あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part308
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part307
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1330350403/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
前スレでは失礼いたしました
改めまして、18:15ごろから投下しなおさせていただきます
「ええ、あんたの故郷とか、そういうことそれはあとでゆっくり聞かせてもらうわ。
…で、質問はそれだけ? いつまでも待たせるんじゃないわよ」
ルイズからいらいらしたように声をかけられて、ディーキンは頭の中で物語の案をまとめるのを中断する。
いろいろと考え込むのは後回しにしたほうがよさそうだが、あともう一つ二つ大事なことだけはこの場で聞いておかなくてはならない。
「アー、ごめんなの…もう少しだけ聞かせてもらえる?
えーと、ディーキンは使い魔のことは知ってるつもりだけど、このあたりはディーキンの知らないところみたいだから勘違いしてるかもしれないの。
だから使い魔になるかどうか決める前に、まずあんたの言う使い魔っていうのは何をするものなのかを教えてほしいんだけど…」
「なるかどうかじゃないわよ、あんたがゲートから出てきた以上なんといおうと使い魔にはなってもらわないと困るの。
…でも、これから長い付き合いになるんだし、自分の仕事をしっかり理解してもらわないと話にならないわね。
いいわ、手短になら説明してあげるから、しっかり聞きなさい」
ルイズの言葉を聞いたディーキンは、首を傾げて考え込む。
「ありがとうなの、ルイズが説明してくれるのならディーキンはちゃんと聞くよ。あんまり覚えはよくないけどね。
…ウーン…、どうしてもならないといけないの?
ええと、やたらに洗い物をさせられるとか、
夜中に呼び鈴で叩き起こされて夜食を持ってこさせられるとか、
朝の着替えを持っていったら『どうして今日の私は赤い服を着たい気分だってわからないの、このろくでなし!』とか難癖つけられてびしばしぶっ叩かれるとか、
…それくらいだったらディーキンはたぶん大丈夫なの。
でもディーキンは、そういうのはあんまり楽しくないと思うの」
昔読んだそれっぽい物語の内容を思い出しつつ、懐から羊皮紙とペンを取り出してメモを取る用意をする。
実際、前の“ご主人様”に仕えていたときには毒を舐めさせられて昏倒したり、麻痺の魔法を掛けられて歯を抜かれたり…、
しまいには寝ぼけて上にのしかかられて死にそうになったりしたので、その程度なら虐待の内にも入らないだろう。
とはいえ勿論、そういう扱いをされて愉快だというわけでもない。
ルイズは呆れたような顔をしつつも、じっとディーキンの様子を見つめる。
「そんなことしないわよ…、ふうん、あんた言葉遣いはあんまり賢そうじゃないけど、字が書けるのね。
それに紙とペンを普段から持ち歩いてるなんて、なかなか勤勉そうじゃないの」
「フン、どうせルイズは人間とちょっと話し方が違うからって、ディーキンをバカだと思ってたんでしょ?
ディーキンはこれでも冒険者で吟遊詩人(バード)なの、だから物語や歌をすぐに書き留められる用意が欠かせないんだよ。
いつどこですごい英雄とか、でっかいドラゴンとか、囚われの美しいコボルドの少女に出会うかわからないからね!」
「…はあ? バードって…、あんたコボルド・シャーマンじゃないの?」
ルイズはコボルドは知能が低く基本的に人語は解さないが、稀に生まれる先住魔法を使う知能の高いシャーマンは別…という知識を本で読んで知っていたので、
コボルドだと名乗る目の前の亜人は、当然シャーマン(大きさからみておそらく子ども)だろうと考えていた。
実際にはディーキンは肉体的には既に完全に成熟しており、子どもと呼ばれるような年齢ではない。
犬と人間の中間のような姿で人間より若干小柄な程度のハルケギニアのコボルドと違い、フェイルーンのコボルドはドラゴンの血を引く爬虫類型の亜人で、身長は成人男性でも人間の半分ほどにしかならないのだ。
ディーキンは体内に眠る強大なドラゴンの血を覚醒させるのに成功したこともあって、平均的なコボルドよりはむしろ体格がいいくらいなのである。
(…外見が本で読んだのと全然違うし、本当にコボルドなのかしら?)
「シャーマン? …ウーン、ソーサラーとか、アデプトの事?
ディーキンはバードなの、卑劣なコボルドのソーサラーなんかじゃないんだよ」
「…コボルドに詩人がいるなんて聞いたこともないわ。
ソーサラーとかアデプトっていうのはよくわからないけど。あんたたちの間じゃシャーマンの事をそう呼ぶのかしら」
「ディーキンにはよくわからないの。ディーキンも自分以外のコボルドのバードに会ったことは無いけどね。
でも、ディーキンは確かにバードだよ…多分、他のコボルドにはバードの手ほどきをしてくれるご主人がいないからじゃないかな?」
「…よくわかんないけど、あんたは詩人で、それを教えてくれるご主人様がいたってわけ?
…まあいいわ。その話はあとで聞くけど、今日からは私が主人だからね!」
そこまで話すと、ルイズは話が脱線していることに気が付いて軽く咳払いをする。
不興を買っていないかとちらっと傍らで待っている教師の方を伺うが、コルベールは2人の話に興味深げに耳を傾けているようなので大丈夫そうだ。
「…ええと、話を戻すけど。まず、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるわ。
つまり、主人に代わって色々なものを見聞きしてくる仕事があるのよ」
「ふうん? あんたと使い魔の契約をすると、ディーキンの見てるものがあんたにも見えるようになるの?」
ディーキンの知るウィザードやソーサラーの使い魔は主人と感覚的なリンクを持っており、1マイル程度までの距離であればテレパシーで意志を伝えることができる。
だが、主人が使い魔の目を通して直接物を見るというようなことは別に魔法でも使わない限りできないはずだ。
(やっぱり、ディーキンの知ってる使い魔とはちょっと違うかもね)
しかし…、よく考えればアンドレンタイドの砂漠の遺跡では喋って魔法も使うネズミの元使い魔を見た覚えがあるし、例外的な使い魔というのは結構いるものだ。
それにウィザードやソーサラーは所持する使い魔によって自身も若干の特殊能力を得ることができる。
たとえばネズミの使い魔なら体が頑健になるし、毒蛇の使い魔ならば口がよく回るようになり、はったりが得意になる、といった具合だ。
ここのメイジの使い魔はそれと同様に『使い魔と視覚を共有できる』という特殊能力を主人に与えるのだと考えれば、大して違ってはいないかもしれない。
「わかったの。ディーキンはあんたが指示をくれたら頑張って偵察してくるよ」
「よろしい。…ま、あんたじゃ私の代わりになにか見てくるとかはあんまり期待できないかもしれないけどね」
ルイズはじろじろとディーキンの姿を観察する。
ネズミやモグラ、カエル(絶対欲しくないが!)や鳥などのように、小さな隙間に入れたり地中・水中・空中を移動できる使い魔なら、調査や偵察の役に立つことだろう。
しかし、この『自分をコボルドの詩人だとだと言い張っているトカゲっぽい亜人』には、肉体的に人間と大して違った能力はありそうに見えない。
変わった亜人だから目立つし、小さな子どもくらいの身長しかないので足も遅そうだし体力も無さそうである。
「ンー…、白くてでっかいドラゴンがいる洞窟とかは嫌だけど、大抵の場所は大丈夫だよ。
ディーキンは見た目よりは断然役に立つの!」
ディーキンは冒険者として非常な経験を積んでいるし、魔法もかなり心得ている。
危険地域や水中その他特殊環境での偵察も、その気になれば魔法や道具を駆使して十分こなせるだろう。
マジックアイテムによる変装のせいでルイズらはまだ気が付いていないが、翼が生えているから空を飛ぶこともできる。
ディーキンは自身ありげに胸を張るが、すぐに何か見落としに気が付いたように首を傾げた。
「…ああ。ウーン…、あんたはメイジだから、あんたの行けないような場所はディーキンも無理かもしれないね?」
バードは歌の魔法たる呪歌を操り、芸能をはじめ多彩な技能に通じている上に剣も魔法も扱える万能職であるが、一方で必然として剣も魔法も専門職には及ばない。
秘術呪文を主たる売り物、専門とする職業ではないので、通常はメイジと呼ばれることもない。
自分が魔法でできるようなことは、見たところ秘術呪文を専攻しているメイジであるらしいルイズも当然できるか、悪くてもスクロールなりワンドなりのマジックアイテムを使えばできるはず。
先ほど自分を召喚したゲートはかなり強い魔法のオーラを放っていたし、それを作ったルイズは(何故かあまり強そうに見えないが)相応に腕利きのメイジに違いない。
少なくとも、さっき他のメイジたちが全員魔法で飛び去って行ったのを見る限りは空は飛べると見ていいだろう。
…となると、自分が空を飛べることや魔法を使えることは『ルイズが行けないところに行ける』という根拠にならない。
すると自分のことは後で機会を見て詳しく話すにしても、契約とやらを急かされている今この場では余計な時間をかけてアピールするまでもないか…、
と、そうディーキンは考えた。
実際にはその認識は誤っているし、並大抵のウィザードやソーサラーでは少なくとも単純な魔力という面ではディーキンの足元にも及ばないだろうが…。
ディーキンは自分の実力に関してはかなり過小評価しているきらいがあるのだ。
一方ルイズの方は、あんたもメイジだから、のあたりで苦々しげに顔をしかめていた。
「…あんたじゃなくてご主人様って呼びなさいっていったでしょ。まあ、今は大目に見ておいてあげるわ。
それから次に、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば、秘薬とか」
「秘薬? …ええと…、ポーションとかの材料とかのこと?」
「それもあるわね。それ以外にも、特定の魔法を使用するときに必要になる触媒よ。例えば硫黄とか、コケとか」
「ふーん?」
つまり呪文の『物質構成要素』のことか、とディーキンは判断する。
ディーキンの知るフェイルーンの呪文にも、発動の際に特定の物質を消費する必要があるものは結構ある。
例えば《跳躍(ジャンプ)》の呪文を使用するにはバッタの後ろ脚が必要だし、非常に高質のダイヤモンドを消費する《真の蘇生(トゥルー・リザレクション)》のように高額な物質構成要素を要求する魔法もある。
あまり高いものはともかく、少々入手が面倒な程度の雑多な物質構成要素ならば使い魔に暇なときに調達させておくということはフェイルーンのメイジでも十分考えられる。
「うん、ディーキンはあんたが何を探してきてほしいか教えてくれたら、探してこれると思うよ」
「そう? …効率は悪そうだけどね」
ルイズはやはり、これといって特別な能力もなさそうな上に、見たところこのあたりに不慣れで秘薬の見つかる場所も知っていそうには思えない亜人の子どもには大して期待できないと考えていた。
もっとも今のところまともな魔法が使えないので、秘薬を手に入れてもらっても売却して小遣いにするくらいしかできないが。
(詩人だとかいってるし…人間の言葉を喋れるのは職業柄ってことかしら?
仮にこいつが本当にコボルドでシャーマンだったとしても、まだ子どもみたいだし…先住魔法は使えないかも。
…まあ、あんまり期待しない方がよさそうね)
あまり役に立たなさそうなのは少し残念だが、人生で初めて魔法が成功した上に珍しい亜人がでてきてくれたのだから十分だ、と自分に言い聞かせる。
それに人間の言葉も話せるのだし、子どもっぽい感じはするが割と賢そうだ。
やたら質問が多いし喋り方がうっとおしい感もあるが、トカゲじみた姿の割に不思議と魅力というか愛嬌があって、こうして話しているうちにむしろ可愛らしく思えてきた。
それが主人と使い魔の縁ゆえなのか、それともこの亜人自体の元々の特質なのかはわからないが。
(…うん、まあ、十分当たりの部類に違いないわ。初めて成功した魔法でそこまで高望みはできないわよね)
「最後に、これが一番大事なことだけど、便い魔は主人を守る存在であるのよ。
その能力で主人を敵から守るのが一番の役目ね」
「オオ、その辺はディーキンの知ってる使い魔と同じだね。
了解なの、もし戦いがあったらディーキンはしっかりあんたを守るよ」
「……その心がけは褒めてあげるけど、あんたはずいぶんちっちゃいしカラスなんかにも負けそうじゃない?」
それを聞いてディーキンはむっとする…と同時に、内心でやや首を傾げる。
フェイルーンのメイジの使い魔は主として小動物…それこそルイズが言ったようにカラスや何かだったりするが、立派にメイジを敵から守る盾として役に立つのだ。
使い魔となった時点で彼らはただの動物から魔法的な獣である魔獣の一種に変化し、姿形こそ変わらないが高い知能と戦闘力を獲得するからである。
メイジの実力が上がれば使い魔もより賢く強くなっていき、やがては元が単なる猫やカエルであっても、並の人間を凌ぐ知能と巨人の類すら単独で打ち倒し得るほどの戦闘力を備えるようになる。
…今の発言からすると、こっちの使い魔はメイジの実力が上がっても強くなれないのだろうか。
だとしても、カラスにも負けるとは言い過ぎではないだろうか。
ルイズにとっては自分はただのコボルドにしか見えずいかにも頼りなく思えるというのはわかるが、普通のコボルドだってカラスに負けたりはしないだろう。
「ええと…、ディーキンはカラスと戦ったことはないけど、狼を殺したことがあるよ。
だからカラスに負けたりはしないと思うの、狼はカラスよりは強いでしょ?」
「え、ほんと? …ってことは、あんたは先住魔法が使えるのね?」
ルイズがやや驚いたようにディーキンを見つめる。
こんな小さな子どもの亜人が狼を殺したというなら、それは先住魔法を使ってやったのに違いあるまい。
(狼を殺せるくらいの魔法が使えるのなら、最低でもドットか…、ひょっとしたらラインメイジくらいの強さがあるかも。
…もしかしてこの使い魔って大当たり?)
「? …ええと、本当だけど、先住魔法っていうのは聞いたことがないよ」
「え、…ああ、そっちじゃそういう呼び方はしないんだっけ。
精霊魔法のことよ、私たちの使う系統魔法とは違う、あんたたち亜人が使う精霊の力を借りる魔法。知ってるでしょ?」
「…ウーン? 精霊の力を借りる魔法…、だね?」
ディーキンは首をかしげた。
どうやら、このあたりでは魔法の分類の仕方もだいぶ違うらしい。
(ええと…、先住魔法で、それは精霊魔法のことで、この人たちが使うのが系統魔法で、…ウーン、どれもぜんぜん聞いたこともないの。
これじゃバードの沽券に係わるね、ディーキンはあとでこのあたりのことをもっと勉強するよ!)
ディーキンの知っている魔法の分類の仕方はいくつもあるが、もっとも大まかな分類の1つは秘術魔法と系統魔法の2つに分けるものだ。
これがこちらでいう系統魔法と先住魔法(精霊魔法)にあたると考えると、ある程度つじつまが合う感じがした。
秘術魔法は己の内にある力によって発動させる魔法である。
先ほど《魔法感知(センス・マジック)》で確認したので、ここのメイジたちが使うのが秘術魔法であることは間違いないだろう。
対して信仰魔法は、神や自然の諸力などの己の外にある力に助力を求める魔法だ。
直接見ていないので何とも言えないが、『先住魔法は精霊の力を借りる魔法』という表現からは信仰魔法っぽい印象を受ける。
もし仮にその分類で正しいとすれば、ルイズの質問に対する答えはノーである。
ディーキンが使えるのはバードの魔法だが、それは秘術魔法に分類されるもので信仰魔法はディーキンには使えない。
しかし精霊(エレメンタル)を呼び出して使役する呪文は秘術魔法にもあり、ディーキンにも使用できる。
だから『精霊の力を借りる呪文』が使えるかと言われれば、答えはイエスになる。
そのあたりがよくわからないのでルイズに尋ね返したいところだが、話がごちゃごちゃして面倒になりそうだし、時間もないらしい。
ディーキンの経験上、人間は概してエルフなどと比べて気が短く、細かいことをいろいろ質問するとすぐ機嫌を悪くして怒り出す者が多かった(相手がコボルドだから鬱陶しく思われているというのもあるのだろうが)。
この女の子もあまり気が長そうなタイプには見えないし、とりあえず事実だけ答えてわからなかったら後で自分で調べることにしようとディーキンは決める。
「ディーキンにはよくわからないけど…、バードの魔法でよければディーキンはいくらか使えるの」
「…は? 詩人の魔法…って、なによそれ、聞いたことないわ」
「ええと…、詩人の魔法は詩人の魔法なの。言葉通りなの。バードが使う魔法だよ」
そこにそれまで事の成り行きを静観していたコルベールが口をはさむ。
「…私も聞いたことがないが…、先住、いや精霊魔法とは違うものなのかね?」
「うーん、ディーキンはその精霊魔法っていうのがちょっとわからないの。たぶんディーキンのいたあたりとこの辺は呼び方が違ってるんだと思うけど…。
あんたたちがバードの魔法を知らないってことは、このあたりにはバードはいないの?
ディーキンは後でこの辺のバードからいろいろ話を聞こうと思ってたんだけど…」
「…いや、街の広場や酒場などではときどき見かけるが…、その、バードの魔法というのは何のことなのかが分からないのだが」
「? …ええと、バードならだれでも魔法は使えると思うの。だからそれの事だよ」
いまひとつ噛み合わない会話をしながら何がなんだかわからないという感じで目をしばたたかせているディーキンを、ルイズが疑わしげな眼で睨む。
「吟遊詩人なんて平民のやる仕事でしょ、平民に魔法が使えるわけないじゃない!
…さっきからわけのわかんない事ばっかり言って…、あんた、本当に魔法が使えるんでしょうね?
使えるのならそのバードの魔法とやらで、ためしに何かやって見せなさい。
それを見たら私たちにもあんたの魔法が何なのか分かるかもしれないでしょ、それが一番手っ取り早いわ!」
「…ンー、そうかもね…」
確かに、この分だと実際にこっちの魔法を見せる(そして向こうの魔法も見せてもらう)方が効率がいいかもしれない。
あいにくと今日は“ボス”と一緒に冒険を済ませたばかりでさほど高度な呪文を唱える力は残っていないが、簡単なものくらいなら見せられる。
さて、そうなるとどんな呪文を見せたものか。
力術などの破壊的な呪文は効果がわかりやすいが、音波系を除けばバードが得意な系統とはいえないし、そんな戦いで使うような代物を無闇にぶっ放すのはまずいだろう。
心術の類はバードが最も得手とする系統のひとつであるが、効果が目に見えず分かりずらいかもしれない。
そうなると幻術がいいだろうか…。
…しかし…、別に魔法の自慢をするわけでもないし簡単な呪文でいいや、とディーキンは考え直した。
第一相手は専業のメイジなのだからバードの呪文程度が自慢になるはずもないし、試しに見せるだけならもっとも簡単な術でいいはず。
ここには特に危険はなさそうだとはいえ、念のため残り少ない魔法の力はできるだけ温存しておきたいというのもある。
「分かったの。じゃあディーキンはお気に入りの一番簡単な呪文を見せるね」
そう前置きすると、ディーキンは両手を自分の胸の前に持ってきて、くるくると宙を捏ね回すような動作をしながら短く歌うような調子で呪文を詠唱し始めた。
ルーンを紡ぎだすと同時に、ディーキンの回している両手の間にほのかな白い輝きが生じる。
「…《アーケイニス・ヴル・ミーリック―――》」
ほんの二、三秒の短い詠唱の後に呪文が完成し、それと同時に輝きはディーキンの両手に吸い込まれるように消えた。
ルイズとコルベールは、呪文が紡がれて光が生じ出すと食い入るようにその輝きを見つめていたが…、詠唱が終了してもそれっきり何も起こらないので、首を傾げる。
「…ちょっとあんた、今の呪文は一体何よ? 少し光ったけど、何も起こらないじゃないの」
いぶかしげに問いかけてくるルイズに対してディーキンは軽く右手の人差し指を立ててちっちっ、と振って見せると、その指で足元に落ちていた小石を差し示す。
すると、小石はゆっくりと持ち上がってルイズの目の前に浮かんだ。
「おお、さっきのは念力の呪文だったのかね?」
浮かんだ小石を見つめながらそう問いかけるコルベールに対してふるふると首を横に振り、今度はその小石を左手で掴んで、そのまま掌の中に握り込んで隠す。
一瞬精神を集中するように目を閉じたのちに掌を開くと、握り込んだ小石はペンキを塗られたように真っ青な色に変色していた。
「?? て、手品とかじゃないわよね…、錬金の呪文かしら?」
「…念力の後で別の詠唱も動作もしてはいないようだったが…、どうやって錬金を?」
ディーキンはまじまじと見入っているルイズとコルベールにニヒヒヒ、と笑いかけると、さらにいくつかの魔法的な現象を起こして見せた。
小石を捨てると、開いた掌の上にいきなり安っぽく粗雑な作り物の花を生み出す。
さらにその花びらを明るく発光して輝かせて見せたり、微風を起こして花を揺らして見せたりする。
その後、空中で指揮棒を振るように造花を握った手を動かし、それに合わせて微かな音楽の演奏を作り出して見せる。
数分ほどそうした小さな魔法を生み出して見せると、ディーキンは軽くお辞儀をしてこの“演芸”を終えた。
「えーと…、これがディーキンの、バードの魔法なの。
《奇術(プレスティディジテイション)》っていうんだけど…、見たことないの?」
ディーキンは始終不思議そうに今の演芸を見ていた2人の反応に、僅かに首を傾げた。
奇術(プレスティディジテイション)はバードがよく演芸の彩などに使用する呪文であるが、ウィザードやソーサラーなどの専業メイジにも扱える術のはずだ。
別名を“初級秘術呪文(キャントリップ)”といい、初学者の呪文の使い手が練習のために扱う簡単な、手品のような魔法である。
どんな駆け出しの見習いメイジでも、使えて当然の呪文と言ってよい。
なのにこの2人の反応は…、全く未知の魔法を見たといった感じではないか?
「…あんた、今の呪文は一体何をやったのよ?
効果は大したことないみたいだったけど、たった一回呪文を唱えただけなのに、どうしてあんなにいろいろな魔法の効果が起こせたの?
明りに念力に、錬金に…、風の魔法や、それに他にもよくわかんないのがあったわ。
最初の呪文でこのあたりの精霊と契約して、いろいろな現象を起こさせたとか?」
「…ううむ…、いや、先住魔法ならば口語を使うはずだから、君の使い魔が見せてくれたバードの魔法というものは先住魔法とは違うようだ。
むしろ今の詠唱は私たちの使うルーンに似ているようだったが、しかし…彼は杖も持っていないし、あのような組み合わせの呪文は聞いたことがないな」
「ええと…、なんでって、そういう魔法だからなの。 ディーキンには、それしかわからないよ。
別にバードの魔法が、みんなこんな感じだっていうわけじゃないけどね」
ディーキンも呪文学の知識は相当以上に持ってはいるが、そうはいってもある種のメイジのように魔法を理論的に研究しているというわけではない。
バードは主に技術として、実用としての魔法の知識は磨いているが、魔法の根本的な理論や研究的な扱いは専門外だ。
自分が使う魔法が根本的にはどんな構成になっていて、なぜそのような現象が起こせるのか、といった話にまでは詳しくないのである。
とはいっても、ある程度の説明はできるし、それを聞けば専門的なメイジである彼らにはあるいは理解できるかもしれないが…、今それをしても余計話が長くなるだけだろう。
「ううむ…、非常に興味はあるが、今ここで話していても分かりそうにないな。
後で日を改めてもう少し詳しい話を聞かせたり、別の魔法を見せたりしてもらえないかね?」
コルベールはやや残念そうにしながらもそういうと、ルイズに続きを促す。
出来れば心行くまで話して検討してみたいが、その前に今はまず契約を進めなくてはならない。
「…うーん…、まあとりあえず、あんたが変わった魔法を使えるのはわかったわ」
この使い魔は確かにいろいろな魔法を見せてくれたし、ろくに詠唱も動作もなしであれだけ多彩な現象を起こして見せたのは大したものだと思う。
…が、ひとつひとつの効果は、どれもこれもコモンマジックか、せいぜい各系統のドットスペルで可能な程度のものばかり。
腕前も全然大したことがない。念力は小石を何とか浮かべる程度だったし、錬金で作った花は一発で作り物とわかる不格好な代物で、風は花びらを揺らす程度。
系統魔法には子どものメイジが覚えて遊ぶ、人形を躍らせたり花びらをまき散らして見せたりする手品まがいの呪文がいくつもあるが、そういったものによく似ていた。
まあ、これは簡単な呪文だという事だったが、高レベルのメイジなら同じドットスペルを唱えても威力が下位のメイジとは格段に違うものだ。
してみると、この使い魔はハルケギニアの系統魔法でいえば、最低ランクのドットメイジくらいの腕前でしかないのだろう。
もっと高度な呪文が使えたとしても、たかが知れている…そうルイズは判断した。
(…でも小さな子どもみたいだし、そんなものよね…、サモン・サーヴァントは成功したとはいえ、“ゼロ”の私が文句を言える立場じゃないし。
それにさっきの話からすれば、きっと全力を出せば場合によっては狼を何とか殺せるくらいの魔法は使えるってことよね?
なら護衛にもならないことはないはずだし、むしろ人間の言葉が話せてちょっと変わった魔法も使えて、しかも珍しい亜人ってだけで十分当たりの使い魔よ!)
ルイズはそう内心で結論して軽く頷くと、胸を張ってディーキンを見下ろす。
「さあ、使い魔の役目についてはこれで終わりよ。もう質問はないわよね?
あんたも結構優秀そうな使い魔だってことが分かったし、納得したならそろそろ契約するわよ。
…もう次の授業も始まっちゃってるんだから」
「ウーン…、ディーキンは使い魔の役目についてはわかったの。
質問は今はもういいし、仕事もちゃんとできると思う…、だけど、ちょっとだけお願いがあるの」
それを聞いて、早速契約を始めようと地面に膝をついてディーキンに顔を近づけていたルイズがぴたりと動きを止め、不機嫌そうに顔をしかめる。
「…何よ、契約も済まないうちから御主人様に要求をしようってわけ?」
「アー…、ごめんなの。でも、その契約とかをする前じゃないと、かえって失礼な話だと思うの」
「もう! …いいわよ、何か知らないけど言ってみなさい」
ちょっと首を傾げると、ディーキンはルイズの顔を見つめてその“お願い”を告げた。
「ありがとうなの、ええと…ディーキンは使い魔をするけど、やりたいこともいろいろあるから、ずっとはできないの。
だから、しばらくしたらお暇をもらおうと思うんだけど、ルイズはそれでいい?」
今回はここまでです…
一向に契約が終わりませんが、次回あたりで一応のケリはつくでしょう
代わりに先に使い魔の仕事に関する話の確認をしております
なお、NeverewinterNightsは電源ゲーである関係上、
ゲーム中には《魔力感知》も《奇術》も登場していませんが、
折角D&Dという広い背景世界があるのですし、バードが戦闘関係の魔法ばかり覚えているのも妙なので…
魔法や技能の習得などは、基本的にD&D3.5版のシステムに準拠して見直しを行っております
ご了承ください
おつ
持っててよかった3.5!
あれ買ったの確か中学ん時だわ
おつです。
丁寧な作りで、次回もたのしみです。
16 :
一尉:2012/03/20(火) 22:07:21.46 ID:rOV5PMYw
召喚にしたのはF4Uでした。
ディーキン乙。
契約完了と共に完結しそうな牛歩な勢いだが大丈夫か?w
ディーキンかわいいなw
結構期間空いてしまいましたが、これよりデュープリズムゼロ第十二話を投稿します。
では行きます!!
第十二話『〜幕間〜人形と主』
___ガリア王国首都リュティス
トリステインには正統なる始祖ブリミルの血を祖とする三つの王家が存在する。
『トリステイン』『アルビオン』そして『ガリア』
現在ガリアの首都リュティスにある王の住まう宮殿グラントロワの一室にて、とある重大な話し合いが行われようとしていた。
国にとって?…………いえいえ。
貴族にとって?…………そんなまさか?
そう…それは隣接する異世界にとっても無関係とは言い切れぬ程この世界を揺るがす大事な大事なお話…
「待っておったぞ俺のミューズ。アルビオンに出向いて貰って居る最中にわざわざすまぬな。しかしどうしてもお前の力が必要そうなのだ許せ。」
玉座にゆったりと腰を落とした青い髪の美丈夫がさも上機嫌な様子で豪快に笑い、薄暗い王の間へと出頭してきた全身に怪しげで黒いタイトな法衣を纏った女性を歓迎する。
「ミョズニトニルン、ジョゼフ様の忠実なる僕シェフィールド参りました。」
恭しく言ってシェフィールドは上質な絨毯の敷かれた床に膝を突くと顔を覆う様に被っていたフードを外す。
燭台の明かりに照らされて現れたのは妖艶でありながら何処か退廃的な…どこか人間味の薄い独特の雰囲気を持つ黒がよく似合う美女。
「ジョゼフ様がお呼びであるならば私は例え地の果て、地獄の底であろうと駆けつけます。
それこそが我が使命、我が喜びでございます。」
「所でアルビオンはどうだ?あの男少しは上手くやっているのか?…あぁやはりそれはどうでも良い、早く本題へと移るとしよう。おい、ビダーシャル!」
逸る気持ちを隠しきれない様にジョゼフがそう言うとジョゼフが腰掛ける玉座の影から一人の長身の男が姿を現した。それはまるで物語に登場する吟遊詩人の様な出で立ち…
「ビダーシャル…」
シェフィールドがその姿を認めて嫌悪する様に小さく呟く。
「待ったぞ、ミョズニトニルン。」
男は被っていた羽根付き帽子を取ると流麗な動きでシェフィールドに会釈して見せた。
男の流れる様な金の長髪の隙間からは長く尖った耳が覗いている。
それはハルケギニアの全ての人間が畏怖し、忌み嫌う最悪の亜人族『エルフ』の証
「実は貴様の能力でこれを鑑定して貰いたいのだ。」
ビダーシャルは懐から慎重に小さな虹色に輝く宝石を取り出しシェフィールドに手渡す。
ジョゼフはその光景を実に満足そうに眺めている。
「これは…」
宝石を手にした瞬間、シェフィールドの額に熱が走り使い魔のルーン『ミョズニトニルン』が淡い光を放ちながら浮かび上がる。
「それは聖地の最奥、シャイターンの門から呪いの様に溢れ出てくる魔力を我等エルフが総力を挙げ凝固させ作り上げたマジックアイテムだ。
最早二度と作れぬであろうそれを我等は『運命の滴』と名付けた。シャイターンの門から溢れる魔力を制御する鍵としてな…が、一つ問題があってな…尋常ならざる強大な魔力を有するそれを我等エルフには扱えぬのだそれが…」
ビダーシャルがそんな説明をしている間にシェフィールドは使い魔のルーンの力によってその運命の滴の力を理解した。
それはまさに力の結晶。
時の流れる力、光が照らす力、命が鳴動する力、闇が蠢く力、そして滴が零れる力…
純粋なる力の結晶、その至高の魔宝の残滓から生まれた一欠片の力の結晶。
かつての在りし時の力から比べればその手に納められた結晶などまさに絞りかす同然ではあるが…
「シャイターンの門はかつてブリミルが目指した地…俺ならばあるいはともエルフ共も思った様だがどうやら俺にはそれを御する事は出来んらしい。
そういった訳でな、ミューズよそなたならばと思って呼んだわけだ。」
どうだ?と言外に付け加える視線でジョゼフはシェフィールドを見つめる。
シェフィールドはチラリとビダーシャルへと視線を向けると言いよどむ様な少し難しげな表情をジョゼフに向けた。ジョゼフはそれだけでシェフィールドの真意を読み取る。
シェフィールドはその運命の滴の力を理解したため出来ればその力は主であるジョゼフのみに伝えたかった。現在は協力関係にあるとはいえ自分達とビダーシャルは本質的には対立しているのだから。
…だが
「フム…ミューズよ構わん、それがどの様な物であろうと包み隠さずこの場で言ってみろ。」
「では申し上げます…これはビダーシャルの申した通り魔力の結晶体の様です。あらゆる力の流れに干渉する事すら可能な万能の秘宝…
私の力ならばこれを我が内に取り込む事で完全にとはいかずとも一応は制御し扱えるかと…」
「そうか…ならば運命の滴はお前に預けるとしよう。構わんなビダーシャル?」
「…致し方あるまい。」
ビダーシャルの返答にジョゼフは玉座に肘を突いたまま満足げに薄く微笑みを浮かべる。まるで端からそうなると予測していた様に。
「では…」
言ってシェフィールドが運命の滴を両手で包む様にして祈りを捧げると運命の滴は宝石状のその形を光へと溶かし、紫電を走らせながらシェフィールドの身体へと溶け込んでいく。
「(これは記憶…?神になろうとした男の?)ぐっ…ぁぁぁあぁぁっ!!」
運命の滴と同化したシェフィールドの額に再び強烈な痛みと熱が走り、膨大な魔力と共にかつて新世界の神になろうとしたとある一人の偉大な魔法使いの記憶の一部が流れ込む…
あまりの苦痛にシェフィールドは呻き声を必死に堪えながら額に玉の様な汗を浮かべた。
「ヴァ…レン…」
しばらくの間続いた苦痛もようやくも安定し、乱れた心拍が落ち着きを取り戻すとシェフィールドは朦朧とする頭で無意識にその名を呼んだ…
「ほぅ…どうやら上手くいった様だな?」
ジョゼフの問いに正気に戻ったシェフィールドは慌てて乱れた髪を整えて膝を突く。
「はっ、この力素晴らしいの一言でございますジョゼフ様。そして我が力は全てジョゼフ様の為にあります、今後とも何とぞ私をお役立て下さい。」
「あれ程の魔力をその身に取り込むとは…随分と無茶をするなミョズニトニルン。
運命の滴を飲んだのであれば近くシャイターンの門にもご足労願うであろう。アレを封ぜよと精霊達も訴え求めているのでな。」
恭しく跪くシェフィールドにそう言ったビダーシャルをシェフィールドは敵意を孕んだ視線で睨み付ける。
「私に命令できるのは我が主ジョゼフ様のみ。貴様の頼みなどでは動くつもりは無いわ。
…………そして私はたった今知った、あれは運命の滴でもシャイターン等という名でも無い…」
究極の至宝の模造品〈レプリカ〉にして代替品〈オルタ〉
「彼の地に眠るあれこそが最大最強のエイオンの遺産『デュープリズム』。」
まるで己の役割に縛られた人形の様に無感情な声でシェフィールドはその名を口にした。
___同時刻アルビオン大陸ウエストウッドの森
ここでは現在沢山の子供達に見守られながら今一人の少女が使い魔の召喚の儀式を行っていた。
少女の名はティファニア…複雑な生い立ちを持ち孤児達と共に森の奥で隠れて暮らすハーフエルフの少女。
その少女が長く留守にしている姉の代わりの心の支えと狩りなどの助けとして今使い魔を召喚する事を決意していたのだ。
「この世の何処かに居る私の使い魔さん。お願いしますどうか私の声に応えて下さい。」
まるで歌う様な呪文の声に子供達から期待の視線が集まる。
何処かの公爵令嬢とは正反対な控えめな呪文を唱えてティファニアは杖を振るう。
まともに使える魔法は一つだけ、系統魔法が使えない自分の使い魔に無茶は求めない。
目の前に現れた銀の鏡から出てくるとすればテファニアは小鳥やリス等の小動物だろうと思っていた。贅沢を言えば狐の様な狩りが上手な使い魔だと実益もあって嬉しい。
そんな風に思っていたティファニアであったからこそ召喚ゲートをくぐって現れた己の使い魔を見た時には心底驚いた…
それはどう見ても人間の男だったからだ。
「ここはどこだ?…私は死んだ筈では?」
黒と茶の毒蛾を連想させる様な毒々しい色合いの甲冑と法衣を纏う仮面の男。男はまず空を見上げた後周囲を見渡しそう呟いた。
男の纏う独特の強張った雰囲気と底知れぬ威圧感にティファニアを含め、周囲の子供達は思わず本能的に恐怖し固まってしまっている。中には泣いている子供も居た。
「あの…」
戸惑いながらもティファニアは勇気を振り絞り何かを思案している男へと声を掛け様とする…すると。
「そこの小娘、解るならば答えろ。ここはどこだ?私はどうしてこの様な所に居る?」
男はティファニアに問い掛けながら害意を見せぬ様注意しながら軽く手を差し出す。
「あ…あの、私が使い魔を召喚しようとして、そうしたらあなたが…」
「何、使い魔だと…?」
ティファニアのその一言に男の纏っていた空気に緊張が走った。
「まさかこの私を下等な使い魔等にする為に呼び寄せたとでも言うのか!?…ふざけるなっ!!私は私達は最早誰の人形でも道具でも無い!!」
使い魔と言う言葉が男の逆鱗に触れたのか男がその腕を振るうと唯それだけで熱風の様な力の波動が足下の草を激しく揺さぶる。
「ひっ…ごめんなさい。本当はペットになってくれる動物さんを呼び出したかったんですっ。それにまだコントラクトサーヴァントはまだ…」
そのせいでますます少女は男に怯えながらも自分の後ろに居た孤児達を男から守る為に抱く様にして震える声で答えた…
そこで男はようやく状況を冷静に理解する。
成る程、確かに己の自我ははっきりと確立している。何か魔術的な干渉を受けた形跡も無い。自分が目の前の少女の使い魔になっているかと問われれば確かにそれは否だ。
先程まで確かに自分はヴァレンの聖域の最深部にいた。
そこで自分に人形としてではなく一人の意思を持つ人としての生き方を示してくれた弟を救う為に力を振り絞り自らにとっての神とも言える創造主へと反逆し処刑、否処分された…
そこまでは間違いない…
そして今男は生前の状態で見た事も無い場所で少女の前に立っている。そして少女は男を召喚したと言っていた…
「ククク……ハハハハ……」
現状を認めて男はある考えへと至ると思わず笑いを堪えきれず高らかに笑った。
「成る程な…原理は解らんがどうやら私はお前に救われたらしい。気が付けば見ず知らずの女に救われていたか…ククク、まるでルウではないか。」
「あの…?」
思わずティファニアは訝しげに首を捻る。男が急に怒り出したと思えば突然考え込み今度は突然笑い出したのだ。
そうしていると男はティファニアへと向き直りその瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ふん…良い機会だ小娘よ、私は私という存在を確立する為にも貴様の使い魔にはなれん。だが行く宛も無い身だ。故に望むならば共に居てやる事は出来るだろう、どうする?」
男のその仮面に隠れた表情が何故かとても晴れやかで、自分を見つめる視線がどこまでも真っ直ぐながら寂しげででティファニアは何故か男の提案を拒もうとは一切思わなかった。
「私の名前はティファニアです。ようこそウエストウッド村へ。」
少女ティファニアはそう言って若干おずおずとした様子で男へお辞儀する。
「私の名はドー………」
ティファニアに対し自分も名前を名乗ろうとした途中で男は思う所があり瞳を閉じてかぶりを振るとゆっくりと自らの顔を隠す仮面を外した。
(キリエル…ナーシアス…カーウィン…私も再び名乗ろう。私が私の意思で歩く為に。)
男は瞼の裏に焼き付いた己の忠臣達を思い浮かべて瞳を開いた。
最早男には自らを道具としての使命に縛り付ける為の偽りの名など不要なのだから。
「私の名はルシアンだ。さっきは怖がらせてすまなかったティファニア。」
「はい、よろしくお願いしますルシアンさん。」
ティファニアがルシアンと名乗った男に微笑むとルシアンもまたぎこちなく微笑みを返す。
それはかつて捨て去った男の本当の名前…
ヴァレンの人形としての使命を果たす為非道を行い、道具であり続けようとしその果てにルウとミントに破れた男の名前。
果たして目の前の少女がルウに生きる意味と強い意志を与えたクレアの様に自分を変えてくれるかは解らないがルシアンはこの数奇な巡り合わせに今はただ感謝する事にした。
そしてルシアンの額では輝きを失った筈のデュープリズムの欠片が静かに淡く輝いた…
これで第十二話終了です。
そもそも運命の滴って何だよって話になるけどアレは海外版タイトルの和訳です。
そして今回テコ入れに登場したドールマス……ゲフゲフン!!ルシアンはルウエンドからの召喚なので改心済みです。
デュープリズムは箱庭RPGなので世界観自体は広いのかも知れませんがいかんせん与えられてる情報が少なすぎてオリジナルストーリーに
持って行きづらいです(-_-;)
ではではまた次回ノシ
デュープリの人乙
シェフィがどんな影響を受けたかすごく気になる
しかしルウエンドってことはミントに勇気の光は無いのか?
28 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:35:17.60 ID:zfnIasvb
ゼロと魔王の12話が完成したので
予約が無いようなら10分後ぐらいに上げたいと思います
29 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:47:46.82 ID:zfnIasvb
ゼロと魔王 第12話 ガリア王ジョゼフ
ルイズは朝早くに目を覚ましていた。
それと言うのも、今日はアルビオンに出立する日であり、それは朝早くに出なければいけないからである。
「さて、ラハールを起こすかしら。昨日なかなか帰ってこなかったけど、さすがに帰ってるでしょう」
そう思い、ラハールがいつも寝ている棺桶を開けてみると、たしかに寝ていた・・・もっとも、それは六角帽子をかぶった子供であったが・・・
「え?ど、どういう事・・・?」
「う〜寒い・・・」
「あ、ごめんなさい・・・じゃない!あなた誰よ!?」
「ん〜?誰あなた?」
「それはこっちのセリフよ!ラハールの代わりになんであんたが入ってるのよ!?」
「ラハールちゃんを知ってるの?それならラハールちゃんから伝言があるって」
「え?」
どうやら、色々話を聞いてみると、この子はラハールの従妹でシャスと言うらしい。
なぜこんな所に来たのかと聞くと、知らないと答えた。
だが、そのこと自体は問題ない・・・いや、結構あるがそんなのはどうでもいい・・・問題はラハールがガリアに行ったと言うのだ。
「ちょっと!?それってどういう事!?」
「ん〜っとね、なんかジョゼフ?とか言う人に喧嘩を売られたから買いに行くんだって」
「ジョゼフ?・・・ジョゼフってまさか・・・!?ガリア王の事!?」
「知らないけど、ラハールちゃんはそこに行くからお前はお前で先に行ってろだって」
「え・・・?何それ・・・冗談じゃないわよ・・・」
ルイズは途方に暮れる、それもそうだろう、ハッキリ言ってこの任務はラハールがいなければ誰が身を守ると言うのかと言う話である。
まず間違いなく、どこかで山賊や空賊に襲われれば終わりである。
「そうだ!?あなたもしかして強いの!?」
仮にも魔王であるラハールの従妹である。
それなりの力を持っており、それでこの子を私に預けたのかもしれないと考えた。
「ん?知らない。戦った事ないし」
ラハールとしては、単純にシャスがいると面倒な事になるだろうからルイズに預けただけで、その辺を全然考えていなかった。
「嘘でしょ・・・」
ルイズは絶望感を感じながら学院を出ようとする。
ちなみに、シャスと言う子供も一緒である。
なぜ一緒に行くのかと聞くと、ラハールについて行けと言われているらしい。
だが、いざ学院から出ようとしたら、出口のところに人影が見える。
一体誰だろうかと思っていると、それは自分の婚約者である子爵のワルドだった。
「し、子爵様!?なぜこのような所に!?」
「シッ!そんな大声を出してしまったら、皆が起きてきてしまうよ。僕のルイズ」
30 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:49:00.80 ID:zfnIasvb
ルイズは色々な気持ちがごちゃごちゃになり、少しの間固まったがなんとか現実に戻る事ができた。
「子爵様、このような朝早くに一体・・・」
「簡単な話さ、私は君の護衛を姫殿下から仰せつかったのさ。あと、そんな堅い言い方はよしてくれ、君と僕の関係じゃないか」
その言葉に少し頬を朱に染める。
ワルドは自分の許嫁で、小さいころからもよく助けられており、憧れの人なのである。
だが、離れた時間が長すぎたためか、好きかどうかを聞かれると疑問である。
恥ずかしがっている内に、ワルドが話しかけてくる。
「君はいつになっても可愛らしいね。しかし、君が連れている子供は君が召喚した使い魔かい?聞いた話だと少年だと・・・」
「そ、それが・・・」
色々悩んだ挙句、ワルドに事の顛末を話した。
シャスの事、そしてラハールがガリアの王に喧嘩を吹っ掛けに行った事。
話を聞き終わったワルドは、心底驚いたようにしている。
「・・・・それは本当かい?しかし、それだと下手をすれば国際問題ではないか」
「えぇ、ですが止めに行くにもおそらく間に合わない上に、何より姫様の任務もあります」
「私のグリフォンで追えば間に合うかもしれんが・・・それをしてアルビオン王家が先に潰れてしまっては問題だからな・・・」
2人は少し考えたが、ラハールには何か目的があったように、こちらにはこちらの目的がある以上ラハール達は放っておくしかないと言う結論に至った。
考えている時に、ワルドが何か言った気がしたが、よく聞き取れなかった。
一方時間と場所を飛ばし、その当の本人達はと言うと、タバサの風竜の背中に乗ってタバサの母親がいると言う領地に向かっていた。
なんでも、タバサの話では、何をどうするかは知らないが、ジョゼフは間違いなく母親を殺しに行くと言うので、先に助けておきたいとの事である。
言い方は悪いが、母親の事を餌に連れてきたようなものなので、それについて反論は出来ないし、ラハール自身それについて何か言う気はサラサラなかった。
「しかし、異世界に来てみてすぐにこれか・・・まあ、ラハールがいるから僕としてはどうでもいいけどね」
オゾンがそんな風に愚痴るが、ラハールがいればどうでもいいと言うのは本気らしい。
それに対して、ラハールはしかめっ面をするが、そんなのは関係ないとオゾンはラハールに引っ付こうとする。
そうこうしている内に目的地の近くに着いたのか、風竜で地上に降り、ここからは歩いていく事になる。
半刻ぐらい歩いてようやく、屋敷の近くに来た。
だが、そこには何十・・・いや、下手をしたら百はいるのではないかと思うぐらいの兵が屋敷の周りを警備していた。
「あらら、相手も手の速い事だね。たった一晩で屋敷にこれだけの兵を集めたのか」
「あの女が報告したにしては速すぎる・・・だから、どこかで見てたのかも・・・」
「ふ〜ん、まあどうでもいいけど、どうするラハール?」
「決まっておろう・・・正面突破だ!!」
ラハールは、適当に集まって周辺を警護していた兵士に向かって【メガファイア】の魔法を投げつけ、盛大に爆発させる。
31 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:50:58.63 ID:zfnIasvb
ほどなくして、その爆発を聞きつけ、他の兵士たちもここに集まってくるだろう。
「おぉおぉ、派手だねぇ相棒。だがそんな考え嫌いじゃないぜ」
「お前もよく分かっているではないかデルフ。それよりおい、タバサ!ここはオレ様たちがやっておいてやる!先に行っていろ!!」
タバサは一瞬考えたが、ここはラハール達にまかせて自分は先に行くことにした。
タバサが屋敷の方に姿を消し、爆発を聞きつけた兵士たちが集まってきた。
「オゾン!さっさと片付けるぞ!!」
「任せてよラハール!!ラハールのために僕頑張っちゃうよ〜!!
力を制限されているとはいえ、今のラハールでもただの兵士やメイジ程度なら束になって掛かってきても勝てるだろう。
だが今回はそれに加えて、フロンと同等の力を持っているオゾンが加わっている。
負けることはそれこそないだろう。
そこには、一方的にやられる兵士達がいるだけだった・・・
後ろの方で轟音を聴きながらタバサは玄関を抜ける。
「やはりだ、ここに真っ先に来たのは我が姪ではないか!」
するとそこには、自分の父親を謀殺し、自分の母親の心を壊した張本人であるガリア王ジョゼフがいた。
その隣にはシェフィールドがいるが怒りでどうでもよくなっている。
「これはこれは・・・賭けは私の負けでしたわね。ここには真っ先に魔王が来るかと思ったのですが」
「今まであの魔王の何を見て来ていた?この局面では真っ先に自分が囮になるであろう」
「物語の魔王とは身なりや話まで違うのですね。まさかこんなに人間臭いのが魔王だなんて」
「言うな、その事については私もがっかりだ。だが、もっと興味がわいたのも事実だ。人間臭い魔王?実に結構!ありきたりでは面白くない!そうとは思わないか?」
タバサの事などすでにどうでもいいとばかりに、ラハールの事を話しているこの二人にタバサの怒りは頂点に達していた。
こいつは、散々こっちをもてあそぶだけ弄んだのだ、それなのにもう殺すつもりもないとばかりに別の事に熱を上げている。
そんなものは納得など出来るはずもなければ、理解するつもりもない。
「ふざけないで・・・!」
そう言うと、体から今までではありえない程の魔力があふれだす。
その怒りでトライアングルメイジだったタバサは、スクウェアメイジの位になる事が出来たのは、なんとも皮肉な話である。
「ほう、怒りでスクウェアクラスになったか・・・なんだやればできるではないか、ただの小娘と思っておったがなかなか楽しませてくれる。それで、私をどうしてくれるのだ?」
「殺す!」
「私を殺す?なるほど、いいだろう。外の魔王が来るまで暇だと思っていたところだ、少し相手をしてやろう。あまり速くに倒れてくれるなよ?」
「【ジャベリン】!!!!!!!!」
今までの【ジャベリン】とは比べ物にならない程の威力とスピードでジョゼフに向かって飛来する。
ガリア王ジョゼフは、メイジではあるが、ルイズと同じく魔法はまったくと言うほど出来ないと聞く、これを防ぐすべはないだろう。
実際、ジョゼフではジャベリンを防ぐことは不可能で、シェフィールドも防ぐことは不可能。
32 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:52:53.29 ID:zfnIasvb
これで終わったと思ったが、いきなりジョゼフがその場から消え、タバサの放った【ジャベリン】は屋敷の屋根だけを貫いていた。
何が起こったのかが全く分からないタバサは硬直をするが、後ろで声がして急いで振り向く。
「なかなかの威力だが・・・・当たらなければ意味がないぞ?」
「!?」
消えたと思ったジョゼフが後ろに立っていた。
【ウィンディ・アイシクル】の魔法を即座に放つが、結果は同じで、ジョゼフはその場から消え、今度は真正面に現れ、いつのまにか持っていたナイフを振り下ろして来る。
ナイフを避けようとするが、少し抉られる。
だが致命傷ではない、すぐに【エア・ニードル】の魔法で突き刺そうとするが当たらない。その後も魔法で攻撃を繰り出すが一向にジョゼフには当たらない。
タバサの魔力が限界に近づいてきたところで、ジョゼフがこう言ってくる。
「頑張るではないか、正直私はお前を舐めていたよ。いや、実に愉快だ。だが、それだけだ、興味が持てん。終わりにしてやろう、何、お前の母親もすぐに後を追わせてやる」
身構えようとした所で、自分の体が痺れて体がいう事が利かない。
どうやら、ナイフに痺れ薬でも塗られていたのだろう。
眼も霞んできたと言う事は毒も塗られている可能性が高い。
そんな事を考えていると、ジョゼフの姿が消える。
これで終わりかと思ったが、自分の後ろでガキィンと甲高い音が鳴った。
動かない体を無理やり動かして後ろを見ると、ラハールがデルフリンガーとは別の剣でジョゼフのナイフを受け止めていた。
「あぁ、あなたは素晴らしい。掛け値なしに素晴らしい!!これは実にいいタイミングだ。あなたは魔王ではなく正義のヒーローか何かか?」
「馬鹿を言うな、オレ様は正真正銘の魔王だ」
「そうでなくては面白くない!しかし、まさか私の加速の魔法以上のスピードで動くとは」
ラハールは、屋敷をぶち抜いた氷の槍を見て。
何かよくない予感がし、今まで虚空に消していたエクスカリバーを取り出し、残っている敵をオゾンに任せて自分だけ来たのだ。
【ガンダールヴ】のルーンとエクスカリバーの本当の力のおかげで、なんとか全盛期の半分ぐらいの力は出せると言ったところだ。
それでもこの世界では敵なしの強さを有しているのだが・・・・
「よく分からんが、勝手に盛り上がるな気持ち悪い!」
ジョゼフのナイフを弾き飛ばし、斬りかかるが、加速の魔法とやらのせいか避けられる。
「チッ・・・なんだあの魔法は」
「この魔法ですかな?簡単です、これが虚無の魔法という奴ですよ」
「虚無だ〜?」
「えぇ、これが第0系統の魔法虚無・・・まあ、あなたの全力に比べれば遠く及びませんがね」
「そう言えばそこの女が、オレ様の事を虚無の担い手の使い魔とか言っておったな」
「えぇ、あなたの主も虚無の担い手の一人です。まあ、今は虚無の魔法を一つとして使う事が出来ないでしょうがね」
「それで、オレ様がその虚無の使い魔とやらだからオレ様に喧嘩を吹っ掛けたのか?」
「いえいえ、私にとって虚無だのなんだのはどうでもいいのですよ。ただ私は飽いている、たったそれだけの事ですよ。そんな時にあなたを見つけた時には心踊ったものですよ」
「あぁ?意味わからんことを言うな!」
「意味が分からんでしょうが、これは簡単な事なのですよ・・・まあ、今回はこのぐらいにしておきましょう。ここで色々を終わらせるのは簡単ですが、それでは面白くない」
「言っておくが逃がす気は毛頭ないぞ?貴様にはきっちり落とし前をつけてもらう」
「おぉ怖い怖い・・・ですが、いいのですかな?そっちの小娘を放っておけばあと数分もすれば死にますぞ?ここで私に構っている暇はあるのですかな?」
33 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:54:35.16 ID:zfnIasvb
チラリとタバサを見ると、息もたえだと言った感じで、ジョゼフの言っている事もあながち嘘ではなさそうだ。
「まあ、今回はこちらもロクなおもてなしが出来なかったのもあるので、少々サービスをさせていただきましょう」
「サービスだ〜?」
「えぇ、まず今回の事はこちらで無かった事にしましょう」
「ほ〜そりゃあよかったな相棒、そうしてもらわなかったらオイラ達はたぶんお尋ね者だぜ」
ラハールの背中に背負われている鞘から刀身をのぞかせたデルフが言う。
そんな事は全然考えていなかったラハールは今その事実に気がつく。
そんなラハールに、ジョゼフは薬瓶を投げ渡す。
「なんだこれは?」
「これはそこの小娘の母親の心を直す薬ですよ。さて、サービスはこんなものです。では、今回はこの辺で・・・また会いましょう」
その言葉を残して、ジョゼフは猛スピードでどこかへ消えて行った。
今のラハールならジョゼフのスピードに追い付けるだろうが、タバサの事があり今回は見逃すことにした。
シェフィールドに関してはいつの間にかいなくなっていた。
エクスカリバーを虚空に消し、タバサをオゾンの所に連れて行こうかと思ったが、オゾンも丁度雑魚の掃除が終わったらしく。
こっちに来たので、エスポワールとヒールをタバサにかけさせた。
タバサをオゾンに見せておいて、屋敷の中を探して、ようやく目的の部屋に着く。
タバサの母親の部屋である。
部屋に入ると、実にぐっすりと寝ている女と、こっちを見てびっくりしている執事がいた。執事の方に色々説明し、女に薬を飲ませ外に運ぶ。
外に出ると、タバサがシルフィードを屋敷の前に呼び出していた。
タバサはすぐに母親の元に駆け寄り無事を確認する。
そうこうして、シルフィードで一度魔法学院に戻る事になった。
執事とタバサの母親を魔法学院に置いて行くからだ。
最初ラハール達はこのまま直でアルビオンとやらに行こうとしていたのだが、タバサも一緒に連れて行ってくれと言ったのだ。
タバサには別に来なくていいと言ったのだが、アルビオンへどうやって行くのか分かるのかと聞かれて何も言えなくなった。
シルフィードの背中で移動している時にタバサが話しかけてきた。
「今日はありがとう」
「悪魔にありがとうなどと言うな気持ち悪い」
「うん・・・・」
「ところでタバs」
「シャルロット」
「ん?なんだそれは?」
「私の本当の名前」
「そうなのか?しかし、それだからなんだと言うのだ?」
「あなたには本当の名前で呼んでほしい」
「・・・・?別にそれは構わんが?」
ラハールには、女心という奴が全くと言っていいほどわかってないのか、これと言って何か感じたわけではない。
だが、それでもシャルロットの方はいいらしく、気にした様子もない。
「あと、これからはあなたの役にたたせてほしい。今日は色々助けられたから」
「それは別に構わんが、オレ様の家来になると言う事か?」
「そういう事でもいい、だからこれからは、どこか行く時私も連れて行って」
「・・・・フン、勝手にしろ」
「うん・・・」
その話を最初から最後まで聴いていたオゾンだが、そのままでは自分が面白くない。
34 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:55:01.42 ID:zfnIasvb
なので、ラハールの背中にいきなりくっ付きこう言う。
「ラハール、僕頑張ったろ?だからご褒美頂戴!」
「えぇい!いいからとりあえず離れろうっとしい!」
「別にいいだろ?」
「わかったわかった、何がほしいんだ?」
「もう!ラハールッたら女の子にそんな事言わせる気」
「何を頼もうとした!?」
「それはもう・・・」
「やっぱり言わなくていい、それより離れろ暑苦しい」
「えぇ〜これぐらいいいだろ?」
そんな事をしていると、ラハールの顔面すれすれに氷の矢が掠る。
「ちょ!?おいシャルロット!?何を・・・!?」
そこからは、魔法が飛び交うわ、オゾンは引っ付いてくるわでめちゃくちゃだった。
最終的にはシルフィードがやめてくれと懇願してようやく収まった。
だが、その騒ぎの中では確かに心を閉ざしていたはずの少女の笑顔があった。
35 :
ゼロと魔王:2012/03/21(水) 13:56:27.27 ID:zfnIasvb
今回はこの辺です。
次回からアルビオン王家の話になる・・・かもしれない
という事で、次回まで気長に待っていてください
諸々乙!
>>27 トゥルーEND後っぽいからあるんじゃない?
37 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:16:16.89 ID:ASM3v6DN
誰も居ないので投下
38 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:20:04.25 ID:ASM3v6DN
39 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:20:55.47 ID:ASM3v6DN
「さあ、話してもらうわよ、あんたが何者なのか」
ルイズの私室。彼女は召喚したニャンコ先生に詰問していた。
自称名の知れた”だいようかい”ボールに手足が生えた短足のインチキ猫。
その本来の姿は神聖で美しく強力……らしい。
食い意地の張った姿からは本来の姿など到底想像もできない。
そこらのこじきの方がよっぽどマシな嘘を付く。
「ふんっ、此方が聞きたいわ。散歩しておったらいつの間にか此処にきておる。
そしたら名前も知らない奴に呼び出されて下僕になれと、随分と都合がいい話だ」
「やっぱり喋れるじゃない、猫かぶり」
好きな食べ物はエビ、イカ、酒。
ネコにもかかわらずエビとイカが大好物である。炒めたタマネギも食べるようだ。
不確定名称謎のブサイク生物と呼ぶが正しい。
ついでに口も達者で、よく動く。ビンの蓋だって捻って空けるし、ドアさえ開ける。
ダルマみたいな姿して猫のごとく機敏だ。
「まあ…な、”この世”でも猫は人間に喋らないものだろう?」
「ええ、まあ、そうね。使い魔とメイジは魔力で繋がっているものだから、互いの意思が伝わるわ」
「広場に居た金髪の小僧とモグラや、赤髪の女と火トカゲみたいなものか」
「そういうこと、でも基本的にメイジと使い魔以外で意思疎通が出来ないの。
だからあんたみたいな人語を話せる使い魔は異質なの」
口が生意気なのを除けば、この上なく優秀な使い魔だ。
だが、この猫は異質を通り越して異常だった。
契約者と使い魔は契約によって魔力の繋がりが出来る。
流れ込む魔力により使い魔の五感が強化されたり、感覚の共有が出来る。
知能さえ上がるといわれている。
40 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:21:46.95 ID:ASM3v6DN
「なるほどな、だがそれがどうかしたのか、喋る猫が居たところで問題はなかろう?」
「大有りよ!普通じゃないの、喋る猫は異常なの!異常な使い魔を呼んだ私も異常者よ!
しかし、魔力の強化は元あるものを強めるだけだ。
毒を食べられるようにしたり、猫が人語を話せるよう出来るものではない。
つまり、元々それらが出来る謎の超ブサイク生物を呼び出したか、
魔法を掛ける際、事故で書き換わってしまったかだ。
召喚は”この世”の何処かにいる、召喚主に合った生物が呼び出される。
「『微熱』のキュルケは火竜山脈のサラマンダーよ
ギーシュですらジャイアントモール、どうして私だけ、ああ頭痛い」
前者なら本来ありえない世界から呼び出してしまったことになり、後者なら魔法失敗である。
生まれて初めて成功した”まともな魔法”
これで魔法成功『ゼロのルイズ』を見返してやれる!と思ったのに失敗した。
学院中の予想通りに。
「『ゼロのルイズ』だからって馬鹿にされるのよ!あんたが普通の使い魔だったらよかったのにっ」
「やはりか、うーん、似ているのう」
「誰よ」
猫は頭からつま先まで値踏みするようにゆっくりと見て、得心したよう頷いた。
ルイズは猫にくってかかるも、猫の機敏な動きでかわされてしまう。
「前にルイズと同じような奴がおっての、そ奴も自分の異常を気に掛けておった。
猫の真似をしたのは、私なりの気遣いだ。異質であると、困るのであろう?」
「あんたに何が判るってのよ」
41 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:22:19.20 ID:ASM3v6DN
「異常扱いされて周囲から孤立しておるのだろう?
それで自身の力に対して恐れ、必要以上に卑屈になっておる」
猫はじっとルイズを見つめた。
胸の内まで見透かされているように感じる。
悔しいが返す言葉も無い。
「……くっ」
「ふむ、あたったか」
「これからはニャンコ先生と呼ぶのだ、私には名がある」
猫は尊大で自信に満ちていて、まるで先生みたいだと思った。
猫に教授される自身を想像して頭が沸騰した。
「せ、せんせい。ヴァリエール家の貴族が、猫っぽい超変な何かの生物にせん…せい」
「こう見えて人より遥かに長い時を生きている。
小娘のお前に呼ばせるにはちょうどいい、……それに、私はこの名を気に入っている」
「ふ、ふ〜ん、ニャンコ先生ね」
名門貴族の誇り、召喚主の意地、猫に説教される人間としての姿。
羞恥でルイズは悶えそうになった。
ああそうだ、メイジと使い魔の上下関係は初めが肝心とちぃねぇさまが言っていた。
わたしがしっかりしないと。
「わたしはメイジであんたは使い魔、使い魔はマスターの言う事聞かなきゃいけないの」
「ほほう、いつ契約をしたのだ?」
わたしと契約しておいて覚えがない、と来た。
どうしてくれようこのデブ猫。
42 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:23:02.18 ID:ASM3v6DN
「あ、ああああの時のキスよ、契約したからわたしの言うこと聞かなきゃいけないの!」
「ふんっ、陰陽師共の式神に似たアレか」
「そ、そうよメイジには従わなきゃいけないんだからっ」
更に猫は”おんみょうじ”とかわたしの知らない魔術用語まで知っていた。
全て理解してますよみたいな落ち着き払った生意気な態度。
気に入らない、使い魔には使い魔らしい態度で!
これは躾よ、躾なんだから!
「契約とは双方の合意があって成り立つものだ」
「キスしたでしょ」
「ん?ああ接吻か、夏目が同じことをしていたな。真名を呼んで口付けをするんだったか」
「文句ある?」
答えたブタ猫は不満そうだった。
「対価だ」
「えっ?」
「契約の対価が見当たらんのだが。
式神の契約でよくあるのは血や命だのう、的場の奴は片目をくれてやっていたか
力には責任が伴う、私を従えるにはそれなりのものでないとの?
それともお前が力で従わせるか?」
ななな、なんてあつかましいの。
わたしのファーストキスをくれてやって、栄誉あるヴァリエール家の使い魔になって
まだ足りないのかしら!
契約に手足をブタ猫にくれてやるだなんて、ずうずうしいにもほどがある。
「わたしが呼び出して、あなたが答えて呼び出され、契約のキスをした。
それで十分じゃない、下僕にくれてやるものなんか一片たりともないわ」
「むむむむむ」
デブ猫の顔が赤くなった。
白いボールに生えた短い手足がばたばたと動く。
自称格の高い”あやかし”らしいが、全くそうは見えない。
使い魔はメイジの小間使いだ。
43 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:23:42.94 ID:ASM3v6DN
「何よ、やる気?だっ、だったら力づくで従わせるまでよ。デブ猫なんかに……負けないんだから!」
くれてやる必要もないし、くれてやる気もない。
わたしは杖をデブ猫に向けた。
メイジの力を見せ付けてやらないと、わたしだって出来るんだから。
「下手に出ておれば、つけあがりおって人間」
デブ猫の口調が変わる。威厳に満ちた低い声。
部屋に立ち込める煙は瞬く間にルイズの視界を奪った。
「ひっ、ひいっ」
煙が晴れた先、あったのは部屋一杯の巨大な顔。
狼にも似た巨大な白い獣が牙を剥き出しルイズを睥睨していた。
「協力して欲しいなら誠意が欲しいところだ、さもなくば頭から喰らうてしまうぞ」
頭一杯に猫だったものの大声が響く。
思念を頭の中に叩き付けられたのだ。
部屋にはをわたしを一呑み出来そうな巨大な魔獣、窓と扉は巨体の向こう。
逃げ場はない。
今、わたしは使い魔に殺されようとしている。
ルイズは手にした杖を落とした。
「い、いやっ」
ああ嫌だ、イヤイヤイヤ!どうしてわたしばっかり貧乏くじなのよ!
わたしは普通に魔法を使って、姉さま達みたいに普通の生活がしたいだけなのに!
嫌、嫌、嫌、だいっ嫌い。
「くくく、条件がある」
どこか楽しむように、そしてどこか困惑したように巨大な魔獣は言った。
「部屋付き三食昼寝付きでなら手をうってやろう。
もちろん食事は人間と同じものだぞ。私はグルメなのだ」
「もう嫌あああああっ」
ルイズの悲鳴が部屋にこだました。
44 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:24:42.99 ID:ASM3v6DN
夜明け。
ルイズは自室のベッドで布団にくるまり啜り泣いていた。
情けなさで涙が止まらなかった。
(格の高そうな魔獣が、三食昼寝付きで協力してやるですって)
(誰が見ても対価が釣り合わないわ)
ルイズはニャンコ先生と契約した。
三食昼寝付きを保障する内容で、力ある、それも非常に格の高い魔獣と契約したのだ。
本来なら手足の一本、命の一つも差し出さなければいけない相手である。
協力してくれたのは気まぐれか……もしくは同情からであった。
ニャンコ先生はルイズと似た人間を知っているといった。
おそらく、前の飼い主なのだろう。
自分に協力しているのは単に似ているという薄い理由でしかない。
(使い魔にまで馬鹿にされて、同情されて、まるでわたしが役立たずじゃない)
(わたし、どうしてあんな使い魔と契約しちゃったのかしら)
本来なら、使い魔は召喚主の力を見せつけ従わせるもの。
おのれの力量では御しきれない力を持った使い魔。
自分の召喚した使い魔だと胸を張って言えないのが情けない、
もしかしたら、ニャンコ先生は事故で呼び出されてしまったのではなかろうか?
それともわたしが不勉強で術式を間違えたせいだろうか?
(わたしがゼロのルイズだから?魔法も使えないメイジだから?異常者だから?間違ったから?)
劣等感に苛まれるルイズであった。
「起きたかのルイズ、飯に行くぞ」
ベッドに転がっているとニャンコ先生が声を掛けた。
まどろんでいる内に朝になってしまったようだ。
45 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:25:23.07 ID:ASM3v6DN
「おはよう、ニャンコ先生。逃げてなかったのね」
マスターの無力に落胆して出て行くかと思っていた。
思い返せば、ニャンコ先生の言動にはわたしを試している部分が多々あった。
「出て行くなら何時でも出来る、此処にいるのは気まぐれかの」
「どうしてわたしに協力してくれる気になったのかしら」
「ルイズと似た人間達を知っておる、私はそれを放ってはおけんのだ」
「……ぐっ、同情ならいらないわよ」
いつかニャンコ先生に認められるマスターになりたいと思った。
「ん〜〜っ、なんとなくお前が気に入った。
察するにルイズは陰陽師の同類であろう?荒事は向いてないはずだ。
呪文を唱える間は守ってやろう」
「ふんっ、お、お願いするわ」
わたしは無力だ。
でも、残ってくれたニャンコ先生が少し嬉しかった。
46 :
ルイズ友人帳3:2012/03/21(水) 21:26:39.22 ID:ASM3v6DN
投下終わり
第6話です。投下開始します。
広い広い草原でわたしは巨大なゴーレムと対峙していた。
必至で振るけど、私はゼロのルイズ、爆発しか起こらない。
その爆発にも巨大なゴーレムにはまるで効果はなくって。
やかましいとでも思ったのか、ゴーレムは私に向かって殴りかかってきた、もうだめかと思った時に目の前にゆまが現れた。
赤い結界を張ってその殴りに因る攻撃を受け止めている。
「ルイズお姉ちゃん、逃げて!」
「嫌よ! 敵に後ろを見せないものを貴族と呼ぶの!」
「そっか、そうだね、ルイズお姉ちゃんは貴族だったね」
そう言ってゆまは何処かから出した長い槍で、殴りかかるゴーレムの腕を叩き切って跳躍した。わたしはそれを唖然として見ながら、コレなら湯までも巨大ゴーレムを倒せるかもしれないと期待をした。
でも、わたしの期待に対してこちらに向かって振り向いたゆまは、悲しそうな表情でリボンを解いてわたしに渡してきた。
「お姉ちゃん、コレをわたしだと思って、元気でね」
え?
「一人ぼっちは寂しいよ、一緒にいられなくてゴメンね!」
そう言ってわたしはゆまがルーンをかざして巨大ゴーレムにツッコんでいくのが見えた、その身体から強大な光が発したかと思うと。
わたしは爆風によって吹き飛ばされた。
何処まで転がったかはわからないけれど、気がつくと何処にもゴーレムの姿もなく、ゆまの姿も消えていた。
このリボンを残して。
「ゆま、ゆま、ゆまぁあああ!!!!!!!」
わたしは錯乱しながら歩き出す。
なにか無いか、何かないかと思って歩き続ける。
「ゆ……ま……」
見つかったのは彼女の左手だった。
完全に宝石は黒くなっていて輝きはなくなっていた。
私はその冷たくなってしまった手を抱きしめて泣きに泣いた。
「うわぁぁあぁぁあああああああああああぁあああああああああああああ!!!!!」
ふと気がつくと私はベッドの上にいた。
ゆまも隣で眠っている。
「……夢……?」
わたしは夢を見ていた。
白い白い何もない世界。
わたしはふわふわと浮いているようで、身体の自由がきかない。
「ここ……どこ?」
「ここは円環の理……みたいなところかな」
「あなたは……だれ?」
目の前にはルイズお姉ちゃんと似た髪の色をした、ツインテールのお姉ちゃんが立っていた。
「わたしはまどか、あなたは千歳ゆまちゃんだね」
「うん」
「わたしは、あなたの未来を知って、緊急でやってきました」
「わたしの未来?」
「早速だけど、ゆまちゃんにはほぼすべての魔法少女の能力を持ってもらいます」
「ほへ?」
「この力でルイズちゃんを守ってあげてね」
わたしの身体が光りに包まれた。
どういうことだろう? 手を覗き込む、特に変わったことはなさそうだ。
「またね、ゆまちゃん……いつか」
わたしが目を覚ますとルイズお姉ちゃんに抱きしめられていた。
「ふわ」
「ゆま、よかった……」
「お姉ちゃん?」
「うんうん、夢だって分かってるけど良かった……」
強くギュッと抱きしめられていて身動きが取れない。
と、左手を覗くと盾みたいなのが付いていた、真ん中には砂時計みたいのが付いている。コレは一体何だろう?
「それよりもお姉ちゃん離し……って、なんか騒がしくない?」
「なにかしら?」
と、ここでノックがされる。
答える前に、ドアが開かれて顔を出したのはタバサお姉ちゃんだった。
「ふたりとも、起きた?」
無表情に見えるけれど、ちょっと慌てている様子。
私達は顔を寄せ合って着替えていないことに気がついた。
「……もう少し準備に掛かりそう」
「急ぎの用事なの?」
「……コルベール先生に呼ばれている」
「ゆま、急いで準備するわよ」
昨日の件は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
生徒先生問わず盗まれた宝物庫の剣のことについて会話をしている。
宝物庫に向かうまでに、唯一の目撃者であるということで呼ばれたことをタバサお姉ちゃんから説明され納得していると。
確かに宝物庫は昨日の巨大なゴーレムの攻撃によるものだろう、大きく口を開いたようになっていた。
その前に先生たちが集合して同じように口を開いていた。
壁には土くれのフーケの犯行声明が刻まれている。
『破壊の杖、確かに領収しました、土くれのフーケ』
こりゃすごいことになってるなと思っていると、隣にいるお姉ちゃんはちょっと眠そうであくびをこらえている様子だった。
「土くれのフーケ! 貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か、魔法学院にまで手を出しおって、随分なめられたもんじゃないか」
「衛兵たちは何をしていたんだね!」
「衛兵など当てにならん! 初戦は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」
あんな巨大なゴーレムに攻められたら、どんな人だって逃げ出しちゃうだろうなって思った、ルイズお姉ちゃんは早くも船を漕ぎ始めている。
確かにちょっと退屈な会話だもんね。
「この通り族は大胆にも忍び込み、破壊の杖を奪っていきおった。つまり我々は油断して追ったのじゃ、責任があるなら我々全員にあるといわねばなるまい」
さすが学園長先生、この場を簡単に収めちゃった。
「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この二人です」
私は使い魔なので人数に入っていないみたいだ。
タバサお姉ちゃんとルイズお姉ちゃんが前に出てきた。
「ふむ……君たちか」
学園長先生は興味深そうにわたしを見つめた。どうして自分がそういうふうに見られるのかわからなかったから私は首をかしげた。
「詳しく説明したまえ」
ルイズお姉ちゃんが前に出て説明をする。
「大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗っていた黒いメイジがこの宝物庫の中から出てきて何かを、それが破壊の杖だと思いますけど、盗み出したあとまたゴーレムの方に乗りました、その後のことはよくわかりません」
「ふむ、あとを追おうとも手がかりは無しというわけか」
学園長先生はヒゲを撫でた。
「時に、ミス・ロングビルはどうしたね」
「それが朝から姿が見えません」
「この非常時に、何処に行ったのじゃ」
「どこなんでしょう」
といっていると、そのミス・ロングビルさんらしき人が現れた、
「ミス・ロングビル! 何処に行っていたんですか、大変ですぞ、事件ですぞ!」
それは見れば分かると思うけど。
「申し訳ありません、朝から調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ、今朝方、起きたら大騒ぎではありませんか、そして宝物庫はこのとおり、すぐに壁にフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知りすぐに調査をしました」
そんな怪盗だったんだ。
確かにでっかいゴーレムを操ってこんなに派手に破壊工作をしていれば、少しは有名な怪盗さんになるかもね。
「仕事が早いのミス・ロングビル」
「で、結果は」
「はい、フーケの居所がわかりました」
「誰に聞いたんだね、ミス・ロングビル」
「近所の農民に聴きこんだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです、おそらく彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
朝から仕事をしてた農民さん見つかるほど、目立つ怪盗さんだってことなんだろうか。
「黒ずくめ……それはフーケかな、ゆま」
わたしに問いかけられてもちょっと困る。
「うーん、それだけじゃフーケだって断定できないんじゃない?」
「……私もそう思う」
「とにかくその廃屋は、徒歩で反日、馬で四時間の場所にあるとか」
「すぐに王国衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
「ばかもの、王国なんぞに知らせておっては、フーケは逃げてしまうわ! その上身にかかる火の粉を己で振り払えぬようで何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた、コレは魔法学園の問題じゃ! 当然我らで解決する!」
と、ここで学園長先生は咳払いをする。
「では、捜索隊を編成する、我と思うものは杖をあげよ!」
誰も上げない、確かにだれだってあのおっきなゴーレム相手に格闘をするのは怖いだろう、私もティロ・フィナーレの他に、まどかさんに貰った能力……は、何なのかわからないけど、とりあえずあるみたいだから立ち向かえられそうだし。
「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようとする貴族はおらんのか!」
わたしの隣にいたルイズお姉ちゃんがすっと杖を上げた。
わたしは杖を持ってなかったけど出てくるかな、と思ってソウルジェムから杖よ出てこいと願ったら出てきたのでそれを掲げた。
「ミス・ヴァリエール!」
シュヴルーズ先生が驚いた声を上げた。
「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて」
「誰も掲げないじゃないですか!」
お姉ちゃんはきゅっと唇を固く結んで言い放った。唇をへの字に曲げて、真剣な瞳を向けたルイズお姉ちゃんは凛々しく格好良かった。
コレなら誰にも負けない、そんな意志を全身から放っているようだった。
それを見てタバサお姉ちゃんが杖を上げた。
「ゆまが上げているから」
「タバサお姉ちゃん……」
「そうか、では頼むとしようか」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険に晒すわけには!」
「ではキミが行くかねミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ、わたしは体調が優れませんので……」
「魔法学園は、諸君らの努力と貴族の義務に期待をする」
ルイズお姉ちゃんとタバサお姉ちゃんは、真剣な顔つきになって直立すると「杖にかけて」と同時に唱和した。それからスカートの裾をつまみ恭しく礼をする。
わたしもとりあえず真似して頭を下げた。
「では、馬車を用意しよう、それで向かうのじゃ魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル」
「はい、オールド・オスマン」
「彼女たちを手伝ってやってくれ」
「もとよりそのつもりでしたわ」
わたし達は、案内役だって言うミス・ロングビルと一緒に早速出発した。
馬車といっても、この前ルイズお姉ちゃんが用意をしたような、屋根がついた豪華なものじゃなくてリヤカーみたいな感じだけど。
襲われた時に外に飛び出せる方がいいということでこのような馬車にしたってタバサお姉ちゃんが教えてくれた。
馬を操るのはロングビルさん。
「でも、馬で4時間もかかってたら逃げられちゃうかもね」
と、わたしが言うと。
「そうねえ、新しい泥棒先に行ったりねえ」
と、ルイズお姉ちゃんが続ける。
タバサお姉ちゃんは本を読みながらわたしたちの話を聞いている様子だ。
「それに、フーケが彼だって言ってたけど、あんなローブじゃ性別わかんないよね」
「そうねえ、農民だから目が良かったのかしらね」
「そうでしょうね、村で一番だそうですよ」
ロングビルさんが付け加えた。
「そういえばゆまは、何か左手に付いてるけどそれなあに?」
「うん、わたしもよくわからないんだけど、まどかさんって人に貰ったの」
「いつ?」
「夢の中で」
「夢か……」
ルイズお姉ちゃんが遠い目をして、何かを思い出している様子だった。
馬車は深い森の中に入っていった、鬱蒼とした森で、逆に飛び出せるようにしたのが失敗だったようにしか思えなかった。
「此処から先は歩きましょう」
ロングビルさんが言った。
私達も警戒を怠らないようにしながら馬車から降りる、それと同時に私は変身を開始した。
森を通る道から、小道が続いている。
わたし達は開けた場所に出た、森の中の空き地って言った感じだっった。学園の中庭と同じ程度の広さが広がっている。
真ん中に確かに廃屋があった。私達は見えないようにしながらその廃屋をじっと見つめた。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
ほんとうにあの中にいるのかな?
「あの中に暮らしているの?」
「人気がなさそうね」
「……悪人はそういう場所を使う」
「そうね」
タバサお姉ちゃんはちょこんと星座をして、皆に自分の立てた作戦を説明するために枝を使って地面に絵を書き始めた。
まず偵察兼囮が小屋のそばに赴き、中の様子を確認する。
そして、中にフーケがいればコレを挑発し外に出す。
小屋の中に、あの巨大なゴーレムを作れるほどの土はない。
外に出ない限り、得意の土ゴーレムは使えないのであった。
そして、フーケが外に出た所を魔法で一気に攻撃をする。土ゴーレムを創りだす暇を与えずに集中砲火でフーケを沈める。
これが、タバサお姉ちゃんの作戦だった。
「じゃあ、わたしが偵察をするね」
「ゆま! ……むむう、他に適任者がいないわね」
「……危険があったらすぐに引く」
私は魔力を使って加速をした、気がついたらできるようになっていたのだ。ひとっ飛びに小山で近づくと窓から中をチェック、何もない事を確認すると、扉から中にはいった。
薪が積まれた場所の近くにチェストがあった。
「とりあえず皆を呼ばないとね」
わたしは外に出て、皆を呼んだ。
「こりゃあ、唯の小屋ね、ハズレだったのかしら?」
「……怪しいチェストがあるくらい」
「まさか中に破壊の杖が入ってたりしないよね?」
「あはは、まさか」
皆でチェストの中を確認した。
これ、ティロ・フィナーレの時に使うロケット砲に似てるけどちょっと違う。
「そういえば今日はフリッグの舞踏会ねー」
ルイズお姉ちゃんが現実逃避を始めた。
何日も前から楽しみにしていたのを私は知っている。
ダンスパーティと聞いていたから私は参加するつもりはないけれど、ルイズお姉ちゃんは存分に楽しんで欲しい。
「辺りを偵察してきますね」
ロングビルさんは仕事熱心だ。
きっと何処かに潜んでいるフーケを捕まえようってことだろう。
なんて騙されない。
わたしはこのあとの展開を魔法によって視たから!
「タバサお姉ちゃん、ドラゴンを呼べる?」
「……? ええ」
「それに、ルイズお姉ちゃんを載せて欲しいの、いいかな?」
「……ゆまの願いなら、承知」
外に出ると巨大なゴーレムが姿を現していた。
わたし一人地上に残ってゴーレムと対峙する。
「無茶しないでよ! ゆま!」
ルイズお姉ちゃんの声がする。
わたしはしっかりと頷いた。
「キミの動きは全部視えてるよ! 未来予知でね!」
ゴーレムの攻撃をかわしながら、剣を飛ばしたり、鉤爪を飛ばしたり、やりを飛ばしたり、弓で攻撃したりする。
「火力が足りないかな」
手に持った槍で、助走をつけながら跳躍して腕を叩ききる!
「でもまだまだわたしには攻撃方法があるんだよ! トネール!」
手に持った剣に雷を含ませてそのままぶった切った!
しかしまだどうやら動くらしい、わたしは油断せずにマミお姉ちゃんの最終兵器を出した。
「とどめだよ、ティロ・フィナーレ!」
巨大な砲弾がゴーレムに直撃して爆散した。
それを見届けてドラゴンが地上に降りてくる。
ルイズお姉ちゃんが抱きしめに来てくれた。タバサお姉ちゃんもこちらを見て微笑んでいる。
「このまま帰っちゃう?」
「え、ミス・ロングビルは?」
「きっと彼女は戻ってこないよ、あの人がフーケだからね」
わたしは未来が視えることを説明しつつ、ロングビルさんの発言の矛盾点や変な所を上げて彼女を犯人に仕立て上げた。
ただ、タバサお姉ちゃんたちは信じてくれるけど、学園長先生とかは信じてくれないだろうなって思った。
アルヴィーズの食堂の上の会が大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われた。私はバルコニーの枠に持たれて、華やかな会場をぼんやりと見つめていた。
中には着飾った生徒や教師たちが、豪華な料理が盛られたテーブルの周りで歓談している、その中にはルイズお姉ちゃんも含まれていた。
フーケは捕まえることは出来なかったけど破壊の杖を戻すことはできた、とりあえずはそれで十分だということにした。
ミス・ロングビルはきっと学園には戻ってこないだろう。
それと同じように私は元の場所には戻れないだろうと思った。
なんとなくだけども。
次に起こる事件まではゆっくりしよう。
わたしは視えた未来に苦笑いをしながらゆっくりとジュースを飲んだ。
投下終了です。
他の作者さんたちも乙でしたー!
ダブルおつにゃん
乙
しかしゆまちゃんがチートすぎるような
うおっ、いっぱい投下が来てて感想が追い付かん(笑)
>>1や作者さん達乙っす
猫ども乙
久々の祭りだ
ティロフィナーレ乙
ご主人様にゃん
60 :
一尉:2012/03/22(木) 01:44:01.85 ID:P/TJpz/r
ジェイコブを召喚にするルイズ
原作見たこと無いけどニャンコ先生かっけぇな
そのニャンコ先生を拳骨一つでぶっ倒す夏目さんマジ男前。
予約も無いようなので11:10頃から小ネタ「新兵の使い魔」を投下します。
64 :
新兵の使い魔:2012/03/22(木) 11:10:53.70 ID:miKQm1ww
「それじゃぁさよならだ。短い間だけど、割と楽しかったよ」
それだけを言うと、ロングビル…いや、今や世間を騒がす怪盗、土くれのフーケは破壊の杖をゆっくりとルイズたちに向けた。杖は手放してしまっているので、魔法は使えない。
最早、打つ手はない。キュルケは観念して目を瞑った。タバサも、ルイズも同じだった。ただ一人、ルイズの使い魔であるアービンだけは瞑らなかった。
「…へぇ、度胸があるね」
「いや、そういうわけじゃない。それよりもロングビルさん…いや、フーケさんかな?…どうしても、かい?」
「残念だけどね、命乞いは聞けないよ。アンタの事はそう嫌いじゃないけどね」
「俺も残念だよ…それじゃ、貴方の負けだ。フーケさん」
その言葉と同時に、アービンは素早く動いた。足元のデルフリンガーに手を伸ばす。
無論、フーケはそれを指を咥えて見ているような馬鹿でもお人好しでもない。
「動くなと言ったろ!」
その言葉と同時に躊躇いなく破壊の杖の引き金を引いた。だが、何事も起きない。
「そ、そんな?何故?」
予想外の出来事に、狼狽の言葉と共に、思わず破壊の杖を覗き込む。それが致命的だった。
視線を戻した時には既に、限界まで引き上げられたスピードでアービンが突進してきていた。
「それは魔法の杖なんかじゃない。俺達の世界のありふれた武器…ただのロケットランチャーさ」
アービンのその言葉の意味が分かる人間は他には誰もいなかったろう。デルフリンガーの柄を腹にめり込まされ意識を失ったフーケはそれを聞く事も適わなかったが。
学院に戻ったルイズ達は、フーケを捕らえ、破壊の杖を取り戻した功績により、オールド・オスマンからシュヴァリエに推薦される事になった。
だが、一番の功労者であるアービンに対しては、貴族でないということもあり、何の報酬も与えられなかった。
その事にルイズは引け目を感じたが、学院長の決定でありどうする事も出来なかった。
夜になり、予定通りフリッグの舞踏会が華やかに開始された。勿論、今夜の主役は一躍英雄となったルイズ達であった。
キュルケは、手馴れた様子で次々にやってくるダンスの申し込みを優雅に捌いていた。タバサは、舞踏会に目もくれず、料理と格闘していた。
そしてルイズは、ダンスを申し込む男達に囲まれていたが、誰とも踊る気は無さそうだった。
まぁ、急に掌返しされても今まで散々からかわれてきたのだから、まともに相手にする気になれないのは当然だろう。
その様子をアービンはバルコニーでワインを片手に一人で黄昏ながら眺めていた。
と、その目が細められた。やっと男達の輪の中から抜け出したルイズが近付いてきたのだ。
ルイズは、ロングビル…いや、フーケを捕らえた時から、そして今もアービンの表情にどこか翳りが差していることが気になっていた。
舞踏会に出ればアービンの気も紛れるのではないか、と思ったのだがどうもそうではないらしい。
一人で佇むその姿はフーケを捕らえた時とは同一人物とは思えないほど儚げで、声を掛けずにはいられなかった。
65 :
新兵の使い魔:2012/03/22(木) 11:13:29.80 ID:miKQm1ww
「…舞踏会は退屈かしら、アービン」
「どうしたんだ、ルイズ。主役がこんな所に来てる暇は無いだろう」
「ふふ、相手をしなくちゃならない主賓が居るわけじゃないもの。構わないわよ。
それよりも…その…御免なさい、アービン。私達を助けてくれたのに、貴方にだけ何も無くて」
「別にいいよ。何かが欲しくてやったわけじゃないし、君達が無事で良かった」
「でも、何かずっと落ち込んでいるように見えるわよ。…もしかして、フーケ…ロングビルのことが気掛かりなの?」
「…まぁ、仕方ないと思っているよ、あれだけの事をして、ルイズ達の事も手にかけようとした訳だし…流石に弁護は出来ないのは分かってるんだけど…
処刑される、となるとちょっと…ね。…甘いと思うかい?」
「そうね…甘いわね。…けど、良いんじゃない?こうして全員無事だったんだから、ね。少しくらいは同情しても良いわよ」
そこまで言ってルイズは少し迷ったが、更に踏み込んだ質問をした。
「で、落ち込んでるのはそれが原因なの?」
その問いに、アービンは暫く逡巡していたが、
「ああ、嫌な事を思い出しただけだよ。…いや、違うな。忘れられるわけが無い。結局逃れられないってのを思い知っただけか」
「ごめん、アービン。全く分からないんだけど…」
「…ルイズ、俺はね。ここに来る前は軍にいたんだ。戦争中でね。あのワイズダック…ああ、君たちがゴーレムと呼んだあれだよ。
あれに乗って闘っていたんだ。ある時、命令が来たんだ。近くにゲリラの拠点となっている村がある。だから…」
アービンの口調から、何を命令されたのかをルイズは容易に推察できたが、あえて続きを促した。
「だから?」
「村落を焼き払え。そういう命令だった」
予想通りだった。
66 :
新兵の使い魔:2012/03/22(木) 11:14:27.19 ID:miKQm1ww
「勿論俺は嫌だった。だから反抗した。俺は軍人である前に人間だ。そんな命令には従えない、ってね。けど…」
そこで、アービンは言葉を切った。その顔には苦渋の色が濃く表れていた。
ルイズは、黙って続きを待った。
「逆上した軍曹に殴られて気絶した。目が覚めたら…全ては終わった後だったんだよ。分かるかい、ルイズ。俺は英雄でもなんでもない。只の…能無しさ」
理不尽だ。ルイズはそう思った。アービンは間違ってはいないのに何故彼が苦しまなくてはならないのか。
だが、その事をどう言ったら良いか分からなかった。
「あの破壊の杖、あれはその戦争でありふれた武器でね…あれで狙われた事も一度や二度じゃきかない。だから、その事を思い出していた。
ここの暮らしは平和だったから、思い出さないように…考えないように過ごしてこられたんだけど…
やっぱり許されるわけがない、そういう事なんだな…」
どう言えばアービンが納得するのか分からなかったが、それでも、ルイズは思った事をそのままに口にした。
「随分酷いところに居たのね、アービンは。…分かったわ。それで苦しんでいたのね?
…けど、貴方、何も間違ってないじゃない。手を汚したわけでもないし、見殺しにしたわけでもない。
だったら、私が、許してあげるわよ。他の誰でもない、貴方のご主人様が許すと言っているのよ。
悲しむのは良いわ。後悔するのも仕方ない。
でも自分が許せないというのなら.それはむしろ傲慢だわ。貴方は神でもなんでも無いんだから、全て救う、なんて出来っこないんだもの。だから、許せないとか、許されないなんて思わないで」
「ルイズ…」
「ねぇ、踊りましょう?踊れば、少しは気も紛れるわよ」
「…俺、ダンスなんてやった事ないよ」
「大丈夫よ、あれだけ素早く動けるんだから。私に合わせてれば、格好はつくわ。
それに、多少ぎこちなくても今日の英雄に文句を言えるだけの働きをした人なんてここにはいないわよ」
そう言うと、ルイズは悪戯っぽく笑った。アービンも、それにつられて微笑んだ。そうして、二人は手を取り合ってホール中央へと歩いていった。
ちょうど楽師達がテンポの良い、新しい曲を演奏し始めた。月光がホールに差し込み、踊りに興ずる者達を柔らかく照らす。
「おでれーた。主人のダンスの相手をする使い魔なんて始めて見たぜ」
デルフが愉快そうに笑った。
ルイズの言った通り、ぎこちないながらも踊っている内にアービンは段々楽しくなってきていた。確かに、悪くない。そう思った。
この世界に不満がないわけじゃないけど、あのまま軍にいるより余程いい。それに…ルイズに許すと言ってもらえた時、自分でも驚くぐらいに救われた気がした。
錯覚かもしれない。何も解決してない、といわれれば確かにそうだろう。だが、今はこの安らぎを大切にしたい。
だから、きっとこれで、良かったんだ。ありがとう。感謝の気持ちをこめて、アービンはそっとルイズの名を呼んだ。
67 :
新兵の使い魔:2012/03/22(木) 11:16:19.95 ID:miKQm1ww
「ルイズ…」
「ああ?何だって?……おい?…チッ、事切れやがった。いい加減にしてくださいよ軍曹。
幾ら馬鹿相手でもちったぁ加減して殴れって何回も言ってるでしょうが。何人目だと思ってるんですか」
「うるせぇよ。戦場でこんなチキンのお守りなんてやってられるか。だったら早くいなくなったほうが後腐れねぇよ」
「ところで、ルイズって何だ?」
「女の名じゃねぇの?ったく、しまらねぇ最期だぜ。ま、こんなチキンが惚れる女なんざぁ、救いようの無いあばずれなんだろ」
「野郎共、おしゃべりはそこまでだ。目標地点に到着。機体状態を確認後、そのまま状況を開始する」
「イエッサー!」
鋼鉄の巨体の中で、そんな会話が行われた少し後、一つの村が消えた。報告によれば、ゲリラ掃討任務の際、新兵が一人戦死したという。
アービンが見たものは夢か、現か、幻か…その答えを知るものはもう誰もいない。
そんな事とは無関係に、今日も戦争は続く。そして明日も、明後日も…
68 :
新兵の使い魔:2012/03/22(木) 11:17:28.78 ID:miKQm1ww
というわけで、カプコンの色々ぶっ飛んだ格ゲー「超鋼戦紀キカイオー」からこれまたぶっ飛んだ「ワイズダックBADEDルートのアービン」を召喚(?)でした。
間違いなく格ゲー屈指の鬱エンド。夢オチなのにねぇ。タイトーSTGじゃあるまいしカプコンは何を考えてこんなEDを用意したのか…
嫌なモン思い出させるんじゃねぇ、という人いたらごめんなさい。
15:25頃から2時間目を投下します。
マチルダが赴任してから1週間。
「おっはよー♪」
元気な挨拶と共にりんが教室に入ってきた。
「わあ、リンそのワンピース可愛いー♪」
「えへへ、おニューなんだ♪ パンツもお揃いで黒だよーん」
ルイズ・りんの会話を聞いたマチルダは思わず手に力を入れ、羽根ペンのペン先を欠けさせてしまう。
(黒い下着!? 最近の学生はそんな物を穿いているのですか!?)
「どれ? 見せて見せてー♪」
目の前にある書類に集中しようと頭では思うものの、耳が勝手に3人の会話に傾く。
「じゃあちょっとだけ……」
その言葉と共にりんがスカートをたくし上げる気配に、マチルダは我慢できずそちらに振り向く。
「うっそぴょーん」
マチルダの目の前では、りんがそう言いつつスカートの下に穿いていたスパッツを見せつけていた。
『きゃ〜!!』
「?」
廊下を歩いていたコルベールは、教室内から聞こえてきた叫び声に首を傾げた。
「今先生パンツ見ようとしたあー」
「ちっ、違います! たまたま振り向いただけで……」
「えっちー」
何とか誤解を解こうとするマチルダだったが、りんは聞く耳を持とうとしない。
「はいはい、負けた人(金貨1枚)ね」
一方、ルイズは同級生達から金貨を受け取っていた。
「賭けていたのですか!」
呆れるマチルダに金貨を手にしたキュルケが、
「ミス・サウスゴータの事信じてたのに……」
「ミス・ツェルプシュトー!!」
と怒りの表情を見せた事でマチルダはさらに慌てる。
「(金貨3枚)かー」
「8・2で『振り向く』だったものね」
「賭け率低っ!!(信用されてません!!)」
収支計算をしていたりん・ルイズの会話に、思わず声を上げたマチルダ。
「と、とにかく! 学院で賭博なんてやってはいけません。ミス・ココノエ! お金を返しなさい!!」
強い口調でマチルダから叱責を受け、りんの瞳に涙が浮かぶ。
「ミス・サウスゴータ、酷ーい」
「自分がパンツ見ようとしたくせにねーっ」
「あっ、ミス・ココノエ、ごめ……」
自分が非難されている事に釈然としないものを感じながらもマチルダがりんの顔を覗き込むと、
「ばーか」
りんはそう言いつつ舌を出して見せたのだった。
「ミス・ココノエーっ!」
「購買行ってくる!!」
「待ちなさい!」
教室から飛び出していったりんを追って廊下に出たマチルダだったが、すぐにつまずき転倒してしまった。
「わっ……」
その結果丁度コルベールを押し倒す形になっている事に気付き、マチルダは思わず赤面する。
「ミ……、ミスタ・コルベール……?」
「子供って、わざと悪い事をして反応を見たりするでしょう?」
職員室に戻った2人。
「珍しいのですよ、ミス・サウスゴータはまだ来たばかりですから」
溜め息を吐くマチルダにコルベールは励ましの言葉をかけるが、
「頼れるお姉さんを目指していたのですけれどね……」
「ぶっ!」
コルベールの奇声に振り向くと、彼は口元をハンカチで抑えつつ激しく咳き込んでいた。
「ミスタ・コルベール?」
「いっ、いえ、何でも……」
マチルダにはそう答えたもののコルベールは内心、
(『頼れるお姉さん』と言うより、『放っておけない妹』という感じなのですよね……)
そう考えていたものの、気を取り直してマチルダに助言する。
「ですが、いくら叱責しても信頼関係が無ければ効きませんよ。馬鹿にしている相手に何を言われても聞く耳を持たないでしょう?」
「ええ……。言われました、はっきりと」
「その上、『えっち』と」
とコルベールはマチルダの背中に貼られている紙を指摘した。
「きゃあ! いつの間に!?」
(信頼関係なんてどうしたら……。言葉も通じない気がするのに)
そんな事を考えつつ中庭を歩いていたマチルダだったが、植え込みの陰に1匹の黒猫がうずくまっている事に気付いた。
「あら。……ちっちっ」
マチルダが舌を鳴らして黒猫を呼んでいるところに、
「(ニャー)?」
そう言って袋を持ったりんがやってきた。
「ミス・ココノエ!」
マチルダがいた事に一瞬驚愕の表情を浮かべたりんだったが、すぐに顔をしかめる。
「10日くらい前迷い込んできたの。ガリガリだったから牛乳あげたりして」
小皿に出した餌を黒猫が食べている様子をマチルダ・りんは2人して眺めていた。
「いじめられてたみたいで全然触らせてくれないんだ」
「そうなんですか……」
「追い出したりしないでよ!? 大人って『動物を可愛がりましょう』って言うくせにすぐ殺すんだから!」
「しませんよ、そんな事! 私動物好きですから」
声を荒げたりんにマチルダは穏やかな笑顔でそう答えると、
「よしよし」
と指を伸ばしたが、
「痛っ!」
伸ばした指を引っかかれ逃げられてしまった。
「いたた、やられちゃいました……」
「貸して」
呟きつつ指の腹の傷を眺めていると、りんはマチルダの手を取って傷ついた指を口に入れた。
「!? ミっ(うわ、舌が……)」
マチルダがそんな事を考えてどぎまぎしているうちに、始業を告げる鐘が鳴った。
「あたし日直だから行かなきゃ! じゃあねー、せんせー」
そう言ってりんは校舎の方に駆け出していった。
彼女を見送ったマチルダがふと指の傷口に視線を向けると、出血が止まるどころか胸が高鳴ったせいで余計に疼くような痛みを感じるようになっていた。
(ああ、驚きました……)
そんな赤面するマチルダの様子を、ルイズが教室の窓から見下ろしていた。
「リン、ミス・サウスゴータの事気に入ったの?」
教室では手鏡に向かって化粧をしているルイズが、棒付き飴をくわえたりんにそう質問していた。
「えー、何で?」
「嫌いな女の指フェラしないでしょ」
「フェラて」
「何触ったかわからない指よ? きったなーい、ばっちーい、えんがちょー」
そんな不機嫌なルイズにりんは笑みを浮かべる。
「あらっ? もしかしてやきもち?」
「だーれが! ミス・サウスゴータにやきもちなんて……」
からかうようなその表情にルイズはそっぽを向いたが、
「へ? 先生? あたしじゃなくて?」
と首を傾げたりんの発言に顔中を真っ赤にしたのだった。
(ルイズ、自滅……)
ルイズの髪を梳いていたキュルケはそう溜め息を吐いたものの、
「何よっ! あんなろくに学級会も仕切れない先生!」
涙目で喚き散らし始めたルイズの頭を撫でてあげるのだった。
「ニアの事もバラしちゃって、保健所に連れて行かれても知らないから!」
『下校の時刻になりました。校内に残っている人は……』
「ニア、ニア?」
下校時刻になった事を伝える校内放送と共に、りんの声が響く。
「ニア?」
「いないわね」
「まさか……」
ルイズ・キュルケと共に探すものの見つからず不安になり始めたりんの耳に、
「ニャ〜」
と猫の泣き声が聞こえてきた。
「!」
「お先にー」
「お疲れ様です」
職員室で一足先に帰宅する同僚とそんな挨拶を交わしていたマチルダに、
「ミス・サウスゴータ、よろしかったら夕食をご一緒しませんか?」
とコルベールが声をかけてきた。
「あ、いいですよ。もう終わりますから」
するとその時、
「ミス・サウスゴーターっ!」
叫び声を上げてルイズが職員室に入ってきた。
「ミス・ヴァリエール!?」
「どうしたのですか、いったい!?」
「ニアが木から降りられなくなって……、リンが……!!」
支援
「リンちゃーん、行っちゃ駄目ー!!」
細い枝の先で動けなくなっているニア目指し枝の上を進んでいくりんを見上げて、キュルケは涙ながらに絶叫した。
「ミス・ココノエ!?」
「梯子を取ってきます!」
そう言ってコルベールが駆け出している間にもりんは前進し、彼女達の体重を支える枝が細くなっていく。
「危ない、ミス・ココノエ! 動かないで!!」
マチルダが必死で上げた声にりんは首を振り、
「だって! 可哀想なんだもん、この子。今までずっといじめられて……。助けてあげなきゃ。優しい人間もいるんだって!!」
そう言いつつ、威嚇されていてもかまわずニアに手を伸ばすりん。
「おいで、ニア。大丈夫、おいで」
そしてりんがニアを抱きかかえた瞬間、鈍い音を立て1人と1匹が乗っていた枝が折れた。
「!!」
「ミス・ココノエ!!」
慌てて落下点に駆け寄ったマチルダの頭部に、りん・ニアが直撃した。
「ニャ〜……」
ニアの声でりんは我に返り、気絶しているマチルダの顔を心配そうに覗き込む。
「……せんせー?」
そっと声をかけたものの、マチルダはぴくりとも反応しない。
「動かしてはいけません! 頭を打ったかもしれません」
「医者を!!」
「せんせー!」
そんな声を遠くに聞きつつマチルダは、
(――ミス・ココノエ……。彼女……、猫みたいですね。鈴が付いててしっぽが2本。――ああ、そうですか。もしかして……、人を信じられなくなっているのは……)
そんな事をぼんやり考えていた。
翌日。
「皆さーん、そろそろ鐘が鳴りますよ。教室に入ってくださーい」
廊下の窓から中庭にいるりん達を見下ろし、マチルダはそう声をかけた。
『はあーい♪』
ニアを中心にしてベンチに座っていた3人は、そう返事して校舎内に戻っていった。
するとコルベールが心配そうな表情で問いかけてくる。
「ミス・サウスゴータ、頭はもう大丈夫ですか?」
「ええもう。軽い脳震盪でしたし。……ただ、あの時の記憶がぼんやりしていて、思い出せないのですよね」
「ほう?」
興味深げな視線を向けるコルベールをよそに、マチルダは欠落した記憶を取り戻そうと視線を虚空に向け考えていた。
(何か大切な事を思いついたような気が……。何でしたでしょう……)
「ねー、見て見て。ほら、今日いちごパンツ♪」
「あ、ほんと。可愛い」
(ミス・ココノエ……、2度も同じ手は食いませんよ)
そんなりん・ルイズの会話をスルーするマチルダだったが、彼女の背後ではりんが大胆にスカートをまくし上げ、下着をルイズ・キュルケに見せていたのだった。
以上投下終了です。
乙かいまのじかん
81 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:39:20.45 ID:oo1zwXom
誰も居ないので投下
82 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:40:00.13 ID:oo1zwXom
「今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝します」
此処はトリステイン魔法学院の食堂。
煌めくシャンデリアが吊るされた高い天井に、ずらりと料理が並べられた長テーブル。
何人ものメイド達が入れ替わり立ち代わり、貴族達の手を煩わせないよう給仕を行っている。
良家の子女、メイジ達が集まる全寮制の学校らしく、椅子一つとっても重く頑丈で繊細な細工が施されたものであった。
生徒達の談笑。既に食事は始まっており、メイド達が忙しく立ち回っていた。
そんな中食堂の扉で立ち往生している一人と一匹。
ルイズ・ド・ヴァリエールと使い魔となったニャンコ先生である。
扉前、食堂へ入ろうとするニャンコ先生とルイズの激しい攻防。
ルイズは両足を広げ反復横跳びの要領で左右に動き侵入を阻止する。
対するニャンコ先生は猫の機敏な動きで足の隙間を狙う。
目指すは食堂、約束された栄光の地。
「だから食堂はメイジしか入れないって言ったでしょ!」
「にゃ〜ん、契約違反だぞルイズ」
「使い魔には使い魔用の餌やり場があるの!」
「にゃに!餌やり場だと!舐めておるのか、ええい実力行使よ!」
数分後、息を切らして扉を開けるルイズとテーブルを眼にまなこを輝かせるニャンコ先生が居た。
83 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:42:04.91 ID:oo1zwXom
「ぜぇぜぇぜぇ、ま、負けたわ」
「にゃう〜ん、たわいもない」
根負けしたルイズを尻目に、テーブルへ飛び込み料理にパクつくニャンコ先生。
赤ワインをラッパ飲みし、ポタージュを啜り、ステーキの肉だけ平らげる。
「うお!猫が酒呑むのはじめてみたよ」
「あの小さな体によく入るなあ」
「5人前は食べてないか?」
猫がテーブルに乱入したせいで食堂はちょっとした騒ぎになった。
今までの鬱憤を晴らすかのように暴飲暴食の限りを尽くす。
「……あれは、ヴァリェールの」
誰かが囁いた。
「やだ躾のなってない」
「ルイズだからしょうがないよ」
「金持ちだから許されると思ってるのかしら」
囁きは広がりざわめきになった。
メイジが常に使い魔とあるのは常識である。
メイジは使い魔を管理する義務があるからだ。
だが食事中や公的な場になると事情は変わる。
毛だらけの猫や泥だらけのモグラなどと同席する事は、相手に不快を与えるかもしれない。
もし、食事に毛や土が入ったら?無礼と言われて仕方がない。
84 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:43:07.90 ID:oo1zwXom
使い魔の仕業は主人の仕業、躾がなってないと食堂中の視線がルイズへと向けられた。
(痛い、視線が痛いわ、背中に突き刺さる…)
ルイズの使い魔は有名だった。
いや、正確にはルイズ自身が知られていた。
此処トリステイン魔法学院はメイジによる魔法使いの為の魔術を学ぶ学校である。
本来、魔法が使えない人間は入学すら出来ない場所だ。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、彼女は魔力はあるが魔法が使えないとても珍しい人間だった。
そしてルイズは長い名前の通り、有力貴族の出身である。
魔法が使えない珍しいメイジ、名家の生まれとしてのやっかみ、生まれから来た性格の歪み。
ルイズは短い間に学院の有名人となった。
皆は噂した、ゼロのルイズは魔法使いであるにもかかわらず魔法が使えないメイジだ。
魔力はあるのだが、魔術として形に出来ないおちこぼれだ。
名門ヴァリェール家、親の七光りだけで学院に入れてもらっているクズ。
勉強だけが出来る頭でっかちと。
・ ・
あの魔法成功”ゼロのルイズ”が魔法に成功した。
知らせは学院中を駆け巡り、ニャンコ先生は一晩で有名になった。
「ちょっと!こっちきなさい!」
ルイズはむんずとニャンコ先生の体を掴み部屋の隅へと移動する。
つるふかして意外に触り心地がよい、重量は手毬二つ分、外見に反し驚くほど軽かった。
ややあって、ざわついた食堂は元に戻った。
「わたしにも立場ってものがあるのよ」
「なあにわざとだ、契約を破ったからだ」
食堂の隅へ持っていくと小声で言った。
「性格悪いわね!」
「にゃに妖怪だからのう」
85 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:43:39.72 ID:oo1zwXom
そんな一人と一匹を熱い視線で眺めている人物がいた。
燃えるような赤髪と褐色の肌、発育のよい長身の体躯はルイズと同世代とは思えない。
ニャンコ先生を見つめる瞳は潤み、肌は紅潮している。
(なんて可愛い猫ちゃんかしら、欲しい!)
ニャンコ先生は悪寒に体を震わせた。
視線を辿れば赤髪の女、あれは不味い。あれはタキの瞳だ。
可愛い物を愛でずにはいられない、始終猫を抱きしめ撫でて猫可愛がりしストレス死させる者の目だ。
女の唇が何事か呟いた。
人混みの向こう、ニャンコ先生の鋭敏な耳は彼女の言葉をはっきりと聞き取った。
「あのだらしないお腹を引き伸ばして、あのもちもちぽんぽんに顔をうずめたい」
よし、奪おう。キュルケは決意した。
86 :
ルイズ友人帳4:2012/03/22(木) 19:44:13.80 ID:oo1zwXom
投下終わり
キュルケェ…
キュルケwww
しかし、ニャンコ先生居なくなっちゃって、夏目の方は大丈夫なのか?
>新兵乙
ワイズダックはパイルバンカーとマインが鬼だったな
でもやっぱダグラムエンドだよね
>乙かいまのじかん
オマチさんが災難やね
>友人帳乙
キュルケ、もう少し落ち着こうぜ
しかし、春の投下ラッシュでうれしいかぎりだ
ギーシュ「君が無粋な真似をしてくれたおかげで、2人のレディの名誉が傷ついてしまった。どう責任を取る気だい?」
シエスタ「本当に申し訳…」
???「その必要はないわ」
マリコルヌ「ヒューッ!見ろよやつの胸板を…!まるで鋼ぱn(銃声))」
『マ、マリコルヌゥゥゥゥゥゥ!!(無茶しやがって…)』
91 :
一尉:2012/03/23(金) 00:11:29.25 ID:7As5Cgon
ロボット化光線車両を召喚にしたルイズはその光線に当たってロボットになってしまった。
ネコミミの使い魔、ただでさえソウルジェムが濁らなくてチート気味だったのに
これ以上のチート与えるとかすげえ萎える
某所の神様転生みたいで気持ち悪かったし、急激につまらなくなった
あの、デュープリとかディーキンが消えたがこのスレなにがあった?
どっちもあるようだが
全部じゃなくて最新50で見てたから消えたように見えただけとかそういうオチじゃないだろうな?
>>96 たまにあるわ・・・途中でなんとか気づくけど
夜分遅くになりますが、ご予約が無ければ続きを投下しようかと思いますがよろしいですか?
Mission 21 <伝説の魔剣士、降臨> 後編
上級悪魔の生命力は、人間はおろかそこらの幻獣や巨大な竜を遥かに凌ぐ。
故にちょっとやそっとの傷はすぐに癒えてしまうし、心臓を貫かれたり脳天を撃ち抜かれたり、人間なら致死量の血を流しても死ぬことはない。
もっとも、痛みはそこそこ感じるのだが。
己の四肢を四つの槍で串刺しにして縫われ、腹を巨大な槍に、そして心臓を愛剣が豪快に貫いている状況の中、スパーダは深く溜め息を吐いた。
そして、心底不快感を露にしながら横目で左手を睨みつける。
このルーンは実に邪魔な存在だ。もはや奴隷を服従させるための枷にも等しい。
常日頃から自分を洗脳しようとしつこく力を働きかけてくるので集中力が削がれる上、戦闘になればルーンが勝手に自分の体を動かそうとするので、
スパーダ自身が慣れた動きで剣を振るうことができない。
ガンダールヴのルーンはあらゆる武器を自在に扱いこなす力を与えるとされるそうだが、はっきり言ってスパーダには不要な代物だ。
自分にはこれ以上、余計な力は必要ない。スパーダにはスパーダで、自分に合った力があるのだから。
だが、このルーンを消し去ってしまうとルイズに迷惑がかかるようなので消し去ることはできない。
……とにかく、今はこのルーンの影響が及ばないようにする必要がある。
さすがのガンダールヴのルーンも、全盛期よりは衰えたとはいえスパーダが力を解放すれば制御することもできなくなるはずだ。
(私は貴様の奴隷などではないことを、思い知らせてやる)
スパーダは全ての意識を集中させ、己の奥底で眠らせている力を解放し始めた。
それは久しぶりとなる、全力の発揮だ。普段は人間としての活動に支障を来たすために自ら封印しているのである。
全盛期ほどの力があれば、人間はおろか何万もの悪魔の軍勢でさえも剣の一振りで薙ぎ倒すことだろう。
純粋な、悪魔の力――。
それを自らを縛りつけるルーンに、そして悪魔の心を持つあの男に思い知らせてやるとしよう。
(な、何?)
全てを諦め、絶望し、放心していたはずだったルイズはその重く砕け散る音で我へと返った。
気付くとキュルケもタバサもギーシュもウェールズもロングビルも、そしてワルドでさえも始祖像に縫い付けられているスパーダを見上げていた。
亜人と化しているワルド以外の全員が愕然とした表情を浮かべていた。特にあのキュルケは恐怖に顔を歪ませ、目を見開いている。
見ればスパーダを縫い付けていたはずだったワルドの武器は全て跡形も無く消えており、胸を貫くリベリオンだけとなっていた。
そして、スパーダの全身からは何やら禍々しい赤いオーラが煙のように湧き出ている。
スパーダに一体、何が起きているのだ。
ルイズが困惑する中、スパーダの胸を貫いていたリベリオンが突如、勝手に抜け出した。その拍子にスパーダの血が一気に噴き出す。
抜け出したリベリオンは床に落ちていくスパーダと共に落下し、床に突き立てられた。
静かに着地したスパーダの髪はいつの間にかオールバックから前髪を額に垂らしたものになっている。
「い、生きている……?」
あれだけの致命傷を負い、血を流したのにも関わらずスパーダは死んでいない。
本来ならばスパーダが生きていたことに喜ぶべきであろうが、そのあり得ない光景に喜ぶことはできず、逆に恐怖を感じていた。
全身から未だ赤いオーラが生じる中、スパーダは突き立てられたリベリオンを引き抜き、手にしだす。
『は、はは……ま、まさか……相棒が……ヴァリヤーグ≠セったってのか……?』
亜人のワルドを貫いている赤い剣から、恐怖に震えたデルフが蚊の鳴くようなの声で呟く。
スパーダが人間でないことはあの武器屋で触れられた時にも分かっていた。
だが、どうにも懐かしく、同時に思い出したくない何かをスパーダから感じてもいたのだが今まではそれが分からなかった。
それが今、確信へと変わった。そして、六千年という時の彼方の記憶に封じられていたものが次々と蘇った。
かつて始祖ブリミルとその使い魔達が恐れた、あの忌まわしい化け物だった……。
『き、貴様……何故だ……! 何故、死なんのだ……!?』
ワルドもあれだけの致命傷を負わせたにも関わらず生きているスパーダに愕然としていた。
だが、スパーダはその問いに答えない。手にするリベリオンを無造作に垂らしたまま立ち尽くしている。
異常な事態に困惑するワルドだが、すぐにある結論が思いつく所へと達していた。
『まさか……貴様も帰天≠オているのか!?』
レコン・キスタとの盟約によって手に入れた、人の身を超える存在へと生まれ変わるという秘術。
その力でワルドもこうして人を超えた力を手に入れることができたのだ。
その秘術をこの男も行っているからに違いない。それならばこれほどの生命力も考えがつく。
「ひっ……」
スパーダがゆっくりと顔を上げ、こちらを振り向いた時、ルイズは底知れぬ恐怖に力なく尻餅をついていた。
「ス、パー……ダ……?」
恐怖に怯えて震えた声が漏れ出す。
その表情は今まで見てきたものとはあまりにもかけ離れていた。
無表情ではあるが……それは氷のように冷たく、研ぎ澄まされた刃のように鋭い、恐ろしい雰囲気を纏っている。
全てを威圧し、押し潰さんとする冷酷な表情……。
この表情にルイズは見覚えがあった。
それは確か、夢で現れたスパーダが浮かべていたもの。
この世のものと思えぬ化け物達を斬り伏せても全く変わることがなかった、あの悪魔の表情と同じであった。
『……ハハハッ! そうか! これは面白い! 同じ天使の力を得た者同士、存分に――』
タネが分かったと思い込んでいたワルドの思考に余裕が戻り、腹を貫く剣を抜き捨てて笑いを上げていたその時だった。
スパーダの姿が忽然と消えた途端、突如自分の目の前へと迫っていた。
リベリオンを手にする手を引いて――。
『グフッ!』
空を切る音を響かせ、突き出されたリベリオンはワルドの腹を豪快に貫いていた。盾で防御することも、レイピアで切り結ぶ暇もなかった。
腹から大量の血が噴き出し、口からも血を吐き出す中、スパーダは右手だけでリベリオンを豪快に振り回し、
ワルドの体を先ほどまで自分が縫い付けられていた始祖像目掛けて放り飛ばす。
『グギャァ!』
翼を広げ、受け身を取った瞬間、ワルドを取り囲むようにして現れた八つの赤い剣が一斉にその全身と翼を貫いていた。
『……兄ちゃんよ。相棒は、天使なんかじゃあねえぜ……』
己を貫く八つの剣から一斉にデルフの声が響きだす。
そして、剣が発光したかと思うと一斉に破裂するように爆破された。
『ギャアアアァッ!』
小規模とはいえ、その爆発はワルドの全身を深く傷つけ、さらに右の翼を引き千切るように吹き飛ばす。
矢で撃ち落された鳥のように床にぼとりと墜落していくワルドだが、スパーダの容赦ない追撃は終わらない。
赤いオーラを纏ったリベリオンを振り上げて衝撃波を放ち、さらに新たに彼の周囲に現れた赤い剣が次々と射出されてきたのだ。
死の恐怖に怯えたワルドは慌てて左腕の盾を構え、衝撃波を受け止める。さらにいくつかの赤い剣をも受け止めて砕いた。
一瞬、安堵したワルドだったが、すぐに衝撃と恐怖を味わうことになる。
『グアアアアアアッ!!』
気付けば背後に回っていたスパーダがリベリオンを振り下ろし、ワルドの左腕を肩もろとも一刀両断にしていたのだ。
いかに天使の力を得たとはいえ、これほどまの傷に痛みを感じないわけがない。
『腕が……腕がああああっ!』
耐え難い激痛に絶叫を上げ、悶絶するワルド。
床に着く寸前、スパーダはワルドの体を突き飛ばし、床に倒していた。
『ライトニング・クラウド! エア・カッター!』
左腕を失い、無様に床に転がるワルドはリベリオンを手に迫ってくるスパーダにレイピアを向け、天使の力を得たことで普段よりも増強された
魔力の全力を持って、次々と魔法を放つ。
スパーダはその攻撃を避けもせずに堂々と体で受け止めたまま物ともせずに歩いてくる。まるで効いている様子がない。
それに多少は傷ついても、すぐにその傷が再生していくのだ。
あり得ない光景に、ワルドの心は絶望で支配されていく。
『貴様……! に、人間ではないのか……!? な、何者だ!?』
恐怖ですっかり震え上がり、慄くワルドが叫ぶ。
迫ってきていたスパーダの足が止まる。
その時、朧げながら全身にオーラを纏うスパーダの姿と共に何かが浮かび上がるのをワルドははっきりと目にした。
幻のように浮かび上がったもの……それは禍々しい角や多重の翼をマントを纏うように背中に収めている、黒い体の悪魔であった。
悪魔の姿と、スパーダの姿が交互に重なっている。
ワルドを睨み続けているその冷たい冷酷な瞳には、一切の慈悲は宿っていなかった。
あるのは、目の前に立ち塞がる敵は全て葬り去るというだけ。
その冷酷な瞳に、ワルドは魂の底から恐怖を感じていた。
『いつまでも調子に乗るな。人間よ』
地の底から響くような、恐ろしい声をスパーダは発していた。
だが、同時にその声には何者も侵すことはできない威厳さに満ちている。
『貴様は侵してはならん領域に踏み込んだ』
静かにリベリオンの剣先を、ワルドに突きつける。
『過ぎた力に溺れ……人の心を失った貴様は、悪魔だ』
『な、何を言う! 貴様だって人間なんかじゃない! 貴様こそ、本物の悪魔――』
喚くように反論するワルドの言葉を遮り、スパーダはリベリオンを薙ぎ払った。
礼拝堂に嵐のような突風が吹き荒れ、その間近にいたワルドを紙切れのように容易く吹き飛ばし、壁に叩きつける。
呻きながら体を起こし、スパーダを見やるワルド。
『ひ……』
スパーダは相変わらずの冷酷で無慈悲な表情を浮かべたまま、じっとこちらに目を合わせている。
それだけで、ワルドは己の心臓を掴まれ握り潰されてしまいそうなプレッシャーが襲い掛かる。
『……た、助けてくれえええっ!!』
完全に戦意を失ったワルドは地を這いつくばり、スパーダから背を向け、片翼と左腕を失くした痛々しい姿のまま礼拝堂から逃げ出した。
あまりにも惨めな姿であったが、スパーダはそれ以上追い討ちを仕掛けることはなく静かにその姿を見届けていた。
「な、何なの……あれ……」
「本当に……スパーダ……?」
「人間じゃあ……ないの……?」
「……」
トリステインの四人の生徒達、そしてウェールズとロングビル、ティファニアらは目の前で起きた出来事と目の前に存在に恐怖した。
特にルイズは、朧げながら浮かび上がった悪魔の姿が、前に夢で見たものと全く同じであったことに愕然としていた。
おぞましい姿に目を背けたくても、金縛りにあったかのように体が動かない以上、それはできない。
スパーダは、人間ではないのだ。……あれはまさしく、悪魔と呼べる姿。
先ほどのワルドなどとは比べ物にならない、真の悪魔だ。
自分は悪魔を使い魔に、パートナーにしていたというのか……?
だが、本物の悪魔ならば自分達を守るために戦うことなどないはずだ……。
悪魔は人間を堕落させ、時にはその命を、魂を狙うとされる凶悪な存在。スパーダが悪魔なら、今までもあんなに自分に気にかけることなども……。
『――ギャアアアアアアアアッ!!』
突如、礼拝堂の外、ワルドが逃げ去っていった入り口の向こうからけたたましいワルドの悲鳴が聞こえてきた。
何事かと入り口の方を見ていると、その入り口から次々と地を這うように姿を現したのは目にするのもおぞましい化け物達だった。
姿勢は低いが体の大きさは1.7メイルから3.5メイルほどまでと様々だった。しかし、その化け物には足が存在せず、代わりに長大な手と腕が伸びて足の代わりとなっている。
おまけに背中からも腕を生やしている上、体の所々に筋肉や背骨が露になっているし右腕に至っては全体の筋肉が剥き出しになっている。
そして、最もおぞましいと思ったのは左の脇腹から巨大な眼球がぎょろりと剥いていることだった。
「う……」
あまりのおぞましさに耐えられなかったのか、ギーシュが吐き気を催す。
魔界の最下級悪魔――あまりにも知能が低過ぎたが故に名前すら与えられなかった種族。
だが、その力は弱肉強食な魔界で生き残るには充分過ぎるほどに強く、時には上級悪魔でさえも返り討ちにし兼ねない。
その名も無き悪魔達はノーバディと呼ばれていた。
――ヘッヘッヘッヘ……。
――ヒャッハッハ……。
――ヒャッヘッヘ……。
知性の欠片も無い、気味の悪い奇怪な笑い声を上げながら次々と礼拝堂に侵入してくる化け物達。よく見ると、その中の一体の背中から生えた手が人間の頭を掴んで無造作に吊るしていた。
左腕を完全に失っていたそれは紛れも無く、人間の姿に戻っていたワルドであった。既に息絶えているようだ。
「……レコン・キスタがついに攻撃を始めたようだな。あれは奴らの放ったものだ」
ウェールズが化け物達の姿を見て呻いた。
気付けば外から馬の蹄や大砲の音、竜の羽ばたく音などが響いてきているのが分かる。
ここにこれ以上いてはいけない。だが、あの化け物達がいては逃げることもできない。
……そして、何よりも恐ろしい存在がいては――。
『ギーシュ。お前の使い魔をすぐに呼べ』
スパーダがじりじりと迫るノーバディ達と対峙し、リベリオンを構えながらそう命じる。
「……ヴェルダンデ!」
隅で嘔吐していたギーシュはスパーダの言葉を聞くと、先日イーグル号を降りてからずっと地中に潜り、自分達の下の地面に潜んでいたヴェルダンデで呼びつける。
床の一角が盛り上がると、そこには彼の使い魔たるジャイアント・モールがひょっこりと姿を現した。
『逃げ道を確保しろ』
ワルドの死体を放り捨て、次々と襲い掛かるノーバディ達を斬り伏せながらスパーダはさらに命じた。
スパーダがリベリオンを振る度に突風が巻き起こり、ノーバディ達を吹き飛ばしていく。
だが、ノーバディも軽やかに受け身をとり、さらに中にはリベリオンをその長大な手で器用に白刃取りで受け止めてもいた。
スパーダの悪魔の姿と一面に恐怖しつつも、一行はその穴の中へと入っていく。
始めにギーシュ、次にキュルケとタバサが穴へ入っていった。最初の二人は穴に入る寸前、自分達のために剣を振るっているスパーダを
恐ろしい物でも見るような視線と共に、畏敬の思いが込められた視線を送っていた。
タバサだけはスパーダが次々と仕留めているノーバディを惜しむように見つめていた。
『Blast off.(消し飛べ)』
残り三体となったノーバディ達に、振り上げたリベリオンから衝撃波を放つ。
その巨大な一撃は生き残っていたノーバディ達はもちろん、床に無残に転がる亡骸さえ塵一つ残さずに消し飛ばし、礼拝堂の入り口さえも粉砕してしまう。
やがて、静寂が訪れた。
いや、外からは未だ大砲の音や兵達が攻めている音が静かに響いてきているために純粋な静寂は訪れてはいない。
だが、それまで壮絶な戦いが繰り広げられていた時に比べればとても静かだ。
礼拝堂は壁や柱、床の全てが砕かれているこの光景が、その戦いの爪跡として残されている。
リベリオンを背に収めたスパーダの全身から、禍々しいオーラが徐々に失せていく。
同時にスパーダから発せられていた威圧感も先ほどまでとは違って嘘のように消え失せ、普段の毅然とした雰囲気に戻っていた。
礼拝堂に残っているルイズ達は呆然としながらこちらへ歩み寄ってくるスパーダを見つめ、立ち尽くしていた。
「あ、あの……スパーダ……なのよね?」
「私はこの世に一人しかいない」
恐る恐る話しかけてくるルイズに、スパーダは何事も無かったかのように平然と答える。
その言葉を聞いた途端、不思議とルイズの表情と心には安堵が蘇っていた。つっけんどんな態度だが、いつものスパーダだ。
安心して思わず体中から力が抜けてしまう。へなへなと、床にへたり込んでしまった。
「何を呆けている。早く脱出せねば命がないぞ?」
「あ……え、ええ……」
今まで混乱していた思考が徐々に正常に戻ってきたルイズはある疑問を思い出した。
「……っていうか、何であなたがミス・ロングビルと一緒に戻ってきたのよ! それにその子誰なのよ!」
先ほどまでの恐怖はどこへ行ったのか、喚き立てるルイズがロングビルとティファニアを指差した。
「ミス・サウスゴータ。何故、あなたがここに?」
全てが終わったことで、ウェールズもようやくその件についてを問いただすことができた。
ロングビルは眉を僅かに顰めたままティファニアを庇うように抱き締める。
「その娘は、モード大公の忘れ形見だ」
ロングビルに代わって、スパーダが平然とそう告げた。
元々、スパーダがここを訪れたのはワルドからルイズ達を救うためでもあったのだが、同時にウェールズにティファニアを会わせようともしていた。
ロングビルは始め、それに反対していた。ティファニア自身は抵抗は無かったものの、彼女やティファニアにとっては仇であるアルビオン王家の人間などと会わせるなどとんでもないことだったからだ。
だが、ウェールズは老害な父親と違ってモード大公の忘れ形見と会えれば会いたいと願っていることを知っていたため、少しだけ会わせることにしたのである。
討ち死にしようという、ウェールズへのせめてもの手向けとして。
「君が、我が叔父上の……」
スパーダから事の説明を聞かされ、唖然とするウェールズはロングビルに抱きついているティファニアをじっと見つめる。
しばしの間、ティファニアを見つめていたウェールズだったが突然、床に片膝を突いて深く頭を下げていた。
「ウェールズ殿下?」
話を聞かされて同じように驚いていたルイズが、ウェールズの行動に困惑した。
「我が従妹君、ティファニア。そして、マチルダ・オブ・サウスゴータ殿。
我が父、ジェームズがあなた達に行った暴挙を……心より詫びる」
真摯な態度でいきなり謝罪をしだすウェールズに、当の謝罪される本人達も呆然とした。
「我が王家が犯した行いを、決してあなた達二人は許してはくれぬだろう。だが、今の我らにできることはこれしかない……。
我らは憎まれても当然だ。この内乱も、元を正せばあの行いが元凶なのだからな……」
「あ、あの……そんなに謝らなくても良いんです。わたし達はこうして生きているんですから」
ロングビルはつまらなそうに鼻を微かに鳴らすが、ロングビルから離れたティファニアはウェールズの前で屈んでそう答えた。
「ウェールズさんは何もしていないんですから、そんなに頭を下げないでください」
「……私を憎んでくれても構わなかったのにな」
自分を全く憎んでいないティファニアの姿に、ウェールズは乾いた笑みを浮かべて顔を上げた。
そっと、フードの上からティファニアの頭を撫でる。
「ティファニア、君は生きてくれ。我が王家は間もなく潰え、歴史の片隅に追いやられることだろう。
だが、その血筋だけは未来に託しておいてもらいたい。始祖ブリミルが六千年にも渡って伝えてきた王家の血筋だけでも、守って欲しいのだ」
「……ウェールズ殿下。やはり、わたし達と共に亡命される気はないのですね?」
ルイズが物悲しそうに言うと、ウェールズは苦笑しながら頷いた。
「ああ。私はここに残らねばならん。王家の人間として、最後の務めを果たさねばならん。
君達はもう行きたまえ。間もなく第二波がここへ突入してくるだろう」
「殿下……」
「ミス・サウスゴータ。こんなことを頼める立場ではないが、我が従妹を……どうか守っていただきたい」
「……言われなくてもそうするよ」
「ティファニア。君と会えて良かった。どうか、元気で」
優しい笑みを浮かべるウェールズに、ティファニアの表情が曇る。
彼女としても、初めて出会った従兄とこのような別れをしなければならないのが辛い。
孤児の子供達はみんな殺され、そして従兄であるウェールズもこれから死に行くというのだ。
大切なものが、どんどん失われていく……。
「スパーダ殿。彼女を救い出してくれたことに感謝するよ」
立ち上がり、最後にスパーダに頭を下げて礼を述べた。
腕を組んだまま見守っていたスパーダは嘆息を吐く。
「アルビオン王家、皇太子ウェールズ・テューダーは今日ここで死んだ」
いきなりのスパーダの言葉にウェールズは目を丸くする。
「今、ここにいるのはただのメイジ……ウェールズだ。もはや王家とは何の関係もない」
「スパーダ、何を……」
「これから討ち死にをするか、ただのメイジとして生きるかはお前次第だ」
それだけを言い、スパーダは背を向けて穴の方へ歩き出す。
「だが、決して死に急ぐな。死すのであれば、命ある限り生き続けろ。……行くぞ」
振り向かぬまま威厳に満ちた言葉を発するスパーダに、ウェールズは一瞬呆然としていたが乾いた笑みを浮かべつつ微かに頷いていた。
「早く行きたまえ。……もう時間がない。穴は私は潰しておく」
入り口の向こうからバタバタと足音が小さく聞こえてくる。レコン・キスタの兵士達が攻めてきたのだ。
「ウェールズさん!」
「行け!」
杖を手にし、入り口の前で堂々と仁王立ちするウェールズ。
ロングビルはティファニアの手を引っ張り、スパーダの後を追って穴の中へ入っていったルイズに続いていった。
自分だけしかこの礼拝堂に誰もいなくなったことを確認し、ウェールズは穴の上の天井を風の魔法で崩し、下敷きにする。
「異国の剣士、スパーダよ。彼女達を、頼む……」
穴の先はアルビオン大陸の真下へと続いていた。その外ではタバサの使い魔、シルフィードが先に出ていた三人を乗せたまま待っていた。
ヴェルダンデはシルフィードの口に咥えられたまま、ジタバタと暴れているのを主であるギーシュがなだめている。
「遅かったじゃないの!」
スパーダ達もシルフィードに乗り込むと、キュルケがホッと安心しながら叫んでいた。
明らかに定員オーバーであったが、地上であるトリステインまでは滑空していけば問題なく辿り着けるはずだ。
「脱出」
タバサが短く命じると、一行を乗せたシルフィードが白い雲の中を緩やかに降下しながら進んでいった。
雲を抜けると、疾風のように飛ぶシルフィードの背中から見るアルビオンは次第に小さくなっていった。
短い滞在ではあったが、様々な出来事があったアルビオンが風と共に遠ざかっていく。
シルフィードの上では、誰も何も喋らない。無言のままだ。
全員の視線は腕を組んだまま瞑想しているスパーダに注がれたままだった。
「スパーダ、あの……」
「その話は魔法学院で話そう」
ルイズの言葉を遮り、そう答えてすぐに話を打ち切るスパーダ。
悪魔としての本性を見られた以上、面倒ではあるが話さねばなるまい。
だが、口で全てを話すのも手間がかかりそうだ。
……となると、真実は聞いてもらうよりは見てもらった方が手っ取り早い。
※今回はこれでおしまいです。
今回のスパーダのデビルトリガーについて、性能としては1のものをイメージしていただくと幸いです。
108 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/23(金) 02:06:39.37 ID:02WTJTn+
更新お疲れ様です!
パパーダ乙です
乙
ティファニアがマーラ様を召喚したらどうなるだろうか?
まさにリーヴスラシルにふさわしいと思うのだが
今日これから第十三話を投稿させて貰います。
第十三話『二人の姫殿下』
ルイズは夢を見ていた。まだ小さい頃、トリステイン魔法学院に行く前の時の事だった。
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの?まだお説教は終わっていませんよ!」
ルイズは自分の実家である、ラ・ヴァリエールの屋敷の中庭を逃げ回っていた。
騒いでいるのは母、追ってくるのは召使である。
理由は簡単で、デキのいい姉達と魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていた最中逃げ出したからだ。
幸い、中庭には迷宮のような埋め込みの陰が多々ある。その中の一つに隠れてやり過ごそうとしたのだが……
「ルイズお嬢様は難儀だねえ…」
「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」
召使の会話を聞いて、ルイズは奥歯を噛み締める。それがどうしても悲しくて、悔しくて、落ちこぼれの自分に腹立てていた。と、召使達は埋め込みの中をがさごそと捜し始めた。ルイズはそれを見て再び逃げ出した。
そう、彼女の唯一安心出来る場所、秘密の場所となる中庭の池へと向かう。
途中見つからないようにと、小さい体をさらに小さくして細心の注意をはらう。
あまり人が寄りつかない、うらぶれた中庭。池の周りには季節の花が咲き乱れ、小鳥が集う石のアーチとベンチがあった。池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で造られた東屋が建っている。
その小さな島のほとりに小船が一艘浮いていた。船遊びを楽しむ為の小船も、今は使われない。、最早この忘れられた中庭の島のほとりにある小船を気に留めるのはルイズ以外誰もいない。ルイズは叱られると毎回この中に隠れてやり過ごしていた。
予め用意してあった毛布に潜り込み、のんびり時間を過ごそうとしているとふと影がルイズにかかり一人のマントを羽織った立派な貴族が、ルイズの小さな視界に写りこむ。
年は大体十代後半、ルイズよりも十程年上の紳士的な美丈夫。
「泣いているのかい? ルイズ」
つばの広い帽子に顔が隠されても、ルイズは声でわかる。子爵だ。
最近、近所の領地を相続した年上の貴族。
「子爵さま、いらしてたのですか?」
慌てて目の前にいる子爵から視線を外して赤くなった涙目を慌てて拭う。見られたくない自分の顔を憧れの人に見られてしまったので、ルイズは顔を赤く染めた。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話の事でね」
「まぁ!いけない人ですわ。子爵さまは……」
ますます顔を赤くしてルイズは俯いてしまう、あの話とはルイズの父親が決めた子爵との婚約の話…
「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」
いつもと変わらぬ口調で子爵が言った。ルイズは首を横に振る
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんの。」
ルイズははにかんで言った。自分の素直な気持ちを理解してくれたのか、帽子の下の顔がにっこりと笑った。
「ミ・レィディ手を貸してあげよう。ほら、僕の手を取りたまえ。もうじき晩餐会が始まるよ」
普段のルイズから真っ先に掴むのだが、今回は躊躇われる。
「でも……」
「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」
さぁ、と再び手を差し延べてくる。大きな、憧れの手。
ルイズに断る余裕はない。頷いて立ち上がりその手を握ろうとした。
その時、突然何者かが視界の外から勢いよく飛び込んでくると子爵を小舟の上から池の中へと蹴り落とした。
「ミント!!あんた何て事を!!」
思わずミントは子爵を蹴り飛ばした人物の名を叫ぶ。いつの間にか気づけばルイズは元の16歳の姿に戻っており、子爵の姿は湖の底に完全に消えてしまっていた。
そしてミントはこれまたいつの間にか現れていた長く続く回廊、その先の果てに輝く黄金のリングに包まれ浮遊する虹色のクリスタルを今はただじっと見つめている。
「………」
しばらくそうしていたと思えば無言のままミントはその奇妙なオブジェに向かって走り出した。
「あっ…待ちなさいよ!!」
思わずルイズはミントを追いかけその背に手を伸ばす。するとミントは立ち止まって振り返るとやはり何も言わずルイズの手をただ強く握った。
そして再びミントが走り出す、今度はルイズを連れて…
走り続ける内にいつの間にかルイズは夢の中ミントの手を振り解き、その隣をがむしゃらに走り続けていた。
せめて足を引っ張らぬ様に…
せめて置いていかれぬ様に…
そしていつか追い抜ける様に…と……
ルイズ達がフーケを捕らえてから数日が経ったとある日。
その日執り行われた授業の担当教師は疾風のギトー、いつも黒を基調とした服装を身に纏って毎度毎度授業の度に自らの属性である『風』がいかに最強であるかを嫌みったらしくこんこんと説明してばかりの生徒達の人気が非常に低い教師である。
そして今日の授業でもいつもの様にギトーの風最強説の講義は行われていた。
「では質問だミス・ツェルプストー最強の系統とは何かね?」
このクラスで最もランクの高いメイジであるキュルケを挑発する様にギトーはキュルケに問う。尚タバサは風と水のメイジなのでギトーの嫌味の対象外である。
「虚無ではありませんの?」
対してキュルケは爪を磨きながらつまらなそうにギトーの質問に答えた。
「今は系統魔法の話をしているのだ。虚無などという伝説は今は関係ない。」
そう言って鼻で笑ったギトーにキュルケは不快感を覚える。
「では、火だと思いますわ。火はあらゆるものを燃やす、破壊と情熱の象徴、まさに最強に相応しい力。」
「ふむ、成る程、君らしい意見だ。ではそれを実践して見せてくれたまえ。君の最も得意な火の魔法、それが風に果たして通用するのかを…ね。」
ギトーのその言葉に教室中に緊張が走る。既にキュルケに火がついてしまっている事は明らかだ。
「ミスタ、火傷ではすみません事よ?」
胸の谷間からキュルケの杖がスラリと抜き放たれ、真っ直ぐにギトーに向けられる。
杖の先で小さな火が灯ったと思えばキュルケの詠唱に合わせて火は爆発的に大きくなり1メイルを超えた辺りでついにギトーに向かって放たれた…
「フレイムボール!!」
火球は教室中に凄まじい熱風を生み出しながらギトーへと真っ直ぐに飛翔していく。
しかしギトーの目の前まで火球が迫った時ギトーは短く呪文を唱えて杖を薙ぐ様に振った。
ギトーが生み出した風はキュルケの放ったフレイムボールを粉砕し、風の衝撃がキュルケを襲いその身体を教室の壁に強かに打ち付ける。
すんでの所でタバサが空気のクッションを生み出した為キュルケには怪我一つ無いがプライドを傷付けられたキュルケは忌々しそうにギトーを睨む。
ギトーはその様を満足げに確認してから、視線を教室全体へ移す。
「諸君。ご覧のとおりだ。強大な破壊力を秘めた火の魔法でも、私が操る風の前にはその力が及ばなかった事を覚えて置いていただきたい。風こそが最強、今日は特別にその所以たる魔法を今ここで御覧に入れるとしよう…ユビキタス・…」
しかしルーンが完成しようとした瞬間、教室の扉が勢いよく開かれ一人の教師が飛び込んできた。
「皆さん、授業は中止です直ぐに正装して正門前に集合です。」
「どういう事ですかな?ミスタ・コルベール、それにその恰好は…」
ギトーは授業の妨害に明らかに不機嫌な様子でコルベールに教室の全員の疑問を代表して訪ねた。
コルベールの服装が今日は何故か普段とは大きくかけ離れている。普段のそれよりも上質のローブを纏い、それの襟には細やかなレースが付いている。
何よりも目を引くのは、 ファンシーメル並の立派な金髪ロールの鬘だ。普段の彼を知るものから見れば冗談にしか見えないようなゴージャスなロールヘアである。
「アンリエッタ王女殿下がゲルマニアの訪問のお帰りに我が魔法学園を訪問されるそうです!!各方杖を磨き、直ぐにお出迎えの用意をしなくてはなりませんぞ!」
(どうしよう……)
ルイズはコルベールからアンリエッタの来校の話を聞いて全身から血の気が引くのを感じた…
「うぅ…世界…むにゃ…征…服…」
今一応使い魔のミントは自分の隣の席で授業そっちのけで物騒な寝言を呟きながら昼寝をしているが彼女の立場は正真正銘の王女である。
そんな人物を双方の同意の下とはいえ使い魔にしているのがアンリエッタにばれたら不味い。
もしかしたらルイズには王族への敬意や忠誠が無いものと判断されるやもしれない。それは人一倍アンリエッタを敬愛するルイズにとっては耐えられぬ事だ…
アンリエッタのお出迎えパレードが正門付近で催される中、ミントはキュルケとタバサと共に離れた高台から興味なさ気にその様子を見ていた。
その生徒達が整列して作っている花道を如何にも王女らしい余所行きの白いドレスを纏った美少女が臣下達を引き連れてそこを歩く。
「あれがトリステインのお姫様か…大した事無いわね、あたしの方が絶対可愛いわ。」
「………それ、私の台詞なんだけど。…まぁいいわ。」
ミントは勝手に勝ち誇った様子で髪を掻き上げるとルイズがどこに居るのかと生徒達の花道を見渡す。
「おっ、居た居た。って…ん?」
ルイズはそんな生徒達の花道の最前列に並んでいたがその瞳はアンリエッタでは無く、その護衛についたグリフォンに跨がる一人の魔法衛士隊のメイジを映していた。
「ほほぅ、成る程ねぇ…」
「何々、どうしたの?…へぇ〜…」
そのルイズの様子を遠目に見ながら何かを察してミントとキュルケははニヤリと口元を意地悪く歪めた。
___ルイズの部屋
その夜、部屋に戻ったルイズは心ここにあらずといった様子でベッドのに座り込むと溜息を漏らしながらぼんやりとしていた。
「なぁ相棒、嬢ちゃんは一体どうなっちまったんだ?さっきから様子が変だぜ。」
テーブルに立て掛けられたデルフリンガーがカタカタと鍔を鳴らす。まるでミントに己の存在を必死に主張するように…
「さぁね〜。」
大してデルフリンガーに構う事も無くミントがニヤニヤとルイズを見つめて笑っているとルイズの部屋のドアが規則正しく叩かれる。初めに長く二回、それから短く三回……。
「ん?ルイズ、お客さんよ。」
その音にはっとルイズが反応し急い小走りで扉へ向かうと、ドアを開いた。
そこに立っていたのは、先端に水晶のついた杖を胸元に握りしめた真っ黒なローブの頭巾をすっぽりと被った少女であった。
少女はキョロキョロと辺りを伺い、部屋の外に誰もいない事を確認した後、ささっと部屋に入り、扉を閉める。
ルイズが声を出す前に、少女がしっと口元に指を立て、それから胸元の杖を軽く振りながら、ルーンを呟くと杖の先から光の粉が、部屋に漂う。
「……ディティクトマジック?」
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
ルイズの部屋に魔法の類いの影響が無いのを確認してようやく少女はローブのフードを外してルイズとミントへその顔をさらした。
「あれ?あんた…」
「姫殿下!」
ルイズはノックの仕方で半ば確信していたが驚きの声を上げ、急いで膝をつく。勿論ミントはそれに倣ったりはしない。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ。」
そう言って嬉しそうに微笑むとアンリエッタはルイズへと駆け寄りその身体を熱く抱擁した。
ルイズは慌ててアンリエッタの身体を優しく引きはがすと再び家臣の礼をとり恭しく頭を垂れる。
「いけません姫様、この様な場所にお一人で…」
「いや…この様な場所って一応あたしもここ住んでんだけど?」
ミントが呆れたように小さく呟くがどうやら既に二人はお互いの世界に入っている様で聞こえてはいないようだった。
「やめてルイズ、私達はお友達じゃない!ここには枢機卿も母上もあの友達面をして寄ってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
ああ、もうわたくしには心を許せるお友達はいないのかしら。
昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、貴女にまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」
「姫殿下…」
顔を両手で押さえ頭を振るうアンリエッタの様子にやっとルイズは顔を上げた。そこからは二人の幼馴染の懐かしい昔話が続いた。
それはルイズとアンリエッタが幼馴染で、幼いころ、遊んだり取っ組み合いの喧嘩をした、という様な極普通の子供の思い出話だった。
ぶっちゃけてそんな他人の思い出話等に興味の無いミントはルイズのベッドに腰掛けて半ば冷めた様子で二人のやり取りを眺め…
(王女ね〜こんな娘が国を支配出来てるとは思えないけど…フフフ、良い機会だわ。ルイズをダシに近づいて王家の秘宝や情報をゲットする為に精々利用させて貰おうじゃ無い!!)
等と邪な考えを抱いていた。
「結婚するのよ…わたくし……」
先程まで嬉しそうに明るく話していたアンリエッタの声のトーンが暗いものへと変わる…
「それは…おめでとうございます。」
それは暗にこの結婚話が望まぬ政略結婚だと訴えている…それをルイズも察してその祝福の言葉は残念ながら心からのものとは到底言えるものでは無かった。
「所で…」
ここでようやくアンリエッタはルイズの後ろで退屈そうにゴロゴロしていたミントの存在に触れる。
「あちらの女性は学園のあなたの友人なのかしら?」
そうルイズに訪ね首を傾げたアンリエッタにルイズは自分がした昼間の最悪の想定が現実味を帯びた事に明らかに顔を青くした。
「あ、あの…姫様あいつはですね……」
「あたしはルイズの使い魔のミント様よ。よろしくアンリエッタ。」
どもるルイズに構う事無くミントは友好的な態度で立ち上がりアンリエッタに手を振ってみせる。
姫として体験した事の無い余りに砕けたその挨拶にアンリエッタは戸惑い、ルイズは頭を抱えて大きく溜息を漏らした。
「ミント、あなた少しは姫様へ礼儀を…お願いだから。」
ルイズは無駄と解りながらも言ってばつの悪そうな表情でがっくりと肩を落とす。
「別に良いじゃ無いルイズ、そんな事言ったらあんただってあたしに対してもっと礼儀を弁えなさいよ。」
「ぐぬぬ…」
ルイズとミントのやり取りにアンリエッタはついて行けず置いてけぼりになったままである。
そもそもルイズはミントに対して明らかに気を遣っている様子だしミントは自分が王女である事を認識した上でさっきの様な砕けた接し方をしてきた。アンリエッタにはいまいち自らを使い魔だと言ったミントの人物像を掴みかねていた。
「姫様、ミントの無礼をどうかお許し下さい。罰ならばわたくしに!!」
ルイズの真っ直ぐな視線にアンリエッタはさらに困惑する。
「どういう事なのルイズ・フランソワーズ彼女はあなたの使い魔なのでしょう?」
「はい、ミントは確かに私が春の使い魔召喚の儀式で呼び出した使い魔なのですが…」
ルイズは伏し目がちに観念し、アンリエッタにミントの事を説明する事にした。
「ミントはこことは違う異世界の魔法国家である東天王国の第一王女…位で言えばその…アンリエッタ姫殿下と同等の地位なのです。で、ですが現在私の使い魔で居るのはミントの意思で…痛っ!!」
そこまで言った所でルイズの脳天をデルフリンガーの鞘が軽く叩き、ルイズはあまりの衝撃にアンリエッタの前にも関わらず頭を押さえて床を転がりのたうち回る。
「言い訳してんじゃ無いわよ。まぁそんな訳でよろしくアンリエッタ。」
余程驚いたのか口を開いたまま唖然としているアンリエッタを見下ろしてルイズに振り下ろしたデルフリンガーを肩に担ぎ直しミントはニヤリと笑った。
「ミントォッ!!」
「本当に驚かされましたわ、ご迷惑をお掛けしますミント殿下。ルイズ・フランソワーズ、貴女って昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずなのね。」
「お恥ずかしいですわ…」
ミントとルイズの些細な口論が終わりミントとの友好を深めたアンリエッタがクスクスと笑う。が、そこで再びアンリエッタは気落ちした様に憂鬱げな表情を浮かべた。
そう、ここからがこのお姫様の本題なのだ…
今回はこれで終了です。
ここ数日投下作品が多かったので何か盛り上がってるみたいで嬉しいですね。
因みに設定としてはルシアンはルウエンドから、ミントはミントエンドからのある意味で平行世界からの召喚となっております。
なので二人ともブックオブコスモスの力を吸収していてバリバリです。
おつおつ
飛び蹴りかまされた方の兄さんじゃなかったかw
ミントエンドじゃクレアさん死んだままじゃないの? その辺は独自?
初投下させてもらいます
プロローグだから短いけど
使い魔は妖魔か或いは人間か
Prologue
『死の宣告』
今日、私の愛した『人』が死んだ。
彼女は私の城から逃げ出し、自殺した。
「アセルス様は変わってしまわれました」
それが彼女の遺言。
自分の頬に流れるのが、涙なのか雨の滴なのかはわからない。
なぜ彼女が私の元を去ろうとしたのか私には理解できなかった。
私が変わった?一体何が?
確かに彼女と初めて出会ったのはまだ自分が妖魔だと言う自覚が少なかった頃だ。
半妖の私は人間の頃の感覚が捨てきれなかった。
人からは化け物と嫌悪されるか利用しようとする者しか近寄ってこない。
妖魔からは半人と蔑まれる。
半分人間、半分妖魔というこの世でたった一人の中途半端な存在。
人間として生きられないならばと、妖魔として生きる為に力をつけた。
そして私を半妖にした張本人『オルロワージュ』を討ち滅ぼした。
妖魔としてしか生きる道はない。
なのに今でも私の身体は半妖のまま。
半妖であることを蔑む妖魔を力ずくで屈服させてやる。
妖魔の血を畏怖する人間には妖魔として恐怖を与えてやる。
そうして私はあの人に代わる針の城の主となった。
最初の寵姫として私は彼女を愛した。
ジーナが私にとっての全てだった。
二人で永遠を手に入れられると思っていた。
数え切れない屍を築き上げ、私に味方はもう一人もいない。
ジーナも、私がかつて心の支えとしていた『白薔薇』も私の前から姿を消してしまった。
あの人の食い滓など興味なかったが、白薔薇は別だった。
オルロワージュを倒した後に闇の迷宮に向かったが、彼女はそこにいなかった。
白薔薇も私の前から姿を消してしまった。
私は今までオルロワージュが白薔薇を消したのだと思っていた。
だが、彼女もジーナのように自ら私の前から姿を消したのではないか?
空にはよどんだ灰色の夜空。
雨も止むことなく、時々稲光が鳴り響く。
ジーナに血を分け与え、蘇らせる事も考えた。
だが、そうする気になれなかった。
彼女が自殺する前に見せた表情。
あんな悲しそうな笑顔は見たことなかった。
彼女はもう二度と私に心を開いてくれないだろう。
オルロワージュの元を去った零姫が彼の元に戻る事がなかったように。
それだけは確信できた。
──なぜ彼女はあんな悲しんでいたのか?
──彼女を悲しませたのは私?
──私が変わったのが彼女を悲しませた理由?
──私の何が変わった?
思考が混沌として、何一つ答えは導き出せない。
誰かの声が聞こえるのも考えが浮かばない理由の一つだ。
「え?」
ようやくこの場に不自然な声に気付いた。
周囲には人影はおろか、動物の気配すらない。
ゾズマあたりが茶化しにきたのかと思ったが、声は少女のように鈴が鳴るような声だ。
ゾズマは私への反逆を企んでいたはずだが、もうどうでもいい。
ふと目を向けると私の前に鏡がある。
奇妙な力を感じることからただの鏡ではないだろう。
声の主は鏡の向こうにいる人物のようだった。
言葉は力強かったが、どこかか細かい。
私はその声になぜか懐かしさを覚えて鏡に手を伸ばした。
危険性を考えなかったわけではない。
だが、ジーナがいないこの城、この世界に私は何の価値も見出せそうにない。
鏡に手を触れ、アセルスは姿を消した。
この日以降、針の城で彼女の姿を見たものはいない……
今回はこれで終了です
サガフロからアセルス(妖魔ED)の召喚となります
サガフロ、懐かしいなあ。投下乙
久々に裏解体真書を引っ張り出してみたが、
12歳の零姫にメロメロで寵姫たちに愛想つかされたあげく未成年者略取でヒューズに逮捕されたオルロワージュは笑ったw
デュープリの人&アセルスの人乙
なんだかミントとアンアンが仲良くなりそうでワラタ
サガフロなついけど、妖魔エンドは見てないやw
みなさん初めまして、SSを作ってみたので投稿したいと思います。
召喚されるのは、戦闘城塞マスラヲ&レイセンの主人公である
川村ヒデオです。
131 :
ゼロツカ:2012/03/24(土) 02:05:06.04 ID:cIEGrmWP
ゼロツカ 第一話 川村ヒデオ
ここは、どこだろう・・・
そう思うのも仕方ない事で、自分はいつものように職場へ出勤しようと玄関から出たのだ。
しかし、それはいつも目に広がる風景ではなく、地面に叩き付けられ、今自分は青空を見ている。
ずっとそうしているわけにもいかないと体を起こしてみると、よくよく周りを見れば周りには人がおり、かなり騒いでいた。
あまりに唐突な出来事に気がつかなかったのだろう。
「見ろよ!!ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!!」
「おいおい、召喚できなかったからってその辺から連れて来るんじゃねーよ」
待て、なんだこの状況・・・・なぜここに居る人達は動物を連れている?
と言うより、明らかにただの動物ではないのもいる。
何よりこの状況はまずい・・・・引きこもり質の自分が話題の中心であり、注目を受けるなど耐えられるわけがない・・・・引きこもりを舐めるな!
目を適当に反らす、すると一人の少女がおり、なぜか震えている。
「先生!やり直しを要求します!!」
何を言っているのだろうか?
やり直し?何か気に入らない事でもあるのだろうか?
先生と呼ばれた人に視線を向けてみると、見事な波兵禿ではないか、いや、頭の天辺に一本の毛がないのだから違うか?
「それは認められません、この使い魔召喚の儀式は神聖であり、それをやり直すなどと言う行為は認められません」
使い魔?ハハハ、何を言っているのだろうかこの波兵は・・・・これでは自分が使い魔として召喚されたみたいではないか、契約には少女の口づけでもあると言うのか?バカバカしい。
「しかし・・・!」
「それ以上何か言うつもりなら、退学処分になりますよ?」
「クッ・・・」
少女は、渋々と言った感じで了承し、自分の真正面に腰を落とす。
「か、感謝しなさいよ!こんな事、普通はないんだからね」
そんな事を言った少女は、こっちの唇に自分の唇をくっ付けてきた。
とどのつまり、キスである。
キスをされたヒデオは、頭を混乱させる。
この引きこもり人生の中で、キスなどと言うリア充の行為をしたことなどなかったからだ。
待て落ち着け!これは孔明の罠だ!!ありがとうございます孔明さん!!!
などとアホな考えをした所で、自分の左手の甲に激痛を感じた。
「クッ・・・!?」
「安心しなさい、使い魔のルーンが刻まれてるだけよ」
使い魔のルーン?そう言えば、さっきからそう言う話をしていたなと考えていると、痛みも引いてきた。
一体何だったのだろうと、左手の甲を見てみると、そこにはよく分からない文字が刻まれていた。
「なんだ、これは・・・」
「さて、これにて使い魔召喚の儀は終了します。解散してください」
132 :
ゼロツカ:2012/03/24(土) 02:05:37.73 ID:cIEGrmWP
自分の理解が追いついていないのに、世界と言うのは勝手に進行するもので、周りの人間は動き出す。
「ルイズはちゃんと歩いて帰れよ〜」
そんな声が聞こえたので、そっちの方を見てみると、空を飛んでいるではないか。
いや、自分だって色々見てきたさ・・・・でも人が空を飛ぶなどと言う事に遭遇した事などないため、驚く・・・・人でなくて良いのならあるが・・・・
「じゃあ、私たちも変えるわよ。ついてきなさい」
ルイズと呼ばれた少女は、歩いて皆が飛んで行った方向へ歩いて行く、自分にあわせてくれているのだろうか?
何にせよ、自分にはついて行くと言う選択以外ないため、少女について行くことにする。
少女の部屋の前につき、少女は普通に入っていく。
だが、ヒデオとしては緊張していた。
女の子が自分の部屋に来ることはあっても、女の子の部屋に自分が入る事など今までなかったからだ。
「何をしてるの?はやく入りなさい」
「あ、あぁ・・・」
初めてのキス、初めての女の子の部屋、神様、自分はこんなにリア充体験をしてもいいのですか!?
と、ここで気がつく、今の状況下ならば、自分に憑いている闇の精霊がツッコミの1つでもしてくるのだが、それがない、呼びかけてみても反応がない。
どういう事かと、また考え込み始めるが、少女に再度催促されたため、部屋に入る。
「で?あなたは誰?」
「僕は、川村ヒデオ」
「カワムラヒデオ?変な名前ね」
そんなに、変な名前だろうか?
まあ、見た所、日本人ではなさそうだし、日本人の名前を聞きなれていないのかもしれない。
そして、ここでもまた何か引っかかったが、それを明確にする前に少女にとある事を言われる。
「ところであんた、さっきからなんでそんなに私を睨んでるわけ?自分の立場わかってる?」
ヒデオとしては、ただ普通にしているだけなのだが、実在した殺人鬼を凌ぐ目つきの悪さと生来の鉄扉面のせいで、他人にはそんな風にいしか感じられないのだろう。
「いや、そんなつもりはないのだが・・・」
「だったら、その目つきなんとかしなさいよ、完全にそうとしか見えないのよ」
生まれつきなのだから仕方ないだろうと言おうとして、とあるものに目が行く。
「その手に持っている物は?」
「貴族が杖を持ってちゃ悪いわけ?」
「いや、なぜ杖が?」
「魔法を使うために決まってるでしょう?あなた、魔法も知らないの?」
魔法なら、個性あふれる知り合いたちのおかげで知っている。
だが、それの誰もが杖を使って魔法を使ったところなど見た事がない、エルシアの魔道書はリミッターと言う話だから、違うだろうし。
そして、そこでさっき引っかかった事にようやく気がついた。
ここはどこだ?と言うより、本当に自分の知っている世界なのだろうか?
133 :
ゼロツカ:2012/03/24(土) 02:06:16.32 ID:cIEGrmWP
自分が知らないだけかもしれないが、少なくとも自分達の世界で、このような学校がある事など知らないし、貴族などと言うものは残っている所もあるが、形だけの様なものと聞く。
それに、たとえ貴族だったとしても、貴族=魔法が使えるなどという常識など、自分がいた世界には存在しない。
そこで、ここがどこなのか聞いてみることにした。
「ここは一体どこなんだ?」
「ここは、トリステイン魔法学院、さすがにトリステインぐらいは知ってるでしょう?」
「・・・世界地図か何か見せてもらえないか?」
「世界地図?まあいいわ、はいこれ」
手渡された地図を渡されて、愕然とする、それは今まで見た事もないような形の地形、そこには、トリステイン・ガリア・ゲルマニア・アルビオンなどと、聞いたこともないような国の名前が書かれていた。
夢かと思ったが、超愉快型極悪感染ウィルスを拾ったあの日から、非科学的な事にはたくさん遭ってきた。
それ故、今自分に起こっている出来事を夢という言葉で片付ける事は、ヒデオには出来なかった。
「何をそんなに深刻そうな顔をしてるのよ?」
さすがに、異世界などと言うものは初めての体験であり、驚きも大きかったのもあり、よほど深刻な顔をしていたのだろう。
今まで、機嫌を悪そうにしていた少女が、心配そうに声をかけてくる。
「い、いや・・・所で1つ聞くが、異世界と言うものがあると言われて、信じるか?」
「はぁ?異世界?あんた、頭大丈夫?」
出来るなら、この少女のこの言葉は聞きたくなかった。
つまり、自分は元の世界に変える方法がないと言う事なのだから・・・
「ちょっとあんた、本当に大丈夫?顔色悪いわよ?」
「あ、あぁ・・・大丈夫だ・・・」
まずい、これは本当にまずい・・・今自分には帰る手段などなければ、この世界で生きていくためのすべもない、完全な詰み状態だ。
つまり、この少女から離れる事は不可能であり、元の世界に戻る方法を探すことが出来ないと言う事だ。
この少女が異世界の存在を知らないのだ、ちょっと足を運んだ所に手がかりがある可能性も低いだろう。
今、自分が生きるか死ぬかは、この少女の行動1つで決まる。
だがこの少女は、自分の事を使い魔と言った。
つまり、その使い魔の仕事を果たしていれば、捨てられるなどと言う事はないだろう。
だから、ヒデオは動く、生き残るために。
「ところで、使い魔と言うのはどういう事をするんだ?」
「あら?急にやる気を出したの?まあいいわ、使い魔とは、主人の目となり耳となる能力があるって言われてるわ・・・でもダメそうね、私はあなたが見ている物が見えないもの」
「たしかに、僕も君が見ているものは見えない」
「あとは、薬の材料をとってくるとか・・・私の護衛とかかしらね」
残念、僕の人生は終わってしまったようだ・・・まあ、一度終わった事があるんだがな。
とりあえず、自分にはこの少女に出来る事は何もなさそうだ。
「まあ、さすがに護衛ぐらいは出来るでしょう」
護衛?ハハハ、ご冗談を・・・引きこもりに一体何が出来ると言うのか?
精霊使いであるが、ロクなのを召喚できないのに?
と言うより、召喚できる精霊の内の1人は、召喚したら社会的に死ぬ・・・もっと言えば、異世界に召喚出来るのだろうか・・・
134 :
ゼロツカ:2012/03/24(土) 02:06:55.79 ID:cIEGrmWP
少なくとも、電気もなさそうなので、ウィル子など論外もいい所だろう・・・頼りのノアレはなぜか反応すら示さない・・・さようなら人生、こんにちは、二度目のクソゲークリア。
「何か黒いオーラ出てるわよ?まあいいわ、今日は疲れたから寝たいの、着替えさせて」
「は?」
待て待て、今この少女は何と言った?着替えさせて?誰に?
「聞こえなかった?着替えさせてって言ったのよ」
「だ、誰に?」
「あんた以外に誰がいるのよ?」
着替えさせる?これは新手のプレイか何かだろうか?
いや、そう言えば貴族なんかは、使用人がいる場合、それに着替えなどをさせるそうだ。
これはそういう事だろう。
「わ、わかった・・・」
寝間着や下着を準備させられ、少女の服をすべて脱がす。
残りは下着を脱ぐだけとなったので、外に出ようとする。
「どこに行くつもりよ?私は着替えさせてって言ったのよ?途中で投げ出すんじゃないわよ」
待て、これ以上何をしろと言うんだ!?
まさか、下着まで脱がすというのか?引きこもりにそんな度胸があるわけがないだろう!
そうして、狼狽えていると、もういいとばかりに下着を脱ぎだしたので、一瞬で目をそらす。
その状態で待っていると、着替え終わったようなので、視線を元に戻す。
「それじゃあ、私は寝るけど、朝私を起こすのと服を選択して置いてちょうだい」
「それは構わないが・・・僕の寝床は・・・?」
「そこにあるじゃない」
視線をルイズが指さしている場所に向けてみると、そこには藁束があるだけだ。
「これが・・・?」
「そう、それがあんたの寝床」
冗談も大概にしろと思ったが、この部屋にこの藁束以外に寝れるようなところはなさそうだ。
つまり、これは冗談でもなんでもなく本気・・・冗談の方がまだ笑いがあったろうに・・・
途方に暮れている間に、少女は布団の中にもぐり、よほどの眠かったのか、まだ日も高いと言うのに、すぐに寝てしまった。
とりあえず、ずっとそうしているわけにもいかないので、ヒデオは言いつけどおりに洗濯をしに行くのであった。
135 :
ゼロツカ:2012/03/24(土) 02:09:26.47 ID:cIEGrmWP
今回はこれで終わりです。
始めは、同じ作品に出てくる初代聖魔王である鈴蘭を召喚しようとしたのですが
プロローグを書き終わった後に、鈴蘭の力の性質上どこかで無理があると感じやめました。
まあ、これからも上げていくので、生暖かい目で見てもらえたら幸いです
魔眼王乙
このヒデオ君丸腰? ケンカを売ろうとする輩は少なかろうが
ノアレ無しのヒデオってサイト以下じゃないのかしら。
寝てたり高みの見物してるだけならいいんだけど。
好きな作品だけど難しそうね。とりあえず楽しみにするわ。
>>122 体はデュープリズムで新造して魂はルウのプリズムに付いてたのを別の秘宝で体に入れたってのが公式設定らしい
トゥルーでどっちのEDでも聖域と消えた筈のマスクがルシアンの墓にあったのは永遠の謎
>>137 両方クリアすると後日談的なドタバタムービー流れるわな
今の技術でマジで再編集してくんねーかな
139 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:36:28.84 ID:T3MSSI85
新スレに気付かず 前スレに投下してしまった…
改めて投下〜
140 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:37:17.59 ID:T3MSSI85
「…これが私の使い魔?…」
「なんだ貴様は? ここはどこだ? 私を召喚したのか? どうやって? さきほどの鏡のようなものか? 転移系の魔法か?」
「随分偉そうだし…私より小さいのに…」
「質問に答えないのはまだしも 小さいとは言ってくれるな」
「なによ どう見ても私より小さいじゃない」
「む…魔力が十分ならこんな姿で… うむ? 結界から抜け出せている? これなら…」
「なに? 言いたいことがあるなら言えば… って! え?」
「これが私本来の姿だ どうだ? お前のちんけな体とは比べ物になるまい?」
「なななななななな… なによ これ… 私より胸が胸が胸が胸が………」
「分かったか? 小娘」
「ううう… ああもう そんなのどうでもいいの! あなたは私の使い魔になるんだからそれにしても今のは 魔法? あなたメイジなの?
平民かと思っちゃったけど」
「ほう 使い魔にしようとして私を召喚したか まあ結果的に結界から抜け出させてくれたわけだし
お前が死ぬまでくらいは面倒を見てやってもよいが ああ名乗っておこうか 私は闇の福音エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
聞いたことはあろう?」
「闇の福音? 聞いたことないわね それに私が死ぬまでって その時にはあなたももう死んでるか 随分なおばあちゃんになてるんじゃないの?」
「私の名前を聞いたことがない? とんだ世間知らずだな おいそこのハゲ 話は聞いていたな? 説明してやれ 見たところ教師のようだか 無論知っているだろう?」
「ハ? ハゲって私ですか? … 確かに私はこの学院の教師ですが 闇の福音なんて聞いたことないですね これでも結構物知りのつもりなんですが ご出身を聞いても?」
「貴様も知らないのか? この不死の魔法使い 悪しき音信 禍音の使徒 吸血鬼の真祖を?」
141 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:38:08.49 ID:T3MSSI85
「「吸血鬼?!!!」」
「ああそうだが ちなみに出身は一応旧世界のフランスだ」
「いや 吸血鬼を使い魔にするなどかつて例が…というか吸血鬼がこんな日当たりのよい場所で平気なのですか?
そしてフランスなんて地名聞いたことないですが もしや東方のほうでしょうか?」
「私は真祖だからな 対して問題にならん ああ そうそう東方出身だ(フランスが分からんとは ここはどこだ? 魔法世界のどこかしらの魔法学校かとも思ったが
まあいいだろう 結界の影響はないようだし 旧世界のどこかではなさそうだな あとあと考えればいいだろう)」
「う〜ん… ミスヴァリエール いまいちよくわかりませんが こちらの方が吸血鬼で それも真祖?とかで 使い魔してはまあ 比べる対象が難しいですが
妖魔の類を召喚できたなら かなり良い結果と言えますし 使い魔になってもいいそうですし 契約しては?」
「そうですね… ねえ あなた? エヴァンジェリン それじゃあ 私の使い魔として契約してくれるかしら? そして 私が死ぬまでつかえてくれるのね?」
「いいだろう 長くともせいぜい60年70年程度になしかならんだろうし 暇つぶしにはなりそうだしな それと 先ほど私を平民とぬかしたが
これでも元は大領主の養女だから 一応は貴族だぞ」
「分かったわ ならお願いするわ 貴族というならそれ相応の待遇も約束する
それじゃ 契約するわよ」
「ああ」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン
この者に祝福を与え 我の使い魔と為せ」
「ん…」
「これで契約完了よ」
「(キスをするのか 使い魔というより仮契約だが… 魔法体系からして違うようだし細かいことはいいか)む 手が熱いな」
「使い魔のルーンが刻まれているのですよ ふむ なかなか珍しい形ですね スケッチしても?」
「別に構わん 好きにしろ」
142 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:38:34.84 ID:T3MSSI85
「なんだかよくわからないけど ゼロのルイズのやつ 吸血鬼を使い魔にしたって 実はすごいんだろうか?」
「いつも失敗ばかりだけど 才能は実はあるってことか?」
「というか これからは下手にあいつを馬鹿にしたりすると 吸血鬼に何かされるんじゃね?」
「それって グールにでもされるってか? ありえないこともないかも…」
「これからはきをつかたほうがいいかもな」
「さあ みなさん ミスヴァリエールの契約が終わったところで 今日の授業は終わりです 部屋にお帰りなさい」
「「「は〜い」」」
「さあ いくか」
「セロのルイズはフライなんか使えないから歩け ブッッ おいなにすんだよ」
「バカお前 さっきの話忘れたのか? 迂闊なこと言うなよ」
「あ そうだった…… ええと じゃあな ルイズまた明日」
「なんだおまえ? 随分バカにされているようだが? あの連中懲らしめておくか?」
「いいわよ あんな連中 ほおっておけば 私たちも行きましょう」
「ふむ お前は飛べないのか なら…」
「わッ あんた飛べるの? それも私を一緒に飛ばすなんて…」
「私にかかれば容易いさ 使い魔として これくらいはお安い御用だ」
「…ありがとう」
143 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:40:09.80 ID:T3MSSI85
とりあえず 完成分は投下完了
台本形式ならVIPとかSS速報でやった方がいい
>>136 あのサングラスがあればゼロ魔世界の大概の存在はどうにかなると思うぞ。
地の文が・・・消えた・・・・・・!?
まずsageないと…
>>145 ドクター製はなんであれ、無双出来そうだ・・・
にじファンのノリで書いたんだな
>>136 そこをハッタリで生き延びてこそのヒデオ
にじファン閉鎖で選択肢の一つとしてこのスレ提示する読者様とかいたな
春だからかどこも馬鹿が湧いてて困る
ここは良い意味でも悪い意味でもグルメだから最低限の体裁は整えてないと風当たり厳しいかも知れんよ
賑わうのなら移転はむしろ歓迎。あくまでルールとマナーを守ればだけど
前にもこことにじファンの二重投稿をしようとして総スカン食らったやつがいた
にじファンは最低系のたまり場だからよその評判は芳しくないんだよな
あそこの最低系の多さは異常
たまーに良作もあるんだが大抵は先に探す気力が尽きる
>>143 まあ台本形式はルール違反じゃないけど読みづらいね
その辺考慮してもう一度投下してくれるとありがたい
. ,ィ =个=、
〈_/´ ̄ `ヽ
{ {_jイ」/j」j〉
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ
く7 {_}ハ>
‘ーrtァー’
ああ、無駄にAAいれるのも駄目だ。ごめんよ
アニメのルイズが地球にいったくだりはルイズがヤンと銀河帝国に行った話を思い出した。
それより問題は自衛隊基地から戦闘機が盗まれたことだ
あのアニメはきっと作者による今日本が抱えている安全保障へのアンチテーゼなんだ
定期サイヤ待ち
虚無と最後の希望はまだだろうか
定期爆熱待ち
「さすがの私も戦闘機は盗めないわ」と何処ぞの黒髪魔法少女が…
前にも小ネタでアセルス召喚があったけどあれは最後にルイズもアセルスの恋人になって
しまったんだっけ?
今回のはどうなるのかな
>>166 没案ではまじかる☆対艦ミサイルの代わりが戦闘機の特攻だったそうだが
169 :
一尉:2012/03/24(土) 22:07:09.22 ID:W/G6hIMb
ローマンを召喚にするルイズ
ローマン「俺はなぜ死んだはず俺はここはとこだ。」
ルイズ「誰だ・・」
才人「このおじさんは・・」
お前ら的にアニメはどうだったんだ
>>171 スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフル
つまり無駄にゴテゴテ飾り立ててた中二的作品だという事か
>>172 つまり1秒間に50回もの衝撃を受ける凄い出来なのか
原作も概ねあんな感じの結末なのね
176 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/25(日) 11:11:34.58 ID:GWeC5mPv
燃えるお兄さんを思い出した
安心しろ、ジョゼフは私が倒した
みなさんこんにちは
今週は、規制はまだしも忍法帳がアウトになってしまいましたので避難所のほうに投下します
どなたかお目についた方でよろしければ代理投下をお願いいたします
では代理行きます。
第八十三話
ネフテスの青い石
怪魚超獣 ガラン
高原竜 ヒドラ
友好巨鳥 リドリアス 登場!
「サイト!」
「言っただろ、おれが守ってやるってな!」
ティファニアの危機にさっそうと駆けつけた才人は、ガッツブラスターを構えながら不敵に笑ってかっこうをつけた。
もっとも、才人も落盤のときに大量の粉塵を浴びたと見えて、顔からパーカーまで真っ黒にすすけている。せっかくのところで
悪いけれども、これでは炭鉱の工夫みたいでルクシャナは失笑したが、それでも撃たれた傷を押さえながら、ティファニアは
表情を輝かせた。
それに、瓦礫ごしにルイズも現れて、ポーズをとっている才人の頭を杖で軽くこづいた。
「なあに、似合いもしないヒーローぶってるのよ。閉じ込められたときに、『やべえよ真っ暗だよ』とかうろたえてた奴のセリフ?」
「ちぇっ、お前がつまづいたおかげで逃げ遅れたくせによく言うぜ。けど、そっちが魔法の明かりを照らしてくれたおかげで助かった。
まさしく怪我の”光明”ってやつだな。おい! そこの金髪の長耳野郎! もうテファたちに手出しはできねえぞ。降参して武器を捨てろ!」
「おのれ、まだ悪魔のかたわれがまだ残っていたか! いったい、なんの悪魔の術を使った!?」
「術じゃねえよ、こいつは科学っつうんだ。それに、こいつは人を救うための力だ、悪魔なんかじゃねえよ」
怒鳴るファーティマに向けて、才人は誇りを込めて断固として言い放った。
才人の手にあるガッツブラスターの先端には、青い色をしたアタッチメントパーツが取り付けられていた。一度リュウ隊長の
手に渡されて地球に送られたこの銃は、モロボシ・ダンによって再び才人の手に返された。その際、CREW GUYS仕様に
いくつかの改造が施されていて、アタッチメントパーツを付け替えることによって、トライガーショットと同じように超絶科学兵器
メテオールを使用することができるようになっていたのだ。
そのひとつが、今ティファニアたちを助けたメテオール・キャプチャーキューブである。メテオールの代表かつ基本といえる
装備で、照射部に一分間限定の簡易バリアーを発生させて、外部からの衝撃から身を守ったり、逆に内部に敵を閉じ込めたり
することもできる。
「黙れ、悪魔の戯言など聞く耳はもたん」
才人の言葉に激昂したファーティマは、銃口を才人たちに向けた。しかし、一瞬前に才人は二発目の引き金を引いていて、
今度はファーティマがバリヤーに閉じ込められてしまった。
「おのれっ! 出せっ! 出さないかっ!」
「無駄だよ。そのバリヤーはちょっとやそっとじゃ破れねえ。少しその中で頭を冷やしやがれ」
キャプチャーキューブは簡易ながら、その強度は見た目よりはるかに強い。並の怪獣の攻撃が通じないのはもちろんのこと、
暗黒四天王のひとりデスレムの火炎弾『デスレムインフェルノ』も軽く跳ね返してしまった。これを内側から破るなら、
無双鉄神インペライザー級の大火力が必要とされる。
才人は、ファーティマが無害化すると瓦礫を駆け下りてティファニアとルクシャナのもとに向かった。ちょうど、そちらの
キャプチャーキューブは時間が過ぎてバリヤーが消え、二人も中から出てきて駆け寄ってきた。
「テファ、大丈夫か? 怪我してんだろ」
「大丈夫、かすっただけだから。それよりもありがとう、助けに来てくれたんだね」
「え? へへ、まあなっ! おれは約束は破らない。特にテファとのだったらなおさらさ!」
天使の笑顔で擦り寄ってくるティファニアに、才人は照れながら胸を張った。もっとも、その後すぐにルイズに耳を引っ張られてしまったが。
「あんた、そのにやけた顔は何? わたしと閉じ込められたときは気にも留めずにひとりで慌ててたくせに、説明してもらえるかしら」
「あいててて! こ、これは、ルイズの顔はもう見慣れているがゆえの新鮮な反応というかなんというか。と、ともかく二人とも
無事でよかったよかった! いてててっ!」
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ウルトラ5番目の使い魔 83話 (2/10) ◇213pT8BiCc(代理):2012/03/25(日) 18:27:51.96 ID:ElGNFbOj
才人は無理矢理ごまかした。だって、ルイズは力強すぎて心配なんてできないんだもの。それに、「自分以外の女を見るな!」というのは
女が惚れた男に対する自然な反応だとしても、ルイズの嫉妬ぶかさは相変わらずひどい。少しは自覚してほしいと才人は思った。
「くすっ、サイトとルイズって、ほんとに仲がいいのね」
「お、おいっ! これが仲よさそうに見えるのかテファ!?」
「うん、だって心配する必要がないほど信頼しあってるってことなんでしょ。いいなあ、わたしもそんなふうに思われてみたいよ」
まったく疑うことをしない天使の笑顔が才人に向けられた。才人からしたら、よくまあそこまで人をよい方向に見られると思う。
純真というか、人間のよいところを素直に見られているというか、ティファニアほど人を澄んだ目で見られる子はそういないだろう。
人は成長していくにつれて疑り深く、心が濁っていくものだから、ティファニアの純真さはとても貴重に思えた。
と、そこで無視されていたルクシャナがルイズの手を放させた。
「はいはい、そこまでにしときなさいあなたたち」
「いてて……わり、助かったぜ」
「どうでもいいわよそんなこと。ま、助けてもらえたっていうならわたしのほうこそだから、今のうちに一応礼は言っておくわ。
それよりも、どうやってここから出るかを考えましょう」
「あら? それなら心配いらないわよ」
こともなげに言ってのけたルイズに、才人とルクシャナは怪訝な顔を向けた。
「はあ、あなたたちわたしが虚無の担い手だってこと忘れてんじゃないでしょうね。さすがに外に出るのは無理だけど、
この程度の岩壁ならどってことないわ」
「そうか! テレポートがあったな」
合点がいった才人はぽんと手を叩いてうなづいた。ルクシャナも、話には聞いていた瞬間移動魔法の名前を思い出して、
なるほど虚無が悪魔の業と恐れられるのも道理ねと、口には出さずに納得し、ティファニアは両手を叩いてうれしがった。
「すごい! ルイズさんって、そんな魔法も使えるんですか」
「ふふん、そのとーり。レビテーションとかフライとかなんて比べ物にならないわ、なんたって一瞬であっちからこっちまで
行けるんだもの。ま、こんなことができるのも、この超絶天才美少女メイジ、ルイズさまだからこそよね。そうでしょサイト?」
「はいっ、そのとおりでありますっ!」
「ほーっほーっほっほ!」
今わめいたカラスがもうカナリアになったと才人は思った。ほめられればすぐ頭に乗るというか、感情の起伏が大きくて
ノリがいい。人によっては疲れる性格だと思うかもしれないが、才人はそうでないルイズはルイズでないとも思うのであった。
「それじゃ、善は急げでさっさと脱出しましょうよ」
「待って、あの人を置いていくわけにはいかないわ」
すぐに脱出しようと急かすルクシャナを、ティファニアが止めた。彼女は、ファーティマをここに残しておくわけにはいかないと言う。
見ると、キャプチャーキューブの時間が切れ、ファーティマは床に倒れこんでいた。どうやら、見た目以上に深い傷を負っていたらしい。
しかし、それでも一丁だけ残った銃を手放さず、ファーティマはティファニアを撃とうと腕を震わせている。そんな彼女の鬼気迫る
姿に、自分も殺されかけていたルクシャナは憤然として言い放った。
「いいわよそんな奴置いていきましょう。どうせ死んだって自業自得よ」
「そんな! それは、いくらなんでもかわいそうですよ」
「あなた、自分が殺されかけたってのにお人よしがすぎるわよ。見なさい、助けたって、そいつはまたわたしたちを殺しに来るわ。
あなたは知らないだろうけど、鉄血団結党っていって蛮人嫌いの狂信者集団の仲間なのよそいつは。ここで始末しておかないと、
あなたの仲間も命を狙われるわ。苦しませるのが嫌だっていうなら、一思いにここで撃ち殺してあげなさい」
話の通じる相手ではないと、ルクシャナは才人にとどめをうながした。
才人は、ガッツブラスターを睨んで考える。確かに、この女は命を助けても、その恩をあだで返しに来るだろう。そのせいで、
自分はともかくティファニアやギーシュたちに危害が及んだら取り返しがつかない。
しかし、正しい道理が正しい答えにつながるとは限らないことを、才人も多くの経験から学んでいた。
血の気を失って蒼白になり、それでも取り憑かれたように銃口を上げようとするファーティマは、まさに狂信者と呼ぶにふさわしい。
が、命は命……それに、すがるようなティファニアのまなざしが才人を決断させた。
「連れて帰ろう。敵とはいえ、こいつにも死んで悲しむ奴がいるかもしれねえ」
「……甘いわね、あなたはまだ狂信者というものがわかってないわ」
「だろうな……だが、おれはこの銃で人殺しはしたくない。まあ、なるようになるさ。ルイズ、デルフを頼む」
悪いほうに考えてもしょうがないと、才人は楽天的に言ってのけた。背中に背負っていたデルフリンガーをルイズに渡し、
ファーティマの持っていた銃を蹴り飛ばして、彼女を背中に背負った。
「はな、せ……汚らしい、ばん、じんめ……」
「はいはい、蛮人でもゴリラでも好きなように呼べ。おれも本当はてめえなんか助けたくはねえが、テファがどうしてもっていうから
仕方なく助けるんだ。ありがたく思ったほうがいいぜ」
「誰が……貴様らのような、サハラを汚すゴミは……われ、らが」
「勝手に来たのは悪いと思ってる。けどな、だからといってゴキブリみたいに片付けられるほど悪いことしたとは思えねえぜ。
てめえが自分らをどれだけ偉い種族だと思ってるか知らねえけど、ちっとは自分の背中を見つめてみやがれ。それでなんにも
思わないとしたら、てめえは見てくれがいいだけのただのバカ野郎だ」
肩越しにファーティマの顔を見て才人は怒鳴った。そのとき、才人はなぜか自然と言葉を荒げてしまったことに気づいた。
ティファニアを殺されかけたことか、差別主義の狂信者への不快感か、そういったものもあるだろうが、なにか別なことで
この女には気に障るものがある。
見てくれがいいだけの……そういえば、才人はちらりとティファニアを見た。彼女はどんどん衰弱の進んでいくファーティマを
心配そうに見つめていた。
「がんばって、船に戻ったらすぐに治療しますから」
「うるさい……」
才人の視界の中でティファニアとファーティマの輪郭が重なる。違和感の正体がわかった、
”そうか、こいつはテファと似てるんだ”
偶然だろうかと才人は思う。昔、日本人には外国人の顔が全部同じに見えると聞いたことがあるが、その類がエルフに
適応されているのだろうか? いや、でもハルケギニアに来たときにルイズたちの顔はちゃんと見分けられたから、それはないか。
とすると、もしかしたら……
そこまで考えたとき、再び大きな地鳴りがして天井からパラパラと石が落ちてきた。
「早く! 次に大きなのが来たら、もう持たないわよ」
「ええ! サイト、テファ、すぐに跳ぶわよ」
三人を自分のそばに集めて、ルイズは虚無の呪文を唱え始めた。『テレポート』の魔法が完成すると同時に、五人の姿は
掻き消えて、次の瞬間残った部屋は瓦礫に埋め尽くされた。
そして、すでに瓦礫にうずもれている山の前にルイズたちが現れると、待っていたエレオノールたちからわっと囲まれた。
「あっ! ルイズ、あなたたち! 無事だったの。そうか、虚無の魔法を使ったのね」
「ええ、運がよかったのか悪かったのか。姉さま、ほかのみんなは無事ですか?」
「うん、我々のほうには幸いながら行方不明はいないわ。水精霊騎士隊の半分はテュリューク殿といっしょに先に帰ったわよ」
この場に残っていたのは、土魔法で掘削をおこなおうとしていたエレオノールのほか、ギーシュたち十名ほどの水精霊騎士隊と
ビダーシャルと、ルクシャナの婚約者のアリィーと数名の騎士だけだった。彼らは、目の前にひょっこりとルイズたちが現れたので
驚き喜んだ。
無事でよかった。心配した、この馬鹿ヤロウと、親しみを込めてもみくちゃにされる。アリィーは、ルクシャナに心配かけさせるなと
言ってはつれない態度をとられてしょげているが、そんななかでビダーシャルがルイズに無表情のままながら礼を言った。
「わたしの姪がまた世話になったようだな。つくづく、迷惑をかけて申し訳ない……ところで、エルフの騎士たちの何名かが
まだ行方不明なのだが、知らないか」
ルイズは、言ってもいいかと悩んだが、ファーティマたち鉄血団結党に襲われたことを伝えた。もっとも、襲われたときには
ファーティマ以外は全滅し、そのファーティマも虫の息なのだが。
「そうか、あの男の走狗が潜り込んでいたとはうかつだった。彼は努力家なのだが、どうにも自己愛が過ぎる男でな。我々も、
お前たちを笑えないのが最近よくわかってきた。それにしても、自分たちを殺そうとした相手を、よく救ったな」
「この女の始末は、あとでテュリューク統領にゆだねるわ。あなたたちの犯罪者をわたしたちが勝手に裁く道理はない……
あなたたちの同胞の不幸には、つつしんで哀悼の意を表します」
淡々と告げたルイズに、ビダーシャルは内心でほんとうに蛮人たちを笑えんなと思った。いったい、より優れているとは
なんなんだろうか? 有無を言わさず暴力で話し合いに来た使者を排除しようとした同胞と、その相手に報復せずに
あくまで紳士的に対応した蛮人……さて、どちらが蛮人と呼ぶにふさわしいものか。
「了解した。その者の処分は、空軍の軍法によって裁かれるだろう」
「寛大な処置をお願いすると、お伝え願いたいわ。それと、あなたたちの魔法で彼女の治療はできないの?」
「重傷だな。できないことはないが、ここは地の底すぎて精霊の加護が期待できんから効果は薄まる。急いで船に戻れ、
専用の医療設備がそろっている」
「よし、そうとなったら急ごうぜ!」
どっちみち、こんな場所で治して暴れられでもしたらなお面倒になる。意識を失っているなら、かえって都合がいい。
だがそのとき、帰り道を見ていたギムリが愕然とした声で叫んだ。
「大変だ! 水が溢れてきてる。この遺跡、水没しちまうぞ!」
「ちっ! みんな、走れ!」
この大人数ではテレポートで連れ出すこともできない。となれば、あとは親からもらった二本の足で駆けるしかない!
しかし、才人たちが地上に向かって長い道のりを駆けているあいだにも、東方号は大きな危機に瀕していた。
「副長! いえ艦長代理! 一番および三番の水蒸気圧力が上がりません。これでは、エンジンは半分しか動かすことができませんよ!」
「かまわん! 残った二基だけでも飛ぶだけならできる。いいから回せ、超獣はもうすぐそこまで来てるんだぞ」
超獣ガランの襲撃を受けている東方号では、ミシェルたち銃士隊が必死になって東方号を動かそうと奮闘していた。
現在、東方号に残っている人数はたったの三十人。最小限度もいいところで、蒸気釜に石炭をくべる人数も、圧力を
調整する人数も全然足りず、まるで、クジラに手綱をつけて操ろうとしているにも似た苦闘だった。おまけに、飛ばす要である
重力制御機構はエレオノールでないと理解できず、念のため作ってあったマニュアル本を読みながらなのでうまく稼動しない。
「くそっ! やっぱりミス・エレオノールだけでも残っていてもらうんだった。わたしたちだけじゃとても手が足りん!
こんなことならスキュラでも隊員にしておけばよかった!」
「おや副長? 酒場で酔ってからんできた男を十人まとめて叩きのめした人とは思えないセリフですね。ちなみに言っておきますけど、
スキュラで多いのは手じゃなくて足ですよ」
「そうですよ。それに亜人は絶世の美女が多いって言いますからね。そんなのを入れておいて、サイトが誘惑されたら大変じゃないですか」
「なんだとお前たち! わたしがタコ人魚にも劣るって言いたいのか!」
「あら? 誰も副長のことだなんて言ってませんわよねー?」
「ねー?」
「うぬぬぬぬ……」
死期が確実に迫っている中でも、冗談が飛び交って笑いが耐えない今の銃士隊は、明らかにまともな軍隊ではなかった。けれども、
達者な口が性質の悪いジョークをつむぎだしながらでも、彼女たちの手は最大限の仕事をこなしていたあたり、まともな軍人では
なくとも超一級の戦士である証であるといえよう。
東方号の左右二基、計四基のエンジンのうち左右一基ずつが回転を始める。出力的には心もとないが、離陸するには
これでも十分である。
しかし、慣性の法則に従い、静止している巨大な質量を持つ物体が動き出すためには、それなりの時間をかけて加速度を
つける必要があった。重力制御で急加速をかけることも一応は可能だが、銃士隊の予備要員ではそこまで緻密な操作ができないし、
下手をすれば船内の人間が急激なGに耐えられずに押しつぶされてしまうだろう。
あと一分時間があればっ! あと五十メイルにまで超獣が迫ったとき、運は東方号に味方した。
「化け物めっ! 撃てっ、撃てーっ!」
それまで無視されていたテュリューク統領の乗艦の砲手が、狂乱してガランの背中に向かって大砲を放たせたのだ。
ガランの背部で爆発が起こり、砲手が万歳の声を上げた。しかし、エルフの大砲の威力は人間のものを大きく上回るとはいえ、
ミサイルさえ跳ね返すガランのうろこにとってはペン先でつつかれたようなものであった。砲煙の晴れた後にはかすり傷ひとつなく、
攻撃を受けたらただちに報復する凶暴性をただ目覚めさせてしまっただけの結果に終わった。
「まだだ! 続けて撃て、いまのはまぐれに決まってる!」
この船の砲手は竜の巣での戦いには参戦せず、またディノゾールをはじめとする来襲怪獣たちとの戦闘経験もない召集兵
だったことが災いした。経験ある優秀な砲主は、新式の戦艦のほうに取られて実質戦闘艦ではない統領艦には二線級以下の
者が回されるのは合理性からして正しいが、彼らはそれをよしとせずに、なおかつ超獣をなめていた。
攻撃されたことに怒るガランの尻尾が統領艦を打ち据えた。魚の尾びれそっくりな尻尾の羽はダンプカー一千台分のパワーを
発揮して、ただの一撃で木造船に装甲を張っただけの船は半壊し、つながれていた竜たちが慌てふためいて逃げていく。
「あ、ひ……」
「馬鹿者! 誰が撃てと命令した。ちっ、早く退艦しろ、この船はもう駄目だ!」
そこでこの船の指揮官代行の士官が命令しなければ、無知な砲手たちはほかの乗組員たちとともに全滅していたに違いない。
彼らの船は超獣の一撃で船としては死んでいたものの、まだ哀れなクルーたちを冥界の門から遠ざける壁としてはわずかに
機能していた。横転しかかり、ひしゃげた船体の反対側へと彼らは走る。
そこへ怒る超獣の第二波攻撃が襲い掛かってきた。超獣ガランは元々は古代魚類が改造されたものであるので、体つきは
魚のシルエットを色濃く残している。海中を、時速三百ノットで泳ぐことができる能力を有していることからも、どちらかといえば
水中戦のほうが得意で、砂漠の地下水脈を縦横に移動して東方号を人知れず追ってきた。しかし、超獣と化した今では
地上でも問題なく戦うことができ、うちわのように異常に大型化した手で統領艦はあっという間に破壊されてしまった。
「ああ、俺たちの船が」
だが、今は命が助かったことのほうを喜ぶべきであろう。彼らの目の前で、船は子供の手にかかる積み木細工のように
原型を失っていくが、とりあえず命だけは助かることができた。そこへ、テュリューク統領らが地下から戻ってきて、彼らは
自らの不手際をわびた。
「申し訳ありません統領閣下。貴重な船を、みすみす……」
「いや、かまわぬ。そなたらが無事だっただけでもなによりじゃ。それよりも、彼奴はもう一隻の船をも狙っておる。彼奴の
気を引いて、時間を稼ぐのじゃ」
「っ!? 蛮人の船を守れとおっしゃられるのですか?」
エルフたちは露骨に嫌そうな顔をした。それを見て、同時に地上に上がってきていたコルベールらの顔がやや曇る。
しかし、テュリューク統領は年齢を重ねただけはあって、次の一言で彼らの口を封じてしまった。
「あの船以外なくして、どうやってこの渇きの大地から帰れるというのかね?」
選択の余地はなかった。鉄血団結党ほどでなくとも、蛮人嫌いの性質をたいていのエルフは持っている。けれども、自分の
命よりも主義主張のほうが大切という偏屈はそうそういない。
再び東方号を狙い始めたガランを、エルフたちは魔法を使って牽制しはじめた。戦闘訓練を積んだエルフの魔法はすさまじく、
砂の混じった竜巻が幾重にも重なってガランを襲う。普通ならば、真空波と高速でぶつかる砂がカッターとなってズタズタに
切り刻まれてしまうだろう。
が、その普通を超越しているのが怪獣であり、怪獣を超えるものが超獣なのだ。
「なんてやつだ。あれで動けるというのか!」
ダメージらしいダメージはほぼゼロであった。ガランはうろこのひとつも落とすことなく、完全に無傷で魔法を耐えている。
逆に振られた尻尾がエルフたちをなぎ払いにかかってくる。避けるのもこらえるのもとても無理だ。
だが、彼らに冥界の門は再び扉を閉ざした。命中直前、飛び込んできた水精霊騎士隊が彼らを抱えて飛び上がったのだ。
「ふぅーっ、危ねえ。超獣に突っ込むつもりだったのに、間違っちまったぜ」
「お、お前。もしかして俺を助けるために?」
「ち、違う! お前たちを救うために……わざと飛び込んだわけじゃないんだからなぁーっ!」
以上、ある水精霊騎士隊員とエルフのやりとりである。なにがやりたかったのか不自然な会話だが、もしかしたら才人から
どうでもいい地球の知識でも仕入れていたのかもしれない。
「と、ともかく。避けるのはおれたちがやる、あんたらは攻撃に専念してくれ!」
「ば、蛮人に指図されるいわれはないっ! ええい、ままよ!」
なかばやけくそぎみながら、人間とエルフはコンビネーションを発揮して超獣ガランに挑んでいった。
水精霊騎士隊が超獣の攻撃を読んでかわし、エルフのほうは攻撃魔法に集中する。魔法の威力では遠く及ばないにしても、
水精霊騎士隊は怪獣との対決経験は豊富だから、だいたい超獣がどう動くかは直感的に予感することができた。大振りな
超獣の攻撃をかわし、あくまで安全に、足止めだけを目的にして彼らは相当な善戦を見せていた。
「おお! 彼らもなかなかやるではないか」
コルベールが生徒たちの活躍に、思わず笑顔を浮かべて快哉をあげた。この砂漠の熱気の中で、あれだけ動けるとは
体力がついたものだ。一ヶ月間銃士隊にしごかれたのは無駄ではなかったということか。
ちょこまかと動き回る小さい者たちを、ガランは執拗に追いかけている。本来の目的は別にあるだろうに、バキシムや
ブロッケンのように高度な知性を持たされていないガランは、命令がなければ本能に従って暴れるしか出来ない。
だがそれも、人間とエルフのがんばりあってこそだ。コルベールとテュリュークは、ふたつの種族が力を合わせて戦ってる
姿にともに顔の筋肉を緩めていた。
「やるものですな。噂には聞いてましたが、あれが砂漠の民の力ですか」
「いやいや、あの若者たちもなかなかやりおるではないか。これは先行きが楽しみなものじゃな」
「ええ、東方号もこれなら大丈夫でしょう。やはり、人間とエルフは相容れない生き物などではない! 私はそう確信しました」
小さなことなど吹き飛ばす必死さが、凸凹ながらエルフと人間の共同戦線を生んでいた。
見よ! その気になったらわだかまりを乗り越えるなど、こんな簡単なのだ。エルフと人間に翻弄されて、ガランはすっかりと
東方号を攻撃する気を失ってしまっている。ミシェルたちの必死の努力が実って、水蒸気機関のプロペラも高速回転を始めた。
あれなら飛べる。飛べさえすれば、どうにかすることもできる。エルフ相手には使わなかったが、新・東方号には初代
東方号に装備されていた秘密兵器と、新型兵器もいくつか搭載されている。が、それも飛ばなくては使えないが、飛べれば
なんとかすることができる。
「いいぞ、その調子だ。私の目は間違っていなかった。彼らならば、エルフと人間のかきねを超えて、ふたつの種族に新しい
道を示すことが出来るに違いない」
コルベールは確信を持って、その言葉を口にした。若者には、大人には想像もつかない可能性がある。急に完璧とは
いかなくても、エルフと人間がいがみ合う以外のこともできるんだと見せることが出来れば、六千年に及んだ確執の壁に
蟻の一穴を作ることがあるいはできるかもしれない。
だがそのとき、期待に胸を膨らますコルベールの耳に、砂漠の熱気すら一瞬で冷ますような冷たくおどろおどろしい声が響いてきた。
「そんなことはさせんよ。お遊びはここまでだ、人間とエルフよ」
「なにっ!」
とっさに振り向いたコルベールとテュリュークの目に、砂丘の上に立つ一人の男が映ってきた。黒いコートに黒い帽子、
まったく砂漠に似つかわしくない容姿。なにより、世界のすべてを見下げているような不気味な笑い顔が、コルベールに
ホタルンガが現れたときのことを、テュリュークには竜の巣から逃げ帰ってきた水軍士官からのおびえきった報告が思い出さされる。
「貴様! ヤプールか!?」
「ほう? 私がわかるのかね。どこかで会ったかな? まあいい……人間たちよ、先日はよくもバキシムをやってくれたな。まさか、
セブンが邪魔をしに来るとは完全に想定外だったが、それでもお前たち程度の技術力でよくぞここまでやってきたとほめてやろう。
しかし、それもここまでだ」
「くそっ! 我々のあとをつけていたのか」
「フフフ、私がお前たちの小ざかしいたくらみを見逃すとでも思ったか? バキシムに探らせて、お前たちの目論見などは
とうに知っておったわ。泳がせておいたら、こんなところにやってくるとは意外であったが都合がいい。ここでなら、どこからも
助けはこない。くだらない伝説もろとも消し去ってくれる!」
勝ち誇った笑みを浮かべ、ヤプールはマントを翻してガランに手のひらを向けた。
「さあガランよ! そんな奴らと遊んでいるのではない。お前の敵はあれだ。叩き潰せ、ガラーン!」
ヤプールの思念がテレパシーとなり、ガランはくるりと向きを変えると東方号に向かって進撃を再開した。水精霊騎士隊と
エルフたちは、ガランの気を引こうと攻撃を続けるが、今度はガランは見向きもしなくなっている。ガランは、知性は低い
超獣だが、その反面テレパシーによる命令には忠実に従う特性を持っている。
しかしそのとき、ついに東方号が巨体を蹴って動き始めた。砂を巻き上げ、砂丘を砕いて少しずつだがガランから遠ざかっていく。
コルベールは、これでなんとか逃げ切れるかと希望を持った。だが、希望を絶望に変えることこそ、悪魔の最大の楽しみである。
「馬鹿め! 逃げられると思ったか。ガランよ、機能停止光線を放てぇ!」
ヤプールの命令と同時に、ガランの鋭く尖った鼻が緑色に光った。その光を浴びた東方号は、急にエンジンの回転が
鈍って、動きが止まってしまったのだ。
「どうした! 止まってしまったぞ、原因は何だ」
「わかりません! 機械は全部正常に動いているはずなんですが」
置物のように止まってしまった東方号の中で、ミシェルたちが慌てふためいて駆け回っているが、どの機械もさっきまでと
まったく変わらずに動いており、止まってしまった理由がわからない。
「艦長代理! 機関砲も動きません!」
「なんだと! まずい、これでは東方号といえども」
逃げることも戦うこともできない。あの超獣の仕業なのか!? これでは、比喩ではなく本当に瀕死のタヌキでしかない。
砂漠に巨大な足跡を残しつつ、ガランはまっしぐらに東方号を目指していく。ヤプールの勝ち誇った笑いはさらに大きくなる。
「フハハハ! やれ、破壊するのだ」
「どうした! なぜ飛ばないのだ! ヤプール、貴様の仕業か?」
「そのとおり! ガラン光線はあらゆる機械を停止させる効果を持つのだ。もはや、貴様ら自慢の船はガラクタも同然だぁ!」
けたたましく、悪魔そのものの形相でヤプールは笑った。ガランの放つ怪光は一種の精神感応波で、これを受けてしまったら
いかなる機械装置といえどもガランの思うがままに操られてしまう。タックファルコンやタックアローを操って不時着に
追い込んでしまったことはおろか、タックガンやビッグレーザー50などの携帯火器すら使用不能に陥らせてしまったほどの
威力を誇り、しかもテレパシーであるから電波妨害への対策もまったく役に立たない。
機能そのものには一切異常がないにも関わらず、東方号は完全に行動不能に陥らされてしまった。数少ない武器の
機銃も動かない東方号は、本当にどうすることもできない。
しかし、最初からこの能力を使えばよかったのに、なぜ黙っていたのか? コルベールはそう思ったが、すぐにヤプールの
下種としか呼べない嗜好に思い至った。
「貴様、我々のあがきを見て楽しんでいたな!」
「ファハハハ! そのとおり、ざっくりと始末してしまうなら簡単だが、それでは絶望が浅い。善戦させ、希望に満ちたところを
落としてこそ絶望が深まる。我らを悪魔と呼ぶか? よろしい、最高の褒め言葉だ!」
宇宙最悪の生命体、異次元人ヤプールらしい考えであった。純粋悪、しかしこいつは元々は自分たち人間やエルフの
歪んだ心から生まれたもの、いわば鏡に映った自分たちの影……それが悪魔と化して自分たちを滅ぼそうしているのだと
考えると、ヤプールへの罵倒はそのまま自分たちへの罵倒となる。
コルベールもテュリュークも、形を持った悪魔を前に、どうすることもできない。護衛の騎士団が魔法をぶっつけても、
すべて見えない壁にはじき返されてしまった。襲い掛かる無力感が、コルベールの胸をしめていく。
「ミシェルくん、もういい。東方号はいいから、君たちだけでも逃げるんだ!」
命には換えられないと、コルベールは叫ぶ。
しかし、ヤプールが笑い、目の前に超獣が迫りつつあるのに、ミシェルは艦橋から一歩も動こうとはしなかった。
「まだだ、まだわたしはあきらめない。最後まであきらめなければ運命は変えられる。奇跡は起こるんだって、サイトは教えてくれたんだ!」
この世で唯一愛した男の名を叫んで、ミシェルは踏みとどまった。悪と絶望に立ち向かえるものがあるとしたら、それは
愛と希望のほかになにがある。命ある限り、負けはしない! 本当は泣き出したいほど怖いけれど、才人が帰ってくるまで、
希望は守り抜く。
そして、その強い思いは、マイナスエネルギーとは真逆の力強い光の力となって集まり始めていた。
遺跡の地下通路……ガランの引き起こした地下水流出で水没しつつある通路を、才人たちは必死になって走っていた。
「くそっ! あと何キロあるんだよ。この遺跡作った奴、張り切りすぎだぜ」
「ルイズ! 本当に君の虚無魔法で脱出できないのかい?」
「人を便利屋みたいに言わないでよ。飛ぶ人数が多いほど、飛べる距離は縮まるし精神力は削られるの。まったくもう、
すごそうに見えて使い勝手が悪いのばっかりなのよね虚無って!」
テレポートを使えばルイズひとりは外に出れても、そこで精神力はカラ。外でなにが起こっているかわからない状況では、
精神力は温存しておかないと、いざというときに困ることになる。
「もう……満足に使えたら、みんなを安全に逃がすことができるのに、こっちには怪我人もいるのよ。こんなのなら、
フライのひとつでも使えるようにしてくれなさいよって」
自分自身の非力さへの怒りも込めて、ルイズは小さくつぶやいた。
足元は水が流れ、速さや深さはまだ水溜り程度なので足を取られるほどではないが、焦燥感をかきたててくる。
しかも、落盤の岩や地割れを超えなくてはいけないので、その度に時間を食われてしまう。
「間に合うか……いや、間に合わせる!」
あきらめては奇跡は起こせないと、才人は坂道をひた走る。自分だけではない、背中には今にも消えそうな命を
ひとつ抱えているのだ。
だが、走りながら才人はいつの間にか自分の喉元に鈍く光る刃が突きつけられているのに気づいた。
「なんだ目が覚めてたのか。よく切れそうなナイフだな、袖口に仕込んでたのか」
「……」
しゃべる力も残ってないのか、ファーティマからの返答はなかった。走りを止めず、才人は小声でファーティマに呼びかける。
「やめとけよ、おれを殺せば、落ちたショックだけでもてめえ死ぬぜ」
「……」
「たいした執念だな、よくもまあ毛虫みたいに嫌ってくれたもんだって感心さえするぜ。まあ、聞いた話じゃお前たちと
人間は戦争ばっかりやってたそうだからな。恨まれる筋なら、それこそ売るほどあるだろうな。てめえも……大方、
あんまり人に言いたくない半生を送ってきたんじゃねえのか? どうだ?」
返答の代わりに、わずかなうめきが聞こえたような気がした。
「ふん、人間もエルフもやっぱり同じか。ったく、まあた復讐者かよ、いい加減飽き飽きだぜ」
「……!」
ナイフがわずかに動いて才人の喉の皮膚に軽く触れた。お前になにがわかると、そう言いたげな反応だった。だが、
才人はつまらなさそうに答えた。
「てめえの事情なんか知ったことじゃねえし、聞いても大方想像と変わらないだろうから聞かねえよ。でもな、世の中を
恨んでるのがてめえだけだと思うなよ。家族や大切な人を理不尽に奪われて、悪魔に魂を売りかけた人を大勢見てきた。
みんな、てめえみたいな暗い目をしてたよ。てめえの考えてること当ててやろうか? わたしはこの世の誰よりも不幸なんだ、
だからわたしにはこの世界を変える権利がある、わたしより幸福なやつはみんな敵だってか。どうだ外れてるか?」
ファーティマの手は、静かに震えていた。
「わかりやすいな、てめえみたいな奴の考えることはだいたい同じだ。それで憎むべき敵がおれたち人間か。そうか……」
才人はそこで言葉を切った。ファーティマは、落ちる勢いで才人の首を掻っ切ることくらいはできるだろうに、動こうとはしない。
少しだけ沈黙が続き、やがて才人はまた口を開いた。
「けど、ちょっとだけ安心したよ」
「……!?」
「ほんと言うと、おれもエルフがどんな奴らか不安だったんだ。ティファニアはハルケ育ちだし、ルクシャナは変な奴だし
ビダーシャルは無愛想だし、いまいち納得いかなくてな。でも、あんたを見て思ったよ、人間もエルフも似たようなもんだ。
蛮人嫌いなんて馬鹿げてるぜ。あんた、おれたちとそっくりだ」
「……!」
「はいはい、文句があるならあとで好きなだけ聞いてやるから、今はとりあえず助けさせろ。死んだらケンカもできねえぞ。
それに、てめえには心外だろうがてめえはティファニアに命を救ってもらった恩がある。自分を殺そうとした相手をだぞ、
あそこまでのお人よしをおれは見たことねえよ」
ちらりと才人がティファニアを見ると、彼女は走って息が上がりながらも心配そうに尋ねかけてきた。
「あの、サイトさん。その人、大丈夫ですか?」
「ああ、心配するな。こういう奴はちっとやそっとのことじゃくたばらねえよ」
才人は、自分が命を狙われていることなどはおくびにも出さずにティファニアに笑い返した。
ファーティマは、心の中でうずまく怒りの正体を自分でもつかむことができず、ただ歯を食いしばって苦痛に耐えている。
曇りひとつない小さなナイフが水の中に落ち、流れにそって闇の中に消えていった。
そして、憎むべき敵をさえ救おうとしたティファニアの優しい心が、握り締め続けていた輝石に届くとき、輝石は静かに
輝いて、眠れる守護者を呼び起こす。
いままさにガランに破壊されようとする東方号。だが、そのとき新たな地鳴りと共に、砂漠の一角から砂の竜巻と共に
甲高い鳴き声をあげながら巨大な翼を羽ばたかせた巨鳥。ワシのような頭部と翼を持ち、恐竜のようなたくましい四肢を
持つ威容は、遺跡の入り口にあった像とまったく同じだ。
「ま、また別の怪獣が!」
「いや、あれはまさか伝説の……」
うろたえるコルベールとは裏腹に、テュリュークは神々しいものを見たかのようにつぶやいた。
現れた鳥の怪獣は、ガランに向かって前進をはじめた。それに気づいたガランも迎え撃つ姿勢をとる。人間とエルフの
攻撃ごときは無視して構わない超獣といえど、さすがに相手が怪獣となれば相応の対処をとらなければならない。
水精霊騎士隊とエルフたちは、怪獣と超獣の激突などに巻き込まれてはひとたまりもないと避難した。
二匹の雄たけびが砂漠の空気を震わせる。もはや両者の衝突は必至だ。しかしヤプールは、その怪獣に強い正の
エネルギーを感じてガランに叫んだ。
「ぬうう、邪魔する気か! ガランよ、そんなやつに構うな。さっさと人間どもの船を叩き潰してしまえ!」
ガランはヤプールの命令に忠実に従い、東方号に巨大な腕を振り上げる。甲板から銃士隊員たちの悲鳴が上がり、
その腕が振り下ろされようとした、まさにその瞬間。新たな翼が空のかなたから現れた。
「あっ! あれは」
青い翼を持つ巨鳥、それは急降下してくるとガランに口から光弾を放って攻撃し、ひるんだガランに体当たりを食らわせた。
そのまま降り立ち、東方号を守るように立ちはだかる怪獣。さらに、先に現れた怪獣もガランに向かって威嚇するように吼える。
「ええい! なんなんだ次から次へと、この怪獣どもは!」
二匹の怪獣の出現という、まったく予想だにしていなかった事態にヤプールも苛立ちの声を上げた。
誰にも知られない砂漠を舞台にして、怪獣と超獣の三つ巴の戦いが始まろうとしている。
六千年の昔、この砂漠に封じられた伝説。それは、同じ悲劇が繰り返されようという今、言い伝えから現実になろうとしていた。
果たして、伝説を残したものの真意はなにか? 虚無との関係は?
すべてが明かされるときは、目前まで迫っているのかもしれない。
続く
今週は以上です。三月もあっという間でしたね。
今回も伏線回収および前進に力を使いました。
先週も書きましたが、ファーティマはあまり凶暴なイメージがわかないので台詞を書くのに苦労しました。反面、ヤプールの台詞回しは
感情むき出しでいいので楽です。
ゼロ魔のアニメも終わったようですね。さて、今後コンプリートブックなども合わせて、最終的にどうなるのでしょうか。
残念ながら、先日愛読していたssがひとつ終わってしまい、落胆したりもしましたが、私はまだこの筆の世界で見たい夢があるので続けていく所存です。
それで、応援してくださる方々に、わずかなりとて夢をこのssで与えられたら望外のきわみです。
改めて、この場や避難所などで応援してくださる方々にお礼を申し上げます。きちんと目を通しておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
では、代理投下お願いします
やっと代理完了。さるさん心の底からマジウゼぇ…。
まあ別にいいんじゃないスかね、所詮アニメですし
大隆起なんてなかったでも、謎のドラゴンが出てきても、教皇が食われてもね
原作でまだ最終巻でてないしアニメとかぶる部分もあるだろうってのに平気でバレ書くやつって脳に障害持ってんのかな
ウルトラの代理投下乙です
レベル足りてたら30分頃から投下予定
使い魔は妖魔か或いは人間か
第1話『遭遇』
使い魔の儀式を行うための広場。
そこで一人の少女が今まさに使い魔を呼ぶための儀式。
サモン・サーヴァントを行っていた。
爆発が起きる毎に同級生が嘲り笑い、少女に対する中傷を浴びせる。
その声が聞こえる度に、杖を持つ手が震える。
「また爆発かよ、流石『ゼロ』だな」
煩い──
「何度やっても『ゼロ』、時間の無駄」
黙れ──
「家柄だけが取柄の『ゼロ』の癖に」
見返してやる──!
「成功するわけないよ、『ゼロ』なんだから」
そんな事認めたくない──!
少女の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女の人生は血が滲むほど努力で築かれてきた。
座学なら学院でも常にトップだし、魔法の練習も誰よりもした。
しかし、練習は一切身を結ばなかった。
起きるのは爆発のみ。
系統どころか子供でもできるコモンマジックすら成功しない。
生まれて16年間、一度も魔法が成功したことはない。
だからこそ、このサモン・サーヴァントの儀式で誰よりも強く願っていた。
誰にも負けないような素晴らしい使い魔を呼ぶことを。
しかし、願いは叶わない。
いつものように爆発が巻き起こるだけで、そこには何も現れない。
頭髪が薄くなった教師──コルベールが、彼女の方に手をかける。
「残念だが、これ以上は……」
ルイズにとってそれは死刑宣告にも等しい一言。
「お願いします!もう一度だけ!もう一度だけやらせてください!!」
必死の懇願。
コルベールは彼女の努力は知っている。
だからこそもう一度だけの言葉を無碍に否定することはできなかった。
しかし他の生徒の手前、彼女一人に付きっきりになるわけにもいかない。
「わかった、ただしもう一度だけだ」
文字通り最後のチャンス。
ルイズは今までより強く祈り、願い、そして精神を集中した。
「宇宙の果てのどこかに居る私の僕よ!神聖で美しくそして強力な使い魔よ!!
私は心より求め、訴えるわ!!!我が導きに、答えなさいっ!!!!」
叫びにも似た呪文が唱え終わると同時に、今までよりも大きな爆発が起きた。
「最後まで失敗かよ!」
生徒の一人が笑いながら叫ぶと同時に、嘲笑がひときわ大きく起こる。
だが、ルイズは悲嘆することも憤慨することもなかった。
爆発の中心地に影が見えたからだ。
>>196 ここでアニメの話して結末ネタバレするやつは死ねってこと
何かいるとルイズが確信するのと同時に、背筋に悪寒が走る。
粉塵が晴れると、そこには一人の女性が立っていた。
彼女はルイズが見てきた中でも、母や姉達とは異なる美しさを持つ女性だった。
濡れた身体から滴る水も、アセルスの艶を一層引き立たせる。
女性にしては短めの緑の髪の毛。
男性にも女性にも見える中性的な顔立ち。
衣装もドレスというよりはどこかの皇太子が着るような男性向けの服装に見える。
血のようにどこまでも深い赤は髪の緑を映えさせ、また服自身の色も引き立つ。
腰には女性が持つには不釣合いな剣を携えているが、彼女には良く似合っていた。
ルイズはその姿を見て、女性が主役だった騎士物語の本を思い出した。
「離れるんだ……ミス・ヴァリエール」
目の前の状況に頭がついていかなかったルイズにコルベールは離れるよう促す。
その忠告にルイズがコルベールのほうを見ると、額に大粒の冷や汗を浮かべている。
手の持つ杖はアセルスへと向けたまま、視線を離そうとはしない。
「あの格好、貴族か……?」
「『ゼロ』のルイズが貴族なんて呼べるものか、第一杖もマントも持ってないじゃないか。」
「平民だ!『ゼロ』のルイズが平民を召喚したぞ!」
コルベールの緊張感など気にした様子もなく、生徒達が再び侮辱の言葉を投げかける。
「黙れ」
彼女が一言だけ告げて腕を振ると、罵声を浴びせていた生徒達が倒れていく。
「せ、先住魔法!?」
その光景を見ていたルイズが思わず叫ぶ。
先ほどまでルイズを見下し、嘲り、中傷していたクラスメイト達も凍り付いたように動かない。
否、動けないのだ。
「貴女は何者なの……?」
先住魔法が使えるということは人間ではない。
ルイズからの疑問に彼女が答える。
「私は妖魔よ」
妖魔。
この単語がハルゲニアで意味するものはただ一つ。
人間に害をなすもの、人間の敵。
体を震わせるルイズに対して妖魔を名乗る彼女は優しく微笑む。
「そんなに怯えなくてもいい、君が私を呼んだのかい?」
「え、ええ……そうよ」
何度も呪文を唱えたことと妖魔を呼んでしまったという緊張から喉は渇ききっている。
それでもなんとか声を絞り出す。
「何のため?」
言葉に詰まるルイズにコルベールが助け船を出す。
「現在、サモン・サーヴァントの儀式中でして……」
「私は彼女の口から聞きたいんだ」
コルベールが説明に入ろうとするが、彼女は拒絶した。
「サ、サモン・サーヴァントで貴女を呼んだのよ」
「何の為に?」
「使い魔にするため……」
気圧されながら、かろうじて紡いだ言葉。
誤魔化しも、この場を切り抜ける言葉も出てこなかった。
故に要点のみの説明の足りない言葉になってしまう。
「いつまで?」
「生涯よ、どちらかが死ぬまで……」
彼女達の問答を見ていたコルベールは卒倒しそうだった。
「い、いやサモン・サーヴァントは本来使い魔になる動物や幻獣を呼ぶ儀式でして、
貴女の様な方が妖魔が呼ばれると言うのは前例がなく……」
コルベールが慌ててフォローするべく、説明を挟む。
だが、彼女は気にした様子もない。
「気を使う必要はないよ、私はなぜ私を呼んだのか知りたかっただけだからね」
ルイズの目の前、妖魔が近づく。
思わず警戒するルイズの頬を撫でる。
ルイズは撫でられると恐怖と同時に安らぎを感じていた。
まるで危険だとわかっていても惹かれてしまう食虫植物を前にした昆虫のように。
「それで君は私と契約するのかい?」
その言葉にルイズとコルベールは驚愕する。
なぜ人の言葉も理解でき、力を持った妖魔が自ら人間との契約を結ぶのか。
コルベールの一瞬の思索がルイズの契約を静止する機会を失わせた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
ルイズはこのサモン・サーヴァントに賭けていた。
魔法が使えないというコンプレックスの中、強力な使い魔を呼び出し見返してやりたい。
その願いに答えるように現れたのが、妖魔とはいえ膨大な力を持つ者。
功名心に逸るルイズは呪文を唱えると同時に、契約の口付けを交わす。
突然の口付けに、わずかながら彼女が驚いた表情を浮かべる。
重ねた唇が離れそうになった瞬間、ルイズの体を抱き寄せて舌をねじ込む。
今度はルイズが慌てふためき、体を離そうとするが拘束は緩まない。
時間にしてみれば一瞬だが本人にとっては長い刻、ようやく開放されたルイズはその場にへたり込む。
ルイズが生きてきて、初めて感じた快楽と愉悦。
瞳は焦点があっておらず、恍惚の表情で虚空を見つめる。
「私の名はアセルス、君は?」
「ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
惚けた表情のまま、ルイズが答える。
いい名前だとアセルスに告げられると、ルイズは気恥ずかしくて顔を伏せてしまう。
ルイズとアセルス。
二人に希望をもたらす出会いなのか、それとも絶望か。
そのことを知るものは誰もいない……
1話の投下は以上になります。
投下してから気付いたけど、
うっかり
>>200でアセルスって書いてたのに気付かなかった・・・
投下乙
>>199 別にここは原作のスレじゃないしなぁ、アニメの話題嫌ならまとめwikiだけ見とけよ
大体アニキャラ総合板にあるこのスレでアニメの話するなって言われてもwww
投下の最中に割り込む方が脳に障害疑われるぜ
アニメのネタバレってw
アニメの最新設定盛り込んだSS投下されてもネタバレ死ねって喚くのかw
207 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/25(日) 22:59:27.73 ID:IPYQuvmm
アニキャラスレにあるってだけで実質は原作ベースが主だろここのSSは
当然だけどあんな糞アニメなんて見てないやつも多い
原作もアニメと共通する設定を盛り込むかもしれないんだからネタバレは自重するのがマナーだろ
んなことも言われないとわからねぇのかカスども
春、か……
「ネタバレ」の意味がわからん
原作は発売されてるし、アニメも放映されてることじゃねーかw
読めばいい、見ればいいってだけの話だ
盛り込んだからってなんだっつんだよw
見てない奴多いからって、アニメの設定盛り込んだ数あるSS群を全否定かよw
最新刊FGでいきなり核バラすようなのはさすがに問題だが
>>207 アニメしか見てない作者も結構居たけどなぁ、モット伯は殆どのSSに出てきちまうしな
ルイズと結婚して世界扉でサイトの親に挨拶しにいくっていう結末が見えただけで、過程は違うってノボルは言ってたよ
聖地奪還とか元素の兄弟ワの人はほぼスルーだから、原作はまた違う流れだと思うよwwww
211 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/25(日) 23:10:33.90 ID:IPYQuvmm
>>210 結末が同じだったら流れが違っててもネタバレはネタバレだろうがクズ
ったくノボルも最後の最後にバカなことしてくれたよ
アニメなんかスルーして原作とぜんぜん違うオチにしときゃいいものを
発売前にオチばらすとか物書きとして終わってる
>>211 まぁリーヴスラシルの能力が魔力電池ってのではっきりして
記すことさえはばかられるなんて連想から厨二設定されるような不安なくなっていいんじゃないのwwそこまで話進んでないのばっかだけど
クロス先の作品なんて最初の1,2話でネタバレ前回だから気にすんなよwww
何か進みがはやいと思ったら、俺の知らない話するんじゃねーって喚いてるアホが湧いてるのか。
214 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/25(日) 23:21:39.78 ID:IPYQuvmm
>>212 てめーわざとやってんだろ
まじ死ねよカス
カスカスカスカスカス
ゴミ!カス!豚!マリコルヌ!ノボル!
ウルトラさんに妖魔の人乙
最近投下ラッシュなのは遅ればせながらのアニメ効果か?
まあ、わけのわからん俺ルールでsageもせずに暴れる、その上罵倒の語彙も貧弱と……
今時分にここまで香ばしい奴も珍しいというか何というか
>>214 ノボルはそりゃアニメ関わってたしわざとやってんじゃねぇのww
一期の時点でアニメは別物ってわかってたんだから原作読む楽しみは全然あると思うけどな
サブキャラの存在状況と伏線の数が違うし、なんだかんだでエイジの絵が大好きだわ
>>214 ぎゃーぎゃー騒ぐ前にsageてくんない?
あー作者貶してる時点もう完全なアンチ荒らしだったか
投下あるのに乙一言だけでアニメの話とかしてんなよw
あ、アセルス乙
投下乙
アセルス・・・元ネタを知らないなどんなのだろ。
222 :
ゼロツカ:2012/03/25(日) 23:52:45.86 ID:Y31F5j/s
ゼロツカの2話が完成したので、予約がないようでしたら
10分後ぐらいに投下したいと思います。
225 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:00:28.01 ID:NUmXR3R0
ゼロツカ 第二話 その勝負・・・
ヒデオは、少女に洗濯を言いつけられたので部屋の外に出る。
しかし、そこで重大な事に気がついた。
「どうしたらいいんだ?」
まさか、洗濯機やコインランドリーがあるとは思えない。
だったら手洗いかと考えたが、生まれてこの方、手洗いで服を洗った事などない。
それ以前に洗濯板などの道具の場所を知らない。
だったら、今までこの服はどうしていたのだろうか?まさか、あの少女がやるとは思えない。
そう言えば、魔法学院と言う事は、ここに通っている学生は全員貴族と言う事になる。
そんな人たちが自分達でするはずはないだろうから、おそらくメイドなり執事なりがいるのだろう。
だったら、その人たちに任せればいいじゃないか。と思うだろう?
知らない人に話しかけるなんて行為が、引きこもりに出来ると思うか?
答えは断じてNOだ。
そうして途方に暮れていると、人に話しかけられた。
「あ、あのう・・・どうかなされましたか?」
知らない人に話しかけられ驚くが、話しかけられた以上、反応を示さないのは相手に悪いと思い、そちらを向いてみる。
するとそこには、やや長めのボブカットにした黒い髪と瞳を持ち、少し低い鼻とそばかすがチャームポイントなメイドがいる。
自分がそのメイドを見た瞬間、相手はビクッっとしたあたり、また自分の目付の悪さのせいだろう・・・異世界でもこれは変わらないらしい。
「え、えっと・・・し、失礼しました!!」
いきなり謝られた・・・だがこれはチャンスだ、自分から話しかけられない以上、ここでこのメイドに洗濯の事で困っていると言う事を言うしかない。
「いや、謝る事は、ない。ただ、元から目つきが悪いだけだ」
「は、はぁ・・・いきなり睨みつけられたと思ったので何か私が気にいらない事をしたのかと思ってしまいましたが・・・すみません、怖がったりしてしまったりして」
「気にすることは、ない。慣れているから」
何ていい子なのだろうか・・・今まで会ってきたイロモノなど、自分の事を殺人犯と勘違いし、逮捕してこようとするわ、いきなり横っ面を殴ってきたではないか。
それに比べてこの子は、自分に非があったと素直に謝ってくれた・・・これだけでも今までのイロモノ共とは天と地との差がある。
ずっと、その感動に酔っているわけにもいかないので、本題に話を移す。
「それより、洗濯をしたいのだが・・・どうすれば?」
「あ。洗濯ですか?それならさっきの謝罪の意味でも私がしましょうか?」
「いや、それは悪い。道具と場所さえ、貸してもらえればそれでいい」
「そうですか?それならこっちに来てください」
メイドに付いて行き、道具を貸してもらい洗濯をしようとするが、どうにもうまくいかなく、結局やり方やコツなどまでも教えてもらい、洗濯を開始する。
「ありがとう。道具を使ってやった事など、なかったから、助かった」
「いえ、それよりあなたは一体誰なんですか?」
「僕は、川村ヒデオ。ルイズとか言う子に召喚された、使い魔という奴らしい」
226 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:01:23.02 ID:NUmXR3R0
そう言うとメイドは納得したようだった。
人間を召喚するなどは普通ないのだそうで、もう学院中に噂が広まっているらしい。
その噂の中心が自分だと言う事を考えると気が重い、人の噂になっていると言う事は、話題の中心と言う事ではないか、そんなのは引きこもりには耐えられない。
そうこう悩んでいると、今度はメイドの方の自己紹介が始まった。
「私はシエスタと申します。ここの学院でメイドをやってます。何か困った事があったら、私に相談してください、微力ですが力になりますよ」
「それは、助かる。誰も頼れる人がいなかったから」
洗濯が終わった後、少し世間話を・・・と言っても、ヒデオ自身社交性が無く、ただえさえ話せないのに異世界の住人と共通の会話もなく、ヒデオはもっぱら聞く側である。
そうこうしている内に、シエスタは自分の仕事に戻ると言ってどこかへ行ってしまった。
自分もどうしようかと思ったが、特にやる事もなく、それに加えてこの世界にはインターネットなどがあるわけでもないので本当にやる事がない。
少し考え、せっかく異世界に来たのだから見物でもしてみようかと思い、洗濯を一旦部屋に置いてくる。
少し見回ってみるが、特に変な建物はなさそうだが、敷地自体がそれなりに広くいい暇つぶしになった。
そして、学生達が優雅にお茶会をしている場所に来てしまった。
リア充共が!と思ったので、そうそうに立ち去ろうとして怒声が聞こえてきた。
何事かと思い、声が聞こえた方に目を向けてみると、キザッたらしい男子生徒があげた声みたいだ。
自分には関係ないとさっさと行こうとするが、怒鳴られている相手を見てその足を止める。
相手は、自分に優しくしてくれたシエスタだった。
さすがにこれを自分には関係ないと言ってられない、ここで見て見ぬふりをしてどこかへ行ってくと自分は後悔をしてしまうだろう。
だが自分に何が出来る?これが翔希ならばさっそうと現れ、あのキザッたらしい男子生徒を倒して丸く収めることが出来るだろう・・・だが残念な事に自分はただの引きこもりだ。
ただの人相手にも負けるだろうし、ルイズの話では貴族は全員魔法を使うらしい・・・これだけで自分が勝つ確率なんてものは皆無だろう。
ならどうする?ノアレ達の力は借りれないこの状況下をどうやって切り抜ける?
「やってみるしかないか・・・」
いつまで悩んでいても仕方がない、ならばいつも自分がやっている事をやってみるしかない。
そう思い、騒ぎの中心へと向かって行き、男子生徒に話しかける。
「何を一体そんなに怒っているんだ?」
「何をって・・・ウッ・・・」
男子生徒が自分の顔を見た瞬間に恐れたような顔をする。
大方、自分の目付が怖くてそうなっているのだろう、ちょっと・・・いや、かなりへこむが、今はそんな事を言っている場合ではない。
シエスタの方は、何が起こっているのかわからず、混乱しているようだ。
「どうした?怖がっているのか?」
「な、何をいいだすんだ!僕は貴族だ!!君みたいな平民に恐れるわけがないだろう」
「どっちでもいいが、質問に答えたらどうだ?一体何にそんなに怒っているんだ?」
「グッ・・・まあいいだろう、このメイドは僕が落としてしまった香水を拾って僕に渡してきたんだ」
・・・は?何を言っているのだろうかこの男子生徒は・・・普通にいい事をしているじゃないか、それに一体なんの問題があると言うんだ?
「それがどうしたんだ?」
「事の重大さがわかっていないな君は、いいかい?そのせいで二人の麗しい女性を傷つけてしまったんだぞ!」
つまり、自分が二股をかけていたのを、シエスタが拾った香水のせいでバレたのだろう。
227 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:02:55.16 ID:Y31F5j/s
なぜ香水でバレるのかまでは知らないしどうでもいいが、この男子生徒が怒っているのは、こんな大勢の前で二股がバレたのを、シエスタに当たり散らして少しでも自分の立場を良くしたかったのだろう。
あまりのバカげた事に、自分のしようとしていた事も忘れて、率直な感想を言ってしまう。
「君は、アホか?」
「な、なんだと!?」
しまった・・・!?これでは、話を丸く収める事が難しくなってしまった。
相手がいきなり、攻撃してきた場合こちらに勝ち目などない。
と思っていたが、相手は予想外の事を言ってきた。
「平民風情がいい度胸だ!貴族を馬鹿にしてただですむと思うなよ!決闘で白黒つけようじゃないか!!」
ここで、こちらを一方的に痛めつける事も可能なのにやってこなで、決闘と言ったのはおそらく、まだ自分の立場をよくしようとするためだろう。
だから、この誘いに対して自分はこう言う・・・
「その勝負・・・断る」
「な・・・に・・・?」
当然だ、なぜ勝ち目もない戦いにこちらがそれに乗る必要があるのだ。
これは聖魔杯でも、仕事でもないないのだ。
これを受けなくてはならない状況下ではない以上、こちらが乗るメリットはない。
さすがに、今の状況でここから離れると報復の可能性があるので、言いくるめる必要があるが、戦う事に比べればいくらかマシである。
「何故僕がそれに乗る必要がある?」
「何を言っているんだ!君は平民であり、僕は貴族だ!!君に拒否権など・・・」
「言い方を間違えたな・・・なぜ僕が勝つのにその勝負を受ける必要がある?」
「は?」
ヒデオ以外の人間すべてがそのような反応だった。
ヒデオは知らなかったが、この世界では魔法を使える貴族にただの人間が勝てるわけがないと言うのが常識なのだ。
たとえ知っていたとしても、この啖呵をきっていただろうが・・・
「何を言っているんだ君は?ただの平民が貴族に・・・」
「ただの平民?いつ僕がただの平民だと言った?」
「な・・・に・・・?」
「いいか?僕は元の世界では魔眼王と呼ばれ、その目にはある能力がある・・・それが何かわかるか?」
「し、知るわけがないだろう」
「未来視の力だ」
「未来視の力?何を言うかと思えば、そんな力を持っている奴など見た事も無ければ聞いたこともないよ」
「そうだろうな、なぜなら僕は・・・この世界の人間ではないからだ」
これは言うべきか言わないべきか迷った。
それもそうだろう、ルイズとかいう少女の反応からして異世界などと言っても、だれも信用しないだろう。
実際、周りの人全員が何を言っているんだこいつと言った目つきで見始めている。
だが今の状況では、使えるものはすべて使っておきたかった・・・後は、これを信じさせられればこちらの勝ちは決まったようなものだ。
「プッ・・・クハハハハ!異世界?何を言い出すかと思ったら。そもそも、ゼロのルイズが召喚した使い魔なんだ、普通かそれ以下に決まってるじゃないか」
ゼロのルイズ?それがどういうものか分からないが、どうやら自分のご主人様の評判はあまりよろしくないようだ。
228 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:03:36.95 ID:NUmXR3R0
だが、この情報はこれで使えるかもしれない・・・
「何故そう思う?」
「何?」
「使い魔と言うものがどういうものかは知らないが、実際に僕はこうして召喚され、ここにいる・・・確か平民を召喚したなどと言うのは聞いたことがないそうじゃないか」
「それがどうかしたのかい?まあ、ルイズが召喚したんだからそれはそれで納得・・・」
「そこから間違っているんだ」
「何を言って・・・」
「なぜそうやって、自分のいいようにいいように解釈しようとしているんだ?怖いのか?」
「何が怖いものか、たとえ君が言った事が本当だとしても、魔法の成功確率が0のルイズがどうやってそんなものを召喚できるのかと言っているんだ。もし本当だとしたら素直に負けを認め、メイドにも謝ってやるよ」
なるほど、ゼロのルイズとはそういう事か・・・だが、あともう少しでここにいる全員をだませる・・・そう確信できた。
だが、あともう少しが、自分の力だけでは無理だ・・・だからこれは一か八かの勝負になる。
「なら見せてやろう、君たちが知らない力を」
「見せてくれるなら見せてほしいものだね」
「なら、まず僕に攻撃してみろ。そうしたら見せてやろう」
「そうかい?なら遠慮はしないからそのつもりでいたまえ」
そう言うと、男子生徒が造花のバラを振り、地面から人の形をしたものを作り上げた。
そして、作られたそれには剣が握られており、斬られれば命はないかもしれない。
だがそれでいい・・・いや、そうでなくてはならない。
「僕の二つ名は青銅≠フギーシュだ。そしてこれは青銅のゴーレムワルキューレ≠セ」
「前口上はいい、それより殺す気で斬りかかってこい」
「いいだろう。やれ!!」
ギーシュとか言う奴が、作ったゴーレムに命令を出し、ヒデオに斬りかかってくる。
周りの人間は、目を覆うもの、興味津々と言った者とで色々だ。
そして、剣がヒデオを真っ二つにしようとした所で異変が起こった・・・ゴーレムがいきなり崩れたのだ。
ギーシュを始め、皆が何が起こったのかはわからない・・・ただ1人ヒデオを除いて。
やはり、いたのかノアレ。
そう、これをやったのは、闇の精霊であり、自分の守護精霊である闇理ノアレだった。
あら?確信はなかったんじゃなかったのかしら?
確かに確信はなかった、でもロソ・ノアレ自身が言ったんじゃないか、どこにでもいると・・・だからもしやと思っただけだ。
そう・・・でも今回のはちょっとズルじゃないかしら?
そうかもしれないが、他に方法が思い浮かばなかったんだ。
まあ、今回だけは大目に見てあげるわ。さて・・・これからどうしますか?聖魔王閣下
なら、出来れば仰々しくここに出て来てくれないか?そうすれば、おそらく信じさせることが出来る。
了解しました
そうして待っていると、ノアレが言った通りに出て来てくれ、その場にいるヒデオを除く人間があっけにとられる。
「これで分かったか?僕はこの世界の人間ではないと」
ギーシュや他の人間も、全員が考える。
確かに、異世界とだけ言われても信用が出来ないが、今見せられたものは錬金でも先住魔法でもない、別の何かだ・・・そして、この世界で魔法以外のものでこんな事が出来るはずもなく、信用するしかない。
それに加えて、さきほど出てきた少女も明らかにいなかった所にいきなり出現した・・・まるで別の世界から出てきたようにだ。
未来視の方だって、異世界の住人ならもしかして?と思ってしまう。
229 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:04:17.57 ID:NUmXR3R0
全員が異世界などという物はやはり信じられないが、否定も出来ないでいた。
「わ、わかった・・・君の言葉を信じよう・・・そしてすまなかった許してくれ」
そう言ったのは、ギーシュだった。
これで、ヒデオは勝ったのだ。
そして、ノアレはその言葉を聞き、出てきたように戻っていった。
「僕に謝る必要はない、それより、シエスタと泣かせた子に言うんだ」
「わかった・・・そして、僕が悪かった。許してもらえないだろうか?」
「い、いえ、私も気が利かなくてすみませんでした」
「いや、僕が悪かったんだ・・・それじゃあ、僕が泣かせた二人のレディにも謝ってくるよ」
そう言い、この場を去っていく、これにて一件落着したので自分の部屋に戻る事にした。
何より、こんな注目には耐えられない。
ヒデオ、色々と台無しよ?
ははは、どんなに嘘とハッタリで固めようと、自分などただのヒキコモリなのです。
さっきまでの度胸はどこいったのよ・・・
そして、去ろうとした所で、シエスタに呼び止められた。
「あ、あのヒデオさん!!」
なんだろうか、と思いシエスタの方に体を向ける。
「あの、何て言ったらいいかわかりませんが、助かりました」
「気にしなくて、いい。色々助けてもらった、お礼です」
そう、何も気にすることはない。これは所詮嘘とハッタリで固められた勝利なのだから・・・それに結局ノアレに助けてもらったのだから、自分の力ですらない。
そして、今度こそ部屋に戻る事にした。
230 :
ゼロツカ:2012/03/26(月) 00:07:12.34 ID:Y31F5j/s
今回はこれで終わりです。
頑張ってみたのですが、やはりヒデオの動かし方が下手だと感じました。
やはり、作者の力量がすごいんだと感じた今日この頃・・・これから不安になる一方・・・
まあ、頑張ってこれからも上げっていきたいと思います
投下乙
ノアレの存在って考えてみればメイジに勝ち目ないな
>>221 他の方が答えてる通り元ネタはサガフロのアセルスです
マルチエンドの中から妖魔ENDのストーリーから召喚
>>231 でも、ノアレはよほどのことが無い限りヒデオに力貸さないから
問題はないんじゃないかね?
投下乙
しかし、少なくともノアレとやらがどういう姿をしているのかくらいは書いてほしいな
クロス先の作品について知らん俺みたいな奴には何が出てきてギーシュらがビビったのかさっぱりわからんぞ
>>233 凶悪な目つきの男の横に
小学生くらいの外見の倒錯的な服を着たゴスロリの妖精登場
つまり……ギーシュは「本物のマニア」だと思い怖くなったんだよ
>>234 き、きっと・・・登場の仕方にビビったんだよ・・・
登場のしかたにビビる?
つまり某コワい顔の魔法使いやゲルマン忍者みたいなもんか
怖い顔と言えば天使の心に悪魔のフェイスを持った何処ぞの男子高校生が…
某シルバーウルフさんがアップを始めた様です
アセルスか白薔薇かどっちか迷っているうちに召喚をされてしまった……。
とりあえず自分の作品を進めないとな、うん。
人間ルートか半妖ルートにすればいいじゃない
レッドをからめてヒーロールートなんて作ってもいいぞ
レッドのエンディングで出たR3X編か・・・
レッドついでに
ポケモンのレッド召還の続き待ってると言っておく
ファイブレッド、リュウレンジャー、レッドレーサー辺りのレッド召喚なら見てみたい
レッドスカル召喚とな
パワポケのレッドならみてみたい
もはやどこからどう見てもレッド=9主≒無個性型主人公だからなぁ
アカレッド
ブルーレット
置くだけ
ワイリー
とにかく職人さんたち乙
やはり以前の小ネタのようにルイズはアセルスの虜にされてしまうのか
百合好きとしては胸熱だな
253 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:10:22.83 ID:vG9+y7UN
誰もいない?投下
254 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:11:21.52 ID:vG9+y7UN
「皆さんご存知の通り、魔法の四大系統「火」「水」「土」「風」「虚無」、
五つの系統がある訳ですが、その中で「土」は万物の組成を司る重要な系統なのです」
今日の授業は教師、赤土のシュヴルーズによる錬金の授業。
赤土の通り名通り彼女は「土」の魔法が得意であり土属性の授業を受け持っている。
人間の授業を鑑賞したいとついてきたニャンコ先生は、授業に飽きて暇そうに欠伸をしていた。
授業内容は基本のおさらい、初歩の内容過ぎてわたしも暇である。
わたしは実践こそゼロのルイズだが、実践魔法を除いた座学ではほぼ学年トップ。
せめて座学だけでも見返してやろうと努力した結果である。
(いいなあ、わたしも猫みたいな自由気ままな生活してみたいなあ)
わたしは授業を聞き流しながらニャンコ先生を観察していた。
自称異世界からやって来た幸運を招く猫、ニャンコ先生は何事も泰然している。
動作の一つ一つが偉そうで、命令に慣れている。味にもうるさい。
使い魔小屋で寝させようとしたら物凄くごねられた。結局わたしの部屋で飼うことになった。
前の飼い主は使い魔に人間並みの、もしくはそれ以上の待遇を与えていたのだと思う。
ニャンコ先生はそれだけの生活が出来た。
力を持った”ようかい”の大物であることに真実味が出る。
255 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:12:44.90 ID:vG9+y7UN
(元の世界が恋しくならないのかな)
ニャンコ先生は授業を子守唄に床で眠りだした。
”ようかい”や”おんみょうじ”とはなんなのだろうか?
一応、わたしは座学で学年首位に近い所に居る。
魔法が使えるようになる為、様々な術式について調べたりもした。
ヴァリエール家の力を使って八方手を尽くした。
並のメイジより遥かに詳しい自負があった。
それでも、ニャンコ先生が理解しているメイジと使い魔に近い存在である
”おんみょうじ”が使う術式らしい”しきがみ”すら知識にない。
更にニャンコ先生が変身した巨大な狼のようなもの……恐らくあれが正体。
あれと同じ生き物の存在すら知らない。
少なくとも、ハルケギニアには居ないはずだ。
ニャンコ先生は猫ですらない謎の生き物なのだ。
(異世界ってどんな場所だろう)
前の飼い主ってどんな人だったんだろう、格好良い人だったらいいな。
もしかしたらわたしと同じ学生かも、男の人かな?
どんな生活してたんだろう?
想像は限りなく広がっていく。
「オホンッ!ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
余所見をしていたら当てられてしまった。教師に目を付けられたのかも。
何時まで経っても初歩の魔法ひとつできないわたしは教師達が抱える頭痛の種だから。
たぶん古典的な魔法使いの正装、つばの広がったとんがり帽子とマントに杖、白いワイシャツをした
古典的なメイジであるミス・シュヴルーズは魔法が使えないわたしを嫌っている。
何故なら魔法が使えないメイジは貴族の資格がないから。
わたしが大貴族の娘だから。
メイジでなければ人でなし、メイジとはそういうものだ。
256 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:13:22.24 ID:vG9+y7UN
「では、土の基本魔法を説明してください」
「え、あ、はい……
『土』の系統の基本魔法は『錬金』です。
金属を作り出したり建物を建てる石を切り出したり、農作物を収穫するなどの生活により関係した魔法が『土』です」
「よろしい、ミス・ヴァリエール、よく出来ました。では次に、実際に錬金を行ってみます」
シュヴルーズは錬金の実技を披露してみせた。
シュヴルーズが呪文を唱えると、教壇の上に置かれた石が輝き、金属へと姿を変えたのだった。
これを見たニャンコ先生が「にゃん」と鳴くのをルイズは聞いた。
「先生!ゴールドですか!?」とキュルケが聞いた。
「いいえ、真鍮です」とシェヴルーズは答えた。
錬金術は物質を別物へ変化させる魔法である。
石を銅や鉄に変化させる技術でゴールドの錬金は数ある錬金でも最高難度である。
錬金出来る金属の精度と種類は術者の実力に準じたものになる。
「火」「水」「土」「風」術者が使える属性数に応じて術師としての階級がドット、ライン、トライアングル、スクウェアと変化する。
「虚無」は架空の属性なので、4属性のトライアングルが最高位である。
シュヴルーズは国を代表するトリステイン魔法学院の教師でトライアングルだ。
真鍮を錬金して見せたのは超一流とはいかないものの、有数の実力者といえた。
「さて、次は誰かに錬金をやってもらいましょうか……ミス・ヴァリエール!」
「え、はい!」
「あなたがやって御覧なさい」
わたしは錬金と聞いて悶絶した。
錬金術の結果は術者本人の実力を示すものである。
まともに魔法が使えないわたしは最低位のドット以下。
無能である。
257 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:13:44.86 ID:vG9+y7UN
「先生!」
金髪の男子生徒が声を上げる。グラモン家のギーシュだ。
「ルイズは危ないです!ゼロのルイズですよ!?」
「ミスタ・グラモン、貴方は彼女をまだゼロのルイズと呼ぶのですか?彼女は使い魔を呼んで見せたでしょう。
サモン・サーヴァントが出来て、錬金が出来ないなんてことがありますか」
カチンと来たわたしは立ち上がって答えた。
「わたし、やります!」
ルイズが教壇に立つ、前には先ほどと同様の石。
「ほほう、これは」
ニャンコ先生はルイズの魔法が見たいと思っていた。
大妖怪である自分を強引に召喚するほどの力である、そして手による知らぬ術式。
ルイズが呪文の詠唱を始める。
同時に、一斉に生徒達は机の下に避難を始めた。
意味を理解出来ないまでも魔法に、何処かで見たような既視感を覚える。
ルイズの呪文が完成した。
閃光、爆発、轟音。
なんの防御もしていなかったニャンコ先生は爆発に巻き込まれたのだった。
258 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:15:18.99 ID:vG9+y7UN
ルイズの失敗術式に壁まで飛ばされたニャンコ先生であったが、怪我はしてなかった。
人間とは元より体のつくりが違うし、体の軽さも相まって軽い打ち身程度である。
授業を担当していたシュヴルーズは医務室へ運ばれ、授業は中止となった。
その片付けをルイズとニャンコ先生がすることとなった。
片方は猫なので実質一人での片付けである。
「どうして、わたしがこんな目に」
ルイズは一人で教室を掃除していた。
”錬金に失敗して元に戻った石”と教室中に爆発で飛び散った破片を広い、集めてゴミ箱へ捨てる。
魔法を使えば一瞬で終わる作業も、手作業では時間が掛かる。
誰も居ない教室を一人で片付けるのだ。寂しさと空しさが心に穴を開ける。
「やれやれ、見てられんな」
ニャンコ先生がにゃんと鳴いた。立ち込める霧、ぽんっと軽い爆発音。
「どうよ?」
「ななん、ななななな、誰よ貴方!」
教室に一人の青年が立っていた。
目付きの悪い、線の細い体をした茶髪の美青年だった。
「くくく、夏目型ニャンコ先生だ」
「変身!?人間にも化けられたのね」
「伊達に長く生きてはおらん。さあ、箒を貸せ。二人でした方が早い」
不敵な笑みを浮かべる夏目型ニャンコ先生にルイズは少し赤くなった。
目の前の青年に心臓が高鳴る。
「あ、ありがとう。礼を言うわニャンコ先生」
「礼なら休日の外食で手を打とう」
いつも繰り返される食べ物の話題にルイズの熱は冷めていく。
「やっぱり、見た目はアレでも中身はニャンコ先生ね」
259 :
ルイズ友人帳5:2012/03/26(月) 22:15:49.59 ID:vG9+y7UN
ニャンコ先生は外見では普通の使い魔に見えるので突発コルベールイベントは無し
乙です。
10分後くらいから投下します。
使い魔品評会を明日に控え、シャルロットとルイズとキッドとブッチは練習に――ルイズのみ――余念がなかった。
言いだしっぺのルイズが主導しステージの上を想定して、最終リハーサルをシャルロットですらウンザリするほど繰り返す。
あれから説得に次ぐ交渉の末に、四人セットでやることになった。
ブッチが執念のルイズに根負けし、されど一人では嫌だということで巻き込まれる形となった。
やることは単なる射的。ルイズは変に凝ったことを要求したが、そこはシャルロットが説き伏せた。
ルイズの格式張った無駄に長い口上もこれで何度目になるのか。
――ノックが鳴った。いつぞやの殴り込みのようなルイズとは対照的に控えめな扉を叩く音。
夜も更けてきて、しかも漂流者がいる部屋を訪問する人間など――今この場にいるシャルロットとルイズ以外にはまずいない。
「こちらにルイズ・ド・ラ・ヴァリエールはいらっしゃいますか?」
「誰?」
名を呼ばれたルイズが部屋の主ではないのに返事をする。
すると扉が静かにだが素早く開けられ、フードで顔を隠した人物が忍ぶように入ってきた。
あからさまな不審者は扉を静かに閉めると、フードをとって顔を見せる。
ルイズは呆気にとられ、シャルロットは両眼を細める。
「ルイズ・フランソワーズ・・・・・・」
「姫・・・・・・さま?」
シャルロットの目が見開かれる・・・・・・ルイズの口から漏れた言葉によって。
そうだ、どこかで見た顔と思った。薄明かりでわかりにくかった。こんなところに来るわけもないという固定観念。
しかし改めて認識してから見れば間違いない。トリステイン王国のアンリエッタ王女殿下その人であった。
ルイズが片膝をついて跪くのにワンテンポ遅れて、シャルロットも同じように頭を垂れる。
状況を把握しきれていないブッチとキッドに、ルイズが口出しするよりも先んじてアンリエッタが発する。
「皆さん普段通りのように楽にして下さい。・・・・・・これは命令ですよ」
ニッコリとアンリエッタは笑う。トリステインの至宝たるその美しさ。
それはルイズやシャルロットとさほど年も変わらぬというのに、口に出来ない艶やかさが滲み出ていた。
彼女が微笑みながら出した命令もまた、無邪気さと親しみやすさを感じさせる。
「あらためましてこんばんは、突然の無作法をお許し下さい。わたくしはアンリエッタ・ド・トリステイン。
一応この国の王女ですが・・・・・・先程も言ったように、今は肩肘張らずに楽にして下さいね皆さん」
「そんな・・・・・・姫さま!!」
「いいのよルイズ、今は一人のアンリエッタとして居るの。命令とは言ったけれど、わたくしからのお願い・・・・・・ね?」
「ぅ・・・・・・うぅ・・・・・・わかりました」
ルイズが折れるのを見た後に、アンリエッタはシャルロットの方へと体を向ける。
するとシャルロットは先んじ、改めて一礼してからアンリエッタと目を重ねる。
「アンリエッタ王女殿下、お初にお目にかかります。私は元ガリア王族のシャルロットと申します。
トリステイン王家には一族共々お世話になっております。どうかお見知りおきを」
再度頭を下げる。仮にガリアが存続していれば、きっと同じ王女でも立場はこちらが上であったろう。
それほどまでにガリアは国土が広く、人口も多く、国力も高く、軍も精強だった。
しかしもはやガリア王族の血筋は残れど既に国は滅亡し、トリステインの庇護下である以上立場の差は天地のほどである。
それにシャルロット自身に拘りもない、そもそも王族と言われてもピンとこない。
「そうですか、あなたが・・・・・・――なるほどわかりました。なればこそわたくしの友となって下さいますか?」
滅びたとはいえ始祖ブリミルの三人の子孫と一人の弟子を起源とする、ハルケギニアに四つある王家の血族。
トリステイン、アルビオン、ガリアの王族は、6000年前の兄弟祖先から連なる親戚だ。
最も遠いが・・・・・・ある意味最も近く、そして最も貴い王族同士。
「畏れ多いことですが・・・・・・喜んで」
アンリエッタの人となりは、先刻までの僅かなやり取りでも充分に理解出来た。
王族としての気苦労。わざわざ訪ねてきた理由。品評会にわざわざ足を運んだこと。ルイズとの関係。
慮れない筈がない。アンリエッタ本人も言うように、ここは畏まらずに対等に接することこそ最も嬉しいことなのだ。
「・・・・・・お姫さん?この国の?」
「ちょっとブッチ!!」
「ルイズ」
失礼な態度のブッチを諌めようとしたルイズを、さらにアンリエッタが名を呼ぶ抑揚だけで嗜める。
ルイズは再三言われることにバツが悪そうに俯く。
「そうです、わたくしがこの国の王女です」
「ふ〜ん・・・・・・で、気楽にしていいと?」
「はい」
「う〜ん、そう言われてもなぁ・・・・・・」
「いいじゃねえかキッド、話が早くてわかりやすい。俺は好きだぜ」
「まぁそれもそうか」
元々堅苦しいことに慣れぬ二人の気質、ブッチとキッドもそれぞれに自己紹介をする。
そしてルイズから使い魔であること、漂流者であることがアンリエッタに告げられた。
「そんな事情が・・・・・・わたくしまで伝わってこないので知りませんでした。ですが頼もしそうで何よりです。
未知の世界で慣れぬことも多いと思います。何か困ったことがあればいつでも仰って下さい。
些少ながらお力添えくらいは出来ると思いますので」
「お・・・・・・おう・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
きっと言えば本当に力を貸してくれるのだろうとキッドとブッチは素直に感じた。
権力を笠に着ただけの、いけ好かない偉ぶった人種とは程遠い。貴賤なく別け隔てなく接し、人々の規範たる姿がそこにあった。
「それとルイズ。あなたに近々お願いすることがあると思います」
「はっなんなりと御命じ下さい。わたしは姫さまと王家に忠誠を誓う・・・・・・――」
ルイズは一泊溜めを作ってゆっくりと微笑んだ。
「――友ですから」
「はい」
アンリエッタも呼応するようにそれに笑顔で返す。なるほど、二人の関係がありありと感じられた。
ルイズのラ・ヴァリエール家は、王家と血縁関係のある公爵家でありトリステインでも最も力を持つ貴族の一つ。
年齢が近いのならなおのこと、幼馴染というのも特段珍しいということはない。
しかし思った以上に、2人の間にはかけがえのない絆が存在しているのだ。
「シャルロットさん」
「・・・・・・?何でしょうか、姫殿下」
「不便なことはありませんか?」
「・・・・・・はい。双子の妹と従姉妹の姉共に、学院で健やかに勉学に励んでいます。
父と伯父も王家の為に日夜粉骨砕身――その恩に報いる為にそれぞれ働いております。
母と伯母も首都トリスタニアの方で平穏無事に何不自由なく・・・・・・。
それもこれも寛大なトリステイン王家のおかげです、本当にいくら感謝してもし足りません」
「お気になさらず。困った時はお互い様ですし、もしかしたら立場が逆になっていたかも知れませんしね」
「・・・・・・恐縮です。もし何か困ったことがおいででしたら、微力な身なれどご助力いたします」
「あらあらそうですか・・・・・・では早速相談にのってくれる?」
「えっ・・・・・・はい、どうぞ」
するとアンリエッタはイタズラな笑顔で少女のように言う。
「ついさっき友達になった人がいるのだけれど、まだどこかよそよそしいというか他人行儀と言うか。
どこか一線を引いている感じがあるの。どうすればもっと仲良くなれるのかしら・・・・・・?」
「うっ・・・・・・それは・・・・・・その人は幼少期から堅物でして・・・・・・あの、慣れるまでは相応の時間が必要と言いますか・・・・・・」
「ではある程度砕けてくれるまでお話しすることにするわ、皆も一緒に」
アンリエッタはシャルロットの手を取り、全員を見回しながら微笑む。
「・・・・・・はい」
「ふふっ」
「・・・・・・ふっ」
「ははっ」
珍しく狼狽えるシャルロットを見て三人も笑い、品評会前夜は更けていく――。
†
魔法学院の一室で机に向かう一人の老人。それはもう真剣な表情で本気で考え込んでいた。
(アンリエッタ王女は一体どんな下着なのか・・・・・・)
彼にとって、事は深刻であった。老いてなお滾り衰えぬオールド・オスマン学院長にとって。
この国で最も貴い女性の肌に密着する布――一体どんなデザインで、どんな色をしているのか。
それを追い求めずして、死んでも死に切れないだろうとすら思う。
されど冗談では済まされないことはやはりこの世には存在する。
己だけのことではない・・・・・・立場もある。様々な葛藤が板挟みとなってオスマンを悩ませた。
「夜分遅く失礼します」
一人の女性がノックもせずに無遠慮に学院長室へとズカズカと入ってくる。
「おぉ〜ミス・ロングビル。夜のお誘いかね?」
ロングビルと呼ばれた女性は、いつものジジイの戯言とあっさり聞き流し用件だけを伝える。
「明日の使い魔品評会のことなんですが――」
「そうじゃのぉ・・・・・・明日までがチャンスじゃのう」
「は?」
「いやいや何でもない、続けてくれい」
ロングビルは特に気にした風もなく中断された話をし始める。
「・・・・・・はい、アンリエッタ王女殿下の訪問にあたり――」
「もう来とるぞい」
「そうですか・・・・・・。――は?」
「じゃから、アンリエッタ王女はもう学院に来ておるんじゃよ」
ロングビルは開いた口が塞がらないようであった。
既に漏れているところには漏れているものの、一応王女はサプライズゲストという扱いであった。
「ッ・・・・・・そうでしたか、今はどちらに?」
「旧友に会うらしいでの、まあ問題なかろうて」
ロングビルは頭を抱える気分である。色々と考えなしにも程があった。
「わかりました。それで・・・・・・護衛も?」
「んむ、一人お付きがいたかの」
「たったの一人だけ・・・・・・ですか?」
おいそれと信じられない。仮にも一国の王女が無警戒過ぎるのではないか。
「お忍びじゃし・・・・・・明日には正式に来るじゃろ」
「・・・・・・如何ほどか聞いておりますか?場合によっては警備体制を改める必要があるのですが――」
「何でも新造の銃士隊を一個小隊30人程だそうじゃ」
「銃士?」
竜騎士隊や、それぞれ三体の幻獣――マンティコア、グリフォン、ヒポグリフ――を駆るトリステイン王家近衛の魔法衛士隊でもなく。
「王女様たっての希望で新たに設立されたばかりの王女直属の隊らしい。
全員平民のみで構成されていて銃を扱うとか。何か実験的な意味合いも兼ねているのかも知れん。
今一人だけ来ておるというのがその隊長さんじゃ、彼女は彼女で凛としていて美しかったのぉ」
(平民の・・・・・・銃士・・・・・・)
ロングビルの目がほんの僅かにだけ細まる。
「我々教師達と生徒達、メイジばかりの学び舎であれば安全じゃろう」
「・・・・・・それもそうですね、ですが一応王女の周囲に警備を集中させるよう手配しておきましょう」
「んむ、頼んだぞミス・ロングビル、ところで今夜――」
「では失礼します」
ロングビルはオスマンの続く言葉を待たずに早々と出ていく。
そして足早に自室の方へと向かうのだった。
†
「う〜・・・・・・」
呻くルイズ。品評会が始まってルイズは極度な緊張の中にあった。
他の生徒達が思い思いに使い魔と様々な芸や絆の深さなどを見せている。
「なんでよりによってトリなのよ・・・・・・」
単純なクジ運の問題、しかも引いたのがルイズ本人だから己を責めるしかない。
「あれだけ暗唱したんだから大丈夫」
(・・・・・・私まで覚えちゃうくらい聞かされたし)
と、シャルロットは後に続く言葉を切って励ます。
「ホントいつまでウジウジやってんのよ、みっともない」
手慣れたようにキュルケが毒づく。
「そんなこと言ったって、わたしの口上もだけど・・・・・・今思えば平凡過ぎるのよ・・・・・・単なる的当てなんて――」
「でも今更演目を変えるわけにはいかない、ぶっつけでやろうとしても失敗するだけ」
シャルロットが説く。どうせ凝ったことをやろうとしてもたかが知れている。
演出の為に魔法でも使うなんて言い出したら是が非でも止めなければならない。
未だに二人共系統魔法は使えない。コモン・マジックではいまいち華もない。
今更ジタバタしても遅いのだ、これもまたルイズの不運で自業自得。
「別にいいじゃないの的当て。男前二人なんだし」
「アンタねぇ・・・・・・"あれ"を見てもそう言えるの!?」
ルイズは空を指差す。そこには風竜を華麗に駆る少女。
空中を縦横無尽に舞い、キラキラとした雪の結晶で華やかな模様までも作っている。
『雪風』の二つ名に恥じぬ、美しい演舞。
「・・・・・・ホントあの子の前にやっといて良かったわ、わたし」
キュルケも舌を巻くしかない。魔法を演出に使うのは珍しくないが、完成度の次元が違っていた。
美麗な炎で魅せたキュルケとサラマンダーのフレイムもなかなかのものだった。
が、晴れ空に現在進行形で展開されているものに比べれば見劣りしてしまう。
「妹は・・・・・・ジョゼットは、こういうお祭り騒ぎ大好きだから・・・・・・」
姉であるシャルロットもどんなことをやるのか知らなかった。恐らく誰も見えない空の上で練習したに違いない。
アンリエッタ王女も見に来る噂を聞いて、なおのこと張り切ったのだろうことも容易に想像出来る。
こういうところで潜在的に派手好きなところが垣間見える。ジョゼットの目立ちたがり屋な側面。
「誰がどう考えたってあの子がトリもトリ、大トリをやるべきでしょ!?わたし達だけじゃないわ、あれの後にやる人みんな悲惨よ・・・・・・」
「あ・・・・・・ははっ」
ルイズは行き場のないもどかしさを訴え、シャルロットは苦笑いするしかなかった。
氷の嵐『アイス・ストーム』で、氷の粒を空間に彩らせる。
複数の氷で形成された矢『ウィンディ・アイシクル』を軌道制御してアクロバット飛行を披露する――。
トライアングルメイジとしての実力を――その本領を、これ以上ないほどに魅せつけていた。
「まっ王女様もその他も、空気読んで察して無理にでも盛り上げてくれるでしょ。逆にハードルが下がっていいんじゃない?」
「ぐっ・・・・・・自分は終えたからって無責任なことを――」
アンリエッタ王女殿下でも、あれほどのものは滅多に見られないだろうと思う。
その周囲を固めている銃士隊。教師や生徒達。雑用の為の平民。皆が皆揃って空へと釘付けになっている。
他の場所で警備している、他の銃士隊員達などが見られないことを可哀想と思うほど。
(銃士隊・・・・・・)
シャルロットは空を眺めながらついつい考え事を始める。
てっきり魔法衛士隊が来ていると思っていたが、メイジの一人も含まない部隊のみを護衛にやって来たと昨夜聞いた時は驚いた。
命令系統としてはアンリエッタ王女の下に属する設立されて新しい――平民だけで構成された部隊。
異世界からもたらされ、少しずつではあるが進歩の一途を辿る武器・兵器類。
"オルテ"や"黒王軍"への対抗の為にも、トリステインでも研究に力が入るようになってきたという。
そしてそれらにスムーズに対応する為に訓練を積み、新たな戦術を確立させる。
時には試作兵器を実際に使って、あらゆる実戦強度を調べるような仕事を担うことも検討されている。
そういったことは魔法が使えず、何ら抵抗ない平民の方が向いているということ。
また貴族・平民問わず、実力ある者を相応に出世させるというアンリエッタの主義。
様々な意味合いを兼ねて、アンリエッタの強い推進によって試験的に作られた新進気鋭の部隊。
既得権益を貪り、平民を蔑む貴族達には評判は悪い。
それでもアンリエッタはちょっとずつでも、意識改革から始めているのだ。
(きっと・・・・・・)
――それはいずれ、とても大きな力になるだろう。
キッドやブッチから直に色々な話を聞いていると、より確信出来る。
地面に鉄で道を作り、その上で蒸気を使って車輪を回して走る"蒸気機関車"。
そんな鉄道がキッドやブッチ達の住んでいた場所で人や物資を運んでいたという。
実際に見ずとも話を聞いているだけで、既存の常識がぶち壊される心地。
銃を実際に持って、撃って、その技術力に驚かされてもいる。
ハルケギニアでも、いつかは芽吹いていく可能性が大いにある文明と利器。
漂流物の存在はキッカケを与え、発展を加速させているだけ。今後は生活も大きく様変わっていくことだろう。
(魔法を使えることが一つのステータスでしかなくなる時代・・・・・・)
今はまだ魔法は第一であり、使える者と使えない者の差は絶対的だ。
"メイジ殺し"と呼ばれる卓越した人間もいるが、基本的に戦力も権力も大きな差が存在する。
だけどいつか・・・・・・そうでなくなる日が来るかも知れない。
アンリエッタの望む――誰しもにチャンスがあり、誰もが台頭出来る世界。
進化の先に一体何が待つのか――。
始祖ブリミルが降臨してからおよそ6000年。
非常に緩やかな速度で発展してきた世界が、ここに来て急激に変わりつつある。
歴史という大きな流れで見るならば、ここが分水嶺と言えるかも知れないとすら感じてしまう。
――沸き上がる大喝采。ステージ上で竜と共に一礼するジョゼット。拍手はいつまで経っても鳴り止まない。
ルイズ、シャルロット、キュルケも、誰であっても称賛の拍手をせざるを得ないほど凄絶で素晴らしいものだった。
しかしその時――喝采と同等の大きな衝撃音が、広場にまで響き渡った。
†
――キッドとブッチは、メイジの控え室とステージを挟んで反対側の使い魔の控え室の方にいた。
獣臭かったものの、珍しい生物を間近で見られるのは単純に面白い。
それは使い魔ゆえなのか・・・・・・人懐っこい多種多様な生物達。
好奇の視線に晒される主人メイジ側の控え天幕よりは遥かにマシであった。
「綺麗だな」
「ああ、綺麗だ」
陽光に乱反射する氷の粒が、水分と共に虹を作っている。
「凄えな」
「ああ、凄い」
まるで生物さながらに動きまわるツララのようなものが複雑に絡み合い、さらにそこに少女が乗る竜が加わる。
漂流者の自分達にも物怖じしなかった活発な少女。姉の方と違って随分と明るく全体的にノリが軽い。
優秀とは聞いていた。異世界出身の自分達には魔法使いの実力なんてよくわからない。
それでも目の前の光景は、なるほど口にせずとも圧倒的な実力を理解させてくれる。
あんなものの後に早撃ちや精密射撃を見せるなんてちょっと逃げたくなる。
が、最初からそこまで気負ってないのでどうでもいいっちゃどうでもいい。
今はただ空を舞台に描かれる芸術を心から楽しむ。
竜から軽やかにステージへと飛び降りて一礼するジョゼットに惜しみない拍手を送った。
そしてその時――まるで列車同士が正面衝突でもしたかのような轟音が、会場に響き渡ったのだった。
†
当然の反射――本能的な行動。誰しもが音のした方向へと向き、驚きを禁じ得ない。
誰しもが思考を止めてしまう。ついさっきまでは品評会の出し物に沸いていた。
突如として起こった非日常的衝撃音。"それ"もまた品評会の催しの一つなのかとも錯覚してしまうほどの異常。
目を向ける方向には、縮尺のおかしい"巨人"が遠く塔に並ぶように立っていた。
トリステインの王女もいらしているこの魔法学院を襲撃するという暴挙。
平和ボケした学院が敵意に対して大した備えもなく曝されている状況。実際に目に見えている凶悪な存在。
そこにいる全員が呆気に取られてしまうのも――無理はなかった。
――ゆえに最も早く動いたのは、漂流者にしてシャルロットとルイズの使い魔たるキッドとブッチの二人であった。
この世界に来る少し前まで、現役の鉄火の中を命を剥き出しに走り抜けてきていた。
平和ボケもなく、敵の力量も認知出来ない。何より巨人に対する好奇心が、その心と体を動かしていた。
どうせ自分達の順番は最後で時間にも余裕はある。それにさっきの空中舞踊以上のものもないだろうと。
次いでその二人が駆け出すのを視界の端に捉えたシャルロット。
いつだってこういった危機的状況に・・・・・・不明瞭な状態にも対応出来るよう――対処出来るよう鍛錬してきたのだ。
流されず、乱されず、常在戦場の心得を培う為に、考えることを止めないようにしてきたのだ。
今動けずして、いつ動くというのか――気付けば冷静にどう動くべきか、瞬時に思考を回転させる。
「ジョゼット!!王女殿下を!!!
答えを出したらすぐさま妹の名を叫んだ。今は様々な人間が密集している。
この状態でパニックが起きれば、王女殿下の御身に危害が及ぶ可能性がある。
己の名前を姉に呼ばれたジョゼットは早かった。何故かなどは考えない。
伊達に双子でずっと一緒に育ってきたわけじゃない。兎にも角にも間髪入れずに行動に移す。
「イルククゥ!!」
連鎖するように使い魔の名を呼んで、低空に一直線で姫殿下を拾い上げて上昇する。
パニックに際しても、敵襲に際しても、まずは空が一番安全だ。広い視点での取り巻く状況確認が第一。
そしてジョゼットはシャルロットの意図を改めて解す。
己はさっきまで飛行演舞を披露していた。ゆえにこそ、直近一帯の状況は自分が一番わかっている。
だからこそわたしに頼んだのだ、最も大事な王女殿下の身を守るということを――。
ジョゼットが動く頃、シャルロットも駆け出していた。もちろん使い魔二人を止める為に。
そしてルイズも後を追うように――姫さまが空へ上がるのを見届けてから――走り出す。
特に何も考えてはいなかった。ただ追わなければならないと感覚的に思ったのだった。
そして大地を蹴りながら考える。そうだ、姫さまだけは何としても――危険も、負い目すらもあわせるわけにはいかない。
姫さまの安全が確保されたなら・・・・・・次は敵性戦力の排撃だ。
系統魔法も使えない自分は役に立たないかも知れない。
それどころか足手まといになるかも知れない。それでも囮くらいにはなる。
少しでも姫さまにのしかかる負担を軽くしてあげたい。重圧を取り除いてあげたい――。
ルイズの一念は無理を通して道理を蹴っ飛ばす。当たり前の理屈を壊して押し広げようとする。
あんな"ゴーレム"くらい自分の手で撃退してやると。
†
「見ろよキッド、デケー」
「嫌でも見えてるって・・・・・・それにしても巨大過ぎる」
走りながら近付けば近付くほど実感する。その常軌を逸したスケール。何度も塔の一角に向かって拳を叩きつけている異形。
その度に学院全体が揺れるような地響きを残す。あんな化物が動いているなんて面白くないわけがない。
「キッドさん!!ブッチさん!!」
立ち止まり、振り返れば、シャルロットが全速で追い付いていた。
「なんだ嬢ちゃん」
「どうした?シャルロット」
「なんだどうしたじゃないですよ、明らかに異常事態で危険です」
ザックリと見ても20メイル以上はあるゴーレム、下手すると30メイルにも及ぶだろう。
あれほどのシロモノを創り出せるとなれば相当優秀な土メイジ。
最低でもトライアングルクラス――スクウェアクラスでもおかしくはない。
何が目的なのかまでは判然としない。まさか黒王軍ということもあるまいが、オルテからの刺客などの可能性は考えられる。
いずれにせよ無用心に近付いたり、迂闊に手を出すような相手ではない。
「大丈夫だって、もうちょっとだけ」
「ブッチさん!!」
「ッッ・・・・・・っと、わかった。無茶はしねえって、ここから見てるだけ」
シャルロットの凄みにやや気圧されながら、ブッチは両手を上げて降参だといった風なポーズを見せる。
「危険と言ったけどシャルロット・・・・・・あれは敵なのかい?」
「少なくとも味方ではありませんし、それに――」
フッとシャルロットのポニーテールが靡く。
「あっ」
「おっ」
「・・・・・・!?」
3人で話している中で、ルイズが目もくれずに走り向かっていく。
「ルイズ!!」
シャルロットが叫ぶも振り向かない。
まずい。ルイズは頭に血でものぼっているのか、冷静ではない・・・・・・間違いなく。
「あ〜あ〜」
シャルロットは「くっ・・・・・・」と歯噛みする。
ブッチはからかい半分でニヤニヤとこちらを見ている。キッドも次の言葉を待っているようだった。
「・・・・・・どうするんだい?」
「力を貸してもらえますか」
「おうよ」
「了解」
迷う要素はない、ルイズを見捨てるわけにはいかない。
二人は戦力としても頼りになる。何よりきっと、学院で誰よりも修羅場を経験している。
そして自分だけが追ってひとたび目を離せば、大人しく待っている気質ではないだろう。
二人を監督しつつルイズを止めに行くのが最善であろう。
「ブッチさん!!"ガンダールヴ"を!」
「ん?あぁ・・・・・・」
ブッチは左手でコルトパーカッションリボルバー"コルトM1860"を右腰の皮ホルスターから抜く。
すると左手のルーンが輝き、キッドとシャルロットをあっという間に置き去りにした。
ハルケギニアにおいて特別な意味を持つルーン。メイジの始祖ブリミルの使い魔が宿したとされる伝説のルーン。
以降6000年にも及ぶ長い歴史の中で確認されず、存在そのものが眉唾ものの使い魔。
『ガンダールヴ』を左手に刻む者、古今東西あらゆる武器を使いこなし、その躯は超人と化して主人を守る。
「ヒャハハハーッ」
肉体で風を切り裂いていく感覚にブッチのテンションが踊る。
出遅れたもののすぐにルイズへと追いつくだろう。
大義名分も出来たことだし、存分に楽しみ暴れてやろうとブッチは高らかに笑った。
以上です。
本当ならドリフ原作に合わせて1ヶ月更新の予定でしたが、
なんか軽く1年先まで投下できる量になっちゃったので、もうちょっと間隔狭めていきます。
多分隔週くらいで……。それではまた。
皆さん乙です
273 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/27(火) 17:56:29.33 ID:J+twvwXD
マクミラン!マクミラン!マクミラン!マクミランぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!マクミランマクミランマクミランぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!マクミラン大尉の緑色ギリースーツをクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!ギリースーツモフモフ!ガイガーカウンターカリカリ…きゅんきゅんきゅい!!
足を怪我したマクミランたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
司令官まで出世できて良かったねマクミランたん!あぁあああああ!かわいい!マクミランたん!かわいい!あっああぁああ!
MW3も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!!!!あ…無限沸きも無敵砲台もよく考えたら…
マ ク ミ ラ ン 大 尉 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!Buggerぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?パッケージ裏のマクミランちゃんが僕を見てる?
パッケージ裏のマクミランちゃんが僕を見てるぞ!マクミランちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のマクミランちゃんが僕を見てるぞ!!
ゲームのマクミランちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはマクミランちゃんがいる!!やったねプライス!!朝までガン待ちやなお前ら!!!
あ、S.A.S.のマクミランちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあギャズ様ぁああ!!ソ、ソープぅううううう!!カマロフぅうううううううう!!!ザカエフぁあああああああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよマクミランへ届け!!プリピャチのマクミランへ届け!
ベア・グリルスの使い魔vsWild
ベア:見てくださいサラマンダーですよ。普段はおとなしい性質ですが、刺激しすぎると激しい炎にで反撃してきます。
数日前にも、サラマンダーを召還した女性が誤って尻尾を踏みつけて焼き殺されています。
ハルキゲニアでは貴重な蛋白源なので捕獲してみたいと思います。
炎・・・青い炎・・・・よし、ウィル・オ・ウィスプの伍長だな
一兆度の炎を放つゼットンにかなうものはおるまい
え?ウィル・ウィプス召喚?
ゼロ魔の世界には空飛ぶお城のグラン・ガランが似合うかもしれない
某火頭「ゼットンは私が倒した」
ショット・ウエポン召喚で、
メイジバトラー量産。
>>276 同じ能力持った百魔獣の王を簡単に仕留める美女剣士が居てな。
>>276 えーと、炎雷破さんならなんとかなるんじゃね?
>>278 ウルトラマンSTORY 0では確かにゼットン複数体を始末している
283 :
ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/27(火) 21:53:06.51 ID:ktR1VKOa
加筆してみました
投稿します
284 :
タイトルも地味なので変更:2012/03/27(火) 21:54:15.19 ID:ktR1VKOa
「…これが私の使い魔?…」
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは魔法が使えなかった。
トリステイン王国でも五指に入る いや 王家に次ぐといってもいいほどの名家に生まれて、
この魔法が使えることが絶対的な価値を持つ世界において、魔法が使えなかった。
父も 母も 姉たちも 親族のどこを探しても自分のようなものはいない。
皆 優秀なメイジである。
その劣等感の中彼女は、長い間諦めず 修練を欠かさずに来た。
彼女が怠惰を貪っているがために魔法が使えないと評するものはいまい。
事実、魔法を使うこと を除けば、彼女が通う、国内だけでなく留学生も訪れるこのトリステイン魔法学院においても最上位の成績を収めている。
しかし彼女は魔法を使えない。
どんな魔法を使おうと、なぜか爆発が起きてしまい、正常に魔法が使えたことは無かった。
そして今日は彼女にとって転換期になるかもしれない重要な日であった。
魔法学院の2年生たちが進級して最初の授業
使い魔召喚の儀 その名の通り生徒たちはこの日各々の使い魔を召喚する。
もしこれに成功し、強力な使い魔を召喚できれば、今までの評判など吹き飛ぶだろう。
彼女もそれを期待し、この日に賭けていた。
これも失敗するようなら自分は駄目だと思い詰めていた。
その一方で希望を捨てはしなかった。
そして当日、彼女が呼び出した使い魔は…
「なんだ貴様は? ここはどこだ? 私を召喚したのか? どうやって? さきほどの鏡のようなものか? 転移系の魔法か?」
とりあえずは成功した。
召喚自体は
しかし呼び出したのはドラゴンでも グリフォンでも マンティコアでもなかった。
最悪 失敗しなければ犬でもネコでも鳥でも何でもいいとは思っていた。
しかし呼び出したこの少女は、見る限り平民だ。
285 :
ID変わっちゃってるな:2012/03/27(火) 21:55:29.99 ID:ktR1VKOa
その上態度も大きい。
貴族を前にしてこれはどういう事かしら?
最低限の礼儀もないとなると…
失敗はしなかっただけマシ とすらいえないかもしれないわ。
「質問に答えないのはまだしも 小さいとは言ってくれるな」
やっぱり偉そうな態度ね。
「なによ どう見ても私より小さいじゃない」
「む…魔力が十分ならこんな姿で… うむ? 結界から抜け出せている? これなら…」
何やらブツブツ言っているが…
「なに? 言いたいことがあるなら言えば… って! え?」
そう思っていたら 変身? した。 一体何をしたのだろう?
風系統の魔法に顔を変えるスペルはあるが、体を大きく変化させるのは不可能のはずだけど
「これが私本来の姿だ どうだ? お前のちんけな体とは比べ物になるまい?」
いやそれよりも重要なことがある…
「なななななななな… なによ これ… 私より胸が胸が胸が胸が………」
「分かったか? 小娘」
「ううう… ああもう そんなのどうでもいいの! あなたは私の使い魔になるんだからそれにしても今のは 魔法? あなたメイジなの?
平民かと思っちゃったけど」
一応聞いてみるが メイジにしても変な気がする。
「ほう 使い魔にしようとして私を召喚したか まあ結果的に結界から抜け出させてくれたわけだし
お前が死ぬまでくらいは面倒を見てやってもよいが ああ名乗っておこうか 私は闇の福音エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
聞いたことはあろう?」
何やら大仰なことを言ってるようだが、まったく分からない 何を言ってるんだろうか?
それに死ぬまでって?
めーるらん に 「sage」 って いれないと おこられるらしいよ。
287 :
使い魔になったキティ:2012/03/27(火) 21:56:57.31 ID:ktR1VKOa
「闇の福音? 聞いたことないわね それに私が死ぬまでって その時にはあなたももう死んでるか 随分なおばあちゃんになてるんじゃないの?」
「私の名前を聞いたことがない? とんだ世間知らずだな おいそこのハゲ 話は聞いていたな? 説明してやれ 見たところ教師のようだか 無論知っているだろう?」
ああもうハゲだなんて… よく言った えらい
「ハ? ハゲって私ですか? … 確かに私はこの学院の教師ですが 闇の福音なんて聞いたことないですね これでも結構物知りのつもりなんですが ご出身を聞いても?」
やっぱり ハゲ先生…じゃなくて ミスタ・コルベールも知らないみたいね。
「貴様も知らないのか? この不死の魔法使い 悪しき音信 禍音の使徒 吸血鬼の真祖を?」
「「吸血鬼?!!!」」
え? 吸血鬼?… それならすごい… でも吸血鬼なんてマイナスイメージがすごいわよね…
「ああそうだが ちなみに出身は一応旧世界のフランスだ」
とりあえず吸血鬼なのは間違いないみたいね
フランスってどこ?
「いや 吸血鬼を使い魔にするなどかつて例が…というか吸血鬼がこんな日当たりのよい場所で平気なのですか?
そしてフランスなんて地名聞いたことないですが もしや東方のほうでしょうか?」
やっぱりハゲも知らないみたいね
そして私も同じ疑問だわ 大丈夫なのかしら?
・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
sage入れ忘れてました 申し訳ないです
「私は真祖だからな 対して問題にならん ああ そうそう東方出身だ(フランスが分からんとは ここはどこだ? 魔法世界のどこかしらの魔法学校かとも思ったが
まあいいだろう 結界の影響はないようだし 旧世界のどこかではなさそうだな まあ あとあと考えればいいだろう)」
真祖? よくわかんないけど強力な吸血鬼なのかしら?
「う〜ん… ミスヴァリエール いまいちよくわかりませんが こちらの方が吸血鬼で それも真祖?とかで 使い魔してはまあ 比べる対象が難しいですが
妖魔の類を召喚できたなら かなり良い結果と言えますし 使い魔になってもいいそうですし 契約しては?」
ハゲめ 人の気も知らないで言ってくれるわね
吸血鬼なんて使い魔にしたら どんな噂が立つか…
でも強力な使い魔なのは間違いないし…
このまま契約しないで 使い魔召喚失敗ってことになったら…
進級取り消しになるかもしれないし…
それこそまずいわよね…
強力な使い魔…
メイジとして優秀…
そう考えれば…
よし 決めたわ
「そうですね… ねえ あなた? エヴァンジェリン それじゃあ 私の使い魔として契約してくれるかしら? そして 私が死ぬまでつかえてくれるのね?」
「いいだろう 長くともせいぜい60年70年程度になしかならんだろうし 暇つぶしにはなりそうだしな それと 先ほど私を平民とぬかしたが
これでも元は大領主の養女だから 一応は貴族だぞ」
へえ 貴族だったんだ
でも吸血鬼なのに 領主の養女?
まあ いいかしら
他にもよくわからないことが多すぎるし
貴族だというなら 寮に止めても問題ないし
「分かったわ ならお願いするわ 貴族というならそれ相応の待遇も約束する
それじゃ 契約するわよ」
そういえば これからキスするのよね…
動物とかとすることになると思ってたけど
「ああ」
相手が吸血鬼で女性とはいえ
これって普通にファーストキスよね
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン
この者に祝福を与え 我の使い魔と為せ」
でもそんなこと言ってられないわよね…
「ん…」
「これで契約完了よ」
これでファーストキスが…
「(キスをするのか 使い魔というより仮契約だが… 魔法体系からして違うようだし細かいことはいいか)む 手が熱いな」
「使い魔のルーンが刻まれているのですよ ふむ なかなか珍しい形ですね スケッチしても?」
珍しいの?
良くわからないけど
確かに他とは少し形が違うみたいね
「別に構わん 好きにしろ」
「なんだかよくわからないけど ゼロのルイズのやつ 吸血鬼を使い魔にしたって 実はすごいんだろうか?」
「いつも失敗ばかりだけど 才能は実はあるってことか?」
「というか これからは下手にあいつを馬鹿にしたりすると 吸血鬼に何かされるんじゃね?」
「それって グールにでもされるってか? ありえないこともないかも…」
「これからはきをつかたほうがいいかもな」
みんな好き勝手言って…
「さあ みなさん ミスヴァリエールの契約が終わったところで 今日の授業は終わりです 部屋にお帰りなさい」
「「「は〜い」」」
「さあ いくか」
「セロのルイズはフライなんか使えないから歩け ブッッ おいなにすんだよ」
「バカお前 さっきの話忘れたのか? 迂闊なこと言うなよ」
「あ そうだった…… ええと じゃあな ルイズまた明日」
「なんだおまえ? 随分バカにされているようだが? あの連中懲らしめておくか?」
「いいわよ あんな連中 ほおっておけば 私たちも行きましょう」
そうよ 言いたい奴には言わせておけばいいんだわ
こんな強力な使い魔を呼び出せたんだし
「ふむ お前は飛べないのか なら…」
「わッ あんた飛べるの? それも私を一緒に飛ばすなんて…」
二人に同時にフライを使うなんて スクウェアでも難しいはずなんだけど
先住の魔法だとしても 詠唱はあるはずだし
さっきの変身といい
東方の吸血鬼は使う魔法も違うのかしら?
「私にかかれば容易いさ 使い魔として これくらいはお安い御用だ」
なんだかんだで結構やさしいのかしら?
「…ありがとう」
投稿終わります
うん。まあ、おつ
地の文は「心の声」だけじゃだめよ
294 :
一尉:2012/03/27(火) 22:53:31.96 ID:bqw+oOqn
最終回後あの旧日本陸軍の加藤隊長を召喚にしたルイズ
MATの方かとオモタ>加藤隊長
皆さん乙です!
今更だけどドリフは原作の設定を上手いこと使ったなと思う。
その手があったか、とちょっと悔しいぜ(笑)
297 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/27(火) 23:40:30.84 ID:+xtX2itk
最終回後あの闇の福音エヴァンジェリンを召喚にしたルイズ
2:50頃から小ネタ
水曜スペシャル 「トリステイン探検隊 脅威!謎の魔術集団に伝説の魔獣ピンクツンデレを見た!」
を放映します。
我々は、謎の鏡に出会った人間が行方不明になる、という都市伝説を確かめるべく、東奔西走していた。そして、ついにその鏡らしきものに出会ったのだった!
「よし、まずは調査だ!」
隊長の掛け声の下、まずは石が投げ込まれた。奇妙な事に、何と石は鏡の中に吸い込まれるように消えてしまった!
「隊長!これを入れてみてはどうでしょう!」
そういってサイト隊員が差し出したものは鍵であった。それを突っ込んでみた。そして引っ張り出してみたが先端に異変は認められなかった。
「ううむ、とりあえず、危険は無いようだが…」
とはいえ、それ以上のことは何も分からない。隊長は早くも決断を迫られた!
例え、危険が待ち受けている事が分かっていたとしても合えてその道を決断せねばならないこともある。それが、探検隊隊長たる者の務めなのだ!
「よし、これより我々は未知なる脅威に立ち向かう!皆、気を引き締めろ!」
「はい!」
隊員たちの声が唱和する!その声には決意が溢れていた。勿論、隊員達にも恐れはある。だが、使命感は恐怖を凌駕する。それが、探検隊なのだ!
そして、探検隊は謎の鏡を潜ったのだった!驚くべき事にその先で我々は原住民と遭遇した!
「…アンタ、ダレ?(訳:異国の者よ。引き返しなさい。この先にはピンクツンデレが出没します)」
「ピンクツンデレ…?それは一体…」
「ミスタ・コルベール!モウイチドショウカンサセテクダサイ(訳:私の村もピンクツンデレの怒りに触れて半分以上が死んだ…)」
「な、何と言う… だが、そこに謎と神秘がある限り、探検隊はどんな困難にも突き進むのだ!そうだろお前達!」
「は、はい…」
どうやら、ピンクツンデレとは原住民にとってはとてつもなく恐ろしいものらしい。さすがの員達の間にも動揺が走る!
(まずい…この動揺を鎮めぬままに行動しては…最悪全滅だ!)
「おう、お前達、ここで休憩だ」
「はい!」
状況を敏感に察知した隊長は、ここで休憩する事を選択した。正直ここでのタイムロスは痛すぎる。
だが、このままピンクツンデレに向かうことは余りにも無謀すぎた!
どんな極限状態の中でも最善の行動を選択できなくては探検隊隊長は務まらないのだ!
「キゾクニコンナコトサレルナンテフツウハイッショウナインダカラ(訳:どうしても向かうのですか?嗚呼、御武運を…)」
何と我々の行動に感激したか、原住民が熱烈な口付けをしてきたではないか!突然の事に驚いたが、隊長はそれを受け入れた。
生まれや言葉は違っても同じ人間同士、誠意を持って接すれば分かり合えるのだ、そう感動に震える隊長であった。
だが、その時!
「隊長!手に!」
「何!おお!?」
これはいかなる事か、隊長の手に怪しげな文様が浮かび上がったではないか?これは一体なんなのか?
「キョウカラアンタノゴシュジンサマヨ(訳:そ、それはピンクツンデレの警告!)」
「ううむ…凄まじい技だ。もしかすると、ピンクツンデレは宇宙人という可能性もあるんじゃないのか?
いや、仮説だけどな…」
冷静に推理を展開する隊長であった。いかなる可能性も考慮して行動しなければ探検隊隊長は務まらないのだ!
だが、残念ながらその仮説を検証するには余りにも時間が足りなかった!
(…隊員たちの疲労も限界だ…ここが潮時かもしれない。脅威に触れ、我々の無力さを知る。
だが、その教訓が次に生きるのならば、撤退も無駄ではない!)
隊長はついに決断を下した!謎を目前にしながらの無念の撤退である。だが、探検隊の不屈の精神はいつか再びこの謎に挑戦し、解明するだろう!
その日まで頑張れ、探検隊!闘え!探検隊!
というわけで水曜スペシャルの探検隊召喚でした。隊長は川口さんでも藤岡さんどちらでも。
ピンクツンデレに出会ってない?何も進展していない?探検隊ですからー。
ゼロ魔本編のあとがきのノボルの悪乗りみたいで(褒め言葉)面白かったよ乙
投下乙
なんというか、読んでる最中ずっとポルナレフが深刻な顔して何かを訴え続けてたんだがww
誰かやると思ってたわww
今から第十四話を投下します。
第十四話『アルビオンへ行こう。』
涙ながらに語ったアンリエッタの抱える悩み。
それは現在アルビオンで行われている貴族派レコンキスタと王党派の戦争の大きな流れの中での政略結婚とトリステイン、ゲルマニアの軍事同盟締結、そしてその政略結婚の障害になりうるアンリエッタのウェールズへ宛てた手紙の存在。
何とかして回収しようにも自分の周りにはそれを任せられる様な人物は居らず近く王党派は壊滅するだろう…
そこまでを話し、アンリエッタは絶望に暮れる様に両手で顔を覆い泣き崩れた。
「姫様、私にお任せを!!その件の手紙、わたくしがアルビオンに回収に赴きます。
姫様の為ならばこのルイズ・フランソワーズ、例え竜のアギトの中であろうが地獄の釜の中であろうと厭いません」
熱のこもった口調でルイズは言ってアンリエッタの手を強く握る。
「ルイズ、私の為に…あぁ、これぞ真の忠誠と友情です。」
アンリエッタはルイズのその手を握り返し涙を拭う。その仕草はまさに悲劇の物語の姫君の物で演劇のワンシーンの様であった。
手を取り合う二人の様子にミントは顎に手を当て、しばし思考に耽る…
ミント自身いずれ近い内に何とかしてアルビオンには赴くつもりでいた。
本から得た情報や様々な人物に聞いた話等からアルビオンがどういう国なのかは既に知っている。浮遊大陸など宝の匂いがプンプンしているではないか…
上手く立ち回れば滅んでいくアルビオン王家からアンリエッタの名の下に始祖の秘宝を譲り受ける事も出来るかも知れない。
しかしかといってアルビオンに行く気満々のルイズの唯のついでで自分もついて行く等とここで言ってしまうのは勿体ない…
なるべくアンリエッタへと恩を着せつつ好感を上げ、尚且つ自分にとってのアルビオン王家への架け橋にする。
ミントはそこまでを瞬時に考え、アンリエッタとルイズに対しわざとらしい位に手を広げて大げさなリアクションの演技をして見せた。
「あぁ…何て可哀想なのアンリエッタ!!あなたの気持ちは同じ王家に生まれた乙女として痛い程に解るわ。 任せて、あなたのお友達としてあたしもルイズと一緒に行くわ。」
ミントのその言葉にルイズとアンリエッタは特にルイズは心底驚いた。
まさかあのミントがアンリエッタが可哀想だという理由だけで自分と共に行くと言ってくれるとは思わなかったから…
「ミント殿下…しかしあなたは…」
異国の王女であるミントに行かせる訳にはいかないと駆け寄ってくるアンリエッタを受け止めてミントはわざとらしく頭を振った…
「ううん…良いのよ、心配しないでアンリエッタ…私達に任せて頂戴、必ず手紙取り戻してあげるから。(でっかい貸し一つよ♪簡単には返せないからね!!)」
「ミント……ありがとう。」
「気にしないでルイズ、あたし達なんだかんだ言ったってパートナーじゃない。(あんたに何かあったらあたし帰れなくなるじゃない。)」
今度は感動に瞳を潤ませるルイズの肩に手を置きながら言って、ミントは視線をそっと泳がせる…
(にしてもちょろいわね〜…)
ここでルイズを直視できる程ミントも腐ってはいない…筈である。
「その任、どうかこのわたくしにも御命じ下さい。」
と、ここで突然ルイズの部屋に声が響くと扉がバンと音を立てて開かれ、一人の人物が颯爽と現れた。
薔薇を携えた金髪の美少年、人呼んで『花咲く薔薇の君−青銅のギー…』
「ゲフゥッ!!」
ギーシュが扉を開けポーズを決めた次の瞬間、無言のままゆっくり歩み寄ったミントの情け容赦無い非情の拳がギーシュの鳩尾に突き刺さる…
「何であんたがここに居るのよ?」
ミントはじと目で見下ろしながらぐったりとしたギーシュを床に転がしその背中をグリグリと踏みつけながら問う。
「うぐっ、やめてくれたまえミス…いや、ミント王女殿下。」
「…あたしが王女って知ってるって事はあんたずっと外で盗み聞きしてたのね…これって重罪よね。どうするアンリエッタ?どうされたいギーシュ?」
ミントのそのサディスティックな物言いにギーシュの顔が青くなる。
「いや僕は、お一人で出歩かれていた姫殿下を見つけたから影ながら御守りする為にですねぇ!それよりもアンリエッタ姫殿下!!その手紙の回収という困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンにも仰せつかい下さい!!」
ミントの足の下からゴキブリの様に這い出し、アンリエッタの前に跪いたギーシュは必死に部屋を覗いていた件を弁明しながらルイズ達の任務への同行を希望した。
「グラモン…もしやあなたはグラモン元帥の?」
「三男でございます。」
「あなたもわたくしの力になって頂けるの?」
「姫殿下の力になれるのであればそれはもう望外の幸せにございます。」
「ありがとう。あなたも父上に良く似て素晴らしい貴族なのですね。」
恭しく言ったギーシュにアンリエッタが微笑む。これでどうやらすっかり舞い上がっているギーシュがルイズ、ミントと共にアルビオンに向かう事が確定したようだ。
「それでは明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします。」
「お願いしますルイズ・フランソワーズ、ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます。書を預けます、それをウェールズ皇太子に届けて下さい。」
「了解いたしました。以前、姉達とアルビオンを旅した事がございますゆえ、地理には明るいかと存じます。」
アンリエッタはそう説明するとルイズの机に座り、さらさらと手紙をしたためた。
そしてアンリエッタは自分が書きあげた手紙を思い悩む様にじっと見つめて、悲しげに首を振る。
その後アンリエッタは少し顔を赤らめると、決心したように頷き、末尾に一文付け加えた。
それから小さな声で呟く。
「始祖ブリミルよ……この自分勝手な姫をお許し下さい。でも、国を憂いても、わたくしはやはり、この一文を書かざるをえないのです……自分の気持ちに、嘘をつくことはできないのです……」
アンリエッタのその手紙への憂いた態度や仕草にルイズはまるでその手紙が恋文であるかの様な印象を受けた…
そしてアンリエッタの手ずから手紙に魔法で封蝋を施されトリステインの象徴である白百合の紋章が刻まれる…
「貴方達の双肩にトリステインの未来は掛かっています…どうか始祖の加護があらん事を…それと御守り代わりにこれを預けます。身の証明になる事でしょうし路銀の足しに必要であれば売り払って下さい。」
アンリエッタからルイズの手に渡されたのは手紙と一つの青い宝石の付いた指輪…
それを手にした瞬間、ルイズの目は大きく見開かれた。
「まさかこれは水のルビー!?」
ルイズのその言葉にミントがピクリと反応し、他の三人に気取られぬ様その口角をつり上げた。
そしてアンリエッタは今度はミントへと向き直る。
「ミント殿下、ルイズの事と此度の事あなたには本当に多大なご迷惑をお掛けします。
それでもあなたが会って間もないわたくしの事を友達と言ってくれた事本当に嬉しく思います。
無事に戻ってこられましたら是非とも一度ゆっくりお話をさせて下さい。
そして今後のあなたの帰還への助力をわたくしもお友達として惜しみませんわ。」
「えぇ任せてアンリエッタ。」
熱っぽい口調で語るアンリエッタに対してミントは込み上げる微笑みを押さえ込み唯頷く。
トリステイン王女の全幅の信頼…まさにミントにとっては最高の報酬だ…
___翌朝 正門前
翌朝、霧深い早朝の中、早々にルイズ達はアルビオンへ向かう為の馬の用意を済ませ、出発前の最終確認を行っていた。
「所で二人とも、アルビオンに僕の使い魔も連れて行きたいんだが構わないかな?」
ギーシュが二人に問う。
因みに既にギーシュはミントから王女である事を秘匿する旨と以前の様に接する様にと命令されている。無論絶対服従を身体にも言い聞かせてある。
「あんたの使い魔ってたしかジャイアントモールでしょ?これから馬でアルビオンに行くって事あんた解ってるの?」
ルイズが呆れた様にギーシュに言うとギーシュは地面を足で数度叩いた。
「心配ないさ、僕のヴェルダンデは馬並みのスピードで地面を掘り進める。それにこんなにも愛らしい姿の使い魔と離ればなれになるなんて僕には耐えられないよ。」
合図に反応して地面を突き破り現れたのは小熊の様な体躯をした大きなモグラ。
そのモグラのつぶらな瞳を見つめて感極まったのかギーシュは熱い抱擁を交わす…
「ま、足引っ張らないならあたしは何でも良いわよ。」
興味なさげに言ってミントはギーシュに用意させた自分の馬にひょいと跨がる。足手まといな様ならば最悪ギーシュもヴェルダンデも道中囮にでもして置いていけば良い。
3男……だと? 支援
312 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/28(水) 12:43:45.45 ID:7a3MARTc
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
5. ファーランド サーガ1、2
6. MinDeaD BlooD
7. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
と、突然ギーシュにされるがままだったヴェルダンデが何故かルイズに猛然と襲いかかりその小柄な身体を押さえつけて覆い被さる。
「キャア!!ちょっと何よこのモグラ!放しな…さいっ!!」
「あはははは、懐かれてるじゃ無いルイズ。」
「笑ってないで助けなさいよっ!!」
突然襲いかかったヴェルダンデの鼻先がルイズの身体をまさぐる度、ルイズが身をよじらせて藻掻く。その様子を見てミントは他人事なので愉快そうに笑っていた。
ここで突然のヴェルダンデの奇行に首を捻っていたギーシュはようやくヴェルダンデが何をしているのかを検討付ける。
「成る程…ヴェルダンデは君が持っている水のルビーに反応しているんだ。彼は珍しい鉱物や宝石が大好きでね、まさに土のメイジである僕に相応しい使い魔なのさ。」
鼻高々にそう語るギーシュにルイズの批難の視線が飛ばされる。
「いいから早く助けなさいよっ!!姫様から預かった大切な指輪なのよ。」
そうこうしているとミントは霧の向こうから気配を感じて、軽い警戒態勢へと素早く移った。
次の瞬間、霧を切り裂き風の大砲の様な突風がルイズにのし掛かっていたヴェルダンデを吹き飛ばした。
「誰だっ!?」
杖を抜いて風が放たれた方へ油断無く構えたギーシュ。
程なくして、こちらにゆっくりと歩いて来ているのか朝霧の中に一人の人物のシルエットが浮かび上がってきた。
「済まない、婚約者が襲われていたのでな…あぁ、心配しなくて良い私は君達の任務の同行者…」
被っていた鍔の広い帽子を外してようやくはっきりと姿を見せた男にルイズの表情は驚きに染まり、ミントも目を丸くした。
そう、その男はミントが昨日見たルイズの視線の先に居たアンリエッタの護衛に付いていた貴族だった。
「魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ワルドだ。昨夜護衛として君達への随行を姫様から仰せつかった…よろしく頼む。」
ワルドと名乗った魔法衛士隊の制服を纏ったメイジは流れる様な動きで三人に向けて一礼する。
驚きに呆然としているルイズ…
「ルイズ、久しぶりだね僕のルイズ。」
ワルドはそんなルイズに駆け寄ると爽やかな笑顔でその身体を抱き上げて再会の喜びを表現する様にそのままクルリと一回転した。
「ワルド様…」
「ハハハッ、相変わらず君は羽の様に軽いな。さて、ルイズ彼等を紹介してくれたまえ。」
「あ、はい。クラスメートのギーシュと…使い魔のミントです。」
顔を赤くしたままルイズがワルドに二人を紹介するとワルドは途端に綻ばせていた表情を引き締めてミントの前に膝を突いた…
「アンリエッタ姫殿下から昨夜お話はお伺いしておりますミント殿下。何においてもあなたとルイズの御身は守り抜くようにと。」
「ふーん、婚約者とは道理で…ルイズもすみに置けないわね〜。よろしく、ワルド。それと別にそんな風に畏まらなくても良いわ、今あたしは唯のルイズの使い魔だからね。」
両手を広げ肩を窄める仕草をとってワルドに畏まった態度を崩す様にミントは促す…
ミントの居た世界から比べればハルケギニアの貴族達は少々こういった礼儀的な物にやはりこだわりがありすぎる気がする。
その後ギーシュとも挨拶を交わしたワルドが自分のグリフォンを呼び寄せ、ルイズと共にその背に跨がると一行はアルビオンへと向かう為港町ラ・ロシェールへと魔法学園を出発した。
「行ってしまいましたね…どうか彼等に始祖の加護があらん事を…あなたは祈らないのですか?」
学院長室の窓からその様子を見ていたアンリエッタが手を組み祈りを捧げる。
その隣で部屋の主オールドオスマンはのんきに鼻毛を抜いていた。
「見ての通りこの老いぼれは鼻毛を抜いておりますのでな……それに既に杖は振られておりますでの。
まして彼女は始祖の加護など無くとも自らの力だけで必ずやあらゆる苦難を乗り越えるでしょうからな。
土くれのフーケすら圧倒するメイジでありながらガンダー………ゲフンゲフン……全く、勇ましい王女です。」
そんなオスマンの言葉に思う所あってアンリエッタは再び強く祈りを捧げる…
(私にもミントさんの様な強さがあったなら…)
「ねえ、ちょっと飛ばしすぎじゃないかしら?ミントとギーシュが大分離れちゃってるわ。」
ワルドのグリフォンの前へ跨っているルイズが後ろを見やりそう言った。既にルイズは道中ワルドと雑談を交わすうちに口調は昔の親しかったものに戻っていた。
「ラ・ロシェールの港町まで止まらずに行きたいんだ。へばったなら先にいけば良い。行き先は分かっているからね。」
「そうだけど……ミントの護衛もあなたの任務でしょう?」
「それなのだがねルイズ、一目見て解ったが彼女はどうやら相当の実力者なのだろう?
それに君の話を聞けば随分と豪放な性格の様だし…トリステインじゃかなり珍しいが正直護衛などを煩わしく感じるタイプの人間なんじゃ無いかな?
そう君の母上カリーヌ殿の様に…」
ワルドのその言葉、特に母カリーヌの部分にルイズは一瞬呼吸が止まる。
「だが…確かに君の言う通りだな。僕は君との時間に少し浮かれていた様だ、少し戻るとしよう。」
そう言うとワルドはグリフォンの手綱を引いて来た道をゆっくりと引き返し始めた。
「あいつ等、人を置いていちゃつきながらどんどん先に行って〜…こっちのペースも考えろってのよ!!」
「日が落ちるまでにラ・ロシェールに着きたいのは解るけど流石に半日以上走りっぱなしだからね………僕も君のその意見には完全に同意だよ。」
切り立った崖に挟まれたラ・ロシェールへの街道を併走する二頭の馬のそれぞれの上でミントとギーシュが上空を飛ぶグリフォンを恨めしげに見つめて愚痴を漏らす。
「しかし…やはり君が王女だったなんて今でも信じられないよ。」
「へぇ?あたしが王女っぽく無いとでも?」
ギーシュの軽口にミントはじと目を送る。
「うっ…」
思わずミントのプレッシャーにギーシュは言葉に詰まってしまう…
が、ここでミントの背中に大人しく背負われていたデルフリンガーが鞘から勝手に飛び出してカチャカチャと鍔を鳴らした。
「当たり前だろうが、俺様だって昨日聞かされたときにゃ驚いたぜ!!どこの世界に相棒みたいなお姫さんが居るかってんだよ。なぁ、坊主お前もそう思うだろ?」
極小さくギーシュが頷いたのを見てミントは溜息混じりにこのお喋りなインテリジェンスソードに文句の一つでも言ってやろうとその柄に手を伸ばした…
「ったく、あんた達ねぇ…」
そこまで言った瞬間、突然ミントの目の前を一本の弓矢が掠めた。続いて幾つもの矢と松明が上空、崖の上から二人に目掛けて降り注いで来た。
「敵っ?」
ミントは素早く反応するとデルフで自分とギーシュに飛来する矢をたたき落として暴れる馬から飛び降り、崖の上を睨む…
ギーシュもどうやら驚いた馬に振り落とされた程度で怪我らしい怪我はしていない様で既に土を練金し即席の大盾を作り矢を凌いでいる。
「盗賊の類いだろう…これは中々不味い状態だね。どうするミント君?」
忌々しそうに言ってギーシュはミントへと視線を移す。
するとミントはデルフを鞘に収め、デュアルハーロウを握り口元を歪めていた…
ギーシュはミントが何をしようとしているのかを悟る…
「どうする?そんなの決まってるじゃ無い。あんな奴ら ボ コ ボ コ よっ!!」
(やっぱりか…)
ミントは崖へと走りながら素早く魔法を放つと魔力の結晶体が4つミントの周囲に浮遊する、そのままその結晶体はミントの周りを旋回する様に漂い始めた。
街道を挟む崖も決してルイズやタバサの胸の様な絶壁と言う訳では無い、足場となる傾斜と起伏は十分にある。
ガンダールブの力に加えてかつて伝説の怪炎竜ウィーラーフの住まうあの怒りの山を何度も踏破した事のあるミントにはこんな崖を登るなど大した事は無い。
問題となる盗賊の放つ弓矢もミントの周囲に展開された自動迎撃魔法サテライトから撃ち出されるバルカンの様な魔力の弾丸によって尽く打ち落とされ、ミントには届く事は無い。
そしてトントンと器用に足場に飛び移りながらミントは崖をあっという間に登っていく。
その最中、何故か上に居る盗賊達の悲鳴が聞こえてきた事にミントは疑問を抱いたが崖を上り切ってみればその理由はすぐに分かった。
「またあの二人か………随分暇人ね…」
風に吹き飛ばされ、炎に焼かれて満身創痍の盗賊達、そしてその上空にはやはりと言うべきか見慣れた青い一匹の風龍とその背にはタバサとキュルケが居た…
以上で第十四話終了です。
前のルシアンとミントの設定ですが上手い事ストーリーが統合されたトゥルーエンドと言う事にでもしといて下さい。
その辺変に固めるとガンガンボロが出そうなんでww
ではまたノシ
乙です。
>街道を挟む崖も決してルイズやタバサの胸の様な絶壁と言う訳では無い、
何気に酷いww
あと、久しぶりにこのスレを覗いたら名作RPGデュープリズムのクロス作品が読めるなんて!
これはガチで嬉しい。
乙!
腹黒ミントがイイね
投下乙!
たまたま視聴したDVDが面白かったので投下
サバイバルゲーム 魔法の世界でサバイバル
熊先生の使い魔
この番組は魔法界でのサバイバルに焦点を当てており
動物の殺される映像が含まれます
視聴に関しては公正な姿勢が望まれます
サバイバルゲームは極限の環境下での
サバイバルテクニックの手引きです
『撮影の順序は番組の流れと必ずしも一致しません』
ロケーション撮影はクルー及び番組ホストの健康面・安全面への
サポート体制を整えた上で行っています
キケンな地域を訪れる際は事前に専門家にご相談下さい
東京上空を飛ぶヘリの中で、ゴリラに似た男がカメラを前に会話していた。
「僕はベア・グリルス
世界の危険な場所に赴き生き残りに挑戦します
無事に生還する為には確かなサバイバル術が欠かせません」
そう、今から彼は異世界サバイバルに挑戦するのだ。
「今回の相手は魔法の世界
自然ではなく人間が作った危険地帯です」
そびえ立つゴーレム
「これが私のゴーレムよ!」
「潰されないよう避けることが大切です」
発狂するピンク
「あ、あんた誰よ!」
「凄くうるさくて怖くなる」
限界への挑戦
(ヒゲ面の男を押さえ付けながら)
「危機一髪でした」
そして爆破も
「耳を塞いで」
「エクスプロージョン!」
究極の挑戦になるでしょう。
『サバイバルゲーム 魔法の世界でサバイバル』
今から向かうのは魔法の世界、ハルケギニアです。
進入はアキバハラのワールドドアから
今回の目的地トリステイン魔法学院までJR秋葉原駅中央改札口より徒歩3分掛かります。
「東京のアキバハラへ向かっています。
今回は魔法の国でサバイバルに挑みます。新たな挑戦です」
魔法相手の生き残り術を人工物に応用する方法をお見せします。
(上空で待機するヘリの下、眼下にはアキバハラの人混み)
「これから僕が挑むのは、魔法世界に召喚されたスパイや兵士
突然召喚されるテロや災害の生存者達が直面するような困難です」
まずはワールドドアの前で触ろうか迷っている少年の前へ割り込んで侵入を試みます
緑色の幕があります、そこへ飛び移りましょう
幕に腕を突っ込むのがコツです
(日本人青年が幕へ触ろうとした瞬間、上空からヘイロー降下してポイントを確保するベア)
「どうにか飛び込めました。交渉に入ります」
(そして付いてくるカメラマン)
呆然とするピンク髪。
召喚したばかりの気の荒い異世界人は頑固ですが説得しやすいです。
(強引にキスをするベア、暴れるが一瞬で取り押さえられるピンク髪)
(光るルーン文字)
「やれやれ大変だな、これで寝場所を確保です」
「私の使い魔なんだから、勝手な行動は許さないんだから!」
現地住民の協力を仰ぐのは重要です。
現地の政治、宗教、生活習慣には気をつけましょう。
「ここまで来ればひとまず安心です。一難去ってまた一難、本番はこれからです」
(編集されカットされるピンク髪の会話、場面は広場へ)
次は魔法使いを倒す方法を探します。
「問題は青銅ゴーレムです。数が居て人間よりも頑丈なんです」
(金髪の青年が呪文を唱えると戦乙女の姿をしたゴーレムがベアを取り囲む)
術者本人へ対する投擲攻撃や説得が使えるかもしれません。
「決闘だ!だが君が頭を下げて許しをこうなら許してやらないでもない」
「意外に彼は話のわかる人間です」
「その前にやりすぎないよう気をつけましょう。周囲に警戒されるだけです」
身の回りにあるあらゆるものは武器となりえます
「でも攻撃に失敗したら青銅ゴーレムの拳が体に激突します」
全身の骨が砕かれる可能性があります。
「よし、行こう」
(目潰しを喰らって動けない間にベアに接近され簀巻きにされる金髪青年)
やりました、次はスタッフの番です
「いいぞ、こっちだ、どうにかやったな」
「此処は紛れもなく人間が作った環境です。
でも生存に必要なのは、安全確保、救助、それに水と食糧
何処にいても同じです」
「宝物庫へ行ってみます」
異世界で災害にあった場合、救助が来るまでの数年〜数十年間は
物資調達の知識が役立ちます。
物が残っていそうな隣の建物に屋上から進入しましょう。
異世界の宝物庫には現代世界の道具がある高い可能性があります。
「使い魔用の納屋に家畜捕獲用のロープがありました」
一本の太さは1.5センチほどです。
5本束ねれば登山用ロープ並みの強度でしょう。
「これを伝ってあっちへ渡ります」
高さに動揺してはいけません。これは登山家がクレバスや峡谷を登る方法です
実用的ですが、かなり体力が必要です
「体重を腕と足に分散するのがコツです。平静を保って…体力を温存しよう」
藁でできたロープは登山用ワイヤーより摩擦があります
「あと少し!」
最もつらいのは終盤
疲労とケーブルのたるみが動きを鈍らせます
最期の難所は建物の縁、まるで崖の”オーバーハング”です。
「渡りきりました。次は君の番だ」
(偶然宝物庫を覗きに来ていた図書館司書、ロープを渡され激しく動揺)
(しかし大人しくロープを貰い登り始める)
「来いよ」
次は現地ガイド、フーケさんの番です。
ベテランの盗賊でも此処を渡りきるのは至難の技です。
「腕を縁に乗せて……よし、やったね」
(すごくいい表情をするベア、釣られて笑うフーケ)
「屋上から進入しよう」
魔法世界の建物は自然と同様に手ごわいです。
つまり、無事に生還する為には
平常心、自信、計画性、安全かつ臨機応変な行動が必要です。
「古い換気ダクトです。建物に入るのに使えます」
「こんな手があるなんて想像もしなかったわ、正面から結界破壊しかないと思ってばかり…」
屋上から建物に入る手段はこの通風孔だけです。
「錆びた部分なら壊せそうです」
長年放置されていたダクトはかなり劣化しています
「完全にさび付いています。足元が不安定だし、高所なので危険です」
しかし内部に入れるなら試す価値はあります
「通れそうですね、でも中は真っ暗です。たいまつが必要です、よし作ろう」
「魔法を使えばいいじゃない」
「魔法を使うと警報機に探知されてしまうんだ」
たいまつの材料探しには場違いにも思えますが、よくみればあるものです
「ルーフリングフェルトです、これは使えます」
これは繊維にタールをしみこませ防水加工した物です
ゆっくり燃えるのでたいまつに最適です
(ハルケギニアには消防法はありません)
未知の洞窟を探検する気分です
「酷い臭いですね、かび臭い、けむい」
(たいまつの煙にむせる現地ガイド)
空気は悪いですが酸素は十分あるようです
「湿気があります。足元が錆びてないか注意して、地雷原を歩く気分です」
「何時床が抜け落ちるかわからないので慎重に進まねばなりません
一歩ずつ確かめながら足に体重をかけるんです」
「先に行くわ」
(ダクトを転げ落ちるフーケ、消えるたいまつ、絹を裂くような悲鳴)
「こういうことを乗り切るコツは、平常心を保ちパニックにならないことです」
「パニックになると腹腔が広がるので、狭い場所がもっと狭くなる」
(落ち着きを取り戻すも目に涙が溜まっている怪盗フーケ)
「よし、前進しよう」
建物の最上階へ出ました。
「よし、手を貸そう」
「抜け出せて嬉しいですね」
(ベアと手と手が触れ合い赤くなる現地ガイド)
「行きましょう」
異世界災害にあったら、生きる為の必需品を探さねばなりません。
医療品、即席食品や缶詰、飲み水、照明や電源などです。
「薬箱がありました」
「変な物盗むわね、私は破壊の杖を」
こういった廃墟はまさに”宝の山”です。
(宝物庫を漁る二人、RPG7を手に取るフーケ)
「コルト・ディテクティブスペシャルですね、これは整備が簡単で役に立ちます」
(カメラに説明するベア)
さて、次回のサバイバルゲームは独房脱出、要塞潜入、対7万人の軍勢相手に
サバイバルする方法をご教授します
お楽しみに
思いつきの一発ネタで書いた
そうか
乙でしたー
深夜の通販を見ているようだった
ベアさんおつw元SASだから戦闘面でも問題ないな
乙でした!
ただ、貴重なタンパク源は……・?
やっぱ虫を食わないとね!
やっぱベアさんはゲテモノ食いが基本か
でもこの世界だと何食べればいいか思いつかなかった
モグラやサラマンダー食べさせようにもベアさんは常にその上をいく
ネタになりそうなのは自生してるハシバミ草あたりか
オークやミノタウロスは食えそうな気がする。
乙です。
ベアさん早く虫を食べる作業に戻るんだw
>337
59種類の栄養素が豊富に含まれる使い魔ですね。
どこぞのハーフエルフがミノタウロスのミノ・タン・ロースを…
虫を食べると聞いて
みみずのカラメルソース
ゴキブリとネギのサラダ
ハエのプティング
をどうぞ
材料集めるのが命懸けだがな
>>342 歴代のリュウのうち、あれほどひどい目にあったのはないだろ
ニーナにさえ避けられたからな…
あ、ワルドさん、一口いかが?
ワルドさんの扱いに困るなあ……
実力的にはワルドに圧勝できるんだけど、そうすると話が進まない。
たまにはワルドが勝つSSがよみたいよ
ヤムチャが敵を倒すようなものだぞ
そこで話終わっちゃうだろw
攫われたヒロインを助け出すのは物語の王道なので、死ななきゃどうにかなるかな?
まあ、それ以降は原作の流れを無視しなきゃならんし、リベンジのために何かしらのパワーアップをさせる必要はあるだろうけど。
ジョジョ行ってワルド無双のアヌビス神でも読んでくるしか
ワルドが勝ったら、バッドエンドルート一直線の転落し続ける世界を楽しむ作品になってしまうのではないかと。
350 :
一尉:2012/03/29(木) 22:13:33.26 ID:yBb4FzBt
月島仁兵衛を召喚にする加賀
別にワルドいなくてもウェールズは死ぬだろうし、ちょっといじればワルドなしで問題なくね?
タルブ上空でゼロ戦を追い詰めるのは腕利きの竜騎士でいいし、その後のワルドはずっと裏方でルイズとは会わない
テンプレがなきゃ書けないならともかくな
理不尽な異世界出身ガンダールブに対抗するために必死に頑張るワルド
シュー……
「何かしらこれ?緑色で四角くてブツブt」
ドカーン
『あなたは死んでしまった』
「……え?何で私ベッドで寝てるの?使い魔は?」
すっかりマイクラといえば匠ってイメージに
いや、他に呼んでネタになりそうなものも居ないけど。
マイクラは「ルイズが●●に召喚されました」スレ向きだよね
……
「あれから召喚できた骸骨やら死体やらは日光に当たった途端に燃え出して死んじゃったけど、今度のは大丈夫みたいね。とりあえずこの真っ黒なやつを使い魔にするわ」
「ふむ、今度のは大人しい使い魔みたいですね。ミス・ヴァリエール、ちゃんと相手の顔を見て契約をしt」
ゴスッ
『あなたは死んでしまった』
「……目を合わせた瞬間になにか衝撃がきて意識が無くなったけど、なんでまたベッドで寝てるのかしら?」
一発ネタのつもりだったが色々とアイディア沸いてきた
久しぶりに書いてみよう
ワルドが勝つ展開だとオリ展開で物語も短く出来そうだな
こんにちは。ご予約がなければ14:42頃から投下しますがよろしいですか?
よろしいですよ
Mission 22 <平和への帰還>
七人の人間を背に乗せ、ジャイアントモールのヴェルダンデを口に咥えたままシルフィードは緩やかに空を飛び続けていた
アルビオン大陸からトリステイン領内までは風に乗り、空を自然に滑空していくだけで到達できるが、そこから先はシルフィードも羽ばたいて自力で飛ばなければならない。
これだけの数の人間を一度に乗せて飛び続けるのはさすがに辛いらしく、『きゅい……重くて疲れるのね……』などとぼやいているのをスパーダは耳にしていた。
だが、それでも何とかがんばったシルフィードは昼近くには一行を王都トリスタニアまで運ぶことができていた。
「待て。ここで一度降りろ」
飛んでいる道中、ずっと黙っていたスパーダが口を開き、タバサに命ずるとトリスタニア中央広場の上空まで差し掛かった所でシルフィードを停止させた。
シルフィードが着陸すると、スパーダはロングビル、そしてティファニアの二人を連れて降りていく。
広場にいた市民達は突然にして現れた風竜の姿に驚いている様子だ。
「ちょっと、どこへ行くの」
ルイズもシルフィードから降りると、不満そうにスパーダに向かって食ってかかった。
「王女への報告は君達だけで向かえ」
「何を言ってるのよ。あなたも一緒に行くの!」
「私は彼女の世話をせねばならん。報告ならば君だけでも行えるだろう。風のルビーと例の手紙とやらも君が渡してやれ」
スパーダがティファニアの肩に手を置きつつ答える。
ティファニアはスパーダをちらりと横目で見上げながら、少し怯えたような視線を向けていた。
隣に立つロングビルも微かに眉を顰めてスパーダを見つめている。
「第一彼女を今、王女に会わせるわけにはいかん」
「う〜〜〜……」
このティファニアという少女、ウェールズ皇太子の従妹だということらしい。つまりはアンリエッタ王女とも親戚ということになる。
アルビオンの王家が潰えてしまった今、恐らくただ一人残った王家の血筋である人間の存在が今の状況で明るみに出れば思わぬ混乱を招いてしまうかもしれない。
……やはり、彼女はスパーダとロングビルに任せるしかないようだ。
「わ、分かったわよ。その代わり、後で色々話してもらうん……だから……」
少々強気に返そうとしたものの、あの時目にしてしまったスパーダの恐ろしい姿を思い浮かべ、その勢いが萎えてしまう。
第一、スパーダは自分が人間ではない事実を晒したというのにどうしてこうも平然としていられるのだろう。
「魔法学院でまた会おう」
頷いたスパーダはシルフィードに乗ったままこちらを見つめている他の三人の方を振り向きだす。
「……話が聞きたければ、今夜ミス・ヴァリエールの部屋へ来い」
そう言い、スパーダはロングビルとティファニアを引き連れてチクトンネ街の方へ向かって歩き出していた。
三人の後ろ姿が見えなくなるまで見届けたルイズは再びシルフィードに乗り込んでいく。
「ねえ、ルイズ。あの子は一体誰なの? それにどうしてダーリンが、ミス・ロングビルと一緒に?」
「う〜ん。見るからに美しい女性だったなぁ……。フードの隙間から覗けていた緩やかな金髪……妖精か女神のように愛らしく……」
「あら、また悪い癖ね。モンモランシーに言い付けようかしら」
「そ、それだけはやめてくれたまえよ!」
キュルケとギーシュが軽く漫才をする中、再びシルフィードは空へと舞い上がっていく。
三人が降りた分、先ほどよりは軽やかな動きで飛び上がっていた。
(何でよ……どうして、また一人で……)
またしてもパートナーと離れ離れになってしまったため、ルイズは哀しそうな表情を浮かべながら俯いていた。
「ねえ、一体どこへ行く気なの?」
まだ人通りが疎らなチクトンネ街へと訪れていたスパーダに着いていくロングビルがたまらずスパーダに尋ねた。
ティファニアは早く安全な所へやらなければならないというのに、こんな所をウロウロするわけにはいかないのだ。
初めてやってきた町の中を、ティファニアは物珍しそうにきょろきょろと見回している。
「この町に知り合いがいてな。今後のことについて相談に乗ってもらう。……ここだ」
スパーダが立ち止まったのは、まだ開店前である宿屋の前だった。
以前、スパーダが寄ったこともある魅惑の妖精亭≠ニいう店だ。
「な、何よここ……。なっ!」
「あぁら、ごめんなさい! まだ開店前なのよぉ」
入り口でロングビルが呆気に取られていると、店の中から体をくねらせながら現れたスカロンに驚き、退いていた。同様にティファニアもびくつく。
時間を間違えて訪れた客かと思って出てきたスカロンは、スパーダの姿を目にすると驚いた顔を浮かべる。
「あら、スパーダ君じゃないの!」
「しばらくだな」
「今日はまたずいぶんとイメージチェンジしたわねぇ。その髪型も似合ってるわよん」
スパーダはその指摘を受けて今になって前髪が垂れたままであることに気がついた。
「それにこんなに綺麗な女の人まで連れて! スパーダ君の恋人かしらん?」
隣に立つロングビルを見て茶化すように言うスカロン。
ロングビルは、その言葉に反応して顔を強張らせていた。
この23年の人生の中、男と関わって良いことなんて何一つなかった。今は正当な職場である魔法学院ではエロジジイにセクハラをされるわ、
あのワルドは大切な孤児達を皆殺しにし、あまつさえティファニアを人質に取った悪魔に等しい男だったのだ。
……男なんて、信用できない。
だが、思えばこのスパーダという男はロングビルにとってようやく出会えたまともな男のようにも感じられる。
初めは異国の没落貴族らしい、ということでどことなく親近感を抱いていた。つっけんどんではあるが自分をかたぎの道へと進めてくれたし、
こうして唯一自分に残された大切な身内を救い出してもくれた。
彼には色々と貸しがあるのだ。そして、いつかはその恩に報いる必要がある。
……たとえ彼が、人でないとしてもだ。
ロングビルはスカロンの言葉を否定もせずに黙り込み、ちらりとスパーダを横目で見つめだす。
だが、当のスパーダはと言うと、
「そんなことはどうでもいい。それより、少し時間があるか? 話がある」
あまりに素っ気無い答えを返したため、複雑そうに溜め息を吐いていた。
スカロンは一行を店の中へと招き、さらにスパーダからの指示で入り口や窓も全て閉め切っていた。
外からの光が閉ざされ蝋燭の明かりが灯されると、一行は誰も客のいない席について向かい合った。
スパーダはスカロンとその娘であるジェシカにティファニアがアルビオンの亡き大公と妾の間に生まれた庶子であること、
ロングビルが彼女をこれまで保護してくれていたこと、そしてアルビオンの貴族達に囚われていたのを救い出したことを話した。
「あらぁ、この子がね……。つまり、お姫様ということね。とっても可愛いわねぇ。妖精さんみたい!」
スカロンはスパーダの隣の席で両膝に手をついたまま俯くティファニアを見つめる。
「っていか、アルビオンって内戦中なんでしょう? そんな危ない所へよく行けたわね」
ジェシカが顎杖をつきながら呆れたように声を上げていた。
「そういった場所が私の仕事場なのでな」
アルビオンへ訪れたのはロングビルの依頼を受けただけだからということにし、王女からの密命であったことは伏せておいた。
「で、そのお姫様がアルビオンの悪い人達に捕まってたのを、スパーダ君が助けたのね。本当、あたしも感激しちゃう!
囚われのお姫様を助け出すだなんて、まるでおとぎ話の勇者みたいだわ!」
両手を合わせて酔ったように盛り上がるスカロンに対し、スパーダは腕を組んだまま話を続ける。
「助け出したのはいいが、彼女は人前には出すことができん身でな」
ちらりと、ティファニアを見やるスパーダ。
無言のまま視線を向けてくるスパーダに、ティファニアは困惑していた。
「ちょっと、この子のことを全部話すつもり!?」
ロングビルはスパーダが何をしようとしているのかその意図に気づいて声を上げた。
彼はこの二人に、ティファニアがハーフエルフであることを語る気なのだ。
ハルケギニアに住まうほとんどの人間は如何にハーフと言えどエルフを恐れ、敵視しているのだ。
もしもこの二人にそのことを誰かに喋られでもすればティファニアは教会や王侯貴族に告発され、処刑されるに違いない。
「あぁら、大丈夫よ。あたし達はお客様のことについては全然気にしたりしないわ。あたし達の仕事は常に広い心を持つことが基本なんですもの。
その子にどんな事情があったって、あたし達は何にも何にも見ていないし、聞いていない」
やはり、スカロンに相談をしてみて正解だったようだ。このような人間がいてくれるからこそ、スパーダはこうして彼を頼りにできたのである。
ロングビルは未だいかがわしそうにスカロンを見つめていたが、そのスカロンと娘のジェシカはティファニアの顔を覗き込んできた。
「お姫様。そんなに怖がらなくても良いのよ。あたし達は、あなたの味方だから」
「そうそう。……大体、あたしの曾お爺さんだって純粋な人間じゃなかったってママから聞かされてたんだから。全然、気にしないわ」
ジェシカが平然と口にしたその言葉に、スパーダは顔を顰める。
「ブラッドのことを知っているのか」
「あらまぁ、スパーダ君もその人の話を知っているの? もしかして、シエちゃんから聞いたのかしら」
スカロンが意外そうに目を丸くし、問いただす。
「そのようなものだ」
しかし、この二人がブラッドの話をしっかりと聞き及んでいたとは。さすがにブラッドが悪魔であることまでは知らないだろうが、
ジェシカの言葉通り、純粋な人間でないことまで理解しているとは。
シエスタでさえブラッドは魔法のような力を使える人だったという所までしか認識していなかったのに。
「たとえ亜人だろうが悪魔だろうが、そんな些細ことは関係ないの。温かい人としての心があれば、誰だって受け入れられるわ。そうでしょ?」
スカロンから同意を求められ、スパーダも無言で頷かざるを得ない。
見た目こそ風変わりかもしれないが、このスカロンは人間としてとても出来上がっているようだ。
ならば態々、ティファニアがハーフエルフであることを話す必要もあるまい。
ティファニアは初め、何もかもが不安で仕方がなかった。
初めて目にする外の世界は全てが活気に溢れており、閉鎖的な環境だったウェストウッドの村には無かったあらゆるものが彼女を惹きつけていた。
だが、同時にその活気に満ちた世界に出るのは不安でもあった。
自分は今まで、村の孤児達や姉代わりであるマチルダ以外の人間と接したことがほとんどない。
故に普通に町を歩き回る人達と出会うとどうしても怖くなってしまうのだ。
おまけに自分は、エルフの血を引いているのだ。その証でもあるこの耳を見られでもしたら、きっとみんな自分を恐れ、拒絶するに違いない。
(どうして、この人達は怖がらないんだろう……)
自身に宿るエルフの血、そして自分がその血を引いていることを知られる恐怖。
それに対し、スパーダは人間ではないし、前にいるこの二人の親族も純粋な人間ではない。
……何故、それを知られても怖くないのだろう。そして、どうしてこうも自然に受け入れられるのだろう。
ティファニアにとってはそれが不思議な光景に見えていた。
「……そこで、だ。トリステインで亜人でも身を隠せるような場所は無いか」
「ああ、それだったら良い所があるわよ。このトリスタニアにある修道院、あそこだったらどんな事情があろうと受け入れてくれるわ」
ジェシカがしたり顔でそう述べると、スパーダも頷くとちらりと横目でロングビルとティファニアを見やった。
「ミス・ロングビル、ティファニア。構わないか」
「あ……は、はい。わたしは別に大丈夫です」
「それが常套手段でしょうね……」
少し躊躇いつつもティファニアは了承し、ロングビルも小さく溜め息を吐きつつ同意していた。
「もちろん、あたし達のことをいつだって頼っても良いんだからね? 困ったことがあったなら、いつでもいらっしゃいな。お姫様」
と、言いながらスカロンはウフン、とウインクをしてきた。
ロングビルは肩眉を吊り上げ、顔を引き攣らせる。
反面、ティファニアはこのトリステインを訪れてから、初めての安堵の笑みを小さく浮かべていた。
スパーダとロングビルは魅惑の妖精亭を後にするとジェシカに紹介された修道院とやらを訪れた。
院長と対面してロングビルと共にティファニアの素性をある程度伝えると、ここで匿ってもらうように頼み込む。
話は滞りなくすんなりと進み、院長はティファニアがハーフエルフであることを知っても拒絶せずに快く受け入れてくれた。
ひとまず、これで一段落が済んだことになる。定期的に姉代わりであるロングビルがここへ来ればティファニアも安心することだろう。
それにスカロンやジェシカも協力してくれるため、当分は大丈夫だろう。
修道院を後にする際、ロングビルは再び離れ離れになるティファニアとの別れを惜しみ、寂しげに彼女を抱き締めていた。
ティファニアもまた、姉であるロングビルとの別れに涙を浮かべていたが、それでも気丈に一時の別れを耐え忍んでいた。
「あの……スパーダさん」
ティファニアはスパーダにも別れの挨拶を交わしてきた。
「本当に、ありがとうございます。スパーダさんには、色々お世話になってしまって。それと……」
まだスパーダのことを怖がっている様子だったが、勇気を振り絞って顔を上げ、真っ直ぐとスパーダの顔を見上げてきた。
そこには今までの怯えた表情は失せた、妖精のように麗しい顔が浮かんでいる。
「わたし、もうスパーダさんのことは怖くありません。スパーダさんは、わたしやマチルダ姉さんや色々な人のために、ああして戦ってくれたのですよね?」
嬉しそうな笑顔を浮かべるティファニアに、スパーダは無言のままその顔を見返す。
幽閉されていた屋敷や礼拝堂で見届けてきたスパーダの勇ましい姿は、ティファニアの心に深く焼き付けられていた。
あの姿を思い浮かべるだけでも、ティファニアの心からスパーダに対する恐怖は自然と薄れていくのだ。
それに自分のためにここまで親身になって世話をしてくれた男の人は、初めてだ。
ティファニアにはスパーダがまるで父親のように頼もしく見えていた。
たとえスパーダが人間でなくても、それは変わらない。
「だから、スパーダさんが人間でなくてもそんなこともう気にしません。スパーダさんだって、わたしのことを拒まずにここまでしてくれたんですから」
スパーダはフードを被ったままのティファニアの頭をそっと撫でる。
その様子をロングビルは肩を竦めたまま小さく嘆息を吐いていた。
スパーダ自身は何も別れの言葉を返さなかった。だが、言葉を交わさずともスパーダが別れの挨拶を交わしてくれていたことにティファニアは気づいていた。
ティファニアは父親のような包容力を持っていた男の背中を見えなくなるまで見送っていた。
名城と謳われたニューカッスル城は今や廃墟と化していた。反乱軍レコン・キスタが大挙して攻め込んだ結果である。
三百足らずの王軍は五万もの大軍であるレコン・キスタからの攻撃に対して徹底抗戦はしたものの、数時間と経たずに全滅させられた。
しかし、追い詰められていた王軍の士気そのものは異常に高く、そのままならばレコン・キスタ側に対しても甚大な被害を出していたかもしれない。
ところがそれは適わなかった。むしろ被害は少なかったと言える。怪我人こそ千にも登る数ではあったものの、死者はその半分程度であった。
それだけの被害が少なかった理由は、レコン・キスタが投入した異形の怪物達の存在である。
オークやトロールのような獰猛な亜人達も戦闘に参加はしていたものの、彼ら以上に王軍を徹底的に嬲り殺しにしたのはその未知なる異形達の働きがあってこそのものだった。
獰猛な亜人以上に残忍で血に飢えた殺戮者達に王軍はほとんど成す術もなく返り討ちにされたのである。
そして、その異形達は戦闘が終わると用が済んだように戦場から消えていくのだ。
いずれにせよ、アルビオン王家がこの世界から消滅した現在、レコン・キスタはアルビオンの正式な政府となったのである。
「せっかく、あの方より授かった力を与えてやったというのに……」
死体と瓦礫が散乱する戦場の跡、廃墟となった城の上を闊歩する一人の男が居た。
冴えない聖職者にしか見えない三十代半ばの男は、レコン・キスタの総司令官であり、今や皇帝となりアルビオンの支配者となったオリバー・クロムウェルその人である。
崩れ落ちた礼拝堂の跡には無数の死体が瓦礫の下から掘り出された。
その中にはトリステインの貴族にして、盟約によってレコン・キスタの一員となった男、ワルド子爵もいる。
彼は首の骨を折られ、左腕を肩から全て失った無残な姿となって発見された。
彼には王家の生き残りであるウェールズを始末するように命じていたが、彼は仕損じ、結果的にウェールズは前線に立ち、兵士達と戦い続けたのだ。
帰天≠ニいう秘術によって人を超えたというのに、結局はこうして無残な結末を迎えた。哀れなものである。
「ウェールズの死体の行方も知れず……手紙も回収できず。これではこちらの目的も果たせぬではないか……!」
国王ジェームズの死体は発見されたが、ウェールズ皇太子の死体だけは未だ発見されていなかった。
部下達の報告によれば手傷は負わせたはずなので無事な状態でいるはずはない、ということらしい。どこかに潜んでいようが絶対に見つけ出してみせる。
保険として彼の流した血は回収しているが、やはり本人を亡き者にして利用せねばなるまい。
クロムウェルは自分の左手の中指にはめられた指輪を見つめる。
少々予定とは異なるが、経過そのものは順調だ。
あの方が兵とこの力を与えてくれねば、ここまで順調に計画は進まなかったことだろう。
一介の司教に過ぎなかった自分が、今となってはアルビオンの頂点に立った。これだけでも満足であるが、やはり更なる高みを目指すのが常だ。
自分には強力な支援者がいるのだ。不可能なはずがない。
今後の計画を推し進めるため、もはや用の無くなった廃墟を後にしようと歩を進めだすクロムウェル。
そのクロムウェルの進路を塞ぐようにして、突如何も無い虚空に亀裂が走り出した。ビシビシと音を立てながら亀裂は徐々に数を増やし、広がっていく。
クロムウェルが足を止めると、バリン! とガラスを破るような音と共に空間に人ひとりが潜り抜けられるほどの穴が開けられていた。
その穴の向こう側からは、思わず吐き気が込み上げてきそうな禍々しい瘴気が溢れ出てくる。
穴の先に広がるのは、闇。そう、漆黒の闇である。
その闇の中からは獰猛な亜人達よりも恐ろしい、地の底から響くような唸り声が轟いていた。
『――首尾はどうなっている。人間よ』
その穴の中からさらに響き渡るのは、威厳と威圧に満ちた恐ろしい声だった。声が発せられると、辺りの空気が震えだす。
クロムウェルは恭しく跪き、声の主に報告を行う。
『そんなものは捨て置け。どの道、更なる戦が始まることに変わりはない』
手紙とウェールズ皇太子の死体を回収できなかったことも報告したが、声の主は大して気にも留めていないようだった。
「ですがゲルマニアとトリステインが同盟を組めば、その兵力は六万にもなります。あなた様が我らにお与えくだされた兵力を合わせても一万。
それでは拮抗した戦いになるかと……」
クロムウェルが心配していたことを口にすると、穴の中に赤く光る目が開かれた。その凶暴な目が、真っ直ぐとクロムウェルを睨み付け、威圧してくる。
『愚か者が。戦いとは力と力のぶつかり合いだ。真の勝利とは、力で?ぎ取ることに意味がある。貴様が王になりたいなどと抜かしたからこそ、我が知識と軍勢を与えてやったのだ』
「ははっ……偉大なる羅王≠諱Bあなたには感謝しております。あなた様のおかげで、私はこうしてアルビオンの支配者となれたのでございます」
それは、もう三年も前になるだろうか。
当時はただの司教でしかなかったクロムウェルがいつものように仕事を終えて眠りに就いていた時、夢の中で託宣があったのは。
――貴様の常日頃の働きを我は見届けている。その働きの礼として、望むものを一つ与えよう。
――望むもの? そうだな。それならば王になってみたいものだ。
無論、それは全てが夢であることを知った上での戯れの言葉に過ぎなかった。
いかに司教と言えど、そんな夢のような託宣をいきなり真面目に信じるほど馬鹿ではなかった。
だが、託宣の主はそんなクロムウェルの思いとは裏腹にその戯れの言葉にこう返してきた。
――良かろう。我が知識と兵の一部を貴様に授けん。その力を持って、貴様の望む王となるが良い。
その翌日の朝、目を覚ましたクロムウェルはいつにもまして充実した気分となっていた。
自分が知るはずのない未知の秘術を使えるようになったし、見たこともない異形達が自分の元に現れるなりラグドリアン湖まで連れられ、水の精霊からこのアンドバリの指輪を奪うことにもなった。
一介の司教に過ぎなかった自分が、僅かな時間で素晴らしい力と地位を手にすることができた。
それからほとんど毎日、夢の中はおろか時々こうして託宣の主が直接現れ、自分が王になるための様々な助言を授けてくれたのだ。
その託宣の主は、自らを羅王≠ニ名乗っていた。
『いいか。次の日食までに更なる争いの火種を蒔け。その時に、我らの世界と貴様らの世界との境界は一時的に薄まる。
さすれば我は貴様らの世界に降臨し、我が率いる全ての軍勢もそちらへ送り込むこともできよう』
羅王の言葉が終わらぬ内に、空間に開けられていた穴は徐々に閉ざされていく。
『無論、全てを成した暁には貴様にも最高の褒美を授けてやる。そのためにも、我の命にはこれまで通り従うがいい』
虚空に開けられた穴が閉じるなり、流れ込んできた瘴気は跡形もなく消え失せていた。
クロムウェルは始祖ブリミルにも勝るであろう、偉大なる羅王≠フ思し召しに心から敬意を示し、跪き続けていた。
※今回はこれで終わりになります。
ムンドゥスは魔帝、アルゴサクスは覇王と名がありますがもう一体はそういったものが無かったので付けることにしました。
おつ
>>352 ワルドサイドの努力ものか、しかしパワーアップったって元素の兄弟化した改造人間になるくらいしかないだろ
義手をロケットパンチできるようになればキャラは立つかな
ワルド「僕は悪ドではない。良いドだ」
こうか
ぷるぷる ぼくわるいワルドじゃないよ
ワルドvsワルプルギスの夜
金曜ロードショーがカリ城だな
ルパン「あぁ…なんてことだ、女の子は悪いエルフの力は信じても、泥棒の力は信じなかった。
女の子が信じてくれれば、ラグドリアン湖の水を飲み干すことも、シャイターンの門を閉じることだってできるのに」
タバサ「話が大げさすぎ…無理、逃げて」
カリ城のルパンならタバサはちょろそうだな
ルパンでふと思ったが、フーケの正体が不二子でしたなんてヤツも読んでみたいねぇ
ルパン…アルセーヌルパン…アンリエット様を召喚しようぜ!
>>376 「盗みは力ではなく美しさと知恵で勝負するべき」
「盗みの際にむやみに人を傷つけるのは恥」
という美学がある人だから、フーケさんに説教しそうだな
しかしミルキィホームズが居ない世界では張り合い無いだろうな
つまり、初代と三代目とオペラなルパンが呼ばれる、と
ファントムシーフ・ルパン……スクールガール・ミーナとトレードしたっけな
悪魔城ドラキュラシリーズのキャラの召喚ものが読んでみたい……とふと思った
でもあんまり適したキャラ居ないかな?
ベルモンド一族は魔物と戦ってナンボだけどゼロ魔のバトル相手って人間が多いし
>>380 ドラキュラXからマリア・ラーネッドくらいかな?
性能がチートだけど性格がアレだから蹂躙にはならんだろうw
アルカードもドラキュラやその配下が関わらないなら表舞台には出てきそうにないし、人間相手に斬った張ったもやらなそうだし。
30分過ぎから投下予定
「これが契約の刻印なのかな?」
アセルスが左手の甲にできたルーンをルイズに見せるものの、彼女の耳に届いていなかった。
契約が無事結ばれた事をコルベールが告げ、見たことのないルーンということで簡単にメモを取る。
コルベールの写生が取り終わった頃、ルイズはようやく現実に帰ってきた。
「あ、あ、あんた一体何をするのよ!!」
現実に戻ると同時に赤面した顔でアセルスを睨みつける。
「キスしてきたのはそっちでしょう?」
「あれは契約の儀式よ!し、舌まで入れてきて……!!」
契約を終えた安堵感からか、ルイズの口調がいつもの調子に戻る。
ファーストキスだったのにとか、いや人間相手じゃないならノーカンよねなど一人でブツブツ呟いていた。
「まあまあミス・ヴァリエール。
契約も済んだ事ですし、教室に戻りますよ」
妖魔が呼び出された上に怪我人も出すハプニングはあったが、契約は無事結ばれた。
契約のルーンが結ばれた以上は、主人に危害を加える事はまずないだろう。
その事に安堵し、生徒に教室に戻るよう指示を出す。
普段なら悪口の一つでもかけるクラスメイト達も、妖魔に関わるまいと足早にフライで飛び立つ。
広場から立ち去る時にアセルスに振り返ったのは二人の少女。
一人は背が低く、無表情で氷のように透き通った青髪をショートヘアーにしている。
もう一人は燃え盛る炎のように赤い長髪をなびかせ、胸元を大きく開いた色香を振りまくような褐色肌。
それぞれ思うことがありながらも、彼女たちも空へ飛び立っていった。
ルイズは系統魔法はおろか、簡単なコモンであるフライも使うことができない。
なので学院へは歩いて戻る。
「どこへ向かうの?」
「トリステイン魔法学院よ、私達はそこで魔法を学んでいるの」
学院を知らないのかと思ったが、妖魔ならば仕方ないのだろうとルイズは納得する。
アセルスも魔法学院と言う言葉に聞き覚えはない。
代わりに思い当たったのはかつて共に旅を共にしたルージュ。
彼がマジックキングダムのリージョン出身だと思い出し、学院も似たものだろうと勝手に推測した。
辺りはまだ夕暮れだが、月が朧気に見える。
アセルスが月を見上げている事に気が付いたルイズが訪ねる。
「どうしたの?」
「ここは月が二つあるんだね」
ルイズにはその言葉の意味がわからない。
「月は二つあるものでしょう?」
「私の居たところだと一つしかなかったから」
考えてみれば妖魔だと言うこと、それとアセルスと言う名前。
彼女の事はそれしか知らない。
そこでルイズは学院に戻るまでの道中、様々な質問をしてみる事にした。
「月が一つしかないって、どんなところから来たのよ?」
「針の城。ファシナトゥールと呼ばれる場所にある」
針の城、ファシナトゥール。
どちらにもルイズは聞き覚えがない。
「そんな所、聞いたことないわ」
「妖魔の支配地域だし、普通の人間が来る事すらないからね」
ハルケギニア大陸から東にはエルフのいる地区があるものの、人が近づくことはない。
妖魔の支配地域もそれと同じようなものだと納得したが、城と聞いてルイズはふと疑問が浮かぶ。
「城にいたって事は宮廷に仕えていたの?」
妖魔が城を持つというのも初耳だったが、自らも公爵の三女という立場がある。
なので、彼女がどのような階級だったのか気になった。
「いいえ、城の支配者は私よ」
支配者、その意味をゆっくり反芻させてようやくルイズは青ざめる。
「じ、女王なの!?」
驚きのあまりルイズの声がひっくり返る。
「気にする必要はないよ」
アセルスにはジーナも白薔薇もいない今、針の城に戻る気は微塵もない。
「で、でも……」
「私が望んで君と契約しているんだ、文句は言わせない」
ルイズ自身は、あまりの衝撃にまともな思考ができない。
改めてアセルスの姿を良く見る。
ルイズは実家が公爵という立場上、王族との懇親会などに参加していた。
アンリエッタ王女と親友のように遊んでいたのはいい思い出だ。
話が逸れたので元に戻す。
故にルイズは目利きというほどでもないが、衣服や装飾品の材質程度なら見極める事はできた。
服はかなり上質な布地である上に装飾もきめ細かく、金や貴金属で彩られている。
平民どころか並大抵の貴族すら用意できる服ではない。
身に付けている装飾品も社交界で見た物に勝るとも劣らない。
妖魔が城を持つのは初耳だったが、堂に入る気品に満ちた態度は王族と言われても説得力はあった。
妖魔とはいえ、王族を呼び出してしまった。
自分が何らかの責任を負わされる可能性は非常に高い。
混乱した思考の中で思いついたのは、教師であるコルベールに話して対応を考えてもらう事。
ようやく見えてきた学院へ急いだ。
学院で早速コルベールを探すが見つからない。
教室に残っていた生徒に尋ねると、学院長の元へ向かったという。
気は進まないがアセルスが妖魔の君と名乗る支配者であることを隠せば、
後々面倒な事になるのは容易に理解できる。
ルイズは重い足取りでアセルスを連れて、学院長室に向かった。
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──その頃、学院長室には二人の人影があった。
「ふむ……それでミス・ヴァリエールは妖魔と契約したと?ミスタ・コーンビーフ」
白い髭を蓄えた老人。
彼こそが学院長であるオールド・オスマンである。
100歳とも300歳とも言われるその威厳あふれる眼光がコルベールを射抜く。
コルベールです。といつもなら名前の間違いでも指摘するところだろうが、
それを許されないほどの室内に緊張が張りつめる。
やはり契約を止めれなかったのは失敗だったか。
契約前に怪我人を出したのもまずい。
強大な妖魔が現れた時点で、指示を仰ぐべきだったかもしれない。
そんな考えが脳裏をよぎる。
「ま、いいんじゃないかの」
帰ってきたのは、張りつめていた緊張感が穴の開いた風船のように萎む気楽な一言だった。
「が、学院長!」
思わず抗議の声を上げるが、オールド・オスマンはそれを片手で制す。
「契約を結べなかったならともかく、亜人を使い魔にした前例はある。
契約前に暴れた使い魔によって、怪我人が出たということも良くある事じゃ」
オールド・オスマンの言う事がもっともなのはコルベールも理解している。
「それは仰る通りですが、力を持つ妖魔が何の抵抗もなく契約を受け入れたというのが……」
「腑に落ちないと言う訳じゃな?」
コルベールが無言で頷く。
「しかしのう……契約を結んだ以上我々にはせいぜい監視するくらいしかできんよ」
ため息をついて、髭を擦る。
「それでも構いません」
「後は……ミス・ヴァリエールと使い魔から話を聞いてみるしかないのう」
今後の対応について話していると、ドアがノックされる。
「失礼します、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。
こちらにコルベール先生はいらっしゃるでしょうか?」
噂をすれば何とやら。
扉の前に現れたのはまさに今呼ぼうとしていた本人の声だった。
「うむ、入りたまえ」
オールド・オスマンに見えたのはドアを開けて一礼する桃色の髪をした少女と横に立つ緑髪の少女。
少女の姿をしているが、その姿にはどことなく威圧感を感じる。
「ミス・ヴァリエールと、貴女が呼び出されたという妖魔かね?ミス……」
「私はアセルス。
でもね、人に尋ねる前に自分で名乗るのが礼儀よ」
アセルスの物言いは不躾にも聞こえるが、ルイズは気にした様子はない。
気にする余裕がないと言うほうが正しいのだが。
「ほほっ、これは失礼を。
この学院を預からせてもらっておるオールド・オスマンと申す」
「あの、僭越ながら使い魔の件に関して、
話しておかなければならない事があるのですがよろしいでしょうか?」
ルイズがおずおずと手を挙げる。
「ふむ、何かね?」
ルイズは先ほど聞いたアセルスが妖魔の城主であることを説明する。
「妖魔の城とな……」
わずかに驚いた表情を浮かべるオールド・オスマン。
理由は妖魔の城のこともあるが、説明中にディテクト・マジックを密かに使ったためである。
魔力を探知する事で、オールド・オスマンはコルベールがなぜ警戒していたのかを察する。
(なるほど……炎蛇のカンが鈍っておった訳じゃなさそうじゃの)
外見では平静を装いながら、内心では冷や汗を流す。
「ミス・アセルス。
今こちらに理解できておるのは、お主が想像以上に力を持っているだろうと言う事じゃ」
学院長お墨付きとなる力を持った使い魔。
思わず歓喜の声を上げたくなるルイズだったが、同時に疑問が浮かぶ。
それほどまで強力な妖魔が、なぜ自分の使い魔となったのか?
「お主は力を持つ妖魔でありながら一切の抵抗なく、ミス・ヴァリエールの使い魔となったという。
そのことがこちらには不思議で仕方ない」
アセルスは自らの運命から人の警戒心や猜疑心などに人一倍敏感になっている。
彼らが警戒しているのは明白だ。
最もアセルス自身、ここで何か事を起こす気など微塵もない。
「使い魔の儀式はその人の求めるものが呼ばれると聞いたわ」
アセルスの言葉にオールド・オスマンは頷いて肯定する。
「彼女が私を求める声を聞いた、私はそれに答えただけ」
「つまり、彼女との契約は自ら望んだものだと言うことかね?」
アセルスは頷いて肯定する。
「うむ、ならばこちらも誠意でもって応対させてもらおう。ミス・ヴァリエール」
「はい」
畏まりながらも返事をする。
「聞いての通りじゃ。
彼女自ら使い魔となる事を望んでいる以上、問題あるまい」
その言葉を聴いて安堵する。
「だが、彼女は妖魔ながらも王族である。
お主も誇りある貴族として礼を逸することないようにするようにの」
「は、はい!分かりました。」
頭を下げて礼をするルイズの様子を見て、オールド・オスマンは満足そうに再び髭を擦る。
「うむ、それと彼女が王族であることは他言してはならん」
理由が分からないルイズはオールド・オスマンに尋ねる。
「無用な混乱を呼ぶから……ですか?」
「それもある、一番の問題は王宮のアカデミーじゃ。
彼らが城を持つ程の強大な妖魔がいると知れば、手段を問わず研究材料にしようとするじゃろ」
アカデミーという単語を聞いて、ルイズの表情が強張る。
オールド・オスマンの懸念が彼女にも理解できた。
アカデミーは国の研究機関だが、人道性を問わない研究方法からその評判は芳しくない。
まして城主の妖魔など前代未聞の話である。
アセルスから情報を聞き出すために、非道な手段も厭わないだろう。
ただ、そんな評判よりルイズには厳しい姉がアカデミーに勤めているという方が苦手意識が強い原因だが。
「ミス・アセルスも構わないかね?
妖魔であることは隠しようがないだろうが、あまり目立ってもらっても困るのじゃ」
「ええ」
アセルスにも研究施設に実験材料にされかけた過去がある。
その手の輩は彼女に取っても煩わしいものでしかない。
「うむ、ではもう下がってよいぞ」
退室した二人の少女を見届けたオスマンは水たばこを取り出し、一息つく。
「フゥ……ただ者ではないと思っていたが妖魔の君とはの」
「ただ城を率いる妖魔となると聞いたこともありません」
コルベールの言葉にオールド・オスマンも同意する。
エルフや翼人など優れた個体が同属を率いる例はあるものの、城ほど大人数を率いるということはない。
妖魔における一国一城の主ならば、どれほど強い力を秘めているかは容易に想像がついた。
「お主の報告では怪我人が出たとの事じゃが、先住魔法かの?」
「いや、それが口語もなかったので先住魔法かどうかも確証がありません」
つまり、彼女が妖魔だと言う事。
それも他の妖魔を率いるほどの強い力を持つ妖魔。
加えて先住魔法のようなものを使う。
「つまり、あの使い魔に関しては何もわからんのと同じじゃな」
何度目か分からないため息をつく。
「そういえば直接関係があるかわかりませんが、
彼女に刻まれたルーンはかなり珍しいものでした」
コルベールが懐からルーンを書き写したメモを取り出す。
「ふむ、確かに見たことのないルーンじゃ。
今は少しでも情報が欲しい。このルーンについて調べておいてくれ」
「はい、それと今後周辺で異変が起きた場合もただちに報告します」
「うむ」
コルベールが一礼して、学院室を立ち去る。
「まったく厄介な事になりそうじゃの……」
後はミス・ロングビルのスカートの中でも覗きながら考えよう。
気晴らしの方法を考えながら、オールド・オスマンは外を見る。
晴れていたはずの空には暗雲が立ち込めようとしていた。
「はぁ〜〜〜疲れたぁ……」
部屋に戻ってきたルイズは着替えもせず、ベッドに倒れこんだ。
一時はどうなるかと思ったが、学院長に問題ないと言われた以上は大丈夫だろう。
張り詰めた緊張感からようやく開放される。
窓を見るとすでに夕日は沈んでいた。
気疲れもあり、このまま眠ってしまいたかった。
「もう寝るの?」
アセルスの声に顔を上げる。
「色々あって疲れたからもう眠りたいの……あ」
そこまで言って気がつく。
もともと使い魔の儀式は動物、幻獣を呼び出すのが通例である。
その為、ルイズが使い魔に用意していたものといえば床に敷かれた藁程度のみ。
「悪いけど、ベッドは一つしかないから一緒に寝る事になるわ」
妖魔と同じベッドで寝るというのは、正直望ましいものではない。
だが、彼女はサモン・サーヴァントで呼んだのである。
呼び出した使い魔を気味悪がるというのは、主人としても貴族としてもルイズの沽券に関わる事だった。
使い魔……その単語に先ほどと同じ疑問が脳裏をよぎる。
なぜ力を持つ妖魔でありながら、自分の使い魔となったのか?
もっとも疲れていたルイズはアセルスに尋ねる間もなく、意識を手放した。
「まるで子供ね」
ベッドに潜って一瞬で眠りに落ちた様子を見て、アセルスが呟く。
その表情は優しげな雰囲気に溢れていた。
自分を呼び出した少女であるルイズを見つめる。
愛らしい少女ではあるが、自分と似通っているところは思い当たらない。
なのに彼女に感じた懐旧の念は一体何なのか。
その正体を知る機会が宵闇と共に訪れる……
使い魔は妖魔か或いは人間か
第2話『支配者』の投下は以上になります
後半飛ばしすぎたかと思ったらよりによって最後の1レスでさるとは
乙
悪魔城とゼロ魔のクロスも昔考えたが
どうしてもドゥドゥドゥドゥドゥ(ryとかホァイとかやらかしてゼロ魔世界を変態的に暴れる姿しか想像できなかった…スマン
あれだ…公式で黒歴史化されてしまった、
漆黒たる前奏曲の女主人公をだな
黒歴史、ならジョゼフがターンXを召喚す
妊婦で戦うといえばビアンカやフローラが浮かぶな
当時小学生、大人になってすげーゲームだったとしみじみ思う
しかしあの夫婦、いったいどこで子作りしたんだ
登山中しかないだろう
405 :
無重力巫女の人:2012/03/31(土) 21:20:35.82 ID:3QasFkzd
>>403 ドラクエ5は懐かしいな…昔はよくやってたよ
けどうちのSFC版はしょっちゅうデータが消えてたから軽くトラウマになった記憶が…
んでPS2のリメイク版のおかげでトラウマから救われたわ。
さてと、皆さん今晩は。無重力巫女の人ですよー
明日から四月ですが、こっちはまだ春風が吹かないというか寒いです
何もなければ21時の25分から、53話の投下を始めたいと思います。
できるのであれば、支援の方よろしくお願いしますね
゛始まり゛には必然的に゛終わり゛がある。
それは世の理であり、容易に変えることはできない。
トリステイン魔法学院の生徒たちにとって楽しい休日である虚無の曜日は、ゆっくりと沈んでいく夕日とともに終わりを告げる。
朝方と昼はあんなに暑かったのだが、日が落ちていくにつれて段々と気温が下がり今では誰もが肌寒いと感じていた。
学院から離れた首都へ遊びに行っていた生徒たちも、この時間帯になるとバラバラではあるが校門をくぐってみずからの学び舎へと戻ってくる。
大抵の生徒は学院のレンタルか自費で購入した馬に乗って帰ってくるが、空を飛べる大型の幻獣を使い魔にしている者たちはその背に乗って戻ってきた。
あと一時間もすれば夕食の時間であり、それまで自室に帰って休む生徒もいれば広場に設置されたベンチに腰かけて友人たちと談笑をしている生徒たちもいた。
談笑する生徒のほとんどは男子であり、話の内容も年頃の少年にふさわしい自慢話の類が多かった。
ある者は街で傭兵に喧嘩を売られたが難なく返り討ちにしてやったという話や、名のある貴族の娘と話をしたという…嘘8割の談笑会をしている。
日が落ちればトリスタニアの繁華街が賑やかになっていくが、それは学院も同じであった。
人が集まるということは即ち、賑やかになるという事と同義でもある。
そんな賑やかな地上の様子を、霊夢はルイズの部屋から見下ろしていた。
いや、正確には項垂れた彼女の視線の先に偶然、広場で騒ぐ生徒たちが写っていた…と言った方が正しいのだろうか。
全開にした窓から両腕と頭を上半身ごと乗り出している彼女の顔は、まさに「ぐったりしている」という言葉が似合うほど辛そうな表情を浮かべていた。
顔色も若干青く、開きっぱなしの口からはう〜う〜と苦しそうなうめき声が漏れている。
この姿だけを見れば彼女がとある異世界の中核であり、異変解決と妖怪退治を得意とした博麗の巫女だと誰が信じようか。
それは霊夢自身も把握しており、今いる場所が幻想郷ではないことに安堵していた。
でなければ今頃…風のうわさで聞きつけた射命丸か紫辺りがニヤニヤと、一見暖かそうで実はそうでない笑みを浮かべて彼女を見下ろしていたに違いない。
「ホント…あの味には驚かされたわ」
「あぁ、あんなの初めて飲んだぜ…ていうかアレは飲み物なのか?」
ぐったりとした霊夢に続いて、同じような気分でベッドに横たわっている魔理沙もつぶやく。
その時、羽ペンを右手に持ったルイズが鳶色の瞳をキッと細めて二人のほうへ顔を向けた。
「ま…知らなかったのなら仕方ないけど、いくらなんでもコレを普通のお茶として淹れて飲んだのには驚いたわよ」
呆れたと言いたげにルイズは首を横に振ってため息をつくと、テーブルの上に置かれた小さな土瓶へと視線を移す。
その中には茶葉が入っている。そう…魔理沙だけではなくあの霊夢さえ苦しめた茶葉が。
「ホントビックリしたわ。なんせ街から帰ってきたら、アンタたちが部屋の中で倒れてたんだから」
そう言ってルイズはあの時の事を思い出した。
☆
タバサが霊夢達に瓶を渡して部屋を出て行ってから一時間ほどした後、ルイズは学院に戻ってきた。
ちょっとした用事と買い物で部屋を霊夢に任せていた彼女は「ただいま」と言ってドアを開けた直後、それを目にしたのである。
部屋に漂うミントのそれと似たような鼻を突くツンとした臭いに、二人仲良くテーブルに突っ伏してうめき声をあげている霊夢と魔理沙の姿…そして。
『オォ帰ってきたか娘っ子!見てみろよコレ?ひでぇもんだろ!?ヒャッハハハハ!』
何故かバカみたいに笑っているデルフが、彼女の部屋の空気を異様なものに変えていた。
最初は何があったのかわからず困惑していたが、事の全てを見届けていたデルフのおかげで事情を把握することはできた。
そして全てを知った後、なんてものを渡してくれたのだとタバサを恨みつつ味覚以外が無事な霊夢達に後片付けをさせた。
ちなみに、緑の液体が入っていたティーポットは泣く泣く捨てることとなった。
霊夢達の飲んでいたあの液体がなんなのかわかった以上、捨てるということはとても懸命な判断だとルイズは思うことにした。
★
「噂では聞いてけど…ハシバミ草のお茶が本当にあったなんてね…」
回想を終えたルイズは羽ペンをテーブルに置くと、土瓶を手に取ってそう言った。
この土瓶に入っている茶葉の原料は「ハシバミ草」というハーブの一種だ。
ほぼハルケギニアの全域で自生しており、地方の料理ではメインディッシュの添え野菜やサラダにしたものを前菜で出すことがある。
鎮静作用があり、細かくすりおろしてスープに入れたり煎じたものを飲めば風邪薬の代わりにもなるらしい。
その一方で独特の苦みもあり、自生してる場所によってはその苦味が味覚と臭覚を麻痺させる神経毒になることもあるのだという。
その為か、ここハルケギニアにおいては野生のハシバミ草は危険な代物というイメージが若干纏わりついている。
しかし何故かこれを愛食する者たちがいて、タバサもその一人であるという事はルイズを含め学院にいる多くの人間が知っていた。
「良薬口に苦し」という言葉があるが、「ハシバミ草」は正にその言葉を体現したかのような存在だ。
そして今、ルイズが手にしている土瓶の中に入っているのはそのハシバミ草を蒸し、乾燥させて作った茶葉である。
最も、それを普通のお茶のようにして飲めば濃縮された強烈な苦味が口内を蹂躙し、今の霊夢や魔理沙と同じように一時的な味覚障害に陥ってしまう。
「あのチビメガネ…次あったらどうしてくれようかしら」
「何物騒な事言ってるのよ。…やり方は間違ってたけど体には良いらしいわよコレ」
赤みがかった黒い目を鋭くしてチビメガネ=タバサに怒りを覚えている霊夢を宥めつつ、ルイズははしばみ茶の説明を始めた。
「これはね、瓶の中から一つまみ分だけをお茶が入ったポットの中に入れるのよ」
そうしたらはしばみ草の苦味が丁度いいくらいに効いて気分が和らぐらしいわ…とルイズは説明するのだが、二人は半ばそれを聞き流している。
今の霊夢達にとって、午前中から口内に居座るジワジワとくる苦味をどうすればいいのか頭を悩ましていた。
この苦味のせいで昼食の時には食欲が湧かず、紅茶や緑茶も口に入れればあの強烈な苦味に変わってしまう。
夕方になってからはだいぶマシになったが、それを見計らったかのように飢餓感が現在進行中で襲ってきている。
今の二人は、正に空腹状態の虎と言っても良いほど腹を空かしていた。
「夕食まであと一時間…ふぅ、長いわね」
「あぁ、全くだぜぇ…」
グゥグゥと腹を鳴らしながらボーっと窓の外から夕日を眺める異界の住人達を見て、ルイズは顔をしかめた。
理由はふたつ。二人が自分の話を聞いていないという事と、お腹のほうからだらしない音が出ているという事。
森の中でキメラと遭遇して以来ある程度のことは許容できるようになったが、それでもこういう細かな事は中々許せなかった。
「もう、人の前でお腹を鳴らすなんて…私以外の誰かに聞かれたらどうするのよ」
ルイズが二人に聞こえない程度の声量で呟くと、背後に置いてあるデルフが話しかけてきた。
『問題ねぇだろ。腹の音なんて腹が減りゃあ誰でも出るんだしよ』
「そういう問題じゃないのよ。…っていうか腹の減る心配が無いアンタが言っても説得力無いんだけど?」
デルフ突っ込みを入れるとルイズは再び頭をテーブルの方へ向けて作業を再開した。
羽ペンを再び手に持つと、テーブルの上に置かれた古びた本へとそのペン先を向ける。
開かれたページには何も記されておらず、色褪せた白紙をどうだと言わんばかりに見せつけている。
ルイズはその白紙を凝視して文章をイメージしているのか、ゆっくりと羽ペンの先端を上下左右に動かした。
しかしいい文章が思いつかないのか、クルリとペン先を回してから本の横に置き、腕を組んで目をつぶる。
脳内で考えているのだろうか、時折ウーウーと唸るような声が聞こえてくる。
その様子を後ろから見つめていたデルフは気になったのか、遠慮なくルイズに質問してみることにした。
『そういやぁさっきから気になってたんだけどよ…その本は何なんだ?全部のページが白紙の様なその気がするんだけどよ』
突然の質問にルイズの体がビクッと震えたものの、すぐに頭だけを後ろに向けて素っ気なく答える。
「アンタみたいなのは知らないと思うけど…これは始祖の祈祷書っていう王家に古くから伝わるとても大事な本なのよ」
その言葉をはじまりにして、彼女はこの本が手元にある経緯をデルフに話し始めた。
それはかつて、ルイズが霊夢と魔理沙を連れて王宮へとやってきた時の話である。
◆
「ご多忙の中、わざわざ来てくれてありがとうルイズ・フランソワーズ、それにハクレイレイム」
白い純白のドレスに身を包んだ若き王女アンリエッタ・ド・トリステインは訪れた客人に感謝の意を述べた。
幼馴染であり、敬愛の対象であるアンリエッタにそのような言葉を言われ、ルイズはついつい緊張してしまう。
「いえ、姫殿下の命令とあらばこのヴァリエール。何処へでも馳せ参じます」
ルイズの言葉を聞いたアンリエッタは少しだけ表情を曇らせると彼女の傍へと近づき、その右手を手に取った。
日々手入れを欠かさない美しく繊細で白い指に自分の手を触られたルイズは、ギョッと目を丸くする。
「ルイズ。ここは私の寝室なのよ?マザリーニもいないしお付きの侍女もいない。子供のころのように、私に接して頂戴」
そう言ってアンリエッタはルイズに自身の笑顔――どこか懐かしい雰囲気が漂う笑みを浮かべた。
きっと思い出しているのだろう。身分も家柄も関係なく、毎日が楽しかった子供の頃の思い出を。
永遠に続くように見えて、余りにも短く儚すぎる時代の一ページを…
「姫さま…」
ルイズはそう呟き、暖かい微笑みを自らの手に触れるアンリエッタに見せた。
生まれついての宿命から唯一逃げることのできた幼女時代へと、戻ったかのように。二人は微笑んだ。
「さすが、お姫さまというだけあって中々良いヤツじゃないか?」
「そうかしらねぇ?」
一方、そんな二人の外にいた霊夢と魔理沙はアンリエッタについて色々と話していた。
これで会うのが三度目である霊夢は、アンリエッタに対して「王家らしくない王家の人間」という評価を下していた。
この国の頂点に君臨している人間らしいのだがどうも雰囲気的にはそんな風には見えず、かといって普通の少女にも見えない。
まるで高原に咲く一輪の白百合のように気高く綺麗なその容姿は、名家の貴族令嬢…というレベルでは例えられない高貴さがある。
しかし先程も述べた通り、王族であるにも関わらず千万の民と文武百官を束ねられるような威厳がちっとも感じられないのだ。
(きつと国の事とかもそこらへんに詳しい大臣たちがうまくやってくれてるんでしょうね)
霊夢はアンリエッタと今のトリステインのことなど全く知らなかったが、見事にその言葉は的中していた。
多分のそれが答えだとこの教えていたら、本人も頭を抱えつつ驚いていたに違いない。
(まぁでも、あの年頃で下手に威厳張ってたら馬鹿みたいに見えるしね)
手を取り合って二人仲良く笑いあうルイズとアンリエッタの姿を見て、心の中で呟いた。
その後、ルイズはアンリエッタに魔理沙の事を紹介した。
この時ルイズは、霊夢と魔理沙がこことは違う別世界から来た人間だと彼女に説明した。
最初は信じてくれるかどうか心配していたが、思っていた以上にアンリエッタはルイズの話を真実として受け止めた。
以前アルビオンから帰還した際、霊夢が何故アルビオンへ行くことになった理由を知っていたからだろう。
そりゃ見たことのない異国の文字で書かれた本―幻想緑起という本――をスラスラと読んだ霊夢の姿を学院長たちと一緒に見ていたのなら、その話を信じても仕方のない事だろう。
「それに何より、貴女たちからはハルケギニアの人々には無い雰囲気を感じるのよ」
それを聞いて魔理沙はキョトンとしつつも笑みを浮かべたのだが、対照的に霊夢は胡散臭いものを見るような表情をアンリエッタに見せた。
アンリエッタは霊夢の表情を見ても不満気に顔を曇らせることなく、魔理沙に挨拶をした。
「遠い所から遥々このような小国へようこそ。歓迎いたしますわ」
アンリエッタがそう言って右手で魔理沙の左手をつかみ、握手をした。
「霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ。今後ともよろしくな!」
「え?…キャッ!」
王女からの挨拶に魔理沙は勢いよく返事をすると、握手をしている左手をブンブンと軽く振った。
本人は軽いスキンシップのつもりであったが、突然のことにアンリエッタは小さな悲鳴を上げる。
無論そんな無礼を見逃すルイズではなく、すぐさま魔理沙に掴みかかった。
「こら!何してんのよアンタは!?」
「えっ、ちょ…おいおい、そんなに怒る事じゃないだろ?」
「あ…二人ともよしてください!私は大丈夫ですから」
鬼のような表情を浮かべて魔理沙に掴みかかるルイズ、突然の事に慌てる魔理沙。
そしてそれを止めようとするアンリエッタの光景を外野から見て、霊夢はため息をついた。
そんなやりとりの後、アンリエッタは侍女に紅茶と茶菓子などを用意させ、ルイズと話し合いを始めることとなった。
お茶が出ると聞いた霊夢は「まぁお茶が出るなら」と言ってとりあえずはルイズと一緒にいることにした。
魔理沙はというと「どんな話を聞けるのか少し興味がある」という理由で部屋に残っている。
色々と嫌な予想をしていたルイズは安堵しつつ、先程侍女が淹れてくれた紅茶をゆっくりと飲んでいく。
流石に王族の飲むお茶というものか、カップやポットはともかくとして使っている茶葉は高級品である。
霊夢と魔理沙のカップにも侍女が紅茶を淹れたが、アンリエッタは自分の手で紅茶を淹れていた。
「最近自分の手で淹れるのが楽しみになってきたのよ、好きな量を自分で調節できるしね」
(ポットの中に入った紅茶をカップに入れるだけじゃない…)
嬉しそうに喋りながらポットの中に入っている紅茶をカップに注ぐアンリエッタを見て、霊夢は心の中でそんな事を思った。
全員のカップに紅茶が淹れられ、アンリエッタは侍女を退室させると一呼吸置いて喋り始めた。
「ルイズ…戦火渦巻くアルビオンへと赴き、手紙を持って帰ってきた事は、改めて礼を言いますわ。
貴女の活躍のお陰でゲルマニアとの同盟も無事締結される事でしょう」
「そのお言葉、この私めには恐縮過ぎるものですわ」
アンリエッタの口から出た感謝の言葉に、ルイズは席を立つと膝をつき、深々と礼をした。
トリステイン王国の貴族達にとって、王女直々に感謝されるということはこの上ない名誉なのである。
しかしそんなルイズを見てアンリエッタは何故か悲しそうな表情になり、首を横に振った。
「頭を上げて頂戴ルイズ・フランソワーズ?貴女と私の仲は単なる主君と従者じゃないのよ」
アンリエッタの言葉にルイズは顔を上げると彼女もまた悲しそうな表情をその顔に浮かべる。
「………わかりました。姫さま」
素直に聞き入れたルイズがスクッと立ち上がり再び席についたのを見て、アンリエッタの顔に笑みが浮かぶ。
ただその笑顔には陰がさしており、見るものを悲しくさせる笑顔であった。
「貴女は…後数ヶ月もすればこの国を離れることになる私にとって無二の友人なのよ」
もの悲しそうに言うアンリエッタを見て、もうすぐ彼女がゲルマニアへ嫁ぐ事になるのをルイズは思い出した。
ゲルマニアへ言ってしまえばこの先数年、下手すれば数十年間は会えなくなってしまう。
「…ゲルマニア皇帝との御婚約の決定、おめでとうございます」
それを想像したルイズもまた悲しい笑みを浮かべつつ、アンリエッタに祝いの言葉を述べた。
幼馴染みの彼女は、政治の道具として、好きでもない皇帝と結婚するのだ。
同盟のためには仕方がないとはいえ。彼女の悲しそうな顔を見るのは耐えられなかった。
一方、黙々と紅茶と茶菓子を堪能していた魔理沙はルイズの口から出た゛結婚゛という言葉を耳にして目を丸くした。
魔理沙にとって゛結婚゛というのは、愛する大人の男女が挙げる儀式だと教えられていたのだから。
そして二人の話からして゛結婚゛するであろうアンリエッタは、魔理沙の目から見ても成人には見えなかった。
「結婚て…あの年でか?」
嘘だろ?と言いたげな表情を浮かべつつ魔理沙は隣にいる霊夢に聞いてみた。
霊夢は肩をすくめつつも興味が無いという感じでその質問に答える。
「そうなんじゃないかしら?まぁ色々理由でもあるんでしょう…っと――――ムグムグ…」
そこまで言うと皿に並べられた小さめのチョコチップクッキーを一つ手に取り、口の中に放り込んだ。
チョコチップの程よい甘さとバターの風味が口の中に広がり、このクッキーを作ったパティシエの腕の良さを教えてくれる。
ある程度咀嚼した後飲み込み、紅茶を一口飲んだ後霊夢はポツリと感想を述べた。
「クッキーと紅茶も良いけど、やっぱり私は煎餅とお茶の方が良いわ」
「わざわざ食べといてそんな事を言うか…」
「食べれるものを出されて食べなかったら勿体ないじゃないの」
さてそんな二人のやりとりを余所に、アンリエッタとルイズもまた話し合っていた。
「今日のトリステインがあるのも、今や貴女のおかげ…
だからこそルイズ…貴女には私の人生の門出を、特別な席で見ていて欲しいのよ」
アンリエッタは寂しそうに言いながら手元にあった鈴を手に取って軽く振った。
透き通った綺麗な音色が広大な寝室に響き渡り、その音は部屋の外にも広がっていった。
鈴を鳴らして数十秒後、一人の侍女が古めかしい本を携えて部屋に入ってきた。
侍女は持っていた本をアンリエッタの手元に置くと一礼し、退室した。
一体何の本かと視線を向けた魔理沙はそれを見て、薄い苦笑いを顔に浮かべた。
「なんというか…随分と酷い所に保管されてたっぽいな」
蒐集家である魔理沙がそう言うのも仕方ない程、その本は酷く汚れていた。
古びた革の装丁がなされた表紙はボロボロで、触っただけでも破れてしまいそうである。
色褪せた羊皮紙のページも色褪せて茶色くくすんでおり、かなり酷い状態であった。
どんな方法で保管をしたらこんなにボロボロになってしまうのか。それがこの本を見て魔理沙がまず最初に思ったことだ。
少なくとも紅魔館の図書館に置いてあるかなり古い年代の本でも、これ程酷くはないはずだ。
一方のルイズもまた侍女が持ってきた本へと視線を移して、目を丸くしてしまう。
「い、一体何なんですかこの本は…見た感じ大分ボロボロなのですが」
信愛する姫殿下の手元に置かれたソレを指さしつつ、ルイズは恐る恐る聞いてみた。
アンリエッタは全然大丈夫といわんばかりにその本を手に取りつつも、口を開く。
「これはトリステイン王家に代々伝わる゛始祖の祈祷書゛というものです」
その言葉を聞き、ルイズと魔理沙は同時にキョトンとした表情を浮かべた。
「これが、かの有名な王家の秘宝…」
「祈祷書…というより魔道書の類だな。この形だと」
二人がそれぞれ別の事を言い、それを耳に入れながらもアンリエッタは話を続けていく。
「実は王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意するのです。
そして選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に詔を詠みあげる習わしがあります」
アンリエッタの説明に、ルイズは「は、はぁ」と気のない返事をする。
それを知っている程宮中の作法に詳しくない彼女にとっては、聞くことすべてが初耳であった。
魔理沙は若干興味があるのか興味津々と言わんばかりの表情を浮かべており、霊夢は紅茶を啜っている。
アンリエッタは手に持っていた祈祷書をテーブルに置いて一息つくて、ルイズに向けてこう言った。
「そして此度の婚約の儀で…ルイズ・フランソワーズ、あなたを巫女として指名いたします」
「――――――――え?」
アンリエッタの口から出たその言葉を聞いて、ルイズは目を丸くしてしまった。
まるで勝率ゼロの賭けに大勝してしまった時のように、信じられないと言いたげな雰囲気が伺える。
そしてルイズの傍にいる霊夢と魔理沙も、少し驚いた様な表情を浮かべた顔を、ルイズの方へと向けた。
「え…あの?私がですか…?」
「何かそうみたいね。あんまり話は聞いてなかったけど」
目を丸くしたルイズの言葉に、興味なさげな霊夢がさりげなく相槌をうった。
そしてアンリエッタもそれに続いて軽くうなずくと、テーブルの上で緊張して硬くなったルイズの右手を優しく掴んだ。
「先程も言ったように、あなたには私の門出を特別なところで見ていて欲しいのよ…ルイズ」
ルイズに向けてそんな言葉を告げた彼女の瞳には、幼馴染への期待と渇望の色が滲み出ている。
それは、友のいる故郷を離れる彼女の切実な願いなのだろう。
ルイズにとってその願いは叶えさせたいものであるが、自分では無理なのではと半ば諦めていた。
そう、詠みあげる詔を考える前から半ば諦めていた。
「わかりました…では、謹んで拝命いたします!」
しかし悲しきかな、ルイズはあまりにも実直すぎた。
幼馴染であり敬愛する姫殿下の瞳を見て断り切れず、結局は請け負ってしまった。
眩しすぎるほど目を輝かせ、自信に満ちあふれた表情を浮かべて…
◆
「…で、近々行われるアンリエッタ姫殿下とゲルマニア皇帝の婚姻の儀で私が読み上げる事になってる詔を考えてるんだけどね…」
表情を曇らせて話し終えたルイズに、デルフは『へぇ〜、こりゃまたタイヘンなことで…』と返して言葉を続ける。
『でも結婚式の詔だろ?そんなもん精々お二人の結婚おめでとうございます。末永くお幸せに…みたいなこと書いとけば良いんじゃねぇの?』
適当すぎるデルフのアドバイスに「バカ、そういうカンタンなモノなら苦労しないわよ」と言って説明を始めた。
しえん
「良い?畏れ多くも先王の子でありうら若きトリステイン王国の王女である姫様の一生一度の晴れ舞台なのよ。
それはほかの結婚式よりも神聖でなくてはいけないの…普遍的な詔ではその式を盛り上げる事なんてできないじゃない!
だからこそ…誰も書いたことのないような素晴らしく、姫様の門出を盛大に祝える詔を考える必要があるの!わかる!?」
最後辺りで熱が入ったルイズの説明に、デルフは何も言わずプルプルと刀身を震わせた。
おそらく笑っているのだろうが、それは嘲笑ではなくきっと感心して思わず笑ってしまったのだろうと、ルイズは思うことにした。
『まぁそれ程熱が入るんならすぐに書けるだろ。一応カタチだけの応援はしておくぜ』
「えぇ見てなさい、今に素晴らしい文章を書いて見せるわ」
笑い声の混じったデルフの言葉にルイズは元気を取り戻したのか、勢いよく羽ペンを手に取った。
ルイズは知らないだろう。詔を考えているのが彼女だけではないことに。
今頃宮中で、多くの文官たちが結婚式で読みあげる詔の草案を考えているだろう。
彼女はただ、用意された詔を一字一句正確に詠みあげる巫女としてアンリエッタ直々に指名されただである。
それを言い忘れたアンリエッタに原因があるかもしれないが、言っていたとしてもルイズは詔を考えていただろう。
「さぁ書いてみせるわ!姫様の結婚を祝う最高の詔を!」
ヴァリエール家の末女は気合を入れた。
家族に、敬愛する王女に…そして、部屋にいる一本と本物の巫女と普通の魔法使いに気づかれることなく、ただ一人。
「何一人で叫んでるのか知らないけど、腹が減りすぎて言葉を掛けるのもめんどうだわ…」
「今日はちゃんとした味のする食べ物を口に入れるまで…なにもやる気がおこらないぜ…」
『青春ムード全開のピンク少女とブルーな異世界少女たち…ハッハッハッ!見てるだけでおもしれぇなコリャ!!』
窓を通して外へと散らばる三色三色と一本の声は、闇夜が広がっていく空へと羽ばたいていった。
※
一方、場所は変わって首都トリスタニアのブルドンネ街。
昼はとても賑やかであったここも、夜になれば殆どの店が閉まり活気が無くなっていく。
貴族用のホテルなど一部の公共施設はまだ開いてはいるがこの前起こった殺人事件の所為か営業している所は少ない。
それとは逆に、繁華街のあるチクトンネ街の安い宿の方が活気づいていた。
ここでは夜間営業の酒場や定食屋が仕事帰りの客たちを迎えようと、開店を知らせる看板を店の前にこれでもかと出し始める。
一日の労働を終えた人々はそんな店を求めて繁華街へとなだれ込み、ますます賑やかさを増してゆく。
日が沈み、再び上る時間までこの賑やかな雰囲気は続くのである。
そんな街の雰囲気と空気を、とある食堂に設けられた屋上席から見下ろす一人の少年がいた。
眼下の灯りで輝く金髪にすらりと伸びた体を一目見ただけでは、男か女かわからない。
細長く色気を含んだ唇。睫毛は長く、ピンとたって瞼に影を落としている。
そして何より特徴的なのは、彼の両目の色であった。
右眼の色は透き通るような碧眼なのだが、左眼の色は鳶色。つまり、左右の眼の色が違うのだ。
虹彩の異常。他人に尋ねられた時、少年はそんな風に答えている。
「ふぅん、偶の旅行ってのはやっぱり体に良いものだね」
自分以外誰もいない屋上席でひとり透き通るような声で呟き、テーブルに置かれた飲み物の入ったグラスをに手を伸ばす。
小鹿の革の白い手袋に包まれた細い指でそれを手に取ると、ゆっくりと飲み始める。
ヒンヤリとしたグラスの中に入ったアップルサワーのすっきりした甘さと酸味を口内と舌で堪能し、一口分ほど飲んだところでそっとテーブルに置いた。
「……うん、やっぱりお酒は故郷のモノに限るね。どうも味がしつこい気がする」
少年はわずかな笑みを顔に浮かべて、胃の中に入ったレモンサワーの感想を誰に言うとでもなく述べた。
そんな時、「ここにいましたか」という声が耳に入り、少年はそちらの方へ顔を向ける。
振り向いた先にいたのは、屋上席の出入り口からこちらへ歩いてくる金髪の女性であった。
立派な麦のように光り輝く金髪をポニーテールにしており、歩くたびにシャランシャランと左右に軽く揺れる。
若草色のブラウスに薄黄色のロングスカートといったいかにも平民の女性…というよりも少女らしい服装で、足には立派な革靴を履いていた。
トリステイン魔法学院で働く給士たちに支給されるこの靴は大事にされているのか、近くから見ても傷ひとつついていない。
そして首にはネックレスのようにぶら下げた聖具が、街の灯りを浴びてキラキラと光り輝いていた。
少年は微笑みを浮かべ、こちらへ近づいてくる女性に声をかけた。
彼にとって彼女と出会うのは久しぶりである、彼女にとっても彼と出会うのは久々である。
「久しぶりだね。君と以前会ったのはシェル……シェ…何て名前だったけ?」
以前顔を合わせた町の名前を言おうとして言葉が詰まってしまった少年を見て、女性はクスリと笑って「シェルピスですよ」と優しく呟いた。
彼女の言葉で思い出しのか、少年はうれしそうな表情を浮かべた。
「そうそうそれだ!この国へ来てからもう二ヶ月近くたつけど、地名が中々難しくて苦労するんだよね」
「まぁ、良くそれで゛お仕事゛ができますわね。わたし驚きました」
自分より一つか二つ年上の人にそんな言葉を投げかけられ、少年は面目ないと言わんばかりに頭を掻いた。
笑いあう少年と少女にも見える女性。場所が場所なら青春の一ページとして心の中のアルバムに納まっていただろう。
ひとしきり笑いあった後、気を取り直すかのように少女が口を開く。
「相変わらず自分のペースを崩さないのですね。ジュリオ様は」
「いかなる時にも自分のペースは乱さなければ、どんな事も冷静に対処できるんだよ」
ジュリオ――女性にそう呼ばれた少年はそんな事を言いながら「さ、立ち話も何だし君も座ったらどうだい?」と少女に着席を促す。
彼の指差した先はテーブルの向かい側に置かれた椅子ではなく、自身が座っている椅子の方であった。
「え?…あ、あなたの隣…ですか?」
それを予想していなかったのか、ジュリオの言葉に目を丸く
「そうだよ。こういう時こそただのデートっていう感じにしないと後で怪しまれるだろう」
「は、はぁ…では、お言葉に甘えて」
ジュリオの言葉に彼女は困惑しつつも、彼の隣に腰を下ろした。
その瞬間、二人が座っている椅子から「ギシギシ…ギシギシ」という軋む音が聞こえてくる。
安い木材で作られたであろう長方形の長椅子が、未成年二人分の体重を受け止めて悲鳴を上げているのであろう。
その音を聞いた二人は顔を見合わせ、微妙な沈黙に耐え切れなかったジュリオが笑顔を浮かべて喋った。
「ははは!ヤバいよこの椅子。話しの途中で壊れたら良いムードが台無しになっちゃうな」
「そ、そうですね…」
相変わらずテンションの高いジュリオにどう接したら良いかわからず、彼女は無難な返事をする。
ジュリオはイマイチな女性の反応を見て笑うのをやめて一息つくと、再度口を開いた。
「はは、じゃあ椅子が壊れる前に…゛質問゛に入るとするかな?」
「…!は、はい!」
人気のない屋上席に漂っていた少女とジュリオの間にある空気は、一瞬にして変わった。
ジュリオは笑顔を浮かべているままだが、少女の顔はキッと緊張感のあるものになる。
まるで裁判台に立たされ判決を言い渡されようとしている被告人のごとく、その表情は引き締まっていく。
「じゃあ最初の質問。゛ゼロ゛が゛消えた゛後に…何か変化は?」
「黒いトンガリ帽子を被った白黒服の金髪の少女とインテリジェンスソードが一本゛ゼロ゛の部屋に居つきました」
「トンガリ帽子の少女…?」
「はい、一見メイジのようにも見えますが杖は所持しておらず、「普通の魔法使い」という自称を持っています」
「魔法使い…メイジじゃなくて…?あ、名前は…」
そんなことを聞かれた彼女は一呼吸おいて、質問の答えを告げた。
「マリサ。キリサメマリサだそうです」
「キリサメ、マリサ…変わった名前だな」
ジュリオはひとり呟くと、「ふふふ」と薄い笑みをその顔に浮かべた。
「もしかすると…彼女も゛盾゛と同じ場所から来たのかもね」
「常日頃゛盾゛と良く絡んでいたりするのでその可能性は高いと思われます」
「良し、゛トンガリ帽子゛という名前で彼女も調べてくれ。くれぐれも気取られないように」
「わかりました、ジュリオ様」
自分が信頼されているという思いを感じつつ、女性は頷いた。
「それと話は変わるが…ここ最近のトリステインはどうなっているんだい?」
今度は謎の会話から一転し、この国の方へと話が移った。
「ブルドンネ街ホテルでレコン・キスタの内通者が変死。事件の詳細を揉み消す動きがあったので恐らく国内の有力者が下手人でしょう。
まだ有力な情報は掴めていませんが、水面下でガリアとトリステインの一部の貴族の間で何かしらの取引があったようです」
彼女の゛報告゛を聞き、ジュリオはやれやれと言いたげに肩をすくめた。
「何処の国も同じだねぇ、年寄り連中が若い連中の足を引っ張るってことは」
年寄りにはうんざりだよ。と最後に呟き何を思ったのか、ふと空を見上げた。
すでに日が沈んでから一時間、見上げた先は深い深い闇を移す夜空が世界を覆っていた。
街の灯りに多少埋もれてはいるが、夜空に浮かぶ無数の星たちが光り輝いている。
一生懸命に自分たちを主張する自然の光は、人口の光が支配する街の中で暮らす人々の目には映らない。
「年寄りたちは上空の光を…未来へと続く道を歩こうとせずかつての栄光にしがみつく―」
先程とは違い真剣な表情を浮かべたジュリオはそんな事を呟き、言葉を続けていく。
「過去の栄光は所詮過去に過ぎないというのにそれすら理解できず、逆に未来へと歩もうとする若者たちを道連れにする。
そんなに過去が欲しければ一人ですればいいのに、老いと死の恐怖に耐え切れず余計過去にすがる。
僕たちは、それを突き飛ばしてでも歩まなくてはいけない―未来へ…無限の可能性と進化、そしてそこからくる未知の恐怖が待っている未来へと」
ジュリオは座っていた立ち上がると、ピッ!と左手の人差指で夜空を指差した。
手袋に包まれた指の先には、一際強く輝く星が浮かんでいる。
まるで希望を胸に生きる若者たちを象徴するかのごとく、それは激しくも神々しく輝いている。
「僕たちのような若い世代の人間は、手を取り合って未来を切り開かなくてはいけない。
その為には四つの゛虚無゛の力と…誰にも縛られることのない゛博麗の巫女゛が必要なんだ」
―――そう、人々がまた…゛旅立つ゛為にも
その言葉を最後に、ジュリオは口を閉じた。
瞬間―――キラリ!と輝く流れ星が夜空を切って飛んで行く。
まるで、未来へ向かって一直線に飛んでいく隼のように、その流れ星はすぐに見えなくなった。
はい、これで53話の投下は終了です。支援してくれた方、ありがとうございます。
今回はジュリオ初登場です。正直言うと結構好きなキャラですね。
昔はキライだったんですけどゼロ魔19巻を読んでだいぶ印象が変わりました。
後今回入っていたアンリエッタと祈祷書の話はだいぶ前に書いたお蔵入りのネタに改良を加えたものです。
いつか使おうと思って中々出せないでいました。
では今回はこれにて、また来月お会いしましょう
乙でしたー
乙
ジュリオがまともに登場するのは珍しいな
すいません、誤字があったので少し修正を
>>414のジュリオの台詞
「過去の栄光は所詮過去に過ぎないというのにそれすら理解できず、逆に未来へと歩もうとする若者たちを道連れにする。
そんなに過去が欲しければ一人ですればいいのに、老いと死の恐怖に耐え切れず余計過去にすがる。
僕たちは、それを突き飛ばしてでも歩まなくてはいけない―未来へ…無限の可能性と進化、そしてそこからくる未知の恐怖が待っている未来へと」
↓修正
「過去の栄光は所詮過去に過ぎないというのにそれすら理解できず、逆に未来へと歩もうとする若者たちを道連れにする。
どんなにすがったって意味がないと言えば、老いと死の恐怖に耐え切れず余計過去にすがる。
僕たちは、それを突き飛ばしてでも歩まなくてはいけない―未来へ…無限の可能性と進化、そしてそこからくる未知の恐怖が待っている未来へと」
お目汚し失礼しました
おまえら!
エイプリルフールは「午前中にホラを吹いて、午後は釈明する」までで1セットだぞ
巧妙なウソついて迷惑かけてもいい日じゃねーぞ!
>>402 出産後に召喚というのも鬼畜だと思うが。
母親は子と離ればなれになり、子は母と離ればなれになるぞ。
特に子供が幼い時だったら尚更だ。
>>421 別に2人そろってゲートを潜ってはならんという決まりはないぞ
いくらルイズでも赤子連れの母親にDQNな当たり方はせんだろうし
あるいはこういう手もある
ソニアが妊娠したのはいつであるとは原作中に言われてない
つまりアーカードも召喚されていて、ハルケギニアで結ばれて身籠ったという事にすれば、
召喚時点でソニアが妊婦である必要はないのだ
産道から赤ちゃんの頭が出てきた瞬間に召喚のゲートが開通。
赤ちゃんの頭がゲートに触れるやいなや、ゲート物凄い勢いで赤ちゃんを引きずり込んでいく。
あとには呆然とする母親と医師たちが残されるのみだった。
もしくは首までゲートをくぐった時点で突如ゲートが閉鎖。
あとには首のない赤子の遺体が残されるのみだった。
仮面ライダーWの右半身だけが召喚だと・・・
仮面ライダーWCJの死体とゴーカイピンクと大杉先生の死体を召喚
ルイズ「犯人はお前だ!」
427 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/01(日) 09:33:47.83 ID:d4W4p3G/
>>422 わからんよ
映画ポケモンのミーの例もあるからね
更新止まってるがいまだに結末がどうなるか気になって仕方がない
ミーは無力だが、ソニアはそうじゃないぞ
そんな扱いをしたら悲惨な目に合うのはルイズの方になるだろ
ドラキュラシリーズなら、聖水持ったリヒターが召喚されれば
斬った張ったの場面は、『アイテムクラッシュ・ハイドロストーム』のゴリ押しで解決しそうな気がする
どーでもいいが、懐中時計だと時間停止するんだよな……
BLEACHの朽木白哉を召喚
貴族の貴族による貴族のための講義(=シスコン講義)を始める白哉
皆さんこんにちは。ウルトラ5番目の使い魔、84話投稿開始します。
やっとこさ普通に投下できそうです。10分後、13:50にはじめますので、よろしくお願いいたします。
次回あたりで契約の件には一応のケリが付くだろうといったな。
あれは嘘だ。
エイプリルフールなので許してください…、
ええ、予定の方が他におられなければ、45分頃から投下させていただきたく
おっと、先約がおられましたか
では、時間をずらさせていただきます
それでは先に投下させていただきます。
第八十四話
守護鳥獣VS三億年超獣
怪魚超獣 ガラン
高原竜 ヒドラ
友好巨鳥 リドリアス 登場!
ヤプールは、らしくもなくうろたえていた。
「うぉのれぇぇ! あと一息でつぶせたというものを、なんだあの怪獣どもは。なぜ人間どもに味方するのだ!」
マイナスエネルギーの波動を振りまきながら、ヤプールの怒号が響き渡る。
東方号を破壊せんものと、その眼前にまで迫っていたガランを跳ね飛ばし、挟み撃ちにして吼える二匹の怪獣。
一匹は、ワシのような頭部と屈強な四肢を持つ鳥人にも似た容姿を持つ土色の大鳥。
もう一匹は赤いとさかと骨翼のような細長い翼を持つ、青い鳥の怪獣。
その二匹が東方号と、人間たちとエルフたちを守るように現われ、今、超獣へと立ち向かおうとしている。
”これはいったいどういうことなのだ?”
さしもヤプールの想定も大きく超える出来事に、同じことを人間たちもエルフたちも思った。
あの二匹の怪獣は、自分たちを守ってくれるというのか? なぜ? いったい何ものなのだと?
しかし、テュリュークは現れた二匹の怪獣を見て、感動にふけるように目を潤ませていた。
「おお……あれこそ、古に聖者アヌビスとともにあったという……大いなる意志よ。やはり、伝説は本当だったのですな」
代々、ネフテスの統領しか閲覧することを許されない古文書。それに記された絵に出てくるうちの一匹の怪獣と、
遺跡の入り口にあった石像、そして砂漠から現れた怪獣の姿が一致する。
古文書にはこうある。再び、世界に大厄災の兆しが現れるとき、地に眠れる守護者たちは目覚めて、心ある者たちを助けると。
そしてそのころ、ようやく遺跡から地上に上がってきた才人たちも、眼前に広がる壮絶な光景に息を呑んでいた。
「ええっ! か、怪獣が、三体!?」
「あれは、ヤプールの怪魚超獣ガラン! それに、あっちのは確か……高原竜・ヒドラ!」
頭の中に叩き込んであった怪獣と超獣のデータを引き出して、才人は叫んだ。
超獣がいるということは、やっぱりヤプールは東方号をつけていたのか。しかし、どうしてヒドラがここに……?
高原竜ヒドラ、科学特捜隊の時代に伊豆の大室山火口から出現した怪獣で、テロチルスやバードンなどと同じく日本に
有史以前に生息していた古代翼竜の生き残りとも言われている怪獣だ。だが、その生態には謎が多く、はっきりとした
正体はわかっておらず、初代ウルトラマンとの交戦中に逃亡後消息不明となり、現在なお幻だったのではという説さえある。
さらに、もう一匹の怪獣……GUYSアーカイブドキュメントにもデータのない、名も知らない怪獣だが、才人とルイズは
その怪獣に確かに見覚えがあった。
「ルイズ、あの怪獣、覚えてるよな!」
「ええ……祈祷書のビジョンに出てきた、始祖ブリミルたちといっしょに戦っていた怪獣! まさか、生きていたの」
夢でも幻でもない。その怪獣こそ、エギンハイム村の森の地下に眠っていて、翼人たちに守られていた、友好巨鳥リドリアス。
ムザン星人とガギとの戦いの後、どこかに飛び去っていたはずなのに、不思議な力に導かれてここにやってきた。そう、彼らが
かつて共に戦った大切な仲間と同じ、かけがえないものを持つ者たちを守るために。
驚くルイズたちの見守る前で、怪獣たちは何も答えず、戦いは待たずに始まった。
ヒドラ&リドリアス対ガラン。
怪獣と超獣のバトルは、まずはヒドラがくちばしでガランをつつきまわした。鋭いくちばしでの乱打で、ガランの無数に生えている
うろこがちぎられて落ちていく。
苦痛で吠え立てるガラン、さらに怒りを増すヤプールの怒声が響き渡る。
「おのれぇぇっ! あくまで邪魔しようというのか。許さんぞ! ならばガランよ、先に目障りなそいつらから始末してしまえ!」
命令を受けるまでは棒立ちに近かったガランだが、命令を受けると素早くそれを実行した。異常に発達した腕を振るい、
ヒドラを弾き飛ばすと、向かってきたリドリアスに破壊フラッシュを放った。爆発が起こり、ひるまされるリドリアス、しかし
その後方から再びヒドラがぶつかってきて、強靭な腕でガランと格闘戦にはいった。
体長八十五メートルと、ウルトラマンAをさえ大きく上回る巨躯を誇るガランに対してヒドラは六十メートル。鋭い爪で
ガランをひっかいてウロコを傷つけ、ガランが体躯を活かして上から攻撃をかけてこようとすると、素早く動いて背中についている
ヒレを引きちぎろうとする。
「なにをしている! そんな怪獣ごとき、超獣のパワーで叩き潰せぇぃ!」
ヤプールは激昂し、ガランは豪腕をふるうがヒドラはひるまない。くちばしと爪の攻撃で食い下がり、ガランに傷を与え続けている。
しかもガランがパワーで圧倒しようとすると、リドリアスが空から体当たりしてガランの姿勢を崩させて援護するではないか。
超獣は怪獣よりも強いはずなのにとヤプールは怒り、見守っている人間やエルフからは喜びの声があがり始めた。
「あの怪獣たち。強いじゃないか!」
「ああ、いいぞ! やっちまえ!」
しだいに、ヒドラとリドリアスを応援する声が増え始めた。その中にはギーシュたち水精霊騎士隊や、大勢のエルフも混じっている。
わずか数分の間とはいえ、ともに戦ったことが彼らを戦友の間柄へと変えていた。
一進一退の攻防が続き、体当たりをかけるヒドラ、尻尾でなぎ払うガラン、攻撃の余波から人間たちを守ろうとするリドリアスが
大地を踏み鳴らすたびに砂漠が震え、雄たけびが大気に悲鳴をあげさせる。
ガランが口を大きく開いた。その喉の奥から真っ白い煙が吹き出してヒドラを襲う。
「ガランガスだ!」
才人が悲鳴のように叫んだ。ガランの吐き出すガスは、別名をデボンエアガスともいい、浴びた物体を分解してガランガスと
まったく同じ成分にして上で吸い込んでしまうという恐るべきものなのだ。コンクリートのビルでさえ一瞬で消滅させ、エースも
苦しめたそれがヒドラに向かう。
が、鳥怪獣に対してガス攻撃が効かないのは誰が考えてもわかることだろう。ヒドラは背中の翼を大きく羽ばたかせ、
ガランガスをあっさりと吹き飛ばしてしまった。
さらに、突風でよろめいたところにヒドラは口から火炎を吐いて攻撃する。すると、元々は魚のガランに対しての威力は
抜群で、背びれが焼け焦げて苦しげな声を出した。
ほぼ五分の戦い。いや、攻撃の勢いではヒドラが押し始めている。
超獣の強さを知ってるルイズは、善戦するヒドラとリドリアスに感心しながらも才人に尋ねた。
「ねえサイト、あのサカナモドキの超獣って弱いの?」
「いいや……ありゃたぶん、相性の問題だろうぜ」
才人は確信げに答える。ガランは確かに強豪とまで言える超獣ではないが、それでも豊富な武器を備えていて決して
あなどれる相手ではないはずだ。それなのに怪獣に押されているのは、ガランとヒドラの性質の違いが大きいと思われる。
簡単に言うと、自己の意識が希薄でテレパシーでの命令に従って暴れるガランと、自分自身の意思で戦うヒドラとの差だ。
ガランは命令を受けるために、どうしても行動がワンテンポ遅れる上に機械的な行動になってしまう。元が魚だったのだから
知性が乏しいのは仕方がないといえば仕方ないが、これは大きな差だ。なにせ、ヒドラはウルトラ兄弟の中でも格闘戦に
秀でている初代ウルトラマンを、スペシウム光線を使われるまでほぼ圧倒していたほど猛烈な攻撃をするのだ。
それに、今見たとおりガランガスは風を起こせるヒドラに対しては極端に相性が悪い。卑怯な手を使って東方号やエルフたちを
狙おうとしてもリドリアスに邪魔される。リドリアスは、ガランの攻撃が人間やエルフに向かおうとする度に、身を挺して
彼らを守っていた。
「やっぱりあの怪獣は、六千年前に始祖ブリミルと……その当時のガンダールヴといっしょに戦っていた、あの怪獣なのね」
ルイズが、人々を守りながら戦うリドリアスの姿に始祖の祈祷書のビジョンで見た、怪獣たちすら傷つけまいとしながら
戦うブリミルと仲間たちの記憶を呼び起こしながらつぶやいた。すると、才人がファーティマを背負っているためにルイズに
預けられていたデルフリンガーが言った。
「懐かしいな……リドリアス、またお前に会えるとは夢みたいだぜ。お前さん、もう目覚めてたのかい」
「リドリアス? あの怪獣はリドリアスっていうの?」
「そうさ、六千年ぶりだぜ。ガンダールヴの翼として、大空を駆けたあいつの勇姿をもう一度見れるたぁな。変わってねえな、
俺も生まれてすぐにあいつの背で振られるようになったが、あんときは楽しかったな。ま、おれはだいたい敵の攻撃を
受けるのに使われてばっかしだったんだが」
しみじみと語るデルフの言葉を、才人とルイズは黙って聞いていた。またどうせ、今になって思い出したというのだろうから
突き詰めて聞くだけ無駄だということはわかっているし、デルフにはデルフの心情があったのだろう。しかし、あの太古の
ビジョンの当人がまだ生きていたとは本当に驚きだ。
「怪獣って、長生きなのね」
「いいや……やっこさんでも、さすがに六千年も生きられやしないよ。思い出したぜ……あの戦いが終わった後、リドリアスは
ほかの生き残った仲間たちといっしょに深い眠りについた。ブリミルたちが一命を賭してさえ、解決し切れなかった危機が
未来に蘇ったときのために」
「自らを、封印? そこまでして備えるって、解決し切れなかった危機ってなんなのよ?」
「……思い出せねえ」
やっぱりね、ルイズと才人はため息をついた。デルフは魔法で作られた精神体が剣に寄生している、いわば岩石宇宙人
アンノンのようなものらしいので、記憶構造も人間とは異なっているらしい。もしかしたら、特定のタイミングで記憶が蘇るか、
特定のタイミングが来なければ記憶が再生しないようになっているのかもしれないが、確証はない。
ガランとヒドラは激闘を続け、ときたまリドリアスが援護をかけている。
「けど、だったらどうしてあの二匹は今現れたの? わたしたちのピンチを、どう知ったっていうの?」
「野生の勘……いや、ハーフエルフの嬢ちゃん、あの子が呼んだんだろうな」
「ティファニアが? どういうこと?」
「……自覚はまだねえだろうけど、あの子はよく似てるんだよ……俺をふるって、救えないものまで救いたがった、不器用で
危なっかしいくらい優しい、あの娘とな」
デルフの心にぼんやりと、ティファニアのシルエットが槍を握って勇敢に戦うエルフの少女と重なる。
そのとき、リドリアスがティファニアのほうを向いて鳴いた。それは、巨体でありながら小鳥や子犬のように優しい声で、
歌うようなその音色は、殺伐としかかっていた人間とエルフたちの心に落ち着きを取り戻させた。
ウルトラの人、待ってました
支援します
「えっ! なに、わたしを呼んでるの?」
リドリアスの視線を感じて、ティファニアは手にずっと握り締めていた輝石を見つめた。輝石は静かにまたたき続けており、
まるで生きているような感じを受けた。
けど、ぼっと見つめてる時間はなかった。リドリアスのなにかを訴えるような視線から、ティファニアは今自分がすべきことを思い出した。
「そうだ! サイト、はやくその人を手当しないと!」
「あっ! そうだった。今なら東方号に乗り込めるぞ、急ごう」
東方号にはクルデンホルフの用意した最新の医療設備が搭載されている。後に数千人単位での搭乗も想定されているので、
現在は満載ではないものの医薬品や水の秘薬の備蓄も多い。エルフの魔法で傷だけは治せても、失血や体力の消耗などは
治療が必要だ。
ウルトラマンAになってヒドラとリドリアスを援護しようかと思いかけていた才人とルイズは、東方号へと急いだ。大丈夫、
あの二匹は強い! そもそも鳥が魚に負けるものか、魔法で足を貸してもらいながら彼らは急ぐ。
守るために自ら蘇った伝説と、壊すために無理矢理太古の時代から引きずり出されてきた化石の戦いは佳境に入っていた。
激闘で疲労し、羽根を舞い散らせながらも果敢に戦うヒドラ。ガランは破壊フラッシュでヒドラを苦しめながらも、ヒドラも
負けずに突風と火炎攻撃で渡り合い、リドリアスも破壊光弾を放ってガランを追い詰めていく。
そしてついに、ガランが弱って砂漠に倒れこんだ。ここぞとばかりに、ヒドラはガランの上を取ってくちばしでつついていく。
「どうしたガランよ! 立て、立ってひねりつぶせ!」
怒りを最大限に燃え上がらせたヤプールの叫びがガランを叱咤する。しかし、もはやガランには命令を実行するだけの余力は
残っていなかった。冷静さを取り戻したコルベールが、ヤプールに冷たく言い放つ。
「無駄だヤプール、あの超獣はもう戦えまい」
「なんだとぉ!」
「いくら改造を施したとはいえ、砂漠の熱気の中でいつまでも魚が平然としていられるとでも思っていたのか? 我々でさえ、
エルフたちの大気の精霊の加護がなければ一時間と持たない酷暑だ。貴様もそれを承知していて、砂漠の地下水を
出現と同時に噴出させて冷やさせていたんだろうが、戦いが長引きすぎたな」
「うぬぬぬぬ……」
遊ばずに、さっさと東方号を破壊しておけばよかったとヤプールは後悔した。まさか、見下していた人間にこうまで冷静に
指摘されるとは、ヤプールにとっては憤怒以外の何物でもない。
ガランも、環境が整えば強かったのだろうが、今回はあまりにもガランにとって不利な条件が過ぎていた。抵抗力の衰えた
ガランを、ヒドラとリドリアスが後ろ足で掴んで空へと飛び上がる。翼を大きく羽ばたかせ、クリーム色の竜巻を巻き起こしながらの
急速上昇、みるみるうちに高度数千、数万メートルの高高度へと達していく。
「すげぇ……」
恐るべき上昇力、風竜を見慣れたエルフたちも飛翔力のあまりの速さに舌を巻いた。もし彼らが地球人であれば、ロケットの
ようだと評したに違いないが、あいにくとこの世界には匹敵するほどのものがなかった。
そして……成層圏。彼らは掴んでいたガランを放した。
後は重力の赴くまま、飛行能力を有しないガランは対抗できない星の力によって奈落の淵へと落ちていく。
落下加速度、毎秒9.8mとすれば、落下のエネルギーは速度と質量に比例するから、六万トン×落下の終末速度となる。
わざわざ計算などしなくとも、誰にでも莫大なエネルギーが墜落と同時に放出されることがわかるだろう。そしてこの場合、
その事実がわかるだけで十分であった。
星の引力という強大なパワーによって、隕石と化しつつあるガラン。ヤプールは、怒りに燃えながら空に手をかざした。
青空が割れて、異次元ゲートが不気味な口を開く。
「やむを得ん。今回は敗北を認めてやるわ。だが覚えていろ! 次はさらにパワーアップしたガランを持って、貴様らを
必ず叩き潰してくれるわ!」
落下中にガランをゲートで受け止めて撤退させようというのか。ヤプールは自らの作戦の不備を認めて、後日の報復を宣言した。
だが、異次元へと通じる地獄の門へ向けて、東方号の甲板から青い矢のような閃光がほとばしった。
「リージョン・リストラクター!」
閃光は異次元ゲートに突き刺さり、次の瞬間ゲートは水溜りが蒸発するように縮んで消滅してしまったではないか。
「なにいっ!?」
ヤプールの絶叫がこだまし、ガランはなにもない空間を素通りして落ちていく。
異次元ゲートを消滅させた光。東方号の甲板では、ガッツブラスターを構えた才人が不敵に笑っていた。
「ざまあみろヤプール。お前の思うとおりにさせるかってんだ!」
ガッツブラスターの先端には、キャプチャーキューブとは違った緑色のアタッチメントパーツが取り付けられていた。
これこそ、対異次元人ヤプール用のメテオール、リージョン・リストラクター。異次元空間封印用メテオール、ディメンショナル・
ディゾルバーのプロトタイプといえる兵器で、同じようにヤプールの異次元ゲートを強制的に閉鎖させることができる。
効果は短時間であるのが欠点だが、携帯できるくらいの大きさなのが大きな利点だ。
背負っていたファーティマを銃士隊に渡して、甲板にルイズとともに残った才人は、ガッツブラスターの引き金のリングに
指を入れてくるくると回して、この改造ガッツブラスターを誇らしげに握り締めた。
才人のガッツブラスターが特別なのは、このアタッチメントパーツで自由にメテオールを使い分けられることにある。
一般隊員のトライガーショットがGUYSメモリーディスプレイを使い、隊長の許可で一分間だけ使えるのに対し、才人は
別世界で単独行動が主になることから、特例中の特例ということで携帯武器に関してのみメテオールの自由使用が
認められていたのだ。
むろん、これはメテオールの使用実績が増えて、運用の安全性が増したということも関わっている。だが、それを
考慮しても、入隊試験も受けていない高校生にメテオールの全面使用許可を出すというのは前代未聞。それだけ、
リュウ隊長やサコミズ総監の才人への期待が大きいしるしであろう。
逃げ道を塞がれ、ガランは背中から真っ逆さまに砂漠に墜落した。これだけの高速と質量では、いかに砂で出来た砂漠でも
衝撃緩和の役にはまったく立たない。皮膚を思い切り叩かれるような衝撃が空気を伝わって才人たちの体をしびれさせる。
エースリフターで投げ飛ばされるよりも強烈な衝撃を受けて、ガランは体をわずかにけいれんさせた後で、両腕を上げようとした。
しかし、そこで力尽きて断末魔の鳴き声とともに、内部から大爆発を起こして消滅した。
「いよっしゃあ!」
「ガ、ガラーン! お、おのれぇぇぇーっ!」
才人のガッツポーズと、苦悶の表情で叫ぶヤプールの姿が対極的に砂漠という無地のキャンパスに映えた。
木っ端微塵に吹き飛んだガランの破片は砂漠に舞い散り、砂に埋もれて消えていく。古代魚から作られた、破壊することのみを
生存の目的とする操り人形は、その上空を飛ぶ、己の意思で生きる者たちにはかなわずに敗れさったのだった。
東方号は無事で、水精霊騎士隊、銃士隊は全員無事。エルフたちもテュリューク統領以下、ビダーシャルをはじめほとんどが
傷つかずに残ることが出来た。しかも、ウルトラマンの助力を借りずにである。
それを成し遂げた、ヒドラとリドリアスは東方号の上を旋回しつつ、まるで再会を喜び合っているように鳴いている。
勝利……砂漠から立ち上るガランの残骸からの煙もしだいに薄れていき、大気に満ちていたマイナスエネルギーの不快な
波動も消えていく。
しかし、世界が元に戻ろうとする中で、決して消えない黒い一点が砂漠に残っていた。
「……」
「ヤプール! 超獣は倒された。お前の負けだ! 我々は、お前の暴力に決して屈したりはしないぞ!」
背中を向けたまま立ち尽くすヤプールの人間体へ向かって、コルベールは叫んだ。隣ではテュリューク統領が、少し離れた
場所では水精霊騎士隊やエルフの騎士たちが遠巻きにヤプールを睨みつけている。いっせいに攻撃を仕掛ける好機では
あるのだが、いまなおヤプールの放つ絶大な負のエネルギーが彼らを近づかせることを拒んでいた。
「ガラン……おのれ、バキシムに続いて今回もまた……きさまら、よくもこの私をコケにしてくれたな」
太陽の光を斜めに受けて、砂丘に伸びるヤプールの影が巨大な悪魔の姿に変わる。とげとげしく、まさに悪魔と呼ぶに
ふさわしい、ヤプールの真の姿のシルエットに、見つめていた人間とエルフを問わずに背筋に冷たいものが走り去っていた。
この広大な砂漠からしたら、ほんの一点のしみにしか過ぎないというのに、ヤプールの周りだけ寒波が襲っている
かのように異様な空間と化してしまっている。
はるか離れた東方号の甲板からも、ヤプールの絶大な怒りのマイナスエネルギーは感じられる。しかも、今までにない規模の、
噴火寸前のマグマのようにドロドロと煮えたぎるすさまじいパワーが膨れ上がりつつあり、戦慄しながらもルイズはヤプールに向けて叫んだ。
「ま、負け惜しみはよしなさい! あなたの姑息な策は破れたわ。人間とエルフは相容れないものなんかじゃない、それが
今証明されたわ。もう、これ以上ふたつの種族が憎みあうこともなくしてみせる。わたしたちの勝ちよ!」
「なにを……人間ごときが、きさまらごとき下等生命体が、我らを見下すか! 許さん、きさまら絶対に許さんぞぉ!」
触れるものすべてが腐りはて溶けてしまうのではないかという、憎悪のマイナスエネルギーの波動がほとばしる。
悪意、邪念、憎悪、ハルケギニアとサハラの人間とエルフの負の心を吸収し続けてきたヤプールから、人間の姿には
収まりきれないほどの悪のパワーが吹き出し、ヤプールのそばの空間が割れて異次元ゲートが発生した。
「なにっ!? リージョンリストラクターで封じたから、しばらくはゲートを開けないはずじゃあ!」
「我らヤプールをなめるなよ! この世界で得たマイナスエネルギーの量はすでにじゅうぶんに溜まっている。見るがいい!
我ら異次元人の悪魔の力を!」
異次元ゲートの奥から、暗黒の中で揺らめく複数の異形の影が覗き見え、すさまじい音量の超獣の声が響き渡る。
それはまさしく悪魔の軍勢のうなり声、戦慄と恐怖の中でルイズはつぶやいた。
「ち、超獣!? あ、あんなにたくさん……うそでしょう」
「ククク……なにを驚く、これらはみなお前たちの生み出したマイナスエネルギーによって育ったもの、いわばお前たちの
子供のようなものだ。本来ならば、お前たち人間とエルフが殺しあうだけ殺しあった後に、一挙に殲滅してやるつもりであったが、
きさまらが和解などをするようであれば話は別だ……手始めに、まずはエルフども、貴様らから滅ぼしてくれる!」
「な、なんだと!」
ヤプールの恐るべき宣戦布告に、テュリュークらエルフたちの顔色が変わった。ヤプールはそれを愉快そうに眺め、
高らかに笑いながら恐怖の計画を語り始める。
「クッハハハ! ここに我は予言しよう。今から三時間後、ネフテスの首都アディールは十体以上の超獣と怪獣の軍団に
蹂躙されて、ひとりの生き残りもなく地上より姿を消すであろう!」
今度は、怒りも驚愕の声も即座には流れなかった。それだけ、今のヤプールの宣言は悪夢じみたものであり、一切の
否定の余地なく、それを実行可能な戦力があると誰の目にも思い知らされるだけのものが、そこに存在していたからだ。
テュリュークだけでなく、無表情が常のビダーシャルも顔を引きつらせ、邪気に当てられて倒れかけたルクシャナは
アリィーに支えられてかろうじて意識を保っている。ほかのエルフたちも、目の前にある否定のしようのない絶大な悪の
パワーに、あるものは失神し、あるものは吐き気を覚えてうずくまる。
さらにヤプールは、異次元ゲートを背にし、才人とルイズのほうを向いて言った。
「ふっふっふ、今度という今度は我々の勝ちだ。これこそ、宇宙警備隊との決戦のために、用意していた超獣軍団よ。
まだ完全ではないが、それでもこのちっぽけな国を消し去るには十分な戦力だ。さらには、この地に眠っている怪獣たちを
マイナスエネルギーで支配して我らの手駒と化させば、この世界にいるすべてのウルトラマンが集まったとしても太刀打ちできまい!」
「なんだと! ヤプール、てめえ!」
「くぁはっははは! いまさら後悔しても遅い。恐怖の中で自ら滅ぼしあっていれば、まだしも長生きできたものをな!
マイナスエネルギーの供給源とならないなら用済みだ。死を目の前にした絶望の中で、断末魔をあげる数万の声となって
最後の役に立ってもらおう」
「やめろ! 相手にならおれたちがなってやる。関係ない人たちに手を出すな」
「そうはいかん。ここで貴様らを屠ったところで我らの怒りは治まらん! 貴様らが、守ろうと志していたものが灰になっていくのを
見て悔しがる様を見ない限りはなあ! 貴様らはせいぜい歯軋りしておけ。急いで追ってくるなら好きにするがいい、ネフテスの
滅びる様をその目で見てから死ぬだけだがなぁ!」
ヤプールは次元の裂け目に歩み去り、黒衣の人間体に代わって、異次元空間に揺らめく不明瞭な紫色の人型が多数現れた。
あれが、ヤプール本来の姿……異次元空間に集まった悪意……生き物の負の心、誰もがなくてよいと思い忌み嫌う感情が
凝り固まった形である。見れば心には恐怖が芽生え、声を聞けば怖気が走る。
「さらばだ、人間にエルフども。お前たちは運がいい、この国のほかの連中よりも少しだけ長生きできるぞ。わしの情け深さに
感謝しろ。ふはははは!」
「待て! 待ちやがれヤプール!」
才人の叫びも虚しく、異次元ゲートは消滅し、ヤプールの哄笑の余韻だけが残った。
砂漠には灼熱の太陽が戻り、陽炎がゆらめく自然の風景が戻る。
しかし、茫然自失とする暇も、現実逃避する権利も彼らには与えられていなかった。
「あと三時間で、アディールは十匹以上の怪獣と超獣に襲われる……そうなったら、アディールは終わりだ!」
あのヤプールの言葉がはったりだとはとても思えなかった。ベロクロン一体でさえ、かつてトリスタニアを焼け野原にし、
トリステイン軍を壊滅させているのだ。いかなエルフといえどもかなうわけがない。増して、現在エルフの守りの要である
空軍艦隊は半壊状態……とてもではないが、時間稼ぎすらできるかどうか。
ならば、行くしかない。そこでなにができるかなど考える必要はない、行かないという選択肢はそもそも存在しない。
東方号に人間たちはすべて乗り込み、乗艦を失ったエルフたちも全員同乗した。中にはまだ蛮人の船に嫌悪感を
示す者も少なからずいたが、彼らも自分の嗜好を表現する場をわきまえていた。
重力制御と水蒸気機関を全開にして、東方号は緊急発進する。さすが、本職のコルベールが指揮をとり、頭数が揃うと
仕事が早いもので、銃士隊だけでやっていたときの半分程度の時間で砂を蹴立てて巨体が宙に舞い上がっていく。
東方号のブリッジ、旧大和の昼戦艦橋にはコルベールとエレオノールのほかに、テュリュークとビダーシャルが招かれて
進路を指示していた。
「北北西の方向へ、それでいいのですね?」
「そうだ。大気の精霊が方向を示してくれるから、万にひとつも間違いはない。それよりも、もっと速く飛べないのか? この船は」
「残念ながら、これが全速です……」
焦った様子のテュリュークと、表情こそ変えずにいるが手足の動作に落ち着きがなくなっているビダーシャルに、コルベールは
すまなそうに答えた。
現在、東方号は可能な限りの速力を出している。蒸気釜の圧力は限界で、プロペラは千切れんばかりに回っている。
恐らくはこの世界に存在するどんな乗り物はおろか、並の竜すら追いつくことは不可能な速度であろうが、それでも彼らの
求める速さにはまったく足りていなかった。
「いくらヤプールでも、あの数の超獣を一度に動かすにはそれなりの時間が必要なはず。アディールが襲われる前に、
市民に逃げるように勧告を出さなくては取り返しがつかないことになってしまう。すべてが終わってからついても……」
ビダーシャルが、地平線しか見えない風景を睨みながらつぶやいた。彼も必死に冷静さを保とうとしているのだろう、
いつもは立ったまま不動を保つ姿勢が何度も手足を組み替えて落ち着きがない。しかしそれも仕方がない、自分の
故郷がこれから滅ぼされようとしているというのに、無感情でいられるような性格のものはそうそう多くはないものだ。
けれど、もし風竜の一頭でも残っていたとしても無駄であったろう。風竜を休ませずに全速で飛んだとしても、渇きの
大地からアディールまでは半日はかかる。前にアーハンブラ城から脱出に使った風石の装置は、携帯はしているものの
ごく短距離しか飛べない。あとあった非常用の魔法装置のほとんどは船といっしょにガランに壊されてしまった。
いくら急いでも無駄……ヤプールの勝ち誇った笑みが浮かぶようだ。時間があるだけに、ヤプールの陰湿さがこの上なく
憎らしく感じられてたまらない。
だがそのとき、東方号の両翼にヒドラとリドリアスが現れた。
「うわっ! い、いつのまに」
エレオノールが、窓外に現れた巨大な姿にびっくりして飛び上がった。だが、二匹の怪獣は襲ってくるわけでもなく、
東方号と並行して飛んでいる。
いったい、どういうつもりだ? 疑問の眼差しを向ける人間とエルフに見下ろされて、ヒドラとリドリアス、二匹の怪獣は
東方号の左右について飛んでいる。その行動に、なにかの意味があるのだろうか……? 二匹は語ることはなく、しかし
確かな意志を持ったその翼は、声なき言葉を語りかけながら風を切っている。
その一方で、医務室に運び込まれたファーティマは、かろうじてその一命を取り留めていた。
ファーティマの凶行は、すでにテュリューク統領も知るところとなっていた。本来であれば、重大な軍機違反で、そのまま
処刑になってもおかしくはなかったが、被害者側からの助命嘆願で彼女は治療を受けられることとなった。
死に掛けていたファーティマに施された、あらゆる手立ては幸か不幸か一応の成功を見た。容態は安定し、治療終了後に、
ティファニアは病室に残されたファーティマを看病すると残ろうとした。だが、鉄血団結党のファーティマのそばにティファニアを
残すことについてはほかが大反対した。それを彼女は、
「いいえ、だからわたしは残ります。この人がどれだけわたしのことが嫌いでも、わたしの中に流れる人の血は消せません。
でも、どうせ嫌われるならわたしという人間を知ってもらえた上で嫌われたいんです」
自分が理解されないのはなによりも悲しい。知った上で憎しみをぶつけられるなら、それと向き合っていくこともできるが、
知られずにただ嫌われるだけというのはどうしようもなく虚しい。ハーフエルフのティファニアの感情の吐露を聞いた皆は、
あくまで無理はしないでと言い残して、別の仕事に移っていった。
しかし、やがて意識を取り戻したファーティマは、やはりティファニアを見て怒りをぶつけてきた。
「き、貴様、悪魔の末裔のひとり。ということはここは蛮人の船の中か、私を人質に、いいや悪魔の生け贄にでも使うつもりか!」
とりつくしまもなく、ファーティマはわめきちらした。麻酔がまだ効いているおかげでベッドに寝かせられたまま動けず、暴れられこそ
しなかったものの、人と話すことがまだまだ苦手なティファニアでは落ち着かせることもできなかった。
そこへ、助け舟に現れたのがルイズだった。ルイズは暴れるファーティマにめんどうくさげに近寄ると、壁にかけてあった鏡を
外して、枕に頭を預けてあるファーティマの顔の前にかざした。
「なんだ悪魔め! 私に呪術でもかけるつもりか!」
「そんなご大層なものわたしは使えないわよ。はーい、ここで質問です。あなたの目の前にあるものはなんでしょうか?」
「……鏡だろう。それがどうした?」
「はい正解、その鏡に映ってる、青筋浮かべて目を血走らせたぶっさいくな顔した女は誰でしょうか?」
ファーティマからの怒声はなかった。ルイズが鏡をどけると、彼女は怒りとは別の感情で顔を赤く染めている。
ルイズは、ふぅと息を吐いた。人は悪事をする自分の姿を自分で見ることは出来ない、だから自分のおこないの醜愚を
知らないままに他者を傷つけてしまう。ルイズは、妄信で己を見失っていたファーティマに、己自身を直接ぶつけたのだった。
感情のままに醜く歪めていた自分の顔にショックを受けているファーティマを、ルイズはじっと見つめる。どうやら、まだ
羞恥心は残っていたらしい。ほっとする、これでなおわめき続けるほど狂っていたとしたら、それこそ鎮静剤を叩き込むしか
なかったところだった。
「大丈夫テファ、危ないことされなかった?」
「はい、ありがとうございますルイズさん。でも、ファーティマさんが……」
「ふぅ……あなた、甘いにも限度ってものがあるわよ。ミス・ファーティマ、わたしを悪魔と呼ぶのは勝手だけど、この子にぐらいは
まともに対応しなさい。命の恩人なのよ」
「な、なに? それに、どうして私の名前を」
「そんなもの聞けばわかるわよ。一応言っておくけど、ぶっそうなものは全部預からせてもらってるわ。あと、わたしはテファほど
優しくないから、魔法を使って悪いことをすればすぐに空のもくずにしてあげる。まあ、そんなことはどうでもいいわね。頭部裂傷、
全身骨折箇所五箇所、内臓破裂、打撲箇所多数、その他もろもろで心肺停止状態。あんたがここに運び込まれてきたときの状態よ。
正直、エルフの医者もさじを投げるような、ほぼ死人だったわ。そんなあんたがどうして助かったと思う?」
ルイズの言葉に、ファーティマは感覚をたよりに自分の体を確かめた。麻酔で動かないけれど、全身の感覚は確かにある。
思い出してみれば、かなり楽になったような気がした。普通では考えられないほどの治りの早さに怪訝とするファーティマは、
ふとティファニアの指にはまった指輪を見て叫んだ。
「きさまっ! その指輪は」
「は、はいっ! えっと、これはわたしの母が故郷から持ってきたものだそうです。失われかけた命を呼び戻す力があるそうで。
でも、傷まではふさげなかったので、すいません」
うろたえながらティファニアは頭を下げた。その指輪は、三十年前にタルブ村で、吸血怪獣ギマイラとの戦いで命を落とした
佐々木隊員を救った魔法の道具だった。母からこれを受け継いでいたティファニアは、あのときと同じように、これを使って
絶命しかけていたファーティマを重傷の状態まで回復させていたのだ。
しかし、指輪の力の源であった宝石はこれで力を使いきって消滅し、今ティファニアの指にはまっているのは台座だけに
すぎない。それでもファーティマは、傷が開きかねない勢いでティファニアに怒鳴った。
「そんなことを言ってるんじゃない。どうしてお前がそれを持っているんだ!? シャジャルの指輪を」
「えっ! どうしてわたしの母の名前を……まさかあなた……母の一族」
愕然とした様子でティファニアが言うと、ファーティマはそうだと怒鳴った。
なるほど……ルイズは才人と同じく、ファーティマに感じていた違和感に気がついた。そう、この二人は他人の空似と
いうには似すぎている……目つきこそファーティマのほうがやや幼げだが、それ以外の顔立ちはそっくりだ。
ファーティマは、愕然としたままのティファニアに向かって怒りをそのままぶつけた。お前の母のシャジャルがハルケギニアに
逃亡したせいで一族は裏切り者扱いされ、その日の食べ物にさえ事欠く日を送ってきたことを。
しかし、怒りのたけをぶつけるファーティマとティファニアのあいだに、ルイズが突然割り込んできた。
「そこまで、もうそれぐらいにしておきなさい」
「貴様には関係ない、邪魔をするな!」
「わたしはテファの友人よ、理由ならそれでじゅうぶん。あなたこそ、不幸自慢大会はそろそろ見苦しいわよ」
「なんだと! 他人のくせに知ったような口をきくな!」
「不幸な目にあってきたのがあんただけだと思ってるの? あんた程度の労苦なんて別にめずらしいものでもないわ。
テファだって、決して恵まれた育ち方をしてきたわけじゃない。天涯孤独で人目を避けて隠れ住む日々、むしろ苦難を
分かち合う一族がいただけあんたのほうが恵まれてるわ。わたしはね、あんたみたいに自分の不幸を売り物にする奴が
だいっ嫌いなのよ。なあにが選ばれた砂漠の民よ、あんたは誰かにかまってもらいたくてぐずる子供よ、いいざまだわ」
容赦なく、見下しきった目のルイズの言葉がファーティマを叩いた。
実際、ルイズはこういった輩が嫌いである。自分だって、ほかの貴族の子弟に比べたら、いい子供時代ではなかった。
それでも、一度たりとてそれを他人のせいにしたことはないのだ。
ファーティマは、ルイズの言葉に才人に言われたことも思い出した。あいつも同じことを言っていた。
人間としての器の違いが、ファーティマにルイズに対抗する意思を奪っていた。ただ怒鳴り返すだけならできるが、それでは
ルイズの見下した冷たい目を消し去ることはできない。
そこへ、ティファニアがおずおずとながら、しかし強い決意を込めた目で入ってきた。
「ルイズさん、わたしにファーティマさんと話させてください」
「好きになさい。わたしはもう行くわ」
ルイズは憮然として立ち去り、病室にはふたりだけが残された。
「……ファーティマさん」
「なんだ」
「母のこと、教えていただけませんか?」
「知ってどうする? お前にとって、不快になるだけだぞ」
「かまいません。わたしにとって、母の思い出は幼いときのわずかなものでしかありませんが、母はとても優しい人でした。
その母が、そこまでのことを承知でハルケギニアまで来た訳……それを知らないと、わたしはずっと子供のままな気がするんです。
それに、あなたの中の怒りや憎しみ、それがわたしを相手に吐き出せるなら、あなたを少しは楽にしてあげることができるかも
しれません……ですから、わたしを憎んで怒ってください……それがあなたの生きる糧になるなら、わたしは受け入れます」
「……」
悪魔と呼んでいた相手に、完膚なきまでに負けている。その屈辱が、ファーティマの心を焼いていた。
人それぞれの人生と戦い……誰しもが、そのドラマの中では主役であり、脇役に下がることは許されない。
すでに遺跡を飛び立ってから二時間が経ち、景色はまだ変わり映えを見せない。
東方号の後部艦載機格納庫。才人はそこで、ゼロ戦をいつでも発進可能なようにエンジンを温めている。
「なにも起らねえはずはないと思ってたけど、悪い予感ってのはたいてい頼みもしないおまけを引き連れてやってくるよな。
十匹以上の怪獣軍団か……さて、勝てるかな?」
才人は、これから起きるであろう戦いが、間違いなくヤプールとの最大の激戦になるであろうことを予測していた。
果たして、ウルトラマンAと未完の東方号でどこまで戦えるか。
しかし、不思議と負けるとは思っていない。それは絶望を糧とするヤプールへの無意識の反抗か、才人にはわからない。
だが決して、あきらめではない。
死闘が待つアディールへ向けて、東方号はひた走る。
続く
今週は以上です。
>>438の方、応援ありがとうございます。
さて、この物語もターニングポイントに近づいてまいりました。
ついに本気を出したヤプールと、人間とエルフの存亡をかけた戦い。プロットを決めてコツコツと書いてきましたが、
あっというまにこんなところまで来てしまいました。
虚無に関する謎も、この作中なりにしだいに解けてきて、この世界の4の4の4に決着がつく日も遠くないかもしれません。
ですが、タバサの帰還に関する物語など、まだハルケギニアでもしなければいけない課題が残っていますので、
まだまだ終わりはしません。
お知らせ
いつもウルトラ5番目の使い魔を読んでくださいましてありがとうございます。
さて、話数も早いもので80話を超え、物語もきりのよいところに入ってまいりました。
そのため、このサハラ編を最後として第二部を終了しようと思います。
85話以降は執筆中ですが、ここばかりはじっくりと書き込みたいので、来週、もしくは再来週まで休載いたします。
第二部もずっと応援していただき、ありがとうございました。レスのひとつひとつをうれしく思っています。
二部終了後、三部を完結編とします。
ウルトラの人、乙でした
二部クライマックス、そして三部も楽しみにしています
>>429 聖水って魔物以外にも効くんけ?
ザビエラ村のエルザには特攻だろうけどなあ
あ、でもキリスト教の聖水が異世界の魔物にも効くのかな
ディーキンの人そろそろ来てもいいんやで
では、15:10ごろから投下させていただきます
「…はあ? あんた、ここまで話させておいて、いまさら一体何を言い出すのよ!
しばらくしたら使い魔を辞めるなんて、そんなの通るわけないでしょ!」
「その、ええと……、ゴメンなの。使い魔の関係が大事なものだってことは、ディーキンもわかってるの…」
こちらのメイジは違うかも分からないが、フェイルーンではメイジにとって使い魔とは、失えば一年と一日の間は代わりを迎えることも叶わない大切なパートナーだ。
使い魔は単なるペットやドルイドが持つ動物の相棒とは根本的に違う。
メイジは使い魔とする動物に己の力を注ぎ込んで魔獣とし、単なる動物を超える力や知能、多くの特殊な能力を与え、テレパシーによる意思疎通を作りだし、まさに自分の分身としている。
たとえ己の使い魔にさえ一片の好意も抱かないような心底冷酷なメイジであっても、使い魔を意味もなく酷使し無駄に危険に晒すような者はまずいない。
もしも使い魔が死ねば、メイジはその使い魔に注ぎ込んだ己が力の幾許かを失ってしまうためだ。
失った力は経験を積めばまた取り戻すこともできるが、決して軽んじられるほどに小さな損害ではない。
それは使い魔を解雇した場合でも同じこと。
解雇すれば主従の結び付きによる特殊能力は失われるが、それでも、その使い魔はもはや動物ではなく魔獣であり、それは解雇しようが変わりはしない。
ゆえにその使い魔に注ぎ込んだ力はメイジの元へ戻って来ることはなく、使い魔が死んだ場合と同じく失われてしまうのである。
そのリスクゆえにあえて使い魔を持たないメイジもいるし、使い魔との契約は一生ものの重要な決断となる。
つまり、仮にこちらのメイジもフェイルーンのメイジと同じだとしたなら…、
しばらくしたら使い魔をやめさせてくれということは、短期間の契約と引き換えにお前の力の一部を永遠に自分によこせと要求しているのに等しい。
こちらは使い魔にされるとは知らなかったとはいえ、あちらが使い魔を持つという大切な決断をして行ったであろう召喚に応じたのだ。
同意して召喚に応じてきたはずの相手が突然そんな無法な要求をしたなら、腹を立てるのは当然であろうということは、ディーキンにだって分かる。
「だったら、ちゃんと一生私に仕えなさいよ!
あんたは私の召喚に応じたし、さっき説明した仕事の内容に文句も無いんでしょ?
なら、なんでしばらくしたら辞めるなんて言うのよ!?」
「ああ…、その、本当にゴメンなの!
本当はディーキンもルイズに迷惑はかけたくないの!
使い魔になるんならずっと主人と一緒にいるべきだってことは、ディーキンもその通りだと思うんだけど…」
ディーキンは本当に申し訳なさそうな態度で謝罪し、一度頭を下げてからじっとルイズの顔を上目遣いに見つめる。
怒鳴られて反射的に少々怯えたような態度になってしまったが、別に媚びているわけではない。
申し訳ないというのは正真正銘、本心からである。
ディーキンはしばしば他人に対してぶしつけな質問もするが、それは単にコボルドゆえに異文化の常識に疎いためだったり、もしくは純粋な好奇心から来るものであって、悪意があっての事ではない。
単に気分を損ねる以上の実害が相手にあるであろうことを、それとわかっていながら要求したりは、普通ならばしないのだが…、
今の場合はこちらとしてもどうしても譲れない事情あってのことで、あえてルイズの怒りを買ってでも話しておかなくてはならないのだ。
「………」
その態度を見ていくらか落ち着いたルイズはそれ以上怒鳴りつけるのは止め、不承不承、ディーキンを睨みつけながらも話を聞いてやろうとする。
「…けど、何よ。 一応聞いてあげるから、言ってみなさい」
「ありがとうなの、その、ディーキンはここに来る時、使い魔をしなきゃならないことは知らなかったのは話したよね?
ええと、ディーキンは、ここに来る前の場所に友だちもいたし、ちょっと離れていたけど自分の部族の仲間もいるし…、いつかきっとやり遂げたい目標もあったの」
「……………」
「ディーキンはしばらくはここにいたいけど、そのうちには帰って、みんなに会ったり、夢を叶えるために頑張りたいんだよ。
もしここがどこかわかってて、ディーキンの故郷に近いところだったら、使い魔の仕事も一緒に続けても構わない。
でも、さっきから話してた感じだと…、お互いに知らないことが多いみたいだし、きっと随分離れてると思う。
だからその時になったら、本当にゴメンとは思うけど…、ディーキンをクビにして、誰か別の使い魔を呼んでほしいの。
もし駄目だったら、その…、きっと迷惑だけど、ディーキンはルイズの使い魔になるわけにはいかないの」
それを聞いたルイズは、困惑したような表情を浮かべて黙り込んでしまう。
召喚に応じておきながら勝手なことを、と腹を立てたが、この使い魔は契約が一生のものだと知らずに応じたのだという。
それでも動物や大した知能を持たない幻獣の類であれば、寝食の面倒を見て、適齢期には番いの世話もしてやって、野生に生きるより恵まれた生活を保障してやれば不満を訴えてくることもないだろう。
だが、この使い魔は亜人とはいえ高い知能を持っていて、先ほどから話す限り人間と精神面でも大した差はなさそうだ。
人間なら、家族もあれば友人も、それまでの生活もある。
衣食住の世話をして面倒を見てやるから一生仕えてもらってもいいだろうといわれても、それで満足であるはずがない。
それでも仮に亜人ではなく人間の平民であれば、貴族に仕えられるのだし、時には家族に会いに行っても構わないから、というような対応もできたのだろうが…。
この使い魔は、本人も言うように一体どこからやってきたのかもよくわからない亜人なのだ。
しかもまだ子どもと来ている。
小さな子が少し旅に出るくらいのつもりで好意から召喚に応じたら、一生家族や友人から引き離されてしまい、将来の夢も捨てて使い魔をしなくてはならない…。
そんなことを言われたら、しばらくしたら帰らせてくれ、というのも当たり前だろう。
いや、もしも自分が同じ立場なら、きっとこの亜人のように大人しくしてなどいられないだろう…おそらく大騒ぎをして、すぐ帰せと暴れていたはずだ。
そして、使い魔が召喚直後にがなり立てて暴れたら…、主人のほうは、どうしようもなく反抗的な使い魔だと結論して、ろくに話も聞かず強引にさっさと契約をしてしまっていたかもしれない。
少なくとも自分だったら、そうしていなかったとは言い切れない。
そうなれば当然主従の仲は壊滅的に悪化し、ようやく呼び出せた使い魔にまで憎悪と軽蔑の眼差しで見られ、最悪夜逃げでもされて完全にメイジ失格ということも……。
そんな“最悪の展開”について考えると、ルイズはぞっとしてきた。
確かにこの使い魔…いや、亜人の子の要求はもっともだし、この子どもが冷静に対応してくれたおかげでそんな悲惨な展開を避けられたようなものだともいえる。
最初は一方的に腹を立ててしまったが、そう考えてみると亜人とはいえ小さな子どもが、このような状況で落ち着いた対応をしていられることにむしろ感心してしまう。
…が、しかし。
(…そういわれても、こっちにも引けない事情が…)
ルイズはどうしたものかと、後ろで見守っている教師の方を振り返った。
見れば、コルベールもいささか困った様子で渋い顔をしている。
「あの、ミスタ・コルベール。私の使…いえ、この亜人はこういってるんですけど…。
その、時間も無いとは思いますけど、もう一度やり直させてもらうわけには…」
そう聞いてみるが、案の定コルベールは少し迷った様子を見せたものの、申し訳なさそうに首を振る。
「……残念だが、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。
一度呼び出した使い魔を変更するなどという例外は、私の権限では認められない。
彼の言い分は分かるし、気の毒だとは思うが…」
「……やっぱりそうですよね……。で、でも、使い魔はメイジにとって一生のパートナーです。
彼が納得していないうちに無理に契約を進めるわけにはいかないと思うのですが…」
「……うむ、確かにそれはそうだが…」
コルベールとしても、これは少し予想外なことになったなと悩んでいた。
召喚された使い魔がこのような要求をしてきたという例は、知る限り過去になかった。
通常使い魔は契約を拒否などしないし、ましてや殆どすべての使い魔は召喚された時点で人間と会話できないのだから要求などを突きつけてくるわけもない。
要求をのめば伝統に反することになり、それはこの神聖な儀式の監督者としての立場上、認めるわけにはいかない。
かといって、使い魔の意志を無視して契約を強行してしまえば済むという話ではない。
先程からの遣り取りや使った魔法を見る限り、まだ未知の部分は多いとはいえ特に危険な相手というほどの事はなさそうだが…、
抑え込んで契約を強行するようなことは使い魔に対するモラルに反しているし、お互いにとって悔いが残る結果になる。
何よりも使い魔のルーンには獰猛な生物でも大人しく従順にさせる効果があるといわれてはいるが、このように高い知能を持ち、明確に契約を拒む意志を示した相手の心をがらりと変えられるほどの効き目があるとは思われない。
普通は現れた生物が契約を拒むということはないので、そのようなケースでどうなるのかはっきりとは断言できないが…。
強引に契約しようものならこちらに失望して隙を見て逃げてしまうか、最悪、主人やその周囲の人間に牙を剥くようなことだってないとは言い切れない。
となると、どうしたものか。
ディーキンの方はそんな遣り取りをじっと聞いていたが、2人が悩んで黙り込んでしまうと口を開いた。
「ウーン、ちょっといい?
伝統とかはよくわからないけど、ディーキンは使い魔をやらないとはいってないの。
引き受けても構わないしむしろ喜んでやるの、ただしばらくしたらお暇をもらいたいってだけだよ?
ええと、契約を取り消したりするのが大変で、迷惑なお願いなのはわかってるけど……、何をそこまで悩んでるの?」
脇から質問されたルイズは、呆れたように溜息をつくとディーキンを軽く睨む。
「…あんた、自分の要求したことの大きさが全然わかってないのね。
迷惑も何も、使い魔は一度契約したら解雇なんてできないのよ。
あんたが死なない限り次の使い魔は呼べないし、どっちかが死ぬまで契約を取り消したりもできないの」
「…そうなの? アー、じゃあ、ディーキンは勘違いしてたみたいだね…」
契約が自分の意志で解除できないと聞いて首をひねる。
死ぬまで解除できないということは…、逆にいえばどちらかが死ぬと、契約が解除されるということだろうか。
フェイルーンの使い魔は、死んでも《死者蘇生(レイズ・デッド)》などの魔法で蘇生させれば、使い魔のままで甦る。
逆も然りで、主人が死んでも使い魔は依然として魔獣のままであり、単なる動物に戻ったりはしない。
主人と使い魔の契約は、死によっても終わらない魂と魂の繋がりなのだ。
実際、アンドレンタイドの遺跡で出会ったネズミの元使い魔は、主人が死んだ後も非常に長い間、魔獣として地下に埋もれた都市に閉じ込められたまま生き続けていた。
そういえばえらく愚痴っぽくて、『ファミリアが死ぬと主人がどうなるってのはよく言われるのに、その逆は誰も気にかけてくれやしない!』などとぼやいていたが…。
あの時は聞き流していたけれど、まさか自分も同じ使い魔の立場になるとは思わなかったなあ…、とディーキンは感慨にふける。
(…にしても、死んだら契約が終わりってヘンな仕組みだね。不便じゃないかな?)
どちらかが死ぬ度にいちいち契約が切れていたら、日常的に厳しい戦いを続ける冒険者のメイジにとっては困ったことにならないだろうか?
これは死からの蘇生がほぼ有り得ないハルケギニアと、それが珍しいものではないフェイルーンの事情の違いによるものなのだが……、そのようなことを知らないディーキンには随分奇妙に思えた。
まあ、それはさておきそのような仕組みであれば最悪どっちかが死ぬ(そして蘇生する)という方法もありそうだが、何度も経験のあるディーキンにとっても死ぬのは気分のいいものではない。
自分もわざと死にたいとは思わないし、他人にそんな要求をするほど非常識でもない。
となるとどうしたものか、とディーキンはしばらく考え込んだが……、じきに何かに気が付いたように明るい顔になって頷く。
「…アア! それなら簡単に解決できると思うの。
つまり、ディーキンはルイズと契約をしなきゃいいってことなの」
「はあ? …あんた、意外と賢いのかと思ったけど状況が分かってないみたいね。
使い魔を持たなくて済むならこんなに悩んでないわよ…、伝統のこともあるし、使い魔を持たないと私は進級できないのよ!」
「…ええと、進級とかのことは知らなかったけど、ルイズは勘違いしてると思うの。
ディーキンはちゃんと使い魔をやるよ、ただ、契約をしないってだけなの。
どんなことをやるのかは知らないけど、契約を済ませなきゃ新しい使い魔が呼べないことにはならないんでしょ?」
「…な、…あ、あんたねえ…、そんなことが本当に認められると思ってんの?」
ルイズは呆れたようにそういうが、ディーキンは不思議そうに首を傾げる。
「ンー…、ディーキンはあんたたちの伝統とかのことはよくわからないけど、何かマズいの?
契約はしないで使い魔はするってことにすれば、その…、使い魔を持たなきゃいけないっていう伝統にも反しないし、もう使い魔が呼べなくなるっていうこともないと思うの。
それが一番いいとディーキンは思うんだけど……」
「そ、そりゃまあ理屈の上ではそうかもしれないけど…。
これは…、つまり貴族の伝統の上の問題で、そんな簡単なことじゃないのよ!」
「…ええと、ルイズの言うことはディーキンにはよくわからないの。
なんでそんなに、契約とかをすることにこだわるの?
理屈の上で問題がないならそれでいいと思うし、他にいい方法がないならなおさらのことだと思うの」
そういってから、ディーキンは少し考え込んで何かさらさらとメモを取るとまばたきしてルイズの顔を見つめる。
バードは放浪者であって、法と伝統ではなく自由と直観を重んじるのだ。
「…それとも、ルイズはちゃんと契約しないとディーキンが仕事をサボると思ってる?
ディーキンはいい冒険者なの、いい冒険者は契約違反なんかしないんだよ。
アー、それに、ディーキンは伝統の事もこっちの事もよく知らないけど、使い魔ってのはきっと主人と信頼し合うのが一番大事だと思うの。
もし、ルイズがちゃんと契約しないとディーキンの事を信頼できないっていうんだったら、やっぱり別の使い魔を呼んでもらったほうがいいと思うけど…」
「い、いや、…なんていうか。
私個人はあんたを信じないわけじゃないのよ。私は、まあ…それでもいいんだけど」
ルイズはちらりとコルベールの方を伺った。
コルベールは咳払いをすると、ルイズの代わりに進み出てディーキンと向き合った。
「あー、…使い魔君、君のいうことはなるほどその通りだとは思うのだが…。
君の主人のミス・ヴァリエールは、二年へ進学するにあたって、君とちゃんと“契約”をして使い魔としなくてはならない。
それが、当学園におけるこの春の使い魔召喚の儀式での伝統で…」
「ウーン…、じゃあ、あんたには他に何かいい方法があるの?」
「いや、方法は思いつかないし、君の意志を無視する気もないが、しかしだね。
…なんとか納得してもらって契約をするわけにはいかないのかね?
ミス・ヴァリエールも君に十分な暮らしを提供できるはずだし、新しいいい人生の目標も与えてくれるだろう。
それにメイジとして君の家族や友人がそうしてくれたのと同じように、パートナーの君のことを大切に…」
コルベールは何とか穏便に説得しようと、しゃがみ込んでディーキンと顔の高さを合わせながらそう説明した。
この亜人はなかなか賢く落ち着いているが、ミス・ヴァリエールに怒鳴られた際に見せたやや怯えたような気配や子どもっぽい話し方からは、幼さと控えめな性格も伺える。
ゆえに、脅すようなことをせずともこちらの理を説いてじっくり説得すれば、最終的には納得し譲歩して契約を受け入れてくれるだろうと考えたのだ。
だがディーキンは、まっすぐにコルベールを見つめ返すとはっきりした意志を込めて首を振った。
「それは、ダメなの。ディーキンは、ルイズがボスとか、おばあちゃんとか、ヴァレンやディランとか、みんなの代わりになるっていう意見には反対だよ。
新しいご主人が前のご主人の代わりになるとか、一人の友だちが別の友だちや家族とかの代わりになるっていうのは、どっちにも失礼な話だと思うの。
それにディーキンの目標っていうのは、前のご主人様とか、ボスとか、誰かからもらったものじゃないからね。
みんなはディーキンにいろいろ教えて、ディーキンを変えてくれたけど…、最後にそれを決めたのはディーキンだけでだよ。
ルイズはきっといい人だとは思うけど、誰もディーキンに他の人生は与えられないの」
コルベールはわずかに困惑してたじろぐ。
今の視線と返答には、この亜人のこれまでの言動からは予想できないほどに、堅い意志が感じられたのだ。
ディーキンはそんなコルベールの表情をじっと見つめながら、さらに言葉を続ける。
「…ディーキンの方は、ルイズと契約しても本当に帰りたくなった時には勝手に出ていくことだってできると思うし、そんなに困らないの。
だけど、そうしたらルイズはもう新しい使い魔が呼べなくなるってことだよね。
そしたらきっとルイズは困るよ。ディーキンはせっかく呼んでもらったのに、ルイズを困らせたくないの。
でもディーキンも自分の人生はあきらめたくないし、ずっと帰れないのは困るの。
それで新しい使い魔を呼ぶのもダメなんだったら、もう契約をしないで、使い魔を変えていい時になるまでディーキンがやるしかどっちも困らない方法はないと思うの」
「それは…、しかし…」
「ンー…、ルイズもさっき、自分はそれでもいい、っていってたよ?
ディーキンはちっぽけなコボルドだし、あんたとは会ったばかりなの。
だから、別にあんたにディーキンの気持ちを大事にしてくれとか、そんなにずうずうしいことは頼まないよ。
でもあんたはたぶんルイズの魔法の師匠だよね?…だったら、弟子の事は大事にしないとダメだと思うの。
あんたにはちっぽけなディーキンのためじゃなくて、ルイズのために考えてほしいの。
ディーキンにはよくわからないけど、その決まりはルイズ自身の意見とか幸せとか、将来とかより大事なの?
きっとディーキンのボスなら、それはいい考えだとは思わない、っていうと思う」
「…、う、うー…む……」
コルベールは唸った。
この亜人の言うことは、確かに理屈の上ではいちいち筋が通っている。
契約を拒んでいる点はともかく、その理由が自分のためではなく主のためだというあたりは使い魔としても立派な態度であると言わざるを得ない。
こちらを言いくるめるためにそんな建前を持ち出してきたのだとすれば見た目に似合わぬ機転だが…、表情や態度を見る限り、すべてこの亜人の本心なのだろう。
これでは伝統と慣例のために契約しなくてはならないと押し通して納得させることなど、到底できそうもない。
また正直に言って、こうも純粋な態度で接してくる相手に対して、そんな不誠実な対応はしたくもない。
そこへ、横合いから今度はルイズが発言する。
「ミスタ・コルベール、私もこの亜人…、いえ、ディーキンの意見を支持します」
「ミス・ヴァリエール、君まで…」
「私も彼と同じように、よく考えた上でそれ以外ありえないと結論したつもりです。
貴族にとって、メイジにとって、伝統は重んじるべきものです。
ヴァリエール家の三女として、由緒あるトリステイン魔法学園で長年続いた伝統に逆らわなくてはならないことは残念です。
ですがメイジの中には一生使い魔を持たないというものもいるのですし、これはあくまで当学園の中における伝統であるはず。
それに対して使い魔をパートナーとして尊重することはすべてのメイジにとっての伝統であり、義務です。
どちらをより重んじなくてはならないかは、明白だと考えます」
「………む…」
今度はルイズの表情にも、迷いのないはっきりとした意志が見て取れた。
元々感情的になりやすくプライドも高く、ちょうど多感な年頃でもあるルイズにとって、先ほどのディーキンの発言は心を動されるに十分だったのだ。
彼女が感じたのは、呼び出したばかりでまだ契約もしていない…今後も永遠にしないかもしれない使い魔が、こちらの事を第一に考えて教師の説得までしてくれていたということに対する感動と、そしてある種の屈辱感。
ディーキンにとっては些細な事かもしれないが、落ちこぼれと蔑まれ続けてこれといった友人もなく過ごしてきたルイズにとって、彼の言葉は大きな喜びだったのだ。
対して自分は…、伝統を重んじなくてはならないからといいつつも、頭の片隅ではせっかくなかなかよさそうな使い魔を引いたのに、契約ができなかったらどうなるのか、
そうすれば他の生徒らにまたどんなに嗤われるかと心配していて、自分の代わりに教師がこの使い魔を説き伏せてくれることを期待していはしなかったか?
そんな気持ちが少しも無かったとは言い切れない、だからこそ自分は途中で助けを求めるように教師の方へ話を振ったのでは…。
そういった自分の心の動きに気が付いたことが、強い屈辱感を呼び起こした。
使い魔が…それも亜人とはいえ異郷の地に呼び出されたばかりという子がこうもしっかりしているのに、主人の自分がただ教師と使い魔のやりとりを眺めるだけで他力本願で事態が片付くことを願ってしまっていたとすれば…、
それは彼女にとっては大きな恥だ。使い魔が頑張っているというのに主人の側はなりゆきで事態が解決することを望んで何もせずただ傍観しているなど、断じて彼女の信じる貴族の態度ではない。
「…もしどうあっても当学園内では認められない行為ということでしたら、私は――」
「い、いや、待ちたまえミス・ヴァリエール。
君たちの言うことは実にもっともだ、だから早まったことは言わないでくれないか」
慌ててコルベールがルイズの言葉を遮る。
認められなければ退学するとでも口に出しかねない様子だったし、そんなことになれば、状況がますます厄介になってしまう。
コルベールとしてもこの2人の素直な気持ちには感じるところがあるし、認めてやりたいのは山々だ。
だが今年度の監督役とはいえ自分はあくまで召喚の場に立ち会っているだけの一教師で、立場上そのような例外を独断で許可するわけにはいかないのだ。
それに、伝統であるからという建前の問題以外にも、いろいろ考えなくてはならない事がある。
(…ミス・ヴァリエールやこの亜人の子にとっては、今の私は頑迷極まる教師としか見えないだろうな。
だがたとえ双方納得の上と言ってもミス・ヴァリエールにとっては辛いことになるだろうし、2人の間だけの問題で済むという話でもない。
私としては、場の雰囲気に流されて軽率に許可を出すわけにはいかん…)
彼女は落ちこぼれとして常日頃から心無い生徒らに貶められている。
先程も召喚したのは平民の子のように役立たずのコボルドだなどと言って囃し立てられていた。
仮にも珍しい亜人を召喚したというのにあんな偏見に満ちた罵詈雑言を浴びせられたのは、彼女に対する蔑視が決して軽いものではないという証左だ。
なのにこの上正規の契約をできなかったなどと知れようものなら、どんな辛い思いをすることになるか。
この亜人は皮鎧などを身に纏っているから、ルーンは鎧に隠れているのだとでも説明しておけば、当面は誤魔化せるだろう。
しかし亜人だって水浴びなどで鎧を脱ぐ機会もあるだろうし、いつまでも露見しないなどとはとても考えられない。
気の強い彼女は、契約していないのは事実だしそんな批判は平気だ、とでも言って強がるだろうが、彼女が嘲笑されるというだけでは済まない。
いくらこの亜人に危険はないと自信を持って断言できるとしても、それは所詮コルベールや、最終的にその決定を承認する学院長の独断でしかないのだ。
契約も結ばせていない亜人を学園内に置いているなどとなれば、安全管理の不備や伝統の軽視を生徒らの親族などが責めるだろう。
最悪王宮などにも連絡がいき問題視されて、責任者である自分や学院長は罰を受け、亜人の方は処分されてしまう…、などということも有り得る。
賢いとはいえまだ子どもの2人は、お互いの尊重はしてもそこまでは考えていないだろうが…、これらの事柄について説明し、考え直すように勧めるべきだろうか?
(…いや、2人が既に合意している以上ここで二対一で話し続けていればそのうち私まで彼女らの意見に流されて迂闊な決定をしてしまいかねん。
できれば私一人で解決したかったが…、こうなった以上学院長に事情を伝えて裁定を仰ぐべきだろうな。
できれば、問題が解決して2人の望みに沿う形の結論が出ればいいのだが…)
そう考えをまとめると、コルベールは咳払いをして顔を上げ、2人と向き合う。
「…あー、君たちの考えはわかったし、言い分は実にもっともだと私も思う。
しかし、私は儀式の監督を任されているとはいえあくまで一教師にしか過ぎないのだから、学院の伝統を覆すような決定を下す権利はない。
君達は学院長に直接会って話を通すのがいいだろうと思うが、どうかね?」
「え…、オ、オールド・オスマンにですか?
その、でも。流石に、契約もしていない亜人を学院長のお部屋には……」
「ンー、…学院長? それって、あんたたちのボスの事?」
「まあ、そんなようなものだよ。
心配しなくても学院長は相手の身分にこだわられる方ではないし、ちゃんと私の方からも君達が面会して事情を伝えられるように話そう。
……今の時間なら部屋に居られるはずだから、すぐ会えるだろう。
授業の方はもう始まってしまっていることだし、それも学院長に伝えて公欠扱いとしよう。ついてきなさい」
コルベールはそういうと自分の杖を持ち上げたが…、すぐにルイズが飛べない事を思い出してフライの詠唱を止め、2人を先導して歩き始める。
ルイズは学院長と直接話さねばならないことにやや緊張しながらも、あわててコルベールの後に続いた。
ディーキンは、ルイズらが先程の生徒たちのように飛んで行かないことについては、特に疑問は持たなかった。
フェイルーンの常識では、空を飛ぶ魔法が使えるメイジだからと言って日常的に飛んだりしないのは当たり前である。
もし魔法を使わなくてもある仕事を実行することが可能であるのなら、フェイルーンの大部分の場所と状況においては、魔法でない手法が取られる。
簡単に空を飛んだり瞬間移動したりできるくらい強力なウィザードでも、隣町に行くのに特に急ぐ理由がないなら、普通は2本の脚で歩くものだ。
本当に必要な時のための魔法を温存しておかず、日常的に便利な魔法ばかり用意して気軽に消費してしまうのは愚かなウィザードである。
ほんの一発《電撃(ライトニング・ボルト)》を撃てば、たった一回《魔法解呪(ディスペル・マジック)》を使えば、それで自分の命を救えるという状況にいざ直面した時に、それを持っていないなどという事になったら目も当てられないではないか。
授業が始まってしまうとかいっていたし、先ほどのメイジたちは急いでいたからやむなく飛行の呪文を使用したのだろう、とディーキンは考えていた。
今の場合、もう急いでいないのだから飛ぶ必要はないのだ。
それはさておき、ディーキンも自前の翼があるとはいえそれほど速く飛べるわけではないし、歩くより飛ぶ方が楽だというわけでもない。
自分もまた羊皮紙にこれまでのメモを取りつつ、のんびりと2人の後に続いた…。
必要かどうかわかりませんが一応作中の用語解説的なものを
単位
1フィート=30.5センチメートル
1ポンド=454グラム
プレスティディジテイション
Prestidigitation /奇術
系統:共通呪文; 0レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:10フィート
初心者の呪文の使い手が練習のために使うもので《初級秘術呪文(キャントリップ)》とも呼ばれ、発動すると術者は一時間の間単純な魔法の効果を起こすことができるようになる。
1ポンドまでの物質をゆっくりと持ち上げたり、小さな物体に色をつけたり、きれいにしたり、汚したり、冷やしたり、暖めたり、匂いをつけたりできる。
粗雑な脆い物体を生み出したり、仄かに輝くボールを掌の上に浮かべたり、微かな音楽の音色を作り出したり、食べ物の味や香りを良くしたり、つむじ風を起こして埃を払ったりなどもできる。
ダメージを与えたりはできず、この呪文で起こした変化は単に物体を動かすといった程度のものを除けば最大一時間で元に戻ってしまう。
ディテクト・マジック
Detect Magic /魔法の感知
系統:占術; 0レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:60フィート、中心角90度の円錐形の放射範囲
術者は魔法のオーラを感知する。明らかになる情報の量は、術者がどれだけ長い間特定の範囲や対象を観察するかによる。
1ラウンド(6秒)の観察で魔法のオーラの有無、2ラウンドでその数と最も強いオーラの強度(希薄、微弱、中程度、強力、圧倒的)、3ラウンド目には各オーラの強度と位置が分かる。
術者の知識次第ではオーラの属する系統やマジックアイテムの特性も判別できる。
破壊されたマジックアイテムや既に終了した呪文の希薄な残留オーラも感知でき、木の扉や土壁、薄い鉄板程度であれば効果範囲は貫通してその背後まで調べられる。
本作品の設定上、ディーキンはこの呪文を《永続化(パーマネンシィ)》して自身に定着させており、自分より高レベルの術者に解呪されない限りは精神集中するだけで常時この呪文の効果を起動できるものとしている。
高レベル冒険者がいくつかの呪文を《永続化》させていることはむしろ当然なので。
今回はここまでです
えー、前回の最後に今回で契約の件はケリがつくだろうなんてウソをいってしまいましたが…、
まあ、その、大体は片が付いたのではないかなーということで…
次回にはきっと初日の夜くらいは明けるよ、きっと!
まあそれはさておき…、
お互い何が何だかわからんうちに契約を済ませてしまう展開ならともかく、
双方冷静になって話し始めた場合、実際少なくともこの程度は相談する必要はあると思うのですよ
展開の遅い作品ではありますが、
どうぞ次回もよろしくお願いいたします
4月からはまた忙しくなるかもしれませんが、できるだけ早く書きたいと思います
乙です
展開は遅くても丁寧に描写してくれるのなら一向に構わんッッ
次回も期待しています
463 :
一尉:2012/04/01(日) 16:43:22.55 ID:GlYLai9z
宇宙人を召喚にするルイズ
腹一杯食わせてくれる方が嬉しい
ディーキンって韻竜って言われそうな微妙な位置にいるよね
ディーキンみたいなリザードマンっぽい種族ってハルゲニアにいるのかね
投下乙!
想像が膨らむSSだなぁ
投下乙でした!
丁寧な分には一向に構わないですよー
続きも期待してます!
>>463 モロ星人ですねわかります
皆様、投稿お疲れ様です。こちらも続きが書けましたので19:30頃から投下しますがよろしいでしょうか
Mission 23 <時空神の記憶> 前編
スパーダと別れたルイズ達は帰還報告のためにシルフィードで直接、王宮の門前へと降り立ったのだが現在は王宮上空の飛行は禁止されているらしく、
魔法衛士隊の一つであるマンティコア隊に取り囲まれ、警告されてしまった。
せっかく命を掛けた密命を成してきたというのに少々残念な出迎えだったが、ルイズは毅然とした態度で自分の身分を明かしつつ
アンリエッタ王女への謁見を取り次ぐように頼んだ。
マンティコア隊に初めは疑われはしたものの、すぐにアンリエッタ本人が現れたことで一行の疑いは晴れることになった。
入城したルイズ達はアンリエッタに事の報告を行った。手紙を取り返したこと、ワルドが裏切り者であったこと……。
アンリエッタはショックを隠せなかった。国内に裏切り者がいたという事実、そしてウェールズが亡命してくれなかったことに。
彼女はやはりウェールズに亡命を勧めていたのだ。だが、ウェールズはアンリエッタの思いに反し、玉砕の意思を貫いた。
彼が生きていてくれるのであれば名誉を捨ててでも亡命して欲しかったと、ウェールズへの思いを口にし、彼女は涙を流していた。
ルイズはウェールズから預かった風のルビーを形見としてアンリエッタに渡し、彼からの遺言であるの言葉を伝えた。
――何があっても、決して私のことを忘れないで欲しい。
その遺言を聞きアンリエッタは誓った。自分はこれからウェールズの分まで強く生きて行こう、と。
報告を終え、シルフィードで魔法学院へと戻ってきた一行を待っていたのは、いつもと変わらぬ平和な時間だった。
先に戻っていたらしいスパーダは何事も無かったように男子生徒達に剣術の指南を行っていた。ワルドとの戦いで乱れてしまった髪は既にいつものオールバックに戻っている。
いつもならその指南に真っ先に参加するギーシュであったが、今度ばかりはそれができなかった。
ルイズもまた、学院長のオスマンにも報告を終えた後、スパーダと一言も言葉を交わすことはできなかった。
あの時に見てしまった、彼の姿。それを思い浮かべるだけで恐怖を感じてしまうからだ。とてもいつものように振舞うことはできない。
だからこそ、彼の全てを知らなければならなかった。そうしなければ、この心の曇りが晴れることはないのである。
男子生徒達の指南を終えた後、彼は日が落ちるまで図書館で入り浸っていた。
タバサも同じく図書館へと訪れ、彼の近くで本を読んでいたのだが、元々無口である彼女から積極的に話すことなどないし、その逆も然りだった。
彼女の使い魔、シルフィードはスパーダのことを悪魔≠ニ呼んでいた。その真実が、あの時に目にしたあの幻影の姿のことだったのだろうか。
いずれにせよ、彼女もスパーダの全てを知りたかった。本当に彼が悪魔なのかを。
結局、夜が更けた頃になって一行は約束通りにルイズの部屋へとこっそり集まってきていた。
ルイズは元々、部屋の主なので集まるも何もない。隣人のキュルケ、同じ寮塔のタバサ、男子寮から来たギーシュ、そして窓からレビテーションの魔法で入り込んできたロングビル。
五人の生徒と秘書は、腕を組みながら椅子に腰掛け静かに瞑想しているスパーダの近くに集まった。
部屋の中には、廊下に置かれていた時空神像がいつの間にか運び込まれている。
「スパーダ、聞かせてちょうだい。あなたは一体、何者なの? あなたは人間ではないの?」
初めに口火を切ったのはルイズだった。単刀直入に問いただそうとするその表情には僅かな恐怖と不安が入り混じっている。
目を開いたスパーダは腰を上げると、閻魔刀を手にしながら時空神像へと歩み寄る。
「この時空神像は時の傍観者と呼ばれ、世界のありとあらゆる出来事を記憶している。そして、その記憶を私達が見ることも可能だ」
ルイズの問いには答えず、スパーダは閻魔刀の刃をゆっくりと鞘から抜き出すと、右手の手袋も外した。
そして、閻魔刀の刃を右手で強く握り締める。
「ちょ、ちょっと……」
キュルケが思わず声を漏らした途端、スパーダの右手からジワリと血が滲み出てきた。
ポタポタと鮮血が滴り落ちる中、スパーダは血に塗れた右手を時空神像へとかざす。
『汝、魔族の血を捧げし者よ。我に何を望む』
時空神像に血が降りかかった途端、その像から威厳に満ちた男性の声が響いてきた。
彼がバイタルスターなどの秘薬を作る際にも聞いたことがある声とはいえ、やっぱり怖い声だ。
神像からの問いに対し、スパーダはちらりとルイズ達の方を振り向くとその顔を値踏みするかのように見回していた。
やがてその視線がタバサで止まる。
「お前が見た彼女の記憶を見せてもらう。なるべく最近のもので構わん」
『承知した』
時空神像の目が赤く光ると、抱え上げている砂時計の中から壁に向かって光が放射された。
一行がそちらを振り返ると、光が放射されている壁一面に何かが映し出されていく。
「これって、タバサ?」
そこに映し出されたのは、紛れも無く杖を手にして魔法を放っているタバサの姿であった。
映像の中の彼女は日が射し込んでくる森の中におり、彼女が放ったジャベリンの魔法が見たこともない異形の怪物を串刺しにしていた。
まるでかかしのような姿形をしているその人形のような怪物は、ロングビルがスパーダと一緒にティファニアを助け出す際に目にしたマリオネットという奴に間違いなかった。
無数に群がり、まるで操り人形のような動きでタバサを取り囲むマリオネット、及び全身が血に塗れて真っ赤に染まって力を増強されているブラッディマリーは各々が手にする様々な武器でタバサに襲い掛かっていた。
タバサは杖を構え、アイス・ストームの魔法を発生させると次々と人形達を吹き飛ばしていく。
人形達も反撃でナイフを投げてきたり、マスケット銃を発砲してきたりするもののフライで素早く飛び回るタバサには当たらない。
「あ、あんな怪物相手によく戦えるなぁ……」
あの礼拝堂でも姿を見せた怪物も恐ろしかったが、こいつらもまた恐ろしい姿だ。ギーシュは今の自分の力では決して太刀打ちなどできないことを見ただけで自覚していた。
「タバサ、あなたあんな化け物を相手に何をしてたの?」
キュルケが驚いたようにタバサに話しかけるが、本人も愕然と目を見開いたままその映像に映る自分を見つめたまま答えない。
これは一週間ほど前に、タバサの祖国であるガリアとゲルマニアとの国境近くにあるエギンハイム村で行った任務での一場面だ。
元々、エギンハイム村周辺を治める領主からの依頼で黒き森に住みついた翼人達を討伐するために王宮からの命令でタバサが向かわされており、
訪れた当初は本当に村人と翼人達はとある事情で衝突していたのだ。だが、その任務の最中に現れたのがあの異形の怪物――悪魔達である。
翼人も村人も関係なく次々と殺戮を始めたその悪魔達に村人はもちろんのこと、先住魔法を操るとされる翼人達でさえも手も足も出なかった。
さすがにこの状況ではいがみ合っていた村人も翼人達も共闘することになった。
実は翼人の少女と村人の少年が密かに恋仲になっていたという事実もあってすぐに彼らは一致団結し、悪魔達を討伐しようと力を合わせて戦ったのだ。
結果として悪魔達の討伐は成功し、この件で翼人と村人達は和解することになったのである。
ちなみに恋仲であり、悪魔達の討伐を主導していた二人の翼人と村人はその後、結婚式を挙げて晴れて結ばれていた。
何にせよ、この任務は思いもよらぬ敵が現れてくれたおかげでタバサのスキルアップに拍車をかけていた。
壁に映し出される映像は空間に穴が開いて更なるマリオネット達が落ちてきた場面で突如として消え、神像から放射されていた光も失せる。
一行はスパーダの方を振り向くが、タバサだけは自分の秘密を勝手に見られることになってしまったためか不満そうにスパーダを睨んでいた。
「こいつは無数の分身を世界のあらゆる場所に放ち、千里眼でああして様々な出来事を見届け、記憶している」
タバサの射抜くような視線を気にせず再び時空神像に手を触れながら淡々と語るスパーダ。
ルイズ達はあの像が秘薬を作ってくれるマジックアイテムという認識しかなかったので、思いもせぬ利用法に目を丸くしていた。
「その記憶は何千年もの遠い昔より蓄えられている。無論、私のこともな」
砂時計から再び光が壁一面に放射されると、そこには全く別の映像が映し出される。
「何よ、これ……」
ルイズが震えた声を喉の奥から絞り出した。
彼女だけではない。キュルケもタバサもギーシュも、ロングビルでさえも映し出される映像に言葉を失う。
スパーダも無表情のまま腕を組みつつ時空神像の隣で壁に映し出される、神像の記憶を眺めていた。
そこに映し出されているのは、この世の物とも思えぬ禍々しさに満ちた大地であった。不気味な色をした空と暗雲には絶えず雷光が瞬き、時に地上へと落ちている。
荒れ果てた大地は所々から灼熱の溶岩や毒々しい瘴気が噴き出してきており、実際にその場にいるように感じてしまうほどに生々しかった。
その荒地の一面に蠢くものがあった。
――キシャアァァッ!
――グオオオッ!
それはオークやトロールといったハルケギニアでも見かけるような獰猛な亜人達とは比べ物にならない程に醜悪でおぞましい、異形の怪物達だった。
その怪物達は互いに傷つけ、殺し合い、血肉を食らっていく。大小はおろか姿さえ様々なその怪物達の争いにルイズ達は目を背けそうになった。
「このハルケギニアとは全く別の次元に存在するこの場所は魔界≠ニ呼ばれる世界だ。そこに住まう者は悪魔≠ニ呼ばれ、弱肉強食の毎日が繰り広げられている」
スパーダは悪魔達が争う光景を指しながら静かに語る。
「私はその魔界で生まれた」
その言葉に一行はスパーダの方を振り返った。
それはスパーダがハルケギニアや東方のロバ・アルカリイエなどが存在するこの世界の住人ではないことを意味している。
つまり彼も、その魔界という世界からやってきた悪魔ということになる。
礼拝堂で目にした禍々しい異形の姿の幻影、人間ならば生きてはいられない致命傷を負っても死なない強靭な生命力がそれを表していた。
「そこは力だけが全てを制する非情な世界だ。力ある悪魔のみが生き残り、やがて覇者として君臨し、己より力なき悪魔達を支配する」
映像が切り替わり、映し出されたのは今まで映し出されていた荒地と似たような険しい岩山のような場所だった。
そこには夥しいほどの数の悪魔達の軍勢が蠢いているが、どれも有象無象の下級悪魔達である。
その下級悪魔の軍勢の遥か後方――切り立った岩山の頂上に一際巨大な体躯の悪魔の姿があった。
――グオオオアアアアァァッ!!
「きゃあっ!」
「うわあっ!」
30メイルはあろうかという巨体を震わせ、恐ろしい咆哮を上げる悪魔の全てを吹き飛ばさんとする破壊に満ちた迫力にルイズ達は思わず恐れ慄く。
ギーシュとルイズは思わず尻餅をついてしまうし、キュルケはおろかいくつもの修羅場を経験しているタバサやロングビルでさえ目を見開き、息を呑んでいる。
頭に湾曲した角を生やし、黄金色の屈強な肉体に無数の赤い線の模様を走らせ、腰から巨大な翼を広げているその悪魔は目つきから何まで凶悪さで満ちており、まさしく悪魔に相応しい顔をしていた。
その巨大な悪魔の咆哮と共に何万もの悪魔の軍勢が一斉に動き出し、恐ろしい咆哮を上げながら攻めだしていた。
「魔界では、遥か昔より覇権を争う無数の悪魔の勢力が存在した。今、見ているのはその勢力の内の一つだ。
そいつは魔界でも屈指の力を誇り魔界の統一者候補だった最上級悪魔、羅王<Aビゲイル」
スパーダの言葉にルイズ達の背筋が凍る。
今、映し出されているこの悪魔がその魔界のトップだというのか。……確かに、有象無象の悪魔達と比べれば威圧感は半端なものではない。
睨みつけられただけで戦意を失ってしまいそうな気迫で満ちており、人間など軽く捻り潰してしまいそうだった。
アビゲイルの口から放たれた眩い光が、敵と思われる悪魔の軍勢を一撃で吹き飛ばし、薙ぎ倒している。
「私もまた、偉大な最上級の悪魔が率いる勢力に属する悪魔だった」
すると、映し出される映像に迫り来る悪魔達の軍勢を前にして立ち尽くす三つの人影が見えていた。
「あれ、スパーダ?」
映像には背負っている剣の柄に手をかけるスパーダと共に肩を並べて敵軍を睨む二人の男の姿があった。
一人は顔の上半分を覆い隠す角の生えた兜をかぶり、鎧とマントを身に着けており、尻尾を生やしているスパーダと同じくらいの歳の男。
もう一人は肩当てや篭手、具足などを身に付けている精悍な肉体と逆立てた短髪が特徴的な偉丈夫の男だ。
「あら、素敵な殿方ね……」
キュルケは思わず、逞しい姿をしているその男達に見蕩れてしまっていた。
その様子を見たルイズが密かに溜め息を吐く。スパーダが悪魔である以上、あの二人も悪魔ということになるはずだが……。
迫りくる悪魔達に対し、映し出されるスパーダは背中からリベリオンとは違う刃広の長剣を抜き出し、鎧を着ている男の右手に雷光と共に悪魔の翼と竜の頭の意匠で細工された大剣が握られる。
剣闘士の男は両手両足に赤々と燃え滾る炎が宿り、身構えていた。
タバサは鎧を着ている男が持つ剣に見覚えがあった。確か、あれはいつかスパーダの仕事を手伝った際に目にした大剣だ。確か、アラストルとかいう。
スパーダはどこか懐かしそうな目付きで映し出される光景を眺めていた。
かつて共に属していた勢力で腹心の一人として共に戦ってきた盟友にして戦友である上級悪魔。
猛る稲妻を自在に操る雷将<Aラストル。
爆ぜる紅蓮の炎を操る炎聖<Cフリート。
アビゲイルが放った数万もの悪魔の軍勢はその三人によって次々と薙ぎ倒されていった。
アラストルが振り上げ、突き出した大剣の先から轟音と共に稲妻の嵐が悪魔達の体を焼き焦がしていく。
さらに大剣を天に向かって高く振り上げると、剣先から放たれた巨大な稲妻が天に向かって伸び、槍のように鋭い無数の落雷が地上の悪魔達を貫いていった。
(これほどまでの雷……わたしには到底操れない)
熟練したスクウェアクラスの風メイジによるライトニング・クラウドよりも遥かに強力で、それでいて美しい稲妻にタバサは惹かれていた。
イフリートの両の拳から交互に次々と繰り出される爆炎の塊が爆ぜる度に多数の悪魔達を豪快に吹き飛ばしていく。
勢いよく燃え上がる炎を纏った篭手と具足による猛々しい体術が繰り出される度に悪魔達の体が砕かれていった。
極めつけは、飛び上がり降下してきたイフリートが今にも爆ぜてしまいそうな炎を纏った拳を大地に叩きつけた途端、
巨大な爆炎が周囲に発生し、彼を取り囲む悪魔達を容赦なく飲み込み、跡形もなく焼き尽くしていった。
(これよ……これこそが炎≠フ使い手の戦いだわ!)
火の系統は破壊≠ニ情熱≠象徴するという。火のトライアングルメイジであるキュルケはイフリートの破壊的な炎を操る姿を、子供のように魅入っていた。
スパーダが斜に構えてオーラを纏わせていた剣を一気に振り上げると、巨大な衝撃波が地を走り、目の前の悪魔達を飲み込んでいく。
……たった一振り。それだけで、何万もの数の悪魔達が一瞬にして薙ぎ倒されていった。
その剣を振るったスパーダの表情は、礼拝堂やルイズが夢で見た時と同じ氷のように冷たい表情であった。
(これが、スパーダの力……)
ロングビルは一瞬にして何万もの悪魔達を消し飛ばしたスパーダの姿に戦慄する。
もしもこの映像のスパーダに、ハルケギニア中の兵士やメイジ達が挑んだとしても、今のように消し飛ばされるのがオチだろう。
あまりに壮絶な戦いだった。始祖ブリミルが伝えてきた系統魔法によって六千年もの古の時代より戦争を繰り広げてきたであろう自分達メイジの戦いが霞んで見える。
三人は圧倒的な数を誇る悪魔達を相手に臆することもなくひたすらに己の力を持って戦い続けていた。
映し出される映像を何も考えずに見るならば、三人の人間の戦士が共に敵を倒していくという光景なのだが、彼らが人間ではないということを映像の所々で窺うことができた。
ちょっとやそっとの傷を負おうと、すぐにその傷は塞がってしまう人間ではあり得ない回復力がその証拠だった。
迫り来る敵は全て討ち滅ぼす。それだけしか行われていないのにも関わらず、一行はその戦いに魅せられていた。
「やがて、私の属していた勢力は他の勢力を打倒し……かつての我が主、魔帝<ンドゥスは魔界の統一を成し遂げた」
さらに映像が切り替わり、どこかの神殿のような場所が映し出された。
厳かな造りをしているその場所は魔界という場所には似つかわしくないほどに神々しく、光に満ち溢れている。
神殿の奥には、巨大な石像が鎮座していた。
王のように堂々と深く腰を下ろしている聖人の姿を象ったその像は座しているだけでも20メイルはあろうかという巨体だ。
その像の前に、数人の男達が跪いている。皆、人間の姿をしているがそれは仮初の姿であり全員が上級悪魔の中でも主君が最も信頼する悪魔達だ。
もちろん、そこにはスパーダの姿もあった。だが、アラストルとイフリートの姿はない。
何故なら、あの二人は勝利寸前の激闘で惜しくも命を落としてしまったからである。
――我が忠実なる腹心達よ。
その聖人の像から発せられたのは、悪魔とは思えぬ神々しさと威厳に満ちた男性の声だった。
――幾千年の長きに渡り続いた戦いは終わり、魔界の統一は成された。ひとえに貴様達の働きに感謝する。特に、我が右腕魔剣士<Xパーダよ。
スパーダの名が呼ばれ、頭を垂れていたスパーダが面を上げる。
その表情はいつもと大して変わらない無表情だが、真摯な態度が窺えていた。
――貴様の力がなければ、我は魔界の統一を成し遂げることはできなかったであろう。
かつての主からの感謝の言葉に、スパーダは再び頭を下げていた。他の悪魔達もまた、頭を垂れたまま主君に平伏していた。
「かつての我が主は、魔界で最も偉大で全能の力がある悪魔だった。あの方は悪魔というより、どちらかと言えば神≠ニ呼んでも差し支えなかった」
スパーダはかつての主、魔帝ムンドゥスに思いを馳せていた。
ムンドゥスは無から有を自在に生み出すこともできる全能の力を持つ悪魔だ。いかに悪魔と言えど、そこまで高度な創造の力を持つ者はいない。
実際にムンドゥスの手によって生み出された悪魔も多く、ムンドゥスの精鋭部隊として従えられている。
そして、その身に満ち溢れる力はその気になればたった一人で魔界全土を掌握できる程に強大であり、まともにムンドゥスと対等の力を持っていた悪魔はスパーダの知る限り羅王∴ネ外にたった一人しかいない。
それほどまでに絶大な力を持つムンドゥスを、スパーダは今でも認めると同時に、恐れてもいた。
……あそこまで悪魔らしい悪魔もいないのだから。
壁に映し出される映像が終わり、時空神像から放たれる光も消える。
映像を見せられた一行は腕を組み、平然とした表情で神像に寄り掛かるスパーダの方を振り返った。
全員が愕然とした表情のまま、スパーダのことを見つめていた。
「スパーダ、あなた本当に……悪魔だったの……」
「それは今、見た通りだな」
ルイズが震えた声のまま言うと、スパーダは平然とした態度を崩さず答えた。
「あの、魔王っていう奴の直属の部下……ってことは、エリート中のエリートってことじゃないか。君はそんなに凄い悪魔だったのかい……?」
ギーシュがガチガチと歯を鳴らし、青ざめた表情で指を差してくる。
スパーダは否定も肯定もせずに肩を竦める。
確かに自分は魔界でも三大勢力を率いる悪魔達にも並ぶ力を持っていたのは確かだが、今となってはそれも過去のものである。
「……全部、嘘だったの?」
「嘘?」
ルイズが顔を伏せて落胆したように呟いてきたのでスパーダも顔を顰める。
「あなた、言ったじゃない。自分は東方のフォルトゥナっていう土地の領主だったって。貴族だったって話も、全部嘘だったの?」
自分が目指すべき真の貴族だと思っていたスパーダが、実は貴族ではなかった。それどころかハルケギニアではないどこか、地獄のような世界からやってきた悪魔だったということに気を落としてしまっていた。
そして、悪魔というとんでもないものを召喚してしまったという事実に。
「いや、その話も全てが偽りではない。五百年ほど前までは、確かにフォルトゥナの領主だった」
「どういうことよ」
ルイズが問い返した時、キュルケが何か府に落ちない面持ちでスパーダに尋ねてきた。
「ねぇ、さっきあの魔王のことをかつての主≠ネんて言っていたけど、それはどういうこと? 今はもう仕えていないということなの?」
その指摘にルイズ達ははたと気づく。
そういえば彼は、あのムンドゥスとかいう悪魔のことをキュルケの言う通り、かつての≠ニ過去形で呼んでいた。
それは今はあの悪魔の部下ではないということを意味していることになる。
何故、今はムンドゥスに仕えていないのか。
スパーダは目を閉じ、しばしの間沈黙していたがやがて静かに口を開く。
「……そうだ。今の私は、魔界とは決別した身だ。魔帝はおろか、魔界で生きる全ての悪魔が私の敵だ」
「全ての、悪魔?」
「ど、どういうことだい? それは」
一同はスパーダの言葉に困惑しだす。
スパーダは魔界の頂点に立つ悪魔の右腕だったという。メイジの二つ名のように魔剣士≠ニいう立派な二つ名でも呼ばれるほどの地位に就いていたはずだ。
だが彼は今、主君はおろか全ての悪魔達と敵対しているという。あまりにも矛盾していた。
悪魔である彼が、何故同じ悪魔達と敵対しているのか。
しかも、魔界の全ての悪魔を敵に回しているということは、彼には味方はいない。
※今回はこれでおしまいになります。後編は近いうちにまた投下します。
ちなみにアラストルとイフリートの容姿についてですが、これはビューティフルジョーでの姿を参考にしています。
乙でした
このスレってオリジナルはどこまで許されるんですか?
そもそもオリジナルは禁止だよ
ってかそれ以前にテンプレぐらい読んでから質問したら?
オリジナルキャラか、オリジナル展開かどっちだ
完全オリジナルキャラは言うまでもなくアウト。
小説なりゲームなり何らかの作品の登場人物が対象だが、原作で台詞が無い等で人物像が掴みにくく個性の薄い、どうしてもオリ設定が入ってしまう人物(ドラクエの主人公etc)でも書籍版などで設定が作られていればそれを引用すれば良し。
誰もいなければ21時半頃から投下します
スパーダ乙
悪魔とブリミル教って相性悪いけどどうさばくのか期待
>>479 キャラ改変とか設定変更(大隆起その他)とかどの程度の範囲まで許されるのかということです
ヘイトとかは駄目なのは当然として、実際問題としてどこまでやってもいいとかそういうことです
>>480 ゼロ魔原作キャラで掴みにくいのとかを、好きに肉付していくとかはどうなんですかね
重要なのは説得力だべ。
嘘を嘘と思わせ無ければ問題無いべ
>>483 ギャグならほぼキャラ崩壊してるのとかあるような
シリアスだと違和感感じるからあんまりオススメできない気もする
設定変更は普通じゃない?
特にクロスオーバーとのつじつま合わせだとどうしても必要になる場合が
21時半になったので投下始めます
第3話『相容れぬもの』
ルイズは夢を見ていた。
少女と思われる人物の人生そのものを体験する夢。
年は自分と同じくらいだろうか。
何の変哲もない平民の家庭。
叔母の本屋を手伝っているようだ。
「それじゃおばさん行ってきます!」
少女の声が聞こえる。
彼女は奇妙な円柱状の鉄と車輪でできた乗り物に乗っている。
その乗り物に取り付けられたかごの隙間から
本を運んでいるのだと理解できた。
しばらくその乗り物を走らせて、一軒の民家の前に止まる。
ガラスで身だしなみを整えるその姿を見て、ルイズは驚愕した。
(アセルス!?)
活発そうな印象は今のアセルスとはまるで雰囲気が異なる。
大体彼女は妖魔ではないのか?
ルイズの疑問をよそに、アセルスは本を手渡して来た道を戻っていく。
鼻歌を口ずさむアセルスは気づいていなかった。
すぐ後ろから何かが迫っている事に。
アセルスが振り返った時、そこには馬車がいた。
だが、それがただの馬車ではないことはルイズもすぐに理解できた。
(化け物……!)
従者が率いる馬は普通の馬の2〜3倍もある大きさ。
さらに従者は骸骨。
その奥にも誰かいるようではあったが、この世の者とは思えない眼差しだけが妖しく光る。
アセルスが馬車の存在に気づいた時にはもう遅い。
突進してきた馬車に体は砕かれ、車輪に引き裂かれていた。
「きゃあ!」
悲鳴と共に飛び起きる。
目覚めればそこはいつもの自分の部屋。
時計を見ればまだ日の昇らない深夜だった。
「ゆ、夢?」
思わず安堵する。
夢にしてはあまりに現実感に溢れていた。
今でも体中から嫌な汗が止まらない。
寝直そうとして、ベッドに目を向ける。
アセルスが隣で眠っていた。
彼女は知る由もないが、アセルスもその頃同じように夢を見ている。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという名の少女の夢を。
少女の家は貴族の三女だったようだ。
家族は少女にも貴族たれと厳しくも愛情を持って、育てられた。
だが、いつからだろう。
その愛情が重く感じるようになったのは。
少女は魔法が使えない。
その事により彼女は貴族として認識されなかった。
家族からは叱られる回数が増えた。
平民からは陰口を叩かれる事も多くなった。
蔑みの視線を浴びる事が日常になった。
少女は壊れそうな心を必死に奮い立たせる。
見返してやろうと、誰よりも魔法の事に関して努力した。
支援
だが運命は決してその努力を実らせない。
むしろ嘲り笑うかのように、彼女に向けられる悪意は日々増えていく。
平民の陰口、貴族の社交界、入学した魔法学院の同級生。
人生において数え上げればきりが無いほど、他人の悪意を受け続けた。
結果、彼女の性格はわずかずつ歪んでいく。
人前で笑顔を見せる事がなくなった、一人きりで泣く時間が増えた。
心許せる人もいないまま、貴族としての自尊心だけが自らの拠り所となっていく。
彼女の姿勢を見て、魔法も使えないのに貴族を名乗るのが滑稽だと周囲は笑う。
やがて進学が訪れる。
使い魔を呼ぶ儀式、これに失敗すれば留年。
厳格な家族が留年などと言う不名誉を許すはずもなく、そのまま退学させられるだろう。
退学となれば彼女にとって、周囲から言われ続けた悪意。
『ゼロ』という事を認める事になってしまう。
だからこそ、彼女は願い叫んだ。
「宇宙の果てのどこかに居る私の僕よ!神聖で美しくそして強力な使い魔よ!!
私は心より求め、訴えるわ!!!我が導きに、答えなさいっ!!!!」
それはアセルスが鏡に触れる前に聞いた彼女の叫びだった。
そこでアセルスの目を覚める。
上質な貴族のベッドには一人分の重みしかない。
部屋の主であるルイズの姿を探すも見つからず、少し経った後に部屋に戻ってきた。
マントを羽織っているのは出かけていたのだろうと推測する。
「なんで裸なのよ!」
部屋に入ってきたときは少し不機嫌そうな表情を浮かべていたが、次に赤面してアセルスに叫ぶ。
「ん?ああ、服が濡れていたままだったから」
「あ……替えの服とか持ってないわよね」
納得すると、クローゼットからシャツと制服のスカートを投げ渡す。
「服の洗濯はメイドに頼んでおくわ。
それまではサイズ合わないかもしれないけど、我慢して」
ルイズもマントと昨日から着たままだった服を脱いで、着替える。
「わかった、後で持っていくよ」
「いいわ、私がやるから。しばらく待ってて頂戴」
普段のルイズなら雑用を自らやる事はない。
ただ自分なりの思惑があって、洗濯物を運ぶ必要があったのだ。
誤魔化すように急いで着替えて、洗濯物を持って部屋から出て行く。
アセルスはルイズを待つ間、彼女の机にあった本を1冊手に取る。
本屋で働いた事のあるアセルスにも見た事もない言語であった。
二つの月、地名にも聞き覚えがない事から自分が未知のリージョンにいるのだと理解していた。
未開のリージョンという存在は別に珍しい事でもない。
上級妖魔あるいはそれに匹敵する力を持つ者であれば自らの力でリージョンを作れるからだ。
それよりも彼女は夢の内容が気になっていた。
あの夢は彼女の人生だろう。
なぜそんな夢を見たのかはわからないが、アセルスにはルイズへの視線の正体に気づいていた。
半妖である事への見下しや蔑み、上級妖魔の血を得た事による嫉妬。
あの感覚と同じである事に。
同じ頃、洗濯物をメイドに預けたルイズも今朝見た夢について考えようとしていた。
彼女は平民にすら魔法を使えない事で馬鹿にされていると自覚している。
洗濯場にいたメイドは自分を馬鹿にしない数少ない相手だったので安堵して渡した。
来た道を戻りながらルイズは夢で見たアセルスを思い出す。
彼女はあの化け物馬車によって轢死したのでは?
アセルスに問い尋ねてみようかと思ったが、あくまで夢の話である。
冷静に考えてみれば、単なる変な夢だったかもしれない。
ルイズの考えを遮るように、胃が空腹を知らせる音を鳴らす。
思い返してみれば昨日は疲れて夕食も取らずに寝てしまった。
その上、早朝から動き回った為に限界が近い。
うん、朝食を取ってから考えよう。
使い魔の役割説明とかもしないといけないけど食事の後だ。
そう結論付けて、ルイズにある問題点が浮かぶ。
妖魔の食事で一般的に知られるものと言えば……人間の血液。
どうやって準備すればいいのか?
自分の血を与える?
流石にそれは御免蒙りたいが、食事を取らせない訳にもいくまい。
頭悩ませるルイズ。
その頃には、今朝見た夢の事などすっかり忘れてしまっていた。
ルイズが悩んだ食事は、アセルスが普通の食事も取れるので問題なく落ち着く。
部屋に戻ってまず食事情について尋ねたルイズは安心して、アセルスと共に食堂へ向かおうとする。
部屋の扉を開けると、ルイズの隣室の扉もほぼ同時に開く。
「あら、おはようルイズ」
「おはようツェルプストー……」
ルイズは憎々しい表情で隣人の女性を睨む。
彼女の顔はアセルスにも見覚えがあった。
ルイズと同年代と思えぬ体躯の良さ、胸元をひけらかす様にシャツを開けている。
健康的な褐色肌と炎のように赤い長髪。
彼女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
儀式の広場でルイズのほうを振り返った少女のうちの一人である。
「貴女、妖魔を使い魔にしたんですって?」
「そうよ、アンタも見てたでしょ」
ルイズが胸を張って答えてみせる。
キュルケはアセルスのほうをまじまじと観察するように見ている。
そして一言。
「……どこかから平民を連れてきただけじゃないの?」
「違うわよ!」
キュルケの指摘に思わず大声で反論する。
「だって妖魔を使い魔にするなんて聞いた事ないもの」
「亜人を使い魔にした例ならあるわ!」
「妖魔にしては見たことのない種族だし」
「彼女はハルゲニアより遠くの出身だから知られていないだけよ!」
小馬鹿にしたようなキュルケの態度が気に入らないのだろう。
ルイズはいちいち声を張り上げて反論する。
「大体貴女に、強力な妖魔を従えることが出来ると思えないのよね」
「どういう意味よ!」
ルイズが思わず、苛立ちから歯軋りする。
だがその音が聞こえるのはアセルスだけだった。
「あら、言わないと分からないかしら?だって貴女は『ゼロ』の……」
「そのくらいにしておきなよ」
アセルスの一言が過熱する彼女達の口論を静止させた。
口調こそ穏やかだが、拒絶が許されない程強い意思を込めて睨む。
キュルケは一瞬身体を震わせるが、すぐに取り繕う。
ルイズの劣等感となる『ゼロ』の言葉を投げかける場合、大半の理由は悪意だ。
自分達が出来て当然のことを出来ぬ者を見て貶め、嬲り、自らの尊厳を満足させる。
その様な者達なら、アセルスに睨まれただけでさっさと立ち去っただろう。
実のところキュルケは、ルイズのことを学院で正当に評価している一人である。
信念を曲げず、貴族足り得ようと努力を忘れない。
魔法が使えないだけで、学院の誰より貴族らしいとさえ思っている。
ならば何故『ゼロ』と呼ぶのか?
ルイズを単にからかっているだけである。
ほんの些細な一言にも、表情をよく変えて反応する姿。
意地を張って反論する様子は小動物のように愛くるしく、ついつい楽しんでしまう。
だからキュルケは気付かない。
自身とルイズの間に決定的な認識のズレが生じていた事を。
「で、何の用なのよ?」
ルイズが改めて尋ねる。
顔にはいつものように不機嫌な表情が張り付いている。
「貴女に私の使い魔を紹介しようと思っていたのよ、おいでフレイム」
キュルケが呼ぶと、一匹の炎を纏ったトカゲが足元に擦り寄る。
「それってサラマンダー?」
思わず呟いた一言だったが、すぐに失言だとルイズは気付いた。
案の定、目の前の憎き相手は火竜山脈に住む希少種だの好事家が価値を付けられないなど自分の使い魔を自慢し始めた。
一通り自慢し終わると、キュルケは自分の使い魔を連れて去っていく。
「何よ、あの女!自分が珍しい使い魔を呼び寄せたからって……!!」
ルイズは自分の呼び出した使い魔、アセルスに不満はない。
妖魔は正直恐ろしいが、オールド・オスマンも認める強さを持っているのである。
だが、妖魔の君と名乗る王族である事は周囲に伏せねばならない。
魔法が使えないと馬鹿にされ続けてきた自分が、初めての魔法で挙げた成果。
妖魔の城主に君臨する程、力を持った使い魔を呼び出したのだと。
なのに自慢することは許されないもどかしさ。
苛立つルイズは空腹に責任転嫁した。
お腹が空いてるからこうも苛々するのだと、とにかく朝食を取ることを優先した。
食堂では一旦アセルスと別行動を取った。
一緒に食堂で食べるつもりだったが、ルイズはアセルスの食事を注文する事を忘れていた。
急な依頼で同じ食事を用意する事が出来なかったので、厨房で賄いを分けてもらうように頼む。
ルイズは謝ったが、アセルスは気にした様子もなかった。
アセルスが去った後、ルイズは食堂に来る前の出来事を思い返す。
食堂に来る途中で、ルイズはアセルスに使い魔の事を聞かれたために答えた。
感覚の共有……に関しては何故かできなかった。
思惑もあり、アセルスには伝えていない。
秘薬の採取に関してはどうでもいい。
妖魔とは言え、王族にそんな小間使いの真似事をさせるつもりは毛頭無い。
最後に一番大切な主を護衛する事──
アセルスはルイズに告げた。
「いいとも、君を守ればいいんだね」
何気ない一言だったが、不意に涙が零れそうになる。
慌てて取り繕ったものの、この学院に来て初めて出来た味方に喜んだ。
同時にルイズは恐れた。
自分が魔法の使えない『ゼロ』だと知られたら失望されるのではないかと。
何故力を持つ妖魔でありながら、自分と契約を交わしたのか?
昨日からの疑問を尋ねることが出来なかったのも、それが理由である。
ルイズがアセルスの事を心から信用していれば疑問を素直に尋ねることはできただろう。
最も、これはルイズでなくても無理な相談だ。
本来ならば人間の敵となる存在の妖魔を出会ってから1日足らずで信頼しろという事なのだから。
ルイズは周囲からの悪影響で素直さというものを失っている。
そんなルイズだからこそ、アセルスは自分がメイジだから従っているのだと思い込んでいた。
しかし、授業の時間は刻々と迫っている。
いずれ気付かれるのは承知していたが、何とか誤魔化したいという気持ちもあった。
食事を終えて、アセルスと共に教室に向かう。
ルイズにとって喜ばしくも苦痛な時間が始まった……
投下は以上になります。
今度は投下終了宣言でさるになるとは……
ストーリーはようやく次回から最初の山場に移れそうです
序盤でお馴染みあのイベントへ
480kbを超えたし、そろそろ次スレの用意が必要ではないですかな
ファシナトゥールの主乙。
しかしアセルス様SSって傾向として妖魔ED後のが多いね。
人間EDだと天寿全うしちゃうし、半妖EDだと変わり映えがないからかな。
妖魔EDの高笑い+暗転で〆の演出が強烈すぎたってのもあるか。
ゲーム準拠とSS冒頭を見るに、イルドゥンとは袂別、ゾズマと敵対、白薔薇と離別でジーナとは死別かぁ。
味方が腹黒ラスタバンだけってのはこのアセルス様相当眉間に皺寄ってそうですね。
容量見てた無かったんで次立ててくる
>>497 人間、半妖共にEDで綺麗にまとまってて弄り難いのかも
決して百合に惹かれたわけでは(ry
投下乙です。
オリジナル設定云々に関しては説得力の有無と面白さが重要だと思ってる。
ゴーストステップ・ゼロも考え方によってはオリ設定も入っているしな。
とはいえ、クロス元のアイテムから設定的に持っていてもおかしくないアイテムを持たせているので違和感はないが。
ディアーナはまさにその例だと思う。
実は原作に居ないけどSSに出てる事に違和感はないし、ストーリー上でもいい場面の演出に一役買っている。
更新しようと思ったけど埋まるまでは次いらないんだった
しかし、アセルスの烈人と幼馴染って設定はなんだったんだろう・・・・・・
サガフロには未使用や中途半端に終わった設定も多いからな
特にアセルス編は開発中にごそっとイベントが削られてるから無意味に存在するダンジョンやボスがゲーム中にいくつも取り残されてる
ベルセルクで出たギーシュが助けた女の子や敵とかのオリ設定とかはいいと思う
確かに説得力を出すためのオリ設定は進行上必要になる
それを全てダメにしたら本当にテンプレどうりにしかできなくなる
いや、このスレでNGなのオリ主とか原作ない史上人物とかだから
遅くなったけど、ディーキンの人乙です。
プレスティディジテイションは掃除洗濯にとても役立つ魔法。
フェイルーンの設定を考えると、ディーキンが普通に魔法が使えているということは、
ハルケギニアという次元界に対する妄想が色々と湧いてくる。
ふむふむ
>>505 あとは三次創作とかじゃなければ何やってもOKなわけか
何やってもOKと思ってない人なら何やってもOK
中々核心を突いた言葉だな
八丁堀の七人第7シリーズ最終回最後のシーンでで江戸城に喧嘩を売りに行った
仏田八兵衛、青山久蔵、磯貝総十郎、花田孫右衛門、吉岡源吾、松井兵助、古川一郎太の七人を召喚
町人出身の一郎太と七光り扱いされることが嫌いな兵助は貴族であることを鼻に掛けた奴は問答無用で殴りそうだが
サガフロ二大不人気キャラの赤カブとスライムをルイズが召喚
勝手にパーティ枠を埋める邪魔者がいなくなってサガフロ側は大助かり
オリジナルと言えばカップルとかはどうなんだろう
召喚されたキャラがくっつくとかはあるけど作中同士のキャラ
ルイズ×ワルド他
シエスタ×モット伯
キュルケ×色々
ギーシュ×色々
タバサ×トーマスorカステルモール
アニエス×コルベール
アンリエッタ×ゲルマニア皇帝orジョゼフ
フーケ×オスマンorコルベール
サイトがいないことをいいことに自由なカップリングとかは許されるのか
あとガチホモ化とかガチレズ化とか
そこらは別にいいだろ、スレに反することでもなし
ただし、評価得られるかとはまた別問題だが
>>513 ネタとしてならまだしも本気でやるなら叩かれるのを覚悟した方が良い。
>>515 何故唐突に叩かれるのを覚悟した方が良い(キリッ とか言い出すんだ
既存で幾らでもあるのに
書いてあるカップリング全部一作でやると勘違いしたんじゃね?
カオス過ぎるがw
>>513 面白けりゃ許されるんじゃね?
アンチも付くだろうけど
かっこいいモット伯とかかっこいいワルドとかありならいいんじゃないの、ワルドやモットとくっついても。
デルフリンガー×地下水
結局は説得力や面白さを両立させれば無問題でFAか
ワルド×モットと聞いて!
アーッ!
サイヤの使い魔のアンリエッタがアップし始めるからヤメレw
「ウホッ!いい男・・・」
ギーシュはモンモンを取ってもケティがいる
ワルドからおマチさんを取っても誰も気にしない
ジュリオからジョゼットを取るSSはないかな
ディーキンの人乙。ハルケギニアはいっちゃえばMP制で、フライとか日常的に使えるのが凄いよな。
フェイルーンとは別次元で魔法が発展してるし。
次回はオスマン&ロングビル登場と二つの月を見る所から宇宙観についての対話かな?
この話が始まってから、テンプレート:ガンダールヴとか
ハルケギニアメイジの基本クラスとかの妄想が止まらないw
頑張れ。
>>519 戦闘妖精の人のべらんめぇなワルドは格好良い(既にルイズの尻に敷かれてるがw)
>529
アニエスにキスされてスレ史上最大のピンチに陥るワル平がみたい。
ラブコメ書くのって難しい
一応相思相愛な二人のあいだに別の女キャラ割り込ませるのは、下手したら空気の読めないうざい女にしてしまうからなあ
かと言って男の心変わりは見苦しい。初回プレイでフローラを選ぶくらい裏切り感がする
アレンビーといちゃついたけど結局レインに落ち着いたドモンにしなけりゃいかんかなあ…
男なら最大4人まで同時にオッケーぐらい言ってみろというのだ
小説でラブコメはよっぽどうまくないときついと思うぞ
身上ちゃんと描写すればするほどシリアスにきつい話になってくし
>>527 ハルケギニアン・メイジはむしろサイオニクスの方が運用近いんじゃないカナ?
とは思う
ゴーレムなんかはアストラル・コンストラクトで再現とか
すべては諸君らのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲にかかっている
試射なら万全だぜ
>>539 アニエスのキスでトロンとなるルイズが見たい。
次に書き込む人が投下してくれるといいね……
ズギュウウウウウウウウン
>>533 そうそれ。身上描写をきっちりやったらうやむやにできない関係の深さになったりと
二股はやっぱり問題だしなあ
日本全国に12人の女が
何その次作で死ぬフラグは
そんなギャルゲーあるわけないだろ
定期サイヤ待ち
ガリアの王女のハートがブレイク寸前だったりトリステインの公爵令嬢の怒りのムチが乱舞したり女王のせつなさがみだれうったり
アルビオンの王族のハーフエルフの乳に釘付けだったりと大忙しになりそうだな
547 :
一尉:2012/04/05(木) 22:27:42.12 ID:QB8oQ5V9
故人を召喚にするルイズ
>>541 じゃあ本編前の桃生純太で
普通のメガプレの目指めて
ハルケギニアに、平民貴族王族問わず100人以上の女性に子供を生ませたメガプレ伝説を
そんで生まれ変わった始祖ブリミルを守護するために大陸の各地に100人の自分の子供を修行に行かせるんですよね
カースト制が出来るな
青銅魔法使いからスタートですね
光速で魔法詠飛び交ったり何度もよみがえってくるマリコルヌがいたりするわけだな
あれ・・・確か魚座の必殺技って薔薇(ry
うお座のヒエラルキーを一瞬で地の底に落とした恐ろしい技だぞ
でもNDじゃ乙女座倒したじゃん……裏切った上での不意打ちで
黄金聖衣は絶対零度じゃないと凍結しない→カミュ最弱説
己の意志を貫き天道に倒された神代剣をサソードゼクター込みで召喚
ただこいつミサキーヌ一筋だったから他の女が眼中に無い
>>556 神クラスは絶対零度の数百倍の冷気がいるしな。
絶対零度の数百倍ってどういうこったよ
一兆度の火球と似たようなもんだろ
マジレスすべきか悩んだけど結局マジレスしてみる
分子振動が完全に停止するのが絶対零度だから
絶対零度の数百倍も何も絶対零度よりも低い温度は存在しない
低温の凄さを表現するには何か別のアプローチが必要になる
逆に分子振動の激しさには上限は無いから一兆度の火球はおk
それは典型的な間違い
サブカル情報を鵜呑みにした結果って奴な
特によくバスタードで出てきた話鵜呑みにしたまま受け売りが続けられてるとかあるんだよな
温度の上限はちゃんとある。一定空間範囲内での可能な原子や分子の総合運動量の上限ってのが定まってる
絶対零度の件をフォローすればあくまでも分子運動の完全停止でしかないから
神の類が既存の分子で構成されてなければそれ以上はありえる事になる
あくまでも分子運動の停止が絶対零度ってのはこの宇宙の三次元上での物理法則の範囲だからな
>>562 おお、上限もありましたか
しかもバスタードが元ネタだとバレた
と言うか素人なりに考えてみるだけでも
本当に上限が無かったら分子運動が光速突破して
わけわからん事になりそうだと思った
対カル辺りのアビちゃんのセリフだな
まぁ空想科学読本じゃないんだからその作品ではそういうものと考えておけばいい
かつてプレイしたゲームの中に「-1000000000000℃」を放ってきた隠しボスがいたような気がしたッ!
1000000000000℃まで加熱してから0℃まで冷やせば
-1000000000000℃って事になる
と言う屁理屈を思いついたんだがどうだろうか
屁理屈と言うか
それはそれで何も間違えてない正論だ
要するにそれぐらい温度を下げるエネルギーを使ってるって事でも有るし
なんか今日勉強になったわ・・・
572 :
sage:2012/04/07(土) 02:52:33.89 ID:ihASDiYz
>>562 要は妄想すればなんでも出来るし創りだせるってことだな!
逆にいえば妄想をやめてしまうとこのスレはデスピアされると
>>562 さらに言えば絶対零度でも零点振動ってものがあるからそれだけじゃ完全停止にもならないんだよな
多分絶対零度に必要な冷気の数百倍の冷気をぶつければ止まるんだろう、なに、小宇宙さえ燃やせば何とかなる