あの作品のキャラがルイズに召喚されました part296
もしゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part295
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1306705073/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
乙
さて、このスレではどんなキャラがハルケギニアにやってくるでしょう?
立て乙
長女は存在を確認できぬ
姉より優れた妹など存在しねェッ!!
>>1乙
ツンデレ×ちっぱいの価値が分からない奴は童貞
>>1乙
最近DB読み返してて思ったんだが、兎人参化なんぞ召喚したら、契約の時点でルイズ終了だよね。
>>9 契約で能力が中途半端に封印されて、兎耳と尻尾がつくだけになったりとか
つまり魔法学院総魅惑の妖精亭化とな
エレオノールはガチ貧乳
>>12 アニメ二期にてルイズに夜這いしようとして間違ってエレオノールの部屋に入り、
そして実際に触った才人曰く「こんなもんだったっけ」だそうな。
あそこまでないと女性ホルモンに異常でもきたしてるんじゃないかと思ってしまう
イザベラもここの雑談で貧乳扱いされてたけど、外伝3巻のカラーイラスト見た感じ
そこそこあるんじゃ?
情報の優先度は、
本文≧作者がインタビューやあとがきで発信した情報>原作イラスト(挿絵や表紙)>アニメ
だと思うけど、果たして・・・
外伝1巻に「すらりと伸びた肢体は美しいし、顔立ちも美人と形容できよう。」とはあるけど、
胸の大きさについての記述は見たことない。
とりあえずスレンダーな美人ではある模様。
普通の胸なんだろうC-くらいの
太ったらDになるっていう
そうか…だから俺の胸はDも有るのか…
>>15 18巻の挿絵ではボディラインがはっきりわかる服を着てるけど、あれで貧相な体とはとてもよべまい
単に登場キャラに大きめが多いから普通が小さく錯覚してしまうだけだと思う
>>15 タバサの冒険のイラスト見ると谷間があるから、貧乳じゃないね。
微乳でBカップくらいじゃないかな。
想像するだにおこがましいが・・・・・・・・・・カリンさまはどんなんだろ?
長女と三女があんなふうだけど次女がアレだしなぁ・・・・・・
一応言っとくけど猫仙人の話は禁止な
カリンちゃんはもともと絶乳だったけどエッチしだしてからホルモンダダ漏れで膨らんできた感じ
カトレアは逆に子供ができたら吸われまくって縮みそう
>>23 猫仙人というと鬼太郎に出てきたあれのことかな?
鬼太郎は80年代ものが最高傑作だった。あの万能武器になるオカリナがかっこよかったなあ
時代劇の三匹が斬る!から殿様、千石、たこの三人を召喚したら平民を苦しめる貴族たちが次々に斬られそうだ
猫仙人でカリンっつーたらドラゴンボールだろ
ドラゴンボールは別に興味ないし
三匹の連中は潜入工作とかもできるから、いつのまにかレコンが壊滅してそう
丹波哲郎さんが主演した三匹のご隠居でもいいな
三匹のDVD-BOX続きでねーかなー
カリン?
ユリアン・ミンツの嫁の事か
ルイズより年下だった気がするが
気のせいだろうな
>>28 三匹のご隠居も懐かしいな、再放送でしか見てないけど
丹波哲郎さん、里見浩太朗さん、谷啓さんの三人は今ではもう実現できないよな
里見さん以外二人とも亡くなってるし
でもこの三人召喚しても実質働くのは里見さんの関屋勘兵衛だけだと思うけど
丹波さんの乾三四郎はあんまり殺陣のシーンが無かった気がするし谷啓さんの玄夢は変装しかできないし
唐突だけれど
なんかこのスレの一部のアホって、他作品キャラとのクロスって以外にもなんらかの制約をSSに課そうとするよね
テンプレ展開は止めろみたいのはたまに見るような気がしないでもない
書き方がアホだから何が言いたいのかよく分からない
なんらかの制約ってなんだよ、そこ一番大事だろ
ウェールズとアンリエッタがラグドリアン湖の畔で誓い合ったっつー奴だろうよ
単発か
ジョゼフが何を召喚しようがシャルルはキッチリ亡き者にしとけ、とかじゃねえの?
タイミングと召喚されたキャラ次第ではシャルルも生きてるかも知れないけど、
それだとタバサがががが
僕の思い通りのスタイルで書いてないから許せないヤダヤダヤダって奴は定期的に沸くが
その辺じゃねえの
そろそろシャルルが召喚するというのもありかな
人格者召喚したら兄貴を妬むの止めて本心を打ち明ける展開
逆に悪人召喚だと唆されて兄貴殺して王座簒奪、そして彼も狂王に…
よしじゃあ同じ兄弟絡みでの悩みを持っていたフェイスレス司令を・・・
というか、もし仮にシャルルが次期王位に選ばれたらどうなってたんだろ?
裏で金ばら撒いてたりしてたし下手すると本編が始まる前の
トリステインみたくなってた可能性がありそうな…
>>40 イザベラが本編のタバサポのポジションになって
碌に才能無い身ながらも叔父を抹殺すべく苦労しつつ策を巡らしていくのか
藤田キャラならるいずととらの続編プリーズ
>>43 んでシャルルが王位に就いて、本音を隠さなくなったら
タバサが父親に幻滅してイザベラのようにやさぐれるんだよ
……本当にガリア王家は病んでる人多いねw
>>40 >逆に悪人召喚だと唆されて兄貴殺して王座簒奪、そして彼も狂王に…
ジャギにたぶらかされたシンを思い出したw
でも「兄より優れた弟なんかいねぇ!」なジャギだったら、絶対ジョゼフの方につくよなぁ
ジョセフがアミバ様を、シャルルがジャギ様を召喚すれば……ガリアだけで話が展開できそうだwwwww
アミバはまだいいけどジャギはシャルルの味方してくれるのか?w
シャルル「俺の名を言ってみろ〜〜!!」
こうですかわかりません!
王になったことで暴走(迷走)を始め、自らの妻や娘もかえりみなくなったシャルル。
王妃は次第に精神を病んでいき、部屋にこもりがちになる。
そして残されたシャルロットにとって唯一心の許せる相手は、幼い頃に母がプレゼントしてくれた人形のタバサだけだった……。
一方ジョゼフとイザベラは、一緒に気楽な隠遁生活を送っていたのでありましたとさ。
極悪の華だとあそこまで歪んだ性格になる過程が描かれてたからな
そら人格歪むだろっていう>ジャギ
なんとなく浮かんだネタ。
ミョズとして召喚されたのに、全く役に立たない使い魔
「海のリハク」
>>51 つまり先代の王様が死んだ時点でどう転んでもガリア詰んでたのかw
湯浴みを命じたシエスタが戻ってこないのに業を煮やしたモット伯が浴室に突撃。
「遅いぞ!!いつまで湯浴みをしているの…だ…?」
興<遅かったじゃないか…
突撃した浴室に居たのはバケツ頭の怪人でした。
興<目的は全て果たしたよ…彼女(タバサ)がな…全ては私の計画通り…残るは、憎まれ役の肉膜だ…
「ひぃっ!?」
興<私の来た証を…ゲイヴンとして来た証を…
最 後 に 残 さ せ て く れ
>>54 シャルルの本心をジョゼフが知ることが出来て、そのままジョゼフが王になれば大丈夫だな。
結構ハードル高いフラグを立てていかないと無理っぽいけどな。
というかイザベラがたぶん一番まともな王様になると思うよ。
次点で狂ってるとはいえ自国はしっかり運営していたジョゼフ。
ジョゼフは多分、「そっちのお前はアレやれ、こっちのお前はソレをやれ」って感じで(本人的には)いい加減に仕事を割り振って、
本人はやる気なくダラダラしてたんだと思う。
>>57 理想的な司令官だね。
平時だと一部の部下の士気は落ちるけど、戦時にきっちり仕事してみせると
そんなのは些細なことになるっていう。
普通の仕事でも同じだよなあ
的確に仕事を割り振らないと回らん
いや、ジョゼフはなんもしてなかったんだろ
で、ときどきレコン・キスタ吹っ飛ばしたときとかロマリア攻めさせたときみたいに無茶振りしてたと
真面目にやったら失敗ばかりだけど、適当にやったのに高評価される人っているよな
ジョゼフの奥さんってほんと謎だ
ダメな男に夢中になるタイプだったのかもしれん
>>62 筋骨隆々で超美男子って設定だぜ?
たとえ駄目男だったとしても、夢中になるだろうよ。
一応モリエール夫人はマジ惚れしてたっぽいな。
愛の告白した直後に殺されたけど。
愛は理屈じゃないのさ
サイコパスに惚れる女だっているんだし
モリエール婦人もレモンちゃん恥ずかしいとか言わされてたのかな
モリエール婦人の絵ってあったっけ?
魔法はおろか胸から雀斑までまるで一定の設定のないゼロ魔と、脳内補完というか考察という名の妄想で補うタイプの作品を混ぜると、やっぱりカオスになるよな
壊滅的にカオスが拡大していて考察しなければさっぱりわからない不親切な世界からやってきたキリイの続きはまだか
その名前に混沌を冠するカオスヒーローの続きも待ってます。
カオスエンペラードラゴン?
カオスヘッド
ゆり子
そらおと劇場版にカオスは出るのかな
75 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 20:39:12.52 ID:ua3+DI4l
随分久しぶりになりますが9時頃に投下します。
事前支援のご用命はゴジラ・コマンドーまで
77 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 20:58:11.06 ID:ua3+DI4l
第一章〜旅立ち〜
その8 登場!土くれのフーケ
魔法学院には斜陽が差し、赤い景色が広がっていた。
一行は、ちょうどルイズの部屋の窓から見える光景、広い裏庭にてムサシを囲んでいる。
「なあ相棒ぉ、俺っちどうしてこんな状況になってんの?」
「わりい、おいらもデルフの力が本当なのか気になるからさ。よろしく頼むゼ、タバサ」
「了解した」
新たな使い手の元に渡った、魔剣デルフリンガー。
今、彼は剣としての初仕事をしようとしている。
「タバサー、有り得ないだろうけれど外さないでよ?どこかの誰かさんじゃ無いんだから」
「ツェルプストー、それは一体誰のことを言っているのかしらぁあ…?」
「あら、そのちっぽけな胸にお尋ねしたらどう?心当たりがおありなんじゃないの」
外野で一悶着起きている最中だが、その初仕事がタバサの手によって成された。
最初の仕事…それは『的』である。
*********
「はぁい、ルイズ。使い魔とおでかけしてたようね?」
「げ、ツェルプストー」
「げ、って何よはしたない」
買い物から学院に帰ってきた二人を出迎えたのは、ルイズの級友二人であった。
会うなり小競り合いを続けている様を見て、やっぱり日常茶飯事だなとムサシは苦笑する。
と、タバサの使い魔であるドラゴンが、顔を摺り寄せてきた。
「きゅいきゅいっ」
「おう、ただいま!悪いけど、今日は何も持ってねえぜ?」
「……今日、は?」
「?ひょっとしてこいつのご主人様かい?
この間、おいらの飯を分けてやってたんだけど……」
「……」
無言で竜に手招きし、自分の使い魔になにやら耳打ちする。
ややあって騒ぎ立てた風韻竜の頭を大ぶりの杖で小突いた。
ムサシは苦笑した、他人に餌付けされるなということであろうか。
「おいらから何かやるのは、マズかったかな?」
「別にいい、ねだったのはこちらの方。迷惑だったのなら謝る」
「気にしないでいいぜ」
王国にはおしゃべりが多かったこともあり、口数の少ないタイプと付き合う経験が無いムサシ。
しかしコミュニケーションが取れないほどでは無いようなので一安心する。
ルイズの級友に迷惑をかければ、しっぺ返しは必ず来ると予想できたからだ。
主にゲンコツや平手で。
「それにおいらも、こいつといるのは楽しかったからな。ええっと……」
「タバサ。使い魔がシルフィード」
「そっか、おいらはムサシだ、よろしくな」
手短に自己紹介を済ませたタバサの視線に、ムサシは頭上に?を浮かべた。
なにやら剣を見る自分のように、値踏みをしているような……そんな雰囲気を感じたからだ。
78 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 20:58:58.71 ID:ua3+DI4l
「こ、コホン…それより、ムサシくん聞きたいんだけど」
「おいらか?」
と、ここで突然キュルケに指名され、己の顔を指さすムサシ。
そうよ、とキュルケがウインクを飛ばして応える。
「ねえ、何を買ってきたのか見せてくれない?私とても興味があるわ」
背の小さいムサシに視線を合わせるため、キュルケはしゃがみ込む。
170サントを越える身長のキュルケが屈めば、ムサシとはちょうど頭の高さが一致する。
おまけに胸元とスカートの裾が危険なことになっている、ルイズはムッとした。
「それならちょうどよかったゼ」
「おう相棒、早速出番かい」
そう言うと、鞘から背中の剣を抜く。
変わらず涼しい態度のムサシに、ルイズは何故かしたり顔だった。
「こいつのことルイズにも説明するところだったんだ」
「一体、このボロがどうすごいって言うの?とても信じられないけど」
一行は剣を持つムサシを囲んでいた。
彼のゴーグルの力が如何にも信じ難いルイズや、不思議な装備の数々に興味を抱くタバサはどこか神妙だ。
「私は信じるわよムサシく〜ん。ね、早く教えて?」
キュルケの猫なで声が聞こえた途端にルイズの口角がひくついた。
彼女だけはいつもとペースが変わらないようである。
言い合いがまた始まりそうな気配をなんとなく察し、さっさと準備に入る。
待ってましたとばかリに滾る剣を鞘から引きぬき、ムサシは抜身のデルフリンガーを掲げた。
「待ってたぜ相棒、俺っちやる気マンマンってなもんよ」
「わりいな、まだ何を斬るってわけでもねえんだ」
「何ぃ?そらねえぜ、やり場のないこの気持ちをどこに向ければ良いのよ」
「多弁」
「おしゃべりな剣ねえ……」
タバサとルイズが剣のトークに難色を示す。
しかしムサシは気にしていない様子でゴーグルをかけ、この剣の秘密を読み解き始める。
「この剣は『ガンダールヴ』ってぇ奴の使ってた剣で、このサビは仮の姿らしいぜ」
「『ガンダールヴ』?……って、あの?」
「始祖ブリミルが従えたと言われる、伝説の使い魔のひとり」
今しがた自分で口にしたタバサも含め、その場にいた一同は息を飲む。
ガンダールヴ、が何者なのか知らない者はここにはいない。
皆名前くらいは知っている。
それほどの伝説的存在の使っていた剣が目の前にあると言う。
79 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:02:04.98 ID:ua3+DI4l
「おおそれだ!さっき言いかけたのはそれ、『使い手』ってなぁそのことよ」
「『使い手』?ムサシ君がそれだっていうの?」
「おうよ色っぺえ娘っ子」
武器屋で出会ったムサシを、デルフは確かに『使い手』と呼んだ。
傍にいたルイズもまた気にかかっていた言葉ではあるが、まさかそれがブリミルの使い魔とつながるとは思いもよらなかった。
「俺っちの前の『使い手』がガンダールヴ、二番目の『使い手』が今の相棒ってこった」
「おいらが、その『がんだーるぶ』と同じだってのか?」
「本当だったらすごいことよムサシ君、やっぱり私の眼に狂いは無かったわ!」
キュルケに抱きすくめられ、降ろしてくれよとムサシは足をばたつかせる。
そんな様子すら気にかからないほどルイズは考えに没頭していた。
ガンダールヴの剣、確かに伝説に名を馳せる剣である。
その剣に認められた自分の使い魔、ムサシ。
だとすると彼もまた『ガンダールヴ』なのだろうか?
しかし目の前のムサシ、そしてデルフリンガーの人物像と今まで自分が読み聞いた伝説を照らし合わせる。
そして頷いた。
なんというか……
「あんたらどっちも伝説ってガラじゃないわねぇ……」
「そりゃねえゼ」
「ひでえなあ娘っ子」
疑心まるだしのジト眼で見られ一人と一振りはがっくりうなだれた。片方は剣なのでよくわからないが。
すると、今まで静観していたタバサが不意に疑問を挙げる。
「ガンダールヴの持つ剣ならば、単なるインテリジェンス・ソードでは無いはず」
タバサの疑問は、当然と言えた。
伝説級の武器であり、マジックアイテムであると言えるデルフリンガー。
何も特殊な能力が無い、とは考え難い。
「何か、魔法がかけられている?」
「お、鋭えところをつくね、眼鏡の娘っ子。俺っちもうろ覚えだが……ええっと……」
「こいつには『魔法を吸い込んじまう力』があるみてえだぜ?」
すっかり自分の能力を記憶の彼方に封じてしまったデルフの代わりに、ムサシが説明する。
この能力ならば、なるほどガンダールヴが『神の盾』の異名を持つ所以にもなろう。
三人の少女はようやくデルフリンガーの正体に納得が行き始める。
すると、ここでキュルケが意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ねえ、ルイズ。本当に魔法を吸収するか見せてくれない?」
「え」
支援してみせるぜ!
81 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:06:01.93 ID:ua3+DI4l
「ムサシ君を疑うわけじゃないけどぉ〜……やっぱりこの眼で見たいじゃない?それとも魔法の調子でも悪いの?」
明らかなキュルケの挑発的な態度ではあるが、あっさりとルイズは乗せられる。
耳まで真っ赤にして、やってやろうじゃないの!と肩を怒らせムサシの持つデルフリンガーの前に進み出た。
「ファイアーボール!」
吹き飛んだ。
そりゃあもう見事に吹き飛んだ。
ただし、吹き飛んだのはムサシでもデルフでも無く、その後ろ。
はるか上、学院の壁であった。
『固定化』の呪文がかかっている筈の壁に大きなヒビが入っている。
驚愕の表情で硬直したルイズに対し、キュルケは遅れて大笑いした。
「ルイズ、目でも悪くしたの?あんなところが吹き飛んだわ」
「ううううう、うるさぁーい!ちょっとズレただけよ!!」
もはや何度目になるか解らない口論が始まったがもはや慣れっこである。
当初の目的であったデルフの能力確認だが、言い出したタバサが魔法を使うとのことで決着はついた。
話はここで冒頭に戻る。
いよいよということで、言い争いも中断したキュルケとルイズも固唾を飲み、見守った。
ムサシがデルフリンガーを構え、距離を取る。
杖を向けてからふと、考えついたような顔をしてムサシのほうを向いた。
「風系統の魔法では確認が難しい」
「そっか、見える魔法で頼むぜ」
「わかった、威力を絞った『ウィンディ・アイシクル』を使う」
『氷の矢』ウィンディ・アイシクルはタバサの得意とする呪文である。
トライアングルスペルではあるが、威力を控えるという調節も容易であった。
「おーいデルフー、いくぜー!」
「うおー!俺っちこういう視線が集まる状態苦手なの!緊張して背中痒くなってきた〜っ!」
「どこが背中なんだ?」
騒ぎ立てる剣自身をよそに、表情一つ変えずタバサによる氷の矢が放たれた。
「ホントに消滅しちゃったわね」
「嘘みたい……ホラ吹きのボロ剣どころか、伝説の剣よ!伝説の剣!」
俄に浮き足立つルイズ。
デルフリンガーの言うことに、偽りは無かった。
放たれた矢は、吸い込まれるように消えてしまったのだ。
思わぬ形で知った事実にすっかり舞い上がっているのだろう、ルイズは勢い良くジャンプして喜んだ。
「あー、効かねえって解っててもこちとらビビんのよやっぱ。まだ胸ドキドキしてら」
「どのへんが胸なんだ」
だがその伝説の剣と、伝説の使い魔は変わらずこの調子である。
例え事実であろうと、伝説の一端を担う者たちと誰が信じようか。
これでは漫才コンビのチビと一振りである。
ルイズは熱くなっていた自分がとたんに虚しくなり、小さな肩をすくめた。
82 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:08:18.03 ID:ua3+DI4l
「伝説って所詮…過去よね」
「あ、それひでえな娘っ子」
一同は脱力した笑いを漏らした(タバサを除いて)
夕日も傾き、そろそろ夜が近い。
各々が空腹を満たし、夜を穏やかに過ごし、明日へ備えて床に就く。
そう思っていた、矢先のことであった。
「あら……」
「雲?」
一行の周囲に、影が差す。
日は沈みつつあるが、まだ夜の闇が訪れるには早かった。
それに、ルイズは感じていた。
この寒気は何だろう。
まるで何か危機が迫っているような。
「違う、これは……」
「ゴーレム!?」
タバサがいち早く気付き、キュルケも次いで驚いた。
のそりと姿を表し夕日を遮ったのは、全長30メイルはあろうかというゴーレム。
それが足踏みで大地を揺らしつつ、こちらに近づいてくるではないか。
キュルケが悲鳴を上げて逃げ出したのを皮切りに、ムサシとルイズも後に続いた。
「何よあれ!?」
「まさかあれって噂になってる……」
「!貴族相手にドロボーしてる奴か」
「『土くれのフーケ』、確かに手口は同じ。これほどのゴーレムを使う賊は他にいない」
タバサが落ち着いた様子シルフィードを呼び寄せた。
ゴーレムは裏庭にいる自分たちなど構いもせずに真っ直ぐ宝物庫へと向かっている。
逃げるなら今だった。
しかしシルフィードに乗り込もうとしたのはキュルケとタバサのみ。
二人はUターンすると、そのまま走りだした。
「ムサシくん!」
「逃げろ、みんなっ!」
先んじて振り返ったのはムサシだった。
ゴーレムの足元まで舞い戻り、デルフリンガーを勢いづけて抜刀する。
「デルフ!待たせたな!」
「おうよ、ついに出番か!?」
「でやあぁーっ!」
宝物庫に拳を叩きつけ続けるゴーレムの脚を、据え物斬りの要領で断つ。
一本の線が刻まれたと思うと、そこから上は斜めにずり落ちた。
切断された膝から下はぼろぼろともとの土になりゴーレムのバランスは崩れる。
「やったゼ!」
「いや、まだだ相棒!」
無くなった部分を埋めるように、足元から土が盛り上がり纏わり付く。
やがてムサシに斬られる前と同じ状態にすっかり戻ってしまった。
上を見上げると、黒いローブの人影が肩に立っている。
どうやらあれがゴーレムの主らしい。
83 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:10:28.03 ID:ua3+DI4l
「くそ、これじゃキリがねえな」
「どきなさいムサシ!ファイアーボールっ!」
遅れて駆けつけたルイズが早速呪文を唱えるが、いつもの通りの爆発が起きる。
教室や舎の壁を壊すことはできても、今回ばかりはゴーレムの表面が弾けてそれで終わりだった。
後から後から補充され、まるで通用していない。
「ルイズ、お前の魔法は効かねえ!危ねえから離れてな!」
危なっかしい主人を守るため、ムサシは真雷光丸を抜いた。
そしてデルフと共に逆手に構えて、ゴーレムの脚へと飛びつく。
両の剣を交互に突き刺し、巨大な身体を崖に見立てて登っているのだ。
これぞ伝説の武具『ベンケイブレス』の力である。
「何よ……!?私が足手まといだって言うの!!」
ルイズの頭に血が上った。
実のところ、彼女はかなり焦っていた。
先程からフーケのゴーレムが殴りつけているのは、自分が爆破した壁。
すでにヒビが入っていたからこそ、今こうして砕かれているのではないだろうか。
ルイズは、責任感と、意地と、劣等感が綯交ぜになった気持ちが抑えられない。
「私が賊を捕まえてやるんだから……!!あんたみたいなチビに遅れは取らないわ!」
ルイズは、忠告を一切聞かぬまま爆破ばかりの呪文を続けた。
持ち前のプライドの高さは、彼女に逃走という選択を捨てさせた。
あるいは、勇敢な使い魔に対する嫉妬だったのかもしれない。
「あいつだな……おい!観念しな、ドロボー!」
ようやく巨大な身体を登り終えたころには、フーケの仕事は済んでしまっていた。
盗み出した品が入っているだろう箱を抱え、目深に被ったフードから人相は伺えない。
ただひとつ見えたのは、三日月のように笑う口元だけであった。
「年貢の納め時ってヤツだぜ!」
したり顔の盗賊に飛びかかろうとしたその瞬間、ムサシはふわりと自分の身体が浮くのを感じた。
いや、浮いたのでは無い。落ちたのだ。
フーケがムサシが乗っていた部分のみを、風化させた。
「うわっ…!」
この高さから落ちてはひとたまりも無い、とムサシは雷光丸をゴーレムに突き刺した。
なんとか落下も半ばでぶら下がることに成功するが、すでに仕事を終えたらしいフーケはゴーレムを歩かせた。
ゆらゆらと揺れ、しがみつくので精一杯だ。
「くっ……」
「ファイアーボール!!」
ルイズの一際大きな爆発がゴーレムのバランスを崩した、フーケも驚いたのか肩口にしがみついている。
だがその拍子に、ムサシの身体を支える雷光丸が、抜け落ちてしまった。
「うわあっ!」
84 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:12:11.91 ID:ua3+DI4l
「ムサシッ!!」
かなりの高さから落下したムサシは、裏庭の草地に叩きつけられた。
主であるルイズは、思わずゴーレムから目をそらして、使い魔の元に駆け寄る。
「ムサシ、やだ、ちょっと…」
「!!危ねえっ」
近づいたルイズを、ムサシは身体ごとぶつかるように突き飛ばした。
人がせっかく心配してあげたのに、だのご主人様に向かって、などといった非難が口をついて出る間もなく。
ムサシがゴーレムが足の下敷きになった。
「え?」
何が起きたのか少しの間、理解できなかった。
そして気づいたとき、ルイズの顔が色を失う。
自分の魔法がムサシを落とし、ゴーレムをよろめかせたのだ、と。
「むっ……」
口が強張り、舌がつっかえて喉が引っかかる。
絞り出せた叫びは目の前で土に埋まった使い魔の名のみだった。
「ムサシぃぃぃぃぃッ!」
*********
フーケは目的を終えたからか、さっさと逃げてしまったようだ。
執拗に追おうとしていたルイズは消沈し蹲り、キュルケが先程から声を掛けているというのに反応を見せない。
そこに、シルフィードに乗って追跡していたタバサが戻ってきた。
「途中まで追跡できたけれども、見失った」
「ああ、ありがとタバサ。ってそれよりこの子なんとかしてよ」
見ればルイズの周りの草がすっかり抜かれている。
ぶちぶちと千切っては捨て、千切っては捨て、よほど先程のショックが強かったようだ。
「ね、ルイズ、あのね……」
「うるさい!うるさいわね!放っておいてよ!」
それまで項垂れたままのルイズがキッと睨みを聞かせ、弾かれたように金切り声を上げた。
目には一杯涙が溜まってはいるが、器用にも一粒たりとも零さずにいる。
これは最後の意地だろう。
「あ、あいつ、ホント勝手なんだから、私の言うこと、聞きもしないで、わたしの、わたしの」
呼吸を荒らげて、肩を震わせ、辿々しい言葉を吐き出す。
キュルケもタバサも何も応えずにいた、そうするうちにやがてルイズの声も勢いを失っていく。
「……わたしを庇って……わたしのせいで、あいつ」
「気にすんなよルイズ」
間の抜けた慰めの声なんて、一番求めていなかった。
空気の読めないのんき者に、ルイズの頭がカッと熱くなる。
「バカ!私はあんたみたいに気楽に……」
85 :
ルイズ伝:2011/06/21(火) 21:14:48.37 ID:ua3+DI4l
ルイズがはた、と気づいた。
この場に置いて存在しないはずの少年の声が聞こえた。
何故だろう、頭の中はぐるぐると回って考えがまとまらない。
そこには泥まみれのムサシがぺっぺっ、と土を吐き出しながらも無事でいた。
「あ、あ、あ」
「だから、さっきから喋りかけてたのに」
「…娘っ子ぉ、俺っち汚れちまったよ。なんか拭くもんある?」
「水の魔法で洗い流したほうがいい」
「あ、俺っち無効化しちゃうから駄目だわ、井戸どこ井戸」
皆、取り留めもないような話をしつつ、何か居たたまれなさそうにルイズを見ていた。
というか何故だろう、何でだろう。
ルイズは当然の疑問を口にする。
「なんで生きてるのよあんたーーー!!」
「『スチールボディ』ゲット・インだぜ!」
ゴーレムにぶら下がったあの一瞬、雷光丸でフーケのゴーレムから能力を吸収したのだ。
ゲット・インでエネルギーを吸収した物体は通常消滅する。
しかしストンプゴーレム、キングマンイーターのように内包するエネルギーが膨大なものは消滅に至らない。
今回もそのケースのようだった。
ちなみに、吸収した能力は短時間ではあるが、自らの肉体に鋼鉄の如き硬さをもたらすもの。
そのお陰で落下しても、踏み潰されても軽症で済んだ、まさに危機一髪という所だったわけだ。
ギリギリの所で果たした生還劇にも関わらず、ルイズは激怒した。
だがその実、ひどく安心させられて涙を隠すのに必死だっただけのようだ。
「ようし気をとりなおして……逃さねえぜ、土くれのドロボー!」
一方ムサシは泥まみれになり傷つきながらも、この場でたった一人わくわくしていた。
ようやく、求めるものにありつけそうだ、と。
随分久しぶりに投下しました、完結目指して頑張ります。
ペース上がるといいなーと思ってますがなかなかどうして……
どこぞでプレイ動画が上がったりしてるがちょっと嬉しくてニヤニヤしたりしてます。
武蔵伝もっと流行れー 武蔵伝2もがんばれー。
乙でした。
しかし、なんというバトルマニア。
最近は珍しくなりつつあるのかな?
乙!
楽しませてもらったぜwwww
考えてみたら、レイガンドほどじゃないけどデルフも相当でかいよな
ルイズ伝の作者さん、乙でした。
スチールボディとは、またマニアックな打開策ですなあ。
この作品では、一体何を盗んで行ったんでしょうねえ、フーケ。
あなたの心です
なんと気持ちのいい連中だろう
ケイオスシーカー?
以前、このスレに掲載された仮面ライダーWから大道克巳が召喚された奴を読もうと思ったら
まとめWikiに載ってないのな
しょうがないから、わざわざ過去ログ漁っちゃったよ
最近、まとめWikiに載らない作品多くないか?
有名な長期連載作品は信者だか作者が即効で載せるけど
初めての作者の作品はかなりスルーされてる気がする
そりゃすぐにエタるような、小ネタにもなってない思いつきをまとめるわけにも…ねぇ?
まとめWikiに載せる義務なんてねえぞ。
載せたいやつが載せりゃいい
ある程度量が出てくるかしなければ載せないだろ
というか、いちいち載せてたら、ものすごい量の一話だけプロローグとか、小ネタか連載かもわからないもので埋まる
時々目につくようになってきて、ふとwiki弄ってるやつが気づいて載せるくらいでちょうどいい
>>69 読者にも登場人物にも不親切、ハルケギニアに不親切な世界w
97 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 12:56:49.81 ID:UTnzKRn1
不親切だけれと不可解ではないからBLAME!は別にいい
これまでも思わせぶりにプロローグ出したけど、その後音信不通で1話で消えた駄作者がうじゃうじゃいるしな
まとめに載せてほしいなら少なくとも3話はほしい。むろんそれなりの長さと中身があって
とりあえず乗ってない乗せて欲しいと思った奴が乗せるのが流儀
そう思ったのなら乗せればいいだけ
別に作者自身が編集してもいいんだし、信者がーとか言って読者を悪者にする必要はないだろ
最近ってのがいつからのことか分からないが昔からこんなんだろ
まとめは作者さんがするのがいいと思う。
誤字脱字改行加筆の修正も同時に行えるし。
それがいいな
やり方がよくわからなくても、その旨が一言そえてあれば誰かがあげてくれるさ
代理投下依頼が溜まってるようだがと、携帯住人からの報告です
タフでなければSS職人になれない。優しくなれなければSS職人の資格がない
>>101 一般的には作者自身がアップするのはマナー違反なんだが……
作者更新の結果があの一話SSの山だろうが
どこの世界マナー違反か知らないけど、ここのまとめにそんな決まりもローカルルールも存在しない
忍法帖テスト。いけるか?
こんばんわ。
他に投下する方がいなければ、21:45より第53話の投下を行います。
……どうでもいいですけど、ユーゼスってスパヒロ版にしろα版にしろ、ボトムズのキリコを見たら『何でこんな奴がいるんだ』とか言って仰天しそうですよね。
前回のあらすじ
・ユーゼス、カトレアを裸にひん剥いてその身体を隅々まで調べ尽くす。
・七万戦でギーシュは眠らされて脱出させられ、ニコラは死亡。あとネオグラ出て来た。
・一体何者なのか正体はサッパリ分からないが、とにかく謎の声がエレオノールに話しかけてくる。
パイロット性能は断トツなんだがな、よくあれで戦えるよ
支援
遥か上空から現れた、謎の蒼い巨人。
いや、『巨人』という表現は実を言うと適切ではない。
なぜならソレは人のカタチこそしているものの、明らかに生物としての質感を有してはいないからだ。
全身を隙間なく金属で覆い、更にその外見から放たれる圧倒的な威圧感や、ある種の神々しさを見てしまっては、それを『人』に類するモノであると口にするのはどうしても抵抗が生じる。
また、最低でも30メイル以上はあるだろうその全長は、ハルケギニアのいかなる生物と比べても巨大だった。
……例として挙げるなら、火竜山脈に生息している『大きな火竜』でも全長はせいぜい15メイルほどである。
『金属で出来たガーゴイル』と言われた方が、まだ納得出来た。
それでもあのサイズの規模のガーゴイル、しかも飛行が可能なものを開発するなど、現在のハルケギニアの魔法技術では不可能だ。
ゴーレムに擬装をして『レビテーション』や『フライ』で浮かせていると無理矢理に考えることも出来なくはないが、それとて風のスクウェアメイジが何十人も必要になるだろう。
…………などと、シティオブサウスゴータの南西150リーグほどの位置で激戦を繰り広げていた人間たち(さすがにアインストにはそのような思考を行う機能はない)が考えていると。
蒼い巨人(他に形容する言葉が見当たらないので、取りあえずではあるがその呼称を使う)の胸の部分、黄金の宝玉を引き立てるように鈍い黒色をしていた箇所が、ガシャンと音を立てて開いた。
一体何が起こったのだ、と人々が蒼い巨人の様子を確認する間もなく、その開いた胸に紫電が走る。
その紫電は3秒もしないうちに蒼い巨人の胸から消え、その代わりと言わんばかりに胸の中央にある黄金の宝玉が輝き始める。
そして。
宝玉の輝きが、これもまた2秒もかからず蒼い巨人の胸全体を覆うほどにまで高まった、その瞬間。
黄金の光は、アルビオン軍、トリステイン軍のド・ヴィヌイーユ独立大隊、そしてアインストが混沌と入り乱れた戦場へ向かって、絶大な破壊力をともないながら降り注いだのだった。
「……………」
ネオ・グランゾンのコクピットの中、シュウ・シラカワの膝の上で、マチルダは唖然としていた。
―――ここで、時間を少し巻き戻す。
クロムウェルから『アンドバリ』の指輪を取り返したマチルダたち。
一行はそのままラグドリアン湖にまで飛んで行き、ネオ・グランゾンに搭載されている精霊レーダーとやらで水の精霊の位置を割り出してからその真上まで移動、『アンドバリ』の指輪を湖の中に投げ入れて、水の精霊からの依頼を完遂させた。
それでウェストウッド村に帰ろうとしたら、この戦いに遭遇したのである。
マチルダもシュウもこの戦争の行く末自体はどうでもよかったのだが、今回のこの戦いは場所がウェストウッド村に近過ぎた。
また、その規模が大き過ぎ、出現しているアインストの数も多過ぎる。
これでは下手をするとウェストウッド村に飛び火しかねない。
「では、取りあえずアインストだけでも掃討しておきましょうか」
泥沼化しつつある戦場を見ながら、そう呟くシュウ。
それは別に構わない。
って言うか、むしろ歓迎しよう。
ウェストウッド村に危害が及ぶのは、自分としても避けたいのだし。
だからマチルダはそれに賛成した。
それから間もなくネオ・グランゾンは『隠行の術』を解き、戦場に姿を現す。
シュウはコクピットにある『こんそーる』をピピピッといじり、ネオ・グランゾンの武装を使って戦場に攻撃を加えた。
そこまではいい。
しかし。
しかし、だ。
その攻撃が、このゴチャゴチャしてワケの分からない状態だった戦場において『確実に1000体を超えていたアインストだけに正確に命中』し。
あのバケモノどもを一匹残らず消滅させ。
あまつさえ直接の人的被害がゼロというのは、もう、驚きとか呆れを通り越して、どう反応していいのかすら分からない。
「……………」
「これでこの戦闘も収束に向かってくれればいいのですが……」
のんきにそんなことを言うシュウ。
いや、実際にはのんきどころか真剣なんだろうが、マチルダから見ればのんきにしか見えない。
マチルダはどうにかしてコイツに、せめて一言くらいは何か言ってやろうとするが、
「……今の、何?」
そう問いかけるだけで精一杯だった。
するとシュウは平然と、微笑すら浮かべてその問いに答える。
「いわゆるマルチロックオンというやつです。要するに複数同時の狙い撃ちですね」
「複数同時……ねえ」
「ええ。最大で65536の目標を同時に攻撃することも出来ますよ。……まあ、そこまでの数を実際に攻撃したことはありませんが」
「ろくまんごせんごひゃくさんじゅうろく……?」
なんだ、そりゃ。
もうワケわかんない。
(……………)
マチルダはシュウとそれほど長い付き合いではないし、しょっちゅう顔を合わせてもいない。
むしろそういう面ではティファニアの方が長じている。
だが、この男に関してハッキリと分かっていることが一つある。
それは、シュウは『嘘やハッタリの類だけは絶対に言わない』ということだ。
だから、この『65536の目標を同時に攻撃出来る』という言葉も、きっと事実なのだろう。
事実だからこそ。
―――マチルダは、このことについて考えるのをやめた。
「しっかしコレ、ユーゼスに知られたら怒られそうですねぇ。思いっきり介入しちゃってますし」
シュウのファミリア(使い魔)であるチカは、そんなマチルダの内心を知ってか知らずか、いつも通りの口調で主人に話しかける。
「……彼は病的なまでにハルケギニアへの干渉を避けようとしていますからね」
皮肉げな笑みを浮かべ、その言葉に答えるシュウ。
「私に言わせれば、あのアインストもユーゼス・ゴッツォも……そして私も等しく同じですよ。
程度の差こそありますが『ハルケギニアに紛れ込んだ異物』という時点で、我々はこの世界に少なからず影響を与えています。彼はそれを理解していません。……いえ、理解はしていても、それを認めたくないのかも知れませんが」
それに、とシュウは付け加える。
「……『私たちのような存在』は、それこそ存在しているだけで『その世界』の因果律を乱す元凶になりかねませんからね……」
シュウの笑みに、皮肉だけではない別の色が混ざった。
「はい?」
何やら小難しいことを言い始めた主人に対して、首をちょこんと傾げるチカ。
そうしてチカが内心で余計なことをつらつらと考える前に、彼女(一応ではあるが、チカは女性的な性格を模して作られている)が担当しているネオ・グランゾンのレーダーに反応が現れる。
「あっ、レーダーに反応です。こりゃアインストの空間転移ですね。……ありゃ? コレ、数は少ないですけど、やけに規模が大きいような……」
「ほう……。まるで、私への対抗手段を慌てて用意したような動きですね」
「……信じられん」
アルビオン軍主力の実質的な指揮を執っているホーキンス将軍は、目の前の光景をそう評した。
何が信じられないかと言うと、もう目に映る全てと言っていい。
突然現れた蒼い巨人。
その巨人から放たれた光が、無数に存在していた『アインストだけ』を全滅させたこと。
更に巨人を迎え撃つかのごとく出現した、20メイルはあろうかという巨大なアインスト。
それが複数。
「……………」
数自体はそれほど多くない。
むしろたったの四体だ、少ないと言えるだろう。
構成だって『骨』が二体に『ツタ』が一体、『鎧』が一体。
アインストとの戦いに慣れたアルビオン軍であれば、慢心でもしない限りはどうとでもなる。
……ただしそれは、相手が人間と同じような大きさであった場合の話だ。
量より質などという単純な問題ではなく、あれだけの戦闘力を持ったバケモノが20メイルほどの大きさで現れた。
ホーキンスが困窮し、現実を認めがたくなるのも、無理からぬ話である。
「……………」
救いなのは、あの巨大アインストがこの戦場から離れた位置、しかもちょうど側面に現れてくれたことだ。
もしまた戦場のど真ん中にでも出現したら、大混乱どころの話ではない。
前方や後方に現れても問題だ。そうなれば間違いなく、自分たちは敵味方の区別などなく蹴散らされるだろう。
もう一つの救いは、
「標的があの巨人らしい、ということだな……」
願わくば、蒼い巨人と巨大アインストどもで潰し合ってくれ。
放心状態から抜け出し、現れたモノたちの攻撃がこちらに向けられる可能性にまで考えが及んだ人間は、アルビオン・トリステインを問わずにそう考えていた。
『グゥォォォオオオオオ…………!!!』
最初の攻撃以降、空中に静止して動かない蒼い巨人に向かって、『ツタ』の巨大アインストは熱光線を発する。
20メイルサイズのアインストが発する熱光線。
轟音は無論のこと、余波だけで大気が震え、光は眩すぎるほどに周囲を照らす。
その破壊力たるや、推して知るべし。
「!!」
閃光に目がくらんでほとんどの者が目を閉じていた中、ホーキンスは辛うじてではあるが、確かに見た。
ドオン、という衝撃と共に、熱光線が蒼い巨人に直撃するのを。
そう、間違いなく直撃した。
直撃はした。
だが、その熱光線は蒼い巨人を守護するように現れた『透明な壁』によって完全に阻まれていた。
「……………」
もし自軍に向かって放たれでもしたら4ケタ単位の犠牲は覚悟しなければならないだろう攻撃。
それを受けて、蒼い巨人は小揺るぎもしていない。
『……ォオオ!!!』
ホーキンスが驚愕の言葉を発するよりも早く、今度は巨大な『骨』のアインストが動く。
人間サイズのものと同じく、武器は黄色い爪だ。
その爪を胸にある赤い光球の輝きに呼応させるようにして巨大化させ、宙に浮かぶ蒼い巨人へと一気に跳躍する。
対する蒼い巨人は、微動だにしていなかった。
まるで、動く必要すらないと言わんばかりに。
『…………!』
『骨』の巨大アインストの爪が、蒼い巨人に向かって振り下ろされる。
しかし、その爪は先ほどの熱光線と同じように透明な壁に阻まれ、それどころか逆に攻撃をした『骨』の爪の方が逆に欠けてしまった。
―――今度は光に阻まれていたわけではなかったので、その場にいた全員が目撃し、そして理解した。
蒼い巨人を守っている不可視の壁の強度を。
蒼い巨人は本当に『動く必要がなかった』ことを。
「……………」
幾人もの人間の命を奪ってきた、アインストの攻撃。
それがあのサイズにまで巨大化したのだから、威力もそれこそケタ違いに上がっている。
そんなケタ違いの攻撃を、完璧以上に防いだ。
「……………………」
ホーキンスを初めとしたこの場にいる人間たちは、この状況をどう受け止めれば良いのか分からない。
……そんな彼らの様子など気にした様子もなく、蒼い巨人は右腕を頭の高さまで動かして、拳を握る。
すると巨人の目の前の空間が白く輝き出し、だがその白い輝きは一瞬のうちに黒く、深い闇の色に染まった。
「な、何だ……?」
自身が作り出した闇へと右手をかざす蒼い巨人。
闇はそれに応じるかのように鳴動し、その中から一本の巨大な剣を出現させる。
蒼い巨人は、己と同じ色をしたその剣を掴み、引き抜いた。
剣を引き抜くと同時に闇は消え、後には何も残っていない。
「?」
どういう仕組みなんだとホーキンスが考える暇もなく、巨人は剣を構え、目の前にいる『骨』の巨大アインストを斬った。
『ォ…………!』
横薙ぎに一振り。
それだけで『骨』は両断される。
弱点である赤い光球も、その周辺を囲んでいた硬い骨も、お構いなしに。
『骨』は瞬時に灰化してしまうが、蒼い巨人の攻撃はそれだけでは終わらない。
バシュゥウン!!
背中から猛烈な音と光を噴出させ、一瞬にして『ツタ』の巨大アインストへと肉迫……いや、通り過ぎざまに剣で一撃を見舞わせる。
サラサラと灰化していく『ツタ』。
だが巨人はそんなものには目もくれず、続いて何か行動しようと赤い光球を光らせている『鎧』の巨大アインストへ目にも留まらぬ速さで接近。
その硬さでもってさんざんアルビオン軍を苦労させてきたはずの『鎧』の身体を、まるでクリームのカタマリでも斬るかのようにアッサリと縦に真っ二つにした。
「な……」
絶句するホーキンス。
よろしい、ならば支援だ
また、驚いたのは最後に一体だけ残った『骨』の巨大アインストの方も同じだったようで、慌てたように空へと飛翔し、空船など比較にもならない速度でもって逃げようとしていた。
対する蒼い巨人は『骨』の逃亡に慌てる様子もなく、逃げた方向にゆっくりと視線を向けると、その硬質な瞳を光らせた。
再び巨人の眼前に黒く深い闇が出現する。
(また何か武器でも出すのか?)
そんなホーキンスの考えは、しかし裏切られることになる。
蒼い巨人は、何と自分から闇の中に飛び込んだのだ。
「!?」
驚くホーキンスだったが、彼の驚きも長くは続かない。
なぜなら、間を置かずにもっと大きな驚きに見舞われることになるからだ。
闇に飛び込んだことによって、蒼い巨人の姿は『その場から』消えた。
飛び込んだ影響によるものか闇もまた消えてしまうが、その消える瞬間と全く同じタイミングで、逃げている最中の『骨』の巨大アインストの目の前に、巨人が作り出したものと同種の闇が出現する。
そしてあろうことか、その中からたった今消えたはずの蒼い巨人が出て来たのだ。
『!』
面食らった様子の巨大アインスト。
当然、そんな隙を蒼い巨人が見逃すはずもなく、
『…………ァ!!!』
巨人が持っていた剣によって、一撃の下に両断された。
かくして、突如として出現した巨大アインスト4体は全滅した。
「……………そんな、馬鹿な」
ホーキンスの呟きは、その一連の光景を見ていた全員の思いでもあった。
あの混乱した戦場で、アインストの一匹一匹を寸分の狂いもなく狙い撃ち、全滅させた攻撃。
巨大なアインストの攻撃を全く寄せ付けない、不可視の壁。
『鎧』を簡単に斬り伏せた剣。
間合いを一瞬にして詰める速度。
闇から闇への、一瞬の間もない移動。
段違いやケタ違いなどというものではない。
アレは強いとか弱いとか、そういう段階の話を完全に超越してしまっている。
人知を超えた力だ。
「……………」
自分たちの前に立ち塞がってきたトリステイン軍なら、即座とは行かないまでも速やかに蹴散らす自信はあった。
いきなり出て来た大量のアインストも、対処の方法はいくつか考え付く。
しかし、アレは無理だ。
人の手に負える代物ではない。
いや、人が触れていいモノでは―――
「……ん?」
戦慄し続けているホーキンスの目に、ロンディニウムの方から艦隊が迫ってくるのが見えた。
おそらくは敗走するトリステイン・ゲルマニア連合軍を追撃するためのものだろう。
とは言え、この状況ではどうにも……。
「…………いや、待て」
猛烈に嫌な予感が、ホーキンスの胸中に渦巻いてきた。
あの我が軍の艦隊は、こちらに向かって来る。
こちらの頭上を通っていく。
それはいい。
さて、ここで問題だ。
今、我々の頭上には何がいる?
更に、今の一連の流れを目撃してしまった艦隊司令が取り得るであろう、最悪の行為は?
「!!」
ホーキンスの思考が『答え』に行き着くが、空高く飛んでいる船に向かって、地上のこちらが連絡を取る手段はない。
旗流信号は船同士が連絡を取り合う際のものだし、マジックミサイルか何かで合図をしようにも、下手をすれば『あの蒼い巨人から我々のことを助けてくれ』と受け取られかねない。
だから。
アルビオン空軍の艦隊が、いまだに空中で威容を放ち続けている蒼い巨人に向かって各艦の砲塔を向けさせている光景を見ても、ホーキンスに出来ることはほぼ無いに等しかった。
「よ、よせ!!! やめろおおおおおーーーーーー!!!!」
届かないと分かってはいても、叫ばずにはいられない。
だがホーキンスの最悪の予想通り、アルビオン艦隊はあの蒼い巨人に向けて砲撃を開始してしまう。
「あ、ああ……」
愕然とした声を上げるホーキンス。
……もっとも、艦隊司令の気持ちも分かる。
あんなモノを見せられて、冷静でいろと言う方に無理があるだろう。
パニック状態になったとしても無理からぬことだし、そもそも戦場で我を忘れてワケの分からない行動に出てしまう人間など、珍しくも何ともない。
それに蒼い巨人の矛先が我々に向けられる可能性も、決してゼロではないのだ。
とは言え。
今回はいくら何でも、相手が悪すぎる。
「……………」
数十発の砲弾が蒼い巨人に向けて撃ち込まれた。
砲弾は先程の巨大アインストの攻撃と同じように不可視の壁に阻まれ、巨人は微動だにしていない。
ホーキンスにとっては見るまでもなく分かっていたことだ。
そして当然と言うべきか、蒼い巨人は身にかかる火の粉を振り払い始める。
パシュンッ
蒼い巨人の胸の宝玉から、いくつかの光が放たれた。
その光は空に浮かぶ戦艦のことごとくに命中し、船体を崩壊させる。
「何と……」
ホーキンスが声を上げたのは、攻撃の威力についてのことではなかった。
そんな段階はとっくに通り過ぎている。
驚いたのは、艦隊の崩壊度合に関してだ。
戦艦一つ一つの詳しい状況についてはさすがに分からないが、あの壊れ具合なら生きている人間も少なくないだろう。
いくつもの戦場を経験してきたホーキンスには分かる。
今の攻撃は、艦隊を殲滅するために撃ったのではない。
情けをかけられたのとも違う。
『邪魔だから取りあえず撃っただけ』なのだ。
例えば『フライ』や『レビテーション』で空を飛んでいるとき、どこかから舞い込んできた木の葉を払うように。
―――逆に言えば、あの蒼い巨人にとって、我が国が誇る艦隊は木の葉程度の価値しかないということにもなるのだが。
「木の葉、か」
平民とメイジ……いや、先住魔法を使うエルフ、硬い身体を持ちながら強力なブレスを吐く巨大な竜。
それ以上の開きが、アレと自分たちの間にはある。
「…………。……む、う?」
ホーキンスが次元の違いを痛感している最中、再び蒼い巨人が動き始めた。
今度は一体何をするつもりだと固唾を呑んでいると、巨人はその身から光を発して、
「は?」
目にも留まらぬスピードで、何処かへと飛んで行ってしまった。
「……………」
呆然となる戦場。
どのくらいの間、それが続いただろうか。
ホーキンスはハッと我に返り、今がどういう状況で、自分たちは何をしていたのかを思い出す。
「ぜ、全軍! トリステイン・ゲルマニア連合軍に対し、攻撃を再開せよ!!」
非常に鈍い動きではあるものの、将軍の号令に呼応するアルビオン軍。
そして、残ったアルビオン軍とド・ヴィヌイーユ独立大隊とで再び戦闘が始まるのだが―――その結果は当然、ド・ヴィヌイーユ独立大隊の全滅と言う形で幕を閉じることになるのだった。
「何だ……何なんだ、アレは!!?」
ロマリア大聖堂の地下深くで、ヴィットーリオは歯ぎしりしながら自分の机に拳を叩き付けた。
鈍い痛みが右手に走るが、それでも彼の中にある驚愕と困惑、そして苛立ちは治まらない。
「あんなバケモノが現れるなど、想定外に過ぎる……!! 1000以上は残っていたアインストを一瞬で殲滅させた上に、切り札の巨大アインストまでもアッサリと片付けただと!? ふざけるな!!!」
ヴィットーリオの感情を代弁するかのようにして両手が机を掻きむしり、机の上に広がっていた書類がグシャリと歪んでいく。
普段の几帳面な『教皇聖下』しか知らない者からすれば目を疑うような光景だったが、この場にいるのは自分の他には使い魔であるヴァールシャイン・リヒカイトしかいないので、特に気兼ねする必要もなかった。
「っ、ええいっ……!!」
とにかく一度冷静になるべきだと判断し、目を閉じて呼吸を落ち着けるヴィットーリオ。
そのまま十数分の時が流れ、ロマリア教皇は軽く頭を振りながらその目を開く。
更に大きく深呼吸し、自分に言い聞かせるように一言ずつ言葉を紡いでいった。
「…………、とにかく、まずは現状の把握が第一ですか」
何はともあれ、初期目標であるアルビオン軍の足止め自体には成功した。
進軍速度も遅くなるだろう。
トリステイン・ゲルマニア連合軍は、これで撤退を成功させるはずである。
結果的には、これでいい。
―――あの正体不明にして規格外過ぎる蒼い巨人については、もう思考から除外することとして、だ。
続いてラ・ヴァリエール家の次女、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌについて。
彼女を動かすのは、取りあえず機をうかがう必要がある。
干渉に成功したからと言ってすぐ行動に移させるなど、浅慮どころかただの馬鹿だ。
それに、トリステインの『虚無』は戦闘経験が……扱える『虚無』の魔法の数が少ない。
戦闘用の魔法が使えない自分が言えたセリフではないが、これは少々よろしくない状態だ。
何とかして彼女には戦闘を通じて新たな『虚無』の魔法を引き出してもらいたいが、さて、どうしたものか。
「……ふむ」
更に言うなら、アルビオンの『虚無』の行方がいまだに分かっていないのも問題である。
アルビオン先王の弟、モード大公が囲っていた妾のエルフ。
その娘が最も怪しい……というところまでは判明しているのだが、そこから先がサッパリ掴めない。
いくら何でも年端も行かない少女がここまで見事に身を隠すことが出来るとも思えず、これまでブリミル教の組織力や情報網を駆使してアルビオンの隅々に至るまで探し尽くしたのだが、結果は芳しいものではなかった。
それに、今回の戦争の裏で動いていたと思しきガリアの『虚無』の動きも気にかかる。
「まったく……課題は山積みですね」
『四の四』を揃えることは難しいと覚悟はしていたが、ここまで難航するとは。
ともあれ、自分の基本方針は変わらない。
出来ることから一つ一つ、だ。
「……それではまずロマリア教皇として、今回の戦争のおかげで各国の内情がどう変化したのかを調べるとしましょうか」
「はっはっはっはっはっは!! 何だ、アレは!? なあおい、ダークブレインよ!!」
アルビオン戦争の発端から終焉までを『演出』して見せたガリア王ジョゼフ一世は、興奮気味に自分の使い魔に尋ねた。
彼は使い魔に『暗邪眼』と呼ばれる機能のごく一部を使わせ、更に使い魔のルーンの感覚共有の機能を中継させて、このアルビオンにおける戦いの一部始終を自身の目に投影していたのである。
「…………おそらく、我らと同じ他世界からの来訪者じゃろう。あれだけの能力を持った存在は『この世界』にはおらん」
主人である男とは対照的に、『我ら』という奇妙な一人称を使う老人の使い魔は淡々と応える。
その顔には、相変わらず何の表情も見えなかった。
「ほう、やはりそうか! いやいや、両用艦隊を使ってクロムウェルとかいうヤツを砦ごと吹き飛ばさせた時には砂の山を蹴飛ばしたくらいにしか感じなかったし、この大多数のアルビオン軍とささやかな数のトリステイン軍がぶつかった時にも大して面白味は覚えなかったが……」
ジョゼフは公の場での気だるそうな様子からは信じられないほど楽しそうに喋り続ける。
「あのアインストとかいうのが出て来てから面白くなったな! そして極め付けにあの蒼いヤツだ!! もしかしたら、お前が最初に俺の前に現れたあの時の姿よりも強いんじゃないのか!?」
「さてな。仮にそうじゃとしても、アレに対抗出来るように変貌すればよいだけじゃ。第一……」
「ん?」
「アレと我らがぶつかれば、『この世界』は確実に崩壊するぞ?」
「はははっ!! それはいい!!」
とんでもないことを告げられたと言うのに、ガリア王は嬉しそうにその言葉を受け入れた。
「前に言ってなかったか? 俺はそれが見たいんだよ。―――いや、違うな、それを自分の手でやってみたいんだ。だからお前と蒼いヤツとの戦いを見てみたくはあるんだが、取りあえずぶつかるのはやめておいてくれ」
「……………」
今はブレイン卿と名乗っている老人は、無言でジョゼフを見る。
その表情はピクリとも動いておらず、まるで人形のようだった。
「いやいや、最後の最後で面白いものが見れた。アレだけでもこの戦を起こした甲斐があったというものだ」
ジョゼフはそんなブレイン卿に構わず、興奮冷めやらぬ様子を見せている。
と、その時、老人の顔がいきなり部屋のドアの方を向いた。
「……………」
「ん?」
ジョゼフもつられて使い魔と同じ方向を見ると、ノックもせずにドアがいきなり開かれる。
「……デブデダビデか」
「は……。只今帰還しましてございます、ダークブレイン様」
現れたのは、今は亡き神聖アルビオン帝国皇帝オリヴァー・クロムウェルの付き人であった小太りの男だった。
デブデダビデは部屋に入るや否や、クロムウェルにとっていたものとは比べ物にならぬほど恭しい態度でブレイン卿にかしずき、ひざまづいて頭を垂れる。
しかしブレイン卿はそんなデブデダビデを一瞥しただけで、またドアの方に視線を向けた。
「スカルナイト」
『はい。私もたった今そちらの御仁からの依頼を終え、戻って参りました』
カシャカシャ、と金属音を響かせながら、頭から爪先まで全身を深い緑色の鎧で包んだ者が現れる。
スカルナイトと呼ばれた甲冑の人物の声はくぐもってはいるものの、声色から判断するに男のようだった。しかし、その顔もまたほんの僅かな隙間を除いては甲冑で覆われているため、彼の素顔を窺うことは出来ない。
そしてデブデダビデとスカルナイトが現れたことに呼応するようにして、新たな声が響く。
《クリスタルドラグーン、控えております》
声の主は姿を見せず、しかしその声は部屋の中にいた全員の頭の中に届いた。
そんな現象にジョゼフだけが興味深げな顔をするが、他の三人は大した反応も示さない。
「ダークブレイン様、お体の治癒は?」
「既に完了している」
ブレイン卿たちはそんなガリア王に構わず、彼らだけで話を進める。
「ならば、この世界をお離れに?」
「……いや、ここは通常では有り得ぬ事象が多発している……。先程確認した者は元より、監視者の生き残り、因果律を操作する力を持つ者……。それに加えて、かなり迂遠な方法で干渉を行っている者もいるようだ」
『……………』
「あるいは、ここは至高天への道程……十二の鍵……因子が集まる所かも知れぬ」
《では……?》
「今しばらくはこの世界に留まる。お前たちはこの世界の変化を促し、それらの因子の動きや変化を見極めるため、ひとまず我らを召喚したこの男の指示に従うがよい」
「仰せのままに……」
そうしてジョゼフを除く面々の話が一段落すると、わずかに開いたドアの隙間から複数の声が響いてきた。
「へえ、これが蛮人の城なのね! 外から見た形も面白かったけど、中も面白いわ!」
「おいルクシャナ! こんな蛮人の住処なんかで、はしゃぐんじゃない!」
「あら、別にいいじゃないの。それとも何? あなたは学者に対して『知的好奇心を殺せ』って言いたいの?」
「そういうことじゃなくてだな……!」
「……お前たち、我々は客人としてここに来ているのだぞ。いくら蛮人相手とは言え、それなりの礼節というものをわきまえろ」
「ですってよ、アリィー。静かになさい」
「〜〜〜……っ。……はあ。まったく」
その声を確認したスカルナイトは立ち上がり、ジョゼフに向かって話しかける。
『……私が連れてきた方々のようですな。こちらにお通ししますか、ジョゼフ殿?』
「いや、一応は俺の客だからな。自分で出迎えることにするよ」
頷いて、ドアに向かって歩き始めるジョゼフ。
「さあて……次の脚本はどんな筋書きで書くべきだろうなあ、ハハッ」
その顔はまるで新しいオモチャを与えられた子供のように、喜色に満ちていた。
なお、今回のアルビオン戦争の最終局面における戦闘の顛末であるが。
全滅という結果に終わったものの、ド・ヴィヌイーユ独立大隊の働きは無駄ではなかった。
『撤退のための時間稼ぎ』と言う点で見れば(アインストや蒼い巨人という乱入者による要因がほとんどではあるものの)確実に任務は果たしていたし、何より大隊そのものが予想以上に奮戦したため、その時間もかなり拡大することが出来ていた。
何より、蒼い巨人が出現したことによるアルビオン兵たちの動揺。
それから立て直すのに、ホーキンスを始めとした部隊の上層部は数時間を要した。
更に一連の事件の影響は兵たちの足にまで及び、その進軍速度は大幅に遅れ……。
結局、最初の戦闘地点から10リーグ離れた場所に陣取っていた連合軍の部隊を確認するかしないかという時になって、本国から『ガリア艦隊によってクロムウェルが戦死した』という報がもたらされ、進軍は中止。
なし崩し的にではあるものの、トリステイン・ゲルマニア連合軍は撤退を成功させたのだった。
…………なお、余談ではあるが。
この戦争の最後の局面において出現した『蒼い巨人』は、後に『アルビオンの蒼き魔神』と呼ばれ、半ば伝説として語り継がれることになる。
朝の気配が薄れ、日差しが強まる頃。
ティファニアはウェストウッド村の近くの森に生っている桃りんごを、せっせと採っていた。
その理由は、言わずもがな食料の確保という面もあるのだが、
(シュウさんに、わたしの……何ていうか、存在みたいなのをアピールしておかないと……)
という、下心と言うには少々可愛気のある動機も含まれていた。
ハッキリ言ってしまうが、ティファニアはシュウに対して恋心を抱いている。
だが、ここ最近のシュウは自分の母代わりであり、姉代わりでもあるマチルダと接近する機会がやたらと多く、前々から『もしかしたらあの二人は……』などと怪しんでいたティファニアとしては、ここで自分を押し出す必要性を感じたのだ。
しかも、今回は二人っきりで長期行動していると来た。
チカに監視役兼歯止め役を命じはしたものの、アレが役に立つとは言い難いし。
ここは帰ってきたシュウに桃りんごのパイでも作ってあげて、印象を良くしておかねばなるまい。
などと考えていると。
「ティファニアお姉ちゃん!」
「テファ姉ちゃーん!!」
ウェストウッド村で一緒に生活している、家族のような子供たちが自分のところに走ってやって来た。
子供たちはぞろぞろと連れ立って、一斉にティファニアに向かって来る。
「あらら、どうしたの? ジャック、サム、ジム、エマ、サマンサ、みんな勢揃いして。何かあった?」
この子供たちには、ウェストウッド村の近くに自生している食事用の野草や豆などを採ってくるよう、お願いしておいたのだが。
どうしたのだろう。
「なんだかエマが変なんだ」
「エマが?」
言われて、子供たちの中で一番小さい少女に目を向ける。
しかし見たところ怪我などはしていないようだし、他の子供たちにいじめられたのなら、その『他の子供』からわざわざ『なんだか変なんだ』なんて申告があるはずもない。
更によくよくエマを観察してみると、自分に何かがあったと言うよりは、何か『言わなければいけないけど、言いにくいこと』を抱えている―――そんなように見えた。
(直接聞くのが一番ね)
ティファニアは桃りんごの採取を中断し、ゆっくりエマに近付くと、膝を曲げて視線を彼女と同じ高さにする。
「あの……」
「怖くないわ。言ってごらん」
優しくエマに話しかけるティファニア。
「森で、森でね……」
「森で、どうしたの?」
「イチゴつみに行ったら、見つけたの」
そのエマの言葉を聞いて、周りにいた少年たちが騒ぎ出す。
「なんだよ! エマ! そういうことはまず、おれたちに言えよ!」
「どうしてだまってるんだよ!」
「だって、こわくて……。血だらけで……、ふぇ……」
どうやら『面白そうなものを見つけた』ということを黙っていたのが気に入らないらしく、少年たちは強い口調でエマを責める。
そんな状況に泣きそうになるエマだったが、そこでティファニアが少年たちをいさめた。
「みんな、エマにやいのやいの言わないで。……それでエマ、どうしたの? お姉ちゃんに話してごらん?」
「……た、たおれてる人がいたの」
「また?」
ティファニアの表情が少し暗いものになる。
ここ最近、戦争の主舞台がアルビオン大陸に移行してから、このように怪我をして行き倒れている人間は多かった。
「きっとアレだよ! せんそうだよ、せんそう!」
「ねー!」
「朝に、森の近くの道を、ぎかいのぐんたいが通っていったもの!」
ティファニアは子供たちにとって戦争が日常となりつつあることに顔を曇らせつつ、エマに続きを促した。
「エマ、どこ?」
「こっちなの」
ティファニアはエマの案内で、自分にとっては庭も同然である森を進み、その後に子供たちが続く。
そうして歩くことしばし。
彼女たちは、大きな木に背中から寄りかかるように倒れている金髪の少年を見つけた。
しかもその隣には、
「……モグラ?」
巨大なモグラが、その少年を守るようにして周囲を警戒していた。
何だろう。
この少年の使い魔とか、護衛のガーゴイルだろうか。
「とにかく、様子を見てみないと……」
ティファニアたちは少年とモグラに近付いていく。
モグラも最初は彼女たちに対して警戒の色を見せていたが、すぐにこっちに敵意や危害を加える気がないということを察してくれたようで、すんなり退いてくれた。どうやらかなり知能が高いらしい。
「ありがとう、モグラさん」
巨大モグラに礼を言いつつ、金髪の少年の胸に母親譲りの長い耳を当てるティファニア。
シュウやマチルダなら手首に少し触れるだけで脈の状態が分かるのだろうが、あいにくと彼女はそんな技術を持ち合わせてはいないため、こうやって直接耳を胸に押し当てるしかないのだ。
「……まだ息は残ってる。でも、傷は深いわ。急いで手当てしないと」
「ティファニアお姉ちゃん、治せるの?」
「ばか! ティファニアお姉ちゃんに治せないケガなんかないんだよ! 知ってるだろ?」
子供たちがそう言ってくれるのは嬉しいが、そのケガを治すためにもまずはこの少年を運ばねばならない。
「村に運びましょう。モグラさん、この人を背負ってわたしたちの後に付いて来て欲しいんだけど……出来る?」
「モグ」
ティファニアの問いかけに、モグラは力強く頷いた。
そして彼女たちは、傷だらけの客人を連れて自分たちの村へと戻っていく。
その途中、ティファニアはモグラに背負われている金髪の少年をもう一度よく見てみた。
「この辺じゃあんまり見ない服ね。外国人……ゲルマニアかトリステインの人かしら?」
―――最初の光景は、水だった。
緑色の水。
それで満たされた透明な容器の中に『その男』はいた。
(……?)
透明な容器ごしに、仮面を付けた何者かが『その男』のことを見ている。
エレオノールはその仮面に見覚えがあった。
確か最初に『声の主』から見せられた光景の中に、それと全く同じ、悪趣味な四つ目の仮面を被った男が出て来ていた。
でも、変だ。
あの時、自分はこの『仮面の男』に対して言いようのない強烈な違和感を感じたはずなのに、今はそんなに違和感を感じない。
むしろ妙な親近感のような、それでいて胸が苦しくなるような感覚さえ覚える。
(何なのかしら……?)
だがそれについて考える暇などは与えないと言わんばかりに、場面は転換した。
「……またあの夢か……」
(えっ!?)
今度は、どこかの部屋の中。
ハルケギニアとは違う建築様式のようだが、そんなことはエレオノールにとってどうでもよかった。
ここで重要なのは、
(これって……ユーゼス、なの?)
たった今この部屋のベッドから目覚めたこの男の顔が、ユーゼスと瓜二つという点だ。
(でも……)
しかし、顔は本当にそっくりだが声が違うし、髪の色も銀色ではなく青だ。
それに……若い。
ユーゼスは自分のことを28歳と言っていたし外見もそのくらいだが、この男の外見はどう見ても20歳前後にしか見えない。
(どういうこと?)
さすがに声変わりするような年齢ではないだろう。
……『何らかの事情があって髪の色と声を変えることになった』、と考えられなくもないが……。
「俺の数少ない記憶……。あの夢の中で俺を覗き込む奴は誰なんだ……?」
『イングラム、すまないが作戦室まで来てくれないか?』
「分かった」
どうやらこの男の名前はイングラムというらしい。
いきなり部屋の中に声が響いてきたのは少し驚いたが、これは多分ジェットビートルにも付いている『つうしんき』とやらだろう。
「おお、イングラム・プリスケン」
「ハワード、俺に何か用か?」
「お前が我々の組織ピースクラフトに来てから半年が経つ……それ以前の記憶を思い出したかね?」
「断片的にはな……」
「そうか。お前は瀕死の重傷で宇宙を漂っていたからな……」
「命があるだけマシだと思っている。そして、そんな俺を拾ってくれたアンタたちにも感謝している」
「今、入った情報によると……ネオジャパンコロニーのライゾウ・カッシュ博士がアルティメットガンダムを完成させたらしい」
「!」
(その名前……どこかで聞き覚えが……?)
(!)
何と、相手が内心で思ったことまで伝わってきた。
どういう仕組みなんだ、これは。
(心の中で思ったことまで分かるなんて……)
ありがたいが、少し不気味な気もする。
などとエレオノールが複雑な気持ちを抱いていると、また『声の主』がいきなり話しかけてきた。
<これはオプション機能のようなものだ>
(お、おぷしょん?)
<既に確定している世界の事象を追うのであれば、割と簡単なことだからな。それにこの場合、内心が分かった方が一連の流れをより深く理解出来るだろう。無論、イングラム以外の人間の思考も『聞き取れる』ようにしている>
(……………)
支援
相変わらず何だかよく分からない話をするヤツである。
まあ、この場合は『そういうもの』だと割り切るしかないのかも知れない。
「イングラム、君に……アルティメットガンダムを破壊してもらいたい!」
「君のアールガンは、過去に何らかの理由で廃棄されたパーソナルトルーパーだ。どこのデータバンクにも識別番号が登録されていない、今回の作戦にもっとも適した機体なのだ」
(アールガンよりも、俺はアルティメットガンダムのことが気にかかる……。その名前に聞き覚えがある……。もしそれを見ることが出来れば、俺の記憶が戻るかも知れない……。それに、俺を助けてくれたハワードやピースクラフトにも恩がある……)
話は少し飛んで、その『ネオジャパンコロニー』とかいう、何だか変な島みたいなカタチをした、恐ろしく大きい建物の中。
イングラムは、依頼された『アルティメットガンダム』を見つける。
「これだな! これがアルティメットガンダム!! ……俺はこいつを……知っているぞ!
……どうしたんだ……この震えは何なんだ……。うぅ! う……何故……体が動かない……」
イングラムがどうしてか身動きが取れなくなっていると、白衣を着た数人の男女と、銃を持った軍隊のような連中が彼が入って来たのとは別の入口から現れた。
イングラムは身動きが取れないながらも何とか身を隠して、彼らのやり取りを見る。
「キョウジ! ウルベにアルティメットガンダムを渡してはならん! アルティメットガンダムに乗れ!」
「はい、父さん!」
「アルティメットガンダムを渡すものか! 死ねぇ、キョウジ!」
「逃げて! キョウジ!!」
「母さん!」
「行くんだ! キョウジ!」
「くっ!」
「キョウジ、アルティメットガンダムを破壊してくれ。頼んだぞ……」
「私たちは……ユーゼスにそそのかされて、とんでもないモノを造り出してしまった……!!」
(!!?)
ライゾウとかいう男の口からいきなりユーゼスの名前が出て来たことに、エレオノールは驚いた。
だがそんなことはお構いなしに、目の前の光景は進んでいく。
「こ、こいつぁ……昔、地球に現れたっていう『怪獣』みたいなガンダムだな! まったくプロフェッサーGも無茶な命令をしてくれるぜ! こんな奴を持って帰れってか!?」
「地球へ逃げるつもりか……そうはさせねえ!」
「何とか無事に地球へ降下出来たか……。それにしても、俺と同時に地球へ落ちた5つの流星……あれらもガンダムなのか? そしてアルティメットガンダムを追っているのだろうか?
まあいい、アルティメットガンダムの降下地点はこのあたりのはず……」
「そこのお前! 聞きたいことがある。この写真の男を知っているか!?」
「!! その男は……」
「知っているらしいな。どこでこの男を見たんだ!? そしてお前は何故ここにいる!? 貴様もデビルガンダムと関係があるのか!?」
「デビルガンダムだと? アルティメットガンダムのことか?」
「やはり関係があるらしいな。答えろ!!」
(どうやらそうらしいな……。なるほど、デビルガンダムか……)
「出ろぉぉぉぉっ! ガンダァァァァァァム!!」
「俺の機体はガンダムじゃない!」
「行くぞ! ガンダムファイトォ! レディィゴォォォッ!!」
「チッ!」
「何だ、いきなり!?」
「戦闘記録001。記録者名、トロワとでも名乗っておこう」
「あれは……デビルガンダム!!」
「以前よりも巨大化している!? このままでは3人ともやられてしまうぞ!」
「ちょうどいい。貴様ら、死にたくなければデビルガンダムの破壊を手伝え!!」
「……言われるまでもない。それが俺の目的でもあるからな」
「戦闘記録……今後の作戦のため、アルティメットガンダムの現状データを収集する」
「何だ!? 破壊したんじゃないのか!?」
「この程度でヤツが倒せれば苦労はしない!!」
アールガンという鉄の巨人と、ガンダムというらしき二つの鉄の巨人。
その三つが力を合わせて巨大な怪物のような……あの粗暴な男がデビルガンダムと呼んでいたモノと戦い、それを追い詰めたと思ったら、デビルガンダムはいきなり全身から強烈な光と衝撃を放った。
光はアールガンや二体のガンダム、更にその周辺一帯までをも巻き込みながら広がる。
イングラムはそれに取り込まれる形で意識を失い、次に目覚めた時には……。
「う……うう……一体、何が起きたんだ……?」
「大丈夫か、君!?」
「……お前は?」
「科学特捜隊のハヤタだ。このロボットは君の機体か?」
「……そうだ」
「なら、君はTDFの……地球防衛軍の隊員か?」
(ここはどこだ……? デビルガンダムが放った光で俺はどうなったんだ?)
「ハヤタ隊員! 無事だったんですか!?」
「やれやれ……てっきり死んだのかと思ったぜ」
「彼に助けてもらったのさ」
「彼?」
「彼って……そこにいる人かい?」
「いや、それよりも……特殊潜航艇S16号を運んできてくれたのか」
「青い球体が湖に落下したと報告してきたのは、ハヤタ君じゃないですか!」
(……あの飛行機といい、潜航艇といい……やけに時代がかった機体だ。それに科学特捜隊と言ったな……まさか……)
「いたぞ、ベムラーだ!! ―――ハヤタからアラシへ!」
「こちら、アラシ」
「怪獣を発見した。ただちに攻撃を開始する」
「了解!」
「で、出た! 怪獣だあ!!」
「まさか……本物の怪獣? これが40年前の『混乱の時代』に存在していたと言われる、超生物か!」
「ジェットビートルで応戦するぞ!!」
(はあ!?)
またも驚くエレオノール。
カガクトクソウタイとかいう言葉は確かどこかで聞いた覚えがあったが、ジェットビートルに至っては聞き覚えがあるどころではない。
いや、よくよく見てみればこの男たちが身につけている服や、変な丸い兜などに描かれているマークは、ジェットビートルに描かれていたそれと同じものだ。
(ど、どういうこと?)
「何て奴だ! こっちの攻撃が効いていない!!」
「ほ、本部に応援を頼もう!」
「何言ってんだ! キャップたちが来る前にこっちがやられてしまう!」
エレオノールの混乱をよそに、状況は推移していった。
アールガンとジェットビートルは協力してべムラーという巨大な幻獣……いや『怪獣』と戦うが、その攻撃も効果はない。
もはや絶体絶命かと思われたその時……。
「ひか……!! ……『光の巨人』!」
まばゆい光と共に、銀色の巨人が現れた。
「!! 何故だ……何故、俺は……アレが『光の巨人』だと分かったんだ……?
それに……俺は光の巨人に見覚えがある……俺の記憶の中に、光の巨人がいる……」
銀色の巨人の力は凄まじく、アールガンの助力もあってべムラーはアッサリと倒された。
そして一件落着し、イングラムとカガクトクソウタイの面々が集まって『センコウテイ』とやらで湖の中に潜ったままのハヤタの身を案じていると……。
「おおーい!」
「ハヤタ! 大丈夫か!?」
「この通りだ」
「君は……本当にハヤタなのかい?」
「本当も嘘もない。実物はたった一つだよ。ところでベムラーはどうなったんだ?」
「銀色の巨人がやっつけたよ」
「やっぱり彼が出てきたか。僕もそうじゃないかと思って安心してたんだ」
「すると、お前を助けてくれたのも……」
「彼だ」
「ちょ、ちょ、ちょい待ち! 彼、彼って親しそうに言うけど、一体名前は何て言うんだ?」
「名前なんかないよ」
「よせやい、名前がないなんて」
「そうだな……じゃあ、ウルトラマンっていうのはどうだ?」
(科学特捜隊……確か40年ほど前、そんな組織が地球にあったと聞いた。怪獣や科学特捜隊が存在するということは、まさか……)
(……………)
あっけに取られるエレオノール。
何と言うか、あまりにも情報が多過ぎる。
いきなり現れた謎の声。
その『声の主』に見せられた、見たことも聞いたこともない光景。
ユーゼスと同じ顔の男。
突然出て来たユーゼスの名前。
タルブ村にあり、今はユーゼスが所有しているジェットビートルが、この『光景』の中にあること。
そして、銀色の―――光の巨人、ウルトラマン。
<……ふむ。今回はここまでだな>
(え?)
ワケが分からないなりにどうにかして状況を整理しようとするエレオノールに、『声の主』はそんな言葉をかけた。
<これ以上続ければ、お前の睡眠に支障が出る。睡眠不足にはなりたくないだろう?>
それはそうだが、今はそれどころじゃないだろう。
全てを知っているらしいこの『声の主』には、聞きたいことが山ほどある。
だが何から聞けばいいのか分からない。
いや、ここはやはり、この『光景』がユーゼスとどう繋がるのかということを……。
<それでは、次の機会にまた会おう>
(え? あ、あの、ちょっと待っ―――)
「ん……」
まぶたの重さを少々わずらわしく感じつつ、エレオノールは仮眠から目覚めた。
何だか随分とグッスリ眠った気がする。
支援
「…………ぇぁ?」
いまいちハッキリしない意識で窓の外を見てみると、既に夕日の光は陰り、夜の時刻に入り始めているようだった。
どうりでグッスリ眠ったように感じたわけだ。
……いや、むしろ眠り過ぎか。
仮眠のつもりでベッドに入ったのに、本格的に眠ってしまうとは迂闊である。
若い時はもっと短い睡眠時間でもやっていけたはずなのだが。
「年かしら……」
あんまり考えたくはないが、今年で28歳を迎えるこの身としては、もう考えざるを得ない。
「…………もう無理のきく年齢でもないかも知れないわね」
などと微妙にネガティブなことを考えていると研究室のドアがノックされ、ドア越しに女性が話しかけてきた。
「エレオノール、入ってもいいかしら?」
同僚のヴァレリーの声である。
「ヴァレリー? ちょ、ちょっと待って!」
エレオノールは急いでベッドから起きると寝巻きから普段着に着替え、眼鏡をかけて髪を梳き、ついでに姿見の前で人前に出ても恥ずかしくない程度に身なりを微調整すると、自分の手でドアを開ける。
「あら、何かの作業中……って言うか、お休み中だったみたいね」
「む……いいでしょ、別に」
眼鏡をかけ、黒髪を後ろに束ねた女性はクスリと笑ってエレオノールの現状を看破する。
一応それがバレないようにしておいたのだが、エレオノールと同じ30人からいるアカデミーの主席研究員であり、割と長い付き合いの友人でもあるヴァレリーの目は誤魔化せなかったようだ。
「それで、何? わざわざ私の様子を見に来たって訳でもないんでしょう?」
「まあ、それもあるわね。あなた最近、根を詰めてるみたいだったし。だけど……」
「だけど?」
「もちろんそれだけじゃないわ。一応、トリステイン国民としての報告ってところかしら」
「?」
『トリステイン国民として』って。
何だ、その大げさな物言いは。
「それじゃ、言うわね」
ヴァレリーはもったいぶった口調で、エレオノールに対してその知らせを告げる。
「『我が国はアルビオン本国からは退却したが、戦争には勝った』だそうよ」
「……何、それ?」
「さあ? 私も人づてに聞いた話だし」
以上です。
よーやく7巻までが終了しました。
でもそれで53話って……。……長いよ! いや、そもそも執筆ペースが遅過ぎるよ! 途中で休止期間とかあったし!
つーかこのペースだと私が予定している完結までに100話以上かかりそうで、なんか怖いです。
そして53話目にして初めて、主人公であるユーゼスが登場しませんでした。
出来れば出したかったんですが、区切りの良い所でもあったので。
でも、主人公が数話にわたって目立たないなんてのはスパロボじゃよくあることなのです。
んで、まあ……ネオ・グランゾンって、ゼロ魔の世界ではバランスブレイカーとかクラッシャーとかいうレベルじゃなくて、もはやバランスイレイザーなんですよね。
初期構想じゃグラビトロンカノンやブラックホールクラスターまで使うつもりだったのですが、執筆するにつれて
『それって無双ですらないんじゃ……』とか、
『さすがにやり過ぎっつーか、ただの虐殺や蹂躙だろう……』とか、
『シュウはそんな無駄な戦闘なんてしないんじゃね?』とか考えるようになり、こうなりました。
……まあ、今の段階でもやり過ぎな気はしてますが。
もっと上手いやり方があったかなー、と思わないでもないです。
書き手のみなさん、七万戦を書く時は気をつけてくださいね!
それでは皆様、支援ありがとうございました。
乙乙
ラスボスの人乙
乙
そういえばラスボスさんは現在まとめに掲載されてる作品のなかでもトップ3に入る長期連載作品だっけ
ラスボス乙
ギーシュがテファとフラグ立てるのか…
モンモン、相手は強敵だぞ頑張れ
133 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 23:30:16.85 ID:rTFoIY+v
ラスボスの人乙。
とりあえず一言。
ギーシュもげろ。
ラスボスさん、乙でした。
> 『シュウはそんな無駄な戦闘なんてしないんじゃね?』とか考えるようになり
いえいえ、雑魚七万ぐらいを消し去るのなぞ、「ぞうさも無い」ヒトですからね シラカワ博士。
今回は たまたまコクピット内におマチさんというイレギュラーがいたんで 気まぐれに仏心でも起こしたんでしょう。
>書き手のみなさん、七万戦を書く時は気をつけてくださいね!
もしも書く時には 心しておきます。
ラスボスの人乙
>『シュウはそんな無駄な戦闘なんてしないんじゃね?』
ヒロ戦では経験値稼ぎをしてましたよ
7万戦って、下手すりゃ蹂躙になるのか……
乙です!
そういや巨大ロボットが出張ってくるキャラ召喚ってそんなに多く無いよね。
大抵の場合強すぎて扱いに困るのがお約束と言う所なのかしら。
おマチさんのゴーレム戦あたりだと大抵肉弾戦で済ましちゃうよね。
機神飛翔の人とかも デモンベイントゥーソードはいつ召喚するの! みたいな。
ぐぐってみると、おマチさんのゴーレムが30メイル級でヨルムンガンドが25メイル級か。
巨大ロボもモノによって大きさ凄い違いますからねぇ。
ttp://blog-imgs-31.fc2.com/a/s/k/aska0180/ahiru.jpg ちなみにデモンベインは50m級。
巨大ロボットなら、敵役でよければウル魔にメカギラスやナースが出てるけれど
ラスボスの方、乙です。
>>136 無双しても、蹂躙しても、原作再現しても、スルーしてもいいのですぞ。
>>137 強すぎるのもあるけど、置き場が無いのも一因かと。
呼ばれたのがガンバスターだったら目も当てられん……。
あーそっか、要するにアレだな。
ボウケンジャーの何話だったかで、ボウケンイエローが一人で巨大ロボ操縦して、まだ巨大化してない敵怪人や他のボウケンジャーを踏みまくったみたいなの。
ラスボスの人乙です!!
え、あ? そうか、そういえばこれ、7万戦でしたね。
なんか普通に戦争してるからさっぱり気付かなかったw
でもまあ今回の敵って、シュウにとっては「雑魚アインスト4体+雑魚以下の群れ」だったんだし、
こういう戦い方になってもおかしくない気がしますな。別にシュウを利用しようとしたわけでもないし。
寧ろダークブレインと主にジョゼフに死亡フラグがたったのが気になるw
闇脳はともかくジョゼフはどう転んでもロクな目にあわなさそうだw
ラスボス乙です
久々に読み返すかと思った矢先の更新で嬉しい
造作もないオーラに誤魔化されがちだが、ゼストや闇脳と比べるとかなり劣るのがネオグラだから
ジョゼフもまだ大丈夫
>>140 戦隊ものは知らんけど、なにその鬼畜ヒーロー
>>137 リアルロボット系だと整備や燃料・弾薬の補給問題もつきまとうからなあ
それはもう食傷どころじゃないレベルで毎回話題に出てるからねえ
>>144 敵味方入り乱れて逃げまどう中戦隊ロボが踏んだりパンチしまくる(しかもノリノリで)戦隊史上屈指の迷シーンだぞ
たしかつべにあがってたな
なかなかLV上がらんなぁ
ラスボスの人乙です。
>>132>>133 だが考えるんだ。ギーシュがフラグを立てても既に他の男相手にフラグを立てているテファがもう一本立てる気になるだろうかとw
>>150 これは酷いwww見てて爆笑したwwwww
>・ユーゼス、カトレアを裸にひん剥いてその身体を隅々まで調べ尽くす。
しかしあらすじの文面だけを見てると物凄い事をやっている様に思えるのな。
まあ、ユーゼスには是非責任を取って頂きたいと切に思う訳でw そしてその後のエレ姉も加えたトライアングラーにニヤニヤしたいと切に思う訳でw
ファンタジー世界に巨大ロボを持ち込んじまうとこうなりかねんという、いい見本だな。
ボウケンジャーは色々はっちゃけてたからなあ…
集合ポーズ決めた後の背後の爆発で服が燃えたり
>>155 ハッピー半被の開運戦隊回だな
あれは腹筋に悪かった
レッドとピンクがダイボイジャーで宇宙開拓に旅だった後召喚関係なく召喚現場に不時着するとかって展開でも面白いかもな
エンジン事故でパラレルエンジンの動力源になってるプレシャス(お宝)が散らばったからストーリー進めながら冒険していくとか
157 :
忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/06/23(木) 13:31:39.25 ID:/maZBlF8
是非その設定でオナシャス
158 :
名無し:2011/06/23(木) 14:37:34.51 ID:04h0vbMt
初めての書き込みですが、お願いします。
ロボット系に関してですが「装甲騎兵ゼロ」の人、原作が終了してからでもいいので帰ってきてほしいです!
最近のゼロ魔本編を見たんですが、まさにこの境遇はキリコにふさわしいんじゃないか思いました。
シリアスさならサイト以上といか、キリコはサイトの上位互換キャラなんじゃないかと思えます。
釣りで言ってんのか
>>150 合体ロボなのに1人で使い倒せるとかどういうことなの…
そういえば乗機を自力で整備できるキャラ、もしくはそれを許すメカって意外と少ないのな。
キリコならカタコンベに転がってるであろうスクラップから部品と武装を剥いでATを組んでいてもおかしくないけど、
MSは当然としてKMFやヴァンツァーじゃ無理かもしれん。
待てよ、固定化で部品の劣化損耗を抑えつつ錬金でバッテリーと推進剤の埒をあければSEED系MSなら動かせる、のか?
>>161 イエローじゃ別に使いこなせてないから安心しろ
……チーフやシルバーなら一人で有る程度使いこなせるんだけどな
戦闘特化の最終ロボダイボイジャーをチーフは普通に乗り回してたし
純正GNドライヴ持ちの00系も大丈夫そう
ただ覚醒後の刹那呼んじゃうと即バーストでだいたい終わってしまう
キリコとかキリイとか男性無口主人公は名前が似るのか
そしてこのままじゃキリイもキリコの二の舞になる
早く続きを落とすんだー!間に合わなくなっても知らんぞー!!
>>161 核融合炉の宇宙世紀MSがダメでバッテリーなSEED系がOKな理由がわからん
消耗部品のこと言ってるなら、SEED系でも交換は不可能だろ
>>164 核反応炉の稼動限界時間は冷却問題を除けば事実上存在しないのは知ってる。
でも炉の冷却のために火を落としたら再起動できるだけのエネルギーを持ってこれないだろうから、
宇宙世紀のMSはSEED系に比べてかなり使い伸ばしづらいと思ってるのは俺だけ?
炉の冷却問題より先にガチガチの固定化で消耗を抑えた機体にガタがくる、というオチも否定しきれないのが苦しいけど。
test
そもそもミノ粉無いと動かないぜ!
みのもんたを粉末にして散布すれば解決するよね?
169 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/23(木) 18:59:58.05 ID:DNK2pN8A
なにそのグロ展開
ハルケギニアでも補充の利くミノタウロスを粉にしてはどうだろう
みの虫の方が集めやすそう
クロウ・ブルースト氏ならハルケギニアにて器物破損でまたもや借金を背負い
ルイズに肩代わりしてもらう代わりに使い魔をする展開でいけるかも
苦労は生身の腕っぷしもあるしな
でもタルブに何が祀られるんだか…
破戒の王かアリエティスの残骸とか
シオニーたんの銅像とか
ネクストACはどれだろうと、召喚したらマズイだろうな。
格納庫で待機状態ならともかく、稼働状態ならルイズ即死は確定だもの。
マイナーだが、ヤマトタケルというアニメに登場した主人公機のスサノオを含めた
魔空戦神というロボは生きた金属でできていて自我と自己再生能力を持っている
しかも食料はそこらの岩石で良いというお手軽さ
専門の魔空戦士か、主人公のように時間をかけて心を通わせない限り、動かせない、あるいは
暴走してあたり一面焼け野原にしてしまうのが難点だが
巨人ゴーグならメンテいらずだぜ。
空飛べないのがネックだけど。
破壊するにしても、エクスプロージョン以外じゃ現代へいき使っても
傷1つ付かないしろもんだけどな
よし分かった。白の1・ニキ=ヴァシュマールを操手ごと召喚しよう。
ゴーグか、あれも好きだった
召喚されるならやはり本編が終わってからか
>>176 アクアビットマンか、コジマでハルケギニアが熱くなるな
>181
作品もボーイミーツガールだし。
ルイズとサイトの間にいても違和感が無い
>>172 『Z』なら、第二次のクロウより前作のランドのほうが召喚向きじゃね?
何せ 『さすらいの修理屋』、劣化したパーツも 修理しながらダマシダマシ使うとか。
コルベール先生の協力があれば、『ガンレオン ハルケ改修バージョン』なんてのもアリかも。
>>137 真ん中のイデオンよりでかいのなに?
まぁ、巨大ロボットといえばあさりよしとおの「ギオ」が究極だよな
>>150 ロボットが内股で走ってきたのに噴いたw
>>161 フルメタのサベージならコッパゲでもなんとかなるかも知れん
小ネタでソースケ召喚あった様な気がするが、ゼロ戦の代わりにサベージ置いて長編もいけるか?
ガンヘッドはロボットに入るよな。酒で動く超ハイテク兵器
龍神丸とかグランゾートとかなら問題は少ないな
戦神丸ならケータイのバッテリー次第だけど
>185
『無敵鋼人ダイターン3』の主役ロボット、ダイターン3。
しかし、思った以上にグレートマジンガーとダイラガーが小さいな。
そして、ALIELやジャイアントロボが思った以上に大きい。
>181
ゴーダ伯に見えた。
ルイズを見てナーシアを思い出し、ついつい肩入れしちゃうのだな。
あれで苦労人だから小間使いも出来ないでもない。
勝手に治って進化してしかも増える!!
そんな素敵なデビルガンダム
小道具によっては交流電気の50Hz100Vを発電させられる風のメイジ大変です
卒業式で時空(とき)を超えた空へ旅立っていった熱血最強ゴウザウラー。
本当に時空を超えてハルケギニアへ到達。聖地からそのままロマリアまで飛んで
行ってくれれば、カタコンベ収容も難しくなさそう。
195 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/23(木) 23:40:50.35 ID:miO/lx9p
北斗の拳からレイを召喚する。
レイ「!?アイリ!」
ルイズ「何のこと!?」
レイ「アイリ!お前の兄のレイだ、忘れたのかアイリ!?」
ルイズ「アイリって誰よ?それに私に兄なんていないわよ!」
ギーシュとの決闘では、ルイズを侮辱され逆上し
ゴーレムを木っ端微塵にする。ギーシュ死亡ルートに突入か!?
>>185 内股で走ってくるというので最近読んだ進撃の巨人思い出した
勝手に直ると言うか進化するSPヴァンガードとか素敵だと思うんだ……
>>180 疫病で死にかけた飛龍(フォルケ・ロー)を召喚でも面白いかも知れんぞ?
個人的には風石を利用して空を舞う海龍(ガルディーネ・ウー)が見たいけど
>>150 こりゃすげー……戦隊もので誰もが思うことを実際やるとこうなるとは
>>192 しかし、怪獣みたいなガンダムってひどくね?
大体あってると思うけどひどくね?
武装錬金から坂口照星とバスターバロンはどうか。
普段は核鉄として携帯してるから、建物の中にいきなり出現なんてことも可能(身長57mだからほぼ確実に建物ぶっ壊すけど)。
大嚢王
何処でもダウンロードできるから、室内でも運用可能
木星くらいの部屋じゃないと辺り一面元素変成されて、肉と駆除系になるけど
>>202 小ネタでやってたな
狭い場所だからバスターバロンは出せないけど素手でワルドをボコボコにしてた
>>194 ザウラージェットって、確か学校の校舎そのものだったハズだから、
ロマリアに行くより トリステイン魔法学院と一体化して変形合体して欲しい。
>>199 群龍伝の初期名前ありキャラ、だいぶ死んでるから死んだ後召喚されたってことにすると
戦記物ができるね。
死んだ中で主人公格はやはりローエンのような気もする。
>>201 元々は地球環境浄化用だからね
モビルファイターと言うか、そもそもロボットと言うカテゴリに合致するかどうかすらあやしい
しかし本来の用途を考えるなら地下の風石問題に対するジョーカーになりそう
例の無限に錬金する装置とかそっち系の立ち位置?
スクライドの崖っぷちのマクスフェルとか
助けて僕のスーパーピンチロボ!
そういえばエヴァンゲリオンもロボットに分類するかは怪しい代物だな
エヴァは人造人間だったんじゃないか?
メンテフリーのロボといえばアストロガンガー。
どっちかと言えばゴーレムやガーゴイルの分類かもしれないが。
マァーベラァー!!
チェーンジ! レオパルドン!!!
ソードビッカーーー!!
214 :
現スレ194:2011/06/24(金) 13:42:07.50 ID:4d1JDAp4
またも熱血最強ゴウザウラーより、機械化帝国の面々。
部品やメンテがどうの以前に、自然物、有機物さえ機械にできる能力がある。
ロボならジアースが・・・
サイトがココペリ役でシエスタがマチのポジション
合体せよ、機皇帝ワイゼル∞!!
コロッケが食べたいナリ
サガフロンティアのレオナルド博士とか特殊工作車は?
仮面ライダーアマゾンを召喚すると
ギーシュ。ヴェルダンテとの間に三角関係がッッ!
「平民が僕の使い魔に触れるんじゃない。決闘だ!」
ルイズ&モンモン
「………………」
タルブ辺りでヴェルダンテ死にかねないな
シャイニングウインドから心剣士召還でとりあえず火と氷は確保出来る。
グレンラガンのカミナは熱い展開が期待出来る。
時に、ヴェルダンデって性別何だっけ。
>>204 ありがとう。読んでみる。
レオナルド博士言われると鷹の爪の方が出てくる…
無茶苦茶チートだけど召喚直後にルイズが「…熊?」って言って流血沙汰必至
あいつトイザラスのイメージの方が強いわ
>>216 吸収するシンクロモンスターどっから持ってくるの?
>>225 吸収する必要なくね。機械としてのワイゼルの動力はモーメントだろうし
227 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 18:24:44.07 ID:3rTwfI0k
「なんだ…この巨大ゴーレムは…」
ゼロ魔側から見たらこんな感じか
すまん、間違って上げてしまった
ぜろろとか理想郷やにじファンに移ってる作者がいるけど
そうしたい場合って、ここで報告した方がいいのかな?
した方がわかりやすいというのもあるけど、離脱宣言とかは欲しいかな。
エターなってる作品の中には無言撤退とか多いし。
モブキャラを色々呼び出す妄想してると意外と楽しい
ロッテリ屋の店員とか
りっちゃんを召喚してどうするつもりだ!
>>232 こちらで読まれますか?
それともまとめサイトで読まれますか?(ガクブル)
モブキャラ…ヤムチャさんのことか
こちらで…!
>>218 サガフロンティアからだとクーンが面白いかも。
最初はあの姿だからルイズは喜ぶでしょうけど姿が変わっていくからそれにどんな反応を示すのやら。
ドラゴン系なら確実に喜ぶだろうけど不死系や無機質系はねえ。
植物系ともなると生物ですら無いからなあ。
サンフラワーになった日にはもう・・・
サガ・フロンティアなら
「いらん」
「邪魔だ」
「白薔薇を返せ!」
と、全プレイヤーから顰蹙を買いまくった赤カブを召喚とか
あまりの役立たずぶりとキモさで話にならんな
植物は生物だ
サガフロといえば鋼の続きみたいのう
みなさんよかったらつかいまのじかんの代理いきます
「つかいまのじかん 1時間目」
「今日から新しい先生来るってー」
「マジ!?」
「ミスタ・コルベール言ってたー」
「どんな先生かなー」
トリステイン魔法学院の2年1組教室は、新任教師の話題でもちきりになっていた。
「リン、何やってるのよ。下着だけで」
次の授業の準備をしつつそう問い掛けた2年1組生徒ルイズ・ヴァリエールの視線の先には、
「待って。今キュルケちゃんに速報を──」
長いツインテールを髪飾りで束ねた少女──ルイズが召喚した使い魔・九重りんが、ルイズの言葉通りショーツだけという姿で「遠話の手鏡」を操作していた。
(『お姉さんみたいな先生』、イメージはこれですね)
一方その頃、噂の新任教師・マチルダはトイレの鏡で身だしなみを確認し終えて、教室に向かっていた。
(ええと、2年1組……)
と歩いているうちに目的地である2年1組教室前に到着、扉に手をかける。
「は──」
と開けた扉の向こう側では、扉が開いた事に気付いたりんが下着姿で「遠話の手鏡」片手にマチルダの方に振り向いていた。
(2年生でよかったです。前の授業が体育だったとは……)
そう考えつつ黒板に自分の名前を書くマチルダ。書き上げると教室内を見回し、
「今日から1組の担任になった、マチルダ・サウスゴータといいます。皆さん、よろしくお願いします」
『お願いしまーす!』
マチルダの挨拶に生徒達が大声で挨拶を返した。
「それではまず、皆さんの顔と名前を覚えるように出席を取ります。キュルケ・ツェルプシュトー」
「来ていません」
キュルケに代わり、「遠話の手鏡」を操作していたルイズが気の無い返事を上げた。
「ルイズ・ヴァリエール」
「はい」
自分の名前が呼ばれても、ルイズの態度は変わらない。
「リン・ココノエ」
「はいはいはあーいっ!」
名前を呼ばれるや否やりんは満面の笑みで起立し、マチルダに矢継ぎ早に質問してくる。
「ねーねー、サウスゴータ先生って何歳?」
「ええと、23歳ですが……」
「独身ですかー?」
「そうです」
「彼氏いますかー?」
「いや、ちょっ……、今は出席を取っていますから」
赤面しつつ出欠確認を続行しようとするマチルダの注意に、りんはかすかに憐憫の表情を浮かべ、
「あ、いないんだ」
その言葉に教室内はどっと笑いの渦に包まれる。
(いえ、いませんけれど……)
「じゃあ、今日からりんが先生の彼女ね☆」
「は?」
りんのとんでもない発言にマチルダが呆気に取られていると、彼女は上目遣いでマチルダを見上げて瞳を潤ませる。
「だってえ〜、先生に裸見られちゃったんだもん♪」
『きゃー!』
「ミス・サウスゴータ、えっちー!」
りんの言葉に、教室内の女子生徒達が一斉にどよめいた。
「いえ、あれは……(ミス・ココノエ、ませていますね……)」
その時、マチルダは自分に向けられている視線に気付いて振り返る。
するとルイズが、「遠話の手鏡」で2人の様子を撮影していた。
「そこ! 画像を撮影しないでください!」
「動画ですけれど?」
「もっと駄目です!」
しれっとした態度で返したルイズの言葉にマチルダはさらに慌て、それを聞いた生徒達の笑い声が教室内に響いたのだった。
「ミスタ・コルベール、さようならっ」
「皆さん、さようなら」
少々遅い時間まで残っていた上級生達が、ロングビルに挨拶して家路に着く。
「気をつけてくださいね」
「ミスタ・コルベールー、さよーなら」
そこにマチルダが職員室から顔を出し、声をかける。
「ミスタ・コルベール」
「ミスタ・ギトーが辞められた訳ですか?」
マチルダ・コルベールは、屋上に場所を映して話していた。
話の内容次第では周囲に人がいない方がいいかもしれないと、マチルダが判断したからだ。
「それは、ですからご病気で……」
「病気とは、何の病気ですか?」
そう曖昧な言葉を返したコルベールだったが、マチルダの追求は続く。
「……ほら、途中で担任が変わる事は子供にはショックではありませんか。やはりフォローするためには私自身がよく知っておかなければと……」
それを受けて、コルベールは溜め息を吐き口を開く。
「……実は、1組には不登校の子がいまして……」
「不登校ですか?」
ふとマチルダの脳裏に、出欠簿に欠席を現す×が並んでいるキュルケの名が浮かんだ。
(……ミス・ツェルプシュトー)
「勉強のできるおとなしい子なのですけれど、別にいじめがあった訳でもありませんし……。ミスタ・ギトーが何度も家庭訪問しましたけれど駄目で、もうずっと……」
ロングビルはそこまで言うと再度溜め息を吐き、
「ミスタ・ギトーも指導に行き詰まって悩んでいたのでしょうね。何て言いますか……、だんだん情緒不安定になって。突然暴れたり泣き出したり……。オールド・オスマンが病院に連れて行って、そのまま欠勤に。
あの時はもう父兄からも苦情が来ていましたし、後で本人から辞めたいと連絡が……」
いかん、しくじった。
>>244はなしです。
そんなこんなで1日の授業を終え、マチルダは職員室で一息吐いていた。
「どうでしたか、1組は?」
とマチルダに声をかけつつ、1人の男性教師がティーカップに入れたお茶を差し出した。
「はあ、元気と言いますか何と言いますか……」
「あはは、騒々しいでしょう、あの子達」
男性教師はそう笑い混じりに返して、もう1個のティーカップに注いだお茶を口に運んだ。
「ミス・サウスゴータも大変ですね。赴任してすぐにクラス担任では」
「あ、聞きました。前任の方が体調を崩して辞められたそうですが……」
「ええ……。そうそう、まだ教科書も来ていないのです。届くまで前の先生の教科書を使ってください」
そこまで会話して男性教師はまだ自己紹介していなかった事に気付き、
「私2組の担任のコルベールです。何でも聞いてください」
そう言って職員室から出ていくコルベールを横目で見送って、マチルダは机の引き出しから1冊の教科書を取り出す。
と、その中に便箋の一部と思しき1枚の紙片が挟まれている事に気付いて、それを広げてみる。
『死ね』
(えっ……)
紙片に殴り書きされていた言葉に、マチルダは目を見開いた。
慌てて紙片があった教科書を開くと、
『ギトーふざけるな』『死』『学院辞めろ』
と、紙片同様中傷の言葉がページの大半を埋めていた。
(何ですか、これは……)
さらに引き出しに入っていた別の教科書を開いてみても、やはり同様の言葉でいっぱいになっていた。
(何ですか、これは!?)
「ミスタ・コルベール、さようならっ」
「皆さん、さようなら」
少々遅い時間まで残っていた上級生達が、ロングビルに挨拶して家路に着く。
「気をつけてくださいね」
「ミスタ・コルベールー、さよーなら」
そこにマチルダが職員室から顔を出し、声をかける。
「ミスタ・コルベール」
「ミスタ・ギトーが辞められた訳ですか?」
マチルダ・コルベールは、屋上に場所を映して話していた。
話の内容次第では周囲に人がいない方がいいかもしれないと、マチルダが判断したからだ。
「それは、ですからご病気で……」
「病気とは、何の病気ですか?」
そう曖昧な言葉を返したコルベールだったが、マチルダの追求は続く。
「……ほら、途中で担任が変わる事は子供にはショックではありませんか。やはりフォローするためには私自身がよく知っておかなければと……」
それを受けて、コルベールは溜め息を吐き口を開く。
「……実は、1組には不登校の子がいまして……」
「不登校ですか?」
ふとマチルダの脳裏に、出欠簿に欠席を現す×が並んでいるキュルケの名が浮かんだ。
(……ミス・ツェルプシュトー)
「勉強のできるおとなしい子なのですけれど、別にいじめがあった訳でもありませんし……。ミスタ・ギトーが何度も家庭訪問しましたけれど駄目で、もうずっと……」
ロングビルはそこまで言うと再度溜め息を吐き、
「ミスタ・ギトーも指導に行き詰まって悩んでいたのでしょうね。何て言いますか……、だんだん情緒不安定になって。突然暴れたり泣き出したり……。オールド・オスマンが病院に連れて行って、そのまま欠勤に。
あの時はもう父兄からも苦情が来ていましたし、後で本人から辞めたいと連絡が……」
翌日の放課後、マチルダは教室に残って書類仕事をしていた。
(不登校の指導に悩んでの事かしら……? それじゃあの落書きはいったい?)
昨日聞いたギトーの事が気になって仕事がはかどらないでいたマチルダの所に、
「先生ーっ! 見て見て、四つ葉のクローバー!!」
と、四つ葉のクローバー片手にりんが駆け込んできた。
「あら」
「裏庭で見つけたの♪ 願いが叶うんだよー!!」
マチルダ自身今まで1度も見た事が無い四つ葉のクローバーに感嘆の声を上げると、りんもクローバーにキスせんばかりに満面の笑顔になる。
「押し花にしーよおっと♪」
机から便箋入りの袋を取り出したりんをマチルダは微笑を浮かべて眺めていた……が、
(ませていてもこういうところは子供ですね。可愛いでは──!)
そんなマチルダの笑顔は途中で凍結した。
りんが取り出した便箋の柄が、教科書に挟まれていた紙片の柄と同一だという事に気付いたからだ。
「……どういう事ですか?」
紙片をりんに突きつけ、マチルダは彼女に詰め寄った。
「なぜこのような事を……、ミス・ココノエ!?」
「……別に?」
犯人である決定的証拠を突きつけられたものの、りんの態度にまったく動じた様子は無い。
「あたし、ただギトー先生と同じ事しただけだもーん」
「同じ事、ですか?」
首を傾げたマチルダに、りんは手にした羽ペンを回しつつ話を続ける。
「うん、ギトー先生がキュルケちゃんに言った事。『声が小さい』『おどおどするな』『とろい』『すぐ泣くな』『お前を見てるとイライラする』……。『何で学校来ないんだ』って!? おめーのせいだっつーの!!」
一瞬言葉を失ったマチルダだったが、それでも強い意思を込めて言葉を口にする。
「……だからと言って、こんな……。病気になってしまうまで……。と……、とにかく、この事はミス・ココノエのご両親に連絡をしなくては──!?」
マチルダがそう言い終える前に、りんはおもむろにスカートの中に手を入れ下着を膝の高さまで下ろし、
「今ここで私が『助けて』って叫んだら……、先生どうなっちゃうと思う?」
「なっ……!?」
とその時、扉を開けてルイズが教室内に入ってきた。
「………」
焦るマチルダをよそにルイズはまったく気にした様子も無く、
「遅ーい! 何やってるのよ!」
「ごめんごめーん」
そう言いつつ下着を上げると何事も無かったかのように、
「じゃあね、先生。また明日ー♪」
と手を振って教室から去っていった。
1人教室に残されたコルベールは安堵する反面、
(恐ろしい子……!)
と白目になった。
一方、家路に着いたりん・ルイズは、
「何ただで脱いでるのよ!」
「ツッコむとこそこかよ!」
「知らないわよ、突っ込まれても」
「名前変えようか。九重りん・オブ・ジョイトイ」
「馬鹿」
そんな軽口を叩いていたが、
「……どうするのよ、ミス・サウスゴータ」
「大事なのはキュルケちゃんのメンタルだから、キュルケちゃん次第かな……」
りんはルイズにそう答えて溜め息を吐いた。
それからしばらく後、マチルダはツェルプシュトー邸を訪問していた。
「まあ、すみませんわざわざ。まったくあの子は……。キュルケー!」
「あ、いえ、できたらミス・ツェルプシュトーと2人で……」
キュルケを呼ぼうとした彼女の母を制し、マチルダは部屋への案内を依頼する。
部屋に入ったコルベールは、小さなテーブルを挟みキュルケと対面した。
(彼女が……。何を言えばいいのでしょうか)
キュルケにどのような言葉をかけるべきかわからず、
「ええと……、初めまして。その……、調子はどうですか?」
等と当たり障りの無い話題から始め、
「私驚きましたよ。とても成績優秀だそうですね? 凄いですよ」
「………」
キュルケは言葉を返さず、ただ俯いたまま沈黙するばかりだった。
(違います。もっと……!! 1番言うべきなのは……)
そう考え、意を決したように口を開くマチルダ。
「ミ……、ミス・ココノエから聞きました」
マチルダの口から出たりんの名前に、キュルケは初めて顔を上げる。、
「ミスタ・ギトーがあなたに酷い事を言ったと……。それであなたは……」
「……っ」
当時の事を思い出したのか、再度俯いたキュルケの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「あ……」
「うっ、ふっ、ひっく……」
(他の教師も親も誰も気付かず、学院を休む以外自分を守れなかった……)
泣き声を上げ始めたキュルケに伸ばそうとした手を途中で止めてマチルダはただ一言、
「辛かったのですね」
「んっ……」
と声をかけたマチルダに、キュルケもその一言だけで答えたのだった。
翌朝。
教室にいたりん・ルイズは、入ってきた人物に気付いて顔を上げる。
「キュルケちゃん!?」
そう声を出すが早いかりんは駆け寄ってキュルケの首にしがみつき、ルイズもかすかな笑みを浮かべ彼女の手を取る。
「リン」
「元気だった?」
「ルイズ」
「心配したぞ、こいつぅ! お仕置きっ♪」
「うふふふふふふふ」
りんにくすぐられ、キュルケが嬌声じみた笑い声を上げる。
そんな3人の様子を微笑混じりに眺めていたマチルダだったが、ふと1つの疑問が浮上した。
(ミス・ココノエ……、いったいどちらが本性なのでしょうか……? 友人想いの優しさと、大人を平気で陥れる残忍さと……)
マチルダは学級を受け持つ自信を少々喪失するのだったが、その時彼女の視界にりんの机に置かれた1枚の紙が入る。
『キュルケchanが学院に来れますように Rin』
と書かれていた便箋に、昨日りんが発見した四つ葉のクローバーが貼られていた。
それを見たマチルダは、そっと微笑むのだった。
「……リン」
その日の午後の教室。
「何でずっと休んでたキュルケより点が悪いわけ?」
「さー?」
ルイズの指摘をどこ吹く風と受け流し、りんは悲惨な点数のテスト答案片手に笑い声を上げていた。
(こちらの意味でも問題児ですか!)
2人のやり取りに、マチルダは頭を抱え心中でそう独白した。
以上、代理終わります
作者の方すいません。順序が少し違うの忘れてました。
>>235 ヤムチャ召喚は、間違いなく多くの人が一度は考えたと思う。
それを面白く書き上げる能力がないから書かないだけで。
ヤムチャより餃子の方がモブだと思う。
戦力インフレに完全においてかれたヤジロベー
ピラフ様を忘れないでやってくれ
あとシュー&マイも
ヤムチャだって余裕で地球粉々にする程度の戦闘力はあるからな
DBのメインキャラでゼロ魔世界との戦闘力の差があまりないのってサタンくらいじゃないだろうか
ヤジロベーも飛べないだけで相当強いからな
サタンは耐久力がゼロ魔世界じゃ酷すぎる高さになるw
まぁサタンはセルやブウの一撃すら耐えるからな。
フーケのゴーレムに踏まれてもほぼ無傷 で済みそうだ。
それに瓦14枚割りの一撃は一般人レベルだと最強に近いし。
強化されて、ヤムチャ位の強さにはなるかもしれないな
シリアスになると耐久力が激減するから
存外にワルドが難敵になるやもしれぬ
ボブ・サップよりちょっと弱いくらい、となんかのコメントで言ってた気がする
サタンはセルの手刀、ブウのパンチ、超一星龍の蹴りを
ビーデルはブロリーのラリアットをくらってもまだ余裕だった
この一族はただの人間にしては硬すぎる
>>261 原作での強さとなると…
・瓦14枚割り
・(Z戦士のいない)天下一武道会で優勝
・銃で武装した暴漢をあっさり叩きのめす
てなところかな。
リアル路線な格闘漫画だったら最強クラスの実力は間違いなくあるもんな、サタン。
>>261 語るスレでは散々既出、というより超有名な作品だぞそれ。
つまりサタンよりちょっと強いボブサップが人類最強ということか。
デビルマンじゃデーモン化してたのもそこらを踏まえていたのかもしれないなー(棒
サタンが居なかったら魔人ブウ編の終盤は詰んでたな
ゼロの氷竜、ブログの方で再会しとったな。
人類最強というなら、で思ったのが冴羽リョウとかシモ・ヘイヘとかゴルゴ13とか銃持ったタイプだった。
せいぜい耐久力という点でカタヤイネン?
いや、舩坂やルーデルはすでに人類の範疇超えてるから。
DBかぁ
ウサギ団の連中をw
ルイズとの相性的に考えて孫悟飯(爺さん)かな。
強さもハルケなら最強域だろ。かめはめ波撃てるし。
>>271 ふぉー・・・こんな感じで別の所で続けてる作者さんもいるのかー
ありがとう
DBだとセル編ぐらいから存在の意味が無くなりつつあったカリン様とかミスターポポとかでもいいんじゃないか?
他にも最初はシリアスキャラのはずがいつの間にかツッコミキャラに転向してたキビト界王神とか
ついでにREBORNからバジルが召喚されたってのも思い付いたけど
>>273 ルイズ詰んだな…
契約したら人参になるじゃねーか
DB・・・・・・・あのいらんコトした挙句飛行機から叩き落されて
「ひょっとしてわれわれはサイテイなんじゃないでしょうか」
で出番終わった三人組なんかどうだろう
戦闘力以外に高い(初期悟空とそれなりにやりあえる)し無双というか
無意味な混乱引き起こすほど実力無いしコルベールとは結構相性良いだろうし
ドラゴンボールだったら悟飯にボコボコにされて18号も吐いて弱体化したから
せめて自爆してみんな道連れにしてやろうと目論んだセルが召喚されて
ハルケギニア終了のお知らせ
>>269 リョウは100tハンマーにも耐えられますぞ。
リョウは素手で恐竜帝国の兵士倒せるんだっけ?
つまり、男の中の男たる神谷明さんを呼べばいいのか。
>>278 ドラゴンボールGTの最初に出てきたよ?
相変わらずで安心した。
>>275 倉庫ってしてるぐらいだから続けるのはこっちじゃねぇのか?
犬繋がりで黒犬騎士団団長ワイアルドを…………ルイズオワタ
>>285 レイプされて殺されてバッドエンド確定じゃねーかw
まあ奴レベルなら学院のメイジ全員でかかれば殺せない事はないだろ
ダメージ通る部分に気づけるかどうかだな
ダメージが通る部分……
肩の後ろの2本のゴボウの真ん中のスネ毛の下のロココ調の右?
戦闘処女ばっかの学院連中じゃきついだろうな
291 :
17の人:2011/06/26(日) 00:28:33.51 ID:SgCwgazy
またまた久しぶりに投下予告。
今度は大使い魔版「烈風の騎士姫」。
可能なら00:30に投下。
目の前に対峙する一頭のミノタウロス。
怯える子供たちの盾となっている少女は、自身も恐怖に押し潰されそうになりながらも、あの時教わった勇気の魔法で自分を奮い立たせる。
しかし、ミノタウロスはこのハルケギニアではかなりの強敵で、少女ではまだ太刀打ちできるはずが無かった。
それを嘲笑するように、ミノタウロスは嬲るように攻撃を繰り返す。
そして少女の肩を砕こうと振るった一撃が、アッサリ止められた。
「……こんな怪物相手に、頑張ったな」
一人の異形が、間に割って入り、ミノタウロスの一撃を片手、それも余裕で止め切った上、少女に話しかけてきたのである。
異形の顔は、光沢のある明るい緑色をした、赤眼の髑髏。
だが、少女は、カリーヌは全然怖いとは感じなかった。
むしろ、その顔を見て安らぎを感じてしまう。
「ライダーパァンチッ!」
異形がミノタウロスを鉄拳一発で吹き飛ばす。
その常軌を逸した力に、カリーヌも子供たちも目を丸くする。
ミノタウロスは辛うじて起き上がるが、足下がおぼつかなくなっていた。
そして異形がそら高く飛び上がり……
「ライダァァァーキィィィィィック!」
渾身の飛び蹴りはミノタウロスの胸板を貫通し、ついででミノタウロスの体を衝撃で真っ二つにした挙句、地面に派手に着弾してクレーターまでこしらえてしまった。
カリーヌも、子供たちもその光景を見て戦くどころか、異形の強さに瞳を輝かせている。
てっきり子供たちを余計怖がらせてしまったのでは? と心配していた異形は、安心しつつも少し呆気にとられてしまう。
そしてカリーヌは眼を輝かせたまま呆然としてしまった異形に話しかける。
あの時、終ぞ自分を助けてくれた騎士から、名前を聞くことが出来なかった鬱憤を晴らすかのように。
「私は、カリーヌ・デジレ・ド・マイヤールと言います!! あ、あなたの、おお、お名前は!?」
かなり興奮気味に名前を尋ねるカリーヌ。
何も言わずに立ち去るタイミングを逸してしまった事に気付いた異形はため息を堪え、変身を解除して元の姿に戻ってから、名乗った。
「タケシ・ホンゴー。それが俺の名前だ」
カリーヌや子供たちから見れば、普通の人間の姿になったようにしか見えなかったらしく、更に目を丸くしてしまう。
それに苦笑しつつも、本郷猛はカリーヌたちに別れを告げ、サイクロンに乗っていずこへと走り去った。
本郷猛、またの名を「仮面ライダー1号」。
ヴォォォーー…………
迫るノワール 地獄の亡霊
この国狙う黒い影 世界の平和を守るため
ゴー ゴー レッツゴー!!
輝くマシン
ライダージャンプ! ライダーキック!
仮面ライダー! 仮面ライダー!
ライダー! ライダー!!
ライダージャンプ! ライダーキック!
仮面ライダー! 仮面ライダー!
ライダー! ライダー!!
「仮面ライダー1号、本郷猛は改造人間である! 彼は自らを改造した悪の秘密結社、ショッカーを滅ぼし、その後も地球を守り続けた!
仮面ライダー1号は、今度はハルケギニアに降臨したのである!!」
仮面異世界(マスカー・ワールド・オルタナティブ)
本郷に助けられてから数ヵ月後。
彼に助けられて以来、騎士になるという夢への決意を更に固めたカリーヌは、魔法衛士体に入るためだけにわざわざ男装してトリスタニアへと来た。
この時代、未だに魔法衛士隊が頑なに女子禁制を貫いているからである。
しかし、着いて早々柄の悪そうな貴族のボンボン相手の決闘の予約を2件も入れてしまい、挙句の果てに父から入隊時に頼れと言われた元衛士、ドラギニャン卿も屋敷を手放して行方知れずであった。
頭を抱えそうになり、それを堪えながらもチクトンネ街をとぼとぼと歩くカリーヌ。
瞬間、カリーヌは一人の男と擦れ違う。
「……カリーヌ?」
「へ!?」
自分の名を呼ぶ声に驚いたカリーヌが振り返ると、そこには本郷がいた。
「タケシ!?」
「どうしたんだ? 男の格好をして」
数分後。
カリーヌから事情を聞かされ、「なるほど」と頷く本郷。
一昔前の騎士衣装に身を包んだ美少年(実際は美少女)と、濃さと爽やかさを兼ね備えた二枚目青年のツーショットは、道行く女性の目を引き付けるが、二人は殆ど意に介さない。
「魔法衛士隊に入るために、か。うちは古臭いからな。最近、隊長の娘さんが特例として入隊できたが、あくまでも体を壊した隊長の代理だからな」
「そんなに……。うち? タケシ、魔法衛士隊に入ってるの!?」
「俺も、特例さ。俺はこの国で言う『平民』なんだが、たまたまオークの群れを素手で蹴散らしていたのを、休暇中だった隊長に見られてな。スカウトが熱心過ぎて断りきれず、名誉衛士として入隊させられたんだ。
それにしても、男装とは考えたな。だが、バレないように細心の注意を払う必要があるぞ」
「旅立つ時、父様にも言われたわ。だからバレないように、タケシも協力してね。それと、今の『ぼく』はカリン・ド・マイヤールだから」
凛とした少年の顔で頼む「カリン」。
本郷はその背伸び振りに「も」苦笑しつつ、快諾した。
チクトンネ街は、銀の酒樽亭。
立地とか色々名前負けしている感は否めないが、料理と酒は名前に恥じないものが出る。
なので、本郷は昼か夜は、大抵ここで腹ごしらえをするのが日課になってしまった。
また、魔法衛士隊の仲間がここにいることが多いのも、本郷には大きい。
すっかり顔馴染みになった本郷の来店に、看板娘のターニャも陽気に声をあげる。
「いらっしゃい! ホンゴーさん。あら? その子は?」
いつも一人で来る本郷が連れ、それも掛け値なしの美少年を伴って来たのだ。
ターニャもこれには目を丸くするしかない。
周囲の目もその美少年、カリンに釘付けになった。
「ちょっとした知り合いだ」
簡単に答える本郷。
一方、カリンは視線に対して我関せずとばかりに本郷に話しかける。
「ここのオススメって?」
「ラグドリアン湖から獲れたイワナだ。不思議なことにここのは生の方が美味い」
和気藹々とした雰囲気の中、それに水を差すかのように、酔客がカリンに絡む。
かなり酔ってるらしく、本郷がいるのもお構い無しだ。
「おいおい、ここは酒場だぜ。ガキがミルクを飲みに来ていいとこじゃないんだぞ」
絡む酔っ払いにムッとしたカリンであったが、本郷が肩を掴み、制止する。
それから数分後……。
なおも絡み、終いには逆切れした挙句銃を取り出して、突きつけた酔っ払いを杖から発した暴風で吹き飛ばしたカリン。
本郷は隙を突いたその手際に感心しつつ、床に転がった銃を拾う。
「都会はああいったのが出てくるんだな」
「どこだろうと、人が集まる所はああいうのが出て来る」
呆れた感じで言うカリンに相槌を打ちながら、本郷は銃の重さを手の感触で確かめる。
そして銃口を自分に向け、引き金を引いた。
乾いた音が響き、店にいた全員が凍りつく。
弾丸は発射されたが、本郷の唇に当り、完全にひしゃげていたのに対し、本郷の唇は火傷すらしていなかったからだ。
「どうして自分に向ける……?」
「人を避けて撃っても、店に穴を開けてしまう」
「だったら一旦外に出て、空に向けて撃てばいいじゃないか」
カリンの的確過ぎるツッコミを聞き、目から鱗が落ちたような顔になる本郷。
「その手があったか」と言わんばかりの表情である。
カリンもこれには流石に少々呆れ気味だった。
たったーん、ででででん♪
たったーん、ででででん♪
「全く、幾らなんでもズレ過ぎじゃないか?」
本郷の行動に本気で呆れた一人の男が、話しかける。
その男は、銀色の髪に左目のモノクルが特徴的だった。
「サンドリオンか」
「俺に気付かなかったのか?」
「ちょうどカリンの相手をしていたんでな」
本当は気付いていたのだが、彼がいつものように物思いに耽っていたので、気を遣って知らないフリをしてただけである。
「で、そこにいるカリンって子は何者だ?」
「……入隊希望者だ。魔法衛士隊への」
本郷の言葉に一瞬詰まるサンドリオン。
魔法衛士隊の現状を知っていれば、入隊を希望するなどあり得ないからだ。
「お前、本気でうちに入隊する気なのか?」
「それはどういう意味だ! ……『うち』? タケシ、コイツも魔法衛士隊の衛士なの?」
サンドリオンの質問に激昂するカリン。
が、同時に彼の一言に反応し、本郷に質問してしまう。
当然、本郷は肯定した。
「あんな感じだが、とりあえず同僚だ」
本郷からの答えに、硬直するカリン。
名誉職とはいえ身なりと姿勢はしっかりと整っている本郷とは違って、サンドリオンは既に態度や表情からしてだらけているのが丸分かりだからだ。
流石に疑いの顔を向ける。
「あんなのがか?」
「事実だ」
淡白に言い切る本郷。
流石にムッとしたのか、サンドリオンの方もからかうように言う。
「やれやれ、うちに入りたいとは随分と物好きだな。それとも単なる物知らずか?」
「どういう意味だ!?」
瞬時に怒り出すカリン。
それを見たサンドリオンは更に調子に乗ってからかう。
見かねた本郷が止めようとした直前、店内に客が二人はいる。
『サンドリオン、ここにいたか! ……あれ!?』
魔法衛士隊での同僚、バッカス&ナルシスである。
二人は、サンドリオンを発見したと同時に、カリンの姿も視界に入れてしまい、目を丸くする。
もちろん、カリンの方も目を丸くした。
「貴様らも、魔法衛士隊に入っているのか!?」
本郷は、カリンの言葉で、彼女の決闘相手がバッカスとナルシスであることを瞬時に悟った。
そして本郷の予想通りと言うか、何と言うか、バッカスとナルシスはサンドリオンに決闘の介添えを頼んだのである。
セント・クリスト寺院の裏側。
言い争いの末に、ここで今すぐ決闘することになり、カリンと本郷達はわざわざここまで移動したのである。
月明りの松明のおかげで、周囲は意外と明るい。
が、それで松明が照らす範囲の外はかなり暗く、人によっては不安になるのは確実であった。
「静かな所だな」
なのにカリンはかなり平静である。
これにはサンドリオン、バッカス、ナルシスの三馬鹿だけでなく、本郷も違和感を覚える。
サンドリオンたちが話しこんでる中、本郷は瞬間的に気付く。
今のカリンは、「恐怖」が欠如していることに。
(さっきまではそんな風には見えなかったが……)
そして、本郷の疑いは、カリンの変化を見たことで確信へと変わる。
カリンは急に震え出したが、こちらに背を向けてから何かをした直後に震えが止まり、さっきの平静さを取り戻していたのだ。
(自己暗示か)
本郷が確信する傍らバッカスとナルシスの内、どちらが先にカリンと決闘するかで揉めたので結局カリンに選んでもらおう、という結論に達した。
カリンは酒場での一件を根に持っていたらしく、あっさりサンドリオンを一番手に指名する。
そして指名した理由と長々と文句交じりに説明していた。
これにはげんなりしたのか、サンドリオンは拒否しようとしたが聞き入れられず、目で本郷に助けを求めるもこちらも突っぱねられてしまう。
流石に応じる以外に選択肢が無いとようやく悟ったサンドリオンは、渋々杖を構える。
それに呼応するようにカリンも杖を構え、決闘が始まった。
サンドリオンは素早く詠唱し、杖からウィーター・ウィップを発現させ、カリンに向ける。
しかし、カリンは「ウインド」で切り刻み、更に勢いを増して、そのまま周囲に吹き荒らす。
本郷はギリギリのタイミングでジャンプし、寺院の屋根に避難。
サンドリオンは水のクッションを魔法で発現させ、壁に叩きつけられた衝撃を殺いだが、バッカスとナルシスはまともに壁に叩きつけられてダウンしてしまう。
「バッカス! ナルシス!」
寺院の屋根から飛び降りて難なく着地した本郷は、慌てて二人に駆け寄る。
壁にぶつけられたダメージが大きく、意識は失っていなかったが二人とも激痛で立ち上がれない。
ナルシスは細身のせいか咳き込んでいたが、バッカスは筋肉が防壁になったらしく比較的軽傷で済んでいた。
「……! タケシ、お前こそ大丈夫か?」
「吹き飛ばされる直前に、ジャンプで寺院の屋根に非難した」
「相変わらずだな……」
本郷の桁違いの身体能力に、呆れ半分で感心するバッカス。
そして、バッカスとナルシスはのっそりであったが何とか立ち上がった。
一方、そんなことはお構い無しにカリンとサンドリオンは壮絶に切り結ぶ。
ナルシスはまだ咳き込みながらも、防戦一方のサンドリオンに激しく打ち込むカリンの動きを見て、呟く。
「タケシ、あの少年の動き、どう思う?」
「経験不足が動きに出ているな。その内サンドリオンにも見抜かれるだろう」
「サンドリオンにとってはそれが勝機か……」
本郷の読みの通り、サンドリオンはカリンの動きの隙を突き、形勢を逆転させる。
しかし、サンドリオンはカリンの美しさに見とれた挙句、無理な動きで傷を開いてしまい、そこを突かれて吹き飛ばされてしまった。
決闘はカリンの勝ちに終わったが、サンドリオン側の事情を知らないカリンは自分の勝ちに納得しかねたのか、サンドリオンに激しく詰め寄る。
見かねた本郷がなだめようと両者の間に割って入った直後、サンドリオン目掛けてダーツが飛んで来た。
すぐに察知した本郷が空高く蹴飛ばした直後、空中でダーツは大爆発。
それに驚いてへたり込んでしまったカリンを尻目に、本郷達は構えた。
今の大爆発を合図にしたかのように、人影が6つ、暗がりからユラリと現れる。
暗い黄銅色のグローブとブーツ、マスクをした、暗闇色の目をした異形。
色合いこそ大幅に違えど、そこにいたのは本郷のもう一つの姿にそっくりの存在であった。
「またオム・クラーヌの偽者どもか」
「まあ、この間は13人も出てきたんだ。その時よりは楽だな」
どうやら交戦は一度や二度ではなく、バッカスとナルシスは至極冷静であった。
サンドリオンも手馴れているのか、大幅に精神力を消耗しているにも拘らず、顔色一つ変えずに杖を構える。
本郷も、冷静な態度を崩さず、起き上がるカリンに手を貸して引っ張りあげた。
「オム・クラーヌ……、タケシのことなんだろ?」
「そうだ。こっちでは、『髑髏のような仮面』で顔を隠しているから、『髑髏男(オム・クラーヌ)』とも『髑髏仮面(マスク・ド・クラーヌ)』とも呼ばれることがある」
カリンの疑問に本郷が明確な答えを提示している横で、オム・クラーヌの偽者……新型ショッカーライダーを相手にサンドリオンたちはブレイドで応戦し、その剣捌きで優位を保っていた。
しかし、サンドリオンは精神力の消耗と、他の二人以上に受けたダメージが響き、徐々に動きが鈍っていく。
それ気付いたかのように、本郷は構える。
「ライダー……変身! トォーッ!」
本郷は天高く飛び上がり、それに合わせてベルトの風車が回転。
それに反応して体内の各種メカニズムが起動。
ベルトの中央部が発光し、瞬間的に本郷の姿が変わる。
そして、着地。
「アイツはいつもああだ。俺達がピンチにならないと戦いに加わろうとしない」
口では文句を言っているサンドリオンであるが、顔は笑っている。
バッカスとナルシスも、本郷が変身したことで、自分達の勝利を確信していた。
『タケシ・ホンゴー……』
6体全ての新型ショッカーライダーがそう呟き、一斉に本郷―仮面ライダー1号―に襲い掛かる。
四方から飛んで来るダーツ型爆弾を全て弾き返し、1号は爆煙を掻い潜って新型ショッカーライダーの内の一体の顔面を盛大に殴り飛ばす。
残りの新型ショッカーライダーの至近距離からの攻撃も易々とかわし、的確なカウンターを連続で炸裂させる。
「トォッ!」
新型ショッカーライダーは基本性能に関しては1号を大きく上回る。
しかし、ショッカーを始めとする数え切れぬ悪の軍団との戦いで得た経験や、天性の身体能力と才能が性能差を埋めて尚、多勢の敵を圧倒する絶対的な戦闘力を本郷にもたらした。
「相変わらず、エルフなんか話にならない強さだな」
「まるで、伝説にある『始祖の使い魔』だな」
1号の嵐の如き戦い方を見て、感慨深く呟くバッカスとサンドリオン。
ナルシスもまた、意味深なことを呟いてしまう。
「まるで、ジョー・シマムラだな……」
そんな仲間たちの呟きを知ってか知らずか、1号は壁目掛けてジャンプ。
激突する前に壁を蹴って別の壁目掛けて飛び、また激突する前に蹴って更に別の壁へ。
それを繰り返すことで新型ショッカーライダーを惑わし、隙を突いて壁目掛けて飛ぶ途中で技を炸裂させた!
「ライダー変幻姫風キック!!」
壁を蹴って別の壁目掛けて飛ぶ途中で敵の顔面にキックをかます、という動作を敵が倒れるまで繰り返す、複数の敵を狭い所で単騎撃破するための技である。
勿論、敵にぶちかますキックも一発ずつなんて数ではない。
先述の通り「敵が倒れるまで」なので敵の数の何倍ものキックを繰り出すのだ。
この技を食らい、新型ショッカーライダーは一人、また一人とその顔面を盛大に粉砕され、事切れる。
1号が着地した後には、その場に立っている新型ショッカーライダーは一人としていなかった。
「ホ、ホホッホホホッホホッホホンゴー……」
辛うじてまだ息の合った最後の一人が、口に仕込んだ火炎放射器を展開したが、突如吹いた突風に吹き飛ばされ壁に激突。
嫌な音を立ててそのまま動かなくなった。
1号が視線を変えると、そこには杖を付きだして仁王立ちとなったカリンがいる。
その表情は、茫然としているのか嬉し過ぎて表情が固まってしまったのか、測り兼ねるものであった。
「カリン……」
「…………タ、タケシ。ボ、ボクは」
1号は震えだしたカリンを気遣うかのように、サイクロンを呼び出す。
そしてカリンを抱きかかえてサイクロンに乗せ、自身もまたがる。
「どうした!? タケシ」
「……足音と怒鳴り声が聞こえる。声からしてユニコーン隊が近づいているようだ。俺はカリンを連れてこの場を離れる。奴らへの説明は頼んだぞ」
サンドリオンに尋ねられ、1号は簡潔に理由を話す。
そしてカリンを乗せたまま1号はサイクロンでそのまま走り去っていった。
「ああ! まただ!」
説明責任を放棄してそのままいなくなった1号に対して、悪態をつくサンドリオン。
バッカスとナルシスはもはや諦めの境地に入ったかのように呟く。
「まあ、あの姿のせいでユニコーン隊から何度も難癖つけられてるからな」
「ユニコーン隊の相手を俺たちに押し付けたくもなるな」
「どうしてあの場から逃げたの!?」
「ユニコーン隊が近づいて来ていたからだ。詳しいことは俺の部屋に戻ってから話そう」
1号はカリンの疑問にそう答え、近道とばかりにサイクロンをフルスロットルでジャンプさせる。
カリンは不思議と、自分を乗せて天高くジャンプしたサイクロンが無事に着地すると確信してしまった。
仮面ライダー1号―本郷猛―が駆っているからなのだが、カリンはそれを漠然としか認識できていない。
果たして、新型ショッカーライダーを仕向けたのは誰か? 敵は何者なのか? 事態が謎に包まれたまま、仮面ライダー1号は戦う。
水の国にやって来た
誰だ? 誰だ? 絶望砕く嵐の男
仮面ライダー! 命のマスク
回せ! 噴かせ! アフターバーナー! スピード全開! サイクロン!
水の国を守りぬけ
ノワールどもをブチ倒せ
ライダー! ライダー! 仮面ライダー!!
300 :
17の人:2011/06/26(日) 00:51:25.88 ID:SgCwgazy
投下終了。
これがリハビリになればいいんだけど…。
投下乙
オッテュ
にんにん
0,5倍だと1024文字か
乙です
皆さんこんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、49話投稿開始します。
三重の異界の使い魔の人、先日は登録ありがとうござました。
さるさん回避もいつもどおりに、10分後にはじめますのでよろしくお願いいたします。
期待
もう49話か…
第四十九話
堕ちた聖地
殺し屋超獣 バラバ
地帝大怪獣 ミズノエノリュウ
灼熱怪獣 ザンボラー
台風怪獣 バリケーン 登場!
「怨念がある限り、幾度でも蘇る」
その言葉のとおり、悪魔は幾度となく人類を恐怖に陥れてきた。
何度倒されようと、滅ぼされようと、封印されようと消えはしない。
悪魔は死なない。なぜなら、その命の源は生き物の発する怒り、憎しみ、欲望といった邪悪な心。マイナスエネルギー。
人が人であり続ける限り、悪魔もまた不滅なのだ。
それは、時空を超えた世界でも例外ではない。
ウルトラマンAによって、溜め込んだすべてのマイナスエネルギーを昇華させられた悪魔は、復讐を誓って姿を消した。
以来、闇に潜んでじっと機会をうかがってきた悪魔は、三ヶ月の月日を経てついに地上に再び現れた。
エルフの住まう地サハラ。その洋上の群島『竜の巣』から、新たな悪夢が幕を開ける。
「お前は、いったいなんなんだ……?」
恐怖に支配された鯨竜艦の艦長が、人の形をした闇に問いかける。
黒衣の男は不敵に笑い、マントを翻して天を仰いだ。
まだ、エルフたちはその悪魔の名を知らない。ならば、二度と忘れずに恐怖で震えるよう教えてくれる。
黒雲がたちこめて、血のような真っ赤な雨が降り始める。
それこそが我ら復活のしるし。復讐のときは来たれり!
「我らは、異次元人ヤプール。今度こそ、ウルトラ一族を葬り去り、全宇宙を暗黒に染めてやる。さあ、我らの怨念を受けし
復讐の使者よ。この地に降り立て! 現れろ! 超獣バラバ!」
空が割れ、真っ赤な裂け目から凶悪なシルエットがひとつの島の上に降り立つ。
鋭い牙の生えた口、右腕に棘つき鉄球、左腕に鎌、頭部に剣を装着した容姿は、まさに全身凶器。
ヤプールによってアゲハ蝶の幼虫と宇宙怪獣が合成されて誕生した、その名も殺し屋超獣バラバ。
地上に足を下ろしたバラバは、裂けた口を開くと金属音のような遠吠えをあげた。それはまるで、ヤプールの復活の喜びを
代弁するかのようで、エルフたちは背筋を凍らせ、ヤプールは楽しげに笑う。
「ふっはっはは、頼もしいやつよ。遠慮はいらん、お前の思うとおりに破壊しつくせ。まずは、この艦隊から始末しろ!」
「なっ、なんだと!」
艦長の驚愕する声を喜ばしく耳に焼付け、ヤプールはきびすを返した。艦橋の空間に亀裂が生じ、人一人通れるくらいの
次元の裂け目が現れる。
「では、死にたくなければせいぜいあがいてみることだ。ふっ、ふっはっはははっ! あーっはっはは!」
呆然と、夢を見ているように立ち尽くすクルーの耳に哄笑を響かせ、ヤプールは異次元の裂け目へと消えていった。
だが、悪魔が去ったことは悪夢の始まりでしかない。見張り員の絶叫が艦橋に響いたとき、自失していた艦長たちは
最悪の現実の中に引き戻された。
「艦長! 怪物がこちらに向かってきます! は、はやく、はやく指示を!」
「はっ! あ、わ……せ、全艦戦闘配置! 砲撃用意、全砲門を怪物に向けろ!」
やっと我に返った艦長の命令で、遅まきながら鯨竜艦に搭載されているすべての砲の照準がバラバに向けられた。
鯨竜艦の装備は、回転式の大口径連装主砲塔が艦橋をはさんで前後に一基ずつ、あとは近接戦用の副砲として、
小口径砲が複数装備されている。その、一隻につき四門の主砲、艦隊は四隻だから十六門の砲が旋回して仰角を
上げていく様は壮観でもあった。
「艦長、全艦射撃準備完了であります」
「うむ」
砲術長からあがってきた報告に、艦長は落ち着きを取り戻した声で答えた。鯨竜艦に積まれている砲の総数はたった四門と
少ないけれど、進んだ技術力を持つエルフによって作られたため、人間の戦艦の持つ大砲の何倍もの威力を誇る。それが
全艦で一斉砲撃をおこなったとき、着弾点で無事でいられる建造物も、生きていられる生物もこの世界には存在しない。彼は
ずっとそれを信じて、誇りに思って水軍に籍を置いてきた。
だが、相手がこの世界のものではないとしたらどうだろうか? 艦長の「撃て!」という命令により、鯨竜艦隊は砲撃の
火蓋を切った。閃光、衝撃波に続いて砲弾が砲身を飛び出していき、硝煙がなごりとして風に舞う。
放たれた砲弾は、敵が巨大だったこともあって半分が命中した。バラバの巨体の各所で爆発が起こり、外れた弾も至近で
炸裂して、岩を猛烈な勢いで周辺に撒き散らす。相手が船であったなら、これだけでもう跡形もなく破壊しつくしていたであろう。
艦長や、艦隊のクルーたちは勝利を待ち望んで、炸裂した砲煙が晴れて、怪物が倒れ伏した姿が現れるのを待った。
しかし、煙が晴れたとき、そこには何事も無かったかのように平然と咆哮するバラバの姿があったのだ。
「ば、ばかな!?」
あれだけの砲撃を受けてまったく無傷だというのか。いや、そんなはずはない。これはたまたま当たり所が悪かっただけだ。
現実を受け入れられない者たちは、次弾装填を狂ったように叫び、準備完了と報告があがると同時に発射を命じた。
そして、結果も完全に再現された。二回目の砲撃は、最初より距離が近づいていただけに七割が命中したものの、一発
たりともバラバの皮膚を傷つけられたものはなかった。絶対の自信を持っていた力が、おもちゃ同然だと思い知らされる恐怖。
それはかつて地球人が幾度となく味わい、ベロクロンを前にしたトリステイン軍が感じた絶対的な力の差、それが今度は
エルフたちに襲いかかろうとしている。
「艦長! 怪物がこっちを、う、うわぁぁ!」
一隻の鯨竜艦の見張り員が絶叫したとき、バラバの口から真っ赤な火炎が放射された。回避運動をとる暇もなく、海面を
這って進んできた炎に鯨竜が丸ごと包み込まれる。それが、この船の最期となった。石造りの艦橋構造物は火炎にある程度の
抵抗を見せたが、生き物である鯨竜は高熱に到底耐えられず一瞬で焼き殺され、エルフたちが魔法を使う暇もなく、
全乗員を道連れに海中に没したのである。
「二番艦、ご、轟沈……」
艦隊旗艦の艦橋に流れた絶望的な報告に、顔を青ざめさせなかったものはいなかった。水軍の主力艦をものの一撃で、
そんなことが起きるなど、誰一人夢にも思ったことはない。
しかし、現実を拒否しても破滅しか待っていない。かろうじて冷静さを保っていた一人の将校が、自失して動けないでいる
艦長に怒鳴るようにして目を覚まさせた。
「艦長! 敵が迫っています。ご指示を!」
「ぁ……う。て、撤退だ! 全艦取り舵一杯! この海域を離脱しろ!」
艦長の悲鳴そのものの命令が、かろうじて艦隊を全滅から救うこととなった。バラバの火炎はさらに一隻の鯨竜艦を
撃沈し、続いて彼の艦の後尾を進んでいた船に襲い掛かった。その船の鯨竜は即死は免れたものの、熱さに耐えられなく
なって、勝手に海中へ潜って逃げていってしまった。エルフには水中呼吸の魔法もあるが、間に合ったかどうかは祈るしかない。
やっとのことで火炎の射程外に逃れたとき、艦隊は旗艦を残して全滅状態。母港に向かってよろよろと進む艦で、艦長に
できることは、ことの有様を本国の司令部に通達することだけだった。
『竜の巣にて、正体不明の敵と遭遇。敵は身長五十メイルを超える怪物を召喚し、我が艦隊は壊滅。敵は竜の巣を占領
せんものとする模様。至急、対策を乞う』
その報告が、本国の水軍司令部、さらにエルフの最高意思決定機関である評議会に届いたとき、彼らの反応は素早かった。
『あらゆる手段を尽くしても、竜の巣を敵の手から奪還せよ』
ただちに、水軍のみならず空軍にも、稼動全軍による竜の巣への出撃が命じられた。
鯨竜艦十隻、空中戦艦二十隻、空中巡洋艦十隻。これだけでもハルケギニアのすべての国の戦力を合計したに等しい
強大な軍事力だ。しかも、これはこのとき即時出撃可能な戦力だけであり、本国にはこの何倍もの戦力がまだ温存されている。
しかし、艦隊の将兵にはこの出撃に疑問を抱く者も少なくなかった。
”なぜ、竜の巣などを奪還するのに、これだけの兵力を動かす必要があるのだ?”
敵に奪われた地を取り戻すのはわかる。ただ、竜の巣はそれほどの戦力を傾ける価値があるとは思えない。
蛮人どもの侵攻ルートからも外れた洋上にあり、むろん基地などが建設されているわけでもなく、資源などもとれない。
住んでいるものもなく、むしろ周辺海域には海竜や巨大鮫などが生息していて危険ですらある。
一部のエルフのうちには、ここに古代の韻竜の生き残りが生息していることが知られているが、それが理由とは到底思えない。
あとは海上に突き出た岩山が奇怪な形の群島を形成する、利用価値のない不毛の土地だけ。
そんな場所を取り戻すためだけに、水軍と空軍が全力出動とは評議会はなにを考えている?
軍艦とはただで動くわけではない。水軍ならば鯨竜の餌、空軍ならば風石が大量に必要になり、その費用も膨大だ。
しかも、今はどの軍隊にも余力はほとんどない。連日、いつ出現するかわからない怪獣に備えて、警戒態勢を崩せない
ために、将兵のほとんどが疲労し、修理中の艦も少なくない。
これは、魔法の鏡を使ってビダーシャルにも伝えられたディノゾールやアリゲラの襲撃も当然含まれる。このときも、
あるだけの戦力を投じてディノゾールリバースを撃破、アリゲラの群れを追い返すことに成功している。しかし、その代償として
それぞれ五隻以上の艦が撃沈破され、死傷者も多数に上っている。
普段やたらと偉そうにしている評議会の連中も、その程度のことは承知しているはず。なのに、全力出動をためらいもなく
命じるとは、竜の巣にはもしかして何か秘密があるのか? 水軍の哨戒海域にも、ほとんど必要がないのになぜか常に
盛り込まれているし、なによりもそこを占領したという敵はなにを目的としているのか?
将兵たちはこみ上げる疑問を仲間たちと話し合い、竜の巣で待ち構えているという敵のことを考えた。水軍の一個艦隊が
壊滅させられたというが、今度はこちらは空中戦力を持っている。巨大な怪物が待ち構えていたとしても、必ず撃破できるはず。
彼らは、今までにも何度も怪獣と戦ってきた経験と自信から自らを奮い立たせた。
しかし、竜の巣において相対することとなった敵は、これまで彼らが戦ってきた『怪獣』とは一線を隔する『超獣』であった。
「五番艦、六番艦、ともに撃沈! 巡洋艦隊も半数が大破しました。司令、このままでは」
戦いがはじまってほんの十分足らずで、空軍の戦力は半壊していた。彼らは、たった一匹の怪物を倒すために水軍と
歩調を合わせてはおれんと、空軍の艦隊のみで攻撃をはじめ、完全な返り討ちにあったのだ。
竜の巣に到着し、バラバの姿を確認した司令は、水軍艦を焼き払ったという火炎の射程に入らないように、その外からの
攻撃で一方的に勝負を決めようとした。しかし、彼らが自信を持って発射した艦隊全艦をもっての一斉砲撃は、水軍が
直面したのと同じ結末に終わった。
「あれだけの砲撃が、まるで役にたたんとは……」
彼らは知らないことであったが、バラバの皮膚はタックスペースのロケット弾やミサイル攻撃はおろか、超兵器ウルトラ
レーザーの破壊力を持ってしてもかすり傷もつけられないほどの強度を誇る。人間のものより勝るとはいえ、たかが大砲で
傷つけられるような代物ではなかったのだ。
それでも、艦隊司令は任務を遂行しようとさらなる砲撃を命じた。一発や二発ではだめでも、何百発も撃ち込めば効果が
あるかもしれないというのが彼の目論見だった。幸い、敵は空は飛べないようであり、火炎の届かないところからなら
安全に攻撃が続けられる。
が、そうした甘い計算はバラバには通用しなかった。バラバの右腕の鉄球の先についている鍵爪が鞭のように伸びると、
あっというまに一隻の戦艦を絡めとってしまったのだ。
「振りほどけっ!」
「無理です! わぁぁっ!」
一度バラバ鞭に捕まってしまうと、タックアローの推力ですら脱出は不可能であり、まして風石船の力では効しきれる
はずがなかった。怪力で引きずり落とされ、海面に叩きつけられた戦艦は大破して戦闘続行不能になる。艦長にできるのは
沈みゆく船から、一人でも多くの乗員を脱出させることだけだった。
思いもよらぬ手段でたやすく戦艦を沈められ、愕然とした司令の命で艦隊は再度砲撃をバラバに浴びせかける。だが、
やはりバラバには通用せずに、逆に艦隊の攻撃が自分になんの痛痒も与えないと確信したバラバは、砲撃をシャワーでも
浴びているかのように平然と体で受け止め、あざ笑うかのように遠吠えをあげる。
また一隻バラバ鞭に捕らえられた戦艦が、今度はバラバの手元まで引き寄せられて、左腕の巨大な鎌で一撃の下に
真っ二つにされた。鋼鉄で装甲を張った艦が、なんの抵抗もなく切り裂かれるとは信じられないと艦隊将兵たちは愕然と
するが、バラバの鎌は地球上の物質で切れないものはないとされているほどの切れ味を誇る。
破壊した戦艦を踏み潰し、バラバの攻撃は容赦なく艦隊を襲う。
今度は巡洋艦二隻が一度に破壊された。バラバ鞭に捕まった一隻が、そのまま別の船にぶつけられたのだ。バラバは、
まるでゲームのコツを掴んできた子供のように、鞭で艦隊を翻弄しながら沈めていく。破壊と殺戮を思うままにするバラバの
暴れように、空から悪魔の声が響いた。
「そうだ破壊しろ。徹底的に破壊するのだ。我々がお前に与えた力はまだまだそんなものではない。暴れろ、暴れろバラバぁ!」
空を覆い尽くす黒雲がそれであるように、ヤプールのおぞましい声が将兵たちの背筋を凍らせる。
まるで、ヤプールの悪意が乗り移ったようにバラバは吼え、対抗するすべのなくなった艦隊へ破壊を撒き散らす。
C
一隻ずつでは面倒と思ったのか、鞭を縦横に振り回し、叩きつけることで次々と戦艦が破壊されていく。
威容を誇った艦隊が、その様を失っていくのにかかった時間はあまりにも短かった。必勝を確信していたのに、なにを間違えたのか?
彼らにとっての誤算は、この敵がそれまで戦ってきた、本能だけで動き回る『怪獣』ではなかったことだ。
『超獣』とは、単に強化された怪獣ではない。侵略・破壊を目的として頭脳・肉体を徹底的に改造された生物兵器なのである。
戦艦が兵器であるなら、超獣も兵器。兵器と兵器の戦いであれば、より強力なほうが勝ってしまう。
そしてもうひとつ、エルフたちにとって想像もしていなかった誤算があった。エルフの武力は、人間よりも優れた技術力だけに
あるのではない。むしろ、人間たちが恐れているのはエルフの個々人が持っている、人間の系統魔法よりもはるかに強力な
先住魔法の数々で、ディノゾール戦では魔法攻撃のみで一度はこれを倒すほどの力を見せている。
だが、その強大な力も、この戦場ではまだ一度も発揮されていない。それだけではなく、不可解な事態が次々と彼らを襲いつつあった。
「竜騎兵隊はなんとかできないのか? あるいは、至近距離からの魔法攻撃であれば」
「それが、帰還しました兵の報告によりますと、精霊がこちらからの呼びかけに答えないそうなのです。魔法はすべて不発に
終わりました。まるで、赤い雨が精霊の力をかき乱されてしまっているようなのです」
「なんだと!? 精霊が呼びかけに答えないなど、そんなバカな!」
「本当です。すでにこの艦からも、防御用の風魔法も使えなくなっていると先ほど報告が。それに、竜たちの様子もおかしい
のです。まるで、雨の中へ出て行くことを恐れているような。おびえて、言うことを聞かなくなってきています」
「どういうことなんだ!? 普段あれだけ従順な竜たちまで……この赤い雨がいったいなんだというんだ」
艦長は、甲板を流れ落ちていく赤い雨に地獄の風景を見たような恐怖を覚えた。
精霊の力を封じ、竜をもおびえさせる赤い雨。まるで、空が血を流しているような真紅の豪雨。
雨を浴びた鳥はぽとりと落ち、雨粒を注がれた海からは次々に魚が浮かんでくる。
赤い雨など、自然界では絶対に降るはずはない。この雨こそ、ヤプールがエルフと戦うために用意した秘策であったのだ。
「ふははは。お前たちが頼りにする精霊の力とやらも、この中では役に立たんだろう。これは、かつてのバラバを守ったときの
雨に、我らヤプールの怨念を溶かし込んだ死の雨だ。生きとし生けるものをすべて拒む、赤い雨の中では貴様らの力も無力だ。
バラバよ、その小うるさい蚊トンボどもを蹴散らしてしまえ!」
バラバの口からの高熱火炎が、接近しようと試みた竜騎兵を焼き払う。
最大の武器である魔法を封じられたエルフたち。もしも魔法を全力で使える状況であれば、彼らはまだ善戦でき、勝機を
見つけることもできたかもしれない。しかし、赤い雨の中での戦いを選んでしまった時点で、すでに勝機は失われていた。
ウルトラ兄弟や人間たちを、幾度となく欺いてきたヤプールの狡猾で卑劣な罠。それにエルフたちもまんまとはめられてしまった。
なすすべもなく撃沈されていく空軍の艦隊。水軍の艦隊も、そのころようやく到着しつつあったが、ときすでに遅いことは
誰の目から見ても明らかであった。
しかし、彼らはまだ戦いをあきらめてはいなかった。最初の慢心を捨てて、かなわないとわかっている相手に立ち向かおうとする。
「五番艦、六番艦、ともに撃沈! 巡洋艦隊も半数が大破しました。司令、このままでは」
「うろたえるな! まだ、我々は負けたわけではない。艦隊全艦、怪物の頭部を狙って集中攻撃。竜騎兵は攻撃準備が整うまで、
なんとしても時間を稼ぐのだ。いいな!」
「はっ! 我ら一同、たとえ相手が悪魔であろうと、一歩も引くつもりはございません」
「よく言った。それでこそ、誇り高き砂漠の民よ。大いなる意志よ、どうか我らに悪魔を打ち倒す力を与えたまえ!」
蛮勇かもしれない。命を軽んじる愚かな行為かもしれない。だが、侵略者に屈するまいとする誇りが彼らを支えていた。
艦長は、自分が軍人としては失格かもしれないと思う。冷静に考えれば、ここは撤退すべきであろう。それでも、まだ
戦う力が残っているのに逃げ出したくない。たとえ逃げるにしても、一矢を報いて、エルフは決してあなどれる相手ではないと
思い知らせなくては、敵はいくらでも侵略の手を拡大させてくるだろう。
我が身を捨てて、守るべきものを守ろうとする勇敢で気高い魂は、エルフも人間も関係なく受け継ぐ者がいた。
そして、その魂に共鳴したかのように、竜の巣が鳴動し、裂けた地の中から巨大な影が現れる。
「あっ、あれは!」
エルフたちは、地の底から出現した巨大な龍を見た。その体格はバラバをもはるかにしのぎ、全身は黒光りする鋼鉄の
ような鱗で覆われている。全高はざっと見積もっても六十メイル。頭部から尾までの体長は百メイルをゆうに超えるだろう。
がっしりと地を踏みつける足は、数千年を生きた巨木のようだ。
だがなによりも、たくましい顎を持つ頭は、それだけで普通の竜の何倍もの大きさと威圧感を備えていた。しかも、その龍の
頭部は一つだけではなく、八つある尾のひとつひとつの先が小型の龍の頭部となっているではないか。
「なんて、でかいドラゴンなんだ……」
ひとりの水兵が、龍のあまりの存在感に思わずつぶやいた。大きさだけなら鯨竜でも百メイルはある。しかし、地上の生物で
この巨大さは類を見ないどころか、あの龍からは赤い雨の中ではほぼ封じられていた精霊の力も、かつて感じたことが
ないほどに強く感じられる。
地底から姿を現した巨大龍は、暴れまわるバラバへ向けて大きく吼えた。大気を揺さぶり、その声に込められた怒りの
波動が、エルフたちをも身ぶるわせる。残存艦隊の艦橋で、今まさに死を懸けた最後の戦いに望もうとしていた艦長は、
息を呑んで龍を見つめた。
「あれは、まさか……あの言い伝えは本当だったのか」
「艦長、なにかご存知なのですか?」
「私の祖父から聞いた話だ。竜の巣の底には、韻竜たちよりもさらに古い龍の王が眠っている。もしも、竜の巣を汚すことが
あるならば、龍の王は必ず蘇ると……おとぎ話だと思っていたのだが、まさか本当だったとは」
「龍の……王」
副官も戦慄した面持ちで、生まれてから見てきた、いかなる竜よりも巨大な龍の威容に見入った。
地を汚したときに現れる龍の王。実は、異世界にもこれと同じ怪獣が出現した例がある。
それが、地帝大怪獣ミズノエノリュウだ。
東京を中心とする関東一帯の地脈、すなわち大地のエネルギーをつかさどる怪獣……いや、超自然的存在と呼んだほうがいいだろう。
都心の地下開発により地脈が切断されたことにより出現し、食い止めようとしたウルトラマンガイアをも圧倒する力を見せている。
ウルトラ支援
はたして悠久の過去より人の手が入らずに、自然のままに守られてきたこの地にも、守護神がいたとしてもおかしくはない。
大気を汚し、水を濁らせ、地を腐らせ、生命を殺す死の雨に怒り、大地の守護龍はついに目覚め、怒りの咆哮をバラバに叩きつける。
「戦うというのか……!」
大地を踏みしめ、ゆっくりとミズノエノリュウは前進していく。
対して、バラバもひるむどころかミズリエノリュウに猛然と向かっていった。左腕の巨大な鎌を振り上げ、猛然とミズノエノリュウの
首を狙っていく。
「危ない!」
誰かが叫んだ。バラバの鎌は戦艦をも一撃で真っ二つにする切れ味を持っている。そんなもので切りつけられたら、いくら
鋼鉄のような鱗を持つとはいえただではすまないだろう。
しかし、ミズノエノリュウはバラバが目の前にまで迫ってきた瞬間、八本ある尾を高く上げた。そして、その先端の龍の頭の
口が開き、白い稲妻のような光線がいっせいに放たれた。直進していたバラバは避けられず、光線の乱打を浴びて大きくよろめく。
ミズノエノリュウはその隙を見逃さなかった。光線の小爆発に押されて体勢が崩れたバラバに向かって、大きく顎を開くと
肩口に深々と牙を突き立てた。たまらず、悲鳴のような声がバラバの口から漏れる。
「やった!」
はじめて怪物があげた苦悶の声に、艦隊将兵たちから歓喜の叫びがあがった。
皮膚を食い破られてダメージを受けたバラバは、逃れようと右腕の鉄球でミズノエノリュウを打ち据えようとする。しかし、
ミズノエノリュウの尾は光線を放てるだけではなかった。バラバのあがきを見咎めるや、すぐさま右腕に食いついて動きを
封じたのである。むろん、左腕の鎌も同様だ。
あっという間に最大の武器である両腕を封じられたバラバに、ミズノエノリュウの牙がさらに深く食い込む。
皮膚どころか肩の骨をも丸ごと噛み砕こうとせんとする顎の力に、さしものバラバも苦しんだ。首を振りながら金切り声の
ような鳴き声をあげ、なんとか食らいついている敵を振りほどこうとするが、半身を押さえつけられる状態ではかなわない。
このままでは体を食いちぎられると思ったバラバは捨て身の攻撃に出た。至近距離からミズリエノリュウに向かって火炎を
放射したのだ。体を焼かれ、反射的にミズノエノリュウは牙を離してしまう。
「惜しいっ!」
あと一息で怪物の体を真っ二つにできたのにと、将兵たちは舌打ちをする。
が、まんまと脱出したと思ったバラバも無事ではなかった。密着するほど近かったので、熱の逆流でバラバも少なからぬ
熱傷を負わされたのだ。
それでも、顔を焦げさせたバラバは、大きく傷つけられた体を震わせると怒りの声をあげた。ひどいダメージを受けてしまったが、
まだ戦うには充分な余力がある。接近戦では手数の差が大きいだけ不利、ならば距離をとって飛び道具で勝負しようと、
バラバ鞭をミズノエノリュウの首に向かって投げつける。
バラバの意思で自由に動く鞭は、ミズノエノリュウの首に巻きついた。バラバはそのまま首を締め上げようと力を込め、
鞭はじわじわとミズノエノリュウの首に食い込んでいく。
「危ない! 絞め殺されてしまうぞ」
「どうして振りほどかないんだよ!?」
エルフたちの焦った声が戦艦の甲板に響き渡る。すでに甲板や舷窓は、二大怪獣の対決をひと目見ようとする者たちでいっぱいだ。
艦長や副官も、それを止めようとはしない。水軍も同様に、鯨竜を止めて戦いに見入っている。
あの名も知らぬ龍が勝たない限り、この戦いに望みはない。しかし、どうしてあの龍は振りほどこうともしないのだ!?
そのときだった。ミズノエノリュウが大きく吼えると首を振った。その勢いだけで、バラバのほうが振り回されて転倒する。
さらに、ミズノエノリュウは鞭に噛み付くと、まるで蜘蛛の糸のように一息に引きちぎってしまったではないか。
「すげえ」
将兵たちは悟った。あの龍がすぐに抵抗しなかったのは、あんなものはいつでも振りほどけたからだ。それを、わざと敵に
攻撃させてつぶしたということは……
「怒っている……地を汚されたことに、怒ってるんだ」
ただ叩き潰すだけでなく、すべての攻撃を正面から跳ね返して自分のやったことを思い知らせる。龍の怒りの壮烈さに、
エルフたちは自らが崇敬している大自然の意志へ弓引くことが、いかに恐ろしい報いとなって跳ね返ってくるのかと戦慄した。
「大いなる意志よ。どうか我らを守り、悪魔を打ち払いたまえ」
エルフたちは祈りを捧げ、人知を超えた悪魔と守護神の戦いをただ見守り続けた。
鞭を失い、よろめきながら起き上がってきたバラバに、ミズノエノリュウの容赦ない攻撃が再開される。
本体と八本の尾、合計して九つの頭から放たれる破壊光線がバラバを襲い、灰色の巨体が爆発の赤い火炎に染められる。
バラバが反撃する隙などはどこにもない。もはや、手数が違うどころの話ではないのだ。バラバが全身凶器でできていると
してもしょせんは一匹、ミズノエノリュウの頭部は九つであるから、バラバは九匹の怪獣をいっぺんに相手にしているのに
等しいのである。
九つの頭、すなわち九匹の龍は破壊光線の乱打をバラバに浴びせ続ける。圧倒的な火力の差。古代日本神話の英雄
スサノオノミコトは、八つの頭を持つ大蛇・ヤマタノオロチを酒に酔わせて倒したが、はたして正面から戦ったとしてオロチを
倒せるものがいたであろうか?
しかし、バラバもその身に渦巻くヤプールの果てしなき怨念が、安易に倒れることを許さなかった。
左手の鎌を盾代わりにして攻撃をしのぐ。たちまち鎌は何本もの光線を浴びて砕け散り、バラバは左手の武器も失った。
だが、その代償にわずかな時間を稼いだバラバは、頭部の剣から閃光のようなショック光線を発射した。これは、回避が
非常に困難であるうえに、ウルトラマンAを一発でダウンさせたほどの威力を持つ。が、バラバの目論見は外された。
ショック光線はミズノエノリュウの周囲に張り巡らされた透明な障壁によって、まるで水面に投げつけられた石のように
無効化されてしまったのだ。
「あれは、カウンターか!?」
高位の行使手のエルフがそう叫んだ。精霊の力で外部からの攻撃をはじく先住魔法に、今の龍の防御法は同じでなくとも
非常によく似ていた。精霊の力に守られているとは、やはりあの龍は大地の化身なのか……
バラバの決死の反撃を軽くあしらい、ミズノエノリュウは再び大きく吼える。その瞬間、遠吠えの振動で地面の裂け目から
水が噴き出し、ミズノエノリュウの周りをカーテンのように包み込む。水に守られ、大地を踏みしめる巨躯は、まさに龍の王と
呼ぶのにふさわしかった。
対して、バラバは両腕の武器を失い、すでに満身創痍のありさまである。それでも往生際悪く、最後の武器である頭部の
大剣を発射するが、ミズノエノリュウの巨大な顎に受け止められたあげく、強大な力で粉々に噛み砕かれてしまった。
すべての武器を失ったバラバに、もう勝機も戦う術も残されてはいない。
だが、空と地を汚された守護龍の怒りはそんなことで収まるものではなかった。
ミズノエノリュウの額に納められた、龍玉という宝玉が青色に輝くと、バラバの体が宙に浮き出した。
「念動力……あの何億リーブルって重さの怪物を、なんて力だ」
手足をばたつかせ、もがくバラバがマリオネットのように宙に吊り上げられていく。能力の格が違いすぎると、エルフの
行使手たちは一様に戦慄した。同じことを人間でやろうとしたら、何百万人、エルフでも何万人が必要となるかわからない。
人間の魔法は己の精神力で自然の理を曲げ、エルフの魔法は自然の理に呼びかけることで力を行使する。そのため
エルフの魔法は人間のそれを大きく凌駕するのだが、しょせん自然の力の借り物に過ぎない。自然の力、それそのものの
発現は天災にも相当する、絶対的な抗えなさを心に植えつける。
空中に磔にされ、防御も回避もできなくされたバラバに対してミズノエノリュウはとどめの攻撃を加えた。
九つの龍の顎から放たれる雷が集中して、無数の爆発がバラバを包み込む。牙が折れ、角が吹き飛んでも攻め手が
緩むことはなく、断末魔の遠吠えとともにバラバの目から光が消えたとき、すでにバラバは黒焦げも同然の状態であった。
ふいに、バラバが糸の切れた風鈴のように落下した。ミズノエノリュウが念動力を切ったのだ。海面に大きく水柱が立ち、
大量の気泡とともに巨体が沈んでいく……そして、完全にバラバの姿が消えてなくなり、海面が戻ったとき、ミズノエノリュウは
空に向かって勝利の雄叫びをあげた。
「勝った、勝ったんだぁーっ!」
地の守護龍の勝利に、エルフたちからも万歳の叫びが万雷のようにあがった。
空軍の艦隊を半壊させた怪物は海の藻屑となり、もう二度と浮かんでくることはないだろう。決死を覚悟していた彼らは、
想像もしていなかった大勝利に心の底から凱歌をあげた。
しかし、赤い雨はなおも止むことはなかった。バラバが倒された後も振り続け、空からヤプールのおどろおどろしい声が響く。
「くっくっくっ……それで、勝ったつもりかな諸君」
まるで、袋小路に追い詰めたネズミに語りかける猫のような、嫌悪感を誘う声に、勝利に沸いていた将兵たちは押し黙った。
同時に、勝ったはずなのに、言い知れぬ恐怖と不安感が湧き上がってくる。いったい、やつのこの余裕はなんなのだ?
あの怪物は確かに死んだはず、なら負け惜しみか? それとも。
「なにを言う! お前の手下は大いなる意志の使いが始末した。この戦いは我々の勝ちだ!」
艦長は、おびえる部下と自分への叱咤も込めてヤプールへ怒鳴りつけた。大いなる意志の前では、貴様の手下の怪物の
力などは取るに足りないことはわかったはずだ。さあ、さっさとこの雨を消して立ち去るがよいと。
だが、ヤプールの返答は侮蔑と嘲笑の高笑いであった。
「フフフフ……ファハハハハ!」
「な、なにがおかしい!」
「ハハハ! お前たちエルフはどんなときに笑う?」
「なに!?」
とまどう艦長とエルフたち。それがおかしいように、ヤプールの笑いはさらに高くなる。
「はははは! そうだな、どんなときに笑うかな。悲しいとき? 悔しいとき? いいや違う? うれしいときにこそ笑うだろう?
そう、例えば……敵が罠にまんまとはまったときなどにな!」
「なっ!」
絶句し、声なき悲鳴が彼らの喉から漏れたとき、暗雲に雷鳴が轟き、風が渦巻いて艦隊を揺らした。
それが、ヤプールの本当の罠の始動の合図だった。
それまでただ降り注ぐだけであった雨が風雨となり、暴風へと変わっていく。
海は荒れ、巨山のような波頭が鯨竜を翻弄し、叩きつけられる波は頑丈に固定されているはずの砲台をももぎ取っていく。
そして、龍の巣の大地は不気味な振動をはじめた。
「なんだ! 今度はいったいなにが起こるというんだ!?」
怪物は倒したはずなのに、死の雨は嵐となってエルフたちを襲う。
ミズノエノリュウも、空に潜む悪の元凶へと吼える。怒りのままに、怒りのままに吼える。
なにが起こっているのか、なにが起ころうとしているのかわかるものはいなかった。ただ、生まれてからずっと精霊とともに
生きてきたエルフたちは、汚しつくされた大気の、地の精霊たちがはてしのない怒りの叫びをあげていることだけは聞き取れた。
こんなに憎悪にあふれた精霊の叫びは聞いたことがない。奴はいったいなにをしようとしているのだ!
エルフたちがそう思ったとき、竜の巣のすべてに悪魔の宣告が響き渡った。
「フハハハ! 今の戦いで、大気に、大地に、怒りと憎しみのマイナスエネルギーが満ち溢れた。精霊よ、わしが憎いか?
破壊したいか? ならば願いを叶えてやる。さあ、実体となって現れるがいい! いでよ、台風怪獣バリケーン! 灼熱怪獣ザンボラー!」
巨大な雷光が空中で交差し、大地に矢のように吸い込まれていく。
すると、黒雲から降りてきた竜巻が渦巻き、裂けた大地からマグマが噴出しはじめた。
そして、竜巻の大気が凝縮して形を成していき、マグマの中から小山のようななにかが浮き上がってきた。
「あっ、あれはーっ!」
エルフたちは見た。竜巻が青白い巨大なクラゲのような怪物に変わり、マグマの中から背中を火山のように灼熱化させた怪獣が現れるのを。
それが、台風怪獣バリケーンと灼熱怪獣ザンボラー。かつてウルトラマンジャックと初代ウルトラマンを苦しめた怪獣を、
ヤプールがマイナスエネルギーを凝縮させることによって再生させたのだ。
二大怪獣の出現と、それがもたらす災厄はすぐに始まった。
バリケーンの頭部のクラゲのような傘が回転し始めると、猛烈な暴風雨が生み出され、ザンボラーの背中の棘が発光すると、
超高温の熱波が周辺の岩を溶かし、遠く離れているはずの艦隊にも火災が発生し始めた。
「うわぁぁーっ!」
圧倒的な暴風と、火山の爆発にも匹敵する熱波の中ではエルフの艦隊といえどもなすすべはなかった。竜は騎兵ごと
吹き飛ばされ、舷側の装甲が引きちぎられて飛んでいく。もはや、戦うなどとは夢にも思えず、彼らに残されたできることは
ただ祈ることだけだった。
「大いなる意志よ! 我らをどうか、どうか悪魔の魔手より救いたまえ!」
天災の前に、人知の抗うすべなどはない。将校も兵も関係なく、彼らは必死に祈った。唯一すがれることができる、強大なる
力を持つ地の守護神に、心からの祈りを捧げた。
「龍の王よ、今一度その力を見せてください。再び怒って、どうか悪魔を倒してください!」
しかし、彼らがいくら祈ってもミズノエノリュウは動かなかった。バリケーンとザンボラーがいくら暴れ、竜の巣が破壊され、
自らが傷つけられていっても抵抗せずに、じっと耐えているだけだった。
「なぜ……なぜ戦わないんだ?」
龍の王の力を持ってすれば、たとえ二大怪獣が相手でも戦えるはずだ。なのに、なぜ無抵抗なのだ? そのとき、
エルフたちの困惑をあざ笑うように、ヤプールの声が響いた。
「いくら祈ろうと無駄だ。精霊は自らを汚す異物に対しては抵抗することができても、同じ精霊同士で争うことはできまい!」
「なっ、なんだと! ま、まさかあの怪物どもは」
エルフたちは、まさかそんなことがあるはずはないと自らの考えを否定した。しかし、ヤプールの突きつける現実は、
彼らにとってもっとも残酷な形で現れた。
「この星の自然に宿るエネルギーに意思があるならば、当然怒りや憎しみもある。死の雨で大気と地を汚し、戦いで怒りを
駆り立ててれば、憎悪に支配された意思を操るなど我らにとってはたやすいこと。貴様らの信ずる精霊は、いまや我々の
忠実なるしもべとなったのだ!」
それこそが、ヤプールの真の狙いであった。マイナスエネルギーの集合体であるヤプールは、生物の負の心を操ることに
長けている。かつても食用にされていった牛たちの怨念を操って、牛神超獣カウラや、水質汚染で死んでいったカブトガニの
怨念を利用して大蟹超獣キングクラブを生み出している。
すべては、精霊を掌中に収めるための罠だった。バラバははじめから囮で、ミズノエノリュウさえ利用されていたことに、
エルフたちはようやく気づいたが、もはやなにもかも手遅れだった。
「まさか、精霊が悪魔のしもべと化すなんて。そんな、そんなバカなーっ!」
「悪魔だ。おれたちは本物の悪魔を相手にしてしまったんだ」
空中艦隊は暴風に翻弄されて次々に墜落していく。水軍も、必死で海域を離脱しようと試みるが、海は鯨竜でも
泳ぐことが困難なほど荒れ狂う。
そして、竜の巣の大地が裂け、巨大な亀裂が口を開けて、すべてを飲み込みだした。
「ああっ! 龍の王が!」
ミズノエノリュウが、悲しげな遠吠えとともに亀裂の中へと沈んでいく。それが、絶望への最終楽章であった。
守護龍でさえも敗れ去った。頼るべきものをすべて失ったエルフたちは、あるものは無抵抗に艦と運命をともにし、
あるものは現実を拒否したまま暗黒のふちへと消えた。
だがそれでも、生への一片の可能性にかけて、執念を燃やしたものたちの操るわずかな艦が、海域から離脱しようと
よろめきながら進んでいく。
ヤプールは、それらの艦を打ち沈めようとはしなかった。慈悲の心があったわけではない、そんなものは奴にはない。
さらに残酷なことを企んでいたからだ。
「フハハハ! せいぜい生きて帰るがいい。そして、貴様らの口から絶望と憎悪の声を広げるがいい。それこそが、我々の
新たなる力となるのだ!」
勝ち誇り、高らかに笑い続けるヤプールの声が、死の大地と化した竜の巣を覆いつくしていった。
続く
ウルトラ乙
以上です。
ウルトラ史上最凶の悪魔、異次元人ヤプールの復活の恐怖。いかがだったでしょうか。
偶然にも、日本語で縁起が悪いとされている49話においての復活となりました。この数字に恥じるところなくウルトラの歴史では、
さまざまな巨悪が出現しましたが、ヤプールほど卑劣で陰湿な敵はいません。
ファイティングエボリューション0ではテンペラー星人やババルウ星人まで利用して捨て駒にしてしまう残忍さ、
エースも評価していますが、こいつほど悪魔と呼ぶにふさわしい敵はいないでしょう。
しかし、闇があれば光もまたあり。ウルトラ戦士たちや、ハルケギニアの人々の心に宿る正義の光は負けてはいません。
力での支配、侵略を打ち破るために立ち上がります。
明日のために、今日の屈辱に耐えるんだ! これは違う作品の名言ですねー
なお、今回のミズノエノリュウは海母とは別個体ですのであしからず。
では、また次回
乙!
ウルトラ5番目の使い魔作者さん、乙でした。
すげえ&とんでもないことになった。
それ以外言葉が出てこないくらい、読み惚れてました。
ウルトラさん乙でした。
何とか今月中に間に合いましたので、進路クリアなら21:40ごろより
第48話の投下を開始します。
その夜――タルブの村の墓場の森にうごめく影は二つあった。
傍目には青い髪の姉妹に見えたその二人――隠密というにはいささか
騒がしく、それでいて、それなりに慎重ではあった。
「きゅい〜おなかすいたのね……」
背の高い少女がそう言って木陰から飛び出そうとして……もう一人の
小柄な少女に襟首を掴まれる。無理矢理引き戻されたことに彼女は
その整った可愛らしい唇をへの字に曲げた。
それはタバサと、そしてかりそめの人の姿の影を見せる彼女の使い魔
シルフィード。ふがくが探知したノイズの正体であり、またその姿故に、
ふがくがノイズと捉えた理由であった。
タバサは一度タルブの村を離れた後、ひそかにここに舞い戻った。
先の襲撃によって手薄になった銃士隊の警護をかいくぐり、知らず障害物を
利用してふがくとあかぎの電探から逃れ――その理由は二つ。
一つは、死亡した北花壇騎士の人相書きを描くこと、そして……もう一つは……
タバサは『風』を識る。故に、風の流れから近づく敵を察知し、それを
避ける術を知っていた。タバサは森に舞い戻り、埋め直された北花壇騎士の
遺骸の前に立った。
「…………」
あの幻の士官たちは現れなかった。だが、どこかから見られている気配は
感じる。タバサは思わず声を出してそれを問いただそうとして……止めた。
『念力』とシルフィードを使って土を掘り返し、かさかさになった遺骸の
顔を月明かりを頼りに描き写す。せめてこれだけでも持ち帰らなければ、
自分がしたことをあの従姉は認めないだろう。タバサは羊皮紙に
チャコールでがしがしと描く。その間、シルフィードには周囲に気を
払わせ、いざとなればいつでも脱出できる算段を取る。
そうして描き終えると、タバサはシルフィードにそこを元通りに埋め
戻させた。シルフィードの我慢もそろそろ限界に達しそうではあったものの、
まだ二人の任務は終わってはいなかった――
その頃、タルブの村入口にある銃士隊詰所。その隊長室で二人の女が
机を挟んで座っていた。
ともに無言……いや、片方の黒髪の女――あかぎが小さく溜息をつく。
そして言った。
「……私としては反対したいわね」
その言葉に、もう一人――アニエスは、苦い表情を隠さない。
「これは姫殿下の発案だ。正直、私もシエスタや私の部下を無用な危険に
さらすことはしたくない」
あれからしばらくして――あかぎが自らの悔恨の念にうちひしがれて
いたとき、アニエスは夜半にもかかわらず再び扉を叩いた。その手には、
届いたばかりの緊急連絡。アニエスからの報告を受け取ったアンリエッタ姫が
送った、命令書だった。
内容が内容のためその場で話ができず、二人は詰所に移動した。
そして――長い沈黙を経て今に至っていた。
「私はフィリップ三世陛下と約束したはずよ。協力はするけれど、命令は
受けないって。
技術の向上が遅々として進まないのはこの国の政治が安定しないせい
だから、私たちにその尻ぬぐいをさせようと思われても困るわね」
あかぎはルイズとふがくから聞いたアルビオンのイーグル号の説明から、
かの国が三十年でどれだけの技術力の向上を果たしたかを知った。
翻ってこのトリステインはどうか。フィリップ三世が病に倒れてからの
長き政治の混乱により、今もって三八式歩兵銃をコピーしたボルト
アクション小銃を秘密裏に小規模製造することがやっと。王が目指した
機関砲と航空機用発動機の大量生産など及ぶべくもない。最終的に内戦で
破綻したとはいえ国家規模のプロジェクトとして実行した国と、村一つの
秘密工場で細々と研究開発を続けた差が、ここで見せつけられたかたちだ。
「それを曲げてお願いする。敵は共和制に移行したアルビオンと、
その裏で手を引いているガリア……もうゲルマニアとの同盟程度では
覆せないと姫殿下はお考えなんだ」
そう言って、アニエスはあかぎに向かって深々と頭を下げる。
その態度は育ての母に対するものではなく、机に頭をすりつけるほどの
その様子に、あかぎは再び溜息をつく。
「……政治的解決ができない時点で、すでに負けているわね」
その言葉にアニエスは何も言うことができない。あかぎは言葉を続ける。
「それでも、今動かせるのは二機だけよ。杏子ちゃんとさやかちゃんが
生きていれば話は違ってきたでしょうけど……。ううん、死んだ子の年を
数えても仕方ないわね」
その言葉に、アニエスはぱっと顔を上げる。その顔に二心はない。
いや、アニエスがそうであっても、アンリエッタ姫がどう考えているか……
あかぎはその疑念を押し込め、はっきりと告げる。
「いいでしょう。『竜の羽衣』の実戦投入を許可します。
ただし、あくまで協力関係。対価を支払っての補給を受けることはありますが、
私の管制下およびそれが及ばない場合は搭乗員の自由意思にて行動する
ものとし、貴国の麾下には入らないことを同時に宣言します」
「姫殿下にはそう伝える。……すまない。本当に、申し訳ない……」
アニエスはそう言って、再び頭を下げた。
翌朝。魔法学院に戻るために『竜の道』に向かうルイズたち三人を
待っていたのは、見慣れない格好の金髪お下げの少女。だが、見慣れない、
というのはあくまでルイズだけであり、ふがくとシエスタには見慣れた
もの――そう、それは大日本帝国海軍の飛行服だった。
少女を見たシエスタは、思わずびっくりした声を上げる。そして、
少女に駆け寄ると、全身で抱擁する。
「マミ!」
「シエスタ、久しぶりね」
抱き合い再会を喜び合う少女二人。しばし喜びを分かち合った後、
シエスタがはっと気づいてルイズに頭を下げる。
「も、申し訳ございません!つい……」
「シエスタ、その子、誰なの?」
ルイズが少女を見上げる。背丈と年頃はシエスタと同じくらいで、
雰囲気もどことなく似ている。違うのは髪の色と瞳の色くらい。
そして、ルイズの視線はある一点に集中する。
マミと呼ばれた少女は、シエスタが紹介するより早く姿勢を正して
敬礼すると、官位姓名を名乗った。
「トリステイン王国銃士隊第七小隊所属、マミです。お見苦しいところを
お目にかけました。お目にかかれて光栄です。ミス・ヴァリエール」
それを聞いてシエスタは先とは違った驚きの表情を見せた。
「……マミ、銃士隊に入隊したんだ……」
「ええ。あなたが奉公に出た後に。私だって自分の生きる道を見つけないとね」
「それだったら手紙くらいくれても良かったのに……」
「訓練が終わったのはつい先日だったのよ。驚かせようと思っていたのも
あるんだけどね。
それで、今回の戦いが初陣」
「そうだったんだ……」
「あの、シエスタ。話が見えないんだけど……」
「ああっ!申し訳ございません!」
ルイズの冷静なツッコミに、再び頭を下げるシエスタ。マミを見た
ふがくが、確かめるように言った。
「その雰囲気にその名前。あなた、もしかして日本人の血を引いてる?」
「はい。三十年前にこの村にやって来た、ススム・シラタの娘です。
私の名前も、父の祖国の言葉で『心根のまっすぐな美しいもの』という
意味だそうです」
「マミはわたしの幼なじみなんです。
でも、五年前……ひいおじいちゃんが死んでしまう一週間前の大雨の夜、
マミの家族が乗っていた馬車が橋の上で鉄砲水に流されて……奇跡的に
助かったのはマミだけで、馬車は二十リーグ川下で見つかったんですけど、
ススムおじさまも、誰も見つからなかったんです」
「それは……大変だったわね」
ルイズは思わず同情的な視線を向けた。
「いいえ。村のみんな、特にシエスタの家族にはずいぶん助けてもらい
ましたから。父の遺産もありましたし、生活に困ることはありませんでした」
「でも、それならどうして銃士隊に……」
シエスタの心配そうな視線に、マミはまっすぐ向き合った。
「さっきも言ったけれど、私だっていつまでも子供じゃない。自分の
生きる道は自分で見つけたかったからよ。あなただってそうでしょ?
ところで、私はあなたたちを送っていくように命令されたのだけど……
シエスタ、あなたその格好で『レイセン』に乗るつもりなの?」
「ほへ?」
思わず間の抜けた声を返すシエスタ。その様子に、マミは小さく肩を
すくめた。
「はあ。聞いてないの?エミリー小隊長から、私そう聞いたんだけど」
「え?なにそれ?わたしそんなの聞いてないよ?」
「そ〜よ〜。事情が事情だから、シエスタちゃんはいつでも動けるように
しておいた方がいいって、私が提案したの〜」
突然間に入ってきた声に三人が振り返ると、そこにはアニエスと、
きちんと畳まれた飛行服を手にしたあかぎ、それにシエスタと同年代
程度に見える、長いピンク色の髪を三つ編みにし、白い小隊長のマントを
身につけた銃士がいた。その後ろにはシエスタの家族をはじめ村人たちが
続いている。
あかぎの様子は昨夜の影を引きずっているようには見えず、いつものように
にこにこと笑っているように見える。マミが敬礼して三人を迎えると、
アニエスと銃士は軽く返礼した。
「あの傭兵メイジどもの一件もあるからな。示威行為としても『竜の羽衣』が
まだ健在だと知らしめた方がいい。姫殿下からの許可も後追いだが届くはずだ」
アニエスの言葉に、ふがくは渋面を隠さなかった。それがどこに対しての
示威行為なのか明白だったからだ。
「不満そうだな」
「当然でしょ。そんなことしたら、またここが狙われるわ。今度は徹底的に
叩きに来るでしょうね」
「そうはならんさ。それが現実となれば、そのときは……そうだな、
トリステインとアルビオンの全面戦争だ」
「アンタ……何考えてんのよ」
「あいにくこれはわたしの案じゃない。むろんあかぎ母さんだけでもない。
だが、協力はしてくれると約束してくれたからな」
アニエスはそう言うとあかぎに視線を向ける。あかぎはその視線に
小さく溜息をつく。
「……私が協力するのはみんなを守るためよ。むやみやたらに攻めることには
協力しませんからね」
「あかぎ……いったい、何の話をしたの?」
ふがくの問いに、あかぎは明確な返答をしなかった。
シエスタが『イェンタイ』の管理室で着替えている間に、シエスタの
家族が総出で複座零戦と震電を『竜の道』へと運び出す。あかぎがかつて
牽引用の木炭車を製造しようとして発動機の素材の問題で挫折したため、
発動機を動かさない状態での移動は人力に任せていた。
「お待たせしました!」
飛行服に着替えたシエスタがルイズたちの前に戻ってくる。武雄の
飛行服を元に仕立てたものだが、素材は大戦末期の粗末な代用品ではなく、
開戦当初の質の良い時代を元に、どうしても入手できないものだけ代用品を
使ったもの(たとえば表地に使われた防水クレバネットは入手不可のため
絹のみになっていたり、裏地が末期と同じポプリンになっているなど)の
ため、いつもの平民用の、ルイズから見れば粗末な服に身を包んでいるのとは
ずいぶん印象が違って見える。マミの飛行服も同様だが、それにしても
髪の色が違うだけでこうも違うのね、とルイズは感心した。
それに……とルイズは思わず視線をシエスタの胸元に向ける。
(ふ、ふがくといい、あかぎといい、シエスタといい、あのマミって子といい……
ダイニホンテイコクの女の子って、み、みんな胸が大きいのかしら……ぁ?)
知らず両手が自身のなだらかな丘陵に向かおうとして……それを寸前で
押しとどめた。それをやったら敗北を認めてしまうような気がしたからだ。
そんなルイズの葛藤を知らず、シエスタは朝日に照らされる複座零戦を
見上げる。今でこそ出撃までに時間を取られる有様だが、これからは
マミと残った機体を使って出撃準備の訓練もすることになるのだろう。
示威行為が目的なら、露天駐機とするかもしれない。
魔法学院からタルブまで、『竜の羽衣』なら三時間もあれば到着する。
もし、自分たちが表舞台に出ることで村のみんなが危険にさらされることに
なったら――そのときはすぐに駆けつけてそれを払おう。シエスタは決意を
胸に荷物を複座零戦の胴体に押し込むと主翼の付け根に駆け上り、ルイズに
手を差し出す。
「ルイズさま」
朝日の中に輝くシエスタ。飛行服姿のそれはいつものメイド姿とは異なり、
よみがえる伝説を受け継ぐ新たなる勇者のそれだ。今まで見たことのない
そのまぶしさにルイズも決意を新たにする。
(シエスタがまぶしい……。ううん、そんなことじゃダメ。
わたしがしっかりしないと。この輝きを鈍らせるなんて絶対ダメ。
わたしが足手まといになったせいでふがくやシエスタが戦えなくなる
なんてこと、絶対させるものですか)
ルイズは決意を込めた視線でまっすぐにシエスタの瞳を見て、その手を握る。
シエスタに引き上げてもらって後席に収まると、シートベルトをつけて
もらい風防が閉じられる。そこまでしてからシエスタも前席に滑り込んだ。
その様子を見たふがくは、あかぎに言う。
「……乗り手がいないって嘘だったんだ」
ジト目であかぎを見るふがく。当のあかぎはそしらぬ顔だ。
「あら、私は武雄さんたちがいなくなったって言っただけよ。後継者が
いないって言った覚えはないわね」
「じゃあ、ミス・エンタープライズがガソリンを使うことがなくなったってのは?」
「シエスタちゃんが奉公に出ちゃったし、マミちゃんは銃士隊に入隊
しちゃったし。他の子もいたけれど、死んじゃったり行方不明に
なっちゃったりしたから。
だから『今は』使うことがなくなってたわね」
あかぎはそう言って視線を三舵の利きを確かめる複座零戦と震電に移す。
確かに嘘は言っていない。それでも釈然としないふがくがふとあかぎに
目を向ける。その視線は、そこにいない誰かも見ているようにふがくには
思えた。
「あ、あの……あかぎ……」
「降臨祭の日よ」
「え?」
ふがくが昨日の夜のことを言い過ぎたと謝ろうとしたとき、あかぎが
不意にそう言った。
「降臨祭の日に、金環皆既日食が起こるわ。もし帰るつもりがあるなら、
そのときまでに決めておきなさい」
ふがくが驚いた視線をあかぎに向ける。あかぎはそんなふがくに
昔のような優しい笑みを向けた。
「今すぐに決める必要はないわ。けれど、知らないで後で悔やむよりは
ずっといいと思うの」
「どうして、ルイズの前で言わなかったの?」
「あの子が今知ったら、きっと良い結果にはならないと思ったからよ。
カリーヌさんに似て、思い込みが激しすぎるきらいがあるわね。
それが良いところでもあるんだけど」
あかぎはそう言って視線を再び複座零戦と震電に移す。
ふがくはその言葉の意味をかみしめる。
降臨祭は年明けの日から始まる新年の祭りだとルイズから聞いた。
今はウルの月。地球で言えば五月。降誕祭の日まで、七ヶ月もない。
今それを自分にだけ聞かせたのは、あかぎなりの考えがあってのこと。
本当に帰る意志があるのか、それを自分に問うているのだろう。
確かに、自分が召喚されたときは、もう大日本帝国は落日の危機に
あったといえる。枢軸軍のうちイタリアは降伏後連合軍に与し、
ドイツ第三帝国も連合軍の反撃にその版図を急速に失い、大日本帝国も
連合軍の猛攻の前に本土まで追い詰められ、最後の拠点である硫黄島から
発進した自分だけが回天の奇跡を成し遂げられる――はずだった。
(けど……何かが引っかかる。私……あかぎがミッドウェイで沈んでからの記憶が……)
ふがくは記憶をたどって愕然とする。ミッドウェイ海戦からルイズに
召喚されるまでの記憶がおぼろげで、ほとんど抜け落ちていると気づいたから。
そのふがくの様子に、あかぎが心配するような視線を向ける。
「……ふがくちゃん?」
あかぎに声をかけられて、ふがくははっと我に返る。そして、思いっきり
頭を振った。
「な、何でもない……。
あかぎ、ありがとう。それから、昨日はゴメン。私、あかぎの気持ちを
全然考えてなかった」
「いいのよ。確かに、そのときはそうするしかないって思ったことでも、
後から見れば不適切だったって思えることだってあるから」
あかぎはそう言って笑みを浮かべた。そして、ふと思い返す。
末期癌に苦しむフィリップ三世陛下にモルヒネとヒロポンを投与したのは
間違っていなかったと思っている。何故なら、モルヒネは鎮痛剤、
そしてヒロポンの本来の用途は抗鬱剤なのだから。それでも未知の病に
苦しむ王を見るに堪えず、その痛みと苦しみを和らげはしたものの、
結果欲深い者たちに『利権』という名の甘露を与えたことは慚愧に堪えない
事実。だから、そのために信頼できる友人を喪い、今ふがくたちに
そしられても詮無いことだと、あかぎは思っていた。同時に、昨日の夜は
武雄が目の前に現れなかった優しさに感謝した。慰められたら、
もっと悲しくなっていただろうから。
「それじゃあ、私も行くね。また遊びに来ても……いいかな?」
「ええ。いつでも待ってるわ」
「うん。それじゃ……」
ふがくはあかぎの笑みに安心したようにそう言うと、タキシングを
始める二機を追いかけようとして……不意に声をかけられた。
「待ちな」
「ルリちゃん?」
『フライ』の魔法で『竜の道』にやって来たのは、ルーリーだ。
ルーリーはふがくの前にふわりと降り立つと、一冊のノートを手渡した。
「あのコルベールとかいうさえない男に渡しておくれ」
「これは?」
「『竜の血』――『ガショリン』の錬金方法なんかをまとめておいた。
シエスタとお前さんの力になるだろう」
それを聞いてふがくはぱらぱらとノートをめくる。そこにはガソリンを
錬金するための材料とイメージ概念などが、流麗な筆致で事細かく
書かれている。インクが乾ききらずに擦った跡があることから、今日の
ために短時間でまとめたことがふがくにも分かった。
「ありがとう。ちゃんと渡すわ」
「困ったことがあればまたここに来な。特に『竜の羽衣』の手入れ、
シエスタ一人じゃ手に余ることもあるだろう」
確かに日々の整備くらいはシエスタもできるだろうが、大がかりなものは
無理だ。それに自分の調整もある。ふがくは深々と頭を下げると、
タキシングから『竜の道』に入り、併走して離陸準備に入った複座零戦と
震電を追いかける。
シエスタが親指を立てて前に倒す合図と同時に複座零戦の栄発動機と
震電のハ四三発動機が力強い鼓動を奏で始め、そこにふがくのハ五四の
六重奏が加わる。同時に風防を閉めた二機とふがくが並んで滑走を開始し、
離陸距離の長い震電に合わせて複座零戦とふがくが同時に空に舞い上がる。
その様子を、あかぎは懐かしむような視線で見送った。
「……本当なら、ここにキョウコちゃんとサヤカちゃんもいたはず、
だったんだけどね」
そんなあかぎに、傍らの銃士――マミの上官である第七小隊長であり、
鋼の乙女であるエミリーが声をかける。アニエスも「そうだな」と相槌を
打った。
そう。アニエスにとって、加藤中佐の娘であるさやか、そして桃山飛曹長の
娘である杏子の失踪事件は忘れられない事件だった。
三十年前にここに残ることにした加藤中佐、白田技術大尉、桃山飛曹長は、
武雄のすすめもあってここで新たな家庭を築いた(さすがに武内少将と
ブリゥショウ中将は「そんな年でもない」と固辞したが)。だが放射線被曝の
影響か、三人はなかなか子供を授かることができず、彼らに最初の子供が
生まれたのは、武雄のひ孫のシエスタが生まれるのとほぼ同時期だった。
三人が皆揃って娘に日本名をつけたのは、遙かな故国への郷愁といえるかも
しれない。そして、彼女たちは父たちの影響を受けたのか、揃って空への
あこがれを見せたのだった。
最初は彼らも渋ったのだが、少女たちの本気にやがて武雄を筆頭に
根負けし、彼女たちが十二歳の誕生日を迎え何とかペダルに足が届くように
なる頃までに、訓練のために複座零戦の後席を改造して練習機としても
使えるようにしてまで、自分たちの志を受け継ぐ新たな世代を訓練し
始めたのだった。
そんな彼らを襲った最初の悲劇が、五年前、『アカデミー』の客員
研究員としての地位を得ていた白田技術大尉とその家族が乗っていた
馬車ごと鉄砲水に流されるという事故に遭ったことだ。奇跡的に助かった
マミ以外誰も見つけることができず、このときの心労からか、武雄が
それからわずか一週間でこの世を去り、武内少将とブリゥショウ中将も、
武雄を追うようにこの世を去った。
その次が、今から二年前、シエスタたちが十五のときに起こる、突然
杏子とさやかが行方不明になった事件だ。この事件の捜査は銃士隊として
このタルブの村に派遣されていた隊長のアニエスが中心となって行われ、
二日後、近くの森の中の石舞台の上にさやかがまるで眠っているかのように
横たわっているのが発見された。
森の中であるにもかかわらず獣などに荒らされた形跡がないばかりか、
まるで何かに守られているようだった、とアニエスが今でもその光景を
容易に思い出せるその事件は、杏子が行方不明のまま現在に至り、結局
真相は藪の中。
アニエスはシエスタと同じく自分によく懐き妹同然だった二人を襲った
事件の手がかりを捜すべく奔走したが、何も分からないままだった。
年を経て得た新たな娘を喪った加藤中佐の落胆は激しく、その後失意の中
この世を去ることになる。そして桃山飛曹長も娘の助けになれなかった
自責の念から以前にも増して何かを守ると言うことに執着し、結果、
暴走した貴族の馬車から身を挺して子供を救い、その子が親元に戻るのを
見届けた後で自室にこもり、そこで息を引き取ることになる――
だが、アニエスたちは知らない。彼らが死してなおこの村を守る鬼と
なったことを。それは自分たちの志を、戦空の魂を受け継ぐ者たちの
成長を見届けられなかった未練か。彼らの存在を知るのはあかぎだけであり、
そのあかぎが眠りについていたこともあり、その存在は今に至るまで
知られることはなかったのである。
「キョウコちゃんのお母さんは、今でも毎日キョウコちゃんが好きなものを
作って待っているんだって。私たちも力になれたらいいんだけど……」
「あの事件はわたしにとっても痛恨の極みだ。もっと二人の様子に気を
配っていれば、こんなことには……」
エミリーの言葉に、アニエスは悔しさを隠さず拳を握りしめる。
そんな二人に、あかぎは冷淡とも取れる言葉を向けた。
「……死んだ子の年を数えても仕方のない事よ」
「あかぎさん、それって!」
思わずエミリーはあかぎに怒りの視線を投げつける。だが、あかぎは
それを受け流した。
「そうそう。ちょ〜っと運動したくなった気分だから、あの森の中で
少しだけ運動してくるわね。木が何本か倒れるかもしれないけど、
気にしないで欲しいわ〜」
「そ、それはどういう……」
あかぎが指さしたのは、墓場の森。意味を察しかねたアニエスが
問い直そうとするが、あかぎはその言葉を待たずに『竜の道』を離れた。
あかぎが離れたことで、震電が戻ってくるまで時間があることもあり、
村人たちも戻っていく。
「……どういう意味なんだ?」
「さあ?」
残されたアニエスとエミリーは互いに顔を見合わせた。
――そして。フル装備状態で墓場の森へと足を踏み入れたあかぎは、
一つ大きくのびをすると、森の一点を見つめ、そこにいる誰かに向かって
言った。
「さあ、出ていらっしゃい」と。
支援
以上です。予定よりも早めに投下し終えてしまったのであとがきだけ
さるさんに(汗
過去編が終わり、こちらも本編の終わりに向けて少しずつ道筋が明らかに
なっていきます。
ちなみに伝説(レジェンド)を受け継ぐ新世代(ニュー・ジェネレーションズ)の
名前の由来は今更書くこともないでしょう(何
この世界にアイツがいるのかはご想像にお任せします。
次回は久しぶりのサシなバトルシーンです。
次回も早めにお目にかかれるよう頑張ります。
乙
娘達の名前に恐ろしいまでの死亡フラグが…と思ったら既に2人死んでるし…
前スレにあった、アウターゾーンZERO 第1話を投稿します。
第1話完結です。
その頃、トリステイン魔法学院は大騒ぎになっていた。
謹慎中のルイズがいなくなったことはもちろんだが、学院の一室に安置されていたはずの才人の死体が消えてなくなっていたのだ。
ルイズが殺人で捕らえられることを恐れ、証拠隠滅のために死体を持ち去ったのか?
その路線が濃厚だ。
直ちに捜索隊が組まれ、ルイズの行方を追うことになった。
もし見つかれば、重い処分は免れないだろう。
話はトリステイン総合学院は戻る。
ルイズは学院長室に通された。
「ようこそ、我が学院へ。私が当学院長のエーゲリッヒ・オティアスです」
オティアスと名乗った学院長は、にこやかな笑みを浮かべていた。
しかし、どうも面に貼り付いたような笑顔が気になる。
魔法学院のオールド・オスマン学院長よりやや若く見える。頭は禿げ上がり、コルベールといい勝負だ。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。よろしくお願いします」
「まあ、そう堅くならずに。私が、この学院の案内をさせていただきます」
オティアス学院長が自ら案内役となり、学院内を見学することとなった。
「まず、この学院は徹底した学力による実力主義を取っています。クラス分けは学力によって決まり、クラスによって生徒の待遇が違います」
学院長の説明を、ルイズは神妙な面持ちで聞く。
「テストを毎日行い、成績の悪い者は下のクラスに落ちます。ただし良い者は上のクラスに上がれます。毎日、生徒の入れ替えがあります」
「あの……質問よろしいですか?」
「はい」
「毎日生徒が変わるのでは、担任の先生は混乱しませんか?」
「大丈夫です。生徒は番号に寄って管理されています。生徒のデータは、番号とテストの成績だけですので、混乱はありません」
番号で管理……まさしく牢獄だ。
「それと、クラスによって待遇の違いがあるとおっしゃいましたが、どんなものですか?」
「はい。食事の時間、上のクラスほど食べられる食事の種類が増えます。最下位のクラスに至っては、パンと水くらいしかありません。さらに、椅子に座ることさえ許されず、床で食事をします」
「そ、そんな……」
まさしく、貴族と平民の違いだ。いや、王族と奴隷と言っていい。
「いい食事をしたければ、上に上がるしかないのです。それが実力主義です。ははは」
そんな理不尽な……と言いかけて、飲み込んだ。
もしかしたら、才人に対しても、おそらく同じことをしたのではなかったか。
理不尽を、何の疑問も持たずに才人にしようとしていたのか。
「ご覧下さい。ここが最上位のクラスの教室です」
教室はまるで、王宮の一室のようにきらびやかだった。
椅子、机、その他備品に至るまで、ピカピカに磨き上げられている。
生徒たちは張りつめた空気の中、教師の説明を聞き、ノートを取っていた。
その後、他のクラスの授業を見て回った。
魔法学院と変わらない作りの教室。これは成績中位のクラス。
下位のクラスに行くにつれ、教室のグレードが下がっていく。
「こ、これは……」
最下位のクラスを見て、ルイズは唖然となった。
机も椅子もボロボロ、生徒たちはやせ細り、まさしく囚人のようだ。
「ここに落ちたら、なかなか上がれません。そうならないために、誰もが必死なのです」
ただよってきた異臭がルイズの鼻をつく。糞尿の臭いだ。
「あ、あの……トイレは……」
「行かせませんよ」
「……!?」
「トイレには行かせませんが、衛生に関わりますので、教室の後ろの容器にさせます」
何ということを。
それは、人としての尊厳を奪うということだ。
「そ、そんなことをしたら、生徒の親が黙っていないのでは……」
生徒たちの親は、おそらく貴族のはず。平民ならともかく、貴族の子供にこんなやり方が許されるはずがない。
「大丈夫です。ここはいわゆる治外法権となっていまして、国の法律の制約を受けないのです」
「し、しかし、生徒たちは貴族なんでしょう? もし親が聞いたら……王家に報告したら……」
「ここは存在が極秘の上、箝口令が生徒や父兄に行き届いておりますので、情報漏れはありません」
どうにも信じられない。
「貴族も平民も関係なく、人生は戦いです。戦いに勝ち抜いていくためには、これが最良の教育なのです」
ルイズは唖然として声も出ない。
その時、鐘が鳴った。
「あ、休み時間ですね。このクラスにはありませんが」
「休み時間がないんですか?」
「そうです。落ちこぼれた者に、休みは必要ありません。食事と睡眠以外は休みはなしです。ではそろそろ行きましょう」
学院長に連れられ、ルイズは教室を後にした。
「ん? 君、今廊下を走りましたね」
学院長は、小走りしていた男子生徒を呼び止めた。
「あ、あのトイレに……」
「いけませんねえ、規則は守らなければ」
学院長は、廊下の脇にあった鉄棒を手に取った。
「……えいっ!!」
「ぎゃっ!!」
頭を鉄棒で殴られ、男子生徒は倒れた。頭から血が流れている。
「な、何を……!!」
ルイズは息をのんだ。
「あー、これは教育的指導です。ははは」
学院長は笑いながら答える。
「こ、これ、死んで……」
「不幸な事故というものです。心配しなくてもそれは美化委員が片付けますから。ははは」
倒れた生徒は動かない。明らかに死んでいる。
しばらくして、美化委員らしき生徒たちが、無表情のまま死体を運んでいった。
別の生徒たちが、黙々と廊下の掃除をしている。
もうルイズは言葉がなかった。
ルイズは学院長室に戻った。
「以上が、当学院の概要です。さて……」
学院長は一枚の書類を差し出す。
「あなたはすでに、特待生として、推薦入学の許可が降りています。こちらの書類にサインしてもらえれば、あなたはここの生徒になれますが……もちろん無理にとは言いません」
サインをすれば、入学できる。
でも、どうする?
ここは明らかに異常だ。
貴族の子供をまるで囚人のように扱い、教育と言って殺すことも許される。
では、魔法学院に戻るか?
しかし戻った所で、人殺しとなじられる毎日が待っているだろう。
そして、また『ゼロのルイズ』と嘲られる。
でもここなら、特待生として入学できる。もうゼロと呼ばれることはない。
学業の成績なら自信がある。成績が良ければ、少なくとも、まともな暮らしは保証されるのだ。
ルイズは決心した。
「わ……わかりました。私、ここの生徒になります! 正直言ってまだ……狐につままれたような気分ですが……気に入りました!」
「そうですか……わかりました。ではサインをどうぞ」
ルイズは渡されたペンで、書類にサインをした。
「おめでとう! 今日からあなたは当学院の生徒です」
「お世話になります!」
ルイズは頭を深々と下げた。
「……早速ですが……あなたは当学院の規則に違反しています」
「え?」
「ピンク色の髪、マントの長さ、杖の長さ、吊り目、胸の大きさ……その他諸々で……全部合わせた処罰は……」
学院長は一旦言葉を切る。
「『終身独房にて学習』、ですね。ははは」
「ご、ご冗談を……」
「冗談なんかではありませんよ。……入りなさい」
その時、学院長室のドアが開いた。
続いて、大柄な黒服の男が二人は言ってきた。
「な、何を……!!」
驚く間もなく、ルイズは両脇を掴まれてしまった。
「は、離しなさい!! こんなことをしてただで済むと思ってるの!? 私を誰だと……」
「だから言ったでしょう、ここは貴族も平民も関係ないのです」
ルイズは必死に暴れたが、男たちの力にはかなわない。
「は、離して!!」
抵抗空しく、地下室の独房に引きずられるように連れて行かれた。
「きゃっ!」
独房に放り込まれたルイズは、床に倒れた。
「や、やめて!!」
続いて鎖で手足、首までも繋がれる。
「な、なぜ!? なぜこんなことをするの!?」
「なぜだか教えてあげましょうか」
ついてきた学院長が、顔面に手をかける。
「バカ貴族のあなたには……」
学院長の顔面がはずれた。仮面を付けていたのだ。
「言っても無駄だからですよ」
現れた素顔は、ルイズがはずみで殺したはずの才人の顔だった。
「サイト!?」
学院長……才人が出て行った後、重い扉が音を立てて閉まった。
それから、連日……。
「なんだなんだ! ほとんど間違えているじゃないか!!」
「す、すみません……お腹がすいてて……」
「何度謝ったら気が済むんだ! 犬でももっとマシな物覚えだぞ!」
「ぐっ……」
「何だ、その目は! 反抗した罰として、鞭打ち30発!!」
「ぎゃああああああっ!! 痛い!! 痛い!! 許して下さいー!!」
その後……行方不明になったルイズは、結局見つかることはありませんでした。
使い魔を死なせたことを苦に逃亡したものと処理されましたが……皆さんはおわかりのはずです。
抜け出すチャンスがありながら、彼女はアウターゾーンから出られなくなってしまったことを……。
場面は日本へと移ります。
「あいててて……」
もうろうとする意識は、頭痛で次第にハッキリしてきた。
「……おっ、気がついたか。大丈夫か?」
誰かが呼ぶ声がする。
「! こ、ここはどこだ!?」
才人は弾かれるように起き上がる。すると、見慣れた景色が目に飛び込んできた。
周囲には人だかりができている。
「え? 秋葉原だけど……」
野次馬の一人が答えた。
「秋葉原? あの時俺は、召喚されて……」
あの時ルイズに暴行を受けて死んだはず……。
「君、悪い夢でも見てたのか? うなされてたよ」
「夢? じゃあ、あれは全部……夢だったのか? ……こ、これは……!」
腕には生々しい鞭の跡が残っている。ルイズにやられたものだ。それ以外は考えられない。
「一体……何があったんだ? 何がどうなったんだ?」
彼は死んではおらず、仮死状態になっていただけでした。
どうやら、それで彼はアウターゾーンから抜け出せたようですね。
さて、皆さんもハルケギニアへおいでの際は、トリステイン総合学院へ入学しませんか?
ただし、厳しい教育方針ですのでそのつもりで!
以上です。
>>341 8行目
誤:話はトリステイン総合学院は戻る。
正:話はトリステイン総合学院に戻る。
連続ではなく、一話完結タイプにしてみました。
そのうち、『魔神の手』『魔女狩り』『禁書』を元ネタにした話を書いてみようかな?
アウターゾーンZEROの作者さん、乙でした。
最初にやったことがやったことだけにこの終わり方も仕方がないけれど、
やっぱりなんかやりきれない……。
ルイズの出番もしやこれだけ!? ルイズのハッピーエンドもあるといい
なあ……。
まぁ、問答無用で死刑宣告された原作の先生に比べりゃ生きてるだけ・・・マシ・・・ってことで
何気にワンコ逆襲も被せたオチも含むんですね
乙
ルイズの胸のサイズで校則違反だったらキュルケはどうなってしまうんだ…
むしろ小さすぎるからダメなのか
描写が悪趣味で単にルイズを苛めたいだけのように見えます
351 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/27(月) 00:05:37.66 ID:NNIvRjq2
遅くなったけど、ウルトラ乙。
ミズノエノリュウカッコ良すぎです。
萌え萌えの作者様、アウターゾーンZEROの作者様、乙です。
>>349 あれは多分新兵いびりの変形だと思います。
服にシワが3箇所あるから違反3点。両方の眼にやる気が感じられないから違反2点。
…というように、考え付く限りのダメ出しを繰り出す訳です。
才人死んでないんだから、冤罪じゃん。
萌え萌えとアウターの人乙でした。
あかぎが尻ぬぐいとか言うと何かエロいなw
>>350 君はアウターゾーンを知らないんだな。
知らない上に文字だけで書き起こされるとそうなってしまうか・・
怖かったなぁあれは・・。後半ネタ切れ起こしてエロ路線に行ってしまったが
>>355 アウターゾーンは知ってますけど、元ネタの生徒は規則違反の暴行こそ受けていたが、
犬のような生活で糞尿まみれとかそんな描写はなかったですよ
その辺りを「悪趣味」だといってるんですが
ルイズにしたって、「嵌められて抜けだせなくなった」ところまでで描写は充分でしょう
その後の仕打ちまで趣味の悪い描写を加えるのは単にルイズ嫌いで苛めたいだけとしか思えないな
あと…元ネタの方では生徒は整形を受けているという設定がありましたし、
スポーツ刈りだのネクタイの柄は変えようがある要素だから一応筋は通りますが
ルイズの髪の色だの顔つきは変えようがない要素なので理不尽ですね
本スレでやらずに毒吐きでも行けよ
敬語とタメ口混じって長文書いてるような奴だからお察し
アウターと萌え萌えの人乙です
>>346 『魔女狩り』はエロパロの某スレで見たな……
コルベール主役の『タイムマシン』とか、子どもの自分に会って人生やり直す話とか
主役を限定しないのも有りかも知れませんね
第2次スパロボZのシオニー・レジスを身一つで召喚。
見知らぬ世界で異能者達(メイジ)に囲まれヘタレる彼女の姿を…
仕方なくメイド服を借りて給仕してるところ香水イベントでギーシュをキレさせて「ひ…!」
ヴェストリの広場で決闘になって「もうやだ…私を、リモネシアに帰してよぉ…」
はたしてハルケギニアでリモネシア外務大臣やってた経験が生かされることがあるのか…
ホームズなりの探偵がゼロの世界で密室殺人の謎を解くとかの場合、遍在の存在がががが
あれ、便利すぎるわ
362 :
!ninjya:2011/06/27(月) 13:02:52.71 ID:Dc6w6jgE
>361
ホームズ「探偵として断言する!
魔法などと言うあやふやな物は存在しない!」
ああ、降霊術なんてあやふやなものは信用出来ないよな!
>>363 逆だ。常識を疑い、彼の検証に耐え得るものなら信用するのがホームズだ。
タイムパトロール(同名作品)の存在も火星人の侵略(宇宙戦争)も見抜く男だぞ。
よし、ここは名探偵ラインハルト・フォン・ミューゼルくんに働いてもらおう
>>364 つまりホーンテッドの会長召喚か……
蘇生や転生まで出来るぞ
古畑さんなら魔法を使ったトリックにも対応してくれるはず
魔導探偵大十字九郎or魔界都市<新宿>の名探偵"人形娘"召喚
人形使う名探偵?
あやつり左近か?
探偵とは少々違うが、相棒の人
特命係の亀山か
>>360 ジョゼフに召喚されてガリアの権力を使うことが出来るようになった
が
悲しいけど、彼女ガンダールヴなのよね
あるいはタルブに、というか、タルブがグレートアクシオン
乗員(村人)はリモネシアの生き残り(最低20人必要)
シオニーちゃんによるハルケギニアの破壊と再生が始まる・・・
アイムもガイオウも居ないから次元獣使えないけどな!!
>>371 >>372 ゼロの相棒だっけ・・・完結までの構想はあるとか言ってたけど
終わってたっけ?
魔探偵ロキからロキ召喚は考えたなあ
ルーン一文字で強力な魔法使えるから、使い魔のルーンの多さを見たら卒倒しそう
「ヘイムダルの月」とか過敏に反応するかも
>>373 リモネシアの生き残りだったらシオニーちゃん袋だたきだろ……
>>375 まぁ子孫だったら事情なんてわかるめぇ
というか、あの状況でプロジェクトウズメの発動とか国民が知らされてたとも思えんし
シオニーちゃんがメイドと聞いたら
本編のシエスタポジに収まってサイトに病的依存する姿も見てみたいとは思ったのだが
・・・シエスタみたいにはなれないだろうなぁ、ルイズに抵抗できるほど彼女は太くない・・・
>>365 あー、そのホームズはTRPGのリプレイに登場する「あらゆることを理論的に説明することで
超自然的な物事など想定する必要がない」ことを証明することで妖かしや魔術を無効化する
ホームズだ。
ちなみにプレイヤーは鋼屋ジンで、必殺技はあらゆる異能を打ち砕く「破邪顕正」と書いて
デモンベイン。
そこでGSホームズの出番
ミルキィのホームズと
緋弾のホームズも忘れないで下さい
ちなみに緋弾のホームズは初代がまだ生きてる
ホームズが多すぎる気がする
>>377 前者はポール・アンダースンの「タイムパトロール」で、後者は「シャーロックホームズの宇宙戦争」だと思うぞ。
前者には名前は出てこないが、
「ある時代のロンドンにいる探偵にヒントを与えるとタイムパトロールのことを見抜きかねない、それほどの男だ」
と言われてる。
後者はパスティーシュなので言わずもがな。
>>380 エンバーミングに出てきた時は口の端が釣りあがるのを押さえられなかったヨ
宮崎駿監督の犬ホームズを忘れてはいけない
いしいひさいちのホームズも是非
385 :
377:2011/06/27(月) 21:11:13.33 ID:jxe+pYX7
>>381 分かりにくいかもしれんが、>>365に対して>>363のネタの説明をしてるんだよ。
「ホームズの宇宙戦争」は今となってはジャスティスリーグでネタに使われてるほうが
有名かもね。
最近アメコミから召喚されるキャラが居ないので寂しい
獣人か
半獣半人と変身能力持ちにわかれるな
ロバート・ダウニー・Jr.のホームズはちゃんと拳闘したり不思議な粉を吸う
>>387 ワイルドハーフから召喚すれば大丈夫だな
下半身素っ裸の虎っ娘を召喚したら
学院的にパンツを履かせるべきでしょうか
醜いものにパンツを履かせるのは苦痛ですが
可愛い虎っ娘にパンツを履かせるのは損失だと思います
・・・学院長辺りは何かしら理由付けてノーパンを許可しそうだよなぁ
あとここで愚痴ることじゃないけど
ちっちゃい頃はあんな可愛らしかったのに
成長したらどうしてああも変わり果てたかな、妹
っていうか、ブレスオブファイアの新作って出ないのかしら
高見盛の話は止めろ
仮に履かせるとして、尻尾はどうするというのだ。
それはそうと、タイトルは失念したものの某九尾狐のお姉さんは尻尾穴付きのショーツを履くのに苦労してるみたい。
九尾とか、すごくモフモフしたいです。
>>386 Xメンだと、爆発キャラつながりでジュビリーとかガンビットが見てみたい
>>393 ガンビットは女癖が悪いからルイズの嫉妬が凄いことに!
>>390 リンプーとかニーナ召喚は考えたことがある。シリーズ中Uは神作だった。
一番好きなRPGだから書きたいけど、今は別のやつ書いてるからできない。
XがこけなきゃYがあったかもしれないのに……
396 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/28(火) 00:06:01.64 ID:TxcqqaKg
二百三高地から小賀武志を召喚。
召喚された当初
「レコンキスタだって悪い奴ばかりではないよ。
自分の信じる正義のために戦っている。」
その後は・・・
「レコンキスタの人間は全員敵であります。」
「死んでいく兵達には、国家も軍指令も軍規もそんなものは一切無縁です!
灼熱地獄のそこで鬼となって焼かれていく苦痛があるだけです!
その部下達の苦痛をトリステイン式の貴族精神で救えるのですか!?」
狐と言えば異世界の旅に慣れまくってる駄フォックスとその旦那がいるな
ルイズも尻叩きされそうだ
狐なら我が家のお稲荷さまのクーちゃんもおるけどね、順応性最高だから平然とハルケにいつくだろな
お菓子で釣るとかできるけどね、ルイズから逃げ出して翌朝食堂にいたりして
狐と言えば久遠かねぇ。
ピンチの時には人間化(多段機能付き)頼れるイカした実用派!
そしてなによりかわいい。
いっそフジリュー版封神演義のダッキを喚んでルイズを某王様みたいに魔改造されるといいよ
403 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/28(火) 01:27:02.03 ID:sIxZT/9f
狐といえば羽衣狐様だろ。
ルイズ確実に食われるけど。
狐火怪獣ミエゴンを召喚、呼ばれたとたんに暴れまわるが自分の吐いた炎が体に引火して自爆
ロシア語で考えるんだ、必ずロシア語で
殺せ!ロシア人だ
>>406 おい、ゲームオーバーになったぞ、どうなってんだ
↑と、ロシア語でかいてある
ロシア関連で召喚したくなるキャラっていないかな。
ザンギエフとかムキムキしててキュルケには良さげだけど。
>>409 カプコン繋がりでロシア繋がりならマッスルボマーのアレクセイ・ザラゾフもいるよ
東南アジアの犯罪都市から
火傷顔の姐御を……
破壊の杖は無論AK
タルブにはミグ
ティーガーの変わりにSU152を配備
バラライカ姐さんいいな
ぜひワルドあたりを強制的に跪かせてほしい
その前にルイズとギーシュが大変な目に遭いそうだw
>>398 クーちゃん喚ぶならトオルも一緒に召喚しとかないと大変な事になりかねないぞなる
丁度番組からいなくなった事だし仮面ライダー000の伊達さんを召喚すれば
ギーシュが5103ポジになりかねんが
ロシア関連よりはソビエト関連のほうがネタ的に優れているのは、喜ぶべきか悲しむべきか
ロシア帝国? そんな物は知らん
誰もいない時間帯だが予告
とりあえずLOG-9前半部分を10分後頃に投下
LOG-9 ネット球
小川が金糸のように煌く美しい草原をはるか遠くに垣間見える漆黒の空間に、ゆっくりと光が入る。
天の川のような白い川が、何か大事なものを隔てるように現れた。
同時に、辺りは方向の分からない、ただの無になっていた。
「ここは…………………」
「ネット球(スフィア)の領域の一つ。君は脳内の情報の配列(フォーマット)が何か強引な方法で書き換えられていた為に、ここの知覚が可能になっていたのだ。
恐らくは、霧亥と呼ばれる人物への不正なアクセスが、その主要な要因だろう………我々は君の意識混濁に乗じ、それを利用した」
「あなた、だれ?」
いつの間にか意識が川の向こうに飛ばされて、辺りは一面の無から、何かが溢れては消える場所に変わった。
“二つの何か”の膨大な組み合わせによって出来る塔。
その中に、あの霧亥とへし折れた剣、加えて自分が、浮かぶように溶け込んでいるのが、まるで第三者から視たように知覚できた。
それともう一つ、白い一枚の布で覆われて、能面のような青白い顔だけをそこから出したようなイメージで知覚される何かが、この領域そのものの一部であるかのように存在している。
「統治局―――ネットスフィアの支配レベル………霧亥と呼ばれる人物へメッセージを伝える為に、我々はネットスフィア・ローカルネットワークを作出し、そこに自己の個性を複製した………………」
強烈な意識と情報があたりにばら撒かれては、ノイズとなって頭に流れ込む。
これが言葉であると軟弱な思考で理解するのは、可聴域を超えた音波を分析するのに等しい苦痛と時間が必要だった。
「現在、混沌とした感染症の状態は、変わることなく続いており、我々はネットスフィアの正常化を望んでいる」
辺りで蠢く二つの何かは、数字で言うならゼロともう一つ、最小にして最大を意味する数字の組み合わせだ。
二進法の世界での1だとは理解しきれなかった。
「霧亥と呼ばれる人物が、都市への不正干渉によって拉致され、目的を果たせていないことを、我々は当初より確認していた。しかし、彼を保護しようとする試みは、全て不可能だった。
なぜなら、如何なる理由があろうとも、ネットスフィアの支配レベルでしかない我々が、霧亥と呼ばれる人物のレベルへ直接的なコンタクトを取ることは、許可されていないからだ。
また、そちらへの介入と、不正干渉への制裁措置についても、同様である」
辺りに感じるイメージは、情報の塔だ。
「一連の不正干渉は、世界線を越えての都市そのものへの干渉であり、カウンタープログラムの発動は、ネットスフィア支配レベルからは完全に独立して行われる。
この瞬間にも、我々は霧亥と呼ばれる人物の救出を果たす前に、状況が壊滅的になってしまうのを阻止する為、独自に様々な処置を試みているが、そちらの世界線による秩序の破壊が、これを妨害している―――」
「……それで、あなたたちの目的は、何なの?」
「―――悪意あるシステムがそちらの領域に存在し、都市の状態に乗じて無作為な干渉を行い、これがカオスの拡大要因の一つになっている。
悪質な行為とはいえ極めて小規模であり、通常これらへの対処の優先順位は低いが、これを解決して後、都市の正常化を果たさなければならない理由がある。
ネットを正常化し、都市を救うには、その可能性を託すに足る存在である“彼”の協力が、不可欠なのだ。
不正干渉を行うシステムは、これを無力化、あるいは破壊することが必要不可欠であるが、
同時に、我々の権限では霧亥と呼ばれる人物を独自に救出することが不可能な為、拉致に使用されたシステムを制御し、利用することが帰還に必要となる。
強硬な手段に出ることはできないのだ」
情報は積み重なっては腐り落ちて消え、それを肥やしに新たな情報を生み出していく。
自分もその生ごみの中に溶けていることに気づいた。
霧亥や、統治局だけが、異様な輝きを放つようにして、確かに存在している。
「だが、我々は未だにその方法を発見できずにいる。都市のカオスは深刻な域に達しており、規則的制約以外にも、様々な障害が発生しているからだ。
そちらでの独自の行動によってそれを発見しなければならない」
統治局は始めてその姿が一枚絵でないことを証明した。
その目は、虚空ではなく、霧亥を見つめている。
「すでに我々は代理構成体を派遣した。今後も最大限の努力を惜しまない。探索の必要がある」
霧亥は覚醒しながらこの夢の世界の中に居るのだと、不思議と理解できた。
だから、まるでこの世界では喋れないのだろう。
まるで白昼夢の中で金縛りに会うように…ただ意思の疎通は、口を動かす以上に、正確で、濃密に、何らかの手段を用いて行えるのもなんとなく分かった。
「どこかに都市への帰還を果たす可能性が存在し、その探索によってそれが発見されることを………そして、君が協力してくれることを、我々は信じている………ありがとう―――」
重たい首を少しだけ持ち上げて、統治局を見つめる。
「まって、霧亥はあなたたちと同じなの?」
この奇妙な世界で唯一、見覚えのある何かが、統治局の額に刻まれていた。
「―――霧亥は我々とは違う。ネットスフィア以前の、システムの………密使………………」
・・・ひどく長い夢を見たような気がしたが、助け起こした友人たちは「だいじょうぶ、一分ないほどしか寝ていない」とだけ告げた。
まあ、夢などそんなものだ、おまけにはっきり覚えているわけでもない。
ルイズはそこでやっと自分の直面した状況と、目にした光景を思い出して跳ね上がる。
こちらは空ろな夢ではない、酷い現実だ。
調子に乗った級友が、腕を蒸発させられるようなちゃちなものではない、何かものすごいことが起こっているとしかいえない光景だ。
その中心人物たる、自身の使い魔―――として召喚した、由来の判らぬ男はどこにいったのかと、あわてて見回すと、また何か騒ぎの原因を生み出そうとしているのが見えた。
止めに入ろうと走り出したものの、次の瞬間には、小さいころにぶちまけた積み木がたてるような音を聞くことになった。
すっかり耳をやられていたとはいえ、その振動だけで思わず三人はへたり込む。
収まり始めたばかりの砂埃は、更なる増援を得てもうもうと勢いを取り戻し、辺りに立ち込める。
学院の本体ともいえる構造の一角が、たった一人の男に引き裂かれて崩れ落ちた。
砂埃がなければ、開いた口が塞がらなかっただろう。
「なにやってるのよ………」
怒鳴ろうとして失敗したルイズは、霧亥が手にする棒状のものに気づく。
棒状というより、近づいてみてみれば、まさしく杖といった趣のものだ。
「なに、それ?」
霧亥は答えず、口周りを覆ったり目を細めたりする様子もなしに、そのまま歩き去っていく。
こういったときに自然と発せられる霧亥の非人間的な力強さから、恐ろしくも頼もしく、やたら颯爽として見えるのは、先のゴーレムの粉砕という事実がなくとも無理のないことである。
が、三人はそれを通り越して、完全に思考が停止しかかっていた。
唖然
そのまま三人は、ほとんど頭の回転が滞ったまま霧亥の後に続く。
「おお、ミスタ・キリイ!!」
そんな叫び声が聞こえて我に返ったころには、もう学院の内部だった・・・
支援
いっそ今の空き時間に落とせるところまで行ってしまおう
・・・そのまま窓が吹き飛んだ挙句、壁までひび割れだらけになった学院長室に案内された霧亥たち四人は、神妙な顔つきの教師陣に、事の顛末を説明するように言われた。
学院長の秘書、ロングビルが騒動に巻き込まれ、重傷を負ったこともあって、中では数人の教師が忙しそうに動いている。
四人がまとめて呼ばれたといっても、霧亥は部屋には入らず、シュヴルーズが慣れた手つきで非常に細かい粒子で出来た堆積物に似たものと水―――粘土を作り、壁を補修しているのを半開きの扉から観察していた。
というのも、平民風情の言うことなど当てにならないと言う、大多数の教師の批判を受けてのことだ。
事実、今回の事件の最中、平民の守衛たちは何もできずにいた。
当直を無視して就寝中だった教師や、生徒たちがおとなしく床に就いたかを見て回っていた教師が、何も知らぬうちに昏倒したことなどは体よく無視されて、それなりに信用に足る生徒たちの証言が始まる。
ルイズ曰く―――町で不逞の輩に襲われた
キュルケ曰く―――ルイズたちが戻ってきた辺りで巨大なゴーレムが練成された
タバサ曰く―――そのゴーレムが学院の宝物を奪おうとして壁を殴打していた
さらに、みな口を揃え矢継ぎ早に、こう続ける
―――キリイが、三十メイルはある巨躯を、一撃の下に破砕した
―――その一撃には、ほとんど詠唱や特長的な動作がなかった
―――明らかに十分な一撃ではなく、過剰この上ない破壊だった
―――学院の被害は、この一撃の余波だ
更に、タバサが「その後で宝物庫の壁を崩したのは、キリイが素手でやった」と言おうとしたが、霧亥を盗賊扱いされては話がややこしくなると踏んだキュルケが、その口を押さえた。
ルイズは教師陣は一様に「まさか」という顔をするかと思ったが、恐る恐る顔を上げると、三人の教師はそうではなかった。
それ以外の教師も、とにかく圧倒的な破壊が起こった事実は認識しており、まるで原因の見当はついていなかったので「もしや」というくらいには思っているようだった。
「全員席をはずすように……これは確定事項ではなく、あくまで参考のための聴取でのう……聞き手が多くて、半端な情報を広められても困るわい」
うんざりした具合で、オスマンが口にする。
退出する教師たちは「そうだ、あの生徒の言うことが真であるはずがない」という具合に、オスマンの発言を理解した。
「あ、ミスタ・ギトー。少し頼まれてほしいことがあるので、ちょいと残ってくれ」
「はい、オールド・オスマン」
かくして、事情に理解のある教師三人が残り、オスマンは深刻な面持ちで深いため息をついた。
ルイズたちには、“三百年生きる老人”という中傷か賞賛か分からぬ陰口をたたかれているこの老人が、文字通り三百年生きた死体寸前の代物に写った。
「ミスタ・ギトー、キリイ君がそれほどの力を発揮する可能性はあると思うかね?」
「私は、先回の決闘の様子を確認しておりました………が、可能性はきわめて高いと、判断します」
「説明してくれんか」
ギトーは不吉そうな眼を窄めて、一息吸う。
「では、まず……ミスタ・キリイの使用した魔法、あるいはそれによらない何らかの武器は、あの間抜けな青銅のギーシュの腕を、消滅させました」
教師が生徒を“間抜け”とは…ルイズは少しムッとした。
「私の風の系統を持ってすれば、ライン以下の能力程度で、技術が低くとも、杖の一振り、一撃で腕など衣類ごと切り落とせましょう。
ですが、驚嘆すべきは、それが“斬撃”ではなかった……という点です。私は、決闘の現場に、消し炭になったミスタ・ギーシュの指先を発見しました。
攻撃の瞬間の発光と、強烈な熱の放射も確認できました。つまり、これは火の系統に分類されるような、物の燃焼を起こすことによる攻撃であるということです」
ちらりと、コルベールに視線を向ける。
「これは、驚くべきこと……異論はありますまい? どのような火力であっても、火で焼かれた物体は、せいぜいが炭になるか、融けて消えるのみです。
炎に煽られて、飛ばされていくことはありましょうが、それはあの決闘の現場では起っていませんでした。
…………では、ミスタ・コルベール―――」
「なんでしょうか」
「―――聞きますが、これほどの火力、トライアングルであり、火系統の研究の第一人者であり、かつて人を焼く立場でもあったあなたから見て、どれほどのものと見ますか?」
コルベールが眉をしかめる。
ルイズたち生徒も、おやっという感じでコルベールを見た。
そうか、彼は昔軍属だったのか。
「……脅威です。人間一人を炭化させる程度であれば、ラインでも容易に放てますが、それでも時間をかけた詠唱は不可欠です。
鉄を溶解させる温度や、人体を骨も残さず灰にする火勢を生じさせるレベルにいけば、一言二言ですむような生半可な詠唱ではすまなくなります。
更に言えば、熱した鉄板の上の水のように、一部とはいえ人体を跡形もなく蒸発させることなど……まして、それを一瞬で行うなど、不可能です。
仮に可能であっても、相応のものを組み立ておかねばなりません。先住魔法のような、特殊なものであっても、事前にある種の行動をとらなければ魔法は満足に機能しないといいます」
「つまり、それを容易くこなして見せた彼は、稀代の才能を持つメイジであるか、我々の前提を根底から無視した途方もない、未知の強力な魔法と技術を持っているということです。
彼はあなた方が暗器と分析した、いわば懐に忍ばせるナイフのようなものでこの威力を発揮しました。眼にも止まらぬ一瞬で、
私の見る限り、何の事前準備もなしに………なにせ、直前まで、青銅製のこぶしを相手にしておりましたから。
そして今回は、彼が主力として、騎士の長槍、銃士の小銃、そして我々の杖のように持ち歩いていた、あの奇妙な物体を使用しての攻撃―――だそうだな? ミス・タバサ」
「確かに見た」
キュルケも合わせて首を縦に振った。
「で、あれば、言うまでもなく本来の威力の一撃を、本気で放ったはずです。
彼の常識で言えば、自身と同等の技術で巨大なゴーレムを生み出したと判断するでしょうから、過剰な破壊も納得できるというものですな。
なにせ、青銅のゴーレムを素手で砕く兵士が住まう国の住人です。ま、本人の口から聞くのが、一番早そうですが」
霧亥は会話の終了を確認すると、部屋の外での待機をやめて一歩二歩と教師と生徒の間に進む。
「おお、そこまで来とったのか。すまんのう、どうにも教師とは頭が固い」
「聞きたいことがある」
たじろぐオスマンは、汗を拭う。
「質問かね? こちらばかり聞いたわけじゃから、そりゃまあ大抵の事は―――」
霧亥の眼が余計に鋭くなったのを正面のコルベールが確認した刹那。
「ま、ま、まっとくれ、キリイ君!!」
「止せ! ミスタ・キリイ!!」
離れた位置にいたコルベールの杖を、抜き取られると同時に見えない力で破壊。
杖がその影の辺りにいたせいで、オスマンの机も内側から弾けた。
しえん
「あぢっ!!?」
すぐそばにいたギトーは、霧亥の左腕からほとばしった電流に当てられ、体中の筋肉が痙攣して吹き飛ぶ。
生徒達は対応する余裕がないほどに驚いたが、先ほどの光景に比べれば幾分衝撃は少ないようで、人に対して力を行使したことを警戒しつつも、激しく動じはしない。
机についたままのオスマンは、霧亥の帯電する左腕に、ついさっき粉々になったような、いわゆる杖と似た形状の物体があることに眼を丸くした。
「それは………」
その形状に、つい反射的に自分も杖を抜いたことを後悔しつつ、霧亥が握るのが宝物庫の収蔵品にあった杖であることを、コルベールも確認する。
銘はなんだったか―――逡巡するうちに、オスマンが「おお」と唸る
「その異界の杖は、そうか、もしやとは思ったが………」
―――オスマンは遠い目をして、よろよろと立ち上がった。
「いったいどういう事です!?」
「あの杖は、彼と同じ世界のものということじゃよ……そうなんじゃろう?」
霧亥に全ての視線が向けられるが、応答はなく、黙って杖をオスマンに向けているだけであることに、ルイズたちも冷や汗を流した。
「話してはくれんか……そうじゃろうな、無理ないわい………」
隠し立てする気はなかったが、そう思われても無理のないことだ。
客観的に見てもそのとおりで、ルイズたちも「たしかにこれは怒るだろう」と納得してしまった。
彼女らにも、一目で杖の表面に浮かぶ、光り輝く珍しい紋様が目に入ったのだ。
コルベールは腕をかばいながら、ゆっくり霧亥の持つ物体に視線を這わす。
「その印は、やはりミスタ・キリイの所属を表すものなのですか?…いや、しかし、そのような紋様は、保管時には見当たりませんでしたが………」
と、ここで彼の右手のルーンを思い出す。
杖との契約―――というのは妙だが、我々の杖が使用可能な状態になるまでに、幾つかの処置を経るように、彼の持つ杖もまた、使用者に応じて変化したというのだろうか?
「それでは、お前さんと彼は、同じ世界からやってきたのか………」
まるで動かない聞き手を抑えながら考察するコルベールをよそに、耄碌したように焦点のぼやけた目のオスマン。
うわ言を思わせる、掠れた声だった。
「どういう意味だ?」
霧亥は、早くも糸口を見つけたような気がしていた。
「それは、ある人物が、ずっと昔にわしの前で使ったものじゃよ………………確かに、どこかお前さんに似たところがあったわい」
知っていることをすべて話せ、と言われるような無言の圧力を受けて、昔話が始まった。
「…………まだわしが若い頃、東の国境の、人の手の入らない森の辺りでフィールドワークをしていたことがあったのじゃが、その時の事じゃよ………
不意に遭遇したワイバーンに襲われたわしは、必死に逃げ回った末に追い詰められ、ついにそのブレスで焼かれようと言うところまで来た。
ところが死を覚悟した後で、ワイバーンは突如としてその標的をわしから逸らした。その狙いの先に、彼が居たのじゃよ………」
霧亥以外も、この興味深い老人の昔話の核心部分を聞き逃すまいと、耳を澄ます。
オスマンは少し伏せ目がちだ。
「全身を黒色の革か金属のようなものでできた鎧をまとった、珍しい黒髪の男。その手に握られていたのが、その杖じゃ。
驚くことに、ワイバーンに一切気づかれずに、その間合いの中に入り込んでいた彼は、まるで意に介していないように、威嚇の唸りを上げるワイバーンを見ておった。
もうすぐに強烈なブレスが吐き出される―――というのが、その鋭い牙の隙間から熱と光が漏れ出すので分かった………が、結局は、ブレスが彼を焼くことも、わしを焼くこともなかった。
巨大な竜の頭部が、ゆですぎた卵のようにして弾けて、めくれた頭骨や体液が、わしの攻撃ではとても敵わなかった鱗の外側に覗いていたんじゃよ。さすがに思わず悲鳴を上げてしまったわい。
構えた杖から、何か見えない魔法で、彼がそれを引き起こしたのだと分かったが、そんなことはどうでもよくなった。
ワイバーンを、鶏を絞めるように撃退して見せた男の“目”が………………まるで、わしの知る、“目”ではなかった」
今思えば同じだった―――老人はあからさまに顔色を悪くした。
一番長く霧亥と接していたルイズも、同じように顔色が悪くなる。
その他教師や生徒は、その光景を思い浮かべてぞっとしたが、あまり実感の湧くものではない。
「それで、彼は?」
ギトーはまだしびれの残る体に苦悶している。
「知らん。姿を消した後で、慌てて彼の立っていた場所に飛んでいったが、もう追跡できる足跡も残ってはおらなんだ……その杖が、何故か捨てられておった以外はのう」
それだけであることを念押しして、語りは終わった。
霧亥はその結末に、興味を失い、思わず警戒棒を下ろしてしまう。
「しかし、それほどのものを、なぜ捨てたのかは分からん。キリイ君には分かるのかと思うが―――」
「蓄電残量が無い。状況によっては使用不可能だ」
「―――よく分からんが、もうあの魔法を放てないほどに、消耗していると言うことかのう?」
霧亥は無言で肯定する。
「それもそうじゃのう………同じように、突如としてハルケギニアに飛ばされたのであれば、その消耗たるや尋常ではないはずじゃし………」
みなそれぞれに思いをはせる中、霧亥は件の人物について考えていた。
火器は原則として、使用者の脳内・電子体内に電子的に内蔵された火器管制用のアプリケーションと、身体構造に含まれる接続器からの電力供給がなければ使用できない。
ただし、使用の度に電力供給を一から行うのは、それ以外の活動に大きな制限がかかるのみならず、膨大な瞬間電力供給が必要になり、あまり実用的ではない。
その為、火器にはある程度の規模の電源、多くの場合はただの蓄電器が組み込まれていて、火器管制用のアプリのみでの、十分使用できるようになっている。
特殊例でもない限りは、火器の携行者は都市構造からの直接的なエネルギーの供給が常時行われているため、このようなもののみに頼ることはないが、その供給が断たれた場合には、
身体内や装備内の、残りの限られている電力をすり減らす形で活動するほかなくなる。
偽装を施されたエージェント達のするような、人の姿を借りた長期の活動程度では、当然力尽きることはないが、
そういったことをまるで想定せずに、限定・特化的な要件で作出された者達であれば、突然のスタンド・アローンとしての行動で、その力が持続するはずはない。
ましてや、ここは都市と違って、恒久的な電力供給どころか、都市の古い設備を利用した手間のかかる電力や装備の補給すら不可能だ。
延命を迫られれば、体内電力は可能な限り温存する必要に迫られ、火器の使用は身体の活動に影響のない、内臓電源に頼るほかない。
霧亥がそうであったように、だ。
「彼が今もどこかで活動しているか……というのはとりあえず措くとしても、キリイ君以外にもこちらに来ておる人間が居ると言うことは、案外、そちらとも近いのかもしれんのう」
霧亥も、もしかするとそうなのかもしれないと考えたことはあった。
純粋な三次元平面における距離ではないのかもしれない。
しかし、今回聞かされた話では、いかに電力不足に見舞われたとはいえ、孤立した状態で装備を破棄するような真似をした先例があるらしいのだ。
帰還の見込みが高ければ、延命のために装備への充電を拒否するだろうか?
あるいはネットスフィア側からの接触があり、破棄の決定を通達されたのかもしれないが、どちらにせよあまり良い事例ではない。
「少なくとも、昔から通じやすい状況にはあった―――というところですか」
ますます老け込んだ二人の言葉に、ルイズは冷や汗を掻いた。
「警戒すべきは、迷い込んだのではなく、確実に我々に連れ去られたという例が、ここにひとつ有るのだ………という事でしょうな」
ギトーの言葉に、今度はオスマンとコルベールが冷や汗を掻いた。
よくも今まで人前では口にせずに留めておいたことを、とでも言いたげに口をもごもごする。
あえてそれに言葉を返すこともしなかったし、恐ろしくて霧亥の表情を伺うこともしなかったが、何かしたところで二人の結論も変わらず、同じだ。
これは狂気の沙汰だ。
ゴーレムの襲撃の件と言い、何かが動き出しているような気配も、この認識を加速させた。
仮に、霧亥と同等の兵士が万の単位でハルケギニアに押し寄せたと言うだけで、エルフや東方を含め、抵抗できる勢力など、何処にもありはしないだろう。
もちろん、霧亥の故郷ほどの文明となれば、比較にならぬ人口と兵力、その派兵手段を持ち合わせているだろうから、抵抗できるかどうかと言う考えすら楽観的かもしれない。
いきなり全面戦争とはいかないかもしれないが、とにかく最低で外交問題相当の事態が、明るみに出ていないだけで、目の前で着実に進行している。
ほかの教師や生徒は、彼らに言わせればまったく考えが足らなかったが、霧亥の認識もこれと同じだ。
都市への不正な干渉のみならず、ネットスフィア関係者に害成したのだとすれば、自体は悪い方向に修正しなければなるまい。
ネットスフィアとその保安を司る団体が、自社と入会者の安全・利益を守るために、何らかの動きを見せる可能性が出てくる。
機能不全が著しい都市やネットそのものではなく、暴走こそすれ、機能の多くは保ったままのソフトウェアと組織に敵対することは、向こうの都合で運よく見逃される可能性が低くなってしまう。
何より、発足当時の民意を象徴するかのように、犯罪者達への対処は極めて厳格であり、そこに至るまでの過程も攻撃的だ。
「で、どうするの?」
しばし沈黙を破るキュルケ。
「いや、これからの方針をどうするのかとかいろいろあるんじゃが………………」
「それも良いですけど、あまり目立たせないようにするなら、一先ず先生達を呼び戻すのは―――」
「あ、忘れとった」
ルイズの指摘に、老人は慌てて自分の魔法で机の形だけを元に戻してから、どこからか持ってきたテーブルクロスで覆い隠し、思い思いの場所へ行き始めた教師達を速やかに呼び戻すようギトーへ指示する。
長引いた聴取や、異音を不審に思う教師も出るだろうから、それへの言い訳も適当にするよう告げた。
「まあ、何はともあれ、ミス・ロングビルを除けば、重傷者も出さず、宝物が盗まれることもなかったわけですな」
「そうじゃ、その通りそうじゃ、とにかく一安心。今すぐ解決する問題もないわけじゃし、補修などで慌しくはなろうが、大きく予定を変更することはあるまい。
本塔への被害も、宝物庫の壁が崩れた程度で、食堂から締め出されるわけでもなく、講義場所が変更される程度ではないかと、凡そまとまっておる」
解決の先延ばし、と言うよりは、後で自分達だけで何らかの対策を秘密裏に執り行おうとしているのが、素人目にも見て取れた。
その後は、何ができるわけでもない生徒達は言われるままに退出し、残された霧亥はオスマンに質問を投げかけられた。
「君の故郷は、このこと知っとると思うかね?」
どこまでも、とは言わないが肯定できる。
「………………ああ」
どこかへと歩き去っていく霧亥の背後で、また二人の教師の老化が進んだが、さらに追い討ちをかけるような事実が、教師の尋問と生徒の証言から判明する。
具体的には、その唯一の重傷者―――ロングビルの服装や倒れていた位置は、ゴーレムの操縦者のものと同じであるという証言と、それを認めるロングビルの尋問結果である。
山積みの課題に、更に多くが積みあがった。
結果の隠蔽は困難。
学院の収蔵品を使い、優秀な生徒が意図せず撃退した―――というような過程をでっち上げるなど、事情を知る教師はこの後、長期にわたる対応に追われることとなった・・・
LOG.9@END
もう少し長くできそうで、意外と区切りが良かったのでLOG-9はここまで
ギトーがよく喋り、霧亥がしっかり会話に参加する、LAWからは随分と衝撃の弱い警戒棒登場の被召喚物回
LVが低いもので時間がかかり、本来やるべきことに支障を来してしまった…
何と生きていたロングビル
しかしBLAME!的な意味から、二度目の出番を作って有効活用する気がしない
投下乙
警棒ってなにかと思ったら、アニメでも使われてたあれか
地味でも現代の対戦車火器よりよっぽと火力があるだろそれw
乙つ
投下乙
有能なギトーだと・・・?
でもギトー先生はやっぱりギトー先生であるな
投下乙でした。
まあそのあたりはギトー先生ですから。
ぶっちゃけ高い汎用性と遍在による物量攻撃は単純かつ強力ですが、
チャージを許すほどヌルい生物しか相手にした事がないのかもしれません。
もしかしたら、フライやレビテーションといった移動系が属しているという理由もあったりするのでしょうね。
438 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/28(火) 19:14:17.10 ID:w3gwAa/G
統治局の外殻素材ぶち抜くのが標準の武器にインパクトが弱いなんて
BLAME!的に考えるとみんな雲行きが悪いようにしか思えない乙
アウターゾーンがまとめに入ってない
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
>>439 まだ萌え萌えさんが登録してないだろ?
というか、あの人以外で誰か登録してるのか?
つか別に萌え萌えさんがそういう役割を与えられてるわけじゃなくて
気付いた人がやるのがここのルールなんだぜ?
俺も登録したことあるし
夢枕獏の魔獣狩りから九門鳳介召還
を冒頭だけ書いてみたが、誰が得するんだろこれ。
スパロボZ2 49話でアイムがアサキムに殺されず
コクピットから放り出されて転落死
一方ハルケギニアのルイズは召喚失敗を続け虚勢を張り続ける
そして主を失ったアリエティスと偽りの黒羊のスフィアをルイズが召喚
契約して新たな共鳴者に
「うごかねーゴーレムなんてどーすんだよw」
「動くわよ!動かせるわよ!!」←共鳴
「私のサラマンダーを見て御覧なさいよ」
「ふん!実家の姉様の所にだってその三倍くらいのがいるわよ!!」←共鳴
「ではミス・ヴァリエール、錬金してみてごらんなさい」
「やめて」
「私だって出来るわよ!楽勝よ!!」←ちょっと共鳴
「ゼロのルイズが僕に勝てると思っているのかい?」
「黙りなさいこの女の敵!アンタみたいな貴族の風上にも置けないような奴は眠り姫の冥王神話が捩れた運命の神喰らいよ!!」←スフィア定着
「結婚しよう、ルイズ」
「うれしいわワルド、だって私、こんなに森のせせらぎは空想科学読本でのどごし甘く深紅の宙燃え立つように孤独の死体保存技術は波打ち際の勇者の鎧アル」
「る、ルイ・・・ズ・・・?」
色々あってVS七万
「電網厄除けシュガーラビットのやみつき麺棒!貧乏神が桜庭演劇部のシルバー二枚入り!!嗚呼!愚かな豊かなコク!冤罪の縛り首がオートリールのアルカリ性!!」
「できることから一つずつ!コイントスの分かれ道は砂漠の城の未来を!!古井戸の底に偶像!硬直した魂の解放者は死神で先輩総攻撃のチャンス!!」
「進化する胸筋の悲しみは熱砂に消えてゆびゆびびゅうううううゆうゆゆ赤い粒子!!」
「美麗イラストでコズミックホラーバー指すエイリアン定700MB春のピスタチオよ!!!!」
ルイズはもう後戻り出来なくなりましたとさ
>>443 オレが得するぜッ!!
とでも言ってほしかったのかね?
>>445 言ってもいいんだぜ。
「ひどい俺得を見た」ってよ。
ゼロのペルソナの作者です
もう少しでイ(エタ)ッちまうところだったぜ。
今から投下します
恋人 意味……魅力・誘惑
タバサと陽介が学園から出発したあとのこと、ルイズと完二の身に大変なことが起こっていた。
「ねえ、カンジ。わたしは世界で一番カンジが大好き!カンジはわたしのこと好き?」
ルイズはカンジの腕に絡み付いて言う。その声は貴族の好む高級菓子よりも甘い。
「……」
完二は苦い顔をして口を閉ざしている。
「ねえ、カンジ。答えてよ。もしかして……わたしのこと嫌い?」
ルイズは目を涙でうるうるさせる。
しょうがないというふうに完二は答えた。
「別にキライじゃねえよ」
「じゃあ、好きなの?」
「……好きなほうじゃねーのか」
ルイズの顔がぱあっと明るくなる。喜色満面とはこのことを言うのであろう。
「じゃあじゃあ、カンジはどれくらいわたしのこと好き?わたしはこーれくらいこーれくらい好き」
ルイズは絡めていた手を離して両手を挙げて広げるようなジェスチャーをする。
「どれくらい?」
ルイズは一旦離した完二の手に再びしがみつき、きらきらという擬態語が似合いそうな目で完二を見つめる。
完二は勘弁してくれと溜め息をついた。
ルイズが突然、完二に猛烈なアピールをするようになったのは、
ルイズが今まで完二に助けられていたことで募っていた思いが恋愛感情となって爆発したから。では当然ない。
ぎろりと完二は現在の状況を作り出した元凶を睨みつける。
その睨みを受けたのは二人の魔法使いはたじろいだ。
その二人とは以前シエスタに因縁をつけた際に完二にシメられたギーシュと、その彼女モンランシーである。
今ルイズと完二がイチャイチャしている(完二が望んだわけではないが)部屋もモンモランシーの部屋であった。
ルイズが完二に熱をあげるようになってしまったのは次のようなわけがあった。
モンモランシーはギーシュのガールフレンドである。そして彼女はボーイフレンドの浮気性にほとほと困り果てていた。
その時、水の魔法使いである彼女はひらめいた。水属性魔法の秘薬である惚れ薬を飲ませればいい。
そうすれば彼は自分にだけに愛を注ぐようになるはずだ、と。そして実行に移そうとした。
ところがそのギーシュに飲ませようとしたワインに入れた惚れ薬を誤ってルイズが飲んでしまったのだ。
結果、ルイズは完二に惚れてしまった。
完二に言わせればバカバカしいにもほどがある話だった。
とはいえ、他人事なら首をすくめて終わらせることでも、完二はその当事者となってしまったのだからたまったものではない。
「おいコラ、モン……モンモン」
「ちょっと変な略し方しないでよ」
モンモランシーが抗議の声を上げるが、完二はそれを上回る大声を出した。
「うっせえ!ダレのせいでこーなってると思ってんだ!ああッ!」
モンモランシーは思わず小さくなってしまう。ギーシュが彼女の盾になるように完二の前に立つ。
「やめたまえ、ぼくの彼女に無礼な真似は……うぐ」
完二はギーシュの襟首を掴んだ。
「テメーのせいだろうが!またシメっぞ!キュッとシメっぞ!」
かっこつけておきながら以前の再現のように再び吊るされるギーシュ。そんなギーシュを救ったのはルイズであった。
「ねえ、カンジ……。モンモランシーたちとばかり話をして……わたしといても楽しくない……?」
今にも泣き出しそうな目でルイズは完二を見上げている。
モンモラシーというよりは今はギーシュと話しているというか、そもそも話すらしていなように思えるが、
ルイズにはどうやらモンモラシーと楽しくおしゃべりをしているように思えたらしい。
見つめるルイズに完二も及び腰になってしまう。
ギーシュを掴んでいる手を離して弁明をする。ギーシュは尻餅をついてゲホゲホと咳をした。
「い、いや、んなこたあねえよ!」
「わたしと一緒はつまらなくない?」
潤んだ目のまま、小首をかしげながら言う。
「お、おう。つまらなくなんかねえよ」
「ありがと、カンジ……」
しがみついていた完二の腕をぎゅっとルイズはより強く抱きしめた。
ルイズの視線が完二の顔から外れたので、完二は射殺すような眼光を元凶たる二人のカップルに投げつけた。
このような茶番は当然ながら完二の望みではないのだ。
凶暴な視線を浴びせられたモンモランシーは慌てて言った。
「だ、大丈夫よ!薬の効果はそのうち切れるから!」
「そのうちっていつだよ?」
「一ヵ月か……一年後か……」
いぶかしげに尋ねた完二に対してモンモランシーは視線を泳がせながら言った。
「んなに待てっか!」
大声を出すとルイズはビクッと震えた。
「か、カンジ、もしかしてわたしが抱きついたりするの迷惑?わたしのこと嫌いになっちゃった?」
それから再び完二はまさしく恋という病にかかってしまったルイズのご機嫌取りを必死にした。
普段の彼なら考えられないほどの献身っぷりだが、今彼はこうする他ない。
なぜならルイズが突然、完二に最初に猛烈に求愛してきた際に
「何不気味なこと言ってんだ……、おかしくなったのか?」
と恋に恋する乙女のハートをナイフでえぐるようなことを言ってしまい、ルイズが大泣きしてしまったからだ。
完二はどうしていいかとあたふたして、泣き止まそうと必死になったし、
そのためにルイズの言うことを聞き、人には言えないようなことをさせられた
(その場にいたギーシュとモンモランシーには喋ったらタダじゃおかないと脅しつけた)。
そういうわけで完二は現在、うすら寒い恋愛ごっこをしているのだった。
再びルイズが完二の腕に顔を擦り付けるようになると、完二は再びモンモランシーに問うた。
「で、治す方法は?」
「解除薬があるけど、作るのにお金が……」
「作れ」
「わたし金欠で……」
「二度言わせんなよ」
モンモランシーは懐事情を理解してくれという風に言ったが、完二にはそんなものをかんがみるつもりなどさらさらない。
モンモランシーは予想外にしぶとく言い訳を続ける。
「でも……お金だけじゃなくて、ちょっと手に入らない材料もあるのよ……」
「どーいうこった」
めんどくさそうに完二はモンモランシーの言葉を促す。
「水の精霊の涙が解除薬を作るのに必要なんだけど……、その水の精霊たちと、最近連絡がとれなくなっちゃったらしいの」
「んだ、そりゃあ……。で、どこにいんのかわかんのか、その水の精霊ってのは」
「ラグドリアン湖だけど?」
「んじゃ行くぞ」
当然のように完二が言うと、モンモランシーはえええと驚いた。
しかし再び完二に睨みつけられて「はい……」とがっくりと頭を下げた。残念ながら彼女には拒否権は与えられていなかった。
その彼氏は彼女の肩に手をまわした。
「安心してくれ恋人よ。ぼくもついていくよ」
モンモランシーは、当然よ。とそっけなく言っただけだった。
ちなみに話に参加していなかったルイズはいつの間にか完二の腕ではなく、腹に顔を埋めようとするばかりに抱きついていた。
次の日の早朝に魔法学院を出て、昼頃ラグドリアン湖に完二たち一行は到着した。
その一行とは完二、ルイズ、モンモランシー、ギーシュだけではなかった。
「あら、今の馬車の中に金髪の美男子がいたわ。チラっとしか見えなかったけど」
「キュルケちゃん、金髪の美男子ならキュルケちゃんのすぐ後ろにいるクマよ」
キュルケとクマであった。この二人はルイズの様子がおかしいと悟り完二に話を聞いて今回の旅に同行を決めたのだった。
この二人の耳が早いとか、勘がいいといよりはルイズの豹変っぷりが目立ちすぎていたというのが正しいだろう。
とはいえこの二人以外は謎の巨人を呼び出しギーシュを倒したこわもての完二と
気難しいといってもいいほど気高いルイズの豹変っぷりを恐れて近寄っては来なかったが。
ここまでの交通手段は馬であった。クマは旅行気分なのか、
前回あれほど渋った着ぐるみを脱ぐことをあっさりと了承しキュルケに抱きついていた。
一方、完二は前回の旅以後、馬に乗ることがあってもルイズに情けなくしがみつくことがないように馬術の練習をここ最近かなり真剣にしていた。
しかし、どういうわけか今回も前回同様ルイズの駆る馬に同乗するはめになった。
まだ心もとないとはいえ一人で乗馬する気だったのだが、ルイズが完二と一緒じゃないとやだとごねたためだ。
ルイズは終始ニコニコと嬉しそうだったが、完二にとっては嬉しくもないタンデームシートだった。
後ろに乗せれば何をされるかわかったものじゃないが、手綱を握らせておけば問題ないだろうと完二は考えていたが、
道中の「あ、そんなに抱きつかれたらわたし……」とか「積極的なのねカンジ」という言葉を聞かされるはめになり、どうしようもないほど後悔した。
ラグドリアン湖は巨大な湖でありガリアとトリステインを区切り国境線の一部をもなしている。
「あの平民が言ってたことは本当みたいね。水位が上がってるみたい」
キュルケは膨大な水量を誇る湖を見ながら言った。
あの平民とは道中に会った農業を営むという男だ。
彼の話によると、ラグドリアン湖は最近、急激に水量を増やしてその湖の面積を増やし続けているという。
おかげで農地は水に沈んでしまったと同情話を長々としてくれた。
「あら、どうしてわかるの」
モンモランシーは以前来たことがあるので水位が上がったことには気付いたがどうしてキュルケは気付いたのだろうかと思った。
「家が沈んでるじゃない」
キュルケはその手入れの届いた指でついっと湖面よりさらに下を指差す。
その指につられてモンモランシーは湖の底を見る。
たしかに家がいくつか沈んでいる。いや、水位が上がったのであろうから沈んでいるという表現は正しくないかもしれない。
浸水というにも規模が大きすぎるであろうか。家まるまる全てが水に浸かって、湖面はさらにその上十数メイル、もしかしたらそれ以上だというのだから。
なるほどとモンモランシーが湖を見ているとき、キュルケは自分達以外が話に参加していないだけでなく、そもそもいなくなっていることに気付いた。
「あら、他のみんなは?」
喋っている間は気付かなかったがキュルケとモンモランシー以外は近くからいなくなっていた。
二人はいなくなった4人はどこかと首をめぐらした。その二人の視界に湖でばしゃばしゃと波を立てる金髪白シャツの姿が目に入った。
しかも二人も。
「あー!助けてくれーー!!」
「助けてクマー!!」
ギーシュもクマも必死に騒いでいる。おそらく遊びのつもりで入ったのであろう。
二人は助けを求めているようだが、残念ながらキュルケもモンモランシーも、何やってるの……以上の思いは抱けず助ける気には一歩届かなかった。
さらに首をめぐらし、静謐な湖を波立てる二人の無粋者を視界に外すと、代わりに水際近くに立つカップルの姿が見える。
おぼれる二人の金髪男子とは比較にならないほどラグドリアン湖に映える。
桃色の髪をした少女が大柄な男に喋りかける。
「ねえ、カンジ。この湖畔って避暑地で有名なのよ。ガリアの王族も別荘持ってるって噂よ」
「ああ、そう」
「わたしたちもいつかここに立派な別荘建てましょう。いいえ、立派じゃなくてもいいわ!
二人でいられるなら!夏になったら毎年毎年ここに来るの」
「……いや、あのな。オマエが今、オレのこと好きなのは魔法で……」
「何言ってるのカンジ、そんなわけないじゃない!ううん、たとえ魔法だとしても永遠に解けないはずだわ!」
完二が助けてくれという視線をキュルケとモンモランシーに送ってくる。彼女らはアホらしいし、自分たちが加わっても面倒になるだけだと判断し見守ることにする。
しばらくしたら完二が湖に飛び込み金髪二人組みを救出し始めた。ルイズから逃れられるなら何でも良かったようだ。
ところでギーシュとクマはおぼれているというにはバシャバシャと長く泳いでいたのでたぶんほっておいても自分で何とかしただろう。
ラグドリアン湖に着いたときの騒がしい事件から時間が経ち、今は夜だ。
一行は湖畔にある茂みの中で姿を隠し何かを待ち受けていた。それというのも水の精霊の涙を手に入れるためである。
一行は昼の水の精霊との対話をした。そこで水の精霊の涙を渡してもらえる約束をした。
最近、水の精霊を襲う者がいるらしく、それを撃退すれば涙をくれるとのことだ。
完二としては喋り方は回りくどいし、美しいと言われる外見も「こんなシャドウ、雨の日よく見かけたな」くらいにか思わず、
水の精霊にいい印象は抱けなかったから、わざわざ助けたいとも思わなかった。
そもそも自分で撃退できるが、面倒だから代わりに倒してくれではいまいちモチベーションも上がらない。
とはいえルイズを元に戻すのに必要だというのならしょうがなかった。惚れ薬を解除しない限り完二に平穏は訪れない。
「にしたって水の精霊を襲うって奴は本当来んのかよ」
「水の精霊が言うには前の襲撃者は自分で撃退したけど、そいつの心を読む限りさらに派遣されるかもしれないって話らしいわね」
「かもってなんだよ?」
「知らないわよ、水の精霊が言ったんで、わたしが言ったんじゃないから」
不機嫌そうな完二に不機嫌そうな態度でモンモランシーは応えた。
そこへクマが話に割り込んでくる。
「でもでもいつ襲撃されるかわからないクマよね?」
クマは金髪碧眼で白いカッターシャツを着て片手に手甲をつけた姿である。
質問に返答したのは彼の主だ。
「そうよね。今日じゃなくて明日かも知れないし、ひょっとすると一週間後かもしれないわね」
「水の精霊って気が長いから」
モンモランシーの付け加えた言葉に4人は溜め息をついた。
「なあに、ぼくがいるから安心さ、心配は無用」
「うっせえ、息が酒くせえんだよ」
陽気な声を一人出したのはギーシュだ。完二もこの世界に来てから飲酒量が増えたが、戦闘前に酒とはどういうつもりだろうか。
「景気づけだよ景気づけ」
「……そーかよ」
はあ、と完二は再び溜め息をついた。
そして最後の一人ルイズは完二の学ランをかけられてすうすうと寝息を立てている。
昼間から夕刻までルイズは完二に構ってもらおうと必死だった。
完二の気を引こうと様々な話を振ったり、それに完二が乗り気じゃないと怒ったり泣いたり、完二がキュルケやモンモランシーと話せば嫉妬したりと騒ぎっ放しだった。
それから騒ぎ疲れて夕方を過ぎたころには寝てしまった。今のルイズの調子では待ち伏せも出来ないので寝てくれて助かったというのが正直なところだった。
寝る前にキスしてとか、さすがにそこまでしてやる義理はないと完二が断ると喚き出したり、代わりに寄り添ってルイズが寝てやるまで待たなければいけなかったりと完二としては一苦労も二苦労もあったわけだが。
「それにしてもカンジ、ルイズちゃんにせっかくアプローチされてたのに全く嬉しそうじゃなかったクマね」
「うむ。そういえばそうだ。ルイズも性格はあれだが顔はいいじゃないか」
クマが疑問を呈するとギーシュも同調した。
「テメーらな……いつものルイズ知ってんだろ?知ってりゃ、あんなの気持ちワリーだけだっつの。
だいたいありゃあ薬でああなってるだけだ、ホントの気持ちじゃねえ。そんなヤツにナニもできるわけねえだろ」
「さすがカンジ、立派クマ」
「さすがぼくを倒した男」
勝手な質問をした二人は勝手に頷いていた。
その同じ動作にも完二は二人がよく似ていることに気付かされる。
金髪で白いシャツと黒いズボンをはいていて外見も似ているし、どちらも女好きだ。
昼間に湖に飛び込んでおぼれると二人して騒いでいた時は生き別れの兄弟かと疑った。
モンモランシーが二人の話に乗ってきて一つ尋ねる。
「じゃあ、本当に好きになってくれたら嬉しいの」
「なんでそういう話になんだよ……」
「いいから、いいから」とキュルケも促す。
二人とも興味津々と言った様子だ。とはいえ完二には恋愛話が好きな少女たちの欲求を満たせるような回答は持ち合わせていなかった。
「別に。タイプじゃねーしな」
ドライな答え方にその場にいた全員が苦笑する。
ルイズを女子と見ることはほとんどないけれど、完二は朴念仁ではない。
かつては女性恐怖症のようなものであったがそれも克服した。以後、完二は男子高校生らしい女性への興味を有している。
なのにハルケギニアでも有数の美少女といえるルイズにたいして全くグラっと来ないのは、完二自身が言ったようにタイプじゃないからだ。
黒髪美人、健康的なスポーツ少女、そして大人びたボーイッシュな少女と言ったように完二の好みのタイプは狭くはないのだが
なぜかルイズはその枠内に収まっておらず恋愛対象に見ることが出来ないのだ。
その理由は完二にもわからない(そもそも完二はそんなこと考えたことがない)。
性格かもしれないし、案外ひょっとすると声だったりするのかもしれない。
キュルケが突然、人指し指を顔の立てた。そして鋭く、しかし静かに言った。
「しっ、来たわよ」
キュルケが茂みの中からラグドリン湖のほうを指差す。
その指先には湖面を前に二人が立っていた。どうやら無駄話をしている間に来たようだった。
「あいつらがか?」
「そうじゃなきゃ夜中に男二人が湖のほとりを歩く?」
キュルケが見るところあの二人は男らしい。
一人はその巨体から男だと判断できるが、もう一人は帽子をしていて巨漢の男に比べて小柄に見える。
とは言っても隣に立っている男が大きすぎるだけのようだが。
「それに……あの二人、そうとうな使い手よ……」
「わかんのか?」
「まあね」
襲撃者を見つけたので事前に決めていた役割どおり動くことにした。
完二とクマがあの二人と直接戦い、ギーシュとキュルケが援護である。モンモランシーは戦えないらしいのでルイズを守ってもらう。
戦いの始まりはギーシュの先制攻撃で開始された。背後を見せていた二人のメイジに大きな土の手が足を掴もうとした。
しかし、それを察知したのか、二人は素早く飛び退き回避した。そこへキュルケの二つの巨大な炎の玉がそれぞれへ放たれる。
普通の人間なら反応の難しい速さとタイミングだったが二人はあっさりと回避する。
二人は魔法の飛んできた方向へ駆けた。そして完二とクマが飛び出して二人を遮る。
完二とクマは初めて二人の襲撃者と対面した。
巨漢の男は予想以上に鍛えられた体であることが分かった。筋骨隆々で杖が握られていなければ魔法使いと分からないだろう。
もう一人の男は予想以上に若かった。少し上向いた鼻が愛嬌を放っておりトリステイン魔法学院になんなくなじむような坊ちゃん顔だった。
「なにもんだ、テメーら」
「おいおい何者だってそりゃこっちの話だろ、なあドゥドゥーよ」
「そうだよね、ジャック兄さん。君らこそ何者だよ?」
すごむ完二を襲撃者はひょうひょうとして受け流し平然としている。
「ナメてんのか、ああ!」
「大声を出さないでくれ。俺たちは別に怪しいものじゃないさ。ここに来たのも仕事の用事で」
クマが発言を遮る。
「水の精霊を攻撃するクマか」
クマの発言を聞き、互いにジャック、ドゥドゥーと呼び、呼ばれた二人は顔を見合った。
「なんで知ってるんだ、こいつら?」
「さあ、ぼくが知ってるわけないじゃん」
彼らは敵が目の前にいるというのにまるで緊張感なく会話をしている。
ジャックは頭をぽりぽりとかいて言った。
「もしかしてお前らってオレたちの仕事をジャマしに来たのか?」
「ああ、そうだぜ」
完二の返答を聞いて、「そうか……」というと二人の襲撃者は杖を構えた。そして言った。
「おれたちは元素の兄弟。まあ、別に覚えなくてもいいよ」
投下終了
>>444 偽りの黒羊乙
選ぶのではなく選ばれるのがアレの所持者
乙乙
元素の出番がここのところ多くてうれしい限りです
>>437 ギトーみたいな軍人じゃないメイジの持つ決定的な弱点は、「早口が下手」だからな。ついでに抜き打ち
霧亥の行動に一人対応できずに感電してるのもそのせいなんじゃないかと思ったり
てかよくなんともなかったな>ギトーとコルベール
そういや上のラスボスの話で闇脳が「十二の鍵」とか言ってたけど、まさかスフィア出す気じゃねぇだろうな。
スフィア合成獣を召喚とな?
若手声優ユニットがなんだって
ととモノから召喚か
そういやナナドラや世界樹はあったっけ?
小ネタにパラディンならあったな
wiz系はキャラの設定が希薄だから長編書くのは難しそうだな…
乗り遅れたけどペルソナさん乙
イザベラ様がデレたから兄弟が派遣されたのか
こういう歴史のズレはif物の醍醐味だよね
>>463 ルイズやキュルケが"某あのね"な展開に遭うんですね、分かります
後付けの夢落ちが付けば完璧
>>438 それがどれほど凄いのかパッとわからないのがな
元素兄弟はもう少し各人の能力や行動目的がはっきりしてくれれば出しやすいんだろうけどなあ
>>459 12の鍵=スフィアかは本編でノータッチだからな
ゼロのペルソナ今から投下しまーすよっと。
第12章恋愛後編。
金髪の男ドゥドゥーの名乗りが終わる前に完二とクマは攻撃に移った。
完二はデルフリンガーの腹でジャックを叩き、クマは手甲に包まれた拳をドゥドゥーの腹に叩き込んだ。
完二とクマに確かな感触が伝わる。先ほど魔法を機敏に避けたのとは違いまともに喰らった。
もう立ち上がれないくらいのダメージは与えたはず。
だが、どういうわけかジャックもドゥドゥーも平然と立っていた。
「おいおい、いてーじゃねーか」
ジャックが言いながら拳を振りかぶる。平然とした軽口に一瞬呆然としかけたが、敵の攻撃にはっとして完二は回避した。
クマもドゥドゥーから距離をとった。
「なんであいつらなんでもねーよなツラしてんだ!?」
混乱して、完二は当然の疑問を吐き出した。先ほどの攻撃は手加減したものだ。
完二が本気で人一人を剣で叩けば死んでしまうかもしれないし、またデルフリンガーが折れてしまうかもしれないからだ。
とはいえ、完二の怪力を喰らい立っていられるはずがない。普通の人間ならそれこそ骨くらい折れるだろう。
混乱する完二の疑問に答えたのはクマではなくデルフリンガーだ。
「相棒がおれを叩き込んだときにアイツの皮膚が鋼鉄になったみてーだぜ」
ジャックは敵の剣に感心し、ほう、と言った。
「インテリジェンスソードか、珍しいな。その通り、おれたちは体を鋼鉄に錬金できるのさ。こんな風にな」
彼は詠唱を始めた。呪文を完成させまいと完二はデルフリンガーを振りかぶった。
が、ジャックの詠唱はすぐに終わり完二の振り下ろした剣を手の甲で受け止めた。
みればその手は金属になっている。ジャックは気軽に完二に話しかけてくる。
「剣は斬るものだろ?そんな鈍器みたいに使ってどうすんだ?」
「うっせえ!」
完二はいったん下がり再び剣を振りかぶった。
「さあ、こちらも勝負だ」
そう言って紡ぎ始めたドゥドゥーの詠唱はあっという間に完成した。
稲 妻
杖の先から電撃がほとばしる。高位の風呪文“ライトニング”だ。
ライトニング
“稲妻”はどこに飛んでいくのかわからないので、通常は“ライトニング・クラウド”で小さな雲を作り出し、遠隔的に発射するものだ。
そうしなかったことからドゥドゥーがかなりの使い手だと知れる。
クマはそのような理屈は無論知らないが、電撃はまずいと回避する。クマの弱点は電撃属性の攻撃なのだ。
喰らえばダウンしてしまう。それは戦闘で致命的なほどの隙を生んでしまうということを意味する。
「ほいっとぉ!」
「へえやるね、なら……」
ドゥーゥーは再び呪文を唱える。
再び電撃が来たらまずいとクマは距離をとった。
クマの悪い予想は外れ、どうやら電撃の呪文ではないようだ。
しかし、それは幸いにも。と言っていいものか目の前の魔法を見ると判断できなかった。
それほどドゥドゥーの魔法はこの世界の魔法をほとんど知らないクマにしても非常識なものだった。
ドゥドゥーのしなる杖は電撃を放つのではなく、逆にどんどん光を集め、そして太くなっていく。そして青白い大木のような太い刃が出来上がった。
“ブレイド”――魔法使いが白兵戦時に使う魔法だ。しかしこれほど大きな“ブレイド”規格外だった。
ドゥドゥーはその巨大な刃を横ぶりに払った。まるで空間を切り裂く剣のようだ。弱点ではないにしても喰らうわけにはいかない。
クマは地面に伏せてなんとかその攻撃を回避した。
「なめたらアカンぜよ!」
軽口を叩きながらクマはいっぱいいっぱいだった。
「まだまだぁ、むっ……!」
再びブレイドを振ろうとしたドゥドゥーに火球が飛んだ。そして地面から6体のゴーレムが現れる。
回避に精一杯になっているクマを見かねたキュルケとギーシュの救援だ。
クマは今がチャンスと駆け出した。注意のそれたドゥドゥーから離れ、戦っている完二の元へ向かったのだ。
「カンジ!敵さんチェンジ!あいつ雷とか使ってくるクマ!」
ジャックと向かい合っていた完二は「ああ?」と言いつつ視線をクマに向けた。
その隙を見逃さずにジャックは完二に一瞬で詰め寄る。しかし拳を完二に打ち込もうとしてわき腹にダメージを受け再び飛び退く。
クマの渾身のパンチを受けたからだ。クマの攻撃に気付かなかったわけではない。
攻撃を受けながらも、完二を倒す一撃が放てると思ったのだったが、予想よりクマのパンチは遥かに重く、鋼鉄化した腹の内側までダメージを与えた。
ジャックがクマの攻撃を気にするほどのものではないと判断したのは負うとドゥドゥーもクマの攻撃に全くダメージを受けなかったからだが、
しかし力をセーブしていたのは完二だけではない。地面を踏みしめたクマの本気の拳は決して軽いものではない。
敵の危険度認識を改めたジャックは拳を構え、唇を下でぬらした。
「やさ男だと思ったらやるじゃねえか」
「野生のパワーを思い知ったクマ?」
突然戦いに割り込まれた完二は文句をつけようとしたが、それを彼の剣が遮る。
「おれを右に構えろ!」
完二も危険に気付いて言われたとおりデルフリンガーを構える。そして鉄の刃は光の刃を受け止めた。
ドゥドゥーのブレイドだ。ギーシュが力を使い果たして作ったゴーレムの軍団を十秒程度で全て破壊したのだった。
「んじゃカンジ、あっちよろしクマ」
気軽に言うクマに怒るより呆れてしまいそうになりながら、それでも完二は剣を構えドゥドゥーへと向かった。
突如、戦いの相手を帰られたジャックはクマに尋ねる。
「なあ、お前」
「なにクマか?」
「おれのほうが弱いとでも思ってるのか?」
ジャックは単純に疑問を感じているようだった。下に見られて腹が立っているという風ではない。
そしてクマもそうは思っておらず、拳を構えながら言った。
「世の中には相性というものがあるからクマよ」
「なるほど」
ジャックは踏み込んだ。
クマとジャックの攻防が始まった。
支援してみる
クマから一方的にバトンタッチをされた完二は防戦一方だった。
ドゥドゥーは長いブレイドを振り回し、攻撃している。そのせいで近づくことはもちろん、距離をとることさえできない。
なんとか回避したり、デルフリンガーで防いで負けないではいる。ただそれだけだ。
「おいおい、相棒よ。さっきから押されっぱなしじゃあねえのか?」
「うっせ!」
そう言いながらも完二は横ぶりのブレイドを防いだ。しかし防いだブレイドは鞭を振るうように上にたたき上げられ今度は上から完二を襲う。
完二は左側に転げるように跳んで攻撃をよけた。
「クソッ少しでも隙ができりゃあ……」
「隙ができればいいんだな?よし、おれを地面に突きさせ」
「ああ?」
怪訝そうな顔を完二は浮かべた。
「きみたち話をしている余裕があるのかい」
そう言ってドゥドゥーはブレイドを振り回してくる。それを完二は力をこめてデルフリンガーを振り回し、はじいた。
大木のようなブレイドを弾く腕力にドゥドゥーは驚いたような表情を見せる。
それはほんの一瞬の、隙とも言えない隙だったが、その一瞬に完二は行動に移った。
「わーったよ!そんかわり何とかしろよ!」
完二はデルフリンガーを地面につきたてた。するとその刀身はドゥドゥーのブレイドの光を奪っていく。
ブレイドに蓄えられたドゥドゥーの魔力を吸収しているのだ。
「な、なんだこれは!?」
慌てたのはドゥドゥーだった。ブレイドから魔法の光が剣に向かっていくなどと非常識な光景を見たのだから当然だろう。
しかし、ドゥドゥーの驚愕はそれでは終わらなかった。
インテリジェンスソードが魔法の力を奪い始めたと思ったら次には、彼が見たこともないような巨人が現れた。
ペルソナ、ロクテンマオウは完二が地面にインテリジェンスソードをつきたてたように自分の得物を突きたてた。
そしてそれを両の拳で粉砕するとロクテンマオウの、完二の力が放たれる。
その力は電撃となりドゥドゥーの体を襲った。ジオ、初級電撃魔法だ。
ドゥドゥーの頭上から発生したほとばしる電流はドゥドゥーの体を、頭のてっぺんから地面までの道筋として流れていく。
その局地的な落雷が終った後、ドゥドゥーは立っていた。ただし、立っていただけだ。
先ほどまでのように平然として、ではない。目の焦点は定まらずフラリフラリとしている。
完二は地面に突き刺した得物を取ることもせず、そして敵の攻撃に警戒することもせずにドゥドゥーに歩き近づいた。
「あばよ」
とどめに完二のパンチを顔面に喰らい、ドゥドゥーの体は吹っ飛び、意識も飛んだ。
クマと戦っているジャックは弟ドゥドゥーが敗北する様子を見て驚いたようだ。
「ドゥドゥー……!」
「ほらほら弟さんの心配をしている場合クマか?ジャックはクマと戦っているクマ」
相対しているクマはそう言った。
クマに向き直ったかと思ったジャックが何か詠唱を唱え始めた。なにかと思ってクマは安全のために距離をとった。
詠唱が完成すると地面から大きな壁が現れた。それはジャックの姿を隠すほど大きかった。またその壁は、ただの壁ではなく土の拳が飛び出してきてクマを襲う。
拳が眼前に迫りつつあった。しかしクマはジャックがその壁を作り出した意図を理解した。
「逃げる気クマね。そうは問屋がおろさんぜよ!滾れ、カムイ!」
クマはどこからか現れた金色に輝くカードをその手甲で砕き、ペルソナ、カムイを召喚した。
カムイは着ぐるみを着たクマのような球形の体をしている。違うのは4本の手足がそれぞれ最も遠い距離になるように配置されているのと、その4本の手足の真ん中に顔があることだ。
カムイはマハブフを発動した。マハブフとは氷結系初級全体魔法である。
マハブフにより生み出された冷気はクマの目前にせまった3つの拳を凍らせ、停止せせ、そして砕いた。
土の拳だけではない。壁の向こうもマハブフの攻撃範囲だ。壁の向こうで逃避に移ろうとしていたジャックも突然の冷気を回避することが出来なかった。
彼の体の表面を鋼鉄にする魔法も、雷同様、氷にも通じはしない。
生やした拳と同様に砕け散った壁の向こうには体の端々を凍らせて地面に倒れたジャックがいた。死んではいないがとても動けそうにはない。
完二と違い、一撃で仕留められたのは、クマの魔力がそれほど莫大だからだ。
ドゥドゥーは完二が、そしてジャックはクマが撃退した。完二とクマは視線を合わせてから大声で叫んだ。
「勝利クマー!!」
「よっしゃあ!!」
その声で今まで隠れていたキュルケ、ギーシュ、モンモランシー、そしていつのまにか起きていたルイズが茂みから飛び出してきた。
「やったわね、クマ、カンジ!」
「やったな、ぼくたちの勝利だ!」
「ほとんど二人の力じゃない……」
「大丈夫、カンジ?怪我とかしてない?」
キュルケとギーシュは勝利を喜び、モンモランシーが彼氏の大口に苦言を呈し、ルイズは完二を心配した。
そうして6人がおのおの勝利の余韻に浸っていると突然強い風が吹いた。思わず、全員目を閉じてしまう。
目を開けると一人の少年と少女がドゥドゥーとジャックの近くに立っていた。
少女は黒と白の派手なドレスを着ていた。その少女は倒れ付した二人をレビテーションで浮かべて様子を調べていた。
「ドゥドゥー兄さんはともかくジャック兄さんまでやられてるなんて……」
ボロボロの二人の傍に立って少女は溜め息をつくように言った。
しばし呆然としていた完二たちだが、一番早くに立ち直ったキュルケが言った。
「だれよあなたたち!」
「元素の兄弟。二人はそういわなかったかな?」
そう言ったのは少年のほうだった。見た目は若いというより幼く12歳くらいに見える。
カンジとクマは武器を構え、キュルケたちも杖を構えた。
しかし少年は両手を上げて、戦う意志がないことを示した。
「杖をおろしてください。自分は弟たちを向かえに来ただけですから」
弟という言葉に全員眉をひそめた。しかし少年は疑問に答えずに自分の言いたいことだけを述べる。
「それにもう水の精霊を襲うこともやめますから。それではさようなら」
少年がそういうとまたも強い風が吹き、土ぼこりが舞い上がった。
目を開けられるころになると元素の兄弟たちは居なくなっていた。
「あいつらどこに!?」
ギーシュはきょろきょろと周りを見回した。ギーシュだけでなくみんなが周りを見たが、影も形も見つからなかった。
モンモランシーはぽつりと言った。
「あいつらなんだったのかしら……」
キュルケは首を振った。
「わからないわ。でもとりあえず水の精霊のお願いはかなえたわ」
「あいつらの言葉を信じるのか?もう襲わないっていうのを」
ギーシュは異論ありげだったが、キュルケの回答は冷静なものだった。
「水の精霊の願いは襲撃者を撃退してってだけよ。今日たしかに撃退したわ。それにもう襲わないって言質ももらえたわ。
たとえそれが嘘だろうとわたしたちには関係のないことよ」
ギーシュとしては釈然としないものもあるが、確かにキュルケの言うとおりだろう。
「ま、終わりってーんならそれでいい……んだよ、クマ?」
「ちょ、カンジ。ちょっと思い出したっちゅーかー、思いついたことがあるクマよ」
ちょんちょんと完二をつついていたクマは言った。
「ルイズちゃんにアムリタ使ってみたらどうクマ?」
完二は固まった。
アムリタとはクマの使う回復魔法であり、どんな状態異常もたちどころに治す万能の回復魔法であった。確かにそれならばルイズも治せるかもしれない。
やっとそのことに気付いた完二の中で怒涛のように後悔が頭の中で渦巻いた。
それは一言で言い表すなら、どうして思いつかなかったんだ!である。
「どうして思いつかなかったんだよ、テメーはよ!」
完二は自分のうかつさを恨みながらクマを怒鳴りつけた。
アムリタはクマの使う魔法である。ならばクマが真っ先に思いつくべきことであろう。
「ちょ、ちょっと忘れていたクマよー」
完二はルイズが惚れ薬を飲んでから何回目になるかわからない溜め息をついた。今までの中でも一番大きい溜め息だった。
ペルソナ使いではないキュルケたちは「どうしたの?」と話についていけていないようだった。
「ルイズを治せんだよ……」
「えっ?」
キュルケ、ギーシュ、モンモランシーの声が重なる。当人であるルイズなど「治す?何を?」と言っている。
三人、ルイズを含めるなら4人は説明を求めるような顔をしているが、脱力しきった完二にその気力はなく、ただ力なくクマに言った。
「やってくれ……」
「はいよ、ペルクマー、来いやぁ!」
カムイが出現してアムリタを発動する。
アムリタをかけられたルイズの顔は変化していった。最初は恋する乙女の頬に朱のさした顔から、しらふの上等な陶磁器のような白い顔。
そして最後にルイズの顔は再び赤くなる。紅潮を通り越してまるでトマトのように赤である。
そして完二の顔を見るなり、ルイズは奇声をはり上げて湖面沿いに走り去っていった。
「な、なんだありゃ?治ったのか?」
走り去るルイズの後ろ姿を見ているモンモランシーは語り出した。
「何をしたか知らないけど、もし惚れ薬が解除されても薬が効いてた間のことはばっちり覚えてるわよ」
全員顔を見合わせ、それから再び走り去っていったルイズを見た。
「そりゃ…キツいな」
「ルイズはプライドが高いからね」
「しゅーちプレイクマ」
「でも、そうならあれは治ったっていう証拠じゃない?」
キュルケはケロっとして言った。それもそうだと全員は納得したが、モンモランシーが一つ疑問を投げかけた。
「でもあの子いつ戻ってくるかしら……」
それは誰にもわからないことだった。
こうして完二の深刻なほどバカバカしい恋愛ごっこは終わった。
支援
元素の兄弟は森の中にいた。クマと完二にやられたジャックとドゥドゥーの治療をしていた。
「それにしてもヒドいやられ方ね。わたしでもすぐには治せないわよ」
「すまない、ジャネット……」
「ジャック兄さん、喋らないで」
妹にそう言われては、巨体をした恐ろしいメイジのジャックも口をつぐんでしまう。
すでにジャネットの治療を受けて動けるようになったドゥドゥーは長兄ダリアンに言った。
「すまない、兄さん。次は必ず……」
「この件から手を引くよ」
子供のような外見をした長兄から紡がれた言葉に全員が戸惑う。
「ちょ、どういうことだよ、兄さん!?」
「あんなやつらに言ったことを守るっていうの?」
ダリアンは首を振った。
「イザベラさまから他の騎士の代わりにと頼まれた仕事だったけど、はっきり言ってすごいやつらだよ。どうも」
「次は絶対負けねえって、なっ、ジャック兄さん」
「ああ、次は必ず」
ドゥドゥーとジャックは敗北しても決して弱気になっていなかった。
しかし、弟たちのやる気を見てもダリアンは意見を変えない。
「あいつらは本気を出していないから、たとえ4人でも勝てるという計算は立てられない。
勝ったところで誰かやられましたじゃ、いくら報酬が手に入っても損もいいとこだよ」
「でも兄さん、任務に失敗したってなったらもうガリア王家から仕事もらえないわよ?」
ジョネットの発言にそうだそうだとドゥドゥーとジャックは同調する。
「仕事なら王家以外にもある。まあ、こつこつとお金を貯めよう」
こうして水面下で仕事を果たして来た元素の兄弟は歴史の舞台へと身を踊ろかせかけて、再び闇の中へと消えていった。
その後の彼らを知る者はいない。
水の精霊を倒しラグドリアン湖の水面上昇を抑える任務は前任者から元素兄弟ではなく本来タバサに引き継がれるはずのものだった。
イザベラが元素兄弟にそれを任せたのは従妹に彼女の母親にゆっくりと会えるようにするための取り計らい。
また、王弟の子であるタバサに過酷な任務は減らそうとするイザベラの始まりの一手であった。
しかし、本来通りタバサに任務が引き継がれルイズたちと接触すれば、水の魔法の薬で心狂わされた母を治す術を持つクマとも会い、
タバサは数年ぶりに真の意味での母との再会を果たせおおせていたであろう。
イザベラの気遣いによってタバサの至高の幸福はさらなる未来へと先延ばしにされてしまうという皮肉な結果が生じてしまった。
そして生じた齟齬は致命的なほど未来に干渉することになる。
ルイズは日が昇ると完二たちのもとへと帰ってきた。走り去ったはいいが、馬もなければ帰れないと気付いたからだ。
帰ってきてもルイズは完二と言葉どころか目もあわせなかった。完二も積極的に関わろうとはしなかった。
ルイズほどでもないが、完二も十分すぎるほどに気まずかったからだ。
とにかくルイズも帰ってきたので、会話のない朝食が終えてから、学院に帰ろうとするのを止めたのはルイズだった。
「貴族として民が困っているのを見過ごせはしないわ」
ルイズは再び水の精霊に会うことを強く主張した。民とはラグドリアン湖周辺に住む農民たちのことである。
どうやらラグドリアン湖に来る前にあった農民の男の話を覚えていたらしい。
自分に話しかけてくるばかりでちゃんと話を聞いてたとは思わなかった。
と、完二は思ったが言っても怒られるし、自分にとっても面白い話題ではないので口には出さなかった。
そういうわけで一行は水の精霊の涙がもう用済みになったのに水の精霊と再び顔を合わせることとなった。
モンモランシーが使い魔のカエルを使い、水の精霊を呼んだ。
朝もやの中、水面が盛り上がり水の精霊が現れた。それは水を反射し、キラキラ光り輝いていた。
呼び出したモンモランシーに対応してその姿をモンモランシーの裸体に変えており、美しいと呼ばれる水の精霊だが、
完二は先日見たときと同様「雨の日の中のテレビにこんなヤツいたな」くらいにしか思わなかった。
「水の精霊よ。約束は果たしたわ。でもあなたの体の一部ではなく一つ他のお願いがしたいの」
「なんだ?単なる者よ」
ルイズが前に進み出て、モンモランシーに代わる。
「どうして水かさを増やすのか、教えて欲しいの。理由があるならわたしたちがそれを解決するわ」
水の精霊は、ゆっくりと大きくなった。そしてさまざまなポーズをとる。その仕草が、微妙に人間のそれとは異なっている。
「お前たちに、任せてもよいものか、我は悩む。しかし、お前達は我との約束を守った。ならば信用して話してもよいことと思う」
完二は回りくどい喋り方にイライラしたがキレておしまいにするわけにもいかないので、黙りこくっている。
「お前たちの同胞が、我が守りし秘宝を盗んだのだ。そして我は秘法を取り返したいのだ」
「それと水を増やすことにどういう関係が?」
「水が世界を覆うころには秘宝の在り処も知れよう」
その気の長さにその場にいた全員があきれ返る思いだった。さすが水の精霊というだけあって時間の概念が人間とは大きく違う。
「なら、わたしたちがその秘宝を奪い返してあげるわ。その秘宝の名前は?」
「お前たちはあれを『アンドバリの指輪』と呼ぶ」
「効いたことがあるわ。たしか水系統のマジックアイテムで偽りの命を与えるという……」
モンモランシーが呟いた。
「そのとおり。だが、あれがもたらすものは偽りの命。古き水の力に過ぎぬ。所詮益にはならぬ」
「偽りの命ってどういうことだ?」
今まで黙っていた完二が言った。
水の精霊は答える。
「指輪を使った者に従うようになる。個々に意思があるというのは不便なものだな」
「趣味の悪い指輪もあったものね」
キュルケが呟く。軽口を叩きながら彼女にはなにかひっかかるものがあった。しかしそのひっかかりがなんなのかが判然としなかった。
「わかったわ!アンドバリの指輪は取り戻してあげるから水かさを増やすのをやめてちょうだい!」
「わかった。お前たちを信用しよう」
こうしてルイズは人ならざるものと約束を交わした。
投下終了。途中で!ninjaからタイトルに変え忘れてたのに気付いちゃったぜ。
>>473>>478 支援あざっす!
実はこの12章恋愛は初期プロットではなかったりします。
というのは全章のプロット書いたときは12章忘れてて、5,6章辺りの本文書いてる途中で
「あっ、ヤベ!12章ねえ!しかもサブタイ塔が二つもある!」って気付いて
サブタイの入れ替えを行ったりしたんですが、その中でもこの章は0から作られた話です。
それでも、この作品では数少ないラブコメ(?)要素を含み、かつ何気に全体の中でもちゃんとストーリー的な意味を持って
今後出ないキャラも出せたので個人的にはわりかしスキです。
さて今後出ないというのはゲスト出演的に出た元素の兄弟と……誰でしょうね……?
プラネテスからDS-12TOYBOXごと
ハチマキ タナベ フィー ユーリを召喚
宇宙モノとクロスさせたらどうなるか
ってなのを考えてみた
>>481 乙っすー。
最近投下がなかったから心配したじゃんかよー。
ペルソナはアニメのトリニティソウルしか知らないけど、
4のアニメPV見たら今からすごい楽しみになった。
>>483 さあ、これを機に原作のゲーム版P4をプレイしてみるんだ
今ならザ・ベストで出てるからお買い得
ペルソナの人乙です
積んでいたP3をやりたくなってきた
P4は持っていないけど買おうかな
ナデシコ劇場版から北辰を召喚、と思ったが二次創作の氾濫で本来の設定がわかんなくなってることに気づいた
二億年前のように静かだね
北斎を召還に見えた
歴史上の人物(もどき)をギャグマンガ日和から召喚というのはどうだろうw
>>467 少なくとも月が都市構造に取り込まれる30世紀以上前の世界で、駆除系を教団が劣化ダウンロードしたものが外伝に出てたが
確かその時に警備会社が、ネットスフィアの技術を用いない兵器で応戦して
対戦車ミサイルやら複数人で運用するビーム砲やら持ち出してたが、傷一つ付けられずにいた
くらいしかないな
後は網膜に表示される文字の読み方も忘れた連中が、火薬式っぽい銃火器を使用して無力だった
必殺飛鳥文化アタックが唸るな・・・
>>486 木連・火星の後継者の暗部、昔はテツジン乗ってた、破壊された夜天光に血は付いてたけど死体残って無かった
公式だとこの程度だった筈
ラピスの裸を思い出して舌なめずりした事からロリコン、16のルリにも反応したことから遺伝子操作フェチとか言われてたが
じゃあ似たようなモノでアルベド呼ぼう
>>483 心配おかけしました。
投下が一ヶ月も止まったのは忍法帳と
「レベル上がるまで時間かかるから推敲いつもより念入りにやっとこか。ああでもやる気が出ないな……」
というわけで推敲するモチベーションになるまで時間がかかったからです。
それはさておき今から投下します。13章死神前編
死神 意味……別離・再生
「風吹く夜に」
「水の誓いを」
それが恋人たちの合言葉だった。
「きみが好きだ」
「わたくしだって、お慕いしております」
「きみと太陽のもと……、誰の目もはばからずに、この湖畔を歩いてみたいものだ」
「ならば、誓ってくださいまし」
「迷信だよ。ただの言い伝えさ」
「迷信でも、わたくしは信じます。信じて、それがかなうのなら、いつまでも信じますわ。いつまでも……」
それは全て、双月を映しこむ美しき湖でのことだった。
支援策
ルイズはラグドリアン湖から戻ってきてトリステイン魔法学院の自分の寝室にいた。
そして手持ち無沙汰となっていたルイズはトリステイン王家から送られて来た『始祖の祈祷書』を読むことに決めた。
もともと『始祖の祈祷書』はゲルマニア皇帝とトリステイン王女であるアンリエッタ姫との婚約の儀で
詔を読み上げられる任を頂いたルイズに、その文を作るために送られて来たのであった。
しかし、その『始祖の祈祷書』を読む前にルイズは忌まわしい事件に巻き込まれてしまいそれどころではなくなってしまった。
思い出すだけでどこであろうと奇声を発したくなるような羞恥の記憶。
ルイズが水の精霊のもとから帰ってきてすぐに『始祖の祈祷書』を読もうと決断したのはルイズの勤勉さの表れではなく、
なにかしらの仕事に集中して嫌なことを忘れようという意志の表れだった。
そして『始祖の祈祷書』はルイズの願いは十全にかなえてくれることとなる。
ベッドの上で行儀悪くうつぶせになりながら『始祖の祈祷書』を開いた。
祈祷書の中には白紙のページが続くばかりということは聞いていたが、
今のルイズはただ時間を潰すことの出来る言い訳があればなんでもよいという気分だった。
しかしページの中には古代ルーン文字が躍っていた。それを見た瞬間、ルイズはわけもわからぬほど、それに引き込まれてしまった。
序文。
これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。
四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す。
ルイズの知的好奇心が爆発的に膨れ上がる。読み始めた不純な動機はルイズの心の中から消え去っている。
神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。
神がわれに与えしその系統は、四のいづれにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚無』。我は神が与えし零を『虚無』と名づけん。
ルイズにはもうページをめくろうとする意志に抗うことはできない。たとえ目の前で戦争が起きようともルイズは構わず読み続けるだろう。
これを読みし者は、我の行いを受け継ぐもの、あるいはそれに抗するものなり。『虚無』を扱うものは心せよ。
『虚無』は強力なり。我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。
選ばれしものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。
ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ
sien
ルイズはさらに急かされるようにページをめくるが、後のページには白紙が続くばかりであった。
本を閉じ、ルイズは半ば呆然としながらも先ほど読んだ内容のことで考え込んだ。
読んでいるうちに、いつの間にか横になっていた身を起こしていた。
何も書かれていないという『始祖の祈祷書』には文字があった。
いや、この書物は読むものを選ぶという。もしかして自分だけにしか見ることができないのか。
ルイズは指に嵌めた水のルビーを見た。それはアルビオンへ行く前にアンリエッタから譲られたものだ。
トリステイン、アルビオン、ガリアそしてロマリアに始祖の時代から伝わるという指輪。これが『四の系統』の指輪なのであろうか。
今まで自分が魔法を使えなかったのは自分の系統が虚無だったからであろうか。だが、読めたといっても序文だけである。
ということはやっぱり自分はただの落ちこぼれで、自分が虚無であるなどというのはただの妄想なのであろうか。
その後、ルイズは真剣な表情で考えこんでいるかと思えば、うんうん唸ったりと頭の中で思考の堂々巡りを繰り返した。
完二はいつも以上に厨房などで学園で働く平民たちと食堂で時間を潰し、部屋に戻ってきた。。
時間が経つに連れ恥ずかしさも実感できるようになってきたので、最悪の場合、ルイズから八つ当たりでもされるのではないかと思っていたからだ。
だが却ってルイズのボーッとした様子に心配することになってしまった。
次の日もルイズは、始祖の祈祷書と虚無について考えこんでいるばかりであった。
今日一日ルイズがおかしいと思ったキュルケは夕食後、半ば強引にテラスに誘い、
半ば強引に付いて来たクマと食後のデザートを楽しみながらルイズに質問を投げかけていた。
ところがルイズときたら、「はあ」だの「そう」だのまるで気のない返事ばかりだった。
惚れ薬が効いている間のことをからかってみても似たような反応であった。これにはキュルケは驚愕した。
ルイズはわりといや、かなり粘着質な性質なのだ。そのルイズが惚れ薬で痴態を晒していたことをすぐに忘れるはずがない。
いつものルイズならこれだけで一年はからかうネタに困らないだろう。
「ねえ、ルイズ、あなた今日一日、その古びた本を読んでるだけじゃない?」
「そう」
それまでと同じように気のない返事をしたルイズは突然、はっと思いついたような顔をした。
「キュルケ!この本読んでみて!」
ルイズはその手に持っていた本をキュルケに渡した。
もう一人の自分の親友と同じように無感情になっていたルイズの突然の感情のほとばしりにキュルケはたじろいだ。
「え、なによ……ってこれ、なにも書かれてないじゃない」
このピンク髪の友人は一日何も書かれていない本を読んでいたのであろうか
。もしかしてモンモランシーの惚れ薬の悪影響を受けているのでは?
とキュルケが頭の具合を心配する少女はさらに自分の指に嵌めていた指輪を抜き取りキュルケに突き出した。
「これつけて読んでみて」
「それに何の意味が……」
「いいから!」
気おされたかのようにキュルケはおとなしく言うとおりにして指輪を嵌めてもう一度白紙だった本を見てみる。当然、今も白紙だ。
「読めないわよ……」
「古代ルーン語が読めないから?何も書かれていないから?」
キュルケは片眉をつり上げた。
「古代ルーン語……?なんでそれが出てくるのよ?」
「つまりなにも書いてないように見えるのね?」
「見えるも何も書いてないじゃない」
「そう……そうなのね……」
ルイズはそう言うとなにか得たものがあるというな顔になり、本と指輪を返してくれとキュルケに言った。
本と指輪を返しながら、キュルケは一日何も書かれていない本を読んだ挙句、
指輪を付けてそれを読めと言いう奇態な言動をする友人のことを本気で心配した。
そしてあとでモンモランシーを問い詰めることも心に決めた。
ところでルイズのぶんのデザートまで無心に食べていたクマだが、着ぐるみは着ていない。
召還されて最初のころは着ぐるみを脱ぐのを嫌がったものだが、最近は脱ぐのに抵抗がなくなったようだ。
未知の場所なのでクマにとって最も完全に近い姿を保っていたかったのかもしれない。
つまり今はこの世界になじんだということだ。
そこへ完二がやって来た。
「おい、キュルケ、クマ。タバサと花村センパイが帰ってきたぜ」
「あら、本当?じゃあ、迎えに行きましょうか」
「あ、ちょっと、モグモグ、待って欲しいクマ」
クマはクリームを飛ばしながら立ち上がったキュルケに言った。
完二はその二人とは別にもう一人同じテーブルに座っている少女に躊躇いがちに言った。
「な、なあルイズ、お前も行っとくか?」
ルイズの返答はなかった。それだけみれば昨日の夜と同じだったが、なにか黙考しているようであった。
「ごっくんペロリ。それじゃ迎えに行くクマよー」
顔をクリームでペイントしたクマが言った。キュルケがしょうがないとばかりにナプキンで顔を拭いた。
考え込んでいるルイズも無理矢理連れて一行は塔を出た。
4人が行った時、タバサと陽介はちょうど馬車から降りようとしていた。
「タバサ、数日ぶりね!」
そう言いながらキュルケは馬車から降りたタバサをその豊満な胸に押し付けるように抱きしめた。タバサはなされるがままだった。
完二とクマも数日ぶりに会う仲間を出迎える。
「センパイ、お疲れっス。つかどこ行ってたんスか?前もこんなことあったよな」
「どーこ行ってたクマ?さーさー、吐きんしゃい」
「んー、いや悪いな秘密なんだわ」
「ムムム、何か怪しい香りが……。でも陽介が秘密って言うならしょーがないクマね」
「ま、センパイがそーいうなら」
陽介の言葉に納得できたわけではないが、一年以上の深い付き合いだけあって完二とクマは踏み込むのをやめた。
タバサを抱きしめていたキュルケは、視界を去ろうとする馬車を見た。
タバサたちが乗ってきたものだが、それには交錯する二つの杖の紋章、ガリア王家の証が記されていた。
この子がガリア王家の馬車で?この子とガリア王家にどういう関係が?
だが、キュルケの思考は、小さな友人とは別の方向へと進んだ。
それは昨日ラグドリアン湖で感じた違和感、そして馬車と王家。それらがキュルケの頭の中で化学反応を起こした。
「なあ、クマちょっと話が……」
「ああああ!!」
キュルケの突然の大声に、話を遮られた陽介はもちろん周りの人間は全員驚いた。
その腕の中にいたタバサも彼女にしては珍しくビクリと小さく肩を震わせた。
「ちょっと、なんなの!?」
今まで帰ってきた二人との会話に参加せず、思考の海を漂っていたルイズも怒ったようにキュルケに言った。
タバサを解放してキュルケは真剣な表情を浮かべてルイズを視界の中央に納めた。
「昨日、わたしなにかひっかかりを感じてたのよ。水の精霊からアンドバリの指輪の話を聞いてから……いえ、正確に言うならそれ以前かしら……」
「ちょっと何を勝手に納得しようとしてるのよ!わたしにもわかるように説明しなさい」
さきほどのテラスでの会話で自分も同じようなことをしておきながらルイズは悪びれている様子はない。
キュルケはルイズの要求の身勝手さを気にはしなかった。もとより意趣返しのつもりもない。
「ならはっきり言うわ。昨日、ウェールズ皇太子の姿を見たわ」
その場に居た一同は言葉を失った。もっともタバサはいつもの寡黙なのかもしれないが。
「どこで?」
やはり一人驚愕とまではいたらなかったのかタバサはキュルケの簡潔な説明の詳細を簡潔に求めた。
「ここからラグドリアン湖へ向かう途中で馬車とすれ違ったの。
やけにいい男が乗ってると思ったんだけどその人がウェールズ皇太子だったのよ」
「な、なんでもっと早くに気付かないのよ!?」
「しょうがないじゃない。男の顔なんていちいち覚えていないわ。
というか死んだものと思ってたのよ、ニューカッスル城にいた人間は全員殺されたって聞いてたし」
「ま、まあよかったじゃん?皇太子さん死んでなくてさ」
陽介がキュルケに噛み付くルイズをなだめる。
クマと完二も陽介と同意見である。
「よかったクマー!王子さま生きてて。クマも頑張ったかいがあるってもんです!」
「ああ、まったくだぜ」
しかしキュルケの顔はウェールズの生存を喜んでいるようではなかったので、完二は尋ねる。
「なに渋い顔してんだ?ちったあ喜ばーねのか?」
「生きてるなら喜ぶわよ。もし生きてるならね……」
キュルケの言葉にルイズだけがはっとした顔になった。
「もしかして、あんたアンドバリの指輪で甦らせられたって言うつもりなの?」
その言葉でようやく完二とクマもキュルケの言わんとしていることを理解した。しかし陽介とタバサは話がつかめない。
「ちょ、待ってくれ。いったいなんの話をしてんだ?」
「ラグドリアン湖で水の精霊から死んだ人間を操るアンドバリの指輪が盗まれたのよ」
これでわかるでしょ。というようにキュルケは端的に情報を告げた。タバサは瞬時に理解し、陽介も少し遅れて理解する。
「つまり皇太子はアンドバリの指輪で操られている?」
タバサが要点をキュルケに問いかける。
「確信はないわ。ただ、もしあの皇太子が誰かに……いえ、操っているならレコン・キスタでしょうね。そうなら狙いは……」
「姫さま……!」
キュルケの出す結論をルイズは言った。キュルケはこくりと頷き、ルイズの推論と同意見であることを示した。
ウェールズ皇太子をわざわざ生き返らせてトリステインに送り込んできている。
彼はアンリエッタの恋人である以上、最もシンプルで効率的なのはアンリエッタを誘拐することだ。
公の場に死体であるはずのウェールズを出すことはできない。種がバレてしまう危険も大きい。
しかし密会し、トリステインの重要人物をかどわかすなら?その重要人物が王女ならば?
恋人であったウェールズにならばそれが出来る。
「行くわよ、手遅れになる前に!」
太陽が地平へと消えようとする時刻、ルイズを先頭に6人は馬を駆り王都トリスタニアに向かった。
アンリエッタは王宮にある寝室にいた。本来ならもう就寝してもいい時間だがここ最近は寝つきが悪くなってきている。
理由は彼女自身分かっている。彼女の恋人であるウェールズ皇太子が戦死したことだ。
恋人は死に、そして自分は政略結婚のためにゲルマニア皇帝に嫁がなければいけない。
アンリエッタは自分が、あの下賎な国に嫁がなければいけないことを考えると情けない気持ちになる。
自分はかつてウェールズが言ったように政略結婚をしなければならないのだ。
ただ、それでも彼の一言があれば救われる気がした。
14歳の夏の短い間、一度でいいから聞きたかった言葉。
「どうしてあなたはあのときおっしゃってくれなかったの?」
目が自然と水気を持ってくる。アンリエッタが目元を拭っていると、扉がノックされた。
「誰ですか、こんな夜中に?」
「ぼくだ」
その声を耳にした瞬間アンリエッタの顔から表情が消えた。
「いやだわ、こんなはっきりと幻聴が聞こえるなんて……」
「ぼくだよアンリエッタ。この扉を開けておくれ」
アンリエッタの鼓動は早鐘のようになる。そして扉へと駆け寄る。
「ウェールズさま?嘘。あなたは反乱軍の手にかかったはずじゃ……」
「それは間違いだ。こうしてぼくは、生きている」
「嘘よ。嘘。どうして」
「ぼくは落ち延びたんだ。死んだのは……、ぼくの影武者さ」
アンリエッタはまるで現実ではないかのように感じられた。
手足の感覚が感じられなくなり、空間に存在していることが強く感じられる。
扉の向こうからウェールズの言葉が聞こえた。
「風吹く夜に」
ラグドリアン湖で、何度も聞いた合言葉。
アンリエッタは合言葉を返す余裕などなく、ドアを急いで開け放つ。
湖畔で見た笑顔がそこにあった。
「おお、ウェールズさま……よくぞご無事で……」
その先は言葉にする事が出来ず、ウェールズの胸でむせび泣いた。
「泣き虫は相変わらずだね、アンリエッタ」
「だって、てっきりあなたは死んだものと……」
「敗戦のあと、巡洋艦に乗って落ち延びたんだ。ところでアンリエッタ、水のルビーはまだルイズが持っているのかい?」
突然の質問にアンリエッタはきょとんとした顔になる。もっともその顔は涙で崩れきっていたが。
「水のルビーですか?あれはルイズに譲渡したものですが……。なぜ指輪の話を?」
「いいや、なんでもない」
強引にウェールズは話を打ち切った。
アンリエッタは疑問を持てないでなかった。今のアンリエッタには瑣末なことであった。なにせウェールズが生きていたのだから。
「アンリエッタ、ぼくはアルビオンに帰るつもりだ。いや帰らなければいけない」
アンリエッタははっとした。
「ばかなことを!せっかく拾ったお命を、むざむざ捨てに行くようなものですわ!」
「それでも、ぼくは戻らなくてはいけない。だから今日、ぼくはきみを迎えに来たんだ」
「わたしを?」
「アルビオンを解放するためにはきみの力が必要なんだ。一緒に来てくれるね」
「わたしは……」
突然のことにアンリエッタは混乱する。
愛する人が自分を求めているのだ。何をためらう必要がある。
しかしそれは感情で、理性は王家として果たすべき義務を語りかけている。
「愛している。アンリエッタ。だからぼくといっしょに来てくれ」
ウェールズの言葉は理性を吹き飛ばした。
ウェールズとアンリエッタは唇を重ねる。
アンリエッタは幸福感に包まれながら、眠りの世界へと落ちていった。
投下終了ッス。
>>494>>496 マジ支援感謝!
「名前欄にレベルとタイトル一緒に入れられないかな?」と思ったけどやっぱ無理か!
実はネット回線の工事の都合とかで一ヶ月くらいまた投下できなくなるかもしれないのでそれまでバンバン投下したいです。
>>502 投下乙
忍者レベル表示はninjaでは無く!ninjaでござるよ
>>503 あらやだホント。
ありがとう通りすがりの忍者さん
今どのくらいかな。
ちなみに、忍者はsuitonされる恐れがあるから結構勢いが有るスレじゃなくて
今にも落ちそうな過疎スレで確認するとよろし
509 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 20:56:09.94 ID:xvtpFvbP
ペルソナの人、投下お疲れさまです。
まだ六月だというのに今年は酷暑ですね…
外へ出る際は熱中症にご用心!
さて、皆さんこんばんは。無重力の人です。
何もなければ21時から作品の投下を開始します。
もしよろしければ、支援の方を御願いします。
510 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:00:07.34 ID:xvtpFvbP
陽が丁度真上に差し掛かって一時間ほどがすぎた時間帯…
授業へと赴き人気の無くなった女子寮塔の廊下を、大きなトレイを持ったシエスタが靴音を響かせて歩いていた。
トレイの上にはサンドイッチやリヨン風サラダにフルーツとチーズ、そしてメインのローストポークのスライスが皿に盛られてのっている。
皿の数からして二人分の昼食は、恐らく彼女の行く先に居るであろう二人――霊夢と魔理沙の為に作られた料理であった。
「まったく、今日は何でして来なかったのかしら…」
シエスタはそう呟きながら、あの二人の姿を思い浮かべた。
今日は良いブタが手に入ったからと腕によりを掛けて料理長のマルトーがローストポークを作ったのだ。
ゲルマニアの料理であるソレはおいしく仕上がり、本場ゲルマニアのローストポークを食べているような感じであった。
生徒達も美味しそうに食べていて、特にゲルマニア出身の女子生徒が料理長の事を褒めちぎっていた。
貴族嫌いで名の通っていた料理長もこれには嬉しかったのか、顔を緩ませていたことは鮮明に覚えている。
だがシエスタにとって一番気がかりだったのは、いる筈の二人がその場にいなかった事である。
いつもなら生徒達と共に入ってきて、二人の席となった出入り口傍の休憩所で食べていた筈だ。
だが今日に限っては何時になっても来ず、とうとう昼食の時間が終わってしまった。
シエスタは何かあったのかと思い、とりあえずルイズに聞こうとした。
だがそれはうまくいかず、ルイズは生徒達と共に授業の方へ出かけてしまった。
結局、その場に残ったのはテーブルの上に置かれた昼食と、困り果てたシエスタとマルトーであった。
「手つかずのモノを処分するのもなんだしな…シエスタ、ちょっと部屋の方まで持っていってくれねぇか?」
マルトーは一切手が付けられていない自分の料理を見て、困った顔でそう言ってきた。
確かに、二人が゛昼食を食べる暇もない゛くらいに゛何か゛をしているのかもしれない。
もしかしたら部屋にいないかも知れないが、その時はその時である。
そうして大きなトレイに二人分の昼食をのせて、シエスタは女子寮塔までやってきた。
いつも夜食や洗濯物を持ってここへ訪れるシエスタを含めた給士達にとって、寮塔の長い階段などどうってことはない。
ここでの仕事は、一年も勤めていれば自然と精神や体力を高めてくれるのである。
「ここか…」
シエスタはルイズ達二年生の部屋がある階で足を止め、踊り場から廊下へと入った。
一定の間隔を保って取り付けられたドアの先には、女子生徒達のプライベートが隠れている。
それはシエスタ達にとって知ってはならない事であり、知る必要のないことである。
しばらく廊下を歩き、シエスタはようやく目的の…ルイズの自室へとつづくドアの前で足を止めた。
そしてコンコンとドアをノックくした後、中に居るであろう二人に声を掛けた。
「レイムさん、マリサさん!いますか?昼食を持ってきましたよ」
ハッキリと、爽やかな声でそう言ってしばらくして数秒――声が返ってきた。
「…もしかしてその声は…シエスタかしら?」
太陽のように元気で快活なその声は、霊夢の声であった。
知っている人の声を聞き、シエスタは安堵の表情を浮かべると共に口を開く。
「レイムさんですか?食事をお持ちしましたが…」
「食事…そういいえば今は何時かしら…ちょっと今時計が見れないのよ」
「時間ですか?…今は丁度13時半ですが」
霊夢の言葉に、シエスタは思わず首を傾げながらも懐の懐中時計に目をやり、ドア越しに答えた。
給士という仕事上時間は常に気にしなければならないので、こうして自前の時計を持っている者もいる。
シエスタから今の時刻を聞き、ドア越しに霊夢の疲れたような声が聞こえてくる。
「そうか…もうそんな時間なのね。大分眠ってたわね…で、アンタが昼飯を持ってきてくれたの?」
「眠っていた」という言葉に、シエスタは思わず安堵の溜め息をつきそうになった。
しかし溜め息をつく前にまずは用件を伝えねばならぬと思い、頭を軽く横に振ってから口を開いた。
「はい。一応マリサさんも含めて二人分の食事もお持ちしたのですが…マリサさんもそこにいるんですか?」
「いるわよ。まだ起きてないけどね。――それより、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」
霊夢の言葉に、シエスタは首を傾げる。
「?…手伝った欲しいこと…ですか?」
「えぇ。ちょっと困った事になっててね…」
511 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:02:24.18 ID:xvtpFvbP
少し戸惑っているかのような霊夢の声に、シエスタはまたも首を傾げる。
「困った事…ですか?」
「まぁね。だからちょっと部屋に入ってきて貰いたいんだけど…」
「部屋に…ですか?別に構いませんが…」
霊夢の言葉にシエスタは疑問を抱きつつも、部屋に入ることにした。
本当に困っているのならば助けぬ道理はないし、何より持ってきた昼食を部屋に入れなければならなかった。
しかし、ドアを開けた先に広がっていた光景はシエスタの想像を斜め上くらいまで超えていた。
「では改めて、失礼しま――――…ってキャア!!どうしたんですかコレは!?」
優しい性格のシエスタは困っている人を無視する筈も無く、ドアを開けて部屋の中に入り――悲鳴を上げた。
それに次いで、『ブラブランと体を揺らしている霊夢』が気怠そうに言った。
「どうしたもこうしたも…とりあえずこんな感じよ」
やや広いルイズ部屋の右端で、なんとあの博麗霊夢が『逆さ吊り』にされていた。
本来外套を引っかける為のフックに引っかけられたロープで体をグルグルとで縛られ、ミノムシのようにブランブランと揺れている。
何者にも自分の態度を変えず、自由に生きているいつもの霊夢からは想像も出来ない姿であった。
一体何がどういう事で、彼女がこんな姿をさらしているのか、シエスタには理解できなかった。
「ひ…ひどい!一体誰がこんな事を…」
体を震わせながらも決してトレイを落とさないシエスタの言葉を返そうと、霊夢は口を開く。
「実はルイズのヤツに―――とりあえずコレ外してくれない…そろそろ頭が痛くなってきたわ」
「ど、どうやってです。なんか私の力じゃ刃物があっても無理な気がするんですが…?」
見た目からしてギュウギュウ…と負と怒りの感情で縛ったような縄を見て、シエスタは言う。
その言葉を聞いた霊夢はズキンズキン…と痛む頭に顔をしかめつつ、ふと幻想郷から持ってきた自分の鞄に目をやる。
「シエスタ、その料理をテーブルに置いてあそこにある鞄の中から白い包みをひとつ取ってくれない…ちなみに小さい方ね」
霊夢の言葉に、シエスタはベッドの側に置いてある大と小ひとつずつの旅行鞄の存在に気が付いた。
彼女の言葉からして、小さい方が霊夢の私物なのだろうが、大きい鞄は見たことが無い物であった。
一瞬この部屋の主であるルイズの物かと思ったが、そのルイズの旅行鞄はちゃんと鏡台の側に置いてある。
(だとすると…あの大きな鞄は…マリサさんの鞄かしら)
シエスタはつい先々日くらいに、魔法学院にやってきた白黒の自称゛魔法使い゛の霧雨魔理沙を思い出した。
★
なんでも学院長の話に寄ればルイズの命の恩人らしく、今はこの部屋で長旅の疲れ(?)を癒してるんだとか。
そしてシエスタにとっても、魔理沙は自分の事を助けてくれた恩人であった。
学院長に紹介された後もシエスタと顔見知りである給士達やコックと親しくなり、暇なときは色々な事を話してくれる。
ただ゛魔法使い゛を自称しているから、料理長のマルトーとは仲良くなれるりだろうかと心配していたが、それは杞憂に終わった。
何せ焼きたてのビスケットを皿に入れて持ってきたマルトーが、ニコニコと笑顔を浮かべながら魔理沙に話し掛けてきたのだから。
「ようシエスタの恩人。ちょっとビスケットを焼いてみたんだが一枚喰ってみねぇか?なかなかイケるぜ?」
シエスタを含め、その場にいた食堂の者達は驚いた。あの魔法嫌いで名の通った料理長が、゛魔法使い゛に笑顔で接したのである。
この光景を、今までぶっきらぼうな顔しか見てこなかった生徒達や教師が見たら目を丸くしていたであろう。
きっとシエスタをチンピラから救ったこともあるかも知れないが、マルトーは少しだけ気になる事を言っていた。
「オレに思い出させてくれた無愛想なガキがいたんだよ。貴族も平民も…根っこは同じ人間だってな。
違うのは呼び方だけ。もしその呼び方だけで相手を差別してたら、性根の腐った人間になっちまうって」
マルトーは、何処か目覚めた顔でそう言っていた。
512 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:05:03.15 ID:xvtpFvbP
☆
そんな事を思い出していると、ふとある事に気が付いた。
(あれ…マリサさんも部屋にいるってレイムさん言ってたけど…どこにいるのかしら…)
先程マリサの分の昼食も持ってきたと言った際、霊夢は魔理沙も部屋にいると返していた。
しかしドアを開けてみると、部屋の中には霊夢だけがいた。それも異様な姿をして。
おかしいな…?とシエスタが思ったとき、霊夢が声を掛けてきた。
「…?どうしたの?」
「え?…い、いや…なんでも…――あ、…ち、小さい方の鞄ですよね…すぐに開けます」
霊夢に促され、今自分が何をすべきか思い出したシエスタはそう言うと、手に持っていたトレイをテーブルにゆっくりと置いた。
カチャカチャと食器同士が触れる音を聞きながらも、シエスタはの視線は完全に霊夢の方を向いている。
今の霊夢の姿は、シエスタにとっては『現実では有り得ない光景』であった。
(一体あれはどうなって…あんなスゴイ状態になったのかしら…)
シエスタは心の中で呟きながら、逆さ吊りにされた霊夢の姿をその目に焼き付けていた。
それでも長いこと勤めていれば体が慣れていくのだろうか、余所見をして料理を落とすと言うことだけはしなかった。
トレイを置き終えたシエスタ軽く深呼吸をした後、ベッドの側に置いてある小さな鞄に近づき、シエスタはあれ?と首を傾げた。
(何だろう…この鞄…見た覚えがないのに…何処かで見た覚えがある…)
シエスタはこの時、二泊三日程度の旅行が出来るこの鞄に覚えのない既視感を感じた。
それはまるで、今まで通ったことのない道を、何処かで通った事があると感じたような違和感…。
一体これは何なのだろうかとシエスタは手を止めようとしたが、すぐにハッとした表情を浮かべた。
(とりあえず…今は考えるよりレイムさんをなんとかしないと)
自分の背後で大変な事になっている霊夢の為に、シエスタは僅かな違和感を頭の隅に押しやり、鞄を開けた。
旅行鞄の中に入っていたのは何着かの着替えと、茶色や緑の大小様々な包みが入っていた。
着替えの方は霊夢がいつも着ている巫女服と同じで、それが何着も入っている。
その着替えを見た瞬間――シエスタの時間が停まった。実際に停まったわけではないが。
普通、着替えというものは色んな服を持っていく。それは平民も貴族も同じだ。
貴族達なら様々な色やデザインのドレスを何十着も、平民ならば色違いの質素な服を何着も…。
しかし、この鞄の中に入っていたレイムの着替えである巫女服は全てが同じデザインで、同じ色であった。
リボンも――服と別離したあの白い袖も――いつもの彼女が身に纏っている物全てが、寸分違わず同じデザインであった。
それを見たシエスタの頭の中に、――――『どうしようもない悲しみと無常感』という言葉が浮かんできた。
まるでそれは、もう帰ってこない親兄弟の横たわる棺の蓋にカギを掛ける時のような、涙の出ない悲しみ…。
泣きたくて泣いても、もう戻ってこないから泣かない。…という見せ場のない意地。
表面は気取っていても、心の中にあるオアシスはすっかり枯れ果てて…涙すら出てこない無常感。
棺を穴に入れて、その上に土を被せていく時の――心から喜怒哀楽が一気に失せていく喪失感。
それらが一纏めになってシエスタの心の中に入っていき、彼女の目から無意識に――――「シエスタ、大丈夫?」
耳を通り、鼓膜の先にある頭の中に、霊夢のハッキリとした声が響いた。
「あ…―――――…はい?」
突然のことに目から出かけていた゛何か゛は急いで引っ込み、シエスタは間抜けそうな声を上げて霊夢の方へ顔を向ける。
そこには逆さ吊りにされた霊夢が体を無意味に揺らしながらも、ジト目でシエスタを見つめていた。
「アンタ熱でもあるんじゃない?今日はやけにボーっとしてるけど」
何処か呆れた調子ながらも、シエスタの身を心配するかのような物言いに、彼女は首を横に振った。
「いえ、何も…―それより白い包みでしたよね?待っててください、今探しますから」
霊夢の素直ではない優しさ(?)に微笑みつつも、シエスタは鞄の中にあるはずの白い包みを探す。
先程何かを感じた着替えに視線を移したが、今はもう何も感じられなかった。
513 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:07:04.62 ID:xvtpFvbP
一体あれは…と首を傾げていると、鞄の右上端のスペースに白い長方形の包みが幾つも入ってあるのに気が付いた。
その白い包みは幾つかあり、紙製品でも包んでいるのか他の包みと比べればかなり薄い。
「レイムさん、白い包みっていうのはこれの事ですか?」
シエスタはそう言いながら鞄の中から包みを一つ取り出し、霊夢に見せる。
「あぁそれよそれ。その中からお札を一枚取って私の体を縛ってる縄に貼り付けてちょうだい」
「オフダ…?」
霊夢の口から出た聞いたことのない言葉に首を傾げつつも、シエスタは包みを剥がす。
中には赤いインクで変な記号が幾つも描かれた長方形の白い紙が何十枚か入っていた。
シエスタは不思議そうな表情を浮かべつつも一枚を手に取り、霊夢の体を縛っている縄にギュッと押しつけ、手を離す。
すると奇妙なことに、紙はピッタリと縄に貼り付いていた。糊など使っていないにもかかわらず。
シエスタがちゃんとお札を貼ってくれたのを確認し、霊夢はシエスタに話しかける。
「助かったわシエスタ。じゃあちょっと離れててくれない?この縄を吹き飛ばすから」
「ふ、吹き飛ばす?」
霊夢の口から出たお礼の言葉ととんでもない言葉に神妙な表情を浮かべつつ、シエスタはそのまま後ろに下がる。
そのまま後ろに下がってベッドの側にまでシエスタが下がったところで、霊夢は目を閉じて詠唱を始めた。
メイジが魔法を使役する際に発するような詠唱と似てはいるが、シエスタの耳ではその言葉が何を意味しているのかわからなかった。
やがて詠唱を始めてから数十秒が経過したとき、縄に貼り付けたお札がカッと光り輝いた瞬間、勢いよく『爆ぜた』。
否、『爆ぜた』というより『消え失せた』という言葉が適切だろうか。
ボン!という音と共に霊夢の体を縛っている縄がはじけ飛び、部屋中に飛び散った縄の破片は床に落ちる前に消滅した。
ともかく、霊夢の自由を奪っていたルイズの縄は見事消滅し、晴れて霊夢は自由の身となり――
ドサっ!
「イダッ…!!」
―重力に従い、床に叩きつけられた。
「ちょ…レイムさん!大丈夫ですか!?」
「あ、あんたにはコレが大丈夫に見えるワケ…?」
何もすることなく落ち、今度は冷たい床に寝そべった霊夢の側に、シエスタが慌てて駆け寄った。
見たところ全然大したことはないのだが、自分で縄を解いて(?)自分から床に落ちた霊夢は、苦しそうな表情を浮かべている。
思いっきり足の小指を過度にぶつけたときのような痛々しい表情の霊夢が発した苦言に、シエスタはどう返そうか迷った。
大丈夫ですよ、大した怪我にはなってません……とか?とりあえず手当てでも…とか?
どっちを言えばいいのかイマイチ良くわからないシエスタと痛がっている霊夢に、何者かが声を掛けてきた。
「お〜お〜仲が良いぜ二人とも。…この私に見向きもしないでイチャイチャしてるとは」
女の子ではあるが、何処か男っぽい口調に雰囲気。その声に聞き覚えがあった二人はそちらの方へ顔を向ける。
二人の視線は大きなクローゼット――いや、正確には戸が開きっぱなしのクローゼットの中――に注がれた。
そこには、霊夢と同じく体を太く丈夫な縄でグルグルとキツく縛られ、拘束されている白黒の魔法使いがいた。
先程気になっていた疑問が今になって解消されたシエスタは恐る恐る、その魔法使いの名を呼んだ。
「マリサ…さん?」
「あぁそうだよ魔理沙だよ。…ところで、私もちゃんとこの縄を吹き飛ばしてくれるんだろ?」
二人のやりとりを、クローゼットの中から見ていた魔理沙の言葉には、何処か悲哀が漂っていた。
◆
支援
支援しる
516 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:09:40.59 ID:xvtpFvbP
それから一時間後…
「ふ〜…やっぱりマルトーの作った料理は格別だぜ。ありがとなシエスタ!」
シエスタの持ってきた昼食を食べ終えた魔理沙は、食後の水を一杯飲んでから感想を述べた。
その顔はクローゼットの中に閉じこめられていた一時間前とは大分違い、生気が篭もっている。
「ご馳走様。悪いわね、わざわざ持ってきてくれるなんて」
一方の霊夢は魔理沙とは対照的に冷めた表情を浮かべていたが、言葉には感謝の念が篭もっていた。
最も、どちらが好感触かと百人に聞けば間違いなく百人全員が魔理沙の方へ票を入れるだろうが。
「いえいえ、私はただマルトーさんに頼まれて持ってきただけですよ。お礼ならあの人に言ってください」
シエスタは直球の魔理沙と遠回りの霊夢にお礼を貰い、僅かに頬を赤らめながら食器の片づけを始める。
魔理沙はそんなシエスタの顔を見て何か気づいたのか更に追い打ちを掛けるかのように、口を開く。
「そうか、じゃあ今日の昼食は味がいつもより良かったのはシエスタが持ってきてくれたお陰だな」
突然魔理沙の口から出たそんな言葉に、シエスタの顔はポッと朱に染まり、魔理沙の方へ顔を向ける。
魔理沙は女性、それもまだ二十代にも満たない少女であるが、シエスタは一瞬だけ魔理沙を異性と認識してしまった。
それが何故なのかはわからないが、けどシエスタはそんな考えは良くないと思い、出来るだけ平静を装いつつ礼を述べる。
「あ…ありがとうございます」
なんとか口から絞り出せたお礼の言葉を聞き、魔理沙は軽く笑った。
「ハハッ、何でお前がお礼を言うんだよ。私は何もしてないぜ?」
「アンタってホント、変な言葉がポンポンと口から出てくるわね」
自分の口から出た言葉の意味をイマイチ理解できていない魔理沙に、霊夢がさり気なく突っ込みを入れた。
食事が終わった後、シエスタが食器をトレイに戻してテーブルを拭いている最中、彼女はある事を聞いてみた。
「あのー、すいません。レイムさん、マリサさん…お二人に聞きたいことがあるんですが」
「ん?」
「何かしら?」
唐突なシエスタの質問に、霊夢と魔理沙はベッドの上からキョトンとした表情を浮かべた。
二人してベッドの上にいるわけだが、二人のしている事はそれぞれ違った。
魔理沙はただ単にベッドの上に座って、幻想郷から持ってきていた本を読んでいる。
霊夢は自分が持ってきた鞄の中にあったあの白い包みを取り出し、何かを探しているようだ。
大量にある白い包みの中身であるお札を一枚ずつ丁寧に確認し、また白い包みに戻している。
魔理沙はともかく、何か忙しそうな事をしている霊夢の事を思い、シエスタは素早く質問を投げかけた。
「つかぬ事をお聞きしますが…あの、その…どうしてお二人はあんな姿に…」
何処かオドオドと恥ずかしそうに喋るシエスタに、二人はつい一時間前の事を思い出した。
シエスタの質問に答えたのは、魔理沙であった。
彼女は鬼の首を取ったかのような笑顔を浮かべ、霊夢の顔を見つめながら言った。
「あ〜、あれか…あれは霊夢が一番の原因だよ。全く、このトラブルメーカーめ」
最後の一言を霊夢に向けて言い放つと、すぐさま霊夢が反論に出た。
「ちょっと魔理沙。何でアタシが諸悪の根源って扱いされるのよ?理不尽すぎるじゃない」
トラブルメーカーという扱いに怒ったのか、霊夢は魔理沙の物言いに嫌悪感丸出しの表情を浮かべている。
「だってそうだろ?お前があのお菓子を食べなきゃ、こうしてシエスタが昼食を持ってくる必要が無かったわけだし」
「それならルイズが諸悪の根源じゃないの。責任転嫁もいい加減にしなさいよね」
「ルイズ…?やっぱり…ミス・ヴァリエールが貴女達に何かしたんですか」
いきなりルイズの名前が出たことに、シエスタは霊夢が最初に言っていた事を思い出しつつ聞いてみた。
「まぁね。ルイズのヤツ、ちょっとお菓子に手を出したくらいでこの仕打ちとは…全く酷すぎるわ」
霊夢の言葉を聞き、シエスタは何があったのか理解し、少し苦笑しつつ言葉を返す。
「レイムさん、人のお菓子に手を出すのは駄目だと思いますけど…」
シエスタがそう言った瞬間、霊夢は元から鋭くなっていた眼を更に鋭くさせ、こう言った。
「たかが菓子一つでこの仕打ち?全く、器量の小さい貴族様だことね。それじゃあ結局食べずじまいで腐らせるのがオチよ」
517 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:12:00.09 ID:xvtpFvbP
逆さ吊りにされたのを余程根に持っているのか、霊夢は恐れもせずに言ってのけた。
その言葉にシエスタは目を丸くしたが、魔理沙は苦笑いしつつ霊夢の言葉に感想を述べた。
「流石貧乏巫女と呼ばれてるだけあるぜ。その日暮らしって雰囲気がいかにm…―「悪かったわね。勿体ない性格してて」
魔理沙の言葉を遮るかのように、誰かがそう言った。
最初魔理沙は霊夢の声かと思って言い返そうとしたが、その口が動くことがなかった。
口が動く前に、いつの間にかドアを開けて部屋に入ろうとした人物に目が入り、軽く驚いたからである。
ドアの開く音は三人の会話に紛れて聞こえなかった所為か、まだ魔理沙しか気づいていないようだ。
「げげ…ルイズ」
何も知らずにびっくり箱を開けたときの様な表情を浮かべた魔理沙と彼女の口から出た名前に、二人は後ろを振り向く。
そこには、開きっぱなしのドアの前で顔をうつ伏せたまま佇んでいるこの部屋の主、ルイズがいた。
予想だにしていなかった人物の登場に対し、二人の反応は対照的であった。
「は?…あれ、何でアンタがここにいるのよ。授業じゃなかったの?」
「え…?あ!ミス・ヴァリエール!?…い、いつの間に?授業はどうなされたので…」
霊夢はいつもと変わらぬペースで顔を見せぬルイズにそう言った。
対してシエスタは驚愕の表情を浮かべ、居るはずのない人間がいる事に驚いていた。
「ちょっとね、忘れ物があったから取りに戻ってみれば…なんとまぁ、言いたい放題じゃないの」
怒気を含んだ声でそう言いつつ、ルイズはゆっくりと顔を上げていく。
まるでそこだけをスローモーションにしているかのようなルイズの動きに、自然と三人は何も言わないでいる。
「でもアンタの言い分も一理あるわね…。いくら大切に保管していても食べ物は食べ物。いずれ腐っちゃうわ」
表情一つかえずに話を聞いている霊夢に向けてそう言ったとき、ようやくルイズは顔を上げて、目の前にいる三人の姿を見回した。
その顔にはハッキリと怒りの色が浮かんでいる。それは下級貴族が裸足で逃げ出すほどであった。
「あの…ミス・ヴァリエール…ものすごく怒ってるように見えるんですが…」
「あぁ、怒ってると思うぜ」
平民であるシエスタはルイズの表情を見てか体を震わせており、魔理沙の方も苦々しい笑みを浮かべていた。
「はぁ…それで、何か話でもあるのかしら?」
しかし霊夢だけは怖いとすら感じていないのか、いつもの無愛想な表情でルイズに話し掛けた。
それがいけなかったのか、溜め息交じりの言葉にルイズの眉が大きくピクンと動き、声を荒げて言った。
「っ…!何よソレ?人が大切にしてるお菓子を勝手に食べてその態度は!
大体ねぇ、アンタは遠慮って言葉を知らないの!遠慮って言葉を!」
もはや叫び声にも近いルイズの訴えに対し、霊夢はめんどくさそうに応えた。
「うるさいわね…私だってそう何でも食べるワケじゃないわよ。たまたまそこの戸棚に目が入ったから取っただけじゃない」
反省の色が見えない霊夢の言葉にとうとう我慢できなくなったのか、ルイズはとうとう腰に差していた杖を引き抜いた。
「だからっ!それがっ!遠慮が無いっ…て言ってるでしょうが!」
霊夢はルイズの手に握られた杖を見て、こちらも負けじと懐に手を伸ばして身構える。
恐らく服の下には針かお札でも入っているのであろう。
もはや一触即発という状況を見て、流石の魔理沙も身の危険を感じ始めた。
「これは…ちょっとヤバイかもな」
魔理沙の言葉を耳にしたシエスタはハッとした表情を浮かべると、すぐさまルイズの方に近寄った。
そして今にも杖を振り上げようとしたルイズの右手を取り押さえ、ルイズの説得を始めた。
518 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:14:29.42 ID:xvtpFvbP
「落ち着いてください、ミス・ヴァリエール!ここで暴れたらお部屋が大変なことに…」
「ちょっ…何すんのよ!?離しなさいってば!」
シエスタは杖を持っていたルイズの右手を無理やり下ろしてなんとか彼女を宥めようとするが、当の本人は怒り心頭である。
大事に取っておいたお菓子を食べられたのはそりゃ悔しいだろうが、そんなに怒ることなのか?
シエスタはそんな疑問を抱えつつ、これからどうやって彼女を落ち着かせようか迷い始めた。
一方の魔理沙は、懐に伸ばしていた霊夢の手を掴もうとしたが、その前に霊夢の方が先に手を抜いた。
出てきた左手に何も持っていないことを確認した魔理沙はホッと一息ついた時、霊夢が何も言わずに歩き始めた。
横にいた魔理沙を一瞥もせずにツカツカと、靴音を床から響かせて。
「おっおい霊夢!一体何処に行くんだよ」
「何って…ちょっと気分転換に外でも行こうかなーって思っただけよ」
霊夢の思わぬ行動に、魔理沙は驚きつつもなんとか止めようとする。
「いや、お前散歩って…何言ってんだよ…まずはルイズに謝るのが先だろ」
「だったらアンタが謝ればいいじゃない。アンタもあのクッキー食べたんだから」
しかし魔理沙の言葉には意も介せず霊夢はそう言ってのけると、窓を思いっきり開けた。
地上からかなり上の階に作られたルイズの部屋は窓からの風通しが良く、サラサラとカーテンがひとりでに動いている。
「じゃあ行ってくるわ。大丈夫、夕食時には帰ってくるから」
窓の縁に足をかけて飛び立つ前に一言だけ伝言を残した霊夢はそう言って、勢いよく飛び上がった。
魔理沙が急いで窓から身を乗り出した時には、もう霊夢の姿は何処にもなかった。
「おい、霊夢…あぁもう…。すまん二人とも、すぐに帰ってくるぜ!」
魔理沙は苦虫を踏んでしまったかのような顔でシエスタとルイズにそう言うと、愛用の箒を素早く手に取った。
一方の二人は何が何だから良くわからず、シエスタはキョトンとした表情を浮かべている。
「えっ…?え、えっと…マリサさんはどちらへ?」
「あの無責任な紅白を連れ戻してくる。なぁに、夕食前には戻るぜ」
箒を手にした魔理沙はそう言うと開きっぱなしの窓の前で箒に跨った瞬間、それは起こった。
「うっ…」
「きゃっ…!」
ブワッと魔力の気配を僅かに感じられる風が周囲に舞い、シエスタとルイズは思わず目を背けてしまう。
そして次の瞬間、魔力の込められた箒は魔理沙を乗せたまま浮かび上がり、窓の外へ勢いよく飛び出していった。
今度はシエスタと少しだけ怒りを忘れたルイズが窓から身を乗り出したが、魔理沙の姿はもう何処にも見あたらない。
後に残されたのは、呆然としているルイズとシエスタだけであった。
◆
その日は、夏だというのにとても風が涼しかったと今でも覚えている。
弟と一緒に夕涼みがてら、グラン・トロワの裏庭で昆虫採集をしていた。
そこはちゃんと整備されているものの、ちょっとした森もある。
兎やリスなどといった小動物を放し飼いにしていて、小さな池も作られていた。
ちゃんと裏庭と外を隔てる丈夫な壁と見張りの騎士達の手で、小さなオレ達は守られていた。
519 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:16:12.63 ID:xvtpFvbP
「おーい!見つけたよ兄さーん!」
夏用の軽い生地で出来たブラウスを着た弟のシャルルが、遠くからオレを呼んでいた。
丁度その時、オレは珍しい羽を持った蝶を追いかけていた。
しかし弟の声にオレが一瞬だけ視線を外したとき、その蝶はいなくなっていた。
一体何処に行ったのかと辺りを見回しても、目に映るのは自分の回りを囲う木々だけ。
仕方なしにオレは溜め息をつき、弟の声に導かれてそちらの方へ向かった。
「兄さん見てよ!ホラ、このカブトムシ!」
年相応の笑顔を浮かべる弟の手には、一匹の大きなカブトムシが握られていた。
自らの強さを示しているのか、頭から一本の大きくと長い角が生えていた。
「おぉスゴイなシャルル!こんなにデカイのは初めて見たぞ!」
オレは素直に驚愕し、自分のことのように喜んだ。
「でしょでしょ!向こうにある大木に貼り付いていたところを、僕が魔法で捕まえたんだ!」
そういって弟はカブトムシを持っていない方の手で地面に置いていた大きな杖を手に取る。
自分たちより何倍も大きいそれは、父親から貰った先祖伝来の物である。
「そうか…お前はやっぱり、オレより魔法の才能に優れているなシャルル」
オレは弟の方を力強くバンバンと叩きながら、笑顔でそう言った。
幼少から魔法の才能に恵まれなかったオレがそんな事を言うと、どうにも自分を卑下している気分になる。
それを察したのか、弟は優しい笑みを浮かべてこう言ってくれた。
「そんな事ないさ、兄さんだってきっと…僕よりも素晴らしいメイジになれるさ」
弟の口から出たその言葉は涼しい風と共に、空へと飛んでいった。
・
・
・
―――i下、陛下。到着しましたぞ陛下」
「…ム?」
ふと頭の片隅から声が響き、ジョゼフは目を覚ました。
ゆっくりと自分の目に映る光景はグラン・トロワの裏庭ではなく、竜籠の中であった。
空中で揺さぶられているかのような感覚を味わえる荷車の中には、ジョゼフの他に護衛の騎士が一人ついている。
そして意識がドンドンと覚醒していくと共に、さっきのアレは夢なのだと認識し始めた。
「夢か…フン、このオレがあの頃の夢を見るとはな…」
「…そろそろ着陸します、ベルトを着用して下さい」
ジョゼフが自嘲するかのようにひとり呟くと共に、騎士が言った。
それに従って備え付けのソファに付いているベルト着けた後、窓から外の景色を眺める。
窓から見えるそこは、ガリアの領地サン・マロンにある軍の私有地であった。
海に沿って作られている街から離れた一角に、そこはある。
下級貴族が持てるような大きさの土地の中にレンガと漆喰で出来た土台の上に木枠と帆布でくみ上げられ、円柱を半分に切って寝かせたような建物が幾つもある。
敷地内や出入り口には何百人もの衛兵達がおり、検問も厳しく許可無き者は貴族であっても容赦なく追い返されてしまう。
例えガリア王国の政治に深く関わる者や軍の将校であっても、事前の連絡と身分証明が出来なければ同じように追い返される。
そんな機密性の塊であるような場所にやってきたジョゼフには、それなりの理由があった。
「報告書には、護衛にあたっていた衛兵二人と焼却炉担当の作業員一人…それに研究員三人を含めて死者が六名との事です」
窓の外を眺めているジョゼフの耳に入っているのかどうか疑わしいが、騎士は手に持った報告書を見つめながら言った。
ジョゼフと騎士を乗せた竜籠はドンドンと高度を落としていき、敷地内にある発着場に降り立った
籠を運んでいた竜達は仕事が終わって休みたいのか、ギャアギャアと鳴きもせずにおとなしくしている。
次いで詰め所の中から四人ほど衛兵が出てきて、竜達を宥めつつハーネスの取り外しに掛かった。
そしてしばらく中で待っていると、詰め所の中から新しく出てきた衛兵が荷車のドアを開けて言った。
「ようこそ゛実験農場゛へ。所長と゛複製実験゛の担当者方がお待ちです」
520 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:18:43.49 ID:xvtpFvbP
「今回の件につきましては…全くの想定外としか、言いようがありません」
冷たい空気の漂う会議室の中に、白髪が目立つ頭を掻きむしりながら、老齢の所長が苦しげにそう言った。
この事務室は、゛実験農場゛の中央に建てられた大きな施設の中にある。
そこは此所の全責任者である所長を含めた何人かの研究員達が働く場所であり、寝るところであった。
その施設の中にある小さな会議室には、王であるジョゼフと゛実験農場゛幹部。そして…゛複製実験゛の担当者達が居た。
ジョゼフを上座にその他の者達は壁に沿って置かれた椅子に腰掛けており、渡された書類を流し読みしている。
そして最新製のマジックアイテムで十分に冷えた部屋の中で汗をかいている゛実験農場゛の所長は、ゆっくりと説明を続けていく。
「゛試験体゛を作るにあたってモデルとなっていた゛見本゛の保管には、細心の注意を払っておりました…
冷凍保管庫の警戒レベルは常に最大にして、衛兵にもアイス・アローを常備させて…内外のアクシデントに対し常に見張っています。
…゛事故゛が起こった昨日も、用済みとなった゛見本゛を処分するため冷凍保管庫から焼却炉に移送する際には、見張りを増員しておりました…」
僅かにその体を震わせながら、所長はそこで一旦説明するのを止める。
それを見計らっていたかのように、今まで黙っていたジョゼフが口を開いた。
「だが゛見本゛は暴走して特注の焼却炉を破壊、被害者が出たうえにみすみすトリステイン領内に逃げ込んだと報告書には書いておる。
これは最悪の事態を想定できなかった゛実験農場゛に不備があるのではないか?」
ジョゼフの言葉に、部屋にいた゛実験農場゛の関係者達は身を震わせた。
下手をすればようやくありつけたこの仕事をクビにされるのだから当然ともいえる。
※
数年前、キメラを用いたとある実験で絶望的なミスをした彼らは失脚し、何年も路頭を彷徨った。
録に食事も食べれぬ生活を送っていたある日、ガリア王ジョゼフからの直々の召集令が送られてきたのである。
それは、自分たちが失脚する原因となった研究所の欠点を元に新しく作られた゛実験農場゛への配属命令であった。
伝えられた内容は、以前自分達の行っていたキメラ実験の再開と画期的な軍事兵器の開発だった。
「もし貴様等が余の満足する物を作れれば今後の生活を保障してやる。だが失敗は許さんぞ」
玉座に座るジョゼフは、何を考えているのかわからない表情でそう言っていた。
下級貴族の生まれでガリア人ではなかった研究者達にとって、喉から手が出るほどの好待遇である。
その場に居た研究員達は全員それに賛同し、゛実験農場゛の幹部となった。
それから後の仕事は、正に彼らの天職とも言えた。
人員と予算に対して文句はなく、実験や研究に使う素材やマジックアイテムも短期間で用意してくれる。
時折ジョゼフの秘書であるという黒髪の女や、ジョゼフ王自身が極秘で視察に来る事もあった。
研究の方も滞り無く順調に進み、正に順調ともいえる状況であった。
数瞬間前に…゛複製実験゛の指令が来るまでは。
※
所長は額から流れる汗を拭うこともできず、淡々と言い訳をジョゼフの目の前で述べる。
「とりあえず゛原液゛は今も保管されていますし゛試験体゛も体自体は完成しております…ですから――」
「もう良いもう良い!そこから先はとっくの昔に知っておるし、何より過ぎた事ならば仕方がないではないか」
しかし、ジョゼフは突如として所長の言い訳を、右手を激しく横に振ることで中断させた。
その後所長がハッとした表情になって喋らなくなるのを確認した後、ジョゼフはゆっくりと右手を下ろす。
「本来なら処罰ものではあるが、今この研究は大事な局面に差し掛かっておるからな。
人員削減はしたくないし、お主等の今後の働きで今回の事は無しにしてやろう
逃亡した゛見本゛については余が手を打っている。安心して今後の研究に励むと良い」
ジョゼフの寛大なる言葉に所長を含めた研究員達はホッと胸をなで下ろし、頭を下げた。
それを見て満足そうに頷いたジョゼフは、キッチリと閉じられた窓から見える空へと視線を向けた。
初夏も間近に迫る季節のおかげか空は澄み切っており、白い雲が風に乗ってゆっくりと動いている。
(トリステインか…面白い。今年は色々と楽しい事があって余も退屈せんな)
ジョゼフはその顔に笑顔を浮かべつつ、空を眺めていた。
その笑顔はまさに、大好きな玩具を親に買って貰った子供の様な笑顔であった。
521 :
無重力巫女の人:2011/06/30(木) 21:34:18.51 ID:xvtpFvbP
これにて、今回の投稿は終了です。
支援してくれた人、ありがとうごさいました。
いよいよ夏の季節がやってきましたね。酷暑の所為で寝付きにくい…
こういう時にHもとい、チルノみたいな存在がいてくれればいいんですが。
いないものは仕方がないので冷えピタを頭に貼って寝ています。
自分の話も時間的にはゼロ魔五巻の時期、つまり夏に近づいています。
今後もゼロ魔と東方を尊重しつつ、自分のアレンジと微量のオリ要素で進めていきます。
では皆さん、熱中症に注意して夏を乗り切りましょう。ノシ
追伸
投下する際に修正している筈の箇所が未修正でした。
>>510 太陽のように元気で快活なその声は、霊夢の声であった。
↓修正後
頭が痛くて苦しんでいるようなそれは、霊夢の声であった。
書きはじめた時、逆さ吊りにするのは魔理沙にしようと思っていた時の名残です。それでは
職人様方、両者投下乙です。
投下された皆さん乙です
来週からは投下できなくなるから、昨日の今日だが投下だ、投下!
第13章死神後編
ルイズたちが魔法学院からトリスタニアへ向かう間に日は落ちてしまった。当然、視界は悪くなるが一行は馬の速度を落とさない。
その強行軍の中で突然、タバサが馬を止めた。それを見て陽介とキュルケも馬を止める。
「どした?いきなり止まって」
タバサは道の外れの茂みを見つめている。
3人が止まったことで最後尾の完二も止まらざるえなくなり、先頭を駆けていたルイズも取って返してきた。
「ちょっと、何してるのよ!早くしないと姫さまが!」
「血の匂いがする」
タバサの返答は短かったが、聞いた者を緊張させるには十分だった。
タバサは馬の首を道から60度ほどずらして森の中へと入っていった。他もそれに続いた。
その先は死屍累々の光景が広がっていた。焼け焦げたり、体の一部分がなくなっているような人間の死体や、血を吐くヒッポグリフたち。
「王家のヒッポグリフ隊だわ……!」
ヒッポグリフ隊はトリステイン王家に忠誠を誓う近衛部隊である。それが今、目の前で倒れ伏している。
ルイズは自身の最悪の予感が的中しそうにあると感じた。
「生きている人がいるわ!」
キュルケの声で一行は馬を下りて駆けつける。
腕に深い怪我を負っていたが、なんとか生きながらえているようだ。
「なにがあったの?」
「姫さまが……」
「さらわれたのね?犯人はどっちに」
その兵は怪我を負っていないほうの手をぷるぷると震わせながら指差した。
その指先は森の中で比較的道なりをなしている方向に向いている。伝えることを伝えたので安心したのかその兵は気絶してしまった。
「おい、クマ。お前はここで出来る限り助けてやってくれ。キュルケもここに残ってやってくれ」
陽介の指示にクマとキュルケは力強く頷いた。
その場を彼らに任せてルイズ、完二、タバサ、陽介は再び乗馬し、先ほど傷付いた兵が教えてくれた方向へと駆ける。
突然、横合いから魔法攻撃が飛んで来た。タバサが瞬時に反応して空気の壁を作り、火球、氷槍、風刃を防ぐ。
だが全てを防ぎきるとまではいかず、馬が攻撃を受け、また受けなくても驚いたために4人は馬から振り落とされてしまった。
それでも4人は危険を肌身に感じ、すぐさま立ち上がって攻撃に備える。
しかし攻撃は飛んでこない。代わりに襲撃者たちが姿を現した。その中にはやはりというべきかウェールズがいた。
そしてその傍らに立つ姿は……
「ウェールズ皇太子!姫さま!」
ウェールズとその隣のアンリエッタ姫の姿を認め、ルイズは叫んだ。
だがアンリエッタは臣下に応えず、代わりにウェールズが静かに喋り始める。
「君はルイズだね。それにカンジ。あとはヨースケとタバサだったけかな。まあいいか。
ルイズ、その指に嵌めている水のルビーを返してくれないか?」
突然の申し出にルイズは声を荒げて返す。
「なぜあなたに渡さなければいけないのですか!」
「ぼくじゃないさ。それはもともとアンリエッタのものだ。だから彼女に返してあげてくれ」
「わっけわかんねえことをベラベラと……!」
イライラとする完二に陽介は緊張した趣で言った。
「言ってわかる様子じゃねえぜ、ありゃ……。ペルソナ!」
頭を焔とする陽介のペルソナ、スサノオが現れ、マハガルを発動する。
アンリエッタをさらっているメイジたちは陽介の素早さに反応できず疾風の刃に体を刻まれる。
だが襲撃者はそのまま地面に倒れこむことはなかった。なんとスサノオのつけた傷がふさがっていくではないか。
そしてメイジたちが攻撃を受けた痕跡は服にだけ刻まれ、その肌にはかすり傷一つ消えてなくなった。
その非現実的光景にたじろぐなかでタバサは素早く氷の槍をウェールズに放った。
わき腹に細い氷が突き刺さるが、その穴もすぐにふさがってしまう。他のメイジたちと同じだ。
その光景を見て、アンリエッタの表情が変わる。
「見たでしょう!それは王子じゃないわ!別の何かなのよ!姫さま!」
アンリエッタはそれでも信じたくないというふうに頭を振る。そして苦しそうに言った。
「お願いよ、ルイズ。わたしたちを行かせてちょうだい」
「姫さま?なにをおっしゃるの!それはウェールズ皇太子じゃないのですよ!姫さまは騙されているんだわ!」
アンリエッタは笑った。鬼気迫る笑みだった。
「そんなことは知っているわ。唇を合わせたときからそんなことは。それでも構わないわ。嘘かもしれなくても信じざるを得ないものよ。
わたしは誓ったのよルイズ。水の精霊の前で、誓約の言葉を口にしたの。『ウェールズさまに変わらぬ愛を誓います』と。
世の全てに嘘をついても、自分の気持ちだけにはうそはつけないわ。だから行かせてルイズ」
「姫さま!」
「これは命令よ、ルイズ・フランソワーズ。わたしのあなたに対する最後の命令よ。道を空けてちょうだい」
姫の言葉に宿る固い決意を感じ、ルイズは言葉を失ってしまう。しかし使い魔たちはちがった。
「んなのなんの言い訳にもなってねえ。テメーの好きなヤツの顔に泥塗るつもりかよ」
「そうだ!皇太子さんもそんなことは望んでなかったはずだ!」
アンリエッタの顔が羞恥で赤くなる。
なにか言い返そうとするアンリエッタを制止したのはウェールズ、いや操られたウェールズの死体だった。
「ならば交渉の余地はないということだね」
「たりめーだ」
瞬間ルイズたちを挟み込むようにしていたメイジたちから魔法が飛ぶ。
完二はデルフリンガーで弾き攻撃をかわしながら自分の主をまもった。
陽介は自分に傷をつけられない風攻撃は意に介さずそれ以外の攻撃を避け、タバサは風を操って攻撃を逸らす。
敵の攻撃の波が弱くなった瞬間、完二はデルフリンガーを地面に突き立てた。
相手が死体ならば遠慮はいらない。
「砕け!ロクテンマオウ!」
完二ももつ最高の電撃魔法マハジオダインが放たれた
。耳を塞ぎたくなるような激しい雷鳴とともに超高圧の電撃がメイジたちを襲う。
電撃に体を焼かれたために回復することもできず、動く死体は動かぬ死体に変わってしまった。
最後に残ったのはウェールズの姿をした誘拐犯だけであった。
「さあ、姫さんを返してもらうぜ」
「来ないで!」
完二がウェールズに近寄ろうとするとそれを遮ったのはアンリエッタだった。
「来たらわたしは自害します!」
アンリエッタの魔法の杖を両の手でぎゅうと強く握り締めて、そう言った。
彼女の言葉が嘘ではないのはその表情が教えている。
「カンジ!動かないで!」
「クソッ!」
アンリエッタの目は狂気をはらみながら真剣そのものであり、近づけば実行することは確実だった。
ウェールズだけを攻撃しようとしても、二人はほとんど抱きあうような距離で、攻撃をすれば姫まで巻き込んでしまう。
ルイズたちは動けなくなってしまった。
「さあ、アンリエッタ。ぼくらの幸せを邪魔するものをここで叩きのめそう」
「はい」
アンリエッタはもうウェールズの姿をしたそれ以外、何ものも信用していない。
『水』、『水』、『水』、そして『風』、『風』、『風』。
水と風の六乗。王家のみに許されたヘキサゴン・スペル。
風と水がまざり合い、水の嵐が生まれる。
詠唱が重なり、それはさらに巨大に膨れ上がる。
津波のような竜巻だ。城でさえ吹き飛ぶだろう。
その天災のような光景を呆然とルイズたちは見ていた。
しかしルイズはすぐに顔を鋭いものにした。その竜巻を、いやその向こうにいる人をきっと見る。
「カンジ、ちょっと時間を稼いで」
「ハア?オマ、アレをどうやって?つか時間稼いでなんとかなんのかよ?」
疑問符が多く付けられた言葉にルイズは確信を持って答えた。
「なんとかするわ。主君の悪夢を晴らすのも家臣の仕事で、友としての義務よ。それに……」
「あん?」
怪訝そうな顔をする使い魔にご主人様は挑発するように言った。
「守ってくれるんでしょう?」
ルイズのことを守る。それは完二が、アルビオンへ向かう旅の中で、そしてニューカッスル城でした約束だ。
ルイズは挑発するような笑みに完二も気楽に返す。
「へっ、たりめーだろ!」
使い魔の言葉を聞くとルイズは始祖の祈祷書を開き、一心に呪文を紡ぎ始めた。
台風は目の前に迫りつつある。
「んじゃ、腹くくるか」
「おう。それが使い魔ってもんだろ?」
完二の手にした剣が語りかける。
その肩に手が置かれる
「ま、先輩も手伝ってやっからさ」
「センパイ……!」
「おい、タバサ。危ないからお前だけでも離れてろ」
タバサは首肯せずに首を振ると「ここにいる」と呟いた。
おいおい。と陽介は苦笑した。退けない理由が増えてしまった、という風に。
主の前に壁のように立ちふさがった完二と陽介を氷の嵐が襲う。
完二はデルフリンガーで魔法を吸収するが、すべて防ぎきれるはずもなく体中に切り傷が出来ていく。
陽介は風属性の攻撃を一切受けないが、嵐は鋭い水を含みそれが陽介の体に傷を作っていく。
だが、二人とも負ける気はしなかった。彼らの背後で唱えられるルイズの呪文が彼らに勇気を与えていた。
嵐の渦中にあり、聞こえるはずもないだが、感じるのだ。自分たちを鼓舞する魔法を。
二人の胸にあるルーンが強く輝く。
なぜ自分が魔法を使えるようになったのか自分ではわからない。
どうして自分が虚無の魔法を使えるようになったのかはわからない。
ただ自分には主君を、友を救う力があるとわかったのだ。ならばその力を使うことに逡巡はいらない。
自分のことを信頼して完二と陽介、それにデルフリンガーも自然災害に等しい巨大な台風を防いでいる。タバサが隣にいるのだって自分を信頼しているからだろう。
だったらその信頼に応えるしかない。
ゼロと言われた自分を信じてくれる人たちを裏切れない。
ルイズの中で生まれ、そして発露を求める力が杖先から放たれる。
ルイズはあらゆる魔法を打ち消す虚無の魔法『ディスペル・マジック』を唱えた。それは王家のヘキサゴン・スペルも、水の精霊の力さえも打ち消す。
嵐は去って、悪夢は終わりを告げた。
精神力を使い果たして気を失っていたアンリエッタが目を覚ますと彼女の周りには多くの人がいた。
ルイズとその使い魔そしてその友人、またヒッポグリフ隊の隊員たち。
アンリエッタは、ヒッポグリフ隊は自分の前で殺されたものと思っていたので驚愕し、そして安堵した。
クマがいなければ、本当に全員が死んでいたかもしれない。
クマはメディアラハン、サマリカームといった使える最高の回復魔法を駆使して死の世界へと膝まで浸かっていた人たちを助けたのだ。
それでも数人手遅れで助けられなかった者もいたが、今回の最大の功労者はクマと言ってもいい。
アンリエッタは身を起こした。傍らにはウェールズの冷たいなきがらが横たわっていた。
ウェールズから視線を離し、自分を囲んでいる人たちを見る。誰も怒ってはいなかった。
その目に同情をたたえている者すらいたぐらいだ。そのことがかえってアンリエッタのしでかしたことの重大さに気付かされる。
どうしようもなく生者から視線を逸らし、傍らの死者を見た。自分の隣に横たわっていたのはウェールズの死体だ。
ついさっきまで動いていたものが、今は目を閉じ静かに横たわっている。
その姿はまるで死体のよう、いや事実としてやはり死体であるのだろう。
「ウェールズさま……」
アンリエッタはそっとウェールズの頬に手を当てた。
その時信じられないことが起こった。ウェールズの目が開いたのだ。
「……アンリエッタ?きみか?」
弱々しい声だったが、恋人は聞き違えるはずもないウェールズの声だった。
「ウェールズさま……」
間違えようもない。偽りの生命を与えられた操り人形ではない。本物のウェールズだった。
「なんということでしょう。おお、どれだけこの時を待ち望んだことか……」
ウェールズはニューカッスル城で戦死し、アンドバリの指輪で偽りの生命を与えられた。
そしてそれをディスペル・マジックで消滅させられたのだから、彼はただ物言わぬ死体になるしかないはずであった。
だが、死者は甦らないという法則は反転し、ウェールズは息を吹き返した。
息を吹き返すと同時にウェールズの服がところどころ赤くなっていった。血が流れ生きている証拠であり、そしてそれが長く続かないという証拠だ。
「く、クマが治すクマ」
クマが急いで治療しようとするが、それをウェールズは制した。
「無駄だよ、クマくん……。一度死んだ肉体は、二度と甦りはしない。ぼくはちょっと、ほんのちょっと帰ってきただけなんだろう。
もしかすると水の精霊が気まぐれを起こしてくれたのかもしれないね」
恋人以外にかけられた言葉は最初だけで、後は全て恋人に向けたものだった。
「ウェールズさま……」
「二人で、全てを捨てられたら。もしきみと二人、小さな家で過ごすことが出来たら……ずっとそう思ってきた……。アンリエッタ、誓ってくれ」
「なんなりと誓いますわ。なにを誓えばいいのですか?」
アンリエッタは必死だった。死へと還る恋人の願いをかなえるために。
「ぼくを忘れると。忘れて、他の男を愛すると誓ってくれ。その言葉が聞きたい。水の精霊ではなく、ぼくに誓って欲しい」
「無理を言わないで。そんなこと誓えないわ。嘘を誓えるわけがないじゃない」
アンリエッタの肩は震える。
「お願いだアンリエッタ。じゃないと、ぼくの魂は永劫にさまようだろう」
アンリエッタは子供のように嫌だと首を振る。
「時間がないんだ。もう、もう時間がない。ぼくはもう……、だからお願いだ……」
「だったら、誓ってくださいまし、わたくしを愛すると誓ってくださいまし。わたくしに誓ってください。
それを誓ってくだされば、わたくしも誓いますわ」
「誓うよ」
アンリエッタは悲しいげな顔で誓いの言葉を口にした。
「……誓います。ウェールズさまを忘れることを。そして他の誰かを愛することを」
ウェールズは満足そうに頷いた。
「次はウェールズさまの番です。誓ってください。……ウェールズさま?」
ウェールズはすでに事切れていた。目をつぶったその顔はたしかに微笑んでいる。
アンリエッタは過去の記憶を思い出す。14歳の短い間、ウェールズと過ごした記憶。
双月を映す美しいラグドリアン湖での思い出を。
瞳に月明かりに照らされた湖が、二人過ごした記憶が焼きついているようだ。
「意地悪な人」
今、開かれたその瞳はただ一人を映しこんでいる。
「最後まで、誓いの言葉を口にしないんだから」
目を閉じると、瞳の中から横たわったウェールズの姿は消える。
一筋の涙がアンリエッタの頬を流れた。
アルビオン大陸の端にある港町ロサイスにはレコン・キスタの、いや、もはやアルビオンの正当な政府の指導者たちと軍事力が結集していた。
アルビオン新政府は現在、トリステイン・ゲルマニアと一触即発の状態にある。トリステインとゲルマニアは軍事同盟を組み、アルビオンに対抗しようとしている。
戦力がロサイスに結集しているのは先制攻撃をしかけるためである。しかし、軍事的目的とは別に隠された目的がある。
アルビオンは外交的に孤立している。それは他国だけでなくアルビオン国内でもそう思っているものがほとんどであろう。
ハルケギニアの3つの大国のうち二つはアルビオンへの敵意を隠さず軍事同盟を結び、最後の一つガリアは同盟側寄りの中立を保っている。
それが現在、ハルケギニアでの一般的な認識だ。
だが事実はそうではない。ガリアはアルビオンと手を結ぶため水面下の交渉を進めていたのだ。
そしてロサイスに軍事力だけでなく指導者たちも勢ぞろいしたのはこの日をもってガリア、アルビオン間で同盟を結ぶためである。
空中戦力で圧倒的優位にあるアルビオン、そしてハルケギニア一の国力を持つガリアが同盟を結べばハルケギニア最大の勢力となる。
国内勢力がつばぜり合いを広げ意思統一に欠けるゲルマニア、そして小国トリステインの同盟など問題にならない。
そういうわけでその指導者たちは楽観的な気分になっていたが、一人だけ険しい顔をしているものがいた。
最高指導者であるアルビオン皇帝クロムウェルだ。
今朝、彼はウェールズ皇太子が水のルビーを奪還するのを失敗したのを知ったのだ。しかもアンリエッタ姫をさらうことさえ失敗したという。
王家に伝わるルビーはガリアと同盟するのに必要なものだ。ガリア王ジョゼフがそれを強く求めているからだ。
もしアンリエッタ姫だけでも誘拐できていればルビーとの交換をトリステイン政府と交渉できたであろう。
結果としては何も得ず、いくらでも使い道のあったウェールズ皇太子というカードを失ってしまっただけであった。
「ガリア艦隊がやってきました」
兵がクロムウェルに伝える。結局どうやって、ガリア王に取り繕うか考えぬまま、時間はやって来た。
しょうがない。と彼は腹をくくり発令所に登った。そこには他の有力な人物たちが並んでいた。
彼らは全員その壮観をなす艦隊が自らの力になると喜んでいるようだった。しかしやってくる艦隊を見て彼らは一つ共通してある感想を持った。
艦隊の数が多すぎではないか。
それが明確な疑念となる前に艦隊の砲撃は赤レンガの発令所を襲った。歓声は悲鳴に変わり、そして崩壊の音が響き渡る。
ガリア軍は電撃的奇襲をかけ、アルビオン反乱軍主力を粉砕。反乱軍を鎮圧した。
それが翌日のガリア政府の発表であった。
投下少量!しつれいかみまみた。
投下終了!
他の人の見てたら「自分のちょっと展開速すぎないかな、日常パート少ないかな?」
って思ったりすることもありますが、今さら修正も効かないのでこのまま突っ走ります
話は変わってサブタイの話です。
12章のサブタイは恋愛でしたけど、書く前は「恋愛は絶対シエスタのパートだな」
とわりと強く思っていて、現在の隠者というかお風呂イベントがそれに当たるはずだったんですが、
この間言ったように新しい話を作ったりサブタイを変更する際に惚れ薬回の方が相応しいな。というわけで変更になりました。
まあ、そんなたいして意味のない裏話
朝からの投下、乙でした。
あらかじめ決められた話数に合わせて話を書くのは大変だと思いますが、
作風としてはアリじゃないでしょうか。
かの紅い光弾もそのクチだそうですし。
投下乙
問題が無ければ15:30頃から使い魔は四代目 第九話 投下開始します。
とはいえ、忍法帖の関係で途中から避難所に投下する羽目になるかも…
537 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:32:00.31 ID:lxFoIsZ2
教室中に響き渡る爆音を伴って机ごと石ころは消し飛んだ。その爆風をまともに受けて、シュヴルーズとルイズは黒板に叩きつけられる。
驚いた使い魔達が騒ぎ出し、教室は最早収拾のつかない騒ぎに飲まれた。使い魔の中にはガラスを破り外へと逃げ出したものさえいた。
「ううむ、これはひどい」
余りの混乱振りに呟いたリュオに、
「…だから止めて下さいと頼みましたのに…恨みますわよ」
机の下から這い出してきたキュルケが愚痴った。
「はっはっは、すまんのぉ。確かにこれではたまらんわな。…しかし、ルイズが魔法を使おうとすると、必ずこうなるのじゃな?他にこんな失敗をする者は?」
「おりませんわ。ルイズだけです」
「そうか。そうじゃろうなぁ。わしもそんな例は知らぬしなぁ。うぅん。しかし妙な話じゃが…大丈夫かな?」
などと話している内に、ルイズが立ち上がった。あれだけの爆発が起きたにもかかわらず、煤塗れになってはいるものの、傷一つない。
ただし、服はそうも行かなかったようであちこち裂けたり破れたりしていた。
ルイズはそれを気にした様でもなく、取り出したハンカチで煤を拭きながら
、
「ちょっと失敗みたいね」
と、言ってのけたのであった。
…大した心臓じゃなぁ、とある意味リュオが感心したが、他の生徒達にしてみればたまったものではない。当然、非難が巻き起こる。
「ちょっとどころじゃないだろ!ルイズ!」
「ラッキーが、俺のラッキーが、喰われた!」
「もうちょっとだけ続くんじゃ、のちょっとですね、わかります」
ほぼ全員から集中砲火を受けるルイズを見て、
「…これもいつもの事なのかな?」
「ええ、爆発の後の毎度の事ですわね」
「まぁ、あんな態度では散々言われるのも仕方ないわなぁ。そこら辺の事が解らぬ馬鹿ではないはずなんじゃが。…しかしまぁ、このままというわけにもいかんか…」
そう言うと、リュオは立ち上がり、教壇があった場所へと赴きルイズと並び立った。自然と教室中の視線が集中する。その視線を意識しつつ、リュオは口を開いた。
538 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:36:20.29 ID:lxFoIsZ2
「その辺にしておくんじゃな。お主等が怒るのも無理はないが、まずは未だに倒れてるこの…えーと、シュヴルーズじゃったか?心配してやらんかい。
…あー、こりゃいかんな。これといった怪我はないようじゃが気絶しとる。
医務室へ運んで一応見てもらうようにした方が良いじゃろうな。生憎とわしじゃどこかわからんので誰かに頼むしかないが…あー、済まんがキュルケや、頼んでも良いかな?」
その要請に、キュルケが礼をしたのを確認すると、リュオは小さく頷くと、ルイズに向き直り、言葉を続けた。
「さて、ルイズ。教師や学友に迷惑を掛けているんじゃ。謝罪もせんと何を取り繕っておるか。
本来はおぬしが真っ先に動かなきゃならん所じゃろうに」
リュオのその言葉に、ルイズは
「…た、確かにそうだけど……あ、あの、そ、その…」
と言ったきり、しばらく黙り込んでいたが、やがて真っ赤な顔でおずおずと
「み、みんな…ご、御免なさい…」
とだけ言って頭を下げた。その姿に、教室がざわめく。
「おいおい、あのルイズが素直に謝ったぜ!」
「し、信じられねぇ、明日は雨だ、いや雪だ」
なお、全くの余談であるが、マリコルヌがルイズの真っ赤になってモジモジするその姿を見て
…いい…いや、いいなんてもんじゃない、ルイズ可愛いよ可愛いよルイズ僕は何て愚かだったんだ何で今まで君のその輝きに気付かなかったんだ
ああ審美眼たったの5ゴミだモジモジしているルイズマジ最高!ああ罵ったり罵られたりしてぇ!
と、余計な何かに開眼していた。
変態はともかくとして、教室の反応を見たリュオは、溜息を一つつくと、
「やれやれ…ルイズよ。キュルケから聞いたぞい。今までずっとさっきの様な対応をしておったようじゃないか。過ちは素直に認めて次に活かす様にしないと碌なもんにはなれんぞ?」
と、声を掛けた、そこへ更に、シュヴルーズを医務室へと運ぶべくレビテーションを掛けていたキュルケが口を挟む。
「全くよね〜 ま、素直に謝るルイズなんて珍しいものを見られたから、貸しは無しにしといてあげるわ。感謝してよね」
「ちょっと、キュルケ!」
「止めんかルイズ。それよりキュルケと一緒に医務室へ行って来るんじゃ。シュヴルーズが目を覚ましたらこの事での処遇を仰ぐように。
それまでルイズは戻ってくるでないぞ。ああそれと、処遇を仰ぐより真っ先にやることがあるが、勿論何をするかは分かっておるな?」
「う…ミス・シュヴルーズに、謝罪、します…」
「よろしい。ではさっさと行かんかい」
キュルケとルイズ、それに気絶したままレビテーションで運ばれていったシュヴルーズが出て行った後、リュオはまだ騒がしい教室を静めるかのように言った。
539 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:39:39.04 ID:lxFoIsZ2
「あー、色々至らぬご主人じゃが、わしも余り馬鹿な事はさせない様にするから、今日のところはこれぐらいで勘弁してやってくれい。
それに…ルイズを侮辱するということはルイズを認めたわしへの侮辱でもあると言う事を忘れんようにな。
さて、そういえば喰われた使い魔がいたはずじゃな?まだ間に合うかもしれん。急いで吐き出させるんじゃ。
…出たか?傷の具合はどうじゃ?ふむ。かなり酷いか。ならこっちへ持ってくるんじゃ
…と、他に手痛い傷を負った使い魔はおるかな?いたらこっちに持ってくるんじゃ。あー、掠り傷ぐらいならお断りじゃからな。持って来るでないぞ」
その言葉に弾かれた様に顔面蒼白の少年が、ボロボロになったカラスを抱えて真っ先に駆け込んできた。
ついで爆発でパニックになり、ガラスに突っ込んだ血まみれの猫、フレイムの吐いた炎に巻き込まれたフクロウも持ち込まれた。
リュオは、その三匹を被害を受けなかった机の上に並べた。真っ先に駆け込んできた少年が心配そうに尋ねる。
「た、助けてくれるのか、ラッキーを?」
「ま、傷次第じゃがな.。おお、派手に齧られたのぉ…どれ、ちとこの傷程度には勿体無いが…ベホマラーっと」
瞬時にラッキーを始めとして、並べられた三匹全ての傷が一瞬で癒える。その様子を見ていた者は一様に、―水魔法の使い手は特に―驚愕した。
傷自体を癒すことは水系統の使い手なら出来ただろう。だが、傷の直りの早さ、それに、その呪文の発動の早さが、そして、三匹同時にやったと言う事が異常なのだ。
いや、そもそも呪文の詠唱すらしていない。一言呟いただけではないか?
その事に教室内が再びざわめく。
「本当に直ってるのか?見せ掛けだけじゃないのか?」
「馬鹿、だったら主人がわからないわけないだろ」
「ってか凄腕ってレベルじゃねーぞ」
などと、ベホマラーは生徒達に強烈な印象を残したのだった。タバサにしても例外ではなかった。
始めて見る規格外といっていいほどの強力な癒しの魔法。彼女にとって、それは今、一番に必要とするものだからだ。
しかし、今のは怪我を治した呪文。果たして通用するかどうか…
と、考えているところに、クラス一の気障男、ギーシュとその(一応)恋人、モンモランシーとの会話が耳に入ってきた。
「…モンモランシー、今のあれは、水魔法かい?」
「違うわね。水の力は感じなかったわ…信じられない、あの様子じゃ、結構な深手だったようなのにそれを、瞬時に…、秘薬も使わず、それも複数?」
「…今の話、本当?」
「え?急に何だい?ミス・タバサ」
「水の力は、感じないと言った」
「ああ。その事ね。あれは…そうね、少なくとも水魔法ではないわ。でも、水系統でない治癒の魔法って…秘薬を使ったわけでもないし…」
思案するモンモランシーを見て、同様にタバサも思案していた。
やはり今のは水魔法ではないらしい。そうでないかとは思っていたが、水系統の使い手であるモンモランシーが言うのだから間違いは無いだろう。
水魔法でない癒しの魔法。それならば、あるいは、母は…?
なんにせよ、今のままでは何とも言えない。確認が必要だ。そう結論付けて、タバサは歩き出した。
「…うむ、効いたな。これで怪我は完治したはずじゃ。とはいえ、今のでかなりショックを受けているようじゃから今日一日はそっとしておくんじゃな」
「あ、ありがとう。助かったよ」
「うむ。しかし、野生やただのペットならともかく、使い魔にしたんじゃからああいう事が起きても動じさせる事の無い様に精進せんといかんぞ」
「あっさりと難しい事を言うなぁ…まぁ、努力するよ」
傷を治した使い魔を主人に引き渡しつつ、
明らかにおかしい。人が爆風で吹き飛ばされるほどの規模の爆発が起きたことを考えれば、術者であるルイズはともかく、間近にいたシュヴルーズに何ら外傷がないのは変だ。
…人体には作用しない対物専用の爆発を起こす呪文…とか?そんな都合の良い呪文、わしだって知らんぞ…
等とリュオは考えていたが、袖を引かれ我に返る。脇にはタバサがいた。
四縁
541 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:41:50.39 ID:lxFoIsZ2
「ん?タバサか?何かな?」
「今の魔法」
「ベホマラーがどうかしたか?」
「凄かった。あんな魔法は見たことがない。水魔法ではないらしいけど、リュオ様は…癒しの魔法が専門?」
「いやいや、そんなことはないぞ。一応使える、という程度じゃ。苦手というわけではないが、得意でもない。
ま、魔力の量がそこらの人間とは違うから多少得意、ぐらいの連中には劣らぬとは思うがな。それがどうかしたかな?」
「…そう…」
リュオの返答に、タバサは明らかに肩を落としていた。その様子を見て、どうやらワケありだ、とリュオは判断した。
話の流れから推し量れば癒しの魔法を必要とする事情がある、というところだろう。
こちらの世界にも癒しの魔法はあるだろうから、それが効かない…余程の重症か、或いは特殊な傷や病か。
そして、シルフィードの話と考え合わせれば、率直に助けを求められない事情がある。恐らくは、ここで偽名を使っている事と無関係ではないのだろう。
あの時は詳しい話を聞く前にタバサが割って入ってきたから、込み入った事情は良く分からないが。
「ふむ…そういう事を聞くという事は何かで癒しの力が必要なのかな?先程言った通り、苦手ではないが得意でもない。
だから、役に立つとも立てないとも言えんな。詳しい事もわからんしな」
「そう…」
タバサは、少し逡巡したが、この場はそれ以上は何も言わない事にした。
リュオの言葉通りなら、残念ながら無駄足に終わる可能性もありそうだし、大体、竜族の王に動いてもらうとなれば、無償というわけにも行くまい。
相応の礼が必要だろう。生憎、今の自分ではそれを用意する方法も、そもそも何を用意したら良いかも分からない。やはり、今しばらくは自分だけで何とかしないといけないだろう。
とはいえ、結局はリュオに頼る事になるかもしれない、そんな漠然とした予感をタバサは抱いたのであった。
542 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:43:33.27 ID:lxFoIsZ2
さて、それから少したった頃である。ロングビルは宝物庫の前で思案していた。彼女が考えていたのはただ一つ。いかにしてこの宝物庫に侵入するか、という事であった。
扉を護る巨大な錠前にアンロックを掛けてみたが、これは予想通りに通用しなかった。ならば、と鉄の扉に向かって錬金をしてみたが、これも無駄であった。
どうやらスクウェアクラスのメイジが固定化を掛けた様である。そうなると、魔法でこの扉をどうにかすることは諦めるよりないだろう。
では他にどんな手があるか…、等と扉を見つめつつ色々検討していると、こちらに近付いてくる足音が聞こえた。
ロングビルは表情一つ変えずにさりげなく、しかし素早くポケットに杖を折りたたみしまい込んだ。
その動作には、焦りといったものは微塵も見受けられなかった。やがて、足音の主…コルベールが現れた。
「…おや、これはミス・ロングビル。こんなところでどうかしましたか?」
間の抜けた声で尋ねたコルベールにロングビルはにこやかに宝物庫の目録を依頼されているのだ、と答えた。
「はぁ、それは大変だ。見て回るだけでも一日がかりでしょう。様々なお宝とガラクタが碌に整理もされず並べてあるだけですからなぁ。
しかし、オールド・オスマンは鍵を渡さなかったのですかな?」
「…はぁ、それがご就寝中でして…まぁ、急ぎの仕事ではないし、偶々ここを通りかかったのでその事を思い出していただけですから」
「そうですか…確かにあのジジイ…いや、オスマンは一度寝ると起きませんからなぁ。
いやしかし、学院長は普段が普段ですからつい邪推を…いやいや、つまらぬ事を言ってしまいました。
それより、どうせ目録作りは出来ないのでしょう?でしたら、どうです。一緒に昼食など?」
余談ではあるが、コルベールの言う「邪推」とは、鍵が無い事で、宝物庫入り口で途方に暮れているロングビルをモートソグニルに(主に下から)観察させたいだけなのでは?という疑問であった。
仮にも学院長に対する尊敬も信頼もない思考であるが、普段のオスマンの言動から付き合わせれば有り得ない可能性ではないだけに、これは完全にオスマンの自業自得であった。
それはともかく、ロングビルは、少し考えるとこの誘いに乗る事にした。
「ええ、ご一緒させてもらいますわ」
「いや、そうですか。では早速食堂に向かうとしましょう。今日のメニューは平目の香草包みですが…おや?」
あっさり同意を得られて、うきうきと食堂に向かおうとしたコルベールは、反対側から歩いてきたリュオを見て立ち止まった。
543 :
使い魔は四代目:2011/07/01(金) 15:45:08.25 ID:lxFoIsZ2
「リュオ様、こんなところでどうしました。それに、ミス・ヴァリエールはご一緒ではないのですか?」
「ほう、コルベールに…ロングビルじゃったな。ルイズはほれ、先の授業で爆発を起こして派手に教室を…な」
「ああ、なるほど…またですか…」
とコルベールは困った顔で頷いて、頭を掻いた。
「大体分かったようじゃな…それで通じるのが何ともいえんところじゃが。まぁ、それはともかく今、シュヴルーズに罰として教室の片付けを命じられておる。
で、わしは昼も近いし、食堂に向かうついでに散歩中じゃ」
「…よろしいのですか?手伝わなくて?」
「素直に頼めば手伝ってやらんこともなかったがな。どうするの?などと小賢しい聞き方をしてきたから一人でやれ、と断ってやった」
「ははは、これは中々手厳しいですな」
「しかしお主等こんな所で何をしておったのかな。もしや密会の邪魔をしてしまったかな?」
その言葉に、コルベールは瞬時に真っ赤になり、ロングビルはにこやかに微笑んでいるだけだった。
「かかか、からかわないで下さいリュオ様。私はただ、ミス・ロングビルが困っていた所に遭遇しただけでして」
「ええ、まぁ、ミスタ・コルベールには説明しましたけれど、宝物庫の目録を作るよう頼まれてはいるのですが、鍵が掛かっていて…
オールド・オスマンに借りようにも今は寝てまして。まぁ、急ぎの仕事でなし、別に今でなくても構わないのですけどね」
「そういう事ですぞ。どうせ仕事にならないなら、と昼食に誘った次第でして」
「何じゃ、ここは宝物庫か?…解錠の呪文では駄目なのか?」
「ええ、ご覧の通り、場所柄厳重に施錠されてますもの。並大抵のメイジでは開ける事は出来ませんわ」
そう言いながら、同意を求めるようにロングビルはコルベールを見た。若干照れながら、コルベールが続ける。
「全くその通りですな。勿論私も無理でして…多分、この学院内でこの鍵を魔法で空けられるのはオスマンぐらいではないでしょうか」
その言葉を聞いて、リュオは思いついた事があった。どうやらかなり強力な鍵らしいが、だからこそ、あれを試すのには丁度良い。
「…ふむ。ちょっと試してみるには良いかな?…この鍵じゃな…
金の鍵、銀の鍵、銅の鍵。七つの鍵の力を借りて申す。我が前の空間と、背後の空間を隔てる一枚の扉よ、その秘密の封印を解いて二つの空間を一つにしたまえ。アバカム」
リュオの唱えたアバカムの効力により巨大な錠前はあっさりと解錠され、床に落ちた。それを見て、コルベールとロングビルの顔が驚愕に彩られる。
「…うむ、アバカムも問題なく作用するか…どうやら呪文は基本的にそのまま使えると思って問題無さそうじゃな。
ああ、そんな顔をするでない。元々重罪人の監獄だろうが王宮の宝物庫だろうがお構いなしで解錠してしまうちと困った呪文じゃ。
この鍵に問題があるわけではないぞ…っと、これで良し」
そういいながらリュオは再び落ちていた錠前を施錠した。それを見て、ロングビルが
「あ、あの、リュオ様、折角開けたのですから、目録作りを片付けたかったのですが…」
と、控えめに抗議したが、
「仕事熱心なのは良いが、急ぎの仕事でないと言ったばかりではないか。どうせすぐに終わるような仕事でなし、後からでも充分じゃろ?」
と、リュオは全く取り合わなかった。
「そうですぞ、ミス・ロングビル。いやしかし、流石はリュオ殿ですな。こうもあっさりと解錠するとは」
「いやいや、この場合はわしの腕というよりも呪文が強力なだけじゃて。さて、時間も頃合じゃし、食堂に向かおうじゃないか?」
こうなってはロングビルも折れるしかなかった。折角扉が開かれたのに!…と、内心歯軋りしながら二人の後に続くロングビルであった。
以上で使い魔は四代目 第九話 は終了です。微妙にマチ姐さん涙目の回ですね。
なお、作中に出てくるアバカムの呪文はゲームブック準拠のものであって、作者のオリ設定というわけではありません。
支援
投下乙
マチルダちゃんは涙目なくらいが丁度いいんじゃないかな!
規格外召喚物では大抵最初の「敵」としてギーシュに並んでとんでもない目に遭うし・・・
乙ですー
最近投下が多くて嬉しい
解錠の呪文か…
封印されたる二本の軸よ
ゴーレム皮なる一つの錠よ
クアガの鷹揚、フォーガの矜持
かけて命じる、いざ開門
壊錠の呪文なら
ザーザード・ザーザード・スクローノー・ローノスーク (ry
>>548 バスタードならそのものずばりがあるだろ
ブロン・ドーブ・セシオン メイス(解錠)
開けゴマ!と聞いて
ゲームブックのドラクエ2ですね。
お疲れ様です
乙でした。
鍵の物理破壊に踏み切らないおマチさんマジ淑女。
open sesameの言葉とともに扉がこじあけられて吸血鬼が現れるわけですねわかります。
>>550 「おろかな人間め、扉を見たらそればっかり唱えおって。覚悟するがいい、このハズレ大魔王がそなたの首を……」
原作終了記念で、華と修羅からほっこり兄さんを召喚というのはどうだろう。
今から投下します。
5日連続投下って新記録じゃないかしら?
星 意味…希望・失望
アンリエッタ姫誘拐事件から一日経ちそして迎えた朝、ルイズたちはトリスタニアからトリステイン魔法学院への帰路についた。
それはつまり丸一日、王城に居たことを意味する。
アンリエッタの帰還をヒッポグリフ隊と共に護衛したのだが、城についてからが大変だった。
ルイズたち3人の魔法使いと3人の使い魔は事情聴取を長々とされた。
その後、前日の夕方から魔法学院を出たため一睡もしていなかった6人は睡眠をいざ貪らんと幾つかの部屋を借りて寝たのだが、その至福のときは長くつづかなかった。
突然起こされたかと思うと6人一まとめでアンリエッタの恩人、つまるところトリステインの英雄だと自分たちを讃えるお偉方に代わる代わる会わされ、似通った感謝の言葉を聞かされた。
それから高官たちの言うささやかなパーティーを終えた後、彼らはもう何者にも邪魔されないという固い決意のもと床に就いたのだった。
ルイズたちが急ぐように城を去ったのはそういう面倒に巻き込まれないようにだ。ただ気にかかったのはルイズたちをあっさりと帰したことだった。
もちろん、早く返してくれるにこしたことはないが、前日の嬉しくもない厚遇から考えると、おやと思ってしまう。
形式ばったトリステインの貴族にしてはあっさりしすぎている。なにか自分たちに構って入られないような事件が起こったのかもしれない。とはキュルケの弁である。
たしかに昨日の午後から徐々に城内に妙な動揺が走っているような気を感じないものが6人の中にいないでもなかった。
王宮内で流れていた情報、噂がなにであったかは学院に戻って数時間ほど経った時、はっきりとわかった。
無数の貴族たちの子供たちが言うことには微細な違いこそあれ、根本的には同じ内容だった。
それはガリア艦隊がアルビオン主力を撃滅し、アルビオン新政府が倒れたということだ。
学院のほとんどの生徒は事態の急展開に理解が追いついていないように見えた。だが時間が経つにつれ彼らの戸惑いは喜びに変わっていった。
忌まわしい共和主義は倒れた。そしてトリステインは戦争の恐怖から解放されたのだった。
その夜はお祭り騒ぎの宴会となった。キュルケは、これだからトリステインの貴族は。と言っていたが、かといって参加しないわけでもなかった。
騒ぎの中、情報は酒気を帯びた舌の上になり、枝が広がるようにその種類を増やしていった。
ガリアがアルビオンを奇襲できたのは裏で繋がっていたからだ。など外交的な噂もあれば、ガリアには秘密兵器があってそれがアルビオン軍を圧倒したのだという噂もあった。
4メイルもの槍を振るう戦士がいたとか、巨大な竜をつれていたとか、高速で動くゴーレムがいたとか、果ては虚無の魔法使いがいたという。
いったいそれらの噂のうちいったいどれほどが、朱筆で丸をもらえるものであろうか。
星 意味…希望・失望
アンリエッタ姫誘拐事件から一日経ちそして迎えた朝、ルイズたちはトリスタニアからトリステイン魔法学院への帰路についた。
それはつまり丸一日、王城に居たことを意味する。
アンリエッタの帰還をヒッポグリフ隊と共に護衛したのだが、城についてからが大変だった。
ルイズたち3人の魔法使いと3人の使い魔は事情聴取を長々とされた。
その後、前日の夕方から魔法学院を出たため一睡もしていなかった6人は睡眠をいざ貪らんと幾つかの部屋を借りて寝たのだが、その至福のときは長くつづかなかった。
突然起こされたかと思うと6人一まとめでアンリエッタの恩人、つまるところトリステインの英雄だと自分たちを讃えるお偉方に代わる代わる会わされ、似通った感謝の言葉を聞かされた。
それから高官たちの言うささやかなパーティーを終えた後、彼らはもう何者にも邪魔されないという固い決意のもと床に就いたのだった。
ルイズたちが急ぐように城を去ったのはそういう面倒に巻き込まれないようにだ。ただ気にかかったのはルイズたちをあっさりと帰したことだった。
もちろん、早く返してくれるにこしたことはないが、前日の嬉しくもない厚遇から考えると、おやと思ってしまう。
形式ばったトリステインの貴族にしてはあっさりしすぎている。なにか自分たちに構って入られないような事件が起こったのかもしれない。とはキュルケの弁である。
たしかに昨日の午後から徐々に城内に妙な動揺が走っているような気を感じないものが6人の中にいないでもなかった。
王宮内で流れていた情報、噂がなにであったかは学院に戻って数時間ほど経った時、はっきりとわかった。
無数の貴族たちの子供たちが言うことには微細な違いこそあれ、根本的には同じ内容だった。
それはガリア艦隊がアルビオン主力を撃滅し、アルビオン新政府が倒れたということだ。
学院のほとんどの生徒は事態の急展開に理解が追いついていないように見えた。だが時間が経つにつれ彼らの戸惑いは喜びに変わっていった。
忌まわしい共和主義は倒れた。そしてトリステインは戦争の恐怖から解放されたのだった。
その夜はお祭り騒ぎの宴会となった。キュルケは、これだからトリステインの貴族は。と言っていたが、かといって参加しないわけでもなかった。
騒ぎの中、情報は酒気を帯びた舌の上になり、枝が広がるようにその種類を増やしていった。
ガリアがアルビオンを奇襲できたのは裏で繋がっていたからだ。など外交的な噂もあれば、ガリアには秘密兵器があってそれがアルビオン軍を圧倒したのだという噂もあった。
4メイルもの槍を振るう戦士がいたとか、巨大な竜をつれていたとか、高速で動くゴーレムがいたとか、果ては虚無の魔法使いがいたという。
いったいそれらの噂のうちいったいどれほどが、朱筆で丸をもらえるものであろうか。
食堂でどんちゃん騒ぎが起きているとき、タバサは自室で読書に励んでいた。
いつもよりいくらか多い量の食事を摂ってからすぐに部屋に戻ったのだ。
ご馳走は好きだが、お祭り騒ぎはそれほど好きでもない。
昨日トリステインの王城でパーティーじみたものに参加させられた後だからなおさらだ。
彼女が一つの本を読み終えたころ、窓辺に何かが下りたった。それはふくろうのようだが、一見すると小さく作り物であることがわかる。
タバサは窓辺に近づいて手に取った。そしてそれを半ばから折った。すると中から手紙が出てくる。
それはガリアの通信手段の一つだった。タバサに用件があるとき、たまにこうして指令を送りつける。
タバサの眉が不審げに上がった。それはイザベラからではなく、ガリア王ジョゼフからの手紙だったからだ。
彼女の父を殺し、母を狂わせた張本人である。人目がないだけにタバサは無表情に近いながらも不快感を示す。
そしてその指令を読み進めるにつれ動揺は大きくなった。
しかし手紙を読み終わるころにはタバサの顔から表情は消えていた。いつもの無表情ではない。
シュヴァリエ・ド・ノールパルテル
それは“北 花壇 騎士”7号、雪風のタバサの顔であった。
タバサと同様にバカ騒ぎに参加せずにさっさと部屋に戻った者は学院内に何人かいた。ルイズ・フランソワーズもその一人であった。
彼女は机に肘をついて、机に置いた始祖の祈祷書をボンヤリと見ている。
ウェールズを忌まわしき魔法から、そして敬愛する姫君を悪夢から解放するために彼女は魔法を使った。
あの時、自分の行動に疑問など生じなかった。
ただ自分にはそれをすべきだという確信があり、それが出来るかどうか、なぜ出来るのかなどまるで疑問に感じなかった。
目をつぶり、ディスペル・マジックを使ったときの感触を思い出す。古代のルーンを呟くたびに体の中を何かしらの波長が巡る。
体の中で、何かが生まれ、行き先を求めて回転していくよう。それが自分の系統を唱えるものが体感するものだという。
自分の系統は虚無なのだろうか。ゼロと蔑まれてきた自分の本当の力なのであろうか。
嬉しくないわけではない。あえて言う必要もなく、とても嬉しい。だがそれをどう表現したらいいのかで彼女は戸惑っていた。
虚無という伝説の属性、ほとんどおとぎ話同然の伝説の力を自分は手にしてしまった。
それを簡単に人に教えてもいいものであろうか。秘密にすべき力ではないのか?
現在、彼女の有する唯一の魔法ディスペル・マジックだけならそんな心配は杞憂かもしれない。
類を見ない魔法ではあるが能動的でないのでそこまで強力ではない。しかしルイズは確信していた。あれは虚無の力のほんの一部でしかないことを。
誰にこの秘密を語ればいいのであろう。優しい姉、尊敬する王女などが思い浮かんだが、ルイズが一番強く想起したのは彼女の使い魔であった。
彼を召還した時とは違う。彼女は知ったのだ。怖いのは顔だけで、彼自身は優しい人柄であるということを。
裁縫などという外見に似合わない趣味があることを。
そういえば裁縫を教えてもらっていたのだが姫の婚約の詔を考えるために中止していたのだった。
元々軍事同盟のための婚約であったためアルビオンの反乱軍が瓦解した今だともう婚約は破棄されるかもしれない。
そうなれば姫は望んでいない結婚をする必要もなくなり、そして自分も完二に再び裁縫を教えてもらえるかもしれない。
彼のことを考えると安心する。ガラは悪いし、ご主人様に反抗的な使い魔だが自分を守るといってくれた使い魔だ。
ルイズは完二が帰ってきたら自分の秘密を一番最初に話そうと決めた。
ただ心配なのは彼は話の重大さを理解できるだろうかということだ。
別の世界から来たので知識量が圧倒的に不足しているのは当然だが、それを差し引いても彼は頭の巡りが悪いようにルイズには思えた。それも彼女が知った一面だった。
そうして彼の少し情けない一面を考えるとなんだかおかしくなってくる。戦いとなれば誰よりも頼もしいというのに。そうして微笑んでいると扉が突然ノックされた。
彼女はその時意識を現実に引き戻されて、ゆるんでいた頬を戻す。
「は、入っていいわよ」
なんとかいつもの威厳を保ちながら言えたとルイズは思えた。
だが、扉は開けられずにノックは続けられている。
「もう、なんなのよ」
もしかして鍵かけたかしら。そう思いながらドアノブに手をかける。鍵はかけられておらずあっさりと開いた。
廊下にはタバサが立っていた。
「タバサ?どうしたの?」
ルイズは小柄な自分より小さな青い髪の少女を見た。彼女も今や信用に値する仲間だ。
アルビオンへの任務、アンリエッタ姫の奪還と彼女も命を懸けて自分を助けてくれ、そして信用してくれた。
完二たちが来るまではキュルケの付属品くらいにしか思ってなかったが、今ではそんなふうには思えない。
ルイズの問いかけにも関わらずタバサは黙っている。
もう一度、何か言おうとしたが、ルイズはその前に意識をなくしてしまった。
ルイズに使われた魔法はスリープ・クラウド。眠りの雲にルイズはかけられたのだった。
その日の夜はトリステイン魔法学院ではメイジたちだけではなく平民たちも貴族たちと比べればささやかなものだが、宴会が開かれていた。
ささやかであるのは貴族の子供たちが大騒ぎをするために料理や給仕も動かざるを得ないためである。
なのでそれは魔法使いたちが酩酊したとき、給仕は手を抜き、料理をいくらか頂いて行われた。マルトーが言うには、自分たちで作ったものを自分で食べて何が悪いということだ。
だが出される料理がささやかでも、喧騒は決してささやかなものとはいえなかった。
平民である彼らも、いやむしろ平民である彼らだからこそ戦争がなくなったことが嬉しいのかもしれない。
男の使用人が兵として集められることも、彼らの故郷が戦火で焼かれることも心配する必要がなくなったのだから。
「戦争がなくなってよかったです」
完二の隣りに腰かけたシエスタがしんみりとした様子で言う。
「ほうだな」
完二は食べ物を詰め込んだままの口で答えた。
普段は賄い食ばかりで貴族に出される料理を口にする機会はなかったのだが、今回それを思う存分口にすることが出来るので張り切って食べているのである。
「わたし心配だったんです。戦争が始まったらカンジさんも行っちゃうって……」
「ほが?ほれは……オレはこの世界……じゃなくてここの人間じゃねーから別に戦争に行く必要はねーだろ?」
完二は口に含んだものを嚥下して、言葉を続けた。
彼はこの国どころかこの世界の住民ではないので徴兵される義務も道理もない。
シエスタは首を横に振った。
「カンジさんはそうでもミスヴァリエールは戦争に行くと思います。見栄っ張りだから。そうしたらあなたはきっと付いて行くはずです」
その言葉には確信に近いものが込められている。
「んなこたあねーけどよ……」
完二は否定の言葉を口にするが。しかし思い当たることがあるためその口調は弱い。
バツが悪く、完二は新たに食べ物を口の中に放り込んだ。
そして行儀悪く言った。
「ふぁしかに、ひままでふぉーゆうこともはったな……」
「あったんですか!やっぱり!」
シエスタは見事なリスニングと解読能力を示した。
そしてぐいと完二に寄る。
「カンジさん」
真剣なものを完二はごくりと飲み込んだ。つばではなく食べ物だが。
「な、なんだ?」
「わたしすっごくカンジさんのことをすっごく心配してるんですよ。どうしてかわかりますか?」
完二は今度はごくりとつばを飲んだ。
「……え、ええといったいどういう……」
完二の顔はいくらか赤くなっていた。酒を何杯か飲んだが、それが主たる要因ではないことは明白だった。
シエスタの口が言葉を吐き出そうとしたとき、マルトーの声が飛んだ。
「おい、シエスタ!こいつを貴族の小僧どもに持って行ってやってやれ!」
「あ、はい」
シエスタは、また。と言って手を振った。
完二は安心したような残念なような気分で取り残された。後ろから肩が組まれる。マルトーだ。
「もしかして悪いことしたか?」
内容とは裏腹に悪いことをしたという響きのある声だった。しかし反省しているという様子はなく、面白がっていることだけが感じとれる声だ。
「うっせ」
不機嫌に答えて、仕事をしていない料理長の前で彼の作品を口に運んだ。
ルイズは何をしているんだろう。と完二は脈絡なく考えた。
タバサはガリア王直々の命令であるルイズの誘拐を遂行している途中であった。ルイズを眠らせたのちは彼女をレビテーションで飛ばし、学校を出た。
そして現在、指定された森の中で佇んでいる。そこでルイズを受け取りにあるものが遣わされるという。それが何かは知らないが、そうすれば彼女の任務は終了である。
生死を共にした人物を売るような行為にタバサは心がきしむ思いであったが、彼女にはそうする他なかった。
指令が書かれた手紙は最後には、背けば彼女の母に害を及ぼすとまで書かれていたのだ。
彼女にとって母の命以上に守るべきものはない。彼女は彼女の正義に基づいて行動しているのだった。
タバサが考え込んでいるうちに受け取り人が到着した。彼女は自分に降り注ぐ月光が遮られたことでそれに気付いた。
その姿にタバサも驚愕した。
実はトリスタニアの王城で騒がれていたのはガリアのアルビオン侵攻ではなく、それのことであった。
それとは夜空を飛んだ竜騎士たちの目撃から始まり、そして数十人が目撃したものだ。
彼ら曰く、
「信じられないが、通常の2倍以上の大きさはあろうという火竜が飛んでいたんだ!雲の上を、都の上を!」
「お待たせしました」
給仕が終わり、シエスタが完二の隣りに再び腰かける。そして完二が片目を抑えていることに気付いた。
「どうしたんですか?」
心配そうにシエスタが覗き込んでくる。その姿を完二は見て取れるが、彼の視界にはそれだけではない何かが入りこもうとしていた。
「わり、なんか、酒の飲み過ぎかもしんねえ……」
言い終わる前に鮮明な映像が彼の視界となる。それは木々がたくさんあり、つまり森だ。
暗がりの森を上空から見上げている。そしてその視界の中にはぽつりとタバサが立っていた。
まるで意味のわからない映像だが、完二の危機感は強くなる。
その視界は回転すると―ちょうど首を動かしたようだ―暗がりの中でもはっきりと分かる赤が映し出された。その赤は一枚一枚の鱗からなっている。
「あ、カンジさん!?」
完二は焦燥感に駆られて走り出した。シエスタの言葉にも振り向くことなく走る。
厨房を飛び出て廊下を走りトリステイン学院の外壁を出る。
さきほど見えたものから予想して森のほうに向かってみると、それはすぐに見つかった。
さきほど自分とは違う視界の中でものだ。とてつもなく巨大なドラゴンだった。
まるで高層ビルのような大きさであり、テレビの中でさえこれほど巨大なシャドウはいなかった。
またそれほど大きいのに暗闇に支配された森を見下ろすように飛んでいる。
しかし規格外の怪物だとわかっても完二は恐れることなく走り出した。あそこにルイズがいると理由もなく確信していた。
走っていくとルイズを見つけた。赤い竜の腕、というか前足に握られている。さっきの視界はルイズのものだったと理解する。
ホバリング
そして竜はさきほどは空中停止していたはずだったのが、徐々に移動し、加速している。完二が走っても追いつけないほど速くなってしまうのも時間の問題だ。
ならばそうなる前に叩き落としてしまえばいい。だが電撃魔法はだめだ。ルイズを巻き込んでしまう。物理攻撃なら問題ないだろう。
いや、今の高さから落ちてしまうとどうしようもない。ルイズは飛べないのだ。
だが、受け止めるにしても竜へ近寄ろうとするうちに却って遠くへ飛んで行ってしまうかも知れない。どうすればいい。
焦燥に駆られながらも必死に足を動かして距離を近づけようとしていた完二。
そこで完二は先ほどの視界つまりルイズの視界の中にいた彼女を思い出した。
タバサに任せるのは危険だろうか。いや、あのドラゴンがいつまで自分の攻撃射程に収まっていてくれるかわからない。
そしてあのドラゴンがいつまでルイズの命を奪わないでいるのかも。完二はタバサを信頼することに決めた。
今まで彼女は何度となく旅の危機を機敏に救ってくれた。
「タバサ!!任せたぜ!!」
森の中にいるであろうタバサに伝わるように可能な限り大音声で叫んだ。
見ればいやでも分かってしまうほど強力な魔物。出し惜しみはしない。
「ペルソナ!」
ロクテンマオウが竜よりも赤いその姿を現した。その手を空飛ぶ竜へと突き出した。
胸の辺りから莫大な力が放出され、突き出した腕のほうへと飛んでいく。イノセントタック、最強の物理攻撃である。
ロクテンマオウから放たれた力は並大抵の魔法なら傷を付けられない竜の鱗も皮膚も貫通し、風穴を開けた。
竜は事切れてその手を放す。
竜の手の中で目を覚ましたルイズは空中で自由になりながらも叫び声を上げる以外なにも出来なかった。
支援
ルイズは絶叫しながら落ちていた。タバサがやって来たと思ったらいつの間にか火竜の手の中にいた。
そして自分の使い魔はその40メイルはあろうという火竜を一撃で倒してしまった。その結果自分はフライの呪文も使えないのに存分に空を飛んでいるのだった。
あのバカ、わたしのこと考えてんの!
完二がメイジたちの恐れる火竜より一回り二回り大きい火竜を屠ったことを讃えるより、完二が考えなしに攻撃を放った自分への配慮のなさをルイズは糾弾したかった。
ルイズの高さが木の高さを下回ったとき体に浮力を感じた。
呼吸をはーはーと荒くしながら自分の身が地面に叩きつけられることを回避したことを悟った。
視界の中に身の丈より大きな杖を持った少女が見える。どうやらタバサが助けてくれたようだ。
「おいルイズ!大丈夫か!」
自分を地面と激突する危機から救ってくれた少女への礼よりも、ルイズは自分を高みから突き放した使い魔への文句が口から突いて出た。
「大丈夫なわけないでしょ!!死ぬかと思ったわよ!!」
「わ、わりい……。つってもタバサが助けてくれだろ?」
ルイズはタバサの魔法で浮いたまま、完二を見下ろしている。
「当たり前よ!そうじゃなきゃ今頃死んでるわよ!あんたみたいなバカな使い魔よりタバサのほうがああああああああ!!」
ルイズの体が完二へと飛ぶ。彼女は叫び声を再び上げ、完二は慌てながら彼女を受け止めた。
「何すんだタバサ!?」
「何するのよタバサ!!」
先ほどとは打って変わって主従の意志が一致した発言である。
しかし、その矛先である青髪の少女の姿は消えていた。
二人とも不思議そうにしていたが、完二に抱かれていることに気付いたルイズは急いで下ろすように命じた。
結果としてルイズは重要な事実に気付くことがなかった。
火竜の右手に刻まれたルーンに。
それが彼女の使い魔と似通っていることに。
その夜、陽介とタバサは貴族たちのお祭り騒ぎに参加していたが、途中で二人は密かに会った。
「なにクマか?クマったら女の子の人気の的になってたのに」
「悪りいな、お前にしか頼めない話なんだ」
普段なら適当なツッコミの一つを入れるクマの発言を陽介は流した。そのことからクマは真剣な雰囲気を感じ取る。
「実はお前の力が必要なんだ。タバサのお母さんのために」
「お母さん?お母さんビョーキクマか?」
「病気……ってわけじゃないけど、まあ、そんなとこかもな」
「任せるクマ!クマは最近ルイズちゃんの病気を治したばっかりクマ!株価じょーしょーしてるクマ」
「ルイズが病気?」
クマは端的にルイズが惚れ薬を飲んでしまった際のことを陽介に話してみた。
「やっべ、ちょっと見たかったかも……。ってそうじゃなくて、お前ラグドリアン湖に行ったのか?」
「そークマ。無駄骨、ていうか無駄ボーンになっちゃったけど」
「なんだ近くにいたのか。あいつの実家もあの近くにあるんだ。
わかってたら、あの時すぐにでも……。って言ってもしょうがないな。とりあえず明日一緒に来てくれるか、クマ?」
「もっち」
クマから色好い返事をもらえ、陽介は明日の実家帰りをタバサに言うつもりだ。
変に期待させて回復できなかったらと思うとなかなか言い出せなかったが、クマはこの世界の魔法の薬を治したという。なら十分期待する価値はあるだろう。
タバサの姿をパーティーの中で見かけた記憶はないのでおそらく部屋で本でも読んでいるのだろうと当たりをつけてタバサの部屋、そして自分のでもある部屋に戻った。
ドアを開けてみると誰もいない。
「あれ、もしかしてまだ何か食ってるのか?」
再び食堂に戻ろうかとも思ったが、入れ違いになるのも嫌なのでおとなしく部屋で待つことにする。
部屋の中に足を踏み入れると、机の上に置かれた手紙に気付いた。なにやら乱雑に置かている。
何か気になるものを感じ、手にとって読んでみる。
「なんだコレ……うっそだろ……?」
そこにはルイズをさらうという任務が書かれていた。そして遂行できなければ彼女の母を殺すとも。
陽介は部屋を飛び出てルイズの部屋に行った。扉は開けられているのに中には誰もいなかった。
もしかしてもうさらったのか?
そう考えているときにまさしくルイズその人の声がかけられた。
「ヨースケじゃない。どうしたのよ、わたしの部屋の前に立って?」
その隣りには完二が立っている。
陽介はほっとした。
「よかった、無事だったか……」
「無事だったかって?無事じゃないわよ!タバサが尋ねてきたと思ったらいつの間にか寝てて竜につかまれてるし、
地面にたたき落とされそうになるし、あの子が助けてくれたと思ったらカンジに投げつけられて文句を言おうとしたらいなくなってるし」
陽介の発言はルイズにとって許し難いことだったのか、糾弾するように一気にまくし立てる。
「ってあれ、なんか顔色悪くない?」
ルイズが思わず心配してしまうほど陽介の顔色は変化した。そして悲壮に言う。
「タバサがやばい」
「やばいってどーいうことっスか?」
陽介の尋常ではない雰囲気に気付いて、カンジは尋ね返す。
「説明してる時間もねえ。もし協力してくれるならラグドリアン湖のオルレアンの屋敷に来てくれ、俺は先に行く!」
それだけ言うと陽介は駆け出した。
彼は小さな自分のご主人様を思い出した。
イザベラに頼まれたというのに。
希望を見出したというのに。
事態は急変を続ける。
支援
書き込めるかな?
投下終了です。
今日は二回も書き込み失敗って出て二重投稿しちゃってさるさんに引っかかって大変でした
>>566>>569 支援感謝です
ペルソナの方、連投乙でした。
支援はリアルタイム遭遇した読者に許された栄誉ですから(笑)
アノンの法則は続き来ないのかな…
仁とのクロスってできないかな
カトレア治してEDか
>>573 難しいよね。
まず、医学知識が必要。
医者モノなら、カトレアさんを治すってのは外せないだろうけど
やっぱり心臓の外科手術あたりかな?
それと、タイムスリップ→未来を知っているって設定は、
「ゼロ魔原作を知っている」に置き換え可能だけど、所詮は異世界なので、
「自分の行為が 過去を変えてしまう」という葛藤は生じない。
旬のネタだけど このあたりをどう処理するか。
江戸時代から現代に戻る途中にゼロ魔世界に召喚されるとか、
どんだけひどい展開なんだろふ
GTAのCJ召喚
別にルーン無くても万能キャラだけど
>>577 ルイズの錬金でWANTED
ギーシュのゴーレムを武器チートで手に入れたAKでハチの巣に
7万相手に戦車と戦闘機をチートで出して戦って
ルイズ必要ねぇな
カトレア治せそうなキャラも多く召喚されてそうだけど
実際治したキャラとかいたっけ?
>>579 萌え萌えさんとこであかぎが治せそうな雰囲気だけど、今のところ否定してるしな。
ラスボスのユーゼスは絶対治せるのに治してないし。
うわ。ラスボスさんって書いたつもりだったのにorz
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ハチマキとめがねとボウイを召喚して気分はもう異世界。
ユーゼスは治さなかったけどなんか他所からの介入で健康体になったっぽいぞ
人間じゃなくなったけどな!
ジョジョの方ではバオーの血を飲ませたら健康でヒャッハーになりましたとかもあったな〜
カトレアはアニメ設定のほうを使えば病弱はほぼ無視できるんだけどあまりやる人はいないな
>>580 あの話のユーゼスの場合、戦闘でもカトレアの身体に関してでも、
簡単に能力を使いまくってたら確実に今より面白くなくなってたと思う。
カトレア「私は人間を止めるぞぉーーーー!ルイズーー!」
カトレアもタバママも一回殺して蘇生すれば治るよ的なゲーム脳のキャラ召喚はまだないか
588 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/03(日) 00:27:52.73 ID:88qAZT4r
誰かアリア書いて欲しい
>>585 面白くなっていたかもしれないが、たぶんそれじゃあ短い話数で終わってたと思うぞ。
もしくは途中でへたるか。
>>587 つ日替わり
死んで蘇生しただけで治るとは思えんがw
FF系ならエスナで治りそうな気もする
もしくは医者のキャラを召喚か…
TF2からMedic召喚
Medi-gunを駆使してカトレアを治す、が
何故かカトレアの体内に鳩が入り込んでいる
前回の投稿から間が空いてたからおさらいも兼ねてちょい昔の読んでみてすごいことに気がついた。
同じレス内でアレキサンドルとアレクサンドルが入り乱れてる……!
明日から一ヶ月ほど私情で投下できなくなるんで6日連続になりますが今から投下します。
法王 意味…信頼・守旧性
トリステインとガリアの国境沿いにある巨大な湖、ラグドリアン湖の近くに古い屋敷がある。
王弟の屋敷であるが、現在王家を表す交錯する杖の紋章には斜め十字が加わっている。王家から追放されたという忌まわしい証だ。
タバサは生家の前に一人佇んでいる。
時刻は深夜。ルイズをさらうという任務に失敗した彼女はわき目も振らずここへやって来た。全て母を心配するがためである。
手遅れかもしれないなどとは思っていない。手遅れなのだ。間違いなく母はこの家からすでに連れ去られている。
そしてこの家はやってくるであろうタバサを確実に始末するための罠が仕掛けられているに違いない。
なればこそタバサはやって来たのだ。
その罠から情報を得るのだ。その罠に敗れてしまうなどとは考えない。
自身だけでなく母の命がかかっているのだ。今まで生きてきたのは復讐のためと母のためであったのだ。
罠がどれほど恐ろしいものであろうと退くことはできない。そして退くつもりもない。
氷のように冷たい表情の下に固い決意を隠し、今まで何度もくぐってきた扉を開けた。古い家らしいきしむ音がする。
いつもならペルスランが出迎えてくれるところだが何も現れない。タバサは矢や魔法が出迎えることも予想したがそれもなかった。
注意深く足を母の部屋の前まで進めた。それまで何の攻撃も、そして家が荒らされているような痕跡もなかったが、決してタバサは油断しなかった。
家の中に流れる空気こそが不穏の証拠だ。それを感じ取れたのは彼女が風使いだからではない。歴戦の戦士だからだ。
扉に鍵はかけられていなかった。観音開きの扉を無造作に引いた。
部屋の中に母の姿はやはりなかった。そしてベッドの上に居る母の代わりに、本棚の前に一人の男が居た。
間違いなく刺客だとタバサは判断するが、それにしても標的に背を向けて本を読む刺客がいるのだろうか。
「母をどこへやったの?」
男は振り向いた。しかしその動きに緊張感はなく、声をかけられたから振り向いたというだけで、
もし声をかけなければ彼女の存在に構わず本を読み続けたのではないかと思わせる。
「母?」
ガラスで出来た金のような高く澄んだ声だった。
薄い茶色のローブを着て、つばの拾い羽のついた異国の帽子をかぶっている。
帽子からは金色の髪が腰まで垂れており、振り向く動きにつられて波打った。男女問わず溜め息をついてしまうような美しさだ。
美しいのは髪だけでなく薄いブルーの瞳も、線の細い顔も、まるで一流の彫刻家が魂を込めて作り上げたかのような美しさだった。
だがタバサはそんなことは意に介さない。彼女にとっては敵であり、せいぜいが情報源だ。
「母をどこへやったの?」
男は困ったように、本を眺めていたが、思い当たることがあったようで口を開いた。
「ああ。今朝、ガリア軍が連行していった女性のことか?行き場所は知らない」
その発言でタバサにとってその美男子は倒すべき存在になった。
氷の槍を打ち出す。
だがそれは男の胸の前で停止し、床に落ちた。彼が魔法を唱えたそぶりもないというのに。
何かで防がれたというよりは、矢自体の推進力が失われたという感じだ。
タバサは相手の出方を窺うために油断なく杖を構えた。
だがタバサの緊張とはうらはらに男の行動には一切の気負いが感じられない。
「この“物語”というものはすばらしいな」
男は手に持っていた本を開いた。
「我々には、このような文化はない。“本”といえば正確に事象や歴史、研究内容を記したものに限られる。
歴史に独自の解釈を加えて娯楽として変化させ、読み手に感情を喚起させ、己の主張を滑り込ませる……。おもしろいものだな」
男は気軽な口調でタバサに問いかける。
「この“名もなき勇者”という物語……、お前は読んだことがあるかね?」
返答は氷の槍だ。先ほどの倍以上の太さもある槍だったが、結果は同じだった。
氷槍は男の手前で勢いを失い、床に落ちる。そして男は語り続ける。
「はてさて、お前たちの“物語”とは本当に興味深いな。
宗教上は対立しているのに……、この物語に描かれている勇者は我々にとっての聖者と同一のようだ」
男の言うことをタバサは聞いていなかった。どうして自分の攻撃を防いでいるのかに思考力を注ぎ込んでいた。
火でも土でもない。水でもないだろう。ならば風の魔法であろうか。だが、それでもあのような現象を起こす魔法を聞いたことがない。
タバサは気付いた。
四系統の魔法ではない?
「先住魔法……」
さも不思議そうな顔で男はつぶやく。
「どうしてお前たち蛮人は、そのような無粋な呼び方をするのだ」
それから男はなにかに気付いたようだった。
「ああ、もしや私を蛮人と勘違いしていたのか。失礼した。お前たち蛮人は初対面の場合、帽子を脱ぐのが作法だったな」
帽子を脱ぎ、言葉を続ける。
「私は“ネフテス”のビダーシャルだ。出会いに感謝を」
金色の髪から……、長い尖った耳が突き出ている。
「エルフ」
タバサの口から搾り出されたような声が出る。
ハルケギニアの東方に広がる砂漠に暮らす長命の種族。
人類の何倍もの歴史と文明を誇る種族。
強力な先住魔法の使い手にして、恐るべき戦士。
杖を握るタバサの手に力がこもる。
北花壇騎士として、様々な敵と渡り合ってきたタバサにも、立ち会いたくない相手が二つあった。
一つ目は竜。
二つ目は今彼女の前に立つエルフだ。
目の前の強敵は気の毒そうな顔を浮かべていた。
「お前に要求したい」
「要求?」
「抵抗しないで欲しい。我はお前の意思に関わらずジョゼフの下へ連れて行かねばならない。
そういう約束をしてしまった。できれば穏やかに同行願いたいのだ」
伯父王の名を聞いて、タバサの恐怖で鈍っていた血流は激しく彼女の体を流れた。
怯えてどうする。母を取り戻すのだ。エルフだろうが、竜だろうが、何が敵でも引き下がるわけにはいかない。
恐怖でしぼみつつあった心が、再びたけり狂う嵐で満ちていく。
強い感情の力は魔力の総量に影響する。
荒れ狂う怒りと激情の中、冷たい雪のように冷え切った冷静な部分が、タバサに足せる系統が増えたことを教えてくれる。
スクウェアの威力を持ったトライアングルスペルを、タバサは唱え始めた。
「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース……」
タバサは最強の敵に挑む。
陽介はタバサが姿を魔法学院から姿を消したことに気付くとすぐに馬に乗ってタバサの実家へと向かった。
完二たちを連れてこなかったのは巻き込めないと思ったからではない
。ルイズやキュルケはともかくとして完二とクマは元の世界でも何度も命を助け合った仲だ。
今さら助けを受けないなど言ったら二人は怒るだろう。
陽介が仲間たちを連れてこなかったのはただ単純に急いでいるからであった。一分一秒が惜しい。
タバサはルイズをさらう指令を課されたのにそれを果たせずにルイズの命を助けた。
彼女は冷静ではあっても冷酷ではないので後悔などしていないだろう。
そうやって仲間を助けたあと、母の元へ向かったに違いない。
タバサが危機にあるであろうに一緒に居てやれていないふがいなさとともに、タバサに腹を立てていた。
なぜ自分を連れて行ってくれなかったのであろう。
確かにこの世界に来てほんの2,3週間で、付き合いも同じだけの期間だが、築いた絆は決してその短い期間に見合うような弱いものではない。
孤独に、人と関わらないように生きようとしている彼女だが、それが本意ではないことを良く知っている。
人のことがどうでもいいなら村人に疑われていたマゼンダ婆さんを救おうとなどしなかった。
仲間たちを助けるために風石の代わりになって船を飛ばそうなどしなかった。
岩場に挟まった自分を火竜の攻撃から守ろうとしなかった。
何より彼女は母のためにつらい任務もこなしてきたのだ。
それらが決して彼女にとって容易でなかったことも知っている。
吸血鬼に地を吸われそうになって震えていたことも、火竜と戦って呆然と座りこんでいた姿も陽介の確かな記憶だ。
それでも彼女は彼女のやり方を選んできたのだ。だったら助けを求めればいいのだ。
自分一人で難しいなら仲間を、使い魔を頼ってくれればいい。
おそらく彼女は自分に遠慮したのであろうが、そんな遠慮など不要だ。
トリステインから馬をとばし、ラグドリアン湖の畔にあるオルレアンの屋敷に着いた。
そして先日ぶりに訪れた屋敷を仰ぎ見る。前も壮麗ながらもどこかうらぶれた様子を感じたものだが、今はそれが遥かに強く感じられた。
意を決し扉を開けて陽介はタバサの母が居た部屋へと駆け出した。罠などは警戒していない。
これは陽介が罠を気にしていられないほど気にしていたというよりも、陽介は罠を気にして進むというスタイルがないためであった。
彼は何百、何千回と異形の怪物たちと戦いを繰り広げてきたが、罠や策謀といった戦いからはほとんど無縁であったため、罠を警戒して進むという戦い方をしないのだった。
もし簡単なトラップの仕掛けでもあれば陽介は彼の実力に比して相当な時間のロスを被ったであろうが、そういった罠はなく、なんなくタバサの母が居る部屋にたどり着いた。
かつて目の前まで来て入室することのなかった部屋。まさかこんな形で訪れることになろうとは思いもしなかった。
タバサの母の部屋に入るとそこにはそれらしい女性の姿はなく、目に入ったのは地面に横たわるタバサと、その隣りに立つ長身の男であった。
陽介の主人はぐったりとしている。
「お前、タバサに何をした!」
その男、ビダーシャルは悠然と答える。
「何をした、とはずいぶんな言い方だな、蛮人よ。私は何もしていない。ああ、この娘の傷を治してやったかな」
予想と違う発言に陽介は鼻白んだ。
「え、本当か?」
「嘘などつくものか」
ビダーシャルはやれやれとでも言いたげだ。
陽介はそれを全面的に信頼は出来ないが、どうにも目の前の男には緊張感がなく、今まで彼を突き動かしてきた衝動が空回りしていた。
「あ、それじゃ、そいつ連れ帰っていいか?俺のご主人さまなんだ」
「それはならぬな。私はガリア王とこの娘を連れてくるようにいわれたのだった」
陽介の顔が怒りで歪む。
やはり敵であった。
「んだそりゃあ!やっぱテメーがやったんじゃねーか!治してやったとかわけわかんねーウソつきやがって!!」
「嘘ではないと言っただろう。まったく蛮人は嘘と本当の見分けもつかぬのか」
ビダーシャルは呆れた様子だった。
そのとき彼の足元で倒れ伏していたタバサが緩慢に顔を上げた。視点の定まらない目で陽介を見てくる。
口が小さく開いたが、声が出ないのかそこから音は紡がれない。
「タバサ!」
「ではそろそろ行くとしようか」
ビダーシャルはタバサへと手を伸ばす。その細い指がタバサの体に触れようとする。
陽介は叫んだ。
「タバサに触んな!吠えろ!スサノオ!」
燃え盛る頭を持つ彼のペルソナは一瞬で敵の間合いに入った。
ソニックパンチ――渾身の力込めた拳が音速でビダーシャルに叩き出され――その力は全てスサノオに跳ね返った。
スサノオは自身のクリティカルヒットをまともに喰らい、陽介にダメージがフィードバックする。
「うっ……!」
どういう理屈かはわからないが、渾身の力が自身に叩きこまれ尻餅をついてしまう。頭がフラフラして意識が朦朧としてきた。
「見たことのない力だな……」
そう言いつつ、ビダーシャルは攻撃する。無様に尻餅をついた陽介に部屋を形作る岩石を飛ばしたのだった。
天井や壁が独りでに剥がれて陽介へと向かって来て、肩に、腹に、腕に、頭に当たる。
体中に衝撃を受け続け、陽介は気を失った。
エルフに敗北し、何をされたかもわからず気を失っていたタバサ。
床に倒れ伏しながらうっすらと気取り戻した時、目に入ったのは花村陽介の姿であった。
異世界から来たという彼に自分の過酷な運命を担わせるわけにもいかない。
だから魔法学院においてきたはずの彼女の使い魔は目の前にいた。
さきほど自分の放てる最高の魔法でわが身を切り裂いたわりには体の痛みは少なかったが、タバサの意識はぼんやりとしたものだった。
自分の使い魔に何かを言おうとしたが、声がでない。
もし声が出たならなんと言ったのであろうか。
今まで一度も呼んだことのない彼の名前を呼んだであろうか。
逃げてと叫んだろうか。
それとも助けてと叫んだだろうか。
彼は火竜を倒したほどの使い手なのだ。エルフも倒してくれるかもしれない。
その思いは決して表層化したものではなかったが、淡いというには強い思いだった。
しかし彼は彼女の目の前でエルフに敗れた。今まで何度となく見てきた彼の心象であるというペルソナ。
その姿は彼女にとっては勝利ともはや同義であったが、それが敗北した。
彼女の目の前には竜を倒した人間という非現実的なものではなく、エルフに倒される人間というどうしようもなく現実的な現実があった。
彼女の使い魔は、エルフは人間を倒せなかった。
アンシャン・レジーム
竜を倒した彼もエルフは人間に勝てないという絶対的階級を覆すことは出来なかった。
体が浮かび上がるのを感じる。エルフにだきあげられたようだ。
「ヨースケ……」
薄れゆく意識の中、タバサは使い魔の名を呼んだ。
被召喚キャラ「チクショオオオオ! くらえタバサママ! 召喚元世界の画期的な医療方法!」
タバサママ「さあ来なさい被召喚キャラ! 私の症状は実はビダーシャルが調合した薬で治りますよオオオ!」
タバサママ「グアアアア! こ、このどんな薬でも魔法でも癒せないと言われていた私の症状が……こんな方法で……バ……バカなアアアアアア」
カトレア「タバサママの症状が治ったようね……」
ティファニア(最新刊で重傷)「フフフ……あの人は傷病四天王の中でも最も元気……」
ジョゼフ(心が病んでる)「ポッと出の召喚キャラごときに治されるとは患者の面汚しよ……」
被召喚キャラ「くらええええ!」
3人「グアアアアアアア」
被召喚キャラ「やった……ついに傷病四天王を治したぞ……これで一番精神を病んでるっぽいヴィットーリオのいるロマリア大聖堂の扉が開かれる!!」
ヴィットーリオ「よく来ましたね、被召喚キャラ……待っていましたよ……」
被召喚キャラ「こ……ここが大聖堂だったのか……! 感じる……ヴィットーリオの病みっぷりを……」
ヴィットーリオ「被召喚キャラよ……あなたの治療を受ける前に一つ言っておくことがあります。あなたは私を治すために『私の母親の情報』が必要だと思っているようですが……別になくても治せます」
被召喚キャラ「な、何だって!?」
ヴィットーリオ「そしてジョゼットは病みっぷりがちょっと行き過ぎてきたので、ジュリオと一緒にデートさせておきました。あとは私の心を癒すだけですね、クックック……」
被召喚キャラ「フ……上等だ……オレも一つ言っておくことがある。実は病や心を癒すこのオレ自身が癒されたがっていたような気がしていたが、別にそんなことはなかったぜ!」
ヴィットーリオ「そうですか」
被召喚キャラ「ウオオオいくぞオオオ!」
ヴィットーリオ「さあ来なさい被召喚キャラ!」
被召喚キャラの画期的な医療方法が世界を癒すと信じて……! ご愛読ありがとうございました!
C
投下終了。投下してみると案外文章少なかったことに気付く。まあ、多ければいいってもんじゃないから別にいいんですけど
読み返して気付いたというか忘れてたことですけど、13章の最後でワルド死んでます。
13章投下した後、言っとこうと思ったけど忘れてました
あ、ごめん。支援。
うむ、ペルソナのパンチといえど戦車砲よりは威力低いかな
戦車砲といってもピンキリだ
さらにカウンターも原作かアニメかで威力が大きく違う
最初期の戦車砲よりは強いかもな。
ただ、88mm砲より威力のあるパンチの持ち主ってそこそこ居そうな気もする。
きゅいきゅい退場か…。
原作だとワルドよりは存在感があったけど、
死んだ方がマシ、てなポジションでも
なかっただけにチト不憫かも。
ともあれ乙。
>>579 他所だけど、『虚無を継ぐもの』は 治療が進行中。
ソニックパンチじゃあな
ブレイブザッパーとマハガルダインで再挑戦シタマエ!
反射をパンチでぶち抜いた人と言えば、ゼロの花嫁におけるルイズ(燦の支援付き)が思い出されるなあ。
幻水ぼっちゃんのソウルイーターなら反射関係なく倒せそうだな
>>591 原因が服毒のタバ母はともかく
ちい姉さまの病気はエスナじゃ治らないのでは
旅の楽士様なら調合の即席エリクサーで何とかなりそうだけど
>>611 デルフが星振剣だったりエルザがシエラだったりしそうだなそれ。
翼人集落にはウイングボードが混じってそうだ。
……あれ、普通に読みたい。
全てトニオさんなら治せます的な
>>613 あれ、ボードじゃなくホードなんだぜ
ウイング「ホ」ード
魔界医師に治せぬ病など存在しない
そらおとのキャラってまだ喚ばれてないよな?
エンジェロイドなんてまさに使い魔用途な存在なのに。
>616
魔王伝で来てたな。
メフィストならいいけど、ダークサイドだとガチ何もしない
そう言や、(他人所有の)使い魔を召喚する話って何かあったかね?
>>618 イカロスは天然で一国を滅ぼす戦略兵器クラスだし、ニンフは電子戦能力の使いどころがないから難しいだろうな
アストレアは作者の技量しだいでおもしろくできそう
カオスがルイズに「愛ってなあに?」って質問したらどんな答えするかな
カトレアの治療……
よし! オーズから石棺呼び出してアン子をカトレアに憑依させようぜ!?
623 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/03(日) 14:15:53.90 ID:OTBf6Cng
>>618 エンジェロイドって翼人にしか見えねーよな
そういえばウル忍の忍獣を召喚するって話があったけど書かれてないのかな?
ウル忍好きだったから結構期待してたんだが
>>623 ニンフは妖精、カオスは悪魔的な翼してるけどね
みなさんこんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、本日50話を投下する予定だったのですが問題が起きました
実は5年間お世話になったパソコンがこのたび寿命を迎えました
幸いデータは外部ハードに残り、一応新しいのは用意したのですが、元がようやくXPが入ってるくらい旧型だったので今の型に慣れずに四苦八苦しています
忍法帖も当然リセットで、そのため申し訳ありませんが今週はお休みさせていただきます
627 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/03(日) 16:26:01.21 ID:OTBf6Cng
なん・・・だと・・・?
自分も七年つきあったパソコンに先日先立たれてしまったばかり…ウルトラの人、残念だけど乙。
来週楽しみに待ってます。
頑張れ。おいらも買い換えた所だ。
…データを救出するために新パソにHD組み込むか、専用の外部装置買うか悩みどころだ
ウルトラさんご愁傷様です。
データが無事だったのが良かったですね。
とりあえず、私のを含め未登録だった長編作品は、元ネタが分かるとか
続編なのにルートが見つからないもの以外は登録したつもりですので、
一応ご報告まで。
>>629 システム系エンジニアでそういうトラブルにも多く経験した人間からすると、
普通のデータドライブとかなら新しいPCにデータドライブとして繋いで
データ移動させるのが楽ですよ。
暗号化してあったりすると詰みますが。
あら?誤字orz
元ネタが分からないもの、ですね…o...rz
まとめサイトの「ゼロのペルソナ 15章 法王」の最後に、ワケの分からんモノがくっついてるぞ…
気づいた時点で手前で編集すればいいだろうが、お前がその編集したんじゃないかと勘ぐってしまうぞ
そういえばペルソナさん15話の
>彼女の使い魔は、エルフは人間を倒せなかった。
> アンシャン・レジーム
>竜を倒した彼もエルフは人間に勝てないという絶対的階級を覆すことは出来なかった
は「人間はエルフを倒せなかった。」
と
「人間はエルフに勝てないという絶対的階級」
ですよね?
投下時点でこうなってるっぽいので普通に誤植かな?
>>630 登録乙です。
ウルトラの人がなんだか大変なことに…ご冥福を祈ります
自分も今のパソコンを使い始めて五年近く経つから、なんだか心配になってきた…
一応、ちょくちょくハードディスクは取り換えてるが…不安が募ってくる
ウルトラの人。気を落とさないで下さい。続きを待っております
全く変えていない俺……コエエエエッッ!
こないだ中古で買ったPCが三ヶ月でお陀仏になった
幸いたいしたデータは入れていなかったからよかったが、PCはちょっと無理してでもいいものを買ったほうがいいと学んだ
サイトのノーパソはどんなのだろうな
小説版のサイトって契約してなくてもルイズと普通に会話してたよね
1.サモンサーヴァントの時点で会話が通じるようになる
2.実はサイトの親か先祖が召喚経験があって、その血を引くサイトには魔法の効果が引き継がれていた
好きな方を選べ
3.細けぇ事はいいんだよ!
4.ハルケギニア語は実は日本語に近い言語だった
やっぱ1だと思う
仮死になってルーン剥がれた後も普通に会話出来てたし
5.翻訳コンニャクお味噌味
もしも怪物くんのフランケンを召喚したら会話できるようになるんだろうか? フンガー語を翻訳できたらすごいぞ
DBキャラでどのラインからなら反射をパンチでぶち破れるのか
どのラインでもブチ破れるんじゃね
反射ってのはつまるところそこら辺にいる精霊さんの力で攻撃を跳ね返すワザだからね
精霊さんの力をオーバーしてる攻撃は反射できないのが道理
実際戦車砲に撃ち抜かれたりしてるしな
ヨルムンのは、あの巨体全体にかけてるからある程度効力下がってるって描写があった
エダーシャル自身のはどんくらいだろうね
思ったけどメガテンだとメギドとムドはカウンターを抜けれそうかな?
ハマはエルフに効くのか解らんな。
ゲーム的に言うならテトラカーンとかマカラカーンじゃなくて、
一部ボスがやるような万能含めてあらゆる攻撃を無効とか反射とかそういう類になるんじゃね
スパロボのバリア系とかである「ダメージ〜までの攻撃を無効化」みたいな感じかな
何かの方法で中和されたり超威力の攻撃で貫通されたり、ATフィールドの効果弱体版みたいな感じ
バリアーの類は破られたらパリーンと割れてほしいと思ってるのはおれだけだろうか
バリアに勝てるのはバリアだけだ!
木原神拳を試すんだッッ!
655 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 07:35:42.25 ID:yf676kVx
この距離なら、バリアは張れないな!
(;OMO)危ないところだったが、ギリギリの所でティファに助けられた
>>620 「虚无(ヤク)い使い魔」で藤井八雲召喚
死ねるわっ!
661 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 17:29:14.45 ID:cgTWyCSb
銀魂から屁努絽様召喚
顔面だけで大概解決しそうだ
それ以前にルイズがあの強面と契約する勇気があるかどうかだが
>>661 マリコリヌが突き刺さったり
ギーシュが突き刺さったり
ヘドロのヘドロが酷い目にあう場面しか想像できない
AVP3のルーキー召喚
北野くんとも契約できたんだから
>>661が今更語る気にならんくらいつまらんネタなのは事実だが
他の作品を引き合いにだすのはやめとこうぜ
そのへんは書き手の料理次第だ
いっそ男女関係含めて深い繋がりをもった主従同時召喚でも良いと思うんだ
契約しようとしたら二人の繋がり見せつけられて手出し出来ないって展開とか
ワルドーッ! 早く結婚してくれーっ!
エレオノール! 踏んでくれー!!
メイン機が壊れて久しく来れなかった。
ラスボスさんが来たのは確認したけど、
最近、魔砲の人とか日替わりの人は来てませんか?
日替わりの人はこの間更新してた
魔砲の人は避難所に進捗状況報告あったよ
マテパの人はまだかな
3210の人、待ってます
>>673 ありがとう。
早くメインマシン復活させないとな。
677 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/05(火) 21:59:54.58 ID:sqN0TKGs
ダンバインねたでバイストン・ウェルではなく、ハルケギニアに召喚される。
レコンキスタにはショットウェポン。ワルドが黒騎士になる。
>>677 sageろよ
最近sageしないやつが定期的に湧くが、こいつか
キャッシュ切れしただけだろ
頻繁に見なくなる人が出たら時折発生するよくある事だろ
誰か一人が常にミスるわけではなかろ
いいから専ブラ使おうぜっていう
専ブラでも久々に新スレで開くハメになったりしたら駄目なのとかはあるんじゃね
sageたところでだから何? としか言いようがないけどな
上げてると荒らしの目に付きやすいんだよ
sageてるから完全に防げるってわけでもないが、気休めにはなるからな
気持ち悪い奴らだな
ageるとかsageるとかのレベルじゃない
そんなことよりタバサにのおっぱいちゅっちゅ
ウォーザードのタバサを召喚
スペースゴジラを召喚
「破壊神降臨」
結晶都市に変わるロマリアと中心に聳え立つロマリア大聖堂
>>674 奇遇だな。丁度俺もいま久々に読み直してるところだ。
被召喚者が補助魔法キャラで戦うのはルイズってのはやっぱアツい
>>689 ちょうどアクアに換わったところで止まってるんだよね
零章も起承転結の結に入ったしそろそろ続きを読みたい
なんかマテパ本スレでも邂逅してそうだな
プリセラの扱いはどうなるんだろうか
テファがFF7のティファを召喚したらいろいろとややこしいことになるだろうな
それはおっぱい祭り的な意味で?
革命の火が灯るな
ルイズは誰を喚べば良いのか
誰を読んでも独占欲が強く出る。同性でも老人でも既婚者でも無生物でも。
そう考えたらある意味ツェルプストー以上に恋多き娘じゃないか。
そりゃ書き手の都合に振り回されてるだけだ
ロリってことで銀魂の武市変平太召喚してみようぜ。多分歓喜する。
ここは世界一腕の立つ殺し屋をだな
誰のキレイな顔をフッ飛ばすんだよw
ワルドさんに決まってるでしょ
銃持ってるのにワルドさんに返り討ちされる図しか思い浮かばないのは、
きっとあのコマから立ち昇るカマせ臭のせいに違いない
ねるまえになんか一本読みたいなぁ〜(ちらっ
基本的に、ルイズは誰でもいいという状況に追い詰められていて、ルーンの効果で暗示とも思える強制力で好意を抱くようになってるしな。
そういう意味ではビッチとも言える。
代理投下依頼でもあったらやるんだけど、やっぱり平日は少ないか
706 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/06(水) 23:12:52.62 ID:jMd9BNJE
リナ・インバースの召喚ネタって無いな、なんか以外
ナーガを召喚したら色々話が混沌化しそうだな、外見といい美学といいスペックといい一部の生物からのカリスマ性といい・・・
>>706 そりゃあスレイヤーズスレは別にあるからな
ビッチルイズか……
駆け魂がハルケギニアに逃げ込んだことにしてエルシィと契約させよう
710 :
1/3:2011/07/07(木) 01:27:55.81 ID:RLhB26Bk
投下します
ソビエトの悪魔が召還されました
春のサモン・サーヴァントの儀式でルイズが呼び出したのは、一風変わった巨大なウサギだった。
「随分大きいわね…てかなんで服着てるのかしら」
赤と白の横縞の変わった服を着て、左耳にはピンを止めているそのウサギは顔に負った傷のせいなのか、まったくといって表情を変えることはなかった。
その顔に不安を覚えたルイズだったが、一応手先は人間並みに扱える上(ニンジンをナイフとフォークで切り分けた)、指示したことは案外きっちりやりとげる。
そのうちにマイペースさにも慣れ、靴を集めるという癖も犬のようでカワイイと愛嬌すら感じるようになった。
ある日のこと。
ウサギならやはりこれだろうと、手ずからニンジンを与えていたルイズのもとに、耳障りな声が怒鳴り声が聞こえてきた。
ついとそちらに目をやると、ルイズが嫌う種の貴族の最たる生徒が、哀れな平民のメイドを怒鳴りつけているところだった。
二股がばれた責任を取れと理不尽なことをのたまっているらしい。
貴族としての矜持が高い彼女は、そんな情けない学友に呆れ同時に見過ごせないと席を立ち、注意をしに行った。
しかし引っ込みがつかなくなったのか、彼は止めに入ったルイズに矛先を変えた。
さすがに顔色を変え、応戦するルイズ。口達者な彼女に旗色の悪さを感じたのか。
グラモン家の子息は彼女の使い魔をなじる方向へ切り替えた。
二足歩行するくらいしか目立ったところがない、愛想もなくて可愛げがないなどと。
だがニンジンを食べ終え、お気に入りの靴を磨き始めたウサギは何を言われようがまったく意に介しているようすはない。ややうっとうしげにしているのみだ。
その余裕の態度に、ギャラリーも二股をかけた彼を謗る。
いよいよ焦った彼は――言ってはならないことを口走った――。
「は!そんなこ汚い靴を後生大事に抱えている、犬コロくずれのツギハギウサギなんて――」
もし彼が――ギーシュ・ド・グラモンが、このウサギの本性を知っていたら――それが自殺行為に等しいことだとわかっただろう。
ウサギがもといたところの連中は、すぐさまあわれな子ヒツジの為に神に祈っただろう。
しかし彼だけでない。主人であるルイズを含めた生徒の全てが、この時までウサギを
「喋らないけれど賢く、まあまあ使えるウサギ」としか認識していなかったのだ。
ギーシュのこの罵りを受け、初めてピクリと耳が動く。
ゆっくりと顔をあげ……彼の感情の無い視線が馬鹿な子供の眼を射ぬく。
思わず気押されるギーシュ。しかしそれを悟られたくなかったのか。彼はさらに愚にもつかないことをしてしまった。
言わずと知れた決闘の申込である。生意気なウサギを躾けてくれる、と捨て台詞を吐き捨てると、一足先に広場に向かう。
思いもしなかった使い魔の毒気に一瞬怯んだルイズだったが、さすがに自身の使い魔に危害が及ぶかもしれない可能性にすぐさま我に返った。
しかし止めようにももう無理だろう。ギーシュは完全にその気だし、ギャラリーが盛り上がって離してくれそうもない。
彼女としてもここでおめおめ食い下がるのは、たとえ規則に反していたとしても嫌だった。
711 :
2/3:2011/07/07(木) 01:28:21.60 ID:RLhB26Bk
数分後。ヴェストリ広場にて。
ルイズは小さな体に闘志をたたえてその場に立っていた。傍らにはウサギが佇んでいる。
気障な口上とポーズを決め、ギーシュが杖をふるう。産み出されるは1体の戦乙女。
魔法が使えないながらも、ライトなど短い呪文を叫び爆発をおこすルイズ。
彼女は決意していた。確実に向こうが悪くとも、こんなことになってしまったのは引かない自分の性格もある。
ならばけじめをつけようと。
そして決して使い魔には手を出させないと。
そう自分に誓っていた。
実際のところ、彼女の爆発呪文は相当の威力があった。
しかし限界もあった。それ以外に魔法は使えない上、応用が利かないのだから仕方がないのだが。
それに気力にも限界があった。ギーシュはさすが軍門の出というべきか、相手の体力をそぐやり方を実に心得ていた。
3体の戦乙女を弾き飛ばしたところで、ルイズは膝をついてしまう。もはや魔法を扱えるだけの元気は残っておらず、今にも気絶してしまいかねなかった。
薄れゆく意識の中彼女が見たのは、戦乙女に向かってスタスタ歩いていく使い魔であった。
ギーシュはせせら笑っていた。先ほどまでの爆発は驚異だったが、メイジが倒れた今使い魔のウサギをつぶすだけでいいのだから楽だ……というわけだ。
精々怖がらせてやろうと、戦乙女に拳を振るわせた時だった。
ボギッ。
と非常に嫌な音がして、数秒後戦乙女の腕が地面に落ちたのだ。
咄嗟に反応できず呆けるギーシュに、よく状況が理解できていないギャラリー。
……理解できないほうが幸せだったろう。
目の前のウサギが、こともなげに青銅を襤褸雑巾のように引きちぎったのだなんて……。
バゴ。まだ呆けているギーシュを尻目に、第二段を放つウサギ。戦乙女は腰から吹っ飛び、上下が分かたれた。この時間は僅か4秒だった。
ベキッ。ギーシュがようやく食堂でウサギに感じた、あの恐ろしさを再び感じたときには、初撃から既に10秒が経っていた。
既に、である。ウサギにはそれで十分に過ぎた。
片腕の残る上半身だけの戦乙女をハンマーに、馬鹿へと突っ込んだ。
奇声をあげて無茶苦茶に杖をふるい、戦乙女をやみくもに突撃させる。
それらすべてを小気味よく跳ね飛ばすウサギ。
やむなくウサギの持っている戦乙女の錬金をとこうとすると、それを思い切り振りかぶって投げられた。
跳ね飛ばされ、全身に打撲を負い、幾本か骨を折りながら壁に激突するギーシュ。杖は既に彼方で粉みじんになっている。
体中に走る激痛に悲鳴を上げながらも、近づいてくる足音に絶句する。
気づけばあの悪魔は目の前にまで来ていた。
そして彼は見てしまった。
あまりにも恐ろしくおぞましいその顔を。
普段の無表情を思い切りゆがめた顔面、血走った眼、うき出る血管。
死を覚悟した瞬間であった。
ギャラリーはというと、飛んできた戦乙女の破片やら瓦礫やらに悲鳴をあげ、半数近くが逃げたり医務室を送りになってしまっている。ウサギの私刑を止められる者はいなかった。
火傷を負った赤子のような泣き声をあげ、必死に助命を願うギーシュ。
最早かつての威張り散らす彼はいない。哀れながらも失笑を禁じ得ない姿だった。
その願いを聞き届けたわけではないだろうが、ウサギの表情が変わった。
ちらりと後ろを見ると、ふらつきながらも立ち上がろうとしている主人が見える。どうやらあまりの騒がしさに目覚めたようだ。
再びウサギは足元に蹲るこ汚い子供に目をやった。
そして背後の主人が「うさちゃん…どこ…?」と呟いた瞬間。
ギーシュの頭を踏みつけ――首から下を地面に埋めた。
踵を返し、出して出してえと叫ぶ彼を無視すると、ウサギは額を押さえて立ち上がったルイズのもとへ帰った。
「なにこれ?何が起きたの?」といつのまにか惨劇が起きている周囲に驚くルイズ。
離れたところで首だけ地面から出したギーシュが泣きながら謝って負けを認めている。
混乱するも、休みたくてしょうがなくなり、彼女は使い魔を引き連れて自室へと戻った。
数時間後、誰にも助けてもらえなかったギーシュは、泣きながら自らの使い魔に掘り起こしを頼むしかなかった。
余談だが、魔法で様子を見ていた院長も教師も、ウサギのあまりの恐ろしさに凍りついてしまっていたという。
712 :
3/3:2011/07/07(木) 01:29:13.40 ID:RLhB26Bk
それからは色々なことが起きた。
メイドをさらった奴は屋敷に馬車を投げて壊し、くみとりトイレへ流したり。
ミス・ロングビルがフ−ケの正体を現した際、「破壊の杖」ことドラグノフ狙撃銃で一発で仕留めたり。
ワルドが裏切れば、彼も、助けに来た敵も全員まとめて逆さに生き埋めにしたり。
七万の軍勢と戦うのに、「竜の羽衣」もといスホーイ9に乗り込み完全壊滅させたり。
危機を感じたエルフが、亡国の王妃の心を壊した毒を盛っても酔っ払うだけだったり。
悪の王が住まう城に乗りこみ、一階ずつ建物の一部を殴り飛ばし粗末な平屋に変えたり。
コルベールがレンチ一本で怪しげなものを作れるようになったり。
モンモランシーのカエルが、なぜか狙ったようにマリコルヌの梟ばかりを捕食したり。
大体、単純な物理攻撃はおろか魔法による攻撃すらまったく傷をつけられないというのが不気味だ。
銃弾の嵐など平鍋で跳ね返す上に、スクウェアクラスの魔法までものともしていないなど。
ときに体の一部が切断されるような大怪我も負ってはいるが、それすら水の魔法なし、包帯一つで直ってしまうので性質が悪い。
またこのウサギには不思議なこともあって、なぜかルイズの前で凶行に至ることはなかった。
大抵彼女が気をやっていたり、席を外していたり、自分に注目していないときにその恐ろしい力を発揮するのだ。
ゆえにルイズからしてみれば、いつの間にか事件が解決しているので拍子抜けしてしまう。
もっとも、使い魔の「それがどうした?」という完全な無表情を見ているとうぬぼれる気もおこらず、彼女の長所が失われることはなかったけれど。
数年後。
大勢の黒幕に多大な肉体的苦痛・心的外傷を与えた一人と一匹は、シューズミュージアムを開いたという。
またウサギの後ろ脚を信じたわけでもあるまいが、ルイズはウサギを幸運のシンボルとしてとらえたらしく、沢山飼っているようだ。
その中には、彼女の使い魔と同じような体格の、気の抜けた顔の緑白ストライプ服のウサギがいるらしい。
今日も彼女たちは、珍しい靴を売っている。
(ウサビッチよりキレネンコ、プーチン召喚)
>>710-712 過去スレ見返したらなかったので書いてみました
どちらかというとプーチンのがガンダールヴっぽいですね…
きっとキレネンコ的に、召喚先ではルイズ=プーチンです。比較的やさしくする対象
投稿乙。
いいなコレwww
キレネンコ、ガンダールヴなくても最初から最強w
貴族だから、食事は豪勢になるから機嫌を損ねないよね。
ウサちゃん発言を見て、「なんだ、Im@sの声ネタか」と思ってしまった
乙
思ったんだがガチャピンでも同じ展開になるんじゃあ……
ガチャピンはギーシュにボコられて物語すすまないですぞ
ウサビッチはやはりBGMがないとな
クロス系作品で毎回召喚された別作品のキャラがルイズに無理矢理契約させられ、
才人と同じような扱いになるのを読むと違和感しかない
それが強キャラなら尚更
こう言うと、大抵が突然の自体に戸惑うから無理矢理されても仕方無いとか、
情報取得や生活の為にルイズの使い魔になるのは自然とか言う奴が出て来るが、
裏を返せば、結局そのパターンしかないってことだよな
そんなワンパターンしかないならクロスなんざ読まずに原作読むって話だ
では貴方はさぞかし画期的かつ斬新で、
ゼロ魔クロスSSに革命を起こすほどの素晴らしいアイディアをお持ちなのでしょうね。
このスレが出来てもう数年経つ
そんなスレにいまだご執心
つまり721大先生的に充分面白いって事だったんだよ
殺伐としたスレに
>>721先生が神SSが投稿する!!
721の神SSでなくて申し訳ないが、11:55頃に小ネタ「ばくれつな使い魔」を投下します。
「…人間のように見えますが…」
「拙者、忍者でござる!」
戸惑ったようなアンリエッタ姫の言葉に、私の使い魔は太い声で答えた。ニンジャってのはこの使い魔のいた所で言う密偵とか、スパイの事らしい。
だから、きっとコイツはニンジャの駆け出しか…そうでなければ、落ちこぼれだ。
なるほど、確かに顔は隠してそれっぽい雰囲気にはなっているし、あっさりフーケを倒した実力は本物だけど…、行動が一々派手で全然隠れてないもの。
「つまり、邪魔をするれこんきすたとやらを倒して手紙を受け取ってくれば良いのでござるな?いざ、突撃!」
…あんた、ろくに姫の話聞いてなかったでしょ?こんなんで任務が成功するのかしら?頭が痛くなってきたわ.…
で、姫様がよこしたワルド様と…何故か途中から加わったキュルケ、タバサ、ギーシュの面々でアルビオンに向かう途中の宿で、ならず者に襲われたの。
しかも、なぜか捕まった筈のおばさ…フーケも一緒に。こんなところで足止め食ってる暇なんて無いのに!
そう思った時、タバサが一つの提案をした。
「私たちが敵を足止めする。その間に」
「解り申した!ではお頼み申す!」
タバサ達が敵をひきつけている間に私達は先を急ぐ、そのハズだったんだけど…
「ばばばバクレツ究極拳!」
私の使い魔が放った凄まじい爆発でフーケを含めてならず者はあっさり全滅。
…したのは良いんだけどタバサ達を完全に巻き込んでるし。ついでに宿も全壊。…こ、これってかなりまずいんじゃ…
「ル、ルイズ…ツェルプストーとの因縁は僕も知ってるけど、これはやりすぎじゃあないのかな…」
あああ。ワルド様が引いてる。ち、違うのに。
「心配御無用!峰打ちでござる!」
「は…ははは。そ、そうか。なら大丈夫だな」
「そ、そうね。峰打ちなら安心よね!」
何一つ動くものの無い宿屋の残骸を前にして、乾いた笑いしかでない私とワルド様をよそに、自信満々に言い放つ使い魔。
爆破に峰打ちも何も無いだろうってのはきっと考えちゃいけないのよね。
…さて、それからは息つく暇も無い怒涛の展開だったわ。手紙を受け取ったら、使い魔が本当にレコンキスタに突撃するんだもの。
その爆烈究極拳とやらを連発してレコンキスタをあっさり蹴散らしたのにはびっくりしたわ。
私を護るために、一緒に居てくれたワルド様の顔が引きつっていたけど…まぁ、あの馬鹿馬鹿しいほどの火力を見たら無理も無いわね。空船も一発で撃沈するんだもの。あんなの反則よ。
ま、そんなわけで、手紙も取り戻したし、ウェールズ王子も生き残ったしで、何だかんだで任務成功よね。姫様も本当に喜んでくれたし、良かったわ。
え?タバサ達はどうなったのかって?
…ほら、何かを護るためには何かを犠牲にしなければならないって言うじゃない?
今トリステインがあるのは彼女達のおかげなのよ。本当にありがとう。私、貴方達の事ずっと忘れないわ。
と、いうわけでニンジャコマンドーよりリューイーグル召喚でした。
ちっとも忍んでない忍者ってのはこのメーカー(ADK)の基本なのでそれはスルーにしても、
突っ込みどころ満載の台詞に展開、ザコどころかボスも瞬殺なチートな爆烈究極拳(戦車も一発だ!)と実に良い味を出しているゲームです。
コイツなら爆烈究極拳のコマンド失敗しない限り、7万だろうがヨルムンガルドだろうが大して問題にしないはず。
忍法ブラックホールもあるしな(原理は気にするな)!
ひでぇwwwwwwwwwwww
キレネンコもニンジャも強キャラっぷりが実に清々しいww
これだからニンジャはwww
峰打ちじゃなかったのかwww
草ぼうぼうだなwww
いや、面白かったけどさ
強ネタキャラの安定感
>>721 でも契るんじゃなくて千切ったりするとヘイト呼ばわりなんでしょう?
にんげん おとこ
を同室の床で寝させるルイズがifで別の人間を召喚したとして
自発的に「使用人たちの部屋で寝なさい」とか「食事は厨房で貰ってきなさい」
なんて言える姿が思い浮かばない
相手がオープンチートor貴族(精神的含む)じゃない限り
序盤はサイトと同じ扱いだと思うのだが
問題無いッッ!
ブタロウならッッ!
全部御褒美だからな
住処ごと召喚された場合その辺りはなんとかなりそう。
寝床は既にあるからルイズの部屋で寝泊まりする必要は無いし、食事はシエスタ経由でマルトーから余りの食材でも貰えば良い。
身一つで呼ばれた場合もコルベールなりに相談すれば何とでもなる。
召喚にはまず鏡をくぐらなければいけない件について
七夕か
GS美神からあのゴツい織姫召喚
何をぶっかければお帰りになって頂けるだろうか
サイトほど怒らせなければもっとマシな扱いにはなるはず
GUNTZから西君召還
貴族も平民も皆殺し魔法学院消滅
全ツンデレのベストディフェンスはオレの中にある!!
とらドラ!高須竜二!!
釘宮声のツンデレなら絶対に負けん!!
灼眼のシャナ!坂井悠二!!
こいつらでどうよ?
>>743 追加
俺はニトロプラス最強ではない!!
全ロリコンキャラ最強なのだ!!
宇宙の中心でロリを叫んだ神!!
旧神!大十字九郎!!
>>735 同室にいるのが耐えられない悪臭でもさせといたらいいんだよ
>>738 家を個人携帯できる世界のキャラを召喚すればいい。
ドラゴンボール(例えば亀ハウスはカプセル化できる)キャラとか、FFキャラにコテージ持たせるとか。
そんなに言うなら一本書いてみればいいじゃない
>>745 じゃあドラゴンボールからバクテリアン召喚で。
ナルホドーを召喚
アポトキシン4869を召喚
ルイズが契約の際に誤飲して幼女に
ワルドの戦闘力が10倍に高まる
赤いキャンディと青いキャンディでもいいな
ワルドはよくロリコンロリコン(マザコンなのは間違いないとして)言われてるが、
その目下の対象であるところのルイズってカテゴリーとしてはロリに含まれるのか? って言うか、含んでいいのか?
>>752 ルイズの虚無が欲しかっただけでルイズ自身には興味なさそうだしなぁ
まぁ、どっちにしてもルイズに欲情したとしてもロリじゃないよなぁ
幼女化してほしいのはエレ姉さま、次点でカリンちゃん
いい大人が18歳以下に欲情するのは十分ロリですよ
>>755 じゃあキュルケとフラグを立ててるコッパゲも、
ティファニアにハァハァしてるオスマンもロリコンなのか……。
アカツキ電光戦記のアカツキを召喚したら、ジョゼフの身体がムラクモに乗っ取られそうだな。
加速を使ってダカダカ走るジョゼフとかマジ似合いそう。
でも他人の体を乗っ取れるのは完全者だろ
ムラクモは自分のクローンのみだっけか?
度忘れしてたわw
ちびうさを召喚したら各イベントどーなるか?
上の方で忍法ブラックホールとか言ってたけど、源為朝ならその弓矢で出せてたよ。
蘭学者ならポジトロンライフルも作れる。重くて持てないだけで。
グランゾンの力なら造作も無いことです
ブラックホール兵器といえばボラー連邦
ブラックホールと言えばヒュッケバインとか
ルイズがアインシュタインを召喚しました
…平民のじじいがなにやってもハルケギニアには影響ないな
ブルーノ!ブルーノ!ブルーノォオオオ!
>>728 城大爆破しといて「心配後無用!峰打ちでござる!」って言っちゃうヤツだからなw
結構面白かったよねあの時代のゲーセンゲーム
銀婚式夫婦の乗った船を撃沈して
「いや、峰砲撃だ」
なんてこと言う艦長が主人公な作品もあるけどな
>>738 そんなもん二次創作ならいくらでも改変できるぞ
原始惑星を呼び出した話なんかも存在するしな
だから書いてみればいいじゃない
それが面白かったらそれでいいよ
花の慶次から慶次、捨丸、岩兵衛主従と松風召喚
ギーシュは村井陽水みたく一皮むけるか千道安みたくボコられるだけかどちらかだな
>>769 そこは改変しちゃいけない基本設定のひとつだろ
>>768 なにその恒例のぶっ飛びおまけシナリオ
続編出ないかなぁ
アークUからエルク召喚したら……駄目だ、アニメ版の印象強すぎて母胎にされるのが出てくるイメージが
ゲーム版しか知らないがアーク世界の魔法は
基本的に精霊の力を借りる物だからエルフと仲良くなれるかもしれない
ギャラリーがルイズが平民を呼んだと騒ぎ立てる境界線はどこまでだろうか
見た目が人間に見えれば全身銀色のシルバーサーファーや全身青白く発光するマンハッタンも平民の範疇かなあ
コルベール「この原理を生かせば、風呂釜が出来上がるぞ!よし、試しに湧かしてみるか…
…うん?なんだかやけに泡だって…」
ルシウス「…プハァッ!!」
コルベール「んな!な、何者だね君は!?」
ルシウス「…?(平たい顔族ではない?ここはローマの属州の一部だろうか?)」
テルマエ・ロマエから、ルイズでなくコッパゲ先生がルシウス技師召喚(?)
その後香水風呂やサウナ風呂の問題点を改善。
再び魔法なしでローマに帰っていく。
>>776 Dや北野君はどういうカテゴリーなんだろうか
>>777 ルシウスは鏡から出てきたら逆に違和感あるレベルwww
平民うんちゃらを逆用したのがメカ沢くん召喚のやつだったな
テルマエ・ロマエを知らん俺は、ルシウスと聞いてマルフォイさんちの死喰い人を思い浮かべてしまった
金ギラ銀に輝いていて平民と罵られそうな人……
伊狩鎧! 6人目の戦士こと伊狩鎧を召還しようぜ!
強いけれど平民だし。
>>772 改変しちゃいけないような設定なんかあると思ってるのか?
その話がゼロ魔の二次創作だってことが説明されなくても理解できるぐらいになら
いくら改変したっていいんだよ
>>783 分かってると思うが、そういうのはこのスレじゃ歓迎されない
>>783 「なろうでやれ」とか言われる前に自重したまえ
なろうのやつは読んだ事無いな
タイトル見ただけでいつも引き返してる
魔女宅キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
誤爆した
ヽ | | | |/
三 す 三 /\___/\
三 ま 三 / / ,、 \ :: \
三 ぬ 三. | (●), 、(●)、 | ヽ | | | |/
/| | | |ヽ . | | |ノ(、_, )ヽ| | :: | 三 す 三
| | |〃-==‐ヽ| | .::::| 三 ま 三
\ | | `ニニ´. | |::/ 三 ぬ 三
/`ー‐--‐‐―´´\ /| | | |ヽ
おジャ魔女召喚
>>738は、言い方がケンカ腰なんでアレだけど、話の発端である
>召喚にはまず鏡をくぐらなければいけない
は 『改変してはいけない設定』かな?
ここのSSでも、本人の意思でくくらず 落とし穴の様な状態で召喚される事も多いし
ゲートをくぐる描写が無かったり 固定されているはずのモノが召喚されたりもしてる。
要は アイディアと書き方次第じゃないの?
791 :
790:2011/07/08(金) 21:23:54.22 ID:tvTv2386
キキを召喚したらフライしか出来ない落ちこぼれの没落貴族の娘とかいわれていじめられるのかな
ほうきを媒体としないと飛ぶこともできない落ちこぼれとか言われるかもしれない
というか、キキの飛ぶ速度や高度や飛行時間ってゼロ魔の魔法よりは優れてるんじゃないの?
ストパンのウィッチ達も、ストライカーユニット無しで召喚されたら 箒を使うんだろうか?
>>795 無手でもシールド使えるし固有魔法使えるからルイズからすればうらやましい限りだ。
>>796 そうすると、剣術使いで『盾』にもなれる モッさんはガンダにぴったり ということに。
破壊の杖は重火器に
シエスタの祖父は祖母に
そして竜の羽衣はストライカーユニットになるわけですね
シエスタの祖父って多分ゼロ魔クロスにおいて一番改変率高いよね
マクロス2の神崎ヒビキが召喚されたら
アンリエッタのスキャンダルネタに飛び付きそう
801 :
sage:2011/07/08(金) 22:51:39.60 ID:frlh83AF
最初の見せ場はギーシュとの決闘だろう。
たいていは降参して終わりだと思うが死亡ルートはあるのだろうか?
ルイズは「空を飛べないこと」に対して強いコンプレックスを持ってるからなぁ。
『瞬間移動』(100メイルくらいの短距離)の魔法を覚えても、
「こんな使いづらい呪文なんかより『フライ』の方が良かった」とか言うくらいだし。
>>799 そりゃ主役が別の世界から呼ばれる時点で違う誰かに代わってる可能性が高いから
>>801 殺す価値すらない。 殺すにしても大抵妨害されたりする事も多いし。
あー・・・じゃあアレだ
ギーシュが決闘で死ぬもしくは重体になって
不思議なこととか改造とか寄生とかで新たな力を得て蘇ったり
・・・考えてみてもあまり思いつかないが
屍鬼の血で人狼にでもなるか
狼繋がりでアインスト化でもするか
>>805 ギーシュがマブイをグリグリしたりするんですね、分かります。
>805 おい、そりゃガッカリウルフだろw
トリステイン魔法学院2年生ギーシュ・ド・グラモンは改造人間である
謎の亜人に襲われ瀕死の重症をおったところ天才メイジタバサに改造され一命を取り留めた
下っ端マリコルヌ・ド・グランドプレを引き連れて日夜戦い続けるのだった
と、本人は思い込んでいた
>>804 サウザー召喚でそういう展開だったな。
それ以外では片腕を切り落とされる展開があったような。
>>808 その設定だとモンモランシーが友達いなくなってしまうww
>>799 シエスタの祖父まで行き着かないものを考えると破壊の杖が一番改変率高いと思われる
ところで次スレは?
そろそろ次スレの季節
>>790 どのような形で鏡をくぐるかについては何も言ってないぞ
家ごと喚べばいいというのに対しての返しなのにさ
使い魔が大きければ鏡も大きくなるのは普通だし、固定されてようが召喚物であれば無茶もできる
けど、そのものでない建築物をどうもってくるよ
それこそレスついたように持ち運びできるのしかないだろう?
その様な討論は避難所へ
816 :
790:2011/07/09(土) 09:49:16.96 ID:3p0X2zbI
では
>>814へのレスは避難所の方へ書きますので。
ID:FUwZ72Saさん よろしくお願いします。
行ってらっしゃい
でもこういうのって
議論するよりSS一本書いた方が説得力あるよね
>>802 100mじゃな……
海を渡りたいのに100mづつしか飛べないんじゃ不便過ぎるだろ
なるほどトンデラハウスを召喚か
そういえばフライは何の系統?
ロックとかとは違う難しいコモンの部類に入るんだろうか
それとも風のドット?描写あったっけ?
ノボル先生が死ぬかもしれんって……
>>820 (以下、タバサの冒険1巻P36より)
タバサは落下の途中で、手に握った大きな杖を振りながら、ルーンを口ずさむ。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ」
ふわん! とタバサは落下の軌跡を変えた。
彼女がたどるはずだった空間を、落ち葉の刃がむなしく通り過ぎていく。
風系統の代表格、『フライ』の呪文だ。詠唱者は、翼を持たずとも自在に空を翔けることができるのだ。
しかし、『フライ』の呪文で飛んでいる間は、他の呪文を詠唱することができない。タバサは翼人の攻撃を避けながら地面に降り立つ。
クラスについての説明はないけど、まあ多分ドットなんじゃないかしら。
翼人で思い出したがクリスタニアのジェノバとか
そーいや弓を使うキャラクターはあんまりいない気がする
魔法が下手で弓を使うメイジ、みたいなキャラがいたら出しやすかったかもね
弓に関しては名手なのがいたな、ご主人様は山猫姫に出てきた主人公、今では一国の主っぽいけど
>>820 ドットだよ。
そうでなければ、1巻初頭でルイズ以外の全員が飛べたことがおかしくなる。
ノボル先生の手術成功して欲しいですなぁ…
以前に癌で胆嚢を摘出しているはずだから、おそらく今回のは転移・再発したってことなんだろうな。
ノボル先生には本当に頑張ってもらいたい。
>>819 初めてIDがかぶったぞw
一戸建住宅なのにかぶることもあるんだなあ。
ゼロ魔あと3巻宣言は病気も考えての事だったのかな
ということは結構せっぱつまってるってことか…
カリンちゃんといらんこの仕事も残っているというのにどうしてこうなった
まだハルケにいくには早すぎるぜ……。
ちょっと鏡探して水の秘薬取ってくる
三国志演義から呂布召喚
あっちこっちに裏切っては付き裏切っては付きを繰り返しそう
それで戦場では魔法も使えないのに最強だったりとか
マイナーで恐縮だが、ジパングの艦から小栗上野介を召喚。
文武に秀で西洋事情にも詳しい。(勝海舟とともに渡米している)
錬金+炎+風の魔法でスチームハンマーを設計する。
その他では財政再建、軍事教練などがあるだろう。
コルベール先生の出番も増えると思う。
マザリーニ枢機卿の相談役にもなるだろう。
才人達の敵に回りつつガリアやロマリアを引っ掻き回してくれると面白くなりそう
ノボル先生が重病か。そういえばクレしんのうすい先生が行方不明になったときはここでもかなり騒がれたっけなあ
トンデラハウスか……懐かしいな
タイムブックはないのか?
トンデラハウスか、あれでロンゲつれてきちゃうとえらいことになりそうだ。
ハルケギニアならひげロン毛の代わりに始祖魔法使いに会える。
FEシリーズのキャラが召喚されたらどんな感じだろ。マムクートなら韻竜、魔導師系ならメイジ扱いになるかな?戦士系ならどうだろ。
ミネルバとかアルテナとかのドラゴンナイトを召喚して「その竜よこしなさい」とか言い出す様が目に浮かぶ
……でも、顔のわりには意外と愛されてるアーダンとか召喚してみると、面白いことになるかもしんないw
ザジとマジを召喚。
「フェイスチェンジ!?見分けがつかないじゃない!」
「「……」」
そろそろDBクロスが読みたいなー
漫画原作版ゲッターロボからスカウト前の神隼人を召喚
アンリエッタの乗った馬車が通る橋を崩落させたり、マリコルヌに「目だ! 耳だ! 鼻!」をやったり
>>845 何の因果かルイズの股間に刻まれるルーンとな
・・・今まであったっけ、契約で局部に焼印
ご立派様
>>838 「あれ?アパートでネトゲしてたはずなのに・・・・・・
ブッダ?ブッダどこー」
坂田銀時を呼んだら銀魂的に股間に刻まれそうだ
そういや銀魂の人もう長いこと見てないな
852 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/10(日) 15:06:35.86 ID:PGwqE5ad
被災して死んだんじゃねwww
855 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/10(日) 19:17:04.97 ID:vEdzeaNU
召喚では無いが、ルイズの血筋を影から守る邪魅っていうのを妄想した。
856 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/10(日) 19:17:15.43 ID:vEdzeaNU
召喚では無いが、ルイズの血筋を影から守る邪魅っていうのを妄想した。
すまんミスった。二回書きこんでしまった
フォーク准将が召喚されました
ルーデルとヘイヘを同時召喚
ただし複座機は無い。
純粋な戦闘能力じゃなくて将官として有能な人物とかが見たい
栗林忠道、ハインツ・グデーリアン、エンヴィル・ロンメル、エーリッヒ・フォン・マンシュタイン、チェスター・ニミッツ、ゲオルギー・ジューコフ、カール・グスタフ・エミール・マンネルヘイム等々
えっ、冷静な人物ばかりって?
そりゃ気性の激しいハルゼーとかじゃトリステイン軍部の将校を殴り倒して一悶着ありそうだからな…
神重徳大佐は奇策で翻弄してくれそうだな
あとはその能力を書ききることが出来る能力を持つ人を、じっと待つだけだな。
ユダヤ人に劣るハルケギニア人のためにアーリア人種である第三帝国軍人が(ry
ふむ
スーパーアーリア人召喚か
で、ハルケギニア連合が結成されて麻雀大戦、と
>>861 問題はどの作品から彼らを召喚するかだな。
現実からの召喚ではクロスにならんぞい(スレタイにも合わないし)。
>>867 だいたい皆回顧録を書いてるから大丈夫
本人が書いてなくても別の人が書いてるので出てきてる場合があるから、そっから登場させればおk
まとめにあるルーデル召喚SSは、本人の回顧録から登場させたために物議を醸し、その結果更新停止したわけだが。
よく分かんないけど回顧録駄目なのかよw
じゃあ戦記?861の人達はだいたい登場するしな
まあ、一番の問題はそれが面白いかどうかに限ると思うが
読み手の共感を誘えて、書き手の自己投影が少なくて、ちゃんと話を書けていれば文句は少ないんじゃないか
というか、書かれてない作品について愚痴愚痴弁明するくらいなら
>>870が書けよ
小林源文作品から、ゴロドクだな
「なんてこった!バアサンだけでなくガキまで、魔女がこんなにいやがる!?」
(魔女のバアサンとは日本でいうところの山姥らしい)
スクランから(マグロ漁船から帰還した)播磨召喚。ハルケギニアに漫画で革命を起こす。
しかも青髭がお嬢を、ティファが塚本妹を召喚していた。
…ルイズいらない子だな
>>861 天下無双 江田島平八伝から山本五十六召喚。
どれだけ史実に近いか詳しくないが少なくとも
本編では平八を瀕死の重症にもかかわらず援護していたので
戦闘能力は高いほうだと思う。
硫黄島からの手紙からバロン西を召喚。
男爵というから貴族的な雰囲気がある。
学院の宝物庫にあったのは愛用していたハーレーのバイク。
品評会では金メダリストの馬術を披露するというのを思いついた。
え、ガロン塚本を召喚?
キュアマリン召喚
ガンダムSEEDよりラウ・ル・クルーゼ召喚。
そこはフラガさんを
アリアンロッド・サガ・ブレイクからフラガラッハのアゼザルさんか。
>>877-878 神の左手ムウ・ラ・フラガ
神の右手レイ・ザ・バレル
神の頭脳ラウ・ル・クルーゼ
名前を記すのも憚られる者アル・ダ・フラガ
こうですか分かりません!
Xアストレイが凄い勢いでお前の方に飛んでいったぞ
テスト
種で死亡した連中がのきなみテファのとこ行きでウェストウッドが種村に
盗賊をぶちのめす新旧三バカ、親子再会したフレイ、のんびりチェスするラウとデュランダル
一方イザベラはミーアから人気とりのレクチャーされてアイドル女王に
ルイズおきてきぼりか。新しいな、期待している
まあ種キャラがルイズに召喚されたら、大抵が才人より酷い状況になるのが目に見えてるしな
特に女の子に腕相撲で負けたり、戦艦内を少しマラソンしただけでバテるスパコ(笑)
さんとかな
某スレで絡んだ状況が書かれてて思ったけど
まどマギのキャラってルイズたちと絡んだら面白くなりそうな要素満載だよな
でも書いてる人がぜんぜんいない(´・ω・`)
QBがルイズに契約を迫るのか
>>861 将官として有能でかつ戦闘力メチャ高く漫画的なエピソードもリアルで持ってて
さらに麻雀力も某漫画で折り紙付きのスコルツェニーさんとかどうでしょう?
>>890 召喚されたとたんに間髪入れず「私と契約して使い魔になってよ!」でゴリ押しでw
でもQBって戦闘でも私生活でも全く役に立たないよね(´・ω・`)
ほむほむでも召喚したら大抵の敵には圧勝できるのに
種キャラなら、レイに母さんと甘えられてさすがに困り果てるタリアを見て親近感を覚えるワルド
タルブでのんびり農業にせいをだすザラ夫婦やサトー親子
にじふぁんに種世界キャラがゼロ魔世界にやってきて無双する『科学で魔法を始めよう』ってSSがあったな
あえて胡散臭いばっかで全く役に立たないQBを召喚して役立たせてこそSS作家の本領発揮だろう。
ほむほむだのまどかを召喚したらルイズ的に成長する余地がなんもないだろ。
ルイズがQBから詐欺の技術を学べば良いんじゃないかな
>>892 QBと魔法少女になる契約をしてしまったら基本的に破滅確定なのがなぁ。
後ほむらはルイズガン無視で意地でもまどかの元に戻ろうとするから話が成り立たん。
ルイズってフライやレビテーションは使えないよな?
原作やアニメで使ってる描写あったっけ
虚無に目覚めた後はコモンスペルは使えるようになったぞ
あれ?でも有効活用してないなそういや
そういえばフライとレビテーションは風属性だったような気がするけどみんな使えるもんなのか?
ヴァルキリープロファイルからプラチナが召喚されました
>>902 以前あったな
途中で止まったのが残念だ
こんなにすごいぞ! ガリア王家
先代ガリア王:ほとんど描写が無いからよく分かんないけど、原作を読む限りでは理由を全然説明せずにいきなりジョゼフを王様に指名しちゃったっぽいぞ!
ジョゼフ:頭の回転は速くて「やる」って言ったものは部下に必ずあげるけど、幼い頃から弟に負け続けてきたせいで心根が歪んじゃって、どんな大事件を起こしてどれだけ大量殺戮して誰が死んでも『どうでもいい』としかとらえられなくなっちゃったぞ!
シャルル:魔法に関してはハッキリ言って天才でみんなからの人望も厚い人気者だったけど、実はお兄ちゃんに負けたくなくて死ぬほど努力してて、影では反ジョゼフ派を焚き付けて味方に引き込んだり裏金を使ってたりしてたぞ!
シャルロット:若くして花壇騎士になったり劇中ではスクウェアクラスにレベルアップしたりとかなり優秀だけど、才人が絡むと親の仇のことさえコロっと忘れちゃうぞ! 最近では「弱い方がサイトに守ってもらえて得なんじゃ?」とか考えてるくらいだ!
ジョゼット:女王をほっぽり出した双子の姉に代わって自分が女王をやってるけど、
ジュリオが絡むと「利用されててもいいから一緒にいる」とか「使い魔に召喚されるのがジュリオじゃなければ今ここで死ぬわ」とか、そんな感じになっちゃったぞ! ぶっちゃけヤンデレだ!
イザベラ:物心ついてから父親からの愛情を全然注いでもらえなかったり、優秀な従姉妹へのコンプレックスとかで色んな人に当たり散らしてたけど、
北花壇騎士団の団長は一応ちゃんとやってたし、コンプレックスが解消されてからはジュリオ相手に駆け引きしたり、政治面ではシャルロットに意見したりしてたぞ! 一番マトモだね!