あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part307

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part306
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1327821877/


まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2デユープリズムゼロの人:2012/02/27(月) 22:53:17.39 ID:YvhvYsE8
スレ立て乙です。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/27(月) 22:55:36.73 ID:DZPABl21
>>1
代理投下行きます

第七十九話
 砕けよ絶望! 希望の光、その名はセブン!!
 
 ウルトラセブン
 一角超獣 バキシム 登場!
 
 
 ひとつ問おう、君は困っている人、苦しんでいる人を見たらどうするだろう?
 たとえば、道端で倒れているお年寄りを見たとして、君はその人を助けるか、それとも無視するか?
 いや、君ならきっとその人に駆け寄って、「大丈夫ですか?」と話しかけるに違いない。
 それが、人間。優しさという、かけがえのない魂を持つ存在なのだ。そしてそれは、ウルトラマンも変わりない。
 だからこそ! そんな人々の助けを求める声がある限り、光の戦士はどんな世界でも必ず応えてくれる。
 
 ヤプールの化身・超獣バキシムの卑劣な作戦によって最大の危機に陥ったウルトラマンA。
 バキシムは、エネルギー切れに陥ったエースの前で、公開処刑も同然にベアトリスたちを攻撃してきた。
 ミサイルの炎と爆風に叩かれ、打ちのめされる彼女たち。さらにバキシムは非道にも、ベアトリスを虫けらのように踏みにじろうとする。
 だが、絶望も悲劇も、もう彼女たちには必要ない。
 誇るべき弟と、その愛する人々のために、彼はついにやってきた!
 
「エースよ、弟よ。あきらめてはいけない」
 
 ウルトラマンAの耳に飛び込んできた懐かしい声。
 それはかつて誰よりも多く人類のために血と汗と涙を流し、戦い抜いた真の勇者のもの。
〔ええ、希望は決して失われることはないんですよね!〕
 忘れもしない、エースが困難な戦いの中でくじけそうになったときも、厳しくも力強い言葉で励ましを送ってくれたその人のことを。
〔北斗さん! どうしたんですか? 誰が来たっていうんです!〕
〔そうよ! もうなにがなんだかわからない! いいかげんにしてっ!〕
 才人とルイズが戸惑った声をあげる。
 しかし、エースにはわかっていた。以前、ワルドがエボリュウ細胞を撒こうとしたときに教えてくれたときから、どんな方法かは
わからないが、あの人がこの世界に来ていることを。
〔心配はいらない。それよりも、才人くんを休ませてやらなくては危険だ。大丈夫、私たちの役割は果たし終えた〕
 変身を解き、ウルトラマンAは空気に溶け込むように消えていく。
 そして、突如戦場に踊りこんできた一頭の馬と、その背にまたがるテンガロンハットをかぶった男。彼はたずなをさばき、猛烈な
スピードでベアトリスの元に駆けつけていく。
 
「ハイヤーっ!」
 
 走る馬は、傷ついた体で呆然と見守っているミシェルやエーコたちの目の前で、恐れる気配など微塵もなくバキシムの足元へと
飛び込んでいく。すでにバキシムの足は無慈悲なプレス機となって目の前だ!
 だが、馬上で駆る男は体を乗り出すと、ベアトリスに向かって手を伸ばした。
「つかまれ!」
 次の瞬間、バキシムの足が地面を叩き、砂埃が舞い上がる。バキシムの体重は七万八千トンであり、踏まれれば人間など
形も残りはしない。ミシェルたち、エーコたちは瞬きする暇すら惜しんで粉塵を凝視した。
まさか……最悪の予感が彼女たちのあいだを駆け巡る。しかし、もうもうと立ち上る砂煙の中から飛び出してくる馬の背には、
男の腕にしっかりと抱きしめられたベアトリスの姿があったのだ。
「姫さま!」
 エーコたちのもとに馬は駆け寄り、男とベアトリスはその背から降りた。すぐさまエーコたちが走りよってきて、男はベアトリスを
地面に下ろすと、まだ腰が抜けた様子の彼女に優しげに言った。
「立てるかい?」
「は、はい……あ、あなたは!」
 下ろされたベアトリスは、その男の顔を見てはっとした。同時に、エーコたちやミシェルも驚きを隠せないように、男の顔を見る。
「ふ、風来坊……」
 そう、彼はこれまで何度もベアトリスの前に現れては、そのつど助けてくれたあの謎の風来坊だったのだ。
 ミシェルが選んで買い求めたテンガロンハットをかぶり、皮のジャケットに身を包んだ彼は、前と少しも変わらない温厚そうな
笑みを浮かべてそこにいる。まるで、超獣がいることなど忘れてしまいそうな、その落ち着いて穏やかな空気は、真の仇に
いきり立っていたセトラたち姉妹の理性をも取り戻させた。
 そうして、彼は驚いているベアトリスの頭を優しくなでると、穏やかに微笑んで言った。
「よくがんばったな。さあ、あとは私にまかせるといい」
「あ、あなたはいったい……?」
 ベアトリスは前々から気になっていたことを尋ねた。この風来坊は、どこにでもいるような風体のくせに、絶対現れるはずも
ないときにばかり現れてくる。その度に見せる常人離れした雰囲気と、ヤプールの手下とさえ戦える力……
 あなたはいったい何者なのだ? ベアトリスだけでなく、ミシェルやエーコたちも風来坊に視線を向けると、彼はいたずらっぽげな
笑みを浮かべて、いつものように陽気な口調で答えた。
「僕はモロボシ・ダン、ご覧のとおりの……ただの風来坊さ」
「ダン……さん」
 ベアトリスはぽつりと、はじめて知った風来坊の名前をつぶやいた。
 風来坊……ダンは、うれしそうにもう一度微笑んだ。そうして、くるりと振り返るとバキシムに向かってゆっくりと歩き出した。
 危ない! なにをするんだとミシェルたちから怒声が飛んだ。けれど彼は少しも動揺することなく、事態を飲み込めずに
立ち尽くしているバキシムの前まで行った。
 そして、テンガロンハットをおもむろに脱ぐと、バキシムを強い視線で見上げたのである。
「久しぶりだな、ヤプール」
「き、貴様は! なぜだ、なぜ貴様がこの世界にいるのだ!」
 風来坊の顔を見たとき、バキシムから大きな動揺の声が響いた。ヤプールは個であって群の生命体、バキシムは単一の
超獣であると同時に、その意識や記憶はヤプール全体と共用されているのだ。
 だが、なぜヤプールがただひとりの男に、ここまで恐れた様子を見せるのか。呆然として見守るベアトリスたちの視線を
背中に受けながら、風来坊はバキシムを睨みつけて、奴の問いかけを跳ね返した。
「そんなことはどうでもいい。しかし、貴様の悪巧みもここまでだ」
「そうか、これまで頻発した不可解な妨害の数々は、貴様がやっていたのだな!」
「それは違う。私はただ、彼女たちの心に宿る勇気を信じて、ほんの少し後押ししただけさ」
 そう言うと、ダンは振り返ってベアトリスたちを見つめた。
バキシムの氷のような冷たさとはまったく違う、温和で穏やかなまなざしがベアトリスからミシェルやエーコ、姉妹たち全員を
一人ずつ見つめては離れていく。彼は誰の顔にも、もう絶望や憎悪の影はないことを確かめると満足げにうなずき、バキシムを
見上げて決然と言い放った。
「彼女たちは、貴様が与えた絶望を乗り越えた。貴様の負けだ、引くがいいヤプール。それでもなお悪あがきをするというのであれば、
私が相手になろう」
「うぬぬぬ、おのれぇ……貴様さえいなければ、なにもかもうまくいったものを! 許さん、こうなれば貴様もここで始末してくれるわ!」
 ダンの忠告に逆にいきりたち、バキシムは雄たけびをあげて迫ってきた。
 やはりヤプールは話の通じる相手ではなかったか……ダンはテンガロンハットを胸元に持つと、一瞬祈るような姿勢を見せた。
 ミサイルの照準をすべてあわせるバキシム。本気の一斉射撃が当たれば人間など一瞬で蒸発してしまうに違いない。
ミシェルやベアトリスたちの必死の叫びが響き渡る。
「危ない! 逃げてぇぇっ!」
 だが、風来坊は微笑を浮かべるとテンガロンハットをベアトリスに向かって、フリスビーのように放った。
「心配はいらない。君たちに呪いを与え続けた悪魔は、私が倒す」
 風に乗ってテンガロンハットがベアトリスの手の中に飛び込んで受け止められる。
 何度も見た、いつもと変わらない風来坊の優しい笑顔。だが次の瞬間、彼の顔は戦いを決意した戦士の表情に変わり、
その手にはテンガロンハットに代わって、赤いゴーグル・ウルトラアイが握られていた。
 バキシムから放たれる十数発のミサイルの雨! だが、ダンはウルトラアイを眼前にかざすと、掛け声とともに着眼した!
 
「デュワッ!」
 
 その瞬間、ウルトラアイから火花のような閃光がほとばしり、ダンの姿が変わっていく。
 銀の兜のような頭部には鋭く輝くオレンジ色の眼、肉体も瞬時に太陽のように赤く染まった精悍なボディへと生まれ変わる。
 そして、ミサイルの炎などをものともせずに跳ね飛ばし、彼は一瞬のうちに身長四十メートルもの巨人へと変身を果たしたのだ!
 
「ジュワッ!」
 
 左腕を縮め、右腕を伸ばしたファイティングポーズをとり、赤い巨人はバキシムを睨みつける。
 ベアトリスやミシェルたちは、目の前で起こった信じられない奇跡に言葉もない。だが、ひとつだけわかることがあった。
「ダンさんが……ウルトラマン」
 姿形は違えども、赤い巨人はウルトラマンAと同じ澄んだ力強いオーラを感じた。彼は自分たちをかばうように背を向けて、
一部の隙もなくバキシムと対峙している。その構えと闘志は、ボーグ星人と対峙したときのダンとまったく同じもの。
 ウルトラマンは人間? いや、人間がウルトラマン? 戸惑いを隠せないベアトリスたち。
しかし、彼はその真意を言葉で与えてはくれない。
 光は闇を照らしてこそ存在を語る! 対して、闇も光を飲み込もうと牙をむいて、憎き敵の名を呼んで襲い掛かってくる!
 
「おのれぇ! とうとう現れたなウルトラセブン!」
「ゆくぞ! ヤプール」
 
 逆上するバキシム、すなわち邪悪なる闇の化身を前にウルトラセブンは勇敢に立ち向かう。
 そう、彼の名はセブン。モロボシ・ダンの名を借りて、数々の侵略者の魔手から地球を守り抜いてきた最強のヒーローだ!
 互いに引かれあうように激突するセブンとバキシム、バキシムの鋭いスパイクのついた腕の攻撃をかいくぐり、セブンの
パンチが炸裂する!
「ダアァッ!」
 首元にめりこんだセブンの拳が、バキシムの芋虫だったころの面影を色濃く残す胴体に、クレーターのようなへこみを
一瞬にして生み出して跳ね飛ばす。俊敏さとパワフルさを併せ持つセブンのウルトラパワーの前には、七万八千トンの
重量すらものの数ではない。
「デァッ!」
 たまらず苦悶の叫びをあげて後退するバキシムに、セブンの眼が隙を見逃すことはない。
 組み付いてボディに膝蹴りを与え、後頭部に鋭い一撃を加える。
 速い! そして重い! たった数発の攻撃だというのに、バキシムは大きな悲鳴をあげてのけぞった。
「いいぞ! がんばれセブン!」
 離れたところから戦いを見守っていた才人が、握りこぶしを大きく掲げて歓声をあげた。テレパシーの使いすぎで消耗しきり、
ルイズにひざまくらしてもらってやっと体を起こしているが、そんなうらやましい状況すらまったく無視して、子供に戻ったように叫びまくる。
 そうだ、ウルトラマンAの言っていた希望とはセブンのことだったのだ。もはや、恐れるものなどあるはずがない!
 鋭い切れ味のウルトラチョップがバキシムの喉元に水平に当たり、そのままボクサーのように連続パンチの応酬だ!
「デヤァッ!」
 一撃ならまだしも、数え切れないほどの攻撃を一度に叩き込まれては超獣の頑強なボディもたまったものではないはずだ。
 まさに、青い悪魔に立ち向かう正義の赤い暴風。
 が、バキシムもまだまだ負けたわけではない。緑色の眼はらんらんと輝き、反撃の機会をうかがっていた。
 なめるな! セブン!
 そう言わんばかりに金切り声にも似た咆哮をあげ、バキシムは巨大な鳥のくちばしのような口を大きく開いてセブンに食らいついてきた。
「グワァァッ!」
 バキシムの牙はセブンの左腕に食いつき、全身の力でセブンは大きく振り回された。
 そしてそのまま振り回した勢いで放り投げ、セブンは廃倉庫のひとつに背中から投げつけられて粉塵があがった。
 さすが……ヤプールの怨念を一身に背負って出てきただけのことはある。ウルトラ戦士に対する反抗心は並ではない。
 バキシムの背部の結晶状の突起物が赤く輝き、両腕の間に赤黒く輝く火炎球が形成され始めた。
「あれはっ!」
 才人は懐からGUYSメモリーディスプレイを取り出してレンズをバキシムに向けた。あれは、エースと戦った初代バキシムにはなく、
メビウスと戦った二代目バキシムが備えていた新兵器。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/27(月) 23:50:30.35 ID:ml+ShDf4
C
9ウルトラ5番目の使い魔 79話 (5/11)(代理):2012/02/27(月) 23:50:52.87 ID:YhaH7vrU
「バキシクラッシャーだ!」
 高圧の破壊熱線が放たれ、セブンに襲い掛かる。
 危ない! セブン!
 だが、セブンはバキシクラッシャーのエネルギーチャージの一瞬の隙に体勢を立て直し、命中直前に前転で熱線を回避した。
 危機一髪……しかし熱線の威力はすさまじく、廃倉庫は大爆発を起こして吹き飛んだ。
 やはり火力はあなどれない。セブンは用心深く構えを取り、バキシムを見据えるが、バキシムは距離をとればこちらのものだと
両腕のミサイル発射口から無尽蔵に放たれるバルカン連打で攻撃をかけてきた。
「ダアッ!」
 セブンはすばやく身をよじってミサイルをかわす。一発一発の威力はたいしたことなくても、動きを止めれば蜂の巣にされてしまうだろう。
 身軽なセブンを相手に、バキシムのミサイルは目標を捕らえきれず、外れたミサイルで周辺は火の海に変わっていく。ここが無人の
廃棄区画でなければ大惨事になっていたことは必至だ。
 しかし、セブンを捕らえられないことに業を煮やしたバキシムは、卑怯者の常套手段とばかりに照準をベアトリスたちに向けて
ミサイルを放ってきた。
「ひっ!」
 先ほどまでの嬲る目的とは違い、殺す目的で放たれたミサイルは火の尾を吹いてベアトリスやエーコたちを襲った。むろん、
彼女たちを狙えばセブンが助けに入るのを読んでの仕業だが、駆け込んできたセブンはさらに早くバリヤーを張り巡らせた。
『ウルトラバリヤー!』
 胸の前でクロスさせた腕を左右に開いて作り出す光のカーテン状のバリヤーは、向かってきたミサイルをすべて受け止めて跳ね返した。
 貴様のような奴の考えなど、最初からお見通しだ! 数々の凶悪宇宙人と戦ってきたセブンは、バキシムの卑怯な戦法などは
想定の範囲内だったのだ。
 セブンはバリヤーを張ったまま振り返り、ベアトリスたちを見下ろした。彼女たちは、エーコたちがベアトリスをかばい、姉妹たちは
セトラやエフィがキュメイラやディアンナをかばい、彼女たちはより年下の子をかばいあっている。その様子は、復讐に狂って
いたころの残忍な気配はすでにない。
 獣から人間に戻った彼女たちの姿を見て、セブンは確信する。
「見たかヤプールよ。お前がどんなに絶望と憎悪を与えようとも、人間の心から光が消え去ることはないのだ!」
「ほざけセブン! まだ終ってはいないぞ。貴様さえいなくなれば、それですべて終わりだ」
「まだわかっていないようだな。人の光があり続ける限り、私は決して負けはしない!」
 バキシムの弾幕をものともせずにバリヤーで跳ね返しつつ、セブンの反撃が始まる。
「デヤッ!」
 セブンが精神を集中させて念を放つと、セブンに向かっていたミサイルが空中で静止した。
 さらに、念波はミサイルをくるりと反転させると、その方向をバキシムに向けて撃ち返した。
『ウルトラサイコキネシス!』
 押し返したミサイルの雨が放ったバキシムに次々と命中し、バキシムは自ら作り出したミサイルによって打ちのめされる。
 兄弟最強を誇るセブンのウルトラ念力、過去にも幾度となくセブンの窮地を救ってきたこの力も日々進歩しているのだ。
 ミサイルを撃つ手を止めたバキシムに、セブンはすかさず間合いを詰めて攻撃をかける。ダッシュからのキックがバキシムを吹っ飛ばした。
「ダーッ!」
 台風に負けた巨木のように地響きをあげて倒れるバキシム。セブンはボディに飛び乗って、パンチの連打、連打、連打!
 圧巻の連続攻撃がバキシムに吸い込まれ、さらにもがいて起き上がってきたバキシムに、もうミサイルを撃たせる隙は
与えまいと打撃を加える。
しかしバキシムは接近戦も決して弱くない。巨体はそれだけでも強力な武器となり、巨大な槍のような硬質の尻尾が
セブンを大きく張り飛ばし、巨体そのものを武器としてのしかかり攻撃を仕掛けてきた。
「ヘアッ!」
 寸前、セブンは転がってバキシムののしかかりを回避した。もしこの直撃を受けていたとしたら、いかなセブンでも
大ダメージは免れなかっただろう。
 しかし、バキシムのレーダーアイはセブンが体勢を立て直すために一瞬だけ背中を見せたタイミングを見逃さなかった。
セブンの背中に向けて、バキシムの最大の武器である頭部の角ミサイルが放たれる。完全にふいを打った発射であるために、
セブンはまだこれに気づいていない。
 そのときだった。
「後ろよ! 危なーい!」
 セブンの耳に響いた十数人の声が危機を知らせた。反射的に身をよじり、角ミサイルは刹那の僅差でセブンを掠めて
飛び去っていき、外れて方向転換をしようとしてるところへセブンは右腕を引き、左腕を水平に胸に当てたポーズで、
もっとも得意とする光線を額のビームランプから放った!
『エメリウム光線!』
 緑色の反磁力線に撃墜され、大爆発を起こす角ミサイル。ほかのミサイルと違って、このミサイルは単発で次はない。
 そしてセブンは自らの危機を救ってくれた、ベアトリスたちを見下ろしてうなずくしぐさを見せた。
「え……あ、もしかして」
 彼女たちは、言葉にこそされなかったが、セブンが自分たちに礼を言ったのだということがわかった。すると、胸のうちに
不思議な自信と暖かさが生まれてくる。そうだ、自分たちはちっぽけでも、ウルトラマンの大きな助けになることもできる。
そう理解したとき、彼女たちはそろって大きな声で叫んでいた。
「がんばれーっ! ウルトラセブーン!」
「負けないで、必ず勝って!」
「あたしたちがついてるぞぉ!」
「セブーン!」
 声を張り上げ、笑顔で手を振って応援する。それは地球で幾度となくウルトラ兄弟を支え続けた地球人類と同じ光景だった。
 これで負けるわけが、負けられるわけがない。
 切り札を失ったバキシムに、セブンの怒涛の攻撃が再開された。
 
 ウルトラパンチ、ウルトラチョップ、回し蹴りにウルトラスィング。レオを鍛えたセブンの宇宙格闘術がバキシムを追い詰めていく。
 
 が、卑怯なヤプールは形勢が不利で覆しがたいと見るや、空を割って亜空間ゲートを作り上げた。
「セブンめぇぇぇ! やむをえんバキシム、ここはいったん引け! 体勢を立て直して出直すのだぁ!」
 アルビオンのときと同じく、ヤプールはバキシムを逃がす気だった。亜空間ゲートに向けてバキシムは後退していく。
 けれども、今さらになって逃げ出すなどと虫のいいことを許すわけにはいかない。ここで取り逃せば、いずれ奴の手によって
エーコたち同様の犠牲者が生み出されるのに違いないからだ。
11ウルトラ5番目の使い魔 79話 (7/11) ◇213pT8BiCc(代理):2012/02/27(月) 23:54:45.40 ID:YhaH7vrU
 セブンは逃げようとしているバキシムに対して、左手の先から緑色の光線を放った。
『ラインビーム!』
 光線は光のロープとなってバキシムの首に巻きつき、引き戻す。以前神戸でモロボシ・ダンとして牧場を経営していたときに
とった杵柄、ロープの扱いはお手の物だ。
 セブンの渾身の力でバキシムは逃げ込もうしていた亜空間ゲートから離されていく。
「放せ! おのれ放さないかぁ!」
「逃がしはしない。お前が、人々を不幸にしようと考え続ける限り、決してこの手は放さんぞ!」
 未来を守ろうというセブンの強い意志がバキシムを縛って逃さない。ウルトラパワーでなぎ倒し、倒れたバキシムの巨体を
それ以上のパワーで持ち上げて、ウルトラリフターで頭上高くへ抱えあげた。
「デュワァァァッ!」
 十万トンの腕力を誇るセブンのパワーを持ってすれば、超獣有数の大重量を持つバキシムも紙の丸太のようだ。
 圧巻の光景に、ベアトリスたちは手に汗を握って見上げている。
「す、すごい……!」
 飛行能力を持たないバキシムはセブンを見下ろしながらも何もできない。
 お前のために傷つけられた、大勢の人間の痛みを知れ! セブンは怒りを込めてバキシムを放り投げた!
『岩石落とし!』
 頭の上の高さから地面に叩きつけられ、バキシムは自らの重量が敵になって大きなダメージを受けた。
 強い、本当に強い! セブンの猛攻に、ベアトリスやエーコたち姉妹は胸のすく思いを味わっていた。自分たちの大切なものを
散々もてあそんでくれたヤプールの手先が手も足も出ずに叩きのめされている。
 そう、正義は絶対に悪には負けない。なぜならば、真の正義は決して悪に屈せずに、あきらめることはない。だからこそ、
不可能を可能にする道も見えるし、負けることはないのだ。そのことを学び、心に思いやりの光を取り戻した姉妹たちには
希望の輝きがまぶしいくらいに見えている。
 
 セトラが、エフィが、キュメイラとディアンナが、イーリヤが笑顔を浮かべ、ユウリとティーナもこぶしを高く掲げて叫んでいた。
 エーコ、ビーコ、シーコもベアトリスと手を取り合い、彼女たちを見守るミシェルたちも瞳に強い輝きを宿している。
 
 もはや、ヤプールの卑劣な企みは完全に破れさった。二度と彼女たちの顔が憎悪と絶望に染まることはないだろう。
 バキシムよ、ヤプールよ、人間をなめるな。
 
 
よろめきながら、それでも起き上がってきたバキシムは、最後のあがきとばかりにミサイルの全発射口をセブンに向けた。
 レーダーアイを通してセブンを睨むバキシムに宿るものは、セブンとは真逆の怨念と執念。負の方向へと極めた感情の力。
 だからこそ、ウルトラ戦士は負けるわけにはいかないのだ。
 今まさにミサイルを放とうとするバキシムに対し、セブンは腰を落として奴を見据えると、頭上に持つ宇宙最強の剣を投げ放った!
 
『アイスラッガー!』
 
 兄弟の中でもセブンだけが持つ宇宙ブーメラン。数々の凶悪宇宙人たちの野望を断ち切ってきたセブン必殺の刃が、
白熱化しつつバキシムへと迫る。
 受けてみろ! ウルトラセブンの正義の一刀を。
 アイスラッガーはバキシムのミサイルを正面から爆砕しつつ突進し、愕然とするバキシムの、その首を一撃の下に切り飛ばした!
「ば、馬鹿な……ちくしょぉぉ……っ!」
 胴体から欠落し、ありうべからざる光景を最期に転がり落ちていくバキシムの首。
 しかし、それは自業自得というものだ。アルビオンからここまで、貴様が撒き散らしてきた悲しみの数々はつぐなわねばならない。
 首が落ちてなお、執念深く腕を下ろさないバキシムの胴体へと、セブンは腕をL字に組んでとどめの光線を叩きつけた。
 
『ワイドショット!』
 
 白色に輝くウルトラセブン最強の光線がバキシムの胴体を木っ端微塵に打ち砕き、首も炎の中へと飲み込み去る。
 終わった……ヤプールの手先として暗躍し続け、ハルケギニアを混乱させてきた悪魔は、ついに滅び去ったのだ。
「い、やったぁーっ!!」
 大勝利に、ベアトリスと姉妹たちのうちから大きな歓声があがった。
 ベアトリスとエーコたちは輪になって抱き合い、ユウリやティーナはガッツポーズをきめ、セトラやエフィたち年長組でさえも
子供のように喜んでいる。
 ようやくこれで、彼女たちにまとわりついていたヤプールの影は一掃された。もはや誰も、彼女たちをしばることはない。
 ありがとうウルトラセブン! ほんとうにありがとう。
 手を振る彼女たちの熱いまなざしに満足し、セブンは彼女たちを見下ろしてゆっくりとうなずいた。
 空は晴れ、バキシムの絶命によってヤプールも異次元に逃げ帰って、青空は冬雲をちりばめせて美しく広がっている。
セブンは大空を見上げ、大地を蹴って飛び立った。
「デュワッ!」
 空を舞い、赤い勇姿はどんどん小さくなっていく。
 ベアトリスたちはその背へ向けて叫ぶ。
「待ってセブン! いえダンさん、わたしたちまだちゃんとお礼もしてないのに!」
 風来坊から受けた恩、それは計り知れなく返しても返しきれる大きさではない。
 でもセブン、ダンはそんなものは求めていなかった。彼女たちに笑顔が戻れば、彼女たちの幸せが幸せになる者が幸せになれば、
それ以上のものは必要ない。
 手を振る人たちに見送られ、ウルトラセブンは去っていった。
 
 
 そしてしばらく……戦い終わった瓦礫の倉庫街の一角で、才人とルイズは馬に乗った風来坊ことモロボシ・ダンと会っていた。
「ウルトラセブン、危ないところをありがとうございました」
「私はたいしたことはしていない。重要だったのは君たちのがんばりのほうさ。それと、この姿のときは私はセブンじゃない。
モロボシ・ダンと呼んでくれ」
「はい! ダンさん、お、俺、ずっとあなたにあこがれてました。どうして、あなたがこの世界に来てるんですか?」
 才人は興奮に震える声で尋ねた。ともかくも、それが一番知りたい。ハルケギニアと向こうの宇宙のあいだには、容易には
越える事の出来ない空間の壁が横たわっているというのに、セブンはどうやってヤプールにも気取られずに来れたのか?
 すると、ダンは当然それを尋ねられると思っていたらしく、微笑を浮かべると明朗に答えた。
「なに、種も仕掛けもない単純な話さ。私は昨日今日来たんじゃなくて、行き来できる機会があったときに普通に来ていたんだよ」
 それは、今からおよそ一ヶ月ほど前にさかのぼる。
 当時、地球ではGUYSの手によりハルケギニアへの次元通路を作ろうとしていたのを覚えているだろうか。
 その計画を察知したヤプールが送り込んできた大怪獣軍団を迎え撃った、我らのウルトラ兄弟。
 しかしそれだけの激戦にあって、ただひとりだけ姿を見せなかったのがセブンだった。それは、彼は戦いが始まる前に、
ウルトラ兄弟のリーダーであるゾフィーから、ある密命を受けていたからだったのだ。
「セブン、これから我々は地球を襲う怪獣軍団と戦い、しかる後に別宇宙へと旅立つ。しかしヤプールがまだどんな隠し球を
持っているかわからん以上、ゲートを開けても全員が無事に渡りきれるとは限らない。そこで、お前は我々に先立って少しでも
ゲートが開いたら潜り抜け、万一のことがあったら向こうの世界でエースを助けてやってくれ」
 結果として、ゾフィーの危惧は現実のものとなった。
「私はゾフィーの指示に従い、怪獣軍団との戦いには加わらずに、わずかに空いたゲートをミクロ化して潜り抜けてきた。
それから先は、君たちも知ってのとおりだよ」
「じゃあなんで、おれたちに名乗り出てくれなかったんですか?」
「敵をあざむくにはまず味方からという。私がいきなり君たちと行動をともにすれば、ヤプールは警戒して隙を見せないだろう。
それに、私もまずは一人の人間としてこの世界がどんなものか見てみたかった。想像していたとおり、すばらしい世界だった」
 ダンは満面の笑みを浮かべ、ルイズも「ありがとう」と笑顔に応えた。
 ハルケギニアも地球となんら変わりない。心を持った人々が泣き、笑い、憎み、愛し合いながら懸命に生きている。それらは
いびつで不恰好で矛盾に満ちているかもしれないが、宇宙のどこよりも可能性にあふれた美しくてかけがえのない世界だと
信じているのだ。
 この世界は、守るべき価値がある。そう語るダンに、才人とルイズはうれしそうに笑顔を返した。
「それじゃあ、これからはおれたちといっしょに戦ってもらえるんですね!」
「いや、残念だがそれはまだできない」
「えっ! ど、どうしてですか!?」
 思いもかけないダンの言葉に、才人とルイズは驚いた。セブンがともに戦ってくれるなら、これほど頼もしい味方はいないが、
どうしてだというのだろうか。
「君たちも知っての通り、我々M78星雲のウルトラ戦士はこの星の太陽の放つ光線の波長には適応できない。メビウスや
ヒカリのような特殊なアイテムがあれば別だが、おいそれと用意できるものでもないのでな」
「そうか! エースはだからおれたちと合体したんだった」
「そのとおり、この世界でウルトラマンとして戦うには、我々はどうしてもこの世界の人間の力を借りなくてはならない。
さっきは非常用に光の国から持ち込んだ予備のプラズマエネルギーを使ったのだが、それはもうなくなってしまった」
 ダンはそう言うと袖をめくり、手首にはめたブレスレットを見せた。
「それは、ウルトラブレスレット……?」
 形状は似ていた。しかし、そこにひとつはめられているひし形の宝石は黒く濁っていて、一目で使い物にならなくなっているのはわかった。
「これはウルトラコンバーターの改良品で、変身に必要なエネルギーを一度分だけ蓄えておくことができる。しかし、まだまだ
開発中の未完成品でな、将来的には三回分ほどまでプラズマエネルギーを充填するのを目指しているが、用意が間に合ったのは
試作品のこの一つ分だけだった」
 才人とルイズは、ダンがセブンとして活動しなかったのはそれも理由だと思い当たった。たった一度しか変身できないのでは、
おおっぴらに姿を現して動けるはずもない。
「その大切な一回を、わたしたちのために……」
 変身できるかどうかの大切さを身を持って知っているルイズは、惜しげもなくその一回を使って平然と笑っているダンに
大きなものを感じて胸が熱くなった。
「気にすることはない。君たちの熱い思いで生まれた奇跡の重さに比べたら、このくらい比べるにも値しないさ」
 変身できないことには慣れていると、ダンは気落ちした様子など欠片も感じさせずに笑った。そしてダンは懐から一丁の
銃を取り出すと、才人に投げてよこした。
「これは君のものだろう。返しておこう」
「よっ! こ、こいつはガッツブラスターじゃないか!」
 才人は目を見張った。それは以前、地球に帰る機会があったときに持ち帰ってもらっていたエネルギー切れのガッツブラスターだった。
けれど、前に使い込んで汚れていたのはピカピカになり、まるで新品のようになって才人の手の中に納まっている。
「GUYSのリュウ隊長からの預かり物だ。君専用にと、エネルギーパッケージをトライガーショットと共用できるように改造したらしいぞ」
 ダンはさらに、GUYSのマークの印刷された小箱を才人に投げ渡した。中身は予備のエネルギーパッケージと、見たことのない
パーツがいくつか入っている。説明書きも同封されていて、才人はなんとなく面白そうな予感がして、それを大切にしまいこんだ。
「ありがとうございます。大切に使います!」
 プレゼントから伝わってくる無言の期待感に、才人はこころよい緊張感を覚えていた。向こうも暇ではないだろうに、わざわざ
愛銃を使えるようにして送り返してくれた。このガッツブラスターを使って、守るべき人を守りぬけというリュウ隊長の叫びが
聞こえてくるようだ。それに、こいつをこの世界に残していってくれたアスカ・シンにいつか会って、返すためにも絶対に無駄に
することはできない。
才人への贈り物をすませたダンは満足そうに微笑んだ。手綱を引くと、馬の背を才人たちに向けていく。
「さて、それではそろそろ私は失礼することにするよ」
「えっ! も、もう行っちゃうんですか!?」
「ここでの私の役割はもうない。それに、私はまだメビウスのように振舞うのは気恥ずかしいのでね。彼女たちには
よろしく言っておいてくれないか?」
 見ると、遠くからミシェルたち銃士隊や、エーコたち姉妹が駆けてくるのが見えた。ベアトリスはサリュアに背負われていて、
聞こえないけれどなにかを叫んでいるようだ。探しているものは、いうまでもないだろう。
「では、エースによろしく頼むよ」
「ま、待ってください。どこへ行かれるんですか!」
「さてね、俺は風来坊だ。どこに行くかは風次第……だが、恐らく遠からざる未来にまた会うことになるだろう。私が命を託すに
ふさわしい誰かとめぐり合えたとき、そのときこそ共に戦おう!」
「はいっ!」
 二人は力強く答えた。ダンの力を求めている人は、この世界のどこかに必ずいるだろう。その旅立ちをさまたげてはいけない。
「はっ!」
 馬の腹に蹴りを入れて、ダンは駆けて去っていく。
 あっというまに小さくなっていき、その精悍な姿に才人は心からのあこがれと尊敬を込めて手を振り続けた。
 やがてベアトリスたちが追いついてくると、才人たちの背中に焦った声が響いてきた。
「ちょ、ちょっとあなたたち! あの方は!」
「……行っちまったよ。もう追いかけても遅いぜ」
 才人は遠くを見る眼を動かさずに答えた。馬の姿はもう豆粒のように小さくなっており、すぐに見えなくなるだろう。
「なんてこと! せめて一言くらい直接お礼したかったのに! なんで止めてくれなかったのよ」
「止められねえよ。あの人には、まだまだやることがあるんだ」
「そうね、戦士の旅立ちを邪魔しちゃいけないわ……見なさいよ、あの後姿を。最高にかっこういいじゃない」
 ルイズも才人に全面的に同意してつぶやいた。悔しいが、己の仕事を成し遂げて威風堂々と去っていく、あの背中ほど
大きく偉大なものをかつて自分は知らない。この遠さのように、まだ全然追いつけないけれど、大人になるからにはああいう
背中のできる人間になりたいものだ。
 才人とルイズの横に足を止めて、ベアトリスたちも去り行くダンを見送った。
 さようなら風来坊、いえモロボシ・ダン、あなたのことは決して忘れない。
 いつしか、ベアトリスやエーコたち姉妹の目には涙が浮かび、千切れんばかりに手を振って叫んでいた。
「ありがとうダンさん! わたし、エーコたちと本当の友達になれたよーっ!」
「あなたから教えられたことは一生忘れない! 本当にありがとう!」
「わたし、またこんな幸せな気持ちになれるなんて……ううん!」
「わたしたち、きっともっとずーっと幸せになってみせるから、がんばるからねーっ!」
 彼女たちだけでなく、セトラからティーナまでの姉妹も泣き笑いながら手を振っている。
 ありがとう、ウルトラセブン、わたしたちにまた生きる希望を与えてくれて。
16ウルトラ5番目の使い魔 79話 (11/11)(代理):2012/02/27(月) 23:59:25.40 ID:YhaH7vrU
 金色の髪や水色の髪が風にゆれ、片眼鏡が陽光にきらめき、怒鳴り声やはしゃぎ声がこだまする。
 彼女たちはもう悪魔ではない。ひとりひとりが立派な人間だ。そして、その自信はあの偉大で大きな目標となる背中を
覚えている限り揺らぐことはないだろう。そう、太陽がある限り地上が光を失うことはないように。
 そのとき、一陣の風が吹き、ベアトリスの持っていたテンガロンハットを吹き飛ばした。帽子は風に乗り、見る見る空の
かなたへと飛んでいく。
 だけども、不思議と誰もそれを追おうとはしなかった。きっと、この風はあの人のもとへと吹いていくのだろうから。
 悪魔の書いた筋書きをハッピーエンドに変えて、降りる幕とともに消え行く飛び入り役者を、悲劇のヒロインとなるはずだった
主演俳優たちは見送る。
 その幸せそうな姿を優しい笑顔で見て、ミシェルは才人の横顔にダンと同じものを感じていた。
「サイト……あの心の中の世界で、わたしたちを導いてくれて、ずっと守っていてくれた、あの優しい気配は……いや」
 それ以上は言うまいと、ミシェルは首を振った。真実がどうあれ、それは今言うべきことではない、むしろ秘すべきことだ。
 でも、才人もいつかダンのように大きな背中を持つ男になるなら、自分もその隣に立てるような立派な人間になりたいと思うのだった。
 
 
 風だけを友に、モロボシ・ダンは去っていく。
 馬のひずめの音が高く鳴り、街はもう遠く小さい。
 そこへ、風に乗って吸い込まれるように飛んできたテンガロンハットを受け止めて、ダンは馬を止めると振り返って言った。
「行くがいい若者たちよ。まだ誰も行ったことのないはるかな地平まで、君たちならどんな困難でも乗り越えていけるだろう」
 たとえ遠く離れても、風はベアトリスたちの希望に満ちた声を届けてくれた。もう心配はいらない、悪魔がどんな魔手を
伸ばしてきても、彼女たちはそれを跳ね返せるくらいに強く成長した。
 そしてダンは、自分が地球と同じくこの星の人間が好きになった自分を感じていた。
「俺が命を託すに値する人間か……フフッ、案外本当に早く君たちとは再会することになるかもしれないな」
 思わせぶりな笑みを浮かべ、ダンは風を切る。
 あとは、エースが命を託したあの少年たちにまかせよう。再び馬を駆り、モロボシ・ダンはいずこへかと続く道を走り去った。
 
 
 明日、東方号は発進する。
 
 
 続く
東方号再建編、いえベアトリスとエーコたちの物語、いかがでしたでしょうか。
ウルトラセブンの登場をもっての完結、作者としても感無量を覚えました。
本来はこの半分くらいの長さで締めるつもりでしたのですが、書いてるうちにベアトリスやエーコたちのキャラ性が膨れてきて
いつの間にか10話以上も費やす羽目に。アイデアは湧いても、それを短くまとめるのはまだまだ苦手で、どうもお付き合いいただき、
ありがとうございました。
 
なお、実を言うと最初のプロットではセトラたち十人姉妹のうち半分はバキシムに殺されてしまって、生き残ったエーコたちが
墓前で強く生きていくことを誓って終わるという、やや鬱の残るエンドを考えてました。
が、書いてる途中で……あれ、でもそれだとセブンが役立たずじゃね? と気づいて全員生存に切り替えました。
でも、なんとかきれいに締めることができてよかったです。作者の魔の手を逃れてハッピーエンドを掴んだ十姉妹の強運には
負けたと思いつつも、作品の展開すらねじまげてしまうウルトラセブンはやっぱりすごい!

次回からは、いよいよ東方への出発です。ガリアは解決してませんが、原作についに追いついてしまいました。
ここからはテンポを上げて、一話ごとにぐっと進めるように書きます。


代理終了。途中本文長すぎと言われたのでこちらで分割させてもらいました。
18 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2012/02/28(火) 01:51:54.76 ID:Mm49nPyo
>>1とウルトラの人乙
19名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/28(火) 16:46:36.92 ID:FJBYdvD/
代理の人&ウルトラの人の乙です!
20名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/28(火) 17:25:08.91 ID:+5etIURk
あれ?
てっきりバキシマム来ると思ってたのに
21名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/28(火) 21:55:44.35 ID:ChcIFzpW
ゲームのみの怪獣は難しいんじゃない
22ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:44:56.85 ID:M7z6q5tn
お久しぶりです
空いてるようなので50分ぐらいから投下します
23ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:51:23.36 ID:M7z6q5tn
 

 逃げるように祝宴の場を後にしたルイズを追って、エリスは薄暗い廊下の中を走っていた。
 やがて彼女は通路の半ば、開いた窓から月の光が差し込むその場所で目的の相手を見つけ出す。
 肩を落とし、俯かせた顔に何度も手をやり、しゃくりあげる。
 月光に照らされて淡く光るピンクブロンドの髪が酷く幻想的で、酷く儚かった。
「……ルイズさん」
 声をかけて、そっと肩に手を触れる。
 するとルイズはびくりと身体を震わせ僅かにエリスを振り向いた。
 顔を上げないまま、眼を合わせない彼女の手を引いて、エリスは宛がわれた部屋へと歩き出す。
 一言も言葉を交わさないまままるで幼子を引くように連れ立って部屋へと戻り、二人でベッドに腰を下ろした。
 同時にルイズは崩れ落ちるようにエリスにもたれかかり、胸に顔をうずめる。
 服をぎゅっと掴んでくる震えた彼女の手を取り、空いたもう片方の手でエリスはルイズの髪を撫でた。
「……どうして。どうしてあの人達は笑ってるの? 明日死んでしまうのに、なんで笑えるの?」
「……」
 嗚咽と共に吐き出したルイズの台詞に、エリスは答える事ができなかった。
「ウェールズ様もそう。あの手紙にはきっと……絶対、姫様から亡命して欲しいって書いてたはずよ」
「……そうですね。私もそう思います」
 それはエリスも気が付いていた。
 彼女もルイズと同様にアンリエッタの表情とウェールズの表情を見ていたのだ。
 するとルイズはエリスの服を握る手の力を強め、吐き出すように言う。
「姫様が……好きな人が逃げてっていってるのに、どうしてあの人は死を選ぶのよ!」
 ここにはいない誰かに訴えるように彼女は叫び、涙に崩れた顔を上げてエリスを見つめる。
「大事な人が生きてって言ってるのに! わたしも生きてって言ったのに! わたしが! わたし、が……っ!」
 感情のままに叫ぶルイズだったが、不意に言葉を途切れさせた。
 何かを言いたそうに、しかしその言葉を口に出す事ができず、ルイズは苦しそうに顔を歪める。
 どうしても口に出せないその言葉がなんなのか、エリスはわかっていた。
「……ルイズさんが協力するって言ったのに?」
「!!」
 エリスの漏らした言葉に、ルイズの顔が強張る。
 何かに耐えるように唇を噛み、しかし歯の根が合わずにカチカチと音が鳴る。
 震えだしたルイズの身体を支えるようにエリスが抱きとめると、ルイズは鳶色の瞳からぼろぼろと涙を零して呻いた。
「……わたし、もういや。こんな国嫌い」
 ルイズは祝宴に立会い、異様なほど盛り上がる彼等を見て心底嫌になった。
 ウェールズを始めとしてあの城にいる全員が、自分の事しか考えていない。
 残された人たちのことなんて全く考えていない。
 そんな彼等の姿を見ていられなかった。
「帰りたい。トリステインに帰りたい……」

 ――でも。

 ルイズは苦悶に満ちた声で囁く。
 身体を震わせて、瞳を恐怖に彩らせ、まるで縋るようにエリスを見つめて、言う。
「わたしなら、あの人たちを助けられる……」


24ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:53:54.56 ID:M7z6q5tn
 

 ハルケギニアには虚無と呼ばれる伝説の系統があるという。
 始祖ブリミルはその虚無を用いて奇跡を起こしたという。
 そして、その虚無を現代に担う者がいるという。
 奇跡が起こらねば彼等を救えぬのならば、奇跡を起こせば良い。
 それが自分には、できるのだ。
 だが、ウェールズによって突きつけられた現実にルイズは震えることしかできなかった。
 彼がその話を聞き入れず部屋を辞した時、正直な話をすれば、安心さえもしてしまったのだ。
 そして祝宴に集った死を覚悟する彼等を見て、彼女は気付いてしまった。

 ――このまま何もせずにいれば、彼等は死んでしまうのだ、と。
 ――このまま何もせずにいるという事は、彼等を見捨てるという事なのだ、と。 
 何故なら、自分には彼等を救う『奇跡』があるのだから。
 自分は彼等の命の天秤をその手に握っているのだ。

 自分の決断と行動によって、多くの人達の命運を左右する。
 貴族として民の上に立ち生きる以上そういう事もあるのだと知ってはいた。
 知ってはいた。
 しかし、それは本当に"知っていた"だけだった。
 故国トリステインのため、王女アンリエッタのため、貴族としての誇りのためならば、それも辞さないという覚悟はあった。
 覚悟はあった。
 あった、と。そう"思っていた"だけだった。
 心の裡に築いていた誇りも覚悟も、何もかもが崩れてしまった。


「わたし、どうしたらいいの? どうすればいいの?」
 怯えた表情で訴えてくるルイズに、エリスは静かに問う。
「ルイズさんは、どうしたいんですか?」
「……助けたい。助けたいわ。わたしはウェールズ様を助けたい。あの人達も。でも……でも」
 それ以上言葉を続ける事ができない。
 あの時言われたウェールズの言葉と、そして――自分の言葉が楔になって声を紡ぐ事を許さない。
 声を出せない代わりに、身体が一層強く震えた。
 エリスはそんなルイズを優しく抱きしめ、囁くように呟く。
「……ごめんなさい。私には、答えられません」
「……!」
 エリスの耳元でルイズが息を呑む音が聞こえた。
 おそらくは突き放されたと思ったのだろう、僅かに強張ったルイズの身体をしかしエリスは抱きしめたまま、言葉を続ける。
「私ならどうするか、というのなら考えてることはあります。どちらを選んでもつらいのはわかってます。
 だけど……今回それを決めるのも、それをやるのもルイズさんですから、私からは言えません。
 ……ただ、一つだけ。ルイズさんは一人じゃないんです」
 エリスの言葉に、硬直し震えるだけだったルイズの身体が僅かに揺れた。
 紫苑の髪の少女は、ピンクブロンドの髪を優しく撫でながら、言う。
「ルイズさんには使い魔の私がいます。柊先輩だっています。だから、全てを一人で抱え込む事なんてないんです。
 "全て"を代わりに背負う事はできないけど、一緒に背負って支える事ならできます。
 ……一緒に一人前になろうって、言ってくれましたよね?」
「エリス……」
 身体の震えは止まらなかったが、ほんの僅かに心に刺さる痛みが薄れたような気がした。
 ルイズはエリスから身を離すと、涙を拭いながら呟く。
「あなた……普段は全然頼りなさそうなのに、なんでこういう時だけ強いの?」
 学院のような箱庭――戦争に直面した今ではそう感じる――にいる時はありきたりの人間に見えるのに、何故かこういう状況でも怖気づく事がない。
 それがルイズには不思議でたまらなかった。

25ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:56:35.97 ID:M7z6q5tn
 

 するとエリスは少しだけ物憂げな表情を見せると、僅かに口の端を歪めて返した。
「前にも少し言いましたけど、私も元は柊先輩と同じウィザードで……『色々』ありましたから。私の時も、そうやって柊先輩や他の人達に助けてもらったんです」
 表情だけは微笑だったが、それを語る彼女の口調はどこか自嘲を含んでいるようにも見えた。
 しかしそれを追及する余裕のないルイズは、先程のように取り乱しはしないものの顔を俯け、苦しそうに眉を寄せた。
 エリスのおかげで僅かに楽にはなったが、それでも決断をできるほど心の整理がついていない。
 お互いに言葉のないまま部屋に沈黙が下りた。
 それを破ったのはエリスでもルイズでもなく、扉から響くノックの音だった。

 顔を強張らせたルイズを手で制し、エリスは一人そちらに向かう。
 扉を開くとその向こうにいたのは、手にワインとグラスを持ったワルドだった。
「失礼。ルイズはいるかな?」
「あ、はい。いますけど――」
 言ってエリスはベッドの上で不安そうにしているルイズに目をやり、
「ごめんなさい。気分が優れないようですから……」
「そうか……しかし、それなら僕としては尚更放っておけない。話をさせてもらいたいのだが」
「ですけど――」
「……いいわ、エリス」
 まだちゃんと落ち着いて話はできないだろうとエリスは断ろうとしたのだが、それを遮ったのは他ならぬルイズだった。
 思わずエリスが目を向けると、彼女は目尻を拭って大きく深呼吸し、エリスに向かって声をかける。
「なんとか落ち着いたから。ありがとう」
 そう言われてしまってはエリスとしては拒絶することはできない。
 ワルドを部屋の中に入れると、エリスはおずおずとワルドに尋ねた。
「あの、私も同席しても?」
「む……それは、構わないが……」
 するとワルドはほんの少し難しい表情をした後、申し訳なさそうに手にしていたグラスを持ち上げて見せた。
「この通り、グラスを二つしか持って来ていないんだ。それに、他人の前で傷心の婚約者を慰めたりするのは、その……正直、照れる」
「あっ……ご、ごめんなさい!」
 はっとしてエリスは口に手を当て顔を赤らめ、それを聞いたルイズも思わず目を丸くしてやはり頬を染める。
 そんな二人の様子を見てワルドは所在なさげに苦笑を浮かべ、エリスに言った。
「いや、気にしなくていい。まあそういう訳だから、席を外してくれると助かる」
「は、はい、わかりました」
 エリスは慌てて一礼すると、最後にルイズを一度だけ見やってから部屋を後にした。
 ワルドがエリスが退室するのを見届けてから振り返ると、目の合ったルイズが僅かに頬を染めて視線を反らす。
 彼女は今更のように自分が座っているのがベッドだと気付くと、慌てた仕草で立ち上がった。
 部屋に置かれている小さなテーブルの方へと促し、二人で向かい合うように椅子に座る。
 このような場所であるのでテーブルも椅子もこじんまりとしていたが、流石にエリスの時のようにベッドで話す訳にもいかない。
 ワルドは持ってきたグラスにワインを注ぎ、杯を合わせる気分でない事を察したのだろう、ただ無言でルイズを促す。
 口を付けたワインの味は全くわからなかったが、喉と身体を潤す水分はルイズに僅かな安堵をもたらした。
「……迷っているようだね」
 ワインを半分ほど飲み干したのを見計らってワルドがそう切り出すと、ルイズはグラスをテーブルに置いて顔を俯けた。
「無理もない話だ。多くの人の命がかかっているのだからね」
 ワルドの言葉にルイズは何も返せず、グラスに残ったワインを見つめる事しかできなかった。
 改めて持ち上がったその話題でルイズの中に再び恐れが浮かび、それを誤魔化すようにワインを一気に飲み干した。
 やはり味はわからない。おそらく酔えもしないだろう。
 ただ、飲むたびに頭の中に何かが沁み込む感じがして、思考はともかく身体は酔ってくれているのだろうと感じた。
 できるのならばこのまま酔いつぶれてしまいたい。そうすれば――

26ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:58:17.25 ID:M7z6q5tn
 

「……」
 ルイズが空になったグラスを差し出すと、ワルドが新たにワインを注ぐ。
 二杯目を一気に全て開けてしまうと、不意に彼が口を開いた。
「……王子殿下とのやりとりを聞くに、キミはまだ虚無を扱える訳ではないのだろう?」
「そう……ね」
 胡乱な様子でルイズが答えると、ワルドは得心したかのように頷き、言った。
「思うに、君が迷っているのはそのせいではないのかな」
「……!」
 その言葉にルイズは思わず目を見開く。
 彼女の視線を受けてワルドはまるで諭すかのように続けた。
「貴族……メイジならば魔法が使える。魔法という確固たる力を宿すゆえに、貴族は誇りを持ち杖を振るう。
 稀代のメイジと呼ばれた君の父上もそうだし、小なりとはいえ僕もそうだった。
 だからきっと君も、力に目覚めさえすれば迷いは消えるはずだ。君の気高い精神に相応しい、虚無に目覚めれば」
 それは、その通りかもしれない。
 実際そういうワルド自身はその力によって衛士隊の隊長という地位にまで上り詰めたのだ。
 そしてエリスも、元は柊と同じウィザードだと言っていた。
 それはつまり柊と同じような力を持っていたのだろう。きっとだからこそ彼女はこういう時でも揺るがないのだ。
 対して自分はどうなのだろう。
 力のない自分ではフーケを捕まえる事もできなかったし、この任務でも柊から置き去りにすらされている。
 ウェールズを翻意させる事もできなかった。
 もしも自分に力があって、それらを自らの手で成しえていたとしたら、果たして今のように迷っていただろうか。
 ……それはわからない。
 何故ならそれは無意味な仮定でしかなく、今あるのは自分に力がないという事実だけだったから。
「でも……ウェールズ様はそれを許して下さらなかったわ」
 その機会すら与えられなかった事に僅かな消沈を覚えてルイズが呟くと、ワルドは優しく笑みを浮かべる。
 そして彼は懐から何かを取り出すと、恭しい動作でそれをテーブルの上に置く。
 それは、どこか古ぼけたオルゴールと青い宝石が嵌められた指輪だった。
 ルイズの顔が驚愕に歪む。
「み、水のルビー? なんで貴方が……」
「あの男から取り返した。これは君が持つべきものだ。始祖の秘宝は虚無の担い手たる君こそ持つに相応しい。そうだろう?」
 酷く優しい調子で語るワルドの言葉に、しかしルイズは心の奥底から何か冷たいモノが這い上がってくるような錯覚を感じた。
 そして一緒に置かれたオルゴールに視線が注がれる。
 始祖の秘宝は自分に相応しい、と彼が言うのなら、その彼が一緒に取り出したこのオルゴールは。
 あの時。
 ウェールズがルイズの訴えを拒絶した時。
 彼は『何』を渡すわけにはいかないと言っていた――?


27ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 01:59:25.92 ID:M7z6q5tn
 

「どう、して……こんな、モノを」
 ルイズは声が震えるのを止められなかった。
 しかしワルドは様子は全く変わらない。変わらないのが、逆に底知れない恐ろしさを感じさせた。
 彼は僅かに身を乗り出し、震えるルイズの手を取った。まるで幼い頃、いじけていた自分を迎えに来た時のように。
「怖いのかい、ルイズ」
 振りほどいてしまいたかったが、身体が動かなかった。
 恐怖に身が竦んでいた、というのもあるが、何故か振りほどきたいという一方で彼の囁きに耳を傾けている自分がいる。
 そして彼は、あの頃と同じようにルイズに言った。
「大丈夫、僕がついているよ」
 心の奥にまで沁み込むようなその声に、ルイズの力が抜ける。
 鳶色の瞳に僅かな光を漂わせ、彼女はワルドを見つめた。
「恐れる必要など何もないんだ。何故なら君には僕がいる。僕が君を護ろう。
 君に降りかかる苦難も罪も"全て"僕が引き受けよう。僕はそのために研鑽を積み力を得たのだから」
「……全て?」
「そう、全てだ。
 恐れる必要などない。君を恐れさせる苦痛や災禍は全て僕が引き受けよう。
 迷う必要などない。君が選んだことで流れる怨嗟や血は全て僕が浴びよう。
 だから君は誇り高いまま、穢れなき聖女のまま、手にした杖で神の奇跡を振るえばいい」
 紡がれる言の葉が酷く心地よかった。
 彼の声がまるで清流のように身体の隅々まで、心の中にまで沁み込んで来る。
 身を任せてしまえばこのまま眠ってしまいそうな居心地の良さ。
 ルイズは陶酔したかのような声で、ぼんやりと呟いた。
「本当……本当に?」
「本当だとも。だから僕と共に行こう。君があるに相応しい場所に。君が歩むに相応しい道へ。……僕と共に」
「……ワルドさま」
 ワルドの言葉にルイズは嬉しそうに微笑を浮かべた。
 そして彼はルイズの手を引き、恭しくその指に水のルビーを嵌めた。
 まるで新郎が新婦にエンゲージリングを嵌める様子に見えて、ルイズはかつてぼんやりと夢見ていた光景と重ねて知らず頬を赤らめた。
 とても幸せな気分だった。
 ただ、どこか心の片隅でそんな彼女を見つめている自分がいる――そんな気がする。
 それが一体なんなのかわからないまま、ルイズはワルドの差し出した秘宝――始祖のオルゴールを手にした。


 ※ ※ ※


28ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:00:50.75 ID:M7z6q5tn
 


 王党派達の最後の晩餐は日付が変わる頃になってようやく半ばを過ぎ、熱狂も下り坂に差し掛かっていた。
 喧騒や歓声が次第に夜の静寂へと変わりつつある中、薄暗い廊下を一人の女が歩く。
 窓から落ちる月の光が、深く被ったフードから僅かに零れた翡翠色の髪を照らした。
 女は曲がり角に辿り着くと一旦足を止めてその先の様子を窺い、再び歩を進める。
 だらしなく寝入った兵士達の隙間を通り過ぎ、彼女は人目を憚るように階段を上り上階に向かう。
 もう少しで仮の天守のある最上階まで辿り着こうとした、その時だった。
「失礼」
 と、不意に声をかけられて女は大きく肩を揺らした。
 数瞬の間の後、彼女がゆっくりと振り返ると、そこには薄闇の中に映える金髪の青年――ウェールズがいた。
「この先は我々王党派の重鎮達が休む部屋だ。申し訳ないが、大使殿の連れとはいえそれ以上立ち入るのはご遠慮願いたい」
「……」
「ミス・ロングビル……で、よろしいか?」
 ウェールズは尋ねたが、女は答えない。
 後ろ手に沈黙を保ったままの彼女をしばし見やった後、彼はどこか芝居がかった仕草で肩を竦めて苦笑を浮かべた。
「本来なら衛兵達が護っていてここまで来れないはずのだが、彼等は"何故か"ことごとく寝入っていてね。いくら無礼講とはいえ羽目を外しすぎているようだ」
 フードから覗く女の口元が僅かに歪んだ。
 表情を隠されてもなおそれとわかる険悪な気配に、しかしウェールズは臆する事なく言葉を放つ。
「地下の港で一度目にしたが、ちゃんと話をするのはこれで初めてか。……顔を拝見しても?」
「……」
 すると僅かな逡巡の後、女――ロングビルはフードを取り払い眼鏡越しにウェールズをはっきりと見据えた。
 お互いに言葉もなくしばしの間視線を交わす。
 やがてウェールズは大きく息を吐いて、懐かしそうに語りかけた。
「最後に会ったのは五年くらい前……モード公の誕生会だったかな。久しぶりだね、マチルダ」
「――気付いてたのか」
「噴飯ものだが、港で見た時は気付かなかった。ヒイラギにサウスゴータで会ったと聞かなければきっと思い出せなかったし、ここにもいなかったろうな」
「……余計な事を」
 マチルダは不快そうに顔を歪め吐き捨てた。
 彼女にとってこの城にいる貴族たちは全く無縁の人間達ではなかったし、少なからず面識のある者もいた。
 しかし、そんな彼等も誰一人としてマチルダの事には気付かなかったのだ。
 姿を晒すのを控えていた、というのもあるが、何より四年近くも前に姿を消した少女の事など覚えているはずもない。
 まして自らの滅びを目前にしているのだ、よほど親密でなければ気に留めることさえないし――彼女にとってそのような相手などもはや存在しない。


29ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:02:33.45 ID:M7z6q5tn
 

「何故ここに――とは聞くまでもないか」
「答えるまでもないだろう? それで、どうするんだい? そこらに衛兵を隠してるのか?」
 マチルダは鼻を鳴らして壁に手を当てた。
 後ろ手に隠していた杖を握り締めて、ウェールズに向ける。
 すると彼は首を左右に振って、手を差し出した。
「衛兵はいない。そして陛下に――父に会いたいのなら、杖を渡してくれ。それが条件だ」
「……何?」
 ウェールズはいぶかしむように見つめてくるマチルダにしかし物怖じせず、空いた手に握る杖を見せると彼女に向かって語りかける。
「今君に王を討たれる訳にはいかない。話をするだけで禍根が絶てるなどとは思わないが、これが僕にできる精一杯の譲歩だ」
「……お前達の事情なんて知った事じゃないね」
「ならば、遺憾ながら僕は――私は陛下の臣として君をここで捕らえなければならなくなるな」
 僅かに表情に陰りを見せてウェールズが言う。
 お互いに杖と視線を向け合ったまま、場に沈黙が下りた。
 ただ、応酬した言葉とは裏腹にその静寂の中に剣呑な気配はほとんどなかった。
 ウェールズにとっては不本意な状況であるのでともかくとして、相対するマチルダの側さえもそうなのが彼にとっては少々不可解だった。
 反応に窮してウェールズが様子を窺っていると、不意にマチルダが軽く失笑を漏らした。
 眉を潜めた彼の前で、更に彼女は自ら持つ杖を下ろし、そして床に放り投げる。
 床に落ちた杖がからからと乾いた音を立てた。
「……マチルダ?」
「これが条件なんだろう? さっさとアイツに会わせな」
 どこか他人事のように彼女はそう言い、その場から離れて壁に背を預け、大きく息を吐く。
 意外な反応ではあったが、マチルダがこうして条件を呑んだ以上否応はない。
 ウェールズは床に落ちた杖を拾い上げると、彼女を促して歩き始めた。
 二人はややあって王の寝所まで辿り着き、部屋の前に控えた衛兵達を下がらせる。
 その際に衛兵達は王子の同伴とはいえマチルダの入室にあたり身体検査を要求したのだが、彼女はそれをあっさりと受け入れ――そして何も不審な物は持っていないと判明したのだ。
 廊下の両端に移動した衛兵を見届けながら、ウェールズは疑念が更に強くなったのを感じる。
 マチルダがこの場に来たのは、言うまでもなくサウスゴータの無念を晴らすためだろう。
 にも拘らず彼女は自ら杖を手放し、そしてナイフなり銃なりの得物も所持していない。
 何らかのマジックアイテムの類も、やはり持ってはいなかった。
 徒手やそれに類する小物では到底メイジを相手取ることはできまい――少なくとも彼女の所作は相手取れる域ではない。
 つまり、ウェールズの知識の及ぶ限りで彼女が王を害する事は不可能なのだ。
 しかし当のマチルダはそれを気にする風もなく、それだけにウェールズは彼女の意図を測りかねていた。
「……どうした? 会わせてくれるんじゃないのかい?」
「……ああ、わかった」
 そう約束した以上反故にする事もできず、ウェールズは覚悟を決めて扉をノックした。


30名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 02:03:14.77 ID:C2foLbYy
しえん
31ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:04:10.69 ID:M7z6q5tn
 

 仮にも王の寝所だけはあり、その部屋は城の中でも最も広い間取りがあった。
 薄暗い室内の最奥、ベッドの脇の灯火に照らされ、老王は身を横たえ何かの書物に目を落としていた。
「……父上。少々よろしいですか」
 静寂を破らぬようウェールズが静かに語りかけると、ようやく来訪者に気付いたかのようにアルビオン王――ジェームズは顔を上げた。
「ウェールズか。どうしたのだ? もう朕には彼等の相手ができる気力はないぞ」
 晩餐の余韻が残っているのだろう、少し上擦った声で言ったジェームズ王に、ウェールズは少し間を置いて答える。
「……。実は、父上にお引き合わせしたい方がいるのです」
「ほう?」
 王は片眉を僅かに持ち上げ、ウェールズの隣にいるマチルダに目をやった。
 彼女は伏せていた頭を上げ、平静な表情を崩さぬよう強く歯を食いしばって父母の怨敵を正面から見据える。
 薄暗がりの中、多少距離もあるので顔はわかるまい――否、例え至近で顔を見られても王は彼女の事は気付かないだろう。
 やはりと言うべきか、ジェームズ王はややあって首を傾げながらウェールズへと問いかけた。
「知らぬ顔だが、よもやそなたの良人という訳ではなかろうな?」
「違います。彼女の名はマチルダ・オブ・サウスゴータ――旧サウスゴータ伯の子女にございます」
「……」
 努めて感情を抑えた声でウェールズがそう言うと、ジェームズ王は僅かに目を細めた。
 場に痛いほどの沈黙が下りる。
 時間が止まったかのように誰一人微動だにせず、どれほどの時間が経ったかもわからないぐらいの静寂の後、老王が小さく呟いた。
「……そうか。サウスゴータの」
 その囁きに押されるようにマチルダがジェームズ王に向かって一歩を踏み出した。
 ウェールズが思わず彼女を止めようと手を出しかけたが、
「よい」
 当のジェームズ王がそれを制した。
 ゆっくりと王へと近づいていくマチルダの背を見ながら、ウェールズは懐の杖に手を伸ばす。
 マチルダは丁度王とウェールズの中間ほどの場所で立ち止まると、酷く冷めた翠色の瞳でジェームズ王を見やり、口を開いた。
「……何か言いたい事はあるか?」
 問うた声にジェームズ王は沈黙を返した。
 マチルダから目を背け、どこか遠くを見るような目線で天井を見上げ、そして息を吐く。
「……ないな。語るべき事などないし、言うべき事もない。それで時が返り事実が変わる事などない以上、何の意味もない」
「――っ」
 マチルダの肩が揺れた。
 僅かに顔を落とし、拳を握り締める。
 後ろからそれを窺っていたウェールズが僅かに杖を握る手に力を込めた。
 しかし――不意にマチルダが嘆息し、次いで天井を仰いだ。
「……どこまでも忌々しい奴だね。謝罪の一つでも聞かせてくれれば――遠慮なく殺してやれたのに」
「マチルダ……?」
 やはり彼女の意図が掴めず、ウェールズはその場に立ち尽くす事しかできなかった。
 マチルダはまるで糸が切れたかのようにその場に座り込み、再び大きく息を吐いた。
「マチルダ。君は……」
 ウェールズは崩れ落ちた彼女に歩み寄り、肩に手を添える。
 彼女は翡翠の髪を苛立たしげに掻き、しかし彼の手を払う事なく自嘲じみた声を上げた。
「何か勘違いしてるようだから、教えとくよ。あたしがここに来たのは――『けじめ』をつけるためだよ」


32名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 02:05:12.19 ID:51VKF9av
私怨
33ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:07:29.17 ID:M7z6q5tn
 

 ――アルビオン王家が憎いか、と問われれば、それは言われるまでもなく憎いと答えるだろう。
 それは当然だろう。奴等のせいで家名は地に落ち、父も母も親しい人も死んだのだから。
 無念を果たしたいか、と問われれば、それは言われるまでもなく果たしたいと答えただろう。
 少なくとも、それが起こった当時はそう思っていたし、そのために生き延びて裏稼業にも身をやつしたのだ。
 そのまま復讐心を抱き続けていられたなら、おそらく彼女は問答などする事もなくアルビオン王もその前に立ち塞がったウェールズもまとめてくびり殺していたはずだ。
 しかし、彼女はそうならなかった。
 彼女は沢山のものを失ったが――唯一残ったものがあったのだ。
 彼女の父母が、そしてその父母と親しいモード公がその命に代えて守ったハーフエルフの少女、ティファニア。
 正直な事を言えば、あの一件が起きた当時マチルダは彼女が疎ましかった。
 何故なら彼女とその母親のエルフこそが、マチルダが陥った状況の元凶なのだから。
 しかしマチルダと同じく総てを失ったティファニアは彼女に縋るしかなく、マチルダも両親の忘れ形見に等しい彼女を捨て置くことはできなかった。
 当初は疎ましさ憎らしさを隠してうわべだけで養っていたが、単純な彼女はそれをまともに受け取って姉として慕うようになった。
 最初はそんな彼女を内心馬鹿にもしていたが……いつしかそんな風に馬鹿にするのが馬鹿らしくなってしまっていた。
 そうやってティファニアとの生活が変化していくのに伴って、王家に対する感情も僅かに変化していった。
 勿論、憎悪が消えてしまった訳ではない。許してやろうと思う事などありえない。
 しかし、かつては確かに抱いていたはずの『何が何でも復讐してやろう』という激情が薄れていたのだ。
 内乱が起きると噂され、そして叛乱勢――レコン・キスタが優勢になり王家の打倒が現実味を帯びてきても、何故かそれに乗ろうという気にはならなかった。
 その理由がはっきりとわかったのはつい最近。
 魔法学院の一件をしくじってからサイトに助けられ、ティファニアに自分の事情を知られた時だった。
 酷く取り乱し泣きじゃくって自分に縋りつくティファニアの姿が、いつかの自分と重なった。
 ……その時、気付いたのだ。
 いつの間にか、生きるための目的が変わっていた事に。

 マチルダがこの場に来たのは、あの時に気付いた自分の心境を確かめるためだ。
 家を貶め父母を殺した張本人であるアルビオン王を目の当たりにして、果たしてその時自分は何を考え何をするのか。
 それを確かめるために彼女は柊達に同行してきたのだ。
 そして実際にその王を目前にして――やはりと言うべきなのだろうか、思っていたほど怒りも憎悪も感じなかった。
 端的に言えば、そう……"どうでもよかった"。
 憎むべき老王が言った通り、もはや今更なのだ。
 復讐を果たしたところで家の名誉が戻る訳でも両親が蘇る訳でもない。
 むしろ今更ながらに謝罪して許しを請い、自分が喪ったそれらを本当に『過ち』にされてしまう方が侮辱というべきだ。
 もしジェームズ王がそうしていたらそれこそ何が何でも殺してやろうと思っていたが、そうはならなかった。
 それがほんの少しだけ、悔しかった。


34ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:09:37.72 ID:M7z6q5tn
 

 マチルダは添えてきたウェールズの手を取り、彼の助けを借りて立ち上がる。
 両の手で少し乱れた髪を一度梳いて整えると、大きく深呼吸して再びジェームズ王を見据えた。
「お前の事はもう忘れる。だが、お前は死ぬ最期の瞬間まで決して忘れるな。お前があたし達にしたことを」
「……よかろう。ただ、朕はそなた達の事に限らず、己の成したことを忘れたことは一度たりともないがな」
 ジェームズ王は晩餐の時に見せた枯木のような印象とは程遠い、毅然とした表情でマチルダにそう返す。
 そんな父の姿を見てウェールズは僅かに目を見張った。
 それは奇しくも件のモード公の事件を境に見られなくなった、かつてのアルビオン王ジェームズ本来のものだったのだ。
 堂々とした王の態度を見やってマチルダは不快そうに舌を打った。
 もはや復讐の事はどうでもいいが、ここまで来たのなら意趣返しをして少しでも溜飲を下げねば物足りない。
「……だったら、覚えているか? お前が追い落としたモード公には忘れ形見がいた事を」
「……!」
 そこで初めて、ジェームズ王の表情がほんの少し崩れた。
 しかしむしろ大きく反応したのは、同伴しているウェールズだった。
「忘れ形見? まさか、子がいたのか?」
「……知らなかったのかい?」
「エルフと通じていることは知っていた。だが、子がいたとは聞いていない。僕の……従妹?」
 エルフが関わる事はともかくとして、子を成していた事だけは厳重に秘匿していたのだろう。
 絶句したウェールズをよそにマチルダがジェームズ王に目をやると、彼もまたウェールズほどではないにせよ表情を険しくしてマチルダを見つめていた。
「……生き延びておったのか」
「生きてるよ。なんなら遺言でも伝えてやろうか? あたしに言う事はなくとも、姪には言う事があるんじゃないか?」
 マチルダが皮肉気に笑ってそう言ってやると、ジェームズ王はほんの少しの沈黙の後彼女と同じような顔で口角を歪める。
「ないな。あれはもはや"わし"とは何の関わりもない。切り捨てたわしに言葉をかける資格なぞなかろう」
「そうだね。あの子はもう『あたしの家族』だ。お前に口出しされるいわれなんてない」
 ジェームズから王としてではなく血縁者としての台詞を吐かせた事に、マチルダは胸がすくような気持ちでそう断言した。
 そして彼女が話は終わりとばかりに踵を返し、部屋を後にしようとする。
 しかしその背中に向かってジェームズ王が声を投げかけた。 
「――待て」 
 マチルダが肩越しに振り返ると、ジェームズ王は瞑目して大きく息を吐いた。
 そして彼は目を瞑ったまま、今だ立ち竦むウェールズに言う。
「ウェールズよ」
「……はい」
「そなたは明日、そこのマチルダと共に城を出て、件の娘に会いに行け」
「……は?」
「わしからはもう何も言う事はないが、そなたならば従兄として何がしか言う事もあろう」
「な――」
 ほんの数瞬、ウェールズは父王が言った言葉を理解できずに呆然と瞬きをするだけだった。
 マチルダもまた驚きも露に目を見開いたが、やはり反応する事ができなかった。
 やがて父の言葉をようやく脳が理解すると、ウェールズは表情を歪めて父王へと一歩踏み寄った。
「何を言っておられるのか! 今はそのような事に気をかけている時ではないでしょう!」
 モード公の一件に関してウェールズは父に対して少なからず思うところがあった。
 マチルダを条件付とはいえ父に会わせたのも、彼女に対する後ろ暗さがあったからなのかもしれない。
 その上でたった今知らされた、一件の当事者であり血縁である従妹の存在。
 確かに会ってみたくはある。可能ならば話をしてみたいと思う。
 だが、それはもはや遅すぎるのだ。
「私には王家の者として陣頭に立つ責務があるのです! それをないがしろにして私事に――」
 不意にウェールズは言葉を切り、はっとして目を見開いた。
 唐突過ぎる父王の言いようが、ウェールズの中にある事実を思い出させたのだ。


35ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2012/02/29(水) 02:11:08.36 ID:M7z6q5tn
 

「……父上。よもや、アンリエッタの手紙を真に受けたのではないでしょうな」
 ウェールズは声を低くし、唸るようにして父へと問いかけた。
 そう、ジェームズ王は先行してニューカッスルに入場した柊から手紙を預かり、その内容を目にしているのだ。
 そこに書かれていた、姪であるアンリエッタの訴えも含めて。
「……」
 ジェームズ王は答えなかった。
 だが、否定しない以上それは肯定しているも同然だった。
「この期に及んで情の言葉など聞きたくはない! 王として自らの弟を手にかけ、マチルダの家族を手にかけておきながら、今になって姪のためなどと!!
 王ならば王らしく、そのつとめを全うして見せろ!!」
 ウェールズは怒気も露に床を蹴りつけ、声を荒らげる。
 モード公の一件に対して思うところはあったが、国の歴史と誇りを担う王家である以上父の行為を半ば受け入れていたのだ。
 だがその歴史と誇りを反故にしたかのような父のいいように、沈めていたものが噴出してしまった。
 ウェールズの射殺すような視線を正面から受け止めたジェームズ王は、しかし顔色一つ変える事なく笑みを浮かべ皺を深めた。
「王とはもとよりそのようなものであろうが。それにな、ウェールズ。そなたは根本的に勘違いをしておる」
「何を!」
「わしは王としてのつとめをないがしろになどしてはおらん。かの娘に会いに行くのはそなたであって、わしではない。
 そして、城に残り陣頭に立つ責務は王たるわしのつとめであり、そなたのものではない。
 ……杖もろくに振れぬほど耄碌しておるが、冠を譲った覚えはないぞ」
「……っ!」
 あくまで静かなジェームズ王の言葉にウェールズは言葉を詰まらせた。
 とっさに返す言葉が思い浮かばず、唇を噛みわずかに視線を彷徨わせる。
「しかし、私とてれっきとした王家の一人には違いありますまい! ならば――」
「この期に及んで小賢しいの。『惚れた女のために死なせろ』ぐらいは言えんのか?」
「な!」
 ジェームズ王がウェールズの声を遮り、くつくつと笑いながら漏らすと、ウェールズは顔を羞恥に染めた。
 思わず食って掛かろうとしたウェールズを更に手で制し、父王は笑みをおさめて言葉を続けた。
「――よかろう。ならばそなたに王家の責務をくれてやる。
 かの娘と会った後、イーグル号とマリー・ガラント号にて落ち延びた避難民と合流しトリステインに向かえ。
 そしてアルビオン最後の大使として彼等の処遇を差配せよ」


36ルイズと夜闇の魔法使い 代理:2012/02/29(水) 03:49:17.38 ID:00WSbG/6
 

「!!」
 ウェールズの表情が凍りついた。
 大きく目を見開き、しかし二の句が告げられない彼に、ジェームズ王はふんと鼻を鳴らして語りかけた。
「そなたは彼等を城から脱出させるだけで満足しておるようだが、落ち延びた彼等は一体どこに行けというのだ? 貴族派が牛耳ることになるこの国には戻る事など叶わず、しかし最後まで我等に付き従った臣民では諸国も良い顔をすまい。
 ここで名誉の戦死を遂げられれば後の事などどうでもよいか?」
「それ、は……そのような事は」
「……この国の大多数の民にとって我等はもはや必要ないのであろう。しかし、少なくともこの城に留まっておる者達は我等を必要としてくれている民だ。
 ならば我等は我等の民に安寧を約束する事もまた王として……王家としての責務であろう。違うか?」
「……」
 ウェールズは答えられなかった。
 答え自体はわかりきっているが、それを答えてしまえばもはや本懐を遂げる事はできなくなってしまう。
 ――否。
 本懐というのならば、こうして迷ってしまった時点で、そのいずれもが等しく本懐なのだ。
「答えよ、ウェールズ」
 まるで背を押すように問いかける父王の声に、ウェールズは表情を苦悶に歪めて瞑目した。
 しばしの沈黙。
 そして彼は、答えた。
「……反論のしようもございませぬ。守るべき民あってこその国であり王家ならば、彼等を守る事が何より果たすべき責務でありましょう」
 頭を垂れ、搾り出すようにウェールズは言う。
 その言葉を聞いたジェームズ王は満足そうに頷き、力が抜けたように嘆息するとベッドに背を深く預ける。
「大使のつとめを果たした頃には、もはやアルビオン王家は消滅しておるだろう。その後は王太子としてではなく、ウェールズ・テューダー個人として好きに身を振るが良い」
「……父上」
「死ぬ事で守るべきを守るのもよかろう。生きる事で更なる災厄を呼び込む事もあろう。
 しかしな、ウェールズ。そなたも男なら、愛するものがおるのなら、そういったものも総て含めて守りきり、そして死んでみせよ。
 娘を守りきって死んだ我が弟のように……娘を守りきって死んだサウスゴータの者のようにな」
 諭すようなジェームズ王の言葉にウェールズは胸をつまらせ、頭を垂れる。
 後ろに控えたままのマチルダも眉根を寄せて俯き、目を閉じる。髪で隠れたその瞳から、雫が零れた。
 水を打ったような静寂の中、ジェームズ王は最後に告げる。
「王命である」
 あくまで王としての命令という『理由』を取り繕う父親に、ウェールズは一人の人間として己の不甲斐なさを痛感する。
 故に彼は恭しく跪き、一人の人間として……息子として父親に答えた。
 ――御意、と。
37ルイズと夜闇の魔法使い 代理:2012/02/29(水) 03:50:26.10 ID:00WSbG/6
今回は以上。
エリスがどうするか、はもう考えてあるんですがここで言うと誘導じみてしまうので次の機会に
そしてルイズとワルドはお互いに運が良かった
以前にも同じような事はやりましたが、今回はかなり露骨に描写したのでワルドが何やってるかはわかるかもしれません
でも実は今回のメインは後半。爺覚醒イベントもといマチルダさんのタイタス昇華とウェールズ生存フラグ
柊達の先行ルートは半ば今回のための仕込みだったりします。勿論サイト関連もあるんですけど
おマチさんは三巻の描写を見る限り既にそれなりに割り切ってる感じ。アニエスやタバサと違う点はやはり「拠り所」でしょう
次回は在りし日を思い出した超☆アルビオン王ジェームズが無双して奇跡の大逆転です(うそ)




ここまで代理
38名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 04:35:39.09 ID:TA25s/kp
乙!乙!乙!!
初めて夜闇の魔法使い読んだけど、なんか面白そう続きが気になる
最初から読んでみます
代理の人も乙でした
39名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 05:09:52.64 ID:TmvDlr0Z
胸が熱くなった。
こんなにかっこいいジェームズ王は初めて見た気がする。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 06:26:56.74 ID:CuI+GFVs
ジジイかっけえええええ
乙です!

やっぱりワルドだったかぁオルゴール。指輪どうやって取ったんだろ
41名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 07:47:57.65 ID:+XTzpbFU
初めて生投下見たけど乙と言わざるを得ない
ずっと待ってました
42名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 18:01:57.99 ID:4ehi43ZW
otu

そういや、BLAME!のって12話まであった気がするんだけど、まとめられてないだけ?
43名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 18:03:11.93 ID:TF3uszSS
>>21
一角紅蓮超獣バキシマム
せめて大怪獣バトルにでも出てきてくれてたらねえ。EXゴモラは出たのに
44名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 19:35:53.02 ID:Yk2MagT0
爺さんかっけぇ。
NWの方投下お疲れ様です
45ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:39:00.39 ID:o1dWxj1M
夜闇の魔法使いの人、投下おつかれさまでした。
これからも頑張ってくださいね。

さて、こんばんは皆さん。無重力巫女の人です。
今月は執筆に関して色々とトラブルに見舞われましたが、それはまた後ほど…
では、特になにもなければ20時45分から投下を開始します。
46ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:45:48.74 ID:o1dWxj1M
トリステイン魔法学院の女子寮塔にあるルイズの部屋――
今日は珍しくも、午前から来客者がいた。部屋の主が不在にもかかわらず。

「…久しぶりに顔を合わせた、って言ったほうがいいのかしら?」
部屋の主の使い魔である霊夢の言葉に、来客者であるタバサはコクリとうなずく。
それを見た霊夢は、相変わらず口数の少ないやつだと心の中で呟いた。
以前春のフーケ騒ぎで助けてもらったこともあるが、それを差し置いて少しだけ不気味に感じていた。
まるで人形のように色を浮かべぬ表情に、ボー…っと宙でもみているかのような虚ろな瞳。
普通の人間ならばまず、彼女に対して距離を置こうとするだろう。
それほどまでにタバサの体から出ている雰囲気は異様なほど不気味なものであった。
しかし、霊夢だけはまた違った気配をタバサの体から感じ取っていた。

(何かしらこれ…他人が距離を置こうとするから自分もそうしようって感じがするわ…)
霊夢が何も言わずまたタバサも無言のままでいると、インテリジェンスソードのデルフが二人の傍にいる魔理沙に話しかけてきた。
『マリサ、あの二人何であんなに黙りこくってるんだ?』
「さぁ?私には見当つかないぜ」
デルフの言葉に、魔理沙はただ肩をすくめる事しかできなかった。
タバサが部屋に入ってきてからすでに一分近くたっており、お互い睨み合ったままだ。
もっとも。『睨み合っている』というより『見つめ合っている』という表現がお似合いだろう。
まるで蛇と蛙が広い原っぱで偶然にも顔を合わせてしまったときのように、両者動けずにいた。

しかしその『見つめ合い』は、魔理沙という第三者の視線が入ることによって終わった。

ふと横からの視線と声に、霊夢はハッとした表情を浮かべると魔理沙の方へ顔を向けた。
「…ん、どうしたのよ魔理沙?私の顔に何かついてるの」
「え?いや、別に…ただ、ちょっとお前の様子がおかしかったからな…」
突然霊夢に声をかけられた魔理沙は若干驚きながらも、そう言葉を返した。
霊夢はそれに対してふ〜んとだけ呟いて肩をすくめると、魔理沙に話しかけた。


「で、話の続きに戻るけど…タバサがアタシ達を学院に帰してくれたのよね?」
霊夢が何を知りたがっているのかわかっている魔理沙は「そうだぜ」と返し、事の詳細を話し始めた。




時間は遡り、魔理沙の一撃でキメラを葬ってから数十分後の出来事――――
あの後、近くの草むらから自分の杖を見つけたルイズは眠っている霊夢の傍に腰を下ろしている。
魔理沙の方はというとようやく一段落ついたのかルイズ達から少し離れた時地べたに座り、空を見つめていた。
47ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:48:12.54 ID:o1dWxj1M
幾つもの星が見えつつある空と共に暗くなっていく森の中。
辺りに注意しながらも、毒で倒れた霊夢の様子を見ていたルイズが、魔理沙に話しかけてきた。
「ねぇ、魔理沙…」
「お?……どうしたんだよルイズ、なんか顔色がわるいぜ?」
ミニ八卦炉を持って地べたに座っていた魔理沙はルイズの方へ顔を向ける。
魔理沙の言葉どおり、ルイズの顔は真っ青に染まっていた。
まるで家の戸締まりを忘れたまま外へ出て、後になってからそれに気づいたときのような表情であった。
一体何事かと思いすぐさま魔理沙が傍に寄ると、ルイズかこんな質問をしてきた。

「私、ちょっと思ったんだけどね?…ここから学院まで、どうやって帰れば良いのかしら?」
「はぁ?」
予想もしていなかった質問の内容に、魔理沙は目を丸くする。
「何言ってんだよルイズ。心配しなくても、私の箒はこの上にあるからそれに跨って帰ればいいだろう」
そう言って魔理沙は、自分たちが滑り落ちてきた傾斜面を指さした。
斜面を上った先には山道があり、そこにキメラの不意打ちで落とした魔理沙の箒とデルフがある。
幸い斜面自体も緩やかだし、多少服が汚れるかもしれないが登れないこともない。
一体何を心配する必要があるんだ?そう言おうとしたとき、魔理沙の言葉を予知したかのようにルイズが言った。

「そりゃ私はあんたと一緒に箒を使えばいいけど……―霊夢はどうするのよ」
「――――あ」
その言葉を聞き、魔理沙はハッとした表情を浮かべた倒れている霊夢の方へ目を向ける。
数時間前、倒したと思っていたキメラからの不意打ちを受けた霊夢の体には毒が残っていた。
今は大分マシになったのか呼吸はそれ程荒くもなく、スースーと眠っている。
そんな彼女を起こして飛ばそうとするのは、危険かもしれないとルイズは判断していた。

「参ったな…霊夢の事だから大丈夫かと思っていたんだが」
「大丈夫じゃないでしょう!大丈夫じゃ!」
霊夢の事をよく知っているであろう魔理沙の発言に、ルイズはすかさず突っ込みを入れた。

その後、二人はどうしようかと暗くなっていく森の中で考えたが一向に良い案は思い浮かばない。
太陽は時間の経過とともにどんどん沈み、刻一刻と夜が迫ってきていた。
遠くの山からは狼のものであろう遠吠えも聞こえ始めてきた頃―――予期せぬ助け舟がやって来た。

「ねぇ…何か聞こえない?」
最初に気づいたのは、魔理沙よりも緊張していたルイズであった。
彼女の言葉に何かと思った魔理沙が耳を傾けてみると、それは確かに聞こえてきた。

―――ッサ… ―……ッサ

「…何だ?…確かに聞こえてくるな」
それは最初、小さすぎて何の音なのかルイズと魔理沙にはまったくわからなかった。
しかし音の正体はこちらに近づいてくるのか、だんだんと大きくなっていく。
48ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:51:27.00 ID:o1dWxj1M
――バッサ…バッサ…

音を聞くことに集中していた二人は、その音が何の音なのかわかってきた。
「ん、こりゃアレか?何かが羽ばたく音だぜ。コウモリみたいにこう…バッサバッサって」
魔理沙はそういって両手を横に広げてパタパタと軽く振り、羽ばたく動作をしてみせた。
それを見たルイズはこんな危機的状況の中で何をしてるのかと思いつつ、言葉を返そうとした。
「羽ばたく音ですって?それだと大きすぎるんじゃ――あ!」

しかし、言い終える前に気がついた。この「羽ばたく音」の正体か何なのか。
それに気がついたルイズは思わず大声を上げてしまい、近くにいる魔理沙が驚いた。
「うわっ!びっくりした…何だよいきなり」
体を小さくのけぞらした魔理沙がそうい言うと、ルイズは体を震わせながらしゃべり始める。
こころなしかその声も大きく震えており、先ほどよりも不安感が募っていた。
「やばいわ…」
「?…やばいって…何がやばいんだよ」
「私、この音が何なのか知ってるわ」
「マジで?じゃあ何の音なのか教えてくれよ」
魔理沙の促しにルイズは冷や汗を流しながら、それに答えた。

「ドラゴンの羽音よ…」
「どらごん?」
ルイズの口から出た思わぬ答えに、魔理沙はキョトンとした。
「ドラゴン…っていうと、あの羽が生えた馬鹿でかいトカゲの事だろ?」
魔理沙は、ここハルケギニアに来てから図鑑(文字は読めない)や学院いる生徒たちの使い魔としてドラゴンを何度か見ているのである。
最初見たときは驚いていたがすぐにおとなしいとわかり、今ではそれを良いことに近くまで寄って観察なんかをしていた。

「えぇそうよ…こんなに大きい羽音を出すのはそれくらいしかいないもの」
まず最初にそう言ってから、ルイズはこんな事を話し出した。
「ドラゴンは基本肉食よ。普段獲物を襲うときは勢いをつけながらも高度を下げて、獲物を鋭い口の牙を咥え込むの…」
こうグワッと!と言いつつルイズは左手を空から襲い掛かってくる竜の頭に、右手を地上にいる獲物として見立てた。
魔理沙はそれに適当な相槌を打ちつつも、時折暗くなっていく空を見つめて警戒している。

「で、今から話すのは森林地帯を餌場にしているドラゴンなんかが行う飛び方の一つについてなんだけどね…」
ルイズはそこでいったん区切ると、一呼吸置いて説明を再開した。

「空から獲物を見つけてもすぐには突っ込まないのよ。突っ込んだら大木ひしめく森林に突っ込むわけだから」
「なぁルイズ、ちょっと…いいかな?」
ふと何かに気づいた魔理沙が呼びかけるも、説明するのに夢中なルイズは尚も続ける。
先ほど聞こえてきた羽音は、かなり大きくなっていた。
「だからね、獲物を見つけたらゆっくりと高度を下げていくのよ…丁度船に積んだ風石の量を減らしていくように」
「おーい、ちょっと…聞こえてる?」
魔理沙は尚も呼びかけるのだが、完全にスイッチが入った彼女を止めることは出来ない。
やがて羽音は当たり一帯に響き始めるとともに、上のほうからバキボキと枝が折れる音も聞こえてきた。

「そして獲物が動きを止めた瞬間、すぐ近くに着地して―「うわっ!!出たぁ!」―――え?」
言い終える前に突如耳に入ってきた魔理沙の叫び声で我に返ったルイズは、後ろを振り返る。
その瞬間、木々の間を縫うようにして何かがこちらにやってきた。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 20:52:48.93 ID:j5opYhGV
しえん
50ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:55:10.39 ID:o1dWxj1M

そこにいたのは――青い皮膚を持つ大きなトカゲ…かと一瞬だけ思った。
しかしトカゲにしてはどこかおかしいとすぐに感じる。
何故なら、あれほど大きく成長するトカゲなどトリステインには生息しないし、第一手足が長すぎるのだ。
ほかの動物で例えれば、犬くらいの長さだと思ってくれればいいだろう。
これは、高山や渓谷で巣作りと繁殖を行う一部の幻獣に見られる身体的特徴だ。
そして何よりも特徴的なのは、背中に生えた一対の大きな羽。
コウモリのように薄い皮膜で覆われたそれは、森の中ではコンパクトに折りたたまれている。
頭部事態はトカゲと似ており、頭には一対の小さな角が生えている。
そして口の隙間から―――ありとあらゆるものを噛み、裂き、砕くことが出来るであろう鋭利な歯が見えていた。

そして、これらの特徴がすべて当てはまる幻獣は一種だけであろう。
この世界では天災の一つとして恐れられ、戦争となれば歩兵千人分もの力となる幻獣――風竜だ。

「――――………………ッキャアァアァアァァァァアアアァァ!!」
魔理沙より数秒送れて何が現れたのか理解したルイズは、大きな悲鳴を上げた。
それと同時に青い風竜も長い手足を器用に動かして前進し、ルイズたちに詰め寄ってくる。
ドスンドスンと足音を立てて進むその姿は、まさに怪獣そのものだ。
「くそっ、霊夢を連れて下がってろ!」
魔理沙は急いでニ八卦炉を目の前の風竜に向けると、ルイズ指示をとばして魔力を八卦炉に込め始める。
先ほどのキメラとは違い殺す気がないので、威嚇射撃として放とうとした。
風竜も何かくると感じたのか、その場でぴたりと足を止めた。

まさにこの状況は一触即発。どちらが先に動いても、戦いは免れないかもしれない。
だがそんな時、風竜の背中から少女の声が聞こえてきた。


「どうしたの。こんな森の中で…」
抑揚はないがしっかりとした発言ができる少女の声に、二人は目を丸くした。

「えっうそ…人…ということは」
魔理沙の驚いた声に、ルイズは今になって気がついた―この風竜に見覚えがあることに。
「あんた…まさか…シルフィード?」

その言葉に風竜――シルフィードが「きゅい」っと鳴くと、声の主が誰なのかもわかった。
ルイズより低い身長に、身の丈より大きい端くれだった杖。
赤縁メガネに蒼い瞳にそと同じ色のショートヘアー。

ルイズと魔理沙…そしてその時は眠っていた霊も知っていた。彼女が誰なのかを。



「…つまり、山で秘薬の材料を取っていたタバサと一緒に帰ってきた。というワケね」
そこまで話を聞いた霊夢の言葉に、魔理沙は「そうそう!」と相槌をうちながらタバサの肩を叩いた。
まるで付き合いの長い友人のように肩を叩かているタバサはというと、相変わらずの無表情である。
「タバサとシルフィードのおかげで暗い森の中を歩かずに済んだし命―ってほどでもない…がまぁ、恩人は恩人だよ」
「うん…まぁ、確かに恩人と言えばそう言えるわ。まぁ有難うと言っておくわ」
一部自分の言葉を訂正しつつ、魔理沙はまるで自分のことのようにタバサを褒め称える。
霊夢はそんな二人の温度差に生ぬるい視線を浴びせつつ、タバサに歯切れの悪い賛辞を呈した。
そして三人(正確には二人)が暫し無言でいると、我慢できないといわんばかりに霊夢が喋った。
51ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 20:58:16.12 ID:o1dWxj1M
「で、話は変わるけど…何の用事でココにきたのかしら?部屋の主は今留守にしてるんだけど…」
やや直球な彼女の質問に、タバサは思い出したかのようにポンと手を叩き、ゴソゴソと懐を探り始める。
そしてすぐに、テーブルに置いてあるティーカップほどの大きさがある濃い緑色の土瓶を霊夢に差し出した。
霊夢はその瓶を見て怪訝な表情を浮かべ、タバサに質問をすることにした。
「…?何よコレ」
「体に良いお茶…どうぞ」
簡潔すぎる問いの答えを聞いて、霊夢は渋々と手のひらを前に差し出す。
タバサはその手に持っていた瓶を霊夢の手のひらに置くと、霊夢と魔理沙に向けてこう言った。

「…どうぞ、お大事に」
あまり感情のこもっていない声でそう言うと、ペコリと頭を下げて踵を返して廊下の方へと出ていった。
カツコツと廊下の床に響くローファーの靴音が聞こえてくると、部屋にいた魔理沙は上半身だけを廊下に出してタバサに手を振った。
「また何かあったらいつでも来ていいぜー!なくても来ていいんだぜー!」
廊下中に響く魔理沙の大声にタバサは振り向くことも手を振ることもなく、ただその背中を向けて踊り場の方へと歩いて行った。
魔理沙には見えない、小さ過ぎる彼女にはあまりにも似合わない゛何か゛がある背中を。

「風のようにやってきて、風のように去ったわね」
タバサに手を振っている魔理沙の背中を見つめながら、霊夢はポツリと呟く。
あまりにも早すぎる珍しい来客者のお帰りに、霊夢は半ば呆然としていた。
もしかして先ほどの事はすべて幻なのかと思ってしまうが、それは無いなと心の中で否定する。
彼女の体から感じた気配は今もハッキリと覚えているし、浮かべていた表情もすぐに思い出すことができる。
そしてこの部屋に先ほどまでいた来客者の背中に手をふる同居人の姿と――掌の上にある茶葉が入った土瓶。

これらの証拠がある限り、タバサという少女がこの部屋訪れたという真実は絶対に揺るぎはしない。


「最初会ったときは気にしてなかったけど、今見るとスゴイ変わってたわね。アイツ…」
霊夢は無表情なタバサの顔を思い出して呟くとその顔に笑みを浮かべ、土瓶をテーブルの上に置いた。
コトン、という…鈍いながらもしっかりとした音が、主の居ない部屋の中に響く。
「さてと…健康になるのはいいことだし、さっそくこ試してみようかしら?」
これから体験するであろう未知なる味を想像しながら、霊夢は椅子に座った。

彼女は知らなかった。中に入っている茶葉の原料である植物がどんなものなのかを。
それをお茶にして飲むことはおろか、生で食べる人すら少ないといわれるシロモノだということを…。
52ルイズと無重力巫女さん:2012/02/29(水) 21:07:19.19 ID:o1dWxj1M
さてと、以上で52話の投下は終わりです。
今月も無事に投下できましたが…いやはや大変でした。

六年近く使っていたデスクトップパソコンが、今月の半ばで逝去しました。
一応大切なデータとかは外付けのHDDに入れていたものの、不覚にもそこに入れていなかった二月の投下分が消失…
急いでヤ○ダ電○へと駆け込んでノートパソコンを購入…書き直し、無事に投下までできました。

皆さんも、大切なデータなどは外付けのディスクやUSBメモリに入れておきましょう。
もちろんCDやフロッピーでもいいですけどね。

それでは、長くなりましたがこれで。ノシ
53名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 21:22:15.27 ID:bvm0szQY
乙。PC災難だったな。俺も液晶が割れてデータ回収に手間取った
経験があるがあれは泣ける。憶えてる限りで再現しようとしても
ノってる状態で書いた物以上の文はなかなか出てこないしな
54名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 21:33:37.36 ID:g90FjuFv
乙です。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 21:46:37.74 ID:nomd/s1j
夜闇の人&代理の人、乙
柊がこの場に居たら中の人が狂喜乱舞! くらいカッコイイよ爺さん!

>>40
全開「ルイズを手ぶらで返すつもりか?」って言って没収してたろ
56名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 21:50:51.30 ID:Qc51dipC
無重力さん乙ー。PCェ…

>>55
おおっと、手紙と混同してたや。
57一尉:2012/02/29(水) 21:56:52.91 ID:wSr4Z434
韓国軍と米軍と自衛隊と旧日本軍を召喚にする。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 22:00:37.71 ID:3Ld3Vr0X
夜闇の人乙です!
やばい、こんなにイカしたジェームズ初めて見た・・・まじかっけー涙腺うるんだわ。

無重力巫女の人乙です!
PCが逝去されたということでお悔やみ申し上げます・・・そういえばタバサタイプのキャラって東方にはいないよねと。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/29(水) 23:59:22.81 ID:RP8QWw+Y
>>42
まだ前スレ落ちてないから確認しよふ
60名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/01(木) 13:40:17.07 ID:HtH97tsf
夜闇きたー
ワルドといいジェームズといいオッサン共がいい味出してますなあ

無重力の人も乙です
お茶好きの霊夢なら案外ハシバミ茶もイケる……ってことはなさそうだw
61名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/01(木) 14:20:54.25 ID:zfRMXfWv
デュープリズムゼロ八話来てたー!乙乙
62一尉:2012/03/01(木) 21:39:51.56 ID:4LtHX7f0
召喚にしたのは草加少佐でした。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/01(木) 22:35:37.65 ID:K2fAhWfw
もしもルイズが魔女を召喚したら
64名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/01(木) 23:58:32.23 ID:ZruwxLHS
マージョ様?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 00:32:48.12 ID:1jkDjJsl
気の良いオカマキャラってあんまり召喚されないよな。
ARMSのマッチョさんくらい?
66名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 00:38:44.24 ID:nooeN/RP
>>63
ベルセルクのフローラおばあちゃまならルイズを魔女っ娘にしてくれるかもしれんな
67名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 00:38:51.54 ID:iZ1kyRF+
キメリエスとかもそうじゃないかね
68名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 00:58:45.09 ID:ZG+gn2yy
デュープリズムゼロ八話乙
俺も規制ではれないわ
69名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 01:11:13.49 ID:qNLcLP5G
>>63
「五年三組魔法組」のベルバラから
魔法の七つ道具の入ったバッグを貰うとか
70名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 01:34:11.88 ID:l/AtzCmD
高槻ママから2丁拳銃と忍術を学ぶとか
71名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 04:14:21.65 ID:AKQ0fEzo
金正日が召喚されました…が、召喚直後寿命で死にました
72 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2012/03/02(金) 07:35:49.24 ID:9CCnqZ3B
一時期作者が癌で逝っちまいそうだったみたいだけど
今は大丈夫なのかな?原作完結して欲しいけど...
73名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 08:27:31.96 ID:xd+JscII
あまり書きたくないんだけど若くてガンになって何度も繰り返し治療してる人ってほとんど助からない
74ぜろ☆すた ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:01:17.27 ID:VtWqdK9B
13:05から第3話を投下します。
75ぜろ☆すた@ ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:05:10.41 ID:VtWqdK9B
「ぜろ☆すた ポケットきゃらくた〜ず 第3話」

『おじゃましまーす』
 ケバキーア街に行った次の日、こなた達4人とカトレア・ギーシュ・マリコルヌはタバサの家を訪問した。
「ありがとう、タバサちゃん。協力してくれて〜」
「……うん……いや……力になれるかわからないけど……」
 そう言いつつ一同を招き入れたタバサに、ロングビルはカトレアが肩から下げている鞄から顔を出して、
「ええと……、私達出て大丈夫でしょうか……。今日お家の方は……」
 と問いかけた。
「……今日はみんな出かけてるから大丈夫……」
「そっか、なら安心ね……。じゃあ早速話し合いをしようと思うんだけど、とりあえず……」
 テーブル上でそうタバサに声をかけたルイズは周囲を見回し、
「あの3人は何しに来たか全然分かってないわね……」
「おおおっ、何という特典映像!!」
「流石コナタ、わかってるな♪」
「マルコメ、GJ!」
 と持参したアニメを再生している遠見の鏡にかじりついているこなた・マリコルヌ・ギーシュに、呆れた視線を向けた。
76ぜろ☆すたA ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:08:31.60 ID:VtWqdK9B
「えっと、そんな訳で……、小さくなった理由は私達でもわからない訳なのよね……」
 コルクの蓋に座ったルイズの説明に、かすかに表情を曇らせたカトレア。だが、
「おおー、このシーン修正されてる!?」
「あの地域だけの放送バージョンだな!」
「ファン心をわかってるね〜♪」
 重くなった雰囲気をぶち壊すように歓声を上げたこなた・ギーシュ・マリコルヌに、思わず顔を引きつらせる。
「ちょっとあんたらねえ……。せっかく来てるんなら真面目に考えなさいよ!」
「ん? 考えるって何を?」
 ルイズからの指摘に、ギーシュの頭部に座っていたこなたが振り返った。
「は? そりゃ元の大きさに戻る方法でしょ」
「ん〜、つまりルイズは小さいのが嫌だと?」
「当たり前でしょ! てゆーか、あんた昨日ミス・ロングビルを戻すって言ってたじゃない」
「いや〜、そうなんだけどね〜」
 そこまで言って、こなたはタバサにちらりと視線を向ける。
「………」
 タバサはこなたに訝しげな視線を返したが、
「『大きくなる方法』があったら、既に試してる……。そんな結論が出ちゃってねえ」
 こなたのそんな発言に胸を押さえてぴくりと反応するのだった。
「まったく……、コナタ達はここへ何しに来たのよ……」
 呆れた表情のルイズの傍らではカトレアがタバサに尋ねている。
「どうしたの?」
「……な……何でもない……」
「ルイズ、見て見て〜」
「ん?」
 突然聞こえてきたキュルケの声にルイズが視線を向けると、
「シルフィードがね〜、こんなに大きいの〜♪」
 とキュルケがシルフィードの背中に乗って満面の笑顔になっていた。
「あれはあれで何しに来たんだか……」
「ミス・ツェルプシュトー、楽しそうですね」
 するとギーシュが何かを思いついたようにルイズの方に振り返る。
「あっ、あのさ、僕思ったんだけど、ルイズの家なら教会にも顔が聞くんだろ?」
「あ〜、うん、たぶんそうだけど……」
「お祓いで何とかならないか?」
「そんな都合のいい話聞いた事無いって……」
 ルイズが呆れた視線を向けるとこなたも、
「そうそう、神頼みで大きくなるならもう試してるよね♪」
 こなたの言葉にタバサは再度ぴくりと反応し、
「あんたには罰が当たってほしいわ……」
 とルイズが今度はこなたに呆れた視線を向けた。
77ぜろ☆すたB ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:12:02.40 ID:VtWqdK9B
「一応わからない中でも言える事は……、事が起こるには必ずきっかけが存在する訳でして。一昨日の晩、私達は共に過ごし共に小さくなっています。という事は、4人に共通する何かがあるはずです。
ミス・ヴァリエールの家で目覚めた時にはもう小さくなっていましたけれど、眠ったのはほぼ同時。つまりおそらく眠る前に4人がしていた事や起きた事の中にポイントがあるはずです。それを突き止めれば、解決策も見えてくると思います」
「う〜ん……。でもあの時、特に変わった事なんて何もしてませんよ?」
 少々考えていたルイズだったが、特に心当たりは思いつかなかった。
「そうなると、やはり部屋主に異変があったか聞くのがいいのですが……」
「部屋主……」
 そう呟いたルイズの背後では、部屋主・こなたがコルクの蓋に乗って楽しげに滑っていた。
 即座にルイズは蓋を取り上げ頭上に振り上げる。
「あんた何してるの……?」
「カ……、カーリングを少々……」
「いっぺん死んでみる……?」
「コルクの蓋はよく滑る……」
 ルイズの堪忍袋の緒が切れた。海ほど広くないルイズの心はここらが我慢の限界だった。
「コナタ! あんたさっきからうろちょろして! もっと真剣に考えなさいよ! ケバキーア街でもあんたが勝手な行動するから面倒な事になったんじゃない! もし発見したのが知り合いじゃなかったら、私達今ここにいないかもしれないのわかってるの!?」
 ルイズに強い口調で叱責されしばらく呆然と彼女を眺めていたこなただったが、
「あ、名シーン」
 と遠見の鏡に視線を向けた。
 怒りに震えるルイズにマリコルヌが、
「まあまあルイズ、僕にナイスアイディアが♪」
 と声をかけ、
「コナタコナタ♪」
 次にそうこなたを呼び寄せた。
「ん?」
 1分後、こなたの姿は瓶の中にあった。
「……マルコメ……、これは何かな?」
「瓶だね♪ ミニミニコナタの自由を奪うには最適なアイテムだな。この中で少しおとなしくしてなよ♪」
 そう言いつつマリコルヌは瓶の蓋をしっかり締める。
「ちょ、マルコメ、裏切り者! っていうか空気穴! 空気穴が無いって、マルコメーっ!!」
「マリコルヌ結構やるわね」
78ぜろ☆すたC ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:16:08.27 ID:VtWqdK9B
「で、本当に何も気付いた事は無いのね? 部屋主!」
「ありませんよ〜♪ これーっぽっちも〜」
 改めて尋ねたルイズに、こなたは親指・人差し指で小さな隙間を作って答えた。
 彼女の頭上では、マリコルヌが金槌・錐で蓋に空気穴を開けている。
「……そう、コナタがわからないんじゃあね……」
「私も時々見てますけど、特には……」
 そう言ったカトレアの様子をしばらく見ていたタバサだったが、
「……あ……あの……何か私……ごめんなさい……」
 と申し訳無さそうに言った。
「え?」
「……協力するって言ったのに……何も思いつかなくて……」
「そんな事無いですよ、ミス・タバサ」
「そうよ。一緒に考えてくれてるだけでも十分有難いものよ」
 タバサの言葉をロングビル・ルイズが否定するとカトレアも、
「そうだよ、タバサちゃん! タバサちゃんは凄く良くしてくれてるよ!! タバサちゃんは自分から手伝ってくれてるし、話し合う場所も用意してくれたし、そ、それに、それに……、昨日私が具合悪かった時に見つけてくれたの……凄く嬉しかった。
タバサちゃんは、もうたくさん助けになってくれてるんだよ」
「ミス・カトレア……」
 見つめ合い2人の世界に浸っているカトレア・タバサの周囲がまるできらめいているかのように、ルイズ・ロングビルには見えた。
(あ、あれ、何か真面目そうに見えて話は全然進んでないように見えるんだけど……。あれ?)
 その時、ルイズはキュルケが今まで沈黙していた事に気付く。
「……あ。ねえキュルケ、あんたさっきから何も言ってないけど……、何か気付いた事とかあったら言ってよ? ……キュルケ?」
 しかしそう言って視線を向けた先に、キュルケの姿は無かった。
「えっと……、キュルケは?」
「あれ? さっきまでそこで寝てたけど……。シルフィードもいないな」
「コナタ、知らない?」
「うんにゃ。いいんじゃないの、少しくらいどっか行ってても」
「そうはいかないわよ。この姿じゃ普段普通な事が結構危険なんだから」
 ルイズ・こなたのやり取りにロングビルも、不安げな表情になる。
「心配ですね……」
「うーん」
「シルフィードちゃんも一緒なら安心じゃないかな?」
「……シルフィードはおとなしくてい子だから……たぶん……大丈……」
 そう言いかけてタバサはギーシュの、
(え? おとなしい? 僕結構襲われてるよ……? 左手とか左手以上とか……)
 とでも言いたげな視線に言葉を止めた。
79ぜろ☆すたD ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:19:18.86 ID:VtWqdK9B
「とにかくミス・ツェルプシュトーを探しましょうか」
「そ、そうね。悪いんだけど私達も連れてってもらえる?」
「……あ……はい……」
「僕もちょっと手伝うよ」
「シルフィードを見つければいいんだな?」
「心当たりの場所とかはあるのですか?」
「……よくいる場所なら幾つか……」
 と言って一行は部屋から出ていった。
 1人瓶の中に残されたこなたは、
「何かわかんないけど出てっちゃった。キュルケには悪いけど、チャンスだね。さ〜、ちょっと遠見の鏡遠いけど、これでゆっくりアニメが見られ**」
 と言いかけて遠見の鏡の方に向き直り、ラベルが鏡の方に向けられている事に気付いて愕然とする。
「どわーっ! ラ、ラベルが鏡の方に!? これじゃ見られないじゃん!! ひょっとしてマルコメ、わかってやってる!?」
80ぜろ☆すたE ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:23:14.62 ID:VtWqdK9B
(……あれ? 頭が……。なんか頭が引っ張られてる感じがする〜)
 そんな事を考えつつキュルケは目を覚ました。
 すると周囲に広がる庭の風景が上下逆転している事に気付いて声を上げる。
「はうっ!? わっ、シルフィード、ここって……え、外? えっと……、どこ行くの……? みんなは?」
 そう問いかけたもののまったく反応を返さず、シルフィードはキュルケをくわえたまま庭を行く。
「……はう〜、どこに行くんだろ〜……きゃうっ!?」
 目に涙を溜めつつ呟いていたところ、突然シルフィードに放されて落下した。
「はうう……、頭打った〜……。ここは?」
 頭を押さえてうずくまっていたキュルケが顔を上げた途端、目の前に巨大なアリが出現した。
「きゃああああ!!」
 悲鳴を上げて跳び退くキュルケの目の前で、アリはシルフィードに踏み潰された。
「あああ、ありがとう、シルフィード。っていうか、ここどこなのかなあ……?」
 その言葉が届いたのか上を見上げたシルフィードに倣い、キュルケもそちらに視線を向ける。
 そこには彼女の身長の数倍の丈がある花が一面に伸びていた。
「わっ、わーっ、凄〜いっ! お花畑だ〜!! タバサの家ってこんなに広いお花畑があるんだ〜。……! あ……、これって凄く広いように見えるけど……、実は普通の花壇でお花畑に見えるのはあたしの体が小さいからなのかな……?
……でも、凄く……綺麗♪ ありがとう、シルフィード。こんないいもの見せてくれて。せっかくだからみんなにも見てもらおうよ♪」
 そう言って振り返ったキュルケの視線の先では、シルフィードが何やら穴を掘っていた。
「? シルフィー……ド? え? あの……、え? え?」
 そしてシルフィードはおもむろにキュルケに接近し、口を大きく開け……。
81ぜろ☆すたF ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:26:13.42 ID:VtWqdK9B
「どっ、どうしたの、キュルケ!?」
 しばらく後、居間に服が土まみれになったキュルケが運び込まれてきた。
「ねえ、キュルケってどこにいたの?」
「タバサちゃんが……」
「……シルフィードが凄く気に入ったみたいで……花壇に首だけ出した状態で埋められてて……」
(風竜の習性か!)
「小さくなったのが少し嬉しかったのに酷いよ〜」
「顔以外が泥だらけだ……」
「じゃあ着替えが必要だね」
 泣き声を上げるキュルケの姿を見てそう言ったギーシュ・マリコルヌだったが、
「でも、今私達が着られる服は……」
「あ、そっか……」
「小さくなった服もそれしか無いんですよね……」
「そうね……」
 そんな会話をしているロングビル・カトレア・ルイズの傍に寄ってきたギーシュは視線をテーブルに合わせ、
「わー、眼鏡も小さいなー」
「ええ、不思議ですよね」
「見てもいいですか?」
 と尋ねた後ロングビルから眼鏡を受け取った。
 するとそこにこなたが、
「体小さいと逆に字が大きくなるから、そのままでいいんじゃない?」
「うふふ、そうかもしれませんね。確かに周りの物全てが大きくなる訳ですから、これだと眼鏡無しでも字が読めますね」
 笑みを浮かべて瓶に貼られたラベルを眺めていたロングビルだったが、突然何かを感じて目を見開いた。
82ぜろ☆すたG ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:29:11.94 ID:VtWqdK9B
 次の瞬間、白煙と共にロングビルの体は元の大きさに戻った。
『………』
 しばらく呆然とロングビルを眺めていた一同だったが、
「……は、はあああ!? ミス・ロングビル、何で元に戻ったんですかー!?」
「え? あ、あら?」
 あまりの出来事にルイズは絶叫し、ロングビルも狼狽のあまり呆然とする以外不可能だった。
「あ……、め、眼鏡も……」
「わ……」
 するとギーシュも、自分が手にしている眼鏡も元の大きさに戻っている事に気付いて口をぽかんと開けた。
「あ、あの、どうやって元に戻ったのですか!?」
「あ……、え……、えっと……」
 しばらく口ごもっていたロングビルが出した言葉は……、
「さあ?」
 その言葉に一同の後頭部に大粒の汗が浮かんだ。
 一方こなたはロングビルが元に戻った時に瓶ごと弾き飛ばされ、床の上でひっくり返っていたのだった……。
83ぜろ☆すた ◆wCjvbWtzPU :2012/03/02(金) 13:32:13.48 ID:VtWqdK9B
以上投下終了です。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 14:04:36.82 ID:xd+JscII
おつっす
85名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 18:16:37.91 ID:C7ldOgOb
>>83

86名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 21:25:36.62 ID:jEkDsiHv
Dies iraeの概念・法則をついでに召喚・・・
話作り辛そうだな・・・
87名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 21:42:19.62 ID:AqSWKP4E
カトレアが病死したカリーヌが
「ハルケギニアなんか石ころの世界にしてやる〜」
と、魔女化したら
88名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 21:48:43.76 ID:plR9bY/Y
>>83
乙でした。
89一尉:2012/03/02(金) 22:27:54.46 ID:4340ixGc
特殊刑事を召喚にする。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 22:37:41.66 ID:c75Bm5J0
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
10. Dies irae
11. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
91名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 07:30:29.90 ID:b5x+7DPa
>>63
コスモス荘のピエール召喚とな!?
92名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 09:47:04.90 ID:XF4KSyyo
言い出しっぺの法則
93名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 10:02:13.87 ID:ag0dMUqJ
>>91
それは……魔女じゃない。


 マ ゾ だ !
94名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 11:33:41.46 ID:xpvSTesI
>>91
ルイズのお仕置きがご褒美にしかならないな
で、ルイズの虚無は自分の血でゴーレム操ったりするのかい?
95名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 16:02:39.71 ID:iCsAvEpQ
>>65
「ゼロのルイズがオカマを召喚したぞ!」
「トリステインマーガクイン? ジョーダンじゃないわよぅ!」

こんな具合か?
96名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 16:15:34.50 ID:/qcd0ZoX
虚無の使い魔はみんなオカマ







そして黒幕は教皇ではなくスカロン
97名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 18:28:07.81 ID:5nsGpcNA
いやしかしスカロン店長はアレで娘がいるわけで・・・・つまり

店長「待て、それは誤解だ、私はバイだ。」

こうか
98名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 19:00:29.39 ID:bRwO6HPP
多重クロスでオカマを召還しまくり。

マクロスFの敏腕操舵士。
グレンラガンの技術者。
クレしんのカンフー三人組。
ワンピースのバレーダンサー。


・・・絶対まとまるわけがないw
99一尉:2012/03/03(土) 19:17:32.53 ID:T9bv/9a+
海パン刑事を召喚にして才人と一緒に戦う。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 20:08:27.95 ID:r2ydlq8q
マカオとジョマがいるじゃないか!
101名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 20:36:46.28 ID:C2/7DY4M
西郷特盛とカマっ娘クラブ
徳大寺ヒロミ
バスタードの顎の人
あとマッスル大鎌
102名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 20:51:49.61 ID:Sth2W3Yw
>>100
世界支配企むレベルのガチ悪役だし…
103名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 21:08:50.27 ID:2sKl6yNo
今やってるデュープリズムのミントも世界征服目論む悪党だ。何も問題ない
つかデュープリズム避難所に続き来てるが代理はいらっしゃらないのか
俺も規制中で200バイトまでしか書けないから代理できない
104名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 21:18:27.86 ID:Bt+4Flgw
昔はクレしんの映画には高確率でオカマが出てたのにね。
なぜかオカマのキャラは悪人でも憎めないのが多い。漢女とか…
そういやオルゴデミーラもオカマだっけか。
105名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 21:31:50.76 ID:chGFqC8+
>104
クレオパトラ・ダンディですね、分かってます。

快男児に敗れ砂漠で力尽きた筈の以下略。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 21:35:00.04 ID:1GpiYWwA
いや、普通に大悟でいいんじゃないかと。

ちょっと書いてみたいんだが、戦前の冒険科学小説みたいな文体が無理なんだよな―。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:03:01.91 ID:xp0io1c4
教皇かジョゼフがカマバッカのイワさんを召喚

108名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:12:50.23 ID:WfvRs6ft
左京とアリサでも良いんじゃね
帰還方法と異能者が公に存在する社会体制を調べて回る左京。『貴族の誇り』を語るルイズを見てニヤニヤするアリサ

DXが第2次大戦頃の話があるお陰でタルブ関係者のでっち上げには困らんな
109名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:16:54.27 ID:5nsGpcNA
>105-106

正直あのアクの強い敵キャラの影響も大きいから難しいよね
ダンディしかりマスカラスしかり
110名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:21:04.70 ID:1GpiYWwA
>>108
シエスタの爺さんはサン・テグジュペリで、竜の羽衣は偵察型P−38だな
111名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:21:11.91 ID:r8Z/sJec
もうシャイターンの門が無差別にオカマ召喚しまくりでいいじゃない。
ガンダくんの右腕に相応しい最強のオカマは誰だ!?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:30:04.34 ID:1GpiYWwA
迦楼羅王レイガ
113名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 22:37:09.44 ID:aq/1zVfs
ネイサン・シーモアがアップを始m…え、あれはオカマじゃなくて乙男?
114名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 23:03:53.08 ID:f+rb3aCy
>>113 その理屈で言うと、貂蝉と卑弥呼も無理か・・・
115名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 23:27:17.04 ID:XByaq/os
デュープリズム代理行きます
2話分あるので途中でさるさん食らったらごめんね
116デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:28:27.61 ID:XByaq/os
第七話『夢の世界のファンシーさん』

ルイズとミントはそれぞれもの凄く悩んでいた…

それというのもミントの肩書きを聞いた後ルイズはハルケギニアに召喚される以前のミントの話をずっと聞いていたのである。
実家での王位継承権の剥奪から二年の放浪の旅、カローナの街での冒険から砂漠の遺跡の冒険。ルウの事、エイオンの事、遺産の事、クラウスの事、ベルとデュークの事、様々な事。
そして妹マヤの事。

最初ルイズはミントの王女であるという言葉を信じられなかった…というよりはまだ正直信じていない。だがミントの語る冒険の話は余りにリアルで嘘とはとうてい断じる事が出来ない。
ミント自身それを証明するアイテムの様な物を持っている訳でも無し、ルイズにはその東天王国の存在を知る事すら出来ない。
もしやと東天王国というのが遙か東方にあるというロバアルカリイエの事なのかとも訪ねたがどうやら全く違う様だ。
そんなわけで全てを聞いた今でもルイズのミントに対する態度は先程までとは変わってはいない。この問題はいわゆる保留だ。
またミント自身がそれを望んだ…

そしてルイズとしての悩みはもう一つ大きい物がある。
ミント自身はブリミルがエイオンの可能性がある為にしばらくはこの魔法学園で遺産探しとやらをするつもりらしい。
一応生活の拠点と他の生徒並の生活の保証を得る為にミントからルイズに譲歩し、使い魔関係は維持される契約となった。
ミントが魔法を使えるという以上少なくとも平民以上の扱いは当然だ。
だがとにもかくにもミントには帰りを待ってくれている仲間や家族がいるのだ。そんなミントをいつまでも使い魔としているのは流石にまずい。
ミントの帰還方法の模索、それがルイズの大きな悩みだった。


一方のミントの悩みはルイズの悩みに似ているがまた若干違う。
「月が二つね〜……」
最初にそれに気づいた時ミントは流石に慌てた。
話し込む内に気付けば外は既に夜の帳が降りており、窓からは昨日気が付かなかった美しい二つの月が見えていたのだ。

そう月が二つというのが問題なのだ。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/03(土) 23:29:53.57 ID:v2DuiTWx
しえんするよー
118デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:30:21.24 ID:XByaq/os
ミントも伊達で冒険者をやっていない、様々な土地での体験というものは大の大人が舌を巻く程に豊富なのだが月が二つの土地など見た事も聞いた事も無い。
そのいやに明るい月明かりがミントの心を僅かに、ほんの少しだけ、微妙に不安にさせる。

ルイズ曰く月は二つが当たり前、ミントはこの国が星の位置から一体自分の知る世界からどれ程離れているかすらわからないのだ…


その夜二人は互いにこれからの事に不安を抱きながらも昨夜と同じく一つのベッドで眠りについた。




___???


眠っていたはずのルイズがふと目を覚ますとそこは見慣れた自室では無かった…

「…どこって言うか何此処…」
それは所々淡い彩りの星やら花やらが散りばめられた見渡す限りのピンクの空間。
クラスメイトの中にはこういった色彩を好む女子もいるがルイズには此処は少々悪趣味に思える。
そしてルイズの足下には一応足場はあるのだがそれはあくまで足がそこに接しているだけで目には全く見えない不思議な地面だった。

「何なのよ一体…変な夢って言うにはやたらはっきりしてるわね〜…ってあれ?痛い!?」
一人呟きながらピンクの平原を歩いていたルイズがこの光景が夢である事を確認する為
自分の頬をつねってみると何とも恐ろしい事に痛みを感じる。

「そう、ここは夢の中であり同時に夢の中では無いわ…」

ふとルイズの頭上から声と共に一人の女性がフライの呪文でも使っているのかゆっくりとルイズの目の前に降り立つ。


(…………………凄い恰好だわ…この人)
その女性の姿を一目見てそう思うとルイズは息をのんで一歩引く。
その女性は幼さを残した美しい顔にふわふわの金髪ロールの髪、その上にウサギの耳を乗せ、
フリルとリボンをこれでもかと言う程にあしらったエプロンドレスを身につけ、足下には丸くて赤いロリータシューズがまた大きく主張している。
背中のウサギの顔のリュックもワンポイントだ…
119デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:30:41.32 ID:XByaq/os
「初めまして、私はメルと言う者よ。人は私をファンシーメルと呼ぶわ。」
メルと名乗った女は柔らかく微笑んでルイズは自己紹介する。

「(そのままな名前ね…)え、えぇ…あ、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールよ。」
「ふふふ…素敵な名前ね。よろしくルイズ。」
「あ、ありがとう。あなたもしかしてミントが話してくれた魔法使いの…」
軽い挨拶を交わした後ルイズは若干ひるみながらもメルに訪ねる。

「えぇ、そうよミントに聞いていたのね。さて、ここが何で一体私が何をしに来たのか、
詳しい説明をするのにはとりあえずミントを待たなくちゃね。…ほら、来たわ。」

言ってメルは視線を上空へ移す。釣られてルイズも視線を上に移すとピンク一色の空から何かが降ってきていた。

空中で手をばたつかせる人影…そう、それは紛れも無くミントだった。

「げふっ!!」
ミントはそのままの勢いで地面へと叩き付けられたがメルの言うとおり確かにここは夢の中なのだろう、ミントのその身体には怪我一つ見当たらなかった。

「久しぶりねミント、相変わらずの様で安心したわ。」
「あいたたた…ってメル!?え、あたし自分の部屋で寝てたのに!」
「あたしの部屋よ。勝手に自分の部屋にしないでくれる?」

腕を組んでむくれるルイズを背に、ムクリと立ち上がりミントは頭を振って軽く意識をはっきりさせる。
目の前にいるのは確かにカローナの街で随分と世話になった魔法使いメルだ。
そして見ているだけで何だか胸焼けがしてくる様な甘ったるいこの空間は紛れも無くメルのアトリエである。

「何でメルがこんな所に?あ、もしかしてあたしを迎えに来てくれたの?」
「えっ?」
喜びのステップを繰り出しながらミントは楽観的な予想に浮き足立つが逆にルイズの表情は曇ってしまった…
そして表情を曇らせたのはメルもである。
120デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:31:02.44 ID:XByaq/os
「残念だけどミントそういう訳じゃないわ。……と言うよりも私はそれが難しい事を伝える為にあなたの夢にやって来たのよ。」
「はい?夢?」

メルは足下から巨大なキノコを召喚するとその上に軽やかに飛び乗って腰を落として話を続ける。
「そうここはあなたの夢の中、それを今は私が間借りしているのよ。」
メルの説明にルイズが思わず首を捻った。
「だったら何で私が居るの?ミントの夢なのに私が居るのはおかしいじゃ無い?」
「それは私にもはっきりとは分かりかねるけど恐らく貴方達が何か魔法的な何かで強く結ばれてその影響で夢が混線しているのかもしれないわね。心当たりはあるかしら?」

ルイズははっとした様にミントの左手をみやる。ミントもそれに気が付いた様だ。
「使い魔の契約か…」
ミントが苦い表情で呟く…
「多分それね…とりあえず順を追って説明させて貰うけどあなたが遺跡で光に飲み込まれて私の所にも直ぐに連絡が来たわ。知らせに飛んで来たルウはとても必死だったわよ。
それで色々な事を調査して見たのだけれど先ずは一番重要な事よ。
ミント一応覚悟して聞いて頂戴ね。」
メルの恰好とは裏腹に真剣な表情で語られる言葉にルイズとミントは揃って息をのむ。

「あなたの今居る世界、ハルケギニアは私たちの居る世界とは別の次元に存在しているいわゆる『異世界』なの。」

「………………やっぱりか」
メルの異世界発言を聞いたミントはしっかりとその言葉を頭の中で反芻し受け止める。
「あら…驚かないのね?」
「月が二つ在ったからもしかしたらって覚悟位は一応してたわ。で、戻れるの?」
ミントは自分でも思った以上に冷静な自分に気が付きながら真剣な表情でメルに訪ねる。
こういう純粋な知恵に関して言えばメル程頼りになる人間は居ない。

「はっきり言ってこちらからはお手上げね。条件を揃えても私の意識を辛うじて眠っているあなたへ繋げれる位かしら?次元の壁を破るのはそれこそ遺産が必要なレベルよ。」
「マジで?」
「えぇ、マジよ。」
「どどど、どーすんのよ〜!!!あたしどうなるの???」
ここに来て初めてミントが明らかに動揺を見せる。正直さっきまで何故か何とかなるという確信があったがメルにばっさりとそれを否定されたのだ。
121デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:31:27.07 ID:XByaq/os
「落ち着いてミント、あくまでお手上げなのはこちらから…がよ。そちらの世界にはあなたが帰還を果たすのに十分な因子があるわ。」
そういったメルの視線がへたり込んだミントから話について行く事が出来ず呆然としていたルイズへと移る。

「へ…あたし?」
ルイズもそれに気づき驚きながら思わず自分を指さす

「えぇそうよ、ミントをこの世界に呼んだのはあなた。つまりあなたには私たちの世界とあなたたちの世界を繋ぐ力が間違いなくあるのよ。」
「でも…私は魔法が使えないのよ?」
ルイズは顔を伏せて自信なさげに首を横に振る。
「それは時が来れば解決するわ。あなたは近い内に必ず自分に眠る力を知る事になる。」
メルは明るく笑ってルイズに言うと今度はミントへ向き直る。

「それとミント、あなたにとても嬉しいお知らせよ。あなたがこの世界に呼び出された大きな要因はルイズ以外にもう一つ、それはきっとデュープリズムにあるわ。
あの時あなたがヴァレンを倒して消えたデュープリズムは次元の狭間に飲まれてヴァレンの意識と共に世界と世界に磨り潰されてこの世界に辿り着いた。
そしてあなたはヴァレンと融合していたとはいえデュープリズムに触れた唯一の人間…
偶然かはたまた運命か…何にせよデュープリズムがあなたを呼んだ。そうは考えられないかしら?」

メルの語るとんでもない仮説にミントは思わず顔を上げて一瞬で元気を取り戻す。
「つまりこういう事ね、ハルケギニアでデュープリズムをゲットしてルイズの力を借りて還ってこい!!上等じゃ無い、俄然燃えてきたわ。」
宣言した後でミントはグッと拳を握り口元を歪める。
ルイズはミントのバイタリティに最早呆れを通り越して感心する。
「そういう事よ。早く帰って来てねミント。みんな心配しているわ…特にマヤがね。」
「えっ、マヤの奴が?」
マヤが自分を心配していると言われてミントはとても驚いた。だが嫌な気はしない。

「『異世界の人達にどの様なご迷惑を掛けているのかと思えば、我が姉ながら想像するだけで…あぁ頭痛がしますわ。』だそうよ。」
「マヤの奴…」
予想道理と言えば予想道理なのだが思わずミントはがっくりと項垂れる。
「だから早く帰ってらっしゃいな。」

柔らかく微笑むメルにミントは今度は胸を張るとデュアルハーロウを突きつけ宣言する。
122デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:32:01.72 ID:XByaq/os
「メル、マヤに伝えて頂戴!!あたしがそっちに戻る時はデュープリズムを手に入れた時よ!
そうしたら一番にあんたをボコボコにして東天王国を取り戻したら今度こそ『世界を征服』してやるわ。首を洗って待ってなさいってね。」
ミントの力強い言葉と言外に含まれる意図にメルは心底安堵した様に再び微笑むと腰掛けていたキノコから飛び降りた。
「フフ、必ず伝えるわ。そろそろお別れの時間だわ、じゃあねミントそれにルイズ。」

手を振りメルは二人に背を向けて歩き出すとその姿は霧に塗れる様徐々に消えていく。

「待ってメル。」
だが咄嗟にルイズがメルを呼び止めた。
第三者の彼女が消えてしまう前にルイズはどうしても確認しておきたい事があったのだ。

「ミントって…その…こんななのに本当に王女なの?」
「こんなのってあんた失礼ね…」
出来ればメルの答えは否定であってほしい。
そうルイズは願う。


「あら、これでもミントは正真正銘東天王国の王女様よ。それじゃあ今度こそさようなら。」

「そんな…馬鹿な…」
願いも虚しくミントが王女である事の確定に力なく崩れ落ちるルイズ…
メルはもう既に完全にその姿も気配も消えてしまった…

「ふっふっふ…これだけ分かれば十分だわ。とにかく何が何でもデュープリズムを手に入れるわよ〜〜!!」
ミントはルイズを尻目に悪ーい笑顔を浮かべて舌なめずりをしながら己の野望の為に新たな闘志を胸に再燃させて叫ぶ。

そうしてピンク一色の世界は緩やかに歪み始め、消失していくと同時にミントとルイズはそれぞれ再び深い眠りへと堕ちていった…


今回はこれで終わりです。メルさんならきっとこれ位の事は軽くやってくれると思います。
123デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:32:20.93 ID:XByaq/os
引き続き8話
124デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:32:48.70 ID:XByaq/os
第八話『買うわ!デルフリンガー。』

「今日は授業は休みよ。街に買い出しに行きましょう。」
虚無の曜日の朝一番に朝食を取り終えたルイズはミントにそう提案した。

「街か…丁度良いわね。行きましょう。」
二つ返事の了承、それはミントとしても断る理由の無い提案である。
何せミントはハルケギニアに召喚された際は着の身着のまま、リュックにはミントの世界の通貨と各種コイン、後は最低限のサバイバルキット位しか持ち合わせていない。
それに寝間着や普段着等も出来れば確保しておきたいし何より様々な人々の集う街などで情報を集める事は冒険者の基本だ。


早速支度を済ませてミントとルイズは一路王都トリスタニアに馬を走らせた。
因みに今日はミントはいつもの服を洗濯へ出してルイズの制服のスペアを借りている。
(少々胸元が窮屈ではあったが入らないと言う事も無い。)



そんな二人の魔法学園を朝一番に出て行く姿を見ている人物がいた。
「あら?ルイズにミント…街に行くのかしら?………何か面白そうね。」
キュルケである。キュルケは昨日の決闘騒ぎ以来、より一層ミントへ強い好奇心を持つ様になっていた。
見た事も無い形態の魔法を使い、その行動と性格はまさに破天荒、まず間違いの無い天然トラブルメーカー。昨日の騒ぎはまさにそれだ。
キュルケ自身そういう騒ぎが大好きだ。自分に直接迷惑が掛からず、指先一つのちょっかいを出す事でより事態を面白く出来るなら尚良しだ。
「でも今からじゃ流石に追いつけないか…いや、あの子の使い魔なら。」
キュルケは鏡台の前でそう呟いて着替えと化粧を済ませると変わり者の自分の親友を頼る為軽い足取りで部屋をでる。


「……………………」
少女タバサは壁に背を預けながらベッドの上に座り静かに本を読みふける。
タバサの虚無の曜日の予定は決まっている。こうして一日静かに本を読む事である。
稀に任務を言い渡される事もあるが今日は幸い任務も無い。端から見れば分からないが今日のタバサの気分はおおむね良かった。

「タバサー居る〜?私よ〜。」
125デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:33:49.30 ID:XByaq/os
が、そんな静かなタバサの世界をぶち壊すかの様にドンドンと扉がノックされ唯一の友人の声がタバサの耳に入る。
タバサは杖を手に取るとサイレントの魔法を唱えて再び本の世界へと集中する。
しばらくして九割方文字の羅列を捉えていたタバサの視界の隅に赤い髪と共に揺れる二つの脂肪の塊が入り込んできた。
どうやら勝手にアンロックの魔法で鍵を解錠して進入してきたキュルケは自分に何かを訴えている様でようやくタバサはサイレントの魔法を解除してやる。

「全くもう、あなたったら酷いじゃ無い。」
「用件は何?」
「ルイズがあの使い魔の子と街に行ったみたいなの。面白そうだから私も追いかけて行こうと思うんだけど今からじゃ追いつけそうに無いわ。
だからあなたの使い魔の風龍で追いかけて貰いたいのよ。ねぇ〜お願い…」
キュルケが胸の前で手を合わせて身体をくねらせる。無駄に色っぽい。
「……………………」
タバサは無言で少し思案した後、窓辺から外に向かって口笛を吹いた。
すると森の中からタバサの部屋へ向かって青い鱗に包まれた一匹の風龍の幼生が飛来してくる。名はシルフィード、タバサの使い魔である。
「乗って。」
一言そう言ってキュルケに促しながらタバサは軽やかにシルフィードの背中に飛び乗る。
「あれ、あなたの事だから「虚無の曜日」って言って渋ると思ってたけどどうしたの?」
シルフィードの背中に乗りながらキュルケがタバサに尋ねるとタバサは無言で自分とキュルケを順に指さし一言小さく呟く。

「友達」

「タバサ!!」
感極まった様子でキュルケはタバサを抱きしめる。その豊満な胸をタバサの顔に押し当てながら。
「それに私もあの使い魔に興味がある…」
タバサは昨日ミントの使用した魔法について思い返す。
もしもアレが先住でも系統でも無い魔法ならばもしかしたら自分の助けになりえるかも知れない。
その為には先ずはミントの事を知らなければならない…

春のまだ少し冷たい風を切ってタバサとキュルケを乗せたシルフィードはトリスタニアへと飛んだ。


___城下町トリスタニア
126デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:34:15.69 ID:XByaq/os
「ふーん…結構栄えてるわね。」
街の広場から周囲を見渡してミントは正直な意見を口にする。
「そりゃあ王都だもの。先ずはミントの服よね。さ、服屋に行きましょう。」
ルイズが先導して歩いて行くのでミントも素直にその後ろを付いていく。
自分一人ならどうとでもなるがルイズ(サイフ)が迷子になっては流石に厄介だ。




最初店内に入った瞬間、「取り敢えずお勧め全部頂戴。」等と曰ったミントに思わず突っ込みを入れる等の一悶着がありながらも下着、寝間着等をを購入しミントの普段着のスペアをオーダーしたルイズ。
服などは完成したら学園まで配達して貰える手はずである。
次に二人が向かったのは貴族御用達のカフェレストランだ。
運ばれてきた料理に舌鼓をうちながら食後のデザートに頼んだクックベリーパイと紅茶をルイズとミントは語りあいながらゆっくりと味わう。

「おいしいわねこのパイ、そういえば昨日は結局ケーキ食べれなかったのよね〜ギーシュの奴のせいで。」
ミントはクックベリーパイの甘酸っぱさを味わいながら吐き捨てる様に言う。
「そういえばそうよ!あんたねあれはやり過ぎよ。あんたの為にシエスタに医務室用意させてたのにその医務室に運ばれたのがギーシュなんだからシエスタきっとそうとう驚いたわよ。」
怒りながらもルイズは愉快そうに笑って言う。
「だから言ったじゃん、あたしを舐めるなって。」
「まぁでもあいつにも良い薬よね。正直なところ私もすっきりしたし。」
「でしょうね。あたしああいう男正直嫌いだわ。」
「あはは、だと思う。」
「あら、じゃあミントの好みの男性のタイプってどんな人?私気になるわ。」
「そりゃあ…………って、キュルケじゃ無い?」

ルイズとミントが会話に花を咲かせているといつの間にやら隣のテーブルにキュルケとタバサが座っていた。
「ツェルプストーっ!?あんた何で…」
「何でも何もあたしはタバサとお茶しに来たのよ?そこでよーく見知った顔を見かければそりゃ声位掛けるわよ。」
反射的に立ち上がったルイズにキュルケはからかう様に笑って答える。
「まぁ座んなさいよルイズ。周りに笑われるわよ。」
ルイズを制してミントは優雅に紅茶を一口すする。確かに他の客の小さな笑い声がルイズの耳には聞こえてきた。
127デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:34:50.02 ID:XByaq/os
仕方なくルイズは席に着くとまだ不機嫌ながらもミント達のやり取りを静観する。
「所でミント、昨日見てたわよ〜。凄かったじゃない、平民だって思ってたけどあなたメイジだったのね!」
「フフフ、もっと褒めるが良いわ。ま、あたしにとっちゃあんなのチョロいチョロい。」

「あなたの使っていた魔法…アレは何?」
ここでさっきまでハシバミサラダをひたすら食べていたタバサが初めて口を開く
「あぁ、あれは…ってあんた誰?」
「紹介するわねミント。この子はタバサ、私の一番の親友よ。」
キュルケの抱擁に押しつぶされながらタバサは無表情にミントに会釈する。
「ふーん…あたしはミント様よ、よろしくタバサ。」
ミントもタバサの会釈に答える様に軽く掌を振った。

「で、あれは…「ストップ!!ミント。」」
ミントが昨日の魔法の簡単な説明をタバサにしようとした所でルイズが突然それにストップを掛ける。
「何?」
「フフフ、タバサには悪いけど使い魔の力の秘密をそうそう簡単には聞かせられないわ。
特にツェルプストーには尚更ね。」

「意地が悪い…」
「あんたの力じゃ無いでしょうが…」
「流石ヴァリエールね…」
三者それぞれ呆れた様にジト目でルイズを見つめる。空気を読めよと言いたげに。

「う…うるさい!!うるさい!!うるさい!!そもそもメイジとして使い魔の秘密を守る位のリスク管理は当然よ。私は何も間違った事は言っていないわ。」
顔を赤くしながらルイズは怒鳴る。言っている事は正論だが如何せん感情が先立って見え透いている為いまいち説得力に欠ける。
しかし、その言い分にはタバサも思うところがある以上ここでごねるのは憚られる。
ミントの事は別に直ぐに直ぐ知らなければならない訳では無い。
ミントとしてもよく考えれば自分のこの世界での特殊性を思い直せばこう言った事をホイホイ話しては無用なトラブルを呼びかねない。ここは癪だがルイズの言葉に理がある。
キュルケも大胸そう考える。


『仕方ない。』

三人の声がハモり、一人の空気の読めない少女のせいでこの話はここで打ち切りと相成った。
128デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:35:15.06 ID:XByaq/os
そのまま四人は折角だからとブラブラ街の中を散策する事にした。
途中タバサの為に本屋に寄ったり、露店で行儀悪く串焼きを買い食いしたり、ルイズのサイフに手を出そうとしたスリをミントがボコボコにしたりと楽しい時間が過ぎていく。

そうしてミントの希望でマジックアイテムの店などを巡った後、最後に武器屋を覗く事になった。
武器を持った際の力が溢れる現象が果たしてデュアルハーロウ以外でも起きるのかを確認する為だ。

ルイズの案内の元で狭い路地裏に入って行った三人、悪臭が鼻につく。よく見なくてもその辺りにはゴミや汚物が道端に転がっていた。

「路地裏っていうのはどこも同じね。でもその分掘り出し物ってのも期待できるわ。」
「そういう物なの?まぁそういう物だから掘り出し物っていうんだけどね。」
ルイズは立ち止まると、辺りをきょろきょろと見回す。

「ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺だったと思うんだけど…」
「あれね。」
ルイズが見つけるよりも早くミントが指をさす、見ると剣の形をした銅の看板が下がっていた。 どうやらそこが武器屋のようだった。
四人は石段を上り、羽扉を開け、店の中に入って行った。


店の中は昼間だと言うのに薄暗く、とても貴族を相手にしている商売では無い事を物語る。
壁や棚には所狭しと剣や槍、槌が乱雑に並べられ、中には目玉商品なのだろうか立派な甲冑もあった。
店の奥では煙草をくわえていた親父が入ってきたミント達を胡散臭げに見つめて直ぐに
紐タイ留めに描かれた五芒星に気付く。
それから慌てて煙草の火をカウンターに押しつけて消すと、ドスの利いた声を出した。

「旦那、貴族の旦那、うちはまっとうな商売してまさぁ、お上に目をつけられるようなやましいことなんかこれっぽっちもありませんや。」

「客よ。」

ルイズが腕組みをしたまま答えると店主はまた驚いた表情を浮かべる。
「へぇ?貴族のお嬢様方が武器をですかい?そりゃまた………しかしそうですね、そうでしたらこちらなど如何で?美しさで言えばうちで一番でさぁ。」
店主は店奥から繊細な銀の細工の施されたレイピアを持ち出してきた。それをミントが受け取り軽く構えを取ってみる。
129デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:35:44.95 ID:XByaq/os
「駄目ね…帰りましょ。」
溜息混じりに呟きレイピアをカウンターに戻してミントは肩を窄めた。
全く持って力がわき上がるあの感覚がこの銀細工のレイピアからは感じられないのだ。

「結局何がしたかったのよ?まぁ良いわ、邪魔したわね。」
ルイズはミントの行動に首を傾げるがまぁ良い、用事が無いならこんな所に用は無い。
「はいよ、どうか御贔屓に…」
用も済んだと早々に帰ろうとする四人に店主は内心武器屋にガキが来るんじゃねぇと舌打ちをする。


『おぅ、帰れ帰れっ!!武器はガキのおもちゃじゃねぇんだよ。二度と来んな!!』

と羽扉に手を掛けた四人に突然そんな男の声が聞こえてきた。
無論店内に居る男など店主以外には居ない。四人が振り返りそれぞれギロリと店主を睨む。

「馬鹿野郎、デル公!貴族のお客様に何て事を言いやがるんだ!!」
慌てて店主は店の隅に置かれた樽の中から随分と古びた一本の剣を取り出して四人の前に差し出す。

「これってインテリジェンスソード?随分口が悪いわね。」
「何それ?」
「インテリジェンスソード、自我と知性を持った剣。」
ミントの疑問に相変わらず本を読み続けるタバサが簡潔に答えた。

「へぇ〜面白いじゃない。ねぇおっさん貸して貸して。」
言うが早いかミントは店主の手から剣をかすめ取る。同時に左手に熱が走り、力が漲る感覚を感じた。
そして今まで剣など扱った事の無いはずのミントの頭の中に剣という武器に関するあらゆる知識が一瞬でたたき込まれた。
適切なメンテナンス方法から適切な構え、振り方、重心の取り方、そして何よりもこの剣がやたらと手に馴染むのだ。

「驚いた…嬢ちゃん『使い手』かよ……それに嬢ちゃんあんたすげぇ修羅場くぐってるな。
よし嬢ちゃん、俺を買え。」

突然神妙な様子になったインテリジェンスソードの様子に全員が目を丸くする。

「へ〜……あんた剣の癖に面白い事言うわね。良いわ買って上げる。おっさんこれ幾ら?」
130デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:36:15.20 ID:XByaq/os
「ちょっとミント、そんなボロッちぃ剣なんか買うの!?ていうかあんたあたしに払わせるんでしょうが!!駄目よ!」
ルイズの訴え等最早関係ない、冒険者としての経験がミントに訴える。
こいつは掘り出し物のお宝だと。

「良いじゃ無いルイズ、面白そうだし。何ならミント、どうせ一山幾らの剣なら私が買ってあげるわよそれ位。」
「おっキュルケ、太っ腹。流石に胸の大きい女は違うわね。」
「胸は関係ないでしょうがっ!!解ったわよ!!買うわ買って上げるわよ馬鹿!!」
キュルケの提案に半泣きで食って掛かるルイズをミントはしてやったりと言った表情で笑う。
はっきり言ってキュルケもこうなる事が読めていての提案だったのだがチョロいにも程がある。

「くっ…そういう訳よ!あの剣幾ら?」
ルイズは金貨の入ったサイフを怒りのままのカウンターへと叩き付ける。

「あれなら新金貨100で結構でさぁ。」

「あっそう!!」
カウンターに乱暴にぶちまけられる金貨…苦笑いで店主はその金貨の枚数を数えている。最早ルイズからのただの八つ当たりである。






「そういえばあんた名前は?」
「あぁ、おれっちの名前はデルフリンガーだ。よろしくな、相棒。」

「あたしはミントよ。ミント様って呼ぶ様に、よろしくねデルフ♪」
131デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/03(土) 23:38:10.27 ID:XByaq/os
以上で第八話終了です。
文章自体は多分今までで一番長いんでしょうが今後はこれ位を平均に出来る様にがんばりたいです。
そして購入させたもののデルフどうすりゃいいんだよorz

それではどなた様か代理お願いします。アクセス規制のばかやろー



ここまで、代理終了
>>118の最後のみ文章が次のレスとまたがってたのでつなげちゃいました
それ以外の抜けとかは多分ない、といいなぁ
132名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 00:05:19.10 ID:L0Zinxfq
おつおつ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 00:06:52.45 ID:L0Zinxfq
ダクソのキャラ召喚待ってます
134名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 00:30:48.18 ID:rFRo9ykt
>>133
ロートレクよんで日ごとに死んでいく学院の生徒やらとかか
135名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 03:24:45.68 ID:XHUe9xO4
>>133
だから言いだしっぺの法則というものがあってだな……
そしてsageろ
136名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 04:16:58.96 ID:TqxxYIKu
月で眠りについていたが、気まぐれから召喚に応じてみたみたものの…
名前が似ているというだけで、こっぱげを隠すために兜を外さない疑惑とか、双子疑惑をかけられるゴルベーザのハルケギニア生活
137名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 11:33:34.39 ID:GhJO/cPN
>>136
そのネタはいいですとも!
138名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 12:11:44.50 ID:WFJnpGin
貂蝉(cv:若本)も気の良いオカマだよね?
139ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2012/03/04(日) 12:41:07.88 ID:8wsdfkMT
皆さんこんにちは。ウルトラ5番目の使い魔、80話投稿開始します。
ほかの方と予約がかぶっていませんでしたら10分後、12:50にはじめますので、よろしくお願いいたします。
 第八十話
 さらばハルケギニア! 東方より愛をこめて!
 
 高速怪獣 デキサドル
 念力種族 ゼネキンダール人 登場!
 
 
 「とうとうこの日が来たか、長いような短かったような……ま、ともかくあっという間の一ヶ月だったな」
 真冬の熱のない陽光に照らされて、鉄色を輝かせる広大な滑走路。そこに鎮座して翼を休める銀翼の戦鳥のパイロットシートに
深く身を沈めて、太陽をあおぎながら才人はつぶやいた。
 ここは、新・東方号の後部に広がる信濃の飛行甲板。全長およそ二百メートル、百ミリ近い分厚い甲鉄で出来た、頑強そのものの
装甲甲板の上には、才人を乗せたゼロ戦のほかにも、三機の再生ゼロ戦が待機して整備を受けている。エンジンカウリングが開けられ、
オイルパイプをチェックしているのは、造船所で手先の器用さを見込まれて雇われてきた職人たちだ。彼らはゼロ戦が回収された
空母から同時に回収された整備器具をまだ慣れない手つきながら、コルベール製のマニュアル本に従って調整をおこなっていた。
 才人はシートから身を起こすと、風防を開いてコクピットのふちに腰掛けた。彼の見渡す先には、新造同様に磨き上げられ、
鋼鉄の輝きを放つ新東方号の第五、第六主砲に続いて、後部艦橋から前艦橋にいたるまでの圧倒的な存在感を示す艦上構造物の
連なりが、天を突かんとするほどに聳え立っていた。
 そこに、一ヶ月前の焼け焦げて幽霊船同然だったみじめな姿はどこにもない。
「昔、映画の撮影で原寸大の大和の模型を作ったことがあるけど、そんな比じゃねえな。あったりまえか、こいつは正真正銘本物の
戦艦大和なんだからな!」
 もう何度目になるかわからないくらい見上げたが、いまだに見飽きることも慣れることもない大和の威容は、この船が兵器という
枠を超えた芸術品という域にまで達しているからだろう。世界最強、その一言のみを達成するために極限まで無駄を省かれた
戦闘能力の塊、機能美の頂点を極めているとしてこれ以上のものはないだろう。
 往年の姿に比べたら、その容姿は大きく変わってしまっているものの、轟き叫ぶ鋼鉄の魂の咆哮はこの耳に聞こえてくるようだ。
 見よ、この世の大過を晴らすために生まれ変わった船のマストに翻る旗は、東方よりの風に吹かれて輝き唸っているではないか。
「地球とハルケギニアの魂の融合。これを希望と呼ばずしてなんて言うかい! ったく、この世界はしょっちゅうとんでもねえ
空からの贈り物がくるが、こいつばかりは神様に感謝するぜ。へっ、朝日を浴びて東方号が赤く燃えてやがる」
 才人は飛行手袋で鼻をこすって、まさしく王者……いや、太陽という冠を頂いた女王のように君臨する新・東方号をうるんだ
瞳でもう一度見上げた。詩文の才能などは小学校の頃から見限っている才人の言葉には、独創性は微塵も宿ってはいないものの、
文章にできない感慨さは十分に込められていた。
 そう、この新・東方号という異形の超戦艦は、ハルケギニアという世界でなければ絶対に生まれることはなかったはずだ。
 
 
 いや、新・東方号だけではない。このハルケギニアという世界は、単なる一惑星としては異様なほど特殊な事例が満ち満ちている。
 
 
 晴れた夜空を見上げてみれば、そこには数億数兆の星星がきらめき、そこにはたくさんの生命が息づいているだろう。
 それは宇宙も同じで、我々の住む世界はひとつの宇宙に属し、ほかに無限に存在する別の宇宙と並行して存在しているのだ。
 つまり宇宙は閉鎖されたひとつの空間であり、その外には別の宇宙が水の中に浮かぶ泡のように無限に存在している。
 そして、それらの宇宙には、人類の発明した数の単位を砂粒ほどに笑うほどの生命が息づいているであろう。
 二十世紀、地球人類はこの可能性を提唱したが、人類の科学力では実証することは不可能だった。しかし、数々の宇宙侵略者や
怪獣との戦いを経て、異次元世界の存在が証明され、二十一世紀初頭においてひとつの定説としてまとめた。それが多次元宇宙論、
マルチバースである。
 
 しかし、無限にあるそれらの世界でも、悪は常にはびこっている。
 
 時に時空をもたやすく超えて攻撃を仕掛けてくる侵略者と、人類はウルトラ戦士と力を合わせて戦い抜いた。
 その中でも最大の敵となったのが、異次元人ヤプールである。
 何度倒されようとも怨念を強めて戻ってくるヤプールとの戦い。そして地球に対して、なおも執念を燃やすヤプールは、
直接地球を攻めることは不利として、別世界を前進基地とすることを思いつき、不幸にもハルケギニアがその標的となって
しまったことに、才人やウルトラマンAは憤りを覚えながら戦ってきた。
 しかし、この世界の人々は、次元を超えてやってきたウルトラマンAに助けられながらも、少ない力を結集して侵略に
立ち向かっていった。ルイズや多くの人々の勇敢な姿に、才人もエースもどれだけ感激したかわからない。
 
 さらに、このハルケギニアという、一種特殊な環境の惑星にある世界は、数多くの別次元からもウルトラマンたちを呼び寄せた。
 ティガ、ダイナ、ジャスティス……彼らもまた、居場所は違えど人々を守るために怪獣たちと戦った。
 
 だが、ハルケギニアを覆う邪悪の影はしだいにウルトラマンたちの手にも負えないほど強大になっていった。
 ヤプールの出現をきっかけにしての、ハルケギニア現住の怪獣たちの復活、宇宙からの怪獣の来襲の開始、さらには
ヤプール以外の他の惑星、異次元からの侵略者の攻撃。それらが世界を混乱させる中で、ヤプールはどんどんと戦力を
拡大し、もはやいつハルケギニアに総攻撃を仕掛けてきてもおかしくないほどに強くなっている。
 もはやヤプールの攻撃を迎え撃つだけでは平和を守ることはできない。なぜならば、ヤプールの力の根源は生物の怒りや
憎しみといった負の感情であるために、この世界に満ち満ちる憎悪の連鎖が存在し続ける限り、ヤプールの力は
実質無尽蔵ということになる。
 新・東方号はその憎しみの連鎖を断ち切るために生まれ変わったことは、すでに誰もが知っている。
 しかし、それにしてもハルケギニアに来てからのヤプールの勢力の強大化は異常だと、このところ才人の中に共存する
北斗星冶ことウルトラマンAは思うようになってきた。
〔やはり、この惑星はおかしい。普通、次元を超えるためにはよほど特殊な事例を別としたら、特化した超能力を持っているか、
莫大なエネルギーを消費しなければならないはずなのに、偶然にしてはありえないほど別次元とつながることが多いようだ。
自然現象とはとても思えない、ならばやはりきっかけは古代にあったという戦いか……その謎を解くためにも、聖地を……
エルフたちと接触する必要はあるだろうな〕
 
 すでに明日の戦いを見据えて、才人やエースは強い決意を胸にして太陽へと向かい合う。
 それは銃士隊や水精霊騎士隊、この街の多くの人間たちも同様で、彼らの目指す先にはヤプールの脅威を打ち破り
平和を取り戻したハルケギニアの姿が浮かんでいる。前をのみ見据えて進むその先には、希望の光が強く瞬いていた。
 そして未来を手に入れるための、『現在』が彼らの前に待っている。
 
「東方号発進、三十分前! 総員配置、全作業員はただちに退艦せよ。繰り返す、全作業員はただちに退艦せよ!」
「水蒸気機関、吸気はじめ。反重力場発生装置、テスト開始!」
 
 静謐を保っていた東方号から機械音が鳴り出し、眠れる獅子が目覚めのときを迎えた。
 さらに外でも、トリステイン軍の軍楽隊による演奏がおこなわれ、処女航海に出港しようとしている新・東方号を大勢の人間が
見守っている。
 運河の両岸は一目見ようという人々であふれ、その数は数万にのぼるだろう。なにせ、これはトリステイン軍が
強大な空軍力を掌中に収めたということを世間に喧伝するための、いわばデモンストレーションもかねているから当然だ。
つい昨日あんなことがあったばかりというのに、平然と桟橋の見物席にふんぞりかえっているド・ポワチエらの面の皮の
厚さには感心さえ覚えられる。
 しかし残念ながら、我々は見物人たちの期待にも軍のお偉いさんたちの希望にも答えてやることはできない。公にはまだ
できないが、この船にははるかに大きな使命が課せられているのだ。
 艦橋トップの防空指揮所につくエレオノールと、その下の東方号の中枢となるべき昼戦艦橋で、コルベールが緊張した
面持ちで指示を出している。彼らは名目上はクルデンホルフの指揮下で、東方号のクルーとなっているが、これから
やることは国家反逆罪にも値する大それたことなのだ。
「一応次期女王陛下の密命があるといえど、こりゃ下手をしたらラ・ヴァリエールも断絶ものね。ま、家名が残っても世界が
滅んだら同じことだからしょうがないけどさ。ふぅ……」
 エレオノールは、短いあいだに自分もけっこう淑女から遠いところに来てしまったなとため息をついた。
 今頃艦内ではミシェルたち銃士隊が出港作業と並行して、別の意味での準備をしているはずだ。それだけでも、立派に重罪に
問われるはずだ。もっとも、行って生きて帰れたらの話だが。
 
 しかし、愚痴を言うのはここまでだ! 全員とっくの昔に覚悟は決めている!
 
「出港用意! 錨をあげよ!」
 艦首から水中に下ろされた巨大な錨が鎖の音とともに引き上げられていき、新・東方号が桟橋から離れていく。
「第一、第二エンジン回転開始」
「微速前進、ようそろう!」
 コルベールの指示でレイナールが蛇輪を操り、東方号はゆっくりと水面を前進し始めた。
「おおっ! 動いたぞ」
 前進をはじめた東方号の姿に、観客からいっせいに歓声が上がった。
 プロペラを回すコルベール製の水蒸気エンジン。その回転が徐々に速くなっていき、東方号ははじめて自らの力で水を掻き分けていく。
「第三、第四エンジンに接続。第一戦速から第二戦速へ!」
 軍艦の方式で東方号は速力を上げていく。さらに、蒸気を溜めていた二基のエンジンも回転し出すと、眼に見えて加速度がつき始めた。
 艦首は河水を裂いて波を生んで対岸に叩き付け、四基の巨大なプロペラから与えられるパワーは莫大な風力を生み出し、
後方に台風のような暴風を巻き起こしながら、この巨大な艦を対岸を馬で走って追いかける人をも置いていくほどの速さまで高めていった。
 すでに艦橋は四基のエンジンの轟音で満たされて、普通にしゃべることができないほどだ。
”まさか、ここまでの力を発揮できるとは!”
 コルベールは自ら作り上げたものながら、その出力の高さに驚嘆していた。この超巨艦を動かせるだけのパワーを出せるかだけでも
正直不安だったのに、予想をはるかに超えた速さを発揮している。しかも自分たちハルケギニアの人間だけで組み上げたものでだ。
 誇らしさを顔に浮かべるコルベールの前で、東方号は誰の予測をも超えた速さで波を切る。
 だが、水の上を走るだけでは足りないのだ。東方号が、その真価を試されるのはここから。コルベールは伝声管に向かって、
船体中央部の宇宙円盤に指令を送った。
「ようし飛ぶぞ! 重力制御開始だ!」
 その瞬間、東方号の周囲の水が空へと吹き上がった。それはまるで滝が空に向かって落ちていくかのようで、見ていた人間の
すべてが息を呑み、この世の光景かと眼を疑う。
 宇宙人の技術で上から下へではなく、下から上へと変えられた重力によって巻き上げられていく水。その中で東方号は
水蒸気機関を全開にし、艦首を浮き上がらせていく。
 今こそ、若鳥の巣立ちのときは来た!
「新・東方号……発進!」
 艦首を天に向けて、東方号は飛び上がっていった。
 上昇角二十度、全速前進。にび色の船体に赤銅色の翼を太陽に輝かせて、巨大冒険船東方号はぐんぐん高度を増し続ける。
「飛んだ! 飛んだぞ!」
 地上で発進を見守っていた人々からいっせいに歓声があがった。東方号は、その圧巻そのものの巨体を持って、伝説の不死鳥も
道を譲るであろう存在感で宙を舞い、一ヶ月のあいだ自らを育んでくれた街に巨大な影を投げかけて縦横に飛び回る。
 まさに、天空を征く鋼鉄の城。その舷窓には才人やギーシュたちが群がり、興奮を隠せずにはしゃぎまわっている。
 そして、新・東方号の生みの親である二人もまた、満足げな笑みを浮かべていた。
「成功したわね、ミスタ・コルベール」
「ありがとう、ミス・エレオノール」
 艦橋に下りてきたエレオノールの祝辞に、コルベールは照れくさそうに答えた。元々女っけのない男やもめの人生、作業中は
仕事に専念していて意識しなくても、こうして顔を合わせて話すとやはりまだ照れてしまう。
 しかし、二人とも成功の喜びに浮かれたのは一瞬で、すぐに顔を引き締めなおすと、伝声管の先にいるミシェルに問いかけた。
「こちらブリッジだ。ミシェルくん、準備はよいかね?」
「こちら格納庫だ。準備はできてる。連中、油断してたから全員制圧するのに五分とかからなかった。いつでもいいぞ」
 疲れた様子もないミシェルの声に、コルベールは来るべきときが来たと覚悟した。
 ここから先は後戻りはできない。東方号を軍のものにせず、アンリエッタ姫から与えられた使命を果たすために、彼は決断した。
 
「進路を東に取れ! これより東方号はサハラにある、エルフの国ネフテスの首都アディールを目指して出港する!」
 
 全艦から咆哮にも似た歓声が上がり、街の上空を旋回していた東方号は艦首を東に向けて速度を上げていった。
 むろん、驚いたのはド・ポワチエをはじめとする軍の高官たちである。勝手に飛んでいく東方号を見て慌て、どうしたんだと騒ぎ立てる。
 そこへ、東方号から十艘ばかりの風石で浮かぶボートが流されてきたと報告があって、彼らはコルベールたちの意図を知った。
それらのボートには、東方号に乗り込んでいた軍の士官や兵が満載されており、現在東方号には魔法学院の教員生徒と
銃士隊しか乗っていないということになる。
「反乱だっ! これは重大な反乱行為だぞ!」
 東方号の真の目的を知らない彼らはいきり立ち、東方号を奪い返せと叫ぶが、それが不可能だということは明らかだった。
東方号に追いつける船はこの世界に一隻たりとてなく、風竜では追いつけたとしても止める手段がない。
 ド・ポワチエらの苦し紛れの罵倒は虚しく宙に消え、地団太を踏む軍の高官や貴族たちの姿が周囲の冷笑と軽蔑を呼んだ。
 けれど、彼らを愚かだと笑うのはいいが、見下してはいけない。いかな虚栄心の塊のような人間でも、彼らにも愛する家族が
いるだろう……公人・軍人としては二流のド・ポワチエにしても、家庭においてはよき父、よき夫であるかもしれない。一辺に
おいて醜くても、それを彼の人のすべてだと決め付けるのは傲慢以外のなにものでもないのである。
 すべての人々の未来と可能性のために、東方号はかなたの空へと去っていく。
 
 さらばトリステインよ、たとえ祝福されぬ旅立ちであろうとも、我らの歩みにためらいはない。
 けれども、その背中に手を振る仲間はここにいる。
 街外れの小高い丘に立つベアトリスとエーコたち十姉妹。彼女たちは、消えゆく東方号を涙さえ浮かべながら、口々に
見送りの言葉を叫んでいた。
「ヴァリエール先輩! いろいろありがとうございました! ラシーナ先輩、先輩方もご無事で!」
「ミシェルさーん! お元気でーっ!」
「サリュアさーん! 必ず帰ってきてくださいね!」
「お世話になりましたーっ! ご武運をお祈りしてまーすっ! わたしたち、ずっと待ってますからーっ!」
 ベアトリスと、エーコ、ビーコ、シーコの声が遠く離れた東方号を追いかけていく。
 彼女たちにとって、この一ヶ月ほど人生において重要だった期間はなかった。ルイズたち魔法学院の上級生たちや、
ミシェルたち銃士隊など、それまでの狭い世界では決して出会うことのなかったであろう人間たちとの対等の交流が、
世の中には様々な人間がいるのだということを教えてくれた。
 そして、あの風来坊……モロボシ・ダン。彼がいてくれたからこそ、底なしの泥沼に沈もうとしていた自分たちはすんでの
ところで岸に手をかけて、救いの手を伸ばしてくれる人の手をとることができた。その思いに応えるためにも、かけがえのない
家族と友を今度こそなくさないために、恩人たちが喜んで安心してくれるように、立派な人間になり……幸せにならなくてはいけない。
 セトラ、エフィ、キュメイラ、ディアンナ、ユウリ、イーリヤ、ティーナも妹たちを暖かく見守り、自分たちの運命を正しい方向に
導いてくれた恩人たちの乗る船に手を振っている。
「お父さま、お母さま……ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。でも、わたしたちはもう大丈夫です。これからなにがあっても、
姉妹みんなで力を合わせて生きていきます。だから、見守っていてくださいませ……」
 セトラの祈りが、姉妹の決意を表していた。
 確かに、いまだ肉体は改造されたままの彼女たちの前途には、想像もできない困難が待ち受けていることだろう。けれども、
怨念という自らの内の悪魔の消えた彼女たちが二度と超獣になることはない。そして、完全な人間に戻る方法もきっと
どこかにあるに違いない。
 そう、生きてさえいれば希望は消えない。決して、自ら死を選びはしない。
 とりあえずは、間もなく見えなくなる東方号……彼らが使命を果たして帰ってくるときのために、留守のこの国を守り抜き、
落胆されないよう出迎る。それが目標だ。
 旅立つ者がいれば残る者もいる。残った者にも役割と戦いがある。ベアトリスと十姉妹にとっても、真の戦いはこれからなのだ。
 
 手を振る人に笑顔で応え、東方号は東へ向かう。
 山を越え、河をまたぎ、町や村を飛び越えて、ひたすら東へと突き進む。
 目指すはサハラ、かつて人間を拒絶し続けたエルフの住まう砂漠の世界。
 しかし、サハラに向かうためには、まずハルケギニアでクリアしなくてはいけない問題があった。
 巡航速度で飛ぶ東方号の艦内の、作戦会議室に指定された大部屋にコルベールとエレオノールのほか、ミシェル、
才人やルイズにギーシュ、それにルクシャナにティファニアなどの主要メンバーが集まって大テーブルを囲んでいた。
 卓上には、ハルケギニア全土の地図が広げられており、コルベールはトリステインの場所を指差して議題を切り出した。
「さて、時間がないので手短に話そう。現在本船は、トリステイン領空を高度六千メイルで東方へ航行している。このままの
進路を辿れば、おおよそ一時間で国境にたどり着けるだろう。しかし、トリステインから直接サハラに侵入するルートは
ないために、我々は三つの選択肢の中からひとつを選ばなくてはならない」
 全員を見渡し、コルベールは眼鏡の奥の眼を教師ではなく、戦場を知る人間のものにして続けた。
「まず一つ目は、いったん北方に出て、ゲルマニア北方の海上を迂回していくルート。二つ目は、東に直進してゲルマニアの
領空を横断するルート、そして三つ目はやや南下してガリア領空からアーハンブラを経由してサハラに入るルートだ」
 それは、トリステインとサハラのあいだに二つの大国が横たわっているがゆえの避けられない道であった。
 サハラに到達するには、まずこの人間世界を通り抜けて行く必要がどうしてもある。しかし、どれもが大きな危険に満ちている
ことは誰しもが理解していた。ならばあとは消去法でいくしかなく、エレオノールが切り出す。
「まず、北方のルートは論外ね。ただでさえ地図もない北方の海上を、錬度不足の船で乗り出せば迷子になるのが落ちよ。
第一距離がありすぎるわ」
 迂回ルートはあっさりと『沈没』した。ちなみに、ルクシャナやビダーシャルがガリアに来たときには、海上を道筋を知っている
イルカに案内してもらえる船を使っていたそうなので、ルクシャナは海上の道は知らない。第一、その船はビダーシャルが
サハラに帰ったときに使ってしまったので、ルクシャナに道案内してもらうためにはどうしても陸上を通る必要があった。
「残るルートはゲルマニアかガリアだな。距離的にはゲルマニアが一番近いし、トリステインの同盟国だからちょうど
いいんじゃないかね?」
 ギーシュが第二のルートを選び、地図上を一直線にサハラまで指し示した。
 だが、ミシェルがかぶりをふる。
「いや、ゲルマニアは危険だな」
「どうしてだね? 万一妨害してきても、この船を落とせる武器なんて世界中にないじゃないか」
「東方号はそれでいいだろう。しかし、あの国が力を持った都市国家の集合体である連合王国だということを忘れるな。
アルブレヒト三世が力で抑え込んではいても、あの国の軍人や商人の自尊心の強さは下手な貴族よりはるかに上だ。
そんなところを縦断していってみろ、連中はトリステインからの挑戦と受け取るに違いない。しかもゲルマニアは人口密度が
高いから、相当な人目についてしまう」
 将来的に戦争の火種になるとミシェルは警告していた。
 才人やルイズは、なるほどあのキュルケの国ならありえるなと妙な納得をしていた。キュルケか……そういえば、
タバサといっしょにしばらく会っていないが、いまごろどこでなにをしているだろうか?
 が、感傷に浸る時間はなかった。残るルートは、ある意味ではもっとも危険がともなうルートであったからだ。
「じゃあ最後は、ガリアを横断するルートか。ちょうど、ティファニアを助けに行った道を空から辿ることになるわけだな」
「けど、それじゃ虚無を狙ってるジョゼフ王の手の中に飛び込んでいくことになるわよ。あそこの貴族は無能王に尻尾を
振るか、恨んでるかのふたつでまとまりがないけれど、ジョゼフがどんな手を打ってくるか想像もつかないわ」
 ひょっとしたらいきなりガリア全軍でトリステインに侵攻してくるかもしれない。それならば、ゲルマニアからのほうが
まだいいのではないかとルイズは言った。
 一同に、決断をしかねる重い空気が流れた。ゲルマニアかガリアか、それはいうなればアルブレヒト三世かジョゼフか
どちらかを選ぶということになる。この場合、アルブレヒト三世はある程度常識の範囲内で思考が読めるが、ジョゼフに
いたってはこれまでの経緯からして、どんな反応を見せてくるか、ルイズの言うとおりまったく予測がつかないのが問題だった。
 それに、ジョゼフには方法はまだ不明だが怪獣を操る手段がある。軍艦なら楽々振り切ることはできるが、たとえば
テロチルスやバードンのようなやつに襲われたら逃げ切れない。
 だが悩んでいる時間はない。全体の最高責任者として、コルベールは決断した。
「ここはいちかばちかの賭けになるが、ガリア経由のルートを選択しようと私は思う」
「理由は? ミスタ・コルベール」
「うむ、最大の理由はやはりガリアは国内の統一が不安定なことが理由にあげられる。本艦が領空を通過したら、国内の
不平派がその不手際を理由にジョゼフを弾劾しはじめるかもしれん。ジョゼフ王がいくら暴君的な前歴を持つといえど、中と
戦いながら戦争をすることは不可能だ」
「けど、下手をすれば外敵を接着剤にしてジョゼフ派と不平派が手を組む可能性もあるわよ」
「いや、それはまずない。無能王という称号がまかり通っていることからも、ジョゼフ王に本気で忠誠を尽くす臣下は
ごくごく少数、あとは利権目当てのごますりだろう。そんなやつらが攻め滅ぼしたところで、たいして取る土地もないような
トリステイン攻略など乗り気になるわけがない。不平派にしたって、トリステインに続いて確実にアルビオンと交戦に
なることはわかるから、ガリアは疲弊しきってしまうことくらいはわかるはずだ」
「なるほど……」
 たぶんに希望的観測が混じっているだろうが、分析はある程度的を射ていた。組織が人を動かすのに基本となるのは、
まず利益であり次に恐怖が来る。ジョゼフがどう言いくるめたところで、トリステインにガリアが攻め込んでも、損害だけ
大きくて得るものは少ない。第一、疲弊したところへ漁夫の利を狙ってゲルマニアが侵攻してくるのは明らかだ。
 ガリア王国は敵となりがたい、問題なのはジョゼフ個人……ならば、どうせリスクを背負わねばならないのだし、
決断は早いほうがいい。コルベールは艦橋に通じる伝声管に向かって、決定を知らせた。
「レイナールくん! 進路を東南に向けてくれ! 本艦はこれより、ガリア王国を経由してサハラへと向かう!」
「アイ・サー! 面舵いっぱぁーい! ようそろぉ!」
 艦首を東南へ、進路をガリア王国へと向けて東方号は運命の舵を切った。
 これが吉と出るか凶と出るかは誰にもわからないが、決断しなくてはなにもはじまらない。
 ガリア国境まではおよそ二時間、それまで各員休息をとっておけと解散となり、一同は会議室から退室していく。
 けれど、才人が退出しようとしたところで、ティファニアにそでを掴んで止められた。
「あ、あのサイトさん……ちょっと、いいですか?」
「なんだい? おれにできることだったら、どんと言ってくれよ」
 不安げなティファニアの表情に、才人はできるだけ明るさを心がけて答えた。とはいえ、ティファニアの言いたい事は
おおよそ想像がついている。そして才人の想像通り、ティファニアの口から苦しげな声が漏れ出した。
「わたし、怖いんです……確かにわたし、母の故郷の国に行ってみたいと思ってましたが、ずっと森の中でしか暮らして
こなかったわたしが、いきなりハルケギニアの代表だなんて……それに、ハーフエルフはエルフのあいだでも
嫌われていると聞きました。だから……」
 覚悟はしていたつもりだったが、いざそのときになると一気に怖くなってしまったとティファニアは心中を吐露した。
 無理もない、なんといってもティファニアはまだ十七歳そこそこの少女なのだ。ましてルイズのように貴族として
教育を受けてきたわけでも、死線をくぐってきたわけでもない。それが世界の運命すら左右する交渉の、最重要人物の
ひとりと位置されているのだから、不安にならないほうがおかしい。
「気にするなよテファ、もともとこの旅自体が苦し紛れのぶっつけ本番なんだ。勝算なんてないし、計算なんて最初から
されてない。ただ、世界を救うのにほかにいい方法が浮かばなかったから、みんなで体当たりしようってんだ……
だからさ、うまくいかなくてもテファの責任なんかじゃない。その後のことはおれたちでなんとかするから、テファは
観光のつもりでエルフの国を見て回ってればいいよ」
「でも、わたし人と話すの苦手だし……わたしのせいで、エルフとの交渉が失敗しちゃったら」
「問題ねえよ、ケンカをやめて友達になろうって言いに来られて、グダグダダラダラくっちゃべってるほうが腹が立つさ。
でもそうだな、テファにぜひやってもらいたい必殺技がひとつあるぜ」
「えっ! な、なんなんですかそれは?」
 興味津々とばかりにティファニアは才人に詰め寄った。そのおかげで、才人からは洋服に収まりきれていない胸元の
谷間が嫌でも眼に入ってきてしまって、脳内麻薬の分泌がやばいことになりかけた。が、才人はルイズ相手では一生涯
見ることの出来ないであろうありがたい巨峰から理性を総動員して眼を逸らし、ティファニアに向けてにこりと笑いかけた。
「なにも考えずに、思いっきり笑いかけてあげればいいよ。テファほどの美少女ににっこりやられたら、たいていの野郎は
ころっといっちゃうって」
「そ、そんな、サイトったら、もうっ! あ、でも相手が女の人だったらどうすればいいのかな?」
「そんときは、ルイズやみんなにやったみたいに体当たりでどーんとぶつかってけばいいのさ。心配すんな、頭の固い
バカ野郎がいたとしても、おれがきっちり守ってやるからさ」
「うん! ありがとっ!」
 才人の自信に満ちたはげましに、ティファニアはほんのりとほおを染めて答えた。
 なんとなくだが、胸のつかえがおりたような気がする。まだ見ぬ母の故郷の国……そこになにが待っているとしても、
自分には森の中にいた頃にはいなかったすばらしい友達がいるのだから。
 
 雲を切り裂き、鳥を追い抜いて東方号はひた走る。
 やがて見慣れたトリステインの景色から、ガリア王国の風景に眼下は変わっていった。
「コルベール船長! 今、国境を越えました」
「ようし、これからは砂漠に入るまで二十四時間の警戒態勢を続ける。皆、つらいだろうががんばってくれよ!」
 ガリア側の発見を少しでも遅らせるためと、人々を驚かせないように東方号は山地や未開の森林地帯などの上空を選んで飛行した。
 その間、才人やギーシュたちは寒風吹きすさぶ指揮所や後部艦橋に立って、どこから敵襲があってもいいように見張り続けた。
 進路を何度も変えるために、ガリア横断には一日かかる。アーハンブラ到着は、明日の昼前後。
 日が沈んで夜になり、灯火管制をしながら東方号は東進する。幸い、ガリア空軍の姿どころか、竜騎士一騎も見えることはなかった。
「案外このまま、見つからずにいけるんじゃないか? ガリアの防空もけっこうザルじゃないかい」
 ギーシュやギムリが平穏な船旅に、楽観的な希望を語り合う。
 だが、ジョゼフはそんなに甘くなかった。夜が明けて、アーハンブラまであと一時間という、以前の旅で野営をした森の上空まで
到達したときのことである。見張りのギーシュに熱いミルクを差し入れようと甲板を歩いていたモンモランシーの目に、後方から
飛んでくる黒い影が映ったのだ。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 12:59:40.98 ID:7qZusYOO
支援。

それにしてもウルトラさんはやいっすねww
「なに? 鳥……いえ、ドラゴン!? グリフォン!? ち、違う、大きすぎるわ! か、怪獣よぉーっ!」
 モンモランシーの叫びが、奇襲を間一髪のところで回避させた。
「全艦戦闘配備! 取り舵いっぱい、全速前進!」
 艦内すべてに警報が鳴らされ、交代して眠っていたメンバーもそれぞれの持ち場に急行した。
 コルベールは、修復した日本製の双眼鏡を覗いて、接近中の怪獣を見た。
 全長は目測で五十メイル前後、ワシのような容姿をしているが、ドラゴンのように筋骨たくましい手足を持っている。
 あんな生物はハルケギニアにはいない。間違いなく、ジョゼフの送り込んできた怪獣だ!
「一気に襲ってこないところを見ると、こちらの様子をうかがっていたのか……危なかった、黎明で皆の緊張が緩んでいる
このときに奇襲を受けたら立て直せなくなるかもしれなかった」
 コルベールは冷や汗をぬぐい、伝声管で全艦に指示を出している。そんな彼の姿を、寝ぼけ眼で艦橋に駆けつけてきた
エレオノールは、怪獣を眼前にしてこれだけ冷静に指揮をとれるとは、この男はいったい若い頃になにをしていたんだと、
いぶかしげに見ていた。
 しかし、東方号が速度を上げたのを見て怪獣はついに襲ってきた。東方号はあっという間に追いつかれ、追い抜きざまに
怪獣は目から青色の怪光線を東方号に放ってきた。
「うわあっ!」
 攻撃を受けたことによる爆発の衝撃が、船体を大きく揺さぶった。
「被害報告! どこをやられた!?」
「右舷甲板に被弾! 火災は起きていますが、損傷そのものは軽微です!」
 伝声管からあがってきた報告は、航行に支障がないことをとりあえずは示していた。
 だが、危険なことに変わりはない。現在、東方号は母体となったアイアンロックスの武装はほとんど使えない状態のままなのだ。
そのおかげで水精霊騎士隊や銃士隊の少数人数で動かすことも可能なのだが、水蒸気機関や重力制御ユニットに攻撃を
受けたら一貫の終わり、こちらの使える武装は機銃しかない。
「くそっ! この船の能力さえフルに使えていたらなあ……」
 主砲の一斉射撃を食らわせれば、怪獣を叩き落すこともできたろう。この一ヶ月、研究に研究を重ねたが、ミミー星人製の
機械の動かし方はついにわからずじまいだった。自分に、あれを解析する能力さえあったならと、コルベールは自らの非力を嘆いた。
 甲板上では、ギーシュたちが単装機銃に取り付いて撃ちまくっているが、怪獣は音速を超えて飛んでいるらしく曳光弾は
怪獣のはるか後方を虚しく流れてしまっている。
 マッハで体当たりでもされたら一巻の終わりだ。それなのに仕掛けてこないのは、こちらを警戒しているからか? いや違う、
カラスがツバメをなぶり殺しにしようとしているようなものなのだろう。
 才人とルイズは、東方号後部のゼロ戦の格納庫で顔を見合わせていた。
「仕方ねえな、ルイズやるか?」
「ええ、向こうでなにかあったときのために力は温存しておきたかったけど、やむを得ないわね」
 ウルトラマンAになって東方号を守る。後のことを考えれば、不安は残るがやむを得ない。
 怪獣は対空射撃をあざ笑いながら、大胆にも真正面から突っ込んできた。艦橋にビームを当てる気だ、危ない!
 才人とルイズはウルトラリングを輝かせ、変身しようと手を振りかざした。
 
 だが、そのときだった!
 
「シュワァッチ!」
 
 突如、天空高くから舞い降りてきた赤い流星。それは一直線に東方号に迫りつつあった飛行怪獣に急降下キックを浴びせ、
猛烈な火花を撒き散らしながら吹き飛ばした。
「なんだっ!? あっ! あれは!」
 艦橋の窓枠にしがみついてコルベールとエレオノールは叫んだ。飛行怪獣はきりもみしながら落ちていき、東方号の前には
空中に静止して怪獣を見下ろす赤い巨人が浮いていた。
 あれはセブン? いや、似ているがあのシルエットはあのときの! 才人とルイズの脳裏にアルビオンでの記憶が蘇る。
 
「ウルトラマンジャスティス!」
 
 そう、あのアルビオンでの戦いで出会った、エースら異邦人のウルトラマンとは違う、この世界のウルトラマン。
 彼が、いや彼女が助けてくれたのか。甲板に駆け上がった才人とルイズ、そして窮地を救われた東方号のクルーたちは手を振った。
 だけども、どうしてジャスティスがここに? 一瞬その疑問が才人とルイズの脳裏をよぎったが、悠長な思考をできたのは
そこまでであった。撃墜したと思った怪獣が、急上昇して戻ってきたのだ。
「シュゥワッ!」
 羽根の生えたロケットのように突進してきた怪獣を、ジャスティスは飛行状態に入って回避した。
 しかし怪獣も、自分の羽は伊達じゃないと言わんばかりに驚くほど早く旋回して再突入してくる。もはや完全に標的は
ジャスティスに変わっている。自らの狩りの邪魔をした相手を、許すつもりはないようだ。
 壮烈な空中戦がスタートした。超高速飛行で迫る怪獣に対して、ウルトラマンジャスティスも飛行速度はマッハ十三を誇る。
東方号を中心としての、まさに目にも止まらぬ戦いは、動体視力の低い者には理解することさえ許されない。
 だが、一見互角の勝負に見えた両者の戦いにおいて、ジャスティスは苦戦を強いられていた。
 怪獣の突進をかわし、その背後に向けて破壊光弾ジャスティススマッシュを放つが、怪獣はゆうゆうと避けて目からの
光線で逆襲をかけてくる。
〔ぬぅ、やはり機動力では向こうの方が一枚上手か〕
 怪獣には翼があり、ジャスティスにはなかった。速度が同じならば、次に空中戦の優位を決めるのはいかに小回りが
利くかということだ。才人が愛用するゼロ戦は、かつて圧倒的な身軽さを武器にして太平洋の空の覇者となった。
 姿勢移動に時間がかかるジャスティスに対して、怪獣は無駄のない動きで攻撃と防御を繰り返している。
 怪獣の目からの光線がジャスティスを襲い、ジャスティスは金色に輝くジャスティスバリアでこれをしのぐ。
 だがその一瞬の隙を怪獣は見逃さなかった。怪獣の口から放たれた光輪がジャスティスの体を拘束してしまった。
「ヌッ! フォォォッ!」
「まずい! あれじゃ戦えない」
 体を縛られた状態では、いかなジャスティスとて戦いようがない。怪獣はそれで調子に乗ったのか、猛然と体当たり
攻撃を連続してかけてくる。ジャスティスは避けるだけで精一杯だ。
 危うし! ウルトラマンジャスティス。このままではやられてしまうと、東方号のクルーたちは震えながら見守る。そして
ティファニアは大恩あるジャスティスのために、思わず祈っていた。
「神さまっ!」
 エルフの神か人間の神か、どちらでもいいから助けて欲しい。怪獣は避け続けて疲労したジャスティスに向けて
一直線に突進してくる。まるで、翼の生えた隕石だ。
 しかし、そのときであった。錯覚か? 怪獣の動きを目で追っていた才人たちは、それまで驀進というにふさわしい飛行を
続けていた怪獣のスピードが、急に鈍ったように思えたのだ。
〔いまだっ!〕
 緩急のあいまでできた隙を見逃さず、ジャスティスは体をひねって怪獣の突進をかわした。そして、渾身の力で体を
縛っている光のリングを引きちぎった。
「デュオォォッ!」
 光輪はバラバラになって砕け散り、ジャスティスの身が自由になる。
 今、怪獣はジャスティスに対して背中を向けている。急旋回してくる気配はまだない。
 チャンスは今だ! ジャスティスはエネルギーを眼前に集中し、一気に前方へ向かって押し出した!
 
『ビクトリューム光線!』
 
 金色の光線は怪獣の背中に命中し、次の瞬間に怪獣は大爆発を起こして吹き飛んだ。
「やったぜ!」
 才人やギーシュたちの内から歓声があがった。怪獣はわずかな残骸と、羽くずを残して風の中に消えていく。
 ジャスティスは東の空を指差し、さあゆけと言っていた。
 ありがとう、ウルトラマン……だけど、どうしてあのとき怪獣の動きが突然鈍ったんだろうか?
 いぶかしげに思われるその答えは、戦場を離れた森の中にあった。
 倒れて消滅していく茶色い肌をした三人の怪人と、腕を十字に組んだ青いウルトラマン。
「行って、存分に働いてこい。エース、こちらのことは心配するな」
 等身大のウルトラマンヒカリは、東の空に向かってそうつぶやいた。あの怪獣を操っていた三人の怪人を、ヒカリが
撃破したために、怪獣はコントロールを失って弱体化したのであった。
 
 一方、戦いの様子を遠見の鏡で見守っていたジョゼフは、シェフィールドとともに薄笑いを浮かべて朝食をとっていた。
「やれやれ、チャリジャの置き土産から作ったクローンどもめ、存外口ほどにもありませんでしたわね。あんな船一隻
落とせないとはだらしない」
「そうでもないぞ、あの程度の障害を取り除けないような者では、とうていエルフ相手に太刀打ちはかなうまい。それに、
デザートの時間までのよい見世物にはなった。おかげで、今朝は久々にうまい食事をとれたわ。余は十分に満足だ」
「ジョゼフさまがお喜びならば、わたくしはそれで満足です。しかし、連中をこのまま行かせてよろしいのですか?」
「かまわぬ。六千年に及んだエルフと人間の禍根を、本気で断ち切れると思っているやつらだぞ。必死になって止める
必要がどこにある? 成功しても失敗しても、実におもしろそうなことになるとは思わんか? はっはっはっは!」
「そうですわね。むしろ、ここで打ち落とされていたほうが、彼らにとっては幸せだったかもしれませんわ。うふふふふ」
 ワイングラスを傾けて、楽しげに笑うジョゼフと、彼の横顔をうっとりと見つめるシェフィールド。暇つぶしにぶつけた怪獣の
代わりなど、まだまだたくさんいる。次にどんな楽しみを見つけようかと、ジョゼフの興味はすでに東方号から移っていた。
 
 東へ、東へ……二人のウルトラマンに見送られて、東方号はひた走る。
「行くがいい、ティファニア……その先にどんな苦難が待っていたとしても、いずれは通らなければならない道なのだ」
「平賀才人、君が真のGUYS隊員にふさわしいかどうか、この旅で試されることになる。気を抜くなよ」
 ジャスティスとヒカリ、二人のウルトラマンはそれぞれ次世代を担う若者たちに期待をかけて見送った。
 
 エルフの国、そこに何が待っているにしても、平穏な道はありえない。
 そしてついに、東方号は人間の領域の最後を見下ろす空に到達した。
「砂漠だーっ! アーハンブラが見えたぞーっ!」
 ここから先は人間を寄せ付けぬ謎の世界。東方号の旅は、いよいよ本番を迎える。
 
 
 続く
153ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2012/03/04(日) 13:06:06.36 ID:8wsdfkMT
今週は以上です。>>148の方、支援ありがとうございました。
新章突入ということで、今回は総集編みたいな感じも込めてサハラ突入まで一気にいきました。
東方号発進、テーマソングはアニソンの帝王のあの歌で。でも、ウルトラシリーズにも宇宙戦艦ウルトリアってのが登場してますので、
できればそちらのイメージで見てもらいたいです。

ベアトリスたちはしばらくお休みです。彼女たちは連れて行こうか悩みましたが、やはりこれからの回の主役はティファニアですので。
でも、名前のあるモブ程度の枠から作者の殺害予定までも振り切って生存をゲットした彼女たちには、いずれまとめて再登場を
させてみようかと思います。

では、次回はエルフたちとの接触です。
154名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 15:19:04.32 ID:c3n/M4Yn
ウルトラ乙

東方は赤く燃えている
155名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 15:59:05.62 ID:Sh04IPY9
今週も乙でぃす!
あの歌っていうと、「期待の〜人ぉが〜俺たーちならーぁばー♪」ですかw

>>138
若本? なにをいっているのだきみは
156名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 18:10:44.16 ID:bK62fJv/
157一尉:2012/03/04(日) 20:58:52.90 ID:E95xdtyy
上げ
158名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/04(日) 21:05:02.58 ID:gsbX4w09
ウルトラの人乙っす。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 00:01:22.09 ID:Ff6FCv7n
160名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 10:05:58.17 ID:LJMdp56q
ルイズがロマサガ2の最終皇帝女を召喚するSSはまだかにゃー
161名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 10:09:16.85 ID:3JrFFNcH
ルイズが暁美ほむらを召喚するSSまだかにゃー
162名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 12:24:38.75 ID:4m6rMpcL
>>160
エタってるのならあるよ

俺もその題材で書こうと思ったことがあるけど、皇帝陛下強すぎてつまらなくなるんだよね〜
163 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2012/03/05(月) 12:46:38.11 ID:bosUwP3b
サイヤの人そろそろ来て?ね?
164名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 12:48:17.91 ID:tdgbIr5s
RPGの個性が殆ど無いキャラはよっぽどバランス感覚が良くないと最強オリキャラ化する痛い展開になる問題が
165名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 13:04:23.36 ID:E9NfQysN
パワポケの裏サクセスの主人公召喚とか何度か考えたけど上手くいかなくて諦めた。
戦闘能力的なバランスはまだ大丈夫そうなんだけどキャラが難しい印象
166名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 13:29:00.90 ID:cLaW8a6D
性格がぼやけたキャラは
あんまり喋らないで心の中で語るキリコ・キュービィー方式とかがいいんじゃね?
167名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 14:12:39.21 ID:UMp1WgNg
鳴海孝之召喚か
168名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 14:56:53.28 ID:wNpvf0hi
どのくらい期間空いたら未完のまま終了なのですか?
169名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 15:07:12.25 ID:WvnGqk1Q
俺こないだ一年ぶりにss投稿してきた
170名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 15:20:57.89 ID:nabimS8U
>>166
ジャン相手に心の中で饒舌な美貌のサービス叔父様のような方か……



ん? ゼロ魔にも『ジャン』がいるな……
171名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 15:27:26.09 ID:BBEwM4Lp
ジャン・コルベール
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド
たしかメンヌヴィル小隊にいたジャン
172名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 15:58:47.49 ID:pXtBa6Cs
銀魂から
寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情
裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこう
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸
を召喚
名前長っ!
173名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 16:29:08.30 ID:1P5JJfH/
ルイズ「五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従えし、『ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ』な使い魔を……」

キュルケ「なにその呪文……」
174名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 17:29:25.45 ID:GYy/KRwn
使い魔の名前はもょもと、金はあるけど装備は一切無し(つまり素っ裸)だったか
175名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 17:46:09.03 ID:AO5GrFJS
プーチンが召喚されたどうなるんかなぁ
176名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 18:05:38.72 ID:WvnGqk1Q
クリフトを召喚したらワルキューレでもゴーレム相手でもひたすらザラキかな
177名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 18:19:57.95 ID:JJBvmjTF
ワルキューレでもゴーレム相手でもひたすら更木……
178名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 19:38:58.19 ID:I8pizWYP
更木剣八を召喚したら手がつけられんな
179名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 19:53:08.53 ID:xaK2hpeN
「剣ちゃん、楽しくなさそう…」
「隊長とまともにやりあえる奴が居ないですからね」
180名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 20:35:23.00 ID:IufMkRdq
剣八程度ならエクスプロージョンで即死だろうな
ド素人のルイズはともかくジョゼフには加速もあるし勝てない
181名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 20:38:30.42 ID:iBf8zkXz
薩摩剣八郎が外側ごと召喚
なぜか実際に放射能火炎を吐けるように
182名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 21:51:16.26 ID:BmkxUp4N
>>180
ジョゼフはナイフで刺してきた腕をひっ捕まえてカウンターだろ
183一尉:2012/03/05(月) 21:51:24.67 ID:lNHvzrKv
イージス艦「みらい」の搭載の「海鳥」を召喚にするその操作を教える為に平賀サイトを
教える佐竹一尉です。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 22:45:21.95 ID:n1sEzE1w
ロマサガ3クロス意外と少ないな
カーソン姉妹、ユリアン、ハリード、少年あたり合いそうな気がするけど
185 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2012/03/05(月) 23:53:47.26 ID:bosUwP3b
どういう流れだよ
186名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 11:45:37.87 ID:1455aeQ9
破壊神を破壊した男とか相性よさそうだな
187名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 12:24:00.20 ID:Td5bfjBE
188名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 12:54:08.66 ID:vVk8a9kB
>>186 そのフレーズで何故かジェネシックガオガイガーが頭に浮かんだ何でだろ?w
189名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:19:00.91 ID:nbjx3v56
>>186 ローレシアの王子はまずい・・・
素手だけで無双し始めるぞ・・・
190名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:19:26.21 ID:bII+Iokm
>186
七万人がことごとく打ち滅ぼされて潰走する姿が目に浮かぶようだ。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:29:38.21 ID:TIQ67Xs2
ロシアの大統領はまずい・・・
素手だけで無双し始めるぞ・・・


に見えた
192名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:42:03.22 ID:A4Js1tUD
メタルウルフな大統領の出番か
193名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:49:33.64 ID:Hwqeq5VF
それは流石に病院レベル
194名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 13:59:13.75 ID:rebLFx53
アニメでリーヴスラシルの能力開陳来たかー
原作で能力違うとかは流石に無いよね?

ノボル先生頑張ってくれー
195名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 15:47:14.72 ID:5g1rhaRg
>>180
周りの奴らみんな瞬間移動に近い様な技使えるんだから加速くらい屁でもないだろ
剣八の垂れ流してるだけの霊圧でも某一方さんの能力劣化版みたいなもんだしゼロ魔世界程度の攻撃じゃ効果無いだろうし
196名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:01:24.88 ID:yQ7aEuYF
>>195
早く動くだけと虚無の加速を同列に語っちゃだめだろ
オサレシュンポじゃ思考速度までは上がらないぞ
反射神経だけで頭使ってる相手に勝てるとは思わないことだ
あとエクスプロージョンは防御無視消滅魔法なんで剣八でも一方でも問題なく即死です
197名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:02:44.57 ID:+fGKBinY
>>192-193
小ネタにゼロの大統領シリーズがあるんだが
198名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:04:15.61 ID:WqZ1M2ec
剣八で問題ありそうなら、新八を呼べばいいじゃない

周りに居るのが超一流だらけで目立ってないけど
新ちゃんは、一流の剣士だし
199名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:11:42.36 ID:vuab+SW6
任侠伝説な方の王子達と聞いて
「もうすぐアレ覚えるからっ」
200名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:35:51.51 ID:nbjx3v56
7万相手に一騎駆けをする前田慶次を思いついてしまった・・・
201名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 16:43:08.15 ID:8jEC0i89
焼き入れしたヨルムンガンドの装甲に効かなかった時点でエクスプロージョンは防御無視じゃないだろ。
あの装甲はタイガー戦車砲で撃ち抜けてるんだから。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 17:05:34.61 ID:7v4f2ttY
>>198

吸い込まれたとして…

新八「…あれ?視界がぼやけてるけどなんとも無いや」
銀時「新八が鏡に吸い込まれて消えちまったー!!」
神楽「おいメガネどこ行ったネー?レンズ買い換えてやるからでてこいヨー」
新八「ちょっとぉぉぉぉっ!!僕ここにいるんすけどぉぉぉっ!?」

ルイズ「召喚したのはいいけどメガネが落ちてただけだった」

こんな結果しか見えん
203名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 17:36:47.64 ID:JEQuWxdr
新八だとヒロインはテファか、声的に

204名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 17:49:40.30 ID:SDAJImrJ
>>202
マダオが召喚された奴が有ったが大体そんな感じだったなw

>>203
よく考えたらルイズは神楽と同じ声か…
205名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 17:51:55.88 ID:nbjx3v56
>>203 パンデモニウムさんの事かw
206名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 18:26:40.98 ID:BOUe2tAS
コノスレの影響でアサシンクリードIIとデュープリズム買っちまったじゃネーかバカヤロー
責任取れこのヤロー
207名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 18:33:10.20 ID:qo1BHxC8
デュープリズム俺も買ったー
奥行き把握しづれー
208名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 18:40:29.95 ID:Dx+XSlcq
使い魔の印が股間に浮き出たり、アニエスがドSでストーカーで悪食なキャラになってたりするのか

>>207
俺もディープリズム探したが売り切れだった
209名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 18:50:41.63 ID:OKBTRvn8
>>207
そんなあなたにアーカイブス!
210名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 19:01:18.83 ID:NVrxw7kr
何故か、あの人とギース様のイメージがダブってる俺w
211名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 19:02:25.35 ID:NVrxw7kr
安価抜けてた orz
>>191
212名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 19:20:32.24 ID:BOUe2tAS
俺はPSストアのアーカイブスで買ったな
LR2がアナログスティックになってる正ですんごくやりづらそうな気がしてきたよまだちょっとしかやってないけどね
213一尉:2012/03/06(火) 22:29:07.57 ID:BMcgjRhG
パッキーを召喚にしたら頭突きにしまくりだよ。
214ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/03/06(火) 23:00:30.16 ID:NcgChl2R
こんばんは、10分後くらいに第3話投下します。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/06(火) 23:02:50.19 ID:gKO86jp+
デュープリズム初回版持ってたから久々にプレイ
酔った・・・よくこんなのやれてたなー俺

支援
216ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:10:23.71 ID:NcgChl2R
 ピンッと張り詰めた糸のように――意識の水面を揺らすことなく心を澄ます。そこにはひとしずくの波紋もいらない。
極限まで高められた集中力は、自覚することなく・・・・・・感覚全てであらゆる情報を余さず捉える。
一分の隙もなく、最適解を導き出す。行動をする上で最も理想的な形、意識する無意識――無意識の意識。
言うは易し行うは難し。されど追い求め続ける無想の極地。あらゆることに通ずるコンセントレーション。
有意識と無意識の狭間でうつろいながらも、シャルロットは握り、抜き、起こし、引いた。

 破裂音と同時に掛かる反動を受け止め流す。
照準をつけて撃鉄を起こして引鉄を引く行為をさらに五度繰り返す。
遠間にある土柱に向かって音と共に弾痕を刻んでいく。

 "コルトシングルアクションアーミー"。通称"ピースメーカー"。
ワイルドバンチの二人が、元の世界の逃亡中に奪った品物の一つであるその銃を一挺とガンベルトを貰い受けた。
伯父のコネで持っていた火打ち式の銃とはまるで比べ物にならないシロモノ。
威力も、精度も、連射性能も、射程距離も、安全性も、取り回しやすさも、全てにおいて桁が違っていた。

 シャルロットの手の中にある"コルトSAA"の"フロンティア"モデル。
ブッチやキッドも使っている、オーソドックスな"弾薬式"のリボルバー。
この"弾薬"というものを実際に見て・・・・・・使って、シャルロットは感動を覚えた。
同時に漂流物の持つ知識や技術が、心底恐るべきものなのだとも実感する。

 弾丸と発射薬と雷管と薬莢を一体化させた、自己完結型のカートリッジ。
金属の筒に火薬を入れ、弾丸をセットし、底にある起爆剤を叩くことで爆発させる。
ハルケギニアでも鉛弾と火薬を紙で包んだペーパーカートリッジは存在する。
しかしそこからの発想と進化が凄まじい。自己完結型となったことで銃そのものが様変わりした。
紙の弾薬包を利用する場合、機構や安全性の問題上どうしても信用に欠けていたことが可能となったのだ。
即ち――予め複数の弾薬を込めて安全に置き、自由に撃つことを可能にした『連射式』の銃。

 弾の方を改良したことにより銃そのものが全く別の進化が成ったという、まさに目から鱗が落ちる思い。
ハルケギニアで普及している新式のマスケット銃が、化石にも思えるほどである。

 さらにキッドが持つウィンチェスターライフルは、レバーを倒して戻すだけで排莢と装填を行える。
コルトSAAと弾薬を共用可能で、実用性を追求した機能美を感じられる。
またブッチがもう一挺使っているパーカッション式リボルバーを見ても、銃そのもののを改良する発想と技術も驚嘆すべきもの。

 同時に何故これほどのものが普及しないのか――謎であるとも感じる。
数ある漂流物の中には漂流者も含め、知識や技術を持つ者は昔から存在していた。
別世界の単純に圧倒的な技術力の高さ、そしてハルケギニアの冶金技術の低さなどもあるだろう。
されどどうあっても実現出来ないかと言えば・・・・・・否である。
時間は掛かってもしっかりと工程を確立させれば、世界の違いこそあれど同じ人間である。
いつかは完成形を見られるだろう。しかし現状そうはなっていない。

 考えられるとすれば、魔法の存在とそれを扱うメイジの立場・・・・・・なのか。
弾薬は確かに破格の技術、実現させれば魔法が飛び交う戦場にも変化は顕われる筈だ。
精度が高く連発する銃が相手では、これまでの先込め式の銃や弓・弩と違って、一瞬たりとも気を抜けない。
さらにその技術のスケールを大きくして、大砲などに流用したのであれば、もはや魔法では防げないレベルになるだろう。
だからこそ自分達の地位を揺るがし崩しかねない――絶対的な力量差を埋めかねない弾薬と銃の存在を認められないのだ。
平民が――貴族を――脅かすなどあってはならないということが、技術革新に蓋をしているのだろう。

 シャルロットはさらに深く考える。異世界の工芸品を無差別に吸収した場合の弊害――。
"技術と技術の間隔に疑念を持てなくなる。技術と技術の間には大事な関連がある"。
"連鎖・反発・蓄積・・・・・・見比べることで新たな発見もある"。
"異世界から次々と完成品だけを手渡され、その間に蓄積されるべきものを、十分に考察出来なくなる"。
つまりは『異世界文明』にその進化と発展を、おんぶにだっこしてしまうことになりかねない。
便利な物だからと、ひたすら取り入れ続けること。その道具や技術を軽い気持ちで行使すること。
 
217ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:10:58.63 ID:NcgChl2R
 それはいつか――"持て余すナニカ"がもたらされた時、正しくそれを扱うことが出来るのだろうか。
異世界と切り離された時に、"後戻りの出来ない間違い"を犯してしまうことになりはしないだろうか。
"身に余る道具や技術は――悲劇を生む"ことにもなりかねない危険を孕んでいるのだ――。

(――・・・・・・なんて、私が考えていても仕方ないけど)
自分はたかが一生徒に過ぎない。いくら自分が考えを巡らせても詮無いことだ。
それでも世界は回っていくし、漂流物は流れてくるのだろう。

 シリンダー内の空薬莢はそのままに、まだ熱を帯びたままの銃を手の内でクルクルと回して弄ぶ。
回転を維持させたまま、腰に着けた皮製のホルスターへとしまう。さらに即座に抜いて、構えて、戻すを繰り返す。
放り投げたり、回したり、何度も素早く出し入れしたりと・・・・・・。
銃――武器――をあたかも手足の延長にするかのように、馴染ませるように遊ぶ。
そうやって・・・・・・待つ。


「やっほ〜」
声のした方向――空――を見上げるまでもない、すぐにその人物は使い魔から降り立った。
「おはよう」
「おっはよぅ!」
朝日のような笑顔でジョゼットは挨拶を返す。次いで発せられる"竜の言葉"。
「おはようなのね」
ジョゼットの使い魔"風韻竜"イルククゥ。本来竜は言葉を喋ることは出来ない。
しかし目の前の竜はそれはとても珍しい種族であった。

 "韻竜"という種はとりわけ知能が高く、言葉を介し、話し、そして『先住魔法』をも使うことが出来る。
メイジが使い魔として召喚可能な存在では最高峰であろう。
その一点だけでも、ジョゼットの実力は凄まじいものなのがわかる。

「またいつものなのね」
使い魔になって日の浅いイルククゥも流石に慣れてきた。日課となっている二人のこと。
ジョゼットは杖を大仰に振り回して準備運動を行う。父から貰った木製の長杖。
通常――杖はコンパクトで携帯性に優れたものが好まれ、それが主流である。
軍人であればシャルロットが持つように、杖を仕込んで剣に加工したものを使う場合がある。
しかしジョゼットはメイジの中でも珍しく、自分の背丈よりも少し長いその杖を気に入っていた。

 シャルロットは木剣を取り出すと、体を不動のままに腕だけで何度か振る。
剣先を丸くし、本来扱うサーベルと同じ重量・重心になるよう鉄芯を入れて調節された鍛錬用の特注品。
それでもやはり僅かにだが勝手は違う。よって都度感触を確かめる。
ウォーミングアップを終えて完全に構えに入った二人を見て、イルククゥが叫ぶ。

「はじめー!!なのね」
イルククゥの開戦の合図に応じて、二人は剣と杖をぶつけ合う。
回復魔法がある為に、多少無理をしても問題ない。
徐々にギアを上げて本気になっていく似たもの姉妹を、風韻竜は外野から応援する。

「いけー!そこ!あぶないのね!!」
シャルロット、ジョゼット、共に集中する二人の耳には雑音などは聞こえない。
それでも観戦するイルククゥは声を張り上げ続けた。
今この時間は・・・・・・イルククゥにとって言葉を話せる数少ない時間、だから。

 韻竜は絶滅したとすら噂される程に希少な種族で、そういった生き物を狙う好事家な貴族もいる。
様々な生物などを掛け合わせて、合成生物たるキメラを作り出すような研究者や機関なども公ではないが存在する。
トリステイン王立魔法研究所。通称"アカデミー"でも、今でこそ非人道的実験はない――と言われている。
――ものの、一昔前ならば平気で解剖して生体を探るようなこともしていたと聞く。
まだ幼生のイルククゥを拘束、解剖ついでに尋問・拷問を加える。
さらに魔法薬で精神を廃にしてでも隠れ棲む韻竜達の所在を聞き出し、乱獲するようなことも辞さなかったかも知れない。
 
218ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:11:34.03 ID:NcgChl2R
 とにかく危険な立場であることには変わりない。知っているのも今闘っている二人だけ。
二人と自分の他に誰もいない状況でしか話せない・・・・・・お喋り好きな風韻竜。
「ああっ!!惜しいのね、もっとこう――」
イルククゥは今この場に、外の世界を堪能出来ることに喜びを感じていた。
召喚される日まで鬱屈とした制限だらけの生活だった。召喚に応じて学院に来た時は戸惑いもした。
周囲をガキに囲まれて叫んでやろうとでもした瞬間、それはジョゼットにすぐさま耳打ちされて止められた。
――危険であると。

 普段からおてんばなジョゼットだが、総じて要領が良く抜け目はない。
伊達に元ガリア王族という立場でもないし、酔狂でシャルロットの妹をやっているわけでもない。
試験が近くなれば猛勉強するし、召喚の儀が近付けば予習に予習を重ねて夢を膨らませた。
あらゆる召喚生物を調べていく内に、韻竜は普通の竜と瞳が違うことも知識として入っていた。
ゆえに取り返しがつかなくなる前に、その場ですぐに機転を利かせて耳打ちしたのだ。

 いざ契約し、話せば話すほどにジョゼットを知り、同時に実力あるメイジであることも知った。
イルククゥも将来性含めて、ジョゼットの使い魔になれたことを喜び慕った。
「イケー!!いくのねー!!」
集中力が切れてきてイルククゥの声が聞こえてくる。
毎回試合うたびに同じ事を思う。シャルロットは強い。ここずっとは本当に勝てていない。
今では杖と剣のリーチ。間合の利ですら微塵にも覆せないほど。

 わたしは決して弱くない、むしろ強い。それでもなお、姉はその五歩先には行っている。
未だに息を乱さず、冷徹な試合運びを展開"させられる"。
でもそれでいい。それでこそ追いかけ甲斐があるというものだ。

 そして何合とぶつけ合う内に、ついに握力が杖を手中に保持出来なくなった。
長杖を弾かれ、バランスを取りきれずにそのまま尻餅をつく。
「あーーーっっ!!う〜」
木剣が素早く首元まで突きつけられ、イルククゥのガッカリした声音が耳に入る。

「・・・・・・はい、いつも通りシャルロットの勝ち」
ほんの少しだけの意地。あたかも余力を残したようなトーンでそうジョゼットは言った。
「えぇ、いつもね」
シャルロットの微笑み返しを見つめる。今に見ていろ、勝ってやる。
そう思うものの、そう考えていることすら読まれてそうな気がした。双子だから以心伝心なところもある。

「んしょっと!!」
ジョゼットは勢いよく立ち上がって、埃をパンッパンッと叩いて払ってから杖を拾った。
それから二言三言、イルククゥも交えて他愛もないことを話しながら体を休めて呼吸を整える。
「ふぅ・・・・・・次いこっか」
さっきのは純粋な肉体だけの試合。今度は直接攻撃魔法等はなしで補助魔法は有りの勝負。

 シャルロットは左手でナイフを抜いて剣と短剣の二刀流になる。
ジョゼットはより前傾に長杖を構えて、姿勢を低くした。
飛行魔法の『フライ』を唱えると、風を味方に地上にいながらにして高速機動戦闘を展開させた。



「――ん、そろそろ」
昇る陽の加減を見て、シャルロットが途中で闘争を閉じる。――次の約束が待っている。
それぞれ打ち身を水魔法で治癒させて、揃ってググッと体全体で伸びをした。

「それじゃあ・・・・・・乗ってく?」
「是非乗るのね!!」
イルククゥはまだ幼生ながらも竜だけあって大きく、全長にして6メイルはある。
人一人余計にどころか、数人乗せても問題なく飛べるくらいであった。
「ううん、また今度」
「そ、綺麗なのにな〜」
今くらいの時間だから堪能出来る絶景がある。だからこそシャルロットは時間を忘れそうで断った。
それにそろそろまとめておきたい考えがあった。――ワイルドバンチの二人に対して。
219ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:12:11.74 ID:NcgChl2R
 
 ジョゼットは浮遊する呪文『レビテーション』を唱えてイルククゥに乗る。
「それじゃ、キッドさんとブッチさんによろしく!!」
「またなのね」
舞うように飛び上がる妹と使い魔を見上げる。唯一無二の双子の妹。大事な大事な双子の妹。

 今でこそ滅びたガリア、王家の紋章は"交差する二本の杖"。
それはかつて・・・・・・千年単位で数える途方もない昔、王位を巡って骨肉の争いをした双子の兄弟。
最終的に共に死んだとされる双子の兄弟。そんな二人を慰める為のものであったという。
同時にガリア王家にとって、双生児というものは忌むべきものとして扱われていたらしい。
長い長い歴史の中で、それ以降ガリアに双子の記録は存在しなかったそうな――。
はたしてそれは単純に生まれなかったのか、それとも・・・・・・"ないもの"とされてきたのか。

 仮に・・・・・・自分達姉妹が王家のままであったらと思うとぞっとする話だ。
もしかしたら片方が亡き者とされていたのかも知れないのだから――。
離れ離れになっていたかも知れないのだから。

「さてと」
あっという間に空の彼方へと消えるジョゼットとイルククゥを見届けてシャルロットは歩き出す。
シャルロットはまたコルトSAAを抜くと、手遊びをしつつ考えながら寮塔の自室へと戻った。



 コルトSAAのローディングゲートを開けて、一発ずつ空薬莢を排出して弾薬を装填していく。
キッドとブッチが召喚されて一週間。
契約したあの日、コルベールが戻ってきてルーンのことが判明した。
キッドの額に刻まれた『ミョズニトニルン』。ブッチの左手に刻まれた『ガンダールヴ』。

 二人にとっては単に便利な程度のもの。されどハルケギニアの人間にとっては特別な意味を持つ。
メイジの始祖たる伝説のブリミルが従えた使い魔が刻んだとされる四つのルーン。
――理由はわからない。シャルロットにせよルイズにせよ、そこまでご大層なメイジではないのだ。

 その後オスマンとも話し、とりあえず学院に一時身を置くことになる。
その上でルーンのことは秘匿し、漂流者という立場としてのみ王宮に判断を仰ぐことになった。
二人は体と衣服を洗い食事を摂って眠った後、次の日には揃って熱を出して寝込んでしまった。
最初こそ感染症や、下手すると世界単位での風土病やもと思った。
が、杞憂だった。単に肉体的・精神的な疲労が、気が抜けたことで吹き出したのだろうとのこと。

 あとは保健担当の者に任せて自分達は、"一つだけ違った"普段通りの生活へと戻った。
"魔法が使えるようになった"学園生活。当たり前の――夢見た――生活。
しかしコモン・マジックは使えるものの、系統魔法は未だに覚えられなかった。

 術者に合った系統魔法を唱えると、体中を魔力がうねるような感覚があると言われている。
けれど火水風土、それぞれ"試してみた"もののそういった感覚はついぞなかった。
それでも今まで全くと言っていいほどに使えなかった魔法。
コモン・マジックだけとはいえ足掛かりが出来たのだ。昔よりは遥かにマシな状況であるし気楽である。
これまで通りに気長に諦めず、努力を継続し待つこととした。

 トレーニング着を脱ぎ、濡らしたタオルで汗や体をしっかり拭いてから制服に着替える。
改めて"弾帯"を腰に巻き、"短剣"を後ろ腰に、右腰に"銃"、左腰に"剣"、"飛ヒョウ"を挿したベルトを太股に巻く。

 常在戦場。いつかは父様のように自分も前線に出ることになるだろう。
そうでなくとも情勢不安な昨今、常に万全の備えをしておいて損はない。憂いはなくしておく。
そして今の状態で動くことに慣らしておく。あらゆる状況に備える為の装備の数々。

 はっきり言ってしまえば異様。学院内の誰であってもここまで重武装している者はいない。
それも当然。メイジともなれば杖一本があるだけで、重装備しているのと変わらない。
魔法だけで攻撃も防御も速度も、全て魔法によって補える。
メイジの実力如何によっては、私が備えている装備の"殆ど"が通用しない。
 
220ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:12:51.27 ID:NcgChl2R
 はずしていたリボンで髪を後ろでポニーテールにまとめ直し、身だしなみを整える。
赤縁眼鏡を掛けて最後にマントを羽織って鏡を見ると、くるりと一回転した。
マントと長めのスカートがフワッと軽く浮き、剣以外が目立たなくなるのを確認する。
シャルロットはあまり遅くならぬよう早足気味で部屋を出た。



 シャルロットは向かった先の塔の部屋の扉をコンコンッとノックする。
返事を待ってから部屋へと招き入れられると、キッドとブッチへと挨拶した。
「おはようございます」
「おはよう」
「お〜っす」
二人の為に用意された一室、ベッドの他にも生活用具一式が揃った部屋。
シャルロットは用意されている椅子へと座る。テーブルには本が数冊積まれていた。
それは言語のハウツー本。本来漂流者は、ハルケギニアとは一線を画す言語体系を持っている。
あれから詳しく調べてわかったことなのだが、漂流者達も出身や時代すら違う場合が多々あるのだ。

 ゆえに漂流者同士ですら、言語は基本的に通じない。
キッドとブッチのように、同じ国の同じ時代の人間が珍しいほどに。
当然ハルケギニア――旧ガリア公用語も通じない筈なのだが・・・・・・。
召喚されたおかげなのか、何故だか言葉は最初から通じていた――ものの、文字は読めなかった。

 最初こそ言葉が通じるならと二人共面倒臭がっていたが、前の世界でも色々苦労したとかなんとか。
原因が不明だからこそ万が一を考えた時に、最悪読み書きくらいは出来ないと不味いと思ったそうな。
結果、朝と晩の暇な時間に可能な限りせめて最低限をと教えることになった。

 シャルロットとしても、名家のルイズほど金銭的な面で援助が出来ない。
だからこういった部分でサポート出来るのは望むところであった。

 ――二人の環境に関して補足すれば、つつがなく使い魔として認められた。
召喚と共にやって来た結構な量の荷物も、数々の身に付けている衣服や武具も全て所有権を認められた。
他国ではともかく少なくともトリステインでは、漂流者の人権は大いに尊重されているおかげもあろう。

 通常自由意思こそ尊重されるものの、好き勝手やられても問題あるので大抵は監視などがつく。
しかし召喚された漂流者という特異性。召喚と契約そのものが持つ神聖性・不可侵性。
きちんとした生活の保障。さらにはルイズが名家で。しかもアンリエッタ王女殿下と幼馴染というのが大きかった。
よって諸々含んだ上でお預かりという形で認められることとなった。

「お二人は・・・・・・今後どうされるおつもりですか?」
「まだ決めてねぇな」
「意外に快適だからね」
シャルロットとしては意を決して尋ねたのだが、ブッチとキッドは軽い気持ちで答える。

 飯は美味いし、ベッドでの睡眠は気持ちが良い。女も街に出れば買える、何不自由ない暮らしだった。
ドンパチは散々っぱらやった所為でしばらくはお断りだった。
酒も煙草も少し勝手は違うもののこっちはこっちで美味い。
豪遊とまではいかずとも、当分はこんな暮らしも悪くないのは確かであった。

「・・・・・・その、こう言うのも難ですが・・・・・・強盗とかしたいとは思わないのですか?」
壁の穴強盗団"ワイルドバンチ"。
言語を教える以外にも暇があれば互いの歴史や生い立ちなどを勿論話した。
漂流物――未知の世界からやってきた者達。月が一つしかなく魔法の存在しない世界。
知識欲の旺盛なシャルロットでなくとも、好奇心をそそられるというもの。それにそれは逆も言えた。

ハリー・アロンソ・ロングボー――サンダンス・キッド。
ロバート・リロイ・パーカー――ブッチ・キャシディ。
二人にとって異世界は生活面に際しても知りたいことは多い。
元の世界ではワイルドバンチ強盗団として活動していた。異世界と犯罪者、二重の意味で住んでいた世界が違う二人。
聞こえは悪いが二人を管理する立場としては、はっきりと言っておかねばならぬこともある。
 
221ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:13:24.62 ID:NcgChl2R
「あ〜?・・・・・・まあ金に困ってるわけじゃねえから特にやるつもりはないが」
「異邦人だし、かなり勝手は違うだろうね」
ボリビアに渡ってからの苦労は、言語の違い含めて散々な労力であった。
魔法なんて存在する世界で強盗をするには、リスクも高いしあまりに認識が違い過ぎる。

「文化が違ーう、ってやつですか。なら・・・・・・いいのですが・・・・・・」
「歯切れが悪いね」
顔色を読んだキッドが聞く。シャルロットは逡巡するも腹を決めた。
まだそれほど日は経ってないが、ある程度の信頼を築けていると言えよう。
彼らは狂っている人間でもないし話も通じる。きっぱりと言ってしまってもいいだろう・・・・・・と。

「漂流者は本来厳格な監視が必要な存在です。オルテ国・・・・・・話しましたよね?
 私の祖国を滅ぼし建国したのも漂流者だと言われています。
 持っている衣服も武器も知識も技術も、代え難いものであると同時に危険視されるものなのです。
 人権こそ認められていますが動向には厳重な注意が払われます。
 最悪拘束されることもありますし、犯罪行為などもってのほかです」

 シャルロットは毅然とした口調と語気で、敢えて強めの言葉を使って濁さずにしっかり言う。
キッドとブッチも茶化さずに、真剣にそれを聞いてくれていた。
「キッドさん、ブッチさん、二人の処置もあくまで暫定的なものでしかありません。
 被召喚者であること、またトリステイン有数の貴族であるラ・ヴァリエールと深い関わりがあること。
 そのルイズと一応私が生活を保障し、手綱を握るという条件で辛うじて今の状態があるということ。
 ・・・・・・それらを忘れないで欲しいんです。つまりは強盗や殺人など犯罪行為は決して行わないで下さい」

 そうしてシャルロットは頭を下げた。
勝手に召喚しておいて、無礼な物言いに対する謝罪と・・・・・・お願いの意味を込めて。
キッドとブッチは少しだけ視線を交わす。
極貧生活で追い詰められるようなことがない限りはもうやらないだろう。
つまり漂流者であればその心配はない、何かしらの形で保護が求められるからだ。
結果として大なり小なり自由が束縛されたとしても、延々と追い続けられて死ぬよりはナンボかマシだ。
「わぁったよ」
「肝に命じておく、無茶はしないさ」

 三人で僅かに微笑み合う。と、その時であった。
ドタドタと聞こえるほどの階段を駆け上がる音。次いでノックもなしに扉が開け放たれた。
はたしてそれは息せき切って肩で呼吸をするルイズであった。
疑問符を浮かべる三人を他所にルイズは開口一番叫んだ。

「ブッチ!アンタ何が出来るの!?」



「使い魔品評会・・・・・・か。そんなのもあったっけ」
「そうよ!しかも姫さまが来るのよ!!下手なものは見せられないわ」
「・・・・・・一応聞いていいかい?」
キッドの質問にシャルロットが答える。

 要するにこの前の使い魔召喚をおこなったメイジと使い魔が、様々な催し物をするというもの。
毎年恒例のお祭り行事みたいなもので、その年召喚した者達だけがメインでやるにしては割と規模が大きい。
そこにトリステイン王家のアンリエッタ王女殿下が来られるというので、ルイズはどうしても出なくちゃならないと言うのだ。
それも観客が目を見張り、あっと驚くようなことをやりたいと考えているようである。

「お断りだな、ただでさえジロジロ見られたりヒソヒソ話されたりするってのに、さらに見世物になれってか?冗談じゃねえ」
「ま・・・・・・まぁ・・・・・・人間が召喚されること自体が異例ですしね、ましてそれが漂流者ともなれば――」
好奇の目に晒され噂されるのも無理はない。
これまで魔法が成功したことのない二人が召喚と契約を成功させ、コモン・マジックも使えるようになった。
しかも件の使い魔は幻獣の類ではなく前代未聞の人間であって、それも漂流者であるならば関心を集めるのも当然である。
 
222ゼロのドリフターズ-03:2012/03/06(火) 23:14:31.20 ID:NcgChl2R
「代わりに出ろよキッド」
「はあ?なんでだ」
「どうせ俺ら二人でセットみたいなもんだろ?バレやしねえって。お前の"ガンファイター"っぷりを見せてやれよ」
「駄目!だめダメ!!そんな姫さまを騙すようなこと出来るわけないでしょ!!」
キッドが返事をするよりも前にルイズが割り込んで止めた。
ルイズとアンリエッタは旧知の仲であり、そうでなくとも王女を相手に信義に反し、裏切るような真似が出来るはずもない。

「誰のおかげで今の暮らしが出来ると思ってるわけ?少しくらい恩に着てくれてもバチは当たらないわ!」
「それはそれで、これはこれだろうがよ。本当に高圧的で厚かましいガキンチョだな」

「ガッ!?・・・・・・ぐ・・・・・・そもそもわたし達が召喚しなきゃアンタらは揃って火竜山脈のド真ん中にでも落ちてたかも知れないのよ!
 それに多分きっと恐らく間違いなく、言葉が通じてるのは召喚のおかげじゃないの!?つまりは感謝が足りないのよ感謝が」
「おーおー言ってくれるねえ、『契約してくれー何でもするから〜』って半ベソかいてた奴がよ」

「泣いてなんかないわよ!!アンタ眼が腐ってんじゃないの!?」
「あーったく、もっとこう・・・・・・流れるような金髪でオッパイがデカく物静かで綺麗な女にでも召喚されたかったもんだ」

「はァ!?む・・・・・・胸なんて関係ないでしょ!!アンタわたしをそういう目で見てるわけ!?」
「いやそれはない」
「このっ・・・・・・ちょっとくらい肯定しなさいよ!!」

 もはや品評会のことなどどこか置き忘れ、全く関係のないところで口論し始める光景。
既に何度目になるだろうか、流石に慣れてしまった。
「私はルイズのような"しがらみ"はないので無理強いはしませんよ?」
シャルロットはキッドへとそう言った。
基本的に強制ではあるものの、適当に理由をつけて休めないこともない。
内申点には多少なりと響くだろう、しかし魔法の実地以外は最優秀な自分には何も問題はない。

「ん〜・・・・・・まぁこっちとしては別にやっても構わないよ、それくらいならね」
「ありがとうございます、"ガンファイター"と言うと、以前に見せてくれた"早撃ち"とかですか?」
銃を譲り受ける時にいくつか見せてもらった銃技の数々を思い出す。
銃の性能を含めて思わず見惚れたほどの技量。それをイメージして己も日々鍛錬してるのだ。
「そうそう。『ガンダールヴ』だっけ?あれの所為で今はブッチがやった方がもっと凄いの出来るけど――」
「・・・・・・でも・・・・・・あまり派手にはやらないほうがいいと思います。『ガンダールヴ』も『ミョズニトニルン』も特別なものです。
 万が一にも露見すると面倒なことになりかねません。・・・・・・ミョズニトニルンが使えそうなもの、あるんですけどね」

「じゃあ無難に・・・・・・クイックドロウでも――」
「いえそもそも無理なさらなくてもいいです。せめてブッチさんが承諾して――」

「シャルロット!!」
「キッド!!」
それぞれ呼ばれる声が重なる。

「あなたも」
「おまえも」
『なんとか言って』
「やって!!」
「やれ!!」

 相性ぴったりにユニゾンする二人に、シャルロットとキッドは笑い合った。
223ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/03/06(火) 23:16:07.26 ID:NcgChl2R
以上です。
いきなり「あたりー」ってエラー出て書き込めなかったり、
なんか専ブラが途中で強制終了したりちょっとビビりましたが、無事投下出来て良かった……。

ではまた次回。
224名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 00:12:36.17 ID:pWyv56II
投下乙です。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 02:02:01.99 ID:1oDsVzcj

ピースメーカーで思い出しだが棄てプリから召喚はまだないよな
226名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 04:05:52.27 ID:CcpRY5Kr
あれはあの世界の中でかっちりはまりすぎててクロスしにくそうな
しかも、設定厳密にするとあの世界の魔法はハルケじゃ使用不可能だろうし

レオとか呼んで貴族と騎士道精神引っさげてオンディーヌメインとか……
227名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 07:56:49.29 ID:RwZizTKn
一方通行さん出すなら魔法とか虚無の定義をどうするかだよね。

虚無は系統魔法よりも更に小さな粒々を制御するとか言う定義だったはずだから
その粒子のベクトルを一通さんが補足・計算できるかどうかがポイントになる。

虚無をAIM拡散力場みたいなもんに設定すれば
一通さん無双になりそうでならなかったりで丁度良さげ。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 11:26:44.48 ID:bSWPsnI3
>ピースメーカー
ウルジャンのやつ思い出した
ゲットオフスリーショットやスポットバーストショットなんて
知らなきゃ魔法にしか見えんかもな
太ったガンマンの早撃ち動画はマジすげえと思った
229名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 12:13:27.27 ID:2xQ1nwT8
>>226
サプリメントであの世界の魔法の原理=形相干渉システムへの割り込みって説明が出て
本来とは異なるけど龍機神へのアクセス許可さえ得られればノーリスクで発動可能だよ

将軍になった後のシャノンをテファに喚ばせてカスール姉妹&ゼフィリスがルイズに喚ばれても良いし
龍機神関係の何かが既に存在する事にしても良いんじゃないか?
230名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 13:24:30.42 ID:XeJxSr++
>>228
アレ半端ないよな
普通に見てるとマジで一発打っただけにしかみえないっつー
231名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 18:31:22.46 ID:GqfEPRky
>>226
ここは本編終了後のシリア・マウゼル4で一つ
性格上、ワルドの裏切り予知しても止めるのは無理っぽいから
その辺書ければ面白くはなりそうなんだが文才が無い
232名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 19:17:53.79 ID:eaJWRHRk
シエスタはデストロイヤーの子孫か
233The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 19:27:32.34 ID:G6SuwIzW
こんばんわ。
ご予約がなければ19:32頃から投下をしたいと思いますが、よろしいですか?
234The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 19:32:28.66 ID:G6SuwIzW
Secret Mission 02 <囚われし神秘の妖精>


アルビオン大陸の一地方、サウスゴータは港町ロサイスと首都ロンディニウムを繋ぐ交通の要衝とされている。
その面積はとても広く、小高い丘がいくつも続く丘陵地帯から、緑溢れる広大な森林、清らかな水源を蓄えた山脈地帯までもがこの地方に含まれている。
かつてこの土地の全域を統治していたのがアルビオン国王の弟であり、財務監督官を務めていたモード大公という人物である。
もっとも、四年前に彼が兄である国王自らの手によって投獄され、殺害されてからというものの、この土地は非常に不安定な状勢となってしまっているのだが。

その一地方の小高い丘の上に建設された中心都市が、シティオブサウスゴータである。
円形状の城壁と内面に作られた五芒星形の大通りが特徴的なアルビオン有数の大都市であり、その人口は四万を数えるとされる。
行政の運営は議会によって行われ、太守も名目上の存在とはいえ堅実な統治を行ってきた。
だが、四年前の出来事、それに合わせて現在は貴族派の反乱軍によって占領されている状況となっている。

ところが、不思議なことにこの町に住む人達はそんな反乱軍に対して拒むどころか、むしろ四年前の出来事から直轄していた王党派の統治から
解放されたことでむしろすっきりした所が多かった。
「いやあ、とうとうあの王様もくたばるのか!」
「まったく、清々するよな!」
ある酒場では王党派が明日にでも壊滅するという事実を素直に喜ぶ者がいた。
何しろ、四年前の出来事で王軍が攻めてきた際、この町にも多大な被害を出したのだから。
おまけにこれまで平和に統治してきた大公や太守がいなくなってからというものの、王党派の統治はあまりにも窮屈なものであった。
税は高くなる上、町には王軍の衛兵が闊歩し、民を監視する毎日。
もはやこの町の民達の不満と怒りが限界へと達した中、あの忌まわしき王党派が壊滅するのだ。

王党派に対する恨みもあって、この町の人々は素直にもはや過去の統治者に過ぎない王党派が滅びることを喜んでいるのである。
中には直接、王の首を跳ねてやりたかった、と息巻く者もいる始末だ。
「共和制に乾杯! ってか!?」
「ははは、違いない!」

(その連中が、王党派と大して変わらないのよね)
酒場中の人間が歓喜する中、カウンターで一人寂しく酒を口にする女がいた。
フードを深くかぶったマントを身に纏う彼女も、明日には滅びる王党派を憎んでいる。だが、それを素直に喜ぶことはできない。
何故なら、その王党派を追い詰めている反乱軍は目的の為なら一切の手段は選ばない非道な連中だから。
彼女は自分の大切なものを、そいつらに奪われているのだ。
(何も知らないと、幸せで良いわよね)
酒場中で歓喜する男達を嘲りながら、ロングビルはグラスの中の酒をあおった。
故郷で作られた酒とはいえ、何故か味気がない。
彼女は今、一人の男を待っていた。と、いっても別に逢引の約束をしている訳ではない。
自分に残された大切なものを取り返すため。彼はそれに協力してくれると言ってくれた。
奪われた物は盗り返す。かつて、土くれのフーケとして活動していた彼女ならばそれを実行していた。
だが、今回ばかりは自分一人では無理だ。
だからこそ、彼の力が必要なのだ。
いつ来てくれるかも分からないその男を、彼女はずっと待ち続けていた。
235The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 19:38:42.88 ID:G6SuwIzW
「もう一杯、お願いね」
「あまり酔い過ぎてもらっては困るのだがな」
ロングビルが店員に空のグラスを差した時、すぐ隣から男の声がした。
刃のような鋭さ、そして威厳さと共に紳士のように静かな声。
ハッと驚いたロングビルが隣を振り向くと、いつの間にか濃い紫のコートを身に纏ったオールバックの銀髪の男が立っていた。
こんな公衆の面前で堂々と大剣を背負い、腰にも剣を携えているその男は、彼女が待ち望んだ姿であった。
「あ、あなた、どうして……」
本来ならば喜ぶべきだが、同時に困惑の思いも彼女にはあった。
このスパーダという男は今、彼自身の仕事を務めている最中で自分の協力はまだできないと言ってきたはずなのに。
いくら何でも協力を申し出た翌日なんて早すぎる。
「明日の朝まで暇が取れたのでな。まあ、そんなことはどうでも良い。
もう一杯飲んでから行くか、行ってから飲むか。どちらにする?」
あまりにも唐突なスパーダの登場に呆気に取られるロングビルであったが、本人はそんなことに構わず冷静に選択を迫る。
当然、彼女が選ぶのは――。

酒場の外へと出た二人は、スパーダがここへ来るまでに乗ってきたシルフィードが待つ場所まで向かう。
町のすぐ外でシルフィードは待機させているのだ。
「しかし、こんな遅くだというのに騒がしいな」
既に深夜過ぎである現在、本来ならばどの酒場も閉まっているはずだというのに
この町の全ての酒場は未だ開店状態であり、客達は馬鹿騒ぎをしていた。
大通りを歩きながら、スパーダはこのお祭りのような光景を不思議に感じていた。
「この町の人達はみんな、王家が嫌いなのよ。これまでこの土地全体を治めていた大公はおろか、
太守さえも殺されたんだから」
「そして、君もその一人か?」
スパーダの言葉に、ロングビルは顔を顰めて俯く。その表情は静かな怒りと悲しみが浮かび上がっていた。
「……そうよ。私はあいつらが憎い。できる事なら、この手で復讐してやりたいとも思ったわ。
でも、そのためだけに生きていたら、あの子達を守ることはできなかったでしょうね」
その顔に刻まれた怒りはさらに強くなり、ロングビルは唇を噛みしめる。
「……だから、私の大切な物を奪った貴族派の連中も許せない。絶対にあの子は取り返し、この手で守ってみせるわ」
「That's right.(その意気だ)」
大切なものを守るために戦おうとする彼女の姿に、スパーダは満足気に微かな笑みを浮かべた。
236The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 19:45:25.84 ID:G6SuwIzW
ロングビルが最後に身内と会ったのは、二日前だったという。
その身内はかつてモード大公が住んでいた屋敷に軟禁されているそうだ。
モード大公が亡くなってからというものの、その屋敷は彼女の実家を取り潰した王党派に属していた一貴族の手に渡ったが、
今回の反乱によって現在は反乱軍の手に落ちている。
反乱軍が捕らえた彼女の身内がモード大公の隠し子であることは知っていたようで、意外にもあまり酷い扱いはされていなかったという。
仮にも反乱軍が敵対する王党派によって殺された大公の娘。彼らからしてみれば共通の敵を持つ同志と認識している、という訳ではない。
ロングビルにとっては血は繋がってはいないものの妹のように大切な家族。つまり、ロングビルを味方にするための人質である。
しかもその身内が異種族であることも承知の上であり、恐らくただ殺すよりはいずれ異種族としての力を利用しようとするつもりなのだ。


シティオブサウスゴータからシルフィードで北へおよそ数十リーグを飛んでいった所に、その屋敷はあった。
さすがに元大公の屋敷というだけあって土地は広く、シティオブサウスゴータにも匹敵するものだ。
肥沃な土地と森に囲まれた中に旧モード大公の屋敷は建っているのだが、その屋敷はおろか周辺もかつて戦闘が行われたことを示す痕跡があった。
屋敷は所々が崩落し、木々や草も焼かれている。かつて、王党派がこの土地へ攻めてきた際の名残なのだろう。

一度、上空でシルフィードに乗ったまま様子を見ていたスパーダはその屋敷および周辺を観察していて妙なことに気づいていた。
「人間の姿が見えんな」
庭にはいくつもの影が蠢いているのが分かるのだが、それらは全て人間などではなかった。
ハルケギニアの各所で活動し、時には人間を喰らうとされる獰猛な亜人だ。
人間よりも二回り以上も大きいオーク鬼やトロール鬼が堂々と庭中を歩き回っているのが見下ろせた。その数は十にも昇る。
「人間の戦争に介入して殺しを楽しんでいるのよ。あいつらは」
「暇な奴らだ」
ロングビルが忌々しそうに呟くと、スパーダは呆れたように溜め息を吐いた。
だが、このような連中がいる以上はこのまま静観するだけ時間の無駄というものである。
「私が呼ぶまでお前はここにいろ」
(きゅい……悪魔に命令されるなんて嫌なのね。でも、お姉様が一緒じゃないから、怖いのね……)
シルフィードの首を数回叩きながらそう命ずると、本来の主の命令ではないためか、そのような愚痴を呟いている。
「ちょっ、ちょっと!」
そんなシルフィードに構わずスパーダは立ち上がるなり、何の躊躇もせずにいきなり地上に向けて頭から飛び降りていったのだ。
あまりに唐突な行動に出たスパーダに、思わずロングビルも声を上げてしまう。
そして、すぐに自分も杖を手にしてスパーダを追って飛び降りた。

およそ80メイルもの高さから屋敷の庭目がけて急降下していったスパーダは地上に到着する寸前で身を翻して体勢を変えると、
ちょうど真下で立ち尽くしていたオークの頭上を踏み潰すように着地していた。
高々度からの急降下による衝撃で首を砕かれたオークはその巨体をドスン、と重い音を響かせながら倒れていた。
237The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 19:53:02.70 ID:G6SuwIzW
――ブギィィ!

――グルルゥッ……。

庭中を歩き回っていた達が一斉にいきなり現れたスパーダを振り返り、猛々しい唸りや雄叫びを上げて威嚇してくる。
運悪く踏み潰されたオークの亡骸から降りたスパーダは自分を取り囲む亜人達を見回していた。
どいつも原始的な武器を手にしたままスパーダに対する敵意とを剥き出しにしており、殺戮を楽しまんとしようとするのが見て取れる。
だが、この亜人達にとって不幸だったのはこれから彼らが相手をしようとしていたのが人間ではないということだ。
そして、その事実を知能の低いこの亜人達が気づくことはない。

――プギギィィ!

二体のオークが前と背後から棍棒を振り上げ、挟み撃ちを仕掛けようと突進してきた。
前から向かってくる方は棍棒を横に振り回し、後ろのオークは渾身の力を込めて棍棒を振り下ろす。

――ブギャッ!?

だが、スパーダを叩き潰すはずであった棍棒は彼ではなく、挟み撃ちを仕掛けた仲間の体に叩きつけられていた。
スパーダが霧のように姿を消してしまったことに驚く暇もなくメキリ、グシャッ、という生々しい音と共に同士射ちをしたオーク達は悲鳴を上げる。
オーク達の頭上へ空間を飛び越えて移動していたスパーダは短銃を手にし、再び逆さの体勢になると
体を勢いよく回転させながら真下のオーク達に次々と銃弾の雨を浴びせていく。
脳天を撃ち抜かれたオークはスパーダが身を翻して着地する前に絶命し、着地したスパーダの足場となっていた。

周りの亜人達は銃をしまうスパーダ目がけて過半数が一斉に突進してくる。だが、あまりにも猪突猛進な動きだ。
スパーダは落ち着いたままリベリオンに手をかけると、向かってくる一体のトロールに向けて迷わず投擲した。
投げ槍のように放たれたリベリオンはトロールの太い喉を容易く貫き、大量の血飛沫が飛び散らせながら仕留めていた。
スパーダは休む間もなくすぐに閻魔刀を構えると瞬時に三回連続で抜刀する。
もっとも、亜人達にはそれが単に手を動かしただけに見えており、神速の居合いで振られた閻魔刀の刃を見ることすらできなかったが。

空気が重々しく不気味に唸る音を響かせ、目の前まで迫ってきた三体の亜人達の存在する空間が歪む。
次の瞬間、亜人達の上半身を包むにして斬撃が繰り出され、文字通り消滅していた。
それでも勢いがついていた下半身は血を噴かせながらスパーダに避けられるまで動き続けていた。

一分と掛からずに七体も全滅させられ、残りは三体。
亜人達はあまりにも異常な強さを見せ付けたスパーダに対し、恐怖を抱いていた。
こいつは本当に人間なのか。いかに知能が低い彼らとはいえそう思いたくもなるだろう。
戦意を喪失する亜人達に対し、スパーダは閻魔刀を手にしたままその場から動かない。
だが、その表情はあまりにも恐ろしいものだった。
無表情ではあるが、全てを凍てつかせんとする氷のようで、そして全て射抜きそうな刃のごとき鋭さが秘められた瞳……。
……まるで悪魔のように恐ろしい姿だった。

――ピギイイィィッ!!

――グギャアアッ!!

恐怖が臨界点を突破したのか、獰猛な亜人達は次々と武器を捨てて一目散に森の中へと逃げ出していった。
その様を見届けていたスパーダが軽く鼻を鳴らすと、トロールの亡骸に刺したままだったリベリオンが
まるで頃合を見計らっていたようにひとりでに抜け出し、回転しながら主の手の中へと戻っていく。
あっさりと愛剣を掴み取ったスパーダは何事もなかったように背に戻す。
238The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 20:00:13.13 ID:G6SuwIzW
「あのオークやトロールを怯えさせるなんて、本当に大したものね」
スパーダの隣にレビテーションでゆっくりと着地してきたロングビルが嘆息を吐きながら言った。
ゴーレムの一体でも造り出して援護しようかとも思ったのだが、そんなことをする暇もなく片付けてしまった。
やはりこの男はただものではない。以前学院でオスマンとコルベールがスパーダがガンダールヴ≠ナはないかという話を盗み聞きしたことがあるのだが、その真偽など関係なく彼は強い。
その気になれば一国の軍隊さえも殲滅できそうな気もしてならない。……実際は無理だろうとはいえ、そう考えてしまう。
「獰猛な亜人とて、命は惜しい訳だ。さて、君の身内はこの屋敷のどこにいる?」
「え、ええ……。付いてきて」

ロングビルは何故か険しい表情で屋敷を眺めていたスパーダを屋敷の中へと招き、正面玄関の扉を開ける。
最近までは人間がある程度住んでいたために中は意外と綺麗であり、天井に吊るされたシャンデリアの明かりが内部をはっきりと照らしていた。
だが、現在ここにいるのはロングビルの身内だけだ。毎日、食事だけは外から運ばれているようなので彼女が飢えたりする心配はない。
だが、やはりこんな場所で幽閉されたままなど彼女にとっては生き地獄も良い所だ。
沈黙が支配する屋敷の中をスパーダを導きながら進んでいくロングビルは自分の妹があれから何もされていないことを願っていた。

それにしても、中の様子が二日前に来た時とは違う。
所々に2メイルはあろうかというかかしのような姿をした人形が置かれているし、毒々しい紫の霧が漂っていたりと
これまで土くれのフーケとして修羅場を潜り抜けてきたロングビルでさえ不気味さを感じとっていた。
「Freeze.(止まれ)」
「えっ、何よ?」
三階へと上がり、廊下を進んでいる途中、唐突にスパーダが呼び止めてきたのでロングビルは足を止めて振り向き、そして目を見開いた。
スパーダはいつの間にかリベリオンを肩に担ぎ、銃をこちらに突きつけているのだ。
……いや、その銃口の狙いは自分ではない。これは……。
そう思った瞬間、スパーダは引き金を引いていた。銃声が鳴り響き、銃弾がロングビルの横髪を掠めていく。

背後から、奇妙な奇声が響いていた。
ロングビルが振り向くと、そこにはいつの間にか見た事もない異形が銃弾に撃ち抜かれ、床に落ちて痙攣していた。
蛸のような触手を星の形のようにいくつも生やした、軟体生物のようなものだったそれは体液を噴出させながら床に吸い込まれるように溶けていく。
239The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 20:08:13.17 ID:G6SuwIzW
「……貴族派は悪魔と組んでいるのか?」
「え? 悪魔って、何のことよ? というより、何よ今のは?」

困惑するロングビルの姿を見つつ、スパーダは深刻そうな表情で熟考する。
今のは悪魔の怨念の集合体であり、新たな個体となった下級悪魔のソウルイーターだ。
獲物の背後に忍び寄り、獲物の体を拘束して魂を貪り尽くそうとする。
普段は気体に擬態しているために物理的な攻撃が効かないが、獲物の背後から襲い掛かる時だけ実体化するのである。


スパーダは屋敷のすぐ外で近くから観察していた時も、内部に無数の悪魔達の気配を感じとっていたのですぐに対応ができたのだ。
だが、こんな下級の悪魔が何故こんな所に?
魔界から迷い込んだのがたまたまここにいたのか、それとも……。

いずれにせよこれ以上ここにいるのは良くない。自分はまだしも、ロングビルや彼女の身内は格好の餌食になる。早く目的を果たさなければ。
「……ぐずぐずしている暇はない。すぐに君の身内を連れ出すぞ。ここは危険だ」
深刻な表情のままスパーダが肩を叩いて促してきたため、一瞬何のことだかを聞こうとしたロングビルだったが、とりあえず今は彼に従って妹がいる場所へと駆けていく。

……その間、彼女は恐ろしい光景を次々と目にしていた。
廊下に飾られていた騎士の鎧が突然動き出し、一度分解すると全く違う形の鎧となって襲ってきたのだ。
回転するノコギリの刃のような円盤の盾を手にするそのガーゴイルみたいな奴は手にした剣を振り回してくるため、
ロングビルも杖にブレイドの魔法をかけて牽制していた。
どんなにブレイドで攻撃しても全て弾かれてしまい、おまけに的確に盾で防御してくるために始末が悪い。
スパーダはそいつらの背後に回ると、その背に張り付いていた赤い結晶を振り上げたリベリオンで砕いた。それだけでその鎧は崩れて消えてしまった。
体術に自信のあるロングビルも同じようにして後ろに回り込むことでガーゴイルのような奴らを倒していた。


突然、虚空に波紋が浮かび上がると共に姿を現したのは巨大な丸い物体を頭上に掲げている貧相な人型の体をした化け物だった。
心臓のように鼓動し、やがて色が変わっていくそれを掲げているそいつらが現れた途端、
スパーダはその化け物に接近しようとせずできるだけ遠距離から銃を連射していく。
何発か銃弾が撃ち込まれると掲げていた物体が突然爆発し、周辺を粉々に吹き飛ばしていたのだ。どうやらあれは爆弾らしい。
さらに同じ奴が現れると、そいつは掲げていたその爆弾を投げつけてきたのだ。
あれが近くで爆発すれば自分達が吹き飛ばされてしまう。
だが、スパーダは斜に構えていたリベリオンを思い切り振り上げて打ち返し、化け物にぶつけて返り討ちにしていた。
240The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 20:16:19.50 ID:G6SuwIzW
「い、一体何なのよ。あいつら……」
「君は悪魔を見たことがないのか」
裏の世界の人間である割に悪魔達を見たことがない様子のロングビルにスパーダは意外に思っていた。
スパーダに問われ、呆気に取られていたままだったロングビルはぽかんと口を開いたまま恐る恐る頷く。
「ならば今のうちに覚えておくと良い。このハルケギニアにはこいつらのような存在もいるということを」
呆然と立ち尽くしていたロングビルだが、突如何かを思い立ったのか青ざめた表情を浮かべると、慌てて廊下を駆け出した。
スパーダもリベリオンを手にかけたままその後を追っていく。
恐らく、彼女の身内が悪魔達の手にかかる場面を想像してしまったのだろう。

「テファ!」
やがてロングビルはある部屋の大きな扉を破るようにして開け、その中へと飛び込んでいた。
かつてのこの屋敷の主であったモード大公の居室なのか、壮麗な造りの広い部屋だった。
ソファーからベッドまで、この世界の貴族の部屋にしては少し控え目ではあるもののどれも上等なものばかりだった。
その部屋の中に、一人の少女の姿があった。
歳は17くらいだろうか。長いブロンドの髪は波打つ金の海のように輝いており、粗末で丈の短い草色のワンピースから
延びる手足は細くしなやかであり、可憐な少女として彩られている。
人間からしてみれば、妖精のように神々しい清純な美しさであることだろう。
そして、最も特徴的であったのはまるで大きな果実のように豊満な彼女の胸だ。普通の人間の男であれば目が惹かれてしまいかねない。
もっとも、悪魔であるスパーダにとってはそんなものはどうでも良いことだが。

彼女は窓の近くの壁際で蹲りながら己の耳を両手で押え、怯えるように目を閉じていた。
部屋に飛び込み、一度中を見回していたロングビルは少女の姿を見つけるとその表情には安堵が宿っていた。
「テファ! あたしだよ!」
ロングビルは即座にその傍に駆け寄り屈むと、少女の肩を揺すって呼びかける。
それに反応し、少女はそっと目を開けた。そして、目の前にいるロングビルの姿を目にすると、しばしの間沈黙していた。
「……マチルダ姉さん!」
やがて顔を輝かせた少女は目元に涙を浮かべ、いつも聞いているのとは違う名でロングビルの名を叫ぶとその胸へと飛び込んでいた。
「もう大丈夫だからね……」
ロングビルが少女を優しく抱き締めながらなだめている。

その光景を静観していたスパーダだったが、少女の露となったその長く尖った耳を目にして囁いた。
「……ハーフエルフか?」
これまでの話から統合して少女が異種族と人間の混血であることは理解していたが、その異種族がエルフであることには驚いた。
ハルケギニアの人間が最も恐れ、そして敵対しているはずだという種族がまさか人間とつがいとなるとは。
スパーダの囁きを聞いたロングビルはハーフエルフの少女を抱いたまま立ち上がると、己の杖をスパーダに向けてきた。
「……そうだよ。この子はハーフエルフさ。あなたはエルフの血を引いているというだけでこの子を差別する気?」
「あいにく、そのようなしがらみとは無縁な所から来たのでな。興味はない」
両手を広げ、肩をすくめながらスパーダは返す。
悪魔と心を通わせた人間ですらいるのだ。今更、異種族を差別する気などない。
目の前にいるこのロングビルでさえ、その少女を差別などしていないのだ。
241The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 20:25:23.36 ID:G6SuwIzW
「マチルダ姉さん。あの……」
スパーダをじっと見ていたハーフエルフの少女が恐る恐るロングビルに話しかけると、彼女は杖を下げて少女を見返していた。
「大丈夫だよ、テファ。この男はあたしの仲間さ」
「挨拶は後回しにしようか」
険しい表情となったスパーダが閻魔刀を抜きながら素早く体を反転させて後ろを振り向いた。
次の瞬間、扉の向こうから銃声が連続で響くと共に無数のナイフが飛来してきたが、スパーダが閻魔刀を正面で回転させて銃弾とナイフを全て弾いていた。
「きゃあああっ!」
少女が悲鳴を上げ、ロングビルが庇うようにその体をしっかりと抱き締める。

見ると、扉の向こうの廊下には屋敷中で見かけたあの人形が何十体という数でこちらへ向かって来るのだ。
おまけに手にするマスケット銃やらナイフやらといった武器を手にし、それを使って攻撃してくる。
「壁に穴を開けて外へ出ろ」
スパーダは閻魔刀でマリオネット達の攻撃を防御したまま後ろに少しずつ下がっていくと、肩越しにロングビルを振り向いてそう命ずる。
ロングビルは即座に背後の壁に杖を向け、練金の魔法を唱えると一瞬にして砂へと変えて壁に穴を開けていた。
その穴の先はもう屋敷の外だ。
ロングビルが少女の体を抱きかかえ、外へと飛び出すとスパーダも閻魔刀を手にしたままその後を追っていった。
屋敷の庭へと飛び降りると、先に出ていた二人はその場で立ち止まっていた。

そこにはスパーダが倒した獰猛な亜人達の死体は影も形もなく、代わりに目にしたのは筋肉が剥き出しで
目や口などに拘束具のようなものを装着し、手には巨大な鎌を手にした、嫉妬の罪を犯した者を
地獄で責め続ける下級悪魔・ヘル=エンヴィーの大群が群がっていたのだ。
魔物などの体液や血肉などを媒介にして現れるこいつらにとって、あの亜人達の亡骸は恰好の依り代であったようである。

「マ、マチルダ姉さん……」
「下がってなさい、テファ」
ヘル=エンヴィー達がゆっくりと迫って来る中、ロングビルが少女を後ろにやると杖を構えてルーンを唱える。
すると、ヘル=エンヴィー達の背後の地面が大きく盛り上がり、15メイルはあろうかという巨大な土のゴーレムが出来上がっていた。
土くれのフーケであった彼女の十八番だ。
ゴーレムの出現にさすがのヘル=エンヴィー達も驚いている。そんなヘル=エンヴィー達を彼女のゴーレムはその剛腕を振り回して次々と叩き潰していた。
スパーダは彼女達の後ろで、しつこく庭まで追ってきたマリオネット達を次々と閻魔刀を力強く華麗に振り回して斬り捨てていく。

そんな戦いを続ける二人の男女の姿を、少女は目を丸くしながら交互に見つめていた。
初めて見にした姉の意外な姿、そして初めて出会ったこの男の姿。
その両方とも、目を奪われる鮮烈な光景だった。

「Come on!(来い!)」
ロングビルのゴーレムがヘル=エンヴィー達を全滅させるのを確認したスパーダは、大声で上空にて待機していたシルフィードに呼びかける。
庭に降りてきたシルフィードに向かってロングビルは少女の手を引いて駆け寄りその背に乗せ、飛び乗ったスパーダと共に乗り込む。
まだマリオネット達はしつこく追いかけてきたが、シルフィードは急速に上昇すると即座にこの空域を離れていった。
242The Legendary Dark Zero:2012/03/07(水) 20:31:48.83 ID:G6SuwIzW
当面の目的は果たしたので、三人を乗せたシルフィードはニューカッスルへの帰路へと着く。
その背の上でロングビルは少女の体に自分が着ていたマントを着せていた。この空の上は彼女にとってはいささか寒いようだ。
「彼女から話は色々と聞いている。私はスパーダだ」
「あ、あの……ティファニアです」
空の上でスパーダはティファニアと名乗った少女と話を交わす。だが、ティファニアはスパーダのことをまだ恐がっているようだ。
「大丈夫だよ、テファ。彼はあたしの仕事先の同僚だから」
怯えるティファニアをロングビルは宥めると表情が安堵したものへと変わっていく。
「マチルダ姉さんの? お友達なのね?」
「まあ、そんなところだよ」
「マチルダ……それが君の本当の名か」
スパーダはそれまでは学院の秘書としての名であろうロングビルという名前しか知らず、
おまけに態度もずいぶんと気さくなものに変化しているので少し呆気に取られていた。
「もう、とっくの昔に無くしちゃったけどね。あたしの本当の名は、マチルダ・オブ・サウスゴータさ」
「では、今後はそう呼んだ方がいいか」
「よしてよ。今更あなたにそう呼ばれたってしっくりこないわ」
苦笑するロングビル……マチルダはけらけらと笑っていた。
「あ、あの……スパーダ、さん?」
まだ少し恐がりつつも勇気を出してスパーダに話かけてくるティファニアをスパーダは振り向く。
「マチルダ姉さんと一緒に働いていたんです、よね?」
「まあ、そういうことになるな」
「姉さんの仕事って、何なんですか? わたしが聞いても教えてくれなくて……」
そう問われてスパーダはちらりとマチルダの方を見る。
彼女は目を細くしてスパーダを見返していた。真実は全て語るな。そう言っている。
「彼女はこことは違う国の学校で、そこの責任者の秘書として働いていた」
「秘書? 偉い人のお手伝いをしていたの?」
ティファニアはマチルダの方を振り向き、興味深そうにしている。
「そういうことさ。あまり給料は高い訳じゃないけど、それなりに楽しいよ」
自分が元盗賊であったことは話したくないのだろう。それでティファニアがショックを受けてしまうのを避けているのだ。


血は繋がってはいないとはいえ、二人は姉妹のように語り合う中、シルフィードの上で座り込んだままスパーダは険しい顔のまま考え事をしていた。
あの屋敷で現れた悪魔達のことである。
奴らはどうやらアルビオンの貴族派が放った悪魔のようだった。
人質であるティファニアが逃げられないように外の亜人達と共に見張りをしていたのだ。
もしも血に飢えて姿を現したのであればティファニアはとっくに奴らの餌食になっていたはずである。
襲われていなかったのは、貴族派の連中の命令だったからだろう。
……だが、何故貴族派にあの悪魔達が従っているのか。人間に召喚されてその主に従うような悪魔はいるが、
今回相手にした連中は人間が使役できるようなものではないはずである。
なのに、貴族派の命令に従っていた。……いや、貴族派は直接な主ではないのかもしれない。
だとすれば他に考えられるのは……。

(誰だ? 誰が貴族派を裏で操っている?)
下級悪魔達を直接従えられるのは純粋な上級悪魔だ。それもあれだけの数を従えられるのはかなり格の高い悪魔である。
スパーダが知っている限り、軍勢を率いるだけの統率力があるのは三つの派閥に分かれた最上級悪魔。

羅王か。

それとも、覇王か。

もしくは、かつてのスパーダの主――魔帝なのか……。


※今回はこれでおしまいです。
ティファニアの登場が早くなっていますが、基本的に話の尺をできるだけ短くするために
話の中で暇な期間があれば他の話も混ぜるかと思われます。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 22:49:07.30 ID:OQnhnR9h
お疲れ様です!
244名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 22:56:35.33 ID:hChDD1Xo
ドリフ&パパーダ乙

>>228
ミラージュ君呼べば、弾切れ起こしてもすぐに剣に対応できそうだ。元フェンサーだし。
ただ、因縁つけてきたギーシュは一瞬で心臓か脳天を撃ち抜かれてデッドエンドになってしまうが。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 23:50:18.56 ID:o3Ka2SAs
>>189
ローレシアの王子は脳筋イメージ強いけど、キャラ設定では戦士としては天賦の才能もってるんだよな
246名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 01:14:11.79 ID:3CnmfZl2
ローレシアの王子は力があるのに素早さもあるんだよな。戦士と武闘家の要素を
併せ持っている。元祖バトルマスターか。はぐれメタルに素手で30ものダメージを
与えてくれた主人公は恐らく彼だけのはず
サマルトリアの王子も散々ディスられてるが、序盤のホイミは使える。中盤のマホトーンは
ボスも黙らせるし、終盤ではムーンブルクの王女のMPをボス戦まで温存させてくれた
状況に合わせて攻守どちらにも対応できるってのは結構大きく、ムーンブルクが
どれだけのターン攻撃魔法に集中できるかはサマルの運用に掛かってると言ってもいい
彼は確かに単体では弱いが、他の二人が攻撃力を発揮できるのは彼のおかげなんだ
ってことで召喚の時はサマルさんも忘れないであげて下さい
247名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 02:11:12.90 ID:zQCyhQ2F
メタル系へのダメージに関してはあくまでもゲームの数値設定とかプログラムの範疇の問題だからなぁ
3でもメタル系に会心でもないのに唐突に100近いダメージ出ること有るしな
248名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 02:27:02.99 ID:lrIwxXic
>>246
サマルトリア組の鉄砲玉はメガンテも覚えるしな
249名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 03:08:49.47 ID:s27ISg9W
性格的には、無個性の原作ゲーム版は論外として、ゲームブック版のカインがいいなあ
250名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 03:14:40.79 ID:CyHc6rrK
>>242
覇王、羅王って誰?
251名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 06:21:25.20 ID:MVC3cW1H
ドラクエネタなら
モンスター物語のメルキドのゴーレム召喚(混乱して暴走したあと)

ストーンマンやドラゴンの大部隊を無傷で蹴散らす性能で
結局メルキド攻略は失敗して竜王にあきらめさせてるからな

だれも学園に近づけなくなるかもしれん
252名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 06:51:38.69 ID:A9EwRkjC
>>246
6と7はレベルを上げて物理で殴れば普通にメタル系に大ダメージが通るよ
253名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 07:08:23.65 ID:ofvBlCFh
あれだろ?モンハンに出てくるアカムトルムと北斗の拳に出てくるケンシロウの兄貴
254名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 11:46:06.64 ID:bMvoR9D/
アカムの兄貴?
255名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 12:36:34.52 ID:QHksaFdj
魔界の3強って、覇王アルゴサクス、スパダ、魔帝ムンドゥスだろ?
ラオウに該当するのはスパダじゃね?
256名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 12:56:01.15 ID:Y4Mn5uwh
アニメにちょろっと出てきたアビゲイルじゃないの?
257名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 14:06:28.10 ID:MTw2yOqN
ルイズ関係なくなっちゃうけどラオウなら魔族とか余裕でちねりつぶせるんだろうなあ
258名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 14:58:29.96 ID:XNYoGlG4
怪傑ライオン丸を召喚したら獣人に変身する人間ってどんな扱いになるんだろ
259名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 15:01:53.34 ID:LhB3r4Ve
ルイズは早くダーク・シュナイダーを召喚してくれ
260名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 15:16:04.38 ID:MISR/+Hm
>>258
普通にライカンスロープだと思うが、ハルケてライカンいないっけ?
261名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 16:00:03.15 ID:s27ISg9W
>>259
召喚した時点ではルーシェだったら尚良し。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 17:23:48.34 ID:rJ5+8R6X
モンスターズ+のサマルさん見てみろよ・・・
あの人マジ強いぞ?
263名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 17:34:07.63 ID:B34o8TmU
>>258
ライオン丸の忍法獅子変化は金砂地の太刀が必要だから
マジックアイテムで亜人に変身してるって扱いになるんじゃね?
264一尉:2012/03/08(木) 20:03:51.33 ID:JPQRzPAC
最強将軍織田信長を召喚にするルイズ
265名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 20:28:27.74 ID:XNYoGlG4
駄目元でライオン丸の話題出したんだが、反応してくれる人がいて驚いた
266名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 21:05:08.69 ID:T/Z2UWkz
>>262
破壊の気をまといし隼の剣を持った彼ですね…… まじパネェ
ロランの化物っぷりとか、本物の竜王のかっこよさとか、ほんとに見所多い漫画だった
テリーリメイクに併せて再開してくれないかねぇ
267名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 21:07:29.55 ID:T/Z2UWkz
おっと、ageちまった失礼
268名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 21:40:05.96 ID:g64SPE+g
ヤンガンの最終回はふいた。
何コマあるんだよ!
269名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 21:57:35.27 ID:pa5xDgs0
>>265
亀だけど自分も怪傑ライオン丸召喚見てみたい
やはり最終回、ラスボスとともに自爆する瞬間かな
270名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 22:04:03.19 ID:OijT5XfM
まだ36歳の俺は原典を見たことがないからライオン丸と言われてもGしか思い浮かばないぜ
271名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 23:32:53.86 ID:MVC3cW1H
あんまし関係ないけど、にじファンでコブラ召喚ネタを書きはじめたチャレンジャーいるな
272名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 02:43:22.78 ID:myvy7TKT
あんまりどころか全く関係ないだろ
他所の話を一々持ち出す必要は全く無い
むしろ双方にとって荒らしに近いぞ
273名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 16:01:17.45 ID:ODLjqGY3
そーだ!そーだ!
274名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 18:09:36.58 ID:SlVkboMS
他の投稿サイトでも時々おもしろいのがあるよな
275名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 18:11:53.49 ID:s1wTre1h
前はVIPとかでもちょくちょく立ってたりしたけど
今は殆ど見かけないよな

ダースベイダー召喚はVIPだったよな
276名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 18:39:37.51 ID:SO++/vXv
一年前後の流行りものじゃなきゃスレは立たないんじゃないかなあ
277名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 19:11:39.16 ID:p3AcvdR/
両津勘吉を召喚
ルイズは部長ポジション(オチ担当)に
278名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 19:50:49.62 ID:ypapPhoe
監獄に送られようが、火竜山脈に送られようが、サハラ砂漠に放り出されようが次回になれば元通りになるのか。
279一尉:2012/03/09(金) 21:15:52.14 ID:0pMvMZ7l
GTA4のローマンを召喚にする。ルイズ
280名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 21:34:57.05 ID:3Ar86sQS
ルイズinタイガー戦車「あの馬鹿使い魔はドコ?!」
シエスタ「サハラに行商に行くと・・・」
281名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 23:30:08.91 ID:Ia+L3tKn
テレポートを駆使して追い回すわけか…… 両津に安息の場所はあるのか?w
282名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 23:34:35.05 ID:zJAEBxbL
こち亀短編のは結構面白かったね
283名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 11:04:34.13 ID:eTzQnU3G
戦車で思ったけどハルクみたいなパワーキャラだと、タイガー戦車を持ち上げて直接叩きつけそうだよな。
叩きつけられたタイガー戦車に上半身を潰されるヨルムンガルド
ルイズ( д)゜゜
ジョゼフ( д)゜゜
284名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 11:30:38.15 ID:Aj3JfwFk
アニメの話だけど、ヴィットーリオが綺麗すぎてワロタww
二次創作のキャラは腹黒しか目立ってないけど、少しくらい影響あるのかな
285名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 11:31:31.01 ID:8f0t3o9i
ハルク?
超人ハルクか?
286名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 12:14:04.36 ID:eTzQnU3G
>>285 それ以外のハルクを知らんけど他に居たっけ?
まぁ従妹のシーハルクも居るけどさ
287名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 12:42:26.08 ID:nBtRE4+d
>>283
ハルクなら殴り倒すんじゃないの
288名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 12:48:54.30 ID:k+NfMg5o
それ以外でハルクといえばホーガンしか思い浮かばん
289名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 12:58:21.38 ID:p2PL4CoF
戦車持ち上げるキャラといったらアナライザーしかおもいつかん。
ルイズは無視されてキュルケやマチルダがセクハラされまくるか。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 13:05:25.94 ID:bknqtBDw
ハルク・砲丸、スタン・ハリセンやアブラド・ザ・ブッチャーが転がるロマリアのカタコンベ
291名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 13:31:11.52 ID:rj8NJyRX
>>290
何その「ロマリアがリングだ」的な展開
292名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 15:16:18.87 ID:uacJ6mUg
>>290
教皇はルガールか?
293名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 15:21:55.64 ID:ccJF1R18
怒りや憎悪などの感情の高ぶりで変身するハルクと、心を震わせる事でパワーアップするガンダールヴは相性が良すぎて、たぶんデルフが折れる
294名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 15:29:01.10 ID:qBOQW6SO
>>290
油戸・ザ・ブッチャーw
295名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 16:37:44.28 ID:ohjuVqLN
>>285
超人と言ったらロックしかいない!
(変な所に食いついてみる)
296名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 16:58:46.10 ID:vZrowNJ2
えげつねぇ使い魔としてゴンさんを召喚
契約が切れたら干からびる
297名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 17:34:51.05 ID:gDMfFJi9
>>296
えげつねぇならゴレイヌだろ
298一尉:2012/03/10(土) 18:16:50.78 ID:YLVlmZpA
ローマン「ここはとこ俺は死んだばす何に。」
ルイズ「誰・・・・」
299The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 22:59:11.02 ID:wGYk/XyM
夜分遅くに失礼します。予約が無ければ23:03頃から投下したいと思いますがよろしいですか?
300名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 23:02:09.06 ID:p2PL4CoF
支援
301The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:05:12.04 ID:wGYk/XyM
Mission 20 <猛る閃光、吠えよ青銅、舞えよ雪風> 前編


翌朝、ニューカッスルの秘密の港ではイーグル号及び拿捕した輸送船、マリー・ガラント号に非戦闘員である女子供達が搭乗していた。
まもなく行われるであろう一方的な虐殺から逃れるべく、白い雲の中を潜り抜けてこのアルビオン大陸を離れていくのである。
その脱出船が出航する寸前、始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂では礼装に身を包んだウェールズと、
鉄兜で身を固めた十数人ばかりの衛士達が新郎と新婦の登場を待っていた。
扉が開き、その向こうから現れたのは二人の男女。ワルド子爵と、制服の上から純白の新婦のマントとヴェールを身につけたルイズであった。
二人を祝福する観客はたったの三人。キュルケ、ギーシュ、タバサである。

「へえ、結構似合っているじゃないか」
ゆっくりと入場し、祭壇までの道の両脇に控える衛士達の間を進んでいく二人の花婿と花嫁を見て最前列の長椅子に座るギーシュが嘆息する。
「フィアンセの子爵と結婚できるなんてあの子も満足でしょうね」
先祖代々、いがみ合ってばかりいたヴァリエール家であり、あれだけからかってばかりいたとはいえ
ルイズが結婚をするというのであればキュルケも素直に祝福をしていた。
「しかし、突然結婚式を挙げるだなんて、子爵もずいぶんと大胆だなぁ。おまけにその媒酌をウェールズ殿下に頼むとは……。
ああ、僕もいつかはこうしてモンモランシーと盛大に式を挙げたいよ」
ギーシュはトリステインに残している愛しの女性との結婚式を想像して、表情が綻んでしまう。
「そうしたいなら、浮気癖はやめた方がいいじゃない?」
「い、いや……あれはだねぇ……!」
二人が小声で喋っている中、キュルケの隣に座っているタバサだけは己の杖を手にしたまま、黙々と本を読み続けていた。

一部を除き、二人を祝福してくれる人間達がいる中、当の花嫁であるルイズの表情はどこか浮かなかった。
朝早くいきなりワルドに起こされたルイズは意味も分からぬまま、妙に熱くなっている彼に連れられてここにいるのである。
彼は「これから結婚式を挙げる」と言ってきたのだが、あまりにも唐突な展開にルイズの頭は付いて行けずどう答えれば良いか分からなかった。
もっとも、ワルド自身はその沈黙の肯定と取ったのか、ほとんど一人で勝手に準備を進めていったのである。
……正直、こんな状況でこんな花嫁の姿をさせられても嬉しくも何ともない。
あまりに突然とはいえ、自分が結婚をするという話を聞いたギーシュは素直に祝福の言葉をかけてくれたし、あのキュルケも素直に「おめでとう」と言ってくれたことには驚いた。
302The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:10:59.52 ID:wGYk/XyM
そして、スパーダも同様に祝福をしてくれたらしい。
らしい、というのはワルドが先日スパーダに結婚のことを話したら、「おめでとう」と言っていたことを伝えられたからであり、直接本人からは聞いていないのだ。
彼は今、ここにはいない。
ワルド曰く、ここの貴族に頼まれ事をされて外へ出ており、まだ戻らないらしいのである。一応、途中出席になるかもしれないと言っていたらしいが。
(……何でよ。何で、あたしには何も言わないの? あたしのパートナーでしょう?)
思えばスパーダとは離れ離れなってしまうことが多い。彼がモット伯の屋敷へ行った時も、一人で町へ行った時も、ラ・ロシェールで分かれた時も……おまけに今度はこれだ。
パートナーが自分に何の話もしてくれずに一人でどこかへ行ってしまうことが、ルイズにとっては結構なショックでもあった。
(もしかしたら、あたしを信用していないのかもしれない……)
パートナーに対する不安、そして先日見てしまった死を覚悟した者達の姿を見て傷心であったルイズを激しく落ち込ませていた。

「では、式を始める!」
いつの間にかルイズは祭壇に立つウェールズの前まで来ていたが、俯いたまま顔を上げようとはしなかった。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻とする事を誓いますか」
「誓います」
ワルドは重々しく頷き、杖を握った左手を胸の前に置く。
ウェールズはゆっくりとルイズへと視線を移す。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール――」
朗々と誓いの詔を読み上げるウェールズ。
訳が分からず混乱したままとはいえ、今この瞬間が結婚式の最中であることを改めてルイズは実感する。
(ワルドと、結婚……)
その相手は幼き頃より憧れていた、頼もしいワルドだ。
彼のことは嫌いではない。むしろ好いているはずである。
なのに、どうしても今は彼と結婚する気になれない。喜ぶべきなのに、喜べない。
303The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:15:42.06 ID:wGYk/XyM
「新婦?」
ルイズが答えないためか、心配そうにウェールズの声がかけられた。
そんなルイズの肩を抱いてきたワルドが落ち着かせるように諭す。
「緊張しているのかい?しかし、何も心配する事はないんだ。僕のルイズ。君は僕が守ってあげるよ。永遠に。それをたった今、誓った。殿下、続きをお願いいたします」
(……そうよ。あたし、言ったじゃない)
ワルドがウェールズに言い、再度誓いの詔を読み上げる中、ルイズは何故自分が今この結婚を喜べないのかに気が付いた。
ラ・ロシェールでワルドに言ったではないか。自分はまだ、多くの人に認められるような人間ではない。だから吊り合わない、と。
それにワルドに今まで抱いていた思い。それは結婚とは全く違うような気がするのだ。
そうだ。自分は多くの人に認められる存在になりたい。
スパーダに、パートナーにも認められる存在にならなければならない。
「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」
「日が悪いなら、改めて……」
ウェールズの言葉の途中、ルイズは首を振り、毅然とした態度で口にした。
「ごめんなさい。ワルド、あたし、あなたと結婚できない」
突然の花嫁の否定の言葉に礼拝堂中がざわめく。観客であるキュルケ、ギーシュも唖然としていた。
同じように驚いたウェールズとワルドも目を何度か瞬かせて言葉を失う。
「ル、ルイズ?」
「新婦は、この結婚を望まぬのか?」
ワルドの顔が強張り、ウェールズは困ったような表情で問う。
「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが……」
そうルイズが答えると、ウェールズは納得したように頷きワルドの方を振り向く。
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」
残念そうにウェールズが告げる中、ワルドはそれを無視してルイズの肩を強く抱く。
それが少し痛くて、思わずルイズは僅かに顔を顰める。
「……ルイズ、緊張しているのだろう? そうでなければ、僕との結婚を拒むなどありえない」
「ごめんなさい、ワルド。昔はあなたに憧れて、恋をしてたかもしれない……。でも、今は違うわ」
「ルイズ!」
毅然としたまま拒むが、荒く叫ぶワルドは肩を掴む手の力をさらに強くしたため、今度ははっきりと顔を顰めて痛さに呻いていた。
304The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:21:31.75 ID:wGYk/XyM
「な、何だか意外な展開になってきたなぁ……」
「あら、結婚式にはこういうトラブルは付き物よ?」
客席で見物しているギーシュとキュルケがあまりに唐突な出来事に驚いていた。キュルケに至っては同時に、この状況そのものを少し面白がっているようだ。
そんな中、タバサはパタンと本を閉じると手にしていた杖を構えだす。その射貫くような瞳は、豹変したワルドへと向けられていた。
ワルドの顔は険しくつり上がり、瞳には冷たい光が宿っている。

「世界だ、ルイズ。僕は世界を手に入れる! そのためには君が、君の能力が、君の力が必要なんだ!!」
恐ろしい、とルイズは思った。これが、あの優しかったワルドなのか?
違う。ルイズが憧れたワルドはこんなものではない。
今までと雰囲気を一変させたワルドに詰め寄られ、ルイズは恐怖を感じながらも告げる。
「……いらないわ、世界なんて」
必死に食い下がるワルドの姿を見苦しく感じたのか、ウェールズがワルドを諌めようとした。
「子爵……君はフラれたのだ。いさぎよく……」
「黙っておれ!」
ウェールズの手をはねのけ、なおもワルドはルイズに迫った。
「ルイズ、いつか君に言ったことを忘れたか!? 君は始祖ブリミルに劣らぬ優秀なメイジに成長する!
ラ・ロシェールでも君の力を見せてくれただろう! その才能が、僕には必要なんだ!!」
だが、ルイズの答えは変わらない。それにあれは自分の才能なんかではないのだ。
「……わたし、そんな才能のあるメイジじゃないわ」
「だから何度も言っているじゃないか! ルイズ!」
ルイズは静かに首を横に振り、告げた。自分の才能だと思っているあの力を。
「いいえ。あれは才能でも何でもないわ。本当は、あれもただの魔法の失敗なのよ。
……あたしはあの失敗を全く活かすことはできなかった。でも、スパーダがあの失敗を活かせるように導いてくれたの。だから、あたしの才能ではないわ」
スパーダがいてくれなかったら、きっとあの失敗を活かせることなくこれからもずっと欝屈した道を進んでいたことだろう。
思えばスパーダは、決して自分を信用などしていない訳ではないことに気が付いた。そうでなければあそこまで自分を気にかけてくれはしなかったはずだ。
ルイズの口からスパーダの名前が出てくると、ワルドの眉間に皺が寄せられた。忌々しそうな表情で、彼は叫ぶ。
「あんなメイジでもない、どこの馬の骨かも分からない男のことなど気にするな!
奴は君の才能を失敗と思い込んでそんなことをしていただけだ! メイジでも、貴族でもないあんな男など気にする必要はないんだ!」
305The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:27:42.59 ID:wGYk/XyM
……あんな、だと?
あまりに酷い、スパーダを侮辱する言葉だった。
確かにスパーダはメイジでない、異国の貴族だ。
このハルケギニアにおいて魔法を使えない貴族など無価値な存在だと軽蔑されることだろう。
だが、魔法が使えないだけではないか? それだけで貴族として価値がないと言うのか?

彼は立派な貴族だ。他の貴族達が認めなくても、自分は彼を認める。
敵に後ろを見せずに立ち向かい、少しつっけんどんではあるが平民にも貴族にも関係なく分け隔てずに接し、
他の貴族達の蛮行さえも正したことがあるというのだ。
彼自身は極めて謙虚であり、そして公明正大である。
あれだけ貴族らしい貴族が、どこにいるのか。

だからこそ、ルイズの心には怒りが満ち溢れていた。パートナーを、そして自分自身を侮辱したこの男に。
「……そう。あなたが必要で愛しているのは、何の根拠もなくあたしにあるって思い込んでる、魔法の才能なのね。
そんな理由で結婚しようだなんて……。それに使い魔であり、大切なパートナーであるスパーダをこうも侮辱するなんて……主であるあたしを侮辱するのと同じよ!!」
精一杯の力で自分の肩を掴むワルドの手を振り払い、怒号するルイズ。
「誰があんたみたいな奴と結婚なんてするもんですか!」
「なんたる無礼!なんたる侮辱! 子爵! 今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を引け!
さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」
ウェールズが腰に当てていた手で素早く杖を抜き、ワルドへ向けた。 他の衛士も同じく、一斉に。
客席に座る三人の生徒達も、同じように杖を構えていた。

だが、こんな状況の中、ワルドは突然落ち着きだすと優しい……優しすぎて作り物に過ぎない、悪魔のような冷たい笑みを浮かべて言う。
「こうまで僕が言っても駄目なのかい? 僕のルイズ」
「nonsense. This's Scum!!(ふざけないで。このひとでなし!!)」
不思議と、その口からはたまにスパーダが呟くことがある、異国のものと思われる言葉が出てきた。
何故、自分がこれを知っているのかは分からない。だが、あまりにも自然と出てきたことにルイズは驚いていた。
306The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:32:42.14 ID:wGYk/XyM
それを聞いて、溜め息を吐きながらワルドは天を仰いだ。
「やれやれ……この旅で君の気持ちを掴むために努力はしたんだが……仕方がない。
こうなったら……目的の一つを果たすとしようか」
「目的?」
困惑したルイズの呟きにワルドは答えなかった。
代わりに、ワルドは二つ名の「閃光」に相応しい速度と手際でレイピアの杖を抜き詠唱を完成させ、青白く光る魔力の刃をウェールズに繰り出して来た。

狙いは、心臓。

あまりの速さに、トライアングルの風メイジであるウェールズでも動きに対応できない。
だが、突風と共にワルドのレイピアの側面に真空の塊による一撃が叩き込まれたおかげで狙いは外れ、左肩を貫くだけに留めていた。
「ぐあっ!」
「何!」
ウェールズが呻き、ワルドが当惑の声を上げる。
「きゃっ!」
次の瞬間、フライによって素晴らしい速さで飛んできたタバサがルイズとウェールズを回収し、反転するとキュルケ達の元へと戻っていく。

「殿下ぁ!!」
「貴様ぁ!」
狙いが外れたとはいえウェールズが傷つけられたことに衛士が激昂し、ワルドに向かって魔法を放とうとする。
だが、ワルドは振り向きざまに杖を振ると、杖の先から鋭い雷鳴と共に嵐のような凄まじい稲妻を放ち、十数人の衛士達を一瞬にして全滅させる。
そこにキュルケがファイヤーボールの魔法を叩き込むが、風の障壁によってかき消されてしまった。

「き、貴様、レコン・キスタ……」
ルイズに支えられ、血が溢れ出る左肩を押えながらウェールズは呻いた。
「ワルド……!! あなた、アルビオンの貴族派だったのね!」
キュルケ、ギーシュ、タバサが二人を庇うように前へ立つ中、ワルドは平然とした態度で答える。
「いかにも。しかし、アルビオンの、というのは正確ではないな。我々レコン・キスタは国境を越えて繋がった貴族の連盟さ。我々に国境はない」
そして、ワルドはちっと舌打ちをしながら続ける。
「この旅における、僕の目的は三つあった。一つはルイズ、君を手に入れること。……しかし、これは果たせないようだね。
二つ目の目的は……ルイズのポケットに入っている、トリステインとゲルマニアの同盟を瓦解させるという手紙の入手。
そして三つ目、そこにいるウェールズ皇太子の命だ。それを邪魔しおって……」
忌々しそうにワルドはタバサを睨む。
それにしてもタバサの行動力の速さにはルイズはおろかキュルケ達も驚いた。
始めに放ったエア・ハンマーも、まるでワルドの行動を初めから予測していたかのような動きであった。
307The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:37:56.46 ID:wGYk/XyM
「何で! 何があなたをここまで変えてしまったの!?」
「あいにく、それに答えるほど暇ではない。全てはハルケギニア統一のため。
そして、ハルケギニアは我々の手で1つになり――始祖ブリミルの光臨せし聖地を取り戻す。そのために、お前達にはここで消えてもらわねばならん」
冷酷な笑みを浮かべ、ワルドはレイピアを構える。それに反応し、ルイズ達の前に立つ三人が身構えた。
「……まったくルイズ、君にも困ったものだよ。あんなどこの馬の骨とも知れん男を使い魔にするとは……。
奴を痛めつけて君に僕の力を見せつけようと思ったら下手に抵抗したし、君にも余計な入れ知恵をしてくれたおかげで何もかも台無しだ。
もっとも、その奴がここにいてくれなくて良かったよ」
そのワルドの態度にルイズは戦慄した。もしかして、スパーダがいないのは……。
「まさか……スパーダに何をしたの!?」
「さてね。先ほども言ったが、奴は野暮用とかでどこかへ行ってしまった。
朝までには戻ると言っていたが、まだ来ないようでは彼の助けは期待できんな」
目を細めてワルドは鼻を鳴らす。
「あんなメイジでもない、どこの馬の骨とも知れん平民上がりの没落貴族ごときでは君のパートナーは勤まらなかったようだな!」
再びスパーダを侮辱する言葉を吐き出すワルド。
ルイズはその言葉に対してさらに怒りを感じ、言い返そうとした。

「黙れ! 裏切り者め!!」
唐突に、ルイズのものではない怒りに満ちた叫びが礼拝堂に響き渡る。
その怒号を発したのは、ギーシュであった。
だが、普段のキザったらしい彼とは思えぬ堂々とした男らしい叫びにルイズはおろかキュルケでさえも呆然としていた。
表情や目付きまでも怒りに満ちて変化していたギーシュは床に落した造花の花びらを剣へと変え、それを手にするとワルドに突き付ける。
「スパーダは立派な貴族だ! 彼は僕らが目指すべき、真の貴族の姿だ! それを侮辱することは、彼の弟子であるこのギーシュ・ド・グラモンが許さん!!」
ギーシュにとって、スパーダは特別な存在だった。
初めはワルドが言ったようにどこの馬の骨とも知れない没落貴族などと軽蔑していた。
だが彼と剣を交え、その強さと人柄に触れていくことで、ハルケギニアの貴族とは全く違う異国の貴族としての風格に惹かれていった。
魔法こそ使えず冷徹で厳しい所もあるが、彼はまさしく本物の貴族なのである。
ギーシュにとってスパーダは尊敬すべき師であり、もう一人の父親とも言うべき掛けがえのない存在だったのだ。
それを侮辱されたことが、許せなかった。
308The Legendary Dark Zero:2012/03/10(土) 23:42:01.05 ID:wGYk/XyM
ギーシュの怒りの言葉にワルドは一瞬、呆気に取られていたがすぐに嘲笑していた。
「おやおや、軍家たるグラモンの人間があのような没落貴族に惚れこむとは滑稽だな!」
「黙れえぇっ!」
ギーシュはワルド目掛けて突進し、後ろに引いていた自らの剣を勢いよく突き出した。
スパーダが使っていた技を見様見真似で放ったものであり、突進力や腕の速さなどは遠く及ばないが一応形にはなっていた。
ワルドはその突きをあっさりとレイピアでいなしつつギーシュの側面に回りこむ。振り上げたレイピアには、ブレイドによる魔力の刃が宿っていた。
ギーシュは即座に体を反転させ、振り下ろされたレイピアを受け止めて押し返す。
後ろへ跳んだワルドは祭壇の上へ身を翻しながら着地した。
そこへキュルケが杖を向け、魔法を放とうとしたがタバサが杖でそれを制してくる。
「二人を守って」
ちらりとタバサはルイズと傷ついているウェールズを振り向いた。
今ここで全員が戦えば、ワルドは隙を突いて二人を殺しにかかってくるだろう。
「もう少しすれば、彼が来る。それまで持ち堪える」
「タバサ。それ、どういうこと?」
ルイズが問いかけるが、タバサはそれ以上答えることなく両手で剣を手にして身構えているギーシュの隣まで歩み寄っていった。
「ん? 何だい?」
タバサがマントの裏から取り出した赤く光る星形の石を自分にかざしてきたため、ギーシュは戸惑っていた。
石が砕け散ると、ギーシュの全身は一瞬、赤い光で包まれてからすぐに収まる。
タバサはさらに星形の黄金に光る石を取り出して自分の胸にかざすと、今度は彼女の全身を黄金の光が包んでいた。
「何をしているか知らんが、こちらから行くぞ!」
ワルドが祭壇の上からウインドブレイクの魔法を放ってきたが、タバサも自らの魔力の全力を出した同じ技で相殺していた。
「うおおおっ!」
そこへギーシュが飛び掛り、大上段に振り上げた剣を叩き付けようとする。
ワルドは素早く杖をギーシュに向け、エア・ハンマーを放つ。
「何!」
直撃したはずのエア・ハンマーは彼を吹き飛ばすことはなく全身が一瞬、赤く閃光を発しただけで彼自身はまるで怯みもしなかった。
「ちっ」
ギーシュの剣をワルドはフライで飛翔することで回避した。
そこへタバサが次々と絶え間なくウインディ・アイシクルを放ってきたため、ワルドは礼拝堂内をまさしく閃光のような速さで飛び回ってかわし続けていた。
二人のメイジがスクウェアのメイジと激闘を繰り広げるのを、ルイズとウェールズ、キュルケは息を呑みながら見届けていた。


※今回はこれでおしまいです。近いうちに後編も投下します。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 23:55:55.15 ID:SMtp1ak4
>>308
ギーシュがタバサと二人がかりとはいえワルドとちゃんと戦闘を行えているとは
気づいてなかったですがギーシュの成長物でもあるのかな、この作品は

何はともあれ乙です
310名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 00:39:48.48 ID:PyGddkzm
スパーダさん乙

日曜なのに人がいないね
なのでデュープリズム代理行きます
2話分あるので途中でさるさん食らったらごめんね

って前回も言ったねこれ
311デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:40:27.20 ID:PyGddkzm
第九話『土くれのフーケ参上』

ミントを召喚してからルイズの周りには少しずつではあるが確実に変化が起きてきていた。
今までルイズをゼロと罵っていたクラスメート達はギーシュとミントの決闘を見た事によってルイズの使い魔の力をその目に畏怖の心と共に焼き付けた。
メイジの実力を計るなら使い魔を見ろと言われるがミントの力を見ればその主であるルイ
ズは只者では無い事になる。
その為公然とルイズを蔑む様な真似をする様な者は明らかに減っていた。
またそのミントが意外にもキュルケやタバサを始め、他の生徒や使用人達にも交友関係を地味に広げているのだ。
ただしミントに喧嘩を吹っかけたりその逆鱗に触れた事でボコボコにされた生徒も何人かはいるが…
またルイズの方でもミントを介してキュルケとタバサと過ごす時間が増えた為今までの様にくだらない揉め事を起こす機会も減っていた。

そして…


「デル・ウインデ!!」
呪文の詠唱と共に起きる爆発…
授業が終わり、日が暮れてからここ最近は毎日中央塔の真下の広場で断続的な爆発が続いていた。
「相変わらず駄目駄目ね、ルイズ。」
「煩いわね、自分でも分かってるわよ。」
爆発の原因はやはりルイズでありそれに駄目出しをしているのはキュルケだ。
しかしルイズはもうキュルケに爆発を笑われても気になどしない。
ミントが以前言った様にこれはあくまでも爆発魔法の成功なのだ、かと言って系統魔法の使用を諦めた訳でも無い。
とにかく周りを見返すにはこの爆発を完璧にコントロールするか普通に魔法を成功させるしか無い、そう結論づけて以来ルイズはめげる事無く毎日こうして魔法の特訓に明け暮れていた。
「ファイアーボール!!」

そしてまた爆発。

その間ミントは何をしているかと言えばそれは意外にもタバサと読書である。
しかしミントはハルケギニアの文字が読めなかったのだがここで意外な解決策があった。
312デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:41:18.40 ID:PyGddkzm
「で、ブリミルが残したのが四つの国にそれぞれ伝わる指輪と秘宝なんだとよ…」

「ふーん…あたしの経験と勘じゃそれって多分何かの封印とかの解除の鍵ね。それにしてもあんたを買って正解だったわ。」

そう、デルフリンガーである。

デルフに本を朗読させてミントは本の内容を頭に入れる。
「俺は今お前に買われて逆に失敗だったって思ってるぜ相棒。ひたすらブリミルの伝説や財宝に関する本を読まされ続けるなんて生まれて6000年想像だにしてなかったぜ。」

「はいはいご苦労さん。」
愚痴るデルフを鞘に収めてミントは本を閉じる。正直こういう勉強のような事は性に合わないが今は必要な事だと割り切る事にする。

「おーいルイズー、そろそろ上がるわよ〜。」
「そうね…今日はここまでかしら。」
日も沈み、きりも良い頃だ。
幾らタバサが周囲にサイレントの魔法を掛けていてもそろそろ爆発の光と振動に文句を言う生徒も現れる頃だ、ミントの切り上げを促す声にルイズも額の汗を拭って答える。


そんな四人の様子を草むらの影から覗いていた人物が居た。
(さて、やるなら今夜かね?)
その人物の名はミス・ロングビル、又の名を怪盗土くれのフーケと言う。

ここ数日のルイズの魔法特訓の事は最早学園中に知れ渡っている、
つまり例えフーケが巨大なゴーレムを使って中央塔の宝物庫の壁をぶち破ろうとした所で目視で無い限りはルイズの訓練の一環と周囲は思うだろう。
こんな強引な手は避けたかったが魔法学園の宝物庫は掛けられたロックの魔法と固定化の魔法が強固過ぎてフーケの練金ではどうにもならない、
コルベールから引き出して得た情報では突破はやはりゴーレムによる壁の破壊しか無い。
フーケ個人の都合として早く仕事を終えて待たせている妹のような少女の元に戻らなければならない以上決行は早い方が良い。

様々な思いと思考が巡る中ロングビルことフーケが杖を抜き放ち地面に向かって詠唱を始めると地面が盛り上がり、あっという間に広場に巨大なゴーレムが現れた。
313デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:42:03.59 ID:PyGddkzm
「何あれ…」
一番最初にそれに気が付いたのはタバサだった。
だがそれを口に出したのはミント、次いでミントの一言にルイズとキュルケも月を隠す様にそそり立つゴーレムを見上げる。
「何ってゴーレムよね…」
呆然としながらルイズが呟いた瞬間、巨大なゴーレムはその手を大きく振り上げてその拳を中央塔の宝物庫の壁に叩き付けた。
振動だけの音の無い轟音が数度響く、既にタバサはサイレントを解除している以上それは明らかにゴーレムを嗾けている者の仕業だ。

「あれってもしかしなくても最近街で噂の土くれのフーケって賊じゃ無い?」
キュルケの指さした先には成る程、暗い色のローブで全身を隠した人物がゴーレムの肩に立っている。
「取り敢えず逃げるわよ!!あんなのに踏みつぶされたりしたらたまらないわ!」
ミントの提案にタバサとキュルケが頷くとゴーレムの足下から全力で離れる様に走る。

だがルイズだけは違った。

「学園に賊が侵入してるのよ。逃げるなんてあり得ないわ!!食らいなさいファイアーボール!!」
一心不乱に壁に拳を叩き付けるゴーレムに向かってルイズは勇ましく駆け寄ると呪文を唱えて杖を振る。
その爆発はさっきまで壁を叩いていたゴーレムの右拳を爆散させた。

「やったわ!!」


その光景を間近から見ていたフーケは思わず舌を巻いた。
話程度にはルイズの爆発の事は聞いた事があったが予想していたよりも遙かにその威力は強力だ。
「鬱陶しいね、小娘が…」
あれをそう何度も叩き込まれたら溜まった者では無い、万が一自分に命中したらそれこそ命に関わる。
フーケは即座にゴーレムの攻撃目標をルイズへと切り替えた。

こんどは無事なゴーレムの左手の平が振り上げられるとルイズに向けて振り下ろされる。
フーケ自身これを当てるつもりは無い、あくまでルイズの戦意を折る為の威嚇の為の目の前への叩き付け。
314デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:42:30.71 ID:PyGddkzm
その叩き付けとほぼ同じタイミングで二度目のルイズの魔法が爆発を起こした。
「きゃっぅ………」
ルイズ自身は叩き付けられた掌の衝撃の余波に吹き飛ばされ気を失って土煙に撒かれながら地面を転がる。
『ルイズッ!!!』
ミント達は悲鳴にも似た叫びを上げると慌ててルイズの元へと駆け寄った。
「あいつっ!!」

そしてゴーレム自身には全くダメージは無い
それもその筈、ルイズの魔法の爆発は今度はゴーレムに命中する事無く宝物庫の壁を爆破していたのだ。
頑強な宝物庫に入ったひびを見てフーケは思わず笑顔を浮かべる。
「アハハ何て偶然だい、感謝するよお嬢ちゃん。」

フーケはそのひびをゴーレムの拳で打ち抜くと素早く宝物庫に入り込み目的の品に手を伸ばす。
それは手の平だいの大きさの燃える様な色の不思議な宝玉。

「『紅蓮の宝珠』確かに頂戴致しましたっと。」

言うが早いか宝物庫の壁面にそう練金の呪文でメッセージを刻みつけてフーケは掌に収まった緋色の宝玉を見つめてほくそ笑む。
だがのんびりともしていられない、思考を切り替えてフーケは再びゴーレムに飛び乗ると
ミント達を見下ろした。
するとミント達は気を失っているルイズを回収し既にゴーレムからは離れている。

(あっちもあの様子じゃ無茶な追跡をする気も無さそうだね。)
唯一タバサが使い魔と共につかず離れず自分を追跡してきているがそれは予想の範囲内、撒く自信はある。
学園の外にゴーレムの歩を進ませながらフーケは安堵の溜息を吐く。




「意外ねミント…あなたの事だから戦おうとすると思ったわ。」
フーケのゴーレムの姿が消えてキュルケはミントにどこか皮肉混じりに言う。
「こいつが居たからね……ったく、引く時は引くってのは戦いの基本だってのに。」
言いながらミントは気を失ったままのルイズの脇腹を軽く足で蹴飛ばす。

「同感ね…この子ったらプライドばっかり高くって困った者よ。」
315デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:43:03.42 ID:PyGddkzm
仮にも主人であるルイズへのミントの仕打ちに呆れた様子でキュルケはルイズをレビテーションで浮かせてやると寮塔まで運んでやる事にした。
既にフーケの追跡をしていたタバサもフーケを見失った為、魔法学園に向かって帰還している。


そうしてフーケ襲撃事件の夜は明けていった。



翌朝。魔法学院では、朝から蜂の巣をつついたような騒ぎが続いていた。
巨大なゴーレムで壁を破壊するという派手な方法で『紅蓮の宝珠』が盗まれたのだ、それも当然である。
既に破壊された宝物庫には学院中の教師が集まりざわめいている。
そして当然と言うべきか昨晩現場に居合わせたルイズ達も事情の聴取の為この場に呼び出されている。

しかしルイズ達の目の前で教師達は事情の聴取どころか何と責任の押し付け合いを始めていた。

「このような事が我が魔法学園で起きるなど…あぁ困った…」
「これだから平民の衛士等役にたたんのだ!当直の教師は誰かね!?何をしていたのだ!!」
一際声を荒げているのは教師疾風のギトー。そしてそのギトーの言葉に顔色を青くしたのはシュヴルーズだった。
「そ…その、当直は私でした。」
「ならばあなたは何をしていたというのだね!?いや、最早何をしていたか等関係は無いですな。」
「うむミセス、残念ながらこれはあなたの責任だ…」
「そ、そんな…」


(眠いわ…ったく人の事叩き起こしといて何なのよこいつ等は…)
ミントが不機嫌そうに重い瞼で教師達を見つめているとここでようやくオールド・オスマンがこの場に現れた…

「待たせて済まなかった。しかし先程から聞いて居れば情けない…教師の怠慢については我々全員が責任を感じ折り入って恥じるべきじゃろう!が、しかし、今はそれを議論する場では無いっ!!」
オスマンのその強い口調と気迫に教師全員が押し黙る。
316デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:43:29.10 ID:PyGddkzm
「さて、目撃者の生徒は…フム、君達三名か、見たままで構わん説明を頼めるかの?」
オスマンは一転して柔らかくルイズ達に問いかける。
因みにミントはあくまでこの場では使い魔でしか無い為証人としては数には入れられていない。
そして、キュルケとタバサは面倒だと言っていたため、その場はルイズが代表として説明をする事になった。


〜ルイズ説明中〜



「……………という次第でフーケと思われる人物は取り逃がしてしまいました。申し訳ありません。」
ルイズは説明を終えて深々とオスマンへ頭を下げる。
「ミス・ヴァリエール顔を上げなさい。誰も君らを責めはせん。何より君等が無事で本当に良かった。」
オスマンは優しく諭す様にルイズに言って今度はキョロキョロと周囲を見回した。
「所でミス・ロングビルの姿が見えんの?誰か知らぬか?」
その問いに教師全員が首を捻っていると丁度ゴーレムによって開けられた大穴から何者かがフライの呪文を使用して宝物庫へ入ってきた。
それは丁度さっきまで話題に上がっていたロングビルだ。

「遅れて申し訳ありません。朝から急いで調査をしておりましたので。」
「調査とな?」
「はい、明朝にこの異常事態に気づいた為急ぎ近隣にて聞き込みを行って参りました。」
ロングビル曰く、学院近在の農民から聞き込みを行い、近くの森の中にある廃屋へと入っていったローブ姿の怪しい人間を見た、 という情報を得たらしい。
そして、そこがフーケの隠れ家ではないかという推測をオスマンらに伝えていた。

「ローブで正体を隠した人物?フーケです!間違いありません!」
と、話を聞いていたルイズが叫ぶ。
「成る程の…してそこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬なら四時間といった所です」
努めて冷静にロングビルが報告を終えるとオスマンの後ろへと下がるとオスマンは教師達に改めて向き直り杖を高く掲げた。

「では、これより捜索隊を編成する。我こそはと思うものは杖を掲げよ」
オスマンの言葉に、教師達は困ったように互いに顔を見合わせるだけで誰も杖を掲げない。
317デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:44:29.89 ID:PyGddkzm
「ん? どうした? フーケを捕えて名を上げようと思う者はおらんのか!?」
だが教師達は相変わらず互いに目配せをするばかりで一向に杖を掲げる気配すら無い。

そんな中一本の杖が堂々と高く掲げられる。
一瞬の内に宝物庫の中に居る全ての人物の注目はその杖を勇ましく掲げる人物に注がれた。

「私が行きます。必ずやフーケを捕らえ紅蓮の宝珠を取り戻します!!」

そう宣言したのはルイズだった。
「ミス・ヴァリエール、君は生徒ではありませんか!ここは教師に任せておきなさい。」
「誰も杖を掲げないでは無いですか!!」
「っ……」
シュヴルーズの制止にルイズは二の句も無く教師達を切り捨てる。
教師達も確かに我が身可愛さに誰も杖を掲げていない以上、何も言う事は出来ない。

そうしている間にもう一つ、杖が高々と掲げられた。
「ミス・ツェルプストーまで!!何を考えているのですか!?」

「私はヴァリエールにだけは負けるわけには参りませんので。」
胸を張りそう宣言し、キュルケは挑発的な微笑みをルイズに向けた。
すると再びもう一つ杖が掲げられた。
「ミス・タバサまで……」
タバサは無言のままその意思の堅さを示す様にまた一段と高く杖を掲げる。
「タバサ、これは私とルイズの問題じゃ無い…あなたまで危険な目に遭うのは…」
キュルケの言葉にタバサは首を横に振るとキュルケ、ルイズの順に指を指して小さな声ではっきりと言った。

「友達、二人が心配。」

タバサのその一言にルイズとキュルケは思わず感激に打ち震える。



「ねぇじいさん、ちょっと良い?」
と、ここで沈黙を守っていたミントが挙手しオールド・オスマンの注意を自分に向けた。
「ほっほっほ、何かね使い魔君。」
「ミントよ。ちょっと聞きたいんだけどさ土くれのフーケって有名な怪盗なんでしょう?捕まえたら賞金とか出たりする?」
318デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:45:00.83 ID:PyGddkzm
ミントの問いに周囲から厳しい視線が注がれた。
唯のルイズの使い魔だと思っている人間にはこの尊大な態度は目に余るものがある。
ルイズはミントが本来王女である事を知っている以上正直あまりミントの態度や素行に対して口を出しづらい。
とりあえずオスマンはその様子に少々困り顔ながらも髭を摩って答えることにした。

「まぁ、出るじゃろうなぁ…恐らくは10000エキューはあるんじゃ無かろうか?」

オスマンの言葉にミントは上機嫌に笑うとその目に闘志を滾らせガッツポーズを見せた。。
「ぃっよし、ルイズあたしも行くわ!!報酬はあたしが7残り3があんた達!!」
「はぁっ!?明らかに計算おかしいわ!そもそも一応あんた使い魔でしょう?そこは私を助ける為に行くって言いなさいよ!」
「そうよ!!普通に考えて私たちとあんた達で5:5でしょうが。びっくりするわ…」
「これは酷い…」
平然とそんな無茶苦茶を言うミントにルイズとキュルケ、小さくタバサまでが流石に抗議の声を上げる。
「ちっ…………冗談よ。とにかくあたしも行くわ、あたしの目の前でお宝かっぱらって行くなんて真似されたんだもの…フーケって奴ボコボコにして地獄巡りさせてやるわ。」
(絶対本気で言ってた。)
三人は内心そう想いながら言っても仕方ないのでスルーする。


「ふむ…話は纏まったようじゃな。では諸君等に紅蓮の宝玉の奪還をお願いするとしよう。
うむ優秀なトライアングルのメイジが二人に………将来有望なヴァリエール家の息女、そしてドットメイジを容易く制したその使い魔殿。戦力的には申し分あるまい。
ミス・ロングビルは彼女達に同行してくれたまえ。」
「はい、もとよりそのつもりです。」
オスマンがそう言えば最早他の教師には口を挟む事も出来ない
コルベールもここはオスマンの判断を信じることにした、何せミントは伝説の使い魔の可能性がある、それをも加味すれば確かに戦力は十二分だ。




「では魔法学園は諸君等の健闘に期待する。」
「杖に掛けて。」
オスマンの言葉に三人が揃ってそう杖を掲げて唱和する、ミントは勝手が分からなかったので取り敢えず見よう見まねでデュアルハーロウを掲げて見る。

こうしてミント達はフーケの討伐へ向かう事となった。
319デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:45:26.82 ID:PyGddkzm
以上で第九話終わりです。
もっとさくさく話し進めたいけど中々難しいものですね…
誤字脱字等あればまたまとめのほうで修正追加します。
320デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:46:24.91 ID:PyGddkzm
引き続き10話
321デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:46:44.47 ID:PyGddkzm
第十話『森の廃屋の死闘』

ルイズ達は現在ロングビルが手綱を握る馬車に揺られながら紅蓮の宝珠奪還の為に学園から離れた森を目指していた。
「ところでさー、紅蓮の宝珠って何な訳?」
荷台でシエスタに用意させた弁当をムシャムシャと頬張りながらミントは誰にと言う訳でも無く問いかけた。
「余り詳しくは分かりませんが私が学園長から聞いた話ですと宝石の様な物らしいですよミス・ミント。」
「まぁ、宝石ですの?詳しくお聞きしたいですわミス。」
ロングビルが後ろへと視線を送りそう答えるとキュルケが露骨に瞳を輝かせた。

「えぇ、らしいですわ。やはり私も土メイジの女性ですから宝石には興味がありまして学院長に色々と聞いてみたのです。
紅蓮の宝珠は強力な炎の魔力が込められているらしいのです。
でも誰がどの様に作ったかもその使用方法も一切分からない不思議な宝石らしいですわ。」

ロングビルはそう言って残念そうに溜息を吐く…
「用途も製法も不明なんて変わった宝石ねぇ…」
ルイズが首を捻る。
「はん、女ってのはどうしていつの時代も宝石なんて物に夢中になるのかね?
俺様にゃさっぱりわからねぇぜ。相棒もその口かい?」
ミントの背に背負われたデルフリンガーが鞘から刀身を覗かせて鍔を鳴らす。
「って…どうした相棒?」

ミントはデルフの声が聞こえていないかの様に何やら考え事をしているのか弁当を食べる手を止め思考に耽っていた。
ミントにはロングビルが紅蓮の宝珠の特徴として上げた条件に見事に当てはまるお宝を一つ知っているのだ。


「もしかして紅蓮の宝珠って………」


そのミントの小さな呟きは道を行く馬車の音に掻き消されたがその呟きを確かに聞き逃さなかった人物は直ぐ側に居た。


そうして馬車に揺られて数時間、ルイズ達はようやく土くれのフーケの隠れ家と目される森の中の廃屋に到着していた。
322デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:47:07.98 ID:PyGddkzm
「作戦を立てる。」
草むらの影でタバサが杖を使って簡単な見取り図を地面に描く。
「先ずは偵察、これは私が…中にフーケが居れば全員で奇襲を掛けて一気に仕留める。」
タバサの提案に全員が頷いて肯定する。
「居ない場合は?」
「その場合は廃屋を調査してフーケの手がかりを探す。」
「オッケー、それで行きましょう。」
キュルケの問いに簡潔に答え、タバサとミントは立ち上がり廃屋を睨んだ。



素早く無駄の無い動きでタバサが廃屋の壁に背を預け、窓から中をのぞき込む。

「…………」
声を出さず事前に決めていたハンドサインを茂みに身を隠しているメンバーへ送る。


「居ないみたいね…」
「よし、あたしとキュルケで中を調べるからルイズとロングビルさん、
周囲の警戒をしといて頂戴。」
「あっ…ちょっ…」
「分かりました、お願いします。」
ミントは言うやいなやキュルケと連れだって廃屋へと掛けていく。
「ではミス・ヴァリエール、私は向こう側から警戒をしますので何かありましたら知らせて下さい。」
そう言い残しロングビルも移動を始めた。
(全くあいつったら…)
有無を言わさず置いてきぼりを食らったルイズは渋い表情を浮かべたがロングビルもミントやキュルケの判断に納得している様なので渋々周囲の警戒に移る。



___廃屋内部

三人はフーケの隠れ家と目される廃屋の中を注意深く調べて回る。
「テーブルと椅子にチェスト…変わった物も怪しい物も何も無いわね。」
「埃が大分積もってる…」
タバサはテーブルの上を指先でなぞる。成る程確かにタバサの指先は汚れていた。
「これは情報に踊らされたかもね…っと。」
ミントの視線は不意に小屋の隅に置かれた一抱えはある小箱に惹かれた。
323デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:47:32.84 ID:PyGddkzm
よく見ればその小箱にだけは埃が被っていない。
「これは…」
恐れ無くミントが開いた箱の中に入っていたのは手の平大の大きさのオレンジ色の宝玉。
それはまさに一目見ただけで今自分達が探している紅蓮の宝玉だと分かった。

「紅蓮の宝珠。」
「嘘!?見つけたの?」
タバサとキュルケは慌ててミントの元に駆け寄るとその箱の中身を確認する様にのぞき込む。
そんな二人とは対照的にミントの視線は紅蓮の宝珠に釘付けになったまま思考はただ一つの疑問に埋め尽くされている。
(まさかとは思ってたけど…何でこれがこんな所にあるのよ…?)

「それにしても何でフーケはこんな所に折角盗んだお宝置いていったのかしら?」
キュルケは首を傾げる。
「確かに妙…」
同じくタバサもそれには疑問を抱いた。余りにこの状況は腑に落ちない。

「そのフーケってのがこいつを誰か横流ししてくれる奴に明け渡す為の指定の場所がここなんじゃ無いの?」
宝珠を箱に戻し小脇に抱えると、ミントは自分の考えを口に出す。
そのミントの言葉に納得すると同時にキュルケとタバサの表情に一気に緊張が走った。
仮にミントの仮説が正解ならばフーケは品物の取引の始終を見守る筈、だとするならば自分達の存在も行動も見られている可能性は十二分にある。
そして紅蓮の宝珠がこの無人の小屋で発見されている以上その推理は無いとは言いきれる者では無い。


『キャアァァァーー!!』
瞬間、三人の耳にルイズの悲鳴が聞こえてきた。
「伏せてっ!!」
ミントが叫び、三人が咄嗟に身を屈めると次の瞬間廃屋の屋根は昨夜見た巨大な土くれのゴーレムの腕によって木っ端みじんに吹き飛ばされた。
「逃げるわよ!!」
廃屋から飛び出す三人に待ち構えていた様にゴーレムの腕が振り下ろされる。
その一撃は紅蓮の宝珠を抱えたミントとキュルケ逹を分断させた。

「ゴーレムはあたしが引きつけるわ。あんた達はルイズ達と合流して逃げながらフーケを探しなさい!!」
言ってミントはデルフリンガーを抜くと素早くキュルケ達とは逆方向へと走った。
324デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:47:53.68 ID:PyGddkzm
「へっ、出番みてぇだな相棒。」
「片手じゃあんたしか使えないのよ。」
左手に熱が走り、力が漲る…これならばゴーレムの攻撃から逃れる事は十分可能だ。

「無茶よっ!?」
キュルケがそう言って杖を振り上げたがタバサがそれを制してキュルケの腕を引き、指笛を空に向かって吹く。
「大丈夫…それより乗って。」
「しょうが無い、それにミントなら確かにいざとなったらあのまま紅蓮の宝珠持って逃げそうよね。」
そう言ってキュルケはタバサが指笛で呼んだシルフィードの背中に飛び乗ると注意深く森の中に居るであろうフーケを探す事にした。


先程悲鳴をあげたルイズはゴーレムに分断されて逃げたミントを目で追っていた。
ゴーレムは一瞬迷った様だがキュルケとタバサを放置し宝珠を持つミントを狙うつもりだ。
そのミントは片手で小箱を抱えて背中に背負っていたデルフリンガーを抜いて、ゴーレムの攻撃を巧みな身のこなしと剣術で何とかしのいでいる。
「ミント!!」
ゴーレムの叩き付けによって舞い上がる土埃にミントを見失いルイズは思わず悲痛な声を上げる。
「ルイズ、乗って!!」
そこに主とキュルケを乗せたシルフィードが飛来し、ルイズをキュルケのレビテーションを利用してその背に回収した。
「キュルケ、タバサ、ミントが危ないの…お願い、助けて!!」
「落ち着きなさいルイズ、ミントは私達に逃げながらフーケを探してといったわ。」
「ミントを見捨てるの?あんた人の使い魔だと思って!!最近少しは見直してきたと思ったのに!!」
「ちょっと、落ち着きなさいよルイズ!」
ルイズがキュルケに感情のまま掴み掛かる。そしてそれを制したのは意外にもタバサだった。
「…彼女はゴーレムを引きつけると言った。あなたは彼女を信じれない?」
抑制無く言ったタバサの視線は森を凄まじい集中力で捕らえ続けている。
「タバサの言うとおりよルイズ、私達の役目はミントが時間を稼いでる内にフーケを見つける事。」
「ミントが戦っているのに……私は…」
悔しさにギリと歯を食いしばりルイズは鋭い視線を眼下の森に落とす。こうなったら絶対にフーケは私が見つけてみせると決意して…
325デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:48:21.31 ID:PyGddkzm
___森の中

フーケは正直焦っていた。

現在相手をしている生徒とその使い魔が予想を遙かに上回る厄介さなのだ。
慎重ながら大胆なタバサ、恐れを知らない勇猛果敢なキュルケ、爆発魔法に警戒が必要なルイズ、明らかにこういった状況に馴れた様子のミント…

そもそも当初の予定では捜索隊をゴーレムで蹴散らし、あくまでもフーケの拿捕に失敗したという事にして自分への疑いを完全に反らせるつもりだった。
欲を言えば道中で誰ぞ古株の教師を引っ張り出して紅蓮の宝珠の使用方法等を聞き出したかったと言うのもある。
彼女達の対応の早さに取り敢えず先に紅蓮の宝珠を確保しようとゴーレムをミントに差し向けたがこれが中々にしぶとい、その間にシルフィードと三人が自分を探している。
時間を掛けては非常に不味い。

(ちっ…搦め手で行かないと駄目みたいだね!!)

フーケは伊達眼鏡を外し、猛禽類の様に鋭い目でゴーレムを介しミントを睨んだ。



___廃屋周辺

しばらく時間を稼いでいたミントは突然ゴーレムの動きが鋭くなった事に気が付いた。
そしてゴーレムは思いも寄らぬ行動でミントの足を止めに来た。

振り上げられたゴーレムの左腕がミントの頭上に掲げられる。
これまではそこから叩き付けや掴み掛かりへと移行していたのだが今回はそういった行動は取らずあくまでミントの頭上を維持しまるで日よけの様に振る舞おうとしている。

(何する気?)
ミントがそう思った瞬間、ゴーレムの左腕が突然一気に崩壊し大量の土砂となってミントに降りかかる。

「やばいっ!!」

そう思った瞬間ミントの身体に激しい衝撃が襲いかかってきたのだった。
326デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:48:55.49 ID:PyGddkzm
「ミントッ!!」
ルイズはその光景を丁度シルフィードの上から見て、衝動に駆られるままシルフィードの背中からミントを襲った土砂に向かって飛び降りた。
「ちょっとルイズ!!」
「………っ」
キュルケが手を伸ばすもその手は空を切る、だがタバサのレビテーションが何とか間に合いルイズは土砂の山の手前に無事降り立った。



「ミントっ!!返事して、ミント!!この、よくも!!」
ルイズは叫びながら土砂の山に駆け寄るとフライの呪文をゴーレムに向けて放った。
だが爆発はゴーレムの肩口に命中するもこんな時に限って威力が全然足りない。


ゴーレムはそんなルイズを確認すると残った右腕をルイズを捕まえる為に伸ばした…


しかし、その腕がルイズを捕らえる直前、ミントを覆っていた土砂の山が轟音と共に大きな爆発で飛散し、同時に飛び出してきたミントに寄ってルイズはその射程外に担ぎ出されてしまった。
意表を突かれフーケが集中を乱したのかゴーレムの腕が盛大に空を切りそのまま体勢を崩して膝を折る…



いつの間にか泥まみれのミントは魔法で土砂を吹き飛ばしたのか左手にデュアルハーロウを纏めて持ち、右手にデルフリンガーを持っている。
ルイズを放しミントは顔を伏せたままワナワナと肩を震わせる…ついでに言えばその背中からはドス黒いオーラが放出されているようにも見える。



「こいつぁすげぇ心の震えだぜ相棒!!そうだもっとだ、ガンダールブは心の震えで強くなる、お前の嬢ちゃんを助けたいって想いが強ければ…
「この泥人形!!よくもこのミント様を泥まみれにしてくれたわねっ!!!!完全に頭に来たわ!!先ずはあんたからボコボコの地獄巡りにしてあげるわ!!!」」
ミントの心の震えの大きさに歓喜の声を上げていたデルフリンガーの声を遮って、ミントが怒りの雄叫びを上げる。
327デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:49:29.87 ID:PyGddkzm
そこにはルイズを助ける等という想いが微塵も無い程に自身を泥まみれにしたゴーレムとフーケへの純粋な怒りしか無い。

「ちょっとミント、あんた大丈夫なの??!!」
「大丈夫よ、ちょっとヘマしたけど…それよりルイズ、悪いけどあれ持って下がってて頂戴。」
ミントはデルフリンガーを地面に突き立ててデュアルハーロウを両手に持ち直すと土砂の跡を指さした。
「ちょっ…俺の出番終わり!?」
そこには土砂から紅蓮の宝珠の箱が僅かに顔を覗かせていた。
「嫌よ!私は貴族よ、貴族は敵を前にして背を向けたりしない、私も戦うわ。」
そう言って杖をゴーレムに向けて構えたルイズ。しかしその射線上にミントの背が割り込んだ
「駄目よ、こっからはあたしも本気出すから巻き込みかねないからね。ご主人様語るなら自分の使い魔の実力位、ふんぞり返って空から見てなさい。」



結局少々渋った物のルイズは素直に紅蓮の宝珠の箱を回収してタバサ達と合流した…
ゴーレムが再び起き上がって来た事に咥え、ミントが自分から自分の使い魔と言っていた…
本来王女である筈のミントにそこまで言わせてしまった以上最早ルイズも自分の役割を果たすしか無い。






「さて、行くわよ土くれ。」


ミントはデュアルハーロウを構え呟くと、破壊の魔法『黒』の光の螺旋を廻し始めた………
328デュープリズムゼロの人 代理:2012/03/11(日) 00:51:42.71 ID:PyGddkzm
以上で第10話終わりです。
今後すこしづつ仕事が忙しくなるのでペースが落ちてくるやもです。

それと本スレの方でデュープリズム買ったよと言っていた方々。作者凄く嬉しかったです。
それでは代理さん申し訳ないですが投下お願いします。




ここまで、代理終了
代理スレ>>709-710のダブっていた分は省いてます
329名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 07:24:50.01 ID:bNilfkO1
投下と代理乙!
330名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 09:43:43.05 ID:hWLgiVS9
お二人とも乙でした。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 10:02:49.93 ID:ImPAIhtk
なぜかしたらばに書き込めない…そんな訳でこっちで失礼します、すごく今さらですけど

フェイルーンからハルケギニアにプレーンシフトした、
コボルドのディーキンの作者さん、第三話乙です。
フェイルーンはとても好きな世界なので、丁寧に説明してくれてありがたいです。

ちっとも知らなかったけど、コボルドがドラゴン・ディサイプルになってるなんて!
皆に軽視され見下されるコボルドの実力の一端が見れるシーン、楽しみにしてますよ。
あの世界のマジックアイテムをコルベール先生が見たら狂喜するだろうなあ。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 10:34:46.04 ID:CASb6JYn
>>331
D&D3.xEだと、コボルドは種族自体にマイナスのレベル調整がかかる、ある意味優秀な種族ですよ。
つまり、高レベルのモンスターとして倒しても、はいる経験値が少ないという。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 10:53:44.92 ID:ImPAIhtk
>>332
D&D世界の住人は、というか冒険者はコボルドだゴブリンだって見下さないでしょうけどね。
あいつらキャラクタークラスで進化するからFFとかSWのようにはいかない。
ちなみにコボルドの脅威度は「NPCクラスのみを持ってた場合」−です。
専門の訓練を積んでソーサラーやバードになったコボルドはもはや脅威のレベルは他と変わらないという

ミーポも可愛かったけどディーキン可愛いよディーキン
334名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 11:12:16.27 ID:2HwDx7F6
スパーダさん、デュープリズムの人、代理の人乙!


俺も最近近所のゲーム屋でデュープリ探してるw
まだ見つからないけど
335名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 12:02:10.94 ID:DGRK0ldU
そんなあなたにPSアーカイブス
336ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2012/03/11(日) 12:43:37.14 ID:YqYGfo6X
皆さんこんにちは。ウルトラ5番目の使い魔、81話投稿開始します。
ほかの方と予約がかぶっていませんでしたら10分後、12:50にはじめますので、よろしくお願いいたします。

 第八十一話
 全速前進! 包囲網を突破せよ!!
 
 怪魚超獣 ガラン 登場!
 
 
 それを最初に見つけたのは、サハラ上空をパトロール中であったエルフの空中哨戒艦の一隻であった。
「艦長! 西方より、所属不明の船が接近してきます!」
 報告を受けた、艦長である空軍士官が望遠鏡を覗いて見ると、確かに西の空にぽつんと船らしき影が浮かんでいる。
「空賊船か?」
「まだ識別できません。しかし、こちらに向かってきているのは確実なようです!」
 見張り員からの報告で、その艦長は即座に戦闘態勢を命令した。
 この哨戒艦の主な目的は、国境付近に出没する人間の空賊を撃退することだった。人間は個人個人ではエルフの敵ではないが、
空賊はひそかに国境の内側に入り込み、ふいをついて大多数で商船や村を襲って略奪をおこなうために、こうして侵入を防止する
目的で、全長百メイル程度の小型ながら多数の哨戒艦が日夜警戒を続けているのだ。
 しかし今回は、艦長はいつもと違うものを感じていた。空賊であれば、哨戒艦の姿を見たら一目散に遁走を開始するくせに、
逆に接近してくるとはどういうわけだろう。しかも見つかりやすい真昼間に入ってくるとは、向こうの船長は哨戒艦に勝てると
思っている素人かと、彼は愚かな蛮人たちを討伐する自分の姿を想像してほくそ笑んだ。
 だが、彼の夢想はわずか数分後に日の目を見ることなく流産することとなった。
「な、なんだ? あ、あれは船なのか!?」
 望遠鏡の中で大きくなってくる船影に、艦長は我が目を疑った。今まで見てきたありとあらゆる国の船のどれとも似ていない、
帆もなければ竜に牽引されているわけでもない、船体はすべてが鉄でできているように黒々と輝いている。
 そして、全身の血の気が一気に引いていくのを感じていた彼らの眼前に、未確認艦はその恐るべき全容を現した。
「せ、戦艦……? か、艦長」
「信じられん……な、なんという巨大な」
 艦長の言語能力では、それ以上の表現をこの場ですることはできなかった。
 まるで島のように巨大な船体の上には、城のような塔が高々とそびえ、その周囲をすさまじい数の大砲が固めている。
しかも、艦首から艦尾にかけて備え付けられた、あの三連装砲塔の巨大さはどうか。
「ば、化け物め……」
 艦長は、自らの船があの巨大戦艦の前ではブリキの玩具も同然だと思い知らされた。先ほどの自信も雲散霧消して、
狩る側から狩られる側に回る恐怖感が全身を包む。だがそれでも、彼は軍人としての責務で自らを奮い立たせ、彼に出来る
唯一の合理的な命令を叫んでいた。
「警報! 周辺空域にいる味方艦すべてに警報を出せ! これは蛮人どもの挑戦だ! やつらいつの間に、あんな怪物を
作り出せるようになったんだ!」
 とてもかなう相手ではない。だがそれでも、エルフとして蛮人に背を向けるわけにはいかないという矜持が艦長を支えていた。
 味方が駆けつけてくるまでは、後退してつかず離れずをとりながら奴を見失わないようにするしかない。あの巨砲が一発でも
放たれたら、こんなちっぽけな哨戒艦は一瞬でバラバラだ。
 畜生! なんでよりにもよって、俺のところにこんな化け物が来るんだ。せっかく危険の少ない砂漠の国境警備につけたのに、
あと少しで配置交代で国に帰って妻や息子と会えたっていうのに……
 艦長の運命を呪うつぶやきは、誰にも聞こえることはなかった。軍人としての本能が、自分はここで死ぬのだろうと言ってくる。
 しかし彼が、運命の性質の悪いいたずらと、そんな心配が杞憂であったと知るには、あと少し時間がいったのである。
 
 
 そしてむろん、接近中の哨戒艦の姿は、未確認艦、すなわち東方号でも捉えていた。
「コルベール船長! 前方に艦影が見えます。エルフの哨戒艦です!」
 防空指揮所に陣取るギムリの声が、昼戦艦橋にいるコルベールの下へと届いて響いた。
 黄色い大地と青い空、見事に二つの原色に分けられた世界の上半分に、黒いしみのような点が浮かび、少しずつ大きくなってきている。
 倍率を上げた双眼鏡の中に映る、ドラゴンに牽引されて飛んでいる黒い亀のような鉄でできた船。木造で風力を頼りにして
飛んでいるハルケギニアの空中船とは、一段階違う次元にあることが明白なあれこそ、噂に聞くエルフの空軍に違いない。
「ついに警戒線に引っかかったな。まあ、別に戦争に来たわけではないのだから、ずっと見つけてもらえなかったらそれはそれで困るのだが」
「哨戒網の場所は、ルクシャナの言っていたとおりだったわね。まったくあの子も、自分の国の情報をよくもペラペラとしゃべれるものよねえ」
 艦橋で、船長のコルベールと副長役のエレオノールが緊張感を交えつつ、とうとう来るべきときがやってきたなと話し合っていた。
 国境であるアーハンブラを越えて、さらに東へと進路をとった東方号。ルクシャナからの情報で、この先に哨戒網が引かれて
いることを知っていたコルベールたちは、そのもっとも分厚い部分へと向けてやってきた。我々は逃げも隠れもしない、真正面から
ぶつかっていくという、それは彼らの決意の表明だったのだ。
 すでに東方号の船内では戦闘態勢が敷かれ、水精霊騎士隊と銃士隊はそれぞれの持ち場で構え、才人もゼロ戦をスタンバイさせている。
 ティファニアなど、一部の非戦闘員は艦橋直下の司令塔に集められて待っている。ここは最大五百ミリもの分厚い鋼鉄で覆われており、
いかなる砲弾でも貫通することはできない上に、ルクシャナが精霊魔法で守っているために破片が内部に入ってくることも完全に
シャットアウトされていた。
 しかし、自分たちが招かざる客であるということを自覚しているコルベールは、相手がちっぽけな哨戒艦であるとて見くびってはいなかった。
「速力を落とせ、向こうに敵対の意思がないことを伝えるんだ」
 火蓋を切ってしまっては、交渉の余地が激減してしまうことは全員が承知している。コルベールは、どんなことがあっても自分から
武力を行使するつもりはなかった。
 プロペラの回転が弱まり、東方号の行く足が弱まると、哨戒艦も同じ速度をとって距離を一定に保った。それを見て、コルベールは
船は小型ながらよく訓練されたいい船だと褒めた。この場合の船とは、艦長から兵卒までの乗組員全般を指す。船とは一種、人体の
縮図とも呼んでもよい存在で、頭脳である艦長と手足となる兵卒のどちらが不健康でもうまく動きはしないのだ。
「諸君、よく見ておきたまえ。あれがエルフだ、あれだけのことができるものが我々の相手となることを、よく覚えておきたまえ」
 コルベールは船体各所に向けて、そう伝えた。それは、いまだにエルフとは恐ろしい先住魔法だけが怖い野蛮な種族だという
認識を残している生徒たちや、銃士隊員へ向けてのいましめであった。エルフは決して先住魔法だけの相手ではない、自分たちと
同じように訓練を積んでやってくるからこそ強いのだと。
 しかし、コルベールは敵愾心を駆り立てることまでは望んでいない。息を呑む艦内に向けて、もう一言付け加えて伝えた。
 
「よって、彼らが永遠の敵となるか、それとも我々の友となるかは諸君の双肩にかかっている。全員、使命を胸に努力せよ!」
 
 艦内から、いっせいに歓声が上がった。水精霊騎士隊の少年たちも、銃士隊の彼女たちも気合を入れなおした。
 そうだ、自分たちは戦いに来たわけではない。ともすれば戦いに傾きがちな心に歯止めを利かせて、もう二度と二つの
種族が争わずにすむようにするために命を懸けに来たんだった。
 
 だが、東方号の機運とは別個に、この船の絶大な存在感はエルフに無視されない以上の効果をすぐにもたらした。
「せんせ、いえ船長! 二時と十時の方向から、新たな艦影が見えます」
「あの哨戒艦が仲間を呼び寄せたんだな。さあて、彼らに道案内を頼めればいいんだが」
 コルベールは禿げ上がった頭をハンカチでなでて脂汗をぬぐった。ここから、東方号の一挙一投足、すなわちコルベールの
指示が死命を決することになる。彼は魔法学院の授業で見せるときのような、陽気な先生というイメージは捨てて、接近してくる
哨戒艦隊を見据えながら次の指示をくだした。
「速度さらに半分! 鐘楼に白旗を掲げよ! 哨戒艦隊に旗艦はどれかと訪ねてくれ」
 指示は、コルベールを信頼する生徒たちによって違えることなく遂行された。彼らも本職には劣るとはいえ、この一ヶ月
みっちりと訓練に励んで腕は上げている。手旗信号はエルフの艦隊の方式どおりに間違えられずに振られて、中央の
哨戒艦から手旗信号で返信があった。
 が、喜ぶには早い。哨戒艦隊はさすが空賊を相手にしてきただけあって、勇猛さとなにより蛮人嫌いを持ち合わせており、
こちらが出した交渉を求めるという求めかけにはなかなか応じようとはしてくれない。『我に交戦の意思はなし』と、何度も
信号を送るがエルフの警備艦隊は砲門を全開にし、真っ向きって東方号の進路をふさぐ構えを見せている。
 向こうから送ってくる信号は、『停船せよ』の一点張り。
「ミスタ・コルベール、ここはいったん止まって向こうの司令官に従ってみてはどう?」
「そうだな、力づくで突破しても彼らの敵愾心をあおるだけだろう。どちらにせよ、我々から手を出すべきではないだろうな」
 向けられた砲門の数に、虚勢を張りつつもおびえた様子が垣間見えるエレオノールの言葉にコルベールは従った。彼とて、
船長になったつもりはあっても艦長になった覚えはない。東方号は戦艦としての形はしていても、彼の中ではあくまで探検船なのである。 
「両舷停止! 手旗信号でそちらの指示に従うと伝えてくれ。ただし、本船周辺一千メイル以内への接近は禁ずると厳命するんだ」
 コルベールの指示は的確に実行され、信号台にいる銃士隊から旗艦とおぼしき船へと信号は送られた。
 エルフの艦隊は、東方号との距離およそ二千メイルで停止した。おそらくそれが彼らの大砲の有効距離であり、かつ彼らの
勇気の限界点といってもよかった。ハリネズミのように大小すさまじい数の大砲を装備した巨大戦艦に、好んで肉薄しようと
考えるくらい蛮勇を備えた艦長は人間もエルフも問わずにそんなに多くはない。
 ただ、冷や汗をぬぐったのはむしろコルベールのほうであった。東方号は圧倒的な威圧感に比して、使える武装は本来の
一パーセントもない無防備状態だ。戦闘に突入したところで、応戦できる兵器はほとんどなく、さらに搭乗しているのも
水精霊騎士隊と銃士隊ほか百名にも満たない少人数……接舷されて乗り込まれたら、強力な先住魔法に太刀打ちする
術はない。
 唯一、ルイズの虚無魔法、あのエクスプロージョンでもフルパワーで撃てば勝てるかもしれないが、それでは虚無を悪魔と
恐れている彼らエルフを逆上させてしまうかもしれない。
 虚無は使えない……そのことはルイズも承知しており、決して使わないと自らに誓約をかけていた。
 
 艦砲戦、白兵戦において両手を縛られているも同然の状況では、戦えば手もなく捕獲されてしまうのは火を見るよりも
明らか。全長四百二十メイルの超巨大戦艦がほぼ非武装で、数えて足りるような人数でやってくるというような非常識に
気がつくような変人がエルフにいなかったのが幸いだった。
 
 東方号から、エルフの最高責任者との会談を求めていると伝えると、問い合わせてみると返信があった。
「どうやら、無下にはしないでいてくれるみたいね」
「無言の威圧が効いたらしいな……従来のハルケギニアの船だったら、戦列艦でも即座に追い払われていたろうな。
しかし本音を言えば、こんな力を背景にした砲艦外交の真似事はしたくなかったのだが……」
「ミスタ・コルベール……」
 うまくいきつつあるというのに憂鬱そうなコルベールの横顔を、エレオノールは怪訝そうな目で見つめた。学者として、
付き合いをはじめてしばらく経つが、この男の内面はどうにも理解に苦しむ。ハルケギニアの普通の貴族であれば、
勇敢さや、戦って勝つことが至上の名誉であろうというのに、彼は何にしても誰かに『勝とう』という意思がまったくと
言っていいほど感じられず、だからといって無気力というわけではない。
 強いて言うなら滅私奉仕の強烈な平和主義者……いったい、なにが彼をそこまで駆り立てるのだろうか? 疑問は
尽きないが、彼は自分の過去については語りたがらず、彼は貴族としての家や土地といった財産はすべて処分していたので
過去の履歴を追うこともできなかった。
 わずかな手がかりは若い頃に軍にいたということだけ……他人の過去を詮索することは無粋であるとエレオールも
思うのであるが、なんとなく彼の自分に強要しているような優しさが、コルベール自身をいつか泥沼に追い込んで
いくのではないかと一抹の不安も覚えるのであった。
 
 空中に静止する東方号と、それを包囲するエルフの艦隊。
 どちらも相手が仕掛けてこないかと、止めることができない冷や汗と心音の高鳴りと戦う時間が続いた。 
 そうして何時間かが過ぎたころである。東の空に、新たな艦影が多数見受けられた。
「見張り所から報告! 前方に、新たな艦影が多数! 先生、あれは戦艦です!」
「なにっ!」
 確かに、東の空に新しい艦影が複数現れていた。相当に速力を出しているらしく、みるみるうちに近づいてくる。
哨戒艦の何倍もある無骨な船体の上には、連装の砲塔が複数ついており、一見しても主力艦だということがわかった。
しかも並の数ではない、大型の戦列艦の後方からは巡洋艦や駆逐艦艇が続いており、上空を防護する竜騎士も
百騎はかたくない。
「ありゃあ……あれは、空軍の主力機動部隊じゃないの。全滅したって聞いてたけど、まだこれだけ残ってたのねぇ……」
 司令塔の装甲の隙間からわずかに見える外を眺めていたルクシャナが、これはまずいわねとつぶやいた。
 これは本国の第二戦隊に属する艦隊で、聖地でのバラバとの戦闘には不参加だったために、幸運にも難を逃れていた。
そのせいもあって、現状エルフの艦隊の中では最強のものである。彼らは、激減してしまった戦力の再編に全力を
尽くしていたが、蛮人の戦艦が接近中であるという報を訓練中に受けると、はじかれたように飛び出てきたのだ。
 艦上で見張りについているギムリたちや、蛇輪を握っているレイナール、それにエレオノールは無意識につばを飲み込んだ。
大きさは東方号より数段劣るとはいえ、数十隻の戦艦の威圧感は半端なものではない。向こうは哨戒艦隊を下がらせて、
東方号を包囲するように左右に陣形を組んできた。
 コルベールは双眼鏡を睨んだまま微動だにせず、エレオノールは逆にそわそわと落ち着かない。
「これは、お出迎えにしてはずいぶんと派手ね。パ、パーティのお誘いにしては少々にぎやかすぎる気が……」
「いや、砲門をすべてこちらに向けている。どうやら破壊する気のようだ」
「へぇ……ええっ!」
 エレオノールが絶叫したと同時に、エルフの艦隊は砲撃を開始した。たちまち、砲煙が巻き上がって多数の砲弾が
東方号の周囲を通り過ぎていく。
 東方号の巨体にも関わらずに命中弾はない。しかしこれは相手の腕が悪かったからではない。いきなり全砲門を
発射したのでは、どの弾を自分が撃ったのかわからなくなってしまい、どう撃てば当たるのか照準が定まらない。
そのため最初はあえて少数の砲を順繰りに撃ち、敵との距離を正確に測るのが効率的な射撃方法なのだ。
 つまりは、この後に本格的な攻撃が始まる。コルベールは、うろたえるエレオノールに「落ち着きたまえ」と告げると、
「仕方がないな……だが、あまりなめられないように、ある程度のデモンストレーションは必要か……」
 うかない顔は消えない。しかし、自分たちも相手も聖人君子ではありえない以上、少々の荒事は必要かと、
コルベールは伝声管の先の機関室に向けて、彼らが待ちに待っていた命令を伝えるために叫んだ。
 
 一方で、コルベールとは対極の思考と感情を持つ者が、第二艦隊旗艦のブリッジにいた。
「汚らわしい蛮人どもめ! 貴様らなぞにサハラの地は一歩も踏ませんぞ。どんなに大きかろうと、所詮はただの一隻。
我が艦隊の集中砲火を持って、空の藻屑になるがいい!」
 いきり立つエルフの艦隊司令は、なかば正気を失いかけた顔で叫んでいた。第一艦隊の全滅で、本国艦隊の
総司令官になった栄誉とプレッシャー、人間への偏見と自分の種族の優越感などが混ざり合い、手柄を上げなければと
焦っていたところに飛び込んできた敵が、彼に本来持っていたはずの冷静な判断力も失わさせていた。
「撃て! 木っ端微塵にしろ!」 
 一隻当たり、大小合わせて十五門の大砲がいっせいに放たれる。ハルケギニアの軍艦に比して、エルフの軍艦の
砲は、数は少ないものの、口径が大きい上に砲身にライフリングが刻まれていて命中率や射程も段違いに高く、
一門でハルケギニアの大砲の十数倍の価値を持つと言って過言ではないのだ。
 それが数百発、静止目標のために命中率を二十パーセントとしても、山一つ崩すほどの火薬と鉄量が降り注ぐことになる。
 放たれた砲弾は、射手の腕のよさを証明するように司令官の期待以上の命中率を記録した。敵艦は炸裂した砲弾の
起こした煙で、巨大な黒雲と化したように見えなくなった。弾着は、少なく見積もっても百発はくだらないだろう。
「思い知ったか蛮人どもめ! バラバラだ、わっはっはっはは!」
 司令官は、蛮人の最新鋭艦を撃沈した功績で勲章をいただく自分の栄光を思い浮かべて悦にいった。
 だが、風に流された爆煙の中から現れたのは、何事もなかったかのように浮き続けている敵艦の姿だったのだ。
「馬鹿な! あれだけの砲弾を受けてもビクともせんというのかぁ!?」
 司令官は、幻でも見せられているのではないかと自分の目を疑った。しかし当然、東方号はいかなる魔法によっても
守られてはいない。東方号を守ったのは、大和から受け継いだ強靭な防御力のみである。
 戦艦には、どの国が定めたわけでもないが自分の主砲と同等の攻撃にまで耐えられるように装甲を張るというのが、
第二次世界大戦までの国際常識になっていた。すなわち、大和型戦艦の船体を持つ東方号の装甲を打ち抜くには、
大和型の持つ四十六センチ砲以上の破壊力を持ってしなければ不可能ということになる。
 むろん、全体に装甲が張られているわけではないので、急所へのラッキーヒットもあるし、よほどの至近距離からなら
口径の劣る大砲でも撃ち抜ける可能性はある。が、そのどちらをおこなうにもエルフ艦隊の攻撃力は及んでいなかった。
いくらエルフたちの技術がハルケギニアよりは優れているとはいえ、大和型の四十六センチ砲の持つ、三十キロメートルも
離れた距離から、厚さ四百ミリもの鋼鉄をぶち抜く破壊力は想像を大きく超えている。
 砲弾は頑強な装甲に阻まれて、一発残らず塀に投げつけられた卵も同然に砕け散り、東方号の格納庫内で砲弾が
跳ね返っていく音を聞いていた才人は思わずガッツポーズをとって叫んでいた。
 
「メイドイン・ジャパンをなめるなよ! そんな豆鉄砲で大和の装甲を撃ち抜けると思ってるのかあ! はっはっはっはっ!」
 
 元来ミリタリーマニアの気がある才人は高らかに笑って、ゼロ戦の上で胸を張っていた。
 そんな才人を見て、ルイズは冷めた態度でため息をつく。しかしこれは女にはわからない男のロマンの領域、日本の
一般的な男子であれば、誰しも戦車や戦闘機のプラモデル、またはロボットやヒーローのおもちゃで時間を忘れて遊んだ
思い出があるだろう。まして、戦艦大和といえばどんなおもちゃ屋にも絶対ある永遠の男の船なのである。
 
 圧倒的な防御力でエルフたちの度肝を抜いた大和こと、東方号。
 だが、コルベールは自分の船を過信してはいなかった。敵弾の百発中九十九発を跳ね返すことができたとしても、
むき出しの水蒸気機関や艦橋に命中したらどうなるかわからない。 
 この艦隊の司令官は聞く耳を持ってくれないか……ならば、エルフの本拠地まで一気に行くまで!
 そのとき、コルベールが機関室に指示した命令が動き出した。四基ある水蒸気機関が轟音を上げて動き出し、東方号は
ぐんぐんと速度を上げ始めた。
「レイナールくん、全速前進! この包囲網を一気に突破して、そのままアディールを目指すぞ!」
「アイ・サー! 今なら、アディールはがら空きですね。ようし、かっ飛ばすぞぉっ!」
 コルベールの放った、これまでのうっぷんを晴らすような爽快な命令に、普段は大人しめな印象を表しているレイナールも
意気を上げて叫んだ。武器は使えないとはいえ、ようやくこの東方号の真価をエルフたちにお披露目することができる。
 四基あるエンジンから轟音と、石炭を燃やす黒煙をいっぱいに吹き上げて加速していく東方号。その轟々たる容姿に、
第二戦隊のクルーたちはさきほど砲弾をすべてはじき返されてしまったこともあって、この世ならざるものを見ているような
本能的な恐怖感を覚えた者も少なくない。
 加速度を増していく東方号は、第二戦隊の次斉射をかわして包囲網からの脱出を図り始めた。しかし、第二戦隊に
属するエルフたちも鍛え上げた船乗りであることは変わりない。一時狼狽した艦隊司令も、副官にとりなされて落ち着きを
取り戻し、陣形を再編成して包囲網を再構築しようとしてきた。
「こちらの加速に追いつけなくなる前に頭を押さえようという魂胆か、優秀だな彼らも」
 エルフの軍人の錬度はやはりかなり高い。コルベールだけでなく、ミシェルたち銃士隊も感心して、水精霊騎士隊の
少年たちに、「あれが軍人というものだ。少しでも早く一人前になりたいと思うなら、あの光景をわすれないことだ」と、
諭していた。
 前面に展開し、艦の壁を持って行く手を阻もうとする第二戦隊に対して、東方号は速度を緩めずに突き進む。その
加速力の速さは完全にエルフたちの想定を超えていた。艦隊の大半は的の巨大さにも関わらずに砲の照準が追いつかず、
進行方向にある数隻のみが散発的に撃っているが、まるで通じずに敵艦はどんどん近づいてくる。
「うわぁっ! ぶ、ぶつかるぅ!」
 すでに包囲艦隊との距離は一千メイルを切った。エルフたちの目には、東方号の艦首に輝く黄金の紋章もはっきりと見えている。
 このままでは激突する! 避けようがない!
 だがそのとき、コルベールは待っていたタイミングが来たと叫んだ。
「今だ! 上げ舵二十、最大戦速!」
 東方号の艦首が天を向き、エルフたちの目に東方号の赤く塗られた船底がいっぱいに映ってきた。そのまま東方号は、
大波を飛び越える大鯨のようにエルフ艦を乗り越えて、名前の示す東方へと全速力で駆け抜ける。
「包囲網突破! ようし、このまま振り切るぞ!」
「まだだ! 奴ら竜騎士を出してきたぞ!」
 歓声をあげたレイナールをコルベールが制した。エルフ艦隊は後方に置き去りにし、ほとんど無視して構わないが
竜騎士は別だ。一個艦隊に収容されている分だから数もすさまじく、さしもの東方号の速力でも振り切れない。
甲板や見張り所からはギーシュやギムリが応戦してもよいですかと尋ねてくるが、コルベールの答えは当然否だった。
下手に刺激して乗り込んでこられたらかなわない。
 かといって、このままズルズルと彼らを引き連れたままアディールにまで行くわけにもいかなかった。時間が経てば、
彼らはまったく攻撃してこない東方号を不審に思って乗り込んでくるかもしれない。そうなったら終わりだ。 
 しかし、運は東方号に味方した。望遠鏡で前方を監視し続けていた銃士隊員が、前の空に広がる黄色い壁を発見したのだ。
「艦橋! 前方になにか、黄色い大きな雲が広がってます。このままだと、あれに突っ込んでしまいますよ!」
「黄色い雲? いや違う! それは砂嵐というやつだ。ようし都合がいいぞ、あれに飛び込んで追っ手を撒いてしまおう」
「ミスタ・コルベール! それは危険じゃないの!」
「このまま竜騎士に追われ続けているほうが危険だよ。私も文献でしか聞いたことはないが、あの中は相当過酷な
環境のはず。いくら精霊の力に守られているエルフといえども追ってはこれないだろう」
 選択の余地はなかった。コルベールの決定は即座に全艦に通達され、艦上に出ていた人間はすべて艦内に飛び込み、
扉や舷窓もひとつ残らず厳重に封鎖された。さらに、水蒸気機関も吸気から砂を吸い込んでは損傷してしまうので、
緊急停止の後に吸気口が閉鎖されて、推進は重力制御に切り替えられた。
「全員覚悟しろ、突っ込むぞーっ!」
 進路を変えることなく、東方号は砂嵐の中へと突入していった。エルフの竜騎士たちは、巨大な砂嵐を前にしてうろたえている
隙に敵艦に飛び込まれてしまって、なすすべなく引き返していくしかなかった。
 だが、砂嵐に突入した東方号を待っていたのは想像を絶する世界だった。たちまち、窓ガラスは太陽光が消えて真っ暗になり、
数億という砂粒が激しくぶつかってきて、視界はほとんどゼロになった。
 もはや、磁石の示す方位以外になにも頼れるものはない。目も耳も塞がれてしまった東方号は、ただひたすら東へと
ゆっくりと進み続け、やがて一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、不安にかられる皆をよそに、外の景色は少しも変わりなく続いた。
 
 けれど、終わりはあっけないほど簡単に訪れた。前ぶれなく視界が晴れ、また青い空と黄色い大地の二原色の世界が戻ってきた。
「抜けた……砂嵐を抜けたぞぉーっ!」
 黄色い地獄に耐え続けていた少年少女たちは、それだけで大きな声をあげて喜び合った。
 周りを見ると、エルフの艦隊や竜騎士の姿はない。さすがの彼らも、あの規模の砂嵐に突入するのはためらったようで、
迂回して追って来るとしたら東方号との速力差を考えて、追いつかれる心配はまずないだろう。
 
 あとはエルフの首都アディールまで一直線だ。主力艦隊が後方に置き去りになっている今、脅威になるものはない。
 
 ところが、砂漠の先にまたも艦影が現れたので、艦内は再度緊張に包まれた。
 なのだが……接近してくるにつれて、それが単艦で、しかも客船らしいことがわかってきた。船体はそこそこ大型ではあるが、
装甲は張られておらずに、牽引する竜の数も少ない。さらに近づいてくると、マストには白旗が掲げられている。
「戦わない……のか?」
 先に袋叩きに近い形で撃たれているので、警戒を解かずに東方号は接近を続けた。
 が、緊張する艦橋に、伝声管で直下の司令塔からルクシャナの慌てた声が飛び込んできたことで、すべての疑問が解消することとなった。
「ミスタ・コルベール! あれちょっと、大変なものが来ちゃったわ! あの船、ネフテスの紋章を掲げてるわ。あれが許されるのは、
ネフテスの統領の座上する船だけよ」
「なんだって! ということは、あれに乗っているのは……」
 エルフの王様!? と、言いかけてコルベールとエレオノールはとっさに口をつぐんだ。
 サハラに行くに当たって、ルクシャナから注意されていたいくつかの事柄のひとつに、エルフの統領を王と呼んではいけないということがあった。
血統での王位継承を神聖なものとしているハルケギニアと違って、エルフは入れ札、いわゆる選挙で指導者を選出する方法をとっている。
権力の世襲を愚策としているところでも、人間とエルフの間の価値観の違い、すなわち分かり合えない一端があった。
 が、驚いている時間はなかった。ルクシャナの言うとおりだとしたら、これは大変な事態である。
 すぐさま、全艦にそのことが伝達され、手旗信号によってこちらの来訪目的が向こうに伝えられると、接舷許可が求められて了承した。
 どうやら、本当に戦う意思はないらしい。コルベールはルクシャナからの注意事項をあらためて全員に徹底するように指示した。
「全員、戦闘服から礼装に着替えておくように。我々が、人間社会の代表だということをくれぐれも心に止めておいてくれ」
 だまし討ち、という考慮は最初からない。危険かもしれないが、エルフが自分たちの旗を使っての罠という下劣な手段を使う
種族ではないだろうという、これは一種の賭けだった。外れた場合は……エルフはしょせん、そんな器しかない連中だったというしかない。 
 だが、そんな心配は無用のものであった。空中に静止した東方号とエルフの船は舷側を接して、互いの船がロープで固定されると、
二隻の間に橋が渡された。互いの船のクルーが緊張した面持ちで整列する前で、その橋を渡ってまずやってきたのは、才人やルイズ、
特にルクシャナにとってはよく見知った顔だったのだ。
「叔父さま!」
「久しぶりだな。ルクシャナ」
 長い金髪とすらりと整った目鼻立ち、エルフの中でも別格の存在感を持つ彼は、かつてアーハンブラ城で対峙した、あの
ビダーシャル卿その人であった。彼は場もわきまえずに飛びついてきたルクシャナをなだめて離すと、彼にとっては一番の
重要人物であろうルイズを見た。
「さて、お前も久しぶりだな、シャイターンの末裔よ」
「ええ、ご無沙汰ね。一応心配してたんだけど、どうやら無事に帰りつけていたらしいわね」
 いきなりの憎まれ口の応酬戦をはじめたルイズに、周りは冷やりとなるがビダーシャルは知れたものだったらしい。気にした
様子もまるで見せずに、一同をざっと見渡すと、再びルイズに向かい合った。
「とりあえずは、我が姪が世話になったことに礼を述べておこう。こんなものでも、心配はしていたものでな」
「どういたしまして、生活費を請求する気はないから安心していいわ。それにしても、彼女ってあなたたちの前でもあれなのねえ……」
 やや呆れがちなルイズとビダーシャルの視線の先では、久しぶりの故郷のものに触れてはしゃいでいるルクシャナの姿があった。
久しぶりに里帰りできてうれしいのはわかるが、この中で唯一緊張感がない様子でよく目立つ。見ていたら、ひとりの青年エルフが
たまりかねたように駆けてきて、なにやら怒鳴っているようだがルクシャナはこたえた様子は微塵もないようだ。
 会話の内容は、「あらアリィー、あなたも来てたの」「ルクシャナ! 君がひとりで蛮人の世界に残ったって聞いて、ぼくがどれだけ」
「あーそういうのはいいから、迎えに来てくれてありがと、シャッラールは元気?」「ごまかさないでくれ! まったく君は昔から……」
ざっとこんな具合である。
 ギーシュたち水精霊騎士隊の少年たちは、”ああ、あれがミス・ルクシャナの婚約者だな。お気の毒に……”と、合点して、
切ない気分になった。男という枠にはまりきらない女に惚れた男は大変だ。しかも互いに美男美女だから、言い争っているのが
非常にこっけいに映る。ビダーシャルも、さぞ胃を痛めたことだろうて……
 しかし、思いもかけない雑劇はそこまでだった。ルイズに代わって、代表者としてコルベールとエレオノールが前に出て、
コルベールは名乗りを、エレオノールは再会のあいさつをして、ビダーシャルはうなづいた。
「了解した。ようこそサハラに、とは言えないが、わざわざの訪問ご苦労だった。諸君に戦意がなければ、我々も手を出さないことを
誓約しよう」
「感謝します。ところで、代表者はビダーシャル卿、あなたということでよいのですかな?」
「いいや、私はただの護衛役……安全確認のために、先に来ただけのことだ。話は、それにふさわしい人とするがいい」
 表情を変えることなく言い、ビダーシャルが一歩退くと、数人の騎士に護衛されて、ひとりの老エルフが東方号に渡ってきた。
とたんに、緩みかけていた空気が引き締まる。よほどに鈍い愚か者でなければ、雰囲気で察することができるだろう。
 名乗りは通過儀式でしかなかった。ネフテスの統領、テュリュークの登場である。
「まずは、遠路はるばるよく来なさったな。人間諸君、長旅わざわざご苦労じゃった」
「恐縮です。しかし、統領閣下自らがお出迎えしてくださるとは意外……いいえ、光栄のいたりです」
「なんのなんの、招かざる客とはいえ、単独で敵地に乗り込んでくるような勇気ある者たちへの敬意を忘れんほど、我らは
礼を失してはおらんつもりじゃ。まあ、血気にはやった若い衆がやんちゃをしでかしたようじゃが、それはお互い様ということで
水に流そうではないか」
 かっかっと、快活に笑ったテュリュークに、人間一同は釣られて頬の筋肉を緩めた。
「わかりました。我々こそ、突然押しかけた無礼をお詫びいたします」
「なんのなんの、諸君らのことはビダーシャル殿からおおかた聞いてある。君たちもすでに知ってのことと思うが、ネフテスは
一枚岩ではない。しかし、わし個人としては諸君らを歓迎する。この出会いを、大いなる意思に感謝しよう」
 テュリュークは、人間社会の慣習に従って握手を求めてきて、コルベールはそれに応じた。すると、人間側から誰が
はじめたわけでもなく拍手が起こり、場はある程度の和やかさに包まれた。テュリュークも人懐っこそうな笑顔を浮かべて、
緊迫した空気に包まれていたエルフ側も、やや緊張を解いたように思える。
 それにしても、エルフの指導者ということで、マザリーニ枢機卿のような厳格そうな人柄を想像していたのに、どちらかといえば
オスマン学院長に雰囲気が近い。が、それでもこちらのことをきちんと人間と呼び、対応の仕方も予習してきた前準備の適切さ、
場の空気をいつのまにか自分のものにしてしまったところには老獪さ、上に立つものの資質を感じさせられる。
 最初があれだったので交渉に持ち込むことすら困難かと思っていたが、もしかしたらこれならば……
「テュリューク統領閣下、我々はトリステイン王国のアンリエッタ次期女王陛下よりの使者としてまいりました。願わくば、
対談の席を設けていただきたく存じます」
「うむ、我らとしてもなんらかの形で君たちの世界との窓口はほしいと思っていた。もはや、サハラにも迫り来ている危機は、
我らだけで解決しえるものではないからのう」
「それでは……!」
 コルベールは喜色を浮かべた。しかしテュリュークは、事はそれほど楽ではないと首を振った。
「待ちたまえ、話すべきことはそれこそ山のようにあるだろうが、我々にはなにも準備らしい準備はないのじゃ。わしは君たちの
世界の『王』とは違って、絶対的な支配者というわけではない。議員たちの総意によっては命令の拒否もされるし罷免もある。
ここに来ておること自体も、ひとつの賭けなのじゃよ」
「では……」
「ははっ、そう慌てなさるな。わしとて、なんの勝算もなく賭けに出るほど無謀ではない。さっき言ったとおり、おおまかな
そちらの事情はビダーシャル殿から聞いておる。どうやら、シャイターンの末裔たちも来ておるようじゃな。ふむ、思っていたよりも
若いのお……」
 テュリュークはあごに手を当てて、ルイズと、次にティファニアを見た。若い、と言ったのは本音だったようで、視線は普通に
意外そうな眼差しになっている。ほかのエルフたちも、彼らのイメージしていた『悪魔』のイメージとはかけ離れていたのか、
半信半疑といった様子で二人を交互に見ていた。
「……」
 ルイズは毅然とした態度で視線を跳ね返し、ティファニアはおびえた様子で才人の影に身を寄せている。
 特にティファニアはハーフエルフということで、見られる視線の冷たさに必死に耐えているようであった。テュリュークの手前、
事前に説明もあって自重しているのだろうが、なにもなければどうなることか……しかし、その誤解を解くことも、今回の旅の
目的のひとつなのだ。でなければ、ティファニアはいつまでも誰かの陰でおびえて生きつづけなくてはならないだろう。
 問題は山積し、どれから片付けていいか、正直誰にもわからない。
 だが、テュリュークは無為にここに来たわけではなかった。
「諸君、そこで私から提案があるのじゃが、これから私について、ある場所に来て欲しいのじゃ」
「ある場所? アディールではないのですか?」
「おいおい、こんなすごい船でいきなり乗り込んだらパニックになってしまうわい。エルフのほとんどは、蛮人を……
特にその中から生まれるというシャイターンの末裔を恐れ、憎んでいるということを知っていてほしい」
「テュリューク統領、その言い方は少し……」
 コルベールは、横目でティファニアを見ながらテュリュークにわずかに抗議した。ティファニアは、今の言葉に強い
ショックを受けてしまったようで、才人の背中に顔をうずめて震えてしまっていた。ギーシュやモンモランシーたちが
なだめようとしているが、すぐに立ち直るのは無理だろう。 
「すまんのおお嬢さん、じゃが現実を受け止めるのが遅くなればなるほど、お前さんにはより酷なことになるじゃろう。
まさか、我らの血筋からシャイターンの一端が蘇ろうとは誰が予測しえたものか、我らにしても、想像力の限界とは
なんと浅いことなのよ……じゃがお嬢さん、お主に流れる血と力が、我らの恐れる悪魔のものであるのかそうでないのか、
確かめようとは思わんかね?」
「それって……どういう?」
「ここより南東……一切のオアシスなく、渇きの大地と呼ばれて近づく者のない砂漠の奥地に、大厄災の時代に
作られたと、極一部の者にだけ言い伝えられてきた遺跡がある。そこに行けば、謎に包まれているシャイターンの
正体のなにかもわかるかもしれん」
 それこそが、自分がやってきた本当の目的だとテュリュークは語った。
 ルイズたちにしても、シャイターン……つまり虚無については見逃せない問題である。六千年前に起きた、とてつもない
戦争のカギを握っていたのは、始祖ブリミルと彼の使っていた虚無にあったのは間違いない。それが現在の世界に
すでに大きな影響を与えている以上、虚無の秘密に迫れる機会は無駄にすべきではない。
 
 わずかな希望に賭けて、東方号は南東に舵を切った。
 目指すは、エルフでさえ生存を拒絶される乾燥と灼熱の大地。そこに何が待つか、今はなにもわからない。
 無人の地を目指す東方号を見送る者は天にも地にもなく、さえぎるものの一切ない空を東方号は飛び続ける。
 
 しかし、天でも地でもない場所に、東方号を狙いつける影がひとつあった。
 
 砂の大地の地下深く、広大な砂漠を縦横に走る巨大な地下水脈。そこには意外にも無数の生命が息づいていた。
 甲冑魚に海サソリ、このハルケギニアの海においても何億年も前に絶滅したはずの生き物が、タイムカプセルのように
生きたまま保存されていたのだ。
 その古代の海の中をとてつもない速さで泳ぐ異形の影。
 全身をうろこで覆い、鋭い鼻先で水を掻き分けて泳ぐ全長八十五メートルの怪魚。その泳ぐ速度はなんと時速三百ノットだ。
 東方号を追うように舵を切る、その正体は怪魚超獣ガラン。この地下水脈に生存していた古代魚を使って、ヤプールが
生み出した新たなる刺客である。
 いったい奴らはどこへ行ってなにをするつもりなのか? それを突き止めるべく、ガランはほかの魚を蹴散らして泳ぐ。
 まさかの地底からの追跡者に、東方号で気づいた者はいなかった。
 
 
 続く
347ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2012/03/11(日) 13:13:14.94 ID:YqYGfo6X
今週はここまでです。
新・東方号、せっかく作ったんだから性能のお披露目としてみました。まあ、攻撃受けて逃げただけなんですが、完成直後に
大艦隊と戦うのは、ある意味SFのお約束ですね。
しかし、古くは海底軍艦からして、空飛ぶ戦艦は男のロマン! 
さて、ビダーシャルも再登場して、サハラ編スタートです。ウルトラシリーズで砂漠といえば、ピンとくる方もいらっしゃると
思いますが、ここからは伏線大量回収でいこうと思います。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 13:20:20.45 ID:tdz0w3Si
乙っした
349名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 13:31:34.07 ID:meoHqk7j
ウルトラ乙
350名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 13:58:26.91 ID:UhagF/Cm

白旗=徹底抗戦てのが思い浮かんだ

本当に総攻撃をくらったでござる

先生! ウルトラで砂漠はやバイものが多すぎてわかりません
351名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 13:59:16.05 ID:/kD7k/3T
>347
乙。

ゾル大佐「ウチのかみさんがね……」
352名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 14:01:21.12 ID:/kD7k/3T
>350
ああ、そう言えば。
『バトルテック』だとただの白旗は一時停戦、白地に赤い×で降伏だったかな?
353 忍法帖【Lv=32,xxxPT】 :2012/03/11(日) 14:09:01.10 ID:aqab/SxV
>>350
バッフ=クラン乙
354名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 21:11:03.30 ID:+nbiLXSb
やめてー
イデオンはトラウマ抉られるから止めてー
355名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 21:24:58.63 ID:AGU0oTDh
TV終盤のソロシップの面々が召喚されると……自分たちの境遇を話して
この厄介な代物処分したいんで手伝ってくれと学園側に交渉とかかな?

バッフクランの連中相手にスペースランナウェイするよりは平民として暮らした方がマシだしな
356名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 21:59:46.42 ID:UhagF/Cm
虚無=イデオンメカ

バッフクラン=エルフ

そう考えると結構無駄な共通点があるな
357一尉:2012/03/11(日) 22:08:49.25 ID:aLg7/ac7
故人を召喚にするルイズ
358名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 22:32:58.36 ID:aciaJPFa
結局イデの掌の上でバッフクランがハルケギニアまでDSドライブしてきて
巻き添えが増えるだけなオチが見える
359名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/11(日) 22:58:22.77 ID:booLAvCX
>>350
水責めにすればお陀仏さ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 01:53:11.84 ID:MZPLUTTG
どいつもこいつも死ねばいい
人類さえ居なくなれば問題はすべて解決する
361名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 02:12:39.32 ID:BXaByA1V
って思うじゃん?
362名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 10:07:50.02 ID:a+OdYCOc
???「まだ俺が主役として召喚されてないなんて・・・地球人との間にこんなに考えの差があるとは思わなかった・・・」
363名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 12:25:34.34 ID:ZTpBC1+p
イデオンを召喚すればダイジョーブ
364名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 14:17:25.17 ID:vbS4mR7F
あー、まあスペリオルドラゴンか三国伝の四侯の武将でも召喚すればある程度なんとかしてくれるんじゃないかな?
365名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 14:35:16.51 ID:qvdM9VDM
しかし出てきたのはうっかりザクレロ
366名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 14:50:20.77 ID:MIjxQEfK
スペドラさんは鎧闘神の後別次元に旅立ってったからありだな
367名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 15:25:05.84 ID:vbS4mR7F
>>365
千生さん何してはるんですか?
368名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 16:19:30.90 ID:HlG/rA7i
コマンドガンダムもしょっちゅう異世界行ってるな
369名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 16:38:29.06 ID:t7qJYdj5
真・三國無双シリーズの関平を麦城で討死(史実は確か捕らえられて処刑だけど)直前に召喚
愛用の斬馬刀があればデルフの出番無いしなんだかんだで星彩一筋っぽいからラブコメにもしにくそうだけど
370名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 17:37:29.80 ID:a8ecZJ/O
黒王号を召喚、松風でもいいけど、主として背に乗せてもらうためのルイズの戦いが始まる
371一尉:2012/03/12(月) 20:23:11.71 ID:yNU337m0
間違えてB29の搭載にしている原爆を召喚にしてしまう。ルイズ
372名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 20:59:33.52 ID:ugl9CECs
>>369
無双か……
Zill Ollのネメア・ランガスター・ディンガルも無双OROCHI2から召喚とかも……
373名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 21:12:28.81 ID:EeBi7dGi
>>369
もともと自分の得物持ってるキャラだとデルフの扱い困るよな。デュープリズムの人も
悩んでるとか言ってたが、あれは愛用武器輪っかだし、新体操のフープ演技みたいに
体に纏わせるとかすればデルフと同時使用いけるんじゃないだろか? あるいは
ファンネルみたいに滞空させるとか地面這わすとか…機動手段としても使えるか?
しかしハーロゥみたいなのならまだしも、明らかにデルフより強力で、かつ腕が塞がる
武器持ってたりする場合は本当に使い道が見えなくて困る
374名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 21:28:41.03 ID:XBn93YG3
デュープリズムからの召喚がロッドだったら自分で武器作るから
正真正銘デルフの出番無くなるなwww
375名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 21:48:34.27 ID:ZMLmNhML
>>373
ある作品だと手加減用とかに使われていたな
376名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 21:57:55.54 ID:ka1hXHRT
ふとアーマード・コアのジャック・Oを召喚したら投下がある度に「遅かったじゃないか…」が支援代わりになるんだろうなw
377名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 23:06:21.47 ID:i62wRan2
>>373
得物が手元にない状態で召喚して、某元素に破壊されたデルフの憑依先にすればいい
問題は作品がそこまで続けられるかだが……
378名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 23:20:47.65 ID:osVYcqE7
逆に考えよう、別にデルフ使わなくても良いじゃん、と
379名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/12(月) 23:30:14.85 ID:iVselH+j
デルフは公式でもいらない子扱いがデフォだからな
380名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 00:17:16.76 ID:y+yA4xHA
死人のデルフはいい使われ方
デルフがデルフのまま動くSSってそう無いよね
381名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 01:00:01.56 ID:JAyV2sT/
アーク2のエルクとかなら、剣使えるけど愛用の武器はないしデルフが日の目を見れるぞ
ルイズとWエクスプロージョンを放つという胸熱展開も拝めるぜ
382名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 01:40:52.72 ID:8NauzRyw
デルフ「馬鹿な、俺は相棒の右腕だったはず」
ガンダ「私の右腕はここにある」ぽむ
383名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 01:58:04.04 ID:yLY2Qv6Z
アークザラッドとかなつかしす
384名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 02:10:32.68 ID:Utlpdl+F
エルクは確かに扱いやすそうだけど火属性だからなぁ
だからといってアーク2で虚無っぽい属性のキャラというとサニアかグルガになるし・・・
え?アーク?回復勇者を召喚したってしょうがないだろ
385名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 06:23:10.63 ID:ZMaehYx3
グルガ召喚とか面白すぎる

召喚の時点で出落ち
386名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 08:30:46.54 ID:CDFy8q/l
>>384
ヂークベック召喚とか……


エルクは色々チートレベルだけど不幸属性だからなあ…特に漫画版
相反する属性、性格のタバサにヒエン付きで喚ばせるのも面白そうかな?

不幸属性的には続編でポット出の女主人公にエルク寝取られるルートの有るリーザも中々だけど
387名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 08:53:01.50 ID:gjz2AnDg
>>381
ARC3だと、エルクは、炎の魔力を剣にして使ってるんだよね……
388名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 09:39:29.29 ID:JAyV2sT/
>>387
アーク3なんてなかった、なかったんだ!
389名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 10:15:13.99 ID:uN8jBxHu
>>384
アークさんは回復以外にもウィークエネミーというチート技がある
初回でラスダンに行けたのはあの技のおかげだ
これでガンダの武器補正と身体能力強化がついてきたら鬼だぞw
390名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 13:06:53.31 ID:ttMdhzaV
棒勇者さんが剣使うのは魔法使用のポージングのときだけや
391名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 14:36:39.28 ID:Utlpdl+F
>>389
ウィークエネミーは確かにチート技だが、相手の能力ダウンに頼る勇者ってお話的にはどうよ?
392名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 15:17:43.43 ID:bTBpGgFH
アレクはどうなんだ?
一応攻撃魔法も補助魔法もできるけど・・・
フォースリングとかインパルスボムとかは虚無に近いんじゃね?
393名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 16:47:42.33 ID:tHWZTy7K
>>382
どこのジャッカルだw
ダイナマイトで爆死させられるぞ
394名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 16:52:21.49 ID:SkGYqIl8
バンディット召還モフモフ
395名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 17:03:29.93 ID:3GgH2nJy
リーザ召喚して、使い魔の使い魔とかちょっと楽しそうだな
396名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 17:23:15.86 ID:SkGYqIl8
ナイフ+デルフの投擲つええ
397名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 17:53:06.21 ID:Ow+v2dTu
武器持ちキャラの武器にデルフが憑依するってのはどうかな、ロトの剣inデルフとか
非常にうっとおしがられるのは間違いないだろうがな…
398名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 17:59:20.32 ID:JAyV2sT/
>>395
『日替わり使い魔』みたいだけど面白そうだ
パンディットをはじめとした牧場のモンスター勢ぞろいだと壮観だな
399名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 20:01:59.92 ID:CDFy8q/l
使い魔的なの連れたのだと最近ならデジモンのキリハさん召喚とか面白そう
400名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 20:22:38.64 ID:yuAXToSf
>>363
つまりハルケギニア人が第6文明人と言う事だったと言うわけですね
401名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 20:25:59.10 ID:a90riXoy
避難所に代理依頼来てるぞ
402代理:2012/03/13(火) 21:13:54.83 ID:2BZvSmf3
【よい子は万引きなんかしちゃダメだぞ】

ルイズと才人は、虚無の曜日に才人の剣を見繕うために街の武器屋にやってきていた。

「しゃべる剣なんておもしろいじゃねえか。ルイズ、これにする」
 
 ふと見つけたインテリジェンスソードを手に、才人は楽しそうに言った。ルイズは、「えーっ、もっといい剣にしなさいよ」と言うが、手持ちが足りないためにそれ以上は言えなかった。
 ところが、二束三文になりそうなそんな剣なのに、店主はかぶりを振った。

「あー、悪いな坊主。その剣はちょっとダメなんだ」
「えーっ、なんでだよ。さっきこいつをいらないみたいに言ってたじゃんか」
「それはちょっと理由があってだな。つまり……」
 
 武器屋の親父は理由を説明しようとした。が、そのとき。
 
「親父! 万引きだ、弓矢が盗られたぜ!」
 
 突然デルフの声が響く。見ると、ひとりの男が980エキューとタグの貼った弓矢を万引きしようとしているところだった。
 盗人は気づかれたと思った瞬間、脱兎の勢いで出口に駆け出した。
 このままでは逃げられる。だが、そのとき武器屋の親父が!

「おのれ万引き野郎! ちゃんと金払わんのなら、仕方ない。死んでもらう!」
 
 なんと、武器屋の手からすさまじい光がほとばしる。
 
『武器屋ビーム!』
 
ドロボー「ぎゃあああぁーっ」クロコゲ

「ふぅ、またつまらぬものを撃ってしまった」
「これでわかったろ? おれっちが見張ってないと、この親父ぼーっとして、いつ万引きされるかわからねえからな」
「で、なに買うかい?」
「は、はぃぃ! こ、このシュペー卿の剣を! お代はローンでお願いしますう!」

以後、ふたりが二度とこの武器屋にくることはなかったという。
 
「今日も暇だなあ、デル公」
「うーん、なんか大切なことを忘れてるような気がするけど、まっ、いいか」


「ゼルダの伝説・夢を見る島」からラスボスより強い武器屋の親父、ほかのゼルダシリーズの武器屋はわからん。
403代理:2012/03/13(火) 21:17:00.12 ID:2BZvSmf3
代理終了。


なるほどこういう書き方もあるのねと小ネタの参考になりました。
404代理:2012/03/13(火) 21:23:40.35 ID:2BZvSmf3
あっ作者さんからのメッセージを忘れてたので、以下に。


本スレのデルフの話で小ネタ思いついたけど規制で書けないのでこっちで



以上、今度こそ代理終了です。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 21:57:10.65 ID:brU1hmF6


小ネタけっこう考えているんだが小ネタ連投したら怒られる?
406名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 21:58:54.02 ID:DF4qeAw7
>405
ネタとか出来上がりによる。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/13(火) 22:01:10.08 ID:SkGYqIl8
期待
408デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:15:25.71 ID:o4b9QJoD
これよりデュープリズムゼロ第十一話投下します。
409デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:17:34.65 ID:o4b9QJoD
第十一話『カノンオーブ』

ルイズはミントから預けられた紅蓮の宝珠の収められた箱を抱いてシルフィードの背中から森の中に潜んで居るであろうフーケをタバサ、キュルケと共に探していた。

「おい、嬢ちゃん見てみろよ、相棒の奴すげぇ事やってくれてるぜ!!」
「何よ?て言うかあんたもフーケ探しなさいよ。」
フーケの捜索に集中していたルイズの背中でついでに回収していたミントが使用を放棄したデルフリンガーがカチカチと鍔を鳴らす。
デルフリンガーの声にルイズはゴーレムと対峙しているミントへと視線を向けた。


「えっ?」

その視線の先にはミントは居なかった…
厳密にはルイズには見つける事が出来なかったのだ。
ミントの仕業なのかいつの間にかゴーレムの足下は真っ黒な煙の様な物で埋め尽くされ、
ゴーレムはその煙の中に残った右腕を突っ込んで闇雲にミントを探している様だった。



ミントはひたすら『ダークブレス』の魔法を撃ち出しながらゴーレムの周囲を走り回る。
紫電を帯びた暗黒の吐息はゴーレムの足下とその周囲を広く埋め尽くすとミントの姿をフーケから隠し、同時にそれ自体がことゴーレムに対して凶悪な攻撃手段になる。

そしてそれは直ぐに目に見える形で効果を現した。

『ドスン!!』
「何?」
衝撃音が響くと同時に足下が悪いのかゴーレムがバランスを崩す。
何が起きたのか分からないままにフーケはとにかくゴーレムで足下の煙をかき回す。

ついさっきまでゴーレムの足は足首の辺りまでしかダークブレスに隠れていなかったが今はすねから下までが煙に捲かれている状態だ。


「今ゴーレムが縮んだ…?」
上空から見ていたルイズが呟く…


410デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:21:22.41 ID:o4b9QJoD
「ちっ、闇雲じゃキリが無いね!!」
忌々しそうに言って異変に気付かぬままフーケはゴーレムでミントを踏みつぶす為、ゴーレムの足を大きく持ち上げさせた。

「何……だって…………」

フーケはそこでようやく気が付いた、ゴーレムの足首から先がまるで風化し朽ちたかの様にボロボロになって崩れ落ちてしまっている事に。
その瞬間また一段、ゴーレムの足下は崩れていった…


「やっぱり土や岩にはこれよね〜。」
ミントはダークブレスに身を隠したまま意地悪くほくそ笑む。
『黒』の魔法の本質は破壊、それも無機物に対して特化した物…
ダークブレスはそれを広範囲に拡散させる魔法であり、爆発力や瞬間火力は無いがじわじわと浸食する様に対象を破壊する。
正直ここまで広範囲にダークブレスを展開する事が出来るとは思わなかった。偏にそれは泥まみれにされた事への恨みと左手のルーンの力でもある。
そしてこれはフーケのゴーレムにとって最悪に相性が悪い魔法だ。

慌ててゴーレムはダークブレスの中から抜け出そうと歩を進めるが、巨大なゴーレムの重量とその足にかかる負担は凄まじい。
蝕まれた足は自重を支える事も出来ず歩く事もままならない、それどころか下手に動かせばそこから崩れる始末。
ゴーレムの足を再構成しようにも既に周囲の土そのものがとてもゴーレムの材料に使える強度を維持していない。新たに練金などしようにもそれを実行すれば最早フーケの精神力ではそれ以外何も出来ない状態になりかねない。

もはや完全に詰みだ。
ゴーレムの膝から下が完全に崩れ落ち、そのままバランスを保てずゴーレムは前のめりに倒れ込む。
見えないとはいえ流石の質量にミントも危なかった。

「フフン…このミント様に挑もうなんて百万年早いわ。」
勝利の余韻に緋色の髪をミントは掻き上げる。

立ち上がろうとする度そこから崩れて行く為ゴーレムはもはや為す術無くそのままジタバタと藻掻きながらミントのダークブレスに分解されて行った。


411デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:24:30.60 ID:o4b9QJoD
「すごい……」
土煙と共に崩れ落ちるゴーレムの姿を見つめながら思わずルイズはそう呟いた。
完全にゴーレムが崩れ落ちたのを確認しシルフィードを下降させながら同じくキュルケとタバサも思わずその光景に言葉を飲む。
徐々に煙が晴れていくそんな中、ミントはゴーレムの残骸の上でまだ怒りが治まっていないのか地団駄を踏んでいる。

「ミント!!」
「呆れるわね、あなた結局あのゴーレムを一人で倒しちゃうなんて。」
そんなミントにルイズとキュルケが駆け寄り、タバサは周囲に警戒を続ける。
「まぁね〜、それよりフーケは居たの?」
「ごめんミント、見つけられなかったわ。」
申し訳なさそうに言ってルイズが項垂れる。
「多分、フーケもゴーレム壊されたから今頃逃げ出してるでしょうね。」
キュルケは周囲を一度見回して溜息混じりに言う


「皆さん、ご無事ですか?」
と、がさがさと草木を掻き分け森の中からロングビルが姿を見せると息を切らせながら駆け寄る。
「皆さん申し訳ありません……私巨大なゴーレムが現れてから恐ろしくて恐ろしくて隠れている事しか出来ませんでした。まさかアレをお一人で倒してしまうとは…所でミス・ヴァリエールが持たれている小箱。その中に紅蓮の宝珠が?」
「はいその通りですミス・ロングビル、フーケは取り逃がしたかも知れませんが紅蓮の宝珠は確かに取り戻しました!」
ルイズがそう言って胸を張ってロングビルに箱を差し出す。
「それは素晴らしい。では…」
ロングビルは微笑みながらルイズから箱を受け取ると同時にルイズの手を強引に引き、自分の元へと乱暴に引き寄せる。

『ルイズッ!!』
三人の声が重なる。

「全員杖を捨てて腕を頭の上に乗せな!!」

ロングビルは今までの態度を一変させルイズの喉元にナイフを突きつけてみせるとミント達を鋭く睨んで言い放った。
「ミス・ロングビル何故あなたが…」
杖を手放しながらキュルケがロングビルに問いかける。
「彼女がフーケ。」
412デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:29:28.62 ID:o4b9QJoD
「フフフ…ご名答その通りだよ。」

フーケはニヤリと笑いながらタバサとミントが杖とデュアルハーロウ手放したのを確認する。
「で、そのフーケが何でまたこんな手の込んだ真似したわけ?とっととお宝持って逃げれば良かったのに。」

「まぁ確かにそうなんだけどね…ミント、あんた馬車の中で紅蓮の宝珠について何か知ってる様な感じだったわね?紅蓮の宝珠を盗んだは良いものの使い方やそれが何なのか分からないと高く売る事が出来そうに無いからね…教えてもらえるかい?でないと…」
フーケは三人に見せつける様にルイズの喉元にナイフを押し当てる。
「………知ってるわ。」
ミントはしばらく思案した後、両手を広げお手上げのジェスチャーをしてみせる。
そしてミントの返答にタバサとキュルケは思わず驚いた。
「そいつは紅蓮の宝珠なんて名前じゃ無いわ。そいつはカノンオーブっていうアイテムであたしも前に必要だったから持ってた事あるわ。」
「ほう、そいつは興味深いね。こいつは異国の品って訳かい…で、肝心の効果と使用方法は?」
一応ミントは学園の内部や周囲には異国のメイジとして通してある。
「待ちなさい、その前にルイズを解放しなさい!!」
キュルケが一歩前に出る。しかしミントは構わず言葉を続ける。
「カノンオーブは魔法機関の動力よ。」
「待ちなさいミント!!喋っちゃ…!!」」
今度はルイズがミントを止めようと勇気を振り絞り訴えたが今度はそれはフーケに阻まれる。
「おっとお嬢ちゃんは黙ってて貰えるかい?続けな。」
「分かってるわよ。そいつを埋め込んだゴーレムはカノンオーブからエネルギーを吸収して動ける様に成る。
今みたいにわざわざ魔力や精神力を使う必要が無くなるのよ。」
ミントは簡単ながら包み隠さず素直にカノンオーブがどの様な物かを説明した。
その説明にフーケは少々訝しんだがどうやらミントが嘘をついているとも思えないし何より手元には人質が居る限りミント達も下手な真似はしてこない筈だ。
「へ〜あたしにとっては随分と魅力的なマジックアイテムの様だね〜。さてそれじゃあ悪いけどこのままあたしは失礼させて貰うよ。追いかけてこない限りはヴァリエールのお嬢ちゃんは適当な所で解放してやるから安心しな。」
「くっ…」
ミント以外の三人が苦い表情を浮かべる。
そしてミントはだけはフーケに対して今までとまるで変わらない様子で対応する。

「分かってるわよ、人質が居る以上こっちだってて…あ、空飛ぶカボチャっ!!」
と、突然会話の途中でミントが大声を上げて上空のあらぬ方向を指さす。
413デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:33:52.02 ID:o4b9QJoD
「えっ??」
当然その場の全員の視線がミントが指さした方向へと反射的に向けられた。


その一瞬の隙を見逃さずミントの瞳がキラリと光る…
「チャンス!」
「え……」
叫んだと同時にミントが跳ぶ…
フーケが空飛ぶカボチャ等という分けの分からない物に気をそらしていたのは本当に僅かな時間でしかなかったがそれでもミントの必殺の跳び蹴りが叩き込まれるには十分過ぎる時間だった。
そうしてフーケの顔面に強烈な衝撃が走る…眼鏡を事前に外していたのはフーケにとって不幸中の幸いと言えただろう。
「うわぁぁっ!!」

ルイズが解放されフーケはギーシュと同じく…いや、それ以上の強烈な勢いで吹っ飛ばされ地面に数度叩き付けられるとそのまま気を失ったらしく動かなくなった。
「よし、悪は滅びた!」

ガッツポーズを取って勝利を確信するミントに最早三人には言葉も無かった…





___魔法学園学院長室

フーケを捕らえてから学園に戻ったルイズ達は今まさにオスマンへと事態の顛末を報告していた。
報告を聞き終えたオスマンは実に苦しそうな表情で髭を摩る。
「まさかミス・ロングビルが怪盗フーケだったとはのぅ…あいやよくぞ紅蓮の宝珠を取り戻してくれたご苦労じゃったな。
それにしても紅蓮の宝珠がゴーレムの動力じゃったとは予想だにせんかったわい。
ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーには儂の方から王宮にシュバリエの勲章をミス・タバサには精霊十字勲章を申請しておこう。」

「まぁ!!シュヴァリエ!?」
「あの…オールド・オスマン、ミントには何かして上げる事は出来ないのでしょうか?
先程の報告の通り最も今回の事件で活躍したのはミントです。」
414デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:35:27.45 ID:o4b9QJoD
ルイズは意を決した様に訴える。ミントが爵位に興味があるとは思えないが自分よりはミントがシュバリエを賜るのに相応しいとルイズは思う。

「しかしのうミス・ヴァリエール、彼女は使い魔じゃ…使い魔の手柄はメイジの物として扱われる。それではいかんかの?」
「先程申し上げた通り今回の件、私は何一つ役には立てずあまつさえフーケに人質にされました。そんな私にはシュバリエを承る資格はございません。」

ルイズは真っ直ぐに問い掛けてきたオスマンを見つめてはっきりと言った。
そのルイズの言葉にさっきまでシュバリエの話に乗り気だったキュルケが一歩前にでてチラリとルイズに視線を送ると高飛車に微笑んだ。

「では私もシュバリエのお話、辞退させて頂きますわ。元々私はルイズが行くと言ったから参加した訳です…私だけとは行きませんわ。」
「同じく。」
タバサもキュルケに便乗して小さく言う。
「なんと、君達もかね…?」
オスマンはルイズに続いて二人に驚愕し、目を見開いた後で心底満足そうな表情を浮かべる。
「あい、分かった。その素晴らしい高潔な精神を持つ君達こそ真の貴族じゃ。さて、それでは今夜はフリッグの舞踏会、フーケを見事捕らえた君達の手柄皆に聞かせるとしよう。今夜の主役は君達じゃ。」


オスマンが言って話を終わらせると人一倍舞踏会を楽しみにしていたキュルケは「そう言えば!おめかししなきゃ!!」と思い出した様に言ってタバサの手を引き学院長室を慌てて出て行った。


「それじゃあミント私達も行きましょう。」
ルイズはミントに声を掛け、学院長室のソファから立ち上がろうとしたがミントは立ち上がろうとする気配も無くオスマンと机の上に安置されたカノンオーブに対して何やら胡散臭げな視線を送っていた。
「ミント?」
「ねぇじいさん、ちょっと聞きたいんだけどさ紅蓮の宝珠…ていうかカノンオーブ、あれどこで手に入れたの?あれはあたしの世界のマジックアイテムよ、ハルケギニアに同じ物があるとは思えないわ。」
ミントの言にオスマンは興味深げに髭を摩る。
「あたしの国故郷では無く世界とな?」
415デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:37:54.05 ID:o4b9QJoD
「あの…オールド・オスマン実は…」
ここでルイズはミントの同意の下、オスマンにミントの正体と召喚されてからの経緯を説明した。


「…成る程のぅ…ふむ分かった送還方法については儂の方でも調べておこう。しかしまさか異国の王女殿下じゃったとは世の中何が起こるかわからん物じゃのう…」
「すいません!!」
話を聞き終えたオスマンは流石に頭を抱えた…その向かいの席でルイズは心底申し訳なさそうにオスマンに頭を下げる。
「で、カノンオーブはどこで手に入れたの?」

「おぉ、そうじゃったな。あれは十数年前に儂が偶然ふらりと立ち寄ったある村で貰ったんじゃよ。
村の守り神の石像に固定化を掛けて欲しいと請われたので引き受けたのじゃがその礼にと依頼主の老人が儂に寄越したのじゃよ。
曰く世に二つと無い炎の宝玉だと言ってな…成る程、異世界のマジックアイテムならば確かに唯一無二じゃて…」
オスマンは懐かしむ様に言って手の上に乗せたカノンオーブを見つめた。

ミントはオスマンの話に表情を渋くする。
今度はカノンオーブを差し出した老人がどの様な経緯でそれを手にしたのかが分からない。そもそも価値が分かっていたならそうホイホイ他人には譲らない筈だろう…
しばらく考えたがそれも取り敢えずは意味が無い事だと結論づけてミントは一つ溜息をついた…

この後ミントはオスマンから左手のルーン『ガンダールブ』についての簡単な説明と帰る方法が見つかるまでの間ルイズと共に居て欲しいという話を聞かされた。
是非も無い…ミントの帰還にはデュープリズムとルイズの力は絶対に必要なのだ。
ミントはそんな事はおくびにもにも出さず交換条件として遺産もしくはそれに準ずる物の情報提供をオスマンに要求して学院長室から離れた。


「あ〜…疲れた。今日は早く寝よっと…」
ルイズと共に部屋への通路を歩きながら疲れた様子でミントはそう漏らす。
「はぁ?今日はフリッグの舞踏会よ。あんたも主役なんだから絶対参加。ほら急いで!」
「えぇ〜…」

ルイズに手を引かれながらミントは露骨に顔をしかめた後、花の様なルイズの笑顔に観念したかの様にぎこちない笑顔で共に走り出した…
416デュープリズムゼロの人:2012/03/13(火) 22:41:20.67 ID:o4b9QJoD
以上で11話終わりです。
やっと規制が解けて嬉しいです。今回使用した魔法は黒色のワイドのダークブレスですが作者の勝手な解釈で演出してます。

代理投稿してくれた方ありがとうございました。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 00:28:59.93 ID:6Rohcshx
乙!

デュープリ求めて4、5件ほど店を回ったけど
唯一あったところが1470円という価格で購入を迷ってしまう。
大人しくアーカイブで買えばいいものデータを買うことに躊躇いがなあ。
アナログ世代もので。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 00:59:06.17 ID:vHQGqSnu
デュープリズムの人乙です

>>391
担い手を守るのが虚無の使い魔なんだから
敵を弱める回復勇者でもいいんじゃないかな
彼が呼ばれる必然性や独自のイベントは思いつかないけど。。。
ネタなら、◯◯一家サインとか、だったら◯◯で戦え!とかか
419名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 02:55:18.22 ID:olyVY5BL
メトロイドのサムスのクロスSSあったらしいけど
今はもう消されてないのかな、Wikiにタイトルはあるのに
420名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 06:13:08.71 ID:MsYkV6JB
根本的に虚無の使い魔として相応しいかとか、相性がどうとか、属性がどうとか
今まで召喚され続けた面子の中にはそんなのどうでもいいようなの多すぎだし
今更そこらへんの整合性は誰であっても問題ないだろう
421The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:00:10.96 ID:0W43vXHv
こんにちは。ご予約がなければ17:05頃から後編を投下いたしますがよろしいですか?
422名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 17:01:29.60 ID:robFTyaL
メトロイドの卵を呼んで、ベビーがルイズに懐くというのなら物語作れるかも
ギーシュがミイラにされるかもしれんがそれはいいとして、冷凍攻撃には弱いから討伐を依頼されたタバサとベビーをかばうルイズの戦いとかよさそう
423The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:06:29.89 ID:0W43vXHv
Mission 20 <猛る閃光、吠えよ青銅、舞えよ雪風> 後編


アルビオン王党派の人間達が籠城しているニューカッスルはアルビオン大陸の最南端に位置しており、
サウスゴータ地方からシルフィードで直進していけば片道で飛んで行けば一時間程度で到着できる距離だった。
だが、それは深夜という時間帯でほとんどの人間が寝静まり、闇夜という地の利を得ることで達せられる。
明け方で太陽が昇り始めてきた頃になると空の上を飛んでいると非常に目立ってしまい、ニューカッスルを
取り囲んでいる貴族派の軍の目をかい潜ることは不可能に近かった。
強行突破は不可能ではないものの、ロングビルやティファニアがいては二人に被害が出てしまう。
そのため、シルフィードをあえて大陸の外へと飛ばさせ、そこからニューカッスルの南側へと迂回させて戻ることにした。
さすがに貴族派も追い詰めた王党派にとっては行き止まりである南側には軍を配置していなかったことが幸いした。これならばニューカッスルに近付くことができる。

あまりにも遠回りなルートを飛んでいったがために、結果的に三時間もかかってしまい、すっかり夜も明けてしまったが。

「綺麗……空ってこんなに大きいものなのね」
アルビオン大陸南西の岸が見える空の上を飛翔シルフィードの上でティファニアは、頭上一面に広がる朝空を眺めて息を呑んでいた。
彼女はこれまでの人生を屋敷の中と、森の奥という閉鎖的な環境の中で過ごしてきた。
故にこのような絶景を目にする機会など皆無だったのである。
極めて魅力的で雄大な景色を眺めていたティファニアであったが、その表情はどこか悲しげであった。
「あの子達にも、見せてあげたかった……」
ウェストウッドの村で、自分が親代わりとなって面倒を見てきた孤児の子供達。
みんな無邪気で可愛かった、幼い子供達。年相応に悪戯などをしたりすることもあったが、その生活は充実で楽しかった。
もしも外の世界へ出る機会があるならば、その子供達も一緒に連れて行きたかった。

……だが、それはもはや叶わない。
みんな、もうこの世にはいないのだから。
だから、この景色を見せてあげることもできない。
自分だけが生き残ってしまって、とても後ろめたい思いだった。
424The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:11:38.39 ID:0W43vXHv
悲しげに空を見つめるティファニアをロングビルはそっと抱き締める。
彼女自身も悔しげな表情で唇を噛みしめており、自分が守れなかった子供達のことを思った。
貴族派、レコン・キスタの連中がロングビルを従えるためにティファニアを人質にし、残った子供達は更なる脅しとして
皆殺しにされた。
さらにその死体を材料に魔物まで造るという暴挙まで成すという、とんでもない奴らだ。
ロングビルは残されたティファニアを守り通すことを、そして大切なものを奪ったレコン・キスタへの復讐を誓っていた。


二人が悲しみに暮れている中、スパーダはリベリオンをシルフィードの上で座ったまま短銃を両手でクルクルと回していた。
既にニューカッスルは目と鼻の先だ。ここからでも取り囲んでいる軍隊もろとも眺めることができる。
どうやら間もなく総攻撃が始まるらしい。見ると、王党派のものと思われる軍隊も出陣しようとしているのが窺えた。
だが、数は三百対五万。とても王党派が勝てる数ではない。もっとも、玉砕しようとしているのだからこの際数などどうでも良いらしいが。

あそこにはまだルイズ達が残っている。それを知ることができたのは、シルフィードのおかげであった。
シルフィードは主であるタバサと感覚を共有し続けているらしく、ぶつぶつとタバサが今どのような状況なのかを時々呟いていたのだ。もちろん、人語ではないが。
まだワルドとの結婚式とやらは終っていないらしい。いや、むしろ始まったばかりだという。
これならば出席には間に合うだろう。
もっとも、別にその結婚とやらを祝福するのが目的ではないのだが。
スパーダはちらりと、ティファニアを肩越しに見やった。

滅び行く王族の皇太子に、せめてもの贈り物だ。

(きゅいっ! 大変なのね! お姉様達が危ないのね! あの髭面が裏切ったのね!)
「ど、どうしたの? この竜、こんなに騒いで……」
突然、シルフィードがわめきだしたことにティファニアが困惑していた。
「心配はいらん」
(ワルド、やはり奴が黒か)
これまでの状況から予想はしていたとはいえ、スパーダは僅かに口元を歪ませて笑っていた。
残念ながら向こうがどのような状況になっているのかはスパーダ自身には直接分からないものの、
ワルドが裏切った以上、結婚式とやらはかなりの修羅場になっていることだろう。
そして、ルイズ以外に残ったトリステインの生徒達もその修羅場に巻き込まれているに違いない。
(激しいパーティになりそうだ)
425The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:17:15.60 ID:0W43vXHv
ニューカッスルの礼拝堂の中、始祖ブリミルの像の目の前で三人の戦士達は激闘を繰り広げていた。
「だああああぁっ!」
ギーシュはワルドへ一気に走り寄るとその場で跳躍し剣を思い切り振り上げ、持てる力の限りで叩きつけるようにして一気に振り下ろしていた。
「ぬっ」
ワルドはその兜割りをレイピアで受け止めると、僅かに呻く。鋭く響く剣戟の音から、威力があるのは明らかだ。
そこへタバサが横からエア・ニードルで自らの杖に真空の槍を纏わせて突き出してくる。
ワルドは即座に予備の杖を手にしエア・ハンマーを唱えてギーシュを吹き飛ばすと、さらにレイピアに同じエア・スピアーの魔法をかけてタバサと切り結んだ。
スピードに関しては小柄であるタバサの方が勝り、隙あらばワルドの死角に回り込んで攻撃を仕掛けるのだが、
ワルドの反応はあまりに速く、どうしても攻撃をいなされてしまう。
「なるほど。貴様も相当な手練れのようだ……スピードにかけては私より上かもしれん。……だが!」
「!!」
エア・スピアーで切り結んでいたと思ったら、レイピアの先から突如ウィンド・ブレイクが放たれ、タバサの小さな体を吹き飛ばして柱へと叩きつけていた。
さらに追い討ちで放たれたライトニング・クラウドによる稲妻がタバサの全身を駆け巡っていく。
「タバサ!」
礼拝堂の隅でルイズとウェールズを守っているキュルケが悲鳴を上げた。
あれほど強力な魔法をまともに浴びれば、いくら何でも……。

「……何?」
だが、同時にワルドも顔を顰めていた。
叩きつけられ、確かに稲妻が直撃したはずのタバサ本人はまるでダメージを負っている様子はなかった。
その小さな体は、未だ黄金の光で包まれている……。
スパーダから渡されていたアンタッチャブルの効果により、タバサの全身は結界で覆われており、肉体は外部からのあらゆる攻撃で傷を負うことはない。
おまけにトライアングルクラスの魔法を連発しても、全く精神力が尽きることはおろか、削られることもなかった。
もっとも、前者の効果はあくまで傷つかないだけで肉体に掛かる衝撃そのものは無効にできないみたいだ。
先ほどギーシュに使ったスメルオブフィアーは衝撃さえも無効にしてしまうほど強力な結界らしいのだが、あちらは結界が発生する回数に限度があるらしく、
ギーシュがワルドの攻撃を何度も受け続けていたのでとっくに効果は切れてしまっている。
「ジャベリン!」
すぐにタバサは体勢を立て直すと、ワルドに杖を向けてジャベリンによる氷の槍を次々と放っていく。
ワルドも同じ魔法を即座に放って迎撃すると、フライを唱えて宙へと逃げた。
426The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:22:54.74 ID:0W43vXHv
「逃がすものかっ!」
吹き飛ばされて倒れていたギーシュが起き上がると、手にする剣をワルド目掛けて投げつけた。
勢いよく回転する剣をワルドは難なく回避する。
「血迷ったか! 自ら武器を――」
だが、かわしたと思った剣が勢いはやや失いつつもブーメランのような軌道を描いて返ってきたため、ワルドは自らの杖を払ってそれを弾き返していた。
ギーシュは自らが投げた剣を睨みながら造花の杖を捻るように振るうと、弾かれた剣の軌道がさらに変わり、ワルドに襲い掛かる。
さらに下方からタバサが杖を向け、ウィンディ・アイシクルを放ってきた。
「……生意気な!」
忌々しそうに呻いたワルドが自分を包むようにエア・シールドによる突風の障壁を発生させると、それらの攻撃を全て弾き返してしまっていた。
ギーシュの剣に至っては弾かれた途端に刀身が砕かれてしまっている。
「おおおぉっ!」
だが、すぐにギーシュは造花の花びらを錬金で剣へと変えて手にし、再びワルドに正面から斬りかかっていた。

「ギーシュのやつ、中々やるじゃないの」
キュルケはタバサと二人がかりとはいえ、スクウェアのメイジであるワルドとまともに渡り合えているギーシュに感服していた。
剣さばき、体の動き、そして反応の速さ。スパーダに比べれば遠く及ばないものの、紛れも無く立派な戦士の姿だ。
「スパーダに鍛えられただけのことはあるわね……」
ルイズも同様にギーシュがあそこまで果敢に立ち向かえることに驚いている。
学院であれだけスパーダにみっちりと特訓を叩き込まれていた甲斐があったのは間違いないだろう。
今のギーシュは目つきからその気迫も普段とはまるで別人のようだ。あそこまで男らしい顔を見せるなんて、初めてだ。
何度ワルドにあしらわれ、魔法で吹き飛ばされてもその闘志が折れることはない。
もしもモンモランシーがこの場にいたのであれば、その勇姿に見とれていたかもしれない。
「私が……このようで無ければ、加勢もできたのだがな……。ぐっ……」
「ウェールズ殿下。動いては駄目ですよ」
悔しげに呻いたウェールズが肩の痛みに悶え、ルイズがその体を支えていた。
(スパーダ。早く戻ってきてよ……!)
確かにギーシュとタバサの連係はワルドを一時的に追い詰めたりはするものの、相手は腐っても魔法衛士隊の隊長だ。
すぐに劣勢から立て直ってしまい、反撃に出てくるのだ。旗色は徐々に悪くなっていく。
スパーダがいてくれれば、もしかしたらワルドでさえも返り討ちにしてくれるのかもしれない。
だが、そのスパーダがいつ戻ってきてくれるのか分からないのでは、どうすることもできない。
タバサは先ほど、「もうすぐ戻ってくる」などと言っていたが、何故彼女にそれが分かるのか。
427The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:28:14.93 ID:0W43vXHv
ワルドはタバサとギーシュの同時攻撃を受け続けながらも、未だ息一つ乱していなかった。
対するギーシュはそろそろ息が上がってきている。普段、こんなに全力を出したことも無かったので持久力が無いのだ。
そして、タバサの全身を包んでいた黄金の光は治まっており、アンタッチャブルの効果が失せたことを表していた。
ここからは慎重に魔法を使わねば精神力が持たない。
「でやあっ!」
剣を構え、ワルドと睨み合っていたギーシュが剣を突き出しながら突進を仕掛けた。
にやりと笑ったワルドはギーシュの頭上を飛び越え、その背後に着地した。
だが、反撃はギーシュにではなく横からジャベリンを放ってきたタバサへと向けられた。
レイピアの先から同じくジャベリンを放って相殺すると、反転したギーシュが全力で剣の乱舞を繰り出しながら攻めてくるのをいなし続けていた。
「ぐはっ!」
その最中、防御に徹していたワルドが剣を振り上げようとしたギーシュの胸に素早くエア・ハンマーを叩き込み、吹き飛ばしていた。
受身を取れなかったギーシュは床に叩きつけられるように倒されてしまう。
「ぐっ……げほっ……。うぐっ!」
起き上がろうとしたギーシュの胸にワルドの足がのしかかり押えつけると、さらにレイピアを突き付けてきた。
「魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるだけではない。詠唱さえ、戦いに特化されている。
杖を構える仕草、突き出す動作、杖を剣のように扱いつつ、詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本だ」
ワルドは馬鹿にしたような態度で鼻を鳴らす。
そんなことはギーシュとて分かっている。そう叫んでやりたかったが、胸をギリギリと捻じこむように
押えつけられていたために喋ることすら困難だった。

「君は確かに、軍家の貴族だな。才能はあるかもしれん。その闘志も認めよう。……だが、所詮は没落貴族の伝えた技だ!」
ワルドはとどめと言わんばかりに、ギーシュの体にブレイドの魔法がかけられたレイピアを振り下ろそうとする。
もはや、これまでか。ギーシュは悔しげに顔を顰めてワルドを睨んでいた。
せっかくスパーダにあんなに鍛えてもらったというのに、こんな裏切り者に負けてしまうなんて。
スパーダは生きるために戦えと言ったのだ。そして、自分が生きるということはここにいる者達を守ることにも繋がる。
それができないとは、あまりに無念だ。
「ファイヤー・ボール!」
「ジャベリン!」
居ても立ってもいられなくなったキュルケが飛び出し杖を構え、ワルドの横から火球を放った。
さらにその反対側からタバサが氷の槍を放つ。
ワルドは頭上にフライで飛び上がり、外れた二つの魔法はギーシュの頭上でぶつかり、水蒸気となってかき消えた。
428The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:34:06.53 ID:0W43vXHv
ワルドが飛び上がったのを見計らい、タバサもフライの魔法で飛び上がるとワルドの懐めがけて突撃していた。
手にする杖にはブレイドをかけてある。そして、ワルドはキュルケが追い討ちで連続で放つ魔法をかき消している最中だった。
今なら、行ける。

「やった!」
倒れているギーシュに駆け寄って念力で起き上がらせ、引きずっていたキュルケが歓声を上げた。
ワルドの横から飛び込み、突き出されていたタバサの杖がワルドの脇腹をえぐっていた。
魔力の刃で斬り裂かれた部分から血が噴き出て、さらにえぐられた肉が飛び散る。
確実に、致命的な一撃が決まった。さすがにワルドもこれで……。
「うっ……!」
だが、呻き声を上げたのはワルドではなく、タバサの方だった。
ワルドは脇腹に負わされた傷など全く気にもせず、瞬時にブレイドをかけたレイピアでタバサの両肩を突き貫いたのだ。
杖を手放してしまったタバサに対し、ワルドはその細い首をがしりと掴み取っていた。
「タバサ!」
拘束されたタバサの姿にキュルケが更なる悲鳴を上げた。

地上に降り立ったワルドはタバサの体を掴み上げたまま不敵な笑みを浮かべ睨みつけている。
「まったく、こうも私をてこずらせおって……本当に生意気なガキどもだな」
「く……」
忌々しそうに言うワルドの首を掴む力が強くなる。タバサは苦しそうに呻いた。
ワルドは脇腹の肉をえぐられ、出血しているのにも関わらずまるで平然としている。痛みさえも感じていないようだ。
何故だ。この男はこんな致命傷を負っているのに、どうして平気でいられるのだ。
タバサは何とか拘束から逃れようと抵抗するが、力に関しては大の大人であるワルドの方が圧倒的に上だった。
「しぶとい奴だな……」
ワルドが嘲笑すると、首を掴む手と腕が光りだした。
「う……く……」
力が、入らない。
タバサは体力から精神力まで、体中のありとあらゆる力が吸い出されていく脱力を感じていた。
そして、力が抜けていくタバサとは反対にワルドの脇腹の傷はみるみる内に癒えていく。
朦朧としていく意識の中、タバサはその光景を目にして驚愕していた。
この男、一体何の力を使っているのだ。これは、魔法などではない……。

「タバサを離しなさい!」
キュルケが杖を向けながら叫ぶと、ワルドはぐったりとしたタバサの体をまるでいらなくなったゴミのようにキュルケ達の方へ放り投げる。
「タバサ! しっかり!」
床に転がったタバサは、キュルケに介抱されていた。
ほんの僅かだが体力と精神力が残っていたタバサは弱りつつもスパーダから渡されていた
バイタルスターとデビルスターで失われた力をある程度回復させる。
だが、これ以上の戦闘は不可能だ。半分ほど回復しても、ワルドはまるで消耗していないのだ。
429The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:39:06.02 ID:0W43vXHv
「さて、これでチェックメイトだな」
レイピアを生き残っている五人に向けながらゆっくりと近付いて来るワルドに、キュルケがタバサの体を抱えながら杖を構える。
ギーシュも再び花びらを練金で剣に変えて手にし、先頭に立っていた。
「本当にしぶといガキどもだ。……まあいい。息も絶え絶えな小鳥の首は容赦なく捻ってやろうか」
冷酷な笑みを浮かべるワルドのレイピアに、バチバチと稲妻が散り始める。
「待て……!! この者達にはこれ以上……」
ウェールズが肩の傷を押えながら杖を手にし、自分の体に鞭を打って立ち上がった。
それを見たワルドがつまらなそうに鼻を鳴らす。
「死に損ないが……」
「やめなさい! みんなには……みんなには、これ以上手出しはさせないわ!」
ルイズも湧き上がる恐怖に耐え、立ち上がると杖を手にしてウェールズをかばうようにして前へ出る。
「もう君はいらんと言っただろうが……まったく、素直に私と共に来れば良かったものを……。
そうすれば、このガキ共も助けてやったのに」
残念そうに息を吐き、ワルドは首を横に振った。

「……では、そろそろお別れだ。君と一緒に、世界を手にしたかったよ。ルイズ」
レイピアに纏う稲妻が激しさを増す。
あんな強烈な魔力が解放されれば自分達は、いや、この礼拝堂そのものも焼き焦がしてしまいかねない。

もはや、万事休すなのか。

ルイズは唇を噛みしめた。

「さらばだ!」

ワルドが吠え、レイピアを振り上げた。
もう、駄目だ――。


――ダァンッ! ダァンッ!


突如、響き渡った二発の銃声。
それと共にワルドのレイピアが手から弾き飛ばされていた。
ルイズ達に向けて解放されかけた稲妻は天井へと放たれ、粉砕するとワルドの頭上に瓦礫が降り掛かってきた。
驚く暇もなくワルドは後ろへ飛び退く。間一髪、回避に成功した。
「何だ!?」
レイピアを弾かれ、ビリビリと痺れる手を押えながらワルドは銃声が聞こえた方を振り向く。
他の五人も、同じように振り向いた。
まさか、とは思うが……。

礼拝堂の入口、そこには三人の男女の姿があった。
その中の、濃い紫のコートを身に纏い、短銃を手にする銀髪の男の姿に四人の生徒達の表情に希望が宿った。

「「「スパーダ!」」」

希望に満ちた声を上げる生徒達。
そこにいたのは紛れもなく、ルイズの使い魔にしてパートナーである男、スパーダであった。
そして、その傍にいるのは学院の秘書ロングビルと、フードを被った見慣れない金髪の少女だった。
礼拝堂の中へと歩を進めたスパーダはその中を見回し、第一声を放つ。
「ずいぶんと過激な結婚式だ」
恐らくは冗談なのだろうが、その表情は普段と変わらぬ凛としている威厳に満ちたものであった。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 17:42:04.91 ID:lUopwMmw
支援
431The Legendary Dark Zero:2012/03/14(水) 17:44:59.16 ID:0W43vXHv
ワルドはスパーダのいきなりの出現に驚いていたが、その傍らにいる二人の姿を目にして嘲笑した。
そして、全ての状況を把握する。
「やはり裏切ったか、マチルダ。その男と共にそいつを連れ出すとはな。もはや貴様に救いはない」
「誰がいつあんた達に忠誠を誓ったの? 冗談じゃないわ、この悪魔め!」
ティファニアを一瞬、睨みつけたワルドに対し、ロングビルが吠えた。
「まあいい。その忌まわしい血を宿した娘もろとも、あとで始末してやろう」
ワルドに睨まれたティファニアはロングビルの後ろに隠れる。そのティファニアを庇うように、ロングビルはしっかりと抱き締めていた。

「ミ、ミス・サウスゴータ?」
ウェールズはマチルダと呼ばれたその女性に見覚えがあった。確か、彼女はかつてシティオブサウスゴータの太守の令嬢、
マチルダ・オブ・サウスゴータだ。
「な、何でミス・ロングビルがここに……?」
ルイズ達も同様に驚いていた。先日帰省したはずだった学院の秘書が何故こんな場所に、しかもスパーダと共にいるのか。
それにもう一人の少女は一体誰だ?
だが、タバサは驚いてはいなかった。何故なら、彼女達がここにいる理由を知っているから。

「ずいぶんと出席が遅かったな。残念ながら、結婚式は中止となった」
「そのようだ」
銃を収めたスパーダはリベリオンに手をかけ、さらに前へと出て行く。
「君達は彼女達の元にいろ」
ロングビルに声をかけ、ずんずんと前へ進んで行く。
途中、ちらりと脇にいるルイズ達を見やった。ルイズはもちろん、ほとんど全員がスパーダの登場に喜びを露にしていた。
ルイズに至っては目元に涙まで浮かべている。
「よくがんばった。褒めてやる」
その中で満身創痍でいるタバサとギーシュを見やると、必死に戦ったらしい二人に声をかけてやった。

「既に貴様がレコン・キスタの一員であることは明白だな」
「いかにも」
ワルドは予備の杖を手にしながらスパーダと相対する。
スパーダはリベリオンを手にし、片手で左右に振りつけていた。
「まったく、実にタイミングの悪い……貴様がこのまま戻らねば、私も目的は達せられたのだがな」
「それは失礼した」
互いに8メイルほど距離を置いて向かい合う二人の武人の姿に、ルイズ達は息を呑んだ。
二人が戦う様は、以前にも見たことがある。だが、それはあくまでも互いの腕試しに過ぎない。
これから行われるのは、死力を尽くした戦いだ。
二人の間に感じられる静かな殺気に、ウェールズでさえも緊張していた。

「……貴様のショーはもはや終りだ。閃光≠諱v

「あいにく、その幕は貴様の死と共に引かれる。ガンダールヴ=v


※今回はこれでおしまいです。
ワルドが今回、使った技についてはDMC4のアンジェロアグナスを参照していただけると幸いです。

432名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 19:03:31.54 ID:ubqxy0tE
>>417
むしろディスクシステムとかニンテンドーパワーとか知ってる
古参のほうがダウンロードには抵抗なさそうな気もするがw
(中学のひきこもり時代、SFCの書き換えサービスにはまった世代)
433名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 21:15:09.54 ID:cxv4zgvf
ゲームギアが入門機だった俺、あの頃はカラー画面ってだけですごかった
でも単三電池6本を一時間くらいで食い尽くすからアダプターないとゲームできない困った子
434名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 21:26:16.56 ID:jnx/6O6I
自身怖いかわ東京M8からだれか召喚書いて
435一尉:2012/03/14(水) 22:33:18.61 ID:Vbs2JUmw
コリラを召喚
436名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 22:51:59.98 ID:iUdEIE0L
アーク話に乗り遅れたが、修行厨のイーガさん召喚すればギーシュとかルイズとか問答無用で修行させられそうだな
437名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/14(水) 23:30:26.62 ID:b5RaG6we
>>435
コリアを召喚に見えた

ここは何処二だ?!元の場所にかえすニダ!!謝罪と賠償を要求巣rにだああああ
438名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 00:33:10.12 ID:czA/UqVB
>>437
さすがにこの場合は、その反応も許されそうな気がするw
439名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 01:18:54.66 ID:ZMkBZBVD
スパーダさん乙です
440 忍法帖【Lv=34,xxxPT】 :2012/03/15(木) 06:34:44.58 ID:tpx95M+a
>>437-438
間違い無く起こることが、ひとつ
原作でルイズがサイトにやらせたように、着替えさせようとした場合、
炭酸飲料を飲んだらゲップが出るくらい確実に、彼の国の国技が発動するな
441名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 07:50:02.83 ID:VLjRKtfb
>>437
ゼロ魔の雰囲気的にニダー<丶`∀´>が頭に浮かぶ
442名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 08:54:20.16 ID:RyMke2ZS
コリア召喚で
ああ、スターゲイトアトランティスのうざい敵のオッサンね
と思う程度の健全さ
443名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 09:54:51.76 ID:yN8rNgsC
キムカッファンとかキムデジョンとか
444名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 10:24:58.74 ID:NLQ2GbA2
破壊の杖がオートボウガンで機械装備で無敵になるフーケ
445名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 10:30:11.45 ID:fd1zGMFK
マシーナリーしか使えないから大丈夫
頭につけるならともかく
446名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 11:02:45.83 ID:lEkFqTLf
パパーダ乙、しかしマジかっけぇ。
山場なだけに、パパーダのカッコよさが映える。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 15:37:45.11 ID:wra4Z05h
設定でてないから想像だけどな
448名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 19:03:55.06 ID:NLQ2GbA2
虚無の呪文がバニシュデス
449名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 19:58:57.38 ID:+187Ckww
ゴリラ召喚?
450名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 20:07:50.27 ID:AGioAo+b
チーフがあるんだし
ノーブル6召喚とか読みたい
451一尉:2012/03/15(木) 20:27:27.44 ID:FGvBltlD
ジエイコブを召喚ぬするルイズ
452名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 20:38:40.96 ID:pNlgY304
>>449
ttp://blog-imgs-15.fc2.com/m/o/n/mondocomics/marvelapes001.jpg
この中から誰か呼べばいい、どいつもこいつも強いぞw
453名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 21:12:04.97 ID:xZokVO/s
ルイズ召喚もいいが、タバサ召喚もみたいな
454名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 22:00:38.68 ID:ph6F9Y3z
タバサにとって最高の使い魔とはどんなんだろう
青髭とシェフィールドをぬっ殺し、母親を治してくれれば満足なんだろうが、他作品のチートキャラを引っ張り出してそんなんしたらアルビオン編やらへし折れるし、そもストーリーとしてつまらんから誰もやらないね
455名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 22:03:04.67 ID:3sGfK8iq
シンデレラ・パニック!の相良宗介を召喚
456名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 22:28:33.24 ID:KN1fbW7v
>>454
能力的には東方プロジェクトの八意永琳じゃね?
あらゆる薬が作れて天才で超強くておまけに死なない。

ただ、ジョゼフ殺しは自分で殺りたいんじゃないかな。
使い魔に殺させはしないだろうから、
戦闘力チートでも自発的に殺りたがるキャラでもない限り
ジョゼフ発のイベントが総崩れになる事もないかと。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 22:33:37.59 ID:2FfLCtws
復讐果たすようなのってそもそもどんくらいあるんだ

そこまでいく作品自体が珍しいだろうが
458名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 22:59:09.24 ID:NLQ2GbA2
幼タバサ(シャルロット)がシャルロッテを召喚
お人形のようだとタバサには従うが、取り上げたイザベラとジョゼフがマミられる
459名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 23:40:20.36 ID:Y7WMVoJy
アニメ版設定なタバサがイザベラ召喚
460名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/15(木) 23:58:16.00 ID:rk9WEzDp
>>454
ギルクラの集さんなら! 右手ヴォイドの集ならタバサにいいように利用されても不思議じゃない!?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 07:41:35.46 ID:F6qm3lGN
>>456
薬の材料が簡単に手に入るんなら事のついでに調合してくれそうだが
そうでないなら親身に助けてくれるかどうか分からんぜ
ハルケギニアに留まる理由はないし
永琳ならメイジの力を借りるより自力でアレコレ帰還方法探すほうが早くて確実
462名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 09:51:40.93 ID:LuKvCTNp
>>460
そしてハルケギニアにアポカリプスウィルスが蔓延…!
トリステイン魔法学院が王国になっちゃう!
463名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 09:54:19.77 ID:fvhSYDe9
>>461
早くて確実かどうかは置いて置くとして、さすがに不老不死とは言え初見の世界で
なんの情報もなしには動かないだろ。
まあ、ある程度情報をそろえてそれなりに状況を整えたら話は変わるだろうが
464名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 12:37:30.93 ID:mp3m6Vbx
タバサの目標がジョゼフへの復讐から事件の真相を突き止める事に変わったSSならあったな。

465名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 13:03:00.83 ID:1HXe4MUZ
>>454
BLEACHの卯ノ花烈とかどうだろう
治療ももちろんだが戦闘力も設定的には隊長格の中でもかなり強い方らしい
この人は戦闘力以上に笑顔での威圧感がものすごいんだけど
466名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 13:04:39.76 ID:Y2x/8YEN
>>456
ジョゼフ殺したらイザベラは絶対仲間にならんな
467名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 13:10:28.63 ID:LBcKUcNk
此処はアニメや漫画の登場人物しか召喚しちゃあかんの?
ドラッガー女子高生やドラッガー自身や40代無色のおっさん呼んだらあかん?
468名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 13:18:25.42 ID:dyfexLON
何らかの作品のキャラクターとして認知されてればおk
469名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 17:39:27.74 ID:GImmOxKm
まじで召喚する気なのか
470名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 17:46:52.09 ID:ynp1ZwW/
40代無職のおっさん?
つまりマダオやニートキングを召喚すればいいわけか
471名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 18:01:28.86 ID:BrDJS6o7
■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!


・ここはあの 作品 の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
472名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 19:33:06.39 ID:b3nteZEV
>>461
だから“能力的には”だよ。
永琳は既に輝夜の従者だしな。

これに限らず従者キャラがルイズに喚ばれるパターンがあるが、
従者としてのアイデンティティが強ければ強いほど、
上手くいくとは思えないんだよな。
大体エタってるし。まぁ、エタってるのは従者キャラ物に限らないけど。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 19:33:18.10 ID:7nGxEguM
マダオとニートキングの文字を見た瞬間に脳内で瞬時に合成されて、マグニートが出来上がってしまった。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 19:39:46.75 ID:efwCHfYl
マグニートは超能力者の選民思想持ってるんだよね
メイジを超能力者と認識したら配下にして平民と敵対するんじゃないか
475名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 19:57:50.93 ID:7UTWE7yp
最近は人柄も丸くなってきてるけどなマグニート―w
ユートピアで楽隠居したあげく、小学生くらいのヴィランに襲撃された時、他のメンバーが臨戦態勢を整える中「君たち宿題は?いや本当に」と一人だけボケた事を言ったり…
476名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 19:59:55.94 ID:GImmOxKm
アメコミから召喚ならレッドが良いな
凹凸コンビ的にうまがあいそう
477ルイズ友人帳:2012/03/16(金) 20:09:54.32 ID:LBcKUcNk
夏目友人帳のニャンコ先生とルイズでエピローグから
478ルイズ友人帳:2012/03/16(金) 20:10:45.12 ID:LBcKUcNk
 ある人間と関わってから時々、楽しいと思うようになった。
見えないものが見える珍しい人間の類。
妖怪である私に媚びず恐れず寄ってきた奇特な人種。
私が見えることで人から疎まれ、避けられてもやめなかった人間。
私も彼と出会うまでは、彼と似たようなものだった。
同じ妖怪に関わらず持つ力ゆえに畏怖され敬われ、距離を置かれていた。

 その人間の祖母である夏目レイコは、人間であるに関わらず強い妖力と胆力を持ち
力でもって多くの妖から真名を奪い『友人帳』なる帳面を造り上げていた。
彼女の『友人帳』を巡る、子孫である夏目貴志と出会い。
以来、『友人帳』を繋がりに私は一部の人間達を友人にしている。
ルイズもそんな私の数少ない友人の一人だ。


「夢を見ておったのか?」
 ベッドから身を起こしたルイズは微笑み、頷いた。
にゃんこ先生が心配そうに彼女の顔を覗き込んでいたからだ。
「動けるか?」
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは若くない。
肌に張りはなく、毛は抜け、目尻に皺が寄っている。
ひ孫が居て、一緒に居た姉たちは既に他界している。
 ルイズはニャンコ先生の背中に触れた。
だるまに似たデブ猫のふわふわとした暖かい感触。
見た目も中身も出会ったときから一部たりとも変わっていない。
「おはよう、ニャンコ先生。あなたは変わらないのね」
 彼女が笑うと、ベッドの傍に立てかけられた松葉杖に手を掛ける。
老衰した手で窓を開くと、若々しい春の匂いが飛び込んで来た。
479ルイズ友人帳:2012/03/16(金) 20:12:22.66 ID:LBcKUcNk
 芽吹く草木と、咲き乱れる花々、青く茂る若葉、庭の薔薇は彼女のお気に入りだ。
透けるような青空と真っ白な雲、遠く離れた街が見える。
街は彼女が守った人々の証だ。
 窓から三歩歩いて彼女は倒れた、二度と目覚めぬ寝顔は安らかで優しさに満ちていた。



 不死に近い妖怪にとって、全ては夢なのかも知れない。
留めようと掴んだものも、やがて手の内から崩れ去ってしまう。
時の流れは残酷だ。
人間の生は短い。
留まり続ける者の後からやってきて、やがて追い越していく。

 だが繰り返される営みは、痕跡だけでも残してくれる。
部屋の隅には一冊の古びた大きな本と錆びた剣。
先代のガンダールヴが使った遺品。

 立て掛けてあった剣が猫に喋った。
「ルイズは逝ったか。残念だったなあ斑のダンナ、いい使い手と使い魔だったのに」
「ふん、使い魔になった覚えなどない。ルイズは……友だった」
「人間を好むなんて物好きだねぇ、ダンナ」
 剣は飾りを動かしてからからと寂しげに笑った。
「ふん」
「まっ、俺も人のこといえねえわな」
 ドアの向こう、駆けて来る子供の足音。
まだ小さい人間の孫、彼女が残したものの一つだ。
「俺はしばらく寝るがダンナはこれからどうするんで?」
「子守りをするのも、楽しいかもな」


 もうすぐ子供が扉を開ける。
斑は一冊の古びた本を見つめた。
そして、懐かしいあの日々を彼女の代わりに思い出すのだ。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 20:49:32.97 ID:m4FHjwvq
>>465
ちょっと読みたい
481名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 22:51:12.74 ID:wYJq/mh6
乙、続き頼む

タバサはやっぱり勇者召喚だろ

ロトかヨシヒコか
482名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 22:58:53.09 ID:IjvesG+O
もょもとだろう
483名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 23:06:31.71 ID:pZHs2Tl4
ニセ勇者 召喚編
484名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/16(金) 23:17:47.86 ID:72wAQwco
ニセ勇者と言えばダイの大冒険のでろりんってあれで弱くはないよな
イオラ使えるあたり、あの世界でもそれなりの武芸者だったのかも
口八丁もあっただろうが、それでも勇者とみなされる程度には鍛錬してたのか
根はそんなに悪い奴じゃないっぽいし
485 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2012/03/16(金) 23:34:00.49 ID:u4aXSfe7
test
486機械仕掛けの使い魔:2012/03/16(金) 23:41:08.72 ID:u4aXSfe7
こんばんは、機械仕掛けの使い魔です
友人帳の方、乙でした
 
予約等なければ、23時50分から、第17話を投下します
487機械仕掛けの使い魔:2012/03/16(金) 23:51:22.14 ID:u4aXSfe7
機械仕掛けの使い魔〜第17話〜
 
 
 ルイズが目を覚ますと、突き抜けるような青空が視界いっぱいに広がっていた。やわらかな日差しに目を細めながら上体を起こし、辺りを見渡す。
そこは、1年以上帰っていない、ヴァリエール邸の中庭だった。下を見下ろせば、木で出来たボートの船底がある。ちょっと視線をずらすと、ボートの縁、続いて波紋が穏やかに広がる湖面。
どうやら自分は、中庭の池に浮かべてあるボートに乗っているようだ。
 あの頃と何も変わっていない、とルイズは思い、同時にこれが夢なのだと理解した。寝る直前までは間違いなく自室であり、そこで繰り広げられた騒ぎは、どれだけ頭が拒否したくとも事実なのだ。
それがいきなり、実家の中庭にいるなどありえない。
「大変な事になっちゃったなぁ…」
手にはご丁寧に、改造拳銃が握られている。ごろん、とまた寝転び、銃口を大空へ向け、『ファイアー・ボール』と呟いて引き金を引いた。やはり火球は生じず、銃身が跳ね、空中で軽い爆発が起きただけだった。
「夢でも、これかぁ…ご丁寧なものね、全く…」
 
 その時、視界の端を小さな影がよぎった。何だろう、と再び身体を起こして後ろを振り返ると、そこには銀糸でグリフォンの刺繍を施された、立派なマントを纏う男が立っていた。
頭には鍔広の羽帽子を被り、立派な口髭を蓄え、そしてその瞳は、優しい視線をルイズへ向けている。
「あ…あなたは…!」
思わず、ルイズは呟いた。彼女が幼少の頃から憧れ、尊敬していた許婚が、そこに立っていたのだ。
「どうしたんだい、ぼくの小さなルイズ。また叱られたのかい?」
その優しい声に何も答えず、ルイズは彼に抱きついた。夢だと理解出来ているのに、彼の温もりを求めるよう、強く、強く力を込めた。
「魔法がまともに使えない事に、少し落ち込んでいただけですわ」
フーケのゴーレムと初対峙した際にあえて武器として、つい先程ギーシュを吹っ飛ばす為に、幾度かは割り切って失敗魔法を行使したが、それでも心中にわだかまりは残っている。
貴族として、メイジとして、魔法が使えないのは致命的だ。その事実が、ルイズの心に重くのしかかっていた。
 
 魔法が使えない事への家族の反応、クラスメイトの反応、教師たちの反応、そして自分の中に澱のように溜まる鬱屈した何か。それらをルイズは、許婚に打ち明ける。しかし彼は、何も言わない。身じろぎ一つしない。不審に思ったルイズが顔を上げた、その時。
「アチョーーーー!!」「あうっ!?」
 甲高い掛け声と共に、何かがルイズの顎を直撃した。夢なので痛みはない。だが衝撃で後ろに倒れた。
「ななな何、いきなり…」
顎をさすりながら、ルイズはキョロキョロと周囲を見た。いつの間にか、憧れの許婚の姿はない。その代わりにボートの舳先に、先程までは確実にいなかった何者かの影がある。
「おいオメー、さっきから聞いてりゃ悔しくねぇのか!? 散々文句とか悪口言われてるみたいじゃねぇか!」
逆光ではっきりとは分からないが、その声は聞き覚えがある…と言うより、ここ最近はずっと聞いていて、忘れようもない。
 声の主が、一歩前に進み出た。
488機械仕掛けの使い魔:2012/03/16(金) 23:54:15.58 ID:u4aXSfe7
 
「く…クロ!?」
 声の主、クロはなぜかぬいぐるみを脱ぎ去り、メタルボディ丸出しであった。額には青筋が大きい物だけで4つ。その他、小さい物が無数。考えるまでもない。クロは、猛烈に怒っている。
「言われんのはしょうがねぇだろうさ。だけどよ、連中を見返してやろうとは思わねぇのか!?」
拳を握り締めて訴えるクロに、ルイズは気圧されながらも答えた。
「そ、そりゃ私だって頑張ったわよ…100回詠唱すれば、きっと成功するって…! だけど、1000回詠唱したって、一度も成功した試しがなかったのよっ!」
つらい練習の日々を思い出したのだろう。言いながら、ルイズの目尻に涙が溢れていった。屋敷を傷付けるのは日常茶飯事。至近距離で爆発が発生して、自身が怪我をする事も多々あった。
その度に次は成功する、と自分に言い聞かせて頑張っていたのだが、心の奥底ではやはり悲鳴を上げていたのだ。
 
 嗚咽するルイズ。そんな彼女を見て、クロは…
「なら1万回唱えやがれっ!!」「へぶっ!?」
…容赦のない飛び蹴りを、ルイズの頬に叩き込んだのだった。
「泣いてる暇があんなら、とっとと次を唱えろ! それでダメならまた次だ! オメーが諦めたら、誰がオメーの魔法を成功させるってんだ!」
ボートの船尾ギリギリまで吹っ飛ばされて、その場で頬を押さえたまま、ルイズは動かなくなった。
 
 そうしていると、ルイズの頭を優しく撫でる手が1つ。
「ルイズちゃんは、何で魔法を使いたがるの?」
見上げてみると、そこにいたのは金属質の身体を持つ、小さな猫。ミーだった。
「そ、それは…」
偉大なメイジになって、魔法が使えない事を笑った人に、『私はこんなに成長したんだ!』と言ってやりたい。そして誰よりも気高く、誇り高い貴族となりたい。
 そこまで考えて、ルイズは気付いた。そうだ、自分がどうして、これほどまでに焦っていたのか。
「私は…みんなに、認めてもらいたい…」
クロと掃除をしていて、これからはオイラも一緒だと言われた時。ミーに自分の失敗魔法を褒められた時。とても心が暖かくなって、嬉しかった。
子供の頃から向けられていたのは落胆と軽蔑の眼差しだった。だからこそ、誰かに褒められたり、認められたかったのだ。
 
「ルイズちゃん、夢っていうのはね、人に自慢する物じゃなくて、自分との戦いなんだよ。一生懸命頑張れば、みんな自然と、ルイズちゃんの事を認めてくれる。クロもボクも一緒にいるから、これからも頑張ろ?」
 舳先ではクロがニヤリと笑い、後ろではミーが頭を撫でてくれている。この上ない心強さを感じたルイズの瞳に、一層強い意志の光が宿った。
 
    +     +     +     +     +     +
 
 場所は変わって、ここは使用人宿舎前。太陽の昇り具合からして、朝の9時頃、といったところか。
「んじゃ、よろしく頼むぜ」
「はいっ、任せてください!」
「へぇ、よく出来てるのねぇ…」
そこにいるのはぬいぐるみを脱いだクロ、シエスタ、そして彼女のメイド仲間であるアイナである。シエスタの手には、クロが普段身に付けているぬいぐるみが乗っていた。
 元の世界のゲームセンター前にあるUFOキャッチャーに侵入し、そこから盗んだ物だ。しかしプライズ品であるというのに、その質はなかなかによい。未だにぬいぐるみであるとバレた試しがない程だ。
「この肉球、本物みたいにぷにぷにしてますね〜…」
 うっとりとした顔で、ぬいぐるみの肉球をいじるシエスタ。そう、このぬいぐるみのクオリティは、肉球にまで及んでいるのだ。柔らかくも確かな弾力、優しげなピンク色。見て、触れて大いに楽しめる逸品である。
489機械仕掛けの使い魔:2012/03/16(金) 23:57:51.59 ID:u4aXSfe7
 
 クロがぬいぐるみを預けたのは、いわゆるメンテナンスの為だ。過酷な旅になるであろう今回のアルビオン行きに際して、ぬいぐるみが破れると、以降メタルボディ丸出しで行動せざるを得なくなる。
戦闘での破損ならまだいいが、糸のほつれや生地の小さな穴が原因だったりすると、あまり面白くない。
 そうならない為に、出発前にシエスタとアイナに頼んで、前に述べたような傷みがないかをチェックしてもらうのだ。
 
 まだ肉球をぷにぷにやっているシエスタと、精巧な作りのぬいぐるみを観察しているアイナに別れを告げたクロは、少し離れた所でもう一度使用人宿舎を見やり、次いで本塔に目を向けた。
「ぬいぐるみは預けた。移動中のメシと油の調達は、ミーくんからマルトーのおっちゃんに頼んでもらった。後は…」
出発までに必要な準備を頭の中で反芻し、残っている物を指折り数えてみた。ミーの『アレ』で引く荷車の補強、アンリエッタの偽装、弾薬類の補給、現地の地図入手などなど…分担はしているが、まだまだやる事は沢山ある。
「弾は明日にならねーとムリだしな、今から出来そうな事って言やぁ…」
ちら、と厩へ目を向けると、そこにはお馴染みの荷車が停めてある。
自転車修理も余裕でこなせるクロならば、補強作業など造作もない。しかし工具類はルイズの部屋にあるが、肝心の部品がない。
「…仕方ねぇ、補強もミーくんにまとめてやってもらうか」
補強作業は、現時点では断念する他ないだろう。
 
 厩から視線を外したクロは、タバサの様子を見に行こうと、本塔へ歩き始めた。タバサには、図書室でアルビオンの地図を探してもらっている。
アルビオン到着後の、安全かつ最短のルートを探るには、可能な限り最新の、詳細な地図が不可欠である。
普段からよく書物を読み、図書室に頻繁に出入りするタバサならば、立ち並ぶ書架を手際よく捜索できると踏んだのだ。
 
 日の光をメタルの額で鈍く反射させながら、ヴェストリの広場を経由して本塔へと向かうクロ。その時…
「ぐぇっ!?」
突如、小規模の爆発が、クロの身体を吹き飛ばした。
 
 
「げっ、ヤバ…」
 吹き飛ばされたクロから約30メイル離れた場所、そこには改造拳銃を構えたルイズと、バラの造花を振るった姿勢で硬直するギーシュの姿が。周囲には7体のワルキューレ。そして改造拳銃の銃口は、しっかりとクロの方を向いていた。
 
 夢から覚めたルイズは、手早く着替えを済ませ、ヴェストリの広場へと向かった。左手には改造拳銃、反対の右手では寝起きのギーシュを引き摺りながら。
 ヴェストリの広場に到着したルイズは、着衣も整っていないギーシュを一喝してワルキューレを錬金させると、それを的に見立てて、爆発を当てる為の訓練を開始したのだ。
 彼女が立てた目標は、とにかく成功を信じて反復練習を続ける事。そして威力はこれまでに嫌と言うほど証明された爆発を有効に活用する為の、改造拳銃を用いての狙いの付け方を身に付ける事である。
490機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:01:07.83 ID:7otKf6oh
 
 しかし、ただ漠然とドアに銃口を向けて詠唱するのと、人間と同じ体格、サイズのワルキューレに狙いを定めて詠唱するのでは、まるで勝手が違う。加えてギーシュに指示する際、ルイズは何を考えたか、ワルキューレをある程度ランダムに動かすように言ったのだ。
静止する目標でさえ、安定して射撃を命中させるには相応の訓練が必要である。だがルイズは、それをすっ飛ばしていきなり動く目標――しかも等速運動ではなくランダム運動する目標に当てようとしているのだ。言うまでもなく、その難度は静止目標のそれを上回る。
 
 そんな無茶な訓練を続けていたルイズだが、当然の如く7体のワルキューレは無傷のまま、彼女の精神力だけが徐々に削られていく。そんな中で、狙いの反れた失敗魔法が、たまたま歩いていたクロに直撃したのだ。
「だ、大丈夫なのかね、クロちゃんは…」
「仰向けに倒れたままで動かな…あ、動いた」
心配するルイズとギーシュ。すると、クロは上半身を起こし、次いでその場で立ち上がった。
「どうやら、大丈夫なよう…だね?」
「うん、何か物凄い笑ってる…あ、デルフ抜いた」
立ち上がったクロは、ルイズたちの方…正確には、己を吹き飛ばした爆発の元凶、即ちルイズと、その手にある改造拳銃を見て、素晴らしく晴れやかな笑顔を浮かべながら、デルフを引き抜いた。そしてそのまま、ルイズたちの方へ歩み寄って来る。
「笑っているけど、どう見てもこれは…」
「え、えぇ、明らかにその、アレよね…あ、ガトリング抜いた」
満面の笑みのまま、クロはルイズとギーシュに向かって歩く。右手にデルフ、左手にガトリング砲を携えて。どう考えても、逃げなければえらい目に遭う。
しかし、思考と身体は時に相反する。脳がどれだけ逃げろ、と警鐘を鳴らしても、身体がそれに従わない事もままあるのだ。今がまさに、その好例であろう。
と言うか、仮に逃げても事態が好転するとは思えないが。
 
 そしてとうとう、クロがルイズたちの元に、到着した。
「よぉルイズにクソガキ、何やってんだー?」
デルフを肩に担ぎ、ガトリング砲を嵌めた左手はダランと下ろし、そして額には大小さまざまな青筋。それでもクロは、笑っていた。
「な、何って…。と、ととと特訓、そう、特訓よ!」
クロの迫力に圧され、どもりながらもルイズは何とか答えた。
「ほぉ〜、特訓か。何の特訓だ?」
「えっと…、とにかく魔法が成功するまで回数をこなすのと…いざって時の為に、爆発を命中させる為の…ご、ごめんなさい…」
「なるほどなぁ〜、それでオイラに命中した、と」
徐々にルイズの声が小さくなり、最後の謝罪は蚊の泣くような声量である。その後のクロの物言いには、ただ頷くしか出来なくなっていた。
 
 デルフの背中で己の肩を数度、とんとんと叩いたクロ。叩くたびに笑顔の質が変わり、晴れやかな笑顔から邪悪な笑みへと変わっていく。そして、
「オメーら2人だけじゃ物足りねーだろ?」
「は?」「え?」
「オイラも協力してやる、ってんだよ」
ある種の死刑宣告が下った。
「い、いやいやいやいや、ああああアンタも色々やる事あるでしょ!? わわわ私たちは2人で十分だから!」
「そそそそうともさクロちゃん! 僕たちなんて気にせずに、きみはきみのやるべき事をだね!」
 未来が見えたかのように、ルイズとギーシュは必死で拒否した。しかしクロは聞く耳持たず、といった様子だ。
「いやー、まさか歩いてるだけのオイラに当てちまうなんて、こりゃみっちり鍛えてやらねーと…な?」
クロの目と、ガトリング砲の銃口が光った。錆だらけのデルフは輝く事など出来ないが、その代わりにハバキをカチィンッ、と鳴らした。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 00:02:31.62 ID:VwLogFpi
支援します!
492機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:03:38.93 ID:7otKf6oh
 
 なおも弁解しようとする2人へガトリング砲をチラつかせて沈黙させたクロは、朗々と特訓のルールを説明し始めた。特訓なのに楽しそうなのは、ツッコむだけ無駄のようだ。
「10秒待ってやるから、とにかくオイラから離れな。10秒後にオイラはスタート、オメーらを追っかける。お互い攻撃は自由だ。オイラか、オメーら2人のどっちかがギブアップするまで続けっぞー」
「な、何よその無茶苦茶なルールは!?」
「鬼ごっこっつーんだよ、知らねーのか?」
「私の知ってる鬼ごっこと違う!」
むしろ、誰も知らないだろう。当然である、クロが即興で考え付いたルールなのだから。
「えーっと、これは僕も参加しないとダメなのかい…?」
「逃げなくてもいーけど、目に付いたら容赦しねーぞ」
どうやら強制参加らしい。
 
 沈黙しつつも、何とかこの特訓を回避しようと考えるルイズとギーシュ。しかし意気揚々とデルフを振り回すクロを見て、考えを改めた。回避不可能、やらなきゃやられる、と。
「じゅ〜う!」
何の前触れもなく、嬉々とした声でカウントダウンが始まった。その瞬間、2人は脱兎の如く駆け出した。全く同じ方向へ。
「ちょ、ちょっとギーシュ! 何でこっち来るのよっ!?」
「き、きみこそ別の方向へ逃げたまえ! 僕がこっちに逃げるからっ!」
互いに非難し合うルイズとギーシュ。譲り合う気はないらしい。
 
「ぜ〜ろっ!」
 とうとう、カウントが終了した。同時にガトリング砲の銃声が1つ、辺りに響く。
「この音は…って、何アイツっ!?」
「ガトリング砲の発砲…って、ひぃっ!?」
その銃声に気を取られ、走りながらも首を巡らせた二人が見たのは、芝生を派手に散らしながら猛スピードで迫って来る、クロの姿だった。デルフを頭上に掲げ、ガトリング砲の銃口はこちらを向いている。
「オラおせーぞオメーらぁ! もっとキリキリ走りやがれッ!!」
怒号と共にガトリング砲が火を噴き、ルイズとギーシュのすぐ後方の地面を穿った。
「う、ううう撃ったわよあのバカ猫!? ごごごご主人様の私に向かって撃ったわよアイツ!?」
「見れば解るとも! 解るから走りたまえっ!」
動揺するルイズに喝を入れながら、ギーシュはバラを取り出し、その花弁を1枚地面に落とした。
「時間稼ぎにもならんだろうがね、ルイズ、援護を頼むよっ!」
「え、援護って何よ!?」
「きみの魔法で、クロちゃんの気を逸らせてくれればいい!」
 
 走りながら上半身を右回りに反らせ、後方のクロに向かって銃口を向けるルイズ。
「撃てばいいんでしょ、やってあげるわよっ!」
銃に精神を集中させたルイズは、あぁ、このまま『フライ』で空に飛び上がれたら、どれだけ楽に逃げられるだろう、と考えていた。その結果飛び出した呪文は、
「『フライ』、『フライ』っ、『フライ』っ!!」
そのまんまである。銃は跳ね上がるが、ルイズの身体が宙に浮く、という事はなく、
「うおっ、危ねっ!?」
迫り来るクロの周囲、足元で3つの爆発が起きた。銃口の向きからは予想も出来ない位置で起きる爆発に、注意が逸れたクロ。ギーシュは、これを待っていた。
「いいぞ、その調子だよルイズ! この隙に行けっ、ワルキューレ!」
ルイズの魔法がクロの気を引いている間に、ギーシュはワルキューレの錬金を完了していた。ただ錬金するだけでは、以前の決闘のように成す術なく蜂の巣にされるだろう。故に、ワルキューレの準備が完了するまで、ルイズの魔法でクロを牽制していたのだ。
493機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:05:59.72 ID:7otKf6oh
 
 ルイズの失敗魔法を回避する為、上方に跳び上がったクロ。そこへギーシュは狙いを定め、ワルキューレを突撃させた。手にした青銅のハルバードを振りかぶり、ワルキューレがクロへ肉薄する。しかし、
「ちっ、舐めんなってんだよ!」
振り下ろされるハルバードをデルフの一撃で叩き折ったクロは、その反動で身を翻らせると、ワルキューレの顔面を全力で蹴り抜き、さらに上へと跳んだ。ワルキューレは頭部を割られ、身じろぎもしないまま地面に落下、バラバラに砕け散ってしまった。
 
「やはり単騎ではダメか! ルイズ、とにかく逃げるんだ!」
「アンタもスピード落ちてるわよ!」
 なぜ跳び上がったのかは解らないが、滞空中であれば速度はこちらに分がある。しかもその高度は、目測でおよそ50メイル以上。着地まではそれなりの時間がかかるだろう。それまでに距離を離そうと、ルイズとギーシュは走った。
 そこで、ルイズが気付いた。なぜ、クロは跳んだ? 最初のは解る。自分の失敗魔法を避ける為だ。では、次いでワルキューレを蹴ってまでさらに上へ跳んだのは、なぜだ?
 背筋がゾクリ、と冷えた。
「止まりなさいギーシュッ!!」
すぐ隣を走っていたギーシュの腕を掴み、無理やりに減速させた。その次の瞬間、ガトリング砲の発砲音が聞こえ、すぐ前方の芝生が、多数の弾丸によって耕された。
「ああああ危なかった…」
散らばった土と芝を見て呆然とするギーシュ。あのまま走っていたら、間違いなく直撃していただろう。
随分やってくれたものだ、降りて来たところに一発撃ち込んでやる、と息巻きながら、ルイズは上空のクロを見やった。そして――顔面が蒼白になった。
 
 クロのしっぽがこちらを向き、その先端が2つに分かれていたのだ。そこに見えるのは、この距離でもハッキリと識別できる、真紅の弾頭。
「ギーシュ、今すぐワルキューレ作りなさい!!」
クロに向けて銃を構えつつ、ルイズが叫んだ。その声に釣られるようにギーシュが上空を見たところで、『フライ』と連呼しながら何度もトリガーを引く。
しかし、クロには当たらない。ジャンプのほぼ頂点にあるとは言え、完全に停止しているわけではないのだ。微妙な移動により、ルイズの照準が定まらない。
 そして、フーケのゴーレムの拳、コルベールの部屋を吹き飛ばしたしっぽミサイルが、ルイズたちへ向けて放たれた。
 
 迫るミサイルに狙いを切り替えてルイズが失敗魔法を連射する。しかし高速で飛翔するミサイルには、爆風が掠る事すらない。
これを見てようやくルイズの思惑に気付いたギーシュは、慌ててワルキューレを錬金した。
「遅いわよ、間に合わないっ!」
「いや、間に合わせてみせるさ!」
地に落ちた花びらから、人間大の光が伸びた。その光が形作ったのは、従来のワルキューレではなかった。武器を一切持たず、鎧も、毛髪も、顔も、乳房さえも存在しない、この上なく扁平な人形であった。その錬金にかかった速度は、従来のワルキューレよりも遥かに短く、
「これで十分なはずだ、跳べ、ワルキューレっ!」
迎撃するには十分な距離を開けたまま、新たなワルキューレは跳び、ミサイルへ体当たりを叩き込んだ。
 
 ワルキューレの体当たりによる衝撃で信管が起動し、上空で爆発するミサイル。
「よ、よく間に合ったわね…」
「生み出してすぐに砕け散るならば、大仰な装飾は不必要だろう? 普段どおりで間に合わなかったら、目も当てられないからね」
コモン・マジックの『フライ』と言えど、さすがにアレだけ連発すれば消耗も激しくなる。それもクロから全力疾走で逃げながら、である。肩で息をしながら、ルイズは颯爽と着地するクロを睨みつけた。
494機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:09:04.41 ID:7otKf6oh
 
「おーおー、ガトリングだけじゃなくてミサイルまで迎撃するたぁ、やるじゃねーか」
「あ、あああアンタ! アンタ仮にもチビッコのヒーローでしょ!? こんな鬼みたいな事ばっかりやってたら好感度落ちるわよ!?」
 息を切らしながら、非常にメタな発言をしてくれたルイズ。しかしクロはヘラヘラと笑いながら、
「だーって、それで困るのはオイラじゃなくて作者だもーん」
と、これまたメタ過ぎる反論を返した。
「だ、だだだ第一、ガトリングだのミサイルだの、当たってたら私たち死んでたかもしれないでしょ!? この特訓、ホントに命の保障とかあるの!?」
もっともな意見をぶつけたルイズ。しかしこれにもクロは、
「心配すんなルイズ、チビッコアニメでそうそう人は死んだりしねーって」
先程と同レベルのメタ的返答を送った。アニメではないのだが。
 
 と、余裕綽々なクロであったが、背後から2つの影が忍び寄っている事には気付けなかった。いや、余裕からの慢心だったのか。
「捕まえろ、ワルキューレっ!」
「何ィっ!?」
バラを振るいながらワルキューレへと指示を出したギーシュ。同時にクロの体が、2体のワルキューレによって拘束された。
「いいぞ、そのまま融合するんだ、ワルキューレ!」
「んがっ!?」
ジタバタとクロが暴れる。普段ならばそれでワルキューレの腕がもぎ取られそうなものだが、今回は事情が違った。ワルキューレの体が、ギーシュの指示によってドロリ、と軟化したのだ。いくら暴れようと、その力は柔らかくなった青銅によって分散され、単なる徒労に終わる。
 やがて完全にワルキューレの形を捨てた青銅は、クロをすっかり包み込み、直径1.3メイル程度の球体を形成した。クロの捕縛に、成功したのである。
 
 クロがワルキューレを蹴ってさらに上昇した際、ギーシュもただ逃げていたワケではなかった。上昇するクロが着地するであろう位置を予測し、そこより後方、死角になるような位置に、次の攻撃の布石として花びらを2枚、散らしておいたのだ。
 50メイル下方で舞い落ちる花びら2枚など普通であれば見えないだろうし、クロの視力がそれすら識別するほど優れていたとしても、今は逃げる自分とルイズに気を取られているはず。自分に都合のいい条件に基づいた搦め手、即ち駄目元の一手だった。
 しかし結果としてクロは花びらに気付かず、まんまと彼の死角でワルキューレの錬金に成功、捕縛に至った。
「今だルイズ、攻撃を!」
微動だにしない青銅の球体を指し、ギーシュが叫ぶ。だがルイズはすでに、準備を終えていた。両手でしっかりと銃を構え、ほんの少し腰を落とし、視線は球体の中心に据えている。
「そうそう死んだりはしない、だったわね? なら遠慮なく、やらせてもらうわよ! 『フレイム・ボール』っ!!」
 
 先程のクロの言葉をそのまま引用し、ルイズが放ったのはゴーレムの頭を吹き飛ばした『フレイム・ボール』。無論、巨大な火球など発生しなかったが、威力自体は前述の通り、折り紙付である。
 青銅の球体はほんの一瞬だけ輝き、直後に爆裂。ごく僅かの青銅片と、大量のドロドロに軟化した青銅を派手に撒き散らした。球体は表面2サントだけが硬化しており、中身はクロの馬鹿力を封じれるように、ドロドロのままだったのだ。
 そして肝心のターゲットであるクロは、爆発によって空高く打ち上げられ、そのまま落下し、地表に激突。糸の切れた操り人形のように倒れ伏した。
「…やった、か?」
「今の爆発は、フーケのゴーレムの頭を吹き飛ばしたのよ。さすがのクロも、しばらくは動けないはずだわ」
 危機は去った――そう思うと、今になって疲れがどっと押し寄せて来た。ルイズは『フライ』で何度も爆発を起こし、最後には『フレイム・ボール』の失敗バージョンを撃った事で、ギーシュはこれまでに経験がないほどの複雑なワルキューレの運用で、精神力が大きく失われた。
それに加えて長距離を全力疾走したものだから、肉体的な疲労も激しい。
 今日はもう、部屋に戻って休もう。明日の日暮れにはアルビオンへ出発しなければならない。無言で視線を交わしたルイズとギーシュは、それぞれの部屋へ歩を進めた――ところで、高らかに、ハバキがカチィンッ、と鳴り響いた。
495機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:14:10.57 ID:7otKf6oh
 
「娘っ子に坊主、まさか終わった、なんて思っちゃいねぇだろうな?」
 ビクッ、と肩を震わせ、ルイズとギーシュは硬直した。
「ルールは、どっちかがギブアップしたら終わり、だっけか。相棒はまだ、ギブアップなんて一言も言ってねェぞ」
「で、でも今ので勝負は決まったようなものじゃないの! クロだってピクピクしてるだけで、全然動かないじゃない!?」
デルフの不吉な言葉をかき消すように、ルイズが吼える。事実、クロは先程からほとんど動かない。しかし、クロがまだ、自分の口で『ギブアップ』と言っていないのもまた、事実。
「いんや、そっちからじゃ解んねェと思うけどよ、相棒――笑ってンぜ?」
 
 聞き間違いかと思った。笑っている? 痙攣しているのではなくて?
「覚悟した方がいいんじゃねぇか? 俺も今、ちょっとこえーし」
デルフの言葉が嘘か真かは関係ない、いずれにせよこの場でじっとしていても、クロが起きた時には大事になる。しかしここでもまた、身体は脳の命令を拒否した。根が生えたかのように、ルイズもギーシュも、動けなかった。
 
 そして とうとう 悪魔が 牙を剥いた
 
 バネ仕掛けの玩具の如く、跳ねるように立ち上がったクロは、足を肩幅に開き、両手を大きく横に広げ、しっぽをルイズたちに向けた。
 いやに冷静に、あれは何のポーズだろう、とルイズが思う。だが間を置かず、その意味が知れた。額、胴体4箇所、両足の甲、しっぽの先端が開き、そこから真っ赤な弾頭が顔を覗かせたのだ。
「オメーらにここまで楽しませてもらえるたぁ、オイラも気付かなかったぜ…しっかり、礼はしねぇとなぁ?」
ゲタゲタゲタ、と狂ったように笑いながら、クロが告げた。これはもう例えるまでもなく、完全なる死刑宣告である。
「逃げるわよ、ギーシュっ!!」「言われなくてもっ!!」
ここでようやく、身体が動いてくれた。弾かれたようにクロに背を向け、一目散に走り出す2人。
「逃げんなオルァァァアアアアアア!!!」
 己が建てたルールを完全に無視した台詞を吐いたクロが、全身から次々とミサイルを放った。
 
    +     +     +     +     +     +
 
「…んで? 何であたしが、クロちゃんのケツを拭かなきゃならないんだい?」
 作業開始から、すでに両手で数えられないほどに吐いた呟きを、ロングビルはまた繰り返した。
「えっと…やっぱり、この前ボクとクロで壊した学院を直したから…じゃないかな?」
その横で答えたのは、背中からマジックアームを4本伸ばして、レンガを積んでいるミーである。この返答も、やはり軽く10を超えていた。そしてその後お決まりのように、同時に溜息を漏らすのだった。
 
 
 オールド・オスマンの秘書としていつものように仕事を進めていた彼女は、本塔の遥か下方から響く轟音に、舌打ちしながらも帳面から顔を上げた。
手近の窓から下を覗き込むと、黒い小さな点から何条もの煙がデタラメに伸び、それが学院の壁や各塔、橋などに行き着くたびに、大きな爆発が発生している。至る所から悲鳴が聞こえ、使い魔たちが中庭に出て暴れ始める。
 そしてそんな中、煙の発生源からひたすらに離れる、これまた小さな2つの点。さっと杖を振ったロングビルは、合計3つの点を『遠見』で確認し、大きく、大きく肩を落とした。
「やっぱりかい…嫌な予感しかしない…」
 容易に想像が付くこの後の展開にげんなりとしたところで、執務室の扉が開き、オールド・オスマンが顔を見せた。
「ミス・ロングビルや。この前のフーケ騒ぎで見事に学園を直してくれたお主を見込んで、ちと頼みたい事があるのじゃが…」
「…いえ、もう解ってますから、それ以上言わないでください…」
そら、やっぱり来た。顔を引きつらせながらも何とか笑顔を搾り出し、ロングビルは中庭へと向かった。
496機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:18:41.21 ID:7otKf6oh
 
 
 そして現在に至る。騒ぎを聞きつけてミーが駆けつけてくれたのは、正直に言うととても助かった。1人で広大な学院の修理など、考えただけで帰りたくなる。
 クロの全身ミサイルによる破壊は、かなりの広範囲に渡っていた。さすがに第一次ガンダールヴ大戦ほどではないが、平常運営が可能かと聞かれたら首を横に振る、その程度にはボロボロになっている。
よくもたった1匹でここまでぶっ壊してくれたもんだと、5体の人間大ゴーレムに指示を飛ばしながら、ロングビルは内心で毒づいた。
 ちなみに今回の破壊劇の主人公であるクロは、現在ロングビルとミーが修理している箇所とは、ほぼ反対側に位置する場所で修理を行っている。
大人しく作業に勤しんでいるのは、ロングビルから鬼の剣幕で、壊したのなら責任持って直せ、と一喝されたからである。
そのクロの横には、チリチリ頭で服が焦げたルイズとギーシュ。結局、逃げ切れなかったようだ。
 
 教員や生徒からすれば、何よりも真っ先に修理して欲しいのは、授業を行う教室たる各塔と、生活の拠点である寮塔だろう。しかしこの学院の性質を考えると、何よりも先に修理をしなければならないのは、外壁である。
 この学院で勉学を修めているのは、トリステインや周辺諸国から入学した貴族の子息・令嬢達だ。当然、そんな彼らを守る為に、セキュリティには万全を期さなければならない。
外壁の修理を後回しにしていたら、賊の侵入を許してしまいました、など許されるワケもない。盗賊としてのもう1つの顔を持つロングビルだからこそ、この作業の優先順位を決定したのだ。外壁に大穴の空いただだっ広い施設など、侵入は赤子の手を捻るより容易い。
 
「ふふっ、でもこうやってると、元の世界を思い出すなぁ」
「ん? 元の世界じゃ、ミーくんがクロちゃんの後始末をしてたのかい?」
 不意に笑みを見せたミーに、ロングビルが聞き返した。妙に作業が手馴れていると思ったが、もしかすると経験があるのだろうか?
「うぅん、ボクじゃないよ。そりゃ、ボクやクロも手伝ってたけど、中心になってたのはマタタビくんだね」
「へぇ…何か、今ならそいつと友達になれそうな気がするよ…」
「マタタビ持って行ってあげたら、きっと喜ぶんじゃないかな?」
「マタタビ…随分変わったモンで喜ぶんだね」
「猫だからね〜」
 ロングビルが、固まった。猫? ネコ? Cat? 猫が、自分と同じような作業をやっていたと?
497機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:20:15.45 ID:7otKf6oh
 
 しばし硬直したロングビル。しかしすぐに思い直した。よく考えれば、クロもミーもサイボーグ、機械仕掛けの猫なのだ。器用に2本足で立ち、人語を喋り、武器を扱い、こうして建物の修理もやってのける。今更驚くような事でもないではないか。
「あ〜、ちょっとビックリしちゃったよ。そりゃクロちゃんミーくんのお仲間なら、出来るってモンさね。凄いもんだね、さいぼぉぐ、ってのは!」
笑いながら、ロングビルはまくし立てた。しかし不思議そうに首を傾げ、ミーはこう言った。
「マタタビくんは生身の猫だよ? ボクたちみたいに喋って、2本足で立つけどさ」
瞬間、ロングビルに『固定化』がかかった。同時に、常識が悲鳴を上げる。目の前のミーやクロでさえ、常識はギブアップを宣言しつつあると言うのに。
「…あんたたちの世界って、どんな所だい…?」
死に体の常識を必死で引き寄せ、ロングビルはそれだけ搾り出した。
「う〜ん、クロが暴れて街が壊滅したりする以外は、大体平和かな?」
それは果たして平和と言えるのだろうか。強烈な脱力感に苛まれ、ロングビルはそれ以上の思考を放棄した。
 
 
 放心し、ポケーっと雲1つない青空を眺めていたロングビル。それで制御を手放してしまったらしく、気付けば周囲で作業していたゴーレムは、一体残らず土くれに戻っていた。そんな彼女の背中から、ぱきり、と、小枝を踏み折る音が聞こえた。
 来たか、でも随分早いじゃないのさ。心中で1人ごちて、ロングビルは杖を握り直し、後ろを振り返った。同時にミーも、枝の折れる音に気付き、マジックアームを収納して背後に向き直る。
 
 闖入者は黒いマントに身を包み、黒い鍔広の帽子を目深に被っていた。僅かに覗く顔は白いマスクで隠され、腰には鞘に納まった、サーベル状の杖が一振。一見して男女の区別は付かないが、その背格好から、男であると窺い知れる。
 長く盗賊稼業をやっていた為に、人の気配には人一倍敏感であると自負していたロングビルだが、振り返ってみれば自分と相手の距離は、驚くほどに近い。勘が鈍った、とは思えない。であるならば、
(こいつ…かなりの手練だね…)
相当な使い手であると予想される。
 
 杖を抜きもせず、随分と余裕に見えるが、その立ち姿には一片の隙もない。ひとまず会話で時間を稼ぎ、どうにか策を練ろうと考えていたその時、男が、口を開いた。
「『土くれ』だな?」
498機械仕掛けの使い魔:2012/03/17(土) 00:30:29.45 ID:7otKf6oh
以上で第17話、投下終了です
原作で私が最も衝撃を受けた、クロちゃんとロミオの舌戦を少々アレンジしてみました。ああ言ったメタな発言も、クロちゃんのキャラを印象付ける大きな要素ですね
元々17話及び18話は、ダイジェストのような感じでアルビオン行きの準備を書こうかと思っていましたが、いざキーボードを叩き始めると、これがものの見事に文字数が増えて…
と言うわけで、今回はルイズとクロちゃん、とばっちりでギーシュの特訓と、貧乏くじを引いたロングビルの話になりました
 
ところで、以前スレ内で、サイボーグクロちゃん原作内での、自衛隊についてのお話が出ていましたが、漫画とアニメでは違っています
漫画内では本物の自衛隊、アニメでは民間自衛隊、と一般企業のような扱いで登場していますね
さすがにガチの自衛隊が「核発射!」と当たり前のように言うのは、アニメではまずかったのでしょう
ただ、現代風の世界観でのフィクションならではのハチャメチャ、というのも、アニメで声付きで見たかったのも事実ですが…
 
少々後書きが長くなってしまいました、今回はこの辺で失礼致します
499名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 08:45:59.86 ID:SGNzzWBL
投下乙!
500名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 16:07:15.66 ID:2BhuLjOJ
投下乙でした。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 16:39:36.27 ID:wgG/QSG5
投下乙!
最初の方のルイズがエイハブ化しちゃってるな
そしてマタタビ登場フラグ?
502一尉:2012/03/17(土) 18:00:36.14 ID:qV+/rroQ
日暮巡査を召喚にするルイズ
503名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 19:56:23.43 ID:rXT0F9tB
>>454
魔界医師とか
メフィストだとミョズに興味を持ってジョセフにつきかねんが
そしてルイズの使い魔を散々いたぶった後ジョセフと敵対すると
504名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 20:22:39.98 ID:QcbQ/B9D
投下乙
やたら核発射したがって部下に止められる人いたなぁw懐かしいw
505名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 20:36:21.94 ID:B+biesuz
魔界都市ハンターのメフィストだと
才人やギーシュに性的な意味で手を出しかねんのが恐ろしいw
506名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 20:39:58.32 ID:qEQBR/q+
メフィストって、見た目が美形でなくても性根が気に入ったら粉かけるからな
外見は冴えないおっさんの、朽葉刑事とかすら口説かれかけてたぞ

ギーシュよりサイトがピンチ。あと、ジョゼフも
507名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 20:42:36.13 ID:9WqTPsQw
月が2つあるから色々と捗りそうだなw
508名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 21:53:03.79 ID:ISaSBv8u
メフィラス召喚?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 22:04:41.21 ID:CYPj/gFl
魔界医師と言ったらドクターモヒカンを推したい
メフィストの兄弟子で死者蘇生スキル持ちのバケモン
見た目は北斗の拳の雑魚ヒャッハー
510名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 22:11:58.99 ID:UAjBdVvs
魔王伝の人、再開待ってます
511名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/17(土) 22:15:29.40 ID:On8HBtci
メフィストは行動理由が明確だからキャラクター動かしやすそうだな
そしてハルケゲニアに起こる魔震、各地に発生する第一級危険地帯、溢れ出る魔物達
週間世界の危機だ
512The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 00:48:57.47 ID:hqeoYDl0
夜分遅くにこんばんわ。予約が無ければ、0:53頃から投下したいと思いますがよろしいですか?
513The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 00:54:28.84 ID:hqeoYDl0
ission 21 <伝説の魔剣士、降臨> 前編



「さて、ガンダールヴよ。貴様は異国の没落貴族と言えど、その力は本物だ。それは認めねばならん。故に私も本気を出させてもらうが、依存はないな?」
不敵な笑みを浮かべながらワルドは言うが、スパーダは答えない。
既に彼は目の前の敵を倒すことだけを考えている。今は彼にこちらから話しかけても何も答えはしないだろう。
だが、ワルドのあの自信は何だ? 既に自分が勝利することを確信しているようだ。
そもそも、ワルドは先ほどの戦いでも本気を出していなかったのか。だが、あの自信がハッタリとも思えない。

「あれをやる気ね……」
ティファニアを連れてルイズ達の元まで来ていたロングビルが顔を顰めて呟いた。
まるで何か汚いものでも見るような忌々しい視線でワルドを睨んでいる。

ルイズはそのことを問おうと思ったが、目の前で起きている出来事の方に目を奪われる――。

ワルドの全身が、見る見るうちに光へと包まれていき、その瞳もまるで血に飢えた獰猛な獣のように鋭く、赤く変わっていった。
ディテクトマジックをかけなくとも、トライアングルクラスのメイジであるキュルケとタバサ、そしてウェールズはワルドの魔力がより大きく膨れ上がり、
そして強靭なものへと変貌していくのを感じていた。
やがて、ワルドを包んでいた光が静かに収まり……。

ルイズ達は唖然とした表情で絶句していた。

「ワ、ワルド……なの?」
恐る恐る、ルイズが口を開く。
バサッ、と風竜かグリフォンなどの幻獣が大きな翼をゆっくりと広げるような音が響き、ワルドが立っていたはずの場所には見たことのない亜人の姿があった。
精悍な肉体は魔法衛士隊のマントと同じ黒で蜥蜴のような尾を生やし、足先も鋭い鉤爪が付いていた。
その背には羽先が刃のごとき銀色でグリフォンの物と同じ双翼を生やし、猛禽類の頭と人間の頭が融合したような頭部の横には後ろに向かって湾曲した角が伸びている。
そして、左腕全体を覆うように巨大な盾のようなものが装備され、右手には馬上槍のように鋭く、肥大化した銀色のレイピアが握られていた。
その亜人の姿にルイズ達は恐ろしい物でも見るかのように目を見開き、愕然としていた。
514The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:01:32.13 ID:hqeoYDl0
『その通りだよ。ルイズ』
その亜人の口から、響きがかかってはいたがはっきりとワルドの声が聞こえてきた。
「に、人間じゃ……ない?」
タバサの体を抱えるキュルケの声が、震えている。

『偉大なる始祖に選ばれし者のみが――人を超え、生まれ変わるのだ。……天使としてな!!』
ワルドはレイピアを薙ぎ払い、礼拝堂に一陣の烈風が巻き起こる。
その烈風は礼拝堂のありとあらゆる物を吹き飛ばし、さらには壁や床にヒビを入れるほどの威力だった。
スパーダはその烈風を全身で受け止めるが、微動だにせずワルドを睨み続けている。
ルイズ達は逆に烈風に耐えられず容易く吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
ロングビルだけはティファニアを抱えて必死に持ち堪えている。

ワルドの体がふわりと、宙へ浮かび上がっていく。
『レコン・キスタの崇高なる目的のために、私は盟約により力を手に入れた!!
偉大なる始祖が与えたもうたこの力を持って……ガンダールヴよ! 貴様を倒す!』
スパーダを見下ろしながらワルドはレイピアを突きつけてくる。
当の打倒宣言を受けたスパーダはそんなワルドを睨みながら、ぼそりと呟いた。
「……哀れな男だ」

それは決して、天使の力などではない。――自分と同じ、悪魔だ。そのことに、ワルドは気づいていないようである。
今までワルドから感じていた奇妙な魔力の正体はこういうことだったのだ。
メイジとしての魔力と混ざってしまってこれまではよく分からなかったが、今はすっかりその悪魔の力を感じることができる。
人間が悪魔の力を行使する……魔に魅入られた人間達が無数に生み出した数々の秘術にはそのようなものがある。
その狂気の秘術が、この世界にも存在していたというのか。
……それとも、何者かがこいつらにその知識と技術を与えたか。
515The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:08:16.47 ID:hqeoYDl0
天使のような姿を模している悪魔と化したワルド――アンジェロ・ワルドは左腕の盾を構えながらスパーダ目がけて突撃してきた。
先ほど、タバサとギーシュを相手にしていた際に使っていたフライの魔法よりも遥かに速い。まるで、風竜のようだ。
だが、スパーダは突き出された巨大なレイピアを体を横に逸してあっさりとかわす。
外れたレイピアは床に激突し、1メイルほどの穴を開けて砕き、陥没させていた。
アンジェロ・ワルドは間髪入れずに体を反転させながらレイピアを薙払ってくる。
スパーダはそれをリベリオンを振り回して弾くと、後ろへと跳躍する。
弾かれたリベリオンをそのまま片手で振り上げると刀身に赤いオーラが纏わりつき、すぐに一気に振り下ろした。
彼がいつも使う剣圧の衝撃波だが、力を溜めていないためかそれほど威力はない。突撃してくるアンジェロ・ワルドの盾によって容易く防がれる。
残像を残し、一瞬にしてスパーダの目の前まで距離を詰めたアンジェロ・ワルドは恐らくブレイドの魔法をかけたのであろう、
青白く光るレイピアで目にも止まらぬ速さの連続突きを繰り出してきた。
タバサでさえ捉えられないその攻撃を、スパーダは最小限の動きで全てかわし、時にリベリオンを盾にしていなしている。

突如、突きをかわしていたスパーダの姿が煙のように掻き消えた。
アンジェロ・ワルドは即座に残像を残しつつ、滑べるような動きで大きく後退していった。
その時間差で、アンジェロ・ワルドが立っていた場所の上方からスパーダがリベリオンを振り下ろしながら急降下してきた。
兜割りはズガン、と鋭い音を立てて激突し、床を砕く。

『これが、天使の力だ!!』
アンジェロ・ワルドの右手からレイピアがつむじ風に包まれ煙のように消えた代わりに、つむじ風と共に現れたのは3メイル近くもある巨大で鋭い銀色の矛だった。
その矛をアンジェロ・ワルドは軽々と振り上げ、豪快に投げつけてきた。
真空が渦巻くように纏わりつく矛は一直線にスパーダ目がけて飛んでいく。
リベリオンを収めていたスパーダは閻魔刀を構え、片手で振り抜く。
手が僅かに動いたようにしか見えない神速の居合いはスパーダとアンジェロ・ワルドの間にある空間を歪ませ、斬撃が発生していた。
投げ放たれた矛はその斬撃に呑み込まれると同時に、跡形もなく消滅する。
さらにスパーダは絶え間なく連続で居合いを繰り出し、アンジェロ・ワルドのいる場所に次々と斬撃を放っていく。
対するアンジェロ・ワルドも自分のいる空間が歪み始めた途端に閃光のごとき速さで移動し、更なる矛を連続で投げ放っていた。
閻魔刀を収めたスパーダは向かってくる矛を即座にリベリオンを袈裟に振り下ろし、明後日の方向へと全て豪快に打ち返した。
弾かれた矛は礼拝堂の壁、天井、果ては始祖の像さえも一撃で粉砕してしまっていた。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 01:11:09.96 ID:+m9dWFUC
支援
517The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:14:42.66 ID:hqeoYDl0
「きゃあっ!」
「うひゃあ!」
礼拝堂の隅にまで届く烈風に先ほどからルイズとギーシュは悲鳴を上げてばかりいた。
亜人と化したワルドは先ほどよりも激しい攻撃を次々とスパーダに仕掛け、スパーダもその攻撃を的確にいなしつつ反撃を行っていた。
もはやこの戦いに、自分達が入り込む余地などない。無理して入った所で、一切の容赦がない攻撃に巻き込まれるのがオチだ。
タバサでさえ、目の前で行われる次元の違う激闘に目を奪われていた。先ほどまでの自分達の戦いなど、まるで子供の遊びみたいに生ぬるい。
これが本物の、戦士と戦士の戦いなのだ。
その戦いのすぐ側に自分達がいるのに、未だこちらに被害が出ないのも不思議である。
「あれが……スパーダ殿の力か」
つい先ほど、タバサの魔法で傷を癒されて幾分楽になっていたウェールズは目の前で起きている戦いに嘆息を吐く。
「参ったな。彼ほどの戦士が、君の使い魔とは。トリステインの貴族も、まだまだ捨てたものではないな」
「こ、光栄でございます」
思わずルイズは頭を下げて跪く。
ルイズもスパーダがあそこまで強いことに、嬉しさを感じていた。
自分よりも遥かに大きなゴーレムでさえも物怖じせずに立ち向かい、返り討ちにしてしまうどころか、あのような
おぞましく強力な怪物となってしまったワルドとさえも互角に渡り合っている。
豪然たる力を持った異国の剣豪であり、立派な貴族でもあるあの男が自分のパートナーだなんて、何だか誇らしく思ってしまう。
今度、実家に戻る機会があればスパーダのことを父や母、そして姉達にも自信を持って紹介することもできる。
「……でも、何だかおかしくない?」
キュルケが怪訝そうに呟く。
「どういうこと?」
「彼にしては、何だか動きが固い気がするよ」
ルイズの問いに答えたのは、スパーダの弟子であるギーシュだった。

ブレイドをかけたワルドの巨大なレイピアをスパーダはリベリオンを振るって次々と弾いており、
時に自分からリベリオンの連続突きを繰り出し、ワルドはそれを盾で防ぐ。
どちらも一歩も引いていない。あれがどうしたというのか。

「それに彼は、先ほどから右手だけで戦っている。左手を全く使っていないんだ」
その通りである。スパーダは右手だけでリベリオンを振り回したり、閻魔刀を抜いたりしているのだ。
両手を使えば、ワルドの防御などとっくに崩したり、レイピアをその手から弾いてしまってもおかしくはない。
なのに、スパーダは何故か両手を使おうとしない。つまり、全力を出していないことになる。
……いや、出したくてもあれは出せない、という方が正しいか。
「どうしたのかしら……」
ギーシュの言葉に、ルイズは心配した表情でスパーダの戦いを見つめていた。

(ルーンが、光っている?)
二人の戦いに怯えているティファニアを抱えるロングビルは戦っているスパーダの左手に注目して、その手袋に包まれている手の甲が僅かに光り始めていることに気づいていた。
518The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:21:35.20 ID:hqeoYDl0
(邪魔な……)
右手でリベリオンを振りながらアンジェロ・ワルドと切り結ぶスパーダは忌々しそうに自らの左手をちらりと睨んだ。
先日、力を封じたと思ったルーンがこんな時に限って復活しだしたのだ。
やはり自身の力を封じてしまった以上、全盛期の頃と比べて力は衰えてしまっているのは仕方がない。
もっとも力を封じてからスパーダもそのままにしていた訳ではなく人間界で千年以上もの間、自らを鍛えてきたので
かつての時よりも三分の一くらいまでは取り戻すことには成功した。
だが、やはり力が不完全であることには変わりないため、このルーンの力を封じても一時的なものにしかならないようだ。
今もまた、ルイズに隷属するように自分を洗脳しようと力を働きかけてきており、それを悪魔としての本能が抑え込んでいるために
戦いに集中できないし、左手を自由に使うこともできない。
実に目障りなルーンだった。こんな時に限って自分の邪魔をするとは。

『どうした? 動きの切れが悪くなってきているようだが?』
距離を取って浮遊するアンジェロ・ワルドがあざ笑ってくる。
スパーダはリベリオンを収め、銃を一つ手にするとアンジェロ・ワルドに向けて連続で発砲した。
『ハアァァァッ!!』
アンジェロ・ワルドは盾を構えてあっさりと防御すると、力ある叫びと共に双翼を大きく広げる。
銀色の羽が次々と舞い散り、そしてその羽は肥大化しつつ鋭い刃へと変わっていく。
手投げ用の小さな槍のような形に変わった無数の羽はアンジェロ・ワルドに付き従うように浮んでいると、次々とその切先をスパーダに向けてきた。
連続で射出されてきたその槍をスパーダは銃で撃ち落としていく。
すると、今度はスパーダの周りを旋回し取り囲むように槍が現れる。
スパーダは即座にリベリオンを手にすると一気に周囲を薙払うように振るい、突風を巻き起こした。
槍を全て吹き飛ばした途端、アンジェロ・ワルドはスパーダ目がけて突撃してきた。
さらに、突き出しているレイピアの先からウインドブレイクの魔法が放たれ、ついにスパーダを捉えていた。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 01:25:21.64 ID:+m9dWFUC
もっかい支援
520The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:28:11.99 ID:hqeoYDl0
「スパーダ!」
始祖の像に吹き飛ばされていくスパーダにルイズが悲鳴を上げた。
スパーダは即座に受身を取り、始祖像の上に着地した途端、そこへ目がけて稲妻の嵐が襲いかかる。
さらに羽が変化した銀の投げ槍が次々と飛来してきた。
「!」
スパーダはリベリオンを正面で回転させて盾にして全ての攻撃を防いだが、今度はあらぬ方向から矛が投擲されてきたたために、短距離の空間を超越して始祖像の下へと瞬時に移動する。
外れた矛は始祖像の顔の炸裂し、粉砕していた。
『今のをかわすとは、さすがはガンダールヴ』
『だが、そろそろ遊びは終わりだ』
ワルドの声が別々の場所より響き渡る。
スパーダは礼拝堂の宙を浮かぶ二人の同じ姿をした亜人に顔を顰めていた。
ルイズ達もいつのまにかワルドが二人に増えているこの状況に一瞬、混乱している。
『我が系統は風だ! 何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教えてやろう!』
一人のワルドが叫ぶと、その背後の空間がブレるように揺らめき、さらに二人の亜人の姿をしたワルドが姿を現していた。
「風の偏在か……」
ワルドの数が増えだしたこの状況に、ウェールズが呟く。
スクウェアスペル、ユビキタス。風は遍在し、風の吹く所、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例するという。
つまりは、分身だ。しかも分身の一体がそれぞれ本体とは別に意思はおろか力を有するという。
「ちょ、ちょっと! いくら何でもあんなの反則だわ!」
思わずルイズが叫ぶ。
四対一、明らかにスパーダの方が不利だ。今まで一対一でも互角だったのが、あれだけの数で一気に攻められてはなぶり殺しもいい所だ。

『本気の戦いに、そんなものは関係ない!』
『全ては、力なきガンダールヴの責任だ!』
散開した四人のアンジェロ・ワルドがスパーダの全方位から次々と容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
スパーダが一人のアンジェロ・ワルドの攻撃を防ごうとすれば、別の方向からもう一人のアンジェロ・ワルドが魔法を放ち、吹き飛ばされてしまう。
如何に全盛期ほどの力が失われているとはいえ、培ってきた技術までは失われはしない。
アンジェロ・ワルドの悪魔としての力は純粋な悪魔達と比べてみれば上級悪魔の中では中の下、といったレベルであり、単体であれば
問題はないが、こうも四人に増えられて同時に攻められると多少はてこずるが倒せなくはないはずだった。
しかし、左手のルーンに邪魔をされてしまって思うように戦うことができなかった。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 01:29:49.87 ID:yRCwEV/x
投下間隔長くね?
支援
522The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:32:56.91 ID:hqeoYDl0
『『『『This's the end!(これで終わりだ!)』』』』
四人のアンジェロ・ワルドが一斉に叫んだ。
一人目がまず、スパーダの正面上方からウインドブレイクを放ち、スパーダはリベリオンの風圧でそれを掻き消す。
そこへ背後に回った二人目がライトニング・クラウドを仕掛け、スパーダの背中に稲妻が直撃した。
「スパーダ!」
ルイズが悲鳴を上げる。
『Die!(死ねぇ!)』
怯んだスパーダの正面から、二人のワルドが同時に至近距離からエア・ハンマーとウインドブレイクを叩き込み、スパーダを半壊している始祖像へと吹き飛ばした。
その拍子に、スパーダの手からリベリオンが落ちてしまう。
始祖像に背中から叩きつけられたスパーダの四肢を、間髪入れずにアンジェロ・ワルドが放った投げ槍が縫い付けていた。

――ドスッ!

そして、投げ放たれた巨大な矛が、始祖像の胴体で縫い付けられているスパーダの腹に突き刺さった。
おびただしいほどの量の鮮血がスパーダの腹から噴出し、矛が突き刺さった衝撃でスパーダの顔が持ち上がり、そしてがくりと項垂れた。
スパーダの血が、腹に突き刺さる槍を伝い、床へと滴り落ちていく。

「「スパーダ!!」」
ルイズとロングビルが、同時に悲痛な悲鳴を上げていた。
目の前で起きた、信じられぬ光景。決して、受け入れられない光景。
一瞬、ルイズ達の視界に映る全ての景色の時間が止まった。

特に、ルイズは目に大粒の涙を溢れさせて。

嘘だ、嘘だ、嘘だ。

スパーダが、負けるだなんて。あんな、悪魔みたいな男に……スパーダが負けるはずはがない。

だが、これは夢ではない。現実だ。

スパーダは……負けたのだ。

あの、悪魔のような男に。

着地したワルドは全ての偏在を消滅させると、床に突き刺さっていたリベリオンを拾い上げる。
そして、それをスパーダ目掛けて投げ放っていた。
リベリオンは、スパーダの胸に突き刺さり、更なる鮮血が噴出した。

「スパーダぁ!」
思わず立ち上がったルイズは始祖像のスパーダに駆け寄ろうとするが、ワルドがレイピアを突きつけてきたため、立ち止まっていた。
恐ろしい亜人の姿となっているワルドの表情は一体どうなっているのか、ルイズには分からない。
だが、この威圧感にはこれまで感じたことのない恐怖を感じざるを得なかった。
『分かっただろう、ルイズ。奴では、君を守れぬ』
感情が読み取れない、冷酷な声でワルドは言う。
ルイズはじりじりと迫ってくるワルドに、恐る恐る後ずさる。
『素晴らしいぞ、この力。私は始祖の従えた伝説の使い魔さえも凌駕したのだ』
自らに酔ったような口調で言葉を続けるワルド。
『私と共に来れば、君にもこの力を授けてあげたというのに。残念だよ……』
冗談ではない。こんな、悪魔みたいな力なんか欲しくない。
そして、その恐ろしい力を自ら望んで手に入れたワルドはもはや人間ではない。
――悪魔だ。
523The Legendary Dark Zero:2012/03/18(日) 01:36:20.63 ID:hqeoYDl0
『もはや、お前達を守れる者はもういない。これで、最期だ……。
裏切り者もろとも、始末してやろう!』
激しい稲妻が散りだすレイピアにルイズ達は慄き、ロングビルがティファニアを庇うように抱きしめる。

『死ねぃ!』

今度こそ、もう駄目だ。
この悪魔のような男に、如何にスパーダと言えども歯が立たなかった。
もはやこの男に、人間では太刀打ちできないのだ。たとえメイジであろうとも。
無力な自分が憎らしい。自分にも、もっと力があれば……スパーダを助けられたかもしれないのに……。
こんな悪魔に対して、自分の力は無力なのだ。

無力、絶望、虚脱――全てを諦めたルイズは力なく膝を折り、涙を流した。
きっと、自分の体を稲妻が貫いても痛みさえも感じずに死ぬのだろう。
ここにいるみんなも、一緒に。
結局、自分は何の力にもなれずにここで死ぬのだ。

姫様の願いも、叶えられずに。

『ぐあっ!』
突如、ワルドが呻き声を上げた。
無力感に苛まれていたルイズはそれに気付くことはなかったが、他の者達は目の前の光景に呆気に取られる。
ワルドの腹部から赤い色をした片刃の剣が突き出ていたのだ。
『な、何だ!』
あまりの出来事に、膝をつき困惑するワルドは自らを貫く剣に手をかける。

『おい……待ちな。兄ちゃんよ……』
その赤い剣から、キュルケ、ギーシュ、タバサに聞き覚えのある声が響いてきた。
『相棒は……まだ、くたばっちゃあいねえ……』
それは、明らかに元インテリジェンスソードであり、今は篭手となっているはずだったデルフリンガーの声だった。
だが、その声は何やら何かを恐れているようで震えているのが分かる。
ルイズを除く一行は、恐る恐る始祖像の方を見上げた。
困惑するワルドも同じように振り向く。

始祖像に縫い付けられていたスパーダの全身から、禍々しい赤色のオーラが静かに湧き出ている。

いつの間にか礼拝堂全体が静かに揺れていることに気付いた。

その揺れは徐々に強くなっていき……やがて、スパーダの胸を貫くリベリオンもカタカタと震えだす。


――そして、その意匠の骸骨の目が妖しく光りだし、閉じられていた口が開かれ、鍔も横へ広がるように開かれた。


同時に、彼を縫い付けるワルドの武器が全て砕け散っていた。

※今回はこれでおしまいです。
今回の悪魔化したワルドは、アンジェロ・クレドを参考にしていますが、違いは翼の数と体、武器の色と種類くらいです。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 05:22:41.60 ID:In86nQcx
パパーダの人乙です。
遂に悪魔としての姿を晒すのか?
525名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 12:11:57.16 ID:a8ZuGAqi
スパーダ乙でした

秋せつらがルイズに召喚される話はまだかにゃー
526sage:2012/03/18(日) 17:52:34.20 ID:+6ijiIrH
>>525
魔法学校が魔界になっちまうよwww
527名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 17:54:43.40 ID:+6ijiIrH
>>526
やべぇ、まちがえた…
528名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 17:58:15.47 ID:pAY5DLI9
串刺し縫いつけはDMCの伝統文化。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 21:47:11.39 ID:PrfyUy6H
サイヤの人、もうきてくれるよね?
530名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 21:52:42.58 ID:X/rFjGlI
オラ待ちすぎて先っぽヌルヌルしてきたぞ
531名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 04:35:29.30 ID:jtr42/W+
カウパー乙
532ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:40:02.43 ID:9Rt2O+46
どうもみなさんお久しぶりです。
ゼロと魔王の11話が出来たので、予約が無ければ
10分後に投下したいと思います
533ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:47:29.93 ID:9Rt2O+46
ゼロと魔王 第11話 終わる因縁・始まる因縁



フーケを撃退したルイズ達は、学園に帰る。
ちなみに、フーケを撃退した事を学園長に報告し大目玉をくらったのだが、それはこの際どうでもいいだろう。
フーケを学園長に突きだして話は終わった。
その日の夜に何かパーティーがあり、ルイズ・タバサ・ギーシュ・キュルケは主役なのだそうだ。
ラハールは興味がないとばかりに並べられた料理を平らげていく。
適当に食べているとルイズが、一緒に踊らないかと言われたが興味がないと断った。
ほどほどに食べ終わり、テラスから飛び降りて近くの森に行く。
そして、森の中を適当に歩いて殺気を感じたのでその殺気の持ち主の名前を呼ぶ。

「タバサとか言ったか?おい、オレ様に何の用だ?」

ラハールはなぜか、タバサに呼び出しをされていた。
当然何か心当たりがあるわけはなく、普通なら絶対に応じないのだが、タバサの態度が最初から変なのが気になりタバサの呼び出しに応じたのだ。
そして、返事の代わりに飛んできたのは氷の矢だった。
それをデルフで斬るが、さらに次の攻撃が襲い掛かる。

「グッ!?」

飛んできた魔法は【エアハンマー】だった。
それをくらいフラつくが、相手は止まってはくれない。
氷の矢が飛来し、フラつく足を無理やり動かし何とか避ける事には成功する。

「相棒、こりゃまずったな・・・今日戦った時から思っていたが、相手はガチンコタイプじゃなくて暗殺タイプだ・・・」
「だからどうしたと言うのだ」
「相棒はまんまと相手の得意な戦場に顔を出しちまったって事だよ!」

そんな話をしている間に相手は、【ウィンディーアイシクル】の魔法を唱え、ラハールに攻撃をしてきた。
ラハールは、一瞬【メガファイア】を唱えようとしたが、ここは森の中だ。
ファイア系の魔法は、元の状態ならいざ知らず、今の状態で木に引火したら大事である。
相手はその事も計算に入れ、森と言う場所を選んだのであろう。

「相棒!何とかして相手に近づかない事には何も出来ないぜ!!」

そんな事はラハール自身も分かっている。
タバサの攻撃を避けながらどうにか好機を探す。
そして、好機を探すのとは別に狙っている事もある。
この世界のメイジは結構はやくにばてる、それが、元々魔力自体が少ないのか、この世界の魔法が特別大量に魔力を消費するのかは定かではないが、今としては丁度いい。
だが、当然それは相手も分かっている。
だから相手は、短期決戦に持っていくつもりだろう。
そう思った通りの行動が来た、四方八方からラハールに向かって飛来する。
クール系・ウィンド系でも同様に防ぐことは無理だろう。
なんとか剣で氷の矢を捌くが、剣一本では限界があり直撃をいくらかもらう。
だが、それで倒れることはない、なんとか攻撃をするために行動を起こそうとした時に、真正面にタバサがいた。
そして、相手は攻撃をしかけてくる。

「【ジャベリン】!!」

これで最後のつもりなのだろう、今までにない威力の【ジャベリン】をラハールに向けて放つ。
534ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:48:04.58 ID:9Rt2O+46
避けれるタイミングではなく、クール系・ウィンド系では敵わなく、ファイア系は論外。
まさしく、ラハールとしては詰み状態だろう・・・・ラハールがこの3種類しか魔法が使えなかったらの話ではあるが・・・・

「【メガスター】!!」

ラハールは星属性のスター系メガ級魔法の【メガスター】をタバサの放った【ジャベリン】にぶち当てて相殺する。
タバサは一瞬怯み、体を硬直させる。
だが、その行動によりラハールに接近を許してしまった。

「これで終わりだ」

剣を首筋に当てられ、負けを宣言される。
今回は完全に自分の負けで、そして・・・と考えて頭が真っ白になる直前に声が聞こえる。

「あら?負けてしまったのね?残念ね、折角お母様を助けられるチャンスだったのに」

そう、タバサ自身はラハールに何の恨みもない、ただこの女が、あの憎きジョゼフの使いと言ったこの女とのかけをしていたのだ。
ラハールを倒すことが出来れば、母様を助けてやると言われてだ。

「あ?誰だ貴様?と言うより、どういう事だ?」

そんな事情を微塵も知らないラハールは当然の反応をする。

「これはこれは、異界の魔王よ。お初にお目にかかります。あなたと同じ虚無の担い手の使い魔、【神の頭脳・ミョズニトニルン】のシェフィールドと申します」
「あ?虚無の担い手?みょずにるにる?」

虚無と言うのは聞いたことあるが、神の頭脳だとか、ミョズニトニルンなどは聞いたことはないラハールには訳が分からないといったところだ。

「おや?何もご存じないのですね・・・まあ、それはそれでいいでしょう。今我が主の興味はあなた自身にあるようですしね」
「お前の主のことどうでもいい!それよりこれはどういう事だ?こいつがオレ様に対して殺気を向けてくる事と関係あるのか?」

タバサとしては、ラハールに殺気向けていたつもりはなく、ただ殺気だっていいただけなのだが、そんな事をラハールは知るはずもない。

「どこから話せばいいのか・・・まあ、その娘の母親は自分の娘を庇い、自分の心を壊してしまい・・・その娘は、健気にも死ぬような任務をこなし、今回はその母親のためにあなたを倒すと言う事が今回の任務っていう事ですよ」

その話を聞き、ラハールは一瞬自分の母親の事を思い出すが、一瞬でそれを振り払い言葉を言う。

「それで?それとオレ様を倒す事になんの関係がある?」
「さっきも申しあげたとおり、我が主はあなたに興味がおありで、あなたの実力を試すため母親の事を餌にあなたに差し向けたというわけです」
「それだけか?」
「まあ、厄介なその娘と母親もついでに始末したかったと言うのもあるでしょう。そっちについては本当についででしょうが・・・説明としてはこんな物でしょう」

ここまでの話を聞き、少なからずこの女と主とやらに怒りを覚えていた。
それは、人のてのひらで踊らされたのもそうだが、何よりタバサに母親を餌に使ったと言うのが気にくわない。
それは、ラハールの母親とタバサの母親がかぶったのかもしれない。
ラハールの母親であるグエンも、自分の命と引き換えに死んでいったのだ、タバサの母親は
535ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:48:40.72 ID:9Rt2O+46
生きてはいるが、心が壊れたと言うのを聞く限り死んでるようなものであろう。

「気にくわんな・・・そんなにオレ様の力を知りたいのならお前か、貴様の主がくればよいだろう。挑戦ならいつでも受け付けるぞ?有料だがな」
「残念ながら、私は戦闘は得意でなく、我が主もこのような場所に来れるようなお方ではないでそこの娘を使ったというわけです」
「そうか・・・だったら、お前にその主という奴の所に案内してもらおうか?」
「それでも構いませんが、私は今回帰らさせていただきます。それでは、異界の魔王よさようなら」
「待て!!」

と言って、逃げようとするシェフィールドとかいう女を追いかけようとした時に問題が起きた。
ラハールの頭上に時空の歪が出てきたのだ。

「あ、相棒!上!上!」
「なん・・・だ・・・?」

時空の歪を見てラハールは少なからず固まった。
正確には、時空の歪から落ちてきている人物に対して固まった。
それは、フロンの妹であるオゾンである・・・まあこっちはまだいい・・・問題は自分の従妹である、シャスまで落ちてきていると言う事だ。

「な!?」

あまりの出来事に硬直してしまったため、オゾンとシャスが頭上に落ちてきているのを回避しそこね、2人にのしかかられる。

「ぐぇ!」
「痛いた・・・なんだよいきなり・・・」
「わ〜い!もう一回もう一回!!」
「もう一回なんてごめんだ!・・・って!?ラハール!?」

自分が何をつぶしているのかを理解し、ラハールから急いで飛び降りる。
シャスはわかってもラハールの上で楽しそうに飛び跳ねている。

「えぇい!いいかげんに降りんか!!」

我慢の限界とシャスを跳ね飛ばし起き上がる。
シャスはケラケラと笑って見事な着地をしている。
よほどラハールに会えて嬉しいのだろう。
そして、そんな事があったせいで完全にさっきの女を見失ってしまった。

「チッ、逃がしたか・・・」
「ん?どうしたのラハール?というか、力下がってない?」
「あ?まあその辺はおいおい説明する・・・と言うか、時空の歪閉じてるぞ?」
「え?あ!?本当だ!?・・・ま、いっか。ラハールがいるし」

オゾンの言葉に若干ゲッソリしながら、さっきから一言も発していないタバサに声をかける。

「おい、お前はいつまでそうしている気だ?」
「・・・・」
「諦めるのか?」
「・・・・」
「・・・・ちょっと、痛いぞ」

そう言うと、タバサを一発殴る。
それでタバサは吹っ飛んで仰向けに倒れるが、ラハールは胸倉をつかんで起こす。

「質問に答えろ!貴様は諦めると言うか?」
536ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:49:32.59 ID:9Rt2O+46
「・・・・どうしろと?」
「あぁ?」

声を絞り出すように声を出すタバサには、悔しさと怒りの色が見える。

「相手は一国の王!それに比べてこっちはただのメイジ!!どうやったって勝ち目なんてない!!」

押しつぶされる前だったのだろう。
誰にも頼ることなく、そして今まで死ぬような思いをして任務に明け暮れていたタバサは、いくらトライアングルメイジだとしてもか弱い少女である。
自分が失敗をすれば母親が死ぬ。
感情を隠すことでそれらの重圧から逃げていたのだろうが、ここに来て爆発してしまったのだろう。

「1つ話をしてやろう・・・オレ様には昔、どうしようもないバカの家来がいた。そいつは、とある女のために世界を相手にした。まあ、そいつは全然役に立たなかったがな」

ラハールの魔界では、100年前に地球側が魔界に侵攻してきた事があった。
ジェニファーと言う地球勇者の助手が捕まってしまいゴードンと言う地球勇者が助けたのである。
実際はゴードン一人では絶対に無理だったが、ラハールやエトナやフロンが手を貸したことにより助けれたのである。
これはその時の話である。

「そいつは、助手よりも弱く本当にどうやって勇者になったのかは分からんがな。たしかにそいつは諦めなかったぞ!!お前はどうする?諦めるのか?たった一国相手に諦めるのか!」
「・・・・」

冷静に聞くと、無茶ぶりにも程がある。
だが、タバサの心が少しは動いたのは確かである。

「後は、お前が決めろ。オレ様はお前がどっちを選んでも、奴らの所に行くつもりだがな」
「・・・・」
「だが、一つだけ言っておくぞ、ここでお前が諦めたらお間は絶対に後で後悔するぞ」

その一言でタバサの心は完全に動いた。

「・・・・行く」
「なんだ?聞こえんぞ?」
「たとえ一人でも行く!母様を失いたくない!!だから!!」
「フッ・・・言えるではないか・・・それでは行くぞ」
「・・・・あのさ、盛り上がってる所悪いんだけどさ、どういう話?」

この後、オゾンに諸々を説明するラハールだったが、さっき自分で言った言葉にダメージを受けたのはここだけの話である。
そして、ラハール達はその夜、トリステインからガリアに向けて旅立った。
537ゼロと魔王:2012/03/19(月) 14:52:33.44 ID:9Rt2O+46
今回はこれで終わりです。
あれ?アルビオンは?とか思った人もいるでしょうが大丈夫です
忘れてはいませんから、これからどうなるのか
期待せずに待っていてください
538 忍法帖【Lv=13,xxxPT】 :2012/03/19(月) 18:45:51.17 ID:a5KEh1MA
期待して待ってます
539ルイズ友人帳2:2012/03/19(月) 19:45:10.08 ID:MOpTqkxN
誰も居ないみたいなので投下
540ルイズ友人帳2:2012/03/19(月) 19:45:53.77 ID:MOpTqkxN
「こ、こんなのが神聖で美しくそして強力な…私の使い魔…?」
 春の使い魔召喚の日、ルイズは召喚に成功した。
それは彼女の期待を大きく裏切るものであった。

「やかましいぞ人間。人の子ごときが私のような高貴な妖に指図をするとは何事だ」
 ルイズが呼び出したそれは、やたら尊大な一匹のデブ猫。
誰かが言った。

「使い魔にまで馬鹿にされてら」
「ヴァリエール家のご令嬢も底が見えたわね」
「ゼロのルイズだからな」
「あ、あの猫喋ったぞ?」

 使い魔召喚の儀式は魔法使いとしての未来を占う大切な試験でもあった。
つまり呼び出したものに応じて、使い手の格が決まってしまうことでもある。
名門ヴァリエール家の子女が力を振り絞り、召喚できたのがたった一匹のデブ猫。
ルイズは大きく落胆したと同時に無難なものを呼び出せたことに安堵した。

「あああ、あんた、誰よ」
 問われた猫は、尊大な口調で呟いた。



「ニャンコ先生と呼ぶがいい」

 ニャンコ先生はマダラと呼ばれる力を持った妖怪であった。
彼は真名が書いてある妖怪を自由に操ることができる「友人帳」を造り出した夏目レイコの孫
夏目 貴志と関わる事になり、以来貴志の死後友人帳を譲り受ける事を条件に
彼の身辺を守っている。
 猫の姿で散歩している最中、不思議な緑の幕を見つけ不用意にも触ってしまったが為、此処に居るのであった。

(此処は何処だ?夏目達の居る場所でもなければ、妖の世でもないようだが)

 広場には棒を持った人間の男女と妖らしきものが集まっている。
人間は夏目たちとは違い、肌が白く髪の色も様々だ。違う種類の人間なのだろう。
齢は夏目たちと比べると幼い、全員が同じような服装をしていて学校とやらに雰囲気が似ている。
陰陽師なのかもしれない。

「しゃ、喋った?」
「きゃあああああ!喋ったああアアアア!」

 私を呼んだらしい桃色の髪の娘が絶叫する。
広場がざわつくと不味いことをしたと私は思った。
猫は喋らない、常識である。人間達の間では。

「にゃ、にゃ〜ん」
 私は猫の振りをした。
541ルイズ友人帳2:2012/03/19(月) 19:46:21.56 ID:MOpTqkxN
「ミ、ミスタ・コルベール!やり直しを!やり直しをさせてください!
何かあの使い魔変です!人語を喋るんです!」
「にゃん!にゃんにゃん」
(明らかに此方の言葉を理解してるじゃない、猫被ってんじゃないわよ)

 召喚された使い魔は刻まれる魔法によって知能が上がる。
召喚主との繋がりによって異種族間でも意思疎通が出来るのだ。
だが、このニャンコ先生は確かに人語を話し、周囲の状況を理解して演技までした。
ただの使い魔であるはずがない。

「ミス・ヴァリエール、普通の猫じゃないですか。
それに召喚のやり直しは無理です、契約をしない限り進級できませんよ」

 対する教師の反応は冷たかった。
返答は教師が生徒に対する命令である。取り付く島もない。

「わざとらしく猫の真似して、喋りなさい!」
「にゃ〜ん」
「私は普通の使い魔が欲しいのよおお」
「ミス・ヴァリエール、やり直しは認められません!」
「ですが!」

 しばらく二人の間で押し問答が続いたが
「使い魔は一生のパートナーです。破棄は認められません。
早く契約を済ませてください、ミス・ヴァリエール」
 教師と生徒、立場の違いにルイズは折れた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン…」
こうして彼女は一匹のデブ猫と口付けを交わし、使い魔の契約を交わしたのであった。
542ルイズ友人帳2:2012/03/19(月) 19:46:45.09 ID:MOpTqkxN
投下終わり
543名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:16:17.88 ID:j4PJbGsD
いいね
544名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:35:39.48 ID:8jTaqymy
ニャンコ先生、というと「いなかっぺ大将」の猫しか思い浮かばん
545名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:40:48.67 ID:jnuty1Ed
それ言い出せば俺だってミーくんと聞けばクロちゃんよりも佐渡先生の飼い猫が思い浮かぶ
546名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:40:56.66 ID:2z0Ue7NA


でも、喋る猫を召喚してやり直しを要求する理由がよくわからんなあ
即座にやり直させろというほど問題があるようには全く思えん
547名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:51:01.40 ID:ycQDgr35
お約束テンプレなので
548名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 21:59:38.05 ID:Yz5dgQxB
にゃんこ先生って自分からニャンコ先生と呼ばせるようなキャラだったっけ
549名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 22:09:07.35 ID:dzlB6e/z
ゼロと魔王
ぶん殴って詰問してるのが熱いな。女の子は絶対殴っちゃダメってのは
それこそれ女を見下してる事にもなりかねんからな
ラハール様は何だどうもタバサに一目置いてる感じなのか?


神聖で美しく強力な使い魔を期待して喋る猫が召喚されるのと
美少女を期待して俺が召喚されるのがほぼ同じくらいのコレジャナイ感だとすれば
ルイズの態度も納得できる…いや猫のがマシか
550名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/19(月) 22:25:03.92 ID:e8Z24tFP
女性の魅力は尻にあると豪語してオスマンと固い握手を交わすキング・ブラッドレイとか…
551名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 08:25:52.11 ID:/erlBb79
尻と聞いて、佐山・御言を思い出したのは
たぶん俺だけ・・・
552 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/03/20(火) 12:11:48.72 ID:XVU8lRiV
テスト
553名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 14:28:17.23 ID:UQ1pdt91
魔王さん乙
ゼロ魔キャラはほとんどが魔界逝きだよなとか思ってみたり
ウルトラが来てたので代理行きます。

第八十二話
 バラーダの神殿
 
 怪魚超獣 ガラン 登場!
 
 
 テュリューク統領の船と会って丸一日。
 南東へと飛び続けた東方号は、テュリューク統領から聞かされたシャイターンの伝説の残る遺跡の上空へとたどり着いていた。
 
「コルベール船長、テュリューク統領艦より、着陸せよとの指示がきてます」
「ようし、重力制御室、船を下ろしてくれ。ゆっくりとな」
 
 遺跡から百メートルほど離れた場所に着陸した東方号と、テュリューク統領の専用艦。砂漠の中でもひときわ目立つ
黒金の船体を砂の上に横たえた巨艦に、留守番としてミシェルら銃士隊を残して、一行は上陸を果たした。
 
「これが入り口か……で、でけえ」
 目の前に広がる巨大な石造りの神殿の持つ存在感に、才人たち一行は圧倒された。入り口の形は地球でいえばギリシャの
パルテノン神殿にどことなく似ており、高さ三十メートルはある石の天井をいくつもの柱が支えていた。
 特に、門のところには巨大なワシのような鳥人の彫像が守護するように鎮座していて一行を見下ろし、そこから地下に向かって、
緩やかな傾斜の坂道が洞窟のように続いていく構造になっていた。
 しかし神殿の大半はほぼ埋没しており、かろうじて入り口部分のみが砂漠に口を開けているに過ぎない。これでは、上空からでも
隠れてしまって見逃してしまい、地上からなら蜃気楼と見える。場所を知っていなければ絶対に発見することは無理だろう。
 見ると、遺跡の柱も相当にボロボロになっており、それをさわった才人は手のひらに残った破片に貝殻が混じっているのを見つけた。
「貝の化石か……こいつが、このあたりでとれた石で作られているとしたら、ここいらは昔は海だったのかもしれないな」
「おいおい、なに言ってるんだいサイト、ここは砂漠のド真ん中じゃないか。海なんて、どこにあるっていうんだい?」
 突拍子もないことを言い出した才人に、ギーシュが暑さで頭がやられたのかと尋ねかけた。けど、もちろん才人は正気である。
「昔ったって、千年や二千年のことじゃないさ。何万年か、何十万年か、ひょっとしたら何億年もかけたら、海だって砂漠に変わるかもしれねえだろ?」
「な、何億年、ねぇ」
 ギーシュは才人の返答に出た数字の大きさに言葉を失ったようだった。無理もない、六千年前の始祖降臨から歴史が始まって、
それ以前は神話のレベルのハルケギニアの感覚では、想像を超えているだろう。もっとも、地球人もごく最近まで恐竜の化石を
ドラゴンの骨と思っていたのだから、彼らを笑う資格はない。
 ただ、才人の話に意外なところから興味深そうな声をかけてきた人がいた。なんと、テュリューク統領である。
「ほぉ、おもしろいことを言うのお、ばん……いや、人間の少年よ。この渇きの大地が、海だったと申すか」
「信じなくてもいいよ、別に確かな証拠があって言ったわけじゃねえし」
「いやはや、そんなつもりではないから悪く思わんでくれ。ふむ、なるほどわしらの尺度では何万年前などという考えには及ばん、
君たちに興味を持ったルクシャナ君の気持ちもわかるのう、ほっほっほっ」
 褒められてるのかけなされてるのか、才人にはよくわからなかった。一言で言えばつかみどころのないじいさんと表現すべきか、
敵か味方かまだどうも判別しずらい。もっとも、そう簡単に腹の内を読まれたら政治家なんて務まらないのだろうが。
 ちらりと横目でビダーシャルを見ると、我関せずといった様子で立っている。ルクシャナを見ると、目を輝かせて遺跡を
観察して回っている。護衛の騎士たちは、感情のない目でこちらを見ている者もいれば、ギーシュたちと似た目でティファニアの
伝説的な双丘から目を離せなくなっている者もいる。エルフというのもいろいろだと、あらためて思わされる体験であった。
「さて、見せたいものは中じゃ。さっそく行こうではないか」
 相当な老人に見えるテュリュークは、むしろ才人よりも軽やかに歩き始めた。エルフの寿命が人間の三倍とすれば、ざっと
二百五十歳はあるだろうに達者なものだ。
 
 一行は、テュリュークに続いて遺跡内部へと足を踏み入れた。
 
 内部は外の暑さとは裏腹にひんやりとしており、汗さえ一瞬で乾く砂漠から来た一同のなかには、おもわずくしゃみをしてしまう者もいた。
 しかし、荒廃した入り口付近から数百メートル進むと、遺跡は遺跡らしい姿を見せてきた。石造りの壁面にびっしりと描き込まれた
古代の壁画、それを見たときエレオノールはまだ新しいあの記憶を蘇らせていた。
「これは……あの、悪魔の神殿にあったのと同じ壁画だわ」
 あの、アボラスとバニラが封印されていた遺跡にあったものと、ここの壁画はそっくりであった。明らかに戦争によるものとしか
思えない炎に包まれた世界、その中で暴れまわっている無数の怪獣……ここのものは保存状態もかなりよく、その鮮明な絵の
迫力は、まさに世界最終戦争を思わせて見る者を圧倒した。
「テュリューク統領、これは」
「見ての通り、ここには大厄災の記録が残されておる。我らエルフを含め、生きとし生けるもののほとんどが死に絶えたと伝えられる
大厄災……我らの一般的な知識では、それはシャイターンの門の向こうからやってきた者たち……お前さんたちの聖者が
引き金になったと言われておるな」
「……」
 エレオノールやルイズは不機嫌になったが、それはただの事実の追認だったので発言は控えた。ここで無駄口を叩いても
何の益にもならない、目的はこの先……なにを言うにしても、答えを見てからで遅くはない。
 そんな彼女たちの雰囲気を察したのか、テュリュークは説明を続けた。
「ここは、口伝では『バラーダの神殿』と呼ばれている。大厄災が起きた後で、生き残りのエルフたちが伝承を残すために
建設し、代々一部のエルフにのみ存在を伝えられ続けてきたのじゃ」
「バラーダの、神殿……」
 才人はその名前を聞いて、ピンとくるものを感じた。
 地球にも、バラージという失われた古代都市の伝説がある。はたしてこれは偶然であろうか? かつて、バラージに唯一
足を踏み入れたという科学特捜隊の記録は、その名前以外について完全に沈黙している。ただ一説によるとそこにはノアの
神という存在が祭られていて、五千年前にバラージが危機に陥ったときに救ったと、わずかな文献から一部の学者は唱えている。
 意外なところから見えてきた、地球とのつながり。これがなにを意味するのか、その答えもこの先にあるのだろうか。
 テュリュークはその後も、コルベールやエレオノールが質問をすると、そのたびに答えてくれた。ときたまルクシャナが口を
はさむことはあったが、それでもまたとない機会は彼らの探究心を満足させた。
 と、質問が一段落したところで、テュリュークは無言でついてきていたティファニアに声をかけた。
「さて、お嬢さん」
「は、はいっ!」
「ほほっ、そう硬くならなくともとって食ったりはせんよ。さて、昨日はあわただしくてゆっくり話す暇もなかったが、ええと……」
「ティファニアです。母が、そうつけてくれました」
 テュリュークは、温厚そうな笑みを浮かべてティファニアを見た。
「よい名じゃな。母君の愛情が込められておるようじゃ……じゃが、その母君のことだがの、ビダーシャル君から頼まれて
調べてみたが……正直、言うべきかどうか迷っておる」
「……」
 ティファニアは、覚悟していたとはいえ、やはり明るからざる母の素性に、「聞かせてください」とすぐに言うことができなかった。
「まだ心の準備が整っておらんようじゃな。聞かずにすませるならそれもよい。知ることだけがすべてではない……母君が
生きておっても、無理強いはせんじゃろ」
 真実は、必ずしも有益な結果をもたらすとは限らない。テュリュークは、あきらめるのも勇気じゃとだけ言うと、それ以上は
言わずにティファニアから離れた。
 ティファニアはうつむいて考え込んでいて、心中は押して察すべきだろう。
「あの子も大変じゃのう。悪魔の復活というからには、なんというかこう……なのを想像していたのじゃが、あんな儚げな子が
現れるとは、そなたらの神もいい加減な運命の割り振りをするのう」
「返す言葉もありませんね。代われるものなら代わってあげたいです……ですが、あなたにとっても我々は大いなる危険要素のはず、
なぜ、そんなにいろいろと教えてくれるんですか?」
「なあに、わしは臆病なだけじゃよ。大厄災が再び起これば、どうなるにせよ未曾有の血が流れる。わしはこれでも、まだまだ
長生きしたいんでのう」
 壁画に描かれた物語を追いつつ、一行は遺跡の奥へと足を進める。
 
 
 しかし、そんな一行を……正確に言えば、人間たちを憎憎しげに睨み続ける数人のエルフが、護衛に混ざってついてきていた。
「おのれ蛮人どもめ、悪魔の末裔などを連れてきて、いったいなにを企んでいるのだ」
「決まっている! シャイターンの門を開き、今度こそ我らを根絶やしにするつもりなのだ。恐ろしい」
「そのとおり! 我らの地に土足で踏み入れるだけでも許しがたいのに、統領閣下はなにを考えておられる。話し合うなど
まったくの悠長、やはりあの方では生ぬるすぎる」
 彼らは、エルフの中でも特に過激派に当たる、ある一派に属する者たちであった。テュリューク統領は、非常時において
専用艦を動かす権限は持っていても、そのクルーまでは選別する権限まではなかったために、こういう輩も混ざっていたのだ。
 口々に思いのたけを吐き出す彼らの周りには、人間の魔法で言うサイレントに近いものが張られていて、ほかの誰かに
聞かれる心配はない。だが、単なる不平の言い合いの内を超えなかったそれに、ひときわ冷断な声で参加してきた者がいた。
「同志諸君、貴君らのご不満ももっともである。しかし、我らに必要なことは議論よりもまず、行動を起こすことなのではないか?」
「これは! 同志、ファーティマ・ハッダード上校殿!」
 兵卒のエルフたちは慌てて雑談をやめ、彼らの直属の上官に敬礼をとった。それを受けて、士官のエルフはやや垂れ目がちな
碧眼を鋭く研ぎ澄ませて見渡す。驚いたことに、その士官はまだ若い少女だった。
「貴君らの気持ちはよくわかる。私もまったく同じだ。我らの神聖な地に蛮人どもが押し入ってくる、その一言だけでも
まさに断腸の思いである。私にもっと大きな権限があれば、奴らを一歩たりとてサハラに踏み込ませはしまいに、実に残念だ」
 憎憎しげに語る口調に、少女らしさはどこにもなかった。年のころは人間ですれば十七歳前後、美しく伸びた金髪に、
エルフらしく整った顔立ちは、そのまま立っていれば誰しもがほおを緩める美少女と映るだろう。しかし、彼女の目つきは
触れれば切れそうな視線というのがそのままで、ティファニアやルクシャナのような温かみのあるものではない。一部の隙もなく
着込んだ士官服とあいまって、氷のような雰囲気は完璧というよりはむしろ異様さの領域に踏み込んでいた。
 ファーティマは、兵たちが神妙に聞く態度をとっていることを確認すると、演説するように口を開いた。
「我ら砂漠の民は、奴ら蛮人よりもあらゆる面で優れている。精霊の声を聞き、奴らでは半日も生きられない砂漠に都市を
築き、奴らにできて我らにできないことはなにもない! まさに選ばれた者である我らが、どうして蛮人などと対等に
なることができようか? 可能であるなら、今すぐ攻め入って彼奴らを根絶やしにしてやりたい。貴君らもそう思っているだろう?」
「そのとおりであります! ですが、残念ながら、現在のネフテス水軍や空軍に、それほどの戦力は……」
 兵の言葉に、ファーティマは悔しげにうなづいた。
 先日、竜の巣に出撃した空軍と水軍の主力が怪獣のために全滅したおかげで、精強を誇ったネフテス軍もすっかりかつての
精彩を失ってしまっていた。彼らも元は水軍の将兵だったのだが、水軍の主力となる鯨竜艦は竜に引かせるだけでよい空軍艦に
比べて再編が難しいため、余っている分の将兵が空軍に回された結果、こうしてここにいるのであった。
「だがしかし、だからといって我らの土地に蛮人どもがのさばるのを座視していい理由にはならないはずだ。奴らは西方で
好きなように地を這いずっていればいい! 生ぬるいやり方ではサハラは守れんということを、私の手で証明しよう!」
「っ! まさか、統領閣下も?」
「いいや、統領閣下はどうあろうと我らが選び出した指導者、それを力で排除してはネフテスのありようが失われる。けれども、
悪魔の首をとっていけば、我らにとってもっともふさわしい方が統領となる大きな助けとなるだろう。私は光栄にも、その名誉ある
密命を、あのお方よりいただいたのだ」
 誇らしげに言い放ったファーティマに、兵たちも感嘆したようにどよめいた。
 それは、ファーティマが空軍の統領専用艦に配属されることが決まったときである。彼女の属する組織の長は、彼女に
ある特命をして空軍に送り込んだのだ。
 
「同志ハッダード少校、君を空軍に派遣することが正式に決まったよ。私としては、君のように才能ある若者を手放したくは
ないのだが、兵を遊ばせるは兵家の愚、わかってもらえるかな」
「はっ! どこへ行こうとも、ネフテスと党への忠誠に揺らぐことはありません。ご安心ください、同志議員殿」
「うむ、よい返事だ。君のような部下を持てたことは、私の誇りだよ。残念ながら、君の忠誠にいまだに疑問を抱く者もいるがね」
「叔母は我が一族の恥であります! わたしは叔母とはまったく違います。わたしは……」
「わかっているよ、落ち着きたまえ。君の党への忠誠の厚さは、私が誰よりも理解している。そこでだ、君に特別な任務を
授けようと思うのだ。知っての通り、空軍にはまだ我が党の崇高なる精神に理解のない者も多い。もう、わかるだろう?」
「はっ! 我が党の精神を浸透させるさきがけとなり、あらゆる努力を尽くすことを誓います!」
「よろしい、それでこそ私の見込んだ若者だ。君を上校に昇進させよう。大いなる意思の御心にそうために、”あらゆる努力”を
尽くしたまえ」
 
 それがファーティマの受けた使命であり、彼女の誇りと存在のすべてであった。
 あくまで忠実な護衛兵を演じつつ、ファーティマは人間たちを睨んで配下の兵たちに命じた。
「いいか、作戦を説明する。この人数でも、やりようによっては蛮人ごときは敵ではない。特に、エルフの血に悪魔の宿った
あの娘は絶対に許してはおけん。これは聖なる使命と心得よ。我ら、『鉄血団結党』の党是……我ら砂漠の民、鉄の如し血の
団結でもって、西夷を殲滅せんとす。大いなる意思よ、我らを導きたまえ」
「悪魔には死を」
 それは、己の信じる理想のためであれば、ほかのすべてが灰と化してもためらわないという狂信者たちの眼差しであった。
 
 
 遺跡は一直線ではあるが、悠久の月日を越えてきただけはあって、ところどころ落盤や地割れが一行の行く手を阻んだ。
 高い天井と、石の壁がつらなる風景は距離と時間の感覚を麻痺させて、何百メイル、何リーグ歩いたのか目星がつかない。
 
 だが、とうとう一行は遺跡の最奥部へと到達した。
 そこにあったのは、ここを作ったエルフたちが畏敬を込めて作ったのが伝わってくる、おごそかな光を放つ石の祭壇。
 そしてそこに立つ、高さ二メイルほどの石像を見たとき、才人たちは思わず駆け寄って叫んでいた。
「これは……ウルトラマン!」
 間違いはなかった。右腕を高く掲げ、静かに立つその姿は見慣れたウルトラマンの姿にほかならなかった。
 いや、正確に言うのであれば、初代ウルトラマンとよく似た姿をしているけれども、頭部の形状が少し違い、全体的に
柔和で優しい表情をしているような印象を受けた。また、立体的に掘られた体のラインも異なっていて、力強さよりも
穏やかさを感じられた。
 が、胸に存在するカラータイマーは、石像が確かにウルトラマンであることをなにより明確に示していた。
「いったい、どうしてこんな場所にウルトラマンが!?」
「わ、わからないよ」
 エルフの神殿にウルトラマンが奉られているという、想像を絶する出来事にコルベールやギーシュたちも近くによって
見上げているが、やはり呆然としたまま動けない。
 そこへ、テュリュークがやってきて、唖然としたままの人間たちに言った。
「やはり、驚いたか。わしも、ビダーシャル君から、君たちの世界の話を詳しく聞いたときには驚いた。そして、悩んだ末に、
もしも君たちがサハラにやってくることがあったならば、ここに案内しようと決めていたのだよ」
「テュリューク統領! この像はいったい? どうして六千年も昔の遺跡にウルトラマンの像があるんですか!?」
「君らの世界ではウルトラマンと呼ぶのじゃな……ネフテスではこれを……いや、この方を聖者アヌビスと呼んでおる。
もっとも、姿までは知られておらぬが、大厄災を引き起こした悪魔を倒したとあがめられておるのじゃよ」
「聖者アヌビス……」
 才人たちはその名に聞き覚えがあった。確か、アーハンブラで過去のヴィジョンを見たときにルクシャナがちらりと
叫んでいた名前だ。そのときには気にしている余裕もなかったが、ルクシャナもやはりそのときのことを思い出したと見え、
慄然としながらも説明してくれた。
「聖者アヌビス、わたしたち砂漠の民のあいだで言い伝えられている古い伝承、あなたたちの概念でいえば神話の類に
入るわね。細かいところははしょるけど、大厄災を引き起こした悪魔、すなわちシャイターンと戦ってエルフの絶滅を
防いだ英雄なの。光る手を持って、あるときは青き月の光のごとき優しさで悪魔に憑りつかれたものを鎮め、あるときは
燃える太陽のごとき勇敢なる戦いで悪魔のしもべを粉砕したという……砂漠の民なら、誰でも聞かされるお話よ」
 その話は、人間の世界で言えば『イーヴァルディの勇者』くらいにポピュラーだという。確かに、内容としてはよくある
おとぎ話と大差はないが、おとぎ話と言い切るには、目の前のものはあまりにも……
 そして才人とルイズも……
「ルイズ、これはやっぱり……」
「ええ、水の精霊に聞いてからずっと気になっていた。もう、間違いないわね」
 今まで、ぼんやりとした仮説でしかなかったものが、はっきりとした形となって現れてくる。
(6千年の昔、この地を未曾有の大災厄が襲った。無数の怪物が大地を焼き尽くし、水を腐らせ、空を濁らせ、世界を
滅ぼしかけたとき、その者は光のように天空より現れ、怪物達の怒りを鎮め、邪悪な者達を滅ぼして世界を救った)
 水の精霊の言ったこと、そして始祖の祈祷書で見せられた過去のビジョン、足りなかったパズルのピースが
またひとつ埋められていく。まだ完全ではないが、今度のピースで絵が見えてきた。
 
「六千年前、ウルトラマンの誰かがこの星にやってきた。そして、そのときも人々を守るために戦っていたんだ」
 
 胸が熱くなった。どんな危機の中でも、助けを求めればやってきてくれるウルトラマンの意思は形は違えど、この世界でも
昔からあったのだ。
 だが、まだ謎は残る。このウルトラマン像は、自分の知っているどのウルトラマンとも違う。この世界出身が確かな
ウルトラマンにはジャスティスがいるが、ほかにもこの世界にはウルトラマンがいるのだろうか。
 また、エルフの伝承では聖者アヌビスは悪魔と戦っていたということになっているが、悪魔がイコール始祖ブリミル
だとすれば矛盾が生じる。祈祷書の見せてくれたヴィジョンでは、始祖ブリミルは悪魔どころか、世界を守るために
戦っていた。
 このあたりに何か、大厄災の真実に関する最大の鍵が隠されているように才人たちは感じた。先人たちも、それを
後世に伝えるために遺跡や伝承など、様々な形をとって残そうとしていたのだろう。二度と同じ惨劇が繰り返されないために。
残念ながら、六千年という月日のうちに記憶は薄れ、遺物は風化していったが、まだ謎を解く手がかりはあるはずだ。
 ウルトラマン像は静かにたたずみ、なにも答えてはくれないが、その視線は在りし日に多くの人々を見守っていたのだろう。
 と……ふとティファニアは、ウルトラマン像の胸、カラータイマー部に青いきらめきを見てつぶやいた。
「あれ……? ねえ、あの光……なにかな?」
「えっ? あ、ほんとだ……」
 指差された先を見て、才人やギーシュたちも気がついた。注視してみると、像のカラータイマーは石ではなくて、
静かな青色を放つ宝石が埋め込まれているようだった。しかし、不思議なことにティファニアに言われるまでは、
誰一人として存在に気づいた様子がなかった。白い石の像の真ん中に、くっきりと埋め込まれているにも関わらずである。
 すると、テュリュークは感心したようなしぐさをして、ティファニアに笑いかけた。
「ほお、あれに気がつきおったか……やはり、ただものではないようじゃのお、お前さんは」
「えっ? いえ、わたしは別になにも」
「いや……やはり、お前さんがここに来たのは運命だったのかもしれんな。あの輝石が、お前さんを呼んだのかもしれん。ほいっ」
 テュリュークは魔法を使い、像の胸の輝石をティファニアに向かって落とした。手のひらで受け取ったティファニアは、
小鳥の卵ほどの大きさの輝石をじっと見つめた。輝石は手のひらの上で、穏やかな青い光を放っている。
「きれいな石ね」
「うん、ブルーダイヤでもサファイヤでもない。見たこともない、不思議な石だな」
「そんなこと、どうだっていいじゃない。海の結晶みたいな青さ……きれい」
「わたしは宝石なんて興味ないけど……でも確かに、月の光みたいな優しい輝きね。見てると、落ち着いてくる気がする」
 輝石を見て、ギーシュやモンモランシーや、ルクシャナもが口々につぶやいた。誰もが、穏やかな笑みを浮かべている。
 この輝石はなんなんですかと問うと、テュリュークはウルトラマン像を見上げて言った。
「その輝石は、聖者アヌビスがこの地を去るときに残していったものだと伝えられておる。不思議なものでのう、どういうわけか、
確かにそこにあるはずなのに、見えたり見えなかったりすることがあるんじゃ。まるで石が、見る者を選んでおるかのようにな」
「石が? ただの石に、そんな意思があるようなことがあるんですか?」
「わからん。ただ、精霊の力でもお前さんたちの魔法でもない、不思議な力としか言いようがない。しかし、伝承では
再びこの世界に大厄災が訪れようとするとき、その石は新たな聖者に受け継がれて、大きな力となるだろうとはあるのう」
 テュリュークが、細い目でティファニアを見ると、才人は驚いたように言った。
「まさか、ティファニアがその聖者の再来だってのか!」
「まだそこまでは言うておらん。けれど、めぐり合わせというものは不思議なものでな。壁ひとつ隔ててすれ違う身内もおれば、
十数年会ってない友人と辺境でばったり出くわすこともある。あの子が、ここにやってきた以上、ここでのめぐりあわせにも
なにか意味があるのかもしれん」
 運命という、言葉にすれば一秒で足りる単語が人生を支配していると思いたくはない。しかし、ティファニアが虚無の
担い手という大任を受けて生まれた者だとしたら、なにかしらの意思と力が働いている可能性もまた、否定できなかった。
 なにも知らぬまま、無邪気に輝石の光と遊ぶティファニア。こうして見ると、あの輝石がそんなすごいいわれを持つものだとは
思えないし、ティファニアにしても普通の女の子以外に見ることはできない。
 もしも、ティファニアがそれほど重要な役目に選ばれた理由があるとすればなんだろう? 才人もルイズも考えるが、思いつかない。
彼女も確かに虚無の担い手で、ルイズのように強力な虚無魔法を使おうと思えば使えるのかもしれないが、エクスプロージョンを
撃てばショックで自分がひっくり返ってしまいそうだし、テレポートで飛び回る姿も想像しずらい。元々使えるという『忘却』の
魔法にしても、すごいといえばすごいだろうが効果が局地的過ぎて、ましてよいことより確実に悪用方法のほうが多そうだ。
 ティファニアにだけある、なにかの素質。恐らくそれは、ティファニア自身もまだ気がついていないのだろう。
 手のひらの上で、蛍のように光り続ける輝石。ティファニアはそれを、飽きることなく見続けていた。
「ふしぎ……なんでか、とってもあったかい……あっ?」
 気のせいだろうか……そのとき、ティファニアは輝石が一瞬またたいたように見えた。けれど、その場にいた誰も気づいた
様子はない。
「どうしたんだい?」
「い、いえなんでもないわ……錯覚だったのかな?」
 でも、一瞬だけども見えたあの光は、まるで自分になにかを呼びかけていたように思えた。ほんとうに一瞬すぎて、意味は
わからなかったけれども、そんな気がしてならない。とても大切ななにかを……
 
 輝石はあくまで石であり、デルフリンガーのようにしゃべってはくれない。
 テュリュークはティファニアに輝石を握らせたまま、大厄災に関する話を再開させた。資料として残っている、あらゆる事柄と
学者が研究した様々な説についてを惜しげもなく。
一方、人間たちもテュリュークやビダーシャル、ときには護衛のエルフから質問があると包み隠さず答えていった。
 ヤプールとウルトラマンの関係、なぜこの世界が狙われているのか、そしてどうして自分たちがここに来たのか。
 隠し事をしたままでは、互いに信頼は作れない。偏見や差別は、その大部分が相手への無理解、無知によって生じる。
たとえ相手が自分と反発する主義主張を持っていたとしても、押し付けていたら永遠に戦争などはなくならない。
 才人たちは、エルフたちが蛮人のくせにと言ってきても、怒鳴り返したいのをぐっと我慢して話し合いを続けた。
  
 
 だが、別の種族への蔑視を悪意で固定してしまっている者ほど度し難いものはない。特定の民族、国家への蔑視、
そうする彼らの主張の一端は真実を掴んでいるかもしれないが、それらを構成しているのはひとりひとりの違った人間であり、
民族やら国家やらというのは単なる社会性集合体の一形態にすぎない。
 端的に言えば、アリとハチが自分たちの巣こそ優れているのだと主張しあうようなものだ。地面の下と木の上の勝負、決着が
つくはずもない馬鹿げた議論だというのは誰にでもわかるだろうに。
 それにも関わらず、そんな極めて狭い分類で世界を分けて、自らを他の集団よりも優越していると考えるお山の大将は
どこでも後を絶たない。エルフも同様であり、人間などは話すのも汚らわしい劣等種だと本気で信じている一団は、彼らの
正義に従って行動を起こそうとしていた。
「ようし、このあたりでいいな。爆弾の準備はいいか?」
「いつでも。見ている者もいないようだ……あとは同志ハッダード上校がうまくやってくれるだろう」
 遺跡の中ほどの柱の影で、数人のエルフが小型の爆弾を仕掛けてほくそ笑んでいた。彼らは、先にファーティマから
命令を受けた一団の兵卒で、この場所で爆発を起こすことによって護衛の兵たちをおびき出し、人間たちが孤立したところで
ファーティマ率いる本隊が奇襲を仕掛けるという陽動作戦を決行しようとしていたのだ。
「導火線は大丈夫だ。離れろ」
 この手の兵器は人間もエルフも大差はなかった。道具には日々進歩していくものと、発明されたときからほとんど変わらずに
何百年と使われていくものがあるが、これはその後者に値する。ダイナマイトがいつまでたっても葉巻型なのと同じようなものだ。
 導火線を伸ばして、彼らは目を合わせた。着火は道具に頼らず魔法でおこなうから確実につけられる。
「やるぞ……悪魔どもめ、思い知るがいい」
 導火線の先から、小さな火がちろちろと燃えながら爆弾のほうへと動いていく。十秒もすれば、火は爆弾に到達して
爆発が起きるだろう。遺跡を崩すような威力はもちろんないが、爆音は石壁に反響して奥までしっかり届くはずだ。
 
 だが、彼らが作戦成功を確信してほくそ笑んだときだった。突如、遺跡全体が轟音をあげて揺れ動き始めたのだ。
 
「うわっ! な、地震か!?」
 立っていられないほどの激震が彼らを襲った。砂漠の民である彼らも地震は知っているが、これはいまだかつて体験
したことのないほどの揺れで、嵐の中の船のように自由を許してくれない。
「まずい! 爆弾が、うわあっ!」
 ひとりが、床の上で跳ね回っている爆弾を止めようと手を伸ばした。しかしそのとき、彼らのいた遺跡の床がぱっくりと口を開いた。
精霊に命ずる暇もなく、エルフたちは地割れに飲み込まれていく。ひとりがかろうじて、裂け目のふちに手をかけて掴まったが、
そこに彼らの仕掛けた爆弾が、まるで主をいとおしむかのように転がってきた。
「よせ、くるなっ! な、なぜ我々がぁぁぁーっ!?」
 爆風とともに、最後のひとりの姿も地割れに消えた。彼らの命を飲み込んだ地割れは、その裂け目から間欠泉のように
水を噴出し始めた。大量の水は波となり、みるみる遺跡の中を浸透していく。
 
 一方、さらなる激変は遺跡の外でも起きていた。
「なんだっ! 地震!?」
「落ち着け! この程度の揺れで東方号はビクともせん。全員持ち場を離れるな!」
 艦長代理のミシェルの命令で、銃士隊は東方号をキープしようと必死になった。東方号自体はなんともなくても、横転して
水蒸気機関が損傷でもしたら大変なことだ。今頃はテュリューク統領の船のほうでも、居残りの船員たちが必死になって
船を守ろうとしているだろう。
 だが、これが普通の地震ではないことを、経験からミシェルたちはすでに勘付いていた。
「副長、これはもしや!」
「ああ、あんまりにいいタイミング……やつだ、来るぞ!」
 乾ききった砂漠から、噴水のように幾本もの水柱が立ち上がる。五本、六本、あっという間に二十本から三十本へと増えた
水柱は、高さ百メイルには及ぶしぶきをあげて、灼熱化した東方号の船体に蒸気を立ち上らせる。
 が、一見涼しげな光景はそれまでだった。
 砂漠に立ち上がる、ひときわ大きな水柱……その中から、巨大な魚のシルエットを持つ超獣、ガランが姿を現した。
「超獣です!」
「やはり来たか、総員戦闘配備! 奴は東方号を狙ってくるぞ、迎え撃つ!」
 ヤプールがおとなしく見ているだけはないと思っていたが、やっぱり妨害に出てきたかとミシェルは歯軋りした。しかも、
乗組員の大半が留守のこんなときにである。指揮官として、最悪だという怒鳴り声こそ発しなかったが、軍靴のかかとを
鉄の床に叩きつけるくらいの自由は行使した。
「機関室! 水蒸気機関に蒸気は溜めてあるか?」
「大丈夫です。いつでも最大圧力まであげられます……って、副長まさか、私たちだけでこの船を飛ばすつもりですか!?」
 機関室から伝声管を通って返ってきた元気な声はサリュアのものだった。今頃は、彼女たちの一隊は蒸気罐の前で
石炭まみれになって働いているだろう。あとは数人が重力制御室に、残り五名ぐらいは機銃にとりついているはずだ。
だが、それで銃士隊の人数は尽きる。正確に言えば、艦橋に予備要員としてミシェルのほかに三人だけいるが、わずか
三十名足らずの人数で、この巨大戦艦を飛ばせるのだろうか?
 だが、ミシェルは断固として叫び返した。
「わからんのか! 今の我々は瀕死のタヌキも同然だ。サイトたちが戻るまで東方号を死守するには、無理でも無茶でも
動かすしかない。わかったか! わかったなら、持ち上げてでもこいつを飛ばすぞ!」
 なんとも、昔のミシェルを知っている者からしたら信じられないような命令口調だった。作っていた生真面目さや、落ち着きの
内側に、解放された心がいつのまにか熱い魂を生み出していたのだ。
 そしてもちろん、ミシェルをそんなふうに変えたのはあいつの影響にほかならない。サリュアや、機関室にいた者たちは
びっくりはしたものの、すぐに笑顔になって艦橋に向かって叫び返した。
「わかりました! 副長の旦那が帰って来るまで、東方号を守り抜けばいいんですね!」
「んなっ! ば、バカお前ら!」
 怒鳴り返しはしたものの、すでに艦内中で大爆笑となっていた。これもまた、以前の厳格な銃士隊では考えられなかった
ことだろう。銃士隊の隊員たちは、それぞれ訳ありで剣の道に入ってきた、国に我が身を捧げた剣鬼ばかりだが、なによりも
恋する乙女の味方なのだ。
 顔を真っ赤にして、「どいつもこいつも……」と、ぶつぶつ言いながら指揮を取るミシェルと、まだ笑いながら手だけは
正確に動かす隊員たち。銃士隊をここまで人間味のある組織に変えたのは、たったひとりの恋心……それをこんなところで
悲恋にしてたまるかと、ただそれだけの理由で三十人の隊員たちは団結する。
 
 しかし、ミルク色の砂漠に、黒い沁みのような点がひとつ。砂丘の上に立つ、真っ黒なコートを着込んでいるというのに
汗ひとつかいていない不気味な男が、東方号とガランを見つめて笑っていた。
「破壊せよガラン! 人間どもの希望なぞ、踏み潰してしまえ!」
 
 さらに、また遺跡の最深部に舞台を戻し、同時進行で物語は進行していく。
「で、でかい地震だったな。な、なんだこりゃ!」
 まだ、超獣出現を知らない彼らは、揺れから頭と体についたほこりを払い、立ち直るときょろきょろと辺りを見渡した。
ひやっとさせられたが、さすがエルフの建築は確かだったようであれだけの地震に見舞われても崩落する心配はないようだ。
 地震が起きたとき、彼らはとっさに出口に向かって全員で走り出した。
 しかし、古い遺跡であるのでやはり強度に限界が来ていたようだ。広々していた部屋は天井から落下してきた無数の
岩石が山を作り出し、入り口付近から完全にふたつに分断されてしまっていた。
「なんてこった。もう数歩逃げ遅れてたら、完全に生き埋めにされてたところだぜ」
「皆、無事か? 誰か、向こう側に取り残されてる者はいないか!」
 コルベールが点呼をとり、水精霊騎士隊は互いの安否を確認しあった。ギーシュ、モンモランシー、ギムリにレイナールも
自分の名前をあげて無事を報告し、その度に全員に安堵の色が流れていく。エルフたちも、テュリューク統領はビダーシャルが
守って、護衛兵たちも頭数があまり減った様子はない。
 だが、幸い全員無事かと思われたそのとき、モンモランシーが慌てたように叫んだ。
「大変よ! ティファニアがいないわ!」
「なんだって!」
 一大事であった。まさか、落盤の向こう側に取り残されたのか、それとも押しつぶされてしまったのかと全員に冷や汗が流れる。
 さらに、エレオノールもひとり見えない顔がいるのに気づいた。
「そういえば、ルクシャナもいないわ」
「なんだと! しまった、私がついていながら」
「ルクシャナ! そんな、畜生!」
 ビダーシャルも、テュリュークの護衛に専念するあまりに、姪のことを失念していたことに端正な顔に小さなゆがみを作った。
婚約者のアリィーも、無闇に近づいたらうっとうしがられると、仕事に専念しようとしていたことを悔しがるがどうにもならない。
「まさか、あの子たち……くっ」
 土のメイジであるエレオノールの直感が、この土砂の山は簡単にどうこうなるものではないことを告げていた。
 落盤した岩の山は、半端な魔法などは受け付けないふうに、無情に聳え立っていた。
 
 何百トンという土砂は、エルフのカウンターの魔法を持ってしても到底耐えられるものではなく、たとえ地球から重機を
運んできたとしても容易に取り除けるものではないだろう。もしも飲み込まれていたとしたら死体が残るかどうかさえ怪しい。
 が、落盤の向こう側ではルクシャナとティファニアは奇跡的にも生き残っていた。
「だ、大丈夫? あなた」
「は、はいっ、ルクシャナさん。あなたが守ってくれたんですか?」
「いいえ、とても間に合うようなタイミングじゃなかったわ。ほら、わたしたちは運がよかったのよ……」
 魔法の明かりの中で、ルクシャナに促されて上を見ると、そこにはあのウルトラマン像が自分たちにかぶさるようにして
倒れこんできていた。ティファニアは、像が傘になってくれたおかげで、自分たちは土砂の下敷きにならずにすんだことを知った。
「ウルトラマンが……助けてくれたの」
「でも、閉じ込められちゃったわ。これは、精霊の力を借りるにしても契約がないと難しいわね。どこかに、通れるすきまがあるといいんだけど」
 先住魔法も万能ではないと、ルクシャナは困った顔をした。また同じ規模の地震が来たら、今度こそ助からないかもしれない。
 だが、死神は落盤よりも早く彼女たちに迫っていた。
「安心しろ、出口など探さなくてもお前たちはここで死ぬ」
 よく通る声が響き、ふたりはその方向に振り返った。
 見ると、髪の長い士官服を着た女が立っていた。額からは、落盤のときに負ったのか血が流れている。しかし、その手には
銃が握られていて、銃口はまっすぐにふたりを向いていた。
「会えてうれしいよ、民族の裏切り者と悪魔の末裔。ようやく、一番殺したいやつらと三人きりになれたな」
「あなた……っ!? その腕章は!」
 ルクシャナは、その女性士官の破れた制服の下から現れた腕章を見て絶句した。
 鉄血団結党……民族の敵はすべて抹殺せよという教義を妄信する、エリート主義に凝り固まった狂信者たち。まさか、
統領の護衛部隊の中にも紛れ込んでいたとは。
だが、とっさに魔法をぶつけようと思ったルクシャナは、相手の銃が震えているのに気づいた。よく見ると、顔色も悪いし息も荒い。
「あなた、まさか今の落盤で怪我を」
 苦しそうなファーティマの姿に、ティファニアは思わず話しかけた。だが、その心配げな声が誇りを傷つけたらしく、ファーティマは
語気荒く怒鳴った。
「黙れ! 悪魔に心配されるいわれはない。悪魔……はは、まさしく貴様らは悪魔だ。部下に陽動を任せて襲おうと思っていたのだが、
いったいどんな悪魔の業を使った? おかげで部下は全滅だ。ふははは! あーっはっはは!」
「あ、あなた……」
 様子がおかしい、もしや負傷の痛みと出血のせいで錯乱しかかっているのか! なら、下手に刺激すると危険だと、ルクシャナは
ティファニアに忠告しようとしたが。
「待って! 早く手当てをしないとあなたも危ないわ!」
「黙れぇぇっ!」
「きゃああっ!」
 銃声と悲鳴がこだました。ティファニアが右肩を押さえてうずくまり、弾丸が岩に当たって跳ね返る音がする。照準がぶれたおかげで、
銃弾はティファニアの肩をかすめただけですんだのだ。
 だが、ほっとする暇はなかった。失血で理性を失いかけていたファーティマは、今のショックで完全にたがが外れてしまった。
予備の銃を取り出して、狂乱しながらティファニアに今度こそはと銃口を向けた。
「死ねぇ! 悪魔めぇぇっ!」
 自らの顔をこそ悪魔のように変えて、両手に持った二丁の銃がティファニアの胸を狙う。ルクシャナはとっさに防御の魔法を使おうとしたが。
「だめっ、間に合わない!」
 銃の速度にはかなわない。エルフの銃は火薬ではなく、風石の力で弾丸を押し出しているために初速が速く、殺傷力が強い。
 ティファニアは、銃口の黒い穴を見ながら、ああ……わたしはここで死ぬのかなと思った。
 せっかく念願だった東の国まで来たのに、まだなにもしてないのに。やっぱり、ハーフエルフはいちゃいけない存在なのかな?
 
 弾丸が放たれ、一直線にティファニアに向かう。
 だが、そのときだった。
 
「キャプチャーキューブ!」
 
 青い光弾がふたりに向かったと思うと、次の瞬間ティファニアとルクシャナの周りを光の壁が取り囲んだ。弾丸はその壁に
はじかれて、土砂に弾痕を作って虚しく止まった。
「なにぃっ!?」
「こ、これは?」
 愕然とするファーティマと、呆然とするルクシャナ。そしてティファニアが顔を上げると、そこにはガッツブラスターを構えて
瓦礫の山の上に立つ才人の姿があった。
 
「サイト!」
「言っただろ、おれが守ってやるってな!」
 
 
 続く
今週は以上です。
というわけでファーティマ初登場&伏線回収そのいちでおこないましたが、いかがでしたでしょうか。
原作で言うと、だいたいファーティマがティファニアを襲ったあたりですね。ただ、才人とテファの親密度やテファの使い手の自覚などが
違いますので召喚はおこないませんでした。というか才人はガンダールヴですらないままです。
それにしても、ファーティマは出しましたが、20巻の挿絵のいくつかで描かれている彼女の顔を見る限り、どうにも狂信者というイメージが
湧かないので過激な台詞を言わせるのに苦労しました。垂れ目のせいか、私にはかなり彼女は子供っぽく見えてしまいます。
さて、オリジナルのバラージの神殿のノアの神の正体はどうやらゾフィーらしいですが、このバラーダの神殿のウルトラマンは誰なのでしょうか。
原作、アニメといろいろ違いはありますが、私は私なりにこの世界の物語をこれからもつむいでいこうと思います。

では、代理投下をよろしくお願いいたします。
次回、いよいよ戦闘開始です。


代理完了。一体さるさんって何なんだ?ぶっちゃけいい迷惑でしかないんだが。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 16:07:21.46 ID:da2YADb8
荒らしが連投できないようにとか
567名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 16:23:32.24 ID:ffop9+wZ
代理乙ウルトラ乙

レベルにもよるだろうけど、2分間隔で投稿すればさるさんは回避できると思うよ
経験談だから正確なところはわからない
568名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 16:47:17.49 ID:jBrZYJZ6
ウルトラの人&代理の方乙
あれ? ノアの神=ゾフィーって漫画版設定で本来はウルトラマンノアじゃないっけ??
569Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/03/20(火) 17:54:54.21 ID:XVU8lRiV
大変遅くなりましたが、
他に投下予定が無ければ18:00ごろから投下させてください
570Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/03/20(火) 18:01:47.50 ID:XVU8lRiV
 
「ええ、あんたの故郷とか、そういうことそれはあとでゆっくり聞かせてもらうわ。
…で、質問はそれだけ? いつまでも待たせるんじゃないわよ」
 
ルイズからいらいらしたように声をかけられて、ディーキンは頭の中で物語の案をまとめるのを中断する。
いろいろと考え込むのは後回しにしたほうがよさそうだが、あともう一つ二つ大事なことだけはこの場で聞いておかなくてはならない。
 
「アー、ごめんなの…もう少しだけ聞かせてもらえる?
えーと、ディーキンは使い魔のことは知ってるつもりだけど、このあたりはディーキンの知らないところみたいだから勘違いしてるかもしれないの。
だから使い魔になるかどうか決める前に、まずあんたの言う使い魔っていうのは何をするものなのかを教えてほしいんだけど…」
「なるかどうかじゃないわよ、あんたがゲートから出てきた以上なんといおうと使い魔にはなってもらわないと困るの。
…でも、これから長い付き合いになるんだし、自分の仕事をしっかり理解してもらわないと話にならないわね。
いいわ、手短になら説明してあげるから、しっかり聞きなさい」
 
ルイズの言葉を聞いたディーキンは、首を傾げて考え込む。
 
「ありがとうなの、ルイズが説明してくれるのならディーキンはちゃんと聞くよ。あんまり覚えはよくないけどね。
…ウーン…、どうしてもならないといけないの?
ええと、やたらに洗い物をさせられるとか、
夜中に呼び鈴で叩き起こされて夜食を持ってこさせられるとか、
朝の着替えを持っていったら『どうして今日の私は赤い服を着たい気分だってわからないの、このろくでなし!』とか難癖つけられてびしばしぶっ叩かれるとか、
…それくらいだったらディーキンはたぶん大丈夫なの。
でもディーキンは、そういうのはあんまり楽しくないと思うの」
 
昔読んだそれっぽい物語の内容を思い出しつつ、懐から羊皮紙とペンを取り出してメモを取る用意をする。
実際、前の“ご主人様”に仕えていたときには毒を舐めさせられて昏倒したり、麻痺の魔法を掛けられて歯を抜かれたり…、
しまいには寝ぼけて上にのしかかられて死にそうになったりしたので、その程度なら虐待の内にも入らないだろう。
とはいえ勿論、そういう扱いをされて愉快だというわけでもない。
 
ルイズは呆れたような顔をしつつも、じっとディーキンの様子を見つめる。
 
「そんなことしないわよ…、ふうん、あんた言葉遣いはあんまり賢そうじゃないけど、字が書けるのね。
それに紙とペンを普段から持ち歩いてるなんて、なかなか勤勉そうじゃないの」
「フン、どうせルイズは人間とちょっと話し方が違うからって、ディーキンをバカだと思ってたんでしょ?
ディーキンはこれでも冒険者で吟遊詩人(バード)なの、だから物語や歌をすぐに書き留められる用意が欠かせないんだよ。
いつどこですごい英雄とか、でっかいドラゴンとか、囚われの美しいコボルドの少女に出会うかわからないからね!」
571名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 18:02:48.33 ID:VWWrFRqs
容量そろそろやばいから次スレ立てた方が良くない?
572Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/03/20(火) 18:03:05.73 ID:XVU8lRiV

「…はあ? バードって…、あんたコボルド・シャーマンじゃないの?」
 
ルイズはコボルドは知能が低く基本的に人語は解さないが、稀に生まれる先住魔法を使う知能の高いシャーマンは別…という知識を本で読んで知っていたので、
コボルドだと名乗る目の前の亜人は、当然シャーマン(大きさからみておそらく子ども)だろうと考えていた。
 
実際にはディーキンは肉体的には既に完全に成熟しており、子どもと呼ばれるような年齢ではない。
犬と人間の中間のような姿で人間より若干小柄な程度のハルケギニアのコボルドと違い、フェイルーンのコボルドはドラゴンの血を引く爬虫類型の亜人で、身長は成人男性でも人間の半分ほどにしかならないのだ。
ディーキンは体内に眠る強大なドラゴンの血を覚醒させるのに成功したこともあって、平均的なコボルドよりはむしろ体格がいいくらいなのである。
 
(…外見が本で読んだのと全然違うし、本当にコボルドなのかしら?)
 
「シャーマン? …ウーン、ソーサラーとか、アデプトの事?
ディーキンはバードなの、卑劣なコボルドのソーサラーなんかじゃないんだよ」
「…コボルドに詩人がいるなんて聞いたこともないわ。
ソーサラーとかアデプトっていうのはよくわからないけど。あんたたちの間じゃシャーマンの事をそう呼ぶのかしら」
「ディーキンにはよくわからないの。ディーキンも自分以外のコボルドのバードに会ったことは無いけどね。
でも、ディーキンは確かにバードだよ…多分、他のコボルドにはバードの手ほどきをしてくれるご主人がいないからじゃないかな?」
「…よくわかんないけど、あんたは詩人で、それを教えてくれるご主人様がいたってわけ?
…まあいいわ。その話はあとで聞くけど、今日からは私が主人だからね!」
 
そこまで話すと、ルイズは話が脱線していることに気が付いて軽く咳払いをする。
不興を買っていないかとちらっと傍らで待っている教師の方を伺うが、コルベールは2人の話に興味深げに耳を傾けているようなので大丈夫そうだ。
 
「…ええと、話を戻すけど。まず、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるわ。
つまり、主人に代わって色々なものを見聞きしてくる仕事があるのよ」
「ふうん? あんたと使い魔の契約をすると、ディーキンの見てるものがあんたにも見えるようになるの?」
 
ディーキンの知るウィザードやソーサラーの使い魔は主人と感覚的なリンクを持っており、1マイル程度までの距離であればテレパシーで意志を伝えることができる。
だが、主人が使い魔の目を通して直接物を見るというようなことは別に魔法でも使わない限りできないはずだ。
573Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/03/20(火) 18:03:52.52 ID:XVU8lRiV
あ、すみません…容量見てなかったです。
次スレ立ててそっち使った方がいいですね。
574Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/03/20(火) 18:08:00.75 ID:XVU8lRiV
次スレ作成いたしました
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1332234406/l50

改めて投下しなおさせていただきます、申し訳ありませんでした
575名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 18:09:14.59 ID:9SlQhM87
次乙
576一尉:2012/03/20(火) 22:04:54.33 ID:rOV5PMYw
召喚にしたのはパッキーでした。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/21(水) 05:29:54.24 ID:Uzsa9QQD
スレ立て乙
578名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/21(水) 13:13:51.10 ID:M7nzcDMI
特に投下が多いわけでもなく、レスがつかないからレス数少ないまま埋まるっつーのももの悲しいな
579一尉:2012/03/22(木) 01:41:57.58 ID:P/TJpz/r
556を召喚にしたルイズ
580名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/22(木) 04:51:17.63 ID:hUDQKwaI
せやの
581名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/22(木) 07:16:42.08 ID:EPGUWTfV
この池沼はなんなんだろうな…
582一尉:2012/03/22(木) 09:10:45.51 ID:+60hOLir
Falloutからスーパーミュータントのマーカスを召喚にするルイズ
583一尉:2012/03/23(金) 00:12:56.18 ID:7As5Cgon
マリオを召喚にするルイズ
584名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/23(金) 03:44:38.01 ID:lvlt01ct
ディスティン・ファローダを召喚するルイズ
585ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました:2012/03/24(土) 12:14:04.34 ID:T3MSSI85
誰もいなさそうなので投下します
586ネギま! のエヴァンジェリンが召喚されました
「…これが私の使い魔?…」

「なんだ貴様は? ここはどこだ? 私を召喚したのか? どうやって? さきほどの鏡のようなものか? 転移系の魔法か?」

「随分偉そうだし…私より小さいのに…」

「質問に答えないのはまだしも 小さいとは言ってくれるな」

「なによ どう見ても私より小さいじゃない」

「む…魔力が十分ならこんな姿で… うむ? 結界から抜け出せている? これなら…」

「なに? 言いたいことがあるなら言えば… って! え?」

「これが私本来の姿だ どうだ? お前のちんけな体とは比べ物になるまい?」

「なななななななな… なによ これ… 私より胸が胸が胸が胸が………」

「分かったか? 小娘」

「ううう… ああもう そんなのどうでもいいの! あなたは私の使い魔になるんだからそれにしても今のは 魔法? あなたメイジなの?
平民かと思っちゃったけど」

「ほう 使い魔にしようとして私を召喚したか まあ結果的に結界から抜け出させてくれたわけだし
 お前が死ぬまでくらいは面倒を見てやってもよいが ああ名乗っておこうか 私は闇の福音エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル 
聞いたことはあろう?」

「闇の福音? 聞いたことないわね それに私が死ぬまでって その時にはあなたももう死んでるか 随分なおばあちゃんになてるんじゃないの?」

「私の名前を聞いたことがない? とんだ世間知らずだな おいそこのハゲ 話は聞いていたな? 説明してやれ 見たところ教師のようだか 無論知っているだろう?」

「ハ? ハゲって私ですか? … 確かに私はこの学院の教師ですが 闇の福音なんて聞いたことないですね これでも結構物知りのつもりなんですが ご出身を聞いても?」

「貴様も知らないのか? この不死の魔法使い 悪しき音信 禍音の使徒 吸血鬼の真祖を?」

「「吸血鬼?!!!」」