>>169のつづきです。
県立北高内某所。
昼休みを利用して開催された「第一回1-5クラス女子品評会」(命名・主催谷口)は、一種異様な緊
張感をもって始まった。そう。下手すると殺られる危険性をはらんでいるのだ。別に阪神地域を根城
とする某広域暴力団系組員やアマ近辺のチンピラに狙われているとか、そういうわけではない。しか
し現に過去2度にわたり開催を企図した際にも、特殊指向性地獄耳を装備したSOS団団長涼宮ハルヒ、
別名「地獄の沙汰も気分次第」大王によって一方的摘発・弁士中止を余儀なくされたのである。
「誠に遺憾である。話せば板垣死すとも自由は解る」とは主催者弁。当時の混乱ぶりが垣間見えよう。
よって今回の集まりは、およそ独裁者国家における非合法地下活動組織にひそかに賛同する政府内実
力者がさまざまな困難を乗り越えてその会合に参加するかのような、まさに命がけの慎重さをもって
開かれたものである。ただ異なる点は、我々の会合の目的がひたすらくだらない四方山話のためであ
るという、ごくごくささいな一点にすぎない。
前置きはこれくらいにしよう。一刻でも時間が惜しい。・・・あれ、こんなに乗り気な設定だったっけ、
俺。谷口がすこし遅れてきたが、とにかくメンバーはそろった。
「でもさ、いまどき女子の体操服がブルマって珍しいよね」
まったくです解説の国木田さん。いやブルマはいい。むしろ望むところである。ただ個人的には、女
子の話題に「はみパン」が出るような状況は少なからず意気阻喪させられるのだが。男子のギャラン
ドゥーと同様に。「なに言ってるんだ」ゲスト解説者山根氏のつっこみである。先生申し訳ありませ
ん。気分を害されたのなら謝ります。
「だいたい、男子はブレザーなのに女子だけセーラー服って、これはもう何かマニアックなの狙って
るとしか言いようがないよね。具体的に何を狙ってるのかわからないけど」国木田氏の指摘はあいか
わらず的確である。「県下の公立でもこれは例外中の例外だね。あとさ、だいたいスカートの丈の平
均値が短すぎるよ。但馬の方とかはしらないけど」これはもう含蓄王と呼ばせてもらおう。
「まあな。でもよ、北高の制服に否定的な意見がない以上−いや俺も賛成だが−この路線は歓迎すべ
きだろうが」谷口が主催者らしい威厳で滔々と語る。
完全に間違った方向だがかっこいいぜ。
「そうだな。たとえばお前らが猫だったとして、ブルマ姿の誰のひざの上が一番嬉しいか、理論的感
情的に説明してみないか。まあ俺は犬派なんだが、この際それはどうでもいい」山根先生のメガネの
下の眼光が見る間に鋭さを増している。
「ふ・・・・・・俺も語らぬわけにはいくまい」
おおッとばかりに山根のことばに耳を傾ける一同。その一挙手一投足にも目を離すわけにはいかない
豊かな知識と嗅覚の源泉だ。オーラの泉もかくやというほどだ。まあ特定のいやな分野だが。
「かつて、パンツ職人という伝統芸能があった・・・・・・俺はその先代伝承者として」おい漫画間違えて
るぞ山根 「これは冗談」
「さてみんな。胸の張りとふとももの感触のやわらかさは比例する」「!!」一同衝撃。
「そして猫もいい匂いが好きである」 ざわざわざわ・・・
「よってこのことから導き出される答えは明白だね」そのとき全員のイマジンは、清潔そうな長い髪
をたなびかせる美貌の女生徒のランニング姿にすでに統合思念体だ。
やばい、情熱をもてあましそうである。「すでに飼い猫として朝倉さんに飼われている夢を3回ほど
見たな、俺。そりゃいい感触だった」 すでにあちらの世界に行きかけているような目でうっとりと
語る山根の口調とメガネにはいまや何の迷いもない。悟ったか。
しかし目隠しをされて耳栓をしながら教室に入っても朝倉さんが教室にいるかどうかが判る彼である。
もはや超能力の域に達していると言ってもいい。そんな山根であるから、夢で朝倉の飼い猫になる程
度のことはなんら不思議ではないのかもしれない。
ハルヒ、こいつをスカウトしろ。