【涼宮ハルヒ】 朝倉涼子さんの10徳ナイフ

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174「第一回1-5クラス女子品評会」改め・・・1/3
>>169のつづきです。

県立北高内某所。

昼休みを利用して開催された「第一回1-5クラス女子品評会」(命名・主催谷口)は、一種異様な緊
張感をもって始まった。そう。下手すると殺られる危険性をはらんでいるのだ。別に阪神地域を根城
とする某広域暴力団系組員やアマ近辺のチンピラに狙われているとか、そういうわけではない。しか
し現に過去2度にわたり開催を企図した際にも、特殊指向性地獄耳を装備したSOS団団長涼宮ハルヒ、
別名「地獄の沙汰も気分次第」大王によって一方的摘発・弁士中止を余儀なくされたのである。
「誠に遺憾である。話せば板垣死すとも自由は解る」とは主催者弁。当時の混乱ぶりが垣間見えよう。
よって今回の集まりは、およそ独裁者国家における非合法地下活動組織にひそかに賛同する政府内実
力者がさまざまな困難を乗り越えてその会合に参加するかのような、まさに命がけの慎重さをもって
開かれたものである。ただ異なる点は、我々の会合の目的がひたすらくだらない四方山話のためであ
るという、ごくごくささいな一点にすぎない。

前置きはこれくらいにしよう。一刻でも時間が惜しい。・・・あれ、こんなに乗り気な設定だったっけ、
俺。谷口がすこし遅れてきたが、とにかくメンバーはそろった。

「でもさ、いまどき女子の体操服がブルマって珍しいよね」

まったくです解説の国木田さん。いやブルマはいい。むしろ望むところである。ただ個人的には、女
子の話題に「はみパン」が出るような状況は少なからず意気阻喪させられるのだが。男子のギャラン
ドゥーと同様に。「なに言ってるんだ」ゲスト解説者山根氏のつっこみである。先生申し訳ありませ
ん。気分を害されたのなら謝ります。
「だいたい、男子はブレザーなのに女子だけセーラー服って、これはもう何かマニアックなの狙って
るとしか言いようがないよね。具体的に何を狙ってるのかわからないけど」国木田氏の指摘はあいか
わらず的確である。「県下の公立でもこれは例外中の例外だね。あとさ、だいたいスカートの丈の平
均値が短すぎるよ。但馬の方とかはしらないけど」これはもう含蓄王と呼ばせてもらおう。
「まあな。でもよ、北高の制服に否定的な意見がない以上−いや俺も賛成だが−この路線は歓迎すべ
きだろうが」谷口が主催者らしい威厳で滔々と語る。
完全に間違った方向だがかっこいいぜ。
「そうだな。たとえばお前らが猫だったとして、ブルマ姿の誰のひざの上が一番嬉しいか、理論的感
情的に説明してみないか。まあ俺は犬派なんだが、この際それはどうでもいい」山根先生のメガネの
下の眼光が見る間に鋭さを増している。

「ふ・・・・・・俺も語らぬわけにはいくまい」

おおッとばかりに山根のことばに耳を傾ける一同。その一挙手一投足にも目を離すわけにはいかない
豊かな知識と嗅覚の源泉だ。オーラの泉もかくやというほどだ。まあ特定のいやな分野だが。
「かつて、パンツ職人という伝統芸能があった・・・・・・俺はその先代伝承者として」おい漫画間違えて
るぞ山根 「これは冗談」

「さてみんな。胸の張りとふとももの感触のやわらかさは比例する」「!!」一同衝撃。

「そして猫もいい匂いが好きである」 ざわざわざわ・・・
「よってこのことから導き出される答えは明白だね」そのとき全員のイマジンは、清潔そうな長い髪
をたなびかせる美貌の女生徒のランニング姿にすでに統合思念体だ。
やばい、情熱をもてあましそうである。「すでに飼い猫として朝倉さんに飼われている夢を3回ほど
見たな、俺。そりゃいい感触だった」 すでにあちらの世界に行きかけているような目でうっとりと
語る山根の口調とメガネにはいまや何の迷いもない。悟ったか。
しかし目隠しをされて耳栓をしながら教室に入っても朝倉さんが教室にいるかどうかが判る彼である。
もはや超能力の域に達していると言ってもいい。そんな山根であるから、夢で朝倉の飼い猫になる程
度のことはなんら不思議ではないのかもしれない。
ハルヒ、こいつをスカウトしろ。
175「第一回1-5クラス女子品評会」改め・・・2/3:2006/11/07(火) 18:26:38 ID:IorlA56B
しかし、「気持ちわからんでもないな。朝倉になら、俺も飼われてみたい」と同意してみる。

それにしてもあいつの部屋ってどんな感じなんだ。一寸の隙もないファンシーでかわいいレイアウト
や家具、小物を想像してみる。うん?なんだ谷口あわてた顔して。
「お、おうキョンよ、俺の言いたいことを代弁してくれたんだな。でも、おまえその、す、涼宮さん
みたいな美人がそばにいてうらやましいぜ。なあ国木田」ヒジでぐいと国木田を押しながら谷口が早
口でフォローまがいのことを言った。「そ、そうだよね」おいおい、別にそんなんじゃねえよ。それ
にあいつの飼い猫だと大変そうだ。それこそ膝の上にいる時間よりも大の字にされて後ろ足から引っ
張り上げつつ意味不明の関節技を決めらてる時間のほうが長そうだぜ。でも……山根理論からすると
ハルヒも掛け値なしの美形かつお肌の瑞々しさではある。おまけにグラマーときてる。ハルヒの膝枕
で耳かきなんか、さぞ気持ちいいだろうな……っておい。しかし、そうだな、この際だから猛者谷口
の忌憚ない評価を聞いてみよう。

「そういえば谷口。お前、校内美少女ランクで朝倉はAAランクプラスだって言ってたな」「お、お
う」「なら聞くが、お前が変な勘違いをしてるらしいハルヒはどうなんだ。性格とか抜きにして」

「!」
なぜか緊張が走る。お前やっぱ5分男だったのか?「あほ」そこだけは即座に突っ込んでくる。
「・・・あ、あー、しかしあいつとは中学からクラスまでいっしょだからなぁ・・・かえってそういう評価
対象としては」お茶を濁す谷口。いいから言ってみろって。なんせ面はいいんだろ。性格は破綻して
るが。「うぐぅ。いや、それよりキョンよ、お前はどっちがいいと思うんだ?」防御に困った谷口が
側面攻撃に切り替えやがった。「あ、それ僕も聞いてみたいなあ」国木田に山根もうなずく。くそ。
「あーそうだな」できるだけ軽く流してる風に言ってみる。こういうのはさらっとだ、さらっと。

「朝倉のポニーテールは見てみたいな。あいつならハルヒよりも似合ってるかもしれん、・・・知って
るだろうが俺ポニー好きだし」

「!!」 俺以外驚愕。谷口の顔が渋面となっていく。
そのとき、秘密会議に選んだこの非常階段の踊り場に見慣れた姿が降りてきたことにいまさら気づい
た。猫の抜き足のように音が立たない見事な優美さだ。すらりとした足に白いソックスが眩しい。そ
して長くてさらさらの髪が視界に入る。「あら、なんか面白そうな話してるのね」ソプラノが朗々と
響いた。
そう、朝倉だ。揚羽蝶が目的の花に舞い降りるような優雅な動作で、スミレのような微笑をたたえた
美少女が俺の横に腰を降ろした。踊り場の下り階段側にいる(なぜか表情の硬い)谷口が地べたに座
っていれば見えたかもしれない。もとから座っている山根の顔が少し赤くなっている。が視線は無難
な位置のようだ。といっても、特殊技能で眼鏡フレームの反射すら利用しているかもしれないがな。
「ポニーテールかぁ。そーね、体育の日とかなら、したままでもいいわよ?」 なんですと!
「だって好きなんでしょ?」 俺を覗き込んで、ウィンクまでしてくる。こいつはやばい、朝比奈さ
んもかくやの破壊力だ。ウ・・・となる。己の動悸も感じる。
しかし、ここまではなんとか俺も冷静だったといえよう。
そういえば谷口が苦虫を噛み潰したような顔で目配せらしいものを送ってくるが、さっきから変だぞ
お前。それにしても苦虫って噛んだことねえな俺。だれか苦虫噛んだことあります?

じたばた脚を動かしている苦虫(想像図)について何気なく考えたのが、俺にとってその日の学校史
上最後の余裕だったらしい。
176「第一回1-5クラス女子品評会」改め・・・3/3:2006/11/07(火) 18:27:25 ID:IorlA56B
「あら、涼宮さんじゃない」

あいかわらずの微笑で朝倉が声をかけた先には−屹立する「地獄の沙汰も気分次第」改め「地獄の沙
汰で無間空間送り」大王さまであった。何も知らずのんびり昼寝していたアザラシに今にも襲い掛か
ろうとする大人のシャチのようなプレッシャーを周囲に撒き散らしている。言い換えれば、俺の命の
ともしびは特殊効果「脅威」持ちのSLG最強ユニットに襲われた荷馬車のような状態といって過言で
ない。山根や国木田はともかく、谷口は必死にそれを目配せしてくれていたというわけだ。
まさに不覚。レ・ミゼラブル

「どうしたの?涼宮さん、なんか怖い顔になっちゃって」クスッと笑いながら挑発としか思えないこ
とを言う朝倉。「たまたまあそこの廊下を通りかかったらここにキョンくん達がいたから、ちょっと
寄ってみたの。そしたらね」なんかうれしそうに喋ってやがる。
「わたしのポニーテールが涼宮さんよりかわいいって言うから、それならしてもいいかなって言った
だけよ?」 はい俺終了。というか、なんでそこをハルヒに強調するんだ朝倉・・・

「説明は結構よ」ハルヒはそれでも抑えた調子で答えながら続けた。
「聞いてたわよそんなこと。ねえ谷口?」苦笑している谷口を睨みつけている。やばい、本気の怖さ
だ。
「あんたらがまた馬鹿ないやらしい話でも企んでこそこそ集まってるみたいだったから、これ掴まえ
て吐かせたのよ」 「で、頃合を見てキョンをふんじばってやろうと思ってたわけ」視線で突き刺さ
れる俺。
べ、別にいいじゃねえか。だいたいなんでこんな話くらいでお前に監視なんぞされなきゃならんのだ。
ストーカーかお前は。
「そうよね。男の子だもん、いくらキョンくんにあなたがいるからって、そういう話くらい、普通じ
ゃないかしら」助け舟というよりは火に油を注いでくる朝倉。なに考えてるんだよさっきから。
すでに会議は「第一回1-5クラス女子品評会」から一変して「美少女ウォーズ@非常階段の踊り場」
とも言うべき展開である。
「・・・・・・」ハルヒが押し黙っている。きわめて珍しい情景だ。やにわに俺を手を強く引っ張って立ち
上がらせる。痛てーな。おい、そんなに引っ張るな、痛いって! 俺をそばに立たせ、ものすごい形
相で朝倉に対峙している。朝倉もしずと立ち上がった。あくまで華麗に。ぽんぽんとお尻をはたく。
目をすこし細めているが、なお微笑は絶やさないまま。すげーなこの女。

「ごめんなさい、涼宮さん」両手の指をあわせてかわいく片目を閉じる。
ふんっとばかりのハルヒ。
「キョンくん、この前はありがとうね。ほんとはね、その話でまたお願いがあったのよ」
ん。えーと、思い当たるといえば・・・・・猫・・・・・か。
朝倉はうれしそうにうなずいて、「そうなの。ほら、ウチってフローリングでしょ。特別に飼わせて
いただいてるし、床を傷つけたくないじゃない」それはそうだ。「だから、爪切りとかいろいろ考え
たんだけど、やっぱりキョンくんにまた手伝ってもらいたくて」なんでそうなるのよとか、そういう
疑問はラノベ基準だから、とでもしておいてくれ。とにかくそういうことである。しかもハルヒたち
の前でお願いされてしまった。
「な、あんた、え・・・・・・?!」呆気に魂を取られたとでも形容したくなるほどの表情で、ハルヒが俺
を見る。
あー、これはつまり、俺が以前に朝倉の家に訪れたことがこの面子、とくにハルヒに明白になってし
まった、そういうことだ。

どうすっかなぁ、俺。