あの作品のキャラがルイズに召喚されました part286
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part285
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1290492458 まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
スレ立て乙です!
スレ番ずれたまんまか
>3
正直すまんかった
それではちょっと失礼
よかったら10分後に投下します
クリフが目を覚ましたのは、ルイズの部屋だった。
「ん……あ、いててて……」
起き上がると、頭に軽い痛みが走る。毛布を敷いた床の上に寝ていたようだ。
「ううむ……」
「あら、お目覚め?」
ヴォルフの声が聞こえた。振り向くと、ヴォルフはルイズの机の上のノートをめくっていた手を止め、ぱたりと閉じた。
どうやら少しの間、気絶してしまっていたようだ。ルイズの使った不思議な『力』に吹き飛ばされ、頭をぶつけて気を失ったらし
い。
サイコキネシスで障壁を作ったのだが、どういうわけか力がほとんど集まらなかった上、突き破ってきた圧力に吹き飛ばされて地
面に転がった……ところまでは憶えている。
「そんなに時間は経ってないわよ」
ヴォルフは窓の外を親指で指しながら言った。見れば、太陽の位置はほぼ変わっていない。
「キクロプスは? それと、ルイズちゃん」
「キュクは厨房へお願いしに行ったわ。なんだか、今朝知り合ったメイドを見かけたらしくて、その子を通してお願いするとか。お
嬢ちゃんはそこのベッドの上」
ルイズはベッドの上に寝ていた。見た感じでは、大きな怪我はなさそうだ。
「ビックリしたわよ、いきなり爆発して。なにあれ、まるで魔法みたいね。杖を振るなんて」
「ああ……なんだったんだろうな、不思議な『力』だった……」
「あら、クリフでも分かんないの? ふーん、でも自爆してたら世話ないわよね」
どうやらルイズの使った爆発は、やはり彼女自身ごと僕を吹っ飛ばしたらしい。
「……ここまで運んでくれたのか」
「離れてたから、アタシとキクロプスは無傷だったしね。その子もあんたが盾になったおかげで、大事にはなってないわ」
「それは良かった」
「全くね。この子性格は悪いけど、こんな綺麗な顔に傷でもついたらコトだし」
「……僕は結構な勢いで頭を打ったんだが」
「それは災難ね。でも女の子を守ってついた傷なんだから名誉の負傷ってやつよ」
……。ううむ。……ま、いいか。
「それで、キクロプスはいつ戻ってくる?」
立ち上がりながら、クリフは聞いた。
「そろそろ帰ってくるんじゃない? そんなに長くはかからないと思うけど」
「そうか……じゃあ、この子が起きるまで待つか」
「待たなくていいわよ、起こしちゃいましょ。別にだいじょぶよ」
ヴォルフはそう言って、ベッドに横たわるルイズの肩を軽く揺すった。
「うう……うにゅ、んにゃ……ん、あれ?」
ぽかんとした顔で起き上がってくるルイズ。
「起きた?」
「え……あれ、ここ……」
「あんたの部屋よ。あんたが気絶しちゃったもんだから、運んできたの」
「えっ! ちょ、ちょっと今何時?」
「さあ? 時計見たら?」
「あーもう! 完全に遅刻よ! ……はぁ。もういいわ、次の時限から出ましょ……」
「あら、サボり? ダメよ、ちゃんと出なきゃ」
「うるさいわね! あんた達のせいでしょ!」
「無視してさっさといけばよかったのに」
「そんなわけにはいかないわよ! 何よ勝手に、食堂で働くなんて相談もせずに……」
「言えばよかったのかしら。じゃあ、これからアタシ達あそこで働くけど、いいかしら?」
「ダメって言ってるでしょ!」
ふう、とヴォルフは肩を竦めた。
「まったくワガママなお嬢ちゃんねぇ」
「どっちがよ!」
「しょうがないじゃない」
「ダメったらダメ!!」
言い合いをする二人を見るクリフの後ろで、キィ、と扉の開く音が聞こえた。
振り向くと、ドアの前にキクロプスが立っている。
「ああ、キクロプス。帰ってきたのか」
「…………話はついたぞ」
「あら、ホント? そりゃ良かったわ」
「え……?」
ルイズが今にも泣きそうな声を出した。
目を見開き、ひどく悲しそうな顔をしていた。
裏切られたような、置いてけぼりを喰った子供のような、どうしていいか分からない場所に放り出されたような顔。
「え、……嘘、でしょ……?」
声が震えていた。
「本当に……? ……もう、決まっちゃった……の……?」
……うう、そんな風にしないでくれ、胸が痛む……。
「……残念だけど、アタシ達も食わなきゃ生きていけないのよ。お嬢ちゃんには悪いけど、ね」
さすがにヴォルフも困った顔をしていた。先ほどまでのからかう調子は鳴りを潜めている。
「ま、しょうがないわよ。人生そんなこともあるわ、気を落とさないで」
ヴォルフはルイズの肩をポン、と叩いた。
涙が目の端から浮かび上がり、震える指先が毛布を揺らす。ルイズが俯く。大粒の涙がぽろり、と毛布に落ちた。
「……ちょっと。そんなに落ち込むことないじゃないの。どうしたのよ急に?」
何も答えず、ルイズが膝を抱える。くすん、くすん、と静かな嗚咽が室内に響いた。
気まずい静寂が周囲に広がった。ルイズの静かな泣き声だけが、耳朶を打つ。
……。どうしよう……。そんな、泣くとは思わなかった……。
「えーと……参ったわね……」
ルイズが泣き出したことで、ヴォルフもどうすればいいのか分からないようだ。正直自分も分からない。参ったな、これは……。
「……なんだかずいぶんと買われてたのかしら……」
うーん……。使い魔、というのはそんなに大事な事だったんだろうか……。
ヴォルフがルイズの頭を、大きな手で包むように撫でた。困ったように頭を掻く。
「ほら、泣かないの。本当にどうしたのよ? あーもう……」
「…………なにがあったんだ?」
眼前の光景にキクロプスが疑問の声を上げた。
「うーん……厨房で働くって言ったら、ルイズちゃん泣き出しちゃってさ……どうしたものか」
「…………む。……そうか。……その話なんだが……」
ルイズがビクリ、と体を強張らせた。
「いやキクロプス、それはまた後で……」
「…………む……いや、そうではなくて……」
「ちょっとーキクロプス、タイミング考えなさいよー。泣いちゃってるのよ?」
「…………いや……そのな……実は……」
? なんだろう、やけに拘るな? キクロプスは周囲を無視してまで主張するようなタイプではないんだが。
「……メよ……」
泣くルイズから、ぼそりと声が漏れた。ヴォルフがフォローに入る。
「ああ、ごめんなさいね。ちょーっと空気読めてなくて……」
「…………いや、聞け。……マルトーという親方が言うには……」
「……ダメよ、ダメ。……ダメ、ダメ……ダメよそんなのー!!」
がばっとルイズが立ち上がった。
「わっ!?」
突然大声でわめき出したルイズに、ヴォルフが驚いて軽くのけぞる。
「ふざけんじゃあないわよ!! なぁにが「厨房で働く」よ!! そんなの、絶対認めるわけないじゃない!!」
「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん?」
「ダメよ!! そんなのダメ、絶対許さない!! ノー!! お断り!! 認めないったら認めない!!」
ルイズは叫びながら、机に走り寄り引き出しを開けて、何かを取り出した。ロープのように長いそれを、ヒュンと風を切って回す。
「ごごごご主人様のめめ命令を聞けないならばば罰をああ与えなきゃ!!」
その先端が床を打つと、バシンと小気味のいい音が響いた。鞭!? う、嘘だろ!?
「あ、危ないってルイズちゃん! ちょ、ちょっと落ち着いて……!」
「ええー!? なに考えてんのよ、ま、待ちなさい!」
「もも問答むむ無用よ!!」
「うわぁ!」
ルイズの振るう鞭がヘビのように伸びてきた。ビシィと肉を打つ音。ヴォルフに鞭があたった。
「ぎゃっ! いったぁー! 待ちなさい、ちょっとー!!」
「うううるさーい!!」
返す刀でルイズの鞭がこちらに来た。危ない!
クリフはとっさに念動障壁を張った。しかし十分に力が集まらず、捌かれた鞭が向きを変えてヴォルフに直撃する。
「アウチ! っいったー!!」
「あ、すまん」
「すまんじゃないわよ!!」
ヴォルフが抗議する。すまん、本当は止めるつもりだったんだが……。
しかし、次の鞭は来なかった。
怪訝に思って見ると、ルイズは鞭を振るう手を止め呆然としてこちらを見ていた。
「……ね、『念力』……!? いや、先住……魔法……!?」
あ、しまった! 見られた!
「……嘘! え、エルフ!? いやでも、人間よね? え!? どうして!?」
ルイズの目が見開いていく。しくじった、つい危機を感じて使ってしまった。
「……あー、いや、今のはその……」
「なんで!? どうして!? あなた、メイジだったの!?」
「メ、メイジ? なんの事だか分からないんだけど……」
え、なんだそのメイジっていうのは?
「なんで、なんで隠してたの!?」
「い、いや違うよ、何かの見間違いじゃ……」
「どうしてごまかすのよ!」
ああダメだ、完全にバレてる。
はぁ、とクリフは溜め息をついた。本当は、少なくとも色々と詳しい事が分かるまでは隠しておきたかったんだが……。
「うーん……しょうがないな……」
ここが異世界だと判明した以上、隠す意義が薄れてはいたのだが。異能の『力』を見せると大抵はロクなことにならないんだよな
ぁ。特に僕とヴォルフのはイメージとか視覚的に。
だいたい警戒されたり恐れられたり、胡散臭そうに見られたりとあまり嬉しくない感情を向けられるから……。まあ、仕方ないか。
言い訳はできなそうだ。
「つまりその……ちょっとした、不思議な力をさ……使えるんだ、僕は」
クリフはボソボソと、呟くように言った。ルイズはぽかんとしている。
「サイコキネシス……念動力っていうやつさ。さっきみたいに弾いたり、触れずに物を浮かしたり、投げたり曲げたり……そういっ
た、ちょっとした事ができるんだ」
本当はちょっとしたどころではないんだけど……。全力で展開したら有視界空間内の力学的物理法則を支配する……。
ジャバウォックやキースがいたな。……ほとんど、支配する、なんて言ってもなぁ……。
クリフの横で、シュウシュウという音がヴォルフから聞こえた。ルイズに鞭で打たれ、裂けた肌が元に戻っていく。
「……あ、あれ? き、傷が……」
瞬く間に傷は塞がり、そこには何事もなかったかのような綺麗な肌があった。
「……便利でしょ? 治っちゃうのよねーこれが」
ヴォルフが傷のあった腕を見つめた。
「……アタシはね、『不死身』なのよ。ガン細胞の応用ってやつでね、怪我をしてもほらこのとおり、すぐに元通りってわけ。まあ
そのちょっと……初めて見たら、びびっちゃうかしら?」
少し悲しげな瞳をルイズに向ける。
「あ、ついでにそこのキクロプスは透視が出来て目から火とか出せるわよ。キャンプの時は便利なのよ?」
そう言って、くい、と親指で戸口に立つキクロプスを指した。
ルイズは信じられないものを見るように呆然としていた。無理もない、誰だってそういう反応を返すのが普通だ。
ああ、失敗したな。これは嫌われたかな……。ここを追い出されるかもしれないなぁ……。
「どうして……?」
わなわなと手を震わせるルイズ。あ、怖がられてる……。こんな可愛らしい子を怯えさせたくはなかったんだけど。
そうして震える手を口元に持っていき―――そして、明るい笑顔を浮かべた。
「どうして言わなかったのよ!? すごいじゃない、なにそれ!」
……えっ?
「全然ただの平民じゃないじゃない! すごいわ、先住魔法に再生だなんて! それに火を出す!? きゃあ、やったわ!」
ルイズは飛び跳ねるように喜びを表した。
「失敗なんかじゃない! ゼロなんかじゃないわ! やった、やったぁ! 強力な使い魔よ、それもこんなの聞いたことないわ!」
小躍りしながら嬉しそうに笑う。あ、あれ……? おかしいな……?
「なによなによ、それならあんなご飯なんて出さなかったのに! どうして言わなかったのよ! やったー!」
そう言って驚いて床に取り落とした鞭を拾い、ルイズが構えた。
「も、もう一回! もう一回見せて! ちょっと打つから!」
「えっちょ、ちょっと待ってくれ!」
ええ、怖がってない!?
「な、なんでよ!? ストップ、待ちなさいよ! てゆーか怖くないの!?」
「なんで怖いのよ! さあ! 行くわよ!」
ヴォルフを制止する声を出すが、ルイズは興奮して聞く耳を持たない。
ぶぅんと鞭が振るわれた。クリフ達はたまらず部屋の中を逃げ回る。
「ま、待ってくれ! あぶな、危ない!」
「なに考えてるのよこの子ー!? なんでそうなるのー!!」
メチャクチャに振るわれた鞭の先端が、壁や床を打つ。建材が剥げ、木板が弾け飛び、ランプが割れてガラスが舞い、枕が裂けて
羽毛を散らした。
「逃げるなー!」
「逃げるに決まってるでしょー!!」
ルイズは笑顔で鞭を振るう。怒ってないだけマシかも知れないが、少々危険すぎる。
転がるようにクリフはキクロプスの脇を抜けて部屋から脱するが、しかしそこに鞭が飛んできた。あ、キクロプス避けろ!
刃物を抜く音。金属の鈍い光が煌いた。
ぽとり、と切り裂かれた鞭の先端が地面に落ちる。ルイズが目を丸くしていた。
「……あ……」
「…………ちょっと、落ち着いてくれ。……なにがなんだか……」
逆手に持ったナイフが、キクロプスの手元に輝いていた。
自慢の鞭があっけなく切り飛ばされ、ルイズの動きが止まった。
「……あ、うん……」
ベッドの陰に頭だけ隠していたヴォルフが、ゆっくりと顔を上げる。
「……止まったの? ……あっぶないわねー……わけわかんないわよー……」
ふう……焦った、予想外すぎる反応だった……。
ルイズがぺたんとその場に座り込んだ。そして、こちらをじっと見つめる。
「……ダメよ。……厨房なんて、許さないから……」
神妙な声で呟くルイズ。どうやら鞭を飛ばされたことで落ち着いて、状況を思い出したようだ。
「……ご飯だったら、ちゃんとあげるから……わたしの使い魔、やりなさいよ……」
可愛らしく眉根をよせて、せがむように言う。その様子に、クリフ達は顔を見合わせた。
「……今朝のは、悪かったわよ。……たしかに、ちょっとひどかったわ。それは、謝るから……」
部屋が静けさに包まれた。クリフ達の返答に少し怯えるようなルイズの鳶色の瞳が、窓からの陽光を映して光っていた。
しかし、ずい、とキクロプスがルイズの前に出て、ゆっくりと口を開く。
「…………それなんだがな、……話を聞いたところだな……」
「……うん」
「…………厨房で働かせてくれ、とかけあってみたんだが……」
「……」
「…………そこの料理長が出てきてな……飯は食わせてもいいと言うんだが……」
考えて喋っているような、ゆったりとしたキクロプスの口調に、ごくり、とルイズが息を呑んだ。
「キュク、ちょいストップよ。……ご飯食べれるんなら、アタシは別に……」
ヴォルフが口を挟んだ。
「まあなんていうの? ご飯とか……今の鞭とか、とんでもない真似しなきゃ構わないわよ。でしょ、クリフ?」
……ふむ。まあそうだな……。あんな悪ふざけをしないのなら、別に僕も問題はない。今の反応を見るに、この子は僕達を忌避する
わけではなさそうだし……。
「……うん。僕も構わないよ。元々は、そのつもりだったし……」
「そうね。じゃあ、それで……」
ルイズの顔がぱぁっと輝いた。
「じゃあ、使い魔やってくれるのね? やったわ、あはは!」
その笑顔に、クリフは思わずはっとした。なんて綺麗な顔で笑う少女なんだろう。こんな笑顔を見たのは、いつ以来だったか。
ああ、そうだ、全員の生き残りを賭けて、危険な任務に身を投じるようになる前。
失敗はチームすべて死、役立たずな部門の人間は揃って足切りという強烈なプレッシャーの中で、ギスギスした気分の毎日を送る
ようになる前は―――ユーゴーと、キャロルの笑顔が、こんな、ふうに……。
「キクロプスもいいわよね? 問題は解決したんだし」
「…………いや、その……む、……そうだな……」
ヴォルフの問いに、少し戸惑いつつもキュクロプズも同意した。
「じゃ、決まりね。そういうことよ、『ご主人様』」
「ぃやったぁ!! やったわ、強力な使い魔よ! それも三つも! これでキュルケも何も言えないわ! うふふ、うふふふ!」
ルイズは飛び跳ねて全身で喜び、可愛らしく笑って踊る。
「あらあら……なんだか珍しい子ねー、何を喜んでるのか分かんないけど」
ヴォルフは首を傾げた。ルイズの態度がいまいち要領を得ないのだ。
僕も、ちょっと不思議だった。今までは「同類」以外はただ恐怖されるか、攻撃されるか、もしくは利用しようと企むような連中
しか見た覚えがなかった。
それが、この少女は嬉しそうに笑い、喜び、歓迎している。何故だろう?
そういえば、昨日コルベール達も念動力らしきものを使っていた。ここでは意外とありふれたものなのだろうか? しかしヴォル
フを怖がらないとは……。
「やったやった、えへへ、うふふ。……あ、いけない! そろそろ次の授業始まっちゃう!」
ルイズはふと我に返り、机の上の水の入ったガラスの皿を見つめた。日時計と水時計の混合のようなものだろうか。
「さ、あなた達も用意しなさい! 今から出ないとまた遅れちゃうわ。急がないと!」
「え? なんでよ、アタシ達も行かなきゃいけないの?」
「さっき中庭でも言ったでしょ! メイジと使い魔は一心同体、授業も一緒に出なきゃ!さあ、急いで急いで!」
てきぱきと準備して、クリフ達をぐいぐいと押すルイズ。
「さ、行くわよ! ゴーゴー!」
全員が部屋から出ると、ドアに鍵をかけてルイズは歩き出した。少しスキップしている。
「……なにかしらねぇ、もう」
「うーん。とりあえず、ついて行こうか」
クリフ達もルイズの後ろについて教室に向かう。普通に歩けば、間に合うくらいの時間はあるようだ。
「…………なぜ……誰も話を聞こうとしないんだ……」
ポツリと悲しげに、横でキクロプスが呟いた。
今日は以上です、ありがとうございました
もしかしたらの話ですけど夜中にもっかい投下するかもしれません
……あ、でもあんまり一人でガンガン出すのはよくないのかな?
乙
時間が空くなら気にしないでいいんじゃないのか
・・・俺も久々に書いてみよう、スランプ脱せたかなー
あんま連発すると書き溜めた分が切れたとききついと思うが。
乙
『魔王』は使えなくなってるのか・・・いや、アレが使えたらレコンキスタ全滅フラグだけどさ
乙
大規模な知覚が出来るのに力場の展開は極限られたものになってるとはね
ヴォルフの再生力は変わってないみたいだし、ガンダールヴとの相性かな?
となると、キクロプスはバッチリだな!
投下乙
クリフ無双も見たい気がする
そこで、どこからともなく聞こえてくる「力が欲しいか」ですよ
働かなければ生き残れない!
働きたくないでござる!
絶対に働きたくないでござる!
でも、スゲー強い奴が出てきたら・・・?
ARMS乙
どっかに猿が召喚されてたりしてな。
「ベンが完全武装している!!」
「働くぐらいなら喰わぬ」
>18
「我も無いけど心配するな」
失礼します、ごくごく短いですが10分後に投下を再開? します
中断してたの?
「じゃあなによ、結局タダメシ食えたんじゃない」
教室のドアをくぐりながらヴォルフが言う。
キクロプスの話によると、厨房で働かせてくれと頼んでみたはいいが、貴族の使い魔を横取りするようなことはできない、と断ら
れてしまったらしい。
ただ、食事はまかない食でいいなら好きなだけ出す、いつでも食べに来てくれということだった。
「…………ずいぶん気のいい親父だった……親切な話だ……」
キクロプスは感動しているようだった。表情があまり動かないので分かりにくいが。
「いい奴もいたもんねぇ。こりゃラッキーだわ」
「…………全くだ」
クリフ達はルイズの後ろについて低い階段を登る。教室はちょうど大学のような浅い傾斜のある形式だった。ただ、全て石ででき
ているのが違う。
へえ、とクリフは思った。自分もこんなところで講義を受けてみたかったなぁ。
クリフは三人の中で唯一多少の教育を受けているが、それはイメージとして能力を引き出すための簡単な物理学や構造学、部隊の
リーダーとして機能するための教育だった。真っ白で無味乾燥な無菌室の中で、毎度変わる白衣を着た男、もしくは軍人然とした威
圧的な男達に、マンツーマンで教えを受けたものだ。
他の雑学についても、成人して正式に部隊が発足してから得たわずかな自由時間の間に、趣味で覚えた程度のものでしかなかった。
だから、こういう学び舎というものでの学業にクリフは羨望に近い感情を抱く。
ルイズが席につくと、クリフ達は生徒たちの勉強の邪魔にならないよう通路の隅に立った。
「? どうしたの、椅子に座ればいいのに」
「いや……僕達はここでいいよ」
ルイズが勧めてくるが、クリフは断った。なんというか、学生達と同じ椅子に座るのは気が引けたのだ。
先ほどからこちらに向けられる好奇な視線もそうだが、子供達の空間に大人の自分達がいるというのはどこか場違いを感じたから
だ。なんだか無性に気恥ずかしい……。
とはいえ、そう感じているのは自分だけだろう。キクロプスは動きにくいところが嫌いらしいし、ヴォルフとしては単純に普通の
椅子では窮屈すぎるだけなのだろう、通路の段差に腰掛けていた。
周囲を見回すと、大小様々な動物たちが室内をうろついていた。見知った生き物も多くいるが、なによりも不可思議な生き物達が
いやに目につく。
「……なんだろうあれ……」
空を浮く巨大な目玉がいる。わけがわからん……。どうやって飛んでるんだあれは……。
ルイズが席についてから、すぐに教師は入ってきた。紫のローブをまとった中年の女性だった。
「こんにちは皆さん。使い魔召喚の儀式は、大成功のようですね。私シュヴルーズは、こうして毎年皆さんの使い魔を見るのが楽し
みなのですよ」
にこやかに微笑むシュヴルーズ。
「それにしても……ずいぶんと大勢召喚したものですねぇ、ミス・ヴァリエール。普通は一人一つのはずなんですけども」
多少興味深そうな顔をして、クリフ達に視線を向けた。教室がどっと笑いに包まれると、あら、とちょっと心外そうな顔をした。
「おいおいルイズ、召喚できなかったからって傭兵達でも雇ったのかよ!」
周囲から馬鹿にする声が飛ぶが、ルイズは泰然とした態度を崩さない。口元には笑みが浮かんでいる。
その様子に、ゆっくりと野次が止んでいく。白けた空気が教室に流れた。ルイズはふん、と鼻を鳴らして腕を組む。
ルイズを囃していた生徒達は、なぜか自信満々なルイズを見てクエスチョンを頭に浮かべていた。
「……なんだよルイズ、不気味なやつだな。できなかったんだろ、『サモン・サーヴァント』」
小太りの生徒がそう言うと、クスクスとした笑い声が上がった。
ルイズは意地の悪そうな声の響きに、少し気分を害したような表情を一瞬だけ見せる。
そこで、隣の通路に座るヴォルフがこっそりと呟いた。
「……なんだか知らないけど、相手の手に乗っちゃケンカは勝てないわよ。……主導権を取らなきゃ」
その言葉に、はた、とルイズはつまらなそうに頬杖をついている大男に視線を向けた。
「ほら、なにか言い返してみろ『ゼロ』のルイズ!」
小太りの生徒は少々しつこく食いついて、なおもからかおうとしている。
ルイズは少し考えるように顎に手をやり、一瞬の間を置いてから、
「……「ただの」フクロウごときの使い魔のくせして、ずいぶんと偉そうね『かぜっぴき』」
と言い返した。
「な、かぜっぴきだと? 僕は『風上』のマリコルヌだ!」
「はいはい、ガラガラうるさいから薬でも飲んで寝てなさい。デブが感染りそうだから話しかけないで」
ルイズのカウンターに周囲の女の子達がぶっと噴き出した。相手にしないといった風で目もくれずに、ルイズは淡々と机の上にあ
る自分の教科書やノートを広げている。
「な、なんだと! ミセス・シュヴルーズ、ゼロのルイズが僕を侮辱しました!」
「あーあ、恥の上塗りね。男のくせに先生に言いつけ?」
「なぁ!? も、もう一度言ってみろゼロ!!」
からかったはずの男の子は、気づけばルイズとの立場が逆転していた。興奮して顔が紅潮する彼を、周囲の男子が「お前の負けだ」
「やめとけ、恥ずかしい」などと言いながら抑える。
「……言うじゃない、あんた」
横に座るヴォルフがニッと笑うと、ルイズは机の下でガッツポーズをして見せた。……なんだか、大人が子供にあまりよろしくな
い影響を与えてしまっているような気がするんだが……。
「はいはい、お友達をあまり悪く言ってはいけませんよミス・ヴァリエール。授業を始めますよ」
こほん、と咳をつくと、教壇に立つシュヴルーズは軽くお辞儀をした。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。これから、皆さんに一年間『土』系統の魔法を皆さんに講義します」
魔法……。また魔法か、とクリフは思った。ここに来てから、幾度となく聞いたフレーズ。
「魔法の四大系統と虚無は皆さんご存知ですね? この学園で一年間学んだ皆さんは、もちろんご存知でしょうからここは省きまし
ょう。しかし、基本を忘れてはいけませんよ?」
そう言って、軽く杖を振る。机の上に、突如としていくつかの石ころが現れた。あれ、なんだ? 今のはどうやって出した?
「私は四大系統でも『土』が一番重要だと考えます。それは私が『土』系統のメイジだから、判官びいきしているわけではありませ
ん。『土』系統の魔法は皆さんの生活に密接に関係しているからです。これがなければ宮殿をはじめとするあらゆる建物、この学園
を建てるのにも大変な労力を伴うものでしょう」
ふと、クリフの脳裏に学園のレンガが思い浮かんだ。昨日の夜に調べた、不思議な謎の力で加工された強固なレンガ。
なんとなく、こっそりと教壇の石を『魔王』で触ってみた。これはただの石ころか?
「農作物の収穫、金属の加工、製本や綺麗なお洋服を作るのまで『土』系統の魔法に私達は大きく依存しています。いまや、虚無の
ように失ってはならない、絶対に手放せない魔法と呼べるでしょう」
生活を依存するほどの『魔法』?
「そこで、本日は皆さんには『土』系統の基本中の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいましょう。すでにできるようになっ
た生徒もいるでしょうが、基本は大事です。まずはお手本をお見せしましょう」
ふむ……錬金。錬金術といえば中世から近世にかけて卑金属から貴金属を作り出そうとしてはじめられた試みだ。一攫千金を夢見
た山師よりも、むしろ宗教的な側面が非常に強く、不老不死などをもたらすありもしない幻の物質を求めて試行錯誤を行った出来事
でもある。
やがてその過程でなされた多くの発見が現代の化学に受け継がれていったのだが……。
シュヴルーズは何かをぶつぶつと唱えると、石ころに向けて再度杖を振った。
石ころが光り出す。輝きが去ると、そこにはキラキラと光る金属の塊があった。
……は?
え、あれ、今のはなんだ。
もう一度『魔王』で金属を確かめる。これは……銅……と亜鉛……真鍮? なぜに? ……な……!? ……どうして!? どう
やったんだ、そんなバカな!?
「ゴゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴ……」
「なんだとぉ!!?」
誰かの声に被せて、思わずクリフは素っ頓狂な声を出した。
なんだ今のは、ちょっと待て、意味が分からない。何が起きた!?
クリフの意識は確かに石ころに向いていた。あの状態で物質が入れ替わるのはまず不可能だ。というよりも、クリフの能力だと物
体の形状が正確に分かるため基本的にすりかえは効かない。
手品じゃない、なんだ、どうしてFeを微量に含んだただの石がほぼ純粋なCuとZnに変わる!?
自分を取り巻く視線に、はっとクリフは我を取り戻した。教室の中の全員の目が、クリフ一人に集まっている。
あ、しまった。つい叫んでしまった。
「……ゴホン、あー……その、失礼……」
驚いた拍子に乗り出してしまった身を戻し、クリフは謝罪した。クスクスと笑いが生徒達から漏れた。
「……なにしてんのよリーダー……」
ヴォルフがじとっとした目を向けた。キクロプスはよそを向いて他人の振りをしていた。椅子に座るルイズが赤面して俯いている。
「……ミス・ヴァリエールの使い魔さんにはちょっと新鮮な驚きだったみたいですわね」
シュヴルーズがそう言うと、周囲の笑いが強くなった。
……恥ずかしい。……やってしまった……。
「……す、すまん……つい、その……」
「なにバカみたいにはしゃいでるのよ……。恥ずかしいったらありゃしないわ……」
「…………俺を、見るな……」
「やっぱり外れ使い魔だったかも……」
口々の非難するルイズ達。うう……言葉が胸に刺さる……。
ひとしきり笑いが収まると、教壇のシュヴルーズは授業を続けた。
「これは金ではありませんよ皆さん、それはスクウェアクラスだけができる技です。私はトライアングルですから……真鍮、といっ
たところですね」
少し誇らしげにシュヴルーズは言う。
「では……生徒の皆さんにもやって頂きましょう。まずは、先ほどの使い魔の主さんに。ミス・ヴァリエール」
指でルイズを指名した。その声に、周囲からどよめきが起こった。
「え、あ、わたし、ですか?」
「ええそうです、ミス・ヴァリエール。立派に『錬金』して、使い魔さんの恥を雪いであげなさい」
ルイズが前を見据えてすっと立ち上がった。教室の動揺が大きくなる。急いで机の陰に隠れる者、蒼白な顔をして見ている者、止
めようと手を伸ばす者。誰かがシュヴルーズに警告していた。
クリフはというと、それどころではなかった。さっきの『錬金』を目撃した衝撃で、頭の中がぐるぐると回っていた。
一体どうしてあんなことができるのだろうか、物理的にありえないはずだ。元素変換? 粒子加速器もなく?
いや、それ以前にあの質量を剥き出しでそんなことをしたら核反応で大変なことが起きるのでは? 周辺地域が焦土になりそうだ
ぞ? 一体過程はどこに消えた?
あまりにもメチャクチャだ、法則も何もあったものではない。
記憶から一つの言葉が甦ってくる。
魔法。
まさに魔法。そうとしか考えられない。あまりにも馬鹿馬鹿しい。だが現実は法則を否定している。冷や汗が出た。
い、異世界……。これは、ここは異世界……。異世界……。
ふと気づくと、ルイズが教壇に立っていた。シュヴルーズのようになにかを呟きながら、石ころに向かって左手をかざしている。
クリフは変な力を感じた。凄まじく濃く、濃縮された力の奔流。ん?これは知ってるぞ、たしか、あの時の爆発の……。
「……危ない!」
クリフの手が虚空を掴んだ。石ころの周囲を包むように念動のシールドを展開する。
しかし、気が抜けたように力が集まらない。あれ、おかしい。さっきと同じだ。どうしてこんな。集まれ、もっと幾重に重ねて抑
え込んで―――。
ルイズが杖を振るうと、ボヒュッ、という篭った音の爆発が起きた。
というわけで、以上です。すごく短いですが……
それでは失礼します
>>26 投下直前に読み返してみて、展開が少し気に入らなかったのでちょちょっといじってました
いや再開っつってたから、中断してたのかと思ったんだけど・・・
何にせよ乙
32 :
ゼロの賢王:2010/12/06(月) 04:07:17 ID:wwZlp1jT
7話が仕上がりましたので投下します。
ポロンの両の手から放たれた閃光の炎刃は一瞬にして7体のワルキューレを粉砕した。
それでもなお、勢いは衰えずにギーシュの方へと向かう。
「う、うわああああ」
ギーシュが叫びながら蹲ると、炎刃は頭上スレスレを通過した。
背後で観戦していた生徒たちも慌てて道を開けると、炎刃はそのまま地面へ直撃して爆発炎上を起こす。
ギーシュは恐る恐る後ろを見た。
すると、そこには大きく抉れ、まるで草刈りでもしたかの様に刈り込まれた地面があった。
(ハァ・・・ハァ・・・。何だあれは?あんなものが直撃していたら僕は・・・)
ギーシュは戦慄する。
そして、今まで見下していた目の前の存在に恐怖を覚えた。
(べ、別々の系統魔法を合体させた・・・?だ、だがそれにしては何だこの破壊力は!?)
ハルケギニアの世界の魔法にも異なる系統魔法を組み合わせる方法は存在する。
例えば『風』と『氷』を組み合わせることで氷の矢を放ったりすることが出来る。
しかし、それはあくまで組み合わせに過ぎず、本来の威力の底上げとはならない。
仮にトライアングルのメイジが最大で100の力を出せたとして、異なる系統魔法をどう組み合わせてもこの100を超えることは出来ないのだ。
これは、メイジが基本的に1つの系統魔法を専門的に学ぶという慣例が原因の一つでもある。
メインで使用する系統以外の魔法がどうしても低くなってしまう為、他の系統の魔法を組み合わせても能力の底上げにはなりにくい。
その為、4つの系統を組み合わせることが可能であるスクウェアクラスのメイジでも、同じ系統を足すことで自身の魔法を強化させる道を選択することが多い。
だが、ポロンが今放った魔法は違っていた。
ワルキューレを破壊した2つの魔法。
それは、威力としてはそれぞれドットレベルの攻撃力に過ぎないかも知れない。
しかし、この2つを組み合わせることでトライアングルレベルの攻撃力にまで増幅していた。
「凄い・・・わね」
キュルケは目の前の光景に思わず唸った。
ポロンが先に使用した2つの魔法については、平民が魔法を使ったこと以外に驚く様なことではなかった。
杖を使用していない様に見えたが、彼女もまたギーシュと同じ様にそれは気のせいか隠し持っていたのだと推測していた。
しかし、今ポロンが放った魔法は別である。
「彼はラインのメイジなのかしら・・・?それにしては・・・」
「威力が強過ぎる・・・」
タバサが呟く。
その目は完全にポロンに釘付けであった。
「あ、ああ、あああああ・・・」
ギーシュは戦意を失っていた。
先程出したワルキューレ7体。
あれが今のギーシュの全力であった。
そう、ギーシュは全力でポロンを叩き潰そうとしたのだ。
それが一瞬で破壊されてしまった。
それを目の前で見てしまえば、心が折れてしまうのも無理は無い。
だが心で負けた者は、どう足掻いても相手に勝つことは出来ない。
(あ、あんなものがまた来たら・・・僕は・・・死ぬっ!?)
その時、初めてギーシュは『死』というものを意識した。
これが決闘でなければ、ただの喧嘩やふざけ合いならば感じなかったであろうもの。
ポロンがギーシュへと歩み寄って来る。
その姿を見たギーシュは情けなく後ずさりながら「く、来るな!!」と薔薇を振った。
花弁が地面にはらはらと舞い落ちるが、それをワルキューレにしようという気持ちさえ湧き上がっていなかった。
ポロンの足がその花弁を踏み付ける。
ギーシュはポロンの顔を見た。
その顔は静かに、そして穏やかにギーシュを見つめていた。
「・・・おい」
「た、助け・・・」
「・・・・・・・・」
ポロンは無言でギーシュの手から薔薇を奪い取った。
「これで、俺の勝ち・・・だな?」
「・・・へっ?」
何かされるのだろうと身構えていたギーシュは少し肩透かしを食らったかの様にポロンの顔を見た。
「あ!・・・ああ。ぼ、僕の負け・・・だ」
やや間を空けてから、ギーシュは力無く言った。
その瞬間、周りの観客から次々と声が上がる。
それは、平民が貴族に勝ったことに対する不平不満、もしくは興奮。
まさに様々な声であった。
ギーシュはホッとして立ち上がろうとした。
すると、ポロンがそれを制する。
「へっ・・・?」
「敗者は勝者に何でもするって言ったよな?」
ポロンはそう言いながらギーシュを睨み付けた。
「あ・・・、え・・・?あ・・・」
「男に二言はねえって言ったよな?」
しどろもどろになるギーシュに更に言葉を浴びせ掛ける。
ギーシュの体に再び震えが起きる。
「な・・・何を・・・すれば・・・いいんだ?」
「・・・・・・・・・」
ポロンは無言であった。
ギーシュにはその沈黙すら恐怖に思えた。
溜まりかねて、ギーシュは恐る恐る訊ねた。
「あ・・・あの・・・?」
「謝れ」
「へっ?あ、あやまる?」
「そうだ、土下座して謝れ」
「あ・・・ああ・・・」
ギーシュは正座し、ポロンに頭を下げた。
「す、すまなかった・・・」
だが、ポロンは首を振った。
「俺じゃねえ。シエスタ・・・お前がさっき八つ当たりしたメイドにだ。それと・・・」
「それと・・・?」
「あそこにいるルイズにだ」
そう言ってポロンはルイズの方を指差した。
突如名前を呼ばれたルイズは吃驚して、ポロンの顔を見る。
「ぽ、ポロン?」
ギーシュはポロンに言われるがまま、ルイズの元へ向かい跪く。
そして両の手を地面につけ、頭を下げた。
それを見て、ルイズは更に驚いた様な顔をする。
「え?ええ!?」
「ミス・ヴァリエール・・・この度の無礼の数々、本当にすまなかった。
許してくれ・・・。この通りだ!!」
ギーシュが地面スレスレまで頭を下げるのを見ると、ルイズもどうしていいか分からず、
「も、もういいわよ!」
と言ってその場から去ってしまった。
ギーシュはルイズが去った後もその姿勢を崩さずにじっとしていた。
それを見て、ポロンはギーシュの元へと向かう。
そして、ギーシュの頭をポンと叩いた。
「やれば出来るじゃねえか・・・」
「・・・・・・・・・」
「いいか?自分が間違ってる時に謝るのは恥じゃねえ。ケジメって奴だ。
それを意固地になって認めようとしねえのは、それこそお前らの言う『貴族』っていう精神に反するんじゃねえのか?」
「・・・そう、だな」
「・・・今はここにはいねえから仕方ねえが、後でちゃんとシエスタにも謝れよ」
「・・・分かった」
「あと、お前が二股かけた相手にもな。なあに、女ってのは大抵何度も土下座して謝れば最後には許してくれるさ!
本当に自分に惚れてくれた女なら、な」
ポロンは2、3度ギーシュの頭を叩くと、ルイズの後を追ってこの場から立ち去って行った。
ギーシュはボロボロと涙を零していた。
それは、決して敗北故の屈辱の涙では無く、まるで親に叱られた子供が零す様な何となく居心地の悪い、
だが、決して嫌な気持ちだけではない涙であった。
(あの男の名・・・確かポロン・・・とか言ったな)
その名前はギーシュの心の中に深く刻まれた。
遠見の鏡で決闘の様子を見ていた、オスマンとコルベールは互いに顔を見合わせていた。
「オールド・オスマン」
「うぅむ・・・」
「あの男が、勝ちましたね」
「・・・じゃな」
「ギーシュ・ド・グラモンは一番レベルの低いドットのメイジですが、それでも実力はラインのメイジにも劣りません。
仮に魔法を使えたとしても、平民にあそこまで遅れを取るなんて・・・」
コルベールは今見た光景を信じられないといった面持ちで見ていた。
「それに彼の魔法・・・。杖も無しに使用するなんて、最後のを除けば威力こそ低いものの、まるで先住魔法です」
「・・・いや、あれは先住魔法ではないな」
「と、言いますと?」
「ふぅむ、あの男の使用する精神力といったものか?それが根本的に我々と異なる様にわしは感じたよ」
「・・・やはり先住魔法では?」
「わしは本物の先住魔法を見たことがある。じゃからこそ、彼の魔法が違うと断言出来るよ。
それに、彼は見た通りエルフでは無く、れっきとした人間じゃ」
「・・・では『例の力』?」
「アレか・・・。じゃが、アレは言い伝えによれば武器に反応する。魔力を武器と解釈したらどうなるかは流石に分からんが、
そもそも『あの力』と彼の行ったものは全くの別物じゃ」
「確かに。ふうむ・・・」
コルベールが思案する中、オスマンは別の可能性を考えていた。
だが、そのあまりに突拍子のない考えには流石に否定しか出来ない自分がいる。
「オールド・オスマン。取り敢えず彼のことは要観察ということでよろしいでしょうか?」
「・・・ああ、そうじゃな。今のところ、彼もミス・ヴァリエールに害する行動は取っていない。
完全に安全な人物と断定することは出来んが、今すぐどうこうすることでもあるまいて」
「それに『例の力』の方も・・・」
「うむ、じゃがそれは慎重にな。もし彼が『例の使い魔』じゃということが分かれば、
彼を呼び出したもの・・・つまり、ミス・ヴァリエールが虚無の使い手ということになる。
そんなことが王宮にでも知られれば、あの子はもう普通の生活は出来なくなる。
それは学院長として・・・いや1人のジジイとしても忍びないからのう」
「・・・肝に銘じておきます」
そう言うと、コルベールはオスマンに一礼してから部屋を出た。
オスマンは水キセルを吹かし始める。
(・・・伝説の使い魔『ガンダールヴ』、のう)
オスマンのその表情を隠す様に水キセルの煙が立ちこめ始めた。
ルイズの中には複雑な感情が渦巻いていた。
それは勿論、自身の使い魔ポロンのことである。
(アイツ・・・!!あんな大事なことを私に隠してたなんて!!)
先程の決闘でポロンが使用した魔法。
それがルイズの心に深く突き刺さっていた。
使い魔に隠し事をされていたこともそうだが、それが魔法なのだ。
魔法をまともに使用出来ないルイズにとっては何処か裏切られた様な気分になっていた。
「ルイズ!」
ポロンの声が聞こえる。
ルイズはこの溜まりに溜まった感情をぶつけようと振り返った。
「この馬鹿い・・・!!」
「す、すまねえ!!!!!」
「へ?」
振り返ると、そこにはポロンが頭を地面に擦り付けている姿が見えた。
あまりに唐突なので、呆気に取られる。
ポロンが悲痛な声を上げた。
「あの魔法のこと、別に隠してたわけじゃねえんだ!!ただ言う機会が無かったのと、
それと、あの教室でのお前を見てたらさ、何か言い出せなくってよ!!」
「・・・・・・・・・」
「俺が魔法使えるって分かったらさあ、教室でお前に言ったことが何か嘘になるっつーか、
馬鹿にされた様に思わすのもアレかなー?ってんで、その・・・言えなかったんだ!!」
「・・・・・・・・・」
「この通りだ!!許してくれ、ルイズ!!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・ルイズ?」
ポロンが恐る恐る顔を上げると、ルイズは何だか泣いている様な怒っている様な顔をしていた。
「ルイ・・・」
「この馬鹿!!!!」
「ひぃっ!?」
「馬鹿馬鹿馬鹿!!!!勝手に決闘なんかして!!勝手に魔法なんか使って!!この馬鹿!!」
「す、すま・・・」
「いい!?今度からこんな勝手、絶対に許さないんだからね!?またこんなことしたら、その時は鞭打ちの刑よ!?」
ルイズの顔はまるでトマトの様に真っ赤であった。
「る、ルイズ?」
「・・・今日のところは寛大に1週間食事抜きで許してあげるわ。だ、だから早く部屋に戻って来なさい!!
せ、洗濯物だってあるし、掃除だってやってもらうんだからね!!」
「・・・ああ、是非やらせてもらうぜ」
「フン!!」
そう言うと、ルイズは顔を真っ赤にさせたままツカツカと歩いて行ってしまった。
ポロンはよっこらせと立ち上がると、その様子を苦笑いで見守った。
38 :
ゼロの賢王:2010/12/06(月) 04:17:50 ID:wwZlp1jT
これで7話は終了です。
ゼロ魔世界の魔法の解釈に何かミスがあったら申し訳ございません(汗)
オスマン関連であまりギャグが無いのは仕様です。
ギャグセンス無いので・・・。
乙!更新が速くて嬉しいかぎり
SSだとオスマンがギャグをあまり言わないって多いよね
なんか二つ名さんと賢王さんって足並み揃ってるな
最近活気があって良いねぇ
SeeDの人も帰ってきたし嬉しい事だらけだ
3210さん賢王さん乙!
こんなに新着のあるスレは久々だね
セイタンってとおり名や戦った時の絵からキースレッドよかクリフのほうが強い印象があるんだがな
実際はあっけなく殺されているけど
44 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 19:06:10 ID:9ESjzKg4
いまだにどうやって負けたのかわからない
仲間盾にでもとられたか
ミス
まあ覚醒したARMSは実質不死身だし
47 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 19:08:26 ID:iSoFVcTQ
クリフは万全の状態じゃなかったからな。戦闘描写がすっ飛ばされてるからどう敗北したかわからないが、万全でキースレッドとぶつかったら勝てないまでもそれなりに善戦しそう。
今思い出したが、終盤のモデュレイテッド相手には
『第一形態はARMS化している部分以外はほぼ生身』
と隼人が言ってたが
レッドはキャロルに捻り折られた腕が即再生してた気がする・・・
クリフ相手にはやっぱり超振動で応対したんだろうな
っていうか、レッドは超振動しか持ってないからな・・・量産サイボーグも実装したけど
何はともあれ乙
受難続きのクリフに幸あれ
パワーだけでARMSを叩きのめしたコウ・カルナギはすげえ
あれはミュータントといっていい物体じゃなかったか
通りすがりのサラリーマンの前には全て無意味だぜ?
キースは全身にアームズが散っちゃってるからな
でもそれにしても回復力はだいぶ高めの方だと思う…一応ジャバやハッターに次ぐ戦闘タイプなのかな?
あとクリフは単純に攻撃力不足なんだろうと思う 決定打がないから時間は稼げても勝つことは出来ない
分子の単にまで伸ばしてしまえば良いじゃない。
と思ったけど、ジャバさんに力ずくで破られちゃったんだっけ、割りとあっさり。
相手のパワーが勝ってたらダメなのかな。
>>50 生まれながらに全身のチャクラが解放されてるんだってばよ!
パワーだけでも鍛え続ければいずれあらゆる敵をワンパンチで沈められるように
>54
そして、ワンインチパンチに敗れるのか。
私、ここの姉妹サイト(奇妙な使い魔)のほうで、
現在も連載中の自分の作品を書いてるんですけど…、
向こうは向こう、こっちはこっちで
もうひとつ、連載しようか迷ってるんですよね。
仮にやったとしても絶対シンドイでしょうし……、
ですから、一応みなさんの意見が聞きたいんですよ。
クロスさせたい元の作品は…ちょいとマイナーなんですが、
「デジタルデビルサーガ アバタールチューナー」
っていうアトラスのゲームで、召喚させたいのは当然
主人公のサーフなんですよ!
人修羅もライドウもいるのになんでサーフがいないんだ!って
ずっと悩んでたんですが、 友人に
「だったら作れば?」って言われたんですわ。
でもね、先ほども言ったんですが、
奇妙な使い魔での連載も完結してないのに…
同時連載なんてそんなハードな……、
それに私、まとめサイトに書き込む方法もしらなくて…
ここに書いてたら、だれか親切な人がまとめのほうに
書き込んでくれるんでしょうかねぇ〜ww
長い、ウザイ、死ね
冷静に実生活と相談して下さい。衝動買いがのきなみ後悔で終わるように、書き切る考えがあるのか
迷うなら小ネタで試して、アイデアと情熱が続くなら連載すればよいと思います
>>51 通りすがりのサラリーマンより笑う雌豹のほうが恐ろしいです
>>56 そういう意図が無かったならすまないが
ごめん、イラッとくる
キースに勝てなかったのは純粋に「ARMS殺し」が無かったからじゃね?
>>56 書くかどうかは自分で決めろ。としかいえない。
まとめについてはまとめのトップページに書かれてる
基本的には作品を見た読者が登録してくれる。見逃しとかもたまに有るけど極々まれ
>>56 そんなスレがあるなんて今知った
これから読みに行きますわー
三行にまとめた
チーッス!ジョジョの方で連載中の作家様でーすw
アバチュのサーフ召喚したいけど正直シンドイ、構って構って〜
それとまとめに登録する方法を知らないし覚える気も無いからお前らやれwwwwそしたら書いてやんよwwwww
あっ、ごめん一個抜けてた
テンプレ?wwwwんなもん糞ッ喰らえだwwww
>>63 そういうのは毒吐きでやれよ、ここでやるのは荒らしと変わらんぞ
>>65 そうだな・・・まあ三行といいつつ四行の方が合ってるんじゃね?w
>>66 めんごめんごw
>>56もこういうノリで来て欲しいのかと思ってさw
>>60 別にARMS殺しが無いと倒せないわけなじゃないからなあ・・・
コアを取るなり壊すなりしちまえばokなんだから、魔王でも出来るっちゃ出来るだろう
ユーゴーこそ真のヒロイン。
という訳で彼女をテファの許へ(ry
>>1乙
というわけでフリオニールの第10話を10分後に投稿いたします。
フーケ編の前半です。よろしく。
トリスタニアでの買い物から数日が経過した。
いつもと変わらぬ夜。ルイズとフリオニールは寝床についていた。
夜も丑三つ時にさしかかろうかという頃、突如、大きな破壊音が夜空に響いた。
「んん?・・・」
余りにも巨大な音であった為、フリオニールは目を覚ましてしまった。ルイズは気付かなかったのか
ぐっすりと眠っている。
半身をゆっくりと起こし辺りを見回すが、暗闇が視界に入るのみで異常は無い様子。
なんだ、空耳か、と思いフリオニールは寝直した。
そして、朝がやってきた。
トリステイン魔法学院に昨夜、盗賊が忍び込んだと学院中で大騒ぎになった。
壁を堂々と破壊し、現場に「領収書」を書置きして目当ての物品を頂戴する手口は、今、
ハルケギニア中の貴族を震撼させている「土くれのフーケ」の仕業であると波紋を呼んでいる。
(昨夜のあの音、夢じゃなかったのか)
と人事のように振り替えるフリオニール。一方、ルイズは好奇心を押さえられないようで、現場へ行くと言い出した。そして、主人と使い魔は現場である宝物庫へ向かうのであった。
(おたからなんてモンスターからブン取ればいいのに)
ルイズはフリオニールを「町人から隈なく情報収集するマメな男」と評価しているが、
実際はかなりの面倒くさがり屋であった。
フリオニールの義妹であるマリアは几帳面な性格で、洞窟に入った際は目ぼしいものが
隠されていないか隈なく探索する主義だった。
しかし、フリオニールは経験から洞窟探索より地上でモンスター(帝国軍)退治する方が
おたからもかなり入手できる上、時間短縮ができて良いと考える為、マリアとしばしば
意見が対立した(その為、『こだいのつるぎ』や『ねむりのけん』といった強力アイテムを
見逃したせっかちなフリオニール)。
フリオニールは渋々ルイズについていくと、宝物庫の壁は派手に壊されていた。
宝物庫のある塔の入り口にはオスマン院長を中心に教師や生徒達が集まっている。
「ああ、なんということじゃ。よりによって『破壊の杖』を持ち出すとは」
オスマン院長の顔は青ざめている。
「オールド・オスマン。このような破壊活動を行えるものが何故、『破壊の杖』を盗んだ
のでしょうか?『破壊の杖』とは一体・・・」
コルベールは腑に落ちない表情でオスマン院長に尋ねた。
「うむむ・・・恐らくは転売目的じゃろう。しかし、それだけは何としても食い止めなければならん!」
オスマン院長は珍しく感情を露わにしていた。
そのすぐ傍では当直であったシェヴルーズが泣きながら謝罪している。
「そういえば、ミス・ロングビルが見当たりませんが」
コルベールはこの集団の中にロングビルがいないことに気付きさり気なく呟いた。
すると、見計らったようにロングビルがやってきて、
「第一発見者である私が「土くれのフーケ」に関する調査を進めておりました」
「おお、さすがミス・ロングビルじゃ。道理で朝から見かけなんだ」
「それで、何かわかったことはありましたか!?」
「はい。近隣の農村へ赴き聞き込みを行ったところ、近くの森の廃屋にフード付ローブを
まとった怪しい人物が細長い筒を持って入って行った、という情報を入手しました」
淡々とした表情で事務的に報告した。
オスマン院長とコルベールは手がかりを入手できてひとまずほっ、とする。
「うむ。調べてみる価値はありそうじゃのぅ」
「では、早速王室に報告を」
「オホン!コルベール君よ。その間にフーケに逃げられたら元も子もないぞい。それに、
これは紛れも無く我がトリステイン魔法学院の失態!これはわしらで解決するのじゃ!
よし!それでは、捜索隊を編成する。我こそはと思うものは杖を掲げよ!」
オスマン院長は「破壊の杖奪還」を宣言したが、それに呼応する教師や生徒はいない。
院長はため息も出ないとばかりに苦い顔をすると、
「情けないのぅ。「土くれのフーケ」を捕まえて名を上げようという心意気のある貴族は
ここにはおらんのか!」
集団に叱責の言葉を浴びせた。すると、
「わたしが行きます!」
ルイズが杖を掲げて捜索隊入隊の意思を示した。オスマン院長はにっこりと微笑み、
「おお、ミス・ヴァリエール!」
勇気ある少女の名を呼んだ。しかし、
「生徒の出る幕ではない!」
『疾風』のギトーと呼ばれる評判の芳しくない教師がけん制する。ルイズは臆することなく、
「でも、先生達はひとりも杖を掲げなかったじゃないですか!」
ギトーに反論した。痛いところを指摘され、うぬぬ、と唸るギトー。
ルイズとギトーの応酬を見ていたキュルケもルイズに負けじと杖を掲げる。
「ヴァリエールが行くなら私も行きます!」
最後にタバサもフリオニールを一瞥すると杖を掲げた。
「彼の魔法を見るチャンス」
すると、教師達は一斉にオスマン院長に反対声明を出した。生徒だけでは危ないと。
しかし、院長は
「では、諸君に聞くが、何故先程杖を掲げなかったのかね? ただ反対するだけの諸君に
彼女達を阻む権利はない!代わりに行くというなら話は別じゃが?」
口先だけ達者で臆病な部下達を叱り飛ばした。
それまで黙って事の成り行きを見ていたフリオニールは、院長のその言葉を聞くと突然、拍手をし
「さすが院長ですね。うちの参謀に院長の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいです」
「おお、君は確かフニオチール君」
「フリオニールです」
「そうじゃった。そうか、ミス・ヴァリエールには頼もしい使い魔がおるな」
「俺、盗賊とか海賊には縁があるんで何とか話つけてきますよ」
『破壊の杖』奪還をオスマン院長に約束した。さらに、院長は教師達を説き伏せる。
「それに、ミス・タバサは『シュバリエ』の称号を持つ騎士じゃ」
その一言に周囲は騒然となった。当のタバサは他人事のように無表情だ。
(何か知らないけど、あの子凄いんだなぁ)
とひとしきり感心するフリオニール。説得はさらに続き、
「ミス・ツェルプストーはゲルマニアの名家出身で、彼女自身もかなりのメイジじゃ」
(キュルケ、留学生だったんだ。そうか、スキンシップが多いのは寂しさを紛らわす為
だったのか)
フリオニールはひとり異国で勉学に励むキュルケにシンパシーを感じた。
なぜなら、彼は孤児だったからだ。
義理の両親には我が子同然に育ててもらったが、少年の時、自分はこの家の子ではない、
という卑屈な感情が沸き起こる時期があった。
その時はそれを押し殺すかのように義理の両親に甘えた。二人はそれに応えてくれた。
義兄(同年生まれであるが生まれ月はフリオニールより早い)と義妹も許してくれた。
この平和で優しい家庭の温もりに抱かれる中でフリオニールはいつか必ず恩返しをしよう、
その為に真っ直ぐに生きようと決心したのだが、その温もりをある日突然、帝国軍に奪われる
ことになった。
フリオニールの回想を傍目にオスマン院長の説得は佳境に入った。
「最後にミス・ヴァリエール。彼女はトリステイン屈指の名門の子女であり、え〜っと、
その、なんじゃ?あれじゃな・・・」
院長はルイズの長所を述べようとするが思いつかない。無理もない。彼女の二つ名は
『ゼロ』なのだから。
戸惑うオスマン院長にすかさずフリオニールがフォローを入れる。
「大爆発を起こせます!」
フォローになっていないフォローに失笑する一同。しかし、オスマン院長は間髪入れず、
「それに、一番に名乗り出たのは他でもないミス・ヴァリエールじゃ。ここにいる中で
一番の勇者じゃ」
ルイズを称えた。押し黙る一同。その沈黙を是、と受け取ったオスマン院長は居住まいを正し、
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
「杖にかけて!」
ルイズ、キュルケ、タバサは同時に唱和し、オスマン院長に一礼した。フリオニールは
杖を持っていないのでとりあえず右腕を上げた。
オスマン院長は4人を優しい眼差しで当分に見やると、
「ふむ。では馬車を用意しよう。目的地に着くまで魔力は温存しておいたほうがよいからの。
では、ミス・ロングビル、案内役を頼んだぞい」
「かしこまりました」
ロングビルに案内役を依頼した。情報の詳細を知っているものはロングビル只一人。
ロングビルは事務的に応対したつもりであったが、表情にわずかなかげりが出ていたのを
フリオニールは偶然見てしまった。
(よりによってあの男が一緒とは・・・)
(ロングビルさん、顔色悪いなぁ・・・それに、なんとなく目元が誰かに似てるような)
こうして、ルイズ達はロングビルの先導でフーケの隠れ家へ向かうのであった。
目的地へ向かう道中、ロングビル自身が手綱を取って馬車をリードしていた。オスマン院長の
秘書なので当然貴族だと思われるのだが、使用人を伴うことはなく馬車メンバーは少女3人、
フリオニール、そしてロングビルの計5人であった。
そのことを不思議がり暇つぶしとばかりにロングビルの身の上を聞き出そうとするキュルケ。
ルイズはキュルケの詮索好きを咎めるのだが、例によって口げんかが始まる。タバサは
我関せずで読書に勤しんでいる。
そして、ピクニックも楽しいな、呑気なことを思い口笛を吹くフリオニールと日常の光景と
さして変わらない馬車の中はとても盗賊退治に向かうものとは思えなかった。
馬車は森へ到着し中へと入っていく。背の高い木々がうっそうと覆い茂っている為、
太陽の光は遮られ森の中は薄暗い。途中、ロングビルは馬車を止め、中のメンバーに
「ここから先は歩きましょう。フーケに感づかれては困りますので」
と提案した。承諾し馬車から降りるルイズ達。
「暗くて怖いわ。ダーリン私を守って!」
キュルケは早速フリオニールの右腕に抱きついた。うっかり鼻の下を伸ばしデレるフリオニール。
「人の使い魔に馴れ馴れしく触れないでいただけるかしら?」
ルイズは鋭い眼光でキュルケを睨んだ。
「あら、ごめんなさい。でも、彼も満更でもない様子よ?」
キュルケは平然と言い返す。すると、ルイズは弛緩した表情の使い魔に向け
「あんたが守らなければいけないのはこのわたしでしょ!」
一喝すると、キュルケの腕を無理やり解いた。
そんなこんなで廃屋のあるところまでやってきたルイズ一行。
「私の仕入れた情報ですと、あの中に怪しい人物がいるということです」
ロングビルは廃屋を指差し緊張した面持ちで説明した。
それを聞いた一行はどうしたものか、とそれぞれ思案をめぐらせる。すると、タバサが
杖で地面に作戦を書いて提案した(フローチャート式)。
偵察兼おとりが廃屋へ行き中を調べる→フーケがいれば挑発し外へ誘き出す→外へ出てきた
ところを魔法の集中攻撃でフーケを退治し捕獲する、というものだった。
賛成するルイズとキュルケ。字が読めないフリオニールは困惑したがルイズから説明を
受けると、「では俺が」と忍び足で廃屋へ向かって行く。
ちなみに、ロングビルは緊急事態に備えて馬車で待機することになった。
ドアを静かに開けて廃屋の中に入るフリオニール。
「おじゃましまーす」
小声で挨拶するが返事が無い。ただのしかばねもない。あるのはテーブルと椅子、暖炉と薪、
その横にチェストが置かれているだけだった。部屋は一室のみ。
(誰もいないみたいだな。どれどれ、おたからはっと)
ポールもびっくりの手際のよさで室内を物色するフリオニール。すると、チェストの中に
筒が納められているのを発見した。
(これだな。どれ)
フリオニールは筒を取り出してふたを外すが中は空だった。ちっ、と舌打ちをすると、
突然、外から悲鳴が聞こえた。紛れも無い「ご主人様」の声だ。
フリオニールは筒をほっぽり投げて駆け足で外へ出た。
フリオニールの第10話は以上です。
>>71で改行し忘れがありました。
訂正してお詫び申し上げます。
それではまた。
フリオニール乙です。
>ポールもびっくりの手際のよさ
RPGの主人公のたしなみだよね!
乙
>洞窟探索より地上でモンスター(帝国軍)退治する方が
おたからもかなり入手できる
お城の周りでザコ敵を倒し続けてウン十年、ためた経験値でついにレベル99
2は熟練度システムだw
ファンタジー北島だ!
>>79 熟練度以前に武器レベルも魔法レベルも16まで。
>>72 野次馬いっぱいの場所でロングビル一人が居ない事に気付くコルベールさんマジ欲求不満
FF2におけるパーティーアタック時の
クリティカル率は異常。
何故通常戦闘時にアレが出ないのかとw
バニシュデスでラスボスまで楽勝、あの頃のゲームはおおらかだった
>>58 笑う雌豹vs烈風カリン
史上最強の専業主婦対決
主婦じゃない気がする
岬越寺秋雨召喚
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 16:40:19 ID:5exD7UOM
>>87 ある意味で夫より厄介そうな人妻と言う共通点はあるぞw
>>89 う〜ん、普通に巌の方が厄介そうだけどな・・・
ネタじゃなくてマジで旦那より云々を言ってる人いるの?
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 17:13:51 ID:5exD7UOM
>>90 それはそれで正しいと思うよ。旦那より云々は個人的な印象ってだけだしね。
俺の場合レッドキャップス編が強く印象に残ってるし、
烈風カリンにいたっては多分にSSの影響も受けてるだろうし。
本編であんまり出番多くないしね、あの人。
>>91 まあなんだ、とりあえず下げようぜw
そんでもってレッドキャップス編が根拠なら、巌も同じことやれると思うんだけどな。
ミサママは普段というか初期とのギャップが大きいそういう印象になってるだけな気がする。
90は高槻夫婦のことで、カリン様夫婦は分からないっすw
>>91 俺も今見て気付いた。ごめんw
ARMSは最近見返してないからなあ、
印象が強く残ってる部分がすぐに思い浮かぶんだと思う。
ヴァリエール夫妻はどうなんだろうね、パワーバランスとか。
烈風の騎士姫の方でなれそめとか書かれてるのかな?
資金的な都合でそっちの方にはまだ手が伸ばせないから良く分からん。
別に美沙ママが巌並みでも構わないだろうに
ミサママさんはほんと笑顔のままで重機関銃乱射したりするから印象はすごかったですよね
烈風カリンはどうなんでしょう。ギーシュたちの語った伝説や、ルイズに放ったカッタートルネードがまず手加減したものだったとしたら本気は?
公爵のビビリ具合からある程度想像はつきますね。
>>94 ごめん、別にそういうつもりは無いんだ、俺の場合は逆に巌の印象が強いのかもw
コウ・カルナギとスティンガーがやり合ってる所に割って入ったり、
悪の秘密基地カリヨンタワーに潜入してみせて崖に地球上に逃げ場は無いとか言ったり、
エアフォースワンで大統領と会話してたり、大統領にアメリカの諜報機関<巌とか言われちゃって、
最後は魔獣の爪からライトセーバー発動してみせたりw
サラリーマンはるろ剣でいうところの比古みたいなものだろう
ジョーカー的な存在
永遠のフィレーナ、ヴィルガスト、エスパークス…レトロファンタジーってどんなのあったっけ
貝獣物語とか?
ドラゴンランスシリーズとか
つ指輪物語
つハイドライド
つイース
後何かあったっけ?
つブラックオニキス
つディープダンジョン
つウィザードリィ
こんな感じかな?
つ折れた魔剣
つ魔法陣グルグル
ソードワールドシリーズとか、
聖剣伝説シリーズもかな
聖剣は2作め以降は違うといわせてもらおうか
ファイティングファンタジーシリーズ
ドラゴンランス以外にも多々あるD&D関連作品とか、
T&T関連作(ゲームブック多数)なんかも
ロードス島戦記はダメかい?
どこまでがレトロといってよいものか・・・
旧約聖書。
キングスナイトは少し違うか
鳥獣戯画
そういや召喚されるキャラで男の娘キャラっていないな
誰かキボン
使い勝手のいい男の娘キャラっておりますのん
ファイティングファンタジーといえば、ソーサリーの人を最近見ないな。
続きを楽しみに待ってるよ。
子狐たゆんでも喚んでもふもふしよう。
>>109 そいつはソードワールドと一緒にフォーセリアシリーズと言っていいのでは
フリオニールの第11話を23:34から投稿いたします。
よろしく。
フリオニールが外に出ると、巨大な火の玉が目の前に迫っていた。
「な、なんだ!」
フリオニールは間一髪でそれを避けたが、廃屋に直撃し炎上した。
火の玉の飛んできた方向を見ると、尻餅をついたルイズ、杖を振り下ろしたキュルケ、
そして、その二人ではなく別の所に視線を移しているタバサがいた。
タバサの見ている方向をフリオニールも見てみると、そこには灰色の体で羽を生やした
悪魔のようなモンスターが両腕を体に巻きつけ、さながらビジュアル系バンドのような
ポージングをして立っていた。
急いで3人の元へ駆け寄るフリオニール。
「どうしたんだ!」
「なななな、なんかキュルケがへへへへ変になった・・・」
動揺するルイズに代わり、タバサが冷静沈着に
「『先住魔法』」
と説明するが、その間にもキュルケはルーンを詠唱している。
『ファイアーボール!』
キュルケの杖から再び火の玉が放たれフリオニールに襲い掛かる。
素早くアイスシールドを装備し火の玉をガードする。先程のものより一回り小さかった為
何とか防ぐことが出来たが、熱がフリオニールの左手に伝わってくる。想像以上の威力だ。
すると、4人の様子を不気味な表情で静観していたモンスターが、突然、『コンフュ』の
魔法を唱えると、4人の頭上に無数のひよこが出現し円を描くように動き回った。
(くそっ!これがあの悪名高い『コンフュ』かっ!)
フリオニールはミンウから『コンフュ』の存在を聞いていたが、実際に掛けられるのは初めてだった。
デルフリンガーを装備していないとはいえ、ワルキューレを破壊できるフリオニールの拳。
レディがこれを喰らったらひとたまりも無いだろうと不安に駆られる。
(掛かりませんようにっ!掛かりませんようにっ!)
祈りが通じたのか(?)フリオニールは無事であったが、今度はルイズが『コンフュ』の餌食になった。
ルイズは口角を限界まで上げてニヤリと笑うと、ルーンを詠唱し杖をタバサに向けた。
目が据わっている。
危険を察知したタバサは素早い動作で『ウィンドブレイク』を放ちルイズを吹き飛ばそうとしたが、
ルイズの爆発魔法と相打ちになってしまった。多量の砂煙が二人の間に舞い散る。
すると、今度はキュルケがルイズに襲い掛かり後頭部にエルボーを打ちつけた。
よろけるルイズだったが、返す刀で振り返りボディブローをキュルケの腹に見舞った。
取っ組み合いのケンカ(?)を始めるルイズとキュルケ。魔法の影響なのか素なのか
フリオニールには判断がつかなかったが、
(このままじゃやばい!)
猛ダッシュでモンスターに接近した。
「キキーーーッ!」
モンスターはフリオニールを威嚇すると『ブリンク』の魔法を唱えた。
フリオニールは(くそっ!)と悔しがったが、8体に増えたモンスターを両手素手で殴りつけた。
しかし、ほとんどが分身に当たった為致命傷にはならない。
次の瞬間、
上空から無数の氷の矢がモンスター(達)に降り注いだ。巻き添えを食らわないように
必死に避けるフリオニール。
「ムキーーーッ!」
氷の矢を浴びたモンスター(達)は断末魔の叫びを上げると1体に戻り地面に倒れた。
我を取り戻したルイズとキュルケ。お互い衣服がはだけ髪がボサボサなのを確認すると、
「何よあんた、その格好!」
「あ、あんたこそ、く、口から血なんか流して!」
声をあげて笑った。
フリオニールはルイズとキュルケの無事にほっ、とするとタバサに近づき
「ありがとう。君が援護してくれたんだね。さすが『シバリエ』」
お礼を言った。タバサは無言で頷き、
「偏在」
とモンスターを指差した。『ブリンク』のことを言いたいのだろう。
話そうか否か逡巡するフリオニールであったが、馬車で待機しているはずのロングビルが
タイミングよく一同の元へ戻ってきた。
「馬車へ戻る途中、魔物を見かけたもので心配になり戻ってきました」
「ああ、それならここにいる『シバリエ』が倒しました」
フリオニールがタバサを指差してロングビルに説明した。相変わらず無愛想(?)のタバサ。
「そうですか。では、私は馬車へ戻りますね」
ロングビルはそう言い残し再び馬車へ戻っていった。
そして、ロングビルが視界から消えて間もなく、高さ30メイルはあろうかという
巨大なゴーレムが瞬く間に生成されルイズ達の前に立ちはだかった。
「フーケのゴーレムよっ!」
「じゃあ、さっきのモンスターはフーケの!」
ゴーレムは慌てふためくルイズとキュルケに照準をに定め、踏み潰そうと足をあげた。
迫り来る足の裏を二人は辛うじて避け、阿吽の呼吸でルイズがゴーレムの胴体に爆発魔法を
かけると、すかさずキュルケが『ファイアーボール』を軸足に狙いを定めて放った。
すると、ゴーレムの胴体の表面はえぐられ片足は膝下を焼き尽くされた。
(やった!)
心で歓声をあげる二人であったが、ゴーレムはバランスを崩して倒れる前に見る見るうちに
破壊された胴体と膝下を再生させた。
「ち、ちょっと、どうしたらいいの・・・」
動揺を隠せずうろたえるルイズにフリオニールは
「逃げましょう!」
と真面目な顔で叫ぶが、ルイズは鬼気迫る表情で
「そんなことできるわけないでしょ!」
自身に言い聞かせるかのように怒鳴った。全身はガタガタと震えている。
「そうですか」
フリオニールは往生際の悪い主人だな、と思いつつもルイズの是が非でも任務を果たそう
というその心意気と勇気に感服し、対ゴーレムの作戦を練る為、頭をフル回転させた。
左手の紋章が淡い光を放つ中、フリオニールは一か八かの賭けに打って出ることにした
(ギーシュの時といい肝心なところでバクチをするフリオニール)。
フリオニールはゴーレムに不敵な笑みを浮かべると、『スロウ』の魔法を唱えた(覚えたて。熟練度1−06)。
ゴーレムの頭上に光る球体が出現した次の瞬間、球体から一筋の光がゴーレムの頭に垂れると、
巨大な光る蜘蛛の巣となってゴーレムの全身を覆った。
蜘蛛の糸に絡まれ身動きが取れなくなったゴーレム。取り払おうと必死にもがくが、
もがけばもがくほど糸は絡まる。ゴーレムは終に動くのを止めた。
「なっ、何よあれ!?」
突如出現した蜘蛛の糸に驚愕するルイズとキュルケ。
「やっと見れた」
ぼそっと呟くタバサ。
「何を言っているんだ!さぁ行くぞ!」
動きを止めただけでゴーレムを破壊したわけではない。熟練度の低い『スロウ』なので
限界もあるだろう。フリオニールは一刻も早く現場から立ち去ろうと3人の少女に声をかけた。
すると、木の陰からロングビルが突然姿を現し、フリオニールの背中に狙いを定めて杖を向けた。
その姿を発見したルイズが
「危ない!」
と叫んだが、ロングビルの杖の先から濃い緑色をした大量の液体が噴出した。
しかし、液体はフリオニールの手前で止まり、回れ右をすると猛スピードでロングビルの
元へ向かっていく。
「ど、どういうことだい!?」
ロングビルは絶叫したが避けることが出来ず液体に飲み込まれた。
ロングビルが意識を失い地面に倒れると同時にゴーレムも消失した。すると、ルイズ達は
一斉にロングビルの元へ向かった。
「まさかミス・ロングビルがフーケだったなんて・・・」
キュルケは信じられないとばかりに頭を振る。
「生きてるの?レイラ・・・じゃなかったロングビルさん・・・じゃなかっ」
フリオニールはいたって冷静であるが言うことは頓珍漢になってしまっている。
「かなりの重症よ。残念だけど、もう助からないでしょうね」
自身の使い魔の言葉を遮りフーケに死の宣告を言い渡すルイズ。
しかし、何故、謎の液体はフリオニールに直撃せず杖の主の下へ戻ったのか?
不可思議な現象に一同首を捻る。
「とりあえず復活させますか」
フリオニールは捕縛用の縄をフーケに縛り付けると、『レイズ』の魔法を唱えた。
すると、上空から一人の天使が舞い降りてきてフーケの頭を撫でた。
「なんなのよ、もう!」
蜘蛛の糸の次は天使。「ダーリン」と呼ぶ男の理解を超えた行動に苛立ちを隠せないキュルケ。
「・・・・・・」
タバサは舞い降りた天使を興味深そうに見つめている。
天使が姿を消すとフーケは意識を取り戻した。
「うっ・・・とんだドジ・・・踏んじまったよ」
全身には謎の液体によるダメージが残っている為、言葉は途切れ途切れだ。
「とにかく、詳しい話は学院に戻ってからにしましょう」
ルイズの〆の言葉に頷く一同。タバサが口笛で使い魔の風竜を呼び、捕らえたフーケを
『レビテーション』の魔法で持ち上げ風竜の背中に乗せた。次いでタバサ、キュルケの順に乗る。
「乗って」
タバサはルイズとフリオニールに同乗を勧めた。
「馬車はどうするの?」
フリオニールはタバサに問う。すると、タバサは無言で風竜の首を叩いた。顔色の悪くなる風竜。
ルイズとフリオニールはそれを見てみぬフリをして風竜に乗るのであった。
フリオニールの第11話は以上です。
失礼しました。
>>77 DQ8で壷や樽を割る時の罪悪感ときたらそれはもうw
フリオニールの作者さん、乙でした。
ハルケの魔法と比べて初期のFFシリーズの魔法はエフェクトがコミカルですから、
その効果ともども驚くでしょうね。
壺や樽を割る……他のRPGならともかく、ゼル伝シリーズでは結構当たり前。
128 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/08(水) 00:41:50 ID:odKpWTkF
フリオニールの人乙ボァー
男の娘といえばブリジットたんは召喚されたことあるのかね
男の娘=早乙女らんま
阿修羅男爵と似てるよね
ギルティギアのブリジットとかな
エグザミィの人の続き待ちきれん
ウルトラマンジャスティスは人間体は女、しかし変身すると男性
まあウルトラマンは性別を超越した神秘の存在なんだけど
>>132 父と母とかウーマンベスとかリリアンとか
コスモスやジャスティスはM78のウルトラマンとは違うから
フリオニールの作者さん乙ですー
スロウやレイズを覚えていたか
まあ白魔法+戦士なら当然か
バスナは覚えてないみたいだから…
ケアル、エスナ、レイズ、ブリンク、スロウ、テレポ…
あとはプロテスとかシェルとか、一応黒魔法でファイアやブリザドとかかな?大抵覚えそーなのは
フリオニール乙です。
白魔法といっても、テレポは事実上即死魔法なんだよなあ…。
138 :
ゼロの賢王:2010/12/08(水) 06:14:31 ID:6ASDBBBm
明け方に失礼します。
第8話が仕上がったので、投下します。
今回は結構オリ設定入って一部キャラ改変してるのでご了承ください。
「何か御用ですか、ポロン様」
ルイズの部屋へ戻る前にシエスタの様子を伺おうと厨房へやって来たポロンに対して、
マルトーが向けた言葉がそれだった。
言葉の内容とは裏腹に刺々しい物言いである。
「わざわざこんな平民如きの為に、その腕を振るって下さって感謝の言葉も御座いませんよ。
ねえ?“我らの魔法”」
マルトーが憎々しげにそう言うと、シエスタが慌てて口を開いた。
「ま、マルトーさん!そんな言い方は・・・」
「黙ってな!シエスタ」
マルトーはそう言ってシエスタの言葉を遮った。
シエスタはおろおろとポロンとマルトーの顔を交互に見る。
「いいんだ、シエスタ」
ポロンもシエスタに向けてそう言い、それ以上は口を噤む。
「で、でも!!」
シエスタは納得出来ないという風に首を振った。
「ポロン様はこんな私の為に、危ない目に遭いながらも貴族の方と決闘までして下さいました。
それなのにこんな・・・」
「・・・だとしても俺がマルトーたちを騙していたことには違いない」
ポロンがそう言うと、シエスタはそれ以上何も言わなかった。
目を伏せ、スカートの裾をぎゅっと握る。
ポロンはマルトーの方へと向き直った。
「魔法について黙ってたことはすまない!だが、これだけは信じてくれ。俺は・・・」
「聞きたくないね!」
マルトーはピシャリとポロンの言葉を遮る。
「平民の振りして俺らに近寄ってよ、表向きは仲良くしてよ、それで裏では俺らのこと馬鹿にしてたんだろ?
それが貴族様の新しい遊びか何かか?ええ!?」
マルトーは貴族というものが心底嫌いであった。
持って生まれた身分の差はある程度は仕方が無い。
だが、中には魔法が使えるというだけで平民を見下し、虐げる様な者も少なくない。
マルトーはそういった連中に痛い目に合わされたことは1度や2度だけではない。
時には愛する家族がその矢面に立たされることもあった。
そうしたことの積み重ねによりマルトーの貴族に対する憎しみは募っていった。
この学院でコック長として働くことが出来る様になったのは、学院長であるオスマンの厚意によるものである。
オスマンは貴族でありながら平民に対する理解も深く、純粋にマルトーのコックとしての腕を買ってのことであった。
そのことに対してマルトーは感謝はしているが、それでも貴族に対する蟠りが解けたわけでは無かった。
寧ろ、料理人への感謝も一切無く、毎日大量に残される料理を見る度に貴族に対する不平不満は余計に募っていくばかりであった。
そんな彼にとって、魔法を使う者は貴族であり憎むべき存在であった。
「帰んな!」
マルトーは冷たくそう言い放つと、背を向けて厨房の奥へと消えていった。
ポロンは特に何も言い返さずにただその背中を見つめている。
「・・・邪魔、したな」
ポロンは誰に言うでもなくそう呟くと、踵を返し厨房の外へと出て行った。
直後にシエスタは顔を上げ、ポロンを追い掛けて厨房を出た。
厨房を出てすぐにポロンの姿を見つけると、シエスタはポロンを呼び止める。
「ポロン様!」
「シエスタ・・・」
ポロンは振り返った。
シエスタは言いたいことが上手く言葉に出来ないことに歯噛みする。
少し間が空いたが、意を決してシエスタは口を開いた。
「あ、あの、私、ポロン様には本当に感謝しております。この御恩、一生掛かっても返せませんが・・・、
必ずお返しいたします!何でもします!・・・だから、その」
ポロンは無言でシエスタの顔を見つめる。
「マルトーさんを悪く思わないで下さい。きっと、きっとマルトーさんにも事情があるんです!だから・・・」
ポロンはシエスタが最後まで言い終わらない内に、シエスタの側まで来ると頭にポンと手を置いた。
そして、優しく2,3度撫でる。
「ポロン様・・・」
ポロンの手は少しゴツゴツしていたものの、その手触りが心地良くてずっとこうして貰いたいと思った。
シエスタはまるで自分が子供に戻った様な不思議な気持ちになっていた。
「大丈夫だ。分かってる」
「・・・ポロン様」
寂しそうな顔でポロンは笑う。
ポロンは撫でるのを止めると、厨房の方へと顔を向けた。
(マルトー、すぐにじゃなくていい。だが、お前なら分かってくれるよな?)
「・・・その、取り込み中のところ大変失礼だがよろしいかな?」
その時、後ろの方から声が聞こえてきた。
ポロンが振り向くと、そこにはギーシュの姿があった。
「お前は確か・・・」
「ギーシュだ。ギーシュ・ド・グラモン。・・・もしかしてお邪魔だったかな?」
シエスタはギーシュの言葉に思わず頬を紅潮させる。
ギーシュはフフッと笑うと、ポロンの横を通り過ぎてシエスタの目の前までやって来た。
「!!な、何か私に御用で御座いますか?」
シエスタはギーシュに少し怯えながら訊ねる。
すると、ギーシュは答える代わりに突然その場に正座を始めた。
そして、両の手を地面につけて頭を下げる。
「え!?ええ!?」
突然のことに慌てるシエスタを無視してギーシュは続けた。
「自分の不始末を君に押し付け、挙げ句の果てに八つ当たりまでして・・・本当にすまなかった」
「そ、そんな!あ、頭をお上げ下さい!」
「この通りだ!許して欲しい!」
ギーシュは頭を地面へと擦り付けた。
「ゆ、許します・・・許しますから早く頭をお上げ下さい!!こ、こんなところを誰かに見られたら・・・」
シエスタが涙目でそう言うと、ギーシュはすくっと立ち上がり再度シエスタに頭を下げる。
ポロンはその様子を見て、思わず顔を緩ませていた。
ギーシュは頭を上げると、ポロンの方へと向き直った。
ポロンはギーシュの顔を見て、ふと何かに気が付いた。
「お前、その頬どうした?」
「これかい?フフ・・・愚かな男の証さ」
ギーシュの頬は真っ赤に腫れていた。
「あの決闘の後、ケティとそしてモンモランシーと話し合ってね。僕の本当の気持ちを2人に伝えた。
ケティには可哀想だが、僕が本当に愛しているのはモンモランシーだとね。
そうしたら、ケティには食堂の時とは比べ物にならないくらい思い切り殴られてね。この様さ」
「そうか・・・」
「でも、不思議と嫌な気分じゃない。・・・誤解を受けないように言っておくが僕にその様な趣味は無い。
何というかとても清々しいんだ」
ギーシュはそう言うと笑った。
それは以前の蔑む様な感じは無く、とても気持ちの良い笑顔であった。
「へっ、男の顔になったな」
「君のおかげだ、ポロン。君が・・・いえ貴方がいたから、僕は過ちに気が付けた。そしてモンモランシーを失わずに済んだんだ」
「良かったじゃねえか。許して貰えたんだな?」
「ああ・・・、ケティが去った後に何度も土下座したよ。一生分の土下座だったかもね」
「いやあ、これからも土下座はするぜ?その一生分の何倍もな。経験者は語るって奴だ」
「そうか・・・肝に銘じておくよ」
そう言うと、ポロンとギーシュは声を上げて笑った。
シエスタもその様子を見ていて、思わず笑顔になる。
暫く笑った後、ギーシュは遠い目になって言った。
「・・・僕は決闘の時、いや食堂の時から貴方を許せないと強く思った。貴方を屈服させてやりたいと思っていた。
あの時、貴方は彼女の為、体を張って僕に立ち向かった。弱き者の為に戦う。それは貴族としての精神だ。
僕は貴族以上に貴族の心を持った貴方を見て何処か嫉妬していたのかもしれない」
ポロンはギーシュの言葉に静かに首を振った。
「違うな・・・。別にそれは貴族とかそんなのは関係ねえよ。それは人として当たり前の“心”だ。
全ての人がそうあって欲しいと俺は願っている」
ポロンの言葉はギーシュだけでなく、シエスタの心にも強く浸透していった。
「人として当たり前・・・か。貴方は本当に僕の想像を簡単に超えてくれる。
さて、僕は失礼させて頂くよ。時間を取らせてしまってすまなかったね」
ギーシュは踵を返して、来た道を戻ろうとしたが、ふと何かを思い出したかの様にポロンたちの方を振り返った。
「気を付けた方がいいよ。この学院にいる貴族は僕の様に物分りのいい者ばかりではないからね。
あの決闘を見て貴方にいい感情を抱かない貴族も大勢いるだろう。教師を含めて、ね」
「・・・ああ、分かった。わざわざ教えてくれて有難うな。ギーシュ!」
「フッ、初めて名前を呼んでくれたね。貴方に覚えてもらえて光栄だよ」
ギーシュは気障な感じで手を振ると、そのまま去って行った。
ポロンもシエスタに別れを告げてそこから去り、シエスタもまた厨房内へと戻った。
「何やってたんだシエスタ」
「キャッ!ま、マルトーさん!こんなところで突っ立ってて何をやってたんですか?」
「・・・いいからこれ運べ。教員室へな」
「は、はい!」
ケーキと紅茶を乗せたお盆をシエスタに渡すと、シエスタはそれを教員室の方へと運んで行く。
シエスタが去った後、マルトーはポロンが去って行った方を見つめていた。
「・・・・・・フン!」
彼は鼻を鳴らすと再び自分の持ち場へと帰って行った。
その夜、ポロンが雑事を済ませてルイズの部屋へ戻ろうとすると、見覚えのあるサラマンダーが目の前に現れた。
「きゅるきゅる」と人懐っこそうな感じで鳴くと、ポロンのズボンの裾を口に咥えて何処かへ連れて行こうとする。
「??どうしたフレイム。何か用か?」
ポロンはフレイムの目を見た。
ポロンはモンスターや動物などと心を通わすことが出来る。
どうやら彼は自分の主人の元へと連れて行きたいようであった。
「俺に何の用があるんだ?」
ポロンは昼間のギーシュの言葉を思い出す。
しかし、彼の主人───キュルケと言っただろうか?彼女はそういうタイプには見えなかった。
いまいち意図が汲めないポロンは取り敢えずフレイムに付いて行くことにした。
フレイムに連れられキュルケの部屋の前まで来ると、ポロンは扉を開いて中へ入る。
「邪魔するぞ・・・って、うわ、何だこりゃ?」
部屋に入ると、中は真っ暗で何も見えなかった。
それでいて何か香水の様な甘ったるい香りがポロンの鼻をくすぐる。
暗がりの中から、声が聞こえた。
「扉を閉めて、こちらへいらして下さらない?」
キュルケの声であった。
ポロンは恐る恐る声の方へと歩いて行く。
すると、ポロンの通過と同時に順々に蝋燭が灯っていき、やがてベッドに腰掛けたキュルケの悩ましい姿が見えてくる。
「貴方は、私をはしたない女だと思うでしょうね・・・」
キュルケはポロンに向かってそう言うと、足を組み替えた。
「・・・・・・・・・・・・」
ポロンは無言であった。
無論、ポロンとて40年近く生きているわけであり、彼女の意図に気付かないわけではない。
仙人の様に煩悩を捨てているわけでも無いので、この状況に何も思わないわけでもない。
だが、
「・・・すまねえ、昔の俺ならお前の誘いにホイホイ乗ってたかも知れねえが、今の俺は無理だわ」
そう言って頭を下げた。
キュルケは自分のこの姿やこの状況を見てもなびかないポロンに内心驚く。
だが逆にそれがキュルケを更に燃え上がらせた。
キュルケは言葉を続けた。
「・・・昼間の決闘。貴方、本当に凄かったわ。平民が貴族に立ち向かうだけじゃなく、あんな強烈な魔法・・・初めて見たわ。
恋しちゃったみたいなの、私・・・」
「だから本当にすまねえ!」
ポロンは再び頭を下げた。
その時、バンッと窓の開く音がした。
思わず音のする方を振り向くと、そこには恨めしげにポロンを睨み付ける男の姿があった。
男はキュルケの方へと視線を移す。
「キュルケ!待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば・・・」
「ペリッソン!?・・・ええと、2時間後に・・・」
「話が違うじゃないか!!」
キュルケは煩わしいといった感じで胸の谷間に差した杖を取り出して振るった。
すると蝋燭の炎がまるで大蛇の様に伸びて、窓ごと男を吹き飛ばした。
「・・・まったく、無粋なフクロウね」
「フクロウ・・・?」
「・・・彼はただのお友達よ。気にしないで頂戴」
その後も立て続けにキュルケの部屋に男がなだれ込んで来たが、全てキュルケは追い返してしまった。
「さあ、これで邪魔者はいなくなったわ!」
キュルケがそう言うと、ポロンはげんなりした表情で見ていた。
そして、後ろを振り向くとやや早歩きで扉へと向かった。
キュルケは去ろうとするポロンを見て、慌てて扉に魔法をかける。
彼を自分の虜にしたいという欲求もあったが、それ以上に彼を知りたくなったのだ。
今ここで帰すわけには行かない。
ポロンは扉に手を掛けると、鍵が掛かってることに気が付いた。
「!?何時の間に!?」
「まだ帰さないわ・・・」
キュルケが獲物を狙う蛇の様な目でポロンを見ている。
このままだとただじゃすまないと思ったポロンは扉に向かって手をかざした。
「アバカム!!」
すると、鍵が開く音がした。
(うしっ!これは使えるのか!)
ポロンは昼間の決闘以降、自身の中の魔力が多少は安定して来ているのを感じていた。
とは言っても、まだベギラゴンなどといった強力な呪文は勿論、ベキラマクラスの攻撃呪文も使えないみたいだが、
ある程度の補助呪文であれば使える様な気はしていた。
自身の掛けた魔法があっさり破られたことにキュルケは驚いた。
目の前の男は、やはりただの平民ではないと確信する。
「お願いだから待って頂戴!!」
キュルケが呼び止める前にポロンが扉へ手を掛けようとした、
その時であった。
バーン!!!!
扉が壊れんばかりの勢いで開けられた。
見ると、そこにはネグリジェ姿のルイズが鬼の様な表情で立っていた。
「る、ルイズ・・・?」
「ポロン!!!!」
ルイズはポロンを怒鳴りつけると、次にキュルケの方へ向き直った。
「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!?」
「仕方ないじゃない。彼のこと、好きになっちゃったんだもの。彼、貴女なんかにはもったいないくらいいい男だわ。
ねえ、『ゼロのルイズ』なんか放っといて、もっとお話しましょうよ?」
キュルケがポロンに向かってそう言うと、ルイズの怒りが目に見えて増していく。
「この女・・・もう頭に来た!!」
ルイズは、まるで怪獣の様にどかどかと歩いてキュルケの元へと歩いて行く。
このままならば、女同士の見るに耐えない凄惨な掴み合いが始まるであろう。
ポロンはルイズの肩越しから声を掛ける。
「お、おいルイズ!俺はあの子見ても別に何も思わないし、何もするつもりはねえ!!
だから部屋へ戻るぞ!!」
ポロンはそう言うと、強引にルイズの手を取ってキュルケの部屋から出て行った。
「あ、ちょ、ちょっと!!」
キュルケが制止する間も無くポロンの姿は部屋の中から消え去った。
「・・・ちぇっ」
キュルケは人知れずそう呟いた。
しかし、最後にポロンの放った言葉は気に食わない。
(俺はあの子見ても別に何も思わないし、何もするつもりはねえ!!)
(あの子・・・ねえ)
ポロンにまだ自分の名前すら呼んでもらえていないことにキュルケは気が付く。
「見てなさい・・・貴方を絶対に私のものにしてやるんだから!!」
その後、ルイズの部屋へと戻ったポロンはルイズに説教を食らい、
明け方までヴァリエール家とツェルプストー家の確執についておさらいさせられるのであった。
146 :
ゼロの賢王:2010/12/08(水) 06:26:08 ID:6ASDBBBm
といったところで8話終了です。
マルトーさんのキャラに関しては貴族嫌いの部分をより強調させました。
もし「こんなのマルトーさんじゃないやい!」って方がおられたら申し訳ございません。
それ以上にギーシュがイケメン仕様になってるのは内緒です。
貴族でなくなったメイジが山程いる世界で魔法使える→貴族だ悪だ!となるマルトーさんなら
平民のロングビルにもものすげぇつらく当たってるんだろうね
内緒じゃないじゃないw
ともあれポロン乙。
ロト紋てDQ4〜5の頃だっけ?
10のプラットホームは何になるんだろうなw
マルトーさん…
>>149 発売時期じゃない?
マダンテを描いてたからXが発売したあとも暫く連載してたんじゃないかな
>>136 サイレス、フォーグ、アンチあたりはどうだろう?
コレらを覚えていたらメイジにとって脅威どころじゃない。
特にフォーグは。
>>151 マダンテ初出はYじゃなかったっけ?
ついで言えば、小説版だとカルベローナ出身のバーバラだから修得できたみたいな設定が追加されてたはず。
連載中に6が発売されてそのあとマダンテ
コミックのカバーに6のマダンテとは設定が違いますとか書いてあった
新作のドラクエの技を輸入したのがロト紋、
新作のドラクエに技を逆輸入させたのがダイ大ってことか。
>>155 ドラクエは\になってもダイ大リスペクトネタが止まらねえんだよな
ざっと思い付くだけでベタン、メドローア、ギガスラッシュ、グランドクロスか
少年誌的な派手さではダイ大のほうが上で、ロト紋はハードなストーリーが見所だったからな
関係ないが、昔スーファミであったグルグルのゲームで光魔の杖があったからずっとククリに装備させてた
ポロンは賢王になった時に子作りできなくなったんだっけ
ダイ大、ロト紋があるならアベル伝説からも召喚あってもいいかもしれない
ドスケベ魔法使いのヤナックとかオスマンと息合うだろう
避難所に書いていたのでわからない方が多いと思いますが
「13日の虚無の曜日 第一話」を
先週の水曜日に投下するといい、投下できなくてすみませんでした。
これから「13日の虚無の曜日」を投下します
深夜、一人の少女がアルビオン王国サウスゴータ地方の
ウエストウッド村近くの森にいた。
その名をティファニアといい、彼女の血にはエルフの血が流れていた。
そのため王により国外追放され、人間の父は獄死、エルフの母は王家の軍により殺され、
自身は追っ手から辛くも逃れ、父に仕えていた臣下の娘であるマチルダの助けにより
ウエストウッド村で孤児たちと一緒に隠れ住む身である。
その彼女が何故一人で森に佇んでいるのか。
彼女は思いつきを実行に移していた。
記憶の片隅で誰とも知らない貴族が行っていた『サモン・サーヴァント』。
それを見様見真似で、試していたのだ。
彼女を知る人間がいても、その行動に意味を見出すことはできない。
それは正しく気紛れであり、失敗することは
彼女の頭の中でもわかっていることだった。
だが僅かにある期待と渇望が、『サモン・サーヴァント』をやめる意志を妨げた。
この気紛れは、決してマチルダや孤児たちと過ごす時間が退屈だったのではなく、
いたずらに魔法を試みているわけでもなかった。彼女には一つの願いがあった。
「もう一度…!」
少女は懸命に『サモン・サーヴァント』を行う。
自身を守ってくれる強靭な使い魔、
そしてマチルダや孤児を守ってくれる使い魔を彼女は欲した。
それは自分の身を守ってくれたマチルダへの恩返しのためであり、
孤児たちを戦禍から守る、孤児たちの恒久的平和のためであり、
そしてもう一つの願いを叶えるための儀式であった。
そのもう一つの願い。彼女はその身ゆえに、村からはあまり離れることができない。
例えそれが自身をこの地へ追いやった世界といえど、外の世界への興味が尽きなかった。
そして考えついたのが使い魔召喚『サモン・サーヴァント』。
『少しだけで良い、外の世界を知りたい』
相手が喋れない動物でも、その存在が外の世界から来ただけでよかった。
彼女はその些末な変化を感じたかったのだ。
彼女は懸命に記憶を掘り起こしながら、『サモン・サーヴァント』を行った。
これで15回目になるだろう『サモン・サーヴァント』は彼女の期待に応えた。
失敗した時とは違う、神々しい光が森の木々を照らした。
思わず目を瞑るティファニア。光は現れた時と同じように一瞬で消え、
ティファニアは成功の喜びを実感しようと目を開けた。
彼女の顔に戸惑いが現れた。光が現れ消えた場所、
そこには2メイル近い人間が仰向けに倒れていた。
異様な風体の人間だった。白い被り物をする頭部にはほとんど頭髪がなく、
申し訳ない程度に、後頭部に疎らな髪があった。
ボロボロの汚れた衣服は所々かびているようにも見え、
ティファニアの服は森の木々の色のような新緑だったが、
対照的にその服は汚らしい沼地の淀みを思わせる色合いであり、
肌はそれと同じといってもいいほど、どす黒いものだ。
辛うじてその体格から、ティファニアは人物が男であると認識できた。
ティファニアは面食らっていた。
彼女としては動物が出てくるものだと思っていたものが
人間が出てきたことに驚きを隠せないでいた。
混乱しながらも、全てを終わらせようと彼女は召喚された人間の横に座り、
キスをしようと被り物を外そうと身を傾ける。
頑丈そうな胸板が上下にゆっくり移動し、微かな呼吸音が彼女の耳に届き、
ティファニアは初めて相手が寝入っていることに気づいた。
そのまま彼女は白く簡素な被り物を少しずらし、
うろ覚えな呪文を詠唱し、唇にキスしようと顔を近づける。
初めてのキスは一瞬だったが、相手の唇の冷たさが印象に残った。
突如、彼女の胸に衝撃が走った。
身体が宙を浮く一瞬の浮遊感、と同時に急激な速度で身体が
自分の意思に関係なく後方へと飛ぶのがわかる。
瞬間的飛行は、始まった時同様、突然の全身の痛みにより終わりを告げた。
腰から痛みが走り、頭に苛烈な痛みが届くと、気が遠くなりそうになる。
視界が歪み、意識を失いそうになりながら自身の状態を確認する。
さっきまで地面に座っていたはずの身体が、地面に倒れており
その先には彼女が召喚した男が右腕を突き出す状態で、
上体を上げてこちらを見つめていた。
目が覚めた男に突き飛ばされ、地面に身体が激突したのだとわかった。
何故という疑問が湧き起るが、ともかく相手に事情を説明しようと
声をかけようとした。しかし痛みが彼女の意思を挫き、薄れゆく意識の中、
男が立ち上がりこちらへ向かってくるのを感じたが、
それ以上は意識を保てず、彼女は気絶した。
第一話投下終了です
次話はいつ投下できるかわかりませんが
今度は投下し忘れないよう努力します
乙です
かみをバラバラにできそうなつかいまだな
クリスタルレイクの魔神キター
乙、これまた恐ろしい使い魔が…
とりあえず、残酷描写が強くなる場合には避難所にお願いしますね
ホラーまったくだめなのよ…
>>146 マルトーは貴族嫌いなだけで、魔法が使える者全般が嫌いなわけじゃないかと。
これじゃ、オスマンやロングビルも嫌いって事になっちまうよ。
>>168 魔法が使える=貴族である事は(ハルケゲニアでは)一般的常識だからポロンの話を聞かずにそう決め付けるのも仕方ないと思う。
名無しや傭兵とかの例外はあっても、魔法学校にいるのだから尚更。
ただ魔法が使える事を知った、ただそれだけで感情が先走っても仕方ないかと。
そういや今の若い人ってジェイソンしってんのかね
俺が子供の頃は結構な頻度で放送してたんだがなぁ
一方ジョゼフはマイケル・マイヤーズ(ハロウィン)を、教皇はフレディ(エルム街の悪夢)を召喚していた……
だったらサイト涙目だがw
どう足掻いても勝てねーよ、あいつら揃いも揃って不死身なんだから
ルイズはシザーマンでも召喚してろ
どのシザーマンかによって色々違ってくるな
1:9歳児。物理的な攻撃では死なない
2:10歳児。超美少年。記憶喪失
3:チョキチョキー!たぶん一番外れ
スレチではあるがマイケルVSジェイソンとか面白そうだ
自分の血族を殺し続ける男と、自分の母の遺体を守り続ける男…
貞子を召喚しても……ビデオがないと完璧無意味だな
>>175 貞子は呼んだ時点で破滅するぜ
あと這いずって出てくる貞子は幻覚という豆知識
規定の日数が立つと貞子が姿を映すもの(ガラスでも水でもなんでもいい)から迫ってくるって幻覚を見るって設定だし
>>169 トリステインでは貴族はサイト除いて全員が魔法を使えるが
魔法を使える者は全員が貴族ではないぞ
まとめからは消えたけど
貞子召喚のゼロのバースデーとかってタイトルがあったそうだな
読む前に消えてしまったんだけど
しかしジェイソンか・・・契約無意味なのかしらね、こりゃあひでぇことになりそうだ
>>170 あの事件以来、スプラッタ系のホラーは一切テレビでやんないからなぁ
182 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/08(水) 21:28:03 ID:Z9XOdmRl
>>183 おま、スレごと消されたらどうすんだ。
バックアップ取るのもめんどいのに。
じゃあさっさと話題変えましょ
もうすぐクリスマスにちなんでサンタクロース男を召喚
むろん宝物庫にあるのは黒龍リチャードめ、メ……なんだっけ?
フリオニールの第12話を23:30頃投稿いたします。
フリオが使う魔法に関しては概ねいただいたコメントどおりになるかと思います。
思った以上に書くのが難しいっす。まぁ、何とかなるか。
結局、タバサの風竜が馬車を持つのをゴネた為、馬車は後で使いを出して引き取らせる
ことにして森から飛び立ったルイズ一行。
大きな被害もなく帰路につけることに安堵し、風竜の背中の上で思い思いに休息を取っている。
「フーケを飲み込んだ液体、あれは間違いなく『クラウダ』・・・」
一見何の変哲もない平凡なデザインの『破壊の杖』を手に取り独り言を呟くフリオニール。
自身が最近まで愛用していた『まじゅつのつえ』より武器としての性能は一段上だろうと
感じ取った。すさまじい魔力が込められている。道具として使った際の威力はもちろん
『まじゅつのつえ』の『サンダー』(熟練度5レベル)を超えている。
フリオニールは『破壊の杖』を床に置くと思いついたようにデルフリンガーを抜く。
「おっ!やっと俺っちの出番だな」
「もう終わったよ」
「えっ!そりゃないぜ、相棒!」
「ごめん。今回は敵が強すぎた」
「だったらなおさらじゃねぇか!」
「まぁまぁ落ち着いて」
2人(?)のやり取りをじっと見ていたキュルケが意を決してフリオニールに近づき
「ダーリン、あなたが何者なのか説明して!」
真剣な表情で問い詰めた。
「う〜ん、そうだな。キュルケとタバサは強敵を一緒にやっつけた戦友だ。隠し事はし」
フリオニールは己の素性を明かそうとしたが、ルイズが遮った。
「ダ、ダメよ!」
「戦友に隠し事はできないよ。言うよ、俺は」
「ち、ちょっと!」
「俺、異世界から来たんだ」
止めるルイズを無視して真実を告げるフリオニール。キュルケはそれを聞かされ鳩が豆鉄砲を
食らったような表情になった。
タバサは読書中だったがページを捲ろうとした手をピタッと止める。
「たまに異世界から人や物が召還されることがあるって院長が言ってた。この『破壊の杖』も
たぶん俺の住む世界の物だと思う。けれど、まぁ、これは秘密ってことで」
フリオニールは人差し指を唇に当てた後、かいつまんで身の上話を始めた。
例によって魔法の本を買って覚えれば平民でも魔法を使えることに驚いた様子だ。
ハルケギニアでは魔法を使える=特権階級(落伍者は除く)なので、フリオニールの住む
世界は一体どのような政治形態をとっているのかキュルケは興味を引かれた。キュルケの
母国であるゲルマニアは金を出して領地を購入すれば平民でも貴族になれる制度である為、
フリオニールもきっとそのような環境で暮らしているのだろうと思った。
フリオニールから返ってきた答えは、王政ではあるものの貴族と平民の垣根はハルケギニアの
それよりも低くおおらかな人が多い世界である、というものだった(パラメキア帝国と
一部の貴族を除く)。
「そうよね。みんな魔法を使えるんですもの。メイジの権威はないわね」
「そうでもないよ?ミンウはみんなから慕われてるし。それにミシディアっていう魔法国家も
あるみたいだし」
「ダーリンはその魔法国家に行ったことないの?」
「そこに行く前に召還されたわけで・・・」
「そうか・・・でも、ハルケギニアに来て良かったでしょう?」
「魔法学院はいいところだね(可愛い娘多いし)。でも、俺はやらなきゃいけないことがあるんだ」
「やっぱり帰っちゃうの?」
「反乱軍は俺で保っているからなぁ、なんて冗談だけど」
フリオニールとキュルケは顔を見合わせて笑った。笑ったがキュルケの表情は寂しそうだ。
フリオニールは気まずくなった空気を何とかしようと話題を変えた。
「魔法は得意じゃないんだけど、この世界に来てから魔法の成功率が高くなったような気がする」
「ハルケギニアがメイジの治める世界だから何か影響しているのかしら?」
「そうかもしれない」
フリオニールとキュルケの会話を黙々と聞いていたタバサが突然、
「毒は治せる?」
「『バスナ』か『エスナ』の魔法であれば治せるけど、俺は使えないんだ」
「そう」
タバサにしては珍しくがっかりした表情を一瞬であったがみせたので、親友のキュルケが
不思議そうにタバサを見つめた。
「ご主人様」のルイズはひとりボーッとしている。キュルケの「やっぱり帰っちゃうの?」の
言葉を聞いて、フリオニールとのいつかやってくるであろう別れを想像すると心臓を
圧迫さそうな気分になった。
そんなことは認めまいと頭を振り
「あ、あんた達。説明は終わったんでしょ?だったら必要以上にくっつかない!」
「あら?やきもち?」
「ち、ちちち違うわよ!だ、誰が、そそそそんなお調子者の使い魔なんか!」
「そう?じゃあ、私がいただいちゃおうかしら」
「また発情期がやってきたのね!ああ汚らわしい」
「恋愛は人間の持つ自然な欲求よ。私は自然に従うわ」
女三人寄ればかしましいとはいうが(一人は蚊帳の外であるものの)、賑やかなひとときと
ともに学院へ向かうルイズ達であった。
時刻がおやつタイムにさしかかろうかという頃にルイズ達は魔法学院へ帰還した。
フーケと『魔法の杖』を持参し院長室へ向かう一行。
院長室ではオスマン院長とコルベールが待機していた。
「・・・ミス・ロングビル?」
ミス・ロングビルの正体がフーケであったことに絶句する二人。
「あ〜、その、あれじゃな。ミス・ロングビルを採用したのは確かにわしじゃが・・・」
「・・・ああ、私の想い人が・・・」
何か言葉を繋ごうとするが非常に歯切れが悪い。痺れを切らしたルイズが
「どうなされたんですか?」
とつつけんどんに伺った。すると、オスマン院長はおずおずと
「酒場でウェイトレスをしておった彼女を秘書としてスカウトしたのじゃよ。セクハラ要因
・ ・・だって、お尻撫でても怒らないんだもの・・・柔らかくて気持ちいかった」
フーケを登用した言い訳を始めた。それを聞き軽蔑の眼差しを院長に向ける3人のレディ。
フリオニールは無言を貫いたが、内心(いいなぁ。うらやましい)と羨望の眼差しを院長に向けた。
「私は騙されたのか・・・」
どうやらフーケは『破壊の杖』に関する情報(セキュリティなど)をコルベールから
聞き出していたようだ。色仕掛けを使ったようで、コルベールもボソッと「柔らかくて
気持ちいかった」と呟いた。片思いをしていた女性が実はビッチであることを知った時のような
失望感に苛まれるコルベール。ぶつぶつと独り言を呟き始めた。
室内がどんよりした空気になったので、フリオニールは流れを変えようと懸命に笑顔を繕って
「院長、その杖ですが、どうやら俺の住む世界の物のようです」
院長に返還した杖を指差した。
「おお、フリョウチーム君」
「フリオニールです」
「そうか、君の世界の物か」
「それに、フーケの使い魔もそうでした」
「何と!フーケの使い魔が・・・」
院長は捕縛され床に横たわっているフーケを一瞥した。すると、フーケは
「そこの・・・小娘が・・・変わった使い魔を・・・召還・・・だからあたしも・・・」
モンスターを召還した理由を途切れ途切れに語った。依然ダメージが残っているようだ。
「それは大変な任務じゃったのぅ。それでは、勇気ある諸君を称え『シュヴァリエ』の爵位申請を
宮廷に出そうではないか!と言ってもミス・タバサは『シュヴァリエ』の爵位を持って
おるから精霊勲章を申請しよう!」
院長の発言にルイズ、キュルケ、タバサの3人は先程の軽蔑の眼差しから一転、希望に
満ちた輝く瞳になった。
やっと威信を回復できた、と胸を撫で下ろす院長にルイズが
「オールド・オスマン。彼には何もないのでしょうか?」
フーケを見張っているフリオニールを見て尋ねた。
「うむ。彼は貴族ではないからのぅ。残念じゃが何かを授けるわけにはいかん」
無念とばかりに頭を振る院長にフリオニールは
「お礼なんていいですよ、院長。その代わり元の世界に帰れる方法、お願いしますよ」
爽やかな笑顔で懸案事項の情報収集を念押した。
「もう!良い気分になっているのに水を差さないで!」
フリオニールのマイペースな発言にルイズは思わず大声をあげた。
「寂しいこと言わないで、ダーリン」
キュルケは目に薄っすらと涙を浮かべている。
「KY。DT」
タバサはいつもどおりの無表情でぼそっと呟いた。
(な、何か俺が悪者になってるぞ!)
うろたえるフリオニールであったが、ようやく我を取り戻したコルベールが
「もうしばらくゆっくりしていってもいいではないですか。なにせ君はあの伝説のガンダ」
「オホン!」
フォローし何かを言いかけたが院長に阻止された。
「???ガンダム?」
「その件は後でわしから話そう。それでは諸君、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。
主役はもちろん君たちじゃ。精一杯着飾ってくるのじゃぞい」
『フリッグの舞踏会』の単語を聞き、笑顔ではい、と返事をすると3人の乙女は院長室を後にした。
「ミスタ・コルベール。君はフーケを牢に繋いでくれたまえ」
「承知いたしました」
コルベールは院長に会釈をし、フーケに『レビテーション』の魔法をかけると部屋を出て行った。
院長は部屋に自身とフリオニールしかいないことを確認すると、
「さっきの話じゃが、君の『使い魔のルーン』は伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものじゃ」
「へぇ〜、それで?」
「伝説によると『ガンダールヴ』はあらゆる武器を使いこなし・・・」
「俺、今までもそんな感じだったけど・・・」
「・・・そうか。なら相乗効果を生むかもしれんのぉ」
「それで、院長。元の世界・・・」
「そうじゃ!『ガンダールヴ』を使い魔に持つメイジは伝説の魔法『虚無』の担い手であり・・・」
「はぁ。うちの「ご主人様」伝説なんですか。確かにすごい爆発起こしますけど(性格も)」
「何じゃ、フニオチンチン君。全く興味なさそうじゃの」
「フリオニールです」
「君が『ガンダールヴ』でミス・ヴァリエールが『虚無』の担い手かもしれんことはわしと
ミスタ・コルベールしか知らん。このことは内密に頼むぞい」
「言われなくても大丈夫ですよ。貴族の友達少ないし」
「そうか」
(このじいさんを頼ったのは失敗なのかもしれない)
フリオニールは故郷フィンと仲間の無事を思い巡らし深くため息を吐くのであった。
追記:数十年前、ワイバーンの群れからオスマン院長を救ったのはミシディアの魔導師だった。
魔法で撃退を試みるも数で圧される魔導師。奥の手である「サンダーギガース」に
変身し、いなずまと岩石で反撃をした。とどめに『まどうしのつえ』を使ったが
(巨人なので杖は爪楊枝の要領で持っている)、それが仇となりあえなく自爆。
後日、院長は亡骸を手厚く葬り『まどうしのつえ』を形見として入手した。
フリオニールの第12話は以上です。
失礼しました。
>>186 サタンクロス召喚、に見えたw
川に流されたルイズを助けようとして…
助けようとして、あやまって滝壺に叩き落とした?
195 :
3210:2010/12/09(木) 00:35:47 ID:1FZ3CSqE
フリオニール乙であります
>>131 携帯から失礼します
規制にかかったみたいで書き込めないので数日ほど様子見でお休みします
>>193 ザンダグロス召喚に見えた俺が通りますよ。
…普通に当たりだな。
197 :
瀟洒:2010/12/09(木) 00:46:29 ID:fs3jjn5i
フリオニールの人お疲れ様です。
来てない期間が長かったから追いかけるのが大変だ……
ともあれ、お久しぶりと言うレベルではないような気がしますが、お久しぶりです。
予約などなければ5分後くらいに投下開始したいと思いますので、
お暇だったら支援をお願いします。
今回大分自己解釈等多目なので、その辺りご注意下さい。
さして訓練をしているようにも見えない妙齢の女性が、2メイルを越える巨体の亜人を苦もなくねじ伏せた。
その様子を、タバサと地下水は余すところ無く見ていた。白蓮は、何も難しい事をしたわけではない。
ある程度の護身術を学んでいる程度の、どこか素人臭い動き。だが、その動きが尋常ではなかった。
タバサはいつか白蓮に聞いた事を思い出した。自分は、身体能力を強化する魔法が得意なのだ、と。
ラルカスの斧を軽々と避け、片腕一本でミノタウロスの腕力と張り合い、上回る。
そしてカウンター気味に決めたアッパーカット一撃で筋肉に覆われた巨体を跳ね上げ、宙に浮かせた。
肉体に作用する魔法を得意とする水系統のスクウェアメイジでも、こうはいかないだろう。
まるでどこかの三文小説のような展開だ、とタバサは思った。
だが、それと同時に身震いする自分が居た。
これほどの力、ちょっとやそっとで身につくようなものではない。
おそらく、すさまじい研鑽の果てに会得したものだろう。
この女性ならば、あるいは可能かもしれない。自分が何よりも望む『あの人』を救う事が。
目の前に広がった世界に、タバサは我知らず唾を飲み込んだ。
ラルカスが意識を取り戻すと、そこは先程と変わらない自分の研究室であった。
先程まで自分を支配していた激情はすっかり引き、心配そうに自分を覗き込む白蓮を見ても、
またやってしまった、という罪悪感しか浮かばなかった。
「気がついたようですね」
「……私は、またやってしまったのか」
力が抜け切ったような声で、ラルカスは口を開く。3年ほど前から、こうなってしまう事がある。
自分の中に潜む、凶暴で、しかし抗いがたい何者かが囁くと、ラルカスは我を失ってしまう。
我を失ったラルカスは近隣の村から子供を攫い、殺しては食らってしまっていた。
最初の内は夢だと思った。余りにも非現実的だったからだ。
だが、夢ではなかった。夢だと思うたび、散らばった骨が、飛び散った血が、
それは現実だと、自分の行いをラルカスに突きつける。
我知らず、震える声が喉から漏れた。
「怖かった、日に日に獣へと、自分ではない何者かへと変貌していく自分が。
様々な薬を調合したが、まるで効果は無かったよ。死のうとも思ったが、結局死ねなかった。
なあ、名も知らぬ君よ。鍋の脇にある棚の中の、蒼いラベルの秘薬を取ってくれないか。
何、ただの毒薬さ。今なら出来る気がするんだ。この、私の中の獣を殺す事が。
私も死ぬだろうが、それもまた報いだ。さあ、決意が鈍らぬうちに取ってくれないか」
だが、白蓮は首を横に振る。そして穏やかに微笑むと、ラルカスの手をとり、握り締める。
柔らかく暖かな女性の手の感触が、ほんの僅かに、ラルカスの心を癒す。
「これはジョゼフにしか話したことはありませんが……私は、厳密な意味での『人間』ではありません。
ある魔法によって老いることも、飢える事もなくなった、『魔法使い』という存在。
これでも千と数百年生きております。そして、そのような存在になろうとした理由。
それは貴方と同じなのですよ。私の場合は、老い。病と老いとの違いはあれ、
私もまた死への恐怖から人を捨てる事を望み、成し遂げた者なのです」
ラルカスが目を見開く。何を言っているんだ、この女は。
そんな考えがよぎったが、杖もなしに自らの全力の『ウィンディ・アイシクル』を迎撃する光弾、
そしてこの巨体の膂力を上回るほどの力を発揮する、異常なまでの強化魔法。
人を捨てた事によりスクウェアとなったラルカスには分かってしまった。この女もまた、人ではないのだと。
「俄かには信じがたいでしょうね。『魔法使い』の外見は人と全く変わりは無いのですから。
でもそれ以外は貴方と同じです。死への恐れも、その払拭の為の手段も、
なんら貴方と変わるものではないのですよ」
ラルカスの瞳に、先程までの怒りは最早無い。ただ呆然と白蓮を見つめているだけだ。
白蓮は彼に優しく、穏やかな笑みを向けると、包み込んだ手を引き寄せた
そして白蓮は語り始める。人を捨て『魔法使い』となった後、自分が辿った道を。
人を助けながら、影でその力の源であった妖怪達をも助けていた。
初めは自分のために、後には純粋に妖怪達のことを想い。
その思想を理解してくれる妖怪や人間もいたが大多数の人間には理解されず、
それを拒む人間によって異世界へと封印された。
その後彼女を慕う者達によって白蓮は解放され、幻想郷へと住まう事となる。
そこは多少の諍いはあるが人と妖怪が共存している世界で、
今まで見てきた全ての中で最も白蓮の理想に近い世界であった。
「その時思ったのです。『違う』者達でも共に暮らす事ができる、手を取り合い共に生きる事はできると。
このハルケギニアでも、エギンハイムという村では翼人という種族と共存していると聞きます。
人とそれ以外の者が手を取り合う、それは夢想ではないのです。
それが私や貴方のように、かつて人であったものであろうとも」
白蓮の言葉を呆けたように聞いていたラルカスだったが、ふと我に返ると首を横に振る。
「だとしても、私は無理さ。この手は既に血に塗れている。
お前も見抜いたとおり、私は罪もない子供たちを手にかけ、貪り食らってしまっていたのだ。
それにミノタウロスとしての本能を消しきれない以上、いつか取り返しのつかないことをしてしまうだろう」
早く毒薬を飲み、この罪深い生を終わらせてしまおう。
そう思い身体を起こそうとすれば、白蓮に阻まれた。
「死んではいけません。死して償うというのは本質的な解決でも、償いでもないのです。
貴方は多くの子供を殺しました。それは貴方が背負うべき罪です。
ですが、罪は償う事ができます。貴方がその魔法で多くの人を救う事こそ、
何よりも償いとなる。私はそう考えました。
それに、手が無いわけではないかもしれません」
「手、だと?」
「ええ。ラルカスさん、『コントラクト・サーヴァント』の魔法は勿論知っていますね?」
ラルカスは頷く。メイジにとって知っていなければおかしいというレベルの問題である。
それを確認してから、白蓮は語り始める。
「この魔法には、契約を交わし視覚を共有する他、精神に干渉する力があります。
気性が荒いはずのサラマンダーが無闇に人を襲うことが無くなった、と言うように。
それを応用すれば、あなたのその食人衝動も抑える事が可能かもしれません」
「本当に……出来るのか? 使い魔の契約は本来、召喚した相手にしか使えないはずだが……」
「やる価値はあると思います。私の元いた場でもこういった魔法を使うことはありますし、
そちらの魔法とも組み合わせれば難しい事ではないでしょう。……よろしいですか?」
ラルカスは思う。何故この女性はこうまでして自分を生かそうとするのだろうか。
彼女としても、私自身としても、殺してしまえば楽なのではないか?
そう聞くと、白蓮は苦笑し、またも首を横に振った。
「私はただ、一人でも多くの人を救いたいだけです。
今も昔もそれは変わりません。たとえ世界が違おうとも、どれほど苦難があろうとも、
それだけは譲るわけには行かないのです。
どうしてもラルカスさんが己を赦せないというのならば、私が赦します。
そして貴方を赦したという罪を私も背負いましょう。
だから、私に貴方の力を貸してください。共に人々を救い、罪を償っていきましょう」
ああ、だめだ。ラルカスは脱力し、天井を見上げる。
この女性はどうやら、とてつもないお節介焼きのお人よしのようだ。
亜人の獣臭い肉体を持ち、多くの子供達を手にかけてきた自分ですら『赦す』と言い切れる。
笑いがこみ上げてくる。おかしくてたまらない。
ああ、始祖ブリミルよ。あなたはどうやらかなり意地の悪いお人のようだ。
このような身体になり、償いきれぬ罪を犯した自分に、まだ『生きろ』というのか。
なんと残酷な仕打ちか。なんと底意地の悪い事か。
よろしい、そこまで言うのならば貴方のその仕打ちを甘んじて受けよう。
このミノタウロスの肉体が滅びるまで、生きて生きて生き抜いてやろうではないか!
「……分かった。君のようなご婦人にそこまで頼まれれば嫌とは言えんな。
ミノタウロスとなって10年、まさか今更人扱いされるとは思わなかったぞ」
ラルカスは起き上がると白蓮の前に跪く。
穏やかな笑みを浮かべた女性に跪く亜人。まるで宗教画のワンシーンのようだ、と、
その様子を見ていたタバサは思った。
「いくら人からかけ離れようと、心がまだ人であるならば貴方は人なのですよ。
私も、未だ心だけは人のつもりですから。……では、始めます」
地下水を構え、白蓮は意識を集中させる。
すると何処からともなく2本の紺色の棒が現れ、片方がくるりと2人の周囲を一周する。
その軌道に合わせて不可思議な紋様が宙に描かれ、浮いたままのもう片方にぶつかって止まる。
すると、そこには白蓮とラルカスを被う魔法陣とでも言うべきものが出来上がっていた。
紋様の放つ光で周囲は真昼のように照らし出され、薄暗い環境に目が慣れていたタバサは眉を顰める。
「我が名は聖白蓮。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
呪文を紡ぎつつ、己がジョゼフと交わした時に感じた感覚、魔力の流れ、
そう言ったものを再現し『コントラクト・サーヴァント』の術式を組み上げていく。
この魔法は呪文を組み上げただけでは発動しない。
口付けを交わし、ルーンを刻む事によって完成とする魔法である。
しかも、どんな対象にでも効果があるのかと言えばそうではない。
『その本人のサモン・サーヴァントで召喚された生物』にしか効果を発揮しない。何故か。
白蓮はそれを知るためにまず、メイジについて調べる事にした。メイジは得意系統を除けば3種に分かれる。
『既に使い魔のいるメイジ』『使い魔を召喚した直後のメイジ』『使い魔のいないメイジ』である。
幸い調査を始めた直後にリュティスの魔法学院で使い魔召喚の儀式があったため、
同席させてもらってその様子をつぶさに観察。結果、ある事がわかった。
契約を交わしたメイジと使い魔の間には、視聴覚を共有するための魔術的な『繋がり』がある。
その繋がりをもってメイジは使い魔の視聴覚を共有しているのだ。
白蓮はこれを契約が為された時点で構築されているのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
召喚された対象とメイジの間には、契約前でもある程度の『繋がり』が存在したのだ。
いわば仮契約とでもいうべきこの『繋がり』を、契約の呪文で強く確かなものにする。
そしてその際に精神に干渉し、ある程度従順にする。それが『コントラクト・サーヴァント』なのだ。
そのため『繋がり』がない対象、つまり召喚していない対象には本来呪文を行使する事はできない。
白蓮はそれを自分の世界の魔法で補い、ラルカスとの間に魔術的な『繋がり』を構築していく。
「――――――」
そしてラルカスに口付け、契約が完了する。少ししてラルカスの左の二の腕にルーンが刻まれる。
正確にはルーンではなく白蓮が帰依する神仏、毘沙門天をあらわす梵字であったが、
おそらく自分の使う魔法を用いてアレンジを加えたからなのだろう、と白蓮は思った。
目を閉じて意識を集中させると、瞼の裏に己の姿が映る。
ラルカスに指示を出して目を動かしてもらうと、それにあわせてその視界の中の自分の姿も左右する。
感覚の共有は成功しているようだ。となれば後は最も重要な部分だが……
どう確かめたものかと思案していると、タバサがそこに歩いてくる。
そして2人の前まで来ると掌をラルカスに向けて差し出し、ナイフを取り出して刃を掌に滑らせた。
皮を裂き中の肉にまで達しているであろう傷口からは見る見る血が溢れ、
ラルカスと白蓮の鼻腔を若々しい血臭が満たす。ラルカスは思わず鼻を手で押さえ、目を瞑った。
先程暴走したばかりなのに、今ここで若々しい少女の生き血の臭いを嗅いでしまっては、
また白蓮やこの少女を襲いかねない。そう思ったラルカスだったが、
普段なら間違いなく湧き上がるであろうあの食人衝動が起こらない。
驚くべき事に、理性で押さえ込める程度に本能が押さえ込まれている。
「成功」
タバサはそう呟くと「治癒」と言って更に掌を突きつけた。
慌ててラルカスはルーンを唱え、タバサの傷を治癒する。
その間にもラルカスの心は昂ぶる事は無かった。
ただ、自分のせいで傷を負わせてしまったという罪悪感だけは消える事は無かったが。
「どうやら契約は成功したようですね……どこか、変わりは無いですか?」
「自分でも驚くほどに平静だよ。なんというか、不自然なまでに清々しい気分だな。
かつて己の使い魔に施した魔法とは、このようなものであったのか……
刻まれる瞬間と言うのは、随分と痛いものなのだな」
己の腕に刻まれたルーンをしげしげと眺めながらラルカスが呟く。
そして、ラルカスは改めて白蓮に向き直るとまたも跪き、頭を垂れた。
「ビャクレン殿、いや、ビャクレン様と呼ぶべきだな。
この度は我が身だけならず、我が心まで救っていただき、本当に感謝している。
この恩はとても返し切れるものではないだろう……」
そこで一旦言葉を切り、『故に』と前置きしラルカスは言葉を続ける。
「故に、今より貴女に、使い魔とその主人と言うだけではない、
臣下としての礼を取らせていただきたい。元より人としての私は死んだ。
そして、獣としての私は貴女に救っていただいた。
だからこそ、私もまた貴女に尽くし、仕えたいのです。
どうかこの1匹の獣に、貴女を守らせてはもらえまいか」
跪いてなお見上げるような巨体を、白蓮は見つめる。その瞳はとても真摯で、一片の曇りもない。
白蓮は穏やかに微笑むと、ラルカスに向かい手を差し伸べる。答えは既に決まっていたからだ。
「―――よろしく、お願いしますね」
瀟洒な使い魔 第十話「亡き弟の為のセプテット」
「――――」
白蓮がラルカスを従えてから、暫くの後。
ガリア王、ジョゼフの私室の1つ。チェス、ビリヤード、
そして、その中央に鎮座する差し渡し10メイルはあろうかという巨大な箱庭。
それら、遊戯の道具で満たされたそこにジョゼフはいた。だが彼はそれらで遊戯に興じるわけでもなく、
ただソファに背を預け、双月の照らす夜空を眺めていた。
それから少しして、背後でドアが開く気配を感じ、ジョゼフは身を起こす。
そちらの方に顔を向ければ、そこにいたのは自身の使い魔。
ミョズニルニトン、聖白蓮が立っていた。
「只今戻りました、陛下。エズレ村のミノタウロス退治、つつがなく終了しましたので、
ご報告に上がりました。それと、もう一つご報告しておきたい事が」
「ほう、流石はビャクレンと7号だな。もう一つの報告と言うのは……ふむ、まだ言うなよ?
余が当ててやろう。そうさな、ミノタウロスを飼う許可をくれとでも言うところか」
その答えに、白蓮は苦笑する。まさにその通りであったからだ。
「ご明察です、流石は陛下」
「なに、簡単な推理だ。お前は毎度7号の任務についていくたびに誰かしら連れてくるからな。
今回連れて来そうなのはミノタウロスだろうと当たりは着いていたのだ。
良い、許す。好きにせよ。ただし人は襲わせるなよ。さすがにそうなっては余も面倒を見切れんからな」
「ええ、分かっています。実は、彼は私の使い魔として契約を果たしまして。
その影響かとても高い知能と理性を有しました。とても紳士的なんですよ?」
臣下の礼をとっているからとやたらと畏まるラルカスを思い浮かべ、白蓮はくすりと笑った。
それにつられてジョゼフもにやりと笑うが、直後、その瞳に、ぎらりとした剣呑な輝きが宿る。
「……ビャクレン、余がお前が何を呼び込もうと許可しているのは、お前を信頼しているからではない。
お前の行動は退屈せんからだ。イザベラも、お前に当てられて随分と丸くなった。
あの鉄面皮な7号……いや、シャルロットですら、昔に比べれば棘が抜けたものよ。
お前はこのハルケギニアの人間とは全く異質な常識に身を置く者だ。
それゆえ、お前の行動は見ていて飽きん。お前が来る前より余が進めていた戦争ごっこ等より、
よほど面白い。これからも好きにせよ。思うままに動け。
盤面で思い道理に駒を動かすのも楽しいがな、お前のように、
余の盤面で勝手に動き回る駒を見るというのも、中々に面白い座興だ」
先程までの子供のような笑顔とは違う、締め付けるような威圧感を感じさせる獰猛な笑みに、
白蓮は背筋を冷たいものが降りていく感覚を覚えた。
この男は、どこまで本気なのだろう。そうも考えた。
恐らくは、全てが本当なのだろう。彼が弟を手にかけたのも、
座興のために自分を自由に行動させるのも、その他の何もかも。
嘘をつかないのは美徳である。だが、この男の『それ』は何なのだろう?
少なくとも、美しいものではない。この男が内面に秘める、歪んだ狂気の発露。
嘘をつかないという事は、己の欲求を押さえる事をしないと言うことでもある。
やはり、止めなければならない。最悪、この手を汚してでも……
そう考えていると、ジョゼフはいつの間にか、部屋の中央にある箱庭の前へと移動していた。
その縁に手を書け、ジョセフは口を開く。
「これを見よ、ビャクレン。これが余の『世界(ハルケギニア)』だ」
白蓮が近寄ってみれば、そこに広がっていたのはまさしく『世界(ハルケギニア)』だった。
正確には、ハルケギニアの地図を模した巨大で精密な模型。立体的な地図ともいえるものだ。
「国中の細工師を呼んで作らせた。完成までには一ヶ月ほどはかかったであろうかな。
最近はこの上でいつもの一人将棋を発展させたものをやっておる」
ジョゼフは王子であった頃、その魔法の才の無さから暗愚と揶揄される事も多く、
その不遇な少年時代の影響か一人遊びにのめりこんだ。
中でもチェスに関しては並ぶものの無いほどの腕前を持ち、
彼とマトモに差し合えるものは、彼自身が手にかけた弟、オルレアン公シャルルのみであったという。
「チェスというのは突き詰めれば定石の応酬でな。
あいてがこう攻めればこう攻める、といった具合に、一定のパターンをなぞる事に終始してしまう。
だが、余がチェスを発展させたこれは少し違うのだ。
現実に則した模型の上で、実際の兵種を模した駒を動かす。だが、ただ動かすのではない。
駒の勝敗はサイコロを使って決めるのだ。これによって結果に揺らぎが生じ、
現実に近い戦いを行う事ができるのだ。例えばだな、弱い歩兵だとしても、
賽の目次第では竜騎士を撃つ事も出来る。現実においてまぐれ当たりで同じ事が起こるようにな」
そして、といい置き、ジョゼフは言葉を続ける。
「お前やシャルロットを好きなように泳がせているのも、あえて『揺らぎ』を起こす為よ。
イザベラから既に聞いているであろうがな、シャルロットは余の姪だ。
本当の名をシャルロット・エレーヌ・オルレアン。余の弟、シャルルの娘さ。
あやつが余の命を狙っている事も、お前が余の見えぬところでかぎまわっている事も、
余は全て知っているぞ? 余自身は無能であるが、鼻の効く犬を飼っておるゆえにな。
だから知っているだろう、隣国アルビオンで起こっている内乱、
それは余が策を巡らし起こした事だという事を」
白蓮は口を開かず、ただこくりと頷く。
「それもまた余にとってはさして重要な事でもない。
たとえこの内乱が世界を覆う大乱となったとしても、余にとってはどうでも良い事だ。
謀反人共の生命線を握っているのは余だ、潰そうと思えばいつでも潰せる。
……話が逸れたな。物事が思い通りに進むのも楽しいが、
予想外の出来事が起こるのもまた良いものだ。ゆえにお前達を泳がせている。
余は内乱を止める気は無い。止められる物なら止めて見よ。
お前が余の策謀を上回る事ができるなら、シャルロットの刃が余を討つ事ができるなら、
余もそれなりに楽しめようというものだからな」
ジョゼフはそこで言葉を切ると、白蓮に下がるように命ずる。
命に従い退出する白蓮であったが、その目はジョゼフの笑みの中に一つのものを見出していた。
それは、自身も馴染み深いもの。白蓮が弟、命蓮を失った時に包まれたもの。
かつて人々に封印されんとした時に感じたもの。
そして恐らくは、彼もまた弟を失った時に感じていたであろうもの。
奈落の底よりもなお深い、虚無にも似た悲しみであった。
ジョゼフの遊戯室を後にした白蓮は、自室のの前まで来るとドアを開ける。
すると、白蓮の胸に小さな影が飛び込んでくる。金髪の幼い少女、吸血鬼のエルザだ。
白蓮は勢いを殺すように軽く後ろに下がってたたらを踏むと、
その小さな身体を抱きしめてゆっくりと下ろす。
エルザの目の端には涙が浮いており、ぎゅっと白蓮に抱きついたまま離れようとしない。
白蓮と目線が会うと、おもむろに部屋の中を指差しながら機関銃のようにまくし立てる。
「白蓮なにアレ何あの牛ナニあの筋肉! なんでここにミノタウロスがいるの!?」
エルザの指差す方を見れば、そこには困ったように頭を掻くミノタウロス…ラルカスと、
呆れたように「だから話聞けよ……ああもうどうでもいいや」と呟く地下水、
そして白目をむいてこてんとソファに倒れこんだまま気絶している17・8の少女。
暫く前に白蓮の部下として王宮に仕えるようになった、リュリュと言う娘の姿があった。
白蓮はここに戻ってきてすぐの事を思い返す。
エズレ村から戻って来た後ラルカスを伴い部屋に戻れば、2人はソファで眠っていた。
起こすのも悪いと思ってそっとしておき、ラルカスを待たせて自分だけ報告に行ったのだ。
ミノタウロスの巨体で王城を練り歩かせるのもなんだと思っての行動であったが、
確かに事前説明なしでいきなり目の前にミノタウロスがいればこういう事になるだろうか。
吸血鬼であるエルザは老化が遅く、これでも齢数十年は重ねているらしいが、
起き抜けに『これ』であったために生理的な恐怖の方が先に立ったのだろう。
まだ四半世紀も生きていないリュリュならばなおさらの事だ。
普段から人外の存在を見慣れていたためにあまり気にしていなかったが、
たしかにこれは自分が軽率だった。白蓮はそう結論付けると、
エルザを落ち着かせるようにその美しい金髪の頭を撫でる。
「大丈夫よ、エルザ。ラルカスさんはとても紳士的な方だから。
それに、私の使い魔として契約しているし、人を襲うことは無いわよ」
子供をあやすような白蓮の口調に、エルザの顔から怯えの色が僅かに抜ける。
そしてラルカスの方をチラリと見て、しがみ付いていた腕を解いた。
「まあ、私も獣に身をやつしたとはいえガリア貴族。
それに、今はビャクレン様の使い魔にして臣下たる身。
その名を汚すような真似はせんよ。安心したまえ」
「牛なのに、貴族? なにそれ」
はてな、とエルザが小首をかしげる。
ソレを見た白蓮は、丁度いいとばかりにぽんと両手を合わせると、
気絶しているリュリュをベッドに寝かせ、毛布をかけ、目を閉じさせる。
そうしてから、ラルカスを連れてきた事情を説明し出した。
エルザの事情も、己の事情も含めて。もとより人外であるエルザ、
外法を用いて人を捨てたラルカス、それらとの戦いで常に側にあった地下水はともかく、
ただ料理を研究している貴族の子女に過ぎないリュリュには、重すぎる事情であるが故に。
「――――なるほどね。つまるところまた拾ってきたんだ」
「ま、掻い摘んでいうとそうなるわな」
ソファに座り足をぱたぱたと動かすエルザに、溜息をつくような風に地下水が言う。
「『また』というと、これはよくあることなのか? 地下水」
「おう。お前でひーふーみー……4人目か?
われらが主は、どうにもお人好しでお節介焼きであらせられるもんで」
ふむ、と顎に手を当てるラルカスが問えば、今度は苦笑しつつもそう返す。
それを見ながら、白蓮はくすりと笑む。
しかし直後に笑みを消すと、真剣な声音で、談笑していた一同に声をかけた。
「――――――皆さん」
「どうしたの?」「何だい姐さん」「如何されました?」
三者三様の返事を返しつつも、一瞬にしてその気配が引き締まる。
その1人は人に紛れつつもその血を啜り数十年を生き、
もう1人は人の身体を操り闇の中を駆け、
最後の1人は死を乗り越えるために人を捨て、化物へと成り果てた。
己が身を闇に置いている者達だからこそ、白蓮の声音に宿ったものを敏感に感じ取った。
「先程、陛下と話をしました。そして聞きました。
自分は全てを知っていると。明言はしませんでしたが、
エルザ、貴女が吸血鬼である事も恐らくは知っているでしょう」
エルザはびくりと身を硬くする。元々、エルザは初めから一人なのではなかった。
父も母もいたが、メイジによって殺された。その時の情景が頭をよぎる。
白蓮と出会うことになる村にいた頃は、策を用いて油断させ、メイジを殺した事もある。
それはエルザに自信をもたらした。父や母でも敵わなかったメイジに勝てると。
だが、白蓮に連れられ一度だけジョゼフに出会ったときに直感した。こいつには勝てないと。
あれは、普通のメイジとは何かが違う。異質、いや、異常なのだ。
普通のメイジと白蓮の心のありようが違うのとはまた違う。
白蓮とはベクトルを異にした異常な精神。それを、エルザは感じ取っていたのだ。
ぎゅ、と拳を握り締めるエルザをよそに、白蓮は言葉を続けた。
「ですが、陛下はそれでも好きにせよ、と仰っていました。
私があれこれと動く事ですら、己の盤上で動き回る駒に過ぎぬ、と。
その上で、隣国アルビオンの内乱に手を貸しているのだと、そう私に言いました。
止められるものなら止めて見よ、それもまた面白い座興だとも」
「伝説の使い魔である姐さんを敵に回したとしても、なおかつ勝つ自信があるのさ、あの髭は。
東も西も南も、確かに手強いが姐さんの敵じゃなかろうさ。だが、『北』だけはやべえ。
俺を欠いたとしても、『北』には、あの恐ろしい『元素の兄弟』がいるからな。
『北』に横の繋がりはねえから詳しくは分からないが、
他にも化物がうようよいるだろうさ。それに、あの髭の王様はすこぶる頭が切れる。
アルビオンの貴族共を手玉に取って戦争を起こさせるくらいにな」
地下水の言葉に、白蓮はこくりと頷く。
「私が今からあなたたちに話すことも、陛下の思惑通りなのでしょう。
ですが、私はあえてこう言います。アルビオンの内乱を止めます、と。
言うほど容易いことではないでしょう。言ったとてすぐに行える事ではないでしょう。
ですが、私は止めたいのです。内乱を、そして陛下の、いえ、ジョゼフの狂気を」
白蓮は一同を見回し、表情を伺う。もっとも、認識できるのはエルザのこわばった顔だけだ。
地下水にはそもそも顔と言うものが無いし、ラルカスの牛頭には表情が最初から無い。
部屋を沈黙が包み、最初に口を開いたのは、エルザだった。
「わたしは、ビャクレンについてくよ。命を救われた恩もあるし、
それに……ビャクレン、わたしは覚えてるからね。家族だって、そう言ってくれた事。
パパもママもいないなら、自分が母親になってあげるって。
わたしはもう、家族と離れ離れになんてなりたくないんだから」
そう最後に小さく呟いてエルザが横を向けば、今度は地下水がその刀身を振るわせた。
「ま、そういう事だね。エズレ村でも行ったが、俺達はあんたが好きなんだ。
俺達みたいな文字通りの『人でなし』でも、人として扱ってくれるあんたがな。
俺はインテリジェンスソード、寿命なんかねえから、生きるための指針が欲しかった。
傭兵として生きてたのも、金や名誉が欲しかったのさ。分かりやすいしな。
けどまあ、伝説の使い魔の相棒、ってのも、まんざら悪くないもんさ。
それが美人のお姉ちゃんなら俺はもう言う事ないね。
さて、牛の旦那、あんたはどうだい?」
軽口を叩いた地下水に水を向けられ、ラルカスは少しの沈黙の後言葉を発する。
「是非もない。私は一度死んだ。そして、獣として浅ましく生きていた私を、
ビャクレン様は救ってくださった。もはや亜人に過ぎない私ですら、人なのだと言って頂いた。
ならばこの大恩、我が身命を持って返すのが道理。
地獄の底まで、お供させていただきます」
瞑目し、うっすらと笑みを浮かべる白蓮。
その笑みの端に僅かに悲しみが混じっていたのは、気のせいではないだろう。
白蓮を除く3人は思った。だからこそ、自分達がついていくのだと。
そして、白蓮が口を開こうとしたその時、一同の輪の外から声が飛んできた。
ラルカスを見て気絶していたはずの、リュリュであった。
聞けばベッドに寝かされた後、少ししてから目を覚まし、
それから寝たふりをして話を盗み聞いていたらしい。
「私は……皆さんほど深い事情を抱えてるわけじゃないです。
ビャクレンさんに命を救われたわけでもないです。けど……
それでも、ビャクレンさんとタバサちゃんのお陰で、私は色々な事に気付けたんですから」
だから、力になれないかもしれないけど、私も一緒に行かせて下さい。
その鳶色の瞳に強い意志を秘め、少女は言った。
それは、少女のなけなしの勇気をはたいた言葉であったのだろう。
なけなしの物をはたいてしまえば、後に残るのはほんの僅かな残り滓だ。
だから、その答えにごふりと笑みを浮かべたラルカスを見て、
少女がまた気絶したのも仕方の無い事だ。多分。
「かっこいい事言っといてなんだけどさあ、大丈夫なんか、これで」
「いいんじゃないかな。わたしは好きだよ、こういうノリ」
「ま、俺も嫌いじゃないけどね」
倒れこむ少女を見てあたふたと駆け寄る美女と亜人の主従を見て、
短剣と吸血鬼はそんな会話をしたと言う。
そして、舞台は再び瀟洒なメイドへと――――
そんなこんなでお待たせしました。瀟洒な使い魔第10話は以上です。
白蓮さんサイドはこれにて一時終了。人外の見本市と化してますがお気になさらず。
11話からはまたメイド長サイドが始まります。
初期のような速度は維持できませんが、月1くらいでなんとか投下できたらいいなあ。
どうか長い目でお付き合い下さい。
それではまた次回。今回大分自己解釈やオリ設定など多目でしたが、
少しでも楽しんでいただければ幸い。
乙でした
俺も好きですこういうノリ
次回も待っています
乙です。ひじりんマジ聖母
だがラルカスは爆発しろ
瀟洒の人お帰りなさい&乙でした。
グラントロワの一角が命蓮寺の分寺になって来ましたね〜。
この先どうなるんだこのチーム。
次回のPA・・・メイド長サイド。
美鈴と子悪魔が加わってどんな騒動に発展するのか楽しみです。
もっとも、ワルドがメイド長に勝てるとは思えませんが。
瀟洒の人乙でした
待っていた、ずっと待っていたよ…!!
何も無いならば2分後に新しく投下させてもらおうかと思います。
元ネタ:バトルロワイアル
召喚されるキャラ:桐山和雄
タイトル:無情の使い魔
桐山の設定
・基本的に原作と漫画版がベース
涼やかな夜風が吹き、潮騒が微かに響いている。
ここは瀬戸内海にある沖木島という小さな島の最南端に位置する岩浜である。
その一角、やや盛り上がった岩場の上に腰掛けたまま、桐山和雄は静かに佇んでいた。
風が強く吹き、生臭く酸っぱいが彼の鼻を刺激する。しかし、彼は一瞥する事なくひたすらに佇み続けていた。
岩礁のすぐ下に、四つの人の形をしたそれが転がっている。みんな動いてはおらず、開かれたままの眼には生気が宿ってはいない。
三人が喉や胸に鋭い切り傷を負い、もう一人は全身に無数の風穴を開けられ、そこから流れ出ていた血が水溜りを作っている。
彼、桐山和雄がほんの十数分前にこのプログラムで支給された武器、小型の「シーナイフ」によるものと、殺した一人の持っていた「イングラムM10サブマシンガン」によってもたらされたものだ。
四人とも、彼のクラスメイトの一員だった。中でも男三人はいつも彼をボスと呼び、不良グループのリーダーとして心酔していた。
しかし、彼は三人を手にかけても特に何かを感じた訳でもない。
良心の呵責も、後悔も、罪悪感も、何一つだ。
ただ、彼は初め、四人の中の一人の女子を捕まえて命を奪う直前に行ったコイントスで自分のやるべき事を決めたまで。
表が出たら、仲間を集めてこの島からの脱出を図る――
裏が出たら、この殺戮ゲームに乗る――
その結果は、裏だった。ただそれだけの事である。
桐山は岩場から降りると、この岩浜から別の場所へと移動するべく歩を進めた。
その間にも彼は自ら殺めた者達を石ころのように全く気にしていなかった。
そして、やや遠くに人の気配があるのも感じていたがそれすら気にも留めはしない。
「……?」
岩浜から森へと続く入口に差し掛かった所で桐山は立ち止まった。
彼の目の前には不思議に光輝く大きな鏡のようなものが浮かんでいた。
先程、ここへ来る際には見なかったものだった。それが何故、今ここにあるのか。
その場で立ち尽くしたまま目の前に浮かぶ鏡をじっと見つめていた桐山は、無表情のまま小首を微かに傾げる。
そして、その鏡に手を伸ばして触れた途端、彼は眩い光に飲み込まれた。
光が収まった時、そこには桐山も、鏡も跡形もなく姿を消していた。
「あ、あらぁ? 桐山君? どこにいっちゃったのよぉ」
岩場の陰でその一部始終を窺っていた月岡彰はかつての不良のリーダーにしてボスであった桐山和雄が忽然と消えてしまった事に狼狽していた。
裏切りを警戒し、桐山の招集命令にわざと遅れて難を逃れ、これから彼を本格的にストーキングしようとしていた所だというのに。
「もう。ひどいわ、桐山君。アタシを置いてどこかへ行っちゃうなんて」
「先生、桐山和雄の反応が消えました」
「何ぃ?」
同じ頃、沖木島の分校の司令室にて今回のプログラムの担当教官・嘉門米美は兵士・野村の困惑した言葉に顔を顰める。
島中に散らばった今回の対象クラスの中学生達には発信機・盗聴器付きの首輪を装着させており、それによって動向を探っているのだがそれが突然途絶えるなどおかしい。
桐山は早速四人を殺害し、順調な滑り出しだったというのにそれが何故突然消えるのか。
首輪を外そうものなら内部に仕組まれた爆弾によって死亡するというのに。
「死亡確認の電波も送られていません」
――ハルケギニア、トリステイン魔法学院
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」
二年生による春の使い魔召喚の儀式。
最後の一人となったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが杖を構え、詠唱を行う。
数回に渡るサモン・サーヴァントの失敗。それにより起こる他の生徒達の罵声。
そして、最後通告による儀式でまた爆発と共に召喚されたのは――
「あんた、誰?」
彼女の目の前に立っていたのは、黒い服の袖に腕を通さず肩に羽織り、襟足の長い黒髪をオールバックにした長身の少年だった。
その首元には金属製の変な首輪が付けられている。
だが、彼は明らかに平民である事は明白だった。
「ルイズ、サモン・サーヴァントで平民を呼び出してどうするの?」
「さっすが、ゼロのルイズだな! まさか平民を呼び出すとは!」
周囲の生徒達から爆笑と共に野次が飛び交う。
ルイズは顔を赤らめ、屈辱に唇をかみ締めた。
「でも、凄く格好良いわね」
「本当に平民かしら」
一部の女子からそのような言葉も出てくる。
ルイズはここで初めて目の前にいる平民の顔を見た。
(た、確かに顔は良いみたい。だけど……)
平民とは思えない程、少年は知的で端整な顔立ちだった。思わずぞくりとしてしまい兼ねない。
それだけではない。彼からは何とも言えない張り詰めた雰囲気がありありと感じられてくる。
表情は先程から全くの無表情であり、その瞳にも光が宿っていないように見える。
しかし、たとえハンサムであろうと彼が平民である事には変わりない。
「ミスタ・コルベール! もう一度召喚させてください!」
ルイズは儀式の教官を務めるコルベールに捲くし立てる。
「それは出来ない。使い魔召喚とは神聖なものだ。やり直しは一切認められない」
「でも、平民ではないですか!」
ビシリと目の前でじっと立ち尽くし佇む少年を指差し、叫ぶルイズ。
「それでも、だ。召喚された者がいかなる者であろうと、呼び出された以上君の使い魔にしなければならない。さっ、早くしないと次の授業が始まりますよ」
コルベールにそう言われ、悔しそうにしながらルイズは目の前の少年の元まで歩み寄る。
153サントであるルイズに対し、180サントはあろうかと思われる細く逞しい体格の長身が目の前に立ち塞がり、その威圧感に思わず竦みかけるがここで恐れていては何にもならない。
「あんた、感謝しなさいよ。平民が貴族にこんな事されるなんて絶対にないんだから!」
主人らしく威圧してみようと叫んでみるも、彼はルイズは見下ろしたまま相変わらずの無表情だった。
人の話を聞いているのかいないのかもさっぱり分からない。
(うう……ちょっと、怖い……)
ただ、その氷のように冷たい人形のように生命感に乏しい瞳に恐怖を感じてしまう。しかし、それでもめげずにルイズは続ける。
「ちょっと! 届かないじゃないの! 屈みなさいよ!」
そう叫ぶと、彼は微かに小首をククッと傾げだす。
その態度が何やら異様にムカつき、
「早く屈みなさい!」
さらに苛々を込めて叫ぶと僅かな沈黙の後、ようやく彼はその場で屈みだした。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
コントラクト・サーヴァントの詠唱を唱え、ルイズは少年の頬を掴んで彼に口付けをした。
彼は何の抵抗も動揺も見せずにただ黙ってルイズを見つめたままだった。
「終わりました」
少年から離れ、振り返るとコルベールに告げる。
少年の左手に使い魔のルーンが刻まれていくが、それでも彼は微動だにしていなかった。
(何なのよ、あいつ。人形みたいで気味が悪い)
左手の甲に刻まれたルーンをじっと見つめている少年を不愉快そうに睨んでいたルイズはふん、とそっぽを向く。
何であんなのが自分の使い魔なのだろう。本当だったらもっと珍しい幻獣とかを召喚したかったというのに。
しかし、一応使い魔を召喚できたというだけまだマシだった。
「ふむ。珍しいルーンだな」
ミス・ヴァリエールが召喚した平民の少年に刻まれたルーンを見たコルベールはそれをノートに書き写す。
(……血の臭い?)
ふと、彼から異様な臭いを嗅ぎ取ったコルベールは顔を顰める。
彼から嗅ぎ取れる血の臭い。それはかつて多くの汚れ仕事を請け、その手を血に濡らしてきた彼だからこそ嗅ぎ取れるものだった。
(この少年……もしや、本当に……?)
歳は明らかにここにいる生徒達とほとんど変わらない。それなのに、彼はその手を血に濡らしているというのか。
しかも、様子からして極最近に彼は人を殺めている。
だが、それで彼が罪悪感のようなものを感じている訳でもない事を察していた。
自分はかつて、多くの人々を死に追いやり、その罪悪感で今も苦しんでいるというのに。
それが信じられず、密かに冷や汗を首筋に滲ませる。
「……それでは皆さん! 春の召喚の儀式はこれにて終了! 解散してください!」
コルベールが明朗に告げ、少年に背を向けて歩き出す。
ちらりと肩越しに彼を見やり、その冷たい瞳に思わず息を呑んだ。
「ルイズ! お前は歩いて来いよ!」
「あいつ、フライはおろかレビテーションさえまともに使えないんだぜ?」
生徒達がルイズを嘲笑うと、各々が宙へと浮かび上がり、広場から去っていく。
悔しさに肩を震わせるルイズだが、やがて自分が召喚した平民の少年の元まで再び歩み寄る。
「……あんた! 行くわよ! 早く付いて来なさい!」
そう叫び、ルイズは彼に背を向けて歩き出す。そのすぐ後を彼は付いてくる。
「あんた、名前は?」
相変わらず黙りこくったままの彼の態度に苛立ちを感じつつ、振り向きもせずにルイズは問いかける。
先程のように言葉ではなく、動きで意思表示をしたのだ。もしかしたら喋れないのかもしれない。それを確かめる意味でもあった。
「……キリヤマ……キリヤマカズオ」
張り詰めたその声に一瞬、びくりとする。
「変な名前ね」
(何だ、ちゃんと喋れるじゃない)
しかし、ようやく一声を発してくれたのでホッと息をついた。
「さて、あんたはどこの平民? どこから来たの?」
学院内の自室に戻ってきたルイズはベッドに腰掛け、目の前に立つ平民・桐山和雄に問う。
桐山は左肩から提げていた自分のデイパックを下ろす。やけに重そうで、床に下ろした途端にガチャガチャと音を立てている。
「この国の平民? それともガリア? ロマリア? アルビオン? ゲルマニア?」
しかし、桐山は返答をせずにまた小首を傾げる。
「……何なのよ! あんたは! ご主人様に向かってその態度は! 返事くらいはしなさいよ!」
「主人、とは?」
やっと返事をした。
「あんたはサモン・サーヴァントであたしに召喚された、あたしの使い魔なのよ。さあ、あんたも答えなさい!
あんたはどこから来たのよ! 何度も言わせないで!」
桐山はまた黙りこくるが、今度は何かを考えている様子だ。
自分のいた場所を答えるだけで何故、そんなに考える必要があるのか。
「俺がいた所は、お前の言うどの場所でもない。俺は、日本という国の香川県城岩町という町に住んでいた」
「聞いた事のない所ね。……って、どこよそこ!」
「ここはどこだ」
桐山はルイズを無視して質問してくる。
「は? 何言ってるの。ここはハルケギニアのトリステイン魔法学院に決まってるじゃない」
「知らない名前だ」
「あんた、どこの田舎者よ」
「その国は俺のいた場所には存在しない」
桐山曰く、彼のいた所は月が一つしかないというルイズには信じられないものだった。
そして、桐山は言う。「ここは俺のいた世界とは違う世界だ」と。
「あんた、人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ? だったら、証拠を見せなさいよ」
両腕と膝を組み、ふんと鼻を鳴らしながら言うと桐山はその場で屈み、デイパックの中をごそごそと漁りだす。
そして、手帳のようなものを投げ渡してきた。
「何よ、これ」
「俺の学生手帳だ。それに書いてある文字が読めるか?」
手帳を開くと、中には桐山の写真と共に色々な文字が書かれているのだがルイズにはさっぱり読めない。
しかし、これは彼が誤魔化すために書いたものでない事は分かる。
そして、この事から一つの可能性が浮かびだす。
「あんた、もしかしてロバ・アル・カリイエから来たの?」
桐山は無言のまままた小首を傾げだす。
それがまたムカついたが、ここで喚いても仕方がないので話を進める。
「ハルケギニアのずっと東にある土地の事よ」
「知らないな」
「……まあ、とにかくあんたがどこから来たのであろうと、あたしの使い魔である事には変わりないわ」
「使い魔?」
その質問に、ルイズは少々勝ち誇った様子で使い魔の事について桐山に説明してやった。
「……と、いう訳であんたはあたしの使い魔。そして、あたしはご主人様なのよ。あんたは使い魔として一生を通してあたしのために色々働いてもらうわよ」
「そうか」
いきなりこんな所に呼び出されておいて、何の抵抗もなく平然と答える。
(やけにあっさりしてるわね)
「具体的に何をすればいい」
「そ、そうね。……まず、使い魔には主人の目となり耳となる能力を与えられるわ。
ま、要するに感覚を共有するということなんだけど……駄目ね。こっちは何も見えないもの」
桐山は特に何も答えはしないが、ルイズはさらに続ける。
「で、もう一つは主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とか」
話を聞いているのかどうか分からないが、桐山はルイズを見たまま黙っているままだ。
「三つ目。これが重要だけど、主人を守る事。……でも、あんたじゃ期待できないわね。何しろ、平民だもの。
ま、それで何もしないというのも何だから雑用でもしてくれれば良いわ」
(話、聞いているのかしら? こいつ……)
「とにかく、今日はもう遅いから続きは明日!」
言うなり、ルイズは服を脱ぎだしネグリジェへと着替えだす。
桐山は相変わらず無表情のままルイズを見ているが、別に使い魔に自分の裸を見られても恥ずかしくはないのでルイズは気にしない。
「それ、明日の朝までに洗濯しておいてね。それから主人がいない間はここの掃除をお願い」
服を投げ渡し、ベッドに潜り込むルイズ。
「ああ、それとあんたは床に藁でも敷いて寝てなさい。明日はあたしより早く起きる事」
しかし、桐山からの返答は何も無い。
だが、深く気にするでもなくルイズは眠りについた。
あまりにも無口、無表情すぎるので正直あまり話をするのは気分がよくない。
……そして、彼のあの瞳が恐ろしかった。
(何を怖がってるの! あたしはあいつの主人なのよ!)
なんの事かな?そんな事件なかったよね?ね?
無 か っ た よ ね ?
※おサルさんに引っかかって間が開いてしまいました。大変、申し訳ありません。
床に座ったまま桐山はデイパックの中身を確認していた。
プログラム開始時に支給されたパンの袋と1リットルの水が入ったペットボトルがそれぞれ二つずつ。
既に四人を殺害していたため、パンは十に増えている。水は重くなるので一本しか奪っていない。
他には地図、方位磁針、時計、懐中電灯。もっとも、地図は沖木島の地図なのでこんな所では役に立たないだろう。
そして、プログラムで支給された武器。
桐山に支給されたのは「シーナイフ」これで金井泉と黒長博、笹川竜平を殺害した。
これは服の中にでも隠しておけば良いだろう。
笹川から奪った武器はサブマシンガン「イングラムM11/9 9ミリ ダブルカラム式」非常に当たりと言える武器だった。50発の予備弾倉も6倉残っている。
金井泉から奪ったのは「スタンガン 10万ボルト」まだ使っていないのでバッテリーは充分だ。
黒長博からは小型自動拳銃「ワルサーPPK 9ミリ」予備の弾も50発分が一箱付いている。
そして、かつての不良グループの参謀格であった沼井充からは「自動拳銃ワルサーP99 9ミリ」こちらも予備弾が一式ある。また、彼の私物としてオイルライターとそのオイルも物色している。
桐山自身の私物は元々、修学旅行としての荷物しか持ってきていなかったのでサイフや学生手帳、読書本などといったものしかない。
桐山は自分が突然、こんな異世界という俄かには信じられない場所にやってきてしまっても別段どうも思っていなかった。
魔法という不思議な物を見ても、本人は何も感じはしない。
ルイズの使い魔となるのに承諾したのも、いつものような成り行きに任せての結果だ。
これからどうなるのかは桐山自身にも分からない。
自分が元の世界に戻れるかどうか、そんな事も別にどうでもよい。
コイントスのごとく成り行きに任せるだけである。
桐山は首に付けられている首輪の違和感に気が付き、手をかける。
この首輪には爆弾が仕込まれているそうで、本来ならあのプログラムのルールで禁止エリアに入ったり無理に外そうとしたりすると爆発をするらしい。
実際、桐山は首輪からほんの微かな機械の音を聞いていたのでそれを即座に理解した。
しかし、今はその音が僅かも聞こえてはいない。
何の迷いもなく桐山は首輪を掴み、力を入れて引っ張る。
あっけなく、首輪は外れた。
首に付いていた都合上、鏡を介さなければ見る事すらできなかったが、外す前から壊れていたのか微かに火花を噴いている。
それをじっと見つめている桐山だが、やはり何かを感じたりする事はなかった。
窓の外に首輪を放った桐山は壁に寄りかかると、床に座ったまま静かに眠りについていた。
バイバイサルさんに引っかかってしまい、投下まで間が開いてしまいました。
大変、ご迷惑をおかけしました。
以上で、一話は終了になります。
桐山の所持している武器についてですが、原作や漫画だと初めに殺害した三人の支給品が何か分からないため、映画などから引用して
持たせています。
ちなみにイングラムは原作だとM10ですが、これではM11/9という種類のものをもたせています。(ダブルカラムで50発というのはオリジナル)
投下乙です。
原作知りませんが、面白そうなので続き期待してます。
桐山召喚ktkr!
まあ、ひとつ言えることは……
ギーシュとおマチさんとワルド逃げて超逃げてw
乙ー
コイントスで生死が決まる。
これは血が流れるぜぇ・・・。
心が震えない桐山は、ガンダだとキツイ気もするけど、
これは楽しみ。
こいつは格闘シーンだけ別のマンガだからワルキューレ破壊できるな
ギーシュとの戦闘シーンで眼球の説明か…
秋谷との決着あとなら別なんだろうけどなあ。
破壊の杖ってまさか……。
秋谷って誰?
眼球がミサイルになったウサギなら知ってるが
セニョール!ですね、分かります
ああ、久しぶりに無事ですまないギーシュ
決闘イベントが起きれば死なないにしても五体満足ではすまない・・・
そういや、フリオニールの宿敵というべき皇帝陛下も続き読みたいなぁ
あっちもギーシュがヤバイんだよな
BR一のナチュラルボーンキラー召喚とかwktkが止まらないぜ!
ふと、コイントス繋がりで「ノーカントリー」のシガーを召喚したら…とか考えてしまった。
めだかボックスから球磨川を召喚したのを見てみたい
優れたクロス物の恐ろしいところは、クロス先に興味を持たせてしまうところだ。
【FF2をダウンロード購入しちゃってから】
私はこのスレの影響で銀英伝とローゼンメイデンと瀬戸の花嫁とエンジェル伝説とらき☆すたを見はじめた
俺はこのスレの影響でゼロ魔を読み始めた
このスレの影響で身長が5センチも伸びました!
じゃあ僕は警察官!
>234
イエス、誤字った。
でも最近新作の投下多いね
活性化してなにより
うちは別所のクロスSSでゼロ魔を知り、ここを教えてもらった
ここでもしコイントスで
使い魔として過ごす
→ ルイズを殺して逃亡する
を選んでいたら・・・ゴクリ。
>>248 やりかねない・・・ルイズのギャンブル運の悪さを考えるとそれもありえるから・・・ゴクリ。
>>246 やあ、4人目の俺w
それにしても、不思議なモンだww
最初ゼロ魔の1巻立ち読みした時は、
「イラッ☆( #^ω^)」って来たのに、それが今じゃ全巻揃えてるしwww
何もなければ3分後に投下しようかと思います。
早朝、朝食の給仕の準備に向かうシエスタは道中、辺りをちらちらと一瞥している一人の少年の姿を見かけた。
見慣れない姿であるが、その様子からして何かを探しているようだ。
「あの、何かお探しものですか?」
彼はシエスタの声に反応して振り向く。
(うわっ……すごい綺麗な人……)
思わず息を呑む。貴族の人間に負けずとも劣らない端整な顔立ちをしており、何とも言えない威圧感と張り詰めた雰囲気が感じられた。
そして、氷のように冷たい瞳……。ぞくりと身震いする。
しかし、彼はどうやら平民のようだった。自分と同じだ。
彼は言葉ではなく、行動で意思表示をした。
小脇に抱えていたものを差し出してくる。どうやら洗濯物のようだ。
そして、その事からどこか水場を探しているのを察する。
「あ……こ、こちらになります。どうぞ」
まるで本物の貴族のような威圧感に少し恐れながらも、シエスタは彼を案内する。
「あの、もしかして、ミス・ヴァリエールの召喚したという使い魔でいらっしゃいますか?」
黙々と洗い物をする彼の横に立ち、問いかける。すると、彼はくくっとゆっくり頷いていた。
(喋れないのかな)
何一つ語ろうとしない彼にシエスタは少し不安を感じつつもさらに話しかける。
「わたし、シエスタと言います。ええと、あなたは……」
「キリヤマ、カズオ」
(ほっ……良かった)
「わたし、ここで給仕をしているんですけど、あなたの事で話題が持ちきりですよ。人間を召喚するなんて初めてだって」
「お前も、魔法が使えるのか」
「いいえ。わたしはキリヤマさんと同じ平民ですから。……あ、せっかくですからわたしも手伝いますよ」
と、言ってシエスタも手伝いだす。桐山は特に何を言うでもなく黙々と作業を続けている。
そして、その仕事の上手さと速さはシエスタにも勝るものだった。まるで以前にもこんな事をしていたようにも見えてくる。
「あの、キリヤマさん。もしかして、前にこんな事をしていたんですか?」
「いや……このような洗濯をするのは初めてだ」
では、どうしてか。そう問うと、「お前を見て覚えた」と言ってきた。
それを聞いてシエスタは驚いた。今、自分もやっている作業を僅かな時間で見ただけで覚えてしまうなんて。
シエスタの手伝いもあって、洗濯はすぐに済んだ。
「他にも何かございましたら、何でもおっしゃって下さいね。同じ平民同士、がんばりましょう」
愛想よく笑ってみせるも、桐山は相変わらずの無表情と冷たい瞳のままこくりと頷くだけだった。
(ちょっと怖いなぁ……)
しかし、外面だけで相手を判断してはいけないことだ。これから少しずつ、彼と話をして打ち解けていけばよい。
桐山はルイズの部屋に戻り、洗い終わった洗濯物を干す。
そして、ベッドの上でシーツを蹴散らしてだらしなく寝ているルイズの肩を揺らし、起こそうとする。
「う〜ん……あと五分……」
と寝ぼけるだけで起きようとしない。
桐山はくくっと小首を傾げた。
それだけで普通にやったのでは起きない事を判断し、桐山は羽織っている学ランの制服の内ポケットの中からスタンガンを取り出す。
バチバチと一瞬、電撃を迸らせてみた後、再びベッドの横に立つ。
そして――
「ぎゃん!」
ネグリジェの上から腿にスタンガンを押し付けた途端に悲鳴を上げて飛び起き、ベッドから転げ落ちるルイズ。
起きた事を確認し、桐山はスタンガンをしまうと前を開けたままの学生服に腕を通し、踵を返す。
「……あ、あああああんた、ねぇ……!」
立ち上がろうとしても足が痺れて動けない。ルイズはベッドに這い上がりつつ物凄い剣幕で桐山を睨みつけるが本人はそれに意を返さずデイパックの中を漁りだしている。
「ご、ご主人様に向かって何て起こし方をするのよ!! 使い魔のくせして!! そんな事して良いと思ってるの!?」
「一度、お前を起こそうとした。だが、起きなかった」
仕方がなかった。そう言いたそうだ。
「もっと他に起こし方はあるでしょうが!! この、馬鹿ぁ!!」
枕を掴み、投げつける。
しかし、桐山はすいと体を少し動かすだけでかわし、扉に乱雑な音を立てて当たるだけだった。
「バツとして今日は朝飯抜きよ!」
その後、バケツに水を汲むよう命じても、着替えをさせるように命じても桐山は黙々とまるで人形のように作業をこなしていた。
桐山の態度にイラつくルイズは作業をしっかりこなす彼を本来なら少しは褒めてやっても良いかとも考えた。
しかし、何故、彼が何も言ってこないのかが分からず逆に不愉快で、そんな事は言えない。
朝食を抜き、と言われても桐山は別に気にしてはいなかった。
ここで例のパンが役に立つ。と、言ってもあまり味気はないのだが。
アルヴィーズの食堂の隅でパンを齧っている桐山は自分の私物である本「人体解剖学」を読んでいた。ルイズから「あたしの食事が終わるまで待っていなさい!」と命じられてそうしているだけである。
「何をしてらっしゃるのですか?」
そこに声をかけてきたのはシエスタだった。
桐山はちらりと彼女を一瞥する。
「ルイズに待てと言われて待っている」
「……あの、もしかしてそれがキリヤマさんの食事ですか?」
ほとんど食べ尽くしているパンを見てシエスタは呆然とする。
桐山はこくりと頷いた。
「そんなパン一つだけなんて駄目ですよ。よろしかったらわたし達と一緒にどうですか? 賄い食しか出せませんけど」
桐山は本を閉じると、了解したのかシエスタの後を付いていこうとする。
「ちょっと待ちなさい」
そこで呼び止めたのは食事を終えたルイズだった。
「あんたは今日朝飯抜きだって言ったでしょう! 勝手にそんな物を貰ったりして何してるの!」
桐山の私物であるパンを指差し、ルイズは叫ぶ。
別に貰った訳ではないのだが、ルイズにはそう見えたらしい。
「あんたも、人の使い魔に勝手に餌付けしないでよ! 躾にならないじゃない!」
と、今度はシエスタを睨んで喚いた。そして、ふんと鼻を鳴らして食堂を後にしていく。
しゅんと気落ちするシエスタ。しかし、桐山の方は気にするでもなく相変わらず無表情だ。
「……お昼にはちゃんとを用意しておきますので、来てくださいね」
ぼそりと桐山に言い添え、シエスタは厨房へと戻っていった。
桐山は残ったパンを一気に飲み干し、ルイズの後を追う。
「あたしが戻るまで、あんたは部屋の掃除をしてなさい!」
追いつくと、相当苛立った様子で桐山に命じていた。
桐山が部屋の掃除をすぐに終え、読書をしていると突然ルイズがやってきて彼を無理矢理外へ連れて行った。
連れて来られたのは瓦礫の山と化していた教室で、錬金の実習でルイズが教師や生徒を巻き込む大爆発を引き起こしたものである。
そして、その片づけを桐山に命ずるルイズは机の上にふんぞり返ったまま彼を見ていた。
桐山は何一つ文句を言わず、黙々と作業を続ける。
従順な使い魔だ、とも思ったが彼が自分に対して文句はおろかほとんど何も言ってこないまま仕事を続けるので、決して使い魔と信頼関係を築けている訳ではない事も察している。
確かに、ムカつく態度ではあるがしっかり信頼関係を築かなければ何にもならない。
「ねぇ、あんた何で何も文句を言わないの? 普通平民のあんただったら、何か一つは言うはずよ」
しかし、桐山は全くの無反応。
まるで自分が拒絶されているような気がして余計にルイズの癪に障る。
「何とか言ったらどうなの!」
「何故、爆発が起きた」
ようやく答えたその一言にうっとルイズは息を呑む。
そして、搾り出すように言う。
「……錬金に失敗したのよ。あたしは昔から、何一つ魔法を成功させた事がない……。それで付いたあだ名は「ゼロ」のルイズ……。
ふんっ、笑ったらどう? 貴族なのに未だに空も飛べないし、魔法一つ使えないんだから。あんただって、あたしの事を馬鹿にしてるんでしょ?」
少し自暴自棄気味に自嘲するルイズ。
しかし、桐山は気にするでもなく手際よい片づけを続けている。もうほとんど終わりかけていた。
そして、ルイズは気付かなかったが桐山は小さなガラス片をいくつか回収し、別の小さな袋に詰めている。
「……何で、何も言わないのよ!」
「俺は、お前の使い魔。それだけだ」
一切の感情がこもっていない声で彼は返してくる。
興味など無い、そうも聞こえてくる。
それが余計に悔しくて、ルイズは喚くのを通り越して泣き出してしまった。
「終わった」
それすら桐山は意に返さず、淡々と告げてくる。
「……終わったなら、さっさと部屋に戻りなさい!!」
目に涙を浮かべつつ叫ぶと、桐山は用は済んだと言わんばかりに教室を後にしていった。
「人間って脆いものだな」
教室から去る寸前、桐山は一言そう口に出していた。
昼になり、桐山は朝にシエスタに言われた通り食堂の裏にある厨房へと赴く。
「あ! お待ちしてましたよ! キリヤマさん!」
入るなり、シエスタが満面の笑みで桐山を出迎えてくれた。そして、料理長を呼ぶ。
「お! お前さんが貴族の使い魔になっちまったっていう奴かい?」
マルトーの言葉に、無言のまま桐山は頷く。
「何でい、元気がねえな! よし、お前さんの元気が出る特製料理を作ってやるぜ! 待ってな!」
豪快に笑いながらマルトーは仕事場へと戻っていき、シエスタは桐山をテーブルに案内する。
そして数分後、賄い食とは思えない豪勢な料理が桐山の前に出てきた。
桐山は無言のまま食器を手にし、食していく。
「どうだい? 美味いか?」
マルトーが言うと、桐山はこくりと頷く。
元々、彼は香川県でも指折りの大企業の御曹司。これくらいの食事は常日頃から食してはいたので素直なものだった。
「おかわりもありますから、欲しい時は言ってくださいね」
と、桐山の横でシエスタが言う。
(ちょっと怖いけど……大丈夫、大丈夫よ)
上品に食事を続ける桐山を見ていて、相変わらず人形のように冷たい表情にまた思わず身震いしてしまった。
しかし、彼は平民だ。同じ平民同士、ここでちゃんと仲良くしておかないと。
「あ、もう良いんですか?」
「礼を言う」
無機質ながら感謝されて、シエスタは嬉しさを感じていた。
「またいつでも来てくださいね」
その後、シエスタは食堂で貴族達にデザートの配膳をしていた。
そこには桐山の姿もあった。
自分達の仕事だからやらなくても大丈夫、だと言ったが桐山は「いいんだ。少しくらいは手伝ってみてもいいと思った」
そう言って仕事を手伝ってくれた。
(優しい所もあるんだな。キリヤマさん)
と、さらに嬉しく感じていたが桐山は別に好意で手伝っている訳ではない事をシエスタは知らない。
桐山が配膳の手伝いをしている所を多くの生徒達が見かけていた。
そして、彼がいつ自分の所へ来るのかと恐怖に震え上がる生徒が多数存在した。
特に、一年の生徒達は彼がデザートを配膳しに近くへ来た途端、びくりと反応し極端に怯えていた。
配膳の手伝いが終わり、桐山は壁に寄りかかったまま読書を開始していた。
桐山に怯えていた生徒達は彼が読書に夢中になってくれた事で安堵に溜め息を吐いている。
少しすると、何やら食堂内が騒がしくなる。桐山は意に返さず、読書に集中する。
「すみません! すみません!」
「いや、許せないな!」
シエスタの必死そうな声と共にキザったらしい男の声も聞こえてくる。
「貴族である僕はあの時、知らないと言った! それを受けたら平民である君は気を利かせるべきではなかったのかな? まったく、これだから平民は……」
侮蔑の混じった声が響く。
それに対してシエスタは先程から頭を下げて「すみません」と言うばかりだ。
桐山は本を閉じ、声が聞こえてくる群集の元に行くと、
「静かにしてくれないか」
張り詰めたような声に、シエスタと彼女に八つ当たりをするギーシュを含めた聴衆が桐山の方を向く。
「な、何だね君は?」
「キ、キリヤマさん……! 駄目です!」
「静かにしてくれないか。……今、そう言った」
彼の言葉が今一理解できず、ギーシュは顔を顰める。
「こちらは今、取り込み中なのだよ! 引っ込んでいてくれたまえ!」
(な、何なんだ……こいつは……)
ギーシュは目の前にいるのが平民であると理解していたが、その氷のように冷たい無情の瞳に思わずゾクリとした。
「聞こえなかったのかね? 早く、立ち去りたまえ!」
桐山の威圧感に負けじと叫び、腕を振るギーシュ。
しかし、桐山はじっと冷たい視線をギーシュに向けたまま立ち尽くしているだけで従わない。
「ああ……そういえば、君はミス・ヴァリエールが召喚した使い魔だったな。使い魔の躾がなっていないとは、さすがにゼロのルイズだ」
と、侮蔑を込めた言葉を吐く。しかし、桐山はそれに意を返さない。
「何とか言ったらどうなのだね!?」
桐山の前まで詰めより、間近で彼の顔を睨む。
すると、彼はすぅと目を閉じ――
「ぶっ」
バン! という大きな音が響き、低いうめき声と共にギーシュの体は軽く錐揉みをし、床に叩きつけられた。
桐山の手には人体解剖学の本があり、それでギーシュを殴打したのだ。
その衝撃で歯が一本抜け落ち、コロコロと床に転がり落ちる。
「へ、平民が……、き……貴族に対して、手を出す、とは、良い度胸をしているな……」
先程、ケティに叩かれていた右の頬ごと側頭部を殴打されたので押さえつつ、立ち上がったギーシュはぺっと血を吐き捨てて桐山を睨みつける。
「決闘だ!」
杖を突きつけ、叫ぶ。しかし、桐山は無表情のまま小首をくくっと傾げるだけだった。
一部の生徒達は、桐山から発せられる異様な威圧感に恐怖を覚え、身震いしていた。
ただの平民のはず。それなのに、貴族とほとんど変わらない……いや、それ以上のオーラを彼は発していた。
「ヴェストリの広場で待つ、逃げることは許さない!!」
しかし、ギーシュはそれには全く気付いていない。
以上、2話でした。
今、気付いたけど前回のイングラム、初めの所を間違えてM10にしてしまった・・・。
そして、桐山は15歳である事も今更ながら思い出した(ルイズよりも年下。タバサと同じくらい)
乙です
こんにちわ10分後に投下したいと思います
と思ったらあれ? USBが行方不明 ちょっと待ってね
もしかしてネカフェで投稿?
でも支援
よし、全裸待機
見つけました大変失礼しました
五分後から投下します
焼け爛れた天井の掃除を終えて、クリフは念動で操っていた雑巾を手元に降ろした。
「よっ……と」
あれから、クリフ達は教室に残って、ルイズの起こした爆発の後片付けをしていた。
周囲の人間に被害を及ぼすことだけはなんとか阻止することに成功したものの、なぜか十分に集まりきらなかったサイコキネシス
では抑えきることができず、爆発の圧力が上に逃げて教室の天井を大きく焦がしてしまっていた。
「……ふむ」
クリフは手の中の雑巾を見つめ、確かめるように握った。
……なんだろうか。雑巾は今、自分が操作した通りに確かに動いていた。しかしさっきもそうだが、なぜか力が入りきらない。思
い切り念力を込めると、すっぽ抜けるようにパワーが拡散してしまう。
「どしたのクリフ?」
隣に立つヴォルフが、不思議そうな面持ちでこちらを見つめてきた。
「いや、なんでもない。……それより、一応掃除はしたけれど、こうして見るとすごく目立つなぁ。色が変わってて……」
石製の天井は茶色く変色していて、下から眺めると明らかに自己主張してしまっている。
「ま、そんなもんじゃないの? あとはプロでないとどうにもならないでしょ」
「ふむ。……まあ、言われただけの事はしたか」
これ以上は天井の石畳ごと変えでもしなければ直せないので、諦めることにした。
「終わったよ。ルイズちゃん」
そう言って振り向くが、ルイズは隅に座り込んで膝を抱えている。
「? どうしたんだい? さっきから」
「ほら、終わったって言ってるじゃない。何を落ち込んでるのよ」
しかし、ルイズは顔を上げようとしない。
教室には、シュヴルーズと他の生徒はすでにいなかった。クリフ達三人とルイズ、そしてお目付け役として手を上げて自ら居残っ
たもう二人の人間がいるだけだ。
「……すごいのね、本当に杖も使わないで……」
そのうちの一人―――朝、部屋の前で挨拶を交わしたキュルケはあんぐりと口を開いて、クリフを見つめていた。
「うん? ああ、一応言ったけど、そのエルフっていうのじゃないよ、僕は」
「へえ……」
興味深そうな顔をして、こちらをジロジロ見てくる。うーん、好奇の目はあまり好きではないんだが。
ルイズの爆発を止めた時、運悪く近くにいたこのキュルケに一連の行動を目撃されていたのが悪かった。他の生徒達に気づかれる
ことはなかったが、イメージを強くするためについ空中で手を握ったせいで、なにかをした、と勘付かれたらしい。
どうせルイズにはバレてしまっていたので時間の問題かと思い、あまり人には言いふらさないで欲しいと含めた上で、自分の『力』
を少しだけ見せてやったのだが……。
「先住魔法ではない?」
他のもう一人、青い髪色のタバサという少女がポツリと呟いた。この子はどういうわけだか知らないが、キュルケと共に残ってい
た。
「その……そもそも、魔法じゃない。人間に隠された能力、というか……」
「……人間の能力?」
「うーん、ちょっとばかり才能はいるけど」
一応、ハチャメチャな魔法と違って、念動力は理屈と説明がついている。世間一般にはもちろん知られているわけもなく、ただの
インチキのような扱いはされてはいるが、各先進国トップやエグリゴリのような裏組織の間では、科学的な研究で解明された事実が
知られている。
「僕のは、やたら極端ではあるけどね。そこそこ便利だよ、ほら」
そう言って、手の雑巾を空中に飛ばしてバケツに突っ込んでから、浮かせたままギュッと絞った。
「例えばこんなふうに、手が汚れないとかね。普通にやるより疲れちゃうけど。今みたいに、手の届かないところを掃除するには使
えるかもね」
怖がられてはいないようなので少し調子に乗って披露してみせると、タバサは真剣な面持ちで宙に浮かぶ雑巾を見ている。ううむ、
魔法が使えるのにどうしてこんなに興味を持たれているんだろう?
「ねえ、他には? エルフ達みたいに、すごい火力とか」
キュルケがさらに質問を投げかけてくるが、
「火力? ……いやあ、そんな事はできないよ。僕が出来るのは、念動力だけさ。大したことはないよ」
と適当にお茶を濁しておくことにした。うん、別に嘘は言ってないし。隣で(よく言うわよ……)とでも思っているのかジト目で
ヴォルフが見てくるが、バカみたいに自慢しまくってもしょうがない。それに、人に危機感を持たせない程度に留めておくのが無難
なのだ。
「ふーん……。なるほどね。それで、他の人はどんな……」
「いや、それより。ルイズちゃんが落ち込んでるんだけど、どうしてだろうか?」
話題を逸らしつつ、さっきからどんよりとしてるルイズを見やる。
「さあ、知らないわ。大方、召喚が上手くいってたから他の魔法も使えるって調子に乗ってたんじゃないの?」
キュルケがそう言うと、図星だったのかピクッとルイズの肩が震えた。負のオーラを強くして、いじいじと地面をいじりはじめる。
「……彼女は魔法が使えないのか? ……そう言えば、はじめて会った時も飛ばずに歩いていたな。でも、寝るときに指を鳴らして
灯りを消していたけど」
ふと、昨日の事が思い起こされる。
「灯りを消したのは、そういうマジックアイテム。この子は魔法が全然一っつも使えないで、失敗して爆発ばっかりしてるのよ。だ
から『ゼロ』のルイズ」
「……なるほど。それであの小太りの少年は……」
「ああ、あれはマリコルヌっていって、ルイズのことあんまり言えない程度の……ぷっ、クク、ククク……」
マリコルヌという少年の話の段に入ったところで、急にキュルケが笑い出した。
「え?」
「ぷぷ……ちょっとごめんなさい、思い出し笑い。でも、「デブが感染る」なんて、ヴァリエールも結構言うじゃないの」
ああ、この子もさっき噴き出していたな、そういえば。
「ま、とにかくそういうわけで落ち込んでるんでしょ、あの子は。まぐれで召喚に成功したからって調子に乗ってちゃ、ねえ。ゼロ
のくせに」
ちょっと意地悪げにルイズに聞こえるように言う。ここから見えるルイズの額にぴしっと血管が浮かんだ。あ、怒ってるな……。
「ほら、なにしょげてるのよ。さっさと起きなさい」
キュルケがつまらなそうに呼びかけると、ルイズは不承々々といった顔で立ち上がった。その口から、不満げにぼそりとこぼす。
「……なんでよ。召喚は、成功してたのに……」
「そんな都合のいいわけないじゃないの、せっかく人が止めてたのに。無理して張り合って、周りに迷惑かけてちゃしょうがないで
しょ」
キュルケの言葉に、むうー、とうなり声を出してさらに落ち込む。
「なによ、いちいち気にしてるんじゃないわよ。日常茶飯事じゃない」
「ま、まあまあ。元はと言えば、僕が騒いだのが発端なんだから、その辺で……」
と、クリフはルイズに助け舟を出すことにした。
「あら、主を庇うなんて、ちゃんと使い魔してるじゃない? そう言えばあなたも、すごく驚いてたわね。魔法を見たのは初めて?」
キュルケはさっきのクリフの狼狽ぶりを思い出したのか、少し意外そうな顔で振り返る。
「そりゃ、まあ。初めてだよ」
あんな無茶苦茶なもの、見た事なんてあるわけがない。物理法則を完全に無視して……やりたい放題だ。
「でも、あなたも『念力』を使えるんでしょう?」
「それはそうだけど……本当に錬金するなんて、あまりにも……。そうだ、魔法と言えば。ルイズちゃんに聞きたい事があったんだ。
いいかい?」
「……なに?」
ルイズが俯いていた顔を上げて、クリフを見た。
「召喚……今も、正直夢を見ているみたいなんだけど……その召喚も魔法なんだろう? どういう原理かは分からないけど、君は僕
達をここに呼び出した。じゃあ、逆に僕らを元の世界にも戻す魔法もあるはずだろ?」
そう聞くと、ルイズとキュルケは揃ってぽかん、とした顔をして、お互いの顔を見合わせた。
……あれ?
「え……? そんな魔法、ないわ?」
「ええ。召喚する魔法はあるけど、呼び出した使い魔を元に戻す呪文なんて、聞いた事もないし」
……。え。……嘘だろ?
「使い魔を戻す必要なんて、これまでなかったわけだし。普通は、死ぬまで主人と一緒よ」
……し、死ぬまでって……。
「そもそも人間を呼び出すこと自体、前例がないわね。あなた、元の場所に帰りたいの? まあ、そりゃそうよねぇ。ヴァリエール
の一方的な召喚で呼び出されたわけだし」
「ちょ、ちょっと。あなた使い魔やるって言ったじゃない!? まさか、やっぱり帰るなんてこと…」
ルイズが慌てだした。いや、使い魔はいいんだけど、その……。
そこで、今まで黙って成り行きを見ていたヴォルフが口を開いた。
「落ち着きなさい、お嬢ちゃん。アタシ達には向こうに置いてきた仲間、ファミリーがいるのよ。女の子が二人ほど、ね。そのまま
放っておくわけにもいかないでしょ?」
「え……」
「命を救われたらしいことはもちろん感謝してるわ。でも、おいてけぼりにしちゃってるんだもの、しかも結構危ないところに。……
そうよ、そういやクリフ、アタシ達が殺られたあとどうなったのよ? ていうか殺られたの知ってた?」
ヴォルフがこちらを見る。
「……ああ。ユーゴー達には、あまり見せたくないショッキングな映像だったよ……」
「げ。じゃあ、完全に死んでると思われてるじゃないのー。あーもー心配だわ……」
「あの後、僕が囮になって二人を逃がして……一応、タカツキ達に合流できたみたいだけど。そこで意識が途切れた」
「あ、じゃあやっぱクリフも殺されたのね、あのチビジジイどもに。あーもームカつくわー。でも、アンタがあれぐらいの敵に遅れ
を取るなんて、油断大敵よ?」
「いや……レッドキャップスは確かに強力だったが、僕はキースにやられた」
「ええ!? キースが前線に出てきたの? ヤバイじゃない、洒落になんないわよ!? じゃ、じゃあユーゴー達危険じゃない!
いくらあの坊や達でもひとたまりもないわよ!」
「ああ……なんとか逃げ切ってくれていることを祈るしか、ないな……」
「ああー! もうどうしよー! ホントに心配だわ、ユーゴーとキャロル死んじゃうわよー!? それに隼人君だって、超タイプだ
ったのにー!」
「……ま、まあタカツキ達も心配だけど……」
別に僕は、人の趣味をどうこう言う気はないけどさ。
そこで、会話に置いていかれたキュルケが口を挟んだ。
「……事情は知らないけど、なんだか大変な時に呼び出されたのね。あなた達」
「ん? ああ、すまない、こっちの話をしてしまって」
「別にいいわよ。それより、どうするのよヴァリエール? ちょっと聞いただけでも殺すとか殺されるとか、あなたの使い魔達が物
騒な事言ってるけど」
キュルケが隣のルイズを見下ろした。ルイズはちょっと青い顔をして立っている。
「え、えと……その……」
「まずいんじゃないの? よく分からないけど、なんだかあなたのせいで……人が死ぬ……かも?」
「え、そ、そんな!? ……で、でも! 呼び出した使い魔を元の場所に戻すなんて……」
「そうね、そんな呪文ないわよね。うーん……」
キュルケが考え込むように顎に手をやった。
そこでふと、ヴォルフがぽん、と一つ手を打って口を開く。
「あ。そうだわ、ちょっといいかしら」
ヴォルフは考えるように少し宙を見上げて、ひげをいじった。少し間を開けて、続ける。
「アタシ少しアイディア思いついたんだけど……お嬢ちゃん、なんか聞いてたら召喚って魔法なんでしょ? 一応」
「え? そ、そりゃそうよ。コモン・マジックの一種だけど……」
「コモンだかコモドだか、そういう詳しいことはどうでもいいんだけど。それをね、もう一度――やってもらえないかしら?」
そう言って、ルイズを見つめる。ルイズの口から、え、と声が漏れた。
「できるでしょ? それは一回成功してるんだから、いくらでもできるでしょ」
「え、あ……え?」
「それをやって欲しいのよ。上手くいけば、ユーゴーとキャロルもこっちに連れてこれるんじゃない? そうすればアタシ達も帰る
必要がなくなって、お嬢ちゃんも使い魔がいなくならないどころか増えて万々歳。……ワーオ! 我ながら誰もが納得のビックアイ
ディアじゃない!?」
自分の言葉に驚くように、ヴォルフが手を打った。
……なるほど! そうか、その手があった。僕達が帰れるかどうかはおいても、確かにそれならユーゴー達については解決する。
迎えに行くのではなく、こちらへ呼べばいいわけだ。
「ヴォルフ、それだ。よく思いついたな」
「ぬっふっふ! すごいでしょー!? アタシ天才かも!」
いや、それはないけど。
「というわけで、もっかいだけ召喚してちょうだいなお嬢ちゃん? これでとりあえずはなんとかなるってすんぽー……あら?」
ヴォルフの提案に、ルイズがふるふると頭を振った。キュルケも横目にルイズを見て、それに同意する。
「え? なんで?」
「で、できないわよ。朝食のあとに、言ったでしょ?……使い魔は一人一つ。それが死ぬまで、新しいのは召喚できないって」
「え、嘘! そうだっけ、そんなこと言ってた!?」
「も、もう。誰も全然聞いてないじゃない、言ったわよ。……残念だけど、それはできないわ」
「なんでよ!?」
「なんでもなにも、そういうものなの!」
「えー!? じゃ、じゃあ……ダメなの?」
……。そうなのか。そういえば、そんなことをチラッと言っていたような。まあ、そんなに都合はよくないか。
「ダメよ、できないわ。だって、呪文が完成しないのよ」
ルイズの言葉に、隣のキュルケも頷く。
「そうよね、それも聞いた事ないわ。普通は無効化されちゃうもの」
「ツェルプストーも知らないわよね? やっぱりゲルマニアにも前例がないのね、わたしも知らないわ」
「えー、嘘。せっかく思いついたのに……。じゃーどうしましょ。あ、でも! アタシ達、三人いるじゃない!? 一人一つっての
から外れてるし、なんとかなったりとかして!?」
「そ、そうだけど……。でも、無理よきっと。普通に考えてできるはずないし……」
「分かんないじゃない、やってみたの!?」
「や、やってはいないけど……」
しつこく食い下がるヴォルフに、思わずたじろぐルイズ。
「じゃあ一回だけ! 一回だけでいいから、ちょっとやってみてくんないかしら?」
「で、でも……」
「女は度胸、何でも試してみるものよ! この通りよ、ね、ね、いいでしょ!?」
「なによそれ……。別にいいけど。じゃ、ちょっとどいて」
ルイズが杖を手に取った。小さな杖を空中で振って、呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、『使い
魔』を召喚せよ。……っと」
最後に大きく杖を振り下ろす。
「……ね。絶対無理に決まってる……って……」
ルイズの目の前に、光る鏡のようなゲートが現れた。
「……うそ?」
呆然と呟いたルイズの前で、ゲートから神々しい光が零れている。
「……できちゃ……った?」
「……ええ!? ヴァ、ヴァリエール!? 成功したの!?」
キュルケが目を丸くする。
「……!」
さっきまで会話にまったく加わらなかった、青い髪のタバサが立ち上がって声なき驚きを示した。
「…………」
隅に座っていたキクロプスは、いつでも抜けるようにさりげなくナイフの柄に手をわずかにかけ、警戒する鋭い目を鏡に向ける。
「できたみたいね……? ……って、よっしゃあ!」
そして、ヴォルフが野太い声を出してガッツポーズをした。
「鏡……? こ、これは……」
クリフはじっとゲートを見つめた。思いつきとはいえ、本当にできるとは。まさか、ユーゴー……?
「シャア! 来い来い来い、ユーゴー! キャロル! 出てきなさい!」
まるでばくちの出目に興奮するかのように、ヴォルフは腕を振りまくっている。
その時、ゲートの先で何かの影が動いた。やがてそれは、ゆっくりと人の形をとりはじめる。鏡のようなゲートが二次元から三次
元に盛り上がって――それは倒れ伏すようにして、こちらに現れた。
ごとり、と床に転がる。
……。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…………」
全員が、声を出さなかった。というよりも、予想外の流れに口を半開きにしたままだった。
ゲートが光を失い、閉じる。後には何事もなかったかのように、普通の空間があるばかりだった。
しばらくの間、沈黙が続いた。ようやくのことで、なんとかヴォルフが声を絞り出す。
「……誰これ?」
ゲートから出てきたのは。
ユーゴーでもキャロルでもなく、黒髪で青いパーカーを羽織った、知らない少年だった。
「お、男の子だわ……」
「……こ、これは誰だい?」
「し、知らない……。わたし知らない……」
「……増えた。……召喚は成功?」
「…………アジア系だな。……顔が平たい」
「……へ、平民増やしてどうするのヴァリエール……」
「そ、そんなこと、わたしに言われても、し、知らない……」
眠ったように目をつぶって倒れている少年を囲んで、一同はごにょごにょと話し合う。
「あ、でもこの子けっこう可愛い顔つきね。アタシの好みからはちょーっと外れるけどなかなかイケルわ」
「え!? あ、あなた男の人でしょ? なんで男の子が……」
「アタシそういう趣味の人なのよ。心は乙女」
「……ご、ごめんなさい、ちょっと絶句しちゃったわ……」
「こら、ツェルプストーに余計な事漏らさないでよ。なんだかわたしが恥ずかしいわ」
「細かいことはいいじゃないの。それよりどこの子かしら?」
「ふむ。見た感じではアジア系コーカソイドに間違いはなさそうだが……キクロプス、どう思う?」
「…………確証はないが、……中国と韓国ではないな。タイでもない。……特徴からして、日本人だと思うが……」
「ううむ……襟から服のタグが覗いてるな。……これは日本語か? 見覚えがある」
「…………おそらく」
「……日本? ……あなた達の国?」
「いや、なんというか僕の国ではないんだけど」
「けっこう可愛いパーカーねぇ。ボーイッシュでいいカンジ」
「……ま、まあ人の趣味はそれぞれよね……」
「ちょっとやめてよ、わたしまで変な目で見られてるじゃないの」
「正直に言うことはいいことよお嬢ちゃん? アタシは自分のパッションに生きてるだけよ」
「……あなたの国でもないの? ……あなたも?」
「…………違う。俺は、国籍自体……ないが」
「アタシも違うわよ。でも、アタシの国の男の子もいいのよこれが。特にローティーンとハイティーンの間は最高よ。ウブな感じが
たまんないの」
「さっきからなんの話をしてるんだお前は。……たぶん、彼は僕達が来た国と同じところから来た」
「……違う国なのに同じところ?」
「…………そうだ」
「いやキクロプス、誤解を招く。僕達はその、旅行者みたいなもので……」
「こうなんていうのかしら、保護欲? 可愛い男の子ってからかったりちょっかい出したくなるのよねー」
「やめてってば、変な話はしないでよばか」
「あ、でもあたしそれ分かるかも……」
「ちょ、ちょっとツェルプストー!? なんでオカマに同意してるのよ」
「あら、あなた分かる? そういうの」
「少しだけ期待させてみたり、そういう素振り見せたら反応が面白いのよねー。赤くなっちゃったりして」
「そうそう、それよ。照れる姿が可愛いのよもう」
「やめてよもう! ばかじゃないのあんた達! なにナチュラルに意思疎通してるのよ」
「……旅行者? 滞在先の国の人?」
「そういうことになるね。まだ確実じゃないけど、たぶん日本人らしい」
「あらお嬢ちゃんにはまだこういう話は早いかしら? そういやお嬢ちゃんもウブそうね?」
「…………心拍も正常。……目立った外傷は見当たらん」
「だって無意味に身持ちの固いトリステイン女だもの。男の子のことなんてなにも知らないのよこの子?」
「……この人も、あなた達のように『念力』が使えるの?」
「あんたが男をとっかえひっかえでおかしいだけでしょ! 普通はそうなの!」
「いや、それはないと思うが……普通の少年のようだけど」
「とっかえひっかえなんてしてないわ。あたしは大勢来る中からつまらない男を切ってるだけ。こう見えても、見る目だけはあるつ
もりよ」
「…………武器の携行はなし。持ち物はバッグが一つ、……中にはノートPCだ」
「アタシは純情も信念があって悪くないとも思うけど。でも、まったく男を知らないってのも考えものねぇ。コロッと騙されちゃう
わよ?」
「……この人は純情?」
「やっぱりそうよね、なにも知らないのは危ないわよね。ヴェリエールも少しは男を見る目を養ったらどう?」
「ああ、確かに素朴な少年そうだ……って、なに? ああ、おいヴォルフ、会話が混線するからあとにしろ。混乱する」
「うるさいわね! 大きなお世話よ! わたしはそういうの、ちゃんとするの!」
「…………あとは筆記用具が少々。……PCは電源が入っているようだ……今、点ける」
「なんだか危なっかしい意見ねぇ……。乙女もいいけど王子様なんてホントにレアよ? だいたいの男は自分のこともキチンとでき
ないヘナチョコばっかりだし」
「……ヘナチョコ?」
「あなたに比べたらそりゃだいたいはヘナチョコだわ……。でも、男って意外と頼りにならないわよねー。いざってなるとダメなの
よ」
「ヴォルフ、やめろって。……さ、さあヘナチョコかどうかは知らないけど、さすがにヴォルフよりは……僕も人のことは言えない
けど」
「そ、そうなの? ……で、でもわたしはその辺はちゃんと将来のために、遊んだりなんてしないでいたいの! 大事なことだもの!」
「…………点いたぞ。……立ち上がりがずいぶん早い。……高そうだな」
「あらら、これは頑固そうねぇ。でも、そういうの重いとか言って逃げるナメた男もいるのよねぇ、ヤるだけヤってるくせに。気を
つけなきゃダメよ? 時々とんでもないのいるから」
「……あなたもヘナチョコ?」
「あーいるわそういうの、価値のない男。ヴァリエール、あなた何も知らないからひどい目に合いそうで心配になってくるわ。あ、
ちょっとなにそれ!? マジックアイテム!?」
「う……。ま、まあその、あんまり体力には自信ないかな……。ところで、彼はまだ起きないのか?」
「あーーーーーーもーーーーーーうるさーーーーーーーい!!!!」
ルイズが思い切り大声を上げると、ぴたりとこんがらがりはじめた会話が止まった。
「……急にヒステリーもよくないわよ、男に低く見られるわよ?」
「違うわよばか! もう、何の話だか分からなくなってきちゃうもの! ちょっといったん、ストップ! 話を戻しましょ。とりあ
えず、これはなに?」
ぴっと倒れたままの少年を指差した。
「これってひどい言い方じゃない? あなたが呼び出したんでしょ、ヴァリエール」
「そ、そうだけど! なんで来るのよ、来れるのよ!? おかしいじゃないの、一人につき一つのはずでしょう!?」
「あたしに言われても知らないわ……。どういうことなのかしら?」
キュルケも分からないらしく、首をひねる。
「……とりあえず、起こしてみようか」
クリフは軽く少年の肩をゆすった。すると、うう、とうめいてから少年が目を開けて身を起こした。
「……え? あれ、ここどこ?」
ぽかん、としてこちらを見つめてくる。
「……えーと。やあ、僕はクリフ・ギルバートという。君は?」
「へ? お、俺? 俺は……平賀才人……」
「なるほど、サイト君。……だ、そうだ」
振り返ってみる。が、一同は黙ってこっちを見ているので、クリフは才人という少年と会話を続ける。
test
「ところでサイト君。君は日本人か?」
「え? え? に、日本人……ですけど…・・・。え? なんで? 誰?」
「まずは落ちついてくれ。混乱していると思う。僕もそうだった。……だが、……慌ててもはじまらない」
「はへ? いや、ちょっとなんですか? が、外国の人?」
「そうだね、僕は君にとって外国の人だ。だが、言葉は通じてるな……? ふむ。君は英語が堪能なのか。まあ、今はこの際それは
置いておこう。それより、どこか怪我はないか?」
「言葉……? いや、怪我はない……ですけど。え、ちょっとわけわかんねえ」
「うん、その通りだ。わけがわからないことだろう。だが、冷静にだ。いいか、冷静に。……よし。じゃあ説明をしよう。……ルイ
ズちゃん?」
再度振り返り、ルイズを見る。
「え? わ、わた、わたし?」
ルイズは急に話を振られて、少し声を裏返した。
「君が呼んだ少年だ。おそらく、彼は……君の使い魔ということになる。この場合、君が説明するのがいいと思う」
「え、で、でも、でも……?」
「慌てないで、落ちついて。君は主人だろう? 大丈夫だ、問題ない」
主人、と言われてルイズははっとした。きりりと顔を引き締める。
「い、いい!? ちょっとそのまま、動いちゃダメよ!」
「えっ? な、なんだよ、ええ? あ、こっちも外人……?」
「動かないで! ……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴン! こ
の者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
そう言ってルイズはつかつかと才人に近寄り、杖を額に置く。え、いや、違う、彼に説明を……?
「おわっ? な、なにをする」
「いいからじっと。そのまま……」
「ちょ、ちょ、え? おわ、な、なになに?」
「動かないでってば!」
ルイズは両手で才人をがっしりとホールドし。
そして、唇を重ねた。
少しして、すっと離す。
「……うう、もう……ちょっと、ツェルプストー! なにニヤニヤ見てるのよ!」
「見てないわよ。まあ、あなたもがんばりなさいよ」
「なにをがんばるのよ! もう、なんだか心の準備できてなかったから、すごい恥ずかしい! ちょっと見ないでよ!」
ルイズが顔を真っ赤にしてわめいてる後ろで、少年は放心して呆然としているようだ。うむ、確かにビックリするよな、彼にとって
は同年代みたいだし。特に日本人はキスの習慣があまりないって聞くな。
「……!? うおわぁあああ!? あ、熱っ、あっつぅー!? 痛ってぇー!?」
そのうちに、才人は手の痛みに床を転がりはじめた。……僕達より不意打ちの度合いがひどくてちょっとかわいそうかもしれない……。
「あら、ちょっとだらしないわね。あの程度の痛みでそんなに騒ぐなんて」
ヴォルフが肩をすくめる。いや、それは少々酷じゃないかなぁ……。
「はあ、はあ、痛ってぇ……。な、なんなんだちくしょう……!? い、意味がわかんねえ……マジでわかんねえ……!?」
才人は混乱に満ちた目をしていた。
以上です。ありがとうございました
とちゅうばいばいさるさんとか出てきてビックリした……
以前予告したとおり黒髪青パーカーが出てきました ホントは違ったけどついカッとなって方向転換
あとさりげなく改題
それでは失礼します
投下された皆様乙ですー
最近投下が多くて嬉しい
この先の展開に期待しております
この三人は大好きだぜ
乙
ところでこの三人と世界最強コンビ、どっちが強いかね?
乙乙
完全に一般人だから色々霞みそうだが、グッドラック平賀……
それは通りすがりの忍者サラリーマンと御見苗の親父がどっちが強い?みたいなもんだぞ
いや、御見苗の親父はトラップの名手でたいして強くないだろ
通りすがりのサラリーマンと比べるならロン毛の仙人が妥当な線じゃ?
こんばんは。
20:50頃にフリオニールの第13話を投稿いたします。
>>197 はじめまして。新入りですがよろしく。
>>237 ミンウ「ふふっ。早速合言葉を使っているな。そうやって人々の声に耳を傾けるのだ」
まあそうだけど米軍グリーンベレーや
人間より五感が優れてるジャン相手にトラップ決めてるのは充分強いとは思うw
サラリーマンと仙人が人外すぎるだけで
この人ら強いだけじゃなくちゃんと年長者として主人公を導いてるのが好きだな
大人がちゃんとしてるマンガやアニメが減ったからなあ
『フリッグの舞踏会』は食堂の2階にあるホールにて和やかな雰囲気の中開催された。
普段は生意気そうな生徒達も正装を着こなし佇む姿はフリオニールをして「さすが貴族」と
唸らせるものだった。ルイズ、キュルケ、タバサもパーティドレスに身を包み会話に花を咲かている。
フリオニールは学院内で孤高の存在である上、フーケ討伐の実績も加わった為、生徒達に
とっては益々近寄りがたい存在となってしまった(もちろん平民である彼がそのような
活躍をしたことに対するやっかみもある)。唯一の友(?)であるギーシュはずっと
女生徒達に囲まれている。会話の輪に加わりたいが女性の群れに入るのを躊躇うチェリー。
パーティ会場で暇を弄び退屈していたフリオニールは、ギーシュを諦めて同じくボッチで
食事をしていたコルベールの元へ向かった。
「コルベール先生」
「おお、フリオニール君」
「俺までパーティに参加してよかったのでしょうか?」
「もちろん!君も主役の一人だよ。似合ってるぞ、そのタキシード」
コルベールは自身のタキシードを見事に着こなしているフルオニールを眩しい目で見た。
フリオニールは感謝の言葉を述べると、小声で
「先生、例の伝説ってやつ」
「しーっ!その話題はここでは・・・」
伝説のことを口にしたがコルベールは慌てている。フリオニールは構わずさらに小さい声で
「やっぱりこの世界に骨を埋めなきゃいけないんですか?」
「・・・あそこで話そうか」
人だかりのない窓際を指差した。二人はそこまでゆっくりと歩くと、ひそひそと
「君が帰りを急ぐ訳を教えてくれないか」
「俺の住む世界では帝国が世界征服を企んでいて、俺達はそれを阻止しているんです」
「そうだったのか・・・」
「この世界が嫌いっていうわけではないんです。ただ、仲間のことも気になるし」
「気持ちはわかるよ」
「お願いです、先生。「ご主人様」には悪いけど、やっぱり俺・・・」
「・・・わかった。『ガンダールヴ』を手放すのは非常に惜しいが私も全力を尽くそう。
しかし、君が元の世界に戻ったらミス・ヴァリエールとの契約はどうなるのか・・・」
コルベールが難しい顔をして沈思黙考しているところにオスマン院長がやってきた。
「楽しんでおるかの?フリオニール君」
「やっと憶えてくれましたね」
「ほっほっほっ」
「ところで院長。なんであの杖に『破壊の杖』という名前を付けたんですか?」
「ああ、あれを使うのはギャンブルなのじゃよ。標的を仕留めることもあれば己を仕留める
こともあり。度を過ぎたギャンブルは身を滅ぼす、じゃ」
「だったら『破滅の杖』でもよかったんじゃ・・・」
「それも良い名前じゃのぅ・・・まぁ、そんなこと気にせんでパーティを楽しんでくれたまえ」
オスマン院長はニッコリと微笑むとその場を立ち去った。
そして、パーティも佳境に入りダンスタイムの時間がやってきた。生徒達は男女一組と
なるべくパートナー選びを始めた。
キュルケは引く手数多でどれにしようかな、をやっている。フリオニールの元へ行かないのは、
誘いたい気持ちは当然あるが何故か心に躊躇いが生じてしまった。先程、フリオニールと
コルベールが真剣に話をしていたのを目撃した時、フリオニール帰還の件が頭によぎって
しまったからだろうか。
タバサは人目もくれず食事をしている。かなりの大食いだ。ちなみに彼女に言い寄ってくる
男子生徒はいない。
なぜなら、屈指の実力を持つメイジである上性格も無愛想な為、学院内でアンタッチャブルな
存在となっているからだ。入学当初相次ぐ決闘で相手を病院送りにした前科もある。
そして、「ご主人様」はフーケ討伐の立役者でありこのパーティの主役の為、多くの男子生徒から
ダンスのお誘いを受けていたが全て断っていた。
普段の『ゼロ』と蔑まれている状況から一転、『シュヴァリエ』候補となり周囲からちやほや
される様になり嬉しくないはずがない。
しかし、ルイズはさり気ない態度を取りつつ、ちらりと使い魔のいる方向を見ると、
何と給仕のメイドと楽しそうにおしゃべりをしている!シエスタという名前らしい。仲間に
して・・・あげるわけにはいかない!ルイズはつかつかと二人の元へ歩み寄る。
「こ、これはミス・ヴァリエール。この度のご活躍、おめでとうございます」
「あ、ありがとう」
「「ご主人様」は踊らないんですか?」
「・・・相手がいないのよ」
「では、私はこれで・・・」
シエスタはルイズに会釈をし、寂しそうな目をフリオニールに向けて軽く手を振った。
その時、ルイズはシエスタのシャツの袖に付けられたボタンを見逃さなかった。
「あら、綺麗なボタンですこと」
「はい。フリオニールさんからいただきました」
頬を赤らめるシエスタ。そして、ルイズを見つめるシエスタの目は心なしか勝ち誇って
いるように思われる。
「そうですよ。「ご主人様」にあげたのと一緒。4個一組1000ぎる。高いのか安いのか
よくわからないけど」
「ちょっとこっちに来なさい」
ルイズは強引にフリオニールの腕を掴み、引っ張るようにしてホールを出て1階へ降り、
周囲に誰もいないことを確認すると
「な、ななな何であのボタンをあ、ああああの娘も持っているのよ!」
「だって、色々お世話になってるから」
「わ、わわわわたしは、あ、ああああんたの何!?」
「「ご主人様」でしょ?」
「そ、そのご主人様に贈るプレゼントと、メ、メイドに贈るお礼をい、いいい一緒にする
とはどういうことよ!」
二人の様子がおかしいと後を追ってきたシエスタが涙ぐみながら
「あ、あの。私、何かいけないことでも・・・」
「シエスタは何も悪くないよ」
「悪いのはあんたでしょ!」
ルイズはハイヒールのかかとでフリオニールの足の甲を思いっきり踏んだ。
「ぎゃーーーー」
激痛に思わず飛び跳ねるフリオニール。
「あんたなんかもう知らないんだから!元の世界でもどこでもとっとと行ってしまえば
いいんだわ!クビよ!クビ!」
ルイズは激昂してそう言い残すと肩を怒らせ去っていった。2階へ戻る気はないらしい。
「痛ててて。なんだよ、本当ヒステリーだなぁ」
「すみません。私、どうしたら・・・うっうっ」
「いいんだよ。気にしなくていいんだよ。君は悪くない」
夜回り先生ばりの口調で小さく泣くシエスタを慰めるフリオニール。
「とにかく落ち着いたら仕事に戻りなよ。この埋め合わせはまた今度するからさ」
「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」
潤んだ瞳でフリオニールを見つめるシエスタ。涙を手で拭いペコリとお辞儀をすると
2階へ戻っていった。
(とりあえず「ご主人様」に謝っておかなきゃなぁ)
フリオニールは痛む足の甲を引きずるように重い足取りでルイズの部屋へ向かった。
一方、ルイズは自室に戻るとドサッとベッドの上で仰向けになって悶々とする気持ちと
格闘していた。
(わたし、なんでこんなに怒っているんだろう・・・)
自身の使い魔は普段の感謝の気持ちを込めてあのボタンをプレゼントしたのだ。他にお礼
したい人物がいたとしても別段おかしいことではない(キュルケは除く)。
貴族への贈り物と平民への贈り物が一緒だったから?
しかし、フリオニールは別の世界の人間だ。主従の関係を理解し、敬語での会話を守り
(たまに崩れるが)よく仕えてくれている中でそこまで求めるのは酷というものだろう。
恐らく充分な金も持ってはいない。
では、何故、あの時あんなに激昂してしまったのだろうか?
ルイズは答えが出ずに脚をじたばたさせていると、ドアをノックする音が聞こえた。
ルイズの部屋の前に着いたフリオニール。案の定、ドアの前にはデルフリンガーとアイスシールドが
無造作に置かれている。
床に乱雑に置かれた際に鞘から少し出たデルフリンガーが不安げな声で話しかける。
「ど、どうしたんだ相棒!?貴族の娘っ子がいきなり部屋から俺っちを追い出したぞ」
「ごめんな、デルフ。俺、クビになっちゃたよ」
「なんだってー!」
「とりあえず説得するからしばらく納まっててくれ、デルフ」
「って、お、おい!」
フリオニールは丁重にデルフを鞘に納め(出番が少なくてすまん、デルフ!)ドアをノックした。
(あいつだわ!)
「「ご主人様」いますか?いるなら聞いて下さい」
(絶対にドアを開けてやるもんですか!)
「俺が軽い気持ちでプレゼントしてしまったことは不注意でした(君にあげたことが)」
(・・・・・・)
「けど、「ご主人様」にもシエスタにもお世話になっているから感謝の気持ちを表したかったんだ」
(そんなことわかってるわよ!)
「なんて言っていいかうまく言えないけど、俺、この世界にいるかぎり「ご主人様」の
護衛はちゃんと果たすつもりです」
(何よ、クビを取り消せっていうの?)
「でも、「ご主人様」勇気あるし、魔法使えるから俺なんかいなくていいのかも」
(どっちやねん!)
「あ、「ご主人様」結構無茶するからなぁ。あのバカでかい土くれ相手に逃げなかったし」
(今度はバカにするっていうの!?)
「でも、「ご主人様」が逃げることを許さなかったからフーケを追い詰めることができたし。
フーケを捕らえることができたのは「ご主人様」様様ですね」
(ここでヨイショ!?)
「だから、その〜・・・」
(もう、しようがないんだから!)
数秒後、ドアがゆっくりと開いた。ルイズの頬には若干赤みがかかっている。
「ま、まぁ、今回は特別よ。今度から「ご主人様」にはちゃんと気を使いなさい」
「・・・わかりました。「ご主人様」」
舞踏会で奏でるメロディがかすかに聞こえてくる。曲は山場を迎えたようだ。
フリオニールは膝をつきルイズの右手をとると
「俺でよければダンスのお相手をさせて下さい。「ご主人様」」
「今から戻っても終わってしまうけど・・・仕方がないわね。さぁ、部屋に入りなさい」
デルフリンガーとアイスシールドを放置したまま部屋へ入る二人。
部屋の中は照明が点いていなかったが、窓から差し込む淡い月光が二人の姿を薄っすらと照らす。
ほの暗い部屋の中で曲に合わせゆったりとダンスを愉しむルイズとフリオニールであった。
フリオニールの第13話は以上です。
失礼しました。
>>276 さすがに魔王が頭一つ抜けてるんじゃね?
とても強い敵と戦う場合、ノリと勢いで何とかしてしまうのがスプリガン
もっと強い力で叩き潰すのがARMS
フリオ乙です
むう…童貞コンビ…
どうでも良いがアジア系コーカソイドってなんだ?
“とある木術の彫刻鬼”の人を呼んだら、中当たりくらいかなぁ。
>290
“黄色い猿”の婉曲的表現。
いや、コーカソイドって白人だぞ?
>>292 "名誉白人"っていう言い回しかな?>アジア系コーカソイド
アジア系コーカソイドなんて言葉はググってもでてこないな…
少なくとも日本人がコーカソイドでないのは確かだが…
単純になにかの勘違いかな?
>>281 >この人ら強いだけじゃなくちゃんと年長者として主人公を導いてるのが好きだな
>大人がちゃんとしてるマンガやアニメが減ったからなあ
ここ最近だと、キングダムの王騎将軍くらいな気がするわ。もう死んじゃったけど。
この最期をもって、主人公を導く年長者としての最後の仕事とする。
みたいなのが多い、気がする。気がする。
299 :
3210:2010/12/10(金) 23:01:22 ID:H7HqvqZh
携帯から。
すんません間違いでございます!モンゴロイドでした!あちゃーやっちゃった…
>>299 罰としてコウ・カルナギとスティンガーのケンカを止める刑に処す
>>301 ぬうう、ならばヴォルフかヘウンリー・バレスに好かれる刑に減刑
薄暗い部屋でコウ・カルナギと源双烈を見分けることが出来たら無罪
失敗すると二人からワンパン
ヴォルフならまだ…
キース・ホワイトはハルケギニアに馴染むかも、キメラドラゴン作ったり、魔法アカデミーで人体実験繰り返したり
メンヌヴィルや元素兄弟をしもべにして、新たなエグリゴリで究極の進化を目指す
ヴォルフに好かれると言えば昨日キュルケ・ヴォルフ同盟成立の話?まで書いちゃいました
半日経っててフリオさんも挟んでるし投下してもいいでしょうか?
むしろ書きすぎちゃってる状況でして…冗長なのがいけないんですけど
よし。じゃあ斑鳩悟と一緒にT-38でアクロバット機動を体験するってのはどうだ
>>306 そんなキツイのじゃ可哀想だ、愛車にオウルを乗っけて近所を一回りでいいよ
スカロンとヴォルフと一緒のベットで一晩過ごすぐらいにしてやれよ
アリスの研究所の実験体に・・・・いやむしろご褒美か
なんだか物騒なことになっているのでヒロミにルビーの力で殴られてくる おやすみ
誰か秋せつらかガレーン・ヌーレンブルグで書いてくれる猛者は居らんか
トンブでもいいよ!
イコノクラストの大闘技都市を生き延びたら無罪でいいぜ
そういや型月のキャラが召喚されたことってあったっけ?
禁忌なのだよ
パタリロのバンコランはギーシュを毒牙にかけるだろうか
その前にあの現実主義者(というより教科書主義者)が魔法をどう受け止めるのか気になる
>>298 フルメタのカリーニンの最期はまさにそんな感じだなぁ。
そういえば、宗介は喚ばれた事あるけどカリーニンはまだ喚ばれてないよな。
>>318 ファントムの超能力だけは受け入れたけどね。
dies iraeの召喚ネタって未出?
なろうに幾つか在ったような
現実主義……超能力者……とある科学の超電磁砲!
…あれって、現実主義の超能力者はいなかったな。
こんばんは。
進路クリアなら16:20ごろより42話(かこへんそのご)を投下します。
それではいきます。
トリステイン王国の王都トリスタニアにある王城の西の塔は、特別な
理由で監禁されることになった王族や貴族のための座敷牢になっている。
座敷牢、といっても下手な貴族向けの宿の部屋よりも広く、ベッドや
机も用意されている。違いは窓に鉄格子がはめ込まれ、扉が分厚い鉄で
あることくらい。貴人を監禁するため、囚人の牢獄とは雲泥の差なのだ。
そこに、ガリアから件の鉄の竜の情報を持ち帰った商人が収監されていた。
最初こそ大声で叫んでいたものの、やがて諦めたのかおとなしくなり、
今では食事を運ぶ衛士と一言二言言葉を交わすくらい。それすらも、
今日はなかった。最近髪の毛が抜け、体に紅斑が浮き出し、嘔吐と下痢を
しているようなので、精神的な重圧があるのだろうと、衛士たちは
思っていた。実際、報告をして『水』メイジに診察してもらったが、
魔法で治るようなものではないとの見立てだった。
「……かわいそうにな。せっかくの大金も、牢の中じゃ使い道がないぜ」
大きな矛斧(ハルバード)を担いだ衛士が肩をすくめる。彼は牢の中の
男に同情していた。
「仕方ないさ。これが街に広まったらパニックが起きる。運がなかったのさ」
相方の衛士が言う。そこに、食事を載せたトレイを持った衛士がやってくる。
「おい、食事だ」
矛斧を持つ衛士が扉を開け、食事を持ってきた衛士が中に入ろうとする。
そこで、衛士が驚きの声を上げた。
「どうした?」
「し、死んでる……」
その言葉に、衛士たちが座敷牢に入る。そこには、吐血し、体中に
紅斑を浮かべて息絶えた、哀れな男がいた。そして数日のうちに、同様に
監禁していた商隊の人間も、次々と原因不明の死を遂げるのだった――
カリンから話を聞いた翌朝、武雄とあかぎは複座零戦で写真偵察に
出動した。
ちなみに『竜の羽衣』と呼ばれている機体を動かすときには、ある程度
村が離れるまで速度を出さないように擬装している。魔法衛士隊に、
ひいてはハルケギニアの人間に、これらが危険視されないようにするためだ。
事実、アカデミーの研究員が検分に訪れたこともあったが、外見だけ見て
帰ってしまっている。機関砲などをじっくりと調べられれば問題があったのだが、
武雄はここに来てから一度も発射していないし、ハルケギニアの銃とは
形が違いすぎるためか、それが問題視されることがなかったのは幸運だった。
「……いきなりどうしたんだ?あかぎ」
操縦桿を握る武雄が、後席のあかぎに問いかける。複座零戦の狭い
操縦席に座るためにあかぎは両腕の飛行甲板と両脚の艦体部を外して
いるので、見た目はほとんど普通の人間だ。
「嫌な予感がするのよ。
武雄さん、先に言っておきますけど、会敵しても距離を取って下さいね」
「ああ。分かってる。敵の正体も分からないのに突っ込むようなバカな
マネはしねえよ」
あかぎは武雄に影響が出ない出力で索敵を行っている。そのため索敵
範囲がかなり制限されているが、昨日カリンから聞いた情報を元にガリア
国境のクロステルマン伯爵領からアルデンの森を目指していた。
その途中、あかぎの電探が複数の中型のフネと複数の風竜の反応を捉えた。
おそらく、国境に展開する途中のトリステイン艦隊だろう。見つかると
面倒なので高度を上げてやり過ごそうとした二人の前に、一騎の風竜に
騎乗した竜騎士が現れる。
「タケオか!?どこに行くんだ!?」
竜騎士は風の魔法を使って複座零戦に話しかける。巡航速度なので
優れた風竜なら多少無理させればついて行ける。とはいえ、それは複座零戦の
速度を知っていればの話。それができる竜騎士は、武雄たちには一人しか
心当たりがなかった。
「あら?ギンヌメール伯爵閣下?ということは、第二竜騎士大隊がこっちに
来てるのね」
「おお、あかぎ殿ではないか!ご無沙汰している。あなたたちがここに
いるということは、やはりあの鉄の竜か?」
風防を開けて話しかけるあかぎに、ギンヌメール伯爵は嬉しそうに言う。
その言葉に、あかぎと武雄は頷いて見せた。
ギンヌメール伯爵は、タルブの村を含むトリステイン北西空域の警護を
担当している第二竜騎士大隊をまとめる若き竜騎士だ。先代の大隊長が
引退したため、家督を継いだばかりの彼が三つの竜騎士中隊を束ねる
この部隊を指揮していた。
武雄が彼と出会ったのは、半年ほど前のことだ。勘が鈍らないように、
ルーリーがガソリンを生成してから定期的に複座零戦を飛ばしていたのだが、
そのときになるべく誰にも見られないようにあかぎが電探管制を行っていた。
スクランブルされないようにトリステインの陸軍部隊や空軍基地に近づかないのは
当然として、警邏中の竜騎士やピケット艦にも見つからないようにするため、
高度を上げて雲に隠れるなどしていた。
しかし、奇妙な飛行物体がその空域に現れる、との噂を着任直後に
耳にした若き伯爵は、あかぎが竜騎士やフネなどを避けていることに気づき、
地上から複座零戦を確認した。それがタルブの村にある奇妙なもの、
『竜の羽衣』であると知った伯爵は、それを誰にも告げず、奇人と噂されても
意に介さず連日観察を行い、ある日ついに行動に出た。帰投途中の複座零戦を
地上から捉えるや騎竜をむち打って追いつき、無理矢理平原に着陸させた上で
武雄に模擬空戦を挑んだのだ。
武雄は最初は渋ったが、伯爵に何度も頼み込まれてやむなくそれを受けた。
翌日、約束した場所で模擬空戦は行われ――結果は武雄の十戦全勝。
倍以上の速度差と機動性に翻弄された伯爵は、ルールであった
『後ろに三秒付かれたら負け』という条件で撃墜判定を喰らい続けた。
空母に着艦するため低速にも対応できる艦上戦闘機とはいえ失速寸前の
速度で撃墜判定を下すことは武雄にも厳しい条件だったが、この日から
伯爵と武雄たちの交流が始まったのである。
複座零戦が高度を上げて飛び去ってから、ようやく第二竜騎士大隊の
竜騎士たちが伯爵に追いついた。
「大隊長どの!今のは……?」
「東方の騎士、サムライだ」
「は?」
「我らの味方だ」
ギンヌメール伯爵はそう言うと、再び艦隊護衛に戻っていく。
竜騎士たちは納得のいかない顔を浮かべたが、すぐに大隊長の後を
追いかけた。
ギンヌメール伯爵と別れてから、武雄はあかぎの誘導で国境を越え、
ガリア領内に入る。すでに『黒い森』――アルデンの森に達するまでもなく、
件の鉄の竜はこっちに向かっているようだった。
「……あれか」
「この反応……武雄さん、あれに近づきすぎないで!被曝するわ!」
「何だって!?」
遠く地上に豆粒のように見える鉄の竜。上空から確認できるだけでも、
大型の肉食恐竜のようだ。だが、あかぎはそこに決して少なくない放射線
反応を感じ取っていた。
あかぎは風防を開け、両目に内蔵された光学測距儀で鉄の竜を見る。
戦艦型鋼の乙女であるやまとほどではないが、あかぎの測距儀は鮮明に
その姿を捉えていた。
「あれは……まさか……」
あかぎは信じられないものを見たような顔をする。九九式極小航空
写真機を取り出して撮影を開始するあかぎ。本当ならばもっと近づきたいが、
フィルムが感光して使い物にならなくなっては元も子もない。
たった十二枚しかないフィルムを、あかぎは惜しげもなく使った。
「武雄さん。もう少し近づいて。風防は絶対に開けないで!ガンマ線は
どうしようもないけど、せめてそれ以外の被曝はさせたくないから!」
「わ、分かった」
ガンマ線、つまりレントゲン線が放出されているのか?――武雄は、
詳しくは分からないがあかぎの様子がただことではないことに身を引き締める。
あかぎが風防を閉めるのと同時に高度を落とし、距離一万まで近づいた
ところで反転、上昇。その間にあかぎは残りのフィルムで風防の強化アクリル
ガラス越しに写真を撮る。除染しなければならない事態は可能な限り
避けなければならないし、武雄は甲状腺保護のヨウ素錠剤を服用していない。
上昇しながら、あかぎは無線機を取った。
「こちら海軍の鋼の乙女、あかぎです。聞こえますか?返事をして下さい!」
返事はない。あかぎは帝国陸軍のチャンネルを使ったが、応答がなかった。
あかぎがいなくなってから変更された可能性が高い。それからチャンネルを
いくつか変えたが、どれも同じだった。
「どうした?アレ、まさか」
あかぎの様子に、武雄も何かを感じ取ったようだ。だが、あかぎは
それに応えなかった。
「……あれが国境線に到達するまでもう数日はあるかしら。ガリア王国の
守備隊が出てくる前に、戻りましょう」
「あ、ああ。分かった」
武雄は機首をクロステルマン伯爵領に向ける。雲の上を抜け、
トリステイン艦隊との接触は避けたが、あかぎはタルブに着陸するまで
無言だった。
タルブに戻った直後、滑走路は大騒ぎになった。あかぎが除染のために
消火ポンプで複座零戦を水洗いするように指示し、武雄の汚染濃度が
基準値以下だと言うことを確認した後、自分自身は複座零戦と同じく流水に
身を任せる。本来なら九九式極小航空写真機も同様にするべきだが、
これは水濡れ厳禁。あかぎが汚染濃度を調べて許容範囲であることを
確認すると、念の為誰にも触らないようにきつく言い聞かせた。
「いったい何があった?」
武内少将がタオルを渡しながら水のしたたるあかぎに尋ねる。あかぎは、
まっすぐ武内少将を見る。
「武内少将、教えて下さい。陸軍は……原子力兵器の研究を最後まで
諦めなかったんですか?海軍は日米開戦前に放棄したのに?」
「何じゃと?!何を言っておる?」
「……詳しくは現像が終わってからお話しします。写っていればいいん
ですけど」
あかぎはそう言って、航空写真機を手に『イェンタイ』こと掩体壕の
管理室にこもった。
管理室はミジュアメ製造所に設置した水力発電機(あかぎとルーリーの
労作だ。もちろん、身内以外には絶対の秘密である)からの電力を管理し、
防爆扉の開閉とランプ職人に特注したエジソン式電球を並べた天井照明を
管理するための配電盤と制御盤、それに緊急時と擬装用の足こぎ式人力
発電機が設置されているところだ。掩体壕にいざというときの避難
シェルターとしての性格も持たせたため、ここには堀から引いた水道の
簡易的な蛇口も付いている。
そこに昨夜のうちに簡易的な暗室にするための暗幕やカバー付きランプなどを
用意してあった。お湯を沸かして水蒸気に埃を吸着させ、それから航空
写真機からフィルムカートリッジを外してフィルムを現像し、乾燥させる。
『固定化』がかけられていた薬液に問題はなかったものの、水洗は水温と
水量の関係で桶につけ置きする置換水洗な上に乾燥にも一晩かかる大変な
作業だ。このため、乾燥に入るとあかぎは掩体壕を出て家族や武内少将たちと
食事を取ったが、鉄の竜については一言も話さなかった。
乾燥が終わってネガができれば次は引き伸ばし。九九式極小航空写真機は
6x6のブローニー版のため、最低でも三倍の拡大は必須。配電盤に繋いだ
引伸機はあかぎの手持ち。設備のない辺境の基地でも他の鋼の乙女たちを
撮すために、ペンフレンドのルーデルにドイツから送ってもらっていつも
携行していた愛用のライカ製引伸機だ。だが引伸機は光源に電気が絶対必要。
だからあかぎはここで作業することにしたのだ。
「こんなことならコンセントつけておけば良かったわね。こっちじゃ
難しいけど」
あかぎは小さく溜息をつく。機材が乏しい中では写真のプリントには
時間がかかる。露光、現像、停止、定着、水洗、乾燥……そしてベタ焼き。
全部が終わった頃には、さらにもう一度夜が明けていた。
>>321 こっちでは未出、かな?
あれの聖遺物も人を殺せば殺すほどパワーが上がるという設定があったはずだし、
アルビオンの7万対1をやったら結構良い線行くかなあ。
ただ適用されるのがガンダなのかミョズなのかがいまいちはっきりせんけど。
扱いとしてはマジックアイテムだろうからミョズなんだろうか。
マジックアイテムの剣(デルフ等)がガンダ適用されるからどっちでも問題はなさげかな。
疲れた表情のあかぎが現像の終わった写真を持って、武雄たちを食堂に
集める。テーブルの上に広げられた写真を見て、思わず武雄はうなった。
「……こりゃあ……」
十キロ以上離れて撮影されたものを引き伸ばした写真だが、『固定化』で
三十年保存されたフィルムや薬液、印画紙を使ったとは思えないほど
はっきりと写っている。
そこに写っていたのは、大型の肉食恐竜、ティラノサウルスにも似た
恐竜の姿だった。しかし、頭部の擬装用皮膚がこれまでの攻撃で一部
はがれ落ち、本来の金属外皮が写っている。
写真を見た武内少将は頭を抱えた。
「……何ということじゃ。陸軍め。開発に行き詰まり、とうに諦めたと
思っておったのに」
「少将、これは、いったい何なんですか?陸軍とは?」
加藤中佐が尋ねる。その質問に、武内少将はゆっくりと答えた。
「昭和十四年のノモンハン事件で、陸軍がソ連の戦車に大苦戦したことは
知っておるな?我が軍の中戦車が、ソ連の軽戦車どころか装甲車にまで
苦汁をなめたあの事件を。
その翌年、とある陸軍大佐が勝手に出した極秘命令による新型重戦車の
開発が始まった。陸軍省の人間の言うことに、技術本部も嫌とは言えんかったの
じゃろうな。
だが、個人の思いつきで決定した代物じゃ。当然使い物になるわけもない。
試験走行で自壊して放置されたのじゃが、陸軍は単機で敵勢力を一掃できる
陸上戦艦の開発を諦めてはおらんかった」
武内少将の言葉を、あかぎが引き継ぐ。あかぎも海軍では聯合艦隊
司令長官の副官で、将官待遇。鋼の乙女開発の情報など、佐官でも
知り得ない極秘情報に触れる権限があった。
「それが、陸軍第四技術本部が開発した試製二脚歩行型超重戦車、
通称『キョウリュウ』。
私が知っているだけでも最大装甲厚200ミリ、ソ連機甲師団との戦闘を
想定して、満州での運用しか考えていなかったみたい。だけど、過重な
自重に機動力を両立させるための駆動部と機関部の開発に、陸軍は苦心
していたわ」
「そうじゃな。そればかりか陸軍はガダルカナルを失ってからは鉄人計画や
超人機計画などという、荒唐無稽な超兵器の開発を始めおった。
特攻兵器を生み出した海軍が言える立場ではないがな。
じゃが、それでもどちらも完全に無茶とはいえんかった。鉄人計画は
頓挫した『キョウリュウ』の開発の延長、超人機計画はあかぎ君を見てから
ようやく着手したチハ君を端緒とする陸軍の鋼の乙女の延長じゃ。
どれも動力で苦心しておったと聞いたが、なるほど、帰還したばかりの
あかぎ君の言葉の意味が分かった」
「あかぎが言った、レントゲン線が関係していると?」
「ガンマ線よ、武雄さん。似てるけど、ちょっと違うわね。
私のような鋼の乙女の動力として、海軍は私を創った後で新しい動力の
開発に着手したわ。重油や食糧を補給する必要がある内燃機関よりも
長期の活動を可能にするために。それがF研究。荒勝教授を中心にして、
彼の元で若い科学者たちが新しい動力の開発を行ったの。同じことを
少し遅れて陸軍も仁科博士を中心にニ号研究ってかたちで開始することに
なるわ。どちらも研究したものは同じ無限の動力――原子力機関の研究。
いえ、陸軍の場合は最初から原子爆弾開発が主目的だったわね」
鋼の乙女に原子力機関を搭載することは、各国がしのぎを削る最新の
研究課題であった。しかし、それが実用化されるには大戦終結から十数年
経過したアメリカの攻撃空母型鋼の乙女、そしてソ連の戦略潜水艦型
鋼の乙女を待たなければならない。そこに白田技術大尉が疑問を呈する。
「ちょっと待って下さい。F研究の噂は聞いたことがありますが……
始まったのは開戦直前で、基礎段階の域を出ないと聞いていました。
そうではなかった、ということですか?」
その言葉を、あかぎは肯定した。
「ええ。最初こそ原子力機関だけだったけど、途中から原子爆弾、原子力
光線砲などの兵器も研究、開発していたわ。
だけど、ある日台湾にあった研究所で作業手順を守らなかった作業員が
小規模の臨界事故を起こしたの。被害は小さかったけれど、海軍は機密として
周辺住民に避難勧告も出さなかった。それが間違いだったって気づいたのは、
事故を起こした作業員が急死したとき。海軍病院どころが移送した東京
帝大病院でも手の施しようがなくって、原因が分かったのはぼろぼろに
なった遺体を解剖してから。それでどうやれば救えたかもしれないって
分かったけど、遅すぎたの。
その事故があってから、F研究を支えている海軍上層部では意見が
真っ二つに分かれたわ。兵器開発の続行を推進する派閥と、鋼の乙女の
新型機関のみに研究を限定する派閥――最終的に兵器開発は中断されて、
完成していた原子力機関と原子力光線砲は、ちょうどトルステイン公国から
依頼があった不沈艦計画に流用されてしまったの。身勝手なことだけどね」
同盟国トルステイン公国から主力艦建造依頼があったのは、条約時代の
『海軍休日』のさなか。そのときに帝国海軍は長門型を拡大した超弩級
戦艦ビフレストを建造したが、同時に、トルステイン公国は秘密裏に
その姉妹艦の建造も依頼していた。
それが四〇サンチ砲十二門を搭載したビフレストを上回る不沈艦――
四六サンチ砲八門と原子力動力、さらに殺人光線まで備えた超弩級戦艦
ヨツンヘイムである。八八艦隊計画と大和型を繋ぐミッシングリンクとも
いえる戦艦だが、ヨツンヘイムは回航中に行方不明になり、トルステイン
公国海軍がその手にすることはなかった。ヨツンヘイムがどうなったのか……
それは公式記録にはその名とともに一切残されていない。
「じゃが、後にF研究での原爆開発は再開された。詳しいことは知らんが、
難航しておったようじゃがの。考えられる理由としては空白の期間に
資料が破棄され、陸軍が科学者を徴兵したことか……バカなことをする。
白田技術大尉が知っておるのは、そのあたりのことじゃな」
新型爆撃機の開発に顧問として携わっていた武内少将は、原爆を搭載する
爆撃機の視点からF研究の機密に触れていた。原爆が完成しても肝心の
搭載する爆撃機がない、では話にならないためだ。
「ということは、我が軍がペーネミュンデで開発していたという
ハウニブのようなものか。
もっとも、こちらは与太話程度にしか信じられていなかったが」
「だが、どうしてそんなものがこっちに?それに重戦車だというなら、
中に人間が乗っているはずでは?」
話を聞いてブリゥショウ中将が小さく溜息をつき、桃山飛曹長が
あかぎに尋ねた。あかぎは小さく首を振る。
「呼びかけてみたけど、返事はなかったわ。陸軍のチャンネルが変えられたのか、
それとも無視されたのか……。攻撃の影響か、それとも以前からなのか、
放射能漏れが発生しているから中の人間も非常に危険なはずよ」
「要するに、海軍と同じところまで陸軍が到達して実用段階に達した
決戦兵器が何らかの事情でこっちに召喚された、ってことか。
くそっ。ならこいつは俺たちで片付けないと洒落にならねえ。
あかぎ、何とかなるか?」
武雄が苦渋の表情でテーブルを叩く。全員の視線が、あかぎに集まった。
あかぎは小さく溜息をつくと、肩をすくめる。
「お手上げ、と言いたいところだけど、そうは言っていられないわね。
基本設計に変更がなければ、『キョウリュウ』は機甲師団撃滅を想定
しているはずだから、航空攻撃に弱いはずよ。当時の設計図は私が記憶
しているから後で概要を書くわね。
それでもそれなりの装甲はあるでしょうし、主兵装の火炎放射器が
どの程度の威力なのか未知数よ。もしかすると原子力光線砲に換装されて
いるかもしれないし。
でも、やっかいなのは放射能漏れ。あまり近づくと被曝してしまうから、
攻撃はできる限り肉薄せず短時間で。おまけに撃破したときがもっと問題ね。
こう言っちゃ悪いけど、トリステイン側が風下の時には撃破したくないわね」
「やれるアルか?」
燕の顔には不安がありありと見て取れる。中華民国の原子力開発は
大日本帝国やドイツ第三帝国、アメリカ合衆国などの先進国に大きく
後れを取っているどころではなく、ほとんど始まってもいないのが現状だ。
ガンマ線の影響は全く理解できていないという方が正しい。そのあかぎに
しても、いやあかぎだけではなく当時の原子力関係者たち全員に言えるが、
後にガンマ線よりも影響があることが分かる中性子被曝の危険性については
後世ほど理解されていなかった。
「やらなきゃダメなのよ。私たちの国の兵器なんだから、私たちの責任で。
でも、燕ちゃんたちは参加しちゃダメよ」
「ど、どうしてアルか!?私たちだけのけ者アルか?」
そう言ってあかぎに詰め寄る燕。その頬に、あかぎは優しく手を添えた。
「あなたは、元の世界に帰るんでしょう?もうじき日食が起こるわ。
そのときに動けなかったら、たぶん、いいえ、絶対後悔するわ」
「そうだ。その日食は明日起こる。昼には『門』が出現するはずさ」
入り口の方からその声は聞こえた。見ると、そこには節くれ立った
杖を持ち淡い紺色のローブを着た、中年の女――ルーリーがいた。
「ノックはしたがね。聞いてみれば相当やっかいな事態みたいじゃないか。
アタシにゃ関係ない……と言いたいところだが、そういうわけには
いかないだろうね」
「ルリちゃん……」
「国境にはもうトリステインの国王陛下も向かったそうだ。
それに、アルビオンからの援軍も。新鋭巡洋艦を三隻も送ってくるとは、
剛毅なことだね。
と、忘れるところだった。魔法衛士隊の隊長殿も、まもなく出立するって
ことだ。言っておくことがあるんじゃないかい?」
ルーリーはあかぎに意味深な笑みを向ける。あかぎは立ち上がると、
写真を手に外に駆け出した。
「ふざけるな!」
あかぎの言葉を聞いたカリンの第一声はそれだった。カリンは魔法衛士隊
マンティコア隊隊長の正装に、顔の下半分を覆う仮面をつけている。
それは威厳を持たせるためだとあかぎは聞いていた。
あかぎは放射能と核動力が暴走した場合の危険性を説明したつもり
だったが、カリンには理解してもらえなかった。
「お前が二日前に『竜の羽衣』で飛び立ってからその絵を描きに行ったと
いうのは分かった。宮廷画家にもそれだけ描ける者はいない素晴らしい
腕前だ。それは認める。
しかし、ぼくに行くなとはいったいどういう了見だ!?」
「あれは、『キョウリュウ』は危険なの。できれば誰も近づかないで、
遠距離からの艦砲射撃で仕留めるとか……」
「ぼくたち魔法衛士隊は王国の杖だ。敵が目の前にいるのに近づくな?
ふざけるのもいいかげんにしろ。
……まったく。呼び止めるから何事かと思えば。時間の無駄だ。
全騎騎乗!」
カリンは麾下のマンティコア隊分隊に出発を命じる。
本来ならここの警護を任されていた分隊だが、今は危急の時。
マンティコア隊はクロステルマン伯爵領に集結するべく命令が下っていた。
あかぎの言葉は、もうカリンには届かなかった。
空に舞い上がってから、カリンが騎乗するマンティコアが言葉を発する。
老齢のマンティコアは人語を解し、話すこともできるのだ。
「……いいのかえ?あの『乙女の器』の話、我は心にとめておくべきだと
思うがね」
「お前はいつも意味深なことを言うな、アテナイス。それでいて、ぼくに
その真意を話さない」
カリンの言葉に、老齢のマンティコア、アテナイスはフォフォと笑った。
「おぬしこそ偽りの衣をまとっておるではないか。しかし、目に見えず、
においもない『毒』とはの。その毒に侵された地は今後七十年草木も
生えぬと言ったかえ?面白いことよの」
アテナイスは本来のカリンの騎獣ではない。カリンの騎獣であるジョエは、
先日不調を訴えて現在王都で療養中。そのため、マンティコア隊の魔獣の
中でも特定の主を持たないアテナイスに隊長権限で騎乗していた。
「荒唐無稽だ。そんな話、聞いたこともない。単なる妄言だ」
カリンはそう切って捨てる。そのカリンを先頭にした編隊は一糸乱れぬ
隊形で南東を目指した――
カリンが飛び去ってから、立ち尽くすあかぎに武雄が声をかけた。
「……聞いてくれなかった、か」
あかぎは振り返らぬまま小さく頷いた。
「それでもやるしかねえ。だが、あの隊長さんが聞いてくれなかったのは
ちいと痛いな」
「それならアタシを本陣に連れて行け。国王陛下を説得する人間が必要
だろう?」
「ルリちゃん……」
あかぎが振り返ると、そこには、武雄だけでなく、ルーリーや武内少将たちが
立っていた。
「アタシとタケオが先行する。本当はお前が行くのが一番だが、お前は
全体の指揮を執らないとダメだ。近くの湖からでもあの辺一帯を見渡せるだろ?」
「そうじゃな。あかぎ君はワシらの連山で運ぼう。どうせ連山には爆弾は
積んどらん。ニューギニアの陸軍部隊に補給物資を投下した後、ラバウルに
向かう途中だったからの」
貴様らにあれを見せるためにな――武内少将の言葉に、武雄が頬をかく。
武雄はラバウル司令時代の武内少将と参謀だった加藤中佐の部下だった
ことがある。それを言われたためだ。
「私の『グスタフ』も爆弾は搭載していない。ベルリンに侵入したソ連
機甲部隊に攻撃した後、敵戦爆連合と交戦したからな」
だが、何の問題もない――ブリゥショウ中将はそう言って笑みを浮かべる。
「機関砲の威力なら、私の震電の30ミリが一番ですね。あの目標なら、
私でも外しはしませんよ」
そう言って、白田技術大尉は「空戦は得意じゃないんですけれどね」と
苦笑いする。
「私たちもお供するよ。あかぎ大姐の恩に報いる絶好の機会だからね」
「ダ、ダメよあなたたちは」
「可可の言うとおり。中国人は恩知らずだ、なんて思われたら心外……
って、ここじゃ日本も中国も関係なかったか。でも、ここにいる子供たちを
守るためにも、ほっとけないよ」
裴綻英と霍可可が拳を突き出し意気を見せる。その様子に、あかぎも
決意を固めた。
「……そうね。だけど、みんな、無理だけはしないでね」
あかぎの言葉に、全員が頷いてみせる。
――こうして。決して歴史に残ることのない彼らの戦いは幕を開けたのだった……
以上です。ルータ再起動したのでID変わってます。
避難所の代理スレにも書きましたが、時間でさるさん解除されたので
こっちに書き直します。
鉄の竜の正体は大戦略つながりでサターンの名作から大日本帝国陸軍の
レイテ島防衛決戦兵器を召喚しました。
核動力なのは戦闘アニメーションと、元ネタの怪獣からです。
あかぎが色々物知りなのはゲーム中でもあかぎの後を継いだやまとが
要求される能力の高さに「あかぎって、頭良かったんだな」と漏らすくらい
ですし、援軍要請も司令官ではなくあかぎに根回しが来るくらいなので
権限を高めに設定しました。
まぁ、やまとのぼやきは戦術家のやまとと戦略家のあかぎの適正の違い
でもあるんですけどね。
このためにF研究が10年以上早まってますが、本文にも書きましたが
あかぎの知識は現実の1950年代初頭程度だと思ってもらえると助かります。
次回はトリステイン国軍の国境防衛戦になります。一方的な蹂躙にする
つもりはありませんので、できるだけ早くお目にかかれるよう頑張ります。
投下乙ッス
乙!
どうも、SeeDの書き手です。
そろそろガリア編が本格化します。もちろん彼女が出てきたり。
あと、文面的に初登場のティファニアがほとんど喋ってないのは仕様です。
お姉ちゃんも居るので難しい話は大体彼女が進めようとします。
では、他にいらっしゃらなければ21:00頃より投下開始します。
mission18 異端の少女、人形の少女
「ふ……予想通りといったところか」
上がってきた報告書に目を通し、ガリア王ジョゼフはさして面白くもなさそうに軽いため息を着く。
あれこれと知謀を巡らすのは、多少の手慰みになりはするが、それがこうも上手く行ってばかりだと流石に面白味に欠ける。
ゲルマニアの非メイジ軍の艦隊が、トリステイン領空内で謎の巨大な光に包まれて消滅したことが書かれている書類をポンと置く。
おそらく女王に即位したトリステインの虚無の仕業であろう事は、想像に難くない。
(無くなった艦隊、これの補填をするために連中は喜んでルナティック・パンドラを受け取るだろうな)
もうじきにガリアの領内も完全に通過する黒い柱のような建造物を思い浮かべながら次の書類に手を伸ばす。
しかし感慨のないモノだと、落胆が心をよぎる。
やがて正に自分が目指したハルケギニア中を巻き込む巨大な戦火が巻き起こるだろうというのに、後悔も、良心の呵責も、達成感による歓喜の念すら感じ取れない。
所詮は、こんなものか。
そこで一人の騎士が、報告のためにジョゼフの元を訪れた。
「失敗したぁ?」
北花壇騎士団に属するその騎士は、今回の任務に置いてイザベラを飛び越えて直接に命令を受けていたのだが
「……申し訳ございません。額に傷のあるやたら強い男が刃向かい……」
「額に傷?蒼い剣を持った傭兵か」
「いえ、白銀の剣を持って白いコートを羽織った男です。件の傭兵は、後から現れましたが専ら我々の放った火の鎮火に当たっていたようです」
「…………」
以前会った感触から言って、正義の味方のような事はやらないように思えた。だが、防衛のために雇われたというのなら、火消ししかやっていなかったというのもおかしな話ではある。
(いや、或いは……やたら強い白いコートの男……あそこに元々居たのも虚無……あのスコール・レオンハートがガンダールヴのなり損ないかと思ったが、それはこちらか。そしてそれが顔なじみならば……)
しばし黙考の末、ジョゼフはもう一度口を開いた。
「それで虚無は?」
「再強襲のため偵察を行いましたが、あの家々全てから住民は引き払ったようです」
スコール・レオンハートが居たのなら、あの竜のフネもあっただろう。それで逃げたと見るのが妥当か。
追跡など出来るはずもないし、発見しても虚無を乗せたままとは限らない。第一、手駒をあいつにぶつけたところで返り討ちにされるのがオチだ。
一瞬で結論を出し、騎士に告げる。
「……あれは今は放っておけ。あいつの手の内にあるならお前のもう一人の主人の手札になることは無いだろうからな」
ジョゼフの言葉に騎士は息を飲んだが、既にしてそっぽを向いている顔を見るに泳がされているという事なのだろう、と苦渋の表情のまま一礼をした。が
「あ、いや待て。……北花壇騎士団の団長を呼べ」
「は?はっ」
再度一礼をしてくるりと背を向ける。
一方のジョゼフはと言えば、もう騎士のことなどすっかり忘れ、今後のことに思いを馳せていた。
(ゲルマニアの反乱については何も動かなかったが、最後の虚無については俺や教皇も出し抜くとはな。案外、ハルケギニアを壊すのは俺よりも奴の方が向いているのかも知れん)
さて、ハルケギニアの矛先をあの男へ向けさせようか。
その口元に浮かぶ笑みは、いつもの空虚な笑いか、それとも心底の破顔か。
「何でだよ!テファ姉ちゃんだけっ!」
「いっしょにいれないの……?」
十名弱の子供達が、そう声を荒げマチルダに食い下がる
「テファの事は、みんなだって判ってるだろ。私達みたいにちゃんと理解してやれる奴は少ない、あんぽんたんばっかりなんだよ。この世の中」
ここはトリステインの地方にある孤児院。アニエスの案内でここを訪れたのは、ウェストウッド村にいたティファニア以外の子供達を受け入れてもらおうとしての事だ。
かの大盗賊フーケと、その庇護下の子供達のやり取りを複雑な気分でアニエスは眺めていた。
(あのサイファーという男の元に、虚無のメイジが居るだろうとは思っていたが……まさかそれがハーフエルフとはな)
敬虔なブリミル教徒であるアニエスにとってみれば、エルフは脅威の存在であり、ハーフエルフとなれば嫌悪すべき対象だ。
だがそれが、最も信仰すべき虚無の力を継ぐ者でもあるのならば、一体どういった対応をすればいいのか、三日経った今でも結論は持てていない。
幸いにも今まではラグナロクの総人口そのものが増えていたので彼女と二人きりになることはなかったが、今後はそうもいくまい。
「じゃあ、サイファーは何だよ!」
「決まってるだろ。俺はティファの騎士だぜ一緒にいなくてどうするんだ」
強気の姿勢で胸を張り、サイファーはそう言って見せる。
「なら俺も、テファ姉ちゃんを守るために……!」
「バーカ」
「あだっ!?」
サイファーのデコピンが炸裂する。
「おめぇぐらいの実力でティファを守りきれるかよ」
「お、俺だって盾ぐらいには」
「はっ!俺より付き合い長いくせにティファのこと、なーんにもわかってねぇなぁ」
大仰に肩をすくめて見せ、軽く睨み付けるサイファー。
「ティファ守って、もしお前が死んだらティファはどう思うよ」
「……悲しむ」
「だろう?あいつを泣かすなんざこの俺が容赦しねぇからな。あいつを守りたいってんなら、俺ぐらいに強くなってからにしろ」
「……判った」
「おめぇらも、良いな?ティファのことは俺とマチルダに任せて、今はここで生きてく事だけ考えてろ」
「じきにまた、ウェストウッドみたいにみんなで暮らせる村を作るからさ、それまで辛抱しといとくれよ」
二人の言葉にようやくながら子供達も頷いて見せた。
「サイファー!テファ姉ちゃんのこと、絶対に守れよ!」
「フン、良いぜ。男と男の約束だ」
差し出されたサイファーの握り拳に、まだ力の足りない少年の拳がぶつけられた。
「何とか、あっちの方も落ち着いたみたいだね」
「リリィ、済まない。面倒を掛ける」
「良いさ。他でもないアンタの頼みだし、こんなご時世だ。十人未満が今更増えたところでそう変わるものでもないしね」
アニエスと同時期に孤児院で育ったリリムは、現在でも孤児院に居る一人だ。ただし、今は世話をする姉・母親代わりとして。
「でも、大丈夫かしらぁ。うちもけっして楽じゃないから、あの子達にはいろいろ手助けしてもらいたいんだけどぉ……」
「その心配は無用だ、ミミー。聞いた話だが、あの子達はもともと居た場所でもほとんど子供達だけで農作業から獲物の獲得までをこなしていたらしい」
「あらぁ、それなら大丈夫そうねぇ」
おっとりした口調で心配そうに尋ねるミミーも、同じく今では世話を焼く側に回った境遇の女だ。
「……で?」
「?で、とは?」
リリムがニマニマと笑みを浮かべながら尋ね掛ける。
「どっちがあんたの男な訳?」
「なっ!?」
予想外の台詞にたじろぐ。
「あの金髪の彼はぁ、口ぶりからすると例の訳ありでここに来れないって言うティファニアちゃん一筋みたいだから、アニーの恋人はあちらの黒髪の彼かしらぁ」
「ふーん、アニーってああいうのが好みだったの」
リリムとミミーの目が向けられた先では、元々孤児院にいる子供達に囲まれた状態で、手持ちのカードを見せて遊んでいる男の姿があった。案外子供好きであるらしい。
「こ、いびとなんかじゃない!あれはっ、ただの!ただの仲間、だ」
必死に言いつのるアニエスを見て、リリムとミミーは顔を突き合わせる。
「アニーの片思いかしらぁ」
「子供の頃から剣の練習ばっかりして、ロクに男の子と話したことも無かったものね。どう話しかければいいかも判ってないわ、きっと」
「だから違うって……!」
こくんと息を呑んで、改めて口を開く。
「大体、あいつが私のことを女と見ているのかどうかすら……」
「とんでもない人を初恋にしてしまったみたいねぇ」
「私達はあんたの味方だからね、アニー」
「だからそうじゃなくって〜!」
カードの隙間からそんなアニエス達のやりとりを見て、あんな口調なのは幼なじみだからなのだろうな、とその彼は薄ぼんやり思った。
「それで、どうする」
孤児院から残留する一行がラグナロクに戻ったところで、スコールは尋ねた。
無論、問題なのはハーフエルフの少女、ティファニア・モードだ。
ブリミル教とは折り合いの悪いエルフと人間の子。それだけでも物議を醸すというのに、更にそれが虚無の力持ちである。虚無については今はもう帰ったオダインのお墨付きであり、彼女はその存在だけでもハルケギニアに置いて爆弾のような少女だ。
アルビオン王家筋であるモード大公の落とし種だ、等ということが取るに足りないことに思えてくる。
「ウェストウッドを焼き討ちしたのは、ガリアの騎士なんだろ」
「所持しているものからの推測と、尋問を信じるのならな」
サイファーの言葉にスコールが頷く。コンフュを利用しての尋問は、本音を容易に引き出せる代わりに、妄想癖のある者に対しては誤った情報を引き出してしまう可能性がある。まぁ、尋問を行った四人が四人ともそんな妄想癖という偶然は考えづらいが。
「なら考えるまでもねぇ。こうなったらもうハルケギニアに居る訳にはいかねぇぜ。ロバ・アル……なんとかっていったか。とにかく砂漠の向こう側まで行くしかねぇだろ」
「簡単に言うねぇ。どうや……」
渋顔でサイファーに向くマチルダは、途中で自分の足下を見た。今自分がいるのは、ラグナロクのキャビンだ。
「スコール。お前は行ったことがあるか?東に」
「ああ、一度だけだが。歴史で習った昔のバラムの様な土地だった」
ラグナロクを入手したての頃、この星じゅうを一度飛び回った事がある。
東方へも赴いて、スコールは故郷への道を探して地上の街も歩いてみたのだ。そこでは細部は違っているが、漢字とよく似た文字も使われていた。
「だが問題がある。むこうとこっちとではまるで言語体系が違った。何故か俺は言葉が理解できたが……それは多分、俺が召喚のゲートをくぐったからだと思う。あれには使い魔に言語を理解させる仕組みもあるそうだから」
遙か東方の言葉が、召喚の術式に組み込まれているのも変な話だが、そもそもの術式が成立してから既に6000年も経っているのに、ハルケギニアでの会話に全く支障がないことからして、この『世界』そのものに影響を受ける術式だとも考えられた。
「だから、サイファーは問題なく意思疎通が出来ると考えられるが、ロングビル――マチルダやティファニアには生活しづらいかも知れない」
「それぐらいなら問題ねぇだろ。俺がしばらくは通訳をやって、おいおいティファ達にもそっちの言葉を覚えてもらえば……」
「無茶言うんじゃないよ、サイファー。あの子達も一緒にいられる場所じゃなきゃいけないんだ。そんな訳の分からないところに連れて行けるもんか」
マチルダが口を尖らせた。
「ウェストウッドの場合は、森に囲まれてたから誰にも知られずに住んでられたけど、ロバ・アル・カリイエにそんな都合の良い場所があるとは限らないんだ。言葉が通じないってのはそれだけで要らない不安を煽る。下手に刺激させる訳にはいかないよ」
「それと、また別の問題がある」
今度はアニエスが告げる。
「あの土地に住んでいるものは、その全てが黒髪黒目だ。レオンはそれほどでもなかったが、私はかなり目立ってしまった。お前達の容姿では、目立たないはずがない」
この言葉には、自身も金髪であるサイファーは黙るしかなかった。
「無しだ無し。そんなところにテファを連れて行く訳にはいかないよ。ただでさえ、男達から目を付けられやすいっていうのに」
気遣わしげに、テファを見るマチルダに釣られて、アニエスも視線が向く。主に、その、恥ずかしげに隠そうとするおおきな胸に。
「えっと、その……」
(……ハーフエルフ故なのか、それとも彼女自身の資質か)
正直女の自分でさえ、そこに気が向くというのに、相棒は彼女を最初に見た時も顔色一つ変えやしなかった。それ程リノアという恋人に夢中と言うことか。
やれやれと首を振る。と、エマージェンシー音が鳴り響く。
「!?何の音だい」
未知の音に、反射的にテファを守るように抱きながらマチルダが辺りを見回す。
「サイファーは念のため、ここの守りを固めていてくれ。アニエス、行くぞ」
相棒と共に客室を飛び出し、ブリッジへの昇降機へ。ブリッジに飛び込んで、一番手近な艇長の端末にスコールは取り付く。
「乗降口付近の第一次装甲板に異常?機外カメラは……ダメか」
アングルが悪く、何か風がふいているようには見えるがそれ以上は判らない。
「打って出るか?」
「ああ」
すぐさま昇降機に飛び乗って装備とフォーメーションの確認に入る。
「先程の映像を見る限り、異常の原因になっているのは、風メイジか、風の擬似魔法を持っている一名、乃至二名。そちらの方は俺が相手をする。アニエスは乗降口付近でガードを」
昇降口から降りて、がんばって、と軽く手を振ってくるジョーカーを視界の端に捉えながら応じる。
「了解した」
(全所持G.F.ジャンクション確認。擬似魔法はオートで攻撃に優先してジャンクション。後に属性防御にサンダガとトルネドを。空きは任意に振り分け)
乗降口を開き始め、僅かな隙間から真っ先にスコールが飛び出していく。続けて飛び出したアニエスは、乗降口を再び端末で閉鎖に向け、守りに入る。
だが、そこから数瞬で決着は付いた。豪ッとガンブレードの爆発音が耳を打つ。
「終わったか?」
視線は辺りをくまなく探りながら、気配だけでそれを察してスコールに問いかける。
「ああ。……この子供一人だけらしいな。G.F.リヴァイアサン、アビリティ かいふく」
「子供?」
その言葉に首をかしげて、警戒は解かないままに、相棒の方を見る。
「こいつは……」
スコールの担いでいる賊の顔をまじまじと見つめるアニエス。
「知っているのか?」
「何をとぼけたことを。忘れたか?ラグドリアン湖のほとりや、魔法学院で会った……」
呆れ顔でスコールに指摘する。
「ああ、あの風メイジか」
それが判ったからと言って、謎はますます深まるばかりなのだが。
「問題なのは彼女のバックに誰がいるかだな。少なくとも私怨ではないだろう。彼女とは二度しか会ったことがない」
エマージェンシーは既に切ってあるラグナロクブリッジ。サイファーにも軽く事の経緯は話し、それでも警戒は怠らないように呼び掛けておいた。
今、風メイジ――確かタバサと呼ばれていた――はロープで腕を縛られ、壁際に座らされている。もちろん杖は持たせる訳にはいかないので反対側の壁だ。
「会った……それだ、レオン!」
ぱんとアニエスが手を叩く。
「何がだ」
「この娘と最初に会った場所だ!」
「ラグドリアン湖、か」
「彼女たちはそのガリア側から来たんだ!そして領民からの頼みで彼女は来たと言っていた」
「彼女はガリアの貴族……」
「その彼女に命令を下すのは?」
「ガリア王ジョゼフ……成る程、繋がったな。狙いはティファニアか……」
――どうだSeeD、俺を殺してみるか?
(いや、或いは俺か……?)
スッと視線が鋭くなり、スコールは宙を睨む。方向は、もちろんガリアの方だ。
「一体何の……」
つもりなのかと、自問自答するアニエスの声にメインCPUの警告音が重なる。
「?何だ」
何かしらの異常は察せたが、未だに表示される字は読めないアニエスがスコールに尋ねる。
「今度は機首第一次装甲に異常?……あれか」
ブリッジの正面、ずっと先の機首に食らいついている一匹の竜が居た。
「何をやってるんだ?あの竜は」
「喧嘩を売って居るんだろう。ラグナロクは竜に見えるからな」
「大して影響はないが、放っておくのもな……」
ラグナロクの着陸脚でもある右腕を操作し、死角からバシッとその竜を打ち据える。
「……これで大人しくなるだろう」
弾き飛ばされて見えなくなったのでやれやれとため息を着きながら、タバサの方に向き直る。
「何を……したの」
「竜が噛み付いていたのでラグナロクの腕で払っただけだ。知っている竜だったか?」
「いいえ……知らない」
タバサは首を振ったが、軽く目を合わせたスコールとアニエスは頷き合う。何かしら、あの竜はこの少女と関係があると見て間違いないだろう。
そこで再び、警告音が鳴る。
「またさっきの……!」
再び頭部付近に見える青い影。それを見て、少し考えるとスコールはライオンハートを抜く。
「……しつこいな。対応してくる」
「んっ……ああ、こちらは私で見張っている」
エアールームのロックをブリッジから解除しておく。
「ジョーカー、俺と一緒にエアールームまで。念のための守備配置を」
「了解、委員長」
後部ハッチから甲板上に上がったスコールは機首方向へと一気に駆ける。
「きゅい!?」
こちらに気づいたらしい竜が鳴き声を上げるが、遅い。
「弾けろっ!」
慌てて逃げようとした竜に飛びかかり、エリアル・サークルを極める。
「きゅいいいいいいい!」
悲鳴を上げて落ちていく竜に追撃を駆けるべく、ラグナロク外壁を蹴り、地上に向かう。
体に斬撃を受け、強かに体を打ち付けられた竜が弱々しく体を持ち上げると、眼前にはスコールの姿があった。
「きゅ……」
悲鳴すら上げる間もなく、落下速度も上乗せされたスコールの蹴りが頭部に炸裂し、再びその体は地面に附する。
「あの少女の次には竜を差し向けて……ガリア王、何を考えている」
蹴りの勢いのまま一回転した体を着地させ、そう呟く。
「し……ふぃは……」
「……何?」
「シルフィは……あんな、王様の事なんて……知らないのね。お姉さまを……取り戻したいだけ、なのね……」
聞き慣れぬ声は、明らかに目の前で虫の息になっている竜から聞こえた。
「お前……口がきけたのか」
驚きに目を見開くスコールの前で、ゆっくりと頭部をもたげ竜は言葉を紡ぐ。
「お姉さまを……返す、のね……」
「お姉さま?」
「その必死さ……やはりあの竜はお前に関係があったようだな」
タバサを床に組み伏せた状態でアニエスは尋ねかける。答えはなかったし、元より期待しても居ない。
「別に正直に言えば良かったのだ。もうお前から引き出す情報は何もなかったから、直ぐに放しても良かったのだし」
スコールがブリッジを出た後、戦いの様子を見ようと機首の方へほんの一瞬眼を逸らした隙だ。
壁に立て掛けられていた自身の杖を、縛られた後ろ手で器用に掴むと即座にウィンドカッターで手首のいましめを解き、アニエスへと杖先を向けた。
が、その時点で既にタバサが行動を起こしたと理解していたアニエスは、詠唱が済むより先に彼女の顔下半分を掌で掴んで口をふさぐと、そのまま床に打ち据えた。
タバサが小柄な少女だという事を差し引いても、人間離れした速度、パワーだった。と、脳震盪をおこしかけてくらくらする頭の中でタバサは冷静に評する。
「全く余計な傷を増やして……ケアル」
杖を取り上げた後、俯せにしたタバサの後頭部に裂傷を見つけたアニエスがその傷を癒す。
「……私が自由になれば、また彼を狙い始める。ならば始末するのが正解」
「判らないか?私程度に、こうも簡単に組み伏せられるお前が、あいつに勝てる筈もあるまい」
それはジャンクションを日常として、アニエスが初めて判った事だった。
力が強すぎてもはや誰が相手でも負ける気がしない。むしろその慢心をこそ諫めねばと逆の恐怖すら覚える力があるのが、ジャンクションだ。
スコールはよくもこれだけの力を持って、ああも平静で居られるものだと感心する。
低いモーター音と共に、エレベーターがブリッジに迫り上がってくる。
「もど……お、おいっ!何だその娘は!?」
戻ってきた相棒は、自分のジャケットを羽織らせただけの半裸の少女を伴っていた。
「あ、お姉さま!」
「……さっきの竜だ」
少々惚けた様子のスコールが、そう返す。
「竜!?」
「あなたさっさとお姉さまの上から退きなさいなのね!きゅいきゅい!」
竜だという少女が、押しのけようとしてくるのでどうしたものかと相棒を見ると
「構わない。ある程度の説明はその竜から聞いたが、今の彼女は、もう俺を狙うどころでは無いはずだ」
先程のタバサの行動と著しく反するが、まぁどうせ障害とはなり得ないのだからと、タバサを解放する。
「お姉さま!きゅいっ!」
駆け寄った竜の少女の頭をタバサが叩く。
「約束破って、人の前で喋ってる」
「そ、それは……」
「判ってやれ、そいつなりにあんたのことが心配だったんだろうし、もし喋らなければ、あのまま俺はそいつの首を切り落としていたかも知れない。あんたとしてもそんなのは避けたいだろう」
かなり物騒な物言いだが、実際そうなっていただろう公算が高いのはタバサにも判る。
「それで?」
どういうことなのか、とアニエスは上半身シャツ一枚の相棒に尋ねる。
「どうやら、彼女の母親がガリア王に人質として取られているらしい。反乱、失敗すれば命はないと」
「非道な……元より貴族であるのならば、そのようなことせずとも、逆らいはすまいに……」
「彼女の場合はそれには当て嵌まらない。何しろ、彼女の父親を殺めたのが、その実の兄であり、彼女の叔父の、ジョゼフ王なんだからな」
「何だと!?では、この娘は王族だと言うのか!」
息を呑んで、口数少ない少女を改めて見る。
とはいえ、哀れな境遇だろうと、ここにそうそう置いておく訳にもいかないのもまた事実。何しろ今はもっとでかい問題の少女も抱えてしまっているのだ。
「今更俺たちがあんたをどうこうする気は無い。ラグナロクからは出てもらうが、力ずくというのも余りしたくない。出来れば自分の足で出て行ってくれ」
しかし黙考していたタバサは、スコールの方に顔を向けると対話を求めてきた。
「スコール・レオンハート、先程私は瀕死の重傷を負わされたと思った。なのにこうして生きている。これは、あなたの力?」
「……厳密には違うが、そうだ」
「ではあなたの力は、毒……呪いにも対処出来る?」
「モノによるが……大抵の手段はある。……何が言いたい」
腕を組んで、タバサの視線と真正面からぶつかり合う。
「傭兵として、あなたを雇いたい」
静かに、しかしはっきりと彼女は言った。
今回はここまで。
アニエスの孤児院での友人やら愛称やらはどっかの某特撮シリーズから拝借。
次回は一気にあの城に侵攻予定。
乙!
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ゼロの賢王:2010/12/11(土) 21:24:31 ID:xL8SJbth
第9話が仕上がりましたので、誰も他にいなければ投下したいと思います。
「ポロン、明日街まで出掛けるわよ」
唐突な提案にポロンは面食らう。
「何だあ?藪から棒に」
ポロンは羽根ペンを鼻と口の間に挟み込んだまま答えた。
今、ポロンはルイズからハルケギニアの文字を教えてもらっているところである。
言葉が通じるから文字も読めるものだとばかり思っていたがそんなことはなかった。
特にルイズと一緒に授業へ出ていると、全く読むことのかなわない文字を次々と目の当たりにする為、
流石にこれはいかんということで恥を偲んでルイズに文字を教えてもらっている。
ルイズは勤勉でありながら意外と教え上手でもあり、ポロンは簡単な読み書きなら既に出来るようになっていた。
そんな個人レッスンの最中、ルイズは突如先のような発言をしたのである。
「明日は虚無の曜日で授業は無いの。だからポロン、私がアンタに剣を買ってあげるわ」
「ああ、それはいらね」
「うんうん、そうでしょうそうでしょう。嬉しくって嬉しくってたまら…って、ええっ!?」
「剣は必要ないな」
「何よ!私からのプレゼントを受けないって言うの!?」
「いや、勘違いすんな!いらねえってのは剣はいらねえって意味で、ルイズからのプレゼントは有り難く頂くつもりだぜ?」
ルイズが凄むと、ポロンは慌てて答える。
ルイズはそれでも納得していないという表情でポロンに詰め寄る。
「何で剣がいらないのよ?アンタ私の使い魔でしょ?私を守るなら剣は必要じゃない」
「自慢じゃないが、俺は剣を全く使えない」
「本当に自慢じゃないわね・・・。でも持ってるだけでも格好はつくでしょ?」
「ルイズ、いいか?剣っていうのはなあ、使える奴が使わないと意味ねえんだ。
仮に運動神経がいいだけの奴が剣持ったって、剣使える奴と戦ったら100%負けちまう。そういうもんなのさ」
「そういうものなのかしら?」
「それにルイズも見たろ?俺は魔法を使って戦う。だから俺に武器はいらねえんだよ」
「ふ〜ん。まあ、確かにそうね」
ルイズは昨日行われたギーシュとポロンの決闘を思い出していた。
その時、ルイズは「あっ!」と声を上げると、鳶色の瞳を吊り上げてポロンを睨んだ。
「そうよ、アンタの魔法!それについて色々聞きたいことがあったんだわ!」
ポロンは「しまった!」という顔をした。
「本当は決闘のあった日に聞きたかったんだけど、アンタがツェルプストーとイチャイチャしていてうっかり忘れてたわ」
「ちょっと待て!別にイチャイチャはしてないだろ、イチャイチャは」
「フン!ツェルプストーの使い魔に連れて来られた!とか言ってたけど、本当はどうだか」
ルイズは目に見えて不機嫌な顔になる。
ポロンはそんなルイズを見て、深くため息をついた。
「ったく、わーったよ。お前の疑問に答えられる範囲で答えてやるからへそ曲げんな」
「べ、別にへそなんか曲げて無いわよ!・・・じゃあ聞くけど、魔法が使えるってことはポロンは貴族なの?」
「いや、俺は生まれも育ちも貴族なんて大層なもんじゃあないよ」
「嘘おっしゃい。貴族でもないのにどうして魔法が使えるのよ?」
「どうして、て言われてもなあ」
ポロンはいっそのこと自分が異世界から来たということをルイズに言ってしまおうかとも考えた。
(まあ、言っても信じねえだろうなあ)
この世界へ来てから数日は経ち、ルイズともある程度は打ち解けてきたと思っている。
とは言え、こんな突拍子もないことを言っても信じてもらえる保障は何処にも無い。
(俺が逆の立場でも信じねえだろうしなあ。言う人間にもよるだろうが・・・)
ポロンは自分の今の姿を改めて確認する。
(自分で言うのもあれだが、こりゃあ胡散臭い以外の何者でもねえな)
ポロンはひとりでにがっくりとうなだれた。
ルイズはそんなポロンの一連の動きを怪訝そうな顔で見る。
「まあ、いいわ。アンタが何者かはそんなに重要じゃないの。問題は・・・」
ルイズは一呼吸置いてから言葉を続ける。
「どうやって杖も無く魔法を使えたのか。問題なのはそっちよ」
「それって、そんなに重要なことか?」
「・・・確かにコモンマジックみたいに杖を使わない魔法というのもあるわ。でもね、ポロン。
アンタが使ってたアレはもうコモンマジックという域を超えていたわ。アレはもう先住魔法の域よ」
「先住魔法?」
「エルフの使う魔法よ。杖を使わなずに様々なことを起こせるらしいわ。
私は実際に見たことはないけど、とても恐ろしいものだと聞くわ。正に凶暴なエルフにぴったりの魔法ね」
「エルフが凶暴・・・?俺のいたところじゃ人間嫌いなのはいても、基本的には大人しくて争いを好まない種族だったけどな」
「それ、本当にエルフなの・・・?まあ、そんなことはどうでもいいわ。
いい?アンタが何処から来たのかは知らないけど、ここトリステインでは魔法を使うのに杖は必須なの。
それも杖なら何でもいいというわけじゃない。それぞれに合った杖じゃないといけないの。
だから、アンタがホイホイと杖無しで魔法を使うって言うのは本来はとても有り得ないことなのよ」
「そうなのか・・・」
ポロンは図らずもこの世界における魔法体系について知ることが出来た。
ルイズと一緒に受けている授業では最初の頃こそ系統魔法の基礎的な部分を教えていたが、
この世界における魔法というものの在り方に関しては、あまりにも常識的過ぎるのか触れることさえ無かった。
ルイズに聞こうかとも思ったが、流石にいい大人が今更そんなことを聞くのは不自然であるし、出自を疑われかねない。
かといって、異世界から来たなどと言えばこれまたあまりにも突拍子が無さ過ぎて頭のおかしい人間とされてもおかしくない。
従って、いずれ何処かの授業でそこに触れるのを待つしかなかった。
それが他ならぬルイズの口から聞けたのだからポロンは内心ホッとする。
ルイズはジーっとポロンの顔を見つめる。
「見たところアンタはエルフには見えないけど・・・」
「んー、確かに俺の呪文・・・いや魔法はお前たちの使う魔法とは大分違うもんだからなあ」
「そうなの?じゃあ、あの魔法はどうやって使ってるの?」
「どうやって・・・と言われてもなあ。上手く言葉で伝えるのは難しいな」
「ふーん。ねえ・・・」
途端にルイズはもじもじしだした。
「その魔法って、私にも出来たりする?」
(・・・なるほど、そっちが本音か)
ポロンはルイズが魔法を上手く使えないことに多大なコンプレックスを抱いてる。ということを本人が口にせずとも察している。
ポロンの出自や魔法について聞いたのも、もしかしたらポロンの使う魔法ならば自分でも。という期待を持っていたからだろう。
事実、ポロンが使う呪文は魔力さえあれば、後は努力次第で使うことは可能である。
(って言っても、それはあくまで俺らの世界でのことだからなあ)
世界が変われば、当然魔法も異なる。
ポロンですら、同じ世界に存在するジパングの神仙術を使うことは出来ないのだ。
違う世界の魔法なら尚更である。
少なくともポロンには初日の授業でシュヴルーズが見せた錬金の魔法や決闘の時にギーシュが使用したワルキューレを使うことは出来ない。
「やってみないと分からんが、恐らく無理だろうな。鍵に例えると、俺とルイズの魔法はそれぞれ別々の鍵なんだよ。
俺の鍵で開く扉がお前の鍵でも開くとは限らないだろ?寧ろ鍵が違う分、開かない可能性の方が高い」
「・・・でも開くかも知れないじゃない」
ルイズはまるで拗ねた子供みたいに唇を尖らせる。
それを見て、ポロンもやれやれと肩をすくめた。
「分かった分かった。取り敢えずやれるだけやってみるか?」
ポロンの言葉にルイズの顔がパァーっと明るくなった。
そんなルイズの表情を見ていると、まるで彼女の親にでもなった気分になる。
「じゃあ、時間がある時にお前の魔法を見てやるよ。っても昼間は授業あるし、恐らく夜になっちまうけどいいか?」
「構わないわ。魔法を上手く使う為にも、試せるものは全て試しておきたいですもの」
「そりゃ殊勝な心掛けで」
そう言うと、ポロンは面倒なことになったなと思っていた。
だが、決して嫌な顔はしておらず、寧ろ親が子を見守る様な優しい顔になっていた。
翌日、虚無の曜日。
ポロンとルイズは朝早くから、馬に乗って街を目指していた。
貴族の嗜みとして乗馬を学んでいたルイズは易々と馬を操っている。
ポロンもまたルイズ程華麗ではないものの、そつなくこなしていた。
学院から街までの距離は遠く、馬でざっと4時間程掛かってしまい、街に着く頃にはちょうどお昼時になっていた。
ここで時を少し遡り、ルイズたちが学院を出る直前こと。
キュルケはルイズの部屋の前に立っていた。
目的はルイズをからかうことと、そしてその使い魔にアタックすることであった。
魔法が上手く扱えないルイズは部屋の施錠を通常の鍵で行っている。
通常の鍵ならば、トライアングルレベルのメイジであるキュルケには無いものと同様であった。
アンロックの魔法で鍵を開けると、遠慮なく扉を開く。
しかし、そこにルイズとポロンの姿は無かった。
何処へ行ったのか思案していると、窓の外に馬に乗って何処かへ行こうとするルイズとポロンを発見する。
キュルケはそれを見るなり、血相を変えて親友であるタバサの部屋へと向かった。
「タバサ!お願い!あなたのシルフィード貸して!」
いきなりそう言われて、頷くタバサでは無かった。
タバサはキュルケの姿を確認するなり、サイレントの魔法を掛けて読書へと戻る。
キュルケは何度話し掛けても何も答えないタバサを見て、その手から本を取り上げた。
本を取られたタバサは仕方なくサイレントを解いて一言。
「虚無の曜日」
とだけボソッと呟いた。
キュルケは申し訳無さそうな顔をして首を振った。
「あなたにとって虚無の曜日がどんな曜日だか、私は分かってるわ。でも、聞いて頂戴。これは恋なの!
私の二つ名は『微熱』!とても燃え上がりやすいの!!・・・あなたも分かるでしょ?」
タバサは特に何も言わなかった。
キュルケは両の手を合わして懇願する。
「お願い!ルイズを追いかけたいの!二人が馬に乗って何処へ行ったのか突き止めたいの!お願いタバサ!私に力を貸して!!」
タバサはふぅ、と息を吐くと腰掛けていたベッドを降り、窓を開けて口笛を吹く。
すると、すぐに大きな羽音が聞こえて来た。
「!!有難うタバサ!!流石私の大親友!!」
キュルケはタバサを強く抱きしめる。
ふと窓を見ると、そこには水色のドラゴンが見えた。
「・・・やっぱり、あなたのシルフィードはいつ見ても素晴らしいわね」
6メイルを超えるサイズの風竜。
このサイズで幼生なのだから、成体となればどれだけ大きくなるのだろうか。
キュルケは改めて、こんな使い魔を召喚したタバサを只者ではないと思った。
タバサが窓からシルフィードの背に飛び乗ると、キュルケもそれに続く。
2人が乗ったことを確認するとシルフィードはそのまま舞い上がった。
上昇していく中、タバサは己の使い魔の頭をポンと叩いて一言だけ呟いた。
「馬2頭、食べちゃだめ」
「きゅい」
可愛らしい鳴き声を上げてシルフィードは頷く。
そうして暫く上空から目を凝らしていたシルフィードは学院から遠ざかって行く2頭の馬を見つけた。
「きゅいきゅい!」
シルフィードはひと鳴きした後に風を切って加速する。
あっという間に2頭の馬のすぐ近くまでやって来た。
「このまま、気付かれない様に追って」
タバサはシルフィードにそう告げた後に本を取り出して読み始めた。
キュルケは親友のマイペースな姿を見て、改めて只者ではないと思った。
ポロンとルイズは街に着くと、取り敢えずお昼を食べることにした。
適当な店を見つけると、2人でその中へ入る。
先の決闘で勝手を働いた罰として食事抜きを言い渡されていたポロンであったが、ルイズの寛大な処置によって彼女の食べるパイを1つ分けて貰えた。
一口食べると、パイのサクサク感に上に乗ったクックベリーと呼ばれる果実やそのジャムの甘みと酸味が絶妙にマッチし、なかなかに美味であった。
(しかし、こいつぁ俺みたいなオッサンが食うもんじゃねえな)
何となく気恥ずかしさを覚えながらもポロンはパイを口の中に放り込んだ。
昼食を終えると街の中をぶらぶらと見て回ることになった。
流石に国一番の大都市ということもあり、賑やかで様々な店が並んでいる。
その途中に仕立て屋を見つけるとルイズが
「そうだわ。ポロン、貴方に服を買ってあげるわ」
と提案する。
ポロンは自分の今の身なりを見て、その提案を素直に受け入れることにした。
流石に替えの服も無い状態なのは不味い。
様々な服があったが、いくつか見ていてもポロンはしっくりこなかったので、
なるべく同じデザインの服を何着か見つけると、それを買って貰うことにする。
会計をルイズに任せて店の外へ出たポロンはとある露天商に目を留めた。
老人が地面に布を敷いて、その上にはけん玉、ヨーヨー、ブーメランといったものが並べられていた。
ポロンは思わずその露天商の方へと足を向ける。
「よう、爺さん。ちょっと見ても構わないか?」
老人は何も言わずにただこくりと頷く。
ポロンは地面へしゃがみ込み、並べられたものを見ていた。
「へー、懐かしいなあこれ」
ポロンは懐かしさのあまり、中からブーメランを手に取った。
(!?)
すると、次の瞬間ポロンの身体はまるで重い鎧を脱いだみたいに軽くなった。
思わずそのブーメランを元の場所へ置くと、その途端に体の異変が消えた。
ポロンはもう一度ブーメランを手に取る。
(何だ?まるで星降る腕輪でも身に付けたみたいに身体が軽い・・・)
ポロンは老人の方へ向き直った。
「おい、爺さん。このブーメランって人の身体を軽くする魔法みたいなもんでも掛かってんのか?」
「・・・・・・・・・・」
老人は無言で首を振った。
(一体、どういうことだ?)
「ちょっとポロン!ご主人様に荷物持ちさせるなんていい覚悟じゃない!」
その時、後ろからルイズの声が聞こえた。
どうやら服の会計が終わったらしく、服の入った袋を抱えていた。
「・・・ああ、ルイズか」
「何しているのよポロン。・・・って、それ平民の玩具じゃない」
その時、ポロンは思い付いた。
「そうだルイズ!剣の代わりにこいつを買ってくれないか?」
「剣の代わりって、そのブーメランのこと?そんな玩具が役に立つの?」
「まあ、そう言うなって。俺はガキの頃、これで何体もの魔物をやっつけたことだってあるんだぞ?」
(・・・って言っても、おおありくいだの一角うさぎだの雑魚モンスターばかりだけどな)
「本当かしら?・・・まあ、その程度なら別に買ってあげてもいいわよ」
そう言うと、ルイズは老人にいくらかのお金を渡した。
「有難うなルイズ」
「ったく、子供じゃないんだからそんな玩具買ってもらったからって、はしゃがないでよ」
「ハハハ、そりゃすまんな」
ポロンは笑いながらブーメランを手に取った。
すると、やはり身体が軽くなった様な感じがする。
ふと見ると、左手のルーンが僅かに輝いていた。
(・・・なるほど、こいつのせいだったのか)
ポロンは改めて左手のルーンを凝視する。
このルーンは使い魔の証だという。
だとすれば、先程身体が軽くなったのもその恩恵なのだろうか。
(・・・こいつについても調べなきゃなんねえな)
「ちょっとポロン。ボーっとしてないで早く来なさい」
「ん?ああ、悪かった」
ポロンは慌ててルイズの後を追った。
「あの子ったら、彼にあんなみすぼらしいものを買い与えちゃって!」
その様子を隠れて見ていたキュルケが言った。
キュルケは2人の後をつけながら、ルイズが何かする度にこんな感じで毒づくのであった。
タバサは何も言わずに本を読みながら、ただキュルケの後を付いて行っている。
「平民の玩具しか買い与えて貰えないなんて、彼が可哀想じゃない」
キュルケはそう言うとチラっと路地裏の先にある武器屋の看板を見た。
「フフフ・・・いいことを思い付いたわ」
キュルケは武器屋の方へと消えて行った。
といった感じで9話は終了です。
あらかじめ言っておくと、このSSにデルフリンガーは出しません。
理由はポロンが剣振る姿が想像出来ないのと、個人的にデルフがあまり好きじゃないから(爆)。
なのでデルフファンの方がいらしたら申し訳ございません。
それでもよろしければ次回もよろしくお願いします。
賢王&SeeDの人達乙でした。
ようやくSeeDの方もタバサが絡んできて、賢王も徐々にイベント攻略中。
日本が誇る2大RPGのこのお話。
今後も期待です。
賢王乙です
まさかブーメランとはその発想はなかった
乙です
原作サイトはただの高校生だし、デル公を抜くのは二次召喚の強さのバランス取りにもいいかも知れないですな
ブーメランじゃ投げたら戻るまでガンダ効果が切れるのがミソかも
投下ラッシュやばいなぁ
皆さん乙ですよー
俺も書きたいけどPCの画面割れて書けないっていうね
皆さん乙です。賑わっているとこちらも筆が進みます。
ということで、進路クリアなら23:10ごろよりCoD UCTの代理を行います。
信頼と実績の萌えゼロ
「枢機卿、敵の進行状況は。」
「現在、敵は隣接している地域を低速で侵攻しております。各村の避難状況は進んでおります、が。」
枢機卿は、立ち上がり、近くにある窓に杖を向けた、方向を指しているらしい。
「あの方面から火の手が見えるのも、時間の問題です。」
「過去の小競り合いの時出来た砦で何とかなってる状態でしょうか。」
枢機卿は小さく溜息を吐いた。
「姫、あんな小砦は防壁にすらなりません、固定化すら薄れ、守る力が無いのですから。」
「では皆、何をして……。」
「――、決死の覚悟で後退戦をしてる、と言ったとこでしょうか。ヴァリエール家領土は今だ一つの領土も占領されておらず、流石烈風カリン殿と言った所でしょうか。そこを取れない為に他ゲルマニア侵攻軍の足も停滞気味になっております。」
「烈風カリンの復活ですか、それがヴァリエール家に?…………ですが。」
「それも時間の問題――ゲルマニアも、酷な事をしますな。」
枢機卿と言われた男は、それから言を止めた。
言っては更に酷と思ったのであろう。そう、この王国は先代から当代に移ったばかりで政治体制が整っていない。その状況下を見越して、攻めてきたのだ。
「何故、攻めてきたのでしょう……。」
「ゲルマニアは金があれば平民も領土を手に入れ貴族になれます。
私の推測ですが、多分ゲルマニアは今過剰領土が無く、地位を持っている者共が反発、
それを見て体制を崩されかねないと見た帝が攻めて来たのでしょう、
目的はこの領土、なれば休戦や講和など無意味、奴等が狙っているものは我が国の滅亡、でしょうな。」
しかし、ここで疑問が一つゲルマニアにおいて、金を持つ者のその数は少ない。
なら、簡単に領土不足になる事は無い。原因は、他国の金持ちがゲルマニアの領土を買い占めたという事なのだろう。
「多分、ガリアが裏にいるのでしょうな。」
「何故ガリアが?」
おおよそ、娯楽か。
それ位にしか考えていないのであろう、あのガリア国王は
話し合いをしていると、伝令が姫と枢機卿のいる方向に走ってきた。
「伝令!ガリアから食料と銃。大砲、葡萄弾の援助が来ました!」
枢機卿の顔色が変わった。
「なるほど、我が国を実験場にしたいのか。」
兵器の性能は実戦を行い始めて分かる、ガリアは魔法先進国、全体技術力も。
トリステインとは比べ物にならない。
しかし、ガリア国内も落ち着いてはいない、ガリアが今戦争状態になったら、反体制派が何時反乱を起こすかが分からない、だからトリステインを利用したと考えた。
「物資は何処に送られているのだ。」
「既に城下町からここに届いて来ております。」
「砲までもこのような短期間で飛ばしてくるとはな……。」
計画的犯行と言うのはこのことかというかのように、苦笑を浮かべた。
「それともう一つ伝令があります、王国民皆兵令により現在後方の領民から城下町の16歳から28歳までの男を強制徴兵、現在数は1万となりましたが、何分鎧と剣の数が足りなくて……。」
「分かった、武器庫から全部出す、周りの武器屋からも徴収、職人に石斧でも作らせろ、総力戦だ、急ぎたまえ」
「了解しました!」
「これが戦争ですか。」
「戦争の恐ろしさはその間、国力を消耗するしかないという事です、この戦乱が終わった後、事後処理で地獄を見ますよ。」
姫は溜息を深くついた。
「これ以上の地獄が何処にあるというんです。」
ゲルマニア陸軍のある一連隊、ラ・ヴァリエール領内
ヴァリエール領中心にむけて行軍を続けていた。
「隊長!何でこんな小鳥みたいな相手に手間取ってるんです?」
隊長は青ざめていた、何故ならここにくるまでに何連隊もが敗走して自国領内に逃げ帰っていたからであった、撤退して二度目の行軍の輩もいる、そいつらもあまりよい表情をしてはいない。
「知らないって事は、とてもとても素敵な事だ、従軍を続けたまえ」
他の連隊からは良い戦果報告が届くのに、この領内からは潰走やら撤退やらしか報告されてないのだ。
全滅という報告が無いのがマシだが、もう宣戦布告から三日、後三時間で四日となる、他の戦線を押し上げる事が出来ないのもここが落ちないからだ。
ここを落として戦線を全面に押し上げなければ輜重隊が安全に物資を輸送出来ない
そして包囲しようと各軍がこちらに向かえば、一隊一隊が領土まで逃げ帰る始末。
各個撃破されないよう、士官の数を増やせば士官が全員KIA
「もうかえりてーよ、長男になりたかった、パン屋継ぎたかったよ。」
「なんかいいました隊長?」
がくり肩を落としている時、前方に馬の群、騎兵が見えた、数は少数。
「偵察か?攻撃してくるようなら応戦をかけろ!」
気にせず行軍を続ける、すると前方の馬はこちらに向けて駆けてきた。
「応戦!槍兵を前に、槍兵は膝を突き構え!突進を防いだら横っ腹を叩け!」
言われたとおり、隊列の前に槍兵が並び、槍を構えた、馬はとがったもの、障害物には突進できない。
しかし、馬はそのまま突進をしてこず、減速、左右に広がる。
隊長は左に右に、視点を移した、すると突然隊長は後ろから殺気を感じた。
振り向こうとした瞬間、――隊長の頭は吹き飛んでいた。
「またメイジのいない隊……まったく、ゲルマニアにはメイジがいないのかしらね。」
マンティコアに乗った、高飛車な壮年から中年の女性が、杖を振り下げる。
ちなみに言うと、メイジが士官だった隊もこの女性が撃破した部隊の中にいたのだが、即効で殺してしまっていた為、メイジがいなかったようにみえたのだ。
「30年前より体が動かない、まったく。でも、ジャガイモの好色達を屠る程度、造作も無いわね。」
左右に広がった騎兵がもう一度合流をし、向きを反転してまた敵の隊列に駆けていった。
指揮系統の失った敵隊列は、馬に有効な槍兵を有効に扱う事が出来ない。
騎兵は敵の隊列と接触、既に指揮系統を崩された恐怖と、騎兵による蹂躙、敵の領域による未知、これらの要因が全て足され、士気など既になかった。
よって……。
「ば、ばけもんだぁっ!うわぁあぁ」
一人、また一人隊列から抜け出して撤退していく。
気づけば、もうその草原には騎兵と一騎のマンティコア、しかいなかった。
敵の阿鼻叫喚を背景に壮年から中年の女性が騎兵隊に命令を下した。
「追い討ちはよろしい、拠点に戻ります。縦列!」
その命令一つで、騎兵隊は即座に列を成し、拠点へと向かっていった。
「私は良くても数が少ない騎兵と馬の疲労度がピーク、私の魔法力も全盛期に比べて半分に落ちている、もって三日か……。」
その頃、ヴァリエール家屋敷
「カトレア、もう休みなさい。もう限界だろう。」
「まだ負傷者がいるなら、傷の手当がっぅ――ごほっ、ごほっ」
カトレアと言われた、病弱な女性は杖を負傷者の傷当たりに近づけると。
またスペルを唱える、傷は修復していくのだが、見て分かるように既に疲労はピークに達しており、限界が分かる。
「私の優しいカトレア、お前が死んでしまったら私はどうすればいい、お前に先立たれてしまったら父はどうすればいい。」
「ですが……、怪我してる人は、こんなにも――。」
突然体から力が抜け、床に倒れこみそうになるところを父と言われた男性が支えた。
「カトレアを部屋に。」
隣にいた執事にそれだけ言うと、執事は即座に動く。
カトレアが運ばれるのを見送ると、書斎に入っていった。
「さて、我が娘にこれだけの事をしたのだ、ゲルマニアの色痴呆共に教育してやらねばならんな。」
巨大な羊皮紙を取り出す、トリステインとゲルマニアの詳しく言うならトリステイン領土とゲルマニア領土付近の地図が書かれていた。
「現状の整理から始めよう、我が軍は訓練すら終えていない民兵が主、
相手は傭兵と国軍の精兵、今は妻の恐ろしい活躍により退けてはいるが、
妻も人間だ。疲労がある。国力も兵力も人口も10倍、戦略での勝利方法は耐えに耐え相手の国力が削がれ現体制が危うく継戦が出来なくなるのを待つ、
それまで一切の侵攻を許さない、その侵攻を妨げる最後の砦がここ。
さて、王国が馬鹿でなければ。兵の増援が来る、どれ位の規模か……敵国に侵攻して、相手から休戦を申し込んでもらうには二万以上の兵はいる。」
さて、そんな兵が急遽集まるかな。そう思いながら窓を見やる
「本国がもし、反撃作戦を練らず城下町での防衛作戦を取るのであれば、話は別だな。」
確かに、草原で接触した場合は地の利を受けれない、ただでさえ兵が少ない今。
それをする事が王国に出来るかどうか、そこが問題であった。
来なければ、最低後三日でこの地は落ちる、落ちれば士気の溜まった敵軍はきっと本国まで容赦ない進撃を続けるだろう。
「せめて後5000の兵があれば……、簡易防壁を作っている事に女子供を動員している現状は不味い。」
その窓から、土等で汚れた女子供が小さな松明を当てにただ土を積み上げていくのが見えた。
「伝統や欲に溺れてまともな政策も出さん結果がこれだ、貴族に対する年金に吸い取られて対ゲルマニア用防衛ライン予算も10年前から降りて来ない、何が空海軍だ、他に何処の国にも攻めれん軍事力の癖に無駄な数がありすぎるのだ」
実際、ここ数年トリステインの国予算はない状態に近かった。
それもそうだ、他国より人口が10分の1も少ない癖に、貴族の数だけは多く。
貿易という概念がまだ無かったとしても言って平原ばかり、伐採技術も進んでるわけでもなく、周辺に鉱山は無く、風石も無い。
農民や町人からそのまま貴族に流れているような状態、そんな状況で更に空海軍維持費に取られ、新艦建造に力を入れていた。
この小国が幾ら血を流しながら働いたとしても、他国空海軍に勝てる程の艦隊を作れる訳が無い、それなら。小型艦主体に建造し、陸軍費に回し、防衛体制を整えた方が合理的だ、というのに。
「あの王国の周りにいる馬鹿どもには理解できんのだろうな、マザリーニもマザリーニだ、周りの反発を恐れて、太った豚共の権力を崩せずにいる。」
その人にはその人の言い分があり、国からの言い分、農民からの意見、貴族の言い分がある。だから枢機卿にも、枢機卿なりの言い分がある。
それは分かってはいるが、このヴァリエール家当主の男は、憤慨せずには入られないのだ、同じ王族の血を引く者として。
投下終了ですsoapが出てきません。
---- ここまで ----
以上、代理投下でした。
なお、こっちに転載する際に『行が長すぎる』とはねられた箇所が2カ所
ありましたので、勝手ながら区切りの良さそうな場所で改行を入れさせて
もらいました。
SEEDの人乙
特撮からとった名前というと
リリム→リムエレキング
ミミー→ミミー星人
違うかな…
3210の人、俺は続きが読みたいです
>370
何故か、
「安西先生、魔法が、使いたいです……」
「ルイズ君、諦めたら、そこで試合終了だよ」
という会話が聞こえた気が。
安西先生、続きが、書きたいです……!
>>371 それを拾っていってSSにして投下する頃にはきいろいきゅうky
>>373 一瞬、シルフィが喋っているのかと思ったぜ
>>369 特撮から取ったというのは多分宇宙刑事だろうと思われる
安西先生を召喚か、胸が熱くなるな・・・
安西先生自身は最弱でも、周囲の人間を際限無く成長させていきそうだな
けど安西先生って流川と桜木に対しては指導してたけど
怪我してグレたミッチーはほっといたんだよな、ルイズとは相性良さそうだけど
>>377 その時期は安西先生もグレちゃってたからな
「錬金2万回です」
「2万で足りるのか」
ワイルドアームズXFやってたら、12人に分身したトルメンタトライアッドの三人にフルボッコにされるワルドと遍在の図が浮かんできた
遍在と違って分身倒しても本体倒すまで何度でも復活するし、倒したら倒したでほかの奴らが強くなるしワルド涙目だな
賢王の人乙
ブーメラン。レヌール城から妖精の国までの必須装備だったな
ブーメランとギラの連続攻撃でおばけネズミ×6を倒して経験値稼ぎしたあのころ
失礼します
10分後に投下開始したいと思います
「……なるほど、そうかね。……ふむ、これは……」
長く白い口ひげをいじりながら、その総髪の老人、学院長のオールド・オスマンは呟いた。
「なるほどのう……。そういうことが……うーむむむ……」
厳かに呟いてはいるが、どうにも対処が分からない、ということはなんとなく分かる。
あれから、ルイズ達は状況を近くにいた教師に報告して、学院長の居室まで連れて来られていた。
一応、目撃者兼証人ということでキュルケとタバサもついてきている。
「……前代未聞じゃのう、これは。はっきり言って、考えられん事態じゃ。使い魔は常に一人一つ……根っこからひっくり返すよう
な珍事じゃな」
「……」
クリフは黙って聞いている。キクロプスは壁を背に、ヴォルフは物珍しそうに周囲を見回していた。才人は当然ながら、心なしか
不安そうに怪訝な顔である。生徒でもある他の三人はきちんと直立していた。
「ただでさえミス・ヴァリエールに三人も使い魔が出たと聞いて、よく観察しておくように、とは言っておいたんじゃがな……おま
けにもう一人出てくるとはの。これは一体どうなっておるんじゃろうな?」
「わ、わたしのせいです! すいません!」
ルイズが頭を下げるが、オスマンはニコニコしながら、
「いや、君を責めるつもりなどこれっぽちもありはせんよ、ミス・ヴァリエール。だいたい、増えたからといって責める道理などな
いしの。単純に不思議なだけじゃ、なぜこのようなことが起きたのか……ふむ」
そこでいったん言葉を止め、思索している。やがてクリフの方を向き、
「クリフ君……いや、ミスタ・ギルバートといったのう。君達三人は知己なのじゃろう? しかし、その少年……サイト君と言った
か、彼はまったくの赤の他人でいいんじゃな?」
「はい、そうですね。彼もまた東京という都市から来たようですが、面識はありません」
「お、俺も知らないです……?」
「うーむ……。一ヶ所の所から三人が来た、ならまだ魔方陣のエラーかなにか、不都合が起きたと考えることもできるが……再び召
喚できたのはなぜなのか……? 謎は深まるばかりじゃのう」
そう言って、少しニヤリと笑って手元のパイプを吹かす。少々嬉しそうに見える……というか、新しい玩具を見つけた子供のよう
な瞳の色をしているのは気のせいだろうか?
「探偵心がうずくのう? この謎を解き明かさなければ夜も眠れんことじゃのう。ふむ、ベレー帽が欲しいところじゃ。ミス・ロン
グビル?」
「おふざけはお止めになってください。真面目なお話です」
ピシャリ、と秘書のロングビルが言い放つ。
「いやわしはちょっと場を和まそうかな、と思っただけでじゃな……」
「必要ありません」
「手厳しいのう……で、じゃ。契約だけは終わっておるわけじゃな? ミス・ヴァリエール」
ルイズはコクリと頷いた。
「は、はい! 出来てます!」
「よろしい、実にけっこう。では、あとはこちらで対処を考えよう。しばらく待って欲しい。おっと、心配することはないんじゃぞ
ミス・ヴァリエール。君は悪いことなど一つもしておらんからの、胸を張っていなさい。……ただし、これ以上の召喚の試みは控え
ておきなさい。大丈夫かの?」
「は、はい」
「それでは話は以上じゃ。時間を取らせてすまなかったの、もう昼時じゃ。ゆっくり昼食をとって、午後の授業に出るとしなさい」
「はい、失礼します」
そう言ってルイズ達は頭を下げて、退出していく。しかし、クリフはすぐにその場を立ち去らなかった。
「……なんじゃの? なにか聞きたいことでも?」
「はい。大変失礼ですが、もしよろしければもう少々だけお時間を頂けませんか?」
「むろん構わないがの?」
「ありがとうございます。それでは……ああ、失礼。キクロプス、大丈夫だ。先に行っていてくれ」
いつの間にスコープをとったのか、ドアの隙間からキラリと光る眼光を覗かせながら、わずかにキクロプスが頷いた。すぐに見え
なくなる。
「失礼しました」
「……ふむ。なかなか恐ろしい使い手と見受けるのう。あんな目は久々じゃ」
「僕の仲間がお恥ずかしい限りで。ただ、彼は信用できる男です。ご安心を」
「いやいや、気にせんでええよ。君ももっとリラックスしたまえ。わしはそんなつまらんことで気分を害したりはせん。……それで、
聞きたいこととは?」
「はい。召喚の魔方陣、についてなのですが、いくつかお聞きしたいことが」
「ふむ」
「まず、死人を蘇らせて召喚できるのか、ということ。また、異世界から人を召喚できるのか、ということ」
「ふーむ。……君達が生き返ったらしい、という話はミスタ・コルベールから報告を受けてはおる。そして、そんな話は聞いたこと
がないのう。というより、あり得ん。わしらの召喚はその場の生物をその状態のまま、そっくり持ってくるものじゃからの。……今、
異世界、と言ったかの?」
椅子に腰掛けているオスマンが、机の上で手を組んで計るような視線を向けてくる。その悪戯っぽい瞳になにを含んでいるのか、
窺い知ることはできない。
「はい。我々は、異世界から来ました。この世界ではありません。間違いなく。そしておそらくあの少年も、また」
「……」
「荒唐無稽なことと受け取られるかも知れませんが。確かに、我々は違う世界の住人です。元の世界にはこの世界における魔法や、
トリステインという国名は存在していません。我々は完全な異邦人です」
「……うーむ。本当にそうかの? どこか遠い国から来たとか……」
「それはあり得ません、残念ながら。我々の世界では地球表面、全球上の探索をとうに終えています。あらゆる国はあらゆる国と国
交を結び、またいつでも結べる状態であり、未知の国家は存在しません」
「全球……?」
「……全世界です、失礼」
……なるほど、この世界は地動説以前の時代か。案外、球状じゃないかもしれないな。
クリフが内心そう納得しかけたところで、
「いやいや、聞いたことがあるわい。港沿いの街で、漁師が世界は丸い、と言っておった覚えがある。確かに、水平線を見れば一目
瞭然ではあった。なるほどのう……」
「少なくとも、私のいた世界では大地は球状でした。……我々は異世界の住人であり、そして、そこにいずれは戻りたいと考えてい
ます」
「ふむ? しかし、君はコントラクト・サーヴァントを受け、使い魔としてミス・ヴァリエールにつくことになってしまったわけじ
ゃが」
「ええ。ですが……私には、むこうに置いてきた仲間が二人いるのです。私の妹が一人と、まだ幼い女の子が一人。彼女達を置き去
りにしたままでは」
「……たしかに、そうじゃの。人を召喚してしまった以上、そういった関係性をすっぽり無視して呼び出されて来てしまってるわけ
じゃからな。さっきの話も、それが元で新たな少年を召喚してしまったわけじゃし……」
「実際、彼は本来完全な無関係者です。巻き込んでしまった責任は我々三人、ひいては私にあります」
「いやいや、君も知らなかっただけじゃ。それに君も巻き込まれた側で元々は無関係じゃ。しかし、わしらの召喚呪文はいわば人攫
いならぬ使い魔攫いじゃからな。人間を対象に適用されるとは思ってもみなかったのじゃ」
「……そこで、最後にもう一つだけお聞きしたいことがあります。召喚された存在を、元の場所に戻す呪文はありませんか? あの
少年も、おそらくは家族がいるでしょう。彼も元の世界に帰さなければ」
核心の質問をぶつけると、オスマンはぐむむ、と唸った。
「……ないのう。わしはこう見えてもそこらのヨボヨボジジイよりはるかに長く生きておるが……今まで聞いたことがない。残念な
がらの」
「……そうですか」
つい、少し俯いてしまう。この長老然とした老魔法使いに言われては、ずいぶんと重く説得力がのしかかってきてしまう。
「とはいえ、わしも魔法の全てを知っているとはとても言えん。どこかにそういう呪文があるやもしれぬし、希望がまったくないわ
けではない。そうじゃな……ミスタ・コルベールは知っておると思うが」
指を立てて、オスマンはこちらをちらりと見る。
「最初の草原にいた、生徒を引率していたあの方ですね?」
「うむ。光る頭がトレードマークじゃ。あれほどの輝きはこの学園では一人しかおらぬ」
「……は、はあ」
「彼はかなり……古文書フリーク、とでも言おうか。実践としても相当な腕前じゃが、なにより学問学術として魔法に詳しい教師じゃ。
彼に伝えておくでの、協力をさせよう」
「本当ですか? それは……ありがとうございます」
「ついでじゃ、図書館も一部教師以外に入れない、重要書物のある『フェニア』の区画も開放しよう。そこで調べてみるとよい。ミ
スタ・コルベールもちょうど今そこで調べ物をしているらしいしの。なに、わしが直々に言っておくでの、他の貴族連中がどうこう
言ったらわしの名前を出しなさい。たいていは問題なかろうて」
「名前を? そこまでしていただくのは……」
「いやいや、よい。呼び出してしまった側として、これぐらい骨を折るのは当然じゃ。むしろ、これだけしかしてやれん。すまんの」
「……ご厚意、ありがたく頂戴します」
クリフは頭を下げた。オスマンはニッカと笑って手を振る。
「よいよい。おっと、もうこんな時間じゃ。急がんと昼飯を食いそびれるぞい。今日のメニューはなにかの、ミス・ロングビル?」
オスマンがそう聞くと、ロングビルはすっと一枚の紙を差し出した。今日の献立表らしい。
「自分でお確かめになってください」
「冷たいのう……。と、そういうわけじゃ。わからんことがあればまたここへ来ればよい。わしはたいていはここにおる」
「はい、お時間をとらせて申し訳ありません。ありがとうございました、失礼……それでは」
もう一度一礼して、クリフは学院長の室を後にした。
「……なんで俺、ここでメシ食ってるんだ? なんでですかね?」
そう言って、才人は骨付き肉にかぶりつきながら首を傾げた。
「さあ、アタシは知らないわ。巡り合わせってやつじゃない?」
ワインをビンごとぐいぐい飲りつつ舌平目のソテーに舌鼓みを打って、実際は言いだしっぺの元凶であったヴォルフが能天気に返す。
ここはアルヴィーズの食堂である。才人も含めた四人の従者は貴族用の椅子に座って、マナーもひどいままテーブルの上の料理を
ガツガツと平らげていた。
「…………」
「……ヴォルフ、お前はひどい奴だな」
まだ大人しくパンを齧っているキクロプスと、唯一見よう見まね程度にはテーブルマナーをしているクリフがじとっとした目線を
向ける。
「? 何が?」
「……いや、いい」
心の中でため息をつく。そうだ、こいつはこれが自然体だった。おそらくいまのところ悪気も罪の意識も特にない。
「ちょっと、少しは大人しく食べなさいよ。恥ずかしいわ」
ルイズがさすがに辟易とした声を出した。
ルイズのテーブルマナーはえらく堂に入ったもので、この若さで流れるようにナイフとフォークを操り音も立てずに食事をしている。
「え、別にいんじゃね? なんかダメなの?」
才人がボケッとした目をして言う。喋る間も口は物を噛んだままだ。
「別にいいわよねぇ。大した問題じゃないわよ、食べちゃえば一緒だし。んがー」
サラダをデカい口でほお張りつつ、ヴォルフが同意を示す。
「ひどいわこれ……。大外れかしら……」
暗澹とした顔でルイズが呟いた。ちょっと顔色さえ悪くなってきている。
「外れ? 外れってなにが?」
「気にしちゃダメよ、この子口が悪いんだから。あ、その肉いただき」
「あっ、ダメっすよ。俺が取っといたんだから。それは俺の」
「ケチケチしたこと言わないのよ。ほら、あっ、皿ごと逃がさないの」
「おっと危ねえ危ねえ。なんだか知らねえけど、こんな美味いメシ滅多に食えねえし。バクッ」
「あーチクショー、狙ってたのに。じゃあこっちの魚いただくわ」
「あっ! くそ、早え。口がおっつかねえ」
さながら飢えた動物が二匹である。いくらなんでも少しみっともない……。僕まで恥ずかしくなってくる……。ルイズがぴきぴき
血管を浮き出してきてるので、ちょっとまずいかもしれない。
米軍機械化小隊が支援に来ました
「おい、ヴォルフ……」
と一応小声で注意してみるが、
「クリフも早く食べないと取られるわよ。食べないんならそれいただき」
と、僕の近くの皿が奪われた。全然聞くそぶりを見せない。ダメだこれは……。
そのうちに、ルイズの堪忍袋が破れたらしい。ドン! と机を叩いた。
「……いいかげんにしなさいあんた達……! 張り倒すわよ……? 欲しいなら給仕に言って。持ってきてもらえるから。頼むから
もうやめて」
そう言って、ルイズはチラリと後ろを振り返る。そこには同じくあまりお行儀のよろしくない好奇の目がいくつもあった。
「なによ、そうなの? それなら早く言ってくれればいいのに」
「なんだよ、怖えなー。あ、じゃあ俺この肉もう一皿欲しい。ヴォルフさん? でしたっけ。も食います?」
「そうね、お願いサイトちゃん。しかしこのワインいけるわー。これももう一本ね」
「それ、俺も後で分けてください。ちょっとでいいんで。すいませーん!」
「未成年でしょーアンタ。まあ別にいいけど」
完全に街中のファミレス感覚である。
「……ちょ、ちょっとビックリだわ……」
ルイズの隣に座るキュルケもさすがに唖然とした声を出した。
「見ないで。見なかったことにしてちょうだい。あとで教育しておくから……!」
ナイフを持つ手を怒りで握りしめながら、ルイズはプルプルしていた。これはあとが大変そうだな。僕は知らないぞ。
「ほれはほもかく……ほのほ、どうふるの?」
「……せめて飲み込んでから喋ってちょうだい」
「ングっ。それで、この子どうするのよ? 一応使い魔の契約っての、したんでしょ? なんの説明もしてないけどいいの?」
「んあ? 使い魔ってなんだ? そもそもここどこだか俺わかんねえんだけど」
才人は自分の境遇を思い出したのか、首を傾げて不思議な顔をする。
「……ここはトリステイン。トリステイン魔法学院よ。あんたは、光栄にもこのわたしの使い魔として召喚されたのよ。喜びなさい」
「んぐんぐ、召喚? はぁ? 何言ってんだお前」
びきっとルイズの額に筋が増える。
「……ダメだわ、こいつも駄犬だわ……。なんでこー人の勘に触れるのがくるのよ……」
「ああ? なんだよ、口悪いなぁ。俺なんかしましたかね?」
「さあ? アタシの時もこんな感じだったけど。ま、通過儀礼みたいなもんじゃない?」
「つーか俺なにされたんですかね? 道端の変な扉くぐったら、気づいたら教室? で倒れてたんすけど。それで、起きたらキ……」
契約の際のキスを思い出したのか、少し食べる勢いが止まって、才人が顔を赤くする。
「あら、アンタうぶねー。こんなちみっこいののキスで赤くなるなんて」
「いや、まあその……」
「アタシもされたわよ、それ。ビックリしたわよ」
「……え」
「ん? ああ、そうね。間接キスになるわね、アタシとの」
「うわ、ちょっとマジ勘弁してくださいよ。食欲落ちる……」
「あら、照れちゃって」
「て、照れてないです……うわマジかよ、うえ」
ルイズが俯いてぴくぴくとこめかみを動かした。完全に置いてけぼりにして会話を進める二人に、ルイズの激怒が高まっているら
しい。さらにもう一本額にタテ筋が生まれている。
「……と、とにかく、あんたはこれからわたしの使い魔よ。そのつもりでいてね」
「使い魔ぁ? よくわかんねーんだけど。それって、コウモリみたいなやつ?」
「……コウモリのがいくらかマシよ……! こんな駄目犬なんか……!」
言葉の中に怒りを滲ませながらルイズが呟く。語尾が微妙に震えているあたり、相当イライラしてきているようだ。
「はぁ? なんだよお前、さっきから突っかかるなぁ。なんの恨みがあるんだよ」
「なんかアタシの時よりキレてない? あ、アタシ分かったかも。ほらあれよ、気がある男の子に突っかかるみたいな」
「え!? マジですか、やべえ! さすが俺、一発で惚れさせちゃうとかすごくね? 俺かっこいいのかな」
「サイト君なかなかイケてると思うわよ? 顔も悪くないし、タッパもそこそこあるし」
「うわ、そんなに褒められたのはじめてだ。そっかー、惚れさせちゃったかー、罪作りだなー俺。最近かっこよくなってきた気がし
てたしなー」
「まあお嬢ちゃんくらいの年にはよくあることね。ちょっといいカンジのを見ると、つい恋に恋しちゃうのよ。怖いところね」
そこで、悪乗りを続けるファミレスコンビに、とうとうルイズの怒りが爆発した。立ち上がって怒鳴り散らす。
「いいかげんしなさーーーーーーい!! わ、わた、わたしをばかにしてるのこの二人組みは!! ゆ、ゆか、床に座らせるわよ
もう!! 蹴っ飛ばされたいの!?」
「なんだよ、そんなにキレることはねーじゃん。どうしたんだよホントに。下品だぞ」
「なーにかしらねー。ほら、はしたないわよ。ちゃんと椅子に座って食べなさい」
「こ、ここここのぉ!! ご、ごごご主人さまをななめなめなめ腐ってるるわわ!! ま、まままとめてちょちょ調教して……!!」
いかん、まずい。ヒートし過ぎだ。このままじゃ食卓をひっくり返しかねない。
「あーその、コホン。ヴォルフ、もうやめろ。サイト君、そこまでにしておいてくれ。ルイズちゃん、深呼吸するんだ。周囲が見てる」
クリフはとりあえずその場を落ちつかせる。大ゲンカしてまとめて外に叩き出されるのだけはちょっとゴメンである。
「えーなによークリフー。楽しくなってきたのにー」
「やっぱり確信犯でからかってるな? やめろったらやめろ、話が全然先に進んでないだろ。彼に説明しないと終わらない」
そう言うと、ヴォルフがはっとした。思い出したらしい。
「あ、そうだったわね。んで、使い魔ってやつなのよ、アタシ達も」
「そうなんすか?」
「そうなのよ。で、サイト君もこれから一員になっちゃうのよね、うん」
「へー」
「あら、軽いわね? ずいぶん気さくなのねぇ」
「いや、別に俺はこんな美味いメシとワイワイ楽しい集まりだったらいつでも大歓迎ですよ? 事情はよくわかんねえけど」
きょとんとした顔で才人は言う。
……。そうか、まずはそこの認識からか。
「あーそのねー、そのへんすんごい言いにくいんだけどねー……」
「ヴォルフ、僕が言う。……サイト君、落ちついて聞いて欲しい。たとえどれだけ驚いても、できるかぎり慌てずに。時間をかけて、
ゆっくり理解してもかまわないから」
「へ?」
「君は今……どこにいると思う?」
「……さあ? 分からないですけど」
「……簡潔に言おう。ここは、異世界だ。魔法が使われる世界。地球上のどこでもない。君のいた東京ではなく、そしてすぐには帰
れない。帰る目処も立っていない」
「……」
「僕達は昨日、この少女、ルイズちゃんに呼ばれてここに来た。そして、一方通行だ。ここから帰ることは今のところできない。こ
この学院長によれば、の話だが」
「……」
「次に待遇だ。とりあえず、衣食住はなんとか揃ってる。だから死の心配だけはしなくても大丈夫だ。ただし、このルイズちゃんの
従者として君は暮らすことになる……らしい。僕達も同じだ」
「……」
「今はそれだけでいい。他にも色々と突っ込むべきところはあるが……これ以上一気にましたてられても困るだろう」
……。……。……。
「……はい?」
「ああ、分かるよ。僕もそうだ。正直、今ここで夢が覚めないかと思ってるよ……」
「え、いや」
「だが現実らしい。現実らしいんだよこれは。本当に」
……。
「いやいやいや。なんですかそれ? 帰れないって、そんなバカな……」
「ハハハ、そうだね、バカなことだ。だが夢じゃないんだよ」
「え? いや、ホントにわけわかんないです。どうしたんですか?」
「だろうなぁ……。笑うしかないね、ハハハ」
「は、ハハハ……?」
「……冗談じゃないんだ、これは……」
……。……。……。……。……。……。……。……。……。
「……え゛っ」
「……帰れないんだよ。僕も君も……。少なくとも、おそらく数日中にどうにかできる話じゃない」
「……はい? ……えっ、なんで? ど、どうして、嘘ですよね?」
「嘘じゃないんだ……僕も頬を抓ったりしてみた。確かに痛い。ベットの上じゃないんだよ……」
「……はっ? はっ? ……はああ゛あっ!?」
「……残念だが……。だが、元はと言えば呼ばれたのは僕達だけだったんだ。それを、不慮とはいえ君を巻き込んでしまった……。
すまない。僕の責任だ」
「いやいやいやいやいや!? いやいやいやいやいや!?」
「君にも、君の両親にも僕は頭を下げなくてはならない。あの時、なぜその可能性に気づけなかったのか……。少し考えれば分かる
ことだった、ルイズちゃんは僕達を呼びたくて呼んだんじゃなかった……。間違って呼んだだけだ、と確かに言っていたのに……」
「えっえっええ゛っ!?」
「……僕が責任をもってなんとかする。だからまことにすまないが、それまで待って欲しいんだ」
「え……? え……?」
「なにをされても文句は言えない。殴らせろ、というなら殴っていい。申し訳ない……」
「……はへ……?」
才人の手から半分ほど食いちぎられた骨付き肉が落ちて、皿をカランと鳴らした。
宙を見つめたまま、才人は呆然としている。当たり前の反応だった。
しばらく、そのままの形で固まる。何も言えない状態らしい。そうだよな……。
「……あ、あのね? 実はアタシがちょーっとお嬢ちゃんにお願いして、もう一発召喚の呪も……おぶっ」
喋りかけようとしたヴォルフの口を手で塞ぐ。
「黙ってろ。僕が言うと言ったろう」
「ぷはっ、で、でも……」
「いいから黙ってろ。僕はあの時賛同していた。それに、誰が原因であろうと彼の今の状況が変わるわけじゃない」
クリフがそう言うと、キクロプスが静かに立ち上がってヴォルフの肩を叩いた。ヴォルフがぐっと押し黙る。
食卓が静かになる。やがて、ゆっくりと才人の口が開かれた。
「……ああ、分かったドッキリですよね。ドッキリだこれ。カメラ、カメラどこ?」
「ん? あ、いや、テレビ番組じゃ……」
「絶対ドッキリ。素人ドッキリとかマジかよー。うわ意外だったなー。そうだよ、そりゃそうに決まってる」
「落ちつくんだ。しっかりしろ、これは架空じゃない。現実なんだ。だからカメラは、……出てこない」
「……」
「……」
「……ハハハハハ! ハハハハハ! ハハハハハハハ! そんなバカなー!」
「……」
「……。……殴ってくれ! 誰か俺を殴ってくれ! さー夢から覚めるぞー! 俺は今日ハンバーグ食ってネットしてゴロゴロする
んだ! さー殴ってくれ!」
「……すまない……」
「いいから誰か殴って! さー早く! 思いっきりやってくれ、夢だから平気! ほら、早く! ガツンと! ドカーンと!」
宙に視線を飛ばしたまま、うつろな笑みを浮かべている才人。やけくその笑いをあげて、周囲にパンチをせがむ。ルイズがパン!
と拳を手で打って一歩前に出た。
「……じゃあ、わたしがやるわ」
「ちょ、ちょっと待ってお嬢!? ぶっちゃけアタシのせいだけどアンタもちょーっと違うわ!?」
ヴォルフが慌てて止めに入る。
「…………なんとも言えん……」
「申し訳ない、サイト君……」
「まー不憫ね……」
キュルケがふう、と息を吐いた。
「かわいそうっちゃかわいそうだけど。運が悪かったのね……あれ、タバサ?」
ふと気づくと、タバサがとことこと歩いて才人の前まで来ていた。
「あ、お前、お前でいいや、あはは。ちょっとでいいんだ、スパーンと殴ってくれ」
コクリ、とタバサが頷く。
「あっ、ちょっ……」
クリフが手を伸ばして止める前に。
まっすぐに突き出された、腰の入った強烈なストレートの拳がケタケタと笑う才人の顔面に炸裂した。
「おかしいとは思ってたんだよ……見た事ねえ場所だし、お城みたいな塔がズラズラ並んでるし……とりあえずテンション上げてご
まかしてみようとしたけどさぁ……」
才人がどんよりとして呟く。
才人が気絶してから、運び込まれたルイズの部屋で目を覚ましたのがさっきのこと。キュルケとタバサは授業に間に合わなくなる
ために途中で分かれ、ルイズと使い魔たちだけが部屋に戻ってきていた。
「知らないわよ。あんたのせいで、わたしまた自主休講じゃないの」
ルイズが眉根を寄せながら呟く。
「ふざけんなよ……どーすんだよマジで……俺なんか学校にも行けねえ……」
「いつまで言ってるのよ。しょうがないでしょ、事故よ事故。わざとじゃないもの」
……うーん、ルイズちゃん、そうは言ってもな……。この子のせいというわけでもないんだろうけど。彼にとってはあまりにもと
ばっちり過ぎる。
「ま、まあまあ、その辺で……。ところでサイト君、君は高校生か?」
とりあえずクリフは話を差し替えた。今後のことを考えなければならない。
「……はい、そうです……三年生」
「ふむ。では、18歳か……。なるほど」
日本人は顔が幼いので、中学生ぐらいの年齢だったらどうしようかと思っていた。もし彼がもっと幼かったり、うら若い女の子で
あった場合事態はもっと深刻だった。このくらいの歳ならば、数日や一週間程度家を明けたとしてもまだマシと言える。決してよい
とは言えないが。
「さっきも言ったが、とりあえず少しの間はここに逗留することを覚悟しておいてくれないか。一応、人間的な生活はできそうだから」
「……はあ。でも……」
「適当に好きなことでもやっていてくれていい。帰還のための手はずは……こっちでなんとか、してみせるから」
「……はい……」
才人は力なく頷く。そこに、ルイズが異を唱えた。
「だめよ、こいつもわたしの使い魔なんだから。わたしのために働いてもらわなきゃ」
「いやいやルイズちゃん……。僕達三人がそれはやるからさ……」
「だめったらだめよ。差別しちゃよくないもの。あんたもとりあえずは雑用よ」
「うーん……。しかしだな……」
ルイズの言葉をボーっと聞いていた才人が、ルイズを上から下へじろじろと眺める。
「……つーかさ、さっきから偉ぶってるけど、お前は一体誰なんだ?」
「お前ってなによ。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あんたとここにいる三人のご主人様」
以前クリフ達にしたように、ルイズは胸を張って名乗る。
「……長っ。なに? ルイズでいいの?」
「様をつけなさい様を。あんたが短すぎるんじゃないの。ヒラグァ・サイトだったっけ?」
「グァってなんだよ……ガ、平賀、だよ。平賀才人」
「ふーん。じゃあサイトって呼ぶわ」
「い、いきなり呼び捨てかよ……」
なぜか少し照れくさそうにして、才人が言う。
「とにかく。わたしの言うとおり、あんたも雑用。他にできそうもないしね。そこのでっかいのと一緒になにかやってなさい」
「なんだよ……めんどくさいなぁ」
ルイズが命令を下すと、ヴォルフがフランクに才人の肩を叩いた。
「じゃ、アタシと一緒に暇でも潰しましょーか。よろしくね?」
そう言うヴォルフにじろりとルイズが目を向ける。
「あんたさっき変なこと言ってたけど……なにがあっても薄気味悪いことだけはしないでよ。それだけは禁止」
「だいじょぶよ。アタシ、恋人は外に作るタイプだから。ほら、取り合いとかになったら嫌じゃない?」
「どこの誰が取るっていうのよ……絶対にやめて、とにかく」
「だいじょうぶだってばー」
……どこまで信用できるかな……。いざとなったら張り倒さなければ。あとでキクロプスにも、なにかあったら半殺しにしてもい
いから止めるよう言っておこう……。
「よし、分かった。僕の方はすぐに取りかかろう」
そう言うと、ヴォルフがこっちを見た。
「え? どっか行くの?」
「図書館だ。そこにMr.コルベールがいる。彼に話を聞いて、帰る方法を詳しく調べてみる。少し待っていてくれ」
とはいえ、目途はまったくと言っていいほど立っていない。できればすぐにでも知りたいところではあるが、あまり自信はない。
「あ、そう。じゃあ、こっちの方はアタシ達がついてるわ。がんばってね」
「ああ。なるべく急ぐ。そっちは頼んだぞ、サイト君のことも。ルイズちゃん、彼のことはヴォルフかキクロプスのどっちでもいい
から任せて、授業に行ってくれ」
「……そうね。いつまでもサボってるわけにもいかないもの」
「うん。それじゃあ」
「オッケー。んじゃねー」
クリフは手を振るヴォルフとルイズ達を背に、部屋をあとにした。
以上ですありがとうございました
サイトが18になってますが召喚のラグとか時空の狭間効果でそうしたのでこれは間違いじゃないです。でも特に意味はないです……たぶん
それでは失礼します
乙です
乙
うーむ、こういうとき責任ある立場はつらいな
395 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:01:02 ID:/CvQ2Zb0
10分くらい後に投下したいと思います。
投下なさってる作者さん達に乙を送ります。
ペースを乱さない方なんか特にスゴイ。
乙です
サイト不憫だなぁw
乙
クリフ大人だな
398 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:10:13 ID:/CvQ2Zb0
第一章〜旅立ち〜
その6 ギーシュやぶれたり!
「ワルキューレぇっ!!!」
「遅ぇ!!」
雷光のような一文字斬り、そして続けざまに縦。
二つの斬撃が、ここハルケギニアには無い漢数字『十』の形を象る。
騎士ラードから伝授された必殺技だ。
曰く、十文字斬り。
鋭く研ぎ澄まされた技は、襲いかかる銅像を4つに分断した。
「てンで歯ごたえがねえぜッ!?」
「くそ……こんな……こんな馬鹿な!!」
ギーシュの奥歯が、火花を散らすのではないかというほどに擦られる。
ここで自分は負けるのか。
年端も行かない子供が振るう剣の前に屈するのか。
武人の一家としての誇りは、すでにズタズタになっていた。
「こんな……こんな所で……グラモンの、戦でも誉れ高き一族の名を……汚すことに……!!」
焦燥に駆られ整ったヘアスタイルをかきむしるギーシュの目に、『ゼロ』のルイズの姿が留まる。
あいつが剣を渡さなければ。
いや、もともと彼女の躾が悪かったのが原因だ。
いやむしろ、あんな小僧を召喚したルイズが全面的に悪い!!
焦りに焦ったギーシュの苛立ちの矛先がルイズへ向くのには、そう時間はかからなかった。
ギーシュの薔薇が、理不尽な方角へと振るわれる。
「『ゼロ』、め……!よくも決闘に水を差してくれたなッ!」
「え!?」
399 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:11:41 ID:/CvQ2Zb0
最後のワルキューレを向かわせたのは、決闘相手の主の元だった。
ギーシュのプライドを守るための、苦肉の策。
「!?ルイズッ!」
「きゃあっ!!」
銅の巨像が少女に迫る。
握られているのは剣、切れ味は鈍そうだが当たればきっと痛かろう。
ルイズはぎゅっと目を閉じた。
恐怖で身がすくむも、いくら待てども痛みが訪れることが無い。
目を開けると、そこには動きを止める騎士像の姿があった。
「……ルイズにまで、手を出しやがったな」
ムサシの投げた黄金の刀が、ワルキューレに刺さっている。
不思議なことに像から光が湧いて、それが刀身へと吸い込まれているように見えた。
わずかに間を置いて、力を失ったワルキューレは崩れ消滅していった。
刀はまるで魔法のように宙を舞い、持ち主である少年の手元へ戻って行く。
その顔は、静かな怒りを秘めているようにも見える。
ギーシュも生徒たちも皆言葉を失い、見ていることしかできなかった。
「女を泣かせてあげくに手を上げるなんて、色男が聞いてあきれるぜッ!!」
「ぐ、ううッ!!」
今の不思議な出来事を問いただす気にもなれない。
終わった、とギーシュはそう思った。
初めは単なる八つ当たり、あんなチビならば赤子の手をひねるよりも容易い。
そう思ったのが、愚かな選択の始まりだったのかもしれない。
その結果がこの醜態だ、明日からは男子連中から後ろ指を刺され、麗しい女子には背を向けられるに違いない。
ルイズを笑える立場では無くなるだろう、ギーシュは絶望し、がくりと膝を折ってしまった。
予想外の展開に辺りがざわつく中、少年はツカツカと歩み寄りギーシュの手から薔薇の造花を奪い取った。
「……僕の、負けだ……さあ、どうとでもするが……」
「おし、じゃあ決闘だ!!」
「……は?」
ムサシはギーシュの杖である薔薇をぽいっと投げ捨てながら、そう言った。
手に持っていたワルキューレの剣が、差し出される。
「け、決闘ならたった今……」
「何言ってやがる!!」
ギーシュの背筋を悪寒が駆け抜ける、まさかこの少年はまだ自分を許す気は無いのだろうか。
まいったと言っても、こてんぱんに叩きのめす気なのでは無いかと想像して身震いした。
だが、その考えが杞憂であるとすぐに理解した。
「花うらないや人形遊びはここまでだ!!男の決闘ってのは……」
そう、コジローの持ちかけた花うらないでの決闘なんかでは無い。
自分が望むのはこういうものだ。
そう思ったムサシはギーシュの手にむりやり剣を握らせ、距離を取る。
振り返り切っ先を向け、白い歯を見せて笑った。
「剣でするもんだろ?お武家様なら、なおさらな」
400 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:12:47 ID:/CvQ2Zb0
ギーシュは剣を手にしたまましばし呆然としていた。
しかし、やがて悟って薄く微笑む。
ムサシに悪意は感じない、そしてどこまでも真っ直ぐな眼差し。
彼はただ、どこまでも決闘を欲しているのだ。
痛めつけたい、屈服させたいという自分の下卑た欲求とはまた違う、ただ、剣を振るう兵法者としての、純粋な思い。
強くありたい。
この身に流れる血故か、ギーシュにもそれが今なら理解できた。
「……我が名はギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。一対一、剣と剣での穢れない純然たる決闘を……受けて立とう」
ギーシュの顔つきが変わった。
周囲を囲んだ女子生徒や、恋いて止まないモンモランシー、そして立ち向かうムサシにもそれが解った。
決闘を望んでいなかったルイズですら、今や言葉を挟む気にはならない。
場が、戦場のそれと同じく張り詰める。
ムサシが剣を両手で正眼に構える、ギーシュもまた、不恰好ながらその腰は引けていなかった。
「……」
「……勝負ーーーッ!!!」
動いたのは、ギーシュが先だった。
いつもの格好つけた立ち振る舞いではない、細身には似合わぬ剣を腰だめに構えて、ただ愚直に突っ込む。
二人の剣士は、交錯した。
「……」
「……ぐッ」
401 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:14:55 ID:/CvQ2Zb0
ギーシュが倒れた。
観衆に驚きが伝染する。
「おい、ギーシュがやられた!!」
「マジかよ!」
「ムサシ!」
「ギーシュ!ギーシュ!!」
ルイズと、金髪を巻き毛にした女子生徒が人ごみから飛び出る。
ムサシはああ、ギーシュをひっぱたいたあの子か、と思い出した。
「ムサシ、あんた……」
ルイズは迷った。
決闘に勝つだなんて思わなかった。
『勝って』と望んでしまったのは自分、しかしギーシュは犠牲となったのだ。
叱咤も激励も、喉に詰まる。
「よくも、よくもギーシュを!!」
「そ、そうだわ……はやく医務室へ」
「おいおい、落ち着けって」
モンモランシーは横たわるギーシュの頭を抱きすくめ、涙まで零して怒る。
ルイズは焦った、その叫びにようやく級友の命の危機を感じたのだった。
虐めを受けたとは言えど、ルイズはそこまで冷酷にはなれない。
と、ギーシュがかすかに身じろいだ。
「……う、う〜ん……す、すまないモンモランシー君には寂しい思いをさせてしまった……
僕という輝ける存在を失っても君はきっと輝ける最高の女性になるだろう……なぜなら
君は光を失っても輝ける、僕にとっての太陽のような女性だったから……ああ……せめて
最後は君の胸の中で……」
「ムダに長くしゃべる元気はあるじゃないのよぉーーーッ!!」
「安心しな、『みねうち』だゼ!」
「それならそうと言いなさいこのバカチビーーーーーッ!!!」
ギーシュとムサシ、二人の頭がスパーーーンと気持よく音を立てる。
ムサシはケラケラ笑い、ルイズも気づいたときには笑っていた。
ギャラリーも大いに沸き、気がつけば決闘の刺々しい空気はどこかへ立ち消えていた。
『ゲット・イン』みねうち。
雷光丸に秘められた神秘の能力、敵の力を奪いとり己がものとする魔法。
先ほどのワルキューレから奪い取った能力で、ギーシュを傷つけることなく無力化したのだった。
402 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:17:21 ID:/CvQ2Zb0
「あいたたた、慣れないことはするものじゃないね……ああモンモランシー、自分で立てるよ」
「いい戦いだったゼ!」
「はは、完敗だったよ……だが、不思議と悪くない気分だ」
よろよろと立ち上がったギーシュ、どうやら傷は浅いらしい。
その表情は晴れやかだった。
「おいらはいつでも相手になるからさ、またやろうぜ!!」
ムサシもまた晴れやかな表情で、手を差し出した。
この少年は今の今まで剣を交えた自分と、今度は手を取り合うと言う。
今までの自分がずいぶんと小さい存在に思えて、ギーシュは苦笑した。
すべてを反省し、少年のあたたかな手に手を重ねる。
「君には敵いそうもないが……よろしくたのむ。そしてすまなかった、ムサシくん」
「ムサシでいいぜ!それよか、謝る相手を間違っちゃいねえか?」
自分よりはるかに小さな少年に頭を下げるギーシュ。
あっぱれだという声が、周囲から乱れ飛ぶ。
今ここにルイズを、ギーシュを笑う者は、いなくなっていた。
そのギーシュはというと、ムサシの声に顔を上げる。
ルイズとモンモランシー、謝罪すべき双方がそこにいた。
「あらら、あのギーシュがルイズに謝るなんて。こりゃ明日は雨かしら、ね?」
ギーシュの謝罪は、すぐにとは言わないがきっとルイズと皆の関係を変える切っ掛けとなるだろう。
視線を落とすと、親友は少年の方をじっと見つめていて反応が帰ってこない。
春が来たのかしらとからかい半分に微笑んだ。
しかし、タバサが見つめているのは彼の武器の方だったと、誰が気づいただろうか。
向き直ってルイズを見ると、使い魔をぽかぽかとぶっている。
しかしその顔は本当に心配していたようだ、ムサシも解っているらしい。
ギーシュがモンモランシーに謝罪している、その饒舌さが災いして平手を食らっていた。
また観客がどっと沸く。
その声に紛れてキュルケは隣の友人にすら聞こえないほど小さく、つぶやいた。
ケンカ友達の、照れ混じりの祝福だった。
「ルイズ、けっこうイケてる使い魔じゃないの。……おめでと」
403 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:18:57 ID:/CvQ2Zb0
オスマンとコルベールは『遠見の鏡』から目を外した。
年端もいかぬ少年が、メイジに勝った。
『ガンダールヴ』の力はやはり本当、というのが二人の結論であった。
「左手に剣を持った時、輝いておりましたね」
「うむ、ルーンの効力もあるじゃろうがあの少年、かなりのもんじゃぞ」
オスマンはほっほっほと笑っている。
コルベールが笑い事ではありません、とたしなめた。
「始祖ブリミルの使い魔であるガンダールヴと同じルーンを持つ使い魔……王室に報告すべきではないかと思うのです」
「何を言うとる」
今度はオスマンがたしなめる番だった。
仮に本物の『ガンダールヴ』であればその力を利用、ないしは悪用する連中が湧いてでるに違いない。
今は他言無用、とオスマンは威厳たっぷりに言った。
「はっ、いささか浅慮でありました。オールド・オスマン」
「よいよい」
「では、私はもう少し独自に調べてまいりましょう。失礼致します」
コルベールが退室し、静まり返る学長室。
使い魔のねずみを指先であやしながら、独りごちた。
「……名前まで同じとは、偶然かのう」
404 :
ルイズ伝:2010/12/12(日) 17:21:48 ID:/CvQ2Zb0
これにて投下終了です、ペースの方は師走で下がるかもしれません。
お待ちの方がもしもひょっとしたらまさかですがいらしたら申し訳ないとしか。
ところでSEEDの方とは体験版のおまけ的な意味で若干因縁を感じます。冗談です。リスペクトしてます。
しかしサブタイトルの方は主にサウンドトラックからつけさせて貰っているのでネタ不足が深刻。
ここは続編のサウンドトラックを買うか……
乙です
ルイズ伝の作者さん、乙でした。
おお、ついにゲット・イン発動! でも、みねうちか。
つまり、ワルキューレはル・コアール剣兵と同レベルなわけですね。
ハデス先生召喚
ルイズの病魔名【突照(つんでれ)】
半熟英雄とは懐かしいな
>409
たまごを召喚するのは考えた。
契約するとつかいまエッグになり、勿論たまごダンスをする。
スーパーエッグなら終盤でレッドドラゴン呼び出せるしな
(ただし使用回数4の時だが)
>>410 エッグマンが出てきてギーシュに割られる所まで幻視できた
ふんだららったへんだららった
たまご召喚は、相手によって色々変えれて面白いね
ギーシュ戦でベビーモス、フーケ戦でヘビーモスとか言う流れも楽しそうw
こんばんは。
フリオニールの第14話を22:40頃に投稿したいと思います。
よろしく。
フーケ事件から10日程経過したある日のこと。
フリオニールはオスマン院長とコルベールからの情報を待ちつつルイズの身の回りの世話を
中心とした生活を送っていた。
ここトリステインは貴族が幅を利かせているとはいえ平和な国家だ。フリオニールは段々と
ここでの生活も悪くないと感じ始めていた。
(まぁ、向こうにはマジックマスターのマリア、豪腕ガイがいるし何とかなっているのかも)
事実、フリオニールが消息を絶ってからヒルダ王女が捜索隊を出して行方を調査している
ものの一向に手がかりが掴めない状況の中、仲間達は着々と任務を遂行し、ついには
『クリスタルロッド』を入手。一路「ミシディアの塔」へ向かうところだった(現在、
マリア達はリヴァイアサンの腹の中。リチャード・ハイウィンドと問答中)。
久々に授業にでもお供しますか、と考え洗濯を早朝に終わらせルイズに同行するフリオニール。
本日の授業は、フーケ討伐の際にルイズが向かうことをいの一番に反対していたギトーが講師だった。
(ああ、あの腰抜けか。でも何か情報を持っているかも)
フリオニールはかすかな期待を込めて講義に聞き入る。
しかし、内容は『風』の系統こそが最も優れたものであり至高であることを延々と繰り返す
だけの退屈なものだった。
(これじゃまるで売れない営業マンのセールストークだな)
どのようなものであれ長所と短所がある。それをきちんと説明した上で上手い使い道を
提案するのがその道のプロというものだろう。
(この人は絶対に「イエローソウル」に『ブリザド』をかけるタイプだな)
フリオニールが期待はずれのギトーをジト目で見ながら耳垢をほじっていると、突然、
教室のドアが開いた。
そこにはロールしたウィッグをかぶり、レースの飾りや派手な刺繍を施したローブを身に
まとったコルベールの姿があった。
授業を妨害されたギトーはいきり立ってコルベールに抗議した。
「ミスタ・コルベール!授業中ですぞ!冗談はハゲ頭だけに」
「オホン!本日の授業は中止と相成りました!」
ギトーの非難の声を遮りコルベールはご託宣を告げた。歓喜の声をあげる生徒達。
続けざまにコルベールは
「本日はアンリエッタ姫殿下が当学院にお見えになります。皆さん、成長した姿を
お見せできる絶好の機会ですぞ。しっかりと杖を磨きお出迎えの準備をするように」
と言い残し足早に去っていった。ギトーもこうしてはいられないとばかりに後を追う。
そして、
門から本塔へ向かう道の両脇に生徒達が一糸乱れぬ整列をしてアンリエッタ王女を出迎えた。
王女が馬車から降りて姿を現すと一斉に歓声が揚がった。
(王女というのはどこでも人気者なんだな)
フリオニールは自身が仕えるヒルダ王女より少し若いアンリエッタを見て感想を漏らす。
列の後ろではフリオニールとキュルケをはじめとした留学生数名が手持ち無沙汰で王女
一行を
見物していた。タバサは通常どおり読書だ。王女へのこの関心の無さはひょっとして
タバサもこの国の人間じゃないのかも、とフリオニールは思った。
そして、フリオニールは王女に付き従う護衛の兵士に目を向けた。その中でも立派な
グリフォンに跨った、羽帽子を被り立派な口ひげを生やした青年に着目した。
(かっこいいなぁ)
フリオニールは思わずため息を吐く。男子たるものあのように堂々と振舞いたいものだ。
キュルケも同じ感想を抱いたようで例によって頬を染めて青年を見つめていた。
ルイズはというと、キュルケと同じような態度ではあるが若干落ち着きがない様子だ。
そんなフリオニール達を傍目に王女一行は颯爽と院長室のある本塔へ入っていった。
その日の夜
グリフォンに跨った青年を見てから何かと落ち着きがないルイズ。
これは一目惚れか?とからかってみたくなったフリオニールだったが、そんなことを言えば
お目玉を喰らうことは判りきっているのであえて無視し、話し相手をデルフリンガーに求めた。
「ああ、俺も王女に逢いたい」
「なんでぇ、今日会ったんじゃねぇのかよ」
「ヒルダ王女さ」
「ああ、相棒の世界のか」
「うん。この国の王女も美人だけど、セクシー度でいえばヒルダ王女の方が・・・」
「俺っちも会ってみてぇな、その王女!」
「ムフフ。デルフのはしゃぐ姿が目に浮かぶよ」
「そうかいそうかい、そりゃ楽しみだ」
二人(?)が他愛もない世間話をしているところに突然珍客が訪れた。
フード付ローブに身を纏った謎の人物が『アンロック』の魔法を使いルイズの部屋に入ってきたのだ。
「どちらさん?」
フリオニールは警戒し探るような目つきで問うた。場合によってはデルフリンガーで
迎撃する構えだ。
不審者の侵入にようやく我に返ったルイズ。怯えるルイズを傍目に不審者は無言で室内を
見回すと、二人に構うことなく懐から杖を取り出し『ディテクトマジック』の魔法を唱えた。
「ち、ちょっと!」
怒気を含んだ声で制止するフリオニールであったが、不審者はフードを取り
「どこに眼や耳があるかわかりませんものね」
正体を明かした。アンリエッタであった。
「ひ、姫様!」
ルイズは膝をつき恭しく礼をする。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
アンリエッタも膝を曲げルイズをひしと抱きしめる。
「ごめんなさいね、ルイズ。『アンロック』なんて下品な真似をして」
「いいえ、お気になさらないで下さい。それよりもなぜこんなむさ苦しいところへ?」
「ああ、ルイズ。私のかけがえのない心の友よ」
そして、ルイズとアンリエッタは昔話に花を咲かせる。なんでもアンリエッタの幼少時の
遊び相手をルイズが務めていたとのこと。
(さすが「ご主人様」。名家のお嬢様の看板は伊達じゃない!)
フリオニールは「ご主人様」が急に偉くなったような気がしてちょっぴり嬉しくなった。
テンションの揚がるフルオニールとは対照的に、アンリエッタは急に暗い表情をして
「私、結婚いたしますの」
と幼馴染に報告をした。ルイズはアンリエッタの陰のある雰囲気を敏感に察知し
「・・・おめでとうございます」
戸惑いながら祝辞を述べた。久しぶりの再開であるのに一気にトーンダウンした乙女達。
「おい、相棒。この王女は政略結婚をさせられるぜ、たぶん」
「本当か?デルフ」
フリオニールとデルフリンガーはひそひそと王女の噂話を始める。
一方、アンリエッタは重くなった場の空気を何とかしようとフリオニールに目を移し、
「ごめんなさいね。お楽しみ中だったのでしょう。『アンロック』なんて使うものではありませんね」
「お楽しみ中?」
「ルイズの恋人でしょう?」
「いいえ。俺は使い魔として召還されましたフリオニールと申します。あと、この剣は
インテリなソードのデルフリンガーです」
「よろしく哀愁!」
「あら!人間の使い魔とはこれまた珍しい。ルイズのこと、よろしくね」
「はい!」「イエッサー」
話題を変えようとしたがルイズはアンリエッタのことが気がかりで話を元に戻そうとする。
「ところで、姫様。わざわざお忍びでいらっしゃったということは・・・」
「まさか、「ご主人様」が替え玉に・・・ゴクッ」「結婚式を妨害してくれ、とか?」
「あんた達は黙ってなさい!」
無遠慮な発言にキッと睨みつけ二人(?)を黙らせるルイス。アンリエッタは頭を振り
「ああ、私としたことがあなたにこんなことを頼めるわけがないわ!忘れて頂戴!」
「姫様、おっしゃってください!」
「いいえ。話すわけには参りません!」
「昔は何でも話し合ったではございませんか! 私を心の友と呼んで下さったのは姫様です」
「ああ、ルイズ。あなたは芯が強くて優しい人。私を心の友と呼んでくれるのね」
アンリエッタは嬉しそうに微笑むと、決心がついたようで真顔になり
「今からお話しすることは他言無用です」
と言った。フリオニールはお邪魔してはいけないと思い、デルフリンガーを持つと
「じゃあ、俺、外で待ってますよ」
ドアへと向かう。
(まさかアンリエッタ王女までラミアクイーンに化けてるなんてことないよな・・・)と
フリオニールは呟きドアを開けると、目の前には真剣な表情で中腰になっているギーシュがいた。
「何やってんの?」
「うわっ!」
ギーシュは慌てふためき尻餅をついた。そして、その姿を鋭い目つきで睨むルイズが
「ギーシュ!あんた何やっているのよ!」
非難する口調で問い詰める。
「す、すみませんでした!僕は何も見ていないし何も聞いていません!」
と言い残し急いで立ち上がるとこの場から駆け足で去っていった。
「まったく!レディの部屋を覗き見するなんていやらしい男!」
「よろしいではないですか、ルイズ。これで心置きなく話ができるというものです」
「フリオニール!見張りをしておきなさい!」
「わかりましたよ」
フリオニールは手を上げてそれに応えると部屋を出てドアを閉めた。
数十分が経過し、アンリエッタがローブに身を纏い部屋から出てきた。
「使い魔さん、ルイズのことくれぐれもよろしくお願いしますわ」
「了解しました・・・そうだ、部屋までお送りしますよ」
「結構ですわ。明日旅立つでしょうから、もうお休みになって英気を養って下さい」
「旅、ですか・・・」
フリオニールは立ち去るアンリエッタの後ろ姿が視界から消えるのを確認すると部屋に入り
「それで、王女の頼みって何だったんですか?旅って言ってましたけど」
「明日からアルビオンへ行くから」
「アルビオン?」
「そう。わたしは大使に任命され姫様から託された任務を遂行するの」
「へぇ、そうですか。どんなところなんですか?」
「それは行ってのお楽しみ。けれど、戦地とだけは言っておくわ」
「戦地!」
フリオニールは戦地という単語を聞き驚愕した。この娘は本気で戦地へ向かうつもりなのか?
「戦地へ赴くということは命を張れということですね」
「そうね。けれど、わたしは必ず任務を果たすわ!」
「さすがです、ルイズさん!と言いたいところですけど、命を賭ける程のことなんですか?」
「国家の一大事よ。トリステインの命運がかかっているといってもいいわ」
「でも、大勢の兵士がうごめく場所へ行くんでしょう?状況によってはその兵士達と
戦うことに・・・」
「別に戦争をしに行くわけじゃないわ。書簡を届けてある物を引き取るだけよ」
「そうですか・・・けれど、俺、「ご主人様」を守りきれないかもしれませんよ」
「何よ、ずいぶん弱気ね。強いくせに」
「戦場というのはそういうところです。兵士の実力も未知数だし。けれど、そんな危険な
任務を幼馴染の親友に託すって・・・」
「姫様の悪口を言うつもり?だったら許さないわよ!」
「こういう任務は俺みたいな平民のソルジャーがやるのが俺の住む世界の常識でして」
「ハルケギニアではメイジが戦場の最前線に立つものなの。あんたにはわからないでしょうけど」
「わからないです・・・はぁ、帝国を倒す前に命尽きてしまうことになるのか・・・」
主人と使い魔がそれぞれの思いを胸の内に秘める中、ひっそりと夜が更けていくのであった。
フリオニールの第14話は以上です。
失礼しました。
フ ル オニール乙
しかし、中途半端にネタに走るとちょっと寒いな…
乙
ギーシュは除外か
心の友ねえ、もしゼロの使い魔が映画化したらアンリエッタが勇敢で優しい頼りがいのあるお姫様になるのだろうか
心の友、つまりお前のものは俺のもの、俺のものも俺のものというわけか
なるほど納得した
アンリエッタは困ったちゃんなお姫さまぐらいが面白い
フリオニール乙です。
>>426 結構合ってるから困るwww
>>426 お前の者は俺の者か・・・サイトのことだな
こんにちは。何も無ければ三分後に投下いたします。
「待ちなさい!」
そこへやってきたのは、今まで教室で泣き崩れ、今になって食堂へとやってきたルイズだった。
騒ぎの原因は他の生徒の話によると、ギーシュが落とした香水の瓶をシエスタが拾い、それによって彼が一年の女子と同級生のモンモランシーとで二股をかけていたのがバレてしまった。
そして、その責任を瓶を拾ったシエスタに擦り付けようとしたら桐山が介入し、あろう事かギーシュを殴り倒してしまった事でここまで騒ぎが発展してしまったという。
「ギーシュ! 馬鹿な真似はやめて! 学院での決闘は禁止されているはずでしょ!?」
「それは貴族同士の話だよ。使い魔とではない」
鼻で笑うギーシュはさらに続け、
「君の使い魔の躾がなっていないから、この僕が代わりに躾けてやろうというんだ。少しは感謝してもらいたいね」
そう言って食堂から去っていった。
唇をかみ締めるルイズは未だに平然と立ち尽くしている桐山の方を振り返り、彼に詰め寄る。
「あんた、何を勝手な事やってるの! 貴族であるギーシュを殴り倒すなんて!」
「あ、ああ……キリヤマさん。申し訳ありません……わたしのせいで、こんな事に……」
ルイズが喚き散らし、シエスタが泣き崩れて詫びているがやはり桐山は全くの無表情である。
すると、桐山は持っていた本をシエスタに手渡す。
「ヴェストリの広場はどこだ?」
彼が発した言葉にシエスタは蒼白になり、首を横に振る。
「いけません、キリヤマさん! 貴族と決闘なんかしたら、殺されてしまいます!」
「主人の許可もなく、そんな事をするのは許さないわ!」
しかし、桐山はすぅと目を閉じ、二人を無視して食堂を後にしていく。
慌ててその後をルイズは追った。
「ちょっと、どこへ行くの!」
「ヴェストリの広場を探す」
即座に返され、ルイズは唖然とした。桐山はやる気だ。
彼は怒りや屈辱などといった感情を抱いている訳でもない。なのに、何故決闘を受けようとするのか。
「貴族に平民が勝てる訳ないじゃない! そんな事は許さないわよ!」
桐山の正面に立ち塞がり、必死に叫ぶルイズ。
メイジである貴族には魔法があるのだ。対して、桐山は明らかに平民。勝算は無きに等しい。
「ちょっと……!」
桐山はルイズの脇を通り、さっさと立ち去ってしまう。
桐山は他の生徒達が自分を見つつ血相を抱えて移動するのを見て、その方向からヴェストリの広場の場所を勘で推測し、そこへと辿り着いていた。
「諸君、決闘だ!」
ヴェストリの広場にギーシュは薔薇の造花を模した自らの杖を掲げ高らかに宣言をする。
集まってきた群集から歓声が湧き上がる。
「逃げずに来たとは、その勇気は褒めてやろう!」
目の前に佇み、こちらを見つめてくる桐山に杖を突きつけるが、やはり無表情のままだ。
「何とか言ったらどうだね? ……いや、平民に貴族の礼儀を期待する方が間違っているか」
鼻で笑うギーシュ。
恐怖で声が出ないのか、とも思いたいが残念だがそうではなさそうだ。では、何も考えていないのか。
だが、どうであろうと決闘は続ける。そして、貴族の力を平民に思い知らせてやるのだ。
「あんたの使い魔、大丈夫なの?」
やってきたルイズの隣に立つのは、寮生活において隣部屋同士であるキュルケだった。
「大丈夫な訳ないでしょ。……もう、何であんな決闘なんか受けるのよぉ」
額を押さえ、ルイズは顔を歪めていた。
「でも彼、とても落ち着いてるわね」
ルイズから見れば落ち着いている、というよりは何も考えていないようにも見えた。
「だからって、平民が貴族に勝てる訳がないでしょ!」
ルイズの願いとしては、桐山がわざと負ける事によりそれでギーシュが満足してくれる事だけだった。
今、ここで使い魔を失う訳にはいかない。
使い魔が負けたと、恥をかくことになってもそれだけは避けなくては。
「あなたはどう思う?」
キュルケは自分の脇で無関心そうに本を読むタバサに語りかける。。
「結果をは見ないと分からない」
(彼……ただの平民じゃない)
タバサはちらりと桐山へ視線を向けていた。
先日、ルイズが彼を召喚した時から彼から異様な威圧感を感じ取っていた。
恐らく他の生徒達はそれで恐怖などしか感じられていないだろうがタバサは違った。
(……血の臭いがする)
それは祖国からの過酷な任務をこなし、時には血を流し、実戦経験が豊富なタバサだからこそ嗅ぎ取れるものだった。
あの少年は、その手を血で濡らしている。人を、殺めた事がある。
彼がここに召喚される前、一体何をやっていたのかは知る由もない。
だが、確実に彼は自らの手で、しかも事故などではなく実戦で人を殺めている。
それも一切の躊躇いも、容赦もまるで無く。
(わたしと……同じ?)
「雪風」の二つ名を持つ自分よりも遥かに冷たい、一切の感情が宿っていない凍りついた瞳……。
まるで人形のようなその瞳が、自分とそっくりに思えた。
学院長室へとやってきていたコルベールは学院長であるオスマンと会話をしていた。
春の使い魔召喚の際に、ルイズが平民の少年を呼び出し、そして彼に刻まれたルーンが見た事がないものであったことを話していた。
オスマンは、コルベールが描いたルーンのスケッチを見つめた。
「あの少年の左手に刻まれているルーンは……伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じであります……」
「つまり、君は彼が伝説の使い魔、『ガンダールヴ』であると、そう言いたいのかね?」
「……まだ憶測の域を出ませんが、その可能性は大いにあります……」
普段なら何かを新しいものを発見すれば子供のようにはしゃぎだすはずのコルベールであったが、今度ばかりは様子がおかしい。
何やら、酷く思い詰めた様子だった。
「どうしたのだね? そんな顔をして。お主らしくないではないか」
「……いえ、何でもありません」
苦々しい表情のままコルベールは首を横に振る。
何か訳ありのようだ。オスマンは問いただすのを中断する。
「ふむ……。――誰かね? 入りたまえ」
その時、コンコンッっとドアがノックされた。
扉の向こうから現れたのは、オスマンの秘書ミス・ロングビルだった。
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。
教師達は、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
「たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい。
……で、誰が暴れておるのかね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あのグラモンとこのバカ息子か。血は争えんのう。……それで? 相手は誰じゃ?」
「それが……、ミス・ヴァリエールの使い魔のようです」
その返答とともにコルベールの顔が蒼白になった。
「いけない……! すぐに止めなくては!」
「どうしたと言うのかねミスタ・コルベール、そんなにあわてて…さすがにグラモンの馬鹿息子も平民を殺したりはせぬよ」
そうまくしたてるコルベールをなだめながらオスマンは言う
「……使い魔のことを言っておるのです。……あの少年は、普通ではない」
人を殺める事に何の躊躇もしなさそうな無情の瞳。
彼が誰かと争わなければ良いと願っていたのが早々に打ち砕かれる。
それで誰かを傷つけでもしたら……。
「私が止めてきます」
意を決したコルベールは踵を返し、学院長室を後にした。
「それで……本当によろしいのですか?」
「うむ。まあ、放っておきなさい。子供同士の喧嘩じゃ」
と、言いつつ彼女の尻に手を伸ばそうとするオスマン。
手が触れる寸前で、ロングビルの肘鉄が彼の頭に叩き込まれていた。
「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね」
しかし、やはり桐山は無言である。
構わずにギーシュは杖を振り、造花の花びらを一枚地面に落とす。
零れ落ちた花びらは光と共に、甲冑を纏った女性を模したゴーレムへと変化する。
「僕の二つ名は「青銅」のギーシュ。よって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手をするよ」
桐山はワルキューレを見て、くくっと小首を傾げていた。
ギーシュが杖を振ると、ワルキューレは桐山に向かって前進し始める。
桐山はガチャガチャと音を立てて走りこんでくるワルキューレを、そしてギーシュを交互に見比べていた。
(ふっ……一瞬で片付くな)
ボーっとしていて隙だらけに見える桐山にギーシュが勝利を確信して笑みを零す。
だが、それだけではこちらの気が済まない。わざと急所を外して少し甚振ってやらねば。
自分の顔をあれだけ思い切り殴った代償を払ってもらう。正直、まだズキズキと痛む。
ワルキューレが拳を突き出し、それは桐山の顔面を強打するはずだった。
(何……!?)
確かに、その一撃は彼の顔面に入った。
しかし、桐山は顔を殴られた方向に向かって動かす事で衝撃を受け流し、全くの無傷だった。
「どうしたギーシュ!」
「さっさとやっちまえー!」
その光景を目にした多くの生徒達は桐山が無傷である事に一瞬、唖然としたが一部からそのような野次が飛ぶ。
ワルキューレはギーシュの命令により、次々と連打を繰り出す。
パンチが、蹴りが、目の前にいる平民を地に伏させるべく容赦なく繰り出されていく。
(……何故だ?)
ギーシュはその光景を見て、顔を顰める。苛立ちが湧き上る。
(何故、奴は無傷なんだ?)
桐山はワルキューレの猛攻を常人とは逸脱した絶妙な、そして優雅な動きで次々と回避している。
その際、彼はかすり傷一つも負ってはいない。
そして、その間にも彼は相変わらずの無表情だった。
「……な!」
ギーシュは目を疑った。
何が、起きたのだ。
桐山がワルキューレの攻撃を体を横へ捻って回避した途端、ズガッという音と共に突然ワルキューレが大きく吹き飛ばされていたのだ。
10メイルは吹き飛ばされたワルキューレは群集達に向かって飛んでいき、彼らは慌ててそれをかわした。
そして、学院の壁に激突し、バラバラに崩れ去る。
今まで桐山の神がかりな回避に静かだった群集が、今度は完全に沈黙する。
「な、何が起きたんだ」
「いや……平民が攻撃をかわした途端に……」
「な、あいつ……何をしたの」
今、目の前で起きているのは現実だ。
先程からルイズは唖然とし、口を開けていた。
平民であるはずの桐山が常人離れした動きで攻撃をかわし、挙句の果てにゴーレムを吹き飛ばしてしまったのだ。
何をしたのか、全く見えなかった。
(あいつ……あんなに強かったの?)
驚きと共に、何故か嬉しさが生じてくる。
極めて寡黙で雑用くらいしかできない平民だと思っていたのが、まさかあれ程にまで強いなんて。
決して、役立たずな使い魔ではなかったのだ。
「……ほう、平民にしては中々やるな」
一瞬、口端を痙攣させて笑ったギーシュは杖を振り、今度は七体のゴーレムを召喚する。
「……僕も調子に乗りすぎていたようだ。本気でいかせてもらう!」
剣や槍、メイスなどで武装したワルキューレ達が佇む桐山を取り囲み、一斉に攻撃を仕掛ける。
だが、桐山の姿は忽然とその場から消えていた。
「……ど、どこに?」
ギーシュが狼狽する中、ワルキューレの一体が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
桐山はいつのまにかワルキューレが手にしていた剣を握り、囲みの外へと出ていた。
ワルキューレ達が次々と桐山に突進していく。
桐山は手にしていた剣を投げつけ、二体をまとめて串刺しにした。
倒れようとするワルキューレの一体へ瞬時に駆け寄り、その手から今度はメイスを奪い取る。
体の遠心力を活かして振り回し、一体を殴打。さらにもう一体へと衝突させた。
その背後、左右からワルキューレが武器を振りかぶって襲い掛かる。
しかし、振り下ろされた武器は桐山ではなく、彼が手にしていたメイスを捉えていた。
軽やかに蜻蛉を切り、瞬時にしてワルキューレの背後へと着地していた桐山は一体の背中に掌低を繰り出し、吹き飛ばす。
そして体を思い切り捻り、落ちていたメイスを再び拾って最後の一体の頭へと叩き付けた。
この時、光るはずであった彼の左手のルーンは、一切の光を発さず力を発揮してはいなかった。
(……すごい)
あまりにも常人を逸脱した桐山の戦闘に、タバサは感嘆とした。
どんなに鍛えられた手練のメイジでもあそこまでの動きをとる事はできない。
多くの修羅場を巡ってきた自分でさえ、彼の動きは初めの一瞬だけを見るので精一杯だった。
そして、その間に垣間見ていた彼の表情は、全くの無だ。
焦りも、恐怖も、余裕も、何一つ伝わってこない。
まるで今、行っている戦闘ですら彼にとってはただ機械的にこなしているだけのようにも見え、戦慄する。
そして、タバサは感じ取った。
(……やっぱり、わたしと同じ)
「そんな……馬鹿な……」
自分の精神力の全てを注ぎ込んで作り出したゴーレムを全滅させられ、ギーシュは力なくへたり込んだ。
彼は、ただの平民。そのはずだ。
なのに、こんな事があって良いのだろうか。
あり得ない光景にギーシュは恐怖する。
「ひっ……」
ちらりと、桐山はギーシュへ視線を向けてきた。
戦闘中も全く変化のなかった表情、瞳――それを目にしたギーシュは蒼白する。
そして、即座に感じ取る。
(こ、殺される……!)
桐山はギーシュを見つめていたが、しばらくするとつかつかと歩き出し、向かってくる。
ガクガクと震えるギーシュは尻餅をついたまま、後ろへ下がる。
「ま、まいった! 降参だ!」
しかし、桐山の足は止まらない。
何故、止まらない。
ギーシュは自分がまだ杖を持っている事に気付き、それも放り捨てる。
だが、桐山は杖に目もくれる事も無く止まる様子は全くない。
何故だ。何故、止まらない。
自分はもうワルキューレを作り出す事もできない。悔しくはあるが降参もした。杖も捨てた。
それで勝敗は決まったはずだ。なのに――
そして、はたと気付く。
自分は彼に、その事を言ったか?
貴族同士の決闘の勝敗は、本来ならどちらかが降参するか杖を落とされた時。……しかし、今回はその事を一度も口にしていない。
この決闘、自分が一方的に勝つものだと思い込んでいた。だから、ルールの説明なんてしていなかった。
平民に貴族のルールを説明しても、意味などないと思っていた。
だがそれでも、自分はもう戦えない。
いくら平民の彼でもそれに気付けない程、愚かではないはず。
なのに、何故止まらない。
(逃げないと……逃げないと……)
しかし、恐怖に全身を支配され、もはや立つ事はおろか動く事さえできないギーシュ。
突然、腹部に突き刺さるような激痛が走った。
「う、ぶ――」
ギーシュはその場で嘔吐し、胃にまだ残されていたものを吐き出す。
それを見ていた生徒達が悲鳴を上げる。
(痛い! ……何で、こんなに痛い! この決闘で、彼からは何も受けていないのに!)
腹を押さえて蹲り、悶え苦しむギーシュ。
「……ある男が、健康診断を受けた」
突然、立ち止まった桐山が口を開き始める。
「その男が帰りに、車で子供を轢いた。男は数分と経たない内に腹部に激痛を覚え、病院で再検査を受けた」
(何を、言っている)
「検査の結果、男は重度の胃潰瘍と診断された。もちろん、先の検査では健康そのものだった。
男は短時間で胃に穴が開いていた。……つまり。
――極度の恐怖や緊張で、人間の体はすぐに壊れる」
何を言っているのか、恐怖に支配されるギーシュに理解する事はできない。
ただ、このままでは自分が殺されてしまう。それだけしか考えられなかった。
そして、桐山が目の前まで来た所で意識を手放した。
「もうやめてっ!!」
白目を剥いて気絶するギーシュの前に立つ桐山の背中に、悲鳴を上げて飛び掛るルイズ。
「決闘は終わったの! あんたの勝ちよ! もう戦わなくてもいいの!」
「どうすれば終わる」
(え……?)
「決闘は、どうすれば終わる」
「何を……言ってるの?」
「俺は決闘が終了する条件を聞いていないんだ」
「だって、ギーシュが散々降参していたじゃない!」
意味不明な言葉にルイズは喚く。
「それが終了の条件であると、彼は言っていない」
確かに、ギーシュは一度もそんな事は説明していなかった。
しかし、もう戦う事すらできないのだ。いくら平民でもそれは判断できるはず。
それが、桐山は分からないのか?
「……いいから! もう決闘は終わりよ! 主人の命令よ!」
そう叫ぶと、桐山はすっと目を閉じて大人しく従い、その場を後にしていった。
既に気絶しているギーシュに対する興味も失っていた。
(まさか……!)
ヴェストリの広場へと向かう道中、桐山とそれを追いかけるルイズとすれ違ったコルベール。
そして、そのすぐ後気絶したギーシュが他の生徒達にレビテーションの魔法をかけられて医務室へと運ばれていくのも見届けた。
生徒が無事である事を知って、ホッと息をつく。
ただ、あの様子からしてギーシュは彼に殺されかけたのだと察する。
危害そのものは加えていないようだが、決闘が続いていたら確実に彼はギーシュを殺していたのだろう。
一切の躊躇も、罪悪感も、後悔も、何一つ感じる事はなく。
何故、あんな少年があそこまで冷酷になれるのか。
コルベールには分からなかった。
以上、三話でした。
失礼いたします。
乙
ルーンなしとは強すぎる
桐山さん怖すぎるぜ…
乙
原作でも人間止めてるしなww
無情さん乙。
そうか、心の揺らぎが限りなくフラットだからガンダ発動してないのか。
ガンダ効果なしでギーシュをボコにしたのは割とあるにせよ、
まさか手も触れず、胃潰瘍でノックアウトとは桐山さんパねえ……
最近の中じゃこないだ召喚されてたジェイソンと並んで最恐の使い魔だよな。
ハルケに血の雨が降るぜ……
中学生レベルじゃない奴がたくさんだったけどこいつは一人人間レベルじゃなかったもんな。
聖帝様とは違った意味での冷酷さ
おいおい、格闘や電脳戦でも人間辞めかけてる奴等ばっかだったじゃないか
コイツは完全に辞めてたけどな!
武術コピーの技能マジチート
主人公も手榴弾を空中でキャッチして投げ返す化け物だったよなw
ジェイソンさんで思い出したが、
昔、「人間」のジェイソンさんを呼び出す話を考えたことあったな。
宝物庫の宝が「太古の精霊力が宿った仮面」で
フーケのゴーレムに踏み潰されて死んだジェイソンさんが装備して
無敵の化物に変化する展開で。
最後は、ラグドリアン湖に重しと一緒に沈められて終了みたいな
>>447 スプラッターハウス思い出した。
ジェイソンとは似て非なるものだと思うけど、
ジェイソンよりは制御しやすいんじゃないかな、とは思う。
中の人普通の人間だし。
確か仮面がなんかの化け物だったか、特殊な力を秘めてるんだったよな。
ルイズが怪物化して戦うのか
多少強化した程度じゃルイズはおっかさんを超えられん
そこで石仮面の出番さ
>>448 最終的に中の人、とんでもない強さになるって聞いたんだが
>>452 確か続編の2だか3だかで、仮面のせいで完全に人外になっちゃったんだっけか。
>>453 1の終盤以降は仮面なしで化け物張り倒せるレベルって聞いたw
ジェイソンって見たこと無いけどマスクみたいな話なのか
スプラッターハウスのリックと13日の金曜日のジェイソンは似て非なるもの。
ジェイソンとスプラッターハウスは別物だ
とある洋館に逃げ込んだら恋人が怪物にさらわれて
ミック(主人公)は突如現れたマスクの力を借りて恋人を助けに行く
って感じの話
で、結局恋人の所に辿り着いたら、恋人は怪物に改造されちゃってて自分の手にかけることになるんだよな。
2で恋人が生き返って、3だと子供が巻き込まれるんだったっけ?
>>458 ビダーシャルに連れ去られたルイズを助けるため、仮面の力を借りてアーハンブラ城を駆け抜けるサイト。
しかしルイズの元に辿り着いた時、彼女は無残な姿でサイトに牙を剥くのだった。
と、ゼロ魔風にアレンジしてみる……鬱なんてもんじゃねーな。
つーかなんでスプラッターハウスなんて知ってる人間がこんなにいるんだよw
いや名作だろう
>>460 どんなマイナーネタ出しても1人か2人は食いつくよな、ここw
ともあれ、いろんな意味で名作と言うことは確かだ。
スプラッターハウスは結構有名だと思う。
>>462 俺はハーフエルフ嫁にした魚屋が通じるのに驚いたな。このあいだ愛蔵版でたけど。
無常の使い魔乙
正直、今回ギーシュは死ぬと思った
ルーンについてもある程度想像してたが、やっぱり無意味か
知識を得る関係についてもやはり働かないのかね
単純に武器なら桐山なら少々触って構造を理解して扱いこなしてしまうだろうし
そして苗字繋がりで
スパロボで想像以上の強さを見せてきやがった桐山英二を召喚とか考えた
原作では現状どう変わっているか未知数であり
アニメ版準拠ならもう性根の腐りっぷりはどうしようもないので
やはりやめた
どっちにしろ森次のいない世界で奴に意味は・・・
>>463 勇者カタストロフは確かに知る人ぞ知る、って感じだったもんな。
牧野先生自体結構色んなところで漫画を描く人だから、それで知ったと言う人もいそう。
>>464 森次有ってこその英二だからなぁ。そこんとこは仕方ない。
魚屋で思い出したけど、うめぼしの謎のむささびなんかも召喚したら面白そうだ。
作品の都合上かなり多芸だし。
>447
ジェイソンさんを言い出しといてなんだが、思い出すなw
まぁ、ジェイソンさん謹製のジェイソンさんとか考えないでもなかったが、この先は○×スレだな。
勇者カタストロフやるんだったら、アンアンやジョゼフが「暴動だー!」でズタボロになってくれると信じている。
桐山といえば俺はやはりキリヤマ隊長を思い出すなあ
温厚な人格者でフルハシのお袋さんが来たときの心配りやメビウスでも引用された名台詞は忘れられん
ノンマルトを・・・
所詮奴らは先住民を偽る侵略者よ
13日の金曜日3の途中までは袋。
途中からホッケーマスクで完結編死亡するまでは
怪力で打たれ強いだけの人間。
この時点ですでに、あらゆる武器が使える気がする。
契約のキスでママにルイズに従えと命令される感じ?
キュルケはキャンプの指導員なみにビッチなので、殺害対象になる。
フーケ戦で死亡し、フーケが宝物庫から盗んできたヘルマスクの力で再生。
ルイズの持ち金が完全に尽きるまで何度でも復活可能な仕様に。
(アーケードのコンテニュー的な意味で)
スプラッターハウス、今度リメイクされるんだぜw
そして勇者カタストロフのSS、書いたんだが先代のパソコンとともにお亡くなりになった
ねったーい!うりん!
ルイズが呼び出したのは不思議な小箱
金色をした四面体に幾何学的な模様が刻まれた奇妙なパズル
ルイズがそのパズルの組み換えに成功した時
ハルケギニアに、痛みこそが快楽となる「異世界」が降臨する・・・
ハルケギニアにガラガラヘビがやってくる
ガラガランダ召喚!
RXとカブトに刺されるぞ。
>>412 一瞬ドクターエッグマンの方かと思っちまった。
東京魔人學園剣風帖から裏密ミサを召喚したらミョズニトニルン一択だな。
使う魔法はガチで異端扱いされそうだけど、恋愛占いは学園の女生徒達にウケるかもしれん。
ヴィンダールブ としてFF4のリディアを召喚
>>472 北欧ではすでに発売されてるが
日本版出るんかね?
>>474 ヘルレイザーときたかw
嫌な予感しかしねえw
どうせパズルを呼ぶなら千年パズルとか
SIRENから須田恭也とか召喚されないかな
不死身属性、宇理炎、焔薙持ちで
異界を渡り歩いてるっぽいからその過程で
ちょっとググってみたけど、なかなかチートなキャラだなw
一方的に蹂躙しないようにするのが大変そうだw
>>485 SIRENか。小ネタで1つか2つくらいあったっけな。
俺も某スレであらすじを見た程度の知識だけど、上手く使えば結構面白くなりそう。
裏を返すと扱い難しいから下手するとえらいことなるって事だけど。
たしか2あたりのラストじゃ各々がパラレルワールドに振り分けられちゃってるし、
2のメンツに限ってはED後と言う設定も面白げ。
一瞬PSYRENと読み違えてあれそんなやつ居たっけって思ったのは秘密。
終了後のジュナスとカプリコ召喚とかは最終話のとき一瞬考えたな。
剣使いだし、カプリコの身の安全を保障すれば使い魔やってくれそうな気がする。
ハルケはサイレン世界じゃないからある程度弱体化もしてそうだし。
でも呼び出して一番面白そうなのはカブトや朧だと思う。
ライズとかあるだけでPSYRENの人物は無双になりそうな気もするけどな
名前忘れてたけど序盤に出てきたゴーレム使う奴とか楽しそう
SDKがガンダになったらもう止まらん・・・銃も使えるしな
ジュナスは現代の時点でドラゴンボールの世界で生きていけるだろって動きするから確実に無双だな
人殺すのに躊躇一切ないどころかむしろ進んで殺しに行くレベルだし最初の時点で大惨事
イルミナ抜けたせいで元と比べても超弱体化とかさせればまあ
>>488 >>490 そういう意味でもカブトや朧を召喚するといいなあと思うんだよ。
カブトはイアン式ライズだし、朧もそれに近いライズを覚えている描写があった。
イアン式ライズは身体能力上がらないはずだからガンダ補正も生きてくる。
ルイズに振り回されつつちゃっかり馴染むカブトとか、
持ち前のフリーダムっぷりでルイズを振り回す朧が眼に見えるようだ。
カブトはなんとなれば幻視やもう1つの力とかあるし。
ルイズが魔法を使えるようになるようなキャラクター召喚っていうのはどうだろうか。
……駄目だ、チルチル召喚でノボルに機関銃突きつけて迫る場面しか思い浮かばん……。
もういっそSS世界には「ゼロの使い魔」っておとぎ話がある事にして、ルイズを月打させるか。
>>492 マジョリータ召喚とかでいいんじゃね?
おジャ魔女ルイズ、爆誕!
>>491 朧の場合はともするとガンダがマイナスに働くんじゃね?
『地球生命の氣との一体化』を目的とする仙人への道と
ガンダとの相性をどう設定するか、って所かなぁ。
まとめwiki久々に見たら桐山召喚されててwktk
ただ重箱の角な指摘で悪いけど、桐山が居た国は日本じゃなくて大東亜共和国だよ、念のため
しかしカズヲさんがいないとなると大量脱出で大団円になるんだろうなw
ただ杉村は原作通り琴弾に殺される確率たかいけど・・・
>>494 ああ、スプリガンの朧ではなくPSYRENの朧な。俳優(タレント?)の方の。
ここみたいな複数作品の話題が混在するところだと同じ名前とかよくあるから、
たまにこんがらがるよな。俺も良くある。PSYRENとSIRENとか。
朧は基本的に素手だし優に負けたのは感情が昂ってしまったせいだし
優だったら相性は抜群だろうが朧じゃ相性がマイナスだろう
屍人オスマン「ミ゙ズロ゙ン゙グ゙ビ゙ル゙やーい、恥ずかしがってないででてきなざーい゙」
>>494 いっそリーヴスラシルにして、その力を如何に御するかを話のメインにするとか?
詳しい能力が判明してないのが問題だけど
500 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/14(火) 12:09:37 ID:1a+knVeI
>>495 あっ、そうだ。うっかりしていた。国内の県名も日本と同じだから忘れていたわ。
ご指摘ありがとう。
ジェイソンにせよ桐山にせよ、ハルケギニアに召喚してくれたおかげで元の世界は大助かりだな
よく分からない内に大勢の人の命を救ったルイズであった
そういう系を召喚した小ネタの〆に使えそうだなw
っていうかあった気がするw
逆もまた然りだけどなw
ハルケギニアはゴミ捨て場かよ
いっそ▲様をだな…
>>485 あの武器って確か普通の人が使うと死んじゃうんだっけ?
宝物庫の中にあるのがロケランじゃなくて宇理炎と焔薙で
才人はガンダルーンのお陰で辛うじて使いこなせるが使うたびに肉体がボロボロになって…とか思いついた
>>507 静岡の△頭だっけ?
ジョゼフや教皇が召喚したら面白そうだな
奴らの罪悪感を呼び覚ましてくれそうで
>>501 逆に彼らが召喚されたことで不利益こうむることは?
もしかしたら、サイトは召喚されなかったことで、秋葉原で車に轢かれてたり。
>>508 たしか、命を捧げて効果を発揮するのが宇理炎。 不死属性を得たSDKだからこそ何度でも利用できる。
>>510 dクス
アンドバリの指輪で不死になったゾンビが使ったらどうなるかとか
ガンダールヴのルーンでどこまで使いこなせるかとか色々考えると楽しいw
ちなみにSDKは赤い水で肉体的に、彼女の血で魂的に不死になってる
ウリエンじゃないと死なないんだよな、SDKも
>>509 ジェイソン自体は身よりも無いみたいだし、既に死人みたいなもんだからいなくなっても問題は無いはず。
桐山もバトロワのプログラムに参加した時点で死んだようなものだから、
召喚されても特に問題は無いだろうね。結局死ぬし。
まあ殺されるはずだった奴らが生きてるお陰で、
何かしらのトラブルが発生する可能性はないではないけど。
>>513 あのタイミングで桐山がいなくなると、三村の分校爆破がたぶん成功するからプログラムは大惨事になるw
フランケンシュタインの怪物を召喚
意外と紳士だけど切れると怖い
ふむ
>>514 ラスボスが織田様に、灯台組は結局別の原因で野田が暴発し自滅
光子は杉村殺した琴弾を殺した直後、光の戦士
プリーシア・ディキアン・ミズホに制裁され人知れず死亡
そしてなぜかちゃっかり脱出組に混じっているヅキ
「アタシ、背負っていくわ!充ちゃんたちの分まで背負って生きていくわ!」
こんな感じになるんですね
フランケンシュタインの怪物か
小ネタにモデルにした映画の奴があった気がするが
映画知らんが描写的に実写版キャシャーンの宮迫アクボーンを思い出した
ガンダールヴ=バラシン
ミョズニトニルン=サグレー
ヴィンダールヴ=アクボーン
リーヴスラシル=ブライキングボス
・・・などと考えててふと思ったが
今まで四大使い魔がルイズの元に一度に全員揃った話はあったっけ・・・
小ネタのバカボンパパくらいか
>桐山もバトロワのプログラムに参加した時点で死んだようなものだから
先生!桐山くんの能力を知る人たちは大半が桐山くんが死ぬとは思ってないと思います!
むしろ大本命だっただろ>桐山
対峙した杉村(だったよな?あのカンフー)の桐山の評価は「虚無の悪魔」だったなぁ(漫画版)
>>517 個人的その展開だと、相馬VS川田or三村の寝技対決に期待する
てーかプリーシア・ディキアン・ミズホ様、ミョズあたりで召喚されてたりしそうだなw
キャシャーンSinsのキャシャーン
権力に驕る悪い貴族はキャシャーンが壊しに来るぞ
>>513 そういやジェイソンはイカれた母親と別れた父が再婚相手と作った腹違いの妹がいたような
>>521 完全に子供のしつけに使われる御伽噺的な存在ですな
まぁ原作通りなわけで!
そして元の世界大助かり的な内容だと
某種の主人公とその幼馴染とヒロインと双子の姉だか妹だかが居なくなったら・・・
・・・DPは決して悪い世界じゃないと思うよ、将来的に歪むだろうけど
もしくは召喚されたことで元の世界に危機が迫るので
早く帰らなきゃな内容もありそう、というか話途中で召喚されたら大抵はそうなるよね
フリオニールは三人パーティでもわりと大丈夫みたいだけどw
何となく、“名前にジョンの付く使い魔”とか考えようとした。
ジョンストン島から来た使い魔は既にあったなぁ。
こんばんは。
フリオニールの第15話を22:50頃に投稿いたします。
誤字脱字やすべる小ネタもあるかと思いますがひとつよろしく。
>>522 FC版でフリオなしだと敵から逃げられないけどね。
>>523 小ネタにスキャットマン・ジョンとかどうっすか
早朝。
朝靄がかかっていて風はない。しんみりとした風景に溶け込むようにルイズとフリオニールは
馬に荷物をくくりつけて出発準備をしていた。
もうここへ戻ることはないのかもしれない、とフリオニールは万感の思いを込めて学院の
空気を深く吸う。すると、爽やかな風が二人の間を吹き抜けた。
「僕も君達に同行することになった」
二人は後方を振り返ると、先日アンリエッタの護衛を勤めていた口ひげの青年がグリフォンに
跨り微笑を浮かべて近づいてきた。
「ワ、ワルド様!」
「久しぶりだね、ルイズ」
ルイズは顔を赤くし両手を頬にあてると、ぼんやりした眼差しでワルドを見つめた。
ルイズとワルドが知り合いであることが判明した為、フリオニールは自身が昨日想定した
「ルイズ一目惚れ説」を覆された。
「えっ?お二人は知り合いなんですか?」
「そうだ。僕はルイズの婚約者だ」
「こ、婚約者!?」
ワルドの発言に目を丸くするフリオニール。じゃじゃ馬で高飛車な娘を婚約者にするのか、
多分尻に敷かれるな、とワルドに同情の視線を向ける。
ルイズは「婚約者」の言葉を聞きさらに頬を赤く染めている。確かにワルドは美男子だ。
照れてしまうのも無理はない。
「あ〜、なるほど。そうですよね。かわいい婚約者が危険な任務に向かうんですから心配ですよね」
「それもあるが、これは王女の命令なのだ。君達二人だけでは心許ないのだろう。しかし、
極秘の任務であるゆえ一部隊をつけるわけにもいかない。そこで、僕が名乗りを上げ
晴れて任命されたってわけだ」
「そうだったんですか・・・それはそうと挨拶が遅れました。俺はルイズさんの使い魔を
させてもらってますフリオニールといいます(無理やり召還されたんだけど)」
「女王陛下直属の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルドだ」
「よろしく、ワルドさん!」
「よろしく。しかし、人間の使い魔とは珍しいな」
ワルドは珍獣でも見物するような目つきでフリオニールをガン見した。その視線にどう対応
すればいいのか困惑するフリオニール。ルイズは助け舟を出すようにフリオニールをフォローした。
「これでも中々の実力を持っていますわ、ワルド様」
「ああ、ルイズと一緒にあの「土くれのフーケ」を捕らえたのだろう?大いに期待しているよ!
ところでルイズ。君は僕と一緒にこのグリフォンに乗っていこう」
ワルドはグリフォンの頭を撫でながら提案した。口調は穏やかであるが有無を言わせぬ
押しの強さを感じる。
一方、ルイズは躊躇いがちに
「えっ!?・・・でも彼は?」
「俺?そんなこと気にしないで下さいよ。せっかくの再会なんだから!」
「気を使わせてすまないな、フリオ君」
「いいですって」
使い魔の処遇を伺ったが、当の本人は至って無頓着であった為ワルドの案はすんなりと可決した。
そして、ワルドはグリフォンから降りルイズをお姫様抱っこすると
「ははは!ルイズ、君は相変わらず体が軽いな!まるで羽のようだ!」
「お恥ずかしいですわ、ワルド様」
「いいではないか。この早朝、誰も見てはいまい」
「朝から見せ付けてくれますね、おふたりさん!」
こうしてルイズとワルドがグリフォンに、フリオニールが馬に跨ると、一行はアルビオンを
目指し魔法学院を後にするのであった。
しかし、ワルドの「誰も見ていない」の言葉とは裏腹にこの光景を見ていた者が二人存在
していたのだが。
ルイズ達の出発を見ていたものは依頼主であるアンリエッタだった。院長室の窓から
不安げな表情で一行を見守る。
「始祖ブリミルよ。彼女達にご加護を」
アンリエッタは手を組み目を閉じると祈りを捧げた。
椅子に座り茶を啜りながらアンリエッタを穏やかな目で見つめるオスマン院長。
「姫様、ご安心なされ。あの3人は絶対無事に帰ってきますとも」
「そうであるといいのですが・・・」
院長が言うのだから何か確証があるに違いない。それにワルドも同行させた。
アンリエッタは組む手の力を一段と強めて小さくなっていく3人を見届けた。
ルイズ出発を目撃したもう一人の人物はキュルケであった。目端が利くのか目ざといのか
不明だが事件を嗅ぎつける嗅覚は人一倍だ。
例によって親友のタバサの元へ向かう。ドアを叩くが返事がないのでやむなく『アンロック』の
魔法を使った。謝罪はあとでしっかりやれば良い。事後承諾だ。
タバサはぐっすりと眠っていた。キュルケは起こすのを一瞬ためらったが、緊急事態なので
なり振りかまってはいられない。タバサの体をゆすって叩き起こした。
「・・・なに?」
「おはようタバサ。無理やり起こしてごめんなさいね」
「・・・また彼のこと?」
「そうなの!今度は王女の護衛をしていたハンサムな彼も一緒よ!その彼とダーリン、ルイズの
3人が人目を忍ぶように学院を出て行ったの。これは何かあるに違いないわ!」
「・・・わかった」
タバサは頷き使い魔の風竜を呼ぶため口笛を吹いた。止めたところでどうせ万難を排して
後を追うに違いない。タバサはパジャマ姿のまま最低限の支度を済ませた。
支援
馬を走らせて半日が経過した。
道中馬を休ませながらグリフォンの二人を追うフリオニールだったが、幻獣であるグリフォンと
家畜の馬では性能差は歴然で次第に距離を引き離されていた。
いくら自身が平民の使い魔とはいえ、馬で移動しているのだから多少スピードを落とすくらいの
思いやりがあってもいいだろう。どうせ俺はお邪魔虫ですよ、と拗ねながら馬にムチを振るうフリオ。
ルイズは遅れをとっているフリオニールか気がかりのようで
「ちょっとスピードが早いんじゃないかしら?」
「ラ・ロシェールまで止まらずに行きたいんだ。ついて来られないなら置いていけばいい」
ワルドに減速を求めるが即座に却下された。
「メイジとして使い魔を置いていくなんてできないわ」
「まさか、君の恋人ってわけじゃないよね?」
「こ、恋人?ま、まさか!」
「ならいいんだ。婚約者に恋人がいるなんてことになったらショックで死んでしまうよ。それに、彼にした今朝の挨拶が間抜けになってしまうからね」
ワルドは振り返って遥か後方で必死に馬を走らせるフリオニールを一瞥し不敵に笑った。
そして、さらに数時間グリフォンと馬はスピードを競ったが、ついにフリオニールは
ルイズとワルドを見失ってしまった。
日が傾きかけ空を赤く染める頃
懸命に馬を走らせていたものの結局追いつけなかった為、フリオニールは馬を止めて降りると
がっくりと肩を落とした。
(ここでドロップアウトか。でも、これって戦力外通告ってこと?)
フリオニールは途方にくれて辺りを見回す。すると、渓谷の両側にそびえる断崖絶壁の
所々に空洞があるのを見つけた。
(まさかあの中に人が住んでいたりして)
そんなわけないか、と思い直した次の瞬間、空洞の中から大量の火矢がフリオニールを
的と捉えるかのように一斉に飛び出してきた。
(どういうことだ!)
フリオニールは背中に携えたデルフリンガーを素早く抜刀し、目にも留まらぬ早業で次々と
火矢を打ち落としていった。見事なクリティカルヒットだった。
「中々の剣さばきだぜ、相棒!」
デルフリンガーはようやく出番が回ってきて嬉しそうにはしゃぐ。
「ここはアルビオンなのかっ!?」
不意打ちを喰らい敵はアルビオン兵であると推測するフリオニール。
考える暇も与えぬうちに再び火矢の群れがフリオニールに襲い掛かる。今度はアイスシールドも
装備し辛うじて火矢を防ぐことに成功した。
(フィンの武器屋で売っている『ほのおのゆみ』程威力のある弓じゃないな)
フリオニールは地面に落ちた火矢をチラ見して呟いた。とはいえ大量の矢だ。
反撃を試みようにも相手は断崖絶壁の空洞の中。自身はこの世界のメイジのように
空を飛べるわけではないし魔法は白魔法をいくつか使えるだけで黒魔法を習得していない。
1対1の接近戦であれば自信のあるフリオニールでも、このように大群でしかも間合いを
取られて対峙されてしまっては手も足も出せない。
(だから俺は戦場が苦手なんだよ!)
いくら異世界へ召還されその世界でのルールに従って行動しなければならないとはいえ、
命を落としてしまっては元も子もない。このハルケギニアという世界は平和そのものと
思っていたが、トリステインの隣国は戦火に塗れており危険とは常に隣り合わせなのだと
気付かされる。いつ火の粉がこちらに降りかかるかわからない。
歯ぎしりをして空洞を睨みつけるフリオニールの上空に見覚えのあるドラゴンが飛んできた。
「ダーリン!」
「キュルケ!タバサ!」
「丁度いいところに!手を貸してくれ!」
フリオニールは頼もしい助っ人が登場し狂喜乱舞した。
「会いたかったわ、ダーリン」
笑顔でフリオニールを見つめるキュルケ。
「乗って」
タバサは無表情で一言風竜に乗るよう促した。
「ありがとう!恩にきるよ」
フリオニールは軽やかな身のこなしで風竜に飛び乗る。
降り注ぐ火矢の嵐をキュルケの『ファイアーボール』とタバサの『ウィンドブレイク』で
打ち払いながら風竜は猛スピードで矢の届かない距離まで高度を上げた。
敵の攻撃が届かないのを確認するとキュルケは不思議そうに
「ところでダーリン。ルイズとハンサムなお兄さんは?」
「あの二人は俺を置いて先に行っちゃったんだよ」
「どこへ向かうつもりなの?」
「アルビオンっていうところ・・・ってここはもうアルビオンなの?」
「ここはトリステインよ」
「じゃあ、あいつらは盗賊団か何かか?」
「そんなところだと思うわ。ダーリンはメイジじゃないから狙われたのね、きっと。
ところで、アルビオンへ行くならきっとラ・ロシェールに立ち寄るはずよ」
「案内してくれないかな?お二人さん」
「元からそのつもりよ。ねっ、タバサ」
フリオニールに行き先を聞き出しタバサに同意を求めた。無言でコクッと頷くタバサ。
馬にくくりつけた荷物が気になるフリオニールであったが、下へ降りればまた火矢が
襲ってくる。どうせ着替えしか入ってはいない。必要なものは町に着いたら揃えよう。
えっ?お金はって?もちろんこの二人のレディから借りるつもりである。返済する気は
あるので決してヒモではない。お世話になった馬の無事を祈りつつフリオニール、キュルケ、
タバサの3人はルイズとワルドが向かったであろうラ・ロシェールを目指すのであった。
フリオニールの第15話は以上です。
失礼しました。
乙
乙
乙
DFFじゃのばらも黒魔法使ってたっけ?
貴様、反乱軍だな
チェリーな使い魔、七ラミアクイーンじゃないみたいだし。 」に笑った。
見事な比喩。
おお、FF2なんてやってたのか。
あのゲーム昔は、味方ぼこりゲーといわれていたが
実は、盾もって攻撃受け続けると、皇帝の流星すらかわすんだよな。
それだけに後半の盾も兼ねたもディフェンダーの一刀流は、超強かった。
>炎の弓
レイラとゴードンはこれもってひたすら後ろで撃ってたけど、
気がついたらヒルギガースを瞬殺してたな。
これからも楽しみにしてますぜ。
FFか、エアリス生存ルートがあるとガセ情報を信じて一ヶ月くらい古代種の都で止まったり、セフィロスを超級武神覇斬でめった切りにした少年の日々
双子に無意味に金の針使ったり、不用意に森に入ってラムウに瞬殺されたころもみな懐かしい
>>539 お前は俺か
俺は二周目に助ける選択肢が出るって聞いてたなあ・・・・
ネットが浸透してない時代でこそだ
おれはティファ派なので平気で先進めて一回クリアで満足したが
一応エピソード飛ばす事でエアリス生存は可能だが下手すると不具合起きるんだよな
ザックスとあの世で幸せに暮らしてるだろうから問題ないな
エアリスもティファも飾りです派のおれ
たまたまググって出てきたカービィのSSが可愛すぎて辛い
カービィ可愛いよカービィ
デマといえば、ドラクエ2やってた頃「ザキ系使えば使うほど相手のザキも効きやすくなる」というデマを聞いた。
それ以来ザキ系は一度たりとも使ってないし使いそうなクリフトは馬車の中から出した事なかった。
もともとあいつの中途半端さはハンパじゃないしね
ベホマラーは「賢者の石」で済むし
Zの一番のごほうびはユフィとのデートイベント。これは譲れない。
同じくデマと言えば、クロノトリガーにおいて隠し武器に「親父の剣」が存在するとかあったなぁ。
デマと言えばゼロの使い魔4期はデマすらないな
三期の終わりが原作とどう食い違ってるか数えるのもだるいくらい
原作とアニメがまったく違う作品なんてざらにあるが
グルグルの一期なんて途中から完全オリジナル、でもきちんと二期につないだ
三期冒頭なんて時間巻き戻してたじゃん。
細かいことは気にしナーイ
乙のばら
>>524 >FC版でフリオなしだと敵から逃げられないけどね。
マジでっ!?
FFUはいつもカツカツで慎重に進んで
味方が一人でも死んだら頭からやり直したほうが早いってスタイルで進んでたから
ぜんぜん知りませんでしたよ
小学生当時はカシュオーンで初めてつっかえたなぁ
>>546 まるでクリフトの存在意義がザキとベホマラーだけみたいジャマイカ
他にも・・・・・・他にも・・・・・えーっとえーっとええええっとぉ・・・・
そう、はぐメタグッズ装備できる!
>>554 まだ重要な役割が残ってるぞ
[メインが死んだら馬車から飛び出してターンを稼ぐ]
[一人でボスに挑み逃げるを連打するターンを稼ぐ]
何を言うか
クリフトにはアリーナ関連の同人誌で色々な役目を担わされる重要な使命がある
ボこられる役くっつく役寝取られる役どうでもいい役etcetc
トルネコは?
Wはピサロが仲間になってから控えが増えたよな
青い閃光「僕にはパーティのお荷物になるなんて信じられません、っと・・・」カタカタ
トルネコは他所で主役張ってるしぃ
あえていうならトルネコがテリーとかリョウで(褒め過ぎかな)
クリフトがラッキーグローバーとかあの辺
>>558
トルネコ「どうせ私なんて、人質として牢屋に入る程度の価値しかない男ですよ・・・」
だがお前にはダンジョンに潜る力がある。それは何よりも尊い力だ
嫁さん美人で有能、息子は将来有望、そして本人は主演でタイトルに名前も入ってるスピンオフに出まくり
市川海老蔵を召喚するSSを考えて見た。
(中略)
マルトー「我らの“歌舞伎”!貴族用のワインだが飲め飲め」
海老蔵「勘弁して下さいよw」
10分後
海老蔵「おい、オッサン。このゴミ箱に入れたワイン早く飲めよ」
マルトー「へ?」
海老蔵「オラ、俺の酒が飲めねえのか!?」
マルトー「ガポガポ」
海老蔵「ハハハハハ、いいザマだなオイw」
ゴチン!
海老蔵「て・・・めえ・・・フライパンで俺を殴ったな?」
シエスタ「ハァ・・・ハァ・・・マルトーさんに何をするんですか?」
海老蔵「・・・(ガクッ)」
うーむ、ブライにはバイキルトをかけるという重要な仕事があるしな
アリーナとライアンは好みの問題かな?
ホイミン召喚なんてどうだろう?
>>566 人間になる前なのか、なった後なのか。それが問題だ
人間になった後って、どんな能力なのか判明してるんかね?
職歴
ホイミスライム → 吟遊詩人(ニート)
あいつ絶対進化の秘宝使ったよね
モシャスン
マルチェロが召還されるシチュが思い浮かんだけど
バッドエンドになる以外道がない気がする
どこのマルチェロさんだよ
マルチェロ物語ぐらいしか出てこないが
あれならギーシュあたりとは意外といい関係になりそうな気がするが
DQ8のマルチェロ?
どの時期のマルチェロかにもよるが、負ける前のマルチェロだと言う事聞かなさそうだなあ
でもあいつは魔法も打撃もいける上に蔵書全暗記頭脳持ちの文武両道キャラ
ルイズに召喚させるよりテファに召喚させて途中までハートフル
テファ発見後はサイトの兄貴分でアニエスのライバル的存在におくかね
>>562 ゲーム内の性能ならトルネコは実は最強なんだよ!
ドラクエWTASでのやつはまさしく武神だった
>568
ホイミスライムが使い魔なら狂喜するだろうな。
で、カトレアの病気は直せないのでがっかりする。
後のシリーズだと、仲魔にして成長出来たっけ?
「殺してザオリク……じょ、冗談で」ちゅどーん
>>576 体力高いし攻撃力もライアン、アリーナに見劣りしないしな。
いまフリーだったと思うし、ちょうどいいんじゃない?
マルチェロ・リッピ召喚
ファンタジスタ嫌いだから虚無との相性がイマイチか?
治せなくてもちょっと疲れたらホイミで割と健康体かもしれない
ルイズにゼシカは召喚させちゃいけないな、うん
>>581 おっぱい+魔法 なキャラだっけ?
ルイズのコンプレックスをめった刺しじゃねえかw
>>582 おそらく世界の描写の壁を考えると、キュルケより大きくアンリエッタより美しい乳
更に伝説の賢者の末裔の天才児
>>576 口をふさいで呪文を封じるとか、他のキャラクターの魔法でもできないことをやってくれるからな、あの男は。
京介お兄ちゃんがルイズの人生相談とか
我侭で理不尽な所が妹にソックリ
>>585 京介が召喚されちゃったら地球に残された妹が発狂します
そーいやなのはさん召喚はあっても士郎召喚はないんだよなぁ
アレこそメイジ殺しの最たるものだろに
幻想殺しとガンダールヴはどっちが強いの、と
>>589 「幻想殺し」は特殊能力負荷はないですから戦えばまあ普通にガンダールヴが勝つでしょう。
上条さんがガンダールヴに、ということでしたらあの右手を持つ上条さんはそもそも召喚されにくい
(黒子のテレポートが『効きにくい』点からそもそも召喚されない、というのではないと思います)ですが
インテリソードとか持ったら壊してしまいますしルーンを右手で触ったらガンダールヴで無くなってしまうでしょう。
「神の起こす奇跡」すら無効化してしまいますから
>>585 タバサが京介になついて「お兄ちゃん」と呼び出し、
自分もそう呼びたいが呼べなくて悶えるルイズ
もしくは桐野も一緒に召喚して、ルイズとどちらが先に「お兄ちゃん」と呼べるか争うが
結局どちらも言い出せず最後は京介に八つ当たりちらす
以上俺妹見たことない俺が妄想してみた
トリステインがフランス系なのでエリカ・フォンティーヌ召喚とかどうだろうか?
召喚されても「これは異国でも不幸な人を助けなさいという神のおぼしめしなのですね!」と超ポジティブ
朝はいきなりおはようダンスでルイズを唖然とさせ、食堂を手伝えば香水ごと大量の皿を割る
でもフーケ編ではなんやかやで改心させ、しつこく付きまとって品評会でキュルケやタバサと組んで歌劇団を結成
最後はみんな揃って勝利のポーズ、決め!
上条さん素のスペックは普通の人間とか書かれてるけど
劇中の描写見る限りとても人間のソレとは思えん超耐久と拳の威力
>>588 高町恭也召喚は以前書いてたんだけどやたらと契約までが長すぎて挫折した
あと、彼の性格から言って最初のルイズは護るに値しない存在なんだよね
最初の高圧的なのは逆に反感しか生まないからね
フーケ辺りだったら護っても良いかなって気にはなるだろうけど
とらハヒロイン達が基本純愛的なせいもあってツンデレに耐性所か経験も無いし
彼、朴念仁な上に恋愛とかにはすんげぇ鈍感だから
初期ルイズの行動はツンデレ耐性が高いか、本当のM属性か、奴隷根性の持ち主でもないと非常に難しい……砂戸太郎(えむえむっ!)が一番問題ないんじゃないかなぁ。
行く当てがない事を強調すれば大丈夫なんじゃね?
で、他に行く当てを見つける前にイベント起こして召喚された側に放っておけない気持ち湧かせる
>>593 反射神経というか動体視力というか、その辺も人間じゃないよな。
>>595 あとは、主人公を見守るタイプ
……いわば先生キャラぐらいだろうなぁ
>>595 「あれ?石動先輩、何時の間に髪の色ピンクになったんですか?」
こうですね
>>590 魔法=ナノマシン説なら、大丈夫。
幻想殺しは科学技術を殺せない。
>>596 わざわざそこらへんを強調しないと言う事を聞いてくれなそうな奴だと
別にルイズに頼らなくても何とかなりそうだったりしそうw
>>600 科学技術で生み出された電撃能力で打ち出されるコインはかき消せる
科学技術で生み出されたベクトル変換能力で打ち出される鉄骨や風はかき消せない
幻想殺しってふしぎ!
仮面ライダー系が最近出ないなぁ
禁書の超能力ってパーソナルリアリティ(オレだけの現実だぜ)ってくらいだから
きっと上条さんが幻想殺しで消せると思えば消せるんだよ!
>>603 逆に考えるんだ、「出なくてもいいさ」と考えるんだ
そうしたら出なくてもなんとも思わないだろう?
上条さんは超能力者じゃないです
つーか、とっくにカミヤン召喚話あるだろw
おまいらスルーの魔法使ってんなww
>>605 そうだ!俺たちは別に働かなくてもいいし生きていなくてもいいんだ!
そのとおり!
>>608の言い分を独断と偏見で解釈したところ、ニート侍ことシグナムを召喚すべきとの結論が出ました。
え?ニートつったらバッテン頬の「サムライ]」(海外版)でしょ?
アレならメイジ殺し上等だしガタきてる体をガンダールヴでテコ入れ出来る
>>611 体にガタが来るほど働いたってことではないのか?
というか彼はもう休ませてやれ…
イカ娘召喚はどうだろうか?
意外と相性良さそうな気が…
をを、イカ娘なら相手の呪文詠唱を邪魔する「強制詠唱」や相手の魔術の根幹を支える信仰や教義の矛盾点を徹底的に糾弾することで相手の精神を一時的に破壊する「魔滅の声」
という特技があるから剣使いとは別の意味でメイジ殺しだな
誰かと間違えているんじゃなイカ
え? ヨグなんとかさんって言った?
>>595 ドMな使い魔か・・・
「ゼロのルイズが召喚を成功させたぞ!」
「しかもあの黒い豪奢なマント、貴族だ!」
「ゼロのルイズがメイジを召喚したぞ!」
「あ、あの・・・私・・・まさか・・・貴族を召喚してしまうなんて・・・思わなくて・・・それで」
「ふぅ〜ん?なるほどねぇ、ついにボクが召喚される出番が回ってきたってわけだねぇ
あんな暑苦しいラストを迎えるなんてツイてないって思ったら
むっふっふっふw
逆にボクは運がいいね!
こぉんな最高のご主人様に飼っていただけるんだから!」
「へ・・・?あ、あの・・・」
「期待を裏切って悪いけど、ボクは貴族じゃあないよ
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「は・・・?貴族じゃない・・・?じゃあ、あなたいったい何者・・・?」
「ボクはジ・エーデル=ベルナル、創世の芸術家さ!!」
(とりあえず、君の爆発に飽きるまでは付き合ってあげるよ、ご主人様♪)
こんな感じか
こんばんは。
フリオニールの第15話を21:00頃に投稿いたします。
最初フリオニールではなくDQ4のクリフトで話を考えていた時期がありました。
フリオもいいけどそろそろネタが・・・。
>>595 保護者タイプとか死ぬ直前死んだ直後、世捨て人タイプでもいけるかもね
SPRIGGANの朧はちときつそうだけど世界自体には興味をかなり持ちそう
サラリーマンなら魔法なんかいらないくらいの英才教育を施してくれそう
優には無理っぽいけど朧ならちぃ姉さまの体も良く出来そうだな
風竜の懸命な飛行により港町ラ・ロシェールに到着したフリオニール達。
道中、フリオニールはルイズが王女の密命を帯びてアルビオンへ向かうこと、王女が同行
させたワルドはルイズの婚約者で魔法衛士隊の隊長であることを二人に説明した。
ルイズに婚約者がいると聞きフリオニールをめぐる恋の行方に光明が差し機嫌の良くなるキュルケ。
「けれど、王女から授かった任務って何かしら?」
「詳しいことは俺にもわからないんだ」
「秘密主義なところあるわよね、ルイズって」
「まぁ、言えない理由があるんだとは思うけど・・・」
フリオニールは自分を置いていった冷酷な(?)ご主人様とその婚約者の顔を思い出し
苦い顔を浮かべた。
フリオニールは風竜の背中から降りて辺りを見回す。港町とキュルケから聞いていたので
てっきりパルムかポフトのような漁師の町を想像していた。
しかし、このラ・ロシェールは海どころかそびえ立つ一枚岩を加工した建物がずらりと
並ぶ山の中の町だった。
「驚いたでしょ?」
「うん。これが港町だなんてレイラもびっくりだね、これは」
キュルケのいたずらそうな目線をフリオニールは少年のような澄んだ眼差しで見返す。
「『土』系統のスクウェアクラスのメイジが作った」
タバサから一言付け加えの説明を受けてハルケギニアの魔法の奥深さを見せ付けられた
フリオニール。自身の住む世界でこのような芸当が出来そうな人物と言えばパラメキア皇帝
くらいしか思い浮かばない。
「もう夜も遅いし「ご主人様」を探すのは明日にしようか。早起きしてさ」
「そうね。それがいいわ。今夜は寝かせないわよダーリン」
3人は貴族が宿泊しても違和感のないグレードの宿をとった(キュルケが強引に相部屋に
しようとするのをフリオニールは慌てて拒否した。結局、部屋割りはフリオニールが一部屋、
キュルケ、タバサの二人で一部屋となった。平民なのに高待遇なフリオニール)。
丁度3人が宿屋に入っていくところをマント姿に白い仮面を付けた男とフード付ローブを
まとった人物の二人組が隠れるようにして見ていたのだがフリオニール達は気付かなかった。
一方、ルイズとワルドは
『女神の杵停』というラ・ロシェールで一番値の張る高級な宿にいた。
まるで新婚旅行のようだね、と呑気なことを言うワルドを尻目にルイズは置いていって
しまった使い魔の安否を気にかけていた。
急いでここまで来たのは良いものの、アルビオン行きの船が出港するのが明後日であると
桟橋の係員から聞くに及び、足止めをくらう苛立ちとフリオニールを置いてけぼりにした
罪悪感がルイズの心の中に錯綜した。
そのようなルイズの心境を知ってか知らずかワルドはしきりに相部屋を要求してきた。
ルイズはやんわりとしかし強い意志を持ってその誘いを断った。いくら婚約者とはいえ
婚前交渉する気にはなれない。ゲルマニアの女であれば抵抗なく部屋を共にするのだろうが
慎み深いトリステインの女としてそれを受け入れるわけにはいかなかった。再会が10数年ぶり
というのもある。確かにワルドは幼少時の憧れの存在であったが、今現在の正直な気持ち
として結婚は当分先のことと捉えている。そんなことを言っているうちに姉のように婚期を
逃してしまうのだろうかという一抹の不安がないといえば嘘になるのだが。
「そうか、わかったよ。けれど、そのような貞淑なところも愛しいよ、ルイズ」
「ごめんなさい、ワルド様。今は任務のことで頭が一杯なの」
こうして二人は別々の部屋をとり休息をとるのであった。
翌朝
フリオニール達はルイズとワルドを探すべく街中の宿屋を訪問していた。一番高級な宿から探そう、
というタバサの提案によって1件目にしてルイズ達を見つけることができた。
ルイズはまだ夢の中だったがワルドは起床していた。宿屋の従業員から連絡を受けてワルドは
ラウンジへやってきた。フリオニールはわざと怖い顔をつくり
「いくらなんでもひどいよ!俺を一人にして行くなんて!」
「この程度で遅れをとるようではルイズの使い魔は勤めきれないぞ、フリオ君!」
「いやいや。あんたは立派なモンスターで空を飛べても俺はタダの馬だったんですけど!」
「乗り物のせいにするとは感心しないな」
「いくら婚約者と一緒で舞い上がっていたとはいえ同行者の管理もできないようでは
隊長失格なんじゃないですか!?」
「言ってくれたな、フリオ君。わかった。君の実力がどの程度のものか僕がテストしてあげよう」
ワルドに抗議したが、逆にテストを受けるはめになった。
放置プレイに続き今度はテスト。この男は余程のS気質なのか?反省のないワルドに怒り心頭の
フリオニールとは対照的にキュルケとタバサは冷めた目で二人の男を見ていた。
「決闘なさるの?ルイズの婚約者さん」
キュルケは落ち着いた口調でワルドに問う。
「ああ、僕の見立てが正しければ彼は伝説の使い魔『ガンダールヴ』だ」
ワルドの衝撃発言にキュルケは唖然とした。タバサも眉をピクリと動かす。
わが意を得たりと得意げに講釈を始めるワルド。
「僕は歴史や用兵に興味があってね。以前書物で見た『ガンダールヴ』のルーンと彼の
ルーンは一緒だ。それに、決闘と言っても命を取ったり再起不能になるような攻撃は
加えないつもりだ。あくまで伝説の力量を確かめるだけなのだからね」
フリオニールは強引なワルドを見て案外亭主関白なタイプだな、と尻に敷く女房タイプの
ルイズとの結婚生活は上手くいかないだろうと思いつつ
「ち、ちょっと!俺はテストなんか受けないよ!」
「尻尾を巻いて逃げるのかねフリオ君」
異議申し立てをしたが、挑発されてついに
「わかったよ。逆に俺があんたを採点してやるよ!」
「よし!そうと決まれば話は早い。この宿には資材置き場に使っている広場があってね。
そこで行うことにしよう。レディ達には立会人として見届けてもらいたい」
決闘を受け入れてしまった。ワルドはキュルケとタバサに立会い人を頼むと外へ出ていった。
決闘場
対峙するフリオニールとワルド。うっすらと輝く朝日が二人の顔を照らす。
決闘の行く末を興味深そうに見つめるキュルケとタバサ。
ワルドはレイピアに似た杖を取り出す。フリオニールは剣も盾も装備する気配はない。
「素手とは僕も舐められたものだな!背中の剣と腕に装着している盾は飾りか!?」
フリオニールは挑発に乗ることなく真顔のまま返す刀で『アンチ』の魔法を唱えた(熟練度3)。
2つの光の輪がワルドの周りに出現し飛び回った次の瞬間、ピンク色をしたピラミッド状の
結界が出来上がりワルドを囲い込んだ。
「『ガンダールヴ』が魔法とは片腹痛いぞ!」
ワルドは素早くルーンを詠唱し『エア・カッター』の魔法で結界を切り裂こうとした。
しかし、結界は破れることなく数秒が経過した後自然に割れて消えた。
結界が消えると同時にワルドは精神力が少し落ちた気がした。朝起きてカーテンを開けたら
外は雨だったような憂鬱な気分とでもいおうか。
フリオニールは続けざまに『アンチ』の魔法を唱える。
そうはさせるものか、とワルドは光の輪を避けようとするが輪は追いかけてくる。
再び結界に囲まれた。さらに気分が優れなくなるワルド。
(これは精神に作用する魔法なのか?「ヤツ」から聞いた情報だと『偏在』や『蜘蛛の糸』の
ような魔法を使うはずだがこのような手段も持ち合わせていたとは!)
ワルドは心の中で呟くが慌てることなくタイミングを見計らって『エア・ハンマー』の
魔法で反撃を開始した。
巨大な空気の槌が上空からフリオニールを狙って振り下ろされる。不可視なので攻撃が
向かっていることさえ気付かない。一陣の風がフリオニールの頭上に舞った次の瞬間、
『エア・ハンマー』はフリオの頭部に直撃した。
「うわっ!」
脳天に衝撃を受けガクッと膝を落とすフリオニール。
「ちっ!この一撃で倒れぬとは」
ワルドは粘るフリオニールを一瞥し舌打ちをする。先程の『アンチ』で精神力を消耗して
いるので魔法の乱発は避けたい。
一方、フリオニールも『アンチ』を2回放ったのに魔法を使われた為、ワルドのMPの
高さに舌を巻く。『エア・ハンマー』のダメージを『ケアル』で回復しながらこの「テスト」は
予想以上に難問だと感じた。もちろんワルドに対する採点は文句なしに合格点だ。
お互いに出方を伺い間合いをとる二人。ワルドはこの状況を打破しようと
「フリオ君、剣を抜きたまえ!僕の杖と君の剣、先に落としたほうが勝ちというはどうだろう?」
「わかったよ」
決着方法を提案しフリオニールはそれを受け入れた。
フリオニールは背中のデルフリンガーを抜刀し、
「よろしく頼むよ、デルフ」
「任せときな、相棒」
挨拶を済ませると構えをとった。盾は装備する気がないのかそのままだ。ワルドはそれを
確認すると迎撃する構えをとる。カウンター作戦のようだ。
フリオニールは先手必勝とばかりに素早い飛び出しでワルドとの間合いを縮めた。
大剣とレイピア状の杖が火花を散らす。剣術は互角。打ち合いをするもののお互い決定打を
放つことができず次第に体力勝負の様相を呈してきた。
「この僕を相手にここまでやるとはさすが『ガンダールヴ』だ」
「あんたこそ魔法だけじゃないんだな」
「僕は誉れ高き軍人だ!」
「俺は軍人が大嫌いなんだよ!」
意地のぶつかり合いであったが、大剣と杖では身体にかかる負荷は一目瞭然でついに
ワルドはスタミナを消耗し動きが鈍ってきたフリオニールの左腕を切りつけた。
一瞬動きを止めたフリオニールに容赦なく追撃の一突きを心臓に狙いを定めて放つワルド。
フリオニールは間一髪突きを避けたが体勢が崩れてしまった為、ワルドの見事な剣捌きに
よってデルフリンガーをはじき落とされてしまった。
「何やってんだよ相棒!」
地面に転がりフリオニールの失態をなじるデルフリンガー。
「すまない、デルフ」
息を切らせ悔しさをにじませながらデルフリンガーに謝るフリオニール。
ワルドは呼吸を整えると得意満面の笑みを浮かべて
「勝負あったな、フリオ君」
「悔しいけど俺の負けだよワルドさん」
勝利宣言をしフリオニールはそれを認めた。ワルドは最後通告を出すように
「これでどちらがルイズを守るに相応しい者か判明したわけだ」
「・・・やっぱりクビですか?」
「それはルイズが決めることだ。しかし、君がアルビオンに行ったところで足を引っ張る
ことになるとは思うがね」
フリオニールのプライドを踏みにじった。
がっくりとうなだれるフリオニールの元へキュルケとタバサが駆け寄る。
「よくやったわ、ダーリン。魔法衛士隊の隊長といえば魔法も剣術もトップクラスよ」
キュルケがフリオニールに慰労の言葉を贈る。タバサもそれに同意するかのように頷く。
「あはは。こんなんじゃ打倒帝国への道のりは険しいな」
フリオニールはレディ達の前で格好悪い姿をみせてしまった恥ずかしさを紛らわすように
苦笑を浮かべる。
フリオニールとの決闘に勝利しご満悦のワルドは
「とにかく、今日中にここを去ることだ」
敗者を気遣うそぶりを見せて忠告した。しかし、キュルケはワルドの思いを無視するかのように
「あら?私達はダーリンを連れて観光目的でアルビオンへ行くのだけど?」
あくまでアルビオン行きはルイズのミッションとは無関係であることを強調した。
「かの国は王党派と反乱軍が戦争をしている。君達が向かうのは危険極まりないだろう」
ワルドは聞き分けのないキュルケに幾分蔑みのこもった口調で言い放った。
「反乱軍!?」
気分の沈んでいたフリオニールであったが反乱軍の単語を聞いて元気を取り戻した。
「そうだ。レコン・キスタという組織が独立運動を展開しているのだ」
ワルドは何も知らずにルイズに付き添ってきたフリオニールに呆れ顔で説明した。
フリオニールは反乱軍の言葉につい条件反射で
「『のばら』」
「???何を言いたいのかわからないが、ちなみに僕は反乱軍ではない」
「なんだ、違うのか」
自身の所属する組織(盟主:ヒルダ王女)の合言葉を言ったが即座に否定された。
「君達がどこへ向かおうと勝手だが僕とルイズの邪魔だけはしないでくれたまえ」
ワルドはフリオニール達にそう言い残すと足早に宿の中へ戻っていった。
フリオニールの第15話は以上です。
>>624の名前欄にタイトル入れるのを忘れました。すんません。
>>538 皇帝陛下からディフェンダーをいただこうと毎回粘るも結局諦めちゃうんだよね。
全然ドロップしない。
>>553 確かフリオの素早さか回避率のレベルで逃亡の判定がされるはず。間違ってるかもしれん。
>>623 朧は冗談抜きでこれが出来なきゃ死ぬという試練を与えてくるから
作者からの愛なりなんなり補正がなきゃルイズが死ぬと思う
フリオニール乙
>>630 でも実は朧は作中一人も殺してなくて、奴に素質を見出された人間は皆化け物になってるという
結論から言うと朧ズブートキャンプはすごい
書いてる途中でジャン殺してたの思い出したが奴は人じゃないのでノーカン
優との戦いの後にあれで死ぬんならそこまでって言ってたから
ギリギリのところで一応生き返る可能性くらいは残しておいたんだろう多分
というか、朧の最終目的は地球と一体化して仙人になることだから異世界なんて冗談じゃなかろう
強い敵が多いのはまあ嬉しいかもしれないが
チェリーさん乙です
>>631 朧と戦って弱点に気付いてなかったら
確実にコスモス戦で死んでたから朧なりの愛の鞭だと思うの
強い敵と戦うのは仙人になるための修行の一環のはずだから
最終的に仙人になれていれば過程はどうでもいいのではなかろうか
>>623 ちぃ姉さまの治療で浮かんだんだけど、じーさんも面白そう
毎回思うんだが、魔法衛士隊の隊長に勝てないから足手まといって、
アルビオンは衛士隊隊長クラスがゴロゴロいる強い国、もといトリステインがよわっちい国って言ってるのと同意だよなぁ。
衛士隊の隊長に善戦したらなら充分戦力じゃんと思うが、対戦相手は誰も突っ込まないのかね。
任務内容が任務内容だからなあ・・・
戦争中の空飛ぶ島国に潜入して王子から手紙を貰ってこい
あとこれ他の奴には秘密だからな
これだろ?
部のキャプテンと善戦しても全国には凄い奴がゴロゴロいるんだぜ的なノリで
自分の目的に邪魔だからそう言っておいてこうとしてんでしょ
トリステインのトップレベルなんだし、県大会決勝とか?w
>>638 そんなもん対戦相手からすりゃ知ったこと無いんだから、普通に突っ込むんじゃね?
36計逃げるが勝ち、ルイズを小脇に抱えてスタコラサッサ
ガンダで全力で逃げたら大抵のやつからは逃走できるだろ
そもそもワルドマンの潜入プランもお前本当に軍人なのかよってレベルだしなw
プランBしかない感じだ
まあ原作だと善戦すらしてない上にルイズが「あなたは魔法衛士隊の隊長だから仕方ないじゃない」といってるし
ワルドは「向こうで大勢に囲まれてもそんなこというかい?」みたいなやりとりはあるけど
二次はそこらへん削られてんの多いから確かに「無茶言いおる」に見えるかも
>>641 そうか、そもそもワルドは決闘なんかしないで障害物競争をすべきだったんだな
今回は負けたようだがフリオニールは戦えば戦うほど強くなるぜ…
自分殴れないDS仕様じゃなくてファミコン仕様なんだから
自分の体切り刻んで寝るたびにタフになるわ
「相手を攻撃しようとする→やっぱやめた」を数百回行えば熟練度がガンガンあがるわ
特殊能力がないこと除けば十分に化け物なんだよなぁあの世界の住人w
でも「相手を攻撃しようとする→やっぱやめた」はFC仕様だとやりすぎるとカウントが0に戻るんだよね。
後、盾を使い続けると素早さの上昇率がハンパじゃあない。
プランD
いわゆるピンチですね
>>642 所詮ワルドは魔法衛士(親衛隊)でしかないから、ガチンコは兎も角、潜入工作は専門外だろうね。
フリオニールなら「単独行動の方が向いている」というゴードン王子の御墨付きだけど。
アルビオン潜入の時点でアニエスがいたら適任だったんだがな
>>650 アニエスはタルブ戦で手柄を上げて、
再生ウェールズ事件でメイジ不信になったアン様に抜擢されて出世したんだから、しゃーない。
>>642 そんなこと言うとなんでお前それでルイズが結婚を承諾すると思ったんだよって行動だしなぁ。
素人相手に力を見せつけて惚れさせようとか中学生の発想かと。
更にほったらかした期間が長いのに再会して短期間で戦争中の国で任務中に結婚を申し込むとかさ。
もっと上手く立ち回ればルイズを手に入れることも可能だったかもしれないのに、
ワルドは根本的に戦う以外に能がなさそうなんだよな。
>>651 SSではその流れを無視してアンリエッタとセットでフライング登場したりする例も多いけどね。
でもアニエスって復讐鬼な点を除けば、強い上に美人でスタイルよくて頭も切れる。
性格も自他ともに厳しいけれど、意外と面倒見もよく優しい面もあると、相当な優良物件だよな。かくいう俺も大好きだが。
だから登場は早いほどうれしい。活躍してくれるとさらにうれしい。
>>652 二次創作ばかり見ていてちょっと印象がわからなくなってるけど
別にルイズが目当てじゃなくてルイズの力が目当てだからじゃないの
ガンダーが任務遂行の邪魔になるかどうかを盗賊襲撃や手合わせで確認しておく
ルイズはこっちにそのままくれば良しでそうでなければ殺して蘇生か洗脳でOK
アニエスは好きだが個性的な女性キャラの中からアニエスを選ぶように
持っていくのは難しいし話をかなり改変しないと無理だからきつそうだ
そもそも明確にルイズ以外を選ぶこと自体珍しくないか?
読んだ数はそれほど多くないがラスボスさんかIFでの承太郎しか思い浮かばない
>>651 >再生ウェールズ事件
ショッカーの再生怪人みたいに言ってやるなw
ともあれアニエスさんをそれ以前に出演させるなら、
傭兵だった時代(タルブ戦以前)の彼女と召喚キャラなりを絡めるといいかもね。
デルフを買う時にばったり出くわさせるとか、方法はないではないし。
その後に影響しかねないから、細かい調整が難しそうだけども。
俺もアニエスさんは読み返してるうちに好きになってきたし、
色んな作品で見てみたいところだなあ。あのぱっつん前髪がかわいい。
>>652 ワルド「テ、テレビで吊り橋効果ってのをやってて、もう見た瞬間に『イケる!これしかない!』と思ったんだよ・・・」
自分は基本的にメインヒロインは好きになれずサブを好む方だが、その中でもアニエスがトップに躍り出る。
こう言ってはなんだが、決闘を機に見境なく熱をあげるキュルケや、(よほどキワモノじゃなければ)好感度が自動で加算されるルイズより、復讐という要素を持つアニエスの方が真っ当なフラグを建て易い。
そういう意味ではシエスタやタバサもそうだが、重さから考えてもアニエスの方がグッとくると思う。
SeeDの人は偉大だと言う事だな
>>656 むしろサイトの好感度アップのお膳立てをしてやったようなもんだったな。
>>657 サブヒロインのほうがメインより魅力的なことってあるよな。
アニエスもいいけど、イザベラがヒロインなのもいい。ルイズを悪化させた感じだけど、カトレアという逃げ場があったルイズよりも同情できてしまう。
アニエスはアニメでキャラ広がったよな。原作だけじゃギャグシーンまったくないし、銃士隊もアニエス以外全員モブだもの。
何も無ければ3分後に投下致します。
しえんもんがー
学院長室から『遠見の鏡』を用いて事の顛末を見届けたオスマンは、低く唸りながら己の豊かな髭を撫で上げる。
鏡に映りこんできた場面には、もはや言葉すら出ない。
(ドットクラスのメイジとはいえ、貴族を倒すとはのう……)
それだけではない。
先程、慌てて止めに行くと出て行ったコルベールの話が正しければ、あの少年は『ガンダールヴ』の力を発動させるのではとも考え、こうして観察していた訳なのだが――
(やっぱり、違ったのかのう)
決闘の最中、あの少年は武器を何度か手にしてはいたものの、彼の左手に刻まれたルーンは全く反応していなかった。つまり、彼は生身であのゴーレムを叩きのめしたのだ。
コルベールが調べた使い魔のルーン――『ガンダールヴ』とはあらゆる武器を使いこなし、たった一人で幾千もの敵をも薙ぎ倒したという伝説の使い魔だったという事なのだが、もしそれが本当なのならば彼が武器を手にした所でルーンが力を発揮していたはずだ。
だが、あれだけではまだ結果は分からない。
もう少し様子を見る必要があるだろう。
(それにしても……あの子供達みたいじゃったのう)
通りがかる生徒や教師達が恐ろしい物でも見るかのような視線を桐山に送り、避けていた。
「ミス・ヴァリエールの使い魔は悪魔だ」
「メイジ殺しの平民だ」
そんな声も密かに囁かれる。
しかし、桐山はそんな陰口にすら全く興味を抱くことはなかった。
「あんた、本当にただの平民? どうして、あんなに強いのよ?」
寮の自分の部屋に桐山を連れ戻すなり、彼を問い詰めるルイズ。
「習ったんだよ」
にべもなくそう言い、桐山は先程シエスタから受け取った本を読み初める。
「習ったって……どこの平民がメイジを……しかもあれだけのゴーレムを軽く捻じ伏せられるって言うの!」
桐山は読書を続けつつデイパックの中から一冊の厚みがある本を取り出し、ルイズに差し出す。
それを受け取るルイズだが、表紙や中に刻まれた文字は桐山の世界における言語で書かれているものであるため、全く読み取る事ができない。
ちなみにその本のタイトルは「総合格闘技の全て」である。
「……何よ! これ! 全然、読めないわ!」
「それに書いてあった。どう戦えば良いのか」
「こんな本一冊であんなに強くなれる訳がないでしょう! 馬鹿も休み休みに言いなさい!」
癇癪を起こし、本をベッドに乱暴に放り捨てるルイズだが、桐山は動じない。
ここでルイズは自分を少し落ち着かせる。喚いてみたって、どうにもならない。
「……あんたがどうやって学んだかは知らないけど、とりあえずあれだけ強いのはあたしも理解できたわ。
でも、今後はあたしの許可なしに勝手な事は一切しないでちょうだい。……大体、何でギーシュの決闘なんか受けたりしたのよ」
「彼が言ったんだよ。決闘だ∞逃げる事は許さない≠ニ」
「あんた、逃げるのが嫌だったの?」
桐山は表情を変えぬまま首を横に振った。
「彼がそう言ったから、そうしただけだ」
「たった、それだけ?」
その事実にルイズは顔を顰めた。
あれだけ強い桐山が決闘を受けたのは、平民である彼なりのプライドでも何でもない。
ただ、彼はギーシュとの決闘≠「選択」しただけなのだ。
彼にとってはそれに意味などなく、ただそこらに落ちていた小石を蹴ってどかしたりするのと同じでしかない。
平民とはいえ実力のある使い魔である事が分かり、本来なら喜ぶべきかもしれない。
だが、彼のそうした異常とも言える行為が理解できず、逆に恐怖を感じてしまった。
(何よ、しっかりしなさい! あたしはこいつの主人よ! 怖がってどうするのよ!)
たとえどんなに異常といえ、自分の使い魔を恐れるなんて、何たる事か。
ルイズは己を叱咤し、桐山への恐怖を打ち消そうと奮い立っていた。
そんな中でも、桐山はルイズを一瞥する事なく読書に夢中だった。
日が落ち、ルイズ達生徒は夕食のためにアルヴィーズの食堂へと赴き、桐山もまた厨房へと訪れていた。
そこで彼はマルトーからや他のコックや給仕達などから「我らの剣よ!」などと讃えられたりしていたのだが、桐山は気にするでもなく昼間とほぼ同じ量の料理を振舞われ黙々と食していた。
桐山が平民でありながら貴族を負かしたという事実に気を良くするマルトーから「どうやってあんなに強くなれたんだい」と聞かれても、桐山はルイズの時と同じく「習ったんだよ」と、それだけしか言わない。
無駄な事は一切話さず、簡潔に一言だけを述べる。マルトーは無口ながら桐山が自らを誇っている訳でないと見て、さらに気を良くしていた。
他のコックらに「みんなも見習え! 達人は決して誇らない!」などと嬉しそうに唱和させるも桐山は気にも留めていない。
「キリヤマさんがあんなに強いなんて、わたし驚きました」
食事を終え、厨房を後にしようとする桐山にシエスタが話しかける。桐山は一度立ち止まり、シエスタの話を聞いている。
あの決闘の一部始終をずっと見届けていたシエスタは初め、桐山がギーシュの召喚したゴーレムにやられてしまうのだと思い込んで悲観的になり、何度も彼に対して謝の念罪を抱いていた。
しかし……結果は見ての通り、桐山の圧勝にて終わった。それだけではない。シエスタは桐山の優雅な戦い振りに惹かれてしまったのだ。
それでいて全く傷一つ付いていないなんて、驚きを通り越して唖然としていた。
「……あの、本当に申し訳ありませんでした。わたしのせいで、桐山さんを危険な目に遭わせてしまって」
実際は全く危険ではなかった訳だが、これくらいの謝罪はせねばとシエスタは頭を下げる。
「いいんだ。ああいうのも面白いんじゃないか」
と、だけを言って厨房を後にしてしまった。
(もう少し。せめて、少しくらい笑ってくれたらなぁ……)
シエスタは桐山と出会ってから今に至っても、彼が一度として笑顔を見せてくれない事を少し残念に思っていた。
笑顔だけではない。彼はあの無機的な表情をまるで人形のように一切、変化させていないのだ。
どうにかして、せめて微笑みくらいは見せてくれないだろうか。
女子寮へと戻り、ルイズの部屋に入ろうとするが鍵がかかっている。中に人の気配がないので、まだルイズは戻ってきていないようだ。
仕方がないので扉の横の壁に寄りかかり、静かにルイズを待つ事にする。
「……?」
すると、学ランの裾を何かが引っ張り、足元に熱さを感じる。
初めはそれほど気にするでもなく静かに佇み続ける桐山だったが、引っ張る力が強くなり、今度は「きゅるきゅる」と変わった鳴き声が聞こえてきた。
ちらりと視線を足元に向けると、そこには赤い体をした大きなトカゲの姿があった。尾の先にはじりじりと火が灯っている。
そのトカゲ――サラマンダーは学ランの裾を咥えたまま、くいくいっと引っ張っていた。
桐山はじっとそのサラマンダーを見つめ、小首を傾げるが、全く離そうとしないのを見て自分をどこかへ連れて行こうとしているのを察した。
学ランから口を離したサラマンダーはルイズの部屋の隣の部屋へ向かってのしのしと歩いていき、中へと入っていく。
その後を付いていき、桐山も中に足を踏み入れる。
中は暗闇に包まれていた。
正確には窓の外から入り込む月の微かな明かりや先程のサラマンダーの尾の灯火だけしかなかった。
「扉を閉めて下さるかしら?」
と、暗闇の奥――ベッドの方から妖艶な女の声がかかる。
桐山は後ろ手に扉を閉める。するとパチン、という指を弾く音と共に部屋の中に立てられた蝋燭が一本ずつ僅かな間隔を開けて灯っていった。
桐山のいる場所からベッドまで、まるで一つの道のように蝋燭の明かりは続いている。
ベッドに腰掛けているキュルケは、年頃の男ならば目のやり場に困る姿をしている。
彼女はベビードールのような下着だけしか身に着けていない。
桐山はそれを見ても特にどうも思わぬまま彼女を見続けていた。
「そんな所にいないで、こちらにいらっしゃいな……」
そんな彼を見て、困惑していると思い込んでいたキュルケは色っぽく声をかけて誘う。
溜め息も何の反応もせぬまま桐山はキュルケの目の前まで歩み寄る。
桐山の凍りついた瞳を間近から目にしたキュルケは思わず、ぞくりと身震いをした。
しかし、彼女が感じているのは恐怖ではなく、高揚感であった。
「初めまして。使い魔さん。あたしはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー」
妖艶に微笑みながら自己紹介をするキュルケ。
「あなたのお名前は?」
「キリヤマ。キリヤマ、カズオ」
桐山が無機質に名乗ると、キュルケは大きくため息をついた。そして悩ましげな目付きをする。
「……あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね。
――思われても仕方ないの、わかる?
――あたしの二つ名は『微熱』。あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。だから、いきなりこんな風にお呼びだてしたりしてしまう……。わかってる、いけないことよ……。
――でもね、あなたはきっとお許し下さると思うわ」
キュルケは立ち上がり、桐山の間近くで彼の氷のような瞳をじっと見つめた。
「恋してるのよ。あたし、あなたに。恋はホント突然ね……。
――あなたがギーシュのゴーレムを倒した時の姿、とても素敵だったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ!
――あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる? 痺れたのよ! 情熱! あああ、情熱だわ!
――二つ名の微熱は情熱なのよ!」
と、勝手に一人で盛り上がるキュルケだが当の桐山はそんなキュルケを見ても全く表情を変えていない。
それどころか、くくっと小首を傾げるだけだった。
(あら、ガードが固いわね……)
普通の男だったらここまでにダウンしているというのに、この桐山という少年にはキュルケの色気が全く通じていない。
次はどう攻めようかと思案したその時、窓の外が叩かれた。
そこには恨めしそうに部屋を覗く一人の男の姿が。
「キュルケ……待ち合わせの時間に君が来ないから着てみれば……」
「ぺリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」
キュルケは胸の谷間に差していた杖を振り、蝋燭の火から大蛇のような炎が伸び、窓ごと彼を吹き飛ばす。
その後もスティックス、マニカン、エイジャックス、ギムリまでもが姿を現すがキュルケの魔法やフレイムによって次々と吹き飛ばされていった。
「でね……あ! ちょっと!」
その間に桐山は興味を失ったかのように踵を返し、無言で部屋から出て行こうとする。
ノブに手をかけようとした途端、扉が乱雑に開け放たれた。
「ちょっとキュルケ! うるさいわよ……ってキリヤマ! あんたなんでこんなとこにいるのっ!?」
そこに立っていたのはルイズだった。そして、わなわなと肩を震わせている。
「取り込み中よ、ヴァリエール」
「ツェルプストー! 誰の使い魔に手を出してるのよ!」
「仕方ないじゃない。好きになっちゃったんだもの」
二人が言い合う中、桐山は興味もなさ気にルイズの脇を通って部屋を後にしていた。
ルイズはすぐ様彼の前に立ち塞がり、問い詰める。
「まだ話は終わってないわ! 何で、あんたがツェルプストーの所にいるのよ!」
「彼女が俺を呼んだんだ」
「……あんた、それだけでホイホイ彼女の所へ転がったっていうの……?」
ピクピクと口端を引き攣らせ、殺気立つ。しかし、桐山はそれには全く動じず、
「俺を呼んできた。俺はとりあえず部屋に入ってみた。それだけだ」
と言い残し、ルイズの横を通って彼女の部屋へと戻っていった。
「待ちなさい! ちゃんと説明してもらうわよ!」
桐山を追いかけ、ルイズも部屋へと飛び込んでいった。
フレイムと一緒に取り残されてしまったキュルケは、先程目にした桐山の瞳をふと思い返していた。
人形のように凍りついた、冷たい瞳。それはまるで全てを容赦なく凍てつかせるようなものだった。
その瞳が、自分の友人とよく似たものである事に気付く。
(……いえ、あの子よりももっと冷たいわね)
トライアングルクラスのメイジである友人よりも、彼の瞳は圧倒的に冷たかった。
そして、一切の感情が宿っていない事に気付く。
翌日は虚無の曜日。休日であり、授業はなかった。
ルイズは桐山を連れて街へと向かう事になった。戦う事ができる桐山に剣か何かを買ってあげようと考えたのである。
使い魔たるもの、主人を守るのも役目の一つ。いくらドットクラスのメイジに勝てたからと言って所詮は平民だ。
剣一つくらいは持たせなければ、それ以上の実力のメイジと戦う事になっても勝てる訳がない。
桐山は特に何の意見もなく、ただ彼女に付いていく事になった。
(……な、なによ! あいつ! 何で、あんなに上手いのよ!)
馬に乗って街まで向かっていたのだが、ルイズは馬術が得意な自分と全くの互角、いや自分よりも優雅で遥かに見事な腕前で馬を走らせているのを見て何故だか無性に腹が立った。
主人である自分が得意とするものが、使い魔に劣る。それがとても悔しかった。
「……あんた! もう少しゆっくり走りなさい! 主人より前に出るのは許さないわよ!」
理不尽な嫉妬が混じった叫びを上げると、桐山は素直にスピードを落としてルイズの隣につく。
「あんた、何でそんなに馬の扱いが上手いの? 前にも乗った事があるの?」
「いや、馬に乗るのはこれが初めてだ」
などと言われてルイズは驚く。初心者? 冗談ではない。自分でさえここまで技術を磨くには時間がかかったのだ。それをほんの僅かな時間でここまで身に着けられるものなのか?
「……う、嘘おっしゃい! だったらどうしてそんなに馬の扱いが上手いのよ!」
「お前を見て覚えたんだ」
(あ、あたしを!? ……な、何なのよ! こいつ!)
確かに乗り始めてから数分の桐山はそれ程乗馬は上手くはなかった。
それを、ルイズの乗馬を僅かに見ただけであそこまで技術を物にするなんて。……化け物だろうか?
一方、学院の学生寮。自室で休日の楽しみである読書にふけていたタバサだったが、突然扉を乱雑に開けて乱入してきた人物に妨害される。
タバサは杖を取り、サイレントの呪文を唱えようとするが、
「待って!」
それが友人であるキュルケであると確認し、中断する。
「タバサ! 出かけるわよ! 支度して!」
「虚無の曜日」
「分かってる。あなたにとって虚無の曜日がどんな日なのか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ。
でも、今はね、そんな事言ってられないの。恋なのよ! 恋!」
と、自分の肩を抱くキュルケ。
「あぁもう、説明するわ! 恋したのあたし! ほら使い魔のキリヤマ! 彼があの人が憎きヴァリエールと出掛けたの!
だからあたしはそれを追って突き止めなきゃいけないの!」
キリヤマ。その名前にぴくりと僅かに反応するタバサ。
「わかった」
そう一言答え、読んでいた本をしまうと準備をする。
ずいぶんと物分りが良いので、キュルケは一瞬呆気に取られた。
「……まあ、いいわ。とにかく二人は馬に乗って出かけたの。あなたの使い魔のシルフィードじゃなきゃ追いつかないのよ!」
沈黙したままタバサは準備をし、窓を開けると指笛を吹く。
そして、飛んできた彼女の使い魔、風竜シルフィードに乗ってルイズ達を追った。
タバサがこれほどまでに軽く了承したのはキュルケに頼まれたからではなかった。
(彼は……わたしと似ている)
あのキリヤマという少年。彼が自分とよく似ていたからだ。
雰囲気、表情、瞳……何もかもが自分と酷似していた。
まるで客観的に自分という存在を見ているような気がして、興味が湧いた。
三時間程、馬を走らせて王都トリスタニアの街へと着いたルイズ達。
今日は虚無の曜日という事でブルドンネ通りには多くの人々が忙しそうに行き交い、通りの脇には露天や商店が並んでいる。
「この先にはトリステインの宮殿があるのよ、だから街として発展もしているの」
桐山に少しくらいは説明した方が良いと思い、ルイズは大通りの先を指差す。
当の本人は田舎者のように辺りをキョロキョロとする訳でもなく、その視線はじっと正面のみ見据えられていた。
「ええと、武器屋はこっちだったわね」
そう言って路地裏へ入るルイズ。桐山もしっかり付いてくる。
路地裏は表通りに比べて日も当たらなくて陰気であった。
「ここら辺は治安が良くないから、あまりここへは立ち寄りたくないのよね……」
と、溜め息を吐くが路地を進んでいると突然、4人の男が二人の前に立ち塞がってきた。
「へっへっへ、貴族のおふた方。ここを通るには通行料が必要でね」
ごろつきの一人が下品に笑う。その手には小さなナイフが握られていた。
「で、いくら欲しいのよ」
「へっへっへ、そうだな。有り金全部出してもらお――ぎゃああああぁぁっ!!」
ナイフを突きつけながら言い終える直前に、突然男が絶叫を上げて蹲った。
その手からはいつの間にかナイフが消え、男の右目に突き刺さっている。
(な、何!? 何が起きたの!)
「このぉ!」
三人がナイフを振りかぶって一斉に飛び掛っていったのは桐山であり、ごろつき達が立ち塞がってから変わらぬまま静かに佇んでいる。
それからルイズは唖然とした。
桐山は三人を、五秒とかからずに次々と地に伏させていたのだ。
一人は両腕をあらぬ方向にへし折られてナイフを脚に突き刺され、
一人は桐山の手刀でナイフを手にした手首を真っ二つにされてその手首ごとナイフをもう片方の腕に突き刺され、
一番マシであった一人は桐山に手を掴まれて捻られ、足を引っ掛けられて前に一回転しながら地に叩きつけられて昏倒するだけで済んでいた。
「あぁ……ああぁ……」
尻餅をついていたルイズは微塵の容赦もなくごろつきを叩きのめした桐山を見て、恐怖を抱きかけていた。
何故、あそこまで冷酷になれるのだろう。ごろつきを叩きのめすのであれば、最後の一人のようにするだけで良いではないか。
「……あ、ちょっと! 待ちなさい!」
足が震えて立ち辛かったが、つかつかと先へ進みだす桐山の後をルイズは追った。
二人が路地を去った後も、ごろつき達は地を這い蹲ったまま呻き声を上げていた。
今ので憔悴しかけたルイズであったが、桐山が人を殺さなかっただけでも幸いだったと感じ、改めて自分を奮い立たせていた。
そして、目的の武器屋へと入っていく。
やや薄汚れた店内には様々な武器が置かれているが、店主は働く気があるのかカウンターでタバコを吹かしている。
しかし、ルイズ達の姿をみるや否や、媚びへつらった顔をする。
「旦那、貴族の旦那。うちは真っ当な商売をしていまさぁ。お上に目をつけられるようなことは、これっぽっちもありませんよ」
「何を勘違いしてるの。客よ」
と、ルイズが言うと店主は眉を顰めだす。
「貴族が、剣を……?」
「あたしじゃないわ。こいつに見合う剣を適当に一つ見繕ってちょうだい」
と、桐山を指差す。桐山は既に店内に置かれた剣を手にしてそれをじっと見つめていた。
しかし、どれを手にしてもすぐに興味を失ったかのように戻してしまう。
「あぁ、従者様にですかい。彼でしたら……」
良い鴨が来たものだと微かに笑いながら店主は1メイル程の長さの、ずいぶんと華奢な細身の剣を取り出した。
「昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たすのが流行ってましてね。その際にお選びになるのが、このようなレイピアでさあ」
「貴族の間で、下僕に剣を持たすのが流行ってる?」
「へえ、何でも最近このトリステインの城下町を盗賊が荒らしてましてね」
店主曰く、『土くれのフーケ』というメイジの盗賊が貴族の財宝を盗みまくっているという。
しかし、ルイズは盗賊には興味はない。
「もっと大きくて太いのがいいわ」
「お言葉ですが、剣と人には相性ってもんがございます。見た所、若奥様の従者様にはこの程度が無難なようで」
「大きくて太いのがいいと言ったのよ」
ルイズと店主が交渉をし合う中、桐山はそちらに全く興味を示さず自分で勝手に剣を取っては戻している。
「これなんかいかがです?」
そして、店主が取り出したのは所々に宝石が散りばめられた、1.5メイルはあろうかという大剣だった。
「ほら! キリヤマ! あんたもこっちに来なさいよ!」
ルイズが桐山の服を引っ張って呼び寄せると、彼にその剣を渡す。
じっとその剣を見つめていた桐山であるが、その剣ですら他の剣同様にすぐ興味を失ってしまい、素っ気無く店主に返してしまった。
それどころか、もうこの店に用は無いと言いたげに踵を返し、店の外へ出て行こうとしてしまう。
「ちょ、ちょっと! どこへ行くのよ! キリヤマ!」
慌ててルイズが彼の腕を掴んで呼び戻す。
「あんたのために剣を買ってあげようって言ってるんじゃない! それを無碍にする気!?」
これではせっかく街まで来た意味がない。
「じゅ、従者さん……お気に入りにならないのでしたら、また別の剣を――」
店主もせっかくの鴨である客がこのまま何も買わずに帰ってしまうのだけは避けたかった。
そんな時だった。
「へっ、ざまあねえな」
突然、どこからともなく男の声が聞こえた。
「客に逃げられるようじゃあ、所詮はその程度よ!」
「何の声?」
ルイズがきょろきょろと辺りを見回す。
すると、店主が積み上げられた剣に向かって叫びだした。
「やかましい、デル公! お前は黙ってやがれ!」
桐山は再び踵を返すと、声がした方へ向かって歩き出す。
「黙らせられるもんなら、やってみるんだな!」
その声は一振りの錆付いた剣から聞こえてきた。
「これって、インテリジェンスソード?」
「はあ、『デルフリンガー』っていうインテリジェンスソードでして。……一体、どこの魔術師が始めたんでしょうねぇ。剣を喋らすなんて……。
やいデル公! それ以上、余計な事を言ってみろ! 貴族に頼んでてめえを溶かしちまうからな!」
「面白れえ! やってみろ! こちとらどうせ、この世にゃ飽き飽きしてた所さ!」
店主とデルフリンガーが言い争う中、桐山はその剣を無言で手にし始めた。
デルフリンガーは桐山の手の中で、桐山を観察するかのように黙りこくっていた。
それから少しすると、小さな声で喋りだす。
「おでれーた。……てめえ、『使い手』か。……って、何だよ!」
そのデルフリンガーでさえ桐山はすぐに興味を失って戻してしまい、離れていった。
「ちょ! ちょっと待て! おい、俺を買え! いや、買ってくれ! おいってばああぁぁっ!」
悲痛な叫びで懇願するデルフリンガーに、さすがの桐山もまた戻ってくる。
そして、再び手に取った。
そして、ルイズをちらりと一瞥する。どうやら、これに決めたようだ。
ルイズは桐山が変な物を選んだ事を意外に思って細く溜め息をつく。
「おいくら?」
「……え? ああ、あれなら20で結構でさ」
「あら、そんなに安くて良いの?」
「こちらとして良い厄介払いになりますんで」
ルイズが桐山に預けたサイフには200エキュー程のお金が入っている。
充分過ぎる程、破格の安値だった。
桐山は店主から渡された鞘ごと、黙々とデルフリンガーを背負っていた。
「あんた、本当にそんなので良いの?」
武器屋を後にし、馬を繋いでいる所まで戻っていく中、ルイズは桐山に問う。
正直、どうして桐山がこんなボロい剣を選んだのか不思議でならなかった。
「いいんだ」
それだけを言い、後は沈黙するだけだった。
「おい! 平民!」
学院に戻ってくるなり、突然桐山を呼び止めた生徒がいた。
ルイズと同級生のラインメイジ、ヴィリエ・ド・ロレーヌである。
彼曰く、先日のギーシュとの決闘で彼が勝ったのが許せないという事だった。
平民の分際で貴族に勝つなどという事はあり得ない。インチキだ。自分ならば彼に勝ってみせる。
そのような理不尽な因縁をつけてきたのである。
ルイズが必死に止めようとしても、ロレーヌは「ゼロのルイズは引っ込んでいろ!」などと言ってくる。
「決闘だ! 平民め!」
そう意気込み、桐山に挑んだロレーヌだった。
しかし、結果はすぐに出ていた。
「あ……あう……」
ものの数秒で地に這い蹲るロレーヌ。その右腕は手首から肩まで見事にへし折られている上に、杖も桐山の手刀で真っ二つにされていた。
その後桐山に対して貴族に勝ったという事実を受け入れられない尊大な生徒達は次々と彼に挑んでいった。挙句の果てには決闘など関係なく、一方的に桐山を叩きのめそうと喧嘩を売ってくる。
最悪、本気で桐山を殺そうとする者さえいた。
だが、桐山はどの相手もほとんど時間をかけずに逆に叩きのめしていた。
優秀な成績を収める生徒さえも、彼には全く歯が立たず、。一矢報いる事さえできない。
そして誰もが水のメイジによる治療が必要な程の重傷を負わされていた。
ただ、桐山もメイジは杖が無ければ無力化できるとすぐに学習していたため、杖をへし折られるだけで済んだ運の良い生徒もいた。
決闘を挑んだ生徒達は桐山を貴族に歯向かったとして訴えるべきだ、と学院長へ直談判していたが、
「馬鹿者。そもそも一方的に決闘を挑んだのはお主達じゃ。それに、彼はミス・ヴァリエールの使い魔。彼に罰を与えるのは彼女だ」
と、突き返されてぐうの音も出ないようだった。
夜が更けた頃、学院庭の塔の壁の傍で夜風に当たりながら桐山は読書をしていた。
学院の生徒達に次々と重傷を負わせてしまったという事で、ルイズからその罰として今日は部屋の外で寝るように命じられたのである。
実を言うと、ルイズもその生徒達から「もう少しお前の使い魔の躾をちゃんとしろ」などと逆恨みされてしまったのでこうなってしまい、そのため仕方なしにこうさせた訳である。
もっとも、ルイズの部屋のすぐ外で構わなかったのだが、桐山はあろうことか学院の庭まで移動していた。
「しっかし、お前さん本当に容赦がなかったな」
傍に立て掛けられたデルフが感嘆に呟く。
「貴族のガキ共相手とはいえ、少しは手加減してやっても良かったんじゃねえかい?」
「……道端の石ころをどかしただけだ」
と、答えるとデルフは溜め息を大きく吐き出す。
「……ったく、とんでもねえやつだなぁ。武器もまともに持たずにメイジを叩きのめすなんて、お前さん何者だよ?」
しかし、桐山は答えずに読書を続けている。
「シカトかよ……」
少し切なそうな声を出すデルフ。
すると、そんな桐山の元に一人の小さな人影が歩み寄ってくる。
桐山はそれに全く興味を示さずに読書を続けていた。
結局、昼間はキュルケと共に街へ行っても桐山に会えなかったタバサだが、そこで彼を見かけていた。
こんな時間に投下を見たら支援だ!
(そっくり……)
読書をしている彼のその姿に、タバサは息を呑んだ。
自分も読書は好きだ。そして、それに夢中になると周りの事などほとんど眼中になくなる。
まるで彼のように。
自分が近づいてきても、彼は全く興味を示さない。
ますます、自分という存在を客観的に見ているように思えていた。
桐山のすぐ隣に立ち、彼が呼んでいる本の中を見てみる。
自分の知らない言語で書かれた専門書みたいだ。
ちなみにその本のタイトルは「腹々時計」である。
タバサには内容が全く分からないが、桐山が自分など気にせずに読み続けているので余程内容が面白いのかと思っていた。
「本、好き?」
「ああ」
話しかけてみると、桐山はタバサを一瞥する事無く答える。
「何ていう本?」
「色々な戦い方が書いてある」
と、簡潔に述べて再び本に視線を戻していた。
(……そう。彼は、強い)
ギーシュだけでなく、この学院の様々な生徒達がまるで相手にならなかった彼。
タバサもこれまでに様々な危険な任務に従事し、多くの敵と相まみえてきたが、正直彼の強さがどれ程のものなのかとても興味があった。
これまで自分は、己の目的を果たすべく力を蓄えてきた。
その力が、『メイジ・キラー』である彼に通用するかどうか……。
そのような黒い衝動が彼女を突き動かす。
「ん? どうしたんだい、嬢ちゃん」
デルフが桐山の横で、自分の身長よりも大きい杖を構えだすタバサに困惑しだす。
桐山はデルフがそのように慌てても、相変わらず読書に夢中だった。
「あなたと、手合せがしたい」
桐山は目を伏せると本もパタンと閉じ、デイパックの中にしまう。
そして、立て掛けていたデルフリンガーを手にしていた。
「おいおい、やめておけよ。こいつはここのガキ共が全く相手にならなかった奴だぜ? ケガしてもしらねえぞ」
「終了の条件は、相手を地面に倒す事」
デルフを無視して彼からゆっくり後退るタバサは桐山にルールの説明をした。
桐山は逆手に持ったデルフリンガーを無造作に垂らしたまま、自分から離れていくタバサを見つめている。
他の生徒達はルールの説明もなしに、一方的に彼を攻撃した。それで彼に半殺しにされた。
桐山は一切の感情が宿らない冷たい瞳で、タバサを見返していた。
タバサに対して苛立ちも、怒りも、敵意も、殺意も、何一つ抱いている訳ではない。
恐らく他の生徒達同様、目の前に転がっていた石ころをどかそうとするだけなのだろう。
ああ、支援するしかねぇぜ!
バイバイさるさんに引っかかってしまったので別の所から。
以上、4話は終りです。
投下中も内容が無いようなどとできてしまったのですが、一応投下はできました。
乙
最近寒いなぁ
あの夏の暑さよりはマシだ。
寒いんだったらダルシムを呼んでヨガファイヤーであっためてもらいましょ
ダルシム「よし、じゃあホットヨガやろうぜ!」
>>671 「腹々時計」w
そんな古い発禁本どこで手に入れたんだ?ww
支給品に入ってたんじゃね?w
「腹々時計」よりも「バリゾーゴン」のほうが…
熱く・・・暑苦しい使い魔
ランド=トラビス
状況にもよるが
ベストはメールと一緒だろうなぁ
フーケ戦は楽勝で終わってしまうな
次点でパラダイムに飛ばされるタイミングの記憶喪失か
バッドエンディングのメール不在
弄りやすいところでバッドエンディングだろうけど
あそこから持ち直すのも中々難しいな
何せ世界滅亡の引き金引いた後だし
話としては成り立っていくかもしれんが、書き手も辛い
何だかんだ不良の抗争やバトルロワイヤルでもさせないかぎり人畜無害だよな
投下がないようでしたら、9時頃に投下を始めます。
>>683 それどころか従者としては完璧すぎるだろ、言わなきゃ何も行動しないけど
>>678 バトロワの映画じゃ爆弾製作のシーンでテキストにしていたとウィキペにあった。
本編見たわけじゃないからはっきりとは分からんけど、
その関係で所持していたんじゃなかろうか。
時系列を確認しようにもうろ覚えすぎて思い出せねえ。
688 :
683:2010/12/17(金) 20:49:37 ID:7yoStjmX
大丈夫だ、問題ない
それでは、投下します。
皆さん、はじめまして。
私の名前はミザリィ。アウターゾーンのストーカー(案内人)です。
アウターゾーン……それは現実世界の外側にある世界。
その世界では現実を超えたあらゆることが起きます……。
そして、それは何重にも連なっています。
これからあなたは、アウターゾーンの一つ、『ハルケギニア』を見ることになります。
ただしそれは、私たちから見てのアウターゾーン。
そこの住人にとっては、私たちの世界がアウターゾーンなのです。
そう、ハルケギニアの周囲にも、いくつものアウターゾーンがあります。
私たちのような全く別の世界もありますが、一見するとハルケギニアと見分けのつかない世界もあります。
どれが現実のハルケギニアであり、どれがそうではないのか。
あるいは全てが現実なのか。
その答えは、皆さんの想像力で探していただくことになります。
それでは、これから皆さんに、ハルケギニアで起きた出来事を紹介しましょう。
アウターゾーンへの扉が、今開かれます……。
すみません、今回はこれだけです。
一話完結型のエピソードを、数話書こうと思います。
ちょwアウターゾーンかいw
マジックアイテムが主な舞台道具か
・・・ギトーが転任した魔法学院で最後を遂げる予感
こんなプロローグにもなってない1レスのみの投下が許されてたまるか!
と思ったけど同時に「アウターゾーンじゃしょうがないな」と納得したw
しかし漫画が禁書扱いされる話がまさか今になって現実になりかけるとは世は無常だねぇ
懐かしいな、タイムスリップする話とか妖精の話とかよく覚えてる。
一番好きなのは魔神の手の話だな。それに当時思春期に入ったばかりだったからサービスシーンじゃドキドキしてたなあ。
アウターゾーンは小学生のころに読んで印象に残ってるのは
時間を巻き戻す時計の話と、身体が透明になる薬の話だな。
どちらもラストが今でも記憶に残ってる。
どの話も大体思い出せるから困る
ボロボロの車に追いかけられる話もあったな
アウターゾーンはミザリィのシャワーシーンが多かったくらいしか覚えてないなw
ミザリィには妹が二人いて
名前をイワザリィ、キカザリィという…
すまん、いしいひさいちのギャグだ。
>>682 原作でも日常生活での凶悪度は女子不良たちの方が上だしな
つーか桐山は今見返すと境遇が悲惨すぎて泣けてくるわ
勘違いされがちだがまったく感情の無いロボットじゃないから
「俺は時々何が正しいかわからなくなるよ」って薄々自分が異常だと
感付いてはいるみたいだし…
例の「米神疼き」がどの場面で来るかも気になる所
>>686 映画版で持ってたのは桐山じゃなくて三村だけどな
つーかあいつは修学旅行になんでこんなもん持ってきたんだ
旅館でも爆破するつもりだったのか?とよく突っ込まれるがwww
アウターゾーンの敵意を持った存在が一体一匹でもハルケに紛れ込んだら
それだけでエライ事になる気がする・・・
あの世界の貴族共じゃ助かるルートが見えない
アウターゾーンで愚かな行動をとるとひどい末路が待ってるからな。
ルイズ、タバサ、アンリエッタ、アニエス、才人、ワルド、フーケ。誰がアウターゾーンに迷いこんでも衝撃的なエンドになりそう。
地居聖を召喚! しない、キモいからしない!
今アウターゾーンつったらアレでしょう
法律で漫画の所持を禁じた、狂った世界のお話
・・・・・・まさか現実がアレに近付くとは予想してなかった・・・・・・
>>701 あんな世界だ。「ひょっとしたらバトロワに参加させられるかも」といつでも役に立つものを常備していたのかもしれない。
>>706 ハッキング用のアンテナも常備だよなたしか
三村さんマジ意味不明
三村は中二病だから仕方ない
三村召喚も面白かったかもしれんな
あとヅキと瑞穂なんかも
>>700 つの丸のモンモンモンでなかったか?
って……モンモンつながり!?
>>710 俺も思い出したわ
「ミザルーです」「イワザルーです」「キカザルーです」
言葉をしゃべるお猿さんは珍しいんだか珍しくないんだか
競争馬も普通にしゃべるし
モンモン召喚したらギーシュがビッグ・ジョンのようにほれ込んでしまうんですね
わかりますん
>>710 いしいひさいちの場合はS・キングの「ミザリー」をネタにした四コマ。
>712
何で『コミカル・ヒストリー・ツアー』がわかるんだ。
>>705 単に「こういう表現あったら、売り場ちょっと移動してね」程度の話で大騒ぎって意味がわかんない。
最悪でも18禁コーナーに移動するってだけだろ。
条例制定に関する問答集しっていれば、すべて答えが出ていて、それゆえ可決されたことなのにね。
反対するのは自由だが、最低限の勉強すらしないで反対する連中だらけってのは意味不明だ。
715 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 14:33:50 ID:Y0xs1dME
「こういう表現」のラインがわかんねーのが問題
副知事が近親相姦描写があっても傑作なら問題ないとか言いだしてさらにカオスだし
指定の曖昧さ
何故か限定して指定されるジャンル
今後の拡大の見込み
とても安心出来ない
気持ちは分かるが他所でやれ
どうも残量が中途半端で職人が投下しづらそうだな
ちょっと早いが埋めようか?
liiiii、
: liiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii: .liiiiiiiiiiiiiiiiiiiillllliiiiiiiiiiiiiiiiiiiii:
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.,r".,,、.`'、、 | .| ._,,,,―¬i、 丿 ./ィ''¨゙゙゙'''''i、 ,―-、 ,―i、 ,,--,、
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/./ \ ゙'i、 | ._,,,,―''''"` l゙ / .r‐----=@ ゙"″ `''''" `''''"
`゙″ ~^ ゙ー'"゙゛ ヘ-′ ヽ,,,,__,x′
―┼― \/ ヽ |_|_゙ ‐┼‐ヽ ―┼― ヽ _|_ 、 ―フ / ̄\ .┼┼
/― /  ̄/ . | | | .―┼―  ̄/ / / ヾ ―‐フ .| | | .-┴┴- ・ ・ ・
/ ー ヽ_ /´ヽ_ |,(ニlヽ (ニl ̄) .(ニlヽ、 /´ヽ_ ./ 、/ (_ \| _/ |三|
/ /_/_ -┼- -┬-
ヽ/ / / -┼- ヒ |三| ・ ・ ・
ム 、/ ヽ_ └┘
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┼/\ ___ ヽ _|_ ___ -┼- ヽ __ .―フ / フ ―┼―ヽ ┼
┼ .土 / |_ |/―┐ / ヽ .田  ̄/ / ∠_ /|―┼- /\ h/
.、| 口 \ 、_) /|. 〈_、 \ //|\ /´ヽ_ \ o_) | 、_| / \ (_
|二|_/_ | _|_ ―┼― ―┼― _|_、 -┼― ―フ \/ | ├ ヽ
|―| / /. | | /― lニ|コ / / ヾ |/ ∠_ / | | -―ヽ
. ┴┴ 、/ |, / / ー- .-ヨヨ- ./ 、/ (フ ̄) .o_) ヽ_ ヽ_ノ (ニlヽ _ノ
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______ ヽヽ | ________ |
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\_ \__ノ ノ ヽ__」 | (二X
、.,ri、
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 ̄ ̄ ゙̄,l リ: : .| :| ィー'''''' ̄` .,,,,,ir-ー''''}" ,r"
'|'| .,,,, l|,,,,―i、 ,,,,,,i、,,,、 .,ri、 'l'ト │ ,l゙ | | =--'''''"| | ,i" ,r"
.l | ._,,, | l '{\ _,,二,、 ,rlレ''l''l'''!i,'i、 l゙,| ,-rr,|.|,,,,,i、 .,l゙ .,l゙ .| .| | :| ,i" ,i"
.,,l`|,|レr" .|.| .'Lト .'l|レー'''=゙L .,l゙,i´ l゙,! .リ゙l |.| .゙~ ̄|:| .,,i´ ,/ | l゙ | | .~'〃
: ,i'レ'~ .|.| ,r, ゙l,,} .,"| l..l、,ト,i´ .,!,レ | | ,,r-ノ.|,、 .,,i'" ,r" : ..,,i´.レ l゙ │
: リリ----r, ゙l,,l,,,i" ,,,,r!二 ゙l,,,,レ゙ ,r',,レ" l゙.| .l|'ニ,l゙,!!ii,= .,〃 ,,r" .゙l~゙゙゙゛.,,/ リ, .゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙レ
.~゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙" `` ゙='''" `~` `゙゛ `"'''~ ゙'!'" "'''''''~゛ ゙~''''''''''''''''''''''''"
723 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:29:51 ID:Ji+nCvzy
ぬるぽ
┌┐OO ┌──┐ ┌┐┌┐ \ | / / \
││┌┐ └─┐│┌──┐││││ ○ o. / ̄| ̄ヽ  ̄ ̄| ̄ ̄ /‐┬┐\ | ‐┼‐
││││ ││└┬┐ノ └┘││ _____ノ| | / |  ̄ ̄| ̄ ̄ ││ │ __|
ノ_ノ ヽ_ヽ ノ_ノ ノ_ノ ノ_ノ |____ノ ヽノ ノ . │ _/___| し(_丿\
____
,,,-ー―, ノ′―――-`ヽ
、゙゙゙゙゙゙゙゙ / ┌──- / /'⊂二二つ〉 〉
 ̄~| |´´ . |r―-, |./ / | .| ヽヽ
r――'´ `ー――-,|| .||| .| .r' ̄ ` ̄ー、ヽヽ
`ー―, .,ィ | \ ̄~ ||,__,| || .| .| .[ニ| .|二] ) ヽヽ
/ /| .|\ \ `ー――イ / `ー┐r― ,イつ \
. / / .|,_! .\ノ ∠,ノ ⊂二二二二ノ \」
,,,,,, ,、i、
,i´ ゙l ,i、,|,,,ノ ,,-、
.广″ ゚゙゙゙゙゙^', !,,,7 .,i´ │
゙'''''''┐ ,----ノ ュ ,,-------=i、、 ,,,,,,,| .\,---、 r‐'¬――――‐i、
,/` ,l゙ .,,,,、 .|゙l l゙ ._,,,,,,,,,,,> / ゙l .ヽ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,、 ,,/
丿 ./ .| `゙''、、 l゙ ゙l ‘''''"゙` .,/ .,i´ `――ーi、 r‐‐'′ / /
./ /` 、 \ `i、 丿 | │ .,/ .r‐,,| ゙l 丿 ,"
{、丿 .'|'', `'―′ / ,i´ 丿 丿 .,i´ ,ri、 | 丿 |
`゙" | .| ,i´ ,i´_,,,-、,, | { .゙l、ヘ,l゙、 | l゙ .l゙
._,,/ ヽ ," .゙l'".,,,,,、ヽ | .|, `゙゙゙゛ | .l゙ ゙l ゙l、
r'" ‘ー-,、 | .,i´ .ヽ ヽ .,,―ッ ゙l │ │ | ゙l .ヽ
{ l",7 |゙'ー-″ .゙l 丿 ゙l ゙'ー''゛ ," .゙l .ヽ ,,/ .| .,,,,,,,,,,,,=@ ゙l .ヽ
\`` │ .゙l_,,/ ゙l _,/′ \,, ) ,,/` 丿 .l゙` _,,,,,,,,,,,"゙'ヽ,、 ゙l、 .ヽ
`''ー'′ ‘―-‐'′ ″ / ,/ `゙゙^ ゙i、 ) \ │
ヽ、,,,,,,/′ ,-'''''''''" l゙ `'ー‐"
‘'ー------′
つーか次スレは立ってるのか?
AA連投すんなと何度も言われてるだろ・・・
次スレ立ててきます
ID:vvHMA3hs
半年ROMってろ
乙
よし、後はスレの繁栄を祈って埋めよう。
忍風の人、サイヤの人、世界最強コンビの人、再開いつまでも待ってます!
埋め
「容量の少ないスレはどんどん埋めちゃおうねえ」
( ・∀・) | | ガッ
と ) | |
Y /ノ 人
/ ) < >__Λ∩
_/し' //. V`Д´)/ ←
>>723 (_フ彡 /
埋めよう
埋めよう
そういうことになった
それにしても桐山さん最強やでぇ…
落ちるまでレスがなければ読んでたSSが全部復活する
分かったよ兄さん!!
任せろ!
久しぶりすぎて480kbでスレが落ちるのかと思ってたぜw
ブランクってのは恐ろしい
うめる
うめない
うめるとき
うめれば
502だっけ?
500KBぴったりで終わり
スレ立ては誰だー?
最凶の人とかヴァリエールキラーの人とか乙。
751 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/19(日) 20:22:33 ID:pJZcvF4s
久々にここに来たが新しいおすすめとかある?
まとめサイトお勧め。
FFTのバルフレアで書いてみようかと思ったけどどうしよう
FFTからでなんか希望があれば言ってください、書くかもです
そんな適当な動機で長続きできるとは思えん
俺は「楽しそうだから」って理由で書き始めたけどな
完結は夢のまた夢かもだが、今ものんびり書いてるよ
まとめサイトにアウターゾーンが入ってないけど、まだ収録できる段階じゃないかな?
あんな1レスだけの物なんて、まとめに入れる価値なんて無いだろ。
威勢のいいこと言ったわりにプロローグだけで終わった書くぞ書くぞ詐欺がたまに出るからな
まぁ気長に待てば良いと思うよ
こんなクロスが読みたい
↓
永遠にコネーから自分で書く
↓
2話ぐらいで投げる
↓
他の作家がかぶるから書きづらくなる
まとめって基本的に投下した当人が入れるんじゃなかったっけ。
有志による更新だから投下した当人じゃない人がまとめに入れる場合も結構多いぞん
どちらのパターンであっても長続きする人は長続きしているので関連性はうすそうだが
まとめウィキにはお世話になっているけど、プロバイダが規制されてるから編集できない場合もある。
自分は誤字を見つけて貰ったのに修正が出来なくてちょっと困っている。
764 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 20:44:12 ID:tra5LF63
あの作品のキャラが遠坂凛に召喚されましたスレたてよう
>>764 型月のキャラがルイズに召喚されましたpart7
767 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/24(金) 01:46:47 ID:cr7qGboj
早いとこ使い切ろうよw
lヽ r',.⊃ ,. -っ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ , -'ノ 〈 l l l´
| レビテト! / | 重力100! | l :/ r、 丶ヽ ,ィ ヽヽ
ヽ___ / ヽ_______ | | ヽ ノノ ノ_.:! lヽ l. :l ,.ィ
 ̄ヽ/  ̄\| \: >-─ヾ ,.ン'‐┴'´:.ノ //
_ __ ,. -- 、/´: : : : : : : | l : : :ニ=-、 l |
/ / _ ヽ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ ´ ̄`)'ニヽ: : : : : : : ヽヽ: : : : :__ン !
<__ l_ノ l ( _/ レビテト! | r'´ヽヽ、: : : : : :,ィ': :j : : : :ヽ_;イ
|_ -ィ rノ_, \_______/ l・) jゝ、: : : :|ヽ__ィ: : : : : : : :〉
{ ;  ̄!r' ヽ__/ : : :: : : `ー‐' : : ;. - 、 ヘ、_
/_ゝj j| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ _,.._ヽ-'_,.ン⌒ヽヽ.: : : : : :{_r-、ヽ__
`T 7V | 重力100! > `-‐ 、二ニ/=':ノ:. :. :. :. :. :. <ヽ-‐'
__.「Z.._ ヽ / ___,./_i´)>‐--------<!jノ〈__
 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
〈 〉 レ ・ ビ ・ テ ・ ト ! <
レ ビ テ ト っ て ヽ > < / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄丶
言 っ て る で し ょ ? l >、 __ ヘ_/\ _r── | いまのうちに |
>ニ-─- 、 ノLヽl / ̄ _ ヽ やっつけちゃお |
聞 い て る ? ね ? | ヽ \_ヽ⌒ y' > /:r-、ヽ \ ─な! /
/ l Lゝッ- T ヽ : __/: :| r'ノ \ ____/
__〈 ノ‐(_,> ' 、_,! 〉: j_,ヘr'′ V
_/丶__/`丶_____,.<_,._l lニ_:::::: 丶l / '´:<ミノ ぎ 、
: : : : : : : : : : : :/\: : : : : : : : : : :ヽ!jTニY::::' <} / /: /:/l´ : ゅ _ -‐ '└、 ,ィ
: : :/\/\/ \ : : : __ : : : : : `: `ヽ、____/ '´ : : //_::::| : | 「\ 7 ,ィ'ノl r' ゝニヘ,.、
: :/ ヽ/ |___:: : : : : _: : : : ///:/ |::::\ | ゝメヽゝ._rノ l_’ヽ!イ l
/: : :`ー ': : //: /: :/、_ ̄L::\ っ ].___j、 rニ'ゝヽゝ
重力100!! /: : : : : : :ー‐ '´: /: :/ _,!\ ̄\:::! レ!_)'、_l` Lrrゞ'
>: : : : :: : : :/: : :/_/::::/: ヽ 」_」 ヽュ j_ハz!
< : : : : : : : : :/ : : ハ:::/| :
おまえがいま感じている感情は精神的疾患の一種だ。しずめる方法は俺が知っている。俺に任せろ。
スレチだけどゼロ魔作品感想まとめってどこかある?
やたら扱う作品が大量だったHPがあったんだけど、ググっても見当たらなくて…
なんか緑色だったのは憶えてるんだが、誰か心当たり無い?
無いよそんなの
とにかくコッチはもう埋めようぜ。
梅
梅梅梅
まだ残ってるのか
埋め生め宇目楳産め
/ へヘ | ,' / ノ/ / /
l i | i | / / / / / あ…ありのまま 最近 起こった事を話すぜ!
l / l | l \ / / / //
l ! | 丶 ' /″ / / 〆 /『おれは意外性のある登場をしたと思ったら
| u ,-丶' , 'u / リ / // 結局カマセに過ぎなかった』
l / ̄;;丶', ; u / // /
l く;;;;;;;;;;;;;;;;;i l,' 〃 / / / な… 何が言いたいのか わからねーと思うが
`i `ー--ぐノ 〃" _ __/ / おれも 何がどうなったか わからなかった…
l`u 、__ゝ_(_ ,-一'ヽシ /,,, イ フ|
`i、 ヽ `ーソ_/' ´ヾ ̄ ̄ ̄ヽ 「 / / 了 頭がどうにかなりそうだった…
/ゝY´ ̄( `ヽ ` ̄ u ,/ / |
l\.`、 rv-──一v、) / / | この後パワーうpとか仲間になる布石とか
\ ''\゙ー──一イ ,,/ / / そんな大層なもんじゃあ 断じてねえ
'h、 ` ̄' ̄ ̄ ,,/
ゝ  ̄ ''| | ̄  ̄ もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…
`ヽ l l
次スレが先に埋まりそうだ
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
|:l\\\||.:.|l///| .///
__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !// /
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./ / / l l l lハ |:|//:::::||.:.||:::::\\l /
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