あの作品のキャラがルイズに召喚されました part298
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part297
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1310281203/l50 まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>>1乙
あとNever Winter Nights - Deekin in Halkeginia登録完了
タイトルとかは全部含めて登録したので訂正するときは五十音順の方も訂正願います
登録久しぶりだからミスっちゃった
>>1乙
未だにまとめへ登録されないエターナルの作者カワイソス
俺はやらんけどね
さて、夏休みにどれだけくるか楽しみだ
夏だねぇ
夏か……
今の夏休みって昔と時期がずれてるって本当なんだろうか?
>>8 >飯田教育事務所によると、26、27日を中心に飯伊の各小中学校で終業式が行われる。二学期の始業式は8月18日の丸山小学校を皮切りに、19、22、24日に実施される。
ソースはミナミシンシュウ.jp
なお、「飯伊」とは飯田・下伊那地区のこと
皆さんこんにちは、夏暑いって誰が決めたんでしょうね。夏寒くても別にいいと思いますが。
さてウルトラ5番目の使い魔、53話投稿開始します。
10分後、11:50にはじめますので、今週もよろしくお願いいたします。
第五十三話
悪夢を越えたその先に……
超古代植物 ギジェラ 登場!
ルイズたち一行がアーハンブラ城にたどり着く前の夜、タバサとロングビルは互いの存在理由を賭けて戦った。
そして、敗れたタバサは仲間たちのもとから去った。いや、逃げ出した……
飛び出した後、どこをどう進んだのかは覚えていない。走ったのか、魔法で飛んだのか、あるいはどこかから転げ落ちたのか。
気がついたときには、タバサは見知らぬ原っぱの中で、土のベッドに雑草をシーツにして夜空をあおいでいた。
「ここは、どこだろう……」
全身疲れきり、鉛のように重くなってしまった体を投げ出してタバサはつぶやいた。
見慣れぬ風景、嗅ぎなれぬ風、北花壇騎士として方々を旅してきたけれど、初めて感じる空気。
いったい、みんなのいた場所からどれだけ離れてしまったんだろうか……体の疲れ具合と、魔力の消耗具合から
推測するに、元いた森から半径十リーグ前後のどこかというところか。シルフィードに乗ればひとっとびの距離だが、
人の足だけに限ると世界はとたんに狭くなる。
気がつけば、月は天頂から主役を星々に譲り、山間にその姿を没しようとしていた。一人で戦ってきたときから、
シルフィードの背に揺られているときまで、何十回、何百回と見上げた夜空、見慣れた星座。けれど今は、生まれ育った
ガリアのどこかだというだけで、まるで違う世界に来てしまったように思える。いや、ほんとうに違う世界に来てしまったのと
同じだろうと、タバサは顔をおおった。
「わたしは、みんなを裏切った……」
心が落ち着くと、続いてやってきたのは逃れようのない罪悪感の波だった。
シェフィールドからの残酷な命令と、それに従ってみんなを手にかけようとした自分。
止めようとしたロングビルを殺す寸前まで追い詰め、あげくその相手に心の弱さを指摘され、無様に逃げ出した自分。
走っているあいだは忘れられていた。けれども、どんなに遠くまで逃げても、心に刻み込まれた痛みから逃れることはできなかった。
わたしは結局、なにをしていたんだろうかとタバサは思った。
はじまりは、忘れることもできない三年前の誕生日のあの日から。すべてを失い、体のいい処刑として送り込まれた
キメラドラゴン退治を乗り越え、シュヴァリエになってから、ひたすらに戦いにあけくれてきた。
ジョゼフとイザベラの気まぐれで与えられる過酷な任務。狡猾冷酷な悪党や、残虐凶暴な怪物退治。
そのすべてをやり遂げてきたのは、奪われた母の心を取り戻し、父の仇のジョゼフに復讐するためだけのはずだった。
なのに、自分にはいつの間にか、目的以外にも大切なものができてしまっていた。
「友達なんて、わたしには一番似合わないものなのに」
誰かとつながりを持とうなんて、今まで考えたこともなかった。でも、入学してすぐになれなれしく声をかけてきた
キュルケから始まって、次々と面倒ごとに首を突っ込む学友たちをほっておけずに関わりあってたら、いつの間にか
仲間の一員みたいになっていた。
なんだ、ほんとうはお前は一人でいるのに耐えられなくなっていたんだなと、タバサは自分を笑った。
どんなに無視しても、平然と話しかけてくるキュルケの声が心地よくて、いつしか逃れようとするのをやめていた。
フーケのときからそうだ。命に関わるような危険なとき、関わり合いになるまいとすれば、いくらでも逃げることは
できたのに、自分からみんなと行動をともにするようになっていた。
皆が危険なことをする。自分の力がないとみんなが危ないというのは口実で、ほんとうは皆とともにいたかっただけだ。
結局、お前は孤独に住んでいるつもりで、人にすがっていた弱い人間なんだと、心の中から別の自分が冷笑してくる。
そのとおりだ……わたしは、魔法の力ではずっと強くなったけど、本質的なところでは、父と母に甘えていたころから
なにも変わってはいない。今回だって、ティファニアを救うというのも、シェフィールドの命令だからというのも名目で、本音は
またみんなと旅がしたかっただけだ。
なのに、わたしはそのみんなを自ら裏切った。裏切って、殺そうとした。もう、取り返しはつかない。
涙があふれ、喉から嗚咽が漏れてくる。なにもかも夢だったらよかったらいい。もう一度、過去に戻ってやり直したい。
けれど、そんなことはできない。過ちは消しようもない。
タバサの心に、昔暗記するほど母に読んでもらった『イーヴァルディの勇者』の一小節が浮かんでくる。
”それは、とある地方のお話。
ひどい領主が村人を苦しめていたところにイーヴァルディがやってきました。
重い税と、役人の横暴に苦しめられる人々を見て、彼は心を痛めました。
そんなとき、彼はふとしたことから、領主の娘のルーと知り合いになったのです。
心優しい娘のルーは、イーヴァルディに頼んで父の圧政から村人たちを助けてもらおうとしました。
ところが、村人たちとともに領主の屋敷に乗り込んだイーヴァルディはルーの案内ではいった部屋で罠にはまり、捕らえられてしまいました。
ひどい拷問がくわえられる中で、イーヴァルディたちはルーが裏切ったことを知ります。
『なぜだ! どうしてぼくたちを裏切ったんだ』
悲しみに満ちた叫びを、ルーは泣きながら聞いていました。彼女は、残酷な父の命令で、イーヴァルディを罠に
かけなければ軍隊を呼んで村人を皆殺しにするとおどされていたのでした。
ところが、横暴な領主の最期は突然やってきました。山を越えた竜の洞窟に潜むという伝説のドラゴンが、領主の
屋敷を襲ったのです。
屋敷はつぶされ、領主はドラゴンの炎で焼き殺されました。そしてルーは、邪悪な神への生贄としてさらわれてしまったのです。
ドラゴンは、真っ暗な小部屋にルーを閉じ込めると、お前の命はあと三日だと言い残して去っていきました”
最後に読んだのは、もうずいぶん昔のことなのに、概要がすらすらと浮かんでくる。
そして、幼いときにはなにげなく読み飛ばしていた、閉じ込められたルーの心を表した一節が、タバサの心にありありと蘇ってきた。
”ルーはじっと考えました。でも、ただ友を裏切り、ひどいめにあわせたという事実だけが残りました。
だから、わたしがこんな目に合うのは当然の報い……
ルーの最後の望みは、裏切った友に許してもらうこと。でもそれは、かなわない望みなのでした……”
「決して許されることは、ないのだから」
あのころは漠然と、かわいそうな囚われのお姫様だと思っていた。イーヴァルディという勇者に助けに来てもらえる
ルーのことを、うらやましいと思って、自分に重ねて楽しんだりもした。
>>10 冷夏だと米が不作になったり
秋の農作物も不作になるから重大な問題だよ!
ウルトラ支援
けれど、今ならばイーヴァルディを裏切ったルーのほんとうの気持ちがわかる。
悪気はなかった。そんなことはなんの言い訳にもならない。ただ、みんなの信頼を裏切って、あげく残ったのは
深い絶望だけ。今更あやまちに気づいたところで、どうして許してくれと言えるだろうか。
ルーは最後にイーヴァルディに救われて、この物語はハッピーエンドを迎える。しかし、自分には助けに来てくれる
勇者はいない。それどころか、逃げ出してきた自分になんの救いを求める資格があるだろうか。
「もう、わたしには何も残っていない。からっぽ……はは、ほんとうに中身はからっぽの、人形の……タバサ」
例えようもない虚無感がタバサを包んだ。もう、終わりだ何もかも……仲間たちには見捨てられ、任務に失敗した以上、
母も処刑されてしまうだろう。もう、何一つ自分には残ってはいない。
これからどうしよう? いっそのこと、グラン・トロワに切り込んで討ち果てて最期を迎えようか。どうせもう帰るところはない。
みじめな人形の末路には、それがふさわしいかもしれないな。あは、あはははは……
絶望の果てに、自己破壊の願望にとりつかれたタバサは、壊れたように乾いた笑いをあげ続けた。
だが、ひびの入ったタバサの心が砕け散る直前に、突然吹いた突風がタバサのほおを打ち、聞きなれた翼の音が
タバサの正気を蘇らせた。
「いたーっ! 見つけたのね、おねえさまーっ!」
大きく翼をはためかせ、流れ星のようにシルフィードが空から落ちてきた。着陸の衝撃と風圧が激しすぎて、
小さなタバサの体は巻き上げられて、何度も草の上を転げまわった。
しかし、痛いと思う暇はなかった。しりもちをついて、半身だけ起こしたタバサの目の前には、シルフィードの背から
さっそうと降り立って、星空を背に女神のように立つ赤毛の親友の姿があったからである。
「キュルケ……」
ぽつりと友の名を呼ぶと、タバサはそれ以上なにも言えずに押し黙った。
どうしてここにという疑問はない。シルフィードは自分の使い魔なのだから、自分の居場所はすぐにわかる。
それよりも、どうしてキュルケがいっしょにいるの? もしかして、ロングビルから全部聞いたのでは? いや、絶対に
聞いている。だったら、裏切り者の自分を始末しに来たのか? キュルケは誇り高い武門の家の出身だ。たとえ
身内といえども、裏切り者は決して許さないだろう。
最期は、一番の親友と思っていた友に引導を渡されるのか……まあ、裏切り者にはちょうどいい末路だろう。
キュルケの炎でだったら、苦しまずに一瞬で死ねる。
覚悟を決めたタバサは、目を閉じると魔法が来るのを待った。
でも、やってきたのは身を焼く炎の熱さではなかった。ほおをなでる、柔らかくて優しい絹糸の感触。
「あらまあ、こんなにもう汚しちゃって。シルフィードが慌てて下りるものだから、せっかくのかわいい顔が台無しよ」
目を開けたとき、キュルケの顔に怒りはなかった。呆れた様子でタバサの顔についた泥をぬぐい、乱れた衣服を
整えてくれている。
タバサは虚を突かれた目で、まるで何も知らないままでここに来たような友の顔を見た。しかし、タバサがキュルケに
呼びかけようと口を開きかけたとき、小さな唇はルージュをひいた人差し指でふさがれた。
「なにも言わないで……少し、お話しましょうか」
「キュルケ……!」
「はいはい、深刻ぶってる女の子は不細工よ。はい、涙と鼻水を拭いて……時間は、あるんだしね」
キュルケはタバサの隣に座ると、ぽんと背中を叩いて空をあおいだ。
夜空はいまだ満天の銀河を瞬かせ、人里を遠く離れた山奥の自然は二人と一匹を、虫の音で穏やかに包んでくれている。
邪魔するものもなく、なににせかされることもなく、キュルケはタバサにすべてを知っていることと、それでなお迎えに来たことを告げた。
「まったくあなたは、人がちょっと目を離すと危ないことばっかりして心配かけるんだから。わたしたちが来なかったら、
どうせまた危ない橋に突撃しに行ってたんでしょ?」
完全に図星を指されて、タバサは返す言葉がなかった。けれど、自分は命をとろうとしていたのだ、これまでとはわけが違う。
なのになぜキュルケはこうもあっけらかんとしているのか? 自分の知る限り、キュルケは憎い相手には憎いとはっきりと
言う性格だ。追い詰めた敵を笑顔で弄ぶようなことはしない。
キュルケの心がわからず、タバサは問いかけようとした。しかし、今度もその直前でキュルケの指がタバサの口を
塞いで、キュルケは微笑を浮かべたまま告げた。
「なぜって聞く必要はないわよ。聞かなくても、今のあなたの思いつめた顔を見たら、なにを考えてるのかは一目瞭然。
ツェルプストーのキュルケさまの読心術をなめるんじゃないわよ。まったく、あなたは昔から物事を悪いほうにばっかり
考える悪いくせがあるんだから。そんなことくらいで、わたしが怒るとでも思った?」
「そんなことって! わたしはキュルケたちを……」
「殺そうとした。わかってるって言ったでしょ。でもね、わたしは全然怒ってはいないのよ。むしろ、すまないと思ってるくらい。
親友のあなたが、それほど思いつめてたときに、気づいてもあげられずにのほほんとしていた自分が情けないわ」
キュルケは、自分の衣服の胸元の部分を、引きちぎりそうな強さで握り締めた。
「あなたが自分を責めてるのはわかるわ。でも、悪いのはあなたじゃない。憎むべきなのは、あなたの弱みにつけこんで
裏で笑ってる卑劣な奴らのほう。違う?」
「でも、実際にわたしは」
「ああもうっ! ほんとにあなたは生真面目なんだから。そういうときはね、「悪いのはジョゼフだ。わたしは全然悪くない」って、
思いっきり責任押し付けてふんぞりかえってればいいのよ。わたしならそうするわ」
からからと陽気に笑い、キュルケは今度は少し強めにタバサの背中を叩いた。
「きっとシェフィールドも、あなたのお母さんの心を治す薬なんて最初から渡すつもりはないわ。まったく、世の中、
だますやつよりだまされるやつのほうが悪いなんて、ひどいこと言うものがいるけど、だますやつのほうが悪いに
決まってるじゃない。だから、タバサは全然悪くないの。わかる?」
「う、でもキュルケはいつも」
「ん? ああ、わたしに言い寄って燃えてく男の子たちのこと? あれはいいのよ。男ってのは、女にだまされるために
存在するものなんだから。でも女をだます男は最低だけどね、タバサも将来ためになるから、よーく覚えておきなさいよ」
けっこうひどいことをしれっと言いながら、キュルケはにこやかな笑顔をタバサに向けた。その笑顔を見ているうちに、
タバサの中で渦巻いていたどろどろしたものも、少しずつ消えていく。
「ほんとうに、わたしを憎んでいないの?」
「疑り深いわね。ま、タバサらしいけど、わたしがタバサに嘘をついたことがこれまであった? それにね、仲間を
裏切らなきゃいけないほど追い詰められて、苦しめられた人をどうしてそれ以上憎めるっていうの? タバサ、
あなたで二人目だけど、どんな過ちも、つぐなおうという気持ちがあれば必ずやり直せるのよ」
二人目……その言葉で、タバサは以前アルビオンでレコン・キスタの間諜だったというミシェルのことを思い出した。
ミシェルがアルビオンで才人たちと再会したとき、タバサはティファニアたちを送っていていなかった。しかし、後に
皆と合流したあとや、その後にトリステインで会ったときには、とても罪を背負った人間とは思えないほど、強く、
明るい笑みのできる人間になっていた。
「サイトが、命をかけてミシェルを救おうとしたとき、人はそれぞれ重いものを背負ってるんだって知ったわ。それを知らずに
怒ったり、ましてや憎むなんてとんでもなく傲慢なこと。だからタバサ、あなたの背負っているものをわたしに分けて。
ただの友達じゃなくて、同じものを分け合った親友としてあなたを助けたいの!」
「そんな! だめよ、これはわたしたちガリア王家の問題。無関係なあなたを巻き込む」
「はいはい、それはもう聞いた聞いた。そういう面倒ごと一切合財承知で首を突っ込みたいって言ってるのよ。わたしの
親友に手を出した以上、ガリアの王様だろうがゴキブリだろうが消し炭にしてやるわ。タバサ、もう付き合いも長いんだし、
わたしがどういう女か、わかってるんでしょ?」
キュルケにとっては、一国の王もゴキブリも同格らしい。タバサは、キュルケの乱暴な優しさが心に染みて、自然と
涙を流していた。
しかし、それでもなおタバサの心には大きな罪を犯したという意識がぬぐえない。理由はどうあれ、うやむやにするには
あまりにも重過ぎる罪だ。なんの罰も受けずに済んでいいはずがない。
「キュルケ、ありがとう。でも、わたしはこのまま免罪されていいとは思えない。わたしは……」
「許すわ」
「えっ……?」
タバサの言葉をさえぎり、キュルケの放った一言がタバサの心を捕らえた。
「タバサがどれだけ自分を責めても、たとえ世界中の人間全部がタバサを弾劾しても、わたしは許すわ。たとえ世界中の
人間すべてがタバサの敵になっても、わたしはタバサの味方でいる。だってわたしは、タバサのことが大好きなの。
優しくて、気高くて、賢くて、わたしにないものをいっぱい持ってる……けど、小鳥のように危なっかしくて、心配ばかりかける。
この世に二人といない大事な親友。タバサがほんとは弱虫で甘えん坊だってこと、ちゃんと知ってるんだからね。だから、
遠慮しないで頼って甘えて……タバサの力になれることが、わたしの喜びなんだからね」
優しく頭をなでてくるキュルケに、タバサは失われる前の母の面影を見た。
いつしか、タバサはキュルケの胸に抱かれて、心の中に溜め込んだものを全部吐き出そうとするように、声をはばからずに
泣きに泣いた。
「キュルケっ、ごめん。ごめんなさいっ……」
「ばか、許すって言ってるでしょ……でも、今日はじめてわたしとあなたは本当にわかりあえたのかもね。もう、お互いに
仲間はずれはなしよ。シャルロット」
友の絆は、邪悪な策略などに負けたりはしない。罪が人を苦しめても、許す心が人を救う。
タバサはキュルケの優しさに、本当に人を信じるということを知った。それは、妄念でもなければ願望でもなく、相手の
心の光が闇に勝つことを信じ、その肩を抱いてともに歩くということ。そして、頼り頼られるだけではなく、ましてや傷を
なめあうのでもなく、互いの苦しみも受け止め、いっしょに背負って歩くということ。
はじめは命じられたからやってきただけだったトリステイン魔法学院。でも、そこにはキュルケがいて仲間たちがいた。
凍て付いた雪風の心の中に平然と入り込み、なんでもないことのように溶かしてくれる人たちがいた。もし彼らがいなければ、
今の自分は昔となんら変わらずに、孤独な灰色の道を歩いていたかもしれない。
その出会いは運命だったのだろうかとタバサは思う。いや、考えるだけせんないことだ。出会いがどうであれ、声を
かけたのも、それを受け止めたのも自分たちの意思だ。その選択は、運命などとは関係ない。
タバサは思いのすべてを涙と声に変えて吐き出し、涙を拭くと同時に決意した。
「ガリア花壇騎士のタバサはもういない。これからは、トリステイン魔法学院の二年生、キュルケたちのクラスメイトの
タバサとして生きていく」
それが、タバサのジョゼフとの決別の証であった。復讐よりも友とあることを強く願い、くびきを解き放って飛び立つ時がきた。
もう、何があっても仲間に杖は向けない。もう、何者にも束縛されたりはしない。
強い光を目に宿して蘇ったタバサの姿に、キュルケは、シルフィードは青い小さな妖精が生まれたような感動を覚えた。
「キュルケ、シルフィード、こんなわたしだけど、これからもよろしく」
「もちろんよ! シャルロット」
「ううん、タバサでいい。その名前も、キュルケたちといっしょにすごしたわたしの大事なものだから」
「おねえさま! 元気になってよかったのね。色ボケ女もたまには役に立つのね」
一言多いシルフィードの頭を軽くこづくと、タバサとキュルケは顔を見合わせて笑った。
しかし、タバサが完全に自由になるためにはもうひとつだけ、どうしても挑まなければならない戦いがある。
「行くのね?」
そうキュルケに問われると、タバサは黙ってうなづいた。
囚われている母の元へ行き、その安否を確認する。シェフィールドは、裏切ったら母の命をとると明言していたから、
無事でいてくれる可能性は低いものとタバサは考えていた。けれど、たとえ死体と対面することになっても、自分を
生み育て、心と引き換えにして守ってくれた母を切り捨てることは絶対にできない。
だが、悲壮な覚悟で死地に赴こうとするタバサへキュルケは笑ってみせた。
「大丈夫。十中八九、お母さんは無事でいるわ」
「えっ?」
「ジョゼフが冷酷で残忍な男だってのはよくわかったわ。きっと奴はタバサがお母さんを奪いにくることを読んで、
待ち伏せさせてるに違いないわ。けれど、お母さんが死んでいたらあなたの必死の反撃を呼ぶことになる。わたしは
ガリアの花壇騎士のレベルには詳しくないけど、今のタバサの実力はそこらの傭兵メイジなんかじゃ相手にならない
くらいに強くなってる」
キュルケはそこで一度言葉を切り、タバサはうなづいた。確かに、ありとあらゆる無理難題をこなしてきたタバサの
実力は、北花壇騎士でも最強クラスだろう。早々対抗できる相手がいるとは思えないし、メイジの力は感情で引き上げられる。
母を殺されて怒るタバサの実力は、軽くスクウェアクラスに匹敵するのはジョゼフならわかる。
「まともに激突すれば返り討ちにあう可能性が高い作戦を、タバサの力を知ってるジョゼフやシェフィールドがとるとは
思えない。けど、なによりも殺すならあなたの目の前でむごたらしくなんて考えるでしょう。きっと、人質として使うはず、
うまくすれば救出の可能性は十分にあるわ」
「わかった」
短く答えたタバサの言葉の続きに、「来るな」とも「来てくれ」という単語も接続されることはなかった。もう、一蓮托生
なのはわかりあえている。あとは、行動に移すだけなのだ。
二人を乗せるために、シルフィードは背を向けて翼を広げる。その広い背中を仰ぎ見て、キュルケはタバサに言った。
「ねえタバサ、お母さんを助けたら、いっしょにゲルマニアに来なさいよ。二人や三人の居候、わたしの屋敷なら
どうとでもなるわ。しばらく身を隠して、家族で仲良く過ごしてみたら?」
「え? でも」
「お母さんに盛られた薬のことを気にしてるのね。それなら、ルクシャナに頼んで解毒薬を調合してもらえばいいじゃない。
エルフが作った薬なら、エルフが元に戻せるでしょ」
あっ! と、タバサはキュルケの言葉に雷に打たれたような衝撃を覚えた。なんでこんな簡単なことに、これまで
思い至らなかったのか。もともと学者であり、ビダーシャルがわざわざ手助けを求めるほどの知識の持ち主である
彼女ならば解毒薬も製造可能だろう。なのに、ルクシャナのエルフにしては軽すぎる性格や、アルビオンから張り詰めた
気持ちが続いていたせいもあるだろうけど、気づこうとすれば簡単にわかったはずだ。
しかし、愕然としたのはほんの数秒だった。すぐに自らのうかつさなど、記憶の地平に追放してしまうほどの希望が
胸にわいてくる。
「お母様が……帰ってくる!」
それはここ数年味わったなかで最大の喜びだった。人は新たなものを得たときと同様か、それ以上に失ったものを
取り戻したときに幸せを味わう。子供のころになくしたおもちゃを大人になってから見つけたときに、自然と顔がほころびる
というような経験は大勢の人が経験したことがあるだろう。
魔王の城へ向かう勇者が、洞窟に眠る財宝を探しに行く冒険者に変わり、キュルケとタバサは強く手を握り合った。
これがジョゼフとの長きにわたる因縁に決着をつけられる千載一遇のチャンスだ。泣いて耐えていた自分と決別して、
運命を自分のもとへとひきずりよせる。
そのとき、二人のもとへ一羽のフクロウが飛んできて、足に抱えていた書簡をタバサの元へと落とした。
それは、確かめるまでもなくガリア北花壇騎士への伝書フクロウであり、差出人は中身を見るまでもなかった。
「ジョゼフからの挑戦状ってわけね。しかし、さっきの会話も聞かれちゃったかしらね?」
「大丈夫、これはわたしの持っているシュヴァリエの任命状の魔法の印を察知して飛んでくるだけだから。もしも誰かが
盗み聞きしてたら気配でわかる」
「そ、まあ女の子の会話を盗み聞きしてたら変態以外の何者でもないしね。それじゃ、向こうさんもやる気らしいし、
お相手してあげましょうか。場所はタバサの実家か、いつごろ到着できる?」
「ガリアの反対側だし、ワイバーンの生息地やシルフィードが休憩できない山岳や森林地帯を避けていくことになるから、
ざっと二日は必要だと思う」
「二日ね。それじゃ、到着するまではのんびり旅行でもしゃれこみましょうか。行きましょ、タバサ」
「うん」
こうして、タバサとキュルケは旅立った。その間、才人たちがアーハンブラ城で戦い、ティファニアを奪還するのに成功
したことを彼女たちは知る由もないが、彼女たちは彼らなら必ず成功させてくれるだろうと確信していた。
そして今、最後の戦いに望み、ジョゼフの罠にタバサとキュルケははまってしまった。
二度と抜け出したくなくなるほどの快楽を味わわせる、甘美な夢の世界を与える古代植物ギジェラの花粉。けれども、
どんなに誘惑にあふれていようと、眠って見る夢は所詮過去の焼きなおしや妄想の産物に過ぎない。未来に続き、
本当にすばらしい世界を築くための夢は、目を覚ましているときしか見ることはできないのである。
キュルケと誓った母を救うという目的を思い出し、タバサは悪夢の残滓を振り払って立ち上がった。
「ごめんキュルケ。わたしはまた、同じ過ちを繰り返すところだった」
「いいわよ。元はといえば、わたしの不注意が原因だったんだし。でも、あの快楽の泉から、よく帰ってきてくれたわ」
「うん、正直迷った。けど、決めたの……どんなに苦しいことが待ってても、逃げないし、黙って耐えたりもしない。
未来をつかみとるために、前を向いて立ち向かっていくって。だって、わたしには痛みを分かち合ってくれる友達がいるから!」
その言葉に、キュルケの顔に最高の笑みがあふれた。
「もー! なんてかわいいこと言ってくれるのかしら。感激しちゃったじゃないわたし! んじゃ、ちゃっちゃとこの趣味の
悪い罠をぶっつぶしちゃいましょうか」
「うん!」
顔を見合わせて、杖を交差させた二人は同時に魔法を放った。
『ウェンディ・アイシクル!』
『フレイム・ボール!』
極低温の冷気と、高熱火球が同時に部屋を封じ込めていた鉄檻に炸裂する。ガリア製の鋼鉄でできた檻は、その
どちらかだけであれば耐えられたであろうが、正反対の熱攻撃による熱膨張と収縮による、分子の過剰運動には
耐えられなかった。
「シルフィード!」
「ええーいなのね!」
シルフィードの体当たりでもろくなっていた檻は叩き壊され、空へと続く道ができた。
さあ、もはや地を這いずる時は過ぎた。シルフィードは自らの主人の親子と、その友を乗せて大空に飛び立つ。
だが、高空へ逃げようとしたシルフィードへ向けて、ギジェラは体から生えた触手を伸ばして襲い掛かってくる。速さは
たいしたことはなく、シルフィードの機動性ならかわすのにはさして苦労しないが、なおも花粉を花弁の中央から
撒き散らし続けるギジェラに、タバサはシルフィードに命じた。
「シルフィード、止まって」
「きゅい」
「タバサ?」
「あれをこのままにしておくわけにはいかない。キュルケ、お願い」
「タバサ……」
ギジェラを杖で指して頼むタバサに、キュルケはその意図をすぐに察知した。しかし、それはこの場所とは赤の
他人であるキュルケにとっても、ためらわざるを得ない意味合いを持っていた。
「いいの? あれを焼き払えば、あなたの屋敷も無事じゃすまない。ここは、あなたとご家族の大事な場所なんでしょう?」
「かまわない。あれがこのまま育ち続ければ、この周囲一帯が危険にさらされる。ジョゼフはそんなことを考慮してはいない。
それに……ここには悲しい思い出のほうが、多い」
目を伏せたタバサの胸中には、空虚だった三年間、自分の家なのに悪夢にうなされ続けた暮らしが消えずに残っているのだろう。
話にだけは聞いているが、狂った肉親と暮らし続けるというのはどんなに苦痛か。わずかに想像するだけで、震えが走る。
しかし、いくらつらい思い出があるとはいえ、それを消し去りたいというのは……いや、それは邪推だなとキュルケは
考え直した。タバサの味わってきた苦痛を、安易に否定する権利はない。それに、あれをほってはおけないし、タバサが
選択したことならば、わたしもそれを尊重しよう。
「わかったわ。けど、あのどでかいのを焼き尽くすのはわたしの炎でも少々骨ね」
「大丈夫、わたしが合図したら火を放って」
そう言うと、タバサはシルフィードをギジェラの真上あたりに向けて飛ばせた。ギジェラの触手は動きが大味なので当たる
心配は少なく、シルフィードは三人を乗せたままでも余裕を持ってかわす。
そうか、タバサが待っているのはあれね、とキュルケは理解した。この巨大植物を人間の力で焼き尽くすには普通の
方法では無理だ。本人は決して好いてはいないが、北花壇騎士として数々の戦いを潜り抜けてきた経験は確かに
タバサの中に息づいている。
触手の攻撃がいくらやっても当たらないことに業を煮やしたギジェラは、花弁の奥からくちばしを伸ばしてきた。
獲物を狙う怪鳥にも似たそれがシルフィードを狙い、開いた口内から黄色い花粉が毒ガスのように噴射される。
だが、それこそがタバサの勝利への賭けだった。確かに、水と風を主に得意とするタバサの力では、植物である
ギジェラに対して決定打となりうる攻撃魔法は打てない。ただし、魔法は攻撃だけではなく、その中には応用しだいで
直接攻撃以上に効果を発揮しえるものも数多く存在する。
その中でも、やはりタバサの得意系統とはずれるものの、魔法難易度としては低く、この状況を逆用できるものがあった。
『錬金!』
タバサの杖が光り、花粉にかかった魔力の光が花粉を引火性の強い油に変える。むろん、全部は変えきれず、
花粉と油の混合した気体がシルフィードに向かって襲い掛かってくるが、タバサはそれに向かって残りの全精神力を
使った魔法をぶっつけた。
『ウィンド・ブレイク!』
突風が花粉と油の霧を押し返し、それはギジェラに向かって降り注ぐ。この瞬間に、得意ではない錬金と、花粉を
押し返すだけの風を作り出したタバサの精神力は尽きた。しかし、同時にタバサが待ち望んだ勝利への条件は整った。
「キュルケ、今!」
「わかったわ。『フレイム・ボール!』」
キュルケの放った全力の火炎弾がギジェラに命中する。それは、通常ならば、直撃したところでギジェラの巨体には
たいしたダメージは与えられなかったであろうが今回は違った。花粉と油、ともに可燃性の物質が細かい粒子状になり、
それが空気と混合したものがギジェラを包んでいたために、引火点を超える熱を与えられたそれにたやすく燃え移ったのだ。
一瞬、太陽が出現したのかと錯覚するほどの火炎がギジェラを包み、高熱が一気に全体を覆う。その閃光と衝撃波が
通り過ぎていき、恐る恐る目を開けたとき、そこには自らの持つ油分に引火し、轟音を立てて燃え上がるギジェラの
姿があった。
「や……やった!」
キュルケはタバサに抱きつき、喜びを全身で表現した。タバサは疲れた様子ながら、口元だけはほころばせて
心の内が親友と同じことを示している。
一方そのころ、そこを遠く離れたグラン・トロワでは、ゲームの開催者であり対戦相手が、自らの敗北を悟っていた。
「どうやらシャルロットの勝ちのようだな。やれやれ、途中までは順調だったのだが……敗因は赤毛の小娘のことを
計算に入れていなかったことか」
「ジョゼフさま、それはいたしかたありません。まさか、あの幻想世界から連れ戻すことが可能だとは」
「いや、あやつらの底力を過少評価した余の落ち度だ。余と対局できる相手もいなくなって久しいから、少々かんが
鈍っていたか……いや、本当の敗因は、余がどうあがいても手に入れることができないものを持っている、
シャルルがシャルロットに残した遺産のせいかな」
ジョゼフは苦笑すると目を閉じて、常に誰からも慕われて囲まれていた弟のことを思い出した。思えば、幼少のころから
自分たち兄弟はくっきりと分かれていた。魔法の才がなく、母からも無能と呼ばれて孤独だった自分と、対照的に
天才的な魔法の才に恵まれて、なおかつ人望の厚さでもてはやされていた弟。
生まれついての差は変えがたく、神はまったく人間を不公平に作る。シャルロットにしてもそうだ。国内のオルレアン派の
貴族はすべて抑え、シャルロットに味方は一人もいないはずなのに、どこからかあの子を助ける者が現れてくる。
自分がいくら孤独であっても、助けようなどという者は現れなかったのに……
その考えは、タバサが聞いたらきっぱりと否定するであろう。キュルケや仲間たちとの友情に、魔法の有無などは
関係ないと。だが、ジョゼフにとっては真実だった。持てる者と持たざる者の価値観の差は、時に残酷なまでに人の心に
壁を作り、運命を狂わせる。
「余は、生涯通じてシャルルには勝てなかった。いや、余が勝手にあいつを勝ち逃げさせてしまった。そして、その娘にも、
これだけ有利な条件を揃えても勝てぬか。ははははは」
敗北を認めたジョゼフの哄笑が寝室に響いた。彼の顔には憎しみや怒り、屈辱感などはなく、単純な愉快さだけが浮かんでいる。
実は意外にも、ジョゼフの心には敗北感はなかった。いや、それ以前にジョゼフにはそもそも「勝ちたい」という意欲が
欠落しているといったほうがいいかもしれない。なぜなら、彼が心の底から勝ちたいと思っていた相手は、もうこの世に
いないのだから。
ただ、勝利の高揚感も敗北の屈辱感もない代わりに、ゲームが終了したことでジョゼフの心には例えようもない
空虚さが生まれてきていた。
「ふぅむ……シャルロットとのゲームも今回でお終いか。しかし困ったな、シャルロットがいなくなった後の暇つぶしを
考えていなかった。やることが特にないというのは退屈だな。虚無での遊びのほうもなかなか進展せんし、
面倒だからエルフとの戦争でも起こすかなあ」
まるで子供が鬼ごっことかくれんぼのどちらをするかを迷うように気楽に、しかし冗談は一切なく本気でジョゼフはつぶやいた。
この世での目標を当に喪失し、それを取り返すことは絶対に不可能だとわかっている彼にとって、この世は退屈な
暇つぶしの場でしかなかった。残った関心は、このくだらない世界をいかにしてもてあそんでやるか、その果てに
自分がどうなれるのかということだけ、そのためならばこの世のあらゆる美徳や理想も踏みにじってくれよう。
だが、ジョゼフが破滅的な夢想に心を任せようとした瞬間、遠見の鏡から聞き覚えのある声が響いてきた。
「陛下、エルフと開戦なさるのは結構ですが、まだ時期尚早であるとお止めいたします。それよりも、陛下には
新たなゲームのステージをわたくしどもといっしょに構築していただきたいものです」
突然、タバサたちを映していた遠見の鏡の画像が乱れ、別の人物の姿が映し出された。それは、端正な美貌の
月目が目を引く美少年で、不敵と呼んでさえいい笑顔で鏡の向こうからジョゼフを見つめている。
しかし、突然の乱入者に声をあげたのはジョゼフではなく、鏡を操作していたシェフィールドだった。
「お前! どうやってこの映像に割りこんだ!? これには、傍受を防ぐ仕掛けが何重にも施されていたのだぞ」
「ふふ、ご無礼をお許しください。まあ種明かしをいたしますと、我がロマリアには世界各国が研究した魔法技術の
成果が蓄積されていますので。この程度のことは、わけはないですね」
悪びれもせずに、彼、ジュリオはシェフィールドに向かってポーズをとってみせた。そのふてぶてしさに、
シェフィールドは歯軋りをして、なにかを怒鳴りつけようとしたがジョゼフに静止された。
「くくく、まあよいミューズよ。貴様、ジュリオとか言ったな。このアイテムの機能に割り込んできたことは驚いたが、
そんなことを自慢したいわけではあるまい。神の奇跡を見せてくれるはずだが、準備ができたのかな?」
「さすが、お話が早くて助かります。まずは、こちらをご覧ください」
ジュリオはそう言うと、体をどかして鏡の映像に彼の背後の風景を映した。するとそこには……
「なっ!?」
「ほぅ」
シェフィールドは絶句し、ジョゼフは口元を歪めた。なんと、ジュリオの後ろに映っていたのは燃え盛るギジェラの
姿と、その周辺を旋回するシルフィードの姿。彼のいる場所は、オルレアン邸の正門近くの街道だったのだ。
しかし、それはありえるはずがなかった。リュティスからオルレアン邸までは、風竜で全力で飛んでも数時間かかる。
なのに、さきほどジュリオが立ち去ってからまだ一時間も経っていない。
ならば、ここか向こうにいるどちらかがスキルニルなどを使った擬態か? もしくは映像を加工しているのかと
シェフィールドは思ったが、ジュリオはそのどちらも違うというふうに首を振った。
「これが、まずは奇跡の前座といったところですか。わたしにとって、あの程度の距離はたいした意味を持ちません」
「ほお、瞬間移動でもしたというのかな。だが、そんなものではたいして驚けんな」
チャリジャという、人間を超越した存在と手を組んでいたジョゼフにとって、この程度は驚くに値しない。だが、ここまで
くるとジュリオもそんなことは承知していると、軽く笑うと空を見上げてから返答した。
「はい、わたしもこんなもので陛下のおめがねにかなうとは思っておりませぬ。さて……ころあいもそろそろよろしい
ようですし、お目にかけましょう。我らの奇跡、力の一端を……そのあかつきには、我らの神の使途に名を連ねること、
ご考慮いただけたら幸いです」
ジュリオはそれだけ言うと姿を消し、映像は元のタバサたちを屋敷から見上げたものに戻った。
ギジェラは噴火する火山のように燃え上がり、一時もがくように激しく動いていた触手も力尽きた。
燃え続ける巨体から葉がもげ、花びらがちぎれて燃えながらオルレアン邸に降り注ぐ。火の雨を受けた屋敷は
燃えあがりはじめ、タバサとキュルケはそれを少し離れた空からじっと見つめていた。
「タバサ……」
「……」
タバサはなにも言わずに、ただギジェラと屋敷の最期を見守っている。やがてギジェラの巨体が燃えながら
崩れ落ちていくと、タバサが幼少のころからすごした屋敷は、炎の海の中に沈んでいく。
だが、炎によって明るさを増していた風景が、突如として暗さを増し始めたのだ。
「な、なに!?」
ずっと屋敷を見下ろしていた二人はとっさに空を見上げた。そして、信じられない光景が二人の目に飛び込んできた。
「あれは、月が……欠けていく」
「月食……!?」
なんと、空を煌々と照らしていた青い月の半月が、虫食いをされたように欠けていく。しかし馬鹿な、今は月食などが
起きる時期ではないはずだ。
そのとき、呆然とする二人の頭の中に、悪意に満ちた恐ろしげな声が響いてきた。
〔君たちの存在は、我々の計画の妨げになる恐れがある。この世界から、消去させてもらうよ〕
その言葉が終わると同時に、反応する時間さえ与えられずに異変は起こった。
何が起きはじめたのかすらわからない二人の目の前で、森の中から白い光の塊が立ち上った。それは、見る見るうちに
小山のように大きくなると、次第に人の形を取り始める。そして、光の塊は黒々とした体を持つ異形の怪物として実体化した。
「あれは! 新しい怪獣!?」
骨格が全身に浮き出たような不気味な容姿に、顔のない頭には頭頂部から首に至るまで黄色く点滅する筋が通っている。
新たな敵は、キュルケの絶叫を合図としたかのように肩を震わせて迫りくる。
悪夢は終わった。しかし、悪夢よりも残酷な現実が迫りつつある……
続く
今週はここまでです。
>>13 いやまあそうなんですが、この暑さは拷問です。よくペギラを連れて来いとか言われますが、ペギミンHの準備はあるんだろうな。
ともあれ支援ありがとうございました。
ライトノベルは愛をテーマにしたものが多いですが、ここではその中でも友愛や信愛といったものを主にとりあげてみました。
友達がいるというのはよいですよね。私にも共に遊んだり、先生に叱られたりしたときに慰めてくれた友達の記憶がありますが、
どれも大切な思い出として残っています。
さてキュルケとタバサに迫る新たな敵はなにか。来週またお会いしましょう。
スパロボからラミア・ラヴレスを召喚したらルイズ涙目だよな。
エクセ姉さんが言うにはバスト93cm以上らしいし、キュルケとテファを交えてお茶会なんぞ開こうものなら大惨事になりそう。
>>25 ウルトラ乙
関東は台風が過ぎてから涼しい日が続いてるけど
西日本や九州は猛暑が続いてるんですよね・・・
しかしさ、エタるのが当然のこの界隈で
1話で「こいつはエタる」っていうのは
クソを指して「これは臭い」というのと同じくらい下らんことだよな。
「こいつはエタらない」と1話の時点で言う奴はおらんのか。
投下間隔が数ヶ月単位で、
忘れられかけた頃とか「まだかなー」とか言われた頃に
毎回投下しちゃってごめんなさい。
せめて 月一ぐらいで投下したい。
でも実際は 隔月ですらない。 ごめんなさい。
どこの作者さん達かは知らないけれどまだかなまだかなー
なんだっていい!作者を励ますチャンスだ!うおおおおおおおおおお!!
ウルトラ5番目の使い魔作者さん、乙でした。
>>だますやつよりだまされるやつのほうが悪いなんて、ひどいこと言うものがいるけど、だますやつのほうが悪いに
決まってるじゃない。
この台詞は凄い同感です。これって、極端に言ったら殺された相手に対して、殺した相手が殺される方が悪いって
言うのと同じですからね。
ジュリオは何やら原作以上に怪しい人物になっている模様。この作品においてはレイオニクス以上の怪獣使いに
なりえる彼ですが、その能力が災いしてか宇宙人にでも操られているんでしょうか?
おーい、タバサ襲ってるけど、自分の恋人の姉だぞー。
おっしゃ、それでは賢王の人と悪魔の虹の人、応援してます。いつでも帰還してきてくださいね。
サイヤと騎士団とカービィとミーディアムの作者さん方、今でも応援してますよー。
エターなる予定の人はリレー許可の遺書をのこしてから逝ってください
いやだから作品名は出さない方向で…
避難所で、ね…
ヴィンダーが怪獣使いか
作品名を出さなきゃ良いんだな
この世ならざる美貌の主を複数召喚した方
ハルキの双月がダブるビーム撃つ日を待ってます
月のビーム・・・MWか
月・・・神に地球を追われたネイティブアースのコロニーとか
火星と木星の間にあった星から逃げてきた民の館と幻獣神の住まいとか
人間になった愚かしいほど健気な機械たちとか
秘密結社の基地と石田声の少年の棺桶と巨大人造人間とか
誰も知らない社とか
実は原始生命体に死の概念を与えた巨大宇宙生物の肉体だとか
月こそ邪神に滅ぼされた本来の故郷の星とか
生命の種子をまいた50億年前の別銀河からの漂着者とか
何度も拳を叩き付けられたり落書きされたり人類殲滅システムが隠されていたり200年前の科学者が眠っていたり
月になぞらえてシナリオ構築するのもアリよねぇ
・・・スパロボJから数十年前のガウ=ラ・フューリアをハルケの月内部に転移
眠りから覚めたフューリーは困惑するもハルケギニアへの移住を計画する・・・
ルイズはハルケギニアのとある村から平民の男子を召喚するが・・・
えー、ぶっちゃけアル=ヴァンの所為でヤンデレ化するエレオノールが見たくなっただけです
ウルトラの人、投稿お疲れさまです。
ジュリオが丁度良いくらいに悪役の助っ人的存在ですね。
善人と悪人の間を行き来する道化師、それが個人的なジュリオへの印象です。
さて夜も更けてきましたね。
何事も無ければ21時25分から投稿を開始します。
よろしければ支援の方、御願いします。
トリステイン魔法学院の敷地から外は、広大な森が広がっている。
首都トリスタニアへと続く街道の外は、どこまでも広がっているかのように感じてしまう巨大な森林地帯がある。
最寄りの街であるトリスタニアに行こうとしても、馬を使わなければちょっとした旅になってしまう。
一応ちゃんとした道はあるのだが、いかんせん森の中を突っ切るように出来ているので凶暴な肉食動物が襲ってくることもある。
その為、魔法学院かトリスタニアに行く者は馬に乗るか馬車に乗るか、あるいは空を飛べる幻獣に乗るしかない。
しかし、今日に限ってはそのどれにも当て嵌まらない゛物゛で学院の敷地を出た者がいた。
「相も変わらず、デッケー森だなぁ。地平線まで続いてるんじゃないのか?」
愛用の箒に腰掛けるかのような姿勢で乗って空を飛ぶ魔理沙は、眼下に見えるトリステインの森を見ながら呟く。
箒の出す速度はそれ程速くはなく、ゆっくりと空中散歩を楽しむ彼女の横を二、三羽の小鳥たちが飛んでいく。
そんな小鳥たちを見て軽く微笑みつつ、自分の後ろにある魔法学院へと視線を向けた。
もうかなりの距離を飛んだのではあるが、トリステイン魔法学院にある塔はハッキリと見えている。
流石はトリステインの誇る魔法学院なのか、その存在はなかなかのインパクトを放っていた。
「さてと、ここまで来れば大丈夫だろ」
魔理沙はひとり呟くと、つい数十分前の出来事を思い出した。
◆
『じゃあ行ってくるわ。大丈夫、夕食時には帰ってくるから』
それはルイズと霊夢が喧嘩し、霊夢が部屋から出て行った直後である。
『おい、霊夢…!』
魔理沙は咄嗟に、窓から身を乗り出して見回してみるが、霊夢の姿は何処にもなかった。
その時魔理沙はあれ?と一瞬だけ首を傾げようとしてその前に、心当たりがあるのに気が付く。
(あいつ…瞬間移動で逃げやがったな…)
あのぐーたら巫女が自分の姿を一瞬にして消す方法といえば、それしか思いつかなかった。
異変解決やちょっとした喧嘩で、何度も霊夢と戦った経験のある魔理沙だからこそ、真っ先に思い浮かんだのである。
霊夢の奴うまいこと雲隠れしやがったぜ…。とおもわず感心してしまったが、すぐに別の考えが頭をよぎる。
(ちょっと待てよ…もしかして後の事は全部私に任せたってことか…!?)
心の中でそう叫び、思わず目を丸くしてしまった。
今のルイズが体内に飼っている「怒り」という名のペットは怒り狂い、ある二人の手に噛みつきたがっている。
それはズバリ、霊夢と魔理沙である。しかしその内の一人である霊夢はトンズラをこいた。
つまり、本来なら二人で仲良く受け合うルイズの怒りを霊夢のいない今、魔理沙が二人分の怒りを受け止めることになる。
怒り心頭のルイズの仕置きはキツイとその身で知った魔理沙は、すぐさまこの部屋から出ることにした。
幸いルイズ本人はシエスタが取り押さえてくれていたので、なんとか逃げ出すことは出来た。
『あぁもう…。すまん二人とも、すぐに帰ってくるぜ!』
そう言った後、何処かへ逃げた霊夢を追うような形で魔理沙は箒に跨り、部屋を出て行った。
とりあえず学院の外へと出れた魔理沙は霊夢を探すワケでもなく森の上を飛んでいて、今に至る。
◆
「え〜と…。お、ああいう広い所なんか好さそうだ」
何処かに休める場所はないかと、眼下の森に視線を向けていた魔理沙は、恰好の休憩場所を見つけた。
そこは森の中にポッカリと出来たような小さな円形の草原で、風に乗ってサラサラと背の低い草が揺れている。
目をこらしてみると草原にはいくつかの切り株があり、真ん中の方には切り落とされていない木がポツンと生えていた。
付近には怪しい者も動物もおらず、休憩にはもってこいの場所であった。
とりあえずそこに降りる事にした魔理沙は辺りに気を配りつつ、ゆっくりと高度を下げていく。
慣れた動きで無事そこに着地すると箒を右手に持ち、思いっきり深呼吸した。
そして口の中にたっぷりと森の空気を入れて、勢いよく吐き出す。
「ふぅ〜、やっぱり森の空気ってのはうまいもんだな」
魔理沙はいまだ切られていない木の根本に腰を下ろし、空を仰ぎ見た。
それから次に霊夢の顔を思い浮かべ、苦々しい表情を浮かべる。
「全く、霊夢の奴も困ったもんだ…まさかあのまま逃げるとは思わなかったぜ」
自分のことを棚に上げつつも、一人勝手に逃げた巫女に込めて呟く。
全ての始まりは、霊夢がルイズの部屋にあったお菓子を勝手に食べたことから始まった。
確かにそれを考えれば霊夢が原因ではあるが、彼女と一緒にお菓子を食べた魔理沙にも一応罪はある。
魔理沙本人は「目の前に菓子があるから喰った」と言っても、ルイズの視点からすれば立派な共犯だ。
それをこの白黒がちゃんと理解しているのかどうかは、よくわからない。
「まぁ仕方ない。ルイズの怒りが収まるまでここでのんびり過ごすとしますか」
魔理沙は諦めにも似た境地でそう呟くと思いっきり背筋を伸ばし、辺りを見回した。
目には眩しいくらいの青空と白い雲が写り、小鳥たちの囀りが耳の中に入ってくる。
魔理沙は被っていた黒のトンガリ帽子を脱いだ瞬間、ハッとした表情を浮かべた。
「しまった、そういやミニ八卦炉をルイズから取り返してなかったっけ…」
いつもなら帽子の中に仕舞っているマジックアイテムがないことに、魔理沙は苦笑した。
朝の授業の時に奪われ霊夢の頭に投げつけたそれを、今はルイズが所持している。
その時の事を思い出し、やけに投げるのがうまかったなーと魔理沙は思い出した。
今取りに戻ってもルイズは怒っているだろうから、自分が怒りのはけ口になるに違いない。
アレとは古い付き合いだが、今行けば確実に大変な目に遭うのはわかっている。
それに戻らなければ壊す!とも脅迫されてはいないから大丈夫に違いない。
「虎穴に入らなきゃ虎児は手に入らないと言うが…それで喰われたら元も子もないぜ」
魔理沙は観念したかのように呟くとゆっくりと目を瞑った。
やがてそれから数分もしない内に、彼女の口から小さな寝息が聞こえてくる。
今日は計二回もルイズの鉄槌を喰らった魔理沙の体は、休憩を欲していたのだ。
一方、事の発端とも言える霊夢は何処にいるのかというと…
魔法学院にある男子寮塔の屋上で、ゴロンと寝転がっていた。
ルイズと喧嘩になりかけて部屋を出た彼女はあの後、瞬間移動を用いて女子寮塔の出入り口で隠れていた。
その後魔理沙が箒に乗って飛び去っていくのを確認して、今に至る。
「はぁ…なんか思ってた以上に怒ってたわねー」
まるで他人事のように呟きつつ、ルイズのことを頭の中で思い返していた。
※
今までに何回か怒ったことはあったが、あの怒り様はその中でも五本指に入るものである。
しかし霊夢には理解できなかった。どうして菓子一つであれ程怒れるのか。
ふとした事で人をからかってくるような連中ばかり居る世界で暮らしている霊夢にとって、菓子一つ分の被害など微々たるモノだ。
ぐっすりと寝ている最中に叩き起こされたり、飲もうとしたお茶をスキマに掠め取られたり、例を上げればキリがない。
しかしその分、怒りの沸点が大分高くなってしまった霊夢に対し、ルイズの沸点は低かった。
生まれつきということもあるが、幼い頃からの教育がそれに拍車を掛けている。
常に清く正しく生き、自分に厳しく道を外す者を見れば正してやり、対峙する者には決して背を向けるな。
それが貴族としての生き方だと。そう教え込まれてきたルイズにとって、許されざる行為なのだ。
ましてやそれが、大事にとっておいた菓子を勝手に食べられたのだから激怒するのも無理はない。
更にルイズの言葉に霊夢が反論したことも、彼女を更に怒らせる要因となっていた。
だからこそ、お互い理解できなかった。
霊夢は過剰に怒るルイズに疑問を感じ、ルイズは人の話を真面目に聞こうとしない霊夢に怒っていた。
※
「そりゃ私だって今すぐ食べようとしたものを盗られたら怒るけど、あれはすこし怒り過ぎじゃないの?」
霊夢はまるで隣にいない誰かに愚痴をこぼすかのように、ひとりブツブツと呟く。
その呟きはそのまま風に乗って何処かへ飛んで行き、誰の耳にも入らぬまま消えてゆく。
耳にはヒュウヒュウ…と風の音が入り、自然と意識が遠のいていく。
(ま、今部屋に帰っても録な目にあわないだろうし、このまま昼寝でもしてようかしら…)
気怠そうな表情でボーッと青空と白い雲を見つめながら、霊夢はそう思っていた。
しかし、そんな彼女の気まぐれを邪魔するかのように青い影がひとつ、彼女の視界を横切った。
「ん…?」
ウトウトしかけていた霊夢は、自分の視界に入ってきたモノに怪訝な表情を浮かべる。
青空ばかり見ていたから目の錯覚かと思ったが、すぐにその考えは否定された。
何故なら、風が空気を切る音と一緒に動物の鳴き声が耳に入ってきたのだから。
…ゅい、きゅいきゅい…
「きゅい?」
いきなり耳に入ってきた謎の鳴き声を思わずマネしつつ、霊夢は上半身を起こす。
そしてキョロキョロと見回したところで先程の青い影と鳴き声の主が、グルグルと自分の周りを飛んでいるのに気が付いた。
大きな体躯に青い鱗を持つどっしりとした体にそれに見合う大きさの翼、そして肉食動物の如き鋭い牙を持つ蜥蜴の頭。
ハルケギニアにおいて、一度暴れれば天災並みの被害を起こすといわれるウインド・ドラゴン――の幼体であった。
口を僅かに開いてキュイキュイと身体に似合わぬ可愛らしい声を上げながら、空を自由に飛んでいる。
霊夢はそれを見てフゥッとため息を漏らす。
「ああいうのは良いわね。余計な事を考える必要もなく空を飛べるんだから」
溜め息を混ぜて竜にそう愚痴を漏らすと、霊夢はゆっくりと目を瞑った。
黒い闇が視界を覆い、風の音しか聞こえない世界は、じわじわと夢の世界へと彼女を導いていく。
やがて数分もしない内に意識が朦朧とし、いよいよ眠ろうとした霊夢の耳に、誰かの声が入ってきた。
「そんなことないのね」
それは自分の周りを飛んでいるウインド・ドラゴンの声ではなく、瑞々しい女性の声だった。
一方、学院のとある場所で怒りを露わにしている一人の女子生徒がいた。
「あーもー…!どうして忘れ物を取りに行っただけでこんなに苛々しなきゃいけないのよ」
ルイズは手に持った『忘れ物』である答案用紙を右手で持ちながら、愚痴を漏らした。
今のルイズは正に、怒れる女神と呼ぶのに相応しいほどその身体に憤怒を纏わせている。
もしも、場の雰囲気を読めない誰かが彼女に気安く触れよう者なら、彼女の容赦ない拳がその顔にめり込むに違いない。
それ程までに怒っている理由は勿論、遠慮という言葉を知らぬあの紅白の使い魔と白黒の居候が原因であった。
人が大事にとっておいた物を勝手に手を出し、録に謝りもせずに出て行った霊夢と魔理沙のことである。
「レイムやマリサのやつ、謝りもせずに逃げるなんて…何考えてるのかしら」
ルイズはそんな事をブツブツ呟きながら、その時の事を思い出していた。
あの時、ルイズの怒りの矛から逃げるように部屋から真っ先に逃げた霊夢。
そしてそれを追うかのように、箒に跨ってサッと部屋から出て行った魔理沙。
あの時、怒り心頭であったうえメイドのシエスタに取り押さえられていた為止めることが出来なかった。
二人が部屋から消えていった後、自分を押さえつけているシエスタの腕を無理やり振り解いた時、彼女は気づいた。
「あいつら…逃げたわね」
もうそうとしか考えられなかった。
確かに、人が大切に取っていた物に手を出した霊夢(それと魔理沙)には罰を与えようと思っていた。
貴族の物に…というかそれ以前に人の物に手を伸ばす不届き者には相応の罰は必要だ。
子供の頃から親や家庭教師からそう言われてきたルイズにとって、それは当たり前のことである。
だが罰といっても、ルイズは自分が幼少期に受けた゛躾と称した体罰゛の様な事をする気はなかった。
この時は精々、『頭に鉄拳一発』というルイズの思考では『まだやさしい』ものを考えていた。
最も、あの二人に対して効果があるのかどうかはわからないが。
だが、魔理沙はともかく勘の良い霊夢は逃げ、魔理沙もそれに続いて…
不幸にもそれが、ルイズを更に怒らせる結果に繋がった。
あの後、おろおろしていたシエスタを無視して、忘れ物の答案用紙を持ってルイズは部屋を出――今に至る。
ツカツカと大理石の床を蹴る靴の音が気持ちよかったが、今のルイズを鎮める事は出来ない。
「もう決めたわ…帰ってきたら夕食抜きと廊下で寝るように言ってやるわ…」
ブツブツと独り言をぼやきつつ、ルイズは教室目指して早歩きで進む。
今日の六限目の授業は座学がメインだと聞いたのに忘れ物をして皆に笑われる。
そして苦笑していた教師に取ってくるよう言われて取りに行けば、使い魔する気ゼロの使い魔が自分を批判していた。
「全く…今日はなんて―――きゃ!」
しかしその独り言は、右の角から歩いてきた小さな影にぶつかったところで終わった。
まさかの不意打ちに用心していなかったルイズはそのまま後ろに倒れてしまう。
幸い頭を打つことはなく、尻もちをついてしまっただけで済んだがルイズの怒りは更に上昇した。
こんなにも人が苛々している時にぶつかってくるとは、なんという輩か。
最早八つ当たりにも近い感じでそんな事を考えつつ、ルイズは怒った表情で目の前にいるのが誰なのか確認した。
「誰よ!この私に当たってきたのは…―――…タバサ?」
目の前にいた人物が全く予想していなかった存在だという事に気づき、ルイズは目を丸くした。
ルイズとぶつかってしまったタバサは微動だにしておらず、いつもの無表情な顔でルイズを見下ろしている。
「た…タバサ。何でアンタがこんなところに…?」
ここにいる理由か全く思いつかないルイズは怒りの感情を一時的に隅においやり、質問を投げかけた。
それに対し、タバサは掛けている眼鏡を人差し指でクイッと直しながら、簡潔に答える。
「トイレ」
「え…そ、そう。トイレ…トイレね」
うん、簡潔でサッパリとしてる。だが貴族の少女がそんな事を簡単に言うか?
ルイズはそんな疑問を覚えながらも、いそいそと立ち上がる。
スカートについた埃を用紙の持っていない方の手でパパっと払うとタバサの横を通り過ぎる。
そしてそのまま教室へ行こうとしたとき…
「…ルイズ」
不意にタバサが声を掛けてきたので、足を止めた。
何かと思い、怪訝な表情を浮かべたルイズがそちらの方へ首を向けると、再びタバサの口が開く。
「貴女の使い魔は、何処か怪我をしてない?」
突然の質問に、ルイズはポカンとしていたが、数秒経ってから答えた。
「え?使い魔って…レイムの事?」
コクコク…とタバサは頷いた。
「いえ…別に怪我とかは無いけど…」
いきなりの質問にルイズはどう答えたらいいか分からず、適当に答える。
だがそれで充分だったのか、タバサは「そう」と呟くと歩き始めた、ルイズとは逆の方向へ。
段々と離れていくクラスメートの後ろ姿を見ていたルイズは、霊夢のことを思い浮かべた。
同時に隅に置いていた怒りの感情も、待っていました言わんばかりにルイズの表情に表れてくる。
「何だったのかしら…さっきの質問…あ、いやでも…それよりも」
やっぱり夕食抜きと廊下で一晩過ごしが良いわね!と呟きながら歩き始めた。タバサとは逆の方向へ。
この時もし、何気無く後ろを振り向いていれば気づいていただろう。
ルイズに背を向けていたタバサの姿が、いつの間にか消えていた事に。
そして、先程まで閉められていた筈の窓が開いていたことも…。
トリステイン魔法学院から徒歩で一時間くらい離れた山中に、小さな山小屋がある。
屋根に穴こそ開いてないものの、外見はボロ小屋そのものでとても人が住んでいる風には見えない。
もう数十年前に作られて放置されているこの小屋は、本来は登山者や旅の貴族、遭難者が寝泊まりする為の小屋であった。
しかし数年前からこの近辺にまで足を運ぶようになったオーク鬼達の所為で、訪れる者はすっかり減ってしまったのである。
だが完全に使われなくなったという事は無く、今では街へ赴いたり木の実やキノコを取りに来た近隣の村人達が利用していた。
見た目はボロ小屋ではあるが、中はちゃんと寝泊まりが出来るよう村人達が綺麗にしている。
オーク鬼達の方も住処からかなり離れているため、山小屋のあるそこまで近づくことは滅多にない。
今まで多くの旅人を夜風、雷雨、猛吹雪から守ってきた山小屋は、村人達を守る仕事に取り組んでいた。
そんなある日の事、とある男と女の子が山小屋に訪れていた。
男の方はまだ三十代に入ったばかりといった顔立ちで、その背中には大きなリュックサックを背負っている。
中には山の中でしか取れない木の実や食べれる茸、そして護身用の゛武器゛が入っていた。
その隣を歩く女の子は、背中に小さな革袋を背負っており歩くたびに革袋がヒョコヒョコと上下に動く。
男はふと足を止めて辺りを見回し、山小屋のすぐ近くにまで来ていたことに気が付く。
「お、もう山小屋か…となると、村まで後三十分といったところだな」
この山小屋は、近隣にすむ村人達にとっては休憩場だけではなく、目印としての意味もあった。
「なぁニナ、村までまだ三十分近く歩くしあそこで一旦休憩しないか?」
「うん!休憩する!」
ニナと呼ばれた少女は男の提案に、元気よく頷いた。
服装からして平民だとわかるその二人は、ここから三十分ほど歩いたところにある村に住んでいる者達であった。
本当は男性だけが山に入り、食べられる山菜に茸、それに甘い木の実を取ってくる筈であった。
しかしそれを何処で聞いたのか、村を出る直前にニナが自分も連れて行ってとせがんだのだ。
この娘は以前一人で山奥に入り、オーク鬼に襲われかけたという経歴を持っていた。
少女の母親は我が侭言わないの!と男にまとわりついているニナを引き剥がそうとする。
しかし男は…
「いや大丈夫ですよ、この娘ひとりなら何かあっても守ってあげられますし」
と快く少女の同行を承諾して、今に至る。
◆
「暗いねー」
「あぁ、暗いな。…まぁ誰も遭難してないのならそれはそれで良いのだが」
古い木のドアを開けた先にあるリビングを見た二人の感想は、似通っていた。
窓の数が少ない所為かもしれないが、小屋の周りにある木々が陽の光を遮ることでそれに拍車を掛けている。
ドアを開けてすぐのリビングには、大きなテーブルと椅子があり、奥には大きな暖炉も見えた。
そこを中心にして暖炉のすぐ横に一つ、とリビングの側面に二つのドアがついている。
暖炉のすぐ横にあるドアはキッチンに通じ、遭難者用の乾物食料や非常食が常に備蓄されている。
リビングの側面にある二つの部屋は大きな二段ベッドが一部屋に二つ、計四つが置かれていた。
とりあえず明かりをつけようと、男は荷物をテーブルに置いてニナに視線を向けた
「ニナ、革袋をテーブルに置いてキッチンからランタンを取ってきてくれないかい」
「うん!わかった!」
小屋に入っても背負っていた革袋をようやく下ろしてテーブルに置いた。
そしてリビングをかるく見回した後、トテトテと可愛らしい足取りで暖炉の横にあるドアへと歩いていく。
男はその光景を見ながらニヤニヤと笑みを浮かべつつ、背負っていたリュックの中から林檎を二つ取り出した。
ツヤの良い赤い果実をテーブルに置くと、次は果物ナイフを取り出そうとしたリュックの中に手を入れた。その時――
「キャッ!」
キッチンへと続くドアを開けたニナが、小さな悲鳴を上げたのだ。
何かと思い、男は咄嗟にそちらの方へ顔を上げる。
そこには顔を引きつらせ、口を押さえてゆっくりと後退るニナがいた。
「ニナ、どうかしたのかい?」
尋常でない少女の引き方に、男は手に握った果物ナイフを持ったまま、そちらに近づいた。
唯一頼りになる男がきてくれたお陰が、ニナは口を押さえていた両手を下げ、恐る恐る口を開く。
「き…キッチンに…オバケが…オバケがいるの」
少女の口から出た思わぬ一言に、男はキョトンとした表情を浮かべた。
「え?オバケ?」
男の言葉に、ニナは軽く頷いた。
首を傾げつつも、男は開いたままのドアを押してキッチンの中へと入った。
まず目に入ったのは、キッチンが何者かによって手ひどく荒らされていた事であった。
床には皿だった陶器が棚から落ちたのか、粉々になって床に散らばり、小さい鍋がコロンと無造作に転がっている。
酷いな…と思いつつ裏口のあるキッチンの奥へと視線を向けた時――彼は見つけた。
裏口とキッチンを隔てるドアに、ボロ布をまとった『誰か』がもたれ掛かっていた。
男はそれを見て一瞬身を強ばらせるが、すぐに落ち着くとその『誰か』に声を掛ける。
「あの…君は一体」
至極落ち着いた風を装いつつ話し掛けるとその『誰か』はゆっくりと、顔を上げた。
その拍子に頭からすっぽりと被っていたフード部分が外れ、相手が思いもよらぬ存在だと男に知らせた。
『誰か』の正体は一人の女性であった。それも十代半ばの少女だ。
白に少し黄色が混じったような肌に、赤みがかった黒い瞳。
艶のある黒い髪は、白いフリルの付いた赤いリボンで束ねている。
これまで多くの人と村や町で知り合ってきた男から見ても、見たことのない特徴であった。
一体何処の生まれだろうか…心の中でそんな事を考えていると…。
「ゲホッ…ゴホ…!」
少女が苦しそうな表情を浮かべて咳き込みだした。
いきなりの事にどうしようかと一瞬迷ったが、男はすぐに皿を置いている棚から手頃な大きさのコップを取った。
その時、ふとこちらの様子を不安な目で見つめているニナの姿が目に入る。
「ねぇ…その子、オバケさんじゃなかったの?」
ニナのいう『その子』とは、自分の後ろで咳き込んでいる少女の事だろう。
「大丈夫だよニナ、この子はオバケさんじゃないよ」
諭すように男はニナ言いながら、キッチンの中に備え付けてある井戸にロープの付いた桶を放り入れる。
五秒もしないうちにバシャーンと水が跳ねる音が耳に入り、男はロープを引っ張り出す。
冷たい地下水を入れた桶が引き上げられ、男はその桶の中にコップを入れ、水を掬う。
そしておかわりがいるだろうと思い、水を入れたままの桶を足下に置くと、コップを持って少女の方へ近づく。
咳き込んでいた少女は近づいてくる男と、彼が持っているコップに気づき顔を向ける。
その表情はポカンとしており、まるで何も知らぬ無垢な子供が浮かべるようなものであった。
「大丈夫?飲める?」
男は優しそうに声を掛けつつ、コップを少女の前に差し出した。
少女は男の言葉を理解したのか、ボロ布の中に隠れていた腕を上げると、差し出していたコップを手に取った。
そして一瞬躊躇った後、コップを口元に持っていきゆっくりと飲み始めた。
「ングッ…グッ…ングッ…ハァ」
録に水分も摂れなかったのか、水を美味しそうに飲んだ。
コップを口元から離し、安堵の溜め息をついた、
「君はひとりかい?名前は?」
男はその様子を見て安心しつつ、彼女に話し掛けた。
まだ村や貴族の学校が近くにあるからといっても、ここは山の中だ。
この世には人とうり二つの姿を持つ吸血鬼という亜人がいる事を、男は知っていた。
おかしな素振りを見せれば、手に持った果物ナイフを頭に刺そうと考えていた。
しかし少女は、ボーッと熱に浮かされたような表情を浮かべながら、ボソボソと何か言い始めた。
「……、……………」
「ん?…今なんて?」
ハッキリと聞き取れなかった男は用心しつつ、耳を傾けた。
今度はハッキリと男は聞いた――――少女の名前を。
「レイム…、私は……レイム…レイム…」
少女はそれだけ言うと目を瞑り、意識を失った。
以上で、投稿は終わりです。今回は前回や前々回と比べれば短いなぁー…
では皆さん、来月にまたお会いしましょうノシ
乙
香霖堂のノリでお菓子に手を出してしまったのだろうか
乙
田舎は実際そんなもんらしい(偏見?)ですしね
専用ブラウザで開いてるスレ投下直前になって間違えた…
四十分頃投下します。
人修羅が来たこれで勝つる
戦場と化したはずのアルビオンの首都ロンディニウムで、略奪にいそしむ傭兵達の姿があった。
貴族派は王党派打倒のため、手柄のあった傭兵部隊に大金を支払う約束をしていた。多数の傭兵は目立った手柄など立てられなかったが、その穴は略奪で埋めるというのが常套手段であった。
積極的に城を攻め落とし、残された財宝を手に入れようと戦う者もいれば、早々に町中の裕福そうな館に押し入って略奪を行う者もいた。
「何か、物はあったかよ」
「ろくなものはねえ、くそっ、ハズレか」
首都ロンディニウムの家々を物色していた盗賊が、いらだちを隠さずに声を上げた。
本業は盗賊で副業が傭兵、そんな彼らは攻城戦を早々に離脱し略奪を行っていた。
金目の物が残されていないとわかると、盗賊は不満そうに空の食器棚を蹴りつけた。
裕福層にとって、食器は調度品であり、調度品は財力の象徴でもある。それが無いと言うことは、どこかに隠されているか、持って逃げたのだろう。
「どっかに隠したって様子じゃねえな、ああ畜生、女でも隠れてりゃなあ」
腹いせにテーブルを蹴飛ばすのを見て、別の盗賊がニヤリと笑みを浮かべる。
「…そのあたりが怪しくねえか、食器棚の後ろだ」
「これか、…そうだな、隠し部屋ぐらいあるかもしれねえ。 おらよ!」
一人が食器棚を引き倒す、すると予想通りそこには扉があった。
「昨日みてえな女、隠れてねえかなあ」
「昨日はおまえが先にやったせいで売り物にならなくなったんだからな」
「俺のせいじゃねえだろ?おまえが首を絞めたから死んだんだよ、俺は殴っただけだ」
「ばか、顔殴ったら売り物にならねえ、せめてあっちの方が役に立てばいいのに、おまえが無茶したせいで」
ばきっ
「 あぶっ」
「あ?」
突然、扉が吹き飛び、ドアノブを掴もうとしていた盗賊が部屋の隅へと転がった。
「メイジか!?」
魔法で扉ごと吹き飛ばされた、そう考えた盗賊達は一斉に武器を構えた。隠し部屋には、顔に入れ墨を入れた男が立っている。こいつがメイジだろう、と。
男が隠し部屋から足を踏み出すと、入り口の影に隠れていた盗賊が叫んだ。
「…う、おおっ!」
杖は持っていない!そう判断した他の盗賊も、男へ剣を突き刺す。
やった!そう思った。誰もが男の血が噴き出す様を想像した。
だが実際に血を吹き出したのは、剣を向けた盗賊達であった。
盗賊の一人は自分の頭に剣を振り下ろしていた、またある者は自分の腹に剣を突き刺し、またある者は自分の顔に剣を突き立て貫通していた。
「あ、あひ」
「なに、なにが」
残った盗賊二人は、突然自殺した仲間の姿を見て、得体の知れない悪寒に襲われた。
男の顔に見える入れ墨は、暗黒の底へ繋がっているようであり、その『穴』から自分が見られている気すらしたのだ。
「うわああああああああああ!!」
なりふり構わずに叫び、逃げようとした盗賊の背後から、男はポケットから取り出した小さな青銅のつぶてを投げた。
つぶては逃げようとした盗賊の脳幹を破壊した、叫び声にならない声を上げながら、廊下の壁に激突し、そのままばたばたと足を動かして…しばらくの後、完全に動きを止めた。
「あ、ああああああ」
最後に残った一人は、足をばたばたと動かしながら失禁していた。
手に持っていた斧を投げ出し、命乞いをする。
「たすけてください、ころさないで、ころさないでください」
「質問に答えろ」
「はい、はい!」
「外の様子はどうなってる?城はどうなった?」
「し、城はもう瓦礫まみれのはずで、へえ、今頃、お宝探しに殺到してる頃で!」
「レコン・キスタの陣地は?」
「あ、あのナントカってでかい建物、王宮から西にちょっと離れた場所に」
「それは本陣か」
「いいえ、本陣はあっしらも知りません!本当です!」
「この辺りに、お前達以外に傭兵が居て、家々を回って略奪をしているのか?」
「いることはいますが、そんなには多くねえと思いやす、貴族の建物がある場所じゃありやせんから…」
「そうか…ああ、ところで、さっき誰かが言っていた、昨日の女ってのはどうした?買い取ってやってもいい」
「へ……買い…取る、ですか」
「そうだ。金貨ならある」
「へ、へへ、ああ、昨日の女ね、昨日の女…い、いや、そいつは、ジョンが殺しちまったんです、それにあんまりいい女じゃありませんでした!お望みならもっといい女を捜してきます!」
恐怖が薄れてきた盗賊は、これがチャンスだと思い、必死で気に入られようと言葉をまくし立てた。
「 だまれ 」
ベキッ
■■■
「………デルフ、周囲に人は?」
『俺の解る範囲には居なそうだ』
「そうか」
人修羅はデルフリンガーと共に周囲の気配を探り、家の周囲に誰もいないことを確かめると、盗賊達の死体を一瞥した。
「…くそっ」
『相棒、おめえ…』
「なんだよ。ハッキリ言ってくれ」
『相棒が何を経験したのかいまいち解らねーけど、相棒は心の中で謝りながらこの家に食料を探しに来たんだろ? 罪悪感の欠片もねー連中とは絶対に別モノだ』
「…気を遣わせたな。デルフ」
修羅は深呼吸すると、隠し部屋で眠っているルイズの額に手を置いた。
窓から差し込む明かりは少しずつ縦に伸びている、夕方が近くなっている証拠だ。
『爆発』で自分の体を焼いたルイズは瀕死の重傷を負った、人修羅の『メディアラハン』で完全に治癒されても丸一日眠ったままであった。
ワルドに裏切られたことがショックだったのか、それとも魔法の影響かわからないが、人修羅でもどうにもならない事態に陥っていた。
優しく、ルイズの額に手を乗せる。熱はない。呼吸も正常。生命力も魔力も満ちている。それなのに目覚めない。
「食料もない。ルイズも目覚めない。少ないとはいえ盗賊は辺りをうろついている。夜までここに留まるべきか…」
『俺が辺りを見回せば、相棒には見えない物陰まで見通してやれる、すぐ移動した方がいいんじゃねーか?こんな盗賊がまだまだ来るかもしれねーしよ』
この場を離れるべきと考えているデルフリンガーは、自分を使えと言うが、人修羅には別の懸念があった。
「使い魔や、竜騎士に発見される可能性は?」
『あいつらは夜目も利くから意味がねーな』
「そっか、夜目が利くなら昼夜の意味はないな。…あとワルドのことだ、奴がこちらの特徴を伝えていたとしたら、レコン・キスタに囲まれるかもしれない」
『どっちにしてもよ、周囲の状況が解らなきゃ動きが取れねえ。人の気配を探りながら町外れまで行って、逃げ出せそうなら逃げる』
「『逃走加速』しても風竜相手だときつい…逃げ出しやすい位置を取るのは賛成だ」
人修羅はクローゼットから地味な配色の服を探した。
女性の使用人が着ていたと思しき服を見つけると、それをルイズに着せ、フードをかぶせた。
ルイズに着せていた自分の服を着直すと、ポケットに詰め込んだ青銅のつぶてや、平たくした五寸釘のようなナイフをベルトに刺し直し、デルフリンガーの鞘を胸の前で斜めにかけなおす。
ルイズを背負った後、風呂敷包みのように布で体を固定する。
「よし。行くか」
人修羅はデルフリンガーの先導に従い、注意深く裏通りを進んでいった。
■■■
アルビオンの首都ロンディニウムは、過去に大火に見舞われ大きな被害を被った。当時の王は防火の観点から、石造りの家を推奨したとされている。
土地勘のない人修羅にとって、似たような家の並ぶ城下町は迷路のようなもので、頼りになるのは日影の向きだけであった。
戦場の音、つまり大砲の音や怒号はもう聞こえてこない。城は陥落したのだと嫌でも理解できた。
ルイズを背負ったまま、不規則に立てられた家々の間を走り抜けていくと、途中の家々から人の気配が感じられた。
この戦争はあくまでもニューカッスルの城を落とすための物であり、町外れに住む人々には直接的な被害はないはずだった。
だが、人修羅の記憶には自分以外の誰かの記憶が、マガツヒと共にすり込まれている。
ある文明では、買い戻すことも可能な『身分』としての奴隷があり、またある文明では『消耗品』としての奴隷があった。
ある地域では都市国家間での祭りを兼ねた争いとして戦争があり、またある地域では征服者による被征服民族の虐殺があった。
無数の戦争の記憶が、人修羅の中にうごめいていた。
人気の少ない草だらけの路地を通り抜け、割れた石畳の上を走り、崩れかけた家々の間をすり抜ける。
この辺りは古い平民街らしく、建物は不揃いな石と木の板で作られている。
乾いた砂だらけの通りは、雨が降れば泥となって足が沈むと想像できる程だ。
道には浅黒い肌の、年老いた乞食の姿もあり、現在は『貧民街』なのだろう。
黄色く変色した野菜を持った子供が、人修羅に視線を向けたのが解ったが、立ち止まる気はなかった。
しばらく走っていると、ロンディニウムを囲む外壁が見えてきた。
外壁は魔法学院よりも低く、防衛と言うよりは境界線として作られているように見える、この程度の高さなら飛び越えても問題はない。
飛び越えようと足に力を入れた、その瞬間、人修羅の視界に何かの影が映った。
「!」
崩れかけた家屋の影に隠れて、遠くの空を見上げると、竜に騎乗したメイジの姿が見える。
王党派の生き残りを捜しているのだろうか、念入りに城下を観察している。
幸いなことに、人修羅に対する特定の視線や害意は感じられなかった。
「こっちを狙ってる訳では…なさそうだな。王党派の生き残りを探しているのか?」
人修羅は少し考えて、ふと、この崩れかけた家屋に着目した。
屋根が半分崩れ、壁も三分の一が崩れているが、隠れるにはちょうど良い空間がありそうだ。
「デルフ、屋内に空間はあるか?」
『んー…地面が掘り下げてあるみてーだ。十分場所はあるな』
「よし。ここで夜を待つ」
竜騎士が向きを変えた隙を見計らって、崩れかけた壁の隙間へと滑り込む。
一休みするには十分な広さがあるが、床には砂が積もり、天井は低すぎるため立ち上がることはできなかった。
人修羅は比較的綺麗な床にルイズを降ろし、デルフリンガーを背中に結び直した。
「誰か近づいてきたら教えてくれ」
『あいよ』
人修羅はルイズの隣に座ると、そっと手を握った。
「ルイズ…」
■■■■■■■■■■■
まどろみのような、温かい液体の中にいるような、安らぎの世界…。
そこにルイズの意識があった。
その世界は無限に広く、永遠とも思える時間があった。
とくん、とくん、とくん……
聞こえてくるのは心臓の音だろうか、一定のリズムが聞こえると同時に、どこからか聞き慣れた声が聞こえてくる。
『そろそろ生まれるだろうか。医師のは数日中だと言うが』
『あなた、子を身ごもっている私以上に気にしてどうするのですか、もっと子供達の前では威厳を持って下さい』
『それは勿論だ。だがな、エレオノールの時も、カトレアの時も、そしてこの子が生まれそうな今も、男の私は何もできん。それが悔しくてな』
『だからといって、うろうろされては気が散ります』
『ううむ…』
『ところで、名前はちゃんと考えているのですか?』
『勿論だ。長男の名前、三女の名前両方考えてあるさ』
『………長男、長女、次はどちらを授かるのでしょう』
『そんなことを考えるなんて、お前らしくない、生まれてくれれば、それが何よりのことだ。男か女かなんて、王宮の連中が何を言ってるのかなど気にするな』
『…ええ、大丈夫』
『おまえとわたしの子だ。元気に生まれてくるさ…』
ルイズはその声に聞き覚えがあった、とても身近な人の声で、安心出来る声。
生まれる前から聞こえていたのだろうか、間違いなく父と母の声だった。
男か女か…王宮の誰かが言ったのであろう、その言葉の悪意を感じたのは物心ついてすぐの頃だった。
何処かの庭園で園遊会が行われた時に、ルイズを見た誰かが、わざとらしく『長男でないとは残念ですね』と言ったのを覚えている。
その言葉の意味は解らなかったが、その時はじめて父を怖いと思い、母が悲しそうにしていた。
その時からずっと心の奥に、得体の知れない不安が渦巻いていたのだろう。
自分は生まれてきてよかったのか、本当は、男の子が生まれるはずで、私は何かの間違いなのかと思ったことがある。
そして私は魔法が使えなかった。
どれだけ練習しても、何度も何度も繰り返しても、爆発するばかりで、一つとして魔法ができない。
その時から母は冷たくなった、父は厳しくなった。
私は落ちこぼれだから人一倍やらなきゃいけないんだ、魔法以外のすべてが完璧でなければならないんだと、そう思った。
でも今は、私が嫌われていたのではないと解る。
母は私たち姉妹誰に対しても冷たく、恐ろしかった。父はとても厳しいけど、とても優しくもあった。
何度も聞いた言葉が、意識の中でこだまする。
『貴族として』『貴族らしく』『貴族ならば』『貴族の』『貴族は』……
母は私を貴族として育てようとした。
父は私を娘として愛してくれた。
エレオノール姉様は私の失敗を見つけては怒り、学問を教えて欲しいと頼んだときは魔法学院以上に丁寧に教えてくれた。
カトレア姉様は私に、人を傷つけてはならいことと、家族は私をずっと心配しているのだと言い聞かせてくれた。
それなのに
わたしは
私は…
ここで眠っていて、いいのだろうか
いいはずがない
それでいいはずがない!
目を覚まさなきゃ
目を覚まして、私は私のやるべき事をやらなければ!
心地良いまどろみから、出なければ!!!
「ルイズ」
はっきりとした誰かの声が、ルイズの意識に届いた。
誰かが自分の手を握って、呼びかけている。
「ルイズ!」
「人修羅!」
■■■■■■■■■■■
「あ、ぐっ」
「ルイズ、ルイズ!」
「…は、ああ、人修羅?人修羅!」
「大丈夫か? 痛いところはないか?」
ルイズは暗闇の中で目を覚ました、ぼんやりと光る人修羅の姿は、消えゆく陽炎のようにも見えた。
だが、ハッキリとした手の感覚がある、人修羅はルイズの手をずっと握っていた。そしてルイズも、人修羅の手を強く握り替えしていたのだ。
「人修羅…ここにいるのね。私も、ここにいる…よかった」
「落ち着いた?」
「ええ、もう、大丈夫」
微笑みを浮かべたルイズが立ち上がろうとするのを、人修羅が慌てて制止した。
「ちょっと待て、ここは天井が低いんだ、頭をぶつける」
「天井?あ、うん…そういえば、ここは何処? どうなってるの?」
きょとんとした顔で問われ、人修羅は言葉に詰まった。
自分の体を吹き飛ばすような酷い目にあった後なのに平然としているのは、あまり良い兆候とは思えなかったからだ。
「どこから話せば…あのさ、ええと、ルイズはどこまで覚えてる?」
「ワルド様…いいえ、ワルド子爵の指輪をつけて、私が操られて、それで、私の魔法が私を吹き飛ばして…あっ、そういえば、腕が治ってる」
「腕、ああ。腕は治せた。ってことは、自分の怪我の様子まで覚えていたのか?」
「ちょっと違うの、あの、変な夢を見て…人修羅が出てきたと思うのだけど、その時私、片腕が、あ、それだけじゃなかったけど、酷い怪我になってたのは何となく解るわ」
「じゃあその時までのことはちゃんと覚えてる、って事だな…」
人修羅は、ルイズと別行動の間何があったのか、ルイズが魔法を使ってからどうやって逃げてきたのかを話した。
ミス・ロングビルを見送り、ウェールズ皇太子を助けたが、ワルドには逃げられてしまい、水のルビーも紛失…その後なんとか人目を避けて城下町まで逃げた、と。
「殿下は、生きているの?本当に?」
「ああ。衛士…だと思うが、側近の二人が別ルートから逃げると言っていた」
ルイズは辛そうに俯いたが、辛さに耐えて顔を上げ、人修羅の顔を見た。
「人修羅。あなたが居て良かった…。殿下がワルドに刺されて、私は、殿下を見殺しにしたのよ。でも、何とかしてくれたなんて、本当に…」
「違う。俺だけがやったんじゃない。ルーンを通して聞こえてきたんだ、ルイズの声が。だから助けに行く事ができた。…体は操られても、心は操られなかったんだ。よくやった」
人修羅がルイズの両肩に手を置き、優しく抱きしめた。
「うん…。人修羅、ありがと…」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
支援
その頃。 ガリアの宮殿、プチ・トロワ。
「うんしょっ」
「もう少しだホー」
イザベラは杖を宙に浮かせ、その上に立つという遊びをやっていた。
遊びと言うには少々特殊かもしれない、何せ足場は水に浮いた木片のようにふわふわと動くのだから、相当なバランス感覚が要求されている。
「上手だホー」
「おっとっと…慣れると結構面白いものだね。と、おっと、あら、あわっ!」
ひゅるんと杖が回転し、イザベラはたまらず尻餅をついた。
床にぶつかれば痛いはずなのに、まるでクッションの上に落ちたような感触だった。
イザベラは「ベッドの上じゃないし何?」と自分の下を見る。
「ヒホー…」
「あわわわっ、ヒーホー!大丈夫かい!?」
「大丈夫だホー、マダに踏まれるより軽いホー」
「ごめんよヒーホー、マダってのが何だか解らないけど、落ちても大丈夫な高さでやってるんだから、お前が私を受け止めようとしなくていいんだよ」
「ん〜〜でも、痛そうなのは嫌だホー」
「……あああああああもうヒーホー!お前は何て可愛いんだ!」
「ホ〜〜〜」
感極まったイザベラがヒーホーを抱きしめ、ごろごろと転がりだした。
しばらくして目を回したイザベラは、フラフラになりながらベッドへと腰を下ろした。
「さて、汗をかいたし、湯浴みをしたら寝ようか。お前湯浴みが嫌いだなんて、勿体ないねえ…一緒に入りたいのに」
「嫌いじゃないホー、苦手だホー」
「どっちでも同じさ。さて…」
床に落ちたままの杖に手を向け、くるりと手首を回転させる。すると杖は操り人形のようにぴょこんと起き上がり、ふわりと風に運ばれてイザベラの手に収まった。
自分の身長ほどもある杖を頭上で回転させると、空気中の水分が集まり、宙に直径1.5メイル程の水球が形成されていく。
「むむ…やっぱりまだ難しいね。『火』の動きまでは…ああ、お湯にならない…。まあいいか」
イザベラは無造作に服を脱ぐと、宙に浮いた水の球体へ飛び込んだ。飛沫が上がることなく、するりと水の球体に入り込むその姿は、飛び込むと言うより滑り込むといった方が適切かもしれない。
「イザベラちゃん凄いホー」
ヒーホーが大げさに手を叩いた。
「でも、こんなのは、ヒーホー達の魔法じゃ、初歩中の初歩なんだろ?この間夢に出てきた、スカアハと、オーデーンが言ってたじゃないか」
「あの二人から見たら何でも初歩になっちゃうホ」
「ぬるいけど、気持ちいいや…ふふ、自分が魔法でこんな事まで出来るなんて、ふふふ、ふふふ」
笑みを浮かべたイザベラが、息を止めて水中に潜り込む。くるりくるりと球体の中を泳ぐと、球体の真下からするりと抜け出し、杖を握りしめて体に熱を集めた。
みるみるうちに髪の毛まで乾いていき、寝るとき専用のキャミソールに着替える。
「さーて花壇に水をやるかね」
イザベラが杖を窓に向けると、『念力』で窓を開け、水の球体を風で削り、雨のようにして外の花壇に降らせた。
「エアロスが楽しそうだホー」
ヒーホーが見たイザベラの表情は、とても明るく、喜びに満ちていた。
ヒーホーが来る前からはとても想像できないほど、イザベラの心は満たされている。
精霊は、命令を与えても動いてはくれない、お互いに喜びを感じたとき最も力を発揮してくれる。
そのことに気づいてからの上達は早かった。
戦闘力では、一般的なラインクラスのメイジに劣るが、手足のように魔法を使いこなすという点でならトライアングルにも勝る部分があった。
今はまだその力を無邪気に楽しんでいる。
だが、次にタバサと向き合うとき、果たしてイザベラは優しいだろうか?
「ニンゲンも、アクマも仲良くしたいホー」
ヒーホーの呟きの意味が、今のイザベラにはまだ解らなかった。
■■■■■■■■■■■■■■■
しえん
以上です。
ルイズ復活!ルイズ復活!
投下乙でした
乙!
盗賊達に使ったのはテンタラフーか?
ニューカッスル突破してもうロンディニウムとはスタミナスゲー
投下乙です
テンタラフーだと剣振る前に死ぬだろう
テトラカーンかマサカドゥスでは
うおお人修羅キテター乙
ようやくというか、呼び方変わったね
ハルケでもヒーホーはなごみ系か
FE紋章の謎のナバールが来たら女キャラには比較的優しいけど
それ以外には容赦ないだろうな
「俺は女を斬る剣は持っていない」と言ってたし
ビラクとか狼騎士団の面々は二次のイメージに引っ張られ
キュルケを無視したりと女に冷たいが男にはそうでもないとかなるかも
イザベラちゃんとヒーホー君、キタワァ*゜゚.。.*・゜(n'∀')η゚・*.。。.:
ヒーホーくんにはできるとこまでお世話になったな
なんとなく魅惑の妖精亭にフェンリルとか思いついた、オカマ二人体制ってだけだけど
ゲート・ガーディアン
究極完全体グレートモス
混沌幻魔アーミタイル
いくらルイズでもこいつらを召喚するのは無理だろう
アクマの人キタワァ
相変わらずヒーホー君とイザベラ様かわいいわぁ
乙
そういえばイザベラは救済率ダントツなのはなんでだろう
アクマ乙!
かわいいよ。ヒーホー可愛いよ。
東京暑いから冷やしに来てよ。
>>72 まだ救いようがあるからじゃね?環境さえまともなら……って性格だし、特にタバサ王権復帰後は
(そのときタバサがどうなったかはさておいて)
アクマ乙!
誤爆は、まぁ、お陰で更新を知ったよ。
『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』のアローン(原作終了後)は召喚されて元の世界に戻れず
親友や妹と三人で暮らすことが出来なくなったとしてもそれは今まで多くの罪を犯した自分への罰と解釈し、
ハルケギニアで償おうとするだろう
彼は戦闘能力自体は全く不明で、むしろ一般人クラスだろうけど
かつて神を依り代にしていた時に剣を使っていたから
神の力を完全になくしてもデルフリンガーを多少は使えるかも
しかし彼はまた年上の女性にいきなりキスされる事になりそうだ
>>73 キングさんが来てホーリータウンにナッチャウヨー
RPGからなら聖剣伝説はまだないよね
リースやアンジェラにはハルケの王家はどう映るだろうか
精霊魔法つかえても救済になるのだろうか
最悪異端認定でアボンだろ
>>36 許可で出たとして自分はエタらずにきちんと締められるのか?
というか今は原作がそうなるかどうかの瀬戸際だろう
>>78 (特にタバサに比べて)系統魔法の才能が無いのがコンプレックスなんだから精霊魔法だろうが才能があるのは嬉しいだろうし
明らかに始祖の血を継いでるって言うか直系を簡単にあぼんはできないんじゃね
最近ハンター×ハンターの再アニメ化が話題になってるけど
意外とハンターからの召喚って無いんだな
完結してない作品はクロスしにくいからな
>>81 よそではあったらしいけど今は消えてる
旅団の方々が召喚されたみたい。読んでみたかったよマジで
完結してない作品でも、死亡キャラだったらまあ出しやすいと思わないでもないけどどうかな
ワンピから火拳のエースを呼んで生き返らせてほしいと思ったのはたぶんおれだけじゃないはず
生きろ、先生。
聖剣伝説ならレンジャーなホークアイが召喚されてるぞ
1.2話だけだが
後短編にサボテンくんとシャドウが居るぞ
仮にハンターを自分で書くとして、まずルイズと契約させるまでの交渉シーンすら書ききれる自信がない
聖剣伝説のシャルロットとかなら
契約できそう
実写版マイティ・ソーからソーを召喚
親和性は割りと高いと思う
>>76 キングと聞いてキバの過去キンさんと5Dのジャックが連想されたんだが
>>90 元ジャックだとルイズの生活費がガンガン削られていく光景が眼に浮かぶ
>91
マイティ・ボンジャックと申されたか。
球磨川召喚SSを頑張って考えたけどチートすぎて扱えなかった…
ぐぬぬ
球磨川もだけどめだかキャラはチートより性格を再現するのが難しいだろうな
あの言動の個性をssで復元できたらたいしたものだ
あとコブラのハードボイルドさやボーボボのハジケ具合も再現するのは大変だろうて
かくいう原作サイトとルイズのレモンちゃんはとてもまねできん
アルビオンからの帰還だけは安泰だな>マイティボンジャック
聖闘士星矢LCの黄金達で妄想
シオン:デルフリンガーをかっこよく(?)修復する
ハスガード:何故か教師になっちゃう
アスプロス:あらゆる難題も無茶苦茶な理屈で解決
マニゴルド:ギーシュは冥界に送られ、帰ってきたら改心
レグルス:天才だからとルイズに嫉まれるが、当人はそれを知って悩んだりする
アスミタ:電波だから想像出来ん
童虎:良い師匠になりそう
カルディア:腕じゃなく心臓が燃えてルーンが出そう
シジフォス:ルイズは貧乳だがロリと認めるかどうか微妙
エルシド:左手がなんかパワーアップ
デジェル:本の虫
アルバフィカ:キスしようとしたら拒絶され契約不可能
キング…サザンクロスの人が浮かぶなぁ
タルブ村にサザンクロスの旗があって、シエスタのお爺さんがハート様になるとか?
>>97 メイドさんの格好して黒髪のかつらつけたハート様がリアルに脳内に出てきたじゃねーかwwww
聖剣3の紅蓮のだったら死にかけで召喚>寝てる間に契約とかかな
聖闘士星矢LCは杳馬パパ転生ジョセフで妄想した。
召還されるのはもちろんオウルのパルティータママ。
そしてその間には息子のテンマが産まれる。
このペガサスは先代、現代と違い貧乏暮らしではなく、
裕福でしかも王族として育てられるペガサスという異例の扱いとなる。
紅蓮の魔導師は落ちこぼれの苦悩を知る人だから
デュラン・アンジェラ編後だったらきっとルイズの支えになってくれる
ルーンの力を使うのは抵抗があるかもしれないが
異色の組み合わせになるかもしれないが
バトルアスリーテス大運動会から神崎あかり召喚。
どこか境遇が似ているので、ルイズにはいい師匠になるかと。
巨乳でワルキューレの拳打を弾くわけか
スカロン「私のほうがおっぱい大きいわ!」
ジュリオ「お前の魅惑の妖精亭より面白い場所なんざ、もはや本当の地獄ぐらいしかあるまい」
>>107 …このスレの住人が今夜魘されたら間違いなく君の責任だwww
ひ ど い も の を み た
もうこうなったらルイズにリースを召喚させて広場に触手を生やすしかあるまい
このスレはブタを飼ってるのか?ブタは屠殺場へ行け!
ソニックがギーシュに召喚されるってのは考えたけど妄想の中だけで終わった。
ソニック・ザ・ヘッジホッグとかやってねー。やったことがあるのはソニアドDXとソニアド2バトル
ぐらいだぜ・・・
ノボル先生、無事に手術成功したかな
>>107 アレ? 普通にオモロですんじゃった俺って……
>>107 お嬢の浴室で耐性が付いたオレには通用しねえ!
拳王ジョゼフにタバシロウが「エアニードル!あたぁ!!」なんて夢に見てないぞ!
タバシロウってなんぞ
タバサケンシロウじゃね?
なんかコミケで似たようなの見た覚えが……
デブの魔人ブウが召還されたら
ルイズは喜ぶかな?ガッカリするだろうかw
ギーシュがチョコにされちゃう…
120 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/03(水) 16:58:48.40 ID:kETbKd++
わたしはノボル先生の復帰を祈っている!そして祈っている!
「元気になったんで完結延期で ^^」
銀魂からマドマーゼル西郷召喚
攘夷戦争初期に褌一丁で天人の戦艦一つ沈めたオカマ
…あれ?いろんな意味で最強じゃね?
とりあえず男性陣は強制女装確定
レコン・キスタによるトリステイン侵攻の際、
スカロン(ビスチェ装備)と一緒に戦艦を全部墜とすのか
>>119 サタン(と犬)も同時に召喚すれば無問題。
>>122 西郷がウェールズに召喚されて青髭空賊団を結成
その後ルイズに召喚された万事屋メンバーから突っ込まれるところまで妄想できた
>>125 その青髭空賊団とやらにナチュラルにジョゼフが混じってるのも妄想できた
魔人ブウは人間の女にチューしようとしてたから
恋愛対象に人間も含まれる→ルイズとチュッチュして善ブウルート
という可能性も
御飯がカトレアに召喚されるつづきまだかなー
そして必殺熾火蒸らしですね、わかります。
>>126 イザベラは汚れたバベルの塔の建造にいそしむのかね
今戦う司書シリーズ見てるんだけど
モッカニアとかヴォルケン読んだら面白そうだ
ルイズはバビディよりマシだから
デブブウでも反逆されないかも
仮にだが、純粋ブウにルイズが捕食されたらツンデレなブウができあがるのかねえ
色が同じだからあまり違和感を感じない…のだろうか
フュージョンは胸の大きさが同じくらいの相手じゃないと出来ないぞ!
ルイズ「お姉さまアレを使うわ」
エレオノール「えぇ、良くってよ」
何故かこんなシチュエーションが頭に浮かんだ私。
とりあえず蹴られるのは才人かなぁ。
137 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/04(木) 01:37:39.67 ID:bMjnO+Ji
遠山キンジ召喚
>>132 正直初期のルイズはかりかりしてやばい
実力を見せたら違うだろうが
ブウの力的に考えて実力を見せる=死人がでるだからな
ハルケギニアにもドラゴンボールがある設定にしないとまずいだろうか
ギャグキャラ相手に実力を見せて貰えば良いんじゃないかな・・・
鳥山先生もギャグキャラは死なないから最強って言ってた気がするし
とりあえず山とか吹き飛ばして目玉飛び出せばいいだろ。DBの鉄板演出
ブウはシエスタと仲良くなりそう
親切だしご飯くれるから
サタンとルイズじゃ性根が違うからブウを改心させられんだろ
サタンはセル編で既に内心では自分が井の中の蛙だったことを認めていたし
要領も悪くなかったからブウと仲良く出来たけど
原作初期のルイズはあの性格だからそんなの認めないだろうし
上から目線で態度も悪いから、召喚直後にブウに殺されるのがオチ
ネコマジンのノリでいけば大抵の事は大丈夫だろ
アルシャード・トライデントのエクスマキニャで、なんとまあみずぼらしい使い魔か。
ネコマジンは公式でベジータ以上だしな
使い魔としていいなら人造人間16号がいいと思う。機能停止してる状態で召喚して、契約で起動させればいい
使い魔があまりに立派だったり、そうでなくともまともな性格だと
どうしてもルイズの悪いところばかりが浮き彫りになるな
初期のルイズが如何に酷い奴だったかが分かる
才人だからまだギャグで済んでいたんだな
>>147 >使い魔があまりに立派だったり、
……ご立派……そうか……
ルイズは正しい貴族であろうとしてる分、他の貴族に比べたらまともで立派なはずなだがな
初期の態度も半分はサイトが悪いし
原作初期のルイズは立派な貴族を目指してるとは思えんぞ
まだそこまでルイズというキャラが固まってなかったからだろうが
ドSとツンデレという記号を擬人化したみたいなキャラだったし
アニメだと悪い方に誇張されてたしな
>>131 モッカニアの「本」なら召喚されてたぞ
あの人も帰ってこないかなぁ
白の書・・・
黒の書・・・
ルルイエ異本・・・
セラエノ断章・・・
ネクロノミコン機械語版・・・
全知全能の書(魔王ゼタ)・・・
スケベ本・・・
思いつく限りの意思を持つ本たち
ネクロノミコン原本と血液言語版は既に召喚されてるのであえて除外
ナコト写本もルイズに力を貸す光景が想像できないというかあり得ないので除外
まぁ、ハンターホラーだったらルイズを乗せるだろうけど
バイク単体で召喚されてもマスターの胎児が無限螺旋に置き去りじゃ・・・駄目かもな
>>150 忠実に原作再現しなくてもいいんじゃね?
二次じゃ母上がやんちゃしてた(違)とか知ってる事もあるし。
先生の手術、成功したそうだぞ。
それは良かった
他のSSサイトの話だが、ゼロ魔関係だけ何故か更新が途切れてるの多かったけど
やはり気になって創作どころじゃなかったんだろうな
途切れてるじゃなくて、更新が止まってると言いたかった orz
ここ2〜3日ね
日本沈没の人や、魔界水滸伝の人とか作家さんの訃報が続いてたからなあ。
作品読んだこと無い作家さんでも、訃報聞くと悲しくなる。
>>152 マルコシアス召喚も面白そうな気がしてきた
ルイズって以外と肉体派だしw マージョーリーみたいな戦いかたしても違和感がない
出版社は所属作家を定期健康診断にかけさせるべきだとおもうあw
>>154 このまま経過も順調であることを祈る、切に
>>158 忘れてた、アニメしか見てないからなぁ
とりあえずルイズによる「バカまる子!!」は割と違和感なく脳内再生余裕でした
>>154 祝 手術成功!
先生も、目が覚めたとたん
「じゃ 体起こしてみましょうか?
できましたね〜 ちょっと 立ってみて〜
はい、それじゃ 歩いてみましょうか!」
てな具合に 看護婦からスパルタされているんだろうか?
その看護婦が釘宮声だったら死人も起きるな
科学の発展の犠牲にならなくて良かったぜ
九州某県の県病に入院してたら8千馬力のサイボーグに改造されてたな
サンチン乙
本当にここの平均年齢は謎だ
名作もしくは迷作に年齢なんざ関係なかと
下は厨房上は50代ぐらいまでは余裕でいそう
実は親子もいたりして
つまり饅頭と初音が合体してオーフェンを消滅させる!?
誤爆なんじゃよ!!
そういや小ネタで栗饅頭召喚話があったし、ジョジョスレにもチョコレートを召喚したのがあったな。
他に菓子類で召喚したら良さげなのってあるかね?
アンパンマン
そういやスレイヤーズ、オーフェン、リウイ、スクライド、ダーカザン、血+、舞Hime、ROD、ケロロ軍曹がクロスオーバーするゲームが冬に発売するな
ヒットして続編が出ればロードス島やアルスラーンの参戦だって夢じゃない
せやけどそれはただの夢や
>>172 ち、チョコラータ…
チーズおかきさんでもいいな
チョコ!トラ!チーター!
だんご三兄弟とか泳げたいやきくんとか
手術成功が数年程度の延命に過ぎないとしても喜ばしいことです
お菓子……ハルケギニアにおいてもきのこたけのこ戦争が始まるのか?
ちなみにオイラはきりかぶかおにぎりせんべい派
>>159 「売れてない作家に何でそんな事してあげなきゃいけないのかな?馬鹿なの?死ぬの?」
アニエスはすぎのこ村派
破壊の杖はグルメスパイサー
オークや火竜は捕獲レベルどんくらいかな
花開院ゆら召喚
京都編後だったら虚無習得したルイズよりも強そうだな
破軍融合の破壊力半端ないし
でも式神が無いとただの小柄な女子中学生
兄の花開院竜二を召喚
式神の扱いもすごいけど口八丁だけでも十分生きて行ける気がする
ただこの兄妹才能有るのに口癖が「自分には才能無い」だから完全にルイズへの侮辱だよな
Fallout3からリバティ・プライム召喚
推定全長20m級の鋼鉄の人型兵器。目からレーザーを発射し小型核爆弾を投げて戦う
装甲は異常に厚く、歩兵手持ちの核兵器では何発受けても無傷
ギャグとか蹂躙物にしかならんな
>>186 民主主義を大音量で叫ぶロボとか胸が熱くなるな・・・
ヒーローズファンタジアにスクラッドプリンセスやザ・サードが参戦しないのはちょっと納得できないですね
>>186-187 動画で見たことあるけど、あれ勝手に動いて敵を蹂躙してくんだよなw
プレイヤーの立場がねーぞwww
リナとオーフェンは、どこの書き下ろしの記憶を引き摺ってるんだ、これw
191 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/05(金) 20:23:24.77 ID:46set9PI
カリカリッ…ガリッ……カッカッ
チョークで何やら書いている音がする、薄暗い部屋に鎧が二つおいてあり
そこには科学薬品や本などが置いてあった。そこにいるのは幼い少年二人が居る
「できた、アル」
「うん・・・」
「大丈夫、完璧だ」
彼らは円のような物に真ん中にある砂鉄のようなのが置いてある
少年がアルに真剣な顔で言う
「やるぞ」
「うん・・・」
二人は円に両手を突いた、すると光が現れ、円の中心の物体が一際光り出した。
錬金術とは、物質の構造を理解し、分解し、再構築する科学技術である。
それは、上手くすれば鉛から黄金を生み出す事も可能になる
しかし、科学である以上、そこには大自然の原則が存在した…。
光に満ちた部屋が一瞬で不気味に紫の光に変化した
兄が振り向いた瞬間・・・
質量が一の物からは、一の物しか生み出せない…
等価交換の原則
「うわぁぁああぁぁぁ!!!」
村に雷が落ち、少年の悲鳴がこだました。
大陸歴 1910年 2月 兄 12歳 弟 10歳。
等価交換の原則は
「何かを得るためには、それと同等の代価が必要」である事を示している。
それは…教訓なのだろうか。
人は何かの犠牲なしに、何も得ることは出来ないと。
暗くなった部屋には煙とイナズマが流れてる
「…ッアル…?……アル…ッ……アルフォンスッ!」
少年が弟の名前を呼んでも、アルが着ていた衣類や靴だけが残っていた
「くそ!、こんな事があってたまるか!!・・・こんな・・こんなはずじゃ・・・。畜生ォ!!・・・持って行かれたぁ・・・!!」
彼は痛みに絶えながら叫んだ、少年の左足は持っていかれてしまった
左足から血が流れいる
192 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/05(金) 20:24:13.17 ID:46set9PI
「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・母さん・・・」
少年はそう言うと、円の中心にあった物体を見た
すると、蒼白い手がぬっと出てきて、手招きをしていた
彼が笑顔を見せたが・・・
手と共にグチャグチャと不気味な音が聞こえてきた
彼の笑顔がどんどん消えていく・・・
煙が晴れて、その中心にあったものは・・・
「!!ーッ」
それは、もう人の姿でも無かった
不気味な形、心臓の音と共に
この世の人間とも思えないものが現れた・・・
「うあぁあぁぁぁぁ―――…ッ」
そして現在、イーストシティの第一図書館には金髪の少年と大きな青い鎧が本を探していた
「はぁ・・・やっぱりここにも無かったか」
『うん、やっぱり石のありかはまだ無いんだよ、きっと』
「一度司令部に戻るぞ。ん?」
少年が歩こうとしたとき、前に緑の光があった
二人は夢かと思った、しかし眼をこすってもそれは夢ではなかった
「なんだこりゃ?」
『兄さん、危ないよ!!』
鎧の少年の忠告も聞かずに、彼はその光に指でつつく
そして手を光に当てたら、いきなりそれは彼の手を引っ張り出した
「!!。何だよこれは!?」
『兄さん!!』
少年がいくら逃げようとしても、光は彼の手を離さなかった
そしてとうとう彼はその光に吸い込まれた
『!!!』
少年を吸い込んだ光はその後に消えてしまった
『に・・・兄さん!!!』
その頃、彼は光の中に吸い込まれ、突然少女の声がした
『我が導きに答えなさい!!』
「!!、誰だ、一体誰なんだ!!?」
彼の名はエドワード・エルリック、国家錬金術師で二つ名は「鋼の錬金術師」と呼ばれている
193 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/05(金) 20:27:10.86 ID:Pd3dvh0t
>>188 ポン刀枠はBLOOD+のサヤさんがいるじゃないすっかー!
サヤを召喚してルイズをシュヴァリエにしちゃおうぜい。
>>192 弟が鎧になってロリになって
SAN値直葬じゃないですか
いちおういっとくけどこのスレsage進行だから
あんた、初めてかい?
投下予告も無い、タイトルも無い。
終了の申告も無いが これで終わりかい?
そんなこっちゃ 怖〜いお兄さん達にドヤされちまうよ。
他のモンの投下を見て ここの作法ってのを覚えた方がイイね。
sageねぇとか杖抜けよ
>>182 んなこと言って売れっ子も亡くなったら元も子もないような気がするんだがw
出版業界はやっぱ編集とかの健康診断もないのかね
ひたすら利益だけを追求する両津商法なんじゃないの
漫画の方だと、それこそ壮絶な話がいくらでもあるしな
マカロニほうれん荘の鴨川つばめ先生とか
>>201 当時合法だった覚せい剤っぽい薬使ってでも原稿落とさなかった
連載終了したいけど編集部が許可してくれなくて段々原稿が荒れていった鴨川先生のことかー
>>202 コミックス最終巻の最終話見てると、ほんと切羽詰ってたんだなってのが良く分かる
>>197 言ってることは正しいけど、なんだか見てて恥ずかしいレスだな。
>>204 いや 自分でもそう思うんだけど、
マジになると カドが立ちそうだったから…
× ドヤされる
〇 ドヤ顔される
だったら酷い話だな
好楽がルイズに召喚される訳か
ファイナルファンタジー6から「しょくしゅ」を召喚
黒禍の口笛召喚
ロマサガの触手は凶器
>触手
デスコ
タルブにはフォースジョーカー:タケオが召喚されており
シエスタがスーツを継承する
ガンダールヴ補正は無いが、あのクラスはキャラの強さ=スーツの性能が全てみたいな感じだから構わん問題ないってことで
>>207 一瞬、円楽師匠(先代)が召喚されたと読んだwww
>>193 ポン刀っていうと椿定光が連想しやすいな
不殺のインスタントガンダールヴ、名刀電光丸を召喚
そういえばあの刀、宮本武蔵にくれてやったはずだが何故か劇場版に出てたな
原作でも実際デルフが日本刀になったよね
既に小ネタで召喚されてるけど
ルイズ「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…」
某アメリカ合衆国大統領「How do you like me Noooooow!!!!!!!!!!!」
レ キ シ ン ト ン 号 轟 沈
これだとストーリー詰むなw
大統領・・・
SPに生命よりもキン●マを優先された黒人大統領・・・
世界征服されて白旗揚げて土下座足蹴までされたのにブレストファイヤーされた黒人大統領・・・
大統領なら、ピリカ星のパピが思いつくな。
大統領だったら、これからだろう
つ「幼なじみは大統領~My boyfriend is the PRESIDENT」
大統領と言えばメタルウルフカオスのあの大統領でしょ
インディペンデンスデイの熱血大統領もいるな
まず、どうやってギーシュを殺……倒すか悩むという無駄なことをするんですね。
3機編成の無人機によるコンビネーションでボコるのはどうか。
この流れで幼なじみは大統領(マイケル・ウィルソン)って内容のMADがあったのを思い出してしまった。
>>218 その前に城を包囲している敵軍を殲滅してそうだなw
米軍全てを敵に回して勝った大統領なら、高々数万程度の軍などジェットコースター並のハイスピードでローストチキンにしちゃうでしょう
「皆さん、私がフェリタニア第二合衆国、初代大統領ピアニィ=ルティナベール=フェリタニアです」
フリーデン・イン・デア・ハント
フリーデン・イン・デア・ハント
やはり私としてはラグナ大統領を推さざるを得ない。
こんばんは、お久しぶりです。SeeDの書き手です。
ようやく最終話までが書き上がりました。そこでまず今日はラスト二話の内の一話から。
ところでゼロ魔にはティファニアが、FFにもZにティファが居ますが、皆さんは「ティファ」という音を聞くと、モードとロックハート、どちらを真っ先に思い出すでしょう?
僕は断然、アディール派で。
では他にいらっしゃらなければ00:25より参ります。
mission26 Arutimishia
「目処が立った!?」
エスタ大統領執務室。
報告に来た親友の言葉に、ラグナ・レウァール大統領はがばと立ち上がった。
「ああ。スコールくんの居る時代に、エルオーネが『接続』できる魔女が見つかったんだ」
「そうか……ならもうじき帰ってくるんだな!」
うんうんとしきりに頷き、ラグナは少し涙ぐんだ。
「ただ……問題もあってな」
「問題?」
キロスの言葉に、ラグナは首をかしげる。
「ああ。その時代に居た、接続出来る魔女というのが……」
現在、ラグナロクはアルビオンへ向けて飛行中だった。
受けている護送任務はモード大公国から。乗っているのは、元ウェストウッドの村にいた子供達だ。
「すっごーい!テファ姉ちゃんがお姫様なんて!」
「あたしたちも、お城に住むのかな?」
「俺、テファ姉ちゃんを守る騎士になるんだ!」
「ばっかでー。騎士ってのはメイジがなるもんだぜ?」
「成れるよ!今は平民でも使える魔法があるんだから!サイファーだって騎士だもの!」
ラグナロクのキャビンは、実に喧しかった。
「一応言っておくが……状況は決して良いとは言えない」
喧噪の中、一番年嵩の少年に、アニエスは小声で告げる。
「大公女は未だに敵は多い。今回君たちを連れてくるように依頼を受けたのも、連れてこれるぐらい情勢が安定したのではなく、目の届く範囲に置いて警護しなければ、人質に取られる可能性が出てきたからだ」
「判ってるよ。俺だってこの三ヶ月ただ孤児として暮らしてたわけじゃないんだぜ。近くの村で盗賊団が出たときなんかも、討伐団に積極的に参加して腕を磨いて……テファを守れるようになったんだ」
気負いを想いで支えて、少年は窓の外を睨む。
そんなキャビンの一つ上、ブリッジに居るのはスコールとジョーカーだ。
「ハルケギニアの上空を通過。海に出る」
機外カメラで雲の狭間に見える青を確認し、スコールは確認の言葉を告げる。
「何の問題もなく着けるかな?」
「飛んでいる間はラグナロクに誰も追いつけない。敵襲があるとするなら、着陸したときだ」
それでも、最も注意すべきは孤児院近くに停まるトリステイン側での事で、完全に出迎えの用意までしているモード大公国側では然程気にしなくて済むだろう。
「ところで、ジョーカー」
「ん?」
「お前とアニエス……いつからの仲なんだ?」
「……意外だね、委員長がそんなこと聞くなんて」
「普通なら、聞かないが……」
軽く首を振りつつ、その点には同意する。
「最近のアニエスがメンタル的に落ち着いているのが、そこに原因があるんだとしたら……ガリアでのオルレアン派からの依頼が終わってからか?」
「……良い勘してるね、委員長も」
苦笑いを浮かべつつ頷くジョーカー。
「意識してたのは、お互いに前からかな。委員長がお酒付き合わないから、自然に愚痴やら何やらは俺の方が引き受けてたからね。仲良くはなってたよ。
それで……ガリア王ジョゼフとの戦いの時一回全滅しかけたんだって?あの後振る舞われたビールも入って、戦闘中の死の恐怖から来た吊り橋効果も手伝って……かな」
「成る程な……ジョーカー、言わなくても判ってると思うが、俺達は……」
「この世界にとっては行きずりの存在、だろ。判ってる、俺にだって夢はあるからな。俺達の世界に帰る。その前提で生きてる」
スコールの言葉に、軽くジョーカーは頷いて見せた。
先の戦乱での被害も少なく、また元々マチルダの伝も強いシティオブサウスゴーダは現在公国の首都となっている。
無事にアルビオンへ子供達を送り届けて、マチルダと久しぶりに会う。ジョーカーは子供達と別れをしていて、スコールはかつて孤児院に送り届けたときと同じにアルビオンで留守番を決め込んでいる。
サイファーがいればジョーカーの方に留守番を頼んだかも知れないが、現在サイファーは急激に拡大した領土の平定のため、アルビオン中をかけずり回っていた。
「それで、治安は維持できているのか?」
「それが……あたしも戸惑ってるんだが、本当に静かなもんさ。テファのことについて、もちろんあれこれ言う連中もいる。直接的に攻撃してくる奴もいるが……はっきり言って村にいた頃に迷い込んできた山賊やらの方が余程多いくらいなんだよ」
困惑顔でそう言いつつ、マチルダはティーカップを口に運ぶ。
この辺りの事情は建国に遡る。
前に述べたとおり、アルビオンの人々は元々地上国家のトリステインやゲルマニア、ガリアに分割統治されていた状況を快く思っては居なかった。ティファニアを簡単に受け入れた一つめの理由は、元々のアルビオン王家の流れを組んでいたからだ。
第二に、その滅亡した旧アルビオン王家の扱いにある。
ティファニアが玉座に着く際に公に改めて大きく宣伝したのは、ティファニアの家であるモード大公が廃せられるに至った経緯である。
勿論、アルビオンの人々はモード大公がエルフと関わっていたことを知っているのだが、ここで二つの事実を加える。則ち、モード家を廃した王家は滅び、そしてモード家の忘れ形見に虚無がいたことだ。
これを踏まえて、旧王家が滅びたのは虚無を蔑ろに扱ったために始祖の怒りを買ったのであるとし、ハーフエルフのティファニアの統治の正当性を虚無であるという一点で強調する。トリステインの新女王の存在もその理論を後押しすることとなる。
こうしてお膳立てを整えた上で現ゲルマニアからの資金援助を受け、まず第一に唱えるのが民達の暮らしの改善だ。地上で数少ない、殆ど戦場になっていない土地から食料を買い貯めていたゲルマニアは、大量の麦をアルビオンへ輸送。その統治の手助けとしていた。
露骨な人気取りと揶揄する者もいるが、少なくとも現実として餓えずに暮らさせてくれる王の登場にアルビオンの民達はそうそう表立った非難を口にはしなくなった。
統治の最後のツメでゲルマニアの名が出てきたが、これらのことを計画したのは全てオットーである。ついでに、ティファニアの母親であるエルフが熱心なブリミル教徒であることも流布しようとしていたのだが、こちらは上手く噂に乗らず、失敗している。
噂流布の意図としては、対ロマリアにおいての味方の増加を計ることがあった。
現在のアニエスがブリミル教徒を自認しながらも、教皇庁に対しては不服従の心を固めつつあるのと同じように、エルフへの敵対心を煽るこれまでの教えとハーフエルフの虚無という矛盾を認識させ、現在の教皇庁への疑心を芽生えさせようとしたのだ。
一応この意識改革は、エルフを血に加えているという事実を抱えるモード朝にとって、支配を盤石にするために非常に重要な一点であった。
この思想転換はティファニアの息子がその玉座に着く際に、国教会の設立を宣言すると共に成されることとなるのだが、やはりスコール達には関係のない話だ。
「まぁ、そんなわけで、まだしも目の届く範囲にって事になったんだけどね」
「判るさ。教皇庁の影響力の強いトリステインに置いておくのは、確かに得策とは言えない」
「……何か、あったのかい?」
「いや……実害はないが、私の幼なじみによると、あの子達の素性を探ろうとしていた連中が居たらしい。そのせいか、孤児院の中でも若干存在が浮き始めていたようでもある」
そのウェストウッドの子供達を探っていたのは、現トリステイン王朝の間者達だ。
現トリステイン女王が即位したのは教皇庁の肝煎りが有ってのことだが、前のガリアでの偽女王騒動を受けて、現王朝の実質的政治主導を握っているラ・ヴァリエール公爵は危惧を抱いた。
娘も同じく偽物にすり替えられるのではないかという直接的な危険もさることながら、ガリア、ゲルマニア、アルビオンの三国が同盟を結び、ロマリアとの冷戦状態に入っているのだ。
ハルケギニア全体の流れが、ロマリアから離れつつある。これ以上ロマリアという船と一緒にいてはトリステインまでが沈没しかねない。そしてそうなればやはり、彼の娘はトリステインの元首である以上タダでは済むまい。
同盟とは行かないまでも最低限、ゲルマニアとの和平は締結しなければと、元々隣領地で、表面上は親交のあったツェルプストー家の娘を通じてガリアへ仲介の当たりをとっていた。
その途中――公爵としては驚くべき事だったのだが――何と同じく教皇庁と手を切る方法を画策していた“鶏の骨”マザリーニ枢機卿から、より近い道を見つけたかも知れないと連絡が入った。
その枢機卿が見つけた道というのが、ウェストウッドの子供達であった。
元々スコール達を監視し続けていた枢機卿は、トリステインの誰よりも早く、孤児院に入れられた子供達の存在に気づき、また教皇庁の情報網を通じてその素性や縁者などにも精通していた。
それが事ここにいたり、自らの祖国のために枢機卿の身分もかなぐり捨ててどうにか当たりを付けようとしていたのだ。
その際に居たのがアニエスの言う、素性を『探ろうとしていた』者たちだったのだが、結局彼ら自身がアルビオンへと行ったためにその道は閉ざされることとなった。
「ふぅ……間一髪だったのかもねぇ」
マチルダが深くため息をつくが、一応取り越し苦労であることはここに明記しておく。もし一月以上移動が遅れていても、国を救うためのパイプ役として、子供達はむしろ下にも置かぬ扱いを受けていただけだろう。
尚、『近道』を失ったトリステインだが再度改めて、今度は公爵と枢機卿が連携してツェルプストー家を通じガリアへの仲介を依頼。二月後には無事、ゲルマニアとの和平を締結するに至り、国体は長く保持されることになる。
公城を出て、ジョーカーと共にラグナロクへ戻りハンガーへ上がったところ、驚愕に目を見開いたままの体勢で、スコールがこちらへ僅かに腕を伸ばしたまま制止していた。
「!?……どうした?」
一瞬異様な光景に言葉を失ったが、スコールの尋常でない表情にとりあえず問うてみる。
「あ……アニエス……」
腕を下ろしつつも、驚愕の表情だけは変わらぬままでスコールは視線も下ろす。
「酷い顔だね。幽霊でも居たのかい?」
「!……そんなものだ」
ジョーカーとしては軽口を叩いたつもりだったが、スコールには笑えない冗談だった。
「魔女が来ていた」
アニエスとジョーカーは子供達と下りて、艇内で留守番中のスコールには特にやることもなく、暇を見てはやっているガンブレードの解体整備に精を出していた。
何せ、使いを荒くせざるを得ない割にデリケートな武器だ。手入れはしておいてし過ぎることはない。
ガン部分の本体のグリス塗りまで終えて、マガジン内部の清掃をしていたときだ。
「……eeD……SeeD、SeeD!」
一瞬、幻聴かと思った。
良く聞き慣れた声が自分の耳を突いたのに、反射的に立ち上がって身構える。
「あ……アルティミシア!?」
真っ赤なドレスに真っ黒い魔女の翼。妖しげな美しさを湛えた魔女が、僅かに至近。ラグナロク内に、居た。
「このような異世界に来て尚、お前は居るのか……」
「何故、お前がここに……」
そう問うだけで精一杯だった。
「フフフ……時をも操れる魔女の力ならば……物理的な距離や障害など何の意味も持たない……忘れたの?イデアを操っているとき、私はそうしてお前達の前から消えたこともある」
違う。そうではない。
自分が聞きたいのはそういうことではないのだ。
だが、驚愕と焦燥とで作られる思考停止という名の精神的監獄から、スコールが立ち直るよりも先にアルティミシアが動く。
「!?」
掲げられた左腕から射出されたカーディナルが、避け損ねたスコールの右頬を掠めてハンガー内を飛び、アルティミシアの腕に戻る。
「私は今はロマリアにいる。来なさい、SeeD……あの時の続きを、今度こそは決着を付けてあげる」
それだけ言い残して、空気に溶けるようにアルティミシアの姿はかき消え、次の瞬間アニエス達が帰ってきたわけだ。
顔を押さえ、呻くようにスコールは呟く。
「正直……あれが何かの幻か白昼夢だったと思わないでもない……」
「けど、その傷だけは本物だ。そうだろ?」
「ああ……あのアルティミシアも、本物だということになる」
ジョーカーの問いに、切れた頬をなぞりながら頷き返す。
「何故生きているのかも、何故ハルケギニアに居るのかも判らないが……」
「その……魔女アルティミシア、か?死んだふりをしていただけではないのか?」
「いや、あいつはただ死んだ訳じゃない。おそらく、寿命はとうに尽きていたのが、魔女の力だけで生きながらえていて、ママ先生が魔女の力を継承したことで生きるための根源となっていた力を失い、消滅したんだ……。
力も失って、そんな死んだふりが出来たとも思えない」
アニエスの推測に、首を振って否定する。
「俺はあの戦いで魔女に会わなかったし、何で死んだものが生きているのかも判らないけど……何でここにいるのかは判ると思うぜ」
「アルティミシアがハルケギニアに居る理由がか?」
割とあっけらかんと言ってのけるジョーカーにスコールは目を向ける。
「ああ、こないだの教皇庁からの女王奪還作戦の時、教皇サマが言ってたからな。俺を殺して、その代わりに新しい使い魔を喚ぶって……俺は生きてるけど、あの時の戦いでルーンは消えた……それで、もう喚べることになってるって事じゃない?」
「なら、あのアルティミシアは……」
「教皇が喚んだ、って俺は考えるね」
頷いて、ジョーカーは続ける。
「委員長と魔女アルティミシアの関係は俺は知らない。けど、わざわざこんな所に挑発に来るって事は道でばったりあっただけでも只じゃ済まない相手だろう。
そんな相手が前からハルケギニアにいたのなら、とっくの昔に委員長の前に現れてる。
今日になってようやく現れたのは、最近召喚されたから。教皇が新しい使い魔を喚べるようになってから結構経つ時期なのは……一度委員長は彼女に勝ってるんだろ。その時の傷を癒すため、とか?」
理屈は、通る。
「……あいつは、今は教皇の使い魔か」
「世知辛いもんだね。俺達の世界の未来をほぼ手中に収めて、過去にまで手を伸ばそうかっていう魔女様が、今や他人の使いっ走りとは」
軽く肩をすくめるジョーカーにアニエスは口を尖らせる。
「だが、何故アルティミシアという魔女はレオンハートの後背を突かなかったんだ?ライオンハートも整備中で、得物もないレオンならば絶好の機会だっただろうに」
「それこそ、魔女が教皇に喚ばれている理由の本丸さ。委員長に一度負けている魔女だ。二の轍は踏みたくないだろう。
罠なり、伏兵なりを潜ませることで必勝を誓ってリターンマッチに臨もうとするはずで、その為の場所がロマリアなら……」
「……聖堂騎士団と虚無の教皇の力が味方に換算できる立場、という訳か」
ジョーカーの推理にアニエスは渋い顔をした。
「けど拙いかもな……下手をするとロマリア教皇庁周辺一帯は、全部あいつの制御下に置かれてたりしないか?何しろ、魔女だし」
「暗示や、催眠ということか?」
「ん」
アニエスの問いにジョーカーが短く頷き返すが、今度は明確にスコールが首を振った。
「いや……第二次魔女戦争中、あいつは他の誰を操ったことはなかった。おそらくアルティミシアは誰かを操る術を持たない」
ガルバディアのビンザー・デリング前大統領は元々その力を利用するためにイデアに入ったアルティミシアを利用していたが、彼女が自分の手の内から出ようとしたところで制止をかけ、逆に殺された。
サイファーは元々『ロマンティックな夢』を追いかけていたのでアルティミシアには協力的だった。
スコール達は一度その行動を停止させられていたが、あれはどちらかというと擬似魔法でいうストップに類する時間制御系の術と見るべきだろう。
魔女のイベントの時デリングシティに居た人々は、あれは単なる集団心理だ。一時の狂乱、興奮状態に過ぎず、操られていたと言えるものではない。
唯一の例外はリノアで、デリングシティ潜入任務中半ば操り人形となって危うく生け贄にされそうになった。
だが後々のことを考えれば魔女の継承者である彼女はそれこそ例外とカウントするべきだろう。ガルバディア・ガーデン、エスタの宇宙ステーションなどでは直接操られてもいる。
「それに、操られていないからといって、教皇が手を貸さないとも限らない。むしろ教皇、アルティミシア双方がお互いの経緯を理解すれば、俺を排除するために結託しても不思議じゃない」
(俺を倒した後は、判らないが……)
ロマリア教皇庁。白亜の大理石で出来た建物を臨める街の入り口に、スコール、アニエス、ジョーカーの三人が立つ。
「ラグナロク……空にして良かったのか?」
そこら中に浮浪者が踞り、決して衛生的とは言えない大通りを歩き出して、アニエスが尋ねる。
「良い訳じゃないが……手が足りていない。虚無相手にはジャンクション人員が二人は必要なのはジョゼフとの戦いで証明済みだが、同時に今回は魔女も相手にしなければならない可能性が高い」
渋い顔でスコールは呟く。
「二対三か」
「いや、アルティミシアは俺一人で相手をしてみせる」
首を振り、きっぱりとスコールは言い切る。
「大丈夫なのか?前の時はお前の仲間も一緒で倒したんだろう」
「問題ない……時間圧縮を使ったあいつの策略で、最終的に一対一にまで持ち込まれたが、それでも俺は勝った。今度も不覚をとらなければ、負けはしない」
「それなら、虚無相手に私とジョーカーの二人がかりで挑めるか……」
「いいや」
脳内で戦略を組み立てようとするアニエスを、ジョーカーが遮る。
「悪いんだけど、俺も因縁があるんでね。もしあの教皇がやる気なら、こっちのオーダーだ。タイマン張らせてもらうよ」
「馬鹿な!幾ら何でも虚無相手に一人では無理だ!ガリア王相手でも私とレオンハートでギリギリの勝利だったというのに……」
「何とかなるんじゃない?」
心配そうに顔を曇らせるアニエスにジョーカーはあっけらかんと言ってのける。
「委員長とアニーがガリア王相手に苦戦したのは、ガリア王がジャンクションを使っていたっていう要素も大きかったんじゃないか?
元々同時に二つの魔法は使えないのがメイジの系統魔法だし、話に聞いた『加速』の虚無も、普通の人間の膂力だと大した驚異になるとは思えない。
何より教皇サマにとっちゃジャンクションなんてのは異教徒の使う異端中の異端だろう?その異教徒を排除するのに系統魔法以外の力に頼るのは本末転倒ってものだ」
「しかし……」
「それに、俺と委員長がそれぞれとタイマン張ってる間だって、他にも教会の騎士サマ達も居るからね。『後々』のこと考えると、余計な被害は出さない方が良いだろうし、アニーにはそっちの足止めに専念して欲しいんだ」
きっちりと戦略を踏まえてのジョーカーの言葉に、アニエスは頷かざるをえなかった。
「さて……」
白亜の城の城門が見えてきて、ジョーカーは軽く笑みを浮かべる。
「蛇が出るか何が出るか」
「蛇は出ない。居るのは魔女と虚無だ」
城門の前に立った聖堂騎士三名。その目の前でスコール達は足を止める。
「傭兵、シードだな」
「そうだ」
シャッと杖がそれぞれ一人に一本ずつが向けられる。
「教皇猊下がお待ちだ。入れ」
半ば以上、脅しとして杖を突きつけているらしいが、彼らは果たしてそれが全く意味を成さない行為だと判っているのだろうか。
(ガリアに間者が紛れていた点から言っても、情報収集を怠っているとは思えない。俺達はいくつもの戦場で系統魔法を無効化してきている。先のガリア女王奪還作戦の時のジョーカーも見たはずだ。それに気づいてない事はない。
それではこれは……対応しきれていないのか?)
スコールの予想は半ば当たっていたが、正確にはこれは対応「しきれていない」のではなく、対応「する気がない」のだ。
自分たちはブリミル教徒の中でも特に教えを信望する者たちであり、その自分たちがメイジではない平民に負ける筈がないのだ、と思う。
言ってみればそれこそが宗教であるとも言える。
一つの教えに縋り、信じ、思考を硬直化させ、その範疇に入らないものを異端者であると断じ、排除しようとする。宗教の持つ影の面。そこを肥大化させた者たちの総本山に、スコール達はゆっくりと入っていった。
セミファイナル、今回はここまで。
通常のRPGでは教会があったり、神官職の者が居たりすることも多いんですが、FFの、特に8ではそうした宗教色が殆ど感じられないので、スコールの宗教に対しての理解度には気を使います。
一応日本で作られたゲームだし、日本の一般人のように「あるのは知ってるけど別段生きていく上で詳しくなる必要はない」ぐらいの認識レベルとして書こうとしています。
では、来週もこの時間のうpを予定しつつ……さようなら。
乙
乙
乙
アルティミシアいい女だなー・・・・・・
東方Projectから守矢神社の3人を召喚したら、佐々木さんは守矢神社の氏子さんとかの設定が追加されそうだな。。
故郷を偲んだ武雄さんが、タルブ村に守矢神社の分社を建てたりしてたら良さげな感じ。
乙乙
宗教を本格的に取り扱う作品ってあんまりないからね、過去作のFFでさえあんまり思い付かないな
宗教を本格的に扱った作品からのクロスってなんかあったっけ?思い付くのだと、ヘルシング……はちょっと違うような気がするがw
宗教関係の話をあんまり押し出したり突き詰めたりすると、
どうしても作者個人の宗教観が前面に出ちゃうからね。
例えば作中で「ブリミル教はここがおかしい、間違ってる」と被召喚キャラあたりがズバズバ言ったところで、
「じゃあどうするんだ」って話になったら、その後の展開が一悶着どころじゃないし。
言われただけで簡単に宗旨替えなんかするのかとか、
そもそもレコン・キスタやらエルフやらとの争いは宗教観の違いもあるだろうけどその辺どうすんだとか、
ダングルテールなんかは新教徒狩りで全滅させられてたよねとか、
まあとにかく色々。
宗教なら、小ネタで仏陀が召喚されてなかったっけ? 立川在住の。
あと 「ご立派様」は宗教SSといってもいい・・・のかなぁ
>>244 ガイア教が生まれたから……まぁ、ありじゃね?
女神まどか召喚
ハルケに、まどか教発生w
メガネっこ教団があったじゃないか、ねえ。
そんなことよりビクトリーム様崇めようぜ
久しぶりにseedきてたーん
そういやラグナたちは2〜3年待ってればオートでスコールたち帰還できるの知らないん?
そろそろウルトラの使い魔がくるころだ。
なので特撮系の話をしよう。
ルイズが呼び出したのは粗大ゴミとして捨てられたとある怪人。
彼はルイズのペットとなり、やがて彼女の両親に認められるためにガンダールブとなるための
特訓をし、ついには大陸浮上問題を解決し英雄となり、ルイズを始めとした数々の女性達のハートすら
射止めてしまうのであった。
そんな彼が生涯のパートナーとして選んだのは―――――ミセスシュヴルーズ
>>250 それだと、中の人的にはまずエレ姉に振られないと。
特撮というと、
召喚されたのは他の人には見えない人
↓
なんだかんだで虚無覚醒
桃色の髪の人「わたし、またあなたと空を飛びたい!」
体が青いひと「君はもう、一人で飛べる」
END
な展開が思い浮かんだ。
ウルトラが来ると特撮の話をしないといけないの?
そうだよ
知らなかったの?
これこれ、御新規さんをからかうのは その辺で止めときましょうや。
来てから話せよ馬鹿ども
ウル魔の人が投下しにくくなるだろうが
ウルトラの使い魔さん来るかな
ルイズとカトレアがストームブリンガーとモーンブレード召喚する話マダー?
皆さんこんにちは、ヤマグチノボル先生の手術が成功して本当によかったです。今年は田中実さんの訃報でがっくりしていましたので、明るいニュースで救われました。
さてウルトラ5番目の使い魔、54話投稿開始します。
他の人の予約がなければ10分後、17:50にはじめますので、今週もよろしくお願いいたします。
第54話
共鳴する悪の波動
精神寄生獣 ビゾーム
宇宙大怪獣 改造ベムスター
円盤生物 アブソーバ 登場!
タバサとキュルケの力を合わせた戦いで、ジョゼフの送り込んだ最期の罠、ギジェラは倒された。
しかし、勝利の余韻もつかの間、突如として現れた新たな怪獣が二人に新たな脅威を告げる。
黒々した肉体に、黄色く発光する顔と胸の器官。才人が見たとしたら、かのゼットンを連想しそうな容姿を持つ人型の
怪獣は、まるで人間の持つ恐怖という感情を形にしたかのようなおどろおどろしさを振りまいている。
キュルケはぞっとしたものを感じ、タバサも背筋になめられたような不快感を覚えた。
そして、ジョゼフすらも予期していなかった第三者は、明らかな敵意をタバサたちに示す。
果たして、その目的はなんなのであろうか……
シルフィードの背から、タバサとキュルケは愕然として異形の怪獣を見つめていた。だが、この自失していた数秒がいかに
貴重であり、自分たちがどれほど危険な状況にいるのかを、皮肉にもその敵によって気づかされた。
新たに出現した怪獣は、まるで喉がひっかかったまま笑っているような、薄気味の悪い声をあげながらこちらに向かってきたのである。
「いけない。シルフィード、逃げて」
タバサは怪獣の接近に、ためらわずに逃げを選択した。敵の能力が未知数なうえに、二人とも精神力を使いすぎて
すでに魔法を打つ余力がない。とても、もう一匹怪獣を相手にするような余裕などはなかった。
シルフィードはぐんぐん上昇していき、怪獣の姿はどんどん小さくなっていく。
しかし、タバサたちは知らなかった。その怪獣……かつて別世界にも現れたことのある、精神寄生獣ビゾームを
操っていた存在が、地球攻撃のために得意としていた戦術を。
高度何千メートルという高さに上昇していくシルフィードを、ビゾームはなぜか光線で打ち落とそうともせずに見上げている。
そして、天高く上がったシルフィードのシルエットが月と完全に重なり、月食が完成したときにビゾームは高笑いするかのように両腕を掲げた。
「ここまで来れば……っ? シルフィード、どうしたの? スピードが速すぎっ」
「ち、違うのね! な、なにかに吸い寄せられてるのねっ!」
上昇をやめようとしたシルフィードを、まるで重力が逆転したかのような強力な力がひきつけていく。これはいったい!? と、
引き寄せられていく方向を目の当たりにした二人は、信じられない光景に驚愕した。
「あれはっ!? 月に。月食に引き寄せられていってるの!」
だがそれは事実だった。月食の月が、まるで空に開いた穴のようにシルフィードを吸い寄せている。
タバサとキュルケは、空に開いた穴の姿に、アルビオンで日食が起きた折、そこからGUYSガンフェニックスが
現れた光景を思い出して戦慄した。
「まさかっ! あれは別の世界へつながってる扉! タバサ、逃げるのよ」
「わかってる……シルフィード」
「だ、だめ、少しずつ引き寄せられてるのね!」
空の穴、ワームホールに向かってシルフィードはじわじわと引き寄せられていった。このままでは、みんな揃って
どこかわからない世界に飛ばされてしまうかもしれない。しかし、ワームホールの吸引力にシルフィードの力はわずかに
負けており、タバサとキュルケにも魔法で後押しする余力はなかった。
ワームホールまであと何百メートルもなく、引き裂かれるような引力の中で、タバサは自らを、キュルケは自らと
タバサの母が飛ばされないように必死で守った。しかし、人一倍小柄で、かつギジェラの幻覚と魔法の大規模使用で
疲労の極に達していたタバサには、すでに肉体的な余裕も残されてはいなかったのだ。
ワームホールの引力に抗って、全力で翼を羽ばたかせるシルフィード。と、急に体がぐらりと揺れ、吸い込まれる
力が強まったような違和感を覚えた。そして、ふと背中を振り向いたシルフィードの心は零下の海中へと放り込まれた。
そこに……いつも同じ場所に座っているはずの主人の姿が、忽然と消えていたのである。
「おねえさまーっ!」
「タバサー!」
シルフィードとキュルケの絶叫が虚空を裂いた。タバサの小さな体が、シルフィードから引き剥がされてワームホールへと
吸い込まれていく。もはや、後先を考えている余裕はなかった。シルフィードはすぐさま反転し、全力でワームホールに
翼を向けた。
「タバサーっ!」
「キュルケ……」
タバサが必死で伸ばした杖をキュルケが捕まえようと手を伸ばす。だが、それが限界だった。タバサは大きく開いた
ワームホールの中に、黒い水に落ちたように吸い込まれて消え、その瞬間、ワームホールはそれまでの吸引力が
うそであったかのように、強烈な反発力でシルフィードを吹き飛ばしたのだ。
「タバサぁー!」
悲鳴とともに、シルフィードはきりもみしながら墜落していった。意識を失う前にキュルケの目に映ったのは、
終わろうとしている月食と、愉快そうに肩を震わせている怪獣の姿だった。
しかし、この異常な月食がもたらした影響はここだけではなかった。
ガリアの反対側で、眠れず空を見上げていた才人とルイズの見ている前でも、ありえるはずのない月食は見えていた。
「そんな馬鹿な……この時期に月食なんて」
呆然と不気味な姿をさらす月を見る二人は、はるかかなたのタバサたちとビゾームの戦いを知るよしもない。だが、
この不吉の象徴のような月がもたらす異変は、二人の元へも別の形で現れた。
突然、才人が肌身離さず持っているGUYSメモリーディスプレイの呼び出し音が鳴った。慌てて懐から取り出し、
スイッチを押した才人の耳に、ノイズ交じりの声が流れてくる。
〔こち……ちき……聞こえるか? ハルケ……才人!〕
「この声は、リュウ隊長! おれです。聞こえますか!」
向こうの世界で、再びこの世界とを連結させる作戦が成功したのかと才人は喜色を浮かべた。しかし、通信の向こうから
聞こえてきたリュウの声は、再会を喜ぶものではなく、急いでなにかを伝えようとする怒鳴り声だった。
〔おう! 才人か、いや……り、時間が……〕
「なんです! よく聞こえない!」
相手の声色から、容易ならざる事態なだけはわかったが、音割れがひどくてうまく聞き取れない。地球で何が
あったのだ? 焦って聞き返す才人へ、メモリーディスプレイからもリュウの焦った声が途切れ途切れに響く。
〔よく聞け! お…………ディゾルバー……次元移動……作戦…………ヤプール〕
「ヤプールですって! なにがあったんですか! もしもし!」
叫べど、激しくノイズの混ざる通信はいっこうに要領を得ない。
地球とハルケギニアを結ぶはずの次元トンネルになにがあったのだ? まさか、ヤプールがすでに地球にも。
才人は、自分の知らないところで事態が大きく動いていたことを知った。しかしそれは、単純にヤプールによる
攻撃が再開されたのみならず、ジョゼフをはじめとするハルケギニアを狙う勢力の活動が混ざり合い、まったく
予想できない形で生み出された結果によるものだったのだ。
そう、この世界は常に狙われている。かつて、地球が宇宙を漂う幾千の星から、侵略の魔手を伸ばされたように。
さらにその中には、ヤプールのように時空を超えて陰謀をめぐらすものも存在する。それらの悪の勢力が互いのことを
意図しあわなくとも同時に活動すれば、それがもたらす事態と被害は計り知れない。
平和を守ろうとする者たちと、平和を乱し混沌と破滅を愛するものたち。
水面下で着々と力を蓄え、悪意をみなぎらせて蠢動してきた敵たちが、ついに表に出て侵略を開始しはじめた。
そして、その次なる標的となったのは才人が帰還を心待ちにしていた故郷だったのだ。
次元を超え、時系列は数時間巻き戻る。
地球……エースたち、M78星雲のウルトラマンたちの故郷のある世界の地球において、それまでの平穏さが嘘のような異常事態が起きていた。
「GUYSアンタクルティカより連絡! 南極にて冷凍怪獣ペギラの群れを確認、北上しつつあり。南太平洋でGUYS
オーシャンが迎撃態勢をとるもようです」
「GUYSスペーシーから緊急連絡! 月面上にて月怪獣ペテロを確認。さらに火星基地にナメゴン二体が出現、
木星ステーションからも、羽根怪獣ギコギラーが地球に接近中との報です。現在全力出撃中」
「ヨーロッパ方面からもザルドン、アメリカでもゴキネズラが出現したそうです。各国GUYSが迎撃中ですが、苦戦しているようです」
フェニックスネストのディレクションルームに、ひっきりなしに各地に怪獣出現の連絡が飛び込み、オペレーターたちが
対応に苦慮している。
世界各地で同時多発的に起きた怪獣の異常発生。怪獣頻出期の歴史上においても、最大級の非常事態が、
この日地球を襲ったのだ。地底から現れるもの、宇宙から飛来するものなど、出現パターンは様々であるが、
そのいずれも大都市や基地などを標的に定め、その防衛のために世界各国のGUYSは総力戦を余儀なくされている。
むろん、これが単なる偶然の自然現象などではなく、ヤプールかそれに匹敵する侵略者による仕業であることは、
当初から誰もが認めていた。
一週間ほど前から、地球の各地で観測された微量のマイナスエネルギーの検出。次元の変動と、それにともなう
ヤプールエネルギーの観測。さらには、GUYSの厳重な警戒網を破っての、地球各地での未確認飛行物体、
いわゆるUFOの目撃証言。その場所はおよそとりとめがなく、日本だけでも瀬戸内海上空、静岡の下田港、
愛知県の伊良湖岬。国外では台湾、フィリピンの海上で漁船が不振な飛行物体を目撃し、南太平洋、北大西洋、
地中海でも飛行中の旅客機が怪しい光を目撃したとの報告があがっている。恐らくこれらは、本格的な攻撃の
準備のための偵察であったのだろう。
当然、攻撃の対象は日本にも向けられ、GUYS JAPANも出動している。このころになると、ハルザキ・カナタら
新人隊員たちも、ジョージやテッペイら前GUYSのOBらの指導で、すでに一人前と呼べる技量に成長していた。
彼らは今では、さらに新たに入ってきた新人隊員たちとともにガンフェニックスで出撃している。
ただし、各地の怪獣の数はかつてのアーマードダークネス事件のときよりも多く、ガンフェニックスだけではとても
対処し切れなかった。そのため、GUYS JAPANはガンクルセイダーや、補用機の旧MATのマットアローの改修機
であるGUYSアローまでも投入して、必死に各地の被害を抑えている。
しかし、各地から悲鳴のようにあがってくる救援要請を受けながらも、GUYS JAPANにはリュウ隊長、ミライこと
ウルトラマンメビウスら主戦力をフル投入できない訳があった。
「隊長! 札幌にアーストロンが出現しました。これで、世界各地に出現した怪獣の数は二十体を超えます。
このままでは、市民の避難が完了するまでに食い止めきれません!」
「ちっ! いったい何匹出現すりゃ気が済むんだ」
「リュウさん! やっぱり僕が行きます」
ディレクションルームで、各地のGUYSクルーに指示を出していたリュウは、待機しているのにいてもたっても
いられなくなったミライから出動要請を受けて、一瞬逡巡した。確かに、メビウスが参戦してくれれば戦況は一気に
楽になる。しかし、現状をかんがみるとリュウは首を横に振るしかなかった。
「だめだ。ミライ、やつらはお前を引っ張り出すことが目的なんだ。ここを手薄にしたら、せっかく完成した
ディメンショナル・ディゾルバー・Rを誰が守るんだ!」
ウルトラ支援!
そう、それこそがリュウを苦悩させている元凶だった。地球と次元を超えた異世界ハルケギニアとの行き来を
可能とする、時空間安定化装置ディメンショナル・ディゾルバー・R(リバース)。かつてヤプールの次元ゲートを
半永久的に封印したディメンショナル・ディゾルバーの極性を反転させたこの装置は、前回のときは未完成で
あったためにわずか三日でゲートが閉じてしまったが、フジサワ博士らの努力で完成にこぎつけられていた。
ただし、ゲートを開くためには理由は不明であるが日食が必要であり、あのときの皆既日食には及ばないにしても、
部分日食が発生する今日しかチャンスはなかった。
「ヤプールは、俺たちが向こうに乗り込んでいくのを恐れてるに違いねえ。いいかミライ、俺たちの仕事はこいつを
防衛して、もう一度向こうの世界へのゲートを作り出す。そして、お前の兄さんたちとも力を合わせてヤプールを
ぶっ倒す。だから、見え透いた誘いに乗るんじゃねえぞ」
「わかりました。すみませんでした」
ミライは素直に謝罪したが、リュウの心は複雑だった。ミライにこうして偉そうに言ったものの、隊員時代の
リュウであったら、真っ先に飛び出していったのは間違いないし、今でもリュウはどちらかといえば司令室より
現場を好むタイプだ。
しかし、一隊員だったころと隊長に就任した今では責任の重さがまるで違う。上に立つものは、自らの自我を
抑えて、全体を、目的を最小限の犠牲と労力で成し遂げさせるために牽引しなければならない。それは、リュウの
気質からしたらかなりの負担になることは、隊員時代の彼を知るものからしたら容易に想像ができた上に、
今回は新生GUYS JAPANに本当の意味で経験を積ませるため、ジョージ、マリナ、テッペイ、コノミら
前GUYS JAPANは参加していないから、負担は一気にリュウにのしかかってくる。
ただし、現在のリュウを知る者の中に、彼がその義務から逃げたことは一度もないことを否定する者もいなかった。
「GUYSを頼む」
かつてディノゾール戦で、セリザワ前々隊長が散り際に残した言葉をリュウは忘れたことはなく、それは
今も続いている。ウルトラ5つの誓い、地球は地球人自らの手で守り抜くという信念を受け継ぎ、そして敬愛する
二人の隊長に追いつくために、リュウは全力で隊長の責務と向き合っている。
地球側の必死の努力をあざ笑うように続く、怪獣軍団の猛攻。けれども世界各国のGUYSは、日本に比べれば
経験が浅いにもかかわらず、じわじわと怪獣軍団を押し返し始めた。
だが、地球側がこれくらいの健闘を見せることくらいはヤプールも想定していた。次元を超えて地球の戦いを
見守るヤプールは、怪獣軍団による無差別攻撃では不十分だと判断した。
「地球人の科学力もなかなかのものだ。やはり、マイナスエネルギーに惹かれてやって来たゴミどもだけでは
不十分だな。ならば、作戦の第二段階へ移る。ゆけ! 超獣どもよ!」
次元の裂け目を通り、ヤプールの第二陣の攻撃が送り込まれる。今度は無差別ではなく、ピンポイントに地球の
重要拠点を狙った攻撃は、即座にGUYSの知るところとなった。汗をぬぐう暇もないフェニックスネストの
ディレクションルームに、新たな敵出現の報が飛び込んでくる。
「隊長! マレーシアの天然ガスステーションにガス超獣ガスゲゴンが出現。続いてインドのニューデリーに
さぼてん超獣サボテンダーが現れました」
「ちっ! ヤプールめ。業を煮やしてついに超獣も出してきやがったな」
舌打ちしたリュウは、事態が深刻さを増していることを自覚した。このまま戦いが長引けば、物量差で負ける。
世界各国への攻撃も、耐えられなくなった国をGUYS JAPANが助けに行かなければいけない状況になるのを
計算しているからなのだろう。実際、戦力の低い地方のGUYSは悲鳴のように周辺国に救援を求め、特に精鋭の
日本には救援要請が山積みされている。これは直接日本だけが標的にされるより性質が悪い。
ヤプールの相変わらずの卑劣なやり口に、以前ヤプールに憑依されたことのあるリュウは胸がむかむかしてくるのを
隊員服のはしをつかんで抑えた。あのときのことは記憶にないが、自分の体を操ってGUYSの皆をだまし、ミライを
陥れようとしたヤプールに、リュウは好意的な感情を抱いたことは一度もない。
絶対にヤプールだけは許さねえ。リュウは決断した。
「メテオールの使用を許可する。ただし、無理に撃破しようとしなくてもいい。怪獣たちはヤプールエネルギーの
影響を受けてるだけだ。ぶっ叩いて追い返せ!」
「G・I・G!」
隊員たちもリュウの荒っぽい命令にすぐに答える。セリザワ隊長時代とも、サコミズ隊長がいたころとも違う形の、
リュウが指揮する新しい形のGUYSの姿がここにあった。
そして、GUYSマシンの必殺装備、超絶科学メテオールが発動し、GUYS JAPANは決戦に打って出た。
「パーミッショントゥーシフト・マニューバ!」
ガンフェニックスから分離した、ガンウィンガー、ガンローダー、ガンブースターの機体が金色に輝き、それぞれの
機体の超兵器が放たれる。
「スペシウム弾頭弾、ファイア!」
「ブリンガーファン・ターンオン!」
「ガトリングデトネイター、発射!」
ガンウィンガーから放たれた大型ミサイルが、静岡の浜名湖で暴れていたシェルターの周囲に巨大な水柱を
立ち上げ、驚かせて追い返した。
ガンローダーの荷電粒子竜巻が、愛媛県の霊峰石鎚山の上空で、参拝客を狙っていたテロチルスを巻き上げて山腹に激突させる。
ガンブースターも負けてはおらず、光線砲の全弾命中で福岡県の山間部から北九州市方面に向かっていたインセクタスを吹き飛ばした。
さらに、その他の機で出撃した部隊も負けてはいない。ガンクルセイダーの改良型ガンクルセイダーMXにはメテオール、
スペシウム弾頭弾が備え付けられており、函館に出現したアーストロンを撃破、千葉県九十九里浜に上陸を
もくろんでいたツインテールを海に叩き返した。
残るGUYSアローは元々四十年も昔の機体なので、改修を重ねたとはいえ性能的に苦戦は免れない。しかし、
これらの機体も整備班長のアライソの下でエンジン出力他、可能な限りのパワーアップがなされていた。さらに今回は
細胞破壊ミサイルや大型レーザー砲・ゴールデンホーク、対怪獣用強力ミサイル・X弾改など、旧防衛チームが
開発・使用した兵器を実験的に再現して搭載してあり、それらを駆使して怪獣たちを退けていった。
新生GUYSの隊員たちは、必死の努力で怪獣軍団の猛攻から人々を守っていく。
怪獣たちが倒され、あるいは逃げ帰っていく姿に人々は歓声をあげ、飛び去っていく戦闘機を手を振って見送る。
しかし、弾薬、エネルギーが尽き果てて、隊員も疲労困憊したGUYS JAPANはしばらく戦えない。彼らが
必死に作ってくれたチャンスを、無駄にするわけにはいかない。
「リュウ隊長、フジサワ博士からディメンショナル・ディゾルバー・Rの発動準備完了と連絡です」
「日食の開始まで、あと五分です」
「ようし、フェニックスネスト、フライトモード起動だ!」
リュウはついに作戦開始を指令した。GUYSの基地、フェニックスネストはただの基地ではなく、その地上の
建物部分は飛行可能な大型航空機として機能する能力を持っている。
最上部のディレクションルームのあるコクピット部分が鳥の頭のように前に倒れこみ、その背部に主砲である
大型砲・フェニックスキャノンがせり出してくる。さらに主翼が展開し、後部リフレクターブレードが垂直尾翼の
ように後方で固定され、フライトモード起動用意が整った。
このモードはGUYS最大の切り札であり、本来はミサキ総監代行以上の許可が下りなければ起動不可能だが、
今回はサコミズ総監からリュウに権限が委任されている。
時空ゲートを開く場所は、フェニックスネスト上空五百メートルの空中。今回は空間座標固定の技術が確定している
ために、ある程度自由な場所にゲートを開くことができる。ただし、地上に開けば両世界を渡ってはいけない者が
通ってしまう危険性が強く、上空高く作りすぎては行き来が不便となるために、監視に適したフェニックスネスト上空に
作ることとなったのだ。
メインエンジンが起動し、すさまじいエネルギーがエンジンノズルに集中していく。
しかしヤプールも、GUYSの作戦は読んでいた。フェニックスネスト上空の次元に歪みが生じ、強力なヤプール
エネルギーが空を黒く染めながら、邪悪な意思とともに漏れ出してくる。
「おのれ地球人どもめ! 今一度時空を超えさせはせぬぞ。今こそ我らヤプールの真なる力を見せてくれる!
ゆけ! 我等が同志、最強の宇宙怪獣ベムスターよ。さらにパワーアップしたその威力で、人間どもをふみつぶして
しまうのだぁー!」
空間がガラスのように割れて真っ赤な裂け目が生じ、その中から巨大な影が姿を見せる。そしてそこから
地球の大地に降り立つ、濃緑色の体を持つ異形の鳥型怪獣。引き裂くような甲高い鳴き声をあげ、今にも
飛翔しようとしていたフェニックスネスト前面の滑走路上で、鋭い一本爪を生やした腕を高々と掲げたそいつを見て、
リュウは悲鳴のように叫んだ。
「あいつは! ベムスターじゃねえか!」
リュウたちGUYSは以前ベムスターとの戦闘経験がある。オオシマ彗星のダストテールを追って地球へ
飛来したそのときの個体は、GUYSやメビウスの攻撃をことごとく吸収して大苦戦させられた。かろうじて
メビウスがヒカリからたくされたナイトブレスを使った、メビウスブレイブの初披露で撃破したものの、それが
なければさらなる被害をこうむったのは間違いない。GUYSにとっては忘れられない因縁の敵だ。
「野郎! 超獣じゃなくてベムスターとは人をなめた真似してくれるぜ。基地の防衛機構を作動させろ。地上兵器で
食い止めているうちに離陸する」
フェニックスネスト周辺には、オオシマ彗星の破片の隕石を撃墜した大型ビーム砲シルバーシャークGをはじめ、
一二〇〇ミリシンクロトロン砲や無人戦車大隊も配備されており、これをフルに活用することで無双鉄神
インペライザーの一体を撃破したことがある。
だが現れたベムスターはただのベムスターではなかった。その特徴の変化から、オペレーターがリュウを止めた。
「隊長待ってください! あれはGUYSが以前交戦したベムスターではありません。ドキュメントZATに記録を
確認しました。レジストコード、宇宙大怪獣改造ベムスターです!」
「改造だと!?」
そう、それは普通のベムスターではなく、体格も一回りほど大きく、以前リュウがどことなくかわいいと表現した
顔つきも、赤目が目立つ凶悪なものになっていた。こいつはかつて、ウルトラマンAによって倒されたヤプールが
タロウが地球防衛をしていた時代に復活した折に、ウルトラマンジャックが倒したベムスターを超獣と同様に
強化再生させた新たなベムスターだった。その実力はジャックが戦ったときのものをはるかに超え、一度はタロウを
完封するほどの脅威を見せ付けている。
今度現れたものは、ハルケギニアの月でウルトマンジャスティスによって倒された個体を強化再生したもので、
ベムスターはヤプールの自信を体言するかのように、地上兵器の猛攻をほとんど無視しながら、大またでのしのしと
フェニックスネストに迫ってくる。
「防衛ライン、突破されます! フライトモード離陸、間に合いません!」
「畜生!」
離陸直前の無防備な状態を狙われたら、いくらフェニックスネストでもひとたまりもない。主砲のフェニックスキャノンは
ディメンショナル・ディゾルバー・Rの発射のために使えず、防衛ラインを抜かれたら打つ手はなかった。
しかし、ベムスターがフェニックスネストまであと百メートルにまで迫ったときだった。滑走路上でベムスターの前に
立ちふさがったミライが、メビウスブレスを装着した左腕を空に掲げた。
「メビウース!」
金色の光に包まれて、メビウスの輪の中から銀色の巨人が現れる。ミライが変身したウルトラマンメビウスが、
フェニックスネストを守るためにベムスターの眼前に立ち上がったのだ。
「ヘヤッ!」
登場したメビウスは、ベムスターに肩から突っ込んでフェニックスネストへの突進を阻んだ。しかし重い! 以前の
ベムスターよりもさらにパワーのあるベムスターに、メビウスの足元のコンクリートが耐えられずにはじけるように
して飛び散っていく。
「ミライ!」
「リュウさん。こいつは僕が食い止めます。その隙に早く!」
「くっ、すまんミライ。だが気をつけろ! そいつは以前のベムスターよりはるかにパワーアップしてるはずだ。
負けるんじゃねえぞ!」
「G・I・G!」
力強く答えたメビウスは、さらに渾身の力を込めてベムスターを押さえつける。だがベムスターはタロウをも
軽々と吹っ飛ばした怪力でメビウスを振り払い、目から発射する破壊光線でメビウスごとフェニックスネストを狙う。
「フェニックスネストはやらせない!」
間一髪、立ちふさがったメビウスがメビウスディフェンサークルを作って光線を防いだ。しかしベムスターは
近接戦を得意としていたオリジナルの能力に、ヤプールによって目や腹の口からも光線を放てるような改造が
施されている。距離を詰めようとしたメビウスに、今度は目から針状の光線を連射して痛めつけた。
「ウワァッ!」
「ミライ!」
「僕は大丈夫です。それより早くっ!」
メビウスは苦しみながらも、フェニックスネストを守る盾としてベムスターの前に立ちふさがった。その隙に、
ミライが作ってくれたチャンスを無駄にしてはならないとフェニックスネストは白煙を上げて、その名に
冠した不死鳥のように、炎をたなびかせて雄雄しく空へと飛び上がった。
圧倒的な威容に、はじめてその姿を目の当たりにする新人隊員たちは揃って歓声をあげた。長い防衛隊の
歴史上でも、フェニックスネスト・フライトモードに匹敵するメカは、UGMの大型宇宙艇スペースマミーなど
わずかしか存在しない。そして、いまやコクピットとなったディレクションルームでは、キャプテンシートにリュウが座り、
矢継ぎ早にディメンショナル・ディゾルバー・R発射の指示を飛ばす。
「メテオール解禁。ディメンショナル・ディゾルバー・R発射用意!」
「高度五百メートル。発射位置固定、フェニックスキャノン安全装置解除」
チャンスは一度、ベムスターを抑えているメビウスも単独では長くは持たない。発射準備完了を待つ一秒が
一時間にも感じられる中で、リュウの額から流れた汗が顔を伝ってあごから床へと滴り落ちていく。
だが、カウントダウンが開始されようかという直前、レーダーを監視していたオペレーターが叫んだ。
「隊長! 後方百メートルに怪獣の反応が!」
「なんだと!? そんな近くに来るまでなんで気づかなかったんだ!」
「わかりません。突然、突然現れたんです。うわぁっ、間に合わない。衝突します!」
直下型地震のような激震が襲い、オペレーターの何人かが床に放り出された。かろうじて席にしがみついていた
リュウは船外監視カメラを操作し、フェニックスネストに食らいついた怪獣の映像をスクリーンに映し出すと、
そこにはフェニックスネストに無数の触手で絡みつく、緑と赤の不気味な生物が現れた。
「な、なんだこいつは!? まるで、クラゲとタコの合いの子みたいな」
「ア、アウト・オブ・ドキュメントに記録を見つけました。こいつは、円盤生物アブソーバだと思われます」
「円盤生物!? そうか、そういうわけだったのか!」
リュウは円盤生物と聞いて、以前怪獣博士のテッペイから余暇時間に講義を受けたことを思い出した。
防衛チームMAC壊滅後に現れた円盤生物と呼ばれる宇宙怪獣たちは、そのほとんどが自分の体を
石ころ大の大きさに縮小できる能力を持っている。恐らく、小型円盤形態でレーダーを避けて接近して
きたために発見できなかったのだろう。
しかし悔しがる暇もなく、オペレーターからさらに悪い報告が入る。
「隊長、フェニックスネストのエネルギーが急速に減少しています。このままではフェニックスキャノンの
発射が不可能になり、最悪墜落してしまいます」
「なにっ! くそっ、やつがエネルギーを吸い取っているのか」
アブソーバという名前は、”吸収”という意味を持つ。あらゆるエネルギーを吸い尽くすといわれるアブソーバの
触手が、蛭のようにフェニックスネストのエンジンに張り付いて、エネルギーを吸い取っていたのだ。
「まずい。なんとか振り払えないか!」
「だめです! がっちり捕らえられていて、とても振り払えません」
「畜生、なんてこった……」
今やフェニックスネストは、電気クラゲに捕らえられた小魚も同然であった。メビウスはベムスターとの戦いに
拘束されて援護できず、GUYSの地上武器ではフェニックスネストを巻き込んでしまうために狙えず、頼みの
戦闘機も全機エネルギー切れで動けない。
これまでか……さしものリュウもあきらめかけた。しかしそのとき、ディレクションルームに懐かしい声が響いてきた。
〔リュウ、あきらめるな。最後まであきらめない者だけが、不可能を可能にできるんだ。それはお前が、一番
よく知っているだろう?〕
「この声は、まさか!」
顔をあげたリュウの前で、アブソーバに複数のミサイルが着弾して火花を上げるのが見えた。
突然の攻撃に驚き、アブソーバの拘束とエネルギー吸収が緩む。そしてアブソーバの醜い姿の後ろに、
丸みをおびた銀色の戦闘機が旋回するのを目の当たりにして、リュウは誰が助けに来てくれたのかを確信した。
「ジェットビートル……サコミズ総監!」
それこそ、最初の防衛チーム科学特捜隊の主力戦闘機ジェットビートルの雄姿。さらに、そのコクピットに
座っている人は、CREW GUYSの総監にして前GUYS JAPANでミライやリュウたちを教え導いてくれた
サコミズ・シンゴ隊長に間違いなかった。
ジェットビートルは旋回してくると、主翼の両端に装備されているロケット弾でアブソーバを攻撃していく。
ただし、フェニックスネストへの誤爆は一発もなく、アブソーバの強固な皮膚を避けて目などの急所に攻撃を
集中させる腕前は並みのものではない。リュウは、アブソーバの拘束が緩んだこの隙しかないと叫んだ。
「いまだ! エンジン全開で振り切れ!」
轟然とメインノズルから炎を吹き出し、フェニックスネストはアブソーバを振り払った。もちろん、一度捕まえた
獲物を逃してなるものかとアブソーバは再度触手を伸ばしてくるが、そこへ急速旋回してきたビートルが
ロケット弾の雨を食らわせて食い止める。
ビートルの動きにはまったく無駄がなく、とても四十年以上も昔の機体だとは思えないキレを見せて、
フェニックスネストの後ろを通り過ぎていった。銀地に赤いラインをあしらったボディは美しく、古臭さはまったく
感じさせない。そしてなにより、主翼と垂直尾翼に描かれた流星マークが、その存在を誇らしげに表している。
ビートルはフェニックスネストにアブゾーバを近づけまいと攻撃を続け、ディレクションルームにサコミズからの
通信が再び入ってきた。
〔リュウ、この怪獣は私が引き受ける。その間に、お前たちは作戦を成功させるんだ〕
「サコミズ隊長! いや総監、総監は確かニューヨークの本部にいるはずじゃあ!? それに、そのビートルは!」
〔実は今朝日本に帰ってきていてな。お前たちが苦戦していると聞いて、いてもたってもいられなくなって、
アライソさんに私の昔の機体を出してきてもらったんだ〕
それでリュウは隊長就任後にサコミズ総監から聞かされた昔話を思い出した。サコミズ隊長は、昔は
科学特捜隊の亜光速実験船イザナミのキャプテンをしており、冥王星までも航海していたことがあったという。
ただし、光速に迫ることによる時間の遅れ『ウラシマ効果』によってサコミズ隊長は四十年前の人間なのに、
現在でも三十代そこそこの若さでいる。そしてそのとき、イザナミに搭載されていたのがジェットビートルの
改造機イガヅチ。そのサコミズ隊長の昔の愛機が、宇宙航行用の装備を取り外して、ここに蘇ったのだ。
〔さすがアライソさんだ。骨董品同然のこいつを、新品同様に保っていてくれた。さあ、いけリュウ!〕
「無茶です! メテオールの装備もないそんな機体じゃ持ちません。総監にもしものことがあったら、GUYSは
どうなるんですか〕
リュウは、セリザワ隊長に続いて敬愛するサコミズ隊長が、むざむざ怪獣の餌食になるのは耐えられなかった。
しかしサコミズは、強い決意のこもった声でリュウを諭した。
〔リュウ、君がやるべきことは、みんなが思いを込めて飛ばしたフェニックスネストをゴールまで導くことじゃ
ないのかな? それに、私が今ここにいるのはGUYSの総監としてじゃない。私個人としての意志だ。私は
お前たち次の世代を担うものたちが、存分に力を尽くせるように働いてきた。しかし、机の上でできる仕事が
なくなったら、もう一度君たちとともに戦いたくなってしまった〕
「総監……」
〔いわばこれは、私のわがままだ。君たちや、ウルトラマンとともに戦いたいという、その一念だけのね。
私もまた、君たちの道を切り開くためにここに来た。だからリュウ、君はみなのその思いをつなげる道を作るんだ!〕
「っ……G・I・G!」
サコミズ隊長も安全な場所を捨てて、命をかけて道を切り開いてくれた。この思いは、絶対に無駄に
するわけにはいかない。
「ディメンショナル・ディゾルバー・Rは、まだいけるか?」
「時間、エネルギー残量ともにあと一回だけ可能です。再発射可能まで、およそ二〇〇秒」
これが本当に最後のチャンスだと、リュウは気を引き締めなおした。新人隊員たち、各国のGUYS、
メビウス、サコミズ隊長、多くの人が背中を支えてくれてフェニックスネストは飛んでいる。こいつを絶対に
落とすわけにはいかない。
だが、GUYSの強い意志を持ってさえヤプールによって強化再生された二大怪獣は強かった。
ベムスターは肉弾戦で完全にメビウスを圧倒し、元々光線技が通用しないというアドバンテージも持って
メビウスを追い詰めていく。
「フワアッ!」
体当たりで弾き飛ばされ、倒れこんだところに蹴りこまれてメビウスは苦悶の声をあげた。こいつは以前に
戦ったベムスターが、多少なりとて持っていたかわいげも消え去り、凶暴性が非常に上がっている。もはや
完全に超獣と呼んで差し支えはないだろう。
すでにカラータイマーは赤く点滅をはじめて、食い止めるだけのつもりではかなわないと考えたメビウスは
一気にけりをつける覚悟を固めた。左手のメビウスブレスから光の剣、メビュームブレードを発生させて
けさがけにベムスターに切りかかっていく。
「テヤァァッ!」
グドンやアリゲラの体でも両断するほどの切れ味を持つ、メビウス必殺の一刀がベムスターに一直線に向かう。
ベムスターはメビウスの動きについてこれないのか、真正面から受け止めるかまえになっている。やった! と、
メビウスはもはや避けようがない距離にまで迫ったベムスターの姿に確信した。
しかし、メビウスの確信は打ち砕かれた。メビュームブレードはベムスターの体に当たりはしたが、石を
切りつけたペーパーナイフも同然にはじき返されてしまったのだ。
「ヘアッ?」
「なんだと!」
狼狽の声を上げたのはメビウスよりも、むしろリュウのほうだった。数々の怪獣を倒してきたメビウスの剣が
まったく通用しないとは信じられない。だがそれも道理だった。ベムスターはかつてウルトラマンジャックの
ウルトラスパークで二度に渡って、体をバラバラにされて倒されている。その轍を踏むまいと、ヤプールは
ベムスターの表皮を特に強化し、ウルトラスパークと同等の切れ味を誇るZATの回転ノコギリをはじき返すほどの
頑丈さを与えていたのだ。
そして一瞬の狼狽はベムスターに味方した。メビウスを抱えあげて投げ飛ばし、鋭い爪の生えた腕で殴りつける。
すでに持つ武器のほとんどが封じられたに等しいメビウスに、満足に反撃する術は残されていなかった。
「ウワアッ!」
「ミライ!」
ベムスターは腹の口から毒ガスを噴射してメビウスを攻め立てる。ディレクションルームのスクリーンに
映るメビウスの苦戦の様子に、リュウは戦友の名を叫んでやるしかできなかった。
たったの二百秒足らずが永遠にも思えるほど長く感じられる。コンソールに表れるエネルギー充填完了の
カウントダウンは恐ろしくゆっくりと流れていき、敵の攻撃はひと時も休むことなく続く。そして、運命のときが
やってきた。
「部分日食が始まったようです。次元の変動が観測されはじめました」
ついに、地球とハルケギニアを結ぶトンネルを開くことができる時間が来た。前回の皆既日食に比べれば
わずか七分の一しか削れず、本来ならたいしたニュースにもならないような些細な自然現象だが、今はこれに
地球はおろか全宇宙の命運がかかっていると言ってよい。
遮光フィルターを通した太陽の姿が徐々に欠けていき、センサーにも次元の歪みが大きくなってきているのが
観測できる。エネルギー充填完了まで、あと一六〇秒。早く、早く、と焦る気持ちばかりが強くなる。
そこへ隙が生じてしまったことを責められる者はいないだろう。リュウはおろか、操縦士までもカウントダウンに
集中してしまったフェニックスネストに向けて、アブソーバの触手の先端が伸びる。
〔リュウ!〕
「しまった!」
サコミズ機からの警告が響いたときには遅かった。アブソーバの触手から、真っ赤に燃える高熱火炎が放射されて
フェニックスネストに襲い掛かる。四千度にも達する高熱火炎に焼かれたらフェニックスネストでも無事ではすまない。
避ける間はとてもなく、リュウが大破を覚悟したときだった。ジェットビートルがアブソーバの触手に体当たりし、
火炎の方向を変えたのだ。
「サコミズ総監!」
フェニックスネストは救われたが、サコミズ機は左主翼の大半を失って墜落していく。垂直離着陸能力も
損傷したのか、姿勢制御する様子もない。このままでは地面と激突してしまう。
「脱出してください。早く!」
〔だめだ、脱出装置も故障したらしい〕
「そんな、総監!」
〔リュウ、うろたえるな。お前には、まだやるべきことが残っている。GUYSを、頼んだぞ〕
「総か……隊長ーっ!」
通信が切れ、燃え盛る炎とともにジェットビートルは落ちていく。メビウスはベムスターに組み伏せられ、
動くことはできない。リュウの心にセリザワ隊長が戦死したときの記憶がフラッシュバックする。
だが、そのときだった。
「隊長! GUYSスペーシーから緊急連絡です。地球に向かってとてつもない速さで飛ぶ、無数の飛行体を
確認したそうです」
「なんだと! 新しい敵か!」
「いえ……これは、この反応は!」
オペレーターは答えを言い切る必要はなかった。なぜなら、太陽系外から光速をも超える速さでやってきた
無数の飛行体は、怪獣に襲われる各惑星や地球の各都市へと飛び込んでいったのだ。
そして、リュウたちの眼前にもそのひとつは現れた。空のかなたから飛び込んできた、太陽のような赤い
光の球。それはフェニックスネストを再度襲おうとしていたアブソーバに体当たりして吹き飛ばし、墜落寸前の
ジェットビートルを、まるで抱きかかえるようにして包み込んだ。
死を覚悟して、操縦桿を握ったまま瞑目していたサコミズの耳に、懐かしい声が響いてくる。
「サコミズ……サコミズ……」
「……君は」
「君はまだ、ここで死ぬべき人間ではない……ともにゆこう、今一度、君の力が必要だ」
ジェットビートルは砕け散り、機体は紅蓮の炎に包まれる。
だがその炎の中から、炎よりもさらに熱い光がほとばしり、光は人の未来がまだ尽きていないことを世界に告げて立ち上がった。
続く
今週もありがとうございました。>264の方、支援感謝します。
タバサの冒険は、いったんここで終わりになります。彼女の冒険を描くのは、私も自由に物語を展開できるので好きだったのですが、
いつまでも延々続けるわけにもいきませんからね。幕引きとしては、少々ショッキングかもしれませんが、死亡してはいませんので
その点だけはご安心ください。
次回は久しぶりに地球が舞台になります。ヤプールの送り込む大怪獣軍団をはたして退けられるのか!?
なお、来週はお盆で忙しいかもしれないので、もしかしたら投下できないかもしれません。
あと、ウルトラマン列伝を毎週欠かさず見ていますが、やはり深い歴史を感じさせられます。妥協無く作った情熱の結晶は、時代を
越えて愛され続けていくということですね。私も、借り物の題材の作品ですが、両作品への敬意を忘れずに妥協無く物語をつむいでいこうと思います。
ウルトラさん、乙です!
なんという胸熱な引き、オールドファン泣かせ!
忙しければ、仕方ありません。急ぐより じっくりイイモノを書き上げてください。
お待ちいたします。
ウルトラ乙
改造ベムスター… あのデッサンの狂った…
どうしようカッコいい
投下乙
やはりサコミズ隊長の元には長兄が来たか
でもヤプールの復活を黙認したのも長兄だったような気が
日替わりの人とか、ペルソナの人とか、早く帰ってこないかな・・・
萌え萌えさんは今日修正だけして生存報告だったね。
どこを直したのかと思ったら、あかぎの排水量で割り算するところを掛け算してたのね……
特に問題がなければ、五分後より投下します
一同の行動を決めたのは、一羽の梟だった。
見覚えがあるというキュルケに、シルフィードは今までタバサへの指令を運んでいた梟だと告げる。
「ルイズへ。七日後、我が屋敷に来られたし」
タバサの筆跡であることを確認すると、キュルケはその内容をルイズへ伝える。
「シルフィードが私の所に逃げるって予想していたようね。タバサの屋敷はラグドリアン湖畔、国境付近のガリア領内の屋敷よ」
モンモランシーがキュルケの言葉に動揺を見せる。
「それ、間違いないの?」
「ええ。一度だけど行ったことあるもの」
初耳だとギーシュが言うと、ひけらかすようなことではない、とキュルケは応える。
自分の出自をタバサが語りたがらないことは全員が知っていたので、それは確かに納得できることだった。
しかし、モンモランシーは続ける。
「待ってよ。ガリア側にある昔からの大きな屋敷なんて、一つしかないじゃない」
「なら、話が早いわ。そこのことよ」
「誰の屋敷か知っているの?」
「勿論」
キュルケは一息置くと、一同を見渡しながら言った。
「無能王ことガリア王ジョゼフの実弟、オルレアン公のお屋敷」
ギーシュとシエスタはポカンと口を開け、モンモランシーの表情は厳しくなる。
そして、ルイズは頷いていた。
「ジョゼフにより暗殺された、と言われているオルレアン公の屋敷ね」
「待ってくれ、それじゃあ、タバサはガリア王の血筋の者ということかい?」
「あるいは、深く関わりのある者か」
カリーヌが言を続ける。
ウルトラの人乙でした。
サコミズ隊長…現実でもゾフィーが来てくれていたなら…
「オルレアン公にはシャルロットという娘がいたと聞いています。年は、タバサと名乗る子と同じくらいでしょうね」
全員が口を閉じ、互いの顔を見合わせる。
やがて、ギーシュがぽつりと言った。
「……もしかして、ガリアのお家騒動に関わることになるのか?」
「あの子はタバサ。あの子が自分でそう名乗り続ける限り、私にとってタバサはタバサ」
キュルケは言い切る。
反論は許さない。タバサの友として。
「シャルロットなんて私は知らない。私が救いたいのはタバサ。それ以外の何者でもないわ」
そうか。と誰かが呟く。
次いで二人、三人、と呟きが広がる。
「オルレアン公の娘なんて、そんな畏れ多い知り合いなんて、私にはいません。でも、タバサ様は大切な御方です」
シエスタが言い、キュルケは微笑んだ。そして頷く一同。
「満場一致ね」
「囚われの姫を救うのは騎士の誉れという奴だね。男子たるもの一度は夢見るシーンじゃないかね」
「ああ、ギーシュのお姫さまはタバサなのね。よくわかったわ」
「いやその、モンモランシー? これは言葉の綾というもので……痛い! 痛いって!」
タバサを救う。一同の意志は固まっていた。
しかし、場所も時間も相手の指定のままである。
罠を仕掛けるにはあまりにも絶好だろう。
「知らずに罠に掛かるのと、知ってて罠に向かうのは自ずから別のものでね」
モンモランシーから逃げたギーシュが知ったように嘯く。
「罠を逆に利用してやればいいのさ」
「どうやって?」
「うん、それは今から考えるとしてだね」
「やっぱり馬鹿ね、貴方」
モンモランシーとギーシュのやりとりに思わず笑うルイズ。
キュルケも笑い、カリーヌもやや相好を緩めている。
期日までの七日間を、一同はヴァリエール家の別荘で過ごすことになった。
傷を癒す者、魔法に工夫を加える者、異界のマシンの技に習熟する者。それぞれが思うように時間を過ごす。
そして指定された当日、一同はラグドリアン湖畔に集まっていた。
いや、正確には集まっていたのではない。足止めされていた。
「予想通り、っていうことね」
キュルケの言葉に自嘲の響きはない。
ルイズの同意を求めようとしたキュルケは、その妙な表情に気付く。
「どうしたの?」
「敵がまとまっているのよね」
「ええ」
キュルケはルイズの視線を追う。そこには異形の怪物が数体、こちらを窺うように佇んでいる。
「あれは、メカアーミーって言うのよ。ザボーガーの記録で見たわ」
「ええ」
「ザボーガーは、メカアニマルには負けたことがないのよ」
「うん。え? アニマル?」
「アニマル」
「あそこにいるのは?」
「アーミー」
メカアニマルはΣ団、メカアーミーはその後に戦った恐竜軍団の者である。
当時、メカアーミー第一号に敗れたザボーガーはストロングザボーガーとして強化された。
しかし、ストロングザボーガーに必要な合体相手、マシンバッハはここにはない。
つまりは、ザボーガー単体で戦うことになる。
「ルイズ?」
「負けるとは思ってないけれど」
今のザボーガーの動力源は虚無である。それは、かつてのダイモニウム、怒りの電流に比べれば遥に高性能なエネルギーである。
つまり、同じザボーガーでも、かつてのザボーガーよりは強化されているということだ。
さらにここには烈風がいる。キュルケもギーシュもいる。マシンホークもある。
「一人で突進しない限り、負けないわよ」
その言葉にキュルケは何か言いかけた口を閉じる。そして、ギーシュとモンモランシーを見た。
二人は嬉しそうに頷いている。
やや時間を空け、ルイズは言った。
「キュルケ、ギーシュ、モンモランシー、シエスタ。そして、お母さま」
ルイズはマシンザボーガーから降りると、一同をそれぞれ見やる。
シルフィードは上空から降りてこない。三ッ首がいる、と彼女は断言し、そのまま上空を飛んでいるのだ。
力量差にかかわらず、竜族である限り三ッ首には対抗できない、それを知った上での配置であった。
「一緒に、戦いましょう」
答えは決まっている。
カリーヌが杖剣を構える。
ギーシュがゴーレムを作り上げる。
キュルケが景気づけのように炎を飛ばす。
「チェンジホーク!」
「電人ザボーガー! GO!」
虚無の力を得たザボーガーは、かつての劣勢を想像すらさせない力で、次々とメカアーミーを撃破する。
チェーンパンチが胴を貫く。ブーメランカッターが胸を切り裂く。速射破壊銃の前に立ちはだかることのできるメカアーミーはない。
あまりにもあっさりと片づいたことで、逆に一同には不審が募る。
何らかの罠か、と周囲への警戒を怠らずに屋敷へと向かうが、その様子もない。
そして、屋敷前に待ちかまえていたのはタバサ本人だった。
「やはり、皆で来た」
「タバサ、貴女無事なの?」
「怪我は負ってない」
キュルケに一言応え、タバサの視線はルイズへと向けられる。
「ルイズ。何も言わず従って欲しい」
「断るわ」
迷い無く答えるルイズ。
「貴女こそ、正気に戻りなさい。三ッ首が何者かわかっているの?」
「関係ない」
やはり迷うことなく答えるタバサ。
「私は、任務を果たすだけ」
瞬間、カリーヌが杖剣を構える。それにやや遅れて身構えるキュルケ。そしてギーシュはモンモランシーの前に立つ。
「これが……」
「……獣臭くて嫌になるわ」
「モ、モ、モンモランシー、き、君は下がっていたまえ」
タバサの背後、屋敷の影から現れる巨体。異形の竜にしてリーヴスラシル、魔神三ッ首。
シルフィードが一声鳴いた。それは威嚇か、あるいは恐怖か。
……よく来た、ザボーガー。大門豊でないのが惜しいがな
そしてゆっくりと開く玄関扉。
タバサは扉のほうにちらりと目を向け、言う。
「ルイズ以外は帰っていい」
私の任務は、ザボーガーを『ここ』へ誘き出すこと。
ザボーガーとその繰者であるルイズ以外は関係ない。
タバサが告げると同時に、屋敷の中から現れるメカアーミー群。
「数だけ揃えるなんて、雑魚確定じゃない?」
「まったく、少数精鋭という言葉を知らないと見える」
ファイヤーボールが唸り、ゴーレムが拳を振るう。
ルイズはメカアーミーには視線の一つも向けず、巨体を睨みつけるように立っている。
……ただのザボーガーで我に勝てると?
凄まじいプレッシャーに顔をしかめるルイズ、その横に並ぶカリーヌとシエスタ。
「ルイズ、一人ではありませんよ」
「ルイズ様、ホークはこのためにハルケギニアに来たんだと思います」
……いや、そうでもないか
二人に続いた三ッ首の呟きに被せるように、ホークでもザボーガーでもない第三の機械音。
「役者が揃ってるじゃないか!」
唐突かつ聞き慣れぬ声。さらに砲声、爆音。
吹き飛ばされるメカアーミー。驚きに目を見開くキュルケ達。そして、タバサ。
「どうして……」
「何驚いてるんだい? いつもの無表情な人形面はどうしたのさ?」
ルイズの目も見開かれる。
そこにあったのは、ザボーガーの記憶の中にあったマシン。盟友マシンバッハである。
「トリステインの貴族さん達? 緊急事態だ。跪けとまでは言わないが、挨拶ぐらいはしてもいいんじゃないかい?」
「これは失礼を。ガリアの姫よ」
ただ一人、表情も変えずに応じるカリーヌにイザベラは笑い、
「さてと、細かい説明は後だ。そこの娘、合わせて貰おうじゃないか!」
マシンバッハが唸る。
ルイスは咄嗟にザボーガーをマシンに戻してターンさせると、バッハへと走る。
シエスタはホークを三ッ首と二人の間に配置し、その動きを一瞬でも牽制しようと動く。
「あんたこそ、こっちに合わせなさいよ!」
「上等! やってみなっ!」
二台が交差する直前、二人はそれぞれのマシンから飛び降り、そして命じた。
「チェンジ! ストロングザボーガー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは風のスクウェアである。
だが、人々は気付いていない。彼の呪文には明らかな偏りがあることを。
ワルドが使うことのできる魔法はただ一つ、「遍在」のみである。
人々は知らない。彼が「遍在」のみに特化した風の使い手であることを。
多種多様な風の魔法を操っているのは彼ではなく、彼の「遍在」である。
それはワルドにのみ許されたレアスキル。「風の原石」の担い手となった者のみに許された、唯一の魔法。
ワルドの母は、研究者だった。その研究内容が風石に関わっていることをワルドは知っていた。
だが、ワルドにとってはただそれだけだ。詳細まで知っていたわけではない。
ワルドがその内容を知ったのは、母の死後のことである。
母は事故死とされた。しかしワルドは知っている。母の死の原因は自分だと。
半ば気狂いのように研究に没頭する母を、彼は疎ましく感じていた。だからこそ、彼は母を日常にいない者として扱っていた。
そんなある日、彼は進む道を邪魔するように立っていた母を払いのけた。悪意はなかった。ただ、邪魔だっただけ。
しかしそこは、階上だった。さらに、階段のすぐ目の前だった。
ワルドを弁護するのは容易い。母は実際に気狂いと言われても仕方のない状態だったのだ。
彼は、壁に向けてそんな母を押しのけたのだ。
抵抗するとは思っていなかったのだろう。抵抗しようとして、痛めていた膝が折れるとは予想できなかったのだろう。
膝が折れた側に傾いた身体。その先には、階段があった。
そしてワルドは、母を押しのけた自分を嫌悪し、そっぽを向いていた。
気付いたとき、母の身体は段に叩きつけられ、滑るように落ちていくところだった。
運がいいのか悪いのか、頭から落ちた母は即死だった。少なくとも、苦しむ時間は最小に抑えられたのだ。
己のやったことに気付いたワルドは死体を見下ろす。
――母さんを殺したのは僕なのか?
答える者などいなかった。
さらにその数年後、父を失い天涯孤独の身となった頃、彼は母親の残した研究成果を己の血肉としていた。
成果は三つ。
「大隆起」
「風原石」
「四つの虚無」
支援だ!
それらの情報をワルドは手中に収めたのだ。
トリステイン、いや、ハルケギニア全体を破壊しかねない天変地異「大隆起」の詳細。
全ての風石を束ねる、あるいは下位とする最大かつ最高にして唯一の風石「風原石」の所在地と制御法。
世界の始まりと理すら左右する「虚無」に関する知識。
これらが揃えば、破壊、君臨、どれを選ぼうと不可能ではない。ハルケギニアの神も悪魔も自在のままだった。
だが、完璧ではないことにワルドは気付いていた。
ワルドは時を待つ。己が力を蓄える。
まずは「風原石」を手中に収め、風石の一斉活動による「大隆起」の時期を限定的ながら制御する術を手に。
そして、「風原石」により得たレアスキル「遍在特化」により、十数体の遍在を自在に操る。
それほどの時をかけず、ワルドの手元には莫大な情報が集まることとなる。何しろ、彼の遍在はその全てが風のスクウェアである。
そのうえ、死と引き替えにしてまで情報を得ることが出来るのだ。
さらに、それによって得た「アンドバリの指輪」は、まさに水系統における「風原石」のようなアイテムであった。
人の心を操り、あるいは死人すら操る水の力。
これだけの力を個人で得た者が、かつてのハルケギニアにいただろうか。
いや、いたことを、ワルドは知っている。
始祖ブリミル。そしておそらくはリーヴスラシル三ッ首竜。
ワルドは、三人目なのだ。
今、史上三人目の力を手にした男はアルビオンにいた。
玉座に背を預け目を閉じたワルドは、心を遍在へと飛ばす。
いくつもの情景がめまぐるしく移り変わる中、ワルドは一つの情景に心を止めた。
それはラグドリアン。
ガリアの情報を知って以来、ガリア各地に埋め込んでいた遍在の一部。
水と風の究極の力により遍在もまた、その力を変えた。
遍在特化とアンドバリの力を掛け合わせることにより、人ならざる遍在を操ることが可能となった。
操るのは「人」である必要などない。そこには「人」の部品があればいい。
目玉一つに耳一つ、そして手首。それだけあれば見、聞き、移動することが出来る。
今、ラグドリアン……いや、ガリアの各地では奇妙な動物を見ることが出来る。耳と目を持ち、自在に動き回る手首を。
その内の数体が、タバサの屋敷の屋根裏に、地下に、壁の隙間に集まっている。
ワルドは、いくつかの視界を通じ、屋敷内の情景を眺めている。
カリーヌ達と共にメカアーミーを薙ぎ倒すザボーガー。
現れる三ッ首。
ストロングザボーガーの登場に、ワルドは眉を上げた。
やりとりを聞く限り、それはザボーガーのパワーアップ形態なのだろう。おそらくは、三ッ首を倒せるはずの。
ザボーガーによる三ッ首打倒は、ワルドにとっても望むべきことだ。
ワルドにとって三ッ首打倒は難しい。ザボーガーを倒すことも同じ。しかし、ルイズを倒すと考えれば難易度は極端に下がる。
ならば、ワルドにとっては三ッ首をザボーガーに倒させるのが最も有利なのだ。
「ロケットチェーンパンチ!」
ワルドが見たチェーンパンチとは異なり、それは火柱を噴き上げながら高速でメカアーミーを貫く。
「ジェット! ブーメラン!」
これもブーメランカッターとは違う。当然の事ながら、威力は桁違いだ。
ワルドの見る限り、ストロングザボーガーはザボーガーとは比べることすらできない強さだろう。
そのザボーガーに負けた自分が、正面から倒せる相手ではない。
「ストロングバズーカファイヤー!」
腰の二門の砲塔からの砲撃がメカアーミーを粉砕する。
ワルドは思わず笑っていた。
強い。確かに強いのだ、ザボーガーは。
だが、所詮は人によって操られるゴーレムの類に過ぎない。操者を倒すと考えれば、これほど簡単な相手もいないだろう。
だから、それはいい。今のワルドにとって、この光景で気になっているのは二つだ。
「さて、ミス・サウスゴータ?」
「ここに」
とある理由でガリアへ派遣された部隊と入れ替わるように戻ってきていたフーケが、即座に姿を見せる。
「その鏡を見たまえ」
無造作に置かれた一つの鏡には、ワルドに送られている映像がそのまま映されている。
支援
支援
?
!?
俺に執筆の才能があれば、
ムダツモ無き改革で書いてみたいな。
ジョゼフがこれはなかなか面白いゲームだとか行って食いつかせる。
一点棒一火石でどうだ。
国士無双13面待ち
ライジングサン!!
モヤモヤする切れ方だなおい
投下中に寝ちまったのかね?
猿だったか
恥ずかしいなオレ
避難所に続きあるよ
Lv不足で代理出来なかった
出来る人誰か頼む
とっくに猿なんか解除されてるわけで
ハッピバァスデーィッ!素ゥゥン晴らしい!新しい虚無の使い手の誕生だ!
シエスタ君、ケーキの準備だ!
>>298 序盤に振り込んで運を捨て、集ったクズ牌で国士無双するヤツが
某麻雀漫画にいなかったか?
>>305 坊や哲の昔の相方だったような
アメリカ兵との通訳役
カードは拾った
拾ったカードは弱い
弱いカードで勝て
おい、デュエルしろよ
拾ったものを使うからです
メタルマックスをディスってんのか?
と聞いてみる。
此処って何のスレ?
あの作品のキャラがルイズに召喚されましたスレ
あるいはおもわぬとこから深い知識が飛んでくるスレ
イメージしろ
想像しろ
ン・ダグバ・ゼバ「呼んだかい?」
>>316 加藤総司令は「最強の敵」のイメージだったそうだが
原作漫画版は最近すっかり大暴落
アニメから加藤が召喚されてジョゼフの使い魔に
教皇の使い魔となりロマリアをマキナ化したマサキと戦うべくハルケギニアで新・加藤機関を結成・・・
一番隊隊長:イザベラ
二番隊隊長:カステルモール
三番隊隊長:ワルド
四番隊隊長:フーケ
五番隊隊長:メンヌヴィル
六番隊隊長:ダミアン
・・・こんなん想像した
ルイズは?・・・・・・爆発繋がりで王政陸
ナタクのファクターがどうしたって
イメージですべてが決まるってどこの魔法騎士じゃ
超能力なんて適当なもんです
まあ最近じゃイメージで戦ってる格闘マンガもあるし
バトスピからダンさんを呼んで…
駄目か、カード関係以外何もやらないや
ダンって名前のキャラはけっこういるよな
冒険ダン吉はさすがにないか
サイコガンを使うコブラも超能力者か?
超人だけど超能力者じゃないな
ギーシュ戦で挑発伝説を敢行してギャラリーから拍手喝采を受けるダンとか?
ワルドには漢道だな
キャプテン・ダンに性根を叩き直してもらおうぜ
ハルケギニアで国家解体戦争おこしたらどうなるの?
ただの侵略者じゃん
>>329 興とか干とかが来るぞ
アイムシンカートウトウ よう首輪つき
国家解体戦争起こせる勢力から考えないとね?興とか干はハルケギニア産搭乗型ゴーレム乗り?
>>323 遊戯王から、王様と社長と十代ならカードでもカード以外でも戦えるぜ!
>>329 「貴族共へ(ry」されてハルケ崩壊
そのあとは企業の老人たちが、新しい資源基地をめぐる経済戦争の舞台として統治します
国家解体戦争を起こす勢力=民間企業
とりあえずゼロ魔の原作で名前が出ている企業…
魅惑の妖精亭か!?
まず、企業という概念を作り、広めるキャラでないと……
まおゆうか。
337 :
携帯住人:2011/08/09(火) 14:17:50.81 ID:IcgnqQSZ
そろそろ誰かザボーガーさんの代理投下したげなよ
すぐゲイヴンネタ出すにわかは巣に帰れ
>>336 ここは敢えて「天涯の武士」から、日本初の株式会社を設立した小栗上野介召喚で。
>>339 前回の書き込みでは他の作品からだったな。
まずは学院の財政改革からスタートか?
そういえば究極超人Rを読み返して気づいたんだけど
あいつ何気にレーザー光線発射機作れるほどの技術力持ってたんだよなw
自転車も時速200km以上出しても平気な特別仕様だし
……何気にチートだよな、シリアスモードになれば結構な女誑しなとこあったし
お米の無い世界にR君召喚ってのは、かなりのイジメだと思う。
稲作を広めるR田中一郎の姿が!
シエスタのお爺さんが種籾持ってたことにすれば…
ゼロ戦?レーザー光線発射装置だけで無双できるからいいだろw
曾お爺さんだった orz
なおさらその種モミを食いたくなったぜ
で、
「お前達に 今日を生きる資格は無い!」
と言って、ケンシロウのコスプレをしたトサカ先輩が登場するんですね。
種モミと聞くと真っ先に世紀末モヒカンに襲われる図が連想できてしまう
えんぎでもない、このスレにはタナカッテン侯爵が6分の1ダースも!
>>349 ざんねん! あなたのかきこみはこれでおわってしまった。
とりあえず、ゼロと電流の続き落とすよ。
「ザボーガー……イザベラ? それに三ッ首ですか」
「イザベラが何故そこにいると思う?」
「三ッ首を倒すためでしょうか?」
ガリアに潜入していたフーケの得た情報は三つ。
ヴィンダールヴとしてマシンバッハを召喚したジョゼフは、三ッ首に与している。ただし、その理由は不明。
イザベラは三ッ首に不信感を持ち、ガリア王の行動を由としていない。
そして、生きる屍とされたロマリアの虚無ヴィットーリオが現在幽閉されている場所。
「手持ちの情報では不足か。ではもう一つ」
ワルドは、鏡に映ったホークとシエスタの姿を示す。
「ルイズにはガンダールヴとしてザボーガー。ガリアにはミョズニトルンとしてマシンバッハ。ロマリアではリーヴスラシルの三ッ首」
フーケは無言で鏡を見つめていた。
動けない。ワルドの視線は一方向ではない。複数から感じる視線。それはワルドの遍在であった。
いや、今のこの玉座に座っている本人すら遍在ではないと誰が言えるのか。
「マシンホークとやら、アルビオンのヴィンダールヴに思えるが」
「ならば、私の知らない内にアルビオンの何者かが召喚したのですね」
「君の妹は虚無には目覚めていない、と聞いたが」
「ザボーガーを召喚したルイズは王族の血を引いているとはいえ、ヴァリエール家の者です」
「アルビオン王家の血を引く者が他にいると?」
「いないとでも?」
証明も反証も不可能だ。
王家の者が愛人に産ませた子。隠された子がいないと、誰が断言できるのか。
「どちらにしろ、ザボーガーにもサポートは必要でしょう」
「確かにな」
下がって良いと告げられ、一礼し下がろうとするフーケをしかしワルドは呼び止める。
「開き直りは一度だけ許す。次はない」
「……さあ、何のことだか私にはわかりかねますわ」
「ああ、それでいい」
それだけを告げると興味を失ったように視線を外し、再びガリアの光景へと埋没する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「観念するんだね、図体だけのトカゲ野郎」
メカアーミーを失った三ッ首に、イサベラが告げていた。
「ガリア王妃の名にかけ、貴様を誅殺する」
三ッ首への視線をずらさず、
「……シャルロット、今ならまだ間に合う、三ッ首を捨てな」
「私はもうガリア王には与しない」
「解毒剤を渡すと言ってもかい?」
「信用できない」
「私や父上より、三ッ首のほうが信用できるって言うんだね」
「当然」
「だったら、ルイズを信じな!」
突然の指名に絶句するルイズ。タバサは思わずルイズを確かめるように視線を向ける。
「ルイズ、あんたならわかるだろう」
「何よ」
「虚無魔法〈記録〉に目覚めたガリア王。そして、ガリアにあるマシンバッハ」
……視たのか
「ああ、そうさ。見たさ。クソトカゲ野郎が、人の母親に何をしたかまでね!」
三ッ首配下として仕えたメザの姿を、ストロングザボーガーは当然見ている。その記録は、バッハの中にも残されていたのだ。
「……にも関わらずいけしゃあしゃあと、死んだ人間を蘇らせるために力を貸せとガリア王に申し出たクソトカゲ野郎がいたんだとさ」
イザベラの瞳が三ッ首を射抜くように輝いている。
「騙された王も馬鹿さね。だけど、私は嬉しかったんだ。母さまを救うために父さまが動いてくれていることが!」
だから、だからこそ。
「絶対に貴様は許さないッ!」
それは、歓喜でもあった。
ガリア王ならば、その程度の詐術に惑わされるわけがない。王を良く知る者ならば誰もが異口同音にそう言うだろう。
だが、王は騙された。いや、騙されたかったのだ。
最愛の女が、妻が、娘の母が蘇るという嘘を。
だから、イザベラの心は震えた。
父の母への愛を知ったから。たとえそれが、どれほど無様な結果に終わろうとも。父が母を愛していたことは事実なのだから。
……許しなど、乞うつもりもないわ。下等な人間ごときの命など、我の知ることか
……メザよ、虫けらを殺せ。お前の父を殺し、母を狂わせた男の娘を殺せ
「駄目ッ!」
キュルケが手を伸ばす。
その手に捕らえられるタバサは、三ッ首に操られるように杖を構える寸前だった。
「タバサ。貴方が人でなしになる必要はないのよ」
「放して」
「いや。この決着がついた後なら止めはしない。それでも貴女が今この場でどうしてもイザベラを討ちたいというのなら」
まずは自分を撃て。キュルケは告げる。
「ガリアへの復讐は止められないかも知れない、だけど、三ッ首に与することだけは絶対に駄目」
……構わん。ザボーガーがここにいると言うことは、その人間は用済みだ。新しいメザなど、なんとでもなるわ
「させるかっ!」
イザベラとルイズが走る。
「ザボーガー! ストロングバズーカファイヤー!」
砲声と同時に白光が閃いた。
三ッ首から伸びた牙が、ザボーガーの左肩を貫く。
そして、砲撃を正面から受けた三ッ首は揺るぎもせずに立ちはだかっている。
以前の三ッ首とは違う。
確かにザボーガーは強化されている。虚無という力によって動くザボーガーの能力は上がっている。
だが、三ッ首も条件は同じ。さらに、この世界は元々三ッ首の生まれた世界である。そしてもう一つ。
今の三ッ首は、リーヴスラシルなのだ。
使い魔としての能力アップは、その召喚主が存在する限りは消えない。三ッ首にとってのヴィットーリオは、ガリアにいる。
正確には、幽閉されている。逃げ出さないように、いや、己の意思で動けぬように加工された状態で。
今のヴィットーリオはただ、三ッ首をリーヴスラシルでいさせるためだけにその命を許されているのだ。
「ザボーガー! 退きなさい!」
ザボーガーを下げるルイズ。しかし、ザボーガーで対抗できない相手に誰が立ち向かうというのか。
イザベラがザボーガーに並び、損傷を確認する。
「左手が完全にやられてるぞ」
本来の装甲も固定化も全て引きちぎるように易々と貫いた三ッ首の牙である。今のハルキゲニアに止められるものはないだろう。
「ルイズ様! ザボーガーをもっと下げてください!」
シエスタの声は頭上から。限りなく飛行に近い跳躍中のホークである。
「ホーク! 三ッ首を倒して!」
ホークはザボーガーと違い、空戦特化の格闘仕様である。固定武装はないに等しい。
対する三ッ首は、三つの竜口からそれぞれ炎、電撃、毒煙を噴き出すのだ。
それでも、シエスタは果敢に三ッ首へと近づく。
だが、ホークはあくまでもザボーガーの対抗機種であり、ストロングザボーガーほどの力はない。
三ッ首との直接対決では勝ち目はないと言っていいだろう。
その隙にカリーヌはルイズとイザベラを庇うように進み、モンモランシーは霧状の水で視界を塞ごうと試みる。
瞬時に火炎によって蒸発する霧。再び牙がザボーガーを襲う。
「ザボーガー! 逃げて!」
ルイズの命令も虚しく、牙がザボーガーの腹部を貫いた。為す術もなく倒れるザボーガー。
「ルイズ。ザボーガーを逃がすのです」
カッタートルネードを放ち、カリーヌがルイズに囁く。
「虚無魔法〈世界扉〉、覚えたはずですね?」
「お母さま、でも」
「時間がありません。自力で動ける内に、ザボーガーを逃がすのです」
言いながら、カリーヌはデルフリンガーをザボーガーに握らせる。
「デルフ、頼みます」
「ああ、任せな」
万が一、ということでルイズは既にカリーヌの計画を聞かされいた。だが、実際にそうなるとは予想していなかったのだ。
今のルイズには、ザボーガーがこうも簡単に敗れるとは想像も出来なかったのだから。
「早く!」
再び霧を生み出すモンモランシー。キュルケはタバサを抑えつつも、細かいファイヤーボールで三ッ首の視界を狭めようとする。
……逃がすと思うか
三ッ首が動き、三つの牙が同時にホークを砕く。悲鳴を上げるシエスタ。
しかし、ホークは破壊されながらも牙を抑え込む。
……邪魔だ
ホークが最後の力を発揮しようとする寸前、ザボーガーが三ッ首の背後に現れる。
振り向こうとし、ホークにしがみつかれる三ッ首。
……貴様!
浴びせられる電撃、今度こそ砕けるホーク。だが、ザボーガーが三ッ首に肉薄する。
ようやく振り向いた三ッ首は気付く。
このザボーガーの左肩が砕けていないことに。
ザボーガーに似せて作られた、ギーシュのゴーレムが砕け散った。
「苦労したんだ、引っかかってくれて嬉しいよ」
吼える三ッ首が見たのは、輝く鏡の向こうへと走り去るザボーガーの姿だった。
「精々吼えな、今頃……」
イザベラが憎々しげに微笑んだ。
「ガリア全騎士団を率いた王が、アルビオンと共にアンタの城をぶちこわしている頃だよ」
メカアーミーとて、一機に多数で掛かれば倒せない相手ではない。
それが、ガリアの誇る「裏」騎士団も含めてならば尚更だろう。
だが、イザベラはまだ知らなかった。
ワルドの真意を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほお……」
ワルドの口元が笑みの形に歪む。
「なるほど、そういう事情だったのか、無能王。泣かせるじゃないか」
ならば、約定通りに手伝ってやらねばなるまい。
ワルドの心が再び揺らぎ、風原石を捉える。そこからさらに、ハルケギニア全土の地下に埋まった風石群へと心は飛ばされる。
ガリア地下の風石を、ワルドの心は捉えていた。
「ふむ。少々過激すぎるかな。まあ、構うまい」
ワルドの笑みが深まる。
「さらばだ、ガリア。そしてロマリアの虚無よ」
大隆起の引き金が引かれる。
その日、ガリアは滅びを迎えた。
ザボーガーの変形合体をダイヤブロックで再現したハイスペックバカも世の中には。
乙
やっぱりこのスレのイザベラ様はカッコいいなあ。
129 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ファイヤーマンやミラーマンといい最近は昭和ヒーローのリメイクがはやってるのかね?
露骨に大友を狙いに来ただけだと思う。
個人的には嬉しいけど。
大友と聞くと人妻寝取り好きのキリシタン大名が浮かぶな。
三大イザベラ様
・気さく
・電流
・アクマ
特に気さくは名作
>364
うちの県の恥だそいつは
>>368 能力的にはともかくメンタル面では歴代主人公中最弱な人は黙ってなさいw
メンタルが強いキラか
CV玄田の彼だな
371 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/10(水) 20:20:09.85 ID:YKEe9NUM
>>369 いや彼のメンタルは最強だよ?
だってロボトミー手術受けたかのごとき感情の薄さだもん
肉体もだって炭素人間技術で代えが効くし
酷いなw
んで色々考察
種初期だとまあヘタレなとこあるけど真っ直ぐな性格だったし、この頃ならなんとか上手くやってけそうだけど
種後期以降だとルイズみたいなタイプとは絶対に合いそうにないんだよな…
マチルダさんとかキュルケみたいな男あしらいが上手そうなタイプなら、上手い事やる気にさせそうだけど
メンタルが強いキラか
カズマさんだな
>>368 ムウの代わりにヤザンあたりが至ら再起不能になるな。
関係ないが
>>369 負債「修行すればドモンより強い(キリ」
メンタル最弱はカミーユじゃね
すぐキレるし落ち込むし暴走するし
カミーユは繊細なんだよ
>>372 おい、それじゃキュルケがまるでラクスみたいな腹ブラックみたいじゃないか!!
つーか、この数レスだけ見ると今召喚スレに居るの忘れそうになったわw
紛らわしいからかわいいキラケン呼んでしまえ!!
379 :
ゼロの戦闘妖精:2011/08/10(水) 20:53:44.04 ID:XkzVM1LP
主人公で歳弱ってことは、『ポケ戦』のアル(ただの小学生?)より下ってこと?
面白そうな論議ではありますが。
ご無沙汰しています。『ゼロの戦闘妖精』です。
避難所の雑談スレで 「データが消えた」とボヤいてたのは 私です。
やっと書きなおしが終了しました。
宜しければ、五分後より投下します。
Misson 16「インディアン・サマー・ヴァケーション(前編)」
修羅場は続いていた。
FAF謹製『リファイン・ゼロ』の設計製造図を書き上げ、担当者に配布し、解説及び各種注意事項を説明する。
ロールアウトしたばかりの『ゼロ号機』をフル回転させて、新人パイロットの訓練に当る。
機体の製作と平行して進めていた 各種新兵器関係の製作も進めねばならない。
新規派遣された研究者達への 物理科学講座も継続中。
肉体的にも 精神的にも、限界だった。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、トリステイン魔法学院に在籍する学生である。
あまりの多忙さから ここ暫く授業にも出席できず 期末試験も免除されていたが、あくまで本分は学生である。
本人も やっとその事を思い出した或る日 その日は前期授業の最終日だった。
「最後ぐらい 顔を出しといた方がイイかな…」
少しは 気分も変わるかもしれないし、そう思って 久しぶりに教室へと足を運ぶのだった。
トリステイン魔法学院のギトー講師。風のスクエアクラスの実力者ながら、従軍経験は無く 教育一筋に生きてきた真面目な独身教師である。
決して悪い先生ではないのだが、能力の高さはプライドの高さに 真面目さは堅苦しさとなって現れてしまい、生徒から慕われるタイプの先生ではない。
このギトー先生、夏休み前最後の授業に 毎年ちょっとしたイベントを仕掛ける。
長期休暇で生徒が羽目を外し過ぎない様 釘を刺しておこうという思惑もあるのだが、内心 自分の強さをアピールしたがっているのも否定しきれない。
今年 そのイベントの対象となったのは、(不運な事に)ルイズのクラスだった。
「それでは 解答用紙を返却する。各自 受け取りたまえ。」
ギトーが杖を振るうと、教卓の上に積まれていた紙束が風に舞い それぞれの生徒の元へと飛んでいく。
風メイジの教師が、皆こんな事をする訳では無いし、出来る訳でも無い。正直 三十路過ぎにしては、ちょっと派手好きというか エエカッコシイと言うか…
「諸君等の努力の成果は、この試験の結果として見せてもらった。
幸いな事に、私の授業に関する限り 追試を必要とするような成績劣悪者は居なかった。皆 よくやったと褒めておこう。
だからと言って、慢心してはいかん。」
褒めるだけで済まさないのが この先生だった。
「もう間も無く、明後日には『夏休み』だ。諸君等の頭の中は 既にその事で一杯だろう。
久々に親元へ帰り たっぷりと甘えてくるも良し、旅に出て 見聞を広めてくるも良し。好きにしたまえ。
ただし 分をわきまえた上でのことだ!」
語気を強め 拳で教卓を『ドンッ』と叩く。僅かにざわめいていた教室が 静まり返る。
「嘆かわしい事に、毎年 夏休み明けの最初の授業には、怪我をして包帯姿で現れたり ましてや出席する事すら儘ならない生徒が 何人か居る。
理由は決まって、『冒険』とやらで 馬鹿な事をやらかした為だ。
そして私は後悔する。『ああ またか!』と。」
芝居がかってはいるが 本心である。負傷した生徒達を見る度に 彼は心を痛めていた。(ただし、周りからは とてもそうは見えなかったが)
「一年生が学ぶ魔法は 基礎の基礎、二年生からが実用性の高い 応用編だ。
進級から今日まで 短い期間ではあったが、諸君等は真摯に魔法を学び 多くの新しい術を身に付けた。
覚えた魔法は 使ってみたくなるもの。それは仕方あるまい。私も そうだったからな。
それが 日々の暮らしの中でなら、まあ いい。だが 戦闘用の魔法はどうだ。」
ここで 生徒一同を ジロリと睨む。数名の生徒が、ビクッと背筋を伸ばしたり 逆に俯いて視線を外したりする。
「『生兵法は怪我の元』、東方の言葉らしいが、正にその通り!
諸君等が、『自主練習』と称して 決闘まがいのジャレ合いをやっている事など、我々教師は把握済みだ。
大怪我をするようなモノでない限りは 黙認しているだけで、もしもに備えて救護体制も整えているがな。」
ちなみに、ルイズとギーシュの『決闘』については、学院長・コルベール・ロングヒルの三名が知るのみで 他の教員には周知されていない。
「それが 子供のケンカであれ何であれ、勝てば自信となる。次は より強い相手と戦いたくなる。
学院内に目新しい相手が居なくなれば 学院の外で探そうとする。そこに『夏休み』だ。
猟犬を 野に放つようなものだと思わんか? なぁ、『仔犬(パピー)』諸君。」
先程 『決闘』と言う言葉に反応した生徒達が、今度はムッっとした様にギトーを睨み返す。
「ほほぅ。未熟とはいえ 一応の『気概』は持ち合わせているようだな。だが それだけでは何の役にも立たんぞ。
この学院の中では 諸君等は幾重にも亘って守られているが、一歩外へと踏み出せば 野盗が居る 野生幻獣が居る 亜人や魔物も居る。
それらとの戦いは 決して『ごっこ遊び』等ではない。敗北は 時に死へと直結する。 諸君等に『覚悟』は有りや!否や!」
現実を突きつけられ、それを理解してくれれば 良し。だが 少年達の冒険心が、その程度では止まらない事も 教師は熟知していた。
「やれやれ、これだけ言っても判ってもらえんとは!
『女子と小人 養い難し』 これも、東方の言葉だったかな?
女子と言えば、己の分もわきまえず 学院長の戯言を真に受けて、『盗賊探索』なんぞを引き受けた者が居たような。」
さて そろそろ仕上げに掛かるか。ギトーは ある生徒に向けて釣り針を垂らした。
『土くれ』のフーケ探索の任を任された三人が 実質的にこのクラス最強のメンバーといえる。うち 一人は長期欠席中、もう一人は挑発には乗ってこないタイプ。
残る一人に 見せしめにこの場でお灸を据えてやれば 他の悪ガキ共も少しは懲りるだろう。そんな算段だった。
「よろしい。では 特別試験といこう。諸君等の『腕前』を見せてくれたまえ。
何 簡単な事さ。最強の系統たる『風』 そのスクエアメイジである私に勝てたなら 認めてあげよう。『冒険』にふさわしい実力があると。
この私からの『御墨付き』だ。尤も 何の効力も無いわけだが。
さぁ どうするね。
逃げてもかまわんよ。そんな臆病者は、学外に出たとしても何も出来ないだろうからな!ハハハッ…」
怒りに顔を真っ赤にし 拳を震わせながらも、少年達は挑戦の名乗りを上げられなかった。実力が違いすぎるのだ。
高等部二年生の平均的なメイジレベルは、ラインならば まぁ優秀といったところ。スクエア相手に敵うハズもない。
ただし このクラスには例外的に トライアングルの生徒が二人居る。
(…彼女なら!) クラスの期待は、そのうちの一人に集まった。
「ギトー先生、ちょっと宜しいですか?」
期待された人物は 立ち上がり発言の許可を求めた。
「ん 何だね、ツェルプストー君。」
「先程からの仰り様、色々と物申したい事はあるのですけど まずは一点だけ。
『風』が最強だなんて、誰が決めたんですの?」
(ミエミエのお誘いですわね。でも 恋も戦も、自分の意図を相手に悟られたら 駆け引きは『負け』。
そんな事も判らないから 今だに彼女の一人も出来ないんですよ ギトー先生。)
そう言って ニッコリと微笑むキュルケだった。
(ほぅ そっちに喰いついたか。まぁ良い。)
「何だ、そんな事か。誰が決めたものでもない、これは一般常識に過ぎないのだよ。
それとも 君がこの場で、『常識』を覆してくれるとでも?
クラス代表として この私を打ち破って。」
(此処までは 概ね筋書き通り)と、キュルケの意図には気付かぬギトーだった。
「さて どうでしょうか?
『常識』で言えば 火力とは、すなわち破壊力であって それに優れるのは『火』の系統。これも常識ですわ。
及ばずながら この私が、『常識』を証明しても宜しいのですが、今回の争点は『最強』。
残念ですが このクラス最強は、私ではありません。」
キュルケは一旦話を止める。
最強の系統?そんなものは無意味だ。最強とは 『集団』ではなく『個』に与えられる称号だから。そして彼女は知っていた。最強の名に値する存在を。
「ですから、後は彼女に任せますわ。」
スッと横に移動する。キュルケの陰になっていた生徒 そこには。
「ヴァリエール君、い 居たのか!」
「ええ 居ますよ、このクラスの生徒ですから。それが何か?」
悪役っぽく口元を歪ませた笑いを浮かべ ピンクの髪の魔物がいた。
ギトーは動揺していた。完全に計算違いだった。
魔法実技において ルイズは優秀な生徒ではない。むしろ 爆発させる事しか出来ない劣等生だ。しかし 戦闘に関しては、その爆発が厄介だった。
風のスクエアであるギトーなら、自分に向かって飛来してくるものは大概 風で払い飛ばす事が出来る。岩礫でも 火球でも 氷槍でも。
だが ルイズの爆発は 何かが飛んで来るのではない。対象が いきなり爆発するのだ。これでは防ぎようが無い!
加えて 命中精度の向上も著しく、10メイル先の硬貨程度の的であれば ほぼ百発百中。詠唱も早く 高速連続攻撃も可能とか。
さらにマズいのは…
気分転換の為に久しぶりに参加した授業で ルイズのストレスはレッドゾーンを越えてしまった。
ギトーの「夏休みだからって 無茶をするな!」という主張は 正論である。少し前のルイズなら 概ね同意したかもしれない。
だが、見習いとはいえ国内最強の魔法衛士隊に所属し 実戦も経験している今のルイズからすると ギトーの言い分は『ヌルい!』のだ。
もう間も無く、『戦争』が始まる。大きな戦争が。多くのメイジが動員されるだろう。この学院の男子生徒の半数以上は 卒業後 軍務に付く事が予定されている。
戦争の早期終結は難しい。よってこのクラスからも 戦地に赴く者が出る可能性は高い。
だとしたら 無理でも無茶でも、少しでも多くの経験を積ませるべきだ。
自分より遥かに強い者と相対し どうにもならない時の逃げ方を学ぶべきだ。一目で相手の実力を見抜けるような 『勘』を養うべきだ。
それだけの事が 全治2〜3ヶ月程度の怪我と引き換えに学べるなら、安いものではないか。
雪風の影響か それともグリフォン隊のせいなのか、かなり戦闘思考に染まっているルイズは そう思う。
加えて、フーケ探索の事を揶揄されたのがいけなかった。あれは 触れられたくない一件だった。
ルイズにしてみれば 既に解決済みの件、ただ 事情が事情なのでおおっぴらにする事は出来ないだけ。とやかく言われる筋合いは無い!
と 言えない分だけストレス値も高い。これがトドメとなって、精神的耐久力のダムは 遂に決壊した!!
(雪風。ギトー先生のIFFコードを、FriendからEnemy に変更。)
《R.D.Y.》
なんとかルイズとの戦闘は避けたいギトー。
「ヴァリエール君。残念ながら 君には資格が無い。
ツェルプストー君も言っていたが、この対決は『最強の系統』を決めるものでもある。
未だ系統の判明しない君が相手では、それを決められない。」
「心配は無用です。
なぜなら 先生に相手をしていただくのは、私の使い魔『雪風』ですから。
たかだか生徒の使い魔に勝てない者が、どうして『最強』を名乗る事が出来ましょう。
そうですよね、スクエアのギトー先生?」
「!?!」
ギトーにとっては最悪だった。ヴァリエールも強くなったが、あの使い魔『雪風』は更にその上を行く。
近頃 トリステイン魔法学院で何が起きているのか。学院長からの公式な説明は無いが 講師等の関係者は概ね理解している。
ゲルマニアと共同で 『空を飛ぶ機械』の開発が進められているのだ。そして その中心に、彼女と雪風がいる。
同僚のコルベール程ではないが、ギトーも風メイジとして『空飛ぶ機械』とやらに興味を持った。
アカデミーから学院に派遣されてきた研究者の中に 学生時代の友人を見かけ、話を聞いてみた。
国家レベルの開発計画であり、守秘義務に抵触する事柄もある為 多くは聞けなかったが 気になる事があった。友人は、雪風のことを『フェニックス』と呼ぶのだ。
雪風が かの盗賊の巨大ゴーレムを粉砕したのは記憶に新しい。そして レコンキスタの艦隊が壊滅した『フェニックスの神罰』事件。
これらから導かれる結論、「戦列艦十数隻を沈めたのは 雪風」!
冗談じゃない!!
最強たる『風』のスクエアメイジと言えども、唯一人で戦列艦と戦い これを沈める等という事は不可能だ。出来るのは、既に伝説と化した『烈風』カリンぐらいだろう。
それを 艦隊ごと葬り去るバケモノと、どう戦えと言うんだ!!!
窓のガラスが 揺れた。
コトコトと。ガタガタと。そして 割れんばかりに鳴り響いた。
グォオオォオオオ! と迫る爆音、校舎を揺さぶり 一瞬で駆け抜けていった。
雪風が 低空飛行で建物スレスレをフライパスしたのだった。
「さて 先生、それでは校庭へでも 出て頂けますか?
別に、教室に二十ミリをブチ込んでもイイんですけど、巻き添えを食らったクラスメイトが、血塗れの肉塊になるのは忍びないので…
フフッ フフフフ。」
ルイズの言葉に 周囲は静まり返る。そして、
「イ、イヤァー!」
「に、逃げろぉぉぉ!」
「血迷うなヴァリエール!」
「よせ。やめろ、やめて、助けてくれ〜!」
一転して パニックと化すのだった。
結局 騒ぎを聞きつけ、「何事ですか!」と教室に飛び込んできたコルベールによって惨劇は回避され、ルイズとギトーはオスマン学院長から説教を食らうハメに。
久しぶりに授業に出ることで 気分転換を図ろうとしたルイズの目論見は完全に裏目に出て、更なるストレスを溜め込むことになった。
同級生達は 明日の終業式を終えれば、『夏休み』だ。
「決めたっ! 私も休む!! 誰が何と言っても休むの!!!」
かくして ルイズの短い夏休みはスタートした。
とはいえ、自分の抱えたモノを いきなり放り出してしまう程に、ルイズは無責任では無い。
丸一日かけて、各研究者への一週間分の課題と職人への作業指示書を作成 緊急連絡用に雪風への無線回線も確保した。
さあ 何をしよう、何処へ行こう。
とりあえず いつものメンバーに声を掛けてみることにしたが…
タバサとキュルケは、終業式にも出席せず 早々に学院を離れていた。
ガリアの国元から呼び出しがあり、実家に帰ったそうだ。(キュルケは それに付いて行っただけ。)
「う〜ん、コレは追いかける訳にも行かないわね。」
同盟国であるゲルマニアのキュルケの屋敷ならともかく、タバサの所に雪風で押しかけるのは 流石にマズい。
諦めて ギーシュを探したが、こちらも居なかった。なんでも、モンモランシーに引き摺られる様にして ラグドリアン湖へ向かったとか。
ただのデートや恋人旅行にしては 変だ。
「面白そうね!」
行き先は決まった。
すぐにでも出発したかったが、残務処理にもう一日掛かってしまい、結局翌日の夕方過ぎになって やっと雪風は飛び立った。
一時間と掛からずに ラグドリアン湖上空に到達する。
(今夜は湖畔のどこかで一泊して 明日、ギーシュ達を探しましょ。)
雪風の探索能力を以ってしても 所在不明な特定人物を発見するのは容易い事では無い。半日ぐらいは掛かるだろうと踏んでいる。
それよりも キャンプの食事用に積んできた 『FAF標準型サバイバルキット』の非常食セットの味が楽しみなルイズだったが、
《報告:地上 湖岸部に高熱源発生。パターン解析、攻撃魔法・火球の可能性92パーセント。何らかの戦闘状態と判断。》
「何かしら? 雪風、対空攻撃を警戒しつつ 接近して詳細情報を収集。」
《R.D.Y.》
そうもいかない様だった。
目標に近付くにつれて 観測される情報量も加速度的に増大する。
《対象地点に四名の人員を確認。アンノウン1からアンノウン4と登録》
広域レーダー上の輝点に仮称名が付随。どうやら 二対二での戦闘のようだ。火・風VS土・水のコンビバトル。
一歩間違えば 死人が出かねないガチの闘いだが、火風系が優勢で 土水系は防戦一方の状態だった。
高解像度カメラがアンノウン達の姿を捕らえた。即座に分析、結果は?
《該当データあり》
そして ディスプレイに表示される『名前』。
「?!? あんたたち、何やってるのよぉ!」
「手強いわねっ!」
キュルケは攻めあぐねていた。攻撃の方はヘボかったが 守備に回ると手強い相手だ。
こちらのファイアーボールを防いでいるアースウォール、アレは唯の土壁ではない。内部に金属板を仕込んだ『複層装甲』だった。
表面の土が衝撃を吸収し 分厚い金属板で残りの熱と勢いを遮断する。土が吹き飛んだ部分は すかさず地面からの補給で修復される。
加えて 相棒の水メイジがオーバーヒート気味の装甲板を冷却し、溶融や強度低下を防いでいる。
(フレイムがいれば、『連続火球弾』で何とかなったかもしれないのに!)
悔やんでも 彼女の使い魔はここには居ない。
ガリアまで 無理を言って連れてきて貰ったのだ。流石に フレイムまでシルフィードに乗せて欲しいとは言えなかった。
その風竜に乗って 上空から攻撃していたタバサが、長めの呪文詠唱に入った。
(『ジャベリン』でブチ抜く気ね。じゃあ それまでに出来るだけ削っておかなきゃ!)
(な、何でコンナ事に… なったんだぁぁぁ!) ギーシュは 必死に壁の欠損部分を修復しながら考えていた。
モンモランシーに拉致?されて、やって来たのはラグドリアン湖。『精霊の涙』を分けてもらう為の条件として 湖の精霊が出した『妨害者の排除』。
初日の晩に 早速怪しげな相手と出会ったのはイイが、これがメチャクチャ強かった。ワルキューレを展開させる暇も無く 一方的に攻められている。
(だいたい モンモランシーがあんなモノを作らなきゃ、いやいや 違うぞギーシュ・ド・グラモン。お前は あの時の一件で何を学んだ?
何であれ 女性に事の責任を押し付けるなど、紳士たる者のすることではない! 違うかぁ!!)
あの一件 香水壜事件とそれによる決闘は、ギーシュに幾つかの変化をもたらした。
女性に対する八方美人的対応は相変わらずだが 恋人と呼ぶのはモンモランシー唯一人。真剣に恋愛に向き合うようになった。
また 雪風にワルキューレが瞬殺されたのが悔しくて 『機関砲に耐えられる装甲』の開発に日々努力していた。
目標は未だ達成されていないが その中間成果である『複層装甲』で 謎の敵からの攻撃を防ぐ事が出来ている。
(この『壁』は貫かせない!
僕の後ろには モンモランシーが、愛するヒトがいる。そして彼女も 魔法で僕を支えてくれている。
そう 今僕は、愛の為 愛する人の為、この身に愛を受けながら 愛の力で戦っている!! だから …負けられないんだぁぁぁ!!!)
必殺の一撃を放とうとする寸前 タバサは気付いた。遥か天空より響く 聞き覚えのある轟音、そして 風を切り裂く落下音。
「待て待て待て待て待てぇ〜い、ちょっと待ったぁぁぁ!」
ズドーンという盛大な音を立てて 一本の大剣が湖畔の地面に突き刺さる。戦いを繰り広げる二組の ちょうど中央辺りだった。
皆が呆気に取られて 戦闘が中断される。
「ふぅ 何とか間に合ったぜ。
よう 嬢ちゃん達、それと薔薇のニ〜チャンよぉ。何があったか知らねぇが、俺っちに免じて 一旦杖を収めちゃくれねえか?」
「……」
「デッ デルフゥ? なんでこんな所に??」
「デルフだってぇ?!」
「もう いったいなんだっていうのよぉ〜」
暗がりの中 出会い頭に戦闘を始めた四人は、ここで初めて相手が誰だったのかを認識した。
「「「ええぇぇぇ〜!!!」」」(タバサ:「……」)
ルイズが合流するのを待って、お互いの事情を説明しあう事になった。
支援
タバサはガリアの『シュバリエ(騎士)』である。
『名誉職としての騎士』や『金で買える階位』ではなく、実力を認められた者にのみ与えられる国家資格だ。
これによって 国から年俸が出るが、当然のように兵役その他の義務も負う事になる。
今回の命令は 「ラグドリアン湖 異常増水の原因調査とその解決」だった。
ルイズの感想は(う〜ん ちょっと意外ね。かの有能なる『無能王』の差配とは思えないわね。)というもの。
現・ガリア王は 「ただ長男だというだけで、王位を継いだ無能者」「日がな一日遊び惚けて、配下ともロクに話もしない うつけ者」
と 一般には『無能王』と呼ばれているが、少しでも『世界』を見る目のある人物からは 間逆の評価をされている。
彼の即位以来 ガリアの鉱工業の発展・貿易黒字額・軍事力の増大は、ハルケギニア随一である。
単一分野が突出するならともかく 多くのジャンルでバランスをとって発展するのは、優れた司令塔の存在無しにはありえない。
ガリア国内の何処を見ても 国王意外にその役目を果たしている者は見受けられなかった。
部下に僅かな指示を与えるだけで 見事な国家運営を成し遂げている人物を、どうして『無能』と言えようか。
(奇人・変人である事は 間違いないようだが…)
今回の案件については、たった一人の歳若き騎士に任せられるようなものではない。
本来なら まず、アカデミーから研究者のチームを派遣して原因を究明し、しかる後 武力が必要ならば騎士団を派遣する、そういったものだ。
にも拘らず 原因については、湖到着の時点でシルフィードが
「きゅい これは『湖の精霊』の仕業なのね!」
と 韻竜の特殊な感覚で看破してしまった。流石 幼生体とはいえ破格の使い魔。しかし、解決方法についてはお手上げ状態。
モノは試しと 攻撃魔法を色々と撃ち込んでみたが、効果があろうハズも無し。
そして翌日 精霊の気配を纏わせた不審な人物が現れたので、仕掛けてみた。ということだった。
ギーシュ達の方は ど〜しようも無い程 下らない話だった。
発端は、『モンモランシーの副業』。
あまり 裕福な家柄ではないモンモランシーは、自分の得意とする『香水』の製造・販売で 学費や生活費を稼いでいる。
その香水が ゲルマニアから派遣された研究者や職人達に、「手頃なトリステインみやげ」として評判となり 売り上げを大きく伸ばしていた。
製品のデキも良いが 作っているのが『美少女学生』ともなれば、オジサマ方から可愛がられようと言うもの。
普段 自分の周りにいる『少年(ガキ)』とは違う 『大人の男性』からチヤホヤされれば、彼女としても悪い気はしない。だが その様子を見て、ギーシュは落ち込んだ。
そして、寂しげなギーシュに 一人の女生徒が急接近してきた。あの時の下級生 ケティ・ラ・ロッタ。(モンモランシ先輩と別れたのなら 今度こそ私が!)
ギーシュは ケティの心遣いに感謝した。ただ ケティとヨリを戻したりはしなかった。(それでも僕は モンモランシーを愛している!)
内面的には成長したギーシュだったが、残念な事に それはモンモランシーには伝わらなかった。
(そりゃあね、かまってあげなかった私も悪かったわよ。でも でもね、だからってスグに他の女と それもあの時の娘とくっつかなくてもイイじゃないのぉ!)
これだけなら、『恋する乙女にありがちな 軽い嫉妬心』と言えない事も無いのだが。
ギーシュの浮気心を封じ込める為、モンモランシーが選んだ方法は、『ホレ薬』だった。
それを飲んだ後 最初に目にした相手にベタ惚れしてしまうという、よくある秘薬ではあるが、実際のところは『強烈な向精神薬』というより『洗脳薬』だ。
当然 製造方法など公開されているハズもない。だが彼女は、薬物製造に関する限り 学院講師も驚くようなモノも作ってしまう位の異才の持ち主だった。
高価な原材料についても、香水の販売が好調で懐具合に余裕があったため 問題とはならず、アブナイ薬はあっけなく完成してしまった!
結果として モンモランシーの企みは失敗に終わった。
ギーシュの為に用意した(薬入り)ワインを、とある人物が誤って飲んでしまい、別の某人物に熱烈ラブアタックを開始してしまったのだ。
あんな気味の悪いものを放置したら、休み明けで学院に戻った皆に トンデモなトラウマを与えてしまう!何より、自分が御禁制の秘薬を作ったことがバレてしまう!!
慌てて『解除薬』の作成を始めたが、材料の内『精霊の涙』だけが どうしても手に入らない。(原因は、タバサが派遣された理由と同じ。)
こうなれば、直接 ラグドリアン湖の精霊と交渉するしかない!と ギーシュを引き連れて来て見たが、そこで精霊から出された条件が
「『襲撃者』を排除してみせよ」と言う事だった。
双方の事情が判り、ルイズは言った。
「じゃ、湖の精霊が 水位を上昇させてるのをヤメれば、タバサ達は攻撃しないし、そうすればもう『襲撃者』も現れない訳だから そっちも条件をクリアした事になるわね。
で、なんでそこいらじゅうを水浸しにするなんて バカな事始めたのよ、精霊は?」
「それなんだけど… よく判らないのよ。」言葉を濁す モンモランシー。
元々 精霊との交渉役を勤められる者は、ごく限られている。
モンモランシーにそれが出来たのは、彼女の実家が かつて ラグドリアン湖の精霊との交渉を執り行う役職であったからだ。
ただし 大規模灌漑用水路の建設計画において 交渉に不手際があったものとしてその任を解かれ、役職も剥奪されてしまっている。
よって 親から娘へ伝えられるべき『交渉役』の技能も、不完全な形でしか教えられておらず、精霊を呼び出すことは出来ても 交渉のスキルが低い為、意思の疎通が不十分なのだった。
翌日 再び精霊を呼び出したモンモランシーは、増水を止めれば襲撃も無くなる旨を説明した。他のメンバーも加わり 代わる代わる説くも、一向に通じる様子は無かった。
言葉が通じない訳では無い。ただ、精霊と人間とでは メンタリティが全く違うのだ。
(電子工学のタームで、芸術論を語るようなモンね。)
埒が明かないと思い、ルイズはある決断をする。
(雪風、『トーカ君』の六号機を湖面上空へ。下部のセンサーを水面に接触させた状態で静止させて。)
《R.D.Y.》
「ちょっとルイズ、何をする気?!」驚くモンモランシー。
「まぁ見てなさい。上手くいったら御慰みってね。」
ホバリングする小型ユニットが センサーロッドを湖へ伸ばす。着水、波紋が広がる。
が、単純な同心円の筈のそれが 踊る。さざめき 歪み 捩れ 様々な幾何学模様を描き出す。
人間との『対話』の為に湖の精霊が作り出した 湖面より聳え立つ『水の人影』が 興味を示したようだ
「何ぞ、吾に触れたるは? …未知 何ぞ 之より漏れ出ずる音?声? 何者? 送る?繋がる? フム ならば開かん『回線』とやらを!」
突然 センサーポッドの周囲の水が盛り上がり ポッドを水中に引きずり込んだ。
《マスター:報告 『湖の精霊』とのコンタクト成功。臨時データ回線 及びプロトコル構築完了。通信可能。》
(了解。ご苦労様。)
ねぎらいの言葉には 回答は無かった。それが雪風。ルイズも理解している。それでも思いは伝えたかった。
「OK モンモランシー。こっちで聞いてみるわ、増水の理由とか!」
(よもやとは思ったけど ヤレば出来るモノなのね〜、精霊と交信って!)
「吾 行うは『失せ物探し』。求むるは 吾の元より盗まれし秘宝。六千周期の昔 託されし魔道具の一つ、『アンドバリの指輪』。」
精霊の対人インターフェイスであるヒトガタの水像が ルイズ達に語っている。同時に 人間には感知できない領域で 精霊と電子知性体の情報交換が行われていた。
一応ルイズは傍受しているが、高密度情報通信の為「ピーピー ガリガリ」としか聞こえなかった。
時折 精霊が「おおっ」「そうか」等と声を上げているので 関係は良好のようだ。
「つまりは たった一個の指輪を探す為に、世界を水没させようって言うの?
何か いろんな意味でスケールが大きすぎる話ねぇ。」 あきれ返るキュルケ。
「…そこまでして取り戻さねばならない『指輪』とは、一体 何?」タバサが言うのも 尤もだ。
「吾にとっては意味無き物。されど、うたかたを生きる汝等には脅威となろう。
そは、死せる者には偽りの命を与え、生ある者の心を操る也。そを持つ者は 偽りの王国の主とならん。
因りて そは吾に託されん。」
『心を操る』の下りで、タバサの肩がピクリと動いた事に 気付いた者は居たのだろうか?
「盗まれたって言うけど、下手人は判ってるの?」と ルイズ。
「然り。既に『雪風』へ伝送済み。」 《マスター:当該データ 再生》
ルイズの脳内に、立体スキャンデータの様な 細密な人物像が描き出される。
後に雪風に確認したところ、湖の精霊に 人間と同様の『視覚』は無いそうだ。大気中の水分を触覚素子として 物質を『見て』いるらしい。
その為 犯人の姿もモノクロ3DCGの如きモノとなる。
ちなみに この方法で見えるのは、自身の周辺だけで、水辺から離れた場所は見ることが出来ない。そのせいで 指輪の現在位置は掴めない、とのこと。
盗人相手なら、ルイズには勝算があった。
「じゃあ この『指輪泥棒』、こっちで捕まえてあげるから、湖の水位 元に戻してくれない?
人間が盗んだものなら、人間同士の方が良く判るってこともあるし。どう?」
精霊は暫く沈黙し 答えた。
「承知。『雪風』とその主よ、汝等に任さん。」
「それで、期限は? いつまでに取り戻せばいいの?」
「時を限るは無用。吾は悠久。汝の生は刹那。命 尽きる迄に戻れば可。」
(気が長いと言うかなんというか。まぁ コッチとしても助かるけど)
「じゃ 契約成立ね。水位の件 頼むわよ。」
「では 吾は去る。『雪風』よ、コレは返すが 吾再訪を待てり。何時也とも歓迎す。」どうやら雪風は 湖の精霊に気に入られたらしい。
水象が沈み行くと同時に 湖に飲み込まれていた『トーカ君六号』が浮上した。水没していたにも関わらず 各部に異常は見られなかった。
「ちょっとルイズ、大丈夫なの?あんな事 安請合いして!?」
無事に『精霊の涙』は入手できたものの、高位の精霊に対し余りに気安く話しかけ かつとんでもない約束をしてしまうルイズが、モンモランシーには信じられなかった。
「心配御無用。こっちには、トリステインで一番 いいえ、ハルケギニア一番の捕り物名人がついてるんだから!」
「あ〜、アンタこの件 『盗賊改』のワルド隊長に丸投げする気でしょ!」ジト眼のキュルケ。
「もちろん! だって、素人が手出し出来る様な事じゃないでしょ?」だが、そんな視線は気にしない。
「おいおい、そんな事、胸を張って言うモンじゃなかろうに。」こちらもアキレ顔。
「…でも確かに その方が確実。」意外と 賛同されてたり。
とりあえず 一件落着。しかし この時はまだ誰も、この『指輪盗難事件』が対レコンキスタ戦に与える影響について、予想だにしていなかった。
事が終われば 皆其々の方向へ。
タバサとキュルケは、タバサの実家へ。(学院からガリア離宮のプチ・トロアへ直行したので これから行くそうだ)
ギーシュとモンモランシーは、モンモランシ家へ。(「ウチの方が 学院より薬物調合設備は整っているから とのこと)
そしてルイズは 学院に戻る。「さて、次は…」 なにやら予定はあるらしい。一体 どこへ行くのやら?
《続く》
支援
391 :
ゼロの戦闘妖精:2011/08/10(水) 21:28:59.11 ID:XkzVM1LP
以上です。支援 ありがとうございました。
『夏休み編』、例によって 話の長さを読み間違って、一回で終わりませんでした。
後編も、夏が終わるまでに投下したいところですけど… 無理だろうなぁ。
できるだけ早めに 書き上げたいと思います。
乙乙
うん。そりゃモンモンが売ってたら可愛がる。
乙
乙
乙
>>396 負債はアホだから「うちのキラきゅんこそガンダム主人公最強(キリッ」と勝手に言ってるだけ
普通、いい年こいた大人はそんな事言いません常識的に
まぁ干された後もツイッターでほざいて問題になったりしてる時点でどうしようもない
マジで演出だけやってれば今でも業界におれたものを・・・・
>>396 スレチだけど、キラがドモンにボコボコにされるssがあったなぁ。あれは爽快だった。
先ほどこのスレに顔出したばっかりの新参者
かつ、ゼロ魔はこのまとめスレから入った「にわか」
更に救いの無いことに原作を最近買い始めたので
原作の中盤以降はほぼ知らない
という惨状だが、そんな駄目な俺でもSS投下しても良いのかな…?
誰でも最初は『新参者』です。
ただ ここではアンチ・ヘイト系や一方的な蹂躙モノは好まれません。
そういった傾向の作品であれば、『にじファン』の方をお勧めします。
ここは、真摯に創作に向かう人には優しいですが そうでない人には厳しい所ですよ。
>>399 取りあえず、投下したいのであれば原作に一通り目を通してからにした方がいい。
つーか、今更だがそう言う事は言わない方がいいよ。
叩かれる原因になるから。
戦闘妖精さん乙
ギトー先生の説明におおっ白ギトーか
と思ったらやっぱりギトー先生だった!でも頭良いぞ!
>>399 一応本編だけでも全部目を通しておくのが
設定で酷い目に遭わないための大人の醍醐味
>>400-403 サンクス、荒れる覚悟で打ったが後悔してないよ
…とりあえず、原作を買えるだけ買ってクロス元もおさらいしてから
投下したいと思う
>>404 まだあわてるような時間じゃない
待ってるぞ
>>404 そんな熱心に原作読んでから書いてる人も、そんなに多くはないと思うけどね、正直。
原作じゃなくアニメや漫画準拠でもいいと思う。
>>407 その手があったか。
自分は404氏ではありませんが、古本屋か配信サイトに行って来ます。
>>404 どーでもいいが、荒れる覚悟ってことはこのスレに迷惑かけるつもりで書き込んだんだな?
そこはせめて気を使ったほうがいいと思うぞ
迷惑ってのはまだ原作知識さしてないけどってとこにかかってんじゃないの
出る杭は打たれる
ちと違うか
雉も鳴かずば撃たれまい?
>>412 なんかそれ聞くと時代劇の悪役が思い浮かぶんだよなw
モット伯が悪代官を召喚
屋敷を改造し傭兵を雇い、シエスタをてごめにするまで才人を食い止めるSS
リッシュモンが破壊神を召喚
地下ダンジョンを作って追いかけてくるアニエスを撃退するSS
実在した時代劇の悪役と言えば鳥居耀蔵とか田沼意次とかだよな
彼らもまさか数百年後の時代でも悪役として扱われてるとは夢にも思わないだろうな
それでもゼロ魔の世界の貴族よりは奉行とか政治家としては有能そうな気がするけど
白田沼なら『剣客商売』があるけど、白鳥居な話って何かあったっけ?
ゼロ魔だと、モットのフォローはできても リッシュモンは難しいか。
鳥居さんは二百年経ってないし田沼さんも二百二十年ちょいだから
数百年後ってのはなんか違うんでないか
白鳥居というか苛烈な正義的な鳥居ならRPGのリプレイ物に一人いたな。
天下繚乱RPGの公式リプレイだったか。
黒光圀はおらぬか
>>419 ルイズを連れて諸国漫遊。
ついでに、悪代官等の溜め込んだ財貨を ごっそりと私物化するクソジジイか?
なんか 『パタリロ』顔のご隠居が 頭に浮かんで来るんだが…
イマジンブレイカーを召喚する方法はあるのか
フィアンマみたいに一度右腕だけぶったぎればいいんじゃね?
あとから中の人効果で生えるし
腕一本から再生するゴルベーザを召喚とな
流石に世界の枠を超えてまでゼムスのテレパシーは届くまい
ゼロ魔側を蔑ろにしろというわけじゃないけど、
クロス先のキャラが壊れそうになるくらいゼロ魔に染まっちゃうのは個人的には嫌だなって思う
ギャグキャラじゃないのに才人みたいな目に遭ったりとか
個人的には、混ざり合ってるようなのよりも
混ざらずに互いが互いを主張するようなクロスのが好き
>>421 無効に出来るのはあくまでも自分の世界の魔法だけだから問題ない
>>421 とある魔術の使い魔と主
コレを読んでなさいな
アイアンマンの社長を召喚したら科学と言う名のゴリ押しで蹂躙しそうだよな。
身体一つでハルケギニアに召喚されても、コッパゲのガラクタからバトルスーツを作り上げそうだし…あの人。
まぁ女好きだからキュルケのお誘いにホイホイされそうだし、それ以外にも色々とネタには困らない人物でもあるがw
某所でアイアンマンの評判聞いたが、
アメコミのスーパーヒーローの中でも五本の指に入るトラブルメーカーというのは本当だろうかw
トニー・スターク、アル中
ついでに頭が良すぎるがゆえに一人で何でも解決しようと無茶して結果最悪の事態になることが…
暴れん坊将軍から上様を召喚
最終的にはみんなでサンバを踊ることに
>>418 リプレイつーか公式NPCだよ。
で、あの妖怪さんのイメージは、アニメの妖奇士が元だと思う。
まー、天下繚乱は流石ハッタリというか、ありとあらゆる所からパクってくることで、
逆にパクリ元をわからなくする、ってやつだから、元ネタは人それぞれに思いつきそうだけど。
>431
「あなたが使い魔だと思ったモノが使い魔です」
>>430 「将軍家は代々下は足軽だ」
あの方をハルケに呼んだら泣くくらいじゃすまないよなぁ
>>430 ウェールズ皇太子が吉宗の影響を受ける。
レコンキスタのアジトに乗り込んでいって
「この愚か者が!余の顔を見忘れたか!」となり
「もはやこれまで・・・。ウェールズ皇太子は死んだ!
この者は偽者じゃ!出会え出会え!」
という展開もありだろうか?
>>434 ウェールズとアンリエッタの出会いが、『暴れん坊将軍』でたまにある、
「お忍びの姫と 徳田新之助」みたいなことになるかも
バカ殿を召喚。すぐに城下(トリスタニア)に行こうとしてルイズやシエスタと追いかけっこ
バカ殿を召喚したらオスマンやモットと意気投合しそうで困る。
シエスタを筆頭にメイドさん達と混浴できる双六とか、女の子をうつ伏せに寝かせてのおっぱい神経衰弱とかのイベントを始めるんじゃね?
しかし思い返してみるとテレビで普通に乳首が出せる良い時代だった。
柳生宗朗召喚したら相互契約でルイズがマスターサムライ化する…か?
そこはかとなく糞スレの流れだな
まあ夏だし
暑いのがいけないんや
ルイズがガリガリ君を召還しました
不可能だよ
ハルケギニアには元々ガリガリ君ないから召還はできない
召喚なら可
見りゃ判る変換ミスをどや顔でチクチクつつくなよ恥ずかしい
既に召喚されていたモノを送り返す、送り返しモノなんてのもアリ…か?
>>430 でも上様って余程の悪人でも無い限り自分でとどめ刺さないんだよな
となると男女の御庭番二人も召喚しないと
どうでもいいけど男の御庭番はたまに殉職するけどニ、三話程すると何事も無かったかのように新しい御庭番が居る
いっそのことめ組のお頭でも召喚するとか
エンディングが毎回皆で神輿を担ぎながらの演歌になるな
大江戸捜査網ならぬトリスタニア捜査網
破れ傘刀舟召喚
悪人は問答無用でたたっ斬られます。
拝一刀召喚
本人も強いがなによりあの乳母車凄ェ
装弾数無限にして重量ほぼゼロなガトリング砲装備してるわ
三歳児がかなりの距離遠投できて殺傷力抜群の手榴弾大量に積み込んでるわ
大砲の直撃にも耐える防御形態に変形できるわ
怪傑ライオン丸は時代劇に入るのだろうか?
快傑ライオン丸と聞いて変身忍者嵐がアップをはじめました
>>451 怪傑は崖っぷちだが何とか。
ただし風雲、オメーはダメだ。
平賀源内も呼ばれたがってます 「えれきてるー」
カラクリバディをオーバーヒートさせて爆ぜろ
>>427 でもトニーは魔法アレルギー、といっていいほど魔法キライだからなぁ
一度アーサー王の時代にタイムスリップしてしまった時エクスカリバーの鞘と同化してしまい
元の時代に帰る方法が「魔法の知識があるドゥームの手でエクスカリバーを「鞘にしまう」
言い換えればドゥームによって、剣で刺されろとマーリンに言われて
トチ狂ってたからな
「魔法を受け入れろ?ドゥームを信じろ?無理にもほどがある!」って駄々捏ねてた
>>447 お庭番に止めを刺させるのは、成敗されるのが武士階級の誰かだった場合、
上様直々に止めを刺すと断罪としては上等の部類=ある意味名誉ある扱い、になっちゃうから、
とかいう話を聞いた記憶がある
まあ、サイトも明確に意識して殺しはしてない訳だし、
自分では止めを刺さない、みたいな縛りのある使い魔ってのも
話のネタにはなりそうだよね
伝七捕物長
よよよい、よよよい、よよよいな
はっ、めでてえなとっw
>>457 匿名希望「やめてよね トリステインのメイジなんかがボクにかなうワケないだろ」
>>459 格下には不殺→同格か格上だとコクピット狙い→それで負けたら「あれは油断してた」な人は黙っててくださいw
>>460 負債「馬鹿にしないで。修行すればドモンだって一捻りなんだから!!」
>>453じゃあGで
実写のエンド後なら多少は獅子丸落ち着いてるだろうし
巨乳の元には豹か虎か
つかマンガ版でいいかもう
>>453 風雲の「ロケット変身」は、コルベール先生あたりと絡ませると 面白くなりそうだけど?
>>430 コブラ・カメ・ワニのコアメダルを持った上様を召喚と申したか
G・・・Gガンからストーカーを
「皆さん、今回ルイズが召喚するのは・・・」
って感じでルイズが何を召喚するのかを説明するだけで終わるんだ
遠山の金さん召喚。
ワルド=同席している黒幕、フーケ=利用されていた
「本日のお裁きにはワルド子爵も同席をお願いいたした。」
桜吹雪の刺青を見てワルドは「おのれ!遠山!」となる。
フーケはトリステイン所払いで一件落着。
G・・・グレートマジンガー
VS七万で倒れた甲児がルーンを失い、ルイズが再召喚・契約を行おうとしたら出てくるプロ
Gと聞いたら黒い悪魔が思い浮かぶ。なにかそんなキャラ居たかな?
天然戦士Gのことかーやめろー
バイオハザード 2
ハルケギニア諸国とレコン・キスタの戦いはトリステイン王国を巡り、急速に収束しつつあった。
だが、この最終局面において、貴族は突如、態度を翻す。
その消極的な姿勢は、事実上の不干渉にも等しかった。
ある密約。
貴族はレコン・キスタを黙認する。
その替わりに、貴族の生命を安堵し、彼らの権威を維持する。
レコン・キスタは、打算家たちの性格を知悉していた。
自らが確保されるのであれば、すべてを賭ける価値などどこにもない。
すべからく、破壊からの復興は経済成長の土壌なのだから。
いまや、レコン・キスタを止めるものは何もなかった。
ただトリステイン魔法学院に従わず、独自に動いたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、その使い魔を除いて。
また なんか湧いた?
どうみてもACfaのパロディです
ゴキブリだったら範馬刃牙からバキ
ゴキブリ師匠から学んだゴキブリダッシュでギーシュやフーケのゴーレムを粉砕
ワルドのライトニングクラウドだって勇次郎が雷攻撃無効のスキルを持ってるから
その劣化版のバキだって人間を焼き殺すのが限界程度の出力なら無効化できるはず
ただ猪狩にあっさり騙されまくったりした経験もあるから搦め手には弱そうなのがネック
小ネタにありそうだったが、一発ネタでMOTHER3のきゅうきょくキマイラ召喚とか。
契約しようと近づいた瞬間。
バクン!!ボーリボーリ…ゴックン
GAME OVER
バリバリムシャムシャバキバキゴクン
○○○ とってもいいなまえなのに……
オレサマ オマエ マルカジリ
それはともかく、近所にコミカライズ版が置いてなかった。
Gっていうとクゥボレーのアストロナガンが……
久々にかつてよく行ってた古本屋行ったら潰れてた
Gなら、キングゲイナーのゲイナーを単体で召喚…とか
才人とはまた違ったやりとりが出来そうで面白そうだ
G…仮面ライダーG召喚
ただし、ルイズは全力坂
481 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/12(金) 23:45:19.83 ID:61kzijpU
ルイズがパンプキンシザーズのアリスを召喚するやつ知りませんか?
探してるんだけど見付からない
プリティベルから高田厚志召喚
ギーシュ戦でギャラリー共々ダンスしたりで面白そう
>>468 リリなののガリュー(ルーテシア付き)はどうか
そういや、召喚魔導師の類が召喚される話ってあったっけ
じゃあもうワンダービットからコックローチマン召喚しようぜ
召喚士ならサモンナイトからとか召喚されてた
あと人修羅も一応召喚士・・・かなぁ
スペクトルマンを召喚してもハルケギニアじゃ変身できないな
GGゴキちゃん!
カーレンから ゴーゴーゴキちゃんを召喚しよう!
カーレンジャーを1回追い詰めたこともある猛者だし!!
ブロッケンGはまだか
ブロッケンマン召喚とか
これまでガスを武器にした使い魔ってみたことない
ゴキブリといえばブレスオブファイア、あれを食うはめになるイベントはトラウマものだ
サガフロンティアからT260Gを
492 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/13(土) 10:23:01.83 ID:7P1Ve7h8
ゴキブリってエビみたいな味なんだっけ
つまりエビはゴキブリみたいな味ってことか
すまん、下げ忘れてた
エビの味をしたゴキブリをどこかが開発してるって話じゃなかったっけ?
えっ ゴキブリの味をした ツインテール?
覇王丸によるとゴキブリは不味かったらしい。
つまり覇王丸はエビが嫌い。
日本で一般的な家庭内害虫の味は知らんけど、南米の方には食用Gとかあったような。
前にムツゴロウさんがあるテレビ番組で、南米に行って大ミミズを喰ってたな。
日本だと食用ミミズは霜降り和牛並みの超高級食材だが。
ミミズと聞くとレーザーミミズが真っ先に浮かぶ自分は間違いなく異端。
ハルケのどばどばミミズは食用じゃないっぽいけど、上手く調理したら美味しいのかもね?
秋山醤「ミミズ料理なら任せろー」
つーか、この人を召喚したらアルビオンに行った先で、王党派の人々にとんでもない料理を振る舞いそうだな。
>499
レーザーミミズか、懐かしいな。
>500
ミョズは内原富手夫か。
ナイア
「いやもう僕がいるし」
>>499 レーザーミミズつながりでメタルマックス3のドラムカンをよびだしたら・・・
まあキス一つで意外ということ聞いてくれるかも知れんな
ただわがまま娘は好みじゃないらしいから主人をほっておいて
周りの女性を口説き始めるかも知れん
ミミズというと・・・・・・・スケバン刑事かBMネクタールを思い出す
ゲロを吐き出すなら死んだ方がマシだぜ
>>503 サイトとの被りを避けるためにヴィンタールヴでもいいかも。
でも2の方が親和性高そうな気ががが。
トモダチ(バトー博士つながり)とかエンジン(ナイルじいさんつながり)とか。
とりあえずギーシュにモゲラを召喚していただきたい。
ギーシュの好物はミミズ千匹とな
土属性召喚、スカルミリョーネ召喚ネタを考えある程度書いたが
イマイチな出来だった上に出来れば春のうちに載せたかったので今年はパス
他に土は・・・・・・ミオとザムジード?
リッチ(FF1)とか?
出会い頭フレアーで片されそうだが
生態的にモンハンのモノブロスとか?
契約で何とか懐いてはくれたけど、フレンドリーな戯れつきで地中がドーンと。
ギーシュなら吹っ飛ばされた後も血塗れの笑顔で餌をあげそうだけど
鬼武者2の柳生ジュウベイなら武器の切り替えで4(5)属性までいける
雷、風、氷、土、火
鬼武者3の明智サマノスケなら4元素+αまでカバー
雷、風、火、天、疾、土、毘沙門
水系が無かったか……
土のバーストンがどうしたって!?
>>512 愛の戦士 レインボーマンなら
月、火、水、木、金、土、日
の七つだぞ
「不発の核弾頭」さんは 『山』じゃなかったかな?
地はディノディロス
烈のグレートゼオライマーじゃ一緒くたにされてるけどね
山と地
しかし、バーストンと見て不発じゃなくて真っ二つとルビが振られたのは
原作を読み返した所為か
秋津マサキを召喚したらタバサのウィンディアイシクルをタバサの(ry
天のゼオライマー
月のローズセラヴィー
火のブライスト
水のガロウィン
風のランスター
地のディノディロス
山のバーストン
雷のオムザック
烈のグレートゼオライマー
キュルケとタバサのコンビすら
「茶番は終わりだ」と申して冥王しそうで怖いわ
ジャック・アトラスが来たら魅惑の妖精亭でもやっぱりクビになるかな
天然戦士GはJコミで復刻されとったなぁ
懐かしかった
>>520 遠見の鏡で決闘の様子を見ながら、オスマン校長がコルベールの残業届けに判を押すとでも?
仮面ライダーオーズから紫のコアメダル召喚
ちょうど属性もあうっぽいし
>>524 紫は一応氷属性だった気がする
緑:雷 :?
黄:光(熱) :火属性
白:重力 :土属性
赤:熱(風) :風属性
青:水 :水属性
タトバ:? :?
タトバ:基本 :企画の意図を伝える属性
オーズの属性ってモチーフになった動物じゃないのか?
鳥属性とか
オーズからなら会長か里中君を召喚したほうが面白そうだな
OOOからなら、いっそのことアンク達グリードなんかもまとめて持ち込みたいですね。
こんばんは。
ついに最終回、SeeDの書き手です。
pixivの方ではもう書いたことのある一文なのですが、こちらでも書いておきましょう。
FF8もゼロ魔も「愛と魔法の物語」でしたが、この話は「剣と権の物語」です。ここまで読んで頂ければ判ります通り、「愛と魔法」がないわけではありませんが、ストーリー中の優先順位としてはサブにあたります。
それでは、最終回を00:30頃よりどうぞ。
FINAL mission Maybe I'm a lion
背中に杖を突きつけられたまま、別の騎士によって先導されたスコール達はやがて広い部屋へと誘われた。正面の数段高くなっているところに玉座らしき物があるということは、ここはいわゆる謁見の間という奴なのだろう。
そしてその玉座には教皇エイジス32世が座り、その隣には
「何故だ」
形式張った挨拶も何もかもをすっ飛ばしてスコール・レオンハートが問いかける。
「何故あんたが生きている」
僅かに
「知らないの?魔女は、その力を別の誰かに継承するまで死ぬことは出来ない。その魔女の力自体が枷となってね」
教皇の隣に立ったアルティミシアが、少し意外そうな顔で講釈を述べる。
(それは知っている……だが、アルティミシアの魔女の力は『あの時』……)
イデアへと継承された筈なのだ。
「力を継承するまで、か……」
そんなのを相手にして大丈夫なのか、と言外に込めるアニエスが相棒を見やる。
(わからないが……)
少なくとも、このまま放っておいていい訳はない。
「さぁ、来なさいSeeD達。今度こそ、私はお前達を下し全てを手に入れる」
「いいや、あんたの相手は俺一人だ」
「正気?折角の助力を断るなんて」
「あんたとの決着は、他の誰にも譲らない。俺が、俺だけが、あんたを倒す」
ガチリ、と檄鉄を引き上げ、両手でしっかりとライオンハートを握る。
「どういうことだ、アルティミシア。お前だけで三人を屠れるのだろう」
些か語気を強めながら、教皇が問う。
「……ええ、勿論。ただ、彼はそう思ってはいないみたいだけれど」
些かうんざりしたようにそう返しながら、アルティミシアはスコールを見る。
「まぁ良いでしょう。それならお前の望み通り、一人ずつ屠ってあげるわ」
「待て、アルティミシア!三人まとめて相手をするのだろう!?」
「……私がこのSeeDを片づける間ぐらい、一人で何とかなさい。そんなことも出来ないのが、『虚無』なの?」
「ぐ……!」
フッと笑われ、教皇は悔しげに唇を噛む。
「アルティミシア、二年越しの決着、ここでつける」
「一つ良いことを教えてあげる。ここは、あなたの居る場所じゃない」
「知っているさ……!」
「ならば――征こう、グリーヴァ!」
ライオンハートを振りかぶり、斬りかかるスコールに対し、アルティミシアは回復していたグリーヴァにジャンクションすると共に大きく空を飛んで待避し、ステンドグラスをぶち破って中庭へ飛び出す。
「逃がすか……!」
教皇からヘイスガを、そこいらの聖堂騎士からレビテトをドローしてスコールも後を追う。
「……役に立たぬっ……!リーヴスラシルがっ……!」
「相変わらず、飼い犬の躾が為ってないようだねぇ、教皇猊下?」
ジョーカーが帽子に手をやりつつ嗤う。
「手駒の使い方、教えてあげようか?」
ひらひらと、手持ちのカードをそよがせてジョーカーが言う。
「ふん……必要ない」
さっと教皇が手を挙げたのに連動して、聖堂騎士達がぐるりと周りを取り囲む。
「もとより、アレもまた異教の徒。頼みにはしておらん」
「ふぅん、俺達を排除すれば、次には魔女も、か……そう上手くいくものかね」
サッと束から五枚を取り出し、ぱっと開く。
「ジョーカー」
「分かってるって。殺しやしないし、意図的に痛めつけたりもしない。ここへは魔女をどうにかする為に来たんであって、教皇庁を壊滅させる為に来たわけじゃない。わかってるさ」
アニエスがかける声に、正面の教皇を見据えたままそう頷き返す。
現状、ただでさえハルケギニアの情勢は混乱しているのだ。ここでブリミル教側の指導者である教皇がいなくなれば、擬似魔法を中心とする勢力に飲み込まれて完全に情勢は決してしまうだろう。故に殺しはしない。死に至る傷も負わせない。
「ただ、委員長の戦いに横槍は入れさせないために、全力で足止めに徹する……」
「ふん、足止めだと?馬鹿なことを。これまでお前はただ逃げ回っただけだろう。この私から」
「そりゃそうだ。あんたとやりあうメリットなんて俺には何一つ無いんだぜ。そんな無駄な事しやしない……こっちは意地でも抑えるから」
「ああ、それ以外の有象無象は引き受けるさ」
ジョーカーに背中を合わせ、剣を鞘のままに持つ。扇形に包囲を固める聖堂騎士団を見据え、正眼に構える。
「ジョーカーや、レオンハートの邪魔をするというのなら、只では済まないと思え」
「弾けろっ!」
「っはは!」
教皇庁上空。中庭から壁伝いに空中戦へと移行しつつあるスコールとアルティミシアの戦いは、熾烈さを増していた。
「これでどうだっ!」
略式のブラスティングゾーンを放つが、エネルギーの束が細く、どうにもアルティミシアを捕らえきれない。しかしフルチャージするほどの時間はタイマンでは稼げまい。
「そんなものかしら?あなたの力は」
「…………」
戦いづらい。
今のアルティミシアはかつてと同じようにグリーヴァにジャンクションして戦っているのだが、かつての姿と違ってずっと小柄で機敏に動けるスタイルになっており、中空に一瞬止まる騎士の矢とあいまって油断のならない相手と言えた。
「アポカリプス」
静かに呟くアルティミシアによって架空空間への門が開かれ、惑星の姿がかいま見える。
「そこだっ!」
門に飲み込まれそうになるのをすんでの所でかわし、ライオンハートを振りかぶって一気に距離を詰める。
「沈めっ……!」
「ふんっ!」
叩き付けるライオンハートにアルティミシアのブラスターエッジから打ち出されたカーディナルが打ち込まれ、僅かに緩んだ速度とずれた軌道をかいくぐってアルティミシアは剣戟をかわす。
「逃れられぬ苦しみを……!」
アルティミシアの足下に発生した六芒星中心の魔法陣が音もなく近づいてくるのを紙一重でかわす事によって暴発させ、接近をかける。
「深き絶望を!」
「がっ!?」
が、続けて放たれた魔力弾をもろに受け、衝撃で墜落する。
「射抜け!」
更に追い打ちで魔力の刃を次々に打ち込み続け、落着していた屋根を貫通してスコールはなお落ちていく。
天井から落ちてきたスコールは、アニエスと対峙していた聖堂騎士の何名かを瓦礫と共に押し倒しながら落着した。
「レオンハート!」
「委員長!?」
「ちっ!」
舌打ち一つ。ダメージは結構もらったが、まだ動けると判断し、すぐに立ち上がり天井の穴を、そこからゆっくりと下りてくるアルティミシアを睨み上げこちらから逆に跳躍して斬りかかる。
「そこだっ!」
「ふっ」
小さくアルティミシアが笑った次の瞬間、スコールの視界から魔女は消え失せ、代わりに四方八方から襲いくる魔法の刃が見えた。
「!」
咄嗟に全てを切り払ってのけ、魔力の爆発の中でスコールの目は再びアルティミシアを捉える。
(魔女のストップか……!危うく串刺しだ)
しえん
「ただ、委員長の戦いに横槍は入れさせないために、全力で足止めに徹する……」
「ふん、足止めだと?馬鹿なことを。これまでお前はただ逃げ回っただけだろう。この私から」
「そりゃそうだ。あんたとやりあうメリットなんて俺には何一つ無いんだぜ。そんな無駄な事しやしない……こっちは意地でも抑えるから」
「ああ、それ以外の有象無象は引き受けるさ」
ジョーカーに背中を合わせ、剣を鞘のままに持つ。扇形に包囲を固める聖堂騎士団を見据え、正眼に構える。
「ジョーカーや、レオンハートの邪魔をするというのなら、只では済まないと思え」
「弾けろっ!」
「っはは!」
教皇庁上空。中庭から壁伝いに空中戦へと移行しつつあるスコールとアルティミシアの戦いは、熾烈さを増していた。
「これでどうだっ!」
略式のブラスティングゾーンを放つが、エネルギーの束が細く、どうにもアルティミシアを捕らえきれない。しかしフルチャージするほどの時間はタイマンでは稼げまい。
「そんなものかしら?あなたの力は」
「…………」
戦いづらい。
今のアルティミシアはかつてと同じようにグリーヴァにジャンクションして戦っているのだが、かつての姿と違ってずっと小柄で機敏に動けるスタイルになっており、中空に一瞬止まる騎士の矢とあいまって油断のならない相手と言えた。
「アポカリプス」
静かに呟くアルティミシアによって架空空間への門が開かれ、惑星の姿がかいま見える。
「そこだっ!」
門に飲み込まれそうになるのをすんでの所でかわし、ライオンハートを振りかぶって一気に距離を詰める。
「沈めっ……!」
「ふんっ!」
叩き付けるライオンハートにアルティミシアのブラスターエッジから打ち出されたカーディナルが打ち込まれ、僅かに緩んだ速度とずれた軌道をかいくぐってアルティミシアは剣戟をかわす。
「逃れられぬ苦しみを……!」
アルティミシアの足下に発生した六芒星中心の魔法陣が音もなく近づいてくるのを紙一重でかわす事によって暴発させ、接近をかける。
「深き絶望を!」
「がっ!?」
が、続けて放たれた魔力弾をもろに受け、衝撃で墜落する。
「射抜け!」
更に追い打ちで魔力の刃を次々に打ち込み続け、落着していた屋根を貫通してスコールはなお落ちていく。
天井から落ちてきたスコールは、アニエスと対峙していた聖堂騎士の何名かを瓦礫と共に押し倒しながら落着した。
「レオンハート!」
「委員長!?」
「ちっ!」
舌打ち一つ。ダメージは結構もらったが、まだ動けると判断し、すぐに立ち上がり天井の穴を、そこからゆっくりと下りてくるアルティミシアを睨み上げこちらから逆に跳躍して斬りかかる。
「そこだっ!」
「ふっ」
小さくアルティミシアが笑った次の瞬間、スコールの視界から魔女は消え失せ、代わりに四方八方から襲いくる魔法の刃が見えた。
「!」
咄嗟に全てを切り払ってのけ、魔力の爆発の中でスコールの目は再びアルティミシアを捉える。
(魔女のストップか……!危うく串刺しだ)
{失礼、一つ前の投稿ミスりました。無視してくださって結構です。}
「楽に死ねたものを……」
「俺は死なない……!」
再び床に着地して、ライオンハートの切っ先を向けた。
「ふっ……」
鞘に入ったまま、布きれで固定されて抜けないようになっている剣を一振りしてアニエスは短くため息をつく。
そして振り返った先では、いくらか傷を受けているジョーカーと教皇とが睨み合いを続けていた。
「存外苦戦しているようだな、ジョーカー」
「いやなに、すっかり忘れててね『加速』の事を。ま、それでも負けないくらいは出来るけど」
ジョゼフの圧倒的な強さは、虚無の魔法は確かに重要なファクターではあるがジャンクションシステムによる恩恵も決して無視できない。
「教皇さん、いい加減ここらで手を引けば?いっとくけど、俺一人に勝てないようならあの魔女も倒せないよ?」
「何を馬鹿な……あの者には既に私の、使い魔のルーンが刻まれている」
「おいおい、まさか忘れた訳じゃないよね。そもそもあの魔女を呼べたのは、何でだったかな?」
トントン、と自分の胸を叩きながらジョーカーは問う。緑のパーカーは目の前の教皇に先日ぼろぼろにされてしまっているので、今上半身を包むのは適当に古着屋で見立ててきた木綿のYシャツだ。
「俺がちょっとした小細工であんたの支配を完全に脱したんだ。あの魔女が大人しくあんたの支配に従っているかねぇ」
まぁ、どっちにしろ、と呟く。
「委員長が倒すけどね、あの魔女さんは」
「いきなさい、グリーヴァ!」
「G.F.召喚、エデン!」
顕現するは二つの神秘。
一人の男が理想とした獣と、まだまだ幼い、しかし強大な力。
「その程度の力では……!」
「エターナルブレス!いけぇっ!」
召喚獣として実体化した二柱。物質空間からもはや隔絶した、異空間においての力のぶつかり合い。
「無駄よ。言ったでしょう、この子はあなたの……」
「そちらこそ、何を言っても無駄だ!」
一喝で、返す。
「俺はこの世界で、本物のライオンを知った。あれはただの獣だ!
肉食で、食物連鎖の頂点に君臨していても、それはただ一つの命であるにすぎない!
もちろんそれは尊ぶべき命だが、何も特別なものじゃない。当たり前の、どこにでもある、命だ!
俺が勝手に理想を押し付けて、何物にも負けないものにしてしまったが……そんなことはない!
どれだけ強靭な獣も、飢えには勝てない。老いには勝てない!
グリーヴァ!もういい!お前がそうして無理をして、だれにも負けないものである必要なんて、無いんだ!」
「いきなり何を……!」
「誰にも頼らないで居ることなんて出来ない。一人で出来ることなんてたかが知れてる!
だから、ほかの誰かと、仲間と一緒に人は動く!
グリーヴァ!俺はもうお前に頼らない。俺は本当の意味で一人で立つ!
人間として、人と人の作る社会に!」
そんなスコールの叫びと共に、ゆっくりとグリーヴァは目を閉じてゆく。
「グリーヴァ!?アナタ……!」
「眠れ、グリーヴァ……」
そっと填めている指輪の表面をスコールは撫でる。
「あ、あああああ!」
競り合う力が消えて、エデンのエターナルブレスがアルティミシアに襲いかかる。途中までがグリーヴァと競っていたため、残り香程度の衝撃だが、それでも十分だ。
「決める……!」
自身の正面に吹き飛ばされるアルティミシアを見据えて、スコールはライオンハートを構える。
弾装も新しいマガジンに変えて、体勢を立て直す暇を与えず懐へ飛び込む。
八回の斬激によって傷だらけになっているアルティミシアは、抵抗も出来ぬままにライオンハートの切り上げで宙を舞う。
「エンド・オブ・ハート……!」
追撃し、さらに立て続けに14回切りつけ、後は落ちるに任せた。
「任務完了だ」
床に降り立ち、トントン、とライオンハートの背で肩を叩くスコールの背後に、虫の息となったアルティミシアが落着した。
「リーヴ……スラシルが……」
絶句している教皇を見て軽く肩をすくませた後、ジョーカーは言う。
「あんたの頼みの使い魔も倒された。今後は俺たちに余計なちょっかいは出さないで欲しいね。俺たちはただ、元居た世界に帰りたいだけだし、アニエスに至っては敬虔なブリミル教徒だ。あんたたちが目の敵にする必要は無いだろう?」
「……ならば、とっととこの地から離れろ!どこの国家にも属さずに居ながら、あらゆる国を凌駕する力を持つ貴様たちの存在は、我々にとって脅威にしかならぬ!」
「そうしたいのは、山々だがな……」
渋い顔でスコールは返す。オダインの言っていた二年のタイムリミットまで、長ければあと7ヶ月は掛かるだろう。
「未だに帰る目処が立っていない」
「それじゃあ、もう帰ろうか」
そんな声が辺りに響く、直後。
「……すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁ……」
ゆっくりとため息をつきつつ、ふわりと浮き上がったアルティミシアの体が直立して床に降り立つ。長い髪は漆黒に染まって結い上げられていたのが解かれ、広がった翼は純白だ。
「まさか……リノア、か?」
構えかけたライオンハートを下ろし、スコールが呟く。
「なに?」
怪訝な顔をするのはアニエスだ。先程まで戦っていたのはアルティミシアと呼ばれる魔女だったはずで、それが何故、スコールの恋人であるリノアなのか。
「スコール……やっと、会えた!」
穏やかな微笑みを浮かべ、『リノア』が駆け寄りスコールがそっと抱き留めた。
「アルティミシアに、入って?」
「そう。いつだかのお返しになる、のかな」
抱きしめ合ったまま、二人はそんな言葉を交わす。
「ホントは、エルオーネさんに二、三日前から繋げてもらってたんだけど、私の力が足りなくて、表層意識にまでは出てこられてなかったの。こうして出てこられたのは、スコールのおかげ」
「リーヴスラシルよ!まだ動けるのならば、この者達を……!」
魔女の無事を見て取ってエイジス32世は声を上げる。
「あ、教皇さん。悪いんだけど、私は今この体を借りてるだけの別人なので、使い魔じゃないんです」
と、ドレスの開いている胸元を指差しながら言うリノア=アルティミシア。
言葉通り、リーヴスラシルのルーンは消失していった。
「なに……!?」
「あ、でも御心配なく。スコールたちを連れて帰るのが私の目的ですから」
アルティミシアの顔のまま、屈託無い笑顔を浮かべても見せる。
「それから、教皇さんが心配してた風石の暴走ですけど、擬似魔法マニュアルのドローのおかげで、ハルケギニアのあたりの風石は殆ど力を失ってるから気にしなくても大丈夫ですよ」
そこまで一気に言って、スコールの肩に手を置きつつアニエスの手を握る。そのアニエスの肩にジョーカーの手が置かれたのを見て、即座に術を発動させ、
「テレポ」
四人の男女の姿がその場から消え去った。
「風石の暴走とは何のことだ」
リノアの力によって、教皇庁から脱出したあと、ラグナロクのブリッジでスコールは尋ねる。
「この世界のフネの動力の風石は、もちろん知ってるよね。ハルケギニアでは地中深くとかにもそうして風石が作られる層が眠ってるんだけど、この風石が取り出されないままに放置されてると、そのうちハルケギニアそのものが浮いちゃうらしいの」
「それは……アルビオンのように、か?」
少し驚いたようにアニエスが尋ねる。
「そうです。それで、これはアルビオンのほうで先に問題になると思うんだけど、風石の力が放出されきってしまうと……」
「まさか、落ちるのか!?」
「そう、らしいですよ。私――と私が入ってるアルティミシアも、直接にアルビオンを見たわけじゃないから断言は出来ませんけど、少なくとも教皇さんはそう考えてたみたい」
だから、とリノアは続ける。
「後でアニエスさんにはサイファーやマチルダさんにこのことを教えておいてあげて欲しいんです。
詳しい時期までは判らないけど、そういうことが起こりうるって判ってれば、国全体に擬似魔法のレビテトを用意させるとかで、最低限の人的被害は抑えられると思いますから」
「ああ……言われなくてもそうさせてもらう……しかし、アルビオンがなぁ……」
ううむ、と軽く唸る。
「それじゃあ、そろそろ帰ろっか」
「あ、帰れるの」
リノアの言葉に、ちょっと驚いたようにジョーカーが呟く。
「……もう少し嬉しそうにしたらどうだ。お前も、レオンハートも」
表情が変わっただけのスコールへと視線を向けつつアニエスは呆れた声を出す。
「いやいや、これでも嬉しいし、驚いてるんだけど、余裕ある態度が俺のスタンスだし、委員長は感情を発露させる事の方がそれこそ少ないからね」
「悪かったな」
むっつりした顔でそっぽを向くスコールに、勝手にセリフをあてるのはリノアだ。
一瞬驚いた顔で、また尚憮然とした顔になり、視線を逸らし直すスコールをクスクスと笑うのを見ていて、なんだかこの二人の関係というものになんだか納得がいく気がするアニエスだった。
「帰り方なんだけど、時間圧縮でこの世界のこの時代と私たちの世界の私たちの時代とを一瞬だけ繋ぐの。世界と私たち自身との因果関係で、余程この世界に残りたいって思わない限り私たちは元の世界に帰れるわ」
微笑みは浮かべたままで、帰還方法を説明する。
「だから、サイファーがこっちに残れるかもサイファー次第、かな。あいつのティファちゃんへの想い次第」
「サイファーにもそれを伝えた方が良いか……」
「んー、それはどうかなぁ」
少し考えるように頬に指をあてるリノア。メイクは落としているとはいえ、アルティミシアの顔で恋人の仕草をやられる事に違和感を覚える。
「あいつがこっちに残りたいのも判るけど、風神や雷神が会いたがってるのもホントだよ。
だから、出来れば言わないで欲しいな。あいつが帰ってくる可能性を残すために。
それで帰ってくればあいつの想いもそこまでで、未練があったって事だし」
「風神や雷神が恨まれないか?」
「それを覚悟しても、会いたいんだよ。二人は」
その言葉を受けて、スコールは頷く。
「そう、か」
「んじゃ、そろそろお願いしましょっか、魔女さん」
ジョーカーのその言葉に、リノア=アルティミシアはちら、と戸惑った視線をアニエスに向ける。
「えっと……何も挨拶とか、しなくてもいいの?」
リノアの言葉に、フッとアニエスは笑みを浮かべる。
「良いも悪いも……解っていたことだ。こいつは只の通りすがり。行きずりの仲でしかない」
「ふぅ、アニーも解ってるね。ちょっとドライすぎるけど」
「なんだ?泣いて引き留めて欲しかったのか?」
ニンマリ笑いながらのアニエスの言葉に、いいや、とジョーカーは首を振る。
「例え強がりでもそうしてる方がずっとアニーらしい」
「なら、良いじゃないか」
「ああ、良いね」
微笑みあう二人。
「……うん、わかった。それじゃ、始めるわ」
目を閉じて、リノア=アルティミシアが時間圧縮の詠唱を始める。
「世話になったな、アニエス」
二年弱の間、共に戦いぬいた男が礼を口にする。
「なに、お互い様だ。お互いに助け合って、それで良いじゃないか。この別れでチャラにしよう」
少し寂しげな笑みをここで初めて浮かべつつ、アニエスが言った。
「ジョーカーも、な」
「うん……あ、でもさ。さっきの話だと……」
なにかに気づいたジョーカーがアニエスに振り返る。
「俺、下手に未練とかあったらこの世界に居座っちまうかもな」
「あ……」
軽く目を見開いて、アニエスは軽く息を呑む。
「それは、大変だな。じゃあ、未練を断たせようか」
素早い動作のそれを、目をつぶっていたリノアは見なかったし、スコールも咄嗟に目を逸らした。
「え?」
「サヨナラの、挨拶だ」
唇同士をゆっくり離して、アニエスは言って、次の瞬間世界はマーブル模様の混沌と化した。
「…………」
ゆっくりと目を開けて、アニエスは少し驚いた。
どこかの海岸沿い。自分の眼前にあるのは、深紅の装甲を持つ人の造った巨竜、ラグナロクだ。
「そうか、お前は残ってくれたのか」
その装甲に軽く手を乗せてから、艇内に入る。
分かっていたこととはいえ、誰も居ない内部に、軽くため息をつく。
「『お前の父親』は、本当にドライな奴だな」
軽く下腹部を撫でてから、そう言ってみせるが、別段恨みは無い。
彼は行きずりの人間。口に出したとおりそんなことは分かってたし、だからこそ二人の愛の証が欲しいとも思った。そしてそれを自分ひとりで育てる決心も、当然あった。
「まぁ、少し彼女が羨ましいかな」
一人、異世界に飛ばされてもなお再会を果たすために操を貫き通した男の、恋人。
女としては、心底に羨ましい。
「尤も、あいつにそれを期待するのは無理か」
ため息一つで、未練は振り切ってみせる。
ブリッジから夕焼け空を見あげ、眩しさに目を細める。
「……お前達と会えて楽しかった。さようならレオンハート、さようなら……×××」
そっと口から出る愛しい男の本名の呟きは、彼女と彼女の子供以外、誰の耳にも入らなかった。
END
終盤、イベントを詰め込みすぎたためと私の技量不足の為に些か駆け足になってしまった観はありますが、拙いながらもこれが私の書きたかった話です。
それでは皆様、長らくおつきあいいただき、誠にありがとうございました。
連載中に社会人になってしまった身ですが、暇があるならばまたお会いしましょう。
完結乙!
乙
Seedの人、完結乙です!
乙
乙です!
乙!
今クイーンズゲイトやってるんだが…なぜか美闘士ルイズという電波を受信した。
乙です!
完結させるとは…すごい
アニエスとジョーカーの話は詰め込み気味だったかな、と思いますが、ともかく乙!
……ところでアニエスがジャンクションしてたG.F.は、スコール達に返したのかな?
>>545 そこら辺書き忘れてますね……すいません、返してる設定です。
ただ、抽出方法なんかはもう習ってるので、今後どこかで入手していったりする可能性は多々あるでしょう(『地下水』とか)。
SeeDの方、完結お疲れ様でした。
ジャンとサイト似てる
某サムラーイは「波」「撃」「弾」「斬」「陣」の五つの系統があるます
前召喚されてなかったっけ?
完走おつおつ
seedの人、完結乙です
よろしければ50分から三重の異界の使い魔たちの代理投下いきます
代理投下頑張ってくれ
〜第12話 伝説:1+1/3×3〜
時は少し遡る。
午前最後の授業が終わるよりも前、中堅の教師であるジャン・コルベールは学院の図書館にいた。
学院本塔にある図書館の蔵書は膨大であり、30メイルを下らない高さの本棚が壁際に並んでいる。
その中で、彼がいるのは“フェニアのライブラリー”。教師のみが閲覧できる区画だ。生徒たちも
利用できる一般区画には、彼の求める答えはなかったのである。巨大な本棚に押し込まれた無数の
書物に、コルベールは次々と目を走らせていく。
――あの使い魔たちのルーン、どうしても気になる
それは、学院の生徒であるルイズとタバサ、2人の召喚した使い魔たちを調べるためだ。落ちこぼれと
呼ばれるルイズが風竜を召喚したことには驚いたが、それ以上に興味を引いたのは、あの見慣れない
ルーンだった。また、タバサが召喚した、3名もの使い魔たち。複数の召喚などという話は聞いた
ことがなかった上に、彼らのルーンもやはり珍しかった。そして、四者それぞれのルーンを見比べた
時、更に驚愕することになった。
その驚きはすぐさま好奇心へと変わり、コルベールは一心不乱にそのルーンを調べていた。そして、
やがて目当ての答えは見つかった。“始祖ブリミルの使い魔たち”という、書物の中に。
目を見開き、自分の持つスケッチと、その中のルーン図を見比べる。そひて、それが間違いで
ないことを知るや否や、コルベールは矢のような勢いで図書館を後にした。魔法学院の学院長、
オスマンの部屋へと向かう。
図書館の上、本塔の最上階にある学院長室のドアまで来ると、軽く身なりを整える。逸る心を
押さえつつ、ドアをノックしようとすると、中から声が聞こえてきた。
「カーッ! 王室が怖くて魔法学院学院長が務まるかーっ!」
やたら気合のこもった声が響いたかと思えば、今度はなにやら鈍器で泥炭袋を殴る様な音が耳に
飛び込んでくる。
「あだっ! 年寄りを。きみ。そんな風に。こら! あいだっ!」
次いで、聞くに堪えない情けない声を聞き、コルベールは溜息をついた。どうやら、オスマンは
自身の秘書であるロングビルに不埒な真似を働いたらしい。オスマンのセクハラ癖と、それに対する
ロングビルの報復は、教職員の間では密かに有名だった。
一気に気分が冷めそうになるが、自身がここに来た理由を思い出すとすぐに昂りを取り戻す。
折角の興奮に水を差される形となったコルベールは、もどかしさも手伝って乱暴にドアを開けた。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?」
先程聞こえてきた声が嘘のように、部屋の主とその秘書は泰然とした姿で出迎えてきた。恐るべき
早業で体裁を繕ったのだろう。きっちりとそれはばれているのだが、コルベールは優しい気持ちで
気付かないふりをした。
コルベールはセコイアの机に肘をついたオスマンの許へ駆け寄ると、持っていた書物を見せる。
白く染まった髪と髭(ひげ)を長く伸ばしたオスマンは、いかにも齢と経験を蓄えた風貌をして
いる。齢100とも300ともいわれる国内でも高名な老メイジは、コルベールの差し出した本を
つまらなそうに一瞥した。
「まーたこのような古臭い文献など漁りおって。そんな暇があるなら、たるんだ貴族たちから学費を
徴収するうまい手でも考えたら」
「そんなことより! これも見てください!」
学院長の戯言を遮り、コルベールは件(くだん)の使い魔たちのルーンのスケッチを手渡した。
そこで、オスマンの表情が変わる。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
その言葉に、ロングビルは立ち上がって一礼する。長い緑色の髪と、知的な美貌が眩しい眼鏡の
秘書は、余計な言葉もなく部屋を後にした。実によくできた女性である。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ……なんだっけ?」
「コルベールです! お忘れですか!」
雇い主はあれであるが。
そして、コルベールはルイズとタバサに召喚された使い魔たちとルーンのことを話していった。
そして、それを調べていった先に、この書物でその答えを得たことを。
「ふむ、始祖ブリミルの使い魔、“ガンダールヴ”か……」
コルベールのスケッチと、書物の中のルーンを見比べながら、オスマンが呟いた。
「そうです! ミス・ヴァリエールの召喚した風竜、その左前足に刻まれたルーンは、伝説の使い魔
ガンダールヴに刻まれていたものと全く同じであります!」
口から泡を飛ばしながら、コルベールは言葉を続ける。
「更に、ミス・タバサに召喚された使い魔たち! 彼らのルーンはかなり妙な形で刻まれていますが、
間違いなくガンダールヴに関わるものです! つまり、4体もの伝説の使い魔が現れたということ
です!」
熱く語れば、ふむ、とオスマンが髭をしごいてみせた。
「確かに、その使い魔たちが伝説と関わる存在なのかも知れんが、ルーンだけで判断するのは早計かも
しれん」
「それもそうですな」
真面目な顔と声で語る学院長を前に、コルベールは多少落ち着きを取り戻す。そこへ、ドアがノック
された。
「オールド・オスマン、至急、お耳に入れたいことが」
扉の向こうから聞こえてきたのは、ロングビルの声だ。
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘を起こしている生徒がいるようです。止めようとした教師たちも、
生徒たちの妨害で手を出せない様です」
それを聞き、オスマンが呆れたように頭(かぶり)を振る。
「まったく、暇を持て余した貴族ほど、性質(たち)の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れて
おるんだね?」
「1人はヴィリエ・ド・ロレーヌ」
「あの、ロレーヌんとこの莫迦息子か。確か、去年もミス・タバサと決闘騒ぎを起こしていたが、
まさかまた彼女と悶着を起こしたのか?」
そこで、ロングビルは一瞬言葉を切る。
「いえ、彼女本人ではありません。彼女の使い魔の少年のようです」
コルベールとオスマンは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために“眠りの鐘”の使用許可を求めております」
「アホか。たかが子どもの喧嘩に秘宝なんぞ使えるか。放っておきなさい」
「判りました」
ロングビルの立ち去る足音が聞こえると、コルベールはオスマンを見据え、オスマンが壁に
掛かった大鏡に杖を振る。それにより、“遠見の鏡”と呼ばれるマジック・アイテムがヴェストリの
広場の様子を映し出した。
そして、オスマンとコルベールは、騒動の一部始終を見るのだった。
「オールド・オスマン」
「うむ」
「あの少年、勝ちましたな。ラインのメイジを相手に……」
「うむ」
若干腑に落ちない気持ちで、コルベールはオスマンに尋ねる。
「やはり、彼はガンダールヴなのでしょうか?」
「ふむ。ミスタ・コルベールよ、ガンダールヴの伝承は知っているじゃろう?」
逆にオスマンに問い返され、コルベールは頷いた。
「はい。始祖ブリミルの用いた4体の使い魔の1体、ガンダールヴ。その姿や種族は記述が
ありませんが、主人の呪文詠唱の時間を守るために特化した存在と伝え聞きます」
始祖ブリミルは、その系統である虚無の強大さ故に、呪文の詠唱が長いという弱点があったと
いわれる。そして、呪文詠唱中のメイジは無力。その間を守護するための存在がガンダールヴで
あったと伝説は語っていた。
「そして、ガンダールヴの強さは千の軍勢に匹敵し、並のメイジでは全く歯が立たなかったと
いわれるが……」
コルベールの言葉を引き継いだオスマンは、思案するように髭を撫でる。
「彼の戦いぶり、せいぜい剣士として一流というのがいいところじゃのう。伝説というには大袈裟
(おおげさ)すぎる」
コルベールは頷いた。あの勝利は、どちらかというと彼を平民と侮っていたヴィリエの油断や、
あの羽の生えた光の助言によるところが大きそうだ。
「ですが、彼のルーンの状態を見ればそれも仕方がないのかもしれません」
「確かにのう」
そこで、オスマンが1つ息をついた。
「全くどういうことなのかのう、“3分割されたガンダールヴのルーン”とは」
そう、オスマンが言った通り、タバサの使い魔たちのルーンは、ルイズの風竜に刻まれた7字の
ルーンを3分割したものだった。少年の左手に最初の3字が、光る生き物の左の上羽に次の2字が、
仮面型の幻獣の触手に最後の2文字が刻まれている。
「ミスタ・コルベール。今折檻(せっかん)を受けているあの少年、彼は本当にただの人間だったの
かね?」
主人であるタバサに罰を受けている少年を魔法の鏡越しに指すオスマンに、コルベールは頷いた。
「はい。念のためディテクト・マジックでも確かめてみましたが、見た目通りただの平民の少年の
ようでした」
「ふむ、ちなみに、あのけったいな仮面については? 人間の使い魔もそうじゃが、生き物でさえ
ないマジック・アイテムを使い魔にしたなど聞いたことがないぞ」
「ええ。あれはどうやら幻獣の一種のようです。実際、ディテクト・マジックにも反応がありません
でした」
「なんじゃと?」
そう言うと、オスマンが目を丸くする。
「と、いうことは、あの仮面が使った魔法は、一体なんじゃ?」
「あっ!?」
そこで、コルベールはその事実に気が付いた。
「ディテクト・マジックに反応しない魔法……もしや先住魔法?」
「いや、それはあるまい」
コルベールの疑念を、オスマンは否定する。
「先住魔法を使う者とは、わしも対峙したことがある。しかし、あの仮面もどきの使ったものは全く
違う」
言葉を探すように、オスマンは間を置いた。
「先住魔法は、もっと具体的に何をどうさせるかを言葉にし、それを効果として現すものじゃ。
しかし、さっきのはどうじゃった? まるで抽象的な物言いばかりで、しっかりと効果を出しおった」
「では、未知の魔法だと?」
「そうなるのう」
厳粛な顔で、オスマンは口を開く。
「ミスタ・コルベール。この件を口外することはまかりならん」
「は? 事が事ですし、王室の指示を仰がれた方がよいのでは?」
「事が事だから、じゃよ」
瞳を鋭くするオスマンに、自然コルベールは姿勢を正す。
「この件は、まだまだ不可解なことが多すぎる。彼らが本当にガンダールヴなのか、その内3体は何故
3分割などという奇妙な形でルーンが刻まれたのか、そしてあの仮面はなんなのか、そしてミス・
タバサは何故3体もの使い魔を得たのか、全く謎だらけじゃ」
「そうですね」
「とにかく、宮廷のボンクラどもにこんなことを教えても、厄介事にしかならんわ。ガンダールヴの
力を以って、戦を始めようなどといいだしかねん」
それに、とオスマンは続けた。
「ミス・タバサの境遇を考えると、余計にな」
深いしわの刻まれた顔に、やりきれない様な色が浮かんでいる。その表情に、コルベールは自分の
短慮を恥じた。オスマンのいうタバサの境遇については何も知らないが、あのネコにつける様な名前を
名乗る少女が並々ならぬ事情を持っているのだろうという事は察していたからだ。
「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「畏まりました。学院長の深謀には恐れ入ります」
オスマンは遠見の鏡を元に戻すと、窓の外を見て呟いた。
「伝説の使い魔ガンダールヴか……。一体、どのような姿をしておったのだろうなあ」
「あらゆる武器を使いこなしたという伝承ですので、腕と手はあったのだと思われますが」
「……手のない奴の方が多くないかの?」
「……ですね?」
決闘から3日目の朝、才人たちは厨房を訪れた。
「おはようございまーす」
「おはようございます」
「邪魔するぞ」
三者三様の挨拶でドアをくぐれば、真っ先に気が付いたシエスタが笑顔で駆け寄ってきた。
「皆さん! いらっしゃい!」
「シエスタ。おはよう」
可愛い女の子からの歓迎に頬を緩めると、メイドの少女が気遣わしげな表情を見せる。
「サイトさん、大丈夫ですか? その、お仕置きの傷は」
「あ、あはは……。まあ、大丈夫だよ」
誤魔化すように笑って見せるが、自分でも無理がある笑い方になっていることが判った。タバサから
受けた罰を思い出すと、それだけで体が痛む。
「ヒャハハ、3日も動けずで、大丈夫もないものだろう」
「うっせ! っつーか、お前がタバサに余計なこと吹き込んだせいだろ!」
意地悪く笑うムジュラの仮面に言い返すが、逆に相手は笑みを深めた。
「うん? 莫迦な意地を張ってボロボロになって、主に迷惑をかけたことは棚上げにするか?」
そう返されると、サイトとしては言葉に詰まる。
「そりゃ、そうだけどよ……」
「なら、オレを怒鳴るより反省した方がいいな」
ヒャハハ、と甲高く笑う同僚を、才人は恨めし気に睨んだ。
「ったく、なんでそうお前性格悪いんだよ」
「そうでもないぞ? 根性が曲がっているだけだ」
「いや、同じだからそれ」
呆れた溜息をつく横で、シエスタはくすくすと笑っている。傍から見ると、漫才じみて見えるの
かもしれない。
「それじゃあ皆さん、こちらへどうぞ。コック長も、皆さんに会いたがっていましたよ」
「あのオヤジさんが?」
初日に会った豪快なコックの姿を思い出しながら、才人たちはシエスタの案内に従った。
「よう、来てくれたか! “我らの剣”に“我らの光”に“我らの面”!」
そして、出会った瞬間に、マルトーの抱擁を受けることとなる。
「お、オヤジさん!? なにごと!?」
突然抱きしめられて目を白黒させると、マルトーが興奮した口調で話しだした。
「何事だって? そりゃお前、我らが勇者たちの出迎えに決まってるだろうが!」
「勇者たち?」
ナビィが聞くと、マルトーは満面の笑みで頷く。
「おうよ! お前らはあの生意気な貴族の小僧に真っ向から挑んでいって、その上勝っちまったんだ!
俺たちにとっちゃ、正に勇者だ!」
熱く語るマルトーに、なんとなく合点がいった。要するに、マルトーは自分たち、特に彼と同じ
魔法の使えない才人がメイジに勝ったという事実に感動したのだ。そんな風に喜ぶ理由は、実際に
メイジと闘った才人には判る気がした。この世界の平民にとって、貴族はそれだけ逆らい難い力を
持っているのだ。そして、それをいいことに平民を蔑む高慢さも。だからこそ、それを平民が倒したと
いうニュースは、マルトー達にとって喜ばしいことだったのだろう。
「だから、お前らは俺たちにとっちゃ特別な存在だ! サイトが我らの剣で、ナビィが我らの光、
ムジュラが我らの面だ!」
嬉しそうに言うマルトーに、厨房の面々がうんうんと頷いている。傷つきながらも立ち向かい、
最後には手にした剣でメイジを下した才人。その才人に的確な助言をし、魔法を破るための道を
開いてみせたナビィ。メイジを逆に魔法で一泡吹かせ、更に被れば平民でも魔法が使えるように
してくれるムジュラの仮面。人気が出ないはずはなかった。
「(オレはむしろ勇者と敵対した側なんだがな)」
ムジュラの仮面が何か呟いていたが、小声だったために誰にも聞こえていない。
「なあ、お前は何処で剣を習った? 何処で習えば、メイジを倒せるような腕前になるのか、
俺にも教えてくれよ」
マルトーが、才人の肩に腕を回して聞いてくる。それに対し、才人は眉をひそめた。
「それがよく判んないんだよ。剣術なんてやったことないのに、なんでか剣を握ったら体に力が
湧いてきたんだ。それに、あれは俺だけの力じゃなくてナビィのアドバイスのおかげでもあるし」
正直にそういうと、何故かマルトーは顔を輝かせる。
「お前たち! 聞いたか! 本当の達人というものは、こんな風に己の腕前を誇ったりしないものだ!」
勝手に盛り上がったコック長の声が、厨房中に響き渡る。それとともに、そこかしこから感嘆の
ざわめきが聞こえてきた。
「本当にそんなんじゃないんだけどなあ」
持ち上げられて悪い気はしないが、ここまで興奮されると少し心苦しい。なんだか、人の良い
大人をだましている気分だ。
「ただ、なんだか判んない力が勝手に湧いてきたってだけで……」
「火事場の莫迦力というやつか?」
ムジュラの仮面に聞かれ、才人は考えてみる。
「うーん、そういうのともちょっと違う気がするな」
そこで、あの時左手のルーンがぼんやりと発光していたことを思い出した。もしかすると、この
ルーンが何か関係しているのだろうか。
再び思案に暮れそうになるが、それよりも早く胃袋が自己主張をはじめる。
「あのさ、朝飯もらえるかな」
「あ、はい!」
才人の頼みに、傍で控えていたシエスタが笑顔で応えた。
「さあ、サイトさん。こちらへどうぞ」
「あ、ありがと」
シエスタが引いてくれた椅子に座ると、そこへ次々と豪勢な料理が並んでいく。
「おお、すっげー!」
その豪華さと食欲をそそる香りに、才人の胃袋が早速逸りはじめた。
「さ、どうぞ!」
「たっぷり食ってくれ! 我らの剣よ!」
「んじゃ、遠慮なく! いただきまーす!」
大きめに切った熱々のチキンステーキを一噛みする。途端、ジューシーな肉汁と甘酸っぱい
ソースの味が広がり、才人の舌を心地よく刺激した。
「うまい! いつもうまいけど、今日はまた一段と!」
「うふふ、おいしいですか? サイトさん、病み上がりなんですから、しっかり栄養をつけて
くださいね」
愛らしく微笑むシエスタに対し、一方才人は苦笑する。
「はは、決闘の傷じゃなくてお仕置きの痛みで3日もくたばってたってのが情けないけど……」
頭を掻きながら言うと、シエスタが何か思いついた顔をした。
「そういえば、サイトさんは普段どちらで寝ておられるんですか? お見舞いの時にミス・タバサの
お部屋に入れていただきましたけれど、サイトさん用のベッドがあったわけではありませんでしたし」
「あー、その……」
不思議そうに首を傾げられ、才人は少し返答に困る。しかし、結局言い訳が思い付くことも無く、
正直に話すことにした。
「実はさ、タバサと一緒のベッドに寝かせてもらってるんだ」
瞬間、シエスタは目を見開く。
「サイトさん! いけません、そんなの!」
そうかと思えば、猛烈な勢いで才人に詰め寄ってくる。
「年頃の女性と男性が寝床を共にするだなんて! ましてや主人と使い魔なのに! もう倫理的にも
主従関係的にもダメダメです!」
「お、おう」
何故か必死の形相で迫るシエスタに、才人はたじたじになった。言っていることはその通りだとは
思うが、迫力が圧倒的すぎる。シエスタは見るからに真面目な感じであるし、こういうことには
うるさいのかもしれない。
「でも、ダメっていわれても他に寝る場所があるわけじゃないしなあ」
ステーキを口に運びながら呟くと、ナビィが声を掛けてくる。
「それなら、間に合わせの寝床を作るっていうのはどう? ワラの上に毛布を敷くとか」
「ワラでしたら、馬の餌用のものが用意できますよ」
妖精の少女の提案にメイドの少女が乗ってくるが、提案された才人は渋い顔を作った。
「うーん、確かに代用品にはなりそうだけど、なんかニワトリ扱いが加速しそうだな」
何の因果か日本人の名前イコールニワトリの名前と思い込んでいる主人の勘違いに、才人は呻く。
ニワトリの巣の様な藁の寝床なんて、ますますそのイメージを助長しそうだ。
「なんというか、ごめんね」
「まあ、今更仕方ないけどさ」
体ごと頭を下げるナビィに、才人はそう返した。彼女の発言が本で起こった誤解であるが、決闘で
助けてもらった恩を考えるとこの程度で怒ることはできない。それより、今は寝床をどうするかだ。
「フローリングじゃなくて畳だったら、そのまんま寝っ転がれるんだけどなー」
故郷のそのまま座って寝れる床を思い出し、才人は郷愁の念を感じた。
「ほう、チキュウとやらにも畳があるのか?」
そこに、ムジュラの仮面が反応してくる。
「もって、タルミナってとこにも畳あんのか!?」
「一般的ではないが、町の剣術道場の上座に少し敷いてあるぞ」
「おいおい、えらく和風だな……」
かなり意外だった。召喚初日にタルミナのことを聞いた限り、ハルケギニアと同じヨーロッパ風の
世界を想像していたのだ。
実際には、タルミナもハイラルも地球で例えるとヨーロッパを基調に世界各地の文化が雑多になった
様な土地柄であるのだが、流石にそこまでは才人が知る由もない。
そこで、才人はふと思いついた。
「そうだ、それならさ、お前の力で畳作れないか?」
「ああ、その程度ならできるだろう」
あっさりと肯定され、才人は軽くこぶしを握る。
「よっしゃ、それなら後で頼む!」
「でもそれなら、ベッドの方を作った方が早いんじゃない?」
ナビィに言われるが、才人は首を横に振る。
「いや、やっぱり畳の方がいいよ。どうせなら故郷のもんを感じられる寝床のがいいし」
言いながら、才人は切り分けた鶏肉をほおばった。地球にいた頃はベッドで寝ていたが、いざ離れると
日本を感じられるものを求めてしまう。人間の性であった。
「しっかし、ホントにうまいなこれ。タバサたち、いっつもこんないい肉食べてんのか」
流石は貴族、と妙に感心していると、シエスタが小さく笑う。
「最近は特別ですよ。もうすぐ“フリッグの舞踏会”ですから、それに備えて今の時期から材料も
普段よりいいものを仕入れる様にしているんです」
「フリッグの舞踏会?」
尋ねてみると、シエスタは答えてくれた。
「毎年の春に行われる舞踏会ですよ。なんでも、新入生の方々を歓迎するレクリエーションとして
開かれるとか」
そこまで言うと、シエスタは夢見る様な表情になった。
「それから、そこで躍ったカップルは結ばれるという伝説があるそうですよ」
ロマンティックですよねー、とうっとりとした声で言うシエスタに、才人は苦笑した。何処の
世界でも、女の子はこの手の話が好きらしい。
その話をしている時、シエスタがちらちらと才人の方を見ていたことに全く気付かないのは、
才人の才人たる所以である。
「舞踏会か。タバサ様、どんなドレスを着るのかな?」
楽し気なナビィの呟きで、才人もそのことに気が付いた。
「タバサのドレス姿か、興味あるな」
食事の手を止めて、ドレスで装ったタバサの姿を想像してみる。黒を基調にし、レースやフリルで
飾られた、俗にいうゴシック・アンド・ロリータ系のドレスをまとったタバサ。彼女の小柄な肢体が
小悪魔的なドレスに包まれ、更にスカートの端を摘まんで会釈する姿を想像するだけで、口許が
だらしなく緩んでいく。
――って、おいおいおいおい! だから自嘲しろっての俺! タバサに欲情したりしたら、もう色々と
終わっちまうじゃねーかよ!
そこまで想像――あるいは妄想――してはっと我に返り、才人は必死で頭(かぶり)を振った。
2つしか離れていない少女に対し、その思考はかなり失礼であるのだが、本人は気付いていない。
「なんでこいつは時々首を振りだすんだ?」
「癖なのかな?」
そして、同僚たちの呟きにも、まるで気付いていないのだった。
「まあ、あの愛想も素っ気も無い小娘が着る服に迷う姿など、想像できんけどな」
「いえてんなー」
ムジュラの仮面が言うと、雑念(ロリコンの呪縛)を振り切った才人は同意する。まだ付き合いは
浅いが、タバサという少女があまりおしゃれに関心はなさそうだということは気が付いていた。
「服といえば、俺も着替えがほしいな」
着ているパーカーを軽くつまみ、ぽつりと言ってみる。ムジュラの仮面の力ですぐに洗濯はできるが、
着たきりスズメではどうにも落ち着かない。
「着替えの服くらい、オレが作れるが?」
「うーん、畳はともかく、こういうのはプロに任せたいな」
ムジュラの仮面の言葉を、軽く拒む。彼には悪いが、餅は餅屋というやつだ。
「ルーンのことも気になるし、タバサに相談してみるか」
〜続く〜
以上、今回はここまでです。
と、いうわけで、今回やっと才人たちのルーンの正体が明らかになりました。さんざんひっぱった
挙句、割と安易で申し訳ない(笑)。ゼロ魔はともかく、ゼル伝的には伝説の力の分割はお約束です。
原作のロマリア組の言動を見る限り、虚無が何度も蘇るのは何らかの必要があってのことと
解釈できましたので、それならガンダールヴが大量に必要な理由があるのならば虚無以外の
使い魔がガンダールヴ化することもあるんじゃないか、というムチャクチャな理屈でこうなり
ました。タバサが虚無でないのは、あくまで虚無でなくガンダールヴが必要だからです。
前回才人のルーン発動場面が弱々しかったのは、ルーンが3分割されてたから、つまり、本来の
3分の1の力しかなかったからです。なんでルーンが不完全なのにガンダールヴとしての機能は
果たせているのかは、虚無の呪文が途中でも発動するのと同じ理屈と思ってください。
なんでこんな訳のわからない状態になっているのかは、その内ナビィやロマリア組が推理する
予定です。
次回はジュリオ視点からスタートです。
以上、代理終わります。
作者さま乙でした。いや、畳やござの上の雑魚寝ってなぜかものすごく気持ちいいんですよね。わかります。
作者氏も代理氏も乙
才人…このロリコンめ!(AA略
スカイブルーから王紅玉とルビーちゃんことルビーレッド召喚ってのを書いてみたんだけど
スカイブルーという漫画自体がまだマイナー過ぎて元ネタが分からないだろうから
誰も楽しめないような気がするので投下を躊躇している
誰か一人でもこのスレでスカイブルー知ってる人はいるかい?
皆さんこんにちは、お盆は夏の折り返しとよく言われますが、まだまだ暑いですね。
さてウルトラ5番目の使い魔、55話投稿開始します。
今回は盆の会から帰ってきたばかりで休載しようかとも思いましたが、ある理由で投稿をすることにしました。
10分後、19:50にはじめますので、今週もよろしくお願いいたします。
第55話
撃滅! 怪獣軍団
宇宙大怪獣 改造ベムスター
円盤生物 アブソーバ
月の輪怪獣 クレッセント
火山怪鳥 バードン
食葉怪獣 ケムジラ
古代怪獣 ゴモラU
火星怪獣 ナメゴン
円盤生物 ブラックドーム
ウルトラ兄弟 登場!
ヤプールの送り込んだ無数の怪獣軍団によって、全世界が窮地に陥った地球。
異世界ハルケギニアへのゲートを開こうとしたGUYS JAPANも、メビウスの力をはるかに上回る改造ベムスター、
さらにフェニックスネストのエネルギーを吸い取ろうとする円盤生物アブソーバによって、絶体絶命の大ピンチに
追いやられてしまった。
だが、この世も終わりの絶望のさなか、サコミズ総監の危機に現れた赤い光の球。そして、同時に太陽系へと
現れた無数の飛行物体。それらは光速をもはるかに超えるスピードで、怪獣軍団の猛威にさらされる各地へと
飛んでいく。
新たなる敵か? いや、それは人類にとっての希望の光だったのだ。
地球に舞い降りた最初の光は、アメリカ合衆国のニューヨークに向かった。
ここでは摩天楼を突き崩し、ウォールストリートを踏み荒らして、黒い体と赤い目を持つ怪獣が破壊を好きにしていた。
世界有数の大都市を襲ったのは、月の輪怪獣クレッセント。市街地に突如実体化して出現した奴の正体は、
かつて防衛チームUGMが戦った、マイナスエネルギーが結集して誕生した怪獣の最初の一匹目だ。
ヤプールの手助けを得つつ、この大都市に渦巻く欲望のエネルギーを吸収して復活したクレッセントは、その
邪悪な衝動を持ち主に返そうとでもするかのように人々を襲う。肉食恐竜型の黒い体に、喉元に名前の由来となった
三日月型の白い模様をあしらって、太い腕や尻尾を振り回してビルを破壊するさまは悪魔そのものだ。
「うわぁっ! 逃げろ」
パニックに陥った人々は、地下鉄の構内など少しでも安全な場所を探して駆け込もうとするが、かえって
せまい場所にすし詰めになってしまって犠牲者が増すばかりだ。GUYS USAは高すぎるビル群や、逃げ遅れた
人々を巻き込む恐れがあるために攻撃することができないでいる。
それでも、彼らは人々が逃げる時間をなんとか稼ごうと、勇敢にも戦闘機をクレッセントの目の前ギリギリを
飛ばして気を引こうとする。平和と正義を愛し、己の身をかえりみずに戦いに挑む魂は国を問わずに息づいていた。
そして、彼らの誇り高いスピリットは天に届いて奇跡を呼んだ。空から赤い光の球が舞い降りて、進行を続ける
クレッセントの眼前に立ちふさがる。その光の中から閃光とともに現れた、赤い光の巨人の勇姿!
「ウルトラマンタロウだ!」
GUYS USAや逃げ遅れていた人々、TV中継を見ていた人々から一斉に歓声があがった。たとえ海を
渡っても、ウルトラマンの名を知らない者はいない。数年前の地球の命運を懸けたエンペラ星人との戦いは
全世界に実況中継されていて、そのときはGUYS JAPANのサコミズ隊長の呼びかけにニューヨーク市民も
一丸となってウルトラマンを応援していたのだ。
登場したタロウは、逃げ遅れた人々を守ってかまえ、真正面からクレッセントに挑みかかる。むろん、自分の
進撃を邪魔されたクレッセントは怒り、鋭い爪を振りかざして迎え撃つが、タロウは俊敏な動きでかわして、
逆に隙をついてクレッセントの首を締め付けて、思いっきり投げ飛ばした。
「トァァッ!」
ウルトラ兄弟最強のパワーを誇るタロウからすれば、体重四万トンのクレッセントも軽々と宙に持ち上げられて、
アスファルトの道路に叩きつけられる。クレッセントは激怒して立ち上がり、目から最大の武器である赤い破壊熱線を
打ち出してタロウを狙う。だが、タロウはジャンプして熱線をかわし、そのまま地上六百メートルできりもみ回転を
してスピードを増大させ、超高速のキックを真上からお見舞いした。
『スワローキック!』
あまたの怪獣をなぎ倒してきたタロウ最大の得意技に、クレッセントは街灯や信号機をへし折りながら吹っ飛ばされる。
いいぞタロウ! 怪獣をやっつけろ! 人々の応援を受けて、タロウは獰猛なうなり声をあげて起き上がってくる
クレッセントへ、恐れずに立ち向かっていく。その勇猛さを見て、GUYS USAも闘志を呼び起こされた。
「ウルトラマンにばかり目立たせるな! ニューヨークを守るのは、俺たちGUYS USAだ!」
「G・I・G!」
自由の女神に見守られる中で、タロウとクレッセントの戦いはGUYS USAも加えて激闘の色を濃くしていく。
地球に舞い降りた光のうち、別の二つはヨーロッパへ向かい、イタリアの首都ローマを目指した。そこでは、
極彩色の巨大な怪鳥と、緑色の芋虫が二足歩行したような怪獣が暴れまわっていた。
「逃げろぉっ! 食われるぞ」
「きゃああっ! 助けてぇ」
美しい市街地を破壊して人々を襲っているのは、火山怪鳥バードンと、そのエサとなる芋虫が巨大化した
食葉怪獣ケムジラ。太古の地球で天敵関係にあり、同族が絶滅するなかを地底で生き延びていた二匹は、
突如噴火したヴェスヴィオ火山から出現した。ふもとのナポリ市外は最初に現れたケムジラによって破壊され、
ケムジラはGUYS ITALYの攻撃を受けてローマ方面へ北上。さらにバードンも火口から出現し、ケムジラを追い、
エサとなる人間を求めてローマ市内へと侵攻してきたのだ。
バードンから逃げようとするケムジラと、ケムジラを餌食にし、さらに人間の肉をついばもうとするバードンによって
紀元前から栄えたローマ市街は破壊され、世界遺産コロッセオも崩れ落ちる。
このまま人類の宝の都市は、バードンの餌場となってしまうのか。
しかし、虐殺の宴は一瞬で幕を閉じた。バードンがこうるさく攻撃してくるGUYS ITALYの戦闘機を撃ち落そうと、
くちばしを空に向けて火炎を放とうとしたときに、視界の外から飛び込んできた二つの赤い流星。それは光の球から
炎をまとった獅子の一撃となって、二大怪獣に襲い掛かったのだ。
『レオ・キック!』
『アストラ・キック!』
燃えるようにエネルギーを一点集中させた必殺キックが直撃し、二大怪獣が軽石のように吹き飛ばされる。
さらに宙で一回転し、華麗に着地した二人の巨人は、古代ローマの剣闘士を思わせる勇ましき構えで現れた。
「エイヤァッ!」
赤い体に銀のマスク。しし座L77星出身のウルトラマンレオとアストラの兄弟は、血肉をむさぼる野獣たちに
敢然と立ち向かっていく。獅子兄弟の絆が勝つか、地球最強怪獣のパワーが勝つか。
一方、日本以外の国で実質上最大の危機を迎えていたのが東ヨーロッパであった。
都市圏を離れた人家も少なく、ひたすら荒野が続く大地。ただし、この場所にはロシアからヨーロッパへと向かって
伸びる文明の大動脈、石油パイプラインがあった。
ここに地震とともに地底から出現した、鋭い角と長い尻尾を備えた古代恐竜のような姿の怪獣。やつは地上に
現れると、荒野の中で唯一金属の光沢を放っているパイプラインに興味を抱いたのか、一直線に突き進んできた。
石油は燃料だけでなく、プラスチックから化学繊維まで、現代社会を根底から支えるもっとも重要な資源だ。パイプラインを
破壊されてはヨーロッパはエネルギー供給を絶たれて枯死してしまう。地底レーダーの観測から、地底怪獣の出現を
予期していた東ヨーロッパ、およびロシア地方のGUYSは総力をあげて、パイプラインをめがけて進撃してくる怪獣を
食い止めようと試みた。
「アーカイブドキュメントの検索にヒット。古代怪獣ゴモラ、恐竜ゴモラザウルスの生き残りといわれているやつで、
過去に日本において三件の出現が記録されています」
「了解、GUYS Russiaより各国戦闘機隊へ、我々が第一次攻撃隊として突っ込むので後に続け。国際合同演習の
成果を見せるときが来たぞ」
「G・I・G!」
GUYS Russiaを先頭に、数カ国の連合部隊はいっせいに爆撃を開始した。空に向かって吼えるゴモラに対して、
ビームやミサイルがゴモラの土色の体に命中して、火花や爆煙が次々にあがる。各国とも、このパイプラインを
破壊されるわけにはいかないから、上空を乱舞する戦闘機はゆうに三十機を超える大部隊となっている。万一
パイプラインに誤射して誘爆させるわけにはいかないので、ゴモラの進行方向、すなわち真正面からしか攻撃
できない点を除いたら圧倒的な戦力といえた。
「ウラー! たかが恐竜がこのツンドラの大地ででかい面すんじゃねえぞ。大昔から、ロシアを攻めてきた奴は
ナポレオンもヒットラーもみんな返り討ちになってるんだぜ!」
ビームのトリガーをひきしぼるGUYS Russiaの隊員が豪快に叫んだ。俺たちの土地をよそ者の好きにはさせない。
それは現在なお数々の紛争が絶えない理由でもあるのだが、自分の家に入り込んだ泥棒を叩き出すことも
できないようでは、どうして幸福や自由を守ることができるだろうか。
だが、彼らはゴモラを単に恐竜の生き残りだと考えてなめていた。確かに、ジョンスン島に出現したことがあり、
大阪を舞台に初代ウルトラマンと激闘を繰り広げた、もっとも有名な初代ゴモラであればそれでよかっただろう。
いくらすごいパワーを持っているとはいえ、腕や尻尾の届く範囲のはるか遠くから一方的に攻撃を仕掛けることができる。
しかしゴモラにはもう一種類、あまり知られていないが隠された能力を持つタイプがいる。
再び正面攻撃を加えようとする連合部隊の戦闘機隊、だが今度ゴモラは突っ込んでくる戦闘機隊へ向けて
両腕を向けた。その手の甲からランチャーのように多数のミサイル弾が放たれる。
「なに!?」
加速度のついていた戦闘機隊は避けられず、一気に五機ほどが撃墜される。ゴモラはそれにとどまらず、
上空の戦闘機隊へも手からミサイルを放って攻撃した。
「馬鹿な! なんで恐竜がミサイルを撃てるんだよぉ!」
油断していた戦闘機隊は次々撃墜されていく。これが、このゴモラの持つ能力だった。生物には進化といい、
住む場所の環境に合わせて自分の体を変えていく機能が備わっている。元がまったく同じ生き物でも、進化に
よってまるで違う生物に変化していくことなどざらで、たとえば有翼怪獣チャンドラーと冷凍怪獣ペギラは、
南国と南極という対極的な環境に住んでいながら兄弟といえるほど似通った姿をしている。これはチャンドラーの
先祖はペギラと同類の怪獣だったが、ペギラ特有の渡りをおこなっているうちに高温多湿の環境に次第に慣れて、
飛行能力などを捨てて、より住みよい南国に合わせて進化していったのだろうというのが一説である。
このゴモラも、元はジョンスン島のゴモラと同類の恐竜ながら、地底の高圧や地熱の影響で体質変化を
起こして、弱点であった遠距離攻撃能力を補うためにミサイルなどを撃てるよう、より攻撃的に進化していったものと
考えられる。その証拠に、初代ゴモラでは一対だった三日月形の角が二対になり、一見角が四本あるように見える。
これはドキュメントUGMに記録されているゴモラの亜種、便宜上ゴモラUと呼称されるタイプだったのだ。
「くっ! 高度をとれ、ミサイルが弾切れになるまで耐えるんだ」
ある隊のリーダーの叫びに、ほかの部隊もそれに習った。だがゴモラUの武器はミサイルだけではなく、
戦闘能力はもはや恐竜の域を超えてパワーアップしている。ミサイルの有効範囲外へ退避する戦闘機隊へ
向けて、ゴモラは今度は頭部の角から稲妻状の光線を発射した。
「うわぁぁっ!」
回避しきれなかった機のパラシュートが、空に幾重もの白いしみとなって落ちていく。ゴモラUの圧倒的な
火力は、かつて福山やトリスタニアで猛威を振るったベロクロンにも匹敵する勢いを見せる。
大部隊をようした戦闘機隊は数機を残すのみとなり、パイプラインは目の前に迫っている。生き残った者たちは
最悪の状況を覚悟した。だが、絶望はなにももたらしはせず、希望を与えるために彼らはやってくる。
「あっ! あれはなんだ」
空のかなたからものすごいスピードで飛んでくる巨大ななにか。それはパイプラインへ迫るゴモラの真上で
姿勢を変えると、無防備な頭部へ向かって矢のようなキックをおみまいした。
『流星キック!』
かつて、古代怪獣キングザウルス三世の角をへし折った破壊力を受けてはさしものゴモラもただではすまない。
ぐらりと巨体をよろめかせて横転し、長い尻尾が蛇のようにのたうった。
そして、この必殺技の生みの親であり、今ここに駆けつけた者こそ、ウルトラ兄弟四番目の戦士。
「新ウルトラマン、ウルトラマン二世……あれが」
ジャックは地球で本名を明らかにしていないので、今でもそうした異名で呼ぶ者は多い。だが、名がどうであろうと
彼がそこにいる事実には変わりなく、またその意志が揺らぐこともない。
「ヘヤァ!」
起き上がってくるゴモラを迎え撃つべく、ジャックは身構える。人類の自由と平和をおびやかすあらゆる敵と戦う、
それがウルトラマンジャックの使命なのだ。
さらに戦いの場は地球にとどまらず、地球の兄弟星にも広がっている。
地球からもっとも近く、もっとも地球に近い環境だといわれる星、火星。ここには火星特産の鉱物、スペシウムを
採掘する基地が建設され、民間の宇宙船も発着して多くの貴重な物資を地球に送っている。
しえん
しかし、火星には昔から宇宙移民を悩ませるやっかいな原住生物が生息していた。
岩の陰から転がり落ちた、ピンポン球ほど大きさの小さな金色の玉。それは火星の強烈な日光を浴びると
見る見るうちに山のように巨大化し、ひび割れた内部からヌメヌメした外皮と、上にギョロりとした目玉が
飛び出たナメクジのお化けが生まれ出た。
こいつはその名も火星怪獣ナメゴンといい、かつては金色の卵の状態で地球にもやってきたことがある。
火星に無数に生息しており、基地設営は幾度なくこいつに邪魔されてきた。なにせ、卵がとても小さいために
発見しずらく、熱でほんの数分もせずに巨大化し孵化するので事前の対処が難しい。
それでも、怪獣としてはさして強くないので開拓者たちは日々の努力を重ねて火星に地歩を築いてきた。
ナメゴンがその外見からわかるとおり、塩分に非常に弱いという特徴を持っていることから塩化ナトリウムを
充填した特殊弾丸が開発され、決定打となったことも大きい。
そのため、近年ではナメゴンの犠牲になる人も少なくなり、基地は安定してスペシウムを地球に供給してきた。
だが、今回基地を襲ってきたナメゴンの数は尋常ではない。火星の地平線を埋め尽くすほどの大群が
砂煙をあげながら砂漠を進撃してくる。基地の防衛隊員たちは、基地の防衛能力を数で圧倒するナメゴンの
群れを必死で足止めしながら、非戦闘員の退避を急いでいる。
「急げ! 貨物船でも戦闘艇でもいい。人を詰め込んだものからとにかく発進させろ」
この基地には物資運搬用の貨物宇宙船が何隻も係留されている。それらが、基地の職員を乗せて次々に
飛び立っていく。せっかく長年かけて築いた基地は惜しいが、人命に代えることはできない。
しかし、あと一隻がというところでトラブルが発生した。
「隊長、東ブロックに子供たちが取り残されています! 隔壁の電路が故障で救助に向かうことができません」
「なんだと! くそっ、東ブロックは一番ナメゴンどもに向かって張り出してるんだぞ」
それは火星生まれの子供たち、この基地で生まれ育った子供たちだった。以前にウルトラゾーンで事故に合い、
ウルトラマンメビウスがヒビノ・ミライという人間名を持つきっかけとなったバン・ヒロトという青年も、彼らと同じように
宇宙生まれの地球人だった。
逃げ遅れた子供たちのいるブロックへ、ナメゴンの群れが地響きをあげて迫ってくる。基地の防衛砲台は
必死に弾幕を張るものの、ナメゴンの目から放たれる怪光線で次々と破壊されていく。
大人たちはどうしようもなく、ナメゴンの群れが東ブロックに迫る。そのとき、空から降り注いできた白色の
光線が群れの先頭をなぎはらい、群れの進撃をさえぎった。一体何が!? 驚き慌てる基地隊員たちに、
上空から巨大な生命反応が近づいてきていると報告が入る。
そして空を見上げた彼らの目に希望が映った。赤い大地に銀色のたくましき巨人が降り立って、子供たちは
その頼もしい後姿に、何度も聞かされてきた伝説のヒーローの名前を唱和した。
「ウルトラマンだ!」
地球を守り抜いてきた、栄光のウルトラ兄弟。その最初に地球へやってきたのが初代ウルトラマンだ。数々の
怪獣や宇宙侵略者を倒し、彼らのまだ見ぬ故郷の平和を守り抜いてきた栄光の歴史は、たとえ星を越えようとも
父母たちから子供たちへと連綿と受け継がれている。
「シュワッ」
窓に駆け寄り、手を振る子供たちにウルトラマンはゆっくりと振り返り、もう大丈夫だと言う様にうなずいてみせた。
しかし、ナメゴンの大群はなおも迫ってくる。餌場へ向かう邪魔者を排除しようと、数十匹が目玉を上げて怪光線を放ってきた。
「危ない! ウルトラマン」
だがウルトラマンは避けない。避けたら後ろにいる子供たちに当たることを知っているからだ。だから、素早く
両手を高く上げ、四角い壁を描くようにして本物の光の壁を作り出した。
『ウルトラバリアー!』
怪光線はすべてバリアーにはじき返され、ウルトラマンはびくともしていない。
すごいぞ、ウルトラマン!
子供たちの声援を受けて、ウルトラマンはナメゴンの群れへ向けて腕を十字に組んだ。
『スペシウム光線!」
その手から放たれる光の奔流が、飢えた怪物どもを蹴散らしていく。
いくらでも来い怪獣どもよ。ここから先には一歩も進ませない!
怪獣退治の専門家、正義のヒーロー・ウルトラマンは、守るべきものがいる限り決して負けはしないのだ。
地球を離れること、およそ六億二千キロのかなたにある惑星、それが木星だ。この星の衛星軌道には、
宇宙科学警備隊ZATの時代から宇宙ステーションが建設され、外宇宙の観測や様々な研究がおこなわれてきた。
そこを襲ったのが円盤生物ブラックドーム。過去に地球侵略をもくろんだ悪魔の惑星ブラックスターによって、
宇宙ガニが改造されたという怪獣兵器で、カブトガニのような体から巨大なハサミを伸ばしてステーションを襲う。
ステーションにも自衛用の武装は施されているものの、ブラックドームはミサイルやレーザーをまるでものともしない。
艇長は涙を呑んでステーションを捨てる決断をした。だが……
「脱出だ! 急げ」
「だめです。脱出艇が破壊されました」
「なんだと! くそっ……」
脱出艇が失われたら、この広大な宇宙空間で助かる道はない。GUYSスペーシーに救助を求めようにも、
ここは地球から離れすぎていて、救援が来るのに何日もかかってしまう。生きる望みを完全に絶たれたクルーたちは、
わずかに酸素が残されたブロックに閉じ込められ、窓外に迫ってくるブラックドームを憎憎しげに睨んだ。
やがて彼らのいるブロックにも、ビルをも溶かすペプシン泡を吐き散らしながらブラックドームが近づいてくる。
だが巨大なハサミが彼らの最後の砦へとかかろうとしたそのとき、光の槍が流星のようにブラックドームの体を貫いた。
『ウルトラレイランス!』
強固な殻ごと田楽刺しにされ、苦しみながらブラックドームがステーションから離れる。
あの攻撃は……救援が来たのか? だが、いくらなんでも早すぎる。ならばいったい……あっ、あれは!
クルーの一人が指差した先から、両手を広げて飛んでくるウルトラマン。
あのウルトラマンはもしかして……やっぱりそうだと、あるクルーが大きく叫ぶ。
「ウルトラマン80だ!」
およそ三十年前の怪獣頻出期の最後の時代、ちょうど彼らが子供のときに地球を守っていたのがウルトラマン80だ。
小学生や中学生のころ、TVで頻繁に報道されるウルトラマン80と怪獣の戦いを見て防衛軍に入隊を決めた、
この年頃の少年少女は数多い。特に、怪獣頻出期の最後に出現した冷凍怪獣マーゴドンは、ウルトラマン80の
力を一切借りずに人間の手のみで倒しているために、そのころに入隊したものは特に多い。
もっとも、その後に怪獣頻出期の終了が確認され、UGMも解体されて地球防衛軍は規模縮小されたのだが、
それでも防衛軍に居続けた志の強い者たちは、少年時代の熱い記憶を忘れてはいなかった。
「俺たちのウルトラマンが、帰ってきた。がんばれーっ! ウルトラマン80!」
音など届くはずのない宙空を挟んでも、ウルトラマンを応援する声は必ず届く。80はしぶとく襲い掛かってくる
ブラックドームのハサミを手刀で受け止めた。
「シュワッ!」
防御から攻撃への転じも素早く切れる。目にも止まらぬ速さのキックを放ってブラックドームをのけぞらせ、
カニそっくりの頭にエネルギーを込めたウルトラ拳を叩き込んだ。
『ウルトラチョップ!』
一瞬隕石が正面衝突したような閃光が走り、ブラックドームの強固なはずの殻がひしゃげた姿が現れる。
まだまだ、80の力はこんなものではないぞ? フラフラになったブラックドームへ向けて、80は宇宙空間の
無重力をまるで感じさせないアクロバティックな動きで連続攻撃を決めていく。
そしてここ、現在地球においてもっとも重要といえるGUYS JAPAN基地において、ひとつの再会がなされていた。
「まさか、こうしてまた君に出会えるとは思わなかったよ」
「サコミズ、それを可能にしたのは君の勇敢な魂だ。君の、未来に向かって飛び続けようとする強い意志が
再び君と私を巡り合わせたのだ。さあ、もう一度平和な世界のために、共に戦おう」
光の中で二つの魂がひとつになり、光は実体となって具現化し、銀色の勇者が今一度この地に帰ってきた。
「ゾフィー兄さん!」
ジェットビートルの燃える炎の中から、神々しい輝きとともに現れたウルトラ兄弟の長兄の勇姿!
メビウスが、リュウが、GUYSクルーたちがいっせいに歓声をあげた。四十年間に渡って人知れず地球人を見守って、
その成長を信じ続けてきた宇宙の友。肩のウルトラブレスターと胸のスターマークも勇ましく、宇宙の各地で戦う
ウルトラ戦士たちにとっても、ゾフィーがいつでもいるからこそ、どこの宇宙でも安心して自らの力を発揮できる
心の支えのような、宇宙警備隊の隊長。
ゾフィーはベムスターに苦戦するメビウスを見据えると一喝した。
「立て! メビウス。お前の力はそんなものではないはずだ。銀河の平和を守る、宇宙警備隊員としての
誇りを思い出せ!」
「はい! ……でやぁぁっ!」
ゾフィーの叱咤に、メビウスは全身の力を込めてのしかかってくるベムスターを跳ね飛ばした。ずんぐりした
巨体が背中からコンクリートに落下して、白い煙が吹き上がる。その隙にメビウスは起き上がって体勢を
整えようとするが、気力は取り戻したもののすでに大きくエネルギーを消耗しているメビウスのカラータイマーは
激しく点滅している。
ゾフィーは、肩で息をしているメビウスに、右手にはめていた大型のブレスレットを投げ渡した。
「受け取れ、メビウス!」
「はっ! これは、ウルトラコンバーター!」
「そうだ。これでしばらくはエネルギーの心配はない。ゆくぞメビウス! 我々兄弟の絆で、ヤプールの
陰謀を打ち砕くのだ!」
「はい! ゾフィー兄さん」
ウルトラコンバーターを装備したメビウスのカラータイマーが青く回復した。依然ベムスターは強力であり、
アブソーバも虎視眈々と隙を狙っているが、これで二対二! 一人では勝てない強敵でも、兄弟が団結した
ときの力は何倍にも強くなる。
メビウスが飛び、ゾフィーが駆ける。フェニックスネストを狙おうとするアブソーバにメビュームブレードを
振りかざしたメビウスが切りかかり、触手をかすめて追い払う。
「リュウさん、こいつは僕に任せて。急いでハルケギニアへのゲートを! エース兄さんと才人くんたちを
助けに行かないと!」
「ああ、頼んだぞ」
アブソーバと空中戦を繰り広げるメビウスに応え、リュウはディメンショナル・ディゾルバーRの発射準備を
急がせる。だが、ただでさえ連戦で疲労のピークにきていたオペレーターたちは、リュウの勢いについていけずに
空回り気味で操作がおぼついていない。
そこへ、ベムスターに格闘戦を挑んだゾフィーからテレパシーが、よく知った声で穏やかにリュウの脳裏に響いた。
〔リュウ、焦るな〕
「この声は……サコミズ総監! 総監がゾフィーと」
〔そうだ。私は今、ゾフィーと一心同体でいる。リュウ、焦るな。焦れば焦るほど冷静さは失われ、かえって人は
力を出せなくなってしまう。怪獣たちは私たちがなんとしても抑える。リュウ、君は君が隊長として鍛え上げた
隊員たちを信頼するんだ〕
「……G・I・G!」
深呼吸して気持ちを落ち着かせたリュウは、それまでとは打って変わってキャプテン席に腰を深く沈めて、
余計なことを言わずに隊員たちに視線を送るだけにした。こうなると、普通でも威圧感のある容貌をしている
リュウに不思議と貫禄が備わってきているように見えて、隊員たちも落ち着きを取り戻してきた。
俺も隊長なんて呼ばれるようになったけど、まだまだサコミズ隊長やセリザワ隊長には追いつけねえな。
リュウは顔に出さないよう自嘲しつつ、これからも自らを鍛えていこうと誓うのだった。
正義と悪とで綱の両端を持ち、負ければ奈落へ転落する綱引き。メビウスとゾフィーの兄弟タッグと、
改造ベムスターとアブソーバの生物兵器タッグ。メビウスは隙あらばフェニックスネストを狙おうと、ふらふらと
つかみどころのない動きで飛ぶアブソーバを食い止める。
一方、過去ヤプールが送り込んできた中でもトップクラスの実力を誇る改造ベムスターに、ゾフィーは
真っ向から立ち向かっていった。
「ヘヤァッ!」
頑強なベムスターにも、生物である以上強いところと弱いところは必ずある。ベムスターの喉元へ
水平に放った鋭い手刀、ゾフィーチョップが炸裂し、のけぞったところにゾフィーキックが五角形の腹の
下腹部あたりにめり込む。
むろんベムスターも最強の宇宙怪獣の異名に恥じずに、この程度の打撃では致命打は受けない。
初代よりも甲高さが強まった鳴き声を上げて、鋼鉄でも噛み砕くくちばしを振りかざしてゾフィーに襲い掛かってくる。
だがゾフィーはベムスターの突進を側面跳びで回避すると、勢いあまったその背中に肩から突っ込んだ。
支援
「ジュワァ!」
うつぶせに倒れこんだベムスターの背中にのしかかり、背中に向かって連続チョップを叩き込む。正面からの
攻撃に対しては圧倒的に強いベムスターも、背面からの攻撃にはめっぽう弱い。起き上がる隙を与えずに、
一気呵成にゾフィーは攻める。
だが突如ゾフィーの背中に白色の光線が当たって、ゾフィーがよろめいた隙にベムスターの脱出を
許してしまった。上空のアブソーバが、メビウスがフェニックスネストを守っている隙をついて援護射撃を
繰り出したのだ。
「ゾフィー兄さん!」
「メビウス、隙を見せるな!」
ゾフィーの被弾にうろたえるメビウスを、ゾフィーはきっと叱咤した。この程度のダメージで私はやられない。
ゾフィーは健在を示すように、体勢を崩したメビウスに触手を向けているアブソーバに対して、腕をL字に組んで
赤色の光線を発射した。
『M87光線Bタイプ!』
ゾフィー最大の必殺技を、速射性を重視して変形させた光線がアブソーバに命中して爆発を起こす。威力を
調節してあるとはいえ、これだけでも並の怪獣ならば吹き飛ばせる威力の一撃に、アブソーバはよろめきながら
高度を落としていく。
だが背中を見せたゾフィーに対して、ベムスターはさきほどの仕返しとばかりに飛行して体当たりを仕掛けてくる。
そうはさせじと、メビウスは上空から急降下パンチをお見舞いした。
『メビウスパンチ!』
炎をまとったエネルギーパンチでベムスターの突進を押し返したメビウスは、空中で姿勢を整えるとゾフィーの
たもとに着地した。
「ゾフィー兄さん」
「メビウス、ベムスターはお前にまかせたぞ」
そう告げると、ゾフィーは撃墜したアブソーバにとどめを刺すために飛んでいった。それは、一見するとメビウスに
冷たいようにも、また戦術的には空中戦に長けたメビウスがアブソーバと戦ったほうがいいように見えるが、そうではない。
自他共にウルトラ兄弟の一角に数えられるようになったメビウスだが、若さゆえにまだまだ甘さが目立つところがある。
かつてはエースやタロウにもそうしたように、あえて強敵とぶつけることで彼らの成長をうながそうという、ゾフィーの
長兄ゆえの厳しさの発露であった。
残されたメビウスに、ベムスターは赤い瞳に残忍な感情を浮かべて威嚇の声をあげてくる。エネルギーを
回復したとはいえ、お前ごときになにほどのことができるものかとなめているのだ。かつては兄弟最強と
言われるウルトラマンタロウを完封した大怪獣、倒すにはかつてのタロウ以上の強さを発揮するしかない。
「負けられない。僕の肩には、リュウさんやGUYSのみんな、ふたつの世界の命運がかかっているんだ!」
意を決したメビウスは、全身のエネルギーをメビウスブレスに集中させた。ブレスの中心の赤い神秘の
クリスタルサークルから炎のような灼熱のエネルギーがあふれ出し、巨大なメビウスの輪となってメビウスの
体を覆っていく。そして、炎が爆発して現れたメビウスの体には、GUYS JAPANの友情の印である、
燃える炎のファイヤーシンボルが刻まれていた。
『ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブ!』
これこそ、かつてタロウですら倒せなかった無双鉄神インペライザーとの戦いで瀕死に陥ったとき、メビウスが
仲間たち全員の友情を受けて転身した燃える勇者の姿。ウルトラ兄弟の中で唯一メビウスのみが可能とした、
自らの姿を変えることによって能力を爆発的に高めるタイプチェンジの能力。
「ヘヤッ!」
バーニングブレイブへ変身したメビウスの逆襲が始まった。メビウスパンチがベムスターの胸を打ち、
メビウスキックが頭部をかすめて火花を散らす! ノーマルよりもはるかに強化された肉体から繰り出される打撃が、
メビウスの攻撃を受け付けなかったベムスターの防御力を打ち抜いていく。
だがベムスターも腹からの毒ガス噴射で反撃をかけてきた。
「フゥワァ!?」
その毒性と、ガス自体が煙幕となったことによってメビウスの動きが止まる。その隙をつき、ベムスターは腹の口、
吸引アトラクター・スパウトを開いてメビウスを狙ってきた。この口はかつて別個体がMATステーションや
ZATステーションを丸ごと飲み込んでしまい、メビウスやヒカリも捕食されかけたほど強力な吸引力と消化力を誇る。
ウルトラマンでも食べてしまう宇宙一の悪食家の口が迫る。
そこへ、数十のエネルギー弾が地上からベムスターの背中に向けて発射された。
「食らえ! バスターブレット!」
爆発が多数ベムスターの背中で起こり、メビウスに集中していたベムスターは驚いて、メビウスを捕食するチャンスを
失ってしまった。そして、毒ガスから脱出したメビウスに、地上からエールを送る十数人のGUYSクルーたち。
「メビウスがんばれ! 俺たちだってついてるんだ」
それはハルザキ・カナタら、新GUYS JAPANの隊員たちだった。各地の怪獣を迎撃して、ガンフェニックスほか
戦闘機すべての燃料弾薬を使い果たし、再出撃できないながらも、いてもたってもいられずに自分の足で飛び出してきたのだ。
トライガーショットを応援旗代わりに振り、応援するカナタたち。メビウスはその声にさらにパワーをもらい、ベムスターへ
反撃に出る。
「セヤッ!」
回し蹴りがベムスターをふっとばし、ベムスターの爪の攻撃にカウンターで放ったチョップが爪を破壊する。
鋭い角での攻撃も、受け止めたメビウスはその力を利用して背負い投げを食らわせる。さらに、細長い尻尾を
つかんで、ハンマー投げのように豪快に振り回して放り投げた。
仲間との絆がメビウスを強くし、バーニングブレイブは彼の無限の成長を象徴するかのように圧倒的な力で
ベムスターを追い詰めていく。
さらにゾフィーも弟の成長を喜びながらも、自分も負けていない。
〔ミライ、いやメビウスはもう立派にウルトラ兄弟の一員だな〕
〔ああ、よくここまで成長した。しかし、メビウスはまだまだ強くなれる。君たち地球人と同じように〕
〔ありがとう、ゾフィー。地球人も守られるだけではなく、君たちのように他の星々の人を救えるように強くなっていくと、
彼らを見ていたら信じられる〕
〔私もそう思う。しかしサコミズ、我々の役目もまだ終わったわけではない〕
〔わかっている。宇宙の平和のために、命ある限り戦おう!〕
ゾフィーとサコミズの心もまたひとつとなり、正義のために力をふるう。
浮き上がろうとするアブソーバをチョップで叩き落し、強引に地上戦に引きずり込んだゾフィーは攻撃を続ける。
強力なパンチを頭部に打ち込み、クラゲのように伸びた触手の一本を引きちぎる。アブソーバは触手の先から
火炎を吹き付けて反撃してくるが、それをゾフィーは付き合わせた手の先からの冷凍光線で迎え撃った。
『ウルトラフロスト』
ガス状の冷凍光線が火炎を相殺し、爆発の炎がそれぞれを赤く染める。だが火焔にまぎれて距離をとろうとする
アブソーバをゾフィーは逃さず、爆発をジャンプで飛び越えて頭部にキックを叩き込んだ。
「ぬ、さすがに硬いな」
ゾフィーキックの直撃を受けてなお、まだ余力を残しているように見えるアブソーバにゾフィーは少し悔しげにつぶやいた。
アブソーバはフラフラした見た目に反して、ウルトラマンレオ必殺のレオキックにも耐える防御力を備えている。
円盤生物は直接戦闘よりも隠密行動での破壊工作や奇襲を得意としているが、いざ戦わねばならない状況に
なった場合でも充分な実力はもたされているのだ。
だがそれでも、百戦錬磨の猛者であるゾフィーの闘志はそげない。
「一発ならだめでも、連打攻撃ならばどうだ!」
触手を無視するかのように距離を詰めたゾフィーは、からみついてくる触手を強引に振りほどいて猛攻をかけた。
パンチやチョップがアブソーバの頭部に雨のようにヒットしていく。一発や二発ならば余裕を持って耐えられた
であろうボディも、押しつぶすような連打には次第に悲鳴を上げだした。微細な亀裂からひびが全体にいきわたり、
割れる寸前の卵のような状態になっていく。
ゾフィーとメビウスのパワーに、ヤプールの切り札の二大怪獣ももはや満身創痍だ。いくら強い怪獣だろうと、
協力しあうことを知らないものでは、絆の力でいくらでも成長できるウルトラマンに必ず抜かれていく。指揮を
とりながらリュウは、戦友と恩師の活躍ぶりを胸を熱くして見守っていた。
「いいぜ! ミライ、サコミズ総監」
そのとき、ディレクションルームの扉が開いて、GUYSクルーではない男が一人入ってきた。
「取り込み中のところすまないが、ちょっと失礼するよ」
「ん! 誰だあんた!?」
突然入ってきた見覚えのない壮齢の男に、リュウは当然怒鳴りつけた。GUYSの関係者でないことは明白で、
かなりラフな格好をしている。警戒厳重なここにどうやって? もしかして宇宙人かと、見えないようにトライガー
ショットを取り出す。しかし、彼は少ししわのまじった顔に温厚そうな笑みをリュウに向かって浮かべた。
「うん、この姿で君と会うのは初めてだったね。以前に一度、君たちの仲間とは顔を合わせているのだが、
今日は彼女はいないのか」
「なに!? あんた、何者だ?」
「説明している時間はないから手短に話そう。私も一度は君と同じ立場に立ったことがあるから、名前くらいは
聞いたことがあるだろう。私は……」
ディメンショナル・ディゾルバーRの発動まで、あと一分。そのほんのわずかな時間に起こった、この出来事が
その後にどういう影響を与えるのか、まだ知る者はいない。
そして、ウルトラ兄弟と怪獣軍団の戦いも、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。
ベムスターを格闘技の連続で追い詰めるメビウスと、アブソーバを徹底的に叩きのめすゾフィー。
強烈なパンチでベムスターの顔面を殴りつけ、爪の一撃をかわしたところにカウンターキックを打ち込むメビウス。
さらにメビウスは背中から持ち上げると、その巨体を軽々と放り投げた。
「デャァッ!」
ベムスターの八十メートルの巨体がわらたばのように転がり、滑走路のコンクリートを引っぺがす、さらに
ゾフィーはアブソーバの触手をつかむと、大きく振り回してベムスターに向けて投げつけた。
「トァァッ!」
起き上がろうとしていたベムスターにアブソーバがぶつかり、両者はもつれ合いながら転がる。
ゾフィーはメビウスの傍らに跳んでくると、腕をあげてうながした。
「メビウス、とどめだ!」
「はい!」
メビウスは一歩踏み出すと、きっと二匹の怪獣を見据えた。そしてバーニングブレイブのパワーを、
胸のファイヤーシンボルへと集中し、真っ赤な炎のエネルギーが天空の太陽のように形作られていく。
支援
「ハァァァッ!」
メビュームシュートをはるかに超える超エネルギー。正義の炎が燃え滾り、そのパワーを最大限に
圧縮した火球を生み出したメビウスは、ベムスターとアブソーバに向けて打ち出した。
『メビュームバースト!』
火球は二匹の怪獣に命中すると、その全身を覆って一気に燃え上がった。かつてはウルトラダイナマイト
でさえ倒しきれなかったインペライザーをさえ、跡形もなく燃やし尽くしたのがこの技だ。
しかしベムスターはメビウス最強の必殺技を受けてさえ、そのエネルギーを吸い取ろうと腹の口を開けてあがく。
だが、ベムスターの悪あがきは実らなかった。ゾフィーは胸のカラータイマーに水平に両腕を沿え、右腕を
大きく反らして身構える。その手のひらに青く輝くエネルギーが集中していき、眼光は鋭くベムスターを見据える。
先ほどのBタイプとは違い、手加減なしの最大出力。光の国の公式記録において、奇跡の八十七万度の
超高熱を達成した、これがゾフィーの代名詞だ。
見よ! ウルトラ兄弟最強光線を!
『M87光線!』
伸ばした手の先から放たれた超絶威力の光線がアブソーバを貫き、ベムスターに吸い込まれていく。
あらゆるエネルギーを吸収するベムスターは、M87光線さえも吸収するつもりなのだ。しかし、メビュームバーストと
M87光線、ふたつの超必殺技の融合によって生じる超エネルギーは、底なしの貪欲さを誇るベムストマックさえ
食いきれない。
ベムスターの弱点は、体内からの攻撃にはもろい点だ。タロウを倒した個体も、ZATが生態を研究して
作り上げたエネルギー爆弾を食わされて体内から爆破されている。ベムスターが消化しきれない餌に
食いついてしまったと気づいたときには遅かった。
メビウスの炎とゾフィーの手から放たれる光芒が、ヤプールの邪悪な意思ごとベムスターの細胞を焼き尽くしていく。
これが最後だ! ゾフィーは渾身の力を込めて光のエネルギーを注ぎ込んだ。そして、ベムスターの
吸収力の許容量が超えた瞬間、ベムスターは体内から爆裂し、アブソーバごと細胞の一欠けらも残さずに消し飛んだ!
「やった……ゾフィー兄さん」
「見事だったぞ、メビウス」
戦いを終えた弟を、ゾフィーは自らの功は一切語らずに賞賛した。
二大怪獣は灰となって舞い散っていき、二人のウルトラ戦士は空を見上げた。
そこには、人類の英知が生み出した鋼鉄の不死鳥が、新たなる道を彼らのために切り開くべく飛んでいた。
続く
今週もありがとうございました。
>>571と
>>582の方、支援ありがとうございました。
seedの人、完結乙です。三重の異界の人、私もフローリングよりタタミ派です。
ウルトラ怪獣大決戦、お楽しみいただけたでしょうか。
そして、伝説のウルトラ兄弟も顔見せ程度ながら全員登場できました。
それにしても、我ながらヤプールもすごいことできるようになったなあ。でも、GUYSはアーマードダークネスの
事件の際にはロベルガーのような強敵を自力で倒せるようになっていたので、これくらいでなきゃウルトラ兄弟も
来てくれないだろうなと思って世界規模の事件にしました。
次回は再び舞台をハルケギニアに戻し、才人たちが主人公になります。
では、夏休みも半分を切りましたが、みなさまお体にはお気をつけて残りをお楽しみください。
最後に、今回の物語を私なりの田中実さんへの手向けとさせていただきます。サコミズ隊長の与えてくれた
多くの形にできないものは決して忘れません。
投下乙でした
乙
>そして、伝説のウルトラ兄弟も顔見せ程度ながら全員登場できました。
あれ?セブンは?と思ったけど最後に出てきたのがダンか。
>>563 確かにそれ知らんけど、アンタの書いたのが面白ければポロロッカするから心配なく
逆に書き手はクロス先を知らんヤツをポロロッカさせるくらいの気概で書いてくれ
ウルトラの人乙!
何故に伝令役がセブンかと思ったがウルトラマン本人のままで防衛隊に所属し
さらに隊長等重役の経験者ってセブンだけだったなそういや。
言い方があれだが他のウルトラ戦士ってヒラの一隊員の経験しかないんだよなぁ。
>>589 そうでもない、GOKAZOKU隊の副隊長の夢星銀河ことウルトラマンナイスがいる
人間一体化型だと科特隊の副隊長格だった初代マンやGUYSの隊長だったヒカリがいるな
背景がハルケギニアなだけでクロス先の敵と戦ってるSSってどうなの
592 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/15(月) 02:33:24.21 ID:2UBMQZEr
ゼルダご一行のSS更新期待しております。
稀によくあるらしい
宇宙一の無責任男シリーズなんか二巻がすでに番外編だった。外伝はまた別にあるとあうのに。
高飛びレイクも本編1と外伝2だな。
ガルディーンは13年待たされたが、鬼平や火の鳥、風の聖痕を待ち続ける皆様ほどではない。
>高飛びレイク
>ガルディーン
いや そんな伝説の作家を持ち出されても…
(主要な声優が次々早世してしまい アニメ化不可能な呪われた作品も)
>>594 全然話がつながらんのだが、誤爆か?
>>589 隊長がウルトラマンだと怪獣との戦闘中に抜け出しずらいからな
やっと制限が解除されたか、やれやれ
巻き添え食って悲惨だった
>>588 ポロロッカがボルテッカに見えた俺は鉄火男槍
ワルド「フッ…いくらウェールズ王子とは言えど、この至近距離からの魔法では一堪りも…何ぃ!?」
ワルドのブレイドの一撃を刹那で見切って、伸び切った腕を逆に捕らえて「間接技こそ王者の技よ!!」と極めるウェールズとか…
それを見ながら「お辞め下さい姫さま…ルイズの間接はそんな方向には…」と幼い頃のトラウマに苦しむルイズ。
藤原組長がブリミルか。
これは人を愛し、正義を守る若者と少女の心のドラマである
異世界では対バイオロン法は使えないぞ
それ以前にバイオロン以外に適用しちゃいかん気もするが
ワルドはテッカマン・ライトニングと名乗るんだろうか。
他のキャラクターでは以下のようだろうか?
ルイズ=テッカマン・ゼロ
キュルケ=テッカマン・フレーム
タバサ=テッカマン・ウインド
ギーシュ=テッカマン・ブロンズ
そしてラブコメ迷走した挙句
前作主人公テッカマン・カリンが全部持って行ってしまうんですね分かります
ハイグレ魔王召喚ってもうありましたっけ?
ハイグレ基地ごと召喚したらハルケギニアvsハイグレ魔王になるだろうけど、
魔王単独だとどうなるだろう?
誰に召喚されても言うことを聞くはずはないけど、意外と策略家だから
自分がおかれた状況を楽しみながら、着々とハルケギニア征服を進めそうな気もする。
もちろん、ギーシュハイグレ人間化はお約束w
>>598 「ボルテッカだと?気は確かかランス、相手はただの平民ではないか! 第一、斯様な狭所で撃ったら我々も無事では済まぬぞ」
「馬鹿!わからんのか!!こいつはただの平民ではない!ガンダールブだ! ボルテッカ以外で倒せるものか!!」
こうですか?
ちょい短めに。6レスほど
ゼロと電流投下します。
皮肉なものだ。と、カステルモールは心から思う。
もっと早くこの機会が訪れていれば、自分は迷うことなく剣を振り下ろしていただろう。
だが今は、今の自分には、ガリア王に向ける剣はない。
少なくとも今剣を向ける相手は、三ッ首である。簒奪者ジョゼフではない。
「ガリア全ての騎士団に命ずる。現時刻をもって我らは三ッ首と袂を分かち、打倒する! これは勅令である!」
まさに青天の霹靂だった。
たしかに、この数日ガリア王の様子がおかしいという話は耳にしていた。
カステルモール、いや、密かにシャルロットを担ぎ上げようとしている反ジョゼフにとっても、その行動は謎だった。
ところが勅令の発布直前、カステルモールは直々に王に喚ばれていたのだ。
「カステルモール」
「はっ」
「お前の真意はわかっている」
「真意、と申しますと」
「もう隠す必要はない。お前がシャルロットを担ごうとしていることにはとうに気付いている。それを咎める気はない」
「何を……」
「咎める気はないと言っているのだ」
もっとも、とジョゼフは自嘲気味に笑う。
「それを信じよと言う方が無理だというのは、本人が一番よくわかっているのだがな」
そしてジョゼフは告げたのだ。
もしシャルロットが望むのなら、王位を譲り渡しても良い、と。
さらに、カステルモールにとっては驚天動地の告白が続く。
故王妃は異世界でその魂を操られ、命を落としたということ。
今現在ガリアと通じているロマリアの人間とは、本人ではなくその召喚した使い魔であるということ。
その使い魔こそが王妃の命を奪った張本人であり、それを隠していたこと。
正直に言ってしまえば、信じられる話ではない。カステルモールにとっては、ジョゼフが発狂したと言われた方が信じられるだろう。
ジョゼフの問いには答えられぬまま、しかし反抗する事も考えられず、作戦決行日が来た。
カステルモールには不本意ながら、今は三ッ首についたとされるシャルロットを諫める事は出来ない。
三ッ首の手中にある珠をあえて見送り、ラグドリアンへ向かったイザベラに託す。
そのイザベラすら、ジョゼフの真意は聞かされていない。彼女が知っているのは、父が三ッ首に反旗を翻すというただ一点のみ。
そして当日、東薔薇騎士団長であるカステルモールすら知らぬ顔の様々の騎士、魔術師が次々と姿を見せる。
まさに、ガリアの懐は伊達ではない。それでも、三ッ首抜きの恐竜軍団となんとかやり合える程度だろう。
偶然かそれとも必然か、カステルモールは常にジョゼフに従うように動く羽目となっていた。
魔法が使えずとも、ジョゼフの剣技と虚無の力は十二分にメカアーミーを相手にする事が出来る。
騎士団長たるカステルモールの力も無論、小さいモノではない。
幸か不幸か、戦闘集団としての二人の息はぴったりあってるようだった。
結果的に二人は、先陣を切り三ッ首基地の奥へと侵入していく。
この作戦の目的は二つ。
一つは、恐竜軍団に壊滅的打撃を与える事。これは表向きに語られている作戦理由でもある。
そしてもう一つ、これは限られた者にしか伝えられていない。
もう一つは、おそらくはこの基地内に囚われているロマリアの虚無を探し出す事。
リーヴスラシルたる三ッ首の力を削ぎ落とすためには、その喚び手である虚無を探し出す事が必要なのだ。
直接対決をザボーガーに任せた場合の、最大限のパックアップでもある。
「ところで、答えを聞いておきたいのだがな」
奥深く、一つ一つの部屋をしらみつぶしに探す段階まで侵入している二人。
ジョゼフの言葉に、カステルモールは頷いた。
悩んだ末の答えを返す。ジョゼフをそこまで信用することなどできない、と。
返ってきたのは笑い声だった。
「さもあろう、仕方ないことだ。好きにするがいい。どちらにしろ、無事に帰れるかどうかも定かではないのだからな」
それは想定の範囲内だった。シャルロットに王位を譲り渡すならば、ジョゼフが生きていては不都合だ。
本人がどうであろうと、周囲が黙っていない事はこれまでのガリアが証明している。
「三ッ首本体はトリステインの秘密騎士とイザベラに任せよう。イザベラが間に合えば、ストロングザボーガーが間に合うのだからな」
だからこそ、自分たちはロマリアの虚無を探しているのだ。
「これ以上は無理につきあえとはいわん。お前の思うままにするが良い」
「三ッ首打倒は勅令。ならば、従うしかないでしょう」
「別任務を与えても良いのだぞ。お前の好きなだけの人員を使え」
「別任務、ですか?」
「イザベラを護れ」
ジョゼフの言葉は続く。
「そして、シャルロットを護ってやって欲しい」
何を今更。その言葉をカステルモールは飲み込んだ。
三ッ首の力は大きい。この総攻撃でも滅することかできるかどうか。
仮に滅することが出来たとしても、こちらの被害も甚大なものとなるだろう。下手をすればガリア騎士団の存続も危うい。
二人の王女を護る必要は、確かにあるのだ。
だが。
だが、しかしだ。
「王よ」
カステルモールは言う。ジョゼフは間違っていると。
「ならば貴方が生きて戻り、護るべきです。それが貴方の責であり、贖罪だ」
間違いを認めるのならば、認めるだけで終わってはならない。
是正し、導き、己が責任において結果を見守るべきではないか。それが、贖罪ではないか。
他人に任せるなど逃げではないのか。いやしくも一国を動かした男の末路がそれでよいのか。
少なくとも自分は、いや、シャルル派であった自分だからこそ、反ジョゼフ派であった自分だからこそ、絶対に許さない。
「余に、生きろと言うのか」
「生き恥を晒せ。そう言い直した方が、受け入れやすいとの仰せであれば」
一瞬虚を衝かれたような顔を見せ、笑い出すジョゼフ。
「そのような物言いをする男だったとは気付かなかったな。なるほど、無能王の名も伊達ではなかったと言うことか」
「その名を付けた我らが不明、今は平にご容赦を」
「特に赦そう」
続けて何か言いかけたジョゼフが片目を抑える。
「これは……」
怪訝な顔のカステルモールに、ジョゼフはその身に起こった変化を伝える。
ジョゼフとイザベラの視界が重なっている。今、ミョズニトルンの紋章の浮き出たメットを被ったイザベラの視界が、ミョズの喚び手で
あるジョゼフのそれと重なっているのだ。
聞こえる物音。
ジョゼフはすぐに状況を把握した。
イサベラがシャルロットに呼び掛ける。ガリアの行動を明かす。
そして、ストロングザボーガーが、三ッ首に敗れている姿。
三ッ首とザボーガーが互角ならば、リーヴスラシルの上乗せ分で三ッ首が有利になる。
ガンダールヴとミョズニトルン、ヴィンダールヴの上乗せは、それぞれルイズ、イザベラ、シエスタのものだ。
操られる存在であるザボーガー、バッハ、ホークと、自律している三ッ首との違いだった。
「急ぐぞ」
ジョゼフの言葉は奇しくも同時だった。アルビオンの宮殿で、ワルドがガリアに別れを告げた言葉と。
その直後の地震は、まさに天の怒りとも感じられるほどの凄まじいものだった。
地下に存在していた基地はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図と変わっていったのだ。
揺れが収まったとき、ジョゼフとカステルモールは互いの無事を確認する。
三ッ首の罠か、とも考えるが、それにしては基地自体も崩壊しているとしか思えない。
「三ッ首自体が生き残っているのなら軍団の再建はそれほど難しくはあるまい」
どちらにしろ、三ッ首自体を倒すのは必須条件である。
二人は戻ろうともせず、探索を続けようとした。が、すぐそこに、地震前までは確実になかったはずの通路があるではないか。
皮肉な事にワルドの引き起こした大隆起、その地震による破壊が二人に隠し部屋の存在を教える事となった。
二人は厳重に隠されていた部屋に到達する。
ロマリアの虚無、ヴィットーリオの元へ。
だが、その姿にカステルモールは吐き気を覚え、ジョゼフすら絶句した。
ガラス容器に漂う、上半身と頭だけの姿。
それはただ、「リーヴスラシルの喚び手」である事以外の価値を一切削ぎ落とされた肉塊。
三ッ首の力を落とさぬために、リーヴスラシルの紋章を消さぬためだけに生かされている姿。
「……ガリア王……か……」
二人は知らず、容器に繋がれたスピーカーからその声は聞こえる。
「殺してくれ……私を……」
ヴィットーリオは全てを聞かされていた。
三ッ首の為した事、己の召喚によって起こされた事。
そしてジョゼフに対する懺悔を、二人は聞いた。
「私を殺せ……三ッ首の力を奪え……」
「我が妻の敵でもあるか……」
ジョゼフが静かに言う。感情を一切入れぬ声で、ただ事実だけを伝えるように。
「そうだ……気をつけろ」
仕掛けがある。とヴィットーリオは淡々と告げる。
自分が死ねば、一帯が爆発する仕掛けがある、と。
「なに、元よりそのつもりだ。聖職者を手にかけるのだ、王族といえど無事ではスマンだろう」
そして、向き直る。
「カステルモール、お前は行け。シャルロットとイザベラを頼む」
もしかすると、先ほどの地震で全滅しているかも知れない。
自分たちが助かったのは、特別に護られているヴィットーリオのすぐ近くにいたからではないか。
だとすれば、シャルロットとイザベラを護れるのは、カステルモールしかいない。
「いや、ガリア騎士の生き残りとして、ガリアの民を護ってくれ」
行け、と再度告げる。
「ガリアの王として、いや、イザベラの父として、シャルロットの伯父として頼む。二人を助けてやってくれ」
「お預かりします」
カステルモールは、尋ね返したジョゼフに二度言う。
「二人をお助けします。貴方が、もう一度戻ってくるまで」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザボーガーに握りしめられた状態で、デルフリンガーは鏡の門を潜った。
虚無魔法〈世界扉〉である。
一度目にザボーガーが潜ったのは、ルイズが無意識に発動させたもの。それによってザボーガーはハルケギニアへと現れた。
これは二度目、明確に意識的に発動したものである。そして、デルフはやってきた。地球へと。
今のザボーガーはデルフの意識で辛うじて動く事が出来る。だが、動力源はルイズによって与えられた虚無の残存分のみ。
すぐにでも目的地へ向かわなければならない。
(にしても、ここはどこなんだ?)
広場、にしては少し狭い。
左手には、造りかけの小屋のようなものが。
ザボーガーとリンクしている今のデルフには日本語がわかるので、文字があれば読む事も出来る。
しかし、目に見える範囲にはそれらしきものはない。
「あれ? ザボーガー?」
突然、名前を呼ばれる。
デルフはザボーガーを振り向かせた。
「ザボーガー、だよな。博士のとこの模型よりも随分ボロっちいけど」
その模型というのが、ザボーガーの完成予定模型であるとデルフが知るのはもう少し後の事になる。
「なんでこんなところに……」
首を傾げているのは、何処にでもいるように平凡な少年だ。
「おい、坊主。おめえ、俺を知ってるのか」
「げっ、喋った!?」
「おいおい、俺の事知ってるおめえは誰だっての」
「え、俺?」
少年は、驚きつつも逃げようとしない。
ずいぶんと好奇心の強い性格のようだった。そう、この好奇心の強さが、別の世界では彼を英雄に仕立て上げるのだから。
「名前、なんてんだ?」
「ああ、俺、才人。平賀才人」
以上第22話、お粗末様でした。
コミケには、ルイズはいたけどザボーガーはいなかったよ。
ここでサイトがくるか。
投下乙でした。
次回が気になる。
乙。
そりゃあ、会場内にバイクは持ち込めないでしょう。
ワンフェスなら、ダイヤブロックで再現を試みる人が出るかも。
すでにストロングまで再現した人がいるんだし。
投下乙です
リアルタイムで読めてなんだか得した気分だわい
ゼロのペルソナの作者です。
私事で忙しかったり、安価スレにハマったり、
終盤の章を一章まるまる書き直して4倍くらいに直そうとしているので遅れていますが、
たぶん、今週くらいには投下できると思います。
そしてあえて今から投下する東方projectから森近霖之助召喚。
今、僕は背もたれもない粗末な椅子に腰かけ本を読んでいる。
僕の今いる部屋、というよりは建物は小さな掘っ立て小屋だ。
地上高い塔の屋上に建てられているため時折強い風が吹いてこの粗末な作りの建物に風が入りこむ。
バタン!バタバタ!
扉が開けられ、風ではなく人が侵入してくる。その風よりも無粋な来訪者はピンク色の髪をした少女だ。
「何してんのよ、アンタはーーーー!!!!!!」
彼女は地面を踏み抜くんじゃないかと思うほど荒い歩き方で僕のもとまで来る。
そして小屋が震えるんじゃないかというほどの大音声を耳元で張り上げた。
そこまでしなくても聞こえる。うるさくてしょうがない。
「何を騒いでいるんだ、君は」
「何を?っじゃないわよ!品評会よ、品評会!!」
本当にうるさい少女だ。
しかしはて?品評会とはいったいなんだったか?
「アンタがいないせいで不参加になっちゃってとんだ恥さらしよ!ああ、もうせっかく姫さまがせっかくいらしたのに……」
彼女が勝手に喋っていく情報から僕は品評会が何かを思い出した。
そう、確か魔法使いたちが自分たちの呼び出した使い魔をお披露目する舞台であるということだ。
さて、なぜそのようなもので僕が少女に責められているかというと、
目の前の少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが魔法使いで、
僕こと森近霖之助は彼女の使い魔であるということになっているからだ。
しかし使い魔と言っても僕は無縁塚で見つけた鏡に触れただけだ。
そうしたらいつの間にか、幻想郷とは違う――しかし外の世界とも違う――世界に連れてこられ、無理矢理接吻をされて使い魔の契約をさせられた。
そのような強引な使い魔との契約があるであろうか。どう考えても無効だ。
だがそのような方向に議論を進めるのはやめておく。
このルイズという少女は何やら頭が固く、その契約の無効を訴えてもまるで話が通じないのだ。
しかし商売でもっとも相手にしたくないタイプかと言うとそうでもない。
頑なな部分もある分、妙に律儀で言質をとることが出来れば良い顧客となるだろう。
世間一般的に言うなら詐欺に引っかかりそうなタイプというやつかもしれない。
だいたい……
「八卦炉を君に与えたことで僕は使い魔としての義務を果たさなくていいという契約だったんじゃなかったのか?」
うぐ。と、短気なわりには律儀な少女は言葉を詰まらせる。
「で、でも……」
「でもも、何もないだろう。そもそも僕が品評会に出たところで何をすればいいんだい?突っ立っているだけでいいのかい?」
そこでルイズは今気付いたという顔をする。
「え、それは使い魔だから何か特技を見せればいんだけど……」
言葉を続いてくうちに声は重くなっていく。彼女もようやく気付いたようだ。
そう、僕の能力は「道具の名と用途がわかる程度の能力」だ。
道具屋の自分にとっては最高の能力であるが、誰かに見せるのに向いている能力ではないだろう。
多くの人間に見られながら持ってこられた道具の名前と用途を言い当てるような隠し芸じみたことをする自分の姿を想像するとぞっとしない。
というか面白くもないだろう。きっと同じ想像をルイズもしたはずだ。
桃色少女は、はあと溜め息をついた。
「役立たず…」
失礼なことを言う。僕の能力は見世物ではないということだ。
「もういいわ。お茶でも飲むから」
彼女は気を取り直したようであった。以前までお茶を置いていた場所を探している。
「ああ、お茶はそこの棚に置いてあるから」
僕は新しくお茶置き場になった少し高いところにある棚を指さした。
「ありがと」
「でも緑茶には手をつけないでくれよ」
この世界では紅茶が主流らしく緑茶はなかなか手に入らないのだ。
飲まないわよ。
ルイズは返答しながら体を伸ばして棚の上に手を伸ばそうとする。しかし背が足りないために届かない。
僕のいた幻想郷では空を飛ぶ能力は何かしらの力を持つ者はみなが持っている能力であった。
それと同様にこの世界の魔法使いたちも空を飛ぶ魔法というのは基本的な魔法の一つであるらしい。
しかし目の前の少女は、うんしょうんしょと言っているだけで地から足を浮かす気配はない。これはこの少女が魔法を使えないためだ。
正確には魔法を使おうとすると爆発ばかり起こってしまうというものらしいが。
とはいえ彼女が魔法を使えないおかげで自分は八卦路を最大の価値で売りつけることが出来たわけだが……
「ちょっと見てないでとってよ」
自分の体格では取れないと悟ったルイズが頬を膨らませて文句を言ってくる。
「やれやれ、人づかいが荒いね」
「荒くないわよ。だいたいあんたはいつも……」
「はい」
また文句を言いそうなルイズにお茶っ葉を手渡す。もちろん、虎の子の緑茶ではなくこの世界で一般的な紅茶の葉だ。
「む……ありがと」
ルイズは小屋の奥のほうに入っていった。奥といってもこの小さな掘っ立て小屋にそこまでの広さはないので単にお茶を沸かしに行っただけだ。
ところでこの小屋の主は僕ではない。コルベールという魔法教師だ。
少し頭の寂しい魔法使いでどこか頼り気なく見えるものの、科学への熱意は素晴らしい。
彼は魔法のために、科学が発展していないこの世界で科学の重要性に一人着目し、そして原始的なものではあるがエンジンを作成していた。
僕は彼に感銘を受け、そして彼も僕の知識に感心を持ち協力関係になったというわけだ。
そういうわけでたびたび僕は彼の研究室であるこの小屋に訪れている。
ルイズは来る理由などないはずだが、僕の主だと言い、たびたび訪れお茶をちょうだいすることを当たり前としつつある。
ずいぶんとたくましいことだ。そういえば彼女には新しいお茶の置き場は高すぎたようだ。また別の低い場所に移し直すか。
それとも空でも飛べるように何かアイテムを作って渡すのもいいかもしれない。彼女はきっと喜ぶだろう。
この世界に来てすぐに八卦路を渡したときのことを思い出す。
会ってすぐに彼女が魔法を使えないことに悩んでいるのはわかったから、魔法を使えるようにするマジックアイテムを作って渡した。
手持ちとこの世界の材料で作った、ちょうど魔理沙に渡した八卦路のレプリカのようなものだ。
客の欲しがっているものを渡すのは商売では当然のことであり、そうやって彼女から生活条件の改善を勝ち取ろうとしたわけだ。
そしてそれは結論からいえば大成功であった。
「な、なによ!ちょ、ちょっと火が出ただけじゃない!!」
などと口では言っていたが彼女の魔力によって八卦路からちょっと火が出たときの彼女の嬉しそうな顔といったらなかった。
打算目的で作ったのに、商売人として誇らしい気持ちになるほどであった。
きっと今もお湯を沸かすために八卦路を使ってちょっと火を出して嬉しそうにしているに違いない。
「この小屋やっぱり暗いわね」
そうこう考えごとをしているうちにルイズが戻ってきた。
「やあ、嬉しそうだね」
「はあ?何がよ」
ルイズはぶすっとしていた。
彼女は机の上にティーカップとティーポットを置き、椅子に腰かける。
「いや、僕の作った八卦炉を気に入ってくれてるかっていう話だよ」
「どうしてそういう話になるのよ……」
どうやらイマイチ僕の言いたいことは伝わっていなかったようだ。
「まあ…もしかしたら…気に入ってるかもしれないわね……」
ルイズはポケットから八卦路を取り出して手元で転がすように撫でる。
「かもしれないってどういうことだい」
「もう、うるさいわね。いいじゃないなんでも……。でも役に立ったのは認めていいかもね」
ルイズは不満げに顔を背けてから喋り始めた。その横顔から察するにやはり八卦路を気に入っているのであろう。
「これのおかげでギーシュとの決闘にも勝てたし。土くれのフーケにも勝てて、勲章もらっちゃうし」
「うん、道具屋としてアイテムを気に入ってくれたようで何よりだ」
ギーシュと決闘したときは停学喰らっちゃうし、実家に呼び出されたりで散々だったけどね。と不満を笑みのまま更にこぼす。
「まさかどっちにしてもアンタが何にも助けてくれないとは思わなかったけど」
笑みが薄くなりジトっと僕を見てくる。
「何を言っているんだい。どっちにしても僕が八卦炉を渡したおかげでどうにかなったんだろう?」
はあ、とルイズは溜め息を吐いた。
「アンタってそういうヤツよね……。使い魔とかおいといて大人として少女が決闘したり、冒険に出たりするのをなんとも思わないの?」
「別にいいんじゃないか。僕の周りはそういう子ばっかりだったよ」
「どんなところに住んでたのよ……」
ルイズは呆れたようだった。確かに霊夢にしても魔理沙にしても普通じゃないかもしれないな。
普通を売りにしている魔理沙が知ったら憤慨するかもしれないが。
どっちにしてもわたしの決めたことなんだからアンタに色々言うのはおかど違いなんだろうけどね。
と、ルイズは自己完結した。そこまでわかってるなら愚痴を言うのをやめて欲しいのだが……。
それから彼女は紅茶を入れてゆっくりと飲み干した。
「ね、ねえ。ところで八卦路の改造予定って今のところあるかしら?な、ないなら別にいいのよ!?期待してるわけじゃないんだから!」
なぜか焦った風だ。どうやらルイズという少女嬉しいことや期待を表すことはよくないことだと思っているらしい。
だが感情を表現することは、心から出来ている妖怪はもちろん人間にとっても重要なことであり隠すようなことではない。
もっとも今のルイズだと全く隠せていないので問題にはならないが。
「ねえ、どうなのよ」
焦れて更に彼女は質問を重ねてくる。
「そうだね、この世界の魔法についても少しわかってきたしグレードアップしてもいいかもしれないね」
「ほんと!」
少女は嬉しそうに椅子から立ち上がる。
その後、自然と立ち上がったことに気付き、すごすごと椅子に腰かけてから、コホンと咳払いをしてから平静を装ったつもりで尋ねてくる。
「この世界の魔法についてわかったってどういうことかしら?」
「ああ、この世界の魔法は土・水・火・風の4つに分かれているだろう」
「当然」
「万物を分類分けする上でこれはかなり基本的な枠組みであるんだ。
地・水・火・風の4属性というのはね。だけど僕はこの世界の魔法は単純に土や水の力を使った魔法ではないと考えている」
「はあ?何言ってるの?」
ルイズは理解できないという顔だ。この世界で育った人間にはなかなか想像しづらい考えだったのかもしれない。
「土や火などのものから力が具現化されていると考えるにはあまりに能力が限定されているということさ。
つまり土・水・火・風からそれぞれの属性が生まれたのではなく、それぞれの属性に土・水・火・風の名前が当てはめられたのさ」
「何言ってるのよ……。ちゃんとそれぞれの魔法はそれぞれの物質を操れるじゃない……」
「魔法という精神面の強いものに物質をどうこうできるかはあまり意味のない話さ。重要なのはその意味合いだ」
意味合い?と、ルイズは額にしわを寄せながら首をひねる。
「そう、このハルケギニアの魔法はあまりに意味が限定されている。
たとえばハルケギニアでは火は戦闘向きで、水はそうじゃないとされているようだね」
「そんなの当然じゃない。火なんか攻撃以外になんの役に立つのよ」
やれやれ、これはどうやら1から説明しないといけないようだ。
「たしかに火には破壊という側面はある。
イ ザ ナ ミ カ グ ツ チ
それは伊邪那美が火の神軻遇突智を生み出す際に焼死してしまったことから、火は存在したとき、あるいはその前から破壊的側面を持つと言える」
「えっ?ちょっとイザナミ…と、カグツチって…?」。
「しかし火は同時に恵みの象徴であり、開明の象徴でもある。
巨大な火、つまり太陽によってあらゆるもの育まれ、人は火とともに成長をした。
これは水にもいえることだ。水は確かに癒しの象徴だが、人が扱いきれないほどの巨大な力でもある。
大水の氾濫の恐ろしさは今さら言うことでもないだろう」
「無視するってどういうことよ……。つまりリンノスケはそれぞれの属性にしては効果の範囲が狭いって言いたいの」
「ずいぶんとざっくりとまとめてくれたが、そういう認識くらいのほうが君には分かりやすいからね。
戦闘に向いているかどうかで、火、風、土、水という順にはっきりするのはおかしいだろうね」
ふーん、とルイズは言葉を咀嚼しているようだ。
「なんかアンタに八卦炉改造頼んで大丈夫なのか心配になってきたわ」
ルイズは疑わしげな目でじとりとこちらを見てくる。
なぜそうなるんだ。
ルイズを納得させようと決意したとき、小屋の扉が開いた。
「やっぱりいましたね、ミスタ・モリチカ。おや、ミス・ヴァリエールもいるのですか?」
この小屋の主であるコルベールが帰ってきたようだ。
「おかえり、コルベール」
「失礼しています、コルベール先生」
ルイズも丁寧に頭を下げる。
「いやいや別にいんだよ。それよりも今日はいい月ですよ、どうですか一杯?」
そう言われて僕とルイズは窓の外を見た。話をしている内に、空は闇色に染め上げられていたようだ。
黒の空に小さな点の如き星たちと、大きな二つの月が浮かんでいる。
「わたしもご一緒させてもらってもいいですか?」
「あなたもですか?」
コルベールはルイズの申し出に迷ったようだ。たしかにあまり今までルイズと酒盛りした記憶はない。
「いいんじゃないですか。多いほうが楽しいこともあるそうですよ」
そう言うとルイズが驚いたように僕を見て来た。
「助け舟出すなんて珍しいわね」
「二つの月の魔力にあてられたんだろう。それと知り合いたちが騒がしく酒を飲むのが好きだったのを思い出してね」
「私は騒がしくなんてないわよ」
ルイズはむくれ、コルベールは笑いながらワインとチーズを机の上においた。
この世界に来てからワインばかり飲んでいるため、日本酒が恋しい。
とはいえ、緑茶と異なりこれはなかなか見つからないため、今自分で作っているものができるのを期待するしかない。
だが、そもそもこの世界で日本酒が出来るのかという不安もある。
ワイン、それに発酵食品であるチーズがあるということはこの世界にも発酵を促進させる神がいるということに他ならない。
しかし、日本酒は日本で作るから日本酒なのだ。
たとえ幻想郷では日本酒ができる作り方でも、この世界ではワインのようになるか、ひょっとするとチーズのようになるかもしれない。
そして窓の外の二つの月を見る。月とは妖怪にとっても、世界にとっても重要な存在だ。二
つあるというのはそれだけ異常ということに他ならない。二倍だから二倍のご利益などと気のいいことは言って入られないだろう。
「ちょっと、リンノスケ!何ボーッとしてるの」
はっと我に返る。ルイズとコルベールがじっと見てきている。どうやら考えごとにふけりすぎていたようだ。
「まったく…今から乾杯よ。あんまり考えこんで話聞いてないとかやめなさいよ」
「わかったよ」
思わず苦笑してしまう。そうだ、今日はこうやって酒を飲むのだった。
こういう日ならば二つの月も、月になぞらえた団子の数が二倍になると、まるで自分の知り合いの少女たちのように能天気に考えるのが礼儀なのかもしれない。
二人と真っ赤な液体が注がれた硝子細工を合わせたあと、僕は空に浮かぶ二つの団子を眺めながらハルケギニア産の酒を傾けた。
支援
投下終了
>>626 支援感謝です
どう考えても書き始めたの、無重力巫女さんの影響ですね、こりゃ。
自分が東方キャラで一番好きな霖之助で書きました。
好きっつうわりにはなんかイヤなやつというか、薄情なヤツに書かれているような気がするのはきっと気のせいですね。
もし連載するなら、ルイズが八卦路を手にして冒険をこなしていくさまを尻目に
物語の端っこである霖之助がやってくるルイズを相手にキバヤシ理論を展開するようなスケールのちっちゃい話を書きたいところです。
誰得過ぎるし、キバヤシ理論なんてそうそう思いつかないから無理だけど
ペルソナの方は次回第17章塔です。しばらくはタバサのターン?
投下乙
支援したと思ったら終わってたのはよくある事
ゼロのペルソナも無重力巫女も期待してまっせ
何気にマジックアイテム製造技術がチートじみている古道具屋店主乙
以前したらばの方に投下されてた幻想郷面子全員使い魔のヤツずっと待ってるわ
オスマンの胃がマッハな奴か
俺も
>>630の作品を、首を長くして待ってる
もちろん無重力巫女さんもだが
静弦太郎召喚
鞭一本でゴーレムを破壊する平民!フーケ逃げてェ!
ひょっとして 水メイジと組めば 最弱巨大変身ヒーローの「アイアンキング」も、一分以上戦えるんじゃないかな?
投下乙です!
幻想郷全員のやつは自分も密かに待ってる
クリミナルガールズの主人公
明日はバイトだと眠りについて
起きたらハルゲニアに召喚される
な〜んて考えたが
…あの主人公、名前無ェ
投下乙でした。
まさか彼で小ネタを書いてくれる方がいらっしゃったとは。
>>635 地獄のプリニー教育係でも出しましょ
シエスタはアレデス
アルマースとサファイアの子孫で目に☆が浮かんでる
>>637 それもなかなか楽しそうだ
次回予告と本編に盛り込むイワシ成分に悩みそうだが…
自分で出しておいて何だが
ハルケギニアの吸血鬼とか問題外のレベルなんだよなぁ
是非エルザにイワシを布教してやってほしいものだ
・・・あれ、とりあえずこの小ネタだけでも一本いけるかな?
とりあえずネタを練りつつバールアームズ増やしてくる
湯音を召喚……
体型のでない着物というドレスを見たルイズはどう反応するんだろう?
吸血鬼って作品によって能力やら強さやらがピンキリだよね。
吸血鬼といえば、腕時計の幻の吸血宇宙人を一度見てみたいな
テンションフォルテッシモ
>>633 ズバットの人戻ってこないかな、とか思ってしまった
エヴァンジェリン召喚とか
キスショットを召喚して、召喚した途端に火ダルマとか
エヴァンゼリン召喚かとオモタ
HAIKUダンディーことスレイヤーさん召喚
スレイヤーは束縛なんて真っ平ごめんな独立独歩な生き方してるから契約するのは至難だろうな。
>>641 吸血鬼が主役だったり主要人物だったりするとその能力はチートって言葉すら生ぬるくなるからね
ただのモンスター扱いの吸血鬼を一緒の場に放り込んだら悲惨なことになる
契約するのが難しいあのお方にルーンを刻んじゃおう講座
一発で学院が瓦礫の山、誇り高くて契約なんか絶対お断り、こんな困ったキャラを使い魔にする方法の一部を紹介するよ
1、帰る方法を見つけるまで、ちょっとでいいからここにいて
2、死に掛けのところを呼んで、気絶してるうちに契約しちゃおう
3、ハルケギニアで弱体化、なぜかゲートをくぐったら弱くなっちゃった
4、ほんとはルイズってすげー強いんだぜ、惑星ふっとばしちゃうあいつも失敗魔法でKOだ
5、同姓同名の物分りのいい人? 大丈夫、SSじゃあ顔はわかんないよ
過去幾多の先人が使ってきたこの方法を使えば、どんな強キャラも今日からガンダールヴさ!
契約してくれたら、ええええ、エッチな事もしていい、のよ?
あれだ、妹様召喚させればいいんじゃね?
多分ギーシュは死ぬが
ギーシュは相変わらず命の危機にさらされてるよなw
マルコメ辺りは袋を被り出すんじゃないか。
全裸で。
20巻でエレオノールに迫るマリコルヌ見てると、無謀な決闘挑むキャラはむしろこいつのほうがふさわしいんじゃないかと思える
むろん女性キャラ限定だろうが
東方のキャラたちが〜は何かきゅんとするというか
ポジティブな意味で寂しくなるような雰囲気なのがすごい好きだった
ソードワールドの吸血鬼なんて召喚した日にゃ
ハルゲニアは一体どうなるのっと
「鬼の作左(著:西条真二)」から本多作左衛門重次を召喚・・・したら四六時中ルイズが作左に説教喰らいそうだなwww
ハルケギニアだった
最近は素で読み間違えるから困る
>>660 吸血鬼なんてケチなこと言わずノーライフキング召喚しとけ
>>663 ノーライフキングなんてせこい事を言わずに魔神王で良い。
そんなのより宇宙最強の魔王呼ぼうぜ
身体は本だけど
林トモアキ作品から初代聖魔王閣下召喚。
マルトーさんたちが全身タイツに。
姫神「吸血鬼と。聞いて」
しかし召喚しても誰からも気付いて貰えない
吸血鬼を召喚してもたいていは『灰』になりますよね?(何かを期待した目で)
ロザバンのモカさん召喚したら男どもは「ぼくの血を吸ってください」状態になるな
ギャグ・コメディ系の吸血鬼モノでは、
太陽光で灰化→かき集めて『復活の儀式』→「あ〜 危なかった!」
てのが定番だけど その度にルーンも消えちまうんだろうなぁ。
吸血姫美夕は?
ぬらりひょんの孫から羽衣狐(現代)召喚
契約と同時に生き胆が食われてしまうので話にならない
>670
出門博士「真っ昼間に吸血鬼に噛まれた、非常に珍しい検体じゃ」
この辺の三大博士に魔術の心得があっても驚かん。
>>673 こちらは、『ドン・ドラキュラ』のつもりだったんだけど・・・
そこまでマイナーなネタで返されるとは!
(アンタ、同世代だな?)
>>673 ひょっとして、非常に血の気が多くて
狼男やパワードスーツとタイマンでどつき合いして勝っちゃう男が恋人な
女の子が主役の話だっけ?
>>666 そこはヒキニパ神を降臨させようぜ
ハルケギニアは簡単に酒が手に入るし
…そしてガンダールヴのルーンを使用するたび
次の日に筋肉痛で死にかけるヒキニパ神
契約してもいいけど、僕の血を吸わないで……これじゃ意味不明だなw
>>668 確かダイ・アモン召喚して灰になったSSあったな(本体は蝙蝠化)
>>677 パテキュラリー・ジルコニア・ブロードを召喚するんですね、わかります。
>>671 垣野内作画のルイズだと!?
見たいじゃないか
「怪物くん」からドラキュラを召喚
食事はトマトジュースだけで良いから経済的だが精精深夜の散歩位しか役に立たないな・・・
吸血鬼…だと…?
ならば俺は敢えて倒す側を呼び出すぜ。
というわけでボクらの太陽シリーズからジャンゴとおてんこさまを召喚だ。
吸血鬼もエルフもオーク鬼もワルドも皆パイルドライバーで熱い熱いと
喘がせてくれるわ!
>>680 「力仕事に」「深夜の散歩」「怪物料理の名コック」
「「「得意はそれぞれ違うけど」」」
ドラキュラだけ役にたたない得意技w
吸血姫美夕だったら、ワルド=はぐれ神魔ということになるだろうか?
その前に中庭での決闘イベントでギーシュは死亡フラグか。
美夕の炎を見たらキュルケは驚くだろうか。
■■「対吸血鬼なら。わたし」
翼手さんがアップを始めたようです
ここで初代、+、cの小夜をまとめて召喚ですよ
変化球で+のネイサンあたりなら暇つぶしにルイズと契約するかも
棺桶型のサンマシーンから颯爽と登場する吸血鬼とかも居るが
確実に変態扱いされる気がするw
blood+のハジ召喚したのあったなそいや
吸血鬼の村なんてのもどっかのラノベにあったな…
…意外に汎用性高かったりするのか?
吸血鬼って種族は
血界戦線の吸血鬼はヤバイなんてもんじゃないな。
むしろあの世界でやばくないのが少ないけど
とらハ3の月村忍などどうか
吸血鬼で尚且技術チートも可能だし
SS書きたいから原作の続きを補完するぞ
…そう思って本屋で本編数冊と烈風の騎士姫1を買って帰った
1時間後、本編そっちのけで
嬉々として烈風の騎士姫の
2巻目を買いに向かう俺がいた
どうしてこうなった…
吸血鬼か、ブレイドとか、ナクナマス兄弟とかかね?
あるいは、吸血鬼じゃないけど、日に弱い関係でダークマンとか。
フロストやダンドリッジ、を呼んじゃって回りが次々篭絡されていく中
再召喚でよんだ、ピータービンセントみを頼りに吸血鬼ハントをするルイズ。
だれもわからないネタですね。
>693
よう、俺
吸血鬼と吸血鬼ハンター両方を兼ねた所と言う事で「吸血鬼ハンターD」からDを召喚しようぜ
問題は最初から無双状態なところだが
あの御方が干渉してこないことを祈るよ
あのお方は息子を愛してるからなぁ…かなり歪んではいるがw
吸血鬼は作品によって差異が大きいからいろんな話が作れる、ギャグからそれこそ身の毛もよだつホラーな作品まで
『ティファニアの留守中に盗賊に襲われて子供たちが惨殺されてしまったウェストウッド村
数日後、ロンディニウムに血のような真っ赤な花を売り歩くティファニアの姿があった……』
カケラも救いの無い話にしかならないから書かないけど
>>695 使い魔のルーンがDの美しさ故に肌に傷をつける事を(ry
ワルキューレとかフーケのゴーレムが美しさ故に攻撃を(ry
美しさのあまり月が援護射撃するんだっけか?>D
天然ツインサテライトキャノンですか判りません
吸血鬼といえば
DPSの付録四コマの『我が姫君に捧ぐ』の鈴宮兄弟とか・・・
魔族スキルがまだイマイチ分からんのよな
わりとどうでもいい条件で変身するくらいしか
>>690 阿智太郎さんのあれかな。
吸血鬼は設定いじりやすいから、汎用性がかなり高いよ。
ところで、対吸血鬼兵装で最強なのは丸太ですよね?
Dは もう呼ばれてなかったっけ?
菊池キャラ オールスター戦みたいので。
某スレの某総帥が書いてる奴だな
途中で止まってるんだよなあ・・・・・・
>>685 あれ?なんでだろう?このレスだけ消えてるような?
>>703 それだわ
最近は吸血鬼にも色々と耐性持ちがいるから困る
優&魅衣 から吸血鬼を呼ぼうよ!
最強吸血鬼にはなれないけれど、最良の手段を取れる吸血鬼といえば
ヴぁんぷの『ゲルハルト・フォン・バルシュタイン』だろう。
たぶん上に挙げられている中では最も吸血鬼らしくないけれどね。
変に釣れちゃったなぁ。
>703
丸太じゃないよ。
先を尖らせた丸太だよ。
デックス「クリティカルヒット!!」
「2発3発4発!!」
「それそれそれ」
BBBのカーサ呼んで欲しい
始めを間違えなきゃ、良い姉貴になってくれると思う
ギーシュの命運は、保障しかねるがw
吸血鬼の話題が続いているのでここはトリニティブラッドとかどうだろう
クルースニクの誰かを召喚したりするとただの変身ものになりかねないな
少なくとも「汗でも大丈夫!」って言えちゃうような吸血鬼は餌にならんだろうし
吸血鬼っていったらアルカードさんがいるじゃないか!
魔法も使える武器も使える無双すぎますね
そういやゼロ魔世界の吸血鬼って血じゃなくて汗とかでもOKなんだっけ。
ギャオスが人工血液で満足してたのと似たようなものかな
養分としては薄すぎて腹の足し程度、らしい。
タバサが召喚したのが某不定形メイドの同輩だったらエルザは生存してたかもしれん、
と考えたがシナリオブレイカー過ぎる気もした。
考えてみればエルザもロリババアと立派にキャラ立ちしてる吸血鬼だったな
吸血鬼って普通の人間を基準にしたら
年齢と見た目が噛み合ってるケースが少ない気がする
主観だからなんとも言えんが
ファントムブレイヴのマローネを召喚
虚無と奇跡の能力と霊魂の物語
…約一名は非常に不幸な目に会いそうだが
>>718 雑草を持つとガンダールブが発動して、SPD差により敵が身動きする間も無く倒せるようになるんですね
>>690 『僕の血を吸わないで』かな?
ラノベだとニート吸血鬼とかいろいろ居るなw
>>721 『吸血村へようこそ』だね
そっちは知らないけど似た感じなのかしら
死なずの姫君のマリィだったら血が苦手だから吸血はされんが金の亡者だから学院が旅館にされるな
ロザバンにもアルカードいるな
めちゃくちゃでかい巨大な化物だけど
>>722 てかどっちも作者同じ
ちなみに吸血村じゃなくて血吸村な
ここに投下せずに直接まとめに載せるのはアリなのか
避難所なりここなり投下しておいた方がいいとは思う
>>726 そう言うのは荒らしとみなされて削除対象になるから止めとけ
>>725 血吸村か、ずっと吸血村と読んでたわい
作者同じなのは
>>703氏の指摘時に
ググって確認して知った
ただ血吸村〜、しか読んでないから
僕の血を〜の内容がちょっと気になった
>>688 ふ、奴がジョン=レノンのファンだってわかれば、悪人の訳がないってわかるだろうさ
とコブラが言ってた。
>>729 僕の血を吸わないでを簡単にまとめると
父ちゃんすげぇ
>>729 作者同じだけど、吸血鬼の設定は微妙に違う。
僕血はウイルス性に近いけど、村の方は呪いに近い。
あと村は吸血鬼は全員にんにくが苦手って設定で、僕血は嗅覚が高いから、嫌いなのはにんにくじゃなくて個人毎の嫌いな臭いって設定だった。
あの人、吸血鬼と忍者が好きみたいだから、ちょくちょくそういうの書いてるけど、毎回設定違うからな。
>>718 某エロゲで「70代はとても若い部類」と言った吸血鬼を思い出した。
でも年齢2桁台の吸血鬼って実際に少なかった気がする。
>>726 ここで聞く前にまとめwikiの注意書きくらい読め
>あくまで同名スレのまとめサイトです。wikiへの直接投稿はお控え願います。
僕血の吸血鬼も地味にゼロ魔世界だと強すぎるよね
たしかあまり才能がなさそうかつ吸血鬼なりたてでも核兵器×2が近距離で爆発しても生きていたし
じゃあもっとも身近な吸血鬼を題材にしたゲーム「蚊」から蚊を召喚
諜報活動とかに便利だろうが、さてどうやってルイズに気づかせて契約までもっていくか
最近の吸血鬼と言えばヴァルバトーゼ閣下は普通に契約まで持ってけばルイズ死ぬまでくらいなら使い魔やってくれそう
問題はルイズの部屋がイワシ臭くなるくらいだな
あとなんか色々追いかけて来て騒がしくなりそう
半分吸血鬼な阿良々木さんを召喚
イワシ閣下は元ゲー的に序盤から
ハルケの政治体制にもの申しそうなんだよな
半分吸血鬼で半分変態なムララギさんか。
>>735 アレは、フロオケベッドさんの力が託されたのもあるからじゃないのか?
アン・ルイスの作品から呼んでルイズそっちのけでギーシュと絡み始めたり
>>712 あれの場合は吸血鬼じゃなくてそれっぽい性質を持ったナノマシン保持者
クルースニクはエネルギー源のバチルス持ちがいないとガス欠切れ起こすから
料理の仕方次第で面白くなりそうだけどね
面倒だからブレイド召喚しようぜ
|ヽ
|w0)
|⊂
フロなんとかさんを召喚する
会う人会う人に名前を覚えてもらえない
対吸血鬼用最強武器つったら鞭じゃないの?
そこから斧とか聖水とか十字架とかに派生するけど
インなんとかさんと聞いて
>>748 どっちだっけ、と迷ったあげく間違えたw
>>749 あれはその一族に流れてる血が変態級だからな…
吸血鬼は全員敬虔なクリスチャンってのは何処のお話だったかな
だから十字架突きつけられると罪悪感にかられて苦しむ、って
GS美神のピートの親父あたりは脳みその古臭さがハルケと相性ぴったりなんじゃないかと思う
>>739 まずトリステインの政腐を何とかした後
次がアルビオンとやっていって
最終的にハルケギニアを救うんですねわかります
ヴェドゴニアの伊藤惣太とリァノーンを召喚とかあったら良いな
それはさておき、ライドウ召喚のやつの3話はまだか…
758 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:27:32.74 ID:IrnkJluJ
皆さんお久しぶりです。
ゼロと魔王の第7話が完成したので、誰もいないようでしたら
5分後ぐらいに投下したいと思います
759 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:31:32.49 ID:IrnkJluJ
ゼロと魔王 第7話 聖剣杯 前日
なんだかんだで時が流れて聖剣杯一日前、今日はアンリエッタが来ると言う事で生徒のほとんどが門の前で待機していた。
「おいギーシュ、なんだこの集まりは?」
「ん?ああ、もうそろそろアンリエッタ王女殿下が来るからね、生徒で出迎えという訳さ」
(そういえば、オレ様はどこかへ行って出迎えられたことがあったか?)
「そして、その後に開会式だよ」
「開会式ねぇ〜・・・聖剣杯ねぇ〜・・・」
ラハールに無理やり聖剣杯に出させられることになったルイズがやる気のない感じで言っている。
「随分やる気がないな君は・・・」
「あたり前でしょ、私は本来出る気がなかったんだから」
「あきらめるしかないだろう、ラハールに逆らうのは面倒だしな・・・・」
この短期間にラハールがどのような人物か把握したあたり、相当家来としてこき使われたらしい。
「あんたには少しは同情するわ・・・」
「君にもね・・・」
「お前ら、何の話をしておるのだ?」
「少しね・・・それより着いたみたいよ」
門の方を見てみると、馬車が来ていた。
それも、ガチガチに警護されているので間違いないだろう。
学院内にある程度進むと馬車が止まり、1人の騎士がドアを開け、中からアンリエッタが出てきた。
「・・・・あれがそうか?」
「ああ、あれが我らの王女殿下さ、美しいだろう?」
常人ならここで普通にうなずくのだろうが、ラハールはとある場所に目が止まって何も言えない。
「王女殿下、よくこのような大会のために出向いてくださり、光栄でございます」
オスマン率いる教員がアンリエッタの前に出て感謝の意を見せる。
「いえ、今年は私の私用などがありますゆえ」
「それでは、こちらへ・・・開会式がありますゆえ」
オスマンはそう言い、アンリエッタを会場に連れて行った。
後に残ったものは、自分の部屋に帰るものや会場に行くものなど、結構バラバラだ。
「いや〜やはりアンリエッタ様はお美しいな〜!さあ、開会式が始まる、僕たちも行こう」
「お前が仕切るな!・・・ん?お前もはやく来い」
「・・・行くわよ」
ルイズはもうあきらめた。
まあ、元々あきらめてはいたが・・・だが、出る以上はせめて悔いの残らない程度にはがんばろうと思っている。
開会式会場に着いた3人は、受付に選手と言う事を証明し会場入りする。
支援
761 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:34:41.14 ID:IrnkJluJ
会場の中に入ってみると、コロッセオみたいな感じの所で、中央には30人近くの人間がいるだろうか、観客もかなりいる。
「今年は開会式ですらかなり参加しているね」
「そうね、去年なんて半分以上席が空いてたし、参加者だって10人ぐらいじゃなかったかしら?」
「まあ、当然と言えば当然なのかもしれないね。今年はなにせ王女殿下が御越しになられている、少しでも覚えてもらえれば幸運」
「それに開会式でお言葉を聞けるかもしれないと、出場していない生徒たちもこぞって出ているのだろう」
「ん?なぜさっきの奴が来る程度で出場してないやつまで来るのだ?」
そんな風に話していた2人の横で退屈にしていたラハールが話に加わる。
「さっきの奴って・・・君ね、グハッ!なぜ殴るのかね!?」
「誰が君だ?オレ様の事はなんと呼べばいいのか教えたはずだが?」
「クッ!・・・ラハール・・・様・・・」
「最初からそう言っておればよかったのだ。で?なぜあいつが来た程度でこんなに人が集まるのだ?」
ラハールとしては、自分が出向いてもこのように魔物が集まったことが無いため、不思議で仕方がなかった。
「そりゃあ、なかなかお目にかかる事なんて出来ないしね。一目見たいと言った奴らと、何か隙あらば覚えめでたくしておきたいと言った奴らが多いからじゃないだろうかね?」
「基本前者の方が多いだろうが」
「そういうものか?」
「あんた仮にも魔王でしょうが」と言いたいルイズであったが、ギーシュの前で言うと、そこから一気にバレる事を考え、グッとその言葉を飲み込んだ。
そうこうしている内に、開会式の時間になったため、ざわめいていた会場も静かになった。
そして、観覧席みたいなところから、オスマンとアンリエッタが姿を見せた。
「さて、まずこのワシから、軽いルール説明をする。皆心して聞くのじゃぞ」
観客出場者から、いいからはやくアンリエッタの話を聞かせろじじい、みたいなオーラが出ているが、オスマンはそんなものを気にせずに続ける。
「この大会は相手さえ殺さなければ基本何でもありじゃ、当然相手の使い魔も殺してはならんぞ。それさえ守れば、武器を使おうが魔法を使おうがなんでありじゃ。」
「ただし大会外で相手に手をだすのは反則だから気をつけろ?まあ、そのような姑息な手段をする奴らはおらんだろうがな。以上ワシからの話は終わりじゃ」
オスマンが引っ込むと、次にアンリエッタが前に出てきた。
その瞬間観客の主に男がすごい眼差しで見始めた。
「皆さん私は明日行われる、この大会が楽しみです。ですから正々堂々、騎士道精神に乗っ取って頑張ってください」
それ以外にも適当にあいさつを済ませて、話を締めた。
「アンリエッタ様ありがとうございました。それでは本日の開会式はこれにて終わりじゃ、明日の大会に出場するものは、しっかり英気を養うがよい。出ない者も明日を楽しみに待つがよい」
そして、オスマンとアンリエッタが引っ込むと、各々が好きに会場から出て行き始めた。
ラハール達も早々に会場から出始めた。
762 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:35:15.88 ID:IrnkJluJ
ルイズとラハールは、会場から出た後は、ギーシュともすぐに別れ寮に戻っていた。
「しかし・・・なんでもありか」
「・・・・あんた何するつもりよ?」
「オレ様が有利になるような事なら・・・と言いたいところだが、この世界ではプリニーがおらんから会場に爆弾を仕掛けるだのが出来んから何もせん」
「・・・・」
平然とそんな事を言うラハールに、半分呆れながら椅子に座って勉強を始めるルイズ。
「お前、こんな時でも勉強か?よくやるものだな」
「こんな時でもしないとね、私はただでさえ魔法が使えないんだから、人一倍頑張らないといけないのよ」
「そうか、まあがんばれ、オレ様は少し昼寝するぞ」
と言って、棺桶に入って行くラハール・
「ふ〜ん、おやすみ」
ルイズはこれで静かに勉強できると机に向かいなおった。
「さて、そろそろ休憩を・・・って、もう外暗いじゃない」
よほど集中していたみたいで、外はもう真っ暗である。
我ながらすごい集中力と感心していると、自分が空腹な事に気が付く、そして丁度棺桶の蓋が開いた。
「ふわ〜、よく寝た」
「あら、あんた今起きたの?」
「ん?ああ、言ったろう少し寝ると」
「・・・少し?まあいいわ、それよりあんたお腹減った?」
「ああ、昼も食べずに寝たからな」
「そう、じゃあここにあんたの分も運ぶようにメイドにお願いしましょ」
そんな話をしていたら、ドアがノックされた。
始めは誰が来たのかと思ったが、ノックの仕方が独特ですぐに誰が来たのか分かって、急いでドアを開けた。
「こんばんはルイズ」
そこに立っていたのは、アンリエッタであった。
ルイズは一瞬固まったが、他の誰かに見られてはいけないと思い急いで中に招き入れた。
「ひ、姫様なぜこのような所に!?」
「静かに・・・誰の目があるかわかりませぬから」
そして、部屋を見渡し何もない事を確かめ息を静かに吐いた。
「ああ、ルイズ会いたかったわ」
「私もです姫様・・・しかしなぜここに?」
「・・・・」
アンリエッタは少し黙り、それからゆっくり言葉を吐き出した。
「ルイズ、あなたにお願いがあってきました」
「お願いと言いますと?」
「あなたに、アルビオンに行ってとある手紙を持ち帰ってほしいのです」
「アルビオンに・・・?しかし今あそこは内乱の最中で・・・」
763 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:35:44.19 ID:IrnkJluJ
「ええ、ですからお願いしいているのです」
「え?」
「ルイズ、私・・・今度ゲルマニアの王と結婚しないといけないの」
「そうなのですか・・・しかし、それと何の関係が?」
「実は、取り戻してほしい手紙と言うのは、私がアルビオンの皇太子に宛てた恋文なのです」
「!?」
「驚くのも無理はないですね。ですが、その手紙がゲルマニアに気が付かれるとこの婚約は破綻してしまうのですよ。そうなってしまっては、国力が落ちたこの国が他国の侵攻を食い止めることは無理でしょう」
「・・・話はわかりましたが、しかしなぜ私なのですか?」
「あなた以外に私は心の許せる友はおりませぬ、そしてそれを城の者にバレるわけにはいかない・・・そこであなたにお願いをしに来たのですよ」
ルイズは、あまりの話に愕然としていた。
そして、それと同時にアンリエッタに・・・友に頼られた事がそれ以上に嬉しかった。
だからこう答えようとしたのだ。
「お任せください姫様!このわt、痛!」
最後まで言おうとしたところで何者かに頭をはたかれた。
「つ〜、ラハール!あんた何するのよ!?」
「オレ様に断わりもなく何を引き受けようとしておるのだ?」
「あんたは私の使い魔でしょ!それにあんただって私に断わりなく聖剣杯に出たじゃない!!」
「それがどうした。それ以上に気に食わんのは貴様だ!」
「え?私ですか?」
ルイズとは話は無いとばかりに、アンリエッタに指を突きつける。
「お前は言ったな?こいつは友達だと?」
「ええ、ルイズは私のお友達です」
「だったら何故自分のやった事を、こいつにやらせようとする?そして危険とわかっている所になぜ行かせようとする?」
「それは・・・!?」
「お前は国と友を天秤に掛けて、お前は国を取ったと言う事だろう?」
「違う!!私はルイズならとってきてくれると信じて!!」
「こいつが取って来てくれる事を信じている?何を根拠に言っておるのだ?こいつは魔法なんてものは使えないのだぞ?それを知っていて信じている?笑わせるな!」
「・・・」
「まあ、国と友、どっちを取ればいいか簡単だったな。普通なら国を取るだろうな」
「・・・・・ます」
「なんだと?」
「違います!」
「何が違うのだ?お前は国の方を取った。そして自分の尻を自分でふかず、人にふかせに行かせるのだろう?」
「国も友も!どっちも取ろうとした結果がこれなのです!あなたに何がわかると言うのですか!?上に立つ者の責任と言うものが!?」
「上に立つ者?笑わせるな、一国の姫程度が魔王であるこのオレ様に上の立つ者と言ったか?面白い事を言うものだな」
「ま、魔王?」
「ば、馬鹿あんた!?あんた何言ってるのよ!」
「お前は黙っていろ!それで?上に立つ者だからなんだと言うのだ?」
「・・・どっちかを取ったら、どっちもダメになる・・・だから国も友も取るにはこの選択しかなかったのです」
「姫様・・・」
「ですが、これだけは信じてください!私は国を救うためにルイズを捨てたわけではないと言う事を!」
「・・・らしいぞ、後はお前良く考えてから決めろ」
「え?ラハール?」
764 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:36:10.49 ID:IrnkJluJ
「お前さっき良く考えずにOKと答えようとしただろ?」
「そ、そんなわけないじゃない・・・」
「本当か〜?」
「本当よ!・・・でもあんたはいいの?」
「いいとは?」
「嫌なんじゃないの?」
「何故だ?どうせ聖剣杯が終わったらまた暇になるからな、いい暇つぶしにはなるだろう」
「それじゃあいいのね?」
「何度も言わせるな」
「それでは姫様、その頼みつつしんでお受けします。ですが出発は3日後でいいですか?」
「ええ、私もそれぐらいに出発してもらおうと思っていたので・・・でも、あなたはすごい使い魔を持ったのね」
「姫様、ラハールが魔王だと言う事は内密にしていただければ嬉しいのですが・・・・」
「当然よ、私があなたから何か奪う訳ないじゃない」
「いや、結構あった気がするのですが・・・」
「細かい事を気にしてはダメよ」
「はあ・・・」
そこから、昔話が始まったので、ラハールは聞いていられないとばかりに、静かに窓から飛び立ち、マルトーの所に食事でもしに行くことにした。
765 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 17:39:06.13 ID:IrnkJluJ
以上で今回は終わりです。
何かgdgdな感じになった気がしないでもないですが・・・
そして支援してくれた方と前回の分をまとめwikiに乗せてくださった方ありがとうございます
更新は遅いかもしれませんが
待ってくれる人がいる限り上げていきたいと思うのでこれからもよろしくお願いします
投下乙です〜
ちょうど読み返してたら
続編が投下されてた
乙
バールアームズの猫糞に失敗し過ぎた所為か
ラハールのハールすらバールに見えてくる・・・
正攻法でプリニガー狩りするべきかなぁ・・・8体は厳しすぎるよぉ・・・
それはおいとき、ラハールってシリーズで一番人望無いような・・・
脳内ランキングイメージしてたらラハールの右に2歳の娘に下克上食らった魔帝出てきましたよ
(基本的に田舎の一般人なアデルは例外として)
後に続いた理事長と閣下が悪魔にしては人望があり過ぎるのか、どうなのか・・・
768 :
ゼロと魔王:2011/08/18(木) 19:34:17.13 ID:IrnkJluJ
>>767 ラハールに悪望が無いのはいつもの事じゃないか
あと3・4の主人公は普通に悪望も人望もあると思う
あ、やっべ・・・
何してるんだろ俺・・・
間が空いてしまったが、続きを書こうと思ったらPCにオフィスが入っていないという問題に直面した
メモ帳に書いても良いのよ?
ワードパッドでもいいんだよ?
ってーか、このスレは基本コピペ投下なんだから、文章を記録できるなら何でもいいと思うんだが
(´д`)Editでググッたら幸せになれると思う
>>767 下手すればアデルより無いんじゃないかな。人望
ゼロと魔王の方、乙でした。
>>752 ハックルボーン神父みたいにパンとワインと信仰のみで3年くらい過ごせば
血筋とか関係無しに凄いことになるよ?
殿下の人望は無かったかもしれんが
何だかんだで個性的で頼もしい仲間
…もとい家来はいたんだよな
…ゴードン一行とか、終盤のカーチスとか
>>771 メモ帳でワードファイルを開けたっけか?
最近は、MSNからとりあえずオフィスを開けるよ。
>>777 続きを書こうってそういう意味だったか…
てっきり「前話の続きの話を書き始める」のだと思った
>>777 MS-Wordのファイルを開きたいってことか
MicrosoftがWord Viewerってのを配布してるぞ
あるいはこの際OOoなんてどうだ?
781 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/18(木) 22:11:55.19 ID:9iR0BIe2
ゼルダの使い魔たちの最新話はまとめサイトにUPしないのですか?
ユーやっちゃいなYOU!
俺? 読んでない作品なんて登録しないよ☆
死神さんに引っぺがされるアルカードさんェ・・・
現代日本で『有角』なんてまんまな偽名使ってた、アドリアン・ファーレンハイト・ツェペシュさん乙
>>785 吸血鬼の弱点の一つに「名前に縛られる」と言ったものがあって凝った偽名が使えないらしいと聞いた
>>783 毒ガスとヴァルマンウェがチートなあの人?か
ニンニクに弱いって弱点ももっと使われればいいのに
タバサをうまく捕らえるものの夕食がギョーザだったためにニンニク臭くて血を吸えないエルザ
もう少し歴史の流れが違ったらニンニク爆撃受けるはめになってたブラドー島を思い出した。
確かに費用対効果的にはいいけどなんか色々駄目だよなwww
ブラドーって性格はアレだけど、顔は超がつくぐらいのイケメンなんだよな
性格はアレだけど
ゼロ魔の吸血鬼ってニンニク嫌いな設定だっけ?
>>767 元のバールアームズを300まで上げれば怒ッキングデスコ(+カーチス)で余裕じゃないか
GSのノリで任務をこなすタバサのSSとかすごく読んでみたいです
任務と言えば、ヒイロ・ユイをタバサに召喚させて
無口コンビ結成とかおもs・・・あれ?
ただ黙ってるだけじゃね?
>>790 文明レベルが13世紀と、ある意味ゼロ魔世界以下のアホだがな
劇場版に登場したノスフェラトは極悪無比だったが
>>792 つまりジョゼフかイザベラがYOKOSIMAを召喚とな。
どっちでも面白そうだなw
そーいえば、ココじゃないけどGSキャラを召喚したルイズの話があったな
鎌田勘九朗だったけど
文珠横島は万能過ぎて使いづらいからな
それ以前に、横島召喚だとほぼ間違いなくYOKOSHIMAになるから困る
GSからなら別のキャラの方がいい
じゃあテレサで
なんかここ最近の吸血鬼に関するレスを見るとハルケの吸血鬼が弱く感じるから不思議だ。
やはりあくまで話の主流じゃなくて一要素に過ぎないからか。
ハルケの吸血鬼は人に紛れてコソコソ血を吸うタイプだからね
あとはカリンちゃんに出てきた双子吸血鬼みたいにエロ特化してるか
どっちにしろもともと戦闘向けではないのかも
ブリミル以来6000年間で本当にヤバいのは駆除されているんじゃないか。
メイジがいちばんヤバいんじゃないかな。他作品キャスターと比べても
影技のスカーフェイスとかだったら
対メイジだろうが余裕で勝てるだろうな
スカーフェイスってルイズがマッスルミレニアムで倒せばいいのか?
O型の女性ばかりが突如失踪する事件がトリスタニアで連続して発生
しかしそもそもハルケギニアに血液型の概念ってあるかな?
輸血するシーンはなかったから無くても問題はなかろうな
どんな怪我も病気も、水の秘薬と水魔法で完治できるとかいうよねメイジの奴らは。
Vol.8を代理投下します。
「アドレナリン」。これは人間が恐怖やストレスに襲われた際に、副腎より分泌されるホルモンである。
このホルモンは身体にある影響をもたらす。別名「闘争のホルモン」。
ストレッサー(敵)を回避・打破するための物質である。
分泌量は各人によって異なる。
そして……、敵の打破に成功すればそれは「勝利」である。ある者がもしその勝利に快感を覚える事があるならば、「その快感を再び味わいたい」と考えたとしても不思議ではない。
新たなストレッサーを求める事になる。続けていく事になる。生殺与奪のゲームを……。
10年前、とあるエルフの集落。
「ひったくりだーっ!!」
雪の降る集落に男の声が響いた。
「誰かあのガキを捕まえてくれーっ!! 鞄と買い物袋を盗まれたあーっ!!」
拳を振り上げて走るエルフの男の前方には、鞄と袋を両手に持って全力疾走するエルフの少女の姿があった。
それからしばらくして、男を撒いた少女は石段に腰掛けて戦利品である袋を物色していた。
「………」
中から出てきた1つの箱を見て少女の手が止まる。
その箱に入っていたのは、父親・母親を模った男女1組の人形だった。
しばらくその箱を眺めていた少女に、
「お前だろう……、ここら一帯で盗みを働いてるのは。何を手に入れたんだい」
ぼろぼろの服を着たエルフの老婆がそう声をかけてきた。
「!!」
「ここらはあたしの縄張りなんだ! 浮浪者には浮浪者の仁義ってもんがあるさあね。あるんだろう、酒や財布が? よこしな!」
少女は立ち上がると鞄・袋を手に老婆を睨みつける。
「……あたしは浮浪者じゃない。あんたと一緒にしないでくれる」
「はっ、あんたに家があるってのかい!! 心安らぐ家が!!」
「あ……、あるっ!!」
「じゃあなぜ盗むんだい。親に買ってもらえばいいだろう」
「………!! うるさいっ!!」
――ゴン
苛立ちに任せて少女は老婆に投石、怯んだ隙を突いてその場から逃走する。
「!! このガキ……。お待ちーっ!!」
走り去る少女の背中に対し、老婆は嘲笑混じりに大声を張り上げる。
「その年で他人の物を盗むようなガキは、先が知れてるよお〜っ!! あたしにゃわかるんだ!! 明るい未来なんてありゃしない!! まともな将来なんてありゃしない!! あたしと同様、ゴミ溜めがお似合いの人生さーっ!! あっはっはっは!!」
老婆の嘲笑から逃げるように、少女は必死になって家路を急いだのだった。
住宅街の中に建つ一軒家。
少女はそっと扉を開けてその中に入る。
(あの男が……、呑みすぎでくたばってますように……)
そう考えていた少女だったが、ゴミの散乱した室内にはまったく人の気配が無い。
(いない……)
ひとつ溜め息を吐いて少女は自室に向かった。
袋に入っていた果物を食べつつ、少女は「遠見の鏡」に映し出されている画像に見入っていた。
『東方では数多くの神話が言い伝えられておるのじゃ。今日はそのいくつかを探ってみるというのはどうかな、オセーテ君』
『うん、博士! おせーて! おせーて!』
『まずは東方神話の最高神・テュリュークじゃ!! 戦争と死の神といわれておる! 愛馬の脚は8本あるそうじゃよ! まるでタコじゃのう』
──ミシッ……
「!!」
突然の足音に気付いて、少女はそれが聞こえてきた方向に振り返る。
「えうっ、お前……、何持って帰ってきたあ……。そのベッドに置いてある玩具は何だ?」
部屋に頭髪の薄くなった男が酒瓶片手に入り込んできて、少女に因縁をつけてきた。
「酒はどうしたあ、酒は……。てめー、あれほど酒屋から出てきた奴から盗めって教えたのに、俺の話を聞いてなかったのか」
「今日は酒屋が閉まってて……」
「じゃあ隣町にでも行ってこい!! 子供なら捕まっても平気だろうが!!」
少女の言葉に耳を傾けようともせず、男は少女に平手打ちをくらわせる。
「あうっ!」
「くそっ……、俺はついてねー男だぜ。あー、喧嘩で工房を辞めてさえなけりゃあなー。10年もあそこで頑張ってたのによー」
酒瓶の中身を口に流し込みつつ身勝手なぼやきを漏らす男。
そんな男の様子を見ていた少女が、かすかな声で何事か呟いた。
「ああ? でかい声で喋れ」
「母さんが家を捨てる前にこぼしてたよ。父さんが勤めてたあの工房は馬鹿しか雇わない所なんだ。下手に賢いやつを入れたら、組合を作られたり訴えられたりするから……」
「……!!」
娘の初めての反抗の言葉だった。本来なら子が親に向かって口にしていい言葉ではない。
しかしそれは親が懸命に働いて子を養っているのが前提である。この娘の場合、その役目は出ていった母親が担っていた。
この男は自分が得た金は全て自分のためだけに使っていた。
「きゃああああ!!」
突然男に襲いかかられ、少女は悲鳴を上げる以外不可能だった。
「ん〜!! んん〜っ!!」
少女は下着だけを残して服を剥ぎ取られ、腕はベッドの枠に拘束されさるぐつわをかけられていた。
「馬鹿にしやがって……!! 俺を怒らせるとどうなるか、体で教え込んでやらあ……!!」
『テュリュークは他の神と敵対したりもしておったんじゃがの。でもテュリュークには強力な女戦士がおったんじゃよ』
少女は必死になって抵抗しながらも、「遠見の鏡」から流れてくる音声をやけに冷静に聞いている自分に気付いた。
男は少女にのしかかり、彼女の首筋を無造作に舐め始めた。
「ん゙ 〜っ!!」
アドレナリンは身体能力にある影響をもたらす。
心拍数アップ・心筋収縮力アップ・痛覚ダウン……。
「!!」
乱暴に下着を引きちぎられて、かすかに膨らんだ少女の胸は男の前に露出した。
「こ……、今度よお〜っ!! 写真機盗んでこい、写真機!! お前は綺麗だあ〜っ!! 写真を売れば儲かるぜ〜っ!! 子供のエロ写真は大人のやつより高く売れるんだあ〜っ!!」
支援
支援
──バキバキッ
渾身の力を込めた少女の腕が、腕を拘束していたベッドの枠をへし折った。
──ドス
「うげっ!?」
男の呻き声のような悲鳴が聞こえ、彼を見上げている少女の顔に血の雨が降り注ぐ。
少女の手首に固定されているベッドの枠だった木片が、男の喉笛に深々と突き刺さっていたのだ。
「お……、お前……、ぢょっど待で……。何やっでんだ、お前ば……」
そして……、
「がびばびいいい〜っ!!」
木片を引き抜かれ、男は喉に開いた穴から盛大に鮮血を噴出させて絶命した。
『女戦士の名は「ビダーシャル」じゃ!! たいへん戦好きの女神として語り継がれておる。人間の戦場において、誰が死ぬかを決定する能力を持って折ったそうじゃよ』
「遠見の鏡」には、全身を鎧兜で固め両手剣を手にした女神の姿が映し出されていた。
男の返り血にまみれた状態で、少女は呆然と東方の女神・ビダーシャルの姿を眺めていた。
そして覚醒……。
少女は恐怖の感情を克服した。自らが恐怖を与える存在と化す事で……。
もう一回
スタート地点付近には多数のテーブルが設置され、予選通過者達が用意された酒や料理を楽しんでいた。
テーブルに手を突きグラスを傾けているビダーシャルは、女性スタッフ達に促されて馬車に乗り込む。
「『ビダーシャル』様……、予選通過おめでとうございます。選手のために用意したホテルまで案内致します」
「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦の本選は明後日……。明日はそれに備えて静養していただく予定となっております」
山道を走る馬車の中、ビダーシャルは女性スタッフから本選に関する説明を受けていた。
「それと優秀な成績で予選通過したビダーシャル様には、ぜひとも開会式での選手宣誓のスピーチをお願いし……」
「明日は近くの町に行きたいわ。1日だけのアルバイトがしたい」
女性スタッフの言葉を遮り、ビダーシャルは両親を模った人形を眺めつつ言った。
「……は!?」
「なるべくきついのがいい。私はね……、イライラが欲しいのよ」
「戦いに備えてモチベーションを蓄えたい……という事でしょうか?」
「そうそう。よくわかってるじゃない」
後部座席のビダーシャルを振り返った女性スタッフがビダーシャルの持つ人形に気付き、
「あら人形。どうしてそんな物持ってきて……」
そう尋ねた女性スタッフをビダーシャルは睨みつける。
「余計なお世話よ。あとこれは人形じゃない、家族よ」
ビダーシャルの迫力に、馬車を駆る女性スタッフは威圧されて横目で彼女を見るのみだった。
真六武衆支援
ドラグニティ支援
どこからの代理投下だ?
代理依頼スレや避難所用投稿スレにもそれらしいのはないんだが?
それに投下終了の宣告もない、盛大な釣りか?
よし、ほっとこう。
ではこれより先なにごともなかったように
>>798 じゃあ長島と野村にラグドリアン湖で決闘しつづけてもらおう
幽霊潜水艦の回を参照
長嶋か
戦国時代にタイムスリップした長嶋巨人軍を召喚しよう
巨人小笠原、ハルケギニアに召喚され死亡
え、巨人獣を召喚?
ゼロ魔がファイナルシーズンとしてアニメ化だとさ
これは数年後にリブートして4クールで再アニメ化のフラグだな
というか1クールって短すぎる
どう考えてもジョゼフ死亡、おれたちの戦いはこれからだエンドしか思いつかん
スタッフのアイデアに期待していいものか
835 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/20(土) 17:33:26.16 ID:OdKMkJN8
「僕と契約して魔法少女になってよ!」
QB召喚してしまったら・・・・・・ルイズが磨耗していく様しか想像できない。
魔法少女はソウルジェムの問題さえ何とかなったらいけそうな気がする。
「破壊の杖」のありがたみを台無しにしそうな人もいるけど・・・・・・
無双OROCHIシリーズから魔王・遠呂智召喚
…ゼロ魔世界終わった
>>835 >ソウルジェムの問題
武器扱いとしてガンダールヴで解決するか、マジックアイテム扱いとしてミョズニトニルンで解決するか、が良いかと。
虚無の使い魔としてのルーンがあるとソウルジェムに穢れがたまらず
穢れという精神負荷が、主の精神エネルギーに変わるという、チート設定なら考えた。
ジョゼフがえらいことになりそうだが。
>>835 そんなのスルーして、ルイズとほむほむがラブラブするSSにするか、ルイズをまどかに置き換えるか悩んだ挙句。
やっぱり書かないことに決めた。時間停止ほむでもいいけど、原作終了後ほむもいい。
ほむプラスやりたい。
ただし3人目は泉ピ○子
QBの言う『エントロピー増加の問題』って、異世界(ハルケギニア)が発見されたのなら
そこに全て押し付けてしまえば解決!ってことになりそうなんだけど。
時間ループや最終回の過去改変からして 時間線分岐によるパラレルワールドの発生しない世界みたいだし。
ああ、まどに!まどに!
魔法少女といえば小ネタの正義の雪風 ジャスティス☆シャルロットもタバサがすげーことになってたな
>>843 なんか宇宙の深淵に飲み込まれそうな教授みたいな台詞だな
エントロピーの法則ときたら「百億の昼と千億の夜」が浮かんだ
始祖降臨やロマリアとからめるのも悪くないだろうが、あんなとてつもなく難解な作品をクロスできる人なんていないだろうな
ラストの阿修羅が果ての無い荒野を歩いた末に鏡に・・・まで想像したが
それ以降は無理でした
結局のところ、高次領域の存在が作った反応炉の異常反応が開発者をどうこう出来る事態じゃ無かったってオチだよな
絡めた瞬間からハルケギニアも逃れようの無い破滅に・・・
エターナルの人まだー?
ファフナーのフェストゥムを召喚して異星間コミュニケーションを
メイジやエルフより 精霊や韻竜とコンタクトした方が、すんなりと分かり合えるかも。
ゼロの氷竜の続きはまだかしら
リウイ一味を召喚するのも良いな
ん?復活希望のssを語る流れか
だったら五月蠅いゼロの五月蠅くない使い魔の続きを希望
イザベラ管理人とか続きを読みてえ
こんにちは。
なんとか賞味期限前(謎)に投下できそうになりました。
進路クリアなら15:45ごろより第50話の投下を行います。
支援します。4期できるそうだけどゼロ戦やタイガーはどうなるんでしょうねえ。
それではいきます。
抜けるような青空の中を飛ぶ二機の『竜の羽衣』。
だが、別れの時は近づいてきていた。
『さて、私はここまでね』
複座零戦よりも航続距離の短い震電に乗るマミからの通信。
魔法学院までの道のりの三分の二というところだが、巡航速度ではない
速度でシエスタたちの乗る複座零戦に平行し、帰投する燃料を考えると
ぎりぎりまで一緒にいてくれたことに、シエスタは感謝した。
「うん。しばらく会えなくなるけど、マミも元気でね」
かつて『キョウリュウ』との戦いの時はタルブから国境まで往復して
空戦までできたと言うが――いやそれ以前にサハラの『聖地』から
タルブまで無給油で飛んでこれた震電だが、今はそのときではないのか、
計算通りの燃料消費で燃料計の針が動いていく。
ろくに着陸できるところもない広い太平洋で行動する艦上戦闘機として
開発された零戦がベースの複座零戦とは異なり、震電は元々飛来する
B-29などの超重爆撃機を撃墜する高高度迎撃用の局地戦闘機だ。
それに、自分は魔法学院まで行くわけにはいかない。マミは機首を返す
前に、もう一度『日本語』で通信を入れる。
『シエスタ』
「……何?どうしたの?」
発音の違いからマミが日本語で通信してきたのは即座に理解した
シエスタだったが、ルイズの手前一瞬そのまま応えるか迷った。
寸時ルイズを振り返り、意を決して日本語で応じる。
『……もし私が死んじゃったら、この子、あなたに任せたいの』
「それはできないよ」
『シエスタ?』
レシーバーの向こう側の幼なじみの顔を思い浮かべながら、シエスタは
即答する。
幼なじみは軍人になった。だから、いつ戦死してもおかしくないから
自分にそう託そうとした――それは理解できていても、もうみんなで
蒼空に舞ったあの日に戻れなくても、シエスタにはそれだけは譲れないと
思えた。
「キョウコも、サヤカも、いなくなっちゃって……。
それなのに、そんなこと言わないでよ」
「…………」
その通信を聞きながら、ルイズは一人考える。言っていることは
ほとんど分からない。断片的に固有名詞がそれらしく聞こえるだけ。
理解できるはずのふがくが口を挟まないことからも、二人の私的な内容
なのだろう。それでも、シエスタの口調から、悲しみの感情が感じられるのは
間違ってはいないと思う。それが改めてルイズに彼女たちの遠い故郷との
距離を感じさせた。
sien
シエスタとマミの通信が途絶えたのはほんのわずかな時間。
だが、それは今まで感じたこともないほど長い時間だったとシエスタは
感じた。その沈黙を破ったのは、マミの方だ。
『……ゴメンね。さっきのことは忘れて』
「わたしこそゴメン。
死なないで、なんて言えないけど、マミのことを大切に思っている人が
いることは忘れないで欲しいな」
『そうね。私、独りじゃないんだよね』
「うん。あかぎおばあちゃんも戻ってきたことだし、ジェシカも呼んで、
またみんなでパーティしようよ。昔みたいに」
『ええ。二人欠けてるのが残念だけど、それもいいわね』
マミはそう言うと、日本語での会話を止めてガリア語に切り替える。
『失礼致しました。ミス・ヴァリエール。
タルブ義勇軍マミ、燃料の限界のため護衛任務を終了、帰投します。
残りの飛行の安寧をお祈り致します』
「え、ええ。ありがとう」
トリステイン王国銃士隊って名乗らないんだ――そう思ったルイズ
だったが、たぶんこの『竜の羽衣』に乗っているときはそうなんだろうと
納得する。そこにふがくからの通信が入る。
『ルイズに合わせたから大変だったでしょ?でも、ここまで送って
もらえたらもう大丈夫よ』
『ふふっ。そんなことはないですよ。ふがくさんもお元気で』
『何かあったらすぐに呼んでよね。ぱぱっと駆けつけてあげるから!』
「この距離でどうやるのよ……」
思わずつぶやいたルイズだが、よく考えると『竜の羽衣』同士の会話でも
魔法は使っていない。大日本帝国の技術力ならそれくらい簡単なこと
なのだろうと思い直した。
『それではみなさん、お元気で!』
軍人らしい口調でマミはそう言うと、機首を返して巡航速度に上げた。
反対方向に飛ぶことになりぐんぐんその姿を小さくする震電。
その姿が完全に見えなくなってしばらく飛ぶと、視界の先に魔法学院の
塔が見えてきた。
「……何か、ずいぶん長い間タルブにいた気がするわね」
アルビオンから戻ったときと同じような懐かしさを感じたルイズは、
思わずそう口にした。
魔法学院の外壁の外、ルイズがふがくを召喚した草原に複座零戦を
降ろしたシエスタ。それを見た教師たちが押っ取り刀で駆けつけるが、
そこにいたのがルイズとふがく、それにシエスタだったため、教師たちの
困惑はより大きなものとなる。
「……説明してもらえるかね?ミス・ヴァリエール」
「えっと、これは……」
先頭に立つギトーはそう言ってルイズに促す。その横で、複座零戦の
胴体から荷物を降ろしたシエスタが、その中から一通の手紙を取り出した。
見慣れぬ服装のシエスタに教師たちは怪訝な顔をしたが、彼女の口から
出た言葉でさらに目を見開くことになる。
「わたしの曾祖母、あかぎから学院長さまに宛てた手紙です。
この『竜の羽衣』はタルブ義勇軍に所属しており、総司令官あかぎが
許可した人間以外、手を触れることは許可できません。
学院長さまにお取り次ぎ願います」
ふがくを複座零戦に残し、ルイズとシエスタはギトーに案内されて
学院長室へと向かう。機体の保全の必要があり、誰かがここに残る必要が
あったためだ。
「……しっかしおでれーた」
「そう?私は頑張るわねと思っただけだけど」
思わず漏らすデルフリンガーに、ふがくはそう言った。
ギトーに正面から宣言したシエスタだったが、その足がわずかに震えて
いたのに気づいたのは、ふがくと、普段から生徒や職員をよく見ている
シュヴルーズだけだ。それを見ているから、ふがくはシエスタの覚悟を
見守ろうと思った。
(あかぎと佐々木少尉に桃山飛曹長……、ううん、それだけじゃない。
あの子の周りにいた帝国海軍とドイツ第三帝国空軍(ルフトヴァッフェ)の
軍人たちの薫陶を受けたってところかしらね)
ふがくは誰言うとなくそうつぶやくと、視線を本塔に向けた。運命の
歯車が一つ狂っていれば、ただのメイドとして一生を終えたはずの少女の
健闘を願って。
学院長室へと案内されたルイズとシエスタ。ギトーは二人を案内すると
部屋を辞する。マチルダ――いや、ここではロングビルだ――も、自分の
仕事をしながら意識を僅かに向けるだけ。そんな雰囲気の中で、オスマンは
あかぎからの手紙を読んだ。
「……なるほど。ミセス・あかぎはきみをタルブ義勇軍の一員として、
本来ならばタルブの村に常駐させるべきところを、ミス・ヴァリエールの
メイドでもあるということで、彼女の護衛を兼ねてここトリステイン
魔法学院に進駐させたい……か。
あのばーさん、やはり死んではおらんかったか」
「あ、あの……オールド・オスマン……?」
手紙を読んで目を細めるオスマンに、ルイズがおずおずと言葉をかける。
シエスタは、まっすぐにオスマンを見て微動だにしない。
「ミス・ヴァリエール。これは重大な事態じゃ。
きみの専属メイドであるシエスタは、取り扱いを一つ間違えばこの国を
滅ぼしてしまえる力を解放した。彼女が、いや『竜の羽衣』がここに
ある限り、この国を攻めようとするものはタルブの村だけでなく、
この魔法学院をも狙ってくるじゃろう。
……いや、きみの持てる力は、今やその気になればこの国を乗っ取れると
言える。トリステイン王国の陸海空軍のすべてをもってしても、
ミス・ふがくとシエスタを止めることはできまい」
オスマンは重厚な机に手を組むと、ルイズを見る。今までに見たこともない、
射貫くような視線。ルイズは思わずつばを飲み込んだ。
そんなルイズに視線を向けたまま、オスマンはマチルダに告げる。
「ミス・ロングビル。ミス・ふがくをここに呼んできてくれまいか。
ああ、『竜の羽衣』のことは心配する必要はない。ミス・ロングビルと、
ミセス・シュヴルーズに監視をお願いすることにする。
ミス・ロングビル、ミス・ふがくをこちらに呼んだ後は、
ミセス・シュヴルーズと二人で『竜の羽衣』を見張っておくように。
言うまでもないが、『竜の羽衣』に傷一つつければ、この国を滅ぼすことに
なると心するように。君とて五千七百万リーブルの巨艦に匹敵する
鋼の女王を敵に回したくはあるまい?」
オスマンはそう言ってマチルダにふがくを呼びに行かせた。すれ違いざま、
ルイズが「冗談じゃない」という言葉を聞いたような気がしたが
、それを確かめることはできなかった。
それからしばしの間を置いて、ふがくが学院長室に現れた。
彼女のそばには誰もいない。マチルダは本当にふがくに学院長室に
向かうように告げた後、『竜の羽衣』のそばにいるらしかった――
一方。ふがくに学院長室に向かうよう、オスマンからの伝言を伝えた
マチルダは、途中で合流したミセス・シュヴルーズとともに『竜の羽衣』、
複座零戦を見上げた。
「……本当に飛ぶものだったなんて。私にはとても信じられません」
シュヴルーズの手前、営業用の口調で話すマチルダ。その横に立つ
シュヴルーズは、複座零戦を感慨深げに見上げる。
「私も、兄から聞いたことはありましたけれど、実際に目にするのは
初めてです。こんなに美しいものだったのですね」
「ミセス・シュヴルーズのお兄さま、ですか?」
マチルダの問いに、シュヴルーズは昔を思い出すかのような優しい
表情になる。
「一番上の兄が、あの『キョウリュウ』との戦いの時に『レドウタブール』号に
乗艦していました。
あの戦いの後、兄も『キョウリュウ』の毒に倒れましたが、その直前に、
毒に苦しんでいるはずなのにとても嬉しそうな顔で言った言葉を今でも
覚えています。
『秘密だが、この国には、ものすごい守護天使たちがいるんだ』と」
「守護天使……ですか」
マチルダはそう言って複座零戦を見る。ハルケギニアの常識では
とても飛ぶとは思えない、濃緑色を基調とした華奢な金属のゴーレム。
その姿は確かに美しいが、どちらかと言えば量産された武器というより
職人が生み出したワンメイクの工芸品にも思える。その翼と胴体にある、
白で縁取られた深紅の紋章は、なるほど、ふがくと同じ太陽の紋章だ。
そして、翼から突き出た、穴が開けられた鉄の筒は、裏稼業で鳴らした
マチルダには、確かにあまり近づきたいとは思わない剣呑さを湛えて
いるように見えた。
マチルダは本塔を見上げる。その視線の先には――この『竜の羽衣』を
駆る少女と、その主がいる。
(さて、賽の目はどう出るかねぇ……)
つぶやいたその言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。
「……それで?私まで呼んだ理由は何?」
開口一番。ふがくはオスマンにそう言った。
オスマンは机に手を組んだまま、三人を見る。
「なに。手間は取らせんよ。
さて、ミス・ふがく。仮に、仮にじゃが、ミス・ヴァリエールがきみと
シエスタに『敵を殲滅せよ』と命じた場合、それを実行に移すかね?」
オスマンの言葉に、ふがくは、はぁ?という顔をした。
「質問の意味が分からないわね。
でも、ルイズがそう命じた場合、実行するかどうかは内容次第ね。
ニューカッスルでもそうだったし」
ニューカッスルという言葉を聞いて、ルイズがびくっと肩を振るわせる。
それを見て、オスマンは、ほおと頷いた。
「……ニューカッスルの噂は、ワシの耳にも届いておるよ。王党派も、
貴族派も、どちらも壊滅するほど多くの犠牲を出した凄惨な戦いじゃったとな。
あれは……そういうことじゃったのか……」
そう口にしたオスマンのルイズを見る視線が変わる。先程までの厳しさは
消え失せ、己の過ちから立ち直ろうとする生徒を陰から支える教育者のそれに。
「ルイズさま……」
オスマンのその視線に耐えられずうつむいたルイズに、ニューカッスルの
戦いには参加していなかったシエスタが言葉をかけた。それで奮い立ったのか、
ルイズは涙をぬぐいまっすぐ顔を上げると、再びオスマンに向き合う。
「……失礼、致しました。オールド・オスマン」
「うむ。では、質問を変えよう。ミス・ヴァリエール。きみは、きみが
手にしたこの力を、再び使おうと思うかね?」
「それが必要であるならば、使いたいと思います。杖も、使うべきところで
使わなければ、ただの飾りだと思います」
まっすぐに言葉を口にするルイズ。その凛とした姿に迷いはない。
ふがくも、そしてシエスタも、安心したようにオスマンと向かい合った。
「私は鋼の乙女、すなわち兵器よ。だから司令官の命令には基本的には
従うけれど、それが間違ったものであるならば遠慮なく違うって言うわ」
「わ、私も、私に空を飛ぶことを教えてくれた曾祖父とモモ隊長の教えを
無にすることはしません!
それに、最初に『竜の羽衣』に乗り込むとき、あかぎおばあちゃんが
言っていました。この力は、私が守りたいものを守るための力だって。
だから、私も、その言葉に従おうと思います!」
「ふがく……シエスタ……」
ルイズは、自分の両隣に立つ二人を交互に見やった。
大丈夫。もう間違えたりはしない。そんな思いを胸にするルイズに、
二人は微笑んで見せた。
「……どうやらワシの取り越し苦労のようじゃな。
よろしい。今のきみならば、かつての『欠地王』や『第四列の男』の
ようなことにはなるまい」
「なにそれ?」
得心するオスマンの言葉にふがくが首をかしげる。それに答えたのは
ルイズだ。
「『欠地王』はね、千年前のアルビオン王ジョン一世のことよ。
アルビオン随一の愚王として名を残してるわね。
けれど、この王さまよりも、妹の『白銀の姫騎士』バージニア姫さまの方が
有名かしらね。火のラインとあまり魔法は得意ではなかったそうだけど、
お付きの動物とも心を通わせたとも言われている心優しき竜騎士
リチャードを連れてたった二人で植民島に取り残された平民を助けるために
ガリア軍と対峙して、そのときに彼女の起こした奇跡――ヴァルハラから
戦乙女(ワルキューレ)の軍勢を呼び出してガリア軍が恐れおののき撤退
したってものだったそうだけど――は今も歌劇として演じ続けられているわ。
トリステイン王国王立歌劇団の人気演目よ。
でも、その奇跡の代償からか、姫が一七歳の誕生日の日に忽然と姿を
消してしまってからジョン一世は狂ってしまったわ。ガリアとの無理な
戦争をして、結果、そのときまで保有していた植民島――今はトリステイン
王国やガリア王国に編入されているわね――をすべて失い、アルビオン
王国の領土はあの浮遊大陸だけになってしまったの。『欠地王』って
二つ名はその愚行に対して送られたものよ」
「へえ。そうなんだ」
「で、『第四列の男』ってのはぁ……これ、トリステイン王国歴史上
最っ大の恥部と名高い宰相テューブのこと。
三十年前に宰相エスターシュ大公が謀反を起こして減封されて蟄居を
命じられた後、リシュリュー枢機卿って人が宰相に就いたんだけど、
この人も十五年前に謀反の咎で死罪になったの。で、その後任が、当時の
ヘンリー一世陛下と懇意にしていた政事結社『民主党』(デモクレーツ)の
代表だったゲルマニア出身の『異邦人』ことタウベ伯爵。だけどコイツ
とんでもないペテン師で、最後にはアルビオンの俗語で『バカ』って
意味の『ルーピー』なんて呼ばれたわ。
さらに最悪だったのが、タウベの後釜の『第四列の男』ことテューブ伯爵。
とんでもないウソツキよ。こいつらの在任二年間で、トリステインは
アルビオンとの関係が戦争直前まで悪くなったし国としての信用も
損なわれたし浪費も浪費で国力が半分になったわ。ヘンリー一世陛下の
唯一の善行が、こいつらの爵位剥奪して国外追放して『民主党』を
非合法組織にしたことくらいだって言われるくらい。
だから、その後にロマリアから招かれたマザリーニ枢機卿が宰相に
就いてから大変な苦労をしてアルビオンとの関係修復したりこの国を
立て直そうとしたの。本当に関係修復されたのは、三年前にラグドリアン湖の
ほとりで催された園遊会でのことだったくらい。
でも、その後ヘンリー一世陛下が崩御なされて……それからマリアンヌ
太后陛下が喪に服されて、アンリエッタ姫殿下も大変な苦労をされているわ。
そこからは、言わなくても分かるわよね」
ルイズはそう言ってふがくに促した。確かに、そこから先は言われるまでもない。
ふがくが納得したように頷くと、オスマンがルイズを褒めた。
「さすが、座学学年トップの成績は伊達ではないの。ミス・ヴァリエール」
「あ、ありがとうございます」
「うむ。強すぎる力は災いを招く。扱う人間に知恵がなければなおさらじゃ。
努々気をつけることじゃ。
それに、後回しになってしまったが、ワシはきみに謝らなければならん」
オスマンはそう言うと立ち上がり、ルイズに深々と頭を下げた。
「きみの系統を察することすらできず、教師一同不当な扱いをしたことを
深くお詫びする。本当につらい目に遭わせてしまった。申し訳ない」
「オ、オールド・オスマン!?あ、頭を上げてください」
オスマンが自分より低いくらいに頭を下げたことに、ルイズは動揺した。
その言葉に、オスマンは面を上げる。
「あ、あの……オールド・オスマン。わたしが……その、『虚無』だって
ことに?」
ルイズの問いかけに、オスマンは首肯した。
「そうかもしれぬ、と思ったのは、ミス・ふがくがミスタ・グラモンと
決闘をしたときじゃった。『ガンダールヴ』の力の一端を見て、な。
確信を持ったのは、きみに『始祖の祈祷書』を手渡したとき――
気づいておったかね?きみが自室で『始祖の祈祷書』に触れたとき、
途方もない魔力があふれ出した。系統が系統のため、そうと知らねば、
気づくこともないことじゃったがの」
ルイズは、『水のルビー』を鍵として『始祖の祈祷書』の封印を解いた
ときのことを思い出す。あのときにそんなことがあったとは、ルイズ
自身気づいていなかった。
「ワシが『虚無』を知っておることが不思議なようじゃの。
三十年前、ワシはフィリップ三世陛下より、『虚無』を捜すよう命じられた。
あのような悲劇を二度と起こさぬようにな。
だから、ワシは『虚無』がどのようなものであるかを知るために数多くの
文献、伝承を当たった。そして知った。始祖の末裔たる三王家の血統、
そして、それ以外の『虚無』を」
「それ以外の……『虚無』、ですか?」
ルイズの疑問に、オスマンは頷いた。
「うむ。きみのように始祖の末裔である王家に連なる『虚無』は、
このハルケギニア史上そのものが残されることはないが、そうであると
確証できるようなものが一番多く残っている。しかし、文献、伝承を
当たれば、どう考えてもただの平民が『虚無』であるとしか思えないものも
少なからず存在するのじゃ。
先にきみがその名を出したアルビオン王家の血統である『白銀の姫騎士』
バージニア姫はもちろん、平民であったと伝えられるかの伝説の勇者
イーヴァルディも、ワシは『虚無』であったと思っておる。第一、始祖と、
その末裔のみが『虚無』であるというのであれば、始祖の弟子と伝えられる
ロマリア皇国の初代教皇、聖フォルサテはどうなるかね?」
「あ……」
オスマンの指摘にルイズは思わず声を上げる。オスマンは続けた。
「始祖ブリミルに『虚無』を授けた存在――それは、始祖のみに『虚無』を
授けたのではない、ということじゃ。おそらく、現在に至るまで影から
我々に干渉を続け、今もどこかで『虚無』を生み出しておることじゃろう。
その目的は分からぬがな。
いや、むしろそれが本来の『虚無』の姿であり、きみのような血統による
『虚無』の方が破格の存在なのかもしれぬな」
「…………」
ルイズは言葉も出ない。その肩に、オスマンは優しく手を置いた。
「……これで、ワシはようやく陛下の墓前にご報告ができる。
じゃが、問題は今の学院に『虚無』を教えることができる教師がおらぬ
ことじゃの」
「あ、あの。オールド・オスマン。わたしが『虚無』だってこと、内緒に
してもらえませんか?」
「ルイズはね、ウェールズ皇太子殿下から、それを誰にも話さないよう
厳命されてるわ。その意味が分からない、なんてことはないでしょ?」
ルイズとふがくがそう言うと、オスマンは告げる。
「誰もおおっぴらにするとは一言も言っておらんよ。
本来ならミス・ヴァリエールの名誉を回復するために公言すべきじゃが、
それがどんな結果を招くか分からぬほど耄碌しておらんわ。
ミス・ヴァリエール。きみの系統を正しく使うための手引きとなるのは、
今のところ『始祖の祈祷書』のみじゃろう。ただの白紙のぼろ本が、
『虚無』の魔導書じゃったとは思いもせんかったがの。
ともあれ、それをきみが占有できるよう、ワシの方から手を回してみよう」
「そんなこと、できるんですか?」
ルイズの疑問はもっともだ。何しろ『始祖の祈祷書』はトリステイン
王国の国宝。いくらルイズが王国三指に入る公爵家の令嬢といえども、
おいそれと譲渡できるようなものではない。
だが、オスマンは大仰に頷いて見せた。
「心配はいらんよ。かつてフィリップ三世陛下が『虚無』を捜すために
設立した特務機関、『ゼロ機関』。表向きは『アカデミー』とは別系統の
魔法機械の研究組織として存在しておったが……知っておるかね?」
ルイズはふるふると首を振る。もちろん平民のシエスタも、ハルケギニアに
召喚されたふがくも知るはずもない。
「まぁ、表向きの理由が理由だけに、ヘンリー一世陛下の時代に『民主党』の
連中に解体されたがの。真の存在理由を知ろうともせず、浅薄にな。
それでもワシのように独自に活動を続けた者もおれば、近年再結成して
アンリエッタ姫殿下の許で活動を再開した者もいる。
もっとも、アンリエッタ姫殿下の目的は『虚無』を捜すことではなかったから、
その方向性は昔とは違うようじゃがの。詳しいことは分からん。
しかし、王家に近いところに知り合いがおることには変わりないからの。
彼らに頼んでみようと思う。悪いことにはならんじゃろう」
「あ、ありがとうございます」
「うむ。『竜の羽衣』についても、了解した。ミスタ・コルベールが戻り次第、
彼を担当に当てよう。この学院で、あれが少しでも理解できるのは
彼くらいじゃろう」
オスマンはそう言ってシエスタに視線を向ける。
「それはミスタ・ササキの戦装束じゃな。よう似合っとる。
きみが毎朝メイドにしては激しい訓練をしておったのは知っておったが、
それはすべてこのためか……身分はさすがに変えられんが、きみの身の
安全についても学院でできる限りのことをしよう」
「あ、ありがとうございます!」
シエスタが二つにならんばかりにお辞儀をする。
「うむ。ワシの取り越し苦労じゃったことがよく分かった。退出してよろしい」
その言葉に、三人は学院長室を退出する。誰もいなくなった部屋で、
オスマンは窓の外に見える『竜の羽衣』を見下ろし、言った。
――もっとも、すでに姫殿下はきみらの力を手の内に組み込んでいるかもしれんがの――
その言葉を聞いたのは、使い魔のモートソグニルだけだった。
その頃――アルビオンの工廠都市ロサイス。ここはアルビオン空軍艦隊の
一大拠点であると同時にアルビオンの首都ロンディニウムに一番近い
空の玄関口でもある。
王党派との内戦にも一区切りし、共和制の名の下に復興への道を歩み
始めたこの国だが、王党派の首魁である国王と皇太子をニューカッスル沖の
空戦で乗艦していた戦列艦『イーグル』号ごと撃沈、戦死させたことにより、
テューダー王家とのつながりが深いトリステイン王国からの報復の侵攻の
予感に民の心中は穏やかではない。
そんなやや緊張感を帯びた街並みを、この状況にはあまり似つかわしくない
一行がゆく。多くの子供を連れた奇妙な格好の少女二人――ほとんどの
人間は彼女たちに関心を示さない、いや関わり合いを避けようとしていたが、
その理由は、少女たちの格好に由来していた。
「えっと、この先の『バルハラ』ってお店ですね」
そう言って指さしたのは、貧相な異国の服装の上から腕や脚に鋼の
装甲を身につけた黒髪の少女、チハ。鋼の乙女である彼女は、『聖地』に
召喚されてから迷いに迷ってこのアルビオンにたどり着いていた。
「ええ。スピ……じゃなかった、マイトさんの知り合いのハーマンって
人に会うのよね。どんな人なのかな」
そう答えたのは、母の形見であるフードに飾られた真っ白い羽飾りが
目を引く焦げ茶色の外套を羽織った金髪の少女、ティファニア。
そのこぼれるような美しさと、外套も隠しきれないはち切れんばかりの
スタイルには、無関心を装う男たちも視線を向けざるを得ない。
チハがティファニアのところに転がり込んだのは、二週間ほど前のことだ。
へろへろになって森に迷い込んだチハを、ティファニアが山菜採りの途中で
見つけたのがきっかけで、そのまま厄介になっていた。そんな、同年代の
友達がいなかったティファニアと、怯えた小動物のようなところがある
チハが打ち解けるきっかけになったのは、ティファニアと一緒に暮らす
子供たち。彼らが戦災孤児であると聞いたチハは、あの戦争のことを
思い出し、それがきっかけで急速に打ち解けていった。マチルダが彼女たちが
暮らす隠れ村ウエストウッドを訪れたのも、そんな時期だった。
「ティファねえちゃん、もう疲れたよぉ」
子供たちの一人がそう言ってしゃがみ込む。ティファニアはその子の
目線に合わせるようにしゃがむと、優しく言葉をかけた。
「もう少しだから、ね。ついたらご飯を食べよう。だから、頑張ろう」
「……うん」
「私がおんぶしてあげます」
チハがそう言って子供を背負うと、他の子供たちが騒ぎ出す。
「あー。チハ、私も!」
「ずるいよぉ!僕も!」
「あはは。みんなは頑張ろう。頑張った後のご飯はおいしいですよ!」
チハはそう言って鉄帯の音を響かせ、子供たちとじゃれ合うように先に
進む。ティファニアは、その様子を楽しげに追いかけた。
スピノザが指定した宿、『バルハラ』は、アルビオンの古典的な
ベッド・アンド・ブレックファストだった。それはガリアやトリステインでは
シャンブル・ドット、ゲルマニアではペンションと呼ばれる、朝食付きの
宿を提供する比較的低価格な宿泊施設。ここもその例に漏れず、家族経営の
家を改装して一階をパブ、二階を宿として提供しているところだった。
おそらくティファニアの素性を慮って、目立たないここを指定したのだろう。
「いらっしゃい」
軽やかな音色のカウベルが鳴り響き、カウンターで洗い物をしていた
赤毛の女性が声をかけてくる。二十代中盤というところか、優しい気持ちに
なる声だった。
「あ、あの……マイト・トゥールビヨンという男の人が予約を取って
くれているはずなんですけど。わたし、ティファニア・ウエストウッドです」
ティファニアがおずおずとスピノザの偽名を言うと、カウンターの
女性はああ、という顔をする。
「あなたがウエストウッドさん?こんなに綺麗な子だとは思わなかったわ。
トゥールビヨンさんからお代も全部受け取っているから、ゆっくりして
いってね。
そうそう。『マリー・ガラント』号は今日到着したから、荷物の
積み卸しとかで乗船できるのは明日になるわね」
「あ、ありがとうございます。騒がしくなると思いますけど、よろしく
お願いします」
ティファニアが深々と頭を下げる。カウンターの女性はティファニアに
宿帳にサインするように促し、それからよく使い込まれた青銅の鍵を
二つティファニアに手渡した。
「これがお部屋の鍵よ。こっちが玄関の鍵。夜遅くに外出して、玄関が
閉まっていたら使ってね。
それからお夕飯はどうするの?トゥールビヨンさんはここで食べさせて
あげてくれ、って言っていたけれど」
「あ、えと……お、お願いしても……いいですか?」
普通こういう宿では夕食は外に食べに行くものだが、世情に疎い
ティファニアはそれを知らなかった。しかし、ティファニアの言葉に
女性は快く応じる。それも代金に入っていたのだろう。
そのとき、カウベルの音が響いた。
「ただいまーメリル姉さん。って、お客さん?」
ドアを開けて入ってきたのは、背の高い男女二人組。ティファニアと
年の変わらないまだ少年少女というところか。どちらもハルケギニアでは
珍しい黒髪で、黒い肩を出した工員シャツを着た少年の鍛えられた体と、
ここロサイス工廠で使用されている赤い上下繋ぎの作業服を着た少女の
背中に届く髪にティファニアとチハは思わず見とれた。
「あらゼルちゃんアリサちゃんおかえりなさい。
こちらはトゥールビヨンさんのお知り合いのティファニア・ウエストウッドさんと、ええと」
「あ、チハです」
「チハさんね。お二人が連れている子供たちも一緒に、明日の朝まで
ここに泊まるわ。お客様に失礼のないようにしてね」
ゼルと呼ばれた少年は、それを聞いて口笛を吹いた。
「マイトさんの知り合いか。二人ともすごい美人だ」
「ゼルー。アンタ手が早いよ。でも、本当に綺麗だね。二人ともお人形みたい」
アリサがそう言ってゼルをからかうが、ティファニアとチハを見て
思わず溜息を漏らした。
「そんな。アリサさんもお綺麗ですよ」
「チハさん、だっけ?お世辞でも嬉しいよ。もっとも、あたいみたいな
油くさい女じゃ、そんな言葉、似合わないけどね」
「油くさい……ですか?」
ティファニアが聞くと、アリサは「そうだよ」と答える。
「あたいらロサイス工廠で働いてるからね。いつも鉄と油に囲まれてるのさ」
「それなら私もずっと戦場にいましたから、大して変わらないです」
チハがそう言うと、ゼルもアリサも意外そうな顔をした。
「確かにチハさんが身につけているの、結構物々しい……ってか、
見たこともない装備だけど、どこで戦っていたんだ?」
ゼルの問いかけに、チハは遠くを見るような目をした。
「……ここからずっと遠いところ、です」
夕食の時刻。夜間はパブになる『バルハラ』だが、今日は客足が少ない。
常連らしき数人がカウンターで酒を飲む一方で、ティファニアたちは
テーブル二つを囲んでメリルが運んでくる料理を楽しんでいた。
「はい。どんどん食べてね」
子供たちが大皿が運ばれてくるたびに歓声を上げる。ここロサイス方面の
郷土料理が中心だが、フネが出入りする港町でもあるためか、トリステインや
ガリア風の料理もある。メリルの腕前もあってアルビオンにしてはかなり
マシな食事ができ、外食などしたことがなかった子供たちには大受けだった。
「おいしいです」
ローストビーフにウスターソースに似た味のソースをかけたものを
口に運んだチハが、思わず懐かしさに涙が出そうになる。フィリピンで
鹵獲されてから連合軍として欧州戦線で戦い、それなりにイギリス料理にも
親しんだチハだったが、まるで日本の洋食屋で食べるような味だったのも、
それに拍車をかけた。
「本当。みんなも喜んでるし、スピ……じゃなかった、マイトさんには
感謝しなくちゃ」
アルビオンの伝統的調理法である塩で味付けされただけのあっさりとした
ウサギのシチューを口にしたティファニアも、そう言って柔らかく微笑む。
ハーフエルフの長い耳を隠すために店内にもかかわらず外套を羽織って
いるのだが、誰も気にすることがない。
「ゼルさんたちが『マリー・ガラント』号に連絡してくれる、って
言ってましたけど。どんな人なんでしょうね、ハーマンさんって」
チハは付け合わせのヨークシャー・プディングを食べやすいように
ちぎりながら言う。チハが食べているのは付け合わせの大きなものだが、
別のバスケットに入っているのは中にソーセージが入った、いわゆる
トード・イン・ザ・ホールのため、子供たちに大受けな料理の一つだ。
そんなとき、カウベルが軽やかな音を立てる。扉を開けて入ってきたのは、
女性の二人連れ。片方の背の高い女性は緑色の長い髪を揺らし、体のラインが
分かる黄色い鎧下の上に上質のファーが付いた上着を羽織り、頭に動物の耳が
ついた耳当てをつけている。もう一人の小柄な女性は金髪を少年のように切り、
その格好も平服ながら動きやすさを重視したもの。しかし、その気の配り方は
相方よりもずっと歴戦の戦士のそれだ。そんな奇妙な二人は店内を見回して、
それからまっすぐティファニアたちのテーブルの前にやって来た。
「え?」
近づいてくる二人、いやそのうちの一人の顔を見て、チハは思わず
自身の目を疑った。そんなはずはない。ここはハルケギニア。見知った
人などいないはずなのに。
そんなチハの心情など知らず、二人の女性はティファニアの前に立つと、
背の高い女性がティファニアに声をかけた。
「……お食事中に失礼いたします。ティファニア・ウエストウッドさまですか?」
「え?あ、は、はい。え、と」
突然声をかけられたティファニアは思わず女性の顔を見上げた。
年は二十歳そこらというところか、耳当てがかなり傾(かぶ)いているが、
世情に疎いティファニアにも、このハルケギニアに召喚されてまだ日が浅い
チハにも、それが分からなかった。
「私、ハーマン・ド・エランと申します。マイト・トゥールビヨンさまの
使いで参りました」
「あ、あなたが……」
驚くティファニア。だが、もっと驚いていたのはチハだった。
「あなた……まさか……シンさん!?こんなところで何をしてるんですか!?」
それを聞いて驚いたのはシンと呼ばれた女性だけではない。ハーマンもだった。
「え?もしかして……じゃなくて、もしかしなくてもチハさん?!」
「なんだいシン。知り合いかい?」
「あ、いやぁ……あはは……」
先程までと違い、ハーマンの口調がくだけたものになる。
そして、シンはといえば……乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
チハか、五式改重戦車が硫黄島にあったらなあ
以上です。
この作品はフィクションであり、実在の人物・団体とは全く関係がありません(謎
ひょっとしてオーバーするかなと思いましたが、なんとか入れ込めました。
オールド・オスマンの独白とか、最初のゼロ機関解体時の「二番じゃダメなんですか?」とか
テンポが崩れるのでオミットしたネタもありますが、自分なりのトリステインの
ミッシングリンクは書けたかな?というところです。
次回はティファたちに焦点を当てた回になります。
できるだけ早くお目にかかれるよう頑張ります。
480KB越えているのでスレ立てようと思いましたが、できませんでした。
どなたかお願いします。
投下とスレ立て乙
萌え萌えの人乙
九七改作ったことあるけどやっぱり弱そうなんだよな、せめて一式砲戦車がもっとあれば
ネタの取捨選択は大事だと思います
投下も減ったなぁ
ボチボチドラクエ5の二方とARMSの二方の投下きて欲しいわ
>>876 生存報告だけだろ
投下はこっちでやるっつってたぞ
アニメファイナルシーズンが告知されたし、新作はしばらくは控えめになるかもね
コロボックル物語とへっぽこ冒険者が来て欲しい……
881 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/21(日) 21:39:10.56 ID:BXdGHrmU
そういえば、ウルトラの人今日は遅いな。何かあったのか……
ちょっとレベル確認
最後に投下していくつめのスレだろう
書きたいのに時間がない
就職なんてするもんじゃないな
したくても就職できない人もいるのさ
自分に回って来た幸せを享受しなきゃ
続きがかけなさすぎて仕事をやめちまおうかとか考えている俺は生粋の駄目人間
来年のファイナルシーズン発表で迷いが……
バイトが忙しすぎて書く暇がない……。
ツキイチで投下できるように頑張ってるけど、この夏は暑すぎてオーバーヒート……
みんなバテてるな
みんなの食卓に鰻を召喚だな
ガララワニ食いてーっ
でもトリコの食材はみんなヘビー級だからなあ
ジョゼフにセンチュリースープ飲ませたらどうなるだろうか?
ジョゼフは笑う時は笑ってるぞ。
極楽鳥の卵とか捕獲レベルはどれくらいになるかね
>891
ブラカワニに見えた
そんな俺に釘パンチ
オーズも来週で終わりだな
そういやあの関係者ってまだ
呼ばれてなかったな
戦えキカイオー
>>894 アンク召喚、そしてシエスタが体を乗っ取られる
アルヴィーズの食堂がクスクシエポジション
だいたいこんなとこか?
オーズなら里中君召喚で強くて万能だけど定時で帰る使い魔
もしくはウヴァ召喚でギーシュ相手に無双していい気になる所で完
辺りで
タバサの欲望が重過ぎるから困る
>>896 アンクはどう考えても大人しく使い魔やってくれるような甘い奴じゃないな。
少なくともルイズに何らかの利用価値がない限り、即座に見限られて終了なのが関の山。
性格的な相性はどう見ても最悪を通り越してるし。
ぶっちゃけ双方の緩衝役になりそうなキャラ抜きだと冗談抜きで全く話が成り立たないレベル。
書くなら成り立つパターンで書くしかないだろう
一番いいのは、ルイズを直接のっとって
才人か映児に変身させるパターンかね。
>>898 欲望の器が大きくなるような環境に育ち一度すべてを失った、オーズにピッタリだなw
/ .:.:/ ..:.:.:.:.:/ : .:/ .: :.. :.:. \ :.:ヽ ヽ
. / :/ .:.:./ .:\.:.:/ .:.{ :l .:.: :. :.:.. 、 :.:.:. ヽ :.: }l:.:.:. l
l :/ :.:.:/:.:. .:.:.:.:.:X:.:. .:./l .:.| :.:/ :.:. 丶:. .:.:\.: :ヽ:.:. :l :.:.:l|:.:.:. |
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V l:.! :. |:.i:. :.:.:.:.:.:l ル≧ァz\l :.:.:', .:.:.jヽ.: l∠j≦:.!.:.:∧:. l :.:/:!:.:.:.:. ヽ うるさいうるさい
/ヽ{:.:.l:.l:.:. .:.:.:.:. j彳 〃´¨ヾ\.:.:.ハ .:.:/ ァ匕 j/ `ヾ`ミ<!:.,' :.:.:.:lヽ:.:.:.:.. \ うるさーい!
/ .:.:.\i小:.:.:.:.:.l:.:l ヽ |l\__ /i`ヽ{ ヽ ..:.:7´ |l \__ / i /ハ:./ :.:.:.:,':.:.:\:.:.:.:..
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ライダー系召喚は数あれどことごとくエタってるから来てもあまり期待できんというか
何故ライダー召喚→エタる、なんだろう
仮面ライダーって作品にもよるけどただのパンチ1発4.5dただのキック1発7dとか
殴られたら死ぬってレベルじゃないよね
仮面ライダーって高いジャンプ力を活かしたライダーキックが必殺技(主に昭和)だけど、新1・2号が約30m、V3で約60m。
だけど宇宙刑事は剣で切り付けるのが必殺技なのに三桁もの跳躍力という。
つまり何が言いたいかって言うと、SSなのにわざわざ「宇宙刑事ギャバンが、コンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」とかやらせたいだけなんですけど
>>902 タバサじゃ無理だろあいつ直ぐに男に靡く奴だぜ
あいつの欲望軽すぎる
>>905 前になにかの番組でやってたんだけど、ライダーは悪の組織○○によって改造されたり、肉親を殺されたりした被害者の立場がデフォなんだそうだ
平成でも無理矢理ライダー同士の戦いに巻き込まれたりと被害者の立場はだいたい同じ、そのためライダーのマスクのデザインは必ず「泣き顔」になっている
そのため加害者の組織に対しては闘志を燃やすが、それ以外の相手とは戦う動機が薄い。ゼロ魔の世界の敵と戦ってると違和感が大きくなってくると感じてくるんじゃないかな
ライダーファンとしたら魔法を使えるとはいえ対人(魔物込み)にハッスルするライダーはイヤだな
生身の相手にハッスルしそうなライダーなんて悪役でもそうはいないもんな
そんな奴浅倉くらいしか思いつかん
ショッカーの平隊員でええやん
レンゲルがぱっと思い浮かんだけど
ムッキーが警官相手にハッスルしたのはニゴリAに支配されかけてたからだしやっぱり浅倉だよねw
歴代ライダーで喜び勇んで改造人間になったのはスーパー1だけ!
スーパー1は惑星開発用改造人間で、初の戦闘用じゃないライダーだもんな
彼の強さはファイブハンドは当然だけど、死の特訓で身につけた赤心小林拳によるところが大きい
なにせ師匠の玄海老師は素手で怪人倒すんだから
V3もストロンガーも自分から望んで改造じゃないか。
復讐のためだからスーパー1とはちょっと違うけど。
SPIRITSの2号を召喚したら、戦場で両軍の杖だの武器だのへし折って回るんだろうな。
>>909 ジョゼフが死神博士を召喚してその技術を利用、怪人を手駒とし暗躍させる。
ルイズに召喚された本郷猛はアルビオン行においてハルケギニアにショッカー残党がいることを知り
戦うことを決意する、とか
平成ライダーは改造されない代わりに何かに取り憑かれたりするとかが多い気がするな
あんまり見て無いから正直知らないんだけど
そんな気がする人が多いのも、全部乾巧ってやつの仕業なんだ
|M0)
>>918 ヒーローを呼ぶ場合は敵対組織がレコンあたりの黒幕にいたという展開にしたら不自然さは解消できるだろうな
まあワルドが「恐怖○○男」にされそうだけど、そのあたりは作者のセンスしだいで
恐怖マザコン男?
言うと思ったよ
要するにゼロ魔の世界で仮面ライダーをやりたいってこと?
言うと思ったよ
test
いい年して特撮ヒーローとか恥ずかしくないの?
もうオーズとグリードズを召喚しちゃえよー
932 :
753:2011/08/24(水) 22:53:32.09 ID:E3CsQ401
>>928 黙れ!
貴様に何がわかる!
俺に逆らうな!
俺は常に正しい!
俺が間違うことはない!
753は最高です(棒
>932
そして、その“貴様”と“俺”は常に複数形であるものとして扱われてきた。
世界に“悪”はなく、万物が“正義”なのだから。
ライダーものといえば、マンギー氏のアレの続きが読みたい。。。
さて、そろそろ500kbか
>>917 心の底からなりたくてなったのと復讐の手段としてなったのとでは全然違うだろう。
V3に関しては一度はライダー1号2号に諭されてるし、あくまで瀕死の風見を助けるための改造手術だし、ちょっとストロンガーとは違うな
ストンガ
埋め目的とはいえすっかりライダーの話題に独占とか
関係ない話題で埋め尽くされるなんていつものことじゃない
いいんだよ、
>>939 それでも君は他の話題でスレを埋めてもいいんだ
ただし、無意味にAAで埋めたりすんなよ、板に負担かかるから
499kbかこれで500kbいくかな
いい年して仮面ライダーやウルトラマンなんて恥ずかしくないの?
そんな古臭い考え方の人間がまだ生き残っていたはな
>>943 なにがどう恥ずかしいのか論理的具体的に証明できたら褒めてやるよ