あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part309

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part308
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1332234406/


まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/01(日) 23:42:50.25 ID:J3EcCota
刷れた手乙
3名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/01(日) 23:44:15.42 ID:6TRdCFBR
50分目の2ゲットとはなw
4名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/01(日) 23:47:59.57 ID:FH056YsU
新スレ乙です
5デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:16:52.56 ID:+ogGI3yv
新スレ乙です。
これからデュープリズムゼロ第十五話を投稿させて頂きます。
6デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:20:43.56 ID:+ogGI3yv
第十五話『ワルドのプロポーズ』

「止めて下さい!!死んでしまいます!!」
「痛い!!痛い!!」
「ありがとうございます。ありがとうございます!!」

すっかり日の暮れたラ・ロシェールへの街道沿いの崖の上に男達の悲痛な悲鳴と嬌声が響き渡る…

「ほら、ほらっ!だったら!素直に吐いて!!楽になりなさいよ!!何であたし達を襲ったのよ!?」
タバサ達と合流したミントは今先程捕らえた盗賊達を綺麗に横一列に並べ、自分達への襲撃について尋問を行っていた。
平手打ちにデュアルハーロウによる殴打、男の泣き所への容赦の無い蹴り…
既に何人かは泡を吹いて意識を手放していたり恍惚の表情でぼんやりとしていたりする。

「ハァ…ハァ…こいつら意外と口が堅いわね。」
ちょっと面白そうだからと言う理由でミントと同じく盗賊達を片っ端から平手でひっぱたいていたキュルケが盗賊の一人の顔をヒールで踏みながら顔を少し紅潮させ、舌で唇を艶やかになぞりながら呟いた…



そう……この少女達はドSなのである。




「ん?あれは…」
そんな盗賊達への尋問を男として直視出来ず周囲の警戒を行っていたギーシュは上空に見覚えのある幻獣を発見した。
それは紛れも無く自分達を放って先を進んでいたワルドのグリフォンだった。


「………あんた達一体何してるの?」
崖の上に降り立ったルイズが周囲の様子を見回してミントに訪ねる…何故キュルケ達が居るのかというよりもこの盗賊達の死屍累々の光景が余りに意味不明だ。
ギーシュも何故か内股で怯える子犬の様に縮こまってしまっている様に感じるし…
何が行われていたのかは何となく察しが付く為、ルイズは若干引いていた…平行世界では嬉々として恋人に鞭を振るっていた癖にである。
7デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:25:35.86 ID:+ogGI3yv
「襲撃を受けたのよ。明らかに待ち伏せしてたみたいだから万が一もあるしちょっと尋問してたの。」
不機嫌そうなミントの言にワルドの表情が一瞬強張る…それはこの凄惨な光景から男として感じ取る部分があったというだけでは無い。
「ミント君、それは結構な事だが我々は先を急ぐ身だ。唯の物取りなど捨て置こう。そしてそちらの二名の淑女は誰なのかね?」
「あら、素敵なお髭の貴族様、ねぇ情熱はご存じかしら?」
「ツェルプストー!!ワルド様から離れなさい!!」
早速キュルケがワルドの腕に抱きつき、その豊満な胸を押し当てそのキュルケを引きはがそうとルイズがヒステリックに叫んでワルドの身体はガクガクと揺さぶられた。

「二人ともルイズとギーシュの友達よ、朝出て行く所見られてて付いて来たみたい。
信用は十分に出来るしあたし達の馬も逃げちゃったからラ・ロシェールって街まではこの子の使い魔に送って貰う事にするわ。」
ミントはそんなワルドに気を遣う様子も無く、そう簡単に説明して暗がりにも関わらず本のページをめくり続けるタバサを指さす。

「どうやらその様だな…仕方あるまい。さぁ、先を急ごう。それとミス・ツェルプストー婚約者の前なので誤解を招きたくは無い。済まないが離れて頂けるか…」
言いながらワルドはやんわりとキュルケの身体を自分から引きはがすと全員に出発を促した…
「オッケー…分かったわ。でもその前に…」
ミントは出発を促すワルドに肯定してどす黒いオーラを放ちながら再びゆっくりと盗賊達の前に仁王立ちする。
「最後のチャンス位はあげないとね。」
纏うオーラに反して猫なで声でそう言って笑うミント。それだけで盗賊達の表情はまさに恐怖に染まって引きつってしまう…

「ちょっ…待って!!本当に唯の物取りでぶべっ!!」
「も、もう勘弁してほしいっす!俺達はラ・ロシェールで雇われただけなんす!アルビオンの貴族派の仮面を付けた男…」
隣の同僚が失神し、遂にミントの尋問に耐えられなくなり本当の事を白状し始めた男、しかしその男は証言の途中で言葉を永遠に失う事になる…

「ひぃっ!!」

悲鳴をあげたのはその盗賊の仲間達、見れば証言を始めた男の喉は鋭利な刃物で深く切りつけられた様にパックリと裂けていた。
ミントの目の前で血しぶきを上げて痙攣しながらドサリと崩れ落ちた男の死体の向こうには感情のこもらない様な冷徹な目をしてレイピア状の杖を構えたワルド。
8デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:30:11.34 ID:+ogGI3yv
「危ない所だったね、その男ナイフか何かを使って縄を抜けていた様だ。最もらしい話で君の注意を引いて隙を狙っていたのだろう…本当に危なかったね。」

確かにワルドの言う通り男を拘束していた縄も改めて確認すると鋭利な刃物に切断されている様にほどけてしまっている。

まるで男の喉を掻き切った鋭い風の刃で切ったかの様に…

「……………………殺す必要は無かったんじゃないの?」
男の死体から目をそらし、ミントが不機嫌そうに言う…
「生かしておく理由もまた無いさ。彼等はどうせ縛り首になる。さて、後は憲兵の仕事だよ、そして僕たちは僕たちの仕事をしよう。
……………それとミント君、あんなやり方じゃ引き出した情報も信憑性に欠けてしまう、尋問から抜ける為にありもしない話を作るかも知れない…何よりあのような尋問など女性のする事では無いな。」
そう最もらしい事を言って半ば苦笑い気味に微笑むとワルドはその場の全員に出発を促しルイズと共にグリフォンで飛び立った…
ミントはそのワルドの背中を見つめ、先程の自分を説得して来た時と盗賊を殺害した時のワルドの目を思い返す…


(誰かに似てる目ね…何か嫌な感じ…誰だったかしら?)


漠然とした記憶を手繰りながらワルドから感じた奇妙な感覚にミントはモヤモヤとしたもの感じながらも考えていても仕方ないと気持ちを切り替え、タバサ達と一緒にシルフィードの背中に乗り込んだ…
多少トラブルには見舞われたが予定どおりもうじきラ・ロシェールにたどり着けるだろう…


ラ・ロシェールに辿り着いた一行は町の外の森にシルフィードを待機させ町一番の高級宿女神の杵邸のレストランにてルイズとワルドを除き食事と休息をとっていた。

因みにキュルケとタバサはついでとばかりに深く旅の目的は聞かずミント達に同行をしている。ミント達が無事この町を出るまでは観光でもしていくとはキュルケの談…
本来ならばルイズの婚約者であるワルドを誘惑してやろうと思っていたがキュルケはワルドにどこか酷く冷たい印象を受けてその興味をほぼ失っていたのだ。

「すまない、やはり船は明後日のスヴェルの夜までは出ないらしい。」
9デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:35:56.37 ID:+ogGI3yv
アルビオンへの船の手配にルイズと共に行っていたワルドがミント、ギーシュ、キュルケ、タバサの四人の元に戻って来るとお手上げだといった様子で肩をすくませる。
「迂闊だったわ…明後日がスヴェルの夜だったなんて…」

本来ならばこのままアルビオンへの定期船に乗って進みたかったのだが空を漂うアルビオン大陸がトリステインに最も近づくのはスヴェルの夜であり、基本的にその前後は燃料である風石の無駄になる為飛行船は出る事はまず無い。
「間抜けな話よね〜…何の為にあたしとギーシュはあんなに急いで馬を走らせたのかしら。」

テーブルの上でへばるギーシュをちらりと見てミントはワルドに批難めいた視線を向けて嫌味をこぼす。
散々人を走らせておいた挙げ句の不手際の足止めである上、護衛の筈でありながら自分達が盗賊に襲われた時居なかった事も、その後の事もあってはっきりいってミントはワルドに対しての評価を大幅に下方修正していた。
「それについては僕からはを謝罪するしか無い。本当に申し訳ないとは思う。さて、部屋の割り振りだが三部屋を確保できたからね。僕とギーシュ君、ルイズとミント君、キュルケ君とタバサ君の組み合わせになるが構わないかな?」
テーブルの上に鍵束を置いてワルドがその場の全員に尋ねると全員「OK」という素直な返事を返した。

「ただルイズ、君とは後で二人きりでゆっくりと大事な話をしたい。後で僕の部屋に来てくれ。」
「…わ…分かったわ。」
そう言って真剣な表情でワルドはルイズを見つめる。ルイズはその台詞と真剣な眼差しに顔を真っ赤に染め、小さく返事をしてただ頷くと俯いてしまった。
ワルドとしてはルイズと同室が望ましかったがルイズの使い魔であるミントは仮にも女の子であり一応VIPだ。ここでギーシュと相部屋で…等と言えば全員からかなりの批判を受けるのは自明の理である。それはワルドとしては避けたかった。
それ以前にそんな提案をしていたらミントの跳び蹴りが炸裂していただろうが…




「それで…大事な話って何、ワルド?」
ルイズは約束通り一人でワルドの部屋を訪ね、テーブルを挟んで向かい合う様にしてワルドと再会を祝した乾杯を交わしワイングラスを傾ける…
「君と僕のことさ…そして君の使い魔の事もね。」
意味深な表情でワルドは言ってルイズに微笑むとまるで子供におとぎ話でも聞かせるかの様な語り口調で話を始めた。
10デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:39:06.04 ID:+ogGI3yv
「君は始祖ブリミルの物語を知っているね?」
ルイズはえぇ。と答えて話の続きを促す。

「かつて始祖は四人の使い魔と共に東の砂漠へと聖地を目指して旅立った。そう、四匹では無く、四人のだ。
僕は君の使い魔が人であると噂で聞いた時、果たしてそんな事があり得るのかと興味を抱いてね、様々な資料を調べ直したんだ。そして今日君の使い魔のミント殿下を実際に見て確信を抱いた…」

ワルドは一層熱のこもった視線でルイズを見つめる。
「彼女のルーン…あれは間違いなくガンダールブのルーン、かつての始祖の使い魔の一角を担った伝説の存在だよ。
ルイズ、君は道中僕に自分は魔法が未だ成功しない落ちこぼれだと言ったね?僕が保証しようルイズ。 使い魔がメイジの格を示すなら君には素晴らしい才能が眠っているはずだ!きっと始祖ブリミルの様に歴史に名を残すだろう。」
熱く語るワルドの様子にルイズは正直困惑していた。悲しいかなコンプレックスの塊であるルイズがここまで他人に褒められ、ここまでの期待を掛けられた事は無いのだから。
「でも私は…」
ワルドはここで一度困惑した様子のルイズが落ち着くのを待って手を取って再び話を再開する。

「ルイズ、この任務が終わったら結婚しよう。」

「えっ?」

「忙しさにかまけてずっと君を放っていた僕だが君を想う気持ちはずっとあの頃のままだ。
僕はこのまま魔法衛士隊の隊長だけに治まるつもりは無い、いずれは国さえも動かす様な力を手に入れるつもりだ。」
ワルドは言ってルイズの身体を当然の様に抱き寄せ、唇を寄せた。だが顔を真っ赤にしたルイズはワルドの口づけを拒む様に身体を強張らせたままだった…

「あ、あの!ワルド様…結婚のお話嬉しいのですがあまりに急な話で私……それに私はミントを元の世界に戻すという約束も果たさなくては…」
やっとの思い出絞り出した様に慌てて早口にまくし立てたルイズにワルドは少し困った様な表情を浮かべるとルイズの腰に廻していた手を放した。
「ハハッ…急がないよ、僕は…」

そう言って優しくルイズに微笑むワルドは内心歯がみした…

11デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:44:04.68 ID:+ogGI3yv
___女神の杵邸_修練場

ラ・ロシェールで一夜を過ごしたミントは翌朝朝一でワルドに呼び出されて女神の杵邸の中庭にある古い修練場に来ていた。
ワルドの用件はガンダールブとミントの魔法の力を実際に体験してみたいという事とアルビオンでの任務遂行の為の戦力の把握の為という名目での果たし合いだった。
そんな事は面倒くさいと普段のミントならば一蹴していただろうが思う所あってミントはワルドの誘いに乗る事とした。
既に一行は全員この場に居る。ルイズは話を聞いてこの場に来た時は何とかして果たし合いを止めようとしていたが当人達(主にワルド)に押し切られる形になっていた。

「無礼を承知しで任務を確実に成功させる為是非君の力を見せて欲しい。それじゃあ準備は良いかなミント君?」
ワルドは静かにレイピア状の杖を抜き、ミントにその切っ先を向けると一分の隙も無い戦士の風格を纏った。
対してミントはワルドに向き直ると臆した様子も無くデュアルハーロウを構えるといつもの様に力む事無く構えをとる。
「いつでも良いわ。レッツバトルってね!」
その緊張感に思い出すのはあの年中金欠の赤毛の武器職人の戦士ロッド、思い起こせばカローナの街に居た時は随分と世話になった。

「…始め。」
立ち会いとしてその場に居たタバサの合図で二人の戦いは火ぶたを切って落とされた…


結果だけを言えばそう時間も掛からず決着は付いた。
ミントのバルカンを巧みなステップで回避し、一瞬の隙を突いたワルドの放ったエアハンマーの直撃を受けたミントが高く積まれた空箱等に叩き付けられ所で周囲が待ったを掛けたのだ。

「子爵、いくら何でも女の子のミントに対してやり過ぎですわ。大丈夫ミント?」
魔法が直撃し頭を打ったのかその場にフラフラと倒れ込んだミントを膝枕で支えるキュルケがワルドを叱責する様に責め立てる。
「やり過ぎ…」
「子爵、僕も流石に味方内でこれはどうかと思います。」
そんなキュルケに便乗したのはタバサとギーシュ…
そんなに強烈な魔法では無かった筈なのだがワルドは三人にミントを不当に傷付けた大人げない鬼畜貴族の烙印を押されてしまった。その為思わずたじろぎルイズへと助けを求める様に視線を送る。
12デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:49:00.48 ID:+ogGI3yv
「ミント!!大丈夫!?酷いわワルド!!」
だがルイズは目を回したミントに駆け寄るとワルドを批難する様な怒気を含んだ視線を向けていた…
「ち、違うんだルイズ、僕はただ…」
ワルド自身ミントに戦いを挑んだ理由は表向きな物とは別にルイズの気を引く為に使い魔よりも自分の方が強く、あてになると示したかったからである。
それが今回完全に裏目に出てしまった…フーケを容易く捕らえたと聞き及んでいたにも関わらず予想を遙かに超えるワンサイドゲーム、これでは弱い者苛めだ。
「子爵…ここは私達でミントを介抱致します。あなたは一旦ここをお離れになってはいかがですか?お互い冷静になるまで、その方がお互いの為ですわ。」
キュルケの冷たい口調の提案にワルドは思わず唸る…
「分かった…済まない、ミント君が目を覚ましたら教えてくれ。」
今ここで空気を読まず、ルイズに自分の実力をアピール等してしまっては逆に嫌われるだけだろう。そこまで考えてワルドはミントの介抱をキュルケに頼むと足早に宿の外へと出て行った。
次いでルイズが宿の人間に水を用意させる為修練場からかけだしていく。


「行った?」
ここでついさっきまで意識を失っていたミントがなんの問題も無い様にぱっちりと目を開いてキュルケに訪ねる。
「行ったわよ。ていうか何でこんな芝居をうった訳?」
溜息混じりに答えたキュルケは特にミントが目覚めた事に疑問をもったりはしない。
何故ならばワルドから果たし合いの申し込みがあった後ミントはこの一連の流れを作る事を事前にキュルケ達にお願いしていたのだった。
「下手に勝ったりして王宮の人間なんて碌でもない奴らにあんまり目を付けられたくないのよ。」
ミントは悪巧みをする様に口元を歪めて言った。それは暗に本気ならば負ける通りは無いと言っている様でこの場に残った三人は思わず呆れてしまう。
「はぁ…全くワルド子爵には申し訳ない事をしてしまったね…」


(それにあんな目をした奴に手の内見せる程あたしはお人好しじゃ無いのよ…)


昨夜ミントはルイズからワルドにプロポ−ズされたという話を聞きベッドの中でワルドに感じた既視感の様な物の正体を思い出していた。
そもそもルイズ何かを望んで嫁に迎えよう等と正気とは思えない。必ず何か裏があるはずだ!!

かつて実家の宮廷魔術師として国政から遺産管理、その他あらゆる面から妹マヤの側近として行動していた男『ドールマスター』

そう…ワルドから時折感じ取れる冷たく嫌な印象はデュープリズムを自らの使命の為に復活させようと主君であるマヤを裏切った彼から感じた物に非常に酷似していたのだった。
13デュープリズムゼロの人:2012/04/02(月) 10:56:31.57 ID:+ogGI3yv
これで十五話おしまいです。
ミントはかつてスターライトデュークに負けた時今回の様に相手の心の良心という隙をえぐりました。

個人的にはミントよりもマヤの方がぶっちぎりで可愛いと思ってます。
14名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/02(月) 12:38:45.71 ID:RAnrbNMj
乙!
15名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/02(月) 16:19:06.82 ID:2yVuGsEY
乙!
>そもそもルイズなんかを望んで嫁に云々
ミントひでえwww
16名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/02(月) 20:33:52.61 ID:7xkqgUy+
>>13
乙!スターライトデュークからスターライトワルドというものを連想してしまったwww
17名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/03(火) 18:05:06.50 ID:XPsTxdw3
乙、次回は酒場襲われてキュルケとタバサ置いていくところかな
18つかよん!:2012/04/03(火) 19:08:50.00 ID:Ww7WaV4Q
これより使い魔は四代目12話 投下します。
19使い魔は四代目:2012/04/03(火) 19:11:32.97 ID:Ww7WaV4Q
マルトーからの刺客とも言えそうなほど質量ともに(特に量が)圧倒的なデザートを見事完食した二人であったが、その代償として腹がどうにかなるまで食堂から動くに動けなくなってしまった。
そうなると、必然的に出来る事は雑談ぐらいしかなく、そうやって時間を潰していた。

「…実は先程お主の学友のギーシュとちょっと話す機会があってな。それで少し気になったのじゃが、どんな男なんじゃな?」
「唐突ねぇ…二つ名は『青銅』のギーシュ。土のドットよ」
「ドット?ドットとは?」
「まぁ、メイジの格というか、強さを表すものね。アレフガルドじゃどうかは知らないけど、こっちでは魔法は5つの系統に分かれているの。
で、それを幾つまで足せるかによって強さが決まるわ。一つならドット。で、ライン、トライアングル、スクウェアの順で強くなっていくの」
「ああ、そういえばシュブルーズがトライアングルとか言っておったわな。あの後の酷い騒ぎですっかり頭から抜け落ちていたわい」
「……」
「そんな顔をするでないわ。蒸し返して悪かったわい。難儀な娘じゃのぉ。で、続きは?」

むすっとした顔をしたルイズを軽くいなしてリュオが続きを促すと、

「…ま、まぁ良いわよ。えーと、ギーシュの話よね?その名の通り、青銅のゴーレムを操る事を得意にしているわね。アレはあれでも軍人の家系だからね。
見た目通りに軽い奴だけど、そういう修練は意外に真面目にやってるみたい」
「アレって…まぁええわぃ。ゴーレムをのぉ。それは凄い。ああ見えて相当にやる奴だったのか?」
「…?大げさな…ゴーレムなんてそう珍しくも無いじゃない」
「何じゃと?…ああそうか、ここではそうなのじゃな。いや、何でそんな事を言ったかというとじゃな…」

リュオにとって、ゴーレムといって真っ先に連想する物といえば曽祖父の竜王軍から城塞都市メルキドを護る為に、とある賢者が研究の末に作り上げたというあのゴーレムである。
その実力は凄まじく、さしもの竜王もまともに倒す事を諦め、魔法で混乱させてゴーレム自身にメルキドを破壊させる、という搦め手を使わざるを得なかった程だ。
そして、その目論見は半分成功し、半分失敗した。
確かに魔法は効いたが、それはゴーレムの行動が「メルキドに攻めてくる魔物を撃退する」から「城門に近付くものを撃退する」に変わっただけだった。
これ以降、メルキドの城門を通った者は人間、魔物の区別なく勇者アレフが現れるまで誰もいなかったのである。

そんな物を使役できるとなればリュオのギーシュに対する見方も丸きり変わろうというものであったが、どうもルイズの話を聞くに、違うようだ。
リュオの態度に怪訝そうな顔をするルイズに、リュオは簡潔にメルキドのゴーレムについて説明した。

「なるほどね。そういう話ならゴーレムを操ると聞いては驚くのも無理はないと思うけど、ギーシュのゴーレムじゃぁどう考えてもそこまで強くはないわね。
というか、本当にそんなゴーレムいるのかしら…噂に聞くフーケのゴーレムならやれるかしら。30メイルはあるという話だし…」
「まぁ、疑うのは無理も無いかも知れぬが本当の話じゃよ。ところで、そのフーケとは何ぞや?」
「ええ、最近巷を騒がす怪盗よ。神出鬼没、大胆不敵。闇にまぎれて人知れず盗み出したかと思えば、白昼堂々とゴーレムを操って押し入ったり、派手に暴れているらしいわ」
「ほぉ。そこまで派手にやって捕まっておらぬとは中々のやり手の様じゃな」
「全くだわ。勿論狙われるほうも色々手を打ってはいるみたいだけどそれを掻い潜って盗みを成功させるんだから相当なものよね。
きっと魔法だけでなく、頭も切れるんだと思うわ」
「そうじゃろうな。実力もあって頭も切れる。一番厄介な手合いじゃな…さて、ようやく動けそうになってきたわい、ルイズはどうじゃ?」
「そうね、これならどうにか…。じゃぁ、そろそろ始める?」
「おお。それでは倉庫に案内してもらおうか…うっぷ」

そうして何とか復活した二人が、ルイズを先頭にようやく倉庫を目指しのろのろと動き出した。

「ああ、変な事で時間を取ったわ。明るいうちに終わるかしら」
「なぁに、今度はわしもおる。そう悲観する事も無かろう」
「…だと良いんだけどね…また何かが起きそうで…」

そうこぼしたルイズの勘は実際正しかった。倉庫へ向かう途中で、二人は呼び止められた。
20使い魔は四代目:2012/04/03(火) 19:12:29.60 ID:Ww7WaV4Q
「あー、呼び止めて済まないが、ミスタリュオ。少し時間を戴けないだろうか。先程貴方が拾われた瓶の事なんだが…」

二人を呼び止めたのはギーシュであった。リュオは、手形と引っかき傷で赤く化粧されたギーシュの顔を見て、大体の事情を了解した。

「おや、ギーシュか。…ちょっと見ないうちに面白い顔になったな」

うぐ、と渋い顔をするギーシュに更に追い討ちをかけた。

「当ててやろうか。あのケティとかいう娘にやられたのじゃろう。しかしそりゃ自業自得というものじゃ」
「いや、ケティとの後にモンモランシーにも…って、そんな事はどうでもいいんだ。とにかく、その瓶を返して頂けないかと」
「おやおや?お主、先程自分の物ではないと言い切ったではないか」
「い、いやそれは…。勘違いしていたんだ、うん。だから返してはもらえないだろうか」
「本当にお主の物なら勿論返すぞ。返すが…どうもお主は嘘吐きのようじゃからなぁ、信用して良いかどうか…」
「そ、そこをどうか…。そ、そうだルイズ、君からも一言頼むよ」
「そう言われても私は事情を知らないから言い様が無いわよ。一体どういうことなのかしら?」
「い、いや、それはだね…」

言葉を濁すギーシュに代わり、リュオは食堂での一件を簡潔に語った。それを聞いたルイズの返事は実に簡潔だった。

「駄目」
「そ、そこを何とか頼むよ」

あっさり切り捨てられてすがるギーシュに、嫌そうにルイズは答えた。

「今の話だと、どう聞いてもあんたが嘘吐いたのが悪いんじゃないのよ。ついでに何で私が二股の片棒担がなきゃならないのよ」
「ふ、二股なんて事、僕はだね…」

痛いところを付かれてしどろもどろになるギーシュをルイズは冷徹に一瞥すると、

「とにかく、そんな理由じゃお断りよ。自分でリュオを説得して頂戴」
「…まぁ男なら口よりも態度で示してもらおうかの。というわけでルイズ、思わぬ形で人手が一人増えたぞ」
「え…?ああ!そういう事。それならいいわ。じゃぁギーシュ、ちょっとついて来てくれるかしら」
「な…何をさせようというんだい…?」

恐る恐る尋ねたギーシュに、にっこりと笑ってルイズは答えた。

「心配は要らないわ。教室を片付けるだけの簡単なお仕事です」

ギーシュがなかまにくわわった!
21使い魔は四代目:2012/04/03(火) 19:14:39.61 ID:Ww7WaV4Q
学院の一角に倉庫はあった。流石に学院本体の様な豪華な造りにはなっていないが、それでも普通の家よりはしっかりとした造りになっているあたり、ある意味徹底している。
中は当然真っ暗であったが。ルイズが指を鳴らすと壁につけられた魔法仕掛けの明かりが点灯し、作業には充分なだけの明るさになった。

「便利な物じゃな。部屋にあったのと同じ物かな?」
「多分ね。倉庫だから実用本位にはなっていると思うけど、まず原理は同じはずよ。
…さて、それにしても…」
「やれやれ、コルベールも言っておったが、本当に散らかっておるな。これでは何を探すにしても一苦労じゃわい」

三人は揃って溜息をついた。埃っぽい倉庫の中はお世辞にも片付いているとは言いがたかった。ある程度整理がついた区画が入り口付近に多少ある程度で、
大部分はあらゆる物が何の法則性も無く乱雑に積み上げてあるだけであった。それは奥に行くに従って段々酷くなるようである。

「正直、長居したくないわね。空気も悪いし。まぁ…倉庫だし仕方ないのかもね。それはそうと、まずは教壇よ。大きい物だしすぐに見つけられるとは思うけど」
「うむ、厄介事は手早く片付けるに限るな…と、これかな?後で備品の持ち出しの報告が必要にな
るのかな?」
「まぁ、それはミス・シュヴルーズかミス・ロングビルに言っておけば大丈夫でしょ。よし、じゃぁ、目指すは教室ね」
「うむ。邪魔になりそうな物があったら退けておいてくれ…というわけで、ほれ、お主の出番じゃぞ、ギーシュよ」

余りの乱雑ぶりに呆然としていたギーシュの反応は鈍かった。

「へ?あ、ああ。何をすれば良いのかな?」
「何を聞いておったんじゃ。この教壇を、教室まで持っていくんじゃよ。年寄りに肉体労働をさせるでないわ」
「わかったよ。ミスタ・リュオ。魔法を使っても構わない、よね?」
「ああ、別に構わんじゃろう」
「あれ、シュヴルーズは魔法を使うなと…」
「ルイズよ、それはお主に向けて言った言葉じゃろう?自発的に手伝いを申し出た友人思いの若者には言っておらんのじゃないかな?」
「ああ、確かにそうかもしれないけど…う〜ん…ま、いっか?」

ルイズは今一つ釈然としなかったが、無用に時間をかけたくない事もありここは妥協する事にした。
どうやらルイズが納得したらしい、と見て取ったギーシュは、

「じゃあ、構わないね」

そう言って教壇にレビテーションをかけた。魔法がその力を現し、教壇がふわりと浮き上がる。そのままルイズを先頭にして三人は出口を目指した。
リュオとルイズがまず道を作り、その後を教壇がフワフワと、そしてその後を教壇を操りながら指揮者の如くギーシュがついて行く、といった按配で倉庫から出て行った。
奇妙な事に、そのすぐ後で乱雑に物が積まれた一角からガタゴト音が鳴り出したのだが…
既に倉庫から出ていた三人がその事に気づく事は無かった。
22使い魔は四代目:2012/04/03(火) 19:18:52.71 ID:Ww7WaV4Q
教室に着いた三人は、早速後始末の残りに取り掛かった。リュオに加えて予想外の助っ人、ギーシュが加わった事もあり、リュオが言ったように作業は何とか明るいうちに終わった。
とはいえ、食堂で時間を取られた事もあり、既に日が沈み始めてはいたが。

「うむ。こんなものじゃろう。完璧だとは言わんが、これで充分じゃろ?」
「そうね。じゃぁ。これで終わりということで。ん〜、疲れたぁ〜」
「…やれやれ、仕方なかったとはいえ、貴族のやる事じゃぁないね。」

やっと後始末から解放されて伸びをするルイズ達だった。その表情には、やっと作業から解放されたという喜びが溢れている。

「何を言っておる。倉庫に戻るぞ」
「え…?あぁ、そうか…でも、もう日も暮れるし、明日にしない?」
「まぁそういうな。ちょっとだけじゃて。大して時間は取らん。それに、今の状態で夕食が入るか?わしゃまだ満腹じゃ」
「う…確かに…」
「じゃろ?腹ごなしの散歩のようなものじゃと思ってちと付き合うのじゃ。まぁ、散歩にしては空気が悪いがな。
ああ、ギーシュや、ご苦労じゃったな。ほれ。全く、最初から正直に言っておれば良いものを。今度は精々落とさぬようにすることじゃな」

そう言いながら、リュオは香水をギーシュに渡した。

「ああ、ありがとう。肝に銘じておくよ。…ところで、こんな時間にこれから倉庫で何をする気なのかな?」
「なあに、このルーンがな…どうも面白い意味がありそうなんでちょっと確かめてみようかと思ってな」

そういって、リュオはギーシュにルーンを見せた。

「…よく分からないがそれは何か面白そうだね。ついでだし、僕も一緒に行って良いかな?」
「わしは別に構わんぞ。では行くか」

倉庫に入るなり、三人は顔を見合わせた。


先ほどと変わらぬ倉庫である。相変わらず、雑然と物が置かれている。
だが。その一角、まるで地層の様に様々な物が積まれた区画の下の方が何やらガタゴトと揺れていた。そしてそこから…

「おい!出せ!出してくれって!」

そうわめく声が聞こえていたのだった。
23つかよん!:2012/04/03(火) 19:21:32.53 ID:Ww7WaV4Q
今回はこれまでです。DQ1・2・3、DS版DQ6とプレイしていた事もありかなり間が開いてしまいました。
10も評判良さそうなんだけどこっちは… いいんだ、運が無いのは分かってるんだ…
24名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/03(火) 22:14:05.86 ID:jjOLBsHX
投下乙!
25名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/03(火) 22:15:46.89 ID:3tCgjfZq
久々に4代目が来とる
26デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:27:42.47 ID:NwLSJ33F
これから第十六話投稿します。

27デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:29:22.28 ID:NwLSJ33F
第十六話『年増再び』

「くそぅ!!」
一人酒場でワインを一気に煽りワルドは毒づいて乱暴にテーブルにグラスを置く。
それというのも朝一番のミントとの立ち会いでワルドはルイズの目の前でミントに圧勝したのだ。だが、それが不味かった…
(異国の王族か何かは知らぬがガンダールブめ……)
御陰でルイズの心象はかなり悪くなってしまった。
これではまるで自分を悪役に仕立てる為の茶番だ。ただワルドの内心が荒れているのは何もその事だけでは無い。

ワルドは気づいていた。ミントがわざと自分に敗れた事も、自分に対して僅かながらにも警戒心(というよりは不信感)を抱いていると言う事も。

ワルドは自分の本当の目的とそれに関する様々な計画、そしてそれに対する障害となるであろう物に対しての対処を思い描いて思考に耽った。

自分のテーブルの後ろに微かに見える密談を行っている二人組のメイジの姿を捉えながら…


___女神の杵邸

滞在二日目、ワルドの御陰で無事船の手配も完了し、明日にはアルビオンに向けて出立すると言う事でミント達は全員揃って宿でゆっくりと身体を休めていた。
既にワルドは朝の決闘の件についてミントに改めて謝罪し一行は共にテーブルを囲いディナーを楽しんでいた。


だがここで一行に再び予定調和のトラブルが降りかかる。

宿の正面玄関が突然乱暴に開け放たれ、そこには弓矢や剣等で武装した大勢のゴロツキ傭兵が控えていたのだ。
ルイズ達と同じく宿に泊まっていた一般の客達から悲鳴が響く。
「居たぞ!!あいつ等だ!!」
一人のリーダー格らしき傭兵が声をあげる。傭兵達は周囲の客達に目を向ける事無くルイズ達を発見すると問答無用と言わんばかりに弓に番えた矢を放ち始めた。


「不味い!!全員伏せろ!!」
28デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:30:09.49 ID:NwLSJ33F
一番素早く反応したワルドが料理とお酒の乗った地面と一体化した石のテーブルの足を練金で崩し、弓矢に対する即席の盾とする。
タバサもワルドに倣い、本を片手に同じく盾を作り出す。その際ちゃっかり自分の好物であるハシバミ草のサラダだけはきちんと取り分ける。冷静な物である。

「どうする?明らかにあいつ等あたし達狙ってるわよ。」
テーブルの盾から半身を覗かせ、傭兵達の姿を確認してミントがワルドに訪ねる。
「僕たちを狙った刺客という訳か…しかし位置取りが不味いな。奴らはあそこから弓矢で慎重に攻めてくるつもりの様だ…魔法で応戦しようにもこちらの精神力を無駄に消費するのは避けたいんだがね。」
「確かに私の火でもあの石の扉の影に隠れられたら効果は薄いかもね。」
ワルドとキュルケが冷静に状況を確認してそれぞれ同じような結論を出す。
二人の攻撃魔法の特性上狭い屋内では使える魔法もある程度制約が掛かる上どうしても遮蔽物に効果を削がれてしまう。
「フフッならばここは僕にお任せを!!奴らを攪乱し隙を作ります、行けワルキューレ!!」
「ななな、何でも良いから早くしなさいよ!!」
と、ここでギーシュが薔薇の杖を高く翳し、舞い落ちた薔薇の花びらから取り敢えずワルキューレを二体練金する。
ルイズからの罵声と共にワルキューレは猛然と傭兵達の元に突撃していく。
途中何本もの弓矢を身体に打ち込まれるがゴーレムの最大の強みはそのタフさにある。あっという間に入り口まで到達したワルキューレに恐れをなしてか傭兵達は慌てて密集していた入り口から逃げ出していく。

「ハハハ見たか!!これが僕のワルキューレの力だ!!」
「やるじゃないギーシュ!!」
お気楽に高笑いを浮かべはしゃぐギーシュ、ルイズ、キュルケ。
しかし残りの面子はその様子が明らかにおかしいという気が付いていた。それは命が掛かった実戦の中で培われた経験からの物である。


ズ ド ン !!!

警戒状態が続く中ワルキューレが宿の外にまで歩を進ませると突如轟音を響かせ、上空から落ちてきた巨大な岩の塊がワルキューレを容易く粉砕した。
「ワルキューレ〜〜〜〜〜!!!!!」

響くギーシュの悲鳴。そしてワルキューレを粉砕した岩の塊は再び浮き上がる様に全員の視界から消えた。

29デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:31:56.63 ID:NwLSJ33F
__外

「ふん、他愛無いね。」
自分の巨大ゴーレムの一撃で粉々に成ったワルキューレの残骸をみやり、フーケはゴーレムの肩の上でニヤリと笑う。
「油断はするな…それとくれぐれもヴァリエールの娘を殺すなよ。」
そのフーケの隣に立つのは全身を黒のローブで包み、顔を真っ白な仮面で隠した男のメイジ。
それは昼間ワルドが食事をとっていた酒場にて密談を行っていた二人組のメイジだった。
ミント達の手で捉えられたフーケは監獄に収監され、そこでこの仮面のメイジに協力をするという条件で助け出されていた。
フーケはその条件を飲んで今ここに居る。まぁそれは協力を拒めば殺すという脅迫じみた物であったからでもあるが…
と、ここでフーケが再び宿の入り口に視線を向けると、再び散開した傭兵達が弓を構えて集まり出す。


__室内

ワルキューレがやられた事で再び傭兵達が室内に弓矢を打ち込み始めた。
キュルケ、タバサ、ワルドもそれぞれ魔法で応戦するも傭兵達は対メイジ戦闘になれているのか魔法が来るそぶりがあれば直ぐに後退してしまう。
「これではじり貧だな。」
「そうね…ま、ここはこのミント様の出番かしらね。」
ワルドが歯がゆそうにぼやくのを聞いてここまで見につとめていたミントがおもむろに立ち上がる。。
「なんだ相棒?手があるのかよ?」
「まぁね〜、ああいう奴らをぶっ飛ばすのには言い魔法がね…」
そう言ったミントに対して全員の主に期待の視線が集まる中で鼻歌交じりにミントが狙いを付けてデュアルハーロウに纏われた黒い魔力を引き絞る。

「何それ?」
ルイズの間の抜けた様な問い…他にはそれを口に出した人物は居なかったが全員が同じ疑問をその珍妙な魔法に抱いていた。
デュアルハーロウから撃ち出されたのは大きさリンゴの二回り程の大きな黒い玉。
練金という訳でも無く完全に実体化したその不思議な質感を持つ黒い玉は連続して五つ程、ミントの黒い魔力の螺旋から生み出され地面をボールの様にゆっくりと撥ねながら傭兵の集団に接近していく。
例えばミントの世界の人間があの傭兵の集団の中に居たならばその人物は撥ねながら接近するその黒い玉から一目散に逃げ出していただろう。
30デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:32:49.68 ID:NwLSJ33F
だがここには誰一人接近してくるその黒い玉の正体を知るものは居ない。
そんなゆっくりと撥ねるだけの玉に誰が警戒をするだろうか?ハルケギニアにはそもそも存在しえぬその魔法、傭兵達は誰もその黒い玉から逃げようとはしなかった。

黒色の魔法、タイプノーマル『ボム』

そして遂に一人の傭兵の身体にボムが接触する…

爆発。爆発。爆発。そして爆発。


圧倒的破壊力の爆発は大量の土煙を巻き上げて大勢の傭兵もろともに宿の出入り口を吹き飛ばし巨大な風穴を岩壁に作り上げた。



「何だいっ!!?爆発!?ヴァリエールのお嬢ちゃんか!?」
その突然の爆発の様子をゴーレムの肩の上から見ていたフーケは直ぐに警戒状態に移った。膠着状態だった状況はその爆発で一転する。
「いや、あれはその使い魔の仕業だ。どうやら爆弾の様な物を使った様だな…」
「ちっ、ミントか…」
仮面のメイジの伝えた情報にフーケは舌打ち混じりに歯がみする。
「……マチルダ、ここはお前に任せる、時間を稼いでここで奴らの注意を引いてくれればそれで良い。」
「あいよ…」
フーケが渋々といった様子で返事をすると仮面のメイジは霞の様に消え去った。


そして一陣の風が吹き抜け、視界を遮っていた土煙が徐々に晴れていく。
快晴の夜空は重なった二つの月明かりを遮る事は無い。フーケの視線の先には同じく自分を敵意を孕んだ瞳で不敵に睨み付けてくるミント達の姿があった。

「久しぶりだねぇ、会いたかったよミント!!」
「げっ…フーケ!!あんた監獄に入ってたんじゃ無かったの?」

「え?確か君達が捉えたはずだよね?」
「脱獄…」
ギーシュがここにフーケが居るという事実に首を捻るとタバサがそれ以外に無いという答えを簡潔に答えた。。

31デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:37:14.83 ID:NwLSJ33F
「あぁ、そうさ!だけど親切な人達がね、私みたいな美人はもっと世の中の為に働くべきだって助け出してくれたのさ。」
訪れたリベンジのチャンスにケラケラと笑いながらフーケは自信満々にミント達を見下ろす。
しかしミントは魔法でも武器でも無くもっと恐ろしい物でフーケに対して先制の一撃を加える。


「自分で美人なんて言ってんじゃ無いわよ!良いわ、手下共々ボコボコにして地獄巡りをさせてやるわ、このミント様にお礼参りなんて百万年早いのよこの『  年   増 !!!!! 』」



年増!!

年増!!

年増!!!!!


ミントが放ったその魔法の言葉が山彦となりリフレインする度フーケの胸には槍が突き立てられた様な衝撃が容赦無く襲いかかる。

「とっ…年…」
「ば、馬鹿ヤロー!!フーケの姉さんに何て事言いやがるんだ!!そりゃあ姉さんは四捨五入したら三十…」

ゴシャリッ!!!

叫んだ傭兵の一人がゴーレムの無慈悲な拳に叩きつぶされる。
(あぁ、あれは死んだわね…)
その始終を眺めていたルイズ達は何故か生きているという確信を抱きつつぼんやりとそんな事を思う…フォローするにも言いようがある。完全なとは言えないが十分なとばっちりだ…同情する。

「小娘が好き放題に言ってくれるじゃないか。 ミント……。地獄を見せてやるよ!

憤怒の表情で握りしめた拳を振るわせフーケは傭兵達を巻き込む事も構わずゴーレムを前進させる。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/03(火) 22:37:25.95 ID:3tCgjfZq
メルキドのゴーレムってと
モンスター物語のゴーレム無双のインパクトは強すぎた。

最終的に、ラダトーム攻略のために用意したストーンマン百体をメルキドに差し向けても無傷で壊滅させちまった。
33デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:38:50.40 ID:NwLSJ33F
「来たな。だがあれをまともに相手はしていられない。諸君、この様な任務では最終的に半数が目的地に辿り着けば成功とされる。故にここは二手に分かれよう。」
傭兵の約半数が戦闘不能になったとはいえ、ゴーレムが本格的に攻撃に参加してきた事でワルドが全員にそう提案する。
すると遮蔽物が無くなった事で本格的に魔法で傭兵達を攻撃していたタバサが無言で自分、キュルケ、ギーシュを指さした。
「囮。」
指さされた二名は了解の意を込めて頷く。続いてタバサはワルド、ルイズ、ミントを指さす。
「裏口へ。」

「分かった、済まないが奴らの足止めを頼む。」
「任せたわ。」
「ちょっと!そんなの駄目よ!!危険だわ!」
ワルドとミントがタバサの提案を了承し、早速裏口に向かおうとするがそこでルイズが異を唱える。
「ハァ、あんたねぇ…」
ルイズの甘さに溜息をつくミント…だがここでルイズを説得したのはキュルケだった。
「冷静になりなさいよルイズ。
そもそも私とタバサはあんた達が何をしにアルビオンに行くのかも知らないんだからこれで良いのよ。
ほら、グズグズしてたら船があいつ等に押さえられちゃうわよ。」
「でも…」
それでも食い下がろうとするルイズにキュルケは一発デコピンを食らわせる。
「でもも何も無いの!!あんたには大切な役目があるんでしょう?それに前はフーケ相手に良いとこ無しだったからね。今回は私達にも活躍させなさいよ。ね、タバサ?」
キュルケの言葉に無言で頷いたタバサの瞳は『任せろ』と雄弁にルイズに語っている。
「行きたまえ、ルイズ。ここは僕たちに任せるんだ。」

「あんた達……頼むわねっ!!」

ルイズは走りだした。それを追いワルドとミントも振り返る事無く裏口から宿の外へと飛び出していく。

「逃がすか!!」
ルイズ達を追おうとフーケはゴーレムを操作しようとしたがそれは自分目掛けて飛んで来た炎の塊によって阻害された。
「ちっ、小娘共がよくも邪魔を…」

「よし、行ったわね…さて、ここからはこの微熱のステージよね。」
34デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:40:37.15 ID:NwLSJ33F
キュルケは懐から取り出したルージュを唇に走らせて色っぽく笑う。既に傭兵は粗方片づいた。後はこちらを見下ろす巨大なゴーレムである。
ゴーレムの進行のせいで既にレストランは壁が崩れ、屋根も無い。最早外と区別が付かなくなっている。
「フフフ、燃えてくるね。だが、あの巨大なゴーレムをどうやって仕留めるかが問題だね。手はあるのかい?」
「まともには無理……だから」

言いながらタバサは魔法で作り出した高圧縮された水の塊をぶつけ、ゴーレムの足にぶつける。
と、タバサは続けざまそのまま水の塊を一気に凍りに変えてゴーレムの足首と膝ををピンポイントで完全に固定する。


「嫌がらせをする。徹底的に…」


そのタバサらしからぬ言葉にギーシュは一瞬唖然としてしまうがキュルケにはその意とする所は直ぐに伝わった。

「アハハ、良いわねそれ最高よタバサ!ギーシュ、ゴーレム使いの土メイジとして敵に一番やられたくない事教えなさいよ。」
ゴーレムの振り回した拳を軽やかにフライで回避して愉快そうにキュルケは笑う。どうやら自分の親友はここに来て新しい一面を見せてくれたようだ。
それがたまらなく嬉しい。

「あぁいいとも。だが、実技の授業で僕に実践しないでくれよ!!」
タバサのあの小悪魔の様な言い様、性格こそ全く違えどまるであの傍若無人で破天荒なミントの様では無いか…平然とそんな事を言うのだから末恐ろしい話だ。
だが、今はそれがまた一層頼もしく思えてギーシュは人生初の命がけの戦いの最中でありながら思わず苦笑いをこぼしていた。


『行くぞ(わよ)、年増!!』



「年増って言うな〜っっ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
35デュープリズムゼロの人:2012/04/03(火) 22:45:25.08 ID:NwLSJ33F
これで第十六話終了です。

しばらくは破壊されたZ世界を再生させるのに忙しくなりそうなので更新遅れるやもです。
一応途中投げにはしないつもりです。

物語の続きが見れない苦しみをデュープリズム本編をやりこんだ人間は知っているのだから…
36名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 01:25:14.29 ID:MG24pYIg
乙です
37名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 01:59:25.25 ID:MQfwWjfQ
ついに年増コールキターーwww
あれ?後ろに誰k(グシャッ!)

ところでマチルダ姐さんって23歳じゃなかったっけ?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 02:23:04.91 ID:hYHMYO2u
中世あたりの文明だから23でも行き遅れになるだろ
おや?外にゴーレムが・・・
39名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 05:37:58.07 ID:n9RIC49N
>>37
いちいち傭兵に年齢ばらしたとは思えんし、「四捨五入したら三十」は潰された奴の個人的印象だろう
40名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 06:14:14.74 ID:jGt8DSjB
人によって一回の投下量って全然違うけど、明確な基準ってあるのか?

一回で多くやるより、一回を少なく話数&投下回数稼ぎしたほうがいいのかな
41名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 10:50:55.40 ID:enY0oakQ
それなりの量ないと読む気すらしない俺みたいなのもいる
42名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 11:18:11.30 ID:rczZ2nrN
内容がいいなら気にならんな俺は
43名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 12:27:51.83 ID:WJYsG+d9
量より、どれだけ続くかだよね
44名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 14:54:31.86 ID:ENeX2YD9
>>37-38
まあまあ、女は30過ぎてからがいちばんいいってガッチャマンも言ってるしさ
45名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 20:39:49.00 ID:NwxtvAR6
>>35
乙です

そういや再世偏明日発売かー
クロウさん召喚面白いかもね。生身でも結構多芸だし、ルイズから借金背負ったりしてw
46名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 21:26:10.84 ID:9j4LQ3hT
デュープリズムの人、乙です!
もしミントがいたらドールマスターの野心に気付いていただろうと言われてただけの事はあるな
ワルドの野心にも気付いたか……
そしてフーケがベル化してる……ww
47名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 22:03:55.32 ID:mSlm2QFH
ドールマスター……ドールユーザー→ゴーレムマスターと連想した
つい最近ワイトキングに粉注ぎ込んでがっかりしたのは俺だけじゃあるまい
48名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 22:12:16.84 ID:QeZyOlqO
>>44
昔の両津も似たようなこといってたな、脂の乗り切った30過ぎくらいのがいいと


あと枢斬暗屯子をいい女の例にあげたこともあったけど
49名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 22:52:36.53 ID:F3/Vw94V
>>47
ドールマスター…久々津さん?
さえない眼鏡が召喚されたと思ったら手持ちのフィギュアが人間サイズになってなんでもこなす便利キャラだったとかいう展開で
フィギュア製作関係の道具と塗料さえ有れば何でもやれそうで怖いかもしれん
50名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 23:50:47.14 ID:Q4DnW2CM
エルフの反射って解除以外だと対策ないんだっけ?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 23:58:41.06 ID:IEvFpPmw
>>50
高速な重量のある物体で強引に突き破る。
原作だとFlakで抜けてるし。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 00:13:23.77 ID:pysDtDjL
反射はそこら辺の精霊さんに攻撃を防いでもらう魔法だから、
精霊さんの手に負えないくらい強力な攻撃や精霊さんが防げない系の攻撃は普通に通るはず
作中で防いだのは単純な攻撃魔法や肉弾攻撃のみで、精神系の攻撃が防げるかとかはわからないな
光や音、空気は遮断している様子が無いから有害な光線や音波、毒ガスなんかは通るかも…
53名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 00:17:34.36 ID:pysDtDjL
あとエクスプロージョンも反射では防げていない様子
ヨルムンガンドは装甲に焼き入れして物理的な防御力を増すことで耐えたが、反射で防いだわけではない
54名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 00:23:32.84 ID:28vLi2SH
つまり、零式防衛術なら突破できると
55名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 00:37:37.75 ID:17F1y8X2
忘却も通りそうなんだよな、反射
56The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:13:05.56 ID:5f45vx0X
夜分遅くになりますが、予約がなければ続きを投下しようかと思いますがよろしいですいか?
57名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 02:14:14.36 ID:VbBcxOAH
許可しよう
58The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:17:19.74 ID:5f45vx0X
Mission 23 <時空神の記憶> 後編


キュルケからの指摘にスパーダは軽く鼻を鳴らし、自嘲の笑みを浮かべていた。
果たして、この異世界の人間達はどこまで信じてくれるだろうか。このハルケギニア以外にも、彼らのような人間が住まう別の世界が存在するという事実を。
そして、その世界でかつて起きた出来事を、自分が起こした行動を全て信用してもらえるか。
スパーダが再び時空神像に手を触れると、砂時計から三度光が壁に放射され、新たな映像が映し出される。
ルイズ達の目に映りこんだのは、先の映像と同じく無数の悪魔達が大地や空を蹂躙する光景だった。
ただ、今回は先ほどのとは何かが違う。

翼を生やし、空を舞う悪魔達は魔界の禍々しい雰囲気がまるで感じられない、夕日が照り、赤々と焼けた夕焼けの空を飛び交っている。
大地を闊歩する悪魔達が足をつけているその地面は、瘴気や溶岩などを噴き出していた魔界の毒々しい大地とは異なり、草木が生えている肥沃で豊かなものであった。
そして、悪魔達が喰らっているのは弱肉強食の世界で互いに争い合っている同族ではない。

――きゃあああっ!

――助けてくれぇ!

――お母さぁぁん!!

――ぎゃああああっ!

燃え盛る炎の光景の中、幾多も響き渡る悲鳴と断末魔。そして、炎の中を悪魔達から逃げ惑う無数の人影。
それは紛れもなく、人間であった。
血に飢えた悪魔達は力のない人間達を容赦なくその爪牙で引き裂き、血肉を喰らっていく。
老いも若きも、男も女も、子供も大人も関係なく、ただひたすらに殺戮を続けていた。
「ひどい……」
あまりに惨く、残酷な光景にルイズは思わず顔を背けそうになった。
「魔界を統一した魔帝ムンドゥスは魔界とは別の次元に、人間達が住まう異世界が存在することを知っていた。かつての我が主はその異世界をかねてより侵略することを企てていた」
顔を顰めながらスパーダは語る。
「元々、魔界と異世界との間には分厚い壁のような境界が存在し、互いに干渉することはできない。だが、力のない悪魔達はその境界の極小さな隙間を潜って人間界を行き来することができる。
如何にムンドゥスと言えど、自分のような上級悪魔達が通れるほどの穴を力づくで無理矢理押し広げることは難しかった。だが……」

映像が変わると、そこには天高くそびえる巨大な塔とそれを崇めるように囲む何百人もの人間の姿が映っていた。
荒野の中に建てられているその塔は山よりも大きく、そして魔界のような禍々しさがありありと感じられていた。
その遥か頂上から、暗雲が広がる空に向けて赤い光が伸びている。
暗雲を突き破り、薄暗い空の中に大きな穴がぽっかりと開けられていた。
その穴を通って、無数の悪魔達が次々と大地へ降り立っている。
59The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:22:47.99 ID:5f45vx0X
「ムンドゥスは下級悪魔達を上手く利用し、人間達を堕落させていった。堕落させられ、魔に魅入られた人間達は魔界と自分達の世界を繋ぐために塔を建てた。
それが、このテメンニグル――恐怖を生み出す土台≠ニ呼ばれたものだ」
映像に映る禍々しいテメンニグルの塔、そして飛び交う悪魔達にルイズ達は目を疑った。
人間が魔界の扉を開き、悪魔達を招くためにこんな物を作り出しただなんて、狂気としか思えない。
いや、その狂気へと駆り立て堕落させたのが、魔界から送り込まれた悪魔なのだろう。
人間達はまんまとムンドゥスに利用され、悪魔達が侵略するための道を開いてしまったのだ。

「これはいつの出来事?」
映像を見ていて僅かに顔を顰めていたタバサがスパーダに尋ねていた。
「今からおよそ千五百年以上も前のものだ」
「……そんな話は、ハルケギニアの歴史には残っていない」
普段から様々な本を読んでいる彼女は、たまにハルケギニアの古い歴史書に目を通すことがある。
始祖ブリミルがハルケギニアに降臨したのは六千年も昔だということだけは伝えられているが、今スパーダが話し、ここに映し出されている出来事はどこにも記録などされていないものだった。
だが、先ほど時空神像が見ていたらしい自分の姿を見せられた以上、これも神像が見届けたものなのだろう。
決して、この出来事が作り物であるとは思えない。
だが、ハルケギニアの歴史には過去に悪魔によって侵略されたという記録も残っていない。
これほどの出来事が起きたのであれば、歴史書に載せられていてもおかしくはないはず。
「あたしも聞いたことないわねぇ」
キュルケもタバサに同意し、他の者達も同様であった。
「どういうこと、スパーダ?」
「……それは当然だ。この出来事は、ハルケギニアで起きたものではない」
腕を組むスパーダが発した言葉に一同、目を丸くする。
「このハルケギニア以外にも、お前達のような人間達が住まう異世界が存在する。そこで起きたものだ。信じる、信じないかはお前達次第だが」
「い、異世界?」
ルイズは一瞬、その言葉が信じられなかった。ハルケギニアとは全く別で自分達と同じ人間が生きている世界が存在するだなんて。おとぎ話もいい所だ。
だが、スパーダが生まれた魔界という異世界が存在する以上、その話は信じざるを得なかった。
「あたしは信じるわよ。こんな凄いものを見せられちゃあね……」
キュルケが乾いた笑みを浮かべて未だ悪魔達が飛び交うテメンニグルの映像を見やった。

「……テメンニグルによって開けられた魔界の扉を通って、ムンドゥスは下級悪魔はもちろん上級悪魔達を次々と送り込んできた。
人間界に降臨した悪魔達、そして悪魔を崇拝する魔に魅入られた人間達はテメンニグルを拠点に各地へと侵攻し始めたのだ。
多くの人間達はそれに対抗したが、ほとんど劣勢だった」
「スパーダも……それに加わってたの?」
恐る恐る、ルイズが問いかける。
60The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:28:35.93 ID:5f45vx0X
スパーダがムンドゥスの右腕だったならば、彼もまた人間界侵略の尖兵として送り込まれたことになる。
ルイズはスパーダが他の悪魔達と同様、人間達を容赦なく手にする剣で斬り伏せていたのではないかと、不安であった。
スパーダはルイズの問いに対して、何も答えなかった。ただ腕を組んだまま目を瞑り、顔を僅かに伏せている。
その沈黙は、肯定を意味しているのか。それとも答えあぐねているのか。
ルイズはもちろん、一行はその沈黙が肯定でないことを願った。
と、突然スパーダがまた自嘲の笑みを浮かべていた。
「……私は、悪魔の中では異端だったのかもな」

――魔剣士スパーダ。何のつもりだ。

突如、響いた禍々しく凶暴そうな悪魔の声。
映像には長剣を肩に担いでいるスパーダが5メイルほどの大きさで、強靭な黒い体に頭頂部には角を一本生やしている獣人のような姿の悪魔と対峙していた。
その巨大な悪魔の他にも下級悪魔達もスパーダを取り囲んでいる。
だが、ルイズ達が目に入ったのはその巨大な悪魔でもスパーダを取り囲む悪魔達でもなかった。
周囲に転がる無数の悪魔達の亡骸、それらはスパーダ自身の足元にも転がっている。
悪魔達みんな、剣か何かで斬り捨てられたようだ。

――我らの目的はこの世界の制圧にある! 偉大なる我らが主を裏切る気か!?

怒りに燃える巨大な上級悪魔、暴閃獣<xオウルフは獰猛で凶悪な眼を赤く光らせながらスパーダに向かって吼える。

――裏切り者。

――逆賊め。

すると、周囲の悪魔たちも同様にスパーダに対する呪詛を口々に吐きかける。
スパーダはそんなことを同胞達に言われてもまるで気にしておらず、無表情のままベオウルフを睨みつけていた。
(あれ? このスパーダ……)
ルイズは映像に映るスパーダを見て、今までの映像のスパーダとは少し異なる印象に気づいていた。
前の映像のスパーダは悪魔らしく冷酷さに満ちた表情だった。だが、今のこのスパーダはこの場にいるスパーダほどではないが、その冷酷さが薄れているような気がした。
そして何より、悪魔達が口にした言葉が気になった。
(裏切り者? 逆賊?)

悪魔達が一斉に、スパーダに襲い掛かった。
スパーダは剣を大きく薙ぎ払うと、向かってきた悪魔達を次々と吹き飛ばしてしまっていた。
ベオウルフはスパーダの剣風を受けても堂々と立ち尽くし、怒りに燃え盛った瞳をスパーダに向け続けている。

――それが貴様の答えか。……逆賊、スパーダ!! 裏切り者は決して生かしてはおかん!!
61The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:33:57.00 ID:5f45vx0X
荒々しい悪魔の咆哮を上げ、ベオウルフはスパーダに飛び掛った。
同時に雷鳴が弾けるような音と共にスパーダの姿が今までの人間の姿から、あの悪魔の姿へと変わっていた。
拳を振り上げるベオウルフに対し、スパーダも長剣を両手で構え、正面から迎え撃っていた。

「私は魔界の軍勢を裏切り、人間達を救うためにかつての同胞達と戦った」
その言葉にルイズ達は驚き、目を見張った。
スパーダが魔界を裏切った? しかも、同胞である悪魔達を全て敵に回して?

映像は次々と変わっていき、どの映像もスパーダが悪魔達を相手に己の剣を振るって一人で戦う勇ましい姿だった。
人間の姿の時であれば悪魔の姿で戦うこともあり、猛々しい剣技以外にも拳から発する赤い光弾を連射し、悪魔達を撃ち抜く。
剣を突き立て、悪魔達が蠢く大地に着地した途端、巨大な衝撃波が何万もの悪魔の軍勢を一瞬にして全滅させていた。
時に見るからに強靭そうな上級悪魔達と戦う姿もあったが、どの悪魔達を相手にしてもスパーダは一歩も引かない戦いぶりを見せていた。
そして、多くの場面でスパーダは悪魔に襲われる人間達を守るようにして戦っている。
時に人間の戦士がスパーダに加勢し、共に悪魔を相手に攻防を繰り広げていた。

「正直、私も同胞達はできるだけ魔界に追い返そうと努力はした。そのまま斬り捨ててしまった者達も多かったがな」
やがて、さらに映像が別のものに切り替わった。
暗雲が広がる空、どこまでも続く血の池、無残に転がる瓦礫の山、そしておぞましい姿をした鎌を手にする悪魔達。それを容赦なく斬り伏せていくスパーダ。
(これは、あの時の……)
ルイズはその場面に覚えがあった。
これは以前に夢で目にした光景。恐らく、魔界での出来事だ。
確か、あの悪魔達を倒した後に……。
「どうしたの、ルイズ?」
ルイズが青ざめた表情で映像から目を背けだしたのを見てキュルケが声をかけた。
「どうしたんだい、ルイズ。しっかりしたま――」
まるで発作を起こしたように呼吸と声を震わせるルイズの様子に心配したギーシュだったが、映像に映った物を目にして言葉を失った。
スパーダが見上げる暗雲の空に浮かび上がる、稲光を散らしながら不気味に光る三つの光。
目のように睨んでいるその光に、ルイズやギーシュはおろか他の者達も底知れぬ恐怖を感じていた。
ただの映像に過ぎないのに、この威圧感は何なのだ? どうして、ここまで恐怖を感じてしまうのだろう。
タバサでさえ、表情には出さないもののその三つ目の光に心の底から恐怖を味わっていた。……四年前、自分が初めて任務へと駆り出された時以上の恐怖だった。
62The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:42:24.62 ID:5f45vx0X
「私は魔界の軍勢に抗う人間達の協力を得て、テメンニグルを封じることに成功した」
テメンニグルを封じる際、スパーダは穢れなき巫女≠ニ呼ばれていた人間の女性の血と自分の血を用いて塔を地中深くに沈めて封印した。
その際、ベオウルフの他、スパーダが直接従えていた上級悪魔なども共に塔の中へ幽閉したのである。
そして、自分の力は人間界に留まるには大きすぎたため、魔界の深淵へと封じてきた。
「そして、かつての我が主、魔帝ムンドゥスを魔界の深淵に封じるべく戦いを挑んだ」
映像のスパーダが長剣を手にして三つ目の光――魔帝ムンドゥスに向かって駆け出した。
あの夢で、ルイズは必死にスパーダを呼び止めた。絶対に戦いを挑んではいけない、勝てるわけがないと精神が警鐘を鳴らしていたからだ。
だが、スパーダは決して止まらなかった。
その姿を彼本来の悪魔の姿へと戻し、手にする剣もまた今までとはまるで違う、禍々しく巨大な異形の剣へと変えて。

そこで映像が終わり、時空神像からの光も消え失せていた。
魔界、悪魔、そして魔帝ムンドゥスの恐ろしさを存分に味わったルイズ達は憔悴し切った様子で、スパーダを振り返っていた。
「私のことは、大まかに説明するとこのようなものだ。お前達が見た通り、私は人間達に味方した裏切り者だ」
「……でも、どうして悪魔のスパーダが人間を?」
誰もが最も不思議に思う疑問。悪魔であるスパーダが自分よりも力の弱い人間を守ろうとしたのだろう。
「……先ほども言ったように、私は悪魔の中では異端だったのかもしれん。私はどうにも他の悪魔達のように無意味な殺戮も、弱者を虐げるのも良しとはしなかった」
スパーダは自嘲の笑みを崩さぬまま言った。
「それに我が主にも少々不満があったからな」
「不満?」
「我が主は、あまりにも残酷で無慈悲だった。主はたとえ自分の腹心であろうと、戦力にならないと分かればすぐに切り捨てる。……あそこまで悪魔らしい悪魔もいない」
かつて魔界で起きた三大勢力の戦いで、ムンドゥスの腹心が他の悪魔の勢力の悪魔に幾度も敗北した時、たとえ忠臣であろうと容赦なく自らの手で消し去る。
ムンドゥスにとっては、他の悪魔達も自分の手駒に過ぎない。役に立たなくなった手駒はこれ以上、自分の手にあっても邪魔なだけ。
ならば、早々に消えてもらった方が都合が良い。
スパーダはムンドゥスの右腕として仕える中で、その光景を何度も目にしてきた。
その度にスパーダの心は痛んだ。主にとっては駒でも、スパーダにとっては仲間だったのだから。

スパーダが珍しく意気消沈している様子を見て、ルイズ達は初めてスパーダの心の一部を垣間見たような気がしていた。
たとえ悪魔でも、スパーダのように他者を思いやる慈しみの心を持っている悪魔がいるなんて意外だ。
63The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:47:45.73 ID:5f45vx0X
スパーダが珍しく意気消沈している様子を見て、ルイズ達は初めてスパーダの心の一部を垣間見たような気がしていた。
たとえ悪魔でも、スパーダのように他者を思いやる慈しみの心を持っている悪魔がいるなんて意外だ。
「私も他の悪魔達と同様に、主の命を受けて人間界へと送り込まれた。人間達は悪魔達の攻撃を受け、次々とその命を奪われていった。
……私は見ているだけで加わりはしなかったが、それを見続けているとどうにも心が痛んだものだ」
そして、その心は同胞だけではない。全く別の力のない種族である人間達にさえも向けられていたのだ。
「確かに、人間は単純な力だけならば我らよりも劣るかもしれん。事実、多くの人間が抗うことはできなかった。
だが、人間達は我らには無いものを持っていることを知った。私は……それに惹かれた」
「人間にあって、悪魔にないもの?」
「それは、何なんだい?」
ルイズとギーシュが問いただし、他の者達も強く興味を持ってスパーダの答えを待った。
スパーダは自嘲の笑みを消し、真剣な顔になるとルイズ達を見回しながら自分の胸を拳で叩いた。
「心≠セ」
「心?」
「力≠制し、他者を虐げることしか能がない我らとは違い、人間には心≠ニいうものがある。
他者を思いやり、愛する者を守るために心を奮わせることで人間は思いもよらぬ力を発揮する。時に心が生み出し、爆発させた力は我ら悪魔をも凌駕した。
私は、人間の愛≠、そして人間の可能性というものを思い知らされた……」
スパーダは人間が発揮した、心≠フ力を思い起こした。

悪魔に襲われる家族や恋人を命がけで守るために戦った人間。そして、悪魔に愛する者の命を奪われた者達。
彼らは愛する者を思う心を爆発させ、単純な力だけならば上を行く悪魔達を逆に倒したことがあった。時には、上級悪魔でさえも人間の心の力に敗れ去ることもあったのだ。
その時に目にした人間の可能性、自分達悪魔にはない心≠ェ発揮する力、そして愛する者のために流した涙……。

「あれを見せられては、私も魔界と決別するしかなかった」
自嘲しつつ、どこか嬉しそうに笑っているスパーダにルイズ達は呆気に取られた。
一人の悪魔が人間の心≠、愛≠知り、人間のために故郷と決別する。まるでおとぎ話のような話である。
だが、ルイズはこれまでのスパーダとの交流を思い返していた。
64The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:51:56.55 ID:5f45vx0X
スパーダはつっけんどんながらも、魔法に失敗してばかりいる自分を気にかけてくれた。そして、自分の失敗を新しいものにするという方向へと導いてくれた。
そして、何千年にも渡って培ってきたのであろう魔の剣技で自分達を守ってくれた。あの勇ましい姿は、決して忘れられない。

ギーシュもまた、スパーダと剣を通して彼の厳しくも父親のような包容力に惹かれていた。

タバサは以前、スパーダが悪魔の巣窟と化した屋敷からメイドのシエスタを助け出した時のことを思い返した。
悪魔の血と力を宿す己を恐れていたシエスタを、スパーダは人間であると諭していた。

――Devils Never Cry.(悪魔は泣かない)

その言葉を口にして。

「私は何とか、ムンドゥスと魔界を封じることができた。全てを終えた後、私は人間界に留まり、人間達を見守っていた。
フォルトゥナの土地を治めていたのは、それから数百年も後のことだ。もっとも、知っての通り今の私はただの没落貴族だが」
スパーダはかつての主を、故郷を裏切り人間達を守るために戦った。そして、同胞達を魔界へと追い返し、挙句の果てにはムンドゥスさえも封印してしまったのだ。
あまりにも凄まじい偉業だった。その異世界ではきっと、スパーダの活躍は始祖ブリミルのように伝説として語り継がれているのだろう。

「……それで、どうするのだ。ミス・ヴァリエール?」
「え、どうするっ……って」
突然、自分に話を振ってきたスパーダにルイズは困惑した。
「私はこのように悪魔だ。だが、始祖ブリミルという奴の残した教義では私のような悪魔は忌み嫌われるはずだろう。
私をこれまでのようにパートナーとしてここに置き、もしも私が悪魔であることが他の者に知られれば君とてただでは済むまい」
「そ、それは……」
確かに、悪魔を使い魔にしただなんて知られればとんでもないことになる。
そして、自分は周囲から馬鹿にされる所か、悪魔を召喚した忌まわしいメイジとして虐げられるかもしれない。下手をすれば実家の家族からも……。
如何にスパーダが人間のために命がけで戦った正義の悪魔だとしても、人が本能的に恐れる悪魔そのものであることに変わりはないのだ。
「君が私を拒むのであれば、私は早々にこのルーンを排除してここを去る」
そう言い、スパーダは閻魔刀を手にして扉に向かって歩き出した。ルイズは慌ててスパーダの背中に声をかける。
「ス、スパーダ」
「しばらく時間をやろう。ゆっくり考えると良い」
パタン、と扉が閉められ、スパーダは部屋を後にしていた。
65The Legendary Dark Zero:2012/04/05(木) 02:55:14.97 ID:5f45vx0X
(スパーダが、いなくなる? あたしの元から……)
そう考えると、ルイズの心は痛んだ。
スパーダは大切で頼もしいパートナーだ。彼がこれからパートナーとしていてくれるならば、あれだけ心強い者は他にいない。
だが、彼は悪魔だ。彼がこれからもパートナーとして自分と共にいてくれるのはあまりにリスクが大き過ぎるのだ。
そして、その決断を下すのは彼のパートナーである自分に他ならない。誰にも、相談できることではない。
「まさか、ダーリンにあんな過去があっただなんてねぇ」
ルイズが決断に悩む中、キュルケがあっけらかんとした様子で言った。
あまりにも平然とした態度にルイズは当惑する。
「キュルケ、あんたスパーダが悪魔だって知って何とも思わないの?」
「それはもちろん驚いたわ。でも、ダーリンはいわば正義のヒーローよ。あれこそ、まさしくイーヴァルディの勇者と呼んでも過言じゃないわ」
「イーヴァルディの、勇者……」
ぴくりと、タバサが反応する。
始祖ブリミルの加護を受けた勇者が剣と槍を用いて龍や悪魔、亜人や怪物など様々な敵を倒すという物語。
タバサも幼い頃、よく愛読していたものだ。
「とにかく、あたしはダーリンを信じるわ。人間の愛を知って正義に目覚めるなんて、こんなにロマンチックなことはないもの」
そう言うと、キュルケは部屋を後にしようとする。タバサもその後を付いていった。
「僕もキュルケと同じだよ。彼は決して悪魔じゃない。紛れも無く人間だよ、あれは」
ギーシュは何故か満足した様子で部屋を後にしていった。

「ギーシュ! 何でアンタがルイズの部屋から出てくんのよ!!」
「モ、モンモランシー! いや、これは……うわあああっ!!」
その直後、部屋の外でそのようなわめき声が響いてくるのが聞こえていた。

ロングビルは何も言わずに窓からレビテーションの魔法で飛び降り、外へと出て行ってしまった。
一人部屋に残されたルイズはベッドに突っ伏し、悩み続けた。
これまでと同じようにスパーダと共にいるか。それとも彼と別れるか。
そのどちらを選択しても、自分に待つのは決して楽にはならない現実だ。
絶対に、後悔しない選択をしなければならない。


※今回はこれでお終いです。
スパーダの動機についてですが、これは小説版4や1の解体新書などで挙げられているものをベースにしています。
66名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 14:38:55.93 ID:y8YuF1QV
スパーダの人乙
ギーシュェ・・・
67名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/05(木) 21:07:51.92 ID:kSmj6pRa
ウルトラセブンを召喚するなら身が軽いタバサとかのほうがいいかな
ミクロ化してオルレアン夫人の体内に入って治療なんとか
68名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/06(金) 17:30:12.32 ID:TVEYxWCJ
黒ミニイカ娘を召喚
オーク鬼退治で食べられたと思いきや、体の中で大暴れ。ってどこの一寸法師やねん
69名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/06(金) 21:20:23.31 ID:Zf0UeUbi
スカイリムのルイズいやルイスを召喚しようぜ
召喚のショックで分裂するルイス
ギーシュと決闘が終わると増えてるルイス
ワルドとの決闘後に増えてるルイス
70名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/06(金) 21:35:04.15 ID:09xhAXHW
>>69
ヴェルダンデが助けに来たら既に半身地面に埋まっているルイス
71名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/06(金) 22:07:10.11 ID:p3nQhhMd
ミクロマン召喚でもすればー
72名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/06(金) 22:58:48.25 ID:/vHvRubF
23時すぎから投下予定
73使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:01:50.85 ID:/vHvRubF
第4話投下します

第4話『零』

教室に入れば、いつものようにルイズに罵詈雑言が投げかけられる。
罵倒する声が小さいのが、いつもとの違い。

ルイズの隣に座るアセルスが原因だろう。
その事に気を良くしながらも、心に引っかかるのは自分が魔法を使えない事。

ルイズは今朝は夢見が悪く、早起きしたこともあって外に出ていた。
契約の魔法に成功したことで魔法が使えるようになったのではとわずかな期待を持って。
最も、希望はいつも通り魔法が失敗した為に打ち砕かれた。
ルイズが朝に洗濯物を運んだのは、失敗による汚れのついた服を隠すためである。

強大な使い魔を呼んでおきながら、自分は何一つ魔法が使えないまま。
素晴らしい使い魔さえ呼べば『ゼロ』ではなくなると思っていた自分の浅はかさ。
結局、魔法を使えなければ『ゼロ』のままではないか。

ルイズが自己嫌悪で憂鬱になったところに教師がやってきた。
授業が始まる。
ミス・シュヴルーズと名乗る教師は今年からの担任だ。

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのが楽しみなのですよ」
教室を見回すシュヴルーズの視線が、ルイズとアセルスを捕らえる。

「ず、随分と変わっ……いえ、立派な使い魔を召喚したものですね?ミス・ヴァリエール」
空気を読めない失言に、生徒達から非難の視線がシュヴルーズに向けられる。
昨日アセルスによって被害を受けた太り気味の少年にいたっては、脂汗を大量に流している。
74使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:04:06.47 ID:/vHvRubF
教師であるシュヴルーズは誤魔化すように授業を始めた。
アセルスは授業に興味がなかったために、ルイズを横目で眺めている。
何度も読み返したのであろう手垢まみれの教科書、熱心にメモを取る様子。
勤勉な生徒である事は間違いない。

にも関わらず魔法が使えないというのは何故だ?
ここが学校ならば、教師達は失敗の原因を指摘しないのか?

「……土系統呪文の中でも、錬金は土のメイジの力量を測る最も分かりやすい手段と言えるでしょう」
シュヴルーズが呪文を唱えると、小石は金色に形を変える。

「ご、ゴールドですか!?」
輝きを見たキュルケが身を乗り出す。

「いえ、これは真鍮です。金への練成はスクウェアでなければ難しいでしょう。
わたしは……トライアングルですから」
勿体振って答えるシュヴルーズ。
続いて、生徒の中から一人に錬金をさせるために候補者を選ぶ。

「それでは……ミス・ヴァリエール。貴女にも錬金をやってもらいましょう」
シュヴルーズの指名に教室内がざわめく。
アセルスは蔑んでの行動かと思ったが、生徒達は本気で警戒している。

「ミス・シュヴルーズ、危険です!」
キュルケの警告に周りが同意する。
危険の意味が理解できていないのは教室に二人。
使い魔であるアセルスと教師であるシュヴルーズである。

「失敗を恐れていては何もできませんよ。気にしないでやってごらんなさい」
錬金で失敗したところで精々不完全な金属になるか石のままである。
土のトライアングルだけあり、シュヴルーズの錬金への認識は正しい。
危険というのもルイズをからかう為の言葉としか思っていなかった。
75使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:07:35.28 ID:/vHvRubF
「……やります!」
長考の後、ルイズは立ち上がった。
アセルスに魔法が失敗する様を見られるかもしれない不安はある。
だからといって逃げるのはルイズのプライドが許さない。

ルイズが教壇へ向かうと、周りの生徒達は急いで机の下に隠れた。
中には教室から逃げ出す生徒まで現れる始末。
途中キュルケが止めるよう懇願するも逆効果でしかない。
石の前に立つと、集中して呪文を唱えようとする。

「錬金!」
呪文と同時に、教室は爆発により木っ端微塵に吹き飛んだ。

-------

──爆破された教室に残されたのはルイズとアセルスの二人のみ。
ルイズは教室の片付けを命じられ、アセルスはそんな彼女を手伝っていた。
教室内は静寂に包まれている。
先に沈黙を破ったのはルイズだった。

「なんでよ……」
蚊の鳴くような声だったが、アセルスの耳に届いていた。

「なんで、何も言わないのよ……」
アセルスには彼女の言いたい事が分からない。

「見たでしょ!?私は魔法が使えないのよ!どんな魔法でも使えば爆発する!!」
身体を怒りで震わせてアセルスに叫ぶ。
一度堰を切った感情は止まる事なく、流れ続ける。

「貴女は妖魔の君なのに!強力な魔法が使えるのに!
なんで私なんかに従うのよ!?同情でもしてるつもりなの!?
無様だと思っているんでしょう!自分を呼んだ奴がこんな魔法も使えない落ち零れメイジだなんて!!
涼しい顔して腹の中で笑っているんでしょう!!」
支離滅裂な物言い。
ルイズにはもう彼女が妖魔である事も王族である事にも気遣う余裕はない。
憤りはアセルスに向けてのものなのか、自分自身へなのかルイズ自身にも不明だった。
沈黙を貫いていたアセルスが口を開く。
76使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:12:32.36 ID:/vHvRubF
「……君は自分が嫌いなんだね」
アセルスの声色はどこか儚い。
「好きになれる訳ないわよ!こんな……こんな……『ゼロ』なんか……」
俯いて涙を零す。

──認めてしまった。
自分が何一つ出来ない『ゼロ』であることを。
いや、本当はずっと前から分かっていた。
自分が魔法で出来たことといえば、使い魔を呼び出したのみ。
サモン・サーヴァントで呼ばれたのが、強大な使い魔だった事はルイズを却って追い詰めた。

アセルスの両手がルイズの頬を優しく包む。
俯いたまま泣きじゃくるルイズの顔をゆっくり上げ、眼を逸らさせないようにする。

「ごめんなさい、私は一つ嘘をついていた」
アセルスは左手で剣を鞘から取り出すと、自分の右手に突き刺した。

「な、何してるのよ!」
右手からは血が滴り落ちた様子を見て、慌ててルイズはその手を握る。
急いで治療室に連れて行こうとするルイズを制止して、アセルスは剣を右手から引き抜く。

「妖魔の血は青いわ」
「え……でも」
アセルスの手を握ったことで、ルイズの手にも血が付着している。
血は赤と青が均等に混ざったような色鮮やかな紫。
少し悲しそうな表情を浮かべたアセルスが次の言葉を紡ぐ。

「私は元々人間、妖魔の血を受けて半妖として蘇った。
半分人間、半分妖魔というこの世でたった一人の中途半端な存在になった」
アセルスの台詞だけが二人っきりの教室に響いた。
77使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:17:10.40 ID:/vHvRubF
教室の片付けを終わらせ、昼食には間に合った。
アセルスは食堂ではなく、メイドに頼んでいた洗濯が終わったので服を着替えに行っている。
スカートが着慣れずに落ちつかないらしい。

ルイズは食事にも手をつけず、考え事をしていた。
アセルスから聞いたのは、荒唐無稽な御伽噺にすら思える物語。
しかし、今朝見た夢が事実だと確信させた。
夢は一種の感覚の共有ではないかとルイズは仮説を立てていたが、裏付ける証拠は無い。

アセルスは世界でただ一人の存在、半妖。
人間からも妖魔からも忌み嫌われていた中途半端な存在。
この話を聞いたとき、貴族にも平民にも馬鹿にされ続けている自分と重なった。
だから、ルイズは彼女に答えを求めた。

如何にして周囲の敵意を乗り越えたのか?

「もう人間としては生きられないならば、妖魔として生きるだけ。
そのために、私を血を与えた妖魔との決着をつけに城へと戻ったわ」
アセルスの瞳に黒い感情が揺らめいたのをルイズは確かに見た。

「他の妖魔も人間も全て屈服させるだけの力……私にはそれだけの力がある」
ルイズはアセルスの解決策に絶望した。

「……私にそんな力なんてないわ」
魔法が使えないから『ゼロ』だと馬鹿にされているのだ。
この世界における力とは魔法。
貴族が特権階級となっているのも、平民には使えない魔法を使える為なのだから。

「いいえ、力ならあるわ。ただ気付いていないだけ……」
アセルスの声はルイズの心の奥底に眠っていた仄暗いモノを揺り動かす。

「己の苦悩を周りの世界にまき散らしてしまえばいい。
欲望のまま、君を馬鹿にするものを足元にひれ伏せさせるんだ」
16年間、他人からの悪意を受けて塗り固められた黒い感情を……
78使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:22:25.78 ID:/vHvRubF
「ルイズ!」
名前を呼ばれ、意識が食堂に戻る。
いつの間にか隣にキュルケが座っていたのを気がついた。

「何よ?ツェルプストー」
「何よじゃないわよ、さっきからボーっとして」
思考の渦に飲み込まれていたルイズは全く気がつかなかったが、キュルケは先ほどから呼びかけていた。

「別に大した事じゃないわ、考え事してただけ」
ルイズの返答に納得したキュルケが頷く。
「ああ、また派手に教室を爆発させてたわね」
いつものからかうような表情を浮かべるキュルケ。
彼女は知らない。
軽い冗談のつもりである言葉が、ルイズにある負の面を刺激し続けている事に。

『己の苦悩を周りの世界にまき散らしてしまえばいい』
アセルスの言葉が脳裏に浮かぶ。
それを抑制しているのはルイズが持つ貴族としての誇り。
しかし、膨らみ続ける感情が破裂するのは時間の問題だと気付いていない。

-------

ルイズが昼食を取っている頃、アセルスは一人のメイドを連れて着替えを行っていた。

メイドの名はシエスタ。
彼女は妖魔の君だと説明を受けていた為、アセルスへの対応は細心の注意を払う。

アセルスが着替えるために服を脱ぐと、シエスタは緊張も忘れて見惚れてしまった。
女性相手だと言うのに、アセルスのしなやかな裸体は妖しい魅力に溢れている。

「どうしたの?」
アセルスに声を掛けられて、正気に戻る。

「あ、いえ申し訳ありません!何でもないです」
慌てて頭を振るシエスタを見て、様子がおかしい理由は自分にあることを気付いた。
アセルスは魅惑の君と呼ばれるオルロワージュの血を受け継いだ為に、女性に対して虜化妖力が働く。
彼女も妖力に惹かれたのだろう。
79使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:26:35.55 ID:/vHvRubF
そこでアセルスはルイズに虜化妖力が効いていないと気がついた。
アセルスの近くにいる以上は妖力に惹かれてもおかしくないはずだ。
虜化妖力が通用しないのは同等の力を持つか、精神力を強く持ち続けている場合のどちらか。

精神を強く持つのは何も前向きな感情によるものばかりではない。
ルイズのように他人の悪意を受け続ける事で、負の感情に囚われている場合にも当てはまる。

ふと、アセルスはシエスタがルイズに対して悪意を向けていなかったのを思い出す。
魔法が使えない為にルイズに対して使用人という立場の者。
平民ですら彼女を蔑む事実をアセルスは夢で見た。

だが、シエスタには悪意がない。
ルイズの前で目を輝かせた姿は彼女を尊敬すらしていると言っても過言ではないだろう。

「ねえ」
「は、はい」
シエスタの心臓の鼓動が一気に高まる。

「貴女、ルイズに恩か何かあるの?」
「はい。私は以前ルイズ様に一生掛けても返せない恩寵を頂きました」
シエスタはアセルスにかつての出来事を語り出した。

-------

──今から、半年ほど前。
シエスタは夜遅く仕事をしていた最中、階段から足を踏み外して全身を叩きつけてしまった。
助けを呼ぼうにも、怪我で声を上げる事すらできない。
意識はあったものの、身体を動かそうとすれば激痛に襲われる。
見れば右腕はあらぬ方向に曲がっており、足も折れている事が自覚できた。

シエスタが痛みと孤独に押し潰されそうになる中、人影が近づく。
魔法の練習で外に出ていたルイズは倒れているシエスタに気付いたのだ。

「ねえ、大丈夫!?」
慌てた様子で声をかけられ歓喜の表情を浮かべるシエスタだったが、
彼女が『ゼロ』と呼ばれるメイジであることに気がつく。
80使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:29:35.82 ID:/vHvRubF
シエスタは陰口へ積極的に参加しないまでも、周りに話を合わせた事はある。
その際に彼女を悪く言ったのも一度や二度ではない。
自分が悪口を言っていたメイドだと気付かれていたら……と思うとシエスタは絶望した。

貴族が平民を、まして暴言を吐くような平民を相手に助ける事などありえない。
故郷に残した家族の事が走馬灯の様によぎり、シエスタは意識を失っていた。

──シエスタが次に目を覚ましたのは、ベッドの上だった。
多少の痛みは残っているものの、体を動かせないほどではない。
助かったのだと安堵すると、後ろから声を掛けられる。

「起きたみたいですね」
シエスタが意識を取り戻したことで、治療を行っていた老婆のメイジが診断を行う。

「まだ身体は痛むかもしれないけどもう心配ないでしょう」
怪我が治った事を確認するとシエスタに告げた。

「あ、ありがとうございます」
「お礼なら私じゃなくてミス・ヴァリエールにしてあげなさい。
秘薬の代金を出したのは彼女ですから」
そう言い残して立ち去る老婆。
彼女の言葉でシエスタはようやく気付く。

重傷を治療するなら黄金並に高価な水の秘薬が必須だと。
思わず青ざめると、老婆との入れ替わりでルイズがやってきた。

「あ、あのミス・ヴァリエール!危ないところを助けていただきありがとうございます!」
お礼を言えたもののシエスタはこの後、どうしていいか分からずにいた。
一平民であるシエスタには治療費を払う手段はない。

「ねえ、シエスタ。貴女は平民で私は貴族だって事は知っているわよね?」
「は、はい……」
ルイズの言葉を聞いたシエスタに最悪の想定が浮かぶ。
借金と言う形を取れば、暴利を貪られて一生奴隷扱いという可能性もある。
奴隷制度自体はハルゲニアにおいても、とっくに廃止されている。
最も平民と貴族という階級差がある以上、奴隷の様な扱いを受ける平民の話は珍しいものでもない。

やはり貴族とはそういうものなのだと、シエスタは暗鬱としていた。
しかし、次にルイズの口から出てきた言葉はシエスタの予想を遥かに超えるものだった。
81使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:36:30.02 ID:/vHvRubF
「だから心配しないで、治療費なら払う必要はないわ」
「え?」
シエスタは思わず間の抜けた返事を返す。

「困っている平民を助けるのは貴族の責務よ。
まして重傷を負った者を見捨てるなんて人として恥ずべき行いでしょう」
ルイズの言葉は確かに貴族として本来の義務である。
貴族は自らの領民を保護し、代わりに平民は労働力を提供する。
だが、そんな建前を律儀に守る者はいない。

貴族は金と権力を貪り、平民はそんな貴族のご機嫌取りを行い、気分を損ねたものは処刑される。
平民が事故で死のうが言いがかりで処刑されようが、気にする酔狂な貴族なんてものは存在しない。
シエスタを含めた、平民が持つ身分への認識。
それが今目の前の少女によって、あっさり打ち崩された。

「……ヴァリエール様」
「何?」
突然かしこまったシエスタを見て困惑している。
そんな彼女に構わず、ただシエスタは地面に両膝と頭をつけた。
祖父から教わった、相手へ最上級の敬意を示す姿勢。
シエスタが一般的な思想を持つ平民ならば、自らの行いを暴露しようとはしなかっただろう。

「私はヴァリエール様のように高潔なお方の施しを受けるに値する人間ではありません」
ただ、シエスタは自分が許せなかった。

「私は身分の差も省みず、ヴァリエール様を不当に評価しておりました。
魔法も使えないのに、家柄だけで貴族を名乗っていると」
これほど誰よりも貴族であろうとする少女に対して、周りに流されるままに彼女の陰口を叩いてしまった事を。
命を助けてもらうご懇情を賜りながら、感謝もなしに自分本位な思い込みで彼女に失望した己の卑小さ。
ただ自分に許されるのは頭を垂れ、地に伏せる事のみ。
82使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/06(金) 23:40:16.20 ID:/vHvRubF
「知っているわ」
シエスタが驚愕で思わず、ルイズの顔を見上げる。

「貴女の黒髪は目立つもの。
気にしてないわよ、別に中傷してたのは貴女だけって訳じゃないんだから」
自嘲気味にルイズは笑う。

シエスタは涙が止まらなかった。
彼女は自分が陰口を叩いた平民だと知りながら、怪我をしていたと言う理由だけで助けてくれたのだ。
シエスタが『初めて見た』の貴族の姿は何より尊かった。

「ヴァリエール様……この受けた大恩、私には返す手段がありません。
せめて貴女に生涯仕える事で、僅かですが返させて下さい」
涙を拭うことなく彼女の手を強く握り締め、再びシエスタは頭を伏せる。

「貴女の名前は?」
「シエスタといいます」
名前を聞いて、ルイズは少し思慮する。

ルイズにとっては、仕える平民にも誹謗されるのなんて日常茶飯事だった。
しかし、本人を前にすれば取り繕う為の方便を口にする。
魔法が使えないとはいえ、貴族相手に侮辱すれば処罰を受けるのは子供でも理解できるから。

このメイドは自らへの罰を覚悟で侮辱の非礼を詫びたのだ。
その上で、魔法も使えない自分に仕えさせて欲しいと懇願している。

「分かったわ、シエスタ。
貴女が私に仕えてくれるというなら、まず顔を上げて頂戴」
ルイズの言葉通りにシエスタは顔を上げる。

「それと私の事は名前で呼ぶ事、いいわね?」
ルイズが学院に来て初めて見せる笑顔。
その表情にシエスタは心奪われた。
83使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/07(土) 00:27:41.13 ID:HBlb5ZB8
こうしてシエスタはルイズの専属メイドとなった。

ただ学院で専属メイドを取る形になれば、周囲がとやかく言うのは容易に想像できる。
なのでルイズが学院にいる間、シエスタは学院メイドとして働きながら仕える様に命じた。

ルイズの提案にシエスタは一も二もなく頷き、今に至る。

「私は本物の貴族というものをルイズ様に出会って、初めて知ったのです」
嬉しそうにルイズとの出会いを語るシエスタを見て、思わずアセルスはジーナの姿を重ねた。
ジーナと話したのは他愛のない話題ばかりだった。
それでも彼女との会話は息の詰まるような針の城で、
妖魔になった現実を受け入れられずにいた自分にどれだけ心の支えになった事か。

きっとルイズにとっても同じなのだろう。
なぜなら夢では彼女の笑顔を見ることは一度もなかったのだから。

外が騒がしいことに気付いたシエスタが様子を見に、部屋を出て行く。
アセルスもルイズの元へ向かおうとすると、シエスタが血相を変えて戻ってきた。

「ルイズ様が!ミスタ・グラモンと決闘しているそうです!!」
84使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/07(土) 00:31:46.17 ID:HBlb5ZB8
さるの所為で遅くなりましたが第4話の投下は以上です

せっかくなんで決闘イベントの展開も微妙に変える予定
85名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 02:03:48.99 ID:mrvXirAe
アセルスの人も、スパーダの人も投下乙でした。

ところで、4に小説なんてあったの? ゲームしかやったことないけど。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 04:29:23.20 ID:iL75pytd
4年ほど前このスレでスタースクリーム召喚を書いていた者です。
更新は途中で頓挫してしまいましたが、その内の小ネタとしてwikiにあるスタースクリーム多重召喚を、
今回続編というかリメイクという形で書き直しました。4時40分頃から投下します。
忍法帳のレベルがアレなので早々避難所にいくかもしれませんが。
87序幕:2012/04/07(土) 04:41:54.34 ID:iL75pytd
 
 1人の少女が、森の中を走っている。

蒼く、長い髪を靡かせ、木々の合間を跳び跳ねるように走っている。
だがその表情は、森林浴を楽しんでいるといった綻びに見えない。
なめし皮で縫われた服には、いたる所に汚れや傷跡がある。手には、不格好な大きな杖が握られている。
そうした非穏和的を窺わせる格好の少女は、背後から迫る巨大な追跡者の息遣いを肌に感じていた。

追跡者が咆哮する。鳥の発するものに似ているが、それにしては足音が重い。尻尾を引き摺る音も聞こえる。

大木をなぎ倒し、追跡者はその姿を現した。
それは、赤黒い鱗に包まれている。鋭い嘴が少女の背中を貫こうとする。
熊の様な大きな腕が少女の身体を捕らえようとする。蛇に酷似した、いや蛇の生体そのものの尻尾が、少女を威嚇する。
胴体には、無数の動物の頭、獣の類から果ては人間のものが浮き上がっており、それらが悲痛な呻き声を上げていた。

人間のエゴが生み出し、誰からも誕生を祝福されることなく、誰からも愛されることなく、
ここファンガスの森で、本能に従い殺戮を繰り返すだけの余生を過ごすそれを、キメラドラゴンといった。

蒼い髪の少女は、その餌となる哀れな犠牲者の1人に過ぎない、筈だった。
少女は、キメラドラゴンの一撃を飛翔して避けた。獲物の規定外の動きにキメラドラゴンは叫んだ。人間の女性のものに似ている。
彼女は着地すると、目標を見失ったキメラドラゴンに杖を向け、詠唱を開始した。

 ――ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウェンデ――

杖の先に、巨大な氷の塊が形成される。少女の居場所に気付いたキメラドラゴンは、突進する。
複数ある頭の内のひとつ、先程の女性の叫びの元と思しき、幼い人間の頭を膨張させ、大きく口を開いた。
だが、スペルを完成させた少女は揺らぎ無く、キメラドラゴンに対し「ジャベリン」を放つ。この瞬間、勝敗は決定した。
氷の塊はキメラドラゴンの頭を貫き、苦しみすら与えることなく、その作られた命を散らせた。
頭を欠いた巨大な肉の塊が、滑るように少女の目前に倒れる。

少女は、その死を、勝利を喜ぶことなく、死後硬直しているキメラドラゴンの残骸から、赤黒い鱗を1枚もぎ取る。
その表情は、そもそも感情のそれを欠落しているかのように冷たい。
それから、今しがた走ってきた方角へ、足を急がせた。
88序幕:2012/04/07(土) 04:43:44.97 ID:iL75pytd
 
数分ほど駆けた先、誰かが大木に凭れ掛るように蹲っているのが見える。真っ赤な血で染まった、人間の、若い女性だ。
束ねた長く黒い髪を右肩に垂らし、素肌は日に焼け、女性ながら鍛えられた身体。
どこか野生的だが端整な顔立ちは、しかし住む環境が違えば麗人として通っていたであろう。
少女はその女性の元に掛け寄った。

「ジル、確認してきたわ! キメラドラゴンはあなたの矢で息絶えたよ! 勝ったんだよ!」

ようやく、少女の顔に感情による変化が浮かんだ。だがそれは言葉の調子と裏腹に、悲しげなものだった。
ジルと呼ばれた女性の腹部には、衣服を破って大きな傷がある。負ってからまだ時間が経過していないため、出血が続いている。
内臓の欠片もかなり失っているはずだ。水魔法による治療をも意味と為さない、深い損傷だった。
だが、ジルの眼にはまだ光が灯っていた。重く、口を開く。

「シャルロット……逃げろって言ったじゃないか……本当かい?」
「えぇ! ほら、奴の鱗だよ。間違いないでしょう!?」

蒼い髪の少女――シャルロットは、勝利の証拠たる鱗をジルに見せると、もうそれ以上喋らないで、と言う。
だが、ジルはキメラドラゴンから受けた致命傷で、もうどれだけ足掻いても助からないのを悟っているのか、発言を続けた。

「わるいんだけど、さ……。私を‘日溜り’へ、連れてってもらえない、かな」
「ジル……」

シャルロットはジルに肩を貸し、ゆっくりと歩みだした。
魔法の力は消費し切ったため、フライの魔法による飛行も出来ない。
ジルの傷口には満足な処置すらなされていないため、鮮血が絶え間なく流れた。
だがその眼には、まだ光が宿っている。


――シャルロットは、ガリア王国オルレアン大公の愛娘として、幸せに暮らし、愛情いっぱいに育てられた。
優しく可愛らしく、優秀な彼女の成長を、家族だけでなく国民の誰しもが心から祝福してくれた。
しかし、王国の冠を巡る、人間のみが持ち合わせる暗闇に捕捉され、彼女は僅かな時間で大切な人々を失う。
先達て、祖父の崩御……この死については、彼女自らの目で見たのではないため、実感こそ湧き難かったものの、深い悲しみを刻む。
ガリア国の内政が、音を立てて崩れるのを幼いながら理解した。そしてこの1人の国王の死が、潜伏していた影を暗闇に変貌させる。

暗闇は、父オルレアンを永遠の闇に連れ去った。
黒い蝕みは浸透を続け、母親と、遂にシャルロット当人に及んだ。
母はシャルロットを庇い、死別こそ免れたものの、その蒼い目からは光が失われる。
以降、光の無いうつろな目をした母親は、シャルロットを娘として認識しなくなった。

暗闇は、従姉妹であるイザベラにも影を覆う。幸いにも彼女の目に光は灯されたままだったが、心は闇に支配されてしまう。
せいぜい幼年期の悪戯程度に収まっていたシャルロットへの対抗意思が、明確に敵意へと変貌していた。
イザベラに憑依した闇は、シャルロットを「ファンガスの森」へといざなった。

闇に翻弄された揚句、キメラドラゴン討伐という名目の死刑を下され、森を徘徊していたシャルロットに、光が訪れる。
森に巣くうキメラ撲滅を果たさんとする、ジルとの出会いだ。シャルロットが久しく触れた、無垢な光を宿した目の持ち主。
ジルはその光で、闇から逃げるも力尽きかけたシャルロットに、おぼろげながら道標を示してくれた。

しかし……その光も、かのキメラドラゴンによって、今まさに尽きようとしている。

ジルの咳き込みの回数が減ってくる。シャルロットは‘日溜り’へ急いだ。

ファンガスの森での滞留期間、シャルロットとジルは、ジルが‘日溜り’と呼ぶその場所を活動拠点にしていた。
そこは、洞窟内でなく、そもそも本来、外敵の襲来から身を守るに適した場所ではない。
森の中に忽然と存在する開けた草原で、周りを囲んだ木々の間から日照りが差し込む、明るい空間だった。
だがそこは、ファンガスの森において、キメラ達の侵入を許さない唯一の地帯。
怪物達がそこを拒む起因は‘日溜り’の面積の半分を占めるように鎮座する、あまりにも大きな‘鉄塊’の存在にあった。
89序幕:2012/04/07(土) 04:45:31.38 ID:iL75pytd
 
鉄塊は、何かしらの動物の形を模している。が、既知の生命の形状からは、あまりにもかけ離れていた。
胴体よりも大きい手足。身体に比例してやや小さな頭。歪ですらある。
全身に黄土色が塗られている。身体側面片方に、何故だか犬の絵が印しつけられている。人の手が加えられていたのは間違いない。
脚部には、黒い車輪がいくつか付けられている。柔らかくも弾力あるそれは、ハルケギニアではありえない技術で開発された代物だ。
背面からは長い尻尾がだらんと垂れ、その端に鋭い8本もの爪が生えている。
触れればこちらが怪我をしてしまいそうな……暴力的な象徴を、全身にびっしりと有していた。

今にも動きだしそうなその鉄塊だが、目に光は無かった。手足をハの字に広げ、頭を垂れて佇んでいる。異質な人形の様だ。
だがジルによれば、それは間違いなく生命体で、生前はその目方の重量さからは考えられないほど身軽に跳ねていたという。
全身には、そこから動かなくなって幾積年を窺わせる蔦や、鳥の糞から生えた植物が覆われている。

そして――その鉄塊の他に、人間の白骨が数体あった。鉄塊の巨体に寄り添うように。
白骨は、傷んではいるが原型は保たれており、この場所が如何に侵入者を遠ざけていたかを窺い知ることができる。
野外に放置されていることによる風化も、鉄塊が壁となり防いでいたのだろう。
数は3人分確認できる。下半身の欠落した大人のものと、肋骨の欠けた、形状からして大人の女性のもの。
それと、その2つの白骨死体に挟まれるかのように、頭の欠落した小さな女の子の骸があった。

1つの巨大な鉄塊と、3つの亡骸が共に眠る、温かく、奇妙な場所。それが、‘日溜り’だった。


――日溜りに辿り着いた2人。
ジルはシャルロットの元を離れると、最後の力を振り絞り、よろよろと亡骸達の元へ歩む。
シャルロットは、その姿を直視出来なかった。目をそらし風の音を聞いた。ジルが、骸の前で仰向けに倒れた。
彼女の視線の先には、鉄塊の大きな頭があった。光の消えた2つの空洞で、あたかもジルの顔を窺っているに見える。
ジルは吐血しつつ、鉄塊に投げかけるように、か細く声を上げた。

「今まで……本当に、ありがとう。最初は、あんたの顔を見たとき、随分おっかない、面構えだな、と思ったもんだよ。
 だけどあんたは、ここでずっとあたしの、家族を守って、くれた」

ジルは数年前、猟人一家である家族と、この森に移住した。屋敷を建て、狩りをしながら生計を立てていた。
ファンガスの森は、魔法学者が取組んでいたキメラの研究が失敗し、研究塔を中核に放棄、封鎖された禁断の場所だ。
誰も近寄らない、近付けない、そんな化物の無法地帯に、ジルの家族は獲物を求め、敢てこの地に住み着いたのである。

森には先客がいた。
競争相手ともいう。巨大な鉄塊だ。一家と目的が同じなのか、森で獲物を狩る光景に何度か遭遇したという。
ジル達は当初、誰かが送り込んだ大型ガーゴイルであろうと考えた。
しかし幾度かの接近で、それが明らかに自我を持つ生き物だと判った。生死と密接に関わる猟人だからこそ、そう判別できたのだ。
未知の知的生命体である鉄塊は、ジル達に歩み寄ることはなかったが、その鋭い爪を向けてくることも無かった。

月日が経ち、猟人暮らしに嫌気がさしたジルは、屋敷を抜け出し、逃げるように単身街へ出稼ぎに。だが、長続きはしなかった。
森に帰った彼女が見たものは、荒らされた屋敷だった。鉄塊の仕業かと頭を過らせたが、屋敷内に散らばった動物の羽毛から、
キメラ達の猛攻だと判った。それも、ある程度知恵のあるキメラがいたようで、計画的な攻撃らしかった。
血相を変えたジルが森の中を彷徨い、辿り着いたのが、後々‘日溜り’となるこの場所だった。

家族と鉄塊は、一緒にそこにいた。共に、こと切れていた。周りにはキメラ群の死骸も散らばっていた。
相討ちだったらしい。3人の家族は、身体の一部を喰われていた。
鉄塊には一見外傷は認められなかったが、急所を突かれたのやもしれない。
その惨状は、最後まで戦った両親、鉄塊、そして妹の勇気を物語っていた。

「幼い妹まで戦ったんだ。あんたも、力を貸してくれたんだよね。なのにあたしは……」

キメラの死骸だけを排除し、家族の死体は放置した。家族をあくまでそこに居させたい、常人には理解し難いジルの我儘だった。
細菌が死体を骨だけにする過程における腐臭も、蛆が腐肉に湧く惨状たる光景も、気にならなかった。
ジルは、残るキメラの撲滅を決意し、数年の間たった1人で戦い続けた。そして数週間前シャルロットとめぐりあい、今に至る。
90序幕:2012/04/07(土) 04:47:15.00 ID:iL75pytd
 
シャルロットは、目をそらすのをやめた。ジルの身にそっと寄り添い、苦痛から絞り出されるような彼女の声に耳を傾けた。

「父と母は、屋敷での襲撃で、全滅を避けた。あんたは、死んでからも、そのでっかいからだで、
 キメラたちをふるえあがらせた。親玉のキメラドラゴンですら、だよ。すごいよね……」

ジルの声が、徐々に小さくなる。

「妹は、シャルロット、あんたとそう、かわらない歳だった」

消えかけた瞳の光の見据える先が、鉄塊からシャルロットへ移る。シャルロットは、ジルの血だらけの手を強く握った。
その手は、冷たかった。

「いいかい、あんたは、生きている。あたしみたいに、自分で閉ざしちゃだめだよ――」

光が、あっけなく、静かに消滅した。瞼こそ開いていれど、ジルはもう何も見ていない。
シャルロットはジル、だったものを揺さぶった。

「消えちゃ駄目……」

瞬間、シャルロットは暗闇の襲来を察知した。彼女の足元に、闇が触手となって絡みつく。肢体を弄る様に、闇が這い寄る。
飲まれる。この暗闇に、幽閉される。
キメラドラゴンとの決戦で、ジルが深手を負わされた直後、シャルロットは光を失いたくない一心で「ジャベリン」を放った。
結果、キメラドラゴンは確かに倒した。だが、キメラドラゴンの存在そのものは、暗闇では無かった。
かわいそうな醜い不幸の集合体を、殺しただけに過ぎなかったのだ。

ジルの亡骸の手を握ったまま、シャルロットは眠ろうとした。ジルの遺した言葉も、無視しようとした。
この闇の先に、父が待っているかもしれない。優しい父が、出迎えて優しく包容してくれるかもしれない。
いっそのこと、楽になってしまおう。シャルロットは、身を投じるかのように瞼を閉じた。
その時――

風が吹いた。森がざわめき、取り囲んだ木々が揺れた。そして、太陽の射光が‘日溜まり’をより明るくする。
鉄塊が日光による反熱を発した。ジルの黒髪が、生前のように靡いた。
そしてシャルロットは、光を見た。
その光は、ほんの僅かなだけ煌めくと、すぐに消えてしまった。だがそれは確かに、光だった。
幾分、体を硬直させる。身体をぴくりとも動かさない合間、心の中であらゆる心境と葛藤を乱舞させた後、1つの結束に考え至った。

彼女はゆっくり立ち上がる。長く蒼い髪が揺れる。腰に備え付けている用具入れから、キメラドラゴンの赤黒い鱗を取り出した。
鋭い鱗を使い、髪を切り落とした。切られた髪は風に乗って森の中へ消える。少年の様な、短髪になった。
ジルの抜け殻を見る。土葬はしなかった。家族と、風変りな戦友と、土に埋めず一緒に寄り添わせる事にした。
きっとジルが、そう願ったように。
シャルロットは、血糊で真っ赤に染まったジルの左手の甲に触れ、祈った。そして、日溜まりを後にした。

キメラドラゴンの鱗と爪を手に、イザベラの元へ戻ったシャルロットは、その名の破棄を命じられる。
そして替わりに、幸せだった頃に母から買ってもらった、素朴な人形の名前を、自らの新しい名とした。

タバサ。

タバサは、生存こそすれど心を何処かに置いてきた母を見つめ、誓った。
明るさを封じた。感情を抑えた。寡黙を、自分自身に約束した。
魔力を、怒りを、それに暗闇を味方につけた。
失われた光を探しあて、もう再び照らすために――。



   スタースクリームだらけ  


   リベンジ・オブ・ザ・ディセプティコン 第1幕 前編
91スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/07(土) 04:49:39.58 ID:iL75pytd
 
 ――時は数年、流れる。物語は、ハルケギニアの諸国の一つ、トリステインへ。

とある夜。
トリスタニアの街が、オレンジ色に染まっている。朝焼けや日暮れの黄昏によるものではない。
街の外れにある林が、熱気と灰を下町に降り注ぎながら、濛々と燃えている。
火柱の合間に黒い影が複数見える。人型だが人間のそれでは無い。オークなどの亜人ですらない。それは回りの木々よりも背が高い。
何体かが、街への境界線に踏み入れ、鋼鉄でできた腕で、建物をいとも簡単に叩き潰す。
黒い影だった巨人たちの姿が、炎と月光に映し出される。鎧を身に纏い、剣を装備している。

ヨルムンガント。

無慈悲で大柄な、鉄の人形。
逃げ惑うトリスタニアの人々が今現在その名を知る由はない。
その巨人達の差し金が、隣国ガリア王国であるという事実は尚更だ。
人々が出来ることと言えば、貴族も平民も関係なく、一切合財を手に、悲鳴をあげながら遁走するのみである。
勿論、抵抗する者もある。トリステイン王軍を始めとし、魔法衛士隊、銃士隊が一団となって戦っていた。

だがヨルムンガントの進攻だけが、襲撃者による攻撃ではなかった。
巨人達の後方から、人間の頭1つ分ほどの火炎玉が引切り無しに飛来、街の破壊に拍車をかけている。

王軍達は、その火炎玉を回避したり防御魔法で守りに徹するだけでも手一杯であった。
銃士隊は、鎮火や住民達の避難誘導にあたっているが、人々は恐怖からか自我を失い恐慌、安全圏への移動すら困難だ。
敵襲そのものより、むしろこの人間の感情による衝突が、状況の悪化を促していた。

銃士隊隊長アニエスは、混沌と化したブルドンネ街大通りで、声を嗄らしながらも指揮をしている。
ひとまずここで住民達を落ち着かせ、足並みを揃えてから、街で一番守りの堅い王城敷地へ避難、
城の裏側からの退路で街の外へ逃げさせるという算段だ。だが、やはり混乱は収まらない。
大通りの店のそこかしこで、喧嘩沙汰が起きている。火事場泥棒でも現れたのだろう。

火柱と火炎攻撃の熱、そして大勢の人間からなる密集温度により、アニエスの体内からみるみる水分が失われる。
普段から体力作りに勤しんでいる、さしもの軍人アニエスも、危うく膝をつきそうになったその時、数体の幻獣が現れた。
グリフォンだ。そして、幻獣に跨りし黒マントの男達は、魔法衛士隊である。
アニエスは、衛士隊の先頭に位置する男を見つけると、萎れかけた身体に活を入れ、走り寄った。

「ワルド隊長! 戦局は!?」
「芳しくない。レドウタブール号は出航するようだが、至急の増援とは見込めんな」
「ですがあの大型ガーゴイルはそこまで接近しています、猶予はありません」

その時、ヨルムンガントが何かを圧し折る音が聞こえた。
住民達が悲鳴を上げる。
92スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/07(土) 04:51:41.12 ID:iL75pytd
 
ワルドは、進行を続けるヨルムンガント達に憤怒の視線を送りつつも、感情を抑えてこれからの一計をアニエスに伝える。

「やむを得ん、逃げに徹する。我々はこれより退路の確保に移る。敵は一方からしか進攻していないから、時間はかからん筈だ」
「心得た、我々はここでの待機、誘導を継続します」

ワルドは頷くと、さっそうと持ち場へと向かうが、やはりその顔には疲労を見せていた。
誰もがへたばり果てていた。気づけば喧嘩は収まっており、皆地面へ座り込み、ある者は憤慨し、ある者は泣きじゃくっている。

しかしヨルムンガントは疲れを知らない。20メイルもの巨躯をゆっくり、確実に歩ませていた。
途中、トリステイン側の土系統のメイジによって作り出されたゴーレムが何体か戦いを挑んだが、ものの無残に土くれに還った。
味方のゴーレムが崩れる度、人々からは落胆の声が漏れた。

アニエスは、部下達の士気具合を見る。彼女達銃士隊は、魔力はなくとも命果てるその時まで戦う気概を持つ。
女王アンリエッタからの、住民を守れという使命には、銃士隊として、人間としてやり遂げるつもりだ。
だがそんな彼女達も、顔を火照らせ、身体の節々の悲痛に耐えている。崩壊も時間の問題か。

ふと、アニエスは夜空を見上げる。
地上での喧騒が嘘であるかのように、星は音もなく光り輝き、
2つの月は神秘的な存在感を示し、平常的でありつつも幻想な夜空を彩っていた。

アニエスは、その壮大な空虚さを前に、ほんの一瞬だけ頭をからっぽにする。
故郷が猛火に包まれたあの日も、夜空はこうも静かだったのだろうか。
星の光とはこんなにも力強く、綺麗だったのか。この半生で、綺麗、と感じたことはあまりなかったな。と、独白までこぼす。

が、瞬時にそれは現実へと引き戻された。視界に入った、火災による煙や粉塵、そして……

音をたててこちらに飛来してくる、5つの、巨大な飛行物体によって。

アニエスは、目を見開いた。どれも大きさは15メイル前後でほぼ均一だが、色や形はそれぞれやや異なる。
その物体たちは、グリフォンや竜といった空飛ぶ獣ではない。人工物でできている。

が、フネでも無い。木製ではありえない照りを放ち、鋼鉄製だと判るに加え、明らかに飛行速度が違っていた。
言うなれば、大きな機械仕掛けの鳥、といったところか。
現在のハルケギニアに、あの5つの飛行物体以外、音速を超える存在はない。
アニエスは、空を見上げながら、先程ワルドとやり取りした時以上に、活力を引き戻した。

「来てくれたか!」

93スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/07(土) 04:54:02.49 ID:iL75pytd
 
 5機の物体は、赤と白の色彩が施された派手な飛行機械を先頭に、V字の編隊を組んで飛んでいる。
ややあって、後方の2機が、派手な音と共にその姿を変形させた。
機械仕掛けの鳥から打って変わり、さしずめ、背中から翼の生えた巨大な鉄の人間、とでもいうべき形状へと成ったその2体は、
編隊から離れ、戦場へ降下を開始した。空気抵抗による轟音が鳴ったかと思うと、
2体の巨人は着地と同時に脚部をフルスイングさせ、それぞれヨルムンガント達に強烈な回し蹴りをお見舞いする。
落下速度と重力の掛け合いで、両者とも見事にヨルムンガントを仰向けに倒させた。

2体の内、紅の体躯の持ち主が、左腕に備え付けられた巨大なスティックを、倒れたヨルムンガントの1体に押さえつけ動きを封じる。
すかさず背中の左翼を外し、右手に握りその形状を大剣へと変え、ヨルムンガントの胸部に突き刺した。装甲に亀裂が入る。
それでも尚抵抗するヨルムンガントは、スティックを掴み、へし折ってしまう。

だが紅の巨人はそれに動揺もせず、胸部に突き刺した大剣をひき抜き、逆手に構えなおし、勢いよくヨルムンガントの首に振りおろす。
大剣の刃が発光する。ヨルムンガントの頭部は鈍い音を立てて胴体から離れ、ようやく完全に動きを停止させた。
紅の巨人は、赤い光を放つ大剣を握りなおし、残るヨルムンガント達を睨みつける。その隣に、もう片方の巨人が近寄った。

『なかなかやるねぇ、アルちゃんよ!』
『思いのほか頑丈だ。油断するな』

2体の巨人が、会話によるやり取りをする。声質は似ているが、口調はまるで違う。
アルちゃん、と呼ばれた先程剣舞を披露した紅の巨人の動きには、無駄がなかった。
変身、降下と同時に剣とスティックを装備、敵に一撃を加えたかと思えば、有利な攻撃部位を見抜き撃破する。

この一連の流れを称賛した側の巨人は――土色に近い赤と、薄い紫色に身体を染めている。
その顔立ちは、人間でいうところの顎が非常に尖っており、ある意味で印象に残りやすい。
片や紅の巨人が端整とも言える白面の顔つきであるに対し、こちらはとても個性的とでも言おうか。

一見てんで色姿形の異なる2体だが、機械の鳥から変化しただけあってか、背中に巨大な翼を付けていたり、
肩や足元に噴射口があったりと、飛翔のための必要部位が身体にあるという共通点が見て取れる。
そんな2体の襲来を前に、ヨルムンガント達は動揺したかのように、その場から数歩後退した。

『ほほう、このイケメンのイケメンによるイケメンすぎる登場に、奴ら怯んでいるようだ!』
『体制を立て直しただけだろう、空気を読め空気を。しかしこいつら何者だ……?』

やや緊張感に欠ける会話をしながらも、2体は戦闘態勢をとり、ヨルムンガント達を牽制する。
身の丈10メイル弱の彼らはヨルムンガントの体格をひと回りほど下るが、その程度の差は意に介していない威風堂々ぶりだ。

大通りで絶望に暮れていた住民達から、歓喜の声が上がる。その間、アニエスは負傷した仲間を背負い、
副隊長ミシェルに指揮の継続を任せると、街道から離れ、逃げ遅れた住民の一時避難場所である広場へ移る。
そこは戦いの光景が間近で目視できる程の位置にあるため、大通りよりもさらに危険である。

大怪我を負って歩けない兵や住民が大勢いる。彼らを一刻も早く医者のいる安全圏へ移動させたいと焦るアニエスの前に、
2つの巨大な物体が飛来した。あの戦っている2体とはまた別のものだ。
赤白の物体と、黒い物体は、変身はせず、機械仕掛けの鳥――飛行機の形態のまま、広場の端に着地する。

それぞれ機首に備え付けられている透明な蓋――つまるところのキャノピーが開き、2人ずつ、合計4人の少年少女が降りてくる。
内3人はフライの魔法でふわりと地面に降り立つが、残る1人は重力に身を任せて落下してしまった。
赤と白の物体、先程のV字編隊の先頭にいたもの、が高らかに大笑いをした。
落下した少女は、痛みに耐え、ピンクの髪に付いた砂を払うと、その大笑いに対し怒鳴りつける。
ルイズである。一通り罵詈雑言を飛ばした後、アニエスへ振り向く。

「アニエス、救援に来たわよ!」
「すまない。想定だにしていなかった敵だ、かなりの被害が出ている」

アニエスが、背後の怪我人達のほうへ顔をチラと向ける。ルイズは水を取り出し、彼らの傷口を診る。
残る3人、ギーシュ、キュルケ、モンモランシーも駆け寄り、まずは出来る限りの応急処置を開始した。
94スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/07(土) 04:56:12.78 ID:iL75pytd
 
手当てをしながら、キュルケがアニエスに言う。

「ビーツーとリーダーさんで、皆を運びましょう。急がないと」
「そうしてもらえるのは助かるが、手数が減ってしまう。彼らに勝算はあるのか?」
「心配いらないわよ。ねぇビーツー!」
『そうね。敵の数は知れているわ、残る3人でも征しえる筈よ』

黒い物体側が女性口調で……だが男性の声で、キュルケに答え、そのまま変身を開始した。
透明だったキャノピーが黄色に発光し、2本の脚を展開すると、上半身部分を回転させながらむくりと起き上がる。
背面に折りたたんでいたと思しき2本の腕を露出させ、頭を出し、それは人型へと成った。
マスク状の口元に、光る冷たい眼が、その顔の表情を他の者に窺わせない。
彼女は……いや彼は、人々を見下ろしてから、すぐ間近で繰り広げられている戦いを見据えた。
すると――

『ちょっと待てよ、なんでこの俺様が難民救助船みてぇなマネをしなくちゃならねぇんだ!?』

赤白の飛行機がそう喚き、こちらの方も変身を開始する。
独特の機械音を唸らせながらの変形プロセスは、先の3体の変身と比べ明らかに物理的な無茶があった。
例えるならば、粘土をこねて形を造るように、その手足はどうやって生えたのか、その色はいつのまに塗りつぶしたのか、
と問いただしたくなるような、説明しがたい変化であった。兎にも角にも、それは巨人へと成った。
黒い頭部からは赤い眼光を放つ。二の腕と脚部は白色、胴体と腰は赤色、前腕と拳と足元は青色で、目に悪い程カラフルな配色だ。
人型に成ったと同時に、ルイズと痴話喧嘩を始めた。

「わがまま言ってんじゃないわよ! 今どーゆー状況か判ってんの!?」
『我儘ぁ? 戦術上、俺が残って戦いを指揮するのが一番得策に決まってるでしょう!』
「とか言っていつもドジこくのがアンタじゃない! タルブの時だって……」
『やってみなきゃわからんでしょうが! その臆し具合があなたの悪い所だってんです!』
「言わせておけば……っ!」
「ちょっと、ルイズ! リーダー! 漫才やってる場合!?
 アルと役目を替わらせましょう、それなら文句ないわよね、リーダー?」

モンモランシーが喧嘩を仲裁し、呆れ顔で提案をした。赤白の巨人は、いてもたってもいられない挙動をしている。
黒い巨人も、やれやれと言いたげな素振りで赤白の巨人の肩を叩く。

『仕方ないわね。リーダー、ひと暴れしてきてちょうだい』
『へっへっ! 俺様がいないと始まらないってな!』

赤白の巨人が、意気揚々と戦場へ駆けだす。振動が辺りに響く。
ルイズはまだ怒鳴っているが、ギーシュが皆の手当てが優先だと制した。
先程よりリーダーと呼ばれる巨人は、走りながら大声で叫ぶ。

『スタースクリーム軍団!! あのポンコツどもを蹴散らすぞ、この俺に続けぇーっ!!』


地上での戦いは続く。その上空、星が輝く夜空で、救援隊のうち残る最後の飛行機が旋回しながら飛んでいた。
それは、色彩は灰色でなされやや地味だが、形状は‘空を飛ぶ’ことに鋭意され流線形を描いている。
よって飛行速度は他を頭一つ抜き、風を切って飛ぶ姿もブレが無く、より洗礼されているように見える。
そして、他と同じように意志を持つその飛行物体は、内なる怒りを少しずつ漏らしてもいた――


 ……ヒトに都合良くあしらわれ……他愛なく触れ合い……人命を優先する……これではまるで……


搭乗者たるタバサは、黙って、眼下の戦局を見計らっていた。
95スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/07(土) 04:57:43.14 ID:iL75pytd
 
 スタースクリーム。

同じ名前、同じ巨大金属生命体、同じく飛行機への変形を可能とする特徴でありながら、互いの存在する時系列が異なるためか
それまで接点の無かった彼らが一堂に会したのは、異世界ハルケギニア・トリステイン学院での召喚の儀式においてであった。
5人の少年少女に召喚された、5体のスタースクリーム。

ルイズに召喚された、赤と白のスタースクリーム。
順番でいえば儀式の一番最後に召喚されたのだが、ニューリーダー病とでも言うか、常に集団の上に立ちたいという性格からか、
傲慢で、よく威張り散らしており、仕方なくか何時しか「リーダー」と称されるようになった。
実際の所、それを面白く思っていない他のスタースクリームもいるが、便宜上この名義を通している。
アクの強いスタースクリーム達を統率するには、一番アクの強いスタースクリームが必然となるのだ。
戦いにおいてもそれなりの指揮力を見せるため、なんだかんだでリーダーとしてのポジションに準ずるのは妥当なのかもしれない。
使い主ルイズとは四六時中喧嘩をしているが、存外相性のいいあたり、喧嘩するほどなんとやらを体現している。
尤も、喧嘩の最終局面では毎度ルイズの虚無の爆発が発動するため、結局頭は上がらない様であるが。

キュルケにより召喚された、黒いスタースクリーム。
「ビーツー」という愛称は、割に紆余曲折をもってして生み出された。
彼女……ではなく彼が元の世界で勃発した戦争は、第三者側から「第二次ビーストウォーズ」と俗称されており、
それを取って召喚当初「BWU」としていたが、アルファベット英単語はハルケギニアで通じる言語ではない。
そこで「ビー・ビー」としたが、それはかのじ……彼にとって愛着ある部下の名前と同じだったので、
さらに形を変えて現在の「ビーツー」に落ち着いた。戦いでは参謀、言うなれば軍師を務めている。
ユーモラスのある一方、物事を冷徹に判断でき、機転も利く、かの……彼には適材適所といえるだろう。
キュルケとは、仲の良い何でも言い合える友人同士という関係が出来上がっている。

モンモランシーに召喚されし、紅のスタースクリーム。
彼がいなければ、現在のスタースクリーム達と召喚者達との主従関係はあり得なかったと断言できる。
元の世界では、基本的に人間を敵かゴミかと認識していたスタースクリーム達の中で、
結果的にではあれど、人間に歩み寄ろうとしていたのが彼であった。
彼の思考と判断、また、そもそも人間をあまり知らないビーツーの興味本位からくる協力もあって、今の状況に落ち着いている。
スタースクリーム達の中では屈指の勇気と度胸と求心力を持ち、戦いでは前線での斬り込み役を任されている。
したたかでもある彼とモンモランシーとの仲は、誰も心配するまでもなかった。
モンモランシーは、彼を「アル」と呼んでいる。由来は「アルマダ」からのようだが、
そもそも何故その単語なのかはよく解らないとかなんとか。

ギーシュが召喚したスタースクリームは……、ある意味彼が一番特徴を掴み難い。
何故なら、彼は召喚された時から、数回ほど姿をコロコロ変えているのだから。
緑色の蜂の姿に変装してみたり、ある時は幽霊だったり、6人位に分身したり、首から頭だけだったり、そして顎が長い。
朝から晩まで「俺はイケメンだ!」とやたら強調している、性格からしてよくわからない奴である。
しかしその破天荒さがかえってギーシュとの波長の調和を生んだようで、2人して調子に乗る彼らを、
人々は「ナルシスティオン」などと呼んでいたりする。本人達もまんざらでは無いらしい。
彼自身の通称は「ナルシィ」。コンビ名と同様、ナルシスト、と掛けている。アゴと言ったら怒る。

『イケメンの俺様から突然クイズだ!! ここまで何回‘スタースクリーム’の名前が出たかな!? 数えるがいい暇人ども!』

こういう奴である。

そして最後の1体、タバサのスタースクリームについては――

ヨルムンガント達との戦いを勝利で終え、その後日での光景で語ることとなる――
96名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 05:05:46.71 ID:iL75pytd
以上です。終わりは見えてるのでぼちぼち投下できたらと。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 16:42:27.82 ID:mrvXirAe
過疎ってる?
98名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 17:28:04.44 ID:mTMwsHIv
雑談は前スレでやってるよ
99名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 19:58:45.32 ID:rNORtY0L
おつおつw
イケメンビーム期待w
100名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 20:52:02.15 ID:394HJCoL
「興味有るけど手を出すのがおっくう」で手を出してなかった作品がたくさんある面倒くさがりな自分だが
キャラが召喚された話をここで読んで、面白そうと思ってその作品に手を出すきっかけになった。

ベルセルク、ドリフターズ、BLAME!、Ruina、Z.O.E、強殖装甲ガイバーとかね
特にその作品をよく知らんでも何となく分かるように書いててくれてたので助かった

(トリコロールクライシスとウィザードリィ4とゲームブック「ソーサリー 」も
やりたくなったが売ってなかった
ファンタシースターはどれからやればいいのかよくわからんかった)

書き手の皆さんありがとうございました


今、面白そうだけど手を出せずに居るのが
GRAVITY DAZEとワンダと巨像とICOとゼノブレイドと
R-TYPEシリーズと白騎士物語とレイトン教授とロロナのアトリエシリーズ
イースシリーズと英雄伝説なんとかの軌跡シリーズとパワプロクンポケットシリーズ
あと漫画で青のエクソシストとラノベの彩雲国物語

知らない人でも分かるような感じで誰か書いて、背中を押してくれると嬉しい
101名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 21:43:47.53 ID:XhTzwvnr
投下です。

102名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 22:42:19.71 ID:T7EknObe
ゲームブック「ソーサリー」をやりたいのならば、アマゾンかどっかで中古で買うのが一番だ
103名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 22:43:02.33 ID:T7EknObe
sage忘れた、ゴメン

>>101の人はどうしたのかな
104名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/07(土) 22:44:22.55 ID:mrvXirAe
投下、乙の打ち間違い?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/08(日) 02:34:29.38 ID:QkjL/MBl
ファンタシースターは2と4が評価安定してたな
106名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/08(日) 10:12:47.15 ID:DGomj+dF
ファンタシースター2はオープニングおよび終盤に一部1のキャラが出てくる
先に1をやっておくと繋がりがよくわかるかもしれん
個人的には3も好きだが、一般の評価はイマイチだな…とりあえず他作品と雰囲気は大分違う
107名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/08(日) 14:10:58.39 ID:SwKa3xgQ
過疎ってるな、また規制ラッシュか
108 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/04/08(日) 15:09:40.61 ID:nvABSIRH
また規制きたの?
忍法帳確認しておこう
109 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/04/08(日) 15:16:28.43 ID:DGomj+dF
確認…と
110名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/09(月) 00:35:56.46 ID:3LoCddKo
規制?
111名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/09(月) 16:16:49.95 ID:u337a24+
ルイズ以外の虚無の担い手がご立派さまを召喚したらどうなるかな?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/09(月) 20:17:50.79 ID:AKii3gZr
テファがムケチンコ見たことあるかどうかが問題だよな
113一尉:2012/04/09(月) 20:41:00.12 ID:P9fFYs/1
ウルフ隊長を召喚にするルイズ
114ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/04/09(月) 23:27:09.25 ID:RhB1to6c
こんばんは、5分後くらいから投下します。
115ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:32:26.10 ID:RhB1to6c
「このっ――」
天を突くようなゴーレムを目前に捉えてルイズはルーンを唱える。先手必勝、やるしかない。
息も上がって呼吸一つするのもつらいが、それでも魔法を放つ――。
――されど不発に終わった。相変わらず失敗の爆発がゴーレムではなく塔の外壁部へと炸裂して衝撃と音を残す。
とはいえゴーレムの動きは止まった。ルイズが大きく息を吸い込んで、肩の上にいる術者と思しき影に向かって叫ぶ。
「っ・・・・・・次はアンタに当てるわよ!!!」
術者とゴーレムはそれでも微動だにしない。ルイズの言葉など全く意に介さず耳に聞こえず。
ルイズは無視する術者へ向かってもう一度叫ぼうとした瞬間、ゴーレムが眼前から掻き消えた。

「アホ」
流れる地面を視界に捉えつつ加速度を感じながら、声のした方向へと顔を向ける。
「っっ!?ブッチ!!」
ルイズはブッチに右腕全体で、腰から猫が丸まるような感じで抱えられていた。
ブッチはある程度距離をとったと見ると、ドサッと遠慮なくルイズを地面に落とす。
「痛ッ・・・・・・何すんのよ!!」
「・・・・・・もう一度"アレ"見て同じこと言えんのか?」
ブッチは冷静に銃口を"ゴーレム"に向けて言った。

 巨大なゴーレムは腕を引き、真っ直ぐ突き出すと今度は壁を破壊した。
ルイズはその迫力と風圧と芯まで響く音とに、ビクッと体が強張ってしまう。
術者は砕けて出来た壁の穴へと姿を消し、ゴーレムは依然として健在であった。
ルイズは無意識に体が震えてきて、声の一つも出なくなる。

 "なんなんだあれは・・・・・・?あんなものに自分は向かっていったのか?"

 "ハイ"になっていたのか・・・・・・一度頭が冷えてからゴーレムを見れば、それは恐怖一色以外の何者でもなかった。
ブッチですら敵と認識してから改めて見ると印象が全然違う。あんなものがもし――と考えるだけで冷や汗が滲む。
縦にも横にも奥にも巨大なゴーレムは、そこに佇んでいるだけでとてつもない威圧感。
命のやり取り――実戦――というものを知らぬルイズにとってそれはより顕著で、どうしようもなく畏怖すべきものだった。
さっきまで相対していたことが――今すらも夢なのではないかと思うほどに。

 しおらしく歳相応の様相を呈すルイズにブッチは「ハッ」と呆れるように嘆息をつく。
そしてやや遠間から見上げる――目と鼻の先に我がもの顔で鎮座する巨体。こんなものはまともに戦える相手ではない。
冷ややかに巨人を観察していると、ひとつの影が"大きなケースのようなモノ"を抱えてゴーレムの肩に乗るのが見えた。


 ゴーレムからさらにもう少し離れて、遠くからキッドと並んでシャルロットは考える。
「・・・・・・もしかして」
ルイズが無事なことにほっと胸を撫で下ろしつつ、ゴーレムを見ていたシャルロットからそんな言葉が漏れた。
こちらを見下ろすようなゴーレムへと"箱のようなもの"を運んだ術者。
その大きさと軽やかさから恐らくは『浮遊』の呪文を使っているのだろう。
(土くれの・・・・・・フーケ)
ピンときた。運んでいる――即ち盗んでいるのだ。
さらに巨躯の土ゴーレムを操るとなれば、薄っすらと聞き及んだ知識でも思い出す。

 貴族をターゲットにする盗賊"『土くれ』のフーケ"。
(そう、丁度あそこは宝物庫の位置。品評会の隙を狙ったわけ・・・・・・か)
本塔の宝物庫がある階層。内部から見る重厚な扉ではなく、挟んで裏側の壁を破壊して忍び込もうという算段なわけだ。
――であるならば、こちらがちょっかいを出さなければ大丈夫な筈だ。
あくまで盗難が目的であり、人間に危害を加えることが目的ではない。
あの人間大ほどもありそうな"箱"がどれほど貴重な物かはわからない。
されど盗まれるだけで済むなのなら、人の命に比べて安いもの。

 多方面に責任問題はついて回ることになるだろう・・・・・・。
が、人が死のうものならもっと取り返しがつかないことになりかねない。
「ブッチさん交戦は厳禁です!!そのままいて下さい!!あれは盗賊!何もしなければ後は向こうが逃げていくだけです!」
すると削岩でもするかのような音を立ててゴーレムが動きだす。
緊張が走るもののシャルロットの言った通り、わざわざ人間に危害を加えるようなことはしないようであった。
 
116ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:33:06.51 ID:RhB1to6c
「盗賊だ?俺達"ワイルドバンチ"の目の前で強盗するなんざ太ぇ野郎だ、なあキッド!!」
「いやだからって撃つなよオイ」
ああは言ったものの、キッドに突っ込まれるまでもない。勝ちの目は薄い――いや無いだろう。
別に自分達の私物でもないし躍起になることはない。

 その時ブッチは――何かに導かれるように――ルイズを見る。
地面にへたれ込むように座って俯くルイズから溢れる滴を・・・・・・必死に抑える嗚咽を、ブッチは見て――聞いてしまう。

 もうわけがわからない。ルイズの頭の中はグチャグチャだった。
耳には入っていた――あれが盗賊なのだと。いずれにせよこのままでは姫さまに責任追及がいくことだろう。
品評会も中止だ。必死に練習して姫さまに聞かせたかった言葉が、見せたかったものがあった。
ジョゼットの後だろうと、何てことのないものだろうと、立派に見せたかった。

 そもそも姫さまは自分を見に来てくれたのではないか?・・・・・・自惚れかも知れない。けれどもしかしたら――。
それなら廻り巡って己の所為ではないのか?自分がいたから姫さまは――。
申し訳なさと、初めてのコントロール出来ない恐怖と、そして何も出来ずに助けられるだけの自分の無力さと・・・・・・。
もう何もかもで感情が溢れてくる。なんてみっともないんだろうか、なんて無様なんだろうか。
いつも大口を叩いておいて、一皮剥けばこんなザマなのだ・・・・・・情けない。

「おい、ルイズ」
名前を呼ばれて、ルイズは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をあげる。
恥ずかしいなどという感情などは彼方へ置いてかれている。
ただ霞んで見えるのは――ブッチの背中だった。

「まあ・・・・・・俺の主人は、形だけだが一応お前だ」
ルイズは思う――彼は何を言っているんだろうか。
口を開けば互いに罵り合うことがしょっちゅうで、主従の関係なんて微塵にもなかった。
きちんと名前で呼ばれた記憶すら今が最初かも知れない。そして・・・・・・その後に続いた言葉の意味。
阿呆でも、空気が読めなくても、今だけはわかった。
召喚し、契約し、ルーンが刻まれ、どこかで自分と繋がっているからなのだろうか・・・・・・。わからない。
こちらの方が借りがあるというのに、彼――ブッチ――は言うのだ。
力が欲しいならくれてやると、自分という力を使えと。

「ブッチ・・・・・・お願い・・・・・・」
「また一つ貸しだな」
ブッチはルイズに背を向けたまま目を瞑ると、獰猛な獣が如く唇の端を歯が覗くほどにあげた。
次いで一足飛びにゴーレムへと向かって征く。何故だろうか、今は心地が良い・・・・・・テンションが高まっている。
あのガキが――ルイズが泣きベソかいていた時は、逆に何とも言えない気分であったのに。

「なっ・・・・・・おい!!」
「ブッチさん!!」
キッドとシャルロットの制止の声が聞こえたが、関係ない。
明日なんてない、明日に向かって撃つ。打算なく感情に身を任せるのも・・・・・・たまには悪くない。
 
117ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:33:33.09 ID:RhB1to6c


 破裂音が二度響く――ガンダールヴによって強化されたガンスキル。
もたらされる精密射撃は、30メイルもある巨人の肩に乗る術者までも正確に捉えた。
虚を突かれたフーケは集中を乱してケースを落とす。
ケースの周囲に展開していた『浮遊』と、ケースそのものが盾代わりになったことで、フーケには傷一つない。

「チッ、無理か」
殺すつもりで撃ったのだが、やはり限度があった。
魔法に詳しくないブッチは、重力に逆らう射程距離の長さで威力がかなり減衰していると見る。
(初撃で決めておきたかったが・・・・・・)
今更思っても時既に遅し。空いた右手でコルトSAAを抜いて二挺拳銃で構える――。
――頃には、フーケはゴーレムの左腕を使って完全に包み込むようにガード体勢をとっていた。
次いで振り上げられた右巨腕がブッチを襲う。ルイズは邪魔しないよう己の判断で既に走って逃げていた。
 
「ノロマが」
ガンダールヴで強化されたブッチの身体スペックであれば、回避するのも難しいことではなかった。
しかも何故だろう・・・・・・?心なしか今まで何度か試した時よりも体が軽く感じる。
とはいえ、敵の攻撃は躱せるもののこちらにも決定打がない。
(今なら・・・・・・――)
ガンダールヴなら――例えこれだけ離れた距離でも"あの技"を当てられるのではないか。

「ブッチ!!」
試してみようと思ったその時に聞き慣れた声。すぐにキッドが指差す方向を見た。
とりあえず疑問は捨て置き、なるほどと"意図"を理解する。

 ブッチはフーケとゴーレムを引き付けるように、適度に攻撃しながら動き回る。
敵意を釘付けにすることで、キッドへ払われる注意を完全にこちらへ逸らす。
同時にキッドが指差した"それ"から、ゴーレムを引き離すように誘導し続ける――。


 ――そのまま立ち回り続けて、ようやく準備が整った。装填されていた弾薬も切れている。
「やれい、やっちまえキッド!」
一繋ぎの音に聞こえる程の断続的な爆発音。
排出され続ける大きな薬莢が、鉄琴でも奏でるように地面に落ちる音。
そこまで見てシャルロットも辛うじて、"それ"が"銃"なのだということを認識出来た。

 クランク手回し式の"ガトリング銃"。弾幕による瞬間制圧力は無類。
土で出来たゴーレム程度、みるみる内に削り穿っていくと同時に、あっという間に弾薬が切れて音も止む。
ゴーレムは無数に穴や窪みを残しながらも、すんでのところで形を保っていた。
撃たれている途中で全力で再生し続けた上でもこの結果。
これがもしガンダールヴを刻むブッチであったなら、集弾することで終わっていたかも知れない。

 フーケ自身、精神力を多量に消費してしまったことにマズイと感じ始める。
「チッ」
キッドは舌打ちしながらすぐに弾薬倉を入れ替えようとする。
しかしそれを許すほどフーケもボケてはいない。ゴーレムを再生させながらターゲットをキッドに定める。
わけがわからないままも兎にも角にも攻撃を加えようとする。
コルトSAAの装填を終えたブッチが銃弾を撃ち込むも当然無視する。

 その"直前"――シャルロットは後ろ腰に挿してある一本のナイフを左手で抜き、『飛行』の魔法で上空へと飛んでいた。
決定力がほんの僅かに足らないだけであった。あの"連射銃"ならば十二分に破壊出来る。
確かにあのゴーレムは強力だ。つくづく完成されたゴーレムと言えよう。
ありふれている土ゆえに、作成するのも修復するのも容易。土だから動かすのも金属と比べて簡単。
コストパフォーマンスに優れる上で、土系統メイジの卓抜した実力あっての、あの常識外れの巨大さなのだ。
 
118ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:34:03.88 ID:RhB1to6c
 そして攻撃の際には拳を『錬金』することで、重量と硬度を上乗せし威力も申し分ない。
そんなゴーレムだからこそ、一定以上破壊すれば保てない。あれは"そういうもの"だ。
再生させる以上にバランスを崩せれば後は自重で潰れる。
硬い金属などではなく土製であることと、何よりも大きさが逆にネックになるのだ。

 もはや静観しているわけにもいかない。ガンダールヴを刻むブッチはともかく、キッドは違う。
確かフーケは殺人はしていないと記憶しているが、そもそも今のように有効な迎撃を加える人間がいなかっただけなのかも知れない。
それほど強力なゴーレムと術者であったわけだが、キッドが使っている"武器"はそれを追い詰めるほどに凶悪だ。

 だから今回ばかりはわからない。危険と見て殺すかも知れないし、勢い余って・・・・・・ということもあり得る。
捕まりでもしたらそれはそれで面倒である、あの"巨大連射銃"が破壊されても問題だ。
それに・・・・・・友であるルイズの為にも――そしてアンリエッタ王女のためにも、気張るだけの価値があるというもの。
例えバレても構わない。優先順位を履き違えたりはしない。

 ゴーレムの大きさすら飛び越えて、シャルロットは敵味方全ての配置を眼下に収める。
(最も被害が少なく、効率良く破壊するには・・・・・・)
悠長に考えている暇はない、即断する。

 そしてシャルロットは"ナイフ"を両手で大きく振りかぶった――。



 お付きの銃士隊や他の見物人を置き去りに、学院全体を鳥瞰出来る位置まで風韻竜イルククゥは飛ぶ。
「大丈夫ですか?」
「え・・・・・・えぇ、ありがとう」
ジョゼットは眼を鋭く見回しながら考える。差し当たっての脅威はやはりあのゴーレムだけ。

 飛行演舞をしている時にはあんな巨大なゴーレムは見当たらなかった。
当然周囲にも竜騎兵などの航空戦力は見えていない。
となれば、最初から学院内に潜んでいてタイミングを計っていたのだろう。

 僅かな時間の間にあれほどのゴーレムを創り出すのは並じゃない。
しかし今いる高度はいくら大きかろうと届く距離ではない。魔法だって"普通"は届かない。
「・・・・・・シャルロットの妹のジョゼットさんですね?」
昨夜の話の中で聞いた家族の名前。そして演舞が始まる前に各メイジと使い魔の名前が読み上げられている。
髪型や雰囲気は違うが、髪色と顔を見ればやはりよく似ている双子であった。

「ご存知でしたか。突然のご無礼ごめんなさい王女さま。ですがココが一番安全ですので今暫くのご辛抱を・・・・・・」
「わたくしも立場は弁えているつもりです、今は大人しく我が身の安全に終始すると致します」
下手に怪我でもしようものなら、オスマン学院長他に多大な迷惑が掛かってしまうだろう。
とはいえ、自分以外の誰かが傷つくようなことでもあれば、身を呈してでも回復魔法を掛けるくらいの気持ちはある。

「・・・・・・なんなんですかねぇ、アレ」
「わたくしにも皆目見当が・・・・・・」
あのゴーレムは現状目的がよくわからない。何度も拳を塔に打ち付けている。
破壊が目的なのかそれとも・・・・・・――。

 アンリエッタは品評会の会場となっていた広場の方も覗く。
混乱こそしているようだったが、とりあえずしっかりと教師陣が宥めているようでまずは安心であった。
その気になれば『飛行』の魔法で逃げることも可能なメイジ達ゆえだろう。
雑務などを行う他の平民の見物人達も、学院のメイジの多さを知っているからか、そこまで騒いでいない。
群集心理が良い方向で作用している。

 そう・・・・・・当然教師だけでなく、発展途上とはいえ生徒達もメイジなのだ。
保有戦力として見れば、この学び舎は決して低くはない。
あのゴーレムは相当なものであるが、一体で攻めるにはまるで足りていない。
それゆえに余計に疑念が湧く。一体何をその目的としているのか――。
 
119ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:34:33.56 ID:RhB1to6c
「あっもしかして・・・・・・?」
「知っているのですか、ジョゼットさん」
ぼんやりとゴーレムと、その大きさを眺めていてジョゼットは気付く。
「お父さまから聞いたことがあります」
「父君に?」
「はい、前に注意しておけ的なことを言われました。確か『土くれ』のナントカってゴーレム使い」

「『土くれ』ですって!?」
アンリエッタは驚きをそのまま口に出す。
言われてみれば間違いない、あんな巨大なゴーレムを使う犯罪者は他にいない。

「確か、盗賊でしたかね」
「・・・・・・その通りです。国内の貴族相手に、様々な物品を盗んでいる大怪盗です」
「まぁ噂で聞くまでもなく、あんなの見せられちゃ・・・・・・とんでもない使い手ですね。
 白昼堂々、大胆に盗みに来たのも"計算済み"のことでしょう。頭も良さそうです」

 含みがあるジョゼットの言葉にアンリエッタは疑問符を浮かべる。
「・・・・・・?どういうことですか?」
「状況的に内部犯だからですよ。さっきまでわたし達が演舞していた時には影も形もありませんでした。
 あんなデカブツが歩いて学院内の本塔まで近付くとなると時間が掛かりますし、すぐにわかります。
 既に侵入を終えていて、わたし達の演舞が終了した後すぐにゴーレムを創り出した以外にありません」

(あっ・・・・・・)
はたとアンリエッタは気付いてしまう。己の所為だと。
自分が来たことで本来の警備状況が変わってしまったのだろう。
それも自分のわがままだからと、魔法衛士隊を動かさず銃士隊のみで構成していた。
幻獣部隊と違って即応力にも欠け、今はまだ戦力も大きく劣る銃士隊。
大丈夫だろうとタカを括っていた事実。内部犯であればまさに狙い打たれた形。

 つまりフーケはかなりの情報収集能力を持っている。
警備体制が変わったこと。イベントで一箇所に学院中の人間が集まること。魔法衛士隊が来ていないこと。
それら全てを見越した上で行動に出たのだ。敵ながら天晴と言わざるを得ないほどに見事な手際。
頭が良いどころではない。流石はトリステイン内を荒らし回って華麗に逃げ果せている盗賊。
今までフーケが重ねた盗難行為も例外なく、精査なリサーチの上で裏打ちされたものだったのだ。
だからこそ毎回毎回行動パターンが違い、正体の糸口すら掴めていない現状があるのに相違ない。


「っ!?」
「あれは・・・・・・」
爆発音がした方へと目を向ければ、ゴーレムから少し離れた位置に小粒に見えるものがあった。
しかしピンク色に映えるブロンドは、遠目でもそれが誰なのかわかってしまう。
「ルイズ・・・・・・!!」
親友を見紛う筈がない。危険だろうが見捨てられる訳もない。例えルイズでなくても――。

「――大丈夫でしょう、あっちを」
今にも飛び出さんとしそうなほどのアンリエッタの機先を制すように、ジョゼットが指を差して示す。
するととすぐに疾風が如く誰かが近付いていき、そのままルイズと共に離れて行ったのだった。

 安心するアンリエッタを他所に、ジョゼットは姉シャルロットとキッドの姿も見つける。
(ルイズとブッチさんがいるんだもん、そりゃいるよね)
当然と言えば当然だった。まさか来ていないこともなかろう。
が、もしそうだったらルイズとブッチの二人まとめて拾い上げても良かっただろう。とはいえ杞憂に終わった。
視界に新たに映るの大きな"箱のような物"を傍らに、ゴーレムへと乗る術者たるメイジの姿であった。
 
120ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:34:56.55 ID:RhB1to6c
「確定ですね、明らかに盗みにきてます・・・・・・」
そんなことを確信していると、ルイズの使い魔ブッチが突如として攻撃を加えた。
箱は地面へと落下し、ゴーレムも応戦。見る見る内に闘争が始まってしまった。
「なっ・・・・・・!?ジョゼットさん!!」
「大丈夫ですよ」
再び焦るアンリエッタを傍目にジョゼットは何の憂いもなかった。

 前にシャルロットと一緒にガンダールヴの力は見ている。あれが遅れをとるとは思えない。
「何が大丈夫なんですか!!」
アンリエッタの目から見れば到底納得出来ることではない。今まさに眼の前で命が失われるのかも知れないのだ。
「シャルロットが――"お姉ちゃん"がいますから、何が起きても特に問題ないです。
 それに・・・・・・わたしは先刻の演舞で魔力が殆ど尽きてますから、援護出来ません」

 ガンダールヴがいるのもある・・・・・・が、何よりも姉のシャルロットがいるから大丈夫なのだ。
下手すれば色々と露見してしまうだろうが、だからと行って自分達が行くわけにもいかない。
姉が自分に王女を預けた以上、それを違えることなど出来ない。
「ならわたくしだけでも!!」
「だから大丈夫なんですって」
ジョゼットの浮かべる――絶対全幅の信頼を置いた――笑み。
最悪『飛行』か『浮遊』で地面へと降りることを考えていたものの、アンリエッタは一旦飲み込む。
(ジョゼットさんは・・・・・・"わたくしの知らない何か"を知っている?)
大丈夫だと迷い無く言い切れるその理由とは。

「――何故なのか、お聞かせ願えますか?」
ジョゼットは説明せねばなるまいと決断する。本来であれば隠しておきたいこと。
しかしこのままでは、本当に眼下の戦場に飛び込みかねなかった。

 そして何より家族揃ってお世話になっているトリステイン王家。
その王女に問われてなお、隠し立てするのは憚られる。
「王女様はわたし達を――その境遇を知っていますか?」
「はい。実は昨晩シャルロットさんとお話しし、また友となりました」
「ならば話は早いです」
ゴーレムとブッチが繰り広げる鬼ごっこを眺めながら、ジョゼットは砕けた感じで語る。

「わたし達の国ガリアは滅び、その時物心ついて少しのお父さまとジョゼフ伯父さま。
 二人はお付きの者と共にガリアの財産を持って逃亡しました。当時はそれはもうかなり大変だったそうです。
 最終的にトリステインにまで流れてきて、王家の温情によって落ち着くまで・・・・・・。
 宝物をいくつも売却し続けて、最終的にお父さまの家と伯父さまの家で、分配して残ったのが――」

 ジョゼットはスッと、持っている大きく節くれだった杖を、差し出すようにアンリエッタに見せる。
「代々わたし達オルレアンの家系に伝わるこの杖と、"始祖の秘宝"の一つである"始祖の香炉"をわたしが譲り受けました。
 そしてシャルロットの方が"始祖のルビー"ともう一つ、"ある物"を貰い受けています。それが・・・・・・その・・・・・・」

 いざ言う段になってジョゼットは逡巡する。それを言っていいものなのだろうかと。
「それは・・・・・・?」
「それは・・・・・・トリステインへの忠誠と、姉を友と言ってくれた王女殿下を信頼しお話しますが――」
覚悟を決める。変に隠し立てするよりは、スッパリと言う方が良さそうだった。
アンリエッタもその心意気に応じるかのように強張る。
 
121ゼロのドリフターズ-05:2012/04/09(月) 23:35:22.73 ID:RhB1to6c
「そのもう一つというのが『地下水』と呼ばれるマジックアイテム、いわゆるインテリジェンスナイフです。
 本体であるナイフを持った人物を水の魔法で操ることで、自由自在に諜報や暗殺をこなす魔道具。
 いざ支配した人物が見つかれば雲隠れする短剣。抗うことは出来ず、所有者を簡単に乗り換える『特性』。
 その気になれば国家転覆をも、そう難しくなくやってのけるほどに凶悪なシロモノなのです」

 アンリエッタはゴクリと喉を鳴らす。それは警告ではない、トリステインに弓引こうというものではない。
逆に今まで持っていても、おかしなことには使っていない。
少なくとも自分が知る限り国内でそういったことが起こってはいない筈。
こうして話してくれたことも、絶対にそういうことには使わないという信頼の証であるとアンリエッタは受け取る。
「ナイフでありながら魔力を持ち、メイジでない平民でも操って魔法を使うことが出来る『特性』もあります。
 だから・・・・・・シャルロットが使っています。シャルロットはつい最近まで魔法が一切使えませんでしたから――」

 もっとも今のところ使えると言ってもコモン・マジックを少々だ。種類も威力も精度も、何故だか乏しい。
地下水を介せば系統魔法すら使えるものの、無しではコモン・マジックもまともに使いこなせていないのが現状だ。
完璧に成功したのはそれこそ召喚と契約のみ。他は少し物を動かしたり、ほんの僅かに鍵を掛けたりといった程度に留まる。
イメージ通りに成功したことはないと言っていた。

「――・・・・・・なるほど、だから隠しておきたかったのですね」
確かにそのような傾国の恐れもある危険な魔道具など、封印されるか破壊されるかである。
良からぬことを考える人間が利用しようものなら、間違いなくロクなことにはならない。

「シャルロット本人は昔から好んで使いませんけどね・・・・・・『道具に頼っては自分の実力にならない』って」
系統魔法は全く使えず、コモン・マジックも最近になってようやく覚えたてで、しかも微妙にしか使えない。
それでもシャルロットはルイズ共々喜んでいるし、練習もしているようなのだが――。

 自分達は間違いなく一卵性の双子だ。
しかもわたし以上に頑張っているシャルロットが、魔法に関して駄目なのは昔からの疑問。
そんな双子の自分がいた所為もあるのだろう、上昇志向は子供の頃からだった。
血筋的に――遺伝的に使えない筈はなかったし、諦めるようなことはなかった。
それゆえにシャルロットは、地下水の『特性』そのものの危険性も含めて安易に頼らない。
そもそも順当に考えれば魔法を使える可能性の方が、魔法を使えない可能性よりも遥かに高いからだ。

 ――それでも万が一があるかも知れない。
そんな時に備えての魔法が使える唯一の手段を奪いたくはない。
シャルロット自身も、最終最後の保険――何よりも"切り札"――として持っておきたかった。

「・・・・・・操ることは脅威です。が、わたし達メイジにとって魔法を使えることはさほどアドバンテージになりません。
 地下水そのものがかなりの系統を足して使えますから、未熟な頃は有用かも知れませんでしょう。
 操られるのがメイジならば、多少なりと魔力を上乗せして強力に放つことも出来ます。
 それでもトライアングルクラスになれば殆ど無用の長物です。だけどシャルロット――お姉ちゃん――だけは違うんです」

 絶え間なく残響を流し続ける、聞いたこともないような破裂音を放つ物体とキッド。
手元で何か弄って見えるブッチ、さらに遠間で呆然と見守るルイズ。
空にまで響いていた音が止み、音の発生源に対して拳を振り下ろさんとするゴーレムと術者。


 そしてゴーレムよりも高く飛んだ、シャルロット――姉――を眺望しつつジョゼットはほくそ笑む。

「"全力"になったお姉ちゃんは誰にも負けないんですよ」
122ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/04/09(月) 23:36:14.70 ID:RhB1to6c
今回は以上です、ではまた二週間後くらいに。
123名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/10(火) 03:35:47.69 ID:Q6sffH8D
投下乙!
124名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/10(火) 14:55:16.34 ID:YsnoKNHh
オールド・オスマンが逝かれた……
125名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/10(火) 17:07:08.93 ID:/YFZnF3W
真田さん…
126名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/10(火) 20:06:18.11 ID:CFXRPq6R
ザラブ星人もだよちくしょう……
127一尉:2012/04/10(火) 20:09:04.75 ID:xLxzlMOE
火星人を召喚にする。ルイズ
128名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/10(火) 23:26:16.06 ID:qQrcjdV+
あの人の演じた役はそれこそ数えられん
ムラマツキャップがザラブ星人を「ご苦労様」と出迎えたのかなあ
それとも古代進とベムラーゼ首相が真田さんと宇宙酔いを酌み交わして再会しているのか
129名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/11(水) 00:00:57.63 ID:oiWzWbYM
乙!

オスマン・・・
130名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/11(水) 23:44:36.73 ID:qKdF3qKQ
最近急に過疎った?
131名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 00:08:15.05 ID:lTJ3Wg07
大規模規制入ってる真っ最中
携帯端末で動いてる人は殆ど書き込めないんじゃね
132名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 00:40:11.68 ID:qE0XrVrh
そうなのか
133名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 00:56:05.53 ID:LkaajIJH
清村くんと杉小路くんシリーズから杉小路隆千穂が召喚されたらという妄想をしたが
あれはあの作者の絵があってこそ面白いと気付く

もし召喚されたらポジションは多分こんな感じ
ルイズ=清村  キュルケ=蓮間(うるしま)  タバサ=工藤  ギーシュorマリコルヌ=安井  シエスタ=川芝さん

杉小路は多分いじりがいがあるなら老若男女区別しないと思うwww  
134トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 04:57:38.38 ID:pQjkfUVt
5:00頃に小ネタ「トリステイン魔法学院Z」 第二話 「寝床を手に入れろ!」を投下します。
135トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:00:33.90 ID:pQjkfUVt
トリステイン魔法学院の食堂は、朝を迎えていた。まだ朝食の時間にはなっていないものの、まもなく訪れるその時間に対応すべく、厨房は既に戦場のごとき様相を呈しており、
食堂もまた、その準備で人がひっきりなしに行きかっていた。そんな中で、その慌しい物音で起こされた明らかに場違いな二人がいた。
バーニーとペイトンであった。

「…おはようバーニー」
「…ああ、おはようペイトン。…やっぱり、夢じゃないんだよなぁ…」
「言うなよ、悲しくなる」

あの後、終始怒りっぱなしだったルイズに簡単に使い魔の仕事を一方的に説明された後、寝るから後はまた明日、とばかりに彼らは部屋から締め出されたのだった。

どこで寝ればよいのか、と抗議してみたが、扉越しの返答は「食堂ででも寝れば?」という実に慈悲深いものだった。

ま、RPGでお馴染みの馬小屋よりはマシだよな…と半分やけくそで彼らは食堂の椅子を並べ、その上で寝たのであった。
不幸中の幸いというか、椅子が上等な物だったのでそんなの即席のベッドでも床に寝るよりは余程快適であった。

「…とりあえず、ご主人様を起こしに行かなきゃ、だな」
「…だねぇ…」

時間を確かめようとして、携帯を取り出したペイトンは、しかし時刻の表示がまるで当てにならないことに思い当たると、溜息を一つ吐いて、ご主人様-…つまりルイズの部屋へと歩き出した。
その後をのろのろとバーニーがついていく。

「何時だった?」
「…ここが我が愛しのアメリカなら十時半ってとこだな。ま、ここじゃどうか分からんがな」
「そうか…ペイトン、もしかして昨夜かけてみた?」
「…電話か?言わなくても分かるだろ。圏外で繋がりゃしねぇよ…っていうか、いくら魔法があるってったってここは出鱈目な世界すぎないか?お前も見たろ!何で月が二つあるんだよ!
…ああ畜生、椅子で寝たせいで体が痛いぜ…っと、ここだよな?」

愚痴りながらペイトンは昨夜のうちに渡された合鍵を取り出し、解錠した。
中に入ってみると、カーテンが閉められ、明かりも点けられていない部屋はまだ暗闇に包まれていた。
起きていてくれれば手間が掛からなくて良かったんだがなぁ、との彼らの期待をあっさり打ち砕く現実であった。

「寝てるみたいだな」
「まず寝てるね…じゃ、やろうか」
「…だな。おいバーニー、カーテン開けてくれ。…サンキュ。…で、ベッドは…と。お、いたいた。全くこっちの気も知らんで幸せそうに寝やがって…」
「…こう黙ってりゃ可愛いんだけどなぁ…」
「黙ってても駄目だろ。あのパンチ、かなり効いたぜ」
「それもそうだね。じゃ、黙っていて、暴力を振るわなければ可愛いって事で」
「HAHAHAバーニーもひどいな。つまりは全然駄目だって事じゃないか?まぁ同感だがな!」

彼らはひとしきり笑うと、再び深い溜息をついた。今の笑い声でも起きないあたり、中々手間が掛かりそうである。

「…それはさておき問題だ。どうやって起こす?」

しばし思案した後、バーニーは決断した。

「…仕方ない、ペイトン、呼びかけ続けてくれ」
「あいよ。おーい、起きて下さい、ルイズ様―」

ペイトンの声をバックに、バーニーは精神を集中させた。すると、ルイズの包まっている毛布の一端が宙に浮き上がり、ゆっくりとルイズからはがされていく。
バーニーがサイコキネシスを使用したのだ。別に毛布を取るくらい超能力を使うまでも無いのだが、昨日見た目にそぐわぬ凶暴性を身をもって味わった彼らである。
どこぞでよくある展開のように、迂闊に揺り起こして起きたルイズと目があって変な誤解をされ魔法が飛んできたら堪ったものではない、と慎重になるのも無理はなかった。

毛布を取られたことや差し込む日光のせいだろう、程なくルイズが目覚めた。ふにゃふにゃになりながらも、二人の姿を確認すると、

「だ、誰よあんた達ッ…って、…ああそうか、使い魔にしたんだっけ」

寝ぼけているのが明白な第一声をあげた。
136トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:04:52.71 ID:pQjkfUVt
「…朝から随分な挨拶ですねぇご主人様。それで、要望通り起こしたわけですが、次の仕事は何ですか?」
「着替え。クローゼットに入ってるから」

皮肉交じりのペイトンの質問には全く動じず、ルイズは鷹揚に指示を出した。

「で、どれ?ああ、右端ね。はい、どうぞ。…え、下着も出すの?…どうぞ。いいえ、変な目で見てませんって。
…ったく、誰がんな子供みたいな…いえ、何も言ってませんよ?他に仕事は?無い。じゃあこの後は…ああ、食堂ね。分かりました。では、後ほど」

若干本音を漏らしながらも、どうにかこうにか初仕事を終え退室した彼らは扉を閉めるなり今朝何回目か分からぬ深い溜息をついた。

「…もしかして俺達、召使と思われてるんじゃないか?」
「奴隷じゃないだけマシかもね、ペイトン。…参ったね、この先の扱いが大体見えたよ」
「全くだ。実に楽しい未来図じゃないか、えぇ?」

同じ結論に達した彼らが、先程より深い溜息をついたとき、ルイズの部屋の隣のドアが開き、女生
徒が現れた。

見事なプロポーションを持つ褐色の美少女である。もし現代アメリカで街を歩いていても男達の注目を浴びるだろう。
まぁ、ルイズも美少女ではあるのだが…こちらの方は現代アメリカで迂闊に声を掛けようものなら逮捕されるのがオチであろう。

その美少女が、思わず口笛を吹いたペイトンに反応してこちらを振り向いた。
「…あら、ルイズの所の使い魔じゃないの」
「は…はは…昨日はごめん」

流石に昨日の事があり、怯えながら挨拶したバーニーを見て、苦笑しながら、その美少女は安心させるように笑いかけた。

「ふふ、そんなに怯えなくていいわ、昨日の事はもう怒ってないから」
「え?そうなの?」
「えぇ、きっちりお返しはさせてもらったから、ね。何かねぇ…こんな目に合うの初めてじゃないしねぇ。ま、良い女は恨みを買いやすいのよねー」
「ははは、確かに君は魅力的な女性だね。他の女の子も君みたいにさっぱりした性格だと助かるんだけどな」
「残念、そこは諦める事ね。それと、昨日の事は許してあげるけど…だからといって調子に乗らない事ね。良い女の裸は安くはないわよ。拝みたかったら実力で、ね」
「それは、俺にも君を口説くチャンスがある、と期待しても良いのかな?とにかく、改めてよろしく、俺はペイトン」
「僕はバーニーだよ」

そう言いながらペイトンが片手を差し出し握手を求めた。バーニーが続き、それに彼女は応えた。

「キュルケよ。しかし貴方達も災難よね。この国は堅物が多いけど、あの子は特に難物よ」
「ははっ、有り難い事に身をもって体験してるよ」
137トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:06:59.78 ID:pQjkfUVt
こうして、三人は固く握手を交わしたのであった。だが、そこへ不機嫌な声が飛んできた。

「ちょっと!何キュルケなんかと握手してるのよ!」

驚いて振り向けば、何時の間に出てきたのか身支度を終えたルイズが仁王立ちしていた。

「何って…仲良くなったら握手ぐらいしたって可笑しくないだろ?」
「だから、何でキュルケなんかと仲良くしてるのよ!」
「何で…って…何か問題あるの?それと、なんかって酷くない?キュルケさん良い人じゃない」

その言葉に、キュルケは少し驚いたような顔をすると、愉快そうに続けた。

「あらあら、賢い使い魔さんじゃない。良かったわねルイズ。貴女には勿体無いくらいの当たりみたいよぉ、ルイズ?」
「…っ!もういいわ!先に食堂に行ってる。アンタ達は好きなだけそうやってればいいわよ!」

怒りで顔を真っ赤にしてそう言い捨てると、ルイズはぷりぷり怒りながら去っていってしまった。

「…わけがわからないよ。何でルイズはあんなに怒るんだ?」
「一応ね、私の家とルイズの家は因縁があるからねー。だからああ怒るのも解るのは解るんだけどねー」
「え?そうなの?」
「そうそう。昔っからあそこのところの男どもをご先祖様が誘惑しちゃってねー。それでなくても国境挟んで隣同士だから、戦争のたびに真っ先に殺し合いよ?
ま、そういうわけだから、これに関してはルイズじゃなくても敵視してもおかしくはないわね」
「俺としちゃ、その男達に同情するわ。ワイフがルイズみたいな性格だったらそりゃ逃げるよ。
相手が君みたいな魅力的な女性なら尚更さ」
「あら、ありがとうペイトン。中々お上手ね。でもそっちのバーニーも中々のものね。良い人なんて言われたの初めてよ?」

キュルケは軽くあしらいながらも満更でもなさそうだった。

「そうなの?本当に良い人だと思うんだけどなぁ。ところで君は、そういう割には別にルイズを憎んではいないようだね?」
「あら、良く分かるのね。ま、殺し合いといっても、顔も知らないようなご先祖様の話しだし。
大体、どうせ身を焦がすなら憎しみの業火よりも恋の炎の方が良いじゃない。だからといって仲良くする気も無いけどね。向こうはこっちを憎んでるみたいだし」
「憎しみより恋って下りには全面的に同意するけどね。うーん、できればルイズに優しくしてやって欲しいかなぁ。でないと俺らにとばっちりが来る」
「ふふ、言うわねぇ。でもそろそろ、あの子を追いかけた方が良いんじゃない?余り一人にしておくと、また癇癪が爆発するかもよ?」
「それもそうだな。ご忠告どうも、キュルケ、じゃあ行くぞ、バーニー」
「待てよ!ああ、ありがとうキュルケさん。じゃぁ、またね」

慌しく礼を言うと、彼らは食堂目指し走り始めた。
こっちへ来てから始めて、それもキュルケのような美女にまともに接してもらったこともあり、彼らの気分は随分上向いていた。
なんだかんだで、こっちでも案外楽しくやれるかもしれない。何となく、そう思った。
138トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:08:42.01 ID:pQjkfUVt
「…気のせいだったな」
「…気のせいだったねぇ…」

彼らは、先程までの自分を呪っていた。床に座らされた彼らの前に置かれたのは硬いパンが二切れ申し訳程度に乗せられたスープである。
まぁ、床に座らされるのは我慢も出来る。だが、若い男の食事にしては明らかに量が足りない。
流石にこれは耐えかねたので、せめて量だけでも何とかするように、しつこく懇願していたら、根負けしたか、固そうなパンが増えた。
…が、それだけである。肉を要求したが、癖になるから駄目、とにべも無かった。いや、肉だけではない。ルイズが食べている美味そうな物は何一つ貰えなかったのだ。
落胆しながら食事を終えた彼らは、食堂の壁にもたれながら不満をぶちまけていた。

「…ったく、何が特別な計らい、だよ。ダイエットでもさせようってのかね」
「周りが豪華な食事な分余計惨めだよね…イギリス人だってもっとマシなもんを食べてるよ、きっと。いっそもう、ストでもするかい?」
「ハンストでもする気かよ。まぁ、こんなんじゃ食べてないのと大して代わらないけどよ…ああもう、仕方ねぇ、恵んでもらいに行こうぜ」
「それしかないだろうね…まぁ、昨日の反応から考えれば、男子を回れば誰か分けてくれるだろ。それに期待しようか」
「ヘイ、待てよバーニー。どうせなら綺麗所と食事としゃれ込もうぜ」
「おい待てよペイトン、そんなあてなんかないだろ!」
「あるだろ、ついさっき知り合ったばかりのあてがよ。駄目元だ、行ってみようや」

「それで?あたしのところに来たってわけ?」

食事中、突然やって来た彼らに最初キュルケは不審な顔をしていたが、理由を説明する内に段々その表情は崩れてゆき、最後には必死に笑いをこらえていた。

「貴方達、大胆すぎて面白いわねー。良いわ。もう手を付けちゃってるから、あんまり残ってないけど、それでも良ければ、だけど」
「とんでもない!ありがたく頂くよ、なぁバーニー!」
「勿論さ。ありがとう、キュルケさん!」

「ちょっと、正気なのキュルケ!なんでこんなのに!」

近くにいた女子からは一斉に非難の声が上がったが、キュルケはまるで気にしなかった。

「貴方達には頼んでないわよ?別に良いじゃない。まぁタバサが駄目というならちょっと考えるけど。別に構わないでしょ?」

その問いかけに、猛烈な勢いで食事をしていた少女が、僅かに手を止め、

「了承」

とだけ言うと再び轟然と食事を詰め込み始めた。

「タバサからも同席の許可がでたわ。ま、もっともこっちは分けてはくれないでしょうけどね」

「構わないよ、正直、白い目で見られないだけでもほっとする」

こうしてキュルケと話している今でも、周りの女子からの敵意の篭った視線がビンビンに突き刺さってきていた。
それだけに、普通に接してくれるキュルケ、放って置いてくれるタバサは非常にありがたかった。

こうして、彼らは何とか食事にありついたのである。そしてこれは、暫く続くこととなったのであった。
139トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:10:52.05 ID:pQjkfUVt
「おお、我等が英雄のお出ましだ!」

朝食が終われば、いよいよ授業が始まる。教室に入った彼らを出迎えたのは、そう熱烈に歓迎する男子と、

「………」

氷点下以下の侮蔑の篭った視線でこっちを睨む殆ど…というか、ルイズ、タバサ、キュルケ以外の全ての女子であった。
食堂の時の反応から予想は出来ていた事だったが、だからといってそれが慰めになるわけも無い。流石にこう露骨に敵意をあらわにされると逃げたくもなった。
面白そうな顔で手を振ってくれたキュルケが唯一の救い、といったところだろうか。彼らはせめて居心地の悪さを出来るだけ感じないようにした。
そして、その敵意はルイズに対しても向けられていた。そのせいで不機嫌を前面に押し出した顔をしていたルイズにペイトンは気になっていたことを尋ねた。

「…ところで、来いというから授業について来たけど、俺達は何をすればいいんだ?まさか俺達にも魔法を習わせる気か?」
「まさか!この授業は、使い魔を連れてくる事になってたから、というだけの話よ。アタシだって何を好き好んであんた達みたいなトラブルの種をわざわざ…
はぁ、もういいから。黙ってそこに突っ立ってればいいわよ。とにかく、余計な事は一切しないで。他には何も望まないから」
「へいへい、有り難い御配慮に感激して涙が零れそうですよっと」
「おいペイトン、挑発するなよ…僕だって我慢してるんだ」

愚痴をこぼしながら、彼らがルイズの後ろに控える格好になると、いい加減耐えかねたか、女子達から一斉に非難の声が上がった。

「ルイズー?あんなの連れてくるんじゃないわよー?今すぐ出て行かせなさいなー」
「そうそう、またやったら今度はアンタも只じゃ済まさないわよー」

自業自得とはいえ、相変わらずの反応にすっかり彼らはゲンナリした。男子共もあんだけ持て囃すならちっとは擁護してくれても良いのに…と内心思ったが、
この状態で擁護したら最後、女子からどういう扱いをされるかは火を見るより明らかである。擁護ゼロなのは無理もなかろう。
だが、幸いな事にほどなくその声は途切れた。ふくよかな中年の女教師が入ってきたのである。
紫のローブに身を包んだ彼女は、教室を見渡すと満足そうに口を開いた。

「皆さん、春の使い魔召喚は成功に終わったようで何よりですわ。このシュヴルーズ、様々な使い魔を見るのがこの季節の一番の楽しみなのです。
生徒達の成長を実感できますしね。ところで…」

そこで、シュヴルーズは言葉を切ると、彼らを見て

「貴方達ですか、ミス・ヴァリエールの使い魔というのは。…えぇと、平民の身で使い魔となっては色々戸惑う事も多いでしょうが、だからといって変な事はしないように。
くれぐれも頼みますよ。ミス・ヴァリエール。貴女もしっかり監督するように心がけて下さい」

その言葉で我が意を得たとばかりに、中断された非難の声が再び飛んでくる。

「先生!私は反対です!あのルイズにこの使い魔を制御できるとは思えませんわ!」
「この平民にそんなこと期待できません!ああ、思い返すだけで腹立たしい!」

その声にルイズはひたすら耐えるばかりで、その様子は散々な扱いを受けた彼らも少しは同情したくなるほどであった。

彼らは反論するわけにも行かず、しばしそれを黙って聞いていたが、収まりそうもないので立ち上がると

「あー、ルイズ。悪いが俺達は席を外すよ。周りの反感が凄いもん。正直、君だって辛いだろ?」
「そうそう、次は出るからそれで許してよ。すいません先生。どうも授業の邪魔になるようですから僕たちは失礼します。構いませんね?」
「本当は使い魔は一緒にいて欲しいのですが…まぁ、こう空気が悪くては仕方が無いですね。
退室を認めましょう。えぇ皆さん。彼らも反省しているようですし、禍根は…まぁすぐに忘れろというのも難しいでしょうが、何時までも引きずらないように。よろしいですね?では授業を始めます」

ルイズは、唇をかみ締め彼らを睨んだが、結局何も言わなかった。彼らも肩を竦めこそしたが、結局無言で出て行った。

その少し後、教室から凄い爆発音が響いた。かなり遠ざかっていた彼らが思わず振り返るくらいの大きなものであった。

「…何だ、今の?」
「おいおい、俺に分かるわけないだろ?ま、何かの魔法だろうな。さすがファンタジーだ。きっと派手なのをぶっ放したんだろ」

再び肩を竦めると、彼ら歩き出した。よもや、それを起こしたのがルイズだなどと知る由も無かった。
そうと知ったのはルイズに呼びつけられて惨憺たる教室の片づけを命じられた時であるが、それはまぁ余談である。
140トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:14:38.73 ID:pQjkfUVt
そんなこんなで数日が過ぎた。流石にルイズも慣れてきたか、初日の不信感丸出し、といった様子もなくなり、彼らを前にしても露骨に不機嫌になることはなくなっていた。
そういう意味では随分進歩したと言えよう。言えるのだが…彼らの待遇はまるで代わっていなかった。

どうやらそれは嫌悪感や罰によるものではなく、ルイズの使い魔と主人では扱いに差があって当然、という意識によるものらしい、
という事が彼らにも分かってきたのだが…当然、彼らがそれで納まるはずも無い。その日もまた、愚痴っていた。

「ああ!もう我慢出来ねぇや。俺達はいつまでこんな生活しなきゃなんないんだ?」
「そんなの僕に分かるわけ無いだろ。未来予知は専門外さ」
「まあ、ルイズが魔法を使えるようになるのが一番ハッピーなんだけどな。今のままだと、コッチが割を食うばっかだ」
「だね。…とはいえ、魔法の事なんかわかりゃしないしなぁ…協力したくてもしようが無いよ」
「だよなぁ…こうなったらアレだ。抗議しないか、抗議」
「ルイズに…じゃないんだろ?どこにだよ。FBIか?CIAか?それに何て言うんだよ。労働基準法違反とでも言う気か?」
「まぁ俺もどこに文句ぶつけたらいいか分からないけどさ…おお、そういえば、ほら、俺達が最初に出会った先生いたじゃん。
ちょっと頭の寂しい。あの人はどうよ。結構話せそうな感じだったし」


突然の訪問にもコルベールは嫌な顔を見せず対応していたが、彼らの話を聞くと、困ったような顔で、頭をかきつつ答えた。

「はぁ、まぁ…君達の要求は分かりますが…正直君達は最初にちょっとその…
不味い事をしでかしたわけですし、ある意味しょうがないでしょう」
「それはそうですが、ルイズはまるで聞く耳持たないので…せめて、それとなく仲裁に入ってもらえないかな、と」
「多くは望みませんが、せめて食事だけでも何とかしてもらえませんか。贅沢は言えませんが二人で食うには量が、その…」
「私としては、もう少し日にちがたてばミス・ヴァリエールも冷静になって待遇を改善するのでは、と思いますがねぇ。
そこへ私が下手に口を出して依怙地になっては逆効果ですし…というわけで、もう少し我慢していただけませんか?
彼女はもともと頭の良い生徒ですから、きっと落ち着いて話せば分かってくれますよ」


「駄目じゃん!正論だとは思うけどなんの救いにもならねぇよ!」
「言うなよペイトン…そうだ、こうなったら駄目元で、先生の更に上に掛け合ってみようぜ」
「上?つまり誰だ?」
「ここの、校長さ」

人に何度か場所を尋ね、やっとたどり着いた学院長室の前で、彼らは躊躇していた。

「じ、じゃぁ、行くぞ」

緊張の余り、震える手でドアノブに触れる。ここの魔法使いを束ねる存在となれば、それ相応の実力を持つはずである。
まさか御伽噺にあるように、ちょっと機嫌を損ねただけで呪いを掛けられ蛙にされてしまった、等という事は無いだろうが…
大丈夫、迂闊な振る舞いをしなければ問題ない。そう言い聞かせて胸に沸き起こる悪い想像を押さえつけながら、ついに扉を開けた。そこで彼らは見た。

「全く!お尻を!触るなと!何度言えば!」
「触って何が悪い!大体、君のお尻が魅力的なのが悪いんじゃ!尻の引力に魂が惹かれたんじゃ!」

学院長らしき人物が、秘書らしき美女に蹴り倒されていたのを。

無言で扉を閉じた彼らは顔を見合わせ、同時に溜息をついた。見たまんまなのか、そういうプレイなのか状況が良く分からなかったが
…とにかく、まるで当てにならないことは確実だったからだ。
141トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:17:32.92 ID:pQjkfUVt
「駄目だなこりゃ。本当に怒りが収まるのを待つしかなさそうだ」
「…その日まで敬謙にすごせ…ってか?この調子だと審判の日が来る方が早いかもな。
そうなったら凄いな。俺でも神父様になれそうだぜ…いや、待てよ…今のは上手くすれば…」
「…?おいペイトン、何を考えてるんだ?」
「うん?面白い事を思いついたんだ。題して、プレゼント作戦!耳かせ、耳」


ペイトンの作戦は単純なものだった。が、バーニーは難色を示した。

「…やだよ、バーナデッドから始めてもらったメールがあるんだ。コイツは墓場まで持っていくぞ!」
「純情だなぁ…わかったよ、俺のを使うよ。貸し一つな。その代わり色々俺のアドレス帳のを登録してもらうぜ」
「何でだよ、全然分からないんだけど!」

不審の声を上げながらも、バーニーは結局ペイトンの案に乗った。他に妙案も無い以上、それに賭けるしかなさそうだったし、何だかんだでペイトンの事を信頼しているからである。


「…おや、君達は…」

再び尋ねた学院長室には先客…コルベールがいた。彼は彼らを見て若干狼狽した様子だった。その手には二枚のスケッチがあり、
良く見ればそれにはバーニーの手に浮かぶ文様と同じものが描かれていたのだが…彼らはそんなものには全く注意を払わなかった。それよりも優先されるべき事項があったからだ。

「始めまして。学院長先生。ルイズの使い魔になりましたバーニーです」
「同じくペイトンです」
「そうかそうか、君達じゃったか。わしが、学院長のオールド・オスマンじゃ。こっちの、コルベール君とは面識はあるな?
それとこちらの美人はミス・ロングビル。わしの秘書をやってもらっておる。して、何用かな?」
「実は、学院長先生に見せたいものがあります。多分、ここではまず見られない珍品ですよ?」

そういって、ペイトンはにやりと笑った。

「実は…ああすみません、その前に窓が開いていた方が都合が良いんで、ちょっと窓を開けてもらって良いですかね?」
「…ふむ?」

怪訝そうにオスマンがロングビルを見やると、彼女は頷き、立ち上がると窓へ向かった。
その動きに合わせ、ペイトンが懐から携帯電話を取り出す。ペイトンがバーニーを小突いたのはその時であった。
それを合図に、バーニーが精神を集中する。すると、窓を開けに向かったロングビルのスカートが風も無くふわり、と捲れあがり、同時にカシャリ、と音が響いた。
現代人なら瞬時に誰に、何をされたか理解し、ペイトンは吊るし上げを喰らっていただろう。
だが、生憎とロングビルはいつもの事…つまり、オスマンのセクハラだと解釈し、報復に出た。振り向きもせずに、無造作に手を振った。
ほぼ同時にオスマンの呻き声が響いた。
狙いたがわず、手に持っていたペンがオスマンの顔面に命中していたのだ。

「すげ…ニンジャみたいだ」

ぼそりとペイトンが呟いた。

「オールド・オスマン、悪戯はいい加減にして下さいね。用事を思い出したので少し席を外させてもらいます!」

にっこりと、凄みの篭った微笑をオスマンに投げかけると、鼻を晴らしてロングビルは退室していった。
142トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:20:03.90 ID:pQjkfUVt
ロングビルが退室したのを見届けると、ペイトンは仕切り直しというように二、三回咳払いをしてから

「さて、これはですね、色々機能がありますが…まぁ簡単に説明するとですね、
この枠内に映ったものを写真…ああ、絵として保存しておくことが出来るのですよ、このように」

と、ペイトンが携帯を操作する。すると、先程捲れあがったロングビルのスカートの中身が見事に激写されていた。ちなみに、赤であった。

「…とまぁ、このような品、恐らく興味を引かれるのではないか、と思うのですが…如何です?
ああ、この絵については気にしないでくださいね。窓から見える景色をとって見せるつもりでしたが、たまたま、偶然、不運にもこんな物が撮れてしまいまして」
「お、おお、うん、これは実に、その、興味深い!」
「全くですな!これは、一体どういう仕組みになっているのですかな?」
「でしょう!そう仰ると思っていました。それで…しばらく使ってみますか?勿論興味がお有りなら、の話ですが」
「勿論じゃ、勿論じゃとも!」

興奮して身を乗り出してくる二人に、極簡単に撮り方、見方だけを教えてペイトンは携帯を手渡した。

「はい、どうぞ。後で解らない事があったら気軽に聞いてくださいね。
ああ、念を押すまでも無いでしょうが、他じゃまず手に入らない代物ですんで、丁寧に扱ってくださいよ?」
「勿論じゃとも!」

力強く頷く二人を見ると、ペイトンは満足そうに頷き、

「それでは、これで失礼します。存分に研究して下さいよ。戻るぞ、バーニー」
「え…?おい、ちょっと、まだ話があるだろ」
「いいから来いって。いいんだよ、これで」

そういうと、ペイトンは無理矢理バーニーを引きずって退室した。が、爛々と目を輝かせている彼らには、その様子は最早写ってはいなかった。
彼らはこの携帯をどうするかにもう夢中だったのだ。
コルベールは、これを隅から隅まで研究してみたいという欲求で。
オスマンは、これで隅から隅までロングビルを激写したいという欲求で。

さて、収まらないのはバーニーである。余りにすんなり引き下がったので、退室するなりペイトンに食って掛かった。
「…おいペイトン、どういう事だ?」
「ん〜、どういう事って?」
「待遇改善してもらうんだろ?なんで携帯渡しただけですんなり引き下がるんだよ!」
「ふっふっふ、まぁ見てなって。後数日の我慢だ。俺の読みが正しけりゃぁ、そうすれば愉快な事になるぜ」
「…?」

果たして、数日後、ペイトンの言ったとおりになったのである。
143トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:22:59.11 ID:pQjkfUVt
そろそろ良いだろ、とのペイトンの判断で彼らは再びオールド・オスマンに面会した。
が。面会自体はすんなり適ったが…彼らを迎えたオールド・オスマンとコルベールの様子がおかしいのだ。

「あ、ああ、君達か。何の用かな?」
「賢明なる学院長殿にはご推察だと思いますが?そろそろこの前渡した携帯を返していただきたいのですが。もう充分研究なさったでしょう?」
「い、いや…あれは実に興味深くてな、もう少し貸しては貰えんじゃろうかなぁ」
「まぁ、それならそれで構いませんが…まさか、壊したりはしてませんよね?」
「はははいやいや、まさか、そんな、なぁ!コルベール君」
「ええ、勿論ですとも!ただ、まぁ興味が尽きないので、もうしばらく!何卒!」
「ですよね!まさかそんなはずないですよね!いやいや失礼しました!」
「いやいや、君がそう心配するのも、うん。もっともじゃよ。じゃが、その、安心してくれんか」

動揺しすぎな彼らを見てバーニーにも大体事情が飲み込めた。無論、それを合えて口にするほどバーニーは空気の読めない男ではない。

「そうですか、ところで話は変わるんですが、ああ、コルベール先生には相談したんですけど。俺達初日にやらかしたせいもあって、未だに食堂で寝てるんです。
食事もキュルケや他の男子から分けてもらっているようなもんだし、もうちょっと、衣…はともかく食住の環境をですね」
「ああ、わかったとも!男子寮に空室があったはずじゃから、そこに移れるようにしよう!食事に関しても厨房に取り計らっておこう。その代わりといっては何じゃがな」
「…ふぅ、わかりましたよ。もう暫くお貸ししておきます。でも、気が済んだら必ず返して下さいよ?」

それだけ言って彼らは退出した。ドアが閉まるなり、満面の笑みで彼らはハイタッチを交わした。

「やりやがったなペイトン!これを狙ってたのか!」
「そうさ、あの秘書さん、結構過激みたいだし、あの爺さんが調子に乗って盗撮でもすればもしや…と思ったんだ。
それに、珍しさからいじり倒せばどの道すぐに電気切れになるだろうって…と」

そこでペイトンは指を立てて「静かに」のジェスチャーをした。怪訝に思いながらもバーニーが黙ると、

「だから私はあれほど彼女の下着を狙うのは止めろと…」
「どんな影響があるか分からんから固定化はやめておこうといったのは君ではないか!大体…」

と激しく言い争う声が聞こえてきたので、彼らは笑いをこらえるのに必死だった。



「それじゃぁ、俺達の新しい城に!」
「我らの再出発に!」
「「乾杯!」」

その夜、彼らは与えられた部屋で存分に祝杯を挙げた。話を聞いた幾人かの男子達もお祝いにやってきて彼らは大いに意気投合した。
そして、久々に満ち足りた気分で、ふかふかのベッドで眠りについたのであった。
144トリステイン魔法学院Z:2012/04/12(木) 05:25:03.78 ID:pQjkfUVt
と、いうわけで「寝床を手に入れろ!」はここまでです。

次回予告

「あんた達のこと、見直したわ。どんな手を使ったか知らないけど、やるじゃないの」

自力で部屋を手に入れたことで、ルイズからの評価が好転し、三人の関係は徐々に良い方向へ向かっていった。
だが、そんなときに謎のゴーレムが学園を襲撃する!彼らは、そしてルイズはどうする?
「おいおいおい!何だありゃぁ!ロボットか?日本製かよ?何でこんなとこに?」
「…ち、違うよペイトン!こりゃぁ、ゴーレムだ!」

そして、再びバーニーの超能力が発動する!

「僕の力で何とかしろだって?…参ったね、スキャナーズもキャリーも趣味じゃないんだ」
「そんなこと言ってる場合じゃなさそうだぜ!うわあ!コッチ来る!」
「見くびらないで!敵に背中を見せないものを貴族というのよ!」

次回「フーケの挑戦!」

…ってのは嘘です。
本当は続けるつもりは全く無く投下した一発ネタのはずだったんですが、
唐突に続きを思いつき、案外悪く無さそうだったので書き上げてみたのがこの話です。

元ネタの映画が撮影された時に携帯電話はまだ登場してないのですが、現代が舞台なので二人は持っていた事にしました。
また思いついたら続きを書くかもしれません。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 09:29:12.56 ID:4lK1bAwn

まさか続編やるとは思わなかった

深夜放送見てたもんとしちゃ超笑えた

というか普通に面白い
こういう面白い掛け合いとコメディーな展開はじつにいい
146名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 11:44:41.81 ID:J1k00H0q
投下乙
原作知らんが面白かった
また続きも読んでみてえ
147名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 14:05:16.57 ID:4H2ounsf
まさかの続ききたw
148名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 18:39:18.67 ID:BxGXot1a
一発ネタだと思っていたら続編が来ていたでゴザルの巻き。
乙乙!

原作本編は無かった事にしてこのままドタバタ学院コメディで突っ走って欲しい。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/12(木) 20:21:32.23 ID:ErxaK8tO
乙です。
読んでて楽しかった
150名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 00:02:57.90 ID:3EvOanBX
乙です

某所のB級洋画紹介見たばっかりだったからさらにワロタ
151名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 01:01:34.76 ID:jhyS7ss2
NHKでデジタルリマスター版の放映が始まったことだし、
ふしぎの海のナディアのジャン・ロック・ラルティーグかハンソン召喚がよみたい

「ハルケギニアより少し進んでる」程度の技術である19世紀から来た技術の天才の2人は
かなり役に立つと思う
グラタン号がフーケのゴーレムにやられるところが見たい
152名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 01:06:44.29 ID:/MK+f0KP
ジャンは見た目と違って男らしいしな
153名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 01:16:23.01 ID:9qWSaeBp
タイミング次第じゃハルケより圧倒的に進んでる技術や知識持ってるんだが
ジェット推進とか理論ごと構築するし、小型電池とか殆ど物資が無い状況で作ったりするレベルだからな
21世紀地球なんか目じゃない宇宙文明時代の科学技術の数々に触れて見てるし甘く見すぎだ
154一尉:2012/04/13(金) 01:26:28.55 ID:85rA6PXY
戦艦大和を召喚にする。ルイズ
155名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 07:35:14.77 ID:lCFL78p6
ナディアからジャン召喚ね……
ゼロ魔のジャンとナディアのジャンのジャンジャンコンビが発明ジャンジャンしちゃうのか?じゃん?
156名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 08:02:17.90 ID:G9b21Fc5
初期案のサイトはジャンみたいな奴だったらしいが
157名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 14:38:24.71 ID:nUyo03mf
>>154
とっくに大和も武蔵も出たssがある

>>153
ジャンよりも、ハンソンのほうがグラタンは初期段階でも現代科学を超えてるだろ
ゲーム版のソフィアとラズだったらルイズとシエスタ相手にお嬢様&メイド対決ができるな
158名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:09:12.09 ID:Jt9E5Tip
いつも思うんだが、何で召喚されたキャラの殆どはされるがままに契約されて
そろいもそろって使い魔になることを承諾してんの?
普通は多少なりとも抵抗するだろ
159名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:10:37.06 ID:/c1+MpQm
作品によるとしか言いようがない。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:12:13.29 ID:hyR21GZ6
基本的に無双が見たいんだから別にいいだろ
それをいうならなんでされるがままに召喚されてんの?ってとこから文句つけろ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:14:36.93 ID:1O2Kux3n
明らかに従いそうもないようなのもいるけど、大半は断固拒否なんてほうが珍しいだろう
162名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:15:30.56 ID:YAMdDxuu
その辺は作者さん次第としか
163名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 19:31:25.01 ID:TE9YgNlq
魔術的な知識が無いとキスが使い魔の契約だとは分からないから阻止は難しいだろうし、魔術が使えなければ契約を潰すことも無理だろうね。
で、召喚されて衣食住を奪われた状態だから、半ば奴隷扱いでも与えてくれる存在に頼るしかなくなるので、使い魔になることを承認するんじゃない。

逆に言えば魔術的な知識と能力があれば契約を回避or潰す事も出来るだろうね。まあ、それだと事故でなければ召喚自体を拒否できそうだけど。
そして、無宿になれていると言うか、見知らぬ外国を旅して回っている(つまり回れる能力がある)ヤツなら自活出来るので使い魔にならずに出て行くかも。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 20:26:14.51 ID:Jt9E5Tip
というかその無理矢理な擁護はいらん
んな思考を全てのキャラがするわけないだろう
165名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 20:42:08.45 ID:/c1+MpQm
抵抗がないのが不自然って主張をするのが不自然な程度にだいたいの作品で理由付けは行われてたと思うよ。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 20:50:50.86 ID:Jt9E5Tip
そうか?
何か全体的に

召喚→ルイズが無理矢理キス→何故か無抵抗→そのままなし崩し的に使い魔へ
って流れが多いんだが
167名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 20:54:11.90 ID:iPm/y/Ns
お前が読んだSSの中では多かったんだろうな
168名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:13:05.42 ID:xeVCSW+z
喜んでキスに応じたH男さんはどうすんだよ!
169名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:16:12.23 ID:Jt9E5Tip
んじゃ聞くけど、召喚から契約までの流れが自然で文句のつけようもないSSってどれよ?
170名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:19:09.01 ID:iPm/y/Ns
不自然だと文句をつけてるのが他にいない時点でその質問は無意味
171名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:29:45.44 ID:Jt9E5Tip
なんだ
要するに召喚から契約までの流れが自然なSSなんて無いってことか
やっぱりみんな何処かであの辺はご都合的展開だと思ってて、目をつぶってたんだな
172名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:31:06.99 ID:TE9YgNlq
>>164
そっちがなんで?と、言ってきたから仮説を考えただけなんだが。
確かに全てのキャラには適応出来ないだろうけど、大抵のキャラが使い魔になった理由にはなると思うけど。
てか、何処が無理矢理だった?具体的に教えて欲しいのだが。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:34:36.94 ID:hyR21GZ6
別にいくらでもあるがここで題名出すほど皆馬鹿じゃないだけだ
なんでキチガイへの対応で特定作品挙げなあかんのか
174名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:39:08.48 ID:mFIgLO/+
ちゃんと説明して契約しようとしたらディーキンの人みたいに序盤だけで長くなるだろ
二次創作なんだからテンポアップの為に、みんなが知っている流れを省くなんて良くあること

で、お前はその事に難癖つけて何がしたいの?
175名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:45:03.42 ID:/Y99BbFh
>>163は特に無理やりとも思えないが…
自分と周りの状況を落ち着いて考えられたなら大体そんな感じの流れになるだろう
自分ならどうする?契約を拒否して一人で生きていけるならそうするけど、無理だという考えに至ったなら使い魔になって庇護下にはいらないか?

上で答えられているとおり作品次第、作者次第だし大体の作品はひどく不自然とは思わない程度には理由付けはされているよ
176名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 21:48:55.81 ID:Jt9E5Tip
まあ能書きはいいので、具体的な作品名を挙げてくれよ
読んで感想述べるから
177名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 22:02:08.21 ID:1O2Kux3n
全部読めばいいんじゃね?どうせ導入部だけ読めばいいんだし

バイバイ、もう来ないでね
178名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 22:02:26.34 ID:hyR21GZ6
キチガイに薦めても作者にかわいそうだからなぁ
こんなに張り付いてる程暇な時間あるなら序盤だけ自分で目を通した方が早いんじゃない?
179名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 23:15:25.79 ID:YqLSdrd8
以前のスレで連載してたシコールでもよんどけよ
180名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/13(金) 23:22:30.89 ID:HIb12JX8
お前ら忘れていないか?

原作自体いやいやと口で言うだけでほとんど抵抗せずに使い魔になってるだろwww
181名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 00:14:05.52 ID:v/3EuGDA
霧亥みたいに契約を無理やり打ち消した後に首引っこ抜きそうになるのも際物w
撃たなかったからいいものの
182スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:34:20.33 ID:+0Nk3Jry
40分ごろより投下します。
183スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:42:09.63 ID:+0Nk3Jry
 
  リベンジ・オブ・ザ・ディセプティコン 第1幕 後篇


 トリステイン王城の式典広場。
晴天に恵まれ雲ひとつないこの日、女王アンリエッタは城を背に、凛とした顔付きで3体の巨人を見上げていた。
即位してからまだ日の浅い彼女ではあるが、その佇まいから窺える威厳さと優雅さは、既に王と呼ぶに相応しかった。
回りには母后マリアンヌ、マザリーニ枢機卿や、そしてアニエスにワルドがいる。
巨人とは、リーダー、アル、ビーツーの3体のスタースクリーム達だ。その足元には、彼らの使い主の姿がある。

先日の、俗称「炎の夜」として語り継がれる、鋼鉄の巨人達の戦いにおける功績を認めるため、
且つトリステイン全体に活気を取り戻すために、授与式と祝賀会が開かれたのだ。
アンリエッタは、スタースクリーム達の顔を一人一人見渡すと、ゆっくりと口を開いた。

「スタースクリーム。貴方達は勝利へ多大に貢献しただけでなく、我らを力を尽くし護り抜いてくれました。
 本来これは、もっと早く渡すべきものでしたが……」

彼女の手元には、5つの小さなインゴットがある。一見小さな紐付きコインだが、
それぞれにスタースクリーム達の体色をイメージした着色が施されている。特製の勲章だ。
アンリエッタはそれをルイズ、キュルケ、モンモランシーの順に1つずつ渡した。音楽隊のファンファーレが鳴る。
残る2つを、再びルイズに手渡しながら言葉を発する。

「ここに居合わせない2名のスタースクリーム……特に、タバサ殿の使い魔は、
 戦闘後の消火活動においても大役を背負ってくれたと聞きます。貴方がたには、感謝の念が尽きません」
『とか言うけどよ、あのド腐れ馬鹿野郎のことだぜ? 本心じゃ無ぇだろうよ』

辺りに戦慄が走る。当然ながらというか、リーダーの発言だ。ルイズは顔を真っ赤にしてリーダーのつま先を蹴る。
厳粛な式典最中にて、アンリエッタ本人に対してでは無いとは言え、馬鹿野郎などと発言したのだ。
他の国、でなくても先代トリステインであれば極刑沙汰だったであろう。
しかしアンリエッタは憤慨もせず、焦ることもなく、微笑みを崩さないまま言葉を返した。

「物の考え方は一片ではない。それは、誰しにも言えます。何かを憎しみながら、その憎しむものを救うことだってある。
 でもそれは、生きとし生ける存在であれば、当たり前のことでしょう?
 そうした複雑な心情を経て、今も尚私たちは歴史を重ね続けているのですから」
『そんなもんかねぇ。人間どもの考え方は回りくどてよくわからん』

式の途中で王に口をはさむ、そんな前代未聞の事態に、式場の雰囲気は勃然と茹で立つ。
マザリーニは肝を冷やし、マリアンヌは娘の成長を知り、アニエスは女王の言葉に込み上げてくるものを堪え、ワルドは深く考え込む。
ルイズは既に意識を明後日の方向に飛ばせていたため卒倒しかけ、キュルケとモンモランシーが慌てて手を貸した。
アルとビーツーは、人間の多面性を改めて見て、より一層の人間への理解を深めていた。
184スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:45:29.49 ID:+0Nk3Jry
 
その頃、自称イケメン・ナルシィと、ド腐れ馬鹿野郎こと5体目のスタースクリームは、
城下町で催されているお祭りにおいて、注目の的として扱われていた。
広場では、各酒場からたくさんの酒が提供され、ほろ酔いの人々は喜びに歌っていた。
戦場となりて、にわかに壊廃してしまった街の復興作業は日々続いている。良い骨休めになっているであろう。

ギーシュとナルシィは、人々の中心に立って自らの功労を語っていた。
ほぼ嘘八百だったが、話し方が巧みなので、皆は酒の肴に武勇伝として聞き入っていた。
ギーシュが何か言いながら薔薇を高々と空へ揚げると、ナルシィがそれをキャッチし、さらに高く揚げ見えを切った。

「我らナルシスティオンに感服するとあらば!」
『求むは拍手御喝采ってな! 惚れるんじゃねぇぞ!』

両者とも満面の得意顔である。観客達がやんややんやと手を叩く。

そこから少し離れた広場の隅に、タバサと、彼女の召喚したスタースクリームがいた。
彼は、他のスタースクリームと比べて、明らかに異質の形状をしていた。
スタースクリーム達は、空を飛ぶ金属生命体とはいえ、外見のそれはある程度人間に準じている。
だが、彼だけは、ひし形シルエットをベースにした肢体の持ち主で、一目からして怪奇的だといえた。

体の表面には、金属線やパイプが露出している。少しでも手足を動かせるたび、それらのパーツ類が連動しているのが解る。
人間で例えれば、血管や筋肉を体表に浮き彫りにさせているようなものだ。

脚は鳥類のように逆関節にくねらせ、小刻みに揺れている。本来長かろう脚だが、このせいでガニ股体勢の印象を受ける。
背中には大きな翼を生やし、腰背面には噴射口がある。胸部には飛行機に変形した状態におけるキャノピー越しに、操縦席が見える。
こうした身体的特徴は他のスタースクリームと相似しているが、より鋭利的な風体だ。

腕は長く、ガニ股なのと相まって、立った状態でも地面に手が届きそうである。
その頭部は、三角状のヘルメットかのような不気味な形で、他者との調和を許さない。
鋭い鶏冠の様な頭部額の形状や、牙にも見える口元の突起物など、どこか蜥蜴じみてるとも言える。

そして、眼は、隻眼――片目だ。
左目部分に銀色の鉄製の眼帯を装着している。右目しか機能していないのである。
左目を失っている彼は、元の世界における軍事兵器「F‐22・ラプター」という飛行機に変身する。
スタースクリーム達が依存する飛行戦闘機の中で、最も性能が良いとされている。

ついで、その「ラプター」が、彼の通称であった。
185スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:47:09.64 ID:+0Nk3Jry
 
ラプターは今、何をするまでもなく、大道芸を披露しているギーシュとナルシィの2名、ナルシスティオンをじっと見ている。
その赤い眼光に、芸を面白がっている振りは窺えない。むしろ、苛立ちを募らせている。
足元にあるベンチでは、使い主であるタバサが座り、好物のはしばみ草を乾燥させ塩で味付けしたものを食している。

そこに、街の子供達が近寄ってきた。知的好奇心盛んな年代の彼らは、大きなラプターに純粋な憧れを示し、
タバサに許諾を得てから金属の足をぺたぺたと触った。怖いけどかっこいい、とか、強そう、と楽しそうにはしゃいでいる。
ラプターは、そんな小さき者たちを踏み潰したくて堪らなかった。
脚を少し左右に振っただけでも、小さな胴体から簡単に頭を削げ落とせる。紙を勢いよく丸めたような断末魔を聞けるだろう。

だが、タバサの眼が、物を言わずそれを制止した。相変わらず口元には乾燥草が銜えられていて威厳には欠けるが。
ラプターは、舌打ちをする。子供達にその音は届いていない。ずっと無邪気に戯れている。
もう1度、彼はタバサを見るが、彼女はいつの間にか本を取り出し読んでいた。だが、杖は握られたままだ。
こうなると、ラプターに勝手な行動の余地は無い。読書し、且つ杖を握った彼女は、ある意味臨戦態勢なのである。
今はそこで、悶々と思考にふけるしかなかった。彼はとにかく、現状の何もかもが不満でしょうがなかった。

 ――先日の戦い。
 スタースクリーム達は敵を倒し、街を救った。さながら人間の前にさっそうと現れた正義の味方、のようにな。
 加え、王女より授与があるということは、つまりあくまで格下の身分として扱わられていることになる。
 
 スタースクリーム達の態度。アルマダとビーツーは元々「人と共存する」甘ったれた主義の持ち主だったが、
 リーダーとナルシィ(しかし間抜けなあだ名だ)は、本来人間を敵視する考えである筈だ。
 だが、その2者も当の人間に骨抜きにされている。被拉致当初の怒りはどこへやら。
 
 百歩譲って、使い魔などと呼ばれるのは我慢してやろう。ほざきたければご自由に、だ。
 だが召喚という名の拉致を被ったあの日、コントラクトサーヴァントだなんてふざけた建前の、無理強いの接吻を受けるまで、
 飛行形態からの変形はおろか、身動きすらとれなかった怪現象は思い返すだけでも理不尽で不条理で、腹立たしい。
 通常の使い魔としての、例えれば「使い主と視界を共有する」といった反吐の出そうな縛りは免れてるのは不幸中の幸いだ。
 もしもそうであったら、迷いなく自らのスパークを握り潰し、潔く絶命の道へ歩んでいただろう。
 すぐにでも街の住民密集地にミサイルをぶち込んでやりたいが、今はそれが選択出来ない自分自身にも腹が立つ。

 それもこれも――この歩く障害、タバサの存在故だ。
 顔を見るたび、苛立ちや恨みを通り越し、嘆きすら覚え、着けたくもない眼帯の奥底が疼く。
 高尚たる金属生命体であるに関わらず猛烈な痒みに襲われ、掻き毟りたくなるのを我慢する。

 だがそれももうすぐ、終わらせてやる。
 それまでせいぜいコキ使ってくれよ、ご主人様――

そうして、好きなだけ自己中心的な頭の整理を行ったラプターは、どうにか感情の突起を抑える。
気がつけば、陽が夕方の色に傾いていた。遊び疲れた子供達はラプターに手を振ると、家へと帰る。
夜の宴が始まる頃合いだ。出席が許されなかった式典は、とうに終わっているだろう。
タバサが立ち上がる。広場中央へ行き、延長戦を始めんとばかりのナルシスティオンに一声かける。

こうして一同はトリステイン学院へと帰って行った。
186スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:50:58.92 ID:+0Nk3Jry
 
――翌日

「やはり、あの剣士人形達は、背後にいるであろう敵の斥候だったのでは?」

トリステイン学院から徒歩で5分のところ、開けた草原にある、通称コルベールハウス。
コルベールの研究所兼スタースクリーム達の溜まり場である。
大木や大きな布を、他の素材と合わせるなどして耐久性を底上げし、定住性も考慮しながら組み立て建設された、
要は巨大なテント基ドームなのだが、天井部を開閉式にすることで日光を入れて室内を明るくするなど、様々な工夫がなされている。

5体の巨躯が優々と居座れるここは、雨風を凌いだり、簡単な発明をしたり、機械の体を潤滑油でメンテナンスしたり、
今日のように会議を開いたりと、その用途は多岐にわたる。

この日、ハウス内にはスタースクリーム5体全員、それとコルベールに、来院者2名がいた。
ワルドとアニエスだ。先の「炎の夜」についての報告をし合っていたのである。

ワルドが言ったように、あのヨルムンガント達――彼らはその名前をまだ知らないが――が斥候を役目としていたのであれば、
スタースクリーム到着後に、幾らかの鬩ぎ合いを繰り広げただけで撤退したのも頷ける。
しかし、ビーツーがそれを否定する。手元には、倒したヨルムンガントの残骸の一部があった。

『多分あれはデモンストレーション、つまり宣伝じゃないかしら』

言いながら、胸部に当たるヨルムンガントのパーツを叩く。乾いた金属音がハウス内に響く。
コルベールが、他のパーツを熱心に調べている。興味深く触ったり、鑢で部品を粉状にして集めたりしたのち、唸った。

「ふぅむ、私はガーゴイル造形は門外漢だが、それでもこの大きさと出来には驚きを隠せないよ。
 これ程のガーゴイルを何体も同時に動かすとなると、よほど大勢か、手練な人形使いがいるだろうね」
『さらに、どの国の設計かを特定させないように、既存のガーゴイルと被らない様な意匠がなされているわ。
 造るのにさぞや苦労したでしょうねぇ。そんなものを使い捨てにするとは考え難い。アニエス。さっきのをもう1度言って頂戴』
「ああ、目撃証言によれば、当日剣士人形達は街はずれで火災を起こし、
 そのあと時間を経てから街に進攻した。住民に、逃げる猶予を十分に与えていた、としか思えん」

アニエスは報告を続ける。建物の倒壊や、怪我人は大勢出たが、死者はいなかった。
これは軍人たちの果敢な攻防による賜物や、神による奇跡などでは無く、どうやら敵の作為的なものだったらしい。
あの火炎攻撃、おそらくファイアー・ボールによる火の雨や、街付近で森林火災を発生させたのは、
かく乱および撤退後の追跡を許さない雲隠れ作戦で、それら結果を全て計算したうえでの処置だったということだ。
森林の焼跡を調査したところ、延焼を防ぐため、あらかじめ一定範囲の木が薙ぎ倒されていたのも判明した。

過去にロマリアで、新教徒狩りとして町を焼き、逃亡者を燻りだす事例はあったが、ある程度調和が平定した現在では考え難い。
アルマダスタースクリームが、我々が出撃したことで、何かしらの罠に陥った可能性は? と慎重な意見を述べる。
それに答えたのはリーダーだった。ここまで集まったデータをまとめる。

『見せしめにしちゃ出所は明かさねぇ、あれから何日か経ったが改めての宣戦布告も無いときた。
 レコン・キスタの残党どもの仕業でもあるめぇ、手間暇がかかり過ぎている。被害も最小限にするたぁ、チキンな按排だぜ。
 じゃあ何だ? 答えは新作のお人形のお披露目さ。
 我らが国はコマーシャルの糧になったわけだ。大体王都まで侵入を許すとは、お前らどんだけザル警備なんだ、アホどもめ』
187スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:52:42.57 ID:+0Nk3Jry
 
いちいち一言付け加えるリーダーの口振りはともかく、現時点ではその解釈で通すこととなった。
つまり、他所の国同士、もしくは一国内の魔法人形の商いにおいて、トリステインがその宣伝場に選ばれた。
人形剣士を実際に暴れさせることで、売り手は買い手にアピールをした、という推測だ。

だが、トリステインにスタースクリームありき、までを前提にしていたかはまだ定かではないし、
第一そんな重大な国際問題に発展しかねない、無茶な商いもあるものかと疑問が浮かぶ。
今後事実が判明し次第、如何ようにも変わってくるだろうが、ひとまずアニエスは提出用の報告書にそう認めることにした。
‘調査の結果やはり見当のつかぬまま’で終わらせたくは無いのである。

『判ってるとは思うけど過剰な反応は禁物よ。陽動して国の間に摩擦を生じさせるのが、敵のそもそもの狙いかもしれない』
「ああ、昨日の祝賀会は、我が国が平常を保っているのを表すのも兼ねていたし、
 首謀、共謀者調査も極内密に進めている。近い内、各国に密偵を送るつもりだ」
『そういうのはアレだ、ワルドに任せようぜ。コソコソ動くのは得意だったろお前』
「……リーダー、痛いところを突かないでくれ」

願わくば、これは「戦争」で無く「いち暴力主義者による悪行」または「災厄」として捉えたいのがトリステインの総意だ。
補足だが、かつてスタースクリーム達は、革命軍レコン・キスタと一戦を交えたことがある。
ただし、一戦というだけあって、タルブでの最終決戦(トリステイン侵略阻止戦においての、である。
最終的なレコン・キスタ崩壊の引導は、後にガリアの艦隊が渡した)まで、彼らは戦争に介入しなかった。

いや、出来なかった。後述するエネルギー問題で、スタースクリーム達は決戦直前まで殆ど戦意を欠いていたからだ。
しかし、問題解消後における活躍は目覚ましかった。レコン・キスタの主力戦艦レキシントン号の撃沈は、
ルイズの虚無の魔法、そして彼らの航空能力をもってしてでなければ、ありえなかったであろう。

勝利の後、彼らは戦績を残したとして称されるべきだったが、元々複雑な立場にあるため、主に枢機卿達がそれに難色を示した。
また、アンリエッタもルイズの‘虚無’については敵国への影響も考え、戦績を公表したくなかったし、
王女としての即位も控えていた。結局スタースクリーム活躍の事実は、表沙汰に記録すらされなかったのである。

しかし時を経て、街を脅かすヨルムンガントの撃退、しかも大勢の国民の前で勇猛ぶりを見せた事により、
ようやくトリステインにとっての功労者として讃えられた、という経由があった。
尤も、人間嫌いのラプターに限らず、人に褒められたところで彼らはあまり嬉しくは無いようだが。

アニエスは、用意された机で報告書の筆を進める。が、ピタと手を止めた。

「ワルド隊長、ここはどういった文体で纏めれば良いでしょう?」
「ああ、君はこの手の書類が苦手だったか」
「元々文を列ねるのが得意というわけでもありませんので……」
「私が記録した書類でよければ目を通してみるか? まる写しとはいかないが、参考にはなるだろう」
「申し訳ない……!」

アニエスとワルドのやり取りに、コルベールはふと微笑んだ。
以前、コルベールとアニエスには過去の不幸からの一悶着があった。
ワルドも、かつては革命軍の間諜として動き、幼馴染であるルイズとの葛藤、戦いがあったそうだ。
だが今はこうして、一緒の空間にいる。

それら人間の鬩ぎ合いには、いつも彼ら――スタースクリームが傍にいた。
彼らの行動がもたらす結果は、本人達の意思に従ってか反してか、少なくとも人間にとっては悪くない方向へと転がった。
軍事上機密にしておくべき情報もこれだけ共有するのだから、信頼までされている。

コルベールは、一番近くにいたスタースクリームを見据えた。ラプターだ。ずっと黙りを決め込んでいる。
恐らく、一番人間を嫌っているのは彼であろう。人間を下等だと見下しているのは本音で間違いない。
実際、痺れを切らした彼による騒動が以前にあった。こともあろうに、学長オスマンを人質にとったのである。

そしてそれが――彼が隻眼となったきっかけでもあった。
188スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:54:04.54 ID:+0Nk3Jry
 
 春の召喚の儀式から幾日か経ったある日の、それは、いつもの院長室の光景だった。
オスマンが、爪をいじる。秘書ロングビルのヒップラインを眼に焼き付ける。お仕置きされる。
コルベールに何か小言を言われる。外の広場に集まって放課後の時間を過ごす生徒達の賑やかな声を聞く。

そして、窓を割って現れた巨大な金属の腕に掴まれ、外に引きずり出される。
オスマンの目前に、2つの赤い目が光る。ラプターだ。口元から涎の様な液体が滲んでいる。

『よぉ、学院長さんよ……ちょっとお時間を頂けるかな?』
「やれやれ、気配にてんで気付かなんだとは。ワシも老いたかのぉ」

ラプターの大きな右手に、両手両足を収められ僅かも身動きのできないオスマンは、積年の経験からによる脱出法を画策するが、
これまでの長き人生で、巨大金属に掴まれて学院主塔の天辺に連れ出された覚えなど、ありようも無かった。
院長室の壊れた壁から、コルベールとロングビルが青ざめた形相で事の成り行きを覗く。
授業が終わった直後の学生たちは、現状理解が追い付かないまま主塔を見上げる。
ルイズやモンモランシーは声を上げて驚く。キュルケとギーシュは言葉も出ない。

学院のそこらにいた他の4名のスタースクリームは、やはりやらかしたか、といった表情を見せた。快くは思わない様だ。
スタースクリーム達は、普段口では人間はカスだのクズだの言うが、こうして実力行使に移ることは無かった。
やろうと思えばやれたのだろうが、同じ名前を持つ者同士、協調よりむしろ牽制し合っていたのである。
ここにきて、ラプターがいち抜けて本性を曝け出したというわけだ。

主塔天辺に立ったラプターは、眼下の者たちを一瞥すると、オスマンを見せつけるように翳したまま大声で怒鳴った。

『手中にあるのがこの老いぼれだけだと思うな。俺がここに陣取る以上、学院にいる者全員が射程距離内にいる。
 無論貴様らもだ、スタースクリームの粗悪品どもめ!!』

叫ぶと同時に、左腕の手首甲から、突起物を展開した。ラプターの隠しウエポン、6砲バルカン・20mmガトリングだ。
ハルケギニアでは代えの利かないガトリング弾やミサイルといった重火器は、それまでずっと封印していた。
ここにきてその役目を果たさせようとしているのである。詠唱の必要なぞ無い為、魔法相手には先手を取れ、有利だ。

同時にラプターから見て塔の側面にいたナルシィが、自身の背中に腕を寄せ、
彼の射撃武器であるデュアルソニック・ブラスターの放射エネルギーを、音を殺して充填する。
早撃ちに自信のあるナルシィは、ラプターの両腕を狙撃し、オスマンの手放しとガトリングの制御を試みようとした。

これはあくまで、オスマン救出願望というより、単にラプターの言動が気に入らない事への反感行動だ。
手放された腐れジジイは他の誰かが助けるだろう、咄嗟に問題解決する自分はなんてイケメンなんだ、
と彼は思っていた。
189スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:54:48.80 ID:+0Nk3Jry
 
が、次の瞬間、ラプターがオスマンを空中真上に放つ。女生徒達が悲鳴を上げる。
そしてラプターは胸部の、戦闘機形態時における機首部分を迫出、さらにキャノピーを開き、落下するオスマンを操縦席に閉じ込めた。
すかさず、機首を胸部に収納し、空いた右手からもバルカンを展開、今度は両腕を生徒達に構え下ろした。
オスマンは気を失っている。
ナルシィは己を見透かされたのに気づき舌打ちをし、エネルギー充填を中止した。

人質を瞬時に胸部に移し、両腕を自由にし、半円180度を瞬息狙撃範囲内にする。鮮やかですらあった。
ラプターがナルシィに対してにやける。ナルシィの企みなど端から見切っていたのだろう。

その模様を窺っていたアルマダスタースクリームだが、右手を背中左翼に添えたまま硬直している。
彼のウィングブレードによる一閃であれば、ラプターに致命傷を与えるのは瞬刻であろうものの、
オスマンという人命を懸念する彼の精神が、ここにおいて行動を鈍らせてしまっていた。
しん、と辺りは静まり返る。
溜まらず、ルイズが叫ぶ。

「あ、あんた! 前からキナ臭い奴だとは思ってたけど、一体なにが目的なの!」
『そうだな、後4,5人、俺と来てもらおうか。そのまま皆でアンリエッタ様に謁見するんだ、光栄だろう?』
「まさか……姫さまを脅すつもり!?」
『脅迫ってことかい? 早とちりだなぁ、俺はただお姫様と楽しくおはなししたいだけだよ』

ラプターが、にんまりとした表情でルイズを見る。ルイズは得体のしれない悪寒に見舞われ、その場に尻餅をつく。

『キナ臭いってのぁ、君の派手なスタースクリームのことだろう? なぁ、無能リーダー』

あざとい挑発に、当のリーダーは顔を顰める。怒り心頭を超え、言葉すらも忘れ震えている。

ラプターは残る人質の選考をした。
ルイズは確定だ。アンリエッタとは個人的な関係もあるようだから「おはなし」も円滑に進むだろう。
となると、残る数名はキュルケ、モンモランシー、ギーシュに決まりである。
スタースクリーム召喚者を選出したわけだが、ここで彼は根本的な疑問に気付く。

 ――タバサはどこだ?
 数時間前に顔を確認したし、この騒ぎを起こして数分が経過する。ここに居合わせないわけがない。
 使い魔が勝手を起こしたことにより、後々使い主として責任を問われるのが怖くなって逃げ出したか。
 魔法の力量においてはそれなりだったから、利用価値は色々あるだろうと踏んでいたが、まあいい。

ラプターは、自分の小さき使い主の事を、所詮は人間の小娘、と鼻で笑おうとした、その時だった。

「スタースクリーム」

ほんの小さな、しかし水流の様に透き通った声が、聞こえた。
190スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:56:55.04 ID:+0Nk3Jry
 
ラプターは声のした、自身の背後上空に顔を振り向かせる。
そこには、小さな影が、太陽光を味方に、ラプターの顔面に飛来する光景が見えた。
短い丈のスカートを靡かせ、大きな杖を構えている。蒼い髪が風に揺れ、その隙間から眼鏡の艶が光る。
ラプターの使い主は、そこにいた。彼女はぶつぶつと何か言っている。

次の瞬間、ラプターの左目は光を失った。
タバサの放った「ジャベリン」の大きな氷柱は、完全に氷として固形される直前に、
ラプターの眼孔へ深く突き刺さり、メタルの眼球を凍結させ、炸裂した。それにより、彼の左眼は木端微塵となる。

彼は悲鳴を上げる。金属の視神経は痛みを感じさせないはずだが、全身を貫くような衝撃が彼を襲っていた。
続いて小さな氷柱が、ラプターの両腕を直撃する。大した威力ではないが、ガトリングの狙いを狂わせるには十分だ。
タバサは、もがくラプターの胸部にしがみ付き、キャノピーを魔法で抉じ開け、オスマンを救い出す。
そして、飛んだ。この間、5秒ほどの出来事だった。
事態を把握した4名のスタースクリームが、行動を開始した。

『スタースクリーム軍団! あの糞喰らえを引きずり下ろせ!!』

リーダーの号令(これが初の号令にして、まだあやふやだった彼の立ち位置を決定づけさせた)と同時に、4名が飛翔する。
アルがタバサとオスマンを受け止め、ナルシィとビーツーが、喚き暴れ狂うラプターを取り押さえる。
そして、リーダーが両腕のスティック状の光線銃、「ナルビーム砲」を構え、濁ったピンク色の光線を発射した。
ナルビームとは、機械の電子回路を麻痺させる特殊光線である。機械生命体にその効果は絶大だ。
エネルギーを大量に消費するため、これはリーダーにとっての奥の手であった。

『キナ臭くて悪かったな、この爬虫類野郎めが』

ようやくラプターは沈黙し、広場に下ろされる。左目は抉られ、全身痙攣しているその姿は、情けなく哀れだ。
学院が騒然となった。生徒や教師達は先ずオスマンの無事を確認する。ある者はラプターに罵声を浴びせる。
眼を覚ましたオスマンは、自分に怪我が無い事だけを伝え、逆に生徒たちの身の健全を知ると、後は何も言わなかった。
タバサは、倒れたラプターをじっと見ていた。ルイズらはタバサに駆け寄るが、ここでも言葉は無かった。
4名のスタースクリームは、場の風当たりを諭してか周りから離れた。教師達の指導のもと、生徒達も宿舎塔の各自室へ戻る。
その場に残ったのは、何かを想う使い主と、傷だらけの使い魔だけだった。


――その後の事は、コルベールも今一はっきりしていない。
確かなのは、あの騒ぎの直後、それが原因なのかは解からないがロングビルが秘書を辞めて何処かへ消えたことと、
そしてスタースクリーム達との関係に、皮肉なことに一定のバランスが築きあげられたことだ。タバサとラプター含め、だ。
さすがに、学院の者達はラプターへの強い不信を植え付けたが、オスマン本人が咎め無しとしたので黙許されている。

ラプター自身は、その日を境に滅多なことで口を開かなくなった。ある意味、タバサに似た。素行も、大人しいとすら言える。
コルベールは、かえってその静けさが不気味に感じられたが、あまり深くは考えないことにした。
そうやって物事を考えすぎるから、頭髪がこんなになったのだろうな、と頭を摩って自虐した。

さて、会議は一応の纏まりを迎え、アニエスとワルドは王城へと戻って行った。
未だ正体を明かさない襲撃者の行方と目的を探るため、北へ南へ働きづめだ。
先刻リーダーの言った「懐にまんまと侵入させられた」というのも事実ではある。守衛強化、訓練の回数もより増えるであろう。
191スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 00:58:53.09 ID:+0Nk3Jry
 
 会議を終えたテント内ではスタースクリーム達が、エネルギー補給を訴えていた。腹減った、ということである。
彼ら金属生命体は、以前は「エネルゴン」という特殊物質を摂取し、消耗した身体機能を回復させていた
(厳密には別称のエネルギー体を必要とする者もいるが、ここでは統一してエネルゴンと呼んでいる)。

ハルケギニアに召喚されて以後、彼らにとっての最初の死活問題がそのエネルゴン補給方法であった。
スタースクリーム・リーダーは、召喚される以前にも幾度となくエネルゴン枯渇問題に悩まされていたため、
こうしたサバイバル術には意外と長けており、様々な解決方を編出し、実践した。

エネルゴン入手は、惑星の地下などに天然物として埋まっていることがある以外、
水力や火力など、極端に強力な発生エネルギーによって発生させたり、変換するしかないが、そう簡単にできるわけではない。
最初は人力やメイジの魔法による発電を試した……が、そもそも協力してくれる人間が皆無だった。
天然エネルゴンや、オールスパークという金属生命体の根源、の探査も行ったが、少なくともトリステインには存在しないようだ。

その他、落雷ショックを活用したり、塩や獣の糞から抽出した塩素やナトリウムを化合させて新たな製造法を模索したりと、
あらゆる手を尽くしたが、結果はどれも空振りだった。
たとえ一時的にエネルギー補給が出来ても、それは雀の涙程度で、需要と供給がまるで追い付かないからである。
金属生命体5体分のエネルギー補給を継続するには相当な量の確保、それもその場しのぎではなく安定した供給が必要なのだ。
コツコツ溜めた微量なエネルギーを巡る、醜い争奪戦も日常茶飯事であった(専らはリーダーとナルシィの掴み合いの喧嘩である)。

次第に予備エネルギーも尽くし始め、さすがの彼らも威勢を尽くし始めた頃(リーダーやラプターすら弱腰だった)、
ナルシィがやけくそで飲んでみたギーシュ提供の赤ワインが、なんとエネルゴンに近い成分として、体に適合されたのである。
環境の変化によって、いつのまにか適応能力が働いていたのでは、と推測される。

「大事な戦いはこれからなんだ、僕のソウルブラザーよ! さぁ、これを飲みたまへ!」

というギーシュの強引さがなければ、今頃タルブはレコン・キスタに占領され、戦争は泥沼と化していたでろう。

そしてその後、石炭をコルベールによる錬金魔法によって化合したガソリンに近い液体を、熟成赤ワインと混ぜ、
ぐつぐつ煮てから冷まして出来上がった、気色の悪いスペシャルドリンクが、
ほぼ完全にエネルゴンの代用となるのを確立させた。これで動力エネルギー補給は容易となった。

スタースクリーム達が魔法の存在に懐疑しつつも、真っ向否定はしないのはこのためである。
現在、スペシャルドリンクは週に1度区間での摂取で、普段は度の強いワイン(1体あたり、大瓶3本分)を1日1回飲んでいる。
果実酒なぞで代用するのは本来プライドが許さない処だが、彼らとて生存第一である。

スタースクリーム達は全員どやどやとハウスの外に出ると、マルトーの仕切る厨房へと向かった。
がらんとしたハウス内に一人残ったコルベールは、片づけをしながら、真意を閉ざしたラプターの事を考える。
と、再び頭を摩った。
192スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 01:04:20.84 ID:+0Nk3Jry
 
 毎日この時間になると、厨房前広場は騒がしくなる。5体の巨人達が、どっとワインを所望しに現れるからだ。
マルトーやコック達は、学院生徒の夕食の仕込みに忙しいため、対応はシエスタ一人に任せられている。
彼らの飲酒の仕方は、同じ赤ワインでも、各様々だ。
リーダーは、ワイン3本分を大樽に入れ、一気に飲み干し、ものの見事に陶酔する。
アルコールが三半規管に作用する人間同様、飲酒直後は千鳥足になってしまうのだ。挙句、眠りこける。
ナルシィの飲みっぷりも豪快なものだが、彼は酒に強いらしく飲酒後もシラフでいる。さすがイケメン酒豪だ、と煩いが。

ビーツー、アルはというと、シエスタに給仕されながら、少しずつゆっくり飲むのが作法となっている。
こうやって徐々にワインを体内に浸み込ませた方が、疑似エネルゴン供給率が上がるそうだ。
尚、ビーツーの口元はマスクで覆われているが、どうやらその隙間から器用に飲んでいるらしい。
どっしりと腰を構えてワインを飲む2体を相手に、シエスタは慣れた手付きでワインを特注の大きな杯に注ぐ。
ふと、彼女は辺りをきょろきょろ見渡す。1名その場にいないのを把握する。

「あれ……今日はラプターさん、いらっしゃってないんですね」
『ふむ、あいつは夜になると、時々タバサと共に忽然と姿を消すが』
『今日は早めの出発なのかしらね。彼女が一緒なら、ま、心配は無いけど』
「あの、ラプターさんて、ああ見えて実はミス・タバサにすっごく懐いてますよね。
 他の皆はラプターさんのこと煙たがっているけど、私そういうところ嫌いじゃないです」

頬に両手を当て、如何にも、今私は想いにふけっているのです、というポーズをとるシエスタ。
ビーツーが訝しげに発言する。

『あれって、懐いてる……って言えるのかしら?』
「だってほら、ラプターさんはいつも無口ですけど、ミス・タバサの前だと饒舌になるんですよ。
 楽しそうに会話してるところを見たことがあるから間違いありません」

シエスタの言う通り、ラプターはタバサに対してだけは積極的に発言をする。なるだけ周りに人がいない状況下でだ。
しかしずいぶん諂ったモノの言い方をするため、殊更そのものなやり取りにしか見えないのだが。
アルマダスタースクリームは、なにか腑に落ちない表情をしつつも、話題を収束させるよう総括を述べた。

『眼を再生不能にされて以降、さすがにタバサへの従順は認めているのかもしれんな。言うことは素直に聞いているんじゃないのか』
「やっぱり! 夜な夜な何処行って何やってるんでしょう! あんなこととかこんなこととか……」

シエスタが、両手を握り合わせながら何やら妄想を始めた。すでにビーツーとアルは眼中にない。

『……人間ってのは』
『面白い考え方をするわね……』

2体は、溜息に近い音を鳴らすと、杯のワインを飲み干した。
193スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 01:06:50.30 ID:+0Nk3Jry
 
 肌寒い季節になってきた。タバサは体温の低下を感じた。ここ、高度数千メイルの上層気温であれば、尚更だ。
タバサは毛布に包まり、あと数ページで終幕となる本を読む。彼女は今「F‐22」に搭乗し、ガリアへと向かっている。
F‐22は異世界の軍事用戦闘機だが、現在その狭いコックピットはさながら布団部屋と化している。
操縦機器類は敷き毛布に隠れ、そこかしこに読みかけの本が挿まれていて、かつて軍人が座っていたであろう名残はない。
今現在、ハルケギニア中において、タバサが心からくつろげる場所があるとすれば、ここがその候補となる。

しかし、ここはF−22の中、すなわちスタースクリーム・ラプターの体内である。
ラプターが憎きタバサを今この瞬間殺害する方法は数十通りある。
急降下して内臓をシェイクする、飛行速度を最高に上げてGで押し潰す、大気圏を突きぬけ酸欠を引き起こす、エト・セトラ。
だがラプターは、それらを実行に移すことなく、あくまでタバサの便利な乗り物に徹している。

それだけでなく、移動間の暇つぶしの相手までこなしていた。タバサが今しがた読み終えた本について、ラプターは言及する。
彼のデータバンクには、既にハルケギニアの文字がインプットされているため、本を評する程度なら造作ない。

『その著者は執筆途中で匙を投げだしたのでしょうな。根性の無い奴だ』

ラプターによる批評に、タバサがこくりと頷いた。
どうやらその本は序盤で起伏の勢いがあった割に、落ちが弱かったらしい。タバサもそれに同意した、という情景だ。
そのやり取りは、傍からすると、形容は特殊であれど使い主と使い魔の微笑ましい交流にすら見える。

やがて、ガリアのプチ・トロワに到着する。宮殿の前庭に着陸したラプターから、タバサが降り立つ。

『お気をつけて、タバサ様』

戦闘機の形態を崩さないまま、ラプターは宮殿へ入るタバサを見送った。
タバサにとって、そこからの流れは決められたものだった。女王イザベラに謁見し、嫌味だか卵だかを投げつけられる。
何らかの任務を命じられる。今回の任務は、ある農村を襲うコボルド討伐であった。
タバサは、その村の位置を聞き、少し目元を動かした。ほんの僅かな変化だったので、その場の誰も気がつかなかった。
タバサは退室しようとする。本来ならそのまま現場へ直行するところだが、珍しくイザベラがそれを引き留める。

「待ちな。今回は、任務のための必要備品をくれてやる。私からの特別配慮だよ。そら、さっさと倉庫にお行き」

イザベラは、従者1名を案内役としてタバサに付かせると、激しい手振りで室から追いやった。
少し間を空けてから、億劫な表情を醸しながら立ち上がり、彼女も室から出て行く。従者も連れず、単独だ。
イザベラは宮殿の庭へ歩んだ。まるで手入れの行き届いていないそこは、王女の住まう場所とは到底思えない。

砂利を鳴らして庭の中心へ進む。方々に伸びた草花の枯れた根っこを踏むたび、彼女は顔を顰める。
散らばった煉瓦が辛うじて示している道に導かれた先に、茶会用の小屋、ただし朽ち果てて今や骨組だけ、が建っていた。
そして、小屋の脇、かつて花壇があったであろう荒れ地に、金属の塊が見える。

戦闘機からの変身を解いたラプターが、そこにいた。
イザベラは腕を組み右肩を突きだし、不機嫌な面構えでラプターの赤い隻眼と目を合わせる。
ラプターは片膝を突き、右腕を前に、左腕を背面に回す。人間が王と対面する際と同じ様な体位だ。
ただし身長差は遥かにあるため、可能な限り身を屈め、頭をイザベラの元へ近寄せた。

『ご機嫌麗しゅう。イザベラ殿――』


そして、密談が始まった。
194スタースクリームだらけ リベンジ:2012/04/14(土) 01:08:32.60 ID:+0Nk3Jry
投下終了です。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 02:06:58.67 ID:6hy9KR8H
そう言えば、召喚されたキャラの特殊能力か何かでそもそもルーンが刻まれない
って展開はあまり見ないな
後で解除って展開ならたまにあるけど、それすらも出来ない作品の方が多い
(ここじゃないけど、めだかとのクロスで球磨川の大嘘吐きですら消せないとか呪いみたいな扱いもあるし)

すぐに解除、或いは契約すら出来ないパターンの作品って他にあったっけ?
196名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 02:39:20.10 ID:JPXSev90
スタースクリームの人乙です
197名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 02:43:40.67 ID:8JCLX+jh
リベンジ乙

>>195
東方の八雲紫が境界いじってルイズにルーンを移してたな、確か。
あとダイ大のポップがコルベール先生に移してたっけ。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 04:31:27.47 ID:S3jzPW4j
>>195
多い少ないからって何がいいたいんだって話
199名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 07:26:03.78 ID:sZ1ucfz7
>>198
別に多い少ないからって何がとかどうでもよくね。
というかこの流れ自体不毛なものじゃね
200名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 12:39:06.91 ID:XPZOAx8m
無毛?
201名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 13:51:24.94 ID:9bztnjD4
コルベールの頭頂部乙
202名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 15:14:39.70 ID:UmQUiE4I
毛根が切ない人を指さすのはやめろ!訴訟
203名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 16:17:01.41 ID:vndHtzkA
神撃のバハムートからハイアルケミストのおねーちゃんを召喚。
コルベールの研究室に引きこもって錬金術の研究ばっかでルイズをイライラさせるが、ある日事故を起こして。

「ん?マナの副作用で体質が変化してしまったみたいだ。まあ安い代償さ」

ルイズ血涙
204名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 16:48:23.31 ID:eix7ksZB
実験事故でむちむち巨乳になるとかひゃっほい!
205名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 16:52:31.84 ID:i9/wRoDC
事故って暴走したから次元の彼方まで飛ばされたオススメの対星系消滅兵器があるんだが
エロい体が楽々手に入るよ!やったねルイズちゃん!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 18:07:38.38 ID:8yTpGV2P
>>205
> エロい体が楽々手に入るよ!やったねルイズちゃん!
元ネタのたえちゃんをタバサに召喚させたくなった
ルイズに召喚されて才人以下の扱いでも元の世界よりは幸せだろうけど
207名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 19:50:39.46 ID:3X+M1uMd
宮崎駿・ジブリ関係からの召喚が読みたいな 巨神兵が召喚されてるのは見たことあるけど

・ナウシカ  魔法を使えないのに姫 重装兵士を殺せる剣の達人
・ポルコ・ロッソ  変なオーク 飛行機を動かせる ただし戦争嫌い
・アシタカ  剣と弓の超達人 呪いの力も合わせると人外クラス
・ハウル  実力ある魔法使いで魔法学校に通っていた経験もある
208名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 20:35:06.85 ID:RG27s47n
規格外少年コナンとか
209名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 21:18:00.57 ID:fLoQ8UEF
誰もいなければ21時半から投下予定
210名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 21:20:09.90 ID:vndHtzkA
>>209
誰なのかくらい名乗りなよ
211使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:26:52.49 ID:fLoQ8UEF
ごめんなさい、名前のコテハン記憶にチェック付けてなかった
212使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:31:14.57 ID:fLoQ8UEF
時間になったので投下させていただきます

第5話『決闘』

「諸君!決闘だ!!」
金髪の少年──ギーシュがいつものように気障な仕草をする余裕もなく、叫んだ。
周囲のざわめきもギーシュの一挙手一投足もルイズの癇に障るものでしかない。

切っ掛けは実に愚かしい出来事だった。
時はアセルスがシエスタにルイズとの思い出を聞いていた頃に遡る。



始まりはキュルケにからかわれつつも、昼食を取っていたルイズの足元に何かぶつかった事だ。

「どうしたの?」
キュルケがテーブルの下を覗くルイズに尋ねる。
「何かが足元に転がってきて……」
ルイズが拾い上げたのは、紫色の液体が入った小瓶。
残り香から香水だと判断する。
キュルケは持ち主に心当たりがあった。

「それ、モンモランシーの香水じゃない?」
ラベルに『愛するギーシュへ』と手書きされているから、プレゼントなのだろう。
ルイズはギーシュに香水の瓶を渡そうとしたのだが、彼はなぜか受け取ろうとしなかった。
受け取らなかった理由はすぐに氷解する。

ギーシュの隣にはケティと言う別の少女が座っていたのだ。
彼女は香水の送り主が誰かも知っていた。
結果、ギーシュに別れの言葉と盛大な張り手を浴びせて立ち去っていく。

これだけ騒ぎになれば、当然もう一人の少女にも感づかれる。
ギーシュの元にやってきた少女はギーシュへ香水をプレゼントしたモンモランシー。
必死に弁明しようとするギーシュには耳を貸さず、ワイン瓶を手に取った。

「最低」
死刑宣告のような一言と同時に、ワイン瓶を全力で頭に振り下ろした。
ワイン瓶は割れ、中身がぶちまけられる。
激痛で頭を抱えたままのギーシュを置き去り、モンモランシーは一瞥すらせず帰っていった。
213使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:35:06.77 ID:fLoQ8UEF
「彼女たちは薔薇の意味を分かっていないんだ。多くの女性を楽しませてこそ……」
立場が悪くなった雰囲気を払拭するべく、ギーシュが自己弁護を始めた。
ルイズは滑稽だとは思ったが、周囲のように囃し立てる気もなかった。
踵を返して、場を後にしようとする。

「待ちたまえ」
立ち去ろうとしたルイズをギーシュが呼び止めた。
ルイズは何の用なのかと、振り返る。

「君が軽率に香水の瓶を拾った所為で、二人のレディの名誉が傷ついた。
どうしてくれるんだね?」
ギーシュの発言を聞いて、ルイズには疑問符が増えただけだった。

「僕は君から香水の瓶を渡されたとき、知らないフリをしたのだよ?
話をあわせるくらいの機転があったっていいじゃないか」
ようやくギーシュが何を言いたいのかを理解した。
単なる責任転嫁だと。

「二股したあんたが悪いんでしょ」
支離滅裂な言い分を振りかざすギーシュをルイズは呆れた目で見ることしかできない。
そんなルイズの反応はギーシュの予定通りだった。

「君に機転を利かせる事を期待した僕が馬鹿だったよ、『ゼロ』のルイズは気配りもゼロらしい」
ギーシュが試みたのは嘲笑の対象を自分から、ルイズに移し変えようとする愚劣な発想。
『ゼロ』といういつもの揶揄。
その言葉を聞いたとき、ルイズは歯軋りする。

年中馬鹿にしてきた彼らは気付いていない。
ルイズが今まで押し殺してきた感情の大きさに。
だから彼らは分からない。
自分達のしている事が、水の溜まった堤防に穴を開けるような危険な行為だと。

ギーシュも御多分に漏れず、この類に当てはまる。
214使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:40:12.28 ID:fLoQ8UEF
「最も仕方ないことかもね、君が貴族なのは家柄だけなのだから」
「……どういう意味よ」
尋ねるルイズの声色に冷たいものが混じる。
異常に気付いたのは、遠くから様子を伺っていたキュルケのみ。
思わず止めようとするが、二人の周りには野次馬が集まっているせいで前に進めない。

「おや、知らないのかい?」
わざとらしい仕草で肩をすくめる。
自分の失態を逸らすべく、ルイズに更なる嘲笑を投げかけるため。

「このトリステインじゃ魔法を使えないものを貴族とは呼ばないのさ」
目を瞑ってやれやれと頭を振るギーシュ。
ルイズの自制心から押し殺していた感情が微かに零れた。
近くにあったスープの皿を掴むと、ギーシュに投げつける。

「熱っ!!!」
熱を持ったスープがかかった事で思わず身を屈め、地面をのた打ち回る。
その際に床に散らばったワイン瓶や皿の破片で手を切ってしまい、反動で飛び跳ねた。
すると今度はテーブルの角に頭を打って、ぶつけた痛みでうずくまる。

まるで喜劇のようなギーシュの不運に周囲が大爆笑の渦に包まれた。
羞恥心から顔を怒りで歪めたギーシュが立ち上がる。

「決闘だ!こんな事をしてただで済むと思うなよ!!」
ギーシュがルイズに杖を向けて、叫んだのは決闘の二文字。

「ちょっと!貴族同士での決闘はご法度よ!」
ようやく人の波を乗り越えてきたキュルケが制止するが、憤慨するギーシュは聞く耳持たない。

「問題ないね、元来禁止されているのは貴族同士の決闘じゃない。
『メイジ』同士の決闘なんだ……ヴェストリ広場で5分後に待つ!」
ナプキンで顔を拭いていたギーシュは場所を告げると、着替えるために自室へ戻る。
ルイズは顔を伏せたまま立ち尽くしている。
野次馬は多少困惑しながらも、突然沸いた決闘という娯楽に盛り上がって広場へ向かっていた。

「ルイズ!応じちゃダメよ!」
広場へ向かおうとしたルイズの腕を思わず掴む。
キュルケが制止したのは心配からの行為だが、ルイズは全く別の意図に曲解していた。

「貴女も私が家柄だけの『ゼロ』だって言いたい訳?」
伏せたままの表情はルイズより背の高いキュルケには見えない。
しかし、血も感情も通わない声は自分を拒絶しているとキュルケは悟った。

「ルイズ……?」
陽気な彼女からは信じられないほど弱々しい声が漏れる。
掴かまれていた腕を強引に振り解いて、ルイズは広場へ向かった。
215使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:46:10.33 ID:fLoQ8UEF
──以上が、決闘までの騒乱である。
原因は実に馬鹿馬鹿しいが、ギーシュはもう後には引けなかった。

魔法で青銅のゴーレム、ワルキューレを生み出す。
一体だけ展開したのは複数展開してルイズの爆発魔法に巻き込まれないようにする為。
最大の理由は『ゼロ』相手に全力を出すなどすれば、周囲から笑われるのが目に見えていたこと。

普段のギーシュならば、女性相手に怪我を負わせるなど恥ずべきだと考える。
だが日頃から周囲への見栄を意識し、嘲笑に晒される事に慣れていない今の彼に余裕はなかった。
故に武器こそ持たせないまでも、ワルキューレの攻撃に遠慮はない。
少し痛めつければ降参するだろうと自分本位な考え方をしていたのも原因だが。

一方ルイズとて魔法が使えない以上、まともな勝算はない。
自らが使えるのは、狙いも付けられない爆発魔法のみ。
ワルキューレの行動より早く呪文を唱えることだけが自分が勝つ手段。
集中して、ギーシュへ一撃を叩き込むべく詠唱を始める。

「錬金!」
爆発はルイズのほぼ狙い通りの位置で起こり、粉塵を巻き起こす。
それと同時にギーシュが小さな悲鳴を上げる。

「やった!」
思い描いた展開に歓声をあげる。

だからルイズは反応するのに一瞬遅れた。
黒煙の中から現れたワルキューレへの対応が。
魔法がわずかに外れたと、気がついた時には手遅れだった。

「この……!」
目前で起きた爆発。
ただでさえ少なかった余裕を、ギーシュから根こそぎ奪った。
青銅で出来たワルキューレによる加減も何もない全力の一撃がルイズに放たれた。
216使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:50:48.61 ID:fLoQ8UEF
ワルキューレの右腕は細身なルイズのあばら骨をいとも容易くへし折った。
生まれて始めての苦痛に血が混ざった唾液を吐き出す。

──勝った。
ギーシュは内心でほくそ笑むと同時に余裕もわずかに戻る。

「勝負ありだ、どうだい?一言謝罪すれば手打ちにしようじゃないか」
ギーシュがいつもの気障らしい仕草で語りかける。

「私は杖も手放していないし、降参もしていないわよ」
よろめきながらルイズが立ち上がろうとするも、片膝をつくのが精一杯である。
野次馬はまだ決闘が続くことに歓声を上げた。

「やれやれ……女性に手をあげるのは趣味じゃないが仕方ない」
薔薇で出来た杖を振って、ワルキューレを動かそうとする。
しかし、ワルキューレは動かない。
ギーシュが疑問に思っていると、ワルキューレは細切れになって崩れ落ちた。

「戦うのは私だ」
ギーシュが驚愕の声を上げるより早く場に女性の声が響く。

「貴様……どうやって!?」
ギーシュが冷や汗を流す。
いつの間にかルイズの傍にアセルスが立っていた。
手にはルビーのように透き通った赤い剣を構えている。

「これは決闘だ!一騎打ちに手出ししないでもらおうか!」
彼女が妖魔であることはギーシュも知っている。
だから彼女が参戦できないように一対一だと強調した。

「私は彼女の使い魔よ、使い魔は主人を護るものでしょう」
「手を出さないで……」
アセルスの言葉を遮るようにルイズが呟く。
声こそ小さいが、明確な拒絶の意思。
217使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 21:55:54.94 ID:fLoQ8UEF
「私は貴族よ、馬鹿にしないで!貴女も私が……」
「違う!」
ゼロだと言いたいのか。その台詞を言うより早くアセルスが強く否定した。

「君が傷つく姿に、悲しむ人がいる」
横目でシエスタのほうを見る。
シエスタは顔面蒼白になりながらも、事の成り行きを見守っている。
ルイズもシエスタの存在に気付いたのか、それ以上は何も言わずに押し黙った。

単にギーシュを討つだけなら、アセルスには容易だ。
だが、それでは意味がない。
あくまでもルイズ自身の手で倒さなければ、周囲はルイズの力を認めようとはしないだろう。

「私は直接手出しはしないと約束しよう。
私を掻い潜って、ルイズを攻撃できればお前の勝ちだ」
アセルスの声はルイズが聞いたこともないほどの重圧に溢れている。

「……いいだろう、その条件で戦ってやる。」
ギーシュとて妖魔を敵に回して勝てるとは思っていない。
この条件はギーシュに取っても渡りに船だ。
妖魔が攻撃してこないのならば勝算はある、ルイズだけを狙えばいいのならば。

「勝手な事して……」
喋るだけでも、傷に響くため自然と小声になる。

「ルイズ。教室でも言ったけど、君は自分の力の使い方を知らないだけだ」
自分が妖魔としての戦闘訓練を行っていた頃を思い出す。
アセルスとて目覚めた頃は、中級妖魔相応の力しか持っていなかった。
上級妖魔としての力を身につけたのは、訓練と針の城から逃げた時による戦闘経験。

ルイズには戦闘訓練も経験もない。
魔法を使えるように練習はしても、爆発は失敗として切り捨てていた。
アセルスだけが感づいている。
ルイズの爆発には膨大な魔力が込められていることを。

だから、教師達は誰も魔法の使い方を彼女に教えられないのだ。
教える側より教わる側の方が力を上回っているのに、制御する手段など教えようがない。
218使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:00:41.13 ID:fLoQ8UEF
「集中するのは詠唱じゃない、相手に狙いを定めるのにまず集中するんだ」
アセルスはルイズの背後に立つと、両肩に手を置いて力を誘導する。

「ワルキューレ!」
ギーシュはワルキューレを残りの最大数である6体を一気に展開させて、ルイズに襲い掛かる。
いかにアセルスが強くても6方向からの攻撃には対処できないと判断して。

アセルスはワルキューレに対して何の行動も起こそうとしない。
目線はルイズだけを見ており、剣すら構えていない。
アセルスに答えるようにルイズも導かれるままをゆっくりと魔力を定める。

「余分な力を込める必要はない、ほんの少しでいい……今だ」
ルイズの力とギーシュの位置が重なると同時に合図を送った。
アセルスに導かれるまま、ルイズが呪文を唱える。

「錬金!」
ギーシュの身体が震えると全身から血が吹き出す。
何が起きたのか分からないギーシュが最後に見たものは、ワルキューレが全て崩れていく姿だった

アセルスが狙ったのはギーシュの胸腔。
体内で爆発が起きたことで肺や心臓が傷つき、ギーシュは血を体中から吐き出して倒れた。

「ギーシュ!!」
金髪の巻き毛の少女──モンモランシーが血を吹いて、倒れたギーシュに駆けつける。
モンモランシーの手首をアセルスが掴むと、ギーシュへ近寄るのを阻止した。

「は、離して!ギーシュが!ギーシュが死んじゃう!!」
怯えた表情を浮かべたモンモランシーだが、ギーシュを助けようと足掻く。
水のメイジである彼女はギーシュの傷がこのままでは命にかかわると確信する。
抵抗するモンモランシーを何の感情も持たずに見たアセルスは、彼女を野次馬のほうへ突き飛ばす。

「ダメだ、まだ決着はついていない。」
傍目に見てもギーシュは戦うどころか自力で動くのも不可能だ、これ以上の決着があるのか?
アセルスが言う決着の意味がモンモランシーにも周りの野次馬にも理解できなかった。

「彼はまだ生きている」
アセルスは剣を持ったまま、ギーシュの元に歩み寄る。
ようやくアセルスが何がしようとしているのか周囲は悟った。

──彼女はギーシュを殺そうとしている。
219使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:05:12.09 ID:fLoQ8UEF
「ギーシュ!!やめてえええええええええ!!!!」
モンモランシーの悲鳴だけが広場に響く。
しかし、恐怖に縛り付けられて誰一人助けに動けない。

動けないのはルイズも同様だった。
彼女が動けないのは恐怖心とは全く別の感情に支配されているのだが、自身でも気付いていない。

全員がギーシュへの惨劇を想像した中、鐘の音が響いた。
音の正体を探る間もなく、その場にいた全員が眠りに落ちる──アセルス一人を除いて。

上級妖魔であるアセルスに生半可な魔力は通じない。
だからこそ、この現象が魔法によるものだと断定した。

アセルスはルイズの傍に寄ると、周辺を警戒する。
感じたのは何者かがこちらを見る視線。
視線に注意を向けていたために、アセルスは自分のルーンが妖しく輝いていたのを知らない──



「『眠りの鐘』が効かない!?」
コルベールが驚愕し、叫んだ。

遠見の鏡。
遠くの景色を見ることができるマジックアイテム。
これを用いて学院長のオールド・オスマンと共に決闘の様子を見ていた。

彼女に刻まれた使い魔のルーンが伝説の『ガンダールヴ』かどうかを調べるために。
あらゆる武器を使いこなし、一騎当千が伝えられる始祖プリミルの呼び出した神の左腕『ガンダールヴ』。
神聖なルーンがなぜ妖魔に刻まれたのか?
本当にガンダールヴなのか?

検証するために、決闘騒ぎを利用して確認しようとしていたのだ。
しかし事態が命のやり取りまで及んだ為に、アセルスを止めるための手段。
音色を聞いた者が眠りにつくとされるマジックアイテム『眠りの鐘』の使用許可を出した。

誤算なのは決闘の張本人と野次馬は眠りに落ちたが、肝心のアセルスは眠る様子がない事。
220使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:10:22.97 ID:fLoQ8UEF

「ミスタ・コルベール、君は生徒達を頼む」
オールド・オスマンが部屋を出て行こうとする。
学院には多くの教師がいるものの、妖魔を足止めするには役不足。
老骨に鞭を打ち、現場に向かおうとしたオールド・オスマンをコルベールが引き止めた。

「オールド・オスマン!」
「何じゃ!?」
今は時間が惜しいと叫ぼうとしたオールド・オスマンが硬直する。
なぜならオールド・オスマンとコルベールの間にアセルスが立っていたからだ。

すぐに状況を判断した二人は杖を構えて、呪文を詠唱しようとする。
だが、アセルスが意識を失ったルイズを抱えている為に魔法は放てない。

「後片付けは任せたわ」
アセルスは二人など眼中にないように、一言告げると姿を消す。
上級妖魔が使える空間移動は場所や次元すら一瞬で超える。
アセルスは半妖の影響か空間移動が苦手だが、短い距離なら問題なく行えていた。

「ミスタ・コールタール」
「コルベールです」
名前の間違いを律儀に指摘しながらも、二人は緊張から解放されていた。

「……取り合えず後片付けをしようじゃないか」
コルベールが首だけで肯定した。
221使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:16:13.17 ID:fLoQ8UEF
「うん……」
小さなうめき声と共にルイズは目を覚ます。
目を覚ませば、いつもの自分の部屋。
胸の傷も完治しており、ギーシュとの決闘は夢だったのかとすら思う。

「目が覚めた?」
ベッドの横にはアセルスが椅子に腰掛けていた。

「アセルス!決闘はどうなったの!?どれくらい私は眠ってた!?それにどうして怪我が……」
ルイズは飛び起きると同時に、様々な質問をアセルスへと投げかけた。

「落ち着いて、君は勝ったよ」
決闘が起きるまでのあらましをシエスタから聞き、ルイズを安心させるための言葉を紡ぐ。
眠っていたのは半日程度、怪我に関してはアセルスが術で治した事もついでに説明しておいた。

「そう」
短く呟くとルイズはベッドに仰向けになる。
思い出しているのはギーシュを爆破した時の感覚。
自分の無能の象徴、失敗、それが爆発。
その爆発で、アセルスに助けられながらも決闘で勝利を収めたのだ。

アセルスに教室で告げられた台詞が脳裏をよぎる。


『君は力を持っている』


──まだ、教室で片づけをしていた頃を思い出していた。

「君が魔法を使おうとすれば、皆一様に畏怖する。爆発を恐れているから」
「それが何なのよ!私が魔法を使えないことを馬鹿にされてるだけじゃない!!」
アセルスにまで馬鹿にされているのかと思い、声を荒げた。

「魔法を使えるだけが取り得の連中は、馬鹿にしている君の爆発を止めることはできない」
逆説的なアセルスの発言にルイズは息を呑んだ。
確かに自分の爆発を教師含めても誰一人抑制できたことはない。
爆発は風のメイジによる障壁も、土のメイジによる壁も破壊した覚えがある。
だからクラスメイト達は魔法で身を守るのではなく、机の下に隠れるのだ。
222使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:20:01.36 ID:fLoQ8UEF
「嘲りが嫌なら、その力を誰かに向けてしまえ。二度と君を笑う者は現れない」
外は明るいはずなのに、アセルスの瞳は底無しの闇の様に深く暗い。
アセルスの言葉を聞き漏らすまいと、ルイズはその眼差しを見つめ続けていた。

「己の苦悩を周りの世界にまき散らしてしまえばいい。
欲望のまま、君を馬鹿にする者全てを足元にひれ伏せさせるんだ」

単なる失敗としてしか見ていなかった為、爆発について考えようともしなかった。
火の魔法に爆発自体を攻撃として扱う戦術があるのはルイズも知っている。
油を気化させたり、土を火薬に錬金するなど下準備を行った上で着火。
つまり最低でもライン相当の技術が必要となるスペルである。

ルイズの爆発はこの例に当てはまらない。
錬金での失敗で分かる通り、火気がないものすら爆発させることができる。
つまり人体でさえも爆発させることができるのではないか……?



答えはギーシュとの決闘で確信した。
自分はメイジとの戦闘において絶大な優位を獲得したことになる。
なぜならこちらの魔法を阻止する手段は相手にないのだから。

力。
何より自分が望んで止まなかったもの。
ルイズは今まで力とは魔法の事だと思っていた。
しかし、自分は殺傷力という一点に置いては、魔法をも凌駕する力を得ていたのだ。

ルイズが爆発の力を認識すると決闘の結末を思い出す。

「ギーシュは……死んだの?」
ルイズの口調が小声になる。
初めて他人の命を奪ったかもしれない事実は、ルイズを震えさせるには十分過ぎた。
確かに力を欲していた。
力とは他人の命をも容易く奪えるものだと、ルイズは認識していなかった。
223使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:25:57.54 ID:fLoQ8UEF
「落ち着いて」
アセルスもかつて妖魔を殺せる力を持っているのだと判明した時、自分の力に畏怖した。
今のルイズも同じ感情に囚われているのだろうと予想する。

「私にもかつて力の使い方を教えてくれた人がいたんだ。
彼女が言っていたよ。力を引きだすも眠らせておくも、自分の心一つだとね」
怯えるルイズを優しく抱きしめた。
自らの不安を取り除いてくれた白薔薇のように、今度は自分が彼女を安心させようとする。

「ねえアセルス……」
抱きしめられたまま、振り返ったルイズがアセルスの名を呼んだ。
「どうしたの?」
アセルスが穏やかに答える。
そこには妖魔の君として戦慄された彼女の姿はなかった。

「アセルスはどうして私に優しくしてくれるの?」
ルイズの態度にもいつものような虚勢も見栄もない。
いつも甘えていた方の姉と喋る時みたいに、声は温もりに満ちている。

「君が昔の自分に似ているからかな……」
半分は事実だ。
残りの半分はアセルス自身にも分からないのだから、彼女に答えようがない。

「私、アセルスほど強くないわ」
「君は強いよ、少なくとも君を侮辱する連中よりも遥かに」
ルイズを蔑視する周囲。
彼らがルイズと同じ立場になれば、耐えられる者はいないだろう。

アセルスは孤独を嫌っていた。
一人耐え抜いてきたルイズを賞賛こそすれど、悪意を向ける気になどなれない。
だからこそのルイズへ向けられる穏やかさ。

いや、正確にはルイズも一人ではなかったか。
アセルスは胸中で否定した。

「君を慕ってくれる者がいたね」
自分を慕うと聞いて、ルイズには一人しか思い出せない。

「シエスタのこと?」
「大切にしてあげなよ、失ってから後悔しても遅いから」
忠告とともに、遠い目を浮かべるアセルス。
224使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:30:05.55 ID:fLoQ8UEF
「……アセルスは後悔したことあるの?」
聞かれたくない事なのは察している。
なので、あえて曖昧な答えを返せるような尋ね方をした。

「あるよ、一度は自分の我侭から。
二度目はどうして失ったのか今でも分からない……」
自分と同じ過ちを繰り返さぬ事を願い、アセルスは包み隠さずに答えた。

一人目の大切な人は白薔薇。
彼女を失ったのは自分の我侭からだとアセルスには自覚があった。
白薔薇は城を出たくなどなかったはずなのに、彼女を助けるという自分勝手な使命感に巻き込んでしまう。
だから、彼女は闇の迷宮へオルロワージュへの償いをする為に残った。
アセルスに自由になれと言い残して。

二人目はジーナ。
彼女がなぜ自殺したのかは未だに答えが見出せない。
悲しそうなジーナの表情だけが瞼に焼きついて……

「アセルス!」
ルイズの声に現実へと意識が引き戻される。

「ごめんなさい……ごめんなさい!」
俯いたまま、子供のように許しを請うルイズがいた。

「どうして謝っているの?」
「だって貴女……泣いているもの」
頬を指でなぞり、そこで初めて自分が泣いているのだと分かった。
人としての心を捨てて、妖魔として生きる事を決意したはずの自分がなぜ泣いているのか?

シエスタとルイズの関係をもう取り戻せない自分とジーナの関係に重ねたから?
ジーナや白薔薇を失った事実を再確認したからなのか?
ただ泣きながらも心は空虚だった。
悲哀、苦慮、絶望、何一つ感じない。

人間にとって恐ろしい存在であるはずの妖魔アセルス。
ルイズは自らの温もりを分け与えるように、抱きしめ返した。
225使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:35:28.62 ID:fLoQ8UEF
驚いた表情を浮かべるアセルスだが、ルイズの体温に気分が高揚する。
このまま少女を抱き寄せ、この可憐な少女の血を奪ってしまいたかった。
だが何故か彼女への吸血が躊躇われる。
血を吸ってしまえば取り替えしがつかなくなってしまいそうで。
アセルスの逡巡の間に、ルイズが口を開く。

「アセルス……私はまだ『ゼロ』のままだわ。
貴女ほどの妖魔をどうして私が呼べたのか分からないくらい」
『ゼロ』、それはルイズが嫌悪しているはずの単語。

「でもね、私は貴女の横に立っても恥ずかしくない貴族になってみせる」
ルイズはアセルスを見上げる。
涙はもう止まっていた。

「その時まで貴女に見守っていて欲しい」
ルイズがアセルスの手を取る。
決意を固めたルイズの鳶色の瞳は美しかった。

アセルスが思わず魅入ってしまうほどに。
このまま彼女が自ら目標とする高みまで見守りたいという気持ち。
そんな彼女を穢してしまいたい欲求。

アセルスの決断は待つ事だった。
ただ虜化して従属させるのでは意味がない。
自分に妖魔の血を分け与えたオルロワージュは従属にした筈の者に裏切られた。
何より、自分もジーナを失った。

妖魔というものは力を増やす事ができても、精神が育つのは成し得ない。
だから人間が行える閃きが妖魔には不可能なのだ。

ルイズは今以上に成長しようとしている。
彼女を見ていれば、ジーナの最期の言葉の答えが求まる気がして。
自分の選択が間違っていたとはアセルスは思えない。
だが、彼女は今の自分を拒んだ。
彼女を見ていれば、理由がいつか見つかりそうな気がした。

アセルスは覚えていない。
自分もかつてはルイズと同じ瞳をしていた事を……
226名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 22:37:25.78 ID:oEYplMuF
sien
227使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/14(土) 22:37:26.84 ID:fLoQ8UEF
投下は以上になります。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 22:39:29.95 ID:/Ha2GS/+
乙です

二次創作ではパワーバランスとかの都合上か、
失敗魔法を原作よりかなり過大めに評価する作品が多いですな
229名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 22:42:27.90 ID:I8G0ZPvF
>>1
230名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 22:43:27.39 ID:I8G0ZPvF
ごめん誤爆
231名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 00:03:20.77 ID:Ufj2mZSz
乙でした。
過疎化してたのが一気に賑わってるけど、もう規制は解除されたんかな?
232名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 00:57:16.77 ID:ShBgGFU6
>>195
そんなあなたに岸辺露半召喚モノを薦めよう
233名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 06:53:27.80 ID:h7BG7SXO
姉妹スレとは言えよそ様のSSをここで紹介して良いものだろうか
234名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 07:01:54.15 ID:tipzXlk7
いいんじゃね。余所のサイトや個人の場所じゃないなら
235名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 07:45:01.16 ID:GVBoJEHY
使い魔は妖魔か或いは人間かめっちゃ好きだわ
wikiで更新されるたびにわくてかしながら読んでる
>>228
でも実際、殺傷力と汎用的な破壊力は高いと思う
制御さえできてれば十分脅威となりうる攻撃じゃないかのう
236名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 08:22:52.51 ID:1726PFBf
>>228
そうでもしないと召喚した超人達がルイズに一目おかないだろうが。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 08:41:38.22 ID:g1cN0RvH
一切原作を誇張せずに描写してるSSって何かあったっけ?
一般人が召喚されたのじゃなくて超人系が召喚された内容の奴で
238名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 11:37:35.77 ID:C+dNid7C
至近距離で爆発してもショックで気絶するだけだし原作中で死んだ人間はいない
直撃は宝物庫の壁にヒビを入れるが範囲は狭く、広範囲の爆風は机を盾にすれば全く届かない程度の威力
教室が滅茶苦茶になったのは使い魔が暴れたせいで爆風のせいではない
体内爆破なんて真似ができるならヨルムンガンドがいくら装甲を焼き入れしようが問題外なのだからできるわけがない
何より、その程度の応用法をいくら失敗だと思い込んでいたからといっても、
当の本人が16年間に試してみたことが全くなかったとは考えにくい
つまりそんなことはできないかやっても大した効果は無いかのどちらかだ

あとエクスプロージョンや失敗魔法が防御無視の分解消去魔法みたいに書いてる作品は多いが、
反射や魔法的な構造物を破壊する効果があるっぽいが焼き入れした装甲には効いていないから防御無視ではない
原作中でエクスプロージョンを喰らった船の帆が炎上したり、失敗魔法でススが発生したりと、
火の魔法ではないにせよ明らかに高熱を発する攻撃である
239名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 11:40:27.27 ID:C+dNid7C
別に誇張しなくても、原作でも初期のルイズは戦力的には全く役立たずに近いのだからいいんじゃないかね
240名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 18:50:32.32 ID:h7BG7SXO
役立たずどころか無力にも関わらずゴーレムに立ち向かうあたり、「無能な働き者」っぽい気がするなあ
241名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:02:27.12 ID:4tvBT1jY
まあ、この世界における虚無の使い手は
覚醒する前は、いつ自殺してもおかしくない精神状態に追い込まれてしまうから仕方ない

真面目な話カトレアいなかったらもう首括ってるんじゃね?
242名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:09:46.17 ID:4yCrFNrb
つーかある程度精神的成長をしている筈の原作最新刊の時点でもルイズのメンタリティと知性はとことん戦闘向きじゃ無いと思うな。
ルイズはあくまでも虚無が使えるだけの虚無の担い手であって、虚無を使いこなす虚無の使い手では無いんだよなあ。
正直ジョゼフ達と戦り合って勝つルイズ主従の姿がとても想像出来ん。
まあ、主役はサイトだからそれで問題無いんだろうけど。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:13:53.01 ID:4yCrFNrb
まあ本当の意味で虚無を使いこなせた人間はブリミルしかいない訳だけどな。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:19:33.97 ID:Sz3L/kBJ
自分の才能を悲観して家出したルイズがファンガスの森にたどり着くが、キメラに見つかってしまい…

ルイズ「ああ…私はここで死ぬのね…でも、ただで食われてやるものですか!」
キメラ?「ほう、逃げないとは意外な」
ルイズ「え!?キメラがしゃべった」
キメラ?「見上げた度胸だが、それは蛮勇というのだぞ、小娘」
ルイズ「くっ!私は一人で生きると決めたんだ。しゃべるキメラに食われるなら、むしろ本望よ。てりゃぁぁ」
キメラ?「甘いわぁ!もっと足をふんばり、腰を入れんかぁ!」

と、いう電波がきた。果たしてその後虚無はパワーアップするのかダウンするのか
245名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:24:12.25 ID:iWLgY8WF
>>243
ブリミルが自分のために作り出した対ヴァリヤーグ用のオリジナル戦闘魔法が虚無だからねえ
それを想定した魔法の勉強をしていない人間が使いこなせるはずがない
246名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:43:15.57 ID:dyNO+Hfo
胸は完璧な虚無だと言うのに
247名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 19:44:52.50 ID:Moyfwxwv
タバサよりはあるだろ!
248名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 21:03:42.42 ID:0v3g8bqh
ジョゼットこそが真の虚無か
249名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 21:04:51.23 ID:+/7nwjZF
更新が2009年頃で止まってんのおおいなぁ・・・
250名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 22:19:53.49 ID:w0UkIPI7
アニメも終わっちゃったし今後は細々とになりそうね
251名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/15(日) 22:45:21.00 ID:Sz3L/kBJ
発火剤として期待したアニメがとんだしけたマッチだったのが痛いわなあ
薄い本的な盛り上げもほとんど期待できん
252Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/04/16(月) 02:58:02.76 ID:2r9PVhOL
契約によって発生しそうな問題は他に何かあるかなあ―――
折角時間かけて話をまとめているのだから思いつく限り突き詰めたいところですが
253名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 15:02:18.10 ID:s0pCdtTr
呼ばれた奴への洗脳が不十分だと、全力で敵対されかねないのが一番厄介
254名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 16:03:33.14 ID:kGusa4aR
召喚されたのが敵対する話はそこそこあるけど途中で止まってるのが残念
255名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 18:37:13.04 ID:CgO+byGo
逆に、私は君を助けるために来た、ってルイズに最初から好意的な奴っていたっけ?
256名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 19:09:20.34 ID:XviV4obi
ミカヤ
257名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 19:09:49.31 ID:6tuqo30s
女性の召喚キャラは、ルイズに好意的なパターンが多い気がする
258名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 19:55:43.73 ID:1fpvI5nP
そういやよくネタで土下座衛門を使い魔にしてるモブ生徒がいるが
真面目に考えるとアイボールとか近親種ならともかく無理な話だよな
奴ら視線で魔法を無効化しちゃうから
259名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 20:02:12.71 ID:5A215l5w
よく?
260名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 20:34:22.81 ID:ST1KdYAq
ロボット残党兵召喚ものが読みたいです
誰か書いてー
261名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 20:35:50.55 ID:1fpvI5nP
ああ、最初期の使い古されたネタだから「よく」と言っても過去形だわな
262名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 21:52:02.79 ID:CgO+byGo
タカヤを召喚、先が読めない”だけ”で途中打ち切り
263名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 22:25:23.45 ID:Uyy//999
土下座衛門って名前でてるのか?
目玉のモンスターなんていくらでもいるわけだが
264名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 22:28:26.93 ID:6KCdR7Cz
おい、○タロー!
265名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 22:29:24.51 ID:2tE4MOJk
>263
おいおい、土下座衛門の名前を出せるわけ無いじゃないか。
あれは名前を呼んじゃいけないんだ。だから『ハインライン(仮称)』とか呼ぶしかない。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/16(月) 22:43:44.99 ID:ToQElN0I
ミカヤとゼロの氷竜を待っているんだけどなぁ・・・すごく好きなのに(o`д´)o
267名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 01:08:06.62 ID:DZ3Ulhl2
ゼロの氷竜はどっかブログかなんかで書いてなかったか?
ブクマの山に埋もれてどこだったか忘れたけど
268名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 01:48:19.07 ID:TkiIHyRk
ルイズと全く相容れることなく、敵対する展開ってここだとあまり無いな
余所だとゼロのレイヴンとか完成度高いのがあるけど
269名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 04:26:01.83 ID:uVEgFuDI
ルイズと敵対なら、ゼロの蛮人、とか?
完結もしてるよ!
270名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 11:11:04.66 ID:O9W86INq
敵対だと、状況を見ずに一人で動こうとする間抜けか、一人で帰り道くらい探せる化け物かだからな
前者だとろくなことにならないし、後者だとルイズ達が一瞬で昇天しかねない
271名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 11:21:01.39 ID:2nATnf5k
ガイオウとか
敵でも味方でも出オチになりそうだ…
272名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 11:30:47.27 ID:1Fpu3svp
短編ネタだけど邪眼は月輪に飛ぶのクロスネタが好きだった
273名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 11:45:40.17 ID:M9PRw/5T
>>271
ホットドッグをマルトーが作って餌付けする
274名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 12:59:38.22 ID:tdVcdl+T
>>255
別スレだが「ゼロと獣王」はそれに近いと思う

275名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 18:25:22.58 ID:KT+xPl7I
SeeD戦記のスコールはルイズを相手にせずにアニエスと手を組んだな
あれほど主人公がルイズを相手にしない作品も珍しい
その分無双オリジナル展開も多かったが
276名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 20:35:53.96 ID:6V16quAp
強引に他所だとか別スレだとか要らんよ
277名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 21:07:32.13 ID:hpoPpg4D
>>275
つーか、スコールってある意味一番ルイズと相性が悪いキャラじゃね?
FF8は一回やったきりだが普通に嫌な奴だろw
278名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 22:22:05.84 ID:cuAwzB7r
FF8にまともな人間自体が(ry
279名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 22:25:39.73 ID:Ruya3Bmv
サソリ沼にまともな人間が1人も居ないだと!?
280名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 22:25:47.86 ID:hpoPpg4D
>>278
雷神・風神コンビと、ラグナと愉快な仲間達がいるじゃないか!
281名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 23:38:14.49 ID:nlN/hWO3
シュウ先輩馬鹿にするとか喧嘩売ってんのか
282名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 23:42:11.96 ID:GnSzuSFS
風神雷神で戦国無双3の立花夫婦を思い出した
宗茂の演舞エンディング後旅に出た宗茂とそれを追っ掛けて行ったァ千代が召喚されるっていうのもありか?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/17(火) 23:52:52.23 ID:sVD8/Lzs
おれはハイパーポリスの笹原夏姫を思い出した
あいつの場合呼ばれても自力でゲート開いてかえっちゃうだろうけど
284名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 00:59:07.46 ID:Cmjx4/yg
対フーケ戦でフーケを殺しちゃう展開のSSって何かある?
あそこって一応ガチの殺し合いだし、そういう結果になっても不自然ではないと思うし
285名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 00:59:44.29 ID:O6V4giyF
へっぽこ魔王が殺して生き返してた
286名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:03:59.20 ID:SOO/U8lz
>>283
桜さんの旦那武士呼び出す方がはいぱーぽりすっぽい雰囲気になりそうだけど
287名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:11:23.34 ID:eBZqOAD7
虚無の魔術師と黒蟻の使い魔
戦う司書からモッカニアの本を召喚するやつで盗まれた秘宝が常笑いの魔刀
で、ガチで殺しあった結果フーケ死亡
288名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:21:27.70 ID:T8ViJxmN
おいおいセルフィ最高なのになにいっちゃってんの?
289名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:23:24.92 ID:4xPhq6Y5
首無しライダー召喚と聞いて
290名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:35:52.45 ID:GYKliRK9
アベンジャーズが映画化されるわけだし
キャプテンアメリカだとかホークアイあたりのマーベルキャラを召喚すれば…


アメコミ系の召喚例が少ないのはやっぱ読者が少ないからかな?
291名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:43:05.72 ID:+96Pa8hs
ウォッチメンがいたような
292名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 01:53:47.20 ID:zOsiYSWF
あれロールシャッハのマスクだけじゃないか
まあ性格的に本人召喚したらロクな事にならないから良かったのかもしれないが
293名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:06:55.87 ID:qxfQEm0m
アメコミキャラはシエスタやキュルケに迫られたらすぐ寝ちゃいそうだ
294名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:08:26.65 ID:OoUF+K9t
マーベルキャラなら最近めっきり影の薄くなったガンビット(現在性教育の教師)か、
ネタを使い切っていらん子扱いされつつあるウルヴァリンの息子ダケン召喚で良いかと。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:19:46.40 ID:4xPhq6Y5
スーパーマンならアルビオン自体を7万の軍に向かって放り投げるだけで終わりそう
296名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:23:23.59 ID:OoUF+K9t
スーパーマンには初歩の魔法にも耐えられないという設定があってな、
ドットスペルであの世に逝きかねない。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:25:09.21 ID:+96Pa8hs
>>292
シャッハーさん子供相手にはそれなりに優しいぞ
むしろキュルケ辺りが指を折られそう
298名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 02:32:48.71 ID:zOsiYSWF
>>297
服脱いだりパンツ渡したりしたらと思うとちょっと…
あと指折られるのはオスマン、フーケ、ワルドとかもだな
299名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 03:38:14.12 ID:CN3End2H
スパイディ死んだらしいしスパイディを召喚すればよくね?
と思ったけど召喚したルイズに対して皮肉ばかり言いそうだ
300名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 09:09:37.22 ID:nJm6/gv6
召喚されたキャラがゼロ魔の悪役勢と組むみたいなダーク展開が読んでみたいな
もっともその為にはルイズと契約しないか、しても見限って出て行く展開になるだろうが
301名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 12:41:17.57 ID:inQlhwEN
契約の内容と意図を知った時点で、結構な確率で関係崩壊しそうな気もする
異世界に放り出されたせいで、関係を維持せざるを得ないってのも重要だが

>>284
ゴーレム破壊のの余波で学院ごとくたばったのあったような
302名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 12:51:28.93 ID:sunz5J+c
大量のSS群の中で一番死んでる、殺されてるゼロ魔キャラって誰なんだろうな、即エタも含めて
303名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 12:59:06.15 ID:o0F6G5b8
とりあえず死亡率が高いのはウェールズ、ワルド、おマチさん、ギーシュ辺りじゃねw
304名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 14:25:04.78 ID:4hx8SOOe
>>299
なんというD4C
305名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 14:45:27.33 ID:s//H+ESb
殺されても誰も気にしないキャラは間違いなくマルコリヌ
306名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 14:49:12.53 ID:cUfpYzp6
>>303
ギーシュが死んだのって姉妹スレの生ハム兄貴召喚の奴くらいしか思い当たらんのだが
307名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 14:53:13.82 ID:/dQcP9tQ
腕が飛ぶくらいなら結構
308名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 14:56:35.90 ID:nzeE53Ob
首が飛んだら人気沸騰
309名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 16:44:43.98 ID:up9GB8ba
そこまでいくと、学院を後にする必要が出てくるレベルだからな
ゼロ魔とルイズの影がどんどん薄れて書きづらい
310名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 16:46:33.74 ID:oI4kET4l
>>305
ギーシュ、シエスタ、マリコルヌあたりはいなくても別に話に支障はない
311名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 17:15:07.93 ID:zoFc5NcK
>>306
向こうの方だとフーケさんが結構エグい殺され方してるよな
0距離ロケットランチャーとかゴーレムを逆に操られて握りつぶされるとか

こっちだと王蛇のミラーモンスターにパクッと飲み込まれてお亡くなりになったのが
あまりにもあっさりしてて印象的だったw
312名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 19:05:55.65 ID:aAej51Tz
立花夫妻は立花夫妻でも境界線上のホライゾン仕様な立花夫妻とか。

最大の問題は川上節の再現がかなり難しいところか・・・

オールドオスマン辺りはナチュラルに馴染みそうなんだが
313名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 19:27:09.32 ID:Yms5lRW0
>>312
やめろよ
オールド・オスマンが萌え抱き枕のカバー被って「新しい価値観…!」とか言いながらルイズたちにダッシュ決める図を想像したじゃないか

…役柄的にはヴァリエール公爵の方か?
314名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 19:48:25.23 ID:cUfpYzp6
>>310
原作なぞりするなら、ギーシュがいないとニューカッスル脱出の時点で詰まってしまうな
315名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 19:49:31.16 ID:/jfsecY1
DMC系は今のところ全部エタってるからスパーダの人には頑張ってもらいたいでござる
316名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 20:05:05.97 ID:IovmuOYY
>>308首が飛んで人気者はガイガンが小ネタでいるよ
317名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 20:17:18.57 ID:rdiv4FT4
>>315
デトロイドメタルシティ?
318名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 21:07:59.82 ID:9Ftb9pe3
>>314
サイト以上の強キャラや知恵の回る人なら脱出できるんじゃね?

ヨルムンガンドのココさんが口先だけで戦場から脱出するのに吹いたぜ。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 21:27:20.88 ID:zY5y/38x
>>306には姉妹スレの小ネタ、ギーシュ座談会をお薦めしよう
320名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 21:50:03.88 ID:cUfpYzp6
>>318
確かに、五万人の包囲を突破できる実力か、ルーラ的瞬間移動等の能力があれば問題ないね
321名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:19:14.49 ID:/dQcP9tQ
むしろ全滅させる実力
322名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:27:16.68 ID:2ifEkqqP
ベギラゴンで5万人のレコンキスタを一撃必殺や。全体攻撃は便利やでぇ
323名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:28:30.56 ID:1KTQcSv9
>>322
そんなことができるならフィールド上から野良モンスターがいなくなるだろ。
全体攻撃と言ってもそれは数体〜十数体規模までのことだ。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:30:58.02 ID:6ZF2/w7x
漫画だとあの手の魔法ってすごい威力だったりするよね
ドラクエ6漫画版とか
325名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:39:24.91 ID:9Ftb9pe3
「これはベギラゴンではない。ギラだ」

漫画のロト紋だと対軍団用の魔法やら必殺技を獣王やら冥王やらが持ってたな。
魔法使いはメガンテ(自爆)で5万ぐらいけそうだな。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:40:16.16 ID:KGxuX5+9
>>322
メイシ゛ 1匹
へいし 10匹
とかで出てきたらギラ系じゃ無理だな
327名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:55:15.44 ID:6iNZUZFg
>>323
つか、個体数があるわけじゃないゲームでそんなこといわれてもな…

>>324
ゲームと漫画の差異でしょ

ドラクエIのゴーレムなんかも、モンスター物語だとチート級の強さで竜王軍を無傷で蹴散らしてるし

ラダトーム攻略のために用意したストーンマン100体を急遽さしむけても蹴散らしたからな

あきらかにゲーム本編のゴーレムよりはるかに強い(笑)
328名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 22:58:57.58 ID:6iNZUZFg
ドラクエで地道に嫌なのは
ゲームだから役にたたないだけで
世界中に効果を及ぼして昼夜を入れ替えるラナルータだな
あんなの頻発されたら迷惑どころじゃない
329名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 23:00:49.96 ID:2U/mGmtm
入れ替えているように見えて、アストロンみたいに自分達だけを止めてる説
330名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 23:14:05.70 ID:yOtUv0db
やみのランプとは一体…
それと周りを明るくするレミーラのこともたまには思い出してください
331名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 23:19:02.29 ID:nzeE53Ob
『ルイズはパルプンテの巻物を読んだ。
なんと!5万のアルビオン兵ははぐれメタルになった!』
332名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 23:33:12.65 ID:+96Pa8hs
レベルアップし放題だな
333名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/18(水) 23:34:36.67 ID:V03MduRD
場所によっては丸々一年極夜か白夜になるからな。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 00:16:39.80 ID:0VLsMrPk
そういや医者キャラって召喚されてたっけ?
335名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 00:16:41.30 ID:UtCdggc3
>>331
倒せず逃がすどころかギラの集中砲火を浴びて「ギラも積もればベキラゴン」オチですね、わかります
336名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 00:18:16.85 ID:qgc/RYJZ
ギルティのファウスト召喚あったような
337名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 00:55:48.42 ID:hqP6ED2s
いや、スライム族的に寄り集まってキング化という可能性も
338名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 05:02:00.33 ID:xsC0li0T
>>325
魔法使いはメガンテを覚えないぞ
覚えるのは僧侶とか賢者

つーか、メガンテで思い出すのはやはりサマルトリア組の鉄砲玉だなぁ
339名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 05:14:11.38 ID:n9mcq1nr
まぁ五万全部倒したら大問題なんだけどな
操られてるだけの一般人兵士が大半だから
340名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 06:06:26.34 ID:PAMfiaUZ
いや5万は操られてないだろ
341名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 06:18:51.59 ID:8BZgnBnS
メガンテイベントだと、一番印象に残ったのはタルキンさんかな。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 07:51:53.13 ID:CCETTt/g
>>339
対七万人戦と混同してないかい?
343名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 09:09:15.66 ID:HZPg7YTP
ワルドってアルビオン編で死んでも、特に以降の物語に支障は来さないよな
344名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 10:35:22.44 ID:kXCq6Op+
>>343
まったくないな。
逆にワルドがいないからメンヌヴィルの船が警戒線を抜けられずに袋だたきに会った、なんて展開も作り得る。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 11:13:19.90 ID:9fFcw8sE
まあ、ワルドを軽くひねれるくらいだと、メンヌヴィルも軽くひねるんだけど
346名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 13:18:04.46 ID:RXf6My2a
ワルドよりメンヌヴィルのほうが強そう
347名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 13:19:33.12 ID:/cyYWz8T
元素の兄弟の方が(ry
348名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 13:27:10.44 ID:kXCq6Op+
ワルドはロリコンマザコン他セリフのネタの多さで小物臭プンプンの強敵感がかなり削られてる
対してメンヌヴィルは手並みの鮮やかさとギャグの入らない残虐さで大抵強敵扱いされる
てかアニエスとコルベールのエピソード的に雑魚にしずらいだろうね
349名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 13:30:52.42 ID:/cyYWz8T
ワルドってスクエアなのにコルベールに余裕で負けそう
350名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 13:34:16.56 ID:xCqNT1+k
>ジョゼフ、ルイズ
>カリンちゃん、シェフィールド(ヨルムンガント)、ジュリオ(成竜)、サイト(戦車)
>ビダーシャル、ジャック
>コルベール、サイト、サンドリオン
>ドゥドゥー、タバサ、ワルド、カステルモール、メンヌヴィル、アリィー
>フーケ>他

くらいのイメージ
351名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 14:14:20.21 ID:CCETTt/g
>>349
だってワルドの役目は、召喚キャラのかませ犬として華麗に敗北することだもの
352名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 17:09:35.74 ID:vzwxeEXa
コルベールって天津飯くらいのポジションで敵役に勝てる位置にいなくね?
ワルドあっさり負けたのは主役補正だと思うけど
まあその後出さない作者が悪いな
353名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 19:30:17.18 ID:VnToLZLU
ワルドはメンヌヴィルに勝てるかどうかやってみないと分からないと認めている
コルベールはそのメンヌヴィルにあっさり勝っているぞ
354名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 19:30:56.82 ID:Ci9fMc/E
補正なしでぶっ殺せるくらいの被召喚者なら問題ない

>>350
戦車やヨルムンとかまで挙げると、相性とかの関係がひどくて比較できない
355名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 20:40:48.82 ID:QiYQE6eD
そもそもからして強い弱いなんて相性や状況や時の運によるからなぁ
ワルドだってやってみたらメンヌヴィルにあっさり勝つかもしれない
356名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:00:50.80 ID:UnSpsYtw
偏在は作中随一のチート魔法だからな
357名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:12:06.20 ID:oP+ovXJh
残念、あれは偏在だ
358名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:19:23.38 ID:4h7oKSVV
遍在って正直言うほど強いか?

ルイズが一体消し飛ばしたし、精神力減っていただろうけど、
4人掛かりで傷癒えてない未熟な初期サイトに
まだちょっと好きかも程度の感情の震えで片腕切り飛ばされてるし
359名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:23:30.40 ID:s7/611Cd
本体は拠点待機で分身飛ばし続けられるとかどう考えても最強ユニット候補だろ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:25:52.59 ID:QiYQE6eD
ワルドが勝てなかったのは悪役補正だよ。
バイキンマンがアンパンマンにすぐとどめ刺さないのと同じ。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:29:30.42 ID:MHHE8Jfo
まあ、創作物である以上、実際の強さよりも読者に与える
インパクトとかイメージのほうが重要ってことじゃない?
ワルドってあんま強者の風格なかったし
362名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:32:59.10 ID:4h7oKSVV
>>359
その分身が弱いんだから無意味やん
烈風みたいに遍在する分だけ全力攻撃に注ぎ込んだ方がよっぽどメイジとしては強いかと

サイトにはデルフがあるからそうはしなかったんだろうけど
火力と複数攻撃が容易なメイジ同士では微妙

チートだとか、それがあるから風最強なんて言うほどの強さは感じられない
ギトーさんが遍在したって、フーケのゴーレムには勝てないんだろうし

非常に便利なのはわかるけどね
363名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:33:58.02 ID:s7/611Cd
分身しても戦力は同じでしょ?
364名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:42:37.17 ID:Tl9nsJ6E
複数人居ても全部所詮ワルドだしなあ
偏在全部がカッタートルネードとか出せたら間違い無く最強なんだろうけど
365名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:43:20.93 ID:+JL/bYRq
まあ結局本人が強いかどうかだな
俺が5人に増えてもヒョードルに勝てるわけないし

カリンちゃんが10人に増えたら無敵に見える!!不思議!!!
366名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:46:04.29 ID:s7/611Cd
いや本体がそこそこ使えれば波状攻撃できるんだから相当強いだろ
前衛に接近戦で固めさせて後ろからライトニングクラウド連打するだけで詰む
367名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:50:45.94 ID:kXCq6Op+
サイト「ワルド!お前が一度に十発のライトニングクラウドを放つなら、俺は十人のガンダールヴになって受け止める!」
368名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 21:58:38.96 ID:+JL/bYRq
>>366
フライで遠くに逃げれば終わりスね
偏在に詠唱いるんだからワンテンポ遅れるし、出した瞬間アボンなんてことも
ぼくのかんがえたさいきょうのせんじゅつ なんて大抵はそうでもないから恥ずかしいよ
というか乗っかっておいて難だが、設定スレか本スレで話すことだな!!

ワルドは所詮ワルドなのが哀しきことよ……
噛ませ三銃士の枷が重いのがSSの慣例としてつらいところ
369名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 22:00:26.41 ID:RXf6My2a
偏在は便利だけど、ワルドが使いこなせてなかっただけの気がする
行動範囲広いメリットがあるのに、教会みたいな密室で発動したらダメだろ
タルブの空中戦なら偏在を竜に乗せて数の優位に立てただろうに使わないし
370名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 22:07:02.88 ID:QiYQE6eD
闇討ち不意打ちだまし討ちに使ってなんぼだと思うけどなぁ
371名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 22:16:13.84 ID:Hvc7oBy2
>>367
いつ流派東方不敗を会得したんだよw

…ドモンや師匠が出てきたSSはあるけど、才人も一緒に出てきたのはないよな?
372名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 22:31:17.18 ID:VnToLZLU
偏在は「強さは距離に比例する」のであって本体と全く同じ強さの分身ではない
至近距離でも本体と同等の強さが出るという説明は作中にない
まあ、ワルドの偏在は本体の間近では少なくともトライアングルレベルはありそうだが
ライトニングクラウド使っていたしな
373名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 22:37:18.07 ID:HZPg7YTP
正直、ワルドって原作からして、ただ単にムカつくってだけのキャラだよな
悪役としてのカリスマが1ミリたりともないから全く好感が持てない

だから召喚されたキャラがこいつに苦戦する展開のSSを見てると
本当にフラストレーションが溜まって仕方無いよ
374名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 23:07:14.89 ID:vzwxeEXa
身を隠しながら延々偏在送り込み続けるだけでいつかは勝てるって話
リスクなしな超高性能暗殺者とか終わってる
人殺すのに別に過剰な火力なんて要らないし
375名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 23:26:35.21 ID:hITCdOR9
ワルドも魔改造して遍在パワーアップさせたらええねん
376名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/19(木) 23:40:25.83 ID:VnToLZLU
>>374
偏在使いは身を隠せば一切発見されず、
こちらから偏在使いの居場所を突き止めて逆に暗殺する手段はなく、
逆に暗殺対象は身を隠しても必ず偏在に発見される、
という条件が成立するならその通りだな
377名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 00:36:04.31 ID:5r4M7aE0
>>376
ルイズの使い魔相手なら、市街戦に持ち込めばかなりの勝率をあげられそうな気がするな。
1リーグどころか100メイルくらいでも(度量衡あってたっけ?)離れて、
路地の奥まった所とか大通りとか、もっといえば宿屋の一室とか適当な民家とか、
ワルドがそこに待機してひたすら偏在を送り込む。
使い魔は基本的に異世界から召喚された人間の筈なので、
地理に明るくない以上隠れたワルドの本体を探すのは至難の業だと思われる
使い魔だけじゃなくルイズがいたとしても条件は変わらない
追う側と追われる側では精神力の疲労が段違いだろうし、散発的な襲撃を繰り返すだけで
決定的なミスをしそうな気がする

なにがいいたいかというと、そんな鬼ごっこ&かくれんぼなシチュエーションで
かっこよく、知略を尽くして戦うようなSSってないかな?
召喚されたのが市街戦のプロとか、ゲリラとか、名探偵とかで頭も使ってワルドに立ち向かうみたいなの。
前提として、教会より前にワルドが尻尾を見せてなきゃいけないだろうけど
378名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 00:42:23.41 ID:TT8jEV4P
>>377
市街戦でワルドが隠れるのはいいとして、
ルイズの使い魔側もどっか適当なとこに隠れたらどうする気だ。
ワルドには敵の隠れ場所を探し出す能力なんかないだろ。
大体ひたすら偏在を送ると言っても、精神力切れまでに何体出せるんだよ?
精神力回復させつつ何週間も持久戦するってんじゃあるまいし。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 04:27:29.68 ID:87lCKxsX
あれ?そういえば何気にデップーさんまだ召喚されてないのか・・・
380名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 04:37:43.37 ID:Uw+L8c04
iPhoneで出た拡散性ミリオンアーサーって、実にゼロ魔で召喚し甲斐のあるキャラが揃ってるな
かまちー原作だからか、女の顔面平気でグーで殴る奴とかいるけど
381名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 17:40:10.26 ID:qbtkGJic
偏在は反則的すぎて味方には使わせづらいよな
仮にタバサが使えたら相手が吸血鬼だろうがドラゴンだろうが安全に任務遂行できるし
382名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 17:50:20.14 ID:y610YGW3
馬鹿しかいないの?ねえ?
383名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 17:55:57.99 ID:qbtkGJic
>>382
ドクタースランプから馬鹿博士を召喚ってことか?
384The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:04:36.80 ID:ydEhT+Kp
何だか投下がさっぱり無くなってしまったみたいです。原作もあれから音沙汰無しだし、関心も失せてしまったのだろうか。
とりあえず、19:09頃から投下をしようかと思いますがよろしいですか?
385The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:09:49.32 ID:ydEhT+Kp
Mission 24 <魔剣士との契約>


ルイズの部屋を後にし、一人学院の庭を訪れていたスパーダは隅に置かれているベンチに腰掛けていた。
この学院に留まれるかどうか、それを決めるのは彼のパートナーとなっているルイズの答え次第。彼女がスパーダを拒めばすぐにここを去ることになる。
もっとも、彼女自身は人間だ。悪魔である自分を拒むのは当然とも言える。
人間は本能的に闇や魔を恐れている。千年以上もの間、人間界を見守ってきたスパーダには分かりきっていることだった。
だから自分が人間に拒まれたとしても、それは当然のことだと割り切っている。
この世界でもまた同じこと。あの礼拝堂や先ほどもルイズはおろかキュルケやロングビル、タバサまでもが悪魔を恐れていたのは明白だ。
(仕方あるまいことだな)
さて、ルイズの答え次第ではここを去らねばならないわけだがその後はどうするか?
もしもそうなれば、スパーダにはやらなければならないことがある。

(どの勢力が黒幕だ?)
この世界は今、魔界に狙われている。
このハルケギニアを訪れてから、まだ少数ではあるが悪魔達の姿を所々で見かけた上にアルビオンの反乱軍、レコン・キスタにも悪魔達が組していた。
今の所、対峙したのは全てが有象無象の下級か中級悪魔であり、少数でも独自の勢力を率いるほどの力がある上級悪魔そのものは姿を現していない。
レコン・キスタを裏で操っているのは間違いなく、上級悪魔だ。それも大軍を統率できる最上級悪魔が……。
かつての主、魔帝ムンドゥスが人間界を侵攻しようとした時のように、この世界の人間を利用して同じく侵略を仕掛けようとしている悪魔がいる。
その悪魔の勢力を魔界に追い返さねばならないが、情報はまだ不足している。どの勢力かさえも分からないのだ。

ただかつての主、魔帝ムンドゥスではないことだけは分かる。何千年も右腕として仕えてきたスパーダは主のやり方を熟知しているからだ。

だがレコン・キスタに自分の勢力の一部を与え、さらには異世界の技術までも与えた所から見ると、一筋縄ではいかないだろう。
異世界を侵略するためならば、その異世界の住人さえも利用しようとする狡猾さを発揮するのが悪魔なのだ。

いずれにせよ、レコン・キスタが魔界によるハルケギニア侵攻の手駒として利用されていることには違いない。
ここに留まるにせよ、離れるにせよこれからレコン・キスタとは何度も敵対することになるだろう。
トリステインの貴族であったあのワルドでさえも密約によってその一員となり、しかも悪魔の力を得ていたのだ。
人間同士の純粋な争いには興味がない。だが、その裏で手を引いている者達を野放しにはできない。

スパーダはおもむろに胸元のスカーフに飾っていたアミュレットを外し、手の中に収まるそれをじっと見つめた。
アミュレットは片面が金ともう片面が銀の縁に、それぞれ真紅に輝く石がはめられている。
人も悪魔も流す血を結晶化したようなその赤い石は、夜空に浮かぶ二つの月に仄かに照らされていた。
(いずれ、お前をこの手にしなければならんだろうな)
386The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:14:45.36 ID:ydEhT+Kp
かつて魔界を封じた時、全盛期であったスパーダの力はあまりにも強すぎた。その強すぎる力は人間界に留まるには危険であり、
またその力によって下級悪魔達を自然に呼び寄せてしまいかねなかった。
だからスパーダは己の力の大半を魔界の深淵に封じた。自分の分身と共に。
だが、もしも魔界からの侵攻が激しくなるのであれば今の状態では正直、力不足だ。特にムンドゥスにも匹敵する最上級悪魔を相手にするのであれば尚更である。
かつて封じた自分の真の力、そして分身はいずれ再びスパーダ自身の手で解かなければならないだろう。


「こんな所にいたの」
そこへ突然現れたのは、先ほどまでスパーダの素性を目の当たりにしていた一人であるロングビルだった。
ルイズの部屋を後にした後、庭を散歩していた彼女はスパーダの姿を見つけるなり、迷うことなく歩み寄ったのである。
ロングビルの接近に気づいたスパーダはアミュレットを元に戻すと、自分の隣に腰を下ろす彼女をちらりと横目で見やった。
「で、ミス・ヴァリエールが拒めば、本当にここを去るつもり?」
「一応、私は彼女の使い魔ということになっている。私が必要ないのであれば、こちらもここに留まる理由はない。全ては彼女次第だ」
「未練も何もなし、ということね……」
はあ、と溜め息を吐くロングビル。
「野暮用があれば立ち寄ることはあるかもしれんがな」
「そもそも、ここを去ってこれからどうするのさ」
「行く当てなどない。もっとも、彼女に呼び出される前と大して変わらん」
ルイズに召喚される前、スパーダは人間界でいつものように各地を放浪しつつその日暮らしな生活を送っていた。
悪魔絡みの事件を耳にすれば即座に駆けつけ、剣を振るって悪魔を狩るか魔界に追い返していた。
一応、スパーダはデビルハンターでもあったためにそうした仕事で生計を立てるのが常であったのである。

……ふと、スパーダは思い出す。
(金を受け取っていなかったな)
そういえばルイズに召喚される直前、スパーダは悪魔絡みの事件を解決してその報酬を受け取りに行く所だったのだ。
依頼主の元へ向かう道中、突然目の前に光る鏡……恐らくサモン・サーヴァントによるハルケギニアに繋がるゲートが現れたのである。

あの時、スパーダは得体が知れない上に未知の魔力を鏡の中からありありと感じ取っていたため、即座に無視していた。
だが、まるでスパーダの道を塞ぐかのように何度も先回りするかのごとく現れたため、仕方がなくそのゲートに入っていったのである。
そうしてスパーダはあの日、ハルケギニアの大地に足を踏み入れたのだ。
おかげであの時、貰うはずだった報酬は手に入らなかったわけだが、この世界では人間界における貨幣は役に立たないだろう。
387The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:20:35.75 ID:ydEhT+Kp
そんなつまらない過去のことはさておき、
「この世界にも奴らは現れる。それを見過ごすわけにはいかん」
ここを去ろうが留まろうが、魔界からの侵攻を食い止めなければならない。
たとえ人間界だろうがハルケギニアという未知の異世界だろうが、その世界に在らざる者は手を出してはならないのだ。
「私は構わないわよ」
「ん?」
「あなたが何者だろう、あたしはあなたを認めるわ」
真っ直ぐとスパーダの横顔を見つめ、微笑むロングビル。
「あなたはあの子を、テファを助けてくれた。それにあの子はあなたのことをしっかり認めていたわ。だから私も、あの恐ろしい悪魔だろうとあなたを信じる」
何の迷いもなくロングビルはスパーダを肯定し、受け入れた。
大切なティファニアが人とエルフの間に生まれたハーフエルフであり半分は人の血を受け継いでいるのとは異なり、スパーダは純粋な悪魔だ。
だが、それでもスパーダは悪魔とは思えぬほど人間らしい存在であることをロングビルは認めていた。

これまで彼と触れ合っていた時間、そして彼が語ってくれた過去が全てを物語っている。
たとえ本性があの恐ろしい悪魔の姿だろうと、彼は人間のように繊細な心を持った存在なのだということを。
そんな人間らしさで溢れた悪魔であるスパーダに、ロングビルは惹かれていた。

はっきりと悪魔であるスパーダを認めてくれた二人目の人間であるロングビル。
スパーダとしては自分が認められようが拒まれようが構わないのだが、面と向かって自分を受け入れる人間がいてくれることに不思議と満たされる気がしていた。
「ねえ、私にも手伝えることはないかしら。あなたは、自分の同胞とこれからも戦う気でいるんでしょう」
「無理はしなくても良い。奴らはこのハルケギニアに生きる亜人達とは存在そのものが違う。深く関わりすぎればただでは済まん」
「私はね、あなたに色々と貸しを作ってしまってるのよ。それを返せないようじゃ、土くれ≠フフーケだった私のプライドってもんが許せないわ」
ロングビルは土のトライアングルメイジ。中級悪魔程度であれば巨大なゴーレムを作り出して薙ぎ払いでもすれば一蹴はできるだろう。
少なくとも、足手まといにはならない。
「妹は悲しませないことだな」
好きにすればいい。そして悪魔と関わり、その身に何があってもスパーダは関知しない。そう言外に込めてやった。
「私は死なないよ。あの子を残して安々と逝けるもんですか」
かつて目にした、土くれ≠フフーケとしての強気な表情をロングビルは返してきていた。


その後、ロングビルはスパーダと別れて中庭を後にしていた。だが、スパーダはまだルイズの部屋へ戻るつもりはない。
彼女にはじっくりと考える時間を与えることにしたのだ。それこそ、朝になるまでの時間を。
その間、スパーダはここでゆっくりと夜明かすことにしていた。
だが、どうやらスパーダの思いとは裏腹にどうやら静かにはさせてもらえないようだ。
「何の用だ? ミス・タバサ」
ベンチに腰かけたまま、腕と脚を組んで瞑想していたスパーダは近づいてきた魔力の気配に対し、一声を発する。
388The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:25:52.24 ID:ydEhT+Kp
ロングビルが中庭を去るのと入れ違いでスパーダの元を訪れていたタバサは、自分の背丈よりも長い愛用の杖を携えていた。
スパーダが目を開き、彼女を見やるといつもの無表情とはまた違う、真剣な面持ちをしていることに気づく。
そして、彼女の瞳には力への欲求、渇望という思いが宿っているのをはっきりと感じ取っていた。
「お願いがある。私と手合わせをして欲しい」
「……何故だ?」
いきなりとんでもないことを口にした青い髪の少女に、思わずスパーダも面食らった。

「ルイズの答え次第では、あなたはここからいなくなる。その前に、本気のあなたと戦ってみたい」
スパーダの力を間近で何度も目にしてきていたタバサは常々、自分の力が彼にどこまで通じるものか試してみたい欲求を抱いていた。
手練れのメイジでさえ敵わない異国の剣豪かと思われていた男が実は悪魔だった。
使い魔であるシルフィードがいつも彼をそう呼んでいた意味を思い知らされた今、彼は今まで戦ってきたどんな相手よりも強い存在であることを認識した。
自分の力を更に高めるにはこれ以上にない相手だった。
もちろん自分が彼に……伝説の魔剣士に勝てるなどとは思ってはいない。自分はあの悪魔と化したワルドにさえ敗北し、そのワルドを彼は赤子のように軽くひれ伏させたのだから。
それでも、タバサは彼と戦ってみたかったのだ。

スパーダは自分との戦いを求めるタバサを見つめていたが、やがて静かに閻魔刀を手にして腰を上げた。
「Why do you need to gain the power?(何故、そこまで力を求めるのだ?)」
タバサの瞳を真っ直ぐと見つめながら尋ねるスパーダに、当の本人は自分の心を見透かされていたことに驚き目を見開いた。
「君が何のために力を欲するかなど、私には分からん。が、これだけは言っておく。力≠セけを得ても結局、何も手に入りはしない」
スパーダの冷たいながらも真摯な眼差しに射抜かれ、タバサは思わず慄きそうになる。
「たとえ、目的が復讐であってもだ」
「!」
自分が抱いている思いを指摘したスパーダにタバサは愕然とする。
「力≠ヘ所詮、手段の一つに過ぎない。それだけを追い求め、他のものを切り捨てても最後には何も残らない」
言いながら、スパーダは閻魔刀の刃をスラリと優雅な動作で抜き、無造作に垂らしていた。
「それでも力≠欲するかはお前次第だ。雪風≠諱v

口調が、変わった。
……悪魔としての本性が露わになったらしい。

タバサはゆっくりと杖を構え、スパーダから10メイルほど距離を取りつつ向かい合う。
「I need more power.(もっと、力が欲しい)」
たまにスパーダが呟く異国の言葉で、タバサは告げた。
澄んだ音色が響くと共に、スパーダの周囲には無数の湾曲した赤い双刃が現れ、回転しながら浮かんでいた。
「It begins.(始めよう)」
風車のように回転する幻影刀が射出され、タバサはエア・スピアーを纏わせた杖を正面で器用に回転させて弾いていく。
スパーダの技を間近で目にしていた彼女が会得していた新たな技である。
そして、この戦いを通してさらに彼の技を盗むこともタバサの目的の一つだった。
風を纏い、優雅に舞う雪風≠ヘ伝説の魔剣士の魔の刃を次々とかわしながら懐へ飛び込んでいった。
389The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:29:52.75 ID:ydEhT+Kp
スパーダが部屋を出た後、ルイズはずっとベッドに突っ伏したままだった。
生涯を過ごす使い魔にしてパートナーと別れるかどうかという重大な選択を迫られている以上、そう簡単に答えは出ないものだ。
使い魔……パートナーの存在は、自分が魔法に成功したという証でもある。魔法に失敗し続けてきたルイズにとってはその証がなくなってしまうということは、
これまで通りのゼロ≠ヨと戻ってしまうことに他ならない。
その証を、手放したくはない。……だが、スパーダが悪魔であるという事実を放置することはできない。
今のスパーダは遠い異国から来た剣豪にして、平民出身の貴族であったという風に周囲から見られている。
学院で生活する生徒、働いている教師や平民達はスパーダを尊敬していたり、平民上がりの没落貴族だなどと見下していたりと様々な思いを抱いている。
だが、そんなスパーダの素性を知った時、多くの人々は掌を返して悪魔である彼を拒絶することだろう。元々、彼を見下していた者達ならばなおさらだ。

そして、その悪魔を使い魔にしていた自分もまた、これまでのゼロのルイズ≠ネどと馬鹿にされていたのを通り越した残酷な侮蔑の言葉を吐きかけら、虐げられるだろう。

悪魔を呼び出した、出来損ないのメイジ? 

ゼロ以下のマイナスのルイズ?

そして、自分は学院をおろか実家からも追放される?

色々と自分の身に起こるであろう結末を想像して、思わずルイズはその身を震わせた。

……怖い。
スパーダの素性が知られた時に何が起こるのかは結局、その時にならなければ分からないのだ。
人々から拒絶される恐怖。それは自分がゼロのルイズなどと馬鹿にされて認められないことよりも恐ろしいものだった。

やはり、スパーダとは別れなければならないのか。
あれだけ頼りになれるパートナーだというのに、それが忌み嫌われる悪魔であってはリスクが大きすぎる。
(……悪魔?)
ふと、ルイズは悪魔という存在に対して疑念が生じだす。
そもそも、悪魔とは何なのだろうか?
一般に悪魔というと、イメージされるのはやはりおとぎ話などに出てきそうなものだ。
見るだけでも恐ろしい姿、人を堕落させて奈落の道に陥れる狡猾さ、時にはその血肉はおろか魂さえも喰らい虐げる残忍さ……。
明らかに人間とは相容れない存在だ。

一方、スパーダはどうなのだろう。
これまで彼は誰かを陥れたり、虐げたりしただろうか。たとえ剣を振るう戦士とはいえ、無差別に命を奪ったりしただろうか。
思えば、スパーダはその悪魔らしさとはほとんど無縁であることにルイズは気が付いた。
少々つっけんどんではあるが自分の進むべき道を正してくれた。自分達が窮地に陥った時はどんな敵だろうと恐れずに助けてくれた。
そもそも彼は異世界で同胞を裏切ってでも人間のために戦ったのだ。
人間の愛を知り、心を打たれ理解した彼は……悪魔ではない。
もしも彼が本当の悪魔であれば、自分達よりも力を持たない人間を守ろうなどと考えなかったかもしれない。

(そうよ。……スパーダは人間だわ。あたし達と何も変わらないじゃない)
如何に彼の本性があの恐ろしい姿をした悪魔なのだろうと、その心は人間と同じなのだ。
だから、何も恐れることはない。
一番大事なのは姿形でも、力でもない。……心なのだ。
彼が人間の心を持っているのであれば、何も問題などないではないか。
これからも生涯を通して、パートナーでいられる。
390The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:34:49.90 ID:ydEhT+Kp
「ぐっ……!」
学院の外壁に背中から叩きつけられ、タバサは呻いた。
だが、それで怯んでいる暇などない。すぐにフライでその場から離脱する。
スパーダの周囲に音色を響かせながら次々と現れる幻影剣がタバサ目掛けて放たれ、その軌跡を縫っていく。
「エア・カッター」
複雑な軌道で飛び回りながら回避し続け、スパーダの右側に回りこむと素早く呪文を完成させ、風の刃を放つ。
スパーダは振り向きもせずに閻魔刀を一振りだけ、振り上げた。
風の刃は閻魔刀によって斬り裂かれ、跡形もなく消滅してしまう。
だが、それくらいはもはや分かりきった結果だ。先ほども死角から何度も魔法を放っても、即座に閻魔刀によって斬り飛ばされてしまうのだ。
魔を喰らい尽くすとされる閻魔刀にとっては、魔≠宿す魔法は投げられた餌同然である。系統魔法はおろか、精霊の力さえも容赦なく喰らってしまうことだろう。
ウインディ・アイシクルはおろか、アイス・ストームのような大技でさえも閻魔刀の前には無力だった。

だからタバサは大技で攻めても無駄だと即座に判断し、小技を用いて死角から攻めているのだが、やはりスパーダには通じない。
「!」
突如、スパーダの姿が残像を残して掻き消えた。
後ろか? タバサは振り向きざまにエア・ハンマーを放とうと思ったが……背後にスパーダの姿はない。
耳元、スパーダの姿が掻き消えた背後で空気が唸り、タバサは咄嗟に横へ飛び退く。
次の瞬間、スパーダが閻魔刀を抜刀しながら滑るように疾走していた。
タバサが立っていた場所を駆け抜け、その軌道上には無数の剣閃が刻まれていたのである。

だが、背中を見せたスパーダの隙を逃すはずもない。これまでは側面しか取れなかったが、今度は完全な死角だ。
タバサは一気に距離を詰めようとし……目前で急停止した。
八本の幻影剣がスパーダを囲むように現れ、さらに周囲を旋回しだしたのだ。
剣先が外に向けられている以上、近づけばミンチ肉にされていたかもしれない。

手合わせとはいえ、スパーダは確実にタバサを殺す気でいる。以前、ギーシュを殺す気で特訓をしてやった時のように。
だが、普通の手合わせは所詮、命の駆け引きのない遊びのようなもの。タバサはその駆け引きができる手合わせをしてくれているスパーダに感謝していた。
慌てて飛び退いたタバサだったが、澄んだ音色と共に掻き消えた幻影剣が自分の周囲に配置されたのだ。
四本が自分の四方に水平で旋回し、もう四本が斜め上から囲むようにして逆方向に旋回している。

これはかなり難しい配置だ。
先ほどはスパーダの周囲から直接放たれるだけでなく、自分の頭上に配置した幻影剣を落下させてきたりしたのだ。
そして、今度はタバサの動きに合わせて固定された幻影剣が放たれようとしている。
水平から放たれたのをかわしたとしても、斜め上か別の方向から放たれた幻影剣がタバサを貫くことだろう。
フライを使ったしてもかわしきれるものではない。
ならば、いっそかわすより……。
「エア・ストーム!」
杖を掲げ、自分を中心にして巨大な竜巻を発生させた。
放たれた幻影剣はその竜巻に吹き飛ばされ、砕け散ってしまう。
賭けには勝った。だが……。
「うぐっ!」
タバサの正面に突如現れたスパーダが閻魔刀の柄頭で腹を打ち据えたのだ。
口から呻きと共に空気が吐き出され、一瞬息ができなくなる。
だが、スパーダは容赦なく怯んだタバサの腹を左手で持っていた閻魔刀の鞘をさらに叩き込んでいた。
強烈な連続攻撃に錐揉みしながら吹き飛ばされ、杖を手放してしまい、地面に叩きつけられる。
「うっ……げほっ……」
苦しそうに咳が喉の奥から漏れ、タバサは腹を押さえた。
転がった杖をスパーダが拾い上げ、閻魔刀を鞘に収めだす。
体を起こしたタバサはよろめきつつも立ち上がり、スパーダにゆっくりと歩み寄っていく。
「Have you satisfied?(満足したか?)」
スパーダの言葉に、タバサは杖を受け取りながらこくりと頷く。
やはり自分と彼はレベルが違う。……だが、伝説の魔剣士と戦うことができたことはとても満足だった。
後は、結果を待つだけだ。彼がここを去るか否かを。だが……。
「仕事が来た時は、私にも知らせて欲しい」
「懲りないな……。まあ、良いだろう」
力を追い求める少女に、スパーダは小さく溜め息を吐いた。
391The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:39:35.90 ID:ydEhT+Kp
さて、そろそろルイズの元へ戻ってみるとしよう。
スパーダはタバサと共に中庭を後にし、女子寮へと戻っていった。
部屋と階が違うタバサとはそこで別れ、ルイズの部屋を目指していく。
もしもルイズが自分を拒めば、このルーンを排除してリベリオンとパンドラを持って去るとしよう。時空神像はさすがに持ち歩けないが。
まあ、あれがある以上、どこかに別の神像があることだろう。それを頼れば良い。
スパーダは平然とした態度のままルイズの部屋の扉を静かに開け、中へと入っていく。
明かりが消されたままの室内には窓の外から入り込む月の光が光源となり、薄暗かった。
ルイズはベッドに腰掛けたまま、戻ってきたスパーダをずいぶんと真面目な表情でじっと見つめていた。
「答えは出たか?」
その前まで歩み寄り、単刀直入に問いかけるスパーダ。
「ええ、決めたわ」
深呼吸をし、ルイズははっきりと告げる。自分の導き出した答えを。
「あたしは、あなたを受け入れる」
何の迷いもなく告げられた言葉にスパーダはふむ、と唸る。
たとえ自分は悪魔であろうとルイズは、スパーダをパートナーとしてここに置くことを選んだ。
それは、どうした考えで決められた答えなのだろう。
「ねぇ、スパーダ。あなたは悪魔だって自分でも言っているみたいだけど、それは違うわ」
「どういう意味だ」

「本当の悪魔っていうのはね、他人の心を知ろうとしないようなものを言うのよ。でも、あなたは人の心に理解を示してくれたわ。
そして、その異世界の人達やあたし達を助けてくれた」
ずいぶんと真面目なことを言うルイズにスパーダは呆気に取られる。
「あなたは悪魔なんかじゃない。立派な人間だわ。本当の姿はあの恐ろしいものなのかもしれない。でも、あなたの心は間違いなく人間よ。
もしも本当に悪魔だったら、あなたはあたし達のような弱い人間を助けようとも思わなかったはずよ」
その場で立ち上がったルイズがスパーダの顔を間近で見上げながら続ける。
「あなたが人の心を愛を知ることができたのも、あなたが人間だからだわ」
「人間、か……」
自分が、人間。……残念だがそれは違う。
スパーダは自嘲の笑みを浮かべだす。
「あいにく、私は悪魔だ。人間ではない。人間のような心を持った、悪魔というべきだな」
「どうして!? あなたは人間よ!」
自分を否定するスパーダに、思わずルイズは声を上げた。

「Devils Never Cry.(悪魔は泣かない)」
「え?」
392The Legendary Dark Zero:2012/04/20(金) 19:45:22.55 ID:ydEhT+Kp
「心を持たない悪魔は、決して涙を流すことはない。心を震わせて流れ落ちる涙は人を想う心と、悲しみの心を持つことができる人間の掛け替えのない宝物だ」
どこか切なそうに笑うスパーダは、椅子に腰掛け閻魔刀も傍に立てかけた。
先ほどと同じようなスパーダのその表情を見て、ルイズは不安になった。
「……私は涙を流したことはない。涙を流してこそ、人間である証だ。だが、私はまだ涙を流してはいない。悪魔である何よりの証拠だ」
人間の愛する心を知ったスパーダが今、最も欲するものがただ一つある。それは人間の宝物である、涙だ。
「……違うわ! あなたは人間よ! たとえ涙が流せなくても、あなたの心は人間だわ!」
食ってかかるルイズの顔を振り返り、微かに笑ったスパーダ。
「その気持ちは受け取っておこう。……だが、私自身は自分が人間だとは思っていない。涙を流すまで、私はそれを認めはしない」
「分からずや……」
不貞腐れ、小さな声でルイズは呟く。
そうして悩み、切なそうにしている姿は紛れもなく人間だというのに。
スパーダにとっては99%の人間の証だけでは気が済まないのだろう。残りの1%、それが涙なのだ。

「……とにかく、あたしはあなたをこれからもパートナーとして認めるわ! 悪魔だろうと何だろうと、あなたはあたしのパートナーよ!」
「それは構わん。……だが、一つ忠告しておきたい」
「え……?」
冷徹な態度へと一変させ立ち上がったスパーダにルイズは思わず身を竦ませる。
「私は人間を見守ると心に決めた。……だが、悪魔のような心を抱く者には決して容赦はしないつもりだ」
腕を組んでじっと見つめてくるスパーダに息を呑む。
「ミス・ヴァリエール。君がもしも道を踏み外し、悪魔の心を宿してしまうようなことがあれば私はある程度その軌道修正はしてやる。ただし……」
「っ……」
閻魔刀を振り抜き、その剣先をルイズの顔に突きつけてきた。
「それで君が改めぬようであれば、私は容赦なく切り捨てる。……その覚悟はあるか?」
冷徹な表情で睨んでくるスパーダに、まるで心臓を握りつぶされてしまいそうな恐怖を感じていた。
彼は人間を守るべくその剣を同胞に向けたが、同時に魔に魅入られて堕落し、悪魔の心を持つようになった人間に関しては例外としている。
あのワルドが良い例だ。魔に魅入られ、悪魔の力を手に入れた彼をスパーダは容赦なく捻り潰した。
もしも自分も彼みたいになれば、同じように斬り捨てられるのだろう。
「……あたしはワルドなんかとは違うわ」
きっぱりと覚悟を告げると、スパーダは閻魔刀を収めていきなり恭しく一礼しだした。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。お前が人の心を持つ限り、その身を守ることをここに誓おう」
「……と、当然よ! あなたはあたしのパートナーなんだからね!」
今までに見なかった厳かな態度に驚きつつも強気な態度で返すルイズ。
とにかく、これで晴れて本物のパートナーを自分は手に入れたのだ。
伝説の魔剣士、スパーダという立派なパートナーを。

「ねぇ、スパーダ。あなたが前に治めていたっていうフォルトゥナのことを教えてちょうだい。いっそ、見せてよ。あの時空神像ってやつで」
それからルイズは夜が明けるまで時空神像に記憶されていた異国の土地、フォルトゥナを見せてもらった。
海に浮かぶ小さな島。トリスタニアに劣らぬ美しさを誇る町。鬱蒼と茂った緑あふれるミティスの森。山脈にひっそりと建つ壮麗なフォルトゥナ城。
そこを治めているスパーダの姿は、今と大して変わらなかった。


※今回はこれでおしまいです。
投下が少ないと、こちらも何故か投下する気が失せてしまう。できれば最後まで続けていきたいのですが……。
393名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 20:09:59.48 ID:Jm9MYSr2
投下乙!
完結までちゃんと持っていけるのは一握りだからねえ
感想あるとモチベーションもあがるだろうけど
394萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2012/04/20(金) 20:55:34.38 ID:D3RvDraa
投下乙です。

とりあえず、生存&近況報告だけ。
マザーボードの故障でSAS RAID Array吹っ飛ばされた(最初RAID I/Fの
故障を疑いましたが、買い換えてもダメだったのでマザーと判断)ので、
復旧にもうしばらくかかりそうです。
マザーとメモリIYHしたまではいいんですが、OS再インストールの余裕がなくて。
今のままでも起動はしているけれど不安定で長時間稼働に耐えません。
(まぁチップセットがnVIDIAからAMDに変われば当然ですが)

ということで、生存報告だけさせてもらいます。
早く完全復旧させたいです……
395名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 21:19:47.26 ID:lMpHRKZG
>377-378
ハルケギアで逃走中をやるのかw
396名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 22:12:16.03 ID:2gjBicM9
パパーダ乙
397名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 23:44:09.63 ID:MD9r04By
鋼鉄の咆哮シリーズから超兵器を呼ぶとしたらエルフとの戦争に使うのがベターかなあ
巨大戦艦アラハバキの主砲やグロースシュトラールのレーザーで水軍を蹴散らすか
ペーサーシュトラッサーやアルウスの艦載機で竜騎士をなぎはらうか
はてはリヴァイアサンの津波で首都ごと沈めてしまうか、だめだこりゃどう考えてもオーバーキルだわ
398名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 02:02:44.52 ID:hDAxtbpM
パパードのひとお疲れ様です!
399名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 08:22:27.00 ID:qusx8mb2
機械仕掛けの使い魔さんは、まだ続けているのですか 
面白いから続けてくださるとありがたいのですが
400名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 08:54:43.04 ID:2/e8PlqC
魔砲使いさんやウルトラさんは、細やかな風物や情景まで描写してくれるから嬉しい。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 12:24:03.06 ID:aerBnBL0
>>398
パパードと聞いてバックベアードを想像した俺は疲れてるのかな…
402名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 14:07:48.44 ID:n4cIV0JA
偏在+現代兵器=最強
403名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 14:18:18.37 ID:WKK4mSXM
偏在の話はもういい
ウザい
404名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 16:33:07.83 ID:vT7LDdIF
偏在使えれば一人で穴三つうめることも可能になるんでしょ?
405名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 16:45:04.24 ID:B/rSMWdc
設定語りの上に低能丸出しだからなあ
406名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 17:08:18.77 ID:XISPk995
麻雀を題材にした作品からキャラ召喚→偏在を使って通し、みたいな
407名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 17:17:07.94 ID:WKK4mSXM
なんでわざわざ偏在で通さにゃならんのだw
同じツラの分身が卓の周りにいたらバレバレすぎるじゃねーか
408名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 17:26:15.00 ID:h4nqVsu1
偏在で食事したらどうなるんだ
解除したらうんこに変化したみたいになるのかな
409名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 17:30:57.83 ID:5mtP7uyO
ヤッターマン召喚

怪しい改造の数々が施された学院
大変なことになったコルベールの研究室

ピンク色のヤッターマン3号通称ヤッターボカン登場

どくろべえに取り付かれたジョゼフと
怪しい覆面のシェレンジョ様、クロッキー、メンヴィラーの3悪
続々ロールアウトするメカヨルムンガンド

タルブ村に眠るメカブトンとアルビオン7万VSチビメカ軍団
410使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 17:58:51.47 ID:JvuqF+U+
18時過ぎから投下予定
411使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:03:01.90 ID:JvuqF+U+
第6話『苦悩』

悩みというのは多かれ少なかれ誰もが持っているものだ。
このトリステイン魔法学院にも多くいる。

一人目は憂鬱げにため息をついたまま、闇夜にたたずむ褐色肌の少女。
雲の切れ目から、朧げな月明かりが彼女のいる広場を照らす。

光に映し出された少女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
普段の彼女なら、この時間は言い寄ってくる男と一時の微熱を楽しむ頃だ。

それがキュルケの日課となっていたが、今宵は一人きりでいたかった。
今彼女がいるのは、ほんの半日前にルイズとギーシュの決闘が行われた広場。

地べたに座るのは躊躇われたので、練金で作られたベンチに座っている。
自身の生活に当たり前だと思われていた魔法。
彼女の悩みは、その魔法が使えない隣室の少女について。

『貴女も私が家柄だけの『ゼロ』だって言いたい訳?』
普段のルイズからは想像もできない冷淡な一言。
それが何時までもキュルケの心に突き刺さっていた。
決闘騒ぎになったのは、確かにギーシュの失言が原因だろう。
だが、あそこまで彼女を追い込んだ一人が自分だとキュルケは考えていた。

キュルケはルイズに悪い感情を抱いていない。
むしろルイズは認めていなくても友人のように思っていた。
しかし、こちらが一方的に思うだけでは何の意味もないのだ。
ルイズに対して、遊び半分で彼女の嫌う『ゼロ』の呼び名を使った事は何度もある。
412使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:08:42.52 ID:JvuqF+U+
誰よりも貴族らしくあろうとする彼女。
卑語くらいでは傷つかないだろうという身勝手な思い込み。
こちらは冗談のつもりでも、彼女の心を傷つけていたのだと気付かされた。

彼女との溝を深さを埋める方法は簡単である、謝ってしまえばいい。
できない理由は二つ。
キュルケ自身の性格と、プライド。
素直にごめんなさいと言えるほど、可愛い女ではないと自覚していた。

プライドに関しては頭を下げるのに抵抗がある訳ではない。
こちらが真剣に詫びれば、許してくれるだろう。
だが、傷つけてしまったお詫びを口だけの謝罪で済ませる。
そんな事はキュルケが自分を許せそうにない。

彼女にお詫びをしつつ、またいつもの関係に戻れる方法。
答えのでない難題に頭を悩ませていると、頬に冷たい瓶が当たった。
小さく驚きの声をあげて振り返る。
コップとワイン瓶を持ったキュルケとは対照的な体格の青髪の少女──タバサがいた。

「飲む?」
感情を滅多に出さないタバサ。
キュルケには長い付き合いから心配してくれているのだと分かった。

「うん、ありがとう」
親友の気遣いにお礼を言うキュルケ。
この素直さをルイズに少しでも向けていれば、事態は複雑になっていない。
413使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:12:37.72 ID:JvuqF+U+
タバサも悩みを抱えている人物の一人。
彼女の悩みは吸血鬼の退治と言う困難な依頼。
依頼を断れず、誰にも話せない理由がある故に助けを求める事もできない。

詳細は不明だが、従姉妹がわざと情報を寄越さないのだろうと推測する。

吸血鬼というのは熟達したメイジにとっても最悪の敵だ。
先住魔法を使い、普段は人と区別もできない為に妖魔と呼ばれ恐れられている。

タバサは目の前の親友が悩む主因、『ゼロ』と呼ばれるルイズが妖魔を呼び出した事を思い出す。
もし彼女の協力が得られれば──と考えるも、使い魔でもあるために彼女はルイズに付きっきりだ。
協力を得ようとすれば、ルイズにも説明する必要が出てくる。

自分の真意に、誰かを巻き込むつもりはなかった。
親友であるキュルケにでさえ、話していないのだから。
タバサは親友に気づかれないように心中でため息をついた。



──同じ頃、ルイズも自室でため息をついていた。
アセルスと並ぶのに恥じない貴族になってみせよう。
意気込んだルイズだったが、決闘という規則を破った為に罰が下される。

『明日の朝、学院長の元へ来るように』
秘書から言付けを預かっており、最低でも自室謹慎は免れないだろう。

魔法を使おうとすれば、爆発が起きる。
爆発を行使する抵抗感こそはなくなったが、室内で練習をする訳にはいかない。
もとより座学に関してはトップになるほど勤勉な彼女である。
教本の類は読み尽くしていたし、図書館は本を取るのにフライが必須だ。

フライを使わなければ利用できない図書館は、欠陥建築ではないだろうか?
平民だけで清掃を行う事ができないので、わざわざ司書のメイジに頼まねばならない。

制服がスカートなのも女学生は困る。
上段の高さまで飛ぶと、下からはスカートの中が丸見えになる。
以前、ツェルプストーの友人であるタバサにその事を教えた時はお互い気まずかった。
414使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:18:36.21 ID:JvuqF+U+
話が逸れたので元に戻す。

このままだと謹慎期間中、無為に時間を過ごさねばならなくなる。
充実した気力が空回りするのは耐えられない。

明日は虚無の曜日、謹慎期間を受けるとしたら明後日から。
魔法に関する参考書を外で買い溜めして、謹慎期間中に読む事にしよう。
アセルスの服も替えがないままだ。
いずれは城下町へ買いに行く必要があった。
朝、アセルスが戻ってきたなら出かける事を伝えよう。

明日の予定は決めた。
次に今日やるべき事を思い起こす。
決闘での感覚を忘れないうちに復習しておきたかった。

爆発を思い通りに制御する。
アセルスの手助けなしでも、出来るようにならなければいけない。
使い魔に頼り続けるようでは、主人とは言えないのだから。

決意を胸に日課となっている魔法の練習を行うべく、外へ向かった。



──ルイズが魔法の練習をしている頃、彼女の使い魔について悩む者もいた。
学院長のオールド・オスマンである。
水パイプを取り出そうとして……念力で取り上げられた。

「一服くらい見逃してくれんかのう、ミス・ロングビル」
「何度目だと思ってるんですか、いくら何でも吸いすぎです」
オールド・オスマンの秘書──ミス・ロングビルに咎められる。

「そうは言ってものう、水パイプでも吸わんとやってられんよ」
「例の使い魔の事ですか?」
秘書である以上、起きたトラブルについては把握している。
使い魔の主であるヴァリエール家の三女と、元帥の四男との決闘について。
教師が匙を投げたルイズの爆発を、使い魔が制御したという話も確認している。
事後処理も面倒になりそうだが、もっと気にかかる事をオールド・オスマンに尋ねた。
415使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:22:16.98 ID:JvuqF+U+
「強い力を持っていると噂くらいは聞いてますが、どれほどなのです?」
ミス・ロングビルの質問は自分の目的による打算からだ。

「さあ?」
打算はオールド・オスマンの呆気ない一言で打ち砕かれた。
ロングビルが思わず転びそうになるものの、慌てて姿勢を戻す。

「さあ?ってなんですか」
「そう言われてものう、お主とて自分の考えの及ばぬものを評価はできんじゃろう?」
最もな意見だが、答えが曖昧すぎて簡単には納得できない。

「基準を持って比較するとか、例えば……エルフ」
「エルフ程度じゃ間違いなく太刀打ちできんじゃろ」
あっけらかんとした発言に衝撃を受ける。
エルフといえば、一流のメイジ十倍を用意して五分になる戦力の目安。
オールド・オスマンはエルフ『程度』と言い、全く太刀打ちできないと評した。

「なるほど、学院長のため息の理由がわかりました」
納得するとロングビルは立ち上がり、何かを蹴り飛ばす。
放物線を描いて宙を舞うのは、オールド・オスマンの使い魔である白い鼠。

「……ですが、それとこれとは話が別です。何か言い訳はありますか?」
彼女は座っていた椅子を右手で持ち上げる。
金属製の椅子は相当な重量なのだが、羽毛のように軽々と扱っていた。

「軽い気晴らしのつもりじゃった、反省はしてない」
言葉通り微塵も反省していない姿に、ミス・ロングビルは椅子を振り下ろした。

椅子を何度も振り下ろしているミス・ロングビルにも悩みはある。
セクハラを働くオールド・オスマンもだが、彼女の正体は貴族から宝を狙う盗賊『土くれのフーケ』。
この学院に秘書として働いているのは宝物庫を狙ったためだ。

彼女の誤算は二つ。
宝物庫の壁が想像より強固だった事。
生徒の使い魔に強力な妖魔が呼び出されてしまった事。
オールド・オスマン曰く、エルフが相手にならない程だ。

二つの問題を解決する手段を考えなければならない。

(エルフといい妖魔といい、私の人生はなんで良く亜人と関わるのかねえ?)
胸中でハーフエルフの妹を思い出して、郷愁にかられる。
セクハラを働いたオールド・オスマンへの暴行は止めていない。
416使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:26:28.52 ID:JvuqF+U+
教師達の問題になっていた妖魔、アセルスにも悩みはあった。
自身の『食事』について。

最初は主としてルイズが血を差し出そうとしたが、アセルスは拒んだ。
理由と問うルイズに血を吸ってしまえば、虜化妖力でアセルスの従属になってしまうと教えた。
渋々納得してくれたが、ルイズが不貞腐れたのも悩みの一つ。

虜化に関してはアセルスは嘘をついている。
肌から直に血を飲まねば虜化妖力は働かないからだ。
かつてジーナはワインに自分の血を混ぜて、アセルスの吸血衝動を抑えた。
ルイズの血を吸うのは、彼女が自分の隣に立つほど成長してからだと決めている。

いくら抑えても、吸血衝動がなくなる訳ではない。
人間を相手に吸血すれば、契約を結ぶルイズの立場が悪化する。
やむを得ないので妖魔の気配を探し当て、そちらで飢えを満たそうとしていた。

従属になるようなら吸血の問題は解決する、敵対されたしてもしばらくの間は空腹を満たせる。

長距離の空間移動を苦手にするアセルスは、細かく距離を刻む。
それでもハルゲニアで最速とされる風竜より早くたどり着けるのだが。

一時間ほど移動して、妖魔の気配がある村が見えてきた。

悩みというのは多かれ少なかれ誰もが持っているものだ。
それぞれの悩みがお互いに関わるとは、この時点で誰も思っていない。
417使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:32:35.58 ID:JvuqF+U+
妖魔の名前はエルザ。
外見こそ愛らしい幼子の姿だが、並の人間より遙かに長い時を生きている吸血鬼。
現在は孤児の振りをして、村の人間達を狡猾に狩っている。

同じ妖魔でも相手の前には、自分など塵に等しいと気づかされる力量。
例えるなら、同じ四足動物でも兎と獅子ほど差がある。
無礼を働かないよう謁見を試みたのだが、彼女はこの選択が間違いだと気づく。

近づいてきた事を察した時点で、逃げるべきだった。
エルザにそう後悔させるほどの威圧、なのに彼女から目を離せない魅了。

「お初に目にかかります高貴なお方。
私はエルザと申します、こんな辺境の村に何の御用でしょう?」
表向きだけでも平静を装えたのは、上出来と自賛したくなる。

「恐れなくていい、何も君を捕って食おうって訳じゃない」
アセルスは警戒させないように告げる。
エルザからしてみれば、胸中を見透かされたようで却って緊張を深めた。

「申し訳ありません、何分弱輩者ですので。
高貴な妖魔と接するのは初めてでございます」
アセルスは見定めるように彼女を眺める。

器量は幼いが悪くない、最低限の礼節もわきまえている。
見窄らしい服をまとっているのは、おそらく孤児を装う為か。
身嗜みを整えれば、それなりに栄える姿になるだろう。

容姿の次に、アセルスは彼女の性質を見極めようとする。

「君はこの村の者を『食事』に暮らしているかい?」
「はい。辺鄙な場所ですが、私のような吸血鬼には都合がよいものですから」
アセルスに妖魔が人間を食料として扱う事への嫌悪感はない。
何も知らない少女の頃ならいざ知らず、人間の負の面を見過ぎた。

「村の者に感づかれていないか?」
「吸血鬼の存在は知っておりますが、私が吸血鬼とは思っておりません。」
エルザはアセルスの真意がつかめずに、ただ村の現状を答える。

「馬鹿者」
短い叱責だったが、エルザは身を竦める。
418使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:37:52.96 ID:JvuqF+U+
「村人が吸血鬼の存在を知っているのは何故だ?」
アセルスの口調にほんの僅かな苛立ちが混ざる。
稚児の我侭を戒める程度の怒りだが、エルザを怯えさせるには十分過ぎた。

「村の者に死体を発見されたからです。
その後は騎士が二度派遣されましたが、どちらも返り討ちにしております」
エルザの答えを聞いて、アセルスは苛立ちをますます強める。
理由が分からないエルザはただ震えるしかなかった。

「何か……私が失礼を働いたでしょうか?」
恐る恐る尋ねるエルザを見て、アセルスは溜息をつく。

「いずれ正体が気付かれる」
アセルスは吸血鬼として露呈するのを、時間の問題だと思っている。
その懸念はエルザにもあったので、自らの計画を明かす。

「私の正体を隠すべく、スケープゴートも用意しております」
エルザがこの村で人間を狩る為の論理的手段を明かした。

村の離れに暮らす老婆。
老婆は一人では身体を起こす事すらままならない病人である。
その一人息子のアレクサンドル。
彼を自分の配下となる屍人鬼にしており、老婆を吸血鬼に仕立て上げる計画を告げた。

「茶番だ」
説明を受けたアセルスは一蹴する。

「は……?」
思わず生返事を返してしまうエルザ。
アセルスはエルザの根源にあるものを見抜いていた。

「村人に吸血鬼と思われている老婆が死んだ後はどうする?」
「この村も吸血鬼騒動で村から人が離れつつあります。村人の伝手で別の村へ……」
アセルスは手の平を向け、エルザにそれ以上は口を開かないよう促した。

「そこでも同じ手を使えば、必ず気付かれる」
繰り返しの作業はいつしか単調になり、必ず綻びが出るものだ。
人間と言うのは目敏い。
危機感を持っていない相手ならともかく、命に関わる以上必ず綻びを見つけるだろう。

「これ以上、人間に手をかけるな」
419使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:42:36.40 ID:JvuqF+U+
本性を明かさないエルザにわずらわしくなったアセルスは命令を投げかける。
エルザにもようやくアセルスの本旨が伝わった。

「なぜです!?私が人間を餌にする事と、人間が食べ物を口にする……は同じ……」
声を荒げたエルザの声が詰まる。
アセルスの鋭い目線が反論を許さなかった。
無論、アセルスは人間を食料にする事を責めているのではない。

「『食事』が欲しいだけなら、村人の死体を残す必要はないはずよ」
吸血鬼がいると村人が認識している原因はエルザが死体を残したからだ。
食事だけならば、死体を隠蔽すればいい。
この村には森も山岳地帯もあるのだから姿を消しても、事故にあったと言い訳がつく。

「わざわざ吸血鬼騒ぎを起こして人間を襲ったのは何故?」
「それは……血がより上質になるからです」
エルザの答えに嘘偽りは無い。
彼女にとって、人間の血は恐怖を与えた方が美味に感じられるのだ。

「そうだ、君はただ快楽の為に人間を殺しただけ。
知らず知らず、自らを追い詰めていると気付かずに」
アセルスが見抜いたエルザの本質。
一般的な妖魔にありがちな快楽主義者。
長い刻を生きる妖魔にとって、快楽と言うものは必要不可欠なものである。

ある妖魔は病気を好んで無免許医と言う仕事を行う。
また別の妖魔は人間に興味を持ち、人間の所属する組織で働く。
自らの研究に没頭する者もいる。
ただこう言った例は大抵妖魔の枠から外れた者、人間で言うなら変人の類だ。

共通しているのはどのように己の退屈を潰すか。
人並み以上の力を持った妖魔は、エルザのように安易な殺傷行為へ走る場合が多い。
必要も無いのに正体を知られる危険性を増やし、己の快楽を満たす。
420使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 18:47:20.96 ID:JvuqF+U+
だからこそ、アセルスはエルザを従えやすいと判断した。
自分との力の差を前に、怯えるだけの吸血鬼に優しく手を差し伸べる。

「私はね、君のことが心配しているんだ」
心にもない一言。
しかし、エルザにとっては極上の蜂蜜酒のように甘く蕩けそうな台詞。

「このまま破滅を待つか、私に仕えるかは君が選ぶといい」
存在だけで女性を虜にする妖艶さを持つアセルス。
魅了に抗うだけの強さはエルザにない。
ただ炎の灯りに誘われた虫のように揺ら揺らとアセルスの元へ吸い込まれていく。

「いい子だ」
エルザの頭を子供をあやす様に撫でた。
アセルスとエルザの体格差もあって、傍から見ていると姉妹のようにも見える。
少し屈むと月光に照らされ、光る首筋に口を近づけ牙を向けた。

「あっ……!」
嬌声が漏れる。
エルザが感じてきた中でも、比類のしようが無い悦楽。
どのような人間の血を奪っても、これほどの快感は決して味わえないだろう。
しばらくすると、『食事』に満足したアセルスが牙を放す。

「エルザ、これで君は私のものだ。いいね?」
「……はい」
未だ余韻から抜けられないエルザの姿に満足する。

「まず君にはこの村でやってもらうことがある」
アセルスは、最初の命令をエルザに下した。
421使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 19:05:27.19 ID:JvuqF+U+
──この日、村を騒がしていた吸血鬼は討伐される。

深夜、エルザの悲鳴と共に村人達は飛び起きた。
村人が武器を手にエルザを探すと、身体から血を流したエルザが村の大男アレクサンドルに担がれていた。

武器を手にした若者達は、エルザを助けようとする。
アレクサンドルは自宅の小屋に戻ると、扉を固く閉めた。

恐慌に駆られた村人の誰かが松明を投げ、家の周りに置かれた油瓶に引火。
家は炎に包まれ、焼け焦げた遺体が大小二つ。
小さい方の遺体は身体が切断されてしまっていた。

死体の大きさからアレクサンドルとエルザと判断する。
老婆の死体は見つかっていないものの、村人達は安堵していた。
吸血鬼の死体は、一般的に溶けて消えてしまうと伝承されている。
村で吸血鬼が現れる事は二度となかった為、村人達は歓喜に沸いた。

ただ二度と帰らぬ被害者を失った者以外は……

以上がサビエラ村における、吸血鬼騒動の顛末とされていた。

当然、エルザは殺されてなどいない。
小さい死体の正体は、アレクサンドルの母である老婆。
エルザは自分と同じ大きさになるよう、寸詰めを行った。
余った部分はグールに山へ捨てさせ、死体を事前に焼き尽くしておく。
最後に小屋の藁や油を燃えやすい場所へ配置し、自作自演による芝居を始めた。

松明は村人が投げたものではなく、エルザが念力で放ったのだ。
村は警戒の為に松明を夜間、ずっと灯していた。
屋敷が炎に包まれたのを崖の上から確認し、村を後にした。

小屋はいとも容易く燃え落ち、死体の検分も不可能な状態。
もし替え玉に気付かれたとしても、もう村に吸血鬼はいない。
追いかけよう事など出来るはずもない。

「君には侍女として仕えてもらおう、いいね?」
「はい、ご主人様」
そこに人間に恐れられた吸血鬼の姿はない。
いるのはアセルスに血を奪われる陶酔に囚われた一人の少女のみ。

返事に満足している彼女は知らない。
自分が忌み嫌った魅惑の君と同じ手段でエルザを従えていると。
彼女を連れ帰ることで、拗ねていた主の機嫌が更に損なわれる事を……
422使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/21(土) 19:07:23.73 ID:JvuqF+U+
6話投下は以上になります。
どうしても最後のほうは投下を逸って、さるにひっかかってしまう…
423名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 20:35:39.71 ID:XISPk995
アセルス乙

>>407
そこはそれ、原作と同じく仮面を被れば問題なし
424名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 20:39:31.80 ID:ymQBaBcq
アセルスの人乙です(`・ω・´)ゞビシッ!!
アセルスは7人の主人公の膣内(なか)で一番気に入ってるわ
そういやデュープリズムの人最近更新してないな、楽しみに待ってるんだけど(´・ω・`)
425名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 22:57:29.97 ID:eFZVXFLh
1〜8番の二次創作小説SS(Side Story)のコミケや通販・ダウンロード販売予定はないでしょうか?
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
5. ファーランド サーガ1、2
6. MinDeaD BlooD
7. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
8. アイドルマスターブレイク高木裕太郎
426名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 23:16:54.58 ID:oLEhhG99
>>424の辞書、訓練されすぎだろ…
427名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 23:46:15.88 ID:FQqkOj2r
乙です

偏在ってそんなに何体も何体も出せるの?
精神力結構使いそうだけど?
428名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/21(土) 23:58:44.29 ID:Ptp+8Fas
投下乙
しっかし小説版のアセルスはオルロワのハーレム乗っ取ってノリノリだったのに偉い違いだ
429名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 00:08:54.04 ID:EDl+GGlz
スクウェアスペルの中にはルイズ曰く一か月に一度ごく少量しかできないほど大量の精神力を消費する黄金の錬金や、
タバサが一回使っただけで汗をかくくらい疲労するフェイスチェンジなど、
スクウェアメイジでもおいそれと使えないくらい消費のデカい魔法が沢山あるらしい

ワルドが至近距離とはいえ同時に4体も出した偏在は、
スクウェアスペルの中ではかなり消費の軽い部類だろうが…
それでも結構消耗するだろうな
430名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 00:34:14.20 ID:6TDsmDvN
同時に四体も出せるっていうのがワルドがチートな証……なんじゃないかな
ギトー先生はおそらく一体しか出せないんじゃないか?
431名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 00:39:46.78 ID:7H4/zo1a
アセルス乙
432名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 00:41:44.36 ID:VDrFk4jk
まあ偏在だって維持すりゃするだけ消耗するんだろうし
ワルドも短期間の戦闘で至近距離のみなら4体出せるけど、
遠距離で長時間維持だったら1体限度とかじゃない?

ギトー先生は知らんが、まあワルドと同じ数出せたとしても戦闘技術とかはろくにありそうもない
フーケにビビッて名乗り出られない程度の人だからね
433名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 00:47:49.11 ID:oeioq7wF
アセルス乙
アセルスの原作知らないんでどんだけのチートキャラなのかがわからんぜよ。
434名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 01:17:25.47 ID:GdcW0+Lu
上級妖魔とそれ以外だと、黄金聖闘士と白銀以下の聖闘士に近い関係

ゲーム中ではアセルスはプレイヤーキャラだから、そこまでチート描写はないけど
ルート次第で最後にラスボス倒すと、新たな妖魔の支配者になって終わる
435名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 01:55:50.06 ID:8Kd7xYNQ
ゲーム的にだと、上級妖魔は下級妖魔から受ける攻撃のダメージを軽減するんだっけ。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 02:22:00.55 ID:5FeWXtAB
最近まとめを読み終わったんだが
すごく気になる所で止まってる作品がいくつもあるんだな
これで原作に興味わいた作品もあるから、今続いてる方は是非最後まで頑張ってほしい
437名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 02:40:11.59 ID:b8l8ecVZ
???「まだ俺が召喚されてないだなんて・・・・こんなにも地球人との意識に差があるとは思わなかった」
438名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 02:51:46.47 ID:nTkbLyJc
星に還れ
439名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 02:58:20.51 ID:sqdEEgFd
威厳、存在感、強さ、かっこよさを兼ね備えた妖魔ならバルバロイ以上を俺は知らない
タイマンを避ける奴は男じゃない、BGMも神だった
440名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 06:44:26.49 ID:xhGQxhaJ
>>439
「誰の手も借りずにお前だけの力でお前の悪夢に立ち向かって見せろ!」の台詞にはしびれたもんだ
ただあいつの場合、使い魔になるよりも敵対して壁になる方が合ってるんだよなぁ
441名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 07:10:37.12 ID:2+0qj5KM
あっさり無実の親子を犠牲にしちゃえるとこを見るとアセルスはもう人間だった時の心はないんだねー
442名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 07:11:55.59 ID:p3dtKUus
>>439
登場シーンの眼が開くのが凄い好きだった。
ラストバトルの、砲撃の中を駆け抜けて斬りつけるとことか。

2好きだけど、うざい盗人キャラと思ったら、土壇場で特徴的な口調が飛び出して生き別れた妹と判明してそれっきりフェードアウトしちゃったのが不満だった。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 09:44:33.25 ID:3t6G/FQW
いかなる戦いにも負けたことのない無敵の使い魔が
444名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 10:58:17.40 ID:3gJO9CoK
謎の使い魔X
445名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 11:18:07.40 ID:je3EemxV
忍者龍剣伝ゼロ
リュウ・ハヤブサが召喚 ついでにあやめも召喚
446 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2012/04/22(日) 15:04:03.34 ID:k6mMIALL
>>442
デスエバンとごっちゃにしてないか?
447名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 15:09:33.56 ID:7DfvtNgy
使い魔マスターTHE END
448名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 16:05:59.63 ID:p3dtKUus
>>446
2の好きな場面上げただけだが。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 16:09:12.66 ID:k6mMIALL
>>448
さいでっか
あの妹だけどGBA版ではEDで無事な姿見せてるよ
450名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 16:15:34.07 ID:WaZBugZW
>>435
ダメージ75%カット、エミリア編タイムアタックとかで活躍
……なんであいつ、1シナリオのラスボスなのに下級扱いなんだよ
451名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 16:27:55.37 ID:GdcW0+Lu
妖魔の場合、生まれが下級ならその後どれだけ力つけても下級なままのはず
ハルゲニアなんて目じゃないくらい格差社会
452名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 17:30:58.93 ID:k6mMIALL
ブレス2とクロスするならリッシュモンやチュレンヌは邪神に支配されて魔物化するだろうな
倒した後もブレス3よろしくコンガーマリトになりそうだし、金の亡者ってやーね
453名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 21:07:49.89 ID:5rx6qqZm
ブレスシリーズか
エンディング後の石になったガーランドをルイズが召還してがっかりしながらとりあえず契約して
契約の影響で石化解除から始まるというのをちょっと考えた
454名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 21:35:11.52 ID:xhGQxhaJ
バルバロイだったら、幼少時のルイズが召喚するも契約前にぶちのめされた挙句に逃げられて、
10年後に魔法学院の仲間と一緒に立ち向かうという展開なら妄想したことある。たぶん短編向けだが
455名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 23:49:51.96 ID:TU5Ou7Z9
ウルトラの代理いきます
456ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:50:58.03 ID:TU5Ou7Z9
 第八十五話
 ヤプール総攻撃! ネフテス首都アディール炎上!
 
 貝獣 ゴーガ
 古代超獣 スフィンクス
 さぼてん超獣 改造サボテンダー
 高原竜 ヒドラ
 友好巨鳥 リドリアス 登場!
 
 
 その日は、いつもと変わらないように始まった。
 
 人間の住まう地ハルケギニアからはるか東方、広大な砂漠地帯サハラに存在するエルフの国、ネフテスの首都アディール。
 およそ、生命の存在を拒み続ける熱と乾燥の大地に、エルフたちは優れた魔法と技術によって高い文明社会を築いてきた。
 ひとつひとつのオアシスを拠点にし、精霊の加護によって太陽の熱波から身を守ることで、砂漠の中にまるで島のように
都市や村を築き上げる。それらを空中船や幻獣を巧みに使って有機的に結合することにより、彼らは高度なネットワーク社会を
形成し、閉鎖的なハルケギニアの貴族社会をはるかに超える合理的な社会体制を育ててきた。投票により統領を選出することを
代表として、彼らの体制はむしろ地球に近いといえるだろう。
 
 アディールは、まさにその象徴というべき大都市であった。
 
 砂漠と海が交わり、青とクリーム色の二原色の風景の中間に、同心円状の広大な埋立地がいくつも作られている。それらが
集合して、海上に蓮の葉の群れのような直径数リーグにも及ぶ巨大な人工島を形成しているのが、アディールであった。
 その上にそびえるのは、高さ数十メイルから数百メイルの石造建築群。全体が日光を反射する白色の不思議な石材で
出来ていて、むしろ地球の高層ビルに相当すると呼んで過言ではないだろう。ニューヨークのマンハッタン島のビルディングを、
白色化したようなものと呼べば近いか。ともあれ、中世の様相を色濃く映すハルケギニアを圧倒的にしのぐエルフの力を
なによりも表す、エルフの誇りと自信をそのまま形にした大都市なのである。
 数万人のエルフがここに居住し、水路でつながれた区画はそれぞれ人間の街では考えられないほど整然と整えられて、
絵画の理想郷のような美しさが常に保たれていた。
 むろん、アディールには大都市たるべき理由と役割が備わっている。国境という概念を持たないエルフたちは、多くの部族に
分かれて砂漠の都市や集落に分散しているが、そこから代表となる議員を選出してアディールの最高評議会に送り込み、
話し合いによって政治運営をおこなっている。そのため、軍事・経済いずれにおいても中心となるアディールには多数の人口が
自然と集中して、ここを事実上世界最大の巨大都市へと成長させたのだ。
 
 ただ、いくら人とエルフの違いはあっても、そこに生きる普通の人々の営みにはなんらの変わるところはない。
 砂漠の各地から集められてきた様々な食物を売る市場、公園や街路には花壇が作られて、行きかう人々の目を楽しませる。
役所や騎士の詰め所、子供の通う学校から若者の集う大学まで、それらの中で様々な生活や商業がいとなまれていた。
 
 繁栄とはまさに、アディールのためにあると言っても過言ではないだろう。
 サハラのあちこちの都市が怪獣に襲われ、竜の巣で水軍と空軍が甚大な被害をこうむったことも、この街の住人からすれば
よその国の出来事のようなものだった。海には水軍の艦隊が停泊し、空軍の主力艦隊が呼べばいつでも来援してくれる。
エルフの最大の軍事力、すなわち世界最強の軍事力に守られたアディールにはまだ一度も怪獣が襲来したことはなく、住人も、
エルフの最高意思決定機関たる評議会議員たちでさえも、アディールを神聖不可侵と信じて疑っていなかった。
 
 
 だが……そんな美と力と繁栄の女神に愛されているようなこの都市に、悪夢のような一日が訪れようとは誰が想像したであろうか。
 
 
 いつもどおりの日……朝起きて、仕事や学校に出て、昼休みに昼食をとって歓談する、そんな特別とは縁遠い時間帯。
457ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:51:20.22 ID:TU5Ou7Z9
 日常という、ささやかな幸福を送るエルフたちを見下ろす高い建物の屋上の空間が歪み、人ひとり通れるくらいの異次元ゲートが
開いた。その中から姿を現す二体の宇宙人、一体は緑色の複眼と鋭いハサミになった手を持ち、もう一体は金色のマスクに
真っ赤な目を持っており、その手にはリング状の刃物を掴んでいた。
 
「ここがアディールとやらか……ククク、いるいる。うじゃうじゃとエサどもがな」
「へっへっへっへ。おいおい、なんだこの小汚ねえ街は? こんなもんをつぶすのにヤプールは俺さまの手を借りたいってのか? 
宇宙の海賊と恐れられる俺さまも、ずいぶんと安く見られたもんだなあ、おい」
 
 現れた星人のうち、緑色の複眼を持ったほうは街を行く人々を舌なめずりするように見下ろし、赤い目を持つ金顔のほうは
荒々しく乱暴な口調で街を見渡している。二体とも、かつて人類やウルトラ兄弟を苦しめた宇宙人の同族で、緑眼のほうは
ヤプール直属のエージェント、赤眼のほうはヤプールに雇われてきた傭兵の宇宙人だった。
「ふぅむ、総攻撃の予定がこんなに早まるとは驚いたが、ここはなかなかいいエサ場だ。牧場にするには悪くない」
「おい、無視ぶっこいてんじゃねえぞ。俺はてめえと違ってヤプールのしもべじゃねえんだ。つまらねえ仕事だってなら帰らせてもらうぜ」
「クク、まあそう慌てるな。武を誇るお前たち一族からしたら、暴れたくてしょうがないのだろうが、目的はただ破壊することだけではない。
それよりも、まずはこの街のエルフどもののんきな顔を拝んでおいたらどうだ? 恐怖に震える顔も、そう変わる前を知っていると
知らないとでは味も変わってこようて」
「へーへ、相変わらずてめえらの趣味の悪さは宇宙一だな。俺は暴れられれば楽しいんだが、まあ確かにこののんきにしてる連中を
ぶっ潰すと思うとわくわくしてくるぜ。ヒヒッ」
 異次元空間を通って、白昼堂々と街中に侵入を果たした二体の宇宙人。彼らは、しばらく安穏と過ごすエルフたちを冷たい
眼差しで見下ろしていたが、やがて飽きたのか赤眼のほうが投げやりな口調で言った。
「へっ、今や世界中で怪獣が暴れてるってのにいい気なもんだな。よっぽど守りに自信があるんだろうが、異次元空間を使えば
そんなものなんの役にも立ちゃしねえ。んで、どうするよ? てめえらご自慢の超獣軍団を出さなくとも、こんな街くらい俺さまだけで
ぶっ潰せるぜ」
「フ、焦るな。一気につぶさずに、じわじわと痛めつけてやれという命令なのだ。そうでなくてはマイナスエネルギーの収集効率が
悪いのでな。それに、楽しみはできるだけ長いほうがいいだろう?」
「まあそりゃそうだが、んじゃどうすんだ?」
「まずは挨拶としよう。ちょうど、この街には先人がおもしろいものを残してあるようだ」
 緑眼のほうはそう言うと、ハサミになっている手の先で、ある壮麗な建物を指して見せた。
「なんだい? あの四角い建物は」
「古美術館だ。エルフどもは芸術に優れていることを誇りにして、ああも大げさな建物を作って見せびらかしている。我々の感性からしたら、
形が奇妙なだけで役にも立たんガラクタをありがたがる気持ちは理解できんが、さらにこっけいなのは、その中身が災いの種だということも
知らずに、すばらしいとかぬかして拝むことだな」
「ふーん、だいたい読めてきたぜ。さっさとやれよ、俺は待つのは嫌いなんだ」
 赤い眼の星人は、緑色の複眼のヤプールのしもべをせかすように手に持った武器を振り回した。
 この星人は言動の荒々しさからもわかるとおり、知略をめぐらせるよりは実力行使を好むタイプである。だが、かといって武人タイプ
というわけではなく、不意打ちや弱い者への攻撃も平然とおこなう。要は性質が凶暴なのであって、それゆえに他の宇宙人からは
『無軌道』『無目的』『無計画』と三拍子揃ってありがたくない称号をたまわっている。が、反面そうした単純な凶悪さこそが、ヤプールの
気に入ったとも言えなくない。むろん、ほかにもこの星人を利用しようと思った理由はあるが、現在はまだそれを必要とはしていない。
 おもちゃをもらうのを待ちわびた子供のようにせかす星人に、緑眼のヤプールのしもべはなだめるように手を振ると、手のハサミを
開いて口先を古美術館に向けた。
 
「今、眠れるお前に力を与えてやろう。六千年の眠りから覚めて、大暴れするがいい! ハアッ!」
 
 ハサミの先から、目には見えない特殊なエネルギー放射線が放たれる。その放射線は美術館の壁をすり抜けて、ある一室に
安置されていた古い木彫りの像に吸い込まれていった。
458ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:51:55.08 ID:TU5Ou7Z9
「フフ、これでいい。さあ、目覚めて動きだせ!」
 台座の上に置かれた像、それは一見なんの変哲もない古い木像であったが、背中の部分にはエルフの古代文字でこう書かれていた。
『我らの子孫に継ぐ、ゴーガの眠りを決して覚ますことなかれ。我らの呪いの一端をこの身に封ず。災厄を忘れおごるとき、
六千年の呪いは蘇って、地はまた炎に包まれてゴーガとともに没すであろう』
 それは現在では古代人の迷信の類として、像はただの古美術品のひとつとして展示されていた。
 
 だが、伝説は本当であった。
 
 地震でもないのに、木像がコトコトと動いて、台座から落ちて真っ二つに割れた。その破片の中から這い出てくる、人の
拳ほどの大きさの奇妙な生き物。サザエのような殻を持ち、軟体の体の先には二本の角と、その先端に鈍く光る目がついている。
 床をうごめく不気味なカタツムリ……平日の昼間なので、人の気配もほとんどない美術館の中をそいつは無音のまま動き回る。
このままだったら、この気味の悪いカタツムリはすぐにやってくる誰かに見つかって、捕獲なり処分なりされただろうが、ヤプールの
エネルギーの込められた放射線を浴びせられたことで急激な体質変化が起きていた。
 ほんの数分後、その展示室に訪れた警備のエルフは、いつもとは違う部屋の様子に首をかしげた。
「おかしいな? こんなところに壁があったか、な……?」
 部屋をふさいでいるおかしな壁を見回して、最後に上を見上げた彼は絶句した。そこには、部屋を埋め尽くすほどに巨大な
カタツムリが粘液で覆われた首を持ち上げて、二つの目でこちらを見下ろしていたのだ。
 ありえない光景への茫然自失、そのとき巨大カタツムリの目から白色の溶解液が光線のように放たれた。カウンターで
身を守る暇もなく、短い悲鳴を最期に不運なエルフは一瞬で服だけを残して消滅してしまった。
 さらに、巨大カタツムリは全長五メートルほどの姿からさらに膨れ上がっていく。それに増して重量も増えていって、
美術館の天井は突き破られ、床は抜け落ちて石造りの壮麗な建物が轟音を立てて崩れ落ちていく。
「なんだ!? あ……なんだあれは!」
 突如として崩落した美術館の惨状に、近くにいたエルフたちは足を止めて美術館をみやった。
 厳選された真珠石でできた美しい建物は無残に崩れ去り、瓦礫の山へと変わってしまっている。
 だが、生き埋めにされた人を助けようとか、役所に飛んでいこうとかいう思考は一秒で消滅した。瓦礫の山を押し分けて、
街路に這いずり出てくる、山のように巨大なカタツムリ。その不気味でおぞましい光景に、人々は悲鳴をあげて逃げ惑い始め、
悲鳴を聞きつけて窓に駆け寄った近隣の建物のエルフたちも、ガラスの向こうに見えるこの世のものとも思えない生き物に
驚愕して、ある者は同じように悲鳴を上げ、ある者は腰を抜かし、ある者は目を疑い、ある者は一目散に逃げ出した。
 この中で、もっとも懸命だったのは即座に逃げ出した者であったのはいうまでもないだろう。ごく一部の者の中には
魔法を使って攻撃を試みた、腕に自信のあるエルフもいたが、二十メートルもの巨体を持つカタツムリの強固な殻はもとより、
粘液で覆われた軟体の体は攻撃をまるで受け付けずに、目から放たれる強酸溶解液でさらに数名が消滅させられてしまった。
 なにげない日常に突如乱入した異形の怪物は、邪魔になるものをその巨体と溶解液でつぶしながら突き進んでいく。
 
「きゃああーっ! なにあれっ!」
「逃げろ! うわぁぁっ!」
「軍はなにやってんだ! こ、こっちに来るなぁっ!!」
 
 エルフといえど、一般人の戦闘力はそう高くはない。増して街中には女子供や老人も多くいる。急いで逃げようとする者、
空を飛んで逃げようとする者、反撃を試みようとする無謀な者、逃げ遅れてほかの邪魔になる者がごっちゃになって、
とても統制の取れた避難行動はとれていなかった。
459ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:52:51.25 ID:TU5Ou7Z9
 無理もない……アディールの歴史開闢以来、この都市が敵襲を受けたことなどは一度たりとてなかったがために、
避難訓練はおろか、その意識さえも一切なかった。混乱が混乱を呼び、パニックの中で出なくていい怪我人が増えていく。
 好きなように暴れまわる巨大カタツムリ、その前進とエルフたちの狼狽ぶりを二人の宇宙人は愉快そうに眺めていた。
「あっひゃっはっはは! こりゃなかなかおもしろい見世物じゃねえか。なんだい、あの怪獣はよ?」
「貝獣ゴーガ、かつて地球でも暴れたことのある怪獣だよ。いずれこの街を攻め滅ぼすための内偵中に、偶然同種族が
封じられている像があるのを見つけてな。小型の怪獣だが、なかなかおもしろいだろう?」
 緑の複眼のほうが得意げに説明した。
 貝獣ゴーガ、それは緑眼のほうが言ったとおり、地球にも出現したことのある怪獣である。
 アウト・オブ・ドキュメント、すなわちウルトラマンが地球に来る以前の事例に記録があり、少なくとも二体の存在が
確認されている。一体目は六千年前に栄えた古代アランカ帝国を一夜にして滅ぼし、二体目はその別個体がアランカ帝国の
遺物である『ゴーガの像』の中に封じ込められていたものが復活し、東京に多大な被害を与えている。
 性質は凶暴で、進路上の邪魔になるものは容赦なく破壊して進む。しかし本来の伝説では、『街に悪がはびこり、
人々が心を失うときゴーガは蘇る』と伝えられるとおり、ゴーガが復活するのはもっと未来であったかもしれないのだが、
悪魔に利用されて蘇ったゴーガに容赦はない。首を振り回し、巨大なドリルにもなる殻で建物を破壊しながら、ゴーガは
我が物顔でアディールを暴れまわった。
 が、街中に突如怪獣が出現するという非常事態に不意を打たれたものの、首都防衛の使命を受けた軍は動き出した。
「おうおう、ようやくとおでましのようだな。お手並み拝見といきますかい」
 建物の屋上のへりに腰掛けて、赤い眼の星人は頭の上を飛んでいくエルフの竜騎士を見送った。彼らはゴーガに
気をとられているようで、白昼隠れてもいない星人に気がついた様子はない。
 
 首都防衛部隊に属する二十騎ほどのエルフの竜騎士たちは、愛騎の風竜たちにまたがって、暴れまわるゴーガを見下ろした。
「あれだな、化け物め。いったいどこからやってきたか知らんが、俺たちが来たからにはもう好きにはさせんぞ」
「隊長、相手はノロマです。全員の一斉攻撃でやっちゃいましょう!」
「待て! 街中で下手にでかい武器は使えん。私の合図とともに集中攻撃をおこなう。殻に攻撃は無駄だ、首を狙え!」
 壮齢に近づいた、歴戦の隊長の指示で竜騎士の部隊は散開した。
 空中でダンスを踊るような見事な隊列を組んでの編隊飛行。彼らはゴーガが街路の比較的広い場所に出るまで
チャンスを待ち、チャンスが到来した瞬間に迷わず攻撃に移った。
「今だ、全騎突撃!」
 一列縦隊を組んでの急降下攻撃、それは首都防衛を背負った彼らの使命感の強さと錬度の高さを如実に表すものであった。
 様々な魔法が威力を集約してゴーガの首に連続して叩き込まれる。いかに粘液質と軟体で打撃を吸収してしまうゴーガの
皮膚もその限界を超えて、千切れ飛んで体液が零れ落ちた。
「第二次攻撃、用意」
 苦しむゴーガへ向けて、彼らは快哉のひとつもなく再度攻撃に移った。敵を完全に倒すまでは決して気を許すことなかれ、
その一点においてのみを見ても、彼らが軍人として非凡であることがうかがえるであろう。
 だが、ゴーガもやられっぱなしなわけがなかった。ほこりをかぶった電球のように不気味に光るふたつの目の先から、
小型時よりも強化された溶解液を放射して竜騎士隊を狙い打ってきた。ジェット戦闘機すらピンポイントで狙える溶解液が
竜騎士を襲い、一瞬で次々に消滅させていく。
「ぬわーっ!」
「編隊を崩すな! 攻撃を続けろ」
 ゴーガの攻撃に仲間を失いつつも、エルフたちはゴーガを狙い続けた。攻撃を受けるごとにゴーガは怒り、巨体をのたうたせて
周辺の建物をなぎ倒していく。ゴーガは全長二十メートルと、ほかの怪獣に比べたら半分程度の大きさしかないが、それでも
街を破壊するには十分なパワーと二万トンの重量を持ち合わせている。
 攻撃を加え続け、しだいにダメージが蓄積していったゴーガは殻の中に首を引っ込めて、転がって移動をはじめた。
鉄筋コンクリートのビルでさえ一撃で粉々にする体当たりがアディールの市街を荒らしていく。エルフたちは止めようと
魔法を浴びせるが、水爆でも破壊不可能といわれるゴーガの殻はびくともしない。
460ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:53:19.27 ID:TU5Ou7Z9
「くそっ! このままじゃアディールが全滅してしまうぞ」
「空軍の艦隊が応援に来るまでにはまだ時間がかかるし、隊長!」
「ぬぅぅぅ」
 ゴーガは転がりながら、狭い水路くらいは乗り越えて区画から区画へと破壊の手を伸ばしていく。今のところは、誰にも
それを止めることは不可能であった。
 だが、彼らは転がり続けるゴーガを観察するうちに、あることに気がついた。ゴーガは一見、無秩序に転がりまわって
いるように見えるけれども、つぶされた家屋から火の手があがったところに戻ってこようとすると例外なく方向転換して
元来た方向に転がったりしていることに。
「あいつまさか、火が怖いのか? ならば、打つ手はある!」
 隊長は意を決して作戦を作成した。残余の部隊の中で、火の扱いの得意なものでゴーガの進行方向に火を放って行く先を
強制的に変更させ、すでに破壊されつくした地区に本隊が大規模な火炎の罠を組んで待ち伏せる。
 彼らはこれに賭けて実行に移した。むろん、すでに壊された場所とはいえ、エルフの建築技術が人間をはるかに凌駕
するといっても、自らの街に火を放つのは心苦しい。しかし、時には心を鬼にして取捨選択しなければいけないこともある。
日本の江戸時代の火消しは火災の延焼を防ぐためにまだ燃えてない家屋を壊して大火災になるのを防いだ。
 住民は避難している。建物はまた作り直せばいい。
 街の被害を覚悟の上で、エルフたちはゴーガを罠の張ってある地点へと誘導した。
「ようし今だ! 着火しろ!」
 ゴーガのポイント到達と同時に、仕掛けられていた油にいっせいに火が放たれた。同時にゴーガにも空中から油が散布され、
ゴーガはまるで焚き火にくべられた紙くずも同然に燃え上がった。
 全身に火が回ったゴーガはもだえ苦しみ、なんとか炎の圏内から逃げ出そうと転がるが、そこは風を操ることを得意とする
者が炎をあおって押しとどめ、ドリル状の殻で地底に潜ろうとすれば土を操れる者が食い止める。
 ゴーガの伝説にいわく、『アランカは罪と共に没す。ゴーガは火と共に消える』とある。ゴーガの弱点は高熱、かつての
ゴーガも自衛隊の火炎放射攻撃の前に敗れ去っていた。ゴーガの殻は頑強そのものだが、それ自体燃えてしまうのである。
 エルフとゴーガの必死の攻防は、ほんの一分にも満たなかっただろうが、彼らにとっては数時間にも匹敵した。
 ついに熱さに耐えられなくなったゴーガは殻から出て全身を焼け爛れさせて崩れ落ち、殻も激しく燃え上がった後に爆発四散した。
「や、やった……」
 ゴーガの最期に、エルフたちは気が抜けたように竜の上にへたり込んだ。
 まさに悪魔のような相手だった。少なからぬ仲間を失って、街にも甚大な被害を出してしまった。幸いこうして撃滅できたから
よかったようなものの、一匹でこの脅威……これが怪獣か、正直二度と戦いたい相手ではない。
 
 しかし、ゴーガなどは真の悪魔たちが動き出す前の、ほんのデモンストレーションに過ぎなかったのを彼らは知らない。
 
 ゴーガの爆発を見て、逆に快哉を叫んでいた者たちがいた。
「はっははは! やっと倒しやがったかよ。ずいぶんと待たせてくれたなあ、んでどうするよ? あの怪獣倒されたぜ」
「あんなもの、いてもいなくてもなんの変わりもない。それに、あの程度の怪獣すらどうこうできないようでは、あまりにも
張り合いがなさすぎるというものだ。赤子の手をひねるにしても、抵抗もしないのではむしろこちらが苦痛でしかない」
 赤子の手をひねることが楽しみと、緑眼の星人は平然と言い、赤眼のほうもそのとおりだとうなずいた。
 確かに、ゴーガはそんなに強い怪獣ではない。弱点さえつけば非常にもろく、もしウルトラマンと戦ったとしたら
スペシウム光線で簡単に焼却されただろうし、現在のCREW GUYSならば通常攻撃で問題なく勝てるレベルだ。
 単に、いたから使っただけ。強いて言うならば、エルフの軍事力のレベルを知りたかったからとでも言うべきか。もっとも、
すでに竜の巣で必要なデータはとれているから、余剰といえばそうでしかないのだが、とりあえずは無駄なあがきをして
楽しませてくれるだけの力は持っているらしくて助かった。
461ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:53:41.89 ID:TU5Ou7Z9
「さて、ではそろそろエルフどもを終わらない悪夢に招待しようか。あんな古代の残りかすとは違う、本物の悪魔をお目にかけよう」
「やっとかい。おい、俺も暴れていいのか?」
「もう少し待て、お前には後でやってもらうことがある。それまではまあ、私の手並みでも見物しているがいい」
 またお預けかよと舌打ちし、面杖をついて座り込んでしまった赤眼の星人を尻目に、緑色の複眼が冷たい光を放った。
 
「破壊と殺戮のショーの開幕だ。ヤプールが手塩にかけて生み出した悪魔の軍団、今こそ白昼のもとにお披露目しよう。
まずは先兵として、現れろ! 超獣サボテンダー! さらに、超獣スフィンクスよ!」
 
 天に稲妻が鳴り、アディールの市街に巨大な異形がふたつ姿を現した。
 ひとつは緑色の全身に鋭いとげを無数に生やした超獣、さぼてん超獣サボテンダー。
 しかしこれはただのサボテンダーではない。以前ウルトラマンジャスティスに粉砕されたサボテンダーの残留エネルギーを元に
強化再生させた、改造サボテンダーだ。地球攻撃に使用されたときは囮としての役割を担い、ウルトラ兄弟と戦うこともなく
回収されていたが、今回は本気である。
 そしてもう一体は、エジプトのピラミッドを守る人面獣身の魔物を模した怪物、古代超獣スフィンクス。
 ツタンカーメン王のマスクに似た顔と、頭部に生えたコブラのような触角に、黄金に彩られた全身は数千年の眠りについた
ファラオが悪霊と化して蘇ったかのようだ。かつて地球に出現した個体は古代星人オリオン星人に操られていたが、
今回はそのときのスフィンクスのデータを元にして再現した、一種のコピーである。ヤプールは以前にも、自身とは直接
関係のない満月超獣ルナチクスを再現してGUYSと戦わせている。
 むろん、再生体とコピー品とはいえ、その破壊力にいささかの手抜きも入ってはいない。
 
「ここからが本番だ。やれ! 存分に破壊せよ」
 市街地に出現した二体の超獣は、住民が驚く時間も与えずに破壊活動を開始した。
 サボテンダーのとげだらけの腕がビルのような建物を粉砕し、スフィンクスの頭部のコブラから高熱火炎が放たれて街を焼く。
 ゴーガの脅威からやっと解放されて、浮かれたりほっとしていたエルフたちの顔が再び引きつる。口からは怒号と悲鳴だけが
吐き出されて、街の壊れる音とシェイクされてパニックという名の不味いカクテルがぶちまけられた。
「なんなんだありゃあ! た、助けてくれぇ!」
「いゃあ熱い! 水、水はどこ!」
「精霊の、わぁぁっ!」
 それはハルケギニアの街々で繰り返された惨劇と、一切の変わりのないものだった。エルフといえど、本格的に戦闘の
訓練を受けたものはわずかである。延々と人間世界と戦争をしてきたとはいえ、生まれて今まで人間を見たことすらない者など
ざらであり、ただの商人や職人、学者などがいくら精霊の力を使えても戦えるかどうかは別のことだ。
 サボテンダーのとげがミサイルのように放たれて高層建築物を爆破し、スフィンクスの蛇になっている二本の尻尾の先端が
瓦礫を銜えて無差別に投げ捨てる。
 なにか目的があっての破壊ではなく、破壊のための破壊。生物兵器として作られた超獣の本領、それが存分に発揮されている。
ゴーガを倒したばかりで消耗している軍隊もおっとりがたなで駆けつけてきて戦うが、ゴーガより数段強い二匹の超獣には
まるで歯が立たない。
462ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:54:19.48 ID:TU5Ou7Z9
 人々の悲鳴を聞き、さらに力を増す超獣と、喜びの声をあげる宇宙人たち。
 しかし、絶望のさなかにあってなお、ヤプールを不快にさせる要素は残っていた。
「火中に取り残された人たちを助け出せ!」
 彼らは軍隊ではなかった。人間世界で言えば、衛士隊や自警団。地球風にもっと噛み砕いて言えば、警察や消防、
町内会や消防団に当たるような小規模な組織の人々だった。
 彼らは、軍隊が必死に超獣の気を引いている隙に、逃げ道を失って右往左往している市民を救おうと動き出していた。
「石に宿る精霊の力よ。我の命によりて動き、道を開けたまえ」
「我が契約せし水の精霊よ、水面より舞い上がりて雨となり、たける炎を鎮めたまえ」
「お前たち! 慌てずに水路まで行ったら水竜が待ってるから乗せてもらえ! ただし下手に飛んで逃げるな。狙い撃ちにされるぞ!」
 我が身を省みず、危急存亡のときに勇気を出した人たちによって、パニックの拡大は防がれて、エルフたちは超獣から逃げ延びていった。
 だが彼らは決して、特別なエルフではなく、人間社会にもどこにでもいる普通の町人たちだった。違うところといえば、彼らは
精霊魔法を使って瓦礫を動かし、火災を消火し、怪我人を治療したりしていたくらいである。どんな災害のときでも、無様に
うろたえるだけの者もいれば、普段目立たないのに勇者のようにふるまう者もいる。たとえその数は少なくとも、彼らに救われた
者たちは決してその恩を忘れない。
 暴れまわる超獣に対しての、ささやかな抵抗。が、それは確かに悪魔たちの愉快をそいでいた。
「ちっ、予定よりマイナスエネルギーの収集率が悪い。くだらんかばいあいなどをしおって」
 緑眼が、つまらなさそうに足元の石材を踏み潰した。組織的な行動ならば、その組織を乱せば抵抗も止まるが自発的な
行動であるならその全員を始末しなくては止まらない。平和ボケした連中しかいない街と見て、あっさりと絶望に染まるものと
見たのはいくらなんでも虫が良すぎたか。
 それに、緒戦は奇襲で一方的な戦いを演じられたが、エルフの軍も増援を得て組織的な抵抗を復活させつつある。
人間よりもはるかに竜の扱いに長け、強力な魔法武器を多数持つエルフの軍事力は人間のそれの数倍から、十数倍に
匹敵する。なによりも、アディールを守ろうとする彼らの使命感は平和ボケとは裏腹の位置にあった。
 しかし、それらの勇気ある行動は確かに悪魔どもの不興を買いはしたが、それ以上を得る力は持ち合わせなかった。
 
「所詮は、時間の問題だ」
 
 複眼の奥で冷酷な光が瞬く。
 暴れまわる超獣二体に対して、エルフどもの抵抗は意外にも粘り強かったのは認めてもいいだろう。けれども、いくら
水をやっても枯れる花をまた咲かすことはできない。狼を前に羊の群れがいくらわめいても、うるさい以上に狼は感じない。
 鋭い風の槍もスフィンクスの皮膚を通すことはできず、スフィンクスファイヤーが空をなぎはらって竜騎士たちを焼き払う。
 十数人の手だれの行使手が五十メートルほどもある、コンクリートビルそっくりな建物を宙に持ち上げてサボテンダーに
投げつけた。が、サボテンダーはすぐさま球形サボテンの形態に変形して転がりかわしてしまう。全体がとげに覆われた、
重量五万トンの球体が転がる破壊力はゴーガの比ではなく、固定化に近い魔法で補強された建物もひとたまりもなく
粉砕されてしまう。もちろん、中に逃げ遅れた人がいるかどうかなどは関係ない。
 
 我が身を省みないエルフたちの英雄的行動は超獣の進撃を遅らせ、多くの非力な市民を逃がすことに成功した。
 水路からは満載の船がどんどんと出て行き、逆に水軍に飼われている水竜たちが海中から集結してくる。
 
 それらは一見すると、ドラマチックなシーンに見えて、詩人や劇作家からしたら筆が進むといえよう。しかし、これは
そのままハッピーエンドにつながるクライマックスではなく、単なるつなぎのシーン、主演俳優たちが舞台に上がってさえ
いない序章なのである。
463ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:54:45.78 ID:TU5Ou7Z9
 そして、この劇に脚本化がつけた題名は『絶望』。
 誰一人希望を得ることなく、暗黒のふちに消え行く悲劇。
 英雄もなく、救世主もなく、悪魔が主役で始まって悪魔が主役で幕を閉じるように書かれたシナリオ。
 この劇の閉幕を飾るのは歓声と拍手ではなく、街が焼け落ちる音と断末魔の悲鳴。
 その変更は脇役ごときのアドリブで揺るぐことはない。
 
 ゴーガの出現で平和を破り、スフィンクスとサボテンダーの出現で安息の消滅を告げた序幕は、ようやくアディール上空に
駆けつけてきたネフテス空軍艦隊の出現によって、次のステージへの移動を決めた。
 
「さて、向こうの役者も揃ってきたな……そろそろ連中のささやかな希望もつみとってやるとするか。お前たちがわずかに
すがって待っていたボロ船がいかに頼りないかを見て、せいぜい絶望するがいい。この地に眠れる古代の怪物どもよ、
今こそ力を与えてやる!」
 
 ヤプールの邪悪な思念が、砂の中に潜んでいた巨大な生命を呼び起こす。
 はるかな地底から浮上してきて、砂中からアディールに急行する空軍艦隊を狙う何者か。砂は流砂となって水のように
渦巻きを作り出し、その中心から黒々とした甲殻が姿を現す。
 
 さらに、緑眼は空軍艦隊から目を離し、その複眼をアディールの別箇所に映した。
 空間を隔てて地上を見ることの出来る複眼が、ゴーガにも二大超獣にもまだ被害を受けていない場所にある、
エルフたちの学校を見下ろした。そこはトリステイン魔法学院などと同じく、幼年のエルフたちが集まって指導を
受ける学び舎である。
 生徒たちは戦場からは遠いここに集まって、迎えの船が来るのをじっと待っていた。
 しかし、安全なように見えたこの場所に集うエルフたちの足元に、新たな悪魔が忍び寄っている。
「くくっ、いるいる。良質なエサどもがたくさんいる」
 実年齢もルイズや才人たちとさして変わらないエルフの少年少女たち。その中の少女たちを、品定めをするように見渡す
冷酷な眼が空にあることを、彼女たちは知らない。
 
 壊滅への一本道を驀進しつつあるアディール。エルフたちの大半は、まだ事態がそこまで深刻だとは気づいていない。
 だが、唯一その破滅のシナリオに黒インキをぶちまけてやれるかもしれない船が、南から急速にアディールに近づきつつあった。
 
 渇きの大地から、一路アディールに向けて北進する東方号。大気を貫き、雲を引き裂いて飛ぶ鋼鉄の女王が、
砂漠に巨影をほんの一瞬だけかけては、音のような速さで通り過ぎていく。
 すさまじい速さ、現在の東方号の速度はゼロ戦をも超えてハルケギニアの乗り物で最速と呼んで間違いない。
 が、確かに東方号の機関はフル稼働し、プロペラは限界の回転を搾り出しているが、この加速は東方号の出力によって
生み出されたものではなかった。
「ミスタ・コルベール! 翼がミシミシ言い出してるわよ。この船、耐えられるの?」
「君もこの船を作った一人だろう、ミス・エレオノール? 作者が自分の作品を信頼しないでどうするね? それに、これでも
遅いくらいなのだ。あの二匹が力を貸してくれなくては、とうてい間に合わないところなのだからな……」
 コルベールはため息をつくと、艦橋の窓から艦首方向を見た。そこには、普通の生物では不可能な速度で飛ぶ二匹の
鳥怪獣の姿があった。
464ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:55:16.85 ID:TU5Ou7Z9
 ヒドラとリドリアス、ガランを倒したこの二頭は、一度はアディール方向へ向けて飛び去ったが、東方号がアディール方面へ
向けて飛び立つと、しばらくして戻ってきた。そのころ、東方号は全速力で飛行しても、アディールが攻撃されるまでには
絶対に間に合わないことに総勢焦っていたのだけれど、そこで彼らはまたしても奇跡を見ることになった。
 
 窓外に現れた、二匹の怪獣の巨大な姿。その威容に、エレオノールは「きゃっ!」と、少女のように飛び上がったが、
二匹は襲ってくる様子はなかった。
 そのまま二匹は東方号と並走して飛び、くちばしで東方号の艦首付近をしきりに指し示しているようなしぐさを見せてくる。
「なにかを、我々に伝えようとしてるのか?」
「まさか、相手は怪獣よ」
 二匹の訴えるようなしぐさをいぶかしむエレオノール。しかしビダーシャルは、そんな彼女の姿勢をとがめるようにかぶりをふった。
「待て、お前たちの狭い知識で結論を急ぐな」
「な、なんですって! よ、よりにもよってこの私に向かって、この私をバカにする気!」
「落ち着け、蛮人の学者。お前たちが蛮人とあざけられる訳のひとつが、その大いなる意志への理解の低さだ。言葉が
話せなければ知恵なきものだとでも思っているのか? お前たちのうちでも、知恵ある獣・韻獣の知識くらいあろう。
まして相手は神話の時代の生き残りだぞ」
 ビダーシャルの言いようが筋が通っていたので、エレオノールは歯軋りしながらも納得せざるを得なかった。
「やれやれ、ルクシャナを相手に先輩ぶりたいならば、もう少し柔軟な考え方をできるように心がけることだな。うかうかしていると、
あの子のことだ、あっという間に抜かれるぞ」
「う、うるさいわね! その涼しげな顔がなんとも憎らしいわ……で! あの二匹はなんて言ってるのよ」
「さあな、私には怪獣の言葉はわからん」
「なによ! 人にさんざん偉そうに言っておいて」
「お前、それでも学者か? わからなければ想像力を働かせてみろ。蛮人の学者とは、書物の丸暗記しか能がない歩く紙切れか? 
少なくとも、私の姪はそうするぞ」
 ビダーシャルの、試しているような目がエレオノールを直視した。学者とはいかなるものなのか、それを暗記した知識ではなく
実力で示してみろという眼差しが、エレオノールのプライドを刺激する。
 考えろ……考えろとエレオノールは自分を叱咤する。あの二匹の怪獣の考えていることを考える。怪獣としてではなく、
自分たち人間と同じだけの知能を有しているものとして……あの二匹がこの船にこだわる訳は? くちばしの指し示す先には
なにがある? ぐずぐずしていたら、ルクシャナに先を越されるぞ。
「もしかして……伝声管を借りるわね! 誰か、錨鎖庫に行って!」
 自分の思い付き、いいやひらめきを信じてエレオノールは叫んだ。錨鎖庫、つまり船の錨の上げ下げをコントロールする
部屋へ行くように伝えられて、ただでさえ人手が足りない艦内は困惑した。しかし、エレオノール女史こと先生の言うことを
聞かなくては後が怖いので、比較的余裕がある中から数人が抽出されて錨鎖庫に向かった。
 だがいったいなにを? 少年数人が息を切らして艦首の錨鎖庫にたどり着いたとき、エレオノールの声が響いた。
「錨を降ろして、長さ五十メイルで急いで!」
 奇妙奇天烈な命令だった。高速で飛んでいるときに錨を出せば、振り回されて危険なことになるのは目に見えているのにだ。
だが、エレオノールの眼鏡の奥の切れ長の瞳が、負けず嫌いと自信を適量にカクテルにした光を放っている。彼女は正気だ。
 東方号の艦首両方から、太い鎖でつながった錨が轟音をあげて降りていく。
「私の考えが正しければ……これで!」
 伸びていく錨の先を凝視する。すると、風に流されてたなびいていた錨をヒドラとリドリアスがくわえ上げた。
 さらにそのまま二匹は錨を引っ張って速度を上げた。すると、鎖でつながっている東方号も引っ張られて、しだいに速度を
増していくではないか。
「うおぉっ! は、速い。これはすごいな」
「やっぱり! あの二匹が私たちの味方なら、私たちをアディールに連れて行ってくれる。非現実的だけど、間違ってなかった」
 自分の中の固定観念をこそ疑え。すなわち、怪獣は未知のもの、未知のものは危険という固定観念。しかし、怪獣が敵だと
辞書にでも書いてあるならともかく、自分の頭の中に殴り書いたメモの記述などあてになるものではない。
465ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/22(日) 23:55:41.78 ID:TU5Ou7Z9
 怪獣も味方になりうる。ドラゴンやグリフォンと家族同然になる人間だっているのだ。ならば、人間と共存できる怪獣がいても
不思議なわけはない。第一、自分たちは絶対に仲良くできるわけがないと言われてきたエルフと和睦しに来たのだ。怪獣と
和睦するなど、それに比べたらなにほどのことがあるか。
 どうだ、見たかと言わんばかりに胸を張るエレオノールを、コルベールは感心して、ビダーシャルは無感動ながらもうなづいて答えた。
「蛮人、いや人間も少しはやるな。どうだ? 声なき声に耳を傾けた感想は」
「別に、竜騎士なんかはみんなやってることじゃない。けど……学者が学ぶべきことはどこにだってある。それはわかったわ、ありがとう」
「礼を言われる筋ではない。しかし、これで間に合うだろうかな……?」
「今は祈るしかないわ。ヤプールが先か、私たちが先か……祈るしか、ないじゃない」
 遠い空のかなたには、まだなんの変化も現れない。それでも行くしか道はないのだ、苦悩も後悔も今は何の役にも立たない。
ただ、当たって砕けるのみである。コルベールとテュリュークも、息を呑んで前をのみ見つめる。
 ヒドラとリドリアスに引かれて、東方号は猛烈な勢いで風を切って進む。
 艦内では、銃士隊と水精霊騎士隊が忙しく駆け回り、エルフたちも客人に甘んじているわけにはいかないと、屈辱を押し殺して
彼らを手伝っていた。
 ギーシュがワルキューレで石炭をくべ、足りない石炭をギムリや手伝いのエルフたちが石炭庫から運んでくる。
 女子たちも、モンモランシーやラシーナが食事を作り運んでいく。
 ルクシャナはひとり、遺跡で得た情報の解析にあたっていた。
「船が加速したわ。どうやら、うまくいったみたいね。意見具申しようと思ったけど、エレオノール先輩に先を越されちゃったわ。
さて、得た情報は私の頭の中にしっかり叩き込んであるけど……この仮説が本当だとすれば……ね」
 自室にひとり閉じこもり、婚約者のアリィーもうるさいからと締め出して、ルクシャナは持ち込んだ資料の山に埋もれて考えた。
これまでのことから想像するに、大厄災の再現はもう目前にまで迫っているといえる。しかし、六千年のあいだに伝承が
歪められて伝えられたところを修正していくと……
「もしかしたら、私たちはとんでもなく愚かなことをしてたのかも、しれないわね」
 天井をあおいでつぶやいたルクシャナの表情には、落胆と希望へのまなざしが等価で交じり合っていた。
 
 そして、ゼロ戦とともに一人で戦いの支度をしていた才人の下へも、彼を思うひとりの娘がやってきていた。
「姉さん……どうしたんですか? 用事があるなら、呼んでくれたらおれのほうから出向いたのに」
「いや、わたしの個人的な用事さ。サイト、これから戦いが始まるな。その前に、お前と少し話がしたいんだけど、いいかな?」
 切なげに尋ねてきたミシェルに、才人は思わずどきりとした。言葉で答えはせず、コクピットから降りてゼロ戦の翼の前に
ミシェルといっしょに立った。機械油に汚れた才人の男くさい臭いと、戦塵にまみれながらもほのかな花のような香りの残る
ミシェルの匂いが、それぞれの鼻腔をくすぐる。
 広大な格納庫にふたりだけ……戦いに望む前の短い時間に、言葉と思いが交差する。
 
 北へ、北へ、ひたすら北へ。
 アディールは、まだ見えない。
 
 
 続く
466ウルトラ5番目の使い魔 85話 あとがき 代理:2012/04/22(日) 23:56:24.81 ID:TU5Ou7Z9
今週は以上です。
さて、二部の最終回となるアディール決戦編ですが、遅れたぶんお楽しみいただけたら幸いです。
長くお待たせして、楽しみにしてくださっていた方はありがとうございました。たまにレスで名前が出ると、やる気が刺激されました。
やはり、応援してくださる人がいると人間は出せる力が違うものですね。スポーツなどでも応援団が過酷な練習をこなすのが
わかるような気がします。
では、次回はヤプールのさらなる猛攻です。どんな怪獣・超獣が現れるのか、東方号は間に合うのか。お楽しみに。


それでは、代理投下お願いいたします。


ここまで、終了
467名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 01:59:58.18 ID:3MGn6shM
>>443
黄金バットはもう呼ばれてるだろ
468名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 02:23:37.33 ID:+NZOMzO8
投下と代理乙
469名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 02:36:26.91 ID:fa4ZVVFQ
ウルトラ代理乙
470名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 16:42:24.70 ID:lp2cRwkX
>>467
>いかなる戦いにも負けたことのない無敵の使い魔
これガッツ星人のことじゃないの?
471名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 16:58:48.84 ID:60E2FzgH
黄金バットさんが召喚されたらルイズを戦わせようとはしないだろうなー、
「戦いと言うのは醜いから汚れ仕事はわしがやる」がモットーの人だから

それよりはヤマトネ博士を呼んできて万能の正義の科学力を振ってほしい

472名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 18:53:54.99 ID://ELsRS6
無敵?
ムテキング?
473名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 19:52:32.05 ID:Y0CGPkhU
無敵将軍かもしれないし
絶対無敵ライジンオーかもしれない
474名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 20:09:02.85 ID:pcdjaL4b
合体攻撃でまさかの337拍子やらかしたザンボット3、ダイターン3、トライダーG7も無敵ってつきますな
475一尉:2012/04/23(月) 20:47:24.43 ID:PTYnzyEZ
ローマンを召喚にした。ルイズ
476名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 21:29:04.00 ID:FASbic9t
海のブルーになるんです
477ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/04/23(月) 22:30:12.12 ID:gXhTuUeL
こんばんは、5分後くらいから投下します。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 22:33:58.71 ID:QcxzE+ZY
羽をばむしり候えながら支援
479ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:35:24.63 ID:gXhTuUeL
 シャルロットは両手で"地下水"を大きく振りかぶる――。
唱えたルーンが魔法として形を為し、ナイフの刀身に絡みついた。それはそれは"長大な水の刃"。
メイジならば殆どが使えるであろう。火・水・風・土の四系統を属性として、その特徴を刃として纏う『ブレイド』の魔法。
されど大きさが規格外。普通ならば1メイル前後のもの、熟達者でも数メイルといったところ。
そしてシャルロットの"それ"は軽く10メイルにも及ぶ、さながら"水龍"が如くであった。

 重力に身を任せてシャルロットは大上段からゴーレムへと"ブレイド"を見舞う。
"水流"はその勢いを以て剣となる。鉄をも断ち切る"流水の刃"。
一直線にゴーレムを叩き斬らんとする"水龍"をフーケは反応出来ない。反応出来てもどうしようもない。
土ゴーレム相手に『土』では効果が薄い。『火』や単純な範囲魔法では周囲への被害が懸念。
『風』では鋭過ぎて修復されやすいだろう。よって『水』系統がおあつらえ向きだ。

 水龍が容赦なくゴーレムの頭部から真下方向へと、鞭剣のようにあっさりと切断していく。
ゴーレムの2/3程度まで両断したところで、水龍はただの水へと戻るとそのまま凍りついた。

 大きく削り裂けた断面を接合修復することも出来ずに、凍結によって動きにも制限が加わった。
シャルロットは『浮遊』の魔法をギリギリで唱えて受け身をとりながら地面を転がり、無事着地を終えたところで叫ぶ。
「今です!!キッドさん!!」
「ああ!!」
ガトリング銃のリロードは完了していた。あまりの光景に驚くよりもまずクランクを回す。
否――狼狽えるのも馬鹿らしいほどの、驚愕の連続だった。今更だ。

 上半身が二つに分かたれた上に凍ってしまっては、修復・再生も不可能。
脆くなったゴーレムに駄目押し二度目のガトリング掃射を耐えることは当然無理であった。
瞬く間に巨人は崩壊し、咄嗟に魔法で減速して地に立つフーケをブッチがすぐさま回り込む。
銃で後頭部を殴り、抵抗する暇を与えず気絶させ――全てが終わった。



「まだまだ系統魔法の使えないお姉ちゃんにとって、"地下水"は魔法を使える道具と同時に"切り札"なんですよ」
崩れ落ちて原型が完全になくなり、ちょっとした盛り土の丘と化したゴーレム。
そんな残骸のすぐ傍に佇むシャルロットを見つめる。
呆然とするアンリエッタをそのままに、ジョゼットは話し続けた。

 ――シャルロットだけが地下水を"最大限有効活用"出来るその理由。
それは普通のメイジとは違う特異体質に起因する。
通常メイジの魔力は、個人と力量にもよるがおおよそ平均的な限界というものがある。
ドットよりはライン、ラインよりはトライアングル、トライアングルよりはスクウェア。
魔法の種類によっては、そのメイジの実力、その精神力によって、同じ魔法でもより強力に放つことが可能となる。

 地下水の『特性』の一つとして、これと近い性質がある。
所有者の魔力を地下水にプラスすることで、より強力な魔法を放てること。
この"特性"をシャルロットの"特異性"と併せることによって凄まじい作用を及ぼす。

 通常は精神力を消耗すれば消耗した分だけ、寝るなどして休まないと回復しない。
逆に言えば、休みさえすればまた元通り全開で魔法を使えるようになる。
しかしシャルロットは違う。魔力の容量が普通のメイジと比べて文字通り桁が違うのだ。
延々と注がれる器。だだっ広いプールに手桶でひたすら水を溜めるが如く、終わりが見えない特殊な器。
それほどの精神力を――魔力をどこに溜めているのかはわからない。されどいくら寝ても全快することがないのである。

 そして年単位で貯めた魔力を地下水に足すと、一体どうなるのか。
歴戦のスクウェアメイジが使うよりも、強力な魔法を撃つことが可能となる。
貯めてある精神力を振り切ることで、通常の何倍、何十倍と威力を叩き出せるのだ。
魔力切れを起こす心配がまず無い上に、大容量の魔力は圧倒的な火力と継戦能力を誇る――。
480ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:35:46.71 ID:gXhTuUeL
「――とまぁ、大体そんな感じです。実際に目にしたからわかると思いますが・・・・・・」
「そう・・・・・・ですね、信を置いていた理由はわかりました。そして、救われました」
「んっと、その・・・・・・終わったようですし、とりあえずみんなのところまで下りましょうか」
「えぇ、そうしましょう」
「他に"諸々"詳しいことはシャルロットから聞いて下さい。それと・・・・・・なにとぞ温情をお願いします。
 シャルロットにとって・・・・・・例えるなら"幼馴染"のような存在でもあって、かけがえのないものだから――」

「"幼馴染"・・・・・・ですか」
視界に映るシャルロットの他に、もう一人いる少女へと自然とアンリエッタは目がいった。
かけがえのない彼女もまた、自分の為にあのゴーレムに向かっていったのだろう。
無事であることに心底喜ぶ。まさに半身が裂かれるような思いであった。

「大丈夫です、悪いようにはいたしませんわ」
アンリエッタの表情が和らぐ。
つまりはシャルロットにとってその地下水とやらの存在は、わたしにとってのルイズのようなもの。
切っても切れない仲を引き裂くなど・・・・・・。それも恩人を相手に無下に出来るわけもなかった。
むしろその力は王家に、国に、民にとって大きな力となってくれるかも知れない。

「ありがとうございます」
本当に大丈夫だろうと、ジョゼットは様子を見て確信する。
(う〜ん・・・・・・よかったよかった)
やむにやまれぬ状況だったとはいえ、自分が暴露した所為で姉が悲しむハメになったら悔やみきれない。
場合によってはあの手この手で交渉しようとも思ったが、王女さまは存外あっさり受け入れてくれた。

(それにしても・・・・・・久々に見たけどやっぱ凄いな〜)
シャルロットが放った猛威。馬鹿みたいな威力で放つのを見るのは、もう何年振りだろうか。
これまで魔法が使えず――練習はしてるものの――魔力だけがひたすらに有り余るシャルロット。
そして魔法が使えない者でも、魔法を使うことが出来るようになる地下水だからこそ為し得る最高の相性。
それこそが"最強の攻撃力"と、"無敵の防御力"を有するに至るお姉ちゃん。

 今回の一件で"ある程度"バレてしまったが――。
このことはお父さまもお母さまも、伯父さまも伯母さまもイザベラお姉ちゃんもみんな知らない。
わたし以外の家族のみんなは、"地下水の効果"によって"魔法が使える"ということしか知らない。
ずっと傍で一緒に育ってきたわたしだけが知っていた。わたし達と地下水達だけが気付いてたお姉ちゃんの秘密。

(うんうん、やっぱり――)

 シャルロットは――格好良くて、頭が良くて、とっても強い――わたしの最高のお姉ちゃんなのだ。



「オイオイ聞いてねーぞ!!何だ今の!?」
「魔法・・・・・・使えたんだ?」
ここまで来たら二人・・・・・・いや三人には話さねばならぬとシャルロットは事情を話す。
魔力のこと、地下水のこと、切り札として隠していたこと。
スッパリキッパリ語った――。


「――そう・・・・・・だったんだ」
事情を知り沈んだ表情を隠し切れないルイズ。
今のルイズの気持ちは慮れない。魔法を使えない者同士で意気投合をしたのに、まがりなりにも魔法が使えるなど。
「ごめんなさいルイズ・・・・・・。でも私は道具に頼らなければ貴方と何も変わらない」
言い出せなかった、ルイズと仲が良くなるほどに。
地下水そのものの危険性も含めて。いざという時の切り札として。誰にも知られずという気質の所為で。
 
481ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:36:05.44 ID:gXhTuUeL
「・・・・・・ん〜ん、違う。わたしじゃ何も出来なかった。力があったとしても・・・・・・怖くて・・・・・・情けない」
そう、シャルロットだからこそ物怖じせずに、冷静に対処出来た。
「それにシャルロットはわたしなんて・・・・・・てんで及ばないくらい努力してるの、知ってるもの」
自己嫌悪に陥るルイズに、シャルロットがどう言おうか悩んでいるとブッチが口を開く。

「ガキなんだから恐くて当たり前だろ、肝が据わってるコイツがおかしいんだよ」
数ある死闘を繰り返してきて、ガンダールヴを刻むブッチですら物怖じしたのだ。
今まで平々凡々と過ごしてきた少女一人が恐怖したとて、誰が責められようというもの。

 まさかのフォローにルイズのみならずシャルロットとキッドも驚く。
ルイズに代わってフーケに喧嘩を売ったことといい、少しだけ心境の変化が垣間見えた。
「んなことよりもアレだアレ」
ブッチが、フーケが盗もうとしていた物を指差す。

「ああ、そうそう何で"ガトリング銃"が・・・・・・勝手に使っちゃったけど」
ついつい使ってしまったものの、漂流者の二人にとって疑問は多い。
「緊急でしたし仕方ないかと・・・・・・。それにしてもなるほど、あれが話に聞いたガトリングでしたか」
ワイルドバンチがいた異世界の話の中で出てきた連発銃の話を思い出す。

「まぁお二人と同じで、きっと"漂流物"でしょう。物品が単独で流れてくることもままあると聞きます」
それが何らかの形で学院へと保管されるに至ったのだろう。
20メイル以上の高さから落下しても壊れなかったのは、『固定化』や『硬化』が掛けられていたからだろうと説明する。
「ははぁ〜」
「なるほどね」

 話だ一段落したところで、風竜が地上まで降下してきて、ジョゼットとアンリエッタが皆の前に立つ。
「姫さま!!ご無事で!?」
「えぇルイズ、あなたこそ大丈夫?」
「はい。・・・・・・三人が助けてくれましたので」

 シャルロットはジョゼットをチラリと見る。
(ごめん、シャルロット。ナイフのこととか話しちゃった)
ジョゼットは口パクとジェスチャーで、諸々話したことを伝える。
(ん・・・・・・しょうがない)
シャルロットは表情と頷きで返す。ジョゼットが話したと言うなら、話さざるを得ない状況だったということだ。

 ルイズの無事を確認し、アンリエッタはシャルロット達の方へと向く。
「ありがとう、シャルロット、キャシディ殿、キッド殿」
「はい」
「おう」
「ああ」
まずは純粋な感謝の言葉。三者三様の返事。
次いでアンリエッタは神妙な面持ちでシャルロットを見つめる。

「シャルロット、お話は聞きました」
「・・・・・・はい」
どうにも反応しづらい。騙していたわけではないが、黙っていた。
どうあっても後ろめたさがある。地下水の存在も放置しておくには危険だろう。

「・・・・・・地下水、危険なもののようですね」
「王家の命令であれば、すぐにでも封印に応じましょう。ですが・・・・・・破壊だけはしないで欲しいのです」
インテリジェンスナイフ――意思を持つ武器。
途方もない時間を生きてきた存在で、幼い頃から私を支えてきてくれた。
困ったり悩んだ時には相談役にもなってくれた。情がある。絆がある。
それを破壊するなど――殺すことなど・・・・・・とても耐えられない。
「いいえ」
アンリエッタはまるで肉親を失うかのような表情を浮かべるシャルロットの手を取る。
「シャルロット、あなたの想いはしかと受け取りました。それにわたくしに出来ることは感謝以外にありません」
482ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:36:35.37 ID:gXhTuUeL
 シャルロットと地下水がいなければ、ゴーレムは倒せなかったしフーケを捕えることも出来なかっただろう。
そうなれば誰かを失っていたかも知れない。そんなことは絶対に忌避すべき事態であった。
既に信頼は証明されている。感謝こそすれ、咎めることはない。魔道具に関しても彼女の管理下であれば大丈夫だ。
近く国家をあずかるものとして甘いかも知れない。
それでも自分が認めた友すら信用出来ない"女王"に一体何が出来るというか。

「これからもその力を、あなたと、あなたの周りと、そして出来うることならば・・・・・・国の為にも使って下さい」
シャルロットは感極まる。まさかそんな言葉を掛けられるとは思ってもみなかった。
目尻に涙が溜まる。握られた手から温もりを感じる。

「わたくしはシャルロットを信頼していますから」
アンリエッタは「彼女のようにね」と付け加えるように、ジョゼットへとチラリと目を向けてすぐに戻す。
シスコンであることに気恥ずかしさを覚えて、ジョゼットの顔がにわかに紅潮した。

 昨夜話していた時に幾度も見た――王女殿下の屈託の無い笑み。
この段に至って、お礼や謝罪はもう不要であった。

「はい、アンリエッタ様」



「あ〜・・・・・・報酬はまだかよ、焦らすなーお姫さんもよ」
"『土くれ』のフーケ"『破壊の杖』盗難未遂事件。この一件はアンリエッタの裁量で一部改竄される形となった。
幸い精細な目撃者もいなかったので、問題なく落着した。

 内部犯"ロングビル"こと本名を"マチルダ・オブ・サウスゴータ"。
元はアルビオン王国のサウスゴータ地方を治めていた貴族の娘。
お家が没落してからは盗賊に身をやつし、ただのマチルダから名を変えてフーケとして活動。

 フーケはロングビルとして学院に潜り込み、王女殿下と護衛部隊の情報をもとに盗難を決行した。
襲撃によって学院が混乱の最中、二人の従者が未然に強奪を防いだという事件概要。
漂流者で使い魔である従者二人が、盗まれそうになった漂流物――"破壊の杖"――を使用した。
またジョゼットの援護もあって撃退。ロングビルもとい土くれのフーケは投獄された。

 ロングビルをロクに調べることもなく、秘書として採用していたオスマンは軽度の処罰で済んだ。
また学院の警備体制や危機管理が一度見直されることになる。
そして今回の事件を解決した三人のメイジ及び二人と一匹の使い魔には、報酬が送られるとのことである。

 アンリエッタは風当たりが多少悪くなった。
結果的に捕えたとあっても、私事によって事件が起こったのが事実。
されど・・・・・・それでも何か決心することがあったのか。
以前よりも精力的に、強い意志で事に励むようになった。
――と、父や伯父伝いに噂に聞いたシャルロットは、ルイズにも伝えて一安心する。

「私とブッチさんとキッドさんは、立場や所属がややこしいですからね」
「まっ・・・・・・気長に待つかあ」
別段不都合は今のところない。忘れられては困るが、そうでなければ焦ることもなかった。
ブッチはふんぞりかえって部屋の天井を見る。ふと左手を上げて甲に刻まれたルーンを眺めた。
「微妙に不便だよな・・・・・・コレ」
『ガンダールヴ』。思わぬ授かりもの。
武器を目的として作られた物を持つことで、身体能力が著しく向上する。

「常日頃から発動しないのがな」
もう何度も実感しているその効果。しかしあくまで武器として作られたものでしか反応しない。
身につけておくだけじゃなく、しっかり握り持たないといけない。
483ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:37:01.22 ID:gXhTuUeL
「でも日常ずっと超人的だったらそれはそれで困ると思いますよ」
「あ〜・・・・・・まあそりゃそうだが」
今のところ手加減しようと思って出来るものではない。
慣れるかどうかもわからないし、ウッカリした時に惨事になりかねない。
女一人抱くのにすら必要以上に気を遣い張ってなくちゃいけないなんて面倒過ぎる。

「だけどもうちょっと融通利いてもいいと思うんだよな。仮に俺が今キッドと決闘しても負けるぜ?」
「・・・・・・何故だ?」
「早撃ちじゃ勝てねーんだよ、銃を握るまでは凡人だ。先手とられたらまず負ける。
 俺よりも先に素早く抜いてかつ正確に当てられんだろ?発動して避けきる前にやられる」

 ガンダールヴはあくまで武器を持つことで初めて発動する。
キッドが銃を抜いて弾を当てるまでに、握り、発動させ、回避行動の為の動きをするまでには撃たれてしまう。
「でも銃士同士の決闘ならそれこそ問題ないと思いますよ、まず銃の性能が違います」
そう――ハルケギニアでは所詮火打ち式だ。その上で練度も違う。
しかもガンダールヴで最速で確実に照準をつけられるのであれば、メイジ相手であっても遅れをとることはない。
「そうだけどよ、論点がズレた。要するに不意打ちにも弱いんだよ。発動前に終わっちまう。
 常に武器握ってるわけじゃねえし、いざって時に能力発揮出来ずに死んじまう。もったいねえ」

「なるほど」
キッドが相槌を打つ。神の左手『ガンダールヴ』。ひとたび武器を持たば超人化、されど持たざれば常人と。
確かにもったいない、もったいないが――。
「そりゃ贅沢だ」
「求めたらキリないのはわかってるがよ」
結果論で言えば召喚から契約までメリットしかなかった。
言語も通じるし、生活も保障され、便利なルーン付き。至れり尽くせりと言える。

「・・・・・・この力が前の世界にあればな」
あのクソッタレなボリビア騎兵隊すらものともしなかっただろう。
馬を走らせつつ通常の射程外から狙撃してもいい。弾幕張られる前に引っ掻き回して暴れるのもよし。
少人数相手なら銃弾を避けるのも難しいことではない。撃って奪ってを繰り返していくらでも逃げ切れる。

「『ミョズニトニルン』は・・・・・・あっちじゃ役に立たないな」
見えはしないが、なんとなくキッドは額を覗くように目を上に向ける。
こっちの世界から元の世界へと、道具を持ち込みでもしない限りどうしようもない。
尤もそれは根本的にルーンそのものにも言えることではある・・・・・・が。
484ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:37:18.79 ID:gXhTuUeL
 シャルロットは二人をよそに独りごちる。"決闘"――それ自体はメイジ同士でもなくはない。
素早い詠唱で華麗に決める者もいれば、まずは防御に専念してじっくり決める場合もある。
機動力や火力、系統の相性も大きく関わり、その展開は多種多様である。

(私は・・・・・・)
詠唱速度も静音性も、何より魔力にも自信はある。
けれどもし実際に決闘の段になった時、力を発揮出来るかは甚だ疑問であった。
ついこの前・・・・・・一度しかない実戦――否、あんなものを経験として数えていいのか。

 それこそ横合いから非生物の巨大な的を相手に、思い切り不意打ちしたに過ぎない。
自分自身が命のやり取りをしたわけではない。まともに相対することもなく一方的に薙ぎ払っただけだ。
いざ向かい合って相手の敵意の渦中で実力を出し切れるのか。相手に呑まれたりはしないだろうか。
決闘に限らず、今後あらゆる状況で戦っていく上でそれは大きな問題だ。

 人の命を奪う行為への躊躇い。状況によっても変わってくるだろう。
興奮状態で何の感慨もなく殺せるのか。運良く平静に対処し得るのか。
頭を回し過ぎてその隙を突かれて呆気なく死ぬのか。あらゆる重圧に何一つ出来ずに終わるのか。

 "死"そのものすら間近に体験したことはない。
幸いにも生まれてこのかた何不自由なく生きてきた。
魔法が使えなかった程度のことなどは、不自由の内には入らない。
五体満足に家族皆が平穏に暮らせてこれたのだから、それ以上望むべくもない。

 だからこそ頭の中の知識にしか過ぎない"死"が怖い。
実際に体験してこそ、本当の意味で蓄積されることは誰もが知っている。
自分の膨大な魔力を全て、回復の水魔法に注ぎ込んでもどうしようもない。
ひとたび失えば、決して取り返しのつかないこと。生き返らせることは誰にも不可能だ。
昔からやたらと考え込んでしまう性格だからこそ、いつも悩み続けていること。

 頭を空っぽにでも出来れば――開き直れるのならなんと楽なことだろうか。
(ジョゼットなら・・・・・・)
妹ならきっと悩みながらも適度に抜いて柔軟に折り合いをつけるに違いない。
キュルケなんかは割りきって考えるタイプだ。ルイズは・・・・・・よくわからない。

(そして・・・・・・)
――人は慣れる生き物だ。肉体鍛錬も最初は苦痛だった。
それでも次第に慣れてきて、今では日課としていつものことだと思う程度。
魔法を使えない劣等感も、正直に言えばかなり慣れていた部分があった。
地下水の存在のおかげも当然ながらあったが、それ以上に心が何も思わなくなっていった。
侮蔑でも同情でも、様々な視線で見られることをまるで気にしなくなった。

 それは精神が安定を求めるからなのか。本能として環境に適応しようとするからなのか。
何度も経験として蓄えられることによって順化していく。無意識の内に何も感じなくなっていく。
いずれは人を殺すことそのものにも何一つ感じなくなるのかと思うと、それもまた恐ろしかった。

(そう・・・・・・目の前の――)
キッドとブッチ。前の世界では金、物、命さえも奪ってきたワイルドバンチの二人のように。
(それに父様も・・・・・・)
父も職業柄、何人もの命を奪っている。伯父だって昔は多分――。
(地下水もそうだし・・・・・・)
地下水は元々凄腕の暗殺者だ。廻り巡ってガリアに落ち着き、"北花壇騎士"として年季あった人殺しだ。
"地下水"の名もその頃に付けられたもので、本名は本人も忘れている。
インテリジェンス・アイテムの意思はそれこそ人間とはちょっと違うものの――。
本人は過去に大勢もの人間を殺してきたと言っていた。それこそ善人悪人問わず。
485ゼロのドリフターズ-06:2012/04/23(月) 22:37:36.22 ID:gXhTuUeL
 いつかは通る道、ゆえにこそ――。
(最初はせめて死なず・・・・・・)
死んだら元も子もない。全力を尽くして死ぬのならまだしも、出し切れずに死ぬのは歯痒い。
なまじ強いからなおのことだ。十全に戦えるようになるまで死にたくない。
自分が死ぬことも怖いし、誰かが死ぬのも怖い。残された家族や友人を悲しませたくもない。

(叶うなら誰かを守る為に・・・・・・)
守る――自分の命でも、他者の命でも。
何かしらの大義名分があれば、理由付けがあればいくらかは精神的に楽だ。

(欲を言えば同情の余地すら一切感じないような相手・・・・・・)
戦争時など命令に従うだけの敵兵などではなく、いわゆる純粋な悪人。
死んで然るべき人間が相手であれば、罪悪を感じなくて済む。

 そしてなるべく意義を見出したい。可能な限り死を無駄にしたくない。
所詮は自己満足だけれど、そうやって我が道を征きたい。

(それでも・・・・・・慣れたくはない)
同時に思う。殺すようなことに慣れたくはない。
誰もがそうなのだと、諦めるのは簡単だ。経験を積み、慣れることで得られるメリットもあるだろう。
だけど否定する。他者の持つ権利を奪うこと。向き合わなくちゃいけないことから逃げてはいけない。
"諦めることに慣れてはいけない"から。

 『あきらめ』が人を殺す――諦めとは終わりであり、終わりとは"死"に通じる。
諦めることに慣れていくということは、いずれ死ぬこと・・・・・生きることを諦めてしまう。
ここぞという時に、踏ん張らなくちゃならない時に・・・・・・よぎってしまう。

 死ねばそこで終わりだ、何も残らない。生きている間にこうして考えてることも全て露と消える。
その前に何を為したのかも、その後にどうなるかも。そこからあがこうとしても、関知の埒外である。
だからこそ"いつだって死には抗ってなきゃならない"。決して終わらせない、何事も諦めてはいけない。
そこから新しく生まれることもあるかも知れない。その気概が可能性を切り拓くかもわからない。
――"『あきらめ』を拒絶した時、人間は人道を踏破する権利人となる"。

 もう今は覚えていない・・・・・・いつだったかどこかで感銘を受けたこと。
思考の飛躍であり、極論かも知れない。時には矛盾することもある。ままならない人の心。
だがいずれにせよ――。
(常に考え続けることが大事だから)
いつだって思考を止めてはいけない。いつもの結論。
たとえ意識とは無関係に慣れてしまっても、常に自覚することで見えてくるものもあるだろう。

 憂鬱な気分を振り払ったその時、ドタバタと階段を登ってくる音が聞こえてくる。
デジャヴュを感じる三人、一瞬嫌な予感が走った。
されど遠慮なしにドカッと扉を開けて入ってくるルイズの表情は、実に晴れやかなものであった。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・姫さまから手紙が届いたわよ!!」
486名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 22:38:38.92 ID:gXhTuUeL
以上で終わりです。支援どうも。
不要なフラグは容赦なく潰しつつザックリバッサリ消化した結果、次回はアルビオン編になります。

相当先まで書いてますが、物語がドドドーッと動き出すのは大分先になりそうなので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 22:45:59.19 ID:09yw9V/e
おつかれさん
488名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 22:58:14.26 ID:fa4ZVVFQ
489・・・:2012/04/23(月) 23:09:02.86 ID:eg1AnN+f
パワーパフガールズのキャラクターはどう思う?
490名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 23:20:53.73 ID:QKw6SjQQ
>>470
「我々は、いかなる戦いにも負けたことのない、無敵のガッツ星人だ」
とセブンに豪語して実際に勝っちゃったからな

相手の能力の入念なリサーチと、最小の労力で敵の士気を砕く狡猾な作戦
ストーリー0のようにガッツがクロムウェルに入れ知恵したらレコンが勝利しそう

ナックルが来たらサイトとルイズの関係者が次々抹殺されるだろうな、シエスタが馬車に引き殺されたりとか
ブラック指令はいうに及ばず
491名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/24(火) 15:19:23.20 ID:pAaALFFR
「我が無敵艦隊に敵うとでも思っているのかね?」→ウワータッタイッキノOFニー!!!

普通は死亡フラグなんだがな、無敵ってのは
492名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/24(火) 15:49:24.56 ID:O2yVZhsa
こんなスレあったのか
面白い
493名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/24(火) 17:36:19.65 ID:Kk2U2GX/
ザラブ星人の青野武さんはオスマン学園長の中の人、いまさらながら世代を超えたすごい人だったんだなあ
494一尉:2012/04/24(火) 20:52:06.90 ID:NX0LLwI7
メデル・ザントを召喚にするルイズ
495名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/24(火) 23:57:10.54 ID:N0/86kKn
ゼロ魔の漫画があることを最近知ったが微妙だった。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/24(火) 23:58:59.37 ID:EKz/d1ol
稀代の変態ライターが渾身の力を魂に込めて書き下ろしたテキストを一塊の漫画家ごときが視覚化できるわけないだろ
コミカライズもアニメ化も土台からして無理な話だったんだよ
497名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 00:41:25.00 ID:uNaXOztE
大人しくエロゲで出しとけばよかったのにな
498名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 00:44:13.99 ID:piK78u3r
>>496
スゲー納得した
499名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 05:55:22.72 ID:9nGDFD8l
>>496
言われてみれば「レモンちゃん恥ずかしいって言ってごらん?」
とかやってるのを他人がどうこうしようなんておこがましい話だよな
500名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 06:46:36.94 ID:RnLQUnRp
でもアニメでは日野と釘宮のおかげでそれなりにキチガイに見えた、もちろん良い意味で

漫画じゃ無理だな
501名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 16:57:46.81 ID:DbcFqm7C
圧迫祭りよ!とかある意味、レモンちゃんよりとんでもない事をやってのける荒木先生なら…
502名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 17:36:23.27 ID:+9WCMGMN
ああ……だからジョジョ魔クロスは時折原作を超える変態臭を発生させるのか
503名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 23:46:05.10 ID:7gbSqwII
ゼロ魔に限らないけど、コミカライズした作品って微妙な漫画家使ってるよな。
もっとうまい漫画家いるだろといつも思うし、エロ漫画家の方がうまいように感じる。
エロ漫画家がゼロ魔をコミカライズしたら売れる。
504名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 23:50:49.16 ID:bnB4+nwl
>>503
今ゼロ魔の漫画を書いてる人だって同人あがりでしょうに。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 23:52:29.58 ID:7KeGm4v4
原稿料をなるべく安く抑えるには(ry
506名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/25(水) 23:56:37.31 ID:L0wsZqha
トゥームレイダーからララ・クロフト……の家の執事を召喚
いくら撃たれてもビクともしない彼の定位置は厨房のあそこ
507名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/26(木) 01:43:20.31 ID:5dxamRi8
>>503

そう考えるとマドマギのは奇跡的だったんだな
508名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/26(木) 02:17:55.82 ID:9HNG9Ayo
超級Gガンは当たり前だけど神なコミカライズだと思う
イマイチだったドモン放浪編が10倍おもしろくなり、新宿編ではまさかの流派東方不敗完全再現ときたもんだ

あまり聞かないが、ゼロのちゅかいまよーちえんってどうなの?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/26(木) 10:08:48.14 ID:xCTMosLK
>>503
エロ漫画家に狼と香辛料のコミック版描かせたら
エロ漫画家が本気出しすぎて凄い物になってたな(いい意味で)
510名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/26(木) 13:39:56.84 ID:/UVuluY7
>>509
そういえば香辛料の原作は完結したんだったな。
511ゼロみたいな虚無みたいな代理:2012/04/26(木) 18:00:11.84 ID:3yTFyw4L
18:05からepisode5を代理投下します。
512ゼロみたいな虚無みたいな代理:2012/04/26(木) 18:05:23.79 ID:3yTFyw4L
「ゼロみたいな虚無みたいな episode5」

「ふや〜、凄い雪なのね!!」
 冬のある日、魔法学院の中庭は一面銀世界になっていた。
「放課後みんな誘って雪だるま作るのね〜♪」
 そう呟きつつ廊下を歩くシルフィードの視界に、タバサの後ろ姿が入った。
「あっ、お姉様なのね」
 声をかけようとしたシルフィードだったが、タバサの傍に立つ人影に気付いて動きが止まる。
 シルフィード達の同級生・ブリジッタが、タバサに両腕を支えられるような形で立っていたのだ。
「ブリジッタ……。何で2人で……。嘘……」
513ゼロみたいな虚無みたいな代理A:2012/04/26(木) 18:08:42.36 ID:3yTFyw4L
「な……、何て寒さなんだろう……。早く寮に帰ろう……ん?」
 震えながら雪の中を歩いていたあぽろは、前方に屈んでいる人影を発見した。
「シルフィードちゃん……」
 近付いてみると、シルフィードは固めた雪に木の葉と木の実で何やら動物のように見える小さな雪像を作っていた。
「ねーねー、何してるの?」
「うさぎ作ってるのね」
「わわっ、手真っ赤だよー。早く教室か寮に帰ろうっ」
「いいのねっ! いいのね……、ほっといてなのね」
 心配そうにそう言ったあぽろにシルフィードは強い口調で拒否したが、
「そう? じゃ私寒いし帰るね」
「お姉様がねっ!」
 本当に放置して帰ろうとしたあぽろの襟首をがっしりつかんで離さなかった。
「お姉様がシルフィに酷い事したのねっ! だから凄く傷付いてるのね〜!」
 自分の胸の中に飛び込んできたシルフィードの頭部を、あぽろは優しく撫でる。
「あんまり泣いたら、ほっぺた涙で凍っちゃうよー」
 そこでふと、あぽろはシルフィードの身に何が起こったかを妄想し始めた。
(それにしても酷い事って……。傷付く程のぬぷ――とか? ずぷ――とか?)
 タバサ×シルフィードの教育上不適切な関係があぽろの脳裏に浮かび、
「うにゃー、それは羨ましいようなそうでないような!! いくら女の子同士でも限界ってもんがあるのに、タバサちゃんはわかってない!」
 声を上げたあぽろが何やら誤解しているらしい事は理解できたものの、シルフィードはその意味が全くわからず首を傾げるだけだった。
「シルフィードちゃん! お股はもう大丈夫?」
「うん、お股……?」
「次はタバサちゃんが泣く番だよ!」
「ほんと!?」
「うんっ」
514ゼロみたいな虚無みたいな代理B:2012/04/26(木) 18:11:11.95 ID:3yTFyw4L
 しばらく後、ルイズ・キュルケ・タバサ・ブリジッタの4人も中庭に集合していた。
「ちょっと……、凄く吹雪いてるんだけど、雪!!」
「大変な用って何〜?」
 あまりの寒さに一同の頭部には早くも雪が積もり、ルイズは苛立たしげに、キュルケは震えつつあぽろ達に声をかけた。
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれたのね!!」
「みんなで雪合戦をしようかと……」
「今日こそグーで殴りたいわ……!!」
 怒りに燃えるルイズとは裏腹に、あぽろ・シルフィードは雪面に図を描いて作戦会議を行っていた。
「いい、シルフィードちゃん? 雪合戦仲良くやってるふりして、タバサちゃんに雪投げまくるの! 大泣きよ」
「うん」
「たまに雪玉に石を入れて投げればなお良しだよ!」
「……うん。アポロ、ありがとー♪」
 あぽろへ感謝の言葉をかけたシルフィードに、
「……シルフィード……」
 とタバサが声をかけてきた。
「お姉様……」
「……シルフィード……一緒に組もう……」
 しかしシルフィードはあぽろの手を握り、
「あっち行ってほしいのね!! シルフィはアポロと組むのね!! ブリジッタと組めばいいのねっ!!」
「シルフィード……」
 タバサの声にも構わず、そのままシルフィードはあぽろの手を取って行ってしまった。
「……ん……わかった……後でね……」
(嘘吐き! 1番大好きだよって言ってくれたのに。だからもう知らないのねっ)
 タバサが去った後、シルフィードはあぽろの胸に顔をうずめて泣きじゃくり始めた。
「タバサちゃんより先に、シルフィードちゃんが泣いちゃったねえ……」
「ごめんね、アポロ。シルフィ頑張るのね」
 あぽろ・シルフィードがそんな会話を交わしているうちに、キュルケ達は雪合戦を始めていた。
515ゼロみたいな虚無みたいな代理C:2012/04/26(木) 18:14:28.28 ID:3yTFyw4L
「んしょ、んしょ」
 雪で作った遮蔽物の後ろで、シルフィードは雪玉製作に勤しんでいた。
「アポロ、雪玉できたのねー♪」
 しかしあぽろはそんなシルフィードの言葉も届かない様子で、遮蔽物の影から前方の様子を伺っている。
「アポロ……」
「馬鹿者ーっ! 今は敵の攻撃が来ているのだぞ。頭を伏せるのであります!! 悲しいけど、これ戦争なのよね」
 笑みと共に言った名台詞はシルフィードには意味不明だったようで、
「アポロ、これ雪合戦なのね」
 とツッコまれたのだった。

 一方、タバサ・ブリジッタ組は……。
「……シルフィード……どうしたんだろう……」
 かすかに沈んだ表情を浮かべるタバサ。
「何か怒ってたねえ」
「……うん……今日シルフィードの下着洗い忘れた事……怒ってるのかな……」
「そんな事してあげてるの!?」
 タバサ・シルフィードの日常に、ブリジッタは思わず驚愕の声を上げた。
「……シルフィードは私の理想だから……何でもしてあげたい……笑ってくれたら嬉しい……泣いてたら笑わせてあげたい……」
「な……、何か妖しいよっ」
「……決めた……」
 思わず赤面したブリジッタをよそにタバサはおもむろに立ち上がり、
「……シルフィードに聞いてくる……」
「えっ」
 そう言い残し駆け出していってしまった。
「えっ、ええ、今!? 今なの!? 1人にしないでーっ!」
 取り残されたブリジッタもタバサを追って駆け出したが、
「あーっ!」
 たちまちのうちに雪玉の集中砲火を浴び、その体は雪の小山にうずもれてしまった。
「タバサのアホーっ!」
 後に残ったのはブリジッタの悲痛な叫び声だけだった。
516ゼロみたいな虚無みたいな代理D:2012/04/26(木) 18:17:34.51 ID:3yTFyw4L
 その頃あぽろ・シルフィード組はというと、
「できた♪ ねえねえ! 雪玉のお城できたのね〜」
 そう自慢げに言ったシルフィードの視線の先では、雪合戦に飽きてしまい寒さに耐えられなくなったあぽろが雪上に突っ伏していた。
「アポローっ」
 とシルフィードが駆け寄り抱き起した時、何者かの気配を感じ振り返った。
「あ……」
 するとそこには、雪玉を両手に持って仁王立ちするルイズの姿があった。
「追い詰めたわよ! ここまで近付いて玉投げたら痛いでしょうねえ……」
「ふえ……」
 ルイズの凄まじい気迫に震えるあぽろ・シルフィード。
「ふふふ……」
「お――」
 シルフィードがタバサを呼ぼうとしたその時、もの凄い速度で駆け寄ってきたタバサがシルフィードをかっさらうようにして連れて行ってしまった、
「――ねえさ……」
 突然の事に、あぽろ達はその後ろ姿に声をかける以外不可能だった。
「おーい」
「雪合戦はー?」
「愛感じちゃうね」
517ゼロみたいな虚無みたいな代理E:2012/04/26(木) 18:20:19.23 ID:3yTFyw4L
「本当なのね? 本当なのね?」
「……うん……」
 雪合戦会場から少々離れた木立の中、タバサ・シルフィードは向かい合って話していた。
「あの時、ブリジッタちゃんが転んだから起こしてあげただけなのね?」
「……理由無しでシルフィード以外の手は触らない……」
「……」
 シルフィードは無言でタバサの掌に頬をすり寄せ、
「うん、信じるのね。困った人を助けるお姉様は素敵なのね」
「シルフィード……」
 タバサがそう言葉をかけた時、
「あー、タバサちゃんシルフィードちゃんいたー!」
 2人の姿を発見したあぽろが声を上げつつ駆け寄ってきた。
「走ったら危ないわよっ」
 そのルイズの言葉通り、
「うみゃあっ!」
 と間抜けな声を上げ転倒してしまった。
「助けてあげて、お姉様!」
「……うん……」
 ところがタバサがすぐ傍まで来た時にあぽろが、
「いたあ……」
 と呻き声を上げつつ立ち上がろうとしたため、タバサは曲がったあぽろの膝につまずいてしまった。
「……うわっ……」
「わっ!」
 そのままタバサはあぽろの上に倒れ込み、
「……ひいっ……」
「んんっ……」
 転倒した拍子に濃厚なディープキスをしてしまった。
 あまりの展開にルイズは目を覆い、シルフィードは大声で叫ぶ。
「お姉様の馬鹿ーっ!!」
「……何で……」
518ゼロみたいな虚無みたいな代理:2012/04/26(木) 18:23:22.13 ID:3yTFyw4L
以上投下終了です。
wikiには作者さんが登録しておくとの事です。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/26(木) 21:13:14.88 ID:B8nKZTbx
代理と投下乙
520名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 17:12:16.93 ID:uwGYp5/M
極端に過疎ってるな、規制の影響か
521名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 17:22:28.14 ID:t0OS0rRb

言っている意味が理解できない。
過疎?
522名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 20:05:09.19 ID:73sBH4yQ
KSO?
523名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 20:12:40.62 ID:TOnaZfpC
カッツォ!
524名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 20:31:32.51 ID:LV5ibsNV
カツオー!
525名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 20:35:59.59 ID:x0nLF4UT
カリツォー
526名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 21:20:06.53 ID:xqqorBN/
ルイズ「あ、あんた誰よ!?」
めんせつかん「がくれきぃ?しゅみぃ?とくぎぃ?」
527デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:34:34.83 ID:xf8gUys7
皆様お久しぶりです。
揺れる天秤のスフィアを完全に解放したのでそろそろ執筆再開です。

それではこれよりデュープリズムゼロ第17話投下させて頂きます!!
528デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:38:56.38 ID:xf8gUys7
第十七話『空賊の正体は?』

宿を飛び出したミント達は桟橋を目指してラ・ロシェールの街を走る。
「見えたわ!あそこよ。」

世界樹と呼ばれる巨大木の麓に作られた階段を前にしてルイズが指さしたのはカンテラの明かりに照らされた壁面に掛けられた看板。その看板には確かに『アルビオン行き船着き場』と書かれていた。

その先に伸びる狭く古ぼけた階段を船着き場を目指してワルドを先頭にミントが最後尾を警戒しながら三人は駆け上がる。
と、先頭を進んでいたワルドが突然その足を止め、杖を抜いて臨戦態勢をとる。

「何者だ!?」
険しい表情を浮かべるワルドの目の前にはその行く手を阻む様に怪しげな黒いローブを纏った仮面のメイジが杖を構えて立っていた。

「ここから先には行かせん。」

抑制無くそう言って問答無用とばかりにワルドの問いには答えず男は杖を振りエアカッターの呪文を放ち、ワルドもまた閃光の二つ名に恥じぬ高速の詠唱で同じくエアカッターを放った。

『くっ…』

二つの風の刃は激しくぶつかり合い相殺すると一瞬の内に指向性を持たない暴風となってワルドと仮面のメイジのそれぞれのマントをたなびかせる。

そしてワルドが作り出したその僅かな隙を見逃さず、デルフリンガーを抜いたミントが一気に仮面のメイジに肉薄するも横薙ぎに振るわれたその鋭い一閃の切っ先が仮面のメイジを捉えるよりも僅かに早く仮面のメイジは風の様に宙を舞い、
ワルドとミントを飛び越え、余りに目まぐるしい戦いにすっかり気圧されていたルイズの眼前に降り立った。
仮面のメイジが咄嗟の反応に遅れたルイズにその手を伸ばそうとする。

だがそこまでだった…

「ウィンドブレイク!!」
猛々しくワルドの声が夜空に響く。

529名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 21:39:35.94 ID:xqqorBN/
じんじぶちょう「がくれきィ?しゅみィ?しえん?」
530デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:42:23.05 ID:xf8gUys7
ワルドの作った隙を見逃さず一瞬で切り込んだミント。その回避行動の隙を使って既にワルドは次の魔法の詠唱を完成させていたのだ。

質量を持つ突風の激鎚、エアハンマーの上位互換に当たるその呪文の直撃を受けてルイズに手を伸ばしていた仮面のメイジの身体が衝撃と共に勢いよく中空に投げ出される。

だが仮面のメイジもまた手練れ、その様な状況でまだ意識も杖も手放してはおらず自由落下の最中に身を翻すとその杖からは今まさに風属性最強の攻撃魔法ライトニングクラウドが放たれようとしていた…

「ったく…往生際が悪いのよ!!」

差し違えるつもりなのかとそれを見て思わず毒づくミント…そして桟橋に一筋の雷光が走り、空気を振るわせる轟音が響き渡った。


「ふぅ…まさかライトニングクラウドを使えるとは思わなっかたよ…」

杖を鞘に収め、雷光に眩んだ視力も回復したワルドは階段の縁から顔を覗かせ眼下の様子を確認する。そこにはもはや街の明かりと夜の闇以外は何も見当たらなかった。

「『ボルト』よ。あれがあんたの見たがってたあたしの魔法よワルド。手紙とか無事、ルイズ?あいつ明らかにあんたの事狙ってた感じだったわよ。」

ミントの言葉にルイズは慌てて懐を確認し、手紙の無事を確認し安堵の息を漏らす。
「え?あ、うん大丈夫よ。」

「やはり油断は出来ないな。ここからは僕が殿を引き受けよう、先に行きたまえ。」

「わかったわ。」

あの瞬間、仮面のメイジの詠唱が完成するよりも一瞬早く、剣閃の直後に魔法の発射態勢に移っていたミントの放ったボルトの魔法が仮面のメイジを閃光で切り裂いた…
仮面のメイジが消し炭になったのか純粋に地面に墜落したのかは定かでは無いが取り敢えずの危機はさった。

何度も繰り返される刺客の襲撃にこれからの旅路の一抹の不安を抱きながらもミントはルイズの持つ手紙などの安否を確認すると再び勢いよく階段を駆け上がっていった。


531名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 21:42:33.71 ID:JxkhwNX7
支援!
532デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:44:04.55 ID:xf8gUys7
ワルドの作った隙を見逃さず一瞬で切り込んだミント。その回避行動の隙を使って既にワルドは次の魔法の詠唱を完成させていたのだ。

質量を持つ突風の激鎚、エアハンマーの上位互換に当たるその呪文の直撃を受けてルイズに手を伸ばしていた仮面のメイジの身体が衝撃と共に勢いよく中空に投げ出される。

だが仮面のメイジもまた手練れ、その様な状況でまだ意識も杖も手放してはおらず自由落下の最中に身を翻すとその杖からは今まさに風属性最強の攻撃魔法ライトニングクラウドが放たれようとしていた…

「ったく…往生際が悪いのよ!!」

差し違えるつもりなのかとそれを見て思わず毒づくミント…そして桟橋に一筋の雷光が走り、空気を振るわせる轟音が響き渡った。


「ふぅ…まさかライトニングクラウドを使えるとは思わなっかたよ…」

杖を鞘に収め、雷光に眩んだ視力も回復したワルドは階段の縁から顔を覗かせ眼下の様子を確認する。そこにはもはや街の明かりと夜の闇以外は何も見当たらなかった。

「『ボルト』よ。あれがあんたの見たがってたあたしの魔法よワルド。手紙とか無事、ルイズ?あいつ明らかにあんたの事狙ってた感じだったわよ。」

ミントの言葉にルイズは慌てて懐を確認し、手紙の無事を確認し安堵の息を漏らす。
「え?あ、うん大丈夫よ。」

「やはり油断は出来ないな。ここからは僕が殿を引き受けよう、先に行きたまえ。」

「わかったわ。」

あの瞬間、仮面のメイジの詠唱が完成するよりも一瞬早く、剣閃の直後に魔法の発射態勢に移っていたミントの放ったボルトの魔法が仮面のメイジを閃光で切り裂いた…
仮面のメイジが消し炭になったのか純粋に地面に墜落したのかは定かでは無いが取り敢えずの危機はさった。

何度も繰り返される刺客の襲撃にこれからの旅路の一抹の不安を抱きながらもミントはルイズの持つ手紙などの安否を確認すると再び勢いよく階段を駆け上がっていった。


533デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:48:09.82 ID:xf8gUys7
しんがりとなったワルドはミントとルイズを見送りつつ内心驚きを隠すのに必死だった。
(まさか異国の魔法があれ程の威力とはな…)
ワルドの立てた計画ではさっきのどさくさ紛れでミントにはここで退場して貰う予定だったがワルドが想像していた以上にミントは強かった。

やはり今朝ミントの力を上手く計る事が出来なかったのは実は思う以上に痛かったのかも知れないなとワルドは改めて考えると船着き場へと再び走り出した。
(何、チャンスなどまだまだ幾らでもある…)


当然ながらその後は刺客の襲撃は特になく船着き場で貨物船舶マリーガラント号を徴用する為ワルドが船長を説得し、道中の風石の不足分をワルドが風の魔法で補うという条件でルイズ達一行はアルビオンを出発する事となった。



___マリーガラント 甲板


「ファ…本当に船が空を飛ぶなんてね……」

現在ラ・ロシェールを船が発ち一夜が過ぎた。普段よりも幾分か近い朝日を背に受けて一路船はアルビオンへの進路をとっている。
倉庫を改築した質の低い客室での仮眠から目覚めたミントは寝ぼけ眼を擦りながら甲板へとノタノタとした足取りで上がる。
雲を抜け空を飛ぶ船の手すりに静かに身体を預けて眠たげに欠伸をして、眼下に広がる光景を眺め、改めて一つ感嘆の吐息を漏らした。
甲板を吹き抜ける風が寝起きのミントの髪を優しく揺らし頬をくすぐる。

「ミントの世界には空を飛ぶ船は無かったの?」
余り眠れなかったのか幾分かミントよりも早く起床したルイズが残してきたキュルケ達が心配らしくラ・ロシェールの街があった方を心配そうに見下ろしながらミントに問う。
「…無い事は無いけど少なくとも一般的じゃ無いわね。」
そう言ってミントは以前ロッドの愛機『スカーレットタイフーンエクセレントガンマ』(略してスカタン号)でヴァレンの聖域へと向かった事を思い出しながらふと口元を緩めた。
あの時は今と違って空から見下ろす光景をゆっくり楽しむ暇など無かったのだ。

「あいつ等無事かな…?」

534デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:49:49.82 ID:xf8gUys7
「さぁね…そればっかりは信じるしか無いわ。」
ルイズの不安そうな言葉にミントはあっけらかんに答える。ルイズはその返答に些か不満がある様子だったが所詮物事など成るようにしか成らないのだ。
そうドライに割り切るとミントは改めて瞳を閉じて再び風を感じる。

思い返せばカローナの街を離れた時以来の船旅だ…あの時は東天王国の統治方針の話で結局マヤとの大げんか、その前は考え事の最中の不意打ちの衝撃で(犯人はロッド)船から海へと放り出されエライ目に遭った。

(……………………………)
よくよく考えれば考える程ミントは自分が船旅に余り恵まれていないのでは無いかと思考をネガティブな物にしていた。


そして…


「空賊だぁーーー!!!」

見張りをしていた船員のその声にミントはガックリと盛大に肩を落とした…




「参ったね…」
心底困ったという様子でワルドがぼやく。
結論から言えばミント達は突如マリーガラントを襲撃した空賊達に対し大した抵抗も出来ぬまま捕まり、武器と杖を取り上げられて身代金の為の人質として空賊船の牢屋の中に放り込まれていた。
無論空賊船が大砲を撃ち込んで来た時ミントは徹底抗戦の構えをとったが武装を一切搭載していない輸送船でそれがいかに無謀かをワルドとルイズに説かれ、
反撃の機をうかがう為渋々空賊達に従った。流石に自分達の乗る船を落とされてはミントもどうしようも無いのは分かる。

三人が牢に閉じ込められてしばらくの時間が経つと一人の空賊が三人の捕らえられた牢へとやって来た。その手には粗末なスープの入った器が携えられている。
「おーい、貴族様メシだぜヘヘヘ…。」
イヤらしく笑いながらスープの器を差し出した空賊に対して臆する事も無くミントはその器に手を伸ばす。見れば分かるが味付けの薄そうなそのスープには豆しか入っておらずミントは明らかに不満そうな表情を浮かべる。
535デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:51:34.76 ID:xf8gUys7
「ショッボイスープね…って何すんのよ!!」
「おっと…メシの前に質問に答えて貰うぜ。アルビオンは今戦争やってる訳だがあんた等何しにアルビオンにやって来てたんだい?」
スープの器を引っ込めて空賊が問い掛ける。

「……………旅行よ。」
ルイズが空賊を敵意の籠もった目で睨みながら短く告げる。
その言葉を空賊は見え透いた嘘だと内心苦笑いを浮かべた。

「そうか旅行とは奇特な話だな。俺達はてっきり貴族派へのお客様だと思ったぜ。」

空賊の言葉に三人の眉がピクリと動く。
「あんた達が貴族派の人間だったら直ぐにここから出してスカボロー港に連れて行ってやれたんだがな。俺達にとっては貴族派の方達は大事なお客様だからなヘヘヘ…。」

空賊はそう言って笑うとスープの器をようやく牢の中へと置いた。

そしてここで二人の少女が全く同じタイミングでそれぞれ全く異なる言葉を発した。

「あ、さっきはあぁ言っちゃったけど実はあたし達貴族派なのよ!!」
「誰が貴族派なものですか。私達はトリステインからの正式な王党派への大使よ!分かったのなら私達を大使として扱いなさい!この下郎!!」

『…………………………』

ルイズとミントが互いの顔を見合わせて固まるとその場の時間も停止する。


「何で馬鹿正直に本当の事言うのよ!!馬っ鹿じゃ無いのっ!!?」
「何で私達が恥知らずの貴族派だなんて名乗らないといけないのよ!!あんたにはプライドって物が無い訳!?」

二人の少女が同時に吠える。
その様子は東方の例えならばまさに龍と虎の闘い。ハブとマングースの闘い。

「あー…結局あんた達は王党派へのトリステインからの大使…って事でいいのかい?」

「あぁ、そういう事だよ。…全く…」
二人のやりとりに気圧されて遠慮がちに問い掛けてきた空賊に対し、ガックリと肩を落としながらワルドは最早隠しても無駄だと悟り半ばやけくそに答えた。
536デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:54:57.21 ID:xf8gUys7
___空賊船 船長室

そんなこんなで一悶着があった後、ルイズ達三人は空賊の頭に呼び出され空賊に引き連れられて船長の部屋へと案内されていた。
「お頭、連れてきましたぜ。」

空賊の声に応える様に部屋の奥にあるテーブルの椅子の座が音を立てクルリと回転し、ひげ面の如何にも空賊と言った逞しい風体の男がルイズ達を出迎える。その手にはメイジの証とも言うべき杖が収まっている。
そして船長室は豪華とは言えぬが一介の空賊の物とは思えぬ程上品に設えられていた。が、ルイズにとって船長室にだらしなく整列する空賊の部下達はどうにも粗野で野蛮な印象しか無い。
それらを束ねる部屋の主は特に嫌悪感を表しているルイズに対して椅子に座ったまま良く磨かれた自分の杖を突きつけニヤリと笑った。

「よぉ…お嬢さんがトリステインの大使様かい?」

「えぇ、そうよ。」

「一体何しに行くんだ?あいつ等は明日明後日にはこの世から消えちまうっていうのによ。」
「あんた達に言う事じゃないわ。あんた達は黙って私達を解放してアルビオンへ運べばいいの。」
「その様子じゃ大事なんだろ?そいつを手土産にしてやれば貴族派は喜ぶと思うがね?」

「そんな恥知らずな真似をする位なら死んだ方がマシよ!」

ルイズは恐怖を確固たる意思で押し殺し、小さな胸を張ったまま船長から一切視線を逸らさず堂々とした態度で淡々と船長の挑発的な問い掛けに答えていく。

(ルイズ…)
その勇ましい姿を黙って間近で見ているミントも正直ルイズという少女を今まで見くびっていたと素直に思う。無論世間知らずの馬鹿だとも思うが…

「やれやれ、全く威勢の良いお嬢さんだ…トリステインの貴族ってのはどうも頑固でいけねぇ。」
537デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 21:58:55.88 ID:xf8gUys7
平行線のやり取りに空賊の頭は疲れたのか呆れた様に溜息を漏らすと頭に被っていた帽子を外した…長い黒髪の癖毛が違和感を孕んで揺れる。

「だが!!貴族派の連中の様な恥知らずとは比べるまでも無い!!…そうは思わないかお前達?」
『サー、イエッサー!!』
一喝と共に突然頭の纏う雰囲気が変わる…それにあわせて部屋の壁に背を預けて成り行きをニヤニヤと見守っていた部下達が一瞬で佇まいを正し、良く訓練された兵士の様に…否、兵士そのものの掛け声で敬礼を頭へと向けた。
何が起きているのか理解が追いつかず、ミントとルイズが目を点にして呆気にとられていると頭は無造作に自分の髪の毛と口ひげを引っ張り、むしり取る。
ワルドだけはここに来て事態を理解した。
現れたのは凛々しい金髪の青年、唯の美形の金髪ならばギーシュと代わりはしないがその姿は真の気品と勇猛さを感じさせる物だった。


「大使殿、先程までの我々の無礼を謝罪する。私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」

粗野な空賊の頭だった男はそう言って未だ驚きによって硬直したままのルイズ達に爽やかにかつとっておきのいたずらに成功した少年の様に微笑んだ。
538デュープリズムゼロの人:2012/04/27(金) 22:03:08.96 ID:xf8gUys7
以上で第十七話終了です。
途中同じ文章書き込みしてしまうわコピーと切り取り間違えて文章が消滅してあばばばってなってしまいました。

久しぶりの投稿でしたがこれからはまた定期的に話進められそうです。では、またノシ
539名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 22:23:19.32 ID:xqqorBN/
じんじぶちょう「ご・う・か・く……乙」
540名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/27(金) 22:34:15.54 ID:Yji5ggn5
呆れるほど有効な乙だぜ・・・
541名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 00:56:14.97 ID:tnYFXVYe
ゼロの破壊魔
とやらがwikiに載ってるんだがこれスレに投下された形跡ある?
542名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 01:12:59.27 ID:6foRVHob
>今回、初めて書く者です。

>一応、とあるサイトで小説を書いている身ですが、こういった投稿小説的な物は初めてなので、何かと皆様に迷惑をかけるとは思います。

>ですが、何とぞ協力の程をお願いします。

どう見ても直接投稿です本当に(ry
543名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 01:29:09.69 ID:GWRI/t4L
直接はご法度なり! まずはこのスレを経由してから登録すべし!

説明はちゃんと読むなり!
544ウルトラ5番目の使い魔 85話 代理:2012/04/28(土) 01:50:36.49 ID:6foRVHob
あ、デュープリの人乙
ミントが調子よく貴族派に成りすまそうとしててワラタw
545名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 01:51:16.31 ID:6foRVHob
あれ、なぜかコテ戻ってたorz
546名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 03:50:00.94 ID:laEONTxQ
デュープリズムの人乙
いい仕事してますね
547名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 15:28:35.35 ID:9XYxY2r4
ルイズが黒光りするGを召喚、死ぬ気で倒したら、すでに増殖するGになっていました
548名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 16:14:30.24 ID:qVdA5cEZ
>>547
せっかくGを召喚するなら黄金のGを召喚して天然戦士Gに変身するなんてのもアリじゃね?
あ、増殖するGが周囲にいないと変身できないか

じゃあ変身後の天然戦士Gを召喚して(ry
549名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 16:20:12.83 ID:7XknOude
G

ウィルス
550名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 17:22:26.78 ID:rw6h8T4L
G

ガラン
551名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 18:53:29.45 ID:73ZzELa8
G…ドクトルG…鳴滝召喚とかw
552名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 18:57:20.03 ID:/1iuUU8I
G……修練闘士のカインさんか
553名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 19:06:38.59 ID:9XYxY2r4
代理投下依頼来てるぞ
554名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 19:32:32.28 ID:tdu5ubzG
G…ゲッターG?
555名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 19:42:23.35 ID:MOjVHbLj
G=ヒコロウ
556名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 20:28:45.15 ID:aOh1tFTZ
テスト
書き込めたらディケイド代理開始
557名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 20:31:09.90 ID:MCFT6BVO
小ネタのオルロックネタが地味にイイハナシカナー?で好き
558名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 20:31:34.77 ID:Bzxt5qyw
Gといえば未完の大作Gダンガイオー
559代理:2012/04/28(土) 20:32:41.54 ID:aOh1tFTZ
代理投下お願いします。

元ネタは仮面ライダーディケイド。キャラは門矢士こと仮面ライダーディケイド。
前後編2話予定です。

    ―――――――これまでの、仮面ライダーディケイドは



『あなたは全ての仮面ライダーを破壊する者です』

『受け取ってもらおう……僕の、悪と正義のマリアージュ』

『兄ちゃん……あばよ!』

『いい台詞だ、感動的だな。だが無意味だ』

『お母さんにお金を貰って私の所にいらっしゃい。改造してあげる』

『なんか、僕もライダーっぽくなってる!』

『残るライダーはお前だけだ。観念しろ、クウガ』

『命ある限り戦う、それが……仮面ライダーだろ』

『いっつもお前は寝てんだろ! ロケバスでよぉ!!』

『イカちゃん返せ、ライダー野郎!』

『我が名はアポロガイスト……大いなる大組織、大ショッカーだ!』

『俺の名は剣崎一真……またの名を仮面ライダーブレイド!』

『これがキバーラの真の姿よ』

『流石、てれびくんのお宝だね』

『プリキュアとなら私もいっしょに踊るかもしれない』

『耐えてその悲しみを自らの糧として、もっと強くならなくてはいけないんだ』

『かつて、仲間のことをナマカというテレビドラマがあった』

『私は信じる。ディケイドが戦い続けるのは、いつかライダーをも超えるため』

『士がかっこいいって理由だけじゃダメ?』

『それがライダーの超パワーの秘密なんですね。次回をお楽しみに〜』

560代理:2012/04/28(土) 20:34:33.37 ID:aOh1tFTZ
双月の輝く夜の森の中を一人の少女が駆けていた。
その少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエールは逃げていた。
突如として自らの前に現れた虚無の使い魔≠名乗る謎の敵の襲撃から。
そして、彼女は必死に抗っていた。
彼女を包む夜の闇よりもなお深い絶望――最愛の人との死という名の別れから。

「あなたの使い魔はどうしたの? それとも本当に噂通り、死んだのかしら?」
「死んでないわよ、馬鹿! すぐにここに来るわ!」

暗闇から聞こえてくる挑発の声に、思わず意地になって言い返してしまう。
謎の敵の言葉は、今のルイズにとってどうしようもない現実だったのだが、それでも認めるわけにはいかなかった。
返した言葉は、もはやただの彼女の願望でしかなかった。
だが、その根拠も何もない、ただの勢い任せの言葉が覚悟を決めた。
ルイズはその場に立ち止まり、静かに呟いた。

「わたしはメイジよ。口にした言葉を現実のものにする力を持っている。だから……だから、もし、あんたが本当に死んだんだとしたって、関係ない。認めないわ」

メイジが唱える魔法――系統魔法は万物の理を歪めるという。
まして自分は虚無≠セ。その意思で世界の理を捻じ曲げ、変えてみせることだって出来るはずだ。
その思いに賭けたルイズは杖を構え、召喚のための魔法サモン・サーヴァント≠フ呪文を唱えだした。

「五つの力を司るペンタゴン……わたしは心より求めるわ。我が導きに応えし、使い魔を召喚せよ!」

詠唱の完成と同時にルイズは杖を振るい、魔法を解放する。
サモン・サーヴァントにより、光る鏡の様な形状をした、使い魔を召喚するためのゲートが作られる。
普通なら、そこでゲートの形状は定まり、使い魔が現れた後に閉じられるまで変化はしない。
だが、目の前の光る鏡は眩く輝きながら次々と形を変え、ついには宙に溶ける様に辺り一面に広がっていった。
そのあまりの眩しさに、ルイズは思わず目を覆った。

――おかしい。前の時とは何かが違う。
でも、確かに魔法が成功した手応えはあった。
来る。間違いなくわたしの使い魔が。きっと、サイトが来てくれる。
拭いきれない違和感を抱えつつも、それ以上の期待と高揚感にルイズは身を委ねた。

そう。その瞬間、ルイズの望み通り……確かに、世界の理は捻じ曲げられていた。
それが運命だったのか、はたまた絆だったのか…………
世界は受け入れてはいけないものを……全てを破壊する存在≠招いてしまっていた。

ルイズの目に飛び込んできたのは、見慣れたルーンを左手に宿した男の姿だった。
見慣れたパーカーに、見慣れたジーンズ。
間違いなく、彼女の使い魔『ガンダールヴ』のそれと同様のものだった。
561代理:2012/04/28(土) 20:36:55.87 ID:aOh1tFTZ
「サイト!!」

込み上げる感情を抑えきれず、ルイズは涙混じりに怒鳴りつけていた。

「ど、どど、どこに行ってたのよっ!? あんたってばわたしの使い魔なんだからねっ! ちゃんと側にいてくれなきゃダメじゃないっ! か、勝手に、何処かに……!」
「はぁ? サイト? いきなり何なんだ、お前は?」

感極まり、泣きじゃくるルイズと、事態が把握できないのか困惑する男。
そんな彼の疑問に答えが出る時間すら与えず、魔獣フェンリルが二人の間に割って飛びかかってくる。
さらに、水の先住の力で操られた不死の戦士に亜人、ガーゴイルの軍勢が二人の目の前にまで迫っていた。

「おい! こいつら、敵か!」
「ミョズニトニルンとかって虚無の使い魔が現れたの! たぶん、レコン・キスタの残党よ!」

男は喋りながらも飛びかかってきたフェンリルの攻撃を避け、カウンターで蹴りを入れる。
続けざまに近くのオーク鬼とガーゴイルの剣士を殴りつけ、すかさずルイズの手を掴んで押し寄せる敵から距離を取った。
その様子を見ていたのだろう、暗がりから虚無の使い魔――『ミョズニトニルン』の声が響く。

「あらあら。本当に生きていたの、ガンダールヴ。でも、随分遅れての登場ねぇ。どこで油を売っていたの?」
「ガンダールヴ? なんだそれは。俺はそんな奴じゃねぇぞ」
「とぼけたって無駄よ。じゃなきゃ、担い手の危機に現れるお前は何者だい?」

ミョズニトニルンの嘲りの言葉に男は嘆息をついた。その言葉は、その男が何度となく繰り返してきたやり取りと同じだったからだ。
あらゆる世界にとっての異物であり、仮初の住人である彼は幾度となく、その問いかけを受けてきたのだ。
それまでと同じように、当たり前のように、その男――門矢士は答えた。

「ただの、通りすがりの仮面ライダーだ」

士は面倒くさげに一枚のカードを取り出し、いつの間にか腰に巻いていたバックルに差し込む。

「変身!」

【KAMEN RIDE――DECADE!!】

機械音と共にバックルから九つの紋章とシルエットが浮かびあがり、士へと集う。
それらによって、瞬く間に士の全身が鎧のようなものに覆われた姿へと変わった。
ルイズが、そしてミョズニトニルンが、その異様を見た時に同じ感情を抱いていた。
それは違和感であり、異質感であり、異物感といった感覚。
目の前の存在がこの世界にあらざるもの、あってはならない存在であることを本能的に感じ取っていた。
そして、その感覚に間違いはなかった。
この瞬間、この世界に対して『仮面ライダー』の侵食が始まっていた。


    ――――世界の破壊者ディケイド。幾つもの世界を巡り、その瞳は何を見る?

562代理:2012/04/28(土) 20:38:52.76 ID:aOh1tFTZ
SS版 仮面ライダーディケイド ゼロの使い魔編
前編 召喚の破壊者(ディケイド)


仮面ライダーディケイドは世界の破壊者≠フ異名を持つ『次元戦士』である。
そんなディケイドの最大の能力、それは『ライダーカード』と呼ばれるカードを使うことで他の世界の仮面ライダー達に変身し、その力を行使することが出来る点にある。
ディケイドのカードには他の仮面ライダーに変身する『カメンライド』やその別形態や特殊形態に変身する『フォームライド』に専用の武器や特殊な技を使う『アタックライド』、
さらに該当するライダーを独自の形態に変形させる『ファイナルフォームライド』にそのライダーの必殺技を使う『ファイナルアタックライド』等がある。
これらのカードを使うことで、ディケイドはあらゆる世界のいかなる戦いにも対応するのだ。

専用武器ライドブッカーを剣に変え銃に変え、ミョズニトニルンの配下を次々と倒していくディケイド。
その圧倒的な力の前にスキルニルが、亜人が、魔獣が、手も足も出ずに蹴散らされる。
そんな不測の事態にさしものミョズニトニルンも驚き、焦りの色を見せていた。

「やるじゃない。でも、こちらの手駒は無数にいる。いつまでその調子が持つかしら!」
「やれやれ。適当に蹴散らせば帰るかと思ったが、これじゃキリがないな」
「小娘の方を狙え! 数で押し潰すのよ!」
「なら、このカードだ」

【KAMEN RIDE――BLADE!!】

『カメンライド』の力でディケイドは仮面ライダーブレイドに変身する。
その姿はいわゆる『ディケイドブレイド』と呼ばれるものだ。

【ATTACK RIDE――MAGNET!!】

ディケイドがブレイドとなって使用したカードの力は『バッファローマグネット』という名の磁力を自在に操る力。
任意の対象を引き寄せ、引き離すことが可能なその効力で、闇に潜むミョズニトニルンだけを引きずり出そうというのだ。

「な、なに!? 体が吸いよせられる……!?」

森の奥から黒ローブに身を包んだ女――ミョズニトニルンが引っ張り出されるように現れた。
バッファローマグネットにより完全に動きを封じられたミョズニトニルンに対し、ブレイドへの変身を解いたディケイドが剣を片手にゆっくりと歩み寄る。
彼女の操るスキルニル達が主人を守ろうと一斉にディケイドに襲いかかるが足止めにならない。

「さてと、とりあえずふん縛るとして、どうしてやろうかな」
「うっ……」
「たしか、魔女裁判は火あぶりだったか?」
「ひっ……く、来るなぁ!」

そんな風に脅しをかけながら、敵を倒しつつ近づいてくるディケイドはまさに各世界で恐れられた悪魔≠サのものの様だった。
恐怖に駆られたミョズニトニルンはすっかり戦意を喪失し、自由の利かない身体を必死で動かして逃げようともがいている。
そんなミョズニトニルンを、配下の軍勢を全滅させたディケイドが容赦なく捕らえようとする。
逃げられないことを悟ったミョズニトニルンは完全に死を覚悟していた。
だがその時、不思議なことが起こった。
忽然とミョズニトニルンの姿が消えたのである。しかもそれは一瞬の内にだった。

「えっ!? に、逃げた!?」
「ちっ、もう一人いたか……!」

ルイズの目には突然ミョズニトニルンが姿を消したようにしか見えなかった。
そのため、何らかのマジックアイテムを使って逃げたのだろうと思った。
しかし、ディケイドの目は今まさに捕まえようとしていた彼女を助け出す影の姿を捉えていた。
不意をつかれたとはいえ、ディケイドでさえ反応しきれない程の高速で動く青の影を。

「二つの月に魔法使い……『ゼロの使い魔の世界』か。また面倒な世界に通りすがっちまったようだな」
563代理:2012/04/28(土) 20:41:40.69 ID:aOh1tFTZ
戦いが終わり、ライドブッカーを収納して手を軽く払うディケイド。
ルイズはそんな自分の使い魔の戦いぶりに虚無を詠唱することも忘れて、ただ呆然と見ていたのだが、戦いが終わったことを理解すると彼に駆け寄りながら疑問の声をかけた。

「すごい……でもサイト、あんたいつの間にそんな力を……?」
「だから俺はサイトじゃ……って、おい。また誰か来たぞ」

ディケイドの言葉通り、すぐに森の奥から人影が現れた。
二人の前に現れたのはかつてのルイズの使い魔、平賀才人と銃士隊隊長アニエス、そして魔法学院の同級生タバサだった。
先の戦争で死んだと思われた才人だったが、どっこい生きており、ルイズの危機にアニエスとタバサを伴って急ぎ駆けつけてきたのだ。

「えっ……!? サ、サイト!?」
「な、なんだよ、これ……!?」

そんな才人達が到着した際に広がっていた光景は、亜人やオーク鬼達の躯や、鎧をつけた騎士の残骸がそこかしこに転がる激しい戦いの痕跡。
そして探していたルイズと、今まさに彼女に近づかんとする謎の戦士の姿だった。
それをみるや才人は剣を抜いて飛びかかっていた。

「てめえ! ルイズから離れろ!!」

大きく跳躍してのその才人の一撃は避けられたが、戦士をルイズから引き離すことは出来た。
ガーゴイルか全身甲冑の騎士か、どちらにせよルイズに手出しはさせない。
そんな思いに駆られ、怒りに震える才人は剣を止めない。

「おい、いきなり仕掛けてくるとはいい度胸じゃねえか!」
「ふざけんな! てめえが何者なのか知らねえが、ルイズを襲ってたことだけは確かだ!」
「何が確かだ、だ!」
「サイト、待って! 敵じゃないわ!」
「ルイズ!?」

今まさに戦いを繰り広げんとする二人に、ルイズが慌てて間に割って入った。
二人の才人が現れたことにルイズも混乱していたのだが、とにかくこの争いを止めることを優先させた。
そして才人も、そのルイズの態度で目の前の相手が敵ではないことを理解し、剣を収めた。
その様子を見て、ディケイドも変身を解除する。

「えっ…!?」

ルイズは変身を解除した士が才人とまったくの別人であることに驚いた。
最初は才人と同じだったはずの服装も、何故だか今はまるで違うものになっていた。
そして、士の手に描かれたルーンを見て、才人も驚いた。

「まさか……あんた、ルイズの新しい使い魔……?」
564代理:2012/04/28(土) 20:43:35.33 ID:aOh1tFTZ
ミョズニトニルンとの戦いから一夜明けた朝。
浮遊大陸アルビオンはサウスゴータの森にあるウエストウッド村、その村のある家にルイズ達はいた。
つい三週間前まで、アルビオンを支配していた貴族派レコン・キスタとルイズ達の祖国トリステイン率いる連合国は戦争を行っていた。
その戦争で才人は七万の軍勢に単身挑み、生死不明となっていたのだが、傷つきながらも辿りついたこの村で介抱され、滞在していたのだ。

「あんた、わたしを放っておいて今まで何してたのよ」
「いやほんと瀕死の重傷だったんだよ」
「どうだか。あんたピンピンしてるじゃない」
「本当だって!」

さっそく、ルイズの才人への追及が始まっていた。
自分は一時は自殺を考えるまで追い込まれていたというのに、目の前の才人は怪我の一つも負っていない。
負っていないのに戻っても来ないし、連絡もよこさない。それがルイズには許せなかった。
実際のところ、才人は本当に生死をさまよう大怪我を負っていたのだが、頭に血が上っていたルイズはそれを認めなかった。
さらにルイズは矛先をアニエスやタバサへと向けた。

「だいたい、なんで銃騎士隊のアニエスやタバサがいるのよ!」
「陛下に命じられてな。死体なり遺品なりがないか探しに来たまでだ。ピンピンしていて、こちらも拍子抜けだ」
「なりゆき」

そんな風にルイズの口撃がアニエスやタバサに向いているのを機に、才人も反撃に転じた。

「人のことばっか言ってくれるけどよ、だいたいお前こそ何だよ。ちょっと俺がいなくなったからって、すぐに別の使い魔呼びやがって」
「ふーんだ! あんたみたいな言うこと全然聞かない、使えない使い魔なんか捨てて、新しい使い魔呼んじゃったわよ。あんたなんかより、よっぽど強い使い魔をね!」

別の男がいつの間にか自分の後釜に納まっていたことに、才人の心中は穏やかではなかった。
ルーンが消えた時点である程度、覚悟していたことなのだが、実際に自分以外が使い魔に選ばれたことのショックは大きかった。
自分がルイズにとってもう必要ではなくなったこと、そして、自分と彼女の絆が失われたことを才人はヒシヒシと感じていた。

「道理で俺のルーンが消えたわけだよ。お前なあ、消せるなら消せるって最初に言えよな!」
「消せるわけないでしょ! 普通はルーンは消えないのよ! ていうか、なに勝手に消してんのよ!」

ルイズも負けじと言い返す。彼女も才人同様にまた複雑な心境だった。
ルイズにとっても才人からルーンが消え、別の使い魔が現れる等とは思ってもみなかったことなのだ。
確かに二度目の召喚では同じ使い魔は現れないといわれているが、再召喚自体が前例の無いこともあって、生きていれば才人が現れるとしか考えていなかったのだ。
才人が生きていてくれた、それだけで嬉しい。
だけど……
565名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 20:45:20.19 ID:eLc3ZC/z
バグったーっ!
支援。

後、Gと言うと殺意と毒三下と巨乳とドラム缶の四人組。
566代理:2012/04/28(土) 20:46:22.95 ID:aOh1tFTZ
「……で、その新しい使い魔にそろそろ説明の一つぐらいしてくれていいんじゃないか?」

いよいよ気まずい雰囲気になりそうになった中、横槍が入る。士だ。
途中までルイズ達の話を聞いていたのだが、二人の痴話喧嘩に待ちくたびれたのだ。

「ちょっと待ってなさい。今、前の使い魔との関係を清算してるんだから」
「いいっすよ。勘違いして攻撃しちゃった借りもあるし、俺から説明します」
「はぁ? 何であんたが説明すんのよ。そういうのはご主人様であるわたしの役なんだけど!」
「うるせえ。俺と同じ故郷から来てんだよこの人は。服装見れば分かるだろフツー」

それから才人による、現状についての一通りの説明があった。
ここが地球と異なる魔法世界であること、ルイズによって自分達が召喚されたこと、人間が召喚されるのは普通ではありえないこと。
ルイズが普通じゃない伝説の魔法使いであること、過去に地球から召喚された人物がいること、しかし戻る方法があるかどうかさえ分かってないこと……
ちなみに、才人が半ば強引に押し切る形で説明を行ったおかげでルイズはずっと不満顔である。

「……なるほどな。だいたいわかった」
「驚かないんですね。俺も人の事は言えないけど、それでも最初は信じられなかったのに」
「まあな。これまでも色んな世界を旅してきているから、いつものことだ」

才人の話を聞き終えても士に全く驚いたり動揺する様子はなく、むしろ横で話を聞いてるティファニアやタバサ達の方が驚いてるぐらいだった。
そんな士の余裕ぶりに、異世界と外国とをごっちゃにしてるんじゃないかこの人、と才人は内心で呆れていた。

「ま、俺のやるべきことはその内分かるとして……で、お前はこれからどうするんだ? 召喚されてから今までの間、使い魔やりながら帰る方法を探してたんだろ?」
「えっ? そ、それは……」
「あんたは自分の居場所に帰りなさい」

士の質問に重ねるようにルイズは毅然とした態度で言った。先程までとは違う、真剣な眼差しと口調である。

「今まで使い魔として勤めたご褒美として、私がラ・ヴァリエール家の総力で帰る方法を探してあげる。東方に行くっていうなら、それもどうにかしてあげる。姫様にもお願いして、出来る限りの手は打つわ。だから、あんたは帰りなさい」
「ちょっと待てよ。なに勝手に話を進めてるんだよ!」
「戦争は終わったわ。あんたはもう使い魔じゃ無くなった。わたしはもう新しい使い魔も見つかった。帰るべき世界があるあんたがこれ以上、わたしにつきあう義務も義理もないでしょ?」
「なんだよそれ……用が済んだから、お払い箱ってことかよ!」

才人の怒声にもルイズは返事をしない。こうなったら絶対にルイズは意志を曲げない。止めようがない。
心の中を悲しみ、そして怒りが駆け巡り、才人はついに部屋を飛び出そうとした。

「分かったよ! いいよ、もう!」
「サイト!」
「桃色頭は桃色の使い魔と仲良くやってろ。お似合いだぜ」
「おい、そいつは聞き捨てならないな……!」

その捨て台詞に今度は士が声を荒げた。よほど才人の物言いが許せなかったのか、その口調には露骨に不機嫌さが含まれている。
そんな士の様子に頭に上った血が一気に冷めていき、自分の迂闊さを才人は呪った。
しまった。そんなつもりじゃなかったのに、カッとなって、ついこっちにまで喧嘩を売ってしまってた。
士はその場に立ち上がり、怒気を込めた口調で才人に言った。

「いいか。ディケイドはピンクじゃなくてマゼンダだ! ……よく覚えておけ」

――そのまま才人は部屋を出た。
567代理:2012/04/28(土) 20:47:43.19 ID:aOh1tFTZ
部屋を飛び出した才人は家の前の庭に寝そべって、ぼんやりと空を眺めていた。
すると横に誰かが座ってきた。

「才人、飲み物持ってきたけど……飲む?」

瀕死の才人を助け、この家を提供してくれているハーフエルフの少女、ティファニアである。
実は彼女もルイズと同じ虚無≠フ担い手なのだが、その事実はティファニア本人含めて誰も気付いていない。
彼女はルイズ達に飲み物を用意したあと、こうして才人のところまで持ってきてくれたのだ。

「……何が『あんたは帰れ』だよ。今更勝手なこと言いやがって。帰れる保証も無いってのに」
「才人は元の世界に帰りたくないの?」
「そういうわけじゃないよ。ただ、急な話だったから」

元々、ルイズに言われるまでもなく才人はずっと地球に帰るつもりなのだ。
ルイズの態度は頭にきてはいるが、帰る方法を探してくれるのなら、これ以上の話はない。
ないのだが……

「そう……わたしは才人に元の場所に帰って欲しいわ。わたしは帰れないけど、せめて才人が帰れたら、自分のことのように嬉しいもの」
「そっか。ありがとう、テファ」
「ううん。それに、あのツカサって人も、帰る方法が分かったら安心すると思う」

ティファニアから士のことに触れられ、才人もハッとした。

「そういえば、あの人、あんな感じで全然戸惑う様子も見せてないけど、そりゃ当然不安だったりするんだろうな」
「うん。いきなり知らない土地に来たら、怖いと思う」

士がルイズの使い魔であることに捉われて色眼鏡で見ていたが、同郷の人間としてもっと違う接し方があったのではないか。
自分は士と同じ経験をしているというのに、そんなことまったく考えていなかった。
才人は自分の都合ばかり考えていたことを恥じた。

「俺、士さんともっとちゃんと話してみるよ。俺が帰るとかの話はその後だったんだ」
「その必要はない。ディケイドはこの世界にあってはならない存在だ」

話を遮るように、不意にかけられた声に才人とテファは慌てて振り向く。
いつの間に現れたのか、才人達のすぐ背後にトレンチコートに帽子を被った男が立っていた。
明らかにハルケギニアのものではないその服装は、才人のいた地球の服装と同じものだった。
そう、それはあの士とも同じ。
ティファニアをかばうようにして、才人は男と対峙する。

「あ、あんた一体、なにもんだ……!?」
「警戒することはない。私は破滅に向かう世界に対し、警鐘を鳴らす預言者だ。平賀才人くん、君に警告に来た。
 今、君の代わりにガンダールヴとなっている男……奴の名はディケイド。世界を歪め、破壊する忌むべき存在だ。
 このまま奴をのさばらせておけば、この世界も手遅れになってしまう。一刻も早く、ディケイドをこの世界から排除するのだ」

預言者を名乗ったその男は、それだけを一方的に告げると踵を返す。

「待ってくれ! 手遅れって一体、どうなるんだ!?」
「滅びの現象が起き、別の世界と融合し、最後には消滅してしまう……奴はそうやって多くの世界を破壊してきた」

灰色のオーロラが揺らめき、次の瞬間にはその男の姿は影も形もなく消えていた。
才人とティファニアは、それをただ呆然と見送ることしか出来なかった。
568代理:2012/04/28(土) 20:48:31.11 ID:aOh1tFTZ
「やれやれ、お前も素直じゃないな」
「なによ」

才人達が外に出ていってからも、ティファニアの家の居間では残された士とルイズの新たな主従が話をしていた。
といっても、途中から士がルイズを一方的にからかっていたのだが。

「あいつのこと、好きなんだろ?」
「は、はぁ!? どこがどうしてそんな結論になるわけよ!?」
「泣きながら抱きついて、『わたしだけのものよ』って言うぐらいにはな」
「ふ、ふふ、ふざけたこといってんじゃないわよ! このバカ! バカツカサ! バカもやし!」

士の茶化したような言い草にいちいちムキになってルイズは反論する。
それを面白がってか、士はさらにからかい続ける。そんなことを繰り返していた。
そんな時、ティファニアを伴って才人が家に戻ってきた。ルイズと士は部屋に入ってきた才人らに視線を向ける。
険しい顔をして才人は口を開いた。

「ルイズから離れろ。話がある」
「どうした? 目上の人に話す態度じゃないぞ」
「いいから離れろ! ルイズ、お前もだ!」
「やれやれ、男の嫉妬は見苦しいぞ」

肩をすくめてルイズから距離を取る士。すかさずルイズとの間に才人は立ち、話を続ける。

「士さん、あんた本当にルイズに召喚されたのか? 自分からこの世界に来たんじゃないのか?」
「……なに?」
「ちょ、サイト! あんた、なに言って……」
「お前は黙ってろ」

才人の剣幕にルイズは思わず黙りこんでしまう。それには構わず、才人は言葉を続けた。

「ディケイドは破壊者。色んな世界を巡って壊してる……そういう話を俺は聞いたんだ」
「……たしかに俺は世界の破壊者だ。それは間違いないな」
「じゃあ、やっぱり!」
「さらにいうなら、お前が最初に言った通り、俺がルイズに召喚されたかも怪しいな」

士が巡っている旅というものは彼の性格同様に大雑把なもので、彼が行き先を決めているわけでもないし、行き先が特に決まっているわけでもない。
かつては巡る世界や目的が決まっていたのだが、その時でさえ細かい行き先の順序などは決まっていなかった。
その世界でやるべきことを済ませたとはいえ、いきなり次の世界に飛ばされる……なんてこともザラである。
つまり、士がルイズに召喚されたのか、彼の次の旅の行き先が偶然この世界だったのか、それは士本人にも定かではないのである。

「お前が聞いた話が全部真実だとして……それで、お前はどうするつもりなんだ?」
「あんたがこの世界を破壊するなら、そのためにルイズの使い魔の座に収まったんなら、俺が止める。そのためなら、あんたを倒す」
「……面白い。やれるもんなら、やってみろ」
「表に出ろよ、決闘だ」

売り言葉に買い言葉。元々、喧嘩っ早い者同士なこともあってか、とうとう二人はぶつかり合わんとしていた。

「ちょっと! あんた達、待ちなさいよ!!」

ルイズの制止も振り切り、二人は決闘のために家を飛び出した。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 20:52:58.64 ID:0vW7Fp5D
>>552
更新は望めないのかな……まだ、待ってるんだ
570代理:2012/04/28(土) 21:05:14.03 ID:aOh1tFTZ
ウエストウッド村から少し離れた森の中。
先日まで自分の墓があった、大きな樫の木の近くのひらけた場所を才人は決闘の場所に選んだ。
対峙する才人と士、そしてそれをみつめるのはルイズとアニエスとタバサの三人。
ちなみにティファニアは、彼女を争いごとに巻き込みたくないという才人の意志で家に残っていた。
彼女はルイズ以上に二人の衝突を止めたがっていたのだが、アニエスとタバサがいざという時には制止に入るということで渋々残ることを承知したのだ。
立会人役を申し出たアニエスから二人に木剣が渡される。それを才人は手にしたが、士は不要と突き返した。

「木剣持てよ。素手の相手とやるつもりなんかねえ」
「ガンダールヴの力は武器を持つと発動するんだろ? ま、素手ぐらいがお前相手にはちょうどいいハンデだ」
「いちいち上から目線で余裕ぶった態度取りやがって。ふざけんな!」

才人の叫びが決闘の口火を切った。
士の態度が癇に障った才人は一気に距離を詰め、木剣を居合抜きの要領で士めがけて振り抜いた。
余裕ぶったその面に一撃でも浴びせたら慌てて武器を取るだろう、と才人は考えていた。
だが、そんな才人の意図に反して、その鋭い一撃を士は悠々と躱していた。
驚きながらも続けざまに才人は攻撃を繰り出した。しかし、次々と士は躱していく。

「くそっ、なんでだ! なんで当たらねえ!」

ガンダールヴの力が失われているとはいえ、才人はこれまで数々の修羅場をくぐり抜けてきていた。
愛用の日本刀一本で様々な魔法を使うメイジ達と渡り合ってきたその腕は今や相当のものである。
それなのに。
そのはずの才人の剣が、士にはことごとく受け流されていた。

「あの使い魔、技量云々以前にもはや人間離れしているな。今のサイトは剣に関しては達人レベルのはず」
「魔力は感じられないけど……」

アニエスとタバサはそんな士の動きにガンダールヴだった頃の才人を思い浮かべていた。
そして才人は焦っていた。
士はあのディケイドに変身する力も、ガンダールヴの力も使っていない。しかも、素手だ。
完全に不利な状態のはずなのに、それでも士は才人の上をいっているのだ。
世界を破壊する悪魔……そのフレーズが頭をよぎり、背筋を冷たいものが走る。

一方、士はその態度と裏腹に内心では感心していた。才人の実力が彼の想像を遥かに上回っていたからだ。
ガンダールヴの力により強化された身体能力に頼っているだけでは身につけられないだろう剣技、観察力、判断力……
それらがこの短い立ち回りの間に十分、肌で感じられた。
実際、士が才人の攻撃を避け続けることが出来ているのは、彼が守りに徹しているからでもあり、見た目ほど余裕ではないのだ。

そんな二人の剣戟を観戦しているアニエス達だったが、ルイズはこの場を離れようとしていた。

「ミス・ヴァリエールは見るに堪えかねたか。まったく、サイトも報われんな。誰のために戦ってるというのやら」
「……追いかける。あなたは二人を見てて」
「わかった。やれやれ、お守りというのも大変だな」

ルイズの後を追うタバサの姿に才人の世話をしたここ数日の自分を重ね、アニエスは溜息をついた。

ルイズは才人達がいる森の広間から離れ、ティファニアの家の庭まで戻っていた。
アニエスは見るに堪えかねたと捉えていたが、実際はルイズは二人の決闘について、あまり心配はしていなかった。
才人はこれまでも決闘という名の喧嘩をかなりの数、こなしてきており、ルイズにとっても珍しい出来事ではない。
それに、ルイズは才人が聞いたという、士が破壊者だとか侵入者だとかという話を信じていなかった。
誰に吹き込まれたのか知らないが、召喚した当人としてはゲートも確認できたし、召喚の手応えも感じた。
何よりガンダールヴのルーンが動かぬ証拠だ。
確かに色々おかしな点はあるが、召喚を否定する根拠には思えなかった。

「サイトのこともだけど、これからどうしよう……」
571代理:2012/04/28(土) 21:06:19.64 ID:aOh1tFTZ
この半日で色々なことがありすぎた。情報量に頭がついていかなかったが、ようやくじっくり考える時間が持てる。
ただでさえ最近は情緒不安定になっていたので、少し落ち着いて冷静になってこれからのことを考えよう。
もう一人の虚無の使い魔についてや士とのこと等、悩みのタネはいくらでもあるのだから。
そんな風に考えてると森の方からタバサがやってきた。
どうやら彼女もあちらの決闘に飽きて戻ってきたのだろうか、ルイズの側の樹の幹に腰掛ける。
タバサのことは気にせず、ルイズは再び思考に没頭しようとしたが……

「サイトはガンダールヴじゃない。ツカサは捕まえられそうにない」

不意にタバサが口を開いた。
内容は聞き逃したが、普段無口な彼女が自分から話しかけてくるのは非常に珍しい。
そんなこともあってルイズはタバサに聞き返した。

「あんた、今なにか言った?」
「サイトを召喚した頃からずっとあなたを助けてきたけど、それもどうやらここまで……」

ルイズの質問に構わず、タバサは続けてそれだけ告げると静かに杖を向けた。
背後に仕掛けていたのだろう、魔法のロープがたちまちルイズを縛りつける。

「タバサ、あんたいったい何のつもり……!?」

ルイズは信じられないものをみるような目で、タバサを見た。
共通の友人であるキュルケならまだしも、彼女はこういうことを冗談でやる人間ではない。
驚きと戸惑いに満ちた表情をするルイズに対してタバサは、

「違うわ。タバサは人形、偽りの名前」

といい、眼鏡を外す。
それだけでルイズは一瞬、目の前の友人が別人に変わったかのような錯覚を覚えた。

「わたしの本当の名前はシャルロット。シャルロット・エレーヌ・ド・ガリア。ガリア王国の王女にして北花壇騎士団の長……そして、あなたと同じ虚無≠フ担い手よ」

そこにはいつもの無表情はなく、彼女が二つ名としていた雪風≠フような薄い冷笑があった。

「なるほどな。この決闘もどきは互いの力量を把握するためのものか」

繰り広げられる二人の戦いを見続けていたアニエスは士の意図を察した。
自分の力を見せるためか才人の力を見極めるためか、どちらにせよ肩を並べて戦う仲になるかもしれない間柄の二人には必要なことだろう。
そのために才人の敵意を煽る辺り、士の性格というのもなんとなく分かる。

才人も途中で士の思惑を察していたらしく、既に彼への敵意は失せていた。
体力はとっくに尽きているのだろう、肩で息をつきながら才人は士へと問いかける。

「聞かせてくれよ。あんた、本当にこの世界を破壊するつもりなのか?」
「さあな。この世界にはルイズに召喚されて来ただけだ。長居するつもりもない。それに……」
「それに?」
「いや、何でもない。不満たらたらのお前のガス抜きをしてやったんだ。感謝するんだな」
「それ、どういう意味だよ」
「好きなんだろ、あいつの事が?」

士の言葉に「好きじゃないよ、あんな奴」と才人は否定の言葉をすぐさま浮かべた。
だが、照れ隠しにしても士相手にそれを口に出す気にはならなかった。
その時、会話を遮るように森の向こうから爆発音がした。それがウエストウッド村の方角からと分かると、三人は顔を見合わせた。
572代理:2012/04/28(土) 21:07:11.41 ID:aOh1tFTZ
「今の爆発音、まさかルイズか!?」
「やれやれ、どこまでも迷惑なご主人様だな」
「いや、ひょっとすると先日現れたという敵が襲ってきたのかもしれんな」
「まさか!?」
「あのタバサとかいう少女がミス・ヴァリエールの側についている。メイジが二人もいるから、襲撃にも対応できるはずだが……」
「なんだと? しまった! おい、急ぐぞ!」

相手がミョズニトニルンの場合、あらゆる魔道具を操る能力でどんな搦め手を使われるかメイジでない自分達には判断できない。
ならば一固まりになるより分散した方がいいだろうというアニエスの判断で、三人はそれぞれ森の別方向から爆発のあった場所へ向かうことにした。

タバサは強いし、ルイズも詠唱の時間さえ稼げれば無敵の虚無≠セ。ミョズニトニルン相手でも遅れは取らないはず。
焦る気持ちを必死に抑え、才人は急ぎウエストウッド村へと向かった。
そして、士は才人達とは別の危惧を抱いていた。

才人達と別れてルイズの元へ向かっていた士だったが、彼が単独になるのを待ち構えていたかのようにオーロラのカーテンが現れ、彼を包み込んだ。
不測の事態だったが、士はこのカーテンが異なる世界間を繋ぐ次元の壁であることを知っており、慌てることなく周囲を警戒した。
オーロラを抜けると、やはり周りの風景はそれまでいた場所と全く違うものになっていた。
どこかへ誘い出された――その理由を察した士は身の危険を感じ、反射的に身を避わす。
紙一重でそれまで士がいた場所が爆発を起こした。

「くそっ、派手な出迎えだな!」

ぼやきながら士は攻撃のあった方向を見上げる。
そこには今まさにオーロラの次元の壁を通って、黄金の龍を象った飛行船のようなものが現れていた。
飛行船に乗っているのは才人の前に現れ、預言者を名乗った『帽子とコート姿の男』だった。
その姿を認めると、士は叫んだ。

「鳴滝ぃ! またお前か!」
「ディケイド、この世界でお前の旅も終わりだ。この『空飛ぶ火の車』で貴様の息の根を止めてやる!」

『空飛ぶ火の車』――それは『スーパー1の世界』に存在した古代中国の戦闘兵器である。
その力は一国をも容易に焼き払うとさえいわれており、エネルギー制御装置でそれを封じない限り、破壊することは至難な程だ。
『空飛ぶ火の車』の攻撃は激しく、士は逃げるだけで精一杯だった。

「ふふはははは、どうだディケイド! 心ならずも一時、大ショッカーに参画したことで、私はこうして貴様を倒しうる多くの力を手に入れたのだ!」
「テキトーなこと言いやがって!」

変身ベルト・ディケイドライバーと同時にケータッチと呼ばれる携帯端末を手にする士。
そうはさせじと、黄金龍の口から猛烈な炎が降り注いだ。

「変身!」

【FINAL KAMEN RIDE――DECADE!】

変身と同時にその攻撃は直撃し、激しい炎と爆煙が巻き起こる。

「やった! やったぞ、ディケイドも今の攻撃を受けては生きてはいまい。ふはははは……っ、なにっ!?」

立ち込める炎と煙の中から九つの紋章が浮かび、凄まじいまでの輝きが炎と煙を掻き消す。
そして、その眩いまでの光の中から現れるのは、変身を完了したディケイド。
その姿は通常のディケイドの姿ではない。
ファイナルカメン端末・ケータッチの力で一気に二段変身を遂げて現れた最強戦士。
歩く完全ライダー図鑑=\―その名は仮面ライダーディケイド・最強コンプリートフォーム。
九人の平成仮面ライダーの最強フォームを従えた、全仮面ライダーの頂点ともいえるディケイドの真の姿である。
573代理:2012/04/28(土) 21:08:22.54 ID:aOh1tFTZ
「ぬぅっ…!」
「そっちが龍なら、こっちも龍だ」

【ATTACK RIDE――ADVENT!!】

『空飛ぶ火の車』に対抗すべく、ディケイドは仮面ライダー龍騎サバイブの能力を解放した。
ディケイドの召喚に応じて、次元を破り、愛車・マシンディケイダーが現れる。
さらに、マシンディケイダーは先の能力解放により、巨大な空飛ぶ赤き龍――烈火龍ドラグランザーへと姿を変える。
最強コンプリートフォームとなったディケイドは全平成ライダーの最強フォームの力を『カメンライド』することなく、自在に行使することが出来るのだ。

「はっ!!」

すかさずディケイドはドラグランザーの背に乗る。
ディケイドを乗せたドラグランザーはその口から猛烈な火球を放ちながら『空飛ぶ火の車』に向かって舞い上がる。
負けじと鳴滝の乗る『空飛ぶ火の車』も火炎や光線、ミサイル弾をもって迎え撃つ。
互いの攻撃が避され、相殺される激闘の中、ドラグランザーが『空飛ぶ火の車』の上空に位置する時が来た。

【FINAL ATTACK RIDE――RYU RYU RYU RYUKI!!】

それを好機と見て、ディケイドはついに必殺技『ドラゴンファイヤーストーム』を発動させる。
バイク形態へと変形し、それまで以上に火球を無数に吐き出しながらそのまま急降下するドラグランザー。
それを見るや、鳴滝も『空飛ぶ火の車』をドラグランザーへと向けて突撃させる。
そして、ついに赤と金の双龍が衝突する。

「おのれ、ディケイドぉぉぉー!!!」

衝突の直前にドラグランザーから飛び降りたディケイドを残し、両者は大爆発を起こす。
破壊力450tを誇るドラゴンファイヤーストームの前には、流石の『空飛ぶ火の車』も耐えきれなかった。
怒声を残してオーロラのカーテンで逃げる鳴滝を見届けると、ディケイドは一仕事終えたといわんばかりに両手を軽くはらった。

鳴滝によって誘い込まれた次元から舞い戻った士は急いで才人達を追いかけた。
だが、駆けつけた士を待っていたのは燃えるウエストウッド村の光景だった。

「ちっ、遅かったか……」

数件あった家は全て燃えているが、ティファニアや彼女が連れていた子供達は避難していたらしく、必死に消化している。
周囲に敵の気配は既に無い。あるいは場所を変えて戦いが続いている可能性もあったが、士は村内に才人達の姿がないか探した。
すると程無くしてティファニアの家の近くで血を流し、倒れ伏す才人とアニエスの姿が見つかった。

「おい、しっかりしろ!」
「士さん……無事だったんだ……!」
「どうした、何があった!?」
「ル、ルイズが……タバサにさらわれた……!」



次回予告

ついに恐れていた事態が起こってしまった……
ディケイドはやはり悪魔だった。まさか、SSの世界まで破壊されてしまうとは……
おのれ、ディケイド! このままお前の好きにはさせんぞ!
この世界こそ、お前の旅の終着駅へと繋がるのだ……!!

次回『Kissへと繋がるJourney』!

みみみみ、みってね〜〜!


574代理:2012/04/28(土) 21:08:56.71 ID:aOh1tFTZ
【A.R.WORLD】
「ゼロの使い魔の世界」(才人の世界、ゼロ魔の世界)
士が訪れた、シンケンジャーの世界とも異なる『ライダーのいない世界』
ここでは平賀才人がルイズの使い魔として、魔法使い=メイジ達と戦っている。
この世界での士の役割は、虚無の使い魔ガンダールヴ。


●登場人物
平賀才人
この世界における仮面ライダーの代わりといえる存在。
虚無の使い魔ガンダールヴとしてフーケ、ワルドといったレコン・キスタのメイジ達を倒してきた。
なお、原典と同名な理由はリ・イマジネーション(再構築)な存在ではないから。

シャルル・ド・ガリア
ガリア王国を支配する狂王にして、かつて壊滅したレコン・キスタの影の黒幕。
あらゆる方面において天才的な才能を持つが、兄ジョゼフを殺したことから狂気に走った。
本来はメイジの天敵とされる、エルフのビダーシャルを使い魔としている。

シャルロット・エレーヌ・ド・ガリア
ガリア王シャルルの娘。ルイズと同じ虚無の担い手でもあり、北花壇騎士団の団長でもある。
虚無の使い魔ミョズニトニルンを操り、ルイズの命を狙った。
なお、彼女は原典における雪風のタバサ≠ナはなく、その双子の姉妹ジョゼット。


●ディケイドが手に入れた、使用したカード
FINAL FORM RIDE:SAITO DERFLINGER(サイトデルフリンガー)
才人を巨大吸魔剣「サイトデルフリンガー」に変形させる。

FINAL ATTACK RIDE:DECADE IVALDI(ディケイドイーヴァルディ)
サイトデルフリンガーをディケイドが投擲する技。


●ディケイドが手に入れて、使用しなかったカード
ATTACK RIDE:GANDALFR(ガンダールヴ)
あらゆる武器を使いこなす『ガンダールヴ』の能力を付加させる。

ATTACK RIDE:LIFDRASIR(リーヴスラシル)
神の心臓『リーヴスラシル』の能力を付加させる。

ATTACK RIDE:EXPLOSION(エクスプロージョン)
虚無魔法「爆発」を発動させる。他に「幻影」や「瞬間移動」に「世界扉」等も使用可能。

以上で投下終了です。

さるったけど代理終了。
575デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:20:34.76 ID:vv9f9L60
代理さん乙〜

続けて問題なければ第十八話投稿しようかと思います。

皆様よろしいか?
576デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:24:14.24 ID:vv9f9L60
第十八話『亡国の宴』

ルイズ達一行にその正体を明かした空賊へと部隊を偽装し、貴族派への補給部隊を襲撃していたウェールズ。
極限られた人間しか知るものは無い秘密の航路を使用し、アルビオン最後の軍艦イーグル号はマリーガラントと共にルイズ達の最終目的地であるニューカッスル城へと到達する事が出来た。
その優れた航海術と秘密の軍港を褒め称えたワルドに対しウェールズは「最早我等はまさしく空賊なのだよ。」と自嘲めいた冗談を溢しながら…
現在そのウェールズに案内されルイズ達はニューカッスル城のウェールズの自室へと案内されていた。

「…宝物なんだ。」

ウェールズはそう言って愛おしそうにアンリエッタの肖像が描かれた小箱から件の手紙を取り出してルイズへと手渡した。
ルイズの手に収まった手紙は何度も読み返されたのだろうか、隅の方は随分とすり切れており手紙についた折り目の癖がそれを雄弁に語っていた。
ルイズはアンリエッタからの密書を読んでいたウェールズの表情と回収した手紙から二人の間にあるであろう想いを察していた。

「恐れながら殿下…王党派に勝ち目は?」
「無いよ。こちらは300、向こうは50000だ。もはや我々は勝つ為に戦うのでは無い…名誉ある死の為に、誇りと勇気を示す為に戦うのだ。」
聞くまでも無いルイズの問いにウェールズは何の躊躇いも無くキッパリと答える。

「殿下も戦死なさるおつもりなのですか?!」
「当然だ。私は王族の務めとして真っ先に死ぬつもりだ。」

ミントは気難しげな表情でずっと二人のやり取りを黙って見守っている。ウェールズの語る王族の誇りや正義、それが全く分からないと言う程ミントも外道では無いがそんな物はくそ真面目な妹のマヤの分野だ…

「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます。」
「ふむ…聞こう。」

「殿下、トリステインへと亡命なさいませ!!アンリエッタ姫殿下もきっとそれを望まれております!」

「ルイズ。」
577デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:28:49.16 ID:vv9f9L60
熱を上げてウェールズに語るルイズをワルドが一言制止の意味を込めて呼びかける。
しかしルイズは構う事も無く訴えを続けた。

「お二人が恋仲で在らせられたのならば姫様は絶対にあなたを助けようとなさるはずですっ!!私が姫様より預かった手紙にもそう書かれていたのではありませんか!?」

「それは無理な話だミス・ヴァリエール。私は既に心を決めている。
それに一国の王女が個人的な感情でその様な文を手紙に書くと思うかね?私の亡命を受け入れると言う事は貴族派、つまりはレコンキスタのトリステインへの進行を助長するだけだ。
君達はそれを妨げる為にここに来た。それでは本末転倒では無いか。」

そうキッパリと語るウェールズの表情は僅かに曇っていた…
「あ…………ぅ…」
しかしだからこそルイズはそこに果てしない強固な意志と苦悩を見いだしてしまいそれ以上は言葉を上手く紡げなくなってしまった。
分かってしまったのだ…もはや説得などではどうしようも無いと言う事が…

「さて、そろそろパーティーの時間だ。君達は我がアルビオン王家にとって最後の客、是非とも今夜のパーティーに出席して頂きたい。」
沈んだ空気を払拭する様にウェールズが明るく言うとワルドとルイズはウェールズに一礼をして部屋を出て行った。



「…………さて、ミント王女殿下お待たせしたね。」

部屋に残されたのはミントとウェールズの二人。
「悪いわね王子様。時間無いってのに。」
手紙の話の前にミントはウェールズに身分を明かし、事前にやり取りを行っていたのだ。

「構わないさ。さて、早速だが我が王家に伝わる始祖の秘宝及び秘伝だけど秘宝は二つある。
一つはこの『風のルビー』。君達が預けられた『水のルビー』と同様の物だ。これは明日君達がこの城から脱出する際に他の宝物と一緒に差し上げよう。奴らにくれてやるよりも君達に貰ってもらった方が遙かに良いからね。
次に『始祖のオルゴール』なのだが残念ながら以前我が国で起きた騒動によって管理を行っていたサウスゴーダ領から紛失しているんだ。これについては諦めてくれ。まぁ元々壊れているのか音が鳴らないって事で有名だった代物だよ。」

578名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 21:28:55.21 ID:4Xa7arBv
ミントとルイズ、二人でデュアルバーロウ 支援
579デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:32:00.91 ID:vv9f9L60
親切丁寧なウェールズの説明にミントはしきりに頷く。
「それと君の国がどうかは知らないが口頭のみで伝えられる様な秘伝らしい秘伝という物は残念ながらアルビオン王家には存在しないよ。」
「そう。それじゃあ最後に…始祖関係で『遺産』『エイオン』『ヴァレン』この言葉に聞き覚えはあったりする?」

ミントの問いにウェールズは瞳を閉じて頭を捻ると真剣に自分の記憶を探す。
だが、それらに該当する知識は生憎ウェールズは持ち合わせていなかった。

「申し訳ないが特には思い当たらないな。」
「そう…残念だわ。」
言いながらミントは真摯に対応してくれたウェールズに満足そうに微笑む。正直遺産の情報などそう簡単には手に入らない事など分かっているのだから。

「わざわざありがとう。それじゃあまた後で。」
「あぁ、パーティーを楽しんでくれたまえ。」






___ニューカッスル城  セレモニーホール


『全軍前へっ!!全軍前へっ!!アルビオン万歳!!!』


玉座に座る国王ジェームズ一世の演説を終えてアルビオンの最後のパーティーに参列している兵士達は今最高の盛り上がりを見せていた。
その様子をミントは並べられた晩餐を無遠慮に腹に収めながら見ていた。誰も彼もが明日命を捨てる…その光景は勇ましくも儚げでミントの食欲を僅かに削がさせる程悲しい物だった。。

「どうだろう、楽しんでくれているかい?」

そんなミントに不意に声がかけられる。
声の主はウェールズで差し出されたのはグラスに注がれた赤ワイン。
「楽しくは無いわ。料理もはっきり言って不味いし。」

580名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 21:35:40.80 ID:A8iXZXae
支援
581デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:36:20.59 ID:vv9f9L60
ミントの物言いに流石にウェールズも苦笑いを溢すしか無い。アルビオンの料理の不味さはハルケギニアでも有名なのだから。
「ハハ…だが、このワインはどうだろうか?これはレコンキスタの奴らに渡すには惜しいヴィンテージ物でね。自信を持ってお勧めするよ。」
「ん…頂くわ。」

普段積極的にアルコールを飲む事は無いミントも今日は素直にグラスを受け取りウェールズの持つグラスと乾杯を交わすとそっと口を付ける。
芳醇な香りに深い味わい、確かにそうはお目にかかれないであろう良いワインだ…

「あんた…明日死ぬのね…」

「あぁ…先程も言ったが真っ先にね。不躾な頼みだがアンには最後まで勇敢だったと伝えて欲しい。」
そう言ってウェールズはワインを一息に飲み干す。

「男ってのは何でそんなに恰好付けたがるのかあたしには分からないわ…ほんとバカみたい、って言うか間違いなくバカよ…」
ミントもウェールズに倣いグラスの中身を空にする。ミントがこのパーティーを楽しく感じていないのは偏にこの目の前のバカのせいなのだ。
既に想い人の願いをも振り切って自ら死に向かうこの男をミントには説得する術は無い。それでもそれはどこか悲しい話だ…

そんなミントの胸中を知ってか知らずかウェールズは再びミントと自分のグラスにワインを注いだ。

「バカ、か…不思議な物だね明日死ぬというのに生まれて初めて言われたよ。………王族というのは中々に生き難いものだ。このバカな男にそんな真っ直ぐな言葉をぶつけてくれる友も居ない。君も王族ならば分かるだろう?」
酔いが回っているのかほのかに赤い顔でウェールズはワインを呷りながら自嘲めいた笑いを浮かべる。確かにアンリエッタに面と向かってバカだと罵る様な人間もトリステインにはいないだろう。

「ハッ、あたしをあんたみたいなのと一緒にしないで貰える?そんな物は言い訳よ。あたしは遺産を手に入れていつか世界を征服して見せるんだから。」
「言い訳か…確かにそうだ。しかし世界征服とは大きく出たね、君は侵略を是とするのか?」

「あたしのする事にかぎってはそれは問題ないわ。だってあたしが世界を征服すれば世界は必然的に平和になるじゃない?
582デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:39:36.75 ID:vv9f9L60
それでもあたしの事を邪魔するって奴が居るならボコボコに叩きのめしてやるし、もし反乱なんかが起きるって言うならその前に圧倒的な力を見せつけてそんな気起こさない様にしてやるわ!!
勿論この国もトリステインもいつかはこのあたしの物にしてみせるわ。」

自信満々に何の迷いも無く言い放ったミントの言葉にウェールズは思わず目を見開いて呆気にとられてしまう。
何という力押しな解決法だろうか…しかしそれは絶対的な真理でもあるだろう。

「くくく…ハハハ……君とはもっと早く出会いたかったよ。」

「あら、何それ?もしかしてあたしに惚れちゃった?しょうが無いわね〜・・・」

「いやいや、そこは否定させて貰おう。僕の心はアンだけの物さ…何、世界とは言わずとも君がアルビオンを征服していてくれていたならばこの様な結末を迎える事も無く僕は唯のウェールズとしてアンと生きていけたのか等と夢想してしまってね。
あぁ、やはり僕は馬鹿だ。ミント王女、いや我が友ミントよ、いつか必ず世界を征服してくれたまえ。僕はそれをヴァルハラで楽しみにしておくよ。」

「言われるまでも無いわ……さて、それじゃあたしはご主人様捜しに行ってくるわ。多分今頃泣いてると思うし。それじゃあねウェールズ。」

ミントはウェールズにウィンクをしてホールを離れて行く。アンリエッタの男で無かったなら景気づけとして最後に頬にキス位はしても良かったかも知れないと少し思う。



「さようならミント…………アンを頼むよ。」



___ニューカッスル城   庭園通路


「あぁ……居た居たルイズ。」

レコンキスタ軍の度重なる砲撃によって破壊されたかつて美しかったであろう庭園を見下ろせる通路の窓辺でルイズは月に照らされてミントの予想通り一人泣いていた。
二人の男女の悲恋と300の人達の無念を想えばルイズはとてもパーティーには出席できる気分では無かったのだ。
583デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:42:41.28 ID:vv9f9L60
「……何でみんな逃げないのよ……死にたがりばっかり…姫様が逃げてって言ってるのに……そんなに名誉が大事なの…?」

そうとう今回の事がショックなのだろう…ミントが辛うじて聞き取れる様な声でルイズはそう呟く。
そしてミントはそのルイズの言動に思わず心の底から呆れ返ってしまった。

「はぁ?あんたがそれを言う?フーケの時も、空賊に捕まった時も、敵を前に逃げたりする位なら死んだ方がマシってあんた言ってたじゃ無い。」

ルイズに対しての慰めなど一切無い、ミントのその尤もな言葉にルイズは思わず顔を落とす。
「……………そうだけど…でも…死ぬなんて…」

消え入りそうな声でルイズは言った…無論ルイズにも分かっているのだ。
しかしミントもそれを察して大人の対応をしてやれる程今は心の余裕など持ち合わせては居ないのだ。だからついきつく言ってしまったのだ。

「あんたさ〜…この際はっきり言っておくけどちょっと甘えてんじゃないの?
少なくともあたしは意地でも叶えたい目的の為に命張ってそれこそ化け物を蹴散らしてきたわ。そう、全ては世界征服の為に!!
いい?ここに残った人達も自分の為に命張ってんのよ、本人が腹を括ったからにはあんたがそれを否定する事は出来ないの!!」

「私は甘えてなんか無いっ…何よ!?世界征服??バッカじゃないの!?あんたがやろうとしてる事は結局は侵略でしょ!?レコンキスタの連中と変わらないじゃ無い!!」

売り言葉に買い言葉とも言うべきか…二人の間に冷え切った空気が流れる。



「もう知らない!!ミントなんて!!」
一瞬の間を置いて子供の様な捨て台詞を残しルイズはその場を逃げ出した。
「………全く…」
ミントは肩を落とし明かりの外に消えていくルイズの背中を見送った…
これがマヤであったならばこの後は肉体言語による討論へと移るのだろうがどうにもルイズはへたれ過ぎる。


「余り彼女を責めないでくれたまえ。」
584デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:43:23.68 ID:vv9f9L60
ふと背後から声がかけられる。振り返ればそこにはこちら側にゆっくり歩いて来ているワルドの姿があった…

「盗み聞きってのは感心しないわね。」
「それは素直に謝罪させて頂く。しかしどの様な会話が行われていたかまでは聞いてはいないさ。」
「どうだか……」
ミントは苦笑いを浮かべるじワルドをじと目で睨む。

「で?何か話があるんでしょう?」

「あぁ…実は明日、僕はルイズとここで結婚式を挙げようと思う。先程ウェールズ皇太子に結婚の媒酌をお願いしてある、快く引き受けて頂けたよ。」

「はぁっ!??急すぎるでしょ?」

「そう言われるとは思っていたが是非とも私はあの勇敢なウェールズ皇太子にお願いしたかったのでね。
そこで是非ミント殿下にも式に出席して頂きたいのですが一つ問題がありまして…出席して頂いた場合、イーグル号もマリーガラント号も出航してしまい帰りの足が無いのです。
私とルイズの二人ならばグリフォンで滑空すれば問題なく戻れますが…」
ワルドは少し申し訳なさそうにミントに頭を下げた。それはミントに先にアルビオンを発てと言う意味だ。

「あたしはそんなに重くないって−の…まぁ事情は分かったわ。それじゃああたしは先に戻るからラ・ロシェールの宿で落ち合いましょう。」

「感謝致します。それでは…」
そう言ってワルドはミントに会釈すると振り返り来た道を戻って行く。


「ねぇ…ワルド!」

「何でしょう?」
振り返るワルド。

「おめでとう。ルイズの事、泣かしちゃ駄目よ。」

ミントは微笑むでも無くそう淡々と言ってワルドに背を向けた。
585デュープリズムゼロの人:2012/04/28(土) 21:46:37.66 ID:vv9f9L60
これにて十八話おわりっす。

最後ワルドが敬語に戻ったのはミント王女への正式なお願いだからです。
それじゃあまたね〜
586名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 21:48:52.81 ID:c7QmmfRm
おつかれさん
587名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 23:45:52.44 ID:Bzxt5qyw
いつの間にか2本も来てたとは流石GW。どちらも乙

>どうにもルイズはへたれ過ぎる
へたれといえばサイトな印象だったがルイズも負けず劣らずのへたれだな確かに

ディケイドのは最後のFFRとかネタバレではw
588名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/28(土) 23:59:49.03 ID:jytbkpE1
デュープリズム乙乙!
待ってました
589名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 02:25:35.98 ID:qNB+uBei
乙!
肉体言語ってエロ意よねー

ミントの身分証明ってどうやってんだろう
590名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 07:09:10.95 ID:+644A4+T
デュープリズムの人、乙です!
世界を征服するということは世界を一つにまとめ上げるということですからね
見方を変えれば確かに世界が平和になるケースもあるでしょうね
591名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 11:22:18.48 ID:MpSCYjjS
>590
カードゲーム『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』の《世界平和学会》ですね。
軍事力をマイナスにすると得点になる強力なカード。
592The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:33:36.81 ID:u34YxUPJ
ご予約がなければ13:38頃から続きを投下したいと思いますがよろしいですか?
593The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:38:47.35 ID:u34YxUPJ
Mission 25 <異邦者の軌跡> 前編



結局、夜が明けるまで時空神像の記憶をベッドの上で寝そべったまま観賞し続けていたルイズはアルビオンでの任務で溜まりに溜まっていた疲労によって、自分でも気づかぬまま眠ってしまっていた。
時空神像から映し出されるフォルトゥナの様々な映像をルイズは度々質問してきたため、スパーダは昔を思い出しながら簡単に説明もしてやった。
フォルトゥナは外界と離れた島国という土地柄である以上、あまり外からの来訪がなく島の土着の人間しかほとんど住んではいなかった。
だが、スパーダは数年だけとはいえその島の領主として留まったのである。……そこでも、魔界の悪魔達が暗躍していたからだ。
ルイズは異国のフォルトゥナに強い関心を抱き、領主として統治していたスパーダの行動を見てははしゃぎ、それが余計に彼女を疲れさせることにもなっていたのである。

とにかく、この状況では今日の授業には出られないことだろう。だからといって無理に起こすこともない。
スパーダは時空神像の映像を消し、完全に熟睡しているルイズを起こさぬように部屋を出ると、そのままアルヴィーズの食堂へと赴いた。
「おお、スパーダ君。おはよう」
食堂へ足を踏み入れた途端、現れたのは炎蛇≠ニ呼ばれている学院の教師、ジャン・コルベールであった。
「私の生徒達が世話になったようだね。君には感謝するよ。しかし、ミス・ヴァリエールはどうしたのかね?」
「まだ眠っている。昼までは起こさん方が良いだろう」
「今日の授業は欠席、か。まあ、仕方があるまい。色々と大変な目に遭っただろうからね」
「それで何の用だ」
何やらやけに興奮している様子のコルベールだが、自分に用件があるのだということをすぐに察して問いただす。
「ああ、すまないね。こんな所で話すのも何だ。我々の席に来てくれたまえ」
そうしてコルベールは食堂の上階、教師用のテーブルへとスパーダを連れていった。
スパーダはいつも厨房の賄い食を口にしているので貴族達の食卓はほとんど目にしていないのだが、朝だというのに無駄に豪勢な食事に少し呆れた。
ただ、教師達の食事は生徒達の物と比べると少し量が少ないので適量とも言える。
そして、そのテーブルには既に何人もの教師達が席についている。

多くの教師達がスパーダの姿を目にするなり嫌悪を露わにした視線で睨んでいた。
「……何故、あの男がここにいるのだ?」
「没落貴族め……」
多くの教師達はスパーダを異国の平民上がりの没落貴族だと見下しており、彼が貴族の食卓へと堂々と足を踏み入れるのが気に入らないらしい。
特に、以前彼に言い負かされて大恥をかかされていたギトーは完全にスパーダに対して敵意を剥き出しにした視線を向けている。
今にも杖を抜いて追い出そうとしかねない殺気を放っているが、それでも飛び掛ろうとしないのは貴族としてのプライドと、教師としての礼儀だった。
「あら、ミスタ・スパーダ。珍しいですわね、こちらで食事をなさるなんて」
反面、スパーダを快く受け入れるシュヴルーズをはじめ、秘書のロングビルや学院長のオスマンはスパーダがこの場にいることを特に問題としていなかった。
スパーダの正体を知るロングビルはもちろんのこと、彼を立派な貴族として認めているのはこの二人と、そしてコルベールだけである。
594The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:43:33.18 ID:u34YxUPJ
やがてスパーダはコルベールの隣の席へと招かれていた。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかなる糧を――」
そして、スパーダも初めて聞くことになる祈りの唱和とやらだがブリミル教徒ではないスパーダは唱和には参加せずにコルベールの隣で腕を組みながら軽く聞き流していた。
「不信者め……」
「所詮、平民上がりだ」
ギトーを初めとする多くの教師達は祈りの唱和を行わないスパーダに対して非難と軽蔑の視線を浴びせていた。

「見てくれたまえ。昨晩、ようやく完成したのだよ!」
食事をしながらコルベールが楽しげにスパーダに見せてきたのは、小石程度の大きさをした緑色に光る星型の石。バイタルスターであった。
「ほう。意外にやるものだ」
以前、スパーダがパンドラや時空神像の使い方などを教えてからというものの、研究者であるコルベールはスパーダがやって来たという異国の技術に強い関心を抱いていた。
特に時空神像が作ったバイタルスターなどの未知の秘薬などには多大な興味を示し、アルビオンへ発つ前にはその作り方についても尋ねてきたのである。
時空神像からの受け売りとはいえ、その製造法については通じているスパーダは異世界の錬金術をコルベールに授けた。
スパーダから教えられた知識により、コルベールは自らの手で異世界の錬金術に手を染め秘薬を作ることに成功したのだった。
時空神像が作るものに比べれば魔力の純度はかなり低いのだが、スパーダが関心すべきは教えてからたった数日で低純度とはいえバイタルスターを完成させたことにある。

コルベールはバイタルスターを製造する時の苦労や工程を、まるで子供のようにはしゃぎながらスパーダに語り続けていた。
研究者としての血が騒ぎ興奮しているコルベールの姿にスパーダは少しうんざりしたが、黙って最後まで話に付き合ってやったのである。
「――今日はこれから私がミス・ヴァリエールのクラスの授業を受け持つのだが、スパーダ君も来てはくれないかね?」
「何故だ」
「私が長年続けていた研究を、生徒達に伝えてやるのだよ。だが、私は生徒達からも教師達からも変わり者と見られている。私はそれに不服はないが、簡単に私の研究を受け入れてくれるとは思えない。
そこでスパーダ君、異国の人間である君の意見もぜひ聞かせてもらいたいのだ」
やや興奮を残しつつもコルベールは真摯な面持ちでスパーダに願い出てきた。
(研究、か……)
どうせルイズが授業に出られない以上、自分が変わりに出てやるしかないのだ。
コルベール自身がどのような研究を続けていたのかは知らないが、内容次第では少し述べてやるのも良いだろう。別に断る理由もない。
「いいだろう」
「おお! そうか! それでは頼むよ!」
595The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:48:57.78 ID:u34YxUPJ
朝食を終えると、上機嫌なコルベールは足早に食堂を後にし、何処かへと去っていった。これから行われるという授業の準備なのだろう。
一体、その授業で生徒達に何を教えてやろうというのか。それは授業に出てみなければ分からない。
「おおーい! スパーダ君!」
教室へ入った途端、高らかにスパーダを呼びかける声があった。
その声の主、ギーシュはスパーダの姿を見つけるなり、席から立ち上がっていた。
「ちょっと! 待ちなさいよ、ギーシュ!」
「すまない、モンモランシー! 後で!」
隣の席に座っていたモンモランシーが呼び止めるが、ギーシュは立ち止まらずスパーダの元へと歩いていった。
彼女は朝食の席から今まで、昨晩や数日間留守にしていた件について問い詰めていたのだが、ギーシュは一切口を割らなかった。
アンリエッタ王女からの密命はもちろん、スパーダの正体を簡単に口にするわけにはいかない。
「ルイズは君を受け入れてくれたみたいだね」
ギーシュの表情はとても清々しく、そして安堵に満ちていた。
たとえ悪魔でも、自分の師であるスパーダがこの学院に残ってくれることを心から望んでいたのである。
「……しかし、彼女はどうしたんだい? 朝食でも見かけなかったが」
「しばらくは休ませておく。それより、用件は何だ?」
「実は先ほど、ミス・タバサに頼んで昼休みに手合わせを行うことになったんだよ」
「ほう」
突然のギーシュの宣言にスパーダはちら、と席について静かに本を読むタバサを見やった。
すると、その隣にいたキュルケはスパーダの視線に気づくと、いつもと変わらぬ生き生きとした笑顔で手をひらひらと小さく振っていた。
「それで、スパーダ君もそれに立ち会って欲しいんだ。君にあれだけ鍛えられた僕の力を試す良いチャンスなんだよ」
スパーダに剣術を叩き込まれてから数週間、ギーシュの剣の腕はまだ荒削りではあるものの既に立派な戦士として成長していた。
腐っても魔法衛士隊の隊長であったワルドを相手にタバサと二人がかりだったとはいえ、ある程度善戦できたことからも明らかだ。
結局は負けてしまったが、ギーシュは自分がまともに戦うことができたことに自信がつき、更に自分を高めようと考えているのである。
そのためにも、シュヴァリエの爵位を有するほどの実力者であるタバサとの手合わせを望んだのだ。
何しろ、ワルドとの戦いはスパーダに見てもらえなかったのだから。傷だらけのギーシュの姿を見て、ある程度粘ったことは察していたようだが。
「いいだろう。どれだけ腕を上げたか、見せてもらう」
スパーダは冷徹な表情を変えぬまま、すぐにギーシュの願いを聞き入れた。
弟子がどれだけ力をつけたのか、存分に見せてもらうことにしよう。
「頼むよ!」
まるで父親に対してせがみ、それを受け入れられて喜ぶ息子のようにギーシュは歓声を上げていた。
596The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:53:24.72 ID:u34YxUPJ
「何よ……ギーシュったら……いつも、彼とばかり……」
モンモランシーからしてみれば、それはあまり面白くない光景だった。
ギーシュがスパーダの弟子になってからというものの、モンモランシーが彼と付き合う時間はめっきりと減っていた。
昼休みになれば他の男子達と共にスパーダから剣術を教わり、特にギーシュはそれ以外の時間でもしきりにスパーダに「剣を教えてくれ」とせがむのである。
確か先日アンリエッタ姫殿下がこの学院に訪れた日より二日ほど前、ようやくギーシュを捕まえて一緒の時間を過ごしたのだが、そこでモンモランシーは彼に
「ミスタ・スパーダから剣を教えてもらうのもほどほどにしなさい」と、言い聞かせようとしたが、ギーシュは憧憬と誇らしさに満ちた顔でこう答えた。
「僕にとって、彼は父にも等しいんだよ。彼は立派な貴族だ。あんなに男らしい貴族は他にいないと思うんだ。
ああして剣を交わして彼と接していると、彼の誇りが僕にも伝わってくるんだよ。……ああ、あれが異国の貴族の風格なんだな――」

異国の貴族にああも憧れ、惚れ込み、夢中となるギーシュの姿を見るのは初めてだった。
憧れるのは良い。父のように愛してくれても構わない。
だが、それでも自分を置き去りにはしないで欲しい。
モンモランシーは怖いのだ。
ギーシュがスパーダと共にいる内に変わってしまうのではないか、自分の手が届かなくなってしまうのではないかと。
他の女の子にデレデレされるよりかはマシだが、ああも夢中になっている姿を見ると、スパーダにギーシュを取られたように感じてしまう。
「何か、良い手はないかしら……」
どうにかしてギーシュの心を捕らえているスパーダから自分に振り向かせられないか、モンモランシーは考え込んだ。
597The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 13:58:21.28 ID:u34YxUPJ
スパーダは教室の一番後ろの壁に寄りかり腕を組んだまま、授業が始まるのを待っていた。
その間、生徒達はがやがやと談笑を続けていたが、コルベールが姿を現すと同時に静まり返る。
コルベールはスパーダの方をちらりと視線をやった後、教卓の上にでん、と妙な物をと置いていた。
円筒状の金属の筒、金属のパイプが金属の箱に繋がれ、その上部や側面には風車や車輪のようなものが取り付けられている。
その機械的な物体をスパーダは何の感情も窺えぬ顔でじっと見つめていた。
生徒達もまた、その装置を興味深そうに見守っていた。
「えー、どなたか私に火′n統の特徴をこの私に開帳してくれないかね?」
妙にウキウキとしているコルベールは教室を見回すと、スパーダを除く教室中の視線が微熱≠フ二つ名を持つ火のトライアングルメイジ・キュルケへと向けられた。
「情熱≠ニ破壊≠ェ火≠フ本領ですわ」
だが、当のキュルケはというと興味がなさそうな様子で爪の手入れを続けており、さらにその作業をやめぬまま気だるそうに答えていた。
「良いかね、ミス・ツェルプストー。情熱はともかく火≠ニは破壊だけではないのですよ。戦いだけが火≠フ見せ場ではない」
魔界において、火とは全てを焼き尽くす地獄の業火を象徴する。まさにキュルケが言った通りだが、コルベールはそれを否定している。
「トリステインの貴族に、火≠フ講釈を承る道理はございませんわ」
自信たっぷりに言い放つキュルケだが、コルベールはそんな嫌味に動じずにこやかな表情を崩さずに続けた。
「で、その妙なカラクリは何ですの?」
「よくぞ聞いてくれました。これは私が長年の研究をかけて開発した装置です」
コルベールは卓の上に置かれた装置を腕を広げて差し、得意げに言う。
そして、彼は足でふいごを踏み円筒の横から杖の先端を差し込み、発火≠フ呪文を唱えた。
ふいごを踏むことで円筒の中に気化した油が入り込むらしく、その油を発火剤として円筒の中で小さな爆発を起こした。
円筒の上に取り付けられているクランクが動き出し、車輪と風車を回転させる。回転する車輪は箱に付いている鉄の扉を開け、中から歯車を介して蛇の人形が飛び出てきた。
外に飛び出ては戻り、飛び出ては戻る。その動作を繰り返させる装置に取り付けられた様々な部品が忙しなく動き続けていた。
「ほう……」
コルベールが長年の研究をかけて開発したという装置を見て、スパーダは珍しく簡単の呻きを漏らしていた。
「ほら、見てごらんなさい! この金属の円筒の中では気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いている!
その動力により車輪と風車を回し、こうしてヘビくんが! 顔を出してご挨拶するのだよ!」
自分で作ったからくりだというのに、コルベールは子供のように興奮しはしゃぎながら装置について力説していた。
だが、それを見せられている生徒達はと言うと……誰一人として全く関心がなく白けた様子で見つめていた。
「で? それがどうしたって言うんですか?」
「今はこうしてヘビくんが顔を出すだけだが、この装置を応用した物を荷車に載せて車輪を回させる。すると馬を使わずとも荷車や馬車は動くのだ。
それだけではない! 船の両脇に大きな水車を付け、この装置を使って回せば帆を使わずとも大きな船を動かすことができる!
そしてさらに! 改良を重ねればこの装置は魔法を使わずとも動かすことができるのだ!
今はこうして火の魔法に頼っているが、断続的に点火できる方法が見つかれば半永久的に動かし続けることも可能となる!」
研究者としての血が騒ぎ、自らの研究の持論を熱心に生徒達に伝えるコルベール。
598The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 14:03:31.17 ID:u34YxUPJ
だが、スパーダを除き誰も彼の研究の素晴らしさに理解を示すものはいなかった。
「そんな物、魔法で動かせば済むことじゃないですか。何もそんなヘンテコな装置をわざわざ使わなくたって……」
「そうですよ。魔法の力があれば何も困ることなんてありません」
「魔法とメイジの力にも限界がある」
生徒達が口々に反論する中、生徒達とは異なる一人の声が上がった。
その鶴の一声に、生徒達の視線が教室の一番後ろに立つスパーダへと向けられた。

コルベールはスパーダが意見をしてくれることに期待を膨らませていた。そして、ついに彼が動き出したことにその期待はさらに膨れ上がっていた。
自分の研究を彼はどう思ってくれているのか、楽しみで仕方がなかった。

スパーダもコルベールの研究は素直に素晴らしいものだと評価している。
非常に原始的ではあるが、紛れもなくあれは熱を利用した動力機関だ。人間界では何百年も前から技術そのものは存在しているが、未だ大きな発展はしていない。
一応、彼からは意見を述べて欲しいように頼まれていたため、約束通り自分の意見を話すことにした。
「如何に魔法と言えど、それを使うのは人間だ。そして、魔法を持続的に使えば当然お前達メイジの精神力は削られるだろう。途中で精神力も尽きるか途切れる。
それこそ、コルベールが言ったような馬車や船を動かそうものならなおさらだ。メイジでは長時間、それらを動かし続けることはできない」
「あら? だったら、数人がかりで協力するか交代して動かせば良いんじゃないかしら?」
キュルケが意見を述べるが、スパーダはさらに続ける。
「そのためには人員が多く必要になる。そもそも作業を交代するという行為そのものが効率が悪い。お前は一々、そんなことをしてまで馬車や船を動かしてみたいか」
「嫌よ。そんなことするくらいなら、普通に座ってる方がマシだわ」
他の生徒達もキュルケの言葉に同意したのか、渋い顔を浮かべていた。
「コルベールの研究はメイジが数人がかりで行うことを、将来はあの装置一つで為すことが可能となる。
燃料さえあれば途中で作業を中断させずとも長時間に渡って持続させられる。発展させれば燃料の消耗を抑えることもできるだろう」
魔界においても、永劫機関≠ニいう魔力の動力源を用いて大規模な装置を動かしたりもするのだ。
装置を動かすのに多数の悪魔達を回せばそれだけ戦力も減ることを意味する。その手間を省くためだ。
「でも結局、その燃料が切れれば動かなくなるんじゃないかい?」
「それじゃあ大して変わんないよなぁ」
「やっぱり、魔法で動かした方が手っ取り早いよ。その燃料だって用意するのが面倒だし」
マリコルヌの他、数人の男子生徒達が異論を唱えた。
「ならば聞こう。スクウェアの風メイジ四人が一時間おきに交代し、全力の魔法で巨大なフネを飛ばしたとする。
それに対し、約六時間おきに樽一杯分の燃料を交換するあの装置一つで今言った規模のフネを長時間飛ばす……。
乗るのであればどちらが良い?」

スパーダの主張に対し、他の生徒達はもはや反論ができなくなってしまった。
確かに短時間で作業を中断して交代するより、長時間おきに交代した方が実に効率が良かった。
そもそも長時間、馬車や船を動かすのは退屈でならないだろう。途中で精神力が切れれば止まってしまう。
それに対し精神力も必要ないあの装置は、燃料一つで延々と馬車やフネを動かすことができる。
スパーダが述べると妙に説得力があり、生徒達は複雑ながらも納得するしかなかった。
だが、やはり彼らは魔法至上主義の環境で生まれ育ったのだ。
「魔法の方が便利に決まっている」「あんな鉄クズなんかに魔法が負けるはずがない」などと反論を抱く者は多かった。
599The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 14:09:49.52 ID:u34YxUPJ
(中々良い発想をしている)
魔法至上主義社会の中でコルベールのような考えを持つ人間がいることにスパーダはとても強い関心を抱いていた。
コルベールのメイジとしての魔力はトライアングル……しかもキュルケなど全く足元にも及ばないであろうほどの力を有していることをスパーダは感じ取っていた。
それはもはや、スクウェアクラスにも達しようかというほどのものであった。
それほどまでのメイジとしての力を持つはずの人間が、やがては魔法を使わず平民でさえも取り扱うことができる技術を生み出そうとしているのだ。

コルベールはスパーダが自分の研究をここまで理解してくれていることに心から満足した。
しかもここまで深く考察していることにはコルベール自身も予想していなかったため、逆に驚かされもしたのである。
きっと、彼の故郷ではこのような技術が広まっているのだろう、そう思い込んでいた。
「そう! 良いかね、我らの魔法は確かに便利かもしれない。だが、それだけで満足していてはいけないのだよ。
常に技術は進歩しなければならない。技術は魔法と違い、才能がなくとも全ての人間が平等に扱うことができる。我らの生活は更なる発展を遂げることになるだろう!」
拳を握り締め、コルベールが熱く語っていた時、教室の扉が開かれた。

「おお、ミス・ロングビル。どうしたのかね」
現れたのは今はオスマンの秘書として収まっている女性、ロングビルであった。
「ミスタ・スパーダがこちらにお出でになっているそうですが……」
知的な秘書としての態度を装っているロングビルが事務的に用件を告げてくる。
「彼ならそちらに」
「ミスタ・スパーダ。アカデミーよりあなたに客人が見えています。すぐに学院長室へと来てください」
(客だと?)
確か、アカデミーというのは王都トリスタニアに設置されている王立魔法研究所の略だったかと思う。以前、コルベールと意見交換をしている中で聞かされた。
新しい魔法の研究やマジックアイテムの解析などを行う研究機関らしいが、研究のためにはあまり手段を選ばない傾向があるらしく、学院長のオスマンもあまり信用していないらしい。
伝説の使い魔たるガンダールヴを引き渡そうものなら躊躇せず解剖するなどのことは行うらしい。
コルベールもまた、その機関に対してあまり良い思い出がないのか浮かない顔をしていたのを覚えている。
もっとも、時折マジックアイテムの保管を依頼されてもいるらしく、あの時空神像も元々はアカデミーとやらから預けられたものだというが。
……そんなアカデミーが、自分に直接用がある?
「おお、ついに来たのか。スパーダ君、すまないが学院長室へ急いでくれないかね。君のことを待っているはずだ」
コルベールはそのアカデミーからの来訪者が来るのを知っていたらしい。
自分に用件があるのならば行かないわけにもいくまい。スパーダはロングビルと共に教室を後にし、学院長室へと向かっていった。
「アカデミーから客人など初耳だ」
「私だって同じよ。何でもあなた達がアルビオンに出発した次の日に来ていたみたいよ。
でも、客の一人はアカデミーの主席研究員。私もひと月前に一度会っているわ。彼女はね……」
「言わなくて良い。直接会うまでだ」
600The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 14:15:53.12 ID:u34YxUPJ
コルベールの授業が始まる直前、学院の敷地内には一台の馬車が停まっており、オスマンが控える学院長室にはその馬車から降りてきた二人の貴族の女性が足を運んでいた。
一人は眼鏡をかけ、黒髪を後ろに束ねた20代半ばの女性。もう一人もまたメガネをかけている見事に美しい豊かな金髪を伸ばした理知的な魅力で溢れた女性だった。
20代後半ほどのその女性の目付きはとてもきつく、見るからに高飛車な印象を感じることができる。
「いやあ、済まないね。エレオノール君、ヴァレリー君。何度も足を運んでもらってな」
「いえ、お気になさらずに。それより、私の妹が戻ってきているそうですね」
労をねぎらうオスマンに対し金髪の女性、エレオノールは凛とした冷ややかな声でまるで気にした様子もなく用件を尋ねる。
「ああ、昨日アルビオンから戻ってきたばかりでな」
「そしてルイズの使い魔という、異国の貴族の男も戻ってきていると」
「うむ。彼は今、ミスタ・コルベールの授業に出ておるはずじゃ。ミス・ロングビル、済まないがミスタ・スパーダを呼んできてはくれんかね」
「かしこまりました」
オスマンの横に控えていたロングビルが秘書の態度を装ったまま軽く一礼をすると、学院長室を後にする。
「ヴァレリー、少し落ち着きなさい」
「だって、いよいよあのマジックアイテムが使われる所を見られるのよ?」
まるで子供のように弾み、浮き立っているヴァレリーを諌めるエレオノール。
ひと月も前、彼女が勤務しているアカデミーがこの魔法学院に預けていたマジックアイテム――それはとても奇妙な形をした黄金像。
エレオノールも何度かその像を調べてみたりしたのだが、威厳に満ちた声を発して何かを要求してくるだけであり、結局は詳細が分からなかった。
やむを得ずこの学院で預かってもらい、半月に一度定期調査に訪れていたのだ。

そして、つい先日もその定期調査で訪問した際、オスマン学院長やコルベール先生が朗報を伝えてきた。
「例のマジックアイテムの所有者が現れた」
そう。あのマジックアイテムを使えるという人間が現れたのだ。
時空神像という名を持つあの黄金像は魔法の秘薬を作ることができる物らしく、コルベールは実際にそれで作られたという秘薬を見せてくれた。
その秘薬を見て、エレオノールとヴァレリーは驚愕してしまった。

星の形をした緑輝く神秘的な石。
色は違えど、二人はその石に見覚えがあったのだ。

だが、その様子をすぐに見ることはできなかった。所有者が不在であるからだ。
そのため、所有者が戻ってきたらすぐに手紙をよこしてくれるようにオスマンに頼んでおり、昨夜その手紙が届いたのである。
そうした経緯もあり、エレオノールとヴァレリーは再びこの魔法学院へ足を運んでいたのだ。
601The Legendary Dark Zero:2012/04/29(日) 14:22:31.87 ID:u34YxUPJ
(まったく、勝手にアルビオンに行ったりして何をしているの。ちびルイズ!)
これから時空神像とやらの力が見られるというのに、エレオノールは憤慨していた。
定期調査で学院に訪問する際、ついでにこの学院に在学している一番下の妹の成果を観察してやっていたのだが、相変わらず魔法は失敗ばかりのようだった……。
誉れ高いヴァリエール公爵家の娘だというのに、どうしてああもあの子は魔法の才能が無いのだろうか。ヴァリエール家の恥である。
だからといって、エレオノールは慰めたりはしなかった。あえて突き放してやることで、失敗を恐れさせずに前へ進ませてやるしかない。
エレオノールもまた、どうしてあの子が魔法が使えないのかを調べたりもしていたが、未だその原因は分からない。

姉がこうして影ながら手助けをしてあげているというのに、あの子は勝手に内乱中だったアルビオンへ赴いたというのだ。
しかも、オスマンやコルベールに問いただしてみると、姫殿下からの密命を受けたのだという。
昔から世話を焼かせる困った子だと思っていたが、本当にもう今度ばかりは許さない。一度、実家に連れ帰って母様と父様に叱ってもらうべきかもしれない。
その前に、自分からも厳しく言いつけなければならないが。

「それに、あなたの妹の使い魔だっていう、スパーダ? どんな殿方なのか、楽しみじゃない」
(スパーダとやら……どんな従者なのか、たっぷり拝ませてもらうわよ)
そんな妹が春の使い魔召喚の儀で、失敗せずに使い魔は呼び出せたらしい。
……まあ、そこは褒めてやるべきだが、その使い魔はどうやら人間であり、しかも遠い異国から来た元貴族なのだという。
そのため、使い魔ではなく従者として見ることになるだろう。オスマンやコルベールはそのスパーダという男のことを絶賛していたようだが、実際はどうなのか。
(あまり期待はできないわね……)
元貴族、ということは異国から流れてきた没落貴族ということではないか。しかも、あの野蛮なゲルマニアのようにメイジではなく平民上がりの貴族なのだとか。
本当にあの子はちゃんとした使い魔も呼べないのか。エレオノールは頭を痛めてしまう。

そしてその使い魔が、時空神像の所有者だということをエレオノールは聞かされていた。


※今回はこれでおしまいです。
前にも書きましたが、話の尺をできるだけ短くするためにタルブ戦までの約一ヶ月までの間に他の巻の話を入れることになるかもしれません。
今回のギーシュとモンモランシーはその伏線ということで。
602名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 15:39:00.21 ID:316CUE6/
パパーダの人乙
またいいところで切るな〜
603名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 19:56:01.37 ID:LWBHxpVL
そろそろディーキンの人期待してもいいか?
604名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/29(日) 20:28:07.66 ID:DlfLm98i
復旧してたか
605使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 20:51:40.58 ID:G79s8CTe
21時から投下予定
606使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:00:43.61 ID:G79s8CTe
第7話『始まり』

決闘から一夜明けた、虚無の曜日。
小鳥が囀る晴れやかな空模様だった。

早朝の学院長室に、ノックの音が響き渡る。
秘書のミス・ロングビルは休日なので出勤していない。

「うむ、入りたまえ」
普段より威厳に溢れたオールド・オスマンの声に扉が開く。

部屋に入ってきたのは、ルイズとアセルスの両名。
もう一人の決闘を宣告した当事者、ギーシュの姿はなかった。

「ミス・ヴァリエール、なぜ呼ばれたのか分かっておるかね?」
「はい、禁止されている決闘を行ったからです」
明瞭に答えるルイズの声。
オールド・オスマンは少し失望しつつ、次の句を告げた。

「ギーシュ・ド・グラモンは未だ生死の境を彷徨っておる」
「そうですか」
ルイズは死者が出る可能性を聞いても、平然としていた。

「責任は感じんのかね?」
一切の動揺が無いルイズを、オールド・オスマンが訝しむ。

「決闘に応じてしまった事は、重々に」
オールド・オスマンとルイズの間には致命的な認識の隔たりがある。

ルイズにとって罰は、決闘という規則を破った罪に対して。
オールド・オスマンが問題視するのは、規則より人を傷つけた事実。
両成敗としてギーシュにも処罰を下すつもりだったが、今はまだ治療中である。
607使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:04:59.34 ID:G79s8CTe
「人を無闇に傷つけるのは貴族のするべき事ではあるまい」
少女が誇り高き貴族であろうとしていたのを承知している。
故に、オールド・オスマンは自尊心を揺さぶるように問いかけた。

「彼は不用意に私を傷つけました」
ルイズは、毅然としていた。
己に非がないと言わんばかりに。

「先に手を出したのはお主だと聞いておるが?」
この情報は間違いではない。
だが、ルイズからすれば事実でもない為に訂正する。

「彼は私を侮辱しました」
「侮辱程度で命まで奪おうとしたのかね!?」
声を荒げ、威圧感が増す。
オールド・オスマンは気付かない。
ルイズに対して、取り返しのつかない失言を行ったと。

価値観というのは人によって異なる。
オールド・オスマンが、最も重んずるのは命。
平民も貴族も問わず、人より長く生きてきたからこそ生命の尊さを知る。

ルイズの価値観はオールド・オスマンと異なっていた。
人命を尊重しないわけではないが、命より大切なものがあると思っている。

「侮辱『程度』……」
だからこそ、聞き流せなかった。
ルイズの表情から精気が消え失せていく。
彼女の心にあるのは、キュルケを突き放した時と同じ情動。

ルイズは力を込めて、拳を握り締めた。
爪が皮を裂いて肉に食い込み、血が滴り落ちる程に。

決闘騒動はルイズの心に確かなひび割れを入れた。
オールド・オスマンの叱咤は心の裂け目を広げてしまう一言だった。
608使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:11:33.50 ID:G79s8CTe
「では偉大なるオールド・オスマン、貴方に尋ねたい事があります」

──ルイズの声はおぼつかない。

──ひびの入った器からは容易に感情という名の水が零れた。

「貴族でしたら、誰もが使える魔法。
一度でも使えなかったことがありますか?」

──16年間、心に溜まり続けた。

「誰でも出来るはずの魔法が失敗、爆発、ゼロ。
お前は何も出来ない人間だと、蔑まれるのが日常となった事は?」

──他人の悪意により、注がれた腐った水。

──澱みきった水からは何も育たない。

──少女の心は淀み、流れのない池のように絶望だけが溜まり続ける。

「軽い悪戯のつもりで、魔法を使われて恐れたことはありますか?
自分も魔法が使えれば何でもないのに、抗えない無力さが分かりますか?」

──それでもルイズは必死に抑え込んでいた。

──自分の中から溢れ出さないようにと、貴族の誇りをもって。

「使えないからと家族に心配されたことはありますか!
心配かけまいと努力を続けて、実らない努力と自覚しながら、
明日は成功するかも、明後日こそは……と日々繰り返すのを無様だと笑われたことは!?」

──誰にも理解されないまま、周囲はルイズの心まで砕こうとした。

──だからアセルスは、力を振るわせた。誰も彼女の心に近づこうとしないように。
609使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:16:56.62 ID:G79s8CTe
「それでも努力を続けないと!
私の家は由緒ある公爵で!母も父も姉も優れた貴族で魔法使いで!
自らが落ちこぼれな所為で、家族に迷惑をかけた経験はおありですか!?」

──ルイズの声は徐々に大きくなっていく。

──告白から慟哭、慟哭から狂った咆哮に変わって。

──流れる涙と共に、溜め込んだ衝動を吐き出してしまう。

「あれ程素晴らしい親から、何故自分みたいな無能が生まれたのかと!
自分なんて生まれてこなければ良かった!
魔法も使えないのに、貴族として生まれた私の人生は何なのかと考えた事は!?」

聞くに堪えない少女の葛藤。
オールド・オスマンはただ沈黙するしかない。
多くの生徒を手がけ、生徒の数だけ苦悩を見てきた自負がある。

時には苦悩を分かち合い、生徒を励ました。
そんな己の経験を振り返っても、ルイズに答えを返せない。
生きてきた300年間、魔法が全く使えない生徒などいなかったのだから。

「何か言ったら、どうですか……オールド・オスマン!!!!」
あらん限りの力を振り絞って、ルイズは叫んだ。
次の言葉を手繰りだそうとしていた彼女を止めたのはアセルスだった。

「ルイズ、行こう。居たくも無い所に居る必要はない」
アセルスはルイズの手を引いて、学院長室から出て行こうとする。

「待ちなさい!まだ話は……」
「黙れ」
オールド・オスマンの制止を一喝で遮る。
アセルスは抜け殻のように茫然としたルイズと共に立ち去った。

室内に残されたのはオールド・オスマンのみ。
アセルスに向けられた冷徹な眼差しは雄弁に物語っていた。

──お前がルイズに何が出来る。

確かに、止めたところで少女の苦悩を解消するのは不可能だ。
魔法を持つ者が持たざる者の気持ちなど、分かるはずがないのだから。
この国──いや、ハルゲニアの貴族が誰も平民の心情を理解できないように。

己の無力さを痛感し、オールド・オスマンは新入生への祝辞を述べた頃を思い出す。

あの時、ルイズの瞳は希望に満ちていた。
彼女から光を奪ってしまったのは──

「この学院じゃ……生徒を育てるどころか、あそこまで追い詰めて……」
オールド・オスマンが虚空を見上げる。

教え導く立場のはずが、彼女を絶望に陥れてしまった事実。
アセルスが少女へ、せめてもの安らぎになってくれるのを願う。
それが悪魔の誘惑だとしても、自分達では少女に救いの手を差し伸べられないのだ……
610使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:23:15.84 ID:G79s8CTe
学院にきて、一年が経つ。
ルイズの心は壊れる寸前だった。

彼女は表情豊かで気性の荒さはあれども、心優しさも持ち合わせている。
公爵という立場を除けば、十人並みの少女だった。

幼い頃に抱いた魔法を覚えるのが遅いという、些細な劣等感。
悩みは時を経る毎、ルイズの心を押し潰す程に膨らんでいった。
自分は一生魔法が使えないままではないかと葛藤し、努力の度に挫折する。

今では人に笑顔を見せなくなった。
焦燥に駆られて、苛立ちを隠そうともしない。
不満そうに目を怒らせ、眉をつり上げる表情が常に張り付いてしまっている。

学院で唯一育ったのが、貴族への自尊心。
仮にただの平民が呼ばれていたら、毎日のように当り散らしただろう。
多少の罪悪感を持ちながらも、今まで溜め込んだ感情を発散させたはずだ。

しかし、ルイズが呼び出したのは『妖魔の君』アセルス。
凛とした雰囲気、圧倒的な力を併せ持つ彼女が眩しすぎた。
欲してやまなかった強力な使い魔を切っ掛けに、ルイズの精神は大きく揺らぐ。

──私はただ、貴族の真似をしていただけ。

魔法が使えない現実を誤魔化し続けた。
ハルゲニアにおける絶対的な貴族の条件──魔法。
条件に当てはまらないルイズに対して、周囲は悪意の差こそあれど同じ評価を下す。

『魔法は使えないが、誇りは貴族であろうとする少女』

だが、この評価は正反対である。
魔法が使えないからこそ、ルイズは貴族を唯一の拠り所としていた。

貴族を否定してしまえば、何者でもなくなってしまう。
努力を続ける事で魔法が使えずとも、貴族としての矜持を傷つけずに済む。

努力家だと教師は賞賛するが、間違いでしかない。
自尊心による強迫観念に、ルイズは突き動かされていただけだ。

柔軟な発想をすれば、爆発を利用する事も思いついただろう。
だが、貴族なのだから魔法が使えなければいけないと思い込む。
魔法が使える者を貴族と呼ぶのではないと信じつつ、魔法に憧れる矛盾。

ルイズの歪んだ日常は、使い魔として現れたアセルスを前に無残に砕け散った。
611使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:27:48.03 ID:G79s8CTe
才能もないのに、プライドだけは一人前の『ゼロ』。
使い魔として呼び出したのは妖魔を従える『妖魔の君』。
分不相応な主従関係──

アセルスと出会った今、ルイズは魔法よりも力を欲した。
爆発が異端であったとしても、力にできるなら迷う必要は無い。

ルイズはアセルスに惹かれている。
虜化妖力による魅了ではなく、アセルス自身の境遇と生き方に。
貴族を名乗る道化のような人生に、切っ掛けを与えてくれた恩人でもあった。

家族も尊敬しているが、ルイズの性格から頼る事はなかった。
特に優しい姉には心配かけまいと、手紙で平静を振舞い続けた。

アセルスは半妖と言う唯一の存在。
人妖どちらにも蔑まれながら、孤高であり続ける。
まさにルイズ自身が求めてやまなかった貴族像だった。

同時に目に付いてしまったのが、貴族という立場にある同級生達の愚劣な姿。

──コンナヤツラハ『貴族』ジャナイ。

『ゼロ』の自分でさえ悟った。
魔法を悪用し、他人を貶めて嘲笑う醜態を貴族が晒すはずない。

使い魔の儀式の数日前。
シエスタが専属メイドとなった為、他の生徒に嫌がらせを受けていると知った。
迷惑をかけまいとして、嫌がらせを隠していると料理長がこっそりと教えてくれた。

話を聞いても、シエスタを救えない無力に憤りを覚える。
魔力の探知も行えない自分では、犯人を特定すら出来なかった。

同時にルイズからすれば、彼らは貴族でなくなった。
貴族が、守るべきはずの平民を姑息に虐げる等あってはならない。

ギーシュ自身は加担していた訳ではない。
だが、平民がどうなろうとも止める気もなかった。
彼だけではなく、これが一般的なハルゲニアの貴族の考え方なのだ。
612使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:33:52.56 ID:G79s8CTe
他者はギーシュの侮辱が、決闘の発端だと勘違いしていた。
オールド・オスマンさえも、今回の発端を侮辱程度と言い放った。
溜まり続けた感情が零れたのは確かだが、ルイズは16年間も耐え抜いている。

ルイズがギーシュを許せなかった一番の原因。
彼らが貴族を名乗る事で、自らの理想まで穢されたと感じたから。

ルイズが命より尊いと信じているものは心だった。
身体や命が一つしかないように、心も一つしかないもの。
まして貴族であれば、誰より高潔な精神を持たねばならない。
家族から教わった理念、トリステインにおける貴族のあるべき姿。

魔法だけが重要視される現在、叶うはずもない古びた思想。

誰にも理解されず、貴族の信念まで貶された時に全て弾けた。
そして16年の間、抑え込んだ感情までも先程ばら撒いてしまった。

「ルイズ」
手を引いたまま、アセルスの呼びかけが廊下に響く。
ルイズは顔を上げられない。
失態を晒した姿をアセルスに見られたくなかった。

「わ、私は……アセルスの隣に……恥じない……貴族になると……決めたのに……!」
決闘後、立派な貴族となるのを誓った。
なのに感情も律せず、アセルスの前で醜態を晒した。
言葉は途切れ、自分への失意から涙が止められなかった。

「ルイズ、私は君を立派に思う」
アセルスは立ち止まり、振り返ると同時にルイズに声をかける。
ルイズはまだ俯いたままだ。

「……止めて……私は同情が欲しい訳じゃない……」
ルイズにはアセルスの言葉が慰めにしか聞こえなかった。

同情されるのは、悪意を向けられるより辛い。
哀れみは、ただ惨めさを強調させるだけだから。
613使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:38:39.81 ID:G79s8CTe
「私は死から目覚めた時、どうしていいか分からなかった。
妖魔になった運命に翻弄され、ただ怖くて城から逃げ出した」

同情が欲しい訳ではない。
ただ誰かに存在を認めて欲しい。
ルイズの心情を共感できるからこそ、アセルスは過去を語り始めた。

「逃げ出しても、私は周りの状況に流されるだけ。
家族も居場所も愛する者も全てを失って、初めて決意した。
私に血を与えた妖魔を倒して、自由になると」

自分の意思で何かを決断してこなかった。
だから全て失ってしまったとアセルスは追想する。

もっと早く、なすべき宿命に気付いたなら。
終止符を打つ事を決意していれば、白薔薇を失わずにいられたかもしれない。

過去に過ちを犯したアセルスが、ルイズに向ける賞賛。
ルイズは魔法が使えない運命を受け入れた。
過去の未熟さを、未来の成長に変えようとする彼女は美しい。

「ルイズ、君はまだ何も失っていない。
それでも悲しみで顔を上げれないなら、少しだけ私から歩み寄るわ」
ルイズを抱きしめ、アセルスは優しく囁く。
抱きしめられたルイズの涙声は更に大きくなった。

アセルスも、何度となく絶望を味わった。
白薔薇は親身になって、抱きとめてくれた。
彼女がいなければ、どこかで挫折したままだったと思う。

ルイズにも支えが必要なのだ。
シエスタや自分がそうなってやればいい。
咽び泣くままのルイズを抱きしめて、アセルスは彼女を守ろうと決意する。
614使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:43:13.57 ID:G79s8CTe
アセルスの胸の中で、ルイズの心に光が差した。
孤独な少女の砕けた心を止めたのは、親でも教師でも友人でもない妖魔の存在。

そうだ、私はまだ『ゼロ』のまま。
アセルスの隣に並ぶと決めた時、成長したような気になっていた。

違う──俯いた状態から、見上げただけだ。
自分を守る為のプライドという名の殻を脱ぎ捨てる。
殻から出て、自らの足で一歩を踏み出さなければいけない。

学院で築き上げた貴族の自尊心。
瓦礫のように、音を立てて崩れていく。
自分は開始地点にすら、立っていなかった。
ようやく、『ゼロ』から目標に向かう為の起点に立てたのだ。

「……アセルス」
ルイズの声にもう悲嘆は感じない。

「忘れていたわ。
街に行こうと思って、シエスタに馬の準備を頼んでいたのよ」
笑顔が浮かべ、アセルスの手を取る。

「付き合ってくれるわよね?」
「ええ、勿論」
初めて目の当たりにする彼女の笑みに、アセルスも笑ってみせた。
二人の姿が、朝靄の中に溶けて消えていく──
615使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/04/29(日) 21:48:56.88 ID:sAx/pgKt
最後に猿ったので携帯から
投下は以上です
616名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 00:07:39.84 ID:ZwL2wXcJ
次スレ

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part310
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1335712027/
617名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 00:08:37.02 ID:mbTKdKK3
>>616
投下した人も投下乙
618名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 01:09:55.15 ID:gB63xQhS
え、次スレ早くね
619名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 01:16:08.94 ID:mTs6y++0
6と9見間違えたんじゃね?
620名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 01:20:34.05 ID:K3QLjqei
>>601
ギーシュが女にデレデレしてそれに嫉妬したりするのは分かるけど、変な嫉妬しとるな。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 01:37:48.00 ID:ZwL2wXcJ
>>618-619
容量
622名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 23:57:04.60 ID:gB63xQhS
てすと
623 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/05/01(火) 00:33:00.79 ID:dUnVqRax
テスト
624名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/02(水) 11:23:44.41 ID:KrbLv3sS
乙!
いいね、ルイズがいい感じに堕ちていく。
すばらしい。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/02(水) 17:46:24.99 ID:ihHb9oHW
アンリエッタ「ふ、俗物が」
626 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/05/02(水) 19:08:50.31 ID:sfYtnSa7
テスト
627名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/02(水) 21:23:45.50 ID:23H44Nes
容量ってどうなってみるんだっけ
628名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/02(水) 22:17:24.44 ID:Wc+wfw30
ブラウザなら一番最後のレスの下の行
629名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/04(金) 01:44:36.27 ID:3GWFuPPq
微妙なサイズが残っとるね
630名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/04(金) 10:41:37.81 ID:J/TvZm6d
498
631 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/05/04(金) 12:04:03.02 ID:qtbaOmZO
テスト
632名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/04(金) 12:39:35.17 ID:FEL4pHZ4
うめ
633名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/04(金) 13:56:58.21 ID:drKVqLpW
うめ
634一尉:2012/05/05(土) 18:04:49.14 ID:Tunu3CUa
635 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 :2012/05/05(土) 18:14:10.19 ID:vr8wgorg
うめ
636名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/05(土) 23:08:51.58 ID:ui8luNWr
うめ
637名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/06(日) 03:52:47.49 ID:p83NLkfZ
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part310
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1335712027/
638名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/06(日) 13:11:33.75 ID:6q6sXLYh
うめ
639名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 00:25:04.95 ID:bgxJkYD4
うめ
640名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 20:35:15.57 ID:n1k4fyIZ
         |.:.| .:l .: \!/ l:.:{  .:.:.|ヽ:.:}ヽ .:j .:.!    |:.  |
         ヽハ:l:.| !:.:.:jV\{:八 .:.::.l }:/_,j;ィト:.l   .:l:.:  |
            ヽ从:.: iイfチ心ハ 、从ィ厶斗<V  .:.jl:.:  |
             \ト小._V;zソ ノ/  V;;_z1 '/  .:.:.:ハ:.:. 八
              リ :} .:::::: ,     :::::::..  /  .:.:.:/.:.ヽ:.:.: ヽ
641使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/05/07(月) 21:57:59.09 ID:IqU9oVvf
うめ
642名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 21:59:02.07 ID:IqU9oVvf
名前消し忘れた
643名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 21:59:44.68 ID:IqU9oVvf
うめ
644名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:00:27.68 ID:IqU9oVvf
うめ
645名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:01:32.06 ID:IqU9oVvf
うめ
646名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:01:48.52 ID:IqU9oVvf
うめ
647名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:02:14.63 ID:IqU9oVvf
うめ
648名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:02:49.59 ID:IqU9oVvf
AA貼ったほうが早かった気もする
うめ
649名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/07(月) 22:04:56.08 ID:IqU9oVvf
650名無しさん@お腹いっぱい。
うめ