もう訳がわからない
次々と死んでいく友達、そして目の前で大量の血を流して倒れているゆーちゃんとみなみちゃん
この小さな民宿で何が起きてるのか
私にはもう理解したくなかった
不意に背後から気配がした。
振り返った先にはかがみが立っていた。
振り上げられた木製の棒
私は身を翻してかがみと距離を置いた。
「かがみ……なんで……」
「あんたしか……もう生き残ってないでしょ」
かがみは一端黙り込み、再び口を開く
「もうあんたと私とつかさしかいないじゃない!つかさは人を殺すようなやつじゃない!じゃあ……あんたしかいないじゃない!」
そう言い切るやいなやかがみは私に向かってバットを振り下ろす
私はなんなく躱すとかがみに接近し、格闘技経験者の腕を活かしてバットを持つ手に関節技を決めバットを奪いとった。
するとかがみは私の首に手を伸ばしてきた。
首をつかまれ、ギリギリと絞められていく。
殺される。かがみは本気だ
私はかがみに向かって無我夢中でバットを振り回した。
一度、二度、
鈍い感触が何度も手から伝わって来る。
十度程感触がした時、首からかがみの手が離れ、かがみはその場に崩れ落ちた。
その姿は見るも無惨だった。
身体のあちこちがヘコんでおり、至るところから血を流している。
もはや潰れた人形をイメージさせるその姿に私は強い吐き気を覚えた。
私は自分が殺めてしまったものから数歩後ずさる。
初めて人を殺した。
それだけで私の心はいっぱいだった。
また背後から気配がした
しかもかなり近い。
振り返る。
そこには包丁を握りしめたつかさの姿があった。
硬直する私。つかさはゆっくりと口を開いた。
「見てたよ……こなちゃん」
そういい終わった直後、ナイフを両手で突き出し、私に向かって走り出してきた。
距離が近すぎた
私はナイフを避けることも、つかさを止めることも出来ず、
つかさのナイフはすんなりと私の胸を貫いた。
胸が熱い、痛い。私は激痛に耐えきれず地面にバタリと倒れこんだ。
身体中に伝わる私の血の感触、その血は止まることなく私の胸から流れ出て行く。そして強烈な眠気が私を襲う。
「こなちゃんの……殺人鬼!みんな殺して……最低だよ!」
つかさがヒステリックにそう叫ぶ。
ああ……違うよ……私じゃないよ……かがみも不幸な事故だったんだよ……
わ た し じ ゃ な い ・ ・ ・
私は言葉にならない叫びを発して、強い眠気に身体を任せた……
らきすたの夜
終
No.555 疑心暗鬼