D.C.シリーズの白河ことりに萌えすぎて死にそうだ9
ここは風見学園本校校舎の屋上。
軋んだ音を立てて扉が開く。
重い鉄の扉をくぐり、一歩外へ。
屋上へ。
それは彼女――白河ことりにとって、自由への一歩だった。
身動きの取れない鳥籠から大空へと羽ばたくために残された、たった一つの出口だったのかもしれない。
ことりの後ろで少し錆びた鉄の扉が閉まる音がした。
もう後戻りはできない。
ゴムの上履きを揃えて置き、生徒達が誤って落ちたりしないための防護柵を乗り越える。
風が、とても気持ち良かった。
ともちゃんと呼ばれていた少女は、今は精神科のある本土の大きな病院に入院している。
そしてもう一人は・・・
「・・・・・みっくん。 今、そっちに行くからね。 また、一緒に遊ぼうね」
みっくんと呼ばれていた少女は最愛の兄に妊娠していることを知られてしまい、その日の内に命を絶った。
左の手首は、ためらいキズでズタズタだったらしい。
結局それだけでは死ねず、最後は下腹部を
ちょうど子宮のあたりを、細くて長い刺身包丁で突き刺して息絶えていた。
葬儀の席で最後に見た死に顔は、疲れ果て、悲しみと苦しみの中で死んでいったことが伺えた。
「・・・・なんかもう、疲れちゃった。 私のお腹の中にも・・・・いるんだろうな・・」
ここ数ヶ月、ことりは生理痛に悩まされることはなくなっていたが
かわりに、いきなり吐き気を催すことが多くなっていた。
下腹部に手を当ててみるが、よくわからなかった。
実感も無く、誰の子かもわからない。
ただ、みっくんが子宮に包丁を突き立てた理由はなんとなく、わかるような気がした。
「みっくんも、お腹が重く感じたんだよね。 取り出したかったんだよね、きっと・・・」
空を見た。
眼下に広がる霞む街並みを眺めた。
これで見納め。
最後に、好きな男子がいるであろう、本校舎の一年生の階を眺める。
「音夢さんと、うまく行くといいな・・・・・・がんばってね、朝倉くん」
片思いの相手の名が、最後に口をついて出た。
秋の空は高くて、太陽は眩しくて、風は気持ちよくて。
でもそれが、なんだか悔しくて、悲しくて。
瞳を閉じ、校舎の壁を登ってくる風に身をゆだねなから、
ことりは自由の翼を広げ、大空へと羽ばたいた―――