あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part299

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part298
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1311990285/



まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 16:43:01.58 ID:5TVXJYCr
スレ立て乙です。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 21:19:51.97 ID:4Jf6NO8/
グヘヘへ、>>1が新スレしょってやってきたぜェ
4ninja:2011/08/21(日) 22:14:13.26 ID:3U8TcxXB
>>1
乙。
5ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:41:52.45 ID:g+M5bYbu
皆さんこんばんわ、萌え萌えの人乙でした。私もそろそろゼロ戦再登場させようかな。
今週はちょっと遅れてしまいましたがウルトラ5番目の使い魔、56話投稿開始します。
10分後、22:50にはじめますので、今週もよろしくお願いいたします。
6ウルトラ5番目の使い魔 56話 (1/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:50:22.22 ID:g+M5bYbu
 第56話
 打ち砕かれた架け橋
 
 ガス超獣 ガスゲゴン 登場!
 
 
 突如地球を襲った、大怪獣軍団の侵攻。その力は人類の防衛戦力を上回り、世界中の地球防衛軍は危機に瀕した。
 しかしそのとき、宇宙のかなたM78星雲からウルトラ兄弟が駆けつけ、怪獣軍団に立ち向かっていった。
 その活躍により、怪獣軍団は壊滅。GUYS JAPAN本部を襲ったベムスターとアブソーバも、ゾフィーとメビウスによって撃破された。
 
 そして、ヤプールがその力を蓄えている異世界ハルケギニアへと向かうゲートを作り出すため、フェニックスネストは
改良型メテオール、ディメンショナル・ディゾルバーRの発射態勢を整える。これに成功すれば、ウルトラ兄弟の
手の届かないところでぬくぬくと力を蓄えるというヤプールの姑息な目論見は崩れ去る。
 世界各国や各惑星で暴れまわっていた怪獣たちも、ウルトラ兄弟とGUYSをはじめとする地球防衛軍の総力で
完全に鎮圧されたという報告が入ってきた。怪獣軍団を倒したウルトラ兄弟も、順次ここに向かいつつあるらしい。
空は先ほどまでの激戦が嘘であったかのように晴れ渡り、作戦の成功を祝福してくれているようである。
 
 だが……
 
「ディメンショナル・ディゾルバーR、照準誤差修正。発射位置固定」
「フェニックスキャノン、砲口部異常なし。全システムオールクリア」
 ディレクションルームに快い緊張感が流れ、リュウはキャプテン席で準備が整うのをじっと待っていた。胸中では、
みんなはできる限りのことをしてくれた、今度は俺たちがなにがなんでも道を切り開く番だと、強い決意が赤々と
燃え滾っている。
「隊長、ディメンショナル・ディゾルバーR、発射可能まであと三十秒!」
「ようし、カウント開始。総員衝撃に備えろ。とんでもねえショックがくるぞ!」
 主砲、フェニックスキャノンに装填されたメテオールカートリッジに次元を歪めるだけのエネルギーがチャージされ、
砲口部に青白い余剰エネルギーが見え始めた。視認するのは無理だが、部分日食も現在最大値に到達していると
報告も入っている。このときにだけ生まれるわずかな次元の歪み、ハルケギニアへの道をメテオールで一気に
こじあけてやる。
 カウントがひとつずつゆっくりと流れていき、誰もが固唾を呑んでその瞬間を待ち望んだ。
 
 しかしこの瞬間、フェニックスキャノン発射に意識を集中しすぎて、リュウたちGUYSクルーも、見守っていた
メビウスとゾフィーも注意力が薄れていたのはいなめなかった。
 怪獣軍団を撃退され、切り札のベムスターもメビウスとゾフィーの活躍で失ったヤプール。けれども、世界各国を
襲った怪獣軍団はあくまで『撃退』されたのであって『殲滅』されたわけではなかった。中には生息地へ
追い返されたり、不利を悟って逃げ出したものも存在する。
7ウルトラ5番目の使い魔 56話 (2/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:51:49.29 ID:g+M5bYbu
 そして、倒されなかったものの一部には、ヤプール自身が撤退させたものも存在する。怪獣軍団の中に
あってわずかに投入されていた超獣、それは地球攻撃と同時に、ある目的をもって投入され、それらを
果たしたがゆえに異次元に回収された。
 その超獣とは……
 
「うぬぬ、地球人め、ウルトラ兄弟め。どこまでもわしの邪魔をするつもりだな。だが亜空間ゲートだけは
なんとしても開かせん。かくなるうえは切り札を見せてやる。超獣ガスゲゴンよ、ゆけぇー!」
 
 ヤプールの波動とともに、地上に一体の超獣が送り込まれた。細身の体に、食べ物をいっぱいに
詰め込んだリスのような膨れ上がった頬を持った不気味な顔。両腕は太く長い鞭になっている。
 出現した超獣は、メビウスとゾフィーに向かって動き出した。その様子はフェニックスネストでも観測されている。
「ドキュメントTACに記録を確認。ガス超獣ガスゲゴンです。マレーシアの天然ガスステーションを襲って
姿を消したものと思われます」
「ちっ! この期に及んでまだ超獣を繰り出してきやがるか。しつっこい野郎だ」
「隊長、ディメンショナル・ディゾルバーR発射まであと十五秒です。どうします!?」
「無視しろ! 今はメビウスとゾフィーにまかせるんだ」
 リュウは焦燥を抑えて、カウントダウンに意識を戻した。どんな超獣かは気になるが、今のフェニックスネストに
できることはなにもない。それに、発射まであとたった十秒だ、いくら超獣でも間に合うものか。
 最終カウントが刻まれる中、ゾフィーとメビウスはガスゲゴンを食い止めに向かった。
「タアッ!」
「テェイ!」
 大蛇のような鞭を振り回してくるガスゲゴンの攻撃を潜り抜けて、二人は左右からガスゲゴンを挟み打った。
そして奴がどちらに対処しようか迷った一瞬の隙をついて、腕の鞭を掴まえて地面の上へとねじ伏せる。
「いいぞメビウス、そのまま動かすな」
「はい!」
 相手がどういう敵か分析している時間がない以上、二人は攻撃するより動きを封じるほうが得策だと判断した。
怪力を誇るガスゲゴンも、ウルトラ戦士二人に拘束されてしまったのでは身動きすることができない。足を
ばたつかせ、口からガスを吐いて振りほどこうとしてくるが、二人はそれに耐えてガスゲゴンの動きを封じる。
「リュウさん、早く!」
 ただの数秒が恐ろしく長い。ガスゲゴンの吐き出す毒ガスに耐えながら、メビウスの目に上空の
フェニックスネストが太陽を反射してまばゆく映る。その突き出した砲門に光が収束し、メビウスとゾフィーの
耳にリュウの叫びが飛び込んできた。
8ウルトラ5番目の使い魔 56話 (3/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:53:17.23 ID:g+M5bYbu
「ディメンショナル・ディゾルバーR、ファイヤー!」
 フェニックスキャノンから放たれた光束が空間の一点に吸い込まれていき、空間が渦巻くように捻じ曲がっていく。
空間の歪みを矯正して封じるディメンショナル・ディゾルバーの極性を反転させたRが、わずかに発生していた
別次元へ通じるトンネルを見つけてこじあけたのだ。
「やった! ワームホールが開いたぜ」
 以前にハルケギニアへ通じるゲートを開いたときと同じ形の時空の穴。最初はしみのような小さなものだったのが、
次第に大きくなっていき、やがて黒雲と見まごうような大きさへと成長していく。皆既日食に比べたら微小すぎる
ほどに小さな空間の歪みだったので不安だったが、天才フジサワ博士の設計は正しかったようだ。
 リュウはワームホールが安定に向かっているのを目視すると、オペレーターに確認を命じた。
「どうだ? 向こうとつながったと確認できたか」
「空間座標の固定は間違いないはずです……しかし、実際につながっているかはやはりくぐってみないことには
断言できません」
 当たり前の答えが返ってきたことにリュウは落胆はしなかった。すでに宇宙に手を伸ばしている地球人類にとっても、
異次元に関する研究はまだまだ未知数の部分が多すぎる。第一、自由に次元に手を加えられるならば、
とっくの昔にヤプールに攻撃をかけているだろう。ならば、確実にハルケギニアに通じたかどうかを手っ取り早く
確認する方法は一つ。
「よし、向こうにいるセリザワ隊長と、平賀才人のメモリーディスプレイに通信を送ってみろ」
「G・I・G、しかしゲートが安定するまでにあと数分かかりますので、少し待ってください」
 二人ともメモリーディスプレイは肌身離さずに持っているはずだから、応答があればハルケギニアに通じていると考えて
間違いはない。そうすれば、ヤプールに対してはじめて攻勢に出られる態勢が整う。向こうの世界でヤプールが
強大化しているのは今回の攻撃の規模を見ても明白だが、いくらヤプールでも本拠地を直撃されればたまったものでないはずだ。
 ともかく、ゲートを開くことには成功した。ヤプールの大攻勢を跳ね返して、俺たちの勝ちだとリュウは思った。
ヤプールも最後に悪あがきに超獣を送り込んできたが、たった一匹でどうなるものでもなかった。ガスゲゴンは
今になってようやく二人の拘束から逃れて、鞭をふるって反撃に出ようとしているが、二人のウルトラ戦士は
余裕を持ってかわしている。
 リュウはメビウスとゾフィーを援護するぞと、フェニックスキャノンを通常モードに切り替えろと命令した。
 だが、砲手がG・I・Gと答える前に、ガスゲゴンのデータを検索していたオペレーターが悲鳴のように叫んだ。
「隊長だめです! ガスゲゴンを撃ってはいけません。奴の体の中には、可燃性のガスが充満しています。
もしガスに引火することになれば、基地が丸ごと吹っ飛んでしまいますよ」
「なんだって! まずい、ミライ、サコミズ総監!」
9ウルトラ5番目の使い魔 56話 (4/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:54:33.34 ID:g+M5bYbu
 リュウの必死の叫びが、光線技で攻撃をかけようとしていたメビウスとゾフィーをすんでのところで止めた。
ガスゲゴンはかつて超獣攻撃隊TACの大気観測用人工衛星ジュピター二号を乗っ取り、自分の卵にして
地球に侵入してきたことがある。ジュピター二号の外装をガスタンクに見せかけ、ガスコンビナートでまんまと
好物のガスを大量に吸収したガスゲゴンは、いわば動く爆弾状態で孵化した。これにはTACやウルトラマンAも
うかつな手を打てず、かろうじて宇宙空間に運んで爆破することで勝利している。
 今回ガスゲゴンはマレーシアのガスステーションを襲って、大量の天然ガスを吸収しているため条件は昔と同じだ。
下手に火花の出る武器で攻撃をかけたら半径数キロは焼け野原になってしまう。リュウはヤプールのもくろみは
基地全体の破壊かとあたりをつけ、地上の隊員全員に地下への退避を警報するのと同時に、ガスゲゴンへの対策を練らせた。
「ガスゲゴンへはガス中和剤および冷凍弾での攻撃が有効と思われます。効果時間は短いですが、一時的にでも
動きを止められます」
 リュウは「よしそれでいこう」と思った。ほんのわずかでも動きが止まれば、メビウスとゾフィーに宇宙に運んで
もらえる。怪獣を宇宙に移送できるGUYSの装備は重力偏向板があるが、これは準備に大量の時間がかかるために
今は使えない。
 しかし、GUYSが対策を打つより早くヤプールは次の手を打ってきた。
「これは! ガスゲゴンの直上に次元の変動と強力なヤプールエネルギーが発生しています」
「また新しい超獣が出てくるってのか!?」
「いえ、この反応は超獣ではなく……隊長!」
「なんだと!」
 オペレーターが示したデータを見せられたリュウは愕然とした。そこには、超獣出現のための大型亜空間ゲートではなく、
もっと小型で超獣が通れるようなものではないが、その奥に強力な破壊エネルギーが渦巻いている。まさかヤプールは、
リュウはヤプールの目論見に思い至って愕然とした。まさか、いくらヤプールでもそこまで残忍なことは。
 だが、ヤプールは悪の結晶体。あらゆる善の逆がヤプールなのだ。それは自らが生み出した子ともいうべき存在に
対しても変わらない。ヤプールは空間を通した目でガスゲゴンを見下ろし、邪悪な笑いを浮かべた。
 
「人間ども、そしてウルトラ兄弟。貴様らの思い通りには絶対にさせんぞ! 最後に笑うのはこのわしだ! ガスゲゴンよ、
我々の勝利の糧となるがいい。やれ!」
 
 わずかに開いた次元の裂け目の奥の目が光り、強力な破壊光線が放たれた。しかし光線が狙ったのはメビウスたち
ではなかった。ガスゲゴンを直撃し、不意を打たれた形となったガスゲゴンは断末魔の声をあげて倒れこむ。
10ウルトラ5番目の使い魔 56話 (5/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:55:52.26 ID:g+M5bYbu
「しまった。メビウス、ゾフィー逃げろ! 爆発するぞぉ!」
 リュウの悲鳴が届いた瞬間、ガスゲゴンの死体から青白い火が漏れた。光線の熱エネルギーが皮膚を透過して
内部のガスに引火したのだ。炎は瞬間的に全体に燃え広がり、さらに周辺の空気中の酸素を奪って燃え上がる。
コンマ数秒後には、ガスゲゴンの体内に圧縮されて溜め込まれていた何千トンというガスはすべて気化し、
ありとあらゆるものを焼き尽くすだろう。
 上空のフェニックスネストにも炎は迫り、回避する余裕はすでにない。
 まさか、勝利のために超獣を犠牲にするとは。人間をはるかに超える動体視力を持つメビウスとゾフィーは
ガスゲゴンが炎と化すのをはっきりと見ながら、やつの悪魔性をまだ甘く見ていたことを悔やんだ。だが、このままではいけない。
「メビウス、飛べ!」
 ゾフィーはメビウスに命じると同時に、自らも脚力の限界を超えて駆けた。サコミズの心も持つゾフィーには、
GUYS基地のどこが弱いのかわかっている。フェニックスネストが飛び立った跡、そこはシャッターで閉鎖
されているといっても構造的にもろい。そこから炎が入り込めば、地下のクルーは蒸し焼きか窒息死を免れない。
ゾフィーは自らの体をもって地下への炎の侵入を全力でふせいだ。
 そしてメビウスも全力でフェニックスネストを守るバリヤーを張り巡らせた。
『メビウスディフェンスドーム!』
 球形のバリヤーがフェニックスネストを覆い、爆発の炎から守った。しかし本来自分自身しか覆えない
バリヤーを大きく拡大させてしまったために、ウルトラコンバーターから供給されるエネルギーをプラスしても
まかないきれない。
「ウァァァッ!」
 二人のウルトラマンのカラータイマーが一気に赤に変わり、爆発の衝撃波はなおも続いていく。
 フェニックスネストも自身の安定を保持するだけで精一杯だ。だが、そんなことなど問題にもならないような凶報が
リュウの耳に飛び込んできた。
「大変です。亜空間ゲートが爆発のショックで安定が乱れて、縮小しはじめています!」
「畜生!」
 爆発の衝撃波は、まだ不安定だった亜空間ゲートにも大きなダメージを与えていた。ようやくウルトラ戦士や
戦闘機が通れるほどに大きくなっていたワームホールが、センサー上でみるみる小さくなっていく。
ヤプールの真の狙いはこれだったのか、歯軋りするもののどうすることもできない。
 火焔に包まれる赤一色の世界の中で、邪悪な思念に変わってヤプールの勝ち誇った哄笑が響く。
 
「ファハハハ! 見たか愚かな人間どもめ、これで貴様らは我らの世界に攻め入ってくることはできまい。
このままとどめを刺してやりたいところだが、ほかのウルトラ兄弟も近づいてきているようだ。今回は
見逃してやるが、次は今回とは比べ物にならない戦力で一気に滅ぼしてくれる。ウワッハッハハハ!」
 
 暗黒の笑いが遠ざかっていき、ディレクションルームには落胆の声が流れる。しかし、指揮官には絶望する権利はない。
リュウは酷は承知でオペレーターたちに叫んだ。
11ウルトラ5番目の使い魔 56話 (6/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:56:32.40 ID:g+M5bYbu
「まだだ、まだ終わってねえ! まだ希望はある。セリザワ隊長か、才人の野郎のところへ通信をつなげ! こっちの
世界でなにがあったのか伝えるんだ。急げ、ゲートが閉じちまう前に」
「じ、G・I・G!」
 はじかれたようにオペレーターたちは動き出した。まだやれることがあるということが、絶望的な状況でも
彼らに働く意欲を取り戻させたのだ。ウルトラマンヒカリ、セリザワ・カズヤが向こうにはいる。それに平賀才人、
事故で偶然ハルケギニアに転移させられてしまった普通の高校生、けれど日本とはまったく違った社会環境で生き抜き、
なじみも薄い世界のために命を懸けてウルトラマンAに選ばれた彼ならば、なんとかできるかもしれない。
 爆発の影響もようやく薄らぎ、空が普通の青さを取り戻す。しかしゾフィーは体力を使い切ってひざを突き、
メビウスはエネルギーを使い切って浮いているのがやっとだ。
「ミライ、大丈夫か!」
「僕は……大丈夫です。それより、ゲートが」
「心配するな。望みは残ってる。それよりお前は自分の心配をしていろ」
 メビウスは消耗した体ながら、フェニックスネストが墜落しないように支えて着陸させてくれた。そのまま倒れこみ、
消滅するようにしてミライの姿に戻る。ゾフィーも大きく消耗した様子で、立ち上がったもののカラータイマーの
点滅は激しい。
 そのとき、ゾフィーは両手をつき合わせて小さなリング状の光線を放った。その光のリングは地上に降りてくると、
多数の光輪を放って、その中からサコミズの姿が現れた。どうやら、サコミズのほうは不調は少ないようで、
メモリーディスプレイでこちらの無事を確認すると、気を失って倒れているミライのもとへと走っていった。今頃は
カナタたちも担架を持って駆けつけているだろう。
 もしこの二人がいなかったら、フェニックスネストごと自分たちは灰になっていたかもしれない。ヤプールの執念、恐るべし。
 しかし、このままヤプールの勝ちにさせてしまうわけにはいかない。この絶望的な状況から、逆転を可能にする
一手は、希望は残っている。それをハルケギニアの才人のところへ届けなくてはいけない。リュウは閉じようとしている
亜空間ゲートをじっと見上げているゾフィーとともに、今できる唯一のことを成し遂げるべくマイクをとった。
「こちら地球だ。おい聞こえるか! ハルケギニアに届いてるか? 才人! 聞こえたら応答しろ」
 
 地球からハルケギニアへ行く望みは、ヤプールの執念によって砕かれた。しかし、ほんのわずかに開いた道を
通じて、希望は地球からハルケギニアへと向かっていく。
 
 場所をハルケギニアのガリアにいる才人たちに戻し、電波に乗ったリュウの声は才人のメモリーディスプレイまで
たどり着いていた。だが、不完全な亜空間ゲートを通過するうちに電波も劣化し、激しいノイズは聞き取ることを
極めて困難とした。
12ウルトラ5番目の使い魔 56話 (7/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:57:05.52 ID:g+M5bYbu
〔こち……ちき……聞こえるか? ハルケ……才人!〕
「この声は、リュウ隊長! おれです。聞こえますか!」
 才人からの応答は地球に届き、リュウは笑みを浮かべていた。フェニックスネストの大コンピュータで処理を
おこなう地球側の感度は、才人の側より格段にいい。リュウは早口で地球で何があったのかを伝えていった。
地球での怪獣軍団との戦い、しかし亜空間ゲートを開くことには失敗したこと。
 だが残念なことに、それらの情報の半分はノイズにかき消されて才人には届かなかった。それでも彼は声色と、
わずかに聞き取れる単語の組み合わせから、地球で危機的状況が起こって、GUYSがこちらに来れなくなったことだけは理解した。
「リュウさん! ヤプールはこっちでも本格的に暴れ始めたんです。すでに、エルフの国の一部がやつに占領されました。
やつは以前よりもはるかにパワーアップして、なにか恐ろしいことを企んでます」
〔な……れ……そっちでも……俺たちは、もう一度亜空間ゲートを……かかる。そ……大変……〕
 ノイズはどんどんひどくなり、音声も小さくなって聞き取れなくなっていく。ゲートが閉じかけているのだ。才人は
焦る頭の中でルイズといっしょに思いつく限りのことを地球に届けようと叫ぶ。どこまで届いているかは未知数だが、
地球を守り抜いてきたGUYSならば、どんな小さな情報でも希望につなげてくれるはずだ。
 しかし現実は残酷に、二つの世界をつなぐ糸を細くしていく。恐らく聞き取れるのもあと数秒、話せるのもあと一回。
才人はリュウの最後の言葉を聞き取ろうと耳にすべての意識を集中させた。
〔いいか……そちら……ん……向かっ……お前の銃……協力し……着くまで……がんばれ!〕
 そこまでで、受信不可能と判断したメモリーディスプレイは通信を切った。空に現れていた不可思議な月食も、
ワームホールと連動していたと見えて、元の青い月に戻っている。つまり、地球とハルケギニアを結ぶ糸は、
ウルトラ兄弟の支援を望む希望も、才人が地球に戻る期待もすべて、水の泡となってしまったことになる。
「なんてこった……」
 電源を切ったメモリーディスプレイを下げて、才人は落胆を隠しえない様子で、窓枠に手を置いてうなだれた。
そんな才人の様子に、ルイズは「大変なことになったわね」「そんな落ち込まれたら、こっちまで暗くなるから
やめなさいよね」「あんたから元気をとったらなにが残るの?」など、声をかけようとして、喉まで出掛かったところで
押しとどめた。
 ここ三ヶ月、才人がGUYSへの正式入隊を果たすためにどれだけ努力を重ねてきたか、ずっとそばにいたルイズは
よく知っている。ガンダールヴでなくなった今、腕っ節は本職の戦士に及ぶべくもなく、知力もよく言って並といえる
程度の才人にとって、GUYSへの入隊は夢であると同時に大きな目標だったのだ。ルイズも、死ぬほど努力して
報われない気持ちは痛いほど知っているから、下手な慰めが逆効果になってしまうことがわかる。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 22:57:11.83 ID:W5cV1LuP
支援
14ウルトラ5番目の使い魔 56話 (8/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:58:27.50 ID:g+M5bYbu
 GUYSの皆やウルトラ兄弟の援軍が期待できなくなったのも極めて痛い。果たして、彼らが再度地球から
こちらまでのゲートを開くまで、自分たちと数人のウルトラマンで食い止めきれるのだろうか? 大きすぎる
重荷を一気に背負わされてしまったことに気づいたとき、才人と同じプレッシャーがルイズの心にものしかかってきた。
 けれども、押しつぶされてしまうわけにはいかない。背負っている荷物は、誇りや期待だけではない、文字通りの
『全て』なのである。負ければその先はなく、やり直しも道の切り替えも許されない。子供のころに魔法ができなくて
逃げ出していたようにするわけにはいかない。
 ルイズは、今の才人に自分がかけるべき言葉はなんなのかを必死で考えた。ここで黙っていて、どうして
パートナーを名乗る資格があるだろうか。才人を愛しく思う気持ちが、才人の心の根幹をなす言葉をルイズに思い出させた。
 
「才人、しっかりしなさいよ! あなたが勉強してるとき、よくつぶやいている言葉があるでしょう?
ひとつ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと。
ひとつ、天気のいい日にふとんを干すこと。
ひとつ、道を歩くときは車に気をつけること。
ひとつ、腹ペコのまま学校に行かぬこと。
ひとつ!」
 
 ルイズはそこで言葉を切った。彼女が暗唱したのは、ウルトラ5つの誓い。ウルトラマンジャックが地球に残していった
言葉で、GUYS JAPANでも未熟な隊員たちの支えとして語られ続けてきたと聞いている。そのひとつひとつは、
なんでもない日常の心得を教えたものだが、それぞれに人間として正しく生きるための願いが込められている。
 そして最後のひとつ。才人は大きく息を吸って吐き、息を整えると目の光を取り戻して答えた。
「ひとつ、他人の力を頼りにしないこと!」
「やっと思い出したわね。まったく、日ごろ口にしてることもろくに思い出せないなんて記憶力悪いんだから。
そんなので試験なんか受けても落ちてたんじゃない? よかったわね、延期になって」
「ちぇっ、相変わらず人をバカよばわりしてくれて」
「犬扱いに比べたら進歩したと思いなさいよ。ぜいたく言えるような人間の出来だと思ってるの?」
「悔しいが、ごもっとも」
 嫌味を飛ばすルイズに、才人は苦笑で答えるしかなかった。頭のよさでも勤勉さでも、ルイズと自分は比べようもない。
何度かルイズの授業には立ち会ったが、すぐに居眠りする自分と違って彼女はいつでも真面目に受けていた。
考えてみたらあの母と姉に育てられたのだ、『怠惰』という言葉はルイズの辞書にはないだろう。もしもルイズが
日本の高校に通っていたとしたら、成績では天地の差をつけられたことは火を見るより明らかだ。
 けれど、昔と違って今ではそうしたきつい言葉にも愛情がこもっている。最後の誓いをあえてルイズが言わなかったのは、
この言葉は人から忠告されるよりも、自分で思い出して内面から変えていくべきものだからだ。
15ウルトラ5番目の使い魔 56話 (9/14) ◆213pT8BiCc :2011/08/21(日) 22:58:59.50 ID:g+M5bYbu
「リュウ隊長たちは、必ずもう一度ゲートを開くはずだ。そのときまで、なにがなんでもヤプールを食い止めないとな」
「そうよ。やるやらないじゃなくて、もうやるしかないんだから。けど、他人に頼らなくてもわたしには頼ってもいいのよ。
わたしとあなたは、も、た……他人じゃないんだから」
 最後の部分を顔を腫らして言うルイズに、才人は気づかないふりをして、やるべきことを確認するようにつぶやいた。
「急いでトリステインに帰らないとな」
「ええ、もう人間同士で争っている場合じゃない。ガリアは無理でも、国同士がいがみ合いをやめるようにならないと、
とてもエルフでも負けたヤプールには対抗できない。そのためには、姫さまになんとしても会わないと」
 巨大な悪に対抗するには、いくら強い志を持っていても個々の人間がバラバラでは意味がない。ヤプールはいずれ、
かつてのUキラーザウルスのような、ウルトラマンの力をも圧倒的に超える超獣を生み出してくるだろう。それに
太刀打ちするためには、ヤプールの力の源である絶望を塗り替えるような希望を人々が生み出さなくてはならない。
 トリステインに一日でも早く帰る。その単純だが、明確な目標を得たことが二人の不安を薄めた。明日には
必ず日は昇る。ようやくやってきた睡魔に身を任せて、二人はベッドの中に体をゆだねた。
 
 
 しかし、希望を見つけようとする世界の中で、邪悪な陰謀はその根を広げつつある。
 再びガリア首都リュティス。グラン・トロワの一室において、ジョゼフは舞い戻ってきたジュリオを拍手で歓待していた。
「いや、見事見事。余以外にもあのようなことができる者がいようとはな。月に穴が開き、シャルロットを吸い込んで
しまうとは余の浅い想像を超えていた。まさに奇跡! すばらしい」
「お褒めに預かり、光栄に存じます。それよりも、これで我々のことを信用していただけたでしょうか?」
「ふははは、信用か。あのような奇跡を見せられては、余も忠実なる神の僕になるしかないではないか」
 しかし笑いながらジョゼフは、ただし信頼はしていないがな、と内心で冷たい目でジュリオを見ていた。こいつは
どうせ、最後にはその奇跡の力で背信者である自分を始末しようとするだろう。なら、どちらが可能な限り相手を
利用しつくし、絶妙のタイミングで裏切るか……なかなか面白いゲームだと、ジョゼフは久しぶりに心地いい高揚感を
感じ始めていた。
「ともかく、疑って悪かったなチェザーレ殿。だがしかし、せっかく自由になりかけたシャルロットを再び母親から引き離して
やるとは、そなたも人が悪い。仲間の手を必死に握ろうとするシャルロットの顔を見たときは、余もぞくぞくしたのだぞ。
ところで、シャルロットは死んだのかな?」
 自らの姪が消滅してしまったというのに、まるでそれとは逆の表情でジョゼフは尋ねた。
「さあ、不安定な時空の歪みに吸い込まれた以上、行き先は見当もつきませぬ。生き物のいない不毛の荒野に
飛ばされるか、空気すらない真空の宇宙に放り出されるか。いずれにしても生きている可能性は低いかと。しかし、
仮に生き残ることのできる世界にたどりつこうと、この世界に戻る方法はありません。永遠に、どこかの時空をさまよい続けるでしょう」
「ふっ、むしろ一思いに死なせてやったほうが幸せな仕打ちだな。しかしそこまでしても、余の心が痛むことはなかったな。
まったくいつになったら余は、昔のような心を取り戻せるのだろうか」
 一瞬悲しげな表情を見せたように見えたのは、この世界への深い絶望か、それともジュリオの錯覚か。自らは望まず、
天の気まぐれで与えられる才能の違いだけで運命を狂わされた兄弟の悲哀は、他人のジュリオには推し量りようもない。
 ジュリオはそれは残念でしたねと事務的に答え、続いても歌うように澄んではいるが人間味のない声で言った。
「シャルロット様の使い魔とお母上、ご友人は我々が捕らえてあります。お会いになりますか?」
「いいや、らちもあるまい。だがゲームの駒としてはまだ使い道もあるかもしれないから、幽閉だけはしておけ。
これからの対戦相手には、シャルロットの友人たちも多くなるだろうからな」
「では、そのように」
 再びうやうやしくジュリオは頭を垂れた。そうしてジョゼフは、もうタバサのことなどは忘れたように楽しげな笑みを浮かべた。
「さて、それではこれからはじめるゲームの設定でも決めていくか。そなたらと余の手駒を合わせれば、世にもおもしろい
遊びをハルケギニアで繰り広げられよう。いや、そなたらのものはあくまで『奇跡』であったな。あの黒い怪物も、教皇陛下の
与えたもうた奇跡によって生み出されたものなのか?」
「正確には少し違いますが、まあ奇跡の産物と思っていただけてけっこうです。人間の力によって起こしえぬ出来事を、
奇跡と総称するのでしたらば」
「まあ深く追求するのはやめておこう。さて、ジュリオ・チェザーレ殿、さっそくで済まないが余は貴公らのどんな期待に
応えればいいのかな? 虚無に関することはうけたまわるが、教皇どのは余にさらなることを求めていると思うのだ。
おっと、これは自意識過剰だったかな?」
「いいえ、ご慧眼のとおりです。我々は陛下に最高のゲームの舞台を提供しようとするにあたり、プレイヤーに
退屈な思いをさせようとは思っておりませぬ。ですがとりあえずは、我々は陛下に力をお見せしましたが
我々のプレイヤーとしての力量はまだお見せしておりませぬ。陛下を失望させぬためにも、まずは我々が
軽くデモンストレーションを起こしましょう」
「ほう、それはまことに念のいったことだな」
「陛下はスリルを楽しむタイプでありましょうが、我々には聖地という確固たる目標がありますため、慎重に
駒を進めるのが基本です。ただ、ゲームは様々な個性のプレイヤーがいたほうがおもしろいでしょう。それにあたって、
ひとつ陛下からお譲りいただきたいものがございます」
「ほう……?」
 ジョゼフはジュリオの申し出に、興味深そうに目を細めた。そして、ジュリオがジョゼフから譲り受けたいというものを
聞くと、惜しげもなく提供すると答えた。
「あんなものでよければ持っていくがいい。しかし、もっと破壊力のあるおもちゃはあるのに、そんなものでいいのか?」
「ご冗談を、あなた様はこれがすでにどういうものなのか、使ってご存知のはずです」
「ふっ、確かに実験はしたが、中途半端な効果で兵器としては欠陥品だ。肉体強化こそできるが、理性を失って
しかもすぐに絶命してしまうのではものの役に立たん。量だけはあるが、頑強な鉄の筒に包まれていて
取り出すのも面倒だしな」
「兵器としては欠陥品でも、使いようによってはおもしろい結果を生みましょう。ナイフが人を刺し殺すだけでなく、
りんごの皮をむくこともできるように」
「なるほど、しかし思考が単純な余には見当もつかんな。よろしければ、ご教授願えないものかな」
 そう言いながら、ジョゼフはジュリオの企みを半分は看破していた。確かにこれをそういう使い方をすれば、
一国を滅ぼすことも可能だろう。だが、それではあまりにも簡単すぎてつまらないのでやらなかったのだ。
だがそれをこいつらは、余を楽しませることも含めてできるというのか?
「それはお楽しみということに。手始めに、我らのゲームの相手となる方々に宣戦布告をいたしてきます」
「では、お手並みを拝見させてもらおうか。楽しい見世物を期待しているぞ」
「ご期待に添えるよう。そして我らの悲願の地への第一歩となるよう、微力を尽くしてまいります」
 ジュリオは最後に、絵画の天使も見惚れるような美しい会釈をして立ち去っていった。
 謁見の間に一人になったジョゼフはしばし、彼が立ち去っていった扉を見つめていたが、やがて視線を天井の
シャンデリアに移した。奴らが、あの悪魔の薬を手に入れたことでどういう行動に出るか、非常に興味深い。
ジョゼフは、チャリジャのやつは拾い物だと言っていたそれのことを思い出していた。奴は確か、自分の世界に近い
亜空間をさまよっていたところを発見し、内容物が自分の商売に役立つかもしれないと思ったから回収したと言っていた。
なんでも、元は地球とかいうところで作られたものらしく、これが入っていた大きな筒のようなものはロケットというらしいが、
聞いてもわからなかったのでそのへんにしておいた。
 肝心の中身のほうも、チャリジャが薬品として生成したものがほんのわずか。それを試しにリッシュモンに反乱を
起こさせようとしたときに道具として与えたが、結局決定的に状況を動かす役には立たなかった。チャリジャのほうも、
信用性に欠けるので商品化はあきらめたらしい。名前は確か……そろそろ夜も遅いせいか、眠くなってきて思い出せない。
 ジョゼフは寝室へ向かい、控えていたシェフィールドに下がるように命じると、がっちりした巨体をシーツの上に
ゆだねた。目をつぶる前に、閉めるのを忘れたカーテンから沈みゆく月が見えた。
「シャルロット……いまごろ、お前はどんな空の下にいるのだろうかな?」
 ぽつりと、思い出したようにつぶやいたジョゼフは、そのまま心地よさそうに高いびきをかき始めた。シャルロットの
死に様を見れないのは残念だが、生きていたとしてもどこか異郷の地で老いさらばえて、故郷を思いながら絶望して
野垂れ死ぬのもいいだろう。いくらお前でも、異世界から戻ってくることは不可能だろうからな。
 
 
 ガリアとロマリアが水面下で手を結び、世界はさらに混沌への道を歩みつつある。
 しかし、ジョゼフやジュリオの思惑とは異なり、タバサはまだ生きていた。
 
 
「ここは、いったいどこなの……?」
 目が覚めたとき、タバサがいたのは不毛の惑星でも真空の宇宙でもなかった。そこはハルケギニアと同様に、
人間が生きていくのに必要なだけの空気や重力を持った星だった。水もあった、緑もあった、そして人もいて
街もあった。しかし……
「あの……」
「? ? ! ?」
「……」
 街をゆく人に話しかけてみても、言葉が通じない。道に落ちていた新聞らしい紙を拾ってみても、文字が
わからない。見たこともない、大きくて四角い石の塔のような建物が見渡す限りに続いており、道幅も
トリスタニアの何倍も広い。驚いたことに、道路はすべて白や黒の石のようなもので固められていて、土や石畳の
ハルケギニアの道よりはるかに滑らかだった。そこをいろんな色や形をした鉄の車が何百、何千両も人を
乗せて行き来している。
こんな大きくて人の大勢いる街は、ハルケギニアで一番大きな国であるガリアにもない。
 
 いったい……どれほど遠いところまで飛ばされてしまったんだろう……?
 
 タバサは、恐らく公園と思える噴水のある広場でベンチに腰をかけてとほうに暮れた。
 見慣れぬ街、見慣れぬ格好の人々。少し考えただけでも、自分がハルケギニアから絶望的なまでに
遠い国に送り込まれてしまったんだということがわかる。これからどこへ行き、どうすれば帰れるかまったく
見当もつかない。
 歩いている人間にしても、ハルケギニアではほとんど見かけない黒髪の人ばかりだ。タバサは、彼らの容姿が
才人と酷似していることから、彼の国に来てしまったのかと思ったが、だからといってどうなるものでもなかった。
 しかも、唯一の頼みであった魔法の杖も、こちらの世界で、公園の芝生の上で気がついたときには
どこかに消えてなくなってしまっていた。杖が無くては、比類なき戦士のタバサも非力な少女に変わりない。
 幸い、タバサの身につけていた学生服はこちらの世界でもそう不自然なものではないようで、道行く人も
特に気に留めた様子もなく歩き去り、怪しまれることだけはなかった。とはいえ、頼るべきものもなく、見知らぬ
異国の地に一人放り出されたタバサは孤独で、あまりにも無力だった。
 やがて不安を紛らわせるためにタバサは歩きだした。目的地も無く、人の波に乗ってさまよった。
 ここでは人と車の通る道がはっきり分かれているらしく、そこを横切るときは白い縞模様の書かれているところを
通らないとだめらしい。
 何か大きな建物のある場所で、大勢の人が四角くて大きな車に乗ったり降りたりしているところから、ここは
乗り合い馬車の駅のようなところなのだろうとあたりをつけた。異世界とはいえ、人間の生活するところでは
似たようなルールが適用されていくものらしい。
 街はとても大きく広大で、タバサの足で行けども行けども終わりはなかった。
「お腹、すいたな」
 なにかの食品を売っている店からの甘い香りがタバサの鼻腔をくすぐる。しかし注文の仕方はわからないし、金はない。
第一間違っても盗みなどはしたくない。
 
 空腹にふらつき始めながら、それでもタバサは歩き続けた。そうして、太陽が傾き始め、夕方に入り始めるころ、
タバサの目の前にひときわ大きな建物が現れた。
「ここは……学校?」
 確信があったわけではない。ただ、十八前後と見える若い男女が大勢行き来していて、広い庭と立派な建物が、
なんとなく母校の魔法学院の雰囲気を思い起こさせたのだ。
 どうやら時間帯から講義はすでに終わって放課後らしく、和やかな雰囲気で場は包まれている。タバサは、どうせ
ゆくところもないのだからと、校門から構内に足を踏み入れた。中では、まだ居残っている生徒がタバサの青い髪に
目をとめて何人も振り返ってきた。こっちでも若者が好奇心旺盛なのは変わらないようだが、タバサには話している
意味はわからない。
 構内を適当にさまよううちに、キャンパスらしい場所に出た。そこでは、男女がおしゃべりしていたり、学食で
買ったのかもしれない菓子をつまんだりしていた。
 タバサはそこもなんとなく通り過ぎるつもりだったが、ベンチに座っている一人の青年に目が留まった。
「あれ、サイトの持ってたのに似てる」
 その青年がひざの上に乗せて、なにか指先で操作しているような機械にタバサは見覚えがあった。確か、
才人が故郷から持ってきたもので、ノートパソコンとかいっていたような気がする。タバサは興味のままに、
その青年のそばに駆けて行って、ずいと覗き込んだ。
「わわっ! なんだ」
 タバサには意味はわからなかったが、彼はそう言って驚いていた。無理も無い話だが、覗き込んだタバサも
驚いていた。なにか、とてつもなく精巧な図形や文字が映し出されて、しかも動いている。パソコンを間近に
はじめて見るタバサは、それが以前見たガンクルセイダーのモニターと重なって見え、思わず見入っていた。
 そのとき、画面に飛行機を擬人化したようなキャラクターが現れて、青年に話しかけた。
「おや? 新しいお友達ですか」
「違うよ。この子が勝手に……ねえ君、どこのクラスの子? もしかして、留学生」
 青年はそうタバサに話しかけるが、当然タバサにはわからない。彼は言葉が通じないことを知り、さらに何ヶ国語を
使って話しかけたが、やはり通じるはずはなかった。けれど、熱心に話しかけてくる様子が人との交流に飢えていた
タバサの気を引き、タバサもなんとか応えようと身振り手振りをふる。
「困ったな。これでも通じないとなると、どこの国の人だろう?」
 彼はまさか異世界の人間だとは知らずに、本気で困ったようだった。それでもごまかして逃げ出そうとはせずに、
真摯に相手を続ける姿勢から、彼の人柄がわかるだろう。と、そこへ彼の友人と思われる数人の青年たちがやってきた。
「おーい、なんだここにいたのか」
「トオル」
「探したぜ。お前がいないと量子物理の研究レポートが完成しないんだからな」
「ごめん。僕も卒論のまとめがおしてて。すぐに行くから」
「頼むぜ。ん? その子は……ははあ、お前いまだにどこの女子にも手を出さないところから、そういう趣味だったのか」
「なっ! 違うよ、この子がいきなり僕のところに来たんだ。僕はけっしてそんな趣味はない」
 友人のたちの悪いジョークに、彼は怒ってみせた。もっとも、友人たちのほうもジョークの域を超えようとはせずに、
軽く謝罪すると彼に事情を聞き、誰かの心当たりはないと応えた。
「迷子かな。教授たちに知らせるか?」
「警察のほうがよくないか? にしても、青い髪なんて珍しいな。染めてるわけでもなさそうだし、どこの国の子だろう」
「言葉も通じないって? それじゃ連れてくのも難しいな」
 彼の友人たちは、それぞれ話し合って考えたけれども、彼の窮地を救う方法は思いつかなかった。そして最終的に。
「よし、じゃあとりあえずお前が引き取って帰り先を探してやれ」
「ええ! なんで僕が」
「だって、こういう不可思議なことを担当するのが仕事だろ? 頼むぞ、我夢」
 
 この出会いが、その後の未来にどんな影響をもたらすのか、想定できている者は全宇宙にただ一人としていない。
 
 
 続く
今週は以上です。>13の人支援感謝します。
ヤプール、思わぬあがきを見せました。しかし、このまま伏線も回収しないままにハルケギニアでウルトラ兄弟無双はなしにしたかったので、
ウルトラ兄弟のハルケギニアデビューはいましばらくお待ちください。
次回からは、そろそろ伏線の回収を主にしていこうと思います。まだまだ完結には話数が必要と思いますが、期待してくださる方々を
裏切らないようなものを作ろうと努力していく所存ですので、今後もよろしくお願いします。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 23:34:26.21 ID:BXdGHrmU
ウルトラの人、乙です。

ヤプールめ、相変わらず血も涙もない悪魔だと思ったら、まさか味方にまで手をかけるとは…。

しかし、まさかタバサが『ガイア』の世界に飛ばされてしまったとはね…

しかも、我夢が久しぶりに再登場!! ウルトラマンガイアにまた会えるなんて、作者さんGJです!!
23名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 23:40:12.02 ID:lOj2XRA7
ここで我夢とは。

まあ、歴代ウルトラの中でも、人間体では一番優秀な頭脳の持ち主でしょうしね。

乙でした
24名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 01:34:41.43 ID:27UPElCM
ウルトラ乙
再びガイアか、そうなるとアグルの再会もあるのかな。
そこは期待ということで。

しかし、ヴィっトーリオとジュリオに取り付いてるものは
相当性質が悪そうだ。
某ネット紳士や、携帯やパソコンの苦手なあの人じゃないのだろうけど、
そうだったらヤプールどころじゃないな。
25名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 13:49:58.65 ID:DoK12yyD
たちが悪いと言えどメガテンお馴染みの4文字ほどじゃあるまい。

ところで、ゾイドは召喚的にどういう扱いなんだろう。
場違いな工芸品扱いで飛ばされた挙げ句、「ハルケ在住の生き物」として
メイジに召喚されたりするんだろうか?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 18:21:08.29 ID:u+Dk+8Tv
四文字?ああ 御立派様 か
27名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 18:21:48.52 ID:5U/wSdHK
四文字? ああ、ヤハウェか
28名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 19:02:52.69 ID:QNvPDlxx
四文字?…ヒーホー?
29名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 19:12:54.75 ID:XGyyH+Tc
確かに合体事故でスライムでたらぶちギレるわ
30名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 20:20:22.70 ID:YZwT9xTC
四文字? ピクシーか? 特に真のラスボスのお供のメギドラオンはやばいが
31名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 20:59:57.46 ID:ZHbk/JWV
初投下
『ドラゴンクエストモンスターズ+』から、スライムの『スラお』召喚

問題がなければ、5分後ぐらいから投下させてください。
32ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/22(月) 21:04:57.58 ID:ZHbk/JWV
タイジュの国――

青々と茂る巨木の枝の先に一匹のスライムがいた。
彼の名前はスラお。
かつて最強のモンスターマスター、テリーと共に星降りの大会を制し、クリオと共に様々な冒険を繰り広げてきた魔物である。

「暇だ・・・」
スラおはゆっくりと空を流れる雲を見上げながらそう嘆いた。
自分のマスターであるクリオが先日、自分の世界へと帰って行ってしまったからだ。
いつタイジュの国に戻ってくるかも分からないクリオが居なければ、冒険に出ることは出来ない。
生殺し状態である。
「クリオなんて置いてオイラ達だけで冒険に行っちまおうかな」
スラおには二匹の仲間がいる。
ゴールデンスライムのゴレムとエンゼルスライムのエルゼだ。
もちろん、この二匹の魔物の心境はスラおと同じで、今か今かとクリオの帰りを待ち望んでいる。
そんなことを考えながらスラおは牧場に戻ろうとした。

「何だこれ?旅の扉か?」
突如としてスラおの前に現れたのは、光る鏡のような物体。

この世界には旅の扉という、別の世界へ繋がる扉が存在する。
スラおは真っ先にその旅の扉を連想した。
しかし、スラおの知っている形とは違う。
「こいつもちゃんと別の世界に繋がってんのか?」
ほんの僅かな好奇心だった。
その不可思議な旅の扉に入るつもりはなく、ただそっと覗いてみただけ・・・

「うぉぉ!?す、吸い込まれる!」
その瞬間、スラおは光る鏡の中へと姿を消した。

33ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/22(月) 21:07:00.37 ID:ZHbk/JWV
――――――――――――――――――――――――――


目を開けるとそこにはタイジュの国と変わらない青空が広がっていた。
今日は絶好の冒険日和だ、などとのんきに考えていたがどうも様子がおかしい。

「何・・・これ?気持ち悪い・・・・」
自分を覗きこんでいる桃色の髪の少女は毒を吐いた。

「なッ・・・そいつはもしかしてオイラのことを言ってんのか?」
突然喋り出した青いゲル状の物体に少女を含め周りの人間たちは驚く。
「しゃ、喋れるの!?」
「あたりめぇだろ!」
無駄に声を張り上げる少女に対して、スラおも負けじと声を張り上げ言い返した。

「あなた・・・一体何者?」
少女は見たこともない喋るゲルに聞いた。
自分で呼び出しておいてあんまりである。
「オイラはスラお。純正のスライムだ。お前こそ誰なんだよ!」
スラおの問いかけに少女は軽く息を吸い込んで答える。
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴族よ」
相手が気持ちの悪いゲル状の生き物であっても、何度も失敗したサモン・サーヴァントが成功したことに浮かれ、ついフルネームを答えてしまう。
儀式を完了させるのに、またフルネームを言わなければならないのに。全くの二度手間である。

「なげぇ名前だな。ルイズでいいな」
「な、あんた貴族に対する礼儀がなってないわね!」
スラおのフランクな態度にルイズは怒る。
「そ、そんなもんどうだって良いじゃねぇかよ・・・・」
そんなルイズの態度に対して、今まで敬意という敬意をはらったことのないスラおは素直に戸惑う。

「流石ゼロのルイズだぜ!とても強い使い魔には見えないな!」
「俺、前に錬金失敗してあんなの作っちゃったことあるぜ」
ルイズとスラおがグダグダしていると周りを取り囲む人間からルイズを蔑む声があがる。
それを聞いてルイズは唇をかみしめる。
おそらくここで使い魔召喚の担当であるミスタ・コルベールに召喚のやり直しを頼み込んでも無駄だろう。
断られるだけの理由はそろっている。
それをルイズは悟った。だからこそ何も言えない。

しかし、野次馬の声に黙ってはいられないスライムが一匹。
34ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/22(月) 21:08:00.43 ID:ZHbk/JWV
「おい、お前ら・・・そいつはオイラを馬鹿にしてるってことか?」
スラおは凄む。しかしそれでも生徒たちの馬鹿にした笑いは収まらない。
「オイラはマスターなしでこの世界に来たんだ。それはもう野生のモンスターみてぇなもんだ」
スラおは戦闘態勢に入る。
体から湧き出る魔力。その小さくシンプルな姿からは想像もできないほどの力。
「だったら人間に気を使う必要もねぇよなぁ?」
流石の生徒達もその魔力に気付く。
その力を真っ先に察知したのはタバサであった。次にキュルケ。
「ベギラマァ!!」
スラおが呪文を唱え、それと同時に閃光が走る。
生徒達はその熱に悶え苦しむ・・・はずだった。

ベギラマはコルベールの火の魔法により相殺された。
「ミス・ヴァリエール!契約を早く!」
コントラクト・サーヴァントさえ終えてしまえば正式にルイズの使い魔となり大人しくなると考えたのか、コルベールは叫ぶ。
ルイズは一瞬躊躇したものの、このスラおとかいう魔物が魔法を使えることを知り、その自信は少し回復しつつあった。
それ故にルイズのとる行動は一つ。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そしてルイズはキスをする。
青色の塊には幸い顔が付いている。口の場所もすぐに分かった。

突然顔の位置まで持ち上げられ、キスをされたスラおは目を丸くした。
たいあたりでぶっ飛ばそうとしたが、体中が痛みそれができない。
スラおの背中には見たこともない文字が浮かぶ。
しかし、文字はまるで水で溶けたインクのように滲み、消えていった。

「いててててて!!!」
強い痛みのせいか、スラおは気絶した。
「今のルーンは・・・」
コルベールは一瞬だけ浮かび上がったルーンに対して過剰な反応を見せる。

「全く、ルイズったらおかしな使い魔を召喚して・・・でも、なんだか面白くなりそうね」
キュルケが親友であるタバサにそう言うと、タバサは何も言わずにうなずいた。
35ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/22(月) 21:08:56.82 ID:ZHbk/JWV
短いですが以上です
36名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 21:12:43.79 ID:30XI0j9M
投下乙です
今後の展開を楽しみにしてる
37名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/22(月) 22:11:05.55 ID:nJcG1IFD
乙!

ドラクエ系はやっぱわくわくするなあ。
38 忍法帖【Lv=33,xxxPT】 ゼロのペルソナ:2011/08/22(月) 23:01:55.10 ID:Sqceyiq+
「もし出来なかったら黄金バットからダレオ(一話仕様)でも呼ぶ短編でも書こうかしら」
とか思ってましたが、なんとか書けたので投下します。

第17章 塔
39ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:04:48.73 ID:Sqceyiq+
塔 意味…価値観の崩壊・緊迫

ガリア首都リュティスのヴェルサルテイル宮殿の一室に二人の男がいた。
一人はこの宮殿の主ガリア王ジョゼフ。
もう一人はすらりとした体に長い金髪と耳を持つエルフ、ビダーシャルだった。現在、ジョゼフの部下となっている。
彼は任務の失敗を自分の主である男に報告しに来ていた。
彼がジョゼフの下についたのはガリア―エルフ間の密約のためであり決して彼が望んだわけではない。
だが望んだものでなくても、目的が果たされるまでのほんの一時期の関係であれ、部下となったからには失敗の責は受けなければならない。
だからビダーシャルはジョゼフに任務の失敗を語っている。
彼の姪とその母を守りきれなかったこと。
襲撃者の中にジョゼフの言った水のルビーの保持者がいるかどうか知る前に傷を負ってアーハンブラ城から撤退したこと。
ビダーシャルが苦渋の顔で語っている間、ジョゼフの顔には激しい感情は浮かんでおらずそれは語り終えた後も同じであった。
ジョゼフはビダーシャルが喋り終えたと知ってから口を開いた。
「なら次の作戦に移るとするか」
ビダーシャルは眉をひそめた。そして不思議そうに尋ねる。
「任務に失敗ことについて言うことはないのか?」
ジョゼフはめんどくさそうに答えた。
「余が命令して、お前は失敗した。それだけではないか。お前だって罰して欲しいわけでもあるまい」
ビダーシャルは不審げにジョゼフを見た。全く腹の読めない男であった。
世間では無能王と呼ばれているらしいが、決して無能ではない。
やはり、シャイターンの力を持つ者は普通ではないのであろうか。
「次の作戦とは……」
「そうだ、戦争だ」
言っている内容に反してジョゼフの姿にまったくの気負いはない。むしろその姿は気だるげでさえあった。
40ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:08:44.33 ID:Sqceyiq+
陽介たちはアーハンブラ城からタバサを救出した後、数日馬車に揺られトリステインではなくゲルマニアのキュルケの生家、ツェルプストー家の領地を訪れていた。
彼らはツェルプストー領地内にある深く濃い黒い森の中に立つ城の中で休息をとっている。
一行がトリステインではなくゲルマニアに逃げこんだのはアーハンブラ城が地理的にガリアの中でもっともトリステインに遠い位置にあったからという理由もあったが、
それだけでなくタバサの母――オルレアン公夫人の処遇が問題であったからだ。彼女は謀殺された現王の弟の妻であり政治的な価値が大きすぎるのだ。
なので無断でトリステインに連れて行くことをはばかり、現在はゲルマニアで休息している間に手紙をトリステイン王家に送り判断をあおいでいる状況にある。
そしてゲルマニアのツェルプストー家をその休息の場所としたのはキュルケの強い勧めのためだ。
オルレアン公夫人の処遇についての手紙はトリステインでも指折りの名家ヴァリエール家の娘であるルイズが親しいアンリエッタに送った。
もちろん、出来る限りいい返事をもらうためであるが、その手紙の中にでさえ、オルレアン公夫人がどこにいるか書いてはいない。
トリステインに勝手につれて行くのが政治的にまずいのだから、当然ゲルマニアにいるのもまずいのだ。だからアンリエッタにさえ話せない。
話せば住居を貸してくれているキュルケに多大な迷惑がかかってしまう。
そしてオルレアン公を匿っているのはキュルケの独断であるため、ガリアの重要な貴人がゲルマニア国内にいることをゲルマニアの主である皇帝はもちろん、
現在彼らが宿を借りている城の主であるツェルプストー当主さえ知らない。
そのキュルケに多大な恩恵を預かっている二人は屋敷の中を歩き、みなが待っている部屋に向かっていた。
オルレアン公夫人がみなに感謝したいと話の場を設けることを求めたためだ。
「こんな悪趣味な館見たことないわね」
自分たちが世話になっている館に文句をつけているのはルイズだ。
廊下を歩きながら、彼女の目には奇怪に見えるこしらえを睨みつけるように見ている。
「オメエなあ、世話になってんだから、んな文句つけんなよ」
至極常識的な注意をしたのは彼女の横を歩く巽完二だ。
この彼女の使い魔は悪ぶっているわりに時々、常識人であることを示す。
「もちろん、わたしだって恩を感じてないわけじゃないわ。ただ、それとこれとは別よ。
 ヴァロン朝かと思ったら、途中でアルビオン式になってるってどういうことよ?意味がわからないわ」
「知るかよ……」
ゲンナリとして完二は言う。この世界の建物の様式など完二が知るはずもない。
ただ、彼女がちゃんと恩を感じているのを理解したので、再度注意することは思いとどまりルイズの不満は適当に聞き流すことにする。
41ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:11:36.97 ID:Sqceyiq+
ルイズがツェルプストーの館がどれほどハルケギニアの文化と伝統をないがしろにしたものか並び立て、完二が相槌も打たずに聞き流しているうちに約束の部屋についた。
扉を開けると今やって来た二人を除く全員が、白いクロスがしかれた長い机の席についている。
机は長方形で長い方の二辺に彼らは腰かけている。入り口から見て左の上座近くからオルレアン公夫人、その娘タバサ、そしてその使い魔陽介。
オルレアン公はクマのアムリタにより心を取り戻しており、目にはもはや狂気は浮かんでいない。
未だにやつれが残るものの生気を取り戻した娘、タバサと似た美しい女性であった。
右側は同様の並びでキュルケ、その使い魔クマが座っている。ルイズと完二はクマに続いて座った。
そこは食事の場所であったが机の上には何も置かれておらず部屋には給仕の一人もいない。
口火を切ったのはオルレアン公夫人だった。
「このたびはわたくしと娘を助けていただいてありがとうございます」
そういうと彼女は頭を下げた。感謝された側は思わず居住まいを正してしまう。
 彼女が心はすでに取り戻していたのだが、ちゃんと話すのはこれが始めてであった。
無論、心を取り戻してから娘のタバサとは馬車の中でさえ常に一緒にいたが、まだ全てを話しきるには時間が圧倒的に足りないであろう。
彼女は真摯な顔を斜め前の席に座るクマに向ける。いつもは丸みをおびたキグルミを着た、金髪碧眼の少年が治療してくれたことはすでに説明されている。
「その上、心を失ったわたくしを治してくださり、どのような言葉でならこの感謝の言葉を言い表すことができるのかわたくしは知りません」
「そ、そんなにかしこまらんでよいですと!どうしたらいいかわからんでクマっちゃうクマ」
オルレアン公夫人は恩人の愛嬌のある態度を見て微笑む。心を取り戻したその笑みは美しかった。
「ありがとうクマさん」
「いやーそれほどでもないクマよー」
クマは笑顔に魅了されながらくねくねと喜んだ。クマの奇態に全員が笑う。タバサも薄く微笑んだ。
笑いが収まるとオルレアン公夫人は語り始めた。
「かつてガリアが二分され内乱におちいる危機がありました」
その声には憂いの色があった。かつての罪を告白するかのようだ。
「わたくしはガリア王の手にかかることでその争いを回避しようとしました。これは自分たち一族のいさかいであって、それを国の争いにしてはいけないと思っての行動でした」
全員がオルレアン公夫人の話を真剣に聞いていた。タバサはじっとテーブルクロスを見ている。陽介はそっと小さな自分の主の肩に手を置いた。
オルレアン公夫人の告白は続く。
42ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:13:41.92 ID:Sqceyiq+
「ですがわたくしが正気を失っている後も貴族の間に不満は残り、シャルロットは苦難の中にいました」
その声に強い憂いの色が含まれる。
「わたくしのやったことは王族としての責務を、母親としての責務を捨てただけなのかもしれません……。
 娘の代わりになるなどと綺麗な言葉で飾り立てた覚悟で毒酒を飲み、
 それから娘にどんな過酷な処遇がもたらされるか知らず……いいえ、考えもせずに」
そこで彼女の言葉は終わり、重苦しい雰囲気が流れる。
その中、陽介が立ち上がり、タバサの後ろに立ち、彼女の母に力強く語りかけた。
「ならこれからはこいつのそばに居てやってください」
うつむいているタバサの両肩に手を置く。自分が彼女の味方であることを強く示すように
「俺には王族とかわかりません。いや、母親についてもよくわかんないかもしんないス。でもこいつが寂しがってたことは知っています」
陽介に力を貸してもらったかのようにタバサはゆっくりと顔を上げた。その顔は涙でぬれている。いつもの無表情ではない。ただただ母を求める娘の顔だ。見つめられた母は息を飲む。
見つめるだけのタバサを、伝えたいことがあるはずの自分の主の背中を、陽介は押す。
「言いたいことがあるならちゃんと言っとけ」
タバサは悲しみでにごった声を出した。いつもの無感動な声ではない、聞いた者がいやおうにでも感情がわかってしまうほど感情が発露されている。
「母さま……もうどこにも行かないで……」
タバサは声を絞り出したことで感情が抑えられなくなったのか、泣きながら母に抱きついた。感情を抑える理性の防壁が決壊したのは母も同様だ。
二人は涙を流しながら抱きしめあった。お互いの存在を確かめるように。今までの年月を埋めようとするように。
キュルケは瞳を涙で潤ませながら優しげに親友を見、陽介も感慨深そうにご主人さまを見ていた。
ルイズと完二は懸命に涙を堪えている一方で、クマは声を上げて泣いていた。
親子の長い長い抱擁が終わった後にキュルケは手をパンパンと叩いた。
「さあ、食事にしましょう。これから一緒にいるなら楽しい思い出も作らないといけないわよ。ほらクマもいつまでも泣いてないでメイド呼んできて」
ぼろぼろと泣いていたクマは鼻を啜りながら涙を抑えて部屋から出て行って話の間、遠ざけていた使用人たちを呼びに行った。
それからは楽しい食事の時間となった。
完二は出された今まで見たこともない料理を出来る限り食べようとフォークと口を盛んに動かし、クマは人の皿に乗った料理まで食べようとした。
ルイズはゲルマニアには食文化さえも品が感じられないといい、キュルケがそれに反論した。
陽介はオルレアン公夫人に話しかけられ戸惑いながらもタバサと一緒に話をした。
43ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:16:58.40 ID:Sqceyiq+
食事がお開きになった後、陽介はオルレアン公夫人とタバサの部屋に呼ばれた。
陽介は親子の間にわけ入るのは、と遠慮しようとしたがオルレアン公夫人の強い勧めで結局、招かれることにした。
タバサ親子と一つの机を囲んでいるが、少し硬い。やはり親子二人の部屋に招かれるのは陽介も緊張した。
「あなたのような人が娘の使い魔で本当によかったわ」
「い、いや恐縮っす」
朗らかに笑うタバサの母に陽介は本当に恐縮しきっていた。
「もしいたら、わたくしの息子くらいの年齢かしら」
「17歳っスからちょっとデカいですよ」
陽介はおどけてみせる。
実際にタバサの母が若く見えるほど美しく、そして場を和ませるための冗談の意味も含めての発言だったが、
そのことから陽介にとって衝撃の事実が判明する。
「あら、それならシャルロットと二つ違いじゃない」
彼はその言葉が理解できなかったが、ゆっくりと理解してから驚きの声を上げた。
「ええええ!!ちょっ、おま、タバサいくつだよ!?」
単純な算数をして答えを出しておきながら陽介は答えを尋ねる。
「15」
陽介より年上で19歳ではなかったのでそれは陽介が計算で出した答えと同じであった。が、それでも驚きは弱まらない。
「おっま、てっきり12、13だと……」
使い魔がそういうと、その主はじっとその顔を見てきた。どこか非難めいたものがあるように感じるのは気のせいではないだろう。
娘の不機嫌とは母は反対にころころと笑った。
「あらあら若く見られてうらやましい限りよ。それに年齢が近いならあなた本当にわたくしの息子にならない?」
「え、それってどういう意味っスか?」
陽介はタバサの母の言いたいことがわからずに不思議そうに尋ねた。
「本当と言っても義理ということよ」
「母さま」
タバサは非難めいた顔を使い魔から母へと向けた。その頬に少しだけ朱がさしていた。
二人のやり取りを見ながら遅まきながらオルレアン公の言いたいことを理解してまたも驚き、それからニヤっと笑って見せる。
「いやあ、タバサはかわいいですけど、できればあと2年は待ちたいですね」
「あらあらシャルロットふられちゃったわね」
オルレアン公夫人は楽しげに笑う。
タバサは不満げに二人の顔を見てから「もう知らない」というように顔を背けてすねてしまった。
母と陽介は顔を見合わせ笑い、それからタバサに謝り始めた。
44ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:26:03.46 ID:Sqceyiq+
それはまぎれもなく家族と過ごす何気ない日常であり、タバサが強く望んでいたものであった。
望むことすらできないと諦めてしまいそうになったこともあった。
しかし長い逆境に耐え、自分の隣に立つ者を手に入れた彼女はそこにたどり着いた。
誰もがこの日のような楽しい日々が長くはなくとも続くものだと思っていた。
トリステインへルイズが出した亡命の願いは受け入れられるにしても退けられるにしても時間がかかるものと推測していた。
だが翌日トリステインから早急に手紙が返ってきた。
こちらから送るときも早くに返答がもらえるようにと急いで送ったがそれでもこれは異常なほどに早かった。
そして手紙の内容はそれ以上に驚くべきものだった。
オルレアン公の遺児シャルロットをガリアの新王として迎え入れ、そしてその母オルレアン公夫人も国賓として受けいれるとのことであった。
それは現ガリア政府へ対立姿勢を示すための象徴を欲したからであった。
そうロマリアを滅ぼすという蛮行を行ったガリア王ジョゼフに対抗する王が必要だったのだ。

6000年の歳月をかけて積み上げられた塔は崩壊を始める。
45ゼロのペルソナ 第17章 塔:2011/08/22(月) 23:35:11.54 ID:Sqceyiq+
投下終了。

ダレオ召喚とかは冗談にしても(食い物関係でギーシュと決闘したり、フーケと戦うルイズをチョコ食いながら応援したりは見てみたいものの)
自分って本当書くの男ばっか。

小ネタのゼロマティ高校で、神山(+林田)
ペルソナで男ども三人
トランスフォーマーでたしか6人
女ばっかの東方からでさえ、霖之助。

しかも男ばっか呼んでる恋愛要素限りなく薄いという。カプ厨の名折れですね。


それはともかく次回は節制。次回でタバサのターンはラスト?
46名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 00:13:22.57 ID:QOaFyeji
乙だぜ乙だぜ乙して死ぬぜえ
47名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 08:50:23.44 ID:8fnc+0Rr
幕張を読んで寝たらルイズに喚ばれて好き放題してルイズやギーシュ達を襲う奈良と
テファと二人っきりになろうとする度に山賊に襲われてキレる塩田の夢を見た…
48名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 12:49:52.16 ID:iUSF0UMP
最初の決闘で奈良づくしなんぞ
見せられた日には、トラウマじゃすまんだろ
49ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:21:42.39 ID:ElrJ9dmK
二話目が書けたので、問題なければ5分後ぐらいに投下させてください。
50ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:26:51.03 ID:ElrJ9dmK
スラおは後悔した。
早く冒険に出かけたいと強く願っていた過去の自分を。
異世界にたった一匹、マスターなし。
それも目の前の少女は自分が新しいマスターだと言う。
「だから何度も言ってるけど、オイラにはもうクリオっていうマスターがいるんだよ!」
スラおはなんとかルイズに状況を分かってもらおうと熱弁する。
ルイズもまた今の状況を理解させるためにスラおに説明する。
「それでもあんたは私と契約を交わしたの。背中にルーンが浮かび上がったでしょ?それが証拠よ」
「でもそいつは消えちまったぜ?」
「あ、あんたがぶにぶにしてるからでしょ!私だって本当はあんたみたいな弱そうな使い魔嫌なんだから!」
「な、なんだとぉ!?」

場所はトリステイン魔法学院、ルイズの部屋。
夜も更け、二つの月が空を照らす。
スラおは自分が別の世界から来た魔物であること、自分の仲間のこと、マスターのことを説明した。
それでもルイズがスラおを使い魔にする決意は固く、逃がしてくれそうにない。
そしてルイズは自分達の世界のこと、貴族と平民の違いやメイジについてを詳しく説明した。

「全く信じられねぇな。オイラ以外にスライムが存在してないなんて・・・」
「どこかにいるかもしれないけど・・・少なくとも私は見たことがないわ」
「旅の扉もねぇんだろ?」
「ないわ。そもそも別の世界があるだなんて信じられない」
「ん〜〜、しかたねぇ。タイジュの国に戻るまではその使い魔ってやつになってやるよ」
「使い魔にしてください。ご主人様って言いなさい」
今まで散々クリオに文句を言ってきたが、ルイズよりは何倍も良いマスターだ。
元の世界に帰ったらクリオに優しくしてやろうとスラおは決めた。
しかし、肝心の元の世界に帰る方法が分からない。
「その代わりオイラが戻る方法を探してもらうぜ」
「まぁ、適当に調べとくわ。あんたが居なくなればもっと強い使い魔を召喚できるしね」
すごく不安だが、もしかしたらクリオ達がこの世界への旅の扉を見つけて助けに来てくれる可能性もある。
結局スラおは成り行きに身を任せることにした。
51ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:27:42.40 ID:ElrJ9dmK
「あんたもちゃんと使い魔としての仕事をこなすのよ」
「使い魔の仕事?」
ルイズが言うには使い魔にはいくつかの仕事があり、いくつかの能力が与えられるらしい。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「なんか見えるか?」
「全然見えない。これは無理みたいね・・・」
スラおは話を聞きながらルイズとモンスターマスターとの違いを少しずつだが理解する。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね」
「食い物なら見つけられるぜ」
「ま、まぁ、あんたにはこの世界の知識がないからこれも無理よね・・・」
スラおにとっては目となり耳となるのも、アイテムを見つけてくるのもモンスターマスターの仕事である。
それらをモンスターに押しつけてしまうとマスターの存在意義はなくなってしまう。
スラおは本当にルイズをマスターとして良いのか、今更ながら疑問に思った。
「あんた魔法が使えるんでしょ?だったら唯一出来る仕事があるわ。そしてこれが一番重要。」
それを聞いてスラおも何をやらされるのかピンときた。
「使い魔は、主人を守る存在であるのよ!私を襲う敵をバッタバッタとなぎ倒すの。まぁ、あんまり強そうじゃないけど・・・」
「そいつを待ってたんだ!」
冒険はすなわち強敵達と戦って勝ち進むことでもある。
スラおはそれを心待ちにしていたのだ。
「でも最後の一言は余計だっつの!オイラめちゃくちゃ強いんだからな!」
事実、スラおは他のスライムとは比べ物にならないぐらいの強さを持っている。
覚える特技の優劣こそあれ、その力はキングスライム並である。
特にスラおは極僅かなモンスターしか得とくしていないであろう、最強の特技を持っている。
しかし、その見た目故、ルイズはスラおの強さを信じてくれそうになかった。

「あ、それと洗濯、掃除、その他雑用もやらせてあげる」
「な、なんだってー!?」
急に思い出したかのようにルイズはそれらをスラおに押しつけた。
スラおを見て気持ち悪いとまで言ったくせに洗濯や掃除をさせるとは恐れ入る。
「私はもう寝るから」
ルイズはあくびをしてベッドに横になる。
「あんたのベッドはそこだから」
と、床を指さした。
そこには藁が敷いてある。
「ちょっと藁が少ないんじゃねぇのか?」
そう言いながらスラおは藁の上に飛び乗り目を閉じた。
普段牧場で寝泊まりしてるので藁の上で寝ることになんの抵抗もないのだ。

52ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:29:12.07 ID:ElrJ9dmK
――――――――――――――――――――――――――


翌朝、目を覚ますとそこは地獄だった。
ルイズは自分で服を取ろうともしない。
流石に着せ方が分からないと言って断ったが、服を着せろとまで要求してきた。
そして籠に入った大量の服。洗濯しろということだろう。
一時的と言っても、一応マスターとして認めたのだから、命令には従うがどうも納得できない。

ルイズが部屋を出たのでそれについていく。
すると別の部屋から赤い髪の少女が現れた。
そしてその後ろには見たこともない魔物がついて歩いている。
「おはよう。ルイズ」
少女がルイズに声を掛けたが、ルイズはまるで出会いたくなかったと言わんばかりに顔をしかめる。
「おはよう。キュルケ」
「それがあなたの使い魔?意外とキュートじゃない」
どうやら馬鹿にされているらしいが、今のスラおにはどうでもいいことだった。
そんなことよりも気になるのはキュルケの使い魔のことだ。
「よう、見たことないモンスターだな。オイラはスラおだ。お前は?」
話しかけてみるが、巨大なトカゲの魔物は人間の言葉を話せないようだ。
名前を知ることはできないが、意思の疎通はできる。
どうやらマスターにはかわいがられているらしい。

「どう?私の使い魔はサラマンダーよ。フレイムって言うの。レアなのよ〜」
「ふ、ふん、私の使い魔は喋れるわ」
「あらそう。それは尚更不気味ね」
「おい、お前さっきオイラのことキュートって・・・」
スラおが言いきる前にキュルケはルイズと勝手に話を終わらせて去って行った。
キュルケに馬鹿にされて、ルイズは不貞腐れてしまったようだ。
「気にすんなよ!あのフレイムとかいうのそんなに強そうじゃなかったぜ!」
「少なくともあんたよりは強そうよ・・・はぁ・・・」
ルイズは深いため息をつき、続けた。
「メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言うぐらいなのに・・・」
「だったら誇ってもいいんだぜ?だってこのオイラがルイズの使い魔なんだからな!」
励まそうとしたつもりが、ルイズはさらに機嫌を悪くする。
「まぁ、スライムがなめられるのにはある程度慣れてるけどよぉ・・・」
自分の実力を発揮する機会が訪れないことに、スラおもまたため息をついた。

53ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:33:06.83 ID:ElrJ9dmK
場所は変わり、トリステイン魔法学院の食堂―――の外。
スラおは食堂の中には入れず、他の使い魔と同じ庭で朝食をとることになった。
「に、肉がねぇ・・・!」
ここは地獄だ。スラおは確信した。

その後も授業で錬金を失敗したルイズが大爆発を起こしてその後片付けをさせられたり、苦労が絶えない。
その時、スラおはルイズがゼロのルイズと呼ばれている理由を知った。
魔法の成功率がゼロだからだ。
馬鹿にしたつもりはなかった。
むしろ、爆発する魔法なんてカッコイイじゃねーか!と、思っていたぐらいである。
しかし、そのこと自体に触れることがタブーだったらしく、ルイズは今朝の件も相まって、かなり機嫌を悪くしてしまったらしい。
そのせいで昼食抜き。片づけをさせておいてあんまりである。
地獄。間違いなくここは地獄。肉もない。

スラおは途方に暮れていた。
他の使い魔から餌を奪い取ろうとも考えたが、問題を起こすとルイズに何をされるかわからない。
腹が減った時は、動かないのが一番。
無情―――それでも腹は鳴る。

「どうしたの?お腹減ったの?」
かなり大きな音が鳴ってしまったのだろうか。
そこには黒髪の少女が腰を低くして、まるで猫をあやすように喋りかけてきた。
「は、腹が減った・・・」
「しゃ、喋った!」
他の使い魔と同じように人の言葉を喋るとは思わなかったのだろう。
少女は驚いたが、すぐに平静を取り戻し、再び声を掛ける。
「賄いのシチューならあるけど食べる?」
「肉はねぇのか!?」
「えっと・・・ごめんね。お肉はないの」
「それでもいい!飯が食えるなら何でもいい!」
少女はスラおを抱き上げて歩き出した。
54ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:34:40.88 ID:ElrJ9dmK
シエスタは相変わらず猫をあやすように、いや、幼い子供をあやすように話す。
「ご飯貰えてないの?」
「そうなんだよ。ルイズのやつ、ゼロのルイズって呼ばれるとすぐ怒るんだ。クリオとはどんなに喧嘩したってこんな扱い受けたことなかったぜ」
「クリオ?」
「オイラのモンスターマスターだ。ルイズの使い魔になってるのは元の世界に戻るまでだ」
「そうなんだ」
色々と突っ込みどころは多かったが、シエスタはあえて何も聞かなかった。
スラおの言うことが本当かどうか確かめる術はないし、何よりもスラおは貴族の使い魔である。
余計な詮索をしてお咎めがないとも限らない。
「ぷはー。食った食った。なんか恩返ししないとな。オイラに出来ることならなんでもするぜ!」
「うーん。大丈夫。気にしなくていいよ。その代わり、このことは内緒ね」
確かに青色のぶにぶにした塊に出来ることはない。
少なくともデザートを運ぶなんてことは不可能である。
「じゃぁ、私はデザートを届けに行くね」
シエスタは大きな銀のトレイにデザートを並べると、それを持って食堂に向かった。
おわかりしすぎて満腹のスラおは、最初は何も考えずにお言葉に甘えたが、やはり納得はできない。
意地悪なルイズとは違って、シエスタは優しい。何か力になりたい。
でもスラおに出来ることは戦闘ぐらいである。
時間があるときだけでもシエスタを見守ろう。
そう決めて、スラおは厨房を出て、こっそりと食堂に向かった。

スラおはなるべく体をつぶして薄くなり、草に身を隠して全身する。
スライムなりの匍匐前進である。
食堂には着いたが、まさか正面ら入るなんてことはできない。
スラおは器用に食堂の壁を登って行き、少し高い位置にある窓を目指す。
「ふぅ〜。お、いたいた」
食堂内には多くの人間が居るが、シエスタの服装は他の人間達とは随分と異なるものだったため、すぐに見つけ出すことができた。
しかし、シエスタはデザートをすでに配り終えた後だった。
にも関わらず、食堂から出ようとしない。
どうやら金髪の男に言い寄られているらしい。
それに対して、シエスタは困った顔をしている。
「こ、これはオイラの出番か!?」
スラおは無理やり窓を開け、食堂の中に入った。
55ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:39:00.47 ID:ElrJ9dmK
「ちょーーと、待ったァ!」
急に降ってきた青色の物体に金髪の男は驚く。
「な、なんだ!君は!」
「ス、スラおさん!?」
シエスタもまた驚く。
周りに貴族が居るからだろうか、スラおの呼び方は"スラおさん"に決定したらしい。
「てめぇ!シエスタが困ってんだろ!?」
「い、いえ、私が悪いんです」
シエスタは俯いて、申し訳なさそうに言う。
どうやら言い寄られていたわけではないらしい。
「そうさ。彼女が二人の貴族の名誉を傷つけたんだ。まぁ、もう許してやろうとしたところだがね」
そうなると、勘違いして出入り禁止の食堂に突っ込んだ自分の立場が危うい。
大声で捲し立てたせいで、おそらく食堂内にいるルイズにも自分が居ることに気付いただろう。
般若のような顔でルイズが立っているような気がして、後ろを向けない。
「シ、シエスタが何したってんだよ!」
もう後には引けない。
「彼女が香水なんて拾ったせいで・・・」
「うるせぇ!お前が悪い!」
相手の言葉を遮るスラお。形振りかまってる暇はない。どっちが悪いかなんてもうどうでもいいのだ。
「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」
周りにいた人間がどっと笑った。
どうやら本当にこの男が悪いらしい。
「つ、使い魔のくせに貴族に対する口のきき方がなってないようだな」
男はキザったらしく薔薇を胸に当てて言う。
「うるせぇキザ野郎。その薔薇全然似合ってないぜ!」
まるで追い詰められた状況からの突破口を見つけたかのようにスラおは挑発を続ける。
「よかろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」
「おもしれぇ。やってやる!」
しかし、ギーシュはくるりと体を翻して去っていく。
「おい、逃げんのか!」
「ふざけるな。貴族の食卓を荒らすわけにはいかない。ヴェストリの広場で待っている。自分の主人にこのことを伝えてから来たまえ」
ギーシュの友人達は楽しげに彼の後を追う。
「だめ、殺されちゃう・・・」
シエスタの声は震えている。
「大丈夫だって。オイラ強いんだぜ?」
しかし、シエスタはその場を走り去ってしまう。
どの世界に行っても、スライムは最弱の魔物だと思われてしまう。
シエスタも、その小さな体や手足のない姿からそう思ったのだろう。
56ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:40:08.14 ID:ElrJ9dmK
食堂の裏にある厨房――
どこよりもおいしい香りが漂うその場所で、少女は少し大き目の皿にシチューを注ぐ。
「うまい!肉以外でこんなにうまいもん食ったことないぜ!」
「よかった。おかわりもたくさんあるからね」
「ほんと助かったぜ。オイラ、スラおっていうんだ」
「私はシエスタっていうの」

後ろからルイズが駆け寄る。
幸い、その表情は般若のようなものではなかった。
怒りというよりは焦りの表情だ。
「あんた!何してんの!勝手に決闘の約束なんてして!」
「だってよ、あいつが悪いんだぜ?たぶん・・・」
「た、たぶんって・・・謝ってきなさい。あんたじゃ勝てないわ」
「だらかオイラは強いんだって!あんな奴に負けるかよ!」
スラおはそう言い捨てて、ギーシュの向かった方へピョンピョンと跳ねて行ってしまった。
「あぁ、もう!使い魔の癖に勝手なことばっかり!」
ルイズはスラおを追いかける。
57ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 13:42:25.27 ID:ElrJ9dmK
以上です
書きこんでて気づいたけど、名乗ってないのにシエスタがスラおの名前を知っている不思議
58名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 13:44:46.76 ID:1aKQ1qs5
59名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 14:51:37.20 ID:QOaFyeji
乙乙
60ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 17:48:05.63 ID:ElrJ9dmK
いまさら気づきましたが、なるほど、メモ帳コピペミスって順番がおかしくなってたから違和感があったのか
>>56の食堂の裏〜「私はシエスタっていうの」 までが、>>54の頭にくると考えてください

すいません、お騒がせしました
61名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:37:02.31 ID:1twAy3fA
ドラクエスライムに洗濯をさせるとかこのルイズはかっ飛んでるなw
62名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:40:56.02 ID:sh6i2KC1
つか洗濯やらはサイトが人間だからやらせたのに、ちゃんとした使い魔にそんなことさせる訳ねえだろ
原作くらいちゃんと読め、そもそも魔法使ったのに弱そうはねえだろ。

人間のサイトと同じ扱いしてどうする。人間以外が召喚されたらそれ相応の対応するだろ。
お前の頭の中じゃ、どんな種族の使い魔が来ても、洗濯やらせんのか?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:47:42.89 ID:VdgXkbGq
>>62
ここではわりとそんな感じのSSばかりですが
64名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:50:12.11 ID:Krmur9CQ
実はフレイム達も洗濯や掃除してたりしてw
65名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:51:24.02 ID:1aKQ1qs5
定期的に湧くNE!
66名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 20:55:34.40 ID:Onv88h6d
俺はルイズが使い魔にベタボレの設定だから、ルイズがルイズっぽくなくて悩んだな。
あれ、洗濯とかさせるどころか、これルイズが使い魔なんじゃね? のレベルで。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 21:00:36.44 ID:En/fKGAF
>>62
なんでいちいちケンカ腰なんだ?
頭の悪さが滲み出てるぞ
68名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 21:03:06.88 ID:E9NOmmEb
さてねぇ、非人間型の使い魔に 洗濯をやらせちゃいけないってこともないし。

「ところでアンタ 何が出来るのよ?
 これと言って役に立ちそうに無いけど。
 そんななりで 『洗濯が得意です』っていうなら笑えるわね。」
「えっなに、『出来ます』ってぇ!
 じゃ 試しにソレ洗ってきなないよ。洗濯場ぁ?その辺歩いてるメイドにでも教えてもらいなさい。
 いいわね!」

こんな感じなら さほど不自然とも思わないけどね。
要は書き方次第でしょ。
>>62さんも アタマ 柔らかくしましょうや。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 22:00:16.37 ID:TW6TkjEL
バカ王子召喚
だめだ、ルイズがストレスで死んでしまうw
70名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 22:27:39.52 ID:JQ9VQWxv
>>62
釣りだと思うけどマジレスしておく。

気持ち悪いです…
71名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 22:49:21.06 ID:LIQT3HFM
>>69
ルイズがトップレスで死んでしまう、に見えた。
疲れてるみたいなんで寝るわ。

でも4期キービジュアルのルイズのケツはたまんねえな!
72名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 22:53:33.67 ID:qfaKXlny
まあ書き方次第なのは間違いないが、スライムみたいなのに洗濯させるのは何か特に理由がないと不自然だな
ベギラマを披露したのに弱そうだといわれるのも確かに変な話ではある
コルベールに相殺されたのでイマイチ威力のほどが分からなかったのかも知れんが

無理に洗濯させんでも話はどうとでもつなげられるし
何か上手く理由をつけて原作通り洗濯やらせるのもいいし、
洗濯すんのは不自然だからやらないことにするというのも別に問題はない
まあ洗濯はシエスタとの出会いイベントだってのはあるが、それも別に初出会いが厨房とかでもどうにでもなるしな
73名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:00:47.78 ID:OACHseJ5
最後まで育てきるとすばやさがトップクラスになるのはDQ5だっけ?
74名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:01:30.49 ID:kIU9Mq05
久しぶりの新作だから浮き足立ってるね
75名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:02:25.05 ID:lN3VLRoN
ベギラマはまがりなりにも初代最強呪文だからな
いくらなんでも、Lv10にも達してなさそうなのに弱そうとか言われる筋合いはないだろ
76ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/23(火) 23:11:08.59 ID:ElrJ9dmK
ちょっと+の方の設定を意識しすぎたかもしれない。
器用に体を変形できるスラおなら洗濯ぐらいできるだろうとか、スライムは強さ的な意味で舐められやすいとか。
ゼロ魔の世界観とかをあんまり考慮せずに強引にクロスさせたから、皆さんの言うとおり不自然な部分が多くなったのかも。
そういった点については今後気をつけていきたいと思います。

ただ、片手間に書いてるものなので、うまくいくかは分かりませんが今後ともよろしくお願いします。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:12:45.52 ID:1aKQ1qs5
しかし四期効果で書き手さん戻ってきたり増えたりするといいなあ
78 忍法帖【Lv=34,xxxPT】 ゼロのペルソナ:2011/08/23(火) 23:19:36.98 ID:M51aWu8d
どうもなんだかやけに長くなったので前編・後編に分けて投下します。
あと言い忘れてたけど、原作での場面を使ってるのは前回で最後。
つまり今回から最後までほとんどオリジナルですね。
その内、エライ原作改変の設定が出てくるんで内心ビクビクもんですね

それじゃあ、よければ今から第18章節制前編を投下します
79ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:21:38.37 ID:M51aWu8d
節制 意味……調和・不安定

夜の帳が下りたグラン・トロワ、その豪奢な宮殿の中でも最も手がかかった部屋の一つにガリア王ジョゼフはいた。
何をするでもなくソファに深く身を沈めている。
その姿は今朝方、ロマリア連合王国の中心都市ロマリアを滅ぼすように命令した男の姿には見えない。
彼の命令によりロマリア国境付近にて大規模な演習を行っていた艦隊は国境を犯し、都市国家ロマリアを滅ぼした。
ロマリア連合皇国全土を制圧したわけではないが、始祖ブリミルの弟子が建てたといわれるロマリアは6000年の幕を下ろした。
というのはロマリア連合皇国が都市国家群の集合体であるからだ。
盟主であるロマリアがかつて始祖ブリミルの弟子が興した国で始祖の没した地であるとして、宗教的権威を振りかざして他の都市国家群を従えていた。
それも拘束力の弱い連合制であるため、すべての都市国家が都市ロマリアの意向に従うわけではない。
要するに都市ロマリアを滅ぼしたロマリア連合皇国はロマリアではなく小さな都市国家たちでしかないのだ。
この行為により歴史に悪名であれ名を残すことが確定したというのにジョゼフの顔には後悔も悲しみも喜びも浮かんでいない。
国一つを滅ぼしても何の感慨も湧き上がらなかった。
やはりか。そうジョゼフは自己の心情を分析する。
弟シャルルを憎み殺した日以来、彼から感情の高ぶりが消えた。
彼は怒りたかった、憎みたかった、後悔したかった。
だが彼はその望みをかなえられずにその日まで王位にいた。
ロマリアを滅ぼすように命じた際にもしかしたら、と思ったがやはりそれは淡い願いに過ぎなかった。
彼は確信している。もはや自分の心を揺さぶるには世界を滅ぼすしかないと。
それでもだめではないのかという思いが彼の中にあったが、たとえそうだとしても彼は唯一の可能性にすがるしかないのだった。
80ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:23:40.53 ID:M51aWu8d
彼が思考にふけっていると、息を切らしイザベラが彼の寝室に入ってきた。露骨に面倒だという表情を貼り付けている父に彼女は迫った。
「父上!いったいどういうおつもりですかロマリアに宣戦布告もなしに侵攻して!」
「だからどうした?」
「我がガリアとロマリアに何の問題もありませんでした。少なくとも突然戦争になるようなことは。
 このたびの戦争で間違いなく他国はガリアを危険な国とみなし敵対するでしょう。
 いいえ、他国だけではありませんわ。ガリア内部でも反乱が起こるでしょう」
イザベラの出した答えは彼女が魔法の才能に比して政治の才能に長けている彼女だから出せたものというわけではない。常識を知るものならわかるようなことだ。
「どうでもいいことだ」
父の発言にイザベラは真っ青になる。
「“どうでもいい”ですって?エルフどもなどと手を組むからこうなったのではありませんか!」
「あの長耳どもは我らブリミル教徒よりまともだと思うがな。まあ、それもどうでもいいことか」
イザベラはジョゼフが理解できないようであった。
王家とは家族よりも社会的な地位を重視するものであり、そのため公的私的関係なくイザベラとジョゼフの関係は娘と父ではなく王女と王との関係であった。
そのため今までほとんど公式の場でしか顔を合わせなかったことがなかった。
それでも王族とはそのようなものだと思って生きてきた。
だがその父であり、王である男は何か不気味な、恐ろしい雰囲気を放っている。
イザベラは呟くように尋ねた。
「わ、わたしはこれからどうすれば……」
「知ったことか。気に入らぬならこの国から出て行け」
ジョゼフの返答にイザベラの顔は髪の毛と同じ青になるかと思えるほどになったが、顔をぎゅっと引き締めた。紡がれた言葉には怯えに彩られながら確かな覚悟があった。
「わかりました、父上。わたしは自分で考えて自分で行動します。今までありがとうございました」
イザベラは頭を下げてから退出した。
ジョゼフは娘の覚悟に触れながら何の感慨も覚えず、ただ不快なものが去ったとだけ思った。
再び扉を開いたのは彼の娘ではなく王宮にはふさわしくない全身を鎧で固めた兵だった。まるで鎧が体の一部とでもいうような存在である。
それは一言も発しなかったがジョゼフはそれの意図を察知して嬉しそうに唇をゆがめた。
「そうか、あのエルフは火石を完成させたか」
その鎧の兜にはルーンが刻まれていた。
81ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:26:31.53 ID:M51aWu8d
トリステインからオルレアン公夫人とタバサの亡命を受け入れることを記された手紙が送られてきた朝、ルイズたち一行はすぐにトリステインへと発った。
手紙の中で催促があったからだけでなく、彼らも早く事情を知りたかったからだ。
この世界の住人ではない完二たちはともかくとして、ロマリアが滅亡したという情報はあまりにも衝撃的なニュースであったのだ。
ルイズなどは忠臣として一刻も早く姫に謁見しないといけないと息巻いている。
そういった強行軍であるために体調がまだ本調子ではないオルレアン公夫人は遅れて別の馬車でやってくることになっている。
間断なく馬車に揺られ彼らはトリステイン首都トリスタニアに出発した日の深夜についた。
日付でいうなら次の日となっているが、トリステインとゲルマニアの国境線上にあるツェルプストー家とはいえ一日で着いたのはずいぶん早いといっていいだろう。
王城に着いてから夜の番に立たされ不機嫌な兵士に取り次ぐように頼むのに骨が折れたが、
城内に伝令が言ってからは早くアンリエッタ王女や枢機卿マザリーニが出迎えた。
6人はすぐに客室へと通された。
キュルケや陽介などはタバサならともかく自分たちが重要な話を聞いていいのかと思ったが話は全員の居る中で話が始まった。
それはアンリエッタは窮地を助けてくれたから席を外すような非礼はできないという好意、それと隠すようなことでもないということが理由だ。
キュルケに対しては、ゲルマニアの名家ツェルプストーの者ならぜひ知ってもらっていたいとも姫は言った。
ちなみにルイズは自分が話から外されるなどということは思慮の外にあったようだ。
客室のイスを一つの小さな机を取り囲むように並べて円卓のように9人は座った。
アンリエッタ姫の隣に座っているルイズが最初の質問を投げかけた。
「姫殿下、僭越ながらもお伺いします。ロマリアを滅ぼしたというのは事実でしょうか?」
質問しながらもルイズは本当のことであると確信に近いものがあった。
それはいまやハルケギアニアの話題を全てさらい、
身分の違いなく上から下までその話題で持ちきりで馬車でいくつかの街や村を通っただけでも耳に入って来るほどであった。
ツェルプストーの城で情報が入ってこなかったのはトリステインの情報網が機能し、
早くに情報を得ていたこととキュルケがオルレアン公夫人を匿っていることもあって、両親との接触を避けていたからだ。
ゲルマニアの有力な貴族であるキュルケの父ならすでに情報は得ていたであろう。
そしてその考えはアンリエッタの言葉で確実なものとなる。
「ええ、残念ながら本当です。……ガリアは、いえ現ガリア王ジョゼフは同じ始祖を起源とする国を滅ぼしてしまったのです……」
悲しげにアンリエッタは目を伏せた。彼女の言葉を継いだのはルイズと同じくアンリエッタの隣に座った枢機卿マザリーニだ。
彼はトリステインの政治を担っている存在であり実質的な宰相である。
先王が逝去してから一身に引き受けてきたためその外見は40代とは思えないほど老け込んで見えた。
そして彼はロマリア出身の政治家でもある。
「これは確定情報と思っていいでしょうが大聖堂は破壊されそして現教皇も逝去されたようです」
82名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:27:50.19 ID:kBQgRu/D
私怨
83ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:28:45.35 ID:M51aWu8d
アンリエッタはおおっ、と悲しそうに声を出し、彼女だけでなくこの世界で生まれ育った者全員が鎮痛なものを顔に浮かべている。
それは発言したマザリーニにしても同様であったらしい。
もともと彼は前ロマリア教皇時代には次の教皇であると目された人であり、前教皇が亡くなった後も帰国せずに王がなくなったトリステインを支えてきたのだった。
もし彼がロマリアで教皇になろうとしていたならばガリアの凶行に倒れたのは彼だったのかもしれないのだ。胸中には複雑な思いもあるだろう。
「このような蛮行はとても見過ごせることではありません。明日のトリステインが今のロマリアにならないという保障はどこにもありませぬ」
こくりとアンリエッタは頷いた。
「そう。だから我々は結束しなければいけません。そして狂王を追い払い正当なる王をすえなければなりません」
正当なる王というところでタバサを見る。見つめられた少女は彼女にしては珍しく困惑している。困惑する彼女を助けたのは使い魔陽介だ。
「ちょっとお姫さま?王になるとか、ちょっとタバサは決めかねてるんで……」
「王族には王族の果たさなければならない義務があります。わたしもあなたも王族であるなら義務を果たさなければいけません」
アンリエッタは強い口調で言った。とはいえタバサも困惑するばかりである。
見かねたマザリーニがさらに何か言おうとするアンリエッタを制止した。
彼女はまだ何か言いたげであったが、頼りにする枢機卿が止めるのでしぶしぶながらも口をつぐんだ。
「これからですが、我々はガリアへの大包囲網を形成します。
 我がトリステイン、ゲルマニア、そして盟主ロマリアを欠いた都市国家群。
 すでにそれらからの同盟の打診が来ています」
大規模な構想にみなが息を飲んだ。その中でルイズははっとしてアンリエッタに尋ねた。
「ゲルマニアと同盟ということはもしや姫さまは嫁ぐのですか?」
以前、アンリエッタはアルビオンの反乱軍への対抗のための同盟を築くためにゲルマニアに嫁ぐことになっていた。
それはガリアが反乱軍の首魁クロムウェル含め指導者を軍主力と共に葬ったために立ち消えになったのだ。
しかしもしガリアのロマリア侵攻で再び嫁ぐことになってしまえば、
ガリアによってなくなったアンリエッタの輿入れがガリアによって再び行わなければならないという皮肉な事態になってしまう。
アンリエッタは忠臣の心配を振り払うように笑みを浮かべながら首を振った。
「わたしはこの国にいますわ」
「姫さま」
ルイズはほっとした。
「シャルロットさまにも言ったでしょう。王族には王族の義務があると。
 わたしはこの佳境にある国を守るために王となります」
突然の告白にあらかじめ知っていたマザリーニ以外全員、驚いた表情を浮かべる。
今度はこの世界の世情も知らない完二たちも驚いていた。
なにせアンリエッタはまだ17歳のうら若き乙女である。王という言葉には不似合いであるように彼らには思えた。
84ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:30:47.84 ID:M51aWu8d
「アルビオンはどうするおつもりですか?あれはガリアが鎮圧したからガリアの支配下にありますわ」
質問したのはキュルケだった。
「アルビオンも決して一枚板ではないということですよ。ガリアの支配をよく思わないものも多くいます」
「つまりはあなたがたトリステインと我がゲルマニアで色々な嫌がらせをするということですね?」
キュルケはにやりと枢機卿に微笑んで見せた。
マザリーニは答えはしなかったが、否定もしない。
彼の頭の中にはアルビオンの中に潜む親トリステイン派、いや反ガリア派を煽り有形無形の妨害をする算段をすでに立てているとキュルケは思った。
「それともう一つ気になる情報が、ガリアは大量の軍艦の一挙投入でロマリアを制圧……いや滅ぼしましたが、その中に未知の戦力があったと情報が入っています。
 信じがたいことですが巨大な火竜、それに今まで見たことのないようなゴーレムがいたと」
「なんだかそれどこかで聞いたことがあるような気がしますわ……」
「わたしもそういえば」
キュルケとルイズは記憶を探るように考えこむようなそぶりを見せた。
枢機卿はさもあらんというように頷いた。
「ガリアがアルビオンを陥落させたときですな。その時も似たような噂が出回りました。
 おそらく事実であったのでしょう。それに全身を鎧で固め風のように動く騎士がいたとの情報もあります」
どうやらガリアはハルケギニア一の陸軍を有する以外になにかしら謎の戦力も保持しているようだった。その得体のしれなさに全員は不安を覚えた。
だがアンリエッタとマザリーニはさらに不安材料を抱えていたのであった。
それは確信のないものであったが、もし彼らが心配しているとおりのことであるとならとんでもないことになる。
「巨大な火竜というものが風の噂に乗っていますが、そのことで気になることがあるのです。
 一つはガリアのアルビオンへの電撃攻撃を前にしてこのトリスタニア、そして城内にも巨大な火竜を見たという噂が立ち上ったということ。
 もう一つはその後に、あなたがたの通うトリステイン学院近くで全長40メイル近い火竜の亡骸が見つかったということです……」
マザリーニたちが想像している最悪はこの火竜がガリア軍の所有していた竜と同一種であることだ。
どういうわけか発見された火竜は絶命していたが、もし生きていたら仕留めるためにどれほどの犠牲を払ったのか想像がつかない。
その疑いはルイズとその使い魔によって肯定されるとともに更に王女と枢機卿を混乱させる。
「その火竜はわたしをさらおうとガリアが差し向けてきたものです」
「あー、オレがぶっ倒したヤツだな」
今まで小難しい話についてこれなかった完二はここで初めて発言した。
その主従の発言にアンリエッタは混乱する。
85ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:32:49.43 ID:M51aWu8d
「やはりあのドラゴンはガリアのものなのですか!?
 いえ、それよりルイズ!あなたさらわれたのですか!?
 それに倒したですって!?」
マザリーニは混乱するアンリエッタをなだめるが、彼自身にも混乱がないわけではない。
「いや……いささか信じがたい話ですが……」
「んだよ、オレらが信用できねーってのか?」
「やめなさい、カンジ」
不満顔の完二をルイズがたしなめる。
「全て本当のこと。ジョゼフから命令されて実行したのはわたしだから」
これからガリア王としてあおごうとしている者からそういわれては二人も否定することはできない。
もともと二人も発言者が信頼できないというわけではない。発言の内容が信じられないように思えたのだ。
「いや、シャルロット様が仰られるなら……しかしなぜジョゼフはミス・ヴァリエールをさらおうとしたのでしょう」
「わからない」
タバサにはなぜルイズをさらわなければならなかったのかは知らされていなかった。
あの時は母の命もかかっていたために詮索できるような状況でもなかった。
「人質にでも使うつもりだったんじゃないかしら。こんなのでも王家の血も引く、トリステイン指折りの名家の娘ですし」
こんなのとは何よとルイズが言ったものの、彼女含め、キュルケの意見に反論する者はいない。他にそれらしい理由も見当たらないからだ。
しかし実はルイズやキュルケなどには気にかかることはあった。それはルイズが虚無の使い手だということだ。だがこの事実を知っているものは限られている。
ルイズ自身がそうだという疑惑を持ったのはラグドリアン湖から戻ってきて始祖の祈祷書を読んだとき、
確信したのはアンドバリの指輪で操られたウェールズからアンリエッタを奪還すべく始めて虚無魔法を使ったとき。
キュルケ、陽介、完二、クマはさらわれたタバサの奪還すべくガリアへと入っていったときに知った。
タバサには話すタイミングもなかったので未だに話していない。
初めて虚無魔法を使ったときには陽介、完二に加えタバサとアンリエッタもいたが、聡明なタバサでも虚無魔法だと気付けたかはわからない。
なによりそれをジョゼフに知らせたとは考えづらい。
アンリエッタは混乱していてそれどころではなかったであろう。
だからルイズがさらわれそうになった理由としては虚無の使い手であることは除外していいはずだ。
しかしルイズは何か違和感を感じた。何か問題を抱えたまま行動しようとするような気持ち悪さが彼女の胸に残っている。
86ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編:2011/08/23(火) 23:36:22.57 ID:M51aWu8d
投下終了。
>>82
私怨感…謝…?

予想外に説明が長くなっちまったい!
前回もエキセントリックなことはなく、地味な話になってますけど
近いうちにエキサイティングな戦闘がきっとあります!たぶん!
87名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/23(火) 23:56:39.79 ID:QOaFyeji
88名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 00:06:47.40 ID:u08Pf39k
ギーシュ「お前は面白い。俺はお前を気に入った。お前が欲しいんだ、ガッツ」

今度の映画版はギーシュがグリフィスになるそうだ
89名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 02:33:17.37 ID:PFvG30I3
            ,. -─── 、
         //  /      `ヽ        _
         /.:./  / / .:.  /     \    /__ `ヽ
       / .:.:./   / ,斗-- 、:{:. .:. ヽ    ヽ  .{ (    ヽ ',
       /  /:  イ´l .:|l.:.:∧:|.:.:.: .:斗ー   ',  ゝ' ,. -ー' ノ
       l ..:.:|:.:.   | ィチ才ミヾヽ.:.:.:/厶.: / .:  〉    / / ̄
       l.:.:.:.!:.:  ∨  }:ヘ.リ  ノ/仟テk';.:./ィ/    / /
      ノ.:.::人:.   ヽ ゝ-'      ト;'ソ//!    __`´
   /.:./.:.:.ヽ:.   ヘ       ` ` |:.: |   (__)
  /.:./.:.:.:.::.ノ.:}:.    ',     __    ,:.  |
/.:./.:.:.:.:.:.:/.:.|.:.:.  l    ´ ´ /.:  |
.:.:./.:.:.:.:.:.:.:./_ィ.:.:.:.   小    イ/:.:.:.:.  l
.:.〈.:.:.:.:.:./   ./.:.    }_,工,.´ー=〈:.:.:.:..   ヽ
 :ノ.:.:/   /.:.:.:.:   /.、 ∧ ̄入ヽ:.:.:.:.   \
/r' ─- 、/.:.:.    /  ∨_ノ´\l/ \:.:.:.:.:   ヽ
.:.:.l    /.:.:     / \  \ /ヽ/ /  ヽ:.:.:.:.:.:.:  〉
/   /.:.:     / \ \  ヽソ /    }:.:.:.:.:  /

90名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 03:45:22.31 ID:x88ZnBtx
投下乙乙
91名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 08:13:10.00 ID:eU8mSffJ
何だか最近口を開けばガッカリ王子がカッコイイような錯覚を覚えてきた
でも真面目な陽介って地味よね
とにかく乙
92ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:20:42.11 ID:riD75jfk
何もなければ5分後ぐらいに三話目を投下させてください。
93ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:26:09.99 ID:riD75jfk
「諸君!決闘だ!」
ギーシュが薔薇を天に掲げて叫ぶ。
広場はすっかり見物客でいっぱいだ。
そのおかげで場所を知らないスラおも難なくたどり着くことができた。
「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
ギーシュはすでに勝利を確信しているようだった。
ルイズの使い魔が召喚されたとき、妙な魔法を使って生徒達を攻撃したことは知っている。
しかし、ミスタ・コルベールにあっさり相殺されたそうだ。
ギーシュは薔薇をスラおに突きつける。
「覚悟はいいかね?」
「あったりめぇだ!さっさとお前の使い魔を出しやがれ!」
「何を勘違いしているんだい?君の相手はこの僕さ!」
「へ?」
ギーシュが薔薇を振ると、一枚の花弁が中を舞う。
すると花弁は一瞬で甲冑を着た女戦士の形へと変わった。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
「お?おう・・・?」
てっきりモンスターバトルだと思っていたが、ギーシュはそれをきっぱりと否定した。
しかし、目の前に現れた甲冑の戦士はとても人間には見えない。
主人とその使い魔が二人で戦うということだろうか?
以前にも戦闘に参加するマスターと戦ったことがある。
その場合、二対一の戦い。ルイズは決闘をやめさせようとした。一緒には戦ってくれないだろう。
それにルイズは魔法をまともに使えない。
「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
ギーシュがそう言うと、女戦士の形をしたゴーレムはスラお目掛けて突進してきた。
「ゴーレム・・・やっぱりモンスターじゃねーか!」
スラおはゴーレムの攻撃を軽くかわす。
「む・・・なかなかやるようだね。でも次はないぞ!」
ゴーレムは凡人ではとらえられないほど素早く拳を振る。
しかし、スラおにとっては大したスピードではない。
「しばらく様子見しようと思ったけど、マスター攻撃してくるわけじゃねぇし・・・こっちも攻めるぜ!」
マスターのギーシュがモンスターのゴーレムに一切の指示を出さないことに疑問を抱きつつも、攻撃態勢に入る。
ゴーレムも魔法を使うわけでもなく、ただ通常攻撃で攻めてくるだけ。
「これなら楽勝だぜ!ベギラマァ!」
ゴーレムはその一撃でボロボロと崩れ落ちる。
「な、なん・・・だと・・・?」
ギーシュはその魔法にこれほどの威力があるとは思っていなかったため、驚きを隠せない。
94ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:27:41.84 ID:riD75jfk
それを見ていたルイズは呆然とする。
すぐにでも止めに入ろうとしたが、あっさりとギーシュのゴーレムを倒したことで、どうすればいいか分からなくなったからだ。
「も、もしかしてあいつって・・・強い?」
ルイズは息を吐くように呟いた。

「やっぱりあれ、『火』系統の魔法で間違いないわね」
決闘を観戦する野次馬の中に紛れていたキュルケが、スラおの魔法を分析する。
「でも、性質が僅かに異なる」
隣にいたタバサは周りの歓声にかき消されてしまいそうな声で言う。

「調子に乗っていられるのも今のうちだ!」
ギーシュが力一杯薔薇を振ると、今度は先ほどと同じようなゴーレムが六体現れた。
「げ!?」
スラおは現れたゴーレム達から距離をとる。
基本的にはモンスターバトルは三対三のデスマッチ。
六体の魔物を同時に一人で相手にしたことは今までにはなかった。
遅れをとったスラおはあっという間にゴーレム達に囲まれ、一斉攻撃を受ける。

「スラお!」
ルイズは無意識のうちに叫び、駆けていた。
「落ち着きたまえ、ルイズ。もう決着はついた」
ギーシュはすっかり平静を取り戻し、余裕の表情で諭した。
ルイズはその場に崩れ落ちる。
「ベギラマァ!!」
その時、スラおを取り囲んでいたゴーレムが強い光に包まれた。
三体のゴーレムが粉々に砕ける。
「なんでぇ。大したことねぇじゃねーか」
一見、スラおは傷つきボロボロになっているようだが、その表情は余裕そのものだった。
「な、なぜ倒れない!?」
ギーシュが再び慌てふためく。
「何をするかと思ったらただの通常攻撃じゃねーか。攻撃力も防御力も、オイラの方が何倍も上だぜ!」
一度に三体のゴーレムを同時に倒されたギーシュはとっさに残りのゴーレムをばらけさせる。
「この程度なら体当たりでも倒せそうだぜ!」
スラおは凄い勢いで自分の右側に回り込んだゴーレムに体当たりする。
ゴーレムはばらばらになって動かなくなった。
「ベギラマァ!!」
スラおに隙はなく、体当たりの直後、すぐに魔法で残り二体のゴーレムを攻撃する。
「どうだ、まだいるか?」
ギーシュのゴーレムは全部で七体。これ以上ゴーレムは出せない。
「ま、参った」
ギーシュは震えた声で負けを認めた。
95ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:28:35.64 ID:riD75jfk
決闘を見ていたのは生徒達だけではなかった。
騒ぎを聞きつけ、『遠見の鏡』で一部始終を見ていた者たち。
それはコルベールとトリステイン魔法学院の院長、オールド・オスマンである。
「オールド・オスマン。あの使い魔、勝ってしまいましたね・・・」
「うむ」
コルベールはスラおの背中に浮かびあがったルーンが、『リーヴスラシル』のものではないかと、オールド・オスマンに報告に行っていたのだ。
「やはりあの使い魔が、始祖ブリミルの用いた伝説の使い魔『リーヴスラシル』・・・」
「そうとは限らん。そのルーンを見たのは一瞬だったのじゃろ?」
オスマンは白い髭を撫でながらコルベールの考えを否定する。
「それにそのルーンは今、消えてしまっている」
「た、確かにそうですが・・・」
ルイズの使い魔が魔法を使える以上、リーヴスラシルの力で勝利したわけではなく、自らの実力で戦ったのかもしれない。
コルベールはそう考えなおし、オスマンに一礼して去って行った。
一人きりになった部屋でオスマンは窓越しに空を見上げる。
「しかし、嫌な予感はするのう・・・」

スラおはルイズの部屋で治療を受けていた。
「いて、いてててて」
ルイズはスラおの体に傷薬を染み込ませた綿を押しつける。
「我慢しなさい」
「この程度のダメージなら薬草一個で一発だって」
自分の世界に存在していた回復アイテム――薬草。
「薬草?この傷薬にもいくつか使われてるんじゃない?」
「えぇ!?こっちの世界の薬草はあんまり役に立たないんだな・・・」
この世界で薬草以上の回復を可能にするものは、基本的にはホイミなどと同じく魔法によるもの。
もちろん世界樹の葉もなければ、神父に頼んで生き返るなんてこともできない。
それを知ったスラおは少し焦る。
「ってことは、あんま無茶出来ないってことか・・・」
全滅すればタイジュの国に戻ることができる。
しかし、それはタイジュの国のモンスターマスターがいる場合だ。
今のスラおは一匹だけでこの世界に来て、かつ一時的とはいえ、新しいマスターの元についている。
死ねば魂はこの世界に留まり、生き返ることも出来ない。
「あぁ、早く帰りてぇ・・・」
スラおは痛みを噛み締めた。

96ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:31:11.51 ID:riD75jfk
――――――――――――――――――――――――――――――――


スラおがこの世界にやってきて数日が過ぎた。
スライムであるが故、平民に慕われることもない。
スライムであるが故、女の子に言い寄られることもない。
スライムであるが故、当然剣を買う必要もない。
ただひたすら、ルイズの服を洗濯し、たまに厨房にシチューを食べに行くぐらい。
ギーシュとの決闘以来、戦う機会もなく、体は鈍りきってしまっている。
「あー暇だ」
ルイズが食事をしている間はただただ暇だ。
この日は朝食も昼食も、お預けされることなく、厨房に行く必要もない。
しかし、スラおにはある考えがあった。
それはシエスタへの恩返しである。
暇でなければそんなこと忘れてしまうスラおだが、何度も世話になっている分、ただ施しを受けるだけの自分に後ろめたさを感じていた。
でもこの体ではおそらくは何の役にも立てないだろう。
シエスタは基本的に平和に暮らしているので、その身を守る仕事は当分まわってきそうにない。
――――ならば人間になればいいのだ

ギーシュと戦いを終えて分かったこと・・・それは自分の魔力がほとんど消費されていないことだ。
何度かベギラマを使ったが、MPが減ったような気はしなかった。
何故かは分からないが、別の何かが代わりに魔力を提供してくれているかのようだった。
と、なれば試すほかない。
スラおはキョロキョロと周りを見回し、誰もいないことを確認する。
そして念には念を入れて物陰に隠れた後、呪文を唱える。

『エボルシャス』

己の思い描く"最強"のイメージ―――
こうありたいと強く願う憧れと意思―――
その思いの力が集約した時、自らの姿形すら変わる技・・・
マダンテをも超越する技・・・
特に見せ場でも何でもないのに使うことになろうとは思いもしなかった技・・・
97ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:32:26.78 ID:riD75jfk
強い光がスラおを包むと、人の形へと変わっていく。
それは勇者。
金色の髪に褐色の肌。
手には盾と剣が握られている。
その剣はとても名刀には見えず、その盾は突き出された槍を防ぎきれるとは思えない。
しかし、彼に斬れない物などなく、彼を傷つけられる者は魔王か、それに匹敵する力を持つ者以外にない。

そんな最強の呪文にも弱点が存在する。
自らのHP,MPを全て消費する。
決して死んでしまうわけではなく、箪笥に小指をぶつける行為が致命傷になりかねないほどの瀕死状態に陥る。
そんな技を戦闘以外に使うべきではない・・・それはスラおも重々承知である。
だが、スラおには考えがあった。
理由は分からないが、おそらく今の自分の魔力は無限・・・
そうでなくても魔力を消費しているのは自分自身ではなく、別の何かである。
別の何かが魔力を提供してくれているとして、その分のMPと自分のMPを合わせればHPまで消費する必要はないはず。
つまり元の姿に戻った時、瀕死になることはない・・・という考え。
たとえこのような可能性があったとしても、100%の確信がない限り普通は試す者などいないだろう。
しかし、基本的に楽天的なスラおには、『思い立ったが吉日』という言葉がよく似合う。
「よっし、これなら・・・」
スラおは握っていた剣を背中の鞘に納め、その上に盾を被せるように背負う。
勇者の力を誇示すれば、僅かな時間で元のスライムに戻ってしまうが、ただ人の姿を保ち続けるだけならば数時間は持つ。

無駄に長い説明で忘れてしまいそうになったが、目的は人の姿になってシエスタに恩返しをすることである。
今ならデザートを運ぶことも容易い。気持ち悪がられることもない。
最弱のモンスターであるスライムだというコンプレックスから、完全に解放され、スラおはシエスタのいる厨房へと向かう。
98ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/24(水) 10:33:16.10 ID:riD75jfk
以上です。
+の"体当たり"の仕様が、ゲーム原作とは異なるようなので、それに準じて効果を変更しています。
自分へのダメージなしで、相手へのダメージも少なめといった感じです。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 14:25:52.51 ID:kztYrqE+
投下乙乙
100 忍法帖【Lv=34,xxxPT】 ゼロのペルソナ:2011/08/24(水) 14:51:52.28 ID:I7BHEWRB
〜スラダンからビッグジュンがルイズに召喚されました〜

コルベール「ピーーーーッ!召喚!!」
魚住「なんだと!?」
「召喚だ!」「痛い!」「魚住召喚モノーー!!」

魚住「ちょっと待てオレが召喚だと!?」
キュルケ「召喚を認めて!」
マリコルヌ「平民よせ!」

魚住「鏡に触れただけだぜ!?何でオレが使い魔なんだよ!!ちゃんと見てくれよ!」
ルイズ「むっ!生意気!洗濯!!」
魚住「なっ…」

「わああああ洗濯だーーー!!!」「雑用扱いだぁ――!!!」

キュルケ「もうバカ!!」
マリコルヌ「もう普通の扱いには戻れないのかい!?」
タバサ「そう」
ギーシュ「甘いね、洗濯をやらせにいくなんてssじゃよくあることだよ」




……というわけで、今から第18章節制後編を投下します
101ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 14:54:04.45 ID:I7BHEWRB
話し合いが終わり、退出しようとしたタバサはアンリエッタに呼び止められた。
「先ほどは偉そうなことを申し上げてしまいましたわ。ごめんなさい」
「気にしていません」
アンリエッタはタバサの手を取り、両手を包みこんだ。
「アルビオン王家は絶え、ロマリアがなくなって、始祖の流れを継ぐのはもはやわたしとあなただけなのです。
 これからは手を取り合いましょう。
 ……ウェールズさまとの約束を果たすのもこの戦いが終わってからになりますね」
最後は自分に言い聞かせるようにして言った。微笑んでいたがどこか悲しげだった。
タバサはどういえば分からず黙っていた。
「それからシャルロットさま。あなたに会いたいという人がいます」
「誰ですか?」
「あなたのよく知る人です。そしてあなたの王位継承を推した人です。
 わたしは一緒に話をしようとも申し上げたのですが、まずはあなたとそして使い魔さんにだけ会いたいと」
「えっ俺も?」
タバサにも陽介にも心当たりの人物が思い浮かばなかった。いったい誰が彼らに会いたがっているのであろうか。
102ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 14:56:06.57 ID:I7BHEWRB
使用人に連れられてきた部屋の中には、陽介も、そして冷静沈着なタバサも驚いてしまう人物がいた。
「い、イザベラさん……!?」
ロマリアを滅ぼしたガリア王の娘がトリステインの来客用の寝室にいたのだ。
「久しぶりね、ヨースケ……それにシャルロット」
イザベラは二人の驚いた顔が見れて嬉しいのか笑っている。
「あなたがどうして?」
対象の定まらない漠然とした質問はタバサがそれだけ驚いていることを示している。
イザベラは目を細めた。
「どうして……か。色々な理由があるわね……。父上がロマリアを攻めたのは知ってるわね?」
タバサはこくりと陽介はこくこくと頷いた。
「あんなことをしたら国はお終いよ。
 他国だけじゃなくて民からも敵視されて、貴族たちだって言うことを聞かなくなるでしょうね。
 だから新しい王が必要なのよ」
「ならあなたがなればいい」
イザベラは苦笑しながら首を振る。
「わかってるでしょ、シャルロット。父上はかつてオルレアン公派と争って王位についたわ。
 なら父上の娘が王位を継いだところで誰も納得なんてしないわ」
それに、と言葉を続けた。
「あなたはわたしなんかよりずっと王に相応しいわ。この王位はもともとあなたのものよ」
タバサは困ったという表情を浮かべる。
「わたしは王になる気は……」
「ないの?」
タバサはどう言ったらいいのか分からないという様子だ。
「それもそうよね。つい先日までは王族から追放で、いきなり王になれなんて言われたら混乱するわよね……」
それから二人は押し黙ってしまう。どちらも言葉を見出せないようだ。
だが伝えたいことがないということではないはずだ。陽介はそう確信している。
「なあ、王になるとかならないとかそーいうのはひとまず置いといて、
 それよりもっと言いたいことがあるんじゃーねーのイザベラさん」
はっとしたイザベラは探り探りと言った感じで喋り始めた。
「ねえ、シャルロット……あなたは父をわたしの父に殺されてきっとわたしを憎く思ってると思うの」
タバサは首をふってそれを否定した。
「あなたの父がやったこと。あなたは関係ない」
「でもあなたに今までひどいことをしてきたわ」
「それもあなたの父が決めたこと」
「ひどいいたずらをしたわ」
「気にしてない」
103ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 14:59:19.80 ID:I7BHEWRB
イザベラが気に病んでいたことをタバサは次々と否定していく。
だがイザベラの顔は完全には、うしろめたさはなくならない。
彼女はもじもじとしている。言いたいことをうまくいえない。どう切り出せばいいのかわからないといった様子だ。
陽介は彼女に代わってタバサに言った。
「タバサと仲良くしたいってことじゃね?」
陽介の主人はそうなの?というように視線を遣る。
「ちがっ……」
彼女は顔を赤くしながら否定の言葉を口に仕掛けたが押し止めて、代わりに黙って頷いて肯定した。
「わたしは構わない」
それがタバサのなんとも味気ない返答であった。
それから二人は子供のころからしたことのない家族としての抱擁をしたが、なんともぎこちなかった。
二人のぎこちない抱擁が終わると形容しがたい微妙な雰囲気が部屋に流れた。
そりゃ、そう簡単に仲良くなるなんて出来ないよな。と陽介が考えているとタバサが尋ねてきた。
「どうすればいい?」
どうすればいいとは主語も目的語もないなんともシンプルな質問文だが、陽介にはちゃんとその意味は伝わった。
タバサはイザベラと仲良くなる方法が知りたいのだろう。
さすがは付き合いが深いだけあるぜ。と、心の中で自画自賛する。
それはさておいてもタバサもイザベラと仲良くしたいと思っていることは歓迎すべきことに陽介には思えた。
だが具体的な方法を提案しようというと難しくなる。
んー。と陽介は首をひねった。自分は親友とどうしたっけか?と元の世界に居た相棒を思い出す。
冬でも学ランの前を閉めることがなく、灰色の髪を妙な形に切っていた親友の姿を思い浮かべる。
そういえばあいつ何を思ったのか、ちょうど今の二人みたいに突然抱きしめてきたな……。
案外悪い気分じゃなかった…ってこれだけだと何か怪しいヤツみたいだな。完二じゃあるまいし。
えーと、んでもってその後、自分があいつと本当に心を通わせたのは……
「川原で殴り合いの喧嘩……」
「それにする」
陽介が懐古して呟いたことをタバサは受け入れた。当然、陽介は慌てる。イザベラも驚いている。
「ちょっ、待てよ、タバサ!」
「なに?」
「えーと……ホラ、ここ川原じゃないし」
「ここでする」
「それに女の子が殴り合うってのは一般的じゃないような……」
「あなたはしたの?」
「いや、親友としたことがあるけどさ……」
104ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 15:03:17.06 ID:I7BHEWRB
「ならそれにする」
タバサは何を思ったのか殴り合うという意見が気に入ったようだった。
陽介が止めようとすると、イザベラが笑った。
「ははっ、なに?殴り合って分かり合おうっての?」
タバサはこくりと首を立てに振る。
「いいわ。あなたがそれで満足するっていうならわたしもそうするわ」
陽介の思惑とは反対になぜかイザベラも乗り気になってしまったようだ。
なんでこんなことに……。
呆然とする陽介に彼の主から、邪魔になるとマントを脱いでわたされる。
「手加減はしない」
戸惑う陽介を置き去りにして少女たちの喧嘩が始まった。
二人は示し合わせたように同時に拳を突き出した。
イザベラの腕の方が長いが先に相手に拳を当てたのはタバサの方だった。
より早い小さな拳はイザベラのボディに入った。
その拳を受けながらイザベラの拳は半瞬遅れて相手の薄い胸を打つ。
ダメージはイザベラのほうが大きかったが、下がったのは体格が小さいタバサの方だった。
タバサは右拳を構えて地面を踏みしめる。
腰の入ったタバサの拳はイザベラの頬に当たり、イザベラはタバサの横っ腹を殴った。
次にイザベラは顔を、タバサはわき腹を……というように拳の押収が続く。
避けることはしない。ただひたすらお互いの拳を相手に届けようとする。
さながら言葉の代わりに思いを届けようとするように。
トリステインの国賓クラスを迎えるための客室で、喧嘩っ早い少年だろうとたじろぐような喧嘩が行われている。
息を切らして戦う少女を見ながら陽介は結局見ているだけだった。
この争う物音を聞いて誰かやってくるかと心配だけはしていたが誰も来なかった。
そういや、あいつ今はどうしてだっけか?自分たちがこの世界に来たころには海外にいたはずだ。
親もとに帰った後、すぐにまた親の短期の出張が決まったから今度は旅行も兼ねて親についていったとか。
とはいえこの世界に来て一ヶ月くらいになるのでそろそろ帰って来ているだろうか。
八十稲羽には女子勢が残ってるはずだからきっと帰ったらめちゃくちゃ怒られるんだろうなあ。シンパイかけんなっつって。
そういえば、いつか完二とも殴り合いしようかと冗談交じりに約束したことがあったけど未だにしてねーな。
などと同じ部屋にいながら一人取り残されている陽介は少女同士の喧嘩が終わるまで仲間たちのことを考えていた。
一歩も引かない殴り合いは長く続いた。5分以上はやっていたかもしれない。
全力の殴り合いである。少女どころか男でさえ生涯にやるかどうかの激しい喧嘩をそれだけやったのだ。
その結果として、二人の少女は当然ながら満身創痍で、仲良く巨大なベッドで仰向けに転がっている。
ちょうど互いにベッドの反対側から倒れこみ、お互いに頭が当たりそうなくらいの距離だ。
二人とも汗を流しハアハアと息が荒い。
イザベラの頬ははれてドレスはところどころ破れて、タバサのメガネは傾いて白いシャツはボタンが飛んで下に着ているショーツが見えていた。
陽介は破れた服を隠すようににマントを主に返す。
105ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 15:05:17.78 ID:I7BHEWRB
「どうだ、スッキリしたか、二人とも?」
その答えは否定だった。
「ぜっんぜん!はあはあ…。顔も、お腹も、体中痛いし…。バカじゃないのあんた……」
「わたしもそう思う…」
確かに提案したのは陽介だが、彼の反対を無視して始めたのにひどい言われようだった。
「でも…エレーヌのことがわかった気がするわ…。小さな体なのにすっごく強くて……」
「鍛え方が違う」
そう言ってタバサは荒く息継ぎをする。イザベラは従妹のらしくない憎まれ口に苦笑した。
「そうよね…。わたしが…わたしたちがあなたをそんなに強くしたのよね…」
それから二人の荒い呼吸だけが聞こえた。
「わたし…あなたに嫉妬してた…。魔法の才能に恵まれてて…みんなに愛されてて…。
 わたしが持ってないもの…あなたは全部持ってた……。だからうらやましかった……」
また息使いが支配する沈黙が流れる。
「……ありがとう、エレーヌ」
「……わたしもありがとう」
それから二人の間に言葉はなくなった。
言葉はもう要らなくなったのだ。それを陽介は理解した。
ボロボロの二人の顔に浮かぶのは明らかな笑顔だった。
人のことバカとか言っておきながら、お前らスッキリしてんじゃねえか。
そう思っても陽介は口に出さなかった。代わりに別の現実的問題を口にする。
「で、その怪我どーすんだ?」
「どうするって?」
「治さないのかってことだよ?」
「治す……そっか治さないといけないわね」
「みんなが心配する」
「そうよね、エレーヌ……。ふふっ、まさか王族同士殴りあってるなんて知られたらみんなどう思うからしら」
その想像が愉快なのかイザベラは笑った。
確かに現王女が自分ではなく別の人物を王位に推しておきながら、
その二人が平民も真っ青な殴りをしたとなればきっと彼女が想像するように面白い顔の一つもするであろう。
「なんだか治すのもったいないわね……」
イザベラは愛おしそうに腫れ上がった自分の頬をさすった。
同じようにタバサも腕をなぜる。次に腫れ上がった顔に触れながら陽介に言った。
「あなたに治して欲しい」
「えっ、俺?」
「以前治してもらったことがある」
確かに陽介は回復魔法が使える。吸血鬼退治のときに戦いで傷ついたタバサを直したこともある。
とはいえクマの方が優れた回復魔法の使い手なので、普段はあまり使わないが。
「ヨースケってメイジなのかい?」
ペルソナ使いを知らず、当然陽介がペルソナ使いだと知らないイザベラは質問した。
「いや、メイジじゃねーんだけどよ……なんて言ったらいいかな……」
「回復魔法が使える」
タバサが端的に必要なことを言った。
「もしかして先住魔法?何でもいいか。わたしもヨースケに治して欲しいな」
「まあ、イザベラさんもそう言うなら……」
106ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 15:08:56.48 ID:I7BHEWRB
陽介はペルソナスサノオを召還して中級回復魔法ディアラマを二人に使った。
イザベラは突然現れたその亜人のようなものに驚いたが、自分の怪我が一瞬で治ったのにも驚いた。
完全回復する上級回復呪文ディアラハンには及ばないがディアラマも少女の喧嘩の傷くらいなら一発で治せる。
処置を終え、陽介は息をついてベッドに腰かけた。二人の少女のように横になったりはしない。
傷はいえたはずなのに二人の少女は未だにベットで仰向けになっていた。
怪我がなくなったところをさすりながらイザベラは仰向けのまま尋ねた。
「いったいなんなんだい、その力?」
「ペルソナっつーんだけど……説明が難しいな……」
「彼は別の世界から来た」
タバサも仰向けのままがあっさりと重要な秘密を暴露した。
「ってタバサさん?そんなあっさりとそんなこと言っていいわけ?」
「ふーん、別の世界から。なるほどねえ」
「信じてるし!」
「なに、じゃあ嘘なの」
イザベラはじろりと陽介を見てくる。
なんだか下から見下ろされるような不思議な気分になった。
「嘘じゃねえけど普通信じっか?別の世界から来ました、なんて」
「あんたは普通じゃないから、別の世界から来たって言われても信じるわよ」
「なんか、イザベラさんヒドイこと言ってない……?」
陽介はタメ息をつきたくなった。
「ねえ、そのイザベラさんってやめくれないかしら。中途半端に他人行儀よ」
「えっ……。いやでもイザベラさんって姫さまだし……」
「もう姫じゃないわ。だいたい敬語もあんたロクに使ってないじゃない」
「いや、敬語はイザベラさんがいいって言ったから……」
「とにかく呼び捨てでいいわよ。だいたい姫とか言い出したらエレーヌなんて王よ」
「タバサは王になるかどうかまだ決めてねーだろ」
そう言って陽介はタバサを見る。
タバサは横になったまま陽介を仰ぐようにして視線を返す。
「あなたはわたしが王になっても助けてくれる?」
陽介はきょとんとした顔を浮かべたが、すぐに笑った。
「あったりまえだろ。お前がなんだろうと助けてやるよ。元の世界に帰るまででよければな」
ありがとう、そう小さな声で聞こえた。
イザベラは仰向けのまま探るように手を動かして、タバサの手を握った。
握った手は同じように握り返される。
「ねえ、エレーヌ」
「なに?」
「父上を助命して欲しいの……」
タバサは手を握ったまま無言だった。
「わかってるわ。無理を言ってるってことは。父上は許されないことをしたということを。それでもあの人は……」
イザベラは手をさらに強く握る。
「あの人もわたしの家族だから」
タバサは答えを返せなかった。
しかし二人の手は強く、固く結ばれている。
107ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 15:11:17.93 ID:I7BHEWRB
タバサとイザベラは幼少時代から仲がよくなかった。
正確にいうならイザベラが一方的にタバサを嫌っていた。
それでも彼女らはまるで自分たちが生まれてからそうであったように、あるべき姿であるように、彼女たちは家族となった。

翌日、トリステインはアンリエッタ姫が王位を継承することを発表。
またトリステイン、ゲルマニア、ロマリア連合皇国の連名でオルレアン公の遺児シャルロットがガリアの新王になることが発表され、
その正当性は支持した各国、そして前ガリア王女イザベラがそれを保障した。
108ゼロのペルソナ 第18章 節制 後編:2011/08/24(水) 15:15:06.74 ID:I7BHEWRB
投下終了!
最近、スラお君のあとばっかに投下してますね。

前回・前章が地味だったので殴り合いをしてもらいました(嘘)。
今日気付いたんですけど、「ゼロのペルソナ」だとルイズよりもむしろタバサの方がちょっとツンデレっぽいですね。
それもこれも陽介が不憫が似合うというか、虐げられることが似合うせいですね。

次回から設定改変爆発です
109名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 18:24:12.39 ID:kztYrqE+
投下乙乙乙
110名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 20:46:14.62 ID:J5cOh5DH
>>100
> ギーシュ「甘いね、洗濯をやらせにいくなんてssじゃよくあることだよ」
クールに言うギーシュを想像してワロタ


>>98
スラお(というかスライム)は通常攻撃が体当たりなんじゃないの(特技的な意味でなく)?
ディノと戦ったときのはアレだがwwww
111名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 22:32:55.64 ID:DGiAzycR
遅ればせながら、萌えゼロの人乙です。

学院長室でのシーンで、通称『営業のテーマ』が脳内に流れたり、

「僕と契約して、『虚無の担い手』になってよ!」

と言う謎のフレーズが浮かんだりしたのは、ここだけの秘密だ(苦笑)
112名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 23:08:20.58 ID:RRkmDr7B
たしか一般的なスライムの体当たりでも大人のパンチと同等の威力があるんだっけ
113名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 23:20:21.03 ID:qqQDQE9V
8歳の子供がスライム三匹に撲殺されかかる(byX)
114名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 00:02:12.36 ID:MIqcYASp
ペルソナさん乙です。






このあと三人でニャンニャンしたのですか?
115ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:12:52.01 ID:cMPv3uie
問題なければ5分後ぐらいから四話目投下させてください
116ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:18:28.78 ID:cMPv3uie
厨房は目の前。
ただシエスタにありがとうと言ってもらえるようなことをしたかっただけ。
それがこんなにも面倒なことになるとは、夢にも思わなかった。
まず第一のアクシデント―――タバサとの遭遇。
ここ数日、ルイズと共に行動して、何人かの生徒の名前は覚えた。
その一人、タバサが厨房に向かうスラおの目の前に立ちはだかった。
「誰?」
意外にも、無口で本にしか興味を示さないタバサが先に声を発した。
「・・・ゆ・・・勇者・・・かな・・・」
何故、食堂で食事をとっているはずのタバサがこんなところにいるのか。
当然、生徒でも教師でも使用人でもなく、普段の使い魔の姿でもないスラおが不審人物としてとらえられるのは当然である。
それはスラお自身も理解していた。
だが、別に見つかった時の言い訳を考えていたわけでもない。
そのため、つい苦しすぎる言い訳が口をついた。
「嘘」
それは驚きのあまり言ってしまったものではなく、明らかに見透かしたものだった。
「う、嘘じゃないって!オイ・・・オレは勇者だ!間違いないって!」
タバサは何も言わずに杖を構える。
相手が自分のことを兵士か何かだと言うのなら、冷静に事情を聴いて対処もしただろう。
しかし、勇者などと意味不明な供述をする不審者を放っておくわけにはいかない。
上半身裸で、威厳のない話し方。
自分の中の勇者像を汚されることが我慢ならなかったという理由もある。
「ま、待てって!何もしねーって!」
ただでさえ困った状況にも関わらず、問題は畳み掛ける。第二のアクシデントだ。
「あら?何やってるの?タバサ」
テレテレテレテレテー キュルケが現れた!
「その殿方はどなた?」
「不審者」
タバサは何の躊躇いもなく、自称勇者を追い詰める。
「あら素敵」
「何が素敵だっつの!目が笑ってない!」
タバサがそう言うからだろうか、キュルケもスラおに敵意を向ける。
117ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:20:09.91 ID:cMPv3uie
逃げるしかない。こんなところをシエスタに見られるわけにもいかない。
しかし、世の中そんなにうまくいかない。第三のアクシデントは早速やってくる。
「あの、どうかなされましたか?」
厨房の目の前で騒いだせいか、シエスタが中から現れ声をかけてくる。
「不審者」「不審者よ」
二人が同時に答える。
「ま、まぁ、大変!」
この姿を見られた。シエスタにとってはもはやただの不審者でしかない。
シエスタをオロオロさせてしまったことにスラおはオロオロする。
次の瞬間、走っていた。それもとんでもない速さで。並の人間では目でとらえることもできないほどに。
「追いかけるわよ!」
キュルケがそう言うと、タバサは頷いた。
こうしてスラおのほんの数時間の逃亡生活が始まるのだった。

日は沈み、生徒は皆自室に帰ったころ、ルイズは一人で庭にいた。
「スラおーー!」
昼から姿の見えない使い魔を探す。
「もう!あのバカ使い魔、勝手にどっか行っちゃって」
「こんな時間に草むしり?」
そこにキュルケとタバサがやってくる。
「違うわよ。スラおを探してるの」
「逃げ出したんじゃないの?あんた頼りないから」
「な、そんなわけないじゃない!そんなわけ・・・」
「ま、いいわ。私達も人を探してるの。金髪で剣と盾を背負った上半身裸の変態を見なかった?」
「見てないわ」
「そう」
キュルケはそれを教師達に伝えることもなく、完全に不審者退治を楽しんでいた。
そのため、ちょこまかと素早く逃げるスラおを捕まえられずに見失ってしまった。
午後の授業にはきちんと出席していたので、まだあの不審者が学院内にいると本気で思ってはいない。
ちょっとした暇つぶし程度だ。
その時キュルケは背後に気配を感じた。
もしかしたら例の不審者かもしれないと、杖を構えて勢いよく振りかえる。
しかし、そこにいたのは人間ですらなかった。
巨大なゴーレムだ。
「きゃあああああああ!」
キュルケが叫んで逃げ出す。タバサもそれに続く。
ルイズは放心状態。ただゴーレムを見上げて突っ立っている。
ゴーレムは宝物庫を殴る。どうやら狙いはルイズ達ではないようだ。
それを理解したルイズは、逃げるどころか攻撃する。
使いたかった魔法が何かは分からないが、とにかく爆発は起こる。
ゴーレムの右腕が僅かに削れた。そんなかすり傷程度のダメージしか与えられない。
しかもその傷は一瞬で回復してしまう。
「そ、そんな・・・」
恐ろしく巨大なゴーレムはおそらくトライアングルクラスのメイジによって作られたものだろう。
そんな物に喧嘩を売るとは正気とは思えない。
それでもルイズは引かない。再び魔法を使う。そして爆発。
ゴーレムの標的は当然ルイズに変更される。目的を邪魔するものを早々に排除してしまおうというわけだ。
すると、ウィンドドラゴンに乗ったタバサとキュルケがやってくる。
なんとかルイズを連れて逃げようとするが、それよりも早くゴーレムの拳がルイズに振りおろされる。
それでもルイズは諦めずに、必死で杖を振る。
次の瞬間、ズドンッという音とともに地面がへこみ、土煙が立ち込める。
「ルイズ!」
キュルケが叫ぶが、ウィンドドラゴンは仕方なく上空へと昇りゴーレムと距離をとる。
118ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:22:14.35 ID:cMPv3uie
「う・・・んっ・・・」
潰された。そう思った。しかし手が動く。瞼も開く。息もしている。
金色の髪が揺れる。
褐色の肌をした男がルイズを抱きかかえている。
筋肉はゴツゴツしているが、妙に心地良い。
「だ、誰!?」
状況が飲み込めないルイズはつい暴れてしまう。
「もう大丈夫だ。怪我してないか?」
男はまっすぐルイズの目を見て言う。
ルイズの頬がほんの少し赤く染まる。
ギーシュとは正反対の顔つき。
それは悪い意味ではない。
美しいという表現よりも凛々しいという表現がぴったり・・・そんな顔つき。
「倒せばいいんだろ?アレを」
男はゴーレムの方に視線を向ける。
「そ、それはそうだけどっ・・・だからあんた誰なのよ!?」
ルイズはそっと、その両腕から降ろされる。
ルイズが男の正体がスラおであることに気づくことはない。
それも当然、まさかあのちんちくりんなスライムが人間の姿になろうとは想像できるはずもない。
「あ!あの変態・・・ルイズを助けてくれたみたい」
キュルケはほっと胸をなでおろす。
ゴーレムの右肩には黒色のローブを羽織ったメイジが立っている。
キュルケがそれを自称勇者に叫んで伝える。
「肩の上の男を狙って!」
「いや、女だ」
その一言に、キュルケもタバサもルイズも目を丸くする。
深くかぶったフード・・・その見た目から性別を言い当てるのは難しい。
そしてスラおは剣を抜いた。
このゴーレムはギーシュが作り出したものとは違う。
当然自分の世界のゴーレムでもない。
相手の実力が分からないのなら手加減をしなければいい。
スラおは剣を全力で振りきる。
ゴーレムまでは距離がある。傍から見ればただ素振りをしているだけだ。
しかし、不可視の斬撃は踊り、ゴーレムの両足は切断され、粉々に砕け散る。
「なっ!?」
黒ローブの女は慌てて杖を振りゴーレムにバランスをとらせる。
「す、すごい・・・」
ルイズは開いた口が塞がらない。
「何あれ!?風の魔法?」
「分からない」
キュルケも驚き、タバサに状況の解明を求めるが、タバサもまた何が起こっているのか分からなかった。
その斬撃に魔力と思しき気配は、全くと言ってなかったからだ。
119ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:23:54.40 ID:cMPv3uie
スラおは再び剣を振る。
その一振りは黒ローブの女を狙ったものだ。
女はゴーレムから飛び降り、難を逃れた。
しかし、ゴーレムは右肩から胴体を縦に真っ二つにされた。
力加減を間違えたのか、宝物庫までも破壊してしまう。
「次元が違う」
地上に降りてきたウィンドドラゴンに跨るタバサが呟いた。
「終わったぞ」
そう言ってルイズの元に歩み寄るスラおとキュルケ達の目が合った。
キュルケはスラおを追いかけまわしていたとは思えないほど目を輝かせて、ニッコリと笑顔を浮かべている。
誤解が解けたということだろうか。それとももう追いかけるつもりがないだけだろうか。
スラおは申し訳程度に笑顔を作るが、それは引きつっていた。
「ゴ、ゴーレムが・・・・」
今だに緊張状態を緩めないルイズがスラおの背後を指さす。
振り返ると、絶命させたはずのゴーレムが立ち上がり、破壊した部位も元通りになって歩き始めている。
「へー、中々やるじゃねーか」
黒ローブの女はまだゴーレムに乗っている・・・ないしは近くにいるはずだ。
スラおは両手で剣を強く握り、振り翳す。
最大の一撃を放てば、ゴーレムとその一帯を消し炭にすることなど容易い。
だが、剣が振り下ろされることはなかった。
急に胸が痛み出す。鳩尾の部分に浮かび上がる不可思議な文字。
「いててててててっ!」
スラおは瞬時に痛みの意味を理解した。
力を無理やり塞き止められる感覚・・・。
元の姿に戻る・・・そう感じて走り出す。
「ちょ、ちょっと!」
ルイズが呼び止めようとするがそんなことは聞いていられない。
ゴーレムは逃げている。ルイズ達に危険が及ぶことはもうないだろう。
逃亡する敵を倒すことよりも、まず自分の正体を隠すことこそ最重要事項だ。
正体を知られることは、弱みを握られることだ。
と、それらしい理由を挙げてはみるが、実はただ恥ずかしいだけだったりする。
しばらくたって、ゴーレムは自然に崩れ去り、そこに黒ローブの女はいなかった。
120ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:25:50.29 ID:cMPv3uie
翌朝・・・。
学院の教師達は慌ただしく動き回る。
土くれのフーケが宝物庫に仕舞われていた『破壊の杖』を持ち去ったからだ。
昨晩、巨大なゴーレムを使い、宝物庫を破壊した黒ローブの女がそうだ。
破壊の杖を盗んだ上に、宝物庫の壁にちゃっかり犯行声明まで残していった。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
それを知ってスラおは悔しがる。
そんな余裕を与えたつもりはなかったのだが・・・フーケがそれだけの実力者だったということだろうか。

あの後、案の定スラおは元のスライムの姿に戻ってしまった。
しかし、これもまた案の定、瀕死状態に陥ることもなかった。
胸に浮かび上がったルーンはスライムの姿ではどこにも浮かび上がらない。
ルイズ曰く、背中にルーンがあったらしいが、それはもう消えてしまっている。
だが、あのルーンが自分に魔力を提供していることは確かだろう。
体に刻みこまれていないだけで、ルーンの力は確かに存在しているのだ。
ルーンの魔力をもってしても維持しきれないのだろうか、自分のHPもMPも消費しない代わりに、エボルシャスの力が制限されてしまうらしい。
普段なら力を誇示しても、もう少し長い間人間の姿を保てるはずだ。
などと考えながら、スラおは学院長室の外で聞き耳を立てる。
フーケの件で、目撃者であるルイズ達が呼び出されたのだ。
当然、使い魔は部屋の外で待機させられる。
微かに聞こえてくる会話・・・数人の教師が怒鳴りあっている。
それが途端に静かになって、こんどはルイズ達が何か喋っているようだ。
後ろから足音。緑色の長い髪、メガネを掛けた頭の良さそうな女が勢いよく扉を開ける。
急ぎの用だったのか、扉を閉め忘れてくれたおかげで、耳を澄ませなくとも会話を聞くことができるようになった。
「ミス・ロングビル!どこに行っていたんですか!」
息を荒らげて、コルベールが怒鳴る。
ロングビルと呼ばれた女は冷静に答える。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。フーケの居所が分かりました」
「ほう、流石はミス・ロングビル。仕事が早いうえに的確じゃ」
オスマンは大きく首を縦に振り、感心した。
その流れで捜索隊を教師の中から募るが、誰も名乗り出るものはいない。
結局、目撃者のルイズ、キュルケ、タバサの三人と案内役のロングビルが捜索隊としてフーケを追うことになった。
「オ、オイラも一緒に行っていいよな!?」
学院長室から出てきたルイズに問う。
「当然でしょ。あんたは私の使い魔なんだから!そんなことより昨日はどこに行ってたのよ」
その問いには答えられなかったが、勇者のことを聞かれることもなく、一先ずは安心してルイズの後についていったのだった。
121ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/25(木) 16:28:28.39 ID:cMPv3uie
以上です。
エボルシャス使用後の画像、検索したらすぐ出てくると思ったけどなかなか見つからないなぁ
122名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 17:12:34.41 ID:yslSc9eS
おつん

>>112
ボーレタリア地方のスライムにもなると、防城兵器か重装歩兵の密集陣形くらいに(ry
123名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 17:17:55.08 ID:IbfpV++K
124名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 21:06:29.16 ID:XU4qCFBK
誰かもう一度ご立派さまを召喚する猛者はいないかな
125名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 21:14:30.23 ID:KCvcxeii
ハードルが高すぎるだろ
126名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 21:19:47.26 ID:MmMigLSw
色んな意味でハードルが高いな
127名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 21:42:56.20 ID:M8DW6tgu
ご立派さまでシリアスとか不可能に挑戦するヤツ居ないかな
128名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 21:51:03.27 ID:05lW7G2P
スラおの声は甲高い声のイメージあって脳内でコンバット越前に変換してしまってるから
勇者のセリフがいちいち可笑しいw
129名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:00:47.47 ID:+qcsAoSq
オナニスト・クリスタルボーイでも召喚しようかと思ったけど二次ネタ過ぎるのでやめた
130名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:07:01.46 ID:SWkVo9Rd
>>129
ワルド 「ルイズ、僕とともに聖地に…」
クリボー 「知るかバカ!そんなことよりオナニーだ!!」

…なんか出てくる敵全員にこれしか言わなさそうだなw
131名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:12:33.10 ID:h/RstJL/
>>130
誰も見ちゃいないさ!月以外はね
132 忍法帖【Lv=20,xxxPT】 :2011/08/25(木) 22:16:11.24 ID:IF2fLKQG
>>122
ゲームだから問題ない。
他所だと攻撃力が素手>88mm砲な人間とかいるけどやっぱり問題ない。

……RPGでレベル99って、実際にいれば人間辞めてる領域だよな。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:19:45.35 ID:Eu+zDNh6
クリボー「バカめ!くぎゅに召喚されたからぶっこく!それだけのことよ!」シャーッ!
134名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:22:10.32 ID:XU4qCFBK
魔王ってさ、レベル99の勇者が攻め込んできたときどんな気分なんだろうな
135名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:23:22.44 ID:8eTNBHUb
アンリエッタ「忠誠には報いるものがないといけません」
手を差し出す

クリボー「握ってくれるのか!?」
136名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:25:13.35 ID:pbRugs0R
>>129
ランス召喚ネタ、七英雄召喚
みんな考えたはずだ

>>134
構わず外科手術で勇者の称号を奪い取る程度のレベル
え?魔王、マオじゃなくて、こいつぁ失礼しましたー
137名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:25:35.92 ID:SWkVo9Rd
ご立派様でないと太刀打ちできんwww
138名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 22:55:06.72 ID:YYP5vTvP
キスオナニー
罵声オナニー
寝顔オナニー
鞭オナニー
下着オナニー
デルフオナニー
床食いオナニー
吊るされオナニー

クリスタルボーイなら一巻だけでこれくらいは……
139名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 23:01:51.81 ID:xrra6OyD
あのキャラのもとにQBが派遣されました
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1304800154/
140名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 23:07:14.19 ID:XU4qCFBK
いらん宣伝するな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/25(木) 23:16:48.35 ID:QbBWAImQ
>>138
召喚オナニーがないじゃないか
142名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 05:26:24.04 ID:EfNZlrsW
クリスタルボーイ…実写版コブラには期待してる
143名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 09:26:33.15 ID:Ya0zEOzA
モロボシダン召喚って今まであったっけ?
人間体である程度宇宙人と戦え、更に超能力まで使えるけどダンなら
いい感じにバランスが取れそうな気がする
144名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 13:54:37.43 ID:Zu5B7BMG
落ちた?

ゼロの使い魔のSSを語るスレ 52
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1313803477/
145ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:10:16.21 ID:lrTuDJm1
問題なければ5分後ぐらいに五話目を投下させてください。
146名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 15:11:03.58 ID:7e20Yd/1
支援
147ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:15:40.84 ID:lrTuDJm1
馬車に揺られながら、空を見上げる。
この世界に来た時と同じ青が広がっていた。
ロングビルが手綱を引き、その他が荷台に乗っている。
キュルケの使い魔は無駄に大きいせいか、学院に置いてきたようだ。
タバサの使い魔も巨大だが、風竜であるため空を飛べる。
もしかしたら近くを飛んでいるのかもしれない。
スラおは小さくて、場所に困ったらギュッと圧縮できるので問題なくルイズ達に同行する。

「で、ルイズ。昨日のあの殿方は一体誰なのよ」
「知らないわよ。私も初めて見た人よ」
キュルケはゴーレムを圧倒的な強さで翻弄した自称勇者が何者なのか気になるようだ。
ルイズを救ったため、ルイズの知り合いだと思っているらしい。
「嘘よ。あの人、ルイズに対して親しげに話しかけてたわ」
まぁ、正体がスラおであるから当然なのだが。
たわいも無い会話で盛り上がっている中、相変わらずタバサは本を片手に黙っている。

馬車は深い森に入っていった。
妙に薄暗く、じめじめしている。
不気味で、できることなら近づきたくない森だ。
しかし、スラおは胸が躍る。
この世界に飛ばされて、始めて学院から出た。
クリオと冒険していた頃は、旅の扉の先でこんな森に何度も遭遇したものだ。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
森の中は木が生い茂り、小道しか存在しない。
馬車で進むことが不可能と判断したのだろう、ロングビルが提案する。
全員が馬車から降りて、森の奥へと進んでいく。
歩き続けると、開けた場所に出た。
そこには一件の小屋がある。
ロングビルが小屋に指を指す。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にフーケが」
全員で木と草の陰に隠れる。
タバサがその場にちょこんと座り、杖を使って地面に絵を描き始めた。
「作戦」
短くそう言うと、キュルケもルイズも腰をおろして、タバサの描いた絵を囲む。
148ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:16:31.62 ID:lrTuDJm1
小屋までには罠が張られているかもいるかもしれない。
まずは道中の安全を確保する。
次に、中にフーケがいた場合は外に誘き出す。
そこに一斉攻撃を仕掛けるというわけだ。
「で、誰が罠が仕掛けてあるかもしれない場所を突っ切って、フーケを誘き出す囮になるわけ?」
キュルケが嫌そうな顔でタバサに尋ねる。
「すばしっこいの」
タバサのその一言で全員がスラおの方を見る。
「や、やっぱりオイラ・・・?」
もはやスラおに拒否権はなかった。
地面に罠が仕掛けられている可能性を排除するため、飛び跳ねずにあえて這うように進む。
「罠はないみたいよ」
スラおが小屋に到着したのを確認して、ルイズが安全であることを確信する。
小屋の中に入ると、まるで物置のよう。人の姿は見られない。
不自然な点を挙げるとすれば、中央にこれ見よがしに宝箱が置かれていることだ。
「誰もいないぜー!」
小屋から出て、ピョンピョン跳ねながらルイズ達にフーケの不在を伝える。
「あのバカ!大声出してっ!」
ルイズが怒って、キュルケがため息をついて呆れる。タバサは無表情である。
早速全員で小屋に向かう。
「結局、フーケはとっくに逃げてたわけねー」
キュルケが残念そうに項垂れる。
だがとんでもない収穫はあった。『破壊の杖』が宝箱の中から見つかったのだ。
「あら、フーケって随分とドジなのね」
「お、おい!それってホントに破壊の杖なのか!?」
「間違いないわ。宝物庫を見学したとき確かに見たもの」
キュルケに確認したが、それは間違いなくこの世界で『破壊の杖』と呼ばれているものらしい。
「マ、マジかよ・・・」
スラおはその事実に驚く。
正確にはそれは杖ではない。
しかし、槍でもないし、剣でもない。トゲが付いてるわけでもない。
見た目で杖と勘違いしても仕方がないだろう。
149ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:17:58.35 ID:lrTuDJm1
次の瞬間、外で見張りをしていたルイズが悲鳴を上げる。
「きゃああああああああ!」
「ルイズ!?」
小屋の屋根が吹き飛ぶ。
そのおかげで視界を遮るものがなくなった。
ズシンという音がなり、ゴーレムが現れる。
「まさか、フーケ!?」
キュルケがそう言う間に、タバサは真っ先に呪文を唱える。
ゴーレムをも包みこんでしまいそうなほど巨大な竜巻が巻き起こる。
しかし、ゴーレムはびくともしない。
少し遅れてキュルケが呪文を唱えて、杖の先から炎を放出し、ゴーレムを焼く。
だが、衝撃のないただの炎では、ゴーレムにダメージを与えることはできない。
「退却」
タバサが呟く。
「お、おい!ルイズはどこだよ!」
逃げてゆくキュルケとタバサを背に、スラおはルイズを探す。
ルイズはいつの間にかゴーレムの背後に立っていた。
ゴーレムの背中が爆発する。
たとえ失敗魔法であっても、今だけはキュルケの炎やタバサの風よりは強いダメージを与えられるだろう。
それでも削れたゴーレムの一部はすぐに元通りになってしまう。
「ばっかやろおおお!」
スラおは勢いよくルイズを蹴飛ばす。
「何すんのよ!バカ!」
既にゴーレムはルイズを標的としている。このままでは危険だ。
「お前の魔法であんなのに敵うわけねぇだろ!」
「そんなのやってみないとわからないじゃない!」
「オイラが注意を引くからルイズは離れてろ!」
「だめよ!私がやらなきゃだめなの!・・・私の魔法ならっ!・・・失敗魔法だけど・・・あいつに傷をつけられる」
大声で捲し立てていたルイズの声が急に小さくなる。
「フーケを捕まえれば、もうゼロだなんて言われない・・・」
スラおは何も言えない。ルイズにはルイズの思いがある・・・。
クリオは時に弱音を吐くものの、自信に満ちていた。
だからこそルイズにどう声をかければいいか分からない。
もしかしたらルイズのプライドを傷つけてしまうかもしれない・・・それでも自分の素直な気持ちをぶつける。
150ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:20:40.31 ID:lrTuDJm1
「オイラを信じろ!」
そうだ・・・結局自分は何の力にもなれない。
使い魔の方が自分より優秀だ。スラおに任せればいい・・・自分は役には立てない・・・。
「好きに・・・しなさいよ」
ルイズは泣きそうな声で言う。
「バカ野郎!オイラにもお前を信じさせろ!」
スラおはルイズのマントを噛んで引っ張る。
ゴーレムの攻撃は範囲が大きく強力だが、動きは鈍い。その攻撃を避けることは可能だ。
「オイラもルイズを信じるから、お前もオイラを信じろっつってんだよ!」
再びスラおが叫ぶ。
ルイズはその意味をまだ理解できずにいる。
私は何もできない。信じられても困る。
そんな時、思い出すのはスラおの世界の話。
別の世界が存在するなんて信じられない・・・でも、モンスターマスターの話には興味を引かれた。
使い魔と主人の関係とは少し違う。主従関係がハッキリしているわけではなく、まるで親友同士のような関係。
そうだ、スラおは『信じろ』と言った。『任せろ』とは言ってない。

私にも・・・やれることがあるの・・・?

「スラお・・・」
ルイズはゆっくりと自分の足で立ち上がる。
「あいつの足、あんたの魔法で壊せる?」
「あたぼうよ!」
「右足だけ狙って!」
ルイズの声に反応して、スラおはゴーレムの右足だけを狙う。
「ベギラマァ!!!」
ゴーレムの足は、抉るような炎に焼かれ、ボロボロと崩れる。
それでも太い足はかろうじて繋がっていた。
そこに爆発が起こる。ルイズの魔法だ。
ようやくゴーレムの右足を破壊することに成功した。
「やるじゃねーか、ルイズ!」
「当然よ!私は貴族なんだから!」
ルイズはすっかり自信を取り戻したようだ。
スッキリした頭は冴えわたる。
以前、謎の剣士がゴーレムの両足を切断した時は、だるま落しのように見事に着地し、バランスを保たれてしまった。
なら片足ならどうだ。あの巨体ならバランスを崩して倒れるはずだ。
その作戦は正しい。だがゴーレムは、執拗にバランスを取り続けて倒れない。
その時、強い風がゴーレムを刺す。
風竜に跨ったタバサだ。キュルケもいる。
片足を失い、強風に煽られたゴーレムは前のめりに倒れる。
「スラお!思いっきり体当たりしてあげなさい!」
151ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:21:50.93 ID:lrTuDJm1
ルイズはしっかり計算して、ゴーレムの下敷きにならない位置に移動していた。
スラおの強烈な体当たりは対ギーシュ戦で一度見ている。
ゴーレムが倒れる勢いと、スラおが下から突き上げる勢いが合わされば、ゴーレムの胸に風穴を開けることができるだろう。
「いいぜ!オイラの取って置きを見せてやる!」
スラおの体がバッと掌のように開いて巨大化した。
「いくぜ・・・超神秘的で超かっこいいオイラのオリジナル技・・・」
「え?ちょっと、オリジナル技とかじゃなくて体当たりだってば!」
今までスラおとの息が合っていたぶん、急に訳の分からない技を使おうとしたことで、ルイズは少し戸惑ってしまった。
それでも構わずスラおは叫ぶ。
「スラお・ジャスティスアッパァー!!!!!」
掌のように広がったスラおの体が丸くなる。それはまるで拳。
胸に風穴を開けるどころではない。ゴーレムの胴体は粉々に砕け散り、残された四肢と頭は繋がりを失って、崩された積み木のようになってしまった。
威力は全然違ったが、確かに体当たりには違いない。
「す、すごい・・・」
ルイズは謎の剣士がゴーレムに攻撃した時と同じ感想を言ってしまう。
「へへーん、どうだ!オイラのこと見直しただろ?」
ギーシュを倒した時よりも何倍も凄い。
素直に感心する。

「やるわねぇ、ルイズの使い魔」
タバサの風竜に乗って、ルイズ達の上空を飛ぶキュルケもまた感心する。
すると、『破壊の杖』をしっかりと握りしめたタバサが呟く。
「いない」
「え?誰が?」
「ミス・ロングビル」

一方、地上で喜び合うルイズとスラお。
しかし、その背後でゴーレムが音を立てて蠢く。
やはりフーケを倒さない限り、ゴーレムは何度も復活してしまうのだ。
フーケの魔力切れを狙う手もあるが、そうなる前にやられてしまいそうだ。
「ど、どうしよう。何度やっても・・・」
自信をつけたルイズも、流石に弱音を吐く。
こうなったら、タバサ達に上空からフーケを探してもらおうかとも考えた。
だが、スラおは『破壊の杖』のことを思い出す。
あれはフーケには使えないはずだ。
そして、見つけてくださいと言わんばかりに、分かりやすい場所に仕舞われていた。
ならもしかしてフーケの目的は・・・。
この考えが正しければ、フーケは自ら姿を現すはず。
「破壊の杖を投げてくれ!!」
152ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:23:17.15 ID:lrTuDJm1
スラおはタバサに向けて叫ぶ。
タバサは素直に破壊の杖を投げる。
「ちょ、ちょっと!何やってるの!?タバサ!」
おそらくは、風竜に乗っている間はフーケも破壊の杖に手が届かないであろう状態。
にも関わらず、タバサはあっさりと破壊の杖を地上に戻してしまった。
「大丈夫」
その後に、たぶん、と付け加えてタバサがキュルケをなだめる。
不安ではあるが、タバサの判断は大体正しい。
キュルケは無理にでも納得して、破壊の杖のその後を見守るしかなかった。

「何言ってるのよスラお!」
「オイラを信じろって!」
ルイズは仕方なく破壊の杖をキャッチする。
ゴーレムはすでに復活して、今にも拳を振り降ろそうとしている。
「そいつを振るんだ!」
それはここにいる誰も使えないはずの代物。
でもスラおはルイズを信じている。ただ、それだけではない。
何故か、それをルイズが使えるような気がしたのだ。本来は使えるはずのない、それを・・・。
これもルーンの力なんだろうか?それともモンスターマスターとの繋がりによるものなのか。

ルイズは訳も分からず、破壊の杖を振る。
どうせ何も起こらない。起こったとしても、それはただの爆発だろう。
ルイズ自身もそう思っていた。
視界に入るのは光。野蛮な爆発が起こるわけでも、炎や風が巻き起こるわけでもない。
強い光が、天から降り注ぎ、ゴーレムを包む。
あまりの眩しさに、ルイズはもちろん、キュルケとタバサも目を瞑る。
瞼を開けた時・・・そこにゴーレムの姿はなかった。
153ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:24:01.33 ID:lrTuDJm1
「「「え?」」」
全員が状況を飲み込めず、意味のない声を上げてしまう。
これほどの魔法は見たこともない。どの系統に属するかも分からない。
そう、それはまるで虚無の魔法・・・。
風竜が地上に降り立ち、タバサとキュルケがルイズに駆け寄る。
「やったわね、ルイズ!」
素直にルイズと喜び合おうとするキュルケ。二人が犬猿の仲とはとても思えないほど。
その時、呆気にとられて隙だらけのルイズの足元が盛り上がる。
バランスを崩したルイズは、破壊の杖を手放してしまう。
落ちた杖を拾う。誰が拾ったのか?
ミス・ロングビルだ。
「ミス・ロングビル!無事だったんですね。いままで何処に?」
キュルケが声を掛けるが、彼女は答えない。
それどころか、破壊の杖をこちらに向けた。
「これは・・・一体どういうことですか?」
尻もちをついたルイズが、目を細め、厳しい口調で聞く。
「まだ分からないの?私が土くれのフーケよ」
その事実に、驚いていないのはタバサだけ。
この状況下で、冷静なのはタバサとスラお。
「予想以上の威力だったわ・・・この破壊の杖。まさか私のゴーレムを跡形もなく吹き飛ばすなんてね」
フーケは全員に杖を捨てるように要求。それに逆らうものはいない。
そんな時、不穏な空気をかき乱すようにスラおが言った。
「残念だけど、そいつは使えないぜ?」
忠告するが、フーケは聞き入れない。
こうなれば、力尽くで杖を奪い返すまで。
体当たりをしようと動いたスラおを見て、フーケは透かさず杖を振る。
しかし、何も起きない。
「そいつは商人しか使えねーんだ」
鳩尾に体当たりされたフーケは簡単に気絶した。
154ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/26(金) 15:25:10.36 ID:lrTuDJm1
以上です。
調子に乗ってフーケのゴーレム強くしすぎた
155名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 16:10:29.76 ID:uC+BFA7i
>>143
1話でエタって登録もされなかったカスならあるが、それを除いてはないな

セブンは時代と平行世界に散らばってるからどの時期を選ぶかでストーリーかなり変わりそうだ
156名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 18:14:02.58 ID:34oQtU9x
『魔物』さん? 乙

>>143
ルイズをジープで追いかけ回して、「特訓」する姿しか思い浮かばないんですが。
157名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 18:15:19.90 ID:L7g2SImC
久々に来た
旬の虎兎でも有ると思ってたけど
まだ誰も書いていないんだな
158名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 18:37:58.56 ID:asXd0L5X
割と古いのばっかだよ。まどマギもない、パンツじゃないヤツもなかった。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 18:38:13.85 ID:uC+BFA7i
>>156
ダンは基本温厚だぞ。ゲンに対してはほかに地球を守る手段がなかったからのやむなさで本人もそれを苦にしていた
MACの隊長時代もゲンの友人の誕生パーティに花を送ったり隊員の誕生パーティを開いたりと心づくしを見せている
160名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 18:55:19.11 ID:QhMOztBq
>魔物
マモノ・・・グレーテル、クレオ、ピーちゃん、狼・・・
あいつらを全部まとめて召喚
得体が知れないから契約したら意外と分かり合えた・・・

しかしそんなルイズたちの前にニーアが・・・

>ダン
SHOのリュウセイもサイコドライバー能力を鍛える特訓がそうとう厳しいらしいことを言ってたなぁ
べ、べつにラスボスさんが恋しいとかそんなんじゃないんだからねっ!!
あるいは諸星中学の暴れん坊メガネを・・・
161名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 19:49:42.11 ID:PKboegBb
>>157が牛さん召喚物を書いてくれると聞いて
162名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 20:08:29.76 ID:34oQtU9x
>>158
ストパンはゼロ魔とは相性は良さそうだけど
WWU系航空機少女として見ると、『萌えゼロ』さんとこの「鋼の乙女」と似てるんで
差別化等から 此処ではやりにくいのかも?
クロスさせるなら ルイズ逆召喚の方がやり易い気がする。

まどかは、
…QBがハマりすぎて、手を出すのが怖い
163名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 20:09:54.64 ID:ee0sAdEt
>>161
DECOの牛ではいけませんか?
間違いなく一発ネタにしかならんが
164名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 20:24:39.75 ID:qfCMsTLv
ストパン出すなら
剣使いのもっさんが一番だと思う
165名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 21:02:27.50 ID:PKboegBb
アルビオンではテファが肩……リーネちゃんを召喚してるんですね
166ゼロと電流:2011/08/26(金) 21:14:24.28 ID:PvtOevgJ
特に問題なければ、五分後から短めですが投下します。
167ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:19:11.94 ID:PvtOevgJ
 地下のラボ内に並べられた三機のザボーガーを才人は興味深そうに見比べている。
 一つは完成予想模型であり、言ってしまえばただのマネキンだ。
 一つは現在建造中のであり、半ば内部構造が露出している状態。
 そして最後の一つは、激しい戦闘を終えてきたかのように所々損傷し、その手にはデルフリンガーを握りしめている。

「やっぱ、そっくりだよな」

 才人はうんうんと何を合点しているのか、頷きながら飽きもせず眺めている。

「そりゃあ、本人だからな」

 ザボーガーに握られたデルフが答えると、サイトが首を傾げた。 

「本人? 人?」
「ん? 本……電人? 本電人で良いのか?」
「さあ?」
「その辺りは再考の余地があるようだね」

 二人(?)に声をかける、ディスプレイを眺めていた男……大門勇は、手元の電源を落とすと才人に向き直った。

「区別するための名前は、才人君に付けて貰おうか」
「え、俺。いいの? 豊さんは?」
「あいつはまだまだ帰ってこないからな」
「留学してるんだっけ」

 勇の息子である大門豊は、現在は地中海コルタ島で秘密刑事としての訓練中なのだが、それを才人が知るわけもない。
 一部の警察関係者以外には、海外留学という事で話が通されているのだ。

「うむ、だから、君に任せよう」

 才人の両親はそれぞれ、勇の教え子でもあった。そのため、才人自身もこのラボへは良く出入りしている。
 世界屈指のロボット工学者である大門勇も、才人にとっては好奇心を満足させてくれる気の良い小父さんなのだ。

「よし。それじゃあいい名前、考えてやるからな」
「おお、よろしく頼むぜ、坊主」
「だから坊主じゃねえって」
「サイトだったか。じゃあ俺はデルフリンガーだ。デルフで良いぜ、坊主」
「おう、デルフ。って、坊主のままじゃないか」 
168ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:19:55.16 ID:PvtOevgJ
 騒がしいやりとりを最後まで続けながら、サイトはラボを後にする。
 残った勇は、今度は別の機械に電源を入れると、デルフザボーガーの前に立つ。

「私がまだ完成させていないザボーガーか……」
「話を始めようか?」

 サイトがいる前では敢えて語らなかったデルフ。
 その一点で、勇はデルフの話を聞く気になっていた。

「それとも、こいつのメモリとやらを覗いた方が手っ取り早いか?」
「同時進行で行こう。概略は君に聞くとして、細かい部分はメモリを再生する」
「じゃあ、どの辺りから始めようかね」
「まずは、異世界の話だけに限定してくれないか?」
「つーと、ハルケギニアの話かい」

 ザボーガーはまだ完成していないのだ。そうなると、デルフザボーガーはどこから来たことになるか。
 例えそれがどれほど信じ堅いことであろうと、答えは一つしかない。
 未来だ。
 ならば、未来のどの時点から来たのか。
 だから、まず勇はハルケギニアの物語を尋ねた。地球の未来を聞く準備はまだ整っていない。
 デルフは語る。自分がルイズに引き取られてからの物語を。
 そして魔神三ッ首の正体を。

「魔神三ッ首……」
「こっちの世界にゃまだいないのかい?」
「聞いたこともないな」
「じゃあ、もっと前の話をしようか」
「君は、ザボーガーのメモリを全て読みとることができるのか」
「……ああ、どうやらそうらしい。どっかが繋がっちまってるんだな」
「なら、一つ頼みがある」
「ん?」
「それ以前の物語は私に聞かせないでくれ」
「なに?」
169ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:20:39.85 ID:PvtOevgJ
 勇は深く椅子に座りこむと、弱々しげに笑った。

「私は弱い人間でね。未来を知るという誘惑に勝てそうにない」
「いや、しかし……」
「駄目だ。それ以上は言わないでくれ。私は最初の予定通りにザボーガーを完成させる。そして君の希望通りザボーガーを修理しよう」
「だがよぉ……」
「論議は無しだ。豊は、ザボーガーとともに一度はその三ッ首を倒したのだろう?」
「ああ」
「ならば、私が未来を知る必要はない」
「だが……」
「……ザボーガー、いや、ダイモニウムの秘密を狙っている者がいる」
「おい」
「私は狙われるだろう。それくらいは予測できるさ」
「だったら!」
「なあ、デルフ君。私は、近い将来に息子が世界を守ることを確信できるんだぞ? 幸せな父親じゃないか」

 それに、と勇は続ける。

「幸か不幸か、未来の知識を知る危うさだって理解できてしまう」

 歴史を変えてはならない。未来の勝利を覆さないためにも。 
 約束された確実な勝利が待っているのならば、未来を知る権利などいらない。
 
「あんたは」

 デルフの言葉は途絶える。
 Σ団に殺されることを伝えろと言うのか。ダイモニウムが奪われることを伝えろと言うのか。
 救うことはできるだろう。だが、それによって変えられる未来はどうなる。誰がそれを予測できる。

「デルフリンガー。ザボーガーを、豊を頼む」
「こんな与太話を本当に信じるのかい?」
「ザボーガーは君たちを信じてる。ならば、私が君たちを信じない理由などないだろう」

 デルフリンガーはザボーガーとともに眠りにつく。
 代々のガンダールヴに受け継がれ悠久の時を超えてきたデルフリンガーには、数年の眠りなど一瞬にすぎない。
 そして、その日はやってくる。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 21:21:09.65 ID:FKd7BmBy
支援
171ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:21:23.06 ID:PvtOevgJ
「……お?」

 閉じた空間に光が差し込まれ、デルフリンガーは意識を覚醒させる。

「そこに誰かいるのか?」
「ああ、もうそんな時間か」

 デルフリンガーは見た。大門勲の面影を受け継いだ、一人の青年の姿を。

「よお、初めましてだな、ダイモンユタカ」
「ザボーガーが話している……わけじゃないな」
「ああ。俺っちは、デルフリンガー。あんたに、会いに来た」

 全てを伝えよう。
 大門勲の言葉を。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ジョゼフは、ヴィットーリオに繋がるコードを断ち切った。

「さらばだ、ロマリアの虚無よ」
「世話をかけたな、ガリアの虚無」

 その瞬間、激しい光と熱を伴った爆発が広がる。
 そして、ラグドリアンでは三ッ首の身体が揺れた。
 
(おのれっ、おのれぇぇ!!)
「お父様っ!」

 イザベラは見た。
 ガリアの王の、ガリアの虚無の、己の父親の死に様を。
 ミョズニトニルンとリーヴスラシル、二つの紋章が同時に消失していく。

「ルイズ! 今です!」
172ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:22:07.00 ID:PvtOevgJ
 カリーヌの言葉を待っていたかのように、ルイズの杖が振るわれる。

「宇宙の果てのどこかにいる……」

 ルイズは言葉を止めた。
 違う。自分が呼ぶべきは違う。
 それはただ一つ。ただ一つ、心を預けたもの。
 喚ぶは一つ!

「……来なさい! ザボーガー!」

 ゴーレムの最後の一体が破壊され、水の壁も風の刃も雲散霧消する。
 炎の玉ははじかれ、電人ホークの残骸が宙を舞った。
 陣営の全ての攻撃が途絶え、三ッ首の咆吼が響く。

(嬲り殺す! 一人残らずはらわたを食い破ってくれるわっ!)

 世界扉が開き、溢れんばかりの光が周囲を覆った。

「久しぶりだな、魔神三ッ首」
(貴様!)

 鏡と見まがう空間の断絶、扉のようにそびえる部分の向こうに二つの人影。

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

 男の声。
 鋭くはっきりとした、それはルイズにも聞き覚えのある声。
 ザボーガーのメモリの中にあった声。

「俺の兄弟をよろしく頼む」
「貴方の兄弟?」
「ああ。身体は鋼鉄の機械でも、赤い血潮が流れている俺の兄弟だ」

 ルイズは一歩、扉へと近づく。

「ヴァリエールの名にかけて誓うわ。私にとっても、ザボーガーは大切なパートナーだもの」

 大門豊はうなずいた。
 二人は同時にヘルメットのインコムを引き出す。

「電人ザボーガー!」
「GO!」
173名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 21:22:15.78 ID:zuodsRWN
支援
174ゼロと電流第23話:2011/08/26(金) 21:24:01.12 ID:PvtOevgJ
以上、お粗末様でした。支援ありがとうございました

次回、「魔神三ッ首編」終了。

その後、短めの最終編「大隆起編」で完結の予定です。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 21:52:42.42 ID:34oQtU9x
乙でした。
「大隆起」をどう扱うのか、期待して待ちます。
176 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 ゼロのペルソナ:2011/08/26(金) 23:27:36.06 ID:MKIkvijh
今から投下します
177名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 23:28:23.10 ID:7e20Yd/1
支援
178ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:33:38.39 ID:MKIkvijh
太陽 意味……祝福・孤独

トリステインが発表したガリア新王の擁立が人々の口に上ると同時に衝撃的なニュースが流れることになった。
ガリア軍トリステイン侵攻。
ガリア王ジョゼフはおよそ30隻の戦艦と2万以上の歩兵でトリステインに侵攻した。
しかしトリステイン側も全くこれを予期していなかったわけではない。外交上全くガリアと問題のなかったロマリアが強襲されたのだ。
ならばトリステインもその例にならうことは十分ありうることだと枢機卿マザリーニは判断し、ガリアとの国境付近の軍を通常地よりも増員していた。
とはいえこの進軍が唐突であったことには変わりがない。ジョゼフはトリステイン―ゲルマニア―ロマリアの大連合を破壊すべくトリステインを蹂躙しようと攻撃に移ったのであろうか。
たしかにロマリア連合皇国がロマリアという中心となる都市国家を失っているので、軸となるのはトリステインとゲルマニアであり、片方を粉砕すれば大連合を破壊できるかも知れない。
しかし、そうだと考えるにはガリアの侵攻が早すぎた。
大連合の発表以前に、それどころかゲルマニアやロマリアという首魁を失った都市国家群の同盟の打診がやってくるか、来ないかくらいに進軍の準備が行われていたとしか思われない。
現在はガリア軍は国境付近でトリステイン軍と戦闘を行っている。増員したおかげでなんとかガリア軍を抑えられているというわけだ。
とはいえトリステインとガリアには歴然として国力の差があった。
ガリアが突然の侵攻に2万もの兵力を用意できたのに対し、トリステインはガリアとの国境線に用意できた歩兵はわずか4000、戦艦は10隻足らずに過ぎない。
それでもガリア軍を押し止め、ラグドリアン湖近くに拘束できたのはトリステインの兵はロマリアを滅ぼした“悪のガリア軍団”と戦い祖国を守るという明確な目的意識があったのに対し、
ガリアの兵たちに戦いの意味を見出せずに士気が非常に低かったためである。
そして奇妙なのは直接軍を指揮している王ジョゼフであった。5倍以上の歩兵と3倍以上の戦艦を持つならば士気の差があっても力押しで押し切ることは不可能ではない。
それを知りながらジョゼフは何もしない。まるでなにかを待っているかのようであった。
そう、彼は待っていたのだ、彼の敵を。
同じ虚無の担い手として自分に抗するために生まれた虚無の担い手を感じ取った。
「来たな」
そこにさしたる感動もない。
巨大な旗艦に乗り込んでいたジョゼフは看板に出た。その隣に立っているのはエルフのビダーシャルだけだ。
彼にとってわずらわしいだけの家臣は旗艦に乗せていない。ジョゼフとビダーシャルを除けば乗っているのは純粋な船員だけだ。
高く飛んでいる艦からは遠くから来襲するトリステインの増援が見えた。
一刻も早く孤軍奮闘している兵たちに加勢しようとしているのであろう、見える兵は全て騎兵だ。足の遅い歩兵は後からさらに加わるというわけだ。
179ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:35:40.35 ID:MKIkvijh
歩兵に比べ少ない数しかいない騎兵である。
おそらく1000を越えるかどうかあやしいくらいであるが、わずか4000でガリア軍を拘束しているトリステインにこの増援は少ないとはいえない。
なによりあの軍の中に彼の姪と娘がいるとすればガリア軍はもしかすると敗退の危機さえあるかもしれないのだ。
あの二人が呼びかければ、明確に旗色を変えるとまで行かずとも、軍の低い士気はさらに下がってしまうかもしれない。それこそ戦闘が不可能なほどに。
なにしろ新王と主張するシャルロットはもともと王と目された現王の弟の娘なのだ。
血統に問題はなく、そして支持者といえばハルケギニアの各国、それどころか現王の娘すら支持しているのだ。
それに対して現王ジョゼフはというもともと弟との争いのために反乱分子を多く抱え込んでおり、そしてロマリア侵攻によって多くの貴族と民衆からの支持を失ったのだ。
そのような状況では、シャルロット、そしてイザベラに説得されながらも離反することなく兵たちが戦うほうが公算が低い。
だがジョゼフはそれでも構わなかった。もともとこの軍はトリステインを蹂躙するためのものではない。
ジョゼフはローブのポケットに手を突っ込んだ。彼のポケットには奇妙なふくらみが3つあった。
そして彼が手を伸ばすとふくらみは二つになり、代わりに彼の手には丸い水晶のようなものが握られている。透明なボールに炎を閉じ込めような奇妙な輝きを放つそれは火石であった。
傍らに立つビダーシャルが作り上げた火の力を集めて出来た結晶である。
エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ        エクスプロージョン
ジョゼフは詠唱を口ずさむ。それは虚無の呪文の一つ“爆 発”だ。
詠唱を最後まで唱えることなく、その力を解き放つ。
虚無の呪文が他の呪文と大きく異なることの一つは他の呪文が詠唱を唱えきらなければ何も発動しないのに対し、虚無の呪文は詠唱が途中まででも全体の長さに対してどれだけ読んだかに比してその力を発揮することである。
ジョゼフの手にある火石にヒビが入った。彼のエクスプロージョンで火石は外郭を傷つけられたのだ。それから再び詠唱を唱える。
ウリュ・ハガラース・ベオークン・イル……
呪文を唱えると彼の手元にあった火石は姿を消した。
数秒後、大爆発が起こる。その爆心はガリア軍の正面に位置するトリステイン軍中央の上空。トリステインの船一隻から兵の一人までこの世から灰も残さず消滅し、ガリア兵も爆発を浴びて半数を失った。
180ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:37:43.39 ID:MKIkvijh
ラグドリアン湖へ向かっていた騎兵に同行したのはルイズ、完二、タバサ、陽介、キュルケ、クマ、それにイザベラだった。
彼らはまさに救援すべき軍が視野に入ったときに小型の太陽を目にすることになった。
突如、空中で生まれた火の玉は爆発的に膨らみトリステインの兵を一掃、残ったのは焼け焦げた大地だけであった。
助けに来たはずの兵たちもわけがわからず呆然とし、生き延びたガリアの兵たちは状況がわからず恐慌状態に陥り逃げ出している。
それはルイズたちも同様で、何が起こったかわからず、誰も声を発することすらできない。助けようとした兵たちはその姿を消してしまったのだ。
完二の肩にかけられた剣がかちゃかちゃと音を立てた。
「エクスプロージョン……じゃねえよな……」
ルイズはみなより早く気を取り戻した。彼女の虚無の担い手としての感性が虚無の魔法が
テレポート
使用されたのを感じ取った。航空艦が一つ“瞬間移動”したことを知る。そしてその行き先も。
そして敵の狙いに気付く。
「みんなトリスタニアに戻るわよ!」
「な、なに言ってるの!?この状況を収集するほうが先でしょ!?」
イザベラはかろうじて混乱から立ち直った。彼女はガリア兵に呼びかけを行うべくついてきたのだった。
確かに現状の混乱しきったガリア軍なら完全にタバサとイザベラの呼びかけでこちらに引き入れることも可能かもしれない。
そうでなくてもこのままでは彼らはいつまでも狂乱しているばかりであろう。
だがルイズは力強く首を振る・
「違うわ」
誰もが混乱しているなか、彼女だけは確信というものを瞳に秘めている。
「トリステイン軍が数倍のガリア軍を止めてたんじゃないわ!ガリア軍が数倍の戦力でトリステイン軍を止めたのよ!」
「な、ナニ言ってんだ、テメエ?」
完二は混乱した様子で言った。
完二だけではない。ルイズ以外は全員混乱している。もちろん一兵卒、トリステインもガリアもわけ隔てなくこの空間にいるもの全員が。
その中で一人状況を理解しているのはルイズただ一人であった。
「あいつはトリスタニアであの爆発を起こす気なのよ」
全員が息を飲んだ。目の前で起こった惨劇が王都で起これば被害はこれの比ではない。
誰かが新たな質問をしてくる前にルイズは言う。
「詳しく説明する余裕なんてないわ。とにかくあいつを止めたいと思うならわたしの近くに来て!」
そういうとルイズは最近、常に身につけている始祖の祈祷書を開いた。
ウリュ・ハガラース・ベオークン・イル。
誰一人、いつも冷静なタバサでさえ理解できていなかったが、完二、タバサ、陽介、キュルケ、クマ、イザベラの全員が聞いたことのない詠唱を唱えるルイズの近くに集まった。
ルイズたちはジョゼフを追ってトリステインへと跳んだ。
181ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:39:52.07 ID:MKIkvijh
              テレポート
ジョゼフは虚無呪文“瞬間移動”により旗艦をトリスタニア上空まで運んでいた。
「やれやれさすがにこれだけの質量をテレポートさせるのは骨が折れるな」
甲板の上にも混乱があった。
船員たちは太陽のような炎の塊で人が、いや空間が焼かれるのを目にしたと思ったら、次の瞬間には眼下に広がっていた巨大な湖は消えて都市の上空を飛んでいるのだ。
誰にも状況が理解できないでいた。
ジョゼフとその隣に立つエルフ、ビダーシャルだけがその混乱に加わらない。
「ここで本当に火石を解き放つつもりか?どれだけのお前の同胞が死ぬと思っている?」
「これからおれとお前らやることを考えるなら死者を減らすことになるだろうよ。いうなれば尊い犠牲というやつだな」
ビダーシャルはジョゼフの言葉に覚えた不快感を隠さない。言った本人も自身の言葉に何の感慨も覚えていないようだ。
「だがその前にこの艦が落とされるのではないか?」
ふむとジョゼフは下に広がる都市を見た。
「あの辺境に軍を陽動してやったつもりだが、やはり首都にはそれなりの兵が置かれているようだな。今は混乱しているようだが、しばらくすれば攻撃されるかもな」
あっさりとビダーシャルの言葉の正しさを認める。
ジョゼフの言うようにすでにトリステインは戦時と判断し、首都トリステインには一部戦力が備えられている。
戦艦は2隻だが他にも王家直属の空を駆けることのできる3種の幻獣部隊もある。
トリステインに侵攻したガリアの船だとわかれば攻撃してくるであろうし、いくら巨艦でも混乱した旗艦は落とされるであろう。
だからこそジョゼフは言い放つ。
「ならばこの船などもう不要だ。出ろ、ヴィンダールヴ、ガンダールヴ、ミョズニトニルン」
彼の乗っていた艦はとてつもなく巨大であった。
その巨艦から二つの巨体が現れた一つは甲板を砕きその姿を現し、一つは船底を壊し眼下の都へと落ちていった。
そして落ちていったものの上には人と同程度の大きさの何かが乗っている。
もう一つの影、甲板を砕き姿を現したそれの背にジョゼフは乗った。それは巨大な火竜であった。
火竜は巨大なものでも20メイル弱であるはずなのにそれはその2倍はある。
主が背に乗ると重力に引かれ地面へと加速して行く船から飛び立つために火竜はその羽を開き羽ばたかせた。
哀れなのはその船に同乗した船員たちだった。自分たちが何を運んでいるのか知らなかった。
そしてあまりの急変化により未だにそれを理解することもできない。
火竜が体を起こして甲板を破壊し、そしてなにかもう一つが船底を破壊して、さらに火竜が羽を伸ばしたことで船はその形を完全に失った。
もはやせいぜい船の残骸としていいようのない物にしがみつきながら彼らは地面に打ち付けられた。
魔法を使えるものは何人かは地面に全身でぶつかることを避けたが、混乱の極みから抜け切れなかったものは魔法を使えないものと同じ運命を辿った。
182ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:42:51.48 ID:MKIkvijh
活気に満ちたトリタニアの城下。生き生きとした顔が並ぶなか、シエスタは浮かない顔をしていた。
それというのも最近、気になっているタツミ・カンジという変わった名の男性がどこかへ行ってしまったからだ。
態度は荒々しく言葉遣いは悪いが、その大きな体に優しさが隠されていることを彼女は知っている。
目つきは悪く、見ず知らずの人間なら目を逸らしてしまうような目をしているが、
好きなこと、つまり裁縫をしているときは少年のように輝く瞳。
彼と会うといつもシエスタは思っていた。彼はどこかに帰ってしまうのではないかと。
だから彼が学園から姿を消すといつも思っていた。
自分の知らないまま、どこかへ行ってしまうのではないかと。
はあ、と溜め息をつく。
マルトーが彼女に王都まで買出しを頼んだのは物憂げな彼女を見かねたからだ。
都に買出しすると同時に息抜きに気晴らしでもしてくるといいというマルトーの気遣いだったが、
時間が出来てシエスタは余計、物思いにふけってしまっている。
「はあ、カンジさん帰って来るのかしら……」
シエスタがタメ息をついたとき彼女の背後で爆音が響いた。
通りを振り向くと廃墟が一つ出来ていた。先ほどまで石造りで出来た民家があったのであろうに。
ポカンとしているとその廃墟からなにかが立ち上がった。なにやら鉄っぽい。
呆然と見ているとそれが人の形をかたどっており体の表面はにぶい金属光沢を放っていることに気付く。
言葉を失ったまま見つめていると、それは立ち上がるとまるで人間のように走り始めた。
まるで人間がなかに入っているみたい。あ、でも家より大きいからそれはないか。
彼女は頭の中で奇妙に冷静であっても体はまるで置き去りであった。
シエスタはそれが40、50メイル――その巨体と機敏さならほんの10秒足らずの距離だろうか――まで近づいてもただ見つめていた。
信じられない出来事で思考停止になった彼女の前に突然、人が沸いたように現れた。
「きゃっ!?」
呆然とていたシエスタも思わず声を上げてしまう。
現れた影たちはなにかを言っている。
「ここはどこ?」
そう混乱した困惑した声で言ったトリステイン魔法学院の生徒タバサだ。
いつも眠そうな顔をして落ち着いている彼女の姿には似つかわしくないとシエスタは思った。
「言ったでしょ。トリスタニアに行くって」
そして答えたのも同じトリステイン魔法学院の生徒ルイズだ。
次は金髪の少年が喋り始めた。
「す、すごいクマ。ルイズちゃん、ワープなんて出来るの……」
シエスタはその少年に少しだけ見覚えと声に聞き覚えがあったが誰かまでは思い出せない。
「ワープじゃないわ。テレポートよ」
「これが虚無の魔法……」
タバサ、ルイズと同じくトリステイン魔法学院の生徒のキュルケは、いやはやといった様子だ。
ひたすら驚いているといった様子なのはタバサと同じ青い髪の女性だ。彼女にはシエスタも全く見覚えがなかった。
「きょ、虚無ですって……!?どういうことよ……?」
「そのままの意味よ。わたしは虚無の魔法使い。あなたの父と同じね!」
ルイズは空を強い眼光で睨みつける。その視線の先には赤い点が浮かんでいる。
「おいおい、そりゃどーいうことだよ!?」
ワケがわからないと言いたげなのは人間でありながらタバサの使い魔である陽介だ。
「あーもう!うるさいうるさいうるさい!
 とにかくわたしはあの爆発を止めるために詠唱を唱えるからちゃんとわたしを守りなさいよね……」
ルイズは視線を自分の使い魔に投げかける。その視線の先には……
「わかった?カンジ!」
シエスタの待ち人がそこにいた。
183ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:44:54.28 ID:MKIkvijh
「お、おう……オウ!?」
「カンジさん!!」
シエスタはたまらず完二に抱きついた。いきなり背中から何かに抱きつかれて完二は混乱した。
「次はいったいナンだってェんだ……ってシエスタ?」
思わず目を大きく開いてしまう。
「はい、シエスタです」
「な、なんでオマエがここに……いやソリャいいから離れろ……背中に、む、胸が……」
完二は鼻を押さえながら抗議する。
「いやです。最近どこに行ってたんですか?もしかしてわたしを助けにやってきてくれたんですか?」
「イヤじゃなくて離れろ……ブフッ」
完二の鼻から血が噴出した。
当事者二人以外は何してるんだと、困ったものを見る目で見ている。
「まったくあんたらは何してるのよ……」
彼の主はげんなりとする。
陽介は完二とシエスタを無視してその反対側を見た。そこには黒い巨人が佇んでいる。
「で、なんなんだアレは?ボケっと突っ立っててくれてるけど空気読んでくれてんのか?」
「なんで何もしてこないかはわからないけど一つだけ言えるわ」
ルイズは自分の虚無の力が教えてくれるものを仲間に伝えた。
「あれはわたしの敵よ」
詠唱の開始、それは戦いの開始となった。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 23:46:01.30 ID:8aSU5Vtn
支援
185ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:46:55.80 ID:MKIkvijh
トリスタニアの遥か上空に40メイル近い巨大な火竜が羽ばたいている。
その背には虚無の担い手ジョゼフが居た。
「ビダーシャル、お前もヴィンダールヴの背に乗ったらどうだ?意外と乗り心地がいいぞ」
ジョゼフは自分より高い位置で浮かんでいるエルフに気楽に声をかけた。
ビダーシャルは指にはめた風石の指輪の力で浮いているのだ。
以前、陽介に敗北したとき逃走に使用したのもこれだった。
「断る。わたしがなぜ望んで火竜の背に乗らなければならないのだ」
吐き捨てるように言った。
「ふむ、ずいぶんと毛嫌いしているのだな」
「当たり前だ。我々エルフがどれだけ火竜に苦労させられたと思う」
「6000年だろう?」
軽口を叩くジョゼフをビダーシャルは睨みつける。
「そう睨むな。だからおれがお前らの災いを除いてやろうというのではないか」
ふん。というようにエルフはジョゼフから視線を外し、彼の足元の街を見る。
あの王都には火竜と同じくエルフを苦しませ続けてきた2体の怪物がいた。
火竜は小型とはいえ人間の住む世界にもいるがそれ以外の2体は人間は知らないだろう。
1体はエルフの精霊魔法でさえ弾いてしまう固い金属で身を固めたゴーレムのような存在。
名はヨルムンガント。
長年の戦いで少なからず数を減らしてきたはずだがそれでもまだ多く存在していると思われる。
もう1体は火竜、ヨルムンガンドより遥かに小さく耐久力もそれ相応だが巨大な槍を持ち鎧のような体を持ちその重量からは想像できないほどの速さで駆ける亜人。
名はヴァリヤーグ。
どちらも人間の手に負えるものではにあとエルフは知っていた。
さて。とジョゼフは呟いた。
「あの王都にはおれの、そしてお前の敵が来ている。あちらも話が終わったらしい。ガンダールヴとミョズニトニルンに手合わせさせてみるか」
ジョゼフはヨルムンガンドをガンダールヴ、ヴァリヤーグをミョズニトニン、ファイヤードラゴンをヴィンダールヴと呼んでいる。
始祖ブリミルが名づけた名を彼は呼ぶ。
186ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:49:11.21 ID:MKIkvijh
幅5メートルほどの街路地に何もせずに立っていたヨルムンガントは休息をやめて動き始めた。
「うぉっと!?突撃してきやがった!」
陽介たちに向けヨルムンガントは地響きのような足音を立てて突撃してくる。
「ペルソナ!」
陽介はスサノオを呼び出した。
反射を持ったエルフとの戦いの反省から放つ魔法は疾風魔法であるガルダインだ。
これならば反射されても疾風無効の陽介には効かない。
しかし……
「なっ、効かねえのかよ!?」
この世界の火竜を一撃のもとに屠った最上級疾風魔法をくらいながら、その鎧を着たゴーレムにダメージらしいダメージはなかった。
疾風に何かしらの耐性を持っているようだ。
「だったら次はクマが……」
「やめとけ!そいつには風も、氷も、雷も効かねえ!」
完二の構えていたデルフリンガーが叫んだ。
「あ?なんでオマエ、んなこと知ってんだ?」
完二の当然といえば当然の疑問。だが彼の愛剣は答えない。敵は目前であり受け答えする余裕がないのだ。
「あいつには普通の魔法きかねえ!娘っこが何もできねえんなら、物理的にデッケエ衝撃を与えな!」
それなら、と完二は敵を見据える。
「任せな!行くぜえ……」
完二はペルソナを呼び出そうと目の前の敵に集中する。
その時、ヨルムガントの脇から長槍が彼に向かって襲い掛かってきた。長さ4メイルもの槍が突き出され先端が完二の肩に突き刺さる。
「うおっ!」
完二は肩を負傷し、尻餅をついた。
槍を持っていたのは全身鎧の何かであった。
その全身鎧――ヴァリヤーグにタバサが攻撃を飛ばした。空気のハンマーが亜人に向けて飛ぶ。
彼女は突然現れた敵の突撃に反応し、その突撃を攻撃でくじくつもりだったが、その敵の速さは彼女の予想より遥かに上だった。
それの速度は速く彼女の詠唱が終わるより早く完二を攻撃した。
結果としてタイミングが遅れたがその代わりタバサの攻撃は完二を攻撃した直後の、いわゆるカウンターの形でヴァリヤーグに飛んだ。
しかしそれは空気のハンマーを脇に跳んで回避をした。それだけの動きだが信じがたい反応速度である。
一瞬の攻防。
だがそうしてヴァリヤーグの攻撃に気をとられた間にヨルムンガントはすでにルイズたち全員を攻撃できる範囲に納めていた。
187ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/26(金) 23:53:29.25 ID:MKIkvijh
巨大な鎧の像は右拳を大きく引いた。
キュルケの作った特大の火球が当たるが巨像は全く意に介さない。
暗い瞳が見据えているのは詠唱を紡いでいるルイズだ。
完二は治療しようとするイザベラを振り払う。そして手に持っていた件を投げ捨て、主へと走った。
「カンジさん!」
「何する気でえ!相棒!」
思わず叫んだシエスタとデルフリンガーの声を背後に彼は主の巨像へと向かう。
ヨルムンガントの拳は地面を削るように主の敵たる虚無使いへと向かう。
しかしそれは虚無の使い魔によって遮られる。完二は両腕を交錯して特大の質量の拳を受け止める。
「ウ、ウオオラアアア!!!!」
衝撃を受け、完二の足が地面に二本の線を引く。
5メイルも完二は突き動かされながら膝をつかず、そしてヨルムガンドの拳が停止した。鉄の拳はルイズに触れることはなかった。
ルイズは集中して何も眼中に入っていないのか、自分の使い魔を信用していたのか詠唱を続けている。
主を守った使い魔はダメージに膝を折る。それを見て取ったヨルムンガントが次は左拳を大きく振り上げる。
「二度もやらせっか!吠えろ!スサノオ!」
陽介のペルソナスサノオが自身の周りを回る円形の刃を蹴り出した。
それはヨルムンガンドの空へ突き上げた左手を肩から切断した。切断の衝撃と突如体の一部を失ったためにバランスを失いヨルムンガンドは地面へと倒れる。
巨体が倒れ地面が揺れる。砂埃の中、ヴァリヤーグが槍を構えて突撃の構えを取った。
それに向かってキュルケが火球を放つ。迫った火の玉を鎧姿の亜人は槍を振ってそれを払う。
だが彼女は自身の火の玉でその亜人を倒せると思っていたのではない。
全て彼女の使い魔のために隙を作るためだ。
キュルケの使い魔クマは主の意図を察して、一瞬の隙の中、ヴァリヤーグの懐へ飛び込んだ。
右手に付けた手甲がヴァリヤーグを打ち据える。重厚な鎧に衝撃が響く。
一撃、二撃、そしてクマ自身も回転しながら勢いをつけた三撃目でヴァリヤーグも倒れた。クマも尻餅をついたが。
ヨルムンガントとヴァリヤーグが一時的にダウンしたのを見て陽介は威勢よく言った。
「さーて、みんなでやっちまいますか!!」
全員の答えは当然、はい。しかない。
ルイズと完二主従以外全員の総攻撃だ。煙が立ちこめる。
それが晴れたときにはヨルムンガントとヴァリヤーグは立ち上がらなくなっていた。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/26(金) 23:59:11.75 ID:8aSU5Vtn
支援
189ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/27(土) 00:01:11.71 ID:Bkhha99o
ジョゼフの使い魔は負けた。
彼の視界はもう彼の目と現在乗る火竜のものだけになる。
「二体ともやられたか……」
ジョゼフが呟くと、ビダーシャルは信じられないという顔をする。
「人間がヨルムンガントとヴァリヤーグを倒すとは……。いや、しかしお前の姪の使い魔もいるならば……」
ビダーシャルは納得しかけるも、かつての敗北を思い出し苦々しくも思う。
「まあ、あの二体はもともとここで死ぬはずだったからな」
自身の使い魔が敗れながらもその主は全く何も思うところがないようだ。
たんたんとエクスプロージョンで火石にヒビを入れている。
「さあ、どうする?」
誰に向けた言葉であろうか。
ジョゼフの手から火石がすべり落ちる。
何万もの命を燃やす悪意が、何万もの人のいる街へと重力に引かれ落ちていく。
190ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/27(土) 00:03:13.72 ID:Bkhha99o
ルイズは詠唱を終え、じっと空を見つめていた。
王都上空、千切れ雲が飛ぶだけの青い空に、不自然なほどの赤い火の玉が生まれた。
まるで小さな太陽が産声を上げたかのようだ。
その様子を見ていた陽介たちはたじろぐ。
先ほどの爆発と同じ規模のものが起こるなら確実に自分たちは王都ごとこの世から消えてしまうだろう。
もちろん、陽介たちが元の世界に戻れるなどという意味ではない。彼らが行くのはあの世と呼ばれるものだろう。
だがそんななかルイズとそして完二が泰然自若としている。完二はクマに傷を治してもらい、使い魔として主の傍に立つ。
文字通り爆発的に大きくなる様子を見せる火石にルイズのディスペルが届く。
全てを焼き尽くす太陽になるはずだった火の玉は急速にしぼみその存在を世界から消した。

トリスタニア上空に飛んでいた火竜の姿はない。
火石が爆発し損ねたのを見届けてからジョゼフはトリステインから姿を、いやガリアからも姿を消した。
彼はシャイターンの門へと向かっている。
そこで彼の使い魔の軍団を手に入れるために。
しかし、これからルイズたちを、世界を待ち受けることが何であれルイズたちは数万の命を救った。
今、空にあるのは破壊の太陽ではなく、世界を照らす太陽だ。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 00:07:15.41 ID:/2zpWWfv
支援
192ゼロのペルソナ 第19章 太陽:2011/08/27(土) 00:09:39.29 ID:Bkhha99o
投下終了。
>>177
>>184>>188
>>191
支援ありがとです。

この作品におけるヴァリヤーグは亜人です。オークやゴブリンみたいなもんです。
なんだかんだで今まで原作の場面を並び替えだとかしても改変なかったんでここに来て改変でドッキドキ。
ところでヴァリヤーグって、自分は最近まで現実の歴史でいうところのローマがモデルだったと思ってたんですけど
ヴァリヤーグという言葉はヴァイキングを意味するんですね。
まあ、そのほうが改変する側としてローマオタクの自分としては気負いがなくなってラクっちゃあラクです


そんな話はともかくとしてアルカナも残り3つ。投下もあと6回くらいで終わりですかね?
193名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 00:11:36.34 ID:CjfVZGFG
194 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/08/27(土) 01:11:00.93 ID:5Is+Ya/L
test
195機械仕掛けの使い魔:2011/08/27(土) 01:17:35.64 ID:5Is+Ya/L
こんばんは、機械仕掛けの使い魔です
 
予定していた幕間2の投稿を…と思っていたのですが、規制明けかつ忍法帖レベルの不足の為、
当面は避難所での投稿を行いつつ、2ch内別スレでコツコツレベルを上げようと思います
 
余計な書き込みかも知れませんが、今後ともご愛顧をよろしくお願いいたします
196 忍法帖【Lv=25,xxxPT】 :2011/08/27(土) 01:25:53.30 ID:iI90XG5q
レヴェル確認
197 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/08/27(土) 02:36:06.63 ID:CjfVZGFG
忍法帖ってやっぱりネックになってんのかね。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 03:03:21.34 ID:L9hWk++c
代理投下、何回もお世話になってきましたので、ご恩返しもかねて勤めます
よろしければ5分後から「雪風とボクとの∞」の代理を開始します
199雪風とボクとの∞@:2011/08/27(土) 03:10:27.46 ID:L9hWk++c
「雪風とボクとの∞(インフィニティ) ∞12」

「タバサ! これを知ってるかい?」
 三成は片手に持っている液体入りの霧吹きを指差してタバサに問いかけた。
「……最近発売されたこれの事……」
 タバサも同じ霧吹きを指差しつつ三成に答える。
「……めがねにシュッシュ……泡の力で汚れすっきり……その名も『メガネのシャンプー』……だから……ミツナリ……ミツナリのめがね……私がシュッシュしてあげる……」
「くはーっ♪」
 撃ち抜かれたかのごとく三成は自身の胸をつかみ、満面の笑みを浮かべた。
(ああ、めがねっ娘の魔女っ娘に自分のめがねをシュッシュしてもらえるなんて、ボクは何て幸せなんだ。この幸せ、しかと眼に焼き付けよう……)
 しかしその時、三成は戦慄すべき事態に気付いた。
「って、見えなーい!!」
 そう、近視でありながら裸眼でタバサの姿を見ようとする三成にとって、今のタバサとの距離は絶望的なまでに遠かったのだ。
「神よ! なぜボクは近眼なのですかー!?」
「……ならミツナリ……私のめがねかけて……」
 天を仰いで絶叫する三成にタバサは自分の眼鏡を外して差し出すが、
「するとタバサが裸眼になるー!!」
「……はう……」
 そう、眼鏡を外した三成がタバサの眼鏡で彼女の姿を見ようとすれば、必然的に裸眼のタバサを見る事になるのだった。
「ボクはタバサの裸眼を見るために生まれてきたんじゃない〜!!」
「……ミツナリ〜……」
 猛烈な勢いで床の上を転げ回り天を仰いで再度絶叫する三成の姿に、タバサは激しい既視感を覚えていた。
(……あれ……これと同じ事が前にもあったような……エンドレス……私達は永遠にエンドレスな2人なの……)
200雪風とボクとの∞A:2011/08/27(土) 03:11:20.93 ID:L9hWk++c
 しかしそこは三成、めがねっ娘に関しては同じ間違いを繰り返す男ではなかった。
「が、しかーし!! こんな事もあろうかと、スペアの眼鏡を用意しといたのだ!!」
 そう言うと三成は懐からもう1つの眼鏡を取り出してかけた。
「……ミツナリ……素敵……」
 予想外の三成の思いつきに、思わずタバサは賞賛の声を上げる。
「ボクとした事がスペアの存在を忘れていたよ」
「……ふう……安心した……」
 タバサは安堵の溜め息を吐いて、手洗い場の縁に寄りかかったその時。
 ――パキ
 とタバサの掌の下で何かが軽い音を立てた。
「……パキ……」
 その音に非常に不吉な何かを感じ、タバサは恐る恐る上げた手が置かれていた場所に視線を向ける。
 タバサの掌の下には三成が最初にかけていた眼鏡があり、彼女の体重によって両方のレンズに亀裂が入っていた。
「タバサ〜♪ 早くボクのめがねをシュッシュしておくれ〜♪」
「……ひっ……」
 眼鏡が割れた事など露知らず、三成は喜色満面の表情でタバサにシュッシュをせがんできた。
「じらすなよ、タバサ〜。早く♪ シュッシュ♪ 早く♪ シュッシュ♪」
「……あは……あは……あはははは……」
 乾いた笑い声を上げる以外不可能なタバサだったが、三成にどう対応すべきか頭を高速回転させていた。
(……ど……どうしよう……)
 三成はタバサが自分の眼鏡をシュッシュする瞬間を、今か今かと待ち構えている。
 そんな三成に眼鏡が壊れただなどと、タバサは言える訳がなかった。
(……ああ……ミツナリがあんなに喜んでいる……それなのにめがねが割れてシュッシュできないと知れたら……その怒りたるやもう……ミツナリの体中からあらゆる『魔』が飛び出てくるかも……ああああ……胃が痛い……誰か助けて……)
201雪風とボクとの∞B:2011/08/27(土) 03:12:12.66 ID:L9hWk++c
 するとそこに、タバサにとって救いの女神とでも言うべき人物が登場した。
「タバサー、何やってんのー?」
「……ルイズ……」
 涙目になりつつ、タバサはルイズに助けを求めようと声をかける。
「はっ!」
 その時親友ルイズ・ヴァリエールは全てを一瞬で理解した!
 首を傾げる三成をよそに、タバサ・ルイズは目と目で会話を始める。
『わかったわ、タバサ。その眼鏡、私が割った事にしてあげるわ!』
『……そんな……ルイズがあえて悪者になるなんて……』
『……それじゃまるで……「泣いた赤オーガ」に出てくる青オーガ……ルイズ……』
『あんたのためなら青オーガにだってなってあげるわよ』
『……でも……親友青オーガを失って……村人達と仲よくなれて……それで赤オーガは本当に幸せになれたの……』
『もう「泣いた赤オーガ」の話はいいのよ、タバサ! とにかく私に任せて!』
 ルイズは一気に手洗い場の方に駆け寄り、
「おっと、転んで手が滑ったー!!」
 とわざとらしく前につんのめって眼鏡に手を伸ばす。
「関節を外し、腕を伸ばして、キャッチ!!」
 次の瞬間、三成の腕がゴキゴキと音を立てて伸びるとルイズの襟首をわしづかみにした。
「ひっ!?」
 抱き合うように身を寄せ合って震えるタバサ・ルイズの目の前で、三成の腕が元通りに縮んでいく。
「ひいっ!」
「おいおい危ないじゃないか。万が一めがねが割れたらどうする? その時君はどう責任を取るつもりだい?」
 ルイズにそう問いかける三成の笑顔は、控えめに言っても人間のそれではなかった。
「ひいっ、もう駄目! 逃げてタバサ! ロバ・アル・カリイエまで!」
「どうしたんだい、タバサ? さあ、シュッシュしておくれ。早くシュッシュを。シュッシュを」
 幽鬼の如くタバサ達の方に接近してくる三成。
 タバサの精神は限界寸前まで張り詰め……、
「……げふうっ……」
 ついに限界を突破したタバサは、口から盛大に血を吐き出した。
『タバサー!?』
202雪風とボクとの∞C:2011/08/27(土) 03:12:52.92 ID:L9hWk++c
「急性胃潰瘍じゃな」
 タバサが担ぎ込まれた保健室で、オールド・オスマンはそう診断を下した。
「うおおおお! 死ぬな、タバサーっ!」
「死にませんよー」
「オールド・オスマン! 僕の五臓六腑をタバサに移植してくれー!!」
「薬で治るわい」
 完全に平静を失っている三成に、オールド・オスマンとロングビルは呆れつつも落ち着かせようとする。
 その一方で、状況把握に三成が役に立たないと考えたオールド・オスマンはルイズに話を聞く事にしたが、
「――で、何があったんじゃ?」
「えっと、シュッシュを……」
「は?」
「シュッシュを……」
 ルイズの答えも同様に要領を得ないものだった。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 03:16:42.86 ID:L9hWk++c
代理以上です。
作者さま、乙でした。ルイズの友情に私の目に涙。
眼鏡にかける三成の執念と表情は悪徳領主を追い回す大魔神のようですね。
まあ私も一生に一度はかけてみたい眼鏡はあるんですが、こう「デュワッ」という感じで。
204ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/27(土) 15:02:26.81 ID:laN5XnOu
問題なければ5分後ぐらいに六話目を投下させてください
205ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/27(土) 15:07:52.60 ID:laN5XnOu
「ふむ・・・まさかミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな・・・。美人だったもので、何の疑いもせずに秘書に採用してしまった」
学院長室で、オスマンは三人の報告を聞く。
ロングビルとは、町の居酒屋で出会ったらしい。
尻を触っても怒らないから採用してしまったのだとか。
何とも人騒がせなじじいである。
「さてと、君達はよくぞフーケを捕まえ、『破壊の杖』を取り返してきた」
ルイズもタバサも活躍した。キュルケは微妙に眉を歪ませる。
「フーケは、城の衛士に引き渡した。そして『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」
そして、オスマンは三人に『シュヴァリエ』の爵位申請をしたと言った。
ルイズとキュルケは満面の笑みを浮かべ、喜ぶ。
タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っていたらしい。
そして、先ほどまで喜んでいたルイズの顔が神妙になる。
「・・・・オールド・オスマン。スラおには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は人ですらない」
それはそうだ。ダメ元で聞いてみただけ。
ただ、今回の件で、スラおとは使い魔の壁を越えた友情のようなものを感じた。
だからこそ、スラおと一緒に喜びあいたかった。
オスマンは、ぽんぽんと手を打った。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり、『破壊の杖』も戻ってきたし、予定どおり執り行う」
三人の内、キュルケだけが肩を上げて喜ぶ。
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
三人は礼をすると、ドアに向かった。
開けると、スラおが隙間から学院長室に入ってくる。
ルイズは呼び止めようとするが、スラおの目を見てそれをやめた。
「じいさん、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「言ってごらんなさい。君の活躍は聞いておる。せめてものお礼じゃ」
オスマンはスラおの無礼を気にせずに、達観して椅子に座っている。
「あの『破壊の杖』はオイラの世界のものなんだ」
「元いた世界とは?」
「オイラはこの世界の魔物じゃねーんだ」
「本当かね?」
「信じてくれ。オイラはルイズの召喚でこっちの世界に呼ばれたんだ」
オスマンは髭を撫でながら、頭の中で状況を整理しているようだ。
「あれは杖じゃない。『正義のそろばん』っていうんだ」
206名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 15:08:30.17 ID:HG7NXf5K
支援
207ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/27(土) 15:09:15.85 ID:laN5XnOu
―――正義のそろばん
それは武器。振れば敵を光の彼方へと消し去ってしまう。
スラおもタイジュの国の図書館に行った時に本で見ただけだが、その効果や威力、形は知っている。
「誰がこの世界に持ち込んだのか知りてぇんだ」
この世界に旅の扉は存在しない。よって、元の世界に戻る方法はない。
でも、自分のいた世界になら方法が存在するかもしれない。
たとえばルーラの杖を使ったらどうなるのか。
キメラの翼を使ったらどうなるのか。
ももんじゃの尻尾は何処を指すのか。
この世界にそれらのアイテムを持ち込んだ者がいて、それを手に入れることができれば・・・。

「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
オスマンは深く息を吸い込んで語り始める。
「三十年も昔の話じゃ。森を散歩していた私は、ワイバーンに襲われた。それを彼が救ってくれたのじゃ」
「そいつは今どこにいるんだ?」
「死んでしまった。酷い怪我をしていたんじゃ。彼はその『正義のそろばん』とやらでワイバーンを跡形もなく消し飛ばした」
正義のそろばんの効果・・・ニフラムによって消された魔物が何処に行っているのかは誰にもわからない。
目の前の物体が消え去る現象を彼らは、粉々に"破壊"したと思ったらしい。
「彼は『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と言っておった。彼が命を諦めた時、持っていた『正義のそろばん』を私に託したのだ」
そしてオスマンはそれを『破壊の杖』と名付けて、宝物庫に大切に仕舞ったいたのだ。
「そいつはどうやってこの世界に来たんだ?」
「彼がどのようにしてこの世界に来たのか・・・それは最後まで分からんかった」
「そっか・・・」
結局、元の世界に戻る手掛かりは手に入らなかった。
だが他にも確かにこの世界に来ていた人間がいる。おそらくは商人だろう。
希望の光が僅かに見えた。
「あともう一個聞きたいことがあんだけど・・・」
「時間はある。なんでも聞きなさい」
「オイラの胸・・・じゃ、なくて背中に変な文字が浮かび上がったんだけど、あれ何なんだ?」
エボルシャスによって、人間の姿になった時は、胸に浮かび上がるそれは、スライムの姿では背中に浮かび上がった。
「ふむ、それはおそらくリーヴスラシルの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
スラおは異世界からやってきた特異的な存在。
最初は信じていなかったオスマンも、もしかしたらという考えが強くなっていた。
確かな情報ではないが、一応スラおに伝えておいても問題はないだろう。
「なんで伝説の使い魔なんかにオイラがなるってんだ?」
「わからん」
オスマンはそれ以上の情報を持っていなかった。
しかし、伝説の使い魔、リーヴスラシルの印が自分に浮かび上がった。
と、なれば自分の魔力を消費せずとも特技を使える理由に納得がいく。

208ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/27(土) 15:10:51.00 ID:laN5XnOu
――――――――――――――――――――――――――――――――


スラおはバルコニーの石造りの手すりの上で月を眺めている。
食堂の上の階。そこは大きなホールになっており、舞踏会はそこで行われている。
当然スラおは踊れないので、用意された食事と酒を胃袋の中へ詰め込めるだけ詰め込んで、夜風に当たっていた。
「楽しんでるみたいね」
真っ白なドレスに身を包み、普段とは比べ物にならないほどの輝きを放つルイズがバルコニーの枠に手をつき、話しかける。
「まぁ、飯は旨かったぜ。肉もあったしな」
スラおは素っ気なく答える。
普段はルイズのことを馬鹿にしている男達も、ドレスを纏ったルイズの美貌には自分を誤魔化すことができなかったのか、多くの者が声をかける。
しかし、ルイズは全ての誘いを断ってスラおの元にやってきた。
そんな様子を見ていたスラおには、ルイズの行動が理解できなかった。
「あのね、聞きたいことがあるんだけど・・・」
ルイズの喋り方には何故か人間の色気のようなものが含まれていた。
「破壊の杖が商人しか使えないって・・・ホント?」
なるほど。ルイズは気にしているのだ。商人しか装備できない武器を何故自分が使うことができたのか。
スラおはそれを察し、言葉を濁す。
「えぇ〜と、それはだなぁ・・・あの魔法は実は賢者にも使えんだよ」
確かに敵を光の彼方へ飛ばす魔法、ニフラムは商人でなくとも使える。
しかし、それではフーケが破壊の杖を使えなった理由が説明できない。
そうは思ったが、ルイズはあえて何も言わなかった。
「ねぇ、帰りたい?」
ルイズはスラおの目を見る。
「それはオイラが別の世界から来たって信じてくれるってことか?」
「信じて・・・あげるわ」
「帰りたいというよりは、帰らなくちゃならねぇんだ。オイラのこと、クリオ達はきっと待ってると思うからよ」
心なしか、ルイズが残念そうにしているように見える。
しばらくの沈黙ののち、ルイズが口を開く。
「ありがとう」
突然そんな風に言われて、スラおは軽く頬を染める。
「な、なんだよ急に。気持ち悪ぃな!」
「うるさいわね。せっかく私が感謝してあげようっていうのに」
「いいやい、別に。オイラはお前の使い魔だからな。ルイズを助けるのは当然だっつの」
ルイズはゴーレムの攻撃からスラおが身を守ったことに対して礼を言ったのだろう。そう思っていた。
「そうじゃなくて、私のこと励ましてくれて・・・ありがとうってこと」
「そ、そんなこと別に礼を言われるほどのことじゃねぇって・・・」
神妙な面持ちで話しかけてくるので、なんだか恥ずかしくて目を見れない。
「私、あんたが元の世界に帰れるように全力を尽くすわ」
ルイズは約束してくれた。それはいずれ果される固い約束。
「だからあんたが帰っちゃうまでは・・・私の友達でいてね」
使い魔ではなく友達という関係。
片方が片方を一方的に使役するのではなく、互いに協力し合う関係。
ルイズはそれを強く望んでいるようだ。それはスラおも同じだった。
二つの月が、初初しすぎる二人を照らした。
209ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/27(土) 15:13:45.43 ID:laN5XnOu
以上です。
ゼロ魔もドラクエもにわか知識しか持ってないから、設定改変で詰みそうでコワイ
210名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 17:07:07.18 ID:ICt6Nvpd
乙でした。

このところ 投下がスゴイけど、早くも「第四期効果」か?
211名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 17:40:18.99 ID:r4PitY8g
誰もやらないのでしたら50分から機械仕掛けの使い魔の代理投下をおこないます
212 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/08/27(土) 17:47:39.51 ID:iUxcgT5d
事前支援
213機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:50:38.89 ID:r4PitY8g
機械仕掛けの使い魔 幕間2
〜モンモランシーとケティ、ギーシュとミー〜
 
 
 アウストリの広場の片隅に設置されているテーブル。そのイスに腰掛けているギーシュは、杖たるバラの造花を眺めながら、小さく溜息を吐いた。
テーブルには冷め切った紅茶が乗っているが、量は全く減っていない。
「僕が男なら、か…」
思い出すのは、クロと決闘をしたあの一件。その時のクロの一喝が、ギーシュの心に深く突き刺さったままなのだ。
 
 ――てめぇが男なら! 二股なんざかけずに1人の女を愛してみせやがれッ!
 
 バラは多くの女性を魅了する物。ギーシュの信念である。賛否あるだろうが、少なくとも自分は今まで、ずっとこの信念に基づいて生きてきた。
 だが、それが揺らいだ。こうして、長い時間考え込むまでに。
 
 どれだけの時間が経っただろうか。もう口にする気も起きない冷めた紅茶を交換してもらおうと、ギーシュが席を立とうとした、その時だった。
「元気ないね、ギーシュ君。どうしたの?」
足元から、声がする。見下ろしてみると、そこには純白のコック帽をかぶったミーがいた。両手で抱えた皿の上では、焼き立てと思われるクッキーが、甘い匂いを立ち上らせている。
「さっき厨房のみんなで焼いたんだ。これ食べて、元気出しなよ!」
別段空腹なワケではない。しかし、この焼き立てのクッキーの匂いは、どうにも抗いがたい何かがある。促されるまま、ギーシュはクッキーを1つつまんだ。
 
 サクッ、と軽快な音と共にクッキーが割れると、香ばしい香りと優しい甘みが、ギーシュの口内を包み込んだ。
噛めば噛むほどに香りと甘みは柔らかく広がり、自然、ギーシュの顔が、何とも言えぬ表情に蕩けていく。
「おぉ、これは…実にうまいよ!」
「えへへ、でしょ〜」
 口の中でペーストになるまで咀嚼を続け、ようやく飲み込んだギーシュは、たった1つでは足りぬとばかりに、2個、3個とクッキーを口へ放り込んだ。
「慌てなくても、まだ沢山あるからね」
 
 クッキーが半分ほどまでに減り、そこでギーシュはほぅ、と一息ついた。
「よくよく考えれば、こんなにおいしいクッキーを勢いで食べるなんて、もったいないにも程がある。ゆっくり頂くとするよ」
食べている間にやって来たメイドに淹れ直してもらった紅茶を一口含み、背もたれに背中を預ける。心地よい充足感がギーシュを満たした。
「おいしい物は、みんなを幸せにしてくれるからね。やっぱり元気が一番だよっ!」
イスの上で軽くガッツポーズを取るミー。するとその拍子に、コック帽が頭からずり落ちた。赤面して帽子をかぶり直すミーに、ギーシュはプッと噴き出した
 
 ギーシュの表情に余裕が出て来たのを見て取ったミーは、ここで本題を切り出した。
「ずいぶん悩んでたみたいだけど、一体何があったの?」
そこで途端に彼の表情が翳った。もしかすると、人には話したくない事なのかも知れない。
「ほ、ホラ、ボク猫だからさ。人に言えない事でも、ボクなら、って思ったんだけど…」
わざと陽気に振舞ってみるが、それも尻すぼみになってしまう。ギーシュの暗い雰囲気に当てられたか。
214機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:52:21.90 ID:r4PitY8g
 と、ここでギーシュが動いた。クッキーを1枚口に入れ、ゆっくりと噛み、飲み込む。口中に残ったクッキーを紅茶で喉の奥に流し込むと、ようやく語り始めた。
「君の友達…クロちゃんに怒られたんだよ。男なら、1人の女性を愛せってね」
「1人の女性…ギーシュくん、二股とかしてたの?」
かつて1匹の犬に恋をし、儚い失恋を経験していたミーは、心中で眉を顰めた。
そして同様に犬への告白を目前として剛の野望に阻まれ、今では小さな恋人志願者・ナナと文句を言いつつも満更ではなさそうなクロなら、そういう言葉をぶつけるだろうなぁ、と納得していた。
「僕はバラとして、多くの女の子たちを喜ばせたいと、そう考えていた。
だがクロちゃんの言葉1つで、僕の信念は揺れに揺れている。今までの僕とクロちゃん、どちらが正しいんだろうか、とね…」
バラの造花を指先で弄ぶギーシュ。彼の目は、今にも花弁を一枚ずつちぎって、花占いでも始めそうなほどに思い詰めている様子だった。
 
「バラとか喜ばせたいとか、ボクにはわからないけどさ…。じゃあ、今までギーシュ君は、どんな事をしてたの?」
 いまいち飲み込めていないミーの質問に、ギーシュは指を折りながら、自分がどのように振舞っていたかを説明した。
「その女の子の美しさを称える詩を送って、愛の言葉を囁いて、一緒に遠乗りに出かけて、学院では食事やお茶を一緒にして…」
ここではたと、説明と指が止まった。代わりに唸り声が漏れる。
「…それだけ?」
小首を傾げたミーに、ギーシュは反論出来なかった。思い返してみれば、同じ事を色々な女の子に繰り返してばかりだったのだ。
 
 10分程度唸り声を上げていたギーシュが、テーブルに伏せってしまった。どうやら、本当にネタが切れたらしい。
「う〜ん、あくまでもボクの考えなんだけどさ…」
頭から煙を吹きそうな具合のギーシュに、ミーが率直な感想を述べた。
「聞く限りだとギーシュ君は、自分を売り込み過ぎなんじゃないかな?」
「自分を…?」
オウムのように繰り返したギーシュへ、ミーはコクリと頷いた。
「全部が一方通行過ぎて、女の子がギーシュ君にお願いとかするチャンスが、あんまりないように思うんだよね」
 入学してからを振り返ってみる。確かに多くの女の子に話しかけ、その大半は多少進展した。
しかしリアクション…女の子からのプレゼントやお願いに比べると、ギーシュからのアプローチが異常なまでに多いのだ。
 しかもそのアプローチも、大半は同じレパートリー。自分で思い返しておいて、少々欝な気分になったギーシュだった。
 
 すたっ、とイスから地面に跳び降りたミー。
「あくまでも猫からの意見だから、本気にしなくてもいいけどさ、ボクはそう思ったんだ」
「いや、貴重な意見だ。心当たりもあるし、参考にさせてもらうよ」
欝な気分を振り払うかのように笑顔を見せるが、それが無理に作った笑みだと、ミーはすぐに気付いた。顔が僅かにひくついているのだ。
「ボクだけじゃなくて、他の友達に相談するのもいいんじゃないかな? 1人で悩んでても、すぐに行き止まりに入っちゃうだろうしね」
割と当たり障りのないアドバイスを残し、ミーはその場を後にした。その場には、立ち去るミーに手を振った姿勢のままのギーシュが残される。
しかしやがてその姿勢も変わり、やはり先ほど同様、テーブルに向かって少し俯く姿勢に戻ってしまった。
215機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:53:12.74 ID:r4PitY8g
 夕飯の準備を手伝いに戻る道すがら、ミーはずっと考え込んでいた。ちょっと気になって振り返ってみると、ギーシュがクッキーを届ける直前の、あの憂鬱を絵に描いたような姿勢に戻っていたからだ。
「この前とは随分雰囲気変わっちゃってるなぁ…あれじゃいつか、本当に身体壊しちゃうよ…」
 厨房の窓からでも、深刻に悩んでいるように見えた彼へ、ちょうど焼きあがったクッキーを届けてはみたものの、あまり効果はなかったように見受けられる。
 ミーが思った通りなら、ギーシュ自身が振舞い方を変える事で解決しそうだが、それが上手く行くかは彼次第である。
 これ以上気にかけても仕方のない事ではあるが、どうにも心に引っかかりを感じるミーだった。
 
    +     +     +     +     +     +
 
 翌日、虚無の曜日。学院に残っていた生徒たちが昼食を終え、厨房スタッフも賄い料理で腹を満たした頃、その少女は現れた。
「あのー…」
「あら、ミス・ロッタ!」
入り口から厨房を覗き込むように頭を突き出していたのは、ケティ・ド・ラ・ロッタ。学院の1年生である。
貴族という肩書きに付随する華やかな美しさではなく、道の片隅や川の土手に咲く一輪の花というような、素朴で優しい雰囲気を纏っている。
 
「空いているのでしたら、厨房の機材をお借りしたいのですけれど…」
「おぅ、好きに使ってくれていいですぜ!」
 ケティが厨房を使わせてもらう時の、いつもの合言葉だ。日にちが決まっているわけではないが、ある程度の暇な時間が出来た時、彼女は学院の厨房へ足を運ぶ。
当初はマルトーたちも気を使っていたが、ケティの裏表のなく、誰にでも丁寧な物腰から、いつしかお互いのやり取りは柔らかい物になっていた。
 
「今日はどんなお菓子を作るの?」
「えっとですね、今日はビスケットですよ、ミーくん」
 お菓子作りに使うであろうミルクや砂糖、小麦粉などを手早く用意しながら聞くミーに、ケティは頬をほんのり朱に染めて答えた。
このリアクションでは、さすがにそのビスケットがどんな人に振舞われるのか、気づくというものである。
「なるほどぉ、うん、頑張ってね!」
ミーの激励に、ケティは頷いて応えた。
 
 使い終わった道具を洗ったり、オーブンを予熱したりと、ケティの手伝いに奔走するミーは、ふとある事に気付いた。
「ふんふんふふ〜ん」
ケティの表情である。鼻歌交じりに生地を混ぜ合わせる彼女の顔は、この上ないほどに幸せそうな表情をしていたのだ。見ているこちらも、釣られて笑んでしまいそうな、朗らかな笑い顔。
(よっぽど楽しみなんだろうな、誰か知らないけど、好きな人に食べてもらうのが)
そんな笑顔を見ながら、知らぬ間に作業に熱の入っていたミー。とそこへ、新たな来客が1人。
 
「ん、誰だろ?」
 見覚えはあった。確かルイズと同じ教室で授業を受けていたはず。しかし、名前はさすがに聞いていない。目線はその客へ、しかし手を休めぬまま考えていると、シエスタが反応した。
「ミス・モンモランシ、どうなされました?」
「秘薬に使う香草を切らしちゃったのよ。余ってるなら、少し頂こうかと思ったんだけど」
「解りました、いつものでよろしいでしょうか?」
「えぇ、お願いね」
216機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:54:49.76 ID:r4PitY8g
 モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。ギーシュの想い人の1人である。こちらはケティとは反対に、長い金髪を縦ロールにセットし、いかにも貴族のお嬢様、といった風貌である。
 香水や水の秘薬の調合を得意としており、一般に流通している材料が切れた場合は、こうして厨房などへ調達しに来るのだ。もちろんタダではなく、後日彼女から、厨房スタッフへお手製香水が送られてくる。
その香水は品質が高く、ギブアンドテイクとしてはやや不釣合いかもしれないが、それも貴族の面子ゆえ、であろうか。
 
 このように、お互い時折厨房に顔を出すものだから、自然と顔を合わせる機会は多い。しかしこの日は、ギーシュの二股騒動以来初めての、モンモランシーの登場である。
無論ミーにとっても、彼女と顔をつき合わしたのはこれが初だ。
「ミス・ロッタ…だったかしら、今日は何を作っているの?」
「あ、ミス・モンモランシ…えっと、今日はビスケット、です…」
少々気後れしながら、ケティが答えた。相手が上級生かつ同じ男性を恋い慕っていた事が理由だろう。
しかしモンモランシーからすると、ギーシュに二股をかけられていた同士として、何となく妙な連帯感を感じていたりする。
「ふぅん…。相手は、ギーシュかしら?」
的を射たモンモランシーに、ケティは顔を真っ赤にして、小さく頷いた。動揺しているのか、生地をこねる手が止まってしまっている。
 それ以上言葉を交わさなくなった2人。ケティは生地こねを再開したが、先程よりは明らかに速度が遅く、モンモランシーは腕を組んで、香草の到着を待っている。
 
 やがて香草が到着すると、モンモランシーはそれを受け取り、二言三言シエスタと話して厨房を去った。
「ふぅ〜〜っ…」
 それを横目で見ていたケティは、深々と息を吐きながらイスに身を投げ出した。緊張の糸が切れたようだ。
「ケティちゃんがビスケットを作る相手って、ギーシュ君だったの?」
「は、はいぃ…」
答えながらケティは、プルプルと小動物のように震えていた。お互いギーシュの被害者と言えるのだが、上級生と想い人を奪い合っていたようなものだ。何をされるか解らず、戦々恐々だったのだろう。
「なるほどねぇ…」
昨日のギーシュの話と照らし合わせ、ミーもおおよそだが、その辺りの関係を把握した。まさか厨房で、とは思っていなかったが、むしろこれがミーに、ある閃きをもたらした。
 
 ようやく気を持ち直し、生地をこねる作業に戻ろうとしたケティだったが、厨房にやってきた再度の来客で、また手が止まる事となる。
「何度もごめんなさいね。私もここ、使わせてもらっていいかしら?」
「へ、ミス・モンモランシが、ですかい? そりゃ構いませんが…」
再びやって来たモンモランシーから、思わぬ要求が出た。厨房スタッフには特に不都合はない為、了承の意を示すと、彼女は済ました顔でケティの隣に立った。
「…はぇ!? み、ミス・モンモランシ!?」
これにはケティも心臓が口から飛び出るほどに驚いた。しかしモンモランシーは全く気にした様子もなく、調理台の上に持参したビンを置いた。
コルク栓をしただけの飾り気のないガラス瓶には、無色透明な液体が封入されている。
217機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:55:39.42 ID:r4PitY8g
「ねぇ、ミス・ロ「は、はいぃっ!」ッ…タ?」
 特に気まずい沈黙が訪れる事もなく、モンモランシーはすぐにケティへ話しかけたが、よほど気を張っていたのか、彼女は名前を最後まで呼ばれる前に、裏声で返答した。
瞬間、厨房に静寂が訪れる。こちらの方が、ケティにとってよほど気まずい沈黙となった。
 隣からの大音量の裏声に、少々耳鳴りを感じてイラッとしたモンモランシーだが、すぐにケティの心境を察し、肩をぽんと叩く。
「そんなに怖がらなくてもいいわ。私もあなたも、同じギーシュの被害者、それでいいじゃない」
「え、えーっと…その…」
「そんな事より、私もお菓子を作りたいの。あなたが作ってるそれ、よかったら作り方を教えてもらえないかしら?」
言い方は少しそっけなかったが、モンモランシーの顔はほんのりと笑っていた。この笑顔にようやく安心したケティは、「はい!」と元気よく承諾した。
 
 
 ケティのビスケット講座は、和やかな空気で執り行われた。秘薬作りには慣れているモンモランシーも、料理はさすがに経験がなかったようで、調理器具の扱いには四苦八苦していた。
また“小さじ1杯”や“1つまみ”などの料理用語も聞いたことがなかった為、まさしくさじ加減が解らない、といった様子である。
 そんな彼女に、ケティとミーがゆっくりと教える。お菓子作りの得意なケティと料理の鉄人たるミーの布陣は完璧で、生地こねが佳境に入ろうかという頃には、モンモランシーの手つきは最初とは見違えるほどになった。
 
 こねが終わり、そろそろ生地を寝かせる、という段になって、モンモランシーが先程のビンを手に取った。
「気にはなってたんだけど、そのビンって何なの?」
「私もあなたが気になっていたんだけどね、この前の授業から…。まぁいいわ、これは私が調合したポーションよ」
ビンをミーに突き出し、軽く胸を反らせるモンモランシー。どう、すごいでしょ? とでも言わんばかりだが…
「ぽーしょん…何それ?」
残念ながら、ハルケギニアにやって来てまだ日の浅いミーは、ポーションが何なのかも知らず、モンモランシーを固まらせた。
 
「…簡単に言えば薬よ、薬。このポーションを生地に練り込めば、焼き立ての香りと味がより一層引き立つ…はずよ」
「はず…? はずって何なんですか、ミス・モンモランシ?」
 微妙に自信がなさそうな語尾を、ケティは聞き逃さなかった。そんな彼女に、モンモランシーはそっぽを向いて答えた。
「ま、まだ試作品なのよ、レシピも私オリジナルだし。最悪の場合は爆発するでしょうけど、水のルーンの詠唱で安定させれば、それも起きないわ」
「「ば、爆発っ!?」」
物騒な単語が飛び出し、思わず大声で合唱したケティとミー。そして間髪置かず、それを聞き届けた厨房スタッフ共々、厨房の片隅に急いで避難した。
「…爆発しないって言ってるのに、失礼ね…。ま、その方が都合がいいわ」
ただ1人、調理台の前に残されたモンモランシーは、肩を竦めながら呟いた。
218機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:56:25.62 ID:r4PitY8g
 丸まった生地にポーションをかけ、力一杯こねながら何やらむにゃむにゃと口にするモンモランシー。遠目に見ても、その姿は一生懸命さがひしひしと伝わって来た。
「なぁミス・ロッタ。俺たち平民にゃあ、ミス・モンモランシが何してるのか解んねぇんですが、大丈夫なんで?」
そんな彼女の背中を見守りながら、マルトーがケティに耳打ちした。厨房で爆発騒ぎを起こされたくないのだろう。
「ごめんなさい、私は火のメイジですから、水の秘薬の事はよく解らなくて…。でも、あの様子なら大丈夫じゃないかと…」
申し訳なさそうに答えるケティ。系統が違う上に、モンモランシーは水の秘薬に関して高度な知識を有しているのだ。無理もない。
「うぅん、大丈夫。生地の熱は、ほとんど上下してないし」
 こっそりと熱源走査をしていたミー。何らかの薬品を練り込んで爆発となれば、化学反応による急激な熱量上昇が関係すると予想していた。
だがモンモランシーの体温による極僅かな温度上昇があった程度で、爆発を起こすには明らかに熱量が足りない。
 ハルケギニアは魔法が当たり前に存在する世界なので、化学的な視点だけでは断言出来ない。ミーの想像出来ない理由で爆発するとも考えられる。
しかしミーは、化学とは別な根拠も加味して、爆発は起きないと断言した。この場ではミーだからこそ知り得た、もう1つの根拠である。
 
 ふぅ、と一息ついて手を止めたモンモランシー。どうやら寝かせ前の最終工程が終わったようだ。
「…あなたたち、もう終わったから戻っていいわよ」
呼びかけに応じて、ケティとミーが調理台に戻った。モンモランシーが最後の仕上げを行った生地は、色も匂いも、先程と何ら変わっていない。ポーションの効果は、これから生地を寝かせ、型に取ってから焼いてのお楽しみ、である。
一同は生地の入ったボウルに濡れ布巾を掛け、しばしの間雑談に興じる事となった。
 
「で、あなたは一体何なの?」
 開口一番、モンモランシーの疑問だ。先程はポーションの件で有耶無耶になったが、改めて確認したいらしい。
「ボクはミーだよ。クロの…ライバル、なのかな? 今は一緒に、ルイズちゃんの使い魔ってのになってるんだ」
「何か、奥歯に物が詰まったみたいな言い方ね…。それにしても、2匹目の使い魔って事?」
「みたいだねー、クロのせいだけど」
「今度はバッサリね…」
 サイボーグ丸出しのメタルボディについても色々と聞かれたが、その辺りはミーもお茶を濁した。あまり多くを語っても、理解は難しいと踏んだのだ。同じ端折るにしても、クロとミーではえらい違いだった。
219機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:58:34.33 ID:r4PitY8g
 そしてやがて、話題はギーシュへと移る。やれ気が多いだの、やれボキャブラリーが少ないだの、やれデート先の選択肢も少ないだの。
さすがは女の子。この手の話題となると2人揃えばガトリング砲である。その応酬にミーは、早期に話題への参加を諦めた。
「ま、言うだけ言ったけど…」
 ギーシュへの文句を言っている間に寝かせも済み、型でビスケットの形をくり抜きながら、モンモランシーが漏らした。
「こうしてお菓子を作ってる辺り…」
共通の敵(?)の存在ですっかりモンモランシーと意気投合したケティが続き、
「「どうにも、嫌いになれないのよね」」
見事に重なって、2人してくすくすと笑い合った。
(意外と、悪くない関係なのかも知れないなぁ。後はギーシュ君次第、かな?)
そんな、親睦を深めた2人を見上げながら、ミーはうんうんと頷くのだった。
 
    +     +     +     +     +     +
 
 この日も、ギーシュは同じ場所に座っていた。相変わらずテーブルには冷めた紅茶、手にはバラの造花。普段を考えれば、いよいよもって重症である。
 一体何度目か、本人も数えていない溜息を吐いたところで、彼はある事に気付いた。どこかから、とても甘くておいしそうな香りが漂っている。
昨日のミーのクッキーに負けずとも劣らぬほどだ。そんな香りに釣られ、首をキョロキョロとさせていると、
「何してるのよ、ギーシュ」
「ギーシュ様、お久しぶりです」
背後から、少女2人の声が。先程の香りもかなり近くに感じられる。振り返ると、
「モンモランシーに…ケティ?」
己が二股を掛けた…掛けてしまった相手がいた。表情がいつも通りなだけに、余計に気後れしてしまう。それに、この2人が一緒に自分に会いに来たという事実が、余計にギーシュを混乱させた。
 
「ど、どうしたんだい2人とも?」
 平静に振舞おうとした矢先にどもった。心中でパニックが進行しつつあるギーシュ。そんな彼へ、モンモランシーとケティは、背中に隠していた包みを差し出した。
「これは…?」
おずおずと受け取る。白い包装紙で綺麗にラッピングされたそれは、手にほんのりとした暖かさを伝える。そして何より、ギーシュの胃袋を直撃する香ばしい香りを漂わせていた。
「そ、その子と一緒に作ったのよ。たまには、秘薬以外の物も作ってみたくなっただけ、それだけなんだから」
「この前は結局渡しそびれちゃいましたから、改めて食べていただきたくて、また作って来ました!」
頬を赤らめながら明後日の方を向くモンモランシーと、柔和な笑顔を見せるケティ。理解が状況に追いついていないギーシュだが、両名はそのまま、小走りで寮塔へ戻ってしまった。
残されたのは、左右の手に1つずつ包みを乗せているギーシュ。
 
 ぽつん、と立ち尽くすギーシュ。そこに響いたのは、彼が昨日も聞いた、金属質の独特な足音。ミーである。
「随分驚いてるね、ギーシュ君」
「ミーくん、これは…」
説明を求めようとするギーシュを、ミーは片手で止めた。
「そのビスケットは、モンモランシーちゃんとケティちゃんの気持ち。ボクは何も関わってない。ちょっとは手伝ったけどね」
その台詞を聞いた途端、ギーシュは両手の包みが、先程の何倍も重く感じられた。自分が傷付けた女の子の気持ち。重いのは当然である。
220機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 17:59:49.53 ID:r4PitY8g
 震える手で、ギーシュはまず、ケティから受け取った包みを開いた。包みの口からは、こんがりと焼きあがったビスケットが顔を覗かせている。形は綺麗に揃っていて、彼女の腕前の程を窺わせた。
 ケティの包みをひとまずテーブルに置き、今度はモンモランシーの包みを開けた。その途端に、ケティのビスケットよりもさらに甘い匂いが鼻腔を刺激した。中には、形は不揃いだけれど、見事な出来栄えのビスケットが入っていた。
 
「このビスケットにどんな気持ちが込められてるか、ギーシュ君ならきっと解るはずだよ」
「…すまないミーくん、紅茶を淹れ直してもらえないかな…」
「ふふ、ガッテンガッテン!」
ギーシュの要望をミーは快く引き受け、ティーポットを受け取りに厨房へ向かった。
 
 イスに座り直したギーシュは、昨日のミーの言葉を思い出した。自分を売り込みすぎたが故に、今まで半ば蔑ろにして来たモンモランシーとケティの気持ち。それが形を成して、目の前にある。
「モンモランシーの気持ち、ケティの気持ち…」
どちらも、決して目を背けてはいけない。傷心の少女2人の気持ちを無碍にするなど、あってはならないのだから。
「まだ、チャンスはあるんだ…!」
 クロの言わんとした、1人の女性を愛するという事。はっきりとはまだ掴めていない。しかしそれをモノにするには、まずこのビスケットに篭った2人の気持ちを受け取らなければ。
バラが向けていいのは、花の美しさと香りであって、棘ではないのだ。
 
 
 厨房へ向かうミーの足取りは、軽い。ギーシュの悩みが解決に向かいそうだからだ。
「何だかんだで、ギーシュ君も愛されてるなぁ。ボクが口を挟む必要もなかったかも」
やはり、料理はみんなを元気にする。ビスケットでさらに深く繋がりを持ちそうな3人の関係に、ミーは嬉しさがこみ上げてきた。生身の頃から料理の勉強を続けてきた甲斐があったというものである。
「それにしても、モンモランシーちゃんのあの言葉…」
 ポーションを練り込んでいた際、モンモランシーが口にしていたのは、水のルーンなどではなかった。もっと簡単で、それでいて彼女の気持ちが簡潔に解る言葉。ミーも知っている、最高の隠し味だ。
「…うん、隠し味なんだから、誰にも教えちゃダメだよね」
これを教えてしまっては、全てが台無しになってしまう。だからミーは、その言葉を胸にしまっておこうと決めた。それにモンモランシーの性格からして、誰にも教えて欲しくないはずだ。
 
「よし、何はともあれ紅茶紅茶っと!」
 コック帽をかぶり直したミーは、一度だけモンモランシーの言葉を胸の内で反芻し、厨房へ駆け出した。
 
 ――ギーシュが、おいしいって言ってくれますように
221機械仕掛けの使い魔 代理:2011/08/27(土) 18:01:31.99 ID:r4PitY8g
以上で幕間2、終了です
 
前回の幕間1では、クロちゃんの過去をメインに据えたので、今回はもう1匹のガンダールヴ、ミーくんにスポットを当てました
ミーくんと言えば、やはり剛くんへの愛情料理を思い浮かべる方が多いと思います
 
ゼロの使い魔世界で愛情料理と言えば、私はケティが最初に思い浮かびました
原作ではあまり出番のなかったケティですが、何となく好きなんですよね、素朴な少女といった感じで…
なので、ミーくん登場確定と同時に、この幕間2のプロットは完成しました
前回は、クロちゃん原作中でもかなり凄惨な描写の多かったキッド編をベースとしていましたので、
今回の幕間2は、真逆のほのぼのとした雰囲気を出せていればいいな、と思っています
 
ヤマグチノボル先生の手術も無事成功し、アニメ4期の製作も決定したそうで、またゼロの使い魔が盛り上がるのではと思うと、
喜びを隠し切れません
私個人としては、版権の問題だそうですが、クロちゃんのDVDを一刻も早く出して欲しくもありますが…
では、今後もゼロの使い魔コンテンツが盛り上がり続ける事を祈りつつ、本日はここで失礼致します


以上で、代理投下を終了いたします
222名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 21:28:11.41 ID:iUxcgT5d
代理投下乙
223名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 21:31:51.91 ID:llhDy6/V
そういや前々スレくらいで1話投下されてすぐエタるって言われた作品本当にエタった?
1話だけでエタるとかどんだけだよ
224Never Winter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/27(土) 22:01:03.54 ID:QJLW5KML
もしや私の事かな?

ものすごーく間が空いてしまってて申し訳ないんですが…。
ちょっと巻き込まれて投下規制されちゃったり色々考えることがあったりしたもので。
9月からは仕事とかもありますからその前に1つ2つくらいは続きを投下はしたいのですが…。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:02:05.40 ID:xLeDbL+z
>>224
むしろ君は期待されてたと思うんだ
頑張ってね
226 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/08/27(土) 22:05:37.91 ID:zxwW+LnB
>>224
登録したけどタイトルとかあれでよかったかな?
227名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:11:24.28 ID:z4yo5KCv
エタるってどんな意味?
228名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:13:06.69 ID:5cl8sgi3
>>227
テイルズオブエターナルの略だよ。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:17:03.08 ID:pCHZWMI4
>>224
敢えて言おう、ktkrと。
楽しい予感がする出だしで、個人的に続きが実に気になる作品だったりします。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:37:38.08 ID:pUAwuQwB
読みきり短編にして、受けと勢いがよかったら書けばいいんや!

>>132
でもあれ、作中でも最弱級だぞ
それこそDQのスライム
231マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:15:11.69 ID:gSGEffO0
スレ汚しになるとは思いますが、拙作、マリア様が使い魔を投下致します。

召還されるのは「マリア様がみてる」より、小笠原祥子です。

途中、端折って、既に完成させて居りますので、短編となります。
232マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:19:01.00 ID:gSGEffO0
1
 祐巳は迷っていた。相談すべきかせざるべきか。文化祭の出し物は紅薔薇家の専任事項。去年は祐巳自身が主役で「とりかえばや」をやった。
一昨年は姉である小笠原祥子様が主役で「シンデレラ」を演じた。
「西洋古典、東洋古典と来たから今年はまた西洋古典かな?」
しかし、妹の瞳子は演劇部のエース。どんな役でも簡単に演じられてしまうだろう。
「私やお姉さまが苦労した分位は瞳子に困って貰いたいし・・・」
この様に考えると何をやれば瞳子が困るか、お姉さまに相談したくなる。ロサキネンシスとして一人前ではないと怒られるかな? などと考えている
内に小笠原家に到着した。今日はお姉様である小笠原祥子様の誕生日。小笠原家で盛大にパーティーが行われるらしい。
「本当に制服で良かったのかしら?・・・」
お姉さまは制服で来なさいと昨日電話で注文を付けてきた。
黄薔薇家・白薔薇家はパーティーには呼ばれていない。でも祥子様のお姉様である水野蓉子様は間違いなく呼ばれているだろう。
祥子様と蓉子様に相談する良い機会である。
233マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:21:06.39 ID:gSGEffO0
2
 インターホンを鳴らしてしばらく待つと、蓉子様が出て勝手口に回るように指示された。何で勝手口なの?と思いながら勝手口に回ると、蓉子様と
瞳子が出迎えてくれた。2人ともパーティドレスだ。
「お久しぶり、祐巳ちゃん。」と蓉子様。
「御機嫌よう、お姉さま。」と瞳子。
「じゃ、祐巳ちゃん。こっちへいらっしゃい。瞳子ちゃんと私がドレスを選んであげるから」
「あの? 祥子様は?」
「祥子は主役なんだからお客様のお相手に決まってるじゃない。今日は祥子の社交界デビュー兼、婿探しみたいな物よ。祐巳ちゃんも間違いなく
ダンスを申し込まれるから覚悟して置きなさい。」
「何で私がダンスを申し込まれるんですか? 今日は祥子様のパーティーじゃないんですか?」
「祐巳ちゃんは祥子の妹なんだから、小笠原グループに渡りを付けたい殿方からダンスの申し込みがあるのは間違いないわ。要は合コンよ。」
「私帰ります。」
「もう遅いの。諦めなさい。」 
「瞳子、何で前以って言ってくれなかったのよ。」 
「祥子様から口止めされてました。」
234名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 23:21:36.81 ID:xLeDbL+z
支援
235マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:24:45.69 ID:gSGEffO0
3
 パーティドレスに着替えた祐巳は、会場に案内された。50人程は居るだろうか。祥子様は中央に居た。紅色のパーティードレスに身を包んで。
「皆様、私の妹の福沢祐巳をご紹介いたします。私共々、宜しくお願い致します。」 
「御機嫌よう。福沢祐巳と申します。宜しくお願い致します。」
祐巳は漸く悟った。男嫌いの祥子様は自分を弾除けに呼んだのだと・・・。来るんじゃなかった・・・と思ったがもう遅い。後で数人の男性とダンスを
踊る羽目になるだろう。もう祥子様ったら・・・。

 「蓉子様は弾除けになるのを承知でいらっしゃったのですか?」 祐巳は疑問をぶつけてみた。
「弾除け? 私が祥子の? まさか・・・。 あんなふうに皆に紹介されたのは祐巳ちゃんだけよ。」
「私だけ?」 
「そうよ。」 
「お姉さまは親しみやすくていらっしゃるから、きっと大勢からダンスの申し込みがあるでしょうね。」 
「ふええ。」
「祐巳ちゃんの百面相を見るのも久しぶりね。」 
「もう、笑い事じゃありませんって。絶対。」
236名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 23:26:38.13 ID:F1qQQNs+
支援
237マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:27:06.98 ID:gSGEffO0
4
 しばらくして祐巳は蓉子様に相談する事にした。
「蓉子様。お聞きしたい事があるんですけど。」 
「何かしら?」 
「リリアン文化祭の出し物なんですが、どうして「シンデレラ」をやったんですか?」
「文化祭ね。あの時は祥子の男嫌いを何とか治そうとして、男と芝居させるのが良いと思ってね。でも大勢出るんじゃ逆効果だし。」
「それで王子様が一人居れば済む「シンデレラ」をやったんですか・・・。」
「そう言う事ね。今年は何をやるの?」 
「実はそれで困ってるんですよ。良い出し物が思いつかなくて・・・。」
「あら、瞳子ちゃんが居るんだから、舞台は成功したも同然じゃないの。」 
「いえ、瞳子が困るような芝居をしたいと思うんです。」
「瞳子ちゃんが困るような芝居? 何でまたそんな芝居を?」 
「瞳子が簡単に演じられないようなお話。何か知りませんか?」
「あのお姉様、何か方向性が違ってませんか?」 
「あら、私がした分の苦労を瞳子にもしてもらおうと考えているだけよ。簡単に演じられたんじゃ面白くないもの。「シンデレラ・とりかえばや」西洋古典
・東洋古典と来たんだから、やっぱり西洋古典がいいのかな?」
「うーん・・・・。そうねぇ・・・・。現代劇なんてどう?」 
「現代劇・・・ですか? 何か良い案があるんですか?」
238マリア様が使い魔:2011/08/27(土) 23:30:15.16 ID:gSGEffO0
5
「祐巳ちゃんが祥子のスールになった時の話を芝居にする何てどう? 現役ロサキネンシスがプチスールになった時の話なんて話題になるでしょ
うし、瞳子ちゃんも自分のお姉様である祐巳ちゃんを演じるんだから、やりにくいと思うけど。」
「それじゃ私が祥子様を演じるんですか? 考えて見ると確かにやりにくいですね。」 
「そう。瞳子ちゃんは祐巳ちゃんの百面相を演じないとね。」
「お姉さまの百面相ですか・・・・・うー・・・・。」

 「何を芝居にするんですって?」と、後ろから声が掛かった。
「祐巳、私達のプライベートを芝居にするなんて冗談じゃ有りません。」
「お姉様、聞いてらしたんですか。」 
「あら祥子。聞いてたの。」 
「お姉様、私と祐巳の馴れ初めを芝居にするなんて妙なアイデアを出さないで下さい。」 
「あら、良いじゃないの。充分にドラマティックだったじゃない。それに昨今、スールの成立が減って来てるって話だし。」
確かにスールの成立数は減少している。蓉子様は意外にリリアンの事を気にしてらっしゃるのかしら・・・・と祐巳は考えた。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 00:02:08.40 ID:y+izRSpX
サルさんとか食らったなら>>1の避難所へ行くといいですぞ支援
240 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/08/28(日) 00:37:50.01 ID:YX07GpNU
途絶えたな
241マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 00:43:28.79 ID:FV0SWwza
6
「聞けば祐巳ちゃんと瞳子ちゃんも祥子の卒業寸前までスールにならなかったって云うじゃない。文化祭の題材としては丁度良いんじゃない?」
蓉子様の考えは確かに正しい。私と祥子様の馴れ初め話でスールが増えるのなら、文化祭の出し物の題材として取り上げるのも悪くない。
けど、祥子様の目が絶対に拒否しろと言っている。瞳子もそれなりに困る題材だろうし、申し分無いと言えば無いけど、祥子様と私の2人だけの
秘密を公開する事に抵抗が無い訳ではない。それに現在リリアン女子大に通われている祥子様が文化祭に来る事は間違いない。知られずに
上演する事など不可能だ。確かに良い題材では有るけど、お姉様を説得しなくちゃいけないな・・・・・と、祐巳は考えた。瞳子の反応は・・・・と
みると、既に役作りの事を考えているのか、蓉子様と祥子様の間で考え込んでいる。
音楽が始まった。
「お嬢様方、談笑もよろしいけど、そろそろダンスタイムですよ。」と、柏木さんがいつもの微笑を浮かべて近づいてきた。
今日の祥子様のダンスのトップバッターは柏木さんらしい。
「あら? これ・・・・何かしら?」 
「ん? どうしたんだい、さっちゃん」 
「これよこれ、キラキラ光って・・・・」 
「どうしたんですか? お姉様」
「みんな、これが見えないの?」 
242マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 00:52:30.77 ID:FV0SWwza
7
祥子様が手を伸ばしたと思った途端、中空に祥子様が消えた・・・・・。
音楽は止まり、パーティーは終わった。
衆人環視の中、小笠原祥子様が一瞬にして消えたのだ。パーティーの主役が神隠しに遭った。後にはどよめきだけが残った。
祐巳は祥子様が消えた空間を呆然と眺め続けた。

 ルイズは召還された人物を見て蒼くなった。その人物は紅色のドレスに身を包み、黒い髪をした年長の女性だった。そのドレスはその人物が
舞踏会に出席していた事を物語っていた。
「ルイズが貴族を召還したぞ!」 
コルベールは慌ててその女性に近寄り、調べた。
「大丈夫、気を失っているだけみたいですぞ。すぐに救護室へ運びなさい。」
ルイズは自分のサモンサーヴァントが起こした結果を考え、恐ろしくなった。
「どこかの国から貴族を召還してしまうなんて・・・。今度こそ退学に成ってしまうわ。何で私ばっかり・・・。」 
運命を呪いながらルイズは救護室に向かった。救護室ではコルベールが召還された女性を気付け薬を使って起こそうとしているところだった。
「ミス・ヴァリエール。そこに座りなさい。今この方を起こすから、君もちゃんと見届けなさい。」 
「はい。」
243マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 00:56:49.19 ID:FV0SWwza
>239
はい。お猿さんくらいました。今日はこれまでにします。
244 忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2011/08/28(日) 03:37:19.34 ID:E9zmh9yE
解せぬ。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 09:54:48.63 ID:oc9QgyeA
「俺ちゃんのヒーリングファクターはガンにも勝てる優れモノ!!ヤマグチ先生もいかがっすか!?…って、何で胸にルーンが出んだよ!?生贄役とかおかしいだろ!?いっぺん死ぬからもっかいやり直させ…聞けよオイ!!」

マーベル・コミックからデッドプールを召喚。
たぶん口数の多さでデルフも閉口する(MvC3のイッスンの如く)
246名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 10:02:42.05 ID:m1xNC9+v
不死身や無限再生か・・・

キリコ=キュービィ
パトリック=コーラサワー
キャシャーン(実写)
キャシャーン(Sins)
アルベド
ラスネール伯爵
戸愚呂(兄)
ティベリウス
マキナのファクター
アラガミ・ハンニバル
セフィロスは・・・肉体を伴って再生したといっても怨霊の類だよな、奴は
ファクターは機銃掃射でミンチになっても再生出来るくらいだし
ORしなきゃ心臓停止くらいはすぐ復活するだろう
247名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 10:06:00.61 ID:rG+qCRrD
キリコは違うだろ。 肉体的に不死身なんじゃなくて、運命が死を遠ざけるのだから。
スパロボのキョウスケも同じだよね。
248マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:08:09.94 ID:FV0SWwza
「マリア様が使い魔」 続きを投下します。
お猿さん喰らうまで^^;

私の場合、他の人のように長文を投下できません。何故でしょうかね?
249名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 10:12:26.20 ID:y+izRSpX
>>248
!ninjaを名前欄に記入した時に表示される忍者レベルが低いのではないですかな?支援
250マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:15:17.23 ID:FV0SWwza
8
薬を使うと、女性は直ぐに目を覚ました。
「ここは・・・・何処ですの?」 
「ここはトリステイン魔法学院の救護室です。どこか痛い所はありませんか?」 
「トリステイン魔法学院?」
「お名前と出身地を教えて下さいますかな?」 
「小笠原祥子。出身は東京です。」 
「トウキョウ?聞いた事の無い地名ですな。ひょっとして、東方の地名ですかな? ご自分が何をなさっていたのか、お話出来ますかな?」 
「自宅で誕生日のパーティーをしていました。目の前にキラキラしている物が浮かんでた所までは覚えているんですけど・・・。」
と言って頭を抑えてしまった祥子にルイズは聞いた。
「貴方は貴族ですか?」 
「貴族? 小笠原家は元は華族の家柄ですけど。ここイギリスですの? でも英語じゃないし、今私が話してるのは一体、何処の言葉ですの? 
もう何がなんだか・・・」と言って、祥子は泣きだしてしまった。
コルベールは「取り合えず。今日の所はミス・ヴァリエールにお任せします。落ち着いてゆっくり話をするように。」と言って出て行ってしまった。
251マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:20:15.85 ID:FV0SWwza
9
 その日の晩は祥子にとって試練の連続だった。魔法が存在する事を知って、うろたえたり、双月を見て卒倒しかけたり、使い魔に成れといわ
れて憤慨したりと・・・・。しかし翌朝、祥子は立ち直っていた。
「昨日は随分と見苦しいところを見せてしまったわね。」 
「まぁ・・・・異世界から来たって言うのが本当の事なら仕方ないわよ。気にしないで。」
「私に使い魔に成れって、言ったわね。条件付きで承知するわ。」 
「条件?」 
「そう条件。2つね。」 
「言ってみなさいよ。」
祥子はまっすぐにルイズの目を見て言った。 
「1つは小笠原家の娘として相応の待遇を保証してもらう事。」 
「まぁ、サチコも貴族の家柄だって言うんだから当然よね。良いわ。」 
祥子はルイズの頬を手で挟んで続けた。
「もう一つは・・・・・・ルイズ、あなた・・・・私の妹に成りなさい。」
「妹に成れ? あ・・姉なら実家に2人いるわ。間に合ってるわ。何を言い出すのよ!」 
「私昨日一晩考えたの。この異世界で私が私でいられる方法を・・・・。支えに成る妹を作れば良いのよ。私だって祐巳と言う立派な妹がいるわ。
でもそれは異世界での話。」
252マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:25:37.72 ID:FV0SWwza
10
「私はルイズを立派な淑女として指導するわ。それが姉の務めなのだから。ルイズは私を妹として精神的に支えて頂戴。これが条件よ。」
ルイズは「うー」と唸って座りこんでしまった。
「私が使い魔に成らなければ、退学に成るかも知れないんじゃなかったの?」
「判ったわ。妹に成ります。だから使い魔に成って。」 
「契約成立ね。」 
「んじゃ、使い魔の儀式を始めるから屈んで。」
「我が名はルイズ・フランソワ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
ルイズのキスが終わると祥子の左手に激痛が走った。 
「使い魔のルーンが刻まれるだけよ。直ぐ終わるわ。」 
痛みが止むと祥子は言った。
「本当ならスールに成るにはロザリオを授受するのだけど、今のキスをその代わりとしましょう。これからは私の事を祥子お姉様と呼ぶように。」
「祥子お姉様?」 
「あら、妹に成ったんだから当然でしょう。後、目上の者に話すときは基本敬語を使いなさい。」 
「敬語?」 
ルイズはまた「うー」と唸って座りこんだ。
253マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:31:04.67 ID:FV0SWwza
11
 「ところでルイズ。今日は授業は無いの?」 
「今日は呼び出した使い魔と親睦を深める日なので授業はありません。さ・・・祥子お姉様。」
「そうなの。では学校の中を案内してくれないかしら? これから生活していくのだから、隅々まで知る必要が有るわ。」
ルイズは祥子を案内する事にした。意外な事に祥子が興味を示したのは、トイレや風呂・厨房・馬屋だった。
(文明レベルは中世ヨーロッパってところかしら・・・) 祥子は視察を終えると、空腹を覚えたので、
「ルイズ。お茶にしましょう。」といって中庭に案内させた。
中庭では、貴族たちが昨日呼び出した使い魔と過ごしていた。コルベールがルイズに近づいてきて、昨日の顛末を聞いた。
「ほう。異世界の貴族ですか・・・。ちょっとルーンを見せてもらえますかな? ほう・・・・見た事のないルーンですな。これは調べて見ないと。」
と言って、資料室へ去って行った。
「使い魔って、やっぱり動物ばっかりね。人間は私一人?」 
「基本的に人間が呼び出されるなんて聞いた事がありません。」 
「そうなの。ではルイズは特別な存在な訳ね。」 
「特別なんてトンデモありませんわ。祥子お姉様。」 
「あら、異世界へ扉を開いたんですもの。充分特別だわ。」
254マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:34:52.03 ID:FV0SWwza
12
祥子とルイズが軽食を取っていると、騒ぎが起こった。ギーシュの二股がバレたのである。
「こっちの世界でも殿方と云うのは変わらないわね。」 
祥子は感想を述べるとお茶を飲んだ。ふと見るとギーシュはメイドに八つ当たりをしているようだ。 
「ルイズ。行くわよ。」 
祥子はギーシュに近寄り言い放った。 
「見苦しい八つ当たりはやめなさい。二股を掛けている男が悪いのです。発覚した原因など関係有りません。」 
「君はルイズが呼び出した貴族じゃないか・・・・。いくら貴族でも使い魔風情に言われたくないな。」
「ギーシュ! 祥子お姉様に無礼な口を聞かないで!」 ルイズが叫んだ。 
「お姉様? ルイズ・・・君は使い魔をお姉様と呼ぶのかい?」
「そうよ。祥子お姉様に無礼を働く輩は、ヴァリエール家に無礼を働く物と思って頂戴。」 
普段ゼロのルイズと陰口を叩かれていても、ヴァリエール家の娘である。トリステインで暮らす者にとって、ヴァリエール家に逆らって良い事など
一つもない。 
ギーシュは「まぁ・・・ルイズがそこまで言うのなら、この紅い薔薇の様な御婦人に免じて、このギーシュ・ド・グラモン、メイドの不始末を不問に処す
事に致しましょう。」 と言って引き下がった。
この瞬間を見ていた者に「祥子様=紅薔薇様」のイメージが焼き付いたのだった。
255!ninjya:2011/08/28(日) 10:40:08.30 ID:d+sukPmR
むむ?
256マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:40:11.23 ID:FV0SWwza
13
 「あの・・・・助けて下さいましてありがとうございました。私はメイドのシエスタといいます。ご用がありましたら、何でも申し付けて下さい。」
「どういたしまして、シエスタさんね。それじゃ、早速で悪いんだけど・・・。着替えをしたいので服を用立てて下さらないかしら。」 
祥子は昨日のパーティドレスを着たきりだった。 
「学院の制服でよろしければ、合うサイズがあると思います。直ぐにミス・ヴァリエールのお部屋にご用意させて頂きますね。」
と言って、シエスタは服の調達に出掛けた。 
「祥子お姉様、学院の制服で宜しいのですか? 別の服でも私が直ぐ用意させますけど・・・。」 
「制服かぁ・・・・去年までは私も制服着てたし、懐かしいわ。」 
ルイズは祥子の着てた制服の事を部屋に戻りながら、祥子と話した。

 「祥子お姉様、起きて下さい。今日から授業が再開します。祥子お姉様。」 
「誰? 瞳子ちゃん? 誰なの?」 
「祥子お姉様、ルイズです。朝です。起きて下さい。」 
「ルイズ・・・・あぁ・・・・そうだった。」 
祥子は寝起きが悪い。異世界に来てもそれは変わりなかった。祥子とルイズは身支度を済ませると食堂に向かった。
257 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/08/28(日) 10:43:41.37 ID:d+sukPmR
おっとと…
258マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:45:01.54 ID:FV0SWwza
14
「お早う。ゼロのルイズ。」 
キュルケが挨拶して来た。 
「ごごごご・・・御機嫌よう。キュルケ。」 
ルイズはしたくなさげな挨拶をした。 
「御機嫌よう? なにそれ?」 
「挨拶よ。挨拶。祥子お姉様に挨拶は御機嫌ようで統一しなさいって言われてるの。」
キュルケは祥子を見て、
「はじめまして。私、キュルケ・フォン・ツェルプストーと申します。お見知りおきを。紅薔薇様。」 
「御機嫌よう。キュルケ。私はサチコ・オガサワラと申します。魔法学校は初めてですから、よろしくお願いします。」 
「紅薔薇様、もう一人妹を持つ気は有りませんか?」
「何よ、ツェルプストー。恋人だけじゃなく、お姉様までヴェリエールから奪うつもり?」 
「おやめなさい。ルイズ。」 
「残念ですが、キュルケ。妹は一人と決まっていますので・・・。」 
「あら、ゼロのルイズなんかより、私の方が良いと思いますわ。紅薔薇様。」 
「あんたなんか・・・あんたなんか。」
259マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 10:50:07.80 ID:FV0SWwza
15
「行きましょうルイズ。朝食が冷めてしまうわ。では御機嫌よう、キュルケ。」と食堂に急いだ。 
「ルイズ。淑女と言うのはそう簡単に感情を前に出す物では有りません。」 
「でも祥子お姉様。ヴァリエール家とツェルプストー家は不倶戴天の敵同士で・・・。」 
「因縁があるって訳ね。ま・・・・後で聞かせて貰いましょう。」
 食堂には当然のように祥子の分も食事も用意されていて、当然のように祥子も貴族たちと同席した。
 「偉大なる始祖ブリミルよ・・・・」食事の前の祈りが始まった。祥子は後でルイズに聞いた
「始祖ブリミルって言うのは誰?」 
「神様の様な人です」
「私の世界のイエス様のようなものね。もっともリリアンではイエス様よりマリア様が信仰されてるけど。」 
「祥子お姉様の世界では、神様よりも信仰を集めている人がいるんですか?」 
「いえ、マリア様って言うのはイエス様のお母様なのよ。ルイズもいつも、ブリミル様のお母様に見られてると考えて行動しなさいね。」 
「それがマリア様なんですね。わかりました。」
260 忍法帖【Lv=26,xxxPT】 :2011/08/28(日) 10:51:46.95 ID:d+sukPmR
支援ー
261マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:26:14.00 ID:FV0SWwza
16
 授業が始まった。
「本年度から土系統の魔法を教える。シュブルーズです。属性は土。二つ名を赤土のシュブルーズといいます。」 新任の先生のようだ。
「では誰かに錬金の魔法をやってもらいましょう。そこの貴女。」 ルイズが指名された。 
「危険です。ミセス・シュブルーズ。ルイズがやる位なら私が・・・」 
キュルケは言ったが取り合ってもらえなかった。 
「錬金の何が危険なんですか。いいから貴女。やって見なさい。錬金したい金属を強く思い描くのです。」 
「ルイズやめて!」 
キュルケは叫んだが、ルイズは聞かなかった。
262マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:30:46.65 ID:FV0SWwza
17
ちゅどーん! 爆発音が響いた。 
「やっぱりこうなったか。」 ギーシュはつぶやいた。 
ルイズの服はボロボロになり、先生は気絶していた。
「魔法って危ないのね。失敗すると爆発するなんて・・・。」 祥子は呟いた。 それを聞いていたキュルケは
「危なくなんかないわ。失敗して爆発起こすのはルイズだけの事よ。いつもの事だけど、全く傍迷惑だわ・・・・。ゼロのルイズ! 一体何回爆発
させたら気が済むのよ。」とルイズを非難した。 
「失敗して爆発するのはルイズだけ? 他の魔法使いが失敗したらどうなるの?」 
祥子はキュルケに聞いた。 
「何の変化も起こりはしないわ。全く、未だに二つ名も持てないゼロのルイズは・・・・。」 
キュルケは憤慨していたが、祥子は引っかかりを感じた。
(なんでルイズだけは失敗すると爆発するのかしら? 異世界に扉を開いたのと関係有りそうね。)
263マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:35:02.43 ID:FV0SWwza
18
 ルイズは罰として掃除を命じられた。
「すみません。祥子お姉様にも手伝って頂いて・・・。」 ルイズは済まなそうに詫びた。 
「気にする事はないわ。掃除なんて、高校時代に戻ったみたいで楽しいし。それよりルイズ。あなた、ひょっとしてとんでもない力を持っているので
はなくて?」
「私の魔法はいつもこうなんです。必ず爆発して・・・・。今まで成功した事がありません。きっと出来そこないなんです。」 ルイズは涙を溜めて
いた。 それを見た祥子は
「そんな事はないわ。だって貴女は異世界に召還のゲートを開いたじゃない。きっと魔力が有り余っているのよ。ところで、一体何を錬金するつもり
だったの?」 
「ゴールドですわ。祥子お姉様。みんなをあっと言わせてやろうと思って・・・。」 
「金って・・・金を練成できるのは、スクウェアクラスだけだって、先生も言ってたじゃない。ルイズって度胸だけは一人前ね。階段は一歩づつ登ら
ないと、踏み外して落ちるわよ。」 祥子は呆れて言った。
264マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:39:47.20 ID:FV0SWwza
19
 祥子は学院の授業に付いて一通り見てみた。魔法実技・方法論・幾何数学・音楽など魔法に関する事は一通りやっているみたいだった。
「でも音楽が魔法と関係あるなんて意外ね。」 
「祥子お姉様。スクウェアクラスの巧みの技になると、音楽的要素が強くなるのですわ。だから音楽の授業は重要です。」 
祥子は音楽の授業で使われている楽器を一通り見て見たが、驚いた事に地球で使われている物と寸分変りが
なかった。(これなら私も楽器を使えそうだわ。楽譜は全く違うみたいだけれど・・・)
祥子は学院の視察を大方終えた。それでこの学院に何が足りないかを悟った。生徒は楽員の決めたスケジュールに参加するだけで、自分
から関りを持とうとしない。この学院には生徒会が必要であると祥子は考えた。 
「その内で良いんだけど、学院長と少し話出来ないかしら。」
「学院長ならいつも暇してるみたいですよ。」 ルイズは答えた。 
「そう、じゃぁ今から面談を申し込んで見るわ。」 
祥子は宣言すると学院長室へ向かった。 
「ちょっと祥子お姉様。何故に?」 
「この学院に足りない物を創設するのよ。」
265マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:45:20.76 ID:FV0SWwza
20
 面談の申し込みはすんなり通った。オスマン学院長の方はコルベールからルーンの報告を受けて興味を持っていたからだ。学院長は祥子
の「生徒会設立」の話を一通り聞いた後、
「生徒の代表を選挙で選ぶとな? それはちと問題が有ろうて・・・。」と感想を漏らした。
「まず目立ちたい者が我こそはと、名乗り出る事になるの。それが生徒の間に要らぬ軋轢を生みかねん。どうしても生徒の代表が必要な場合は
学院の方から任命するのが筋ではないかの? それに滅多な者が生徒代表にでもなったら問題が生じかねん。君の国ではどうか知らんが、
このトリステインで選挙などと云う物を認めるわけには行かんぞよ。」 
祥子は自分の認識の甘さを悔やんだ。ここは中世の世界なのだ。まだ選挙制が認められる筈が無かったのだ。民主制に慣れていた祥子の認識
不足だった。トリステインは王政の国なのだ。
 「そうですか。では下がります。ご面談に応じて頂いてありがとうございました。」 祥子は引き下がる事にした。生徒会を立ち上げる為には、
生徒からの声が必要と思ったからだ。 
「ときにそなた、武器は・・・・」 
「武器?」 
「あ、いや、その・・・なんでもないよ。」 
学院長はルーンについて話をしかけてやめた。いずれ時が全てを明らかにすると思ったのだ。
266マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:49:46.20 ID:FV0SWwza
21
学院長室を出るとキュルケとタバサがいた。
「御機嫌よう、紅薔薇様。」 
「何よキュルケ。あんた立ち聞きしてたの?」 
「偶然よ。学院長室に紅薔薇様が向かわれたのが見えたから、後付いて行ったら、丁度ミス・ロングビルが出て行ったんで・・・。」 
キュルケは続けた。
「生徒の代表を選挙とか云うので選ぶんですか? なんか面白そうじゃない。」 
「残念だけど、その話は潰されたわ。」 
「ええ? そうなんですか。それは残念ですねぇ・・・。」 
3人は歩きながら話を続けていた。3人が宝物庫の傍を通った時、祥子は大きな土ゴーレムを見て驚いた。
「ルイズ、あれ、何?」 
祥子は震えてルイズに聞いた。 
「土ゴーレムですね。トライアングルクラスの・・・。」解説を終えると、ルイズは叫んだ。
「あんた何やってるの? 盗賊ね! ファイヤーボール!」 
ルイズのファイヤーボールは壁を爆破しただけで失敗に終わった。 
「ファイヤーボールってのはこうするのよ!」 
キュルケはゴーレムに向かってファイヤーボールを撃った。ゴーレムはモノともしない。 
「ちっ、もう戻って来たのか・・・・。」 
盗賊のフーケはそう漏らしたが、壁にヒビが入っているのを見てゴーレムのパンチを宝物庫に浴びせた。
267マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:56:21.18 ID:FV0SWwza
22
 フーケは宝物庫から出てくると、
「感謝するよ!」と、祥子達に向かって叫び、ゴーレムの肩に乗ったまま姿を消した。
「待ちなさい!」ルイズ達はフーケを逃がすまいとしたが、フーケは学院の壁を越えると土くれとなって消えた。
 フーケが現れた事で学院は騒然となった。授業は自習となり、祥子・ルイズ・キュルケ・タバサの4人は目撃者と云う事で学院長室に呼ばれた。
「すると3人ともしかとは顔を見ておらんのじゃな?」 学院長は念を押して聞いた。 
「はい。フーケは顔を隠していました。」 ルイズは代表して答えた。この時、ミス・ロングビルが入ってきた。
「この学院の一大事に何処に行って居ったのじゃ?」 
学院長が聞くとミス・ロングビルは答えた。 
「近所に聞き込みに行って参りました。それで炭焼き小屋に出入りしている者が、フーケではないかと云う情報を得ました。」 
「ほぉ、流石、仕事が早いな。」 学院長は感心した。 
「誰かフーケを捕らえて名を挙げようという貴族は居らんか?」 学院長は問うたが、誰一人名乗り出なかった。 
「あの・・・・私が・・・・」 ルイズが杖を上げた。 
「ルイズ、よしなさい。」 祥子はルイズを咎めたが、ルイズは
「私はフーケを目撃しておりますし、確認が取れると思います。」と言って聞かなかった。 
「では私も;・・。」 今度はキュルケが杖を上げた。
268マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 12:59:46.65 ID:FV0SWwza
23
「あんたはいいのよ。」 ルイズは嫌そうに言ったが、キュルケは
「ヴァリエールには負けられませんわ。」と言って引かなかった。次にタバサが杖を上げた。
「まぁ・・・いいじゃろ。君達に任せるとしよう。ではミス・ロングビル、彼女等をその小屋に連れて行くように。」と指示した。

 炭焼き小屋へは馬車で向かった。
「祥子お姉様は来なくても良かったんですよ。」 
「私はルイズの姉であり、使い魔でもあるのよ。ルイズが行くと言うなら、守りに行かないわけにはいかないわ。」 
キュルケは祥子の世界に付いて興味深々で話を聞くのだった。
馬車が炭焼き小屋に着くと、ミス・ロングビルは周囲の偵察にいった。タバサとキュルケは炭焼き小屋の中に入って調べる事にした。しばらく
すると2人が破壊の杖を持って出てきた。 
「どういう事? 何で盗んだ物を放置してるのかしら?」 4人が思案していると、ゴーレムが現れた。
祥子は真っ先に避難した。キュルケとタバサは魔法をぶつけたが無駄であった。ルイズは逃げなかった。 
「ルイズ! 早く逃げなさい。」
「ルイズ、逃げて。」 
皆が勧めたが、ルイズは逃げなかった。
269マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:04:46.49 ID:FV0SWwza
24
「魔法が使えるものが貴族なんじゃない。敵に後ろを見せない者が貴族なのよ。私はゼロなんかじゃないわ!」 
ルイズはそう言って魔法を放った。しかし、いつもの通り小さな爆発が起こるだけだった。祥子はルイズの元に走りながら
「破壊の杖を使ってゴーレムを倒して!」と叫んだ。
キュルケは破壊の杖の箱をあけたが、そこにあったのは杖ではなかった。タバサはエアハンマーでゴーレムに打撃を与えつつゴーレムの気を
引いた。
 祥子はルイズを伴って、キュルケに合流した。そして破壊の杖をゴーレムに向けると叫んだ。
「皆伏せて!」 
破壊の杖は一撃でゴーレムを屠った。 
「祥子お姉様、魔法は使えないんじゃなかったんですか?」 ルイズは祥子に問いかけた。
「それともこれ、マジックアイテムなのかしら?」 
「何でこんなものがここにあるのかしら? 何で私に扱えたのかしら?」 
祥子は自分の行為に驚き、破壊の杖を地面に投げ捨てた。
ミス・ロングビルがいつの間にか戻ってきていて、破壊の杖を手に取りながら言った。 
「破壊の杖と言うだけの事はあるわね。私のゴーレムが一撃じゃないの・・・・。」
270マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:09:45.94 ID:FV0SWwza
25
「私のゴーレム?」 ルイズは呟いた。 
「そう。盗んだは良いけど使い方が判らなくてね。仕方なくこう言う手段を取った訳。動かないで!」 
「あなたがフーケなのね。」 祥子は鋭い眼でフーケをにらんだ。 
「そうよ。教師じゃなく、生徒が来たのは誤算だったけど、そのお姫様なら扱えると思ったわ。」 
「ミス・ロングビルどうして貴女が盗賊を?」 ルイズは訊ねた。 
「盗賊の方が本業でね。それではさようなら。」 
フーケは破壊の杖を作動させようとしたが、破壊の杖は煙も吐かなかった。 
「タバサ! エアハンマーよ!」 
祥子の言葉と同時にタバサはエアハンマーをフーケに叩きつけた。 
「どうして・・・・」 
フーケは意識を失いかけながらも問うた。 祥子は
「これは魔法の杖でもマジックアイテムでもないの。ロケットランチャーっていう、私の世界の武器よ。あいにく、単発式なの。弾が無いからもう使え
ないわ。」
271マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:14:49.54 ID:FV0SWwza
26
 学院に戻ると直ぐ学院長からお呼びがかかった。学院長は
「いや、フーケを捕まえるとはたいした手柄を立てたものじゃ。君達には王宮から恩賞が下るじゃろう。」といって皆を労った。
祥子は「少しお聞きしたい事が有るのですけど、どうして私の世界の武器があるんですか? どうしてフーケは私にこの武器が扱えると知っていた
のですか?」と問い正した。
学院長は破壊の杖の由来を祥子に話し、祥子に刻まれたルーンが伝説の使い魔ガンダールヴの物である事、ガンダールブは全ての武器を扱っ
てブリミルを守った事を話した。 
「私がそのガンダールヴだとおっしゃるのですか・・・・。」 祥子とルイズは驚いた。 
「今宵は舞踏会じゃ。たっぷり踊って、ゆっくり休むように。」 学院長はそう言って話を終わらせた。
272マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:20:15.27 ID:FV0SWwza
27
 舞踏会では大勢の男性からダンスの申し込みがあった。祥子とルイズはそれを全て断って二人で話した。
「祥子お姉様が伝説の使い魔だと云うのは凄いですね。流石は祥子お姉様です。」 
「私を呼び出したのはルイズ、あなたよ。やはりあなたは特別だったわ。」 
「それにしても全ての武器を自在に扱えるというのは凄いです。明日は虚無の曜日だし、早速武器を買いにいきましょう。」 
「ルイズ。淑女というのは武器を扱えなくても良いのよ。」 
「でも力が勿体無いじゃないですか。祥子お姉様、私の為だと思って付き合って下さい。」 
「仕方ないわね。判ったわ。」 祥子は同意させられた。 
「ルイズ、あなた踊らないの?」 
「祥子お姉様だって申し込まれてたじゃないですか。なんで踊らないのですか?」 
「私は殿方は苦手なの。これでも随分、殿方に免疫が出来た方なんだから・・・・。ルイズは何故踊らないの?」 
「日頃、ゼロのルイズって馬鹿にしてる男達と踊る気にならないんです。」 
「じゃ、私と踊りましょうか?」 
「祥子お姉様と? それは楽しそうですね。」 
二人はダンスを踊った。 
273名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 13:24:05.73 ID:ZUkqAftX
支援様がみてる
274マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:25:42.08 ID:FV0SWwza
28
「こうしていると、祐巳と踊った時の事を思い出すわ。あの時もとてもダンスが楽しかった・・・。」 
ルイズは「私、祐巳様に嫉妬を覚えますわ。祥子お姉様、祐巳様の話をなさる時、とても幸せそうなんですもの。」と膨れた。

 次の日、祥子とルイズは街の武器屋に来ていた。
店主は「貴族のお嬢様方。ウチは真っ当な商売をしておりますが、何の御用でしょうか?」と不審がって聞いて来た。
ルイズは「客よ。別に文句を言いに来たわけじゃないわ。祥子お姉様に相応しい武器を見繕って頂戴。」と店主に告げた。 
「これは失礼しました。こちらのお嬢様にですか? そうですね。華奢だし、細身の剣なんてどうでしょうか?」
と言って装飾付の細身の剣を取りに行こうとした時、
「はぁ・・・女の身で剣を買うのかい? こりゃ次の戦争は負けだな!」 
と声がした。 祥子とルイズは無礼な声の主を探したが見当たらなかった。
店主は「こらデル公! 商売の邪魔だ、黙って居やがれ!」と怒鳴った。祥子とルイズは声の主に気が付いた。
それは一本の剣だった。
「インテリジェンススォード?」 ルイズは手に取って見た。それは古くて錆も浮いたボロ剣だった。
「ルイズ、私にも見せてくれないかしら?」
275マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:30:43.97 ID:FV0SWwza
29
祥子が剣を手に取って見ると、
「おでれぇた。おまいさん、女の身で使い手か! なら俺を買え! 俺はデルフリンガーっていう名の伝説の剣だ!」と、剣が喚いた。
「伝説の剣?」 ルイズは疑問を浮かべつつ店主の顔を見た。
「こりゃ、たまげた。デル公が俺を買えだとよ」店主は呆れ顔で言った。
「その剣なら、100で結構でさ。いつも商売の邪魔されて困ってたとこです。いい厄介払いでさ。」
「でもこんな錆だらけのボロ剣を祥子お姉様に買えるわけ無いじゃない。」 
「錆だらけだと? よし見てな。」 
デルフリンガーはそう言うと光り出した。光が止むと錆は綺麗になくなっていた。
「どうだ? 俺様を買えば手入れ要らずで便利だぞ。そら買え、俺を買え!」と喚いた。
ルイズは「どうします? 祥子お姉様。」と祥子に判断を任せることにした。
276マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 13:34:58.38 ID:FV0SWwza
30
「私には重すぎると思うけど・・・・。」と祥子が言うと、デルフリンガーは、
「でえじょうぶだ。おまいさんなら片手で扱えらぁ。抜いて見ろ!」と喚く。祥子が言われた通り抜くと、確かに片手で扱える。 
「あら、本当だわ・・・。じゃぁ・・・・これにしましょうか・・・。」 
店主は「やいデル公! お前手入れ要らずの剣ならそう言えってんだ。100で売るって言っちまったじゃねぇか!」 と頭を抱えた。 
ルイズは「100? 祥子お姉様に相応しい剣が100の訳無いでしょう? 500よ。500出すわ。」と勝手に値段を変えた。
店主は「貴族のお嬢様。ありがとうございます。」と頭を下げ、金貨500枚でデルフリンガーは祥子の剣となった。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 14:26:09.57 ID:iNpbOOO7
半日たっても終わらない投下なんてはじめて見た
278名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 14:39:15.24 ID:ZI7J1ZJu
テキストをあぷろだに上げた方が早いなw
279名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 14:47:40.19 ID:5fPQu9Ag
>>231
>途中、端折って、既に完成させて居りますので、短編となります。

短編じゃねえだろ、これ。
章を分けずにずうっと続けているだけじゃないか。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 14:54:00.32 ID:lOrAJHWi
一応聞くけど、誰か投下したい人とかいない?
日曜日だし、投下しようと思っている人いるかも知れないから。
281マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:01:10.90 ID:FV0SWwza
??
 「祥子お姉様、私達、ここで死ぬんですね。」 ルイズは表情も変えずに言った。 
「そのようね。」 祥子は答えた。 「何故祥子お姉様だけでも逃げて下さらなかったんですか? 私、祐巳様に申し訳なく、辛いです。」 
「妹を守るのが姉の役目、主人を守るのが使い魔の役目。2つの役目が一致してるんだから、逃げるわけには行かないでしょう。」 
祥子はルイズをまっすぐに見つめて答えた。 
「まぁ7万の敵って言ったって、各部隊は指揮官が倒れりゃ、後方に引いて再編成するんだ。指揮官を確実に倒せば、戦えない相手じゃねぇ
よ・・・・。」 デルフリンガーは二人を励ました。 
「ルイズ、祈祷書を見て使えそうな魔法を探してみなさい。」 ルイズは祈祷書の頁をめくった。 
「テレポートの魔法が新たに見つかりました。」 
「私を連れてどの位跳べるか、試して見て。」 ルイズは呪文を唱えた。 
「ざっと100メイル程ですね。祥子お姉様。これでは逃亡用には使えませんわ。」 
「それでも敵の指揮官の前に私を連れて行く事は可能ね・・・・。イリュージョンで相手の気をそらして、テレポートで指揮官前に出現、指揮官を
倒した後、テレポートで離脱。これを繰り返せば、7万の足止めと云う目的は達成出来るわね。虚無の担い手と虚無の使い魔の力を敵に見せて
やりましょう。」 
282マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:06:11.86 ID:FV0SWwza
??
祥子は精一杯気を張って言い放った。そしてルイズと2人、7万の敵に向かって行くのだった。
 「相棒! 足止めはもう充分だ。離脱方法を探した方がいいぜ。」 デルフリンガーは祥子に言った。 
「そんな事言ったって、もう周りは敵で一杯だわ。」 
「草の茂みでも良い。隠れられるところにテレポートするんだ。」 ルイズはデルフリンガーの言葉に従った。 
「ここももって5分でしょうね。ルイズ、もう一度祈祷書を読んで見て。」 ルイズが祈祷書を読むと新しい魔法が見つかった。 
「祥子お姉様、世界扉というのが見つかりました。」 ルイズが世界扉を唱えると、目の前に小さな穴が開いた。 
「その穴に飛び込みなさい。早く。」 
祥子がそう言うのと大量の矢が飛んで来るのがほぼ同時だった。祥子はルイズが逃げ延びるまで、矢の雨を食い止めたが、祥子が穴に飛び込もう
とした瞬間祥子の胸に一本の矢が突き刺さった。 
「祐巳・・・・・・」 祥子は消え行く意識の中で最愛の妹の名を呼んだ。
283マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:09:50.89 ID:FV0SWwza
??
 小笠原祥子が消えて半年、祐巳はリリアン女子大受験の為、最後の追い込みにかかっていた。現役のロサキネンシスが受験に失敗する
訳にはいかない。何事にも「平均点が売り」の祐巳にとって、受験は大問題だった。それでもどうしても考えてしまう。 
「お姉様は一体何処に行ってしまったのかしら・・・・。」 今夜も受験勉強をしていても、お姉様の事が気になる。 
「うーん。ちょっと一服しようかな?」 と伸びをしていると、背後でドサっと大きな音がして祐巳は振り向いた。
そこには桃色の髪をした女の子が、血まみれの黒い髪の女性に縋って呼びかけていた。
「祥子お姉様! 死なないで!」 
「相棒!」 
「祥子お姉様? え?」 
祐巳は血まみれの女性が消えた小笠原祥子であると認識するのに時間がかかった。 
「え? お姉様?」 
漸く認識すると、胸の矢を抜こうとした。 
「抜くんじゃねぇ! 失血死するぞ!」 男の声が祐巳を怒鳴った。 
祐巳は慌てて、「えと、救急車!」と叫ぶと、携帯に手を伸ばした。

 その晩の事を祐巳は断片でしか思い出せない。ルイズと名乗る女の子と一緒に救急車に乗って、病院に運ばれた事。あまりの事に、小笠
原家への連絡が遅れた事。連絡を受けて飛んで来た柏木さんの顔。蓉子様の蒼ざめた顔。瞳子の泣き顔。手術中の文字が灯ったライト。
284マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:15:10.19 ID:FV0SWwza
??
 数日後、祥子が意識を取り戻したとの知らせを受けて、祐巳はルイズと面会に行った。この半年、何があったのかはルイズから聞き出した。
信じられない話だったが、目の前でテレポートされれば信じる他無かった。
ドアをノックして祐巳とルイズは祥子の病室に入った。
「お姉様、無理はなさらないで下さい。」 
祥子が起き上がっているのを見て祐巳は心配した。 
「祐巳・・・・・・。やっとあなたに会えたわね。」 祥子は幸せそうに微笑んだ。 
「相棒・・・。もうダメかと思ったぜ。」 デルフリンガーが言うと祥子は
「もう相棒じゃなくなっちゃったわ。」 と左手を見せた。ガンダールヴのルーンが消えていた。 
「心筋に矢が刺さっていたから、心停止させて手術したって、お医者様が言ってらしたわ。」 
祥子はルイズに「ごめんなさい、ルイズ。使い魔の契約が切れちゃった・・・・。」と笑って言った。 
「いえ、祥子お姉様に生きて居て貰えれば、私はそれだけで・・・・。」 ルイズは涙を浮かべて言った。 
「また召還のゲートが開いても、今度はもう入らないわよ。」 
「はい。祥子お姉様はこの世界で祐巳様とお暮らし下さい。御機嫌よう、祥子お姉様、祐巳様。」
285マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:19:45.86 ID:FV0SWwza
??
 ルイズがトリステイン魔法学院に戻ると、大騒ぎになった。ルイズが殿軍を勤めた事を皆が知っていたのだ。生きて帰った英雄を皆が称えた。
しかし、ルイズはもうそんな事に興味はなかった。新しい使い魔を呼び出す気も起こらなかった。

 ルイズは自分に必要な物が何かを悟っていた。そう、私も持つのだ・・・・・。妹を・・・・・。
286マリア様が使い魔:2011/08/28(日) 15:27:07.41 ID:FV0SWwza
以上で終わりです。
スレ汚し、すみませんでした。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 15:39:38.88 ID:ByZ2BJOu
マリアの人乙
288ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:05:08.60 ID:C8Z6RFzt
マリア様乙でした。
問題なければ5分後ぐらいに七話目を投下させてください。
289ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:10:38.00 ID:C8Z6RFzt
フリッグの舞踏会から何日か過ぎた朝。
慌てふためき走り回る生徒や、顔面が攣りそうなほどの笑顔でスキップする生徒がそこらじゅうにわらわらと。
「こりゃ何の騒ぎだよ」
朝食を済まし、ルイズの部屋に戻ろうとしたスラおは、何度か廊下を行き交う生徒に踏まれていた。
生徒の話を盗み聞きしたところ、アンリエッタとかいう姫が学院を訪問するとか何とか。
人の群れを掻い潜って、ルイズの部屋に戻る。
窓から外を確認すると、正門のあたりに生徒達が整列している。
その中には、授業中のはずのルイズ達もいる。
すると、立派な馬車が学院内に入ってくる。
中から出てきたのは白髪のおばさん。とても"姫"には見えない。
と、思っていると再び人が現れる。
その風貌はまさしく姫。美しく、可憐な様子が遠くから見てもうかがえる。
「冒険の臭いがするぞ」
昔から世界の危機には王やら姫やらが深く関係していると相場が決まっている。
その度に勇者が現れ世界を救う。
勇者に憧れるあまり、一時的とはいえ、本物の勇者にまでなったスラおにとっては、好奇心をくすぐりすぎる状況だ。
その時、背中に一瞬だけガンダールヴのルーンが浮かび上がったことをスラおは知らない。
290ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:11:42.30 ID:C8Z6RFzt
その日の夜・・・。
ルイズは急に立ち上がったと思ったら、ベッドに腰掛けて枕を抱きかかえたりと、そわそわしている。
いつもならベッドに横になって寝息を立てている頃だ。
そういえば、今朝、姫の護衛か何かだろうか、羽帽子を被った髪の長い男の貴族がいた。
遠くから見ていただけなので確信はないが、ルイズはその男を目で追っていたような気がする。
ついでに頬も染めていた・・・ような気がする。
もしかしたら、それが原因かもしれない。
「おいルイズ。もう寝た方がいいんじゃねぇか?」
毎朝ルイズを起こす役目を担っているのはスラおである。
寝不足になってもらうと、寝起きが悪くなる。ついでに機嫌も悪くなる。
面倒事が増えてしまうではないか。
就寝を催促してもルイズは目を閉じようとはせず、それどころかスラおの声も聞こえていないようだ。
そんな時、ノックの音が聞こえた。
ノックは規則正しく、初めに長く二回、それから短く三回叩かれた。
ルイズの顔つきが変わる。
慌ててブラウスを身につけ、ドアを開ける。
そこには黒い頭巾をかぶった女が立っていた。
フーケの時もそうだったが、スラおは魔物。
雄、雌の違いを見た目でほとんど見分けられない魔物の仲間。
それ故、匂いやちょっとした仕草で性別を簡単に区別することができるのだ。
その女は図々しくも、部屋の中に入ってきて扉を閉める。
「・・・あなたは?」
女は人差し指を口元にやり、ルイズの問いを制止する。
そして、杖を取り出し軽く振る。すると光の粉が部屋に舞う。
「・・・ディティクトマジック?」
それは魔力を探知する魔法。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
女はそう言って、黒い頭巾を取る。
なんとそれはアンリエッタ王女。
遠くから見ただけでも眩しい輝きを放っているのに、こんな近くで直視すると、あまりの輝きに失明してしまいそうだ。
「姫殿下!」
ルイズが慌てて膝をつく。
スラおは妙にテンションが上がってしまって、うおっうおっと言いながらぴょんぴょん飛び跳ねる。
ルイズに睨まれるが、気付かない。
そして、アンリエッタは透き通るような声で言った。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
291名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 16:12:26.96 ID:eXDjubqt
支援
ん?ガンダールヴのルーン?
292ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:12:46.23 ID:C8Z6RFzt
アンリエッタは感極まってルイズを抱きしめる。
「あぁ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません。こんな下賤な場所へお越しになられるなんて・・・」
姫はまるで友人のように話しかけてくるというのに、ルイズはずっと畏まっている。
姫もそんな状況を嫌がっているのか、堅苦しい行儀をやめるように促す。
緊張しているのか、それでもルイズは堅苦しい行儀とやらをやめようとはしない。
その緊張を察したのか、アンリエッタは昔話を始める。
「幼い頃、いっしょになって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの!泥だらけになって!」
それを聞いて、顔の筋肉が緩んだようにルイズははにかんだ。
どうやらアンリエッタとルイズは幼馴染らしい。
これはますます冒険の臭いが漂ってくる。
しばらくの間、ルイズ達は昔話に花を咲かせた。
だが、アンリエッタの明るすぎる表情に影ができる。
「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね。ルイズ。フランソワーズ」
王族には王族なりの苦労があるのだろう。
将来を約束されるということは、逆にその道から決して外れることができないということでもある。
アンリエッタは窓の外の月を眺めて寂しそうに言った。
「結婚するのよ。わたくし」
「・・・・おめでとうございます」
一応、祝福の言葉を贈るルイズだが、その声は沈んでいた。
スラおでも分かる。それは望んだ結婚ではない。
自らふった話だが、場の空気の沈みようが想像以上だったのか、アンリエッタは話をそらす。
「面白いガラス細工ね。マジックアイテムかしら?」
アンリエッタがスラおに目を向ける。
まさか生きているとは思わないゲル状の物体を、ガラス細工と勘違いしたらしい。
それがピョンピョンと飛び跳ねているのだから、マジックアイテムと思っても仕方がないだろう。
「あれは一応生きている使い魔です。脳味噌がないので失礼な態度をとることがありますが、どうかお許しください」
ルイズが少し焦った声で答える。
「脳味噌がねぇってどういうことだよ!」
友達だとかなんとか言いながらも、失礼なことを言うルイズを一喝する。
「ガラスのように綺麗だったのでつい。かわいらしい使い魔ですね」
それに人の言葉まで話すなんて、と目をキラキラさせながらアンリエッタが見つめてくる。
嘘偽りなく、素直に誉められたような気がして、スラおは恥ずかしくなって、ぷいっと背を向ける。
293ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:15:04.15 ID:C8Z6RFzt
>>291
うわ・・・ミスった・・・
正しくはリーヴスラシルです。
ご指摘ありがとうございました。
294ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:17:21.03 ID:C8Z6RFzt
その後、ほんの少しの間だけ沈黙が続く。
その沈黙を破るように、アンリエッタが深いため息をついた。
「姫様、どうなさったんですか?」
ルイズが心配して聞くが、アンリエッタはなんでもないと言って言葉を濁す。
だが、わざわざこうしてルイズの部屋にやって来ている時点で、アンリエッタは悩みを聞いてもらう気満々なのだ。
案の定、何度かルイズが聞き返すと、アンリエッタは口を開いた。
「今から話すことは、誰にも話してはいけません」
アンリエッタはルイズに向かってそう言ったが、スラおはもちろん席をはずす気などない。
アンリエッタも使い魔に席をはずさせる気はなく、構わず話を続ける。
「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが・・・」
「ゲルマニアですって!」
ゲルマニアが嫌いなルイズは驚きのあまり、アンリエッタの話を遮ってしまう。
「あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
アンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢を、ルイズに説明した。
同盟のために、ゲルマニア皇室に嫁ぐことは必要なのだ。
「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません」
アンリエッタは呟いた。
「・・・したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を、血眼になって探しています」
「もしかして、姫様の婚姻をさまたげるような材料が?」
ルイズの額に汗が浮かぶ。
アンリエッタは両手を合わせ、天を仰ぐようにして頷いた。
「おお、始祖ブリミルよ・・・、この不幸な姫をお救いください・・・」
その場に崩れ落ちるアンリエッタを見て、スラおは目を輝かせる。
そんな場面ではないのだが、一国の姫を目の当たりにしたのは初めてだから仕方ない。
何をするにも、言うにも、大袈裟なところが、世間を知らないお姫様っぽさを強く表現していた。
そんなことを考えていると、またも大げさに両手を広げ、話し始める。
「・・・・わたくしが以前したためた一通の手紙です」
「手紙?」
「そうです。それがアルビオンの貴族達の手に渡ったら・・・、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」
「どんな内容の手紙なんですか?」
ルイズがその内容を聞くのは当然。だが、それには答えられないらしい。
295ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:19:15.69 ID:C8Z6RFzt
その手紙は、今は手元にないという。
「手紙を持っているのは、アルビオンの反乱勢ではありません。反乱勢と骨肉の争いを繰り広げている、王家のウェールズ皇太子が・・・」
遅かれ早かれ、ウェールズ皇太子は反乱勢に囚われてしまうらしい。
そこでルイズもスラおも理解する。
「つまり、その手紙さえ取り戻せば・・・!」
私に任せてくださいと言わんばかりにルイズが声を張り上げる。
「だめよ!ルイズはわたくしの大切なお友達!そんな危険なこと頼めるはずもありませんわ!」
なんてこったい!ここまできて引くなんてそりゃないぜ!
スラおは心の中で叫ぶ。ルイズのいる前で姫様にそんなことを言えばただでは済まない。
だが、姫のために任務を遂行する・・・こんな血湧き肉躍る冒険はなかなかない。
頼みの綱はルイズ。きっと引きさがらないはずだ。
「私は、あの『土くれのフーケ』を捕まえた一人です。その一件、わたくしめに任せていただければ必ず!」
ルイズにスラおが続く。
「オイラもいるから大丈夫だ!」
どや顔で胸を張る。
アンリエッタもそんな二人の態度に、ようやく折れた。
アンリエッタは、何度も何度も感謝の言葉を口にし、何度も何度も頭を下げた。
「早速明日の朝にでも、ここを出発いたします」
ルイズがそう決意した瞬間、扉がバタンと音を立てて勢いよく開く。
「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
ギーシュが仲間になりたそうにこちらを見ている!
たとえギーシュといえど、貴族であり、いいとこの息子だ。
話を盗み聞きされたこともあり、アンリエッタはギーシュも任務を遂行する一人として認めた。
そして、ルイズはアンリエッタから密書を受け取る。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引きぬくと、ルイズに手渡した。
「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が必要になったら売り払ってくれても構いません」
ルイズはそれを受け取り、深々と頭を下げる。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなたがたを守りますように」
296ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:20:49.97 ID:C8Z6RFzt
朝もやの中、ルイズとギーシュが馬に鞍をつける。
スラおは、ルイズの馬に乗せてもらおうと、既に馬のお尻にちょこんと乗っている。
「ルイズ、お願いがあるんだが」
ギーシュが相変わらずキザな表情を作って言う。
「ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」
「連れていけばいいじゃない」
ルイズは素っ気なく言う。
ギーシュはそれを聞いて、キザな表情を崩して満面の笑みを浮かべた。
すると、地面がモコモコと盛り上がる。
「ヴェルダンデ!ああ!僕の可愛いヴェルダンデ!」
出てきたのは大きなモグラ。ジャイアントモールというものらしい。
とにかく、これでもかと言うほど溺愛されていた。
「え?ちょ、ちょっと!何なのよ!」
急に、その巨大なモグラがルイズにのしかかり、体を鼻でつつきまわす。
最終的に、ルイズが右手の薬指にはめている指輪をクンカクンカと嗅ぎ続ける。
「なるほど、指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
ルイズの助けを求める声も意に介さず、ギーシュは手をポンと叩いて、一人で勝手に納得する。
「面倒くせぇモグラだな。オイラがどかしてやるよ!」
スラおは馬の尻から飛び降り、ヴェルダンデを蹴飛ばそうとする。
そんな時、一陣の風が舞い上がり、スラおはヴェルダンデ諸共吹き飛んだ。
「誰だ!」
ギーシュが怒りのあまり顔を歪ませ、くしゃくしゃのブサイクに変わる。
目の前には羽帽子の長髪、長身の男。
「貴様、僕のヴェルダンデになにをするんだ!」
「てめぇ!オイラを吹き飛ばしやがって!なにしやがんだ!」
ギーシュとスラおの息が合った。
「落ち着いてくれ。僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行するよう命じられてね。君達だけでは心配らしい」
男はギーシュ達を制止し、帽子を脱ぐと、一礼する。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
それを聞いてギーシュは項垂れる。一、魔法学院の生徒風情では敵わない相手なのだろう。
「すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを、見て見ぬ振りはできなくてね」
「うるせぇ!オイラまで吹き飛ばすこと・・・って、婚約者?」
相手が誰だろうと構わず威勢を張るスラおだったが、婚約者という言葉に驚いて唖然としてしまう。
「この"へちゃらぽけん"が婚約ぅ!?」
「だ、誰が"へちゃらぽけん"よ!意味分かんないわよ!」
ルイズはいつものように大声でスラおに言い返す。
しかし、婚約者の前であることを思い出したのか、青ざめたと思ったら、今度は頬を赤らめ、急に淑やかになる。
「なんでい・・・・」
こうして、スラおの新たな冒険は始まった。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 16:21:57.76 ID:y+izRSpX
支援
298ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/28(日) 16:21:59.24 ID:C8Z6RFzt
以上です。
コピペ間違ったり自分で改変した設定間違ったり・・・なんかミスが多いなぁ
299ウルトラ5番目の使い魔 ◆213pT8BiCc :2011/08/28(日) 18:41:22.92 ID:68LpDVDu
皆さんこんにちは、4期正式決定だそうで、ずっと待っていてほんとうによかったです。
57話投稿開始します。
10分後、18:50にはじめますので、今週もよろしくお願いいたします。
 第57話
 闇に打ち勝つ選択
 
 異形進化兵 ゾンボーグ兵 登場!
 
 
 地球とよく似た自然環境を持つ世界ハルケギニア。そこには、多くの生命が息づき、人々が様々な生活を営んでいる。
 アルビオン王国の内乱が終結して以降、世界は散発的に現れる怪獣の出現はあれど、平和と平穏を取り戻しつつあるように見えた。
 しかし、この世界を手に入れようともくろむ邪悪は決して滅んだわけではない。平和の光の足元にできる影の中で、
邪悪はその力を蓄え、人々を陥れるために卑劣な策謀を練り続けていたのだ。
 
 世間がアンリエッタ王女の婚姻の祭りで賑わう中、伝説の虚無の力をめぐる争いに巻き込まれてしまったルイズたち。
世界の命運をも左右するという大魔法の存在にとまどいつつも、虚無の力を狙う謎の敵の脅威は否応なしにルイズたちを
望まない戦いの渦中へと引きずり込んでいく。
 運命か必然か、次第に姿を現していく虚無の真実と、かつてのハルケギニアに起きた災厄の歴史。
 そして事件の黒幕である、ガリア王ジョゼフによるティファニアの誘拐ではじまった冒険。エルフの少女ルクシャナとの
出会いから、困難な旅路を経てたどり着いたアーハンブラ城。そこで待っていたビダーシャルとの存在をかけた意志の
激突と、恐るべき敵フォーガスの戦い。想像を絶する苦難の旅は、ティファニアの奪還成功によってハッピーエンドで幕を閉じたと思われた。
 しかし、才人たちがこの世界が自ら生み出した闇と戦うあいだに、ハルケギニアを狙う最大の侵略者は目覚めていた。
 湧き上がる喜びの中で届いた最悪の凶報。
 長い沈黙を破って復活した異次元人ヤプール。怨念と、この世界に満ちるマイナスエネルギーを吸収して蘇った
その力はかつてを大きく上回り、強大な武力を誇るエルフの軍隊をも踏みにじり、彼らが守り続けてきた聖地を苦も無く
占領してしまった。
 
 永遠に続いてほしいと思い続けてきた、休息の期間の終わりの鐘。

 さらに、ヤプールとの決戦に対するために準備されていた亜空間ゲートも、ヤプールの妨害によって閉じられた。
 最大の援軍を失い、意気消沈する才人だったが、ルイズのはげましで勇気を取り戻し、あらためてこの世界を
守るために戦うことを決意した。
 急ぎ、トリステインへの帰路を目指す才人たち。
 だがそのころ、才人たちの知らぬはるかかなたで、ヤプールとも違う勢力が行動を開始していた。
 ガリア王ジョゼフと接触したロマリアの使者。彼はジョゼフと手を組むために、母親を救出しに来たタバサたち
一行を強襲し、空に開いたワームホールにタバサを追放した上、キュルケたちを捕らえてしまった。
 ジョゼフから盟友と認められた彼らは、ジョゼフから”ある物”を譲り受け、なにかを企んでいる。
 新たなる脅威の誕生を知らぬまま、才人たちはトリステインへと急ぐ。
 
 しかし、この世界を狙って暗躍する勢力のひとつは、すでに陰謀を始めつつあった。
 
 トリステインを遠く離れた、ハルケギニア最南端の大都市ロマリア。ここは始祖ブリミルの弟子フォルサテが
開いたと言われる、ロマリア都市王国の後身であるロマリア連合皇国の首都であり、ハルケギニアの人間たちが
信仰するブリミル教の総本山である。
『光溢れる地』
 ロマリアは自らを神格化してそう呼び、聖地に次ぐ神聖なる場所と誇る。事実、過去には数多くの高僧や聖人が
この地で修行を積んで、迷える人々を救っていったと伝えられている。今でも、そうした伝説を信じる敬虔な
ブリミル教徒たちに巡礼地としてあがめられ、毎年何万という人間が訪れて繁栄している。
 ただし、過去の崇高なる理想は時代ごとに錆び付いていった。神官たちは救世よりも荘園の経営に腐心するようになり、
現在ではお布施という名の莫大な収益で贅沢な生活を謳歌する修道士たちのそばを、各国から流れてきた貧民たちが
一杯のスープを求めて炊き出しに並ぶ歪んだ姿となっていた。
 人間の持つ矛盾をそのまま具現化したようなバラックの都市。そこには、聖人たちの影に隠れるように多くの
素性の知れない者たちも隠れ住んでいる。そしてその、日の当たらない貧民街のさらに奥……難民からすら
つまはじきにされるような、犯罪者たちの巣窟で、一人の男が追われていた。
「くっ……まだ追ってくるか」
 男は人の気配の無い路地を、追手をまこうと右に左にと駆け回っていたが、背後からの気配は消えることはなかった。
男の衣服は平民が着るようなみすぼらしいもので、しかもかなりくたびれてぼろぼろになっている。一見すると、
そのへんの物乞いに紛れていてもわからないだろう。ただ、背格好は痩せてはいるものの筋肉質でがっしりと
しており、元々はかなりよい生活をしていたのが察せられる。しかし、左腕のそでの中身はからっぽで、隻腕が
ただならぬ過去があったことをも語っている。
 彼はやや広い路地に出ると、行く手にも殺気を含んだ気配が待ち構えているのに気づいて立ち止まった。
「袋のネズミというわけか……ぐっ! ま、また発作がっ!」
 突然胸の痛みに襲われた男は、額から脂汗を噴出してうずくまった。
 そこへ、路地の陰から数人の人影が現れる。男は、長く手入れをしておらずぼさぼさになった長い髪の
すきまから、その追跡者たちの姿を睨み付けた。
「人間ではないな……ガーゴイル、いや……人造人間の類か」
 男は荒い息の中で、銃を構えながら現れた敵の正体を吟味していた。敵は、人間と変わらぬ背格好で、
鉄兜のような頭部に赤く光る目を持っている。男は長い間戦場に身をおいたこともある経験によって、
そいつらから人間特有の殺気を感じず、かといってガーゴイルのような無機質さも感じなかったことから、
生きている操り人形と判断した。
「確か、諜報の中にガリアが数年前、複数の生き物を掛け合わせる研究をしているという報告があったな。
中には生き物の特性を持つガーゴイルの実験もあったそうだが、研究施設で起きた事故で凍結されたはず。
何者かが再生させたのか……?」
 彼は仕事柄目にして記憶していた資料を思い出し、痛みを紛らわせるように内容をつぶやいた。
 そうしているうちにも、正体不明の兵士たちは銃口を向けながら規則正しい足取りで迫ってくる。銃そのものは
ハルケギニアの軍隊で一般的な、威力と命中精度に乏しいマスケット銃だが、前後からいっせいに撃たれたら
避けるまもなく即死させられてしまうだろう。
「私を殺す気か……? ふっ、そのようだな」
 彼は胸の痛みを意識的に無視して、前後からの襲撃者に対して身構えた。敵との距離はおよそ六メイル強、
道幅は三メイルほどで、この距離と狭さなら子供でも目標をはずすことはないだろう。
 対して男のほうは武器らしい武器は携帯しておらず、服装も銃弾を受け止められるようなものではない。
なのに男は苦痛による発汗と呼吸の乱れはあるものの、腕をだらんとさせ、不敵さをさえ感じさせる態度で
襲撃者たちを待ち構えた。
「どうした? こんな死にぞこないを殺すのになにを用心している。まさか、心臓の位置を知らないわけではあるまい」
 男は右手の親指で、ツンと突くように左胸を刺してみせた。そのあからさまな挑発の様子に、心を持たないはずの
人造人間たちがいっせいに銃口の心臓へと向けて引き金に指をかけた。だが、彼らの指よりも早く男の右手が
懐へと伸びて引き抜かれ、その手に握られていたみすぼらしい木の杖から雷光がほとばしった。
『ライトニング・クラウド!』
 強力なトライアングルクラスの電撃魔法が男を中心に雷撃を振りまき、銃弾が放たれる前に銃の火薬を
爆発させ、襲撃者たちの体を高圧電流が貫く。男はメイジだったのだ。数秒後、襲撃者たちはすべて地面に倒れ伏し、
仮面や服の隙間からブクブクと白い泡を吹き出しながらしぼんでいった。
「やはり、人間ではなかったか……ふぅ、それにしても、この閃光がこんなみすぼらしい杖を使わなくてはならんとは、
我ながら落ちたものだ。まあ、元の杖では捕まえてくださいと言っているようなものだから仕方ないが……」
 男は自嘲げにつぶやくと、杖をしまって一息をついた。いつの間にか胸の痛みの発作もおさまっており、
汗を拭いた袖が黒く染まる。
「しかし、こいつらは何者だ? いったい誰が、こんなものを使って俺の命を狙う?」
 男はこの汚れた町の住人たち同様、人目を避けて隠れ住む生活を続けていた人間だった。それが今日、
食料品を買出しに出かけたところ、突然銃を突きつけられて、慌てて撒こうとしたあげくがこのざまだ。
男は自分のことが母国の追っ手に知られたのかと考えたが、すぐにその可能性を否定した。あの連中は
こんなものは使えないし、第一知ったら直接捕縛に来るだろう。なにせ現在の自分は第一級の国家反逆者、
情状酌量の余地無く死刑台直行の身分だ。
 ならば、こんな人形たちを使って自分を襲わせる奴はと考えたが、心当たりは見つからなかった。
 そこへ、襲撃者たちのやってきた路地の奥から今度は生きた人間の声がした。
「申し訳ありません。少々、あなたの実力を試させていただきました」
「だれだ!」
 もう一度杖を引き抜き、油断無く声のしたほうへ構える。やがて路地の暗がりから、神官服を着た
美々しい金髪の少年が姿を現した。
「杖をお下ろしになってください。私はあなたの敵ではありません。ロマリア法王庁より、あなたを迎えに
参上した使者です」
「敵ではないだと? こんな得体の知れない人形を使って、人の命を狙っておいてか」
「それに関しては平に謝罪いたします。ただ、あなたの腕がなまっていないか早急に調べる必要がありましたので、
やむを得ず強硬な手段をとらせていただきました。それにしてもすごいですね。この人造人間、ゾンボーグ兵と
いうのですが、ガリア王ジョゼフ様からいただいた珍品なのにあっさりと撃破なさるとは」
「ガリア王だと?」
 ジョゼフの名に、男の眉がぴくりと動いた。
「おもしろい。ロマリア法王庁とガリア王が通じているとは知らなかった。どちらも、黒い噂には事欠かない
連中だが、貴様らなにを企んでいる?」
「別に悪いことなどは考えていません。我らは忠実なる神の僕、その行動は常に善なるうちにあります。ただ、
悪なるものたちに神の威光を知らしめるためには、時に力も必要なのです」
「ふん、貴様ららしい詭弁だな。しかし、貴様らに協力して俺になんのメリットがある?」
 少なくとも衣食住くらいは保障されようが、それ以上に危険な仕事をさせられることになったら割に合わない。
ただでさえ社会的な立場から体調にいたるまで最悪なのだ。それならば、この掃き溜めの中で貧しくても
安全に生きたほうが、まだ長生きできるというものだろう。
 ところが、使者の少年はその問いを待っていたとばかりに左右で色の違う瞳を光らせた。
「むろん、あなたにふさわしい報酬は用意させていただきます。ですがそれにも増して、この仕事はあなたに
打ってつけでもあるのです。本来高貴な身分であるあなたを貶めた者たちへの復仇もなり、なによりあなたが望む、
聖地へと近づくための助けとなることでしょう」
「聖地だと!」
 男は少年の言葉に強く反応し、少年は得たりとばかりに彼に頼みたい仕事の概要を伝えた。すると、懐疑的だった
男の表情がみるみるうちに暗い喜びに満ちてくる。
「なるほど、それはいい。成功すれば一石二鳥が三鳥にも四鳥にもなる。しかし、こんなとんでもない陰謀を
あのお方が企んでいようとは、世の人間たちは想像もしていまい」
「あのお方は、常にハルケギニア全体の幸福を考えていらっしゃるのです。そのためならば、涙を呑んで異端者や
少数の者たちの犠牲を甘受なさります。さて、お返事のほうはいかに?」
「承ろう。まだ俺にもツキは残っているようだ。ふっふふふ、アンリエッタと手下の小娘どもめ、いまにみているがいいわ」
「感謝します。ではさっそく、あのお方がお待ちです。ご同行願いますか? ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド殿」
 それは、私欲のために信頼につばを吐いてすべてを失った男と、博愛と信仰を世に広めることを使命とする神官の
小さな出会いであった。だが、神の威光と博愛を説く優しい言葉と笑顔が、本当に光溢れる未来を人々にもたらすのか
証明できる者はいない。いたとしたら、それは異端者の烙印を押されて迫害される。それがこのロマリアという街の
現在の真実……神は人を愛し、平和を望む。しかし、人間は神ではなく、この世には人間しかいない。
 
 
 才人たちが地球との交信をおこなったあの夜から五日後、彼らの姿はトリステインの港町ラ・ロシュールにあった。
「うわぁ! こりゃまた、トリスタニアがそのままこっちに来たみたいなにぎわいようだな」
 才人は以前来たときよりもさらに多くの人でごった返すラ・ロシュールの街を見て、感嘆したようにつぶやいた。
 ヤプールの復活と、新たに明らかになった虚無の真実、エルフの国の事情などをアンリエッタ王女に報告するために
才人たちは学院にいったん帰ると、そのまますぐに出かけた。同行するのはルクシャナとティファニアの二人。
エレオノールは調べたい資料があると、その足でアカデミーに直行した。ロングビルは、ウェストウッド村の子供たちに
ティファニアの無事を知らせるために別れた。本来なら、一番来てほしい人なのだが、いつまでも私が保護している
わけにはいかないからと預けられる形になった。ピーターは連れ歩けないから水槽に入れてメイドに世話を頼んできた。
 そうして、学院でアンリエッタがすでにトリスタニアを出発していると聞き、一路ラ・ロシュールを一行は目指した。
しかし、前のように簡単にアンリエッタに会える環境では、どうやらなくなってしまっているようだ。
 今この小さな港町は、才人たちがガリアに行っていた間にトリスタニアでの行事をすべて終わらせて、これから
アルビオンへと向かうアンリエッタ王女とウェールズ王。いや、今や夫婦となった二人の若き王族の姿をひと目見ようと
望む人々によって、その歴史がはじまって以来の人口を達成していたのだ。
「弱ったな。これじゃいくらなんでも、姫様と会うのは無理っぽくないか?」
 才人が人の壁に圧倒されるようにぼやくと、ルイズもさすがに額に汗を浮かばせた。
「うーん……これはちょっと、簡単に考えすぎてたわね。いくらわたしでも、予約なしで姫さまと会うのは難しいわ。
姫さまにお話ししなきゃいけないことはいっぱいあるのに……それよりもテファ、大丈夫?」
「は、はいなんとか……でも、こんなにたくさんの人を見たのははじめてなので、ちょっとフラフラします……」
 エルフであることを隠すための帽子をぎゅっと押さえながら、ティファニアは慣れない人ごみに押しつぶされそうな
自分をなんとか奮い立たせた。今回の目的は、ティファニアをアンリエッタ王女に紹介して、人間の世界で
生きていけるように慣れさせることもある。とはいえ、辺境の森の中からいきなり都会に放り込まれたらストレスは
大変なものだろう。まあ、そのために同じエルフでも性格が正反対な前例についてもらっているのだが。
「うう、わたし本当にこんなところでやっていけるのでしょうか……?」
「気にすることないわよ。いくら人が多くたって、付き合うことになるのはせいぜい十人かそこら、あとはカカシが
歩いてるとでも思えばいいの。気楽にいきなさいって」
 ルクシャナが、さっそく美貌に目がくらんで言い寄ってきた男たちを盛大に無視しながらティファニアの肩を叩いた。
ティファニアは、「うう……自信ありません」と弱気に答えるのを、才人やルイズは苦笑しながら見守る。まったくもって、
ルクシャナの環境適応力には驚かされる。いまさらだが、地球との行き来が可能になっていたとしたら、彼女は
是が非でも来たがったことだろう。それどころか、ウルトラマンにひっついて光の国にまで行くことまで本気でやりかねない。
亜空間ゲートのことは、彼女にだけはなんとしても秘密にしておこうと才人は思う。
 
 そうして一行は人ごみを避けつつアンリエッタ夫婦が宿泊している高級宿へと向かった。むろん、いくらルイズが
ヴァリエール家の一員で、姫の知人であってもおいそれと対面は認められなかった。現在夫妻は各種行事から
式典の客の相手まで、一分の猶予もないだろう。こちらもそれに増した重大事なのだが、それを言うわけにもいかない。
ルイズは怖いのを承知で、奥の手を使うことにした。
 
 やがて日も暮れて、街が夜の顔をのぞき始める頃、一行は宿の一室でアンリエッタと対面していた。
「そうですか……あの悪魔がエルフの国で……いつか来ると覚悟していましたが、まさかそんな方法を使ってくるとは
考えてもおりませんでしたわ。ともかくルイズ、大冒険でしたわね。よくぞ無事で帰ってきてくれました」
 ねぎらいの言葉をかけるアンリエッタに、ルイズはひざをついて頭を垂れた。
 アンリエッタは式典用から部屋着の簡素なドレスを身にまとい、連日の祭典の疲れを少々見せながらも幸せの
ためであろうか元気な様子である。地球でいえば午後七時半あたりのこの時間、本来なら晩餐会の予定が
入っているところ、わざわざ自分たちのために予定を裂いてくれた。理由は詳しく聞いていないものの、当然
かなりの無理をしてくれたことは想像にかたくない。
 それでもウェールズは、「アンリエッタもそろそろ疲れたころだろう。友人と思い出話をして、休憩していてごらん。
僕はそのあいだに出席できない領主や町長からの手紙をさばいているよ」と、怒った様子も無く席を外してくれたから、
足を向けて眠れないというか、ありがたいというほかはない。
 だが、王族にこれだけ無理をさせたからには代償もともなった。ルイズが事のあらましを説明しきるのと同時に、
気難しい顔でルイズの前に立ったブロンドの女性騎士。
「ルイズ、顔をお上げなさい」
「は、はい……」
 ルイズにとって、この世のなによりも恐れている存在がそこにいた。『烈風』カリン、現在はアンリエッタたちの
身辺警護の総責任者を預かっているルイズの母親である。こうも早くアンリエッタとの対面がかなったのは、
才人から警護役の銃士隊を通してカリーヌにルイズの伝言を伝えたからであった。
 ただ、覚悟はしていたことだが王族の予定に割り込んでもらうという無茶は、規律を重んじるカリーヌの気に
触らないわけはなかった。それに、虚無のことをはじめ、これまで隠していたことが一気に露見してしまったことで
ルイズの心音は十六年の生涯中最大に上がっていた。
「まず、こまごました前置きは避けましょう。あなたがガリアへ行っている間に、おおまかなことは姫さまより
お聞きしました。虚無……かつて始祖が使ったという伝説の系統、信じがたくはありましたが、数々の証拠から
私も信ずることにしました。秘密にしていたことは、事の重大さから目をつぶることにします。ですが……
なぜ独断でガリアに乗り込んだりしたのですか?」
「それは……時間がなかったことと、トリステインに迷惑をかけたくなかったからで」
 圧殺するようなカリーヌの問いかけに、ルイズは勇気を振り絞って答えた。むろん、言い訳で許されるとは
思っていないが、答えなければもっと早く殺される。
「ルイズ、あなたはまだ思慮が足りません。いくらあなたがトリステインと関係ない一個人として行動した
つもりでも、相手はガリアの王なのです。その気になればヴァリエール家の人間がガリアに入ったという
ことだけで、諜報活動の疑いでもなんでも疑惑のかけようもいくらでもあります。それはつまり、戦争の火種にも
つながることになり、あなたの友達だけでなく、何万という人間を不幸にする結果になるのですよ」
「はっ、はいっ!」
 恐縮するルイズは生きた心地がしなかった。正直、あのときはそこまで考えていなかったが、ジョゼフが
その気ならもっと恐ろしい結果になっていても不思議ではなかったのだ。この後はエア・ハンマーか
ウィンドブレイクで制裁か、ルイズが覚悟しかかったとき、止めてくれたのはアンリエッタだった。
「まあまあカリーヌどの、親としてお気持ちはお察ししますが、ここはもうそのあたりでおやめくださいまし」
「殿下、しかし国の大事にあるものが無断で国境を越えたるは重大な罪。これを容赦しては、国法のなんたるかの
示しがつきませぬ」
「でしたらそれは、さらわれた要人を救助したことの功と相殺とすればいいではありませんか。それに、もしも
ルイズがガリア入りを躊躇して手遅れになっていたら、それはそれで貴女はお怒りになるでしょう? 不公平ですわ」
「う、それは……」
 的確なところを突かれて、さしものカリーヌも言葉につまった。確かに、行っても行かなくても怒るならば不公平だ。
アンリエッタは、救いの神を見たように目を輝かせているルイズをちらりと見ると、駄目押しの一言を加えた。
「もちろん、国法を重んじる思いはわたしも王女として変わりませんわ。でも、今日はめでたい祝いの日、
罪人にも恩赦があって当然ですことよ。年明けにはわたしの女王の戴冠も予定されていることですし、恩赦も
二倍で手を打ちませんこと?」
「……そこまで言われるのでしたら、私は臣下として従わざるを得ません」
 カリーヌは根負けしたように杖をしまった。ルイズは助かったと知り、全身の力が抜けて倒れこみそうになるのを
あやうく才人が支える。にわかに信じられないが、あの母が許してくれたらしい。いつもなら、よくて魔法で半殺しの
目にあうのにこんなことは初めてだ。
「ただしルイズ、あなたはもう自分の一挙一足に大きな責任がともなう立場なのです。仕置きを恐れていられる
うちはまだ幸せだということを、ゆめゆめ忘れてはなりませんよ」
「ひっ! あ、はいっ!」
 ルイズは再び緊張してひざまずいた。本当にこんな幸運は二度とあるまい、重ね重ね姫さまには頭が上がらない。
このご恩は一生かけて返していこうと、ルイズはあらためて忠誠を誓うのであった。
 そうして一礼したカリーヌは再び部屋の隅で、直立不動の構えの姿勢に戻った。表情にはさきほどまでの
怒りの色は微塵も無く、女神像が鎮座しているように一瞬才人は思った。見事な変わり身の早さというべきか、
ルイズもいずれ成長したらこうなるのであろうか? 才人はルイズにはいつまでも変わらないままでいてほしいと、
少々わがままな理由で思った。
 親子の問題が収まると、アンリエッタはルイズに視線でうながした。ルイズはこくりとうなずくと、後ろに
控えていたティファニアに前に出るよううながした。
「わたし、ティファニアと申します。お、王女殿下にはお初にお目にかかります」
「ようこそ、トリステインへ。あなたのことは先ほどルイズから聞きました。ハーフエルフとのことですが、わたくしは
そういったことを問題にするつもりはありませんのでご安心くださいな」
 アンリエッタは緊張しているティファニアに優しく声をかけると、手をとって彼女を立たせた。
「あなたも虚無の力を受け継ぐ使い手とのこと。そのために、ずいぶん大変な思いをなさったようですね」
「はい……わたしも正直、この力をどうやって使ったらいいかわかりません。エルフの血を引くわたしに、虚無だなんて」
 まだ自分のことに整理がついてない様子のティファニアに、アンリエッタは手を握ってゆっくりと話した。
「あなたも望まぬ運命を背負わされた者なのですね。わたくしもそうでした、王家の血筋をうとんじたことは数え切れません。
でもいろんな人を見ているうちに、誰もが自分の運命の中でそれぞれの悩みや戦いを繰り広げていることを知りました。
考えが落ち着くまで、焦ることはありません。あなたの周りの友が力になってくれるでしょう。わたくしも、せめてこの
トリステインではあなたの引受人として力になりましょう」
「姫さま、わたしなんかのためにそんな」
「いいのですよ。命令しかできないわたくしが人助けをできる数少ない機会なのですから、むしろわたくしのほうが
お礼を言いたい気分です。ガリアからまた狙われるかもしれず、心細いかもしれませんが、今はとりあえず自分の
力が悪に働かないようにだけ心がけていてください。虚無は、エルフの国では世界を滅ぼす恐怖として伝わっている
とのことですけれど、わたくしはルイズやあなたを見ている限りはそう思いません。いいですね?」
「ほんとうになにもかも……ありがとうございます!」
 ここに来るまでは、ジョゼフと同じ人間たちのボスだと警戒していたティファニアも、アンリエッタが信頼するに
値する人間だと思ってくれたようだ。才人とルイズはほっとして顔を見合わせた。
 これでとりあえずはティファニアは身分的にはトリステインに住むことができる。エルフということさえばれなければ、
つつましやかな生活くらいは保障されるだろう。第一関門を潜り抜けられたことで、二人は肩の荷の半分くらいは
軽くなった気がした。
 のだが……
「よかったわねあなた! これでもう住まいに苦労することはないんでしょ。いやあ蛮人の世界はいろいろと
めんどうくさくて大変ね。なんだったらアカデミーの私の部屋に来る? そしたら毎日楽しく研究できるしね!」
 より大きな頭痛の種が芽を出して、二人は肩の荷が三倍になったような気がした。
 ティファニアは素直でおとなしいからいいのだが、動く爆弾娘の処置に関してははっきり言って自信が無い。
自分たちの倍くらいは生きているくせに、奔放さは子供のようだ。悪い娘ではないのだが、自分の興味最優先で、
そのためには対人関係など薬にもしない。
 天然で他人に心労をかけるタイプのルクシャナは、才人たちのそんな心配には一切気づいた様子も見せずに
アンリエッタと向かい合った。
「あなたが、エルフの国からやってこられたという方ですね。わたくしのお友達が大変お世話になったようで、
まずはお礼申し上げますわ」
「はじめましてお姫さま、ルクシャナと申しますわ。貴女のことはお噂もかねがね、なかなかの名君の卵だと
アカデミーのほうでも評判でしたわ」
 種族が違うとはいえ、一国の最高位にほとんど対等な態度で接せられるルクシャナの姿勢は無神経と呼ぶか
豪胆と呼ぶかは判断に苦労する。おかげでルイズなどは冷や汗ものだが、アンリエッタは気にした様子は
ないようであった。
「ふふっ、あなたのことはわたしも前から少々は存じております。先日のトリスタニアの二大怪獣についての
事後報告のレポートを、エレオノールさんが提出しに来たときにあなたのことを期待の新人だとほめていらしたわ。
その何ページかはあなたが執筆したものでしょう。情報分析と考察のわかりやすさは、素人のわたしには助かりました」
「あら、先輩がそんなところで。これは今度、サハラのやしの木のジュースでも差し入れましょうかね。そうだ、
よろしければ姫さまにもいくらかおすそ分けしますわよ。国の私の婚約者に頼めば、ラブレターがおまけについて
送ってきてくれますから」
「それは楽しみにさせていただきましょう。それにしても、あなたの国にはハルケギニアでは見たことも無いような
珍しいものがたくさんあるのでしょうね。いつか行ってみたいものですわ……」
 アンリエッタの瞳は、おてんばだった幼女時代の光をいまだ消すことなく宿していた。遠くを夢見るような
アンリエッタの表情と、ルクシャナの好奇心にあふれた顔はどことなく似ている。けれど、決定的に違うところもある。
「あなたたちエルフの社会は、王を持たずに入れ札でその時々の統領を選出するのでしたね。始祖の血統を
重んじるわたしたちの世界では考えられないことですけど、王になるべき人がなれるという社会はすばらしいものと
思います。わたくしも、そんな世界に生まれていたら……」
 それは、王の責任を放棄する気は無くとも自由にあこがれている気持ちの裏返しの発露だった。よりよい王で
ありたいとは思う、思っても自分より王にふさわしい人間はいるのではないのかという気持ちも常にある。自分で
自由に飛びまわることはかなわないアンリエッタに宿ったさみしさに、ルクシャナは同類の情を感じた。
「姫さま、わたしの知る限りであなたより熱心なエルフの指導者は、そんな何人もいませんわ。テュリューク統領は
立派な方だけど、ほかの議員の人たちは頭の固いおじいちゃんばっかり。入れ札で議員を選べるっていっても、
候補者がバカばっかりだったら同じことなんだから……わたしも、蛮人の研究なんかやめろって何回邪魔されたことか」
「そ、そうなんですか? でも、エルフは人間よりずっと頭がよくて進んだ文明を持っていると聞きますが?」
「だからそれは過大評価ですって。もう、めんどくさいなあ……」
 ルクシャナは少々うんざりした様子ながら、以前才人やエレオノールにも語ったことを説明した。人間とエルフが
遠い存在ではなく、同類に等しいほど精神的には近しい存在であること。それらを分けるものが、ほんの少しの
力の差と、つまらない誤解があるだけだということを。
「お姫さま、あなたさっきティファニアにハーフエルフだということを気にしないって言ったわよね。でもそれって、
まだエルフと人間が別のものだって思ってるってことでしょ? まあ生物的にはそうなんだし、私も本音は
エルフと蛮人が同等ってのはしゃくにさわるところがあるんだけど、それってどこかおかしいわよね」
 アンリエッタはすぐに返す言葉が無かった。もっともルクシャナも自分で言っておきながら、柄にも無いことを
言ってしまったなあという後味の悪さがある。ほんの一月くらい前の自分なら考えられもしなかったことだ。
サハラを出て、自分の知識がまったく役に立たないほど大きな存在があり、広い世界があるのだと気づかされた。
何度も命の危機にさらされたが、旅に出てよかったと思う。
 それからアンリエッタとルクシャナは、互いの好奇心を満たしあうかのように貪欲に会話をぶつけあった。
人は砂漠に行かなければ砂の熱さはわからず、海に行かなければ海水のしょっぱさはわからないけれど、
言葉からそれらを想像し、頭の中に作った擬似世界で体験することはできる。そしてその世界のリアルさは、
より多くの情報を与えられることによって育っていく。
 エルフの国の人々、自然、制度、情景、さまざまなものが二人の心の中で形をなし、色づけされていく。
そうした触れ合いの中で、アンリエッタはひとつの確信を抱くようになっていった。
「ルクシャナさん、これは思いついたばかりの私見なのですが、聞いていただけますか?」
「ええ、どうぞ」
「あなたとティファニアさんで、エルフと人間のあいだの架け橋になってもらえないでしょうか?」
「えっ……?」
 一瞬空気が凍りつき、ルクシャナも才人たちもアンリエッタの言葉の意味がわからずに絶句した。けれど、アンリエッタの
目は真剣そのものだった。
「ルイズたちとあなたの叔父上との和解、虚無が見せたという太古のハルケギニアの争い。そして今のあなたとの話で
わたしは確信しました。エルフと人間はけっして相容れないものではないことを。ですから、ふたつの種族の歪んだ
関係をかつてのあった姿に戻し、エルフと人間の国がただの隣同士として行き来できるようにするために、力を貸して
いただけないでしょうか?」
「待って、話が飛躍しすぎるわ! どうして急にそこまで進むのよ」
 突拍子も無い依頼に、さすがのルクシャナも顔色を変えていた。エルフと人間の共存を考えた才人とルイズですら、
いきなりそこまでは考えていなかった。段階でいえば、五つも六つも飛び越している。今日はじめて会った相手に対して
言うことではないはずだ。だが、アンリエッタは考えなしで言ったわけではなかった。
「驚かせてしまったのは謝ります。ですがルクシャナさん、ティファニアさん、わたしは本気です。エルフの国と友好を
結びたい……いいえ、敵対しあうのだけでもやめたいとわたしは切に願っています。あなたも、このままふたつの
種族が戦い続けても、なにも得るものはないとわかっているでしょう」
「そりゃあまあ……考えてみたら、よくもまあ何千年も同じ事を繰り返したものよね」
「そう、過去幾年、ふたつの種族は聖地というたったひとつの場所をめぐって不毛な争いを繰り広げてきました。
譲れないもののために必死になるのは大切なことですが、果てを見失った愚かさが、侵略者につけいられて
しまったのです。悪賢いヤプールは、ふたつの種族のいさかいに目をつけたのでしょう。たとえエルフが攻撃されても
人間は手助けをすることはできませんからね」
 ルクシャナはアンリエッタの言いたいことがわかった。この世界がいくつもの勢力に分かれている以上、全体を
いっぺんに攻め落とすよりも、ひとつずつつぶしていったほうが確実だ。ましてエルフはヤプールとの戦いに
慣れておらず、すでに大損害をこうむっている。なによりも、サハラにはウルトラマンがいない。
「ですが、それは逆をいえばヤプールはエルフと人間が和合するのを恐れているという証です。わたしはヤプールが
はじめて現れたときからずっと考えてきました。ヤプールは、なぜあれほどに強大なのか? ルイズ、あなたたちも
ヤプールの力の源を知っているのでしょう」
「はい、奴は人間の絶望や恐怖、憎悪といった暗い心から生まれる、マイナスエネルギーといったものを力とするそうです。
で、いいわよねサイト?」
 才人がうなづくと、アンリエッタは言葉を続けた。
「そう、ヤプールが最初に現れたときもそう言っていました。そしてハルケギニアの人間にとって、潜在的に恐怖や
憎悪の対象となるのは、聖地を支配し続けているエルフへのそれです。エルフにとっても、何度も攻めてくる人間への
憎悪は強く蓄積されているでしょう。つまりエルフと人間が憎しみ合い続けるということは、ヤプールに無限に力を
与え続けるということなのです」
 一同は、アンリエッタの性急さの理由を理解した。ウルトラマンAに一度倒されて、たった三ヶ月でエルフを
圧倒するほど強大に復活したヤプールのエネルギー源は、この世界の生き物たちが延々と溜め続けてきた
憎悪にあったのだ。
「もちろんそれだけではなく、貴族、平民問わずに個々人の問題はあるでしょう。しかし、今のわたしたちが
見るべきなのはハルケギニアでもサハラでも、まして聖地でもなく全世界なのです」
 アンリエッタはそこでいったん言葉を切った。ルクシャナは、思いもよらぬ重大な話に戸惑っており、ティファニアは
あまりのスケールの話についていけていない。才人とルイズにしても、今後のことを相談しにきたとはいえ、まさか
アンリエッタからそのような話を聞くことになるとは思ってもおらず、圧倒されていた。
 しかし言うはやすしだが、課題は多い。いや、多すぎる。ハルケギニアの人間が一般に信仰しているブリミル教は
エルフを敵だと教えているし、エルフにしても人間を蛮人と呼んでさげすんでいる。何千年にも渡って蓄積されてきた
二つの種族を分ける壁の厚さは果てしない。
 そんなことが果たして可能なのか……一同の肩に、ティファニアを救い出そうとしたときすら軽く思えるほどの、
とてつもない重圧がのしかかってくる。
 ルイズはアンリエッタに、どこまでを考えているのか問いかけようとした。ところが、その前にドアがノックされて、
秘書官が次の行事の時間が迫っていると告げてきた。
「あらまあ、もうそんな時間ですか……皆さん、今日は貴重な情報をありがとうございました。そして、突然に
無理を申し上げてしまってすみません。ただ、わたくしは本気でエルフとの終戦を考えています。そうでなければ、
この世界はかつてのトリスタニアのように滅びてしまいます。どうか、馬鹿げたことと思わずに真剣に考えてみて
くださいませ」
 会釈したアンリエッタの顔には、一点の淀みも無かった。エルフと人間の和解……恐らくアンリエッタ個人の
考えではなく、カリーヌやウェールズの意見も入っているだろう。この三人はアルビオンでヤプールの人間体と
じかに会っている。奴の持つ絶対的な邪悪さを身に染みて知っているからこその決断に違いない。
「では、失礼ですが今日はここまでで……わたくしたちはあと二日、この街に逗留いたしますので、次に会える
時間がとれましたらこちらからお伝えします。それまでは、祭りをお楽しみください。魔法学院のみなさんも、
夜を楽しんでいらっしゃるそうですよ。それと……ふふっ」
 そう言い残すと、アンリエッタは秘書官にせかされて、カリーヌをともなって立ち去っていった。最後の含み笑いが
気になるのは、また真面目な顔の裏でいたずらを企んでいるような予感がするからだ。だがそれはともかくとして、
ルイズたちはこの街が祭りの真っ最中だったことを思い出した。まだ夜は長い、これまで苦労の連続だったのだから
今晩くらい遊んでもいいんじゃないか。
「よっし! ルイズ、遊びにいこうぜ」
「そうね。この際パーっと気晴らししましょう。テファ、トリステインの遊びを教えてあげるわ。ついてきなさい」
「あっ、はい! よろしくお願いします」
「あーっ! 私をのけものにする気!? 蛮人の祭りなんて珍しいもの、この私が見逃すと思ったの!」
 こうして四人は連れ立って、夜の街へと乗り出していった。ラ・ロシュールの街は、ゾンバイユの襲撃の陰も
残さぬ賑わいで、平和の喜びを万人に提供している。
 
 その賑わいの中で、四方に目を光らせつつ、一般人を装って歩く四人ほどの女性たちがいた。
「だから、規制事実が大事なんですってば。がんばって一番に越えるところを越えてしまえば、あとは「責任とってね」
の一言だけで、恋人だろうと婚約者だろうと、圧倒的に有利に立てますよ」
「だから、私はそういうやり方は嫌なんだって言っているだろうが。振り向かせるなら、力づくじゃなくて、正々堂々と
勝負したい。汚いやり方じゃ心は手に入らないよ」
「もう、副長はそういう方面には潔癖なんですから。結婚はともかく慣れですって。それにそれくらいのことをしなけりゃ、
貴族相手には太刀打ちできませんってば」
 会話の内容は年頃の女性らしく軽いが、視線だけは鋭く辺りに張り巡らせる彼女たちはむろんただの観光客などではない。
銃士隊の副長ミシェルと部下たちが正体である。彼女らは以前と同じく、ラ・ロシュールの警備についていたが、今回は
銃士隊の制服が威圧感があるということで、私服で一般客にまじって警備をしていたのだ。
 ともかく、こういう場所ではすりや置き引き、万引きは多い。彼女たちはそうした不心得者が祭りに水を刺さないように、
怪しい者を探して祭りの中を練り歩き、女性と思って油断したすりを何人か捕縛した。また、祭りの混雑で困っている人が
いないかと巡回していると、ある店の前でぐっと考え込んでいる初老の男性が目に付いた。
「もし、そこのあなた。なにかお困りごとですか?」
 ミシェルが話しかけると、男は振り向いて微笑を浮かべた。
「うん? あ、いや、帽子を買おうと思っているんだが、どうもいまいち迷ってしまってね。よかったら、君たちも選んでくれないかな?」
 男は五十代ほどで、厚手のジャケットを羽織ったたくましい肉体の持ち主だった。けれど顔つきは温厚で、ミシェルは
牧場主のような人だなと思った。露天にはいくつかの帽子が飾られているが、この人の雰囲気に似合いそうなものとなると……
ミシェルは考えた末に山高でつばの広い帽子を選び、男はそれを買うと、すぐにかぶって見せてくれた。
「どうかな? 似合うだろうか」
「ええ、とてもよく似合っていますよ」
 おせじではなく、男の雰囲気とあいまって見事にフィットしていた。これで馬に乗れば、そこらの多少顔がいい若者より
ずっと絵になるだろう。男はまんざらでもない様子で微笑んだ。
「ありがとう。おかげでいい買い物ができたよ」
「それはよかった。ところで、どちらからおいでなのですか? 見たところ、珍しいお召し物ですけれど」
「なに、ごらんのとおりの風来坊さ。では、失礼」
 男は礼儀正しく礼を述べると、雑踏の中に消えていった。
 
 
 続く
314ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2011/08/28(日) 19:06:44.62 ID:68LpDVDu
以上です。
今回はお久しぶりだのヒゲ男と、テファの人間界デビューのその一となりました。
魔法学院での入学エピソードも書きたいのですが、話の都合上また今度となります。
それにしてもルクシャナとティファニアは組ませると非常に動かしやすかったです。唯我独尊とおっとりの相性がいいのが
様々な作品で多用されている訳がわかりました。
では次回は9月ですね。少しは涼しくなるといいな、うちは扇風機しかないので今年は酷です。
315名無しさん@お腹いっぱい:2011/08/28(日) 19:46:48.19 ID:+Gf9tDkF
ウルトラの人、乙でした。
あの風来坊が来てくれましたかw
頼もしすぎるwww
316名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 20:05:42.32 ID:HfYbiapb
どう考えてもリアルでマスク盗まれた あの人じゃないのか
317名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 20:06:47.21 ID:Hl9fSm8Y
だから前の時にいなかったのか
昭和縛りでも後もう一人いるよね?
318名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 20:09:05.76 ID:Hl9fSm8Y
勘違いしてた
すんません
319名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 20:09:12.99 ID:rG+qCRrD
ダンってメビウス&六兄弟だと牧場やってましたな。
しかも神戸近郊。…明石牛?
320名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 20:58:05.64 ID:zezizwyF
ウルトラ乙
321名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 21:04:57.44 ID:o57BwKw+
ウルトラの人乙!
メビウス&ヒカリに続いてあの人もハルケ入りか。
とりあえずサイトがヘタレたら烈風さんと同等かそれ以上の扱きが待ってるなw
322名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 21:20:38.56 ID:k5XQuQHB
ウルトラの人乙です!

何と、フェニックスネスト内にいたと思ったらいつの間にかいなくなっていて、
まさか閉じかかった亜空間ゲートに飛び込んで、ハルケギニアに来ていたとは!!
これで、また才人たちに頼もしい仲間が一人ではありますが、来てくれましたな!!!

前回、ガイアの世界に飛ばされたタバサと出会った我夢ことウルトラマンガイアといい、
物語もクライマックスに入りそうです!!!
323萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2011/08/28(日) 21:38:56.82 ID:VgfYeVzh
皆様乙です。

私が前回登録してから今日20時までの未登録作品を登録しましたが、
登録ポリシー上自作品以外の誤字修正は行っていません。

ですので、そういうのがある方はご自身で修正をお願いします(__)
324名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/28(日) 22:19:07.14 ID:d0YeRuvk
超乙だ
325萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2011/08/28(日) 22:23:37.56 ID:VgfYeVzh
あ、一つ重要なことを書き忘れていました。

今、手元に過去ログがないので、298と299からしか登録していません。
確か前回の49話を投下したのが297だったはずなので、それで投下されていた
作品ではヌケがあるかも……です。
あったらごめんなさい。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 00:04:13.34 ID:4hglJNFg
乙乙ですぞ
327 忍法帖【Lv=26,xxxPT】 :2011/08/29(月) 00:50:39.70 ID:K+g3xty6
乙ー
328名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 12:59:48.45 ID:5Flz4TBA
風来坊は、アニエス・ミシェルに素手で向かっていけとか、カリーヌの使い魔から逃げるなとかいう扱きしそうだなw
329名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 15:30:21.32 ID:yTsX29XI
>アニエス・ミシェルに素手で向かっていけ
ミシェル 「…私が勝ったら言う事を何でも聞いてもらうぞ!
       そのかわり、お前が勝ったら私が何でも言う事を聞こう!!」

才人 『なんか勝っても負けてもルイズに酷い目に遭わされそうなんだけど…』
330名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 16:54:00.49 ID:xTqU3iPZ
風来人はねだやしの巻物を投げた!

ダンジョンから銃士隊の気配が消えた!
331名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 19:29:26.36 ID:cxiJB/X7
エピローグを書くかどうか悩み中。
スパっと終わるのもいいかもしれないけど「それから」とか「○年後」とかもステキな響きよね
332名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 19:43:15.22 ID:yTsX29XI
契約していきなり数年後から始まるのも悪くはないか?
333名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:19:27.63 ID:wCumqvf1
>>332
契約から十数年・・・

人類は、戦っていた

トリステイン公爵家令嬢が召喚した使い魔・・・フェストゥムと・・・



・・・こんな感じ
まぁ実際に召喚したら十数年経つ前に蹂躙されますね
334名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:29:58.13 ID:Yu7dUw+5
>>333
フェストゥムの 「あなたは 其処に居ますか?」攻撃は、
「バカには通じない(By スパロボK)」らしいので、ハルケ勢は意外と善戦するかも?
335名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:33:12.45 ID:ljODif5c
フ「あなたは 其処に居ますか?」
童「見りゃ分かんだろ」
フ「あなたは 其処に居ますか?」
童「しつこいって。いるっつてんだろ」
フ「あなたは 其処に居ますか?」
童「ええい!さっきから何だ、てめえは!同化したいんじゃないのか!?」
336名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:45:35.26 ID:g5n7aoCp
いや、童帝を童って略すなよ。なにかと思った。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:51:04.74 ID:wCumqvf1
童=才人かと

もしくは

フェ『あなたは 其処に居ますか?』
デル「なんだ金ピカ、おめー使い手か?」
フェ『あなたは 何処に居ますか?』
デル「ここだって、ここ」
フェ『あなたは 何処に居ますか?』
デル「いや、だからここに居るって、居るっていうか在るって!!オイ!!」
フェ『あなたは 何処に居ますか?』
デル「俺はここに居るゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

店主は既に同化されている
338名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 20:57:47.16 ID:B4J82V9J
召喚された人類の脅威とハルケギニア人の総力戦とか書ききれたらなかなか熱そうだな
339名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:17:42.29 ID:G+FuKnIv
>>338
そういう展開だと召喚した奴がどう考えても無事では済まないのが少しだけ困る所ではあるな。
まあ、そういう場合はルイズではなくジョゼフ辺りに召喚させるのが妥当か。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:23:57.15 ID:wCumqvf1
ルイズも小ネタだと初期学校怪談の山岸くらい死んでるからな
顔の皮を剥がされたり、サイレントヒルに逆召喚されたり、呪われたり

あ、発想の逆転
学校怪談の化け物呼んだら・・・・・・・・・・・・あかん、後期からミゾロギ召喚しか想像できねぇ
久々に単行本を読まないと
341名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:27:19.37 ID:71Vrxiuu
サイコ バスターズの馳 翔(漫画ver)

を召喚
342名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:27:46.20 ID:Q1KCzUpa
ルイズが泣く使い魔だったらご立派様以上はいないと思う
才人は毎度チャンスを逃してるけどナニのほうは大丈夫なんだろうか
343名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:34:48.07 ID:cxiJB/X7
サイト「ようし、今日も据え膳食わずにオナニーだ!」

……クリボーと同時召喚してルイズに手を出さずオナニー道を行くサイトを想像した
344名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 21:40:36.34 ID:4Q9ZiDdK
いい加減ふたばネタはやめなさい
あと1番影響受けるのはどう考えてもマリコルヌ
345名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 22:25:26.93 ID:cQI0zF/t
>>338
モフモフの方の首輪付き召喚と申したか。

コジマ汚染の症状が豊胸だったら酷い事になるな。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 22:25:27.61 ID:yTsX29XI
>>343
ジョゼフが召喚したら、あのヤンデレ兄弟を矯正wできるかも
347名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 22:46:22.36 ID:wCumqvf1
>ヤンデレ兄弟
相羽次男「呼ばれた気がした」
348名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 23:39:49.72 ID:EzRLWHwc
>>347
ヤンデレは三男だったかと
349名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/29(月) 23:44:28.97 ID:4hglJNFg
>>347
貴様オメガ様を忘れるとは!
350名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 01:19:27.70 ID:bbTjVTBN
MISTERジパングから織田信長と日吉を召喚
「魔法使いに魔物に竜、それらが全部俺の手下になったらスゲエ!」
「と、殿ーっ!」
351名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 01:50:30.81 ID:AGvZXFML
最後は破壊の杖=精霊石の杖でルイズが信長の心臓を刺して倒すんだな
352名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 02:17:33.73 ID:KVDtxKBn
>>343
そのクリボーを召喚したらあらゆるフラグを捩じ伏せそうだ。しかもいい方向にw

COBRAは内容と共に台詞回しもいいんだよな。

ルイズ「私は16歳よっ!」
コブラ「こいつは驚いた。俺はてっきり卵から孵ったばかりかと思ってたぜ」

あの小粋な台詞がコブラ登場作の難易度あげてるんだろうなー…
353名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 02:23:21.29 ID:N5KX2WJW
無限のフロンティアとかも考えたがコブラとは別の意味でセリフ難易度高かったなぁ
354名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 02:48:17.27 ID:bFb30t3U
 時々バットマンからの召喚が話題になるけど、バットマン・ザ・フューチャーの
2代目バットマンことテリーなら年齢も(アメリカの)高校生だし、性格も調子の
いいワルガキ系で才人と通じるものがあるし、意外とよさそう。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 02:55:39.11 ID:KiSJ5KwA
>>352
下手したらレディが迎えに来るだろうしな
356名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 06:39:35.63 ID:6Jy0sv9C
犬夜叉の殺生丸
強いしツンデレだし妖刀やら魔剣好きだし空飛べるし妖怪だしロリコンだし
どうよ?
357名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 07:00:58.26 ID:fC/gYao8
問題ない、書いていいぞ
358名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 07:49:28.23 ID:P08zcfVU
>>353
むげフロはあらゆるキャラがネタセリフとそれにツッコミを入れてることで成立するという
狂気のバランスだからなー。
あのセリフを再現してると、ゼロ魔世界がむげフロ世界にレイプされるだけだと思う
359名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 09:10:00.23 ID:+puy+0Vc
色んな作品を読んだが、ギーシュに決闘を申し込まれると、皆ご丁寧に決闘まで待ってるのが何か不自然だ
キャラによっては申し込まれた時点でギーシュをボコボコにしたり
下手すりゃイチャモンつけられた時点で手を出してもおかしくないのに…
原作なぞりをしたいからなのかも知れんが、
その為にここでは手を出せないとか変に言い訳重ねて余計に不自然になってるのが何かなあって思う
360名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 09:34:58.25 ID:U6AslddI
色々読んでるんじゃなくて半端に目を通していちゃもんってるのが判るような事をしたいなら毒吐きスレへ
361名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 11:29:47.62 ID:c3JedidJ
史実の宮本武蔵なら、
決闘をするぞと言われてから始まる前の間に隙があれば討ち倒した実績があるけどね。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 11:40:48.72 ID:/Mk8XU12
バガボンドから宮本武蔵召喚?
とりあえずギーシュは死ぬ
363名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 12:19:56.35 ID:fYPs8vsS
JESUSからジーザスを召喚
伝説のメイジキラーになる
364名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:28:37.52 ID:mWeVqIc9
亡国のイージスから宮津&磯風
365名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:34:00.27 ID:KiSJ5KwA
侍か…

ギーシュのワルキューレをあっさりと斬り捨て、決闘勝利すると
腰に剣を挿した剣士は何処かへ去っていった、黒いかたまりを残して…


侍よりドナドナ召還
366名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:39:13.34 ID:Vyh7C77Z
銀魂から志村新八を召喚
新八って本編でヘタレヘタレ言われてるけど周りが化け物染みて強いだけで結構強いんだよな
実績としては軽く挙げただけでも
・煉獄館編で天人たち蹴散らした
・紅桜編で不意打ちとはいえ紅桜装備の似蔵の腕を斬り落としたり春雨の兵隊を蹴散らした
・芙蓉編で鉄パイプ一本で戦闘用に改造されたメイドロボの大軍を突っ切った
・柳生編で銀時との連携とはいえ敏木斎に勝利
・吉原編で鳳仙派の兵隊たちを負傷している状態で蹴散らした
・地雷亜編でも同様の活躍
・四天王編で竹刀だけで溝鼠組のヤクザを蹴散らし人斬り平子を峰打ちで瞬殺
などの活躍してるし
多分剣の腕だけならアニエスやワルドより上じゃないか?
367名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:39:26.12 ID:6rd1C0FF
コブラ→鉤爪がニクいあのお方 といった連想ゲームから

「マップス」のリプシアン召喚

騎士道精神叩き込まれてるし何よりツッコミレベル高いからルイズと相性良さそう

ただ「ボディ」も来たら強過ぎるのが欠点かな
368名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:42:47.82 ID:4tLM0Dpo
>>366
銀魂読んでる人間なら誰もがそこを疑問に思うよなwww


ガンパレの蒼速水を召喚した作品、続編書いてくれないかなぁ……
幻獣軍の侵攻を示唆する描写まであったのに、フーケで終わりは寂しすぎる
369名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 13:52:34.99 ID:e3XiYkJV
>>366
るろ剣のパクリで新八は弥彦だからな
強くなるのも計算のうちだろ
370名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 14:35:34.33 ID:KsEI9uH3
>>329
勝っても負けてもだめなら引き分ければいいじゃない
ま、その場合さらにもめそうな気がするけどなw
371名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 14:45:58.58 ID:7FLcdq7M
>>363
JESUSと聞くと、エニックスが昔発売したADVを思い出す俺はオッサンだな

……あれが来たらエイリアン召喚より酷い事になりかねんがw
372名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 16:06:51.02 ID:6rd1C0FF
>>371
マイコンBASICマガジンー!(なぜベーマガ?)

結構最近までキャラデザ美樹本だと思ってたわ
ただ単にあの頃流行の「美樹本っぽい絵」に過ぎなかったんだね
373名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 16:11:17.53 ID:6GUlYvTB
>>371
最後は音楽で撃退のあれか。
あかほりの書いたゲームブックだと、直接対決だったな。
374名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 17:03:27.40 ID:KsEI9uH3
音楽ったらジャイアンリサイタルやおれの歌を聞け、死の合唱のようにアニメやゲームとかじゃ音楽は兵器と同義語だわな
375名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 17:47:28.48 ID:8h26lsyG
SAMURAI7の主役の七人なら誰でも一騎当千の兵になれるな
基本的に全員縛るものはないから動かしやすいし
376名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 18:04:20.17 ID:Jm0GirWf
>>348
>>349
すまん、ブラスター化の副作用が出たみたいだ
アルコールを摂取した所為で組織崩壊が加速した

でもまぁ居るよねぇ
大家族になるとさ、歳の離れた兄弟とかだと
「お父さんかと思いました」「え?お母さんじゃないんですか?」って兄ちゃん姉ちゃん
377名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 18:14:38.57 ID:fYPs8vsS
ルイズがロマサガ2の最終皇帝(軽装歩兵のジュディ陛下)を召喚
当然戦闘時のコマンドポーズはハイキックです
378名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 18:21:58.57 ID:a/LF+e7v
>>374
音楽ってか音波は実際兵器になるしな。
拡散させればスタングレネードのような非殺傷兵器、
収束させればギャオスの超音波メスみたいな殺傷兵器となる。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 18:42:36.07 ID:vj03csoN
>>378
禁書あたりで聖歌が超強力な儀式魔法になるとかなかったっけ
380名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 19:16:56.92 ID:Zwsmrc7c
SAMURAI7…魅惑の妖精亭でスカロンと一緒に嬉々として女装するゴロベエさんとか?
381ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:28:29.20 ID:0HuU0Wuo
問題なければ5分後ぐらいに八話目を投下させてください。
382ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:33:46.60 ID:0HuU0Wuo
「大変ですオールド・オスマン!城からの知らせです!チェルノボーグの牢獄から、フーケが脱獄したそうです!」
ルイズ達が去った学院で、ミスタ・コルベールが血相を変えて叫ぶ。
「ふむ・・・」
オスマンは、眉間にしわを寄せて深く椅子に腰かける。
「門番の話では、さる貴族を名乗る怪しい人物に『風』の魔法で気絶させられたそうです!」
その風の魔法を使ったメイジが脱獄の手引きをした。
それはつまり、城下に裏切り者がいるということ。
しかし、オスマンは全く焦った様子を見せない。
もし、あの使い魔が本当に伝説のリーヴスラシルなら・・・


――――――――――――――――――――――


ワルドはグリフォンに跨り、空を飛んでいる。
ルイズはワルドの膝の上。
ルイズの馬に乗るはずだったスラおは、ギーシュの馬に乗るはめになった。
「ちぇっ・・・なんでオイラがお前と一緒に・・・」
ケチをつけるスラおに対してギーシュが呟く。
「ぼくだってヴェルダンデを置いてきたんだ。我慢したまえ」
ギーシュもまた、スラおと同じように傷心していた。
ラ・ロシェールの港町までは、馬で約二日の距離。
一刻も早く任務を遂行したいのか、ワルドのグリフォンはノンストップで空を駆け続ける。
それに馬で追いつくのは至難の業だ。
ワルドは楽しげにルイズと話している。
そんな様子を、ギーシュの脇越しに、スラおが怪訝そうな面持ちで見つめる。
これは別にやきもちではない。魔物であるスラおが人間に恋するはずもない。
ただ、あのワルドとかいう男は、何故かいけ好かないのだ。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 19:34:49.33 ID:1dr1IG/K
>>377
ロマサガ2の最終皇帝は汎用キャラじゃないじゃないか

>>381
支援
384ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:35:38.72 ID:0HuU0Wuo
何度か馬を交換して、休まずただひたすら走り続けた結果、その日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着くことができた。
港町と聞いていたが、そこは明らかに山の中。
「なぁ、何処に海があるんだ?それとも川か?」
疲れで意気消沈気味なギーシュに聞いてみる。
ギーシュは大きくため息をつく。それは疲れから出るものではなく、単純に呆れているようだ。
「君はアルビオンを知らないのか?」
そう言って、ギーシュがハッとした顔になる。
「人語を喋るから、つい君が人のように接してしまった」
人間ならば、人の常識を持っているのは当たり前。しかし、魔物であるスラおは、異世界から来ようと来まいと、人の常識を知る筈もない。
と、いうことなのだろう。
「アルビオンに行くには・・・」
ギーシュらしからぬ親切心で、スラおの疑問に答えようとしたそのとき。
ギーシュとスラおが乗る馬に幾つもの松明が投げ込まれる。
馬は驚き、前足を高く上げて暴れる。そのせいで馬から放り出されてしまった。
「奇襲か!?」
ギーシュが喚く。
スラおはすぐさま戦闘態勢に入るが、暗くて敵の場所と人数を瞬時に把握できない。
無数の矢が二人目掛けて飛んでくる。
その時、一陣の風が舞い上がる。
小さな竜巻が、まるで生きているかのように全ての矢を巻き込み、あさっての方に弾き飛ばした。
地上に降り立ったグリフォンからワルドが降りる。
「大丈夫か!君達!」
「もしかしたら、アルビオンの貴族の仕業かも・・・」
「貴族なら、弓は使わんだろう」
ルイズの予想はどうやら外れたらしいが、そうでなければ一体誰の仕業なのか。
スラおは辺りを見回し、ようやく地形を理解する。敵の場所も数も大体は分かった。
だが、敵はこちらを見ていない。全員が空を見上げているのだ。
そして、天に向けて矢を放つ。
「何してんだ?あいつら」
敵の間抜けな行動に、仕返しするのも忘れる。
彼らが放った弓は先ほどと同じように小さな竜巻に絡めとられて、矢としての役割を失う。
「おや、『風』の呪文じゃないか」
ワルドがそう呟くということは、あの竜巻はワルドが作り出したものではない。
月の光を背に、一匹の竜のシルエットが浮かび上がる。
「シルフィード!」
ルイズが驚きの声を上げる。確かにそれはタバサの風竜。
それが地面に降り立つと、二人の少女が風竜から飛び降りる。
一人はもちろんタバサ。もう一人はキュルケだった。
「お待たせ」
キュルケは赤い髪をかきあげて言った。
「お待たせじゃないわよ!何であんたが!」
グリフォンから降りたルイズは、一目散にキュルケの元に駆け寄って怒鳴り散らす。
「助けにきてあげたのよ。朝方、あんたたちが馬に乗って出かけたから後をつけてきたの」
これはお忍び。尾行に気付かなかった方も悪いが、尾行する方もする方である。
一国の危機に対して、ただの好奇心や悪ふざけで干渉しようとするのだから迷惑此の上ない。
しかし、敵は全てキュルケ達が倒したようだ。怪我をして呻く男たちが転がっている。
大きな戦力になることは間違いない。
ギーシュが男達を尋問したところ、彼らはただの物取りであることが分かった。
「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」
ワルドが一行にそう告げた。
結局、何故山中に港町があるのかというスラおの疑問は解決することなく、町の光を目指して歩き出す。
385ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:39:09.73 ID:0HuU0Wuo
ラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』。
一階の酒場でくつろいでいる一行は、各々、酒を飲んだり食事をとったりしている。
そこに、『桟橋』へ乗船の交渉に行っていた、ワルドとルイズが帰ってくる。
「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」
ギーシュの隣の席に腰を掛けて、ワルドは言った。
本来二日かかる距離を、精神と体力を削って一日で辿り着いたというのに、船に乗れないとはこれ如何に。
「そりゃ、波が荒れてるってことか?それとも海賊関係か?」
体力は有り余っているが、長い間、ただ馬の尻に乗っているだけの暇な時間を過ごしたおかげで、精神的には疲れ果てている。
納得のいかないスラおはワルドに少し強い口調で問いかける。
「波?何のことだ?明日の夜は月が重なる。その翌朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」
よくわからなかったが、ギーシュやキュルケがうんうんと頷いているのを見て、スラおはそれ以上聞くことをやめた。
この世界にはこの世界の常識が存在する。わざわざそれを全て理解する必要もないだろうと、スラおは楽観的になる。
しばらくたって、全員が部屋に戻ろうとする。
部屋分けは、キュルケとタバサが同室。ギーシュとスラおが同室。ルイズとワルドが同室だ。
最初は、ワルドのせいでシルフィードやグリフォンと同じく、外で寝かされそうになったが、ルイズが気を使ってギーシュの部屋に居座ることができた。
人語が話せるスラおに聞かれたくない話でもあるのだろうか、ルイズと同室になることはワルドが拒否した。

翌日、スラおはソファーの上で目を覚ます。
本来、外で寝泊まりするはずだったため、ベッドは一つしかない。
ベッドの上には口を開いた間抜け面のギーシュがうつ伏せで、スースーと寝息を立てている。
この世界に来るまでは、ずっとクリオと共に過ごしてきた。
それ故、気付かなかった。ルイズと過ごして初めて気づいた。
朝のまどろみの中で、最初に目にするのが男か女かだけでその日、一日のやる気が全く違ってくることに。
人間の姿に強く憧れ、実際に何度か人間になったせいか、そういう気持ちも理解できるようになってきた。
こんな時は、気分転換に外に出るのが一番だ。
スラおは、ピョンと飛び跳ね、器用にドアノブを捻る。
宿の共有スペース。そこの窓を出れば、大きなバルコニーがある。
大きく欠伸をした後、背伸びをする。
「おはよう。使い魔君」
後ろから声をかけたのはワルドだった。
「よ、よぉ・・・」
どんなに偉い人間であっても、敬意の示し方なんて知らないし、別に仲が良いわけでもない。
そんな気持ちから、スラおは気まずい声を出してしまう。
「人の言葉を話せるとは珍しい。それに頭も良さそうだ。そう、ずっと思っていたんだ」
ワルドは微妙な笑顔を浮かべて言った。
誉められてはいるのだろうが、喜べない。
その後も、出身地は何処かとか、一体どういった種類の生き物なのか、スライムという種族は全員人語を喋れるかなど、ワルドの口から噴水のように質問が溢れる。
答えられる質問には答えた。信じてもらえるとは思っていないが、一応異世界の出身であることも伝えた。
異世界の話を聞いた途端、ワルドが目を見開き、怪しい笑みを浮かべたことにスラおは気付かない。
「君の体にはルーンが刻まれていないようだが・・・本当にルイズの使い魔なのかい?」
一番知りたい質問なのか、ワルドの表情は真剣なものに変わる。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 19:39:28.49 ID:gJpM+zhC
支援
387ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:40:16.82 ID:0HuU0Wuo
「背中にあったけど、消えちまったよ」
正直、ワルドと話すのは疲れる。おそらくワルドのことを、今だにいけ好かない奴だと思っているせいだ。
さっさとくだらない会話を終わらせたいスラおは素直に本当のことを話す。
「背中?それは本当に背中だったのかい?君の体は少し透けているようだし・・・もしかしたらルーンは体内に刻まれていたのかもしれないな」
スラおにとって、どうでもいい憶測を展開するワルドを尻目に、再び大きな欠伸をする。
「例えば、心臓の部分・・・とかね」
そう言うと、ワルドはおどけた表情に戻り、スラおの体をぐにぐにと握り始める。
「そんなことより、この体は一体どういう作りをしているんだい?」
ハハハッと笑う、その顔を殴りたい衝動を抑え、ワルドの手を振り払い自室に戻ろうとする。
しかし、ワルドは今までよりも少し大きな声でスラおを制止する。
「ルイズに聞いたよ。土くれのフーケを倒したんだって?」
「みんなで倒したんだ。オイラだけじゃねぇ」
「手合わせ願いたい」
「手合わせ?」
もちろん言葉の意味は知っているが、聞きなれない言葉に少しだけ戸惑う。
「そいつはモンスターバトルってことか?」
「モンスターバトル?使い魔同士を戦わせるってことかい?違う。僕と君の決闘さ」
この世界では、使い魔同士を戦わせる習慣はあまりないらしい。
立派なメイジがわざわざ使い魔と戦いたがる理由は何だろうか。
「お前、オイラの実力を知っておく必要があんのか?」
なんとなくそう思った。
ギーシュ達の実力は大体想像できるだろうが、この世界に存在しない生き物であるスライムの実力は定かではない。
「うむ、鋭いね。これからは危険な戦いに身を投じることになるかもしれない。大事な戦力として君の実力を知っておきたい」
何故かその言葉からは真実味が感じられなかった。
だが、ワルドが言う以外の理由が思い浮かばない。
昨日の大移動で、ストレスが溜まっていたスラおはそれを了承する。
「いいぜ。やってやるぜ。後悔すんなよ!」
「中庭に練兵場がある。そこでやろう」
一人と一匹はそろって中庭に向かった。
388ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:42:18.85 ID:0HuU0Wuo
「君は平民どころか人ですらない。しかし、貴族同士の決闘と考えて構わん」
「おうおう、そんなことどうでもいいから、さっさと始めちまおうぜ」
スラおは体をつぶしたり、伸ばしたりして準備運動をする。
「そう言うわけにもいかない。立ち会いには、それなりの作法というものがある。介添え人がいなくてはね」
すると、物陰からルイズが現れる。
どうやらワルドに呼ばれたらしい。
「ワルド、バカなことはやめて。それは私の使い魔・・・ただのペットみたいなものだから」
向かい合う一人と一匹を見て、ルイズはすぐに状況を察したらしい。
決闘をやめさせるために、仕方なくルイズの言った『ペット』という単語にスラおは強く反応する。
もちろん、それが本心でないことには気づいているが、そこまで言われて黙っているわけにはいかない。
「これはオイラとこいつの問題だぜ?ルイズは黙って見てな!」
つい、そんな風に言ってしまう。その言い草に怪訝そうに言い返す。
「やめなさい。これは命令よ?」
それでも、スラおは口をへの字にして言うことを聞こうとはしない。
「なんなのよ!もう!」
ルイズもついに匙を投げてしまう。
「では、介添え人も来たことだし、始めるか」
ワルドは腰から杖を引きぬく。フェンシングの構えのように、それを前方に突き出す。
この世界での強さの基準は、魔法が使えるか使えないか。スラおは単純にそう考えている。
ならば、この男も当然強力な魔法を使ってくるはずだ。
問題なのは、その魔法の性質。
学院の授業を傍らで聞いてはいたが、日常魔法か、技術面での講義ばかりだった。
戦闘においての魔法が如何なるものなのかをまだ理解できていない。
ギーシュ戦やフーケ戦は、特技を使わない魔物と戦っていたようなもの。
魔法らしい魔法との直接対決は初めてだ。
389ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:44:13.93 ID:0HuU0Wuo
スラおはまず、自慢のスピードでワルドを翻弄しようとする。
しかし、ワルドは小回りの効く見事なステップで逆にスラおを翻弄する。
「結構速ぇじゃねーか!・・・ベギラマァ!!」
稲妻のような炎がワルド目掛けて唸る。
しかしベギラマは、練兵場の隅に積み上げられている木箱を破壊した。
外れるはずがない。そう思っているスラおには隙ができていた。
「随分軽い魔法だ。おかげで難なく風に乗せることができた」
そう、ワルドは魔法で風を起こし、ベギラマの軌道をずらしたのだ。
ワルドが呪文を唱え、杖を突きだす。
隙があったといえど、瞬きもせずに目を見開いていた・・・。
攻撃の実態を視認した時点で、ベギラマでの相殺、体当たりを利用しての回避など、幾らでも対処はできた。
しかし何も見えない。
空気を圧縮して固めたような、不可視の槌。エア・ハンマーがスラおに直撃する。
何が起こったのか瞬時には理解できない。
スラおは吹き飛ばされ、壁にぶち当たる。
「いてて・・・」
もろにダメージを受けてしまったが、まだまだ戦える。
ワルドもそんなスラおの状態に気付いたのか、再び杖を構え直す。
しかし、ルイズがスラおの元に駆け寄り、庇うように抱き上げる。
「もうやめて!あなたは魔法衛士隊の隊長じゃない!強いのは当たり前よ・・・だからこんな風に見せつける必要なんてないじゃない!」
まだ余力を残している。なのに邪魔をするなんてありえない。
しかし、何故だか嫌な気はしなかった。
「すまないルイズ。そんなつもりではないんだ。彼の実力を知ることは、より完璧に任務を遂行するために必要なことだったんだ」
ワルドが優しい声でルイズに答える。
決闘が中断された以上、状況的にスラおの負けだ。堂々とはしていられない。
「大丈夫だってルイズ。オイラ部屋に戻るからさ・・・放してくれよ」
ルイズは俯いて、目に微かに涙を浮かべて頷いた。
「行こう、ルイズ」
そう言って、ルイズの手をワルドが引く。
390ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/08/30(火) 19:45:06.43 ID:0HuU0Wuo
以上です。
支援ありがとうございました。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 20:13:06.86 ID:WiPmW9GA
>>379
あれは三千人を越す魔術師による合体魔術を、聖歌隊の合唱に例えてるだけで音波攻撃ではない。
ゼロ魔ではアンアンとゾンビウェールズのヘクサゴン・スペルに近い。

おまけにあれ黒幕に真似られた上に本家がやった結果は反射されての自滅だ。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 20:45:35.68 ID:fcypSVXZ
ワンピースのTVスペシャルに音楽を武器にする海賊団も出てきたな
ルフィが思い通りに操られるとか意外に強力だった
393名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 21:13:26.81 ID:fYPs8vsS
>>383
わかっているさ
だが俺は軽装歩兵のジュディが最も好きなんだ
銀色の装備に銀色の髪、そしてあのハイキックの角度といい、どストライク
でもやっぱり最終皇帝の外見を変えると文句が出ちゃうよな
394名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 21:15:29.84 ID:Jm0GirWf
よくて女最終皇帝がアマゾネス出身くらいかな・・・

そう、七英雄のコントばっかり取り沙汰される漫画版です
395名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 21:19:55.53 ID:UDTfHOEs
>>383
ロマサガ2の最終皇帝は、やり方次第で汎用キャラにできる
まあそれやると、せっかく最初に名前設定した本来の最終皇帝が、未登場のまま終わるんだけどなw
396名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 22:57:53.83 ID:L/siyvHv
銀魂から神威を召喚したら即元素の兄弟あたりを殺りにいきそうだな
SEEDみたくフリーで活躍させると面白いキャラだと思う。書く技量はハンパなくいりそうだけど
397名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 22:59:45.80 ID:UDTfHOEs
中の人はサイトと同じなのにねぇw>神威
398名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:04:19.16 ID:ChYNkT7m
カムイだとデルフリンガーないとキツクねーかな
ガンダサイトよりちょっと強いぐらいのイメージ
399名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:11:19.51 ID:Fd3a0RY5
ナチスは人を死に至らしめる音波兵器を完成させていたよ
ただし音源から30cm以内に22時間居続けることが死なせる絶対条件だったけどね
400名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:12:28.22 ID:aReO44kb
神威瑞穂とな・・・!
401名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:13:57.17 ID:L/siyvHv
>>398
いやガンダサイトよりはるかに強いだろ。ジャンプキックで宇宙船破壊できるんだぞあいつ。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:28:53.97 ID:D2pTXjHb
>>401
多分>>398のは神威じゃなくて、カムイだ。
変異抜刀霞斬りとか、飯綱落としの。

どっちにしろガンダサイトよりは強かろうが……
403名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:32:07.06 ID:Fd3a0RY5
なら「カムイの剣」の次郎はどうだ
地味だぞ地味だぞ地味過ぎて泣いちゃうぞ
でもめっさ強いぞ     矢野先生ェ・・・・・完結させて欲しかったですゥ
404名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:34:37.23 ID:L/siyvHv
>>402
ありがと、そっちは知らんからわからなかった
カムイといえばカムイコタンの巫女を召喚はエタってるから誰か新しく書いてくれないかな
405名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:54:37.02 ID:flAUhe1t
>>396
それ以前に、あいつは召喚した奴を迷う事なく殺っちまって終了が不可避に近い、
いわゆる出オチキャラの部類だけどな。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/30(火) 23:56:56.57 ID:5Iz067AT
>399
音響兵器なら自衛隊がソマリアの海賊退治につかった奴は極悪だったな
407名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 00:19:01.10 ID:vqu6hp50
>>403
一瞬『カイムの剣』に見えた。
フリアエェ……
408名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 00:35:02.15 ID:AAGXPOBm
>>405
じゃあキメラドラゴンを研究していた塔での実験失敗でハルケに来訪
そのまま施設を破壊し、キメラたちを殲滅して「ここもおもしろそうじゃないか」とハルケに居つく
数年後、英雄として名を上げた才人たちの前に現れるとかいう展開なら出オチにはなるまい
409名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 00:40:51.33 ID:5gE1rLAO
>>390
410Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:42:18.35 ID:f7WISGh0
予約がなければ5分後くらいから投下させていただいてよろしいでしょうか
411 忍法帖【Lv=27,xxxPT】 :2011/08/31(水) 00:42:48.34 ID:f7WISGh0
レベル確認します
412Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:48:22.43 ID:f7WISGh0
 
(オオ…イテテテ、すごく長いコボルドのトンネルをくぐったみたいな気分なの…)
 
《使い魔召喚(サモン・サーバント)》のゲートから飛び出すなり見知らぬ少女に頭突きをかましてしまったディーキンは、そんなことを考えながら……、
頭をさすりつつ起き上ると、泥をはたいてきょろきょろとあたりを見回した。
さて、一体自分はどんな場所に召喚されたのだろう?
 
…どうも、ウォーターディープとは随分と様子の違うところのようだ。
 
抜けるような青い空の下、草原の中。
周囲では変わった、同じようなデザインのきれいな服を着たたくさんの若い人間(エルフやドワーフとは明らかに違うし、大まかな造形から見て多分人間で間違いないだろう)達が、ざわつきながら物珍しそうにこちらを見つめている。
しかし髪の色や顔の造作(コボルドであるディーキンは人間の細かい特徴や容姿の区別にそんなに詳しいわけではないが)などから、彼らはウォーターディープで見かける様々な人間の人種のいずれとも違うように思えた。
特に髪のバリエーションが豊かで…、中には相当珍しい髪の色合いや形をした人間が何人も混じっている。
 
(ウーン、なんか随分カラフルな髪の毛の色の人たちなの…魔法で染めてるのかな?…ディーキンは青い髪とかもなかなかステキだと思うね、多分…。
えーと、あの不自然にロールした髪はなんなのかな?錬金術で作った薬とかで固めてるの?)
 
しかし、それ以上にディーキンの注意を惹いたのは、非常に多種多様な生き物が彼らと一緒に居ることだった。
犬や猫、梟にカエルなどのありふれた生き物に、とても大きなモグラなどのちょっと変わった生き物。
空中に浮かぶ目玉(アンダーダークで見たビホルダーやアイボールにちょっと似ている)や尻尾に炎を灯した真っ赤な大トカゲなど、魔獣っぽいものもいる。
ドラゴンらしき生き物(しかし、見たことがない種類の)もいて、つぶらな瞳をぱちぱちさせてこっちを見つめている。大きさからしてまだ成体ではなさそうだ。
 
ディーキンは(さっきぶつかったっぽい誰かのことも気になってはいたが、それ以上に周囲の状況が物珍しかったので)しばらくきょろきょろとあたりを観察し、いろいろと頭の中で考え込んでいた。
よく見ると、周囲の人々はデザインや大きさに差はあるものの、皆一様にワンドやスタッフのような棒状の物を手に持っている。
ゲートをくぐる前に使った《魔法感知(ディテクト・マジック)》の効果がまだ残っていたため、しばらく観察しているとそれらがいずれも微弱〜中程度までの“秘術魔法”のオーラを放っていることが分かった。
 
(オオオ…、珍しい生き物がいっぱいなの。本でも見たことがないようなのもいるの!
ウーン、この人たちはみんな秘術魔法使いみたいだから…、人間のソーサラーかウィザードで…、ちょうど使い魔とか召喚した生き物を連れてるところかな。
えーと…、つまりディーキンも、そうやって召喚された生き物?
…ムムム、コボルドを召喚するなんて…、もしかしてこの人たちはハラスターみたいな危ない魔術師の集まりとか?)
 
413Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:49:49.71 ID:f7WISGh0
先日の冒険で出会った狂える大魔道師・ハラスターは、自分で作り上げたアンダーマウンテンの広大なダンジョンに住み…、
数々の危険なモンスターをあちこちから召喚(正確には「招請」か)して内部に配置していた。
モンスターたちは大方皆呼び出されたことを不満に思っていたようだが、彼に対して反乱を起こしたり逃げ出すものはいなかった。
いや正確には、試みたものは大勢いただろうが無事に成功したものはいなかった。
それだけハラスターの力は強大で、皆から恐れられていたのだ。
…もっとも“ボス”と一緒にアンダーマウンテンに乗り込んだ時にはドロウ達がハラスターを捕まえていた(本人?は捕まったのはクローンだとか言っていたが…)ので、
支配者のいなくなったモンスターたちは今が好機とばかりにあちこちで暴れまわっていたのだが。
しかしそれもドロウ達の背後にいたのが地獄の大悪魔・メフィストフェレスだったからであって、そうでなければ仮にも彼が捕まるなどまず有り得なかっただろう。
実際あの“ボス”でさえ、彼に全く抵抗できずに制約の魔法をかけられて、一瞬でアンダーダークに飛ばされてしまったほどなのだ。
ついでに自分も巻き添えを食ったが、お陰でものすごい冒険物語を書けたし、英雄の仲間として評価もされたから結果オーライだ。
 
まあ、それは置いておいて―――。
 
(…ウーン、でも、ボスとかハラスターみたいにすごい人たちには見えないね…悪魔とかドロウのほうがよっぽど強そうな感じがするの。
じゃあ、何のためにディーキンを呼び出したのかな?
ここはダンジョンじゃないけど、向こうの方にでっかいお城みたいな建物が見えるし…もしかしてこれからずっとあそこの警備をやれとか?
うわあ、それはちょっと嫌だね!そんなことになったらどうしようかな…)
 
きょろきょろと観察しながらあれこれ考えをめぐらしてしているディーキンを指差して、周囲の学生達はざわざわと雑談を続けている。
 
「…ねえ、あれって亜人じゃない?」
「ゼロのルイズが亜人を召喚しちまったぞ!」
「見たことないぜ、何だあれ? …ま、でも随分小さいし、役には立たなそうだな!」
「身長が100サントもないわね。 あれじゃお使いもできないわ!」
「ああモンモランシー、君の使い魔もずいぶん可愛いね、名前はもう決めたかい? 僕の使い魔にはどんな名前をつけようか迷ってしまうよ!」
 
周りの人間達が何やらざわついているのに気付いて、ディーキンは首を傾げた。
どうも大半が自分のことを話題にしているようだが、「見たことのない亜人だ」という声が気になった。
亜人というのは、多分コボルドやオークのような人間以外の人型生物全般を指しているのだろうが……。
こんなに人が、それも(ソーサラーかウィザードか知らないが)博識なはずの魔術師たちが揃っているのに誰もコボルドを知らないなんて。
このあたりにはコボルドが全然住んでいないのだろうか?
いや、そもそもコボルドを知ってもいないのなら、どうして自分を召喚(招請)したりしたのだろう?
 
――ちなみに、自分を見下しているらしい発言が多いのは特に気にしてはいない。
いや勿論多少はムッとしてはいるが、ここ(どこかは知らないが)ではどうせ誰も自分のことなんて知らないのだろうし、「ちっちゃなトカゲ」が見くびられるのはいつものことだ。
ゲートをくぐる前から、また以前と同じ見くびられている状態からこんどは自分の力だけでしっかりと周囲に認めてもらうのも冒険の一環だと覚悟している。
むしろいきなり襲いかかってくるような相手がいないだけでも、ディーキンが事前に想定していた様々な状況の中ではむしろいい部類である。
コボルドにとっては、人様にいきなり攻撃されずにちゃんと話を聞いてもらえるだろう、などと期待する事自体本来なら楽観的過ぎるのだ。
 
414Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:52:09.67 ID:f7WISGh0
「ミ、ミス・ヴァリエール、大丈夫ですか? 怪我などはありませんか」
「いたた……、ううう…」
 
他のとは大分感じの違う声がすぐそばから聞こえてきて、ふとそちらに目を向ける。
そこには他の人達とはやや違った格好をした比較的年配と思われる人間がかがんで、こちらをちらちらと警戒しつつも、傍でへたり込んで涙目で頭を押さえている長い桃色の髪の女の子を介抱していた。
 
「…アー…、」
 
それを見て、鏡から飛び出した時誰かにぶつかったことを思い出す。
ゲートの傍にいた状況からすると、自分を呼び出したのはこの2人のうちどちらかだろう…最初から気にしてはいたのだが、周囲の状況があまり物珍しかったのでつい考え込んで声をかけるのが遅れてしまった。
どうやら、自分がぶつかったせいでこの少女はかなり痛い思いをしたらしい。
あの時は決心はしたもののどうにも踏ん切りがつかなかったので、思い切って勢いをつけて“コボルド高跳び隊”にでもなったつもりで頭からゲートに飛び込んだ。
今考えるとかなりバカバカしいことをしていたものだ。
仮にあの少女がゲートの前に立ってなかったとしたら、顔面から地面に激しくダイブしていたはずである。
ちょっと意気込みがすぎたようだと頭を欠く。
 
それはさておき…、どちらが自分を呼び出した魔術師だろうか?
 
コボルドの頭突きを喰らったくらいでへたり込んでいる少女が強力な魔術師だとは思えない(腕利きの魔術師は体もそれなりに丈夫なものだ)し、ただ一人年配なあたりから見ても多分介抱している男の方だろうか?
他の人たちよりは強そうな雰囲気がするし…、この少女も含めて他の若い人間達はこの男から魔法を教わっている魔術師見習いか何かだろう、とディーキンは推測した。
 
(アー、でも…、まわりの人たちの話からすると、ディーキンを呼び出した人は“ゼロのルイズ”っていうんだよね…、ゼロっていうのは二つ名かなんかかな?
ウン、それは格好いい感じだけど…その後のルイズっていうのは女の人の名前っぽい気がするの。
とすると…、やっぱり倒れてる女の子の方がディーキンを召喚したのかもね。
とりあえず…あとでこの人からディーキンを呼び出した訳を聞くとして、まずはあの女の子に謝っておくべきだね。
大したことなさそうだけど、怪我をしてたら治してあげた方がいいかな…ディーキンのせいみたいだからね!)
 
「…アー、えーと。さっきはごめんなの、ディーキンは謝るの。そっちの女の子は大丈夫なの?」
 
いきなり声をかけられて、コルベールはやや驚いたように目をしばたたかせてディーキンの方に視線を移す。
ルイズの方は声をかけられてようやく意識が自分の痛みの外に向いたのか、しゃがみ込んだままきっと涙目でディーキンを睨みつけた。
 
「え、ああ…大事はないだろう。 …あの、君、人間の言葉が…」
「ちょっとあんた、一体何なのよ!いつまでたっても出てこないし、近づいたらいきなり飛び出してぶつかってくるし!
これからあんたのご主人様になる相手に対して、こんな無礼を働いて許されると思ってるの!?」
「…ちょ、ちょっとミス・ヴァリエール、落ち着いてください」
「これらが落ち着いていられるもんですか!ミスタ・コルベールは黙っていてください!」
「は、はあ……」
 
415Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:53:50.81 ID:f7WISGh0
いきなり女の子の方から激しく怒鳴りつけられて、ディーキンは飛び上がって2、3歩後ずさる。
生来の気の弱さに加えて、機嫌の悪い時の“御主人様”の癇癪で酷い目にあったり、怒声を上げる大勢の人間に追い回されたりした長い間の経験のために、未だに怒鳴られたりするとぎくっとしてしまうのである。
今では“ボス”と一緒だったとはいえ恐ろしい悪魔とも戦えるほどの勇気はあるのだが、この性質だけはなかなか完全には抜けないようだ。
 
「…ああ…、その…、ディーキンは謝るの!本当に、ディーキンにはあんたを傷付ける気なんて少しもなかったの!
…けど、ちょっと不注意だったの…。ごめんなの、でもディーキンは、ただ、呼び出されたことに答えたいって思って……」
 
あたふたとうろたえながら、キャンキャンと子犬の鳴くような声で哀れっぽく訴え頭を下げて赦しを請うディーキンを見て、今度はルイズの方が困惑してしまう。
もし口応えでもしてこようものなら更に激しく怒鳴りつけていたところだが、こうも素直に、怯えたような哀れな様子で謝られてしまうと気勢が削がれる。
同時に、待ち続けさせられた苛立ちと痛みに対する怒りでヒートアップした頭が急速に冷えていく。
 
…よく考えれば相手は亜人ではないか。
平民なら貴族に無礼を働いたらすぐさま謝るのは当然だが、呼び出したばかりの亜人に人間の礼義を求めてみても仕方がないだろう。
しかも見たことのない亜人ではあるが、言葉遣いや身体の大きさ(ディーキンは人間でいえばせいぜい3歳児かそこら程度の身長しかない)からみてどうも相手は子どもではないかと思える。
小さな子に対して萎縮しているのをいいことにかさにかかって怒鳴り散らすなんて、相手が亜人とはいえ罪悪感を感じるし…貴族としても少々みっともないような気がする。
 
第一冷静になって考えてみれば、(どうして向こうが勢いよく飛び出してきたのかはさておいても)使い魔とぶつかったのは自分が召喚の鏡に接近し過ぎていたせいだ。
コルベールがせっかく注意を促してくれていたというのに、それを無視して勝手に召喚の鏡に近づきすぎた自分も悪い。
幸い出てきたのが小さな亜人だったから大事はなく、こうして八つ当たりなどしていられるが…。
コルベールも言ったとおり、もしも使い魔がもっと大型だったりしてそれと衝突したりしていたらそれどころではなく、下手をすれば命が無かったかもしれないのだ。
 
そして何より、この亜人はこれから自分の使い魔……生涯のパートナーとなるであろう相手なのだ。
初対面から自分の非を棚に上げて一方的に相手の非を咎め、怒鳴りつけるような真似をしては今後の信頼関係にも影響が出てくる。
そんなことをすれば一生禍根が残って気が咎めることになるかもしれない。
……まあ、それは大げさにせよ、とにかくそれを置いてもこの亜人は…、自分の初めて成功させた魔法の証ではないか。
 
まあ、これが同年代くらいの生意気そうな平民の少年とかだったら「やっと成功させた魔法がこんな平民なんて!」と激高し、
いちいちそんなことを考えずに無礼を咎めて怒鳴りつけたり召喚のやり直しを求めたりしていたかもしれないが…。
 
(…って、何を考えてるのよ私は。いくら私の魔法でも平民なんかが召喚されるわけないわよね…。
…とにかく、さっきまで痛くてそれどころじゃなかったけど、やっと実感が湧いてきた…ついに成功したのよ!
それもありきたりのちっちゃなトカゲだのの使い魔じゃなくて、言葉も話せる亜人よ!
…よくみるとちっちゃいといえばちっちゃいし、なんかトカゲっぽいけど…。
とにかく大成功よ、もう誰にもゼロのルイズなんて呼ばせないわ!)
 
416Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:55:12.00 ID:f7WISGh0
「…ああ、その、…もういいわ。ぶつかったのはこっちも不注意だったみたいだから。顔を上げなさい。
ええ、と……、あんた、ディーキンっていう名前なのよね?」
「ああ! だからその…、……アー、えーと。許してくれるの? ありがとう、ディーキンはすごく感謝するよ! 
…えーと、そうなの。ディーキンはディーキンっていうの。“ディーキン・スケイルシンガー”なの。
えーと、あんたの名前は、ルイズっていうんだよね?」
「そうよ。私の名前はルイズ、“ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール”よ、覚えておきなさい」
 
ほっとしたように頭を上げると二、三度頷いてニヒヒヒ、と笑うディーキンを指差して、周囲の学生達が一層騒がしくざわざわと雑談を続けている。
 
「ねえ、あいつ人間の言葉で喋ったわよ!」
「どんな種族の亜人だ?知ってるやつはいないか?」
「人間の言葉を話せるってことは……、先住魔法を使えるのか!?」
「…うーん、ゲートをくぐった時に喋れるようになったとかじゃない? それに使えるとしてもまだ子どもじゃないの、あれ?」
「ゼロのルイズにペコペコしてるような奴だしな、気ばっかり強いゼロにはちょうどいいぜ!」
 
ディーキンはきょろきょろしてその反応にまた首をひねる。
ルイズは、こっちとの話を中断して「何よ、召喚を成功させたのよ、もうゼロじゃないわ!」などと怒鳴り返しているようだ。
その様子を見た周囲は何やら一層囃し立てている様子(ディーキンには理解しがたい言葉がいろいろ混じっていて、内容はよくわからなかった)である。
 
(ウーン、この女の子は普段からこんなふうによく笑われてるのかな?
いや、それはともかくとして…、やっぱりなんかおかしい感じがするね)
 
確かに周りの人たちが言うとおり自分は今喋ったが、コボルドが喋るのは当たり前ではないだろうか。
共通語(ディーキンの住む世界“フェイルーン”で、人間の文化圏を中心に最も広く普及している言語)を話せるコボルドは、まあ確かに、それほど多くはない。
多くのコボルドは野蛮で学がなく、普段仲間内の会話で使うドラゴン語しか話せない。
しかし、少なくともディーキンの認識としては、決して驚くほどに稀だというわけでもない。
事実、自分の部族には族長や“飛び跳ね匠”をはじめとして、共通語を喋れるコボルドは大勢いた。
コボルド自体を知らないにしても、共通語を話せる生物は別に珍しくもなんともない。
野蛮なゴブリンにだって、地下に住むドロウやデュエルガーにだって、共通語を話せる者は大勢いる。それだけありふれた言語なのだ。
 
(ン…? まって、おかしいといえば……、この人たちの話している言葉も、何かおかしな感じがするね)
 
彼らの喋った言葉の意味は自然に理解できていたので今まで特に意識していなかったのだが…、注意してよく考えてみると、どうにも妙なことに気がついた。
普通の、特に注意を払っていない人間ならばこんなことにすぐには気付かないかもしれない。
しかし、ディーキンの詩人(バード)として、また冒険者としての感覚と経験が、違和感を訴えたのだ。
 
417Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:56:06.73 ID:f7WISGh0
周囲の人々は皆、ディーキンも普段よく使用している共通語を話しているように聞こえるのだが…、彼らの言葉には地域特有の訛りがまったく感じられないのだ。
ここがどこか、正確なことはディーキンにはまだ分からない。
しかし観察した限りではウォーターディープとは相当に離れた場所であるはずだ、見受けられる人間の人種さえも異なっているのだから。
ならば、たとえ使っている言語は同じ共通語であっても…、ウォーターディープに住まう人々とは異なるその地域特有の訛りや方言じみた言葉が混ざっているのが普通のはず。
実際、ディーキンはいろいろな地方や、時には異なった世界までもを旅してまわって、何度もそういった場所場所の言葉違いを感じた経験がある。
なのに、ここではそれがまったく感じ取れないのだ。
周囲の人々は全て、ディーキンが訛っていると感じない最も理解しやすい響きの共通語で話しているように聞こえる。
 
(……ウーン、これはもしかして……、ディーキンやこの人たちが今話してるのは、実は共通語じゃなくて……)
 
「…ええと…、いいかね?」
 
考え込んでいると、横合いからコルベールと呼ばれた男に声をかけられた。
ルイズとか言う女の子の方はどうしたのかと視線をめぐらすと、まだやかましく囃し立てている周囲の生徒らに何やらぎゃあぎゃあと騒いで噛みついているようだ。
 
(そういえば、さっきから使い魔がどうとかご主人様が何だとかいってるのも気になるけど…、とりあえず)
 
声をかけてきた相手に振り向いて、ちょっと首をかしげる。
 
「オホン。 えーと、…“ディオス・エレ・ディーキン・ファグツ”?」
「…は?」
 
ポカンとしたコルベールの顔をディーキンはじっと見つめる。
何を言ってるんだかわからん、なんだその言葉は?…という感じの顔だ。
 
「…えーと。聞き取れなかったの? “ディオス・エレ・ディーキン・ファグツ”…って言ったの」
「…いや…、意味が分からない。 それは、君の種族が使っている言葉か何かかい?
すまないが、私達の言葉が話せるのならそれを使って話してくれないかね」
「…ああ、わかったの。 あんたはディーキンに用なの?って言ったんだよ」
「うむ、ありがとう。…そうだよ、ディーキン君。もう理解しているかもしれないが、君はミス・ヴァリエールのサモン・サーバントに答えてこの場に召喚されたのだ。
君は人間の言葉を話せるようだが、亜人かね? このあたりでは見ない種族だが」
 
ディーキンは「いや、ディーキンの住んでいたところの言葉なの」と答えて首をかしげると、意味ありげに笑みを浮かべた。
コルベールは、そのどこか意地悪げな笑みを見て、怪訝そうに顔をしかめる。
 
なお、別にディーキンにはいかなる悪意もない。
出し抜けに笑ったのはただ、今の短い会話のやり取りで首尾よく自分の思いついた考えを確かめることが出来たので、達成感から自然に湧いてきただけである。
爬虫類であるコボルドの笑みは、それに慣れない人間にはどこか意地悪そうに見えることもあるものなのだ。
 
418Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:57:10.97 ID:f7WISGh0
実は今、ディーキンが最初にコルベールに話しかけるのに使った言葉は共通語である。
ただし、今までのように特に意識せず自然に話すのではなく一言一言注意して、“正しい共通語講座”の講義でもするかのように意識的に正しい発音を心がけて話してみたのだ。すると、コルベールには何を話しているのかが分からなくなった。
 
ディーキンは、先ほど感じた不自然さから、今まで自分が話していた言葉は実は共通語ではなく、彼らの話している言葉も共通語ではないのではないか、と推測した。
ある呪文を使用した時の感覚に酷似していることに気がついたからだ。
そして今のコルベールとのやり取りで、その考えが正しいことを確信したのである。
 
(たぶんあのゲートをくぐって召喚されたときに、一緒に《言語会話(タンズ)》か、それに似たような魔法の効果をかけられたみたいだね…。
どんな相手でも呼び出すと一緒に言葉が通じるようにするなんて、便利な魔法なの。
となると、あの女の子はかなり腕の立つ魔法使いなのかな?あんまりそうは見えなかったけど…。
ウーン、それに…、あのコルベールって人はこの魔法の効き目を知らないみたいなだったけど…、自分達の使う魔法のことを知らないなんておかしくないかな?
えーと、こんな魔法を使ったっていうことは、もしかすると…)
 
ディーキンはコルベールと会話しながらも、普段になくあれこれと深く考えを巡らせていた。
英雄と慕う“ボス”が傍にいてくれる時には、恐ろしい怪物や何かに怯えながらもどこか安心して無邪気に旅を楽しんでいるが、コボルドは本来は臆病で慎重な生き物だ。
ディーキンは普通のコボルドとは大きくかけ離れた性格をしてはいるが、それでも弱いコボルドとして生まれ、その文化で育った以上、警戒することの大切さは知っている。
あの女の子にせよこの男の人にせよ、危険な相手には見えないし悪意もないだろう、ということは既にほぼ確信してはいるのだが、
それでもいきなり見知らぬ土地にやってきて相手の目的や状況をまだ把握しきれていない今、完全に気楽になるのは早いと考えているのだ。
 
今は自分一人で、自分の責任で行動を決めなくてはならない。気をつけて情報を集め、自分一人の力で状況に対処しなくてはならない。
そういう気負った思いもあり、周囲の状況やこれから待つであろう新鮮な驚きに心の底から期待を募らせながらも、
一方ではいつになく注意深く状況を把握しよく考えて行動を決めようとしてもいる。
そもそも見知らぬゲートに飛び込む事自体賢明とはいえない、ということはディーキン自身もよく承知しているが、
根が無邪気な性格で英雄に憧れ冒険を求めているということと、完全に考えなしに能天気極まりなく振る舞うということとはまた別なのである。
 
一方コルベールは、安堵の気持ちと若干の警戒の混じった微妙な思いで目の前の亜人を見つめる。
安堵しているのは、どうやら成功が危ぶまれていたヴァリエール家の息女も含め、例年通り全員無事に召喚の儀を終えられそうだ、という肩の荷が下りたことに関して。
警戒しているのは、最後にそのミス・ヴァリエールが召喚したのは今目の前にいる見たこともない亜人…、それも人間の言葉を話す亜人だということ。
人間の言葉を話せるほど知能の高い亜人は、“先住魔法”(人間以外の種族が使う、始祖ブリミルの系統魔法以前から存在した魔法)の使い手である可能性が高い。
世界に宿る数多の強力な精霊達の力を借りる先住魔法は、総じてメイジが個人の精神力だけから生み出す系統魔法よりも強力であり、人々から恐れられているのだ。
勿論コルベールも、その例外ではない。
 
(いきなり鏡から飛び出してきた彼にミス・ヴァリエールが体当たりされたことはどうやら単に事故だったようだが…、まだ無害とは限らない。
召喚の儀を完全に無事に終えるまでは、気を抜くわけにはいかん)
 
419Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 00:58:30.01 ID:f7WISGh0
コルベールは、総じて楽観的な対応をしている(というか、むしろ警戒などまったくしていない)周囲の学生達ほどには呑気に考えない。
そもそも、「亜人が召喚される」ということ自体が極めて珍しいことなのだ。
召喚されるのは通常動物か、幻獣類であることもある。しかし、人間とか亜人が召喚されるというケースはほとんど例がない。
召喚までにやたら時間がかかっていたのも、気にかかるといえば気にかかる。
 
動物や幻獣の類であれば、召喚の鏡から自発的にやってきた使い魔は大人しく、まずメイジに危害を加えたりはしないという多くの前例がある。
しかし、前例がほとんど聞かれない亜人についてもそうであるという確固たる保証はないのだ。
目の前の亜人は確かに小さな子どものような背丈しかないし、言動からも稚いというか無邪気そうな印象を受ける。悪意も全く感じられない。
だが先住魔法の使い手だとしたら体の大きさなどから危険度は判断できないし、「だからこそ警戒が必要かもしれない」ともコルベールは考えているのだ。
 
それに亜人は総じて人間とは敵対しているものであり、よくても排他的でお互いに関わり合いにならないものだ。
知能も、種類にもよるが少なくとも動物などよりはずっと高く、策略の類も用いることが出来る。
 
(この亜人は、いくら召喚に応じたとはいえあまりに人間に対して警戒心が無く、友好的過ぎるのではないだろうか?
亜人とはいえこんな幼げな声形の相手をむやみに疑りたくはないが…、少なくとも無事に契約が済むまでは、生徒たちの安全には私が責任を持たなくては。
人間の町や村に混じり、無害な隣人を装って一人また一人と殺してゆく吸血鬼のような存在でないとも限らない)
 
吸血鬼はどんなに外見が美しかったり、華奢だったり、幼かったりしても、また普段の態度がいかに無害そうであっても、その実態は悪意に満ちた極めて恐ろしい亜人だ。
勿論、使い魔として自発的にゲートをくぐってきた以上危険な相手である可能性はかなり低いだろうが、一応まだ警戒はしておかなくては。
 
「ン…、つまり、ディーキンを呼び出したのはやっぱりあっちの女の子でいいんだね。
ええと、ディーキンは見ての通りのコボルドなの。 あんたたちは、コボルドを見たことがないの?」
「コボルド……? いや、知っているが…、君はあまり、その、コボルドのようには見えないが」
「そうなの? ウーン…、まあ、ディーキンはとびっきり美少年だから、普通っぽくは見えないかもね!(ニヒヒヒ)」
「…そ、そうなのかね? うーむ…」
 
コルベールは首をひねった。
コボルドならば、勿論知っている。比較的ありふれた亜人だ。書物でどういう生物か読んだこともあるし、実際に見たことだってある。
だが、目の前の亜人はどうみても自分の知るコボルドとは別物ではないか。
コボルドの美醜なぞ知ったことではないが、どう考えてみてもハンサムだとかそういったレベルの違いではない。
 
コルベールの知るコボルドとは、犬と人間のあいのこのような亜人である。
身長は平均150サント弱程度と小柄で、全体的には人間のような姿をしている。一方で頭部は犬に似ており、腕と足の筋肉が発達しているあたりも犬を思わせる。嗅覚も犬並みで、目は赤く輝いていて夜目が利くという。
大抵は洞窟などで野蛮な暮らしをしており、時折近隣の集落を襲って家畜や財貨を略奪したり、彼らの崇める犬頭の神に捧げる贄として人を攫ったりすることがあるので、人間とは敵対関係にある。
しかし力も知能もそこまで大した事はなく、魔法を使えぬ平民の戦士でも何とかできる程度の亜人だ。
例外は、時折生まれる群れを率いる神官――コボルド・シャーマンである。
 
420Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 01:00:19.18 ID:f7WISGh0
一方、目の前にいる亜人は…。
確かに頭の形はどことなく犬を思わせるところがあるし、声もキャンキャンいう響きが混じっていて犬っぽい印象を受ける。目もわずかに赤い。
―――だが、共通点はそこまでだ。
この亜人は全身が黄緑色のうろこに覆われているし、小さな角が生えている。どう見ても犬人間というよりはトカゲ人間ではないか。
身長も見たところせいぜい100サントあるかどうかといったところでコボルドにしては低すぎるが…、それに関しては単に子どもだからかもしれない。
 
(…うーむ、一般的なコボルドとは似ているような似ていないような…、亜種か何かだろうか?
しかし…、生物学に詳しくはないが、犬とトカゲではかけ離れ過ぎているような気がするが…。
仮にコボルドだとすると、人語を解する点から見てコボルド・シャーマンの子どもということか)
 
コルベールはじろじろとディーキンを見つめながら、今後の処遇について考える。
 
(嘘をついているのだろうか? だとしたら何のためだろう、もし悪意的に解釈するなら我々を油断させて隙を突くためか。
いや、まさか。嘘ならもっともっともらしい話をするだろうし、こちらを油断させたいのなら人間の言葉など話して見せず、無学で無力な子どもを装ったほうがいい。
やはり単純に無邪気な子どもという事でいいのかもしれないな。
本当にコボルドなのかはちょっと疑わしいが…、これ以上時間を食うわけにもいかないし、この場で悩んでいても答えは出ないだろう。
ミス・ヴァリエールとの契約は一応動向に警戒だけしておいて行わせることにして、後で学院長に一応報告と調査でも……)
 
「…どうかしたの? あんたは随分じろじろこっちを見てるみたいだけど、ディーキンの顔に何かついてる?」
「…ああ、うむ、すまない。とりあえず話はわかったよ。他にもいろいろと聞きたいことはあるが、それはまた改めてということにしよう。
ひとまずはそろそろ、ミス・ヴァリエールと……」
 
といいかけてふと視線を巡らせて彼女の姿を探すと、相変わらず何も考えないで騒いでいられる幸せな学生たちと言い争いをしている真っ最中だった。
 
「おい、コボルドだってよ!」
「コボルドかあ…、どんな珍しい亜人かと思ったら大したことないのね、ヴァリエール。でも、シャーマンだとしたら先住魔法を使えるのかしらね?」
「………わからない、子どもみたいだから」
「うむ、コボルドなど、平民の戦士でも勝てるくらいの亜人だ。 つまりは、平民と同じくらいの役にしかたたないということだね」
「…けどコボルドってあんなのだっけ? 前に領地で見たことあるけど、なんか随分違うような気が…」
「自分でコボルドって言ってるじゃない? ちょっと変わった格好のコボルドだってだけでしょ。なんせゼロのルイズの使い魔だもの、変わりモノがお似合いよ!」
「いやあ、あの小ささじゃ魔法も使えないだろうしむしろ何の役にも立たないぜ!流石はゼロのルイズだな!」
「…うるさいわね! 人の使い魔にケチをつける気なの?ただのフクロウだの、カ、カエルだの使い魔の奴にはいわれたくないわよ!」
 
うんぬんかんぬん。
 
(教師の苦労も知らずに、いい気なものだ……。トリステインの名門貴族ともあろう者達が、あんな態度と能天気さでいいのか。
少しは物を考えていそうな2人は他国からの留学生だし……、これではこの国の将来が思いやられる)
(…ウーン…、なんだか全然すごそうじゃないし、えらく平和そうな人たちだね。すごい冒険って感じじゃないの。
書くとしたら、珍しい場所を巡りあるいた旅行記みたいな本になるかな?
でも、珍しそうなところだし、ディーキンを呼び出した魔法はすごそうだったし……)
 
コルベールは内心で溜息を吐き、ディーキンは新しい物語の出だしの部分を考えながら、彼らの争いをのんびりと見つめていた…。
421Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 01:03:33.38 ID:f7WISGh0
今回は以上です。

第一話の投下からえらく日が空いてしまって、待っていて下さった方には申し訳ありませんでした。
その上話がほとんど進展していませんが……、まあ、性急に進めずのんびりと行こうかと。

9月に入るとまた忙しくなりそうですが…、時間を見てまた投下させていただきたく思います。
422Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2011/08/31(水) 01:21:01.49 ID:f7WISGh0
>>226
登録ありがとうございます
タイトルは、今回の私の名前欄のが正式な名称でいいかと思います

Neverwinterって地名なので、Neverとwinterは区切らないのが正しいですね…
前回は間違えていました、すみません
423名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 01:41:04.72 ID:42XYbW+X
>>396

神威と聞いて修羅の門の不破さんを思い出したオサーンが通りますよ。

424名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 02:03:34.32 ID:XSE6QAN2
>>422
乙でした
425名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 03:57:44.74 ID:968Ze0xU
>>423
連載再開したし、そこまでオサーンではないと思うがな。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 04:21:04.84 ID:lnt/KQFR
>>425
それにコンビニでちょくちょくコンビニ売り用の単行本が発行されてたりするしね。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 04:55:32.88 ID:XZ7fA4Cq
よく国ごと召喚するssあるけど日本みたいに話の通じる国以外を召喚しちゃったらどうなるんだろう?
ソビエトとか中国とかナポレオン時代のフランスとか今熱いリビアとか
一瞬で侵略されちゃうよね
428名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 05:09:10.57 ID:5gE1rLAO
>>422
429名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 06:23:29.10 ID:zo7neM6U
>>422
超乙
ディーキンの雰囲気でてていいな
ほんとエタらないでがんばって欲しい
430 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/08/31(水) 07:46:11.62 ID:2V08mMJ6
>>422
登録完了
あと運営議論スレでタイトルの修正を依頼しときました

なんか雰囲気があっていいなぁ
バードだから「音」に察しがいいとか細かいところにちょっとニヤッとしてしまう
忙しそうですんで無理しないでがんばってください
431名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 08:20:36.17 ID:GOoz+9Zt
殺生丸で書こうとしたけど自分の文才の無さに挫折orz
書き手さんは凄いなぁ
432名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 09:08:48.10 ID:ZCkinX6z
>>371
とりあえずベッドマナーを教えてもらおう
433名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 09:09:57.66 ID:ZeqUGzvn
>>431
殺生丸って犬夜叉の?
あれはりんと邪見の3人コンビで萌えるからむしろそこが俺だったら厳しいなあ
434名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 11:36:19.68 ID:tP4M42ad
犬夜叉だったら蛮骨たち七人隊でアルビオンやガリア戦争を股にかける傭兵戦記なんてのも悪くないな
435名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 13:58:50.52 ID:8yXZ+kLm
イシュトリ・イン・ヨリョトルをゼフォンごと召喚inウエストウッド…
調律の歌に紡がれる耳の形に囚われない世界…らら?
436名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 13:59:52.62 ID:SJq+3jec
殺生丸が無理ならキャラが被っててなお且つそれ以上の戦闘力を持つBLEACHの朽木白哉ならどうだ?
本誌でも久しぶりに登場したし
大貴族だしルイズと同じく貴族の誇りって言ってるし
意外にギャグもこなせるし
いざ戦闘になったら閃花だけで相手瞬殺したり断空で全ての魔法を無効化させたりしそうだけど
437名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 14:05:16.71 ID:ZCkinX6z
殺生丸と間違えて音速丸が(ry
438名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 14:43:56.07 ID:aEdjelKl
殺生丸なら天生牙でウェールズ蘇えらせれるな
439名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 16:18:41.97 ID:vrlTS0+h
>>403
問題はデルフ装備じゃ、『無拍子』や『変移抜刀霞切り』が出来ない事だな
440名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 16:26:58.38 ID:3TpNykZj
NARUTOから九尾召喚
441名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 16:39:57.60 ID:hWtpR+5e
で?
442名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 16:55:20.25 ID:9w1pdfQ0
DoDからアリオーシュ召還

ダメだ、生徒を食っちまうか
443名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 17:49:45.59 ID:1d7g1iIx
**を召喚、ダメだの出オチネタはもういい
出オチにしないような舞台設定のアイデアを出したまえ
444名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 18:05:33.16 ID:5gE1rLAO
>>443
なろうのゼロのキメラアントのように、ルイズが死んでしまっても続けようとすれば作者次第で続けられそうな気もする
445名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 18:25:26.59 ID:OuiNP+YN
アポロン仮面ことギリアムを召喚

平行世界を旅してる男だし超最適 
446名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 18:44:25.07 ID:L9xwSLal
>>445その人が来ると某ストーリーが終わるよ
ヒーロー戦記やればわかるけどね
447名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 19:01:11.86 ID:8yXZ+kLm
>>445
むしろ信彦さんか光太郎かビルゲニアを喚んでほしい
モグラ獣人要員もいるし
448名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 19:07:59.42 ID:zo7neM6U
音痴の人か
449名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 19:24:30.59 ID:L9xwSLal
見た目がV3中身がズバットですねわかry
450名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 19:41:27.46 ID:5gE1rLAO
>>448
音痴ならジャイアンだろjk
451名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 19:44:50.07 ID:LGOdJt4v
使い魔品評会がジャイアンリサイクルになり、全員ノックアウト
452名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 20:04:02.61 ID:VgLys/i0
ブレスオブファイアUからバルバロイ召喚

召喚しょっぱなから強烈な戦闘力でルイズが重傷を負わされた挙句どこかに消え、
ルイズにトラウマが残るも「いつかコントラクト・サーヴァントしてやるんだから」と切磋琢磨
虚無の担い手として成長したルイズはバルバロイと再会し、一騎討ちでこれに挑む
……まあこんな流れだと、せいぜいが短編SSで終わるんだろうけどなぁ

いや、あいつ結構好きなんだよね。出番二回しかないくせに、やたら強烈な存在感持ってるし。
知性のかけらも感じさせない醜悪な怪物の姿と、そこからは想像もできない威風堂々とした台詞回しのギャップも好きだw
453名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 20:05:17.40 ID:zyAAZt5e
島耕作を召喚
ただしアニメはFROGMAN作成のFlashアニメ
タイトルは「その時、シマコーが使い魔!」
454名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 20:21:47.47 ID:hWtpR+5e
>>444
それを考えもしないでセルフダメ出ししてる馬鹿ばっかだから考えて言えって>>443は言ってるんだと思うよ
455名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 20:59:12.40 ID:X1mAR2Om
昔、ここにSS投下したけど
一切リアクションされずに今みたいな「○○が召喚されたら〜」みたいな話をされて、
そのまま何も感想を言われぬまま埋もれてしまって心が折れてしまった

まとめWikiに載ったことだけが唯一の救いだが、ダメ出しでもいいので何か感想欲しかったなあ
今はもう続きを書く気はないけどさあ
456名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:00:04.72 ID:ixY5lxYu
>>452
「お前ひとりの力で悪夢を乗り越えてみせろ!」
ほんとに邪神のしもべかと思うくらいにかっこいいからなあ
457名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:02:01.62 ID:xaSinx3x
だってここはSS投下スレじゃなくて雑談主体スレだからな
どんなスレか確かめずに動いたほうが悪い
458名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:03:09.88 ID:hFR21qo/
いきなりダメ出しされるのも、やっぱり辛いよ。
それだけじゃなかったから、何とか続けられてるけど。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:09:21.43 ID:t18vg6Wg
>>455
それならり長く投下続けてるけど、それでも何回かそういうことがあったよ。
まずは「何が受けなかったか」を自省してみて、それでも続けようと思ったから
今でも続けているけどね。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:13:37.02 ID:X1mAR2Om
いやあ、ダメ出しよりもノーリアクション、悪く言えば無視が一番辛いだろ
ここに投下する人は少なからずリアクションを求めてるわけだしね
自己満オンリーならわざわざこんなとこに投下はしないで脳内だけで済ますさ

そういやSSが投下され続けて久しいからアレだが、確かにここは雑談スレだわな
でも、今やSS投下スレとしての側面もあるのは事実だし、周りからもそう見られてるんだから
せめて投下されたSSには何かリアクション欲しいッスわ
ダメ出しの一つでもあれば次に活かせるし
あからさまな荒らしは除いてね
461ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:17:11.23 ID:0hpLwm74
皆さん今晩は、無重力の人です。
流れを切るようで悪いですが、46話の投稿を始めます。
何もなければ21時22分から開始します。
出来る限り支援の方、御願いします。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:18:02.92 ID:X1mAR2Om
ああ、ちなみに俺が言ってるのは初回の話ね
そりゃあ長く書いてればノーリアクションの時があっても仕方ないとおもえるけど
一発目からノーリアクションは流石にキツい
せめて初回の時だけはリアクションして欲しいです
463ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:22:04.31 ID:0hpLwm74
それは捜していた。果てしない森の中を飛び回りながら捜していた。

゛それ゛は指の先に生えた鉤爪で木に抱きつき、辺りをギョロギョロと見回していた。
顔から半ば飛び出した様な目が忙しく動き回り、自分の視界に゛動くモノ゛がいれば、ソイツに注目する。
そして『捜しているもの』がいなければ、近くの木に狙い定めて、自分の身体を投げるようにそちらへ飛び移る。
飛び移った先にある木でも先程と同じように抱きつき、ギョロギョロと目を動かす。

何故そんなことをしているのか?一体なにを捜しているのか?
何処かの誰かがそんなことを゛それ゛に聞いても、答えることはないだろう。否、答えすら浮かばないだろう。
゛それ゛に組み込まれた脳の中には『指示された命令を完璧にこなせるか』という事と『ある程度の判断力』しか入っていない。
やがて木から木へと飛び移る内に、゛それ゛の視界に、山道に沿って建てられた一軒小屋があることに気が付いた。
自分の目を上下左右と激しく動かしながら、小屋の中に゛二人のニンゲン゛がいることを知った。
小屋の窓から見える部屋の中では、大きなニンゲンと小さなニンゲンがいる。
それだけなら、゛それ゛はすぐに山小屋から離れるつもりであった。

しかし、見つけたのだ。゛それ゛は捜し物を見つけたのだ。
小屋の中から『捜しているもの』の体を流れる血の匂いと、『あの場所の匂い』が鼻をつく。
自分を閉じこめていた大きなニンゲンたちが嗅がせた、『あの場所の匂い』をハッキリと鼻で感じたのだ。
とどのつまり、自分は一歩前進したのである。『与えられた命令を完遂する』という自分の道を。
「クル…クックゥ?クゥルル…!」
まるで鳥の鳴き声にも似た声を上げながら、゛それ゛はゆっくりと口を開けた。
そして奈落の底を彷彿とさせるような真っ暗闇の口の中から、赤い舌が少しずつ出てくる。

その舌はまるで、林檎の皮のように真っ赤で、とても長かった。



「リッンゴォ♪リンゴォ♪真っ赤なリーンゴォ〜♪」
ニナの口ずさむ唄をBGMにしつつ、男は林檎の皮を剥いている。
剥いた皮はまるで口から垂れ下がった舌のような赤い部分がテーブルの上にとぐろを巻いている。
常日頃からこういう事や家事をしているのか、男の手つきはかなりのものである。
男が林檎の皮を剥き終えた頃には、身から剥かれたばかりの皮がテーブルの上に山を作っていた。
「ニナ、お皿を持ってきてくれないか。これより二回り小さめのヤツでいいよ」
いつの間にか唄うのをやめていたニナはコクリと頷き、トテトテと台所へ向かう。

その間に男は白い身をさらけ出している林檎を小さく切り分ける。
六等分に切り分けた林檎は、目の前にある大きな皿の上に盛りつける。
それから一分もしないうちにニーナがトテトテと歩きながら小さな皿を両手に持って戻ってきた。
男は大皿に盛りつけた一口サイズの林檎を四個手に取り、ニーナの持っている皿の上に盛りつけた。
「ニナ、この林檎は右の寝室で寝てるあの子に食べさせてあげなさい」
「うん!わかった!」
男の優しい言葉にニナは返事をすると、右側の寝室へと向かう。
片手でドアノブを捻る彼女の後ろ姿を暖かい目で見つつ、男はリュックに手を伸ばした。
464ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:25:48.96 ID:0hpLwm74
「ふんふふ〜ん♪ふんふふ〜ん♪」
上機嫌で鼻歌を口ずさみながら、ニナは寝室へと入った。
この山小屋には寝室が二つあり、多数の遭難者がここを訪れても大丈夫なように作られている。
毛布やシーツの他に乾燥させた薬草や包帯といった医療品等が入っている箪笥もあり、有事の際にも事欠かない。
更にリビングと違って鉄格子の付いた大きな窓があるお陰で、陽の光が良く入ってとても明るかった。

そしてその寝室に置かれている二つあるベッドの内一つの上で、赤いリボンを着けた黒髪の少女が寝ていた。
規則的な寝息を立てている少女の身体に掛けられた薄いタオルケットが、寝息に合わせて上下に動いている。
ニナはニコニコと笑みを浮かべながらもトテトテとそちらの方へ駆け寄った。
両手に持っていた皿はベッドの側に置いてある小さなテーブルの上に置き、ついで盛りつけられていた林檎を一つ手に取る。
美味しそうな色をしたそれを暫し眺めた後、勢いよく口の中に入れた。
まるで野に咲く花の如き美しさを持った少女の口が、歪に動きながら林檎を咀嚼していく。
シャリシャリ…シャリシャリ…とスコップで土を掘ると聞こえてくるような音を立てながら、林檎はニナの口の中で粉々になっていく。
林檎独特の酸味や甘みを一通り堪能したニナは可愛らしい笑みを浮かべ、かみ砕いたそれを一気に飲み込んだ。
ゴクリ、と擬音がつきそうなくらいの勢いで飲み込んだ彼女は満足そうな笑みを浮かべ、プハー…と一息ついた。

「ん…んぅ…うぅ…」
その時、ベッドで寝ていた少女の口から呻き声が聞こえてきた。
「あっ!目ぇ覚ましたんだね?」
ニナは素早くその声に気が付きそちらの方へ目をやると、少女が瞬きをしていいるところであった。
何回か目をパチクリさせた後、黒みがかった赤い瞳が自分の顔を覗き込んでいるニナの姿を捉える。
その時一瞬だけ目を丸くしたものの、すぐに元の眠たそうな目に戻るとゆっくりと口を開いた。
「こ…ここは…」
「ここ?山小屋だよ」
少女の口から出た質問を簡潔に答えるとニナは林檎を一つ手に取り、少女の前に差し出した。
一方の少女は、目の前に差し出された林檎か何なのか分からず、突然の事に怪訝な表情を浮かべる。
「アーンして?アーン…」
ニナはそんな表情を浮かべている少女に対し、催促するかのように言った。
彼女の言葉を理解した少女は、少しうろたえながらも口を開けた。
「…?あ、あ〜…――…む!」
瞬間、開いた口にニナが容赦なく一口サイズの林檎を三分の二程突っ込んだ。
突然の事に少女は再度目を丸くしたもののそれが食べ物だとわかったのか、林檎が入った口をゆっくりと閉じていく。

シャク…シャリ…シャリ…
一定の間隔を置いて口を動かし、少女は林檎を咀嚼していく。
その顔に浮かべた表情は、怪訝なものからキョトンとしたものへと変わっていた。
「ねーねーおいしぃ?ニナはとっても美味しかったけど、お姉ちゃんはおいしぃと思う?」
一方のニナはニヤニヤと笑みを浮かべながら、捲し立てるように聞いてくる。
とても酸味と甘みが利いた林檎を噛み締めながら、少女は何が何だかよく分からない表情を浮かべつつ、頷いた。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:26:06.39 ID:WPQ6uy8M
>>462
「楽しませたいから書く」人間はノーリアクションの原因を分析して改善を行う
「書きたいから書く」人間はリアクションの有無に関わらず己を貫き通す
「ちやほやされたいから書く」人間は……
466ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:29:04.53 ID:0hpLwm74



一方リビングからニナの楽しそうな声を聞いていた男は、その顔に笑みを浮かべていた。
「今日はニナと一緒で本当に良かった。僕だけじゃうまいこと対応できそうにないからな…」
自虐ともいえる言葉を呟きながら、男は二個目になる林檎の皮を剥いていく。
十五の頃から山に入って木の実やキノコの採取、シカ狩りを行ってきた彼は女性の扱い方というのを知らなかった。
特にあの少女のような、思春期真っ只中(?)の女の子をどう扱って良いか全く知らないのである。
それにひきかえニナは分け隔て無く、他人と接することができる良い子だ。
あんな良い子もやがては大人になっていく過程で、世の中がいかに残酷なのか理解していくのだろう。

そんな事を考えていた男の気分は憂鬱なものとなっていくが、ふとある事が思い浮かんだ。
「それにしてもあの子、見たことのない服を着てたな…」
男は林檎をグルグルとゆっくり回す左手とナイフを動かしていた右手を止め、ポツリと呟く。
彼の言うあの子とは、いま隣の部屋で起きたばかりの黒髪の少女の事である。

少女が水飲み気絶したあの後、仕方なくベッドへ運ぼうと抱き上げたようとして身体に着けていたボロ布がズレ落ちた。
ボロ布の下に隠れていた彼女の服は、ニナと男が初めて目にする異国情緒漂う奇妙なものであった。
ハルケギニアは各国ごとに服の主旨は違うものの、結構似ているものが多い。
それ故にだろうか、二人には少女の着ている服はどうひいき目に見ても『趣味の良い者が着る服』とは思えなかった。
(まぁその事は別に良いとして…これからどうするか…だな)

ひとまずその事は頭の片隅に置いておくことした男は、ニナの笑い声が聞こえてくる部屋の方へと目を向ける。
ニナは初めて会う少女に優しく接しているが、男はどうにも信用する事が出来なかった。
こうして自然と長く付き合っていると、人を惑わしその血肉を糧とする人間と瓜二つの亜人を見かけたという話を良く耳にする。
オーク鬼、トロール鬼、コボルド…そして吸血鬼や翼人にエルフの他、この大陸にはマイナーながらも亜人が数多く生息している。
その大半が樹海や洞窟、渓谷や高原地帯に砂漠など人が滅多に来ない場所に好んで住む。
そして言うに及ばずこの小屋のある場所も、人が大挙して押し寄せてこない山中だ。

そんな山の中にある小屋で、しかも日中に迷い込んでくる人間はいるものだろうか?
勿論いるのかも知れないが、男は万が一の事も考えて目を細める。

(もし最悪の事態になったとしても…オレがニナを守らなければ)
男は心の中でそう呟きながら、手に持った果物ナイフをまじまじと見つめていた。


カラ…カラン…
「―――…ん?」
その時、ふと背後から物音が聞こえてきた。
思わず後ろの方へ向けると、背後にある暖炉の中に見慣れた物が一本、落ちているのに気が付く。

「…木の枝?」
それは山で日々の仕事をする男にはありふれた、一本の木の枝であった。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:30:31.58 ID:8JCwOdLb
支援
468ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:32:07.72 ID:0hpLwm74
森の中や道ばたで見かけるならいざしらず、この枝は何故か暖炉の中に入っていた。
たまたま折れたモノが煙突を通して入ってきたというのなら説明はつくが、それにしてもおかしい。
訝しげに枝を睨み付けながら男は腰を上げると剥きかけの林檎を皿の上に置き、右手にナイフを持ったままそちらの方へ近づく。
そして暖炉の側に来ると腰をかがめ、中に落ちている木の枝を左の手で取る。
(まだ若くて丈夫な枝だ。それにこの折れ方…明らかに人の手によるものだ)
男が落ちてきた枝をマジマジと見ていると、暖炉と外を繋ぐ煙突の中から奇妙な音が聞こえてきた。


ペタ…ペタ……ペタ…
先程の音とは違う、明かに異質な音である。
何処か粘着質漂うそれはまるで、誰かの足音にも聞こえた。
その音を耳にした男は素早く起ち上がると、二、三歩後ろへ下がった。
左手に持っていた木の枝をすばやく放り投げ、ナイフを両手で握りしめる。

何だ?一体何がいるんだ?
男は自らの呼吸が段々と荒くなっていくのを自覚しながら、暗い暖炉の中を凝視した。
後ろに下がった後も尚ペタペタ…という音が暖炉をとおして聞こえてくる。
やがて十秒もしないうちに音は大きくなり、こちらに近づいてくるのがハッキリとわかった。
最初はペタ…ペタ…と間隔を開けていた音がペタペタ…ペタペタペタ…とその間隔が短くなっている。
音が近づくに連れ男の呼吸も荒くなっていき、ナイフを持った手の力もどんどん強くなっていく。
男は覚悟を決めたのか、握りしめていたナイフをテーブルに置くと、素早くリュックの中に手を入れた。

(何が来るのか知れないが…来るなら来い!)
男は力強く心の中で叫び、リュックの中から無骨な鞘に入った大きな獲物を取り出す。
それは、山仕事をするような者達が常日頃持ち歩いている一振りの大きな鉈であった。
薪を割ったり小さな木の枝を切り落とす事もでき、時には襲い来る獣たちを倒すことも出来る。
木こりや旅の平民にとって、その鉈は絶対に欠かせないモノであった。

男は鞘から獲物をスラリと抜き、左手に持った鞘をナイフ同じくテーブルに置いた。
ゆっくりと、音を立てぬように置くと右側の寝室へとつづくドアへ視線を向ける。
あのドアを越えた先には、無垢な心を持つニナと素性の知れない行き倒れの少女がいるのだ。
(あの子たちを怖がらせるワケにはいかない…出来るならば一発で仕留めてなければ)
男は心中で考えつつ、血痕一つ付いていない綺麗な鉈の刃先を火がついていない暖炉の方へ向ける。
日々の手入れで鉈は綺麗ではあるものの、その刀身はこれまで多くの命を断っていた。
野犬や狼、時には毒蛇の身体を切り刻みその頭を切り落としてきた。
男の方も鉈で戦うという経験は一度や二度ではない、山で仕事をするのならばそれなりの覚悟は必要なのだ。
でなければ襲い来る獣たちに殺されるか、荷物を纏めて故郷を飛び出して街へ行くかの二つしかない。
男はその選択で山に残ることを決め、ここにいるのである。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:34:50.52 ID:5DfjPwGl
支援
470名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:35:24.90 ID:XgAJZr10
支援!
471ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:36:01.72 ID:0hpLwm74
「フゥ…!…フゥ!」
段々と大きくなっていく自分の呼吸音に焦りながらも、男は待ちかまえる。
ペタペタという音は段々と大きくなり、もうすぐこの暖炉から音の主が出てくるのは目に見えていた。
自分がやらなければ隣の部屋にいる少女達の命が危なくなるのだ、やるしかない。


再度決意を固めた彼は鉈を振り上げ、そして―――


シュッ…!―――――



―――――ゴトリ… 

「…?」
寝室で寝ていた少女に林檎を食べさせていたニナの耳に、変な音が入ってきた。
まるで、胸の高さにまで持ち上げた大きな岩を地面に落としたときの音と似ている。
しかし今聞こえた音には何処か湿っぽい、粘着質な音も含まれていた。
まだ幼いニナにはその違いがわからないものの、リビングからの異音に首を傾げた。
一方、ニナに林檎を食べさせてもらっていた黒髪の少女も、その音に気づいてドアの方へと顔を向ける。
口の中に入った林檎をモグモグと噛みながら、目を丸くしてドアを見つめている。
「お兄さんが林檎でも落としたのかな?」
丸くて可愛い目をパチクリさせながら、ニナはリビングへと続くドアを凝視していた。
木造のドア一枚越えた先にあるリビングだが、ドアがあればリビングの様子は全く分からない。
ニナはリビングで何が起こったのか気になったのか、「おにーさーん!」と男を呼びながらドアの方へ近づこうとしたが…

「…駄目よ」
「えっ?」
歩き出す前に後ろから聞こえてきた声の主が、ニナの肩を掴んだのである。

何かと思いニナが後ろを振り返ると、ベッドで横になっていた黒髪の少女が自分の肩を掴んでいるのに気が付いた。
村へ帰る前の小休止にと入った小屋の中で倒れていた彼女はドアを凝視していた。
特徴的な黒い瞳は鋭く光り、可愛らしい10代半ば相応の目をキッと細めている。
一方、肩を掴まれたニナは訳が分からないという表情を浮かべながらも、そんな少女に話し掛けた。
「お姉ちゃん何するの?はなしてよ」
その言葉に少女は反応せず、ニナの肩を掴む手の力も緩めようとしない。
尚もリビングへと通じるドアを凝視しているその姿は、まるで何かの動きを読もうとしているかのようであった。
肩を掴まれているニナは突如豹変したかのように表情が変わった少女に、僅かばかりの恐怖を覚えた。
「お姉ちゃん…ねぇ…いい加減離し――――え?」
なんとか離して貰おうと苦しそうな声で言いかけた言葉を、ニナは飲み込まざるを得なかった。

先程まで片方の手でニナの肩を掴んでいただけであった少女は、突如ニナの腰を両手で掴んだのである。
一言も発さず素早い手つきでニナの身体を抱きしめた少女は転がるように、横になっていたベッドから飛び出した。
埃がうっすらと積もった床に足を着けた少女はニナを抱えたまま何かを捜すように辺りを見回し、すぐに目当てのモノを見つけた。
それは寝かされる前に脱がしてくれたのだろうか、ベッドの下に一足の黒い革のブーツが置かれている。
472ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:39:13.03 ID:0hpLwm74
少女はニナを抱えたまま器用にブーツを履くと、先程まで二人が凝視していたドアがミシッベキッ!と音を立て始めた。
そこへ視線を向けてみると、丁度ドアの真ん中当たりからもの凄い音と共に木片が飛び散っていく。
「え…?なに、何……きゃ!」
不吉な音をたて始めたドアにニナが気づいた瞬間、一切れの木片が彼女の頬を掠る。
掠っただけで幸いにも血は流れていないが、珠のように白くて綺麗な肌に赤い一筋のかすり傷が付いてしまった。
尚も激しい音を立てて壊れていくドアにとうとう一つの小さな穴が開いた瞬間、そこから一本の腕がものすごい勢いで出てきた。
そしてある程度出たところでピタリと止まり、何かを掴もうとするかのようにジタバタと滅茶苦茶に動かし始める。

それは平均的な成人男性の立派な腕であったが、その肌はとても人間のものとは思えなかった。
人間の腕にしてはやけにゴツゴツとしており、所々に爬虫類のそれとそっくりな鱗も貼り付いている
肌の色も普通の人間と違い、とある世界では『FLORA(フローラ)』と呼ばれる系統の迷彩と類似していた。
これだけ見ればとても腕の持ち主が人間とは思えないが、それらを無しにしても十分に人間のモノとは思えない証拠を持っていた。

その証拠は、飛び出してきた腕の五本指にそれぞれ付いた長く、鋭利な鉤爪であった。
まるで火竜の手からもぎ取ってそのまま移植したかのような鉤爪には――――赤い血がベットリと付着していた。

「……!?キャアアアアアアアアアッ!」
突如ドアを突き破ってきた手に、とうとうニナがその小さな口を大きく上げた悲鳴を漏らした。
瞬間、その悲鳴を合図に黒髪の少女は片足で勢いよく床を蹴った。
トンッ!と気持ちの良い音を立てて少女の身体が床から離れ、そのまま背後にある窓へと向かって飛んでいく。

そして、窓の割れる大きな音と共にニナを抱えた一つの影が、山小屋から離れていった。

シ ャ ア ァ ァ ァ ァ ! キ キ ィ イ ィ イ イ イ  イ イ ィ ! 

少女とニナが消え、『人のいなくなった山小屋』を中心に、この世の物とは思えない鳴き声が響き渡る。
その声は森と周囲の山々に伝わり、獣たちは恐怖に駆られて鳴き声の聞こえた場所から離れようと走り出す。
オーク鬼たちも謎の鳴き声に驚いたのか、獲物を求めて山の中をうろいていた何匹かが仲間達のいる塒へと戻っていく。
ふとした事が死に繋がる野生の世界において、この選択は正しいものである。
そして山の中にある村に住む人間達も同じで、皆が皆不安に駆られていた。


しかし、その様な状況になっても平然としている人間はいることにはいた。
473ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:41:58.89 ID:0hpLwm74
その少女は森の中に出来た広場のような場所に佇み、空を見上げていた。
周りの景色から明らかに浮いている黒と白の服装は、彼女の存在をこれでもかとアピールしている。
太陽のように輝く金髪はさながら超一級のアンティークドールのようであるが、正真正銘彼女は生きた人間だ。
つい先程までここで昼寝をしていた少女の耳にも、あの甲高くおぞましい怪物の鳴き声は聞こえていた。
それが原因でついつい目を覚ましてしまい、ふと起ち上がって今に至る。

「ふぅ…人が折角昼寝と洒落込んでたってのに…迷惑な奴だ」
その口から出た言葉はおしとやかなお嬢様のそれではなく、まるで男のような言葉遣いであった。
だが少女の瞳に宿る強い意志と少々不機嫌そうな表情の前では、その言葉遣いがしっくりと来る。
この少女の名前と性格を良く知るものなら、誰もがそう思うだろう。
相変わらず森の奥から怪物の鳴き声が聞こえ、鳥の囀りすら消えてしまっている。

「こんな真っ昼間から鳴くなんて迷惑もいいところだぜ」
自分以外誰もいないのにもかかわらず少女は一人呟き、足下に置いてあった箒を拾い上げた。
ちゃんと手入れが行き届いているが扱いが手荒いせいかところどころに傷が入っているソレは、単なる掃除道具には見えない。
それはこの少女が数多く持つ゛大切な持ち物゛の一つであるからだ。その内の一つで最も大切な物は今手元に無いが。
「まぁ、人が寝静まってる夜中に鳴いても迷惑だけどな」
少女は尚も呟きながら右手に持っていた黒い大きなトンガリ帽子を頭に被った。
まるで絵本の中の魔女か魔法使いが被っているようなそれは、少女には何故か似合っている。
何故なら、彼女がその帽子を被っているような゛魔法使い゛をしているだからだ。似合わないはずがない。
少女は頭に被ったソレを左右上下に動かして調節しながら、箒を持つ左手に力を込める。
この世界で使われている力とは全く異なる、自らの身体に溜まった魔力を少しだけ箒の中に入れていく。

「人様に迷惑かける奴は、懲らしめてやらないとっ…――な!」
少女、魔理沙は最後にそう呟くとその場でピョンッ!とジャンプした。
そして空中に浮遊している間に素早く箒の胴体部分に腰掛け、箒に込めた魔力を放出させる。
すると驚いた事に箒は地面に落ちず、魔理沙を乗せたまま空中に浮かんでいる。
数秒ほどその場で浮遊した後、箒が出せる力とは思えないほどの早さで上空へと飛び上がっていった。魔理沙を乗せたまま。

その箒もとい魔理沙が目指す所は無論、鳴き声の主の元であった。

474名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:42:53.69 ID:7HGk0IfE
支援
475ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:46:49.76 ID:0hpLwm74
以上、46話でした。
ルイズと霊夢は今回お休みでしたが、次回以降また活躍して貰います。
それでも次の話から何話かの間は、魔理沙メインのお話となります。
一応彼女も原作では主役級ですので

さて、明日で八月も終わりいよいよ秋(姉妹)の季節である九月の始まりですね。
去年と同じならまだ暑い日が続くと思いますが、まぁ頑張って執筆していきます。

それでは皆さん、また来月末にお会いしましょう。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:50:40.21 ID:X1mAR2Om
>>465
ものを書く動機と内容は関係ないじゃない
ちやほやされたい人が素晴らしいSS書くかも知れないでしょ
477ルイズと無重力巫女さん:2011/08/31(水) 21:51:03.36 ID:0hpLwm74
いかん、書き忘れてた…

今回自分の投稿の際支援してくれた方々、本当に有り難うございました。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 21:58:58.63 ID:KkQcsI9d
>>476
いや、>>465は内容の話じゃないと思うよ
479名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:07:36.54 ID:MHR99/qA
>>422
乙でした。
原作は知らないのですが、メフィスト倒したってことは、エピックまでいったコボルドですか?
前回サモン・サーバントのゲートを正確に理解してましが、バードの知識はやはりとんでもない。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:11:00.75 ID:svXa4YrR
>>477
素敵な巫女さん乙
481名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:16:42.13 ID:hFR21qo/
無重力の人、乙でした。


話は変わって。
自分のSSにレスをもらえるのは、凄く嬉しい。
でも レスをもらえる事に重きを置きすぎると 書き手は『SSの暗黒面』に落ちますよ!
私も 以前、レス欲しさに 此処では言えない様な事もやってしまいました。(今は反省してます)

ID:X1mAR2Omさんも また、『書きたい』ネタを思いついたら 書いてみてください。
レスが付く・付かないは、タイミングと時の運!そう思います。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:19:12.59 ID:X1mAR2Om
遅ればせながら投下乙
483名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:24:03.94 ID:5DfjPwGl
無重力さん投下乙

>>ID:X1mAR2Om
このスレは超速エタに敏感だから(過去に何度もあった)新作を様子見する読者が多い
フーケか、それこそアルビオンに行くくらいまでは無反応を覚悟しなくてはならないかもしれない
呼び出した使い魔が「読者の好きなキャラ」や「話のタネになるキャラ」だったりしたらまた話は違うんだけどね
484名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:24:37.63 ID:X1mAR2Om
>>481
いやあ、自分はもうROM専ですから

これから投下する新人さんとかが自分みたいに心折られないようにね
書くモチベーションって凄く大事だし、やはりリアクションがあったら次も書こうって思うだろうしね
提唱したわけですよ
485名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:36:23.13 ID:FHU57hBo
自分が投下したあとに反応なかったという愚痴を他人の投下に割り込んでまで続けるヤツ
486名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:37:12.74 ID:8yXZ+kLm
腋巫女の人乙です



投下時の反応が薄い事への苦情は
一話目にしてエタってる人達にお願いします
487名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:49:20.35 ID:WPQ6uy8M
>>475
乙です。
レイム、一体何者なんだ……
488名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 22:59:58.54 ID:0Eufo3re
>>486
これが開き直りという奴か
489名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:04:21.20 ID:/Vy0i8m+
えっ
490名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:04:39.56 ID:Xrg6h1Db
>>484
タイトルを晒してくれないと何とも言えないが、一話目の内容が

ルイズ「あんた誰?」
被召喚者「ここはどこ?」
モブ「さっすがゼロのルイズ! なんかよくわからん奴を召喚したぞ!」
ルイズ「やり直しを要求します!」
コルベール「ダメだ、契約しなさい」
ルイズ「感謝しなさいよね。貴族にこんなことしてもらえるなんて(ry」
被召喚者「熱い」
コルベール「見たことないルーンだな」
コルベール「ガンダールヴイエ〜〜!」
キュルタバ(興味ないね)
モブ「ルイズ、お前は歩いて戻ってこいよ!」
ルイズ「さっさと行くわよ!」
被召喚者「月が二つある……」
つづく

こんなんだと反応に困るな。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:05:17.10 ID:u+Q1PsfR
1話でエタってるんじゃない、短編なんだ
そういうことにした
492名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:14:38.06 ID:0Eufo3re
こういっちゃ何だが、雑談スレと投下スレを分けた方がいいんじゃね?
投下したssの感想を言うよりも何々が召喚された云々という雑談の方がしたいんだろ君たちは
その方が幸せだろ、お互いにとってさ

まあ、間違いなく投下スレは過疎るだろうがw
493名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:16:35.92 ID:IFtHwuwU
「これは1話でエタっているのか?」
「いや、短編なんだろう」
「そうか、短編か」
「ああ、短編だ」
「「そういうことにした」」
494名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:21:29.47 ID:4HZFV+Uu
ソーサリーゼロいつの間にか更新?
495名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/31(水) 23:35:30.52 ID:t18vg6Wg
>>490
確かに長く続いてる人はそのあたりからアレンジ加えてるのが多いね。
逆に原作なぞりからいきなり超展開ってのもあるけど。
496聖樹、ハルケギニアへ:2011/09/01(木) 00:02:29.82 ID:FzARiqnq
こんばんは
もしよろしければ二十四時六分ぐらいから投稿をしたいと思います
497名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 00:05:48.18 ID:0cVw9zUP
おおエクスデスの人だ! 事前支援
498聖樹、ハルケギニアへ-7-A-1/7:2011/09/01(木) 00:08:37.28 ID:FzARiqnq
学園に戻ってからタバサと今後の簡単な打ち合わせをする。
稽古をつけるのは主に夜、皆が寝静まった頃に学園から離れた場所で行うこと、
長時間行い就寝時間を削れば、学園生活やタバサの身体健康に影響が出ることを考え
短時間になった。
タバサは睡眠時間を削ろうと問題無いと言ったがエクスデスは却下することにした。
たとえ本人がこれで良いと気にせずとも、周りがタバサの様子が変わった、疲れ気味では、どう過ごしているのかなどと気にしてしまう可能性がある。
ふとした変化に意外と気付く者は多いのだ。
理由を話すとタバサは納得したのか、
「分かった」
とだけ言って後は何も言わなかった。
タバサに不満が燻っていると感じたが、それは譲らなかった。

もっとあなたの事を知ることができれば

先の言葉、あれに準ずることにした。
お互いにもっと知り合えた時。
その時が来れば色々と聞けるかもしれない、ならば今無理に聞く気も無かった。
だがそれよりも先に、
「コレはどうする」
タバサに問う。
「大丈夫、コレはわたしが起こす」
二人がコレというのはジャベリンの欠片が頭に命中して気絶したシルフィードのことである。
ポーションを飲ませようとしたが意識がなくては飲ませようもなく、このまま放置するわけにもいかず取りあえず持ってきたのだ。
「起こせるか?どこか打ちどころが悪かったのかもしれん
 治療するならば・・・」
というエクスデスをタバサは首を横に振って否定する。
代わりにシルフィードの近くに寄り、エクスデスにこいこいと言わんばかりに手招きする。
「?」
499聖樹、ハルケギニアへ-7-A-2/7:2011/09/01(木) 00:12:55.93 ID:FzARiqnq
エクスデスがタバサに招かれるまま寄ってみると、
「・・・きゅい〜・・・きゅい〜・・・」
と変てこな寝息が聞こえてくる。
気絶した後にいつのまにか眠ってしまったようだ。
「・・・・・」
ここにコレの天敵でもいれば命が無いかもしれない。
よく今まで野生で生きて来られたものだなとある意味感心した。
寝ているだけなら後は主人であるタバサに任せれば大丈夫だろう。
部屋に戻る為に寮に入り戸を閉めたところで、何か柔らかい物を叩く音と妙な悲鳴が小さく聞こえた気がしたが確認せずに戻ることにした。
後は主人であるタバサに任せれば大丈夫だろう。

部屋に戻り解錠して中へ入る。
出た時同様音を立てないようにゆっくりと、隙間から中を確認しつつ戸扉を開けて。
ルイズが起きてしまわないように。
結果部屋の主は起きてはこなかった。
扉を閉めてゆっくりと動いてソファーまで移動し、身につけた装備も静かに外していく。
エクスデスのような巨体がそろりそろりと闇の中を動く様子は何か変だった。
装飾まで外し終えたところでベッドの方からばさりと音がする。
ルイズが寝がえりをうって布団を落としてしまったのだ。
その様子にエクスデスはやれやれと言わんばかりに立ち上がると、ルイズの傍まで近づき布団をかけ直す。
起きるかとも思ったが深い眠りについているのかルイズは、
「ん・・・」
軽く何かを感じました程度の反応だった。
再びソファーに座るとエクスデスは思案を始める。
(さてどうしたものか)
タバサにどうやって教えていくか、どのような方法が一番合っているかを考える。
窓から見える二つの月を時折眺めながらエクスデスは最善の道を考えるのだった。
タバサに教えると事と、逆に教わる事にもなる自分の事を。
夜は更けていった。

500名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 00:13:39.00 ID:ClVg79K9
久しぶりだからこそうれしい
支援
501聖樹、ハルケギニアへ-7-A-3/7:2011/09/01(木) 00:17:48.95 ID:FzARiqnq


そして朝、日常を普通に普段どおりに過ごす者にとってはさわやかに目覚める時、ルイズもまた目を覚ました。
「んぅ・・・」
まだ起きたばかりで頭がぼんやりとしている。
まだ梳かしていないぼさぼさの髪をポリポリと掻いて首を横にすれば見慣れた自分の部屋、
ソファーの上には自分の使い魔が横になっている。
相変わらず寝ているのか寝ていないのか分からない。
そんな事を考えながらむっくりと上体を起こすと自分の姿を確認する。
そこにはいつものネグリジェではなく学園の制服で胸元がゆるんでいる。
(・・・?)
なぜ自分は制服で寝ていたのか?
脳が疑問を提示し自分で答えを出す。
答えは昨日のドタバタで散々疲れてベッドに飛び込みそのまま寝てしまいました。
しかも制服は睡眠時に着る物ではないのでしわくちゃになり、自分の体もすっきりさわやかとはいけない。
寝たというのにこの疲労感。
朝から何でこんな気分にならなければならないのか。
再びソファーに横たわる巨漢に目をやり、ベッドからおりてゆっくりと向かっていく。
目はもう覚めていた。
一方のエクスデスは自分に近づく気配に意識を覚醒させる。
「む?目が覚めたかルイ」

「この馬鹿ぁぁぁぁぁ!」

ドスゥという音と共に顔に枕が叩き込まれた。
柔らかな枕のはずなのだが、どうにも柔らかい枕から発せられる音ではない。
「!?」
痛みは無いが急に視界を暗転させられ流石にこれには驚く。
「何をする!」
枕を顔からどけてもルイズは枕を再び振りかぶって叩きつけて来る。
殺気のこもった攻撃なら体が覚えていて咄嗟の対応も可能だが、こんな枕で殴られたぐらいでは動じることはない、だが取るに足らないからこそ困るというものもある。
それに反撃をするわけにもいかない。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 00:18:07.27 ID:Zg+rrUTW
これは支援であってそれ以外とは無関係
503名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 00:26:09.78 ID:/YrWsHAf
 エクスデスも丸くなったなあ……支援です。
504聖樹、ハルケギニアへ-7-A-4/7:2011/09/01(木) 00:27:02.58 ID:FzARiqnq
それが今の状態だ。
「よさんかルイズ!何事だ!」
「何事も何も大事よ!ご主人様に対して不愉快な思いをさせる下僕なんか許されないんだから!」
「不愉快な思い?ああ、もしやそのままの姿で寝かせたことか?」
ルイズの枕攻撃を手でガードしつつルイズが着ているしわくちゃな制服を指差す。
「そうよ!・・・って分かっててやったの!?」
「声を掛けようとしたときには既にお前は熟睡していたのでな。起こすのもしのびないのでそのままにしておいた。起こした方が良かったか?」
「当然よ!お陰でシワだらけじゃない!」
ヨレヨレの制服を指さして怒鳴るルイズ。
実はこういうことでルイズが怒るのではないかとも想像はしていた。
魔法で攻撃されるかと思いきや、枕で叩かれるのは予定外だったが。
「しかし制服に関して問題は無かろう。予備がある」
そう言って枕をのけるとクローゼットを開け予備の制服を取り出す。
「替えがあるから大丈夫とかいう問題じゃ無いの!」
「分かった。以後気をつけよう。では着替えるか?」
「ちゃんと反省してるの?全く!」
ぶちぶちと文句を言うがこのままでいるわけにもいかない。
ルイズは制服を脱いでエクスデスのほうに渡す。
エクスデスもそれを受け取り簡易に畳むと下着類の着替えを渡す。
505聖樹、ハルケギニアへ-7-A-5/7:2011/09/01(木) 00:32:22.74 ID:FzARiqnq
必然的にそのルイズの着替えを見ることになる。
ルイズはエクスデスが自分のほうを見ているのに気付いた。
「な、何よ」
使い魔に見られたところで恥ずかしくも何ともない筈なのだが、じっと見つめられると
何だか恥ずかしくなってくる。
頬を赤くしているルイズに対しエクスデスはここで口を滑らせてしまった。
気にしている者にとっては致命的な禁句を。
「見ていて思ったがお前は他の娘達に比べると顔立ちは見事だが、体は少し貧しいな。
 もう少し肉を付けてみてはどうだ」
エクスデス的には悪気は無である。
正直な感想を述べただけで。
「・・・・・・・」
ビシッと空気にひびが入ったような気がした
ルイズは受け取った下着を持ったまま黙って固まっている。
貧しいな、貧しいな、貧しいな・・・
エクスデスの言葉が頭の中で繰り返される。
「・・・・・・・」
その不穏な空気をエクスデスも感じ取り自分が口を滑らせてしまった事に気付いた。
(これは迂闊だったか)
506聖樹、ハルケギニアへ-7-A-6/7:2011/09/01(木) 00:36:20.08 ID:FzARiqnq
先の発言のどのあたりでルイズの琴線に触れたかは分からない。
だがルイズがぶるぶると震えだしこの後に待つ展開を予想すると、枕攻撃どころではないということは確実だ。
「ルイズ、すまなかった、失言だ」
詫びは入れておこう、詫びたところでどうにもならないだろうが。
そしてその通りだった。

「どうせわたしは背も低くて胸も無くて尻もないわよわかりきった事を淡々と述べるん
じゃないわよというか下僕の分際で生意気にもご主人様に説教たれるんじゃないわよ
あんたなんかに言われなくても分かってるわよーっ!!」

「そこまでは言っていない」

朝から派手な爆音が響き渡った。
ちなみにエクスデスの魔法防御により部屋は大破壊を免れたのである。
杖を手にした瞬間、魔法が来る事を理解して即座に対応したのだ。



ルイズが授業に出た後エクスデスは一通りに部屋を掃除し洗濯物を持って洗い場に出掛けた。
叱責という名の爆発のダメージはゼロなのだが、それで平然としている使い魔にルイズは生き物にとっては命の糧を奪われる罰、食事抜きを命じた。
エクスデスが食事もするというのは知っているので、これを禁止するという罰でこの何とも言い難いほど余裕を感じさせる下僕をぎゃふんと言わせようというのである。
等のエクスデスは別にずっと食物をとらずとも死にもしないのだが。
「食べる」という行為に興味を持ち始めていた時に中止命令を受けて不満であった。
(とにかく怒らせたのは間違いない、これはやむを得んな)
どのみちルイズの機嫌が直らない限りはどうしようもない。
自分にも非はあると言い聞かせて納得した。
水汲み場に着くと洗濯板を取り出して準備をしていく。
今までやったことも無い掃除、洗濯も興味深いのでこれはこれで楽しみなのだ、
507名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 00:36:56.68 ID:0cVw9zUP
貧乳はすてーたすだー
508聖樹、ハルケギニアへ-7-A-7/7:2011/09/01(木) 01:09:32.43 ID:FzARiqnq
だが対象の洗濯物を取り出した時点で動きが止まる。
そこに現れたのはルイズのパンツ。
洗い方を以前はシエスタ任せにしてしまい自分では出来なかったのだ。
習おうとは思っていたがギーシュの一件でうやむやになり、夜はタバサと会っていたので
そんな時間は取れなかった。
「・・・しまった」
パンツを持ったまま固まる巨体。
509聖樹、ハルケギニアへ-7-A-7/7:2011/09/01(木) 01:13:36.49 ID:FzARiqnq
「エクスさん!」
パンツをまったまま固まる巨体に声を掛ける人物。
振り向けばそこにはシエスタの姿が。

「先日は済まなかった、洗濯をまかせておきながら配膳を途中にしてしまって」
「いえ、気にしないで下さい。あ、それは揉みこむようにゆっくりとお願いします」
「うむ」
シエスタに習いながら洗濯物を片づけていく。
510名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 01:17:35.19 ID:JKF/EmXb
支援
>>509
>パンツをまったまま
持ったまま でOK?
511聖樹、ハルケギニアへ-7-A-7/7:2011/09/01(木) 01:18:02.10 ID:FzARiqnq
今度は力の限り引き裂きかけるようなことは無い。
スムーズに洗い物は無くなり、綺麗に整えられて干されている。
日差しも良く穏やかな風も吹き、夜までには出来上がるだろう。
桶も片付けそこで、ギーシュの一件や今朝の爆発(原因・ルイズ)のことを雑談的に話して、それから朝食をぬかれた話になった。
「ということはまだ朝食も召し上がってないんですか?」
「ああ、一応私にも非があるのでな。やむをえん」
「そうですか・・・」
シエスタは少し何かを考えたあと、にっこりと微笑み。
「エクスさん、ついて来て下さい」
と、どこかへ歩き始める。
タバサとの教え合いは互いに用意ができてからなので、他に予定があるわけでもなくついて来いというなら行くことにした。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 01:19:18.70 ID:ziTgQYOo
おや聖樹の人が、支援。
513聖樹、ハルケギニアへ:2011/09/01(木) 01:21:29.23 ID:FzARiqnq
>>510
持ったままでです 誤字申し訳ありません
514聖樹、ハルケギニアへ-7-A-7/7:2011/09/01(木) 01:22:59.11 ID:FzARiqnq
「時にシエスタ、さっきから呼んでいるエクスさんというのは何だ?」
「エクスデスさんとお呼びするより私なりに親しみをこめてみたのですが・・・嫌でした
 か?」
足を止め不安げに顔を見上げてくるシエスタ。
こちらが不快に思うかもしれないという事だろうが、不快に感じていたら先程に呼ばれた時にやめるように言っている。
「別にかまわん、好きに呼ぶがいい」
ぱぁっと、笑顔になるシエスタ。
「はい!そうしますエクスさん!」
二人は再び歩き出し、食堂へと向かった。


「あ、あとエクスさん
 女の子への接し方も勉強しましょうね?」
「・・・そうだな、頼もう」







515名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 01:42:57.30 ID:0cVw9zUP
乙でした
エクスさんと聞くとカードエクスクルーダーを連想してしまう…
516名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 02:07:22.45 ID:64chHCXo
うーん、仕方ないのかも知れんが
エクスデスみたいなキャラがゼロ魔のノリに付き合って
ギャグみたいなことをさせられてるのはやはり違和感があるなあ

元々が血も涙も無いような悪意の塊だけに余計になあ
ギルガメッシュならまだ何とか
517名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 05:10:30.94 ID:iNPNReyi
乙乙
518名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 08:22:59.21 ID:RSwz12kk
投下乙です


>>516
コンパチヒーロー物とかと同じように考えれば良いのでは?
エヌオーに悪意を根こそぎ食い尽くされたとか

わりとシリアスな場面のはずなのに「カメェェーーッ!!!」って叫ぶ奴だし
519名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 08:46:40.45 ID:KDeSfAfk
乙!
520名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 09:17:58.39 ID:PyvO33TL
>>518
別にあれはお茶目でもウケを狙ったわけでも無いだろう

コメディ映画でも普段シリアスな作品に出てる人がふざけた感じで出て来たら笑えないのと一緒で
ギャグのイメージの無いキャラに無理にギャグへ付き合わせるよりは
そのキャラはそのままで周りとのギャップで笑いを取るという形にした方が素直に楽しめる
ってのは分かる気がする

ゼロ魔のギャグって原作からしてそこまで面白いもんでもないし、ゼロ魔キャラありきだから
そうじゃない異質なものがやっても違和感は拭えない
521名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 09:53:26.63 ID:rQN2oGwE
東方の幻想郷入りシリーズの方が面白い
522名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 10:04:36.38 ID:TtlNcr39
幻想郷入りしたキャラが召喚されたらもっと面白いんじゃね?
そうだね、惨事創作だね
523名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 10:19:06.60 ID:rhtxtxz0
別作品のキャラを必要以上に介入させると原作レイプにしかならん。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 10:21:10.86 ID:ZrEb7Ry9
ファーザーとオンナスキーと大王とキャプテンを召喚したら面白いはずなんじゃよ
525名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 10:37:44.81 ID:rQN2oGwE
SSに限ったことじゃないけど原作以外は皆原作レイプみたいなもんでしょ
どれだけ良作だどれだけ駄作だ言われようとも
526名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 11:33:47.16 ID:dITgXJew
>>525
定期的にわく批判厨を相手にするな、文句があるなら避難所毒吐きが規則、ここで語りたがるやつは荒らし
527名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 11:55:43.03 ID:rhtxtxz0
>>526
ちょ、批判してるわけでも文句言ってるわけでもないのに、厨とかヒデェ。

>>525
それはそうだけど、キャラが一人と複数ではどちらのほうがゼロ魔の世界観を保つことに比重を置けるかなって。
複数書くと、それだけで来訪キャラの説明や活躍でゼロ魔の部分が霞んでしまうし。
528 忍法帖【Lv=36,xxxPT】 ゼロのペルソナ:2011/09/01(木) 14:14:05.37 ID:qQrQr+tH
ペルソナ4、リメイクされる上に格ゲーになるらしいですね。めでてえ

第20章審判前編を今から投下します。
529ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:16:34.52 ID:qQrQr+tH
審判 意味……変革・行き詰まり

優しい風が青々とした草を掻き分け、透きとおる水が柔らかな光を反射する風景。その幻想的とすら言える世界の中に4人の少女がいた。
内三人が同じ学校の制服を着ている。とはいえ一人は緑色のジャージを、一人は赤いカーディガンを羽織り、
一人は女性であるにも関わらず男子生徒が着る学ランを着ているのだから3人の服の意匠が似通っていると思うものはいないであろう。
そして最後の一人は一人オレンジ系統の私服を着ている少女だ。彼女の背後には大きな異形の姿があった。
彼女のペルソナ、カンゼオンだ。カンゼオンは探知能力に特化した稀有なペルソナであり、今もまさにその探索能力を働かせている。
それは両手で持っているバイザーを自身の主、久慈川りせにかけさせている。
彼女の頭がペルソナの両の手で包み込まれているようなこの状態が、カンゼオンの能力を使うときの体勢だ。
りせは精神を集中させ、文字通り頭がアンテナとなっているペルソナでテレビの中の世界を探知していた。
今まで彼女たちの旅において道先案内をしていた能力は全て、失踪した巽完二、花村陽介、クマの3人を探し出すことだけに使われている。
そのため、期待と不安をないまぜにした表情で見つめる三人の少女のことも意識には入っていない。
りせは海外ロケを終え、稲羽市へと来てすぐにジュネスのテレビの中へと入った。
消失した3人の仲間を一ヶ月テレビの中で探していた天城雪子、里中千枝、白鐘直斗らに劣らず、彼女はいなくなってしまった仲間たちを心配していたのだ。
3人の少女たちが自分たちに探知能力がないことを悔やんだように、八十稲羽に戻れなかったことを辛かった。
霧が晴れ、澄み切った世界。立って見渡せば世界の端までも見渡せるような世界の中で、自分が最も知る3人の探索にかかる時間はそう長いものではなかった。
しかし仲間たちの消息をつかみたい彼女たちにとってはまるで時計の針が遅らせられているような長い時間だった。
カンゼオンの姿が消えると――それは探知を終えたということだ――、緑色のジャージを着たボブカットの少女が焦ったようにりせに尋ねる。
「わ、わかったの?あいつらのいるトコ?」
りせは、自身の返答が3人を消沈させるものと理解しながらゆっくりと答える。二つにくくった髪が揺れる。
「見つからない。……この世界にはカンジたちはいないみたい」
冷静なはずの直斗も含め、りせの言葉に愕然とする。
「見落としってことはないのよね?」
赤いカーディガンを羽織っている天城雪子は後輩に念を押す。
「見落としなんてしないよ。たとえ霧がいっぱいにあってもあの三人だったら見つけられる自信もあるし」
530名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 14:17:49.56 ID:EctauMmY
めでたいか?w
世紀末バランスにならないことを祈りつつ支援
531ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:18:35.66 ID:qQrQr+tH
「なんてことだ……。僕たちは一ヶ月も見当違いのところを探していたのか……!」
学ランに身を包んだ探偵でもある白鐘直斗は迂闊だったと思っているのだろうが、りせは否定する。
「ううん、見当ちがいじゃない。たぶんここで3人は消えたんだと思う」
「え……それはどういうことですか?聞かせてください」
「この世界に痕跡が残ってるっていうのとは違うかもしれないけど感じるの。一ヶ月くらい前……あの三人がほんの少しだけこの世界にいたみたい」
「少しだけいたということは、すぐにテレビの外に出たということですか?」
直斗は質問しながら頭の中で推理を組み立てる。
電化製品売り場近くで彼ら三人を見たという証言から推測したに、失踪前にテレビの中へ入ったということはまちがいではないようだ。
だがすぐにテレビから出たならその後の足取りがつかめないのは……。
推理を進めようとする直斗にりせは新たな情報を与える。
「いいや、たぶんジュネスに戻ってないと思うの。なんていうかな……まるでテレビを通り道にしみたいな、ヘンな感じなんだけど」
「なるほど。テレビを通ってどこか別の場所へ行ったために目撃はジュネスの家電売り場近くで途切れ、そして今この世界にも彼らはいないということですか」
筋は通っているように思える話ではある。
「でも、あいつらどこにいるの?」
千枝の疑問はもっともであり、何よりも肝要なのはそこであった。彼らがどこにいるかが分かれなければどんな推理も意味がない。
「ごめん、私の能力でもそこまではわかんない……」
りせも自分の無力さが情けないと言いたげであった。つらそうにする後輩の姿に、混乱している千枝もそれ以上は追及できない。
「悲観しない!」
大きく出された声に肩を落とし気味だった直斗、千枝、りせは少し驚く。
声を出したのは雪子だ。
「今日で今までわかんなかったことがわかったんだから悲観することなんてないと思う。それに彼もやって来るし」
彼とはこの場の4人、そしていなくなってしまった3人にとってもリーダーであり、そして大切な人物である。
一ヶ月親の海外出張に付き合っていたために八十稲羽にやってこられなかったが、あと数日で来るとの連絡もあった。
彼が来る。その言葉に全員が勇気付けられた。
532ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:23:47.21 ID:qQrQr+tH
人間たちの住む土地よりも東にあるエルフたちの住む世界。その東端、一般的にロバ・アル・カリイエと呼ばれる東の世界の境界線、そこに数千のエルフたちの姿があった。
彼らは敵に備えていた。
敵とは人間などという脆弱なものではない。もっと恐ろしいものだ。
エルフたちは戦列を組んで戦うことはしない。だから無造作に並んだように見える現在の状態も、敵と戦うための布陣である。
彼らの視界に無数の黒い鎧が現れる。それは100を、いや千を数えるかもしれないヴァリヤーグだ。
二束歩行で、しかも獣よりも早い速度で、列を整然となして突撃する甲冑はそれがおおよそ常識的存在ではないことを端的に示す。
長槍を持って突撃してくる影たちにエルフは第一波の攻撃を仕掛ける。
火が、風が、土が飛んで行く。
しかし突撃する敵は、炎で焼かれて体を溶かしたり、疾風で体の一部を切り取られたり、頭や足を土塊で潰され数を減らしても突撃を続行している。
まるで前から飛んでくる攻撃も、傍らで倒れていく仲間も目に入らないというように。
それでもエルフの攻撃でヴァヤリーグたちの突撃力はかなり削り取られた。だがエルフたちに一片の油断もない。
これからが正念場だからだ。先陣を切り突撃してきた敵に続いて、エルフたちの視界に入っていた別の二種の巨大な影も近づいてくる。
一つは小さな影と同じく大地を蹴って、もう一つは空から飛来する。
陸路を取る怪物は甲冑姿のヴァリヤーグと同じく金属光沢を放つ。
しかしヴァリヤーグが人に鎧を着せたような姿であるのに対し、その化物――ヨルムンガントはゴーレムが鎧を着た姿だ。
その大きさはヴァヤリーグよりも10倍はあるのではないかという巨体だ。
それはつまりヴァヤリーグとほとんど同じ高さであるエルフにとっても巨大であるということだ。
その巨大なゴーレムは大地を蹴って、まるで操り人形のような常識的なゴーレムとはまるで別種であることを主張するように、素早い動作でエルフに迫る。
もう一つ、空から飛来する影は火竜だ。竜はハルケギニアにおいて最も恐れられる魔獣の一種であり、それは人間だけでなくエルフにとっても共通の認識と言って相違ない。
しかいエルフたちが今見ている竜と比べればまるで普通の竜などかわいいものであった。それは火竜である。とても巨大な火竜である。
体長は40メイル近くあり、通常の火竜の二倍で、それどころかこの世界において最大の生物であることに疑いがない。
100近い火竜が空を飛びエルフたちに襲い掛かってくる。
歯がなりそうな恐怖がエルフたちを襲う。一体で、人間10人以上の力を持つとされるエルフたちが恐怖に耐えるさまは、それだけで人間には恐ろしい何かに見えただろう。
恐怖に飲まれないようにエルフたちは次なる迎撃行動に移る。
直系10メイルオーバーの岩、それもあらかじめエルフたちのよって強化された超硬度のものが、10数人分の精霊の力によって大砲よりも早い速度でヨルムンガントに撃ち出される。
一体を砕き、そしてさらに2体、3体を打ち倒していく。ヨルムンガントには火も、風も、水も通用しない。打ち倒すにはひたすら強力な物理的衝撃が必要だ。
空を飛ぶ火竜には水や氷の精霊の力が撃ち出される。さらにエルフたちの最大の戦力の一つである水竜も今回の戦線にいた。
水竜は相性もさることながら通常の火竜よりも強力な力を持つ。もちろん今戦っている火竜には純粋な戦力では劣るだろうが水は火を消す。
水竜は高圧力の水を口から吐き出した。それは上空高く飛ぶ火竜にダメージを与える。弱った火竜にエルフたちが水・氷を打ち込んでいき、倒していく。
533ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:26:45.97 ID:qQrQr+tH
エルフ側に戦況は優位であったが、しかし戦闘の趨勢は時に一瞬で反転する。
始まりは2,3体のヴァヤリーグがエルフの前衛を突破したことから始まった。
                      カウンター
使い手のエルフたちが最前線に出て“反射”で守りを固めていたのだが、ある一点が突撃を繰り返す槍の圧力に持ちこたえられなかった。
ヴァリヤーグはヨルムンガントよりも、巨大種の火竜よりもその大きさそして破壊力では下回る。
だがその使い手のエルフすら上回る機動力、そして他の二種の10倍の数の戦力によって防衛線は突破された。
エルフたちの戦列に紛れ込んだのはほんの数体だったがそれらは暴れ周りエルフたちの戦術をかき乱した。
その槍によって数十のエルフがその槍に襲われ、さらに混乱が広がる。
そうしたために化物たちへの攻撃に間隙が生じる。
その間を縫って一体のヨルムンガントが大地を蹴り、そしてエルフたちを蹴り進む。圧倒的な質量差の前に反射は意味をなさない。
エルフたちを文字通り蹴散らしながら、水竜にたどり着き、その巨大な金属のゴーレムは横振りに拳を叩きつけた。
腹部をまるで生物ではないかのようにへこませながら水竜は横っ飛びに吹き飛んでいく。
信じられないというようにそれの飼い主たちはぽかんと見つめている。
エルフたちの攻撃とその間の間断の時間は逆転していた。
攻撃の時間の合間合間にインターバルがあるのではなく、かろうじて思い出したように攻撃しているだけとなっている。
それも全くの統制を欠いたものである。そしてエルフたちの決壊寸前の勇気は最後の一押しを受ける。
空から何かが落ちてくる音が、騒がしい戦場にも確かに聞こえた。そのことから巨大な質量だということがいやでもわかる。
空から翼をたたみ落ちるように下りてきたのは火竜だ。それは今まで自分に牙を向いていた水竜を踏みつけて降り立った。
水竜は突然の重量に耐え切れず骨や内臓、筋肉の壊れる音がしながら圧死、その口からはグロテスクな悲鳴が小さくなった。
潰れた水竜を踏みつけて火竜は咆哮を上げる。まるで玉座に腰かけ、誰が竜種の王であるかを示すかのようだ。
ここに戦線は完全に崩壊した。
ヴァリヤーグたちはその槍を鮮血に染め、ヨルムンガントたちは走り回るだけで死を撒き散らし、火竜たちは全てを燃やし尽くした。
勇敢に戦っても、勇敢に死ぬことができるだけの戦いとも言えない戦い。誰もがただただ逃げた。
全ては6000年前からの延長線上、6000年前から続く戦いの歴史だった。
534ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:32:24.93 ID:qQrQr+tH
トリステインを侵攻したガリア王ジョゼフはトリステインから姿を消した。
そしてオルレアン公の遺児シャルロットを擁立したトリステインの勢力は抵抗らしい抵抗なくガリアの地へと分け入っていった。
民心はロマリア侵攻の際に離れかけていた。
そしてトリステイン―ゲルマニア―ロマリアが大連合を組み、オルレアン公の遺児シャルロットを新王として擁立した時点でガリア貴族の半数近くがジョゼフを見限った。
そういった中で、ジョゼフ王が姿を消せば、残りの半数がシャルロット新王側に鞍替えすることは何もおかしなことではない。
このとき、こういった事態に起こりがちな略奪も起こらなかった。それには3つの要因があった。
一つはこれが新王擁立のための侵攻であったからだ。略奪などすれば支持が受けられなくなってしまうのは当然である。
二つ目は貴族たちが戦うことなく受け入れるということは彼らの持つ兵たちは全く消耗していないということだ。
いわば略奪が起きないように睨みがきいているといえるだろう。
最後の一つはすでにトリステイン王となることが知られているアンリエッタ王女直々に略奪行為が禁止されていたからだ。
そうつまりこの軍の指揮をとっていたのはアンリエッタ王女であったのである。
こうしてトリステイン軍は、かつてのオルレアン派を中心としてシャルロットのもとに集まってくるものたちを吸収しながら進軍し、戦いらしい戦いなくガリア王都入りを果たした。


王都リュティスの郊外にある王族の城ヴァルサルテイル宮殿には現在ハルケギニアの有力者が集まっていた。
壮麗な宮殿の中でも青レンガで作られ異彩を放つグラン・トロワの一室にはゲルマニア皇帝をはじめ、ロマリア連邦の各権力者、またアルビオンからも何人かの有力者が訪れていた。
しかし彼らの顔に浮かんでいるものは多くは不満であった。それはトリステインがほとんど単独でガリア進軍を果たしたことに起因する。
彼らは自分たちを差し置いて手柄を独り占めにしたトリステインはガリアへの影響力を大きいものにしようとしていると考えている。
彼らの多くはせっかく軍を用意しながらもトリステインの早い進軍のためにすでに新王への支持を固めた地域を何もすることなく通ってきただけであった。
もはやそれは進軍とすらいえないものだった。
トリステインについて大きな声で批判を行えないのは、ジョゼフ王の子イザベラと新王シャルロットが進んでこれを支持したこと。
それと初めはトリステイン軍単独であった戦力がジョゼフ王から離反したガリア軍を吸収していき、
王都リュティスに到達することにはその数がトリステイン軍に拮抗して、新王シャルロット王も実質的な力を持つようになってなおトリステインとの協力体制を崩さなかったためだ。
しかし、小さな声では新王はトリステインの傀儡であるという者もいた。
「みなさんご足労感謝いたします」
そう言ったのはこの会議の主催者の一人であるアンリエッタ次期王であった。
そして隣には新王シャルロットがいる。円形のテーブルであるためこの会議には上座というものは無い。
二人も自分たちに寄せられている反感に気付いており、少しでもその反感を買わないためだ。
二人の心配の通りホストの言葉にいい反応をする者は少ない。
当然のことながらアンリエッタやシャルロットの二人の少女はこの会議の中で最年少であり、そのことでも低く見ているものもいるのだ。
535ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:34:28.68 ID:qQrQr+tH
構わずアンリエッタの隣に座っているもう一人のホストであるシャルロットが発言を引き継ぐ。
「皆に集まってもらったのは、ジョゼフ王に備えるため」
会議上はざわざわと騒がしくなる。それはどちらかといえば冷たい反応であった。それを代表するようにゲルマニア皇帝が発言する。
「ジョゼフはすでに逃亡していて、彼についた軍もない。何の脅威にもなりえないだろう。そもそもヤツが生きているのかすら怪しいものだ」
そうだそうだというように会議場がざわいめいた。
しかしアンリエッタは確信を込めて否定するように首を振る。
「いいえ、ジョゼフ王は……ジョゼフは生きています。そして必ず反攻します」
会議の場にいた者の中には露骨にアンリエッタを冷笑する者もいた。軍も支持者もいない元王がなんの脅威になるかと思っている者たちだ。
しかし王が生きて反攻を企てることが決して軽視できるものではないことを理解している者もいる。放っておけば大きな戦乱になるかもしれない。
そしてそれは今回のガリア奪還で何の活躍をすることが出来なかったトリステイン以外の国がガリアでの利権を得るチャンスがあるということだ。
「ジョゼフがどうして生きていて、そして反攻しようとしているかと推測したのか説明してもらえるのかな?」
ゲルマニア皇帝も自国の介入のために少しでも情報を得ようとして、アンリエッタに喋らせようとする。
「かまいません。みなさん全員にその理由をお目にかけましょう」
確信を込めた一言とその内容にハルケギニア指折りの有力者たちは眉をひそめる。そして顔に浮かんだ怪訝は驚愕あるいは戸惑いに変わる。
突然、彼らの囲んだ机の上に長い槍が現れたのだ。長さ4メイルはあろう槍が突然白いテーブルクロスの上に鎮座している。
「こ、これはいったい……?」
「みなさんにはこれからジョゼフの力と、そして私たちの立ち向かわなければならない運命を知ってもらいます」
混乱の中にいる彼らはアンリエッタの言葉を理解できるものもなく、そのため冷笑を返すこともできない。
そして落ち着きを取り戻す前に、彼らは全員は槍の記憶の中へと引きずり込まれた。
536ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:37:25.23 ID:qQrQr+tH
               リコード
「どうやら全員、あなたの“記録”をかけられたようですね」
「はい」
先ほどまで議場にはいなかったはずの少女が現れていた。
ウェーブがかったピンク色のブロンドを揺らす少女、ルイズである。
手入れの行き届いた真っ白なテーブルクロスの上には不似合いな槍がある。それはトリスタニアを強襲したヴァリヤーグの槍だ。
ルイズのテレポートによって運ばれたこの槍にはヴァリヤーグの歴史が刻まれていた。
幾度となくエルフと戦った記憶があった。
人間が恐れるエルフたちを槍玉に挙げていくその姿。そしてその槍はエルフたちを襲う二種の巨大な存在も映していた。
エルフと並び恐れられる竜、それも人間の知るものの二倍はあろうという巨体を持ちエルフたちを焼き払い蹂躙する火竜。
鉄の装甲を持ちながらその巨体から想像もつかない走力を見せるヨルムンガンド。
3種の怪物たちがが数十どころか数百以上もいることをその槍は記憶している。
そしてジョゼフに使い魔として呼び出され、火竜とともにトリスタニアを襲ったことも。
こういった物の記憶を呼び起こし人に見せる魔法が虚無魔法レコードである。レコードは記憶を操る魔法で、ルイズは槍の記憶を想起させてアンリエッタの呼び出した全員に見せている。
そうハルケギニアの権力者たちを集めたのは会議のためなどではなかった。全ては彼らにハルケギニアに訪れる運命を知ってもらい、そして兵力を結集させるためだ。
全てはジョゼフがシャイターンの門からつれてくる使い魔たちの軍団に備えるためである。
もし座して待つだけならばガリアもゲルマニアもトリステインも、人間の住む全ての国という国が滅びることになるだろう。
537ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編:2011/09/01(木) 14:40:37.49 ID:qQrQr+tH
投下終了。

>>530
支援ありがとっす。
格ゲーも気になりますけどやっぱリメイクの追加要素も気になりますよね。
P4は作りこみがしっかりしてるから女主人公追加っては難しそうですし

にしたって今回オリ設定いっぱいです。
投下もあと5回くらいなんで、今月中には終わるでしょう、たぶん、おそらく!
538名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 16:30:41.33 ID:pAYGyNry
>>527
毒吐きの方へレスしといたんで そっちでヨロシク。
539ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 17:49:47.24 ID:L1dOj2rc
問題なければ5分後ぐらいから九話目を投下させてください。
540ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 17:56:09.37 ID:L1dOj2rc
この世界に来てから何度も見上げた空は、いつもとは違った雰囲気を漂わせていた。
山の空だからだろうか、星がいつもより多く、強く輝いているような気がする。
そして、二つの月は見事に重なり合い、一つの青白く輝く月へと変わっている。
いつも通りのスライムの形状を保ち続けられない。
ため息が出るたびに、体が溶けるように平べったくなっていく。
何故ルイズは自分のことを庇ったのだろう。
答えは簡単だ。あれ以上やってもスラおに勝ち目がないと思ったからだ。
婚約者の実力を把握していないはずはない。
丁度、二桁になるであろう数のため息をついたとき、窓にルイズが映っているのに気がついた。
「どうしたんだよ?」
なるべく沈んだ気持ちを見せないように、普段通りのおどけた声で言う。
「ごめん・・・決闘の邪魔しちゃって・・・」
ルイズは決してスラおの実力を過小評価していたわけではない。
ただ、仲間内で争うことを嫌がっただけだ。
だからこそ、結果的にスラおを負けに追い込んだことに罪悪感を感じていた。
スラおのプライドを傷つけてしまったのではないかと・・・。
「気にすんなって。あいつ結構強かったしな!」
その罪悪感を振り払うために、スラおは素直に負けを認めた。
「それに、今回は負けちまったけど・・・ルイズがいたら勝ってたぜ」
「え?」
「オイラはルイズと一緒なら絶対負けねぇ」
それは本心。
この世界の人間で、この世界の魔法に精通している人間が指示を出してくれれば・・・。
ルイズが後ろで一緒に"戦って"くれるだけで、余計なことを考えずに、全力で敵にぶつかることができる。
モンスターマスターとは、魔物と心を通わせ、魔物の力を100%引き出すことのできる職業。
「うん・・・分かったわ。次は私も一緒に戦う!でももう仲間と喧嘩するのはなしよ」
ルイズの魔法は成功しない。そのことを馬鹿にしたあだ名は、取り返しのつかないほど浸透し、二つ名として扱われるようになってしまった。
そんな自分を信用して、一緒に戦おうと言ってくれる。自分の力が必要だと言ってくれる。
そう考えると、気分が清々しくなる。
なんだかしばらくスラおと月を見たくなった。
スラおが佇む窓に近づく。
541ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 17:58:02.38 ID:L1dOj2rc
が、何故か月が見えない。まるで大きな壁が目の前に現れたかのように・・・。
それは何処かで見たことのあるゴーレム。
「ま、まさかフーケ!?」
「感激だわ。覚えててくれたのね」
ルイズの予想は的中した。
窓の外には、巨大なゴーレムに乗ったフーケが顔をのぞかせている。
「てめぇ!牢屋に入ったんじゃねーのか!」
スラおは、いつ攻撃されてもいいように態勢を整える。
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
そう言うフーケの隣に、白い顔が浮かんでいる。
それは、黒いマントで身を包み、さらには黒いフードを深くかぶった仮面の男。
闇に紛れたその男がフーケを出した張本人とでもいうのだろうか。
「それで、何しに来やがったんだ」
「ちょっとしたお礼よ。あなた達にとびきりのプレゼントを上げようと思ってね!」
ゴーレムの拳が迫る。
それは以前のように土ではなかった。
「あっぶねぇな!」
体を広げて、ルイズに覆いかぶさり、フーケの粋なプレゼントを間一髪のところで避ける。
土でないそれは、岩だった。より強力な強度と威力で、部屋はほぼ全壊。
「ここには岩しかないからね!」
「関係あるか!またぶっ飛ばしてやる!」
スラおはゴーレムと向き合う。
「ダメよ!逃げるの!場所が悪いわ!」
ここは三階。丁度ゴーレムの胸のあたりの高さだ。
ゴーレムにとっては実に攻撃しやすい場所。
巨大な敵を倒すなら、前回と同じく下半身を攻めるのが有効だ。
ルイズはスラおを抱えて、階段を駆け下り、一階へ向かう。
542ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 18:01:01.27 ID:L1dOj2rc
一階には鉄の塊が幾人も。
それは鎧を着た傭兵達だった。
キュルケ達はテーブルを盾にして身を守っている。
敵は、魔法の射程外から無数の矢を放ってくる。
それ故、身動きが取れず、じりじりと近づいてくる斧や剣を持った傭兵すらも倒せないでいる。
「やっぱり、あいつらただの物取りじゃないわね」
「フーケがいるということは、アルビオン貴族が後ろにいるということだな」
キュルケとワルドがひそひそと言葉を交わす。
「オイラに任せろぉぉ!!ベギラマァ!!」
一階にやってきたルイズの手から飛び降りて、問答無用で炎を浴びせかける。
ベギラマは全体攻撃。複数の敵に同様のダメージを与えることができる。
接近する傭兵はその攻撃でほとんどが戦闘不能になった。
後は残った数人と、外から矢を放つ傭兵が十人ほど。
「よし、もう十分だ。後は彼らに任せよう。行こう、ルイズ」
ワルドがそう言ってルイズを誘導する。
「ど、何処に行くってんだよ」
「裏口から抜け出すのさ。桟橋に向かうためにね」
つまり、キュルケ達を囮にするというわけだ。
「大丈夫なのかよ」
「舐めないでちょうだい。これぐらいなら、なんてことないわ」
キュルケがクスッと笑ってそう言った。
「こういう時こそ僕の出番さ!」
ギーシュはぐわっと立ち上がって叫ぶ。
そのため、テーブルの盾から上半身がはみ出る。
途端、複数の矢が放たれる。
「ひいいぃぃ!!」
情けない声を上げて両手を頭に乗せてしゃがみこんだ。
「何やってんのよ・・・あんた」
「まぁ、待ちたまえ。僕のワルキューレなら矢は無意味だ」
気合いが入りすぎて、間抜けなミスをしたギーシュは、まるでそんなこと無かったかのように冷静に答える。
ギーシュは薔薇の杖を振って七体のゴーレムを同時に出現させる。
幾つもの矢が突き刺さるが、ワルキューレは意に介す様子もない。
その中の一体の影に隠れ、キュルケが前進する。
「さっきの炎も熱かったでしょうけど、私の炎はもっと熱いわよ!!」
ワルキューレの肩から杖を出すと、その先端から凄い勢いで炎が放出される。
スラおの攻撃で少なくなった残りの傭兵達はのたうちまわり、一目散に逃げて行った。
「張り合いがないわね。あら、まだいたの?さっさと行っちゃいなさい。足止めの意味がなくなっちゃうでしょ」
キュルケに言われて、ルイズも決心がついたのか、ワルドと共に裏口へと向かう。
「後は・・・頼んだぜ!」
ここでキュルケ達の力にもなりたいが、ルイズを守るのが使い魔の役目だ。
スラおも当然ルイズについていく。
543ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 18:03:30.48 ID:L1dOj2rc
「外にいる奴はどうするんだい?流石の僕もあそこまでゴーレムを駆使することはできないよ」
「大丈夫。私に考えがあるわ。そのためにはギーシュ、あなたの力が必要よ」
「僕の力?任せたまえ!なんでもするさ!」
キュルケはギーシュの手を無理やり引っ張って、酒場のど真ん中で棒立ちになる。
「な、ななな・・・君は一体何を考えてっ・・・!」
二人もの獲物が無謀にも防御なしで目の前に現れたのだ。
傭兵達もチャンスとばかりに一斉に大量の矢を放つ。
「タバサ!」
キュルケが叫ぶと、今まで空気だったタバサが、範囲の広い竜巻をキュルケ達の目の前に盾のように出現させる。
すると、こんどはキュルケがその竜巻に向かって炎を放出させる。
「火と風って凄く相性がいいのよ」
止めどなく杖の先から炎が放出されるため、風で掻き消されることはなく、炎の竜巻が完成した。
大量の矢は炎の竜巻に吸い込まれる。そのまま竜巻の回転に揉まれ、火の矢となって傭兵達の方へ飛んでいく。
予期せぬカウンター攻撃を受けて、数人の傭兵が倒れる。
外れた矢は、火の明かりによって暗闇の先に潜んでいる敵の姿を露にする。
自分達の居場所がばれ、奇襲を掛けられなくなれば、メイジに敵うはずはない。
傭兵達は背を向けて走り出す。
「やったわね。作戦成功よ」
「僕の力が必要って・・・ただの囮だったのか・・・」
「何言ってるの。私達全員既に囮じゃない」
死ぬ思いをして、汗をだらだらと流しているギーシュに冷たい視線を向けて言い放った。
「ふぅ。しかしこれで終わった・・・」
「まだ」
額の汗を、ポケットから取り出したハンカチで拭ったギーシュは、タバサにその考えをピシッと否定される。
「大ボスね。土くれのフーケ・・・」
「フ、フーケ!?何故こんなところに!」
「あんた今まで気がつかなかったの?ずっとゴーレムの足が見えてたじゃない」
キュルケの視線は相変わらず冷たい。
フーケももちろんキュルケ達の存在に気付いている。
「金で雇った傭兵がどれほどのものなのか見学していたけど・・・やっぱり私がやらないといけないみたいだねぇ」
フーケがそう言うと、ゴーレムが一歩踏み出す。
それだけでゴゴゴゴゴという音を立てて、建物が半壊する。
三人は再びテーブルの盾に隠れる。
「ここは僕に任せてくれ!作戦がある。だが、それにはキュルケ・・・君の協力が必要不可欠だ」
「なによ、私に囮になれとでも言うんじゃないでしょうね」
「まさにその通りだ。だが、僕もタバサもその囮の一人だ」
ギーシュは頼りないが、ゴーレムを倒す手段も思い浮かばない。ここは試しに任せてみようと、キュルケもタバサも頷く。
足をジタバタさせるゴーレム。それがかなり凶悪な攻撃となる。
踏みつぶされたら一巻の終わりだ。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 18:05:15.48 ID:iOqs1An4
魔物の勇者さん来てたー!

C
545ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 18:07:14.48 ID:L1dOj2rc
「で、まだなの!?」
息を荒げながら逃げ惑うキュルケが、我慢の限界とばかりにギーシュに怒鳴る。
「もう少しだ!!」
どうやってあの岩の体を砕くのか楽しみなのに、ギーシュ本人もただ逃げ惑っているようにしか見えない。
「ハハハハハッ!無様だねぇ。まぁ、あんた達の実力じゃぁこんなものね」
余裕の表情で高笑いをするフーケの背後に、人影が現れる。
「え?な!?」
それはギーシュのゴーレム、ワルキューレ。
急に現れたそれに抱きつかれて、フーケはそのまま落下する。
とっさに、手首だけ動かして杖を振り、レビテーションを唱えるが、時すでに遅し。
僅かに衝撃は抑えられたものの、肩から地面に落下した。
「くっ・・・このっ・・・覚えときな!」
フーケが悪態をつくと、岩のゴーレムがボロボロと崩れ落ちる。
おそらく、わざとゴーレムを維持する魔力を切断して岩雪崩を起こし、その隙に逃げ出すつもりだろう。
その作戦は見事成功し、フーケは姿を消した。
「あんた、なかなかやるじゃない。ワルキューレを一体、よじ登らせるなんて」
キュルケの冷たい視線は温かいものに変わり、ギーシュを見直す視線を送る。
「でも、あんなに暴れてたゴーレムの足に・・・振りほどかれずにどうやって?」
「ふふふ・・・二階なら丁度ゴーレムの腰のあたりの高さのはず・・・動きの少ないその場所からワルキューレをしがみつかせたのさ!」
「二階って・・・あんたいつから視界の外でゴーレムを操れるようになったの?」
「あれ?そういえばいつからだっけか・・・」
普段の実力を無意識のうちに上回っていた事実に、キュルケとギーシュは首をかしげる。タバサは無視して本を読む。
まるで見えない力がギーシュに味方したようだった。
この時、逃れようのない最悪の"運命"に巻き込まれていることに、ギーシュは全く気付かない・・・。


―――――――――――――――――――――――――――


「『桟橋』なのになんで山に登るんだよ」
てっきり、山と山の間に海に繋がる川でもあるのだろうと思っていたスラおは、耐えられずに疑問をぶつける。
しかし、二人とも必死に走っているため、息が荒れ、質問に答えられない。
とんでもなく長い階段を登りきると、そこには巨大な木が姿を現す。
大木にはたくさんの松明がつけられ、まるで町の明かりのようだ。
スラおはそれを見て、タイジュの国を思い出す。
タイジュの国も夜になると、室内の明かりが漏れて、それはそれは美しかった。
もちろんこの木は、タイジュの国ほどの大きさはない。
「あの枝にぶら下がってんのって・・・船か?」
枝の先には幾つもの船がランタンのようにぶら下がっている。
「そうよ。あんたの世界じゃ違うの?」
「まぁ、違うっちゃ違うかな」
スラおの世界にも飛べない人間が空を移動するための手段が幾つか存在する。
この世界ではこういうもんなのか、と思った程度で、それ以上の疑問も不安もスラおには無かった。
木の中は空洞になっており、螺旋階段のようなものが天辺まで続いている。
ワルドの後を追って、階段を駆け上る。
しかし、目の前には白い仮面の男。
「て、てめぇ!」
スラおが叫ぶが、その時すでに仮面の男はルイズを羽交い締めにしている。
546ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 18:09:00.21 ID:L1dOj2rc
そのままルイズごと、階段から飛び降りる。
「ルイズ!」
距離的に届く技はベギラマのみ。しかしそれではルイズも一緒に攻撃してしまう。
すると、ワルドが風を巻き起こしてルイズと仮面の男を引きはがす。
そのままワルドは落下して、ルイズを抱きかかえると、フライの魔法で空を飛ぶ。
仮面の男は空中でくるりと旋回し、階段に着地してスラおと対峙する。
「よくもやってくれたな!覚悟しやがれ!」
スラおはベギラマを唱えるが、ワルドの時と同じように的が外れる。
「こいつも『風』系統のメイジかよ!」
次の瞬間、スラおの体に電撃が走る。
「『ライトニング・クラウド』!」
「あがががががっ・・・・・!!」
直撃を受けたスラおはプスプスと音を立てて黒こげになる。
なんだか今日はやられてばっかりだ。
そんな風に考えていると、戻ってきたワルドがエア・ハンマーで仮面の男を吹き飛ばす。
「スラお!大丈夫!?」
こうしてルイズに駆け寄られ、抱き上げられたのは何回目だろう。
「ままままあだだだだ大丈夫ぶぶぶぶ」
まだ痺れていてうまく喋れない。
あの雷の魔法はギガデイン並の威力はあった・・・。
だが、一発でやられるようなスラおではない。すぐに動けるようになった。
それでも心配なのか、ルイズはスラおを抱きかかえて移動する。

ようやく船着き場まで辿り着いたが、船は出港する時間を迎えていない。
そこは図々しさに定評のある貴族、ワルド様がなんとかしてくれる。
半ば強引に船に乗り込み、出港させる。
目指すはアルビオン。
スラおの冒険も終盤を迎える。
547ゼロのルイズと魔物の勇者:2011/09/01(木) 18:10:03.14 ID:L1dOj2rc
以上です。
支援ありがとうございました。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 18:15:01.95 ID:iOqs1An4
投下、乙です。
元ネタ知らなかったけど、この作品でモンスターズに興味出てきました。
何気にモンスターズ関連の作品って良作多いみたいですしね。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:17:30.57 ID:PyvO33TL
ゼロ魔側のキャラが改変されたりイメージと違うことさせたら叩く癖に
クロス先のキャラが同じことされたので文句言ったら隔離スレへ行けって
ちょっと極端過ぎやしないか?
大体隔離スレで文句言っても仕方ないだろ
作者に文句あって言ってんだから
550名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:27:24.20 ID:idYEV9KS
かといってここで続けるのは荒らしになるんじゃないのっと
毒吐きスレ見てる人はきっちり見てるよ
551 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2011/09/01(木) 19:33:38.29 ID:dHEb8qfR
魔物の人乙です
552名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:37:36.87 ID:TtlNcr39
まぁ毒吐き行っても相手にされないだろうけどね
553名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:41:01.49 ID:7ZneUfQZ
投下乙でした。
554名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:43:29.53 ID:1I6JL+as
嫌いなやつに文句言うより好きなやつを応援するほうがよほど建設的だしな
そういうわけで世界最強コンビの人、お笑い芸人の帰還を楽しみにしてますよ
555名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 19:44:32.44 ID:pAYGyNry
>>549
>516の件を仰っているのだと思いますが、
>518がコレを受けて 更に>520で反論していらっしゃいます。
この先になりますと 『論議』が始まったものと見做してよいでしょう。

スレ冒頭のテンプレに
>・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
とありますから、避難所への誘導は 対応として正しいかと。

もし 論議を続けたいのであれば
「では 避難所で」と、自ら移動を宣言すれば、関心のある方々は
そちらでも参加してくださると思いますが、如何でしょう?
556名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 20:14:26.91 ID:mFP9cDzp
本気で議論したいなら毒吐きじゃなく雑談なり語るなりに誘導しろと思う
まぁ向こうで書いたことの最後の一行言いたいがために毒吐きに誘導したんだろうけど
557名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 20:31:06.88 ID:PyvO33TL
何か勘違いしているようだが、議論したいんじゃなくて
クロス先のキャラを壊したエクスデスの作者へ文句を言いたいわけでね
その前に苦言を呈した人に便乗したわけなんだが

最初はやんわりとオブラートに包んで伝えたのに、それすらNOとか、もうね
これはもう言論統制って奴じゃないかね

あとエクスデスの作者はエクスデスを止めて別人で続き書いてくれ
あまりにイメージに合わなさ過ぎてディスってんのかと思ったわ
558名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 20:39:23.85 ID:Zg+rrUTW
そういうスレじゃねーから!
559名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 20:44:58.36 ID:F8Km1K9+
めんどくせーから賞賛の書き込み以外は毒吐きスレでやれよ
これで解決だろ
560名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 21:02:22.50 ID:Ftgk7Gt4
>>557
>>クロス先のキャラを壊したエクスデスの作者へ文句を言いたいわけでね
勘違いも何も、その時点で毒吐き行き。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 21:33:57.26 ID:RSwz12kk
つか「まだやってたの?」って気分な訳だが
何か勘違いしてるのは自分である事を自覚なさい
562名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 21:39:41.00 ID:ziTgQYOo
嫌なら見るな。
563名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 21:53:22.44 ID:wNN6XTod
なんか煽り合いに持って行こうとしてる奴が居るな
564名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:00:07.77 ID:oPQ3L/Yw
ドラクエからだったらムーンブルクの王女(犬)はどうかな

ふつーの使い魔でとりあえず喜ぶルイズ
フーケが盗み出したラーの鏡で人間に戻り、バギでゴーレム撃破に貢献
後日改めてギーシュと決闘イベント
565名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:01:05.17 ID:O2vgolRX
つーか、今回のスレやたら投下が多いな。
まだ600言ってないのに要領は457バイトいってるし
566名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:03:45.48 ID:MO7GVrFl
容量よくやらないとね
567名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:03:47.58 ID:Zg+rrUTW
>>565
いいことじゃないか
568名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:05:14.87 ID:O2vgolRX
>>565
あ、違うキロバイトだ。
ざっと数えて20回は投下あったようだ。多くていいことだ
569名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:07:10.91 ID:F8Km1K9+
おかげでテストの汎用性は高くなりました いい傾向です
570名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:07:34.00 ID:Ftgk7Gt4
何 それは本当かね!? それは・・・・気の毒に・・・・
571名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:12:18.83 ID:uubLhQBd
四期のおかげで人が増えるか
いやぁいいことだ、この調子でかつての勢いがもどればいいね
572名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:14:06.78 ID:Zg+rrUTW
>>570
お前絶対OD-10だろ・・・
573名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:19:42.52 ID:4e1/cDJ4
>>569
三 穴
574名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:44:40.60 ID:3agqn/I6
某所でコミカライズが一部無料という話を知って「渡りに船だ」と読んでみたが、
コルベールが二次でコッパゲコッパゲ言われているのが理解できた。

あとルイズが存外にいい子で安心した。
二次を書く気を容赦なく削る性格だったらどうしようかとヒヤヒヤしたが杞憂だったぜ。
575名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:49:13.68 ID:FzARiqnq
確かに人は戻ってほしいなぁ
最近さびしいから
576名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 22:54:02.96 ID:OLa3dxsR
次スレは大丈夫なの?
577名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 23:20:21.42 ID:oXBFB15L
もしルイズがレーニンとか毛沢東を召喚しちゃったらどうなるの?
578名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 23:25:09.43 ID:iOqs1An4
処女との性交療法をやっていた毛沢東だとルイズやタバサの貞操がマッハになる。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 23:48:33.55 ID:PlwruQil
>>570
喋らないキャラでも、キューブ召喚って無いよね
580名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 23:55:01.14 ID:wNN6XTod
そのためのフラジールで(ry
581名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/01(木) 23:57:34.70 ID:64chHCXo
○○が召喚されたら・・・ってよく挙げてるけど
いくら雑談でもあまりそうネタをポンポンと出してると
他の人が誰かのネタでSS思いついても、パクリみたいな感じがして書きにくそう
582名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 00:05:02.91 ID:F8Km1K9+
そうかな?
583名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 00:14:43.91 ID:Fb7VrNfQ
個人的にはもし自分の書きたい内容に少しでも近いネタを挙げられてるとしたら
そのネタでSSは書きにくい

何も言わなければ、何か言われそうだし
かと言って、前置きで○○のネタから拝借〜って言って書き始めるのも何か悔しい
特にその誰かのネタからインスパイアされて書き始めたってわけでもなければ余計にね

まあ、あくまで個人的には、だが
584名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 00:51:10.27 ID:jzyOA0R5
「おまっ、今そのネタで書いてるんだから勘弁してくれよ〜」とおどけるくらいでいいんじゃない?
585名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 01:15:29.45 ID:UzAgME09
キューブ?
ああプリメの執事だなw
586名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 01:27:50.99 ID:Kerw5mKe
>>576
まだひとつは投稿できる容量があるから早い。
にしても埋まるまで二週間未満なんて、去年の中旬なみのペースだぞ。これも4期効果の一端なのか?
587名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 02:28:45.62 ID:kCZFp8sr
>>580
AMSから光がっ…!の人?
588名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 04:32:24.15 ID:Jaxoxd61
個人的にはとあるのオリアナがみたい
589名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 06:52:54.61 ID:QiUM52N2
>>581-583
そうなんか
文才ある人に書いて欲しくてそういう書き込みよくするんだが、今後ひかえるよ
590名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 08:44:58.63 ID:17MqfIzY
もう夏休みは終わったはずじゃ・・・・
なんでオカシなのが湧いてるんですか?
591名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 09:14:22.55 ID:I1CHn2R5
何々を召喚!だけならまだしも、そこから更に一ネタ二ネタ書き加えるなら
それでお前がss書けよ!って思うことは少なくない
592名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 10:49:48.11 ID:fyfO0ZEB
>>557
ここはゼロ魔スレなんだからどっちの方に風当たり強いか想像つきそうなもんだが
593名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 14:36:55.45 ID:SdBHyEOE
○○を召喚!××を△△して■■になりそう
・・・確かにお前が書けよというか鬼なる
594名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 14:52:38.41 ID:ybqL9ef/
つまり投稿レスと、名無しが乙と言うだけのスレになれと言うことか

>>587
それはパイロットのほうだ
フラジールは機体名
595名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 15:09:15.50 ID:maPhTbqr
>>591>>593
作文能力が皆無なので年表になってしまうが宜しいか?
596名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 15:15:15.03 ID:tNZ0tMPe
年表だけで作品に引き込ます方が難しいと思うけど
597 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/09/02(金) 15:45:57.62 ID:Jr35cvA4
つか書きたいなら書けばいいし書きたくないなら書かなきゃいい
ネタいわれてようがなんだろうが書きたい気持ちがあるならそれでいいと思うんだが
なんでそんなに因縁つけてるんだかわからん
598名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 15:48:34.72 ID:ihNyiIqA
そもそも年単位でやり方決めてやってるスレのやり方気に入らないでごねてる部分がどうしようもない
599ゼロのペルソナ  忍法帖【Lv=37,xxxPT】 :2011/09/02(金) 15:48:35.75 ID:RSjIWYAf
>>114に返信しなきゃと思って忘れに忘れてスルーになってましたけど、ご想像にお任せというかヒントは
・花村陽介である
ということです。
つーか、殴り合って疲れてタバサとイザベラぐっすり眠ったんでしょう。


そんなこんなでLet's roll.(さあ、投下だ)
第20章審判後編
600ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 15:51:54.33 ID:RSjIWYAf
      リコード
虚無魔法“記録”から目覚めたとき、誰も喋ることができなかった。
時はジョゼフがトリステインに火石を落とし、それがルイズのディスペルによって打ち消された後。
場所はトリステインの王城のある一室。
そこに集まっていたのは王女アンリエッタ、枢機卿マザリーニ、ガリア新王を称するタバサ、ルイズとキュルケ、彼女らの使い魔陽介、完二、クマ、そしてイザベラもいた。
9人はリコードにより、トリスタニアを襲撃したヴァリヤーグの槍の記憶を見た。
人間が恐れたやまないエルフたちを次々と餌食にしていく嘘のような、そして凄惨な光景。
エルフたちを襲う光景の中にはルイズをさらおうとした巨大な火竜と、王都を襲った巨大な金属ゴーレムの姿もあった。
しかもそれらは1体ではない。数十、もしかしたら数百かそれ以上の数がいたのだ。
それから銀色の鏡のようなものを通りジョゼフの使い魔となったことも知る。
「おめーらが今、リコードで見たバケモノどもがブリミルの力なのさ。ブルミルはむかしその力で人間の住む世界を統一した」
部屋の中にいる9人のどの人間のものでもない声が響く。
それは完二の背中にある剣から発せられている。
デルフリンガーは前回、王女たちとの話し合いの場に武器は持ち込めないために参加できなかったが、本人たっての希望で参加している。
自分はブリミルに作られた剣だと言って。
「ゴーレムみたいなのはヨルムンガンド、亜人をヴァリヤーグ、それに巨大種の火竜。それぞれをブリミルはガンダールヴ、ミョズニトニルン、ヴィンダールヴと呼んだもんさ。つってもブリミルにみんなまとめてエルフたちの住む土地の東に行かされたけどな」
話を聞いていた中で、比較的落ち着きを取り戻していたタバサは尋ねる。
「どうしてそんなことを?」
「そりゃ、オメエ、ブリミルが死んでコントロールを失った使い魔たちが人間を襲わねえようにするためさ。だから使い魔たちの住む場所を、人間の住む国より東にあるエルフの土地の更に東に置いた。そうしとけばエルフたちが壁になってくれっだろ」
それはこの世界で生きてきた人間にとっては衝撃的なことであった。今の今まで恐るべき、そして憎むべき敵とも思い、実際に何度も戦火を交えてきたエルフたちは人間を怪物から守ってくれていたのであった。エルフたちは自衛のために戦ってきただけだとしても。
「つってもエルフたちも限界なんだろうな。ジョゼフがエルフと繋がってるみてえだが、エルフが虚無の担い手と接触するって言うならまず使い魔たちをどこか別の場所にやってもらおうっていう魂胆なんだろうよ」
今までの話からジョゼフが虚無の担い手であると推察はできたものの、初めて明言されたアンリエッタとマザリーニも戸惑う。もっともそれ以外の、ルイズを除く全員はそのことについてちゃんと話を聞いていなかったのだが。
「ジョゼフ王は虚無の継承者なのですか……?」
「ま、たぶんまちがいねーだろ。それより俺はどこか別の場所にやってもらおうって部分に驚いて欲しかったんだけどな」
601ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 15:54:35.26 ID:RSjIWYAf
「どこか別の場所……。まさか我々の国々にですか!?」
思案したのちに思いついたアンリエッタの言葉が響くとともに緊張が走る。
もしあれだけの怪物が人間たちの世界に放たれればどのような惨事になるか想像もできない。
何せ一人で人間10人以上の戦力になるといわれるエルフたちが一方的な虐殺を受けるほどのバケモノだ。
たとえ全ての国の軍事力が結集しても勝てるかどうかわからない。
「そうだろうな」
「ですが使い魔を呼び出せるのは一人一体のはずでは?」
マザリーニの質問は魔法使いにとっての常識中の常識である。たとえ命令することが出来ても呼び出せないならば意味はない。
「正当な虚無の使い手なら特別に3体、一種につき一体呼べんだけどな……。
 ま、それでも足りねーよな。
 しっかしそこはさすがブリミルというか、自身の力を引き継ぐ者が現れたときにちゃんと使い魔を呼び出せるように大規模な召喚のゲートを開ける場所を用意してんのさ」
「ど、どこなのよ?」
イザベラは焦りから身を乗り出す。先に抑えることが出来れば使い魔の軍団を呼び出すことはできないはず。
「聖地だ」
聖地とはブリミル教にとってもっとも重要な土地とされる場所である。それは果たして使い魔の召喚の場所であったのだ。
この世界で育った人間たちには常識が壊れていくような音が聞こえた。
「つっても場所は、人間とエルフの住む国境近くにあるって以外俺も知らねーんだけどな。
 エルフたちはシャイターンの門って呼んでるらしいが、門って言ってるだけあっちの方が正確かもしれねー。
 あれは使い魔を呼び出すための門みてーなもんだし」
聖地はエルフたちが現在領有していると言われている。
言われているというのはブリミル教が聖地はどこにあるかを知らないためだ。どこにあるかわからないがエルフたちの所有している土地を奪い返すことなど不可能である。
6000年も続く戦いの中でエルフたちと戦って得た土地など微々たるもの。それどころか反攻で、奪われた土地のほうが多いだろう。
そして人間たちが攻撃しても、エルフたちが人間を追い出す程度に止めていたのは正反対の場所に使い魔たちがおり、それらが後患の憂いとなっていたからなのかもしれない。
「勝算は?」
マザリーニがデルフリンガーに真摯な瞳で尋ねる。
実質的宰相とも言われる枢機卿が真剣に頼みごとをする姿は滑稽といえるかも知れないが、彼もそしてこの場にいる全員が固唾を飲んで始祖の作った剣の言葉を待つ。
「ルイズだ。ルイズはもともとそのために虚無の力に目覚めたんだからな」
言われた当の本人は、覚悟していたようにその言葉を受け止める。
「ブリミルもな、虚無の力がとんでもねえ悪人に渡ったら、って心配したんだよ。
 虚無の魔法を使うために1つの秘宝と1つの指輪。
 使い魔たちを呼び出すのに、一種の使い魔につき一個、つまり3つの指輪が必要にと厳重な制限をかけてもまだ心配だった。
 だから虚無の力を分けた。つまりルイズ、お前さんはカウンターなのさ」
場の視線はルイズに注がれる。
602ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 15:56:36.83 ID:RSjIWYAf
「わかってた……っていうとちょっと違うけどその話を聞いて納得したわ。わたしはあいつを敵だと感じたわ」
「だろーな。だが、問題は使い魔だった。
 たとえ同じ虚無の力を持っても使い魔の軍団がいる以上、その対抗する担い手に勝ち目はねえからな。
 なにせあいつらはこの世界で最強の存在だ。だからこの世界の他のどんな幻獣を呼び出しても勝てるはずがねえ。
 だからブリミルは自分も知らねえ、虚無の4種めの使い魔を作った」
不思議なことを言うとみな眉をひそめた。
「デルフ、それってどういうこと?ブリミルは4体の使い魔を率いたって言われてるはずよ」
「じゃあキュルケ、その4番目の使い魔の名前わかるか?」
キュルケは首を振った。尋ねるように視線を向けてもみな同じようだ。
始祖が4体の使い魔を引き連れたというのはよく知られた話であり、少し書物を引けばガンダールヴ、ミョズニトニルン、ヴィンダールヴの名はすぐに知れる。
だが4番目の使い魔の名を知っている者はこの場には、それどころかこの世界にいない。
「そりゃそーだ。ブリミルが率いたのは4番目の使い魔なんていねーんだからな。
 ブリミルは正当な虚無の担い手に対抗するために生まれる担い手の召喚の扉に細工をしたのさ。
 扉が異世界で開くようにな。それで呼び出されたのが4種めの使い魔だ。」
今まで少し話についていけなくなっていた陽介、完二、クマが話に注意を引かれる。自分たちが呼び出された原因というのは始祖という人物だったのだ。
「な、なんでそんなことを?」
「虚無の使い魔はこの世界最強だ。だからこの世界でどんな使い魔を呼び出しても対抗すらできない。
 なら、異世界から強いヤツを呼び出してソイツに戦ってもらえばいいとブリミルは考えたのさ」
全員が押し黙った。
沈黙の中、答えを返された陽介は言った。
「ブリミルさんテキトー過ぎじゃね?」
ルイズは伝説の始祖をないがしろにしたことを言う陽介を睨んだが、それだけで何も言わない。ルイズも意識したにしろ無意識にしろ陽介の言ったことを思ったからだ。他の全員も同様だ。
デルフリンガーは笑っている。
「確かにそのとおりでえ。しかもどーいうわけか、娘っこの使い魔だけじゃなく、そこのねーちゃんとちびっこの使い魔までそうしちまったってわけだ。
 ジョゼフが一回で3体の使い魔を呼ぶように娘っこも3体呼んじまったんだろうな。それも不完全で、他の魔法使いの召喚に割り込む形で」
ルイズが驚いたように目を少し見開き、それからうつむいたのをキュルケは見逃さなかった。
603ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 15:58:37.71 ID:RSjIWYAf
「今、ジョゼフは姿を消してるそうじゃねえか」
「確定した情報ではないが、ガリアは現在混乱状態にあります。おそらく王が姿を消したように推測されますが……」
「あいつは門に行って使い魔を呼ぼうとしてるんだろうよ。あいつはもう3つのルビーがあるしな」
「ロマリアを攻めたのも、始祖の時代から伝わる指輪を手に入れるためなのですか……?」
「それ以外ないと思うぜ」
重い沈黙が流れる。
イザベラは目を伏せてスカートを強く握る。タバサは手をイザベラの手にそっと重ねる。
沈黙を切り裂いたのはアンリエッタの力強い声だった。
「次にジョゼフ王……いえ、もう王ではないですね。
 ジョゼフが攻めてくるときは恐ろしい使い魔を連れてくるでしょう。
 わたしたちは戦わなければいけません。どれほど絶望的であろうとも」
それから三人の使い魔に姿勢を向ける。
「あなたたちは別の世界から来たといいます。きっとそうなのでしょう。
 この世界はあなたたちの世界ではありませんが、始祖ブリミルのご導きで出会えました。ぜひともお力添えをお願いします」
アンリエッタは深々と頭を下げる。
「ちょっ、頭さげるとかやめてください!」
彼女の行動に陽介は慌てた。
アンリエッタは顔を上げた。
「協力してくださるのですか?」
異世界から呼び出された3人は顔を見合わせる。
「実を言うとこのために呼び出されたとか言われてもよくわんないし、たぶんそれじゃあ命かけて戦おうなんて思わないっす」
それは言うまでもなく、彼らと同じ立場に立たされた者なら誰もがそういうだろう。しかし陽介の言葉はそこで終わらない。
「でもこの世界に来て一ヶ月程度だけど、仲間が出来た。大切な仲間が。そいつらをほっとくなんてできることじゃねえ」
陽介はタバサの肩に手を置いた。彼女は彼の顔を見上げた。じっと見つめてくる少女に笑うことで答える。
「オレもだ。世話になったやつもいる。ダチがアブねえってのに知らん顔なんて男じゃねえ」
「クマもこの世界の人を守りたい。クマはみんな大好きだから」
それぞれの主は使い魔の言葉に感銘を受けたようだ。
アンリエッタは全員の顔を見回してから言った。
「戦いは苛烈なものになるかもしれません。それでもこの世界を守りましょう」
全員が強く頷く。
604ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:00:38.63 ID:RSjIWYAf
ハルケギニアの権力者たちがグラン・トロワの一室に集まっているとき、その宮殿の庭にある噴水の外円に腰かけている二つの姿があった。
その一つは丸みをおびていて大きい。
「最近ちょっと暑くなってるけど、夜は涼しいわね」
時刻はすでに深夜であり、噴水の水面には美しい双月が映し出されている。
「そうクマね……」
キュルケは隣に腰かけているきぐるみ姿のクマを見る。
球型の体で細い噴水の縁に腰かける様子は危うい。前から押したら抵抗することもなく水面に後頭部からダイブだろう。
だがそれよりも気になるのはクマの様子だ。
「何か悩みごとがあるの、クマ?」
クマの様子は眼に見えて混乱を見せた。あたふたと動き、バランスをくずして水辺に落ちそうなのが心配だ。
「べ、別になんでもないクマよ!」
「あら、わたしに隠しごと?」
「むっ……」
しばらく黙って後、クマは観念した。
「この間、デルフが言ってたことを考えていたクマ」
「不安になったの?」
「そーなんだけど、たぶんキュルケチャンとは別のことクマ」
「どういうことよ?」
「デルフは強い人を呼び出すって言ってたクマ」
「あなた人なの?未だによくわからんないんだけど」
「ガク」
クマはおおげさに前のめりに倒れるフリをする。
「もう、キュルケチャン!イジワルはやめて欲しいクマ!今クマ真剣な話してるクマよ!?」
「ごめんなさい」
イジワルだけってわけじゃないんだけど。それは口に出さず謝る。もっともクマのどこかコミカルな動きに少し笑いながらだが。
「だから、クマは強いから呼びだされただけなんじゃないかって……。
 クマはきっと何か理由があってキュルケちゃんに呼び出されたんだと思ってた。でもクマじゃなくたって強ければ誰でもいいんじゃないかって……」
じっと真面目に話を聞いていたキュルケが口を開いた。
「あなたって本当にバカね」
「ななななんですと!?」
立ち上がってキュルケはクマを正面に回って、見据える
「バカって言ったのよ。えい」
つんと軽くクマの体を押す。
「あ、あわわわわ」
腕を振りながらなんとかクマは噴水への落下を防いだ。
605ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:02:55.69 ID:RSjIWYAf
「な、ナニするクマ」
「だってあなたがあんまりにもバカだから」
「だからクマのどこがバカだっていーんですか!?」
「今からたっぷり教えてあげるわ」
「なんだかカンビなヒビキ…」
「みんなも来たしね」
「えっ?」
キュルケはクマの向こう側、噴水の向こう側へと片手を高く上げて振っている。
クマも噴水の縁から降りて振り返るとたしかにそこには4人の人物がいた。
ルイズと完二、タバサと陽介だ。
「あんたたちこんな夜中に何してるのよ?」
「あら、ずいぶんな言い方ねルイズ。お話が終わるのを待ってたのよ。
 ずいぶん長い時間かかってたみたいだけどどうだった?」
「協力を取り付けられた」
「そう良かったじゃない」
ルイズはそんなことはないという風にオーバーリアクションで首を振る。
「みんな質問が多すぎるのよ。虚無の魔法使いだからって何でもわかるわけじゃないのよ!?」
よほど質問詰めにされたのであろう。おそらく喋らせたら朝まで愚痴をこぼすかもしれない。
「そんなことより聞いてよ、クマったらさっき何て言ったと思う?」
「そんなこと!?」「キュルケチャン!?」という二つの制止の声は無視する。
「この子ったら、強い使い魔が呼び出されるなら別に自分じゃなくてもよかったんじゃないのかって、偶然呼び出されたんじゃないかって悩んでたのよ?」
「はあ?んだソリャ、イミわかんねえ」
言葉の通り、完二はなぜそれが悩みの種になるのか理解できない様子だ。
「い、イミわからんて……」
「お前はよくどーでもいいことで悩むよな」
「どーでもいい!?」
クマは陽介の切捨てる言葉に驚愕の声を上げる
「どーでもいいだろーが。別に俺らが呼び出された理由なんて。
 どんな理由で俺たちがこの世界に来てもこの世界での体験したことが嘘になるわけでもねー」
「それはそークマ……」
「よーするにお前がこの世界に来てよかったかどうかだろ?」
陽介はクマを片目をつぶってみて来る。
「俺はよかったと思うぜ。タバサに召喚されて」
タバサが自分の使い魔に顔を向ける。
「ヨースケ……」
呼ばれた使い魔はへへっと照れくさそうする。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 16:04:23.42 ID:kX+JipaT
しえん
さて、次スレの準備をしないとな
607ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:05:31.21 ID:RSjIWYAf
しかしタバサは親友キュルケを指差し、言った。
「でも、サビエラ村では彼女に呼ばれたかったと言ってた」
「えっ、アレ、そんなこと言ってたっけ?つーかよく覚えてましたね、タバサさん?」
突然、吸血鬼退治を行った村のことを言われてあわてる。
たしかに油断しきった魔法使いのフリをするためにお酒を飲んでいたときにポロっと何か言った記憶が……
「しょーじきなトコロ、おんなじご主人様にするならクマみたいにボンッキュ……」
一字一句違わぬ言葉をタバサは淡々と紡ぐ。
まぎれもなく自分が言った言葉に記憶が想起されて陽介も焦る。
「わーっ!!ちょっ、マジやめて!つーかもしかして怒ってる?根に持っちゃってる系?」
陽介は自身より小さな少女に必死に言い訳を考え、刺激された記憶中枢からそれより昔のことを思い出す。
たしか召喚されて次の日の朝にタバサに召喚されて良かったと言ったはず。
「あっ、でもホラ。それより前にルイズよりタバサのほうがいいって言ったぜ?」
「それは床で食べさせようとしなかったというだけ」
ルイズも慌てた。なにせこの二人の主従が言っているのはまさに自分のことだからだ。
「む、昔の話じゃない!今はさすがにそんなことしようとしないわよ!」
完二が来た次の日、ルイズは彼を床で食べさせようとした。
その結果として完二が怒ってどこかへ行ってしまったりしたが、あとで自分と一緒に食べようと言ったはずだ。
もっともその後の完二の失言のためにその言葉は撤回されて、なんだかんだで彼は厨房で平民たちと共に食事をとるのを日課にしている。
慌てる二人と、落ちついて言葉数少なく反論するタバサたちを脇にクマが言う。
「クマは…ヨースケやカンジみたいな活躍してないクマ」
「何人もあなたの魔法で助けたじゃない」
「そーだぜクマ。ルイズがボヤっとして惚れ薬なんて飲みやがって、あの時は……」
「ちょっとあの時の話はやめなさいよ!あーもう、なんなのよ今日は!」
タバサや陽介に昔の話をしないように釘を刺しながらしっかりと自分の話は聞いていた。
完二はしまったと頭をかき、ルイズはぎゃいぎゃいと文句を言っている。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 16:05:48.44 ID:tfGW2u93
>>593
鉄スレから出てくるな
609ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:07:39.21 ID:RSjIWYAf
タバサと陽介、完二とルイズがそれぞれ白熱しているなか、クマは傍らに立つ自分の主を見る。彼女の目は優しい。
「キュルケチャンはクマが使い魔でよかったクマか?」
「当たり前じゃない。わたしにとって最高の使い魔よ」
その言葉を聞き、クマは感極まり泣き始め、抱きついた。
「おーよよよ、クマ、キュルケチャンの使い魔でよかったクマ!」
「ほらほら泣かない」
使い魔の肩というか背中らへんをぽんぽん叩いてやる。
「だからルイズも」
「今度は何よ?」
完二に文句を言っていたルイズがどうせまたろくでもないことだろうと思ってきっとキュルケをみる。
「わたしの使い魔があんたのせいで変わったからって巻き込んだとか思わなくていいのよ?」
「なっ――」
不意を打たれた、そういう顔をする。おそらくルイズも思うところがあったのであろう。
だがキュルケに言わせるなら何も気にすることではない。
それはタバサも同じようだ。
「気にしないで。ヨースケはわたしにとって最高の使い魔だから」
「タバサ…!」
気にかけていたことを二人にフォローされて、少し戸惑いながらルイズは虚勢を張った。
「ふ、ふん当たり前よ。むしろ感謝して欲しいくらいだわ!」
「いや、感謝はちげーだろ」
言い過ぎた感のある言葉に使い魔の冷静なツッコミが入る。
ルイズの顔は赤くし、キュルケや陽介、そしてクマが笑う。
「わ、笑うじゃないわよ!」
「む、ムリよ。あなたたちのコンビも息ぴったりなんだもの……」
さらに使い魔二人の笑い声が大きくなる。
「あ、今、タバサも笑ったでしょ!」
「笑ってない」
「うそ!今クスって……」
「笑っていない」
どうやら意地でも認めないということをルイズは悟る。
610ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:09:43.95 ID:RSjIWYAf
「もういいわよ……。そういえばタバサ、アンドバリの指輪返してもらったけどいいのよね?」
タバサはこくりと頷いた。
アンドバリの指輪はかつてウェールズを操ったレコンキスタにあったと思われていたものであり、タバサたちが入城を果たしたときにジョゼフの寝室にあったものだ。
レコンキスタにもジョゼフの影があったのであろう。
「水の精霊に返すって言ったけどとりあえず戦いが終わってからになりそう」
「みんなでラグドリアン湖に行ったことも、なんだか懐かしいわね。2、3週間くらいしか経ってないはずなのに」
「近くにいたけど俺らは別だったんだよな」
陽介とタバサはラグドリアン湖の畔にオルレアン公宅、つまりタバサの実家を訪れていたが、ルイズたちと同行したわけではなかった。
「あのときはギーシュとかモン……なんだっけか?まあいいや、モンモンも一緒にいたな」
「ん、誰だ、それ?」
「ほら、アレよ。カンジが来てすぐに食堂でつるし上げてたのと、その彼女」
「へー」
ん、何でそんなやつらと一緒に行ってたんだ?という陽介の質問は無視してルイズが言う。
「今度は6人で行けたなら、いいのに……」
ルイズは手の中にある指輪を見ながらポツリと呟いた。
「いいんじゃなくて、やればいいじゃない?」
「そーだぜ」
「クマもサンセークマ」
6人で指輪を返しにラグドリアン湖へ行く。それは誰にも魅力的な提案に見えた。
しかしこの約束が果たされる日は来ることはない。


その次の日、ヴェルサルテイル宮殿でガリア新王、シャルロット・エレーヌ・オルレアンそしてアンリエッタ・ド・トリステインの戴冠が行われた。
二人の戴冠式は同時に行われたのだった。
本来、戴冠はロマリア教皇が執り行うものである。しかし彼女たちは互いに冠を授けあった。
教皇が空位の場合や、来訪できない場合は戴冠は教皇の代理人が行うのが慣例であったが、あえて二人はこの選択肢を選んだ。
それはトリステインとガリアの強い結束を示すだけでなく、6000年前から続いてきた世界の変わりつつあることを示していたのかもしれない。
審判の日は近い。
611ゼロのペルソナ 第20章 審判 後編:2011/09/02(金) 16:14:27.75 ID:RSjIWYAf
投下終了。
>>606支援どうもッス。

なんだかんだ言ってますがジョゼフがめっさ強い敵連れてくるってことです。
そしてクマが悩んだように、この改変設定の世界のシステムだと別に呼び出されるのは強ければ
完二たちじゃなくてもいいって感じ(ギャグ)なんですよね。
そこがちゃんと完二たちじゃないといけないという物語になってるかはストーリーにかかっているわけです。
精一杯書いたんで、コイツらじゃないと!って思えてもらえているなら幸いです。



そいじゃ、次スレ立ててきます
612名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 16:22:24.72 ID:hGyqoYxX
ペルソナさん投下乙

>>608
鉄じゃなくてただのブロント語じゃね?w
613名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 16:25:27.56 ID:RSjIWYAf
あんまりスレ立てしないもんだからやけに時間がかかっちゃった
次スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1314947983/
614名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 18:08:15.12 ID:SwfBfCvA
>>612
なんとか語は知らんが普通に読みづらくて迷惑

ペルソナの人乙
615名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 18:29:04.96 ID:hGyqoYxX
俺に言われても困るw

>>613
616名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 19:22:57.31 ID:ieYaxJSV
ペルさん乙っす!
謎が明らかになっていく感じが実に心地よかったです。

とりあえず、投下中に、しかもいいシーンで割り込んだ>>608は極刑に処すべき
617名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 20:14:04.98 ID:XD2BwoM4
っスルー
618名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 22:09:37.64 ID:QiUM52N2
乙乙乙
619名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 22:46:26.10 ID:UZzy0jqQ
P4が格ゲー化するんだよな
620名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 22:57:58.30 ID:F0wtlDBo
ぺる乙

>>619
アイギスがゲスト参戦らしいな
対戦格闘ってことは2Pカラーがあるんだろうけど・・・シャドウか?
陽介と千枝が微妙だ・・・
そして番長こと鳴神は・・・どうなる
621名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 23:07:40.94 ID:fyfO0ZEB
カンジシャドウとか胸熱
622名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 23:39:27.49 ID:S+LxEwQ1
>>619
どうせならペルソナよりメガテンの方を格ゲー化してもらいたいな。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/02(金) 23:43:54.95 ID:H6ft9RHT
>>622
飛び道具が万能属性+麻痺のおまけ付きの真Tヒーロー
広範囲、高威力の地母の晩餐 人修羅





・・・他に誰かいたっけ?
624 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/09/03(土) 00:46:51.53 ID:zR6lkhZS
真1と真3出して真2がないとかイミフ
キャラ立ちはともかくとして名前持ちのキャラが多いのは真1より真2の方だし
まぁキャラ立ちって意味ならサマナーシリーズの方が多いとは思うが
特にハッカーズ
625名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 00:50:01.57 ID:9q6OfNkT
アバチュ…
626名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 01:32:48.75 ID:wgp2vw1S
>>623
指差し確認で無双する『7』(真2)とか
背後霊でパワーアップする『たまき』(真if)とか
そもそも初代DDSのナカジマを忘れてくれるなと

メインのキャラ丸被りじゃね?アームターミナル持ち物理馬鹿丸被りじゃね?
627名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 03:03:57.06 ID:nk0NXpKh
>>625
エンブリオンとか格ゲに向いてそう
628名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 03:15:53.55 ID:3VmEBx0e
そこでギリメさんの登場ですね
629名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 07:19:44.09 ID:Jydn5H/F
>>627
ゲイルあたり面白そうだよな
カポエラみたいで
あと、各トライブのリーダー達とか
630名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 07:52:30.37 ID:sUpdJFup
真Uならご立派様だろこのスレ的に考えて
631名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 09:23:18.87 ID:2U9upFb5
拷問だ、とにかく拷問にかけろ
632名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 10:07:02.50 ID:Eb15L2nc
うむっ、緊急連絡だ
633名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 10:28:43.99 ID:rPUbUxZq
ただし君だったらルイズに召喚されて酷い目にあってもいいや
634名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 13:29:25.04 ID:9Lxm2qs2
デビルサマナーならライドウ召喚で
635名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 14:15:00.73 ID:t5XNkrnU
よく喋る方のライドウも出してダブルライドー
636名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 14:47:16.17 ID:QNFyRPK8
ライドウ召喚ならゼロの仲魔があったな
2話でエタったが
637名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 15:27:42.87 ID:uIyZYSfn
ファイナルフォームライドウ?
638名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 21:06:34.84 ID:rPUbUxZq
しかし、このスレでする話題でもないが
真・サマ・ペルの時系列は実は結構適当だな
作中での隣接具合を見てるとソウルハッカーズとifで矛盾が・・・
ifと真Tとサマナーが同時期だったはずなのだが
ハザマはソウルハッカーズでまだ魔界落としの準備してるくさいという・・・
留年してるのか

アモン召喚でロリ剛毛デーモン化するルイズ・・・許されるでしょうか?
639名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 21:29:48.80 ID:3WRAi+nY
手塚治虫風ルイズ

ゼロのルイズが果てしない失敗の末ようやく召喚できた使い魔はなんと
黒髪の平民だったのです!
コルベール「ふう、何とか召喚には成功ですね。あとは契約の儀式を・・・」
ルイズ「リテイク」
コルベール「!?」

そしてルイズはさらに何度も召喚を重ね色んな平民(このスレで召喚されてるキャラたち)を召喚するも
ルイズ「リテイク!リテイク!リテイク!リテイク!」
コルベール「〜〜〜ッ!ミス・ヴァリエール!この平民の使い魔のどこが駄目だというんですか!」
ルイズ「コルベール氏、私の使い魔はね、こんな歩きかたしないんですよ」
640名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 21:30:53.94 ID:s/Nl0ctC
>>638
異なる歴史を歩んだパラレルワールドってことで説明されてたんじゃなかったかな?
時系列もそれでずれがあるってことで。
641名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 21:43:44.75 ID:rPUbUxZq
>>640
まぁ、細かいことだからね、確かにどうでもいいんだけど・・・
ノモス攻略にかまけて留年して
自分を苛めた連中が居なくなっても留年したんで下級生新入生に苛められまくって
結局まだ魔界落としを企てるハザマを想像したら・・・なんか笑えたんで

ルイズがハザマのパソコンを召喚してノモス攻略する話でもいいか
ただモバゲーのハザマ編やってないから詳細を知らぬ・・・PSPかDSに移植してくれアトラス様
642名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 21:48:50.92 ID:sUpdJFup
>>638
パラレルだろ。サマナーの作中でトールマンとかゴトウとかが逮捕されたニュースが流れてたし
643名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 22:02:50.41 ID:0Zh0AU1X
パラソルワールド?

パラソルへんべえ召喚?
644名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/03(土) 23:46:38.26 ID:IDYV7/mV
ソウルハッカー図のデモムービーは秀逸だったよな
645名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/04(日) 03:12:08.69 ID:P7sqoh4g
>>643
パラソルへんべえww
懐かし過ぎるwww


内容なんか全く覚えてないがwwwww
646アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き:2011/09/04(日) 11:58:02.86 ID:cUyf+rP5
アウターゾーンZEROの第2話、12時ころから投下します。
最初は『魔女狩り』をベースにした話を考えていましたが、ネタが浮かばず、
今回の作品を書きました。
アンチルイズの話なので、ご注意下さい。
647アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き:2011/09/04(日) 12:03:58.26 ID:cUyf+rP5
皆さん、こんにちは。私の名前はミザリィ。アウターゾーンのストーカー(案内人)です。
今日ご紹介するのは、アウターゾーンの一つ、ハルケギニアで起きた出来事です。
公爵家の娘、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女はメイジ、いわゆる魔法使いでありながら、魔法が使えないというコンプレックスを抱いていました。
そのコンプレックス、さらには周囲の嘲笑が、彼女を歪ませていきました。
自分をバカにした周りの人間を見返すために努力をすることは、決して悪いことではありません。
しかし、強さを追い求めるあまり自分の殻に閉じこもり、ひねくれてしまった彼女が魔法の力を手に入れたところで、どうなるでしょう。
多くの人を不幸にするに違いありません。
それは、彼女の同級生たちにも言えることです。
力を持つ資格のない者が大きな力を手にしては、その力は暴力になるだけです。
それを理解している子供が、トリステイン魔法学院に何人いることでしょうか。
さて、私はハルケギニアで一仕事するとしましょう……。



これで何度目の失敗だろうか。
トリステイン魔法学院で進級試験として行われる、召喚の儀式。
生徒たちが次々と召喚を終える中、ルイズだけが何度も失敗し、爆発を起こしている。
このままでは留年は免れない。
周囲から罵声を浴びせられ、だんだんと焦ってくる。
「五つの力を司るペンタゴン……我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」
切羽詰まったように詠唱し、杖を力の限り振ると……再び爆発が起こった。
またか、と周囲がはやしたてようとしたその時、あっと誰もが息をのんだ。
煙の中に人影がある。
煙が徐々に薄くなり、召喚したものが見えてきた。
姿を現したのは……平民とも、貴族とも見分けがつかぬ、大人の女であった。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/04(日) 12:04:44.35 ID:yDYMpxmt
アンチはなろうでやってください
649アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き:2011/09/04(日) 12:05:20.97 ID:cUyf+rP5
ウェーブのかかった長い髪。男を簡単に悩殺できるほどの妖艶かつ豊満なスタイル。
つり目も、美人というにふさわしい顔を引き立てている。
「な、なんだありゃ……すごい美人だぜ……」
「貴族か? 平民か?」
「貴族だろ? あんなすごいスタイルしてる平民なんていないよ」
生徒たちはざわめく。
「う……く、悔しいけど負けたわ!」
キュルケは本心で負けを認めた。それほどのスタイルだった。
「ど……どなた……ですか?」
ルイズは、失礼のないように聞いた。もしも貴族だったら大変だ。
[私? 私の名前はミザリィ。私を呼んだのはあなた? お嬢ちゃん]
お嬢ちゃんという言葉にカチンときたが、ぐっとこらえた。
「う……あ……そ、そうです。あなたはどこの貴族でしょうか?」
[貴族? 何それ?]
この女……ミザリィは貴族ではないらしい。それが、イコール平民ということにはならないのだが、ルイズはそこまで考えが回らなかった。
「へ、平民だったの? あんたみたいなのがね」
[いきなり呼びつけておいて、あんたみたいなのとは失礼ね。それに、貴族とか平民とか、何を言ってるの? 昔のヨーロッパじゃあるまいし]
ミザリィの声のトーンが少し下がる。背筋に薄ら寒いものを、ルイズは感じた。
「……な、なんなのよあんた! 平民のくせに、貴族に……」
[逆らう気? って言うわけ? そうだと言ったらどうするの? 死刑だとでも?]
「そ、そうよ! 最悪はそうなるわね。私の家がどんなものか、あんたは知らないでしょうけど、平民なんかどうにでもできるのよ、貴族は!」
[面白いわね。できるものならやってみなさいよ、お嬢ちゃん]
ミザリィの挑発に、ルイズは冷静さを失った。
「な、な……見てなさいよ! あんたなんか、いずれ首をはねられるか、首を絞められるかよ! 私の命令一つで。その時には、お嬢ちゃんなんて言ってられないわよ」
[私の首をはねられるの? いいわよ。そっちがその気なら、私もただじゃおかないわよ]
「ま、待って下さい。私が代わりに説明します」
ただならぬ雰囲気を察した、教師のコルベールが割って入る。
650アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き:2011/09/04(日) 12:07:26.58 ID:cUyf+rP5
「ここはハルケギニアのトリステインという国の、トリステイン魔法学院です。あなたは春の使い魔召喚の儀式で、使い魔として呼び出されたのです。彼女、ミス・ヴァリエールによって……」
コルベールは早口で、事情を説明する。
[フーン、私がこのお嬢ちゃんの使い魔ってわけね]
ミザリィはうなずいている。
「そうです。ですから、彼女と契約をして下さい。……そういうことで、いいね? ミス・ヴァリエール」
「は、はい……」
この女の正体は良くわからないが、背に腹は代えられない。
もう何度も召喚に失敗している。その末にやっと成功したのだ。やり直しはきかない。
使い魔なら、もう悪魔でもなんでもいい。
「と、とにかく私と契約しなさい! あんたは使い魔なんだから」
[嫌よ]
ミザリィは、切り捨てるように言った。
「私に逆らう気!?」
[当たり前でしょ。貴族だかなんだか知らないけど、あんたみたいな性悪のクソガキの使い魔になんかならないわ]
「何ですって!?」
ルイズは杖を向けるが、ミザリィは怯まない。
[あら、魔法を使うの? やってみなさいよ]
「くっ……」
魔法を詠唱しようとして、やめた。
この女を攻撃できる魔法を、自分は使えない。使えるとしたら、魔法の失敗による爆発だけだ。
そんなものがこの女に効くとは思えない。
[どうしたの? 早くしなさいよ。……!!]
その時、ミザリィの服が刃物で切り裂かれるように破れた。
さすがのミザリィも、不意打ちは避け切れなかった。
[……]
血は出ていない。服が破れただけだ。
「手加減はした……」
少し離れた所に立っていたタバサが、杖をミザリィに向けながらつぶやく。
タバサがエア・カッターを放ったのだ。
「ど、どう? これが、メイジの力、魔法の力よ! 思い知った?」
ルイズが、自分がやったことのように得意気に言い放つ。
[……こうやって、逆らう平民を力で抑え込む、これが貴族のやり方なのね。卑劣なものだわ]
「! そ、それは……」
痛い所を突かれ、ルイズは怯んだ。
[今私の服を破いたのは、そこのあなたね。おいたがすぎるわね。ちょっとお仕置きしてあげるわ]
ミザリィの目が光った。
651アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き:2011/09/04(日) 12:09:22.09 ID:cUyf+rP5
「……!? な、何!?」
タバサの周りに、人型をした半透明のものが現れた。それは次々と増えていく。
「……!?」
[それは、あなたが今まで戦って殺してきた人たち、そしてその家族の亡霊よ]
「う……うわあああああああーっ!!」
タバサが鋭い悲鳴を上げた。
……殺さないでくれ……殺さないでくれ……
……父ちゃんを返せ……父ちゃんを返せ……
亡霊たちのうめく声が、タバサを責め立てる。
「ゆ、許して……許して……」
何十という亡霊に囲まれ、タバサは無様に腰を抜かした。
……殺さないで……殺さないで……
……兄貴を返せ……返せ……
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさあああああい!!」
誰よりも優等生のはずが、何もできずただ泣き叫ぶタバサに、皆が呆然としている。
[もういいわね。二度とあんなことしちゃだめよ。わかったわね?]
タバサはうずくまったまま、泣き続けている。
「返事は?」
「……は、はい……」
タバサが涙声で答えると、亡霊は消えた。
[さて次はお嬢ちゃん、あなたの番よ]
「な、何をする気!?」
[こうする気よ]
ミザリィの目が再び光った。
周囲に生臭いにおいがたちこめる。
「な、何!?」
気がつくと、ルイズの一番苦手なもの、カエルが群れをなしてルイズを取り囲んでいた。
ゲコゲコと、不気味な鳴き声が幾重にも重なって響く。
「ぎゃ、ぎゃああああ!!」
何匹ものカエルが飛び跳ねて、ルイズに迫る。
[フフフ……さっきの威勢はどうしたのかしら]
ミザリィは笑みを浮かべる。周りの生徒は誰も助けようとしない。いや、できないのだ。
この女は恐ろしい。まず勝てない。そう本能が告げている。
「カエルは……カエルは嫌ーっ!!」
ルイズは逃げ出そうとするが、カエルの大群がルイズに襲いかかった。
全身に取り付かれて、ルイズは尻餅をつく。
「い、嫌……やめて……」
顔面に大きいカエルが張り付く。
次の瞬間、ルイズの股間から生温かい液体が流れた。
恐怖のあまり失禁したのだ。
[あらあら、おもらしなんかしちゃって……無様ねえ]
ミザリィに嘲笑され、ルイズはさめざめと泣く。
いつの間にかカエルの大群は消えていた。
652アウターゾーンZERO 第2話・お仕置き
「う……う……くくく……もう、あんたなんか……殺してやる!! 爆発で吹っ飛ばしてや……」
「や、やめるんだ! ミス・ヴァリエール!! 使い魔を殺したら退学だぞ!!」
「うるさい!! こんな大恥かいて、もう何もかもおしまいよ!! もう何もかもどうでもいい!!」
コルベールが止めるのも聞かず、恥辱に涙を流しながら、杖を構えて呪文の詠唱をしようとした時だった。
「う……ぎゃあああ!!」
何十、何百のカエルが全身にビッシリとついている。
「嫌、嫌ーっ!!」
杖を落とした瞬間、カエルは煙のように消えた。
「……き、消えた!? どうなってるの!?」
[簡単なことよ。これからは魔法を使おうとすると、必ずカエルが現れるわ。条件反射でそうなるように、私が『条件付け』しといたから]
「な、何ですって!?」
[他の子たちにも同じように『条件付け』しておいたわ。魔法を使ってごらんなさい、一番苦手なものが現れるから]
生徒たちはどよめく。
[それじゃ、私はもう帰るわね]
ミザリィは召喚された場所に立つと、振り返って不気味な笑みを浮かべた。
[あなたたちが魔法を使えなくなったことを知ったら、平民の人たちはどうするかしら? どんな仕返しをされるか楽しみね。ねえ、お嬢ちゃん、それに坊やたち……じゃあね]
そう言い捨てた次の瞬間、ミザリィの姿は消えていた。
「あ……」
ルイズも、タバサも、そしてコルベールも、誰もが思考を停止したまま呆然と立ち尽くしていた。



その後、生徒たちがどうなったかは皆さんの想像にお任せするとしましょう。
今まで好き勝手に生きてきた貴族の子供たちにとって、これからの制約に満ちた人生は辛いものになることでしょう。
しかし悪い子にはお仕置きが必要。子供たちがあのまま大人になっていたら、多くの平民を不幸にしていたに違いないからです。