ちょっと変になってるね
すみません
ドロドロの人間関係で。
どういう経過か、リリカルシリーズ内で弓兵を召喚したなのは。 記憶の共有によってこの世で最も己を憎み、永劫に苦しみ続けるエミヤの記憶を知ってしまい、どうやっても癒せない傷や、そもそも本人が自己の救いを求めていない事を知り懊悩する。
(本編なら士郎がなんらかのリアクションをとる事でエミヤに違う可能性を見せる事が出来るが、ここでは登場しない)
詳しい経緯を知らずとも弓兵との関わりが原因であると悟り、なのはを心配し、エミヤを追求するフェイトやヴィータ達。
それらを承知しつつもそれはそれといった感じで、口手八町でレジアス等の管理局首脳の裏を探り策謀をめぐらし、あるいは真摯に語りかけるアーチャー。
弓兵を復讐者に、あるいはなのはをフェイトに互換してもイケル。
あと、前にもあったけどディルムッドが召喚されて、一部人間関係がギクシャクするっていうのをギャグではなくシリアスでやってみるとか。
どうやってもディルが不幸だな〜。猛犬以上の幸運ランクの低さ。
すみません……フェイトルートを先に仕上げる筈が
妄想のパラメーターが短編の方に偏ってしまい、こっちの方が早く仕上がってしまいました。
慰安旅行の一日目、投下します
「ティアナ。 さっきのあの通信は何だ?」
温泉街へ皆が散っていく中、シグナムがティアナランスターを呼び止める。
先ほどの不振な通信を言及するためだろう。
だが呆……と、どこか夢見心地のティアナには声が届いていないようだ。
無理やり呼び止めて事情を聞き咎めようとする騎士。
だが彼女に近寄ろうとした将を遮るように立つ―――
――― 和装束に身を包んだ少女が凄まじい形相でこちらを睨んで来る ―――
「………む」
「あ……あ、シグナム副隊長……さっきは、その……」
「ささ、行きましょうご主人様! あちらに美味しい甘味所がございます!
ここら一帯は私の庭のようなもの……数々の穴場スポットに案内しちゃいますよ!」
腕にしがみ付くようにして少女はティアナをズリズリと引き摺っていってしまう。
まるで外敵から大切なものを守ろうとするように。
その後姿を将は細い目で見据えつつ―――
「大丈夫かアイツ?」
「将来、執務官として局を背負って立つ身だ。 あれも良い経験になるだろう」
狐に憑かれた部下の奮闘を―――合流したヴィータと共に期待するシグナムであった。
――――――
CHAPTER 1-1 あくま達 ―――
「良かったねティア。 もっと怒られるかと思ってたから……ホッとしちゃった!」
むしろ、いきなり鉄拳が飛んでくる事も覚悟していた。
故にあの厳しいシグナムがあっさりと解放してくれた事に幸運以上のものを感じてしまう。
「………」
しかしながら親友からの応答は………無し。
「どうしたの? もしかしてまだ体がだるいとか?」
「……………………軽いのよ」
「へ?」
キョトンとするスバルナカジマを前に、戦々恐々のティアナの表情である。
「軽いの………足の裏に自分の体重を感じない」
言ってその場でステップを踏む執務官補佐。
背中に羽が生えたような軽いフットワークで地面を氷上の如く滑り―――
「うわわ!?」
何と切れ味の鋭いハイキックをスバルに放ったのだ!
その中足がスバルの鼻先スレスレで止まる!
「ちょっと、ティア!?」
続け様に左のリードからミドルキックのコンビネーション! 必死に捌くスバル!
そう、必死だ! 不意を突かれたとはいえ近接特化のスバルが彼女の技に全力で対応せねばならなかった!
「速やっ!? ティア、速っや!?」
カミソリの様な後ろ回しをスウェーバックで回避したスバルが感嘆の声をあげる!
掛け値無しの絶賛だ。 親友の蹴りが掠めた顎から、焦げ臭い匂いがする。
「凄い凄い! ティアナ絶好調だよ! いつの間にそんなっ!?」
「ふ………」
喜びはしゃぐ親友を前に―――
(な、何された……? 私は、あの狐に……?)
―――ティアナの笑みは確実に引きつっていた。
言うまでもなく自分にスバルと組み手が出来るほどの近接技術は無い。
身体能力が馬鹿みたいに向上しているのだ。 いや、肉体スペックだけではない……
さっき魔力集束を試してみたら、リミットブレイクするまでいつもの半分の時間もかからなかった。
恐ろしい……恐ろしい……狐のエステ恐ろしい……
腹ごしらえをしてくると饅頭屋に消えていったサーヴァント……
その得体の知れなさがとにかく恐ろしい。
「ほとんどドーピングじゃない……ブーストなんて目じゃないわ。
今ならマジで、なのはさんにだって勝てそう」
「それは頼もしいね」
「ひええっ!? なな、なのはさん!?」
自嘲気味に哂うティアナの後方。
白を基調としたBJに身を包む、言わずと知れた高町なのはが立っていた。
「あ、あはは……あの、違うんです……今のは、その……」
「でも駄目だよティアナ……具合が悪い時にはしゃぐと余計に悪化するから。
無茶はしない事! 体調管理も仕事のうちなんだから、ね!」
「……………はい」
上司の言葉に肩を落とす。 全くもってその通りだ。
「今回の演習には参加しなくて良いから。 ゆっくり温泉に漬かって休む事」
「えっ!? だ、駄目です! それは……!」
今から自分達が向かうのは教導演習会の第1斑。 つまり、なのはの受け持つ組だ。
上司の手伝いをするために自分は体を引き摺ってでも、ここまで来たというのに……
「いいから。 しっかりと英気を養って日々の疲れをふっ飛ばす事。
夜更かしもいけません。 これは命令です」
「…………でも……いえ、了解です」
支援します。でいいんだよね?
面目次第も無い。 6課のメンバーとして役に立つために来たのにこの体たらく。
しかし一度、なのはの前で無茶をして大失態を演じた経験もある。
この「命令」を突っぱねられる材料など彼女に持ち合わせる筈がなかった。
ティアナをお願い、と監視役にスバルまで付けられて……結局、首を縦に振らされてしまった。
(どうしよう……突然にして3日間、完全にフリーになっちゃったわ)
「ふん……何ですか? あの偉そうなの」
「うわわ!?」
いつの間にか背後にいたキャスターこと狐のタマモ。
饅頭の袋で手を一杯にしながら、去って行く教導官をジト目で見つめている。
「スターズの隊長で私達の上司! 高町なのは教導官!
エースオブエースの称号を持つ凄い魔導士で私とティアナの憧れの人なんだよ!」
「ふうん―――――何かヤな感じ。 上から目線で人を見下して」
「そういう事言わないの。 尊敬してるんだから」
一瞬だがティアナの声に紛れも無い、怒りの感情が乗った。
主人の不興を買ってしまった事にビクンっと反応し、耳を震わせる狐。
「…………」
そのまま口を尖らせて沈黙してしまうキャスターである。
蚊の鳴くような声で 「うー」 と唸る仕草は、拗ねたのか、それとも凹んだのか?
「おみやげ……買いにいこっか」
「うん!」
「………」
ともあれ、まずはこの降って湧いたような休暇の潰し方を考えよう。
皆が働いているのを尻目に過ごす、居心地の悪い三日間になりそうだが。
温泉街の道すがら―――二人と一匹は往く。
――――――
「この人達……毎日、こんな事やってるんですかぁ…?」
高原の薄い空気を必死に肺に取り入れようと喘ぐ口からは、もはや悪態しか出てこない。
奈須高原の開けた大地に用意された特設グラウンドで、ヘロヘロになりながらランニングする影3つ。
「ていうか、私達……何しに、ここに来たんでしたっけ?」
記憶が確かならば、これは楽しい楽しい温泉旅行の筈ではなかったか?
何で今、自分は山のてっぺんで馬車馬のように走って、飛んで、死にかけているのだろう?
「知ってる桜? 消防隊や軍隊の人達ってね、旅行先でもトレーニングを欠かさないんだって。
あいつら2日も何もしないと逆に高熱出して寝込んじゃう変態体質なのよ」
「ほらほら! 無駄口を叩かない! 苦しい時は呼吸を意識して!」
後ろから教導官、高町なのはの声が飛ぶ。
そしてあっという間に自分達をごぼう抜きにしていく白い背中。
これで何週遅れにされたのだろう? 「に、人間じゃない……」 という桜の呟きが皆の心の代弁だった。
「あと、これ全然いつも通りじゃ無いからな。
前に付き合いでフルでやった事があるんだが―――今日はまだ半分以下に抑えてる方だ」
――――――
「「はぁ、はぁ……」」
乱れた息を整える余裕もない。
地面に突っ伏しそうになる体を辛うじて支える士郎となのは。
「……凄いね、衛宮君。 初見でフルラウンド付いてきた人、初めてだよ……」
「何――――男のつまらぬプライドというやつだ。
いかに相手が魔導士とは言え、女性よりも先に潰れたとあっては凛に何を言われるか分からん」
「そっか……やっぱり男の人の体力は根本的に違うね。
フェイトちゃんもあと数年もすればエリオに抜かれるかも、って言ってたし」
ちょっと悔しいな……と、はにかんだ笑みを見せるなのは。
「じゃあ、お互い限界が近いところで………締めの模擬戦と行こう。
これはほぼ全ての体力を出し切った後にやるから意義があるの。
勝ち負けは度外視で、とにかく全てを出し切る事……いい?」
「勝ち負けは度外視と言っても――――別に勝ってしまっても構わないのだろう?」
強気な士郎の言葉にキョトンとするなのは。 次いでニヤリと不敵に笑い―――
「………うん! 全力でお願いっ!」
――――――
「………気がついたら医務室だった」
「どうでも良いけど何でアーチャー口調なのよ?」
「酸欠で会話のキャッチボールが出来なくてな。 ほぼ無心で話してたら、ああなった」
なるほど、極限状態で何が何だか分からなくなるというのは分かる……自分達が今まさにそんな状態だから。
そして、いつ終わるとも知れない苦行に苛まれる3人の背後から、またも人影―――
「だらしないわねー! しっかりしてよ、凛、桜!
貴方達がショボイせいで魔術師みんながそうだと思われたら心外だわ!」
歌い上げるような少女の声が死にかけている3人の鼓膜を叩く。
「ア、アンタは……」
極限状態に入りつつある人間には酷な物言いだ。
しかも、ドズン、ドズン、と腹に響く振動が地味にこちらの体力を奪っていく。
桜が 「うぷっ……」 と口元を当てて嗚咽に咽ぶ中―――
「アンタはソレの背中に乗っかってるだけでしょうがーー!!!」
怒りの声を少女―――イリヤスフィールに叩きつける凛である。
そう、なのは教導官を更に周回遅れにしている巨人―――バーサーカー。
その肩にインコみたいに乗っている少女もまた、旅行の参加者であった。
ちなみに当然、サイズの問題でバスではなく空輸での出勤である。
「向こうも困惑してますね……」
「流石のなのはも肉体面でコレに教えられるわけも無いか……」
突撃<ロース>ッ!!の掛け声と共に前方、なのはをもブチ抜く黒鉄の巨人。
これには教導官も苦笑するしかない。
こうして魔術師側のプライドは白い少女によって辛うじて保たれたわけだが―――
「んなわきゃ無いでしょ! そんなもんに頼って勝っても意味は無いわ。
犯された名誉は――――――自分の手で取り戻してこそ価値があるのよ!」
不敵に笑う凛。
そう――――本番はこれからなのだ。
――――――
「地上戦メイン?」
「そう。 何か問題が?」
一通りの基礎メニューを終えて、ついに演習会の肝である「模擬戦」が行われようとしていた。
異なる技法を持つ世界同士の交流で、これほどに情報・技術の交換が為されるものは無い。
身内同士のスパーリングなどとはまるで違う、いわば交流試合といっても良い事柄だ。
「理由があれば聞かせて貰えるかな?」
「簡単よ。 こっちは貴女のように飛べないし、地上と空じゃ距離が離れていて戦いにならないじゃない?
離れてバンバン打ち合う大味な塩試合なんて見物人も退屈でしょう?」
「そんな理由じゃ空戦魔導士に翼を畳ませる……不利な要求を一方的に飲ませる道理にはほど遠いよ?」
「そちらが一方的に不利になるってわけじゃないでしょう?
遠れて打ち合いたいってんなら、こちらだって望むところなんだから。
貴女はロングレンジに特化した砲撃魔導士だけど――――私にだってコレがある」
言って懐から見せたモノ―――なのはの顔色が明らかに変わる。
この遠坂凛を1戦級に押し上げる要、鈍色に輝く短剣……!
「威力では貴女の勝ち。 でも連射性能と魔力供給では私の勝ち。
ね? 大味になっちゃうでしょう? 簡単な図式の勝負にしかならない。
だから貴女が飛行しない代わりに私はコレを封印するって事でどう?」
「……………分かった。 陸戦メインで行こう」
「決まりね」
緊張感に溢れるやり取りが終わり、互いに定位置につく2人。
こうした戦前交渉から戦いは始まっている。
「でも……向こうは飛行禁止でこっちは宝石剣封印? これって姉さんの方が損してるんじゃ?」
あの短剣は並の砲撃よりも連射で勝り、威力でもそう引けは取らない筈だ。
少なくとも宝石剣が直撃すれば魔導士の装甲とて確実にブチ抜けるだろう。
ならば打ち合いを選んだ方がどう考えても得な筈だが……
「桜はまだ見た事無いんだったな。 高ランクの空戦魔導士が戦うところを」
桜の疑問に士郎が答えを返す。
「あいつらはサーヴァントに匹敵する速度と旋回性能で大空を自由に飛び回り、地上に爆撃を降らせるんだ。
強力な対空兵装を所持しているだけじゃ、あいつらと互角に戦うには足りなさ過ぎるんだよ」
対空手段を持ってようやく―――彼らとは 「戦いになる」 程度の話にしかならない。
Sランク空戦魔導士に拮抗するには少なくとも、セイバーやランサー並に走れて、跳べて、かわせて、切り払える事が必須。
「普通の人間はそこでつまづく。 相手のド肝を抜く一発を引っさげていても奴らの速攻に大概は潰されるからな。
武装隊―――戦闘のプロは伊達じゃないって事だ」
「じゃあ、まんまと口車でなのはさんを地上に降ろした……姉さんの作戦成功ってところですか?」
「どうかな? なのはは敢えて遠坂の誘いに乗ったように見えたが―――お、始まったぞ!」
開始の合図と共に―――凛が駆けたっ! まるでスプリンターのように弾ける赤い装束。
相対する高町なのはは両足のスタンスを広げ、周囲にディバインシューターを設置する。
―――――打ち合いが始まった!
奇襲とも言えるスタートダッシュを見るに凛は明らかに短期決戦を仕掛けていた。
腰を据えて戦えば地力の差がモロに出るが故に、この判断は間違ってはいない。
「6番……8番……大盤振る舞いですね」
「全力で行かないと速攻で潰されるからな」
「いえ、そうじゃなくて……あれだけ今月ヒイヒイ言ってたのに」
「ああ……………まあ、弾薬の費用は全てあっち持ちだから」
納得である。 冷蔵庫には100円バーガーの買い置き……ニッシンとペヤングに埋もれて久しい遠坂邸。
そんな赤貧の鬱憤を晴らすような魔術士の猛攻は悲哀に満ちて凄まじい!
五大元素を有する色彩鮮やかな宝石をアサルトライフルのように打ちまくりながら突進する凛。
「くっ……この!」
「…………」
だが、なのはは揺るがない! 叩きつけられた渾身の3番をも冷静に対処していく。
まるで山を相手にしているような錯覚が凛を襲う。
魔力弾のつるべ打ちを一歩も動かずに打ち落とし続けるエースオブエース。
噂ではあのマジックガンナーとも互角に、艦隊戦さながらの打ち合いをしたと言われている彼女だ。
いかに遠坂凛と言えども弾幕の削り合いを仕掛けて勝てる相手ではない。
体ごと叩きつけるように放つ手持ちの宝石。
その最後の一つをなのはに放ち、それが弾かれた時―――勝負は決する。
「姉さんがまるで歯が立たないなんて……」
ゼエ、ゼエ、と肩で息をする凛に対し、涼しい顔を崩さない高町なのは。
これがサーヴァントとも拮抗するSランク魔導士の力なのか?
「いや……」
足がもつれるのか―――なのはに向かってよろけるように、1歩、2歩。
2人の間合いが徐々に………徐々に詰まっていく。
「まだだ」
「!!!」
なのはが息を呑む! 目を見開き、右手で障壁を形勢!
その強大なシールドに対し、遠坂凛が突っ込んだ!
――――――
「ど、どうしたの!? アンタ、それ……!?」
「うええ……やられたぁ」
自然公園のベンチで肌寒い風に煽られながら休息を取る一行。
スバルの格好は俗に言うスポーティなヘソ出しルック。
腹部を晒した露出の高い服装だが―――今、そのむき出しの腹に大きな痣が出来ていたのだ!
「さっき向こうで早速、手を合わせたんだ……アサシンさんと」
ティアナが青ざめた表情で親友の赤黒く腫れた患部に触れる。
「つっ…」 というスバルの呻きが聞こえた。 重症にすら届く傷に二の句が繋げない。
「衝撃が……背中にまで突き抜けてる……」
何をしたら―――どうやったら人体にこんな傷をつけられるのだ?
しかもBJと幾多の障壁で守られた魔導士の肉体に?
「裏当て、浸透剄……アサシンさんはそう言ってた。
この星の拳士なら皆、会得してる基本技なんだって。 地球の拳法って凄いなぁ……」
「だ、大丈夫なの? すぐにキャロかシャマルさんに見せないと……」
「へっちゃら!………でも無いけど、そこは私も意地の見せ所だよ!
結局、こちらのナックルは当たらなかったけれど、私だって最後まで倒れなかったからね!
向こうも驚いてたもん!」
「アレ耐えるとか、頑丈なブリキですねぇ」
狐が呆れたように呟くと同時――――
遠く離れた第1演習場で悲鳴のような歓声が上がった――――
――――――
演習場の中央―――なのはの体がくの字に折れた!!!!!!
「か、ふッッッ!??」
嗚咽に咽ぶ声に苦悶の表情! 凛の拳が確かに通った証だ!!
「やったか!?」
思わず立ち上がる士郎!
絶招に至っていない拳法で彼女のBJを抜くなど到底、敵わない筈だ。
そして並の人間の駆使する剄力も同様に通用しないだろう。
「しかしどうやって……? まさか魔力か!?」
そう、体内に巡り巡るは「気」も「オド」も同じ事―――
その扱いに長ける者の総称を魔術師と呼ぶならば、遠坂凛は天才と言われた魔術師に他ならない!
剄の変わりに宝石の魔力を代用しての浸透剄を炸裂させたのだ!
無茶苦茶極まりない合作だが、それも彼女ならでは!
(まだよ、まだまだっ! 取りあえず一発入れたけど、この鉄骨女を沈めるには全然、足りない!)
心意六合・金剛七式の構え―――中国拳法に広く伝わる連携技!
一撃で相手を倒す八極拳とは相反する技だけど気にしたら負けだ!
(悪く思わないでね、なのは! 掃腿から、通天砲、連環腿、あとは……もう適当っ!
がら空きのボディへ打ちまくって打ちまくって……!!!)
と、勝利への図式を明確に描いたところで―――――――
そこで凛の意識は途絶えた―――
――――――
苦しげに腹部を庇ってよろめく高町なのは。
彼女に向かって踏み込み、2撃目を放とうとした紅い魔術師。
遠坂凛の体が天高く舞い上がる―――!
彼女の足元から噴水のように湧き上がったのは桃色の魔力弾!
10数個のアクセルシューターが下から凛を貫いた!
息を呑む桜に、ピシャリと額を叩く士郎! これが……恐いのだ!
高町なのはは元々、相手の攻撃を受け止めて返すタイプの魔導士。
自分の防御力に絶対の自信を持つが故に出来る戦法。
あらかじめ打たれる事―――打たれる覚悟を備えている者に不意を打たれるという言葉は無い。
例え防御を抜かれダメージを受けても、常にカウンターの一手を残しておくのが迎撃のセオリーならば……
初めに周囲に張り巡らせた彼女の弾幕が―――心なしか少なかった事にまずは気づかねばならなかったのだ!
潜地式のシューターの地雷によって跳ね上げられた凛に向かって、なのはが左手を指し示す!
その号令に従い、残りのシューターが獲物を目指して飛来―――追撃は終わらない!
3時の方向から凛を滅多打ち!
きりもみしながらはね飛ぶ肢体!
今度は6時の方向からつるべ打ち!
嵐の中に放られた人形のように翻弄される肉体!
そして正面にてゆっくりと構える教導官のデバイスの照準が―――既に脱力して宙を舞う対象をロックオンする!!
「ディバイン……バスター」
―――模擬戦は終わった。
――――――
……恐らくは初めて目の当たりにする者も多かった筈だ。
人が巨大な熱線に飲み込まれて大爆発する光景、というものを。
その惨劇に誰もが―――二の句を繋げない。
「…………姉さんが死んじゃった」
ボロ布のように地面に打ち捨てられる残骸の如き姉の姿を見て
呆然と漏らした桜の呟きを―――暫くは誰も否定出来なかった。
「いや………流石にそれは無いと思いたいが……だが、しかし……」
「たとえ傷一つ付いてなくとも立派な殺戮シーンよね……今の」
不敵が身上のイリヤですらドン引きしている。 そんな中、悠然と佇む管理局のエースオブエース。
ホワイトデビル、KOアーティスト等々、彼女に付けられた渾名は(蔑称を含めて)枚挙に暇が無いが
やはり噂というのは煙が出るから人の口に登るんだと―――しみじみ思わされる光景だった。
「敵に打ち込んだ時………追撃する時こそが一番の危険を孕んでいるもの。
相手を迎撃しようと考える者なら、ほぼ例外なくそこに罠を張る。
だから相手にダメージを与えた瞬間こそ、一歩引いて全体を見据える事……それを覚えておいて」
教導官の講釈は、しかし誰の耳にも入らない。
(次―――次って、あれ? わ………私の出番ですか?)
特に間桐桜の表情がみるみる固まっていく。
締められる寸前の雌鳥みたいな目で魔導士を見つめる彼女―――
「あ、どっこいしょーーーーっ!」
だが、皆が―――なのはですら目を剥くほどの咆哮を上げて
何と遠坂凛が……た、立ち上がった!? 信じ難い。 間違いなくオーバーキルだった筈だ!
「ふふ、うふふふふふ―――」
泥酔者のようにフラフラと引きつった笑みを彼女は作る。
その服の下に仕込んだ宝石がばらばらと床に落ちる。
鎖帷子のように縫い付けたそれが、彼女の意識を寸でで残した命綱か。
「流石ね、なのは……今のはサーヴァントすら沈め掛けた戦法だったんだけど
やっぱ昔の戦法の使い古しじゃ通用しないか……」
「知ってる。 今のは遠坂さんがキャスターを追い詰めた戦法だよね?」
「こりゃ参った――――ガリ勉め。 対策してるのはそっちも同じって事か」
そう、この高町なのはの恐ろしい所は天性の素質に恵まれていながら地道な努力を決して欠かさない事。
スペックに勝る相手が常に万全を期して、こちらの事を調べ上げてリングに上がる様を想像すると分かり易い。
「ああ、そう………そういう事……本気なんだ、アンタ。
ふうん――――面白いじゃない」
くぐもった笑いを喉の奥からひり出して、凛がなのはに人刺し指を突きつける!
「明日も来るわよ! この私、遠坂凛の名にかけて―――3日の間に必ずアンタをKOしてやるっっ!」
「戦技教導隊所属、高町なのは。 その挑戦、受けて立つよ。
五大元素の魔術師の渾身の戦技………楽しみにしてる」
ニヤっと笑みを作る凛。
そして程なく―――くにゃりと崩れ落ちる赤い肢体。 こんにゃくのようだ。
「―――完全に堕ちたわね」
「おい……今の倒れ方は流石にやばくないか?」
「姉さん………瞳孔が開いて……」
「見栄を張るためだけに蘇生したのね……凛らしいわ」
泡を吹いて大の字にダウンする遠坂凛を担いでいく3人と1体。
その後ろ姿を見送り―――――教導官はようやく、ふう……、と一息つくのだった。
こうして1日目は、しろいあくまがあかいあくまを完膚なきまでに粉砕する結果に終わった。
さて、我らが遠坂凛はあの不沈の要塞を3日間で攻略する事が出来るのだろうか?
(あ、私の出番、うやむやになってラッキー……)
裏で胸を撫で下ろしている間桐桜を余所に―――教導教習会・第1班。 その初日が終了した。
――――――
幕間 アヴァロン ―――
翠屋は今―――正念場だった。
開店してより類を見ない、歴史的な貴賓を迎えていたからだ。
コク、コク―――
並べられたタルトを黙々と、粛々と……だが凄まじい勢いで食破していくお客さん。
「――――素晴らしい」
手に付いたクリームまでもペロリと舐め取り、その口から「ほう、」と賞賛が漏れる。
「いや……気持ちの良い食べっぷりですなぁ」
人によっては意地汚い行為にしか見えないが、高貴な人間がやると優雅な仕草になってしまうから不思議だ。
店長である高町士郎も緊張しながらも、目の前の人物に感嘆の声を隠せない。
「感服しました。 どうやらシロウという名を持つ方達は総じて料理のスキルが高いようだ」
「それは、どうも……それにしても貴女のような人とウチのなのはが御知り合いだとは……
失礼ですが娘とはどういった馴れ初めで?」
「どういったと言われましても―――さて、どこから話せば良いのか。
彼女とは時に剣を交え、時に共闘し、かけがえの無い友となりました」
「こんな立派な人にそういって貰えるなんて……あのなのはが、なぁ」
目頭が熱くなるお父さんである。
「セイバーさん! シュークリームも試食して貰えないかしら?」
「頂きます」
父は複雑な感慨に胸いっぱい。
母はあくまで可愛らしいお客を持て成すのに大忙し。
そして客は食う食う、とにかく食う!
「恭ちゃん……」
「分かるか美由希? あのセイバーという少女の凄まじさに。
仮に俺たち2人が今、不意を突いて彼女に仕掛けたとする……」
「返り討ちだね……ほぼ確実に。 私でもはっきり分かる」
そして厨房の影からは客に物騒な視線を送る兄妹が。
「試してみたいな……一人の剣士として」
「ちょっとまずいって! ここで問題を起こしたら、なのはの立場が悪くなっちゃう!」
「む……分かっている。 そのくらい」
「でも、なのは……あの人と互角に戦った、らしいよ」
兄妹共に――――沈黙する。
「あのなのはが、なぁ……」
目頭が熱くなるお兄さんである。
世の中、何が起こるか分からない。
最も戦いとは無縁な平和主義者で剣の才能も皆無だった「あの」なのはが―――
「恭ちゃん……私も涙出てきた……」
「いつかはなのはの成長をこの剣で確かめてみたいものだ……」
しかしあまりに酷い負け方をしようものなら兄の威厳が粉々になりそうだが……
と、そんな感じで魔法使いの妹を持った兄姉が複雑な感動に身を打たれている厨房である。
――― 何はともあれ、高町一家は今日も元気です ―――
「あの、そろそろシグナムとの約束が……」
「あと一品だけ! 和菓子も揃えてみたんだけど……」
「頂きます」
そしてセイバー。 アルトリア・ペントラゴン―――
やっと辿り着いた理想郷は、彼女にとってのアリ地獄であった、らしい―――
――――――
CHAPTER 1-2 雷迅を穿ちし双眸 ―――
「けほっ、ごほっ……」
洗面所に突っ伏して咳き込むか細い肢体―――
それは今さっき教導を終えたばかりの高町なのはのものだった。
彼女に心配そうに付き添うフェイト。
その背中を優しく摩ってやると 「ふええ……」 という力無い呻きが返ってくる。
「大丈夫?」
「大丈夫、じゃない…………」
「流石だね凛は……初日でなのはからクリーンヒットを奪うなんて」
遠坂凛という魔術師はセイバーと同様、局に最も名を知られている者の一人だ。
故になのは、フェイト、はやてとも交流が深く、時には助け、助けられてここまで来た。
だから今日、なのはは日頃の感謝と友情の表れとして凛の全力を正面から受け止めるつもりで望んだのだ。
そしてご覧の通り……物の見事に受け損なったというわけである。
「き、効いたぁ…………来るのが分かっててこれだもの。
やっぱり一筋縄ではいかないや……あの人は」
正面に道を作ってやれば裏道を。 裏道をチェックして待ち構えれば地面に穴を掘ってでも相手の裏をかく。
それが彼女、遠坂凛という魔術師だ。
あの天才が形振り構わず自分から一本を取りに来るという。 それを考えるだけで―――
「気が重いよー……」
「ファイトだよ、なのは!」
縋りつく高町なのはを元気付けるフェイト。
珍しくへこたれ気味な彼女に付いていたいのは山々だが……
「私もそろそろいかないと……」
「あ、そっか……そうだね。 フェイトちゃんも気をつけて」
そう……今日のフェイトのモデルエネミーは―――
「うん……極めつけの相手だ」
パン、パン、!と頬を張って気合を入れる執務官。
雷光――フェイトテスタロッサハラオウンが意気揚々と第2演習場へと向かう!
――――――
「志貴っ! 志貴っ! 志貴っー!」
「遠野く〜ん! 高望みはしません! 一発……まずは一発当てる事から始めましょ〜う!!」
戦技演習の場らしからぬ黄色い声援が飛び交う。
女性陣の声により、場は異様な雰囲気に包まれていた。
「凄い人気だね……」
「迷惑かける………気にしないでくれ、と言っても無理かな?」
「ううん、大丈夫。 始まってしまえば余計な音は消える」
互いに礼儀正しく一礼をして、2人はバックステップで距離を取る。
1斑のような駆け引きも特に無く、ルール諸々も容易に決まった。
「では教導演習会・第2班担当、管理局執務官フェイトテスタロッサがお相手します。
正々堂々、技を競い合いましょう」
「遠野志貴です。 及ばずながら宜しく」
志貴がフェイトの障壁を抜けたら勝ち―――これが2人の間に交わされたルールだ。
クリーンヒットを入れられたら自分が只では済まないという、フェイトの言葉によって決まったルール。
「下手に出てるようだけど内心、自信満々よ……あのフェイトって子。
指一本触らせないって顔してるもの」
「シオン……フェイト執務官の強さはそれほどのものなの?」
「解析終了――――はっきり言います秋葉。
彼女が相手では代行者ですら食い下がるのがやっとかと……今の所、志貴に万に一つも勝ち目はありません」
アトラスの錬金術師の並列思考による戦術予測。
それが叩き出した必敗―――聞いた秋葉が口惜しそうに唇を噛む。
「お兄ちゃんローキック! ローキック! チョコマカ速い相手は足を潰すんだよっ! 膝の靭帯ブッチ切れ〜〜!」
「いやいや志貴さん! レバーです! レバーを抉るんですっ!
こつこつペチペチ当ててけば、どんな強大な相手でも5Rまでに失速する筈です!」
「た、大変そうだね……」
「………分かってくれて嬉しいよ」
あれほどの期待……受け止めて背負う方も難儀だろう。
幾多の女性の熱視線に打たれる彼の背中は、耐えぬ気苦労に満ちている―――
そんな業に些か達観した節のある、落ち着きと貫禄を称えた少年が小振りのナイフを構えてフェイトに向き合った。
「そろそろ始めようか。 俺が心配するような事じゃないだろうけど……全力で行くから、しっかり避けてくれよ?」
「うん……遠慮なく来て」
バルディッシュの通常<アクス>モードを正眼に構え、フェイトも身構える。
――――――
(なるほど……変則的かつ緩急を付けた動きでこちらの視覚を撹乱させてるんだ)
刺客や隠密を旨とする者が多用する歩法―――その足裁きに初めは驚いたフェイトだった。
高速戦闘に慣れた自分の目ですら、しばしば彼の姿を見失い、懐を脅かされたからだ。
蝿や蚊などを目で追いかけていると、時にフ――、と姿を見失う事がある。
彼の動きはそれと同様の原理だろう。 人の反射神経の裏を付く「意外」の体術だ。
(最初は驚いたけど……でも、もう見切った!)
しかしながら、つくづく圧倒的な戦力差というのは埋め難いもの。
か細い女性の手に明らかに余る長物をフェイトは軽々と振るい、遠野志貴を圧倒し始める。
「くそっ! あと一歩!」
「七つ夜」と記された小振りの凶器がフェイトの体を掠める―――!
が、冷静にサイドに反らして事無きを得る魔導士。
外野で上がった 「あ〜」 という落胆の声に苦笑する彼女。
射撃魔法や得意の高速移動すら使わず、近接においても志貴に主導権を渡さない。
「あいたっ!?」
デバイスが下から振り上げられ、ナイフが刎ね飛ばされる。
「志貴……飛び込んでくる時、防御をおろそかにし過ぎ。
それだと受けに転じるのに一呼吸遅れちゃうよ」
「くっそ……! まだまだ!」
ナイフを拾い、かかってくる少年を前に身構えるフェイトだったが―――
(っ!!?)
突如、凄まじい悪寒に貫かれる!
応援席を見ると―――自分を凄まじい顔で睨み付ける鬼がいた!
紅く染まった髪を逆立てて、遠野秋葉が本物の鬼女さながらの形相で仁王立ちっ!
(こ、恐いなぁ……)
身を竦めるフェイトであった。
「これで既に6本目……て、何やってんですか秋葉さん?」
「決まっていますっ! 私の眼力で相手にプレッシャーをかけてるんです!
これで兄さんの勝率が1%でも上がるなら……!!」
「妹がそれやるとシャレにならないでしょ。 それにしても―――強いわ彼女」
アルクェイドの呟きに今や誰もが反論する余地が無い。
金の髪、黒衣の装束を身に纏った彼女の揺ぎ無き貫禄。
初め、おっとりとした彼女の様相を見た者は、とても戦いを生業にする人間だとは思えなかった。
だが今は見紛いようも無い―――死徒をも遥かに千切るSランクの称号を持つ魔導士。
管理局のエリート執務官の力をもはや認めないわけにはいかない。
「遊ばれちゃってますねぇ……女神のような彼女、その内にはとんでもない刃を隠し持つ!
男性はああいう女の人に弱いんですよぉ! あの人、優しい顔して実は相当の魔性と見ましたよ〜!」
「くう〜っ! 兄さん! そんなおシリ丸出しの人を相手に何てザマですか!? 意地をお見せなさいっ!」
「そうだそうだー! おシリならシエルの方が圧倒的に勝(ゴッ)」
客席に血飛沫が飛び散る! 毎秒30発以上の拳が飛び交い、次いでクロスカウンター。
両者のテンプルに拳がめり込み……その場に崩れ落ちる月の姫とシスター。
アリーナ最前列では死闘が始まっていた!
「「…………」」
そんな外野を尻目にヘナヘナと脱力してしまう2人である。
彼女らのおかげで交わされる刃にいちいち力が入らない。
「フーリガンかお前らはぁぁ!!! 頼むから少し静かにしてくれっ! あと汚い野次を飛ばすんじゃない!!」
たまらず応援団に叱責を飛ばす少年だった。
彼にしてみれば所在無い事この上無いだろう。
局の結界担当や係員もその様子に苦笑いを禁じえない。
「ホ、ホントにごめん……何かもうグダグダだ」
「あはは……面白い教導になっちゃったね」
これではいけないな、と思いつつ―――フェイトもそんな微笑ましい光景を見て頬が緩んでしまう。
異質な状況や特別な環境に置かれた人間が歪まずに育つ条件は、良い友達、家族、仲間に囲まれている事だ。
彼が異形の力に押し潰されなかったのはきっと―――彼女達に囲まれていたからなのだろう。
(今日はすっかり悪役だな……)
「フェイトさん、油断しないで! 相手はまだ余力十分です!」
………そうでもないか、と執務官は微笑する。
女子の声援に紛れて、大事な大事な聞き間違えようの無い声が耳に届いたからだ。
自分だって子供の頃とは違う。 あの声援さえあればどんな時だって戦える。
「途中、ダレちゃったけど……最後はちゃんと形にして締めよう」
「! ………ああ」
相棒バルディッシュを華麗に振り回し、後ろ手に構えて腰を落とす執務官。
見物人全てが息を呑む。 彼女の空気が明らかに変わったのだ!
フウ、――と呼吸を絞っていくフェイト。
先ほどまで湧いていた見物客も固唾を呑んで見守る。
最後に今日、自分のサポートに回ってくれたエリオモンディアルの姿を確認しようと
彼女は、客席の方にチラっと目をむけ―――――――
「………………え?」
その思考が―――――――――――完全にフリーズした。
――――――
曰く―――瞬きの後には相手を沈めている。
それが雷光、フェイトテスタロッサハラオウンの疾風迅雷。
殺気などという物騒なものをぶつけてくる彼女ではない。
だがそれでいて―――迫り来る雷雲のような威圧感がゆっくりと場を支配していく。
遠野志貴もまた、七夜の業を受け継ぐ者として臆さず身構えた。
だがもはや勝敗は歴然。 このままでは志貴に勝ち目は無い。
「万事休す、です……彼女の止めの一撃を志貴が回避する術はない」
志貴がフェイトの動きを捉える事は絶対に無い―――シオンはそう事実だけを告げた。
淡々とした声に一抹の落胆が篭ったのは、志貴ならあるいは…という期待があったからだろうか。
しかしながらプロとアマチュアの違いは勝てる戦いを決して取りこぼさない事だ。
何をしてくるか分からない凶悪な犯罪者を常に相手にする執務官。 まぐれやラッキーパンチを期待出来る相手では無い。
圧倒的優位にいるフェイトは自身の魔法をほぼ使っていない。
せいぜいがブリッツアクション <部分的身体能力の加速術式> くらいだろう。
「術の大部分を封じている以上、決して届かない相手じゃないんです。
ですが、残念ながら踏んで来た場数のケタが違う……」
プロフェッショナルの腰を据えての迎撃とはあれほどの安定感、磐石を誇るものなのか?
付け入る隙など無い。 彼女の思考、冷静さを乱す何かが無い限り―――
「―――足の小指くらいならバレないわよね?」
親指の爪をかじりながら物騒な事を言い出す鬼妹。
「やめた方が懸命ですよ秋葉さん。 悪質な危険行為は即、反省室送りですから」
「そうだよ妹………あそこはキッツイよ? 髪の毛全部抜け落ちるよ?
ドラゴン○ールのナ○パみたいに紅主バージョンになっても認識されなくなるよ?」
言ってケラケラ笑う吸血鬼に、キーーッ!と牙をむき出しにする秋葉であったが――――
「……………………………? 姉さん、秋葉様」
翡翠がポツリと呟いた。
………………
「あ………隙」
次いで琥珀がポツリと呟いた。
戦闘経験が稀薄な彼女達ですらそれに気づいた。
あさっての方向に意識を向けたまま―――
魂が抜けたように無防備になっている―――――相手に……
「遠野くんっ!!」
シエルの言葉よりも先に彼が弾けるように一歩を踏み出す!!!!!!!!!
そして静かに――――少年は眼鏡を外し、内に秘める力を解放したのだ!!!!
「フェイトさん!? 前っ!!」
「っ!? っ……!」
蒼く、どこまでも深く、蒼く―――!!
その双眸が放つ光に貫かれ、フェイトの総身に鳥肌が立つ!
使うまいと決めていたバルディッシュの戦闘形態<サイス>を思わず解禁し、眼前の相手に振るう!
だが――――――殺された……!
何の変哲も無い小刀がフェイトの光り輝く大鎌に触れた瞬間
黄金の刀身が紙のように断ち切られ、バラバラに霧散する!
その手に何の手応えも残さぬままに!
(こ、これが……!)
――― 近接特化型・単体破砕・殺害レアスキル ―――
(直死の……っ!!)
目の前の相手が、先ほどまでの少年と全く別のモノと化していた――――
「死」の体現者! 殺気と蒼き瞳に射抜かれて、フェイトの理性よりも本能が訴えた。
コレに殺される事は必然。 どれほど力で勝ろうと死の摂理からは逃れられないと!
咄嗟に手を翳し、張った障壁!
「……逃がさない―――――殺す」
その三重の護りごと、黒衣の魔導士の体を――――17つの閃光が駆け巡った!
――――――
「…………っ!!!」
手を翳した姿勢のまま微塵も動けないフェイト―――
彼女の横を切り抜け、ナイフを構えながら志貴も一歩も動かない―――
魔導士は驚愕に目を見開き、少年はやる事を終えたように目を閉じる。
やがて彼女を覆っていたBJが上半身……
次いで下半身と砕けて飛散していき―――
「フェイトさんっ!!」
応援席から大歓声があがり、対照的に蒼白になるエリオが悲鳴をあげる。
文字通り一瞬で、あまりにも呆気なく、模擬戦の勝負は決したのだった。
「…………あ?」
しかしながら次の瞬間、大衆の誰かが間の抜けた声を発する。
執務官フェイトテスタロッサハラオウンのBJ―――
だけでなく、その下に羽織る服までが―――
舞い散る花びらのように―――ファラリと、破けたからである………
――――――
「…………」
「ち………」
羞恥に頬を染めて、フェイトはその場にペタンとしゃがみ込む。
そんな彼女から一歩、二歩と後ずさる本日のヒーロー、遠野志貴。
「………違うんだ」
しかして……シン、と静まり返った広場に彼の呟きだけが空しく響いた。
当然、広場はそんな御託を許すような雰囲気ではない。
収集の付かなくなりそうだった舞台にて先手を打つように、秋葉がコホンと咳払いをする。
「志貴……それはちょっと、どうかと思うよ」
「遠野くん―――狙いましたね?」
「なっ! 違っ!?」
「遠野家の長男ともあろう者が何て破廉恥な――――!」
並みいる女性陣が突如、掌を返したように大ブーイング!
先ほどの団結、心温かい応援はどこへやら? 寄ってたかって好色野郎を罵倒する!
「志貴さまを最低です」
「志貴さん、もろ出しでレッドカードですー♪ 地下帝国にご案内ですかねー」
「お兄ちゃんの変態!変態!変態!変態!」
「もはやエロ河童ですか貴方は」
「なっ!? 都古ちゃんまで!? 待ってくれ! 俺の話を聞いてくれっ!」
四方八方から言葉のナイフで滅多切りにされる彼。
野犬に囲まれた鳩のように右往左往するが既に逃げ場無し!
彼の腕を、足を、女性達が拘束する!
「う、うわあああああ!! 違うんだぁぁああああっ!!!」
海神に捧げられる生贄のように、魔眼の少年は連れていかれる。
えっほ!えっほ!という女性陣の掛け声が、唖然として動けない局員の耳に木霊する中―――
「―――――、」
困ったようにその場でしゃがみ込んだまま、助け船を出そうか迷っているフェイトに
宿の浴衣を手渡して、ペコリと頭を下げた黒猫の夢魔が、生贄の行列へトテテテテ、と駆けていく。
こうして、結局うやむやのうちに第2演習場の1日目は終わる。
フェイト、遠野志貴、共に戦闘不能という結果を以って。
女性陣に連行されていった彼がその後、どうなったかは永遠の謎であり―――
また知らない方が幸せであろうと、断言するものである。
――――――
「恥ずかしいところを見られちゃったね……ごめん、応援してくれたのに」
控え室にはレンに渡された浴衣を羽織ったフェイトと―――エリオモンディアルの姿があった。
確かに文字通り恥ずかしいトコロを見てしまったが今更だ。 それよりも……
――― どうして最後、ソニックムーブで回避しなかったんだろう……? ―――
それだけが少年の心に疑問を投げかける。 どう考えても間に合うタイミングだった筈だ。
あの魔眼使いもまた、フェイトが後ろに避ける事を見越したからこそ一歩、深く踏み込んだ。
だがフェイトは下がらずにシールドで受けたのだ。
故に距離が合わず、BJの下の服にまで切っ先が及んでしまった―――これが真相である。
「危なかったね……彼の手元があと少し狂ってたら体を斬られてたかも。
何にせよ完全に懐に入られちゃった私の完敗だ」
「負け、なんでしょうか? 空戦も魔法の大半も封じて、相手に合わせて打ち合って、それでも……」
「負けだよ。 初めに取り決めが為されて、それに従って戦って負けたんだから」
その事実を後から言い訳で引っくり返す―――そんな事は出来ないし、してはいけないのだ。
しかしながら納得のいかない表情を向ける少年である。
未だ自分の槍が届いた事の無い、尊敬する彼女が簡単に負けた事を受け入れられないのだろう。
第一、空戦魔導士が地上縛りで戦うなどハンデをつけ過ぎだと思わずにはいられない。
「エリオ……空を飛ばない人を相手に、飛んで離れて模擬戦をやっても何の意味も無いんだよ。
実戦だったら相手はこちらが飛行している時なんかに、正面から構えて襲ってなんて来ないでしょう?」
少年の肩を抱き、フェイトは諭すように言葉を続ける。
「食事を取っている時、眠っている時、必ずこちらが地に足をつけている時を狙ってくる。
その攻撃を捌けなければ意味が無い。 空戦魔導士といっても私達は結局、人間。
地上で生活している生き物なんだ。 である以上、戦いは何時だって陸から始まるんだよ」
羽を持ったが故に常に覚えておかねばならない。 自分が本来は地に根を張って生きる生物だという事を。
それを忘れて陸での戦いを疎かにする者は必ずどこかで足を掬われる。
そうやって短い現役生活を終えた魔導士をフェイトは沢山見てきたのだ。
「今日はラッキーだったんだよ……模擬戦だったから。
もし本番であの少年に奇襲を受けていたら……私は確実にバラバラにされてた」
「分かってます……分かってますけど……悔しいです………こんな簡単に!」
「エリオ……負けから学ぶ事の方が多い。 今の闘い、私じゃなくてあの志貴から学ぶ事はあった?」
「え?」
「見るべき所は山ほどあった筈だよ? そこに目が行かなきゃ、エリオの槍は私にも……その上にも届かない」
最後のあの1撃―――否、17連斬は、単純な速度では割り切れない 「絶対」 のタイミングで放られた。
これを外せば後は無いという特攻じみた切っ先は、こちらの感情の解れに一糸乱れぬ精度で捻じ込まれたのだ。
極めれば、いかに最速の機動力を以ってしても防ぎようの無いタイミング―――
その決定的なワンチャンスを必ずモノにする爆発力。
きっと彼はそういう戦いを……常に格上の相手と繰り広げて来たのだろう。
殺し合いにおいて確実に存在する第6感のようなモノは、時に揺るがぬ性能差をあっさりと凌駕する。
結局、沈黙のうちにエリオはフェイトと別れ、控え室を後にした。
彼女は少年にとって母親でもあり、姉でもあり、師匠でもあった。
そんなフェイトの言葉に対して、今はまだ心が整理出来ず納得の行かない事もあるだろう。
だが、その芯に刻まれたものは確かにあったのだ。
フェイトの言葉通り、今日の光景を少年は余すとこなく眼に焼き付ける。
そしてこれより数年後――――
彼はとある合同演習においてフェイトを今日と 「全く同じ目」 に合わせる事になるのだが………………それはまた別のお話。
―――――
幕間 お前の母ちゃん○○○ ―――
(応援してくれたエリオに厳しい事を言っちゃった……負けて幻滅させた上に、何て偉そうな物言いだろう)
気まずい形で別れてしまった少年の事を思い、執務官は胸に一抹のしこりを残す。
(でも私は出来れば将来、エリオに超えて欲しいんだ………私の事を)
彼は強い子だ。 今日の事も糧にして、きっと前に進んでくれる―――そう、信じている。
それよりも問題は、一瞬だが確かに会場で目に飛び込んできたシルエット――――――
腰まで垂らした漆黒の長髪………群青のマント………
エリオがいた遥か後方で佇んでいた影………
「かあ……………さん」
気づいた時には既に見えなくなるほど遠ざかっていた痩身の人影は―――
「……………」
既に自分しかいない控え室で、フェイトは確かに見えた母の姿に苛まれていた。
「実に良い母親っぷりじゃないか」
「え?」
だが、その焦燥の隙間に割り込むように誰かから声がかけられた。
控え室の入り口―――
ノックも無しに入室した何者かが、フェイトの後ろに立っていたのだ。
「タバコ、吸ってもいいかね?」
「あ………ど、どうぞ……」
知らない顔だ。 誰だろう?
一瞬、意味深な表情を作った後、彼女はシガーケースから一本取り出して火をつける。
室内にヤニの匂いが充満し、白煙が通気孔に吸い込まれていく。
「じゃなくて……誰ですか貴女は? ここは管理局の関係者以外、立ち入り禁止……」
「ふむ―――見たところ素材は間違いなく自分の遺伝子を使っているようだが。
しかしこうまで性質が異なっていると、にわかには信じられんな。
やはり人間の性など往々にして、後天的に脚色されるものに過ぎないという事か?」
来訪者に対して質問するフェイトだったが答えは返って来ない。
その人物はいきなりズカズカとフェイトに近づき、無遠慮に鼻先に吐息がかかるほど顔を近づけて―――
「すまん。 キミ、もう一度、脱いでくれないか?」
「え、ええ!?」
「いいじゃないか。 あれだけ盛大に見せびらかしたんだ。 今更、減るもんじゃないだろう?」
「………っ!」
ほんのりと赤くなる執務官の頬。
あまり思い出したくない事をズケズケと掘り返してくる彼女に対し
もはやフェイトも怪訝な態度を隠さない。
「………………」
「駄目か………ならば仕方が無い。 私とあっち向いてホイをやって欲しいんだが」
「…………あの」
「あっち向いてホイだよ。 知ってるだろ? あまりここで時間を取りたくないんだ……早急に頼む」
…………………
「ジャンケンホイ! あっち向いてホイ!」
「ジャンケンホイ! あっち向いてホイ!」
…………………
(何やってるんだろう……私は)
謎の女史に強引に付き合わされるフェイト。
否、特記すべきは付き合ってしまう彼女の性格の良さか。
「驚いたな………眼球移動、視神経から脳へ、全身へと展開する神経郡の並列。
並大抵の技術と知識では到底、再現できない筈なのだが」
何やらブツブツ言っている女史。 遊戯に付き合っている間も無遠慮にフェイトの体を見回してくる。
上から下からねぶるような、その視線に居心地悪そうに身を竦める魔導士だった。
「―――――命の蘇生は神に対する逆理。 だが命の創造は神の所業そのものだ」
相変わらず、こちらの言葉を差し挟む隙は無い。
あっち向いてホイは6、7回戦ほどで終わった。
そして突如、虚空に向かって講釈を垂れ始める彼女。
「それをあの女……よりにもよって後者の方を先に成功させてしまうとはなぁ。
実際、愚かの極みだよ……哀れと言っても良い。
知識と能力のみ神の域に近づいて、精神がそれに全く追いついていないのだから。
何の事はない、あの女は――――――ふむ?」
そして女は今しがた、気付いたようにこちらを一瞥して口を開く。
「キミ、母親は好きかね?」
「………いきなり何を言っているんですか?」
「自分を人形扱いするような母親をキミは今でも愛しているかと聞いている」
――― 不意に爆弾を落とされたような衝撃だっただろう ―――
フェイトの表情が凍りつき、次いでみるみるうちに険しくなる。
「愛しています。 今でも変わる事無く」
そして―――迷う事無く答えた。
「そうか」
闖入者は租借するように何かを思案する。
「恥じる事は無い――――誇りを持て。 人形はいいぞ!」
そして、はっはっはっ、と上機嫌で笑いながら去っていく。
バタンと勢いよく締まるドア。 フェイトの 「あ……」 と呼び止めようとする声も遮られ―――
電光石火。 執務官に何一つ反撃させる事無く………
「な…………何だったんだろう?」
一過性の台風のような女は謎だけを残し、去っていった。
――――――
CHAPTER 1-3 四の五の言わずにぶった切れ ―――
(……………ハズレ、か)
うんざりといった表情で烈火の将シグナムは溜息をついた。
「あの……シグナムさん」
救護班、キャロルルシエが心配そうに騎士を見つめている。
「お前は何もしなくて良い。 軽口に付き合ってやる事もないのでな……バカは構うと付け上がる」
「ハッ! 脳筋女にバカって言われちゃったよっ!」
まったく―――本当に……セイバーが来る筈がとんだブタを引いたものである。
「騎士? 魔導士? デカイ顔してるけどさぁ。 どうせサーヴァントよりも弱いんだろう?
したり顔で聖杯戦争にちょっかいかけて来やがって、あまり調子に乗るなよな」
「ほう? 聞き捨てならんな」
「おっと! 凄んだって駄目さ! 僕に手を出すと地獄を見るぜ」
「面白い……どんな地獄を見る?」
「これを見ろよっ!!!」
言って彼――――間桐慎二が両手を広げる。
すると右手には魔導書。 左手には令呪が。
「聞いて驚くな……今の僕はサーヴァントを2体も所持してるんだぜ!
お前らがヒイヒイ言って手こずる化け物を2体もさあっ!
ついに僕が聖杯に認められる時が来たって事だよ! 今、いい感じに最強じゃない? 僕」
問答に乗ってやった事を心底、後悔する将である。
失望とも呆れとも付かない深い落胆。 それを見て、慎二の顔が歪にゆがんだ。
「生意気な女だな……いいよ、吼え面かかせてやる」
「仮にも男子が他人のフンドシを見せびらかしてご満悦か? では満足したなら、もう帰れ。
お前のような者がここに居ても楽しい事など何一つ無いぞ」
「はぁ? 逃げるの!? ひゃはははっ! もう遅いってのっ!!
おいライダー×2! こいつ泣かせちゃえよ!」
…………………
「さあ! この無礼な女をボロクソに引きずり回して地面に這い蹲らせてやるんだ!!!」
…………………
――――何も起こらない。
天然パーマがひゅー、と風に揺られている。
「あれ………ど、どうしたんだよライダー×2っ!? 何故来ない!?」
「あの二人なら反省室だ」
行きのバスで暴走行為を働いた罰として、すごすごと連れて行かれた一団。
彼が呼び出そうとした切り札は、既にその中だった。
「ちなみに二人からの伝言だ」
しなびたワカメが乾燥ワカメになるくらい絞ってやって下さい
「なっ!? あんの役立たずが! 裏切ったのかっ!?」
大人になれよ、シンジ
「余計なお世話だっっっ! 8歳だからってバカにしてんのかーーーーーっっ!」
地団太を踏んで悔しがるOH慎二。
「……貴様の根性は幼少の頃から叩き直さねば直らんという天の啓示だな。
よかろう。 全く持って気は進まんが暇を持て余していた事だ……稽古をつけてやる」
「や、や、やってられるかよ……っ! 僕は帰るぞ!!」
踵を返し、第3演習場を後にしようとするワカメ。
既に賽を投げてしまった後だと言うのに……
その頬から数センチ横をレヴァンティン―――蛇腹剣に変形した将の刃が通り過ぎる!
パラリと落ちる慎二のもみ上げ。
「ひっ!!??」
「まず一つ。 迂闊に敵に背を向けるな。
一撃で殺されたくなければな。 さあ、好きな武器を取れ」
「やや、やめろ! やめやめ………ひいっ!??
ちょ、熱い! 何か熱いんですけどっ!?」
「どうした? こちらはまだ剣すら抜いていないぞ?」
……………………
キャロ達、救護班が思わず目を逸らす………
口元を押さえてその惨状を見ないよう悪戦苦闘する中―――
第3演習場の初日は何の山場も無く幕を閉じた。
幼い頃からの教育は大事だというお話―――そう注釈を付けておかないと………
「ぎゃあああああああああああああっ!!!!!!」
この惨劇は到底、映像に残せるものではなかったと――――後の記録係は語る。
――――――
「――――空戦がしたいのだ」
「いや………アンタは陸戦を磨いた方が……」
「――――空戦がしたいのだ」
「いや、あのな…………」
「――――空戦が」
「頼むから地上にいて下さいっ!」
第4演習場―――
鉄槌の騎士が紅蓮の鬼の熱意に負けるまで、ゆうに30分もの時を有したという―――
――――――
幕間 ヴァルハラ ―――
パンパン、――と小気味良い音が境内に響く。
彼女達は厳かに手を合わせ、次いで自分の引いたおみくじをめくる。
「末吉かぁ……こういう中途半端なんは微妙やなぁ。
大吉か、いっそ大凶辺りが出てくれた方がネタとしては盛り上がるんよ」
可も無く不可もなく、という結果に不満を露にする八神はやて。
だが横にいる人物が引いたおみくじをピラピラと見せて来るにあたり―――
「げっ……大凶……」
「ネタにどーぞ」
「う………うーん。 決起運わろし、今は動く時ではない、かぁ……どういう事やろ?」
「――――――――また延期か」
陰を背負った切ない笑いを浮かべる彼女。
現地到着後、午後いっぱいを使って行われた教導演習会の1日目。
そのプログラムも全て終了し、皆がぞろぞろと山道を降りて帰路につく。
ひのきの枝に雪の残滓を称えた、風情のある情景。
その中途に設けられた神社でお参りするのは、はやて部隊長と――蒼崎青子。
本格的に色彩彩の催しが開かれるのは二日目だ。
今日のところはゆっくりしても支障は無い。
あとは温泉にでも入って山の幸に舌鼓を打ち、温かい布団で休むだけである。
「それはそうと……どうでした? 青子さんの目から見ても十分、見応えあったやろ?」
「まあね」
それは言うまでもない、先ほどまで行われていた教導演習の事である。
「志貴も成長したわねぇ……あのか弱い少年が、まさか魔導士をひん剥くまでに成長するとは。 私の教育の賜物かしら?」
「何を教えたのやら……まあ、フェイトちゃんはあまりああいうの気にせんから不幸中の幸いやけどな。
でも青子さん。 志貴君が気になるなら皆と応援すれば良かったん違う?」
「あの面子に混ざると浮くのよ、私。 遠くからあの子を見守っているだけで今は満足よ」
そして美味そうに熟したら食らう!と付け加える事も忘れないアオアオ。
最後さえなければ最高に良い人なのに………苦笑する八神はやてだった。
「話は変わるけどさ……行きのお騒がせ連中が反省室に叩き込まれたんだって?
大丈夫なの? あんなもん大人しく抑えておける手段なんて、そうあるとは思えないんだけど」
「そこは問題ないよ。 対問題児専門のエキスパートが助っ人に来てくれたわ。
まずは管理局からファーンコラード校長っ!」
「へえ?」
「滅茶苦茶、強いんよ! 昔、なのはちゃんとフェイトちゃんが二人掛かりでかかっていって……瞬殺されとった」
「うげ……マジ!? あの二人を!?」
今よりランクこそ低かったものの、数値も経験値もメキメキ伸びていて上り調子だったなのはとフェイト。
そんな脂の乗っていた二人に敗北の味を教える意図で組まれた模擬戦だった。
「……丸めて、畳んで、ポイッ!やよ? 当時、なのはちゃんもフェイトちゃんも相当ショックでなぁ。
なのはちゃんなんて未だに何が何だか分からないうちに負けた、言うてるわ」
その所業は今の高町なのはがSS+の武装局員2人を鼻歌交じりに捻るようなものだ。
ファーン・コラード―――局の生きた伝説。
なのはですら未だにその深遠の実力の底が見えないという怪物魔導士である。
「で、もう一人はそちらさんから超有名人。 魔導元……」
はやてが最後まで言い終わる前に―――
青子が飲みかけのコーヒーを、だーっと口から垂れ流す。
「うわ、汚っ!?」
「っ! えええええええええええええええっっっ!??」
境内に彼女の絶叫が山彦となって響き渡る。
バサバサと飛び立つ野鳥たち。
「あの爺さん来てんのぉぉぉぉぉ!!? かか、かか、かきかきっかっか―――」
「あ、青子さんが動作不良や!? ちょっと面白いけど落ち着いて〜!」
そうだ――――迂闊であった!
あのぢぢいがこんな面白いイベントに目を付けないわけが無い!
「胃が痛くなってきた………帰ろかな」
「そ、そんなに……? オウム返しで悪いんやけど、そこまで凄い人なん?」
「凄いっていうか――――――ナイトメア。
貴方達の認識では真祖が最強って事になってるけど……
あの爺さん、散歩でもするかのようにソレの大元を殴りに行ったのよ。 気に食わねーっつって。 しかも勝った」
「うええ……」
最強の老人ペアだった―――その部屋では魔人二人が手薬煉を引いて待っている。
誰だろうと悪さなど出来よう筈も無い。
「そして極めつけに………」
「ちょっと待て―――」
青子の顔が盛大に引きつる。 何を言っているのだ、この娘は―――?
先にその二人の名を出しておきながら他に極めつけられるモノがいるとでもいうのか?
ブルーの疑問に答えるように、無言で懐から写真を取り出して見せるはやて。
その時の二人の表情は何物にも形容し難かったが――――ただ、ただ、白かったとだけ言っておく。
二人は彼を知らない。
だがこの世界で彼を識らない者は恐らく皆無といっても良いだろう。
ニコっと爽やかな笑顔を見せ合う部隊長と魔法使いである。
「こりゃ―――――――どうにもならんわ」
「そうやろ?」
「あー、バスの中で大人しくしてて良かったわぁ……
こんな解脱部屋に放り込まれたら人生、丸ごと変わる」
「ヴァイス君にイスカさん大丈夫かなぁ? 後で様子見にいかな」
写真に写る、その沙羅双樹を背景に慈愛の微笑を浮かべる御人―――
六道、引いては宇宙の摂理と合一した「彼」の写真を脇に仕舞うはやて。
その部屋は時を置かずして「ヴァルハラ」と呼ばれ―――三日間を通して全旅客の恐怖の対象になったという。
本日のヴァルハラ送り―――
ライダー(イスカンダル)
ライダー(メドゥーサ)
ライダー(ドレイク)
ヴァイスグランセニック陸曹
危険行為、並びに交通違反、車両破損。
………そして先ほど、もう一人
――――――
CHAPTER 1-4 湯煙の中で ―――
「一番風呂ーー!!」
祭のスポンサー。 右の御大、月村忍が大浴場へ飛び込んだ。
「正確には一番風呂ではありませんが」
「…………そうね」
主人の喜色に満ちた顔が一瞬、曇る。
浴室中に充満する香を炊いたような甘い香り―――
桶攫いの中にある数10枚の薔薇の花びら―――
準備中に押しかけ、ファリンを拘束して風呂焚きをさせ
浴室を独占していた誰かさんは、ついさっき反省室に連行された所だ。
後に道中での悪質な車両改造も発覚したらしい。
「まったく皇帝だが何だか知らないけど……公共のマナーくらい守って欲しいわ」
ともあれ改めて新湯となった湯船。
漬かるのは忍を筆頭にメイドのノエル・K・エーアリヒカイト。
医療班のシャマル、キャロ。 警備課のシャッハ。 そして遠野家メイドの翡翠である。
「もうすぐ教導組の連中が大挙して押し寄せてくるからね。
今のうちに入浴を済ませておいて。 夕食時からノンストップ稼動になるわよ!」
「でも、お客様を差し置いて私達が、その……一番湯など頂いてよろしいんでしょうか?」
「よろしいのよ。 祭は裏方こそが真の主役なんだから」
決して脚光を浴びない裏方こそ祭の支柱にして屋台骨。
だからこそ彼らに対する賄いを微塵も惜しむ忍ではない。
「しかし着いて早々トレーニングとか信じられない連中ね……慰安旅行の意味分かってるのかしら?」
「血の気の多い人ばかり集まっちゃいましたから。 少しでも抜いておかないと。
おかげでこちらは大忙し……まあ一線を弁えた方ばかりなので酷い怪我人は出ないと思いますけど」
「そう言えば翡翠さんは第2班を見に行ったのよね? どうだった〜?
意中の彼はかっこ良いとこ見せられたの〜?」
忍がニヤァ、とからかうような笑みを見せる。 ほのかに紅潮する遠野家メイド。
「はい……一応、勝利を収めました……」
「ええっ!? フェイトさん負けちゃったんですか!?」
キャロとシャッハが目を剥いて湯船から身を乗り出す。
「し、信じられない……あのフェイト執務官が…」
「勝利したというか……はい………互いに傷は深かったようですが」
しどろもどろに、どう説明しようか困惑顔の翡翠である。
「へえ……結構、広いんだ。 東洋の奥地にしては頑張ってるじゃない」
そんな中、入り口から新たな湯浴み客の声がする。
恐らく少女のものだろう。 訛りのある日本語のイントネーションが独特な口調だった。
教導組のお客さんだろうか―――? メイド達がそわそわと居心地悪そうにしている。
「…………?」
しかし彼女達が次いで気づいたのは―――
「……………地震?」
「私も感じました。 確かに何か揺れたような?」
―――ドン、ドン、とハンマーで床を叩くような振動だった。
否、それは地震というより突貫工事の騒音に近い。
そして、やがてその揺れが地震などではないと思い立つ彼女達。
音が次第に近づいてくるからだ!
「何……何が起こってるの?」
緊張に身を固くする忍。
無意識に皆を後ろ手に庇うのは当主としての強い責任感からだろう。
「さ、早く来なさいバーサーカー」
その彼女の決意も―――――モノが到着するまでだったが。
「ちょ、なっ!?? なな、な、え、ほあっ!?」
少女の声と、次いで出入り口を窮屈そうに潜る大巨人を前にして……
忍が首を絞められたような声をあげる。
「"!$%'O(’!#$%&(’’%$””」
「……っ!? ……っ!!? ……っ!?」
否、反応は様々だがバグる思考回路は皆一様に同じ。
クモの子を散らしたように浴槽から飛び退り、各々が壁の端に張り付いて体を隠す!
その浴室の中央を―――ミシ、ミシ、とタイルを軋ませて闊歩する重厚感!!!
「何よ? どうしたの貴方達?」
「ど、どうって……お嬢ちゃん! こここ、ここはココ……」
「大丈夫よ。 バーサーカーは狂化されてるから理性は無いし。 安心していいわ」
「ああ、あんし、ってちょっとそういう問題じゃ……!!?」
「………ああ、そっか。 そうよね。 日本の浴場って色々面倒臭いってシロウが言ってたっけ」
少女は何か得心がいった様に頷くと―――
「脱いで。 バーサーカー」
その言葉を以って全てのモノに止めを刺した。
――――――最後の良心がパージされる。
――――――
「ふう……」
諸々の事情により早めに教導を終えたシグナムが憂鬱な吐息を漏らす。
さっさと風呂に入ってしまおうと、皆より先に温泉の暖簾を潜った彼女だったが―――
「……………」
――――何というか、広がっていたのは阿鼻叫喚だった……
旅の鏡を使用したと見られる魔力の残滓―――
恐らくそこを潜って強制的に転移してきたであろう、一糸纏わぬ女達―――
ガタガタ震え、力無く壁にしなだれかかっている者がいる。
虚ろな目をしてぶつぶつと壁に何かをつづっている者がいる。
うわ言のように 「お許し下さい、お許し下さい」 と連呼している者がいる。
卒倒した月村忍を小脇に抱えたノエルの 「測定不能……測定不能……」 という音声が脱衣場に木霊する。
「………何があった? おい、シャマル……」
茫然自失の風体で虚空を見上げていたシャマル。
将の存在にすら気づかず正気を失っていた彼女だったが………
やがて何かを思い出したようにハッと目を見開き、辺りを見回して―――
「キャロが…………キャロが逃げ遅れてっっ!!! あああああああああああっっ!!!!!!」
半狂乱になる湖の騎士を呆気に取られて見下ろすシグナムであった。
――――――
「何なのよ……ねえ、そこの貴方」
「あ、はい」
取り乱して風呂から上がってしまった方々を不思議そうに見ていたキャロに、雪の少女が話しかける。
「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン――――イリヤでいいわ」
「キャロ……キャロルルシエです」
「キャロ。 ちょっと手伝ってくれない? 見たところ肉体年齢は同じくらいだし仲良くしましょう」
「そうですね。 あ、お背中お流しします」
「バーサーカーもお願い。 一人だと大変なの」
「あ、それ分かります! 私もよくフリードの体を洗ってあげたから……
ヴォルテールに至っては近くの湖を貸し切って三日かかりましたよ。 思い出すなぁ……」
流石は竜召喚の少女である。 巨人の竜を前にしてもまるで動じない。
しかして幼女2人に全身を洗浄されるギリシャ最大の英霊。
その神をも恐れぬ所業については―――
もはや、どれほどの試練を上乗せしてもなお足りぬ原罪である事をここに追記しておく。
――――――
「騒がしいな女湯は……まったく風呂くらい静かに入れんのか?」
隣から聞こえてくる喧騒に舌打ちをするアーチャー。
「どうしたエリオ君? さっきから元気が無いようだが?」
場面は変わって男湯。
湯船に漬かるのはサーヴァント・アーチャーとランサー。
管理局のクロノ、ロッサ。 そして―――エリオモンディアル。
アコーズ査察官が意気消沈している少年に声をかけた。
「フェイトが模擬戦で遅れを取ったのが思いの他、ショックだったらしい」
「ほう……あのフェイトが負けたのか?」
アーチャーが驚きに目を見張る。
「飛車角落ちの条件だったとはいえ、ね。 僕もそれには驚いているが……」
だが後で映像を見て納得がいった。 止むに止まれぬ事情もあったのだ。
そもそも今回の演習は勝つ事が目的では無い。
向こうに合わせて、空戦魔道士は初めから飛行禁止にしようという話さえ出たくらいである。
ことに教導官に選ばれた者には今回、一様にある目的・司令が下っていた。
(特に重要な事は向こうのレアスキル使用のデータを可能な限り記録に残す事。
だからフェイトは最後、敢えて「直死」に対してソニックムーブを使わずシールドで受けに行ったんだろう)
結果として魔導士の三重の障壁を<直死>が抜いた―――抜けるという貴重なデータが収集出来たのだ。
フェイトには気の毒な思いをさせたが、彼女は局員として立派に任務を果たしたのである。
この事実を純粋な少年に告げるのは酷かも知れないが、汚いと謗られる事でも無い。
戦技「披露」とは優れた者の技を公開させてその技術を盗むための場だ。
相手の技術をより引き出そうという試みはむしろ当然の試みであった。
「おい小僧。 落ち込んだ時の気分転換の仕方ってやつを教えてやる」
そんなクロノの思案を他所に、湯船から上がったランサーが脇でゴソゴソやっている。
手に持つは真紅の魔槍ゲイボルク。 因果を超えて対象を貫くといわれる槍の穂先が
女湯に面する壁をコリコリ―――、と職人の如き緻密さを以って削り穿っていく。
「よし……開通だ」
「おい………キミは何をしている?」
「何って―――見て分からねえのか? 天国へと至る道を模索してんだよ」
引きつる提督を前にして、しれっと抜かすアイルランドの大英雄。
「だああああっ! 何を考えてるんだキミは! 犯罪だぞっ!
僕達が何なのか、まさか忘れたわけじゃないだろうな!?」
「固え事言うんじゃねえよ……何が犯罪だ。
俺が坊主くらいの頃は、こんなもん悪戯のうちにも入らなかったぜ」
「仮にも名だたる英霊が覗きの真似事とは嘆かわしい!
止めるぞクロノ! この悪辣な痴漢男を拘束する!」
「お前ら、英雄色を好むって言葉を知らねえのか!? 止められるもんなら止めてみなっ!」
水上を跳ね飛ぶ3人の男達。 ……醜い。
オスという生き物の性は、時に人を獣以下の畜生へと堕落させる。
「あの……皆さんはそんなに……女性の裸って見たいものですか?」
ポツリと呟いた少年の声―――ランサーも局のエリート達も、その動きがピタリと止まる。
「「「……………」」」
一人、大人しく湯船に漬かる少年に対し
ランサーは無言でツカツカ歩み寄り、彼の肩に手を置いて―――
「―――――お前、何言ってんの?」
憤りを通し越した、そんな無表情でこう言った。
「いえ、その……僕はそれほどというか………見慣れ……いえ」
しどろもどろに言い掛けた事を訂正するエリオ。 だが時既に遅し。
「…………詳しく聞こうか」
槍兵に肩をがっつり組まれて湯船に拘束されてしまうエリオ。
困ったように目を泳がせる彼だが、失言を後悔しても後の祭。
「すいません……忘れてくれると嬉しい、です……」
「……そうか。 あの娘達はそういった方向に無頓着だからな……なるほど、キミも苦労してたんだな。
僕も昔はフェイトのそういう所に大層、困らされたものだ」
ロッサが唖然としているのを尻目に、得心したように頷くクロノであった。
「エ、エリオ君……じゃあ、もしかしてキキ、キミは、その……はやて部隊長の、も……?」
「…………」
つい、と―――――エリオはロッサから目を逸らす。
子供なりの精一杯の優しさだった。
「ぐああああああっっ! 何て事だぁぁ!! アンリミテッド・ドッグ・ワークスっ!!!」
「おい! 犬を粗末に扱うんじゃねえよ!」
「ついでに技の名前も改名したまえ―――真に迫れぬ贋作ほど惨めなものは無い」
「うるさい黙れっ! お前ら使い走りに僕の気持ちが分かってたまるかぁ!!
……さあ、エリオ君。 ちょーっとお兄さんが背中を流してあげようか」
「ひいっ!?」
「ついでに脳も洗浄してあげるからねー。 大丈夫……痛くしないから、こっちへおいで」
身の危険を感じ、高速魔法を駆使して姿を消す少年。
「ふはははははっ! 逃がさないよ!!」
それを猟犬たちが群れを成して追いかけていく―――――
―――――――――――――言うまでもなく………
本日のヴァルハラ送り(追加) ―――
ヴェロッサ・アコーズ査察官
浴室での錯乱、少年に対する暴行
蛇足だが、後日―――とある槍のサーヴァントが機動6課へ入隊したいと局の窓口に申し出たという。
「サーヴァントを入局させるのは管理局の悲願。
確かにキミならば、どの隊でも引っ張りダコだろう。 して、志望動機は………?」
「ああ? そんなもん、お前……決まってんだろうが」
男は居住まいを正し、コホンと咳払いをして一言―――
「綺麗な姉ちゃんと毎日、お風呂に入りたいからですっ!」
「却下だーーーーーー!!!!」
………書類審査に通すまでもなかったという。
――――――
幕間 恋する相手を求めて ―――
1等の温泉旅館でありスポンサーに大財閥が付いているという事も手伝って、その日の夕餉の品目は豪華絢爛なものだった。
ありとあらゆる山の幸が並べられる煌びやかな食事に皆、一様に舌鼓を打つ。
なのはやフェイト、はやては久しぶりに会ったアリサ、すずかとはしゃぎながら箸をつついている。
普段は部下の手前で抑制してきた年頃の女の子の部分を今日は存分に開放している。
後に部屋で猛省する3人娘だったが、これが慰安旅行というものだ。 その楽しげな娘達の様子を誰に責められる筈も無い。
そんな中―――――ソワソワと辺りを見回すシグナム。
知らずセイバーの影を求める双眸。 挙動不審な騎士の様子に周りも何事かと眉をひそめる。
(………いない? 奴が夕餉の席に顔を出さないだと?)
結局、彼女は午後の教導に顔を出してくれなかったのだ。
おかげで本日は丸ごとワカメの世話だ。
「おい、シャマル……セイバーを見なかったか?」
「うーん……どのセイバー?」
「青い奴だ」
「あ……………え、ええ。 彼女なら医務室で寝込んでるわよ」
「なっっ?」
人目もはばからず驚愕の声をあげてしまう将。
夕膳を引っくり返す勢いでその場に立ち上がりそうになる。
「馬鹿な!? あいつが……やられたのか!?」
まさか彼女を医務室送りに出来る者が局内にいたのか?
一体どうやって? どの演習場でやられた? 相手は高町なのはか、テスタロッサか?
いや局員がやったとは限らない。 何せ本来、敵味方である者がこうして一同に会しているのだ。
(心無い者の不意打ちに会う可能性は十分にある……くそ、一体どこのどいつが!)
「私」
ぐるぐると思考を巡らせるシグナムの隣で、ポツリと一言―――
「……………………何?」
「だから……相手、私………私と、翡翠ちゃん」
羞恥に耐えるように彼女は言った。
「………………どういう事だシャマル?」
「…………」
「もしや………先ほど素っ裸で脱衣場に転移してきた事と関係が」
「思い出させないでぇぇ!!!! その事をぉぉっ!!!!」
「キャッ!」とばかりに手元の焼酎を投げつける緑色。
湖の騎士は未だ乙女の心を忘れない。
将の顔面にぐつぐつに煮立った熱燗が直撃するのだった。
セイバー初日――――
翡翠とシャマルの手作りツープラトンで、もれなくダウン中。
――――――
CHAPTER 1-5 幾多の思惑の元、夜の帳が降りてくる ―――
「勝てないっ!」
「きゃあっ!?」
温泉旅館では定番の卓球盤にて遠坂凛のロケットスマッシュが炸裂!
間桐桜の浴衣から零れ落ちそうな、これみよがしに実った胸―――
その双丘の谷間にスポーン!と白球が叩き込まれた。 後ろに尻餅をつく桜。
「ふう……取りあえず溜飲は下がったわ」
「ひ、酷いっ! 八つ当たりですかっ!?」
卓球で妹をメタメタにして鬱憤を晴らす姉。
猛抗議する桜だが、そんなもの右耳から左耳である。
「はー、すっきりしたー!」
そんな心温まるやり取りを背景に、入り口から浴衣姿のイリヤが姿を現す。
「どうしたの? 二人ともお風呂入らないの?」
絹のような長髪を後ろで結わえ、くるくると見せびらかす雪の少女。
どうやら入浴中に知り合った女の子に結って貰ったらしい。
「今はパス。 夕食後なんて人ごみでごった返してるだろうし」
「姉さん人ごみは苦手ですものねっ! 体臭キツイから!」
「クラゲ臭のするアンタよりマシよッ!」
「おいおい、喧嘩はやめてくれよ……」
人間関係がギスギスしているのは間違いなく、昼間のボロ負けの影響だろう。
「とにかく……実際にぶつかってみて痛感した。
やっぱ、モノが違うわ。 このままじゃ勝てない」
桜も真面目な顔つきになる。 姉にここまで敗北を認めさせるとは……
改めて高町なのはという魔導士の恐ろしさを実感する。
「明日は何とか宝石剣の限定使用まで認めさせようと思ってる。
でも………それでもまだ届くかどうか―――」
「難しいでしょうね。 凛とあのなのはって女の才能が互角だとしても―――
戦いを一つの手段としてきた者と、戦うためだけに力を磨き上げている者の違いよ。
あんなもの普通、魔導とは言わないわ。 敵を叩き潰す事以外、出来る事ってあるの? アレ」
「戦いのためだけに力を磨く、か………どこの修羅の国よ?
ただ強くなりたいだけだったら魔術師なんてやめるわよ私は」
一応、災害救助とかやってるみたいだけどね、と補足する凛。
「本宅からバゼットさん呼びますか? この前、勤め先をクビになって暇してるだろうし」
「……駄目。 相性が悪すぎる。 多分、フラガ発動まで持たない」
「じゃあ、アーチャーかライダー……いっそセイバーをぶつけるというのは?」
「セイバーはダウン。 食い倒れだって」
「いや食中毒だ。 あの顔色は正直、笑えなかった」
「何にしてもよ、桜。 どうして時計塔が私を派遣したか分かる?
仮にサーヴァントでなのはを圧倒したとして、そんな事に何の意味も無いのよ。
英霊なんてのは本来、私達にとっても制御不能の化け物なんだから」
故にアレらと普通に、互角に戦えてしまう管理局魔導士に対し、協会がどれほどの危惧を抱いているか想像に難くない。
あくまで「人間」の魔術師が彼らに対抗できる手段を確立しない事には、お偉方は枕を高くして眠れないのだ。
「結局ね、組織と組織が絡み合う以上、こういう水面下の冷戦が繰り広げられるのは避けられないのよ」
だから昼間は、勝気なイリヤもバーサーカーをけしかけなかったのだ。
この1班を任されているのは協会側で最も有名な魔導士―――エースオブエース。
その彼女に満を持してぶつけて行ったのが時計塔のエースである遠坂凛だったわけだが……
「それでこの体たらくじゃ頭が痛いわ……上が何か言ってくる前に急いで手を打たないと」
「………言ってきたぞ」
げっ!?とガマガエルの泣き声のような声を出す凛。
士郎が持ち歩いていた備品のノート型PC―――
そのメールフォルダの受信音が鳴り響く。
ゴクリと息を呑む凛。 士郎も桜も緊張の面持ちだ。
して、それを開くと―――――――
「おーーーーーーーっほっほっほっほっほっほっっ!!!」
――――――部屋に渾身の高笑いが響き渡った。
「ご機嫌よう、ミストオサカ!!!! どうやら盛大に土を舐めたそうですわねぇ!
ライブ中継で鑑賞いたしましたわ! 貴方の無様なやられっぷりをっ!」
金髪の縦髪ロールを振り乱し、画面に映ったのは凛の宿命のライバル。
青を基調としたドレスに身を包んだ、もう一人の時計塔のエース!
「ル、ルヴィア……」
士郎が喉から搾り出すようにその名を呟く。
よりによって今一番、凛と合わせたくない顔がモニターにでかでかと……
卓球盤に腰を落とし、声一つ発さない遠坂凛の顔を誰一人まともに見れない。
「私、楽しみにしていましたのよ? 我が御学友である貴女が協会の代表として選ばれて
さぞかし大活躍しているだろうと期待に胸を膨らませておりましたのに。
それが、まさかこんな自殺モノの醜態を晒していようとは………」
彼女の背後の大画面に、昼間の教導の動画が写る。
わざわざ保存して実家の大画面で再生しているのだ。
ああ、そして場面はあろう事か―――凛が空中で四方八方からボコボコにされているシーン!
「おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!」
凛が砲撃で爆砕KOされた瞬間まで鑑賞し――――巻き戻し
「おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!
おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!」
また同じ画面まで鑑賞し――――巻き戻し
「おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!
おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!
おーーーーーーーっほっほっほっほっほっっ!!!!!!!!」
それを何度も何度も繰り返し、ソファの上で身をよじりながら笑う笑う!
蒸せるほどに笑い倒し、足をバタつかせて悶絶する!!
やがて、溜飲が下がったように居住まいを正した後、彼女はハァ、と一息ついて―――
「死になさい」
―――虫でも見るような目つきでこう言った。
「人並に恥という概念をお持ちならば今すぐ切腹なさい。 ヤマトナデシコらしく。
ああ、まったく嘆かわしい……今この瞬間も貴女に吸わせる空気がもったいな―――」
金髪が最後まで言い終わる前に、士郎と桜の頭を何かが掠めた――――!
二人の頬肉をゾブリと抉って行った閃光の白球……背後で再び炸裂ロケットスマッシュ!
ピンポン玉がノートPCの画面に写ったルヴィアの鼻っ面にめり込むっ!
「あんのフランスパン女がぁぁぁあああああああーーーーー!!!!」
「ちょ、お前! これ協会の備品っ!」
「落ち着いて下さい姉さん!!」
魔術師たちの夜が更けていく―――
――――――
「相変わらず、やかましい女ですねぇ………あれ? どうしましたご主人様?」
「バカ! カーテン空けるな! 今、顔会わせたら、どうすればいいのよ私はっ!?」
滅茶苦茶、気まずい……………
カーテンで仕切られたパーティ部屋の一室。
身の縮こまるような思いでティアナランスターは、努めて音を立てないようにイチゴ牛乳をすする。
どうやら第1演習場は噂以上の壮絶な展開になっているようだ。
今、凛に出くわそうものなら絶対に拉致られる。
高町なのはの弱点を教えろと尋問されるに違いない。
「弱点……思い出しますよ―――7日間のマトリクス収集」
「ええと、ねえねえアサシンさん! これこれ、イケるんですよねっ!」
「なかなか筋が良いな娘……問題ない。 食らわせてやれい!」
「よぉし! チー……」
「それ鳴いたら呪う」
「そんなぁーーー!?」
亡国遊戯―――4人で夜を明かすならこれしかないという定番ゲーム。
4人打ち麻雀に勤しむ凸凹パーティである。
「あの……私、なのはさんに夜更かしするなって釘刺されてるんだけど」
「クハハハハッ! 遊興の旅路の初日に何を呆けておるかっ! 今日はこのまま完徹よ!」
「ねえ、ご主人様。 魔導士っていうのはそんなに強いんですか?
……あ、当然ご主人様はメッチャ強いですよ! それはもう、タマモ分かってますから!」
過剰なマスター贔屓も忘れない狐である。
「でも、人間がサーヴァントと互角に戦えるなんてなっちゃったら、私達の存在意義が……
聖杯戦争も立ち行かなくなっちゃいますし、何だかタマモは納得いきません」
「うーん……まあ、なのはさんやフェイトさんは特別かな。
あそこまでやれる人なんて局中を探したって一握りしかいないもの」
「………特別」
「苛苛―――ッ! ここにもおるぞ! わしと立派に打ち合った拳士がな!」
「ええーっ? そんなぁ……私なんて一方的にやられてただけですってば!」
「謙遜する必要は無い! お主は天性のカンと言うべきか、兎にも角にも勝負勘がズバ抜けておる!
特化した体力と膂力と弛まぬ功夫を併せ持つ立派な拳士よ! 明日も存分に―――」
何も見えない空間に、ニヤリと―――魔拳士が歪に哂った気がした。
「―――殴らせてもらうとしよう」
「明日は負けませんよー!!」
「どんだけ仲良いのよ、こいつら……」
「仲が良いというより、丈夫な木人を手に入れて喜んでるだけですよ? ソイツ」
二の打ち要らずの魔拳を耐え抜いた機人のボディにBJ、そしてストライクアーツ。
親友の頑丈さは折紙付きだ。 パンチドランカーになる心配も無いだろう。
拳と拳で深く繋がった間柄に茶々を入れるような野暮な真似は、するだけ無駄というものだ。
「それはそうと―――明日、その教導とかいうの覗いてみたいです。 ご主人様」
(キャスター?)
意味深な態度を見せるキャスター。
常のフワフワとした態度と打って変わった真摯な瞳。
そこに得体の知れない圧力を感じ、気圧されてしまう。
(……でも、なのはさんの所に行ったらまた怒られそうだし)
どうしたものか、と思案に耽るティアナランスターであった。
2人と2体の夜も更けていく―――
交流慰安旅行、一日目終了―――
安息に身を委ねる彼らに――――――――――――光あれ。
一日目終了です
ではまたノシ
バーサーカー一瞬12回殺してやりたいと思ったけど、よくよく考えたら、お父さんの背中洗ってあげてる程度に見えるな
透明アサシンの拳法に耐えるスバルすげえ。二打不要って言われてるのに
視えない打撃で殺ろうとしたら視えない障壁に打点ずらされて渾身にならずgdgdにとか
しかしよくここまでカオスな状況をカオスなまままとめられるもんだ
カオスすぎて笑いが止まらんw
GJ!
GJ!
グッドカオス!
なのはさん砲撃で締める必要ってか空中コンボする必要ないでしょー!凛の耐久をドンだけに見積もってんだ!
キャロちゃんマジパネェな
反省室から生還できるとしたら神性と図太さを合わせ持つイスカくらいかな?
ランサーの正直さには笑った
そして、ヴィータによって空飛ぶキシMAXが見れるのか!?
ところで、前スレはどうなったんだ?
容量の限界超えた
650レスで500k超えだもんな
前半投下が少ないと思ったら後でえらい量来たし
ヴィータに空戦したいって言ってたんキシマなんだ。ネロかと思ってた
なのはのムービー2nd決定した視たいね
再来年だって
1stかなーり売れてるっぽいねー
2ndまでに魔法夜が発売されてるといいよな!
>>53 紅蓮の鬼だから軋間の坊ちゃんかと
メルブラ的にも空中戦したいだろうねー
ネロは飛んだら放送できないでしょ
飛べそうだけどさ
読み返したら、シンジの輝きが異様だった
ゲーム第二段も決まったみたい
なのははいつまで金を生み出し続ける気なのか
取り敢えず目測誤って直死が深く入ったというのは無理があるなw
あれは対象の線や点を見て通せば深さ関係なく殺せるというもので
志貴が初めからフェイトの着てる物全てを剥ごうと思って斬らなきゃああはならないとオモ
かんなぎの作者ね
しかしDDDはどうなったんだ?ずっと楽しみにしてるのに
きのこ………・描けなくなっちまったのか
遅くなったけどGJです!
ところで
>写真に写る、その沙羅双樹を背景に慈愛の微笑を浮かべる御人―――
これってあの人?ラスボスなあの人ですか?
セイヴァーさんだな
謎のビーム出してくる大仏みたいなお兄さんか
>だがこの世界で彼を識らない者は恐らく皆無といっても良いだろう。
これは言い過ぎな気がしたが、「この世界」の解釈を変えればそうでもなかった
やっぱり、セイヴァーもみんなと一緒に屋敷に泊まってるんだよな?
寝室とか風呂とか想像できん……
セイヴァー『現世の沐浴は心が洗われるようだ(フェイトちゃんのパンティちゅっちゅしたいお!)』
コラード婆ちゃんと(ry
反省室といえばタコ部屋
つまり原稿が落ちそうな「悟れ!アナンダくん」の執筆を手伝わされると
そういやリリカルブラッド氏の兄貴はなのはの唇を奪ってるんだよな
しかもフェイトの前でという
何か絡みあるかなあ
エウェル「愛しい愛しい私の猛犬。
あなたの心のハヤブサは、林檎の木の下でいつも待っております。
子供を作るなら、今度こそ連れ返ってくださいまし。
あなたの子供であれば、さぞ可愛らしいことでしょう」
浮気OKで、見たこともない相手の子供も愛し、仕事に理解があり、仲間を家族と思い、夫の死に殉じる、互いに初恋の妻とか勝ち組ってレベルじゃねーぞランサー
リア充自害しろ
フェレットはどうにかしろ
オコジョが犬に勝てるとは思えんが
しかし当の兄貴はいい女とは縁がないという
縁はあるんだよ
最終的にいい結果にならないけど
snでもhaでも言ってたが
本人はないと思ってるんだよな
師匠、姫さん、オイファ……あるじゃんって感じだがw
出会いはあっても別れが早すぎるってことかと
ランサーの運命なのかな
早馬のような、流れ雲のような、流星より早い閃光のような一生の
朽ち果てた師匠を前に『俺が殺してやればよかった』みたいな事言っちゃう人ですから
え、朽ち果ててたの
朽ち果ててないし、そもそも死なない
師匠は人間離れし過ぎた結果、死ねない存在になってしまったのを嘆いてたから
そうなる前に「俺が殺してやれたらよかった」と悔いていたのだよ
ユーノが完全に使い魔(非攻略キャラ)となる(風呂イベント)前に、人間として抹殺してあげられれば良かったのに
それを言うならただの犬と化したザッフィーの方が…
戦力外通知されても盲導犬で食っていける
ヘラクレスに鋼のクビキ教える代わりに盾のナインライブズ教えてもらおう
アンコのバサカの射殺すがただの百烈拳だったのには笑ったが
あれならザフィーラにも伝授できるな
冷静に考えちゃうザフィーラ
「射殺す百頭の本質は九連一体の高速身体運用」
「空戦を可能とする俺なら、手加え脚、そして牙が使える」
「ヘラクレスの強大かつ柔軟な筋肉による体術をそのままトレースするのは良くないが」
「敵を砕く盾というのは気に入った」
他作品だと盾を打撃武器として使うスキルがありますけど、ザフィーラはずっと獣の姿のままですからね……
四期では基本的に人型&弟子までいるザッフィーなめんな
なのはに盾を攻撃に使うキャラはいないな
強いて言うならなのはさんのバリアバーストくらいか
つかザッフィーって実力はどんなもんなんだ?
なんか地味でいまいちよくわからん
ザフィーラ 「素手で勝負しろ!」
手甲つかうから素手じゃないような、そうでもないような
実力は魔力ランクより高いはず
イクスの頃のステエキにはもうランク、実力共に抜かれてんのかね
なのポの漢っぷりが神なだけに物悲しい
使い魔がデバイス使わないのはなんか理由あるんだろうか
>88
武装錬金で植物型・動物型のホムンクルスは本能によって戦うため、人間の武器(核鉄)を扱うことが出来ないという設定がありました。
使い魔も本能的に『人間の道具であるデバイス』よりも自分自身を武器として選んでいるのでは? 使えないことは無いのでしょうけれど。
ユーノのような結界魔導師はデバイスを必要としないらしい。理由は不明だが
持ってても仕方がないものなのかもな
>>88 デュランダルはリーゼ姉妹が使う予定だったのかな?
スーパーグレアムタイムがあったんだろうきっと
>>88 >>91 両方の疑惑から「スクライア族フェレット本体説」なんてジョークが
次の投下はまだかにゃ〜
釣りバトル読み返してるぜ
>>96 どうもです。 今回は前回の短編の反省も兼ねて描いてたりしますので宜しく。
紅蓮の鬼は軋間、反省室のVIPはセイヴァーさんです。
分かりにくかったようですが今回はよりはっきりとした描写があります。
二日目は2つに分けます。
一日目も分けようと思ったのですが、なかなかキリの良い部分がなかったもので……
では投下します
二日目序章 深夜 ―――
丑の刻。
古来より禍々しき者が跋扈するに最も相応しいとされる時間帯。
草むらを飛び交う虫すら寝静まる帳。 其に這いずる凶兆が今、旅館に迫りつつあった。
「サイ姉〜! そろそろ到着だよ〜!」
「分かっている。 さて、少しは殺りがいのある連中だといいな」
否、彼らは凶鳥―――
現世より崇められし英霊も法の守護者も纏めて犯し尽くさんと嘲笑う、世界を殺す猛毒だ。
「……………リアクト」
飛翔戦艇<エスクアット゛>を根城とする凶悪犯罪組織フッケバイン。
少女の紡がれた言霊に従い、旗艦がその能力を解放、完全戦闘形態となる。
もはや止められない。 休暇を楽しみ寝静まる皆の頭上に彼らの凶刃が迫る。
――――――だがその時……!
私の管轄に毒を蒔こうだなんて――――
――――――天より降り注ぐ落雷の如き声が侵略者の鼓膜を震わせた!
やっぱり宇宙は広いという事かしら?
こんな愚かで笑える連中がスペースデブリの如くプカプカ漂っているんですから
「うるっせえな……このバカでかい声は何だ?」
「…………何? あれ?」
彼らは初め認識出来なかったのだ……そのあまりにも巨大なナニカを。
天を突き雲を抜けるソレを前に、てっきり山脈か何かとでも思い至ったのだろう。
だがこの地に住まう者なら真っ先に気づく違和感……そう、奈須の大地にあんな巨大な霊峰など存在しない。
「うわー! でっかい女の人だー!」
1人が無邪気な声を上げる。 その、あまりにも出鱈目な影を前に。
「あれが女? 乳が全く張ってねえじゃねえどはぁーーーっ!??」
仁王立ちの紅の巨人……否、怒り心頭のお嬢様!
繰り出された100290(省略)文ケンカキックが旗艦の横スレスレを通過する!
「上等じゃねえかクソカスが……ステラ! 全砲門オープンファイアッ!
あの断崖絶壁みたいな胸板にブチ込んでやれぇ!!!」
G-Autumn Rodge―――山間に設けられた絶対防衛ラインに今夜、5度目の戦火が上がる。
――――――
「すまないわね本当に……これで秋葉に借り一つか」
結界を越えて侵入する招かれざる客に退場を願う、難攻不落の関所。
佇む伝説の巨人を見上げて月村忍が口惜しそうな声をあげる。
管制室でノエルに肩を貸して貰い、ようやく立っている彼女。
昨日のアレがよほど堪えたのだろう。 乙女回路をズタズタに抉っていったアレが。
「それにしてもデカっ! 混血って多芸よねぇ……巨大綾○かっつうの」
「軽く人間超えてますね。 さっきなんて隕石、蹴り返してましたし」
「ふっふっふっ………仰る通り、今の秋葉さまは無敵です!
通りすがりのマッドドクターさんの協力で昨日完成した、まききゅーGeX<ゴールドエクスペリエンス>の力!
名づけてGGG秋葉さま! アリスト○レス並と言っても決して過言ではありませんっ!!!」
スリージー
ふんぞり返って答える遠野家メイドの痛い人。
確かに通常のGよりも数段、途轍もないモノになってる。 間違いなく。
「まあ、効き目が切れた時の筋肉痛は通常の100倍ですけどねー」
そして断言する。 世界の毒とはこういう割烹着の事を言うのだ。
「姉さん………それはちゃんと秋葉様に?」
「やだなぁ翡翠ちゃん! 勿論―――」
満面の笑みを浮かべる琥珀。 皆の視線を一身に受けて―――
「――――――あ、言い忘れた」
悪魔は当たり前のように、こう答えた。
――――――
幕間 湯煙の漢達 ―――
「コクトー。 混浴行くぞ」
早朝、黒桐幹也の浴衣の裾を引っ張る謎の式。
「えーと……式? キミはななな、何を言って」
「恥ずかしい事を二度も言わせるな」
哀れなほどに困惑し、しどろもどろになる幹也くん。
彼は今、一人ではなかった。 後ろには遠野志貴、高町恭也、ユーノスクライア、衛宮士郎がいる。
彼はつい先ほど、男同士で親睦を深めようの会の会長に就任したばかりだ。
一度は恭也に譲ろうとしたのだが 「柄じゃない」 の一言で自分が就く事になった名誉会長の席。
しかしてその座を早くも揺るがす脅威が今ここに。
「まさかお前、女に恥をかかせるつもりじゃないだろうな?」
「え、えぁ……」
上目使いの式は一見、いつもの無表情だが―――
よく見ると頬が少し赤い。 ……直死並の破壊力だ。
潰れたカエルの様な声をあげて後方の仲間に縋るような目を向ける彼。
――― 親指をビっと立てる盟友達 ―――
結局、少女に首根っこを掴まれて声にならない悲鳴を上げながら連行されていく青年。
友の万歳三唱に送り出され……黒桐幹也は桃源郷へと旅立った。
―――――男同士で親睦を深めようの会、5分で破綻。
――――――
「混浴………あったんだな」
既に1人が殉職した男同士で(略)のメンバーが浴場の暖簾をくぐる。
いわゆる朝風呂というやつだ。 3時から5時までの清掃時以外は年中無休なのがこの温泉の魅力である。
「しかし、こんな立派な男湯と女湯があるのに混浴にわざわざ行く客がいるのか?」
「だから――――――わざわざ一緒に入るためですよ……恭也さん」
いまいち合点がいかない恭也を尻目に、賢者のような面持ちで頷く3人である。
「衛宮君はこの後、すぐに演習の準備だったか?」
「ええ、そうです。 しかし昨日は遠坂がピリピリしちまって、ロクに眠れませんでしたよ。
枕元にいつ発火するか分からないダイナマイトを置いてる気分ってのは、ああいうのを言うんだなって……」
「はは………それは大変だったね。 なのはもあと二日、苦労しそうだなぁ」
なのはの事も宜しく、と頭を下げるユーノに対して苦笑いを禁じえない士郎である。
あの大怪獣2体を相手に自分が出来る事などたかが知れている。
まあ、やれる事をやるしかないだろう。 命懸けで……
「俺も昨日、参加したんだけどメニューの半分もこなせなかったよ。
情けない………このひ弱な体が恨めしいな」
「でもフェイトから一本取ったって聞いたよ?」
「ついでにやり過ぎて出禁になったともな」
「その話はやめてくれ……頼むから」
談笑しながら脱衣場を抜ける一行。 今日も一日忙しくなりそうだ。
せめてこの一時は誰にも邪魔されず、湯舟に身を遊ばせたいと願う彼らであった―――
「………待て」
だが、先頭を切って浴室に踏み込んだ高町恭也が皆に制止の声をかける。
声色に尋常ならざる緊張が孕んでいる事を察知した志貴、士郎、ユーノ。
彼らとて平常の裏側に身を置いて久しい者たちだ。 状況を素早く察知出来ない者はいない。
「―――――怪物……?」
小声で呟いたのは衛宮士郎。
湯煙の向こう側―――明らかに異形の影が見え隠れしているのを認めたからだ。
湯気に怪しく光る幾多の目。 間違いなく人の外へと至ったシルエット。
常世の聖、神、魔の気配が一同に集結しているこの地だ。 怪が誘われて紛れ込んでいても不思議ではない。
御神の剣士が静かなる闘気を纏い、戦闘態勢へと移行する。
その鋭利な殺気……やはり本職の持つ空気は違うなと改めて実感する後方の3人。
だが感心してばかりもいられない。 最悪、ここで殺陣を演じなければならないのだから。
直死を操る殺し屋、防御結界のエキスパート、投影魔術の使い手も恭也に習い一様に身構える。
普段は女性陣のパワーに隠れがちなヒーロー達だが、こうして揃うと壮観の一言だ。 全裸だが……
すり足で間合いを詰めていく一行。 目に映る影はどんどん増え続けている!
蜘蛛のようなナニカ―――
像のようなナニカ―――
虎のようなナニカ―――
ヒョウのような―――
鹿のような―――
(…………………鹿?)
志貴の心に何かが引っかかる。
無言で皆を制し、注意深く距離を詰めていく魔眼の少年。
そして―――彼は見た………
浴室いっぱいに群がる黒一色の動物奇想天外を!
山奥の秘境よろしく、ケダモノに占領された硫黄香の漂う秘湯を!
黒々とした何かが油のようにプカプカ浮いている毒の沼地さながらの浴槽を!
その中央………デコイのように浮かんでいる生首がこちらをギョロリと向いて―――
「――――――――どうした? 入らんのか?」
「入れるかぁぁぁぁあああーーー!!!」
志貴のナイフが首カオスの額にブッ刺さった。
本日のヴァルハラ送り―――
ネロカオス
浴場の汚染、営業妨害
――――――
CHAPTER 2-1 両手に無敵花 ―――
(こ、困ったなぁ……)
ユーノスクライアは今、人生初の苦境に立たされていた。
原因は見ての通り、彼の両脇に侍る人影にある。
「「―――――、」」
自分と並んで粛々と歩くのは双方ともに女の子。
両手に花というのは男なら一度は夢に見るシチュエーションである。 純朴な彼には聊か重い幸運だ。
しかしながら…………相手が相手となれば素直に喜べるわけも無い。
「あの……二人とも僕と一緒にいて大丈夫なの?」
「良いんだ。 あんな根性無しは知らない」
「バスで言った事忘れちゃった? 浮気するって言ったでしょ♪」
左右同時に答えが返ってくる。 そう、言うまでもない。
今、彼は古今東西最強無敵のヒロイン2人に挟まれている。
両義式にアルクェイドブリュンスタッド……その気になればマジで世界を席巻できるパーティーだ。
これを幸運と受け止め羽目を外せるようならば、彼は司書長でなくカイゼル髭を蓄えたどっかの支配者にでもなるべきだろう。
「えっと、でも2人とも立派な相方がいるでしょう? 幹也さんに志貴と一緒に楽しんで来た方がいいんじゃ?」
「土壇場で逃げ出しやがった奴の事なんかどうでもいい」
……今朝の事か。 どうやら彼はエデンの門をくぐる事は叶わなかったらしい。
「昨日の事で本気で拗ねちゃったのよねぇ……だから、ちょっと冷却期間」
こちらはこちらで昨日の「あの事故」の影響か。
朝に見た志貴の痩せ細った表情からも、昨日は女性陣にどれだけ搾られたか想像に難くない。
「まあどの道、休んで貰うつもりだったけどね……一瞬でもモノの死を視ちゃったわけだから。
今日は志貴に無理はさせられないわ」
そう、遠野志貴の演習会欠席を始め、2日目は何かと人員が足りなくなってきている。
月村忍は昨日から調子を崩し、反省室送りにされる者も続出。
挙句の果てに今朝方、遠野秋葉がぶっ倒れてリタイアしたらしい。
よってユーノも率先して昼間の見回りに従事しているわけだ。
「アルクェイドは秋葉さんの容態について何か聞いてない?」
「んー、琥珀に毒殺されかかって生死の境を彷徨ってるだけじゃない?」
「ど、毒殺っ!?」
「ああ、安心して。 いつもの事だから」
「リタイヤ続出か………旅行に来て体を壊すなんて、こんなバカバカしい事は無いぞ」
やはり近年稀に見る、大掛かりにして大所帯による催しである。
方々で色々と大変な負荷がかかっているのだろう。
絶えぬ気苦労に息を付きながら中天を見上げると、日は既に正午を指す位置にあった。
「そろそろお昼だけど、良かったら一緒に食べようか。 2人はリクエストとかある?」
「ハーゲンダッツ」
「ハンバーガー」
綺麗に割れた。 しかも旅行に来てまで頼むものじゃない。
何て垢抜けない女の子たちなのだろう。
「式………他人のお財布でご飯を食べる時は爪の垢ほどでも遠慮するものよ?
少しはコストパフォーマンス考えたら? ラクトアイスにしなさいよ」
「お前、血が嫌いなんじゃなかったっけか――――あれも立派な牛の血肉だぞ?
俺はてっきりアスパラでもバリバリ丸かじりしてるもんだとばかり」
「ま、まあまあ! 郊外に出ればファーストフード店もコンビニもあるから!」
自分を挟んでむ〜っと睨み合う両者。 こんな火花に当てられたらこちらが焦げてしまう。
もはや天秤の支柱として機能する事を余儀なくされるユーノ司書長。
なのはにだけはこんな姿を見せたくない……何となく。
温泉街の入り組んだ道すがら、屋台や出店の準備が進んでいる。
今日は祭だ。 夕方から夜半にかけてここも賑やかになるだろう。
夜の締めには大掛かりなイベントがある。 これまた血の気の多い者が集まりそうな極めつけのやつだ。
「射撃大会はもう始まってるみたいだね……ちょっと覗いていく?」
威勢の良い司会の声が3人の耳を叩く。 そしてそれに入り混じる射出音―――
火薬やらビーム砲やらソニックブームやら、鼓膜に優しくない轟音が響き渡っている会場はすぐそこだった。
昼食前の余興とばかりに、そんな開けた広場に一行は進む。
――――――
「決まったーー!! ティアナランスター惜しくも敗れたりーーッ!!
ハードボイルドの象徴、二丁拳銃での奮戦空しく、錬鉄の英霊の前に散る一輪の華!
残念ツインテール! しかし胸を張れ! お前は決して凡人なんかじゃないっ!」
「命中精度では負けていなかった……威力が足りなかったのか?」
「うーん……ラストのバーサーカーをブチ抜くには相応の威力がいるからねぇ」
フィールドに次々と現れる、アインツベルンのホムンクルス技術で生成された的。
リーズは速い。 セラは反撃してくる。 そしてバーサーカーはとにかく硬かった。
「それにしてもアーチャー強い! 下馬評通り、数々のインチキ武装を自在に操れる仕様は伊達じゃない!
精魂尽き果てたかのように膝から崩れ落ちるエリート執務官の卵〜!」
「タイガー。 質問があるのだが」
「ししょーと呼べい。 らぶりい眼帯」
「了解だ、ししょー。 1回戦から見ていたのだが、何故アーチャーは勝利すると相手に背中を向けるんだ?」
「そりゃアンタ、口で説明しちゃうと色々台無しになるデリケートな事象が働いてるのだよ。
お主も来世は男に生まれてくれば自ずと理解出来ようというもの!」
「心得た。 今度造られる時は男性体である事を願おう」
「お、おーーーっと、これはっ!?? 狐が切れたっ!!!
主人に対する明らかな挑発行為に狐が切れましたッ! 神器・八咫の鏡が翻る!
ガラ空きの背中に炎天直撃ぃぃ!! アーチャー火ダルマで転げまわるーーっ!」
――――――
「…………盛り上がってるわねー」
「ヴァイス陸曹が凄いな……この面子で準決勝まで勝ち上がってる」
「いや――――やられるぞ」
――――――
「ぐふっ……!? か、体がっ!?」
「あーっと、これは………毒だぁぁ!! こちらもアーチャー宝具展開!
ヴァイス選手、服毒っ!!! 実に汚い! 前評判通りの何でもありっぷり!
法律? 何それ? 現職の公務員にシャーウッド流ヘルズアーツを叩き込んだーーー!」
「やめんかアーチャー! この戦い、騎士の誇りを汚すような真似は許さん!!」
「誇りだぁ? 何を甘い事を言ってやがる! これは負けられない戦いじゃねえのかよ!?」
「ワシにとってはな―――だが、お前にとっては違う。 もはやお前が手を汚す必要は無いのだ」
「マスター……」
「おーーっと! 美しい主従愛ッ!
次々に飛び出す的を無視して感涙に咽び抱き合う緑茶とジジイ!
取り合えずラッセルクロウには似ていないーーーーっ!」
「い、いいから早く解毒剤をよこせ馬鹿野郎ーーーーッッ!!」
――――――
「………………」
「やっぱり遠距離戦は専門外だ。 まるで分からん」
凄まじい盛り上がりを見せる射撃大会。
異様なテンションでヒートアップしている司会。 その端には機人の少女の姿も見える。
ここも怪我人続出のようだが、シャマルが順次対応しているので大事は無いだろう。
「昼食を摂った後、僕は第2演習場に行かなきゃならないんだ。 良かったら一緒に行く?
アルクェイドは昨日、フェイトの教導を受けてくれたんだよね?」
「まあ、ね…………うーん」
考え込む姫君である。 行ったところで今日は遠野志貴はいない。
昨日は彼の付き合いで顔を出しただけで、特に教導とやらに興味は無い。
正直、気が進まない。 何せ足を運んだところでメインは―――――
「どうせシエルだし」
――――――
第2演習場―――
昨日とうって変わって平地に設けられた多数のビル群。
そのギミックが空戦魔導士に対応するための「足場」である事は言うまでもない。
「呆れた技術力ですね……幻でもなく、こんな舞台を即席で作り上げてしまうんですから」
ここ2班では今まさに、シエルとフェイトが激しい戦いを繰り広げていた。
代行者の象徴的武装である黒鍵と、フェイトの攻防の要、射撃魔法フォトンランサー。
雷光の矢と火葬式典が両者の間で、秒間20発以上の猛威を以って鬩ぎ合う!
互いの投擲が花火のように宙空で炸裂し、大気を焦がし、周囲にキナ臭い匂いを充満させる!
昨日と違い、術式全開で大空を滑空する金色の魔導士。
その黒衣と並走して駆ける、これまた黒い法衣の代行者。
双方ともに一般局員の視界に止まらぬ凄まじい身のこなし。 影すら追わせないとはこの事だ。
ことにビルとビル間を跳躍してフェイトに追い縋って来るシエルはまるで野生動物さながらだ。
その人間離れした所業に驚嘆を禁じ得ないフェイト。 あれを素の身体能力でやっているのだから驚きである。
もし昨日のように術式を使用しないで彼女と相対したら、捻り潰されるのは間違いなく自分だろう。
「相手の足場が途切れると同時に仕掛ける……行くよ、バルディッシュ!」
<Yes sir>
プラズマと火の粉が舞い踊る演習場。
爆発に視界を遮られる中、足場を失い宙に躍り出るシエルの身体。
その着地を狙って――――フェイトが凄まじい速度で踏み込んだ!
「くっ!? セブンっっ!!」
「はああああっ!!」
―――――――瞬きも許さぬ執務官の一閃だった。
いや、それを許さぬからこその雷光の異名か。
未だ硝煙冷めやらぬ広場にて、コンマの隙に切り込んだ疾風迅雷。
フェイトのザンバーフォームの刀身がシエルの首筋に突きつけられていたのだ。
「……………」
共に激しく息を乱し、全身の汗を拭おうともせずに相手を睨み据える闘士2人。
右手の黒鍵3本で一応の防御姿勢を取ったシエルだが、フェイトが本気で巨剣を振り抜いていたなら結果は明白。
か細い投剣の防御など容易く弾き飛ばし、シエルの首を刈っていただろう。
模擬戦はこれにて決着。 構えを解いて肩を竦める代行者の仕草が、自身の敗北を認める合図であった。
「完敗です。 考えてみれば貴方相手にこんなモノ振り回しても意味がありません」
言って切り札を床に打ち捨てる。 「はぎゃっ!?」という悲鳴が聞こえた気がしたが……
「ううん……紙一重だった。 あの投擲、見たところ普通の投剣のようだけど
どうやってあれだけの火力を付加しているの?」
「それは秘密です♪ 秘伝のレシピを簡単に教えるわけにはいきませんから」
「そっか……それもそうだね」
互いに健闘を称え合い、一礼をして下がる両者。 四方に控える局員から惜しみない拍手が飛ぶ。
「お疲れ様。 惜しかったね」
「いえ、見ての通りの有様ですよ」
リーズバイフェの労いに本心からの言葉を返すシエル。
あれほどの巨大な剣を、棒切れを振り回すように容易く振るってくるとは……
中距離で何とか五分。 接近戦に持ち込まれればかなり苦しい。
シエルとて人間離れした戦闘力の持ち主だが、その武装の大半は人ならざるものを狩るためのものだ。
対人、もしくは人造兵器と真っ向から戦うために編み出された技術とは用途も性能もまるで違う。
向こうはまだ使用していない上位モードを残しているというし、そもそも高々度からの遠距離砲撃を封印させてのこの結果だ。
完敗と言うしか無いだろう。
「見たところポテンシャル比は4:6……決して覆せない数字じゃない。
けど、やはりフィールド支配率に差がありすぎるね」
「私の投擲に貴女の豪腕が合わさってどうにか、というレベルです。
攻・防・速が高レベルで纏まっており、地形・重力・距離を問わない固有戦力……
実際、大したものですよ。 魔導士というのは」
「彼らの数値の高さはそのまま保有技術の差だ。 デカくて硬くて速くて強い。
子供でも分かる理屈だね。 ナルバレック郷への報告はどうするんだい?」
どうもこうも、そのまま報告するしか無いだろう。 本気でやってボロ負けしましたと。
模擬戦とはいえ埋葬機関上位に位置する「弓」が敗北したと言う事実は軽くない。
上がてんやわんやの大騒ぎになりそうで、今から頭が痛いシエルとリーズであった。
「………しかし昨日に比べて随分と寂しいものだね」
閑散とした応援席を見て、盾の騎士が気の毒そうに呟く。
昨日は遠野志貴応援団で埋め尽くされていた見物席にはほとんど人影が無い。
ダウンした秋葉の代行で琥珀。 それから志貴目当てで見物に来たであろうツインテール―――
大方、こちらの目を気にして出て来れないであろう死徒見習いの少女の影がチラホラと。
そんな木枯らしが吹き荒ぶ客間を見て、シエルの目尻にホロリと涙がこぼれる。
「いいんです……どうせ私だし」
「えー? シエル、もう負けちゃったの?」
「!!」
新たな来訪者の声に一瞬、喜びの表情を見せる代行者であったが、すぐに慌てて取り繕う。
微妙なタイミングで一番会いたくない顔に出会ってしまったからだ。
「コホン……い、今頃ノコノコと重役出勤ですか?」
「長引くと思ったから道中見物してから来たのよ。
貴女はもうちょっとやれる子だと思ってたのに……私の見込み違いだったかなー?」
「うるっさい……このアーパー吸血鬼」
「しっかりしてよー。 相手が異端じゃないとテンション上がらないって一種の職業病よ?
私やネロ辺りに負けてたら貴女達、そんな悠長にヘラヘラしてないでしょう?」
「ええ確かに! 貴女の顔面を陥没させろと言われた方が余程テンション上がりますよ!」
言うなれば殺し屋や傭兵がプロの格闘家相手にリング上で戦うような違和感か。
同じ「戦い」というカテゴリーの中においても畑違いという言葉は確実に存在するのだ。
「ま、今日は貴女の顔を立ててそういう事にしといてあげる。
でも実際―――あのクラスの死徒が出た場合、どうするわけ?」
「知れた事です。 教会は早急に取り組むでしょうよ。
雷速で飛来する物体を叩き落とせる超重礼装の開発に」
「NASAにでも頼んだ方が早いねソレ」
もっともSランク魔導士レベルの戦力を持った死徒が偶発的に生まれる可能性などほぼ無い。
あり得るケースとしては魔導士自身が噛まれたケースだが―――
「物騒な会話だな……………まあ無理も無いか。
普通なら決して談話の成立しない吸血鬼と異端狩りの会合だものな」
「――――――、」
脇でこちらの話を聞いていた人影の声に皆が振り向く。
その両眼に知らず緊張の面持ちを浮かべてしまうのも、かの異端がもはや特異な域にあるが故か。
「両義式―――またとんでもないモノを同伴して来たものですね」
「ご挨拶だな。 昨日はもう一つのコレが大活躍だったそうじゃないか?」
自分の眼を指して言う少女。 言うまでもなく志貴の事だろう。
魔眼の少年と少女が現実で出会う事は恐らく無い。
極め付けに強力な磁石のマイナス同士―――ここに遠野志貴が欠席していたのは恐らく必然だったのだろう。
「どう? せっかくだから式も一戦やってみない?」
「俺にシスターほどの立ち回りは出来ないよ。 察しの通り人殺し以外、能が無いんだ」
「いいじゃない、試しにやってみれば? 負けるのが恐いって柄でもないでしょう」
「お前、単に俺がやられるところが見たいだけだろ?」
「アルクェイド……来てくれたんだ」
―――声は意外なところからかけられた。
「見ての通り、まだ演習終了には時間があるんだけれど……良かったら少し手合わせしてくれないかな?」
「っ! フェイト!?」
何とフェイトだ。 魔導士が2人のやり取りに割り込むように声をかけたのだ。
脇にいたユーノの表情が凍りつく。
名指しでの模擬戦の申し込み。 しかも相手は―――――
「―――――――――え? 私?」
「良かったな。 ご指名だぜ」
――――――
幕間 湯煙の女たち ―――
「変態女を見ませんでしたか!?」
汗と疲労に塗れた体は予想以上に重いものだ。
そんな溜まりに溜まった疲れを癒そうと一行は温泉の前まで来ていた。
教導官組である高町なのは、フェイト、ヴィータ。
そんな彼女達の前に、鬼気迫る貌で立つ少女の発した言葉がこれである。
「………………変態女じゃ分からないよ」
「危ない眼をした女です!」
よほど興奮しているのだろう。 会話に主語と述語と接続語が生じていない。
困ったように首を傾げるなのはを見て忌々しげに唸る少女。
「ああ、もういいですっ! 式の奴ぅ……兄さんを混浴に連れ込むなんてぇーー!!」
望んだ答えが得られないと見るや少女は肩を怒らせて行ってしまった。
背中に炎のような怒気を漂わせながら。
「……今日は朝から騒がしいよな」
ヴィータの漏らした呟きが本日の慌しさを端的に物語っていた。
ついさっきまで月村メイド隊が総出で男湯の清掃に入っていたところだ。
念入りに、丹念に―――そう、あれは掃除というより滅菌に近い。
陣頭指揮を取る忍に話しかけようとしたなのは達だったが――
「よそう……忍さん、あれは機嫌最悪の時の顔だ」
兄と懇意にしている月村家の当主は、なのはにとっても近しい人だ。
故に分かる。 口元に浮かべた微笑はそのままに、薄く開いた両の眼がまるで笑っていない……
くわばらくわばらである。 今、彼女に話しかけるのは自殺行為に等しい。
「張り紙がしてあるぞ……ペット厳禁! 理性は無くとも性別はある!!……何だコリャ?」
気になったが、押し寄せる疲れを温泉で洗い流す誘惑には勝てない。
先を争うように暖簾をくぐる3人であった。
「お疲れ様、みんな」
「お疲れ様ー! 調子はどう、って聞くまでも無いか」
既に先客がいた。 アリサバニングスと月村すずかだ。
上気した頬は彼女達が湯に漬かってだいぶ立っている事を想像させる。
本日2人は1〜4班の演習場の全てに顔を出してくれたのだ。
差し入れのドリンク、レモンのハチミツ漬けなど持参しての訪問。 皆、大いに喜んだものである。
「正直、旅行先での演習会なんて前代未聞の試みだから閑古鳥が鳴く事も覚悟してたんだ。
思いの他、好評で安心したよ」
「私は旅行まで来て痛い思いするなんて真っ平ごめんだけどねー。 物好きな人って多いわ」
「参加しないまでも噂を聞きつけて見学してくれる人も多かったよ。
やっぱりダミー生徒の存在が大きいね……ウチは遠坂さんが良い仕事をしてくれて助かってる」
サクラというわけではないが、これだけ技術や技法の違う者が一同に会するのだ。
教導を引き立てる演出として生徒を演じてくれる人間は必須だった。
その点、あの遠坂凛は凄まじく適任だった。
「初日は裏をかかれてキツイの貰ったけど、今日は完璧に絡め取ってやったよ。
ふふ……してやったり!」
嬉しそうな高町なのはのVサイン。 あの凛をやり込めたのが相当、嬉しいらしい。
「やっぱアンタ本質的にサドだわ……初対面の時に食らったビンタの傷が今頃、疼いてたまらない」
「でもよ、今日くらいは向こうに華を持たせても良かったんじゃねえのか?」
「そういう事すると滅茶苦茶怒るんだよ……
勘も尋常じゃなく鋭いし、手心なんて加えたら一発でばれちゃう」
「遠坂さん、強烈だもんね……なのはちゃんと何時ケンカになるかとヒヤヒヤしながら見てたもの。
もし同じ学校に通ってたらアリサちゃんと良いライバルになってたと思うな」
一同、うんうんと頷く。
「戦闘以外でも理論でズバズバと痛い所を突いて来るから手応えあるよ。
久しぶりに教え甲斐のある生徒にぶつかった感じかな」
「でも大丈夫? 残り一日、あんな調子でやられて最後まで持つ?」
「たはは……頑張ります(ブクブクブク)」
なのはが沈む。
辟易とした表情を見せてはいたが、しかしながら実は大助かりな面もあった。
ああやって反抗したり問題を起こして教導にメリハリを付けてくれる方が教える方はやり易いし
第三者への見栄えも良くなる。 全く彼女のエンターテイナー性は生まれながらの素質であろう。
それでいて油断すると本気の一発を捻じ込んでくるのが彼女、遠坂凛という魔術師だ。
初日はそれでやられた。 2日目は何とかいなした。 ……正直、明日はどうなるか分からない。
「アタシの方は引き続き、軋間のオッサンとガチだ」
次いで、広い浴場でバタ足をしながらのヴィータの報告である。
「あのオッサンははっきり言って空戦の才能がねえ。
ていうか陸戦空戦、関係ねーんだよ……1度、アイツの全開出力を見せて貰ったんだけどさ」
紅蓮の鬼が体内に抑えて、なお有り余る炎熱を解放し―――
演習場は一瞬で焦土と化した。 局の用意した計器が残らず吹き飛んだ。
「極端に限定した仕様での話だが………ありゃ下手すりゃSSランク超えるかもしれねー」
「…………!!」
絶句する魔導士たち。 静まり返る浴槽がその内容の凄まじさを物語る。
大げさに言っているわけではない事はヴィータの表情を見れば分かる故、尚更に。
「で、だ……そんな要塞に羽をつけてだぞ? 戦闘機とドッグファイトさせて欲しいと頼まれたアタシの気持ちが分かるか?
付き合いとはいえ時間と手間の浪費だよ……無駄な努力って言葉をひしひしと感じてる最中だぜ(ブクブクブク)」
ヴィータが沈む。
生真面目な少女は何とか生徒の希望を叶えてやろうと四苦八苦―――
されど適性の無い者に理論を叩き込んだところで物にはならない。 それはやる前から分かっている事だ。
「うんうん、ヴィータちゃんは頑張ってる」
「撫でるな〜!!」
「そう言えばシグナムさんは?」
「ああ、あいつならさっきすれ違った。
時間がずれたんで先に風呂浴びて、休憩室でまったりしてんじゃねえかな?」
昨日のシグナムは散々な有様だったらしい。
エリオが気の毒に思ったのか何やら画策していたようで、今日は凄い教導になったとか。
「エリオは最近、色々な人と懇意にしてるからね。 そのつてを頼ったのかも知れない。
本当に頼もしくなったよ。 もっとも………」
ツカツカと壁の方に歩いていくフェイト。
何故か不自然にポッカリ空いた壁の穴に―――勢いよく一本指の抜き手をブチ込む!
ぐはああああああっ!?
ラ、ランサーさんっ!?
言わんこっちゃねえ! 俺は先に上がるぞ!
――――――という声が男湯から……………
「………いらない事も教わってるみたいだけど」
呆れ交じりの溜息をつくフェイト。 指先から発する電撃の熱で壁を溶かして穴を塞ぐ。
事情を察し、悲鳴をあげて湯船に沈むすずか。
「コラーーー!!」と怒り心頭で男湯に桶を投げ込むアリサ。
隣の浴室から一目散に退散していく気配。 後で十二分に追求してやらねばなるまい……
「ところでフェイトちゃんはどうだったの?」
「昨日、見事に一本取られたんだってな。 たるんでんぞー!」
「うう……面目ない(ブクブクブク)」
フェイトが沈む。
そう、第2演習場。 真祖アルクェイドブリュンスタッドに試合を申し込んだフェイト。
その行方の果てには意外な顛末が待っていたのだった―――
――――――
CHAPTER 2-2 狐の心 ―――
「何て事すんのよキャスター! 追い出されちゃったじゃないのっ!」
「だってぇ……あいつムカつきません? だいたい敵に後ろを見せる方が悪いです!
日々是戦いを旨とするサーヴァントとしてどーかと思います!」
「アンタはー……」
「まあまあ、ティア! 演習見学に丁度良い時間まで暇を潰せたんだし、結果オーライという事で!」
今日も奔放な狐と能天気な相棒を両隣に抱え、振り回される羽目になっているティアナランスター。
昨日、キャスターが見に行きたいとせがった教導見学。 色々考えた結果、やはり一斑には顔を出し辛い。
高町なのはに釘を刺された事もあるからだ。 なら残るは―――
「客席から覗くだけだからね? これから見に行くのは私の現・直属の上司。
フェイトテスタロッサハラオウン執務官の第二教導演習場よ」
「昨日の白い人とは違うんですか?」
「なのはさんは一斑でこの人は二班担当。 フェイトさんもなのはさんと同じ空戦Sランクのエース。
私の尊敬する先輩で凄い人よ。 決して見劣りする事は無いわ」
「―――――――――また、ですか」
「え?」
「いいえ何でも♪ とと、丁度良いところに来たみたいですよ!」
――――――
流れるようなツインテールを腰まで垂らした黒衣の魔導士。
そして質素な白のタートルネックに身を包んだ月の姫君。
フェイトテスタロッサハラオウンとアルクェイドブリュンスタッド。
相立つ砂金のような髪をなびかせて、2人が試合場に向かい合う。
「あの〜、私なんかと練習試合をしたってしょうがないと思うんだけど?」
「そんな事は無いよ。 私も今後のために勉強したいんだ。
胸を借りるつもりで臨みたいんだけど………どうしても都合が悪いのでなければ、是非!」
「ふうん……」
周囲をチラっと見渡す吸血鬼。 そこかしこに設置されているのは記録用の機材だろう。
脇に待機している局の人間は、こちらと視線が合うと恐れる様に眼をそらしてしまう。
「そうは言っても相手の安全を慮っての戦いなんて経験無いのよね……
正直、どの程度までやって良いのか分からない」
「致命傷や、後遺症の残る怪我は勘弁して欲しいけれど
優秀な医療スタッフが控えてるから戦闘不能になるくらいの負傷は全然オッケー。
そこは遠慮なく来て欲しいんだ。 機があれば容赦なく叩きのめしてくれていい」
「あはは! ホント顔に似合わず物騒な人ねー! ………やるからには私も負けてやる気無いし。
カミナリさまとケンカするなんて初めてだから、手加減出来るかどうか分からないわよ?」
「喧嘩じゃないよ……模擬戦」
「ああん、もう面倒臭い〜! これはシエルもやりにくかっただろうなぁ……」
地団太を踏む仕草がとてもコミカルだ。 享楽的で天真爛漫という言葉が何よりも似合う月の姫。
だが、そんな彼女の内に秘めた特大の刃を見逃すフェイトではない。
ついに引っ張り出した。
第97管理外世界……否、地球最強の個体。
真祖アルクェイドブリュンスタッド。
「じゃあ、やりましょうか――――仇取ってあげる、シエル」
「余計なお世話です。 ちゃんとレギュレーションを守って戦って下さいね?
熱くなるようなら、すぐ黒鍵ブチ込んで止めますから」
教会の腕利き2人が脇に付いての模擬戦だ。
彼女たちの表情……明らかに真祖が戦う事を恐れている。
そんな相手が今、自分の前に立っているのだからフェイトにも恐れが無いわけがない。
だがこれは貴重なデータになる。
神秘の解明は管理局の急務であり、その結晶たる彼女が目の前にいるのだ。
多分、自分は勝てないだろう。 そもそも彼女相手に勝つという図式すら成り立たない。
やられる事は覚悟の上だが、それでも形にしなければ意味が無い。
――― 自分に出来るか? 彼女と「闘い」を成立させる事が ――――
ふっ、ふっ、……と、短い深呼吸と共にステップを踏み始めるフェイト。
高鳴る鼓動を少しでも制御し、最強を相手に自らの最善をぶつけるために。
――――――
「……ウソでしょ?」
ティアナは呆然とその光景を見ていた。
表情は蒼白。 焦燥に駆られ、震える手で予定の記された冊子をめくる。
今日のフェイトの相手はシエルという教会所属の人物のはずだ。
それが何故、こんな出鱈目な事態になっている…………?
噂だけはイヤいうほど耳にした惑星最強の個体――――アルティミットワン。
星の触覚。 星そのものと言っても過言ではない、吸血鬼の頂点に立つ真祖の姫。
彼女のデータは局にもほとんど無い。 交戦記録も同様に。
だがSSSランク――――オーバーSSSという人外領域。
人には決して踏み込む事の叶わない規格外<EX>指定とされる数少ない事例。
そのカテゴリーにあの吸血鬼の名前が上がるところをティアナは何度か耳にしている。
現在、管理局に彼女を打破する術は無い。 あれと対峙できる個体などせいぜい全開状態のリィンフォースくらいのものだ。
そんなモノに単騎で相対するなど………正気の沙汰ではない。
互いに準備運動をしているのか、小刻みにステップを踏んでフットワークを確かめているフェイト。
気合は十分といった表情だが、その顔が緊張に強張っているのが分かる。
「やあっ!! たあっ!!」
近くで真祖もまた肩慣らしのように腕を振るったり肩を回したりしている。
それを誰よりも間近で見ているからであろう。
「な、何なのよ……あの風切り音は?」
彼女が腕を軽く振るうだけで、空気が裂けて真空のかまいたちが発生してたりする。
地面が歪にめくれ上がり、風圧が嵐のようにこちらにまで届き、ティアナとスバルの髪を舞い上げる。
まるで兵器が自身の性能を確認するかのよう―――
一つ一つの部品を組み直し、自身を最適化しているかのよう―――
些細なパフォーマンスですら、その埒外が滲み出てくるのだから恐ろしい。
「まずいよティア……助けにいかなきゃ!」
「バカスバル! 互いに了承済みの模擬戦で何をどう助けろってのよ!」
窘めてはみたが、スバルが漏らした気持ちも分かる。
明らかにレギュレーションを超えた対戦だ。 いくら局のデータ収集といっても限度がある。
それとも……もしかしたらフェイトはワザと自分が負けるようなカードを組んだのだろうか?
両世界の関係は今の所は良好だが、それでも危うい均衡を保っている事に変わりは無い。
ことに秘匿を旨とする彼らとここまでの関係を築くのに、どれほどの艱難辛苦があったか分からない。
故にあまり向こうの顔を潰すような結果を残すのは局としても本位ではないのだ。
第一斑の高町なのはは勝ち越す流れで来ている。 ならば自分は負け越しで終わろうと考えていても不思議ではない。
フェイトはそういう気遣いの利く人間だ。
そんな思慮に駆られるティアナランスターだったが―――――
「……ティア? タマモさんは?」
考え事に耽っている合間……共に見学に来ていたサーヴァントが―――
いつの間にか消えていた事にティアナは今更ながらに気づかされたのだった。
――――――
「――――あれ? ………あれあれあれあれ!?」
今まさに戦闘開始という、その時―――
アルクェイドが素っ頓狂な声をあげた。
「…………」
突如現れた少女を前に目を白黒させる真祖。
口を開こうとするも言葉らしきものが出てこない様子だ。
何せばったりと出会ったのだ――――――ソレとコレが……
衝撃に流石の姫君も驚きを隠せない。
「驚いたな……白面の狐だろ、アレ?」
「天照と月読が場末の温泉でバッタリ会っちゃいました、みたいな感じですか。
神話に残るレベルの邂逅ですが、さて……」
共に「神」という、人の作りし座に置かれた者同士の邂逅。
暫く無言で見詰め合う2人だったが―――
「―――――何も言わずに、ここは私に譲ってくれませんか?」
「―――――お好きなように。 私も乗り気じゃなかったし」
それだけで大まかな意思疎通が為されたのか、キャスターの申し出に2つ返事で快諾するアルクェイド。
発していた威圧感などどこへやら。 吸血鬼は少女に道を譲るように2歩下がり、あっさりと舞台を降りてしまう。
「聞いての通りです。 対戦フリーなんですよね? 不束者ですが、せいぜい勉強させ―――」
「何考えてるのよアンタはぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
客席から雷鳴のような怒声が飛ぶ。
ビクッ!と怯んだように肩を震わせる狐。
だが、その獣耳が貝の様にパタンと閉じる。 黙殺の構えだ。
「宜しいですよね? それとも私では役不足とか?」
「ううん…………いいよ。 やろう」
真祖との模擬戦が流れてしまったのは正直、痛い。
だが乗り気でないアルクェイドを半ば強引に引っ張り出した罪悪感もあったフェイト。
成り行き上、この流れは仕方が無い。
それにサーヴァント戦―――2日目の締めとしてこれ以上の相手はいないだろう。
対サーヴァント対策の確立は今や管理局にとって最も重要視される事項だ。
第97管理外世界に従事する魔導士にとって彼らの存在はそれほどに重い。
「ティアナ、スバル。 結界のサポートをお願い出来るかな?」
「は、はい!」
フェイトもやる気だ。 こうなっては上司の邪魔にならないよう離れて見ているしかない。
最後にこちらを頑なに無視しているキャスターに対し―――
「フェイトさん……甘くないからね!」
すれ違い様にこんな言葉を残し、場を後にするティアナ。
ご主人様の背中を一瞥はせずとも尻尾で感じ―――きゅっと唇を噛むキャスターだった。
「ねえ、ティア……タマモさんの事も応援してあげようよ」
「何でよ! アンタ、フェイトさんが負けてもいいっていうの!?」
「そうじゃないけどぉ……」
背中越しに少女を見やるスバルである。
(だって……タマモさんのあれってどう見ても……)
――― 嫉妬だ ―――
そう、昨日のなのはとのやり取りからしてそうだった。
主人が自分よりも優先する人間―――
自分を一番に見てくれない―――
「さあ―――――――始めましょう」
彼女はきっとティアナの一番になりたくて――――
――――――
出雲に神有り
しゃんしゃんと―――鈴の音が鳴り響き、少女の唄が紡がれる
粛々と安らぎすら感じさせる少女の童歌。
しかしそれは残酷な安らぎに他ならず、底知れぬ怨嗟は時に諦観めいた慈愛を場に灯す。
即ち全てのものの終焉という究極の慈悲を以って―――
周囲は既に変容を始めていた。
奈須の山間に設けられた広場はもはや元の景観を失い
くすんだ空に淀んだ空気。 そして巨大な鳥居が周囲を取り囲む。
「これはこれで面白くなってきたかもね……」
「お前と同等の存在か―――固有結界かコレ? いつぞやの螺旋より余程タチが悪そうだ」
「ううん、それよりも上」
「っ! まさか空想―――ッ!?」
シエルが息を呑む。
もはや広場全域を覆い尽くす群青の堂。
場は須らく魔狐の腸と化していた―――
「それに近いモノよ。 さて、どうする執務官さん?」
山河水天に天照す
是自在にして禊の証
名を玉藻鎮石
しゃんしゃんと―――鈴の音が鳴り響き、少女の唄が紡がれる。
「やめなさいっ! 洒落になってないわよキャスター!」
ティアナの声は少女の唄に掻き消されてその耳に届かない。
囁くような静かな歌声が、まるで不協和音のように鼓膜を揺らし、数多の雑音を飲み込んで消し去る。
――― 宝具発動 ―――
異空へと変貌した場。 記録に従事していた局員が事態を把握できず半狂乱に陥っている。
何てこと……明らかに模擬戦の枠を超えた展開だ!
今のサーヴァントに、主人の腕にしがみ付いて人懐っこい笑みを浮かべていた面影は無い。
怪の光を灯した狐の双眸。 垣間見えるは数多ある怨霊の頂点に君臨するその本性。
場は奈須の原―――
折りしも彼女が千の命を吸い尽くし、果てに討たれた宿縁の地。
かの力を振るうにこれほど相応しき場所があろうか?
「…………ッ!!」
敵の異形、異能に彩られた異常事態―――
他の局員のように恐慌に陥らなかったのは彼女の並々ならぬ経験の賜物だろう。
BJで護られた肌にジクリと痛みを感じ、フェイトの顔が苦悶に歪む。
まるで徐々に体が壊死していくような感覚は酸の海に漬けられたかのようだ。
常世咲き裂く怨天の花―――
深緑とも闇紫ともつかぬ、おぞましい光を発しながら宙を漂う殺生石。
その現世ならぬ冥府の只中で少女が哂う。 ゆらゆらと。
「……………真ソニック」
覚悟を決めた。 敵は本気だ!
ならば答えて見せる、この雷光一閃で!
冥府へ続く入り口か、数多の社が立ち並ぶ魔空間にて―――只中に光の柱が突き立つ!
魔導士の周囲に稲妻が迸り、天空より次々と降りてくるプラズマが煌々と翻る!
「はあああああああ!!!!」
真祖に叩きつけるつもりだった全力全開!
オーバードライブ・真ソニック・ライオットモードッッ!
雷帝が吼える!
その抑え切れぬほどに増幅された雷迅を巨大な剣に込めて!
もはや殺界に飲み込まれた空間にて、その主である少女目掛けて、光が―――――飛んだッ!
…………………………………鈍い音が場に響いた。
――――――
…………………
…………………
「………………大丈夫? キャスター」
――――返事は無い。
埋まってない方の半身。
尻尾が微かにピクンピクンと反応する。
「取り逢えず引っこ抜かなきゃ……スバル、そっち持って」
「オッケー! せーのっっ!」
スバルとティアナが力任せにその両足を引っ張ると、尻尾がバタバタと悶え暴れる。
痛い!痛い!と訴えているようで気が咎めるが……このまま放置しておくわけにもいかない。
やがてバコンッ、とコンクリの壁から何かが引き抜かれる音が響き―――
場は場外も場外。
瞬間最大にして雷速にすら届く魔導士の踏み込みが齎した地面の亀裂。
雷迅剣・ライオットブレードが刻み付けた大地を深々と抉った痕。
その延長線上、200m先のフェンスに突っ込んだ―――
息を激しく切らせながら唖然としているフェイト。
そして一言も発せない観客の視線の先にて―――――
上半身、丸ごと壁にメリ込んだ一匹の狐が………今、救出されたのだった。
――――――
「……アルクェイド」
「…………」
「貴方と同格という割にはその、不甲斐ない結果に終わりましたね……?」
「…………瞬発力に富む相手に持久戦、挑んじゃったからねぇ」
「あのめり込み方は他人とは思えませんね〜……あ、待って下さいユーノさん〜」
ユーノと琥珀が演習場に降りていく。 負傷者の治療のためだろう。
その先では痙攣を起こしている狐を介抱するスバルとティアナがいた。
「ああ、大変っ! ティッシュティッシュ!」
可愛い目鼻立ちの少女の、ドクドクと流れる鼻血が痛々しい。
茫然自失の体で腰を抜かしているキャスターの鼻元を拭ってやるスバル。
「―――――――ひ………ひどくないですか…………? あいつ」
「………言ったでしょ? 甘くないって」
目に涙を溜めて抗議するキャスター。
技の前振り中に割り込んで来る、相手の空気読まずの理不尽を訴えるが、ティアナは聞く耳持たず。
「だ、大丈夫っ!?」
フェイトが血相を変えて場内から駆けてきた。
オーバドライブの反動がキツイのか体を引き摺っている。
「ごめん………フルスウィングしちゃった。 け、怪我はない………?」
「―――――憑いてやる」
「え?」
「憑いてやる……お前の心臓はこれより4年と215日13時間3分6秒後に止まる」
「逆恨み禁止! 自業自得でしょうが!
………あの、フェイトさん、迷惑かけてすみません」
主人に首根っこを掴まれて連れていかれるキャスターであった。
「バーカ! バーカ! 痴女!! 露出狂!!!」
「やめなさいってのッ!」
狐の罵声が響き渡る第二演習場。
日は既に傾き、丁度、教導の終了を知らせる鐘が塩原山中に鳴り響いた。
「………………はぁ」
教導演習会二日目終了―――
脱力感から重い溜息をつくフェイト。
何というか、本日もドタバタのうちに終了する第二班なのであった。
――――――
幕間 マキリ ―――
「こんにちわ」
「……ん? ああ、こんにちわ」
騎士は急ぎ足で第3演習場に向かっていた。
すれ違った娘に挨拶を返し、早歩きで目的地へと急ぐ。
面識というほどの事は無いが今の少女の顔には見覚えがあった。
あれは確か……いや、今はそれどころではない。
人に物を教え導く立場の者が、約束の時間に遅れる事など許されない。
遅くても開始10分前までに必ず会場入りしているのがこの将だ。 さて、急がなければ―――
――― だが、そんな彼女を ―――
「……………………なっっっ!!!!!?」
――― 深き穴へ落ち込む感覚が襲った ―――
重力に解放された肉体。 そして浮遊感。
底の無い闇へと堕ちていく体。 麻痺していく5感。
掠れる視覚に、先ほどの少女の白髪と化した髪が―――
「兄さんをいたぶって良いのは私だけなんです………うふふふ」
騎士の消えた通路には一人―――泥のように濁った少女の声のみが響いていた。
――――――
「っ………何事だ!?」
混濁する5感を無理やり起こしてデバイスを起動する。
底の無い孔に落ちていく感覚から解放される将。
天を仰いでも闇しかない。 地を見下ろしても暗黒が広がるのみ。
「………………」
だがすぐに気づく。 虚無を思わせる空間でありながら、自分は孤独では無かった。
煌々と目を輝かせ、こちらを見据えて舌なめずりする巨大な影の存在を認めたのだ。
――― 流石に殺ちゃったらマズイですよね……でも少し痛めつけるくらいならアリかな ―――
そんな声が聞こえた気がした。
そこはまるで餌場。
自分はさしずめ、飢えた巨人の群れに投げ込まれた鶏といったところか。
「………どこのどいつかは知らんが」
その影はこちらを見るに躊躇い無く襲ってきた。 問答など初めからなく、意思疎通を計る暇すら無い。
獲物を見つけた動物のように無造作に、獰猛に、覆い被さる闇の波濤。
餌は圧倒的な脅威に飲み込まれ、己が身を蹂躙される予感に苛まれるしか無いだろう。
「…………面白い」
但し―――餌が鶏ではなく、獣すら食い散らす獰猛な火喰い鳥であった場合はその限りではないが。
騎士は炎熱のデバイスを構え、燃えるような双眸を称えて………笑った。
――――――
CHAPTER 2-3 騎士よ、狙撃兵よ 大志を抱け ―――
「来ねえじゃねえか?」
第3演習場。 生徒3人が教官の不在に顔を曇らせていた。
訝しげに声を発したのは生徒その1、紅蓮の槍を抱えた偉丈夫だ。
「絶対おかしいです………あのシグナムさんが時間に遅れるだなんて」
「時を無駄にしたな―――暇を貰うぞ。 約束の刻限も護れぬ騎士などたかが知れている。
それに光の御子のお墨付きとはいえ、女では大した期待も出来ん」
尊敬する騎士を愚弄されてエリオがムッと唇を尖らせる。
だが客を待たせているのは事実だ。 何も言えない。
場には怱々たるメンバーが集っていた。
昨日の第3班が散々だったと聞いたエリオモンディアル。
将を気の毒に思った彼がランサーネットワークを駆使して方々に声をかけまくったのだ。
ことに機動力こそ槍兵の真骨頂。 歴代ランサーに総当りを試みた少年である。
そして懇意にしているクランの猛犬は言うに及ばず、双槍の使い手―――
あのフィオナ騎士団一番槍、ディルムッドオディナの勧誘に成功したのだった。
手に持つ紅薔薇は魔力を―――武装局員の障壁やBJを紙のように切り裂き
手に持つ黄薔薇は手傷を―――決して癒えぬ負傷を相手に負わせる、殺傷に特化した呪いの刃。
白兵戦最強とすら謳われる、ミッド武装隊にとって天敵となるサーヴァント。
砲撃魔導士ならば距離をとって戦う選択肢もあるが騎士はそうも行かない。
一太刀すら受ける事を許されないシビアな戦いを余儀なくされる、そんな相手だ。
エリオもシグナムも常から是非、コンタクトしたいサーヴァントの一人であった。
「セイバーだって女だぜ?」
「あれは別だ。 伝承において男とされてきた英霊に真の性別など然したる意味は無い。
事実、アレは入れ物が女体というだけ―――中身は紛う事なき獅子であろうよ」
「あいつも最近は大概、乙女なんだがなぁ。 この前のバイト先であいつ見たんだけど
UFOキャッチャーでボンデライオン取って大喜びしてた時の面は必見だったぜ?」
「………そんな事は有り得ん。 貴公、俺を謀るか?」
「シグナムさんだって強いですよ。 女の人だからって甘く見ていると痛い目に合うと思います」
「ほう…………?」
「色男……坊主の言う通りだぜ。 女なら誰もがお前さんの魔貌に腰砕けるわけじゃねえ。
あいつの勇猛さは俺が保証する」
もうちょっと待ってみようや、とディルムットをなだめるランサー。
こういう時は本当に頼りになる兄貴である。
余談だがエリオが声をかけた者はもう一人いた。
意思の疎通が成り立たず、身の危険を感じて逃げてきたのだが……
脇にいたピエロが物欲しそうな顔でこっちを見ていたのが印象的だった。
――― オイシソウ ―――
あのピエロ……確かに自分を見てこう言ったが、あれは何だったのだろう?
「しょうがねえ――――坊主。 シグナムが来るまでお前が教えてくれよ」
「ええ!? そそ、そんな僕なんかが……無理ですよ!」
時間を無駄にしたくなかったのか、ランサーがとんでもない事を言い出した。
青天の霹靂とはこの事だ。 槍一つで国の行く末すら担ってきた英霊が相手である。
自分のような若輩がどの面下げて教鞭を振るえというのか?
「遠慮すんな。 今の時代の戦人がどんな鍛錬してんのか興味あるしよ。 な?」
「…………」
猛犬の申し出に2槍のランサーも異論を挟まない。
えらい事になった…………どうすれば……?
(教えろって言ったって………せいぜいプログラムをなぞるくらいしか出来ないよ。
じゃあ、まずはフィジカルトレーニング? スクワットから順番に?
いやいやいや! 今更この人達の足腰鍛えてどうすんだ!?)
見事にテンパるエリオくん。
期待を露にこちらを見据える英霊の顔が悪魔に見える。
熱い視線を一身に受けて泣きそうになる少年であったが―――
「!?」
彼にとっては幸か不幸か――――その時、異変が起きた。
3人の立っていた広場の中央、地面が突如として鳴動し、変容したのだ!
雑草の緑と黄土の大地が瞬く間に黒く変色し、タールのようなドロドロの池と化す。
突如として起こった事態に少年は声も出ない。
一槍のランサーが舌打ちする。 まるでそれに対し、苦い思い出でもあるかのように―――
やがて血相を変えた局員や3者の視線を一身に受けた汚泥の池。 その中心が歪に盛り上がる!
虚空の底なし沼の、泥の内から破裂するかのような、それは爆発だった!
内部より食い破り、突き抜けるように翻る膨大な爆炎と、一条の矢!
そして紅蓮の炎を伴って虚空から飛び出してきた影が一つ!
「シ、シグナムさんっ!!」
その影を見てエリオが叫ぶ!
不死鳥の如き見事な炎翼に覆われて飛び出してきたのは少年の機知の間柄。
烈火の将シグナムが皆の眼前にて地面に降り立つ……否、不時着気味に地面に堕ちる。
池はあれほどの威容が嘘のように、すぐさま逃げるように立ち消えてしまった――――
「はぁ、はぁ、はぁ………はぁ、」
「シグナムさん!? 何があったんですか!? 今のは一体……!?」
彼女の有様は酷いものだった。
ヘドロの海を泳ぎ回ったように全身を汚濁に塗れさせ、勇壮な騎士甲冑は所々が溶けてボロボロ。
息も絶え絶えの表情はまるで、さっきまで千の軍勢を相手にしてきたかのようだ。
「……………迷惑をかけた。 少し準備運動に精を出しすぎてな」
不測の事態に襲われたのは明らかだった。
だが将は次いで何の事は無いと笑う。 散歩でもしてきたかのようにあっさりと。
古今無双の槍の英霊と自分のために奔走してくれたであろう少年。
集った面子を前にして、情けない姿など見せられる筈が無い。
「遅れてすまない……こんな見苦しいなりで申し訳ないが時間が惜しい。
皆がよければ、これより第3演習場・教導演習会を始める!」
くどくどと言い訳はしない。 行動で表すのみ。
血と硝煙に塗れ、戦装束はボロボロ。
しかして凛と立つ将は揺ぎ無い―――
「な? 良い女だろう?」
「……………ふむ」
ランサー2体を唸らせるに足る本物の騎士であった。
――――――
…………………………
「……………………ん」
霞掛かった意識が不意に覚醒する――――
朧に揺れる視界。 どうやら寝こけてしまったようだ。
温泉上りのマッサージチェアの心地良さに耐えられなかったのだろう。
公共物をあまり独占するのはいただけない。 あと少しだけ揉み玉にこね繰り回されたい欲求を断ち切り
気だるげな仕草でシグナムは立ち上がる。 近くの売店で牛乳を購入し、雄々しく一気飲み。
浴衣を身に纏った美丈夫は、女性の艶かしさよりも強やかさを感じさせる。 やはり女である前に彼女は騎士だった。
「すみません! そこの貴方、着物に赤ジャンの殺人狂女を見ませんでしたか!?」
「心当たりはないな」
「そうですか……失礼!」
夜叉のような顔の少女が何事か質問し、廊下を韋駄天のように飛んでいく。 何なんだ?
それにしても―――――今日は有意義な一日だった。
眠りこけていた先ほども、夢の中で本日の教導を反芻していたところだ。
余韻に浸ってなお余りある素晴らしい教練。
普段は彼女の苛烈さに付いてこれる生徒などおらず、ついぞ手加減する癖がついていた。
だからこそ本気を出して全部受け止めてくれる生徒には愛しさすら感じる。
エリオには改めて感謝しなければならないだろう。
「むしろ彼らに悪い事をしてしまった……手傷さえ負っていなければ、もう少し食い下がれたのだが」
不慮の事故(?)による負傷でベストコンディションで臨めなかったのがつくづく惜しい。
模擬戦はチーム形式で行った。 ライトニング隊VSランサー×2のカード。
贔屓目に見てもこちらの負けだった。 手心を加えさせてしまったのが何より悔やまれる。
だが将にとっての収穫は、彼らが共にセイバーと戦った事のある者だという事だ。
あの手強いランサー達を前座扱いするわけも無いが、剣の騎士として最強の聖剣に挑まんとする身だ。
この会合を無駄にする手はない。 ランサー×2も話を聞くや、進んでセイバーの事をあれこれ話してくれた。
今や来たるべきセイバーとの1戦に向けて気運は万上。 期待で胸が張り裂けかねない有様だった。
「姉さん……? シグナム姉さん! 起きたんスか!」
「……今度は何だ?」
そんな片思いに苛まれている騎士の後方。
喜色満面の青年―――ヴァイス陸曹の声が響く。
あちらも風呂上りか、肌が上気して紅潮している。
「お疲れの所、申し訳ないです! 声をかけようとしたんですけど気持ち良さそうに寝てるから」
知人が傍に来ても気づかなかったらしい。
余程、精魂尽きていたのか思ったよりも深い眠りだったようである。
「そうか……すまん。 弱音を吐くでは無いが今日は少々きつかったのだ」
「いや、そんなとんでもない! むしろ麗しの姉さんの色っぽい寝顔を十分に堪の………」
と、慌てて口を紡ぐグランセニックさん。
浴衣をはだけさせて寝息を立てている上官にハアハアしていたなんて言えない。
これ以上、口が滑るとマジで殺される。
「先輩! そんな事より……」
「分かってる。 姉さん、これ見て下さいよ! 射撃大会で勝利を掻っ攫って来やしたぜ!」
「何だと……本当か?」
後輩であるアルトに促されて彼が誇らしげに掲げたのは射撃大会の優勝商品―――虎、聖杯……?
いや、商品の目録はどうでも良い。 優勝……紛う事なき一等賞。
そんな彼の出した結果にこそ目を見張るシグナムである。
「あ、酷えな! 俺が勝てるわけ無いと思ってたんスか?」
「すまん……悪いが勝機はほぼ無いと思っていた。
お前の腕はよく知っているが、何せ相手があのアーチャーだからな」
実際、ティアナも参加したが歯が立たなかったらしい。
百発百中の宝具を持つサーヴァントが相手である以上、普通の人間が的当てで勝負になる道理がない。
自分とて弓を射る心得はあるが、並べるのは威力だけだ。 精度では到底、敵わない。
「あいつの双銃じゃキツかったでしょうね。 射撃ってのは対象をいかに速く正確に撃ち抜くかが重要だ。
撃ってから弾道修正するコンセプトの魔弾じゃタイムロスが大きすぎる」
「ならばお前はどうやって命中率100%を相手に勝利した?」
よくぞ聞いてくれました!とばかりに顔を輝かせる青年。
話したくて仕方がないという様子がひしひしと伝わってくる。
「ここで質問なんスけど、魔力を使って100%の奴と弾切れナシの90%以上……
長期戦に持ち込んで強いのはどっちですか?」
いきなりな問い掛けだった。 恐らくは今日の勝因を孕んだ問いだろう。
質問は吟味するまでもなく、その意図はさして難しいものではなかった。
サーヴァントの命中率100%は全て宝具によるものだ。 宝具は魔力を少なからず消費する。
故に永久に撃てるわけではないが、実弾モードのライフルで弾薬支給があるルールならば弾切れの心配は無い。
「持久戦に持ち込み、相手の魔力を枯渇させて宝具を封じれば少なくとも同じ土俵には上がれる……
で、それにどのくらいの時間を要すれば良いのだ?」
「なぁに、100発も打たせりゃヘロヘロになるでしょうよ」
「100発……気の長い話だな。 しかし、それほどの長丁場ともなれば問いの答えは明白だ。
90%の命中率とて完璧では無い。 相手の魔力切れよりも先にこちらがミスする確率の方が高いだろう」
「そこですよ姉さん。 確率ってのがミソです。
狙撃手の90%っていうのはね……本チャンでは絶対に外しちゃいけない数値なんです」
90%……つまりは10回に1回は外れるという確率。
アベレージとは通例、その者の戦績のトータルを換算して出されるステータスだ。
調子の悪い時、不慮の事態が起こった時、集中力が途切れた時。
疲労や緊張により手がぶれた時、機器の類が万全でなかった時等等。
当然、それら全てを加味して算出される数字である。
つまりここぞという時、最善の状態で臨む射撃においてはほぼ完璧を誇るのが、トータル90%以上の射撃手の腕なのだ。
このレベルにある者が、一射で自軍の勝利、敗北が決まるという場面において外す事はほとんどない。
イザという時に10分の1を引いてくるような馬鹿者は、狙撃手として名乗るのもおこがましい愚鈍だと言えよう。
「私は射撃に疎いのでよく分からんが………
つまり普段は90%前後のお前が極限の集中力を維持する事で限りなく100%に近づいたという事か?
言うは易し、行なうは難しだな。 それが出来ればミスショットを起こす者など……」
「うーん……ってより、確率変動って言った方がしっくり来ますね。
何らかの力を働かせて、本来10回に1回引いちまうミスを回避し続けるってとこです」
何らかの力とはつまり普段の100倍の集中力とか―――
体力とか、精神力とか、運とか、あるいは寿命とか―――
「もっともらしく言っているが………それは神懸り的な理屈だぞ。
机上の空論にすらなっていない。 とてもまっとうな戦術とは言えん」
「言いたい事は分かります。 俺だって自分で何を言ってるか分かりませんとも。
こんな事、普通じゃ無理だ。 だけど……あの場ではそれが当然のように出来ちまったんスよ」
アルトも無言でうなづく。 そう、彼女も見ていたのだ。
ヴァイスの鬼神のような技の冴えを……
あれは果たして人間の業において介在出来る域なのか?
確率変動弾―――自身の本来の%を乱数により歪ませ、10分の1を延々と回避し続ける離れ業。
確率という概念がいずれは本来の数値に集束される以上、今後数週間のヴァイスのアベレージは散々なものになるだろう。
俗に言う「ぶり返し」というやつだ。 だが、ともあれ本日の彼はそういう人の理外に位置する存在だった。
きっかけはそう―――――昨日の…………
「…………………ぶほえっ!?」
「先輩っ!?」
吐血するヴァイス。 どうやら昨日の事を思い出したようである。
そう、あの恐怖のヴァルハラにて味わった――――!!
男がサーヴァントと相対出来るほどの革新を齎したであろう出来事。
その詳細については―――掘り下げない方が良いのかも知れない。
「大丈夫か?」
「へ、へっちゃらッス! 我が心は常にヴァジュラを抱いている―――
その身を彼岸領域に置かば是恐れるものは何も無し―――
………………えっと、ヴァジュラって何でしたっけ?」
「………思い出さなくていい。 続きを話せ」
「そうそう、そんな感じで順当に勝ち抜いていったんですが……えっと、どこまで話しましたかね?
ぶっちゃけた話、キツイ勝負になったのは準決勝からの2試合だけだったんですよ」
「そこで相手選手に毒を盛られたんです……
流石にドクターストップで棄権しようという話になったんですけど
敵のマスターが後で勝ちを譲ると言ってきて」
「いや、あの潔さには感動しましたよ! ブラックモアの爺さんとは後で飲む約束してるんスけど、まあそれはともかく」
話はまだまだ続きそうだ。 喜びを露に唾を飛ばす青年が微笑ましい。
最後まで付き合ってやるかと溜息交じりの微笑を浮かべる将だった。
ちなみに背後ではエリオとランサーが女性陣に追い立てられていたりするが―――どうせ下らない事だろう。
その様子を見てヴァイスの顔から血の気が引き、冷や汗を浮かべ
さり気なく女性陣から死角になる位置に回りこんだりしているが―――
どうせ下らない事だろう……
――――――
「決勝! ついに決勝ですっ! 史上最大の大番狂わせがここに起ころうとしているーーーッ!
ライフル一丁でサーヴァントに相対し、凌駕しようとしている勇者の名はヴァイスグランセニック!!
ヒー・イズ・グレイテスト・ヒットマンの称号まであと一歩! 奇跡の瞬間を我々は目撃しようとしているのか!?」
「陸曹……凄いな」
タイガーと隻眼少女の解説の下、ファイナリスト2名がここに集う。
赤い外袴の騎士アーチャー。 そして機動6課ロングアーチ隊の期待を一身に背負う青年だ。
「まさかキミが上がってくるとはな……
決勝の相手はブラックモア郷のサーヴァントで鉄板だと思っていたが。
七天の再現―――ニヒリルトとナルシスト再び、とは相成らんか」
「見下してんじゃねえぜアーチャー。 アンタとは一回やってみたかったんだ。
射撃の最先端はライフルだ! 弓なんぞに何時までも遅れを取ってちゃ射手としての沽券に関わるんでね!」
合同作戦においてこのサーヴァントの凄まじさは何度も見ている。
局の狙撃部隊が彼に悉く良い所を攫われているところもだ。
最新鋭の装備を引っさげておきながら、いつまでも弓兵などに遅れを取っていては良い面の皮。
その借りも含めて今ここで纏めて返す!
「だがキミは準決勝で受けた毒が癒えていまい。 そんな様で長期戦を仕掛けたところで最後まで持つとは思えんが」
「抜かせ。 アンタなんか狐に燃やされてたじゃねえか」
「おーっとこれは両雄、早くも火花が散っている! まさにスパークリングワイドプレッシャー!
期せずして満身創痍の漢達が相並ぶ決勝戦、双方譲らずといったところでしょう!」
「ししょー。 ヴァイス陸曹に勝機はあるか?」
「うーん……難しいかなー。 ここだけの話、彼、キャラ的にちょっと弱いし。
なのはっちも言ってたけど、特化したモノがあるキャラと無いキャラじゃ
ここぞという時の勝負では雲泥の差がつくのよね実際」
男の背中、怪しげな呪文、中2全開の決め台詞―――
これだけのハイスペックを有するアーチャーに比べてヴァイスはどうか?
「恥ずかしいくらい突き抜けてる弓兵さんと並ぶと浮き彫りになる―――そう、奴は地味夫くんである!
はっきり言って二軍臭しか感じない! 極限の戦いにおいて勝敗を左右する決定的な要因とは即ちっ!」
「聞こえてんぞこの野郎……あと、なのはさんの言葉は全然そういう意味じゃねえから」
「とはいえ、キャラ立ちっていうのは即席でどうにかなるもんじゃないしね〜。
立ちくらみするほどイカした通り名でもあれば、話は別なんだけど」
「イカした通り名………刃舞う爆撃手、とかか?」
「はっは、またまたご冗談を」
(ガーン………)
気に障る解説はどうでも良いとして、英霊を打破するには自分にパンチが無いのも事実。
しかし今更、背中に鬼やら天やらを現出させたところで奴に並べる保障は無い。
結局、人は戦場において自分の背負える物を駆使して戦うしか無いのだ。
「いっくぜストームレイダー! 狙い打つぜぇ!!」
ヴァイスが吼えた。 声高らかに―――
……………………
……………………
「おーーっとパクったぁぁーーーー!! ヴァイス選手、恐れ多くも大御所作品からの大胆なパクリっ!」
「なっ!? 違うっ! 不可抗力だ!」
「これはいけません! 勝敗以前に万死に値する恥ずかしさ!
ヴァイス選手、目先のキャラ立ちに囚われて悪魔に魂を売ったかーー!!?」
「うるせえんだよ! それ言ったら、このアーチャーなんてパクリの集大成じゃねえか!!」
「是非も無い―――だが模倣を大衆に晒す最低条件とは即ち、本物を凌駕したと断ずる自負の有無。
生半な模倣は道化と化すぞ? ミッドチルダが生みし魔弾の射手よ―――そんな様でこの私に付いてこれるか?」
「舐めんな………アンタが俺に付いてくるんだよ!! 行っくぜぇぇ!!」
――――――
「………と、まあこんな感じで!」
アルトが熱弁を振るう。
いつになくカッコ良かった先輩の勇姿。
語る彼女も興奮さめやらぬ様子だった。
「凄かったんですよヴァイス先輩! あのアーチャー相手にサドンデスまで持ち込んで……」
魔力切れに持ち込んでなお、弓兵の力量は恐るべきものだった。
宝具になど頼らずとも彼はほぼ100%の確率で的を中つ達人だ。
勝負はいつまでも付かず、最終的には特別ルール―――
一つの的を射出して先に穿った方が勝ち、という形に変更せざるを得なかった。
「悔しいけど認めますよ。 つくづく奴は半端じゃなかった。
矢を番え、弓を絞って、打つ……それをほぼノータイムでやってくる。
セミオートライフルが速さで分が悪いってんですから開いた口が塞がらねえよ実際……」
左右からランダムに射出されるスペシャル的、イリヤ(とにかく速い)をより速く射抜いたほうの勝ち。
持久力でもいよいよ勝ち目が見えなくなってきたヴァイスが、ここでいちかばちかの勝負に出た。
幸運だったのが使用されたクレー射撃の装置が局の持ち込んだ機材だという事だ。
射出パターンは膨大だが、機械である以上は必ず一定の周期が生じる。
その機材は何を隠そう、ヴァイスが少年の頃から飽きるほど練習してきた物と同じ型式のものだったのだ。
「パターンをカマかけての先打ち……いくら英霊だってあればっかりは防ぎようがねえ。
未来予知でも出来ない限りはね。 もっとも、外れてたら俺の負けでしたが」
しかも的がイリヤに変わってから、明らかにアーチャーの弓に戸惑いが生じた……
そんな人知れぬ幸運も重なって―――
サドンデス42投目にして―――――ヴァイスの射撃が、アーチャーの投擲を上回った時………勝負は決した!
瞬間、アルトを初め、ロングアーチの同僚達が感涙に咽び飛び込んでくる。
快挙と評してなお足りないこの勝利。 仲間から揉みくちゃにされ、胴上げされ、手荒な歓迎を受ける。
アーチャーが背中を向けて何か言ってた気がするが、そんなもの聞こえる筈が無い。
常に裏方に徹してきた男がついに、ついに灼熱の栄光を手にし、その勝利は皆の歓声と祝福の元に胸に刻まれたのだ。
―――こうして、ヴァイスとアルトが本日の戦果を誇らしげに語り終える。
まるで親に満点の答案を自慢する子供のような表情だ。
為した偉業を考えれば無理もないが。
「………大したものだ」
惜しみない賞賛の言葉を漏らすシグナム。
人間がサーヴァントを下すという事例は快挙を超えてイレギュラーとすら評される。
もぎ取った勝利はそれほどに尊く重い。
「それで、ですね……今日は俺、目茶目茶頑張って戦ってきたんスよ」
「ああ、よくやったな」
「毒を食らった体を推して我ながらよく勝てたと思います。
これも勝利の女神が俺に微笑んでくれたんですかね……
イーパウに抉られた傷口なんて、もう化膿しそうで痛くて痛くて」
「すぐにシャマルかキャロの所に行け」
「いや、そうじゃなくて……すぐにでも応急処置が必要というかですね」
話は既に終わった筈だが―――? 未だ何かがあるような陸曹の表情。
あからさまに挙動不審な様相だ。
上目使いで姉と慕う騎士を見やる。 ……気持ち悪い。
「ですからその、頑張ったご褒美っていうか………
今日くらいはその、自分に甘えても良いかなーなんて思ったりしてですね」
「何だ? 何かあるならはっきりと言え」
「はいっ! はっきり言います! 姉さんにちょっと頼みがあるんですけど!
実は毒による外患部への応急処置の一つで、誰かに口で吸い出して貰うのが良いってシャマル先生から聞きまして!」
「なな……先輩、まさかっ!?」
男、ヴァイスグランセニック。 憧れの上司にまさかのリップサービス要求。
相手が相手である。 命知らずなことこの上ない所業だ。
だがしかし彼の本能が、今日はこのまま突き抜けろと叫んでいる―――
よく見れば瞳の奥にコスモが見える。 反省室において一体、どれほどの神秘を叩き込まれてきたのか。
「セクハラですよ先輩!? 第一もうお風呂入ってるじゃないですか! 毒なんてとっくに全身に回ってますよ!」
「うるせえなっ! 今の俺は負ける気がしねえんだ! 確変はまだまだ続いてんだよっっ!!!
英霊すら下すほどの何かが体の中に降りてんだ! 今日を逃がしたら、こんな機会は永遠に………」
男は必死だった。 対照的にポーカーフェイスの将。
元々、何が起きても不動の精神を崩さない騎士である。 その心胆がどう揺れ動いているのかまるで読めない。
赤くなるなり青筋立てるなりしてくれれば、その後のリアクションも取り易いのだが―――
支援
ともあれ賽は投げられた。 ゴクリと唾を飲み、シグナムの次の言葉を待つ。
「化膿の対処法ならばもっと手っ取り早い方法があるぞ」
そんな彼を前に、将がゆらりと立ち上がり―――
「焼こう」
「すいませんっした! 調子に乗ってましたっ! 見果てぬ夢を見た俺が馬鹿でしたっ!!!!」
撃沈だ! 舞い上がった青年の心胆は刺すような殺気に貫かれ、地の底に落ちた。
憧れの姉さんはやはり変わらず猛禽だった。 脱兎の如く逃げ出そうとする陸曹。
その首根っこをしかと掴むシグナム。 うひいっ!と情けない悲鳴をあげるヴァイスくん。
紅蓮の双眸が後輩を射抜く――――
ああ、やはり今日の自分はどうかしてた…………
強運に見舞われた時こそ、引き際を間違えば一気に坂を転げ落ちるというロジック。
これは本気で死んだかもしれない。 炎のように苛烈な騎士に束縛され、身動きも取れない青年に―――
「良くやったな………ヴァイス坊や」
―――おもむろに顔を近づけた将が……………
そのまま、彼の額に口付けを、した………
「…………………」
アルトが短い悲鳴をあげて両手を口元に当てる。
「もう寝ろ。 明日に疲れを残すぞ」
素っ気無い一言を残し、鷲掴みにされていた裾が無造作に放られる。
フワリと浮いた後、床に着地するヴァイス。
しかしながら暫く何が起こったのか理解できずに呆然と佇む彼。
色を失い、白化した彼……
心は依然、宙にフワフワ浮いたままの彼……
だが、だが……………額の皮膚より中枢神経に伝達されるマシュマロのような感触は紛れもなく―――
10数秒を要してやっと正気を取り戻した彼。
やがて自身の生涯の悲願が今、叶ったのだという事を認識出来た瞬間―――
「き………………きゃっほぉぉぉぉぉぉぉぉいっっっ!!!!!!!」
彼は天に拳を突き立てた。
きっと明日、死んでもおかしくないだろう……それほどの幸運の偏りだ。
だが涙に咽び廊下を駆けていく男の背中は、例え死しても一片の悔い無しと雄弁に語っていた。
ヴァイスグランセニック無双の2日目。
涅槃から生還して後の、恐らく人生最頂の日は――――――こうして幕を閉じる。
「先輩! んもうっ!!」
何故か頬を膨らませてヴァイスの後を追いかけるアルト。
「可愛い奴らだ」
その姿に苦笑するシグナムであった。
――――――さて、慰安旅行も残すところあと一日
シグナムの心残りはセイバーだ。
期待に胸を膨らませる反面、もしかしたらという不安もある。
あの騎士王は本当に来てくれるのだろうか?
戦士同士が交わした約束を違える彼女ではないと信じてはいるが……
騎士の頂点に立つと言われる王。 そして聖剣エクスカリバー。
その邂逅を夢に見て――――
シグナムもまた、相棒のデバイスを抱き二日目をこえるのだった
支援
最後滅茶苦茶になってしまいました
すみません
何とか問題なく読めれば良いのですが
二日目後半は割とすぐに投下します
ではまた
覗きにて悟りへの道を開こうとした男達もまた、心に神を宿している――――
率先して覗いてる奴は心に宿すどころか半分神様
悟りとはいったい――――うごごご
詰められてる場面こそ何気に詳しく見たかったw
GJ!
今回はウスィー人達が目立っとりますな。キャラとか服とかが
陸曹に出番どころか活躍の場が与えられるとはなー
Forceキャラまで…作者氏は全キャラ登場させるつもりでいらっしゃるか
wiki見てて気づいたのですが、旅行日数が6日に延びてる?
3日だったような…記憶違いだろか
test
模擬戦での相次ぐなのは勢圧勝パターンにそろそろ嫌気がさしてくる。
型月側のスペックとか無視してなのは勢圧倒!!とかやってて楽しい?
タコ部屋送り最有力候補のギル様まさかの音信不通w
>>139 原作のスペックを再現したらほとんどの鯖がなのはに手も足も出ないだろうがそれで満足?
おい、それ以上ハサン先生のことをいじめる気なら、こちらにも考えがあるぞ
■■■■は■■なり
>>141 なるほど、ようは型月フルボッコにしたいだけか。
この恥辱と屈辱を払拭するには慎二がなのはを撃墜するくらいしてもらわないと割に合わないな
>>139 こういう感想は出るかーやはり
しかし結局は書き手と読み手の見解の相違でしかないから、どちらが正しい正しくないの判断は尽きかねる
私見だが作者的には、
真祖・鯖>なのは上位≒魔法使い≧代行者・魔術師
みたいな感じなんだろう
今回はなのは勢の活躍が目立つというだけで、その上には型月がいるとしている点は変わっていないわけだが
それでも納得がいかないのなら理想郷にでも行けばいい
望み通りの作品はいくらでもある
しかしこのスレでもこんなフォローしなきゃならんというのも悲しいもんだなー
作者氏も予測と覚悟はしていただろうけど
頑張って
>>141 煽りもやめれ
>>145 その私見に物申したいがそれは置いといて、
宝具を出されても一撃死、一晩対策練ってたみたいだけどこっちの圧勝で終わったね、
とかやってるあたり、なのは圧勝がしたいだけにしか見えないよ。
この作者、以前はそこら辺のバランスを上手くコントロールしてたけど、
ここ最近はなのは贔屓がひどいな。
>>146 なのは圧勝がしたいだけならセイバーギルアルクにも余裕で勝ってるはずだわな
熱くなって自分の気に入らないとこばかりが先行してしまっているように見える。頭冷して読み直せ
バランスって何だろうな
説明できるか?
もっと言うと、完結していないこの作品にレッテル貼りするのはまだ早いね
>>147 >熱くなって自分の気に入らないとこばかりが先行してしまっているように見える。頭冷して読み直せ
読んでから感想を言ってるのに更に読み直せときたか。
批判はレッテル貼りとか、批判にピリピリして盲目になってないか?
完結してないから感想を言うのはまだ早いね・・・じゃあいい意味で裏切ってくれるといいな。
サーヴァントで負けたのキャス孤だけだよね?
そんな不自然だった?
勝ち負けはどうでもいいとして、長編でバトルしまくってんだからこっちでも競わせなくてもいいんじゃないか、とは思ってる
作者はいい意味で頭の悪いコメディも心理描写もできるんだから、こういう話くらい作品間で上下がついてしまうバトル抜きで進んでるのを見てみたい
とはいえ原作ですらここ最近なのはの日常パートなんて無いからなー
訓練してるか模擬戦してるか戦ってるかのどれかだしコメディで使いにくいんじゃね?
つうかどう見ても遠坂さんの逆転フラグ立ってるじゃんw
どう考えてもG∞秋葉の一強というか一狂だったような気がするしおすし
あえて戦闘を入れたのは、非Fateの型月キャラに対する救済だと思うんだがにゃー
軋間とかもヨイショしたのは、その一環でしょうなー
描写も、超カッコイイ必殺技もない人たちの戦闘SSとか今後も希望薄やん
で、晴れ舞台のダンスの相手にはリードと華が必要と
そーいうSSにツッコミは無粋と思うんすわ
親善試合のエキジビションの勝敗にここまで一喜一憂とは熱い奴がいるな
しかし局主催の催しに型月のスーパーユニット投入して教導官を半殺しして悦に浸る展開とかやられても
第三者に見せる相手に怪我させない戦いは不得手だって型月側言ってるし気を使ってるんじゃないの?
キャス狐はもらい事故
さあ、おかしくなって来た。
>>150 >長編でバトルしまくってんだからこっちでも競わせなくてもいいんじゃないか、とは思ってる
それを決めるの作者でしょ
思うのはいいが言うべきことではない
>>154 >第三者に見せる相手に怪我させない戦いは不得手だって型月側言ってるし気を使ってるんじゃないの?
それならそういった部分をちゃんと書いた方がいいと思うけどな。
>>156 別にいいじゃん、読んだ上でそう思ったのなら。っていうかなんで言ったらダメなんだ?
何を書くかを決めるのが作者なら、どんな感想を言うかを決めるのは読者だよ。
普段クラスの人気者達の影に埋もれた者達が目立てる可能性を秘めた舞台
運動会みたいなもんさね
進行中のフェイトルートはどうするつもりなんでしょうか
一読者としては先に番外編を最後まで読んでしまいたいと感じてます
日程が増えたなら、、風呂の回数も増えるな
ランサー「これだけフラグ回収すれば、あとは夜這いイベントのみだな!」
エリオ「なんでボクら反省室へ捕まらないんでしょうか?」
ランサー「相手がして欲しいことをやってるんだから反省する必要はないだろ……?」
>>157 感想を言うのは良いが、その感想が的外れなのが問題だとは思う
最終的には嫌なら読むなって返されるだけだし
>>160 的外れかどうかを決めるのも作者だよ。
そしてSSを公開した以上、そういう感想がくるのも覚悟の上だろ。
書くのも自由
読むのも自由
言うのも自由
全て自由
リリブラ氏カンバレー
>型月側のスペックとか無視してなのは勢圧倒!!とかやってて楽しい?
こんな明らかな煽り文句言っといて、都合が悪くなったら正当化か?
感想を言うのはいいが、その前にマナーや言葉遣いについて考えるべきじゃないのか
まあ、感想は自由だけどあんまりスレの空気が悪くならない程度でね
>>133 GJ!
ネタが多すぎて感想に困るSSだw
チンクと藤ねえの絡みはここでも鉄板ですね
>>156 あれくらいは読んだ後の感想だろ
これが嫌だからあーしろこーしろと強制する意見でもないんだから
リリブラ氏乙です。幹や、そこは風呂行っとけよ。男として逃げるな!
エリオ、串刺し公にも声掛けたんだ。度胸あるな。ヴラドさんと魔道士も面白そうだけど
キャス狐可愛い
本編も、続き旅行も楽しみにしてます!!
他人の感想や意見に対して作者でもないのに文句つける奴が一番のバカ
叩きあいはどうでもいいんだが
規制でパソから書き込めねぇ
やっぱ、アチャは勝負を譲ったんかね
ラストバトルに専用BGMは欠かせないだろ
剣と魔導更新
この忙しいであろう時期にあの量あの質あの投下ペースを誇るリリブラ氏に驚嘆
宝具でも使ってはるんかいな
花札氏やEXTRA氏らもお待ちしておりますぞ
BGM約束された勝利の剣ってエクスカリバーより宝具そのもののBGMだと思う
投げボルグのときなんかもかかってたな
金ぴか専用BGM「黄金の王」→そのまま帰る
バサカ専用BGM「蘇る神話」→ラブラブカリバーンで7殺
小次郎専用BGM「疾風の剣士」→引き分けor普通に負け
衛宮君専用BGM「エミヤ」→アーチャー負けフラグ
ダメじゃん専用BGM
>>176 まだカレンのテーマが…ってあれも相討ちダメットさんか…
HFルートの終局近くのサブタイトルに、
『この生、全ての善』
って、あったよね
「この世、全ての悪」に人が抗い、償うための言葉だと思ったんだけど、
この言葉についての、なのは達の見解を訊いてみたいな
なのはは勝利BGMばかりだな
正直言って、例え主人公だろうとヒロインだろうと、敗北の苦汁をなめる程度の山場がないと盛り上がらないんじゃないかと。
無印ならフェイトとの戦い、A’sならヴォルケンリッターとの戦いとか……StSでなのは達三人に苦難が降りかかる場面はあったろうか……
まあSTSはもともとスバルたちの方が主役の企画だったはずだし
だがしかしセイバーは苦汁舐めすぎという罠
そしてZEROにいたってはヒロインはウェイバーという罠
英霊とは「座」に存在するものであり、そこから呼び出される。『座』に時間は関係なく過去・現在・未来に存在した英霊が登録されている。
征服王イスカンダルの『王の軍勢』は主従の絆によって作り出される固有結界である。
実はアサシンを打ち砕いた時、アサシンに反撃された英霊もいたはず。たとえばウェイバーとか……
一人だけゲームのグッズで武装してたとしたらありうる
そういや、六課の括りで登場させるとユーノは出らんないのか
そこは個人転移で
「別に――――助けしまっても構わないよね?」
「六課の味方をしているわけじゃない!
僕は僕の友達に肩入れするだけだ!」
と、熱いシーンをだな
>>187 そのセリフ全部なのはさんなら男前になるんだけどなあ
なのはさんは何をいっても男前だよ
Fate/ZEROがアニメ化か…。
劇場版同士のクロスというのはどうだろうかと思ったが、特にどういうものかというイメージはわかなかった。
>>Fate/ZEROがアニメ化
なんという胸熱
して製作会社はどこだ
なのはさんは劇場版では割りと普通の女の子になってしまってたな
>製作会社
ufotableだったはず
らっきょのとこか
Fate作ったとこでなくて安心した
これは期待できる
え?
ユーフォーってソースどこ?
公式のZEROのサイトにはアニメ化としかないのだが…。
見逃しているのかな。
やべ
地球の裏側からでも見に行くわ
これは前作らっきょの評判も相まって凄い観客動員数になりそうだな
あとはFATEの絵として見れるかどうかだな
197 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/22(水) 12:35:28 ID:KNwKX6FI
ゼロがアニメ化とかセイバーが可哀想だな
セイバーに限れば、なのはでいう撃墜シーン集って感じに
ディルムッドの殺陣は興味ある
zeroアニメ化ってキャスターペアどうなるんだろ。セイバーよりそっちが気になる
OVAちゃんと買うから原作に忠実であってほしい
キャスターペア? ……修正の嵐かもしれない。
OVAならグロも問題ないだろうが
TVで放送されるなら
例のシーンは明暗調整やモザイクで見えにくくなるだろうな
んで、DVD/BDで見えやすくしてガチ描写解禁と
鮮度抜群の踊り食いはともかく腸オルガンは描写するのはマズすぐる
サウンドドラマとはなんだったのか
>>202 おお、すまぬ。
しかし…これだとまだ確定と言い切るのは難しいかもなあ。
ユーフォーの方は未来福音のアニメ化とかいう落ちではあるまいな。
Zeroのufo制作は
雑誌の早バレで確定してる
そか。ありがとう。色んな意味で希望がもてた。
月姫のコミック完結
結論:佐々木少年は神だった
>>205 いやまて、未来福音やるとしたら未那が出るってことだぞ
ZEROと別にむしろやれと
よい子のみんなのところにはサンタさんはやってくるのだろうか
サンタコスした赤セイバーが来るよ
ついでにイーノックコスしたエミヤも来るよ
神牛にソリを牽かせた履いてないサンタがな
そしてプレゼントを略奪していくわけか
死の天使@メッカさん「ユニゾンデバイスが欲しいです」
ZEROは公式サイトができてたが、ちゃんとユーフォーだった。
いや、ディーンだって、TVの演出も一部すげぇいいのがあったしさ…それはそれでとも思うんだけど。
ところでいつぞやカレイドルビーZEROを今年のうちに書き出すかもとかいったが、なんだかんだと都合がつかずに駄目だった。
お詫びというわけではないが、クリスマスイブなプレゼンというのも少し違うか、
また予告編を投下してお茶を濁すとか(それだ)
というわけで、ちょい長めなので投稿予告。
20時7分から。
結界に閉ざされた海鳴の海岸。
そこで一人の男と、一人の少女が向かい合う。
男は青い肌をしていた。
少女は黒い髪をしていた。
対峙した時、二人の間の距離はおよそ十メートル。
、通常の地球の格闘技、武術では、この空間を乗り越えて攻撃を加えるのは困難窮まるだろう。
いや。
「――止めて見せろ」
「やってあげるわよ」
二人は同時に動き出す。
最速のスプリンターならばおよそ一秒で駆け抜ける十メートルという距離を、少女はさらにその半分の時間で詰め寄った。
男はその少女の勢いを計っていたように、カウンターの拳を繰り出す。
最初の掌は右。
真上から振り下ろす伏虎。
男の右の正拳を撃ち落す。
続いての掌は左。
真下から突き上げる降龍。
男の左の肘を弾き上げる。
さらに両手を上げ、男の両手に虎爪掌を食らわせてガードを崩す――
そして、胸の中央に猛烈な震脚と共に川掌を叩き込む。
虎爪掌連環劈捶――
その上に同じ箇所へと衝捶、頂心肘。
虎が山を爪で崩そうとするかのような動作で防御を壊し、猛烈極まりない掌打を以って急所を叩き、さらに拳と肘で追い討ちをかける――八極門の絶招――必倒の連携(コンビネーション。
――猛虎硬爬山――
それを魔術回路(サーキット)から生み出された魔力と魔術で加速された身体能力で繰り出された時、およそ立ち得る者などこの世にはいないと思われた。
だが。
男は倒れなかった。
十五メートルの距離を砂地の上で吹き飛ばされながらも、ふんばり、前のめりに。
立っていた。
「…………………ッ!」
少女は驚愕を顔に浮かべた。
それは、ありえざる事態だったからだ。
バリアジャケットの物理防御力は彼女だって知っている。
だが、彼女が打ち込んだのは充分以上にそれを打ちぬける威力があったのだ。少なくとも、彼女はそう確信していたのだ。
「それだけか」
男は言う。
「まだまだよ」
少女は笑う。
二つの影は、再び距離をおき――
男は盾であった。
少女の魔力と勁の爆発によって叩き込まれた衝撃は、男の防御を打ち砕くのに充分な威力があった。
主より賜った騎士甲冑の上から、果断なく、容赦なく、恐るべき打撃が打ち込まれてくる。
だが、男は盾であった。
盾は砕けない。
盾は決して砕けない。
何故ならば。
砕けた盾は、もはや盾ではないからだ。
砕けた盾は、それは盾の残骸でしかないからだ。
だから、砕けない。
男が盾である限り、砕けることなどありはしない。
破綻した論理であり、物理の枠をも踏み越えている。
しかし。
論理を踏破する理不尽こそ戦士であった。
物理を超越した不条理こそ魔法であった。
それこそが、ベルカの戦士の証であった。
強靭な意志と強固な魔法を備えた彼らを相手に、およそ一対一の戦いにおいて打倒することなど、到底叶うはずがない――――。
「鋼の軛―――!」
発動された魔法の効果により、砂浜から何十もの、何メートルもの魔力の円錐状の楔が発生した。
十数メートルの距離を自ら離した少女が、助走段階に入った時にその発動の隙は生じた。
「―――――――――ッ!」
跳躍の寸前に魔力に縫いとめられた少女は、苦痛と驚愕と、それでもなお口元に不適な笑みを浮かべた。
「ルビー!」
『はい、凛さん!』
だが、知るがいい、ベルカの戦士よ。
「コンパクトフルオープン!」
魔法(ルール)はより馬鹿げた魔法(反則)によって撃ち砕かれる。
「鏡界回廊最大展開!」
ここに、ベルカの魔法さえ届かない魔法(キセキ)がある。
「Der Spiegelform wird fertig zum transport―――!」
「開けシュバインオーグ!
我は我の望む場所へ、我は我の望む法を!」
見よ!
見よ!
見よ!
理不尽をねじ伏せる理不尽!
不条理を踏みにじる不条理!
約束された勝利の具現。
絶対、大丈夫――そんな言葉を現実にするために顕現する、現代の地球に残された、最強にして最後の幻想(ラスト・ファンタズム)――――!
彼女こそが!
彼女らこそが――
――――魔法少女
222 :
カレイドルビー ZERO A's 予告編:2010/12/24(金) 20:16:55 ID:kQpsehsY
「あなたは……?」
神社へと続く階段の途中で世界は変わった。
それに気づいた彼女は、進行する方向に見知らぬ少女がいるのに気づく。
★ ★ ★
「ねえ! お話聞いてってば!」
「ディバイン……バスターッ!」
「凛さん、だめ―――ッ!」
「とおす!」
「撃ち砕いてみせる! みんなが信じてくれている! レイジングハートが力を貸してくれている! 誰もが幸せになれるはずだって、人は闇なんかに絶対負けることはないって!」
―――魔導師、高町なのは
「どうしてもやるんですか?」
夜の下、魔力で封鎖された街の中、コンクリートで築かれた塔の頂上で、少女は問うた。
向かい合った先にいる女性は、無言のまま目を閉じて、頷いた。
★ ★ ★
「いける? バルディッシュ」
「プラズマ・ザンバー!」
「どうしても行くのなら………私は止めない。私もいく」
「そう………私は、あの人にキスを貰えたら……額に軽く優しくでも口付けを貰えて、私の娘だっていってくれてたら、それでよかったんだ……っ!」
「――――ともだちだ」
―――嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ
「あの人だ……!」
少年の視界の隅に、その女はいた。
ビルの屋上に立ち、奇怪な魔法でどこともしれない意空間へと手を伸ばしている。そしてその女もまた、彼に気づいた。
★ ★ ★
「お久しぶりです」
「……変わりませんね」
「無茶苦茶だ!」
「やれる! そして、僕も手を貸す! 君たちなら絶対できる!」
「全力全開で! 手加減抜きで!」
―――ユーノ・スクライア
海鳴市を救った少年少女たちの前に立ちふさがる、新たな脅威――――。
「うるせーよ」
階段の上に立ち、小さな槌を肩に置き、赤い小さな少女は、階下の少女へと彼女は告げる。
告げてから、こつりと階段を下りていく。
◆ ◆ ◆
「はやて、おかわり!」
「なんだよ、いいじゃないか」
「ぶっ飛ばされたいやつだけ前にでろ!」
「帰って、みんなと……」
『我ら、夜天の主のもとに集いし騎士 』
―――鉄槌の騎士、ヴィータ
「残念だ。お前とならば、本当に心ゆくまで戦えただろう」
夜の下、魔力で封鎖された街の中、コンクリートで築かれた塔の頂上で、女は応えた。
向かい合った先にいる少女は大剣を構え、女もまた剣を抜いた。
◆ ◆ ◆
「まて、はしたないぞ」
「戦いは嫌いではない。むしろ好きだ。相手にもよるが」
「敵と味方に別れているが、あなたと進む道が一瞬でも交差した、そのことを喜びたいと思う」
「その構え、新陰流・無刀取りか――」
『主ある限り、我らの魂尽きることなし』
―――烈火の将、シグナム
「あら、みつかった。けど、遅い」
女は術の行使中に少年に補足されたことに気づく。
だが、目的は果たした。すでに果たしていた。
◆ ◆ ◆
「こんばんわ」
「そうね。こんな日が、毎日、ずっと続いてくれるといいのにね――」
「解ってるわよ……もう私たちは止まれない」
「―――どきなさい!」
『この身に命ある限り、我らは御身のもとにあり』
―――湖の騎士、シャマル
砂浜に魔力の嵐が吹き荒れる。
輝く短剣を掲げる少女と、少女に向かって拳を伸ばす男がいた。
「Eins,(接続、)zwei,(解放、)RandVerschwinden(大斬撃)――――!」
「おおおおおおおおおおおおおおッ」
◆ ◆ ◆
「どうした?」
「………犬ではない。狼だ」
「他に方法がないのなら、それをするしかないのなら、それをするまでだ」
「この身は盾っ。貴様が無限に変身を続けるのなら、その尽くを受けつくして見せよう!」
『我らの主、夜天の王、八神はやての名のもとに』
―――盾の守護獣、ザフィーラ
―――全ての鍵となる少女と、不思議な少年
「みんなー、ごはんやよー」
少女がいうと、つい先日できた家族たちと、居候の少年の合わせて六人がテーブルにつく。
そろって手を合わせた。
◇ ◇ ◇
「私が、主……?」
「ふふーん、内緒」
「すまんなあ。ここでやめたら、王様じゃないんよ。王様だったら、折れたらあかんのよ」
「命を、頂戴」
「おかわりも、あるんよ」
―――夜天の主、八神はやて
「ハヤテのご飯は、とてもおいしいよ」
少年は少女に聞かれて、素直にそう応えた。
少女ははにかんだ。
◇ ◇ ◇
「ふーん、こういう仕組みなんだ」
「大丈夫、僕がついてるから。この世に何も恐ろしいものなんかないよ」
「―――ああ、貴女たちはそうなんだ。貴女たちがそうなんだ」
「それで、いいの?」
「これは余計なことをした僕のお詫び――違うな。これは、義務だ。先達として貴様らに示す、生涯に二度と見れぬ奇跡と心せよ」
―――???
交差する力と思惑―――
「何故なんだ提督!? 何故、そこまでして!」
―――執務官、クロノ・ハラオウン
「幾多の犠牲を払った! 数多の悲劇を踏み越えた! もはや我等は言葉では止められん!」
「というわけさ」
「クロスケ!」
―――提督、ギル・グレアム & 使い魔リーゼロッテとリーゼアリア
事態は混乱を極め―――
「駄目です! 今の一撃でアルカンシェルが破損を……」
「――仕方ありません、通常の魔導兵器を打ち込みなさい」
―――リンディ・ハラオウンとアースラクルー
そして、せんりつのよるがおとずれた
「……とおると思ったか」
黒い翼を広げ、顕われる。
「咎人たちに、裁きの光を」
光を掲げ、降臨する。
「蒐集行使―――接続、解放、大斬撃」
『魔法』にすらも届く―――。
「それは、永遠だ」
とこしえのやみ。
「私は、しあわせです」
―――???
☆ ☆ ☆
その手は誰も救えない。
奇跡は決して起こらない。
―――本当に?
☆ ☆ ☆
そんな悪夢をねじ伏せる理不尽こそ。
そんな現実をふみにじる不条理こそ。
☆ ☆ ☆
「はぁい、お待たせみんな!」
杖?を振り、かわいらしいポーズをつけて、彼女はやってくる。
「愛と正義の執行者!」
『キャー☆素敵ですマイマスター!』
「魔法少女、カレイドルビー の」
☆ ☆ ☆
「スターライト・ブレイカー!」
「プラズマザンバー!」
「ラグナロク――!」
☆ ☆ ☆
「――プリズムメイクが、はじまるわよ♪」
カレイドルビー ZERO A's 2010年公開
「せやけど、それはただの夢や」
――未定。
というわけで、投下終了。
カレイドルビーZEROは、無印になんかうっかりとルビーを持った中学生時代の凛が巻き込まれたら…という話で、これはその続きのA's編。
まあ、凛がかかわっただけというのも違う設定ですが、そこらはおいといて、続きなのでよりずれがひどいことになって、A's本編より壮絶なことになりばいいなあ的な妄想。
構想としてはStS編まで考えてはいますが、そこまでは多分書けないだろうなあ…。
とりあえずいろんなネタとかちりばめていますので、解る人にはそこらも含めて楽しんでいただければ幸いです。
なんとか来年に始められたらいいのですが…。
それでは、みなさま。
メリークリスマス。
???「シュハキマッセリ〜、シュハキマッセリ〜♪」
セイヴァー「……友よ、それは意味を理解した上で歌っているのか?
それ以前に今日が何の日か心得ているか?」
???「モチロン! サンタクロースがトナカイで初飛行した日だよ! って、どうしたの?」
セイヴァー「いや……勘違いをもって悟りに至ったそなたも心に神を宿している」
???「やだなあ、父さんの事なら忘れてないって。ところでさ、ずっとその格好と喋り方じゃ疲れない?
君がラスボスなんて珍しいよね」
セイヴァー「……これでも抑えた方だよ。
梵天さんが原作者に直談判したみたいだからね」
???「ああ、だから原作者がシナリオを書きなおしたのか……」
クリスマスプレゼントありがとおおおGJ!
リリカルなのはA'sの前身、リリカルなのはZ(仮称)はもっとダークな話だったそうな
凛の存在が物語にどう影響するのかねー
そのいつかを楽しみにしてます
理想郷の方も含めて
ザフィーラ△
ユー、ザフィーラ△ええ!
そしてカレイド、それは魔法少女の技やないっ
むしろ、サブミッションをつかいたまガ―――!!!??
>>234 見た目的にビーム出すなら額からですよねー
しまった。
青い肌とか書いてるが、青い服だ。
つか、肌が青いとか、ガミラスかい……。
ほかにも変な表現とかあるな。
あとで修正…は、別にいいか。
そもそも予告編なので、実際の投下するバージョンとはまた違うだろうしねw
どうして理想郷の方で書いてるのもばれたのかということについてはおいとくとして…。
念のために八極門の猛虎硬爬山について。
凛が使っているのはかなり適当。というか、この技についてはどうにもはっきりとしない。
以前に見た本では探馬掌、振り下ろしの掌の連撃で相手のガードを崩してから膝をあげてフェイント、さらに踏み込んでの掌というものだった。
ただし、この流れはちょっとイメージに合わないのでぐぐって各派の猛虎硬爬山を比較しているサイトがあったので、そこを参考にしてでっちあげたのでした。
実際に本編を書くことがあるかどうかは微妙ですが、まあ気長にお待ちください。
その前にカレイドルビーZERO StSの予告編が投下されるかもしれんけど…。
では、今度こそ。
乙
文体や行間や趣向、使ってるネタでだいたい分かるな
八極拳はアキラとジョンスリーで知った俺
ジョンス・リーはそういえばゲーム八極拳をリアルに再現した八極拳使いと戦ってたなー。
Vividはいろんなストライクアーツの流派が出てきそうでそこら楽しみ。
なんか雷帝流とかあるみたいだけど。
ベルカの王は聖王、覇王ときたからみんな王がついてると思ってたんだが、予測が外れた。
型月で出てきた格闘技は八極拳以外は七夜の暗殺術?と葛木の蛇、あとはなんちゃって八極拳とスーパー合気道…は未登場か。
あとは秋葉の使いのも遠野に伝わる技だっけかね。
柳洞寺の古武術とか面白そうなんだが、使い手が戦ってるのが氷室の天地くらいだから、どんなかわからん。
軋間家も鬼に近い家だけが使える体術がある
紅摩が使ってるが、幼少期に見て覚えたのかな
あとは流派ナインライブズ、荒耶の戦場武術、フラガ式ボクシング、シエルの埋葬機関体術、百ハサンの幻の古武術、小人ハサンの歩法、シオンのコピー格闘、エーデルフェルトのプロレス、エミヤの現代格闘、青子のパクり武術、ランサー他の喧嘩殺法
ついでにセガール璃正、コルキス神拳、バビロン皇拳、オイリーのサーヴァント
式は御家仕込みの剣術と古武術とか
電磁発剄みたいなのでヤンキーふっ飛ばしてた
>>242 最後の三つはetaFスレあたりから出てきたんじゃあるまいなw
両儀家とか忘れてたな。そういうSS書いてたのに。
なのは世界には、御神流があるんだろうなあ…。
ViVidでは戦闘スタイルもそうだけど(抜刀術天瞳流とか)、古代ベルカ式のようなマイナー術式が増えてるね
件の雷帝ちゃんならダールグリュン、他にもエレミアン・クラッツとか
今丁度、徒手空拳で武器を持った相手と戦うことの怖さや不利さを学んでるけど
…言われてみればそうだと気づいた冬の夜
test
待たせたなメリー!! ……すいません、調子に乗りました。
Fate/EXTRA 白い魔導師、二話目を今日か明日には投稿したいと思います。
ああ、そういえばそんなSSもあったなあ……と思っている方が大半でしょうが、何卒よろしくお願いします。
PS:ここまで更新が遅れたのは、全国のみんなとモンスターをハンティング……ではなく、
(多分)ハサン先生の子孫になって、ルネサンス期のローマを駆け巡っていたのが理由の大半だったり。
マイナーですよね、このゲーム。
その投稿、貰い受ける
むしろ調子に乗ってどんどん投下(ry
楽しみにしとりますよ!よ!
俺は某有名TRPGでウィッチなのはさんとナイトセイバーに頑張ってもらってる
>>247 あの赤セイバーはかなり可愛かった
楽しみにまってます
そろそろというかあふとちょっとで今年も終わり…。
いろんな作品が更新されていたが、ここ最近なかった作品もあるな。
自分としてはLyrical Nightの続きが気になる。
避難所に投下があったから、代理いくよー。
#1
ちらちらと肩ごしに後ろを振り返るアリシアの手を引いて走りながら、
フィアッセはまいったなぁと呟いた
「ホテルと反対方向に逃げちゃった、どうしよう?」
ボディーガードやソングスクールのスタッフの居るホテルに逃げ込んでしまえば
こっちのものだという目算があったらしい
今から引き返すのは危険な気がするし、士郎も心配だ
さてどうするか―――
むぅと唸った彼女の前に一台のワゴン車が道をふさぐようにして止まった、
その扉が開くかどうかという間に目を走らせた先にある路地に飛び込む
肩越しに振り返ったワゴン車から降りてきた人影の手の甲に刺青があるのに気がついて
フィアッセは顔を曇らせた
アレが本物なら今度の人達が持ってるのは拳銃だろう、
コレで少なくてもさっきの人達が“偽者”どころか悪い人だというのが
はっきりした訳である
「アリシア!」
「えっ、え?!」
戸惑うアリシアの手を引いた瞬間、乾いた音と共に地面で何かが弾けた
驚いたアリシアが足を止めるのを強引に走らせる
警告無しに発砲してきたが当てるつもりは無いようだ
こちらが恐怖に負けて足を止めるのが目的、といったところだろうか?
路地から通りへ出ようと更に足を速める、曲がろうとした目の前を銃弾が通り過ぎたが、
逆に行くのは不味いという勘に従ってそのまま駆け抜ける
その途中―――
「しまった、携帯―――」
銃弾に驚いた瞬間か、それともアリシアを引き寄せたときか……
手にしていたはずの携帯電話をいつの間にか落としたようだ
さて、どうしよう……
“切り札”を失ったことに気が付き、焦りを顔に浮かびかけた所で、
観光客らしいオレンジ色の髪の少女とすれ違った
「そのまままっすぐ、川の方へ」
「え―――っ、うん!」
すれ違いざまの少女の指示に、フィアッセは一瞬戸惑い、
ついでそれに気づくと心強そうに頷いた
そろそろ自分もアリシアも限界である、
でももう一息だと言い聞かせ、懸命に走る
「さっきの人……」
肩で息をしながらちらちらとアリシアが後ろを振り返る
その手を引いて走りながら、自分も肩で息をしながらフィアッセは大丈夫だよと
笑みを浮かべて答えた
#2
車で深山町側から市内に入り、冬木大橋を通って新都に入る
「士郎の奴、家に居ないみたいね
何事も無ければいいけど……」
後部座席で携帯電話を切りながらそう言う凛に、ティアナは嫌な予感が頭によぎった
こう言う時のこう言う発言はいわゆるドラマのお約束である
「心配はいいけど、その歳で携帯電話の操作にまごつくのはどうかな?」
ハンドルを握る女性が苦笑しつつ凛にあきれた声を上げる
その片耳には携帯電話に繋がったイヤホンがつけられており、
運転しながら片手間で何処かに連絡を取っていた
その顔が一度、呆れの混じった苦笑を浮かべた後、
一転して緊張したものに変わった
「どうしました?」
助手席のフェイトが声をかけるのを手で制する
どうやら先方に何かあったらしい
「先に街に入っている部下の報告でね
フィアッセと連絡が取れないそうだ」
土手沿いの路肩に車を止めながらの女性の言葉にフェイトが眉を寄せる
ボディーガードの目を盗んでホテルを抜け出したらしい
ここ最近荒事に遭遇していないのと日本ということもあって気が緩んだのだろう
とは思うが、周りからすればたまったものではない
「とりあえず空から探してみます、
美沙斗さんとシャーリーは此処に、ティアナは凛と一緒にこのあたりの巡回頼める?」
「それがいいでしょうね、
多分何かあったらあの莫迦も首を突っ込んでるでしょうし」
騒ぎの一つもあれば手っ取り早く見つかるんじゃないといいながら車を降りる
不謹慎だが凛がそう言えるのもその人物を信頼しているからだろう
「あぁ、少しまってくれ」
イヤホンのある側の耳に手を当てながら、行こうとする凛とティアナを呼び止めた
どうも街中に居る部下から何か新たな連絡があったらしい
「赤毛の少年が男達と乱闘したあと何処かに走り去ったそうだ」
どうも直前にその少年がフィアッセらしき女性ともう一人を男たちから逃がしたらしい
部下にその男たちの拘束と身元の確認を指示しながらの美沙斗の言葉に凛は納得した
―――間違いなく士郎だ
「なら駅前に向かいましょ、多分どっちかと鉢合わせるはずよ」
女性も少年も大橋方面に向かって走り去ったとの報告に対しての
地元民の土地勘からの凛の提案に反対する理由は無い
おのおのに動き出し
飛び上がったフェイトが飛行魔法を使う不審な魔導師を発見、捕縛したのは
これからわずか数分後の出来事であった
#3
通りがかった路上で不審なワゴンを士郎が見かけたのは偶然だった
信号待ちや人待ちにしては不自然なところで停車している
路地に向けて後部座席のドアを開いていることからそちらに人が出て行ったようだが
―――これも、先ほどの黒服達と関係あるのだろうか?
だとすれば二人が心配である
警戒しながらワゴンに近づくと、
運転席の男は携帯で何処かに連絡を取るのに集中しているらしく
聞き耳を立てると小娘一人にいつまでかかっているなどといったやり取りが聞こえてきた
これは間違いないな―――
と士郎が右手に干将を投影しようとした瞬間だった
路地の方からオレンジ色の光の玉が一つ、ふらふらと漂ってきた
「―――?」
首を傾げた士郎の前で、その光に顔を運転席の男が顔を向けた直後、突然光弾が加速した
それまでのふらふらとした動きとは段違いの速度である、
気づいたときには助手席から運転席まで見事に貫通、破壊して、
運転席に居た男は路上に放り出されていた
「士郎!」
その光景に面食らいながら光の弾が来た路地の方を向くと、
見覚えのある黒髪の少女―――遠坂凛が現れた
「遠坂、倫敦で何があったか知らないけど
街中で派手に魔術をぶっ放すのはどうかと思うぞ?」
改めて確認するとワゴン車の助手席から運転席まで見事に貫通、
ドアやシートその他もろもろ見事に外に放り出され、ガラスも全損である
ここまでやるあたり相当ストレスが溜まっていたようである
「ちょっと、何でそうなるのよ?
さっきのは私じゃないわよ」
「そうなのか?
てっきり遠坂の宝石魔術かと思ったんだが」
あぁでもそうなるとワゴン車が原形留めてるのはおかしいのか?
と士郎は首をかしげた
「えぇそうね、ちょっと試してみましょうか?」
懐から宝石を取り出しながら口の端を吊り上げるのを見て、
士郎はあわてて彼女を引きとめた
「なにしてるんですか?」
呆れた様な声に顔を向けると見覚えの無い女の子が路地から顔を出した
「あぁ悪かったわね、
それで、対象は確保できたの?」
「えぇ、件の連中は全員拘束しました、
アリシア・テスタロッサの方はシャーリーさんが」
凛の知り合いであるらしい少女はテキパキと答えると手にしたカードを懐に収めた
何かのコスプレかと思うような服装だが、魔術礼装だろうか?
そう思う士郎の目の前でオレンジ色の魔力光が弾け、
少女の服装がありふれた洋服に変わる
どうやら彼女が先ほどの光弾の主のようだ
「ティアナ!!」
上からの声に少女が頭上を振り仰ぐ、
つられて振り仰ぐと、上空から金色の光が降りて来る所だった
地面に付いたところでそれが弾けると、中から男を抱えた女性が現れた
抱えられているのは士郎が先ほど逃した黒服である
金色の魔力で出来た輪で拘束されているようで意識は無いようだ
「なんでさ?」
それを脇に置いて、士郎は女性の顔に驚いて声を上げていた
髪形こそ違うが彼女の顔がアリシアに瓜二つだったからである
「時空管理局本局執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです
ご協力ありがとうございました」
あぁ―――そういう事か
男を降ろし、そう言って差し出した女性の手を握り返し、
その柔らかさにドギマギしながら士郎は幾つかのことに納得した
#4
翌日衛宮邸
「―――大体分かった、
それで、アリシアはどうなるんだ?」
凛から事情の説明を受け、士郎は指し当たって最も気になっている疑問を口にした
「独力での本国への帰還は本人の能力的に不可能な上に、
地球にはそもそもそんな技術はありませんよね
それに、もともと事故で流れ着いたようなものですから、
今回は緊急避難が適応されることになります」
Diaryと書かれた大学ノートに目を通し、
件のロストロギアの内いくつかは虚数空間内で損失、
そこで何らかの取引があったものと思われるが詳細不明などと書きながら、
ティアナがそれに答えた
アリシアから提出されたそのノートは十数冊に及び、
この街にたどり着いてから没するまでの間に彼女の母が書いたものだと言う
「戸籍は綺礼がでっち上げてるしね、問題は無いんじゃない?」
「でも一応手続きは必要なんだよな?」
同じノートを片手に魔術教会への報告書を書いていた凛が相槌を打つ
とはいえ士郎が言う通り、地球側がどうあれ管理局には役所としての立場がある、
通常特別な許可が無い限り管理外世界での居住は認められていない
「えぇ、でも本人の希望があればどうにかなる範囲ですし、
手続きの方もフェイトさんが―――」
言いかけて「アレ?」とティアナが首をかしげる
何か引っかかりを覚えたらしい
あの書類、あんなふうに処理してよかったかなと首をかしげるあたり
手続きに何か問題があったのかもしれない
「なにか職権乱用か? とかそんな疑問を感じるんだが……」
「良いんじゃない?
職権なんてどうせこういうときに乱用するためにあるんだし」
ティアナの様子に士郎が不安を覚えるが凛は軽く流した
「何か誤解を与えかねない言い回しですね……」
「いいのよ、別に誰にも迷惑はかからないんでしょ?」
結果として損をしたものは居ないので結果オーライということらしい
まぁいいか、と納得し、お茶の御代わりを注いだところで呼び鈴が鳴った
「っと、客か」
今日は来ないとは思うけど桜だったりするとまずいから、
ティアナの立場については適当に口裏を合わせといてくれと言いながら応対に出る
律儀に門前で待っているらしいことから桜ではないなと
軽い気持ちで門扉を開いた士郎は呆気にとられることになるが
それはまた別の話
というわけで代理投下終了。
投下乙でした。
あ、しまった。あとがきいれるの忘れてた。
名前: ko-j ◆ 98.80uUOME 2010/12/27(月) 09:46:55 ID:l2SJBghw
以上を持ちましてEX『There is it must be. 』終了です
アレが未解決、とかコレがやっつけだとかいろいろありますが
その辺は次回の講釈ということでご了承ください
というわけで本当にこれで代理投下終了。
改めて乙&すみませんでした。
主&代理投下乙
本編も待ってるぜ
アリシアとフェイトが同じ空間にいるだけで微笑ましい
冥土からプレシアさん呼んで来て欲しいね
拳銃レベルの武装じゃ魔導士が出張ってきたら問答無用で詰むかね
対物ライフル辺りだったらどうだろう
待たせたなメリー!! いや本当にお待たせしました、すいません。
今から『Fate/EXTRA 白い魔導師』第二話、投稿します。
泥濘の日常は燃え尽きた。
最も弱きものよ、剣を鍛えよ。
その命が育んだ、己の価値を示すために。
一回戦 開幕:残り128人
「う、んん……」
なんか頭が重い。目を開けると、真白な天井が見えた。
「知らない天井……じゃないね」
一人ツッコミをしながら起き上がると、ベットの周りを覆う白いカーテンの隙間から
机と棚に………何て言うんだっけ? 視力検査をする時に使う、穴の開いた丸の表みたいなやつ。
ともかくそれらの品がここは学校の保健室だということを示していた。
――いや違う。ここはあたしが知っている月海原学園の保健室じゃない。
ここが学校の保健室なのは間違いないけど、なんというか本物っぽくないというか……。
そもそもどうしてここにいるんだっけ?確か放課後にレオ達を見かけて、後を追ったらレオが壁の中に消えて――。
「あ、ようやく起きたんだ」
回想に耽っていると、ベッドの横に、突然に人影が現れた。
白いスカートとジャケット、ツインテールにした栗色の髪をした女の人。名前は確か……。
「ええと、アーチャー、さんだっけ?」
「うん、おはよう、マスター♪」
ニッコリと微笑んだ彼女を見て思い出した。変な人形に襲われて、絶体絶命だったあの時――。
「あの、あなたは一体……」
突然現れた女の人に質問をしようとした直後、背後でガラスが砕ける様な音が響き渡った。
振り向くとあの怪しげな人形が、あたしと人形を遮っていた光の壁を粉々に砕いていた。
「……レイジングハート」
『Attention.Strength of the defense has fallen due to the magic decrease.(警告。魔力低下の為、防御の強度が下がってます)』
「そう……それじゃ、手早く片付けないとね」
それを特に慌てた様子もなく、冷静に観察する白い服の人。っていうか、杖が喋ったーー!?
「下がってて」
「え……は、はいっ」
とりあえず言われたとおりに後ろへ下がると、自分の敵と認識したのか、人形が白い服の人へ対峙した。
人形は先ほどの様にローリングソバットの様な回し蹴りで飛びかかっていった。
「アクセル、シュート!」
それよりも一足早く、白い服の人が何かを叫び、周りに桜色の光弾が五つ浮かび、人形を迎え撃とうと飛び出して行った。
空中でつるべ撃ちにされて勢いを失ったのか、人形は女の人の前に着地し、槍の様に腕を勢いよく伸ばした。
次の瞬間、鈍い金属音が響いた。
音の正体はあたしを助けた光の壁が人形の刺突を止めていた。
まるで先ほどの焼き直しの様な光景に驚いていると、白い服の人は両手で強く杖の柄を握り、
「ハァッ!」
気合い一閃、という感じに杖で人形を殴り飛ばした。人形はたたらを踏んで後退する。
「ラスト!」
白い服の人が杖を人形に向け、その先に光弾が一つに集まっていく。
人形も流石に危険を感じたのか、防御の姿勢をとるけど……何故か、あたしにはそれが悪足掻きに見えた。
「クロスファイア、シュートッ!!」
光が集まり、一直線の光線となって人形へと奔る! そして――
「……ッ!?」
人形には最期の瞬間がどう映ったのだろう。
光線は人形のガードごと胴体を貫き、胸に大穴を開けた人形が音を立てて地面に転がった。
「すごい……」
思わず呟きが漏れた。あの人形だって恐らく人間では相手にならないぐらい強かったのだろう。
それを圧勝と言っていいぐらい一方的に倒すなんて。
「貴女は一体――ぁ痛ッ!」
彼女が何者なのか問い質そうしたとき、左手の甲に激痛が走った。
薬品をかけられた様な痛みはすぐ治まったが、じんわりと熱を持っていた。
「何、これ……?」
熱の引かない左手甲には、翼を広げた鳥の様な刺青が刻まれていた。
当然ながら、身に覚えがない。そもそもタトゥーなんて趣味じゃないし。
「令呪が刻まれたみたいだね」
「令…呪……?」
白い服の人はあたしの手に刻まれた刻印を見て厳かに頷いた。
何の事か聞きたかったけど、手の刺青――令呪――を中心に体が熱くなり、意識が遠のいて――――。
「って、所までは覚えてるけど……」
保健室のベッドの上で記憶を確かめる様に遡った。
「そこまで覚えてるなら問題ないよ、マスター」
白い服の人――アーチャーは安心させる様に笑みを浮かべた。
改めて見ても、一目で強烈な力がこちらへひしひしと伝わってくる。
あの人形との戦闘で人智を超えた存在だとは、薄々と気付いてるけど。
ただ、些細な事だろうけど、外見がちょっと……。
別に容姿に問題はない。むしろ整った顔立ちだし、ツインテールにした栗色の髪は羨ましい綺麗だし、
胸だって服の上から分かるぐらいに大きくて嫉妬しちゃう……ってそこはどうでも良くて。(ホントは良くないけど)
問題はアーチャーの服装の方。白いミニスカート、白いシャツの上にはこれまた白いジャケット。
それを赤いリボンで胸元を飾っているという白一色なわけだけど、全体的になんというか魔法少女のコスプレっぽい……。
手に持っている金属の杖もソレっぽいし。
「うん? どうかした?」
「え? いやいや何でもないです!」
黙っているあたしを不審に思ったのか、心配そうに聞いてきたアーチャーに考えていたことがバレない様に必死で否定した。
別に似合ってないわけじゃないし、ドレスコードは人それぞれだよね、うん!
「……まあいいや、じゃあ改めて自己紹介しようか」
「あ、はい。あたしの名前は鳴海 月(ゆえ)です。鳴海は海鳴の漢字を逆にして、ゆえは月と書く方です」
話題が逸れて好機とばかりに、あたしは自分の名前を名乗った。それにしても月と書いてユエなんて変わった読み方だよね。
「海鳴を反転させて鳴海、か。ユエ、というのもいい名前だね」
アーチャーは親しみをこめてあたしの名前を復唱した。でも、どこか懐かしそうなのは何でだろ?
「次は私の番だね。私はアーチャーのサーヴァント。アーチャーって呼んで。この子は私の相棒のレイジングハート」
『Hello,grand master.』
アーチャーと一緒に、金属の杖――レイジングハートが挨拶してくれた。うわあ、本当に杖が喋ってる……。
でもそれより……。
「アーチャーのサーヴァント?」
「うん、アーチャーのサーヴァント」
それは名前じゃなくて何かの役職名じゃないの?
私の名前は某です、とは答えずに、××社の課長です、とだけ答えてる様なものだと思うけど。
「マスター、聖杯戦争の事は覚えてる?」
あたしの疑問を察したのか、アーチャーが質問してきた。
「ええと、聖杯というと神の子の血を受けたとかいうヤツ?」
「そう、あらゆる願いを叶えると言われる聖遺物。それを取り合う魔術師(ウィザード)達の戦いが聖杯戦争だよ」
「……そもそもうぃざーど、って何?」
「――――――え?」
あ、なんか驚いてる。なんでそんな基礎的な事を知らないの? と言わんばかり。
「まさかそんな基礎的な事を忘れてるなんて……」
「あ、あははは、やっぱりそう思っていたんだ」
「笑い事じゃないよ。記憶に不備があったら、これからの戦いに差し支えがあるかもしれないからね」
苦笑するあたしに対し、アーチャーの顔は真剣そのもの。
そんな真面目に返されると、知らなかった事に罪悪感を感じるんだけど……。
「ふう……、いい機会だから、これからの事も含めて最初から説明するね」
魔術師(ウィザード)。
魔力(マナ)が枯れたこの世界で、自らの魂を、“存在の雛形”という形而上の概念をデータにした霊子へと変換し、
電脳世界へとアクセスして世界の理を捩じ曲げる『新しい魔術師』。
かいつまんで言えば、魂ごとネットの海に入れるハッカーってことらしい。
聖杯戦争は、このウィザード達が万能の願望機である聖杯の所有権を奪い合う、命を懸けた戦いとのこと。
「命を懸けるって……そこまでする様な事なの? 皆で聖杯を分けあえばいいのに」
「残念だけど聖杯の所有者になれるのは一人だけ。それに、命を懸けるのは定められたルールなんだ。悲しいけどね」
そういうアーチャーの顔は本当に悲しそうで、それ以上聞くのが躊躇われた。
ともかく、あたしはその聖杯戦争に巻き込まれてしまった、ということなのだろう。
「その左手の模様は令呪と言って、聖杯戦争のマスターの証であると同時に、
サーヴァントに三回だけ命令を強制させられる。でも全部使い切るとマスター権がなくなるから注意して」
「実質二回しか使えないってわけね……」
左手甲に宿った刺青は、よく見ると三画で描かれていた。一画で命令を一回ってところかな。
ああ、そう言えば……。
「あのさ、ウィザード達がすごいハッカーって事は、ここって……どこ?」
さっきからずっと気になっていた疑問を口にした。
見慣れているはずの保健室なのに、どうしても異質な空気を感じる。
それを言ったら、人形に襲われたあの空間も何なのだろう?
「そっか、ここが何なのかも忘れてるんだ……。
ここは霊子虚構世界。通称セラフと呼ばれる聖杯、ムーンセルが作り出した電脳空間だよ」
――――――はい?
「ここが……電脳空間?」
「うん。マスターもどんな事情にせよ、聖杯戦争に参加したのなら、
このムーンセルにアクセスしたはずだけど……記憶にない?」
ここが……現実ではない、作り物の世界。
だから、かな。あの時、生徒会長の一成が可笑しかったのも。今この保健室に異質感を感じるのも。
「次に私は何者か、という説明だね」
「あ、はい」
際限のない思考ループを断ち切って、思わず背筋を正してアーチャーに返事をする。
それにしても、こうやってアーチャーが説明しているのはよく似合っている。
「サーヴァントというのは、ウィザード達と一緒に戦う英霊のこと。
英霊というのは生前の行いによって後世の人達にも信仰される存在のことだけど、
ここまでは分かる?」
「あ、うん。学問の神様として拝められている菅原道真とか、そういうやつ?」
とっさに思いついた例が正解だったのか、アーチャーは満足そうに頷いた。
「そう、他にも三国志で有名な関羽、ギリシャ神話のアスクレピオスとかが有名だね。
そういった過去の英雄を、聖杯戦争では七つのクラスに分けるの。
セイバー。
アーチャー。
ランサー。
ライダー。
キャスター。
アサシン。
バーサーカー。
私の場合は遠距離攻撃が得意だったから、アーチャーのクラスに振り分けられたんだ。
キャスターも該当するけど、陣地を張ったり、道具を作ったりするのは得意じゃないしね」
そう言って恥ずかしそうに告白するけど、確かにアーチャーが物を作るのは似合わないかな。
どっちかと言うと物を使う方。例えば大砲の試作機とか、ってあたしはなにを考えているんだ。
「あ、ちょっと待って。サーヴァントがみんな過去の英雄ってことは、アーチャーも何かの英雄ってこと?」
服装は……まあこの際おいておくとして、あの人形を軽々倒したアーチャーも歴史に残るような英雄なのかもしれない。
と言っても、杖からビームを出すような英雄って心当たりはないんだけど。
そんなあたしの思惑を余所に、何故かアーチャーは少し考え込む様な顔をした後、重々しく口を開いた。
「ごめん、今はまだ話せないんだ」
「む、それはあたしが信用できないってこと?」
「人として信用できないってわけじゃないよ。ただ、聖杯戦争において真名の開示は重要になる。
どんな英霊か分かれば、戦法や弱点が調べられるからね」
確かに……英霊が過去の人物だというなら、文献などを調べれば簡単にその人の事を調べられるだろう。
「う〜ん、でもさ。あたしペラペラ言い触らす様な真似はしないよ?」
「本人にその気がなくても口を割らす方法はいくらでもあるよ。
そうでなくても、情報を盗み取られることもあるしね」
そう言われると何も言い返せないな。自分がウィザードということにも実感が湧かないし。
まあアーチャーは今は、と言っているだけだからいつかは話してくれるでしょ。
「最後に……」
アーチャーは一旦言葉を切ると、背筋を正し、警察の様な敬礼のポーズで宣言した。
「誓いはここに。これより私は貴女の盾となり、貴女を支える翼となる。
これからよろしくね、マスター」
そう言ってニコリと微笑んだ。
まだ聖杯戦争の意味も、自分の記憶さえあやふやだ。
それでも――
「うん、これからよろしくね。アーチャー」
せめて、この笑顔だけは裏切らないようにしよう。
『Master,the person comes here.』(こちらへ人が向かってます)
突然、今まで沈黙していたレイジングハートがアーチャーに声をかけた。
「ありがと、レイジングハート。それじゃ、私は霊体化して消えてるね」
「霊体化? 何それ?」
「サーヴァントは基本、姿を消して行動するの。これも敵サーヴァントに対する防諜対策の一環だよ」
そう言うと、アーチャーの姿が消えた。思わずアーチャーのいた場所に手を伸ばしても、そこには空気しかない。
「心配しなくても、私はここにいるよ」
「本当に消えてるんだ……」
茫然とつぶやきながらベッドから出ると、保健室の扉が開かれ、人が入って来た。
入ってきたのは、保健委員であり、間桐慎二の妹の桜だった。
青みがかった長い髪に、赤いリボンでアクセントを加え、
月海原の制服の上に白衣を羽織ったかわいい子。
「あ、桜。おはよう」
とりあえず朝の挨拶をすると、桜は平坦な声であたしに告げた。
「聖杯戦争本戦に出場、おめでとうございます。
私は皆様の体調を管理するNPC、間桐桜と言います」
「――ああ。そうなんだ」
覚悟はしていたけど、今まで友達と思っていた本人からはっきり言われると、
改めてここが戦いの為に整えられただけの舞台だと意識してしまう。
「予選で一度、記憶を失った状態で四日間を過ごしてもらい、その間に自分の役割を思い出していただく。
それが聖杯戦争の予選でした。セラフへ入った時の記憶は返還したのでご確認下さい」
「え……ちょっと待って。あたし、自分の名前以外、思い出せてないけど」
頑張って記憶を掘り起こそうとするけど、予選での学校生活と自分の名前以外まったく出てこない。
予選での生活が仮初のものだと理解は出来た。でも他は全てまっさらだ。
「そう言われましても私には何とも。私は運営用のNPCですので」
ぴしゃりと言い切られてしまった。う〜ん、それなら別の人に聞くしかないかな?
「これを渡しておきますね」
そう言って手渡されたのは、ちょうど携帯電話と同じくらいのサイズの端末だった。
ボタンが見当たらず、タッチパネルの画面のみということはスマートフォン?
「運営側から指示がある場合はその携帯端末に連絡が入るのでご確認下さい。
また、それはマイルームの鍵も兼ねているのでなくさないようにして下さい。
他に何か質問事項がありましたら、NPCの統括の言峰神父にお聞き下さい」
それだけ言うと、自分の役割は終わったといわんばかりに、
こちらに背を向けて椅子に座ってしまった。
「分かった。ありがとね、桜」
とりあえずお礼を言って保健室を後にする。
いろいろと聞きたい事があるし、まずはその言峰神父を探さないと……。
これが、あたしの生涯そのものとも言える、聖杯戦争の始まりだった。
投下終了です。どうにか年内に投下できました。
今回は只の説明会ですね。しかも未だにアリーナへ潜れてない……。
Fate/EXTRAをプレイ済みの方には今更な説明かもしれませんが、
未プレイの人の為にどうしてもやっておきたかったのです。
あとウィザードの説明は完全に筆者の独自解釈です。間違ってたらごめんなさい。
最後に、次のスレで以前いただいた質問に答えていきます。それでは皆さん、来年もよい御年を!!
投下乙! そしてGJ!
しかし英霊なのはさんなんか、どういう対応とられるというのかw
まあパートナーの方の英霊に知識があるだろうけど
Q.なのは以外にリリカルキャラは出る?
A.出ません。言うならFate/EXTRAのなのはルートなので、
なのはさん以外に出番はないです。
Q.やっぱりステータスオールEから?
A.はい。そのお陰で使える魔法もかなり限定されてます。今のところ、
アタック→アクセルシューター
ブレイク→クロスファイアシュート
ガード →プロテクション
というカンジになっています。
Q.アーチャーみたいな過去だった?
A.……ノーコメントで。とりあえず本人は後悔してないみたいですよ。
まとめwikiへの登録を完了しました。
序盤はディバインバスター無しですか
これはきつい
ティアナからパクった技に頼らざるを得ないとは
しかしつくづくこの人キャスターじゃなくアーチャーで招聘される率高いなぁ
Ko-j氏、投下乙!代理人乙!
えーと、つまり、どういうアレだってばよ
アリシア……本編とどう関係するんだ
>>274 投下乙!
基本攻撃にシューター使えるとか魔法少女ハンパないな
駄狐はほぼ筋力依存のパンチだというに
しかし、このアーチャー、主人公のサーヴァントらしく何か欺瞞があるのだろうか
月と書いてユエと読ませますか。 ライトじゃなくて良かった。
しかし今気付いたけれどエクストラ設定はオリ主を不自然なく出せる最高の舞台かも知れない
…クロスファイアは一応ティアナの主砲だった気がするぜ!
GJ!
これを期に興味を持ってくれる人がいれば嬉しいですね
大まかなストーリーはそのままなのかな
期待と妄想が膨らみます
まとめの方に現状のステータスとか載っけてみるのもゲームチックで面白いかも
しかし年末投下ラッシュうめぇ
まだリリブラ氏も控えてるし
去年はあれほど閑散としていたというに
>>274 投下乙
確かに、なのはさんが細々した道具作ってる図は想像つかない
どちらかといえば道具破壊(ry
劇場版のコメンタリでスバル達にBlu-rayについて語っていたりする
>>245 天瞳流ってなんだろうとか思ってたら、今月のVividか。
日本からの移民みたいなのがいるから古流風なのもあると思ってたが、まさかずばりくるとは思わなかったw
中国拳法風とか古武術風の魔導な武術とか、なんという厨二。
もっとやってくれって感じだ。
どんだけ地球の文化が浸透してんだよw
FやVを主軸に置いたものはまだ少ないですね
やはり完結していないから扱いにくいのかな
>>264 待ってましたメリー!
取りあえず貴方がTMエースのブロッサム先生を聞いたであろう事はよく分かったw
この地球の文化の浸透度から考えたら、ミッドチルダに魔術師の五人や十人はいてもおかしくないな。
文化の流入ならその逆もありうるな
またはものすごーく信じられないほど偶然にも似通った文化が発展したとか。SF的に考えて
ヴィヴィオは攻撃も防御も絶対値が高くなく全体的にパワー不足らしい。聖王の鎧もSLBで消滅
学者向きで、戦うとしても中後衛。ズバリ格闘技に向かない
なのはさんが持つ空間把握能力と言う名の謎の防御スキル、と似たようなものを有するところが美点
「Fate/EXTRA 白い魔導師」のことで、ちょっと言いたい事が。
序章の次が第2話、ておかしくない?
>>287 そんなでよくも覇王に勝てたな、聖王。
むしろ聖王の鎧が凄すぎるのか。
高速技能習得とかもあったっけ。
クローンとはいえヴィヴィオとオリヴィエじゃモノが違うんじゃないの?
星間戦争レベルの戦乱において無敵の英雄をなのは一人で押さえつけるのは流石に無理があるし
>>288 ご指摘を受け、wikiに登録した方を修正しました。
以前投稿した『第二話』の題名を、『第一話:一回戦開幕』にして改めて登録しました。
今後、この様な事がないよう注意します。ご指摘、ありがとうございました。
円卓よろしく強い側近がいたんじゃない?
あるいはオリヴィエ以外の王族とか
覇権を得たくらいだから、敵を仲間にする友情パワーもあったはず
きっと、最初の頃は目立ってなかったのに、いきなりガチ格上を倒してダークホースと思ったらあれよあれよと
なのは/EXTRAは、通常攻撃がクロスファイアや誘導弾ってチートなんだから、強敵ばかりでよさそう
ドレイク→呂布(アンチコードなし)→クーフーリン(アンチコードなし)→ガウェイン→イスカンダル→ディルムッド→青髭(アリーナいっぱいの触手)
>>287 あんだけ体術に優れてるのに向かないとは…
魔道師は近接こそ必殺技が必要なのか
それとも、鎧が生かせるのは遠距離ということなのか
とりあえず触手が鬼門だな。
魔法少女的に。
概念が英霊を左右する世界だと、触手はこと魔法少女に対して相克する。
魔法少女は常識に対する天敵だが、触手は魔法少女にとっては死神なのだから。
お前は何を言ってるんだ
ベルカの騎士ですら触手の牙にかかることはあり得る
対触手はマスターの役割といえよう
って冗談は置いても、迷路上の破壊不可空間と瞬間回復・増大する大海魔の相性は異常
SLBもエクスカリバーも怖くない
魔法少女と触手……まあエロゲ世界なら天敵ですけど、ここは一応全年齢向けのスレですから。
A’sで触手に絡めとられたシグナムだって救助の手が……手遅れだったらどうなっていたんだろう。
指摘どうもです。
もう少しなのはサイドの展開が続くので怒る方もいるでしょうがご容赦下さい。
力関係は本編と変えておらず、両世界間はほぼ互角の設定です。
互いに脅威となる部分があって、本編ではなのは達から見た神秘の底知れなさを強調しており
本作では地球から見た管理局のデカさを強調した結果です。
ただ今回は明確な力関係を描いたつもりはありません。
Vividのようなスポーツのノリでの結果なので、真剣勝負における明確な勝敗とはほど遠いかと。
原作でも模擬戦でティアナがなのはに勝っていますし。
教導参加者はこのイベントで局に協力するために生徒役を買っている人ばかりです。
なので師範を叩きのめして看板に泥を塗ってやろうと考えている人はいません。
互いの技術を学び、盗み合う交流の場と取って貰えば宜しいかと。
・第七で相打ちを狙おうとして咄嗟に防御に切り替えたシエル
・テンションの上がらない教会陣、乗り気じゃない式とアルク
・ランサーズが手負いのシグナムに手心を加えた
ここらで読み取ってくれれば。
なのはと凛がガチなのは、特に引けない間柄だからです。
本当なら年越し前には旅行を終えている筈だったんですが
ちょっと体調を崩してしまい、大幅に遅れてしまいました。
しかも今回も小出しです。 二日目後編と、祭本編で分けます。
三が日までに二日目終了………できればいいなぁ。
では旅行二日目の続き、投下します。
まあ気にせず投下すればいいさとしえん。
CHAPTER 2-4 ―――
「セイバーさん! 食中毒というのは本当ですか!?」
場所は翠屋。
高町士郎が体調不良で倒れたというセイバーに詰め寄った。
士郎の顔色は真っ青だ。 食に携わるものとして、これは死活問題に他ならない。
「面目ない……不覚を取りました」
「まさかうちの生菓子が……」
「この剣に誓ってそれだけはありません。 私とて騎士の端くれ……
自身を討ち果たした者を見誤るほど愚かではない」
何が直撃したのか、おおよその見当はついている。
そもそもあれは食中毒などと生易しいものではない。
毒殺だ……内蔵を抉り取られたような感触が今でも残っている。
「そうですか……美由希。 念のため厨房のチェックを」
とはいえ台所を預かる身としては、お得意さんの言葉だけで安堵できるわけもない。
娘に厨房確認の指示を出す士郎である。
「今日はお客さん少ないですねぇ」
ショートケーキの苺を頬張りながら周りを見回すリィンフォース・ツヴァイ。
だが小人のデバイスの見立ては少し間違っている。
決して少なくは無い。 あくまで昨日に比べての話である。
今も稼働率80%前後をキープしている翠屋出張店。
桃子さんのスイーツの腕が人外含めた客の舌を虜にし、店は連日大盛況だ。
「2日目は温泉街に夜店が出ますからね。
シスターシエルがこれだけは外せないと言って飛んでいきましたよ。 シャッハも一緒です」
「ライバル登場かぁ……翠屋も今日が正念場やね」
昼間の設営状況を見るに相当、大掛かりなものになるだろう。
栗のモンブランを突付きながらのカリムグラシアと八神はやて。
どこかから聞こえてくる祭囃子の音が実に心地よい。
だが、それにしても………である。
右を見ても―――
「まあまあだな。 洋菓子だけなら帰ろうかと思ったけど」
「またそういう事を言う……美味しいなら美味しいって素直に言えばいいのに」
「うるさい! 言っとくけど、これで今朝の事を許したわけじゃないからな」
左を見ても―――
「ほら、鼻の頭にクリームついてるぞ……」
「それは大変♪ 取って! ねえ舐め取って!」
「なな、何バカな事言ってんだこのバカ吸血鬼!」
支援、無欠にして盤石
後ろを見ても―――
「セイバー……お腹壊してるんだからあまり無理するなよ」
「何の。 モモコの甘味処は別腹です」
……………
「つくづく色気の欠片も無いな……私達」
深い溜息をつく部隊長であった。
局きっての美女揃いと名高い機動6課は、言うまでもなく年頃の健全な若者の集まりだ。
あまりに風紀が乱れるのは困るが、しかし色事率0%というのも、いくら何でもおかしく無いか?
なのはやフェイトなど、その気になれば引く手数多だろうに……少し勿体無い気もする。
「それはマスターも同じですぅ! ね、アインス!」
「はい。 殿方との情事に関してはよく分かりませんが
少なくとも私がお慕いするのは主のみ」
「ふふ、これはな、二人とも……ライクとラブの違いや。
今度、詳しく教えたるからなー」
「「?」」
温かい朗らかな笑顔を見せる主。
今、教えて下さいです〜、とはしゃぎ回る小さな末っ子。
銀髪の融合機はその光景をただ幸せの中で眺めている。
自分を救ってくれた最愛の主と、妹にして本来ならば絶対に会う事のないであろう―――
「…………」
――――と、思いかけて、アインスはそれ以上の思考をカットする。
それより先に進んではいけない。 進めば全てが台無しになってしまう。
せめてこの三日間だけは 「事実」 を忘れよう。
「事実」 を考え、口に出した時点でこの幸せは泡沫の如く散ってしまうだろうから。
「主はやて……」
「ん? どしたん? リィン」
本当に迂闊な自分。 迂闊でバカで、臆病な自分。
そんな自分がいつ夢から覚めるかも分からない。
ならば覚める前に、いつ別れが来ても良いように―――主にこの言葉を送っておこう。
「……ポルカミゼーリア」
「んー? 何? どういう意味?」
「ふふ……何でもないです」
主従の絆は永遠に――――主と彼女に永遠に幸あれ。
後方―――ぶほっ(笑)、という紅茶を噴き出す声。
諸共に肩を震わせるシスターの姿が。
閉口モノのランサーとギルガメッシュ少年が深く項垂れる。
どうせ、またしょうもない企みが成就されたのだろう。
この女は本当に地獄に堕ちれば良いのに……
閑話休題―――幸せの形は人それぞれだ。
誰も不幸になっていないのなら、それは平和な日常なのだろうと切に思うものである。
――――――
「繁盛しているようですね」
「あ、シスターシャッハ」
夜店の並ぶ温泉街を歩くシャッハが、売り子の女の子に声をかけた。
屋台ハチマキにハッピを羽織り、それに……何というか……
「ず、随分と寒そうな格好ですが平気なんですか?」
「ドクターの指示です。 まあ私らこの通り、ちょっとくらいの暑さ寒さはへっちゃらなので」
「ふう……あー疲れましたわぁ♪」
話し込むシスターとナンバーズの少女。
その後方、「毒舌占い館」 と銘打たれたテントから4女クアットロが姿を現す。
毒々しいマントを羽織り、その下に覗くは……その、何というか……
「信じられねえ……大盛況じゃねえか、クア姉!」
「わざわざお金払ってまでクア姉のイヤミを聞きたいだなんて、どこの物好きッスか?」
「ふふん! メガネ属性にヤンデレが今の時代の流行ですものぉ。
やっと時代が私に追いついたというか♪」
「………単に性格が悪いだけだと思うけど」
わいわいと楽しそうな少女たち。 どこにでもいる姉妹の姿だ。
皆、働いてモノを作り、売って、それにやりがいを感じている。
戦闘機人などという悲しい宿命を背負って生まれなければ、今頃は―――
「あーら? これは教会の……我らの監視に来たんですかぁ? ご苦労サマです♪」
「妹が世話になっている、などと礼は言わんぞ」
姉妹の3女と4女がシャッハに剣呑な視線を向ける。
スカリエッティの因子を色濃く受ける彼女達は未だ更生の意思を示しておらず
本来ならこうして外に出す事も出来ない者たちだ。
恭順を示した妹達が、シャッハと姉2人の間に漂う不穏な空気を感じ、心配そうに伺っている。
久しぶりに姉妹で全員集合できた。 本当に楽しい祭なのだ。
少しでも長い時間……出来ることなら明日も明後日もこうやって一緒にいたいと願うほどに―――
「貴女達も局に更生の意を示してくれれば、こんな特別措置に頼るまでも無い。
毎日、姉妹で一緒にいられるのですよ?」
「全員集合などしてはいないがな……ドゥーエが欠けている」
もはや一生、戻らぬであろう姉の名を口にするトーレ。
「飴と鞭…………神にべったりとご奉仕する身分の人は本当
他人の心を篭絡させるのがお上手ですねぇ♪」
「だが無駄だ。 我ら初期型ナンバーズの心は博士と共に在る。 引き離されれば死を選ぶ」
「そうですか………残念です」
深い溜息をつくシスター。 この忠義心は確かに見事だ。
未だ狂気の科学者から彼女達を引き離す算段はついていない。
「何を見ている貴様ら。 焼きそばが切れた……呆けていないで調達して来い」
「ウ、ウィーッス! トーレ姉!」
「チンクはどうした? 見当たらんが」
「さっき、謎の虎に拉致られていった……」
だが本当に仲の良い、心の通じ合った姉妹だ。
この子達を出来ればずっと一緒に居させてやりたいと願うのは自分だけではないはず。
それは教会で預かっているセインも常から願っている事だけに、何とかしてやりたい―――
「………ん? あれ? シスターシエル?」
それはそうと―――
たった今、同伴していた代行者の姿が消えていることに気づくシャッハであった。
――――――
「……というわけで気紛れに技術提供をしてやったのさ。
すると見る見るうちに私の知識を吸収してしまってねぇ。
彼女は実に良い。 狂気と欲望を絶妙のバランスで遊ばせているところが実に好ましい」
「はん……つくづく慰みモノから色モノへと華麗なジョブチェンジを遂げたもんだな、あいつも」
賑やかな喧騒から少し離れた丘で、怪しげな白衣2人が夜店を見下ろすように立つ。
「ところで笑っている暇があるのかい? 蛇の君。
自慢の同士はどうやら、かなり押されているようだが」
「ぐ、ぐぬぬ……」
ロアが憎々しげに見つめる先。 居を構えるはスカリエッティの最高傑作ナンバーズ。
一致団結して屋台に励む彼女達。 出店群の名は「夜店☆ナンバーズ」である。
華やかな少女達が紡ぎ出す魅惑の露店。
何といっても特筆すべきはその、華やかを通り越した艶かしい衣装だろう。
全員、際どいVライン、Tバックを惜しげもなく晒したフリル付きのレオタードだ。
はっきり言おう。 性欲を持て余す。
冬の高山でこの格好はあらゆる意味で狂気の沙汰で、夏祭りと勘違いしてるとしか思えない。
だが女性から見ても可愛らしい衣装に身を包んでの接客だ。
街道が沸き立っているのは無理からぬ事だろう。
「どいつもこいつも安易な萌えに走りやがって……」
「欲望に溺れる者は欲望を知り尽くしているのものさ。
故に他人の欲望を刺激し、遊ばせる事など造作も無い」
勝ち誇る博士。 もっとも彼はファッションには疎い。
あの衣装は通りすがりの芸術家とやらにコーディネイトをしてもらったものだ。
「絶対皇帝たる余が、何とも難儀な業を背負わされたものよな……トホホ」
などと漏らしていたが興味は無い。
煩悩の数だけ他人に親切を施さないと酷い罰ゲームがあるとか何とか……まあ、どうでもよい。
皇帝だの芸術の使徒だと抜かしていた、その大口に見合う仕事をしてくれた事実だけが重要だ。
「言わせておけば………こちとら人生、幾度となく繰り返してきたんだよ!
人間なんてとっくの昔に極めてんだよ俺は! おい貴様ら、もっと気合を入れろっ!」
ロアの怒声が飛ぶ。
臨時招聘で掻き集めた栄えある死徒二十七祖(予備軍含め)。
彼らの営む「ミッドナイト27」の、ここが正念場であろう。
「だああっ! 何でアルトルージュがたこ焼き焼いてんだよっ!
どんだけミスキャストだよ! てか片っ端から食ってんじゃねえかよ、犬がよぉ!!」
「おい腑海林! お化け屋敷って何だよ今更過ぎるだろっ!
もはや、この温泉街で化け物なんか珍しくないっつうの!」
「スミレは酔っ払ってないでそろそろ本気出せ!
陸に上がれば無敵なんだろうが! とっとと客引きでもしてきやがれ!!」
「蛇よ―――そう安っぽく、がなり立てては到底、真理には届かぬぞ」
「旦那……落ち着き払っているが、何か策でもあるのか?」
「無論―――劣勢は我が営む金魚すくいで挽回すべし。
ほらこの通り、全て子供に人気のデメキンです」
「そんなピラニアより獰猛な金魚いるかボケェェーーーーーッ!」
駄目だこいつら……客商売の何たるかを分かっていない。
このままではミッドナイト27は夜店☆ナンバーズにダブルスコアで完敗する。
オルトが到着してさえいれば、巨大テーマパーク・水星ランドの開園に漕ぎ着けられたのだが
奴は今朝方、秋葉に蹴り返されて軌道を外れた。 次にまみえるのは何時になるか……
「まずい……まずいぞ」
ギリギリと犬歯を噛み鳴らし、自身の経営する夜店を巡回するロア。
死徒のプライドにかけて余所者に完敗などという不名誉は許されない。
焦燥に駆られる吸血鬼が、街道の奥に差し掛かった。
その一角にて―――
「……………おい」
彼は何とも言えない乾いた声を漏らした。
「……………何やってんの? お前」
「はなひはへなひへ(話しかけないで!) はふ、はむ!」
そこが、かの27祖番外・カリードマルシェの経営する店であり―――
宿敵すら眼中になく、一心不乱に……いや、これ以上記さずとも
ロアがここで何を見たのか語るまでも無いだろう。
死徒の面子をギリギリ守った売り上げ。
そのほぼ全てが教会の代行者によるものであった事は……
双方にとって強烈な皮肉以外の何物でもない―――
――――――
幕間 祭を控えて ―――
皆、夜の祭に出張っているのか―――
浴室に彼女以外の人影は無い。
女性らしい流線型を描いた肢体がどざえもんのように浴槽に浮かんでいるのみ。
「………」
重い沈黙。 場に現した感情は複雑で、とても一言で表せない。
昨日にも増してコテンパンにやられた自分を嘲笑えば良いのか?
それとも自分をここまで虚仮にしてくれた相手に怨嗟の念でも抱けば良いのか?
こちらが宝石剣を解放するなら、自分も一手解放する―――
それが条件だった。
だがブラスターモードは双方の安全上の理由から当然、封印されている。
だからこそ凛は初め、彼女がエクシードによる高速機動を解放するのかと思っていた。
1も2も無く了承した。 そんな物を地上戦オンリーで解放してもさして意味は無いからだ。
昨日にも増して有利な状況でスタートを切れる、と思い立った凛。 その勘違いを……突かれた!
遠距離の間合いになり、盛大に打ち合おうと短剣を構えた凛に向けて飛来する―――ビット!
遠坂凛の体が強張った。 ブラスター無しでアレを制御出来る筈が無いからだ。
実際、それは何の役目も果たさず凛の横を通り過ぎただけ。
……フェイント!? やられた! そう気づいた時には手遅れ。
あとは固定砲台・高町なのは、その異名通りの力を見せ付けられただけだ。
圧倒的な火力に拮抗する事も出来ずに飲み込まれたのみ。
意識をトバされた自分には知る由もなかったが、聞いた話だと模擬戦終了時、なのはは肩で大きく息をしていたという。
数時間に渡る砲戦を繰り広げて汗もかかない女だ。 そのフェイントが相当、体に負担を強いていた事は間違いない。
彼女がそこまでして欲しかったのは速効。 回転率に勝る宝石剣に対して先手を取る事。
本気の雷撃戦に臨む際、ただ先手を取るためだけに、彼女はド初っ端から大量の魔力を消費したのだ。
大枚のはたき所を熟知しているからこそ、そんな博打を打てる。
基本を外さずセオリーに沿ってくるかと思えば、一瞬の後に大胆に大きく踏み込んでくる。
――― あれが高町なのはの本気と言うやつか ―――
そう、なのはと本気の勝負をしたのは今回が初めてだ。
そして勝機がほぼ無いのを承知で、敢えて真正面からぶつかってみた。
結果はご覧の通り。 その感想を一言で言うならば―――
「ガンダムだわ」
言い得て妙とはこの事か。
アレと真っ当に打ち合う事の愚を改めて思い知る。
速射砲と高射砲と誘導ミサイルと大砲を備えたモビルスーツに生身で打ち合うようなものだった。
あのセイバーが一目置き、あの士郎の隣に立つ事が出来る女―――
そんなモノが自分の他にいるとは思えなかった。
管理局との初めての邂逅で、白い翼をはためかせて飛ぶ彼女に会うまでは。
ルヴィアとも違う、恐らくは生涯のライバルとして相対する女との出会い。
安い嫉妬に駆られる凛ではない。 むしろその座を競うライバルの登場に大いに武者震いし、燃えたものだ。
彼女とはそれ以来の、本気でぶつかり、本音を言い合える間柄。
親友などと呼ぶのはこそばゆいが、戦友と呼べるほどには背中を預け合ったりもした。
だからこそ―――例え相手の土俵であっても3タテを食らうわけにはいかない。
正直、協会の面子なんてものは二の次だ。
戦友として競い、並び立つ者として恥ずかしくない力を示さねば、到底ライバルとは名乗れない。
しかし正攻法でぶつかって勝てる相手じゃない事はこの2日間ではっきりした。
さて、どうしたものか………
「ん……?」
思案に耽る魔術士。
その時、頭頂部にごつんと衝撃が走る。
浴槽の中央にて水面に浮かぶ女体が何かに突っかえた―――
――――――
皆、夜の祭に出張っているのか―――
浴室に彼女以外の人影は無い。
女性らしい流線型を描いた肢体が腐乱死体のように浴槽に浮かんでいるのみ。
「う〜……う〜……」
知らず漏れてしまう呻き。 それに合わせて水を掻く金毛の尻尾。
ご主人様の前で大恥をかかされた事による憤りは計り知れない。
いくら殴り合いは不得手だといってもアレはないだろう……
一方的に嵌め殺すか一撃で死ぬか―――自身のピーキーなスペックがひたすら恨めしい。
「まあ……正直、スペックとか以前にあれじゃ力が出ませんけど……」
そうだ。 マスターの制止の声を振り切って戦いに臨んだ自分が、どこの誰に勝てるというのか?
宝具を展開しようと何をしようと、主人が自分の勝利を望まなかった時点で負けるのは確定事項。
もし一言、彼女が 「頑張れ!」 と応援してくれたなら―――
この最弱のサーヴァントは雷鳴を切り裂き、敵を噛み千切る牙を届かせていたかも知れない。
「…………」
いや、この期に及んで勝ち負けはいい。
どうせこの身は数え切れないほどの負けを体験してきた。
どだい、今の自分が出来る事など限られているのだ。
本来の身から9等分されたモノのほとんどを使って、妖魔に堕ちた自分を抑え付け
主のために奉仕する、ただそれだけのサーヴァントとして現界している自分……
今のこの身は直死で細切れにされたと噂の真祖を遥かに下回る惰弱だ。
だがしかし、自分の状態がどうあろうと一つだけ認めなければいけない事がある。
――― あの人間は確かに強かったのだ ―――
異なる星から来た異訪者。
その力は確かにサーヴァントに届くものを持っていたのだ。
当然、母なる大地に住まう者のそれを大きく凌駕した力。
「案外、簡単に抜かれちゃうものなんですね……私達って」
神秘が不可侵だった頃の時代はもはや無く、神にとってヒトは地を這う赤子では無くなっていた。
確かにミッドチルダは異邦の地。 だがそこに住まう人間と、この地に育む人間が同じヒトだという事に代わり無い。
ならば、地球人も年を経て―――いつかはあの域に辿り着いてしまうのだろう。
ならばその時、人はサーヴァントの力を必要とするのだろうか?
神を崇める心は残っているのだろうか?
自分の奉仕を必要としてくれるのだろうか?
神様は人に憧れて恋をしました。
でも、ヒトは神様の存在をだんだんに忘れ、その手を離れていってしまう。
ヒトが自分を必要としなくなる―――それはとても寂しくて辛くて、悲しい………
「ん……?」
思案に耽るサーヴァント。
その時、頭頂部にごつんと衝撃が走る。
浴槽の中央にて水面に浮かぶ女体が何かに突っかえた―――
――――――
「「……………」」
はて? 浴槽の広さを鑑みれば、まだ壁に至るには早い筈だ?
湯船の中央でシンメトリーのように重なる女体と女体。
2つの体は反転するように体を起こし、正面に向き直り―――
「「あーーーーーーーーーーーーっ!??」」
行きのバスで会った品の無い面が目と鼻の先にある事を確認。
両者の渾身の絶叫が浴室に響き渡るのだった。
あかいあくまと白面の物、再び相見える。
――――――
「―――――ん?」
今、中の方で何か聞こえたような……
その耳が怪鳥音のような反響音を捕らえ、振り向く彼。
「逃げられた……逃げられた……許せない」
「コラ!」
「きゃんっ!?」
だが今はそれどころではなかった。
士郎の拳骨が間桐桜の頭にヒットし、可愛い悲鳴をあげてその場にうずくまる桜。
軽い折檻とはいえ、士郎が彼女に手を挙げるのは余程の事だ。
そして、向かいには困ったように佇むティアナ執務官補佐がいる。
「すまないなホントに……」
「いえ、シグナム副隊長も気にしていないと言ってますし
今後このような事の無いよう注意して下されば」
「ああ、十分に言っておくよ。 シグナムの所にも後で顔を出すから」
話題に上がっているのは間桐桜によるシグナム襲撃事件の事だ。
管理局員を闇討ちするなど本来ならば大問題になるところだが、お咎め無しと聞いて胸を撫で下ろす士郎である。
侘び代わりにあの戦闘マニアとスパーリングなどさせられそうだが、そのくらいはしょうがない。
「…………」
対して士郎を前にして、ティアナは少々緊張気味だった。
衛宮士郎―――彼女も何度か模擬戦で手を合わせた事がある。
彼の標準スペックは決して高くはない。 現にティアナも何度か勝っている。
だが、それでいて実際の任務において、なのはやフェイトを振り回すほどの獅子奮迅の活躍を見せる―――
そんな一部で有名な、嘱託局員一のイレギュラーこそが彼だった。
「私や、あの時の姉さんと同じ目に合わせてやったのに……
泣き叫んで命乞いするどころか反撃してくるなんて……
何で? 許せない……許せない!」
「コラ!」
「きゃんっ!?」
今度はちょっと強めに折檻する。 うずくまる桜。
「イタイです先輩……」
「イタイで済んで幸いだ。 局の武装隊……しかもヴォルケンリッターにちょっかいかけて
今まで無事に済んでる事自体が奇跡なんだぞ?」
一見、間桐桜に折檻しているだけのように見える彼だったが
話によっては彼女の咎を全部受け持つつもりだったのだろう。
数多の作戦に自発的に参加し、自虐レベルで危険な任務を請け負い
作戦が終わればいつだって一番の成果を出していて、そして一番傷ついている。
そんな噂の彼。 こうして見ると普通の青年にしか見えない。
ただ遠巻きから数度ほど見た光景がとても印象的で、どういう人物なのか興味があった。
「それにしても遅いな」
「あ……えっと、衛宮さんもですか?」
「何だティアナもか? ああ、連れがまだ中にいるんだ」
浴室へ続く出入り口に目をやる2人。
いつになく長風呂なのは昼の教導のダメージが尾を引いているのかも知れない。
「でも遠坂さんはやっぱり凄いです。 なのはさんにあそこまで突っかかっていけるなんて。
私なんか、なのはさんと向かい合うと、まだちょっと過去のトラウマが……」
「ああ、例のアレな」
「う……」
詳しく説明するまでも無いようだ。
一部で知れ渡ってしまっている自分の、高町なのはに対する反抗劇とその一部始終。
人呼んで 「ティアナ、ちょっと頭冷やそうか事件」……
思い出す度に顔から火が出るほど恥ずかしい、アレである。
「実際、仲が良いのか悪いのか判断に困る二人だよな。 横で見ててハラハラしっ放しだよ。
お互い、負けたくないって気持ちがあるのと同時、自分より優れた部分をちゃんと認めてもいるんだ」
上手い具合に話をそらしてくれて助かった。
あれを掘り下げられたら正直、たまらない。
こういう気遣いもまた彼の美徳なのだろうか?
高町なのはと遠坂凛。 局内でも圧倒的な存在感を誇る2人。
彼がその両者と密接な繋がりを持っている事は今の発言からも伺える。
「特に遠坂はなぁ……この二日間、ボコボコにされてるのを楽しんでる節すらあるよ。
同年代にあそこまで圧倒されるのって多分、初めてだろうしな。
でも、あいつはその上で―――最後は必ずマクりに行く奴だ」
明日はきっと、とんでもない事考えてるだろう。
お目付け役としては頭が痛い。
「なのはさんも明日が正念場、という事ですね?」
件の2人から全幅の信頼を寄せられている青年は苦笑する。
否……信頼というのはどうだろう。 ちょっと違うかもしれない。
彼の事を高町なのはに聞いた事がある。
するとなのはは深い溜息と共に……こう言ったのだ。
「ティアナ………一つだけ言っておくね…………………絶対に衛宮君を見習ったら駄目だよ?」
あの教導官がこう断言したのだ。 思わず、あんぐりと固まってしまった。
あの人にここまで言われる人物なんて未だかつていたか? そんな人、想像も出来ない。
とても興味は尽きないし、この機会に色々と親交を深めたかったのだが―――
「今日はもう話しこんでいる時間は無いようだな」
「はい、残念ですけど私もそろそろ行かないと。
もう……何やってるのよキャスターは」
そう、この後には二日目夜の最大の催しが控えている。
各々、その準備に取り掛からなければならない。
本来、こんなところで油を売っている時間すら無いのである。
名残惜しいが―――この風変わりな青年と交流を深めるのはまたの機会に取っておくとしよう。
――――――
「駄狐!」
「赤べこっ!」
湯を蹴るようにバックステップして間合いを取る両者。
敵意剥き出しの顔つきは、今すぐ第2ラウンドを始めようという面構えだ。
「これはご無沙汰ですねぇ―――風の噂では名誉の戦死を遂げられたとか?
魂魄まで砕け散ったはずの貴方が何故、一丁前に湯浴みなんかしてるんですか?
温泉に迷って出るとか、マジ有り得ねー」
「アンタこそ、フェイトに場外まで吹っ飛ばされたんだってね?
さぞや絶景だったんでしょう? 打球の気持ちってやつを教えて欲しいわ。
フェンスに狐拓を刻み付けて、名実共に天然記念物に認定された感想と合わせてね」
バチバチと湯煙にプラズマが飛び散る中、二人の獣が睨み合う。
双方、猫か何かであれば全身の毛が逆立っていた事だろう。
「凹んでる時に辛気臭い顔を見せてくれたものですね……ご主人様を待たせてるんで、お先に失礼」
「あら? 逃げるの?」
「………あまり調子に乗らない事です。
魔力供給という名目がなきゃ、誰がアンタみたいな醜女と乳繰り合うかっての。
あの時の情けねぇ顔を思い出す度に笑いが込み上げてしょうがないですよ、プッスッスー(笑)」
「パパ、パラレルワールドの事なんか知るかーーー! 早く行きなさいよ、せいせいする!
せいぜいティアナにエキノコックスとか移さない事ね! 念のため、私も身体検査してもらおっと♪」
「カッチーーーン!! 誰が寄生虫持ちかぁーーーッ!!? アッタマきたコイツっ!!」
ブチ殺す―――!!!!!
瞳に殺の一文字を称え、屠殺の構えを取る魔術師と狐。
「はいはい二人とも落ち着いて下さいな♪」
だが一触即発の両者に声をかける者がいた。
いつの間にか湯船の中央に漬かり、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる新たなる来訪者。
「管理局に手酷くやられた者同士、争っても仕方無いでしょう?
私でよろしければ是非、相談に乗ってあげますけどぉ♪」
「アンタ………機人の……」
凛が呟く。 声のトーンが下がったのは臨戦態勢レベルの上昇に伴っての事。
眼鏡の奥より怪しく光る双眸。 戦闘機人ナンバーズの4―――クアットロ。
JS事件の実行部隊において策謀と謀略を旨とする
スカリエッティの娘達の中で取り分け、危険な個体である彼女が一体、何の用か?
「あら、そんなに緊張しなくてもよろしいですわ。 私とて行楽を楽しむ客の一人。
こうやって皆さんと親交を深めたいだけだというのに♪」
「あからさまに胡散臭さダダ漏れでよく言いますね。
私は別に貴女とも、そこの赤チンとも友達になる気はありませんので」
「ちょっとアンタ……さっきから、赤べことか赤チンとか」
「それは残念。 サーヴァントともあろう方が魔導士に一蹴された無様をそのままにしておくとか。
雪辱を晴らす手伝いが出来ればと、こうして馳せ参じましたのに拍子抜けですわ♪」
湯船から上がり、浴室を後にしようとしたキャスター。
その尻尾がピクンと跳ね上がる。
「無礼な土偶ですね―――手足を千切ってあげましょうか?」
「私に八つ当たりしても事態は解決しませんわよ? 神様の断片さん。
貴女だって本当は外宇宙よりの来訪者との交流なんて苦々しく思っているクチでしょうに♪」
「――――――」
狐の目が冷たく、鋭利になっていく。
人間とは一線を隔す、おおよそ温かみの感じられない魔性の光。
どこで調べたのか知らないが、この人形はこちらの内心をある程度は解しているらしい。
そう、あの異世界からの来訪者達―――
齎す知恵と知識は、母なる大地に住まう者に確実に力を与えるだろう。
だがそれは即ち、ヒトがこの手より離れていく事を促す行為に他ならず
先ほど憂いていた事態を無下に促進する事と同義だ。
人の子が、自分の力で我が元を旅立つならばいい。 悲しいけれど受け入れる事は出来る。
だが、外部の者によって齎された知恵の実を貪り食って、それで得た進化など進化ではない。
単にそそのかされたのと何ら変わりが無い。 そんなものを認められるはずが無いだろう……
――― いっそ滅ぼしてしまおうか ―――
管理局の船団が地球近郊をうろつくようになってから幾年。
そんな衝動に駆られる事もまた決して少なくはなかった―――
「しかし貴女も味わった通り、Sランク魔導士は管理世界における最強無敵の戦力です。
部隊として動けば、サーヴァントをも凌駕する難物。
貴女一人では到底、彼らを追い払う事はかなわないでしょう?」
覗き込むようなクアットロの機械の瞳。
挑発と誘惑を織り交ぜた言葉はとても甘く鋭く―――
「でも、この私の策があれば……」
「――――――――くっだらない」
だが幻惑の仕手の囁きを、サーヴァントは一蹴して切り捨てる。
「このタマモ、己の策で敵を絡め取る事は良しとしても、下賎な入れ知恵を恵んでもらうほど落ちぶれてはおりません。
彼らがこの地に有害か否かは、私の判断で私が決める事。
貴女………躍らせる相手を間違えると自身の身を滅ぼしますよ?」
あの程度の連中を最強無敵と断ずる人形に、九尾揃った自分の姿を見せてやりたい。
元々、揺り篭すら単体で落としかねない大妖である彼女。
本当ならば賢しい策など必要としない、強大な力の持ち主なのである。
(そもそも今のご主人様は管理局の人……そこに牙を向けられる道理がありません……)
これ以上、主人の意に反する事は出来ない。
自分は今日まで彼女を困らせてばかりだ。
気持ちを切り替えよう……余計な事はもう忘れてしまおう。
抱えた憂鬱を振り払うように―――今度こそ、キャスターは浴室を後にする。
「は………煮え切らないサーヴァントですこと。
揺り篭を一人で落とすぅ? ハッタリ塗れの負け惜しみにしか聞こえませんわ。
さて………貴女はどうします魔術士さん?」
ゴミでも見るような目で狐の背中を見る機人。
実際、彼女にとって利用価値の無いものなどゴミ以下なのだろう。
今度は凛の方を向いて呟くクアットロである。
「ねえ。 ガンダムに勝つにはどうしたら良いと思う?」
「…………は?」
だが返って来たのは、沈黙を守っていた魔術師のそんな第一声。
「ガンダムに勝つには―――結局、同じガンダムに乗るしか無いのよね」
「あ、あの……ガン、ダムって?」
「ああ、何でもない。 貴女には関係ない話」
既に機人の事など凛の眼中には無かった。
「宝石剣で攻撃力だけ並んだところでしょうがなかったのよ。
技術、才能で5分ならば、せめて同様の機体を有さなければ話にならない」
ある…………一つだけ。
遠坂凛に残された最強最大にして最悪の機体が。
問答無用に強力で、理不尽なほどに破滅的な―――
――― 覚悟を決める時なのかも知れない ―――
切り札は初めから用意してあったのだ。
一つの決意を旨に秘め、凛もまたその場を後にする。
「……………」
そして一人残された機人。
「バカな人達…………勝手にすればよろしいですわ。
私は私で、祭を盛り上げて差し上げるだけですから♪」
自分を無視して行ってしまったゴミ2つ。
特に気分を害する事もなく、機人は一人ほくそ笑む。
人影の無くなった浴室―――
チャポンという水面が跳ねる音と共に
女性らしい流線型を描いた人工の肢体が、新たに浴槽に浮かぶのだった。
――――――
「「惚れてまうやろーーーーーっ!!!」」
高度300m、奈須の空に少女の声が響き渡る。
「あー気持ちイイ! 肌に刺すような空気がたまらない!」
「ですよねー! 私も落ち込んだ時、こうやって気分転換するんですよー!」
世に言う絶景とはこの風景の事を指すのだろう。 人がゴミのようだと呟きたくなる。
彼女達を背に乗せて飛翔する巨竜ヴォルテールがイリヤとキャロの歓声に答えるように唸る。
「神竜……こちらの竜とはちょっと位置づけが違うようだけど
私のバーサーカーとどっちが強いかしら?」
「うーん、制御の難しさは良い勝負だと思いますよ? よく暴走させて怒られてます」
てへっと舌を出して笑うキャロ。 今のはひょっとして冗談なのか?
「丁度良いわ。 今夜のアレで決着をつけましょう………
と言いたいところだけど、サイズ的に無理かな」
「はい……残念ながら、余裕ではみ出しちゃいます」
何にせよ昼の教導では大人しくしていたイリヤ。
フラストレーションも良い具合に溜まっている。
せいぜい晴らさせてもらうとしよう。 ついでに凛の仇も取ってやらねばなるまい!
「さあ、出陣よ! バーサーカー!」
雪の少女が大空に必勝を誓う。
そして―――――――――――祭が始まる!!
――――――
では一端、ここで切ります。 祭はそれなりに長くなるので。
このSSは元々、「なのはさんの教導」という
型月キャラがなのは達の教導を受けたら?という短編と「慰安旅行」を組み合わせたものです。
今にして思えば、分けて書いた方がよかったかなとも考えていますが。
少し、なのはに天秤が傾いているのは感じた通りかも知れません。
今までなのは側に割を食わせ過ぎた感があるので……
だって、なのはさん……本編で未だ0勝2敗1分け……そろそろ活躍させないと……
何がどう間違って6日と書いてしまったのか不明ですが
初めの予定通り3日で終わりです。
ではまたノシ
しまった! 読んでたら途中で支援するの忘れてた!
支援すると思ってた時には、もう投下は終わってたんだぜ!?
ともあれGJでした。
来年もいいお年を。
ぼるかみぜーりあ!
流石ネロ教授、現代に適応してやがる
そして、ハブられることに余念がないクアットロに泣いた
シグナム姐さんがアレされちゃったのは少しブルーかも
あと、狐の大言ぶりはかなり、らしいよね
P.S.カレー野郎は顔が広い元実力派のロア派閥でしたが祖ではないす
凛の奥の手って何なんだろうか?
ポテンシャル真円の凛が使えばあらゆる分野の超天才となり、非殺傷っぽい何かとかできそうなアレではないかな
ほら、心の裏だだ漏れなインテリジェント・デバイスっぽい何か
新年あけましておめでとうございます。
今年もこのスレに数多の作品の投下のあらんことを。
とりあえずリリブラさんには改めて投下乙。
凛は……
怪物を追う者は怪物にならないように注意しなければならない、というが。
魔法少女を打倒する概念は、ソレしかないということか。
次回の更新も楽しみに待ってます。
凛のアレはガンダムはガンダムでもGのほうに近いノリなんだが
Gだったら生身のままでイケるじゃなイカ
なのはって型月の五大属性でいったら、やっぱり空(星)になるんだろうか
凛が持ち出そうとしてるのって、ひょっとしなくても万華鏡か。
勝てるかもしれないけど、色々なものを失いそう…
火でもいいし空でもいい何なら杖でもいい
自由とはそういうものだ
枯れ井戸ステッキ…
いやなんでもない
狐は本気出すとそんなに凄いの?
狐の正体は天照大御神の分御霊だったはず
英霊としてではなく怪物として顕現した時の姿が白面金毛九尾の狐だっけ
英霊相手に100体まとめて相手してやんよと大見得を切り、実際に玉藻前は八万の軍勢を術をもって退けた
ただし、対策を練られ、武人たちが訓練した後は弓や刀であっさり殺されたりしてるので、巨大レーザーやら必中必殺やらラドン百頭殺しマルチホーミングレーザーをされた日には……
まあ、ダキニ天も逸話に入れてるので潜在的なスペックはマルチに高い
ただし、源流が元祖ヒッキーなんで太陽神でもどこぞの戦神みたいにはいかないぞ、っと
ウィキペより転載
>8万余りの軍勢を那須野へと派遣した。
>那須野で、既に白面金毛九尾の狐と化した玉藻前を発見した討伐軍はすぐさま攻撃を仕掛けたが、九尾の狐の術などによって多くの戦力を失い、失敗に終わった。
>三浦介と上総介をはじめとする将兵は犬の尾を狐に見立てた犬追物で騎射を訓練し、再び攻撃を開始する。
>対策を十分に練ったため、討伐軍は次第に九尾の狐を追い込んでいった。
>九尾の狐は貞信の夢に娘の姿で現れ許しを願ったが、貞信はこれを狐が弱っていると読み、最後の攻勢に出た。
>そして三浦介が放った二つの矢が脇腹と首筋を貫き、上総介の長刀が斬りつけたことで、九尾の狐は息絶えた。
これで殺生石にチェンジしたわけだ。
タマモ的には悲観して全力を出さなかったのかもしれないが。
>>327 狐の言うことを信じるべきか、信じぬべきかってことかと。
ちなみに、玉藻前は九尾ではなく二尾の妖狐という話があったり。
案外、『幽霊の正体見たり枯れ尾花』でも、僅かでも恐怖したら勝てない存在だったのかも。
強大な魔力と風説に恐怖しない存在はいなかったろう。
妖怪として、当時の信仰(恐怖)は良い糧であっただろうし。
レス、サンクス
随分と遅れてエクストラやって狐でクリアしたんだけど
宝具性能が他二人に比べて微妙だったから今一強いって感じがしなかったんだ
本気出せばっていうか、英霊でなぐ怪物として顕現したらって話だな
サーヴァントとしての彼女はぶっちゃけたいしたことない部類だけど、妖怪としてなら8万を追い返してるから相当なもん
天照でもあるし
どこにでも神殿を作れると思えば……
日記宝具や傷返し宝具に比べれば……
つーか、アーチャーの宝具性能がおかし……
まあ正直、あのキャスターに斉藤さんの声で「ご主人様」とか言われたら、サーヴァントとしての実力とかどうでもよくなる気はするw
女主人公とキャスターの組み合わせでちゅっちゅっさせたい…。
EXTRAなのはが魔力ステータス(魔力運用能力)Eってことは、かなーり不味くないだろうか
空戦とかできるのかな
飛べないと距離をとって戦うのが難しいな
バインド連打も無理…
月「なのは! 新しいカートリッジよ!」
性格は変わってなさそうだよね
??? 「高町なのはのスペックを教えてやってもいいが
今の彼女はまだレベル1の状態で、ぶちスライムを倒すのにも 数ターンかかるカスだ」
>>336 何でキラがバタ子さんみたいなセリフを吐くの?
>>338 SS「Fate/EXTRA 白い魔導師」の主人公「鳴海 月(ユエ)」のことじゃないか?
>>336 魔力Eでカートリッジを扱えるかどうか
扱える魔力量自体が低レベルに落ち込んでるし、爆発!する可能性も
逆に、最大魔力容量はそこまで落ちてない可能性あるけど
ここは、なのはさんの魔道師スキルやレイジングハートによる最適化の出番かも
>>323 星属性は心情的にはわかるなあ。
でもリリカルでは属性付きの方が珍しいので、設定的にだれもかれも空(星)属性になっちゃうのが難点。
>>336 カートリッジを受け取って、檜山ボイスで「よっしゃぁあああ!」と叫ぶなのはさんを想像してしまった。
どうしてこうなった……。
A'sなのはさんはレイハのサポート抜きの状態だと、ディバインシューターを撃つのにも詠唱が必要だった
それを逆に考えると夢が広がるかもしれない
なのは の レイジングハート で おうだ する こうげき !
型月的には火がノーマル魔術師(知識・禁忌に関わる者全般?)っぽいので、それっぽくしてみる
陸戦局員:火or土or水
空戦:風
なのは:空
フェイト:風
はやて:色
シグナム:火
ヴィータ:火、土
なのはさんならRHで殴り殺せるよ
狐も鏡で殴ってたし
グレンラガンは四部構成で、それぞれ70年代・80年代・90年代・00年代を表していたらしい。
もしリリカルや型月作品が年代の違う作品だったら……変身魔法でアイドルでドロドロな芸能界なリリカル、ゲッターやマジンガーのような泥臭い戦いとお色気の型月……
>>343 むりやり当てはめるんならなのはは風でいいんじゃね
空はエーテルだから違う気が…
っていうか色って何?
避難所にカレイドスコープが投下されているので、代理投下します。25分から。
と思ったけど、まだ投下終わってなかった。
投下終了次第、確認とってからこちらに代理投稿するということに。
なんか投下終了したようなので、17分から。
カレイドスコープ第二十二話『月下』はじまります
#1
転送でたどり着いた先は鬱蒼とした森だった
「ここは……アインツベルンの森か―――」
相変わらず辺鄙なところに住んどるのかと首をめぐらして呟くライダー
転送ポートを設置するにはこうした人気の無い場所は都合がいいのだが、
そんな社会的な現実問題をこの男が考慮するかと問われれば、おそらくしないだろう
「それでティア、これからどうするの?」
「まずはイリヤに会って聖杯戦争そのものを説明してもらいましょ、
後はその上で冬木市内に異変が無いか調査ってところね」
「妥当だな」
スバルに対する答えに異論は無いとシグナムも頷く
現状取れる選択肢から言っても他にさほど方法も無いのではあるが
其処から森を暫く歩き、ちょうど正午の頃合に一向はアインツベルン城へとたどり着いた
(後にシグナムが語るところによれば、
ライダーが「面倒だ」と森を破砕しながら行こうと宝具を召喚しようとしたのを止める
という手間が無ければもう少し早くついたとのこと)
「遠路はるばるようこそいらっしゃいました
歓迎いたしますわお客様」
ノックする前に開いた正面扉をくぐり、ロビーの中ほどに来たところで、
白い少女はそれを見下ろす階段の踊り場に現れた
会食の用意は整えているというイリヤの言葉に従い中庭に出ると、
小奇麗に整えられた其処に豪華な食事の並んだテーブルがあった
「お昼時だし、長い話になるから食べながら聞いてもらえば良いわ、
それで、今貴女達は聖杯戦争に巻き込まれている、コレは確かなのね?」
「うむ、いずれも現界したのは余を含め第四次、第五次の英霊ばかりであるが
相違あるまい」
ライダーの返答に難しい顔で納得するイリヤ
事前に連絡を入れておいたにしてもやけに聞き分けのいい、というか様子が何かおかしい
「何かこっちで変わったことは?」
引っ掛かりを覚えたティアナの問いに彼女はあったわよと答えた
「三日前倫敦から帰国したはずの凛が今朝未明に失踪したわ、
路上に凛のものらしい宝石が落ちてたから拉致された可能性はあるわね」
犯人は魔術師かもしくは―――
「関連があるかどうか決め付けるのは早計ではないか
―――それで、そ奴も聖杯戦争の関係者なのか?」
「遠坂凛
聖杯の御三家である遠坂家の現当主で、
第五次聖杯戦争におけるアーチャーのマスターよ」
「ふぅん、つまりセイバーとランサーめが口を割らんかった
アーチャーの真名もそ奴なら知っておるのだな?」
イリヤの返答に納得し、酒をあおりはじめるライダー、
自分の聞きたいことは聞いたので後は適当なところで相槌を打つ腹積もりらしい
「ついでに言えば倫敦の後見人はロードエルメロイU世こと
ウェイバー・ベルベット卿よ」
あの人そんな本名だったのか、
と不機嫌そうな仏頂面を思い出しながらティアナは思ったが
酒瓶を掴んだ格好でライダーはほうと声を上げた
「あの小僧か
―――それで息災か?」
「えぇ、没落したアーチボルト家に取り入り立て直した名士として
倫敦時計塔では今や知らぬものの無い名講師だそうよ」
「然り、流石は余の見込んだ男よ、
うむ、良い、実に良い」
無論、それで納まる器ではあるまいがと言いながら実に上機嫌になるライダー
あの仏頂面の堅物が仮にこの男のマスターだったとすれば、
さぞや振り回されて胃の痛い思いをしただろうなとティアナは思った
「前置きが長くなったけれど、
聖杯戦争について説明させてもらうわね―――」
事の起こりは200年ほどの昔
アインツベルン・遠坂・マキリの三家がそれぞれの思惑から協力して始まった
聖杯の器をアインツベルンが、霊地を遠坂が、そして令呪をマキリが用意し、
その始まりには“魔法使い”さえ立ち会ったという
儀式の成功にマスターが戦い合う必要はなく、
召喚された七騎のサーヴァントの魂を全て「器」に注いでしまえばそれでよいのだが、
御三家の間で完成した聖杯の権利を独占するために殺し合いが始まってしまい失敗
二回目の儀式から円滑に殺し合いが進むように現在の「聖杯戦争」を模した形となった
「おい、それではサーヴァントの願いが叶わんのではないか?」
聖杯が完成するには全ての英霊を殺す必要があるのなら、
英霊は何のために召喚に応じるのか?
「えぇ、儀式としては聖杯に七騎全ての魂を注いで穴を開けるのが目的ですもの、
それに“聖杯”として機能させたいだけなら六騎も注げば十分だから嘘は言ってないわ」
肝心なところを伏せることで相手に都合よく誤解させるという、
要するに一種の詐欺である
「それで、率直に聞くけど聖杯は何処にあるの?」
冬木市が舞台であるということは市内の何処かに聖杯か、
それに順ずるシステムが存在するはずである
「小聖杯なら目の前にあるんだけど
貴女達が言ってるのは聖杯儀式の根幹となる大聖杯のことよね、
それなら柳洞寺の地下よ」
「お寺の?」
土地使用の権利関係はどうなっているのだろうか?
割と大真面目に考えかけ、ティアナは思い直してその考えを脇に置いた
「あのさ、小聖杯と大聖杯って何?」
一個の聖杯を取り合うのが聖杯戦争なんだよね?
とスバルが首をかしげながら話を引き戻す
自分なりに話を纏めようとしてはいるようだが
「大聖杯は街に仕掛けられたシステム―――ロストロギアで言うと本体ね、
小聖杯っていうのは―――」
「聖杯戦争で降臨する中身を受ける器の方というわけだな
余をはじめサーヴァントやマスターが“聖杯”と呼んでおるのは基本的にはこっちだ」
理解できたのかどうか曖昧だがとりあえず頷くスバル
あれ、でも目の前のどこにあるの? などと辺りを見回しているが
「ロストロギアにしても形状は様々だからな、
―――例えばレリックは魔力結晶だが、
今回のカレイドスコープは魔力結晶はあくまで端末で、
本体はもっと大掛かりなものだという話だろう」
闇の書のように膨大な量の魔法の知識と魔力を蓄え続けたものも
一つの万能の願望機の形ではある
器といっても実際にはそうした形である必要性はあまり無い
願望機として機能するカタチに出来ればいいのである
「と、言いますと?」
「例えばこの城やイリヤスフィール自身が聖杯であったとしても不思議ではない」
ちょうど我々の目の前にあるしなと言うシグナムにイリヤが頷く
シグナムの言うことはまさに正鵠を射ていたからである
「あなたの言うとおり、
第五次聖杯戦争の小聖杯はこの私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」
第三次聖杯戦争において戦争の最中器が破壊されると言う事態に陥ったアインツベルンが
器自体に自衛能力を持たせるためホムンクルスと言う偽装を施したのが彼女の母であり、
第四次聖杯戦争の小聖杯でもあるアイリスフィールである
イリヤ自身はさらにそれに最高のマスターとしての性能を施したものであると言う
「セイバーと一緒におったあの女か、あれはマスターではないのか?」
「違うわ、第四次聖杯戦争のセイバーのマスターはお母様ではなく、
衛宮切嗣―――私の父よ」
「衛宮―――って、士郎さんのお父さんじゃなかったっけ?」
あれ、じゃあイリヤと士郎さんは兄妹? と首を傾げるスバルに対し
姉弟よとイリヤは答えた
第四次聖杯戦争は現在の新都一帯を火の海にして終結を迎えた
その時に焼け出された一般市民の少年が現在の衛宮士郎ということらしい
イリヤ自身は普通に成長することが望めない肉体ではあるが、
実年齢はむしろなのは達と同じぐらいとのことである
「それで、他に聞きたいことはあるかしら?」
「そうね、それじゃ―――」
イリヤの問いかけにティアナはいくつかの質問を口にした
#2
「あれ、おかしいな?」
首をかしげながら衛宮士郎は受話器を戻した
某国の高級ホテルの一室、日本に帰った凛に連絡を取ろうとしたのだが、
自宅も携帯も繋がらない
「流石に二年以上も持ってて充電の仕方が分からないってことはないだろうし、
何かあったかな?」
地下室で実験中で出られないと言う程度ならいいがと思いながらノックの音に振り返る
出てみると年齢不詳の日本人女性が立っていた
「お久しぶりです、えっと……御神美沙斗さん、でしたっけ?」
「あぁ、少し話があるんだけどいいかな?」
部屋に上げると随分いい部屋をあてがわれているなと感心された
士郎としてはボディーガード扱いでいるので安い部屋で十分なのだが
日本に比べるとこの国は治安レベルが低い為、
外国人は基本的にある程度高い部屋を勧められるのだという
「俺一人なら何とでもなるんですけど、
内線電話が引かれている中で一番安いのがこの部屋だそうで」
いざと言う時に護衛対象に連絡がつけられないのは良くない
一応曲がりなりにも今の自分はマクガーレン・セキュリティの嘱託扱いなので、
雇用主に迷惑を掛ける訳にはいかないのだ
「まぁ、路上に自販機が置けるような治安レベルではないからね
―――さて、本題に入ろうか」
ソファーに座り美沙斗は管理局からの情報なんだが、と前置きしてから口を開いた
「遠坂凛さんが失踪した、日本時間で今朝未明のことだそうだ」
「遠坂が?」
なんで管理局からそんな情報が? と首を傾げながら嫌な予感を感じる士郎
「次元犯罪者によるものかはまだわからない、ということらしいけどね、
向こうの事件と関わりがあるかもしれなくて、今あの子の教え子が冬木に行ってるんだ」
美沙斗の言うあの子とはなのはのことである、
その教え子で捜査関連と言うことはティアナ達かと士郎は思った
もっとも、士郎からすればなのはよりティアナ達のほうが面識が先なのだが
「むこうで魔術師が関係する事件が起きてるのか……」
少し心配だ、物理的には下手な英霊並みに戦える連中が揃っているが、
大丈夫だろうか
遠坂さんの身の回りで彼女に恨みを持ってそうな人物に心当たりは?
という問いに士郎は首を横に振った
指し当たってルヴィア辺りという答えがあるにはあるが、
彼女の場合正々堂々正面から決闘を申し込むだろう
(全うな“魔術師の決闘”になるかどうかは脇に置いておくとして)
「なら、聖杯戦争の秘密をかぎまわる魔術師がいる可能性は?」
「それはいるでしょうけど、それなら遠坂よりイリヤの方が―――」
其処まで答えて、この人に聖杯戦争の話したっけ? と士郎は首をかしげた
「一体何故?」
「あの子達から頼まれた質問をしただけで中身の説明は受けていないよ
聞いた限りだとシュバインオーグと言う人物の技術を用いた物と言う話くらいかな」
私にはさっぱりだと言うが、
聖杯戦争の御三家にシュバインオーグなる人物はいないはずである
向こうの事件の原因であるアーティファクトの関係者だろう
一人納得し、なるべく早く直に連絡を取ろうと決める
コレが日本なら国際電話で済むが、
ミッドチルダとなれば最低でもイギリスに戻らないと次元通信ができない
「分かりました、俺の方は今週は動けませんが、
イギリスに帰ったら向こうに連絡を入れます」
「そうしてくれると助かる、
私もそう何度も伝令役を引き受けられるほど暇じゃないしね」
と言うよりもむしろ忙しいはずである
香港の国際警防隊の指揮官で管理職なのは伊達ではない
一頃に比べれば落ち着いたとは言え裏社会の闇はまだまだ深いのだ
「さて、部下を待たせてるんで流石にもう行かないと」
フィアッセに会っておきたかったが時間が無い、
と彼女はソファーから立ち上がりながら苦笑した
来る時も唐突だが去るときも唐突だ
去り際、その気があるならウチに連絡をほしいと言う何度目かになる言葉に、
その内にと同じ返事を返す
実際そろそろソングスクールやマクガーレン・セキュリティから離れるべきだろうと思う、
本格的に“その道”に足を踏み入れるなら“向こう”の方が確かだ
一時間後、
そんなことを考えながら士郎はクライアントであるフィアッセと合流しホテルを後にした
行き先は難民キャンプ、クリステラ・ソングス校長の慰問コンサートである
#3
夜半、柳洞寺山門前石段
イリヤの説明を受け「一晩霊地の監視に回る」という結論に至ったティアナ達は
それぞれ四つの霊地を中心に冬木市内に散らばっていた
「セインをつれてきた方がよかったか」
大聖杯にいたる地下洞窟への入り口を確認し石段前へと戻りながらシグナムはつぶやいた
入り口は崩落により塞がってしまっており、一朝一夕に撤去できる状態ではなかった
セインならISディープダイバーで内部を確認できただろうが居ないものは仕方がない
「境内も調べた方がいいか……む?」
石段の中腹辺りの踊り場まで戻ってきたところで山門の方に気配を感じ、
シグナムはそちらを振り仰いだ
柳洞寺の住人か、見咎められたらどう言いつくろうか―――
目を向けた先、山門の正面に立つその人影は、静かに月を見上げていた
「今宵はまた上弦の良い月が出ている、そうは思わぬか?」
視線こそ向けてこないもののこちらには気づいていたらしい、
いわれて見上げると確かに半月ながらなかなかに良い月が出ていた
なるほどと頷いて、
気を悪くしないうちに立ち去ろうと石段を降りようとしたシグナムを人影が呼び止めた
「待たれよ、事情は知らぬが私はここの門番でな、
態々このような刻限に参拝するような者を黙って帰すわけには行かん」
なにより、その様な清んだ剣気で通りがかられては黙っておれぬ
と、その影はゆっくりとシグナムの居る踊り場まで降りてきた
其処まできて影にしか見えなかった理由をシグナムは理解した
降り立った相手が水墨画のような黒尽くめの和装に白い髑髏面をしていたからである
―――アサシンのサーヴァント?
黒尽くめに髑髏面という格好からそうであろうとは思うのだが、
同時に違和感がありすぎて判断に困る
特にこうして自分の目の前に態々姿を現す辺り、どうにもおかしい
「門番と言ったな―――
一体、誰に命じられたものだ?」
首もとの愛機に手をやりながら問いかける
「さて、
しいて言うならこの身の依り代があの山門であるが故、と言ったところか」
はぐらかす様な言い回しだが、さりとて嘘というわけでもないようだ
いずれにせよ、このまま立ち去れる状況ではない以上、迎え撃つ以外に選択肢は無い
「レヴァンティン!」
呼びかけに答え炎の魔剣が起動する、騎士甲冑に転じた彼女に対し、
影はゆっくりとその背の長刀に手をかけた
「時空管理局ミッドチルダ首都防衛隊シグナム二等空尉だ
立ち会う前に名を聞かせてもらおう」
「名乗る程の持ち合わせは無いが、
名乗りをもって問われたとあれば応えねばなるまい」
長刀にかけた手を止めてそう答えると、影はゆっくりと面に手をかけ
おもむろにそれを脱ぎ捨てた
その下より現れた涼やかな声にふさわしい美丈夫としての顔立ちである
口元に浮かべた笑みはシグナムの剣気を受け止めてのものと見て間違いなかった
「アサシンのサーヴァント 佐々木小次郎
―――ではシグナムとやら、存分に果たしあおうぞ」
改めて背から長刀を抜き放ち、まっすぐに突きつける
それを見て知らずシグナムの口元が釣り上がる
なにより剣士として挑まれては退くわけにはいかない
答えるように彼女も剣を掲げ、その切っ先を打ち合わせた
449 : 名無しさん@chs 2011/01/05(水) 17:08:51 ID:1KfHxTBQ
今回は以上です
というわけで投下終了。
またなんか色々な展開があって、続きが楽しみですね。
…ところで、避難所での投下に時間がかかってて、「よもやさるさん?」とか思ったが、確かあっちは連投規制なかったよね。
常識で考えて誤字チェックをされていたのだろう。
気がつけば六時とか過ぎてる。
飯くってきます。
シグナムと小次郎ですか
考える事は皆、同じですねw
test
カレイドスコープさん、GJ!
自分もカレイドスコープ氏に続いて投稿を開始します。
『Fate/EXTRA 白い魔導師 第二話:校内探索』
保健室から出ると、そこは見慣れた学園の一階の東廊下だった。でも聖杯戦争の本戦になった今では、
風景が映画のセットみたいに形だけ整えられたものだと分かってしまう。
「よう、鳴海も予選を突破したか」
声をかけらられた方向に振り向くと、月海原の制服を着た男子生徒が立っていた。
「こんにちは。……えっと、どちら様でしたっけ?」
「覚えてないのかよ、ひっでーな。予選では同じクラスだったんだぜ?」
そう言われても名前が全く思い出せない。確かに見覚えはあるんだけど……。
「まあ仕方ないよな。参加者の大半が共通のアバターを使ってるから見分けがつかないかもな」
「え、そうなの?」
「ああ、カスタムアバターを使ってるのは、一部の一流ハッカーだけだぜ」
言われたみればうちのクラス、似た様な顔ばっかりだった気がする。稀に変わった服の子もいたし。
遠坂さんとか、何で私服なのかなー、と疑問だったけど、自分のアバターを弄れるくらい凄いハッカーだったわけだ。
「あ、そうだ。NPC統括の言峰って人、知らない?」
「言峰? いや見てないな。二階の柳洞一成に聞いてみたらどうだ?」
「一成もここへ来てるの?」
「来てるも何も、黒い制服を着た連中は運営用のNPCだぞ。
分からない事があったら、そいつ等に聞いてみろよ」
桜に続いて一成もNPCか。それでも知り合いがいるのは、なんとなく安心するな。
「分かった、教えてくれてありがと」
とりあえず言われた通りにするため、男子生徒にお礼を言ってその場を後にした。
一階の階段に差し掛かったとき、ふと気がついた。
「やば、結局名前を聞いてないじゃん……」
全裸待機
「おお、お前も突破できたのか。良きかな、良きかな!」
二階に上がると、こちらに気付いた一成が相好を崩して話しかけてきた。
こういう反応を見ると、NPCというのが信じられないんだけどなあ……。
「ありがと、一成。それで……一成は運営用のNPCってヤツ?」
「うむ。生徒会長と同時に聖杯戦争の運営も兼ねている。分からない事があればドンドン聞いてくれ」
と自信たっぷりに一成が言う。うん、やっぱりNPCでも一成は一成だね。
と言うか運営の仕事は生徒会長と兼ね合いなんだ。
「それじゃあさ、言峰さんの居場所を知ってる?」
「言峰神父か? 生憎と所用ゆえしばらくは校舎内に出て来ないな」
一成の話しぶりだと、今は言峰神父に会えなさそうだな……。
困ったな、すぐにでもあたしの記憶が戻らない事情を聞きたいのに。
「なに、心配せずともしばらくすれば出てこよう。
それまで校内を散策してみるといい。屋上の眺めは中々のものだぞ!」
「うん、そうする。ありがとね、一成」
とりあえず今は言峰神父に会えないみたいだし、ここは予選の学校とどう変わってのか見て回るとしますか。
「うわあ……確かにこれは凄いわ」
まずは校内を見て回る事に決めたあたしは、一成の薦めに従って屋上に来てみた。
屋上そのものに変化は無かったけど、空には1と0の数列がびっしりと並んでいた。
幻想的でありながら、デジタル世界を思わせるソレは確かに壮観な眺めだった。
ふと、屋上の非常階段に目を向けると、そこには先客がいた。
遠目からでも分かる真っ赤なブラウスと黒いミニスカート、
派手な服装に負けないくらい圧倒的な存在感のある、ツインテールの黒髪の女の子、遠坂凛さんだった。
容姿端麗、成績優秀とまさに絵に描いた様な学園のアイドル。あまり話したことは無かったけど、
同い年とは思えない上品な大人な振舞いに、ひそかに憧れてた。
でも今の遠坂さんからは、アイドルなんて淡いイメージは無い。
何と言うか、纏う空気が戦場のソレっぽいというか、戦いに挑む強い意志みたいなものを感じる。
聖杯戦争――
とりあえず戦うとは決めたけど、今の遠坂さんを見ると、本当に戦いに来てるんだなあ、と思ってしまう。
それにしても何してるんだろ? さっきから床や壁をぺたぺた触りながらブツブツ呟いてるけど……。
「……あれ? ちょっと、そこのあなた」
そんな風にしばらく見ていたら、向こうもあたしに気付いたのか、声をかけてきた。
「は、はい? あたし、ですか?」
「そう、あなたよ。そういえばキャラの方をチェックして無かったわよね」
そう言って、遠坂さんはおもむろに近づき、あたしの頬に手を伸ばして、ってちょっと!?
「あ、あの!」
「動かない、動かない。……へぇ、温かいんだ。生意気にも。あ、肌もプニプニしてる」
細く、柔らかい指が顔から肩、腕、と段々と下の方へ触れていき――
「そ、そこは、ひゃん!?」
「ふ〜ん、意外とあるんだ。いっちょ前に恥ずかしがってるし、感度も良好、と」
そう言いつつ、今度はお腹や腰の方へと手を回していく手付きにはいやらしい感情は見えない。
触診を行う医者の様に、身体に触れる手付きに迷いはない。
「〜〜〜〜〜ッ!!」
「あれ? おかしいわね、顔が赤くなってる気がするけど?」
そう頭に言い聞かせてるけど、鼻先三センチ辺りまで顔を近づけられると、胸が不自然にドキドキするわけでして……。
それにしても遠坂さん、やっぱり綺麗だな。柳眉と言うのかな? 細い眉がいぶかしむ様に眉根を寄せてるけど、
それでも遠坂さんの美しさは損なわれない。白く、水を垂らせば弾く様なきめ細やかな肌も、
上質な宝石を思わせる黒い瞳も、遠坂凛という女の子を飾る一級の装飾品に思える。
ツインテールに纏めた黒い髪なんて、手に掬えばサラッとした感触が伝わりそう……。
「なるほどね」
はっ!? なんか思考が明後日の方向へ行ってる内に、遠坂さんは調べ終わったみたいで満足そうに頷いてた。
「やっぱりNPCも景色同様、見かけだけじゃなく感触もリアルね。本物以上と褒めるべきかしら?」
え? ……えーと、なにかものスゴイ勘違いされてる様な………?
「? ちょっと、なに笑ってんのよ。NPCだって調べておけば、今後の役に立つでしょ?」
遠坂さんは顔をしかめながら、誰もいないはずの後方に振り返った。
あたしには見えないけど、多分遠坂さんのサーヴァントがそこにいるんだろう。
「はあ? 彼女もマスター? だってマスターもっと……ってちょっと待ってよ!?
それじゃあ調査で体をベタベタ触ってたわたしって――」
さっきの行動を思い出したのか、うわぁと頭を抱えて黙り込んでしまった。
心なしか、顔も赤い。って、なんか後ろでアーチャーが笑いを堪えてるみたい。
「どうしたの、アーチャー?」
「ふふふ、どうやら彼女はマスターのことをNPCと勘違いしてたみたいだね」
NPCって……あたしって、そんな風に見えたのかな? まあ桜とか一成もパッと見たカンジ、本当の人間みたいだけどさ。
「ッ、うるさい、わたしだって失敗ぐらいするってーの! 痴女とか言うなっ!」
サーヴァントが何か茶々を入れたのか、何もない空間に、がーっ、と吠える遠坂さん。
でもこれ、事情を知らない人から見たらかなり怪しい人だよね。あたしもアーチャーと話す時は注意しよ。
「大体、そっちも紛らわしいんじゃない? マスターのくせにモブキャラと同程度の影の薄さってどうなのよ。
あなた、まだ予選の学生気分が抜けなくて、記憶がちゃんと戻ってないんじゃないでしょうね?」
「え、どうしてその事を知ってるの!?」
「はい? ……まさか、本当に記憶がないの? 冗談でもなんでもなく?」
一瞬、こっちの事情を知っているのかと思って、つい聞き返しちゃったけど、
遠坂さんはかえって驚いた様に聞き返してきた。あー、ひょっとして冗談半分で聞いてきたのかも。
でも困ったことに事実なんだよね。当事者であるあたし自身ですら、途方にくれるほどの。
「それって、かなりまずいわよ。聖杯戦争のシステム上、
ここから出られるのは、最後まで勝ち残ったマスターだけ。記憶に不備があっても、途中退出は許されないわ。
……あ、でも別に関係ないわね。勝者は一人だけ。あなたは結局、どこかで脱落するんだから」
心配そうに、眉間に皺を寄せていたのも数秒だけ。遠坂さんはすぐに醒めた声になってしまった。
自分以外はみんな殺し合う相手。その事実を思い出したかの様に。
「ま、ご愁傷様とだけは言っておくわ。大方、本戦に来る時に魂のはしっこでもぶつけたんじゃないの?
何にせよ、まだ予選の学生気分でいるなら勝ち残るなんて夢のまた夢かしらね。じゃあね」
「あ……うん、じゃあね。遠坂さん」
それだけ言い残して、遠坂さんは屋上から去って行った。彼女に言われた事が頭の中で反芻していた。
勝ち残れない。
それはあたしが一番よく分かっていた。記憶が無いとかそれ以前に、戦う姿勢が出来てない。
それも分かっている。でもいきなり願いを叶えてやるから殺し合え、なんて言われても、どうすれば……。
「やっぱり、これから戦うことは不安?」
今まで黙って見ていたアーチャーが気遣う様に声をかけてきた。
「……うん、遠坂さんの言う通り、あたしには戦う覚悟なんてまだないんだと思う。
今でも、聖杯戦争とか言われても現実感が湧かないし………」
「……それでも、私は貴女のサーヴァントだよ。心配しないで、どんな答えを出しても、
私はマスターを批難したりはしないよ」
安心させる様に微笑む自分のサーヴァントを見て、なんとか笑みを返す。
「うん、ありがとうね。アーチャー」
自分にとっていま確かな事は、この女性のマスターであるという事だ。
それなのに、自分がしっかりしないでどうする。そう思い直し、あたしはその場を後にした。
「ふむふむ、構造自体は学校と変わらないね」
時刻は夕方、予選の学校生活なら既に放課後となっている時間に、あたしは一通り校内を探索し終えた。
一階の西廊下の突き当たりに出来た、あの空間の入り口以外、校内で構造が変わった場所は無かった。
ただ、2−A以外の各教室は入り口が固定されたかの様に開かなくなっており、校門から先へは出られなくなっていた。
出られないと言うより、ゲームでステージの外は作られてないから進めないとか、そんなカンジ。
あとは前から立ち入り禁止を言い渡されていた視聴覚室と用具室。ここは予選が終わった今も入れないみたい。
そういえば一階の東廊下を抜けた先の花壇にある教会。
予選の学校生活の時は特に用事が無かったから近寄らなかったけど、ここも何かあるのかな?
教会の前で、青いショートヘアの眼鏡をかけた、いかにも教育ママという感じの人に、
準備中だから少し待ってろ、なんて言われて追い払われたけど……なんだったんだろ、あの人。あの人もNPCなのかな?
「あれ? あの人……」
一階の下駄箱前、そこに黒い服を着た長身の男性が佇んでいた。
黒い制服を着ているのは運営用のNPCだと聞かされた。でもこの男性が着ているのは神父服。
となると、ひょっとしてこの人が言峰神父かな?
「すみません、あなたが言峰神父ですか?」
「ふむ? 君は……ああ、128番目のマスター、鳴海 月か」
思い切って声をかけたみたら、予想は当たっていたらしく、神父服の男――言峰神父が振り向いた。
2メートル弱はありそうな見上げる様な長身、襟元で跳ねた黒い髪をした中年の男の人。
でも――妙な威圧のある微笑みを浮かべた顔が、なんとなく気に障る。
「本戦出場おめでとう。これより君は、正式に聖杯戦争の参加者となる」
文面だけ見れば、こちらを祝福してるけど、重苦しい声で告げられるこっちの身としては、
判決を言い渡される罪人の気分だった。
「明日より、君たち魔術師はこの先にあるアリーナという戦場で戦うことが宿命付けられた。
この戦いはトーナメント形式で行われ、最後まで勝ち残ったマスターに聖杯が与えられる」
「トーナメント形式って……参加してるマスターは何人いるんですか?」
「128人だ」
128人!? 参加者の多さに声を上げそうになったが、すんでの所で思いとどまる。さっきトーナメントと言っていたから……。
「そっか、戦うのは7回なんだ」
「その通り。二人一組のマスター同士、毎週殺し合いを続け、最後の一人まで絞る。
一回戦ごとに六日間、相手と戦う準備をする猶予期間(モラトリアム)が与えられ、
七日目に相手マスターと最終決戦を行い、勝者は次へと進み、敗者はご退場いただく、といった具合だ」
つまり最後まで勝ち続ければ、7週間でこの聖杯戦争は終わるってわけね。
言峰神父の説明は明確で分かりやすい。だけど――
「非常に分かりやすいだろ? どんな愚鈍な頭でも理解可能な、実にシンプルなシステムだ」
この人を食った様な態度はどうにかならないかな? いちいち癇にさわるな……。
「何か、他に質問があれば聞こう。聖杯戦争の監督役として、最低限のことを答える義務は等しく与えられるものだからな」
言峰神父って監督役なんだ……。あまり話して楽しい相手じゃないけど、あたしの記憶の事は聞いておかないと。
「ええと、あたしの記憶が戻ってないみたいなんですけど」
「なに?」
どうやらこの質問は予想外らしく、言峰神父は怪訝な顔になった。
「ふむ……少し、携帯端末を貸したまえ」
言われた通りに端末を渡すと、何やら操作を行いながらブツブツと呟き、やがて顔を上げた。
「なんともイレギュラーな事だが、どうやらシステムにエラーがあったようだ。
残念だが、今の所はどうしようもないな」
「そうですか……」
これで記憶が戻るかも、と期待してたけど、そう旨くはいかないみたい。
無くした記憶は気になるけど、今はこのまま聖杯戦争に参加するしかないかな。
「ああ、最後にもう一つ。本戦に勝ち進んだマスターには個室が与えられる。
マイルームに入るには2−B教室の前で携帯端末をかざしてみるといい」
「え、本当に? やったあ!」
思わず小躍りして喜んでしまったけど、私室があるのは重要なことだ。
そりゃあ、あたしだって女の子だから人前で見せられないものとか色々あるわけですよ。
「用が無いならもう行くといい。伝達事項は全て伝えた。明日より存分に殺し合うといい」
喜んでたあたしに水を差す様に、言峰神父は実に慇懃な笑みを浮かべて去って行った。
あまり人見知りしない性格だと、自分で思ってるけど……この人だけはあまり好きになれそうにないな。
言峰神父と別れた後、今日はもう休む事にしたあたし達は、用意されたマイルームに入った。
「これが…マイルーム……?」
目の間に広がる私室の内装を見て、つい疑問形で確認した。いや、まあ、別に豪華なものは期待してなかったよ?
最悪、机と座布団しかない四畳半の部屋とか覚悟していたけど……。
「これは個室じゃなくて教室だね」
隣で実体化したアーチャーがポツリと呟いた言葉が、マイルームの現状は表わしていた。
そう、与えられた私室というのは空き教室そのものだった。ご丁寧に机や椅子、教卓はそのままで置かれている。
「ま、まあ、作戦会議が出来る部屋があるというのは重要だからね」
「そ、そうだよね! 一応、広さは相当なものだし!」
アハハハハー、としばらく笑い合うあたし達二人。
「……模様替え、しよっか」
「……そうだね」
――こうして、記念すべき本戦出場の初めての夜は、教室の片付けに従事するのでありましたとさ。
投下終了です。
……うん、またなんだ。また説明会なんです。
次回こそ、次回こそアリーナに潜ってみせる……!
しかし残念ながら、筆者の一身上の都合で、次回の投稿は来月以降になりそうです。
更新を待って下さっている方、本当に申し訳ありませんがもうしばらくお待ち下さい。
一応、なの……アーチャーのマトリクスを制作中ですので、
そちらは今月中に投稿するかもしれません。
それでは失礼します。
wikiに登録しました。
投下乙でした!
どういう風に戦うのか、ゲームとどう違った展開になるのか、楽しみにさせていただきます。
あとマトリクスも。
月のひゃんっ!に濡れた
模様替えといっても某虎の贈呈品以外の選択肢が果たしてあるのだろうか?
更新、気長に待っております
GJ!
どんな殺風景な部屋でもレイハならなんとかしてくれる! …えーと、プロジェクター?
念話は可能なんだろか
カレイドスコープ、白い魔導師、両作者ならびに代理投下GJ!
>>374 きっとユーノっぽいナマモノくれるだろうな
カレイドスコープの小次郎はハサンから分離したようだけれど、一人なんだろうか
性質変化して、周りに伏兵がいたりしないかね
キャスターによる山門の加護を得ないならば、小次郎は純粋な剣士でしかない
魔法とか使われたら、対処しようがない
それとも、剣に付き合ってくれそうにない相手の前には、現れないか?
ハサン小次郎……超3Dザパニーヤの出番ですね
多重次元屈折現象で増えた3本の悪魔の腕が全く同時に相手の心臓を握り潰すわけだな
一本で充ry
三本だからいいんじゃまいか
三方向からの回避不可技
ここはあえて第四次で百人ハサン×3…!
燕返しって3本だから驚異なんではなく、それに至るほどの剣筋が驚異なんだと思うの
単純な剣速はセイバー以下だったのに、それを超えたスピードになって、切れ味も激しく上昇しているし
>>376 むしろ、百ハサンがみんな小次郎
シグナム「くらえ!音速火炎斬!」
小次郎A「ぐふっ」
小次郎B「小次郎Aがやられたようだな…」
小次郎C「ふふふ、奴は小次郎の中でも剣を振ることしかできぬ最弱」
小次郎D「魔法剣ごときにやられるとは、剣士の面汚しよ」
シグナム「くらええええ!」カリューイッセーン!!
BCD「「「無念!!」」」
小次郎E〜『よく来たな、ヴォルケンリッターシグナム…待っていたぞ…!!!!』
魁!アサシン塾
打ち切り決定!
「撲針愚」
これは別名「ピカレスク・マッチ」と呼ばれるもので
通常のグローブの代わりに鋭利な刺のついた鉄球を手につけて行なうボクシングである
その起源は古代ローマ帝国、残虐好みで悪名高い、かのネロ皇帝の発案にあるという
現在でも欧米などではマフィアなどが非合法な地下試合( アンダーグランド・バトル )
として興行し、莫大な利益をあげているといわれる。
ネロェ……
キャス狐可愛いが…なのはと組み合わせるには、前世的にくーちゃんとかだしたくなるw
PC版のなのはは15の時にクロノと肉体関係持ったんだっけか
TVとPCのなのはがSts時に入れ替わったらクロノにあって自分の旦那と間違え騒動が起きたり
死んでる筈の父親やアリサを見て卒倒したり色々イベントが考えられるな
理想郷にあったな
どうもです。
>>317 ご指摘感謝。 こちらの描写が分かりにくかったようです。
カリードマルシェ=「死徒二十七祖(予備軍含め)」の「予備軍」の方に入っていると解釈して頂ければ。
では二日目残りの祭部分。
前半後半に分けて投下します。
リゾートリリブラとはここら一帯のリゾート施設全般の総称である。
そしてこの三日間、旅館を初めとした温泉街のほぼ全てを、月村・遠野両家が大っぴらに貸し切っていた。
まさにマネー・イズ・パワー。
しかし当然、一般人が皆無というわけではない。
物流などで莫大な物資と資材が動く以上、全てを内々の者で賄う事など出来ないし
大口の顧客ともなれば地元の行商の稼ぎ時でもある。 自慢の産物や土産品を持参して商売に勤しむ者も多い。
今日も今日とて行商人達は客の集まる箇所に群がるように商売に精を出す。
夕刻―――
かなり大掛かりな祭が開催されると聞いた彼らが会場である神社に赴いた。
「きゃあああああああああっ!? むぎゅっ!!」
――― ズドン、ドシャ、ズシャアァァァァ!!!!!! ―――
そんな彼らを待ち受けていた光景がコレである。
「な、何じゃあっ!? 何が起こっただっ!?」
「そ、空から……水着のおなごが降ってきただよっ!」
どこぞより砲弾のように飛来した人間が目の前に墜落したのだ!
鈍い音を立てて地面に亀裂を作り、もんどりうって倒れ込んだのは……女、か?
平和な日本に暮らしていて目にする光景ではない。 否、紛争地帯でもまず見られないだろう。
地元民の狼狽を他所に、肩と脚線を惜しげもなく晒した女が弱々しく呻く。
「む、うう………不覚……教会騎士団のしめしが」
常識的にどう考えても致命傷の筈だが………
足取りがおぼつかないながらも身を起こし、彼女は境内へ戻ろうとする。
彼らとて馬鹿ではない。 この先で途轍もない事が行われている事くらい、肌で感じ取れる。
君子危うきに近寄らず。 無事に帰れる保証の無い所に嬉々として足を踏み入れるのは死の商人とトルネコだけで十分だ。
こちらに気づいたのか、ペコリと一礼をして再び危険地帯に赴く女。
その後姿を詮索するでもなく、ただ見守る地元民であったのだが―――
「………………ええ尻じゃあ」
「っ!」
思わず漏れたその声に、凛々しかった彼女の表情が羞恥に歪む。
顔をゆで蛸のようにボン、と赤らめ、露出部分を隠しながら―――
女―――シャッハヌエラは足早に境内に消えていった。
――――――
CHAPTER 2-5 千秋楽 ―――
「とぁらった! とぁらったぁ! これは名勝負よー! 立会いから全く動きを止めない両力士!
しかし瀕死山(四股名です)、相手の動きに着いていけてない!
ストライカーを翻弄するその勇姿! さながら土俵の魔術師と謳われた舞の海が乗り移ったかのようだー!」
「た、たらったたらった……速い。 スピードと小柄な体を十分に生かした取り組みだ」
ハイテンションな行事と物入りは、お馴染み大河とチンクのアナザータイガーコンビ。
お送りしているのは円形闘技場。 所狭しと駆け抜ける2つの影。
何をしているのか見紛う者はもはやいないだろう。
「ふえええええっ! 来ないでぇ!!」
筋骨隆々の力士に相対するのは小柄な少女。
彼女は人間離れした膂力と身体能力を持つ土俵の新星。
本編でヒロインになり損ねた分、角界に全てをかける。 その心構えは十分だ。
「違うもん! 遠野君に会いに来ただけだもんっ!
それにリメイクではちゃんと正式に私のルートが―――」
黄色のスクールセーターを羽織り、下は艶かしい御足を限界まで晒す少女。
その悲しい遠吠えはともかく、健康的な太股に見惚れようものなら瞬殺お陀仏間違い無しだ。
繰り出す百烈張り手は目にも止まらず、相手が土俵際まで吹っ飛ばされる。
「だ、旦那ぁぁっ! くそ……何であんなのが強えんだよ!?」
アギトの悲鳴が闘技場に轟く。 土俵と呼ばれる神聖なサークル。
己が肉体を武器に2人の神が技を競った日本古来の戦場だ。
「ピンチの時は助けてねって言ったのに………どうして来てくれないの……
嘘つき――――嘘つき――――お腹、空いた……」
「おーーっと堕ちていく! どんどん深みに堕ちていくぞ、ピンチ塚っ(四股名です)!
ダウナー系ここに極まれり! 深みにハマったらブレーキ知らずの大転落っ!
出るか!? 業界一、後ろ向きなあの必殺技がっ!!!!」
「ピンチ塚(四股名です)が何か仕掛ける気だ、ゼスト……!」
「ていうかその名前はイジメだと思うんですけどーーー!」
少女の抗議は保留される。
亜麻色の髪を振り乱す女力士、弓塚さつきの漏らした不満と――――その隙。
「取った! ぬあああああああっ!」
「ひっ!? きひゃーーーー!??」
それを突けない男ではない。 彼はかつて局内屈指のストライカー。
最強の名を担った、今なお技巧においては健在のベルカの騎士だ。
猫のように駆け回っていた少女の腰の注連縄を豪腕が捕縛。 そのまま上手に投げぬいた!
悲鳴と共に少女の体がサークル外に放り出され、頭から落着。
ゾリゾリゾリ!と地面を滑る小柄な体が今………力なく、ペタンと地面にへたり込む。
「上手投げー! 勝者、瀕死山ーーーーー(四股名です)!!!
一片の容赦無し! 少女力士が地面にめり込んだぁ!
そのアークドライブは角界に旋風を巻き起こす事叶わず! またもヒロインになり損ねましたー!」
「切り札を出す前に潰された……この戦い、タメの長い技は出せないと見て良いな」
「むふう……固有ルートを望む心は個人的にヒジョーに分かるだけに
残念な結果に終わったといえるわねー! まあ、100年くらい待てばあるいは、ね」
「そんなに待てないもんっ!!」
悲哀のヒロイン(候補)を尻目に勝ち名乗りを受ける騎士ゼスト。
上気した鋼の肉体を誇るでもなく、粛々と土俵を降りる。
その際、審判である眼帯の機人と目が合った。
「おめでとう。 良い勝負だったぞ」
「……………そうか」
かつて自分を仕留めた相手に健闘を称えられる。
そんな奇妙な縁に苦笑するでもなく、ゼストは応援席で心配そうな顔をしている仲間の元へと戻るのだった。
「ゼスト……平気?」
「ああ、何とかな」
「それにしてもあの行司! 縁起でもねえ名前つけやがって!」
アギトがタイガー行司を敵意剥き出しで睨み付ける。
「若いが良い闘士だった。 命を削ったフルドライブで何とか勝ったが……」
「ちょっ! こんなもんで命削らないでくれよ!」
「そう言うな……この体では、あのレベルには到底、届くまいが」
心配そうな表情を向けるルーテシアにアギト。
騎士は柔らかな微笑を向け、異様な熱気に包まれつつある東方へと目を向ける。
あそこではもはや人語に表せぬ激戦が繰り広げられているのだろう。
かつての自分ならば、と惜しむ気持ちはあるが詮無き事だ。
今はこの背中を押してくれる同志の期待にのみ答える者でいよう。
「ベルカの騎士ゼスト……せめて、もう一花咲かせよう。 続けて行くぞ!」
「さあ、瀕死山(四股名です)の2人抜きなるか!?
病魔に蝕まれた体は蝋燭の最後の輝きの如く狂い咲き!
この漢に続けて挑む者は名乗り出よッッ!!」
「さつき、泣かないで……私が仇を取るから」
「リーズさん………うう」
対するは路地裏同盟一の男前。 仲間として果たすべき仁義がある。
相手は元Sランクのストライカー。
本来なら太刀打ち出来る相手ではないが―――
「名乗り出た! 名乗り出たのはピンチ塚(四股名です)の盟友!
え、と……男女っ(四股名です)! 物乞い同士の熱き友情!
次戦、死にぞこないVS死にぞこないの血みどろの戦いが繰り広げられるーー! 胸熱っ!」
「酷いな……この行司」
「気にするな。 祭の喧騒など、どこも似たようなものだ。
今はただ目前の好敵手にのみ意を注げば良い」
「真面目な人だね。 でも融通の利かない気質は嫌いじゃない。
しかし生まれて初めてだよ―――こんな女の子らしい服装に身を包むのは……機能的で良い感じだ」
「故に浮き彫りになる、苦行により極限まで絞り込まれ、鍛え上げられた肉体。
相手にとって不足無し……推して参れ!!」
「ああ――――行くよ」
行司の手が振り下ろされ―――
互いの蹴り足が大地を抉り、双方の張り手がクロスし、相手の頬をブチ抜いた!
――――――
「ス、モウ……」
カタログを読みながら呟いたのはティアナランスター。
各土俵に 「奈須千秋楽―――大相撲」 と銘打たれた垂れ幕が見える。
その下で鍛え抜かれた肉体と肉体が激突し、凌ぎを削る。
日本の伝統文化にいまいち理解の及ばないミッド生まれのミッド育ちである彼女。
ただでさえ教導で疲労の溜まった面々も多いというのに、この上、肉体労働を重ねるのは如何なものか。
「ていうか親交を深めようと開かれた交流会の割には
旅行先でも争ってばかりなのよね……私達」
「何の! 闘いはセッ○○以上のコミュニケーションだって強い人が言ってたっっっ!!!」
「へあっ!?」
ゆうに100mは離れていようかという行司からの、まさかのレス返し。
「ししょー。 ○ック○とは何だ?」
「夕餉の席でお父さんに聞いてみると良いっ!」
「了解だ」
「何なのよ、もう……」
まあ百歩譲って催し自体はいいとしても、だ。 形容しがたいほどに問題なのはそのユニフォーム。
男性は上半身裸で、マワシと呼ばれる薄生地で局所を覆っただけの格好。
そして女子は極限まで食い込んだ白のレオタードに、腰に注連縄を締めた、これまた極限軽装の出で立ち。
(そういえばナンバーズも夜店で似たような格好をさせられてたけど……)
季節外れの白スク水がどう考えても不自然な普及を見せている。
誰かが水面下で広めているのか? 邪な陰謀をひしひしと感じる。
ともあれ今、結果として半裸の男女が組んずほぐれつ近接戦闘をするという
信じ難い祭が目前で展開している。 冗談ではない……セクハラだ。
「………誰よ? こんな卑猥な祭を考案したエロ河童は?」
「私です」
「ひええっ!? カカ、カリムさん!?」
愚痴るティアナの横に、いつの間にか正座していたカリムグラシア。
何を隠そう、彼女が祭の発案者にして実行委員長である。
「お叱りはごもっとも……敷居の高い催しになってしまった事は否めません」
「いや、あの、違うんです! 斬新過ぎて凡人の私にはちょっと理解が及ばないなぁってだけで!」
全身から冷や汗が噴き出す。 しどろもどろに答える執務官補佐である。
彼女は部隊長、八神はやての更に上に位置するお偉方だ。
怒らせたら自分の首など一瞬で吹き飛ぶ。
「いいのですよ。 些か強行軍になってしまったのは事実ですから」
カリムは気を悪くした様子もなく柔和な笑顔で答える。 助かった……
「相撲とは、この地に根差した神道に基づいた儀式。 奉納祭の起源でもあると聞き及んでいます。
また優れた武芸でもあり武術でもある。 此度は数多の世界から集った武人も多いので……
二日目の締めに最も相応しいものと判断し、敬意を表して企画した次第なのですが」
――――――
「――――で? これはどういう事だ、2人とも?」
境内に最も高く居を下ろすのは神棚だ。
設けられた席に座り、青年は不快極まりない様子で尋ねる。
彼の両脇には女性が2人。 その片方が実行委員長のカリムと目配せをして何事か合図をする。
「どういう事も何も無いでしょう? これは奉納祭ですから。
納め奉る神様がいなくては話になりません」
「いや、だから……俺、いつから神様になったの?」
「神様というか、それっぽいナニというか……よく先方が納得してくれましたね?」
「納得? 詳しく話さなかっただけですよ。
向こうさん、未だにコレが本気で神様と信じているようです。
面白いから放っておこうかなと」
この女は………、と護衛役のバゼットが頭を抱える。
立会いの度にそこら中から聞こえる、杭打ち機が炸裂するような音。
ああ絶景かな超人相撲。 己が肉体を拉がせて神への感謝を表す彼ら。
しかしながら捧げている相手はアレなソレであり―――
聖なるモノに労を捧げる儀式と信じ頑張ってるあの人たちが
真相を知ったら果たしてどうなる事やら。
「血生臭いのは勘弁してくれよ……せめて女の子の参加者の安全をもう少し考慮してだな」
バレたら洒落で済ます気か? あんなに人が飛んでるのに?
全身に不可解な文様を刻まれ、赤い装束を纏ったカミサマがぶつぶつ文句を言っている。
「局側は体表面を覆うフィールドの使用が許可されています。
レガースやブーツ、頭部やショルダーパーツなどの防具も可。 十分かと思いますが?」
「あの連中を相手に真っ当な防具がどこまで役に立つのやら……
とにかく危なくなったら即、中止にするからな?」
「あれだけ頑張って労を貢いでいる人達に失礼な物言いですね。
貢物の価値を決めるのは偏に受け取った者の心根よ?
貴方はカミサマらしく、血ヘド吐いて戦う大衆に舌鼓でも打って喜ぶ義務を果たしなさい」
奉納祭というかサバトじゃないか……
そんな青年の呟きは意図的に無視される。
「その皮肉、やっつけ具合―――ほどよくクソッタレだぜアンタら。
なら、せいぜい俺を満腹にさせるようなゴキゲンな血ヘド祭ってやつを見せてみなよ」
もうヤケだ……戯れた笑みを浮かべる彼。
神どころかその実、全く逆のモノとして祭り上げられたとあるサーヴァント。
士郎演じる退廃の面持ちは―――紛れも無い 「この世全ての悪」 だった。
――――――
そんな祭にスバルは只今、絶賛ノリノリ参加中。
「おら気合入れろスバル! そんな膂力じゃ到底、救助隊の任務なんて任せられんぞーー!」
「「「 SOSっっ!!!!! SOSっっ!!!! 」」」
「押忍ッッ! ぬおりゃああああああーーーーー!!!!!」
………楽しそうだ。
最前列で激を飛ばしているのはヴォルツ司令だろうか?
新しい部署に配属されたスバルが随分とお世話になっているとよく話していた―――
そんな親友を見ると、レオタードの上には防災救助部隊の制服を模した黒のジャケット。
まわしを取り合う競技上、ウェスト周りを隠していない事を除けば普段のBJとそう変わらない出で立ちだ。
なるほど、コーディネイト次第ではちょっとイケてるかも知れない。
「あの格好でさえなければ私も出場してみようかなーって思ったんですけど」
「おや? フェイト執務官の直属ともあろう方が、露出に臆するとは意外ですね?」
…………さらっと失礼な事言った、この人?
というかフェイトさんってやっぱり他からそういう目で見られているのか……
「初めは男性力士との公平性を重んじて女子もまわし着用。
上はサラシという発案だったのですが、シャッハ他多数の女性参加者の猛反発に合いまして」
「当たり前です!」
「あくまで神聖なる儀式なのですけどね……」
シュン、と落ち込むカリム。 どこまで本気なのか分からない。
そして今、そんな2人の頭上の遥か上――――
何かが凄い勢いで飛んでいく!
「せ、聖王騎士団に栄光あれーーーーーーーっ!」
ノーバウンドで滑空し、柵越えを果たす物体。
断末魔をあげるそれが人型の何かであり、紛う事なき人間だと理解出来るまで数秒。
「シャッハさーーーんっ!!!!??」
「シスターシャッハ……貴女でも及びませんか。
どうやら、こちらが圧倒的に旗色が悪いようです」
そこら中で交通事故が起こっている。
人が飛んでいる。 ハネられている。 舞っている。
辺りを見回すと流石に教導に携わっていた者は出ていないようだが……
何にせよ、阿鼻叫喚の大相撲千秋楽。
神事と言っていたが、本当に誰かが天に召されないか心配だ。
大丈夫なのか? これで労災が降りなかったらストライキものだろう。
「………! スバルッ!?」
そしてそこに視線を戻したティアナが息を呑み、目を向けると同時――――
――― ごしゃ!! ―――
鈍い音が響き渡るっ!
――――――
「ふわーーーーーーっ!!?」
恐ろしい風圧がティアナの髪を掻き上げた!
自身の横スレスレを地面と並行に、親友が通り過ぎていったのだ!
「………っ!?」
今さっきまで土俵上で奮闘していたスバルが観客席の奥まで吹っ飛び、弾丸のようにフェンスに激突した。
そしてコンクリのフェンスまでもぶち抜いて瓦礫に埋まる。
何というか―――歪な飛び方だった。
四方八方から力を加えられたピンポン球のような……
「ちょっとアンタ!? 平気っ!? 生きてるっ!?」
血相を変えて駆け寄るティアナ。
「…………………い、痛い」
レガースもジャケットも粉々のボロボロだ。 首があらぬ方向に向いているのが、とにかく目に優しくない。
口元を初め、露出の多い衣装が更に破けて、下に覗く素肌の至る所が痛々しく腫れている。
「■■■■■ーーーーーーーーッッッ!!!!!」
口惜しそうにスバルが見据える先―――
土俵の上で今しがた彼女を叩きのめしたモノが吼え猛る!
「軍神五兵<ゴッドフォース>幕内Ver.――――
相手はなす術なく粉砕されるのみです……ご自愛を」
言ってスバルにバンドエイドを投げてよこすマスター、ラニ[。
「呂布が出たぞーーーーーーーー! 愛陳宮(四股名です)完全勝利っ!
音に聞こえし方天画戟の破壊力を体で再現した撃滅奥義! キン肉マンだよ、この人!
ゆで理論を体現した奴に初めて出合ったその感動! 行司は涙が止まらないーー!」
「ぶちかまし、喉輪、突き押し、足払い、だし投げの五つを同時に叩き込む複合技……
5方向から来る5つの加撃が見事に繋がった……スバルは大丈夫だろうか?」
「だ、大丈夫なわけない…………関節が完全にガタガタだよ……」
「苛苛苛―――ッ! ぬしには少々、荷が重い相手であったな」
バーサーカー―――真名は大陸最強の名を欲しいままにする無双の武人。
魔拳士をして場合が場合ならば一戦交えたいと言わしめる英霊だ。
三国時代における無双の体現。 相対しようと容易に考えるだけでもおこがましい。
「中華の武技は奥が深い。 速力、膂力は十二分に足りているぬしだが、如何せん正直過ぎる。
常に真正面から当たるだけでなく、搦め手も覚えねば百戦百勝とは相成らんぞ?」
「挙句、いみじく姿を消しての一撃狙いですか? コソ泥と同じですね。
武道家としてどうなのよ?って話です」
スバルと重なるように言葉を紡ぐキャスター。
声色を似せると本当にどちらが話しているのか分からない。
「中華の武だか何だか知りませんが、あんなのにあっさり負けちゃうなんて
ミッドチルダの拳士とやらも大した事ないですねぇ」
「ほう―――ほざく。 貴様にあの三国無双を転がせる秘策があるとでも?」
「当然。 朝飯前の油揚げです、あんなの」
「ええー? ウソだー!」
「出来ますー! あんなの私にかかれば1秒ですー!」
「無理無理無理だって! 半端な強さじゃないんだから、あのバーサーカー!!」
珍しくキャスターに食ってかかるスバル。
只でさえ徒手の攻防はパワーで劣る女性が男性に勝てる要素は少ないのだ。
隊長陣を含めた6課勢の中でも、このルールでサーヴァントに当たり負けしないのはスバルくらいのもの。
だからこそ彼女は体力で劣るキャスターの言葉に到底、頷けない。
「ふん……仕方ありませんね。 実演しますから犬系、ちょっとそこに立ってくれません?」
「……? ええ、と……こう?」
そんな彼女をギミックとして立たせるキャスター。
あの英霊を瞬殺するとまで豪語する狐の秘策。
ファイティングポーズを取りながら、スバルはとても興味津々だ。
「まず立会いがこうじゃないですか? 相手がこう来ますよね」
「うんうん!」
「こうして、右四つに密着しますよね? 相手も負けじと押し返します」
「うん、と……でもそれじゃ力負けして寄り切られちゃうんじゃ?」
「はい黙って。 そしてこう相手のマワシを下から掴むフリしてですね…………
死角からこう、ぐしっ、と―――――」
しかして――――――
「えっっ!? ひゃあっっっっっ!!!!!???」
キャスターと組み合った状態にてギミック・スバルが甲高い悲鳴をあげる。
彼女の腰が不自然に跳ね上がり、そのままカクンと落ちかかるその下半身。
何とか踏ん張って、タマモにしがみ付くように残して見せる彼女であったが―――
「ほら、ラクショー♪」
「…………!!!!!???」
期待満面だったスバルの表情が次第に青くなっていくのは多分、恐怖から。
目の前にある狐の顔。 その笑みをスバルは一生忘れない。
口元が歪に裂けた――――般若さながらのその笑みを。
「だ、駄目ーーーーーーーーーっっ!!!!!
タマモさん、お姫様なんだからそういう事しちゃダメーーーーーっっ!」
「勝ちゃいいんですよ、勝ちゃ。 ちなみに本当なら、ここで手から密天が。
あ、吸精もいいですねぇ………ぐふふふふふ♪」
「はひぃ…………っっ!!!」
何だ、この修羅の生き物は? 宮廷皇女の面影が微塵も無い。
技の詳細は深く記すまい……最低最悪の「裏技」とだけ言っておこう。
確かにこれなら1秒であいてはしぬ。 相手が男なら尚更に。
「何かと思えば………クハハハ! 浅慮なり狐!
中国の武には既に急所を体内に隠す術など確立済みよ!
貴様らのいる地点など我らは1000年前に通過しておるわ!」
「に、にゃにおうーーっ!!!」
「あ、あの……タマモさんっ! そろそろは、離して……ッ」
「だあああああっ、うるさーーいっ!! 注目されてんでしょうが!!
恥ずかしい事を大声で喚き合うじゃないっ!!!!」
「まあ冗談はさておき―――攻略法はありますよ。 マジで」
――――――
「楽しそうねぇ……ティアナ達」
お騒がせ4人組がいる土俵の方角―――
ラニ・バーサーカーの鎮座する東部屋最南端のサークルを見つめるシャマルである。
幕内力士の跋扈する殺劇空間の只中で、次々と撃破されていく局側の力士達の救護に大忙しだ。
「ておああああああーーーッ!!!」
そして東部屋西側では―――
凍てついた空気を切り裂く雄叫びが上がる!
諸共に褐色の力士の放った飛び蹴りが敵に叩き込まれたのだ!
「これは凄まじい! 闘犬竜(四股名です)のジャンピングケンカキックーーーーーーー!!
骨をも砕けよとばかりに放たれたカカトが相手の顔面に炸裂ぅーー!」
「………我は狼だ」
「モロに蹴ったな……あれはルール上、OKなのか?」
「んー、いいんじゃない? どうせマトモな相撲で収まるような連中じゃないし」
身も蓋も無い。 プロレスか。
あと、この行司は瞬間移動でも出来るのだろうか?
さっきまでスバルとラニ・バーサーカーの試合を仕切っていた筈だが……
「………ぬうっ!」
渾身の蹴たぐりを叩き込んだザフィーラが息を呑む。
敵は―――まるで揺るがなかったのだ!
盾の守護獣の一撃を、まるで蝿でも止まったかのように払いのける。
(この程度の攻撃では勝機は無い……分かっていた事だが)
敵が「コレ」である以上、まともにやって勝つ術は無い。
とうに理解していたのだ。 ならば今こそ、温めていた秘策を出す時っ!
「行くぞ! 鋼の猫だまっ……ぐはああっっ!?」
ゴチャリ、と肉の潰れる音がした……
「ぬおおおおおあああああっ!!!?」
相手力士の突っ張りがカウンターでヒット。 やたらと渋い悲鳴をあげて飛んでいくザフィーラさん。
その体が吹き飛び、壁のシミになる寸前で―――シャマルの風の防壁が展開し、見事に受け止められる。
「ぐう………す、すまん」
「気にしないで……やっぱり貴方でもどうにもならなかった?」
「己が無力を恥じるのみだ」
守護騎士が見上げる視線の先―――
「■■■■■ーーーーーーッッ!!!!」
ザフィーラを一撃で葬り去った巨人の雄叫びが大地を揺らす。
「ふうん……殺しちゃ駄目っていうルールが正直、一番の枷だと思っていたけれど
これくらいの力なら十分、耐えてくれるんだ。 だんだんコツが掴めてきたわ」
雪の少女の酷薄な笑みが敗者に注がれる。
そして佇む、言わずと知れた最強のサーヴァント。
イリヤスフィールフォンアインツベルンのバーサーカー!
キャロとの話ではないが、このイベントにかける少女の意気込みは本物だ。
狙い打ったかのように投入してきた切り札は文字通り無敵の横綱!
「おーい弟子1号〜!」
行司がイリヤにぶんぶんと手を振っている。
あからさまにうんざりした表情を向けるイリヤ。
「景気はどうかね、キルビル?
紹介するわ! こちら、アナザータイガー道場の弟子2号!
どこぞの不肖の弟子とは似ても似つかぬ、素直でデキた門弟よ!」
「お初にお目にかかる、姉弟子。 これが噂のバーサーカーか……壮観だな」
「つうか違和感無さ過ぎ。
完全に土俵に溶け込んでるよ、このギリシャ人……マゲ結いてぇー」
「鬱陶しいわね……いいから、あっち行ってなさいよ」
「しかし残念だったわー、闘犬竜(四股名です)!
犬の猫だましとか小洒落たフェイバリットホールドを披露してくれましたが
理性の無い狂戦士にはギャグも届かなかったか! 着眼点とユーモアは買うんだけどねー」
「………我は狼だ」
既に死屍累々を築き上げているイリヤ・バーサーカー。
アレと素手で取っ組み合いをするなど無理ゲー過ぎる。
坂田金時でも連れて来なければ話にならないだろう。
「では行司は他を仕切らねばならぬ故、またなっ!
相手を殺すんじゃないわよ弟子1号!」
「姉弟子……また」
ペコリと頭を下げる機人と藤村アバターな行司。
ふんっと鼻を鳴らす少女であったが、それにしても―――
「目障りね……あっちと……あっち。
私のバーサーカーだけで十分なのに……」
幕内の最南端と、中央の方角を見てイリヤが舌打ちする。
特に陣の中心に位置する、あのうっとおしい奴を
少女は忌々しげに、殺意すら込めて睨み付ける。
その瞳は―――まるで聖杯戦争を戦うアインツベルンのマスターが戻ってきたかのようだった。
――――――
「ねえ、なのはママは出場しないの?」
「ママは砲撃戦しか出来ないからね。 こんなのに出たら潰されちゃうよ」
クリクリとよく動くオッドアイが尊敬する母親を見上げている。
苦笑交じりで少女の頭を撫でる母。
高町なのはと高町ヴィヴィオ、親子で祭を観戦中だ。
「そ、そんな事ないよ〜! ママは世界一強いもん」
しかしなのはの今の言葉には頬を膨らませて反論する娘である。
ヴィヴィオにとって、なのはは誰にも負けない一番のママなのだ。
口では謙遜しているが、戦えばどんな相手にだって負けない筈だ。
時間が合わなくて二日間、母親の教導をロクに見る事が出来なかった。
だから今夜は、強いママの勇姿が見れると期待していた少女であったのだが……
「ヴィヴィオがもう少し大きければなぁ……」
呟く少女。 幼い彼女の目にも局側が劣勢なのが分かる。
なのはやフェイト要する機動6課はこの娘にとって謂わば我が家だ。
出来れば……否、絶対に負けるところなんて見たくはない。
「ママ……ヴィヴィオも早くママ達と肩を並べて戦えるようになりたい」
「…………」
この言葉は最近の少女の口癖となっていた。
彼女は何時しか、母親の大きな背中を殊更、意識するようになり
自分もいつかママに負けないくらい強くなりたい、ママに戦い方を教えてもらって肩を並べて戦いたいと夢に見て
それを仄めかせる言葉を口に出すようになっていた。
「早くママの教導を受けられるようになりたいな」
「ママの教導は主にセンターやバック主体のものなんだよ、ヴィヴィオ。
近接戦に特化したものではないから……専門的な事は騎士の皆に教えて貰おうか」
「えー! ママがいいなぁ……ママに教えて貰いたい!」
「ふふ……そうだね。 でも、効率を考えたら
スバルやノーヴェに教えて貰った方が断然強くなれるから、ね」
それは傍から聞いていればもっともな理屈であっただろう。
だけど何時しか、なのははこうしてヴィヴィオの言葉をはぐらかすような物言いをするようになっていた。
普通の子供なら流してしまうほどの、母親の小さな戸惑い。
この娘は聡明だった。 親の心情を解さないほど向こう見ずではない。
「…………」
なのはのその腕から逃れ、トテトテと丘の方に駆けていくヴィヴィオ。
「ヴィヴィオ? どこへ行くの?」
「おトイレ」
「そう……気を付けてね」
少女は肩を落として振り返りもせずにいってしまった。
落胆させてしまったのだろう……チクリと、その胸が痛む。
「何だ? 喧嘩でもしたのか?」
そして―――娘と入れ替わるように新たな人影が現れる。
「式……ううん、何でもないよ」
両義式と―――その横に黒髪の利発そうな女の子の姿がある。
着物の少女の右手をガッチリ組んで離そうとしない女の子。
されど仲が良いようには見えない。 黒々としたオーラが2人の間に渦巻いているようだ。
「紹介するよ……鮮花だ。 さっき、お前んトコの店で捕まった」
「黒桐鮮花です。 変態女が破廉恥な事をしないかと、お目付け役として同行しています」
ペコリと頭を下げる鮮花―――――黒桐?
黒桐幹也と何かしらの関係があるのだろうか?
そういえば昼間、鬼のような形相で館内を駆けずり回っていたっけか。
「そういうお前も兄貴に欲情する変態じゃないか」
「え……お、お兄ちゃんと……?」
聞いたなのはが目を白黒させる。
「否定はしませんが何か? 但し欲情とは心外だわ。
殿方を混浴に連れ込もうとする女が他人を変態呼ばわりとか、ヘソで茶が沸くわよ実際」
「既に人目もはばからずか………お前スゴイな。
なあ、なのは。 お前も確か兄貴がいるようけれど、ねんごろになりたいとか思った事ある?」
「あ、あはは……」
歴戦のエースの目が泳ぐ泳ぐ……
確かに兄、恭也は文句無しにカッコ良い。
幼少の頃は世界一ハンサムなお兄ちゃんのお嫁さんになりたいとか思った事が無いといえば―――
「人それぞれじゃないかな」
下手な事を言うと自爆しそうだ。
この件はこれ以上、首を突っ込まない方が良いだろう。
「シケた解答だ。 教官ならビッとした答えを示さないと生徒に舐められるんじゃないか?」
「ごめんね……教導隊では恋愛相談は受け付けてないんだ」
「そうか。 ところで、さっきの娘は親戚か何かか? 妹って感じじゃ無かったが」
「ううん、私の子供」
………………………
………………………
歯切れの悪いなのはに別の話を振っただけの事。
それくらい何の気なしの質問だった。
………………………
………………………
対して返ってきた答え。
2人は歯切れが悪くなるどころではない。
完全に絶句である。
「――――そうか……………子供か」
絞り出すように紡いだ式の声。
後ろでパクパクと口を開く鮮花。
「え? だ、だって……なのは教導官って確か20歳前後の筈ですよね?
あの娘、どう見ても5、6歳は超えてて……」
「おい、どうするんだ? 凄絶極まりないレベルの違いを露呈しただけじゃないか。
すくすくと子育てまでやってる相手に近親相姦どうですか?って、馬鹿か俺たちは」
「だから相姦とか言うな! 私は貴方と違ってプラトニックに攻める予定なの!」
盛大な誤解をしているのだろう。 いつもの事だ。
養子という事は掘り下げればすぐに分かる事。
反応が面白いので暫く放っておこう。
「おかしいと思ったんだ。 お前、年齢よりも遥かにババ臭いもんな」
「あはは……女の子っぽく無いという点では式も相当だよ」
「ふうん…………子供、か」
真面目な顔で何かを思案する両儀式。
眉間に皺が寄るほどの考慮はこの少女をして珍しい。
「式ッッ! アナタ今―――ダレとの子供を連想してるんですか!?」
「痛いぞ、爪を立てるな。 まだ何も言ってないじゃないか?」
「でも…………結構、重いよ?」
なのはの口を突いて出た言葉に、じゃれ合っていた2人の動きがピタリと止まる。
「っ………」
その失言にハッと口を押さえるが、もう遅い。
真摯な表情でこちらを見据える式と鮮花の視線。
居心地悪そうに、1児の母は溜息をつく。
「重荷―――煩わしいという事ですか?」
「まさか」
それには1も2も無く否定するなのは。
「あの子の存在は私に新しい幸せの……夢の形を教えてくれた。
誓って煩わしいなんて思った事は無いよ」
「それじゃ、何が?」
「…………」
そう――――初めは我武者羅だった。
娘の期待に答えたくて、事実、力の限り答えてきた。
あの娘の前では何時だって強い自分でありたかった。
ヴィヴィオに良い所を見せる。 ヴィヴィオが自分を見て笑ってくれる。 それが生き甲斐になった。
恋愛をはじめ、人並の女の子の幸せを放棄してきた空バカの自分が初めて手にした「当たり前」の幸せ。
浮き足立っていたのだろう。 舞い上がっていたと言っても良い。
―――だけど、いつしか抱くようになった……迷い。
少女の中でスーパーマンになってしまった「自分」に対する疑問。
子が親に向ける崇拝と尊敬は、民が英霊に向ける信仰に匹敵する。
自分を唯一絶対の存在とし、自分を指標に世界を見て、自分の背中だけを追い求める娘。
本当にそれで良いのか? 欠点も至らぬ所も山ほどある、こんな自分を盲信させたままで。
自分をただ追い求め、目指すような人生を娘に歩ませて―――
「あの子の進むべき道を考えると、それだけで不安になる……平静でいられなくなるの」
責任に押し潰されそうになる。 何よりもかけがえの無い娘………だからこそ迷う。
自分の事ならば迷い無く進めるなのはが、娘の事になると途端に弱気になってしまうのだ。
ことに高町なのはが歩んできた道は普通とは懸け離れた道である。
果たして少女にそれと同じ道を歩ませる事が幸せに繋がる事なのだろうか?
なのはは思う。 自分が魔法使いの道を歩むと言った時―――
お父さんとお母さんは同じような葛藤に苛まれたのだろうか? これほどに苦しくて不安だったのだろうか?
ならば改めて尊敬してしまう。 その不安を押し殺して、自分に好きな事をしろと言ってくれた事を。
自分なんて本当のどうしようもない……情けない。
今ここに娘がいないというだけで、これほど心配で居たたまれない気持ちになってしまうというのに。
「お前―――――本当に母親なんだな」
「……………」
式が口にしたのは単刀直入な感想だった。
「それは親が子に抱く感情として、まったく正しいものだと思うぞ。
いやホント大したものだ……俺みたいな人でなしがお前に言える事なんて何一つ無い」
おおよそ珍しく、少女は今、本気で他人を尊敬している。
バスで話をしたのは、強大な魔力で敵を薙ぎ払う魔導士高町なのは。
だが自分と近しい世界に身を置く筈の人間が今見せたのは、全く自分と異なる一面だ。
それに式は目を細めずにはいられない。
「お前を見てると俺なんか、デキても到底、育てられそうもないよ。
育児、教育共に全任かな――――――――――アイツに」
「くおらぁぁぁぁぁぁぁあああああああーーーーーーーーッッ!!!!」
「乳母はお前か。 ヘンな事教えるなよ……て、痛い! 痛いってば!」
ゴロゴロと原っぱで取っ組み合いを始める式と鮮花を残し―――
「ごめん……ちょっとヴィヴィオを探してくる」
なのはは娘の駆けていった方へと向かうのだった。
――――――
「アインス、しっかり! スピードで掻き回すですっ!」
局の本命の1人であるザフィーラの敗北。
そして今、この土俵では6課要する横綱の登場だ。
影すら踏ませずに疾る黒い疾風。
漆黒のイメージと懸け離れた純白のバトルスーツが、彼女のアンバランスな魅力を醸し出す。
此度はルール上、地上での戦いを余儀なくされていた。
しかし無敵の翼を封印され、それでも祝福の風は強かった。
「1度は言ってみたかった台詞を言うわよ!
じじじ、実況が追いつかなーーーーーーーーーーい!!!
闇雑誌(四股名です)! 土俵内に言葉通りの暴風を巻き起こすーー!!」
「お前も私を闇の書と呼ぶか……」
「アインス! 余所見しないで! 危ないですぅ!」
そんなリィンフォースの胴を―――ゴォウ!と、丸太のような腕がかすめた!
地に沈むほどに低く潜り込み、その懐に入ったリィン。
渾身の突き押しが敵の分厚い胸板に叩き込まれる。
しかし10tダンプすら吹き飛ばす彼女の仕手は……相手を揺るがす事もかなわない!
「■■■■――――ッッ!!!」
敵の咆哮が奈須の山々を震わせ、そこに住まう鳥達を一斉に飛び立たせる。
「強いねお姉ちゃん――――まさか、この子と普通に遊べる人が存在するなんて思わなかった。
ジャバウォックも喜んでるよ………私もとってもとっても楽しいな♪」
「もっと楽しみましょうワタシ。 もっともっと遊びましょうアナタ。
命賭けの鬼ごっこ――――大変! 捕まったら羽をもがれちゃう♪」
酷薄なる2人の少女が背中合わせに言葉を紡ぐ。
鏡写しのマスターとサーヴァント。
彼女達が作り上げた世界の住人―――赤熱の巨人ジャバウォック。
「……ししょー。 あれ、地面と同化してないか?」
チンクの指摘はごもっとも。
土俵の中央で大木のように根をはり、サークルアウトを頭から拒否する不動のチート。
その圧壊の力を無造作に、無尽蔵に振るい続けるだけで土俵内の隅までを薙ぎ払う。
「おい、反則じゃねーかっ! そんなもんにどうやって勝てってんだよ!?」
「怒ってるの? 小さいお姉ちゃん? 恐いわ……夢の世界に境界なんて存在しないのに。
みんな自由に、楽しく跳ねて遊んで、どこへだって辿り着けるのよ?」
「だからそういう事を言ってんじゃなくてっ!!」
ヴィータの叫びが空しく響く。
両者のサイズ差は明白。 巨人の両手が間断無く、リィンを捕縛するために放たれる。
だが巨人はわざわざ注連縄を掴むのでもなく四つに組む必要も無い。
その掌は無造作に彼女の肢体を鷲掴みにし、握り潰せるほどに巨大で凶悪なのだ。
もはや相撲にならない。 不思議の国の住人はルール無用のアウトロー。
恐ろしい魔手を避け続けるアインス。 銀髪が風圧ではためく。
鉄砲突き(もはや大砲突きだが)を紙一重でかわし、外側に回りこむ。
そしてジャバウォックの右手を脇に抱え、閂に決めて投げを打つアインス。
「………ふっ!!」
ギチリ!!!!!、という凄まじく鈍い音が場に木霊する。
それはアインスの馬力と巨人の圧力が鬩ぎ合った音。
土俵そのものを浮かび上がらせかねない、100万馬力同士の立ち合いだ。
だが――――巨人の腕は折れない! 持ち上がらない!
リィンの閂が力任せにふりほどかれる!
すかさず跳躍し、敵の頭上に身を躍らせるアインス!
氷上のスケート選手のように空中で10回転半!
その遠心力ごと巨人の側頭部に蹴たぐりをぶち込んだ!
雷属性のオマケ付き。 夜天の雷が巨人の全身を貫く!
そして空中で軽やかにトンボ返りをして着地した彼女が―――敵の打倒の有無を確かめる。
…………が、さして時間を要するまでもない。
「ウ……ウソですぅ……あれを食らって」
ツヴァイの茫然自失の表情が結果の全てを物語る。
その渾身の一撃ですら、雄大な巨体が全く揺らいでいない事を認めざるを得ないリィンフォース。
「土俵の外に押し出せねえ……攻撃も効かねえ……どうしろってんだっ!」
(手応えが無い……奴の……奴の弱点となる属性は何だ?)
その名は娑婆王(四股名です)。 東部屋中央に君臨するチート横綱。
コレと立ち合った他の挑戦者がどうなったかなど答えるまでも無い。 悉く、10を数えぬうちに砕け散っただけだ。
リィンだからこそ接戦を演じられているが、このままでは一生、決着を見ることは無いだろう。
あのヴォーバルを蒐集していなかったのが祝福の風の不運。
どこかで勝負に出なければジリ貧だ。 故に、かくなる上は―――――
「夜天の猫だまっ………ぐっっ……ッッ!!」
振り下ろされたハンマーナックルの直撃を受けるリィンフォース。
「お前もかーーーーーーーーーーーー!!!」
行司が突っ込みを入れる。 均衡はあっさりと崩れた。
プレス機のような、ジャバウォックのはたき込み―――
隕石を受け止めたかのような重圧だった。
衝撃で空気が爆ぜ、足腰の弱い客から順に吹き飛ぶ。
あまりの威力にリィンの両足が膝の下にまで土俵にめり込んだ!
己が失敗に臍を噛むも既に遅し。
横殴りの突き押しが今度こそアインスの細い体にクリーンヒット!
「………っっ!!!」
ドキャンッ、!!!!!!という高質量の鉄鋼同士が激突したような快音。
砲弾のように吹き飛ぶリィン! 悲鳴をあげる蒼天の妖精!
咄嗟に羽を広げて受身を取ろうとするアインスであったが―――
「……………!」
飛行がルールに抵触する以上、この羽で出来る事はもう無い。
このまま飛ばされたらフェンスを越え、塩原山の頂上まで吹き飛ばされていただろう。
「ああ、もう! この馬鹿野郎がっ!」
だが彼女を宙で拾い上げたのはヴィータだった。
共に凄まじい慣性に苛まれながら、地面に強引に墜落。
受身を取り、四肢を使って地面にへばり付くように落着する。
それでも巨人の膂力は彼女らを留めておけず、軽量の体を50mほど引き摺るに至る。
「ふう…………………あ、あのなぁっ!!!!
何で羽を畳んだままなんだよっ! 死ぬ気かオメエは!!?」
「すまない……ルールに違反すると聞いていたから」
「お姉ちゃん―――もう終わりなの? せっかく今日初めて、面白い遊び相手に出会えたのに……
ありす、ちょっと物足りないな」
「アリスもアナタともっと遊びたい。 他の人は紙細工のように脆くて楽しめないもの。
鬼ごっこは飽きたから、今度はお人形遊びをしましょうよ―――勿論、お人形はアナタ♪」
鏡合わせのように踊る二人の少女。
互いに反響するその声は、鼓膜を狂わせる海魔の歌声のよう。
「ウチの悪魔っ子と、どっちがアレかしらねぇ……ま、ともあれ勝負はついた!」
タイガー行司がジャバウォックに軍配を上げる。 接戦を制した不思議の国の巨人。
総合的な戦力ではリィンも決して引けを取らず、限定された戦場でなければ結果は違っていただろう。
だが横綱同士の取り組みは、終わってみれば巨人の圧勝だった。
「くっそッ! 好き放題やりやがって! 次はアタシが!!」
「駄目ですぅ! リーチ差と体重差が違いすぎます!
あんな突っ張り貰ったら、山の向こうまで吹っ飛ばされちゃう!」
「すまない……応援に答えられなかった」
「真面目にやらねーからだ、タコッ!
ザフィーラといい、何だよあの猫、何とかってのは!!」
アインスに対するヴィータの当たりは、いつもながらちょっと厳しい。
シュンと落ち込む祝福の風である。
「盾の守護獣と共に一生懸命、研究したスモウの必殺技だ……
でも、やはり付け焼刃では使いこなせなかった。
せめて力士出身の魔導士のリンカーコアを蒐集出来ていれば……」
「お前、絶対ふざけてるだろ?」
「そもそも地に足を付けた戦いで、アレに勝てる人なんているですか……?」
ジャバウォック――
無敵を超えてチート的な絶望感すら漂わせ、ソレはサークルの中央にて佇む。
管理局側の横綱、陥落――――祭は終局へと向かう。
――――――
「自重しろっ!!!!!!!!!!!!」
行司の一喝!
■■×3の同時投入という冗談のような暴挙に義憤を露にするタイガーである。
「負け越しですか………致し方ありません。 どうやら我々の完敗ですね」
「済まないわねぇ、実行委員……大人気無い連中ばっかりで。
オリンピックにドリームチーム叩き込んだNBA以来の塩っぱさを感じるわー」
「妹たちにも増援を頼んだのだが相手の名を告げた瞬間に切られた。
ノーヴェ辺り、乗ってくれるかと思ったのだが」
取り組み表の、局側参加者の名前に次々と×が付いていく。
3体の無敵横綱を要する向こうに対し、唯一頼みのリィンフォースが敗退した事により大勢は決した。
(……はやては来てないのかしら?)
祝福の風の勇姿をあれほど見たがっていたのだが、一体どうしたのか?
その彼女も主の到着を待たずにたった今、敗北してしまったのだ。
他の場所ではだいたい5分5分の戦績のようだが
双方の最強戦力が集った東中央だけはどうしても崩せない。
あの3つの土俵に誰が挑んでも1勝もあげられないのだ。
こればかりはどうしようもない。
予定よりも早い閉会になってしまうが、そろそろ閉会の準備をしなければ……
「……………」
カリムが神棚のカレンへ合図にと、右手を高くかざす―――
――――――
喧騒で賑わう祭の中、トボトボと肩を落として歩く少女がいた。
高町ヴィヴィオである。
寂しそうな、困ったようなママの顔が忘れられずに
こうして途方に暮れたまま当て所なく街道を彷徨っているのだ。
「困らせるつもりじゃなかったのに……」
ヴィヴィオにとって、なのはママは文字通り全てだった。
あの鮮烈な事件を経て、出会いを経て、ボロボロになりながら自分を救い出してくれた人。
いつだって、どんな時だって守ると言って抱きしめてくれた。
その温もりが、硬い鎧の中からこの身を引っ張り出して包み込んでくれたのだ。
でも何時しかママは―――自分を見てああいう表情をするようになった。
自分がママのようになりたいと言うと少し困ったような顔をする。
自分がママに教えを乞おうとすると出来ないと言う。
自分にとってママは優しくて、強くて、特別で――――
「ヴィヴィオの事……嫌いになっちゃったのかな……?」
それを思うだけで少女の体は、心はバラバラに瓦解しそうになる。
あのママに限ってそんな事は有り得ないと理性では分かっている。
だが子供とは一度、不安を抱くとそれを無下に誇張させていってしまうものだ。
ギクシャクとボタンを掛け間違うような違和感は次第に無視出来ないものになっていく。
決して間違えない、揺るがない筈のなのはの迷い。 それは少女のジレンマにすら拍車をかけるのだ。
不安に居たたまれなくなって彼女の瞳に涙が滲む。
声を上げて泣きたくなってしまうその心情。
視界が滲んで――――前が良く見えない……
「――――娘よ」
そんな時――――少女に声をかける者がいた。
「えっ?」
しゃくりあげるような声を漏らすヴィヴィオ。 不意をつかれて咄嗟に反応できない。
厳粛な趣を持つ、どこか不吉さを称えた響き。 少女の体が緊張に強張る。
辺りをキョロキョロと見渡すと、すぐに声の主を見つけられた。
「………何かご用ですか?」
「―――――その内に住まうモノに少々、問いたい事がある」
いつの間にそこに佇んでいたのか?
ヴィヴィオを見下ろすように、黒ずくめの長身の男が立っていた。
その顔は涙で曇る少女にはよく見えない。
「娘―――自分の起源が何なのか知りたくはないか?」
「起源?」
男は言った。 少女はオウム返しに聞き返した。
「この身ですら掴み切れぬ凄まじい力の渦をその内に感じた。
溢れ出る生命の奔流。 永きに渡る放浪の中でこれほどに雄大な御霊を持つ者は皆無であった。
その身の元来の姿は、さぞ強力な■■なのだろう。 実に興味をそそられる」
何だろう。 よく聞こえない………
粛―――――
その手が、視界の回復しないヴィヴィオの額に翳される。
「その法外な力―――無限の螺旋に終止符を打つに至るか否か、試させてもらおう」
途端、定まらぬ視界に合わせて今度は少女の聴覚が揺らいだ。
次いで味覚、触覚、嗅覚、あらゆる感覚が断線するかのように麻痺していく。
その異常事態に危機感すら感じる暇もなく――――
「おじさんは………誰ですか?」
ヴィヴィオは呆然と問いを口にして、場に倒れ付す。
「魔術師――――――――――荒耶宗蓮」
男は答えた………粛々と。
重き言霊は、ついぞ誰の鼓膜を揺らすこともなかったが―――
――――――
――― 会場が時を置き去りにしたように静まり返る ―――
それは、カリムが台座の神(もどきのアレ)に侍るシスターに目配せをし
宴もたけなわの意を示した時だった。
即ち、実行委員が終了の鐘を鳴らそうとした、その時だ。
初めに異変が起きたのは境内の入り口の階段付近。
ザワッ!!!!!!と―――息を呑むと表現するにはあまりに異様なざわめき。
居合わせたシャッハが自身の命であるトンファー型デバイスを取り落としたのが印象的な光景。
次いで境内の参道をゆっくりとせり上がってくるような――――熱気と、波。
――― 何か途方の無いモノがこちらへと向かってくる ―――
謂わば、大気の……否、世界のうねりのようなものが徐々に近づいてくる感触。
水を打ったような静けさの中、人々のえも言われぬ感情がどんどん肥大化していく。
そんな皆の感情と視線を一身に受けて――――
――― 勝敗の決した戦場、土俵に向かう新たな影があった ―――
閉会の合図を送ろうとしたカリムがソレを見た瞬間、元の姿勢のまま固まってしまう。
あの聡明なカリムグラシアが、である。 怪訝に思ったカレンの視線などお構い無しに。
唇をわななかせ…………両手を胸の前で組み、何事かを唱え出す彼女を見て、カレンも隣にいる士郎も異常を察知する。
やがてその異変を―――
ソレの推参を―――
境内にいる全ての人間が知覚した。
ソレは静かに微笑んで、そして―――――
「せ、聖王………………」
誰かが彼女の名を―――否、彼女に与えられた唯一無二の称号を口にする。
聖王――――オリヴィエ・ゼーゲブレ ヒト 陛下
「ぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
ウオオオオオオぁぁぁぁオオオオオオ!!!!!!!」」」」」
200を超える人間の、五感を絞り尽くすような絶叫が奈須の大地を振るわせたっ!!!!!!
教会信徒が平伏した! 問答無用の平伏だ!!!
カリムを中心に手を胸の前に組み、舞い降りた彼女にひざまづく!
降臨したるはベルカ戦史無敗の英雄――――聖王オリヴィエ。
祭は―――神に奉る真の祭は終わりではない。
今、これよりようやく始まるのだ。
――――――
取りあえずここで切ります。 続きは遅くとも明日までには。
しかし最近、今日中に終わると思ってた添削作業が5日くらいかかったりと予定が読めなくて……
さるさんに気をつけてたら今度は連投規制に引っかかりました。
そうならないために適度な量に切ったんですが……
初期に比べて投稿しにくくなって来ましたね、2chも。
祭の種目については発案段階で「無差別対抗スケート」 「スキージャンプ」等が候補に挙がっていました。
特にスケートではカットカットさんが大活躍してくれるだけに是非、機会があったら描きたいなと思っています。
ではまた ノシ
む。今気づいた。
リリブラの人乙! そしてGJ!
つか自重しねえなこいつらwもっとやれ。
とりあえず、
「1度は言ってみたかった台詞を言うわよ!
じじじ、実況が追いつかなーーーーーーーーーーい!!!
闇雑誌(四股名です)! 土俵内に言葉通りの暴風を巻き起こすーー!!」
「お前も私を闇の書と呼ぶか……」
には吹きましたw
次回の更新もお待ちしています。
聖王ヴィヴィオの活躍に期待www
アリスまで登場とか、もしかして全サーヴァントをコンプするつもりなんでございますか?
何にしてもGJでありました。投下楽しみにしてますよー
乙ちゃん
魔導士の一部って踏み込みだけで丘が砕けるような、バーサーカーと比べたって十分怪力だったような、まーいーけど
なのはさんって殴り合いの教導もできるんじゃなかったっけ?ていうかやってるし
そのための魔法もけっこう覚えてるようだし、それで補助レベルの一流以下ってのはまずなさそう
ていうか自他が砲撃馬鹿と言いつつ、9歳のときからすでにドッグファイトでの近接戦もそつなくこなしてるし
vividで色々なことにチャレンジしてたらストライクアーツにはまっただけでヴィヴィオが実は(現状では)近接格闘に向いてないと(されていると)いうのは置いといて
GJ!
起源覚醒したら外見も変わるんだっけか
大人版ヴィヴィオはキリッとした美人顔で高身長
オリヴィエはタレ目の可愛い系で普通かちょっと低い程度の身長だが
SUMOUの結末に期待でござる
>>414 近接戦闘は可能だがそれを主体としているわけではない&いつもの謙遜&なのはさんの格闘が見れるのは本気出した時だけ
てことでいいんじゃなイカ?
魔法少女がガップリ四つで組んでリキむとか、淑女のフォークリフトじゃあるまいし……
魔法力士ドスコイ★なのは……
俺は、リリブラを纏めて読む、まとめて読むぞアンサラー
あれ、日付変わっとる…………
では続きを。
この二日目後半は「Vivid-ZERO」、、というとおこがましい事この上ないのですが
Vividに続く小話を色々妄想して描いたものです。
>>414さんのご指摘のフォロー的な部分も少しはあったり無かったり。
技術的な事よりも、「世のお母さん」が抱える葛藤とか云々で悩んで尻込みしちゃってるなのはさんです。
人生において尻込みというものをした事がない彼女だけに余計、子育てとか娘の進路とかにテンパっている図です。
あと作中のオリヴィエは青子の逆行運河と同様、作者の妄想オリジナルなのでご容赦を。
信徒達の強烈な信仰によって補正バリバリの、と補完すれば……やはり無理がありますが。
では投下します。
「とんでもないのが出て来たな」
「分かるの? 式」
「ああ………死の線が見えない」
蒼深に輝く双眸を細め、魔眼の少女は土俵内の「彼女」を視る。
その頬に幾ばくかの引っかき傷があるのはご愛嬌。
「―――わけじゃないんだが、試しにソコをなぞろうとすると消えるんだ。
まるで俺の殺気に反応するかのようにズラしてるとしか思えない」
多くの線を見、そしてあらゆるモノを払ってきた殺しの怪物。
その彼女をしてこれほどデタラメなイキモノに出会ったのは真祖以来かも知れない。
「向こうさんの秘密兵器か? なのはが戻ってきたら是非、詳細を聞かせて欲しいな」
「そういえば遅いですね彼女」
2人の少女が見据える先―――
教会信徒、その信仰対象である「彼女」の降臨。
全員の精神状態がまさに発狂寸前にまで昂ぶっていた。
「「「「「%’$#!#$%&$”!$%((&%$!$%%ーーーーーーー!!!」」」」」
式と鮮花の会話は彼らの絶叫に遭えなく掻き消される。
――― そして、その取り組みを終えて ―――
「し、瞬殺ううううううううぅぅぅぅうううううううううううッッーーーーー!!?」
彼らの絶叫に行司の怒号が重なった。
進撃の聖王、その序章が幕を開けたのだ―――
――――――
「■■■―――――――ッ!!!!」
「止めなさいバーサーカー……既に勝負はつきました」
無敵の横綱の一角があっさりと崩れた。
そこには皆の視線を否応無しに釘付ける圧倒的な存在がある。
自分らを見下ろしながら、まるで不遜を感じさせない極星の輝き。
それに畏敬の念を抱きつつ、マスターであるラニは狂戦士に静かに機動停止を命じる。
「眩いほどの明星――――でも私のサーヴァントとて担っているモノは決して劣らなかった筈。
ならばこの結果は手綱を取握る私の未熟さ故なのでしょうね」
うなだれるラニ。 感情の見えにくい表情の中にも落胆の色がありありと浮かぶ。
未だ己が宿星は見えず―――あらゆる意味で師の教えを実践するに足らぬ事を理解する。
開始2秒足らずの出来事だった。
水面に浮かぶ羽の如き柔らかな構えは、立ち合いでのぶつかり合いを初めから拒否し
雄牛のように突進するバーサーカーのぶちかましに抗う事をしなかった。
そこから軍神五兵(幕内Ver.)に繋げるのがこのサーヴァントの必殺パターン。
歪にパンプアップしたバーサーカーの肩口。 刎ねられて浮けば――勝負は決まる。
だが聖王はその凶器と化した肩に優しく掌を添えたのみ。
結果、一瞬でサークルの端まで詰められる彼女。
誰もが、その華奢な体躯がサークル外に弾き飛ばされる光景を思い描いただろう。
――― だが結果として宙を舞ったのはバーサーカーの巨躯だった ―――
何をやったのか認識出来た者は数えるほどもいない。
まるで互いの位相を魔法にて入れ替えたかのような―――
かの王の捌き、まさに霞の如く。
何人たりともその身に触れる事叶わず
「えーと……う、うっちゃり? 小手返し? 真空投げ?
決まり手不詳の神技炸裂に行司も少々、戸惑っております!」
立会いの勢いのまま客席まで吹っ飛んだラニ・バーサーカー。
そして彼女を交互に、改めて見比べるタイガー。
土俵際―――――狂戦士を秒の値で仕留めた攻防を取りあえず指すならこの言葉だろう。
彼女の在り様は流水そのものだった。
押し寄せるバーサーカーの突進を手の平で真綿のように受け止め
勢いをまるで殺さず土俵際まで共に下がり、ギリギリのタイミングで手品の如き手管で相手をうっちゃった。
いかな剛力も絡め取る柔武の極意。 完璧なる武の姿―――
観客はその一部始終をまざまざと目撃する事になったのである。
――――――
「驚きましたね――――アルクェイド。 アレは確かにサーヴァントなんですか?」
「うーん、杯は勿論、七天に至ってさえ異星の英霊を招聘する力は無い筈なんだけど……」
クトゥルーのように地球の伝承に名を連ねるモノが這い出てくる事はあっても
この地に逸話の存在しない、寄り代の無い英霊を聖杯が呼び寄せる事は有り得ない。
故に、ならば彼女はどうやってこの地に降り立った?
今や200人の信徒の異様な熱気に包まれる東の土俵。
アルクェイド、シエル、フェイト、ユーノの教導2班の面子が、騒ぎから少し離れてソレを見る。
「しかし、あの呂布奉先を秒殺とは只事では無いですよ……
フェイトさん、ユーノさん。 彼女はそれほどの英霊なのですか?」
ミッドチルダ組の2人に問いかけるシエル。
「……………フェイトさん? ユーノさん?」
「「え? あ……」」
しかし双方、揃って抜け殻のような顔付きで呆然と土俵を眺めている始末。
ユーノもフェイトも教会の人間ほどではないが、受けたショックは決して軽くない。
………降り立った英霊の姿に………あの娘の影がちらつく―――
恐らく別の場所で観覧している高町なのはも同様の驚きに苛まれているに違いない。
「ユーノ……私、なのはを探してくる」
緊張の面持ちでその場を離れるフェイト。
目を白黒させる真祖と代行者の問いにはユーノが答える羽目に。
「聖王オリヴィエ……ベルカ戦史時代において無敗のまま戦火に消えていった伝説の王だよ。
古代ベルカ最強と称された圧倒的な力。 その偉業の数々は逸話でのみ僕らの知るところとなっている。
彼女の存在はそのまま伝説となり神聖視され、やがてその死を悼む者たちが集まり
敬虔なる信徒となって、聖王教会が創立されたんだ」
「伝え聞く無双の武力、加えて信仰の対象。 聖人<セイント>の属性をも併せ持つ武王。
なるほど、こちらのルールに乗っ取っても文句無しのシロモノですか」
「見たところクラスの縛りも無いみたい。
三国志で例えるなら無双さんよりも、むしろおヒゲさんに近いんじゃないかな?」
おヒゲ―――美髭公・関帝聖君。
武神と崇められながらも度重なる不忠によって野卑され、蔑まれる事も多い呂布に対し
死して後、敵にすら奉られたとある武将がいた。
武力においては飛将軍に一歩譲るも、生きながらに本物の神に祀り上げられた者は同時代において彼しかいない。
故に英霊になってからの格は呂布を遥かに凌ぐだろう。
畏れられるだけでなく「崇め」られる―――それこそが高貴な幻想の源である事は語るまでもない。
「つまりはそれと同類の英霊って事よ。
デメリットの塊みたいなバーサーカー化をされちゃってる方が負けるのも道理よね」
真祖が何故か不機嫌そうに鼻を鳴らしながら言葉を続ける。
「元々、バーサク化なんて理性の乏しい怪物くらいにしか有効に働かない代物だもの。
上位英霊クラス以上のレベルの戦いで、今更、身体能力が1ランク程度増強されてもねぇ……
培ってきた技術、積み上げてきた戦術や経験のほとんどが飛んじゃったら意味無いって」
「………貴女、やけにバーサーカーに辛辣ですね?」
「――――――ファニーヴァンプだったらなぁ……」
――――――
「―――と、貴様の攻略法とは大方、そんなところであろう?」
「概ねは………それにしても貴方、やけにバーサーカーに辛辣ですねぇ(ニヤニヤ)」
「――――――ユリウスのド阿呆が……」
敵―――バーサーカーの弱点を突く秘策を語ったのは他ならぬアサシン。
経験者はかく語りき。 姿はなくとも苦虫を噛み潰したような表情が見えるようだ。
武人と呼ばれる人種を狂戦士化するリスクは高い。 所謂、バーサーカー堕ちというやつだ。
爆発的な攻撃力と引き換えに、ほとんどの宝具を封印され、理性を失うという弊害。
弱点を露呈されてなお対策の立てようがなく、敗北する時は本当に呆気なく負けてしまう。
今の取り組み、本来の文武百般を誇る呂布であればオリヴィエの誘いに容易く乗りはしなかっただろう。
バーサーカーの扱いは全サーヴァント中、もっとも難しい。
破壊的な力を有してなお、決して勝率が高くないクラスと揶揄される理由がそれだろう。
マスター、サーヴァント共にあまり歓迎されるクラスでは無いらしい。
「圧倒的質量で押し、突き、張って、潰すのが相撲の本質―――
なら一見、この競技とバーサーカーとの相性は洒落にならないように見えます。
現に、手力雄みたいなクソ野郎が初めの頃は強かったですよ。 それはもうぶっちぎりで」
「ク、クソ野郎って……」
「でもちょっと経って、<かわり> <いなし> <はたき込み> <うっちゃり> みたいな
相手の力を利用する技が増えたら、突撃一辺倒のあのヤロウはめっきり勝てなくなりました。
結局、涙目で引退しましたよ。 風の噂ではその後、他の格闘団体に転向してボコ専になったとか何とか」
最後のはよく分からないが、流石は古事記の生き字引き。
この競技の大元が発足した頃から鑑賞している筋金入りの相撲フリークだけの事はある。
「ちょっと待ってタマモさん……それは当然、私も考えた。
でも口で言うのは簡単だけど、バーサーカーの動きは半端じゃなく速いよ?
1歩下がる度に5歩は詰めて来る、そんな相手に狭いサークル内でパワーとスピードを完封するなんて事が可能なの?」
牛に突撃するマタドールはいない。 それは狂戦士を相手にした際、誰もが初めに行う戦法だ。
だがそれを実行した者は悉く失敗に終わった。
望みの戦果を上げられず、虫のように場外に吹っ飛ばされた者の多い事多い事。
相撲において柔はあくまで予備的な懐刀でしかない事の証明だ。
狭い土俵で圧倒的な速度と剛力を有する相手に柔武を示す事などほぼ不可能では無いのだろうか?
「確かに言うは易し、行うは難し。
この会場でソレを完璧に実践出来るのは、そこのオッサンくらいのものでしょうね」
己が肉体でのみ陰陽五行に触れ得る―――彼らの名は拳士。
その五感、戦いにおいて正しく自身と相手の力の濁流を知覚し、駆使する者の総称。
なら、キャスターの言葉が正しいならば、あの聖王の拳は中華最強と謳われた彼……
「神槍」の武に匹敵すると言うのか?
「ならば良し―――存分に見せて貰おうか。 聖の王とやらの功夫を」
八極随一の魔拳の双眸が向けられる先。
観衆からどよめきが起こる。
最強は常に最強の道を示すが故に最強。
美しき、聖なる拳の進撃はまだ始まったばかり―――
――――――
先の一戦の余韻が未だ冷めやらぬ東部屋中央―――
聖王はラニ・バーサーカーを下した南端の土俵を降りて
次の敵が待つ西の土俵へ、ゆっくりと歩を進める。
「あ、あのー、ちょっといいかなお姉さん。
基本、対戦フリーではあるんだけど……いくら何でもそれは無茶じゃないかなー?」
「…………」
「ていうかさ、もしよければ四股名を決めてくれない?
このままじゃ勝ち名乗りをあげられないし……下手な名前付けると八つ裂きにされそう」
彼女の後に続く信徒をチラっと見やるヘタレもとい、大河アバター。
クスリと笑みを漏らすオリヴィエである。
「……………………では朝聖王で」
「……あん?」
暫くの沈黙が両者の間を支配する―――
「ぶ、ぶはははははははははははははははっ! オッケーオッケー!!
ようこそ血湧き肉踊る禁断のバトルアリーナへ! 出撃前に遺言状なんて野暮はナシっ!
次の相手はちょーっとヤバイけど、もしもの時は骨は拾ってあげよう! 心置きなく戦えいっ!!」
「陛下……ご武運を」
彼女の歩みの後に続く信徒達。 まるでモーゼの十戒だ。
熱に当てられた人の波が押し寄せるようにして目指す先―――
「四股名なんて必要ないわ―――勝ち名乗りを上げさせるとでも思ってるの?」
凍てつく氷のようなその言葉。
声の主はイリヤスフィールフォンアインツベルン。 怜悧な瞳が美拳士を貫く。
そして待ち受けるはギリシャ神話最大の英雄。
「格」という面において、聖王を遥かに上回る半神のサーヴァント。
「洒落になってないわね……………
浅い所でパチャパチャやってるだけだったら許せたし、我慢もしてあげた。
でも深海―――――私達の領域にまで土足で踏み込んだ以上、ただで済ますつもりは無いわよ」
「………」
「英霊なんてモノを出して来られたら、こっちも冗談では済まないの。
ねえ、アナタ……こちらの領域を侵してるって自覚は当然、あるんでしょうね?」
「………」
王は答えない。 優美な微笑でのみ少女の言葉に応じる。
「ま、いいけどね………なら、もっと答えやすい質問をしても良いかしら?
―――――――どうして私のバーサーカーを2人目に選んだの?」
彼女がこちらをごぼう抜きにしようとしている事は理解した。
だが勝ち抜き方式で見るなら強い方を最後に持って来るのが常識だ。
という事は、つまり―――――
「私のバーサーカーをあの新参者よりも下に見てるワケ?」
少女のものとは思えない殺気が再びオリヴィエを貫く。
アインツベルン最強のサーヴァントを従えた最強のマスター。
その魔眼が挑戦者に容赦なく向けられるが―――
「勝利するための最善手を打ちました……非礼に思われたのなら謝罪を」
「――――――そう」
彼女は微塵も臆さずに答える。
はっきりと、勝つつもりだと――――
「潰していいわよ―――バーサーカー」
ならば遠慮も容赦も必要ない。
当然の帰結として圧倒的な力の差を教えてやるだけ。
ハエを見るような目で、少女はサーヴァントに命令を下した。
「■■■■■■ーーーーーーーッッッ!!!!!!」
――――――
「何やってんだ遠坂は……?
ちゃんとイリヤにも声援が行くよう扇動しなきゃ駄目だろ」
「纏まりとか団結とか皆無ですからね。 私達」
流れは明らかに向こうだ。 上座から見るとよく分かる。
アウェイに晒された妹(実は姉だが)を心配そうに見つめる士郎こと現アヴェンジャー。
何がやばいかって、遠巻きから見て分かるほどイリヤがキレてるのがやば過ぎる……
「■■■■ーーーーーーーーーッッ!!!!」
山岳を思わせる太古の巨人が迫る。 その巨体が凄まじく速い。
「……………!!!!」
蝶のように舞い滑る美貌の王。 その痩躯が驚くほどに力強い。
立ち合いの瞬間、掻き消える巨人と拳士。
今度は彼女も一切の小細工無し。 出だしからトップギアの刺し合いに移行する。
100の魔手を100の裁きで打ち返し、サークル内に描き出される紛う事なき死闘。
取り合い―――互いの身体を捉え、捕縛する組手争いは熾烈を極めた。
狭いサークル内に両者の残像が幾重にも重なって発生している。
バチン、バチン、バチュン、と何かがぶつかる音が多重奏のように響き渡る。
「何コレ!? まさにヤムチャ視点っ! マジで解説のしようがないんですけどっ!? 」
「ししょー、解析が出た。 双方、1秒間に100発単位の攻防を繰り出している」
「ペガサス幻想(ファンタジー)っっ!!?」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」」」
場内、割れんばかりの大歓声。
他ではほぼ全ての取り組みが終わり、選手観客一同の視線がここ、東場所西の土俵に注がれている。
繰り広げられるのは聖戦。 祭の行事の一つとして始まった余興が今、神話の具現をここに表す。
だが、そんな2人の間にはっきりと優劣がつき始めたのは、取り組み開始後1分を過ぎた頃。
牛若丸と弁慶を髣髴とさせるその勝負は、しかしその習いと真逆の趨勢を場に写し
聖王の装束が徐々に切り裂かれ、粉雪のような白い肌に赤い痣が刻まれ始めていた。
信徒から悲鳴と怒号が上がる中、追い詰められていくのはオリヴィエ。
いなしにいった手が拉がれる。 完全にかわした体が衝撃だけで弾かれる。
体系化した術技を持たない半神の英霊はアルクェイドの言葉通り、バーサーカー適性が抜群に高い。
技は用を成さない―――圧倒的な力と速さの前では
そう言ったのは誰だったか? 理通りの脅威を巨人は余すとこなく実践する。
天をも砕く剛力は、鬼子の舞いも天女の羽衣も偏に捕らえ引き裂く暴力の具現。
その巨体から想像も出来ない小刻みな歩法で徐々にオリヴィエの逃れるスペースを潰すサーヴァント。
本能レベルで戦術的なバーサーカーは、両手を雄大に広げ、敵を挟み込む様な構えを見せる。
繰り出す技は合掌捻り―――頭部を挟んで相手を薙ぎ倒す荒技だ!
土俵際まで下がったのが彼女の仇になる。 左右後方逃げ場無し!
迫る掌のプレスを両の手で受けるが、メキャリ!と彼女の両肩の軋む音がここまで聞こえた。
「ひぃ!? ジャンククラッシュ!? 潰れたっ? ミンチっ!?」
「いや、残した……しかし」
かふっ!っと短い悲鳴を漏らし、苦悶をあらわにする聖王。
強大な、これほど強大な敵は彼女の戦歴をして数えるほども無かっただろう。
穏やかな微笑を称えていた表情は今、戦火を前にした闘姫の険しさを取り戻す。
女である前に武人。 己を凌駕する存在と相見える事の歓喜、胸を焦がす戦慄。
肉体を犯す激痛すらがひたすらに愛おしい。
敵は理性無きバーサーカー。 その喜びを分かち合えないのが残念だ。
そう、惜しむらくは彼が正気を―――戦術を失っている事。
どれほどに肉を、骨を引き裂かれようと「暴」で「武」は挫かせない。 聖なる拳の名にかけて!
――― 必倒の機は我にあり ―――
今はただ激流に身を任せ、その時を待つ。
――――――
しかして奇跡を目の当たりにしようと詰め掛けた信徒は、ただただバーサーカーの強大さに凍りつくのみ。
熱に当てられた彼らに思考と現実を呼び戻す巨人の咆哮。
「殺される!」と、客の一人が叫んだ。 土俵に上がって虐殺劇を止めようとする者までいる。
「………」
そんな喧騒の只中にて、彼らを尻目に
少女イリヤスフィールは勝利の予感に残忍な笑みを―――
「…………どういう事なの?」
浮かべて―――――いない?
ここに少女は、狼狽を露にする―――
――――――
愛娘を探しに、なのはが外れの洗面場まで来た時
会場が異様な熱気に包まれて―――それは降臨した。
ベルカ史上伝説の王の土俵入り。
割れるような怒号と歓声に耳を打たれ、なのはは振り向き「彼女」を目撃する。
「ヴィ……ヴィヴィオ!!?」
フェイト、ユーノと同様の驚愕を抱き、彼女は言葉を漏らす。
聖王ヴィヴィオ―――あの悪夢のような出来事が脳裏を過ぎり、彼女は息を呑まずにはいられなかった。
だが、違う……あそこに立っているのは別人だった。
容姿こそ似ているが纏う雰囲気があまりにも懸け離れている。
聖王となった娘の姿形も知っているなのはが、ヴィヴィオと彼女を見間違う筈が無い。
「……………!」
だが――――それでいて、なのはは確かに感じたのだ。
数千の視線が彼女を埋め尽くす中、それを掻き分けるような聖王の瞳が自分に向けている事に。
気のせいではない。 まるで自分に、自分だけには目を逸らさずに見て欲しいという……
現在、彼女はあのイリヤスフィール率いるバーサーカーとの大一番に臨んでいる。
語るまでも無い。 地上戦ではセイバーをも超える最強のサーヴァントだ。
局の作戦事項においてアレを相手にするならば、要塞攻略戦並の戦力を投入しなければならないだろう。
その破滅的な攻撃力もさる事ながら、宝具、十二の試練<コ゛ット゛ハント゛>は生半可な攻撃を弾き返し
攻撃をラーニングして次からは肌に触れる事すら許さず打ち消してしまうという最強の鎧――――
「………………!?」
そう、それを知るが故に………なのはは今、イリヤと同様の疑問を抱くに至る。
確かに戦況は聖王に不利だが、未だ双方、攻防に成り得ているのは何故?
破壊的な暴力に晒されて風前の灯ではあっても、オリヴィエのいなし手やストッピングの蹴りもまた
巌のような敵の肌に少なからず傷を負わせているのだ。
「聖王の鎧」
固唾を呑んで見守るなのはであったが――――呟いたのは、会場の端の柵に佇んでいた少女だった。
まるでなのはの疑問に答えるように紡がれた言葉。
教導官の驚きは無理も無い。 「それ」を一介の少女が知っている筈が無いからだ。
そう、聖王もまた不抜の鎧を身に纏う者。
奇しくもバーサーカーの宝具と防御力の面で同等の性能を持つ、王を護る最強の衣。
共に不抜の衣を纏った者同士、どんな作用が働くのか想像もつかない。
だが仮に磁石の同極のように、類似した性質同士で打ち消し合う作用が働いていたのだとしたら―――?
「………」
触れられざる者同士だからこそ、互いに触れる事を許される。
神域の守りは既になく、裸の戦士2人が相打つのみか?
――― あとは互いの技が勝負を決める ―――
ヴィヴィオの探索もさる事ながら、高町なのははダビデとゴリアテの巨人の如き勝負をただ黙って見守るのだった。
――――――
「ガチ勝負っ! これは茶々……もとい、解説を挟みづらい!
ヴォルケンリッターの2枚看板ですら体を張ったギャグを披露してくれたのに
どうやら両者にそんな空気を読む気は毛頭、無いようです! 次でボケてーーっ!」
「「うぐ」」
2枚看板、ザフィーラとアインスが頭を垂れる。
そして苛ただしげに爪を噛むイリヤに今、余裕は全く無い。
どういう因果かゴッドハンドが無効化(本当は相殺)されてしまっているのだ。
ならば楽勝というわけにはいかない。
相撲ルールというやり慣れない闘いにおいてなお、狂戦士が無敵だったのは攻撃を無効化出来たから。
だがその加護を失った以上、1回戦での彼女の戦法は未だ有効なのだ。
力で劣るあの女が狙うは、巨人の剛力を搦め取ってのサークルアウトだろう。
そしてそこまで分かっていながら、バーサーカーであるが故に対策の立てようが無い。
どうする? 令呪で狂化させて一気に勝負を決めるか、それとも狂戦士に作戦を伝えるか?
直線しかしない暴走機関車に曲がり方を教え、ブレーキをかけられるのが令呪の仕業。
自分ならば出来る。 このバーサーカーを完璧に制御できる自分ならば。
今、少女がサーヴァントに相手の狙いを示唆して、慎重に事を運ばせればその勝利は磐石のものとなるだろう。
(………)
だが、それではバーサーカー1人の力で勝った事にはならない。
令呪を発動するという事は即ち、マスターが助け舟を出すのと同じ事なのだから。
(あれ……? 私って、こんな甘ちゃんだったっけ……?)
ルールを守る―――勝ち方に拘る。
「殺し方」しか知らなかった以前の自分からは考えられない思考。
微かな戸惑いに苛まれる少女であったが……今はいい。
「■■■■■―――!!!!!」
1対1なら、こちらの方が断然、強い。
大丈夫……相手の小細工が届く前に勝てる。
自分は変わらずバーサーカーの強さを信じるだけだ!
そんなマスターの思いを知ってか、狂戦士が最後の詰めに入る!
四方八方から迫り来る突き押しは五月雨の如し。
ふらつく聖王の足取りはもはや倒れる寸前――――
―――――――――かと思われた。
――――――
「行ったっ!!!」
「ふむ―――これが最後の反撃となるか」
スバルとアサシンの目下…………
否、それが燃え尽きる前の蝋燭である事は誰の目に見ても明らか。
己が肉体にバーサーカーに匹敵する爆発力を生じさせられるのはこれがラストだろう。
まるで空に掛かった階段を駆け上るかのように優雅に鮮烈に。
針の穴を通すような踏み込みで聖王は、バーサーカーの豪腕を掻い潜り、烈火の如く懐を侵す!
「耐えなさいバーサーカー! 耐えて捕まえれば勝ちなんだから!」
神代において神より賜った頑健な肉体は、ゴッドハンドが機能せずともなお健在。
今更あの女の攻撃など恐くない。 いなし、逃げ回るだけの彼女にもはや残された武器も無い。
両の手を広げ、今度こそ四つに組もうと、上から相手に覆い被さろうとするバーサーカー。
――――――――否……それは謝った認識だ。
武器が無い? 術が無い? そんな事は有り得ない。
剣士が剣を折られれば戦えない。 槍兵から槍を取り上げれば術を失うだろう。
だが彼女は違う。 彼女は拳士だ。 その両の手に宿った技こそ彼女の全て!
華奢にすら見える肉体そのものが英霊オリヴィエの宝具そのものだ!
聖王が上から覆い被ってくるバーサーカーの、その眼前に―――
「聖王・猫騙し」
手をパン―――――!!!と、叩きつける。
「■■■――――!??」
それは魔力を帯びた圧倒的な光!
大気を完全に遮断した半径30cmほどの空間は真空を形成し、巨人の息吹を疎外する!
更に叩きつけられた魔力の光がサーヴァントの目を焼き尽くす!
「えーーーーーーーーーーーーーー!????」
「なるほど、あれはああいう技だったのか」
アインスとツヴァイ、両融合機が驚愕と感嘆の吐息を漏らす中
――― 刹那、狂戦士は完全に敵の姿を見失った ―――
彼女を捕らえようとした腕が空を掴み、拳士は霞のように懐から掻き消える。
前かがみ気味の体制になった巨人。 そしてオリヴィエは――――?
「頭上!!!!! 頭上ですっ!!
朝聖王(四股名です)、宙に身を躍らせて平良呉巣(四股名です)の背後を取ったーーー!」
待って耐えて訪れた機。 逃がす彼女ではない!
バーサーカーを見下ろすように、中空に舞うオリヴィエ!
胡蝶乱舞―――まさに天女の如し!
力、速さは用を成さない―――極められた技の前では。
場に新たに示された理。 それは全ての者が等しく抱く驚愕と、目を奪われるほどの美技と共に心に刻まれる。
前方に全ての力を叩き付けたバーサーカーに対し、彼女はその後頭部を軽く触れて後押ししただけ。
それだけで―――力学では説明のつかない衝撃が狂戦士の延髄から脊椎を繋ぐ急所に叩き込まれる!
「■■■■――――ッッ!!!!?」
「バ……!?」
イリヤが絶句し、息を呑む。
呂布に続き、自身の突進力を利されたサーヴァント。
流石の巨人をして踏み止まる事叶わない。 そのまま―――
――― ズドンッッッッッッ!!!! ―――
場に快音が轟くのだった…………!
――――――
直下型の地震の如き振動が客の体をフワリと浮かせる。
その光景はまるで空手家が演舞で叩き割る氷柱の末路か―――
「タ、タイタニーーック……」
または行司の呟き通り、沈没中の豪華客船の光景さながらだ。
土俵が中央を支点に真っ二つにぶち割れていた。
地盤沈下のように両端が競りあがり、まるで英字の「V」の如き様相を見せる、さっきまで闘技場だったソレ。
相撲の決まり手はサークルアウトだけではない。
土俵に足の裏以外をつけた瞬間においても力士の敗北となる。
ならば濛々と立ち込める粉煙の中に示されるは奇跡の逆転劇。
土俵中央にて頭から叩きつけられ、土俵そのものを砕き割り
更に大地に上半身ごと埋め込まれたのは最強のサーヴァント―――
そして満身創痍の王が――――
息を切らせながらも、ほんの少しの茶目っ気を称えた微笑と共に佇んでいたのだった。
――――――
「奥義開眼ーーーーーーーーーーっっ!!! 朝聖王(四股名です)、まさかの逆転勝利っ!
信じられんものを見た……あの平良呉巣(四股名です)を、はたき込みで地面に埋めちゃったよ!?
行司はこ、興奮して舌が上手く回りませーーーーん!! つうか、どんだけ猫騙し好きなんだよ!!」
タイガー行司が勝者の名を称える。
無双の英霊相手に2連勝。 快挙を超えた奇跡に場のボルテージは最高潮。
不可能な道筋を切り開く偉業こそが英雄の所業ならば
今、自分達は確実に神話を目の当たりにしているのかも知れない。
そして絶対の勝利を信じていたサーヴァントの敗北を……
感情の消えた表情で見つめている少女の姿が1人、対照的だった。
放心状態なのか、事態を飲み込めないのか定かではない。
俯き加減に、自分のサーヴァントを見据える少女。
そんな彼女に些か申し訳無さそうにペコリと一礼をし、確たる足取りを以ってオリヴィエは次の土俵へ向かう。
その後姿を、イリヤは呆然と見送る―――
(負けてない……バーサーカーは負けてない……!)
次いで灯る感情は耐え難き憤怒。
楽しみにしていた……負けるわけの無い勝負だったので興が乗らない部分もあったけれど
いつも苦労ばかりかけているサーヴァントにせめて晴れ舞台を与えてやりたいと常から願っていた。
それはセイバーと士郎の睦まじさを見てより育った彼女なりの思いやり。
教導で相手の顔を立て続けて我慢していた鬱憤もあった。
密かに凛の仇も取ってやろうと子供なりの義侠心を秘めてたりもした。
それを――――飛び入りに全部、台無しにされたのだ。
あんな女の添え物に、よりによって自分のサーヴァントを……
このバーサーカーを引き立て役にしたというのか……
許せるわけがない。 プライドの高い少女にそれが耐えられる筈が無い。
「――――――バーサーカー」
電池の切れたロボットのように動かないサーヴァント。
上半身丸々、地面に埋め込まれた無様な肢体。
そんな狂戦士に彼女は今、再び命を下そうとする。
令呪―――本当に本物のバーサーカーの力をあの憎き女に叩き付けてやるために。
(あんなひ弱な奴――――本気出せば一瞬で肉隗なんだからッッ!!!!!)
負の感情の抑え切れない昂ぶり。
諸共に彼女の全身に紅い令呪が浮かび上がり―――そして
「駄目じゃないか……イリヤ」
「――――え?」
オリヴィエに刃を振り下ろそうとしていた少女が―――――その思考を完全に、止めた。
「これは殺し合いじゃなくて試合……聖杯戦争とは違うんだよ。
互いの健闘を称え合い、相手を尊敬するスポーツだ」
「――――――――すぽおつ?」
聞いた事の無い言葉に目を白黒させるイリヤ。
否、士郎達と暮らすようになってから、その言葉の意味だけは学習していたが………
「巡り合わせや運が無くて相手に軍配が上がる事もあるだろう。
そんな時、一時の感情で全てを滅茶苦茶にしてはいけない。
そんな事をすれば一生懸命、戦ったバーサーカーの健闘も含めて全部、台無しにしてしまう」
それは一生、自分に縁の無い世界。 画面の中の世界の出来事。
この身には生涯、無縁のものだと――――
「そんな事はないさ……さっきはちゃんとルールに従ってやれたじゃないか?
イリヤがこの先ずっと楽しく生きていくために、周りの大切な人を悲しませないために
その気持ちはとても大切なものだ。 今日、出来た我慢を決して忘れてはいけないよ」
「………………」
硬直したように動かない少女。 体に浮き出た令呪も既に消えていた。
「―――――――――良い子だ……偉いぞ、イリヤ」
聖王を崇め、狂喜乱舞する大衆の声が場内を震わせる中
ポツンと佇む少女がハッと正気に戻り、辺りをキョロキョロと見回すが――もう声は聞こえない。
その声の主を見つける事は――――出来なかった。
――――――
「イリヤちゃーーん!」
喧騒を掻き分けてキャロルルシエがこちらに駆けてくる。
「お疲れさま! その……………残念だったね。
9分9厘、勝ってたのに……本当に惜しかったよ」
息を切らせながら、こちらを慮るその表情。
自分を慰めてくれているのだろうか?
「………」
もし怒りに任せて相手の女を叩き潰していたら―――
この友達の顔も曇らせてしまったのだろうか?
せっかくの楽しい旅行を台無しにするところだったのだろうか?
「ありがとう、キャロ。 でも、バーサーカーの―――ううん、私の負けよ」
冬の少女は、今もなお口惜しさを残したまま。 敗北を甘受するにはその思考は未だ幼い。
でも、そんな複雑な胸中のままに、少女は無理にでも笑みを浮かべる。
それはキャロに対する精一杯の強がりでもあり、彼女をこれ以上心配させたく無いという思いやりでもあり―――
後にこれが苦笑いというものなのだと―――――少女は今日、初めて知るのであった。
――――――
「さっきのは聖王の技じゃない」
少女が呟いた。 少し憮然としているのは気のせいか?
何にせよ周囲の絶大な喝采を受けて更なる土俵に向かうオリヴィエを見据える高町なのはと―――少女。
その背中は信徒の期待を背負うほど雄大に、だけど張り詰めた風船のように儚くも見える。
「自身を超える化物を相手に3連戦……どう考えても無茶。
まともにやっていたんじゃお手上げ。
どこかで大きく張って勝たないといけなかった……」
少女の言葉、その観察眼はもはや疑う余地が無い。
多くの人間が眼前で起こる神懸り的所業を奇跡と断ずる中で
彼女だけはその神技を術技と捉え、とにかく冷静に目をむけていた。 どこか冷めたような感じさえある。
そう、それは完璧な組み立てによる綱渡り―――
出来るか出来ないかはさておき、オリヴィエと同じ立場に立ったなら教導官も同じ選択をした筈だ。
3連戦を制する第1歩は、1回戦の如何による。
ことにあの面子を相手取るならば初戦は瞬殺狙いより他に無い。
故に自身の手の内を晒さぬうちに相手の弱点を一挙集中して撃破する。
寸でまで引き付けての柳受けに小手返し(既存の武術に相当する技としての例)。
完璧に相手を捕らえたように見えたがその実、オリヴィエが吹き飛ぶ確率は5分5分だった。
だがその賭けに勝ったが故に、次の2戦目に繋げる事が出来る。
そして2回戦。 初戦を無傷で終えていなければあのイリヤ・バーサーカー相手に勝率すら叩き出せない。
そこに全戦力を注ぎ込み勝利する。 結果は見ての通り。
彼女の戦術はついにここまで一度の破綻も見せず、余人の瞳には奇跡の体現としか写るまい。
言い伝えでは聖王は決して出力や資質に恵まれていたわけではなかったという。
拳技における破壊力、戦闘力で彼女を上回る王はいくらでもいたらしい。
だが彼女は、その誰との戦いにおいても遅れを取る事はなかった。
相撲という競技は奇しくも騎士の戦いに似たところがある。
力の限りぶつかり、押し合い、捻じ込む事に特化したベルカ式。
そんなオフェンスに特化したベルカにおいて唯一、受け技と柔法を極めたのが彼女、オリヴィエゼーゲブレヒトだと綴る史書家も多い。
曰く、彼女は拳法における化剄に相当する技の使い手という説。
フィジカルの弱さを埋める様々な護身技。 膂力どころか魔力すら捕らえて柳の如くいなし、合わせ、迎撃する。
その究極の発露こそ、修験の果てに彼女が纏った王気―――聖王の鎧。
防御・受けに強い者ほど連戦、長期戦に長けると言われている。
戦乱において王という立場に置かれた彼女の在り様を考えれば納得か。
自分よりも強い相手に勝つには、相手よりも強くならなければならない……その究極の形がそこにある。
あらゆる剛拳を、怪力を、閃刃を悉く退けた伝説の王。
自分では説明どころか想像すら及ばない何かが確かにあそこにあるのだ
(だけど流石にもう限界だ……)
そしてなのはをして叩き出せる予想戦果はここまでだ。
3戦目に勝機を見出せる要素がどこにも無い。
敵に弱みを見せないよう微笑を崩さない彼女だが、満身創痍なのは明らか。
先の2人との勝負でさえ薄氷を踏むような戦いをものにし、それを2回続けて成し遂げた事が既に異形。
「!」
まただ………また聖王がこちらを見て微笑んだ。
一体、彼女は何を思い、そして何を伝えようとしているのだろうか?
そして大衆の、なのはの見守る前にて彼女は最後の土俵に上がる。
東場所の中心に位置する、灼熱の巨神の座する戦場へと。
「もしもし……もしもーし! 貴女、もう絶対に止めた方がいいって。
ここで止めても誰も貴女も笑わない!
馬鹿な事はお止しなさいよぅ……タイガー魔法瓶あげるから」
「陛下……………無茶です」
その言葉を遮るようにサークルに上がるオリヴィエ。
待ち受ける巨人はただそこに在って、感情の読めぬ表情で王を見る。
これが―――次の、玩具……?
鏡の世界の住人は創造主たる少女の望みのままに
楽しく、愉快に、放られた玩具で遊んで見せるだけ。
「……ホントにやらなきゃいかんの? 知らないぞー!」
そして、立会い――――
今まではいなしの構えに一貫していた聖王が初めて、どっしりと腰を落として臨む。
その差違に気づいた者がどよめきを漏らす。
あれは―――――
「…………魔力、集束……!」
乾いた喉で―――なのははその言葉を搾り出した。
――――――
あと1人―――
あまりにも当たり前のように英霊を抜き去って行く彼女。
それはこの王の過ごした日常、その生涯を如実に表している。
即ち、戦乱を生きた彼女の道程の再現だ。
既に多数の傷を負っている彼女。
先の2体が無双ならば今度の相手はチートだ。
あのアインスですら勝てなかった、なのはですらもう無理だと思わしめる絶望的戦況。
そんな中、王が最後に取った構えこそ―――!
「そ、そうか……初めからそのつもりで!」
偶然か必然か、彼女が選んだ切り札は高町なのはと同じ集束魔法。
3戦目は初めから真っ向一撃粉砕。 それがオリヴィエの選んだ戦法だった。
ここに全ての力を使い切ってなお、最強の一撃を放つ方法がある。
散った魔力を再び放つ最終兵器!
取り組みが始まったら、タメの大きい技は一切使えない。
リィンフォースですら、その巨大な力を発揮出来ずに敗れた。
されどミッド、ベルカ共に最も力を発揮出来る技はチャージ後のタメ打ち。
「そしてこの立会いの間こそ………絶対の勝機……!」
そう、何を呆けていたのか? 自分もこの祭の熱に当てられてしまっていたとでもいうのか?
それは過去、教導官がここぞの勝負で選んできた戦術と同じではないか。
聖王がわざと自分と同じ戦闘スタイルを選んだ? そう考えるのは自惚れなのか?
「……………」
集束砲は確かになのはの得意技だ。
しかし眼前で行われているソレは自分などとは比べ物にならないシロモノだった。
鳥肌が止まらない……メルトダウン寸前の核融合炉を前にした時のような恐怖。
時空が歪み、次元にすら干渉しかねないエネルギーの奔流がオリヴィエの懐に集約されていく。
その収束された力はあのエクスカリバーと同等か―――それ以上かもしれない!
「はっけよぅい…………あれ、これ何かヤバくない?
あの、アナタ達。 言っておくけどコレお祭だからね?
もう少しゆとりを持った取り組みをお願いしたいなー、なんて思うわけですよ行司的に」
「……………」
「■■■―――」
(き、聞いちゃいねぇ……)
カウントダウンを終えた核兵器が2つ、既に発射体勢に入っていた。
足のスタンスを広げ、体を極限まで沈み落とした聖王。
笑みを捨てた彼女が双眸に写すは戦乱の光。
金の髪を逆立たせ、肺の底から極限まで絞った息吹をゆっくりと吐き尽くし、巨人を睨み据える。
対して低く、重く、天を劈く咆哮をあげる巨人。
自身の立つ大地と同化し、静かに鳴動させるはジャバウォック。
赤子の如き思考回路が確たる脅威を前に、危機感から防衛本能を呼び覚まし、遊びは闘いへと変化する。
その姿はまさにガイアの具現のよう。 幻視させるは終末の巨神兵か。
楽しい祭がいつの間にやらハルマゲドン。
目の前でヴァン神族とアース神族が刀を振り上げたままで開戦の合図を待っている。
この手を振り下ろせば――――ボン!だ。
「あー、もう知らないからね! どうにでもなれ! のこっ………にょえええっ!?」
「ししょー!」
チンクがタイガーの胴体を抱え上げ、土俵の外に飛び退る!
と同時―――
「■■■■――――!!!!!」
明確な敵意を抱いた巨人の殺意ある一撃!
この世に砕けぬものなど無いと言わんばかりに唸りを上げて敵に迫る。
その破滅の具現を前に――――
「破ァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!」
オリヴィエもまた渾身の咆哮にて敵を迎え撃つ!
発気裂帛ッッ!!!!!!
虹色の魔力が彼女の全身から立ち昇り、捻りこんだ痩身から放たれる双掌!!!!
巨人―――その向こうにあるナーサリーライムの干渉をも打ち抜かんと翻る、聖王の次元干渉破砕拳!
世の理を大きく逸脱した2つの力の塊が――――今、激突す!!
――――――
………………
………………
………………
「アサシンさん……凄いよ……ゾクゾクする」
「むう………」
スバルの羨望と憧憬の吐息は、ここに集った皆の心を代弁したものだ。
怒声と、絶叫と、沈黙と、いずれを口に発したかは人それぞれだが―――
彼らの目前には雲すら突き抜ける火柱が上がっていた。
2者の立会いによって生じた竜巻の如き力の奔流。
土俵を飲み込む赤と七色の魔力光は成層圏にまで届き
ひしめき合い、マーブルのように混ざり合い、周囲の土俵を巻き込んで崩壊させていく破壊の渦。
紛う事なき奉納祭。 善きも悪しきも偏に天に帰する意味ではまさにそう。
渦から漏れ出る力が火の玉のように会場中に降り注ぎ
大地を穿ち、次々とクレーターを形成していく。
ここに集う者達がいずれも常人離れしていたのが幸いだ。
一般人の入場を規制していなければ今頃、どうなっていたか想像に難くない。
力の発露はゆうに20と数秒ほど続き
そして天変地異が収まった後―――――
「…………2人は?」
チンクが唖然とした呟きを漏らす中―――
ドサリと、何かが地面に落ちる音が木霊した。
――――――
土俵は跡形もなく消滅し、残るは2人の力士がその地に刻んだ激戦の御徴。
地底のマントルにまで届こうかという巨大な孔のみである。
そして――――誰かが、喉の奥から詰まったような呻き声を……あげた。
――――――
――― 神に等しきその御身が地に伏す光景 ―――
その敗北を、彼らは夢にすら描けなかったに違いない。
世の何物を以ってしても犯せない、その象徴たる王の微笑は見る影も無く
苦しげに、競り上げるような吐息を漏らして倒れ付す、彼女。
もはや隠し切れない憔悴と、豪奢な衣、纏った薄絹のほとんどを破損させた―――
「………及びません、でしたか」
満身創痍の肉体をごろりと仰向けに寝かせ、満点の星空を見上げて……
彼女は己が敗北の言葉を呟いた。
口の端からつ、と血の筋が垂れる。
そして、直後―――――
ズズン、!!!とジャバウォックの巨体が地に落ちる。
巨大質量が地響きを立てての落着。
ゆうに重機1台分に相当する巨体の墜落だ。
見物人の体が浮き上がって余りある衝撃が奈須山中に轟き渡る。
境内の中央に深く、深く穿たれた孔を挟むようにして地に横たわる力士と力士。
その結果に対して皆の胸に去来するのは感動か悔恨か、羨望か無念か。
心ここにあらずといった誰かの呟きが漏れ出てしまう前に―――
「………ししょー」
「分かってるわよぅ…………娑婆王(四股名です)ーーーー!!!!
朝聖王、地面にセメダインの如く張り付いたチート横綱を、何と土俵ごと引っくり返そうという前代未聞の試みっ!
かわいい顔してその気質は星の一徹そのものか! 豪快極まりない仕手でしたが、惜しくも敗れましたーーー!」
行事が勝者の名を上げるのだった。
祭りは終わった――――今度こそ。
――――――
沈黙に包まれていた境内に―――次いで上がったのは割れんばかりの大声援。
ジャバウォックの躯の両胸には、彼女の双掌破の後が聖痕<スティグマ>のように刻み付けられていた。
深刻なダメージである事は疑いようもない。
仮想プログラムである巨人の体躯がジジジ、と存在を危ぶまれるようなノイズを走らせている。
あれが……あれが戦火の渦に消えた最強の聖拳。
次ぐ者が途絶え、歴史の闇に埋もれて久しい幻の戦技の一端か。
「ジャバウォックが疲れちゃったみたい―――今日はそろそろおうちに帰る時間ね。
行こう私……早く帰らないとママに怒られちゃうわ」
「そうねワタシ……ナーサリーライムは童歌。
紡いだ逸話は皆の記憶に残る。 それだけでワタシは―――」
紡ぎ手は1人よりも2人いた方が何倍も楽しい。
御伽話の王様に感謝と敬意を示しつつ―――
しかして、その謡うような言葉が最後まで紡がれぬままに
双子は陽炎のように消えていった―――巨人と共に。
そして聖王もまた―――横たえていた身をゆっくりと起こす。
相当にきつそうだが、200の信徒が自分を見守っているのだ。
いつまでも地に伏せているわけにはいかない。
「素晴らしき英霊達の集い……その眩さに引かれました。
不肖、武の道を歩んだ者としていても立ってもいられなかった……
働いた無礼を許してください」
自身を見据える異郷の英霊たちに尊敬の意を―――
自身を見上げる敬虔なる信徒たちに感謝の言葉を―――
いずれまた強者と武を競える事を夢に見て
変わらぬ微笑を称えた姿は徐々に薄れていき―――
ベルカ戦役最強無敗の英雄。
聖王オリヴィエ・ゼーゲブリヒトは陽炎のように
秋の空が映し出す夢のように――――虚空へと消えていった。
――――――
聖王信徒の象徴たる彼女が負けた―――
だがしかし、誰もその敗北を恥とは思わなかった。
絶叫し、喉を潰し、命をも搾り出すほどの声をあげる信徒たち。
もはや感極まって誰の顔もくしゃくしゃだ。
彼らの涙を止めるあらゆる身体機能がその役目を放棄し
何が何だか分からなく、言葉にならない嬌声を喚き散らす者すらいた。
「ジャンヌゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーッ!!!」
何か妙なのも混じってる気がするが……
――――そして最後、彼女はまたも高町なのはの方を向いて微笑んだ。
見せたいものは可能な限り見せた……そう言わんばかりの表情だった。
その瞳に込められた想い。 理解の及ばぬままに、それでも精一杯受け止めた。
――― この目に、記憶に焼き付けた ―――
「………」
言い知れぬ高鳴りに支配されるなのはの胸の奥。
その熱さに苛まれ、自身の胸をぎゅっと握る。
「あれが聖王………今の私じゃ、全然届かない」
そして、なのはの傍でオリヴィエの戦いを見守っていた少女。
彼女もまた、何か大きな想いを胸に秘め、両手をきつく握り締めている。
「でも、いつか必ず」
「あの、貴女は………?」
なのはが背後から彼女に声をかける。
この少女の事が何故か凄く気になったから。
「……………」
だが、声をかけられた途端
まるで人と接触するのを嫌うかのように少女はその場を後にする。
今はまだ表舞台に立つ時ではない―――運命が彼女にそう伝えたのだろうか?
誰とも関わる事無く静かに舞台を降りた少女。 その背中を呆然と見送るなのは。
聖王に並々ならぬ感情を抱いていた彼女の瞳には確固たる意思が垣間見えた。
高町なのはは知る由も無い。
顔すら満足に見る事の出来なかった、この少女の名は――――アインハルト・ストラトス。
聖王オリヴィエと最後まで凌ぎを削った覇王イングヴァルトの末裔。
後に愛娘ヴィヴィオの終生のライバルにして、かけがえの無い友達になるであろう彼女の事を―――
今のなのはが知り得る筈もなかったのである。
――――――
もう一つの最終決戦 ―――
東場所と対を為す西の土俵。
ほとんどの人間が現世に降り立った伝説の王の姿に目を奪われていた頃―――
「イスカさん、例の反省室……相当、キツイって噂ですけど大丈夫やったん?」
「うむ、なかなかに愉快な体験であったぞ」
豪快にガハハと笑う征服王イスカンダル。
流石だ。 この大器の前では釈迦の説法も異国の音曲と変わらないという事か。
「まあ、相応のペナルティは貰ったがな……1週間の征服禁止だとよ…………トホホ」
前言撤回、それはきつい。 やっぱりとても堪えているようだ。
「ありゃあ征服出来んな……」と、彼の呟き。
ううむ、げに恐ろしきはヴァルハラである。
「それはそうと見よ。 あやつめ、人の上に立つ者の悲哀を極めておるぞ。
なかなかに見応えがある……お主の上官であろうが? 応援せんでいいのか?」
「応援かぁ……せやけど……う、う〜ん」
少し躊躇った後、蚊の鳴くような声ではやては彼に声援を送る。
「レ、レジアス中将! ファイトですー」
「黙れ小娘がっ!」
帰ってきたのは罵声。 肩を竦ませるはやて。
「貴様に応援なぞされたくはないわっ! このわしを犯罪者扱いしおってっ!!
わしの意地、わしの心根、そこで黙って見ておるが良い!」
「この通り、嫌われとるん……居心地悪いなぁ」
取り巻く応援団はかつての地上本部、レジアスシンパの連中で占められている。
はやては完全にアウェイだ。
突き刺すような視線に晒され、正座での鑑賞を余儀なくされている。
東中央では凄い事になっているらしい。
携帯の向こうであのカリムグラシアが支離滅裂になっているのだから余程の事だ。
義理立ての世知辛い付き合いが終わったら、一刻も早くアインスの応援に駆け付けたいというのに……
「レアスキル持ちがそんなに偉いか!? キャリア組がどれほど優れているというのか!?
サーヴァントがどれほどの者だというのかぁ!?」
猛る中年……もとい、中将が相手に突進する。
体重を乗せた張り手が見事、相手の顔面に炸裂。
バチコーンと響き渡る肉を打つ音! これは決まったか?
「――――――、」
「ぬ、ぬおっ!?」
だが相手は……男の半分も無い、その肢体は1歩も揺るがない。
張ったレジアスの方が返ってくる衝撃で崩れてしまうほど。 まるで大木だ。
「吼えたな―――泥に塗れた中にも、切なる光を感じさせる吐露は実に心地良い」
ぐぎぎ、と全体重をかけて敵を押し出そうとするレジアス。
だがしかし、琴を背負うにも難そうなその細腕がゆらりと動く。
「だが、まだ甘いわーーーーーーー!!」
「ぐほぉあっ!!?」
フワリ、と薔薇の花が舞う。 諸共に中将の横っ面が弾け飛ぶ!
口から鮮血を撒き散らし、100キロ超の巨体が回転する。
駒のようにきりもみし、そのまま土俵外へとスピンアウト―――
「ふんぬっ!!」
否! 巨体は土俵際で踏み留まる。
ガクガクと震える膝に活を入れ、男は雄々しく敵と相対するのだ。
「父さん無茶です! 相手はサーヴァントなんですよ!?」
「無茶か……思えばわしの人生は無茶、無謀に彩られたものであったな。
無力なわしに出来た事と言えば決して諦めず、愚直に前進する事のみ……ならば!」
打ちのめされ、這い蹲っても、決して負けを認めるわけにはいかない。
でなければ力及ばず死なせてしまった部下に申し訳が立たない。
決して叶わぬ物―――叶わぬ事に挑み続けた。 それが彼の生き様そのものだ!
「間違っているぞ――――そなた」
だが今、男の生涯を否定する者がいる。
限界の際まで食い込んだレオタードを一片の羞恥なく着こなし
煌びやかな注連縄を施されたバトルスーツが身体の線を惜しげもなく晒している。
赤を基調とした装束を上から羽織ったサーヴァント――――セイバー。
赤剣は吼える。 原初の火の如く煌々と。
「悲壮な覚悟は、己の無力を嘆く心の裏返し。
頂に身を置く者に無茶、無理、などとのたまう口など必要ないわ、このたわけ者っ!」
言って、爆発的な仕切りから瞬時にレジアスの内側を侵略するセイバー。
高らかに己が王道を謳いながら紡ぐは隕鉄の鞴・皇帝連拳コンボ01!
「権は剣なり―――権力という大いなる力を手にしていながら、それを無力と卑下する愚かさよ!」
「ぶおあっ!?」
下から突き上げるような掌低―――
「全ての無理を押し通すのが君臨者たる皇帝の力!
故にいかなる敵を前にして、なお無敵と自覚せよ!」
「ぶぼばばばばばっ!?」
全身に突き込まれる百烈拳―――
「現に富も! 栄華も! セイバーの座すらも! 絶対皇帝たる余の思うが侭であったわっ!!」
「どはあああああああ!!?」
仕上げとばかりに、中将の鼻面に強烈なドロップキックが炸裂した―――!
「セイバー(青)さん、聞いてたら怒るわ……特に最後」
「あやつもせめて、この半分でもはっちゃけられればなぁ……
ちいとはマシな余生を歩めただろうに」
ダルマのように吹き飛ぶ中将。
だが、またも残す! 彼の体のどこにそんな力が眠っているのか!?
「わしを舐めるなーーー!!!!」
「ぬ"うっ!?」
セイバーの飛び技の着地を狙い、レジアスゲイズは必死で組み付く。
難破した船の支柱にしがみ付く熊の如く!
そのまま体格を生かした鯖折を敢行するレジアス。
セイバーの細い腰を、背中を、ギリギリと締め上げる中将の豪腕。
気力だ。 圧倒的戦力差を中将は気力で埋めている。
「思うがままに散財し、謀殺し、国から追われた妖婦だろ貴様は!
そんな奴に地上の平和を守る事の難しさが分かってたまるかぁぁ!!」
「ふ、ふん……! 力及ばぬ無力を嘆くは今わの際にする事だ。
権謀術中に彩られ、そなたと同様、惨めな最期を迎えた余ではあるがな……
この身は一度として己が<剣>を無力などと辱めた事は無いぞ!」
気合一閃、中将のクラッチを力づくで切るセイバー。
箒のように細い腕が丸太の如きレジアスの両腕を押しのけ
そのベアハッグが徐々に開放されていく。
「確か煩悩の数は108であったな―――貴様で最後だ、レジアスとやら。
横綱たる余が支配者の何たるかを教えてくれよう。
そして余の軍門に下った暁には……貴様もこの素晴らしき衣装を身に纏うのだっ!!!!」
オーリスが「ひっ」と短い悲鳴を飲み込んだ。
彼女の後ろには暴君に敗北し、ソレを着させられた局員達の姿が(当然、オーリス含め)。
彼らにとっては、教会における聖王と同義の存在であるレジアスゲイズ。
象徴であり、最後の砦……辱められてたまるか……我らが地上の誇りと矜持を!
――― というわけで、ここもある意味、最終決戦 ―――
局員の悲鳴のような歓声が飛ぶ中で、はやては早々に家族の応援に赴く事を諦める。
「カリム、あかん……ちょう、そっちには顔出しできへん。
あと西方の横綱が決まったよー。
うん、うん、そうや。 皇帝特権とかそういうので」
携帯を切って溜息をつくはやてである。
「ふむ―――やはり、あの赤いのとも相容れんな」
「あの衣装を着たリィンフォース、見たかったなー……」
西場所にて毒婦と中年のぶつかり合いは果てる事無く続いたという。
それが傍から見て、裸のトドが少女に汗だくで抱きつき
絶叫している犯罪的光景だったとしても―――
それは聖王の舞いに勝るとも劣らぬ
心震わせる取り組みであった事を、ここに追記しておかねばならない―――――
――――――
「あーもう! 悔しい、悔しいっ!」
旅館のエントランスに少女の高い声が響く。
「やっぱ納得いかない! 何で私のバーサーカーがあんな……
どこの馬の骨とも分からない奴に負けなきゃならないのよ!」
「分かるわぁ。 悔しさっていうのは負けた直後より後からじわじわ来るからね」
「負けてないっっ!! 10回やったら9回はバーサーカーの勝ちだった!」
「アーチャーも射撃で似たような事言って負けてきたわね……
ま、その1回をあそこで引き当てた不運を呪いなさい」
「うう〜〜〜」
地団太を踏むイリヤ。 よほど悔しいのか目に涙が滲んでいる。
少女にとってあのバーサーカーがどれほど特別な存在か分かろうというものだ。
移入している感情もひとしおだろう。
誰もが聖王が殺される、とまで思ったあの大一番。
10%以下の勝率をここ一番で引いてきたのは流石、英霊といったところか。
しかし濃厚な敗北の図式を覆し、勝ちを手繰り寄せるのは秘めたる想いの強さだ。
今日は絶対に勝ちたいと願ったイリヤ。 その願いを凌ぐ想いがあの拳士にあったという事か?
こんな祭の席で、あれほどボロボロになってまで、かの美しき王は何を求めたのか? 何を示したのか?
(ま、そんなの人それぞれよね……他人が与り知る事じゃない)
そうだ。 譲れない想いはただ密かに誰にも知られる事無く灯せばよい。
自分とて明日はあの化け物相手に、10回に1回の勝利を掴みにいかねばならないのだから。
「ほら、イリヤ」
士郎がハンカチを渡してやると、レディとして少しは恥ずかしくなったのか
スン、スンと鼻を啜りながら涙を拭いて大人しくなる少女である。
「でもイリヤだって、あの相手の強さは認めるだろう?
セイバーも震えたって言ってたからな」
「………」
「だったらまずその心を尊重しないと駄目だぞ? これは戦争じゃなくてスポーツなんだから」
その言葉に一瞬、目を見張る少女だったが―――
「………だからこそよ。 今すぐ再戦を申し込むわ。
勝ち逃げなんて許さない。 今度はホントにホントに本気なんだから!」
「負けず嫌いの悪魔っ子め………だけど、あれじゃねぇ」
意気揚々と少女が目指す敵の本丸……凛が指を刺した先では―――
――――――
「――――聞こえなかったのか? 我が自ら謁見の許可を与えると言っているのだが」
「………」
「まさかこの英雄王に2度、同じ台詞を吐かせるのではあるまいな?」
「こちらも2度は言いません。 陛下は現在、どなたともお会いになられません」
カリムグラシア、シャッハヌエラ、そして後方に集う聖王騎士団。
英雄王に一歩も引かぬと立ち並ぶ勇猛なる騎士たちだ。
「この偉大なる我の訪問を無碍にすると申すか?
その罪―――貴様ら全員の命を以って償う覚悟は出来ていような?」
「とうに……あのお方の御身は我ら全員の命よりも遥かに重い。
ただし聖王信徒一同、勝てぬまでも貴方の鎧に我らが信仰を刻むくらいの事はして見せましょう」
王の灼眼に怒りが灯る。
さりとてカリムも一歩も引かず……一触即発とはこの事だ。
「まあ待て待て! 双方、落ち着け! そなたら少し勘違いをしておるぞ?
何も取って食おうというわけではないのだ。 同じ王として我らの邂逅、その記念となるべき会談をだな……」
「だあああっ! 貴様こそ待て待て待てぇぇい!! 余を差し置いて何を勝手に話を進めておるかーー!!」
「ちっ……ややこしいのが来おった」
廊下からドドドドと駆けてくるのは赤セイバー。
白いスーツにこびり付いた赤い染みはヒゲの返り血だろう。 生々しい。
「おう、息災か赤いの。 あのけったいなサウナスーツは全部、配り終えたのか?」
「ふふん♪ 任せろ。 たった今ノルマを…………………て、違ーーう!!!
余の意向を無視したその無体な進行、ひたすらに遺憾の念を抱くぞ!
この競技は東と西に頂点を頂き、最終的に両者で雌雄を決するものではなかったか!?」
肩を怒らせるセイバーこと暴君ネロ。
「西の横綱は余だ! 余こそが噂の美姫を存分に愛でる資格がある!
さあ、聖王とやらを出せ! 余との統一王者決定戦ではせいぜい可愛がってやるから!」
色々と違う競技が混ざっている。
「横綱って……そりゃ、お前さんが勝手に言ってる事だからなぁ。
あと紛らわしいから一人称、変えろよ」
「ハ―――、誰かと思えば世に無能を晒したまま野垂れた愚帝か。
バビロンの毒婦とやら……よもや我と対等のつもりではあるまいな?
そも、貴様如きがセイバーと同等のクラスに収まっている事自体、許しがたい暴挙であるぞ」
「暴挙とは誰の事だ? バビロニアの英雄王よ。
自身の許容を超えた財宝に埋もれ、使い潰すような輩が至高の宝玉を手に取るなど断じて許さぬ。
聞き及ぶ限りの麗しき美姫―――芸術と名のつくものは全て余にこそ相応しい!」
「いいだろう! では誰があの麗しき王を従えるに相応しいか、ここで王問答と行こうではないか!」
「……もう帰ってくれませんか? 貴方たち」
――――――
「収拾つかないな、あれは……」
「ああ、もう! うっとおしい連中ね!」
ついにはあそこで酒席を催そうとしている大王を騎士団が必死に押し返している。
あの中に飛び込むのは、とてもとても遠慮したいところだ。
「今日はもう無理なんじゃないでしょうか? それにしても凄い人気ですね」
「只事じゃないからな。 あの面子をごぼう抜きなんて」
「抜かれてない!」
「はいはい……まあ、ゲームってのはそれくらいムキになって丁度良いのよ。
大人気ないと言えばそれまでだけど、遊びは本気でやるから面白いんだから。
卓上テーブル引っくり返してリアルファイトに発展するくらいが丁度良いわ」
「いや、それは駄目だろ」
「ところでイリヤ……何であの時は止まったの? 貴方、令呪を発動しようとしてたわよね?」
そう、皆が聖王の背中に釘付けだった時、凛も士郎もしっかりとイリヤの挙動を監視していたのだ。
彼女が乱闘を起こす気配を誰よりも早く察知していたからである。
だから少女があの時、悋気を飲み込んでくれた事に胸を撫で下ろすと同時に
あそこで自己を抑制出来たイリヤに対し、腑に落ちない点が残った。
「らしくないなぁって思ったのよ。 やけにあっさり引き下がったけど、何かあったの?」
「………………」
それは珍しい光景だった。
歯に絹着せないこの少女が、何故か言いにくそうにもごもごと口元を淀ませる。
首を傾げる凛である。
「………別になんでもない。 私もオトナになったってだけの事よ」
これ以上、少女が口を開くことはなかった。
だってそれは多分、幻聴だっただろうから。
その声の主がここに来ている筈が無いのだから。
「そんな事より自分の事を心配したら?
明日も無様を晒したら本当に死ぬほど大笑いしてやるんだから」
少女は苦渋の奥に確かに感じた温かい幻聴を胸の内に仕舞いこみ―――
明日の大一番を控えた凛に話を逸らすのであった。
――――――
エントランスのソファにて―――
押し問答を続ける王と教会の面々を遠巻きに見守っているのは高町なのはだった。
両膝にかかる適度な重みは娘のもの。
ヴィヴィオが大好きな母の膝枕の上でスヤスヤと寝息を立てている。
時折、寝返りを打たれてくすぐったいが、それも心地よい感触だ。
この手に抱ける最愛が今、確かにここにあるのだから。
「こんばんわ――――キミの子どもかい?」
そんな親子の睦まじい姿に誰かが声をかけた。
重みのある渋い男性の声。 誰だろうと顔を上げる。
すると2人連れの男女のカップルが自分を見下ろしていた。
否、夫婦、か? 年の頃は30歳に届くほどだろう。
「はい。 大事な私の娘です」
「かわいい………ちょっとだけ抱かせて貰えないかしら? ……駄目?」
「あ、はい。 どうぞ」
そう告げたのは女性の方。
息を呑むほどに美しい……けれどどこか儚い印象を受ける、肌も髪も真っ白な貴婦人だった。
ふと、あの雪の少女の面影を思い出させる―――
「貴方、今幸せでしょう?」
「え?」
「こんなかわいい子を自分の娘として抱く事が出来る……母親の―――――女の本懐よ」
優しい手付きで娘の頭を撫でる婦人。
未だ拙い自分のそれとは違う、本物の母親の抱擁だった。
ヴィヴィオに、抱く人間が変わった事すら気づかせないほどの手管。 ちょっと悔しい。
……女の本懐。 考えた事もない、わけでは無いが……
考える暇はなかった。
この10数年は壮絶に忙しくて、自分の抱いた夢は他の夢への浮気を決して許さなかった。
だけどこうして娘を持ってみて、自分の価値観が揺らぐほどの何かをヴィヴィオが与えてくれたのは事実だ。
他愛の無い話に花を咲かせる母2人。
そしてそれを1歩下がった位置で目を細めて見ている男の人。
とても優しそうな、虫も殺せないような印象を受ける。
まさにお似合いの夫婦といった感じだ。
それを見て「いい……」と思ってしまうのは高町なのはがエースである前に紛う事ない女であるからか。
「ありがとう」
婦人からヴィヴィオを返される。
「いえ……お2人も慰安旅行の参加者ですか?」
「いや、僕らは個人的に。 忙しくて新婚旅行もろくに出来なかったものだから……
今日はその埋め合わせというところかな」
そうだろう。 参加者名簿は大方目を通したが、この夫婦に見覚えが全く無い。
全てを把握しているわけではないが、記憶の隅にも残らないという事は恐らく無い筈だ。
自分はこの2人の事を知らない、全くの初対面だと断言できる。
だのに、何だろう?
何かが、とても心に引っかかる。
彼らを……否、彼らに自分と、とても近しい何かを感じてしまうのは―――
「―――――キミはこの娘をどう育てていくつもりだい?」
「え?」
いきなりの質問に面食らう。
男性の得も言われぬ迫力に押されたのもあった。
「あれほどの力を持っている以上、きっと一般で言うところの普通の人生は歩めない。
何よりも周りが放っておかない。 どれほど望もうと彼女は多分、一生平凡とは無縁な人生を送る事になるだろう」
「………」
それは自分が今、娘に対して抱いている悩みだった。 男性の言うとおり、力とは力を引き寄せる。
法外な力を持つ者は、否応無しにそれを発揮する事を世界から強制される。
だからこそ高町なのはは悩んでいたのだ。 この娘を強くしてあげる事にすら成否が見えなかったのだ。
「闘いと……力と無縁の人生を歩ませたいという気持ちは当然ありました」
そして自身の想いを紡ぐなのは。
初対面の、見ず知らずの夫婦に何故こんな話をしてしまうのか?
不思議と自然に口をついて出てしまった事に彼女は驚きつつも………
2人が悪い人には見えなかった事や、何よりこちらを見る彼らの目がとても優しくて
自分を実の娘のように眺めるような温かい光を見て取れた事で納得する。
「でも多分、無理でしょう……あれほど強烈な魂を内に宿すこの子に、それを抑え付けさせる事なんて出来ない。
そんな事をすれば、どれほど歪んだ一生を送らせてしまうか分からない」
本当の自分を忌み嫌い、拒み、己をひた隠して生を送るものもいる。
だがそれは悲惨な人生だ。 自分を偽り続けて送る生の何と苦しい事か。
ならば力の使い方を決して誤らない様、周りが導いてやれば、それが一番良い筈だ。
誰かに利用されないように、自身の力に溺れないように、周りが守ってやれば良い筈だ。
それは自分がかつて出した結論で、そして自分が大人たちにして貰った事でもある。
だから自分も、この娘の歩む険しい道を見守り、共に歩む義務がある……それこそ全力全開で。
そこまで口にして、なのはは先の聖王が自分に向けた視線―――
迷いに苛まれている自分に聖王オリヴィエが何を伝えたかったのかを理解した気がした。
出来うる限りの自分を見せた。
己の拳を、己の道を、己の辿った宿業を。
その上で―――どうかこの子を頼みます……
自分の遺伝子を持って生を受けてしまった幼い魂を、どうか見守ってやってくださいと―――
迷わずに、怖じけずに、貴女の全てをこの娘に注いであげて下さいという、それは彼女なりの後押し。
彼女の必死の戦いに、自分だけに宛てられたそんなメッセージが込められていた事をなのはは理解する。
ヴィヴィオはこれからも自分に戦い方を教えて欲しいと願ってくるだろう。
この頼りない背中をずっと追いかけてくるだろう。
だけど技術的な事ではないのだ。 背伸びをしなくても良いのだ。
その在り様を、その生き方を―――今日、自分が目に焼き付けたものと共に伝えてあげれば良い。
「見守ってやる事だ………………
僕らには無理だったけれど、キミにはそれが出来るし―――その力もある」
「頑張ってね……絶対に後悔しないように」
「………はい」
なのはが何かの核心を得た事を、まるで理解しているように
夫婦は母親一年生の彼女に激励の言葉を送り、去っていった。
親という面で見れば不屈のエースとてまだ雛鳥のようなもの。
あの2人はまるで、そんな彼女の拙い足取りを見るに見かねて肩を貸してくれた親鳥のようで―――
去って行く時も本当に幸せそうな、憑き物が落ちたかのような夫婦の顔が……とても印象的だった。
自分もあんな顔が出来るだろうか? 愛しい者とかけがえの無い者と一緒に歩んでいけるだろうか?
それでも微かに憂いを秘めた夫婦の表情。 本当は会って話したい人間がここにいたのかも知れないが……
そんな男性の背中が、外見はまるでそぐわないというのに―――
――――――どこか、あの衛宮士郎や、アーチャーに……似ている気がした。
――――――
いつの間にか、エントランスに静寂が戻っていた。
外界の喧騒から乖離されたような不思議な出会い。
その後、王と騎士団の問答の顛末がどうなったのかは分からない。
初冬の冷たい空気が肌を刺す夜半の大広間にて
なのははゆっくりと立ち上がり――――
「破っ!!!」
その場にドン!と震脚。
全身のバネを集約するような腰の回転と共に、虚空に双掌を放つ。
空気を切り裂くような凄まじいキレを有した一撃だった。
それはオリヴィエが最後に見せた技―――集束・双掌破を模したもの。
「うわっ!?」
「あ………ユーノ君?」
後方、聞きなれた青年の声がする。
祭の事後処理や片付けを終えてきたユーノスクライアである。
「す、凄い突きだね……それはさっきの聖王の技?」
「うん、猿真似にもなってないけどね。
旅行から戻ったら、ちょっと本格的に習ってみようと思うんだ……これ」
言って、護身程度に学んでいた近接散打の型を確かめるように体を動かす。
伝説の英雄が示した偉大なる聖拳。 自分ではその100分の1も再現できないだろうが……
だけど娘にちゃんと教えると決めた以上、中途半端になんか出来っこない。
やるからには徹底的に……それが高町なのはの高町なのはたる本領なのだから。
「燃えてるね……なのは。 ところで、さっき誰かと話していたけれど知り合いの人?」
ユーノのその問いには黙って首を横に振る。
長い時を経てのようやっとの「埋め合わせ」―――
紡いだ男性の言葉が、何故か今になって
とても切ない響きを含んでいるように感じてしまうのは……何故?
とにかく、あの2人の新婚旅行をみだりに邪魔をしてはいけない……そんな気がした。
不意に思い出してしまう……あの素敵な笑顔。
幸せな夫婦の幸せそうな表情。
手に入れられなかった、望むべくもなかったものを、ようやっと手に入れられたような―――
去来する、言い知れぬ切なさと哀しさと、それに相反するような嬉しさに胸が締め付けられてしまう。
一体どうしたんだろう? 自分はどうにかなってしまったのだろうか?
「ユーノくん………」
「ん? 何?」
「……………混浴行こうか?」
うん……きっとそうだ……今日の自分は何かおかしい。
だから今日くらい―――こんな夢を見たって……いいよね?
「え"っ?」
スターライトブレイカーを不意打ちで食らったに等しい衝撃が司書長を襲う。
はにかむようななのはの表情。 少し恥ずかしげに俯いている。
そんなベビーフェイスであまりにもさらっと打ち込まれた一撃必殺・集束砲。
「うえええええええええええええぇぇぇぇええええええええっ!!!!!!????」
エントランスに純情青年の青い絶叫が木霊する。
「ヴィヴィオも行くーー!」
耳聡くママの言葉を拾ったヴィヴィオがガバッと起き上がる。
「よーし、行こう行こう! 今日は家族で水入らずだ♪」
「ちょ……それはまずいってっっっっ! なのはっ!」
「えー、たまには一緒に入ろうよ! 恥ずかしがる事無いよ♪
だってユーノ君は私の裸なんて見慣れてるもん」
今更でしょ?と、悪戯っぽく笑う白い悪魔。
誰かに聞かれたら魂まで焼き尽くされるような発言をサラリと!
ユーノの狼狽は頂点に達していた。
きっとフェレット形態の時の事だろうが、その話を何故、今頃持ち出すか!?
「10年越しの取立て。 利子をつけて返してもらおうかな♪」
「返してもらうー」
「そそ、そんなぁ〜〜〜〜〜〜!!」
司書長、二日目にして最大の受難はここに極まった。
しかしながらの温泉マジック。
高町なのはがここまで「女」として彼に接する事など、もう一生無いかも知れないのだし―――
「なのはぁ〜〜〜! どこにいるの〜!?」
未だ境内で親友を探索中のフェイト。
彼女よりも速くなのはの元に辿り着ける事もまた奇跡に等しい事象なのだから。
故に、たまには男を見せろというこれは天の思し召し。
なのはの小さな、でも大事な大事なとある決心―――
その受け皿にすらなれないのなら、彼は一生フェレットの姿で過ごすべきであろう。
結局、彼は抵抗の術を剥奪されたまま
なのはとヴィヴォオに手を握られて……天国への階段を登る。
幸せな家族たちに幸あれ
夢のような時間―――その最後の夜を越す
――――――
二日目、終わりです。
何か本編とやってる事変わらないような気がしますが
今回はVividを意識して描きたかったので、こういう形になりました。
熱血格闘スポ根モノとして描いてみたかったので。
ラニとイリヤに可哀想な事をしてしまいましたが……
この埋め合わせはいつか必ず。
ではまたノシ
たまに早起きして気づいた。
リリブラの人乙!
というか、一回か二回の投下量で、自分の書いたほぼ全てになるんだから、もうすげぇとしかいいようがないなw
次回も楽しみにさせていただきます。
あと相撲の極意は「押さば押せ、引かば押せ」の愚直なまでの前進にあるのだとキャス狐にはいいたいのだがががが…!
アルクェイドが出ていれば聖王を止められたはず!
まあアルクが白スク着たらファンタズムーンになっちゃうけど
分かってはいるが、リリカル贔屓が少ししつこい。
そしてイリヤの「十回やったら九回は勝てた!」とか咬ませ発言が酷い。
次元干渉できるほどの一撃で勝てないなんてこたないんじゃあないんだろうか笑
そんな一撃、たとえアリストテレスだろうが防げないでしょ笑
まぁ恐るべきはレリックなしの状態でそれを放つオリヴィエの強さか。
>>451 そんなことはないとおもうけど?
型月贔屓のほうが今ままで多かった様に思えるし、バランス取れてると思う、個人的にだけど。
型月が基本リリカルより上じゃなきゃいやだ、て人が最近ちょっと多くないかな。
なにはともあれ、そろそろアルクとかギル(かませになる可能性が最も高いけど笑;)
の戦闘が見たいです!
毎度GJ!
ここに来てオヤジ達の活躍。汗臭い血生臭い
はやては青子と麻雀でもしてるのかと思いきや、なんと貧乏クジ
王様って面倒くせぇ奴が多いこと多いこと
次回のなのはvs凛でこの旅行のフィナーレでしょうかね
娘の手前負けられないなのはママと、後がない&勝利フラグビンビンの凛
どう決着をつけるのやら
…筋肉神父となのはオルタ達の明日はどっちだー!?
忘れてた? そもそも出す予定が無い? HAHAHAご冗談を
>>452 いや、正直それは俺も感じたわ。
なんつーか、本編は主人公ポジになのは勢が置かれてるから
今苦戦しててもどうせ最後は勝つ(はず。作者が置いてけぼりとか食らわせない限り)だけど、
こっちは取り返すとかそういうのないから結局負けたままなんだよね。
しかもそれが続いてる。フラストレーション貯まる人が居てもおかしくないよ。
そもそもお祭りだってんならバトルなんてしなくてもいいはずなんだし。
まあ結局は2次創作なんだし気楽にいこうぜ
嫌なことは忘れてしまえばいい
ネテロ並に感謝の心を持ってSSを読もうぜ
○cって書けないのか… ?に化けやがった
ザッフィーが負けて当然みたいのは承服しかねまーす
ザッフィーにも謝罪を要求する
まあ冗談だけど別にガチでやっても普通にいけそうだしあんまり片方持ち上げられても
と思う派の俺でした
最近文句が多いのは理想郷から流れてくる人がいるせいかなーと思ったり思わなかったり
ここは、なのはと型月双方が好きな人達で仲良くしましょーなすれです。はいここ重要
作者氏の投下後の発言は、なのはを型月と同格に扱ってごめんなさいとまで言っている(とも受け取れる)わけだが
型月側にも最初からカナーリ気を使ってるのが見て取れるよ
原作の知識と理解度も抜群。ただなのは側の知識はあやs(ry…というのは置いておいて
好きな作品同士を好きにコラボさせんのに文句あっかー! と虎ボイスで叫びたい
一方だけでなく、双方に愛がなきゃこんな話は書けん
実にこのスレらしい作品だと思うのでした
型月贔屓は最後には勝者にするリリカルが打ち破るべき困難として型月を描かれているから、
山場を作る為に敵(型月)を強大にするのは演出としてアリだと思う
リリカル贔屓も主役視点が置かれてる方が最終的に良い目を見てるように見えるのは仕方のない話
前回、キャス狐がスバルにした裏技って何?
玉つ○し…
え? スバルって玉あったん?
いや呂布に一撃で勝つ方法って…
そこのことじゃないの?
リリブラ氏乙です
リリブラさんはバランスよく書いてると思いますよ。型月は型月ですごいし、リリカルもすごい所はあるし
SLBは核数個分のエネルギーらしいし
赤セイバーとレジアスの対決が何故か一番面白く感じてしまった。
ジルまで出てきたってことは、ランスロットも出てきたりするんですかね?
ランスロットがバスでおとなしく座ってる図想像したらシュールなんですが
ジャンヌでちょっと吹いてしまったわw
未登場の人たちが何してるのか想像するとなんかワクワクしてくるぜ
>>457 ちょwwヤクザ
その格好でポン刀振り回したらリアル仁義なき戦いだろw
京都の屋台で大判焼き焼いてたあんちゃんにも似てるなぁ
起源覚醒したらなんか無差別級の変なのが出てきたでござる
リリブラさんは、呂布の采配の仕方は上手いなーと思った
バーサーカー化でヘラクレスとキャラ被ってるのに、しっかり動かしてる
相撲を取らせにくいベルカ勢を猫騙しに拘らせてみるなども
>>467 核数個ってニコニコの計算?
エクスカリバーが川蒸発とか、真・ソニックが雷速とか逆に人間認識限界とか、バリンジャークレーターとかそういう計算って嫌い
原作者たちは深く考えてないから、なんとなくで考えるべきだと思う
自分も気にしすぎだけど
……ランスロット卿は、ガウェイン卿に見つからないよう心技体の一致で隠れています
王に許してもらったので、賢者タイムです
都築はご想像にお任せしますてとこが多いからなー
高く見積もればで核にギリギリ耐えられない程度であり、低く見積もれば手榴弾にギリギリ耐えられる程度のバリアジャケットとか
恋愛だけは無いと断言してるがw
式に始まりなのはに終わる草食系男子混浴リア充爆発しろとか
延々と一人テリーマンを続けるアインたんにここまで突っ込み無し
やだなあ、ユーノくんなんて見てませんですよ?
アレは式さんじゃなくて変装した白純リオ、もしくはランスロットですよ
夢じゃないですか?
さすがに核数個分とかないわw
そろそろ、クー・フーリンをバーサーカーで出して、ヘラクレスを味方サーヴァントにしてみようぜ
ゴッドハンドは、聖杯でないマスターの適性により不完全で
3分しか戦えないとかでもいい
気のいい大男風サーヴァントで征服王とキャラ被るかも
いいケツしてんじゃねえか……
ヘーラクレースさんは大西洋と地中海を繋げた張本人だぜ?
ゴッドハンド無しでも強すぎて色々扱いに困ると思う
しかし、日本では知名度なかなか、最高のマスターでも狂化を抜いたらB+BBBCのステータス
隙がない一流の性能ではあるが、知名度まあまあのアーサー王のスペックには劣ってしまうぜ?
さすがに狂化・ゴッドハンドなしだと、ナインライブスあっても、
一流の肉体と、無比なる勇気、「普通に強力な宝具」の「普通の一流」サーヴァントになってしまう
まあ、逆に使い易いが
なのはが知名度補正受けたら、フェイトのリボンとかの小物アイテムも装備に加わるのかね
リボン:とってもかわいい。フェイト・T・ハラオウン召喚の触媒になるが(ry
あの計算は光ってから音っていう演出をもろに受けるところから出した計算なので、信用度は……。
ただフェイトに防がれて別れた光が、ビルくり抜くように消し飛ばしてる方は確定か。
どっちにしろ、一般人なら死ぬのだけは間違いない。
>>481 もともとAだけど、EXにならないのでAのまんまとかありそうだと妄想してしまう。
だってあの巨体と筋肉だぜ。あれでAいかないんだったら、Aランクの筋力ってどんなんだと。
たしかに、Aにワンランク足してもAだし、筋力に関しては元からA+あるかもしれない
呂布とかもB+ランクだけど、普段から彼らの枠に納まらない破壊力があるし、多く見積もれば60(120)→70(140)まではあるやも
ヘラクレスだけ光ってるワンランク分は、イリヤによる狂化ランクの抑制(コンマテ3)だとした方が自然かなと思って、それ前提で話をしたが
あと、マッチョと筋力(肉体的な強さ)は比例しないぜエミヤン
腕相撲で五次ライダーに瞬殺されるアーチャー
五次弓兵の筋力は肉体的にはなんの資質も無い一般人が鍛えた物としては破格なんだよ!
だって他のやつ等は神性もちとか幻想種とのハーフだったり、その他の逸般人共と比べたら充分に人外だよ。
リリカルキャラって素の状態で一番身体能力が高いのは守護犬とかスバルとかかね。
にじファンの リリカルとマジカルの全力全壊
ここ最近の型月×リリカルなのはクロスssではかなりの良作、といっても全体数がそんなにないんだけど。
作者の前作はアチャの4次逆行で文章力といい、さすがにじファン(当時なろう)といった程度だったが、こちらのギャグ主体SSはなかなか楽しめる
これまでのテンプレをとは違うコロンブスの卵的な展開
でも文章は相変わらず…
ゼストやガリューあたりも高そうだ。見た目的に。
竜はさすがに人間外すぎるのでランク外で。
まあ魔法無しな純粋な身体能力となると、高町家がヤバいんだが。
戦闘機人かな。改造人間だし
日常生活だけなら5日は不眠で連続稼働できるとかナポレオンもビックリ
それに体力でヒケをとらない教導官は鍛えすぎ、つか鍛えてどうにかなるんすか
リリブラでは釣りバトルでプロテインの牛乳割りなんて飲んでたが、
ギプス付きのハードな自主トレにトレーニングと並行して過ごす日常生活、さらに局員としての非日常が当たり前の小3…
違和感がなかった
高町なのはを論議する場合に限って常に最強の戦力を想定しろ
奴は必ずその少し斜め上をいく
信じられるか?
アチャーさんは小次郎より筋力低いんだぜ?
その小次郎もキャス子より耐久が無かったりする(って事は凛に凹られたらかなりピンチ?)しあの世界はよくわからん…
流石にとことん体力勝負したらスバルには敵わないだろうけど(ていうかそうでないと困る)
ちょくちょく超人設定を垣間見せるからなぁ、なのはさんは
取り敢えず疲れても顔に出さないように訓練されてそう
>>481 ギリシア最大の英雄が史上最高のマスターと契約してそのステはちょっと考えづらい。
初戦は狂化してなかったのにセイバーを圧倒してるし。
セイバーもヘラクレスの能力はほぼAランクって言ってるし。
初期のセイバー圧倒はあてにならん
怪我を負ってたしそもそも魔力不足で仮に
>>481のいうステだったとしても
十分圧倒できるステだし
まああのヘラクレスの素のステが
>>481だった場合の違和感は拭えないが
アーサーや円卓連中がはっちゃけてるだけにw
狂化分を真面目に差し引くとランスロットがCBB+DE、呂布がB+B+C+D+D+とバーサーカー組は激しく微妙なステになっちまうぞw
ちなみに三倍パワー使ってランスを倒しきれなかったガウェイン卿のステはB+B+BAAな
普通に考えりゃB+BBBCはないわな
>>493 ランスはBBB+CBで全然違うぞ?何見て書いた?
呂布はそもそもバーサーカー化:Aの効果か不明な時点で引き合いに出すのはナンセンス
Bで全パラワンランクアップなのにAでも同じ効果とかまずあり得んし
+がその効果の表れで呂布はAABCCって可能性もあるし
神話とかよく知らない層でもヘラクレス=力強いってイメージは一般にある
ハリウッド映画のヘラクレスの俳優がシュワルツェネッガーだった事を見てもそれは明らか
確かに奴が筋力Aじゃないのはおかしいな
パッと見では筋力Bと弱体化時と大して変わらないクー・フーリン
やはりパッと見ではヘラクレスすら凌ぎかねないパラメータ、加えて宝具の一部を開放してすらいるターミネーター呂布
この二人が互角の戦いぶり
これを見るに、ヘラクレスは狂化時にA+ギリギリまでの筋力があったのではないかと思われる
まあ、パラメータはBあれば英霊として一流、最高純度でAなんてくらいの大まかさでおすし
+で怪物的身体能力(筋力)、驚異のダメージ耐性(耐久)、図抜けた反応(敏捷)、底なしの魔力運用量(魔力)、主人公補正レベルの幸運ってことかな
敏捷(スピード、反応)は、今までの例を見るとスピードキャラってより超反応キャラのが+付き易いみたいだな
逆に言えば、ソニックフォーム類がスピードに+を付けるものならば、+驚きの、++破格の、+++別格のスピードと表せるわけか
劇場版なのはさんのSLBはSLB+++くらい?
超ペット友之によって齎された密弩ガジェットの傑作宝具・魔導師的杖(レイジングハート)の最大運用です
後世では、ツインテっぽい髪型がトレードマークのミッド最強武神として半ば神格化されてます
夜天の王、聖王の生まれ変わり、地上王レジアスなどの王を、うっかり裏切って滅殺したとかいうトンデモ説も有名
魔導師的杖は5つのモードをもつとか、強敵相手には進化するとか云われてますけど、魔法少女化Aしてるので近接と主砲しか使いません
>>500 あれは単に収束を甘くしただけなんだと
実は喰らう方は、安心安全な綺麗なSLB
だから付くとしたらSLB−
>>497 兄貴の技量スゲーと見るべきなのか狂化した意味あったのか呂布と見るべきか
困る結果だよな>互角
数値外のところの部分が出てき過ぎw
>>502 ちゃんと収束させてたらビルとか蒸発させてたあの余波っつーか流れ弾っぽいものが全部対象を直撃すると?
なかなか笑えない話だなオイw
>>503 エミヤのキャラ付けのため目立たないが、クー・フーリンは経験・機転に優れたキャラとしてデザインされてる
技術も小次郎のために目立たないが、神域の槍捌きであり、巧みさがスピードに繋がっていると書かれている
呂布が一押し足りないのは、月じゃ知名度補正がなく、バーサーカーで赤兎馬を持ってこれなかったためではないかと
ランスロットの無窮の武練って、なんでついてるかよくわからない
一つの時代で無双って言えるほど圧倒的ではないし、それならもっと突出した人物はいる
心技体の一致も、心は……
ぶっちゃけ、ピュア騎士ガラハッドの方が相応しい
なんなの?円卓に俺ツエーしたオリ主スキル?
なのはキャラなら武練に相応しいのはクロノだけど、そういうことなら、シリーズ初の男主人公となったトーマだろうか
リリカルの主要キャラの大体が持っているだろう「心眼(偽)」ですが、むしろ物語的に主人公に相応しいのは「心眼(真)」だと思うんですよ。
……おそらく到達できるのはやはりティアナくらいだろうなあ。
>>506 > 円卓に俺ツエー
原典のランスロットがそうだからだろ。
心眼(真)は、立て直しスキルなだけあって、相手の足元すくうタイプじゃないとつかないぽいんだよね
バトル大好きさんにはつかない
心眼(偽)は殺気読むとかじゃなく第六感だから、意外とつかないような気がしなくもない
スキル化して補填されたら、(真)や「直感」より防御率は安定しそうな感じだけど
ユーノについてたら凄い
>>508 やっぱランスのアーサー王伝説に対する立ち位置かねえ
スキルって一つ付くだけでも突出してる能力だよ
ディルムッドみたいなバリバリの武闘派だって、日本じゃ固有の戦闘スキルは心眼(真)しかないし、じゃらじゃらさせる必要はない
見た目は豪華でも、スキル(長所)ばかりに頼るやつは脆い
>>510 キャラを作成する時にごてごてと長所ばかり並べるみたいなものか。
万能≒バランス≒何でもそつなくこなす≒目立った点が無い≒器用貧乏
その代わり突出型は弱点も突かれ易い
一つに特化してる以上、それに対して対策を練ればいいから楽に攻略される
群として動けて他からのサポートが得られる立場ならともかく、単騎で戦っていかなければならない場合ある程度の万能は必須
とりあえずスキル欄にルーンBって書いとけば間違いない
反骨の相とか頭痛持ちとか書いちゃダメだぞ?
皇帝特権とか専科百般は具体的にできることを言おう
神性は相性が激しいから相手をよく調べておくんだ
>>510 >>513 なのはさんが筋肉筋肉してきたのはそういうことなのか
スキル偽造とかおまえランスロットだろ
さすが円卓きたない……ドゥーエだと!?
>>513 でもバサクレスみたいにパワーさえあれば技など要らぬ! という例もある。
あとなのはさんは何でも屋にさせ過ぎだと思う。最終的にMS(魔法少女)からMS(モビルスーツ)になったし。
そのバサクレスさんも飛ばれたら詰むとか
ナインライブスさえ使えてれば死角無し狂化イラネとか辛辣な意見がちらほらと
万能主人公「どこからでもかかってこいやURYYYYYYYYYYY!」
一点特化ラスボス「チャンスは、一瞬―――!」
万能と一点特化に戦闘に於ける優劣はつけ難いが、物語に於てはその限りではなく
>>513 9歳なのはさん全否定じゃないですこ
人間が繁栄した理由を『知恵である』と考える作品は多いし、自分もそう思う。
バーサーカーは弱体化するクラスなのか、それとも理性と引き換えに強化するクラスなのか……大抵の英雄が自分よりも強い存在を倒して英雄になったことを考えると、ただ強いだけのバーサーカーの脅威は意外と小さく思える気も?
もっとも単純な膂力が戦況を一変させることも少なくありませんが。
霊体化で空戦とまではいかなくとも空中にはいける模様
(サーヴァントは霊体のまま食い殺すのが下手なアサシンより強いのは秘密)
実は、ヘラクレスはバーサーカーで呼ばないと危ないかも
ヘラクレスが令呪キャンセルしてアインツベルンと戦争し、ゴタゴタでイリヤが冬木に来なくなる場合
→冬木に聖杯は桜だけ→虫爺さん&言峰の暗躍→味方は大聖杯の情報なし→最後の希望は英雄王?→アンリマユ覚醒
→世界オワタ
>>518 ユーノくんやレイハさんのサポートを忘れたらあかん
数字のうえで強くなっても肝心の英雄としてのスキルが使えないんじゃなあ
とはいえ、例えばスバルの全ステータスがアップしたり+がついたりしたら、殆どの魔法は失われるが戦闘力というか厄介さは上がるよ?一応
英霊によっては、石化などに抗える可能性が出てくるし、自身を省みないので鉄砲玉としては強くなる可能性も高い
聖杯戦争バトルロワイアルのクラスとしては明らかに御三家の罠だけどさ
エクストラとかカリヤ叔父さんみたいなのならアリと言えなくもない
四次ギル様を狂化させると前人未到のオールA達成だがどう考えても弱体化するよなw
>>517 実際ヘラクレスはバーサーカーにすると完全に弱体化
それにただ飛ぶだけだと普通に落されるっぽいけどね
>>510 っていうかスキル欄って持ってるスキルが全部表示されてるわけじゃないみたいだしなぁ
アルトリアも妖精の加護持ってるけど表示されてないし
>>519 扱いにくくなるから、弱い英霊を強化するのが普通じゃなかったっけ。
なのに五次バーサーカーは強いのをさらに強化してるのに、マスターがバテないから破格だとか。
でも実際は狂化が足を引っ張っていたという。……不憫な。
>>524 いやしかし、狂化によって慢心も吹き飛ぶならばそれはアリなのやもしれぬ……w
もしギルガメッシュがバーサーカーとして召喚されるとしたら……エルキドゥを失った怒りとか悲しみが原因ですかね?
で、戦法は慢心も奢りも無く「王の財宝」からの射出攻撃でサーチアンドデストロイでしょうか。
>>529 バーサーカーになっても財宝使えるかな?むしろバーサーカーに収まってくれるか?
もういっそ財宝を狂化しちゃえば?
もうどいつもこいつもみんな狂化しちゃえよ
バサカアルトリアは見てみたい気もする
バサカなのはさんは想像だに出来ないモノになる気がしてならない
>>529 庫から宝具をランダムに引き抜いて殴りかかるだけの非常に微妙なサーヴァントに
あれ?
それじゃFF5のギルガメじゃないか
もともと無造作にぶっぱなすだけの戦法がメインだからバサ化してもあんまし変わらなさそうだがなあギルっちは
そのまえに狂化との相性はどうなんだ
エルキドゥのほうはバサカ適正あるっていうかむしろそっちが本領らしいが
様々な宝物の原典が収められている王の財宝。
『最初に作られた偽物』という名目でエクスカリパーが入っているのか。そして幸運持ちのサーヴァントと戦っている最中に引き当てて、攻撃力1でペチペチやっているところを反撃される……と。
王の財宝も適当に吐き出すだけだと、厄介ではあっても上位レベルの存在の撃破には不足となるよ
そもそも、バビロン一本一本の威力は本人依存ではないし
なのはキャラや一部の魔術師は狂化しても魔術を使えるかもしれん
要は、狂ったまま魔術を使った逸話があればいい
その場合、例外的な理由がなければ狂化ランクはC以下になっちゃうかもしれないから、魔力的な恩恵はないれど
インテリジェント・デバイスありなら高ランク狂化でも魔法できるやも
つ 病化
……ヤンデレ化?
プリズマのバゼットが本編より強く見えたのは自分だけだろうか
まぁ絵があるからそんな風に感じるのかな
>>540 多分みんなそう思ってる。
まぁバゼットが強くなってるわけじゃなくてサーヴァント達が本編のよりかなり弱体化してるんだけども。
hollowで凛と士郎を瞬殺できるみたいに言ってたのが事実だってのがよく分かったな。
普段がダメットさんすぎるので本領出すと違和感しかないという
ヤング言峰と良い勝負だな
バサクレスは他のサーヴァントだとイリヤ助けるために
聖杯破壊する可能性あるからな
なんでも願いをかなえられるよりは幼女を選ぶ
ヒーローってのはそういうもんだろ
プリズマ作者によれば黒英霊がかなり弱くなってるらしいが、それでもなぁ
A+ルーン魔術師の実力的にはそう間違ってないんだろうが……
バゼットがアーチャーはともかく、(意志なし・弱体化でも)クー・フーリンに勝つって、全然ダメットじゃないよ!!
精神的に別人だよ!
フェイトが重甲冑くらいの違和感
>>544 死者であり、維持の代償が大きすぎるヘラクレスではイリヤの人生を支えられないから、イリヤの背負うアインツベルンの悲願を手伝ってあげるかもよ
あの娘、既に覚悟完了しておるので
某スレでも言ってた人いたけど、バゼットがあこがれてたのは英雄クーフーリンであって、ランサーの殻を被っただけの暴力には特に思うところは無いんじゃね
何かあったとしても、敵となるならそれはそれと割り切る人でもあるし
限界まで練り上げた体術、執事をふっ飛ばしたキックボクシングらしからぬ崩拳
言峰とか絡んでそうだね
ただ、凛の逆転の一手である共有魔術が本物ならフラガラックが反応してなかったのはおかしいので、そこに気がつけなかった時点で脳筋ぶりは変わらないかもも
バゼットさんLv20って感じかなー
黒エミヤがまんま成長したアンリなのはワロタ
あの執事も何気に半端なかったな
あの呪術は別にフラガ発動しないと思うけど
宝具みたいな奥の手でないし
投げ技にもラックできるから、切り札その一の魔術にも反応するんじゃない?
ゴッドハンドのような常時発動も反応するし、プリズマイリヤ設定だと大技でアウトに変化してたし
まあ、よくわからないけれど
ルビーがフラガラック知ってるのも謎だよね
ホロウではバサカにフラガ打てなくて涙目だったような
最悪の相性で勝ち目が無いみたいな
>>549 フラガはあくまで相手がどう認識してるかによるんで
バゼット側からすればまだ何か奥の手を隠しているという認識になってもおかしくないかと
別に設定変わったわけじゃなくて切り札を大技って表現しただけじゃね
>>550 撃てたよ
ただバーサーカーの宝具が蘇生宝具だったからラックの意味がなかっただけで
フラガラックはカウンターで発動しないとランクC程度の宝具くらいの効果しか出ないんだっけ
一応撃てないことはないんだけども
とりあえずバーサー化は腕力ごり押しタイプでないと、あまり意味はないみたいな感じだな。
ランスロットみたいなのは例外として。
リリカルなのはでいうと、狂化してよさそうなのは…スバル、くらいか。
なのはさんのバインドを突破するくらいはしそうだ。
バーサーカーで召喚されると理性を失うので、ヘラクレスのような肉体そのものが宝具、ランスロットのように武器を使いこなすスキルを持ち続けている、などが必要になるんでしょうな。
……なのはさんがバーサーカーで召喚されるとしたら、魂の髄まで染み込んでいるだろう砲撃魔法を連発するとしか思えない。戦術スタイルはもちろんラミエルで。
>>553 ノーヴェを瞬殺した時なんてまさにそれだったね
>>554 唯一の誤算は
その時のなのはが曖昧でも正気でもなく
間合いに入る者全てを撃ち抜く
魔神と化したこと
バーサーカーなのは。
非殺傷設定を切り忘れた(切る事を思いつかなかった)為、オーバーキルのダメージを受けても楽になることがないという。
ししょー。ソレ苦しむ間もなく死んでると思いまーす!!
アジアカップ優勝記念に小ネタ投下します。
緑がまぶしいサッカーコート。
大観衆の中で、ひときわ輝く選手達がいる。
それは、現代におけるヒーローたち。
中でも、相手ゴールを割って得点した選手など、英雄そのもの。
もし、彼らが必殺技を持っていたら?
『蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)―――!』
*『ああー!!!!人壁が次々と吹き飛んでいくーっ!!ボールはGK森崎くんの正面だー!!』
森崎「そうなんどもぬかれてたまるかー!」
*『森崎くんキャッチ、いや、倒れた!ボールはまだ生きている!!』
*『入ったーッ!!!!ゴオオオール!!!』
解説『GKは非常に惜しかったな』
もし、なのは達が、こんな風に戦うならば、いったいどんなことになるだろうか。
これは、そんな妄想である。
【サッカーをしよう!〜三人娘の必殺シュート〜】
『真・ソニックフォーム!!』
森崎「こんどこそ、みきってやる!」
*『フェイトが脱いだー!!!彼女は本気だ!!』
*『速すぎるボール運び!!GK森崎くん混乱しているぅ!!』
森崎「くそっぜんぜんみえない!」
*『ん?これは……入ってるぞ!!』
*『いつの間にかゴールしている!入った!ゴール!!』
*『解説さん、これはどういうことでしょうか?』
解説『私の眼には全てが見えていた。すごくドキドキした』
『スターライトォ、ブ、レイカー!!!!!』
*『ジャンピング・ボレー・シュート!!』
*『激闘で荒れたコートの芝生がめくれ上がり、ボールに吸い寄せられていく!!』
森崎「とまれー!」
* 『巨大な塊となったボールが、GKごとゴールポストを吹き飛ばした!』
* 『これは、ゴールです!!ゴールゴールゴーーール!!!!』
解説『これは、死んだな』
『響け終焉の笛(ラグナロク)!』
審判「試合終了!」
*『あーおしかったですねえ八神選手』
解説『技の名前が悪かったのではないかな。アンリミテッドとか付ければよかったのに』
>激闘で荒れたコートの芝生がめくれ上がり、ボールに吸い寄せられていく!!
カンフーサッカーですねわかりまます
12回までゴール無効のGKバサカ
無数のニセボールで翻弄するエミヤ
そういえばホロウでセイバーさんがサッカーに興じてらっしゃいましたね
空間から無数のボールを打ち出すギル(球種多数)
そしてかたっぱしからセーブ&キャッチするランス
ただしセイバーを確認した時点で守備放棄
>>561 投下乙
森崎ってキャプテン翼?
解説の紅茶さんチーッス
>>562 ゴッドハンドといえば神の手
12回までは神々の祝福によりハンド無効
超人サッカーなら固有スキル持ちの戦闘機人組とかいいんじゃないかな
そこは森崎くんじゃなくて慎二にしておこうぜと
関係ないけど東方サッカー思い出した
ホローのアルトリアさんがサッカーやってたときのお間抜けぶりときたら
生前どんだけ円卓メンバーからぼっち攻撃されてたんだと
StSのなのはさんが愛されすぎとかたびたび論議されるじゃん
あれより愛されキングだったような感じだぜ?
悪口とか言ったらリンチ確定
ただ、コーンウォールの猪が一番冷静、不思議ちゃん扱いされる脳筋環境
あと寝取られ多発
なのはさんサッカーは苦手そう
フェイトは強引さと柔軟さのバランスが良さそう
スバルは守備向きな気がする
なのはは昔は運痴だったらしいが
今やセンターサークルからでもFKを叩き込みそう
フェイトは長友ばりのオーバーラップで相手を撹乱
>>569 なのはは空間把握力高いから、キーパーとか司令塔とかいけそうな気がするなあ
エミヤは技術はともかく性格が向いてないかもしれない
ランスロットはチームの雰囲気しだいってところかな
クー・フーリンは、ホッケーの1対12伝説とか脚力を見る限り、相性はよさそう
エリオやディルムッドとチーム組んでほしい
シエル先輩やシスター・シャッハは謎の技術で強そう
あー、女子サッカーは代表でも中学レベルらしいから、なのはさんならパワープレイで余裕か
ギルガメッシュは、宝具がチームメイトなイメージ
ヘタイロイ人数オーバーで反則負け
むしろ、固有結界の中にゴールを取り込んでゴール→外に開放
ティアナの二丁拳銃による空中パスカット・空中ドリブル
審判はバゼットがいいな
反則チート選手から死んでいく
切嗣と緑茶のトラップ地獄とか
ボールに直接触れること無く試合が進みそうな
軌道変化させたり加速させてみたり
ボール役は誰が丁度いいだろうか
一番有効なのはアサシンの見えないインターセプトか
小次郎の燕返しシュートか
リリカルと型月で特殊能力アリのサッカー……イナズマイレブンにしかならない気がするのですが。
既に入った結果を作れる兄貴こそ(ry
幸運値EXのキーパーには通じない!
高い幸運でも稀に外れる程度らしいから大丈b 審判「はい、フラガラックー」
刺しが相手だと審判も無事じゃ済まない…
つかEXって数値不可であって必ずしもプラスってわけじゃないよな
マイナス方向にぶっちぎってる可能性もあるわけか
無限の剣製で大量のボールを創りだすエミヤと
ボールの原点を打ち出すギルの姿が…
審判「はい、ファール」
円藤キャプテンの必殺技『ゴッドハンド』
ヘラクレスの宝具「十二の試練」
……キーパーは決まったな。あとイギリスチームは意外とセイバーと相性がいい必殺技が多い。
しかしリリカルでキーパーと言えば『盾の守護獣』であるザフィーラくらいか。「鋼のくびき」ににたキーパー技があったはずだし。
なのはGODの滑子は王の威光なる攻撃キャンセル技が使えるらしいのでキーパーはこいつで
審判「バインドは反則ですね、――副審、ラックを2つ。斬り抉る戦神の大剣(レッドカード)です」
副審「さすがに相手の動きを止めたらなーっと、――投影完了」
大会委員長「コンパチに死を!(わたしもサッカーしたかったんよ?)」
紫陽花と黒死鳥の凶宴もとい共演はいつだ
ランスロット「ボールは友達(ほうぐ)だ」
ランスロット「食べれるバナナシュート!!」
そこのおっさん!
ユニフォームは下もちゃんとはいて来なさい!
第四次バーサーカーの宝具『騎士は徒手にて死なず』は手にしたものを自らの宝具にする。
戦闘機の上に張り付いて操作した実績があるので、ボールを宝具として強力なシュートを行うことが可能。
ただし理性が無いので、むしろゴール前に令呪で縛り付けた上でキーパーグローブを宝具に変えたほうが良いのかも。
スカリエッティ「ならば、動くゴールだ!さらにバリヤも付けようじゃないか!!」
アサシン 「私は佐々木小次郎ではありません
ただこの秘剣燕返しを使えるというだけで〜」
とか言って、とある吸血忍者が召喚されたらどうしよう
型月勢力とリリカル勢力が同等に戦えるスポーツと言うと、やはり肉体的能力がものをいうものよりもテクニックや戦略を重要視するものの方が良いだろうか。
……ウインタースポーツは結構やりあえる気がする。
雪被りの石嫁(ルールブレイク・ヘカティックグライアー)―――!!
サッカーもチームワークと基本技術がないと最後はマークされて負ける気がする
セインのディープダイバーとかクラスの反則を全員持ってれば別だけど
ああ、相手のボールも奪えないと駄目か
体力絡まない室内遊戯で……と思ったが、花札という前例があるんだったorz
なんだかんだで必殺技ぶっ放す姿が浮かぶのは、キャラゲーの宿命か。
思考ルーチンにも違いはあるけど、分かりにくいからね
必殺技がないと、減算で特長を表すように見える
こいこいしない・速攻しないとか
思考ゲームの最善手ってのは、得てして王道=定石だから
だから、嘘吐いて裏切ってナンボのルールにしないとね
室内遊戯……賭け事なら黄金率をもつギルガメッシュ、強運の持ち主であるセイバー、騙しあいの得意だろうキャスターとアーチャーは強そうだ。
ハブられたもの負けな場合を考えると、策謀は自滅と表裏一体
安定した実力としてはイスカンダルがサーヴァント最強か
人徳と敵に回したくないプレッシャーでなのはは優れるな
意外とディルムッドとか強いかもね
イケメン忠義キャラと見せかけて、心眼(真)で足元掬うの得意
地味だし
シエル先輩はカレーせずに地味にやれば恐ろしく強いはず
志貴は何らかの狙いをもって結果的に場を荒らすが勝てないタイプ
はやては楽しむ裏で勝敗バランスに気をつかいそう
遠坂凛誕生杯・絶対領域記念…だと…!!
UMA達の饗宴か
ヘラクレス×なのはのカップリングを考えたんだが、割とトントン拍子な気がした
↓のような流れで
ヘラクレス「ナノハ――貴女を、ゴッドハンドしたい……」
なのは「私も…スターライトブレイカー、です」
ヘラクレス「なんと、それでは私達の未来は黄金の林檎ですね」
なのは「ヴィヴィオも、私の大好きな聖王の鎧だもの。きっとアクセル・シューターしてくれますよ」
ヘラクレス「さっそく、アインツベルンの城で十二の試練しましょう」
なのは「うん。でもその前に、私のお父さん達にディバインバスターしなきゃ」
ヘラクレス「確かに、セイバー達も呼んで、士郎殿らとまとめて射殺す百頭しましょう」
なのは「エクセリオンしてくれるかな?」
ヘラクレス「きっと。盛大な聖杯戦争にしましょう!!」
なのは「アナタと、お話しして、ほんとに良かった!!!」
ヘラクレス・なのは『■■■■■■■■■■■■――――!!!!』
その後、二人は100年ほど、幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし
マ ッ ス ル ド ッ キ ン グ ☆
日本語でおk
あなた、疲れているのよ
なのはが戸愚呂弟のようにムキムキになる夢を見た
強かった
人差し指を突き出しただけで空気が銃弾みたく飛んでくるのか
なのはが戸愚呂弟みたいな台詞を…と思ったけど、「全力全開!」の人なので「100%で戦える資格を得たに過ぎない」とかはないよなあ。
>>609 つ 明鏡止水の境地
つ リミットブレイク
つ 人機一体
なのはさんに似合いそうな戸愚呂の台詞。
なのは「ティアナ……、ティアナはさ、もしかしてまだ、自分が死なないとでも思ってるの?」
むしろその台詞はなのはに向けられそうな気が
なのはさんはマジに死にかけてるので、そういうの言われるのどうなんだろう。
そういや士郎って二次じゃ散々だけど、原作的には切った張ったじゃない割とまともな道に進む人間なのかな
ホローじゃ厳密には違うと言えば違うが士郎自身法律関係に進みたいとかも言ってた気がするし
ていうか原作からしてアーチャーが割といかれてただけで、士郎は現実的な自己分析もできてる割とふつーの少年で主人公だったような気がしてきた
それは気のせいだ
なのはは何度死にかけても死地に突っ込んでるし士郎とは別方向の命知らずな感じ
617 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/08(火) 08:31:18 ID:LANKkwh0
>>614 というか極端なんだよね彼、
現実的な状況分析したかと思うと次の瞬間DQNといわれても仕方がない暴挙をかますし
うぉ、下げ忘れた
衛宮切嗣の起源は「切」「嗣」で、例えとして『一度切った紐は同じように繋いでも繋ぎ目があるように、それ以前と同じものではありえない』という意味の言葉があったはず。
士郎がもし切嗣に出会わなかったら、それ以前と変わらない人間だったら……第四次聖杯戦争で被災しなかったら……どんな人間に育っていたのだろう。
鞘を埋め込んだことで起源が捻じ曲げられた、みたいな設定を何かで見た気がしますけど、二次設定かもしれませんし。
案外なのはと似たような人間に育っていたかも?
友達100人「救うばかりで導く事をしなかったから貴様はぼっちなのだセイバアァァ」
アフターケアは大事だということだな
なのはとセイバー
>>619 魔術特性が剣になったのは鞘のせいですね
これは公式回答があります、くわしくはコンプリートマテリアルVを見てください
アーチャーともなると、起源も剣に変わりつつあるらしい
まあ、セイバー召喚も含めて、このアヴァロンがFateの運命たる部分の脚本家と言えるかも
ちなみに、残念ながら「聖杯戦争が解体されて」セイバーとラインがなくなると投影できなくなり、魔術特性などを変えるだけになるらしい
キリトゥグ・エミヤ「やっべ、鞘無くしてた―――ん?」
キリトゥグ「これ(レイハさん)を代わりに埋めよう」
レイハさんを埋めたら……起源が『砲撃』か『魔砲』になるのですね?
もしくは相互間の『話し合い』がで着なくなり、一方的に自分の意思をぶつける『OHANASHI』しかできなくなるとか。
レイハさんの起源となのはの起源は違うだろう。レイハさんが起源に影響するんだから詰まるところ、
「all right.」「ready.」「satand by.」「call me.」
から成り立つわけだから。
よってつまり完成される士郎はというと、
「俺の名前を呼んでみろ(call me)」が口癖で、あらゆる状況において準備万端(satand by)のオムライス(all right)娘(レディ)が完成……、
しません。
>>622 その設定、意味が上手く理解できない。見ただけの宝具は何の問題もなく投影続けられるのに、
どうして物理的に接触し続けて半身だから工程すっ飛ばして投影できるようになった鞘だけはできなくなるんだ?
夢と現実の折り合いがつけられなかったのがアーチャー
夢と現実の折り合いをつけつつあったのが士郎
って感じだろうか?
士郎の命知らず他、発作的行動は夢がどうのというより、まだ捨てきれないでいるある種幼稚とも言える正義感からのものと思うと割とスッキリ収まるし
とはいえ、サーヴァントやらを目にして、普通にガクガクブルブルして何もできなくなってるような場面もあるから
やっぱり割りとまともな人間と思える
それらの諸々って「狂ってる」とかをそのままの意味じゃなくてある種の褒め言葉として使うような原作者が遠因なような気がしてきたぞ、と・・・
そういう側面からなのはさんを見ると、あの人の方がよっぽど正しく狂ってるというか悟ってるというかな気がしてきたぞ、と・・・
聖杯戦争があったから、そっちに進んだんじゃないのか?
>>625 鞘は投影対象としては破格過ぎて、セイバーとラインがないと無理っていうか、セイバーのものだから、セイバーがいないと機能しないってことじゃねーかね?
そもそも武器じゃないし。
捨て駒となってバサカに挑むアチャやギルに挑むランサー、ギルに蹂躙されるバサカ
自分以上の強者を命懸けで救おうとするほどの変態ではないのよね士郎は
女の子は例外だが
悪をも救うのが正義の味方だと指摘した言峰
Fateルートで言峰を倒しはしたけど実は敗北してる、ように見えたり
どのルート後でもアーチャー(のよう)にはならないって聞いたがどうだったかな
てかエクストラで出た話が事実だとアチャの過去ってマジキチだしほんとに別人と考えた方がいい気も
法曹に進みたいってのが実現したら正反対の道もいいとこだし
そういやしろーくんは教会地下の魔力タンクとか知っててもスルーしてなかったか
さらっと
なのははもうなんというか、命知らずというより根元から戦士になってるだけじゃないか
前提には魔法で人の役に立ちたいとかが来るけど、あまりに長期戦いすぎで思考もそっちの方に
流石に戦わないと生きていけないという程戦闘ジャンキーとは思わんけど、本人の言うとおり堕ちるか決定的に衰えるかしないと身を引きそうにない
>>630 ある種の完ぺき主義者なのかもしれんよ
SS書いてるみるとそういう解釈もできる
一回こっちに足突っ込んだら堕ちるところまで堕ちるというか、
そういうところも父親に似てしまったんだろ
地下の魔力タンクは……セイバールートの時は単にあの後どうなったのか書いてないだけじゃね?
どの道あそこからは死なせてやるのが人情って話の気がするしエピローグで語ってもしゃ−ないところではないかと
>>631 STSのアバンでヴィヴィオに関してのモノローグでその辺ちょっといってたな
でも士郎の軋みっぷりに比べてなのはは割と普通に修羅の道に適合しちゃってるね
士郎と並べられるほどなのに、無理なく破綻の兆候も全く無いのは環境の違いなのか
どこまで行っても孤独になりそうなイメージが無いのもあるな
士郎の場合は一人で突き進んでいっていつか破滅しそうな流れだが、なのはは常時誰かいるし
士郎にも凛を始めとした仲間がいたけど
それですら受け止められない域まで跨ぎ越しちゃったんだろうね
なのはの場合、やはり管理局というでかいバックボーンを持った組織の後ろ盾があるのは大きい
自分の理想に見合った力を提供してくれる
衛宮士郎には才能がない
常に才能に見合わぬ理想を追い求める破綻者
対して高町なのはは才能の塊にして求道者
同じような事をしているようで道を踏み外す事から最も縁遠い人種
封印指定クラスの才能をスルーしたらあかん
修練を積んだわけでもないのに百発百中という弓の腕前もあるし
士郎最大の不幸は、肌に合う魔術組織が世界に存在しなかったことだと思う
士郎が行うのは飽くまで物理的・肉体的救済て感じかな
その辺がなのはとの差異ではないかと
エミヤは笑って、愛ゆえに救いにいくわけじゃないからね
それでも、悔恨で殺しまくったキリツグよりずっとマシらしいけど
一つ言えるのは、アーチャーの人生は、攻略失敗されたヒロインの人生ってことだ
両方とも本格的に後が無くなったら我が身を省みないのは同じ
ただ「本格的に後が無くなる」までのラインの多さが決定的に違う
理想の為に人を殺したかどうかっていうのも大きいんじゃないかな
エミヤは犠牲にした人を裏切らないためにっていうのもあったんだろうし
一人でも殺してしまったら後戻りは出来ないだろうと思う
ところで、聖王のミッドでの補正ってどれくらいなんだろう
キリスト教圏内のアーサー王とかカエサルくらい?
キリスト教圏内のキリスト本人だろどう考えても
ミッドでも聖王教会が盛んなのはわかるんだけど、本場じゃない気がするんだよね
科学万歳でもあり、アルハザード様が背後に控えてるから分かりにくくはあるな
救世の王だからユダヤ圏のモーゼ(+武神成分)が近い気がする
複数星系に渡る範囲は唯一神もびっくりだが
結局、伝説次第なんじゃないの?
誇張すべき伝説にないことはできない
出力スペック他なら上回った百王もいて、それを統一する過程での逸話が色々あったはずだが……
聖王教会の教えによってはトンデモなくなるが、詳しくはわからんし
最高神として表現するならデップ・福耳王子・エロ親父タイプよりは片目親父や長腕パパだろうけれど、人間なんだよな
アーサー王が実在して♀で大陸統一して聖杯ゲットして天に昇った後に主神の扱いになったら?ってイフが一番近いのかな
聖王の鎧の正確な効果を教えて欲しい
無効化なのか削減なのか
物理耐性も
学習機能持った常時発動の超強力BJ(レリック供給)とは違うの?
聖王の鎧は英霊化したらまた別の効果になるだろうな
ぼくの考えたかっこいいサーヴァント化するなら
筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力A+ 幸運A+ 宝具A+++
【スキル】
虹の聖光A++:
カイゼル・ファルベ。聖王家の血にたびたび現れる魔力光。
カリスマA、神性Cを合わせた物に近い効果を持つ。
オリヴィエを視認した味方に対してLUC判定を行い、成功すると勇猛Cの効果をもたらす。
古代ベルカ式A+:
古代ベルカ式を元にする、我流に近い魔力運用システム。
他者の技術を解析し、取り込む事に優れる。
多少のシステム体系の違いを問題としない柔軟さを備える。
【wepon】
レリック:半永久的な魔力供給を可能とする宝具。マスター不在でも、干渉力が下がるだけで現界を維持可能とする。
デバイス:スッゴいデバイス。
【宝具】
聖王の鎧EX:
常時発動する聖王の防衛特質。
宝具Aランク相当の全面防御に加え、自らへのあらゆる火力を半減し、
MAGによるST判定を確実に成功させる。
学習能力を持つため、同類の攻撃への抵抗は飛躍的に上昇する。
聖王の揺りかごEX:スッゴい戦艦。月の魔力がなければ十全な稼働はできないが、質・量ともに脅威的な力を誇る。本来は宇宙空間用。
スッゴい宝具:逸話具現化の宝具。無効化を無効化したり、秘孔を突いたり、なんでもいいがチート。チート。
実際の宝具がEXで、ステータス欄の宝具ランクがA+++なのは、イスカやランスとか見るに問題ない
ギルガメッシュもエア単体じゃ宝具ステEXは無理だろうしな
だが、聖王の鎧が宝具Aランク防御デフォルトってヤバくね?
通常攻撃というか近接が、「覇王さんのカイザー流でも」全く意味なくなってしまうぞ
近接は聖王の鎧に対する答えの1つのようだし、キャラとして殴り合いを無くすのも美味しくない
強力な防御とかで濁せ
宝具とカチ合う効果にしたいなら、最大開放時〜とかつけるといい
>>646 本人の意思と関係なく発動してるけど、基本はバリヤジャケットの仲間のようだ
聖王の鎧の定義自体も一定ではないが、その中に聖王のバリヤジャケットがあるように、基本能力はそれなんだろう
戦乱の時代において、聖王は何より生き残ることが求められたんだとか
つまるところ、聖王の鎧とは肉体の兵器にあるらしい
・魔力・物理強度はに関しては、スカが「Sランク砲撃くらいでは死んだりしない」と言った程度ではっきりしていない、はず
・魔法や戦闘技術を見ただけで学習
それによるコピー技の使用や攻撃の無力化
ちなみにコピーした技は自己流アレンジも可
・ゆりかごと接続すれば魔力無限
こんな感じか
聖王の鎧はゴッドハンドに似ている
強いて違うところを挙げるとすれば、12回復活できないってところかナー
ゴッドハンドはAランク素通りだが、聖王の鎧は防御するぜ!
人間状態だと殺傷で抜かれたら死ねるが
ネロ・カオスがヴィヴィオ食べる→“ネロ”が死ぬ→ヴィヴィオが乗っ取る→無敵チート!!
さて次スレ逝くか
あら、こんなに容量くってたか。
では立てて来る。
15分までにたてなかったらダメだったと思って、誰か立てて
乙梅
乙
命あるスレは必ず滅びる。
衆生は苦しみの輪廻にいる。
スレの新設をもって悟りへの道を拓こうとした
>>653もまた、
心に神を宿している。
ume