【リリカルなのは】ヴィータは真紅の花カワイイ8【StS】
数ヵ月後、ヴィータが航空戦技教導隊に正式に転属となる日・・・
「おぉ、よう似合っとるやん」
嬉しそうなはやての前には航空戦技教導隊の制服を着込んだヴィータがいた。
「そ、そうかな・・・なんか違和感があるけど」
「すぐ慣れるて」
「うん・・・あの、はやて・・・・・ゴメン・・」
「なんや、急に謝ってどないした?」
俯いたままヴィータが話し続ける。
「あたしははやてのすぐ近くにいられない。はやての事、守れないから・・」
「私の事は心配せんでもええよ」
「だけど・・・」
「ヴォルケンリッターはお前だけじゃない。私やシャマルやザフィーラやリィンもいる。
お前の分まで私達が主はやてをお守りする。安心して行って来い」
「シグナム・・・・」
「そやで。ヴィータが自分で選んだんやろ?だから胸張って行けばええ。でもこれだけは忘れんでな。
私達は家族なんや。どれだけ離れた場所にいてもそれはずっと変わらん。ヴィータの帰りはいつでも待っとるから。
帰ってくる時は遠慮なく帰ってくるんやで」
はやてがヴィータの頭を撫でて優しく諭す。
「うん」
「ヴィータちゃん、そろそろ時間よ?」
「ヤベぇ、もうそんな時間だっけ。それじゃあはやて、皆・・・行ってくる!」
「気をつけてな」
「お土産待ってるですぅ」
勢いよくヴィータは家から飛び出していった。
「なんか娘を嫁に出す父親の気分やなぁ」
ヴィータを見送ったはやては忙しそうに家の中に戻る。
「あれ・・?ヴィータちゃん?もしかして、もう準備万端とか?」
「ああ。予定の時間よりちょっと早かったけどな。お前、まさか何も準備してねぇのか?」
「ちょっとはやったんだけど、色々とやってたら・・・」
「とっとと準備しろ!あたしを初日から遅刻させる気か!」
「うぅ、ヴィータちゃん厳しい・・・」
結局、なのはの準備が終わるのはそれからさらに30分を要した。
「やっと準備できた・・・それじゃあ、フェイトちゃん、ヴィヴィオ。行くね」
「私もなのはと行けたらいいんだけど・・」
「無理言わないで。フェイトちゃんはフェイトちゃんのお仕事があるんだから」
「ヴィータ、なのはの事お願いね。なのははすぐ無茶するから、ヴィータが止めてあげてね?」
「任せろ。イザとなりゃアイゼンでぶん殴ってでも止めるから」
「それはちょっと、遠慮して欲しいな・・・」
「冗談だよ、半分はな」
「半分なんだ・・そうならないよう努力しないといけないね」
「そうだ、無茶されると周りが余計な心配するんだからくれぐれも気をつけてもらわねぇとな」
「あははは・・・・それじゃ行ってくるね。ヴィヴィオもいい子で待ってるんだよ?」
「うん!なのはママ、ヴィータお姉ちゃん。いってらっしゃい!」
「ああ、行ってくるな!」
「行ってきます」
転送ゲートが開き、なのはとヴィータの姿は光の中に包まれるとあっという間に姿を消した。
「・・・・・・」
「ヴィータちゃん、緊張してる?」
「お前みたいに神経図太くねぇ。少しぐらいは緊張する」
「私、そんなに無神経じゃないもん。あ、そうだ。ちょっと聞きたかったんだけど」
「あんだよ?」
「さっき無茶されると周りが心配するって言ったけど・・・周りって誰の事?」
「ヴィヴィオとか、はやてとか、テスタロッサとか・・・・」
「む〜、ヴィータちゃんは心配してくれないの?」
「あたしはその・・心配だからこうしてここにいるんだろ」
ヴィータがそっぽ向いたままつぶやく。
「ヴィータちゃんも含まれてるんだよね。ありがとう」
「・・・・」
なのはの笑顔にヴィータの顔が赤く染まる。
(ああ、そうだ。この笑顔だ。あたしが一番守りたいのは。この笑顔を守るためにあたしはここにいる。
だから、どんな事からだってなのはを守る。この笑顔を守るためならなんだってしてみせる)
「ヴィータちゃん?」
「なんでもねぇ。ただ、かなわねぇなって思った。それだけだ」
「?あ、そろそろ時間だね。行こうか」
「なのは。その・・あたしがお前を守るからな。今度こそ、絶対にだ」
「うん、ヴィータちゃんに愛想尽かされないように頑張るよ」
「尽かさねぇよ。お前みたいな危なっかしいのほっとけるか」
「私よりヴィータちゃんのほうがよっぽど危なっかしいもん!
そもそもヴィータちゃんはいつもいつもすぐ後先考えずに突っ込んで行っちゃうし。
いくらベルカ式だからってただ突っ込めばいい訳じゃ・・・」
「後方からの砲撃がメインの癖にホイホイ前に突っ込んでいくのはどこのどいつだよ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
沈黙がその場を支配する。
「なんで喧嘩してたんだっけ・・・」
「忘れた。ていうか時間・・・」
「あ・・・・・・大丈夫、ギリギリ。いこ、ヴィータちゃん!」
「お、おい!引っ張るな!」
ヴィータの手を引っ張ってなのはが駆け出す。
(結局リードされてるんだよな、あたしは。まぁいいか、少なくとも今は)
握られた手をしっかりと握り返し、願う。
”願わくば、このつないだ手がいつまでも繋がり続けん事を”
FIN