村の辻で、隣人達と立ちばなし中のルージ先生、うっかり何気無く、人前でアクビしたり腰を揉んだりしようものなら、
「あんだよ先生、ゆんべも別嬪の嫁さんに寝かせて貰えんかったんか。ほんに、色男はシンドイのう。ワハハハハ」
・・・などとオヤジ連中にからかわれ、苦笑いしながら頭を掻くことしきり。
「あらあら、あんまりウチのひとをからかっちゃ、ダメですよう」
なんて声の方を見やると、
結わえ髪と前掛け姿と、呑気な田舎言葉がすっかり板についたコトナさんが、重く張った胸を揺らし、眠る乳飲み子をおぶって悠然と微笑みながら、村のオババ連を引き連れてこちらに歩いて来る。
そんな彼女の姿を、眩しそうに目を細めて手を振り迎える先生の右手には、クリクリした目で大人達のやりとりをキョトンと見上げる、むかしの先生そっくりな男の子が、モミジみたいに小さい手をつないでいるのだった・・・。
何という事もない、のどかな村の昼下がりのひとコマである。