1945年にエンジェル隊がタイムスリップ2

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107名無し陸戦隊:2006/03/03(金) 21:08:03 ID:sOnrCdDy
昭和20年 4月5日 午前4時00分 横浜港
横浜港に到着した輸送船団は、油槽船や貨物船を桟橋に停泊させ、
夜も明けない内から荷降ろし作業を開始した。
人がせわしなく動き、用意されていた重機や起重機は、エンジンを唸らせ荷物を埠頭に降ろし始めた。
その間、護衛艦艇は港外にて対空火器を空に向けると警戒態勢に移った。
旗艦鳥海では、小沢冶三郎中将が参謀より荷役作業の進展状況を聞いていた。
「ご苦労だった、兵達には交代で休みをとらせる様に。」
すべて聞き終えた小沢は、参謀にいった。
「わかりました、では失礼します。」
参謀が出て行くのと入れ替わりに、伝令の兵が入ってきた。
「報告します、ただ今、第3航空艦隊長官、木谷中将がお見えになられました。
長官に面会したいとの事であります。」
「木谷が?分かった、長官室に通してくれ」
「はっ了解しました。」
一礼すると伝令は艦橋から出て行った。
木谷の奴め、いったい何しに来たのだろうか・・・小沢は、半ばいぶかしがながらも
艦橋にいる参謀達に後を任せると、足早に長官室へと向かった。
階段を下りて行き、艦橋の下部に位置する長官室の扉を開けると、
可燃物を取り払った殺風景な部屋の中には、すでに人影があった。
「これはどうも先輩、先にお邪魔していますよ。」
人影の声を聞き、思わず顔をしかめた小沢の前には、木谷中将が、1人、簡素な椅子に座わり待っていた。
木谷は小沢と海軍兵学校の3期後輩にあたるはずだが、遠慮と言うものを持ち合わせて無いらしい。
部屋に入った小沢は、長官用の椅子に腰を下ろすと、木谷を見据えた。
小沢は、木谷の高い才能を認めるし、彼の行動にも一目おいているが、性格的に好感が持てなかった。
「ふむ、貴様も相変わらずのようだな、色々と噂は聞いてるぞ。
赤レンガを離れても大暴れしとるそうじゃないか。
まあ、そんな事はどうでもいい、こんな時分にやってくるとは何か急ぎの用だろう?」
木谷は大きくかぶりをとった。
「ええそりゃーもう、積もる話も沢山ありますがね・・・それは置いときましょうか。」
営業用とも言える笑いでしゃべりを止めた途端、厳しい目つきに変わる。
「海軍大臣が死亡されました。」
その瞬間、小沢のただでさえ厳つい表情が、最大限まで引き締まった。
「何だと!!米内閣下がか、なぜだ、暗殺か?」
「いえ横須賀にお出での際に奇襲に巻き込まれたのです。」
「なんと不運な・・・でそれを貴様はわざわざ伝えに来たと言う訳か?」
「いえ、私は積荷の方に用があったのでついでに来たまでの事です。
では時間も惜しいので、そろそろおいとましますよ。」
「もう帰るのか?」
「ええ、明日も忙しい身ですからね、今の内に休んでおかないと、体が持ちませんよ。
ハッハッハッ、まあ小沢先輩もまたすぐに、忙しくなるでしょうがね、それでは失礼します。」
「おいそれはどういう事だ?」小沢が言い終えるよりも先に、扉は閉まった。
まったく・・・あわただしい奴だ。んっ
机を見ると、一通の手紙が置いてあった。どうやら木谷中将が置いていったらしい。
封筒の裏を見ると上田拓人中佐の名があった。
「上田君か、作戦参謀の時は世話になったものだ・・・」
一瞬懐かしさを感じた小沢は、封筒を手に取ると、すぐさま封を開けた。
中の手紙を開き文面を読んでいく。
ふむ・・・これは・・・・・一通り読み終えると手紙を机の上に置き、眼をつむった。
ワシもそろそろ身の振り方を決めんといかんか・・・
甲板に出た木谷は、長官室の方に僅かに顔を向けると、そのまま迎えの内火艇に乗り込んだ。
108猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/06(月) 00:11:57 ID:a1iovBPF
横須賀海軍病院 昭和20年4月4日午前02:15
「終戦工作・・・米内閣下がですが・・・」
ちひろは工作と言う言葉に少し躊躇いを覚えた。陸、海軍共に下の間では本土決戦を推進し士気を高めていたためである。
無論、上もそうであろうとちひろは考えていたのだ。
「そういえば米内さんは言ってたわね、焦土化し国民が一人もいなくなった日本をだれが日本の呼ぶのかって・・・」
蘭花が寂しそうに語る。
「その時わたくしは負けるにも負け方があると申しましたわ、おそらく米内さんもそれを探していたのだと想いますわ」
「ああ、御前会議で米内さんが提案した角松さんとの接触もあたしらの加入を止めるためだったと思うからね」
「その通りですわ。私たちや角松さんを自重させ終戦を予定通りに進めるつもりでしたの」
ミントは包帯の上から自分の傷を撫でる。
「そうであれば大変な事になりましたよ。嗚呼・・・・とうとう重大な歴史干渉してしまったんですよ!」
ヴァニラの横においてあるノーマッドが会話に割り込んできた。
「歴史干渉があるとどうなるんですか?」
ちひろは首を傾げる。
「死んでいる人間が生き残ってしまったり、生きていなければならない人間を殺したりを過去ですると未来が大きく変わる恐れがあるんですよ!
それも米内さんのような日本国の重要な人物でしたらね」
「ノーマッドさんの指摘どおりですわ・・・可能性は分かりませんが私たちの時代まで影響を及ぼす恐れがありますの」
「え?それってどういう影響よ」
「簡単な原理で言えば、あるべきものがなくなるということでしょうか?例えば蘭花さんが先週購入したワンピースとかも・・・」
ミントの一言に蘭花の表情が変わる。
「え〜ダメよダメダメダメ〜!まだちょっとしか着てないし」
「はぁ〜単純な人だ・・・・」
ノーマッドが首を左右に振って慌てる蘭花を呆れたように見つめている。
「コホン、冗談はさておきそんな事よりもっと重大な事が起こってしまう可能性があるって事です」
「で、それって何とかできるの?」
蘭花が哀願するような目でミントを見つめる。
「ええ、簡単なことですわ。米内さんがやろうとしていた事を私たちでやっちゃえばいいんですの」
ミントは少し心がほぐれたのか口元をかすかに緩めた。
109猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/07(火) 00:06:19 ID:kt3tfKVn
横須賀海軍病院 昭和20年4月4日午前02:20
「それで未来は戻せるの?」
蘭花が涙目でミントにすがり付く。
「蘭花さん、ライトのスイッチを押すとどうなりますの?」
「なによ、馬鹿にしてんの、ライトがつくに決まってるじゃない」
ミントに抱きついたまま怪訝そうに蘭花が答える。
「じゃあそのライトは蘭花さんにしかつける事ができませんか?」
「そんなもんスイッチおしゃ誰でも付け・・・・あ!」
「そういう事ですわ、終戦工作をするのは誰でも構いませんのよ」
ミントは蘭花をそれとなく引き離した。
「ただそのスイッチの押し方が分からないけどね」
フォルテが付け加えるように言う。
「それじゃあ・・・だめじゃん」
蘭花はまたションボリとした。
「絶対に無敵強運のミルフィーユにお願いするをもってしてもかい?」
フォルテが流し目でニッと笑う。
「あ、こいつなら・・・・100万通り以上の中からでもそのスイッチが押せるわ」
「むにゃ、むにゃ・・・」
何か寝言を言っているミルフィーユの頬をツンツンと突付いてみる。
「じゃあ、この最初の選択はミルフィーユさんにお任せしましょう」
「さんせ〜」
「そうだね、あたしもこの娘にかけてみようかね」
「ちひろはどうなん・・・・あれ」
ちひろは病室の戸を開けて左右を警戒しながら確認していた。
「どうしたんだい?」
「しゅ、終戦工作の話など憲兵に聞かれたら逮捕されてしまいます!」
ちひろが真剣な顔つきでこちらを見つめてきている。
「お前も不自由な時代にいきてるんだね」
改めてフォルテは同情しちひろのあたまを撫でてやった。
110猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/09(木) 01:24:35 ID:iPyWZ7xw
海軍省 昭和20年4月5日午前06:00
自分の上着を毛布代わりに正光は仮眠を取っていた。
徹夜で神と話し合うつもりでいたのだが神が日吉に帰ってしまい計画はオシャカになってしまったのである。
「すまん、すまん。日吉に急用ができてな」
急ぎ足の軍靴の音が聞こえるかと思うと神が会議室に飛び込んできた。
「う〜・・・ん〜・・・全くこの非常時にどんな野暮用だ」
大きく伸びをして上着を着ると神を席に座らせる。
「先任参謀とは忙しくてな」
白い歯を見せると二人は真剣な顔つきになった。
「米内閣下の件は聞いている・・・豊田長官も嘆かれていた」
「ああ・・・陸軍の反発は避けられんがエンジェル隊は海軍いや連合艦隊が守ってみせる」
正光の表情を見て神は同じ釜の飯を食った何か直感的なものを感じた。
「その様子じゃ妙案があるのか?」
「ああ、付け焼刃だがな。この後の対策会議で発表してやるつもりだ」
「聞いてもいいか?烏丸作戦参謀」
「気持ち悪いいいかただな、仕方ないいいだろう」
正光は軽く頷くと白いテーブルクロスのかかった机を指でさし即席の海図を表した。
「ここを横須賀とする。無論彼女らをこのまま横須賀に留めておくのは恐らく不可能だと思う」
そう言うと正光はテーブルクロスをスゥーとなぞりだした。
「陸軍にそれなりの建前をやり連合艦隊がエンジェル隊を保護できる場所。なおかつ防空網が整えやすく気候もよし
軍都広島を上手に置き連合艦隊旗艦大和の本拠地・・・・呉だ」
「江田島か・・・・舞鶴、佐世保もあるが343航空隊もいる瀬戸内の方が安全だろう」
無難な作戦に神が頷く。
「しかしだ・・・飛べるのはハッピートリガーだけなんだ」
「どう言うことだ?」
「横須賀奇襲でヴァニラ君は腹部を打ち抜かれ重症、ミント君も毅然とはしているがあの様子では戦場恐怖症になってるかもしれん」
神は無言で頷いた。
「そこでだヴァニラ君の容態が落ち着いたらミント君ともども呉にハッピートリガーで移送してもらう。
ヴァニラ君の病院は陸軍の顔たてで広島市内の病院がいいと思う。残ったトリックマスターとハーベスターは
横須賀航空隊のベテランにでも登場してもらうのがいいのだがあの娘らの脳波というものでしか動かないらしい」
「難しいものだな」
「そこで駆逐艦で牽引して海上輸送する。しかしこれは作戦だ千巻とまではいかんが軽巡を旗艦して水雷隊にも帯同してもらいたい」
111名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/09(木) 17:44:14 ID:rjJLygjq
>>110
大和は第2艦隊だから連合艦隊旗艦じゃないはずです。
旗艦勤めたのは武蔵<<大淀<<20年には日吉に上がってます

それに駆逐艦で牽引って機関がこわれませんか?
F1カーでトレーラーを牽引するのと同じと聞いた事があるし
軍艦が牽引するのは非常時だけだと思います
牽引する役目の船として曳船が存在している訳だから
普通に大型曳船に曳かせたらいいと思うのですが

最終行のところは水雷隊じゃなくて水雷戦隊だと思いますよ
それとも駆逐隊の事ですか
水雷戦隊は旗艦を軽巡が勤めないといけないからセットの筈
駆逐隊は駆逐艦4隻程度で編成されています

軍事版に参考になりそうなスレがあったので貼っておきまつ

初心者歓迎 スレを立てる前に此処で質問を 249
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1141670989/

■○創作関連質問&相談スレ 11
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1140629862/

とにかくガンガレ!!
112猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/10(金) 20:10:16 ID:cuqcNecN
>>111
ご指摘ありがとうございます。戦時小説等ではよく駆逐艦が曳航しているので・・・
連合艦隊旗艦というのは正光が「大和ホテル」的な意味でいったものですので。
月曜日には書き上げますのでお楽しみに
113猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/16(木) 00:17:27 ID:jpU26Yv+
海軍省 昭和20年4月5日午前06:00
「護衛に関しては護衛艦艇に依頼を出しておくが2部隊もつけるのは了承してはくれんだろう。ロストテクノロジーだったか?」
「ああ、エンジェル隊から頂いたミラクルミルクだったな」
「油槽船のタンクにたらした所本当に満タンになった。その燃料は長門にぶち込んでおいたから長門は動けるぞ?」
「長門はダメだ。あれが動くと目立つからな・・・・」
正光は苦しいながらも輸送艦隊の編成を神に依頼しておいた。
しばらくは紋章機移送作戦の青写真談義を煮詰めていたが2人の意見だけでは連合艦隊も動いてくれるわけはなく、残りは他メンバーの到着を待つ事にした。
一方、横須賀では病棟から海の方へフォルテが朝の散歩に出かけていた。
「ん〜」
軽く深呼吸し潮風を吸い込むと少し悩みから開放される。
「フォルテさん」
後ろからちとせの制服に身を包んだちひろが声をかけてきた。
「お、ちと・・・ちがうちがう、ちひろ早いね」
「勝手に出歩くと怒られますよ、ここは軍港なんですから」
「わりぃ、わりぃ・・・少し潮風に当たりたくてね」
フォルテが病棟の方に戻ろうとするとちひろはフォルテを制止させる。
「でもここぐらいまでなら大丈夫だと思います」
「そうかい?じゃあ少し横須賀軍港を眺めさせてもらおうかね」
「横に座ってもいいですか?」
「ああ、いいよ」
フォルテが少し横を譲ってやる。
「シャープシューターを動かしたんだってね、どうだった?」
「今まで搭乗したどの航空機よりも素晴しいものでした」
フォルテがちひろのおでこを軽く突く。
「言葉が硬いよ。まぁあんたらしいかな?しかし、初出撃であのコントロール、パイロットとはいえできたもんじゃないよ」
「いえ、蘭花さんのご指導がよかっただけです!!」
自分を謙遜必死に否定するちひろはますますおかしく見える。
「はっはは、蘭花のご指導かい?あの娘は確かに接近戦はプロだと思うよ。射撃はからっきしだけどね」
「しかし、蘭花さんがおっしゃる通りに戦闘を行なえばこそ米軍機を撃退できたんです」
フォルテは笑顔で自分の腕を叩いてみせる。
「そりゃあんたのここがいいんだよ。よし、シャープシューターが動かせるとなりゃあたしからも訓練をしてやらないとね」
フォルテはニッコリ笑うとちひろの手を引いて病棟へと戻り始めた。
「どうしたんですか?」
「烏丸大佐が戻ってきたらシャープシューターの訓練を申し込むのさ」
114名無し陸戦隊:2006/03/16(木) 14:46:43 ID:j+P13uKH
昭和20年4月5日 ハワイ 太平洋艦隊司令部
「高い出費となったね・・・」
太平洋艦隊司令長官チェスター・二ミッツ大将は、
提出されたレポートを目にしながら、疲れた表情で大きくため息を吐く。
「はい、残念ながら、兵の救出担当艦も明け方には、ほぼ撃沈されてしまいました。
今までの消極的さのない、容赦ない攻撃です。艦の消耗よりも人的被害の方が問題です。」
参謀長のレイトン大佐は申し訳なさそうに二ミッツの表情を窺った。
「肝心の目標、大型機、FDの破壊も失敗した。
さっき電話が来てね、作戦部長にどやされたよ。」
二ミッツは机の上に腕を組んで頭を擡げた。
キング作戦部長の事だ、さぞかしデカイ雷が落ちた事だろうな・・・
そう脳裏によぎった、レイトンは、二ミッツ長官が気の毒に思えた。
「それでレイトン、その後日本に何か動きはあったのかい?」
「はっ、情報部の報告によりますと今のところ変化は見られない様です。
ただ、最近日本軍、特に海軍の暗号の強度が上がったように見られます。
今までの様に、簡単に解読する事が出来ません。」
レイトン参謀長は報告を行いながら、汗でずり落ちた眼鏡のズレを直す。
「そうか、モンスターが健在なのに動きが無いとは、何だか不気味だな。」
「今、日本沿岸の潜水艦と偵察機の数を増やし、情報収集を強化してますので。
近日中に、何か報告できると思います。」
「うん、頼んだよ。」

陽も空高く上り、昼になろうかと思う時刻、横須賀近海には多数の艦影があった。
誘導役の掃海艇から「入港準備ヨシ」の発光信号が出され、艦隊は微速で前進する。
前方警戒を行っていた、島風に続き、艦隊旗艦、鳥海と両脇を秋月・初月が固め、
後ろから空母大鳳、瑞鶴が松型・橘型駆逐艦に守られ軍港内に静々と入港する。最後に殿の防空巡洋艦、五十鈴が港内に入って行く。
南方から運んできた物資を、揚陸し終えた船団と、横浜で別れた小沢艦隊は、横須賀への寄港命令を受けたのだ。
ここで、消耗した機材と燃料の補給と、損傷艦の修理を終えた後に、次の命令まで待機となる。
旗艦鳥海の艦橋に立つ、小沢長官は、横須賀の風景を眺めていた。
港内には戦艦長門やフィリピンで行動を共にした伊吹・鞍馬等がその存在を誇示するかの様に、停泊していたが。
施設内は、うっすらと煙の昇る、爆撃の後や弾痕が痛々しく残っている。
船渠には、爆撃で朽ち果てた伊400潜の残骸が骸を晒していた。
黒々と焦げた残骸は、不謹慎ながら、鯨の丸焼きを連想してしまう。
これからどんな指令が来るかは、分からんが、とりあえずは兵達の英気を養い
暫しの休息を楽しもう、考えるのはそれからだ。
紋章機、そう呼ばれている機体へ、小沢は厳つい顔を向けた。
115猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/17(金) 00:57:04 ID:5j4jyMxe
             昭和20年4月5日午後01:00
会議は物々しい雰囲気の中開始された。
会議には首相、参謀総長、軍令部総長、陸軍大臣が顔を揃え、参謀次長、軍令部次長もゾロゾロと揃い始めていた。
「大変な事になってしまった。米内海軍大臣の殉職、エンジェル隊隊員の負傷、紋章機の損傷・・・・陛下もお悔やみになられていたよ」
米内の座る場所を井上が開けて座ったためより空しさが会議の空気を重くした。
「海軍として今回の失態をいかに考えているのかお聞きしたい」
開口一番に発言をしたのは梅津美治郎(うめづよしじろう)参謀総長であった。
本土決戦を主張する彼は何としてもエンジェル隊の保有する戦力を本土決戦に投入すると決め込んでいたのだ。
そう、本土決戦準備の遅れは全て彼の元に情報として入っている。梅津の中にもそれなりの焦りというものがあったのである。
「横須賀は無防備すぎるのだ。ここは横田基地に入れるべきではないか?」
梅津を援護するかのように杉本は飛行機試験場がある横田基地を推薦してきた。
しかし、海軍側は首を振らずに感情的な言葉も両陣営から飛び出し始める。
海軍側も皆得策を用意しぶつけていくものの陸軍も首を振らなかった。
エンジェル隊の論議は完全に煮詰まってしまい会議は2時間立った所でクールダウンの意味も込め
陸海軍別室による1時間の休憩が取られる事となった。
116猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/18(土) 01:58:40 ID:sYmouLXK
別室 昭和20年4月5日午後03:00
「ふぅ〜」
神は大きく深呼吸すると椅子にどかりと座り込んだ。
「陸軍め、言いたい放題だ。井上閣下や皆も頑張っているがあっちさんも納得はしないだろう」
「ああ、俺の案を切り出す場所もなかった」
正光も疲れた表情で隣に座っている。
「しかし、木谷閣下や上田達も頑張ってくれている。エンジェル隊を陸軍に渡すような事になればこれまで以上にわが国にとっても不利になる事は確かだ」
「分かっているさ、俺だって後半年早くエンジェル隊を迎えていたら連合艦隊に編入を企んでいるところだからな」
「そうだな艦隊殴りこみを豪語するお前なら真珠湾にでも大和、長門を護衛させて突入させているかもま」
「はっはっは。俺はそこまでの凡人ではないぞ」
少し空気が和んだ所で外が騒がしくなってきた。間もなく士官が一人海軍側の部屋に飛び込んできた。
「失礼します、特別顧問としまして石原莞爾陸軍中将がお見えになられました!」
「何!」
場の空気に緊張が走るのもつかの間、皆急いで廊下に飛び出して整列した。
何故予備役の軍人がこの場所に現れたのか、正光は先日の説明会の時を思い出した。
そう石原はその場に出席していたのである。
考える間もなく背広姿で石原は現れた。事情を知らされていない陸海軍将校全てが石原莞爾復帰のシナリオが脳裏を描く。
「いや、いや、予備役にここまでの配慮、ご苦労、ご苦労」
彼はゆっくりと陸軍側の部屋に歩いていった。しかし、部屋に入る手前で彼はクルリとこちらを向きかえり一言言い放つ。
「諸君らは私が現役に戻るとご期待されているが、私は助言と言う立場でこの場所に参上した。なぁに年寄り教授の授業だと思い聞いてくれればいい」
石原はそういうと陸軍部屋に消えていった。
「小磯総理のご指名で石原閣下をお呼びになったそうです・・・」
親しい将校がそっと正光に耳打ちしてくれた。

117猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/18(土) 02:26:32 ID:sYmouLXK
会議室 昭和20年4月5日午後04:00
先ほどとは180度変わり石原の会議は独壇場となっていた。
「この中にはエンジェル隊の説明会に参加していた者も多数いると聞くが、果たして内容を理解していたのかね?」
石原はこう切り出すとまるで学生たちに講義をするように説明を開始した。
「エンジェル隊の降臨は正に天からの恵みである事は変わりはない。しかしだ、エンジェル隊の戦闘力は陸、海合わせても到底いや
今現在戦争を遂行する国々が1つになってかかっても恐らく勝ち目はないでしょうな。結論から言うと彼女らが私たちの陣営についていてくれる事の方が奇跡だと思います」
そういうと石原はチョークをとり黒板に何を描き始めた。紋章機?らしき物体と大きな惑星、そして小さな惑星が描かれている。
「これが彼女らが存在する世界と言うわけです。彼女らの説明を元に私が描いた想像図ですが、おそらくこれで正しいでしょう」
「えーまず彼女らの戦争と我々の戦争のどこが違うのか、そこから説明するべきですな」
石原は黒板を軽く叩くと皆が彼に注目した。
118猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/19(日) 23:34:02 ID:UvA5n4BS BE:161693069-
会議室 昭和20年4月5日午後04:00
「皆さんお忙しいようなので説明は手早く行きますよ」
石原はにやりと笑うと学生に講義やるように話し始めた。
「我々が現在体験しているのは制空権、制海権を交えた三次元の戦争、エンジェル隊が活躍する時代の戦争は更にその上を行く四次元いや五次元の
戦争なのです。つまりは制空権、制海権を超越した宇宙空間における戦争と言う事になるでしょうな」
説明会に来ていなかった将校が宇宙と言う言葉に首を傾げる。
「宇宙とは空のかなた上、天空と言う事になるのですよ。そしてその天空こそが彼女らの戦場であるのです。
まぁ例えるのなら大日本帝国という惑星がありアメリカと言う惑星がある。その間太平洋という宇宙があるといったものでしょうか?
ですからエンジェル隊の時代は戦争ともなれば制宙権の確保を念頭に置かなければならないのであります」
「ですから彼女らから見ればこの大東亜戦争も内戦!鳥篭の鳥達が自分の巣の場所を巡って争っているようにしかてしか見えないと私は思いますがな。
さて、私は以前最終戦争論と言うものの中で無着陸で世界をぐるぐる廻れるような飛行機ができ一発あたると何万人もがペチャンコにやられる決戦兵器が必要であると解いた!」
石原の拳に力がこもる。
「エンジェル隊の乗る紋章機こそその使者ではないのか!」
119猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/23(木) 01:55:41 ID:5G81FqsG
会議室 昭和20年4月5日午後04:30
石原の熱弁は30分続いた。
「しかし、エンジェル隊とてトランスバールという国の主力部隊ではない」
石原の断言に皆が驚愕する。
「ロストテクノロジー回収とやらを雑務にしているようだが戦時下ともなれば月の聖母という人物の護衛にあたる守衛隊にはや代わりするのだ」
「つまりはトランスバール皇国軍と言うものは更なる強大な戦力にてその広大な領土を統治していると言う事なのですよ。数多の火力を抑止力としてね」
石原はそういうと今度はトランスバール本土の衛星を指差した。
「彼女等の守る月の聖母の宮・・・・これも兵器工場だといっていましたぁ。そして聖母はこれを封印していると・・・・・・
ですが白き月と言うのはすでにその役目において重要な部分をもっております。最高の決戦兵器を隠し持てるという真実・・・これこそが最大の武器なのですよ」
石原はグラスに汲まれた水を一口飲むと咳払いをした。
「いやぁ〜久々の講談は疲れますな。まぁですからここに集まっている陸、海軍の皆様はつまらぬ意地など捨てて日本軍としてエンジェル隊に向き合う心構えがありませんとおそらく彼女等は使えませんぞ」
全ての言葉を言い切った石原は陸軍側の用意した席にドスリ腰を降ろし腕を組んだ。
満州事変を画策した名将は満足げに目を閉じ瞑想をするような形で後は高みの見物を図ろうと言うのである。
会議は水を打ったかのように静まり返り、数分が流れるころ首相の小磯が口を開く。
「陸、海軍も分かってくれたか?エンジェル隊の総戦力はこの国の総力、いやこの全世界の総戦力よりも強大であると言う事だ。
大日本帝国内閣総理大臣として私は、対エンジェル隊政策は万全を期す必要性があると認識している。国家としても本土決戦と
同等の腰を入れねばならないと言う事なのだ」
小磯は一呼吸おくと腹に決めていた言葉を発する。
「内閣を解散し、早急に建て直しを図りたいと思う・・・・・」



120名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/27(月) 23:38:31 ID:tyPUIrAS
会議室 昭和20年4月5日午後06:00
会議は小磯の解散を聞きその後もエンジェル隊を巡って一進一退の攻防が行なわれた。
海軍は正光の案を発表しそれを提示した。それに対し陸軍は陸軍第10飛行師団が要求した安全確保の
要求から横田への移動を立ち上げてきた。
上田中佐達も直ぐに帝都からの距離が取れていないとの指摘があったが、陸軍側はソ連警戒を盾に取りそれを排除した。
また、横田に来る前に海軍が敵機を迎撃せよとののしられてしまったのである。
ここで連合艦隊の熱血漢神は机を思いっきり叩き正光案の承諾を求めて声を荒げていった。
「石原閣下の申されたように、今は海軍だ陸軍だと言っている場合ではない!エンジェル隊を呉に入れられれば
被害の少ない広島でヴァニラ少尉の治療にも専念でき、なおかつ優秀な整備士も揃っている。陸軍が心配するソ連も
アメリカから紋章機の戦果の噂は聞きつけているはず、条約が切れてもじだんだを踏むはずです」
神の熱弁は井上次官や真田少将らも丸め込まれそうになった。そして彼と向き合っている豊田長官に少し同情的な感情を抱かせたのであった。
陸軍から見れば東條英機暗殺まで画策した神は煙たい以上の存在であった。
「わかった、ではこうしよう。現在エンジェル隊の紋章機は6機。君たちが主張するように彼女らは駒ではない。しかし、現在1機は中破しており残りの数機も小破以下の損害を受けている
そこでどうであろうか?南洋諸島のとある島で我々も最終兵器極秘建造を行なっている研究部隊がありますな井上次官」
杉元は井上の方に視線を送った。
「いまだにその兵器は一つも仕上がってこない。それどころか東京大空襲以降音信不通、これ以上の国費無駄遣いはありませんよ。そこでだ
カンフーファイターの修理をその機関に任せるとしましょうか?つまり6機ある紋章機を2つの小隊に分けるということだ」

121名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/29(水) 19:08:30 ID:l9H9YdB6
>>120揚げ足取るようですまんが
当時の呼び名は横田基地じゃなくて福生飛行場だぞ横田は戦後にアメリカがつけた名前だ
後杉山元大将の名前が杉本とか杉元になってる
122猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/30(木) 22:01:45 ID:tz3NvkLo
ご指摘ありがとうございます。

会議室 昭和20年4月5日午後06:30
杉本は取って置きのカードをきった。エンジェル隊が駒でないというのであれば駒として使用できる
フラグを立ててしまえばよかったのである。
現にカンフーファイターは先の沖縄戦で中破しており、エンジェル隊側からも修理の要求が着ている。
無論、研究チーム進行状況はわからないが陸軍諜報部によれば相当なものだと耳にしていた。
腕のよい技師を大量に投入し研究員も多い、内地のどの場所よりも技術は進んでいるであろう。杉本はそう思い切って新たな案を海軍にぶつけた。
井上としても悩みどころであった、あの施設ならばカンフーファイターの修理もどこよりも先進に行えるであろうと信じていた。
しかしながら、腑に落ちない部分はある。陸軍将校の中には顔を見合わせているものがいたのである。
井上は陸軍側のこの案には数名しか立ち会っていないと確信したのである。
だが、呉でのカンフーファイター修理は不可能に近い状況。これ潮時かとも思い始めていた。
それからまた一時間の時間が流れ、エンジェル隊対策の流れは陸海軍の双方対立から妥協案へと以降をはじめていた。

123猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/31(金) 02:54:11 ID:oIt0jTXV
横須賀海軍病院 昭和20年4月5日午後06:00
ヴァニラはまだ眠っていた。医師は過労も重なったのであろうと言っていたが不安でたまらなかった。
「ヴァニラさん目を開けてくださいお祈りの時間ですよ・・・・」
枕元におかれたノーマッドは30分おきにヴァニラに話しかけていた。
ミルフィーユとミントは紋章機移動のサポートのためで払っておりフォルテとちひろは新しい泊地になる近辺の横須賀航空隊へ挨拶に行こうとフォルテが言い出したため
ちひろはそれに付き合うこととなった。
蘭花はというとカンフーファイターの移送が中止となったためにこうしてヴァニラの病室にポツンと付き添っていた。
「はぁ・・・・」
小さなため息をひとつつくと窓辺に行って横須賀を見ていた。
ミントの渡したミラクルミルクが広まったのであろうか眠っていた艦に燃料がつぎ込まれ、船独特の機械音がかすかに聞こえる。
「ノーマッド・・・・ちょっと散歩してくるね」
「はいはい・・・まったくヴァニラさんがこんなに苦しんでおられるときになんて自己中心的な方だ」
「帰ってきたら一撃見舞うわよ」
蘭花は病院であることを遠慮して怒鳴るのはやめにした。
病棟を出ると昨日の空襲で重症や重度の火傷を負った患者で息を引き取った遺体を運び出す作業が行われていた。
白い布が被せられているものの蘭花はいたたまれない気持ちになる。
『あたし達が来なかったらこの人たちも死ななかったのかな・・・』
そう思うと胸をわしづかみされた感覚に襲われその場に入られなかった。
月明かりの夜道を少し下っていくと見慣れた花頭がこちらに歩いてくる。
「あ!蘭花さ〜ん」
ミルフィーユが人懐っこい声でこっちに走ってきた。
「おお、お疲れラッキースターはちゃんと格納してきたの?」
「はぁい、紋章機がすっぽり入る迷彩のカバーを作ってもらいました」
「へぇ〜すごいじゃないの!」
「上空から見たら森のように見えるらしいですよ」
「カンフーファイターの修理が終わったら私も被せるの?」
「ああ〜カンフーファイターには直接塗装をほどこすかもらしいですよぉ」
「はぁ?」
少し冷静になって考えてみる・・・・赤と白の美しいコントラスト、大好きな愛機カンフーファイター。
ムーンエンジェル隊として白き月を護衛する機体でもある。
蘭花はカンフーファイターの迷彩色仕様を想像するとゾッと寒くなった。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/31(金) 14:36:13 ID:Ad1k1Fu+
>>122
>杉本は取って置きのカードをきった。

あんま言いたくないけど早速間違っとるぞ'A`:
資料と指摘はしっかり嫁よあと時代考証もな
125猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/03/31(金) 22:45:17 ID:oIt0jTXV
>>124
毎回のご指摘、まことにありがとうございます。
タイプミスに関してはチェックを強化してまいりますので
資料に関しても、日本軍側をもっと重視していきたいと思います。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/02(日) 19:25:14 ID:6DKxMDBt
>>125タイプミスだったのか・・・それならしょうがないな
俺はてっきり素で名前間違えているのかとオモタよ

作者は軍オタじゃないのか?
軍オタでもないのにこの作品書いてるんなら結構スゴイぞ
127猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/02(日) 23:20:05 ID:pImEIpoa
>>126
第二次世界大戦位の世界に興味はありますな、名無し陸戦隊さんに助けられての小説ですよW
128名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/07(金) 14:41:16 ID:UQ9JqBYv
保守age
129名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/09(日) 20:52:33 ID:uzg+fwEk
横須賀海軍病院周辺 昭和20年4月5日午後06:10
蘭花は再び夜の散歩を再開した。
「別についてこなくてよかったんだけど・・・・」
となりにピッタリいるミルフィーユを蘭花が見る。
「いいですよ、私も夜のお散歩行きたいです」
「はぁ・・・・軽く運動になるくらい歩くわよ」
「かまいませんよ」
「おんぶしろとか絶対いっちゃだめだからね」
「そんな事、言うわけ無いじゃないですか!」
「はいはい、ごめんごめん」
ミルフィーユを心配して言ったつもりだが彼女は少しむくれてしまった。
しかし、蘭花の少し運動を半端なものではない。この散歩にしてもおそらく軽く数キロは歩くこととなる。
無論ミルフィーユがお供についていることは自覚しているつもりだが集中するとつい忘れてしまう。
そうなったときのために内心蘭花はミルフィーユをおんぶすることを覚悟していた。
「そう言えばミントは?」
「あれ、会いませんでした?先に行くっていってらしたんですけど」
「会わなかったわよ?」
「おかしいですねぇ・・・」
ミルフィーユが首をかしげる。
「そうね。どこに行ったんだろう?」
130猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/13(木) 01:50:45 ID:ON5z/DWh
ちょうどその時、ミルフィーユ達の横を遺体を積んだトラックが通り過ぎていっ
た。
するとすぐ近くの茂みからガサガサ草ずれの音が聞こえる。
「蘭花さん!」
驚いたミルフィーユが蘭花にくっつく。
「何よ野良犬かなにかでしょ?」
怪訝そうに蘭花がミルフィーユを降り払おうとするがミルフィーユはさらに蘭花
にくっつく。
するとまたガサガサと音がする。
「やっぱり何かいますよぉ・・・・」
ミルフィーユがおびえた表情で蘭花を見ると蘭花もその表情を硬くする。
草ずれの音は次第に遠くなり病院の方へと消えていった。
「行くわよミルフィーユ」
「いやですよぉ〜こわいですぅ!」
好奇心の沸いた蘭花は草ずれの音を追っていく。月明かりだけが進行方向を照らしているため耳を頼るしかない。
「うっうっう・・・・・」
病院の方を眺める黒い影がすすり泣くような声を上げる。
「ら、蘭花さん・・・・」
ミルフィーユも泣き出しそう・・・・・
「静かにしなさい・・・・・」
ミルフィーユに抱きつかれながらもゆっくり足を進ませる蘭花。
目標が近くなると足を止めそっとその姿を確認する。
『ミ、ミント!?』
一瞬の安堵の後彼女の行動に蘭花は目を疑った。
『あの娘泣いてる・・・・』
131猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/17(月) 02:10:11 ID:7Qi1W1lp
横須賀海軍病院周辺 昭和20年4月5日午後06:30
「ミントさ・・・」
「しっ」
声をかけようとするミルフィーユを蘭花が静止する。
そして二人は、ミントの様子をジッと見つめていた。
「もう大丈夫ですわ・・・・私は軍人ですのよ・・・・ハァハァ」
鼓動が早くなりとても息苦しくなる、足が地に付いている感覚がしなかった。
ミントはその大きな目を点にしてトラックが去った今でも震えが止まらなかった。
「わたしは・・・わたくしは・・・」
自分の胸をキュっと抑えているうちに涙が止まらなくなってしまった。
泣くのは何年ぶりだろう・・・・
自分は本当に戦場恐怖症なってしまったのか?角松の行動・・・・頭が爆発しそうになる。
何度も頭を整理しようとしたが無理だった。
『パキ!』
その時、ミルフィーユが小枝を踏んでしまう。
「あ・・・・」
「ミ・・・・」
「ずっとみてらしたの?」
132名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/22(土) 19:28:38 ID:yXeXnMwh
保守上げ
133猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/23(日) 22:59:04 ID:EGJTXylM
横須賀海軍病院周辺 昭和20年4月5日午後06:30
「い、いやべつにあの・・・・黙ってみているつもりじゃ」
蘭花が必死につくろうが墓穴を掘ったような感じになってしまう。
「でも、何で泣いてたんですか?ミントさん」
ミルフィーユは見たことを悪気ない様子で質問する。
「あなた達には関係のないことですわ!」
「・・・・・・・・・」
ミントのこわばった表情にミルフィーユは何も返せなくなった。
「そういうわけですから、放って置いてくださいまし」
「でも・・・・私たち同じエンジェル隊じゃないですかぁ〜」
ミルフィーユが目を潤ませながらミントに擦り寄っていく。
「これはわたくし自身の問題ですの!」
ミントはミルフィーユを軽く突き飛ばしてその場を去ろうとするが今度は蘭花がミントの肩をつかんだ。
「言ったはずですわ・・・・これはわたくしの」
「知らないわよ!あんた、ミルフィーユ謝りなさい」
ミントが言い終わる前に蘭花が間髪いれずに怒鳴った。
「わたくしは、わたくしは・・・・とにかく放っておいてくださいまし!」
「あんた、昨日何があったの?フォルテさんやヴァニラと分かれてから」
ミントの脳裏に昨日のことが鮮明によぎる。炸裂する爆弾、吹き飛ぶ肉片・・・・
「米内さんが死んだ時になにがあったのよ」
無言のままミントはうつむいてしまう。
「言いなさいよ。あたしたちは!」
「蘭花さん!」
ミルフィーユが土を払いながら立ち上がった。
「私、気にしてませんから。大丈夫です」
「ミルフィーユ・・・・」
自分にはないやさしさをこういう時に蘭花は感じてしまう。
「ミントさんが悲しむようなことなら私は聞きたくありません」
「ミルフィーユさん・・・・・申し訳ありませんでしたわ。わたくしはこれで」
ミントはさびしそうにトボトボ去っていった。
「あの子絶対へんよ。あなたもそう思ったんでしょ?ミルフィーユ」
後姿を見送りながら蘭花がミルフィーユに疑問をぶつける。
「そうかもしれません。でもきっと悲しいことなんです。でも大丈夫、私またおいしいお菓子を作りますから」
にっこりと笑うとミルフィーユはまた歩き始めた。
普段ボーっとしてるだけにこういうときのミルフィーユは少したくましく見えるのであった。
134猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/30(日) 02:21:27 ID:9b/h9rnv
鈍筆でもうしわけありません。

明日は更新します。
135名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 20:51:41 ID:Mduj/Ztc
>>134
遅くてもいいから無理はしないで。
今の時期何かと物入りだから仕方ないよ
136猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/30(日) 23:14:55 ID:9b/h9rnv
南洋諸島イージス護衛艦みらい 昭和20年4月5日
「本当にお世話になりました」
イージス護衛艦みらい艦長梅津は協力者達に握手をしてみらいへ乗り込んでいった。
島の住民が見送る中、みらいはゆっくりと泊地を離れていく。
「全身ビソーク、全員坊ふれ」
「全員ボウレー!」
みらいの乗組員たちが一斉に数年間お世話になった島の人々に手を振っている。
島の住民も別れを惜しむかのように大きく手を振っていた。
「博士、彼らは日本に迎え入れられるでしょうか・・・・・」
「なぁに心配はいらんさ、ここでもうまくやっていけたんだ。さぁそれより次のお客さんを迎えるとしよう」
白衣を着た二人の男はみらいの姿が夕闇に見えなくなると島の奥へと消えていった。
一方みらいは島が小さくなると航行速度を徐々に上げ公海へと出て行った。
「達する、艦長の梅津だ。みな久々の洋上で浮かれているかもしれんが今は戦時下であることを忘れぬよう。そしてわれわれの目指す日本も今はまだ他国に等しい」
艦長の席に座ると梅津は乗組員全員に放送を流し数年ぶりの航海への浮かれた恐れ等に喝を入れた。
137猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/04/30(日) 23:40:33 ID:9b/h9rnv
海軍省 昭和20年4月5日 PM08:00
7時過ぎにようやく妥協案がまとまると、エンジェル隊への報告が正光には待っている。
しかし、紋章機海上輸送作戦の専任参謀を買ってでてしまったため横須賀に行く暇など無く
自宅にも帰れない状態となってしまった。
「あなた!」
幸がエンジェル隊の制服を風呂敷に包んで駆け寄ってきた。
「よかった、なんだ千晶も来たのか?」
「そんな言い方ひどいよ!」
そばにいた千晶はむぅっとむくれる。
「すまないな、本来なら誰かを家によこしてやるつもりだったんだが」
「いえ、今は軍もお忙しい時なのですから私たちはかまいませんよ」
幸がにっこりと笑うと正光も安堵の表情を浮かべる。
「烏丸大佐!」
その時後ろから士官が声をかけた。崩していた表情をこわばらして正光は振り返ると、士官は耳打ちで何かの報告をおこなった。
「そうか・・・車をまわしてもらえないか」
数日のことが重なり配車ができないことを知らせる知らせだった。
正光は少し困った顔をしていると千晶が正光の手を引っ張る。
「じゃあ私たちでミルフィーユさんに制服を持っていってあげるよ」
「なんだって?」
「そうねまだ列車はあるのでしょ?」
幸も千晶の提案に賛成する。
「いや、駄目だ」
しかし正光は首を横に振った。
「昨日米軍機の奇襲を受けたばかりのところに民間人をやれるか」
「でもこの制服がなければ皆さんお困りになるのでしょ?」
「それはそうだが・・・・」
正光が再び表情を曇らせる。
「では決まりでですね、千晶参りましょう」
幸は正光の許可を取る前にくるりと背を向けた。
「あ、わかった。お前たちで行っても今はややこしくなる、ちょうどエンジェル隊に誰かを伝達にやるつもりだったんだ。それに護衛も頼んでみるよ」
正光はあわてて建物の中に消えていった。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 17:44:14 ID:LhgZFH2J
保守
139名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 10:21:06 ID:ovJXeINc
保守2
140猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/05/07(日) 23:45:37 ID:ZB8HyN1b
横須賀海軍基地深浦湾内 昭和20年4月2日 PM08:00
シャープシューターが夜の闇を破ってゆっくりと着水する。
「よっしゃ、上達早いね!さすがは飛行兵だ」
フォルテがちひろの方をバンバン叩き上達をほめている。
飛行時間は8時間、大気圏内を高度2万メートルで南極方向へ飛行し大陸をできるだけ迂回して北極、そして横須賀に戻る
飛行ルートにちひろも疲労の色を見せた。
「大丈夫かい?」
ちひろの身体を支える。ちひろは座席の端に手を置いてゆっくりと体制を治した。
「ええ、今まで乗ったどの戦闘機よりもゆったり任務につくことができました」
少々疲労の色は見えるがちひろの目は輝いている。
「明日もお願いできますか?」
まるで子供のように目を大きくしてフォルテを見つめるちひろにフォルテも少々驚いていた。
新人なら紋章機を8時間も動かしたら多少は音をあげるのだが・・・・・
そう思うとフォルテもちひろのすごさに笑わずにはいられなかった。
「あっはっは、蘭花やミルフィーユから聞いたけどあんたはすごいよ。でもあたしは明日行けないんだ・・・・・
たまにはヴァニラのそばに着いててやりたいしね」
「そうですか、すみません無理を言ってしまって・・・」
「いいんだよ、明日はミルフィーユに頼んでおくからね!」
軽くウィンクすると画面の隅から岸に連絡するパイロットボートが近づいてきた。
「じゃあ行こうか、明日も飛ばしておいで」
「はい、明日もがんばります」
二人はにっこり笑うとシャープシュータのハッチを開けた。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/08(月) 20:34:09 ID:4x4iZr7q
エンジェル隊がワンピの大航海時代にタイムスリップ!
142名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/12(金) 22:43:11 ID:p5pvYHRt
ほしゅ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/14(日) 22:32:24 ID:3VZAGGeY
保守…みんな、下げなくてもいいのか?
144猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/05/14(日) 22:40:30 ID:AokehRMs
横須賀海軍病院 昭和20年4月2日 PM08:00
『もぉ!ミルフィーユ、早く帰ってきなさいよ』
ミントと二人気まずい空気の中蘭花はヴァニラの病室に居た。
先ほどの一件はともに決着がつかず何となくケンカをしたような雰囲気が漂っている。
蘭花は相手を泣かせてしまって誤る機会を伺ってる子供のようにミントの方をチラチラ見て視線をそらしている。
ミントも文庫本を取り出し蘭花と背を向けて座っているのだがやはり気になり足をパタパタさせていた。
ミルフィーユはというと元気が出るお菓子のレシピ取ってきますと言って病室を飛び出したのが1時間前のことだった。
『あ〜どーしよ〜出て行ったら何かいやな感じだしなぁ〜。フォルテさんでもちひろでもいいから帰って来い!』
念じるようにドア見つめるもノブはぴくりとも動かなかった。
「・・・・・・・・・・・・・ううう・・・・」
どこからともなく蚊の鳴くような声が一瞬聞こえた。
「!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!」
二人の方に電気が走る。
何時もなら互いに確認を取り合うところだが今日はそんなこともできない。
互いに平常を装い再び沈黙が続く。
「ううう・・・・・・・ううう」
再び不気味な声が耳に入った。
今度も少し反応を示したがやはり平常心を装う。そして4回目のうなり声でようやく蘭花が口を開いた。
「ねぇ?」
とても業務的な口調でミントを呼ぶ蘭花。
「なんでしょう?」
「さっきからうなり声がするわよね?」
「そうですわね」
「何だと思う」
「さぁ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
素っ気無く会話は終了した。
「そういえばノーマッドどこいっちゃったのかなー!?」
つらさを紛らわすため蘭花のわざと大きな独り言、しかしミントの反応はなかった。
「ここですよ・・・・・・・」
今度は蘭花のお尻から声がする。
「ひゃあ!」
思わず椅子から飛んで立つ。
「何がひっやぁ!ですか、まったく私を押しつぶすなんて・・・・・」
「ノーマッド!」
文句を聞き終わる前にノーマッドはクシャクシャになされる。
「コノヤロー、びっくりさせやがって!なんであんな声だすのよー」
「私は最初のうちにどいてくださいっと言ってそれ以後はあきらめてましたよ」
「え・・・・じゃあ」
ノーマッドをポトリ落とす。
「うう・・・・・・・・・」
「まさか!?」
蘭花はヴァニラのベッドに駆け寄った。」
「ヴァニラ!」
ヴァニラはかすかに手を動かし蘭花の呼びかけに答えた。

145名無し陸戦隊:2006/05/16(火) 22:31:48 ID:vly0wxqe
昭和20年4月5日 午後8時 サイパン イスリート飛行場
陽が沈んでいき、辺りが暗闇に包まれていった。
滑走路脇の駐機場には、出撃する事の無い100機を越える数のB29が、その巨体を静かに休めている。
よく見ると、所々に灯りが灯っており、整備員が機体に取り付いているのもある。
しかしその規模も、毎日の様に出撃していた頃に比べれば小さいものだった。
寂しいものだな・・・今は、だが
第21爆撃兵司令官カーチスルメーは、窓から顔を背けると机に向かった。
広々とした司令官室内は夜になった所為だろうか、少し涼しくなった感じがした。
天井にぶら下がった電灯に、羽虫がはためく中。
気分もよさげに椅子に持たれ掛けると、机に置かれた書類を手に取った。
その書類には米陸軍航空軍総司令官、ヘンリー・アーノルド大将からの指示が書かれていた。
3日前の爆撃以降、爆撃作戦が延期されている今の状況に不満を持つルメーは、
アーノルド大将へ日本本土爆撃の再開許可を打診していたのだ。
今日になりワシントンからその回答が届いた。
返信文には、オペレーション・アイスバーグを支援する為に、二ミッツ元帥の指揮下に入っていた、
第21爆撃兵団を元の任務に戻す上で、爆撃再開を許可する旨の事が書かれていた。
さらに中国に展開していた第20爆撃兵団の部隊もマリアナへ移動させるとのおまけ付きだ。
どうやらアーノルド大将も今の状況に不満を持っていたらしい、
普段から戦略爆撃だけで日本を降伏させて見せると、豪語しているアーノルド大将は
訳の分からない、たった5機のモンスターの為に爆撃を中止させる程、気弱な性格ではないらしい、
おそらく参謀総長達へ強引に迫って、許可を取り付けたのではないか・・・
昨日は海軍も横須賀に奇襲を敢行させている、陸軍としても海軍に対抗して何か動きを見せたいと思っている筈だ。
理由はどうあれルメーとしては、作戦が再開出来ればそれでよかった。
文面を読みながらルメーは、延期されていた爆撃作戦の内容を頭の中で構築していった。
爆撃を行うのなら、やはり守りの薄い夜間がいいだろう・・・
今までの爆撃で低下している日本国内の生産力を、低空からの精密爆撃で一気に叩く、
日本軍の夜間迎撃体勢は一部を除けば問題にならない。
手始めに延期していた、東京を初め・神奈川・千葉辺りの都市とその一体にある工業施設からだ。
ルメーは壁に掛かっていた地図を軽く叩いた。
146猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/05/19(金) 22:46:04 ID:TUE3zZv7
横須賀海軍病院厨房 昭和20年4月2日 PM08:00
今夜の海軍病院の厨房にはとてもやさしく甘い匂いが漂っていた。
7時過ぎ、唐突にやってきた花の髪飾りを付けた少女は、両手一杯に食材を抱えると厨房を貸してくれと懇願してきたのだ。
夕食の片付けが終了した間際で調理人達は困惑したが彼女の表情を見て必ず完璧に片付けることを条件に厨房を渡すことにしたのだった。
「ミルフィーユさん・・・・・」
「はい?」
一人の調理人はミルフィーユに話しかける。
「見学させていただいてよろしいですか?」
「かまいませんよ!」
鼻の頭にクリームを付けながらミルフィーユは笑顔で答えた。
すると呆れて去った調理人までが厨房に戻りミルフィーユの厨房さばきに食い入る。
手際よく、効率よく動く姿にも感激するが調理人達はミルフィーユの表情に見とれていた。」
彼女の料理を見ていると厨房は戦場という言葉が全く当てはまらないのだ。
その姿は優美にまるで踊るようにも見える。
「ふーふふん♪ふーふふん♪」
楽しい鼻歌に乗せて食材は次から次へまるで自ら変身するかのようにおいしいお菓子へと姿を変えていった。
やがてやさしい香りは、病棟の方へと伝わっていき、昨日の米軍奇襲で傷つついた兵士、神経を尖らせている士官にも届いてゆく。
しかし、誰一人厨房に怒鳴り込もうという人間は居いなかった。
それがミルフィーユの不思議な力かもしれなかったのだった。
147名無し陸戦隊:2006/05/20(土) 21:04:47 ID:BOq4MTWa
昨日の戦闘から一日が過ぎて、222空司令部にも、戦闘の詳細が次々と入って来ていた。
昨夜行われた木更津空の反撃は、敵艦隊に大打撃を与えたらしく、
傍受した敵の通信から、救援を求める符号らしきものを多数確認したと言う。
久々の戦果が上がったにも関わらず兵舎の中では、どことなく元気のない搭乗員達であふれていた。
無理も無かった。敵機を迎撃すべく出撃した222空の戦闘機隊は、当初敵編隊を相手に善戦したが、
戦闘後、司令部から入った無線により、それが囮部隊の一つだったと知らされたのだ。
しかも航空戦の間に敵の攻撃部隊本隊は、まんまと横須賀に侵入してしまった。
近藤中尉達は急いで引き返したが、横須賀に着いたときには、既に敵機は爆撃を終え去った後だった。
その後、役目の終わった222空戦闘機隊は追浜飛行場に着陸した。
疲れた表情の搭乗員を前に、新谷司令はねぎらいの言葉をかけると、
非常時に備えて、休息を取るように言われた。
戦果確認により昨日の戦闘で、グラマン12機撃墜確実、2機不確実、5機撃破、
ドーントレス艦爆8機撃墜の判定が出たが、こちらも無視できない損害が出ていた。
制空隊は2機が自爆、3機が被弾したものの搭乗員は無事だった。
駆逐隊の方はさらに損害があり、深追いした零式艦戦3機が自爆、被弾機は軽微な物も含めて8機、その内2機が不時着した。
さらに着陸時に2機が足を折る等して損傷し、1人が重傷を負ってしまった。
何人か姿の無くなった戦闘機隊員達は、皆意気消沈し重い足取りで兵員宿舎に戻っていった。
こうして一日が過ぎてゆき、ただ黙ったまま何をするでもなく、時は過ぎていった
148名無し陸戦隊:2006/05/25(木) 19:08:32 ID:/grCEAaK
昭和20年4月5日午後13時 追浜飛行場
昼食を終え隊員達は、それぞれ将棋を指したり昼寝を始めた。
一応、警戒態勢が執られているので、全員すぐに出撃出来る様にはしている。
重々しい空気が残る待機所にいる近藤中尉は、何もする事がなく、ただじっとしていた、
中尉自身昨日の戦闘で、2機撃墜確実、1機協同撃墜が認められていたが、
横須賀の防衛が失敗した事を思うとあまり喜べなかった。
爆撃を許してしまったが為に、米内海軍大臣が戦死し在泊艦艇に多大な被害がでてしまった。
その出来事を、今日開かれる軍の会議で、陸軍が責任を追求するらしいとも、隊内でまことしやかに囁かれていた。
上層部の中には、航空隊が不甲斐無いからこのような事態になった、と言う者もいるらしい、
それが一層部隊内の士気に影響を及ぼしていた。近藤中尉もやるせない気分になった。
これではまるで、攻撃を許したのは自分達が不甲斐無い所為だと言っている様なものではないか
体勢の不利な中、各航空隊は健闘したし、こちらにも無視できない損害が出ている。
責任を問うというのなら、敵の目標が分かっていたにも関わらず、
何にも対応していなかった連合艦隊司令部や赤レンガの参謀共が取るべきではないか…
海軍のみならず、非常時に何も動きを見せなかった陸軍はどうなると言うのだろうか?
目標となった物は彼らにとっても重要なはずである。
考えると余計に腹が立ってきた。近藤中尉は、我慢できなくなりすくっと立ち上がった。
ちょっと飛行機を見に行ってくる。
そういい残して、外へ出た。
愛機の整備でもして少し気を紛らわせよう、そうでもしないとやってられない。
149猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/05/26(金) 23:24:31 ID:iOmmcWAY
パイロットボート 昭和20年4月5日 PM08:30
「いやー湾内でも海は気持ちいいねー」
深浦から出してもらったパイロットボートの船首でフォルテは風に頬を当てていた。
湾内はとても穏やかでパイロットボートが蹴立てる波の音が耳に入るだけ。
「フォルテさんは海は久しぶりなんですか?」
ちひろが首をかしげる。
「ああ、中々トランスバール本土に降りる事もないからね。こういう軍艦がたくさん停泊している港も少ないしね」
「え?軍艦は母港を持ってないんですか?」
「いやぁそういうわけじゃない。おおきな艦は衛星軌道上停泊するからめったに大気圏内にはおりないのさ」
「宇宙ですか・・・・・」
「そう、宇宙さ。ちひろは・・・ああ、そりゃあ行ったことないか」
「はい」
ちひろは夜空を見上げながら答える。
「この空の彼方にあるのが宇宙だよ、そうだ明日ミルフィーユと見てくるといいよ」
フォルテは右手で空を指差しながら笑う。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/02(金) 11:17:26 ID:E3hy6Sqg
保守
151猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/06/02(金) 22:11:33 ID:bgt0mA08 BE:134743695-#
東京駅 昭和20年4月5日 PM08:30
「じゃあ上田、頼んだぞ!」
東京駅に海軍の車が滑り込むと幸と千晶がすぐに降ろされ最後に正光と横須賀までの護衛を頼んだ
上田中佐が降りてきた。
「はい、エンジェル隊にもよろしくと言っておきます」
「ああ、お前の方が開けているから話も合うだろう。後、陸軍の諜報部には気をつけろ。それから」
「奥さんと千晶ちゃんも大丈夫ですよ」
少し引きつった表情の正光をなだめる様に答える。
「分かっていればいい、俺はまた海軍省へ戻って練りなおせるとこは練り直しておくからな」
そういい残すと正光は急いで車に乗り込み上田中佐も敬礼でそれを見送った。
「では行きましょうか?列車は2等を取ってもらえましたし不自由しませんよ」
「ご同行ありがとうございます。じゃあ急ぎましょう」
「そうですね。いこう千晶ちゃん」
「はい、お願いします」
千晶が小さな頭をぺこりと下げると3人は東海道線のホームへと歩き出した。
列車は5分後の発車、車掌に切符と席を確認させるとすぐに席が見つかった。
帝都への空襲がめっきりなくなり東京駅も人の移動が若干活発になってきている。
上野での乗り継ぎ急ぐ人が足早にホームから消えていく姿に千晶は目を追っていた。


152名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/04(日) 17:19:32 ID:HdFUApQW
りる 26.9%
パキラ 26.0%
ゆうま 25.4%
鉄子(あいこ) 21.7%

153猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/06/07(水) 02:32:07 ID:jpt9YF8S BE:125761267-#
トランスバール皇国エンジェル基地 4月5日
ウォルコットはエンジェルルームへの道を急いでいた。
メアリーも同じくいそいでいた。
そう、いよいよエンジェル隊救出プログラムを立ち上げるその日がやってきたからである。
「おはようございますウォルコット中佐」
「おはようございますメアリー少佐」
「お、おはようございます。メアリー少佐、ウォルコット中佐」
「おお〜おはようございます桜葉さん、昨日はよく眠れましたかな?」
ツインテールの少女にウォルコットはにこやかに答えた。
「はい、あ!ウォルコット中佐私のことはリコって呼んでもらってかまいません」
「アプリコット・桜葉だから・・・・リコなわけ」
メアリーが後ろで疑問符をつくる。
「えーえーわかりましたよ。リコさん」
「はい!」
元気のいい返事と笑顔が返ってきた。
「さて・・・本題ですがメアリー少佐、軍の方はあれから」
「完全に意気消沈ですよ。シャープシューターも失いましたし」
やれやれという表情にウォルコットもがっくり肩を落とす。
「がんばりましょうよ!今日はエンジェル隊救出の初日なんですよ」
リコがパワー前回に二人をまくし立てる。しかし、この救出隊のメンバーは現在のところツインスター隊とウォルコット中佐、そして遊びに来た妹・・・・
「やる気でた?」
「あう・・・・・・」
リコはカクっと首を落とす。
「でもマリブとココモが調査に向かってくれてるのよ彼らを信じましょ」
メアリーがリコの肩をポンポンと叩く。
「そうですよ。お姉さんは必ず救出しますよ」
ウォルコットも肩を叩こうとしたがその瞬間リコにぶん殴られた。
「きゃー!ごめんなさい、ごめんなさーい!!!!!!!!!」



154猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/06/13(火) 05:21:47 ID:M26436Ob BE:188641297-#
鈍筆で申し訳ありません。

今晩更新です
155猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ :2006/06/14(水) 01:00:10 ID:Wtx063qF BE:143726786-#
海軍省 昭和20年4月5日 PM08:45
大急ぎで海軍省に戻った正光は再び紋章機の呉極秘輸送作戦の青写真を引いていた。
トリックマスターとハーベスターの海上輸送、正光の頭には昨年の空母信濃撃沈が浮かんでいた。
突貫工事と工夫の技術不足から欠陥はあったものの無事に呉に送り届けたかった。正光の心にまた悔しさがにじみ出る。
第17駆逐隊の磯風、浜風、雪風の3隻を護衛につけ夜明け前に出向させた。しかし、11月29日に浜名湖南方176km地点で米潜水艦の雷撃を受けたのである。
今回も同じような進路をとることになるから潜水艦の奇襲は必然的であろう。
「青写真は引けたか?」
しばらくすると神が湯飲みを二つ持って入ってきた。
「あー今回も潜水艦に苦しめられそうだな」
湯気のたつ湯飲みを受け取ると茶を一口すすり苦笑いして海図を指差した。神も海図を覗き込み苦笑いを浮かべた。
信濃がやられた所にバッテンがうってあった。
「あれは綺麗だからかなり目立つだろうな。まぁ紋章機は雷撃に耐えてくれると思うが引っ張ってる方がやられたらな」
「そうだ、紋章機だげどこかに流れていったら困るからな」
「どうやっても操縦できないのか?」
「横須賀航空隊に何回かやらせたが駄目だった。本当にエンジェル隊でないと動かせないようだ」
ため息をつくともう一口茶をすする。
「長門を先行させたらどうだ?」
「紋章機の囮になってくださいと頼めるか?仮にも元連合艦隊旗艦だぞ。それに大きな艦が動くとな」
「ああ、どこから聞きつけた分からんがまたわんさかやってくるぞ」
正光の長い夜はまだまだこれからのようであった。


156名無し陸戦隊
昭和20年4月5日午後14時 沖縄 嘉手納海岸
青く澄み切った空には海鳥がゆったりと飛びかい、甲板を海風が流れる様にそよいでいく。
しかし甲板から見える景色は、見るも酷い有様であった。
米軍の上陸地点であった海岸線の地域一帯は後に、鉄の暴風と呼ばれる程の砲撃に受けて
クレーターだらけになっており、元の景色の原型を留めていない。
沖縄の陸海軍の部隊が共同で突貫作業を行っており、海岸線と道路等の復旧作業は進行していたが、
破壊された家屋や畑は手付かずのままとなっている。
現地の兵の話によれば、不発弾等が残っているために作業に移れないらしい。
海岸の方は米軍の放棄した車輌等の回収が進み、すっきりとしている。
今は多数の大発や内火艇が、艦隊が運んできた物資の運搬や人員の移動で忙しなく動いていた。
「少佐、作業完了しました」
「うん、今行く」
風景を眺めていた後藤少佐は、姿勢を正すとゆっくりと作業場の方へと向かった。
沖縄に到着した特設工作艦、常盤丸の上甲板には、大型起重機が備え付けられてあり。
油圧機構で稼動する高性能の起重機は、多少の重量物を引き上げる事が出来た。
後藤少佐が作業現場にやって来ると、その起重機が水中より引き上げたある物体が、
甲板に置かれて調査が行われようとしていた。
「おっ、やっと来たかい」
現場の指揮をとる杉田技術中佐が仁村少佐に手招きした。
「どんな物ですか?」
「うーん、凄いよぉーいろんな意味で、見た目の大きさに比べて予想以上に軽いし、
硬度も今の技術水準を超えているね。未来の金属とは言え理論的に考えられないよ」
目の前の物体、それは沖縄航空戦でカンフーファイターが酷使した為に、
アンカーから外れてしまったクローの部分である。
沖縄の戦闘終了当初、増援等を送るために軍令部は、僅かながら船団を派遣する事にしたのだが。
沖縄根拠地隊の報告によって、米軍の放棄した物資が大量に回収された上、
座礁している船舶が大量に放置されている事が判明した。
軍令部にも頭の回るものがいるらしく、何か戦力になる物があるかもしれないと
急遽、船団になけなしの工作艦と調査の為の技師が追加されて、沖縄まで来たのであった。
「それで、これどうするんです?まさか軍令部は同じものを作れとか言ってるんじゃないでしょうね。」
「まさか、これと同じ金属を作れと言われて、そう簡単にはいなんて言えないよ。
詳細な数値を取った後、持ち主に返還するそうだ」
杉田技術中佐は、腕を広げてだるそうに肩を竦めた。