朝起きたら台所に翠星石がいた。

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76名無しさん@お腹いっぱい。
深夜、部屋に入ってきた翠星石 「ふわぁ〜...もう寝るかですぅ、これを作ってたらすっかり遅くなったですぅ」
「台所で何やってたんだ、こんな夜中まで」 「!!?ッち、チビ人間!!寝ていたんじゃないのかです!?」
「下で鍋だか何だかをひっくり返す音がして気になって眠れなかったんだよ」
「プ!いい歳こいて何、気の小せぇことほざいていやがるですか、お前みたいのをノミの心臓というですよ。
お子ちゃまなチビはとっととクソして寝るがいいです!」
何でそこまで言われなきゃいけないんだ!僕はムカついて、得意満面で厭味を言う翠星石の髪をつかみ顔面を床に叩きつけてやった。
「ひぎゃあっ!!!!い、いきなり何をしやがるですか?!」 と、すぐさま起き上がった翠星石がうらみがましく僕にたてつく。
その時翠星石が持ってた何かが床にコロリと転がり落ちた。 ん?何だこりゃ?思わず拾い上げようとすると
「そ、それは?!ダメですっ!!」 と言って翠星石が飛びついてきた。が、僅差で僕がそれを素早く拾い上げた。
「か、返せですっ!!それは、翠星石がっ!!!」 ほう、大事なものらしいな。ふん、ただで返すと思うなよ。
「返すです、チビ!それは...それはぁっ!!」 うるせえ!!ガタガタぬかすと、こいつをひねりつぶすぞ!?
「ひぐっ!!!」 よほど大事なものらしい。この悪魔人形がいうことをきくなんて...
僕は翠星石から奪った物をしげしげ見た。 「やぁぁぁぁっ見るなです!!」
うるせぇな...何だこりゃ?箱...か?
箱は「頬を赤らめてハートマークを抱きしめた幸せそうな表情のクマのブーさん」が数箇所印刷された
いかにも小さい子供や女の子が喜びそうな図柄の包装紙がなされ、それに幅広のリボンがかけてあった。
ためしに箱を振ってみる。耳をあてると中で何かが転がるような音がした。
「や、やめろです!振るなです!まだ固まってないかもなのです!」 こいつ何を言ってやがるんだ?
77名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/22(水) 20:55:29 ID:InQq7afa
はは〜ん、こいつ、また良からぬことをたくらんでいるに違いない。
この翠星石という人形は外見は可憐で大人しそうな顔をしているが、だまされてはいけない。
実はとんでもなく性悪な悪魔人形だ。
乱暴な言葉づかいはもちろんのこと、暴力まで振るう。
いつも年下の雛苺をいじめまくるし、僕の部屋の窓ガラスをしょっちゅう割りまくる
しかもワザとだ。僕もこいつにはピアノ線で足をひっかけられた(足切断したらどうするんだ!?)こともあるんだ。

この箱も何かの悪さの仕込みに違いない。僕は翠星石の悪事を阻止すべく箱の中身を確かめるために中身を確認することにした。

ビリッビリッ!
僕は無造作に箱を包んでる包装紙を破く。
僕の手の中で破かれ握りつぶされた紙に印刷されたクマのブーさんの笑顔がゆがみ引き裂かれていくのを目の当たりにした翠星石が悲鳴をあげる。

「あああっ?!(泣)ブーさんがっ!何するですか!もっと丁寧にはがせですよ!
それは夕飯の手伝いの“ごほうび”で、のり からもらった翠星石のとっときの宝物ですぅっ!!それをと、特別に使ったのにですぅ〜!」

ぬわにっ!!『夕飯の手伝い』だぁ?!
まさかあの晩の花丸ハンバーグ『卵の殻が混入された目玉焼き』に『何かの小骨が入っててそれが喉に刺さるハンバーグ』『下水のような味のソース』
を作ったのは、翠星石だったのか!?どうりで!!作りなれてる姉ちゃんが、そんなミスするのか?と思ってたが...
ちっ、どうりで夕飯の時に翠星石の顔を見たら目をそむけるはずだ。
顔を赤くしてうつむいたのは「してやったり」と興奮してたからってワケか?!
この悪魔人形め。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/22(水) 20:56:36 ID:InQq7afa
ふん、そんなに大事なもんなら返してやるさ!
僕は丸めた包装紙を部屋の隅の床に叩きつけた。それはころころ床を転がり翠星石の足元にで止まった。

「あ...あ...ブーさんが...」

クシャクシャになった紙をわざわざ広げてそんなこと言ってやがる。うっとおしい!

包装紙を取った箱のフタにも何か封筒のようなものが付いていた。
こちらは真紅も夢中になってる「くんくん探偵」の主人公「くんくん」のキャラが使われたキャラ物の封筒だ。
封筒の表面には緑のサインペンで書かれた文字があった。
何て書いてあるんだ?ミミズが腕立て伏せしてるような字だが...
かろうじて『ヅュソちま へ』と読めなくもないような??

「や、やめろですぅ!読むなですぅ!!こ、こんな、こんな形で読まれるなんて翠星石は...翠星石は...
こんな...ううう...っ翠星石はこんな...」

まったく、自分の悪事がバレそうだからって、そこまで取り乱すことないだろ?
僕は封筒から中身を取り出そうとした。

「やめろです!!!返しやがれですっ!!!それを読んだら...読んだら許さね〜ですぅ!!!」

再度、翠星石が飛び掛ってきたので、とっさに分厚い参考書を顔面に叩きつけてやった。
「うぎゃああっ!!!」
床に落ちたところを後ろ手にして縛り上げてやった。ロープの代わりは翠星石の無駄に長い髪を代用した。
無理に解こうとすると腕か首のどっちかがスッポ抜けてしまうだろう。
「く、首が...痛いです...う、腕がつるです...うぅ」
おとなしくしてろってんだ。僕は抵抗できない翠星石を尻目に封筒の中の手紙を読む。
だが、こちらもミミズが腹筋運動してるような文字で読めやしない。
かろうじて、『ヅェソ 犬 女予 \≠ で寸』と読めなくもない文字があった。

ふん、なにかと思えばくだらない。僕は暗号めいた文字が書かれた紙を丸めてゴミ箱へ叩き込んでやった。

「あぁぁぁっ!!...手...紙、通販の本で、日本語...勉強...うぅっ...
翠星石は...この日のために...一生懸命書いたですよ...?そ、それを...」

ちっブツブツ何言ってやがる?この人形は?壊れちまったのか?
79名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/22(水) 20:58:14 ID:InQq7afa
「うう...ひっく...うえ...」
おいおいおい何だこいつ?何涙なんか流してるんだ?...この日のためにって
そんな前から計画してたのか?この悪事は。なるほど用意周到に計画してきたが
それが今日この日に僕に知られてオジャンになったってわけだな。ふん、馬鹿めw
さーて、と...この箱何が入ってるんだ?どーれ見てみるか...
あ?何だこのコゲ茶色の...!!??!!まさか、ウ〇コ!!!!
...じゃ、ないみたいだな...臭いもしないし。
ひしゃげてはいるが、どことなくハート型に見えなくもない。
「おい、このグニャグニャの茶色いのは何だ?」

「あああ...さっき箱を振ったからです...やっぱりまだ固まってなかったのです...
せっかく夜遅くまで翠星石が...何度も作り直して、今度こそうまくできたですのに...」

茶色い物の表面をよく見ると何か白いものを溶かして描いた絵のような物がある。
なんか雛苺がよく床に落書きするときに描く僕の顔みたいだ。−□ー□−とあるのは眼鏡のつもりなんだろうか?
「おい、これは何だって言ってるだろ?」
「そこまで見てまだわからんのですかっ!!この脳足りんっ!!世間知らずの引き篭もりのチビ人間!!!」

はぁ?おうコラ!何て口のきき方だっ!!僕は禁句を口にした人形を思いっきり踏みつけてやった。
ゴスッドスッバキ!
「ぐあっ!ぐえっ!いやっ!...ううう...翠星石はこんな...こんなつもりで...
...喜んでくれると思って...溶かして...型に流し込んで...一生懸命作った...ですよ?
ホワイトチョコでジュンの顔を描いて...のり も頑張ってね応援してるって言ってくれたのです...それなのにこんな...」
80名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/22(水) 21:00:14 ID:InQq7afa
あ?姉ちゃんがどうしたって?こいつ姉ちゃんになに吹き込んだんだ?
どういうわけかうちの姉ちゃんはこいつには甘々なんだ。
それをいいことにこの性悪人形がしてきた悪事は数知れず。だが残念だったな、
お前の本性を知ってる僕には通じないぞw

僕はおもむろに床に横たわってる翠星石のアゴのあたりをつかんで強引に顔を持ち上げた。

「あががががあっっっ!!!な、何をするですかっ!?」

ふん、知れたこと!そのきき方がなってない口をふさいでやるのさ、コイツでな!
そら、喰え!てめえが作ったというこの得たいの知れねえブツをてめえで喰いやがれ!!
僕は歪な茶色い物を箱ごと翠星石の口にムリヤリねじ込んでやった。

「な、何をするですか!やめてです!やめ、いやああああああっむ、むぐっぐぅっ!!!!」

翠星石はつぶした箱でパンパンにふくらんだ口をかろうじてモゴモゴさせながら
紅と緑の目から涙をとどめなく流した。

ふん、面白くない。確か冷蔵庫にヤクルトの買い置きがあったはずだ。それを飲んで
寝直そう。僕は部屋を出て台所に向かって階段を降りていった。

(うう...うえ...どうして...翠星石がこんな目に...?翠星石は...
翠星石は...ジュンのこと...ううっ...ジュン...蒼星石ぃ...さびしいよう...
蒼星石ぃ)