最近、尿から甘い香りが漂って困るので
塩分を投下する事にした。
5分後に数レス連投する。
待っても来なかったら突然規制されたとでも思ってくれ。
放課後の部室で鬼の居ぬ間にネット上の巨大掲示板を何気なく覗くと、
俺達SOS団にまつわる話題を扱うスレッド群を発見した。
その中では、俺としては実に不本意ながらハルヒと哀れな一般人との
ラブストーリーが多数展開されていた。砂を吐きそうだ。
だがちょっと待ってくれ。
話自体はいい。俺は二次元の住人だから表現の自由に関しては寛容だ、
色々と抗議したい事はあるが百歩譲って認めてやってもいいぞ。
しかし、何かが――というか、何もかもが違うんだ。
伝えたい事が沢山ありすぎてもどかしい感じだな。
長門曰く「うまく言語化出来ない」ってところか。
俺としてはこのもやもやした気持ちを解決して、いい加減スッキリしたいんだが。
「なるほど。それで僕の出番というわけですね」
そういうわけだ。ハルヒ心理学専攻のお前なら、ややこしい事態だろうと
あいつのブッとんだ思考回路だろうと日本語で説明出来ちまいそうだしな。
スレッド上の二次創作小説(SSと呼ぶらしい)に目を通した古泉は、
「ふむ……」などと言い、最早見飽きた微笑を顔に貼り付けたまま
額に人差し指を当てて何やら思索に耽っている様子だった。
ちなみに今は下校途中で、女性陣三人が前方を歩き、野郎は普段通り後方だ。
「調べてみたい事があります。この件については僕なりに精査した上で
結論を出したいと思いますので。答えが出たらあなたにも連絡しますよ」
何やら大袈裟な話になってきた。俺は手っ取り早く脳内サプリして
くたびれた心身の回復に専念出来ればそれで良かったんだがな。
49 :
「涼宮ハルヒはツンデレではない」:2007/05/17(木) 07:17:05 ID:YM2pP5Qa
古泉からの連絡メールが来たのは、夕食を終え部屋でくつろぎ、
妹が風呂から出たので俺も入ろうかと腰を上げた時だった。
『夜分遅くに失礼します。件のあなたが涼宮さんに抱く感情に関する
僕個人の主観を交えた分析結果が出ましたのでそのご報告を。
詳細は明日にでもゆっくりと。今日はどうぞお休みになって下さい』
……俺は一部の物書きとの多少の見解の相違を、核心を避けながら
古泉に説明しただけだというのに、それが却ってまずかったか。
誤解を生みそうな表現が多々あるのはこの際目を瞑ろうと思っても、
奴特有な魚の小骨が引っ掛かるような物言いに俺は安眠を妨げられるのだった。
次の日の昼休み、弁当箱を片付けると計ったようなタイミングで
教室に現れた古泉に促され、二人で文芸部室へ向かった。
窓際には長門が居るが、今回は特に気にしなくてもいいだろう。
古泉は団長席のPCの電源を起動し、ネットのブラウザを表示させると
懐から取り出したメモ帳を見ながらたどたどしい手つきでURLを入力する。
www.egogram-f.jp/seikaku/index.htm
性格診断ねえ。お前が言ってた調べものってのはこれの事か。
「ええ。これが実によく当たるんです。尤も、その時の心理状態も顕著に
なりますから、自己診断を行うのはフラットな状態が常に望ましいです」
50 :
「涼宮ハルヒはツンデレではない」:2007/05/17(木) 07:18:08 ID:YM2pP5Qa
説明を一通り読み、診断を開始すると50の質問が並ぶページが表示される。
話の流れからすると、これでハルヒの心理をシミュレートしてあいつの
性格を心理学的に解析するのだろう。
「いえ、今回はもっと効率的な方法を使いました。確かにあなたの言った
やり方で解析するのがより正攻法に近い、と言えるでしょう。
しかし僕達は所詮他人。涼宮さん自身ではないのでオリジナルの回答を
ダミーでは再現しきれない可能性は高いと思われます」
ニヤケ面は一度言葉を切り、同意した俺に対し大仰に頷くと続けた。
「とりあえず、何でもいいですから答えを埋めて結果ページへ行きましょう。
全て『どちらともつかない』にすると……ごく平凡な性格、との結果が出ます」
まず結果ページが表示され、更に最下部のリンクからは詳しい診断結果が
得られる仕組みになっている、というわけか。ふむ。
www.egogram-f.jp/seikaku/kekka/bbbbb.htm
「ここでURL右端のbbbbbに注目して下さい。
これは結果ページの5つのエゴグラムを表す、というのはお解りですね?」
……つまり、それらしい診断結果を虱潰しにして当て嵌まるのが
ハルヒに近い性格ってわけだな。で、一致するようなパターンが存在したのか。
「ありました。涼宮さんのある程度の特徴と傾向を念頭に置き、
該当しそうなところを調べ数十分。思ったよりも早く辿り着きましたよ」
誇らしげに胸を張る超能力者。そんなに嬉しいのか、お前。
眉の緩み具合がどことなく褒めて欲しそうに見えたが無視しておく。
www.egogram-f.jp/seikaku/kekka/abbab.htm
概ね合っているとは思う。思うの、だが。
斜に構えた常識家。以前古泉が言ってたとおりだな。
しかし、それだとあいつの宇宙人や未来人や超能力者が云々って話はどうなる。
この結果通りだとすると、ハルヒのパーソナリティーに整合性が失くなるぞ。
「整合性は要りませんよ。涼宮さんは常識的でありながら超常的な事象を
捜し求めているのですからね。個人が内包する自己矛盾の一つです」
ハルヒの場合は、個人が内包するレベルのを遥かに凌駕していると思うがな。
どれくらいかというと宇宙規模でだ。言い換えると超能力者を作り出すほどには。
「そうです。その大きな矛盾こそが涼宮さんを涼宮さんたらしめているのです。
そこに涼宮さんの力の根源があるのではないかというのが、機関での一説と……」
長々と解説者モードに入ってしまった古泉の言葉をBGM程度に
俺の頭に浮かんだのは、以前ハルヒから聴いた野球場での出来事だった。
……そうか。変わったのは価値観であって、性格が変容したのではないんだな。
性格はそのままに自分が信じていた世界が否定された気がしたから、
傍から見たら以前とは全く逆の、奇行に走ったようにしか見えなくなったんだ。
例えば同じエゴグラムが出た複数の人物が居たとしても、環境や社会的立場、
趣味や特技、服装、食べ物の好き嫌い、果てはパンツの銘柄に到るまで完全に一致する
人間はこの世に二人と居ないように、性格類型一つ取っても色々な人間が居るのだろう。
中にはハルヒみたいなのも、な。それを一見しただけで見抜くのは難しい。
人が人を理解するってのは大変なんだな、と俺はしみじみ思ったね。
断っておくが、俺は物書きを批判したいわけじゃないぜ。
見解は人それぞれだし、多くの人が涼宮ハルヒを好意的に見てるのはまあ、悪い気はせん。
東中時代なんぞを想像すれば、尚更の事な。
古泉もよく調べてくれた。放課後のモノポリーでは手心を加えてやるか。
「そうそう、一つ言い忘れていましたが」
俺の心境を知ってか知らずか、人差し指を立てて気色悪いウインクをかましたそいつは、
「診断結果のページを先へ進めると、相性診断が出来るんですよ。
自由時間が大幅に余りましたのであなたと涼宮さんの相性を調べてみました」
おもいっきり要らん事を言い出しやがった。
「あなたは優柔不断型なので、能動的にアクションを起こす涼宮さんとの相性は
なかなか良好、吉と出ています。将来的に見て破綻する可能性は低いでしょう。
良かったですね」
ニヤニヤするな、不愉快だ。土地全部買い占めて破産させてやるからな。
いじょ。
もっと書こうかと考えたが、くどくなりそうなので省略。