6月下旬、二、三日前から降り続く雨が今日も窓を濡らす、梅雨冷のするある日のことだ。
「キョンッ!」
クラスメートたちが一斉に振り向く。
授業中にデカイ声で呼ぶな。恥ずかしいだろうが。
「何言ってんの? クシャミよ、クシャミ。 アンタなんか呼んでないわ」
ふざけんな。
そんなクシャミがあるか。
クラスメートたちがニヤニヤと俺を見る。
俺は前へ向きなおる。
「…キョンッ! …キョンッ! キョンッ!」
「うるせーぞ。いーかげんにしろ」
「クシャミだって言ってるでしょ。 しょうがないじゃない。 寒いんだもん」
紛らわしいんだよ。
クシャミならクシャミらしくしろ。
「アンタが勝手に聞き間違えてるんでしょ。 知ったこっちゃないわ」
クラスメートたちがクスクスと笑っている。
…勘弁してくれ。
俺は歯ぎしりしつつ前を向く。
「…キョンッ! …キョンッ! キョンッ!」
フン。
相手にしてられん。
無視するに限る。
「キョンってばさっきから呼んでるでしょ!」
何だってんだ。今度はクシャミじゃねーのかよ。
「消しゴムが転がっちゃったのよ。アンタの椅子の下」
この野郎…。
ハルヒの消しゴムを拾い、俺は前を向く。
恥をかかせやがって…。
ちょうど俺も鼻がムズムズしてきた。
少し仕返ししてやるかな。
「ハ…ハ…ハ……ハッッッッルヒッ!!」
教室中がドッと笑い出した。
「ちょ、ちょっと! 何よそれ! バカじゃないの!?」
振り返ると、ハルヒが耳まで真っ赤に染め、窓の外に顔を向けている。
ふん、どうだ、思い知ったか。
「WAWAWry」