「ど、どうしたんですか? 涼宮さん」
みくるちゃんが大きな目を更に見開いて振り向いた。
それもそのはず。
その直前にあたしが素っ頓狂な声を上げたからだ。
「な、なんでもないわよ」
あたしは慌てて取り繕った。
みくるちゃんは首を傾げながら「そうですかぁ」と言って団長席から離れていく。
(見られては……いないようね)
私はみくるちゃんが自分の定位置の席に着いたのを見守りながら、目の前のディスプレイをちらりと見やる。
そこにはキョンのテレカの画像が写っていた。
これは反則よ……!
雑用係のクセにこんな企画モノのテレカ作ってもらうなんて!
しかも、な、なんでちょっとはだけてるのよ!! なんか変な色っぽさまで漂ってるし……
なんだかさっきから無意味にドキドキしてる。相手はバカキョンなのに……!
ああ、今日はあいつが(ついでに古泉君も)掃除当番でよかったわ。 絶対今アイツの顔直視できないわ、あたし。
しかし――
テレカの画像を見てると自然と口元がだんだん緩んでしまう。そんなみっともないとこ、みくるちゃんに見られたくないのに、さっきから目が釘付けになって離せない。
――今日、ア○メイ○に寄って帰ろうかしら……
そ、そうよ団長としてキョンのテレカがどれだけ売れているか偵察に行かなきゃね。
雑用係だもの、対抗馬の軍曹に負けてしまうかもしれないじゃない。
場合によっては――五十枚くらい買っておかないといけないかも。
いいえ多分苦戦してるはずだから、絶対買わなきゃ!!
そこでふとあたしは思い至った。
大体テレカってレジで店員に注文しなくちゃいけないわよね……
注文――
10分キョンください!
店員 「いらっしゃいませー」
あたし「らき☆すたの12話のテレカください」
店員 「宗介とキョン、どちらですか?」
あたし「キョンください」
『キョンください』
『キョンください』
『キョンください』
ちょ、ちょっと恥ずかしいわよ!! これは!
セリフに尚且つあの絵だとなんかイヤラシさが倍増されるわ!
やっぱりネット通販で大量購入しようかしら?
と、通販ページに飛んでみると、
『予約注文終了』
えええええええええええ!!
早すぎるわよ! キョンよ!? キョンオンリーのテレカよ!? 社長にも『不人気キャラ』とか言われてたのに、何この即完売状態は!
こ、これは軍曹をぶっちぎりで抜いたかもしれないわね……
でも!!
店頭販売の方は負けてるかもしれないじゃない!
そうよ! 勝つならとことん勝って、完全勝利を目指さなきゃ!
今からすぐに、ア○メイ○にGOよ!
――それに……ちょっと言ってみたいかも……「キョンください」……って……
と、あたしは自己決定を下しパソコンの電源を落として、鞄を手に振り向くと――
「……!! 有希!?」
有希がじっと黙ってそこに立っていた。
――いつから?
「ゆ、有希――見たの?」
それに無言で有希は小さく頷く。
「そ、そう」
有希は黙ったままじっとあたしを見ている。
その透明な目に根負けしてあたしは、
「有希も一緒に来る?」
「いい」
え?
有希は自分のポケットをさぐったかと思うと、
「……これ」
「! ええええええ!?」
あたしの目の前にキョンのテレカを広げて見せた。
ひー、ふー、みー、よー……十枚ある。
有希はあんぐり口をあけたままのあたしに淡々と説明し始めた。
「店頭で買う際、一人十枚までと言われる。あと店によっては名前でなくて番号でもOK。チラシを持っていって指さす手もあり。わたしはそうした」
「そ、そう……」
「そして3時間前現在で、残りがかなり少ない模様。店に行く前に電話で取り置きしてもらった方がいい」
「え! ホントに!?」
「そう」
こうしちゃいられない。
あたしは鞄から携帯を取り出しながら、
「みくるちゃん! あたし急用ができたから、本日の団活は勝手にやってて、ってキョンや古泉君に言っておいて!」
「は、はぁーい!」
あたしはダイヤルを押しながら部室を飛び出した。
中途半端でサーセンorz
昨日からレスを見続けてたらこんな妄想が降臨しました。
SSはハルヒスレの方がいいのかもしれませんが、ここのレスからもらった煩悩なので。