>>921 >>922 >>923 >>924 >>925 (何を考えてるんだ、この女は?)
俺は思わず心の中でつぶやいた。
「いっしょに入りませんか?」
明らかに何かを勘違いした様子で、そう言いながら流し目を送ってくるこの女。
以前告白されたとき、俺ははっきり断った。彼女も納得した筈だった。
俺に愛する人がいることも、彼女は知っているはずなのに。
土砂降りの雨に濡れた彼女に、風呂と着替えを勧めただけでまるで恋人気取りのこの様子。
(怖い……)
心の底からそう思う。
彼女が親切心から(?)俺の世話を焼いてくれる態度。
それはある意味有り難いものだが、逆に言えば、
もしもその好意を断ったら…一体彼女はどうなるのだろう?
正気と狂気の境界線上をたゆたう彼女の魂を傷つけないようにすること……
俺にできるのはそれだけなのだろうか?
彼女の心と、俺自身の身の安全を守るために。
俺は果てしない無力感にさいなまれ続ける……。
(音夢…早く帰ってきてくれ…)