我らがマリア様!藤堂志摩子さんをマターリ語るスレ 3

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312名無しさん@お腹いっぱい。
缶の端から細い細い、褐色の糸が下がる。
祐巳はまるで極楽から降りた蜘蛛の糸のようにそれにすがりつく。
しかし手を使うことは赦されていない。
だからその糸に舌を絡めようと必至に伸ばすさまは
幾人もの亡者に劣らないほど浅ましかった。
乃梨子の唇の端が左右に引かれ、ちろりと赤いものが覗くと
その糸は太くなり、流れとなっていった。
祐巳は目を見開き、口を大きくだらしなく広げる。
精神的も乾ききった喉が、時折妙に大きく鳴る。
「ぷっ。くくく、いやだわ、祐巳さんたら」
無様な音に志摩子は容赦ない言葉を返す。
その言葉は祐巳の目頭を熱くさせたが、祐巳はそれどころではなかった。
上を向き口を閉じずに液体を飲むことは難しい。
まして液体の量が増えれば呼吸などしている間などない。
祐巳は目を白黒させ手をバタつかせながら飲みつづけた。
それでも喉をゴボゴボ言わせて飲み切れなかった雫があごから首をつたう。
そこで乃梨子の手が止まった。
「ふっふふっうふふふふ、祐巳さまぁ、カラーを汚されるなんていけませんよぉ〜」
「ふふふっでも祐巳さんならそれも可愛いらしく思えるわ。」
そういわれる間も雫は滴りつづけ、祐巳のセーラーカラーの汚れは広がってゆく。
祐巳はふと、みぞおちにも冷たさを感じる。
襟元から下着にまで雫が入り込んでいるらしい。
志摩子は食器棚に赴き、下の開き戸から安っぽいアルミの平皿を取り出す。
そのままそれをひょいっと投げると、祐巳の足元で軽い音を立てて落ちた。
「でもそれ以上汚すときっと紅薔薇さまに怒られるわ」
「そうですよ祐巳さま。今度はちゃんと食器で飲ませてあげますからね」
乃梨子は祐巳の足元にしゃがみ、今度は平皿にMAXコーヒーを注いだ。
皿の端に出来る茶色の円。それが少しずつ大きくなり器一杯に広がる。
祐巳の眼はその色に釘付けになっている。
唇を開き舌がのぞく。
早い呼吸を繰り返す。
それはまるでお預けの指示を受けた飼い犬のように。