ア  ネ  モ  ネ  た  ん  3

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299名無しさん@お腹いっぱい。
>>215
最終回記念にとりあえず書いてみました。
48話以前の話って思ってください。
最初に謝っときます。
長くなってごめんなさい。


ドミニクとの最初の出会い?
感動的でも最悪でもなくて、平凡だったわよ。

場所はワルサワ。
雨が降ってた。
施設から送られてきたわたしを、空港であの人が待ってただけ。

「私が今日から君の身の回りの世話をすることになった、ドミニク・ソレルだ。よろしく」

差し出された手を、わたしは無視した。
気にしてたのは、デューイ・・・あのおじさんのこと。
あいつが、私の命を握っているような人。
たくさん媚び売って、気に入られなきゃと思って来たのに、迎えにきたのはこいつだけ。
拍子抜けしちゃった。

ドミニク?私が手を取らないから、少し困ったみたいに手を持て余してたわ。
そんな顔は、ちょっとかわいいなって思ったかな。
それがわたしたちの出会い。
どこにでもある、つまんない話よ。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:49:15 ID:xlqKLIZW
艦長GJ!だったよな。
ユルゲンスのおかげで念願の赤面するアネモネが!!

これからは再放送と漫画と小説のドミモネを応援するよ。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:49:23 ID:+Sh1Ad1w
ジ・エンドのライダーになった私に、みんなそれなりに優しくしてくれた。
整備の人も、ドクター達も、コックさん達も。
1番優しかった人?
それは・・・ドミニク。
うん。断トツ。

わたしが夜寝付けない時、手を握ったら、優しく握り返してくれた。
わたしが寝たら、頭を撫でてつぶやくの。
「ゆっくりおやすみ、アネモネ。」
その声が聴きたくて、いつも寝たふりしてたわ。

朝は、いつも優しく起こしてくれた。
「おはよう、アネモネ。朝だよ。」
いつもわたしが目覚めて最初に見るのは、ドミニクの笑顔。
決まった時間に変わらない台詞。

普通の救急箱がダサくてイヤって言ったら、次の日にはかわいい熊のアップリケが入った
救急箱を用意してた。
あの人、どんな顔してあれをレジに持っていったんだろう?

訓練で出撃する時、帰ってくる時、熊のアップリケの救急箱を抱えて、いつもドミニクは
私のそばにいてくれた。

普通にしてれば二枚目なのに。

泣きそうな顔で
「気をつけるんだ。絶対に帰ってくるんだよ。」

笑顔で
「おかえり、アネモネ。怪我は無いかい?」

もうちょっと、カッコつければいいと思わない?


うん。1番優しかったのはあの人。
だからわたしは、ドミニクのことが1番嫌いだった。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:50:27 ID:+Sh1Ad1w
だってその優しさは、仕事だからだもん。
あの人はわたしの世話係。
わたしを精神的にも肉体的にもいいコンディションにするのが、あの人への軍の命令だから。
わたしがジ・エンドのライダーだから、あの笑顔を向けてくれてるんだわ。
ほんとのほんとに、わたしのことを心配してくれる人なんて、どうせいないんだし。

それが悲しくて、たくさんやつ当たりしたわ。
蹴ったり殴ったり、噛み付いたりした。
そんな時、わたしを責めるでもなく、あの人は悲しそうな顔をする。
それに更に腹が立って、何度も何度も手を振り上げた。

ほんとは、休日にデートにでも誘って欲しかった。
そしたら、その優しさが特別なものなのかもしれないって思えたのに、
あの人はそんなことしてくれない。

だから、わたしはドミニクが嫌いだったの。
うん・・・あの日まで。


あの日は、海上でのジ・エンドの飛行訓練の日だった。
わたしは自分の立場を守るために、その日も訓練前にデューイの部屋に遊びに行ったの。
ほんとは、あんなおじさん嫌い。
演技だからしてるけど、あの人に抱きついたりしたらそれだけで鼻血が出ちゃう。
でも、ポイント稼いでおかないとね。

そしたら、部屋の中からデューイが部下と話してる声が聞こえたの。

「どうだ?あれの代わりの用意は進んでいるか?」

「なかなか実験段階で壊れることが多く、実用化に至るものはまだ出来ていません。しかし、今のライダーでも現時点ではあまり問題は無いと思われますが・・・。」

「予備はあったほうがいい。それに、あれはプロトタイプのような物だ。あれの薬物データを活かし、第2、第3のライダーあたりで作戦を進めるのが私の理想なのだよ。」

「なるほど。財団にジ・エンドの予備ライダー作成を急ぐよう、連絡しておきます。」

聞き終えて、走ったわ。自分の部屋に。
毛布にくるまっても、震えが止まらなかった。
私に着けられた首輪・・・犬みたいで嫌だったけど、犬ならまだ上等だわ。
わたしは部品としか見られて無いって気づいたの。
怖い。失敗したら、うまく乗れなくなったら、わたしは取り替えられるんだ。
助けて。助けて。助けて。助けて。誰か、助けて。
303名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:51:24 ID:+Sh1Ad1w
ガチガチになって臨んだ訓練はボロボロ。
うまく波に乗れなかっただけじゃないの。
初めて、ジ・エンドがわたしの言うことを聞いてくれなかった。
勝手に海の上で飛び回って、最後は海に向かって一直線。
着水する直前にバスクード・クライシスまで暴発するし。
水しぶきがバァンってあがって、すごい衝撃がきて、海に落ちたわ。

しばらく、海の底で呆然としてた。
やっちゃった。失敗しちゃいけないって分かってたのに。
早く言い訳しなきゃって通信しようとしたら、通信系が壊れてて連絡が取れないし。
仕方ないから、ちょっと海の中を泳いだ。
その頃には、ジ・エンドも不思議とおとなしくなってて・・・わたしは気ままに海の散歩。

このまま逃げちゃおうかな?
浮かんで、すぐにやめた。
軍からは逃げられない。
わたしを追ってくるんじゃなくて、ジ・エンドを追ってくるんだけど。

でも、帰りたくもない。
失敗したから、わたし取り返られちゃうのかな?
処分されるのかな?
怖い・・・。

不意に、1番嫌いな人の顔が浮かんだの。
出撃前、
「アネモネ、顔色が良くないよ。やっぱり今日の訓練はやめるべきだ。」
とか、必死で言ってた人。

「わたしはこれに乗らなきゃいけないの!!」
ビンタしたら、両肩をしっかりつかんできた人。

「ならアネモネ、絶対に帰ってくるって約束してくれ。」
真剣な眼をしてた人。

返事をしないでジ・エンドに向かうわたしの背中に声をかけた人。
「必ず帰ってくるんだ!!待ってるから!!ずっと待ってるから!!」

ドミニク・ソレルって人。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:53:18 ID:+Sh1Ad1w
海の中を漂いながら、ぼんやり思ったわ。
もし、立場が違ったら・・・別の場所で出会えていたなら・・・。
たとえば学校の・・・クラスメートは無理だけど、部活の生徒とコーチとか。
もしそんな風に出会えていたなら・・・好きになったと思う。絶対。
二枚目で、私にとびきり優しくて・・・。
そりゃ、好きになると思わない?


でも、現実は違うのよね。
わたしはジ・エンドのライダー。
あの人は世話係。
人生って辛い。

「 」のうかな・・・。
「 」んで、生まれ変わったら、普通に生きたいな。

普通に生まれて、遊んで、笑って、恋して、結婚して、好きな人と二人で幸せに暮らすの。
そして、普通に「 」にたい。


「待ってるから!!」

目を閉じると、背中にかけられた叫び声がよみがえる。

うるさい・・・
仕事だから優しいだけのくせに。全部演技のくせに。

「待ってるから!!」

あぁもぅ!!

顔をあげる。
いいや、帰ろうって思ったわ。
怖いけど、いつもわたしを迎えてくれた、あの人の笑顔が見たいから。
たとえそれが、薄っぺらい演技だとしてもね。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:54:06 ID:+Sh1Ad1w
わたしは海が気に入って、基地のギリギリまで泳いで帰った。
突然海から帰ってきたわたしを見て、みんな驚いてるのが分かる。
そしてハンガーにはいつもみたいにあの人が・・・いなかった。


バカバカバカ!!ドミニクのバカ!!


わたしは、あんたに会いたくて帰ってきたようなもんなのに、なんでいないのよ!!
ジ・エンドから降りた私に整備の人達が駆け寄ってきて何か言おうとしてたけど、
完全無視。

とにかく走ったわ。目指すはあのバカの部屋。
なにしてんのよ!!もしのほほんと寝てたりしたら、蹴り飛ばしてやるんだから!!

「ドミニク!!ドミニク!!」

あいつの部屋に飛び込む。
そしてわたしが見たのは、電気もつけずに真っ暗な部屋の真ん中で立ち尽くす、ドミニクだった。

「ドミニク!!」

文句を言おうと開いた口が止まる。
別人かと思うほど、生気のない瞳。
具合でも悪いの?

「・・・アネモネ・・・?」

ゆっくり目が動いて、わたしを見ると、小さな声でつぶやく。

「アネモネが・・・会いにきてくれた・・・。」

わたしは、やっぱり怒りがおさまらなくて、閉じかけた口を開く。

「嘘つき!!待ってるって・・・」

最後まで言えなかった。
ドミニクがわたしに抱きついてきたから。
抱きつくって言うか、すがりつくって感じ。
わたしの肩に顔を埋めてくる。
ちょ・・・ちょっとなに!?いきなりなんなの!?
知らなかった。こいつ力強い。振りほどけない。
急に見せられた男らしさ(?)にドキドキ。
私、怒りもどっかに吹き飛んで、慌てて変なことを口走っちゃった。

「待っ・・ドミニク・・・わたし、まだシャワー浴びてないから!!今からシャワー・・・」

「・・・僕も行くよ。一緒に行く。」

は?

「・・・連れてってくれないか?アネモネ」
306名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:54:53 ID:+Sh1Ad1w
バチーン!!

そのビンタは、過去最高の手ごたえがしたわ。

今度はドキドキがどっかに吹き飛んだ。こいつ最低。
叩かれたドミニクの目に、涙が浮かんでた。

「バカ!!あんた連れていけるわけないじゃない!!」

叫んで、部屋から逃げ出した。

「アネモネ!!待ってくれ!!アネモネ!!」

閉じた扉の向こうから、そんな声が聞こえてきたけど知らない。
私は急いでそこから離れようと背中を向け、

「アネモネー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

立ち止まった。

それは声じゃなかった。
声って呼べるもんじゃない。
叫びですらない。

腹の底から絞り出した、音だった。

空気の振動まで伝わりそうな、音。

怖くなって、わたしは逃げた。
どうしたの?ドミニク・・・。
わたし、いつもの優しいドミニクに会いたくて帰ってきたのに・・・。
熱いシャワーを浴びながら、少しだけ泣いたわよ。
もう、誰も信じたくないって思った。
少しでもあの人に期待した、私がバカだったんだって。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:57:03 ID:+Sh1Ad1w
シャワーからあがったわたしを、おばちゃんのドクターが待っていた。
わたしがこの基地で、まぁ心を許せる数少ない人の一人。
デューイが嫌いで話が合ったの。

「おかえりアネモネ、大変だったわね。」

「大丈夫、今日はちょっと調子が悪かっただけだから。」

ドクターは、簡単な診察を済ませたあと、訓練中の様子を尋ねてきた。
いつもはドミニクがわたしから話を聞いて、それをデューイに報告するんだけど、
それが無かったから代わりにしなきゃいけないらしくて。


「そう・・・勝手にジ・エンドが・・・怖かったわねぇ」

「別に大丈夫。海を泳げて楽しかったわ」

「大丈夫じゃないわよ。あなたも飛んで帰ってきてくれればいいのに、わざわざ海底を泳いで帰ってくるなんて。
ジ・エンドのシグナルがロストしてたから、みんな心配したのよ?」

「え!?なにそれ!?どういうこと!?」

「さっきあなたも言ってたじゃない、通信できなかったって。通信どころじゃないわよ。
ジ・エンドのシグナルはあなたが海に落ちた時に、オールロストしたの。くわえて、
こっちじゃそこまで分からなかったんだけど、バスクード・クライシスで水しぶきまであがったでしょ?
オペレーターの子が、『ジ・エンド爆散しました!!』って叫んじゃったから、みんなそう思い込んじゃったのよ。」

「アハハハハハ!!それ面白い!!で、その後はどうなったの?」

「あなたと入れ違いになったんだけど、捜索隊を出したわよ。そうそう!!ドミニクくん、すごかったわよ〜!!」

「え?」

聞きたくない名前が突然出てきてドキっとする。

「あなたのリフの調子がおかしい時から、『アネモネ!!アネモネ!!』って。訓練とはいえ作戦中なのに大声出してたわよ。
しまいにはデューイに『訓練を止めてください!!』って、掴み掛かりそうになるし、ジ・エンドが爆散って聞いた時なんか
半狂乱になっちゃって大暴れ。捜索隊どころか鎮静剤打たれて部屋に放り込まれてたわ。いや〜あの子もあんな顔
できるのね、おばさん見直しちゃったわ。」

「え?」

「少し休んだら、ドミニク君の部屋に顔出してあげなさいよ。きっと飛び上がって喜ぶわよ。」

「わかった・・・そうする・・・うん」

いや〜若いっていいわね〜とか言いながら、ドクターが部屋を出る。
一人になった部屋で、私はフラっとよろけて、壁に背中をついた。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 12:57:52 ID:+Sh1Ad1w
ズルズルとへたりこむ。
目眩がする。
「シャワールームじゃなかったんだ・・・」
すがりつくようにわたしに抱きついてきた、あいつの震える声が浮かぶ。
バカ・・・・。


「・・・僕も行くよ。一緒に行く。」

「・・・連れてってくれないか?アネモネ」



ドミニク・・・あんた・・・わたしとどこに行くつもりだったの?



あの日、わたしはどうやら本当に自分を心配してくれる人が一人いる事を知ったの。
あの日からかな・・・気づいたらドミニクを目で追うようになったのは。
うん、まぁつまり、惚れちゃったのかな。
相変わらずデートにさそったりはしてくれないからイライラするし、わたしもうまく甘えられなくて・・・恋って辛い。

わたし、この世界が嫌い。
でも、あの人は最後の希望なの。
わたしがほんとのほんとにピンチになった時、助けに来てくれるんじゃないかなって、
馬鹿みたいに信じてる。
白馬の王子様みたいにスマートに助けてくれなくていいの。
あの人らしく、不器用に、でも必死に助けに来てくれないかなって・・・思うの。
絶対内緒よ!!
ドミニクに言ったら駄目なんだからね!!