1945年にギャラクシーエンジェルがタイムスリップ
1 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :
2 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/01(木) 23:30:52 ID:I+iBCB0N BE:95818548-2BP(3354)
今までのあらすじ
1945年にエンジェル隊がタイムスリップとは?
いつものようにロストテクノロジーの捜索、回収任務に当たっていたエンジェル隊が発見した
折鶴のようなロストテクノロジー・・・・それは物体を過去のターニングポイントとなる時間場所にタイムスリップさせてしまうものであった。
通称ヒストリーポインター
そうとも知らずにそれを持ったまま次の任務に出かけてしまったエンジェル隊はミルフィーユの運気も相まってその能力を発動させてしまう。
そして5人が次に目覚めた世界は時空地震いや・・・・・EDEN形成よりも遥かかこの時代・・・・昭和20年4月1日の沖縄県であった。
そこではまさに日米両軍が今まさに激突しようとする寸前であったのである。
物語はこうして始まっていった。
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/02(金) 00:02:53 ID:I+iBCB0N BE:89829656-2BP(3354)
昭和20年4月6日横須賀海軍病院 PM09:50
「やはり・・・・あなたがの歴史介入が・・・・・」
ウォルコットが頭を抱えた。
「そうですか、やっぱりちひろさんの死期がずれてしまって後世に影響が出ましたか・・・・」
ノーマッドが予想ができたいたかのように言う。
「死期がずれたらどうしてちとせが消滅するのよ」
蘭花が立ち上がって反論する。
「わかりませんか?私たちは歴史と言う線路のポイント変えてしまったんですよ・・・・死んでなければならない人が生きている・・・これはおおき」
「黙れ!」
蘭花がノーマッドを床に叩きつける。
「ちひろはね・・・・やっと生きる喜びを取り戻してくれたのよ。それを・・・」
「まぁまぁ蘭花さんおちついて」
画面越しに蘭花を諭すウォルコット。
「これが落ち着いていられる事ですか!!」
「じゃあちひろさんも一緒に私たちの時代に着てもらいますか?」
「おぉ!それいいわねあんたにしたら上出来よミルフィーユ」
ミルフィーユのアイデアにぱぁっと明るくなる蘭花。
「だめですわ」
しかしミントがすぐに反論をぶつけた。
「1945年に生きている方をトランスバールにお連れして幸せだと思いますの?」
「なによミント、あんたは反対だっていうの!?」
また蘭花の顔が曇った。
「蘭花さん・・・・ちひろさんには千晶さんという大切な妹、それに烏丸大佐に幸さんという大切なご家族がおられますの
それを私たちの勝手だけで奪ったり、引き離したりする事ができまして?」
「そ、それは・・・・でもじゃあちとせはどうするのよ?」
「方法はございますわ。ノーマッドさんがおっしゃられた歴史の線路を元の線路に戻しますの・・・」
言葉重くミントが最後の言葉を言おうとした時隣に座っていたフォルテがそれを制した。
「ミント!それにみんなも」
フォルテの一声でシンとした空気が戻る。
「ちとせとちひろの件はまたこちらで考えておくよ。所で中佐この通信は何時でもつながるのかい?」
話題をそらすとフォルテはウォルコットに目を移した。
「いいえ、残念ながら本国もこれほどの電力を本土から貰うのは容易くなく・・・次は何時になるかは・・・」
「はいはい、そんなこったろうと思ってたよ。よっしゃ、次の通信まであたし達も対策を考える。中佐たちも何とかしておいてくれよ!」
フォルテがサラリと言い放つと手を振り通信も同時に消えた。
「フォルテさん・・・・・」
全員がフォルテに注目する。
「みんないいかい、この通信は誰にも内緒だ!いいね?でもこれは諦めじゃないちひろもちとせも両方助けるんだよ」
フォルテが厳しい表情で4人を見る。
「はい!」
フォルテのサラリと言い放った言葉に4人は大きく返事を返した。
4 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/02(金) 00:05:15 ID:FwP2F1/m BE:62881237-2BP(3354)
おくれましたが
まとめサイトありがとうございます!!
5 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/03(土) 00:05:47 ID:xJhfueXE BE:188641297-2BP(3354)
昭和20年4月7日香取型練習巡洋艦鹿島 AM02:45
深夜の横須賀軍港に1隻の巡洋艦がゆっくりと入港を果たした。
「機関停止しました」
伝令の下士官が巡洋艦鹿島艦長三島幸三大佐に告げる。
「うむ・・・ご苦労」
紋章機輸送作戦の旗艦を勤める鹿島は作戦の概要が伝えられると広島県呉軍港を出航、潜水艦の目をくぐりぬけ
お供の駆逐艦数隻を引き連れて横須賀入港を果たしたのであった。
「あれが紋章機というものかね?」
三島は深夜も作業の進む紋章機を見つけると副官である北野淳平中佐に尋ねる。
「はい、あれが沖縄戦で米艦隊に大打撃を与えた重戦闘機です」
「ほほう、なるほど世界最強のロケット推進を誇る重戦闘機か・・・噂どおりだな」
三島は満足そうに頷くと時計の針を見る。
「草木も眠る丑三つ時か・・・・」
そういうとタバコに火をつけて煙を上げる。
「何とかここまでたどり着けたな」
「はい、危険を侵し最短ルートを取って正解でした」
北野は安堵の表情を浮かべてため息をついた。
「いや北野中佐、我々の仕事はここからだ。うまく事が運びすぎている」
「そうですな、この紋章機を呉まで送り届けるのが我々の役目・・・・」
気を入れなおすように表情を強張らせる。
「本番はこれからだ各員にも十分休養をとらせるようにさせてくれ」
「は!伝えておきます」
北野が敬礼すると三島は煙草の煙を再びすぅっと上らせた。
6 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/04(日) 00:22:37 ID:aGrJdHGD BE:146721277-2BP(3354)
昭和20年4月7日 航洋曳船桂丸 AM08:00
徹夜の作業が続き朝日が昇るころにようやくトリックマスターと航洋曳船桂丸の連結が終了した。
作業員たちは心地よい疲労と達成感から太平洋からの朝日を拝み桂丸の甲板で朝食の握り飯に被りついていた。
「飛行兵さんのお付みたいだな」
作業員の一人が指差す方向からパイロットボートがトリックマスターに接近してくる。
「あの大型機を飛ばしてるのがあのお嬢さんかい?」
「コラ!あれでも少尉さんだぞ。聞かれたらどやされちまう」
作業員が笑っている同僚を注意する。
一方そうとも知らずミントは下士官の説明を受けながら牽引時のトリックマスターにかかるダメージについて質問をしていた。
「お船に引かれての海上航行なんてはじめての経験ですの」
ボルトとワイヤーで操り人形のように固定されているトリックマスターを見ながら心配そうに話す。
「はい完璧です。5、6本切れても問題ありませんよ」
下士官の隣で責任者が胸を張って仕事の良さを説明している。
「はぁ、わかりました。あと一応内部への浸水はないと思いますがトリックマスターも被弾しておりますの」
ミントが指差す箇所には高角砲弾や機関砲の生々しい傷跡が残っている。
沖縄での激しい対空砲火を物語っていた。
「こちらの修理は?」
「これはヴァニラさん・・・失礼、アッシュ少尉にお任せしておりますのですが備えあれば憂いなしお気をつけくださいまし」
「は!部下たちに徹底させます」
「はぁ・・・・よろしくお願いしますわ」
7 :
名無し陸戦隊:2007/02/05(月) 01:35:10 ID:z+SEcUbP
回想1944年 昭和19年10月19日 呉
甲板から眺める光景は壮観なものだった。
今泊地には、第三艦隊を中心に多数の艦艇が集結している。
大小の艦艇の間を内火艇が行き交い、
海上護衛総隊が必死に護り抜いた南方の良質な油を満載した油槽艦は、出撃を控えた艦艇へ最後の給油を行っている。
これだけの艦隊が集まるのはおそらくマリアナ以来だろうか・・・
それを思うと、どこと無く寂しさを感じる。
大鳳の傍に停泊する空母群を見て上田中佐はふと目を細めた。
あの時いた瑞鶴と隼鷹の姉妹艦である翔鶴と飛鷹は、共にマリアナ沖海戦で沈んでいった。
今度の戦では果たしてどれだけの艦が生き残るのだろうか。
もしかしたら瑞鶴と隼鷹も一番艦の後を追う運命なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
僅かな可能性でも生き残る術があるならそれに採るべきなのは必定である。
マリアナ戦以降、第3艦隊は来たるべき決戦に備え出来る限りの手段を講じてきた。
艦隊司令部では各艦の艦長達や航海・砲術関係の士官が集い、
航空攻撃に対する研究会を開いては、弾幕の展開方法から艦の操艦術や回避運動等について何度も語り会った。
各艦の乗組員達も僅かな時間さえ惜しんで、新たに積み込んだ機銃や電探の操作に慣れようと躍起になって練習に励んだ。
囮と言う過酷な任務が待ち受けているだけに、士官から補充された新兵まで皆必死だった。
8 :
名無し陸戦隊:2007/02/05(月) 01:45:14 ID:z+SEcUbP
>>1猛虎☆全勝様、そしてまとめサイトの開設者様、乙です。
現在規制が掛かっており、
PCから書き込めない状況が続いておりますので
今回は携帯から書き込んでいます。
誤字脱字が多く、普段以上に見にくいかもしれませんがご勘弁の程をm(__)m。
9 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/07(水) 12:20:23 ID:cpLpmnWf BE:59886645-2BP(3354)
>>8 それはたいへんですね
早期の解決願っております
再開オメ
楽しみだな
11 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/10(土) 00:58:25 ID:6B0sEASH BE:119772858-2BP(3354)
昭和20年4月7日 トリックマスター AM08:00
作業は順調に運んでいる。見守るミントもほとんどお任せ状態である。
「すみません少し内部に入らせてもらいませんこと?」
突然思い立ったかのようにミントは下士官にトリックマスター内部への許可を求めた。
「どうなされました?」
「いえ、少し内部のシステムをいじっておかなくてはならない場所を思い出しましたの」
「そうですか・・・・それは我々では無理ですね。どうぞ、搭乗はできますよ」
「じゃあ入らせてもらいますわ」
ミントはそそくさと格納庫の方へと入りハッチをしめてしまった。
「ふ・・・ふふふ・・・・一週間いろいろなことがあってわたくしとした事が・・・・」
ぼそぼそと何かつぶやくとハッチロックをONにする。そしておもむろにロッカーを開けると
一体のワニを取り出す。
「こ、これですわ・・・・最近ちょっとナーバスすぎましたのよ!!そう、そうなんですわよねワーくん!!」
興奮したようにワニに袖を通すと誰にも見せない表情でまた何かを語り始める。
「あ、あはははは〜さぁワークン!!わたくしを・・・わたくしを〜」
満面の笑みで薄暗い格納庫をのた打ち回るミントがそこにはいた。
12 :
名無し陸戦隊:2007/02/12(月) 22:52:18 ID:Y0ZEATB6
回想1944年 昭和19年10月19日 呉 空母大鳳艦内
甲板を後にした上田中佐は打ち合せの為、部屋へと向かった。
入り口に着き中を伺うと、まだ時間が早いせいか、そんなに人はいないが。
何人かの参謀の姿があり、黙々と打ち合せの下準備に取り掛かっている。
他の士官や佐官の姿もあったが、誰一人雑談をするでもなく、自分の作業をこなしていた。
今の状況が芳しくないからか、中には憮然とした表情さえしている者さえいる。余裕のある者は誰一人いないみたいだった室内には独特の空気が漂い、外とは一線を期した空間となっている。
一息ついた上田中佐がそっと静かに部屋へ入ると、いきなり声を掛けられた。
途端に上田中佐に周りの視線が集まる。
びっくりしながら顔を向けると、航空参謀の雑賀中佐が近づいて来る。
確か雑賀中佐は小沢長官の指示で、各地の基地や工場と掛け合っていて、不足している飛行機の確保に奔走していたはずだ。
一体何があったのだろう?
気まずそうに立っている上田中佐の前にやってきた雑賀中佐は、うれしそうな表情で話を切り出した。
「名古屋に行ってる連中から報告があった。
愛知飛行機の工場で仕上がった流星改、二便の分を確保出来たらしい。
大きな不都合が見つからなければ明日にはこちらへ飛ぶそうだ」
13 :
名無し陸戦隊:2007/02/18(日) 23:41:12 ID:abv6T/b3
回想1944年 昭和19年10月19日 呉 空母大鳳艦内
明るい話題に上田中佐の表情も和らいだ。
「それは良かった。まとまった数の流星改が揃えば攻撃隊も多少マシになる。
しかし明日になるとすると出撃してしまうから接岸して収容している暇もないな…
海上で着艦させないといけないけれど大丈夫かい?」
上田中佐は不安げに言った。
現在母艦航空隊は再編途中であり、熟練搭乗員も不足している。
マリアナ沖海戦を生き残った搭乗員を中心とする一団は、
ようやく着艦をこなせる技量に達してきているもののまだ完全ではなく。
さらに補充の若年兵になると、基本訓練を終えて間もないが故、離艦もやっとという有様だった。
「それなら心配ない。乗ってくる奴は皆腕利きばかりだから着艦でヘマをする事もないだろう。
まあ、出来ればもう少し訓練出来る時間があれば良いのだがな…」
そう言うと雑賀中佐はため息を吐いてさらに続けた。
「現在母艦航空隊にいる開戦以来のヴェテランは全体の約1割、飛行時間800から1000時間以上の中堅搭乗員が3割弱、
500から800時間程度のようやく空母に慣れてきた連中が2割程に、
予科練上がりのヒヨッコが残り4割を占めている。
こんな調子でまともに勤まるのかね?」
雑賀中佐はお手上げと言わんばかりに肩を竦めた。
上田中佐も頷く
確かに今の状態で母艦航空隊を戦闘に投入するのは正直厳しいが。
何とか揃えた新鋭機の性能と、戦い方で補えれば何とかなるかもしれない。
後は時の運に頼るしかないだろう…
14 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/19(月) 00:29:22 ID:DgNCCyCe BE:134744459-2BP(3354)
昭和20年4月7日 横須賀海軍病院病室 AM08:00
「はぁ・・・・はぁ・・・・・」
自分の傷口に手を当てて癒しの光を当てようとするがまだまだ体力が続かなかった。
「ヴァニラさん無理はいけませんよぉ・・・・・」
傍らのノーマッドがヴァニラをいたわっている。
「・・・・・はい」
表情を変えてはいないが額の汗と息遣いで苦しさが伝わってくる。
コンコン・・・・・
「はい・・・・・」
「失礼します」
担当の看護婦が病室に入ってきた。
「どうですか?お加減は」
「・・・・はい、問題ありません」
「アッシュ少尉、痛いところがあったりやってほしいことがあったら言ってくださいねそのための看護婦なんですから」
意識不明のときとなんら変わりない実態に看護婦の口が思わず滑ってしまう。
ヴァニラは我慢強い性格ゆえに自らの事をあまり人には伝えないのである。無論これだけの怪我で回診でも声ひとつ上げてはいなかった。
しかしそれが看護婦には歯がゆかったのであろう。
「・・・・・・・」
「す、すみません、出しゃばったことを言ってしまって!」
ハッと我に帰った看護婦は慌てて頭を下げ部屋を出ようとする。
「・・・・・広島ってどんなところなのですか?」
出て行こうとする看護婦は耳を疑う。ヴァニラの「問題ありません」以外の台詞をはじめて聞いたのだから。
「え、ああーあ、広島の陸軍第二病院に移られるんですよね、私も幼い時に基町に住んでましたらね」
ヴァニラは黙って頷いた。
「近く広島城がとっても綺麗でねアッシュ少尉も一度お元気になられたら見に行ってみてください」
ヴァニラは再び黙って頷いた。
15 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/23(金) 04:19:21 ID:9v3Efekf BE:161693069-2BP(3354)
昭和20年4月7日 烏丸家 AM08:00
「いってきまーす」
モンペ姿の千晶が肩にかばんをかけでかけようとしていた。
「お弁当持った?防空頭巾は?」
幸の声が奥から聞こえる。
「大丈夫、あー今日は早いから4時には帰ってくるからね」
「はーい」
幸の返事を聞くとそのまま家を飛び出していった。
「あなたはお休みなんですか?」
「ああ、たいていの事は重徳が調整してくれるらしいからお前は休んでいろと」
リラックスした浴衣姿で正光は新聞を読んでいる。
「ちひろは?」
「朝の4時におきて散歩に出かけましたよ」
「そうか・・・・・」
新聞越しに残念そうに返事をすると正光はまた新聞を読み始める。
一歩ちひろは浅草からの帰り道を家に向かって歩いていた。
知覧で特攻前夜に誓った約束、生まれ変わったらみんなで浅草にトーキを見に行こう。
この事が頭にあったのかちひろは日も昇らないうちから浅草へと散歩を始めていた。
しかし、3月の大空襲で浅草寺もそうとうの被害を受けている。
変わり果てた浅草寺の境内を眺めながら一応のお参りをすますとすることもないので家路についたのであった。
下町の空襲被害は凄まじいものであたり一面は焼け野原、すれ違う人々も無表情でまるで人形劇のようである。
ちひろもこの風景を見てしまうと何故か気持ちがボゥっとなってしまった。
16 :
名無し陸戦隊:2007/02/28(水) 00:04:34 ID:lAzxsrf8
回想1944年 昭和19年 10月20日 伊予灘
外は陽も暮れたかと思うと、あっという間に暗闇に包まれた。
抜錨する空母大鳳の艦橋では、艦長の号令が響く。
機関出力が上がり、黒い波間を船体は動き出した。
伊予灘を出撃する第3艦隊の艦船群は、対潜警戒を行う海防艦の先導を受けて、
豊後水道に向けて進路をとった。
静々と航行を開始した。大鳳の艦橋内は、静かだった。
艦長が指示を出し、航海長や操舵手達、乗組員が動いている中。
小沢治三郎長官を始めとして、参謀長以下の司令部幹部も、
一言も喋らずに、前を進む防空戦隊の方を見ている。
沈黙の中、上田中佐が後ろを振り向くと、やや距離を取りながら瑞鶴が追状している。
大きく間隔を開けているのは、衝突を避けるためだろうが。
その動きは、前に比べやや緩慢に見える。
竣工以来、戦闘に投入されていなかった大鳳は、乗組員の技量も維持されているが、
あ号作戦で被害を受けた。瑞鶴等の艦艇は多数の乗組員が消耗しており。
兵の技量を維持させるのに、苦労しているらしい。
新たに補充された兵は錬度も低く、30代以上と平均年齢も高く。
簡易教育を受けた応集兵が殆どであった。
戦争が長期化する中、日本の人的資源も深刻化してきていたのだ。
17 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/02/28(水) 00:08:07 ID:ten+fDR5 BE:17966232-2BP(3480)
昭和20年4月7日 浅草からの帰り道 AM08:40
焼け野原を自分の家の方向に歩いているものの目標物が少なすぎるためひどく広い気がする。
さすがに少し疲れたのかちひろも一息入れることにした。
崩れてちょうどよい高さになっている壁を見つけるとそこに腰をかけて一息つく。
「はぁ・・・・・疲れました」
我ながら少し遠出しすぎたと反省しながら焼け野原を眺めていると天女隊として土浦に出発した昨年との
違いに気持ちが空っぽになってしまう。
「お若い方どちらさんのご親戚でしょ?」
ボーっと空を見ていると老婆が話しかけてきた。
「は、はい・・・・いえこの辺りの親戚と言うわけではないのですか」
「そうですか、そうですか。そりゃよかった、この辺の町内は火事が酷くてね。しかしいや驚かれたでしょ?3月の空襲はひどいものでしたから」
「はぁ・・・・」
老婆は遠くを見るように語りはじめる。
「12時を回るか回らないかの時でしたか空襲警報が出ておじいさんと二人で防空壕へ行ったらもう火の手が上がっていてね
風の強い夜でねー一度逃げたのに・・・・・」
「どうか・・・・?」
老婆が袖で涙をぬぐうと少し笑ってみせてくる。
「ごめんなさいねこんな話をして」
「いえ・・・・かまいません」
「この刀・・・・これをとりに行ってそのまま火の中に、でこの刀抱えたまま・・・・
何でも維新の時の親父の形見だとか」
「そうでしたか・・・ごめんなさい・・・」
ちひろが深々と頭を下げた。
「どうしてあなたが謝るの?」
少し驚いたように老婆が聞き返す。
「あ・・・いえ、でもごめんなさい」
「不思議な人だね・・・・」
本当のことなど言えるわけはないのだが老婆は深くは聞かなかった。
「おばあちゃーんいくよ〜」
孫らしき人物が手を振っている。その先には荷車が使えそうな物を満載して待っていた。
「娘婿の夫婦で今から岐阜に疎開するんです。この年になってこんな長旅をするとは」
走ってくる孫の姿を見ながら老婆が答える。
「これから岐阜まで、道中お気をつけて」
18 :
名無し陸戦隊:2007/02/28(水) 00:08:13 ID:R9XCC3j1
今回も諸事情により携帯から書き込みました。
確認はしたのですが、見にくい部分があると思います。
申し訳ありません。
19 :
名無し陸戦隊:2007/03/02(金) 18:56:42 ID:aWfCAATN
回想1944年 昭和19年 10月20日 伊予灘
暫く見ていた上田中佐は、瑞鶴が速度を上げ始めた事に気付いた。
瑞鶴だけではない。後方に続く千歳、千代田の二隻もだった。
大鳳との距離を詰めた3隻は、ピタリと後方に付くと。縦列隊形を整えていった。
どうやら先ほどの心配は、杞憂だったようだ。上田中佐は安堵する。
瑞鶴の貝塚艦長を始めとする。老練な指揮官達は、
巧みな指導力と士気の維持に努めてきたのだろう。
今の艦の動きは、先ほどとは大違いである。
少なくとも陣形を維持しながら航行するには、問題は無いように見えた。
参謀長が小沢長官に陣形が整った事を告げると、小沢長官は深く頷く。
「このままの隊形を維持しつつ巡航、間も無く豊後水道を越える。
各艦に水上の見張りを密にする様に伝えろ」
厳つい表情の小沢長官が言った。
参謀長も同意し、すぐさま他の艦へと伝えられていく。
上田中佐が聞いた話では、本土沖合いでの、米潜水艦の目撃が増えている。
下手をすると漁船等が、浮上してきた潜水艦から、砲撃を受けた例もあるらしい。
太平洋に出れば、即発見される恐れは十分にあった。
その予感は間も無く的中する事となった。
前衛の伊吹が、米潜水艦からと思われる通信を傍受したのだ。
対水上電探にも僅かだが反応があったらしく、駆逐艦が牽制に向かった。
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/06(火) 18:34:31 ID:q0F0dAVe
保守上げ
21 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/03/07(水) 00:40:46 ID:FIpEovlg BE:71863564-2BP(3591)
昭和20年4月7日 浅草からの帰り道 AM08:50
「お若い方。お名前を聞いてもいいかしら?」
「あ、申し送れました。烏丸ちひろと申します」
ちひろは丁寧に頭を下げる。
「そうかいいい名前だねぇ・・・・時子やちょっと来ておくれ」
台車の方に手を振ると娘らしき人が近づいてくる。
「時子やちひろさんに渡してもいいかい?」
ちひろはキョトンとしていると時子という娘さんは納得したように頷き台車に何かを取りに戻った。
そして荷物から細長い巾着持ってくると刀を入れと老婆に手渡した 。
老婆は肩身の刀に深く礼をするとその刀をちひろに手渡す。
「ちひろさん、迷惑でなければこれをもって行って貰えますか?」
「そんな・・・・それはご主人の形見ではありませんか。私はとてもそんなものを」
「鉄を供出しなければならんのにこれはどうしてもできんかったですよおじいさんは・・・しかし、これからしばらくは居候の身
向こう様も迷惑される。かといってこの場において行くのも不憫だしねえ」
老婆はあらためて刀をちひろに差し出した。
「ですが・・・・・見ず知らずの私なんかがそんな大切なものを頂く道理がありません」
「先ほどの目を見るとあなたならこの刀を渡してもよいと思ったんですよ。どうかこの婆を助けると思い・・・」
「私からもお願いいたします。父の大切な形見ですが母が思った方なら」
深々と頭を下げる二人にちひろは困惑する。しかし、二人の真剣な顔を見ると決意したのか一礼する。
「わかりました・・・・ご主人の大切な刀お預かりします」
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/11(日) 00:18:04 ID:5bN9m1Xb
ただ保守だけするのもなんだが。
どうせなら皆で保守がてら意見や質問みたいな
何かレス付けていった方がいいんじゃないか?
でないとまた落ちそうな気ガス
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/12(月) 13:41:00 ID:olWUCFxS
__,,,, -―''''''"" ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄` ''';;;;―- ,,,,__
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(:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ'i;;;| ;=ニ( )ヽノi ミ{;<( )ニ=、 |;;;il/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ノ
``''' ―ー- ;;_:i`! /` - '", ';;; ⌒ ;;;`,;;`''' ヾ l,'"`;―ー '''"´
l | /i ;;ハ ` ノ l.ソ .l
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!.' , i! l ! ゙i! l! .,' / )
`-ゝ i! ;,'"⌒゛ヽ,; .i! .,' ‐"
', i! (~i ̄ ̄i~! .| ./ 口でクソたれる前と後に『サー』と言え!
,,-―、 /:..l .l! |! ',t--ーt/ i! / ,'
/i :::', ,./:.:.:.', ',', ` -ー' . ノ .,' /,,,__ 分かったかウジ虫!
ノ.i ', :::! '゙:.:.:.:.:.:.ヽヽ `''''''" / ,' ',`-ヽ二二ニ'' ー-、
__,,,.! .ヽゝ ,,,_:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:` \.、 __ノ./ ',:.:.:.:\:.:.:.:.:.: ̄ ̄` 、
24 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/03/14(水) 00:44:55 ID:h6oaV81N BE:143727168-2BP(3777)
昭和20年4月7日 浅草からの帰り道 AM09:10
刀を預かるとちひろは荷車を見えなくなるまで見送った。
そして、荷車が見えなくなると自分もまた帰路へとついたのである。
『この刀は任務に持っていこう。きっとお守りになってくれる』
一人決意を固め廃墟の街を進む。きっとよい風は吹き始めると信じて・・・・・・
一方市ヶ谷の参謀本部ではある会議大詰めを迎えていた。
「というわけで現在シンガポールに滞在中のジャン・ポワレフ研究員を本土まで安全にお連れ頂きたいというわけです」
梅津参謀総長は最後に念を押すと及川軍令部総長と海軍将校達がは同意をする。
「確かに・・・ニ号研究・F号研究の総力を結集する事ができれば新型爆弾の開発はいそげますな。しかしナチスがよく研究員をそれにあの兵器も」
及川は完成が急がれる新兵器の真意を問う。
「金田など最初からあてにしていなかったのだよ、それにこの兵器のほうが現実的ではある」
梅津はにやりと笑うと次にジャン研究員についての説明を始めた。
「なんでも優秀な研究員だがヒトラーは今世紀中の兵器開発を投げ出したらしい・・・・そこで我々が技術交換という名目でごり押させてもらったのさ
まぁ相当な変人でもあると聞いているがな」
「それは楽しみですな。紋章機の借りもある数週間中にはジャン研究員の乗る艦を手配できるようにしましょう」
「頼みますよ。日本の存亡にかかわる事・・・・・」
その言葉で両者は席を立った。
>>22 鈍筆でご迷惑かけております。
ご意見、ご感想お待ちしておりますのでぜひ共に
25 :
名無し陸戦隊:2007/03/16(金) 02:19:53 ID:Zf9FLOKX
回想1944年 昭和19年10月21日 太平洋 本土南西海域
地上を抜けてから、どれだけの時間が経過していたのだろう…
そろそろ母艦が見えてもいい頃だが…
燃料計の針は、まだ十分な量を示しているが、さすがに心配になってくる。
まだ外も薄暗い。朝も早い時間に名古屋を飛び立った。
山口大尉率いる飛行601空分遣隊は、途中松山基地で給油し、そこから南西へと進路を採っていた。
四国から太平洋に出てからと言うもの、周りは海しか見えず。
既に、陽も高い位置に昇ろうとしている。
編隊の中、流星改の一機を操縦する小松一飛曹の前方で、誘導機は唐突にバンクをし始めた。
反応した小松一飛曹は、前方の水平線に目を向けた。
彼方には、真っ青な海原が広がっているだけに見えた…が。
よく目をこらすと、小さな点が出てきた事に気が付いた。
編隊が近づくにつれて、小さな点は数を増やし、少しづつ鮮明になっていく。
徐々に大きくなるそれは、大規模な艦隊となって、正体を現わした。
悠然と航行している二つの艦隊は、それぞれ輪形陣を組んでおり。
3・4隻の空母を中心に、戦艦、巡洋艦、駆逐艦が、周りを囲み。守る様に浮かんでいる。
「中々の絶景じゃねえかー。海軍にもまだ、こんなに船があったんだな〜ええっ!!」
流星改の操縦席に座る。小松一飛曹は、興奮ぎみに、後ろに向かって言った。
「小松よ〜、調子に乗ってると、またヘマするぞ〜。もう少しキチッとしとけ」
後部偵察員席に座っている伊東二飛曹が、小松一飛曹をたしなめる。
「心配ご無用。この俺様がんなドジ踏むわけねぇだろうがよぉ」
「そんな事言って…、この前大酒かっ食らって、二日酔いになっちまった挙げ句、
隊長から大目玉くらったのは、どこのどいつだ?」
「馬っ鹿野郎。あれは、酒が悪かっただけの話だ。
安物の酒じゃ、俺の性に合わねえんだよ。
普段の俺ならなぁ、ウイスキーや菊政宗だったら軽く2升はいけるぞ!!」
小松一飛曹は、堂々と言ってのけた。
「阿呆、そんな事自慢になるか!!
昨日も何だかんだ言って、皆でビール空けてたろ。まだ酔いが残ってるんじゃないか?」
「そんなもん起き抜けに、冷水に顔突っ込んでたら吹っ飛んじまったよ!!
久々に大暴れ出来るんだ。野暮な話は無しにしようぜ」
そう言いながら小松一飛曹は、屈託の無い笑みを浮かべる。
「まあいいや、もうすぐ俺たちの番がくるぞ。着艦の用意しておけよ。」
―――母艦勤務なんて、南太平洋海戦以来だからな…
呆れた口調ながらも、伊東二飛曹の表情はどことなく嬉しそうだった。
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/21(水) 19:34:52 ID:4WYPYp0c
>>25 保守を兼ねて一部指摘したいところがあります。
26行目
誤:菊政宗 正:菊正宗
活字化の際は訂正願います。
27 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/03/21(水) 23:43:55 ID:7VHJsDDg BE:41920272-2BP(4080)
昭和20年4月7日 烏丸家 AM10:20
ちひろは家に戻ると早速頂いた日本刀を正光に見せた。
「ほぅ・・・・・鞘は痛んでいるが剣にはクモリひとつないよほど大切にされていたんだろう」
刀を抜いて正光は神妙にそれを見つめると満足したように頷き鞘に戻した。
そして刀をちひろに返す。
「父様?」
「例え剣術を学んでいないからといってお前が預かったものだ。ちひろが持っていなさい」
「はい・・・・・」
ちひろはそう言うと刀を袋にしまった。
「南方には持っていくのか?」
「はい、肌身離さず持ち歩きます」
「あちらは湿度が高いと聞く、また潮風刀には毒だ。気をつけなさい」
「はい」
ちひろはそういうと自室に刀を持ち帰る。
そして再び下に降りてきたのは昼食の時であった。
雑炊と少々の小鉢と食糧事情の悪さが目立っている。
この時に二人はミルフィーユや蘭花、神が訪れた時の幸への負担を内心詫びた。
「ちひろ、準備はできているの?ミルフィーユさんや蘭花さんにご迷惑のないように」
「はい、シャープシューターも一人で飛ばせるようになりましたし用意も済んでいます」
「今日抜けば後二日しっかり体調を整えなさい、それから南の島はマラリアが流行っていると聞くから注意なさい」
「はい母様」
幸は次に正光に顔を向ける。
「あなたも久々の艦隊勤務でしょう、注意なさってくださいね」
「おいおい子供じゃあるまいし」
正光は苦笑いを浮かべ雑炊を啜った。
「父様も呉に駐屯されるのですか?」
「いや、ミント君達を送ったらその日の晩の夜行でとんぼ返りだ。日吉も離れられんからね」
残念そうな表情でちひろに答える。内心は広島に出てうまいもの食べようと思ったがそれも叶わないだろう。
28 :
名無し陸戦隊:2007/03/23(金) 20:48:40 ID:gjS8GP24
>>26様
ご指摘感謝致しますm(__)m
活字化の予定は無いと思いますが、
次に書く際には気を付けたいと思います。
見て頂いてる方は少ないと思いますが、
遅篳で誠に申し訳ありません。
時間は掛かりますが、本編のお目汚しにならない程度に
書いていきたいと思います。
29 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/03/25(日) 04:04:10 ID:UuLdZR3T BE:95817784-2BP(4110)
昭和20年4月7日 パイロットボート AM11:00
「フーンフフーン♪」
弁当箱三つを小脇に抱えミルフィーユが陽気な鼻歌を歌っている。
「ご機嫌じゃないか?どうかしたのかい」
愛銃をいじりながらフォルテがニコニコしてるミルフィーユに話しかける。
「今日は横須賀で頂いたものでお弁当作りましたぁ!!とーてもヘルシーなんですよ」
「麦飯にサツマイモ・・・・缶詰のお肉でかい?」
「ピンポーン♪今日は病院の裏庭に生えていた筑紫とかも入れちゃってまーす」
ニコニコしながらお弁当箱を見せる。それを見てフォルテはミルフィーユを羨ましく思えた。
「こりゃお昼ご飯が楽しみだねぇ、ところであんたは南方への準備はできたのかい?」
「ばっちりですよ!新しい水着に・・・・お料理の道具も運び出しましたし」
無言でフォルテの右腕がミルフィーユの頭部に振り下ろされる。
「ふぇぇぇ〜痛いですぅ〜」
「あんたはリゾート惑星にでも行くきかい!全く・・・・・」
あきれながら海のほうに目をそらすと係留されている紋章機と外洋曳航船、そして巡洋艦鹿島が目に入る
「お〜ずいぶん物々しいね〜」
「あの艦も大きいですねーでも沖縄から帰るときにあった艦はもっと大きかったですよ」
「あーそうそう戦艦大和だねあたし達は呉にいくからもしかしたらまた見れるかもしれないね」
30 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/29(木) 11:24:57 ID:L0GnFN5h
保守あげ
31 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/02(月) 20:06:28 ID:aDH3yzmu
保守
32 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/03(火) 23:51:11 ID:T9DraY1V BE:71863564-2BP(4110)
昭和20年4月7日 パイロットボート AM11:00
「大和かぁ・・・・一回乗ってみたいですね」
「そうだね、ありゃ気持ちよさそうだしね〜」
大和への思いをはせていると自分達の機体が鮮明に見えてくる。ハーベスター、トリックマスターは人形の様につながれており
カンフーファイターは損傷箇所を痛々しく残していた。
今日も上空には警戒の零戦数機上がっていた。独特の爆音を耳にするとフォルテはミルフィーユに空中戦の時の事をたずねた。
「そういや帝国海軍の飛行機はどうだったんだい?」
「え?いや・・・・紋章機より狭くて、衝撃がすごいんですよ〜」
後半は目を回してしまいほとんど覚えていないミルフィーユであったが二式練習機の自体の感想はそんなものだった。
「でもちひろさんの操縦はとっても上手で横須賀航空隊の北村さんにもうちょっとで勝つところだったんですよ」
「へぇ、やっぱりあの娘はすごいねぇ」
フォルテは満足そうに頷くと丁度ボートはトリックマスターに接岸するところであった。
操舵してきた水兵がロープを受け取るとしっかり固定される。
34 :
ヤルタ会談:2007/04/04(水) 10:21:19 ID:H+8xvw+7
その頃の世界では・・・・
世界の支配なんて簡単だ。
極東は蒋介石にやれば、アメリカの援助で中国を支配していくだろう。
太平洋? それは我がアメリカが頂く。
アフリカはインドルートの関係からイギリスにいく。
スターリンが欲しがっているのは、ソ連の安全保障だけだ。
もし私が彼に何でも与えて、その代償を求めずにおけば、
スターリンだって阿漕なことはしないはずだ。
――ヤルタ会談前のルーズベルトの発言
大掃除をするにはもう少しの時間がかかるが、ドイツはもはや負けだ。
これからの問題はソ連だ。
口を酸っぱくして説明をしても、アメリカ人にはこのことが分かってもらえないのだ。
−−ヤルタ会談前 チャーチルの発言
イギリスの同盟国となったからといって、イギリスの本質やチャーチルがどんな奴かを忘れてしまってはならない。
チャーチルというのは目を離したが最後、懐から1カペイカでも盗み取る男だ。
では、ルーズベルトはどうか。ルーズベルトはそんな男ではない。
――ヤルタ会談前 スターリンの発言
35 :
名無し陸戦隊:2007/04/05(木) 00:56:03 ID:7FuY7x5S
回想1944年 昭和19年10月21日 太平洋 本土南西海域
程なくして、流星改隊に収容準備が整った母艦から、着艦指示が下りた。
順番が後回しになった戦闘機隊は、攻撃機隊の収容が終わるまで、艦隊上空で直援行動に入っていた。
小松一飛曹機の番は、数機下りた後、すぐにやってきた。
母艦の後方に一直線に向かうと、そのままトンボ釣りの駆逐艦の上を飛び越え、飛行甲板に向かって降下した。
主脚を下ろし、フラップを引くと、大鳳の飛行甲板が目前に迫っていた。
着艦信号の光は、降下角度の良好を示しており、
小松一飛曹は、前方誘導灯の赤い光を見つつ操縦桿を操り、機体の位置を保ち続けた。
誘導索の列に機体が入り込んだ直後。
着艦フックが丁度ワイヤー列の真ん中辺りに引っ掛かり、速度がガクンと急激に落ちた。
そのまま甲板に主輪が着いて滑るように走るが、小松一飛曹はそこですかざずブレーキを掛ける。
速度が落ちていた流星改は、僅かな距離を走るがゆっくりと動きを止めた。
36 :
ヤルタ会談:2007/04/05(木) 16:46:24 ID:1BBF+ki5
スターリン「ドイツに賠償を支払わせるために
工場、機械設備、鉄道車両をドイツから撤去すべきです。
ソ連は、ドイツの重工業および生産財の80パーセントを徴収します。
いずれにせよドイツを解体し、孤立した弱小の小国の寄り合い所帯にしてしまわなくてはならない。
チャーチル「イギリスの世論は賠償という考え方には反対です。
第一次大戦後ドイツに巨額の賠償を課した結果、今度の戦争を引き起こしたことを
忘れてはいないからです。
スターリン「なるほどヴェルサイユは失敗した。
しかしあれは、あなた方が現金払いを要求したからだ。
我々は生産財や原料といった現物を要求しているのだ。
チャーチル「そうかもしれん。が、しかしドイツという馬に
馬車を引かせようと思ったら、馬草くらいは残してやらなくっちゃあ。
空きっ腹じゃあ馬は動きませんぞ。
スターリン「いや、我々としちゃあ、その馬がくるりと向きを変えて
こっちを蹴ったりしないように監視してなくちゃならないんでね。
37 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/05(木) 16:52:35 ID:1BBF+ki5
昭和二十年四月沖縄・・・
日本兵は自らが正しいと思う道、つまり、武士道を基にして戦っていました。
それは戦士の道。降伏はありませんでした。
全く望みの無い事態に直面しても、なお諦めようとしない兵士達。
実際に彼らと戦ってみなければ、とても理解出来ないことです。
日本兵の誰かを助けようとすれば、その男は必ず手榴弾を爆発させて、
自分自身はもちろん、こっちまで死ぬことになるのです。
私達にとっては全くありえないことでした。
――アメリカ海兵隊員の回想より
これなんて映像の世紀w
バーンとやりたい!バーンとやりたいー!
41 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/06(金) 15:46:18 ID:/Bv/iVub
なに?あの噂の園迩娃瑠隊(エンジェル隊)
が?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__
/__|__
/_了゚Д゚)
(|〆/|)
/|  ̄ |
∪ ∪
42 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/08(日) 19:56:42 ID:1x3ruNoS
今の職人さん以外にも誰か書いてくれんかな。
WWUで別シチュのSSとか読んでみたいぜ。
43 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/11(水) 01:02:19 ID:xsNzpRsS BE:167681287-2BP(4110)
すみません遅れて!
保守します
45 :
名無し陸戦隊:2007/04/12(木) 00:40:44 ID:mJWhik3f
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 本土南西海域
うまく着艦出来た小松機は、誘導を受け、機体を飛行甲板中央の待機列に移動した。
まだ発動機も止まらぬ内に、甲板脇から待機していた作業員達が飛び出して、小松機へ一目散に向かってくる。
風防を開いた小松一飛曹は、主翼の上に足を掛けると、甲板にひょいと飛び降りた。
後ろの偵察員席からは、大きな身体を引き起こした伊東二飛曹が、機体の反対側に降り立っている。
機体に取り付いている作業員を避けつつ、二人は流れる風に当たりながら、一息吐いた。
ここにきて、体のあちこちが痛んできた。
しかし、このまま立っていても、作業の邪魔になるだけだった。
かといって、勝手にうろつく訳にもいかない。
どこか適当な場所で、待っていた方が良さそうだ。
仕方なく辺りを見回していると、二人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おい、お前等もこっちに来いよ。下手な場所に行くと機銃手にどやされるぞ」
二人が顔を向けると、艦橋の後部辺りに、先に下りていた搭乗員が数名、手持ち無沙汰な様子で立っていた。
顔をあわせた二人は、思わず苦笑してしまう。
どうやら、彼らも自分達と同じ考えらしい。
後ろでは、大勢の作業員に押された愛機が、昇降機の上に載せられて、降下していった。
その様子を尻目に、二人は、空いている空間に小走りで移動した。
やってきた場所の近くには、機銃座が並んでおり、新型の4式40ミリ連装機銃が備えられている。
その傍らには、機銃の操作員が下りてくる飛行機を、興味深そうに眺めていた。
小松一飛曹と伊東二飛曹の二人も周りと一緒に、飛行甲板の作業風景を見物する事にした。
僅かな時間の内に、元々数の少なかった流星改は、艦内への収容を終え、戦闘機隊の着艦が始まった。
一番手は分隊長の山口大尉の乗機だった。大尉の機は、バンクしつつ艦と軸を合わせ、寸分違わず制動索の真ん中に着艦フックを掛けた。
鮮やかに着艦を決めた大尉の機体に、すぐさま作業員が駆け寄る。
操縦席から出てきた山口大尉は、疲れた様子を微塵に感じさせることもなく、大きな足取りでこちらに向かってきた。
46 :
名無し陸戦隊:2007/04/12(木) 00:46:46 ID:mJWhik3f
お目汚しですみませんが、
猛虎☆全勝様が投下されるまでの、前座にでもなれば幸いであります。
先日亡くなられた、阿部善次少佐に合掌しつつ。
名無し陸戦隊
47 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/14(土) 02:11:34 ID:5uk9+WUr BE:143727168-2BP(4110)
昭和20年4月7日 トリックマスター AM11:30
トリックマスターに乗り移った2人はミントと合流し早速お弁当を広げた。
「じゃあもう今日で工事ほとんど終わるってことかい?」
「ええ、皆さんが頑張って頂きまして予定よりだいぶ早く終りそうですわ」
「じゃあ、じゃあミントさんものんびり休暇ですね」
突貫工事による大幅な工期削減で一気にお暇ができた。
「まぁ皆で遊びに行きたいのは山々だけどまたこの前みたいなことになったらねぇ」
「そうですわミルフィーユさん、横須賀にあまりご迷惑はかけられませんもの。」
「は〜い・・・・・」
ミルフィーユはつまらなそうに返事をする。エンジェル隊分隊の前に皆でどこかに行きたかったのである。
「あーそう言えばミント、あんたに第二陸軍病院に付き添ってもらうよ」
「え?わたくしがフォルテさんは・・・・・」
「ハッピートリガーじゃあ市内まで入れないだろ?それに輸送部隊に何かあったら援護に行くつもりだからさ」
フォルテはミントとヴァニラを降ろした後すぐに後続の輸送部隊の援護に回るつもりだった。
「じゃあ・・・・」
「呉まで自力で帰っておいでって事さ、向こうの人にも迷惑はかけられないからさ」
「地図を用意しておいてくださいまし」
「いいな〜知らない街を歩くってなんかワクワクしちゃいますよね」
隣でノー天気な発言をするミルフィーユを羨ましくおもいながらもミントは納得したように頷いた。
48 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/15(日) 01:11:42 ID:KEgZaORx BE:80846093-2BP(4110)
昭和20年4月7日 トリックマスター AM12:20
手早く昼食を済ませると3人はトリックマスター外装へと上った。
「すごいですね〜あの前のお船がトリックマスターを引っ張るんですか?」
「ええ、速力がどこまで出るか心配ですけどね」
古い船を見ると心配になってしまう。しかし、この輸送作戦は帝国海軍の威信かけても成功させなくてはならないのである。
その無言の気合は作業員からも伝わっている。
「まぁ烏丸大佐が戻ったら詳しい作戦内容もわかるしね。あの人の事だから速力くらいカバーしてくれるよ」
「そうですわね・・・信濃の二の舞はゴメンだっておっしゃってましたしね」
フォルテとミントが顔を見合わせて笑う。
「ねぇフォルテさん、ミントさん・・・・・」
ミルフィーユは近づいてくる1隻のパイロットボートに指をさした。
「なんだい交代要員でも乗せてるんじゃないかい?」
「いえ・・・・違いますわ。かなりの上官ではないでしょうか?」
近づいてくるパイロットボートに目を凝らすと確かに交代要員の運搬にしては様子がおかしい。
パイロットボートはトリックマスター手前で停船すると一人の人物が顔をのぞかせた。
「あ〜お爺さ〜ん!」
ミルフィーユが大きく手を振り返す。しかし他の作業員、水兵は一斉に整列している。
フォルテ、ミントもミルフィーユを抑えるように気を付けさせた。
「ミルフィーユさん!鈴木閣下ですわよこの前のことを忘れましたの?」
「一応お世話になってる身なんだからちゃんとしな・・・・」
忘れずに二人の耳打ちがミルフィーユに届いた。
「桜葉少尉!降りてきてもらえるかね」
側近の士官がパイロットボートからミルフィーユを呼びつける。
「は〜い・・・じゃなかった。は!すぐに参ります!」
ミルフィーユが縄梯子を下り始めるともう一隻のパイロットボートがエンジンをかけはじめる。
「大丈夫でしょうか?」
「さぁね、鈴木閣下ご指名みたいだし」
縄梯子を下る様子を見守りながら二人はひそひそとつぶやく。
「ちょ、ちょっと待ってくださぁ〜い、まだ上向かないで〜」
肝心のミルフィーユは縄梯子からパイロットボートに移るのに補助をしてくれる水兵に注文をつけていた。
ここはクロスオーバーのSSもOKなのか?
てすと
>>49 クロスオーバーがなんなのかわからないけど、
スレタイに近いシチュエーションのGA作品ならいいと思う。
52 :
49:2007/04/15(日) 20:47:42 ID:mL4xFLtZ
>>51 ナムコの戦闘機の某シューティングゲームとなんだ。
まあまだ設定を考えてる段階なんだが・・・
53 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 20:51:19 ID:9HTFMj2P
保守
何とか1000まで持たせる。
54 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/22(日) 02:16:06 ID:iu0c10Ab
よしっ皆でネタを考えてここで披露するんだ。
俺からはベアキャットと東海出してくれ。
名無しの方でもいいから。
55 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/24(火) 00:08:12 ID:2mGvLzMw BE:161692496-2BP(4110)
>>49さん
亀レス
どうぞ楽しみにしています。申し訳ありませんが名前欄にトリップをお願いします
製本時に編集の方が作業しますのでなにとぞ・・・・
>>54 日米の兵器はできるだけ出そうと思っています。
56 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/24(火) 01:16:54 ID:2mGvLzMw BE:104801257-2BP(4110)
昭和20年4月7日 トリックマスター AM12:40
ミルフィーユと鈴木を乗せたパイロットボートは近くの桟橋に接岸し二人を降ろして去っていった。
これは鈴木が頼んだのであろう。
「すまないねぇ忙しい時に」
「いいえ、おじいいえ、鈴木閣下も私達の紋章機をご見学ですか?」
「左様、無補給で世界を何週もできる航続力、驚くべき運動性と戦艦級攻撃、防御力を兼ね備えた重戦闘機、これは見ておくべきだった」
係留されている六機の紋章機をみながら鈴木は答えた。
「そして、米内君に香の一本でもさしてやらにゃ」
「ごめんなさい!」
ミルフィーユが勢いよく頭を下げる
「いいや君たちのせいではない、 我々の油断じゃよ」
ミルフィーユの頭を撫でながら鈴木は答える。
「ミルフィーユさん、ワシはあんたにもう一つ聞いてもらいたいことがあるんじゃ」
「なんですか?」
不思議そうに首を傾けミルフィーユがたずねる。
「鈴木貫太郎、内閣総理大臣の推薦を受けた。それについて聞いてもらいたいことがある」
「そ、そんな!!わ、私は難しい話とかむりですし・・・・そういうのは苦手なんですよぉ〜」
険しい表情でミルフィーユを見る鈴木にミルフィーユが全身全霊の無理を伝える。
「ワシとて流石にこの話を聞いたときはまいったよ。岡田らめこんな年寄りをとな、そんな時あんた達がやってきた。
遥か未来よりきた天使とあってはな」
「そうだったんですか、じゃあもしかして総理には・・・・・」
ミルフィーユ表情を明るくしてたずねる。
「断るつもりじゃ」
「え!?」
肩の力が抜けた感じになる。しかし鈴木は真剣であった。
「他の連中は何やら根回しをしているらしいがワシに現状、総理の資格など」
「そんなことないですよ!鈴木閣下なら大丈夫です」
「何故そう思える?」
「私は政治とかそういう難しいことはわかりませんが鈴木閣下なら大丈夫な気がするんですぅ!」
ミルフィーユの表情には自信があった。確信ではないけれども・・・・
「気か・・・・ミルフィーユさんらしい答えじゃ。しかし今回のことは幸運では」
「違います!私は自分を幸運だなんて思ってません運が強いだけなんです。でも鈴木閣下違います
ピンチをチャンスに変えられるから大丈夫なんです。だっていままもすやってきたんですよね」
57 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/24(火) 22:18:13 ID:btsZ54jG
wktkしながら続きに期待します。
58 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/04/27(金) 19:20:59 ID:hFvNQh8s
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 本土南西海域
「お前達、長い間ご苦労だった。俺は、飛行隊長に報告して来なきゃならん。
スマンが、もう少しここで待っててくれ」
先任の士官にそう告げると、山口大尉は、そのまま艦橋の中へと入っていった。
大尉がいなくなった後も、小松一飛曹は他の者達と共にその場で、
緩い風に曝されながら、見物を続けた。
駐機している戦闘機は、次々と格納庫の中へと降ろされていき、
後続の機体が着艦に入る。
どの搭乗員も腕が良いので揃っているので、
事故の心配をしている者もあまりいない。
ここまで作業が進むのは、技量だけでは無かった。
今日は天候が良い上に風も少ないので、艦もあまり揺れていない。
今ならば多少要領が悪くても、容易に着艦が可能なであろう。
1個中隊はあった機体も、残りはあっという間に、最後の1機となっていた。
飛行機が着艦する分、小松一飛曹の周囲の人だかりも増えて、
ちょっとした見物人の山となっている・・・
目を細めながら、艦の上空を通過する艦戦を見送る。
一航過した艦戦は、艦の後方に回りバンクを始めた。
機体と母艦の幅のズレを補正し終えると、フラップを下げ、速度を落とし降下を開始する。
しかしその動きは、どことなく頼りない。
「あの艦戦、報国5729号だぞ。操縦しているのは、新品少尉か」
搭乗員の誰かが言った。
新品少尉と言う、言葉が耳に入った小松一飛曹は、伊東二飛曹に質問を投げかけた。
「おい、新品少尉って誰だよ?」
「お前覚えていないのか?この前名古屋に来た時、山口大尉と一緒にいたの見ただろう。
若いが腕に見込みがあるからって、大尉が推薦したって奴」
そこまで聞いて小松一飛曹は、大きく相槌を振った。
「ああ・・・あの少年か、わかった、わかった。
そうか〜あの坊主ね・・・」確かに見た事がある。
まだ高等学校を出たばかりの少年に見えたので、
てっきり大尉の親戚が見学にでも来ていたのかと思い、気にも留めなかったが。
まさか自分より階級が上、しかも士官とは・・・。
おそらく大学に在学していた所を、学徒動員で引っ張られたのだろう。
外見から判断すれば、大学に入ってすぐに飛行科予備学生と言ったところか・・・
少尉になっているなら、一通りの訓練は終えている筈であり。
大尉からが引っ張ってきたなら、大丈夫だろうか。
そんな事を考えつつ、やや速い速度の艦戦を目で追った。
速度が落ち切れていないのは、最後まで待っていたので、
燃料を消費して機体が軽くなっているせいだ。
ちょいと速すぎるな・・・もうチョイ落とさねえと突っ込むぞ―――
飛行甲板でも万が一に備え、事故防止用の静止横索を上げようとしている。
件の艦戦は、母艦の目前に来て、強引に機首を上げている。
そのまま制動索の列に飛び込むと、
前方の丁度良い部分を掠め、一番手前の制動索に着艦フックが引っ掛けた。
主脚が着いた後、尾輪が落ちるように着地し、機体を揺らす。
見ていた作業員は慌てて、ワイヤーを外しに行った。
周りで見ていた者も、力が抜けて思わずヘタってしまった。
「あんの馬っ鹿野郎、一歩間違えりゃ大切な機体をオジャンにするとこだったぞ」
安堵感に浸りながら、小松一飛曹達は怒声を上げた。
「まあ少々強引だが、初めての着艦にしちゃあ、うまくやった方じゃないか」
誰かが、場を鎮めるかのように言った。
開かれた風防から顔を覗かせる新品少尉は、腰が抜けたのか、
作業員の手を借りながら、操縦席を体を起こしている。
そんな様子に、小松一飛曹の怒気は、急激に萎えていくのであった。
59 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/04/30(月) 03:10:46 ID:P/RONlDP BE:74858055-2BP(4110)
[設定資料]
シールドも魔法も、ナノマシンもなかったエンジェル隊・・・・
敗北のための勝利、明日のための敗走。
ただ・・・・どのエンジェル隊よりも勇気を持ちどのエンジェル隊よりも生きることに一生懸命だった4人の天使
「天空の天女隊」
部隊名 大日本帝国海軍女子航空部隊天女隊隊
昭和19年結成
配備機体 一式戦闘機隼改 二式複座戦闘機屠龍 零式艦上戦闘機(予備機)
隊員 烏丸ちひろ伍長(隊長) 川村麻奈上等飛行兵 加藤このみ上等飛行兵 天野明日香上等飛行兵
60 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/01(火) 01:05:04 ID:5q5Y/+fj BE:215590289-2BP(4110)
昭和20年4月7日 桟橋 AM12:40
ミルフィーユは真剣な顔つきで鈴木を見据えている。
「はっはっは!ミルフィーユさんそれは貴方じゃよ」
思わず笑いがこみ上げてきた鈴木。
「ミルフィーユさんは本当にいい運の持ち主だとワシは思っとる。今の君にはわからんかもしれんがな」
「そんな事ないですよ〜私なんか何時も皆さんに迷惑を・・・・」
逆にほめられてしまい頬を真っ赤に染めてミルフィーユが謙遜する。
「いやいや、ワシは自分の命を守ることだけに運が強いだけだ。しかし君は違う、皆の幸せを願いこうして戦っているではないか」
「鈴木閣下・・・・・じゃあ総理大臣になってください!」
鈴木はキョトンとするがミルフィーユの表情は真剣である。
「ミルフィーユさん、ワシは・・・」
「私は皆を幸せにしたいです。だからそのために総理大臣になってください」
さっきより明確にミルフィーユの言葉は鈴木の胸に届く。
「なるほど、ワシは皆を幸せにする道具になれということじゃな・・・・・」
怒られと身構えたがそれが今自分が言える一番の言葉だった。しかし鈴木の表情は穏やかなってゆく。
「そうか・・・ミルフィーユさんのお力をもらえるなら大丈夫じゃ、本当にありがとう」
鈴木はそういうとくるりと背を向け歩き出しすぐに迎えの車がやってきた。
車のドアが開くと最後に鈴木はもう一度礼をして車に乗り込んだ。
そしてその夜、鈴木貫太郎は内閣総理大臣職を正式に引き継いだのであった。
61 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/05(土) 17:30:37 ID:zI1hU4pT
保守
62 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/06(日) 00:34:05 ID:LnQEmWNS BE:134744459-2BP(4140)
昭和20年 4月6日(日付変更線) パールハーバー PM07:00
常夏の島が太陽に別れを告げると将校クラブに明かりがともる。
南国の夜風を心地よく肌に触る。酒を片手にトランプを楽しむ者や談笑をしている者など皆、拘束時間を離れ楽しんでいる。
パールハーバーが日本軍の奇襲を受けて早4年、今や形勢は逆転し島は再び静けさを取り戻していた。
しかし、2月からの硫黄島上陸作戦の大打撃に加え4月1日のアイスバーグ作戦失敗は一応の影を落としている。
そしてパールハーバーの将校クラブでも沖縄に現れたロケット重戦闘機の話は持ちきりであった。
「空母郡にはだいぶの被害が出ている層じゃないか?日本本土爆撃も一時中断、運気に見放されたか?」
オンザロックを片手にガトー級潜水艦キングフィッシュ艦長ライン・マリオ大佐がニヤリと歯を見せた。
「ああ、飛行機乗り達に臆病風が拭き始めてね。えらい迷惑だよ」
アメリカ空軍将校グレッグ・シーツ大佐が悔しそうな表情で返答する。
「まぁこんなしがない潜水艦乗りにまで噂が流れてるんだ。じゃあ拝ませてもらおうか?」
「何を?」
「おーうおーうとぼけやがって、持ってるんだろ?高い撮影両の空飛ぶ悪魔の写真を」
「馬鹿!重要機密だぞ・・・」
グレッグは周りを気にしながらラインを睨み付けた。
「しかし、それを見せるためにきたんじゃねーのか?」
「まったく・・・・とんだ腐れ縁だ!」
ぶっちょう面のままテーブルの下から封筒を一枚で渡す。ラインも何食わぬ顔でそれを受け取った。
そしてスッと中身を抜き奇襲隊が撮影した紋章機を確認し素早く封筒に戻す。
「なかなかのベッピンさんだね〜こりゃバタバタ落とされるわ」
「ライン!口が過ぎるぞ。さてじゃあ本題に入る」
グレッグの一言にラインの目がかわる。
「数日前の横須賀奇襲いこう日本海軍の行動が活発化している。特に本州周辺がだ、これはおそらく何か大きな作戦があると見ている」
63 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/05/08(火) 18:43:52 ID:ZHcwwXo/
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦上
フックが掛かった瞬間、つんのめるように体は押し出されそうになり、
大きな衝撃に続けざまに見舞われた。
制動索の一番手前に引っかかったのは、自身でも分かった。
十数本並ぶ、制動索に着艦フックを掛ける時、
列の真ん中の辺りに掛けるのが理想とされ、手前に近づくごとに衝撃が強くなる。
先輩から、着艦に慣れていない者は、よく手前の方に引っ掛け、
尻餅を着くような感じで甲板に下りると教えられたが、正に自分がその一人であった。
甲板に着地し、機体の動きは完全に止まっているが、未だに実感が沸かない。
握っていた手を操縦桿から離すと、手袋越し汗ばんでいるのがわかる。
目の前の視界も、まだおぼろげながら揺れていた。
座席から身を起こした白浪少尉の体からは、緊張からなのか、汗がふき出した。
自分でも分からない程緊張していたようだ。息も荒い。
大きく息を吐いて、心身を落ち着かせていると、作業員が軽く風防を叩いてきた。
その作業員は、大丈夫か?と言わんばかりの表情をしていた。
とりあえず外に出なければ―――何とか腰を上げると、方々の体で風防を後ろへ押し開いた。
作業員が差し出した手を借り、こわばっている体に力を入れた。
作業員に一言礼を言い、甲板に飛び降りた白浪少尉は、脚がよろけ倒れそうになった。
ぐらついた白浪少尉の体が、とっさに後ろから支えられた。
「おっと大丈夫か?」
いつのまに背後にいたのか、山口大尉が背中を抑えている。
「たっ大尉、すいません・・・」
申し訳なく思いながら、少尉は体勢を戻した。
「あんまり気張りすぎてると、戦う前に体を壊すぞ。もっと気楽にいけ。誰も咎めたりせんから」
「はぁ・・・しかし・・・」
戸惑い気味の少尉は口ごもる。
「まあ仕方ないな、今回が初めての着艦だったんだし、
本当は一度か二度、内地で降ろさせてから行きたかったんだがね、
空戦科目を叩き込むだけで精一杯だったからな・・・それでもよくやったよ。お前は」
そう言うと、大尉は苦笑いを浮かべながら、少尉の肩を軽く叩いた。
「さてそろそろ行かないと、早くしないとお前の部屋がなくなるぞ」
見ると甲板にいた筈の搭乗員達は、既に艦内に移動しようとしていた。
「あっ」
少尉は慌てて雑嚢を拾い上げると、装甲に覆われた甲板を走り出す。
大尉と話していて、既に緊張感も無くなっていた。
64 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/11(金) 01:35:54 ID:ZDaGhhK4 BE:83841247-2BP(4140)
昭和20年 4月6日(日付変更線) パールハーバー PM07:20
グレッグは真剣な表情でテーブルに手を組んだ。
「第21爆撃集団は週末からB29により日本本土爆撃を再開する。西日本限定ではあるがな・・・」
「なるほど・・・その為にジャップの海軍の動きが気になるということか」
「ああ、そういうことだ。お前達の艦隊にも近々出撃命令が下るだろう」
「かー!それでデビルちゃんの写真をわざわざ俺に見せて手柄を上げさそうってか?親友!」
感極まったかのように喜びを見せるラインだったがグレッグの目つきは真剣だった。
「いいやライン、これは航空機だが水上機でもある、沖縄でも着水したところを駆逐艦が雷撃を行ったが仕留められなかったそうだ」
「何が言いたい?」
ラインの目つきが鋭く戻る。
「フライングデビルの機影を黙認したら逃げろ、こいつらは見えない目を持ち明後日の方向から攻撃を受けたとの報告もある。そしてその攻撃力は戦艦ウェストバージアをも葬り去った・・・」
「グレッグサンキュー、ちょっと艦に戻る」
そう語るとラインは席を立った。
「ライン・・・・死ぬなよ」
去るラインを振り返らずにグレッグは送り出した。
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦内
部屋に入った白浪少尉は、案内してくれた兵に挨拶をして扉を閉めた。
「はぁ〜疲れた・・・」
机の傍に雑嚢を置くと、あてがわれたベッドに倒れこんだ。
朝からの飛行は少尉にとって、今までにない疲労を蓄積させた。
今まで受けてきた訓練でも苦労したものだが、
今日はいつもとは異なる前線に向かう緊張感の様な物が、体力以上に神経をすり減らした。
「ここまでやってきたけど、生きて帰れるのかな・・・」
仰向けのまま億劫そうに腕を伸ばすと、雑嚢に入れていたノートを取り出した。
少尉はこのノートに、学んできた戦技法や先輩搭乗員から聞き止めた飛行技術を細かく書き込んでいた。
そのノートの中に、封筒と一枚の写真が挟んである。
ノート越しから少尉は、気恥ずかしそうに周りを見回す。
今、部屋にいるのは少尉のみで、他の者は全員出払っていた。
自分だけしかいない事を確認し、写真をそっと手に取り眺めて見た。
モノクロの写真には一人の女性が写っている。それは内地にいる彼女の姿だった。
彼女と最後に会ったのは、もう半月程前になるだろうか。
あの時は、わざわざ東京から汽車に乗り、基地まで会いに来てくれた。
直接一緒にいられたのは僅かな時間たったが、それから暫くして手紙と写真が送られてきた。
もしかしたら彼女も、自分が前線に送られる事を察したのだろうか?
呻りながら少尉は横に転がった。
軍機に関わるので口ではいえないが、顔に現れていたのかもしれなかった。
「元気にしてるかなぁ・・・最近じゃ内地も物騒になってきてるし、何も無ければいいけど」
今の所、爆撃機が飛来している地域は、西日本の一部に限られているが、
占領されたマリアナ各地の飛行場は整備も終わり、そろそろ内地全域に爆撃機が飛んできても、
おかしくないと噂が立っている。
歯がゆく思いながら何度も読んだ手紙をまた読み返す。
手紙には彼女の近況が書かれていた。手紙によれば彼女は今、姉の家に厄介になっているとある。
彼女の姉は結婚しており、その夫は海軍軍人と聞いている。
現在艦隊勤務に就いていて、今は一人で家を守っているとの事なので。
妹である彼女も一緒にいた方が安心だろうと、お互い配慮したのだそうな。
「生きて帰れるのかな・・・僕・・・・・」
不安に駆られながら少尉は深い眠りへと誘われていった。
66 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/05/12(土) 22:05:41 ID:pq//dzid
一部訂正、本文3行目
>そのままあてがわれたベッドへ倒れこんだ。
既に遅いですが、2行目と3行目は入れ替えで。
資料や考証が少なく、かなりおかしい部分もあると
思われますがご了承下さいm(__)m
67 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 20:10:02 ID:WmGL8kpK
保守上げ
68 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/19(土) 23:38:13 ID:B8jkg5w/ BE:74858055-2BP(4200)
昭和20年4月9日 横須賀海軍病院 AM08:00
ヴァニラを除いたエンジェル隊4名が屋上へと集結していた。
「さぁていよいよしばしお別れの時だよみんな」
円陣を組むかのように4人の中でフォルテが最初に切り出しす。皆それぞれに緊張した顔つきをしていた。
「フォルテさん、次に会えるのは3ヶ月後くらいなんですよね?」
ミルフィーユが手を挙げながら質問をぶつける。
「ああそうだよ。烏丸大佐の話だと蘭花のカンフーファイター修理とヴァニラの回復見込みも考えるとね」
「じゃあ、もしその間にどちらかが元の時代に帰っちゃったりしたら・・・・」
「そん時は戻って方が助けに戻る。いいね!」
「は、はい!わかりました」
さらっとした答えにミルフィーユもびっくりして返事を返す。
「蘭花もちひろの言うことをしっかり聞いておくんだよ」
「あたしも子ども扱いですか?大丈夫ですよ〜ミルフィーユじゃあるまいし」
「えー私はそんな〜・・・・ひどいですよ〜」
ミルフィーユが可愛く怒るが何事もないように蘭花はスルーする。
「海上輸送作戦も順調そうですけどアメリカ軍は気がついてないんですかね?」
「いいえ、おそらく察知はしていると思いますわ。しかし航空攻撃は考えにくいですわね」
ミントはアメリカが紋章機への警戒を強め輸送艦隊への本格攻撃はないと考えていた。そのためにもAチームは
輸送艦隊が出港する時刻に硫黄島、グァム方面へと飛び立つのだ。
「足止めはしてあげられるかもしれないけどそっちが呉に着くまでは無理よ、すり抜けられたら頑張ってね」
「わたくしとヴァニラさんもハッピートリガーで呉へ先行しますの」
少し困ったように耳を動かす。
「まぁあたしが2人を降ろしたらバックアップに向かうけどね」
「それでも多少は艦隊だけになりますもの不安ですわ」
ミントは悔しそうな表情を浮かべる。横須賀奇襲以来紋章機搭乗時のテンションが安定しないのである。
多少のことはできるにしても飛行や戦闘となるとよりテンションが不安定になってしまうのだ。
「もう、またそんな顔してるの?びしっとなおしておきなさいよ!」
表情を察した蘭花がミントの背中を思いっきり叩き反動でミントは少しよろけてしまう。
「コホコホ・・・・・もう、乱暴すぎますわ!」
むぅ〜っとした表情で蘭花を睨むと今度はでこピンを見舞われた。
「私達も頑張るから、あんたも頑張りなさいって闘魂注入よ!」
蘭花は元気な表情でミントに笑顔も送っていた。
69 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/20(日) 07:31:11 ID:FjAV17JE BE:59886454-2BP(4200)
昭和20年昭和20年4月9日 烏丸家前 AM08:00
迎えの車がすでに到着している。幸と千晶も表へと出てきており正光も洗濯の行き届いた軍服に身を包み外へとでている。
そして最後にちひろが姿を現したのであった。
烏丸ちとせの制服に身を包み老婆より譲り受けた刀を提げ玄関から出くる。
「お姉ちゃん!」
ちひろの制服姿を見るなり千晶が飛びついてくる。
「私はね・・・・千晶は・・・・もう何処へも行ってほしくない・・・兵隊さん・・じゃ・・ない普通のお姉ちゃんでいてほしい・・・の」
感極まり泣き出してしまった千晶は嗚咽しながら自分の思いを姉にぶつける。
「千晶・・・・・」
ちひろは自分一杯千晶を抱きしめるとやさしく彼女の髪を撫でてやった。
「お姉ちゃんはもう一回戦争に行ってくるね、御国のため・・・うんうん、父様や母様そして千晶やみんなを守るために・・・」
「お姉・・・ちゃんが・・・やらな・・・っきゃ・・・だめなの・・・」
「そう、シャープシューターは私でしか動かせないの。大丈夫!紋章機はとっても強いんだから・・・ね!」
「いやぁ・・・ミルフィーユ・・・さん達に頑張って・・・もらおうよ」
千晶は強い力でちひろにしがみついて離れようとしない。
「だめよ、兵隊さんを送り出すときは・・・・ちゃんと万歳しなさいって・・・・教わったでしょ」
ちひろの目にも涙が溜まり始め、思いがこみ上げてくる。
「千晶、お姉ちゃんを放しなさい」
「いや・・・・」
幸の言葉にも千晶はちひろに抱きついたまま離れようとしない。
「わかりました。千晶はそんなわがままを言うのなら母様は千晶に罰を出します」
千晶は幸の言葉に一瞬身震いを起こす。
「お姉ちゃんが帰ってくるまでミルフィーユさんから頂いた映画は見ないことにします!」
「それからちひろはそのリボンを千晶に結んで上げなさい」
幸は気丈にちひろがつけていたちとせの赤いリボンをさしてそう言った。
「はい、母様」
母の心情を察してちひろはリボンを外して千晶に結んでやった。
「さぁお姉ちゃんも大切なちとせさんの物を千晶に預けたのよ、これでいいわね」
千晶は髪に結んでもらったリボンを触りながらちひろから離れる。
「いい子ね」
幸はやさしく千晶を引き寄せちひろのほうを見る。ちひろの目には涙が一杯溜まっていた。
「女の子とはいえ貴方は帝国軍人、涙最後に流しなさい」
幸がモンペのポケットから出したハンカチを手渡した。
「はい母様、私も頑張ってエンジェル隊の皆さんの足手まといにならぬよう頑張ってまいります」
涙を拭いハンカチを返そうとすると幸はその手を静止した。
「持っていらっしゃい、お守りにしちゃちょっと不足だけどね」
幸が何時も持ち歩いているハンカチを持たせてくれる。
70 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/05/26(土) 04:30:48 ID:6i/hT1h6
昭和20年4月9日 車内 AM08:10
ちひろはハンカチを制服のポケットに詰め込むと幸と抱き合った。
「頑張っていらっしゃい」
「はい・・・母様」
別れを終えた頃に正光が玄関から姿を現す。
「じゃあ行ってくるぞ」
「御武運をお祈りしています」
部下の手前もあり幸はちひろと違って正光を形式上送り出す言葉をかける。
「千晶、母様の言うことを聞いてしっかり家を守りなさい」
「と、父様も・・・頑張ってください」
まだ涙の残っている千晶は嗚咽交じり父と別れを告げた。
「じゃあ行こうかちひろ」
「はい父様!」
2人の敬礼が並ぶ、また日常から戦争に戻る瞬間であった。そして車に乗り込むとすぐに車は走り出した。
「父様、お姉ちゃーん!」
千晶が走り出す。その姿はサイドミラーで確認できたがちひろは振り向かなかった。
また必ず逢えるという新年が彼女を走させたのであろう。
やがてミラーから千晶の姿が消えるとちひろは小さく深呼吸を行う。
「1時間でつく、また飛行艇を出してもらった」
正光はまっすぐ一点をみながらちひろに話しかけた。
正光にとって自身最大級作戦が始まろうとしていたのである。
71 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 12:45:53 ID:DnqCJyuv
父上様、母上様、喜んで下さい。いい立派な死に場所を得ました。
皇国の荒廃、この一戦にあり。大君の御盾となって、潔く死に就き、宿敵を撃滅せん。
男子の本懐、これに優るものがまたとありましょうか
23年間の幾星霜、よく育てて下さいました。
この度がその御恩返しです。
よくも立派に皇国のために死んでくれたと褒めてやって下さい。
ああ、我ら特別自爆隊。向かう所は敵空母に急降下
――神風特攻隊員の遺書より
72 :
猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2007/06/02(土) 02:39:31 ID:BC6pJXUD BE:83840674-2BP(4500)
昭和20年4月9日 巡洋艦鹿島 PM01:00
「エンジェル隊隊長のフォルテ・シュトーレンです」
「連合艦隊紋章機輸送作戦専任作戦参謀烏丸正光です」
鹿島の乗組員に敬礼を送ると数倍になって帰ってくる。
「ようこそ、艦長の平岡義方だ」
2人は甲板で三島は歓迎を受けると早速作戦室に案内された。
すでに他の参謀や駆逐艦艦長集や外洋曳航船2隻の艦長も終結している。
「本作戦の作戦専任参謀烏丸正光大佐です」
「エンジェル隊隊長フォルテ・シュトーレン少尉です」
すぐに全員が立ち上がり敬礼をおこなう。
「いよいよ最終打ち合わせとなるわけですが平岡艦長、やはり出港は日の入り直後に行うことしたいのです」
「そうか、しかし烏丸参謀・・・駆逐艦も旧式が多く日没からでは夜明けまでに明石海峡まで達せるかはわからんぞ」
「はい、その辺の事はすでに考案済みです。フォルテ君たのむ」
フォルテが立ち上がり海図を指差す。
「現在エンジェル隊は分隊を行い二手に別れ時間差を置いて出撃します。またあたしのハッピートリガーも先行しますので
最短航路による航海が可能だいうことです」
「しかし、君たちの重戦闘機は潜水艦や機雷などの掃海は可能なのかね?」
「紋章機で潜行中の潜水艦を攻撃したことはありませんがロックオンも可能です。火力を強めればいけるはずです」
「推測かね?」
平岡は横目でフォルテを見た。
「ええ、実際のところ」
「ではその作戦は飲めんな・・・・」
「艦長!」
横の正光は思わず声を上げる。
「不安要素がおおすぎるよ烏丸参謀、やはり出港は夕刻がよさそうだ。硫黄島からの航空攻撃ならば横須賀航空隊を
護衛につけてもらえばいいさ」
「それはわかりますがあまりにも大規模な部隊の移動は逆に敵を動かしかねません」
正光も食い下がるが他の艦長も平岡の案に同意している様子だった。
「我々は海上護衛総隊なんだ、君の案もわかるがここは現場の意見を通させてもらう。もちろん君のを参謀として見下しているわけではないさ
参謀の作戦も完璧だと思う、しかしだ紋章機は陛下から安全を願われているもの・・・」
正光をフォローするかのように平岡は語った。
「確かに夕刻に出港できれば翌朝の到着は間違いありません。ですが本艦隊は航空攻撃に潜水艦以上の脅威を感じます
横須賀航空隊の新鋭機閃電を持ってしても浦賀水道を超越えての護衛は困難だと思います」
「シュトーレン少尉、エンジェル隊は分隊するといったね」
再び平岡は横目でフォルテを見た。
訂正
巡洋艦鹿島の艦長が判明しましたので三島から平岡に変更しています
73 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/06/02(土) 21:41:23 ID:BkdPhOTs
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦内
部屋に帰ってきた相部屋の同僚に起こされた。白浪少尉は、
目を覚ますとゆっくり起き上がった。
舷窓の外わ見ればすっかり暗くなっており、もう18時を回る時間になっていた。
「もう夕食の時間だから、貴様も食堂に行ったらどうだ?」
同僚は、一緒に行くか?と少尉を誘ってきたが、
まだ用意もあったのでやんわりと断り、後から行く事を告げた。
頷いた同僚達は、あまり遅くなるなよ。
早く行かないといい席が無くなってしまうからな、と言うと部屋を出て行った。
1人になった白浪少尉は、手早く数少ない荷物をしまうと後を追った。
通路に出ると、食堂のある方へ向かい軽く走りだす。
確か聞いた通りなら、こちらの方で間違いないはずだった。
ところが・・・まだ乗りなれていないためか、途中で位置が分からなくなってしまった。
大型艦だけあって広く、見当違いの場所に出てしまう。
こんなことなら、寝ていないで艦内を散策するべきだった。
困り果てた白浪少尉は、誰かに聞こうと思い、格納庫の方へと向かった。
通路を戻り、階段の方にさしかかろう瞬間、突然何かに接触した。
思いっきりぶつかった白浪少尉は、その弾みで後ろへ大きく転げてしまった。
どうやら通路に出くわした人物と、鉢合わせに衝突してしまったらしい。
痛みを堪えながら床にぶつけた腰をさすり、白浪少尉は相手の方を見る。
一方の影もその場に倒れ、尻餅をついていた。
相手も士官らしく、紺の軍装に身を包んだ男は、確実に自分より年上だと判断出来た。
「つぅ・・・すいません大丈夫ですか?」
腰を庇いつつ立ち上がった少尉は、まだ倒れている士官に手を差し出した。
「ああ・・・すまない、大丈夫だよ」
士官は少尉の出した手を借りて起き上がる。
その時少尉の目に、袖の襟章が目に付いた。それを見て少尉は思わず目を見開いた。
その襟章は、中佐の階級を示す物だったのだ。
解らなかったとは言え少尉は、自分より遥かに階級が上の相手に向かい、
気軽に話しかけていた事になる。
今更ながらに少尉の体に震えが走り出した。
「ししっ失礼しました!!自分の不注意で中佐にぶつかってしまい申し訳ありません」
大きな声で言いながら少尉は、直立姿勢で思いきり頭を下げた。
そんな少尉の青ざめた表情が見えたのか、手を振りながらそれを制し。
「いや、いいよ、いいよ、こっちも少し考え事をしていたしね。悪いのはお互い様だ」
そう言って中佐は軽く笑った。
そんな中佐に対して少尉は、ただただ恐縮するばかりであった。
エンジェル風味インフォメーション!
さてさてコミックマーケット72当落結果が届きました。
今年はビシッと受かっております。
さて肝心の参加日は
コミックマーケット72 1日目 東地区D-01bです!
新刊もご用意できるかと思いますのでぜひお越しください
75 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/06/05(火) 20:52:34 ID:aIrcdoAC
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦内
「ところで君は、こんな所で何してたんだい?煙草を吸いに行く訳でも無いようだけど」
「はい、実は食堂を探しておりまして」
中佐の問いに対して少尉はしどろもどろに答えた。
「食堂?士官食堂なら全く方向が逆だぞ」
「ええっ、そ、そうでしたか・・・ええと・・・」
白浪少尉は慌てて言葉が詰まってしまった。
やはり寝てないで、誰かに艦の案内をしてもらうべきだった・・・
そんな少尉の表情から、事情を察したのか?中佐は指摘する。
「はあー解った。君、今日来た山口大尉の部隊の所属だろう?」
「えっ!?何で解ったのですか?」
ぎくりとした少尉は、とっさに中佐の目を見た。
「飛行服姿でうろついていて、艦の内部を把握していない。しかも見た事の無い顔ときた。
おそらく乗り込んでから1日か2日と言った所だろう。
この艦の母艦搭乗員は新しい者でも、乗艦してから1週間くらいは経っている。
とすれば、今日来た分遣隊の隊員位しか当てはまらない」
まるで推理小説の真相を明かすかのように、中佐は淡々とした口調で述べた。
「どうたい?」
「はい、艦に乗ったばかりで・・・迷ってしまいました・・・」
少尉は自分の顔が熱くなっていくのが分かる。
艦内で迷ったとあっては、いい笑い者でしかない。
穴があったら入りたいとは、まさにこういう時なのだろう。
予想通り目の前の中佐は、さらに大きく笑う。
「ははは、そうか、乗ってすぐじゃ仕方が無いな。俺も艦に乗った頃はよく迷った物だよ。
まあ暫くすればなれるだろうけど、いざと言う時に艦から出られないなんて事には、ならない様にね」
「はい・・・すみません」
「別に誤らなくてもいいさ、で君の名前は?」
「はい、本日着任しました。601空分遣隊の白浪一史少尉であります」
ここで少尉は今更ながら敬礼をする。
「白浪少尉か、名乗るのが遅れたが、俺は上田中佐だ。
第3艦隊で作戦参謀を勤めさせてもらっている。まあ、こんな万事この調子だから、
出世も遅れてるし、あまり艦隊の役にも立っていないけどね」
自己紹介した中佐は、自嘲気味に笑う。
確かに上田と言う中佐は、見たところ他の佐官に比べると、どこか抜けている感はある。
しかし、それ以上に何か不思議な空気を漂わせていた。
それをどう言うべきなのか、当てはまる言葉が全然見つからない。
でも、その物腰の低さはすぐに好感が持てた。
「とにかく、遠路はるばるご苦労だった。これからは君にも沢山働いて貰わないといけないからね。
そうだ!折角だから、夕食は俺がご馳走しよう。」
「ええー!!」
上田中佐の突然の提案に、思わず叫んでしまった。
「まあまあ、そう驚きなさんな。別にとって食おうと言うわけじゃないんだから。
こうして会えたのも何かの縁だろうし、
部下に対して何か奢った所で、別に咎める者もいないだろう?」
「はあ・・・」
「それに、君は士官食堂の場所を知らないんだろう?ここで別れてもまた迷ってしまうぞ。
最悪、今日は食事抜きという事にもなりえる。
丁度自分も腹が減ってたし案内がてらという事で。な?」
人懐っこい態度で接してくる上田中佐に、少尉は頷いてしまうしかなかった。
>>74 猛虎☆全勝様。夏コミご当選おめでとう御座います。
どうやら今年も行けそうですので、新刊楽しみにしております。
>>74 猛虎☆全勝様。夏コミご当選おめでとう御座います。
どうやら今年も行けそうですので、新刊楽しみにしております。
お忙しい様ですが、お体に気をつけて頑張って下さいませm(__)m
昭和20年4月9日 巡洋艦鹿島 PM01:04
「ええ、エンジェル隊は二つの小隊に分隊しています」
平岡は頷くと海図をなぞりながら硫黄島を指差す。
「君たちの重戦闘機は飛行場を叩けるかね?」
「艦長!?まさか」
正光は驚いたように首を突っ込む。
「重戦闘機に千鳥飛行場と元山飛行場を叩いてもらう、これなら恐れをなしてグアム方面から航空攻撃はないだろう」
「ええ、損傷しているカンフーファイターを除いては可能です・・・」
フォルテは低いテンションで平岡に可能であることを伝えたが乗り気ではなかった。人が死ぬ戦争を嫌っていたためである。
「なぁに滑走路に大穴を開けてくれればいいさ、噂の火力なら足止めは容易のはずだ」
「艦長!硫黄島にはまだ・・・・」
正光は小笠原兵団の残存部隊が以前戦闘を行っている可能性を示唆する。
「それは君の方が良く知っているのではないか参謀?」
「く・・・・」
正光は黙り込む、海軍省ですでに最後の報告を聞いていたのである。しかし、残存部隊生存の可能性は否定できないと思ったのである。
「遅くなりました!」
その沈黙を劈くかのようにシャープシューターの点検が遅れていたちひろが作戦室に入ってくる。
「エンジェル隊分隊長、烏丸ちひろです。父・・・いえ烏丸大佐、お話は聞こえていました、自分も平岡大佐の作戦を支持します」
「ち、いや烏丸少尉・・・・」
なんとも言えない顔をする正光を置いてちひろも硫黄島までの海図をなぞり始めた。
「これは天女隊が最後の任務で飛んだ飛行路です」
ちひろは天女隊として最後の任となった硫黄島進出を思い出しながら話を続ける。
「両飛行場の所在地、米軍上陸地点及び小笠原兵団の退路は頭に入っています。私が飛行場を攻撃します。
飛龍による爆撃より安全ですし効率ですから」
ちひろは父に承認してほしいと言う表情で見つめた。
「しかし、紋章機とはいえ当初作戦に支障でては元も公もないんだぞ」
「烏丸大佐・・・・天女隊が最後に硫黄島を離れる時に27航空戦隊の市丸少将はおっしゃいました。天女は泥にまみれて死ななくていい空で死ぬのだと」
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦内
「じゃあ行こうか、こっちだ」
前を歩き出した上田中佐に促され、少尉は戸惑いながら後ろにつき歩き出した。
中佐は歩いている間、白浪少尉に色々と質問を向けた。
出身地はどこか?家族は何人いるのか?と、他愛も無い事ばかりだ。
少尉が一つ一つ丁寧に答えていくと。
中佐は熱心にそれを聞き、自分の身の上話を話し始める。
自分の奥さん自慢や、腐れ縁で繋がっている友人の話・・・
そうこうする内に、士官食堂の入り口が見えてきた。
「着いた。ここだよ」
中佐は指し示した入り口の中に颯爽と入る。
中では食事を撮っている士官達が、賑やかに会話を広げていたが、
突然やって来た中佐の姿に、皆一斉に顔を向けた。
上田中佐の顔を見るや、何故佐官がここに来たのだ?と言いたげな、驚いた表情の者と。
事態を理解しているのか、何事も無かったかの様に、また食事を始める者と。
食堂内の反応は、二つに別れた。
驚いている士官達をよそに中佐は、なれた足つきで空いているテーブルに向かう。
中佐につき従う少尉にも、奇異の目が向けられる。
集中する視線は、あまり気分の良いものではない。
「ああ、気にしなくてもいいよ。いつもの事だから」
席に座りながら、あっさり言った。
いつもという事は、普段からここに来ているのだろうか?
疑問に駆られつつ少尉は、中佐の向かい側の椅子に腰を下ろす。
「さて・・・今日のお勧めは何かな?少尉は何がいい?
ここの炊事班には、腕の良いコックがいるんだよ」
中佐は無邪気そうな顔で、今日の献立が書かれた表を覗いていた。
>>76-77昨日の書き込みが二重になっていますね。申し訳ありません。
昭和20年4月9日 作成開始60分前
横須賀航空隊は配備されている機体の半数が暖気運転に入っていた。
閃電、雷電、零戦52型の爆音が駐機場にけたたましく響き渡っている。
一方横須賀港内も軍艦独特の機関音が響いてた。水兵は慌しく出向の用意を進めており怒号は桟橋まで聞こえている。
各艦の見張員は双眼鏡で空を睨み続ける頭上を対空警戒に当たっている航空機が掠めていった。
Aチームのシャープシューター、ラッキースターは桟橋を離れている。
カンフーファイターは傷痛々しくタグボートに引かれての登場となっている。
手空きの港内職員は日本海軍最後の勇姿とばかりに岸に集まっていた。
「いよいよ出発か・・・・・」
蘭花がミルフィーユに通信をつないでみる。
「フォルテさん達とはしばらくお別れなんですよね・・・・・」
「二人とも作戦開始直前ですよ!」
ちひろが通信に怖い顔で割り込んできた。
短くなった髪をくくりなおし日の丸の鉢巻と腕章をつけているためちとせそっくりとは言いがたくなっている。
「あ・・・・ごめんなさい」
「はいはい、うちの隊長さんはうるさいからね」
「蘭花!」
「分かったわよ・・・」
罰悪そうに蘭花が通信をきった。
「おい、ちひろ」
「あ・・・・フォルテさんどうしました?」
「隊長なんだからどんと構えておきな、そんな事くらいでイライラしてちゃ先持たないよ」
「はい・・・・どうしても力が入ります・・・・」
少し申し訳ない顔を見せるとフォルテはニッコリと笑った。
「硬すぎでも柔らかすぎてもあの二人はついてこないよ!がんばりな」
「そーだそーだ」
蘭花が通信に割り込んでくる。
「蘭花・・・・もぉ!フォルテさんわかりました。わたしがんばります」
昭和20年4月9日 作成開始45分前
フォルテは通信が切れると海軍病院に待機しているミントとの連絡をおこなう。
「ミント、そっちの様子はどうだい?」
「先ほど最後のナノマシン治療を施され、今しがた麻酔をうってもらって眠られてますわ」
安堵の声でミントが答える。
「そうか、よかった。ミント1時間の旅だが抜かるんじゃないよ」
「大丈夫ですわ。まったく誰だと思ってますの?」
しっかりした返事にフォルテも苦笑いを浮かべた。
「そうかい、じゃあ乗っける時はまた連絡頼むよ」
「了解ですわ」
短い通信が終わりフォルテはクロノクリスタルに添えていた手を離す。
ハッピートリガーのコックピットから見る横須賀港内にフォルテは懐かしさを覚える。
「久々だねぇ・・・・こんなドキドキするなんて」
胸に手を当て高まる気持ちを自重させながら独り言をつぶやく。
思い出されるのは不正規部隊として走り抜けた過去の自分であろうか、フォルテは何かを懐かしむかのよう作戦開始準備に沸く
横須賀港内を再び見つめ始めた。
一方通信を切った側のミントはヴァニラ担当の看護婦につかまり頭に包帯を巻かれていた。
「明日は広電にも乗るのでしょう?市内は憲兵の目も厳しいですから」
ミントは仕方なしに自分の頭に包帯を巻かせてやっていた。包帯は自慢の耳にも丹念に巻かれほぼ後頭部を覆っている。
次に用意されたのが防空頭巾と名札付のブラウスにもんぺが用意されていた。流石に皇国軍の制服では厄介なことになる。
「市内を歩く時はこれを着ていてください、トランスバールの制服は病院から小包で送らせますから」
「はい・・・わかりましたわ。あの、この名前なのですが・・・・」
ミントがブラウスの胸についている名札にかかれる名前を指差した。
草野薫(くさのかおる)と書かれ、住所は呉にある軍属の住居が記載されていた。
82 :
名無し陸戦隊:2007/06/16(土) 01:37:22 ID:gUaMXsjc
保守ついでに作中に登場する閃電の解説を。
閃電とは、昭和18年、開発中の17試艦上戦闘機(烈風)の発動機問題に絡み、
業を煮やした三菱側が、軍にある機体の逆提案を出した事が発端となる。
雷電の後継として17試艦戦の設計を流用した、
高速・上昇性能に重点を置いた局地戦闘機と言う名目で。
主翼には層流翼層を採用、機体周りを中心に改修され。
発動機には、航空本部の支援を受けて完成したばかりの、二千馬力級ハ43を搭載。
作業は急ピッチで進行し、19年春に完成した試作初号機は、予想以上の性能を叩き出した。
ハ43搭載の烈風共々、すぐさま正式採用された機体には、
生産機種整理で開発中止となったJ4M1、17試局地戦闘機の愛称が転用され、閃電と名付けられる。
武装は20ミリ、30ミリ機銃が2から4丁、種類によっては機首に13ミリ2丁装備。
主翼下には27号や28号十番噴進爆弾、ドイツ式29号オルカン噴進弾。
火薬式加速推進筒を数本装備可能。
操縦席等を中心に防弾装備あり。
基本型の制空任務用の一一型を初め、艦載機に改修した二二型や、戦闘攻撃機型等も存在する。
簡単に言えば、和製ベアキャットの様な物となります。
携帯から失礼致しました。
83 :
名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA :2007/06/18(月) 22:36:45 ID:fSUs1UUv
回想1944 昭和19年10月21日 太平洋 空母大鳳艦内
再び賑やかになった士官食堂の中で、配膳係の兵が料理を運んで来る間、中佐との会話は続いた。
二人テーブルの前に置かれた今日の献立は洋食らしく、
皿に乗った大きめのオムライスとスープに、付け合せのサラダが盆の上に乗せられてあった。
まず少尉はスプーンを手にして、スープを飲み込む。
「そういえば、君は恋人とかいるのかい?」
上田中佐の突然の素っ頓狂な質問に白浪少尉は、口に含んでいたスープを吹き出しそうになった。
出す寸前で何とか飲み込んだが、器官に入ったスープでむせてしまった。
少尉は下を向きながら咳き込んだ。
「突然何を言い出すんですか!」
まだ咳が収まらない少尉は持っていたハンカチを口に当て、声を荒げた。
「いやぁ、だいたい少尉位の年齢だと、
お付き合いしてる女性の一人や二人いそうだからさ、ちょっと気になったんだ」
そう言いながら中佐は、内側はがとろけている半熟の卵を、
スプーンで起用に切り出して、チキンライスと一緒に口に運んだ。
美味しそうに食べる中佐は少尉を追及する。
「で、どうなんだい?」
「そんな人・・・いませんよ・・・」
少尉は、ぼそっと答えた。
彼女ならいる事はいるが、あまりこういう事は他人に話したくなかった。
何となく恥ずかしい感じがしたからだ。
それ故に、軍に入ってから今までの間、他の者に話した事はほぼ無かった。
そうか・・・と一言言った中佐は、何やらぶつぶつと呟いている。
中佐の様子を見ながら、少尉が首を傾げていたら、二人の前に山口大尉がやってきていた。
大尉は中佐に挨拶をすると、妙な笑みを浮かべて少尉の方を見る。
「少尉、お前確か彼女いなかったか?名古屋に会いに来ていたのは、お前さんのコレじゃないのかい?」
どうやら二人のやり取りを見ていたらしく、
大尉は小指を立てて、とんでもない事を口にした。
ぎくりとしながら中佐の方に向くと、興味深そうに目を輝かせている。
「それは本当かい?」
「ええ、この前二人で名古屋市内わ歩いているのを見かけましてね〜
いやあ、若い者はうらやましい」
張本人である大尉は面白そうに、さもありなんと言ってのけた。
もう駄目だ・・・これ以上はごまかせないな・・・
顔が赤くなった少尉は、ため息を吐くと、二人に本当の事を話す事にした。
84 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/22(金) 00:21:12 ID:5B0+oae2
保守
86 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/26(火) 11:08:44 ID:C6+SpTEq
説明は簡単。
はだしのゲン+G.A。
中岡 元・・・タクト
進次・・・・・・・カズヤ
大吉・・・・・・・ウォルコット
君江・・・・・・・カルーア(被爆後、焼けるカズヤとウォルを見てテキーラになる。)
英子・・・・・・・ちとせ
浩二・・・・・・・レスター
朴・・・・・・・・・ランティ(被爆後テキーラを負ぶって疾走。ウォルの出所祝いに米をくれる。)
近藤隆太・・・ココモ
君江の一時居候先のババア・・・ディーダ(最後にタクトからの反撃に遭い、肥だめにドボンコ。)
鮫島竜吉・・・ノーマッド(非国民を理由に「ちとせが盗みをやった」とスっ裸にしてウォルに殴られる。)
広島市・・・・・トランスバール
最終巻で元が旅出た東京・・・ノイエ
原爆・・・・・・・時空震(クロノ・クェイク)
アメリカ兵・・・ヴァル・ファスク
昭和20年4月9日 作成開始15分前
旗艦鹿島の艦橋からヴァニラとミントを乗せたパイロットボートがハッピートリガーに接岸し2人の搭乗を正光が確認している。
美しい夕日が艦橋を照らし真っ赤に染め上げていた。
「いよいよか・・・・ちひろ、頼むぞ」
鹿島より前方で待機しているシャープシューターに目を向けながら正光はつぶやく。
本作戦は帝国最後の賭けである。信濃の二の舞だけはゴメンだ。
そんな思いが正光の中に渦巻いていた。
「日没までにはまだ時間があるな・・・」
一刻も早い日暮れを願う正光、しかし日没にはまだ少々の時間が必要であった。
「烏丸大佐、まもなく作戦開始です」
最初に出港する駆逐艦春月から送られる手旗信号に見張員の声が聞こえる。
艦の底から聞こえる振動も激しくなっている。甲板では出港作業がさらに慌しくなってきた。
「よし、行こうか!」
正光は気合を入れるかのように両手で自分の頬を叩くとキッと正面を見据えた。
一方前方で待機しているAチーム3機は自分の機体に映し出される作戦開始残り時間のカウントに目を奪われながらその時を待っていた。
特に損傷のひどいカンフーファイターではあらゆる警告がディスプレーに表示され蘭花を困らせていた。
「残弾表示キャンセル、電磁アームのセーフティ解除、電力供給をエンジンに集中・・・・あー!めんどくさい!!」
普段整備士に任せている仕事をなれない手で説明を読みながら行う蘭花であるが消せば消すほどに警告が増えているようである。
「うわー!!!!」
「蘭花!はやくして」
ちひろから再び通信が入ってくる。
「あんた、作戦開始前に通信するなっていったでしょ」
「ミルフィーユさんが傍受されないって教えてくれたので」
すました顔で蘭花に答えるちひろ。
「なによー!!大体あんた、命の恩人に手のひら返しすぎだって」
「ありがとう・・・・蘭花」
「ほぇ?」
ちひろが急にまじめな顔で蘭花に頭を下げたため蘭花も驚いてしまった。
「蘭花は私に大切な事を気が付かせてくれた、だから今こうしてまた私は戦えるんだよ」
「え・・・・いや・・・もぅ!分かった、急ぐから切って、切って!」
頬を紅くしてテレながらちひろに通信をきるように願う。
「・・・・こほん、じゃあもう時間無いからはやくね」
ちひろも少し恥ずかしそうに回線を切った。