あの作品のキャラがルイズに召喚されました part281
1 :
誘導用 :
2010/08/04(水) 16:23:39 ID:PpnGYynj もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part280
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1279443433/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ ※現在は荒らし被害の為に運営議論スレで協議の結果、概ね2010年9月まで避難所進行の流れとなっています。
こちらの投下は自由ですが、荒れやすい状況なので下記のスレでの投下を推奨します。
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part235 in避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1244615213/ ※2chにスレを戻す詳細な日時等は、運営議論スレで話し合い決定されます。
意見・要望のある方は、こちら↓でどうぞ。
運営議論スレ6
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1233565334/ このスレに意見を書きこんでも参考にされませんのでご注意ください。
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_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950 か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/05(木) 20:06:06 ID:pii3Xgzl
otu
| |  ̄ ̄厂 ̄´"ヽ、 これは土下座なんだから! |/ノ ト、 _, _,/ / / /\ 1乙じゃないんだからね! |/ ト、_>、_ /// ヽ | | `ヽ、_,、/_/_, l | | _,rvく二´ ̄ | 〉 |_,. - ' ´\ヽ\_ / |、_ノ丿 / \ / 〉 〈{ / \ / }___j、_/ >-、_/⌒ヽ,_ _,.― ‐' }/ -−─−'─ - ,,____`ヽ `ー‐'¬ー―' { ´"''−'⌒ヽ,_ ヽ、 _ _____________ `ヽ、 ´"''−−―'
このぐらいまで単純化できそうな気がする。 爆発召喚 キス契約 「ゼロ」の由来判明(教室で爆発) 使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦) デルフ購入 フーケ戦 舞踏会 最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち 爆発 平民プゲラ コルベール問答無用さっさと汁 キス契約 フライに唖然とする 説明はぁどこの田舎者? 何者であろうと今日からあんたは奴隷 二つの月にびっくり 洗濯シエスタと接触 キュロケフレイム顔見見せ みすぼらしい食事厨房でマルトー 教室で爆発片付け 昼食シエスタの手伝い香水イベント オスマンコルベール覗き見 ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w ルイズ寝取られの歴史を切々と語る 休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと この段階でフーケは絶対つかまらない 翌朝捜索隊保身に走る教師一同 教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ 小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない オスマンから褒章 舞踏会 終わり 途中飛ばすけど、 対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
『華の使い魔』 「…誰よアンタ?」 その日、少女・ルイズが召喚したのは1人の男であった。 その姿を最初見たとき、誰かが「平民を召喚した」と 言っていたのが聞こえたが、その男の姿はどう見てもただの平民の姿とは異なっていた。 それはハルケギニアでは見かけない黒い髪と瞳だけのせいではない。 その体格は2メイルほどもあり、全身を覆うのは鍛え上げられた筋肉の鎧。 しかもそれが飾りでないことを示すように散りばめられた無数の刀傷。 だが何より彼女を困惑させたのは平民とも貴族ともつかないその奇抜な衣装である。 「あぁ〜ん?なんだぁここは。」 そう言うと男はボリボリ音を立てて頭をかきながらキョロキョロと辺りを見回し始める。 その品性のかけらもない様子にルイズは 「うん、間違いこいつは平民だ。」 と頭痛を感じながら呟いた。 その後、頭の薄い教師にやり直しを要求するも却下され結局ルイズはこのちょっと…いや、だいぶ変わった平民と契約する羽目となったのである。
その後もこの使い魔は主人であるルイズのいう事などどこ吹く風。 余程の田舎育ちであるのか目に映るもの全てが珍しいと自由奔放に学院内をうろついて回る始末。 そしていつの間に仲良くなったのか、夜ともなれば厨房のコックやメイドたちと 酒まで呑み交わしているではないか。 「あ゛ぁ…なんであんな下品な平民が私の使い魔なのよ…」 そう呟いてうなだれていたルイズの元に突然ひとりのメイドが飛び込んできた。 「たた…大変です!ミス・ヴァリエール!!」 血相を変えて迫ってきたメイドをなんとか落ち着かせ事情を聞いたところ、なんとあの使い魔が貴族から決闘を申し込まれたらしい。 それも、貴族に絡まれていた目の前のメイドの少女を庇ったためだとか…。 ルイズは慌てて決闘が行われる予定の場所、ヴェストリの広場へと身を走らせた。 数分後、ルイズがヴェストリの広場に着いたとき、そこには人だかりができており、 それをかき分けながら前に出たルイズは自らの使い魔と対面する金髪の少年を目にした。 「諸君、決闘だ!」 金髪の少年、ギーシュ・ド・グラモンが観客たちに向けて高らかに宣言する。 ルイズはそのギーシュに詰め寄ると決闘の中止を願い出た。しかしギーシュは軽口を放つと、彼女の頼みを一蹴してしまった。 話にならない…ルイズは次に使い魔に歩み寄る。 「あんた!何勝手に決闘なんて受けてんのよ!?」 「あぁ〜ん、知らんよそんなこと。あっちが勝手にふっかけてきたんだよ。」 そう言うと彼はボリボリと耳の穴をほじり始める。 「ちょっと!人の話を真面目に聞きなさい!いいから今すぐギーシュに謝ってきなさい!」 「はぁ?何で俺が謝んなきゃなんないかね?」 心底不思議そうに聞き返す使い魔にルイズは激昂した。 「いい?いくらあんたが傭兵かなんかだろうと、平民はメイジには勝てないの! それがこの世界の常識なの!じょ・う・し・き!!」 ふぅふぅと肩で息をしながらまくし立てるルイズ。 だが次の瞬間ルイズを待っていたのはそれは大きな笑い声であった。 「だぁ〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはっはぁ!!」 その笑い声の主は今しがた説教を受けたばかりの使い魔である。 「な、何笑ってんのよこの馬鹿はぁあああああああっ!?」 「くくくっ…いやぁすまんすまん。 それにしても、お主はなかなか面白い冗談が言えるじゃないか。」 …冗談?冗談と言ったかこの平民? ルイズはその言葉にピクピクと額に青筋を浮かべたが、それより先に口を開いたのは決闘相手のギーシュであった。 「そこの平民君……平民が貴族に勝てないのを冗談と言ったかね?」 言葉自体は穏やかだが、ギーシュの言葉には確かな怒りが込められているのがわかる。 「冗談を冗談と笑って何が悪い?それとも何だ? お前さんみたいなシモの皮も剥けてない小僧が俺に勝てるのか?」 「なっ…!?なんと下品な!!」 ギーシュはその言葉に顔を真っ赤にして怒る。 「おやおや、図星かい。すまんすまん。 だっはっはっはっはっは!!」
男の大笑いが再び広場に響く。 するとそのやり取りを聞いていたであろう周りから僅かにクスクスという笑い声すら聞こえてきたではないか。 ……ぷちん ギーシュは頭の中で何かが切れた音を確かに聞いた。 「ふざけるな平民風情がぁあああああ!!この僕をっ…誇り高いトリステインの武門の血を引く僕を馬鹿にしやがってえええええええ!!」 平民にこうまで徹底的にコケにされた挙げ句、周りからも笑い者にされたことで、薔薇を自称するほどプライドの高いギーシュは完全にキレていた。 「ほう、お前のような小僧が武家の者とはな。よほどこの国は平和と見える。」 「黙れぇえええええ!!」 叫び声を上げながらギーシュが薔薇の造化の付いた杖を振る。 するとひらりと一枚の花びらが舞い落ち、地面から鎧に身を包んだゴーレムが出現した。 「ほぅ、これが魔法という奴か。」 その様子に男が目を丸くする。 「僕はメイジだ。魔法で戦うのは卑怯とは言わせないよ。 よってこの青銅のゴーレム、ワルキューレがお相手しよう!」 919 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 21:01:46 ID:XwQN/rso [6/19] その言葉にぴくりと男の眉が跳ねる。 「おい…お前は戦わないのか?」 その言葉にその場の貴族たちは「やっぱりな」と声を漏らす。 所詮平民は平民。魔法の力の前に怖じ気づいたのだ。 誰もがそう思っていた。 …だが、それは間違いである。 「貴族と野蛮な平民を一緒にしないでくれたまえ。 剣で戦うのは平民。貴族は杖を振るって戦うのは当たり前じゃないか。 それともなにか?今更謝れば済むとでも思ってないだろうね?」 ニヤリとギーシュの顔が歪む。 言葉こそ幾分落ち着いたが、未だに心の中は怒りの炎がマグマのように煮えたぎっているのだ。 だが、それと同じく、対する男もまた静かな怒りの炎を燃やしていた。 「わかったでしょ?平民はメイジに勝てないの!だから……ヒッ!!」 男の顔を見たルイズの表情が恐怖に染まる。 何故から男の表情はいつもの飄々とした人懐っこい笑顔などではなく、 まさに獲物に喰らいつかんばかりの獰猛な獣のそれに豹変していたのだから。 「なるほど…ならば俺も見せてくれよう。 貴様の言う平民の戦い方というものをなぁ!!」 −−轟ッ! 男のその言葉と共に周囲に突風ともいえる気配が駆け巡る。 少し離れた場所で決闘を見ていた青い髪の少女はその気迫に目を落としていた本を落とし、瞬時に杖を構えてしまったほどだ。 (……あの人は…強い。それも、桁違いに…!!) 少女はそう感じると、目を見開いて男の戦いを見守り始めた。 「殺れぇええ!ワルキューレェェエエ!!」 男の声を決闘開始の合図とし、青銅のゴーレムが男へと猛スピードで突進する。
次の瞬間、広場にゴキリと鈍い音が響いた。 「…終わったな。」 男の首の骨が砕けたであろう音を聞いてギーシュは静かに呟く。 ……だが。 「……脆いな。」 「…なっ!!」 静寂を打ち破り聞こえた声に周囲は騒然とした。 何とワルキューレの一撃を受けた筈の男の拳がワルキューレの攻撃が当たるより早くその胴体を貫いていたのである。 「ぬぅん!」 男が腕を振り上げると、青銅でできているはずのワルキューレが腕から外れ、小石のように軽々と宙を舞った。 「だりゃあああっ!!」 そして男はもう一方の腕を自由落下してきたワルキューレに振るう。 その一撃を受けたワルキューレは粉々に砕け散り そのまま目の前のギーシュをかすめて飛ぶと、後方の外壁に小気味よい音を立てながらぶつかった。 「ば…馬鹿な、僕のワルキューレが平民の拳なんかで…」 その信じられない光景にギーシュの頬を一筋の汗が伝う。 しかし、まだ自分のワルキューレは一体やられただけだ! ギーシュは自分を奮い立たせると新たに落とした花びらから今度は6体ものワルキューレを錬金した。 「どうだ!平民がこれだけのワルキューレを一度に相手できるか!?」 自信満々に言い放ったギーシュに男は一言 「無論だ。」 と答えると、それがハッタリではないことを示すかのように背中に背負っていた長い朱色の棒を手に取ると、その先端に被されていた布を外す。
その中から現れたのは妖しく光る銀色の刃。 そう、それは棒ではなく鮮やかに輝く見事な長い朱色の槍であった。 「さあ…全力で参れ。」 「……ッ!?」 朱槍を構えた途端に男が放つ威圧感が数倍にも膨れ上がり、ギーシュを始めとする貴族たちを包む。 「来ぬのなら…こちらからゆくぞ?」 男の目がぎらりと輝いた瞬間… 「う…うわぁあああああああああ!!」 耐えきれずギーシュは6体全てのワルキューレに一斉攻撃を命じた。 槍と剣を手にしたワルキューレは猛スピードで男の命を刈り取るべく突撃する。 だが次の瞬間… 「おおりゃあ〜〜っ!!」 −−斬撃一閃! 横一文字に振り抜かれた長槍の刃は青銅のゴーレムたちをまるで紙切れの如く一撃で 切り裂いてみせたのである。 「戦を兵に任せ、自分は安全な場所で身を守るしかない輩がいくさ人に勝てるか…。」 あまりにも鮮やかな決着に見ていた貴族たちも、ルイズもギーシュも声を失っていが、 一瞬の静寂を引き裂いたのは周りからの歓声とどよめきであった。 922 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/06(金) 21:09:41 ID:XwQN/rso [9/19] その中でただひとり、ギーシュだけが悔しさを超えて絶望に打ちひしがれ、その場に崩れ落ちた。 もう彼にはワルキューレを作るだけの力などカケラも残ってはいない。 そこへ向かい、男さのしのしと歩み寄ってゆく。 そしてギーシュの眼前に朱色の槍を突き立てた。 「ま…参った…降参だ。」 全てを諦め、俯いたまま呟いたギーシュ。 だがそんな彼を待っていたのは更なる恐怖であった。 「…参っただと?貴様は何を言っておるのだ?」 「……は?」 その言葉にギーシュの、周りの目が点になる。 「だ…だって…決闘というのは降参するか相手の杖を奪うかで……ひっ!!」 そう弁明したギーシュの顔が恐怖に歪む。 何故から、彼の目の前にいる男の全身から放たれる怒りの気配が決闘のときのそれの倍近くにまで膨れ上がったているのだから。 「ならば貴様は自分は死ぬ覚悟もないくせに俺を殺すつもりでいたのか? 笑わせるな小僧っ!!何者であろうと武士(もののふ)に刃を向けた以上! 決着は死以外はないと心得よ!!」
「!?」 それは確実な死刑宣告であった。それを裏付けるかのように男の瞳には全く迷いというものが見受けられない。 「お…おま…おま……平民が貴族を殺すなど……国が黙っていないぞ!?」 震える口から必死に言葉を絞り出すギーシュだが、完全に声が恐怖に塗りつぶされている。 「ならばそやつらも殺すまで!! もう一度だけ言うが、武士に刃を向けた以上生きるか死ぬかふたつにひとつ。その覚悟すら持たぬ者など俺は絶対に認めん!! そして…とどめをさすが果たし合いの作法。」 男の言葉にギーシュは絶望した。 どれだけ言ってもこの男には無駄だ。もうあと5分もしないうちに自分の首は胴体と分離してしまうに違いない。 そう思うと、急に世界の全てが輝いて見え始めた。 脳裏には今まで口説いてきた多くの女性たちの顔が浮かんでは消えてゆく。 その中で一際輝いて見えたのが、先程振られたばかりの金髪の巻き毛の少女の笑顔であった。
「……くない。」 「あん?」 ぽつりと聞こえた声に男は首を傾げる。 「…たくない…しになくない…死にたく…ないっ…!」 死を前にしたギーシュは、『命を惜しむな、名を惜しめ』という家訓すら忘れガタガタ震えながら 顔を涙と鼻水でべちゃべちゃにしていた。 それを目にした男はぐいっとギーシュの胸倉を掴むと顔の高さまで持ち上げ、その両頬を激しく掌で叩いた。 「ぎゃびっ!ぶぴっ!!」 その度ギーシュは奇声を上げ、顔からは血と涎だか涙だか鼻水だかわからぬ液体が飛沫となり飛ぶ。 「あがが…はばばばば…」 貴族の気品などあったもんではない情けない表情を向けるギーシュに男は信じられない行動に出た。 なんと、彼の掃いていたズボンを下着ごと一気にずり下ろしたのである。 瞬間、多くの女子生徒たちから悲鳴が上がるが、男はそんな声など気にするでもなくギーシュを怒鳴りあげた。
「なんだーっ!!この一物(いちもつ)は〜っ!? この程度で縮みあがるなど貴様それでも武家の出の者かーーっ!!」 「ひぃいいいいい!!」 男は再びギーシュを地面に叩きつけると怯えるギーシュに向かい言い放つ。 「死にたくないならば方法は簡単。 この俺を殺せばいいだけのことだ。」 「…は?」 …この男は何を言っているんだ? ギーシュはそう思った。7体のワルキューレをもってしても 傷ひとつ付けられないような男にどうやって勝てというのだ? だがそんなギーシュに向かい、男…いや、『漢』は声高らかに言い放つ。 「何を不思議がるか?貴様にはまだ命がある。両手両足に頭までもな。 ならば足掻いてみせよ!己の全てで!他の何者でもない貴様自身の体で!! 武人であるならば最期のその瞬間まで猛々しくあれ!そして華やかに散ることこそ本望と知れ!!」 「!?」 その言葉にギーシュは雷に撃たれたような衝撃を受けた。 だがその直後、その表情は憑き物が落ちたかのように晴れ晴れとしたものへと変化し始める。
「そうだ…君の言う通りかもしれない。 僕は自分のエゴのために知らず知らずのうちに貴族の …いや、人としての誇りを傲慢さと履き違えてしまっていたんだ。」 そう言ってふっと笑ったギーシュはそのまま姿勢を正し穏やかな表情で目を閉じた。 「さぁ、討ってくれ。君のような男に首を取られるならば僕も武門の男として本望だ。」 「お主……ふっ、最期の最期に真の武人となったか。」 男はそのままギーシュに向けて槍を振り上げる。 この槍が振りおろされたとき、それは間違いなくギーシュが息絶えるときであろう。 その光景を見まいと多くの学生たちが一様に目を塞いだが、 その中でただ二人だけがそれをせずにいる者がいた。 「「駄目ぇええええ!!」」 突如、大声を上げながら男とギーシュの間に、そして男の背中へと二人の少女が駆け寄る。 そのうちの1人は男の主であるルイズ。 そしてもう1人は、先程ギーシュの浮気に愛想を尽かしたはずの金髪の少女・モンモランシーであった。
「おい、何をする?」 男はぎろりと腰の後ろを掴んでいる主人を見据える。 ルイズはその眼力に一度びくりと肩を揺らしたが、きっと男を睨み返すと震える体を押さえながら言葉を紡ぐ。 「あ…ああ…あんた!もう十分じゃない!何も命まで取る必要あるわけないでしょ!?」 「お主は黙っていろ。その言葉はこの男に対する侮辱でもあるのだぞ?」 男が更に増した眼力でルイズを見つめる。だがルイズも怯まない。 「あんたは私の使い魔よ!あんたこそ私の言葉をちゃんと聞きなさい!! それにいい?あんたのいた場所ではどうか知らないけど!この国にいるからにはこの国の法に従いなさい!! もしそれに従わずこの国を敵に回すというなら… 私は誇りに賭けても……例え刺し違えてでもあんたを殺すわ。」 そう言い放ったルイズの瞳は、涙をたたえながらも強く、まっすぐと男を見据えていた。 年齢以上幼く見えるその体にある瞳。 それを見つめた男はそこに宿る確かな強さを感じていた。 そしてもう1人。 「モ…モンモランシー!何をしているんだ!?」 「……ッ!!」 なんとモンモランシーは震える手で男に向かい杖を突きつけていたのである。 「ギ…ギーシュを殺すっていうなら…こ、今度は…私が相手になるわ!」 「なっ…モンモランシー!一体何を言っているんだ!?僕はいいから早く下がって…」 「ギーシュは黙ってて!!」 モンモランシーの言葉を聞いたギーシュは慌てて彼女を止めようとしたが、モンモランシーは強い言葉でそれを遮った。 「だいたいあなたはいつも私の気持ちなんて無視して自分のことばかり…… それも今度は勝手に納得して死のうですって? 冗談じゃないわ!あんたがいない世界で私がどうやって生きてけばいいっていうのよ!?」 「!?」 嬉しかった…ただただ嬉しかった。 ギーシュはモンモランシーの言葉にもういつ死んでもよいとばかりに大量の涙を流す。 だが、女子ひとりを戦場に立たせるのは武人として許せはしない。 ギーシュは軋む体を懸命に従わすと再び杖を手に立ち上がった。
そして最期の一滴の力を限界まで振り絞りながら杖を振ると、地面から一本の青銅の剣を錬金。 ギーシュはそれを手に握ると己が愛する女を守るべくモンモランシーの前に出て剣を構えた。 「ギーシュ…あなた…」 「ふっ…最後の最後まで格好つけたくなるのは僕の悪い癖でね。 それに最期は本物の薔薇として、誇らしく散りたいのさ。」 「あなた…やっぱ馬鹿よ。」 「最高の…誉め言葉だね。」 そう言って二人は小さく笑い合うと、眼前の障害を打ち砕くべく声を張り上げた。 「「さぁ!今度は『青銅』のギーシュと『香水』のモンモランシーがお相手仕る! いざ尋常に勝負!!」」 二人は互いにに己の未来を、愛する者を守るべく全身に揺るがぬ決意を込め男に対峙する。 (この世界にも…このような強き者たちがいるのだな。) ルイズにギーシュ、モンモランシーの瞳に宿る確かな強さを感じた男は満足そうにふっと息を吐くと、その背中に再び朱槍を背負う。 そこにはもう先程の鬼神の如き殺気はなく、ただ天で大らかにそびえる雲のような男が立っていた。 「かぁ〜っ!やめだやめ!いくら俺でも勝利の女神相手じゃ勝てる気がしねえや。」 そう言って男はまたボリボリと頭を掻いた。 「なっ…僕らに情けをかけるのか!?」 ギーシュは予想外の男の態度に慌てて虚勢を張るが、男はさも面倒くさそうに言ってのけた。 「お前が絡んできたせいで飯を食いそびれて腹が減ってかなわん! もしまだやる気なら飯の後で改めて声を掛けろい。じゃあな!」 そう言い残し男は観客たちを掻き分けのっしのっしと食堂の方角へ歩き始める。 「助かった…のか?」 そう呟いてギーシュは手にしていた剣を落とす。 だがそのとき、男はぐりんと体を向き直すと再びギーシュの前へと歩み寄ってきた。 「ひいっ!」 やっぱり殺す気か!? そう思い剣を拾おうとしたギーシュだが、それより早く男の顔がギーシュのすぐ眼前に現れた。 そして怯えるギーシュをじろりと睨みつけ、一言。 「言い忘れていたが、お前が因縁をつけたメイドと、迷惑をかけたおなご達にしっかりと謝っておくのだぞ?」 「は…はい…はいぃ…。」
情けなくプルプルと震えながらそう答えるギーシュ。 その返事を聞いた男はにかりと笑うと、再び食堂の方角へ歩き出し、今度こそ見えなくなった。 「た…助かったぁ。」 その場にへなへなと座り込むギーシュとモンモランシー。 そして男に真っ向から啖呵を切ったルイズも魂を抜かれたように広場の芝生へと体を崩す。 「ルイズ…さっきはすまなかった。僕が悪かったよ。 そ、それで…一体彼は何者なんだい?」 ギーシュが疲労困憊な様子でルイズに問う。 「私もわかんないわよ…ただ遥か東方からやってきた天下御免の『カブキニン』とか言っていたわ…。」 「カブキニン…一体どういう意味だろうか?」 「…さぁ?」 疲れ切った表情に終始?マークを浮かべ る3人。 しかし彼らはまだ知らない。 この後、あの男が世を騒がす怪盗・土くれのフーケを討伐し、 遠くアルビオンにおいては風のスクウェアメイジであり、魔法衛士隊隊長である男に一騎打ちにて勝利。 更には攻め込んできた王党革命を目論む組織5万の兵をたった1騎で壊滅させることを…。 そして後々、ハルケギニアでイーヴァルディの勇者と肩を並べるまでに彼の名が永く語り継がれてゆくことを。 その伝説の勇者の名は奇抜な格好をした肖像画とともにこう記されている。 『ハルケギニア1の傾奇者・前田慶次』と。 了
面白かったです そしてガンダールヴのルーン無しでも慶次なら問題ないっぽくね
何か最近誰も投下予告とか終了宣言とかしないよな もちろん全員荒らしって事でいいんだよね?
そもそも余所で投下されてるもののコピペじゃねえか。
08/06に投下されたのをこっちで読む意味がない
元ネタ作品:大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン 召喚されるキャラ:バルゴン(孵化前および才人と一緒) タイトル:悪魔の虹 投下は初めてになる新参であります。結構、古い作品からのチョイスになりますが……。 何も予約が無ければ二時三十分頃から投下しようかと思っています。
ここ、トリステイン魔法学院では今年二年生となった生徒達が<<春の使い魔召喚>>の儀式で様々な使い魔達を呼び出し、契約していた。 ある生徒は火竜山脈に棲むとされるサラマンダーやら絶滅したとされている古代の幻種に属する風韻竜を召喚したり、またある生徒は仕 草などが微妙に愛らしいジャイアントモールを召喚したりと賑やかだった。 そんな中ただ一人、どれだけ時間をかけても使い魔を召喚できない者がいる……。 「いつまで経かってるんだ、あいつは……」 「所詮はゼロのルイズだ。あいつなんかにサモン・サーヴァントが成功するもんか」 既に使い魔を召喚し終えていた生徒達からぼそぼそと、陰湿な悪口が飛ぶ。 桃色のブロンドを揺らす少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは幾度もの召喚の儀式に失敗していた。生 徒達はもちろん、初めは彼女を励ましてくれていた教師コルベールも今では彼女の失敗に辟易としていた。 コルベールがまた後日に行おう、と持ちかけてもルイズは諦めずに続ける。 しかし、いくらやっても爆発が起きるだけで使い魔は召喚されない。 他の生徒達にもこれ以上、時間を割く訳にもいかない。コルベールはルイズに「次で最後ですよ」と通告する。 これで最後だと言われ、ルイズも息を飲みながら杖を構える。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!」 もう失敗は許されない。このまま、ゼロのままで終わる訳にはいかない。 「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 この際、どんなものが呼び出されても構わない。魔物だろうが悪魔だろうが。 「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」 ――お願い! 出てきて! あたしの使い魔!! ルイズは杖を振り、そしてまた爆発は起きた。 また失敗か、と誰もが思っていた。が、今度は違うようだった。 爆発の煙の中から現れたのは――人のようだった。それも、ただの平民。見た事のない変な服を着ているのだから間違いない。 「見ろよ! ルイズが召喚したのは平民だぜ!?」 「さすがはゼロのルイズだな! 平民を呼び出すとは!」 ドッ、と生徒達が爆笑していた。そして、召喚したルイズを馬鹿にしたように野次が飛ぶ。 多くの生徒達が爆笑する中、たった一人だけ笑っていない生徒がいた。 青い髪をした眼鏡をかける小柄な少女。風韻竜を召喚したタバサは興味も無さげに読書を続けていたが、野次を耳にしてちらりとそちら へ視線をやる。 青い変な服を着た平民の少年だった。召喚したルイズがコルベールにもう一度だけやらせて欲しいとかみついているが、一度呼び出した からもうやり直しは認められない、と言って彼女を諭している。 ルイズは渋々と平民にコントラクト・サーヴァントの儀式を行おうと口付けをしている。一応、儀式は成功したようだ。苦痛に喘ぐ彼の 左手にもルーンが浮かんでいる。 別にどうという訳ではない。……ただ、彼の足元に転がっている小さな物体がタバサは気になっていた。
25 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/08(日) 19:24:25 ID:Uvd6JQGF
「ふむ、珍しいルーンですね……。では皆さん、教室に戻りましょう!」 コルベールはルイズが召喚した使い魔(といっても平民だが)の少年の左手のルーンを確認すると、生徒達を促す。 「わぁー、何これ?」 「きれーい」 すると、女子生徒達が見惚れたような声を上げている。 コルベールはそちらを振り向き、顔を顰めた。 「綺麗なオパールね……」 赤髪に褐色の肌をした女子生徒、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーも見惚れたようにそれを手にし、指先でなぞっていた。 「しかも、こんなに大きい……」 彼女の手にあるのは、ちょうど手の平程度の大きさをした虹色の光沢を放つ卵上の物体だった。 多くの女子生徒達がその物体に惹かれて集まり、取り合いになっている。 あれは、ただの宝石とは思えない。コルベールはそう感じた。 「君達、ちょっと待ちなさい!」 コルベールは慌てて彼女らの元へと駆け寄り、虹色の物体を取り上げる。 自分の手の中にあるその物体を近くで凝視するコルベール。 確かに、見た目は美しく大きな宝石に見えるが……。 「……これは、宝石ではないな」 「ええ? それでは、何なのですか」 取り合いに混じっていたルイズが尋ねてきた。 眼鏡を掴み、さらにじっと睨み付けるように観察するコルベールはその形状、大きさなどからこの物体が何なのかを断定する。 「……何かの、卵だね」 「卵?」 「あ、そいつは俺の傍に転がってたやつ……」 ルイズが召喚した使い魔の少年が、コルベールの手にするそれを不思議そうな目で見つめてくる。 そういえば彼がルーンを刻まれている時に苦しんでいた際、彼の傍らに虹色の光沢を放つ物体があった。それがこれだろう。 「と、いう事はこれは君と一緒に召喚された物なのかな」 「そ、それじゃあ!」 顎をつまみながら推測するコルベールだが、召喚したルイズ本人は途端に狂喜乱舞したようにはしゃぎだす。 「この中に、凄い幻獣とかが眠っているんですね!?」 コルベールの手からその物体を引ったくり、愛おしそうに間近でそれを見つめている。 「卵のままじゃ、孵化するのにどれだけ経かると思ってるの……」 「やっぱり、ゼロのルイズだな。卵のまま召喚しちまうとは……」 そんな陰口が野次馬達の中から飛ぶのが聞こえた。 「何をしているんだ、君達。教室に戻りなさいと言っただろう?」 すぐ様コルベールが野次馬の生徒達を再度、叱るように促していた。生徒達は次々と中庭を後にしていく。 そして、ルイズの手から虹色の物体を取り上げる。 「ミズ・ヴァリエール。たとえこれが君が召喚した物だとしても、君は既に使い魔と契約をしている」 「いいえ! こんな平民は、使い魔じゃありません!」 平民の少年を指差し、喚くルイズ。 「その幻獣が、あたしの本当の使い魔なんです! こいつは間違って召喚されてしまっただけです!」 「しかし、二体も使い魔を持つなんて特例は許されないし、そもそもこれがまだ幻獣の卵だと決まった訳ではないのだよ?」 と、諭されてルイズも低く唸りながら不満そうにしていた。 「とにかく……これが何なのか分からない以上、私達が預かっておくから、君も教室に戻りなさい」 渋々とした顔で頬を膨らませるルイズはようやく納得したのか、平民の使い魔を連れて中庭を後にしていた。 同じように中庭を後にしていくコルベールは、手の中に納まる物体を睨んでいた。 こんな卵は、見た事がない。動物なのか幻獣なのかは分からないが、綿密に調べてみる必要がありそうだ。 もし本当にミス・ヴァリエールの言うようにとてつもない幻獣か何かだとしたら……。
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/10(火) 21:25:50 ID:tMPERiue
ばーか
反応が小学生っぽい
29 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/11(水) 15:54:42 ID:SgntnCX6
ある日、とあるルイズわ呪文お念だ。。 そしで、綾崎颯わ召喚されている。。。 その日の夜。。。 「バガ犬!!!」「女装..」「激SM」「OOXX....」..OTL......
30 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/11(水) 16:00:16 ID:xWn+mR7q
ルイズに召喚されて魔獣に捕食されるゆとり藍蘭島のゴミどもをだな・・・・。
>>31 一言足りん
「現時点で作品投下に見える代物は全て荒らしの不正コピペです」
33 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/13(金) 23:39:27 ID:1wt/z9Rm
感想書いてきた奴、お客様か? もしそうなら、ここからネタ仕入れて書き込みに行くなんてみじめなやつだ
どうやら盗作で削除された作品を素晴らしかったと言ったり、サイトの事を噛ませ犬wwwとか言ってたりしたようだな
>>33 感想を投稿する際の注意事項
その上に作者の心得として
1. 投稿する際の注意事項
・ 感想内で荒れそうな雰囲気があれば作者自ら諌める等してください。
・ 「私は厳しくもためになる感想だと受け止めていますので……」などはっきりと書き込むべきです。
とあるので、むしろ批判的な感想に感謝レスをすべきということだな。まあ大半は馴れ合いだが。
面白い!! 召喚されました系のSSでは バトル系か恋愛系が多いので 非常に新鮮でした! そして味噌ペーストっすかwww これでエルフも虜だwww
タンクさん早く帰ってこないかな〜 ついでに音声作者がしれって復帰してみたりとか
本来悲痛な場面であるはずの怪我を押しての出撃がルーデルさんにかかったら笑い話にしか見えねえw
マジで化け物か、この作者。 精霊と家族同然どころか肉体関係だから傷ついてもオート回復 わざわざKATANA復活……SEKKYOU……辛い過去を思い出しての暴走(笑) 太陽神の巫女(笑)……コルベール天使化&TS ……圧倒的……圧倒的香ばしさ……! 10話まで耐えたけどもう無理……あばよ……ダチ公……
現実回帰とかめちゃくちゃ久しぶりに見た やっぱり夏休みだから更新停止してた作品がいくつかあがってきてるんだな どうせならタンクさんが・・・
理想郷で一番面白いゼロ魔作品は 3.0(さんてんぜろ)国志【ルイズは董卓を討つようです】 だな。
最近、スパム書き込み多いな 2ch外の広告書き込みって、規制できたっけ?
そっちの管理人次第じゃないかな。
愚にもつかない馬鹿げた下らんゲハ話はどうでもいいから、 SSを更新する気があるのか無いのかだけでもはっきりさせてくれ。 まさか原作で新刊が出るたびに新しい設定が出てくるから、完結するまで更新しないとか?
もう終わりなんだよノボル…ゼロの使い魔人気も
まだ終わっちゃいねえってんだよ!
実際のとこ、ルイズが家出したあたりから自転車操業感が半端ない
ゼロと始祖精霊 その女性は追われていた。 月明かりが照らす森の中、赤い紅い女性は逃げるようにかけていた。 道なき道を、だ。 軽やかに枝を蹴り、しかしその反動で枝が揺れることもなく跳躍し前進し追手から逃れるよう森の中を進む。 その女性は人間ではなかった。 背中には紅い3つの対なる羽が、いや羽と表現するよりも紋章と言ってしまえるそれが付いている。 女性は精霊だった、しかも6枚羽の上級精霊。 何かを感じ取り振り向く。 そこには白い淡い光を放つ球体が浮いていた。 ただの球体とは違うちょこっと小さな羽が1対生えている。 これもまた精霊≪一般的にはボウライと呼ばれる≫下級精霊である。 その球体が撃ち放たれた砲弾の如く女性へと飛んでいく。 砲弾というのはあくまで速さの比喩であって動きではない。 ジグザグとフェイントをかけながら女性へ肉薄する 「ッ!なめるな!!」 人間ではみきることのできないスピード、それでも女性はその姿を捉え右手を向ける。 刹那、手より紅い閃光が放たれる。 精霊雷。精霊が放つ力そのもの。 直撃を逃れ撤退していく球体を最後まで見ることなく女性は再び前進する。 もう猶予はなかった、早く仲間のところへつかなければ。 いくら上級精霊といえどやはり精霊だ、自身の力を使えば消耗する。 そして消耗した力は許容量を超えれば消滅してしまう。 「始祖精霊と呼ばれた私がこのまま消えるのか…」 ふと物思いにふけいってしまった、それが問題だったのだろう。 目の前にソレがあるのに気がついたときはもう遅かった。 緑色の鏡のようなソレにその女性は吸い込まれこの世界から姿を消した。
>>54 ドーンと景気のよい音が鳴る。
ここはトリスティン魔法学院、爆破作業をしている工事現場ではない。
春の使い魔召喚の儀式。一年生から二年生へ進級するための必須課題である。
本日何度目だろうか、途中まで数えていた者もいたのだろうがみな呆れかえりヤジを飛ばしている。
「ゼロのルイズ!何度目の爆破だよ!」
「コモンマジックですら失敗するなんてさすがゼロだな!」
それは一人の少女へと向けられた馬頭の言葉だった。
少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは落胆と苛立ちの狭間にいた。
自分以外の一年生全員既に召喚し契約を終えている。
何度召喚を試みても爆破しか起こらずあたりはさながら砲撃戦の後のようにクレーターがあちらこちらにできている。
全てルイズの失敗魔法によって、だ。
「ミス・ヴァリエール。続きは放課後にでも」
生徒の監督者であるハゲ田デンゾウもといコッパゲ、訂正コルベールがいう。
「いやです!召喚を続けさせてください!」
「しかし「あと一回!これで最後にしますから!」
コルベール何かを言おうとしたがその言葉を最後まで聞きたくなかった。
「わかりました、これで最後ですよ」
そういうとコルベールは後ろに下がった。
あのハゲ爆破に巻き込まれないように下がりやがった。
「まぁ無理もないか…」
そのまま沈みかけてた気持ちを持ち直すよう首を振る。
「落ち着きなさいルイズ、貴女はできるわ…」
目を閉じて深呼吸を2回、呼吸を整え集中しいざ!
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
ゆっくりと、しかし力強く唱える。
「五つの力を司るペンタゴン、わが運命に従いし『使い魔』を…」
目を開く、まだそこには何もない。
「召喚せよ!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオン。
景気のよい爆発音が今日もトリスティン魔法学院を揺らした。
「嘘、失敗なの…」
今までにないほどの爆発だった、今日だけで何度爆発したかわからなかったがこれは超ド級の爆発といっても過言ではない。
むしろこれ成功してても使い魔けし飛んでるんじゃない?
ふっきれた思考に笑っている自分がいる。
「おい、あれ!」
生徒の一人が声を上げる、その声につられてルイズも爆心地をみる。
「え…?」
土煙がやんだそこには一人の女性が立っていた。
とても美しい赤い紅い女性。
「ここは..どこだ…?」
女性が何かをいったのはわかる、しかし言葉を理解できないでいた。
それほどまでにこの女性は美しく、そして輝いていた
始まりの女神とゼロの魔法使いは出会った。
どこのコピペ?
57 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/30(月) 17:40:12 ID:4ArDlcBa
>>54 どこでやってるんだ?ぐぐってもみつからん
そろそろスレも復活かな
60 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/30(月) 20:19:35 ID:p3LO7+dy
あげとくか
いつも思うけどギーシュとの決闘騒ぎシーンで最初にギーシュが絡んだ相手がシエスタというのはあり得ないと思う 女の子に絡むとかギーシュの性格から言ってないだろ
貴族以外は人に非ずっていう感じの貴族代表なんじゃねえの
でもギーシュって女なら誰でも手を出すわけでもないんだよな 俺の記憶が確かならばルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタには 手を出したことないし もちろん、性格や出身、体形、身分など手を出さない要因の心当たりは複数あるが
ギーシュのジャスティスはモンモンよりかわいそうな胸とビッチと平民は対象外なんだよ
成長途上のルイタバは論外。 キュルケには相手にされない。 シエスタは平民。
あとベアトリスには完全に頭が上がらなかったな
あれは実家が借金してるからだろ
68 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/08/31(火) 18:09:47 ID:Fiqh7hC/
あとよくSSで見るのがモット伯のシエスタ買い取りだけど そんなシーン原作になかったよね?ゲームとかであったの?
モットさんはアニメオリジナルキャラだよ シエシエフラグ製造のためだけに毎回酷い目に遭うかわいそうな人
奇妙な〜スレの「ゼロいぬ」で初めてモット伯を知った俺にとって、彼は綺麗な人。
よーしこのスレをモット伯縛りにしてモット伯に付いて話して埋めてしまうってのはどうだい
モット伯を縛りたいんなら一人でどうぞ
モット伯の魅力
SSでたまに見るのがシエスタがモット伯にやられちゃってるやつ もうそれを見た瞬間に作者死ねと思うわ
なんで? モット伯にやられたシエスタはもう駄目なの?それって酷くね?
シエスタはべつに最初からどうでも…おっとこんな夜更けにだれかきたようだ
>>75 なぜわざわざ不幸にするのかということよ
なんの繋がりも成長も覚悟もなくただショッキングさの演出だけのためにね
ショッキングな演出の為だけにそういうのはあり 別に本編のシェスタがレイプされた訳じゃないんだし
そういう安い演出つかわないとショック与えられないなんて雑魚作家はおよびじゃない
金もらって書いてるわけじゃないから、よばれなくてもいいんだろう。
別にその程度書き手の好き好きで良いじゃないか それが同人活動ってもんだ
この場合およびじゃないのは誰かもうちょっと考えた方がいいな
別に読者がおよびじゃなくても、同人小説は書ける。 だいたい、読者と一言でいっても、理想郷となろうじゃ趣味がぜんぜん違うし。
ゴジラ召喚。もう誰も止められない。
マグロ食ってる奴なら
あっちの方が御しやすいけど、ネズミ並みに大量に増えるからなぁ…
そいつらはジラって呼ばれてる紛いもんだべ
タバサがシルフィではなく ガメラ3のイリスを召喚していたら。 ・・・ガリア滅亡?
ゴジラは骨法で倒せます
サイヤの使い魔と海馬、イチローのが面白いし続きみたいけど無理っぽいな
サイヤ読みたいなー だれかDBクロス書いてくれ
ピッコロさんはお守りになれてるから当たりになるかもしれない。
マントを貴族仕様からピッコロタイプに変えて、 「あなた本当にピッコロのこと尊敬してるのね」 とキュルケに言われるルイズが見えた
ピッコロ大魔王がハルケゲニアを征服しようとする話ですね。
支転輪と黒点筒召喚。中からシャオとルーアンが。
ファイブスター物語のアマテラスが(レディオスソープでもいいけど)召喚されるのが見たい ジョーカー星団では神の力隠してたからゼロ魔世界では神様パワー全開で俗な活躍をしてほしいね 設定としてはラキシスを探しに行ったときに召喚される感じで
どうせ作者の自己投影オナニーになるから隠したままでいいよ
>>92 アンアンとウェールズ関連で「恋愛と言う奴らしいな…解らない」と考え込むピッコロさんが幻視できた。
唯一(?)のチャラ男サイヤ人ゴテンならハーレムラブコメ展開にもついていける気がする
ヤムチャさん忘れるとかどういうことなの?
>>96 アマテラスの場合、本当の本気出したら「宇宙ごと作り直して終わり」にならんか?
まあ、そうする動機はたぶんないけどもさ。
ドリフターズから島津豊久 刀の鞘でギーシュ顔面ぐっちゃぐちゃ 他の漂流者や廃棄物出すには「紫」と「EASY」の対象がハルキゲニア世界とした方が良いか
とりあえずこっち進行かな
だな
>>102 妖怪「首おいてけ」が伝説に残るわけですね
>>95 この二人が本気で(星神や陽転神を使って)暴れたら7万の軍勢蹴散らせそう。
>>103 運営で審議中でここで進行とかそういう話しはまだ無い
>>105 守護月天とか懐かしすぎるが、そんなに凄まじいものだったっけ?w
陽転神は物質に命を与えるとかだっけか、アルビオン大陸そのものに命を持たせられるなら或いは……
>>102 黒王「ルイズって二文字足してアナルイズって書くと凄いエロそうなので超インランっぽい、明日までに改名して来い」
ルイズ「死(ち)ねーーーっ!」
るいへきしんだしたら、何万相手でも止めちまうのがシャオだわな
それにしても避難所進行って結構過疎るんだな 毎日されてる雑談が完全になくなってるし、心なしか感想も少ない
そりゃそうだろう
避難所ってあくまで避難所だし
だからどうすんだよ糞共
糞で思ったけど、スポーツ物で召喚って難しいよね 格闘技系なら問題ない気がするけど ハルケにそのスポーツがあるという設定か、被召喚者が流行らすしか展開がないね どっちにしろ長編には向かないね
テニヌなら戦闘も余裕
何気にマラソンランナーとか水泳選手って近代スポーツが確立する前って特殊技能保持者じゃね?
元々スポーツは軍事教練という意味合いがあったからなあ。
>>114 どっかの世界からマ王を喚んで野球を流行らす訳ですね
>>116 微妙に話ズレる気がするけど昔の、飛脚やってた人はマラソンなんかメじゃない距離を毎日走ってたらしいな。
昔の日本人は走るという事自体が、特殊技能みたいなもんだったようだが
走る……ねえ 「キーーーーン! んちゃ!」
韋駄天の八兵衛に憑依されたルイズと申したか
「走る」といえば、小ネタの走れメロスは今読んでもカオス過ぎるw そういえば翼喚んでサッカー流行らせたヤツもあったよな。
カオスと言えばあの競輪の奴がカオスだったな
桜木花道ならハルケでもたくましく生きていけそう。 まあバスケとはなんら関係ない話になるだろうけど。
クロノトリガーからロボなら問題なさそうだ
カエル喚んだら面白そうだなw
呼ばれてるぞ。絶賛停止中だが
ウサビッチはやく召喚してくれ
夢幻紳士誰かやってくれんかなぁ。 凄く難しいと思うけど。
夢幻魔実也ってどう考えても長編に向かないしなw
>>128 「手の目」のSSは若旦那が裏主役だと思うけど
あ、活劇編だとスラプスティックでいいな。 真美とルイズが仲良くなると、アッコちゃんファンとして複雑だが。
聖帝様まだー?
烈風の騎士姫とのクロスまだか
134 :
超零の使い魔 :2010/09/08(水) 02:59:49 ID:aZTuAkdo
「あんた誰?」 煙が消えた時、そこにいたのはサラマンダーでも竜でもジャイアントモールでもなく、奇妙な恰好をした、おそらくは平民の男であった。 全身を灰色の服(その形状はいわゆるスーツであるが、ハルケギニアには無いタイプの服である)で固め、革靴を履いているその男は、 呆気に取られているルイズや周囲の生徒、引率の教員とは対象的に、ひどく落ちついた――というより人間味の無い――様子でルイズの問いに答えた。 「私が何者か、という事ですと、私は他の世界からやって来ました『異世界人』とでも言うべき存在です。 ああ、他の世界と言っても、あなた達の言う『聖地』や『ロバ・アル・カリイエ』の事ではなく、正真正銘の『異世界』です。 異世界と言っても世界の構造に大きな違いがあるわけではなく、この世界と同じような平行世界が無数にあり、私はそのうちの一つからこちらに来たわけです。」 「は?」 スラスラと答える男に対して、ルイズが発する事が出来たのはこれだけ。周りの生徒達はますます呆気にとられている。 「本名を明かす事は出来ませんが、私の事は『ミスターグレイ』とでもお呼び下さい。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールさん」
>>134 誰かと思えば田中光二ワールドのドラえもん、灰田さんかい。
未来の道具をぽんぽん取り出した挙句に当局に追われて逃げ出すさまが目に浮かぶ。
…ところで、お友達のミスターパープルはどこに付く気だろうか?多分ガリアあたりだろうけど。
>>135 そしてロマリアに付いたミスターブラックがまた未来のゲテモノ兵器を持って来ちゃって何かやらかす、と
玄野「今回のターゲットは魔女星人か」 ギョーン ルイズ「あんた何やtt」 頭がパーン
いつもながらどんな話題が振られても反応する人間がいるここの人間層の厚さは半端ないな
139 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/08(水) 19:01:22 ID:wm5cMmkf
ところで、WとのクロスSSはマダー? 本編終わったし そろそろ誰か書いてもいいんじゃないかな?
>>137 いっそガンツ球かその製造元、マイエルバッハ ごと呼び付けてしまえ。
宇宙人の山が来てさぞ楽しくなるだろう…うまいことネタころがしが出来れば。
>>139 じゃあアンタが書けばいいんじゃないのか?
Wを召喚だとしたら ・翔太朗召喚、杖がロストかダブルドライバー ・フィリップ召喚、杖が以下略 ・ロスト・ダブルドライバーのどちらかを召喚 ・過去に召喚されたおやっさん ・Wをそのまま召喚 とかか
むしろパーフェクトサイボーグことZXをだな
召喚されるもののインフレを突き詰めて、サモン・サーヴァントで召喚されるのが全て宇宙戦艦なハルケギニア。 キュルケがサダラーンを、タバサがエンタープライズ号を、ギーシュがリシテア(バイク戦艦)を召喚する中、 ガスジャイアント級戦闘母艦スーパーサイレン(直径10万km)を召喚したルイズの明日はどっちだ?
いっそR-GLAY1戦闘機とかどうよ? 他にもR戦闘機とか
バイド召喚
ハルケギニアは滅亡した・・・
使い「魔」っていうぐらいだから、魔物召喚もいいよな 魔帝ムンドゥス、幻魔王、伐折羅王、ゲペルニッチみたいな完全な魔物や、 奈落、ジェクト、老王オーラント、ネロ・カオスみたいな半分魔物な連中とか。
サモナ2からハサハさん召喚して 「お姉ちゃんのお嫁さんになる」を再現したい
>>144 …スケールか!!
U.C.に偏っているのでエグゼクターとかビーグル号とか
……ルイズがスーパーサイレン呼べるのか。ならば
ティファだったらダイソン天球丸ごと召喚だろう(乳的に)
誰かレンズマンのレンズのみ召還して。
アレ適格者以外が触れると死ぬぞ。 >レンズ というか、持ち主が死んだ時点でレンズも消滅するし。 あれは複製絶対不可能で銀河を越えた距離を一瞬で繋げれというる 究極の身分証明書 兼 通信機だ。 アニメは半分黒歴史だから参考にしない方が良い。
レンズは外せるじゃないか。 キムと、その子供達以降の新世代なら。 連中なら、異世界までレンズ探しにこれるさ。
書き忘れ。 キムが外してどこかに保管してたときみたいな状態で召還
キニスン以前のでも外せるけど、 その外したレンズに持ち主以外が触ると死んでしまうという素敵な仕様なんだって。
嘘発見器みたいなブラックボックスをどこかの司令官に預けたときとごっちゃにしてたか、俺? ちなみにアニメは見たことないので知らない。すまんかった。
ルイズと同じ弱点を持つキャラ召喚したらどうかな。 ハットリくんとか、モンモンが大の苦手になったりして。
ルイズと同じ弱点か。癇癪もちでちっぱいの大河ちゃんをだな
バスタード!!からルーシェ召喚で契約のキスでダークシュナイダーになる
「ドロロンえんま君」のシャポーと 「ど根性ガエル」のピョン吉。 三人で一人前。
バッカーノからニース召喚! ニースの性格(爆弾魔)を知って絶望するルイズ。
>>156 間違ってないやろ。そこのエピでキムとメンターの会話で「レンズマンの力はレンズに起因するのではない」「だが、レンズには他の役割もあるので可能な限り身につけるべきである」
とされている。つまり、召喚したレンズを何らかの手段で死なずに身に付けられたとしても、レンズマンとしての力が使えるわけではない。
ちなみに、元の世界で騒ぎにならずに取り寄せられるレンズとしては、キムが新米レンズマンの偽記憶を植えつけて敵基地に潜入した際に腕ごと切り離されたレンズがある。
所有者であるキムが生きているため、分解されずにアイヒ族の母星に保管されていたから、惑星アイヒが移動惑星くるみ割りで粉砕されたときに消滅してるはずだから、
召喚されても誰も気にしない。
>>161 ダラスさん召喚しようぜ
あまりの屑っぷりに何度も爆殺しようとするんだけど不死身だから死なない
>>159 ルイズもアンアンも非処女だから封印はとけないよ
アイアムパーフェクトソルジャー!
ジェネラル召喚するの?
ギーシュ戦でワープから10割持って行くんですね、わかります
あれで尖兵だと言うのだから困りますな
人造人間16号を召喚 対7万戦で 「ルイズ、お前はいいやつだ。お前といっしょに旅ができて楽しかった」
ヘルズフラッシュでアルビオンがヤバイ
そんな適当に歩いてるだけで傷一つ着けられる事も無く周囲にパニック起こしそうな奴が遺言じみた事w
>>169 タルクウラ七万人相手なんですね、分かります
最初のメが抜けてたorz
>>168 ジェネラルは修羅の国における砂蜘蛛のような役回りだったということで
じゃあアルビオンはビッグゲテスターか。 タルブの草原でのどかに草花とたわむれる16号とかいいな。
で、結局どうすんの? このスレ使うの?新スレ立てるの?避難所でずっとやんの?
避難所見ると、まだ明確な回答出てないみたいにみえるから もう少し待つしか無いようだね
だからか。 どこにも投下がないのは。 静かだな…
いや避難所の本スレに時々投下あるじゃない
>>164 アンアンはともかく・・・・
つーかアンビッチは手紙でびびるくらいだから当然処女だろ
いやあの手紙でびびってたのはアレがばれるとゲルマニアとの同盟話が潰れるからじゃん 言ってみれば結婚相手に自分の過去がばれるのを心配してるビッチ
処女のビッチってw
ビッチはその行動、その精神性だな
手紙云々に関してはテンプレな騎士物語のヒロインだと思うが なんであんなビッチビッチ言われてるのかわからん
サイトに鞍替えが速過ぎたのだ…
親友の留守中に彼氏を寝とろうとする女の何処がビッチじゃないというのだ……
アンリエッタは明らかにビッチだが、 サイトに一途でエッチなだけのシエスタまでたま〜にビッチなんて言われてるのがな
シエスタはビッチと言うかヨゴレだな
189 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/11(土) 09:35:42 ID:3ElblyPO
友情にかこつけて戦場に手紙とりにいくのに立候補させる無意識?の腹黒さ
190 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/11(土) 09:41:42 ID:3ElblyPO
大体ガキの手紙くれーでマジに同盟壊れるのかとか、 本気でマズイと思ってるならなんでマザリーニに相談しないんだとか、 知られるのが恥ずかしいだけだろそんなんで友人を死地にいかせんのかとか、 いろいろ嫌われる理由があるから
全部ノボルが悪いんだー
地球の常識とハルケギニアの常識は違うってことだろ。 手紙の件はワルドやクロムウェルは本気で同盟阻止に使うみたいだったし、 アンリエッタの命令にルイズやギーシュはむしろ喜んでいた。 ところでアンリエッタと並ぶかはわからんがルクシャナもかなりタチの悪い女だよな。 自分の目的のためなら国を混乱させるのもいとわないし、恋人の思いを平気で利用してる。
w
>>177 あれ? このスレを消費するまでは避難所と併用って結論が出なかったっけ
>>194 一回それで纏まるのかと思ったら、また議論進んでるよ
なんと言う読解力の無さ 結論は変わらずに議論の中で、間違い指摘無視してごり押し主張繰り返すのがいるって話が一回出てるだけ その辺で妙なのが自演して騒いでるっぽいけど併用結論は何も変わってない
うわぁ…間違い指摘するのにわざわざ読解力の無さとか…
ただ指摘するだけでいいのにな
それとも煽って何か得することでもあるのかね
>>194 wikiの方でアナウンスされてるし、結局はあのままだったんじゃないのかな
各巻よりセリフ抜粋・アンリエッタ 1巻:出番なし 2巻「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい! あなたとわたくしはおともだち! おともだちじゃないの!」 3巻「ならば、わたくしは……、勇敢に生きてみようと思います」 4巻「そんなことは知ってるわ。わたしの居室で、唇を合わせたときから、そんなことは百も承知。でも、それでもわたしはかまわない。ルイズ、あなたは人を好きになったことがないのね。本気で好きになったら、何もかもを捨てても、ついて行きたいと思うものよ。 嘘かもしれなくても、信じざるをえないものよ。私は誓ったのよルイズ。水の精霊の前で、誓約の言葉を口にしたの。『ウェールズさまに変わらぬ愛を誓います』と。世のすべてに嘘をついても、自分の気持ちにだけは嘘はつけないわ。だから行かせてルイズ」 5巻「今宵だけでよいのです。恋人になれと申しているわけではありません。ただ、抱きしめて……、口づけをくださいまし……」 6巻「この身を焼くことで罪が赦されるなら……、喜んで贖罪の業火に身をゆだねましょう」 7巻「ならばあと一週間でロンディニウムを落としなさい! なんのためにあれだけの艦隊を! あれだけの軍勢を! なんのために“虚無”を! 切り札をつけたと思っているのですか!」 8巻「王になんか……、なるんじゃなかった……」 9巻「しばし……、ほんの少し……、安らげる時間が欲しいだけなのです。できれば、あなたのそばで……、それを得たいだけなのです」 10巻「自信はないし、うまくやれているとは思えない。でもね、わたくしは女王なのよ。ルイズ」 11巻「ルイズ、ルイズ! 殿方を蹴っ飛ばすなんて、レディのすることではないわ!」 12巻:出番なし 13巻「神は、多少の教義の違いなどには目をつむってくれますわ」 14巻「よくわかりました。これから聖下のお言葉は、布で濾したあと、慎重に理性を働かせて拝聴することにいたしましょう。ただ、もう一つの件に関しましては、正式に抗議することにいたします」 15巻「わたくしがいなくとも、国は動きます。マザリーニ枢機卿も母君も、家臣団も未だ健在なのですから。ですが……、エルフとの大規模な戦になったらハルケギニアが潰れます」 16巻「あなた、夢中になってわたくしの唇を求めてきたのですよ。こんな風に……」 17巻「あれはただ、あなたの真似をしただけですわ。誘惑したわけではありません」 18巻「わたくしだって、たまに本音を漏らしたいわ。心を許せる相手がほしいのです」 19巻「気をつけてね。ルイズ」
各巻よりセリフ抜粋・シエスタ 1巻「貴族の方々にお出しする料理の余りモノで作ったシチューです。よかったら食べてください」 2巻:出番なし 3巻「け、結婚するからって言えば、喜ぶわ。みんな。母さまも、父さまも、妹や弟たちも……、みんな、きっと、喜ぶわ」 4巻「もう、ちょっと、その、人が来なさそうで、綺麗な場所がいいなあ。あ、でも! これ願望でして! サイトさんがここがいいって言うんなら、ここでも平気よ。ああ、わたし、怖いです。だって初めてなんだもの。母さま許して。わたしここでとうとう奪われちゃうのね」 5巻「……子供みたいな体して、貴族? ……へぇ」 6巻「好きなんでしょ? 要はやきもちじゃないですか。それなのに貴族がどーのこーのなんてね、ちゃんちゃらおかしいですわ」 7巻「やーん、こんな早く会えるなんてー! わたし感激です! か・ん・げ・き!」 8巻「勘違いしないでください! ミス・ヴァリエールは正直どうでもいいです! でも、好きな人の涙は見たくないんです……、ぐぐぐ……」 9巻「し、しかってください! サイトさんにしかっていただくなら、わたし本望だわ! こ、こんな感じですっ!」 10巻「『お前が望むやり方で、このわたしに奉仕しなさい』。そう言ってマダム・バタフライは、騎士に奉仕させるんです! それがもう! きゃあきゃあきゃあ! 言えません! きゃあきゃあきゃあ!」 11巻「でも、そんなやらかすであろうサイトさんが……、わたし……」 12巻「モノにしたなんて……。そんな言い方はよくないわ、ジェシカ。第一サイトさんは、わたしのそういう人じゃないもの。ご奉公先の、ご主人さまよ」 13巻「わ、わたしはちょっと舐めちゃいましたけど! そんぐらいですから! わたしは綺麗なままです! その、サイトさんのために……、ぽっ」 14巻:出番なし 15巻:出番なし 16巻「安心してください。このシエスタは、いつでもサイトさんの味方ですから。ほんとうもう、なんのかんの言ってわたしが一番ですよ? なにせよそ見してもあんまり怒りませんし、他の子とキスしてもあんまり怒りません。それ以上したら殺しますけど。でも好きですからね」 17巻「う、浮気はわたしだけにしてくださいねって! 言ったのにッ! やくそくしたのにッ! なんでサイトさんは高貴が好きなんですかぁ! 野に咲く可憐な花の良さだってもっと知るべきですッ!」 18巻「軽く? 入っちゃった?」 19巻「どういうことですか。貴族同士の密約ですか。一日交替とかそういうアレですか」
レイアース召喚。 ♪止ま〜らぁない〜未来を〜目指して〜♪
光、海、風の三人か、名を上げたらアニエスがスカウトに来るかも。 ところで、もう本スレ復帰してるんだよね?
>>202 本スレっていうのはラノベ板のことか? もうノボルのスレは立ってるよ。
もうこのスレにSSを投下していいのかってことです。
okだよ wikiにも書いてあるけど、このスレを使っている間は避難所と併用
>>199 こうやってみると一番人間臭くてかえって好感が持てるんだがw
伊藤誠を召喚してハーレムエンドにすれば無問題なんだよ。 エロい人には、それがわからんのです。
ティファニアが言葉ちゃんか
ルイズ「この付近に魔物はいる?」 テファ「いませんよ」
るいず「アルビオンに手紙をとりに行くわよバカ犬!」 ポヒューン・・・デデーン! るいず「ア、アルビオンが・・・消えちゃった・・・手紙ごと・・・」
もうだめだあ…(ry
では、こちらのスレのほうに投下してもよいとのことですので僭越ながらスレ復帰の口火を切らせていただきます。 皆様こんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、13話の投下準備できました。 問題がなければ、10分おいて14:50より開始いたしますのでよろしくお願いします。
頑張ってね〜
第十三話 涙雨の日 宇宙調査員 メイツ星人 巨大魚怪獣 ムルチ 巨大魚怪獣 ゾアムルチ 登場! いやな雨…… いったい、いつまで降り続けるんだろう…… 雨が、やまない……いつまでも……いつまでも…… その日、トリステインは夏の終わりを告げる長雨にさらされていた。 太陽は朝から黒く立ち込めた雲にさえぎられ、いつもは高台に聳え立つトリステイン王宮が 壮麗に美しさを誇る首都トリスタニアも、行き交う人はまばらで、王宮のバルコニーから街を 見下ろす王女アンリエッタの顔にも、笑みはない。 「まるで、この世界が死んでしまったようですわね……」 「殿下、風雨が強くなってまいりました。お体にさわりますので、室内にお入りください」 「ええ……」 アンリエッタはその声に従って、自らの執務室に戻るとガラス戸を閉めた。 室内は薄暗く、ときたま差し込んでくる雷光が、部屋の中でアンリエッタにひざまずいている 二人の人影を照らし出していた。 一人は、鎧と鎖帷子に身を包み、貴族のマントを羽織った金髪の女騎士アニエス。 もう一人は、頭からすっぽりとかぶったぼろで全身を覆い隠し、わずかにすきまからのぞく 口元の形で、それが女性であるということだけはわかる奇怪な風貌の持ち主であった。 アンリエッタは、ひざまずいたままじっと自分の次の言葉を待っている彼女たちに 話しかける前に、ディテクト・マジックで念入りに部屋に盗聴が仕掛けられていないかを 確認すると、さらに声をひそめながら口を開いた。 「それで……その情報に誤りはないのですね?」 「はい。きゃつは、我々の捜査が身辺に及ぶにいたって、公職から追放された幾人かの 貴族と連絡を取り合っているのが確認されました。近日……早ければ、今日、明日にでも 行動を起こすでしょう」 アニエスの返答に、アンリエッタは肩をすくめた。 「悲しいことですわね。わたくしはこの国を愛しています。ですから、この国を支えてきた 貴族も、この国を愛していると思っていた……いいえ、思いたいと思っていたのですが」 「彼らは、なによりもまず黄金を愛するものたちです。この国が売り物になると思ったら、 より高く売ることしか考えますまい」 「残念ですが、仕方ありませんね。できれば、この日が来てほしくはないと願っていましたが。 しかしこの国の未来を座視して、このような者たちの手にゆだねることはできません」 机の上に置いてあった書簡を取り上げて、アンリエッタはそこに書かれている貴族の 名前を憎憎しげに読み連ねた。それは、このトリステイン王国からアンリエッタ王女を 放逐し、ある高貴な身分の人物を押し頂いて新たな国を作ろうという、反乱計画の 概要書だった。 アンリエッタは書簡から目を上げると、それまでの悲しげな表情から一転して、 苛烈さと冷徹さを併せ持つ目に代わって命じた。
「アニエス、この報告書に名を連ねた貴族をすべて捕縛しなさい。容赦はいりません、 反抗するものは手打ちにしてかまいません」 「御意に、しかしこの首謀者に限りましては、まだ不明な点が残っていますので、 あと少々泳がせたく存じます」 「不明な点?」 「はい、こやつが不平貴族どもを糾合するために用意した金銭は、彼の所得はおろか、 どう賄賂を集めたとしてもまかなえるものではありません。それに」 アニエスが言葉を止めると、今度はぼろの女が軽く頭を下げて報告した。 「わたしは、ここ一ヶ月間、きゃつの身辺を徹底的に洗いました。すると、レコン・キスタの 崩壊を境に、きゃつの下へ出入りしていたアルビオン人の姿が消え、代わってガリア なまりのある人物が現れるようになったということです」 「ガリア……それが、新しいパトロンだと?」 「それはまだ不明です。ガリアと一口に言いましても、様々な組織が入り乱れております。 奴は、レコン・キスタ以前からもガリアの人身売買組織と通じていました。その節での 線で洗っておりますが」 「人間を売り買いする……人として、もっとも恥ずべきことですわね。わたくしは、わたくしの 治世のうちでどれほどのことができるかはわかりませんが、少なくとも人身売買だけは、 トリステインから一掃しようと考えています」 「ご立派なお考えです。どうか、もうこれ以上あの男のために不幸になる人が増えないように、 お願い、いたします……」 そのとき、ぼろの女の声がかすれ、顔を覆ったフードの下の絨毯に雨粒がこぼれたような しみが落ちると、アンリエッタは彼女の前にかがみこんで、その肩を抱いた。 「あなたには、つらい役回りばかりをさせてしまって、本当にごめんなさい」 「いいのです。これは、わたしの人生で、つけなければならないけじめなのですから……」 「それは、あなたのご両親の……?」 「はい、わたしの父と母は、奴のために命を奪われました。そして、残されたわたしの人生を めちゃめちゃにした、あの男が生きている限り、両親は安心して眠れないでしょう」 体裁を整えてはいたが、その言葉にははっきりとした憎悪と決意が込められており、 アンリエッタはその意思の強さを悟った。だが、同時にそれは極めて危うく、彼女自身をも 焼きかねないどす黒い炎であることも見抜いていた。 「命を粗末にしてはいけませんよ。前にも言いましたが、たとえ仇を討てたとしても、 あなたが命を失えば、それ以上の親不孝はないのですから」 「は……」 彼女は小さく答え、そうして彼女はアニエスに続いて、我々は準備がありますので また後刻と言い残して、執務室を退室していった。 その後ろ姿を見送ると、アンリエッタはまた窓際に歩を進め、まるで城が海の底に 沈んでしまったかのように水を流す窓に手をつくと、悲しげにつぶやいた。 「深く愛するがゆえに、逆に憎しみを捨てることができないとは、人の心とは、なんと残酷な 仕組みで作られているのでしょうか……」
王女である自分の権力をもってしても、たった一人の人間の心さえも救ってあげることが できない。人の心とは、愛とはいったいなんなのだろうか……アンリエッタは、自らの 知識をはるかに超えた難題に心を痛め、もし自分も愛する人を失ったら復讐に狂った 人間になってしまうのだろうかと、今ははるか遠くの空で自分を思っているに違いない 愛しの人の笑顔を、まぶたの裏に思い浮かべた。 雨はなおも降り続き、日はとっくに昇っているはずだというのに夜のように暗い。 普段は数多くの貴族が豪華な衣装をきらびやかに輝かせて歩く廊下も、今は人の絶えた 古城のように生気がなく、そこを歩くアニエスともう一人の姿も、あたかも妖怪のような 陰影さえまとっている。 「まもなく、私のはなった斥候が帰ってくる。その報告しだいだが、おそらくは今晩あたりで 決着をつけることになるだろう。覚悟しておけよ」 「……」 「つらいか? いつわりだったとはいえ、お前にとって育ての親だった男だ。迷いがあるのだったら、 ここで降りてもいいんだぞ」 「いいえ、迷ってなどはおりません」 「嘘をつくな。これでも人を見る目には多少自信がある。お前はまだ迷っている。だまされていた ことが嘘であってほしいと、心の底でそう願っているだろう」 ぼろの女は返事を言わず、じっとうつむいたままだった。 「気持ちはわかる。しかし、迷いはためらいを生み、命取りとなる。お前一人で死ぬのなら ともかく、足手まといになられたらかなわん」 突き放すようなアニエスの言葉に、ぼろの女は立ち止まると、つぶやくようにアニエスに尋ねた。 「隊長には、迷いはないのですか?」 「ない。私の故郷、ダングルテールを焼かれて二十年、復讐の一念だけが私を支えてきた。 奴の心臓に剣を突きたてるのが、私の生きる意味だ」 「……二十年」 それほどの長い時間、練り続けられてきた復讐の念とはどれほどのものだろうか。 ぼろの女は、アニエスの中に隠されたその怨讐を理解していたつもりだったが、あらためて 聞くと、その長さに慄然とせざるを得なかった。 「それにな、正直なところを言うと、私はお前には来てほしくはない。私はもう、二十年間 ささげてきた復讐の人生から逃れることはできんが、お前はまだ引き返せる。今日まで よくやってくれた。しかしもう戦いからは身を引き、一人の女として幸せを求めてもいいんだぞ」 「そんな……わたしにだって、もうほかに行くべき場所なんて、どこにもありません」 「なら、戦うか引くか、はっきりと覚悟を決めろ。ここにいる限り、我らの行く道は修羅道なのだから」 「……」 答えはなく、その肩が小刻みに震えているのを見たアニエスは、フードの下に手を伸ばすと 濡れていた彼女のほおを指でぬぐい、静かに告げた。 「作戦開始は今夜だ。日暮れまで休暇をやる。それまでに決めろ」 「……隊長」 「行って来い。お前が今、一番信じられる、会いたいと思っている人のところへ」 「……はい」 小さくうなずいた彼女はアニエスに一礼すると、小走りに立ち去っていった。 外はなおも豪雨が続き、暗くかすんだ街は死んだように静まり返っている。 アニエスは城門から、彼女が馬に乗って雨の中へ溶け込むようにして走っていったのを 見送ると、彼女を救ってやれない自分の無力を嘆くように、かつて唯一自分と引き分けた 一人の少年に向かって、祈るようにつぶやいていた。
「あの子は、私では救ってやることはできない。だから頼む、あの子はもうこれ以上、 不幸になる必要なんかないんだ」 雨中に歩を進めていったアニエスの背を雷光が照らし出し、やがて彼女の姿は街の闇の中に 染み込むように消えていった。 低気圧はトリステイン全土を覆い、この魔法学院とても例外ではない。 「よく降るもんだ」 才人は女子寮のルイズの部屋で、窓ガラスに叩きつけられる雨粒を見ながら一人でつぶやいていた。 今日は平日なのでルイズは昼前の今は授業中で、才人は一人で留守番だ。 トリステイン魔法学院は、ライブキングの騒動が引いていた尾もすでに薄れ、平常を取り戻して 連日普通に授業が続いている。その間、授業に参加してもやることのない才人は、ルイズが 帰ってくるまでGUYSライセンスの勉強時間をもらって、毎日地球で高校に通っていた頃とは 比べ物にならないほど勉強にはげんでいた。もっとも、それも最近の雨のせいでパソコンの 予備バッテリーも尽き、充電用のソーラー充電器も使えないので、今ははっきり言って暇を もてあましていたのだが。 「んったく、雨雲を吹き飛ばしたりできないもんかねえ」 「まぁ、しょうがねえよ。天気だけは、これまでどんな大魔法使いだってどうにかできた奴は いねえんだから」 部屋の中で唯一の話し相手である、インテリジェンスソードのデルフリンガーが、つばを カチカチと鳴らしながら、憂鬱そうにしている才人の退屈を紛らわせようと話しかけてきた。 「空を晴らすのは魔法でも無理か。恵みの雨とは言うが、こうも長続きするとうんざりするな」 空はどんよりと分厚い雲で覆われ、ときたま雷鳴がとどろく冷たい雨は、今日でもう三日も 降り続けている。 「まあおれっちも、湿気はさびる原因になるから嫌いだね。たまには手入れしてくれよ相棒」 「自分からさび刀に変身してたくせによく言うぜ。しかし、やることがないってのも善し悪しだな」 長雨のおかげで、ルイズが授業中に片付けておくことになっている洗濯や掃除といった 雑用もしばらくは休みになり、体を休めることができているのはうれしいが、人間……特に 日本人というのは不便なもので、仕事がないとどうしてかそわそわしてしまう。 「シエスタやリュリュも今ごろは仕事中だろうしなあ。この学院で、今暇なのはおれぐらいか」 「相棒もなんぎな性質だねえ。人は人、自分は自分だろ。暇なら寝てろよ、せっかくの 休みじゃねえか」 「一年中夏休みみたいなやつに言われたくないぜ。ったく」 才人はやれやれとぼやいた。まったくもって、仕事中毒の日本人からしてみれば デルフリンガーほどうらやましい身分はない。なにせ働かなくても食わなくても、死にはしないし 年老いたりもしないのだ。 「馬鹿言っちゃ困るぞ相棒、俺だってお前みたいな奴ばっかりならいいが、俺を手に入れた 大半はろくでもないのばっかりだった。お前と違って、俺は嫌いな奴から逃げたりは できねえんだからな」 「わかってるって、デルフには前からいろいろと世話になってきたからな。ツルク星人のときや テロリスト星人のとき。ちょっと前も、ワルドと戦ったときだって、デルフがいなけりゃ俺は どうなっていたか」 スクウェアクラスの使い手であるワルドとの戦いで、魔法を吸収するというデルフの特性が なかったら、無事に戦えたかは疑わしい。いや、そうでなくとも、常日頃から色々なことで 助言をしてくれたり、戦い方を教えてくれたりするデルフには世話になっているのだ。
「……剣に向かって頭を下げる持ち主ってのも珍しいな。さすがにそこまでされるとこそばゆいぜ」 「そうか? お前はおれよりずっと年上なんだろ?」 「もう正確に何歳かなんて覚えてねえよ。つか年寄り扱いすんな」 その一言に、才人は白髪の老人姿のデルフを想像してしまって、思わず口元を押さえた。 「ぷっ……まぁ、なにはともあれお前には何度も命を救われたな。またワルドみたいな奴と やることになったらよろしく頼むぜ」 「任せときなよって。そういやあ、アルビオンから帰ってもう一ヶ月を過ぎたのか。早いもんだな」 「ああ……」 才人は軽く相槌を打って、あの浮遊大陸であった数々の冒険や戦いの日々を思い出した。 あれ以来、ヤプールの攻勢は知っている限り一つもなく、逃したバキシムのことは気になるが、 しばらくは戦力の増強をはかっていると考えていいだろう。 アルビオンも平和になり、ウェールズ皇太子も頑張っているだろうし、ティファニアや子供たちも 元気にしているだろうか。それに…… 「ミシェルさん、いまごろどうしてるかな……」 才人の脳裏に、アルビオンで別れて以来、一度も会っていない銃士隊の副長の、最後に 見た笑顔が蘇ってきた。アルビオンでの戦いが終わったあとでは、しばらく身を隠すと 言っていたが、無事でいてくれるだろうか。 「なんだ相棒、もう浮気の画策か? ま、あの姉ちゃんも美人だったもんなあ」 「茶化すなよデルフ。そんなんじゃねえってば」 「照れるなっての、なんつったって相棒は思いっきり抱きしめて、チューしてもらったような 仲じゃねーかよ!」 「お前……それルイズのいるところで言ったら、鉄くず屋に叩き売ってやるからな」 すんだこことはいえ、ルイズに半殺しにされるネタを思い出させて得はない。才人は デルフに念を押して、余計なことを言うなよと脅しをかけておくと、はぁとため息をついて ルイズのベッドに大の字になって寝転び、目を閉じた。 「もう怪我も治ってるだろうが……無茶してなきゃいいけど」 ヤプールがアルビオンで暗躍しているのを知って、調査で乗り出したときに偶然 アニエスと出会い、死に掛けていたミシェルを見たときはどういうことかと慌てたものだ。 でも、本当にショックが大きかったのは、意識をとりもどしたミシェルから彼女の 生い立ちを聞いたときのことだ。 幼い頃に陰謀で父と母を失い、天涯孤独の身の上となったこと。かつての父の友人で、 レコン・キスタの協力者に拾われて、その恩返しと国への復讐のために銃士隊に 入った……つまりは、最初から裏切り者だったということ。 だが、その父の友人こそが父を罠にはめた張本人であり、利用されていたのだと いうことをアニエスから聞かされ、絶望に打ちひしがれたミシェルを、才人はどうしても 憎むことができなかった。 あのときは、ほとんど自殺に近い形で背信者として処刑されようとしていた彼女を どうにか思いとどまらせることができたが、復讐の対象が国からその男に変わっただけで、 今でも復讐のために生きているということには変わりない…… 最後に話をしたのは、アルビオン最終決戦の前夜だったけれど、今考えてみたら あれで終わったと思ったのは甘かったかと才人は悔やんだ。あのときに見た笑顔が、 今はまた曇っているかもしれないと思うと、やりきれない思いばかりがしてくる。 「……本当に、よく降るよな」 雨の日というものは、思い出したくないことばかりよく思い出す。 「家族の復讐……か」 才人は、豪雨の音を聞きながら、机の上に置いてあった地球防衛軍の全戦闘記録が 記載された分厚い教本の中から、ごく最近……GUYSがボガールを倒し、ヤプールの 第一次侵攻を撃退してから、少し経ったときの記録を選び出し、デルフに向かって独り言の ように読み上げ始めた。
それは、地球防衛軍にとって、いいや地球人にとって決して忘れてはならない愚行の 記憶を呼び覚ました事件。才人にとっても、これまで黄金色に彩られていると思っていた 防衛チームと怪獣・侵略者との戦いの中で、消えない血文字で記された記憶。 ある日、宇宙のかなたからやってきた一機の宇宙円盤……当時、怪獣頻出期の再来、 ボガールとヤプールという強敵を迎え、つい先日も謎の大円盤群によって送り込まれた 円盤生物ロベルガーに襲われたばかりの地球は当然警戒し、対怪獣邀撃衛星を はじめとした防御網を発動させた。 「そのときおれは学校にいて、教室の備え付けのテレビで、非常警戒警報を見てた。 また宇宙から侵略者が来たのかよってな……けど」 その円盤から降りて語りかけてきた宇宙人の声は、侵略者のものではなかった。 はるか宇宙のかなたにあるメイツ星から、地球と友好を結ぶためにやってきた 使節、それが来訪した宇宙人の目的だった。 しかし、彼は同時に地球とのあいだでどうしても解決しておかねばならない問題が あるとして、CREW GUYSに、かつて地球で起こった地球人と、あるメイツ星人との あいだに起きた事実を語って聞かせた。 その事実とは……才人はページをさかのぼり、時代をさかのぼっていく。 「最初は嘘だと思った。でも、この事件のあとでGUYSの広報部から公式の説明が 発表されて、みんなが事実だとわかったのさ」 才人は、ドキュメントMATに記載されている一つの悲しい物語を読みはじめた。 あれも、こんな冷たい雨が降りしきる日だったという。 今を去ることおよそ四〇年前の、昭和四六年。日本の高度経済成長期。 当時の日本は、戦後の混乱期から脱して、ひたすらに上へ上へと働き続ける反面で、 公害や経済格差などの問題が強く表面化してきており、厚くたちこめたスモッグの下で 人々の心にも黒いすすがかかっていた。 そんなとき、とある工業都市の一角の川原で、寄り添うように暮らしている老人と少年がいた。 彼らはいつからかそこに住み、老人は身寄りをなくした少年を、まるで息子のように かわいがり、少年も老人を本当の父親のように慕っていた。 けれど、そんな彼らに近隣住民の目は必要以上に冷たく、いつの間にかあいつらは 宇宙人だという、根も葉もない噂が広まっていき、少年には首だけ出して生き埋めにして リンチをかけるといった、およそ人間というものがここまで残酷になれるのかと思うくらいの 凄惨ないじめが加えられた。 それを、当時のMAT隊員郷秀樹はなんとか食い止めようとしたのだが、とうとう 暴徒と化した住人たちは大挙して二人の住んでいた廃墟に押し寄せ、少年をかばう 老人を殺害してしまった。 だが、老人が殺されたとたん、まるで人間たちの愚挙をとがめるかのように地底から 一匹の怪獣が現れて、人間たちに襲いかかった。 巨大魚怪獣ムルチ……実は老人の正体は、数年前に地球に環境調査の目的で 降り立っていたメイツ星の宇宙人で、工場の吐き出す汚水によって変異した魚の怪獣 であるムルチを、人々の害にならないようにと超能力を使って川底に封印していたのだった。 しかし人間たちは愚かしくも、善意の宇宙人を勝手な思い込みで悪魔と信じ、本当の 悪魔を自らの手で蘇らせてしまった。 口から強力な火炎を吐き、暴れまわるムルチに人々は逃げ惑い、工場地帯は みるみる火の海と化していった。 結果的に、ムルチはその後現れたウルトラマンジャックに倒されたが、この事件は 人間の愚行が招いた怪獣災害の中でも、特に醜悪で忘れてはならないものとして、 MAT隊長伊吹の意向で事実のまま記録され、三十五年後にGUYSの目に止まることになる。
しかし、ミライ隊員とのあいだで交渉を成立させかけていたメイツ星人は、まだ状況を 知らなかったリュウ隊員に誤って撃たれてしまい。激昂した彼は万一の際の武力手段として 宇宙船に乗せてきた怪獣を出現させた。 巨大魚怪獣ゾアムルチ……かつてのムルチの同族を強化改造したその怪獣は、 メイツ星人の怒りを代弁するかのように街を破壊していく。 そして、攻撃をやめるように言うリュウ隊員に、そのメイツ星人は告げた。 「殺されたメイツ星人は、私の父だ」 ゾアムルチは豪雨の中で、まるで三十五年前を再現するように暴れまわり、食い止めようと 立ちはだかったウルトラマンメビウスをも寄せ付けない勢いで破壊を続けた。 それは、三十五年前に地球人の無知と恐れが生み出した、二度とあってはならない 悲劇から始まった、あまりにも悲しい復讐劇だった。 才人はそこまでを話すと、つらそうに息を吐き出して、立てかけてあるデルフに話しかけた。 「おれは人間ってのが、こんなひどいことをできるのかって、しばらく夜うなされたよ」 「相棒の世界も、人間ってのは大概バカなもんらしいな。三十五年前に戦ったっていう そのウルトラマンも、よくもまあそんなバカどもを助けようと思ったもんだぜ」 「……そうだな」 才人はデルフの言葉を否定はしなかった。もし、自分がその場にいあわせたとしたら、 メイツ星人を殺した人間たちを、絶対に助けようなどとは思わなかっただろう。赤の他人の 自分でさえそうなのだから、その息子の憎しみは想像にあまりある。 「でも、復讐して誰が幸せになれるっていうんだ」 ほんの小さくつぶやいた才人は、だからこそ今でも復讐に走っているであろうミシェルの ことを思うと、悲しくてたまらなくなるのだった。そんなことより、あの人にはもっともっと 似合うことがあるはずなのだから。 教本を握り締め、無言で固まっている才人にデルフが言った。 「なあ相棒、その話さ、父親を殺されたっていうそいつのこと、最後はどうなったんだ?」 「ん? ああ……」 才人は我に返ると、ウルトラマンメビウスとゾアムルチの戦い。そしてメイツ星人の その後のことを話そうとした。 しかしそのとき、突然部屋のドアがノックされて鍵を開けると、そこには才人もよく見知った つるっぱげ頭の教師が杖をついて立っていた。 「やあサイトくん、ちょっといいかな?」 「コルベール先生じゃないですか」 思いもよらない訪問者に、才人は授業はどうしたのかと尋ねると、コルベールは今日は 午前中は私の担当の授業はないのだと答えた。 「ミス・ヴァリエールのところや、食堂のほうにもいなかったのでここだと思いましてね。 お邪魔でしたか?」 「いいえ、こっちも暇してたところです。なあデルフ」 「まあなあ、長雨ってのは気がめいるもんだ。ちょうどいいところに来てくれたな、先生」 「おや、なにか話し声がすると思いましたら、あなたでしたか。インテリジェンスソード、ほお これだけ見事な刃ぶりのものは珍しい」 コルベールは壁に立てかけられて、カチカチとつばを鳴らしている剣を珍しそうに眺めた。 「はじめましてと言っとくか、そういえば直接話したことはなかったが、相棒の背中でけっこう 噂は聞いてたぜ。確か『炎蛇』って二つ名の火のメイジだっけな。そんでもって、授業中に いろいろと珍妙な機械を持ち出してくる変わり者って聞いてるよ」
「ほぉ、私もなかなか有名だね。このあいだ披露した、火と蒸気の力で動く愉快なヘビくんは ぜひ君にも見せたかったな」 剣に向かって楽しげに話すコルベールに、才人は苦笑してかるく肩をすくめた。この先生は 基本いい人なのだが、この世界にしては珍しく才人たちの世界でいう機械を作ることに 生きがいを感じていて、研究者気質というのか、それに没頭すると周りが見えなくなる癖がある。 「それで先生、わざわざ女子寮まで何かご用ですか?」 「おっとそうだった。サイトくん、ちょっと悪いんだが急いで手伝ってほしい仕事があってね。今、いいかな?」 「はい、ちょうど暇してたところですしいいですよ」 コルベールなら変な仕事はもってくるまいと、才人は快く了承すると雨具を取り出して部屋を出た。 「悪いなデルフ、話はまだ今度な。ルイズが帰ったら、よろしく言っといてくれ」 ドアがきしんだ音をして閉められ、鍵の閉められる音がカチリと鳴ると、デルフリンガーは 何かを考え込むように鞘の中に納まって、そのまま静かに動かなくなった。 それから数十分後、才人はコルベールが自宅にしている小屋の中でほこりに埋もれていた。 「うっ、げほっ! げほっ! 先生、こりゃいったいなんですか?」 「ん? ああ、そこにあるのは火の力を利用して自動的に動く装置の試作品、そっちのは ある村に伝わっていた古代の秘薬の製造法の写しだよ」 コルベールは粉塵にまみれて咳き込んでいる才人に得意げに説明した。 周りには、木でできた棚に様々な色の薬品のビンやら試験管やらが雑然と並んでおり、 ほかにも古びた本がぎっしりとつまった本棚や、才人からみたらわけのわからない ガラクタとしか思えないものが詰まった木の箱がいくつもおいてあり、それこそ足の 踏み場もない。 「先生、発明好きもけっこうですけれど、少しは部屋を整理してくださいよ」 「いやあ面目ない。男の一人やもめというのは不精になりがちでね。でも、明日までに なんとかしないと、私のせっかくの研究成果が全部捨てられてしまうんだ」 才人がコルベールから頼まれた仕事というのは、ずばり部屋の掃除であった。コルベールは 一般の教師とは違って、本塔と火の塔のあいだに掘っ立て小屋を建てて、そこを自宅兼 研究所としている。でも、最近異臭と騒音に続いてコルベールが夏期休暇のあいだに あちこちから集めてきたらしいガラクタでゴミ屋敷の体までなしてきたので、教師ということで 大目に見てきた学院側からも、とうとう改善命令が来たのだそうだ。 「まあ、掃除はルイズので慣れてますからいいけど、この臭いは……目と鼻につくなあ」 「なあに、臭いはすぐになれる。しかし、ご婦人方には慣れるということがないらしく、 このとおり私はまだ独身である」 聞かれもしないことまでコルベールはつぶやきながら、足元の木箱の中から、これはいる、 これはいらないとガラクタを振り分けていく。 「やれやれ」 才人は嘆息したものの、普段から世話になっているコルベールの一大事であるのでと 割り切って、気合を入れなおすとほこりとガラクタの山に向かっていった。 そしてそれから数時間、正午を過ぎるころになってようやくと部屋の半分ほどが片付いた。 「ふぃー、疲れた」 「ご苦労様、これだけ片付ければとりあえずはいいだろう。私はこれから午後の授業の 準備をせねばならんから、君も休んでいたまえ。三・四時間ほどしたら戻るから、後は一気に 片付けてしまおう」 そう言うとコルベールは雨具を着込んで外に出て行った。
才人は、腹も減ったことだし食堂で残り物でももらおうかと考えたが、疲れてすぐに 動くのがいやだったので、コルベールが使っている質素なベッドにごろりと横になった。 「一〇分ほど休んだら、メシを食いに、行く……か」 そう思って目を閉じたとたん、疲れからか強烈な眠気に襲われて、才人は深い眠りに落ちていった。 外に降る雨はなおも勢いを衰えさせず、屋根や窓ガラスに叩きつけられる雨粒は、小屋の中に 規則正しい音響となって流れていく。 やがて何時間か過ぎたころであろうか……ふと目を覚ました才人は、うすぼんやりした意識の中で 壁にかけられた仕掛け時計の針を目の当たりにして飛び起きた。 「いっけね! 寝すぎた」 見るとたっぷりと一時間半は過ぎてしまっている。才人は慌ててベッドから飛び降りて、 雨具に手を伸ばした。しかし、扉に手をかけようとしたところで、今の時間ではもう残り物も 処分されていると思い当たると、大きくため息をついて、コルベールの研究机の椅子に 腰を預けた。 「失敗したなあ……」 寝過ごしてメシを逃すとは不覚。こんなことならさっさと食べにいっておけばよかったと 才人は悔やんだが、もはや後の祭りだった。 「しょうがない、せめて水っ腹でごまかすしかないか」 やむを得ず妥協した才人は、片付けの最中に見つけたコルベールのティーセットを 取り出すと、戸棚の中から茶葉を取り出してお湯を沸かし始めた。 しばらくすると、アルコールランプで温められたやかんから湯気が漏れ始め、ティーポットに すくって入れた茶葉から緑茶とよく似たよい香りがただよってくる。 「この匂いも懐かしいな」 ハルケギニアではお茶は高級品にはいるが、コルベールは研究のときの眠気覚ましとして 利用していたらしい。勝手に飲んで悪い気もしたけれど、これくらいはお駄賃としてもいいだろう。 いい具合に沸騰したやかんを火からおろし、ティーポットにお湯をつぐと、悪臭がたちこめていた 小屋の中を、芳醇な香りが塗り替えていった。 「それじゃ、いただきますか」 充分に色が出たことを確認した才人は、いよいよカップにお茶をそそごうとティーポッドを 手に取った。だが、その直前に小屋の扉をトントンとノックする音が響いて、びっくりした 才人は思わずティーポットを落としてしまいそうになった。 「やべっ! 先生帰ってきたか」 盗み飲みしようとしていたのがバレると、才人は半分パニックになって、足りない頭で 隠ぺい工作をしようとティーポットの隠し場所を探した。けど、相手がいつまで経っても 中に入ってこないことに、ふといぶかしさを覚えて冷静に戻った。 おかしいな、先生だったら自分の家なのだから普通に入ってくるはずだ。ならルイズか 誰かか? いや、おれの知り合いにご丁寧にノックして返事が返ってくるのを待つようなのはいない。 尋ねてくる人間に心当たりがなかったので才人が考え込んでいると、また同じように ドアがノックされたので、とりあえず才人は出てみようとドアを開けてみた。 「はい、今開けますよ」
支援
ドアを開けたとたんに、外から風雨が飛び込んできて入り口付近と才人のズボンのすそを濡らした。 けれど、そこに立っていた人物を見て、才人は立ち尽くしたまま首をかしげた。 「あの……どちらさまでしょうか?」 相手は才人と同じくらいの背格好だが、全身にボロボロのローブのような布を羽織っていて、 顔はおろか服装すらまったくわからない。まるで街角で物乞いをするこじきのようだ。 もちろん才人にはこじきに知り合いはいなかったので、「コルベール先生にご用事ですか?」と、 できるだけ礼儀正しく尋ねた。 しかし、相手はゆっくりと首を振ると、やがてぽつりとつぶやいた。 「サイト」 「えっ!?」 才人が驚いたのは突然自分の名前を呼ばれたからではなかった。その相手の声が、 よく聞き知っている……ここで聞けるはずのない人のものだったからだ。 「ま、まさか!」 才人の心に、信じられないというのと同時に期待が湧いてくる。 そして、フードをまくって現れた、短く刈りそろえた淡く青い髪と、同じ色の瞳を持つ顔を見て、 才人は自分の予測が正しかったことを知って喜色を浮かべた。 「ミシェルさん!」 はたしてそこに立っていたのは、アルビオンで別れて以来、ずっと才人が安否を気遣ってきた その人に間違いはなかった。 だが、才人は喉の先まで出掛かっていた再会の喜びの言葉を飲み込んだ。 「どうしたんですか!? ずぶ濡れじゃないですか」 気づいたのだ、今彼女が身につけているものは粗末なぼろだけで、雨具すら着込んでいないこと。 それに……雨粒を受けて水を滴らせる彼女の顔には、アルビオンで最後に見たときの笑顔が 微塵も残っていないことを。 ミシェルは何も答えずに、ただじっと感情のこもっていない瞳で才人を見つめてくる。 「と、ともかくそんなところにいたんじゃ風邪ひいちゃいますよ。えと、とりあえず中にどうぞ」 才人がうながすと、ミシェルは小さくうなずいて小屋の中に入ってきた。 閉じられた扉にまた雨粒が当たり、激しく音を立てて跳ね返る。 魔法学院に降る雨はさらに勢いを増し、嵐の様相を見せてきた。 一方そのころ……トリステインをむしばもうとする勢力もまた、新たな一手を進めていた。 同じく雨の降りしきるトリスタニアの街の一角にある、チェルノボーグの監獄。 国中から、特に凶悪犯や政治犯などが集められる、この地上に現出した冥府ともいえる暗黒の 牢獄の、さらに深部の死刑囚用の独房に、一人の男が拘禁されていた。 「さて……今日で、何日目になるんだっけかな」 窓の一つもなく、一本のろうそくの灯りでかろうじてシルエットくらいはわかる、そのカビと ネズミの臭いで満たされた狭苦しい牢獄の中で、手足を赤さびた鎖でつながれてその男はいた。 顔は、垢と無精ひげにまみれて見る影もなく、以前の彼を知るものがこれを見たとしたら、 その凋落ぶりをあざけるとともに、憎むべき裏切り者とののしっただろう。 元トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、 自分の国を裏切って薄汚い暗殺に自ら手を染め、あげくの果てに侵略者に操られた道化と 成り果てた男の、これが報いだった。 だが、眼光だけはまだ死んではおらず、その視線の行く先は牢獄の石壁を超えて、はるかに 見果てぬ先を幻視していた。
「いつか……聖地へ」 この牢獄に入れられた時点で死刑が確定しているというのに、ワルドはときたま神への 祈りの言葉のように、その単語を繰り返しつぶやき、生きていることを自分自身に確認 させるようにからからに乾いた唇を動かしていた。が、あるとき、ふとおかしな気配を感じて 視線を流すと、そこにはいつの間にか見慣れぬ人影が立ってこちらを見下ろしていた。 「誰だ……?」 看守ではないことはわかるが、元々部屋が薄暗く、しかも逆行になっていて相手の顔は 真っ黒くしか見えない。ならばいよいよ死刑執行人がやってきたのかと身構えたら、 その相手は思いもよらないことを言ってきた。 「聖地に、行きたいかね?」 「なに……!?」 突然切り出された言葉に、思わずワルドが反応すると、相手は自分は敵ではないと示すように、 両手をひらひらとして、素手であることを教えて見せた。 「ふふふ……ワルド元グリフォン隊隊長……かつてはトリステイン最高の騎士とまでうたわれた 勇者が、ずいぶんとみじめになったものだな」 「自分の才覚にうぬぼれて、世界がなんでも思うとおりに動かせると錯覚した男の、これが末路さ。 誰かは知らないが、なかなか面白い見世物だろう?」 いまさら自分のかっこうを取り繕う気はないのできっぱりと言ってやったら、相手は面白かったのか 乾いた笑いを漏らした。 「ふはは、おやおや思ったよりも謙虚ではないか」 「多少は、反省というものはしているのでね」 「よい心がけだ。しかし、このままでは君は明日にでも斬首だ。それではその反省とやらも 役に立つまい。どうだね? 我々に協力するというのならば、その暁には聖地でも世界の果てでも 行けるようにしてあげようではないか」 「ふん。いまさらレコン・キスタの再建か? 張子の虎の担ぎ手はごめんだね」 「いいや、我々の後ろ盾はレコン・キスタなどとは比較にもならん。それに、我々は革命を 起こそうなどというまどろっこしいやり方はとらん。まずは手始めにアンリエッタを廃し、 トリステインを我が物とする」 ワルドは内心で嘆息した。目の前のこいつはアンリエッタに恨みを持つ不平貴族だろうが、 あまりにも無謀な計画だ。出してくれるのはありがたいけれど、そんなものに加担したところで、 処刑されるのが明日から三日後に変わったとしてもあまり意味はない。 「いったいあなた様はどこの大貴族さまだい? 王権に反逆するなど、アルビオンのバカどもの 最期を知らないのかね」 「ふふ、あいにくと私は奴らとは違う類の立場の人間でね。今名乗ってもいいが、まだ知らない ほうが、君もいろいろと興味が湧いてくるだろう」 「ちっ、もったいぶるやつだ。いったい、どのような大義名分があると?」 「大義名分? ふふ、君ともあろうものが、そんなものは後付でいくらでも作れることくらい 承知していよう。この国には、アンリエッタのおかげで閑職にまわされ、腐っている貴族が 大勢いる。それらが共謀すれば、生み出せない濡れ衣などないよ」 確かにそうだとワルドは思ったが、その反面アンリエッタには、下級貴族や平民から取り立てられ、 彼女に忠誠を誓った味方も数多いし、大多数の国民はアンリエッタに味方するだろう。そのため 不平貴族が共謀したところで数では圧倒的に負けている。なにより力といえばアンリエッタには、 絶対的なジョーカーが存在しているのだ。
「子供の空想だな。一国を相手取るにしては戦力が足りなさ過ぎる。それに、仮にアンリエッタを 捕縛なり殺害なりできたとして、『烈風』はどうする? あいつがいる限り、反乱軍は即座に 皆殺しにあって、それで終わりだ」 「はっはっはっ! そう言うと思ったよ。だが、我々の後ろ盾は一国を相手取るにふさわしい 強大さを持っている。それに、我々にはあの『烈風』に対抗するだけの力もある。これを聞けば 君も心変わりをするだろう。教えてあげるよ」 男は嬉々として反乱計画の概要を語り、それが進むに連れて、ワルドの顔に驚愕と歓喜の 笑みが満ち満ちてきた。 「なんと、俺が投獄されているあいだにそこまで……面白い。俺の考えていたよりは世界は 広かったということか」 「どうかね? 我々に協力してくれる気になったかね」 「いいだろう。このまま処刑台の露と消えるよりかは賭けてみる価値はありそうだ。お前たちに 協力しよう」 男はワルドの口から望んでいた回答を得ると、袖口から牢獄の鍵を取り出して、鉄格子の鍵を 開けて牢内に立ち入ってきた。すると、これまで逆光で見えなかった男の顔がぼんやりとだが 視認できるようになり、それが自分もよく知るトリステインの要人だとわかると、口元をゆがめた。 「そうか、まだあなたがこの国にはいましたね。確かにあなたなら、不平貴族を糾合し、 国法を利用して王権を弾劾することができる」 「長く表に出ず、雌伏のときを送ってきたが、さすがにあのぼんくら王女もそろそろ私を排除 しようと動き出したのでな。こちらに手袋を投げてくるなら迎え撃つまでというわけだ」 ワルドは数えるのも飽きてしまったほど長い時間自由を奪ってきた鉄枷が床に落ちると、 足の感覚を取り戻すかのようによろめきながら立ち上がった。 「で、私になにをしろと?」 「なに、私の首を狙ってドブネズミが這い回っていてね。無視してもよいのだがなにかと目障りだ。 とりあえずは、勘を取り戻すつもりでそやつらを始末してほしいのだ」 そういって、男はワルドに彼の杖を手渡すと、やがて牢内に雷鳴がとどろくような音が響き渡り、 牢の扉が閉まった音を最後に静寂が戻った。 後には、溶けたろうそくのように溶解した鉄枷が二つ、薄く煙を上げて残されていた。 続く
以上で、次回に続きます。
>>223 の方、支援ありがとうございました。やっぱり誰かに支援していただけるというのはうれしかったです。
今回は少々重苦しい話になりましたがいかがでしたでしょうか。
今回作中で引用しましたムルチとメイツ星人の話、「怪獣使いと少年」のお話は、ご存知の
方はすぐわかるでしょうけれど、いまさらわたしが申し上げる必要もないくらい悲しく、
そして様々なことを考えさせられる話でした。
この話が当時の人々に残した影響は、35年も経った後に続編が作られることからも明らかでしょう。
今回からは、原作でいえばトリスタニアの休日編にあたりますが、ご覧の通り内容は大幅に
変更してあります。もちろん、配役を変えただけではありませんので、それぞれの人たちが
どう考え、どう行動していくのか、これから新しい物語を彼らと共に作っていこうと思います。
ウルトラの人乙でした
ウルトラの人乙
13話ってもっと話数があったような気がするんだが 他作品だったか
ウルトラの人、今回も乙でした。 「ウルトラシリーズ史上最大の問題作」といわれるあの話が出てくるとは思わなかっただけに驚きました。 そして、まさかのワルド復活!? この後どんな展開になるのか次回も楽しみです。
232 :
名無しさん@お腹いっぱい :2010/09/12(日) 20:08:39 ID:0TPvQJ2j
ウルトラの人、乙でした。 昔、再放送で見たメイツ星人の回は 今思い出しても、胸が悪くなりますね。 ミシェルさん、再登場。 サイトによって、心が救われると良いですね。
本当に気分が悪くなる話だが、同時に目を背けてはいけない話でもあるところが なんとも複雑 じぶんも、メイツ星人や少年をいじめる側には絶対にならないかと聞かれたら・・・
ウルトラマンメビウスの小説版で「怪獣使いと少年」の後日談がありますよー。 ハードカバーなんでお高いですけど、他の収録作品も合わせていい本です。
遅くなりましたがウルトラの人、乙です。
相変わらず先が気になる展開ですね。
これからも楽しみにしてます。
>>230 第1部が99話で完結
これは第2部の13話
冒頭のモノローグはメビウスつながりですか。 たまにはこういうエピソードもいいですね。
すみません。一本お話があるのですが、投下させていただいてもよろしいでしょうか。
いいんじゃないかな
お返事ありがとうございます。それでは、次のレスから投稿させていただきます。 召喚されたのは、つげ義春の『李さん一家』の李さん一家です。
240 :
リさん一家 :2010/09/12(日) 23:03:05 ID:lTOA2kSm
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ル・ブランの西のはずれにある持ち主のいない地所を召し上げて住むことにしたのは、もう自分の将来に見切り をつけたためである。 かつてヴァリエール領の死刑執行人の一族が住んでいた屋敷は、陸の孤島と言っていいほど近隣の地所から離れており、しかも近くの湖から風が吹いているせいか、領 内では珍しく湿気の多い土地柄ゆえに生い茂った森に四方を囲まれ、一本の道だけで森の外とつながっている。生い茂った森と言っても木々がみっちり立て込んでいるわ けでないので、その間を十分散策できるというのも気に入って、トリステイン学院を去った後、家族のお荷物にならずにあと三、四十年、せいぜい五十年の楽隠居の生活を 送るため、早めの終の棲家として移り住むことにした。 森の裏手は、公爵家の初代がラ・ヴァリエールの地を拝領する以前から石柱が並んでいる広場があり、ちょっとした観光名所になっている。そこを訪れる観光客のざわめ きが森を通り抜けてくるのを聞きながら、それに背を向けて庭で読書をするなり、お茶を飲むなりして日々を無為に過ごすことに、世俗を無視する世捨て人の倒錯した優越 感を感じるのが、今のルイズの生き方である。時々、かつて同じ教室に机を並べていた友人のキュルケ・フレデリカ・アウグスタ・フォン・ツェルプストーが訪ねてきては、なん とか引っ張り出そうと、最初の二年ほどはしていたが、これがルイズの決めたヴァリエールの一員としての生き方だということを納得してからは、ゲルマニアで世俗の栄達に 邁進する貴族として、世捨て人を訪問してからかいつつも、隠者の助言を求めるという関係に変わっている。 森を越えてくるのは声だけではなく、ついでも森を散歩したくなった旅行者が、うっかり地所の中に入ってくることがままあり、そのような旅行者と言葉を交わしたり、場合に よってはお茶に誘ったりするのも楽しみの一つである。そのようなことはルイズにとって、学院にいた時には考えられなかったことだが、今となっては、なぜあんなにピリピリ していたのか、そちらの方がむしろ理解できない。タバサが森を抜けて庭に迷い込んできた時も、ルイズはつくづくそう思ったものだ。いつも本ばかり読んでいて何を考えて いるか分からないのにキュルケとだけは仲が良かったタバサは、座学は完璧にしようと思って必死の努力を重ねていたルイズにとって、年下であるにもかかわらずトライア ングルクラスの実技の実力を持ち合わせながら、知識でも追い立ててくる目の上のたんこぶだったが、今にして思えば一緒に勉強すればさらにお互いの力を伸ばすことが できたはず。そう考えると以前の自分はつくづく損をしていたとルイズは思う。 「えっと、あまり話したことなかったけど、わたしのこと覚えてる?」 「ええ。久しぶりね、ルイズ」 「その・・・タバサ、って呼んでいい?」 学院を去った後、ガリアで起きた政変で、彼女の立場が激変したことは、隠遁しているルイズの耳にも入ってきていた。 「ええ。学院で知り合った人たちにとっては私はタバサだから。キュルケもいまだにそう呼んでいるもの。気にしなくていいわ」 「ありがとう。時間があったら、お茶、飲んでかない?」 「お言葉に甘えさせてもらうわ」 そう答えるとタバサは、連れてきていたメイドと衛士に声を掛ける。メイドは「はい、陛下」と言い、椅子を引いてタバサに掛けさせ、ルイズとタバサ二人の給仕をする。衛士 は、タバサのそばに控えながら談笑する主人と主人の友人を見守った。 「キュルケから聞いていたけど、本当に召使も置いてないのね」 「そうよ。だからできることは自分でしているの。使い魔も一緒だけど、召使と言うよりは一種の変わった間借り人よね」 噂をすれば影が差す。その使い魔がタバサと同じく森を抜けて帰ってきた。 ルイズが引き籠もることを決意したのは、サモン・サーヴァントで平民を呼び出してしまったことが直接のきっかけである。メイジの実力を見るには使い魔を見ろと言われて いるこのメイジ社会のハルケギニアで、魔法を使えない、魔法の系統を象徴するとも考えられない人間の平民を召喚したということが他の貴族にどう映るか、どんな反応が 返ってくるか、そして自分が、言わばサモン・サーヴァントでハルケギニアに強制連行あるいはら致されたに彼らを、人生の障害として憎むようになるのではないか、それら の考えから、ルイズは貴族社会を離れる決心をした。 「リさん、おかえり」 「ただいま帰ったのです」
241 :
リさん一家 :2010/09/12(日) 23:07:48 ID:lTOA2kSm
使い魔は名前を尋ねた時、リと名乗った。その時は呼び捨てにしていたが、学院を辞め、貴族を捨てたつもりで若隠居するとなると関係も変わってくる。もうメイジとして生 きるのはあきらめたのだから、使い魔ではない。使用人を置くつもりもなかった。だから、ルイズは彼を友人として遇し、自身よりだいぶ年上なのでリさんと呼んでいる。 リさんは、本人言うところの「ギャング時代のカポネのようなスーツ」という服を着ている。上はズボンのポケットに丸めて突っ込んであるものだから、そこがひどく膨らんでい る。そんな姿で森の中を散策するのがこの使い魔の日課である。 「お客さまだったのですか」 リさんは、タバサに気づき少しかしこまったポーズをとる。 「そうよ。紹介するわ。学院で同窓だったタバサ。本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン、ガリア女王陛下よ。でも学院ではタバサと名乗っていたから、今でもタバサと呼 んでいるの」 「ええ。初めまして、リさん。お噂は伺っています。私のことはタバサと呼んでくださって結構ですよ」 「初めまして、女王陛下。リと申します。ルイズ様の使い魔であるのです」 「森の中で何をなさっておいででしたの?」 そこまではタバサはルイズから聞いたことがなかった。それゆえの質問である。 「鳥と話していたのです」 なぜ鳥と話ができるようになったのかということは、リさんにも分からないとルイズは聞いている。鳥の話を聞いているうちに、なんとなく話が通じそうな気になって、話しかけ たところ通じたのだと言う。学院の教師の一人、コルベール先生は彼の右手に現れたルーンの意味を教えてくれなかったが、感覚の共有も、秘薬の材料の採集もできない この使い魔に可能な唯一の特殊技能と関係あるのかもしれない。 「あら、鳥とどんなことを話してらっしゃるの?」 学院にいたころと大いに変わったのはルイズだけではない。タバサも、女王としての決して平坦ではない、女王になるまでとは種類の違う苦労の多い道のりを経て、見違え るほど社交性を身に着けていた。 「鳥というものは頭がよくないので、天気と食べ物の話しかしないのです」 ちょうど庭に下りて来た雀たちがいたので、リさんはチチチチチチチと声をかけた。すると雀たちもチュンチュンチュンチュンチュンチュンと応じる。 「今日は晴れているから羽が濡れなくて済むと言っているのです」 「じゃ、よかったわね、とお伝えくださる?」 タバサは、リさんを通訳として鳥と話してみるつもりになっていた。リさんはチチチチチと雀に声をかけ、雀はチュンチュンチュンチュンチュンチュンと返す。 「明日も晴れるとエサが取りやすいと言っているのです」 「かみ合ってないわね」 とルイズが突っ込んだ。その間タバサははるか上空を旋回している、地上の人間の目では点にしか見えない自分の使い魔に心で呼び掛けた。 (シルフィード、今の聞こえてた?) (きゅい。聞こえてたのね。「大いなる意志」が作り上げた自然の生きものの言語で話していたのね。そのおじさん、嘘ついてないのね) (そう) (ただ鳥は頭がよくないと言っているけど、それは間違いなのね。鳥にとって必要で重大なことを話しているだけなのね。人間が色々考え過ぎるのね) その日、タバサとルイズは、庭に訪れる鳥の話と、かみ合わない会話を楽しみながら旧交を温めた。
しえn
243 :
リさん一家 :2010/09/12(日) 23:13:05 ID:lTOA2kSm
召喚したのはリさん当人だけではなく、運よくと言うか折悪しくと言うか、一緒にいた家族も全員こちらに引き込んでしまっていた。リさんの妻と子ども二人である。 リさんの奥さんは目鼻立ちのはっきりとしたショートカットの美人で、スタイルもなかなか肉づきのよい女性である。コントラクト・サーヴァントを直接交わしていないにもかかわらず、 彼女の右手にもリさんのと同じルーンがなぜか存在している。リさんによると故郷では海女をしていたとのことで、実際地所の近くの湖で、素潜りをして魚をとってきている。淡水と海水の浮力の違いに最初は苦労したが、 魚が目が合うと寄ってきて、そのまま大人しく捕まってくれるのが不思議だと、ルイズはリさんから聞いている。 リさん一家とルイズは食卓を共にしており、リさんの奥さんが獲ってきた魚もそこに並ぶ。リさんと奥さんの子どもたちは、最初ほとんど口を聞かず、笑ったり怒ったりと言った感情も見せず、 子どもらしい遊びも何一つするではなかったが、ルイズがいろいろとかまっているうちに少しずつ反応が返ってくるようになった。当初は発育不良に見えたが、隠棲先を見つける前に いったんド・ラ・ヴァリエールの本邸に戻ったルイズに当然ついてきている二人を見たルイズの母も姉たちも一様に心配し、あれを食べろこれを食べろと世話を焼き、ル・ブランのはずれに 隠居所を見出した時には、ヴァリエール家の厨房から食材をまわそうか、料理人も派遣しようかと言ってきた。ルイズも、思うように育たない体にいらだちを覚えた経験があるので、 あまり意地を張らず、焼いてくれる世話は素直に受け入れた。学院を辞めたばかりのルイズは、自分の意志で退学してきたと言え、傷ついたプライドも抱えていたので、 自分が無力な分野の存在を指摘するような発言には強く反発しても不思議はなかったが、自分の体のことじゃないからと素直になる努力をできたことが、思えばルイズが大人になる上で大きな一歩だったのかもしれない。 母親によく似た上の女の子も、姉のお下がりを着ているので最初のうちはこれも女の子かと思っていた下の男の子も、年相応に健康な成長を見せてくれている。この二人はなぜかギーシュとマリコルヌがお気に入りで、 二人が来ると大喜びで寄っていく。ギーシュは相変わらずドットクラスで青銅のワルキューレを作っているが、ただその数が今では二十体を越え、しかも動きが人間並みに精密になってきている。 一芸に秀でることの恐ろしさを思い知らされるが、子どもたちにはもっとかわいらしいものを錬金で見せてあげている。最近ではギーシュとモンモランシーの間に生まれた赤ちゃんが来るのが一番の娯楽らしい。 マリコルヌもよく遊びに来る。純粋に自分に走り寄り、お気に入りの自分より大きなぬいぐるみに対するように跳び付かれ、お気に入りの丸々した着ぐるみを愛でるような眼差しで見られるのがたまらないらしい。 「大きくなったらマルちゃんのお嫁さんになる!」と上の女の子に言われた時には、嫌にさわやかな笑みを浮かべて「大きくなる前でもオッケーさ」と言い放ったものだ。 ルイズは子ども二人とマリコルヌだけにならないよう、常に警戒している。ともあれ、彼らはルイズの侘び住まい(と言っても屋敷ではあるが)の二階に一家で暮らしている。 ルイズはそろそろ二人を学校に通わせようかとすら考えている。
244 :
リさん一家 :2010/09/12(日) 23:15:46 ID:lTOA2kSm
ルイズがアンリエッタ女王の使者として内々のうちにロマリアに派遣され、珍しく屋敷を離れている間のこと、ある日、リさんは、厚さが一様でないので料理を作ると焼きムラが出てしまう不良品の大鍋が捨てられそうになったのを貰ってきた。 それに水を張り、下から火を焚くと五右衛門風呂だ。帰って来たルイズが辻馬車から駆け降りて森の中の一本道を走り抜け、庭に駆け込み屋敷に上がり、二階に駆け上がり二階から駆け下り、屋敷から裏庭に駆け出てそれを見つけた時には、 奥さんが鍋に入り、リさんが下から火を焚いていた。 「ここにいたの!・・・・・・何してるの?」 うちわを持ったままリさんが答える。 「故郷の風呂なのです」 ルイズは足を火傷しないのかと心配になったが、 「底に板を渡してあります」 とのことだった。 「女房は故郷では海女をしていたのです」 そして、リさんは奥さんの素潜りの腕前を見せてやろうと言い、奥さんをお湯の中に潜らせた。 「五分くらいは平気で潜っているのです」 「ふ〜ん・・・・・・それどころじゃなかった! リさん! あんたたち、帰れるわよ!」 「帰れるとはなんのことですか?」 「ロマリアで教皇聖下にお会いしたのよ! そうしたら教皇聖下は失われた系統である虚無の使い手で、世界扉(ワールドドア)っていう魔法が使えるのよ。 見せてもらってけど今まで見たことのない街が扉の向こうにあったわ。精神力を蓄える必要があるけど、リさんたち、そこを通って元いたところに帰れるのよ!」 「ルイズ様は私たちを帰したいのですか?」 「えっ?」 「私たちが邪魔なのですか?」 「そういうわけじゃないけど・・・・・いや、あなたたちは私がサモン・サーヴァントで無理やりこっちに呼び寄せたんだから、 人として元の世界に帰してあげないといけないんじゃないかと・・・・・・リさん、こっちで幸せ?」 「子どもたちはずいぶん明るく、健康になったのです」 「・・・・・・じゃ、元いたところじゃ?」 その時、奥さんがお湯の上に顔を出すなり、グンニャリと伸びてしまった。 「大変、大変、おぼれてしまったのです」 リさんとルイズは、あわてて奥さんを鍋から引き上げようとするが、奥さんは前に記したように肉づきのいい体格なものだからなかなか引っ張り出せない。 「何をぼやぼやしているのです」 とリさんはルイズを叱咤する。やっとこさ引っ張り出して屋敷に運んだが、ルイズは途中で躓いてしまい、奥さんの裸の両太ももにぼてっと挟まれたりした。 ルイズの人生に入り込んで来たこの一家がその後どうしたかと言うと まだ二階にいるのです。
以上までです。改行が変になったことをお詫びします。機会を下さりありがとうございました。
追伸。支援ありがとうございました。
乙乙
亀だけどウルトラの人超乙です! 荒らしもいないし投下もあるしでスレがやっと正常化したな!!
ル・ブランは家名ではあるまいかな ラ・ヴァリエール領の西の外れ、のほうが
モーリスルブラン
とくに何がおこるわけでもない幸せなルイズって新鮮だな 乙
メイツ星人も可哀そうだとは思うが あれは、メイツ星人自身にも責任が無いわけじゃないからな 不法入国、理解不能な武器の所持、使用 地域住人の理解を得るための活動を一切しない 自分が管理している怪獣の危険性を一切説明しない いっちゃあ悪いが、スパイ行為や破壊活動の意思があったと思われてもしょうがない 相互理解には、お互いの努力と時間が必要だってことを考慮せず 地球人側の責任ばかりを問うのはどうかと 強いて言うならば、MAT隊員としての責任として、メイツ星人の隔離、保護、 もしくは地域住人に事情を説明して安全を保障する等の、行動をとらなかった 郷隊員の責任になると思うが 彼は、自分自身が、地球人にとって例外中の例外の存在であるウルトラマンであったため 無意識の内に、地球人の厚意に甘えて、危機管理を怠ってしまったんだろう
>>253 メビウスの時代ならそれも可能だろうけど。
あの時代背景じゃ無理ゲー以外の何者でもないと思われ。
お久しぶりです。魔砲の人です。 少し短いですが、第32話 幕間 投下します。 本当はこの次予定の話と一繋がりだったんですけど、あまりにも内容が隔絶しすぎているので別の話にしました。 なお、今回は構成の都合上、ゼロ魔二次にもかかわらずゼロ魔側が全く出てこなくなってしまいました。 かといって本編にも密接に繋がっているので番外にも出来ず、このタイトルになりました。 続きの内容はほぼ出来ていて純粋に執筆時間が取れるかどうかの問題ですので、後半部に当たる33話『懺悔』は短めですが早めにお届けしたいと思います。 今回も仕事の関係で臨時に仕事が空いたので執筆できたという有様でして、このままだと続きがいつ出せるかという状況になりかねなかったので。 そんな状況ですので34話以降はまた少し間が空いてしまうかもしれませんが、しばしお待ちください。 日勤と夜勤の繋がりの関係で、平時休みが全くないに近くなっていますので。一応週1の休みはあるんですけど夜勤明けから日勤に繋がるんで休んだ気がしないんですよね。
第32話 幕間 次元空間に浮かぶL級巡航艦アースラ。 現在は状況の変化に備えて待機するのが任務となっているため、激務と言われる『海』の仕事の中でも巡航中と並んで確実に休暇の取れる日々が続いている。 先ほど定時連絡が届いたため、私信を受け取った待機中の要員は、皆私室で家族からの手紙に涙していることだろう。 危険度は低いが機密性が微妙でかつ任務が長期にわたると、こういう状態になりやすい。 特に今回は直接通信が阻害されているため連絡が往復するのにちょうど一週間ほどかかるので、オンライン時代からはあまり考えられない状態が出現している。 かくいうクロノ=ハラオウン提督も、個室内で部下には見せられない緩んだ顔で妻と子供達の顔を想像しながら自分宛の私信ファイルを開いていた。 何せ海の提督ともなると長期に家を空けることもしょっちゅうであり、元同僚で理解ある妻はともかく、子供達が父親の顔を忘れると言うことになりかねない。 なのできまじめな彼は今回のような状況ではなくてもこまめにビデオレターを出していたりする。そのほうが子供達には印象的になると思って。 これが実は、かつてとある事件で増えた義理の妹がその親友達とやっていたことを参考にしているのはクロノと妻だけの秘密である。 それはさておき。当然届いていた妻からのメールと、公のものにするほどではない部下からの報告に混じって、少し意外な名前が一覧の中にあった。 ユーノ=スクライア。 彼とは親しい友人であるが、今の彼との関わりはむしろ公的なもので、私信を送ってくる理由が考えられない。直接会える環境ならともかく、今のような状態の時には、むしろ私信は遠慮するタイプの人物だ。 しかもファイルの容量が妙に大きい。まるで山ほどの資料をパッキングしてあるみたいだ。 何か、ある。 そう思ったクロノは、妻からのメールより先にこちらを開くことを優先した。もっとも彼は楽しみは後に取っておくタイプで、妻からのメールを見るのもいつも最後だから別段特別なことではなかったりする。 そうしてメールを開こうとしたと見ろ、機密解除のパスワードを要求された。しかもこれは第一級機密、提督個人にしか閲覧が許可されない指定になっていた。 確かにユーノならこれを掛ける権限を持っている。彼は無限書庫の司書長だ。 無限書庫は意外に機密性の高い部署である。内容そのものはともかく、執務官が事件の手がかりを求めて協力を要請するのは日常茶飯事であり、その過程でどうしても司書は機密性の高い情報に触れてしまう。 そしてユーノは本人が最上位の腕を持つ司書であり、かつあまたの司書を統括する司書長なのである。無限書庫から禁断の情報を引き出したことも山ほどある。人体改造法の詳細を記載した研究書など、枚挙にいとまがない。 それゆえユーノは、このような特定個人のみに開封を許可するための機密指定コードをほぼ自由に扱い得る立場にある。だが彼は決して公私混同をする性格ではない。ましてや機密コードでエロ本を送るようないたずらも決してしない。 となれば、このファイルにはそれだけのものがある。そうクロノは判断し、提督の個人私室であるというのに、盗聴器を初めとする情報漏洩対策を再確認した後、さらに個人で結界を張った。 そうしてファイルを開いたクロノは、何故彼がわざわざ機密指定を厳しくしたのかを理解した。 「……これは確かに、はやてやフェイトには見せられんな」
内容そのものは実のところそう機密性の高いものではなかった。だがこの事実を今の段階では知られたくない人物が艦内には2名ほど存在していた。 一人は提督副官であり、この艦内では提督、艦長に続いて3番目に位の高い人物で、かつクロノに何かあった時にはその代行となる人物である。それゆえ公的にこれが送られてきた場合、彼女には提督と一緒に内容を確認する義務が生じる。 もう1名は彼の妹であり、女性の身で彼の私室に入ってきても何らおとがめのない人物である。不調法はしない人物ではあるが、万一これを見られたら取り返しが付かない人物であり、かつ何故かそういう不幸な場所に居合わせそうな巡り合わせの悪さもある人物でもある。 資料の内容は、前回送ってきた『ハルケギニア』と『聖王遺産』の関わりに関する追加報告であった。 −−− クロノ、こんな手紙をもらって驚いていると思うけど、これから先のことは心して読んでほしい。 あれからの追跡調査で、目的の人工惑星『ハルケギニア』が、かつてアルハザード文明の手によって作られ、古代ベルカの初代聖王が受け継いだことはほぼ間違いがない。 元々ベルカの初代聖王は聖王教会が信仰しているように、王としての側面に加えて、宗教的な『奇跡』の逸話が多い。これに関して、研究者の間では初代聖王が、滅びたアルハザードの『遺産』を受け継いだというのは定説に近い。 一つには歴代聖王の纏う『聖王の鎧』、七色の魔力光がある。かつてのアルハザード文明において有力者だったと目される一族も、また聖王と同じ『七色を纏うもの』と表されているしね。 実際、聖王遺産を初めとして、現在発見・確認されているロストロギアの中には、『使用に七色の魔力光による認証』が必要なものが意外に多い。聖王のクローンたるヴィヴィオが作られたのも、ゆりかごを起動させるための『鍵の聖王』としてであったし。 詳細は不明だし、追跡調査中でもあるけど、初代聖王の時代には、ベルカを国として成立させるだけの様々な『奇跡』を行えるだけのロストロギアが存在していたのもほぼ確実だといえる。 『人工惑星ハルケギニア』も、そういったものの中の一つだったみたいだ。ただ、記録によると初代聖王は存在の確認はしたもののそれ以降アクセスした様子は無いらしい。 彼の手にした遺産には、その人工惑星を建造するために使われた技術そのものがまだ残っていたから、わざわざそこまで行くのが手間だったらしいね。 もっともそのおかげで、その人工惑星には初代聖王が保持していた『奇跡の技術』が、古代ベルカ滅亡後もそのまま維持されている可能性が高いというのは歴史の皮肉かもしれないけどね。 ……と、これで話が終わっていれば、こんな風にわざわざ鍵を掛けるまでもない話で終わったんだけど。 これがどうも変な方向に繋がるんだ。 ボクがこの一連の記録にたどり着いた時、この記録が過去に閲覧されていたことに気がついた。まだボクが無限書庫から情報を効率よく引き出すための検索魔法を確立していない頃だよ。 それこそ蔵書百万冊の図書館からただ一冊の本をタイトルだけを頼りにしらみつぶしに探すような苦労があったことは間違いないと思う。問題はその閲覧者の名前だ。 プレシア・テスタロッサ 確かに彼女なら不思議でもなんでもない。死んだ娘のために一時期はプロジェクトFにも関わっていたと目される彼女なら、無限書庫の閲覧を許可されても不思議じゃないし、その手段としてアルハザードに目を付けてもおかしくは無い。 でも、この『ハルケギニア』の存在があると、当時の事件の様相ががらりと変わる可能性がある。 当初プレシア女史は思い詰めた果ての狂気によってアルハザードという『妄想』に取り付かれてあの事件を起こしたとされていた。 当然だよね。次元断層を作り、虚数空間を越えた先にアルハザードがあるなんて、そんなものどう考えたって狂人の妄想に過ぎない。だけど、もし彼女が『ハルケギニア』の存在を知っていたとしたら?
聖王が信仰の対象として今も残るほどの『奇跡』を成し遂げた源泉。それが手つかずのまま残っているかもしれない『アルハザード製の人工世界』。 つまり彼女は、充分な勝算があってジュエルシードの強奪をもくろんだ可能性が俄然高くなる。 ところがそうなるとまた別の矛盾が生じてくるんだ。 それはPT事件そのものの構図だ。 もしあの計画が狂気ではなく理性的なものだとしたら、強奪の過程がずさんすぎる。加えてジュエルシードが海鳴に落ちた過程に、ものすごく不自然なところがあるんだ。 そもそもボクは当時まだ子供だったし、ジュエルシードの回収にばかり目が行っていて、何故ジュエルシードが海鳴に落ちたのかまでは考えもしなかった。 でもクロノ、冷静に考えてほしい。 PT事件において、ジュエルシードは次元航行中の輸送船が襲撃され、その過程でジュエルシードが流出、第97管理外世界『地球』の海鳴市に落着した、となっている。 実はここだけで相当な疑問点があることに、今のクロノなら気がつくはずだ。 まず、確実な奪取が必要なら、ジュエルシードを流出させるような不手際がそもそもおかしい。フェイトの魔力ランクなら、直接強奪したほうがまだ成功率が高い。 次に、次元空間に流出した物体が、管理外世界に落ちる事自体が天文学的確率だ。そもそも次元航行艦の航路は、偵察任務がある当時のアースラみたいな軍艦ならともかく、ロストロギアを輸送する船が管理外世界の至近を通るなんてあり得ない。 現に襲われた輸送艦も、地球とは充分に離れた航路を取っていた。それなのにジュエルシードは、ピンポイントで狙ったかのように海鳴市に落着しているんだ。 そしてもう一つ。この件についてある人物が一切動いていなかったのが気になる。 ジュエルシードは願望発動型のきわめて危険なロストロギアなんだ。しかも一度発動すれば探知はたやすい。だとすると、気がつかなかったはずはないんだ……リーゼ姉妹が。 当時は新暦65年4月。つまり闇の書が起動すると目されていた6月の直前。 そんな重要な時期にあのグレアム提督がはやてに監視を付けていなかったはずはない。そんなところにあんな危険物が飛び込んできたとしたら、絶対に動いていたはずだ。 発動の事件にはやてが巻き込まれたんならフォローのしようもあるけど、もし万が一はやてとジュエルシードが接触したら大変なことになる。 何しろ当時のはやての願望は『家族がほしい』だ。そしてはやてには闇の書との繋がりがある。うかつに彼女がジュエルシードを手にしたら、一気に闇の書が覚醒する危険があったんだ。 基本は防衛に徹したとしても、この事件を長期間放置するのは危険だと判断したはずだよ。 ところが当時の調書をいくら調べても、提督とPT事件に関しての関連性が一切出てこない。どう考えても何かがある。そう思ってもう一度PT事件のことを洗い直してみたら、とどめの一撃が出た。 フェイトが拠点にしていたマンションだ。
地球は魔法がないとはいえ、文明の発展度はミッドに匹敵する先進世界だ。特に日本は戸籍制度なんかもあって、そう簡単に部屋を確保できる環境じゃないんだ。 実際、海鳴は観光地だし、フェイトの容姿は日本人離れしているから、拠点を確保するなら期間を考えてもホテルを利用したほうが遙かに安全なんだ。 適当な観光旅行の家族をでっち上げて、本来同行する予定の両親が仕事で遅れたため、アルフとフェイトの姉妹が先行してきたとでも言えば多少は不審がられてもそれ以上の詮索はあまりされない。 デポジットで充分なお金を振り込んでおけば食事その他も遙かに問題が少ない。 にもかかわらず、フェィトの拠点は『確保されていた』。 そう。どう考えても、まるで『ジュエルシードが海鳴に落ちてくることが予想されていた』としか思えない状況があるんだ。 こう考えると、フェイトが初めて回収したジュエルシードをプレシアの所に持って行った時に虐待されたことに関しても穿った見方が見えてくる。 あの時点でプレシアがフェイトを虐待するのは実は少しおかしいんだ。アルフは虐待のための虐待だと思っていたようだけど、あの時点でのフェイトは貴重な手駒だ。 戦闘が予想される場面で戦力を低下させることは本来の目的の成功率を下げることになる。 いくらフェィトが憎くてもそれは本末転倒だ。アリシア第一のプレシアが成功率を下げるような真似をするはずがない。ましてや理性が残っていたのなら。 だとするとプレシアはフェイトが本当にサボっていた……つまり、ジュエルシードの回収になのはやボクが出てくることを予測していなかったという可能性が見えてくる。 つまりプレシア本来の予想では、誰も知らないところに無造作に落ちているジュエルシードをただ回収してくるだけ……つまり子供のお使い程度の難易度を想定していたということになる。 そう考えていたのなら、未知の世界に浮かれてお土産なんかを買ってきたフェイトを叱ったとしてもおかしくはない。叱り方が常軌を逸していてもね。 でもそれは逆に、プレシアはジュエルシードを海鳴に落とすところまで計算済みだったと言うことになる。というか、あの日あの場所でジュエルシードが流出した場合、それがピンポイントで海鳴市に落ちると言うことを予測していたとしか思えない。 加えてそれを管理局が邪魔しないと言うことまで織り込み済みでね。 ……そう思ってボクはある確認を取ってみて落ち込んだよ。 プレシアに無限書庫の使用許可を出していたのは……最高評議会だった。 −−− 手紙はまだ続いていたが、クロノはここで一旦読むのを中断した。 PT事件。クロノがなのはやフェイトと出会い、ひいては自分に義理の妹が出来ることになった、発端の事件。 人生こんな筈じゃなかったことばかり、哀しき狂気の犠牲になったのが妹だと、そう思っていた。 だが、どうやら人生、まさにこんな筈じゃなかったことばかりらしい。 もしプレシアがジュエルシードを全て集めていたら。 ひょっとしたら、彼女は今回発見された次元回廊を開き、ハルケギニアに至っていたのかもしれない。しかも管理局の闇の黙認を受けて。 JS事件ののちに知られた最高評議会の実体……脳だけになった彼らがこれを知ったのなら、間違いなくバックアップをしたはずだ。死者すらよみがえらせる技術があるなら、彼らに新しい肉体を与えることなど造作もなかったであろうから。 そう考えれば、PT事件において不鮮明だった謎が全て説明できてしまう。ジュエルシードという危険性の見込まれるロストロギアの輸送計画が漏れた件など特にだ。 ただ、だとするとこれから向かう地……今なのはがいる土地は、正真正銘、惑星規模のロストロギアである可能性が高い。 そんな地で彼女がどんな生活をしているのか。頭の痛いクロノであった。
はい、短いですけどここまでです。 どうしてもここに組み込まなきゃいけなかったんですけど、この後決戦直前の様子に繋げると違和感でまくりなんですね。 ですので先にも言いましたけど時間空き次第次は早めに出します。というか疲労していない時間が取れればすぐにも書けるんですけど一日12〜16時間労働が連続していますので。これで給料は同じ(爆)。 仕事があるだけいいですけどね。 次回はロサイス決戦前の一幕、『懺悔』の予定です。合わせると多いしぶった切ると少ない。次回も物足りないとは思いますがご容赦のほどを。
ここで闇の書事件が来たか……設定が好物すぎる……
>>245 スゲー。ゼロ魔側の登場人物が全てつげ義春の画で再生されたw
おっと、魔砲の人も来てた。早く続きが読みたいのはやまやまだけど、体こわさない程度に頑張ってください。
リさん一家の人、魔砲の人乙でしたー! 改行のおかしくなったのは、多分、テキストからコピペする前に書式を弄って右端で折り返すを解除してからすれば問題なかったと思います。 どういう拍子でか、そうしないとこういう風に改行がおかしくなることがあるんです。 いずれにしろGJでした。
みなさん乙です。 やっぱりこっちの方が盛り上がりますね。 私も進路クリアなら17:10ごろより33話の投下を行います。
それではいきます。 「本当にうまくいくんですかねぇ」 薄暗い船倉で男はつぶやいた。言葉とは裏腹に、その口調は軽い。 まるで朝食に向かうかのようなそれに、目元に大きな火傷の痕がある男、 メンヌヴィルが答える。 「今回もやることは同じだ。殺し、焼き尽くす。それで報酬を得る。 簡単だろう?」 そう言って、メンヌヴィルはにやりと笑う。彼らのいる船倉には、 メンヌヴィルを筆頭に十数名ほど。歴戦を語る激しく汚れた革のコートを まとい、危険な雰囲気をまとった彼らは、重槍騎兵一個大隊にも匹敵する 威圧感を持っていた。 「違ぇねぇ」 男は軽く口笛を吹く。メンヌヴィル小隊――『白炎』のメンヌヴィルと いえば、傭兵の世界で知らぬ者はない。残虐で狡猾……そして有能。 彼に率いられた小隊は、彼らが去った後には消し炭しか残らないと 言われていた。 「……ねえ、シエスタ。『改めて』ってことは、キュルケたちが見た 『竜の羽衣』には何か隠されていたわけ?」 日も暮れて。釈放されたタバサとともに宿屋に泊まっているキュルケたちとは 別に、ルイズとふがくは村外れのミジュアメ製造所近くにあるシエスタの家に 泊まっていた。突然の貴族の来訪、しかもシエスタの雇い主とあって、 シエスタの家族の驚きは大変なものだった。 来客用に整えられた部屋で、シエスタはルイズの問いかけに答える。 ふがくの部屋は別に割り当てられ、ここには二人しかいない。 「うーん。そういうわけじゃないんですよ。 ただ、普段人にお見せするときには『こんなおもちゃなんてインチキだ』って 思ってもらうようにしているんです。アカデミーの方も昔は何度も来られました けど、外見だけ見て帰っちゃったそうです。『ディテクト・マジック』を 使っても魔法のかけらも見当たらないって。ルイズさまたちみたいに ふがくさんを知っていればまた違った結論を出したと思うんですけど」 「ふうん」 そう言って、ルイズはベッドに転がる。学院のベッドとは比べものに ならないが、適度な反発があり寝心地はよい。聞けばシエスタの育ての 曾祖母が使っていた部屋らしい。調度などもほぼそのままらしく、長く 使い込まれたそれらは落ち着いた雰囲気を見せていた。 ふと、ルイズは脇机の上に置かれた小さな額に目が行った。そのとたん、 ルイズの目の色が変わる。飛び上がって額を手に取り、シエスタに 問う。 「……なんで、これがここにあるの?」 それは不思議なセピア色の絵だった。歳も様々な十二人の男女が まるで生き写したかのように精緻に描かれたそれは、ルイズにも見覚えの あるものだったのだ。 「それですか?ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんたちが三十年前に 戦友と一緒に撮したものだそうです。フィリップ三世陛下もいらっしゃるので、 大切にしています。 その中で今も生きていらっしゃるのは、タルブ領主アストン伯爵さまと、 魔法衛士隊マンティコア隊隊長だったド・マイヤールさま、竜騎士隊 第二大隊隊長になられたギンヌメール伯爵さま、それにルリおばあちゃん だけだと聞いています」 「これ、お母さまの部屋にあった絵とまったく同じよ。お母さまも戦友との 記念だって言ってたけれど……」 「明日、ルリおばあちゃんに聞いてみましょうか?」 シエスタの提案に、ルイズは「そうね」と頷いた。
――そして早朝。四時過ぎ。 未だ日が昇らず、暗い空の中。タルブの村の上空に、一隻の小さな フリゲート艦が現れた。 メンヌヴィルは甲板に立ち、まっすぐに宙を見つめている。眼下には、 まだ朝食の準備すら始まらぬ寝静まった村。煌々と明かりに照らされる ミジュアメ製造所と、村外れのまっすぐに伸びる道のようなものがここからなら はっきりと見える。艦は上空を照らす死角に位置し、その存在は未だ 秘せられていた。 彼らに与えられた任務は、この村でひそかに開発されているはずの 新型銃を奪取、または製造施設ごと破壊すること。そのためには、最悪 村ごと灰燼に帰してもかまわないと言われている。トリステインにいる 内通者よりの情報で、製造施設はミジュアメ製造所の地下に隠されていることが 分かっている。ここまでメイジの使い魔やピケット船、そして竜騎士隊が 行っている哨戒ラインに引っかからなかったのも、その内通者のおかげ らしかった。 「何にしても、やることには変わりない」 「そうね。やることは同じね」 そうつぶやいたメンヌヴィルの頭上で、年若い女の声がした。 年若い女――ふがくは、機関短銃をメンヌヴィルに向ける。電探で 不審なフネの接近に気づいたふがくは、念の為上空待機していたのだ。 その左手にはデルフリンガーが握られ、魔法への対策としていた。 「ずっと奇妙な感じが消えなかったが……お前だったのか」 「官位姓名を名乗りなさい。それと目的と」 「……目的か?それはな……」 機関短銃を突きつけながらふがくが問う。メンヌヴィルはにやりと 笑うと、いきなり無骨な長い鉄棒のような杖を引き抜き炎を放った。 ふがくが自分に迫る炎をデルフリンガーでなぎ払う。その一瞬の隙に、 メンヌヴィルは部下に命令を下しフネから飛び降りた。 「予定通りだ!全員降下!」 その号令で船倉の扉が開かれ、フネに乗っていた全員が飛び降りる。 高度は千メイル近い。だが…… 「飛んだ!?全員メイジだったの?!」 「やべえ!相棒!」 ふがくが追いかけようとしたが、メンヌヴィルたちが飛び降りた フリゲート艦が急速に高度を落とし始めた。落下予測地点は村の真上。 ふがくはやむなく機関短銃の代わりに取り出した対空爆弾でフリゲート艦を 爆破する。その爆発が、この惨劇の幕開けとなった。 「あれは何だ!?」 村の上空で突如として起こった爆発に、歩哨として立っていた銃士が 空を見上げる。その陽に焼けたのど元に、鈍い光を放つ冷たい刃が 食い込んだ。 メンヌヴィルたちはあらかじめ降下ポイントに定めていたうちの、 村の入り口、『竜の道』、村長の館に分かれて降り立つ。『フライ』を 使っている間は魔法が使えないため、障害となるものには容赦なく 投げナイフの洗礼を与える。フリゲート艦の爆発でミジュアメ製造所に 近づけなかったのは誤算だったが、村長の館の前に立ったメンヌヴィルは 素早く命令を下す。 「ミジュアメ製造所はオレがやる。ジャン、ルードウィヒ、ジェルマン、 ついてこい。残りはここを押さえた後で入り口と堀の向こうに降りた 連中と合流し、村を制圧。手向かうヤツには平等な死をくれてやれ!」 メイジたちは頷いた。 爆発の衝撃が宿屋を揺らす。タバサは目を覚ますと、急いで身支度を 整える。杖を手に、扉を開けると、今まさにノックしようとしてたギーシュがいた。 二人で隣室のキュルケを起こしに向かう。キュルケもタバサほどではないが、 すでに身支度を整え始めていた。
支援
「タバサ、それにギーシュ?」 「ここは危ない」 タバサは短くそれだけ告げる。キュルケは軽く耳を澄ますように目を つむる。その足下で、サラマンダーのフレイムが、うるるるるる……と 階下に向けてうなっていた。 「そうね」 身支度を終え、杖を胸に挟んだ瞬間、階下で扉が破られる音が響いてきた。 「いったん退く」 「ちょ、モンモランシーは?」 「もう間に合わない」 タバサがつぶやき、階段の反対側の窓から不審者がいないことを確認して 飛び降りる。近くの茂みに身を隠し、キュルケがギーシュに問うた。 「先生は?」 「僕が気づいたときにはもう部屋にいなかった。ああモンモランシー、 今君を助けに」 「そんなことしたら見つかっちゃうでしょう!ああもう、肝心なときに 先生がいないんだから。ルイズの様子を見に行ったのかしら。あの子が 一番危なっかしいし」 キュルケが歯がみする。辺りは暗い。落ちてきた火の粉が宿の反対側を 照らすだけ。日の出はまだのようだった。 アニエスもその頃、詰所の寝室で目を覚ましていた。この村には自分の 暮らしていた部屋もあるのだが、公私の区別をつけるためと詰所で寝起き していた。 枕元に置いた剣と、一挺の長銃を素早く手に取り、剣を鞘から抜き放つ。 そのまま部屋を出ようとして……妙な気配を感じ扉のそばで待ち受けると、 何者かが扉を蹴破り炎が渦巻いた。 アニエスは炎の下をくぐり、剣を振り上げる。赤い雨が降り注ぎ、 哀れな傭兵メイジは絶命する。そのまま剣を横に突き立て、驚いた顔の もう一人をお供に送ってやった。 「アニエスさま!大丈夫ですか!」 銃士たちが飛び込んできてそう尋ねる。アニエスは返り血を浴びたまま 頷いて見せた。 「問題ない。状況は?」 「敵襲です。上空で大きな爆発が起こった後、村長の館と『竜の道』、 そして村の入り口に敵が降り立ちました。村の入り口の敵は今ので最後 ですが、村長の館と一部居住区が制圧されています」 「してやられたな。アルビオンの狗か……ミジュアメ製造所は?」 アニエスは侵入者のなりを見て、そう断じた。上空から降下侵入するほどの メイジばかりで構成された小部隊。間違っても物取りのたぐいではない。 第一、物取りはわざわざ銃士隊と事を構える度胸など持ち合わせていない。 それに初戦で村長を狙われたのは明らかな失態だ。 「現在各個応戦中ですが、健在です。 それと、『竜の道』にミス・エンタープライズが向かわれました。 第三小隊が援護に回っています」 「なんだと!?くっ……敵の目的は新型銃と『竜の羽衣』の装備か! 第一小隊はわたしに続け!第三小隊はそのままミス・エンタープライズと ともに『オヤシロ』と『イェンタイ』の確保。残りは村長の館と居住区の 奪還に向かえ!いいか、施設の確保と非戦闘員の安全を第一だ!」 「はっ!」 銃士たちは敬礼すると伝令のため走り去る。アニエスも自らの部隊を 率いてこの戦況を覆すべく足早に焼けた部屋を後にした。 モンモランシーの目覚めは最悪だった。いきなり扉を蹴破られ、 寝ぼけ眼のまま革のコートをまとった人相の悪い傭兵メイジと目が合った。 「ひっ!?」 モンモランシーは強制起動された意識のまま思わずベッドの上で後ずさる。 その様子に、傭兵メイジは下卑た笑みを浮かべた。
支援。
「はっ。客がいたか。しかも、上玉だ」 傭兵メイジは杖を向けたまま、モンモランシーに近づいてくる。 彼女の杖は手が届くところにない。丸腰のまま、ベッドの上で震える モンモランシー。 「……い、いや。助けてギーシュ」 「彼氏の名前か?ここには誰もいやしねえよ!」 傭兵メイジの手がモンモランシーの頬に触れる……が、その力が いきなり抜けた。声もなく崩れ落ちる傭兵メイジ。モンモランシーが 目を開けると、そこには見たこともない出立ちの男が立っていた。 「あなた……は……?」 それは上下がつながったカーキ色の革の服を身につけた男だった。 両方の上腕部に描かれた白地に赤丸の紋章がよく目立つ。額に桃色の 見たこともない果物の紋章が描かれたカーキ色の革の兜をかぶり、 レンズの奥が見えない大きな革の眼鏡。それに白いマフラーで口元を 覆い、その顔は見えなかったが、その雰囲気はモンモランシーに恐怖を 与えるものではなかった。 「そのままじっとしているといい。もうすぐ助けが来る」 「あ、あの……もう少しここにいて下さいませんこと?それに、お顔を 見せて下さいませ」 モンモランシーは頬が紅潮するのを感じていた。あなたがいないのが 悪いんだから――そう心の中で言い訳する。男はしばらく無言のまま だったが、やがて口元に手をやりマフラーを下げようとして…… そこに銃士たちが大きな音を立てて入ってきた。 「だ、大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」 銃士たちは息を切らせつつも貴族の前で礼を失しないように必死に 平静を装っていた。傷つき返り血を浴びながらも、村長の館との一緒に 最優先でここを奪回したのだろう。しかし、そんなことに興味がない モンモランシーは、無粋な人たち、と思いつつも、小さく咳払いをしてから 振り向き優雅に言い放つ。 「こちらの殿方が賊を倒して下さいましたわ」 その言葉に、銃士は不思議な顔をした。 「……あなたが、倒したのではないのですか?」 「え?だってそこに……」 モンモランシーが振り返ると……そこには誰もいなかった。 上空で爆発音がしたとたん、ルイズの意識は一気に夢心地から現実に 引き戻される。この感覚……それはあの『イーグル』号の艦橋で ライトニング姉妹の放った『ジョーカー・ペア』の衝撃に振り飛ばされた時に近い。 それは奇しくもギーシュも同じだったのだが、それは彼女の知るところではない。 急いで制服に着替え、愛用のタクトを手に取った。 「ルイズさま!ルイズさま!起きて下さい!」 そこにシエスタが激しく扉をノックする音がする。ルイズが扉を開けると、 シエスタは朝の訓練に出るところだったのだろう、動きやすいズボン姿 だった。
「敵襲?」 落ち着いたルイズの言葉に、シエスタも少しは平静を取り戻したのか、頷く。 それを見たルイズはきびすを返して部屋に戻り、自分の荷物を手に取るのではなく、 脇机の上の額を布にくるむと大切に懐にしまい込んだ。 「行きましょう。ふがくとシエスタの家族は?」 「ふがくさんは夜遅くに出て行ったきりです。家族はミジュアメ製造所へ 向かいました。あそこはうちの管理ですから」 「それならいいわ。わたしたちも安全な場所に逃げましょう。 どこか隠れられるところはある?」 「『イェンタイ』に入れれば確実なんですけれど、『竜の道』の方からも 火の手が上がってますから……ここからだと墓場の森ですね」 「贅沢は言っていられないわね。行きましょう」 そう言って、家から出る二人。だが、迂闊にも周囲を確認しなかった その目の前に、今もっとも出会いたくない相手がいた―― メンヌヴィルは突然目の前の家から出てきた二人に意識を向ける。 若い女、それも突然のことに驚いているのが手に取るように分かった。 「ア、アンタたち!いったい何のつもり?」 女の一人、ルイズがタクトを向ける。だが、メンヌヴィルはルイズではなく 後ろに向けて杖を振るった。 火薬が炸裂する音と女のうめき声。メンヌヴィルの杖から放たれた 炎をまともに受けて、銃士たちが抱えていたマスケット銃の火薬が暴発 したのだ。 破裂した銃身が食い込んだ顔と指が飛んだ手を押さえ、銃士たちが地面を のたうち回る。その惨状にシエスタが悲鳴を飲み込み、ルイズのタクトも ふるふると震えた。 「オレが怖いか?」 そう言ってメンヌヴィルは微笑む。悪魔のような笑み。その瞬間、 ルイズは気づいた。 「アンタ、ひょっとして……目が」 メンヌヴィルは答えず、その代わりに無骨な鉄棒のような杖をルイズに 向けた。そのとき、メンヌヴィルに向けて炎が放たれる。とっさに炎の 魔法を唱えて相殺するメンヌヴィル。その向こう側には―― 「わたしの教え子から、離れろ」 硬い表情で杖を構えるコルベールの姿があった。
重ねて支援
支援を開始する。 目標、砲戦距離四万!
以上です。 メンヌヴィル隊急襲は2回分に長くなったので分割します。 後編もできるだけ早くお見せできるようにするつもりですが…… 再就職活動がうまくいってないせいかテンションが上がりにくいですorz 月給下げても通勤圏内にここずっと0件ってどういうことですかorz とまぁ、それは置いておいて、どっちも頑張ります。 次回でやっとあの人が登場の予定です。
萌え萌えの人乙でした! メンヌヴィル強襲にコルベール、さらにアニエスまで。 次回にも期待します。 あと…再就職は自分も頑張ってたりしてますが、本当、最近はなかなかみつからないですね…。
萌もえの人(それと遅ればせながらウルトラ&魔砲両氏)の皆様乙っす。 ていうかリアルの方も皆様ホントに乙というか、頑張ってくださいというか、 ただただ応援してます。 頭頂部禿vsメンヌヴィルは個人的に原作屈指の好カードだと思うので、 次回を楽しみに待ってます。
乙でした。 降下猟兵、落下傘部隊といえば史上最大の作戦が印象的だったなあ。 さて、あの人ってのは誰かなあ?
>>253 その点に関しては、メビウスでメイツ星人の息子のビオが
「勝手に地球に入り込んだ我々にも確かに非はある」
と言ってたな。
せめてダイナかコスモスの世界だったら…
ルイズとの契約を「了承」の一言で片付け、本人曰く甘くないジャムをハルケギニアに広めようする某主婦を召喚みたいな。 同人格闘ゲーム仕様なら戦えるが…ガンダールヴじゃねぇよな…この人。
>>280 いやでも、若い頃の戦闘能力を考えると間違いではないかも>ガンダ
まぁこの人ははばかられる者だろうけどw
>280 kanon ではなく kanoso の方だったりして。
KEY系か… 魔法の力が欲しい 狂った母親を助けたい 義理の従兄と再会したい と謎の教団に入信するルイズ、タバサ、アンアンの物語を…
???「えいえんは、あるよ」
>>283 タバサとアンアンだけならクロノトリガーからシルバード召喚でok
タイムスリップしてなかったことにする。
>>280 甘くないジャムはタバサに大好評を博す
更にはしばみジャムを新開発
ルイズは無難に寝ぼけながらクックベリージャムを食べて娘を思い出しますねとか言われる役だな
>>285 タイムスリップネタなら刹那零召喚を何度か考えたが
使い過ぎるとパラドックスで整合性とかおっつかないから
小ネタか最後まで歴史改変はとっておくべきだよなぁ
名前的にもちょうどいいのだが
そういえばタイムスリップの大家、ドラえもんからノビタ君がまだ居ないのが意外。 臆病で弱くてダサいけど勇気があって優しくてなんか涙が出てくるというもってこいの人材なのに。
>>286 むしろタバサは絶句し、ジョゼフの心を戦慄に震わせ、タバサのママが正気に戻るとか(毒をもって毒を制す的に)
そして戦闘シーンでは偏在もろとも食卓に座らされるワルド(ファイナルメモリーで)
シエスタ「勝てないから貴族っていうんですよ」「そんなこと言う人嫌いです」 タバサ「嫌いじゃない」 シルフィ「あうーっ」 ルイズ「うにゅう…」 うぐぅ役がいないな…
カオス過ぎる
元ネタが何なのかわからんのだけど
カノンだな
こち亀から召喚なら両津以外なら誰がいいかな。 爆竜大佐に地獄の訓練を受けさせられる銃士隊 爆乳大佐にムチで打たれてもだえながら嬉々として訓練する水精霊騎士隊
あの4年に一回しかおきないやつ
特殊刑事課の警官を呼んだら、誰が現れてもルイズは涙目だな……
>>296 予知能力無くして首になったとか言ってなかったっけ?
まぁ四年後何事もなかった様に予知能力使って警察官やってそうだけど。
海パン刑事は何となく馴染みそうな気がするw
本編でも行方不明な戸塚を召喚
カノンといえばシードラゴンまたはジェミニを思い出したわ。 「飛ばされた」スレでちょうど星矢ネタあったからちょっと妄想。 ルイズ、シードラゴンの鱗衣を召還。 ルイズこそ真のシードラゴンの海闘士だった。 その後すぐ魔星に目覚めた天孤星ベヒーモスのマチルダと一戦交える。 現代聖戦に参加しなかった者達はハルケギニアにいたという妄想。 ルイズとマチルダのみしか闘士はいまの時点で思いつかなかった。
サイズが合わず鱗衣を着られないルイズ、まで読んだ
無理して装着したら引っかかるところがなくてストーンと落ちるところまで妄想
手塚治虫原作『鉄の旋律』のリメイク版?米原先生の『DAMONS』よりヘイトが使い魔に。 ルイズじゃなくてタバサの使い魔になったり、復讐繋がりで。 妻と娘失ったヘイトがタバサとタバサ母とくっついたり、アニエスと復讐に関していろいろあったり。 登場人物もいい感じで狂っている奴とか多いし意外に合うんじゃないかな。
ヘイトは最初から最後まで妻と娘と自分の腕のための復讐だから他の女とくっつくのは合わない気がするが 原作の方だったらまだ合うと思う
>>301 一輝兄さんを召喚するネタなら考えたことがあったが、
召喚直後のルイズが気に入らずに鳳凰幻魔拳(軽め)をかけられてコントラクト・サーヴァントのキスで爆発する幻覚を見せられるルイズ、の時点で色々と諦めた。
シャカ「ふっ、これが烈風か…… まるで涼風だ!」 氷河「お前の雪風など俺の薄皮一枚凍らせるにすぎんと言ったはず… だが二度目はそれすらもかなわん!」
犬夜叉を召喚。 考えてみればこいつもけっこうなツンデレだよな。 そんでテファが桔梗、ジョゼフが七人隊をそれぞれ召喚だとか。
ジョゼフは奈落一択
フッ、君たち、少し行儀が悪いな。まるで死肉に飛びつく餓鬼の様だぞ。 地面に頭をこすり付けて私を拝め。 私の顔こそ引導代わりだ、迷わずあの世へ行きたまえ。 いくかね、ポトリと。 シャカさんの容赦ない台詞。
弥勒「私の子を産んでくれぬか」 キュルケ「ええっ!? な、なんて情熱的な殿方」 さすがのキュルケもこういう口説き方をされたことはないだろ
k
>>313 「オレの子を産めぃ・・・!!」
超人類王・親不知巧を召喚
しかしこのSSはいつもと同じ現代の日本から召喚
未だ旧人類!!
・・・未来から呼んだらきっと手がつけられない
さりとて現代から呼べばただのシャイな偽ラオウ高校生
どうしよーもねーなーw
>>302-303 そこは体型に合わせて調整してくれるそうだから、体型が違う獅子座がそうみたい。
>>310 乙女座の歴代の魂は好き勝手にハルケギニアに来てそう。
もう少し煮詰める。
現代聖戦に参加しなかった闘士達のハルケギニアリスト予定。妄想版
アテナside オウル、クレイン
ポセイドンside シードラゴン(ルイズ)
ハーデスside 天孤星のベヒーモス(マチルダ)
天魁星のメフィストフェレス、天暴星のべヌウ、天究星のナス、天巧星のハヌマーン、地獣星のケット・シー etc
もう少し追加するとシードラゴンのルイズはシードラゴンの技だけでなく。 ジェミニのアナザーディメンションやギャラクシアン・エクスプロージョンも使えることにする。
『悪代官』から悪代官を召喚。 仕掛け好きでリッシュモンと意気投合して劇場がからくり屋敷に。
>>315 幻朧魔皇拳を使うルイズなんざ見たくないわww
G1トランスフォーマーから破壊大帝メガトロンを召喚 ロボットモードでも敵なしだろうけど ワルサーP38にトランスフォームさせてルイズに撃たせてやりたい。 しかし間違いなくエネルギーの強奪に走るな……
あれぇ?俺のえびチャーハンは?
>>319 確かこいつホビー誌の外伝的な小説でイボンコといっしょに甦ったよな?
G1と違いお話に人間が出ないからって(原人は出たが)、やることがエグすぎなんだよ千葉トロン……
間違いなく陰謀張り巡らしてハルケギニアの有機生命を皆殺しにしようとするぞ。
藍染「あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ」 ルイズ「な…に…」
やっぱり、本スレに人がいるっていいなぁと思う黒魔でございます。 本スレの皆さま、お懐かしゅうございます。 さてさて、戻ってきて早々に最終回、と参りたくございます。 出会いがありゃあ別れもあるもんで、寂しい限りですが…… ま、『せいせいするぁ!』てなことをおっしゃる方もおられるかもしれませんね。 すいません、今回で終わりますのでご勘弁を。 では、問題無ければ23:50より失礼を。
それでは、投下開始と参りましょう。 ----- 目覚めた朝はいつも喜びを願うんだ。 今日もいい日でありますようにって。 ゼロの黒魔道士 〜エピローグ〜 Message〜虹〜 でも、『いい日』ってなんだろう、とも思うんだ。 毎日が、毎日来て、毎日毎日、どれも違っていて…… どれが良いかなんて、決めきれないくらいなんだ…… ---- 復興著しいトリスタニア。 カンカンとハンマーの音が平和なリズムを刻んでいる。 と、その平穏に似つかわしくない気忙しい駆け音が。 「畜生!!なんであんなガキにっ!!」 「お前のせいだろがウェッジ!!」 この二人が這い出して来るということは、ある意味平和なのであろう。 ネズミが穴倉から出てくるということは、表が平穏であるときなのだからだ。 “くすねとり”のビッグスと“かっぱらい”のウェッジ。 ちょっとは知られた、小銭稼ぎの小悪党共だ。 そろそろ配給のパンとチーズに晩酌の酒でもと、久方ぶりの『仕事』でもしたのだろう。 ただ、少々間が悪かった。 「待てーっ!!」 「そこの泥棒ー!!待ちなさいー!!」 タマネギ隊。 子供自警団という名よりも、 失せ物、困り事には片っぱしから何でも首をつっこむ、 好奇心旺盛な愛すべき糞ガキ共という名が相応しい。 子供の視線は大人よりもはるかに低い。 だからこそ見えるものもあるのだ。 例えば、ビッグスが袖の下へ滑り込ませた婦女用の財布、 例えば、ウェッジがポケットから落としかけたペアリング、などだ。 しかる後、大人の視線から見れば『逃走劇』、子供目線で言えば『鬼ごっこ』がはじまった。 片や裏路地まで知り尽くしたプロの悪党だが、 片や街を遊び場としてきたプロのお子様達だ。 両方が必死であればあるほど、なんとも微笑ましい。 往来の住民や買い物客がクスクス笑う。 中にはからかい半分に「がんばれよー!」とどっちに当てたものか分からぬ応援をする始末。 走る当人達も嬉しいやら恥ずかしいやら。
では最後らしく、ナイツオブラウンドで支援
何しろ顔が割れれば商売がしにくくなるのがスリの辛い所。 勝負を決めると、自ら窮地に飛び込んだ。 針路を急変させ右へ。日の射さぬ路地。犯罪者共の穴倉。 もちろんタマネギ隊もこれを追う。 追うが……忽然と逃亡者共の姿が消える。 目の前にあるのは、壁。 大人ならやすやす越えられるほどの高さの壁。 城下町ならではの地形だ。 侵入者の足を止めるための障害物の名残。 それが犯罪者共の助けになるのだから皮肉なものだ。 鬼ごっこの鬼達は、悔しそうに壁を見上げた。 一方の壁の向こう、 お子様達と久々の運動を楽しむハメになった大人達が息を切らしていた。 壁の向こうで悔しがっているであろうぼっちゃんじょうちゃん達をニヤリと嘲笑う。 「へっ、ここまで逃げりゃこっちの……」 日の射さぬ場所、そこは犯罪者達のオアシス。 だが真の闇など、早々存在するものではない。 「そうはいきませんよ!!」 ガキ共が、もう二匹。壁のこっち側。 読んでやがっただと?この逃走劇の行く末を? ハメられた!! 「なっ!?バックアタックだっ!?!?」 「汚い、ガキ共汚いっ!?」 壁を背にし戦うのが有利なのは、あくまでも戦闘の備えがある場合。 この場合は単に逃げ場を失った馬鹿というだけだ。 「――……よしっ!これで終わりっ!!」 ものの数分後。 子供たちのリーダーが勝利のガッツポーズを取っていた。 4人揃ってズルズルと、駄目な大人2人を引きずる様は、 大通りの市民から暖かく迎えられていた。 「またお手柄だな!」とか「この間はありがとうね!」などという声もかけられる。 タマネギ隊の隊員達は、凱旋さながらに、手を振ってこれに答えていた。 「がんばってますねー、皆さん!」 こう声をかけたのは、見目麗しい女性だった。 「あ、副長!!」 「ミシェルさん、お疲れ様です!!」 トリステインでは最早お馴染となったマントと制服…… 女王直下の銃士隊、その副長の姿である。 この実に均整の取れた形で、ドラゴンをも刈るなど、誰が信じられよう? 「隊長見ませんでした?非番でこの辺にいるとは聞いたんですが――」 だが、今手にしているのは剣ではなく、数枚の書類を束にして紐で綴じたもの。 どうやら、上へ報告すべき内容について隊長殿にいくつか質問があるようだ。 「あぁ、アニエス先生なら――」
しえん
噂をすれば、何とやら。 大抵は悪しき物が登場する場合に使われる諺であるが、 別段悪に限った話では無いようだ。 「――だーかーら!?何故私がっ!?」 大通りに、悲鳴とも怒声ともつかぬ声が響く。 「良いじゃないか。うん、大変よろしい」 それを向けられたと思われる男性は、 そんなアニエスに対し髭を面白そうによじっていた。 実に、実に楽しいと、そう言いたげに。 「確かに、蛸の件でも、リッシュモンの件でも感謝はする!」 何しろ、どこに出しても恥ずかしくない美人でありながら、 普段はもったいないほど仏頂面である美人の赤面顔。 これを見て喜ばない男子などいようか?というものだ。 法院の暗部に探りを入れるなど危険を侵した甲斐があった。 「その件で恩を着せるつもりは無いさ。貴族の嗜みだ」 従ってモット伯は至極満足していた。 「少々買い物に付き合って欲しい」と言うだけでこのような眼福に浸れた今日に。 自分の趣味の確かさ、自分の計画性、自分の才能そのものに。 そして目の前の一級品の素材を、磨き上げた己の手腕を誇らしく思いながら、 髭をクルリと、楽しげによじっていた。 誰が恩に着せよう?むしろこちらからお代を支払いたいぐらというのに。 「だが、一介の騎士が非番だからと言って、こ、このような服など……」 スレンダーな体は、むやみに隠すものではない。 そのラインに沿うよう、それでも動きを妨げること無いように計算を重ねられた服は、 ただ単に露出を多くした下品なものではなく、機能性をも備えた美となっている。 そこに、ごくごくささやかに、フリルやコサージュといった女性らしさをあしらっていく。 所為、ナイトドレス。メイド服をイメージしたと思われるカチューシャがアクセントだ。 色気と可愛らしさ、そして何より、モット伯の趣味を詰め込んだ一級品だ。 モット伯は下から上へと視線を舐めるように上げていきながら、 満足気に頷いた。 未来ある若手仕立職人に投資し続けた甲斐があったというものだ。 再び視線を上から下へ。 うむ、生地の皺が体の線を強調して良い具合に…… 「似合うから問題無い!むしろこれも貴族の嗜……」 首筋から鎖骨、そのまま脇のラインから太ももへと移った辺りで、その先が急に消えた。 そして太ももの先にあるふくらはぎ、その先の踵が、 モット伯の頭蓋を上から振り落とされた。 「やっぱり貴族なぞ嫌いだぁ〜!!」 「む、この感触は良いなっ!しかもこの眺めはなかなか……」
想像してみていただきたい。 踵落しのために、足を振り上げ、やや無防備になっている女性を。 踵落しのために、ひねられた腰、そのラインを。 ピッタリとした服にわずかにできる、皺の優美な曲線を。 その先の、普段感情を抑えている女性の、泣き顔と赤面を。 そして何より、モット伯は痛みを快感に変えることのできる人物。 うむ、実に生きてきた甲斐があるというものだ! 「死ねっ!死ねぇええっ!!」 「良いぞぉぉ!!もっと、もっと罵ってくれっ!」 洋服店の店先で、彼らはそれを見てしまった。 この破廉恥なる営業妨害を。 「ミシェルさーん、あれ何ー?」 「……はい、タマネギ隊ご苦労さまですー。今日は解散ということでー」 流石に、教育上悪い。 副長は書類をマントの中にしまって、手をパンパンと叩いた。 子供たちが変な道に進まれても困る。 「えー?」「なんでー?」 「いいですから。後で報告書だけお願いします」 「はーい!!」 何はともあれ、トリスタニアはもうすぐ秋。 賑やかな声と、ハンマーのカンカンという平和なリズムが響いていた。 ---- 例えば、好きなことをやれた日。 例えば、好きな人と過ごせた日。 例えば……えーとー…… うん、そう、『生きてるんだな』って思えた日。 どれもいい日なんだなぁって、そう思うんだ。 ---- は〜い☆みっなさ〜ん!! あなたのアイドル、ケティちゃんだよぉ〜♪ はい、まみむめもー!!!!(挨拶) ……ん?元気が無いぞー?もう一度ー!! まーみーむーめーもー!!!(挨拶) え……うそ、この流行の挨拶が通じないなんて!? ケティショック、超ショック、ウルトラショック。 え、違うって?流行って無い?うそ、この華麗なる挨拶が!? むぅ、『おハロー』の方がナウかったのでしょうか…… って分析かましてる場合じゃござんせんことよっ!! えぇ、うっかり流行遅れになってる場合じゃないんですよ!! むしろ何冒頭から無駄口聞いちゃったんですか、ケティの大馬鹿っ!! そうそうそう、言いたかったことは別にあるのよっ!! それはモチのロンロン!!ギーシュさまのことを置いて他に無いのですわよっ!!! 「――つまり、ジョウキキカンで無駄となってしまう熱量も、この理論ならば……」 「精密ですね……これは錬金のやりがいがありそうだ!」
もう、何?夏って男も女もこれほど変わってしまうものなのかしら? 殿方はさらに魅力的に、そして、乙女のハートは……あぁ、さらに燃え上がるほどにバーニングに!! 何、この溢れだすワイルドかつクールな魅力? 同じ空気を吸っているというだけで……嗚呼!! このケティの小さな胸は、爆発、暴発、大爆発! もういつ止まってもおかしくありませんわ〜♪ 「すまないね。課外で学生にこんなことをさせて……」 「いいえ!これはこれで練習になりますし……単位をオマケしてくれるならなおさらですよ!」 「正直だな、君は……ハハ、よしはじめよう。まずは燃料部から……」 「はいっ!」 あぁ、でも、でも、私はこの高鳴る胸をそっと押し隠して、ここで見守るだけしかできないのかしら!? あぁ、あぁ、でもでもでも!お邪魔をするのは悪いですし、でもしかしそれでも! あぁ、小さなケティは悩みが溢れて溺れ死にかねませんわっ!! 「あら?ダーリンに用事?」 「んなっ!?」 ほ、ほう、やるじゃないですか…… 物陰にひっそりこっそり半日ばっかし隠れていたこのケティを見つけるとは! 確か二年生のキュルケとか言う女でしたね、この鬱陶しい赤髪女は! くっ、伊達に……伊達に……畜生、所詮脂肪の塊なのにっ!? 何たわわに実ってけつかかりやがるんですかっ!? 「ダーリンは忙しそうだから、アタシが何か伝えておきましょうか?」 「だ、ダーリン!?」 な、なんですと!? ダーリン!?ダ、ダーリン!? 運命のダダダダーリン!? おらちょっと待てやコラ手前表出ろや!? 私の、わ・た・し・の!!ギーシュ様をダーリンとな!? それとも屋上行って飛び下りりてぇかゴルァ!? 「ん?あぁ、そういうこと――ま、いいけど……」 「な、何ですか、その勝ち誇った顔はっ!?」 笑ってやがります、この女! ほくそ笑んでます、この牛! 余裕で笑ってます、この婆! クッ、ギーシュ様も所詮殿方……脂肪の誘惑には勝てないのですかっ!? おのれ、もっと豊かに育ちくされ、私の儚い希望っ!! おのれ、もっと弾けて飛んでけ、この胸いっぱいに満ちていけ!! 「フフ、いーこと?恋は当たって砕けろよ?黙って見てたらはじまらないの」 「はぁ?何言いくさ……言ってるんですか、センパイー?」 勝者ぶってんじゃねぇーですよ、このアマがー! 思わずケティ、やさぐれますわよ?ささくれますわよ?乙女のハートが荒みますわよ? 「恋は何度も当たるもの。そう、理想の殿方に出会うその日までのね―― ダァ〜リ〜〜ン!!!」
ちょっ!? なんたる不意打ち、なんたる仕打ち!? ちょっと乙女ハートが荒野になってたところで牛乳女がラブ・ダイブをかましてるではないですか!? おのれ、先んじられてなるものかっ!? 私のダーリンに、ダーリンに、ダァァリンにぃぃぃぃぃぃぃ…… ダーリン? 「わわっ!?ミス・ツェルプストー、いきなり後ろからは……」 「あら、怪我は治ったんでしょ?いいじゃないの、ダーリン!それに、キュルケって呼んでと――」 「――キュルケ君、コルベール先生と何時の間に……」 ……ケティ、勘違いしてましたわ。 そう、乙女は勘違いをするものです。 それもまた美学です。美点なんです。むしろ美女です。 そうか、キュルケ先輩はコルベール先生と…… いやー、結構結構!歳の差カップル万歳! そうよね、愛に障壁なんてないもの! よし、先輩に続けですわ! ケティも決めるわラブ・ダイブ! 飛びこめギーシュ様の胸の中☆、その腕の中にレッツ・ゴー! 思いを乗せて飛んでけこのバディ&SOUL!! バネのようにパワーを込めるはカモシカのような私の足! 愛の大砲着火5秒前!4,3,2…… 「――誰かと思えば、泥棒猫ね」 あー!あー!あー!もう、もう、もうっ!! なんでこう出てきますかねー、こーゆーときにー! この陰気くさーいウェットなアバターがーっ!アバタ娘がーっ! 「あぁら――誰かと思えば、モンモンせんぱーい。おひさしぶりー?」 「ふん、今更私のギーシュを狙おうなんておこがましいのよ!」 「恋は何度も当たるもの、だそうですよー、せんぱーい? 私は諦めが悪いんですのー」 「ふふん、いいこと?私はギーシュとこの夏……」 ケティ、頭にちょっと血が昇りました。 バーニングです。ワーニングです。危険取扱注意です。 ギーシュ様と一夏!?しかもギーシュ様を呼び捨てに!? こうなってはもう、ケティを止めることはできません!! 止めてくれるなおっ母さんです!もう触るな危険です!! 乙女の戦がは始まっているのです!! 愛しい人をその瞳に留めた瞬間からっ!! 頂上取る戦いは始まっているんですっっ!! 乙女のガンの付け合い飛ばし合いっっ!! 逸らせばたたっ切るぞホトトギスってなものなんです!! 「あ、あぁら!!それならこの前の週末、 ケティは忘れることができませんわ!ギーシュ様は私と一晩……」 ちょっとの嘘は許されます。 えぇ、乙女は嘘を纏って美しくなるのです。 お化粧です。メイクです。特殊効果なのです。 ましてや敵は恋仇、いや仇なんてもんじゃないですわっ! もう、エネミー!モンスター!いいえ倒すべき害虫っ!!
「そ、それなら私だって――」 「いえいえ、ケティはもっとあーんなことやこんなことまで――」 恋のバトルはロイヤルにしてロワイヤルっ! ルール無用の闘技場っ! 負けるなケティここにあり!! 「み、ミス・ツェルプストー、そ、そのの当たって……」 「当ててますのよ♪――ギーシュ、あれは止め無くていいの?」 「……正直、ちょっと怖い……」 乙女の毎日はラブ&ファイト!! これからもケティの戦いは続きますのよ! そう、ギーシュ様の腕の中、最高の形ですっぽりしっぽりおさまるその日まで!! 「いいこと、私が――」 「ケティこそが――」 「「ギーシュ(様)の恋人よっ!!」」 ---- こんな毎日が永遠に続けば良いねって、そう思うけれども、 生きるって、永遠の命を持つことじゃないよね? 助け合って生きていって、毎日が良いなぁって思えるのが、生きるってことだと思うんだ…… ---- 色合いこそは単調だが、起伏に富んだ景色が後ろに流れていく。 風は砂っぽくて乾いている。時折、チリチリと顔に当たる粒子がこそばゆい。 ハルケギニアでは想像もつかなかった景色と風。 顔に巻きつけた布の下で、男は豪快に笑っていた。 「ははは、悪くないなっ!このショコボとやらはっ!!」 股の下で、クェっと鳥馬が鳴く。 人の足が沈み込む砂地をも踏み越える、広く逞しい蹴爪。 その速力、その力強さを、ジョゼフは気にいっていた エルフの住まう地のその先、ロバ・アル・カリイエへと至るその大地。 ジョゼフはその地を、神の視点を得られる空からではなく、 自ら駒となった錯覚を覚えるような大地から見ることを望んだ。 神々の遊戯は終わった。今は、人として世界を楽しみたい。 子供のような好奇心を満たすこと。それが彼の望みであった。 「あ゛ーづーい゛〜……日陰入りたい〜……」 ジョゼフより離れて数メイル。 ジョゼフが駆るよりもやや小さい鳥馬に乗る少女の1人が、 飴玉みたいに溶けていた。 日焼けをしないようにか、手袋にローブ、顔中をヴェールで覆うという重装備だ。 「不便だねぇ、吸血鬼は」 もう1人の少女が呆れたようにぼやく。 それだけ着こめばそりゃ暑かろうといった風に。 こちらの少女は、やや広い額を隠すこともなく、 ごくごく簡単にバンダナなんぞを巻くだけで済ませている。 今まで感じたことも無い風を、日の光を、景色を、 その五感で抱きしめたいという現れだった。 「あんただってヘバってたでしょうが。ここんとこずっと」
そんな彼女に、重装備の吸血鬼がツッコんだ。 確かに、ヘバっていた。昨日まで。 はしゃぎすぎ、バンダナやローブすら身に付けない軽装。 注意も受け入れず、そんな格好をしてればヘバるのも当然だ。 「あ、あれはほら、水が合わなかっただけだっての!!」 だが彼女、イザベラはあくまでもこう主張する。 断じて自分のミスでは無い。 単純に今までと違う暮らしをしているからその環境の差なのだ。 断じて浮かれ気分と言う訳ではない。そう、断じて。 「ちょっとぉ、健康には気を付けてよー。アタシの食糧なんだからー」 それに対し、吸血鬼であるエルザはダレたまんま忠告した。 イザベラとエルザの関係は奇妙なものだ。 一応は主従関係になるのだが、食われる者と食う者の関係でもあり、 それでいて互いにタメ口でしゃべるという関係。 「そう言い方されるとなんか腹立つねぇ」 イザベラは、そんな関係を笑った。 それは今まで狭い王宮では見せたことも無い、 何も背負うことも気負うことも無い、軽い笑い方だった。 「イザベラー!何をしているー?行くぞー!?」 「はいっ!!ただ今参ります、父上っ!!」 そして、頼れる者の傍にいることから見せる、安堵の笑みだった。 笑顔のまま、イザベラは鳥馬の手綱を握る。 砂漠の太陽は、どこまでも明るかった。 「……健康にはなってるみたいね。精神的にも」 「そいつが一番でございますね」 それを見守るのは、吸血鬼が一匹としゃべるナイフが一本。 どうしようも無いほど我儘な女王様についてきた、 奇妙な家来たち。 どうしようも無いほど我儘で、どうしようも無いほど泣き虫な彼女の、 どうしようも無い友人達。 「行くぞー!地平線の彼方まで、突っ走るぞぉぉっ!!」 「待ってください父上〜!!」 チェス盤からこぼれた王の駒と女王の駒、それに従う小さい駒。 彼らの遊戯は終わらない。 女王の道は、どこまでも真っ直ぐと。 それは、遥か彼方の未来へと続く道だった。 ---- 時間があったら、色々なことを考えるんだ。 ボクが何をするために生まれてきたのか、とか、 孤独を感じた時はどうしたらいいか、とか。 この世界に来るまでも色々考えたけど、やっぱり今も答えは出ないままだ…… その答えを見つけるのも、生きるってことなのかもしれないね…… ----
聖地――あるいはエルフ達の言で言うところの『悪魔の門』。 今回が災厄の根で、会談を持つことができたのは僥倖と言えることだろう。 「――以上がネフテスの要求だ」 エルフの世界と、ハルケギニア。 いがみ合っていた両者が、忌まわしい事件が契機ではあるものの、歩み寄る。 このような歴史的な会談に立つことは、政治屋として誇るべき仕事なのだ。 そう、政治屋としては。 「ちと辛いのう。そちらに有利すぎではないかの?」 「蛮人……失礼、ハルケギニアに対する差別が厳しくてな」 「ふーむ……マザリーニ殿。 ワシとしてはこの第三項だけは削ってもらうべきかと……」 「では明日の会議にはマザリーニ殿が直接……」 だが、一人の人間として考えた場合、政治屋としての重荷は時に背負いきれなくなりそうになる。 「――胃薬」 「む?」 「胃薬を、くだされ」 翌日に控えたエルフの老評議会の面々との会議、それに当たっての会談。 我が政治屋人生で最も胃が痛んだときであったと記憶している。 オールド・オスマンを友人兼アドバイザーとして侍らせ、 エルフにしては(これも今となっては失礼な物言いになるのだが) 優しかったビダーシャル殿と打ち合わせをしながらも、 我が胃袋はは来る重圧に耐えきれず悲鳴を上げていた。 だが、これが政治屋というものだ。 古い幻想は終わり、新たな未来を作るために。 例えこの胃が壊れようとも重圧に立ち向かうこと。 これこそが、私が政治屋である理由であるのだと、今ならそう言える。 「頼むぞ。政治家さんが仕切ってもらわねばな」 「貴方の方が適任では……」 「ワシはほれ、エルフの女性を相手にするので忙しくての!ほっほっほっ!」 エルフの女性は、確かに美しい。 絵本に描かれる妖精が現実に現れたかのように。 「――頭痛薬も頼みます、ビダーシャル殿」 「よく効くのを、渡そう」 しかし、なんと前途多難であったのだろうか! もっと早く引退すべきであったと、私の胃袋と痛む頭が訴えていた。 マザリーニ回顧録 第五集『幻想の終焉』 第六章 『新たなる幻想へ』より抜粋・編集 ---- 色々なことを考えたり、色々なことを知ったり、 まるで毎日って虹みたいだなぁって思うんだ。 赤に、黄色、青に、紫に…… 何回見ても、どれだけ色の種類があるのか数えきれない。 毎日って、虹みたいだなぁって、そう思うんだ…… ----
「――引くことの雑費その他、っと……黒字御礼ありがとうございます、だぁね」 ノートの一番下が、黒ペンで締めくくられたことにマチルダは満足していた。 キングス商会の業務はどれも順調そのもの。 都市復興に伴う土木事業も、ヨルムンガント部隊によって快調。ボランティア同然で行える。 裏稼業をしていた頃のような、明日への不安ばかりの生活から逃れ、 マチルダの毎日は充実していた。 何も心配は無い。そう、何一つとして―― 「っん〜!!――テファー、そろそろお茶にしようかー?」 「はーい!今日はスコーンを焼いたの!」 「おい、いいね――っ!?テファ何それっ!?」 いや、たった一つ、心配があった。 「?」 マチルダの義妹、ティファニア。 ハーフエルフであり、王族でもあり、というややこしい生い立ちが将来に影響しないかどうか心配。 うん、それも一つだ。そう考えると心配は二つに増えるのかもしれない。 「そ、その格好どうしたのさっ!?」 「クジャさんの服、着てみたくて自分で……変、かな?」 もう一つの心配は――マチルダの目の前に堂々とぶら下がっていた。 ティファニアはずっとここ、ウェストウッド村と呼ばれる森の奥で過ごしてきた。 それであるが故、世間知らずに育ってしまった。 そこまでは良い。 服装の趣味が悪くなることは、良くこそは無いがまぁ許せる。 だが、それとティファニアが重なると、これはいけない。 むっちり白磁のような太ももを強調するブーツときわどいビキニパンツ、 上に身につけているベストから健康的なお腹が臍とともにベルトの影から見え隠れし、 その上の、どう形容しようが兵器なのであろう双球の下半分が存在感を示すかのように露出している。 その胸単体でも革命を起こせるほどの逸材なのに、ここまで来たら国がひっくり返るどころではない。 もう世界の終焉だ。ハルマゲドンだ。 そう女性のマチルダにすら思わせてしまうような破壊力が、そこにはあった。 「――はぁ」 「ど、どうしたの姉さん!?変なら言って!?ごめんなさいっ!?」 世間知らずなだけなのだ。マチルダはそう思った。 狼を知らない羊。自分の破壊力に気付いていない爆弾だ。 少々世間に出してある必要があるだろうか。 マチルダは考える。 何時ぞや忍び込んでいた学院にでも、ティファニアを預けて世間を教えてやるべきだろうかと…… ---- そういえば、記憶の色っていうか、魂の色も虹色だっけ。 色々なことを考えたり、色々なことを知った人の記憶って、 それこそ虹よりも虹色になってるんじゃないかなぁって、そう思うんだ…… ----
それはまた何時かの、星蛍が降りそうな夜のこと。 水面に寄り添うは双月の影か、 愛しの君か。 「風吹く夜に」 「水の誓いを」 何時かと変わらぬ逢引の文言に、 何時の頃からか、加わった一文がある。 「「偽らぬ月の下で」」 いずれが真と問うことなく、寄り添う月のように、 それが二人の合言葉となっていた。 「――ようやく、といったところですね」 国の復興もようやく軌道に乗り、こうして時間を作ることもできる。 「君とこうして会える日が愛おしいよ」 ただただ水面に寄りて、そっと触れあう。 それが永遠であればと願うように、柔らかく、優しく。 「もっと頻繁に会えれば良いのですけど……」 「分かっているさ。お互い、守る物が増えた」 共に、年若いが、やがて国を背負う者達。 未だ頼りないが、それでもその背は、受け入れる覚悟を帯びていた。 大切なものを、守るという使命を背負う覚悟を。 「でも、この時だけは」 「あぁ、この時だけは……『裸のアンリエッタ』だな?」 「もう……」 クスリ、と笑いあいながら、そっとその唇を寄せる。 ふわりと虹色をした光が蛍のように天に降っていった。 水精霊に惹かれた、恋人達の記憶の欠片だろうか。 それは、彼らの幸せを祈るように、どこまでも高く、高く…… この瞬間、抱き合う二人にとって世界は彼ら二人だけのものであった。 だからカサリと藪が揺れたことなど、気付かなくてもしょうがない。 「こげな大物ば釣れるなば…… はぁ〜、張っておくもんだべなぁ〜!!」 『釣りおじさん』と呼ばれた特派員が書き上げたスクープは、 瞬く間にハルケギニア全土へと広まった。 『アンリエッタ王妃とウェールズ皇太子、双月の下愛を誓い合う!』 この報は、復興の象徴として、概ね好意的に捕えられることとなるだろう。 二人はやがて、薄暗い月影の下だけではなく、 晴れ渡る太陽の下で抱き合うのだろう。 二人と、彼らの背負う者に幸あらんことを、 そう言いたげに、虹の欠片が優しく飛び交っていた。 ----
ボクは……今度死ぬまでに、どれくらい色々な色を見られるんだろうね? そう考えていくと、たまんなく不安になってしまうんだ…… 命って、永遠なんかじゃない。永遠じゃないから意味がある。 そんなことは分かってるんだけど……お別れのときはいつか来るって分かるんだけど…… やっぱり、孤独を感じてしまうことは、たまんないくらい怖いんだね…… ---- 貴族、ましてや騎士と呼ばれる身分に就くような貴族は、 それなりの行儀というものを求められる。 とは言うものの、行儀というのは至極当たり前のものが多い。 『口に物を入れたまましゃべらないこと』、 『破れたままの靴下を履かないこと』などと言ったごくごく単純なことばかりだ。 「……」 「お嬢様、お待ちをっ!お嬢様っ!!」 そしてもちろん、『廊下を無暗に走らないこと』という行儀もある。 あくまでも『無暗に』であり、絶対に走るなというわけではないのではあるが。 彼女には、廊下を走る理由があった。 行儀というものをかなぐり捨ててでも、急く理由があった。 「……」 「おじょうさ」 以前より少し伸びた髪が乱れるのも厭わず、 彼女はその扉を破れんばかりに開けた。 薄い雨雲から漏れる陽光が、慈しみをもってベッドを照らしている。 寝たきりであった病人の姿は、もうそこには無かった。 そこにあったものは―― 「――あら」 「……母様」 まだ、血色が良いとは言えない。 やや乱れた髪にも、まだ艶が戻ったわけではない。 それでも彼女はベッドの中、上半身を持ち上げていた。 狂ったような奇声を上げることもなく、 以前のような、理知的な光をその瞳に宿して。 「シャルロット……大きくなったわねぇ」 ゆっくりと、ゆっくりと、それは春の暖かさのごとく。 『騎士』の名を受けた少女の心が溶けていく。 『雪風』に封じ込められた針が、また時を刻み始める。 『人形』と揶揄された無表情な仮面が崩れていく。 おかしいぐらいにぐちゃぐちゃだ。 笑いたいのか、泣きたいのか、何がなんだか分からない。 行儀なんてどうでも良い。 タバサは、いや、シャルロットは、ようやっと自分の名を取り戻したのだから。 「お母様……!!」 「まぁまぁ、この子ったら――」 飛びついた衝撃で、ベッドが大きく軋んだ。 涙でシーツが染まっていく。 そんな娘を、母は優しく優しく撫ぜた。 それは時計の針が戻ったかのように、昔そのままに。
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「やれやれ――シルフィード、邪魔をしないようにな」 「きゅいっ!」 窓の向こうと扉の向こう。 これ以上は野暮天も良い所だと、執事と使い魔が場を辞する。 もう大丈夫。そう、悲劇の幕は閉じられたのだ。 〜〜〜〜〜 にんぎょうげきは もうおわり! にんぎょうげきは もうおわり! ぼっちゃん、じょうちゃん ありがとさん! にんぎょうげきは もうおわり! これでこちとら みせじまい! にんぎょうは もういないんだからさ! これでこちとら みせじまい! にんぎょうが もうにげたんだからさ! え?おはなしのつづきはって? おいおい それをきくのは おかどちがいさ! にんぎょうのことは しってるが かのじょは もう じぶんのみちを あるきだした どうなろうと しるはずがないだろう? でもそうだな ふつうにんぎょうげきなら こうはなしをしめくくるかな? ――こうして みんな すえながく いつまでもしあわせにくらしましたとさ めでたし めでたし―― ---- でもね、怖がってちゃしょうがないんだよね? 折角、毎日が毎日来るんだもんね? ボクは……ボクの物語を生きているんなら…… おしまいのところがめでたしめでたし、で終わるようにしたいなぁって、そう思うんだ…… ---- ――こうして、アクイレイアの住民を救った彼女、 『水都市の聖女』と呼ばれるようになったエレオノールは、 いくつもの栄誉と、いくつもの称号を受けます。 それは、彼女が求めていたもの。 彼女がどんな男よりも優れていると、自身で証明した光であったのです。 ですが、今の彼女にとって、最も必要なものは……他にあったのです。 ♪栄誉などいりはしない♪ 細い体で、歌いあげます。 ♪そんな実にならぬもの 男にくれてやればいいのだ!♪ 望んでいたものを、全てを退けて。 ♪あぁ 男なんて 男なんて♪ 真に必要なものは、“愛”であると、そう歌いあげるのです。
♪あの人の他に誰も要らない!!♪ 歌劇では、この後ピーコック卿の腕の中に抱かれる至るまでを描いていくのですが―― 史実では、どうだったのでしょうか? 実を言えば――彼女がその後結婚したのかどうか、全くの“謎”に包まれているのです。 これは、政治的な理由によりあらゆる資料がもみ消されたからとも、 エレオノール自身が、それ以上世間の表舞台に出ることを望まなかったからとも伝えられますが、 真相は、最早誰も知ることはできません。 ――ですが、1つ、おもしろい手掛かりが。 歌劇“エレオノール”の初演が行われたタニアリージュ・ロワイヤル座、 その眼と鼻の先、丁度トリステインが誇るアカデミーの見える通りに、そのお店はあります。 昔ながらのドアを開けると、すっぱくてほろ苦い、 なんとも刺激的で不思議な香りが、あなたを出迎えてくれます。 エレオノールの功績にはもう一つ、珈琲の焙煎を産み出したということが挙げられます。 すなわち、それまで薬用に煮出すだけだった豆を、炙ることでその香りを引き出す手法。 直接鉄板の上で、じっくりと火を通し、その後特殊なミルで粗く。 たっぷりのミルクとも相性の良い、極上の一杯はエレオノールが産み出した製法そのままに、 今も出されています。 ところで、このお店、どう呼ばれているか、想像がつきますか? エレオノール自らが命名したと言われるお店の名前は、 『銀の羽根亭』。 ――たまには、歴史に想いを浸らせながら、 刺激的で不思議な香りのする珈琲も、悪くはないのかもしれません。 ---- 毎日、笑ったり、怒ったり、泣いたり…… うまく、言葉にできないんだけどね、言いたいなぁって思ってたんだ…… 僕が、とっても嬉しいってことに、 そんな毎日が送れることに、 ボクの物語が続けてゆけるってことに…… ---- ポチョン、ピチャン。 遠くで誰かが泣いている。 誰が泣いているのだろう。 ――昔の自分?子供の頃の自分か? 「――ジャ」 遠くで誰かが呼んでいる。 誰を探しているのだろう。 「クジャ!!」 熱い鼻息で、まどろみの中から引きずり降ろされた。 目の前にあったのは、笑ってしまうほどの牛の面。 夢の方がまだ現実味がある。 「――あぁ、寝起きに君の顔はよろしくないな」
ミノタウロスの面構えというものは、 お世辞にも美的とは言い難い。 苦笑しながら、目を窓の外へ。 どうやら、雨が降ってきたらしい。 なるほど、空が少し泣いているというわけか。 「暢気なものだ。他人に準備をさせておいて二度寝とは」 別に、二度寝をするつもりだったわけではない。 たまりにたまった書類を―― 何しろ、王も王女も公務をクジャに押し付けて探求の旅へと出かけてしまったのだから ――徹夜続きで片づけていれば眠くもなろうというものだ。 だが、クジャとしては睡魔に襲われたというのは、弱みを見せるようでおもしろくない。 居眠りというのはそう美しい物でも無い。 だから、あくまでも格好をつけ、彼はこう言い訳をする。 「――今日という日を噛みしめての二度寝さ。至福だろ?」 実際、至福なのだ。 眼を閉じても、また開くことができるという安心感。 それが、たまらなく愛おしい。 「噛みしめるほどのものかね、今日という日が」 「あぁ、素晴らしいよ。詩にもあるだろ?」 「詩?」 「うん、こういうのだ――」 呆れたようなラルカスの溜息に、 クジャは笑いながら、朗々と歌いだした。 奇妙なことに、それはハルケギニアとは異なる言語で組み立てられていたにも関わらず、 音と一緒に、その意味も浸み渡るように伝わった。 Yesterday is history.≪昨日は過去のこと。≫ Tomorrow is a mystery. ≪明日は未知のこと。≫ Today is a gift. ≪だが今日は贈り物だ。≫ That's why it is called the present. ≪だからそれを「プレゼント」と呼ぶんだ。≫ 歌い終わると、クジャは満足そうに笑った。 いつもの妖艶な笑みではなく、子供のような笑顔。 プレゼントを受け取った、子供のような顔だった。 「――今日という日に『ありがとう』ってわけさ」 そう、『ありがとう』。 『あの、さ……』 『ん?何だい、ビビ君?』 『……ありがとう!』 かつて、他者を貶めることでしか自身を証明できなかった男にとって、 何よりのプレゼント。 それはたった一言の、感謝の言葉だった。 かつて、この世にいらぬ者として生を受け、 生まれ変わってもなお、その呪縛から抜け出しきれなかった者はこのとき救われた。
子は、親から産まれれば子となるが、 親は、子に認められて初めて親となる。 これほどのプレゼントがあるだろうか? 今日という日を、生きていても良いという、その喜びを受けること以上の? 「――さて、トリステインで美味しい珈琲が待っている。 準備は出来たんだろ?行こうか、僕達の舞台に」 今日はトリステインの王立アカデミーとの技術提携会議だ。 クジャはこの仕事に満足していた。 今までは他人から奪うことを主な仕事としてきた。 だが、今はこう思うのだ。 『誰かに感謝されるのも、悪くない』と。 「勝手な男だな……」 「それが、僕さ」 とはいえ、周囲の評価はそうそう変わることはない。 それでも構うもんか。 昔と違い、今の自分には『今日』がある。 無限の可能性に彩られた今日という素晴らしいプレゼントが。 だから、いつかその内、その『勝手だ』という評価を覆してやるぞなどと、 勝手気ままな野望を抱きつつ、クジャは執務室を後にした。 ---- 『ありがとう』 ……うん、一番、しっくり来る言葉だなぁって思うんだ。 毎日が毎日来るってことに、ボクがどう思うかって。 ずっとずっと続く毎日じゃなくて、一日しかない毎日が来るってことに。 「あいにくの雨、ねぇ」 「まぁ、ちょいと暑い日が続いたからいいんじゃねぇの?」 「出かける予定だったのに――」 「あ、でもほら……」 「あー、こりゃすぐ晴れそうだな」 「じゃぁ、晴れたら出発ね!」
雨だったり、晴れだったり。 「今日はまず仕立て屋でしょ、それと靴屋と……あぁ、お化粧品!これは外せないわ!」 「わざわざ買わなくてもいいんじゃねぇのー?」 「ビビ・シュヴァリエ・ド・オルニティアの名を受けるのよ?着飾らないでどうするの!」 「相棒の受勲式であって娘っ子のじゃねぇと思うんだがなぁ〜……」 暑かったり、寒かったり。 毎日って本当に色んな色だよね…… それこそまるで…… 「良いじゃない!折角の晴れぶた……ビビー?行くわよー?」 「……あ、うん!」 「どうしたってのよ……あら!」 「お、こいつぁなかなか見事な……」 雨上がりの空にかかる、この大きな虹みたいに、ね…… みんな…… ありがとう…… これからも、よろしくね! ボクの記憶は…… 空の続いている、この場所に、あるよ!! -------------------------------------------- Thank you for All "Final Fantasy IX" staff ,All "The Familiar of Zero" staff ...and of course, ALL OF YOU!! THE END --------------------------- さて、本編が九を掛けましたる八十一幕(プロローグ、エピローグ含む)、 幕間劇が九幕の合わせましたら九十幕。 長きに渡って上演して参りましたお芝居もこれにて閉幕、とさせていただきとうございます。 正直、残した設定もありますので、番外編でも書きたいのですがねw(需要あれば避難所にでもいずれ) 精神的に参っていた2年前の12月より、現実逃避に始めた (それも最ほぼノープランで!)にしちゃそれなりに書けたと自画自賛しますが、 いかんせん、駄文だなぁと思うことも多々ありまして、 約2年、こんな拙作にお付き合い戴き、ありがとうございました! あ、最後に1つ。 拙作では、よくFF関連のワードをサブタイトルにしているのですが、 今回の『Message〜虹〜』は特に意味アリなタイトルですので、是非ググってくださればいいなと思います。 FFファンの1人としては、切に。 それでは、駄文に駄文を重ねました。 長きに渡り、お目汚し、失礼いたしました。
おつ
長い間本当に乙でした。 アニエスとかマチルダとか、少々前途多難な人もいますが、 ファルコン号で空のかなたへ飛び立ったときのようなすばらしいエンディングでした。 冒険の思い出を、ありがとうビビ。
345 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/16(木) 11:34:55 ID:b4h3IMWj
::+ : ._: .:ムムー 、i、 .,,r'"`: : : : .`''‐,、 -i、 ._,ィ′ ゙'i、 .,,イ^: .、 、 ゙ュ : ”゙'"` .,、 ll6h' 〔 .l" .l° `゜` : z゙l ゚!,、 丶 -. .,l: il : ,,、 、,‐゙゙ll,,,、 ,- ...l゙ .〃./′ .゙゙lllll,,,,,,,,、: `゙`,,,,e'″ ,l″ : ゙゙゙゙゙゙゙lllllll゙゙゙’ " 、テ − : ,llll'llll. 、 :| .` ." ., '. 'lil`!ill.イ " l! 'k .l、.,,,,ll ,,.lll゚、 2 l| .゙l, .ネ .゚!゙},il:゚~.トノ l| ゚i、 、: ` ,,",. l| ヘi、,/、,_,_,,,,,l,,iliiliiiili、 ." ,llllllllllllllllllllllll!!l″ : ゚|: : : : : : : 」: 'll!l!!l!!!!ll゙゙ ̄`: : : :
黒魔道士の人、長らくお疲れ様でした。 クロス先は知らないんだけど、毎回の投下を楽しく読ませていただかせてもらいました。 次回作も楽しみにしています。
お疲れ様でした。 ホントいい話でした。
黒魔道士の方、お疲れ様でした。 すばらしいエンディングをありがとうございました。 この余韻で溢れるスレを汚すようで申し訳ないですが、 20:50分より第4話を投下させて頂きます。
4話 ルイズにとって、シマムラ・ジョーは困惑する程捉えどころの無い人間だった。 使い魔として生きる事を承諾しながらも、自分勝手に毎日を楽しんでいるようだ。 かといって、主人の自分に対して非礼を働くような事は一切なく、 主従が逆転しているのではないかと思うほど、優しい兄のように接してくれている。 と思えば、ふらりとどこかへ出かけたかと思うと、男女構わず生徒と仲良く接している。 実は、貴族同然の待遇を受けている立場と彼の持つその甘いマスクから、 女生徒の中で密かに人気を高めているらしい。 何より彼女が困惑している所もそれに近いような所だった。 あの笑顔と向かい合うと、どうも自分のペースを掴めないのだ。 彼と一緒に授業を受けた事がある。 それは彼が魔法に興味をもっていた為だったが、彼の見たい魔法はその授業中に見る事は出来なかった。 いや、私には見せる事が出来なかった。 教師であるミセス・シュブルーズの錬金に彼は感嘆していたのだが、 彼女の後に名指しで錬金をするよう指名され、見事に失敗した。 失敗と言っても錬金が失敗したような可愛い失敗ではない。 いつものように失敗魔法が引き起こした大爆発で、教室を半壊させる程の大失敗だった。
その後ジョーと二人で教室の後片付けをしていたのだが、私は泣きたい気持ちを抑えるのに必死だった。 クラスの皆には馬鹿にされ、きっとこの使い魔も同じように思っているだろう。 彼女は彼を正視する事が出来なかった。 だが彼は、彼女の頭に手を置き、「大丈夫。いつかきっとうまくいくよ」と微笑んでいたのだ。 本来ならば「何も知らないくせに」と、素直に言葉を聞く事は出来ないのだが、 何故か彼の言葉が彼女を安心させたのだ。 大丈夫。いつかきっとうまくいく。 今までも血のにじむ様な努力をしてきた。そのいつかが来る事を信じて。祈って。 彼女は忘れてしまっていたのだが、そのいつかはもう来ていたのだ。 あのサモン・サーヴァントの儀式を成功させたではないか。 そして目の前に、その使い魔がいるではないか。 そう思うと、彼の言う「いつか」がすぐ目の前に来ているように感じられた。 そうして彼女は小さく頷き、ぽろぽろと涙を流した。 そんな経緯を経て、彼の事を考えるとどうしても自分のペースを保てなくなってしまったのだった。 彼に何故そのような包容力があるのかは、彼の過去を一切知らない以上、分からなかったが、 その包容力によって自分の意識が少しだけ変わったのは確かなのである。 これは恋なのでは、と疑ってみたが違うような気がする。 貴族が平民に対して恋をするなど、彼女にとってはありえない話だし、 それを差し引いても、彼は恋愛対象ではなく、それ以外の何かのように思えるのである。 それは一体何なのか? これが彼女を困惑させている大きな原因だった。 答えはまだ出ない。でもそれは、とても暖かい何かだ。
------------------- 時間は少し遡る。 ジョーはコルベールと共に、学長室に通されていた。 それは彼の左手のルーンが、ある書物に記されているものと酷似していたからだった。 それを発見したコルベールは、大慌てで学長にこの「大事件」とも呼べる事実を伝えたのだと言う。 「ガンダールヴ?」 とジョーは訊ねた。 すると学院長オスマンは、 「これから話す事はとても重大な事なので、他言はせぬように」 と前置きをした上で話始めた。 遥か昔、偉大なる始祖と呼ばれるメイジ、ブリミルが4人の使い魔を呼び出した。 神の左手 ガンダールヴ 神の右手 ヴィンダールヴ 神の頭脳 ミョズニトニルン そして最後にもう一人、記す事さえはばかれる。 彼らは6000年前にここハルゲニアの地に降り立ち、人間達の基礎とも言える魔法を人々に与えた。 彼が始祖と呼ばれるのはそれだけが理由ではない。 それまで先住民によって支配されていたこの世界を、彼は解放したのだ。 その偉大な業績と、使い魔達の圧倒的な力は今も尚伝えられ、 それ故に「始祖」として絶対的な信仰の対象になっているのだった。
そしてその使い魔の一人、ガンダールヴ。 そのルーンがジョーの左手に刻まれているのである。 そして、ガンダールヴが呼び出されたという事は、その主も普通のメイジではない。 本来魔法とは火、水、風、土の四つの元素から導き出すものだ。 しかし始祖ブリミルはその四つの系統の使い手ではなく、 「虚無」と呼ばれる系統のメイジだった。 それはブリミルの死と共に失われ、伝説となっていたのだ。 つまり、ガンダールヴを呼び出した者は、伝説の再来、「虚無の担い手」に違いないのである。 これによって、二人の教師はルイズが何故魔法を使えないのかを知った。 彼女は魔法を使えないのではなく、使う術を知らないのだ。 何らかの形で虚無の魔法の使い方を知った時、彼女は初めて自分が何者なのかを知るだろう。 だが、それは今ではない。 伝説の再来ともなれば、それはこの学園内で収まる話ではなくなる。 トリステインに収まらず、このハルゲニアの地に住む全ての人々にとっての伝説なのだ。 この事実を易々と広めてしまっては、下手をすれば戦争すら起きかねない。 それ程の大事なのであった。 オスマンはジョーに、口外する事を禁じた上で、一つだけ彼の望みを伝えた。 「どうか、彼女を守ってやってくれ。」と。
------------------ 教室は散々な有様だった。 机や椅子の破片が吹き飛び、ガラスは粉々に砕け、しばらくこの教室で授業は行えないだろう。 ルイズは黙々と作業している。小さな肩が、なおさら小さく見えた。 彼女は自分を卑下しているかも知れない。 魔法が使えぬからと、使う術を知らぬだけなのに。 それをこの世界の誰も教える事が出来ないだけに、彼は歯がゆさを感じた。 少女は彼に背を向け、なおも作業をしている。 「ルイズ」 そう言って彼が近づくと、顔を伏せたままこちらを向いた。 彼はありったけの心を込めて、彼女の頭をなでた。 「大丈夫。」 そう言うと、沈んだ目で「何が?」と彼を見つめた。 「大丈夫。いつかきっとうまくいくよ。」 真意を伝えられないもどかしさを感じながらも、そう伝えた。 少女はこくりと頷き、そして時間を忘れる程泣き続けた。
第4話終了です。お目汚し失礼しました。 5話は書きあがり次第投稿します。 ふと疑問に思ったんですが、SS作者の皆さんって原作も読んでるんですかね? 私は一切目を通して無いんですがw
どうなんだろ?原作読んでるならギーシュとの決闘騒ぎの話でギーシュが食堂で絡む相手をシエスタにするなんていう暴挙は出来ないと思う。
何度目だよその話
別に良いけど、そこで「w」を付ける神経は理解できん。
大した理由なく喧嘩を売り歩かないような被召喚キャラが、噛ませ三銃士が一番目のギーシュと戦えるようお膳立て シエスタとのファーストコンタクト及びフラグ立てに適している クロス発祥でも半ばテンプレ化した使いやすい展開
009乙です! 大抵は読んでるんでしょうけど読んでなくても問題はないかと 一時期、それを理由に作者を追い出そうとした馬鹿共がいましたが そういう手合いは無視して一向にかまいません。 そも、テンプレに書かれてるわけでもないですし。 続き楽しみにしております。
わざわざ波風を起こすのは浅はかな馬鹿のすることだな
こんなところじゃ真偽なんて分からんからな、確認なんて出来るわけない だから別に読んで無くても良い…それを一切こちらに気づかせなければ なんで言ったの? 文末に『w』までつけて
本当に残念でした、貴方の作品楽しみにしてたのに
>>362 毒吐き行け
何のためにあんなスレがあると思ってるんだ
せめて一行に書けよwwww
ああ、ごめん…
んじゃ毒吐きいくか
草を生やした程度でぐだぐだ言うなよ お前ら乞食のくせに何様のつもりだ
ハルゲニア…
最近テンプレに書かれて無い を繰り返す妙な子もいついてる
読み手が上から目線とかバカ過ぎだろ
使い魔の記述で思い出したけど リーヴスラシルという名前から リープスラッシャーとか連想しちゃって ゲシュペンスト召喚とか考えたけど もう来てたのね
アクアビットマンや弱王や干を一発ネタで……
>>354 作品がつまなかろうと原作を読んでいなかろうと
このスレに投下するのは問題無いが
そのコメントが俺みたいなのに燃料投下になることが思い至らないその低能、
もしくは判ってても思わず言ってしまう煽り耐性の無さ救いがたいな。
これが投稿者が煽り屑に転生した瞬間である
草の一つくらい生やしてもいいかなと浅はかな考えでした。 質問は純粋な疑問からでしたが、荒らすような事になってしまい申し訳ありませんでした。
「w」の是非はともかく 二次創作をするに当たって原作を読まないと言うのは如何なものかと
二次創作に「原作読んでません」は禁句なんだよ。 さらに草まで生やしてんだから、もうどうしようもない馬鹿だな。 黙ってりゃよかったのに。
アニメ見てるんならいいんだろうが
アニメ版準拠でアニメ版の展開範囲でならな
アニメは見てますがそれは置いといて、スレを荒らすようなレスをした事を反省しております。 今後気をつけます。失礼しました。
>>358 モンモンの香水やらケティがどうのこうのってイベントを回避、もしくはスルーしつつギーシュと戦うとなると、
ちょっと頭をひねる必要があるだろうしなぁ。
そういう意味ではシエスタにはある意味、犠牲になってもらう必要がある。
まあ、ギーシュとの決闘イベント自体を起こさないって手もあるが、
それだと以降ギーシュを「友人その1」的なポジションに置きにくいし。
人はなぜ自ら地雷を踏むのか
その原作の出来もルイズが家出したあたりから劣化してるからな・・・
召喚からギーシュ戦までを、やったことにして一気にその先からストーリーを始める手もある。
>>372 アクアビットマンとかトリスティンがコジマでヤバいw
ところで首輪の辺りから霞スミカの声を出して会話する首輪付きけものを召喚とか
何で地雷を踏むのかって、その発言を地雷とわからない無知だからだよ 紛争地帯の子供と同じ
紛争地帯の地雷を踏むのは無知だから、てのは否定したい
井上和彦とくぎゅの声で脳内再生されるので女共が放っとかない感と 天然ジゴロ兼癒し系ホストなジョーという意味でルイズがメロメロなのも判る。 他の始祖系使い魔の配置次第だろうけど、先が楽しみなので続けて頂きたい。 ローカルルールは尊重すべきだろうけど、ROM専やってるとなんだか 不慣れな投稿主を排斥したいだけ? に見えてしまうこともままある。 鯖移転やら避難所生活でドタバタしてた直後だけに、できれば 新規の投下に関してはもちっとまったり行きたいなぁ、と……だめ?
なぜ地雷を踏むのかって?そこに地雷があるからさ スコッパーはホント地獄だぜヒャッハー
夜闇の人しばらくこないな 楽しみにしてるのに
ラスボスの人と聖帝の人も最近見ないから悲しいぜ
誰がなんと言おうと、ホロと静留さんを待ち続けるのさ。
ゴーオンジャーの人早く来ないかなあ めちゃくちゃ楽しみなのに
ヴァリエール爆発 ルイズが召喚したのはミカンだった。しかしそのミカン何やらカチカチ音がする…
同じような一発ネタで檸檬を召喚 ただしこっちは本当にただの檸檬
トマトを召喚 もちろんあの映画の
トマトの次は人参か…なんという…
トーマとカカロットを召喚とは異色の組み合わせですね
かわいそうなトーマ 思いがかなわずに身を投げたらユーリのいない異世界に
サイヤの使い魔の人、カムバーック!
ディシディア続編も発表されたしFFボスキャラの人達待ってるのよ!
悟飯「シェンロン、おとーさんを元の世界に戻してください!」 神龍「拒否された」 悟飯「まじっすか」 神龍「まじっす」
405 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/17(金) 15:57:07 ID:qJ7kggAK
はじめまして、ルイズの世界にハドソンソフト「煉獄弐」の主人公が召喚されたらどうなりますかねえ?
まずsageなさい。 というかかなり古そうだな。
メモリーセルはともかくエネルギー補給が無理な気がする
遅れましたが黒魔道士の方今まで楽しませていただきありがとうございました!
特にオチの無い単発ネタを落そう あれは私が360000…いや14000回召還魔法を失敗した時だったか まぁいい 私にとってはこの世界の話で、君たちにとっては多分…異世界の話だ 彼には72通りの名前があるから何と言えば… 確か最初に会った時は…そうイーノック 確かそういう名前だった あいつは最初から言う事を聞かなかった 私の言うとおりにしていればな まぁ いいやつだったよ モンモンがギーシュの二股に気付いたのは メイドが香水の瓶を発見した時だった メイドを救うため、イーノックの長い旅路が始まる 「イーノック そんなルーンで大丈夫か?」 「大丈夫だ 問題ない」 「ああ!イーノック!私の恋人たちが嫉妬で怒っています さぁ行きなさいヴァルキューレたち!私の憂さをハラスノデス」 『神は言っている まだ死ぬ定めでは無いと』 「イーノック そんなルーンで大丈夫か?」 「一番いいルーンを頼む」 『神は言っている ギーシュをボコれと』 「そいつはガンダールブ 始祖の残した伝説のルーンの一つだ 上手く使いこなせよ」 「イーノック、使い魔の持つ唯一にして絶対の使命 それは主人に尽くすことだ お前は常に私の事を考え、私にとって最良の未来を選択していけ」 「初めましてだな ガンダールブ」 「そいつはワルド 私の婚約者だ」 「また途中で連載ストップか」 「あいつは忍耐力と文章力が無いからな」 「続きはこれを読んでる連中に書いてもらうさ」
こんな小ネタで大丈夫か?www 大丈夫だ、問題ないwwww
>>397 ふと思い出した小ネタをとりあえず投下してみます
「傷物の使い魔」
412 :
傷物 :2010/09/17(金) 19:34:57 ID:S+69+iSH
散り行く最中に彼女は思った ”私たちが…戦争がない世界で…軍とは無縁の形で出会ってたら…” 彼女は考えてもせん無きことと、願うことをやめた 虚空の空にまた命が散る、それは彼女とその同志たちが望んだ世界の常 彼女もまたそれに殉ずるつもりでいた しかし、彼女にその時は訪れなかった 光に包まれ、鋼鉄の棺桶がひしゃげるより前に彼女はそこへ招かれた まるでコントのような優しい爆発に巻き込まれ、青空の下へ 周囲には黒マントの少年少女、目の前にはピンクブロンドの少女と眩い禿頭 そして隣には 彼女が思いを寄せた、心と身体を重ねた、赤毛の男が一人 うわ言で自分の名を呼んでいる 信じられない、望んで叶うとも、叶える資格など無いと思って、望みは捨てた しかし、頬を伝う暖かい滴が、自分の本心を写す鏡だった ああ、結局、自分は彼を求めずにいられないのだ 疵物の自分を知らずとも受け入れた、この男を 「・・・やり直しを要求します!」 「確かに人間が二人も召喚されたなどと前代未聞だが・・・」 ピンク頭が何事か吼えているが無視する あまりにやかましかった所為か、彼が目を覚ました 私は彼の頬に手を添え、仕切りなおすつもりで声をかけた ここが私たちにとって無限の開拓地になるかは分からない だが、拾ったこの命と機会を受け入れて 彼と共に歩んでいこう・・・ 「・・・おはよう、アクセル」
413 :
傷物 :2010/09/17(金) 19:37:51 ID:S+69+iSH
〜オマケ〜 その後、トリステインの虚無の使い魔がどちらになったのかは定かでないが 当時はゼロと馬鹿にされ、自信を失いつつあった担い手をフォローしたり茶化したり 年長者として貴族のボンボンに再教育を施したり 盗賊に盗まれた学院の宝だという錆びた刀を見て苦笑したり 親しくなったメイドの少女の故郷の村にて子供たちと再会したり 同じく虚無の使い魔となったかつての同志と対決したり 様々な騒動、事件を伝説に残した彼女たちが波乱と活力に満ちた生を送ったことをここに記す スーパーロボット大戦Aよりレモン=ブロウニング召喚でした 彼女の言葉とはちと違うけれど、やり直しの機会を得て、少しだけ幸せになったかもしれないレモン様でした
乙です もっと詳しく書いてほしいですね
リアルレモンちゃんだなw あとは死にかけたところを召喚された&髭面の中年にキスされた衝撃でアクセルがアホセルにとか 我はウォーダン・ユミル!耳長おっぱいの剣なり!とか
リーチも発売したし、虚無と最後の希望の人こねーかなぁ
バルゴンの人の続きが気になる。 月光遮る悪魔の虹だ
夜闇の最新のやつがまとめに未登録だったのでドキドキしながらwiki初編集しようと思ったらNGユーザーになってた おまけに避難所もいつの間に書き込みできなくなってた 巻き添えオソロシス 誰か登録頼む……
419 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/17(金) 22:50:00 ID:VjPvihyK
ウルトラの人、いつも素晴らしいストーリーをありがとうございます。 毎度楽しみながら読ませて頂いております。 今回は回想形式とはいえ、メイツ星人にムルチ、ゾアムルチと来ましたか。 「帰ってきたウルトラマン」の有名な11月の傑作群のひとつですね。 図々しいかもしれませんが、帰ってきたウルトラマンが大好きな僕としては、 他の11月の傑作群に登場したゼラン星人、プルーマ、キングマイマイ、レオゴンも出して欲しいです。 特にゼラン星人を登場させるのでしたら、原作通りに頑是ない少年に化けて 才人とルイズ、ウルトラマンAを挑発するあのやりとりをやって欲しいです。 (平賀才人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 いや、2人合わせてウルトラマンAと呼ぼうか) とかテレパシーで呼び掛けて、挑発に憤慨した2人が憎悪に駆られて、 狂気の形相で少年に化けたゼラン星人に 襲い掛かるシーンを読んでみたいです。 またレオゴンは、ビオランテの雛形でもありますよね。 あんな巨大な悍ましい姿の巨大な怪獣ビオランテとウルトラマンが戦うのは 僕個人としては夢の対決だと思っています。 まあ、作品枠が違うので100%無理だと思います。 ガディバがレオゴンに憑依して ビオランテになるってのは、ちょっと無理がありますね。 以上、僕の勝手かつ個人的な意見でした。 ウルトラ5番目の使い魔の作者さん。 真に受けないでくださいね。
うぜえ 人に要求しないで自分で書けよ
>>419 ビオランテ
ティガ&ダイナのクイーンモネラが近いんじゃないでしょうか?
うわあ・・・なにこいつキモい・・・
キモイっていうか普通に気持ち悪い
ガチムチなおっさんキャラの召喚は無いかな? 具体的なレベルを言えばFF11のガルカくらいのヤツ
>>416 逆にリーチにはまり過ぎちゃってしばらく戻って来れなくなったりして・・・・
まとめにスネークがあったけど…おっさんではあるがガチムチといえるかどうかは…(一応筋肉はある)
リュウはけっこうgtmtじゃない? 続きがきになるところですね
田亀源五郎作品からの召喚ですね、わかります。
ガチムチ・・・・ クレイトスさんか!
筋肉ならいっそバルバトス・ゲーティアを……
>>430 D2まだ途中で積んでるから詳しく知らないが
なんか別シリーズに出てくると色々とイチャモンつけて勝手にキレるんだっけ
アイテムとか術とか・・・出オチじゃん!!
ガチムチといえば
黒魔完結おめでとうございます
と、ディシディア12が発表されたこったし
そろそろ腕のバランスが人類としてはややおかしい兄さんにご足労していただいてもいいかな?
でなければ・・・ヨーゼフ、ヤン、マッシュ、バレット、親父、スノウ
ワッカはぷよぷよになったらしいから除外ですね
いっそ鉄巨人でもいいか
っていうか、最近のRPGには筋肉が少なめだと思う
>>431 リメイクされたデスティニーだと
放置レベルアップを仕掛けて一定時間たつと何処であろうとバルバトスと戦闘になる
難易イージーでバルバトスとの戦闘になると即死レベルの大ダメージ技を戦闘開始直後にぶっぱなしてくる
アイテムとか術を使うとカウンターはデスティニー2じゃなかったっけ?
まぁ余談だなw
魔砲使い黒姫を召喚 時期によってキャラが全然違うからタイミングが問題だな。
どのタイミングでも使い魔なんかやりそうに無い件
やっぱ黒姫よりゼロのほうがいいか。
じゃああれだ、『まんが日本昔話』の『黒姫山のりゅう』より黒竜を呼ぼう。 ルイズを嫁にするために領地を何周もして、最後に正体をさらしちゃう。
“ストーム1”平賀才人 マザーシップ撃墜後、援護を行っていたスカウト4の生き残りに自らの権限を託す。 その直後、マザーシップの爆発に巻き込まれ行方不明となる。
>>424 別スレのクロコダインとかどうだろうか
人外だけど
ライブアライブの知力25の人を召喚とか たぶん暇があるごとに空気も読まず腹筋とかしてそう
筋肉の召喚・・・幽々白書のトグロ弟とか
l
>>440 フーケ後の舞踏会で月夜をバックにベランダでオレンジジュースを飲むんだな
>>440 筋肉といえばイダテンの兄貴しか考えられない
ヤスケンラグナロクのトゥーゲント兄貴とかどうでしょうか
コングマン呼ぼう 筋肉の躍動と子供達のヒーローさ
>443 しかしそのイダテンは田丸先生のコミック版の主人公であった。 ……連載が進むにつれて貧弱になるんだよなぁ。
>>433 黒姫ときいて元関脇黒姫山こと現在の武隈親方を思い出した俺って…
>>446 よろしい。ならばベンテンの姉貴だ。
愛超兄貴で見(魅)せた鍛え抜かれたボディはまさに女神と呼ぶにふさわしい。
>>424 ガルカといえばジラMか世界クエ後のザイドとか呼べそうだな
黒魔導師の人、長い間乙でした。私もずっと楽しみに見ていました。最後まで面白かったです。 皆様こんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、14話の投下準備できました。 問題がなければ、10分おいて15:50より開始いたしますのでよろしくお願いします。
第十四話 傷の記憶 うろこ怪獣 メモール 登場 六千年間、ハルケギニアという土地は大きく分けて五つの国によって統治されてきた。 アルビオン、ガリア、ロマリア、ゲルマニア、そしてトリステイン。 始祖ブリミルの血を引く王家の治めるアルビオン、ガリア、トリステイン。 都市国家の集合体であるゲルマニア、もっとも小国ながら始祖の教えを伝えることで宗教的に 四国の上に立つロマリア。 それらの国が様々に絡まりあうことで平和が保たれてきた。 けれども、どんな世界のどんな国であろうと統治するのが人間である以上、その暗部で なされることには地球と比べてもなんら変わりはしない。 ゲルマニアでは、現皇帝アルブレヒト三世が親族すべてを幽閉して皇位につき、アルビオンでは レコン・キスタの内乱が集結したばかり、ガリアでも現国王ジョゼフ一世が弟を暗殺したことは 公然の秘密となっている。それはむろん、トリステインも決して例外ではない。 現在でこそ王女アンリエッタの手腕の元で権力の集約と浄化がおこなわれているが、数十年前、 名君と呼ばれた前々王フィリップ三世の死後は、たがが緩んだ中で賄賂、脅迫、裏切りが貴族のあいだで 日常のようにおこなわれ、その中で大勢の人が地位や財産、あるときは命までも失ってきた。 だが、そんな醜い争いの影で犠牲にされてきた罪のない人々を、いくら闇に葬ったとしても、彼らは それを忘れることは決してない。 ある日突然、父を、母を、家族を奪われた子供は、いったい誰を憎み、どうやって生きていけばいいのだろう…… 夏の終わりの冷たい雨が降るある日、コルベールの研究室の掃除を手伝っていた才人は、 突然やってきたミシェルを迎えていた。 「えっと、とりあえずこれで体を拭いてください」 才人はコルベールの荷物の中から取り出したタオルを、ずぶ濡れのミシェルに差し出した。 「ありがとう」 受け取ったミシェルは、それを使って濡れた顔や体を拭いていった。本当は着替えるのが 一番なのだろうが、あいにくこの小屋にそんなものがあるはずがないので、掃除の最中に 見つけた小さなストーブに火を入れた。 「これでよしっと……それにしても、よくおれがここにいるってわかりましたね」 「正門で会った教師に尋ねたら、ここにいると聞かされた」 「ああ、コルベール先生と会ったんですか。いや、それよりもアルビオン以来ですね。お元気……」 そこまで言いかけて、才人は自らの配慮のなさに失望を覚えた。このひどい雨の中、銃士隊の 制服でもないぼろを着て、雨具もなしにやってきたミシェルがただならぬ状況にあるのは、少し 考えればわかることだ。 「なにか、あったんですか?」 尋ねると、ミシェルは才人に向かって小さくうなずいた。 ともかく、濡れた服のままでは体に悪いので才人が毛布を手渡すと、ミシェルは羽織っていた ぼろを脱いで、その下に身につけていた質素な肌着の上から毛布をまとった。そのとき、わずかに 触れたミシェルの手は、まるで氷のように冷たかった。 才人は、すぐにでも話を聞こうと思ったのをやめて、椅子を引いて彼女をテーブルにさそった。 ミシェルは黙って椅子に腰掛け、才人もその小さな木製のテーブルの反対側に座ると、 ついさっき自分が飲もうとしていたお茶でもてなした。
「えーっと……どうぞ、粗茶ですが」 「……」 テーブルに二つ置かれたティーカップから、温かな香りが立ち上って鼻腔を快く刺激する。 とはいっても、女の子を自分の部屋に招きいれたことなんかない才人は、お茶の香りなんか わからないくらいに内心どぎまぎして、心臓の音が大きく高鳴っていた。 やべ……この人こんなにきれいだったっけか? 間近で顔を見ると、アルビオンで彼女を背負ったときのちょっと恥ずかしい記憶が蘇ってくる。 なにせ普段はコルベールが研究台として使っているテーブルなので、二人が向かい合って 座ったら、軽く手を触れ合えるくらいに顔が近づいてしまうのだ。 ”ルイズやシエスタもそうだけど……女の子って、いい匂いだよな” そんなことを考えている場合ではないのはわかっていても、男というのは悲しい生物である。 第一、才人より年上といってもミシェルもまだ少女と呼んで充分な若々しさがある。 おまけに、それでもうミシェルの吐息が顔にかかりでもしたら、初心な才人が我を失うには 充分すぎるくらいであった。 どうしよう、時間が経ったからお茶は苦くなってるんじゃないか? というか、お茶菓子でも 出したほうがいいのか? いやそんなものないし、というよりもなんと言って話を切り出せばいいんだ? ああ、思えばルイズやキュルケやシエスタは黙っていてもあっちから好き放題しゃべるから 苦労しなかったけど、こっちから話しかけるにはどうしたらいいんだろうか。 才人は久しぶりに自分がなぜ地球にいた頃もてなかったのかを思い出した。 でも、本当の男と女……いいや、本当の信頼というものはそんな上っ面だけのものではない。 ミシェルは才人の淹れたお茶を無言で口に運んでいたけれど、やがて中身を飲み終わると ティーカップをおいて、口元に微笑を浮かべた。 「ありがとう。おかげで体が温まったよ」 「あっ、はい!」 その一言で才人はようやく我に返ると、自分もお茶を飲み干した。でも慌てて飲んだせいで むせてしまい、それで笑われてしまうと、ほんの少しなごんだ空気が二人のあいだに流れた。 「よかった。てっきりしばらく会わないうちに人が変わったのかと思いましたよ」 「変わらないさ。いや、曇っていたわたしの目を覚まさせてくれたのはお前だ。もうわたしは 昔のわたしに戻る気は無いよ」 両者は顔を見合わせると、ようやくそろって微笑みを浮かべた。 「お茶、もう一杯いかがです?」 「いただこう。こんなものを飲むのも久しぶりだ」 「あの……アルビオンのあとで、アニエスさんのところに帰ったんじゃなかったんですか?」 才人が尋ねると、ミシェルはもう一杯注がれたお茶の温かさを確かめるように答えた。 「いや、形式上私は戦死したことになっているからな。銃士隊でも私の生存を知っているのは 隊長しかいない。私は、死んだことになって密かにトリステインに残ったレコン・キスタの 残党や、王家に不満を持つものたちの動向を調査していた」 「それで、そんな格好を?」 「そうだ。この姿なら貴族どもは汚いものと目を逸らすからな。それに、これが私の本当の 姿のようなものだ……」 自嘲的につぶやいたミシェルに、才人は以前聞いたミシェルの過去の話を思い出すと、 苦しげに首を振った。
「昔は昔、今は今でしょう。少なくとも、おれは今のミシェルさんがどんな人なのかを知ってます。 格好なんか、どうだっていいでしょう」 たとえ相手がどんな姿をしていようと、変わらない態度で接する。そうでなければ、地球人は いつまで経っても宇宙の仲間入りを果たすことはできない。かつてババルウ星人は、人間は 相手を外見で判断する愚かな生き物と言ったという。才人は、正しい答えになったかは わからないが、少しでもミシェルを元気づけたかった。 「おれたちの部屋に行きましょうか? もう少し経てばルイズたちも帰ってくるし、なにか困った ことになってるんなら、キュルケやタバサも力になってくれると思いますよ」 けれどミシェルは静かに首を横に振った。 「いい、わたしはお前に……お前だけに、会いに……会って、別れを言いに来たんだ」 「わ、別れ!?」 思いもよらない言葉に仰天した才人に、ミシェルは事のあらましを説明した。 「ああ、我々が内偵していた不平貴族たちの一団が、今晩あたりにでも決起するとの 情報がはいった。これをつぶせば、もうトリステインに王女殿下に反抗する勢力は無くなる。 けれど、それだけに奴らも窮鼠と化してくるだろう。手だれのメイジや傭兵を相手に、生きて 帰れる自信は無い。だから、その前に一目お前に会いたかった」 「なに言ってるんですか! だったらなおのこと、助太刀させてもらいますよ」 テーブルを強く叩き、上半身を乗り出した才人の目には強い闘志が宿っていた。あのときと 同じ、苦しんでいる人を放っておけないウルトラの誓い。でも、ミシェルはそれを受け入れる ことはできなかった。 「いや、これはレコン・キスタを利し、不平貴族たちを肥えさせてきたわたしがケリをつけなければ いけないことなんだ。お前たちを巻き込むことはできない」 「そんなこと関係ねえよ! おれたちは、何度もいっしょに戦った仲間だろ!」 「すまない。でも決めたことなんだ……それよりも、死地に赴く前に、お前にだけは話して おきたいことがあるんだ」 「おれに、だけ?」 不思議な顔をした才人に、ミシェルは胸に手を当てて少し照れくさそうにした。 「アルビオンで、裏切りが発覚して処刑されるわたしを、お前は……お前だけは血を流してまで かばってくれた。もう生きる価値もない、ゴミクズのようだったわたしに、生きる希望をくれた。 あのときから、お前の存在はわたしにとって太陽だった」 「そんな……おれなんか、ただ自分の気に入らないことのために暴れただけです。最後に 生きる決断をしたのは、ミシェルさんの勇気ですよ」 誰かを救いたいとは思っても、自分を救世主だなどとは才人は考えたことはなかった。 他者への愛は崇高でも、それに快感を覚えては他者愛は自己愛になり、醜悪なエゴイズムに 転落する。 でも、才人はミシェルに頼ってもらえたことは素直にうれしかった。ルイズがそばにいるときと 同じように、胸がカァッと熱くなり、どこか幸せな気持ちになってくる。 ミシェルは、そんな邪心の一欠けらも無い才人の照れ顔に、心の鍵を外した。 「勇気か……でも、その勇気をふるいおこしてくれたのもサイトだよ。お前は遠い国から 来たそうだが、お前の国の人はみんなそんなに優しいのかな?」 才人は軽く首を横に振った。 「おれの国にだって、いい奴も悪い奴もいますよ。ただおれは、小さいころから何度も世界を 救ってくれたウルトラマンたちにあこがれて、あんなふうに人を助けられるヒーローに なりたいなと思ってきただけです」 「ヒーローか……わたしにとってそれはまさしくお前だったよ。闇に沈んでいっていた わたしを引きずりあげてくれた……サイト、わたしにとってお前こそがウルトラマンだよ」 ミシェルはそう言うと、手を伸ばして才人の手を両手のひらで包み込んだ。すると、 手のひらを通じて才人の体温が冷え切っていたミシェルに伝わっていく。
「サイトの手はあったかいな……」 「えっ! あっ、え!」 こんなときにどう反応すればいいのかわからない才人は、無様にうろたえるしかなかった。 でも、二人っきりで心の扉を開いて、はじめて会ったときとは比べ物にならないくらい 穏やかな笑みを浮かべられるようなったミシェルは、この上なく優しく才人に語り掛けた。 「自覚がないなら何度でも言うぞ。サイトは、わたしにとって本物のヒーローだよ。こうして、 わたしの手のひらを暖めてくれるように、サイトはわたしの心に火を灯してくれた。だから、 もっと誇りを持て、お前は本物の……ウルトラマンだよ」 「ミシェルさん……」 才人の心にとまどいに代わって、じんわりとした温かさが染み入ってきた。 そうか、おれはこれまでウルトラマンAの力を借りてみんなを守ってきたつもりだったけど、 ちょっとだけ……ウルトラ兄弟と同じことができていたのか。 才人は、ミシェルにとって自分が特別な存在であることを自覚したのと、少しだけ夢が かなった思いで、ささやかな幸福感をミシェルと共有した。 けれど、才人の笑顔に小さな勇気をもらったミシェルは、才人の手を離すと目を閉じて、 ゆっくりと……静かに言葉をつむぎはじめた。 「なあ、サイト……わたしが昔、貴族だったということを覚えているか?」 「はい。確か、十年前に」 「ああ、そうだ……十年前、あのころのわたしは十を少し超えただけの、子供だったな……」 とつとつと告白をはじめたミシェルの話を、才人はじっと黙って聞いた。 十年前、それまでは法務院の参事官だった父のもとで、何不自由なくすごしていた。 けれど突然父に身に覚えのない罪が着せられ、地位は剥奪されて財産も失い、両親は 失意の中で自ら命を絶ち、あとには一人自分だけが残された。 「ここまでは、前にも話したな」 「はい」 「その後はひどかった。屋敷から追い出され、自分の杖まで奪われて、魔法も使えなくなった わたしは、国中をさまよった……人のものを盗み、ものごいをし、ゴミをあさったり…… 生きるためにはなんでもやったさ」 「……」 才人は何も言うことはできなかった。それを体験したこともない者の慰めやはげましが なんの効果もないことぐらいは知っていたからだ。 「でも、子供がいつまでも一人でそんなことで生きていけるはずもない。やがて官憲に 捕まって牢獄に入れられることになった。いや、牢屋の中で出た食事のほうが、ゴミの 中のパンよりもうまくて、情けなくて涙がでたのを覚えているよ」 才人は聞きながら、できる限りの想像力を動因してその情景を思い浮かべようとした。 腐肉をあさる野良犬のような生活、町の人からは石を打たれて追われ、夜は物陰で 一人震えて眠る……自分なら、一週間も耐えられそうもない。 「でも、牢屋に入れられたってことは、そこで働かされるようになったということじゃないんですか?」 日本の刑務所をイメージして才人は尋ねた。だが、ミシェルは首を横に振ると、さっきよりも さらに苦しそうな様子で話を続けた。 「いや、わたしにとって本当の地獄はそこからだった……知っているかサイト? 牢獄という ところは、いつなんどき囚人が死のうと事故や自殺で片付けられる。それを利用して、 その監獄の署長はある商売をしていたんだ」
「商売?」 なんのことかわからないと怪訝に問い返す才人に、ミシェルは皮肉な笑いを浮かべて答えた。 「奴隷売買だよ」 その瞬間、才人の体温は零下にまで下がった。「えっ?」と、聞き返そうとした言葉も 凍りついた喉から発せられることはない。 奴隷……現代日本ではすでに絶滅したはずの、忌まわしすぎる単語。才人は何度も 聞き間違いではないかと、自分の耳を疑って記憶を推敲するが、ミシェルは愕然としている 才人へ追い討ちをかけるように、小さな唇を動かしていく。 「いまから七、八年ほど前……勢力を伸ばしつつあったガリアの人攫いたちは、この国の 役人と結託して人身売買をやっていたんだ。それでわたしも売られ、トリステインの ある豪商のもとで働かされることになった……」 それから先の告白は、才人にとって何度耳を塞ごうかと思ったほどの壮絶な告白だった。 「子供の奴隷は大人と違って、安くて言うことを聞かせやすいから、そこではわたし以外にも 大勢の子供が働かされていた……そこは、いわゆる金貸しだったのだが、借金のかたに 取り立てられてきた荷物を運ぶために昼夜を問わず駆り出される日々……できないものや 失敗したものは容赦なく殴られ、食事もわずかなパンとスープしか与えられず、みんな やせ衰えていた」 「……」 「当然、脱走するものもいたけれど、弱った体で、しかも子供の足で逃げ切れるはずもなく、 みんな捕まった。それで、奴らはほかの子供たちが逃げようなんて気を起こさないよう 見せしめとして皆の前で拷問にかけるんだ。生爪をはがしたり、焼けた鉄棒を押し付けたり、 手足をしばって犬をけしかけたり。それで死んだものも大勢いる」 「ひどい……ひどすぎる」 「朝起きたら、隣で眠っていた子が冷たくなっていたこともある。いっしょに働いていた子が、 突然倒れて血を吐いて、そのまま死んだことも何度もあった。そのたびに、やつらはゴミを 扱うようにつまんで捨てると、また子供を買ってきて働かせるんだ」 「狂ってる! 人間のやることじゃねえ!」 怒り、怒りしかありはしなかった。人間は欲のためにそこまで残酷になれるのか、そして なぜそんなクズのために、なんの罪もない子供たちが犠牲にならねばならないのか。 身を焼くような憤怒の中で、才人は歯を食いしばった。 過去の世界を闇から引き出すように、ミシェルの独白は続く。 「そんななかで、わたしは生き残った。生きていたのかどうかわからない毎日だったが、 体だけは生きていた……けど、わたしが十六歳のころ、店に運ばれてきた荷物の中に、 偶然わたしの屋敷で使われていた家具や美術品が混ざっていたんだ」 当然、自分は必死になってその荷物をあさったとミシェルは言った。ただ懐かしさに とりつかれたから……だけではない。そこに、もしかしたらあるかもしれないと思ったからだ、 貴族だったころの自分を象徴していたもの、魔法の杖が。 「結果をいえば、あったよ。荷物の底に紛れるようにしてな。そのままだと、間違いなく ゴミとみなされて処分されていただろう。わたしはこっそりと、懐に隠して持ち帰り、 記憶を頼りにして魔法を試した」 「それで……?」 「できたよ。時間は経っても、わたしの杖はわたしの杖のままだった。でも、魔法が 使えたとしても、当時のわたしはドットに過ぎず、逃げ出したとしても生きていく術などは なかった……でも、それからしばらくしてのことだった……」 そこまで語ると、ミシェルは口をつぐんで、テーブルの上でうつむいてしまった。
才人は口を閉ざしたミシェルの顔をじっと眺めていた。こんな顔は自分もしたことがある。 例えて言えば、小学校のころにクラスメイトにいじわるをされたことを両親にうったえようと したときか……あのとき、言うべきかどうか迷っていた自分を、両親は決意がつくまで じっと待っていてくれた。だから才人もせかしてはいけないと思い、黙ってミシェルの ティーカップにお茶を注いで、自分もじっと押し黙って待った。 それから、時間にすれば多くて数分だろうけど、二人にとっては数時間に匹敵した 沈黙が流れた後で、ミシェルはティーカップを掴むと、すっかりぬるくなってしまっていた お茶をぐっと飲み干した。 どうしようか……ミシェルはこのとき、才人に続きを話そうかと迷っていた。心を許していても、 これから先の話を語るのは、身を切るような苦しみがともなうだろう。 だから、ミシェルは最後に才人の気持ちを確かめることにした。 「サイト……頼みがあるんだ」 「なんです? おれにできることなら、なんでも言ってください」 才人はにっこりと笑って答えた。そこに一切の他意はなく、ミシェルは才人のそんな純粋な 優しさを感じ取って、最後の決意を固めて立ち上がった。 「ミシェルさん?」 突然自分の横に立ったミシェルを、才人ははっとして見上げた。そして、差し伸べられた 手を握って立ち上がると、まっすぐに目と目を合わせて見つめあった。 「これから先のことは、隊長にも、誰にも話したことはない。お前がはじめてだ…… おぞましい、吐き気がするような……それでも聞いてくれるか?」 「はい」 強く、一点の曇りもない返事を才人は返した。 「ありがとう……なら、これから見せるものを、決して目を逸らさずに見てほしい。わたしの、 本当の姿を……」 「え……?」 ミシェルは、怪訝な表情をした才人から離れると、後ろ向きに一歩、二歩と歩いて立ち止まった。 マントのように羽織っていた毛布がスルリと床に落ち、灰色の粗末な肌着を肩からまとった だけの肢体があらわになる。 「えっ!? ちょっ」 才人はとまどい、つばを飲み込んで見入ってしまった。ルイズの着替えは手伝うし、 キュルケに下着姿で迫られたこともあるけれど、彼女たちとはまた別に、薄布一枚に 包まれただけのミシェルの体は贅肉の欠片もなく、かといって筋肉で固まっている というわけでもなく、女神像のような崇高さを漂わせていた。 しかし、恥らうように才人に背を向け、肌着の肩紐に手をかけたとき、ミシェルは目をつぶり、 強く歯を食いしばった。 「見てくれ……これが、わたしだ」 そして、最後に残った薄布が床に落とされ、一糸まとわぬ姿となったミシェルの裸体が さらされたとき、才人は息を呑んで目を見開き……言葉にならないうめきをもらした。
「あ……な……」 それは、才人の想像したようなものではなかった。 薄明かりの中で、ぼんやりと浮かび上がったミシェルの後姿はシルエットだけで見れば、 均整のとれた芸術品のようなプロポーションを持っていた。 しかし、灯りに照らし出された背中……本来なら、純白のキャンバスのように彩られている はずのそこは、到底数えきるなどはできないほどの傷跡で、ズタズタに埋め尽くされていたのだ。 「う……その、傷は……」 あまりのむごたらしさに、才人は思わず口を覆い、額に大粒の汗を浮かばせた。 それまで肌着で覆い隠されていたが、ミシェルの肩から臀部にまでいたる無数の傷跡は、 銃士隊の訓練や戦闘による負傷などでは絶対になかった。才人もハルケギニアで何度も 剣をとって戦ったからわかる。ほとんどの傷は刃物による裂傷や刺し傷ではなく、 ひも状のもので強く殴られたことによるみみずばれの痕……つまり。 「鞭の傷……?」 自分にもルイズに乗馬鞭で叩かれた傷跡があるのですぐわかった。しかし、ミシェルの背に 刻まれたそれは、深さや大きさが才人のものよりはるかに大きい。 ミシェルは、才人の言葉にこくりとうなづくと、背を向けたまま苦しそうにしゃべりはじめた。 「これが……わたしが生き残った代償さ……実はな、奴隷になってから数ヶ月経ってから 後のことは、あまりよく覚えていないんだ。考えるのをやめて……人形にならなければ あの地獄では生きていけなかった」 才人は歯軋りした。心を殺さなければ生きていけないほどの地獄……それがどれほどの ものだったのか、想像の及ぶ余地などなかった。 「でも、今でもときどきふっと思い出すんだ。背中を炎で焼かれているような痛みを、 わたしを怒鳴って、嬉々として鞭を振り下ろす男たちの顔を……はは、はははは」 「……」 「だが、そんな地獄のある日……仕事を終えて奴隷小屋に戻ろうとしていたわたしを、 その商家の息子が呼び止めた。自分の部屋に来い、そう言われたらしいが 疲れきっていたわたしはそのままふらふらと、言われるままについていった。 そこに……なにが待っているかなんて想像もせずにな」 「え……」 「ふふふ、男が女を部屋に連れ込む。だったらすることはわかるだろう? なあ!」 「ミシェルさん?」 突然ミシェルの声が抑揚を失ったことに、才人は背筋に冷たいものを感じた。 「ひひひ、その息子も例に漏れない下種野郎だったよ。部屋に入るなり、わたしの 手を掴んでベッドに押し倒したんだ! あははは」 「ミシェルさん! どうしちゃったんですか!?」 「ああ、あのときのことは今でも夢に見るよ。なんでも、いつのまにか十六歳になっていた わたしのことを、前々から狙っていたらしい。ひっひ、笑っちゃうだろ。脂ぎった顔を 上から近づけて、よだれを垂らして笑うのさ」 「ミシェルさん! ミシェルさんってば!」 慌てた才人が駆け寄り、肩をつかんで激しく揺さぶってもミシェルはいっこうに 反応する様子を見せない。才人は気づいた。このときの記憶は、ミシェルにとっても 心の中に固く封印されていた、開けてはならないパンドラの箱だったのだと。
「もちろんわたしは暴れたよ。でも、やせ衰えて疲れきった体じゃかなわない…… 奴隷の服を破り捨てられて、さんざん殴りまわされたあげくに奴は言ったのさ。 「奴隷のくせに主人に歯向かうな、お前はモノなんだ。いくらでも代わりがきく んだから、せいぜい壊れる前にボクを楽しませろ」ってな!」 「もういい……もうやめてください」 狂ったようにわめき散らすミシェルのあまりの痛々しさに、才人はとうとう 耐えられなくなった。しかし、才人の必死の呼びかけも、今のミシェルには届かない。 「あはは……そのとき、わたしの中の何かが壊れた……隠し持っていた杖を 取り出して……あとは、あとは」 「言うなーっ!」 「……気がついたら、わたしは血の海の中に一人で立っていた……馬鹿息子は もう形も残ってなくて、周りにはわたしを苦しめてきた男たちの死骸も転がってた。 それからわたしは、奴隷の仲間たちのところに帰って行ったんだけど、あの子たちは、 全身に血を浴びた、裸のわたしを見て言ったのさ……化け物ってね!」 あとはもう、壊れた楽器のようなけたたましい音がミシェルの喉から流れ続けた。 才人はどうすることもできずに、ただ自分の無力を歯を食いしばって嘆いていた。 だが、突然ミシェルは笑うのをやめると、才人に向かって大きく手を広げて、 自分の裸身を正面から見せつけた。 「なあサイト、見てくれよ。わたしの体はどこもかしこも傷だらけさ。あのごみための中で、 ボロボロに汚されきってしまって、おまけに血を浴びたにおいも全身に染み付いてる。 わたしは、お前の考えてるような女じゃない……こんな醜い女なんていないだろ?」 それが、ミシェルの心を今でも縛っている錆付いた鎖だと才人は知った。 ミシェルの全身には、普通の女の子ならば大切に守られていなければならない 乳房からへその周り、太ももにまで傷がまだらのように刻まれている。だが、 それにも増して深い傷、奴隷だったころの記憶が亡霊のように彼女を苦しめている。 だから、才人はこぶしを握り締めた。彼女の苦しみに気づいてやれなかった無力な 自分、何の罪もない少女にこうまで残酷な運命を押し付けた世の中と悪党ども、 そして……過去の鎖に縛られて未来に手を伸ばせないで、必死で助けを求めに来た ミシェルに向けて、ありったけの怒りを込めてこぶしを振り下ろした。 「この、バカ野郎ーっ!」 才人のパンチはミシェルの顔面をとらえ、大きくはじけた音を部屋に響かせた。 むろん、才人の腕力程度では鍛えぬいたミシェルには通じないけれど、才人の 気迫はミシェルをよろめかせ、床の上に崩れ落ちさせた。 「誰が、ミシェルさんを醜いって言った! 誰がミシェルさんをバカにした!? そんな傷が何百何千あったって、ミシェルさんが別の何かになったりはしない! もしそんなことを言う奴がいたら、おれは絶対にゆるさねえ。たとえ、ミシェルさん 自身だったとしてもな!」 痛むこぶしを握り締めながら、才人は思いのすべてをぶっつけた。そうして、 魂のすべてを叩きつけるしか、できなかった。この人は、もう一生分の不幸を 使い果たしている。過去に囚われていてはいけない。未来に幸せを見つけなければ いけないんだ。
ミシェルは、床に腰をついて、殴られたほおを抑えながらぼんやりと才人の 顔を見上げていたが、やがて相貌を崩すと、大粒の涙と大きな声をあげて 泣き始めた。 「うっ、うわぁあん! あああっ!」 うずくまって、幼児のようにミシェルは泣いた。過去のすべてを、自分の中の闇を 全部涙に変えて流してしまいたいかのように泣いた。彼女にとって、一番恐ろしかったのは 自分の隠してきた姿を知られて、才人に嫌われてしまうことだったのだ。たった一人、 闇の中に手を差し伸べてくれた才人がいなくなったら、また一人ぼっちになってしまう。 でも、そんな心配は無用だった。才人は、確かに力も技も、人格もなにもかも未熟な 少年である。けれど、たった一つ、どんなことがあろうとも苦しんでいる人を見捨てる ことはできないという、ウルトラ兄弟が地球に残していった心の遺産を受け継いでいる、 ミシェルが願っていたとおりの、本当のヒーローだったからだ。 泣きじゃくるミシェルを、才人は今度は守るように優しく抱きとめた。生まれたままの姿の ミシェルの体は、まるで蝋人形のように冷たく、手を離したら、そのまま崩れ落ちて しまいそうにもろく才人は感じた。 「あなたにどんな過去があろうと、おれはあなたを卑下したりしない。あなたを傷つける 奴がいたら、おれがぶっとばす。だからもう、自分で自分を傷つけるのはやめてください」 「ぐっ……ひぐっ……ほ、本当にいいのか? こんな、血と泥に汚れきった奴隷のわたしを、 サイトは……」 「ミシェルさん、血で汚れてるんだったらおれも似たようなものですよ。でもね、血で汚れた ものを、唯一きれいにできるものがあるとしたら、それは涙だとおれは思います。 悲しい過去に苦しむのに、おれに真実を打ち明けてくれたのは、おれを信じてくれた からでしょう? 人を信じる。こんな貴いことができる人の流した涙が、血の汚れなんかに 負けることは絶対にないですよ」 「サイト……」 「もうあなたは鎖につながれた奴隷なんかじゃない。今度は、おれが言いますよ。 自覚がないなら何度でも、ね。ミシェルさんはきれいです。誰よりも、おれが保障します」 「サイト……ありがとう……ありがとう」 ミシェルは才人の首に手を回すと、ぎゅっと抱きしめた。才人もそれに応えて、ミシェルの 背中を強く抱きしめる。すると、ミシェルの瞳からまた涙がぽろぽろとこぼれだした。 でも、今度のそれは悲しみの涙ではない。喜びの、安堵の、感謝の、愛の涙だった。 「サイト……お前に会えて、本当によかった」 「おれも、あなたに会えてよかった」 それは、ミシェルの心を長年に渡って縛りつけ、苦しめてきた鎖がついに朽ち果てて 切れた瞬間だった。 やがて、才人の体温が移って温まってきたミシェルから、ほのかな甘い香りが 漂ってきて、才人は顔を赤らめた。冷静になると、今生まれたままの姿のミシェルが 腕の中にいるとわかると心音が高鳴ってくる。 同時にミシェルも、才人の温かさをさえぎるもののない全身で受け止めると、 今度はそれを才人に返したくなって、才人の腕の中から離れると、決心したように言った。 「なあサイト……アルビオンでの夜で、トリステインに帰ったらキスの続きをしようって 言ったのを覚えているか? これが最後になるかもしれないなら……わたしの、 わたしの初めて、もらってくれるか?」 ミシェルは才人の手を取ると、自分の胸元へといざなった。才人は、一瞬衝動に かられたが、腹に力を込めて手を引っ込めると、ゆっくりと首を横に振った。
「いや、遠慮しておきます」 「どうして? わたしは、わたしじゃあ駄目なのか!?」 「違います。そんな、現実から逃げるような理由で、ミシェルさんの大切なものを もらうわけにはいきません。それに……おれはルイズが好きだ。あいつを裏切る ようなことはできない」 ミシェルは悲しそうな顔を浮かべ、しばらくするとやや寂しげな笑みを浮かべた。 「お前は、本当に優しいな。ミス・ヴァリエールよりも早く、お前に会いたかった」 「すみません」 「謝ることはないさ。わたしは、お前のそんなところに救われたのだから。でも、 大好きだよサイト……この世の中の誰よりも、お前が、一番」 切ない声で思いを告白したミシェルの思いに、才人は応える術をもたなかった。 だから、せめて最後にと二人はどちらからともなく唇を重ねあい、離れた。 「サイト……ありがとう」 ミシェルは穏やかに笑うと服を身につけ、才人と並んでベッドに腰掛けた。 そして、過去の出来事の最後を語った。 「あのあと、屋敷を逃げ出したわたしは、裏町を転々としながら魔法で脅したり、 奪ったりしてなんとか生き延びた。しかし、やがて衛士の手が伸びてわたしは 捕らえられ、主人殺しのとがで牢獄に入れられた」 ミシェルの口調は今度はしっかりとしていて、才人はじっと黙って聞いていた。 「あとは裁判を受けて……といっても、主人殺しは死刑に決まっているから 裁判など形だけのものだ。だが、そのとき裁判長だったのが、高等法院長の リッシュモンで、奴はわたしの素性を知ると助命を申し出てきたのさ」 それから先のミシェルの話し方は、まるで吐き捨てるかのようだった。 「当然、わたしは喜んださ。はじめて父の無実を信じてくれる人に巡り合えたの だからな。そしてわたしは奴に引き取られた。温かい食事も、普通の人間が 着るものも、風雨にさらされずに眠れる場所も与えられてわたしは有頂天だった。 そして奴は言ったのさ。「今この国は腐っている。君の父上の無実も、君が 奴隷に落ちたのも、全部国が悪いからだ。実は私は有識ある人々と国境を 超えて手を組んで、腐った王政を打倒する組織に組している。どうかね? 共にご両親の仇を討ってみないかね」とな!」 才人は、激昂するミシェルの手をぐっと握り締めた。 「……もちろん、わたしは一も二もなく喜んで従ったさ。体と魔法を鍛え、学を 身につけて、騎士としてアニエス隊長にとりいった……あとは、知ってのとおりさ。 だが、今にして思えばはじめからわたしを道具にするつもりだったのだろう。 それに、あとから知ったことだが、お前が以前に銃士隊に報告してつぶさせた 人身売買組織の元締めもリッシュモンだった! わたしから家族を奪い、 わたしの人生をめちゃめちゃにしたのは、誰でもないリッシュモンだったのだ!」
怒りと、悔しさからミシェルはベッドにこぶしをつきたてた。 なにも知らないうちに道具にされ、操り人形にされ、自分にとって本当に大切なものを 奪う手助けをさせられそうになっていたのだ。 才人は、ミシェルの境遇を聞いて、地球で過去に起こったある事件を思い出した。 それはドキュメントZATに記載されている。あまりに悲しい出来事。 今を去ること五十数年前、地球から一人の幼い少女が姿を消した。 けれど数十年のときが流れたある日、その少女は幼馴染であった宇宙科学警備隊ZATの 北島隊員の元に成長した姿を現した。 北島隊員とその少女・マリは短い時間だが幸せなときを過ごした。 しかし……実は、マリは地球侵略を狙う惑星帝国ドルズ星の凶悪宇宙人ドルズ星人によって 拉致され、ZAT基地を破壊するための尖兵として改造されていたのだった。 北島隊員にとりいってZAT本部へ侵入を試みようとするマリ。だが本部の厳しい警備の 規則に阻まれて入場を拒否されても、信じようとしてくれる北島隊員やZAT隊員たちの 優しさに触れて、すんでのところで我に返ることができた。 だが、ドルズ星人の埋め込んだタイムスイッチは容赦なく、彼女を醜いうろこ怪獣メモールへと 変えてしまう。 火炎を吐き、暴れまわるメモールはもう以前のマリではなくなっていた。 立ち向かうZAT隊員たちや、ウルトラマンタロウ。 メモールは火炎や長い尻尾、吸盤状の右腕から放つ赤い煙幕を使ってタロウと五分の 戦いを繰り広げる。対してタロウもアロー光線で隙を作り、反撃に転じて形勢を有利に 展開するものの、必殺のストリウム光線を撃つことはできなかった。 なんの罪も無い少女を、侵略のための生物兵器に変えてしまうとは、戦いながらタロウは 卑劣なドルズ星人に怒りを感じたが、憎きドルズ星人はM88星雲の星に隠れて、決して 自分は姿を見せることはない。メモールを元の姿に戻してやることはできず、かといって 殺してしまうこともできない。やるせない思いを抱きながら、ただただ宇宙のかなたに 送り出してやるしか、タロウにもしてやれることはなかった。 それは、数ある怪獣事件のなかでも、どうしようもなく救われなかった悲劇として記憶されている…… 「似てるといえば、似すぎてる……」 才人はミシェルに聞こえないようにぽつりとつぶやいた。何の罪も無い人間を道具にし、 自分は決して手を汚さない奴は、悪党の中でも最低の部類に入る。ミシェルも、真実に 気がつくのが遅れていたら、メモールのように使い捨ての道具として終わっていたかもしれない。 でも、まだ間に合う。そんなクズのいいようにさせてはならない。メモールの悲劇を繰り返しては ならないと、才人は強く決意した。 「どうしても、復讐はするんですか?」 「ああ、恨みや憎しみだけじゃない。わたしや、なんの罪もなく死んでいった奴隷の子供たちのような 存在がこれ以上生まれないためにも、あの男だけは始末しなければならないんだ」 復讐はなにも生まない。才人はそう思ったけれど、顔も見たこともないリッシュモンという男に、 自分でさえ激しい怒りを覚えるのを思えば、きれいごとを言う気にはならなかった。 それに、奴隷貿易の元締めであるリッシュモンと一味を倒せば、その機に乗じて トリステインから奴隷制を一掃できるかもしれない。奴隷……人が人を物として扱う、 これほどおぞましいことはない。だが、才人の故郷である日本だって、太平洋戦争時くらい までは貧しい農村が娘を女郎に出す人身売買が横行していた。また、つい近代になるまで アメリカが黒人奴隷を使っていて、そのときの差別が今でも強く尾を引いているのは誰もが 知っている。決して、ハルケギニアが、トリステインが特別なわけではないのだ。
しかし、そのためにミシェルが命を落としてはなんにもならない。だからこそ、才人は ウルトラマンA、北斗星司の記憶も借りて、ひとつの昔話を静かに語りだした。 「昔、おれの国でも超獣に父親を殺された少年がいたんです」 そして、二人はしばらくのあいだ穏やかに語り合い、やがてトリスタニアに戻らねばならない 時間がやってきた。 「じゃあサイト、わたしは行くよ」 「わかりました。アニエスさんによろしく」 くどくどしい別れの言葉はなく、ミシェルは着てきたぼろに才人から借りた雨具をかぶせて、 なお強く降り続く雨の中に消えていった。 才人は、小屋の軒下からしばらくミシェルの去っていった方角を見つめ続けた。 だが、閉じたドアに寄りかかって物思いにふけっているところに、横合いから声をかけられて 振り向くと、そこには桃色の髪の少女が立っていた。 「ルイズ……いたのか」 「ええ」 才人はルイズの声色で、ここでなにがあったのかルイズは知っていることを悟った。 「どこから見てた?」 「さあ、想像にまかせるわ」 「そうかい……」 「言い訳はしないのね」 「ああ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」 二人だけで会っていたことは事実なのだから、どう言おうと無駄だ。それに、たとえ相手が ルイズでも、ミシェルの過去の秘密は絶対に言えない。 でも、ルイズは表情を変えずに、鞭も杖も取り出すことはなかった。 「怒らないわよ。あんたの性格くらい知ってるわ。言い訳しないってことは、あんたは自分の やったことや言ったことに、なんの負い目も感じてない。後ろめたいことがないからでしょう。 なら、わたしが怒るのはお門違いってもんだわ」 「へぇ、こりゃ雪でも降るかな」 「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ。さぁ夕食にいくわよ。ミスタ・コルベールも、この雨で 退去期間が伸びたから、片付けの続きは明日でいいそうだからね」 けれど才人はルイズの言葉には従わず、雨具をとるとルイズに背を向けた。 「わりいけど、晩飯と明日の朝飯はいらないってシエスタに言っておいてくれ。ちょっと 野暮用ができた」 「どこへ行く気?」 「世間一般で言うところの、大きなお世話ってやつかな」 才人の言葉が何を意味しているのか知ったルイズは、軽くため息をつくと止めても無駄だと思った。 授業が終わって寮に戻ってみたら、才人がいなかったのでデルフリンガーに行き先を 聞いてみて来たのだが……まったく、こいつはどこまでも優しすぎる。ほうっておくと、 すぐに別の誰かのところに行ってしまう。 でも、そんな才人だからこそ、ルイズは誇らしさで胸が熱くなるのを感じていた。 続く
以上で、次回に続きます。 今回は全編、ミシェルさんのエピソードでお送りしました。 作中の彼女の過去は私の創作です。少し壮絶にしすぎたかなと思いましたが、本編やタバサの冒険などで 何度も人買いや人攫いが登場することから、決してありえない話ではないと思います。 でも、本当はどうあっても、光に向かって手を伸ばせば誰かがきっとその手を握ってくれると信じて、 この話を書き上げました。 なおミシェルさんの年齢は、この作中ではおおよそ十九から二十一歳くらいだと思ってください。 それから、先日NHKで放送されました歴史秘話ヒストリアで、ウルトラマンの脚本を担当した 金城哲夫氏のエピソードが語られ、その中で金城氏の脚本に対する言葉が紹介されました。 蛇足かとも思いましたが、ウルトラの世界にとどまらず、ほかの物書きの皆様にとっても一つの指標となるものだと 思いましたので、ここに引用させていただきます。 ”娯楽映画とか、怪物映画とか言われるが 少なくとも我々は既成の概念で仕事をとらえ、 マンネリで仕事をしてはならない。 シナリオは特にそうだ。 傑作とは、現状を打破し 旧来のものにプラス・アルファの魅力をもたらした作品であると思う。 娯楽であれ、怪物であれ、作る側の情熱である。 いつか傑作は必ず生まれる” 私の実力で、どれほどのプラス・アルファをもたらせるかはわかりませんが、情熱だけは 失わないように、これからも書き続けていこうと思います。 では、また来週。
ウルトラ乙
ウルトラ乙
ウルトラ乙
>>437 デルフ一本でレキシントンやヨルムンガンドも落としそうだな
トグロ弟「こいつ(ギーシュ)を倒すには…、まあ5%ってところか…」 ・ ・ ・ トグロ弟「3%くらいでもやれたでしょうがねぇ…なにせ臆病なもんでねぇ」
>>449 ザイド(内藤スレ)が真っ先に浮かんできたの…
ルイズとタバサは逃げてーw
そういや内藤スレザイドは真性ロリだったなw
>>442 アニメ版だとウーロン茶もいける口だぜ
だからどうしたと言いたいが
しかしトグロ弟の好きなオレンジジュースが炭酸の安っぽい奴だとしたらハルケギニアでは入手できそうに無いな
天然のオレンジジュースだったら果物握りつぶして自作できそうだけど
>>470 ロリコンなw真性ロリだとザイドが幼女の様に見えてくるwww
しかしあんなキャラでも実力が本物なら、タバサは技を教えてもらおうとするのかしら(設定は暗黒向けだけどさタバサ)
ウルトラ乙! このサイトさんは男前だな!
トグロ弟を呼んだら、 垂金似のモット伯の首をふっとばしたり、 フーケの勇気に敬意を表して45%でゴーレムの相手したり、 相棒扱いしてくるデル公を肝心なところで兄者と同じ扱いにしたり、 七万を100%で吸いまくったり?
美しい魔闘家タバサ「トグロと戦う前、私の名前は強い妖戦士シャルロットだった」 トグロのクツの裏を舐めてでも命ごいするタバタンが見たいだけだろとかいうな
お前らの物差しでジョゼフ様を裁かせはしない ジョゼフ様の魂は渡さない 私達はもう飽きたんだ お前らはまた別の敵を見つけ戦い続けるがいい 仙水と樹が消える場面とジョゼフとミョズが死ぬ場面がぴったり過ぎる
477 :
名無しさん@お腹いっぱい :2010/09/20(月) 07:04:50 ID:C44roUB0
ウルトラの人、乙です。
ルイズが隔世遺伝で目覚めるのですね。
トグロ弟と戦うワルドは偏在にエアハンマーで自分の背中を打たせてロケットのように加速してブレイドの刃をどてっぱらに突き刺して勝つんだ しかしそれは演技で大したダメージは受けていなかった その後の再開で トグロ「お前と前回戦ったときは20%だった。そしてこれが60%!この状態でも3分でニューカッスルを平らに出来る」
ライトニングクラウドくらってちぎれかけた腕が80%で即くっつく それ見た時点で勝てないと悟れワルド
偏在+死ぬ気のライトニングクラウドで萎む戸愚呂 そして100%…と呟いて消え去るワルド
あれでB級妖怪なんだよな
>>481 当時のジャンプ本誌の特集によると
S級妖怪クラスの仙水相手に善戦するそうだ
赤い靴はいてた女の子・・・ タロウにはバサラの回みたいな欝ものもけっこうあったよな
妖怪としての妖気とかがB級なだけで人としての積み重ねが物凄いあるからな
赤い靴履いた女の子……百鬼夜翔のオーナーを思い出した……しかし下手なタイミングで呼び出すとザ・フォッグもセットで召喚してしまう。 いや、原作終了後だと「どこか」へ行ってしまった事になっているから丁度良いのか?
誰か学園黙示録から召喚してくれね? 濡れ濡れ先輩だと、かなり話が面白くなりそう 目立たない主人公だと、サイトとほぼ同じ展開っぽい ヒラコーならサイコーな燃え萌え展開かも
>>478 その役はむしろシエスタがふさわしいかと
ロングヘアーのシエスタ・・・いいな
>>483 まぁ仙水はしょせんS級並と言っても下のほうだしね
最終回の鈴木より弱い
マンガの世界には落ちこぼれのクラスほど実はすごい奴が多く、 エリートほど小物という法則がある。
ハリーポッターのネビルとかかね
ウルトラの人乙 やっぱり聖帝様のやってた事は酷いと実感できました
貴様、聖帝様に楯突く気か? 消毒してくれるわ〜〜〜〜〜!!
消毒されれば免許を返していただけるんですね?
TDN乙
お久しぶりです、何とか続きを書く事が出来ました よろしければ、50分には投稿させて頂きます
第七話D 王都トリスタニア 〜イルククゥのおつかい〜 時間は戻って昼前…街中を一人の女性が歩いていた 腰まである青い髪に、魔法学院のメイド服を着ている 本来は愛嬌のある可愛らしい顔をしているのだが、その表情は今ムスッとしていた 「全く…風韻竜である私をおつかいに使うなんて、本当に失礼な奴なのね。」 ぶつぶつと女性は文句を呟いている…この女性の正体は、イルククゥであった 韻竜は姿形を変えられる、『変化』の呪文を使う事が出来る その術によって、彼女は今あの竜の姿から人間の女性へと変化していた そんな事をしているのは、彼女が言ったようにタバサからおつかいを頼まれたからだ 『この本を渡してきて欲しい…彼女のいる場所は地図に書いてある。』 と、こうして本と行き先を記した地図、それに今来ている服を渡された だから、こうして慣れない人間の姿で目的地に向かっている 当の本人は、今頃学院の自分の部屋で読書タイムを満喫している頃だ 「こんなの、自分でやれば良いのに…。」 ぶつぶつと、タバサに対して文句を言い続けるイルククゥ 最初の内は文句ばかり言っている彼女だったが、それも街中を歩いている内に変ってくる 「それにしても…人間の街は面白いのね。」 目の前に広がる王都の光景に、自然とそう呟いていた 静かに時を過ごしてきた故郷と違い、此処は大勢の人で賑わっている 街中に見える物も、森や山しか知らない彼女には新鮮なものだった そんな中を歩いていると、人だかりを発見する 「ん…あれは何なのね?」 その中心で楽器をならして歌っている男は芸人だろうが、驚くほど奇妙な格好をしていた 羽のついたターバンを被り、派手な衣装を身に纏っている金髪の男 竜であるイルククゥでさえ、変な格好であると思った 「そして俺は歌うのさ♪あふれ出す魂のほどばしりを♪」 歌と流れる曲は独特ではあるが、聞いていて楽しいものだった 周囲の観客達も聞き入っていて、終わったと同時に拍手が起こる 男は礼をすると、その場を去っていった 「人間の街は面白いのね。あんな変な格好した人間がいるなんて…。」 次は笛の音が聞こえてくる…少年聖歌隊のパレードだ 思わず後を追ってしまいそうになったが、ある物が目の前に現れた 「うきゅ。」 現れたのは、全身がエメラルドグリーンの体毛に覆われた、変わった生き物である こんな生き物をイルククゥは見た事もないし、知らなかった 「ん、お前は何なのね?」 「クルール、クルール!!」 イルククゥの問いかけにそう答え、それが名前だと気付くのに少し掛かった クルールと名乗ったこの生き物は可愛らしい瞳で此方を見てきた 生きた人形と言ってもいいくらいの可愛らしさに、彼女の心はきゅんとなる 「か、可愛いのね…な、撫で撫でしてあげるからこっちに来るのね。」 少し興奮しながら、可愛いものが好きなイルククゥがおいでおいでと手招きする しかし、そんな彼女の意に反してクルールは背を向けて去ろうとした 「あっ、待つのね。」 そう言っても、クルールは足を止めずにどんどん向こうへ行ってしまう そんなクルールを、イルククゥは早足で追いかける 追いかけてくる彼女に、クルールはスピードを上げて逃げ出す 「うきゅ、うきゅきゅ!!!」 「待って〜〜〜。」 タバサのおつかいを忘れ、クルールを追いかけるイルククゥ 彼女は目的地とは正反対の方向へと行き、やがて……
「………何処なのね、此処は?」 気が付いた時、何故かイルククゥは狭い路地裏へと迷い込んでいた 追いかけていたクルールの姿も見えなくなり、彼女一人で途方にくれていた とりあえず此処が何処なのか、地図を見て確認しようとするが… 「うーん……全く解らないのね。」 持っている地図は、目的地までを簡略的にわかりやすく書いたものだった 故に、此処が何処であるのかが解らない…迷子になってしまった 「………とりあえず、歩くのね。」 それが現状の彼女が思いつく、最善の行動だった 彼女は進む、前へ進む、まっすぐ進む…分かれ道があれば右や左へ、壁があれば引き返す 「あー、もう…疲れたのね。」 半時間が過ぎて…疲れた足を休ませる為に、イルククゥはその場に座り込んだ あれからどれだけ歩いても、表通りに辿り着く事が出来なかった 因みに、此処は才人が迷い込んだ路地裏でもあったが、彼女が知る筈もない 「人間の街って、何でこうも入り組んでるのね…もっと解りやすくすれば良いのに。」 慣れない人間の身体で歩き回るのは辛い…空を飛べたら良いのに そこで、イルククゥは妙案を思いついた 「そうなのね、術を解いて空を飛べば良いのね。」 何で気付かなかったのかしら、とイルククゥは自身の頭を軽く叩いた しかし、路地裏とはいえこんな街の中で元に戻ってしまっては大変な騒ぎになってしまう そんな事にも気付かず、イルククゥは周囲に誰もいない事を確認して術を解こうとした 「イテテテ、くそ〜〜〜。酷い目にあったぜ。」 だが、その直後に後ろから人の声が聞こえてきた 術の解除を中断してイルククゥが振り返ると、数人の男達が此方へと向かってきていた 体中ボロボロになっているこの男達は、才人とシエスタを襲ったあの暴漢達だった 「アニキ、一体何時の間にやられたんでしょうね?何か素早いモンが走ったのは覚えてるんですけど…。」 「俺だって知りてぇよ…いつの間にか気絶してるし、あいつ等もいなくなってるし。」 どうやら、青年とあの犬にやられた事は彼等の記憶から抜け落ちているらしい 悪態をつきながら歩く彼等は、先にいるイルククゥへと目をやった 「おっ…アニキ、あんな所に女がいますぜ。」 「女?ああ、確かにな…でも、何でこんな所にメイドが?」 多分、道に迷ったのだろう…そういう事で納得する事にした そして、男達はこの女で憂さ晴らしをしようと、イルククゥに近づいた 「よぉよぉ、嬢ちゃん。一人でこんな所にいちゃ危ないな。」 「そうだぜ、俺達みたいな危ない奴がいるかもしれねぇぜ。」 典型的な台詞で脅しに掛かるが、イルククゥはキョトンとしていた 「何なのね、お前達?私は忙しいから早くどっかに行けなのね。」 「どっかに行けとは礼儀を知らないメイドだな…俺達がちゃんと調教しなきゃいけねぇな。」 「い、痛い…何するのね!?」 男の一人が髪を掴んで引っ張り、イルククゥは相手を睨む だが、男達はそんな事で臆する事無く笑みを浮かべるばかりだ 「言っただろう、調教だって…俺達好みの、可愛いメイドにしてやるからよ。」 リーダーの男の手が、イルククゥの服へと伸びていく この時、怒った彼女はこの男達を叩きのめしてやろうと、術の解除を行おうとした 「待ちなさい!!!」 だが、そこへ響く女性の声 全員が声の方を振り返ると、そこには緑髪の少女が立っていた
「なんだい、お嬢ちゃん…俺達に何か用かい?」 「貴方達、そのメイドさんをどうするつもりなの!?」 白々しく男が尋ねると、少女は彼等を睨み付ける それは、これからやろうとしている事は許さないと言っているようなものだった 「何かするつもりだ…って言ったらどうするんだ?」 「そんなの…当然許さない!!!」 少女は拳をギュッと握り締めると、彼等に向かって構えを取った 彼女の勇ましい行動に、男達は笑い声を出した 「中々勇ましい嬢ちゃんだ…おい、お前らちょっと可愛がってやれよ。」 リーダーの指示に、二人の男達は少女に歩み寄っていく 自分達より一回りも小さいこの少女に、何の危機感も抱いてなかった 「何なら、嬢ちゃんも仲間に入るかい?俺は嬢ちゃんみたいなのでも…。」 なので、男の一人はそれ以上何も言う事が出来なくなった 何故なら、少女は男の顔面を殴りつけ、沈黙させたからだ 「たあっ!!!」 続いて回し蹴りを放ち、驚いているもう一人を蹴り飛ばした 壁に頭を強く打ちつけ、一人目と同じように沈黙する 「な、何だお前、やろうってのか!?」 慌ててリーダー以外の男達が、ナイフを取り出して構える が、その時には少女は既に懐へと入り込んでいた 「はぁ、たっ、せやっ!!!」 ドカッ、バキッ、ゴキッ……擬音として表せば、そんな音だろう それがこの路地裏に響き、あっという間に男達は倒された 「と、止まれ…止まらねぇとこの女を…。」 慌ててリーダーの男がイルククゥを人質に取ろうとしたが、それは遅すぎた判断だった 「掌底破!!!」 少女は既にリーダーまで近づいて、掌底を男の腹に叩き込んだ 腹部に衝撃を感じた頃には意識は飛び、彼は仰向けに吹っ飛んでいった 「全く…人質を取るなんて最低だよ。」 手をパンパンと払ったと同時に、男は地面に落ちる 死んではいないが、当分は目を覚まさないし、ご飯も食べられないだろう 「さて、と…貴方、大丈夫だった?」 「だ、大丈夫なのね…。」 少女の問いかけに、イルククゥは驚きながら答える マジマジと見ていると、彼女は照れた様子を見せた 「お、驚かせちゃったかな…貴方が危ないと思ったから、急いで助けたんだけど。」 「凄く驚いたのね、お前人間なのに凄く強いのね!!」 野生の感から感じた事を、イルククゥは正直に告げる だが、その言い方に少女は少し疑問を浮かべる 「人間なのにって?」 「あっ…き、気にしなくて良いのね、言葉の危というやつなのね。」 イルククゥは自分の失言を紛らわせようと、少女に地図を見せる 「私、本当は此処に行きたいのね。でも、道に迷って……。」 「此処って…私達が住んでる辺りだよ。此処に行きたいの?」 こくこくと、イルククゥは頷く 「解った、今から一旦帰る所だったから一緒に行こう…えっと。」 「イルククゥなのね。」 「イルククゥさんね…私はファラ、ファラ・エルステッド、よろしくね。」 少女…ファラと自己紹介を終えたイルククゥは、彼女と共に路地裏を抜け出した そして、二人は一緒に目的地へと向かうのだった
「へぇ、じゃあイルククゥはおつかいでその本を届けに来たんだ。」 「そうなのね、人使いの荒い奴なのね。」 目的地へ向かう間、イルククゥとファラはお喋りをして楽しんでいた その間に二人ともすぐに仲良くなり、気軽に話し合うようになっていた 「それに、ご飯をちゃんとくれないのね。この前なんか危うく飢え死にしそうになったのね。」 「そうなんだ…此処じゃあ貴族は平民に酷い事するのが多いって聞いてるけど…。」 イルククゥの話を真に受けて、ファラは彼女に同情する だったら、その本をちゃんと届けないと… 「それで、その本って誰に渡すの?」 「えっと、確か…え、エス……。」 イルククゥは相手の名を言おうとするが、それ以上言葉が出なかった 悪戦苦闘している彼女を見て、ファラは苦笑する 「もしかして…名前忘れちゃったとか?」 「そ、そんな事はないのね…えっと、エス…エス〜〜〜。」 「ファラ!!!」 相手の名前を何とか言おうとしたその時、ファラを呼ぶ声が聞こえてきた 二人が声の方を振り向くと、ピンク色の髪をした少女が此方に向かってくる 手には、買い物袋を一袋分抱えている 「あっ、エステル。」 「エステル…そう、エステルなのね。」 ファラが少女の名を呼んで迎えた時、イルククゥも同じように少女の名を言う この本をエステルという少女に渡す…それが、タバサに言われたおつかいだ 「ファラ、お仕事ご苦労様です…其方の方は?」 「アンタがエステルなのね?ちびすけからこれを渡すように言われたのね。」 イルククゥは持っていた本を、即座にエステルに差し出した 突然の事に驚きながらも、彼女から本を受け取る 受け取った本の表紙を見て、エステルはそれが何なのか理解した 「あっ、これって私がタバサに頼んでいた…貴方、タバサの使いの方なんです?」 「イルククゥなのね。」 「私はエステリーゼ…エステルです。本を届けてくれてありがとうございます。」 エステルは丁寧に礼を言うと、大切に本を抱える 「じゃあ、イルククゥが本を届ける相手ってエステルだったんだ。」 「そうみたいなのね…これでようやくおつかいが終わったのね。」 これで、ようやく帰れる…そう思った時、ぐぅという音が鳴った それはイルククゥのお腹の音で、急に空腹感を感じ始めた 「安心したら、急にお腹が空いてきたのね…ご飯食べたい。」 お腹を押さえながら、イルククゥが空腹を訴える 「だったら、家でご飯食べていかない?折角此処まで来たんだから。」 「そうですね、色々とお話も聞きたいですから。」 「ご飯が食べられるのね?だったら、すぐに行くのね。」 二人の誘いにイルククゥがすぐに了承すると、三人はすぐに家へと歩き出した
支援剣!!
『出会い』 ファラ「エスエル、イルククゥの主さんとは何処で会ったの?」 エステル「タバサとは、少し前に本屋で出会ったんです。」 エステル「偶然私が選んだ本と彼女が選んだ本が一緒だったのがきっかけで…。」 ファラ「そう言えば、前に友達が出来たって言ってたっけ。」 ファラ「それで、どんな感じの人なの?」 エステル「そうですね…外見は青い髪に眼鏡を掛けていて、自分より大きい杖を持った小柄の少女です。」 ファラ「ふんふん。」 エステル「最初の頃は寡黙で此方から話しかけてもあまり返してはくれなかったんですけど…。」 エステル「最近は少しくらい話してくれる事も増えて、一緒に本について話したりもするようになりました。」 エステル「それに、この本…私が欲しかった本だったんですけど、頼んだらこうして届けてくれました。」 ファラ「ふーん…何かイルククゥの話から想像してたのとは少し違うなぁ。」 ファラ「もっと冷徹で酷い人だと思ったけど……。」 エステル「彼女は寡黙で感情を表に出すような子ではないですけど…私は本当は優しい子だと思いますよ。」 ファラ「そっか…エステルが言うならそうなのかもね。」 ファラ「じゃあさ、今度家にイルククゥと一緒に呼ぼうよ。どんな人か、会ってみたい。」 エステル「そうですね、何時か家に招待しましょう。」 『彼女達の事情』 ファラ「ふぅ…。」 エステル「どうしたんです、ファラ?」 ファラ「ううん…私達が此処に来て結構経っちゃったなと思って。」 エステル「そうですね…もう2ヶ月以上は経ったでしょうか。」 ファラ「2ヶ月か…リッド達、大丈夫かな?」 ファラ「あの光にリッド達も巻き込まれた筈だから…心配だよ。」 エステル「ファラ…大丈夫です、ファラのお友達はきっと無事です。」 エステル「だから元気を出してください…ファラは元気な方が一番良いですから。」 ファラ「エステル…ごめんね、エステルだって友達の事が心配なのに。」 ファラ「………よーし、リッド達が無事だと信じて、私も頑張ろうっと。」 エステル「その調子です、ファラ。」 『この先だよ』 ファラ「私達が住んでる家はこの道を真っ直ぐ行った先だよ。」 エステル「右手側に少し大きな建物があって、小さな花壇があるのがそうです。」 ファラ「さ、早く帰ってご飯にしよ。」 『そっちじゃないよ』 ファラ「あっ、イルククゥ。家はそっちじゃないよ。」 イルククゥ「あれ、そうなのね?」 エステル「私達の家は少し大きな建物で、小さな花壇が目印です。」 イルククゥ「解ったのね。今度は間違えないように気をつけるのね。」
『出会い』 ファラ「エスエル、イルククゥの主さんとは何処で会ったの?」 エステル「タバサとは、少し前に本屋で出会ったんです。」 エステル「偶然私が選んだ本と彼女が選んだ本が一緒だったのがきっかけで…。」 ファラ「そう言えば、前に友達が出来たって言ってたっけ。」 ファラ「それで、どんな感じの人なの?」 エステル「そうですね…外見は青い髪に眼鏡を掛けていて、自分より大きい杖を持った小柄の少女です。」 ファラ「ふんふん。」 エステル「最初の頃は寡黙で此方から話しかけてもあまり返してはくれなかったんですけど…。」 エステル「最近は少しくらい話してくれる事も増えて、一緒に本について話したりもするようになりました。」 エステル「それに、この本…私が欲しかった本だったんですけど、頼んだらこうして届けてくれました。」 ファラ「ふーん…何かイルククゥの話から想像してたのとは少し違うなぁ。」 ファラ「もっと冷徹で酷い人だと思ったけど……。」 エステル「彼女は寡黙で感情を表に出すような子ではないですけど…私は本当は優しい子だと思いますよ。」 ファラ「そっか…エステルが言うならそうなのかもね。」 ファラ「じゃあさ、今度家にイルククゥと一緒に呼ぼうよ。どんな人か、会ってみたい。」 エステル「そうですね、何時か家に招待しましょう。」 『彼女達の事情』 ファラ「ふぅ…。」 エステル「どうしたんです、ファラ?」 ファラ「ううん…私達が此処に来て結構経っちゃったなと思って。」 エステル「そうですね…もう2ヶ月以上は経ったでしょうか。」 ファラ「2ヶ月か…リッド達、大丈夫かな?」 ファラ「あの光にリッド達も巻き込まれた筈だから…心配だよ。」 エステル「ファラ…大丈夫です、ファラのお友達はきっと無事です。」 エステル「だから元気を出してください…ファラは元気な方が一番良いですから。」 ファラ「エステル…ごめんね、エステルだって友達の事が心配なのに。」 ファラ「………よーし、リッド達が無事だと信じて、私も頑張ろうっと。」 エステル「その調子です、ファラ。」 『この先だよ』 ファラ「私達が住んでる家はこの道を真っ直ぐ行った先だよ。」 エステル「右手側に少し大きな建物があって、小さな花壇があるのがそうです。」 ファラ「さ、早く帰ってご飯にしよ。」 『そっちじゃないよ』 ファラ「あっ、イルククゥ。家はそっちじゃないよ。」 イルククゥ「あれ、そうなのね?」 エステル「私達の家は少し大きな建物で、小さな花壇が目印です。」 イルククゥ「解ったのね。今度は間違えないように気をつけるのね。」
投稿ミスってしまいました、すいません 「モグモグッ、モグモグッ!!!」 場所はファラ達が住んでいる家に移って・・・テーブルには料理が並んでいる その料理を、イルククゥは片っ端から食べ尽くす勢いで食べていた 既に半分以上の料理がテーブルから姿を消している 「も、もっと落ち着いて食べたらどうです?」 隣で食事をするエステルは、イルククゥの食べっぷりに驚いて手が止まっていた そんな彼女の言葉も聞かずに、食べ続けている そこへ、料理を作ったファラが皿を持ってやってくる 「わっ、もうこんなに食べちゃったんだ。」 「美味しいから当然なのね。」 口周りについたソースをぺろりと舐め取りながら、満足そうにイルククゥは答える 「ふふっ、そんな事言われると作り甲斐があるよ…はい、どうぞ。」 持ってきた料理をテーブルの上に置くと、ファラも椅子に座った そして彼女も食事を取り始めると、賑やかな声が聞こえてくる 「それにしても、あの時のファラは凄かったのね。自分よりでかい相手をドカーンと…。」 「大活躍だったんですね、ファラ。」 「大活躍って程じゃないよ、イルククゥに乱暴しようとした暴漢達をやっつけただけで…。」 食が進み、会話が続く…イルククゥはその時間を楽しんでいた 彼女達の側では、青い犬が同じようにご飯を食べている…ラピードだ やがて満腹になった彼女は、お腹を押さえながら背凭れにもたれかかる 「はぁ〜〜、美味しかったのね。ご馳走様。」 エステルとファラが食器の片付けに向かい、此処にいるのは彼女だけだ 彼女達が戻ってくるまでの間、何となくイルククゥは視線を泳がせ、周りを見てみる 此処は元々宿屋だったそうなのだが、何かの理由で営業を止めてしまったらしい 誰もいなくなった此処を、ある人から譲り受けたそうなのだ 内装は殆ど手を加えていないので、宿屋当時の面影が色濃く残っている 「ん、あれは……。」 そんな時、イルククゥの目にある物が目にとまった 壁に掛けられている一枚の絵…その絵にはファラとエステルの姿が描かれていた 他には側で休んでいるラピードに黒い髪をした青年とマントをした少女 それに二対の剣を構え、格好良くポーズを決める帽子を被った少年の姿がある 「それね、この家をくれた人が画家さんに描かせた絵だよ。」 丁度ファラとエステルが戻ってきて、絵の事を説明する エステルの手にはデザートを持った器がある 「あっ、デザートなのね♪」 イルククゥはデザートに目が輝き、テーブルの上に置かれるとすぐに手を伸ばした 「あの時は大変でしたね…ファラ達が助けた女の子がこの国の…。」 「うん、それで……で、ク…は王宮に、……ダは旅に出ちゃって…。」 二人は思い出話を始めるが、イルククゥは殆ど聞かずにデザートを食べ続ける 一人でデザートを食べきろうとした時、ある言葉が耳に入った 「そう言えばファラ、お仕事の方はどうです?」 「ううん、全然…浚われた女の子達が何処に行ったのか、手がかりが見つからなくて。」 「そうなんですか…ユーリも一度戻ってきたんですけど、手掛かりは無しだって…。」 「浚われた女の子って?」 耳に入ってしまったので、イルククゥが何となく尋ねる それを聞いて、ファラとエステルが視線を彼女に向ける 「あっ、イルククゥは何か知らないかな?実は……。」 ファラは自分達が何をしているのか…この王都でおこっている事件の事を話し出した
少し前から、この王都で若い少女が誘拐される事件が起こっている 人攫いの仕業らしく、捕まった少女達は外国へと売られるらしい ファラ達はその誘拐された少女達を探しているのだが、手掛かりを得る事が出来ていない ………… 「…って訳なんだけど、イルククゥは何か知らない?」 「うーん…知らないのね、私この街には初めて来たから。」 イルククゥは首を横に振りながらそう答える その答えを聞いて、二人の顔に少しばかり落胆の色が浮かぶ 「そっか…それなら仕方ないよね。」 「悪いのね、何も知らなくて。」 「ううん、気にしないで………それにしても大丈夫かな、ジェシカとジャンヌ。」 「心配ですね…スカロンさんも心配のあまり倒れてしまいましたし。」 どうやら、彼女達の友達まで浚われてしまったらしい だからこそ、まだ何も手掛かりが得られない状況に二人は焦りと落胆を抱いている 「友達が浚われたのね?それは大変なのね。」 事情を聞き、イルククゥは少しばかり考えた そしてすぐに、自分の頭の中に出た結論を口にする 「よし、だったら私もその浚われた友達を捜すのを手伝うのね。」 突然の協力宣言、それにファラもエスエルも目を丸くして驚いた 「ええっ、そんな…関係ないのに手伝って貰うなんて…。」 「関係なくないのね、友達が困っているのに放っておけないのね。」 「友達って……イルククゥ。」 既にイルククゥにとって、ファラもエステルも友達だった 人間の世界で出来た初めての友達…その友達を助けたいという気持ちは揺るがない 「それに、意志ある者を物のように扱うなんて許せないのね、すぐに見つけ出すのね!!」 「あっ、待ってください。」 そう言うと、エステルの制止を聞かずにイルククゥは果敢にも外へ飛び出していった 「…イルククゥさん、場所が解っているのでしょうか?」 二人がその後を見つめていると、しばらくして彼女は戻ってくる 「そう言えば、何処を探したら良いのね?」 その言葉に、二人は少しばかり呆れてしまう とりあえず、ファラが現在の状況を説明する事にした 「二人が浚われたのはつい最近で、場所は市民街…私がイルククゥと会った場所だよ。」 「つまり、そこを探せば良いのね?」 「まあ、そうかな…犯人は現場に戻るって言うから、私はそこを探していたんだけど。」 「なら、早速出発するのね。」 「うん、じゃあ一緒に行こう…でも、絶対に無茶しないようにね。」 「大丈夫なのね、これでも私強いから。きゅいきゅい。」 目的地が解り、もう一度イルククゥは外へと出て行った その後をファラが追いかけるが、その前にエステルの方へ振りかえる 「じゃあ、エステル…私イルククゥと一緒に行ってくるから、ラピードと留守番お願いね。」 「解りました…でも、気をつけてくださいね。」 「大丈夫だって、イケる、イケる。」 そう言って、ファラはイルククゥと一緒に件の場所へと向かう そんな二人を、エステルは静かに見送った
…………… 「うーん…見てないな、そんな子。」 「そうですか…ありがとうございました。」 此処は先程イルククゥがいた路地裏が近くにある、小さな通り道 通行人との話を終え、ファラは頭を下げる 家を出て、再び情報収集を行ったが…全く情報が得られない しばらくして、少し離れた所にいたイルククゥが戻ってきた 「イルククゥ…どう?」 「駄目なのね、そんな子知らないって言われたのね。」 ふぅ、と溜め息をつきながら彼女は疲れた様子を見せる ファラは辺りを見回しながら、呟くように口を開いた 「これだけ探したら、手掛かりの一つでも見つかると思うんだけどなぁ。」 「どうしても見つからないのね?」 「うん、ラピードにも手伝って貰ったけどね…途中で臭いが消えてて駄目だったんだ。」 人攫いの中にはメイジがいて、痕跡を魔法で丁寧に消したのだろう なので、ファラ達は殆ど手掛かりがない状況で悪戦苦闘している 「これ以上長引けば皆危ないのに…どうすれば…。」 「どうしましたかな、お嬢さん達?」 そんな時、二人に一人の男が声を掛けてきた 見た目は初老の老紳士で、人の良さそうな笑顔をしている 「あっ、すいません…実は私達、人を探しているんです。」 「おお、それはそれは…大変ですなぁ。」 事情を話すと、老紳士は我が身の事かと思うほど落胆した様子を見せた 「おじいさん、何か知りませんか?長い黒髪をした女の子なんですけど…。」 「ほう、ほう………んん、そう言えば。」 「何か知っているんですか?」 「いえね、私はこうして街を歩いて回るのが日課なんですが…前にそんな子を見た気がしますなぁ。」 「本当なのね!?」 此処で思わぬ手掛かりを得られたと思い、二人は老紳士の話に食いつく にっこりと笑うと、彼は続きを話す 「ええ、何やら慌てた様子でね…走っていったのを覚えています。」 「どっちに行ったのか、覚えていますか?」 「ええ、それも覚えていますよ…何でしたら、そこまで案内しましょうか?」 「お願いします!!」 老紳士の申し出に、ファラは即座にそれを受け入れた 此方ですよ…と老紳士が前を歩き、二人はその後に続いていく 「良かったのね、ファラ。」 「うん。これで二人を見つけられたらスカロンさんも喜ぶよ。」 二人は喜び合いながら、正直に老紳士の後へと続いていく 通りから離れ、人の少ない路地裏へと入った…日光も殆ど遮られているので、昼間でも薄暗い 「一体何処まで行くのね?」 「もうすぐですよ…もうすぐ。」 先程の件で路地裏が嫌になったイルククゥが急かすと、老紳士はそう答えてまだ歩き続ける やがて、三人は行き止まりである大きな壁の前へとやってきた 「つきましたよ…此処です。」 「此処?此処って行き止まり……。」 この時、ファラは嫌な予感がしたが、この人の良い老紳士を思って行動出来なかった なので、彼がこれからしようとする事に対処が遅れてしまう 「いいえ、此処ですよ…イル・ウォータル・スレイプ・クラウディ…」 小声で何かを呟きながら老紳士が振り返る…その手には杖が握られていた 直後、青白い雲が現れて二人の頭を包み込み…強烈な眠気が襲ってきた 「こ、これって…魔法…。」 「ふみゃあ……何だか眠くなってきたのね…。」 先にイルククゥが眠りについた…先程沢山食べた為、眠気に抗えなかったからだ ファラは何とか持ちこたえようとしたが、やはり寝てしまった 「お前達が探している女もこうやって眠らせたんだからな。」 優しい老紳士の仮面を剥ぎ捨て、欲望に満ちた笑みを浮かべながら男はそう答えた
「………クゥ、……て。」 夢と現実の狭間の中…イルククゥは何かが聞こえてくると思った だが、夢の中にいたい彼女はその声に耳を傾けようとしなかった 「むにゃむにゃ…もう少し、あと少しだけ食べたら…。」 「起きな!!!」 夢の中に入ろうとするイルククゥだが、別の声がそれを許さなかった ガツンと頭を何かで叩かれ、彼女の意識が急激に覚醒する 「痛いのね!?」 飛び起きるイルククゥ…頭を擦ろうとしたが、手が動かなかった どうしてかと確認してみると、後ろ手に体が縛られているのに気付いた 「な、何なのね、これ!?」 「ようやく気がついたわね。」 イルククゥが声の方を見ると、二人の少女がいる事に気付いた 一人はファラだった…自分と同じように、上半身を縛られている もう一人は長い黒髪をした、気の強そうな女の子だった 「ファラ!!」 「イルククゥ…良かった、起きないんじゃないかと心配してたんだよ。」 ホッと胸を撫で下ろすファラ…イルククゥは辺りを見回した どうやら此処は馬車の中らしく、今移動中らしい それに自分達以外にも何人かの女の子がいて、皆悲しみに暮れている 「ファラ、一体これはどういう事なのね?」 「うん…私達、人攫いに捕まったみたいなの。あのおじいさんも仲間だったみたい。」 悲しそうにファラは答えた…信じた相手に裏切られたから それを聞いて、イルククゥは怒った 「あのおじいさん、私たちを騙したのね!?許せない!!!」 縄を解こうと、イルククゥは暴れたが縄は全く解けない なら、元に戻って…と、ファラ達を前にして術の解除を行おうとした だが、その直後に激しい激痛が襲ってくる 「イタタタタタタタ!!?」 「無駄よ、これは魔法で出来たロープらしいから…ちょっとやそっとじゃ解けないわ。」 解除を中断して痛がるイルククゥに、黒髪の少女が説明する 一体誰なのね、こいつ…と彼女を見ていると、ある事を思い出した 「んん、お前…ひょっとして、お前がジェシカなのね?」 そうよ、と少女…ジェシカは答える 「ミイラ取りがミイラ…ってのは良く言うわね、あたしを探しに来て捕まるなんて。」 「ごめんね、ジェシカ…助ける筈が私達まで捕まっちゃって。」 「ううん、気にしないで。あたしだって自分なりにジャンヌを探してたらこいつ等に捕まったんだし。」 「…それで、これからどうなるのね?」 「あいつ等、私達をゲルマニアに売り飛ばすって言ってたわ。」 そう言っているのを、彼女は聞いていた…横目で一人の少女を見る 周りの女の子たちと同じように怯えているその少女は、彼女が探していた店の女の子だ 「イルククゥもごめんね…結局貴方も危険な目に遭わせちゃった…。」 「気にしないのね。自分から進んでした事だから、友達を恨んだりしないのね。」 「でも、これからどうするの?この状況で当てに出来そうなのはユーリだけだし。」 ファラの仲間である、黒髪に刀を持った青年…彼もまた人攫い達を探している 彼が自分達の事に気づかなければ、女の子達同様異国に売られる事になる 「もし、ユーリが気づかなかったらどうする?」 「その時は隙をついて何とかするよ…足だけは自由だからね。」 「おい、お前等…静かにしろ!!」 見張り役の男が怒鳴ってきたので、それ以上は話をするのを止めた 果報は寝て待て…時が来るまで、三人は大人しくする事にした
それから何時間か掛けて、彼女達の乗った馬車は国境の関所に来ていた 何人かの少女たちは、関所の役人が自分達を見てきっと見咎めてくれると信じていた しかし、ジェシカはそんなわけないと思った 「私達を隠してないのに、堂々と関所を通る筈ないわ。」 そして、関所へ到達して馬車が止まった…役人が何人かやってくる 男達は前へ出ると、役人と話し合う 「ふむふむ…成る程、積荷は小麦粉と材木か。」 馬車はイルククゥ達が乗せられた馬車の他に、もう一つの馬車と護衛用の馬車があった 材木が入っているという馬車の積荷は大きいもので、時々ガタガタと音がする それを無視して役人は小麦粉が入っているという、イルククゥ達のいる馬車の中を覗き込んだ 「成る程…確かに、中身は小麦粉だな。」 男達から金を受け取り、ニヤニヤしながら役人はそう言った その言葉に、女の子たちの顔色は絶望に染まる 「いやああああ、もう帰して、お家に帰してよぉ!!!」 「うるせぇ、小麦粉が喋るな!!」 耐え切れなくなった少女の一人が泣き叫ぶ…怒鳴っても少女は泣き止まない 怒った男は少女を黙らせようと、馬車の中へと入ってきて手を上げる このままじゃ…そう思ったと同時に、咄嗟にファラが動いた 「はあっ!!!」 「うごっ!?」 素早く蹴りを放ち、少女を殴ろうとした男を蹴り飛ばす ものすごい勢いで飛ばされた男は、役人とぶつかって互いにのびてしまう 「ファラ、今は動く時じゃないでしょ。」 「ごめん、咄嗟に体が動いちゃって…でも、こうなったらやるしかないよね。」 相変わらずロープは解けないので、足技だけで戦うしかない ファラはすぐに外へ出ると、護衛の馬車へと向かう 「何だ、何があった!?」 後ろにいた護衛達が動き出そうとする…その前に先手を打つしかない 彼女は上空へと飛び上がった…確認できる敵は三人 「鷹爪落瀑蹴!!!」 それは、流星の如く空中から地上の敵へ急降下する技 一撃目の衝撃波、更に二撃目の衝撃波を相手に食らわし、最後に急降下蹴りを食らわす 一撃目は右にいた男、二撃目は銃を構えようとした男を倒した 最後の一撃で残った一人を攻撃し、彼等は叫ぶ間もなく地面に沈む 「よし、次は……。」 残りの敵を確認しようとした時、風が襲ってくるのを感じた…即座にファラは避ける 風は材木が入っているという馬車の車輪を切り裂き、馬車が傾く そのせいで積荷が地面に倒れるが、誰もそれに見向きもしない 「やってくれるじゃないか…只の平民ってわけじゃないようだね。」 魔法を放ったのは、杖を持った女のメイジ…この人攫い達のボスだった 隣には、自分達を騙して捕まえた老紳士の姿もある 「私は平民だよ…これだって、平民の証だし。」 首に付けているチョーカーを見せながら、ファラがそう答える 「その力…あんた、凛々の明星《ブレイブ・ヴェスペリア》だね。」 「私達の事を知ってるの?」 「噂はかねがね聞いてるよ。」 その噂は、最近トリスタニアに凛々の明星という何でも屋が現れたというものだった メンバーは平民の癖に腕っ節は強いと、傭兵達の間ではちょっとした有名モノである 「ヒンギス、あんたとんでもないヤツを捕まえてきたね。」 「し、知らなかったんです、まさかこんな女が奴等の仲間だったなんて。」 「まあいいさ…凛々の明星なら、退屈しのぎにはなるだろうしね。」 そう言うと、女頭目は杖を振るう…すると、ファラを縛っていたロープが解けた 「ちょっとばっかり、遊んであげるよ…掛かってきな。」 「後悔しても知らないからね…行くよ!!」 手を軽く動かし、準備運動を終えると拳を構える その行為に対して笑みを浮かべると、女頭目は杖をファラに向けた
支援
女頭目は凛々の明星が凄い連中だと知っていたが、その力量までは解っていなかった 平民はメイジに勝てない…その根底から、ファラの事を舐めているのだ 「くらいな!!」 「飛葉翻歩!!」 風の刃・エアカッターを唱えてファラに向けて放つ が、彼女はそれを風に舞う葉の如くかわし、一気に接近して女頭目に蹴りを放つ 「ぐぇ!?」 女頭目は間一髪でそれを避け、代わりにヒンギスがその一撃を受けた 横に飛びのくと、ファラとの間合いをあける 「あっ…ごめんなさい、おじいさん。」 敵とはいえ、年寄りを蹴り飛ばしてしまったので反射的に謝る 蹴られたヒンギスは完全にのびてしまっており、その謝罪を聞く事はなかったが 「はっ、中々やるじゃないか…これならどうだい!!」 今度は風の刃を何本も作り出し、それをファラに飛ばしてくる それを空中に逃れる事で避けると、ファラは女頭目に向かっていく 「散華猛襲脚!!!」 飛び込み蹴りから回し蹴りを繰り出すこの技…それを女頭目は何とか避ける その後も襲ってくる拳や蹴りの嵐…彼女の表情も余裕から困惑に変っていく 攻撃を避け続けながら彼女は思った…こいつ、本当に平民か…と 「(冗談じゃないわよ、こんな平民がいてたまるもんですか!!!)」 今までの経験から解った…この女は自分よりも強い だが、それを認めたくはなかった…認めれば、自身の負けを認める事になる 「せやっ!!!」 「うっ!?」 放たれた彼女の一撃を避けられず、女頭目は杖を使ってガードした だが、それは予想以上に重く、彼女はふらついてしまう 隙が出来た彼女に向かって、ファラはトドメの一撃を放とうとした 「これで!!」 「おい、待て女!!!」 その直前に男の声が聞こえ、ファラの拳が止まった 振り返ると、男がジェシカを連れて外に出てきていた まだ一人残っていたらしく、その手にはナイフが握られている 「動くなよ…動けば、この女の命はないからな。」 「ファラ、あたしに構わずこいつ等を…うっ。」 「ジェシカ!!!」 ジェシカは男に首を締め付けられ、苦しそうに息を漏らす ファラがジェシカに気をとられているうちに、女頭目は彼女へ風の魔法を放った それを避ける事が出来ず、ファラは真正面から受けてしまう 「きゃあ!?」 風に吹き飛ばされ、ファラの体は地面に叩きつけられる 女頭目はよろけながらも、しっかり立とうと足を踏ん張った 「姉さん、大丈夫ですか!?」 「な、何とかね…よくやったよ。」 手下の横槍を責める事無く、ゆっくりとファラへと近づいていく 何とか立ち上がろうとするファラに向けて、女頭目は杖を向けた 「あんたもよくやったよ、本当に…でも、此処までだよ。」 「ひ…卑怯だよ、人質なんて…」 「勝つためには手段は選ばない主義なんでね…それに、あんたはいちゃいけないんだよ。」 女頭目は詠唱を行い、何時でもファラの首を跳ね飛ばす準備を整える 「あんたの力は私を…メイジを脅かす。だからあんたは死にな。」 「ファラ!!!」 ジェシカが叫ぶが、捕まえられていて駆け寄る事も出来ない どうすれば…この危機を打開する、いい方法はないのか… 「待つのね、お前達!!!」 その時、馬車からイルククゥが飛び出し、彼女達に向かって叫んだ
「何て卑怯な奴等なのね、自分が負けそうになったら平気で人質を使うなんて。」 「何だお前は、大人しく馬車に戻ってろ!!」 だが、イルククゥの怒りは頂点に到達している…はい、そうですかと引き下がるわけがない 彼女は怒りに任せて変化の術を解除し、元に戻ろうとした さっき試したように、膨張する体にロープがきつく食い込んでくる 「んぎぎぎぎぎぎ…痛い、痛いけど我慢するのね、きゅい、きゅいきゅい〜〜〜!!!」 「な、何だ、何が……と、トカゲ!?」 突然の事に男だけでなく、ジェシカもファラも、女頭目もその動きを止めていた 彼女の体は輝き、本来の竜の姿を取り戻しつつあったからだ そして、とうとう…… 「くけ〜〜〜〜!!!!」 彼女の膨張にロープが耐え切れなくなり、引きちぎれた 同時に、イルククゥは元の姿へと戻り、締まらない雄叫びをあげる 「な、何だこれ…竜!?」 男は驚きのあまり口をあんぐりと開け、ナイフを取り落としてしまう ジェシカも驚いていたが、好機だとも思い、男の足を思いっきりふみつけた 「いってぇ!!!」 その痛みから、男の手が緩み…その隙をついて、ジェシカは逃げ出した 同時にイルククゥが翼を大きく動かし、男を打ち据えた 気付かなかった男は避ける事も出来ず、やられてのびてしまう 「そ、そんな馬鹿な…。」 ファラもまた、女頭目が驚いている隙をついて攻撃に転じた 一気に相手に詰め寄ると、彼女が気付く前に技を繰り出す 「臥龍空破!!!」 左右の拳で敵を打ち上げる気合の拳…それが女頭目に向けて放たれる 気付いた時には、自身の体が宙に浮くのを感じた そして、空が見えて…そこで、彼女の意識は途絶えた 「イケる、イケる!!!」 拳を振り上げ、勝利のポーズをとるファラ…だが、こんな事をしている場合じゃない すぐに冷静になって、人質に取られていたジェシカに駆け寄った 固く縛られていた縄を解き、彼女を自由にする 「ジェシカ、大丈夫!?」 「何とかね…一時はどうなる事かとひやひやしたわ。」 見た所、彼女は何処も怪我をしていない…ファラはホッと胸を撫で下ろす それよりも…と、彼女は向こうを振り向き、同じようにファラも振り向いた そこには、本来の姿へと戻ったイルククゥがジッと佇んでいる 「これって…どういう事?」 「私にも解らないよ……あなた、イルククゥなの?」 「きゅい、きゅい……あのね、本当は…。」 ファラの問いかけに、おずおずとイルククゥが全てを話そうとした時、向こうから物音が聞こえた 彼女達が振り向いた先にあるのは、材木が入っているという箱…ガタガタと振るえている それが段々と激しさを増し、やがて箱の中から巨大な腕が生えた 「グオオオオオオッ!!!!!!」 後に続く、獣の雄叫び…自身を閉じ込めていた箱を全て破壊し、その全貌を現す 緑の体毛に覆われ、異常に発達した腕を持つモノ…… それはまさしく、『化け物』と呼ぶに相応しい怪物だった
「ファラとイルククゥ…大丈夫でしょうか?」 一方その頃、エステルはラピードと共に留守番をしていた タバサから贈られた本を読みながら、エステルは二人の事を考えている もう夕方になるのに、二人は依然として帰ってこない 「それに、ユーリも帰ってきませんし…心配ですね、ラピード。」 エステルの言葉に対し、ラピードは何も返事を返さなかった だが、突然立ち上がると扉の方へ視線を向けた 「どうしたんです、ラピード…誰か来たんです?」 本を閉じて、エステルは椅子から立ち上がった 同じように入り口を見ると、ノックも無しに扉が開いた 「あっ、貴方は……。」 現れたのは、青髪にマントをした長い杖を持った少女…タバサだった 彼女は何も言わず、ゆっくりと中に入ってくる 「タバサ、貴方なんですね。今日、貴方の使いの方が来て…。」 「グルルルルル……。」 エステルが事情を説明しようとすると、突然ラピードがタバサに向かって唸った ラピード…と彼の様子を見た後、もう一度タバサを見る すると、タバサは持っている杖を構えた…自分に向けて 「た、タバサ、何を……。」 「………。」 エステルの言葉に何も応えず、タバサは杖を向けたままだった 無表情のまま、彼女はルーンを唱える…魔力が杖へと集まっていく そして……… ………… 今回の投稿分、終了です 今回はストーリーの流れが上手く纏まらず、何度も手直しする形となりました でも、こうして投稿出来たので満足です 次回はようやくトリスタニアの話完結、近いうちに投稿します そして、早くモット伯の話や品評会、フーケの話を出したいです それでは
乙乙
熱いバトル、乙でした。 だけど、こらシルフィードぉ!
最近完結したガンダム00のせっさんの前じゃあ亜人と人間、貴族と平民の抗争など屁でもあるまい
刹那・F・セイエイ ルイズ 邪気眼 ゼロ魔で検索したらこんなのがかかったんだがw 858 :水先案名無い人[sage]:2008/03/13(木) 19:37:07 ID:rx7kfYCI0 655 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 21:32:27 ID:whn25cAN はじめまして 作品名:機動戦士ガンダム00 使い魔:刹那・F・セイエイ 投下よろしいでしょうか? 659 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 21:40:20 ID:GZObvd2R おお、なんかルイズがやたら苦労しそうな使い魔だががんばれー期待してるぞ 660 名前:00の使い魔 phase00-0[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 21:41:58 ID:whn25cAN phase00 終わりの始まり 人物紹介 名前 刹那・F・セイエイ 真名 ヤマオカタカシ 年齢 14才 職業 学生。裏の世界では凄腕の暗殺者。 身長 185cm 外見 モッズヘアーで黒のブランド服を着こなしている。 趣味 スキー 好きな科目 英語・パソコン 技能 魔眼による石化。吸血鬼と皇族のクォーターでもある。 備考:異能集団ニーチェに囚われの兄を助け出す今一歩の所でリトルウィリー・田中に妨害され失意の中に新たな出逢いにより FifthHevenの入会試験に意欲を示すも仇敵断紅麗に惜敗する。 協会に終結する異能たち。幾多の組織から派遣された者たちの考えが考察する中でタカシは光る鏡につつまれ・・・ 661 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 21:44:07 ID:0nlVE0Af こりゃもうガンダム関連は全て禁止だw 664 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 21:45:09 ID:GZObvd2R 見なかったことにしようorz
>>リトルウィリー・田中 誰やねんwwwwww
何事だよww
名前 刹那・F・セイエイ 真名 ヤマオカタカシ この時点で既になんかおかしいだろwwww
名前以外なにも関係ねえwww
だがこれで"作品名:機動戦士ガンダム00"と言い張れるその胆力だけは驚嘆に値するなww
偶然だろうがウルトラとテイルズが対になる内容だな 人さらいとか、ドラクエ5のリュカが聞いたら怒るだろうな 最近来ないけど、日替わり使い魔の人帰ってきてほしいぜ
あー、あれだ。 いいか??刹那の心を受け継いで、これからは君たちがガンダムになるんだよ。 これは00じゃないなんて、まるで自分は知識人? 常識人である風に言うやつには正面から向かって目を見て言ってやれ。 俺がガンダムだ、私が刹那なんだと。 でかい、でかいガンダムになれ(多分サイコ辺り、狂ってる的に) こんな感じで書いたんだろう。
おれはガンパレの人にかえってきてほしい
ラスボスの人…? フフフ…ハッハッハ! その通り、私がこのゲームのラスボスです! さあ、カモン!カモン!
日替わりとサイヤと氷竜の人はマダカナー
ゲゲゲの女房が放送中に使い魔くん千年王国帰ってくると思ってたんだが…。
皆さんこんばんは、夜分遅くに失礼します。 ただいまより新規作品投下したいと思います。 直前にテイルズの人が来てるところになんですが、なりダンより双子召喚です。 小説版とGBC版をベースに、X設定を所々取り入れる感じになると思われます。 では、45分頃に始めさせて頂きます。
あ、ありのまま、今起こったことを話すわ。 「わたしは春の使い魔召喚の儀式で使い魔を召喚した。 と思ったら、いつの間にか目の前にふたりの赤ん坊がいた」 何を言ってるのか分からないと思うけど、わたしも何が起こったのかわからなかった。 頭がどうにかなりそうだわ…… 捨て子だとか、コウノトリが間違えて運んできたとか、そんなチャチなものじゃ断じてない。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……
わたしことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、目の前の惨事に手をこまねいていた。 人間、しかもこんな赤ん坊。それもふたりも! どうしたらいいか、わたしに分かるわけないじゃない! 「ミスタ・コルベール……」 この状況に耐えられなくなったわたしは、監督官のミスタ・コルベールに救いを求めた。 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「もう一回召喚させてください!」 もう一回! 次は必ず成功させられるはずだから! でも、ミスタ・コルベールの言葉は非情だった。 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「どうしてですか!」 「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」 それはもちろん分かってます。だからこんなに頑張ってるんです! 「それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それによって専門課程へと進むんだ。 一度呼び出した『使い魔』は変更することが出来ない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。 好むと好まざるにかかわらず、この子達を使い魔にするしかない」 それも分かってます! でも、だからって! 「こんな赤ちゃんを使い魔にするなんて聞いたことがありません!」 そうわたしが言ったら、あたりのクラスメイト達からどっと笑い声が上がった。 ムカつく! 先生がいなかったら一人残らず爆発させてやるのに! 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。この子達は……」 ミスタ・コルベールはふたりの赤ん坊を指差した。 「確かにただの赤子かもしれないが、呼び出された以上、君の使い魔にならなければならない。 古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。 この子達には君の使い魔になってもらわなくてはな」 「そんな……」 わたしの最後の希望が断たれた。 「それに、だ。 君がもしこの子達を使い魔にすることを拒否したとする。そうしたら、この子達はその後どうすればいい? いまの時勢、見ず知らずの赤子を引き取って育ててくれる奇特な人間もそういないだろう。 まさか、このまま捨て子にするなどという非人道的な行為に及ぶわけではあるまい?」 まさか。仮にもヴァリエール公爵家のわたしが、そんなことするわけないじゃない! 「確かに、君が望んで召喚したわけではない。いわば事故のようなものだ。 だが、君が召喚した以上、君はこの子達に対して責任があるはずだ」 それを言われると弱い。わたしだって別にこの子達が憎いわけじゃないし。 「わかったかね。では、儀式を続けなさい」 「はい……」 仕方なく、わたしはふたりの赤ん坊に向き直った。 ピンクと青の産着に包まれて、穏やかな顔で眠ってる。私の葛藤のことなんてまったく分かってないだろう穏やかさだ。 「ねぇ」 わたしにこんな声が出せるんだと、自分でも驚くくらい優しい声で、語りかけた。 「あんたたち、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 そして、 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 呪文を唱え、ゆっくりと顔を近づけ…… そっと、口付けた。
「おわりました」 ふたりの赤ん坊との契約が済んで、わたしはそっと顔を離した。 赤ちゃんとのキスなんて愛情表現みたいなものよ、ノーカウントよね。 「『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたようだね」 当然よ! と言おうとしたら、あたりから盛大な野次が飛んできた。 「相手がただの赤ん坊だから、『契約』できたんだよ」 「そいつらが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」 「バカにしないで! わたしだってたまにはうまくいくわよ!」 「ほんとにたまによね。ゼロのルイズ」 そういってわたしのことを笑っているのは、『香水』のモンモランシーだ。 「ミスタ・コルベール! 『洪水』のモンモランシーがわたしを侮辱しました!」 「誰が『洪水』ですって! わたしは『香水』のモンモランシーよ!」 「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよ!」 「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! それとも子持ちのルイズ、コブ付きルイズとでも呼んだ方がいいかしら!」 「なんですって!!」 「こらこら、貴族はお互いを尊重しあうものだ」 ミスタ・コルベールがわたしたちの仲裁に入ってきた。 もともと悪口を言ってきたのはむこうなのに。こっちは被害者よ。 その時、突然赤ん坊たちが泣き出した。どうやら使い魔のルーンが刻まれる痛みのようだ。 「大丈夫よ。『使い魔』のルーンが刻まれてるだけだから」 そういって赤ん坊たちをあやす。さっきまで言い争っていたのが嘘のように穏やかな声で。 ……少しずつ、この子達に情が湧いてきた気がする。 そのうちに泣き声が小さくなってきた。どうやらちゃんと刻まれたようだ。 ……胸に。 ミスタ・コルベールがふたりのルーンを確かめる。 「ふむ…… これは珍しいルーンだな。それもふたりとも同じものか」 わたしには使い魔のルーンの種類なんて分からないけど、やっぱり普通とは違うんだろうか。 「さて、これで春の使い魔召喚の儀式は終了です」 すっかり忘れていたけど、今は使い魔召喚の儀式の最中だった。 「じゃあ皆教室に戻るぞ」 そういって『フライ』の呪文で空に飛び上がった。 というか、この子達を連れて教室に戻るの? 「ミスタ・コルベール! わたしはどうしたら?」 「そうですね…… このあとは授業もないし、あなたは一度寮に戻りなさい。 その子達の世話のことも含めて、いろいろ考えたほうが良いでしょう」 「はぁ……」 それだけ言ってさっさと飛んでいってしまった。ちょっと無責任すぎませんか、先生…… 「じゃあな、子持ちのルイズ! 子育て頑張れよ!」 「早く父親見つけてやれよ! 子供がかわいそうだぞ!」 「バーカ、ゼロなうえにコブ付じゃ相手なんて見つからないだろ」 クラスメイトたちも言いたい放題言いながら行ってしまった。 「……」 すっかりあたりから誰もいなくなって、わたしは目の前の赤ちゃんを抱えながら途方にくれた。 「……これから、どうすればいいのかしらね」 誰にともなく呟いて、結局わたしは一人で寮に戻った。
「あら、ミス・ヴァリエール。どうしました?」 寮に着いて、自分の部屋に戻ろうとしたところで、一人のメイド−名前は確か、シエスタ−に会った。 「ちょうど良かった。ちょっとこの子持って頂戴」 「へ? あ、はい……」 ずいぶんと間抜けな表情をして、青い産着の子を受け取るシエスタ。 その視線は、わたしと、わたしが抱えてる子と、彼女が抱えてる子の間をせわしなく行き来している。 「なに、何か言いたいことでもある?」 「えっと…… おめでとうございます?」 ……は? 「利発そうなお子さんですね。それで、この子達の父親はどなたで……」 どうやら壮大な勘違いをされているらしい。まあ無理もないか。 「ちょっと落ち着きなさい。あんたとわたしは昨日も一昨日も、一年前からずっと会ってるでしょ? いったいいつ子供を生めるってのよ!」 「は、はい! すみません! それじゃあこの子達はいったい?」 「使い魔よ」 「え?」 「だから、わたしの使い魔! 今日が使い魔召喚の儀式だってことは知ってるでしょ?」 「ええ。知ってます」 「で、召喚したらこの子達が出てきたわけ! 以上、なにか問題ある?」 「い、いえ、問題なんてそんな……」 ふぅ、叫んだらちょっと落ち着いたわ。 ちょうどいいからこのメイドにいろいろ手伝ってもらうことにしましょう。 「そういうわけだから、これからはこの子達の面倒を見てかなきゃいけないの。あんた、子育ての経験は?」 「えっと、はい。実家では弟たちの面倒を見てきましたが……」 「なら、この寮にいる間はあんたに手伝ってもらうから、よろしく」 「え、ええ!?」 よし、協力者一人確保。これで何とかなるでしょ。
「あの、ミス・ヴァリエール」 「なによ?」 今更協力できませんなんてのは無しよ。 「この子達の名前です。ミス・ヴァリエールが親代わりになるなら、名前をつけてあげないと」 名前。そういえばすっかり忘れてたわ。 でも、子供に付けるに相応しい名前なんて思い浮かばない。 「名前ね。どんなのがいいのかしら」 一応、尋ねてみる。 「それは私には答えかねます。ミス・ヴァリエールが考えてあげるべきです」 答えを期待はしていなかったけど。なんだか、ますますプレッシャーが強くなった気がする。 ついさっき会ったばかりの子の名前を決めるだなんて、無理に決まってる。 「うーーん……」 今気づいたけど、こっちのピンクの方は女の子で、青の方は男の子ね。 しばらく唸っていたわたしだったけど、ふと、雷に打たれたような閃きを感じた。 これが天啓というものかしら。 「メルとディオ…… そう、女の子がメルで男の子がディオ!」
以上で投下終了です。 短めですが、次話から大きく場面転換するため、連続しにくいのでここで切っています。 ルイズの1人称で進むのは仕様です。本来の主役であるところの双子がまだ話を作れる状態じゃありませんので。 ただし、次回以降は3人称で進む予定です。 冒頭のポルナレフ風は…… 忘れてくださいw さて、なりダン(特にGBC版)を知っている方なら分かるでしょうが、いわゆる「あなた」の役をルイズに担当してもらう形になってます。 フォート家の双子を呼ぶ手も考えましたが(というか初期案はそちら)イマイチ膨らみきらないので、思い切ってこちらにシフトチェンジしました。 結果、今後原作から乖離する部分が大量に出てきます。時間の流れで仕方ない部分なのですが。 なので、そういうのが嫌いな方はNG登録などの対策を採って頂くようお願いします。
何故無用な1文を付けたがるのか
ふと思ったけどウォッチメンのDr.マンハッタンを召喚したら、ハルケギニアという世界に興味を示しそうじゃね? フィクションの世界にしか居なかったメイジやモンスターの存在とか、何より自分が予測できなかった召喚そのものとか… とりあえず召喚した側は何とかして服を着させないといけないがw
これはちょっと擁護できない
擁護できないって、裸の使い魔を従えろと言う意味で? 「ぼ、僕は、つ、つかいまになったんだな。 つかいまというのは……」
始めたばかりではまだ評価をつけがたいな。 とりあえず、あとがきで謙遜するのはいいけどいろいろ言い訳して卑屈になるのはよくないと思う。
面白いパターンなのでちょっと期待してる。 が、後書きにいらんこと書いてるのが余計。
まずは稲作を広めるところから始めよう ハルケギニアに新たな食文化が根付くまでを描いた感動の物語
裸の使い魔 ターミネーターとかコスモス発動した小泉ジュンイチローとかか
タルブならおにぎりがあるかもしれない
ゼロ戦の代わりに、訳のわからん奴が置いていった絵があるのかw
>>538 小ネタにあったな
あちこちから絵を描いてくれと追い回される山下先生がw
黒魔導師終わったのかー おつかれさまー FF8とかFF5とかFF2とか止まってるのも再開し無いかなぁ
なにが残されようと律儀に奉っておいてくれるタルブの村人は親切だ さて、忍空やバルゴンの人もまだかなあ
タルブは魔窟だ
達人がいたり魔王崇拝の本拠地になってたりオーバーテクノロジーが封印されてたり タルブは人外魔境だな
>>536 深夜のお忍びの際にアンリエッタが気絶するんじゃないか?
原作での才人の勘違いキス以上に刺激が強すぎるw
ルイズ「ディティクト・マジック?」
アンリエッタ「ええ、目や耳があるかわかりません…から…ね?」
マンハッタン 「……?(ティンティンぶ〜らぶ〜ら)」
アンリエッタ「……………………はぅ」
なあーに、魔王マーラ様だって召喚されてるんだからなんてこたあない
格闘モノのキャラって召喚されたことってあるっけ? 喧嘩商売の佐藤十兵衛とか来て欲しい。ワルドあたりが 頭脳戦でおちょくられまくった後、煉獄でボコボコにされそうw
デッドプールを召喚
>>553 リュウとか豪鬼とか呼ばれてるぞ。
格ゲーなら舞とかナコルルとかミナとか誰か呼んでくれないかなあ。
羅将神ミヅキなら短編にいたぞ。
つーかナコルルもういるじゃない。
>>553 十兵衛なら文さんと一緒に召喚されるのを考えた事は有るが
やっぱ二人は今からトーナメントもある身だしなぁって思って止めた
文さんも十兵衛も自分の倒すべき敵の居ない世界に飛ばされて帰る手段も無いとか言われたらルイズに金剛かました後色々酷いことしそうだし
あれ。消えちゃったのか? 読んだ記憶があるんだけど。
>>560 あの二人がゼロ魔世界に来たらギャグパートが始まって、
ルイズが合法ロリかどうかで、某知事やロックもどき、芸人のそっくりさん達が会議始めるよ。
喧嘩商売が駄目なら 塩田やうぐいす呼べばいいじゃない
>562 小野さんて名前のミノタウロスが出てきてジークジオンですね。 わかります。
565 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/24(金) 01:31:27 ID:iONgDXCv
SAMURAIDEEPERKYOより鬼眼の狂(先代紅の王との決着後)を召喚。 チートすぎるな・・
>>560 忘れちゃいけない、文さんの童貞暦は実に38年!
自分のファーストキスを奪った16歳のルイズに何もできないことは確定的。
もっとも父親の仇討ちが不可能になったと知ってマジ泣きするのも確実だが。
……これで十兵衛も一緒だと、地球への帰還のためには手段を選ばない最悪に
ダーティーな展開しか想像できんなあ。たしかにそりゃダメだわ。
やっぱ北斗の拳からレイを召喚してマチルダさん辺りを剥(トベウリャ!!)
>563 剣客商売に見えた。 小雨坊とかひどいよ。せめてうなぎ屋で。
サイトに念友を作れと?
念・・・念能力・・・ということでハンター×ハンターから・・・王を召喚! 召喚したその日にルイズ死にそうだな 没
ハンタからならボマーを召喚すれば良いじゃない
ゲンスルーだったら一人か三人かで行動が変るかな たんにリリースが使えなくなるだけかも知れんが
ハンターならポックル召喚くらいがちょうどいいんじゃないかねえ 戦力インフレ高すぎて惨殺されちゃったけど、念使えるから十分強いし、性格もまあまあ そんでテファのところにはポンズが召喚されてて感動の再会とか
ハンゾーさん一押し
一応グリードアイランドを手に入れてプレイできるだけの力はあるモタリケ
ゴレイヌ一択
もしも、ルイズが召喚したのが塾長だったら。 「わしが男塾塾長兼、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢の使い魔、江田島平八である!! どうじゃあ、こんなもんで!?」 「ぃ、い、いいんじゃない?」 「ぐわぁっはっは! このわしにむかってしもべになれと言った女子ははじめてよ! よかろう、女子を命懸けで守るのが日本男子の本懐である!」 暁時代の男塾には女子(半分)もいるし、塾長の懐の深さに期待しよう。
こんばんは 予約もないようなので投下させていただきますね
使い魔はじめました――第二十三話―― アルビオンでの戦争を、済し崩し的に終結させたルイズとサララ。 彼女らは、救国の英雄としてアルビオンの王党派から、盛大に称えられた。 しかし、あまり長く滞在する訳にもいかず、出来るだけ足早にトリステインへ戻った。 杖を取り上げ、縛り上げたワルドを連れて王城へルイズ達が現れた時には、 一触即発になりかけたが、アンリエッタの一言により騒ぎは収束。 そうして、ワルドを別室に監禁した後、アンリエッタの私室へと移動した。 チョコは、ワルドを見張る、と称し、めんどくさくなりそうな話から逃げている。 そこで、ルイズとサララは事の顛末を、アンリエッタ、マザリーニ、マリアンヌに告げた。 「まあ、まあまあルイズ! 私のお友達! あなたには感謝してもしきれませんわ!」 感極まったアンリエッタは、ぎゅむぎゅむとルイズを抱きしめる。 「本当に素晴らしいですわね! 流石、カリンの娘!」 反対側から、マリアンヌもルイズを抱きしめていた。 この親子、実に良く似た者同士である。 カリンとは何方ですか? と少し離れて座っていたサララが問う。 「私の母様よ。先々代の陛下にお仕えしていたの」 「そう! とても強くて素敵でしたのよ! 女の子だと解った時は、 三日三晩泣き明かしたものでしたわ!」 未だ若々しい太后は、目をキラキラと輝かせながらまるで少女のような笑みを見せる。 「今のルイズのように、スラリとした手足をしていて、とても華奢で、 それなのに信じられないくらい物凄い魔法を使って、どんな相手にも立ち向かって! 何でしたら、その当時の絵姿などお見せしましょうか、ミス・サララ?!」 がたり、と席から立ち上がりそうな程、熱の入った物言いにも、 サララは表面上はひるまない。ただ、彼女にしては珍しく、普段から笑みを浮かべる口元が、 ひくひくと困ったようにひきつっていた。 「あー、コホン。太后陛下、それはまたいずれ。姫殿下も、ミス・ヴァリエールを お離しせねば、息が止まってしまわれますぞ」 華やかな場の雰囲気にそぐわない、枯れ枝のような男、マザリーニが二人を諌めた。 二人にぎゅうぎゅうと抱きしめられていたルイズは、ようやくホッと一息つく。 「アルビオン側からの書類によれば、レコンキスタに所属していた人々は、 あちら側で処分を決定するそうですが……、まあ、大半が悪魔の手で 洗脳されていたもの、そうそう厳しい処分にはなりますまい」 ルイズが持ち帰ってきた、ウェールズからの書類を読みつつマザリーニはそう告げる。 「それでは、ワルド子爵の沙汰だが」 「そ、そのことですが、僭越ながら申し上げます!」 緊張した面持ちで、冷や汗をかきながらルイズが叫ぶ。 「ワルド様、いえ、ワルド子爵は、あ、悪魔に操られていたからこそ、 祖国を裏切るなどという、大罪に手を染めたのです、ですから、あの、その」 「つまり、彼の沙汰にも酌量を、と?」 マザリーニの鋭い眼光に怯み、一瞬目をそらす。 目をそらした先で、サララが音に出さず小さく口元を動かす。 がんばってください、と。それに励まされ、再びマザリーニに向き直り、頷いた。 「ほう……」 しかし、さらに鋭く睨みつけられる。体がガタガタと震える。 なんとかその震えを押さえようと、サララの手を握りしめた。
「まあまあマザリーニ、そんなに苛めてはいけませんよ」 場の雰囲気を打ち砕くように、マリアンヌがころころと笑いながら、 ルイズに優しく微笑みかける。 「我が国は優秀な人材が不足しているのです。彼のように優れた人材を、 どうして処刑したり、牢に入れたりすることがありましょうか」 その言葉に、ルイズは呆気にとられる。 「で、では、その、ワルド様は?」 「……半年の減給と、一か月の謹慎、といったところでしょうな。 罪状を明らかにするわけにも行きませんから、まあせいぜい、 姫殿下の命令で勝手に動いたこと、に対する処分ですよ」 真面目くさった顔で、しかし目には愉悦を湛えながら、マザリーニが告げる。 「よ、よかったぁ……」 全身から力が抜け、ルイズはへなへなとサララによりかかった。 お疲れ様です、とばかりにサララはルイズの頭を撫でる。 「ワルド子爵は、ルイズの婚約者ですものね。心配するのも、当然ですわね」 アンリエッタも、労いの言葉をかける。 しかし、これがとんでもない事態を引き起こした。 「あら、貴方の? でしたら、良いことを思いつきましたわ」 楽しそうに、マリアンヌが笑う。 「謹慎の間に、サンド……いえ、ヴァリエール伯爵と、カ……、夫人に、 そのワルド子爵とやらを、鍛え直してもらいましょう」 「え、いえ、その、太后陛下、それは」 ぴしり、とルイズが固まる。 「カリンのことですから、娘の婿になる相手が命令違反を行った、というだけで、 言わずとも鍛錬を行うに決まっていますわ。でしたら、やりやすいように、 こちらから書状を出せば、きっと喜びますね」 それは、ある意味でワルドに対しては死刑宣告とほぼ同意だった。 しかし、ニコニコと笑う彼女に対して、誰も文句は言えない。 悲しいかな、彼女こそが、この国一番の権力者なのであった。
よろしいでしょうか、とサララは場の空気を変えるために言葉を発した。 「む、何ですかなミス・サララ」 サララは、エンペルの話や酒場の噂の中で、特に気になっていたものの話をする。 すなわち、人間が蛙になってしまう呪いについて。 「何と……ゲルマニアの流行り病は、呪いであったか」 マザリーニが驚きを隠せぬ様子で目を見開く。 「人間を蛙にしてしまうなんて、何と恐ろしい呪いでしょうか……」 「同じハルケギニアに生きるもの、どうにかしたいものですわね」 そこで、とサララは告げる。実は、その呪いをかけられるのに使われたであろう薬剤を、 自分は持っている、その成分を解析すれば、解呪の薬が作れませんか? と。 「成程……、そうすれば、ゲルマニアにも恩が売れますし、良いかもしれませんな」 マザリーニは考える。大国である隣国ゲルマニアに、恩を売るに越したことはない。 第一、放っておいてその呪いがトリステインにまで広がらない、とも限らないのだ。 早急に解呪薬を大量に精製する必要がある。 と、すると問題となるのは、誰にその精製を頼むか、であった。 「あの……マザリーニ卿。その、もしかして、研究を頼む相手について、お悩みですか?」 その顔に浮かぶ表情から、彼の心境を読み取ったルイズが問う。 「でしたら、その、アカデミーに」 「アカデミーに? ……ふむ、そうですな、国家危急の可能性もある事態です。 神に近付くための研究ではありませんが、始祖もお許しになるとでも言い含めれば、 どうにか、頭の固い評議会共を納得させられそうですな」 本来ならば、アカデミーで行う研究は、神の御心を探るためのものばかりである。 しかし、知的好奇心に負け、異端ギリギリの研究を行うものも少なからずいるのだ。 「その、アカデミーにご依頼なさるなら、ある二人を推薦したいのです」 ルイズは、ちらり、とサララを見た後で、一度息を飲む。 アカデミーは恐ろしい研究を行う所、というイメージしかまだ若い彼女にはない。 ともすれば、サララを危険に晒すかもしれない。 だからこそ、彼女の知る二人の人物を、推薦した。 「一人は、ヴァレリー・ミシェリーヌ・オーラ・ド・ヴォングダルジャム。 そして、エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ヴァリエール。 ……私の姉、です」
それから二週間後。ルイズとサララはアカデミーのエレオノールの研究室に居た。 マリアンヌ達のサインが入った書類と、鍋から出した役立ちそうなアイテムを持って。 チョコは、遠出が面倒だからと学院に残っている。今頃は昼寝の時間だろう。 書類に目を通す二人を、サララは観察しながら、 失礼が無いように、と予めルイズから教えられていたことを反芻する。 金の髪をした方がエレオノール。メガネをかけた目元が少々キツい。 姉妹だけあって、その表情や顔立ちは、ルイズのものと似ている。 もう一か所似ている部分もあったが、 そこに関してはサララもどっこいどっこいなので敢えて言わない。 もう一人、黒髪をひっつめ、これまたメガネをかけた妙齢の女性が居て、こちらがヴァレリー。 エレオノールの数少ない友人で、ルイズもそこそこ親しいのだとか。 「書類は確かに預かったわ。それにしても、ルイズ、あなた使い魔が人間だなんて、 どうしてそんなこと黙ってたのよ」 「う……それは、その、叱られるかと、思って」 ルイズが堅い表情で答える。それを見て、ヴァレリーはおかしそうに笑った。 「そんな顔することないわよ、ルイズ。エレオノールはね、 折角可愛い妹が魔法を成功させたっていうのに、そのことを詳しく教えてもらえなかったのを 、 ちょっとスネてるだけなんだから」 「ヴァヴァヴァ、ヴァレリー! 誰がスネてるんですって!」 エレオノールが杖を振るう。机の上にあった文鎮が、ヴァレリーの頭を軽く叩いた。 「やだもう、図星突かれたからって怒らないでよ、エレオノール」 ヴァレリーも彼女の反応は慣れたもので、笑っている。 ああ、ちょっと素直じゃない所も似た者姉妹だ、とサララもつられて笑った。 「でも、おかしいわ。平民が呼ばれるなんて、前例がなさすぎる」 「へ、平民だけど、一応魔法使いの血筋ではあるのよ。 その……ちょっと、色々あって魔法が使えないだけで」 「あら、そうなの?」 その説明を聞いたヴァレリーが、好奇心に駆られて杖を振るった。 唱えた呪文は、ディテクトマジック。 優れた水のメイジが使えば、その体内の魔力などの流れさえ把握できる呪文である。 「……あら?」 故に、ヴァレリーはサララの魔力の流れに首を傾げた。 「魔力の質、っていうのかしら? それが、少し普通のメイジと違う気がするわ……」 「どういうことよ」 「んー……、だめ、お手上げ。サンプルが少なすぎるもの」 ヴァレリーが集中を解くと、サララの周りを覆っていた光の粒子が消える。 「まあ多分、その魔力の質の違いが、あなたが魔法が使えない理由じゃないかしらね?」 「とにかく、人間なのには間違いないのね?」 「ええ」 エレオノールとヴァレリーの会話を聞きながら、サララはただ笑みを見せるだけだ。 しかし、内心では冷や汗をかきつつも、安堵のため息をついていた。 人間と少し違う、と言われてサララは焦っていたのだった。
サララの世界では、魔法使いと魔女は、ある一点おいて大きく異なる。 魔法使いは魔法を使う人間で、魔女は、魔女という種族なのだ。 獣人と同じような、亜人だ。 その魔女という種族の中であっても、サララの血筋は、格別に特殊であった。。 何しろ、血の繋がった直系ご先祖様の中には、新たな魔王と結ばれた魔女やら、 吸血鬼の伯爵と結ばれた魔女やらが居るのだから。 そういったイレギュラーを起こしたのが、全て魔法の使えない魔女で、 なおかつ、皆『サララ』という名だったのには、因縁を感じざるを得ない。 サララ自身に入っている魔族の血も吸血鬼の血も、すっかり薄まっているが、 いざその血筋がバレたとしたら、退治されていたかもしれないのだから、 それがバレずに安心してしまうのも、仕方のないことだろう。 「とにかく、これは国を救うために必要な、しかし極秘で行わなければならない、 極めて重大な研究よ。ルイズ、ゆめゆめ他言することのないように」 「は、はい、解りました!」 「そして、貴方。その術に使われているという薬を出しなさい」 はい、と頷いて袋の中から、液体の入った革袋を取り出す。 薬の名は『ガマの油』。魔族間では、世話になった相手に送る程、ポピュラーな薬だが、 ダンジョンの中で入手することは稀である。サララがこれを手に入れたのは、 とある奇妙な事件に巻き込まれた際の偶然によるものだ。 「直接触ったり、嗅いだりしても大丈夫かしら」 ヴァレリーが問う。ある工程を経た上で、口にしなければ大丈夫だとサララが答える。 以前は判らなかったが、今は、はっきりとその工程や成分の情報も頭に流れ込む。 ただ、サララには調合が出来ない。故に、協力者が必要だったのだ。 今、直接の戦闘とは別の、サララの戦いが始まろうとしていた。
以上で投下終了。 烈風の騎士姫はカリンちゃんもマリアンヌちゃんも可愛くて生きるのが辛い。 ペロペロ! ペロペロ! あとヴァレリーの名前はでっちあげです。
へ、へんた(ry あ、作者さん乙
作者さん乙でした。 あとマリアンヌはカリンちゃん見てから本編を見ると色々とあの後あったんだろうなーと今から楽しみ。
このワルドが後に受ける『お稽古』って、BGMがネオグランゾンとかゼオライマーのテーマじゃないかと思えてきた。
稽古? 拷問の間違いじゃね?
稽古?「頭冷やそうか」の間違いじゃね?
ただのOHANASIでしょ。
ほぉーれお仕置きだべー
ああ、それにしてもラスボス分が足りない、足りないんだ……っ。
駄狐の油揚げおいしいです
静寂なる・・・スレ・・・・・・
595 :
三重の異界の使い魔たち :2010/09/25(土) 22:28:22 ID:pTY8ybVw
お久しぶりです、差し支えなければ、40分頃から投下いたします。
私は三重県にいます。
えっ
〜第5話 最初の夜inトリステイン〜 ムジュラの仮面の力を試した後、才人たちは一旦空き教室に戻った。そして、才人、ナビィ、 ムジュラの仮面の3名は、タバサとキュルケにこの世界のことを詳しく説明されていく。 曰く、この大陸は今才人たちがいるトリステインを始め、大きく5つの国家と幾つかの都市 国家からなる西側のハルケギニア、それ以東のエルフという種族が住まうロバ・アル・カリイエ ――東方――と一括りにされる土地に分かれていること。 曰く、この世界では基本的に魔法が使えるメイジは貴族とされ、それ以外の者は平民とされる ことで社会が構成されていること。 曰く、基本的に魔法を使えない者が貴族と同等の権威を持つことはできず、それが可能なのは キュルケの母国ゲルマニアくらいのものであること。 曰く、この世界において魔法は社会の基盤となっており、それ以外の技術は二の次であること 等だ。 反対に、才人たちも自分たちの世界のことを話していく。 曰く、地球の技術に魔法は全くなく――仮にあったとしても遥か昔のことだ――、物理法則や 数学、工業力を発展させた科学という技術により生活が成り立っていること。 曰く、ハイラルは3人の女神たちにより創造され、人間、コキリ族、ゴロン族、ゾーラ族等の 幾つかの種族が共に生きる地であること。 曰く、タルミナもハイラルとやや内容が異なるが人間と異種族が共存し、4人の巨人が四方の 守護神となっていること等を。 そうやって、一通りの説明の交換が終わる頃には、日がすっかり傾いていた。窓から赤い西日が 差し込みはじめ、次いで遠くから鐘の音が響きだす。 「終礼の鐘」 「ああ、もうそんな時間なのね」 タバサの言葉にキュルケが続いた。終礼ということは、もう今日の授業が終わる頃なのだろう。 そして、今が夕暮れであることに気付くと、才人の胃が自己主張を始める。 「そろそろ腹減ったな……」 腹部を撫でながら言ってみれば、タバサが頷いた。 「もうすぐ夕食の時間」 「そうね、食堂に行きましょうか」 キュルケの言葉に一同は揃って頷いたが、彼女はそこで何か考える様に才人たちを見てくる。 「でも、才人たちも食堂に入れるとまずいかしら?」 「え、なんで?」 才人が首を傾げると、キュルケは肩をすくめてみせた。 「アルヴィーズの食堂は、貴族専用なのよ」 「トリステイン貴族は頭が固いから、平民が入ればなにかしら言われると思う」 「そ、そうなの?」 2人の説明に、才人は若干焦る。食堂が使えないのなら、自分はどこで食事を取ればいいの だろうか。 「問題ない、厨房は使用人用の食堂を兼ねているから、そこで貴方たちの分の食事も用意する ように言いつけておく」 「そっか、ありがとなタバサ」 タバサの言葉に才人は安堵し、彼女の小さな頭を撫でる。途端、彼女は僅かに驚いた風に ――ただし表情は動いていないが――顔を向けてきた。次いで、才人もすぐに自分が何を したかに気付き、慌てて手を離す。 「あ、ご、ごめん!」 相手が幼い少女とはいえ、そんな気軽に触れるものではない。女の子に慣れていない普段の 自分なら、簡単にこんなことはしないはずだ。主従関係を結んだことで、気が緩んだのだろうか。 それを見ていたキュルケが、意地の悪い笑みを浮かべる。 「貴方、奥手そうに見えて意外に手が早いじゃない?」 「な、なに言ってんだよ!」 冗談めかして言うキュルケに、才人は抗議の声を上げた。幾ら出会い系サイトに登録する程 彼女募集中状態だからといって、こんな下手をすれば小学生程度の女の子に手を出す気は毛頭ない。
――まあ、確かに可愛い子だとは思うけど…… そんな考えが頭をよぎると、才人は何かを否定するように頭を振るう。自分はロリコンでは ない、色々と破滅する類の人間ではない、そう念じながら。 「おい、何をやってるのか知らないが」 「もうタバサ様とキュルケ様行っちゃったよ」 ムジュラの仮面とナビィの声で才人は思考を中断し、主となった少女の後を追った。 そして先行する2人に追いつくと、才人はナビィとムジュラの仮面に視線をやる。 「そういや、俺はともかくお前ら何食べるんだ?」 ナビィは妖精ということだし、ムジュラの仮面に至っては仮面である。何を食べるのか、 今一つ予想が付かない。 「ワタシは別に何もいらないわ。妖精は食事の必要がないの」 「同じくだ。オレは生物というだけで、基本は仮面だからな」 「そうなのか?」 「そうなの?」 2人の回答に、才人とキュルケが疑問を呈する。 「森の妖精っていったら、なんとなく花の蜜とか飲むイメージがあったけど」 「フフ、いりませんよ。妖精は精霊と似た存在ですから、普通の生き物とはちょっと 違うんです」 キュルケの疑問にナビィが答え、才人もムジュラの仮面に尋ねた。 「お前も、触手とか生やしたからクラゲみたいにして何か食うのかと思ったけど」 「誰がクラゲだ! 胃袋などないから、食おうが食うまいがどちらでもいいんだよ」 「助かる」 そこで、タバサがぽつりと呟いた。 「食費が1人分で済む」 「あ、ああ、お世話になります」 食費という単語にこれから彼女に扶養される実感が出てきた才人は、思わず頭を下げる。 「自分より4つか5つは年下の娘に首(こうべ)を垂れるとは、いい様だな」 「やかまし!」 ムジュラの仮面のからかいに、才人は怒鳴り返した。反論の言葉がないのが尚情けない。 「15歳」 すると、2名の主となった少女が足を止め、言葉を投げてくる。 「私の歳」 「へっ!?」 タバサの告白に、彼女の使い魔3名は驚きの声をハモらせた。 「ちょっ、ちょい待った! えっ、なに!? 15!? じゃあタバサって、俺のたった2つ 下!? マジで!?」 「嘘っ!? ワタシてっきり、リンクと同じ12歳くらいだって思ってた!!」 「あの剣士といい、子鬼といい、最近ガキに縁があると思っていたが、思ったよりは上 だったか」 三者三様の驚愕を聞きながら、タバサは言葉を続ける。 「だから、4つも5つも、ということはない」 それだけ言うと、タバサは踵を返して足を進めていった。そして、キュルケが才人と ムジュラの仮面に咎めるような眼を向けてくる。 「貴方たち、レディの年齢に関する話題は、もっと注意しなさいな」 「は、はい……」 視線に気圧された才人だけが答え、一行は再び厨房を目指した。 しばらく歩き、厨房が見えてくると、青いドラゴンを従えた桃色の髪の後ろ姿が そこから遠ざかっていくところだった。 ――あれだけでかい使い魔だと、メシの用意も大変だろうなー 余計な心配をしながら、タバサが使い魔にかける食費が自分の分だけでよかったと、 才人は一人苦笑した。 そして、いざ厨房の前に立つと、タバサが扉のノッカーを叩く。木製のドアが乾いた 音を響かせ、軋むような音とともに開かれた。
「はい、どういたしました?」 中から顔を見せたのは、黒髪のメイドだ。恐らく、この学院で働いている使用人なのだろう。 日本の学校でいう事務員にあたるのだろうが、それがメイド服というのは流石異世界、と才人は 妙な関心をした。歳は才人と同程度だろうか、その髪の色と黒い瞳が、僅か数時間で遠い世界と なってしまった日本を思い起こさせる。無論肌の色や顔立ちは日本人離れしているが、その 小作りな顔立ちといい、軽くまぶされたそばかすといい、なかなか可愛らしい容貌をしていた。 メイドの少女はタバサたちの姿を確認すると、姿勢を直して慇懃に一礼する。 「これはミス・タバサ、ミス・ツェルプストー、如何いたしました?」 ――学院の生徒の顔と名前暗記してんのかな? すげーな 淀みなく主とその友人の名を唱える少女に、舌を巻いた。貴族という立場の生徒たちが通う 学校で働く以上、名前を失念するという無礼があっては我が身にかかわるのだろう。才人は そんな事情にまで考えが至りはしないが、自分と同い年程度だろう少女の立派に社会人として 働いている姿に、ちょっとした敬意を覚えた。 ――しかも、結構可愛いし…… 「私の使い魔の食事をお願いしたい」 「あたしの使い魔のも、お願いするわね」 益体のないことを考えていると、タバサとキュルケが自分たちを指し示す。 「お2人の使い魔さんのお食事ですね、畏まりました」 言いながら少女は一礼すると、才人たちへ視線を移す。が、そこで彼女は小さく首を傾げた。 「あの、ミス? こちらの方は?」 その言葉に、才人は苦笑する。 「ああ、その、俺がタバサの使い魔になった、平賀才人です」 「ええ? だって、貴方、人間では!?」 「いや、まあ、そうなんだけどね」 大仰に驚く少女に、才人としては頭を掻くしかない。先程までの説明でも判ってはいたが、 やはり人間が、それも複数召喚された上での1体として使い魔となる事態は、ひどく珍しい ようだ。 「まあまあ、貴方、ちょっと落ち着いて」 そこへ、ナビィがとりなすように間へ入ってくる。 「あ、貴方は?」 「私はナビィ、タバサ様の使い魔2番目よ」 「2番目?」 要領を得ない風な少女に、今度はムジュラの仮面が声を掛けた。 「オレたちの場合、色々特殊なようでな。ちなみにオレがタバサの使い魔の3番目ムジュラの 仮面、こっちの赤いのがツェルプストーの使い魔フレイムだ」 自分とフレイムを紹介したムジュラの仮面を見て、それからナビィと才人に視線を移して いき、メイドの少女は目を瞬かせた。 「ミス・タバサは、3名も使い魔さんを召喚なされたのですか、それも、言葉を話せる方 ばかり……」 言うなり数瞬茫然としていたが、すぐに我に返った様子であたふたと再起動する。 「ご、ごめんなさい! お時間を取らせてしまいました! 使い魔さんたちのお食事ですよね!? 皆さん、こちらへどうぞ!」 少女に促されて、才人たち使い魔4名は彼女の後を追い厨房へと入る。 「それじゃあ、あたしたちは食堂で夕食だから」 「後で、寮の前で合流」 「おう、了解」 赤毛と青髪の少女たちに、才人は軽く手を振り返した。 「おう、お前らか! ミス・タバサとミス・ツェルプストーの使い魔たちってのは!!」 厨房に入ったナビィたち使い魔カルテットを出迎えてくれたのは、顎髭を蓄えた恰幅のいい 中年男性だった。男性、この学院の料理長だというマルトーは、ナビィたちにかわるがわる 視線を送ってくる。
「いや、俺もここで働いて長えがな、喋れる奴が召喚されるだけでも珍しいってのに、3人も 召喚されたのなんて初めて見たぜ!」 立派な体格に似合った豪快な声で言ってのけると、マルトーはサイトの肩に腕を回す。 「特にお前だ! サイトっつったか? 変な名前だな!」 「ほっといてくださいよ、俺の国じゃ普通なんですから」 サイトがそう抗議すれば、マルトーはそうかと笑った。次いで、その気風のよさそうな顔に 僅かな同情の色が浮かぶ。 「貴族に召喚されちまうなんざ、お前も運がなかったな」 「はあ、でも、ゲートとかいう奴をくぐっちまった俺も軽率だったし」 サイトが頭を掻きつつも答えると、マルトーは感心したようだ。 「かーっ、健気だねえ! 気に入ったぜ、坊主! なんかあったら、ここに来な! 俺に 出来ることなら、力んなってやるぜ!!」 「あ、ありがとうございます!」 その人の好さそうな笑みに、サイトもまた相好を崩して頷いた。彼も比較的人好きがしそうな 気性に思えるので、馬が合うのかもしれない。 そんなことを思いながら、ナビィは厨房の中を見回してみる。ナビィたちのいる位置から見て 調理場は奥の方にあり、幾人ものコックやメイド、給仕がせわしなく動き回っていた。大きな かまどやオーブンがたくさんあり、見ているだけで熱気が伝わってきそうだ。更にその手前は 椅子やテーブルが並んでおり、恐らくここが使用人用の食事スペースなのだと推測できる。 「そいじゃ、お前らの飯だな! 待ってな、今作ってやるぜ!」 やがてサイトの肩を解放すると、マルトーは職人の顔つきになっていた。仕立てのいい調理服の 袖をまくり、ナビィとムジュラの仮面を見てくる。 「そっちのお面と光ってるのは、いらねえんだったな?」 「仮面と呼べ。ああ、オレもこの妖精も、食事の必要はない」 ムジュラの仮面がやや憮然として答えれば、マルトーはその表情に驚きの色を混ぜた。 「妖精ってか!? こりゃまたすげえ奴が召喚されたもんだ! 妖精なんざ、絵本でしか見たこと ねえぜ!」 それだけ言うと、マルトーは調理場へ戻っていく。その背中を見送りながら、ナビィは彼の 言葉を反芻した。 既にタバサとキュルケから聞かされてはいたが、やはり妖精はこの世界では架空の存在でしか ないようだ。自分の同胞がこの地にいないという事実は、少し寂しく思えた。 「どした、ナビィ?」 少し気持ちを沈ませていると、いつの間にかテーブルの席についていたサイトが声を掛けて くる。 「あ、なあに?」 「いや、なんか光り方が微妙にどんよりしてたから、どうしたのかなって」 どうやら、感情が輝きに表れていたらしい。怒った時には赤くなり、警戒時には黄色くなる等、 妖精の輝きは感情と深く関わっているのだ。 「ううん、ちょっと、同じ妖精がこっちにいないのが、寂しいかなって思って」 「そっか……」 短い相槌が打たれ、サイトの眼差しに物憂げな色が混じった。彼自身も故郷から離れた 身であるが、同じ種族、つまり人間が周りにいないわけではない。だから、同種とさえ会え なくなった自分に同情してくれているのだろう。かと思えば、一転してサイトは温かな笑みを 浮かべてみせた。 「まあ、大丈夫だろ? タバサだって、俺たちを帰してくれるって言ってたし、それまでは 俺もムジュラの仮面もいるんだ。寂しいことないって」 励ます様な口振りに、ナビィは笑みを――多分人間には判らないだろうが――浮かべた。 楽天的な考えであるとも思ったが、この少年は基本的に優しい性格のようだ。 「そうね、ありがとうサイト」 素直な例の言葉が、口をついて出る。次いで、新たに仲間となった2名の顔を交互に見た。 「今日からワタシたち、同僚ね!」 「ああ、そうだな!」 「こうして口を聞きながら誰かと手を組むなど、初めてだ」 言いながら、タバサの使い魔たちは笑い合った。
それから、サイトはムジュラの仮面に向き直る。 「そういや、さ。お前呼ぶ時ムジュラでいいか? ムジュラの仮面っていちいち言うの長ったら しいからさ」 「好きにしろ。オレもお前をヒラガと呼ぶぞ、サイトよりそちらの方が気に入ったからな」 そして、また彼らは笑みを見せた。人間と魔族が笑い合う様。人間を脅かすモンスターと 戦ってきたナビィには、なんとも奇異な光景だった。 そう思った時、ナビィの脳裏に微かな疑念が浮かぶ。 ――ムジュラって、一体どういう魔族なの? 「お待ちどう様です」 「できたぜ、坊主」 ムジュラの仮面たちが談笑していると、先程のメイドの少女とマルトーがサイトの食事 ――及びフレイムのえさ――を持ってきた。深皿の中に褐色のシチューが、肉や野菜を 浮かべながら湛えられている。 「おお、うまそー!!」 それにサイトは喜色満面で応え、少女が皿を置けば早速スプーンで一口すすった。 「いっただきまーす!」 言うが早いか、スプーンがその口に吸い込まれていた。瞬間、サイトの目が輝く。 「うん、美味い!! すごく美味いよ!!」 歓声を上げるサイトに、少女とマルトーは揃って笑みを見せた。 「おう、そんなに喜んでもらえるたあ、料理人冥利に尽きるねえ!!」 笑いながらマルトーがサイトの背を叩けば、サイトがすすっていたシチューを吐き出しかける。 「それに比べて貴族の連中ときたら、美味いのが当たり前と思ってやがる、俺たちがどんなに 苦労して最高の味を出そうとしてるかなんて、気にもしやがらねえ!!」 腕を組みながら、苛立ちを露わにするマルトー。先程の台詞でも薄々気が付いてはいたが、 どうやらこのコックは貴族を嫌っているようだ。それも、相当に。 「確かに、あいつらは大したもんだ。魔法を使って土から鍋だの城だのを作れる。とんでもねえ 火を吐き出せる。果てはでっけえドラゴンだって操れる。けどな、俺たち平民だって、こんな 風に絶妙な味に料理を仕立て上げられるんだ。これだって、魔法みてえなもんだ!」 力説するようなマルトーの言葉に、サイトは頷いてみせた。 「確かに。俺、こんな美味いシチュー初めて食ったよ!」 「おお、判るか! やっぱお前いい奴だな! ますます気に入ったぜ!!」 豪快な笑いを浮かべながらサイトの肩に腕を回し、それにサイトは苦笑い気味ながらまんざら でもなさそうな表情で応える。 ――こいつら、人生楽しそうだな…… 本人たちが聞けば恐らく心外だろう感想を抱いていると、ナビィが近寄ってきた。 「なかなか明るい性格みたいね、黒髪の同僚君は」 「ああ人が好いと、扱い易いとも難いともいえるな」 ナビィの言葉にそう答えると、彼女は僅かに輝きに黄味を、警戒色を帯びさせてくる。 「ところで……」 「……なんだ?」 微かに硬くなった少女の声音に合わせ、ムジュラの仮面もまた表情を――仮面なりに―― 引き締めた。 「ムジュラ、貴方一体何者なの? ただの魔族ってわけじゃないでしょ?」 問われ、ムジュラの仮面は僅かに思案する。 「何者か、と言われれば、俺にもよく判らない。なにせ、同種と呼べる存在がいないからな」 言葉の通り、ムジュラの仮面はこれまで自分と同じ様なモンスターに出会ったことがなかった。 魔物、魔族はあくまで魔なる生命体を括るための呼称で、種類と呼ぶには大まかすぎる。そのため、 ムジュラの仮面自身が自分の具体的な存在を定義できていないのだ。
「ただ、俺は邪気の持ち合わせが少ないんでね。すすんで破壊や殺戮を行うつもりはないさ」 「ええ、貴方からは邪悪な気配がそれほど感じないのは判るわ」 けれど、とナビィは続けた。 「多分、貴方の邪気が抜けたのは、貴方が魔力を失った時と一緒でしょ? 貴方の元々の力が 尋常でないことも、なんとなく判るよ」 青い妖精の言葉に、ムジュラの仮面は少し感心する。まだ出会って間もないのに、中々の 観察眼だ。よほど洞察力が優れているのか。それとも、よほど魔族と相対した経験が多いのか。 ――多分、両方だろうな 「不躾かもしれないけど、教えて。どうして貴方は邪気と魔力を失ったの? 何故人間に力を 貸す気になったの?」 それを聞かなければ、仲間として心を許すことはできない。言外に、そう言われているのが 判った。 別に信頼してもらう理由はないが、これから行動を共にする相手とわざわざ波風を起こす 道理もない。全てとはいかないが、ここは素直に答えることにした。 「邪気と魔力を失った理由は、ある人間の剣士に敗れたためだ」 「剣士に?」 聞き返すナビィに頷く。 「オレは魔力を持った仮面だ。オレは自分を被った者に力を貸し与えてきた。そして被った 者は、自分の欲望のままにオレを使った」 過去を振り返りながら、ムジュラの仮面は言葉を続けていく。 「強大な力を持てば、欲望のままにそれを使う。人間とはそんなものだと思っていたが、あの 小僧はそんなオレの人間観とは違っていた。オレを倒す程の力を持っていながら、それを昨日 今日会ったばかりの者たちを救うために使う、そんな奴だった」 思い起こす。あの緑衣の少年の戦いを。自分がタルミナ中にかけた呪いを打ち破り、そして 本来縁もゆかりもないだろうその地に住まう者たちを救ってきた、あの姿を。 「奴を見て、少し人間という者が判らなくなった。判らないからこそ、興味が湧いてきた」 「だから、人間の使い魔になったってこと?」 「まあな」 短く答えてやると、ナビィが小さく息をついた。 「そう。まあ、今はそこまで聞ければいいわ」 つまり、まだ聞きたいことはある、ということだろう。それはそうだ。何故その剣士と戦う ことになったのか、他者に力を与えて何をさせてきたのか等は、何も語っていないのだから。 しばらく視線をぶつけ合っていると、不意にナビィはくすりと笑いを零す。 「それにしても、人間はともかく、魔族と仲間になる日が来るなんて、思ってもみなかったな」 ――オレはつい最近まで妖精と行動を共にしていたがな 妖精の呟きに対してそんな考えが浮かぶが、説明が面倒なので口にはしない。 「考えてみれば、サイトにしてもそうね」 「うん?」 続けられた言葉に訝しむと、少女はまた言葉を続けた。 「リンクの次に仲間になったサイト、リンクとサイト、サイトリンク、洒落が効いていると いうかなんというか……」 「何言ってんだ?」 自分でもよく判っていない風に、ナビィは苦笑を返してくる。 一方、ムジュラの仮面は“リンク”という名に、僅かな引っかかりを覚えていた。 ――リンク……あの剣士の小僧と同じ名前だが…… 数瞬訝しむが、やがて疑念を切り捨てる。ナビィの話によれば彼女はそのリンクなる相棒と 別れた直後に召喚されたようだし、ムジュラの仮面もあの剣士に倒されたその時に召喚された はずだ。時間的に、計算が合わない。 そう思い至れば、あの剣士の名前にすら自分は反応してしまうようになっているという 事実に気付き、ムジュラの仮面は1人苦笑した。 その当の少年剣士によって、自分のいた世界の時間がさんざんに掻き回されていた事実が、 全く考慮に入れられることはなく。 そんな遣り取りをよそに、フレイムは1人――もしくは1頭――幸せそうに少女の運んで きた焼肉を厨房の隅で頬張っていたという。
食事の後、タバサは自身の使い魔となった3名と合流し、寮へと向かった。途中、部屋が 自分のものより2階下のキュルケと別れ、タバサたちは自室へ戻った。勿論、使い魔である サイト、ナビィ、ムジュラの仮面にとっては初めて入る部屋である。特に、サイトなどは異性の 部屋に入ったことがないのか、必要以上に緊張しているようだった。 「おー、夜見ると更にすげーな、あの月!!」 しかし、それも30分以上前の話。ベッドに腰掛けて、使い魔召喚に関する本を読んでいた タバサは、本から視線をちらと声の方に移す。そこには、窓際に集まったサイトたちが、 ハルケギニアの双月を眺めながら感嘆している姿があった。 「こっちの月は、青と赤に光るんだね」 「俺の所だと、白とか黄色とかに光ってたよ」 「ハイラルでもそうね」 サイトとナビィの会話が聞こえてくる。異世界の月の話、僅かに興味をそそられはしたが、 月はしょせんただの月、それほど詳しく聞くこともないだろう。 「よう、ムジュラ。どうした? やけに無口だけど」 窓枠に手を掛けながら、サイトが傍らに浮くムジュラの仮面に問い掛けた。いつの間にか、 愛称で互いを呼ぶ仲になっていたらしい。普段ならばどうでもいい話と切り捨てるところだが、 自分の使い魔たちのこと、ましてや色々と前例のない使い魔たちのことだ。些細なことでも、 気に留めておいた方がいいだろう。それぞれの特徴をまとめたノートでも作るべきだろうか。 「ああ、あの2つの月がな……」 「へえ、お前も月に見惚れたりするのか?」 意外そうにサイトが聞き返せば、ムジュラの仮面はなにか月よりも遠くを見るような眼で応えた。 「あの2つの月、あれを両方大地に落とせば、どれ程の業火を生むだろうな……」 「……何考えてんだよ……」 異形の仮面の返答に、黒髪の少年は呆れたような声を漏らした。呆れたのはタバサも同様だ。 月を落とせば、などと、無駄な妄想もいいところである。そんなこと、不可能でしかないと いうのに。 しかし、誇大妄想はさておくとして、ムジュラの仮面は色々と興味深い存在だ。メイジとは 異なる、なおかつ強大な魔法を操る仮面。弱体化しているらしいとはいえ、先程見た力だけでも その能力の深さは窺いしれた。 そして、それ――もとい、彼――を被ることになった少年、ヒラガサイト。彼もまた無視 できない。彼の持っていた“のーとぱそこん”なる道具。あれはこれまで幾多の書物を読んで きたタバサにさえ、全く未知の代物だった。そして、彼曰くあれは彼にとっては珍しくないもの らしい。あんなものが普通に作られるような技術力、それを持つ土地で育った彼は、おそらく 自分にハルケギニアの文献とは違った知識をもたらしてくれるだろう。 そして、彼らの傍で浮遊するナビィ。彼女の特殊能力はかなり有用になると思われる。 単純に聴覚を共有するだけでなく、離れた相手と会話を可能とする力。使い魔を3名も従える 身としては、ムジュラの仮面、サイトと別行動を取る際も連絡が非常にスムーズになるはずだ。 なによりも、彼らの一人一人が、それぞれハルケギニアと全く異なる世界から来たのだと いう。 違う世界――正直にいって、そんなものおとぎ話でしかあり得ないと思っていた。しかし、 彼らは確かにハルケギニアの存在とは違うように思える。少なくとも、ハルケギニアとは全く 常識を異にする場所があることは確かだろう。 そして、彼らをそこから連れだしてしまったのは、タバサだ。タバサが、彼らをそれまでいた 世界から、彼らが常識としていた日常から、無理やり遠ざけてしまった。3名の内1名は別段気に した風ではないにせよ、決して故意があったわけではないにせよ、自分が彼らの生活を一変させて しまったという事実は、タバサの心に重くのしかかっていた。他者の運命を自分の都合で捻じ曲げる ――それは彼女が最も憎むべき男がしたことと、同じことであるように感じられたからだ。
だからこそ、自分は彼らに対する責任を負わなければならない。そのため、今もサモン・ サーヴァントに関する文献を改めて――今日まで既にあらかた読んだ――読み直している。 「なあ、タバサ」 それから2冊ほど本を読んだところで、サイトが声を掛けてきた。 「なに?」 「いや、タバサさっきから本読んでるけど……」 そこまで言うと、サイトは何故か困ったような表情を浮かべた 。どうしたのだろう、彼らを放って おいて読書をしていたことが気に入らなかったのだろうか。 「俺たちにも、字を教えてくれないか?」 違ったようだ。 「字を?」 「ああ。タバサは俺達を帰す方法を探してくれるって言ってたけど、やっぱり俺達も自分で探した方が いいだろ? なら、本とかで調べられるように字が読めないとさ」 そういうサイトの顔は、微妙に赤みを帯びている気がした。どうやら、先程の表情は年下の女子に 物を教わろうとするのが気恥ずかしかったためらしい。 タバサはベッドから立ち上がると、周囲の本棚から簡単な本を何冊か見繕う。そして、それらを机の 上に乗せると、杖を振るって予備の椅子を机のそばにつけた。 「こっち」 サイトは一瞬きょとんとするが、すぐにここに座れと言われたことに気付いたらしい。相好を崩し、 タバサの用意した椅子に座った。それに、彼の同僚2名も続く。そして、タバサと使い魔たちの識字 講習が始まった。 「言葉は判るけど、字はどうだろうと思ってたけど」 授業開始早々、サイトがそんな呟きを漏らす。 「やっぱり、字は全然読めないな」 落胆したように、黒髪の少年は肩を落とした。ここで読めたらこの講習の意味がなくなるのだが、 それを聞いてタバサも妙に思う。 「そもそも、何故貴方たちと私たちの言葉が通じるのかも不明」 彼らの内、少なくともサイトは名前の雰囲気からして自分たちとは異なる言語体系の持ち主と推測 できた。ナビィとムジュラの仮面は、名前からはあまり違和感がないが、それでも違う土地から来た 以上言葉に差異はあるはずだ。それなのに、彼らとの会話は互いに未知の単語が時折現れる意外は 普通に行えている。 「何故貴方たちとは言語の違いを感じないのか、判らない」 「Hey!」 タバサとサイトが首を傾げていると、ナビィの元気のいい声が耳に届く。 「Listen! どうしてかは判りませんけど、もしかしてワタシたちにこの世界の言語を翻訳する力が 働いているんじゃないでしょうか?」 「翻訳する力?」 サイトが聞き返せば、ナビィは体ごと頷く。 「きっとワタシたちが自分たちの言葉で喋ると、なにかの働きで喋ったことが自動的にこの世界の 言葉に翻訳されるのよ。逆に、ワタシたちが聞くこの世界の言葉は、ワタシたちの言葉で聞こえる ようになるの。だから、ワタシとサイトとムジュラがそれぞれ喋った言葉も一度この世界の言葉に なるから、タバサ様たちにも通じるし、ワタシたちにも聞く時の翻訳機能で通じる様になるんだわ」 そう締め括ったナビィの推論は、筋の通ったものだった。確かにそう考えれば、それぞれ異世界の 住人であるサイトたちが自分たち、そして彼ら自身の間で言語を共有できる理由に説明が付く。 しかし、疑問が残らないではない。 「でもさ、なんでそんな都合のいいもんが働いたりするんだ?」 その疑問は、サイトによって指摘される。一体何故そんな翻訳機能が生じたりするのか、それが 判らなかった。そこで、ムジュラの仮面がどうでもよさそうな調子で考察を口にする。 「異世界へとが繋がることは、前例がないんだろう? だったら、召喚魔法の副作用としてそんな ことが起こることもあるんじゃないか?」 「なんか投げ遣りだな、おい」 サイトが少し咎めるような声を出す。確かにムジュラの仮面の声はいかにもいい加減なもの だったが、まあ考え方としては妥当であるとタバサには思えた。
そこで、タバサは話が脱線しすぎていることに気付く。 「続ける」 「あ、はいはい」 本を指差しながら声を掛けると、サイトが真面目な顔をつくってそちらに向き直り、ナビィと ムジュラの仮面もそれに倣う。そして、タバサはサイトたちに字の読み方から教え始めた。 それからしばらくして、ナビィの言う翻訳機能はどうやら文字にも有効であったことが判明 する。サイトたちはタバサが本の単語を読む度にその単語を習得し、それを数回繰り返した だけで基本的な文章は読めるようになっていた。更に、どうやらこの機能は翻訳用であると 同時に要約用でもあるらしい。サイトたちの音読を聞いていれば、皆原文とは微妙に違う、 しかし間違ったものでなく、より意味の通り易い簡潔な文章に置き換えて読んでいた。例えば、 「ミルクを零してしまった」という慣用表現を、「大変なことをしてしまった」という本来の 意味で読むといった具合で、言い回しの類を簡略化するのだ。 そうやって1対3の講習を続けていくと、いつの間にかもう大分夜も更けていた。 「そろそろ、寝る時間」 「あ、そうだな。結構経ったし」 サイトの声を背に、タバサはクローゼットへ近づき、おもむろにマントを脱いで、上着の ボタンを外しにかかる。 「ちょっ、なにやってんだよ!?」 それを見ていたサイトが、背後でやたら慌てた声を上げた。 「寝間着に着替える」 振り返って答えながらも、ボタンを外す手は休めない。 「い、いや、なにも男がいる前で着替えることないだろ!?」 「これから一緒に暮らしていく」 焦っているのか少し調子のずれた声のサイトに、タバサは冷静に答えた。実際、サイトとは これからこの部屋で共同生活していくのだ。別に全裸になるわけでもなし、下着姿を見られる 程度で、動じることはない。それに、他人に肌を見られる程度で羞恥を感じるには、自分は 侮辱を受けすぎている。 「だから問題ない」 言いながらシャツを脱げば、サイトの顔が真っ赤に染まった。 「お、俺が問題あるんだよっ!!」 叫ぶや否や、サイトは脱兎の勢いで部屋から出ていった。半瞬遅れて、ドアが音を立てて 閉じられる。 「……」 そうして、取り残されたタバサは、先程のサイトの表情を思い出す。はけで塗ったような、 見事な赤面。自分でも未成熟だと思うタバサのこの体を見て、あそこまで照れることはない だろう。内心ではそう思うものの、あそこまで素直に焦られると、こちらもなんだか恥ずかしく なってくる。 「…………」 結果として、タバサは頬を軽く染め、今更ながらシュミーズで包まれた体を抱くのだった。 「はぁ……」 タバサの部屋の前で、才人は大きく溜息をついた。 「まったく、自分が女の子だって自覚あんのかよ」 男の前でためらいもなく着換え出すタバサに、呆れと戸惑いが入り混じった感情で毒づいて みる。幾ら幼い外見だからとて、15歳という年頃の少女の態度ではないだろうに。 「と、いうよりも、お前が男扱いされてないんじゃないのか?」 一人頭を悩ませているところへ、横手から意地の悪い声が掛かる。 「なんだ、いたのかムジュラ」 「悪いか?」 「いや、悪かないけど」 部屋を出る時にくっついてきたのだろう、いつの間にか傍らに浮いていたムジュラの仮面に、 才人は軽く頭を掻く。ナビィの姿は見えなかったので、彼女は部屋に残ったようだ。
しえーんぬ
「それより、俺が男として見られてないって、どういう意味だよ」 少し厳し目の声で、ムジュラの仮面に問い質す。生きているとはいえ、仮面に男のアイデン ティティーを否定されては黙っていられない。 一方で、ムジュラの仮面はどこか見下すような光を眼に湛えていた。 「お前、色々と経験ないだろう?」 「ぐはっ!?」 いきなり図星を突かれ、彼女いない歴17年の才人はひざから崩れ落ちかける。 「なんでお前がそんなこと知ってんだよ……」 「見れば判る」 硬い声で尋ねれば、あっさりと無情な答えが返ってきた。 「その歳でろくに知らないガキじゃ、男と見られんでも仕方はないだろ?」 「ぐうぅ……」 ムジュラの仮面の言い分に、才人としては唸るしかない。しかし、そこでふと気付く。 「って、ちょっと待てよ。そんなこと言うけど、それじゃあタバサは? タバサはどうなんだよ」 あの2つも年下の幼げな少女に先を越されているとすれば、なんとも切ない。しかし、 ムジュラの仮面は答えずにいる。 「おいってば!」 「さあて、自分で聞いてみたらどうだ?」 再度の質問には、そんな返事を送られるにいたった。無論、常識的に考えれば今日会った ばかりの少女に面と向かってそんな質問をするわけにはいかない。というよりも、そんな ことを気にしている時点で、なにやら罪悪感がふつふつと湧きだしてきた。そんな才人に対して ムジュラの仮面が向ける眼はというと、実に意地の悪さがよく判る輝き方をしている。 「薄々気付いてたけどよ、ムジュラ、お前性格悪いだろ」 「今頃気づいたのか? ナビィと比べて随分鈍いな」 罵倒の声に余裕で応えるムジュラの仮面に、才人はまたも溜息をついた。これからこの性悪な 仮面と同僚をやっていくのかと思うと、やや頭痛を覚える。 そんな遣り取りを続けていると、やがてタバサの着替えが終わったとナビィの声が告げてきた。 それに従い、才人たちは部屋に戻る。そこには、果たしてナビィと、レースの付いた薄いグリーンの ネグリジェを着たタバサがいた。 「今日はもう寝る」 「ああ、でも」 タバサの言葉に答えながら、才人は改めて室内を見回す。部屋のサイズは、日本でいう八畳間程は あるだろうか、入口から見て右側の壁は一面が才人の背よりも頭3つ分は高い本棚で覆われ、その 全てが本に埋め尽くされていた。入口から正面には先程才人たちが月を見ていた高さ2メートル、 幅1.5メートルほどもある大きなアーチ状の窓があり、その右隣りには字を教えてもらった机が ある。そして、窓の左隣には簡素な造りながら見るからに柔らかそうな、それでいて人が3人は 余裕で寝られそうな程大型のベッドがあった。けれど、言い換えればそれだけしかない。 「俺、何処で寝ればいいかな?」 戸惑い気味に、才人はタバサに尋ねた。ベッドはその大型のもの1つだけで、他に寝具は 見当たらない。疑問に思っていると、タバサは無造作に手にした杖でベッドを指した。部屋に 1つしかないベッドを。 「ここ」 「えーと……」 何やら嫌な予感がしてきた才人は、少し表情を引きつらせて質問を重ねた。 「じゃあ、タバサは何処で寝るの?」 「ここ」 やはり唯一のベッドを指し示される。予感的中。つまり、タバサは才人と一緒に寝るつもりで いるらしい。 「あのー、タバサさん?」 「なに?」 首を傾げるタバサに、才人は1つ咳払いして言葉を続ける。 「俺、男。で、タバサは女の子。OK?」 「知ってる」 そう言うタバサの顔は、無表情ながら何を言っているのかと言わんばかりの色が見てとれた。 「普通、男と女は、簡単に一緒に寝ようとしたりしちゃダメなの。OK?」 「ベッドは1つしかない」 一般論からたしなめようとする才人に対し、タバサは事実を淡々と告げてきた。
「貴方は私のせいで故郷から切り離されてしまった。そんな相手にベッドを使わせないような 真似はできない。私も、自分の部屋ではなるべくベッドで寝たい」 「いや、それは……」 そういう風に言われては、才人も返す言葉がうまく見つからなかった。それに、確かに タバサとベッドを共にしなければ、自分かタバサのどちらかが床で寝るしかなくなる。才人と してもどちらかといえばベッドで寝たいし、だからといって女の子を床で寝かせるわけにも いかない。だからといっても、やはり知り合ったばかりの少女との同衾には少なからず抵抗が ある。 どうしたものかと頭を悩ませていると、不意にタバサの瞳に目が行った。そこには深い 碧さがあった。海のように底の知れない、強い意志を秘めた翠眼。それに気圧され、才人は 抗議の意思が薄れていくのを感じ始める。 「まあ、別にいいだろうよ。2人で寝るにも十分すぎるサイズに見えるぞ」 眠た気な声に振り返ってみればムジュラの仮面が眼の光を鈍くしてたたずんでいた。 「オレは先に寝させてもらう。主、壁を借りるぞ」 「壁?」 才人、タバサ、ナビィが揃って疑問の声を上げる間にも、ムジュラの仮面は言った通り ベッド側の壁まで寄ると体を反転させた。そして、裏側を壁にぴたりとつけると、その目から 光を完全に消して見せる。どうやら、眠ったらしい。 それにしても、と才人は思う。 「この部屋にこいつが掛けられてるってのも、相当似合わないな……」 いかにも何処かの部族の仮面といった風情のムジュラの仮面が、この本ばかりではあるが 優美な内装の部屋に飾られているという有様は、酷くアンバランスに思えた。 「でも、それを言ったらサイトの空色の服にムジュラ被るのだって、まるで合ってないよ」 「……確かに」 言いながら、才人は自分のナイロンパーカーを軽くつまむ。この服装でムジュラの仮面を 被るのは、確かに似合わなすぎるだろう。 ――でも、こいつに似合う服ってどんなだよ ムジュラの仮面とマッチしそうな服と、それを着た自分を想像し、才人は一人呻いた。そこへ、 タバサが才人のパーカーの裾を軽く引っ張ってくる。 「寝る」 「あ、うん」 なんだか、もはや口答えする気もなくし、才人はとりあえず上着だけ脱ぎ、白のハーフ スリーブシャツ姿で、タバサとともにベッドに入る。 ――ま、ただ寝るだけだし、別にいいか 持ち前の楽天ぶりを発揮し、才人はそっと目を閉じた。 しかし、30分もしない内に、その見通しが甘かったことを思い知る。 才人は、1つ小さな呻きを漏らしてその誤算の正体を見据えた。薄闇を通し、ベッドの 向かい側に1つの影を見つけることができる。勿論、タバサだ。ほぼ同時に布団を被った タバサは、既に夢の中の住人だった。自分たち3名に文字を教えて疲れたのだろうか、 すっかり熟睡している。 ちなみに、妖精であるナビィは睡眠の必要はないとのことで、机の辺りを漂っていた。 ムジュラの仮面は、変わらず壁に張り付いていて現在部屋のインテリア中。 それはともかく、問題なのはタバサが才人の方を向いて寝ていることだった。より詳しく 言えば、タバサの寝顔が、大問題なのだ。 ――なんつーか、綺麗過ぎだろ…… 心の中で、賞賛のような毒づきを漏らす。彼女の顔立ちが平均以上であることは気付いて いたが、眼鏡を取り、夜の帳が下り、瞼の閉じられた状態というのは、昼間起きている時に 見るのとはまた違った印象を受ける。 光の下よりも深みを増した髪。長いまつ毛に縁どられ、柔らかに閉じられた瞳。暗がりの 中から覗けるそのあどけなくも整った寝姿は、一種神秘的な美しさを感じさせた。そんな姿を 見ていると、不覚にも胸の鼓動が逸り始めるのを感じてしまう。
――そういや俺、さっきタバサとキスしたんだよな…… 不意にそのことが思い出された。刹那、心音がまた少し高くなる。その高鳴りは才人の 意思に反して緩やかに上がっていくようで、それにつれてますますタバサの寝顔から目が 離せなくなっていく。 ――いやいや、だから待て待てっての! 俺はロリコンじゃない! いつかやらかしちゃう 類のヒトじゃない! 思わず才人は頭(かぶり)を振るが、そこでタバサが15歳であることを思い出す。 ――セーフか? ……いや、アウトだな さり気なく失礼な判定を1人脳内で行い、才人はタバサから顔を背けようとした。 「……まって……」 そこへ、震えの混じる声が、才人の耳に届く。思わず声の方を向いてみれば、才人はそこで 目を見開いた。 「まって……」 そこに、閉じられた瞳の隙間から涙の粒を落とす、タバサの姿があったのだから。 「タ、タバサ!?」 驚きに任せて身を起こすも、次に聞こえてきた言葉に眉をひそめる。 「とうさま……かあさま……」 涙に濡れたような声で、父と母を呼ぶタバサ。混乱するサイトをよそに、それは続けられる。 「とうさま、かあさま……まって……だめ……」 涙が零れていた。言葉が零れていた。涙が一滴零れる度に言葉が一言零れていき、言葉が 一言零れる度に涙が一滴零れていく。 「とうさま……いってはだめ……かあさま……のんではだめ……」 哀しみの粒がシーツを濡らす。嘆きの音が耳を突き刺す。苦悶に満ちた嗚咽が部屋を満たして いく中で、胸が締め付けられるような痛みを訴えた。 「とうさま……かあさま……だめ……わたしをひとりにしないで……」 そして、それ以上の悲哀の激痛に苦しむ少女の姿がある。才人は、そっとその許へと身を 寄せていった。 「とうさま……かあさま……」 未だに悲哀の嵐は治まる兆しはなく、その最中(さなか)でタバサは1人震えながら、 孤独な悲鳴を上げ続けている。 「おいていかないで……ひとりにしないで……」 そんな彼女の体を、才人はそっと抱きしめた。首に手を回し、不慣れな手つきで小さな 頭を撫でる。 「大丈夫、大丈夫だ……」 タバサの耳元に、静かな、そして言い聞かせるような声で呟いた。すると、タバサの体から、 僅かに震えが消えていく。 「大丈夫だから……」 その言葉に、なにか意味や根拠があるわけではない。そもそも、才人にはタバサの寝言の 意味も、泣いている理由も判らない。けれど、タバサは今苦しんでいる。それだけは確かだ。 だから、何とかしたいと思った。たとえそれがこんな拙い慰めしかできないのだとしても、 放っておくことはできなかった。彼女は、こんな哀しい声をすべき娘(こ)じゃない。もっと 幸せな笑みを浮かべるべき娘だ。何の根拠もないそんな確信が、才人の中で生まれていた。 そうやって不器用な慰めを続けていると、やがて腕の中から安らかな寝息が聞こえてくる。 「落ち着いたか……」 誰に言うでもなく言葉を漏らすが、タバサを撫でる手を止めようとはしない。このまま こうしておいた方が、タバサも安心するかもしれないから。 そこで、才人は改めてタバサを見つめ直す。身長は140センチほどしかなく、体つきは 華奢と表現するよりないほど細い。この頼りない体の中に、彼女はどれほどの悲哀を抱えて いるのだろうか。謎めいた少女とは思ってはいた。しかし、そんな言葉では追いつかない、 自分などには想像もできない程に大きな事情が彼女にはあるのかもしれない。それを感じた 時、才人の中でタバサを護るという思いが、朧気ながら輝き始めていった。
数分後自分の状態を冷静に考えた才人が自分のロリコン審問を再開するのは、また別の話。 その頃、トリステイン魔法学院の上空に1頭の竜が浮かんでいた。シルフィードよりも 大型で、白い鱗を持つ風竜。ジュリオ・チェザーレは、その上にまたがっていた。白を基調と した神官服と濃紺のマントで身を包んだ彼は、夜の上空の寒気に小さく身を震わせた。余りの 寒さにその顔は歪むが、それでもなおそこには美貌とよぶべきものを感じさせる。白金色の 眩い髪に、女性と見紛うような細面の上でバランス良く、そして最高級の造形で各部位が 配置された顔立ち。 なによりも目を引くのは、彼の瞳だ。左目はルイズのそれと同じ鳶色だが、右目はタバサの ような碧い瞳。異なる色に光る月に例え、月目と呼ばれる目。ハルケギニアでは不吉とされる その相貌は、彼の美しすぎる美貌の中で危うさのアクセントのように輝いていた。 「なんなんだろうね」 魔法学院を見下ろしながら、ジュリオは独りごつ。 「トリステインの“担い手”の様子を見に来てみれば、いやはやとんだびっくり箱だ」 言葉面こそ飄々としているが、その声音に硬さは否めない。 「風韻竜に“盾”のルーンが刻まれたのは、まあいいとしても、青の姫君が召喚した連中、 あいつらは一体なんなんだ?」 疑念の滲んだ声を上げながら、ジュリオは魔法学院の寮棟の辺りを見据えた。 「あの黒髪君の方は、たぶん“工芸品”の世界から来たんだろうけど、後の2人は判らないな。 というか、妖精に魔族? まるでおとぎ話じゃないか」 呆れの感情を混ぜながらも、ジュリオの疑念は終わらない。 「大体、彼らに刻まれたルーン、あんな形で刻まれるものなのか? それ以前に、なんで 彼女の使い魔にあのルーンが? いや、そもそもなんで3体も召喚されたんだ?」 そこまで言うと、ジュリオは乱暴に頭を掻きむしる。 「ああ、くそっ、わけ判んねえよ!!」 品のいい顔立ちに似合わぬ粗野な言葉遣いで吐き捨てると、ジュリオは1つ息をついた。 「とにかく、このことは聖下に報告すべきだな。行こう、アズーロ」 声を掛けながら相棒の脇腹を踵で軽く叩き、ジュリオはその空域から去っていく。 こうして、才人、ナビィ、ムジュラの仮面の、異世界での最初の一日は終わっていった。 未成熟ながら、他者を護るために力を尽くせる少年、平賀才人。 勇者とともに巨悪と戦い、伝説の一翼を担った少女、ナビィ。 本来ならば、月さえも動かし得る力を持つ者、ムジュラの仮面。 この3者との出会いが、雪風のタバサにどのような運命をもたらすのか、この世界をどう 動かしていくのか。 その答えを持つ者は、まだ誰もいない。 〜続く〜
以上、今回はここまでです。支援をくださった方々、どうもありがとうございます。 やっと召喚された日が終わりました……5話も使って、まだ2日目に入っていないとは 我ながら話し進むの遅いこと。 次回からはなるべく話の展開を早くしていけるよう頑張ります。早く才人にデクの実とか 回転斬りとか使わせてみたいので。 次回も才人視点からスタートです。
投下乙です ところで才人が早くもフラグを立てている件についてw >それ以前に、なんで彼女の使い魔にあのルーンが? やっぱりあのルーンなんだろうか?
皆様こんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、15話の投下準備できました。 よろしかったら今日も、10分おいて14:50より開始いたしますのでよろしくお願いします。
支援っす
十五話 悪夢との決闘 異形進化怪獣 エボリュウ 登場! 豪雨の降りしきる闇夜のトリスタニアで、戦いは始まった。 夢よもう一度と、国家転覆を企てる不平貴族の一団による反抗を阻止しようとする王軍は、 アニエス率いる銃士隊を中心にして一斉摘発に乗り出したのだ。 「王家直属銃士隊である。リグヨン子爵、国家反逆の容疑で逮捕します」 次々と有無を言わさず屋敷に突入して、隊士たちは次々と反逆計画に加担した貴族たちを 捕獲していった。 けれど、貴族たちは皆メイジであり、さらに反逆計画に備えて傭兵を従えていたものも 大勢いたために、おめおめと捕縛されようとはしなかった。 「おのれ小ざかしい平民どもめ、貴族の力を見るがいい」 屋敷の中で銃士隊と貴族、傭兵の戦いが繰り広げられる。だが、銃士隊は平民のみの 部隊であるとはいえ、全員が対メイジの訓練を受けてきた猛者ばかりである。集団になっての 屋内戦はお手の物であり、反抗した貴族たちは無情に切り伏せられていった。 しかし、子ネズミをいくら退治したところで、丸々太った親ネズミを放置しておいたら 子ネズミはいずれまた増殖してくる。不平貴族たちを束ねる大物、それを捕らえるか倒す、 そうでなければ、トリステインは白蟻に蝕まれた木のようになってしまうであろう。 アンリエッタ王女は、街を見下ろせる王宮の窓から、貴族の邸宅が集まる高級住宅街を 見下ろして、貴族の邸宅のいくつかから火の手が上がったのを見ると、緊張してつぶやいた。 「はじまりましたわね」 「御意に」 答えたのは、現在王女と王宮の護衛のすべてを一任されているマンティコア隊の隊長、 ド・ゼッサール卿である。竜騎士隊や、トリステインの誇る三つの魔法騎士隊のうちのヒポグリフ隊が いまだ再建途上、グリフォン隊が隊長謀反で信頼を落とし、戦力はあるが新隊長がまだ部隊を 統率しきれていない今では、マンティコア隊はまだ全盛期の半分程度の戦力だが、唯一統率の とれた優秀な部隊だ。 「作戦が完了するまで、殿下の身に不逞なやからが近づかぬよう、我ら一同身命に代えましても お守りいたしますので、どうかご安心を」 「『烈風』カリン殿の愛弟子の貴方、信頼していますよ」 今、トリスタニアに『烈風』はいない。いたら警戒させてしまって、地に潜られたら やっかいだからだ。少数のマンティコア隊と、平民のみの銃士隊なら敵も油断 するだろうというのが、アンリエッタの目算であった。 「ご信頼にお応えできますよう、全力を尽くします。しかし、あの銃士隊というものの 実力はたいしたものでありますな。正直わたくしも、平民の女のみということで、 なにができるものかと思っていましたが……あの勇猛さ、戦えば私でも危ないかもしれません」 ゼッサールは、遠見の鏡で見えてくる銃士隊の奮戦に、嫉妬や世辞のない率直な感想を述べた。
銃士隊は、武器は剣やマスケット銃しかなく、確かに一対一で戦えばメイジに及ばない。 けれど、それが二対一、三対一となれば連携と虚を突く素早さで、戦いなれていない 貴族や油断した傭兵メイジなど物の数ではない強さを発揮できるのだ。 眼下で燃えている屋敷は、火のメイジが炎を放ったのか。それとも照明の火が引火 したのかは定かではない。だが、遠見の魔法で見たら、屋敷から出てくるのがおおむね 貴族を捕縛した銃士隊員ばかりであることに、アンリエッタはほっと胸をなでおろした。 「子ネズミの一掃は、とどこおりなく進んでいるようですわね。ゼッサール卿、火災が 広がらないように、ただちに消火の手配を」 「はっ、ただちに」 ゼッサールはアンリエッタの命令を伝令するためにいったん室外に出て行った。 それと入れ替わりに、アニエスが入室してきて、ひざをついて一礼した。 「反乱分子の捕縛は、ほぼ予定通りに進行中です。こちらの被害は軽微です」 「よくやってくれました。彼らの裁判は、後日あらためておこないましょう」 アンリエッタの声に喜びはなかった。反乱を計画した貴族は、国家反逆罪で 死刑はまず確定といっても、彼らにも家族はあるのだ。一族郎党皆殺しという 残虐行為に手を染める気はなくても、彼らの恨みは残る。それらとの戦いを 考えて憂鬱にならぬほど、アンリエッタは大人ではなかった。 しかし、そういった情念を捨てなければならない巨悪も、またこの国にいるのだ。 「あとは、彼を捕縛するだけですわね」 「はっ、リッシュモン高等法院長……」 その名が語られたとき、二人の顔に苦いものが伝った。 この国の司法をつかさどる機関である高等法院、そこは主に貴族同士の揉め事を、 法と神の名の下に解決する、いわゆる裁判所としての役割を持つ。また、その他にも 劇場でおこなわれる歌劇や文学作品などの検閲、平民たちの生活をまかなう市場の 取締りなど、幅広い職権を有している。その権限の強さは、政策をめぐってしばしば 行政をになう王政府と対立するほどであった。 だが、強い権力には得てして悪意がつきやすいものである。リッシュモンもその例に 漏れずに、自らの権力をもてあそび、さらに貪欲に強化しようとして数え切れない 人間を泣かせてきた。 「わたくしは、幼いころから彼にはずいぶん可愛がってもらいましたが、あれは出世の ための嘘の笑顔でしたのね」 「私の故郷、ダングルテールも奴の差し金で焼かれました」 「……彼をそこまで駆り立てる欲とはいったいなんなのでしょう? 国を売り、人を騙し、 奪い、殺し、悲しませ……およそ人間としてあるべきものを全て捨ててまで、お金と いうものに魅力があるのか、わたくしには理解できません」 「私も、理解したくもありません」 二人とも、リッシュモンのためにこれまで失ってきたものは大きかった。アニエスは 故郷と人生を、アンリエッタは過去の思い出と愛した国に住まう大勢の善良な人々を。 だが、これ以上奴の思い通りにいかせるわけにはいかない。罪人には、罪に合った 罰を突きつけてやらねばならないのだ。 アニエスは、アンリエッタも自分と同じ思いだと確信すると、立ち上がって一礼した。 「では、私は最後の始末に向かいます。彼の生死は、私に一任されてよろしいですね?」 「ええ、国の品位と権威を守るべき高等法院長が逮捕となれば、あとの始末が大変でしょう。 不慮の事故ということにしておきなさい」
「御意」 冷酷だが正しく、そしてありがたい命令だとアニエスは思った。アンリエッタはアニエスの 過去については一言も触れなかったが、復讐の機会をくれたのだ。 戻ってきたゼッサールと入れ替わりに、アニエスは室外に出て、マンティコア隊の 隊員たちが固めている廊下を無言で歩いた。歩きながら、腰につった剣や、全部で 五丁持っている銃に異常がないかを自然な動作で確認する。 そして、正門へと続く王宮の中庭に差し掛かったときだった。道の真ん中に、今は 全員が出払っているはずの銃士隊の制服を着た者が、アニエスを待っていた。 「隊長、わたしも連れて行ってください!」 「ミシェル……」 かつて、アニエスの片腕として、銃士隊の副長として戦っていたときと同じ戦装束で、 ミシェルはアニエスの前に立っていた。 「わたしも、銃士隊の一員です。隊長、お願いします!」 「ミシェル、お前……」 言い掛けて、アニエスは口をつぐんだ。今のミシェルは、半日前の小動物のような か弱さに支配されていた少女ではない。一本の芯を飲み込んで、一人で立つ力を 手に入れた一個の戦士の表情をしていた。 「行ってきたんだな?」 「はい!」 強く答えたミシェルの返事に、アニエスは満足そうにうなずき、そして思った。 やはりサイト、お前はすごいやつだな。 アニエスは、ミシェルの心の鎖を断ち切ってくれた才人に、心の中で強く感謝した。 バカで、無謀で、弱いくせに勇敢で……だが、一つだけあいつは誰にも負けない 強さを持っている。人を救うために必要な、金でも力でもない、人間の本当の強さを。 「もう心残りはないのだな?」 最後の確認のつもりでアニエスは聞いた。けれど、ミシェルの答えはアニエスの 想像とはまったく逆だった。 「いいえ! 心残りをもらってきました」 「……なに?」 思わず抜けた声を出してしまったアニエスだったが、強い光を宿しているミシェルの 瞳を見てその訳を理解した。なるほど、あいつならこの世に思い残すことなくなんて、 間違っても認めるわけはないな。 でも、考えてみたらそのほうが何倍もいい。 とたんに愉快になったアニエスは、含み笑いを押し殺すとまっすぐにミシェルを見据えた。 「ようし、ならばゆくぞ! 目指すは、リッシュモンの首一つだ」 「はっ!」 心を一つにしたアニエスとミシェルは、城門から豪雨降りしきる闇の中へと駆け出していった。 リッシュモンの屋敷は、高級住宅街の一角にある二階建ての巨大な建物だった。 最高法院長という身分のものにふさわしく、外壁は美しく塗られ、屋根や窓辺には 見事な彫刻が飾られている。 だが、アニエスとミシェルは建物の外観の壮麗さに、かえって憎悪を掻き立てられた。 二人はリッシュモンがなにをして、このような豪奢な屋敷を建てられるほどの財力を 手にしたのか、つぶさに調べ上げていた。柱の一本、レンガの一つ……奴は食い物にした 人間の骨を柱に、肉をレンガに、涙を漆喰にしてこの屋敷を建てたのだ。
それに、偶然だろうが周りにはかつてのベロクロンやホタルンガの襲撃で家を捨てていった 貴族たちの廃墟が軒を連ねていて、アニエスとミシェルは憮然とした。まるで、どんな 状況にあっても他者を身代わりに生き残るリッシュモンのこ狡さを象徴しているようだ。 むろん、玄関は頑丈な扉で閉ざされていて、招かざる客に帰れと訴えている。 が、今の二人にとって城門などはなんの障害にもならなかった。 「吹き飛ばせ」 アニエスの指示でミシェルが杖を振り、高級木材でできた扉を粉々に粉砕する。 邸内に足を踏み入れた二人は、まだ子供のような小姓が腰を抜かしているそばを 足早に通り過ぎると、押し入ってきた賊を捕らえようとする衛兵や傭兵を蹴散らしていく。 「邪魔だぁ!」 「道を開けろ!」 剣で突き、銃で撃ち、魔法で邪魔者がなぎ倒されていく。どいつも、リッシュモンが 金にまかせて集めた一騎当千のつわものや、トライアングル以上の強力な使い手では あっても、今の二人の敵ではない。 「は、はぇ……がっ」 一人の傭兵メイジが杖ごと叩ききられて倒れる。彼は何度も戦場をくぐった自分が、 たかが平民の剣士、しかも女に負けるなどと信じられなかった。が、しょせんはそんなふうに 敵をあなどっていた彼らが、はじめからこの二人に敵う道理などなかった。 過去の呪縛から解放され、明日への希望を手に入れたミシェル。 頼もしい右腕が帰ってきて、肩に背負っていた重荷を下ろせたアニエス。 メイジの力は心の高ぶりに左右されるというが、それはなにもメイジに限った話ではない。 強い心をもって互いに死角を補い合う二人は、それぞれの力を何倍にも増幅し、どんどんと 奥へ進んでいく。 「おい、リッシュモンはどこだ!?」 廊下で出くわした執事を捕まえて、アニエスが問いただすと執事はあっさりと「奥の 執務室におられます」と答えた。所詮金の虫の家臣、主への忠義心など無きに 等しいらしい。 二人は微細な抵抗を退けつつ、ついに屋敷の一番奥にあるリッシュモンの執務室に たどり着いた。なんのためらいもなくドアを蹴破る。 だが、中に飛び込んだ二人が見たものは、もぬけの空となった部屋の空虚さだけであった。 「しまった! 逃げられたか」 「いや待て、椅子が温かい……まだ遠くへは行っていないぞ」 「くそ、逃がしてなるものか!」 「落ち着け! あの尊大な男が雨中に一人飛び出していくはずはない。奴はまだこの 屋敷のどこかにいる」 あのリッシュモンがおめおめと捕縛されるはずはないと考えていたアニエスは、 窓辺に駆け寄るミシェルを制して室内を調べ始めた。窓を開けているのは恐らく偽装だ。 これまで散々したたかに生き延びてきた奴が、万一の際の逃亡手段を用意していない はずがない。 丹念に室内に仕掛けがないか二人は本棚を蹴倒し、壁に剣を突きたてて探した。 すると、床の一部、ちょうどリッシュモンの執務机の下の床を叩いたときの音が違うことに アニエスは勘付いた。 「ここか……よし、ミシェル」 ミシェルに命じて床板を壊させると、その下からは正方形の形をした一辺二メイルほどの 穴がぽっかりと暗い口を開けていた。
「隠し通路ですね……かなり深そうです」 「風が来るな。どこかに通じているようだ。奴は、この先か」 「追いましょう」 「当然だ。頼むぞ」 穴は深く、どこまで続いているのかわからなくても、二人には迷いはなかった。 アニエスがミシェルに抱きつき、二人は暗い穴の中へと飛び込んだ。 絶対に逃がしはしないぞ。地獄の底まで逃げようとも、必ず追い詰めて決着をつけてやる。 決意を胸に秘めて、二人の姿は冥府にまでつうじていそうな漆黒の穴の中に消えていった。 一方、暗い穴のその先は地下通路に通じていた。このトリスタニアには、昔から暗殺を 恐れる貴族たちが、思い思いに築いた抜け道が縦横無尽に張り巡らされている。 過去に銃士隊がつぶした人身売買組織の親玉が逃亡に使った抜け道も、この一つであった。 その湿ってよどんだ空気の中を、豪華な法服に身を包んだ男が歩いていく。 「やれやれ、あの姫さまと跳ね返りどもにも困ったものだ」 忌々しげにつぶやきながら歩く男の顔は、杖の先にともされた魔法の灯りを受けて、 老いた顔に暗い影をささせている。こいつこそ、トリステインに残った反アンリエッタ派の 最後の大物、リッシュモン高等法院長だった。 「やれやれ、先手を打つつもりがあんな小娘に裏をかかれるとはしてやられたわい。 この調子では、ほかの貴族どもも全滅じゃろうが、私はそうはいかぬぞ」 追い詰められた様子は微塵も見せず、リッシュモンは暗い笑みを濃くしていく。 なぜなら、アニエスの予想したとおりに、リッシュモンは自分は絶対に捕まらないと 自信をもっていたからだ。 「ふっふふふ。今頃、平民どももさすがに抜け道には気付いていよう。しかし、そこから 私にたどり着くには少なくとも半日はいるだろう」 その自信の一つが、過去数百年に渡って掘られた貴族の抜け道を調べ上げて、 接続、延長したこの地下道であった。ここは、トリスタニア全体……それこそ彼の屋敷から 高級住宅街の別の屋敷、チクトンネ街のなんでもない家の床下、国立劇場の地下から 下水道まで迷路のような分岐点と長大さを誇っている。その道筋を熟知しているのは 自分だけ。ほんの数十人ばかりが降り立ったところで、リッシュモンのところにまで たどり着くのは不可能といってよかった。 しかし、リッシュモンには地下通路を通って国外逃亡をはかるつもりは毛頭なかった。 この国には彼が長年に渡って蓄積してきた富が蓄積されているし、自分をコケにした 小娘たちをそのままにして逃げるほど、彼の自尊心は小さいものではない。 「くっくっく、今のうちにせいぜい勝ち誇っているがいいわ。あの方からいただいた切り札が あれば、最後の勝利は私のものだ」 リッシュモンは懐から一片の書簡を取り出し、それに書かれている図説を読んでほくそえんだ。 そこに描かれていたのは、このハルケギニアのあらゆる設計思想に該当しない形をした、 巨大な”あるもの”の説明書。彼がこの地下通路を延長しているときに偶然発見されたそれは、 はじめは何に使われるものなのか皆目見当もつかずに放置されていた。けれどガリアから 彼を支援したいと申し出てきたある男の使者としてやってきた女が、その使用方法を 突き止めてくれた。それさえあれば……リッシュモンは最後の勝利を確信していた。 だが、そんな想像をしながら歩いていると、リッシュモンは通路に反響する足音に、 いつの間にか別の誰かのものが混じっていることに気がついて立ち止まった。 追っ手か? 立ち止まってなお響いてくる足音に、リッシュモンは灯りをランタンに移すと、 杖を構えて自分がやってきた道からやってくる何者かを待ち構えた。 通路の曲がり角の先から、ぼんやりと灯りが近づいてくる。その中に現れた人影は、 リッシュモンの姿を見て口元を歪めた。 「おやリッシュモンどの。近頃の高貴な方は、ずいぶんとかび臭い場所を好まれるようですな」 「貴様か……アンリエッタの飼い犬め」 ほっとした笑みを浮かべ、リッシュモンは現れたアニエスを見据えた。二人は身分の違いで 直接話したことはなくても、アンリエッタの御前で何度か顔を合わせている。しかし、彼は 現れたのがメイジではないただの剣士ということで、最初から彼女を甘く見ていた。
「消えろ、貴様と遊んでいる暇はない。この場で殺してやってもいいが面倒だ」 リッシュモンの言葉に対するアニエスの答えは銃口だった。 「よせ。私はすでに呪文を唱えている。あとは貴様に向かって解放するだけだ。二〇メイルも 離れれば銃弾など当たらん。命を捨ててまでアンリエッタに忠誠を尽くす義理などあるまい。 貴様は平民なのだから」 面倒くさそうにリッシュモンは続ける。 「たかが虫を殺すのに貴族のスペルはもったいないわ。去ねい」 完全にこちらをなめきった様子のリッシュモンに、アニエスは絞り出すように言葉を切り出した。 「私が貴様を殺すのは殿下への忠誠からだけではない。私怨だ」 「私怨?」 「ダングルテール」 リッシュモンは笑った。その地名を聞いたとたんに、ほとんど忘れかけていた記憶を懐かしく 掘り返して、心底楽しそうに笑った。 「なるほど! 貴様はあの村の生き残りか」 「貴様に罪を着せられ……何の咎もなく我が故郷は滅んだ」 アニエスとリッシュモンの、まったく対極に位置する光をはらんだ視線がぶつかり合う。 「ロマリアの異端審問『新教徒狩り』。貴様はロマリアの依頼を好機として、ありもしない反乱を でっち上げて踏み潰した。その見返りにロマリアの宗教庁からいくらもらった? リッシュモン」 リッシュモンは唇を吊り上げた。 「さあな。金額を聞いてどうなる? 気が晴れるのか? 教えてやりたいが、二十年前の ことなどいちいち覚えてはおらぬよ。まあ、当時のロマリアは今と違って新教徒狩りに 熱気だったから、大金だったとは言っておこう。おかげで、あのときは随分うまい酒が飲めたよ」 アニエスの食いしばった唇から、血が糸のように流れた。 「金しか信じておらぬのか。あさましい男よな」 「お前が神を信じることと、私が金を愛すること、いかほどの違いがあるというのだ? お前が 死んだ肉親を未練たっぷりに慕うことと、私が金を慕うこと、どれほどの違いがあるというのだ? よければ講義してくれ。私には理解できぬことゆえな」 話しているだけで、アニエスの全身に身の毛もよだつような悪寒と、煮えたぎった溶岩のような 憎悪の熱さが駆け巡った。 殺してやる。誰がなんと言おうと、こいつだけは生かしておくわけにはいかない。 しかし、アニエスは爆発寸前の感情を抑えて言った。 「貴様を殺す前に、一つだけ聞いておくことがある。二十年前の、ダングルテールの虐殺に 加わった実行部隊の記録を探しているが見当たらぬ。貴様なら、実行部隊の隊長が 誰なのか知っているはずだ」 「なんとも執念深いことよ。確かにあの記録は公になるとまずい類の資料ゆえ、ある場所に 厳重に保管してある。だが隊長の名前など、とうに忘れたわ」 「ならば言え! その資料はどこだ!?」 「はっ! 甘いわあ!」 アニエスが激昂して吼えた。その一瞬の隙をついてリッシュモンは魔法を解放した。 杖の先から巨大な火の玉が飛び、逃げ場のないアニエスに向かって一直線に飛ぶ。 だが、火の玉はアニエスに当たる直前に、アニエスの前に突如出現した土の壁に当たって、 粉々の火の粉となって四散した。 「なにぃ!?」 相手は剣士、魔法など使えるはずがないと思っていたリッシュモンの口から驚愕のうめきが 漏れる。土の壁は役割を果たすと崩れ落ち、その後ろで守られて無傷のアニエスの姿が 再び浮かび上がる。 そして、アニエスの背後の曲がり角から、杖を握って現れたもう一人の姿を確かめたとき、 リッシュモンの顔にはじめて苦々しい歪みが伝った。
「リッシュモンさま……あなたとこうした形で再会するとは、まことに遺憾の極みです」 「ミシェル……お前、生きていたのか!」 たっぷりの皮肉を込めて現れたミシェルを見て、リッシュモンは今アニエスを守った魔法と、 そしてなぜこれだけの短時間でアニエスが自分に追いついてこれたのかを理解した。 ミシェルは土系統のトライアングルメイジだ。風のメイジが空気の流れを読み、火のメイジが 温度に敏感なように、土のメイジは土中を伝わる微細な振動を察知して、歩く振動だけでも 人の動きを知ることができる。 ミシェルはアニエスと並んで立つと、杖の先をまっすぐにリッシュモンに突きつけた。 「リッシュモン! 十年前に貴様に無実の罪を着せられて死んでいった父の恨み、 今ここで晴らさせてもらうぞ!」 「ほぅ……ということは、もうすべてに気づいたと見えるな」 「信じたくはなかった。だが隊長と貴様の会話ですべてわかった」 「ふん! 親子そろって愚かなものよ。少し甘い言葉をかければすぐに信じ込む。貴様も 黙って利用されていれば幸せな夢を見られていたものを」 あざ笑うリッシュモンに、ミシェルの手の中に握られている杖がきしんだ音をあげた。 「確かに……わたしは愚かだった。しかし、貴様の作ったよどんだ悪夢からわたしを 目覚めさせてくれた人がいるんだ。覚悟しろリッシュモン、今ここで殺してやる」 「ふん、平民や裏切り者ふぜいにやられる私ではないわ!」 二人分の憎悪を一身に受けながらも、臆した様子もなくリッシュモンはさらなる呪文を唱えた。 先よりも巨大な火球や、鋭い切れ味を持つ風の刃が飛ぶ。さっきの火の玉はアニエスを 甘く見ていたために手加減していたが、今度は本気の攻撃だ。 しかし、アニエスとミシェルも前に向かってためらいなく地を蹴った。 「いくぞ! ミシェル」 「はい! 隊長」 剣と、杖を振りかざして二人の剣士は駆けた。その前に立ちふさがる放った火球や真空刃を ミシェルの作り出した土の壁ではじき、はじかれた火の粉をアニエスがマントで振り払って ミシェルを守りながら進む。 「おのれっ!」 リッシュモンも豪語するだけはあって、放つ魔法の威力は相当なものだ。だが、この地下道は ミシェルにとって自分の系統を最大に活かせるフィールドである。それに、完全に息の合った 二人のコンビネーションには一切の隙もない。 二十メイルだった間合いが、じわじわと縮まっていく。十五メイル、十二メイル、十メイル。 予想外の二人の進撃に、リッシュモンにも焦りが生まれ始めた。 「くっ、小娘どもがっ!」 「無駄だ。貴様の魔法の手の内はすべて調べ上げてある。せいぜい貴様の愛する金にでも祈れ」 「い、いいのか? 私を殺せば、貴様の望む資料の場所はわからなくなるぞ!」 「かまわんさ。あと何十年経とうが調べ続けてやる。貴様は一足先に、貴様が馬鹿にした平民の牙を 受けて死ね。リッシュモン!」 「うぬっ!」 後ずさりしながら魔法を打っていたリッシュモンと、アニエスとミシェルの距離が五メイルに 迫ったところで、アニエスは疾風のように駆けた。
「死ねーっ!」 ありったけの憎悪と殺気を込めて、その身そのものを一つの刃に変えてアニエスは突進する。 目指すはただ一つ、憎き仇の心臓ただ一点! 一度打ってから次の魔法を使うまでの、ほんの一瞬の隙をついたアニエスの突きをかわす術は リッシュモンにはなかった。 必殺の間合いに飛び込み、剣の切っ先を無防備なリッシュモンの胸に向ける。 あと半瞬、あと少し力を込めれば奴の命を取れる。アニエスは全身のばねを込めて剣を突き出そうとした、 そのときだった。突然アニエスに圧縮された空気の塊、エア・ハンマーの魔法が打ち込まれて、 アニエスの体はリッシュモンまであと数サントというところで、後方に向かって吹き飛ばされてしまったのだ。 「ぐあっ!」 「隊長!」 投げ出されたアニエスにミシェルが駆け寄って抱き起こす。幸い、少し打っただけで打撲にはなっていない。 しかし、今の攻撃はなんだ? あの瞬間、リッシュモンは完全に無防備だったはず。なら、まさか!? ミシェルがそう思った瞬間、リッシュモンの背後の暗闇から、暗い男の声が響いてきた。 「やれやれ、来るのが遅いから様子を見に来てみれば……困りますね。あなたは私を聖地に 送り届けるのが約束でしょう」 「ワルド! 貴様か!」 アニエスもミシェルも、その男の顔を忘れるはずはなかった。元グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・ フランシス・ド・ワルド、国の栄誉をになう魔法衛士隊の重責にありながら、私欲のために国や仲間を 売った卑劣漢。 「久しぶりだね。アニエスくん、ミシェルくん」 往年と変わらない、魔法衛士隊の制服で現れたワルドに話しかけられて、アニエスとミシェルは 背筋に怖気が走るのを感じた。こんな奴に名前を呼ばれるだけでも気持ちが悪い。しかし、 ワルドの出現は感覚とは別に、現実的な脅威が出現したことを意味していた。 「貴様、リッシュモンについていたのか?」 「ああ、処刑を待っていたところを、その親切な御仁に救われてね。恩返しもかねてネズミ退治を 請け負っているのさ」 ネズミはどちらだと、アニエスとミシェルは思った。結局は自分の欲のために他人にへばりついている ことには変わらないではないか。 ワルドは、邪魔をした自分を憎憎しげに睨み付けてくる二人を見据えて不敵に笑った。 「さて、観念してもらおうか。ミシェルくん、君はトライアングルだろうがアニエスくんは平民だ。 対してこちらはトライアングルとスクウェアの組み合わせ。いかに地の利があろうと、君たちに 勝ち目はないよ」 「みだりに舌を動かすな。この薄汚い裏切り者が!」 「ふっ、ぼくの目的に比べたら、トリステインもアルビオンもとるに足りないことさ。それよりも、 裏切り者というならば、そこの彼女もじゃないのかね?」 ワルドはアニエスの弾劾にも動じずに、悠然とミシェルを杖の先で指した。だが、ミシェルが ワルドに言い返すよりも早く、アニエスはワルドの汚らしいものを見るような視線から、ミシェルを 守るように毅然として言った。 「ミシェルを、貴様のようなクズといっしょにするな。たとえやり方が間違っていたにせよ、 お前たちにミシェルの苦しみのなにがわかる……過去になにがあろうと関係ない。ミシェルは、 紛れもなく私の部下だ……我々銃士隊の仲間だ!」 その言葉には、一辺の迷いもためらいも存在しはしなかった。 アニエスの気迫に押され、ワルドは「うぬぅ」と思わず後づさった。 「酔狂な女だ。裏切り者を仲間とはね。ならば、その大切なお仲間といっしょに地獄に送ってあげよう」 「貴様ごときにできたらな」 「強がりはよしたまえ。確かにこの狭い空間では、僕の特技の偏在は役に立たないけれど、 それでも君たちごときを倒すには充分だ。魔法衛士隊を、平民の寄せ集めの銃士隊と いっしょに考えないでくれたまえよ」
「言ってくれるな……だが、貴様こそ我らをなめるなよ」 再び剣を構えなおしてアニエスは立った。そんな彼女を見て、リッシュモンはあざ笑う。 「馬鹿な女だ。頭に血が上って平民は貴族に、トライアングルはスクウェアに敵わないことを 忘れているらしい。ましてワルドくんは元グリフォン隊の隊長だぞ」 すっかり自信を取り戻し、傲慢に笑うリッシュモン。だが、ミシェルはそんなリッシュモンに、 喉から響く笑い声で答えた。 「ククク……」 「……なにがおかしい?」 「いや、さすがはわたしがバカだったころに従ってた人だ。以前のわたしと同じ、曇った目しか 持っていない」 「なに?」 「戦いの勝敗を決めるのは、魔法の有無でも、メイジのランクでもない。そんなものは、 見せ掛けの強さでしかないと、わたしはある男から教わった。本当の強さというものは、 どんな強敵が相手でも、恐れず立ち向かえる勇気があるかどうかということ……いくら 強力な魔法が使えようと、自分の力にうぬぼれた貴様らなど、恐れるに足らんさ!」 「ふっははは! どうやら貴様は英雄歌劇の見すぎのようだな。なんとも青臭い脚本だ!」 引きつったように聞き苦しい笑い声をあげるリッシュモンに、しかし笑われたミシェルは哀れ そうな表情を見せると、杖に続いて剣を抜き放った。 「どうかな? ……隊長」 「ああ、やるぞミシェル」 同じ二人でも、自分たちと貴様たちでは二人の意味が違う。笑いたいならいくらでも笑え、 それを今証明してやる。 誰にも聞こえぬ開幕のベルが鳴り響き、アニエスとミシェルが走り、リッシュモンとワルドが 呪文を詠唱する。 「ふふん、馬鹿め」 リッシュモンは馬鹿正直に突っ込んでくるアニエスとミシェルを見て口元を歪め、隣にいる ワルドと視線をかわして杖を振った。狙いは二人ともミシェルのほう、敵にとって唯一の メイジであるミシェルを始末すれば、残った平民の剣士など恐れるに値しない。 たちまち放たれた風と炎がからまりあって、灼熱の熱波となってミシェルに向かう。 得意の土壁で防御しようとも、スクウェアとトライアングルの融合のこの魔法は、そんな 防御などは突き破ってしまうだろう。 しかし、アニエスもミシェルも、リッシュモンたちがそういう戦術で来ることくらいは あらかじめ読んでいた。アニエスがミシェルにのしかかって地面に引き倒すのと同時に、 ミシェルは地面に錬金をかけて泥に変え、勢いそのままに飛び込んだ。一瞬後、 アニエスの背中の上を摂氏数百度の熱風が通り過ぎていくが、火のメイジである リッシュモンと戦うことを想定して、マントに水袋を仕込んでいたアニエスには熱波は 届かずに、そのまま素通りしていった。 一方、攻撃を放ったリッシュモンとワルドのほうは勝利を確信していた。 「二人揃って燃え尽きたか、少し力を入れすぎてしまったようだな。あっけないものよ」 「苦しまずに死ねたのですから、幸せというものでしょう」 強力すぎる魔法は二人から視界を奪い、目標に当たったときの手ごたえも失わさせていた。 いや、それよりも先に今の攻撃に耐えられるわけはないという思い込みが、アニエスと ミシェルの姿が消えたことへの警戒心を麻痺させた。 その隙に、二発の銃声が闇を裂く! 「ぐわぁっ!」 「ぬおっ!?」 肩を射抜いた痛みにリッシュモンとワルドが気づいたとき、そこには泥まみれの姿で、 防水加工をした銃を両手に構えたアニエスがいた。 「きさっ」 ワルドが反応するよりも早く、今度はミシェルが銃を撃ってリッシュモンの右手と ワルドの腹に命中させる。命中率の悪いマスケット銃の片手撃ちでも、目標まで 十メイル未満にまで接近すれば二人の腕ならば充分に当たる。 「だから言ったろう。自分の力にうぬぼれている貴様らなど、恐れるに足らんと」 「この距離なら、速攻性は銃のほうが勝る。平民の武器だからとあなどったな。 その傷では満足に杖も握れまい。覚悟はいいか」 弾切れの銃を放り出し、剣を握りなおした二人の剣士。 リッシュモンとワルドは痛む傷口を抑え、「おのれ平民が、卑怯な手を使いおって」と 毒ずくけれど、それこそ自分たちの敗因だということに気づいていない。
そう、魔法も剣も銃も、威力こそ違えど戦うための武器でしかないことに変わりはない。 そして武器である以上、それを扱う人間によって生きもすれば死にもする。あのとき、 リッシュモンとワルドが油断せずに本気だったら、アニエスの奇襲に気がつく余裕が あったはずだ。 それでもワルドはこんな奴らに負けるはずはないと、撃たれていない腕で杖を 握って呪文を唱える。しかし、二発銃弾を受けて精神の集中が乱れている状態では、 抜き撃ちの早さではアニエスに敵わず、手の甲を撃たれて杖を取り落とした。 「ぐぁっ!」 「無駄な抵抗はよせ、晩節を汚すぞ」 冷酷に言い放ったアニエスの剣が正確にワルドの喉元を狙う。 リッシュモンも、落とした杖をミシェルの錬金で土に変えられ、魔法を使えなくされていた。 抵抗する術を失ったワルドとリッシュモンに、アニエスとミシェルの剣が狙いを定める。 「ワルド、貴様には以前ミシェルを傷つけてもらった借りがあったな。ミシェル! リッシュモンはお前に譲る。両親の仇を討て!」 「はっ!」 振り上げられたアニエスとミシェルの剣が、数え切れないほどの歳月で積み重ねられた 憎悪の全てを込めて振り下ろされる。 だが、追い詰められながらもリッシュモンは撃たれていない腕を懐に忍ばせ、 内ポケットにしまった”ある物”を取り出していた。 それは、内部に緑色の液体が込められた小さな筒状のガラスで、針とピストンがついている。 すなわち注射器であり、リッシュモンはミシェルから見えないようにマントの影にそれを 隠すと、針の先端をワルドの背に向けた。 ”大口の割に役に立たない奴め、貴様ごときに使うのはもったいないが、やむを得ん” 心の中で吐き捨てたリッシュモンは、力のままにワルドの背に注射器を突き刺した。 「ぬぁっ!?」 突然背中に走った激痛にワルドはのけぞった。同時に、予想外の事態に驚いたアニエスと ミシェルも反射的に後ろに飛びのく。 ワルドは自分がリッシュモンに何かを打たれたことに気がつくと、すぐにリッシュモンを 振り払った。しかしそのときにはすでに、リッシュモンは注射器の中身をすべてワルドに 注入し終えていた。 「貴様! 俺になにをした!?」 「フフフ……」 毒でも打たれたのかと慌てたワルドが問い詰めても、リッシュモンは薄ら笑うだけで答えない。 しかし、変化は早急に、残酷に始まった。 「リッシュモ!? うっ、がぁぁぁっ!」 突然襲ってきた激しい胸の痛みに、ワルドは胸を押さえて悶絶した。 「き、きさ……」 しゃべろうとしても、痛みで喉も震えて声も出てこない。アニエスとミシェルは獣の ような叫び声をあげてもだえるワルドを、なにがどうなっているんだと呆然として見つめた。 「あっ、がぁぁっ!」 とうとうワルドの意識が苦痛に耐えられなくなってきたのか、人間のものとは思えない 叫び声があがる。しかもそれだけではなく、ワルドの体が雷光のようなスパークに 包まれだしていく。リッシュモンはそんな様子に戦慄しながらも、満足そうにつぶやいた。
「フフフ、さすがあの方のくださった薬だ。こんなに早く効き始めるとはな」 「薬だと!? リッシュモン、貴様ワルドになにを打ったんだ?」 危険な予感にアニエスが叫ぶように問いただすと、リッシュモンは空になった 注射器を見せ付けるように、得意げに説明した。 「私に力をお貸しくださっているあるお方からのプレゼントでね。君たちのようなネズミが 目障りになったときに使えとおっしゃられたのだ」 「前置きはいい! 早く言え」 「クク……こいつの名は確か『濃縮エボリュウ細胞』とかいったな。これを移植された生物は、 能力を飛躍的に増大させることができるが、ある副作用がある。これは、その副作用を 特化して改良したものだそうだ。その副作用とは……ふはははは! これはすごい」 「な……」 歓喜するリッシュモンと、愕然とするアニエスとミシェルの前で、ワルドは人の姿を失っていった。 全身の皮膚が岩肌のように硬質化し、腕も四本爪の鍵爪に変化、さらに巨大な頭部と長い尻尾を 持った怪獣の姿へと変身してしまったのだ。 もはや人とは思えないうなり声をあげて、ワルドがエボリュウ細胞で変化してしまった怪獣は 鍵爪を振り回して暴れ始める。 「ふははは! 打ち込んだ生き物を怪物に変えるというのは本当だったか。聞いていたより 小さいが、まあ生まれたばかりならば仕方あるまい。役に立たない男だったけれど、捨て駒としては 上出来だよ」 「リッシュモン、貴様というやつは!」 哄笑するリッシュモンを、アニエスとミシェルは憎悪を込めた目で睨んだ。 この男にはいったい、人の血は通っているのだろうか? ワルドも確かに憎むべき敵ではあったけれど、 こいつは自分の安全のために平気で他者を怪物に変えてしまった。 人の皮をかぶった悪魔というものがいるとしたら、まさにそれはリッシュモンのことだろう。そして奴は、 自らが怪物に変えてしまったワルドに、犬にするように命じた。 「さあ、我がしもべエボリュウよ。お前は私の言うことだけは聞くようになっているはずだ。その虫けら どもを殺してしまえい!」 「リッシュモン……お前は、人間じゃない!」 怒りを込めて、アニエスとミシェルは道を塞いでいるワルドの変異した怪獣・エボリュウへ切りかかった。 だが、エボリュウの皮膚は鋼の剣さえ通らず、逆に鍵爪の一撃を受けてしまった二人は吹き飛ばされて 土の床に転がった。 「ミシェル、大丈夫か!?」 「はい……しかし、あいつの体は剣では切れません」 「見かけ倒しではないということか。しかし、奴を倒さねばリッシュモンへは届かん。私が奴を引き付ける。 その隙に魔法で仕留めろ」 剣がだめであったら、それしか二人には打つ手はなかった。 鍵爪を振りかざして襲ってくるエボリュウの攻撃を、アニエスは剣で受け止める。しかし、エボリュウの パワーは片腕だけでもアニエスの全力を上回っており、こらえきれずにアニエスは靴底を削って 後ずさりさせられた。 「くぁぁぁっ!」 まるで猛牛の突進を受け止めたようだ。アニエスの全身の筋肉がきしみ、鋼鉄の剣さえ曲がり はじめているかのように思える。
「隊長! あぶない!」 アニエスの危機を見て取ったミシェルが助けに入ろうとする。エボリュウは片腕だけでアニエスを 押さえ込んでおり、無防備なところを反対の腕で殴られたらひとたまりもない。だが、アニエスは 加勢を跳ね除けて怒鳴った。 「馬鹿者! 今がチャンスだ。早く撃て!!」 一時の情にほだされて機会を失うなと、軍人として冷静な部分がアニエスに叫ばせた。 ミシェルははっとして、反射的に杖の先をエボリュウに向けて呪文を唱える。しかし下手に 強すぎる呪文を使えばアニエスも巻き込んでしまうために、精神の集中は巧緻を極めた。 『錬金!』 上下左右の土壁から鉄の槍が飛び出してエボリュウに突き刺さる。土系統のメイジはランクが 上がるに従って、より希少価値が高く上質な金属を作り出せるがゆえに、トライアングルクラスの ミシェルの作り出した鉄は単純な硬度と考えればチタニウムにも匹敵するだろう。 「やったか!?」 動きの止まったエボリュウを、アニエスとミシェルは息を呑んで見上げた。さしもの異形進化怪獣も、 三十本近い槍に貫かれたらこれまでかと思われ、じっと動く気配を見せない……だが。 アニエスとミシェルが気を抜いたその一瞬の隙に、エボリュウは全身の槍を振り払うと 鍵爪の一撃で、二人をまとめてなぎ払ってしまった。叩きつけられて倒れたアニエスとミシェルの 口の中へ、胃液とともに濃い鉄の味が広がってくる。 「うぁ……っ」 「ミシェル……しっかりしろ!」 アニエスは壁に背中を打ち付けて激しく咳き込んでいるミシェルを助け起こした。 なんという奴だ。あれだけの魔法を受けて無傷に近いとは、小さくてもあれはまさに怪獣だ。 奴の後ろからはリッシュモンの高らかな笑い声が響いてくる。 しかし、あきらめるわけにはいかない。アニエスに支えられ、立ち上がったミシェルは荒い息の中でつぶやいた。 「負ける……もんか」 続く
以上で、次回に続きます。
>>615 の方、支援ありがとうございました。
今回はアニメで実現しなかった、アニエスとミシェルが力を合わせてリッシュモンと戦うというのを満を持してやってみました。
というか、アニメではたぶんこうなると思ってたのですがね。いいじゃない、アニメオリジナルキャラがレギュラーになっても。
でも、まともにこの二人が手を組んだらリッシュモンに勝ち目はないのでワルドも出所させてみました。
なお、うちのワルドさんは「僕は世界を手に入れる!」がベースです。
では次回、アニエス&ミシェルvsリッシュモン&ワルド、決着です。
ウルトラ乙 ワルド・・・珍しく生き残ったと思ったのに
ウルトラ乙
631 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/26(日) 16:25:24 ID:wT4Y8Uik
ウルトラ乙
ウルトラ5番目の使い魔作者さん、乙でした。 リッシュモン、最悪すぎる……こんなのがごろごろしてるこの世界じゃ、 現在休止中のヤプールがバキシム強化どころか、Uキラーザウルス二世製作 する日も近そうだなあ。
ウルトラ乙 ワルドめ、なんて悲惨な終わり方をw
ウルトラの人乙
635 :
名無しさん@お腹いっぱい :2010/09/26(日) 19:31:19 ID:1zcpy2IB
ウルトラの人、乙です。 高等法院長に、この称号を送ります 『人間版ヤプール』
乙!! このリッシュモンは、地獄に落ちる価値もない! どうにかして、生きたまま永遠に苦しませる刑罰ってないもんかな
ジョルノ「終わりが無いのが終わり、それがゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」
おお、それがあったな
蔵馬のあの敵を半永久的に生かしながら捕まえておく魔界草が
アレトグロ兄が不死なだけで 常人なら普通に死ぬだろ
>>640 仙水編のはそうだけど、ラスト付近のあれは永久に死なないんじゃね?
飛影のプレゼントの奴か よくジャンプで骸みたいなキャラだしたよな
ハンターやネウロも一時期残虐描写がひどかったからな 多分、相当な苦情が編集部には来たんだろう リッシュモンも、ジョゼフみたいに壊れたのや戦闘狂とか除いたら、純悪人としてのゼロ魔キャラでは随一だろ なぜコルベールはこやつを始末しなかったのか
コルベール「めんどくさいしー」
今晩は、ようやく第七話の最後を投稿できそうです 18時55分より投稿を開始します
第七話E 王都トリスタニア 〜風の妖精〜 エステルは目の前の光景に戸惑っていた 目の前にはタバサがいて…自分に杖を向けている この世界の魔法を発動させるルーンを唱え、何時でも此方を攻撃出来るようにしている 「タバサ、どうして…何故こんな事を?」 「………。」 エステルが尋ねても、タバサは答えようとしない…杖を向けたままだ 彼女の真意を聞き出そうとエステルはもう一度尋ねようとしたが、その前にラピードが動いた 「ガウッ!!」 ラピードはタバサに飛びかかった…その杖を奪おうとしたのだ 彼の動きは素早かったが、タバサの方が先に魔法を発動させた 彼女とラピードの間に空気の壁が生まれ、ラピードはその壁にぶつかる 更に風圧が襲いかかり、ラピードの体は大きく吹き飛ばされた 「ギャン!?」 「ラピード!?」 壁に叩きつけられ、床に倒れるラピードにエステルが駆け寄る 「正当防衛」 この時初めてタバサが口を開き、自分に否がない事を主張した そして、ゆっくりとエステルへと近づいていく 段々と彼女達の距離が縮まっていく…その時だった 「正当防衛か…だったら、家への不法侵入者を退治するのも、正当防衛だよな?」 突然、上から男の声が聞こえてきた それにタバサが反応するよりも早く、何かが彼女の背後へ着地する そして、首元には冷たい刃が添えられていた 「まったく…何処の世界でも、貴族様ってのは傲慢らしいな。」 「ユーリ!!」 エステルが彼の名を呼ぶ…よっ、と彼は今の状況でも気軽に返事を返した タバサは彼を倒そうと、行動を起こそうとするが… 「おっと、変な事はするなよ…お前がどんなに優秀なメイジ様でも、俺の方が早いぜ?」 更に刃がタバサの首に近づき、その冷たさが伝わってくる 彼の言う事は正しかった…この男にはスキが無い 魔法を唱えても、体を動かそうとしても、それより前に自分がやられる どうすれば…… 「待ってください、ユーリ…彼女は私の友達なんです。」 だが、そんなタバサに助け船を寄越したのは、他でもないエステルだった その言葉にタバサは僅かながら驚き、対してユーリは呆れる 「おいおい、何処の世界に家に勝手に上がり込んで魔法ぶっ放す友達がいるんだよ?」 「それは…きっと彼女は誤解しているんです。話し合えば誤解も解ける筈です。」 エステルはそう答え、ゆっくりとタバサに歩み寄る 「ですからタバサ、一度杖を下げてください…お願いします。」 頭を下げ、エステルは彼女にお願いする しばしの沈黙が続いた後…タバサは構えていた杖を下ろした 「ユーリも刀を納めてください、そのままじゃ話も出来ません。」 「信用して良いのか?納めた途端、襲いかかってくるとか…。」 「タバサはそんな事しません。私が保証します。」 「根拠がない気がするが…まあ、お前がそう言うなら大丈夫か。」 少しばかり不服だったが、彼女の意を受けてユーリも刀を鞘へしまう 彼女の言うとおりタバサは反撃する事無く、彼等は話し合う事となった
「さあ、話して貰おうか…どうしてこんな真似をしたのか?」 「グルルル……。」 少しの時間を置いて…ユーリはタバサを睨み付けてながら目的を問いただす ラピードもさっき吹き飛ばされた為、低いうなり声をあげて彼女を威圧する 「ユーリ、ラピード。そんな態度では彼女が話したくても話せないですよ。」 「けどな…。」 「………貴方達ではない?」 エステルが一人と一匹を宥めていると、ようやく沈黙を破ってタバサが口を開いた ユーリとエステルが同時にタバサを見ると、もう一度彼女は口を開く 「私の使い魔を浚ったのは…貴方達ではない?」 「使い魔…使い魔ってひょっとして、イルククゥさんの事ですか?」 その言葉に、短くだがこくんとタバサは頷く 「使い魔ってメイジが連れてるアレだろ?何で俺達がそんな事しなきゃなんねぇんだよ?」 「待ってください…確かメイジの使い魔はハルケギニアに住む人間以外の生物の筈です。」 本から学び取ったこの世界の知識によると、その筈である だが、彼女の言い分ではその知識とは矛盾してしまう 「彼女は…イルククゥさんは人間の女の子でした。人間を使い魔にする事は出来るんですか?」 「一応例外はある…けど…。」 その先の事を喋るのを、タバサは渋った…自分の使い魔の秘密を喋るべきかどうか 「どうした?何か話しちゃまずい事でもあるのか?」 「………今から話す事、誰にも話さないと約束する?」 彼女は真剣な眼差しを向け、これから話す事の重大性を伝える 二人は顔を見合わせ…やがてエステルが先に手を挙げて誓いを立てた 「約束します。これから貴方の話す事を誰にも話しません。」 ほら、ユーリも…とエステルに言われ、渋々手を挙げる事で同意する意を示す それを信じる事にしたタバサは話した…彼女がこの世界で絶滅したと言われる韻竜であると 彼女に自身を人に変化させる術を使わせ、エステルの下へ使いに出した事を 「イルククゥさんが韻竜だったなんて…驚きです。」 「そうか?始祖の隷長〈エンテレケイア〉だったクロームだって、似たようなモンだったろ。」 「始祖の隷長?」 「あっ、いえ…此方の話です。それより、イルククゥさんに何かあったんです?もしかしてファラも…。」 「ファラ?何でファラの名前が出てくるんだ?」 事情を知らないユーリに説明すると共に、タバサは自分が見た事を話した メイジと使い魔は一心同体…使い魔の見聞きした事は、主人であるメイジも見聞きする事が出来る 彼女の帰りが遅かった為、タバサはその能力を使用して彼女の居場所を探った そして、イルククゥの目と耳を通して知った事は、彼女が人攫いに浚われたという事だった タバサはエステルが荷担しているのではと思い、こうして乗り込んできたという 「そうだったんですか、だから私に杖を向けたんですね。」 「それよりファラの奴…関係ない奴巻き込みやがって。」 「ファラを責めないでください。彼女の申し出を私も受け入れましたから…私にも責任があります。」 「でも、結局了承して連れて行ったのはファラだからな…後でケジメつけてもらわねぇとな。」 この件が終わってからのファラの処遇を決め、再度ユーリはタバサに尋ねる 「で、その使い魔さんとウチのファラは今どうなってんだ?」 「…今確認する。」 タバサは神経を研ぎ澄ませ、イルククゥとの感覚を共有する …馬車の中、複数の女の子達、緑髪の少女と黒髪の少女との会話、ゲルマニア… イルククゥの見たもの、聞いたものがタバサの頭の中へと入り込んだ 「彼女達は今馬車の中にいる…馬車はゲルマニアに向かっている。」 「そうか。よし、じゃあ国境を越えられる前にさっさと助け出すぞ。」 「その必要はない。」 準備をしようとしたユーリだったが、タバサの言葉に動きを止める そして、そのタバサは彼等に背を向けると一人外へ出て行こうとした
「タバサ、まさか一人で行くつもりですか?」 「恐らく、敵はメイジもいる…貴方達では足手まとい。」 「でも、一人で行くなんて…。」 それでもタバサの意志は変わらず、出て行こうとする タバサ…もう一度、エステルが切ない声で彼女の名前を呼ぶ 入り口の前でタバサは立ち止まり、背を向けたまま口を開く 「エステル…貴方は貴方を疑い、杖を向けた私を友達だと言ってくれた。」 エステルは驚いた…初めて彼女が自分の名を呼んでくれた事に 「友達には…迷惑を掛けたくない。」 「タバサ…。」 そして、初めて自分を友達と認めてくれた…本当なら嬉しいのに この状況では素直に喜べず、複雑な想いを抱くしかなかった 「………おい、ちょっと待て。」 いよいよタバサが一人で行こうとした時、ユーリが呼び止める そしてタバサに歩み寄り、反射的に彼女が振り返ると同時に額に軽い衝撃が走る 「!?」 「勝手に決めて、勝手に行こうとすんじゃねぇ。」 それは、ユーリが彼女の額に向けてデコピンしたからだった 額を抑えながら驚く彼女に向けて、ユーリは言葉を続ける 「こいつはお前だけの問題じゃねぇ、俺達の問題でもあるんだ。俺達が行かないでどうする?」 「しかし、貴方達の力では……。」 「平民はメイジ様には敵わないってか?んなの、こっちの常識だろ?」 ユーリは鞘から刀を抜くと、構えをとった 改めて見ると刀身は美しく、横で見ているタバサの顔がはっきりと映っている 「相手がメイジだろうが何だろうが関係ねぇ、俺達の仲間を浚った落とし前をつけさせねぇとな。」 そう言うと、ユーリは再び刀を納める…この男は本気で、メイジと戦うつもりだ 「タバサ、こうなったユーリはもう止める事は出来ません。それに…。」 そう言うと、エステルは近くの壁まで歩いていった 壁には杖と盾が掛けられており、彼女はそれを装備する 「私も行きますから…援護と回復は任せてください。」 彼女も軽く構えを取って、自分が戦える事を示す 「ワウワウ!!!」 ラピードも同じように吠えると、背中に差してある短剣を抜いた クルリと回転させて鞘に戻し、自分も戦える事をアピールする 「ってな訳で、俺達凛々の明星は俺達のやる事の為に行くぜ。」 「ジェシカとジャンヌ、他の浚われた娘さん達…それに、ファラとイルククゥを助ける為に…です。」 「ワウワウ!!!」 二人と一匹の意志…それを受けて、タバサは思い出した 黒の森で出会ったあの少年と少女…ジーニアスとプレセアの事を 彼等はあの二人と同じ気がする…だから、大丈夫だろうと そう思った時、タバサは反射的に頷く事で彼等の意を受け入れていた 「よし、話が決まったなら早速出発するぞ。まずは足を借りに行かねぇとな。」 此処からゲルマニア方面までの距離は遠く、徒歩で追いつくのは不可能だ 馬か、何か乗り物が必要になってくる 「馬なら私がお金を出す。それで……。」 「いや、馬よりもっと速い奴持ってる奴がいるから…あいつに事情を話して借りてくる。」 ちょっと待ってな…とユーリは家を出て行き、ラピードがその後に続く 家にはエステルとタバサが残り、タバサの横にエステルが立つ 「タバサ、頑張ってイルククゥさん達を助けましょうね。」 優しく微笑みながら彼女はそう言った…タバサはこくんと頷く 少し経って、外から何かが羽ばたく音が聞こえてきた…二人は外へ出る 同時に、上から影が自分達を覆い、更にユーリの声が聞こえてくる 「足は手に入った…行こうぜ、お二人さん。」
「きゅいきゅい!!こいつ…とっても危険なのね。」 一方のファラ達は、木材が入っていたという積み荷から現れた化け物と対峙していた 相手を見て、イルククゥは本能で悟った…こいつには勝てないと 腹が減っているのか、涎を垂らしながら此方を見つめている 「ね、ねぇファラ…あいつ、こっちをジッと見てるんだけど?」 「多分、私達を餌だと思ってるんだよ…二人とも、下がって。」 ファラは前へ出ると、化け物相手に拳を構える…その行動に、ジェシカは驚いた 「ファラ、あんたまさか…無茶よ、いくらあんたでもあんな怪物相手に出来るわけ…。」 「大丈夫だって、私あんなのよりもっと凄いのと戦った事あるから…イケる、イケる。」 何を根拠に…と呆れそうになるが、化け物が此方に向かってきたのでそうも言ってられなかった ファラも、二人を巻き込まないように真正面から向かっていった 「私がこいつと戦っている間に、他の女の子達を逃がしてあげて。」 そう言った次の瞬間…化け物は巨大なその腕をファラに向けて突き出した 普通の少女が喰らえば一瞬で肉塊になるであろうその一撃を、彼女は紙一重で避ける 「はあっ!!!」 懐に入り込むと、パンチを一発放った 怪物はその攻撃によろめき、続いてファラは空中へと飛び上がった 「てぇい!!!」 続いて蹴りを喰らわせる…その一撃は重く、怪物は横向けに倒れる ファラは地面に着地するとすぐに離れ、間合いを取る 今の一戦から、ファラは相手の力量を考えた 力もある、体力もある、それにスピードも…自分一人で倒すにはいささか面倒だ 「(別に倒さなくても良いんだ…今は捕まった子達を逃がす時間を作れば。)」 決着は、その後で考えれば良い…やがて、怪物がゆっくりと起き上がった 腕を大きく振るって前進してくる…再びファラは怪物との戦いに挑んだ 「すご…本当にあの子、あの怪物相手に戦ってる…。」 「やっぱりファラは凄いのね、そこらの人間とは違うのね。」 彼女の奮闘にジェシカは驚き、イルククゥははしゃぐ だが、こうして彼女の戦いを観戦している余裕は二人には無いはずだ 「…って、関心してる場合じゃない、速く此処から離れないと。」 ジェシカは捕らわれた女の子達が乗っている馬車へ向かった 馬を操って、その場から逃げようとするが…… 「ほら、速く…此処から逃げるんだよ。」 「ブルルル……。」 馬に手綱を打って走らせようとするが、馬は動こうとはしない この馬もイルククゥ同様、本能から怪物の危険を知り、恐怖で動けなくなっていた 「こら、さっさと動いて…此処にいたらあんたも喰われるんだよ。」 ジェシカが怒鳴り、何度打っても馬は動こうとはしなかった 怪物の雄叫びが聞こえてくる、此処でぐずぐずしている暇はない 仕方なく彼女は馬車で逃げるのを諦め、馬車の中へと入る そして、捕まっていた少女達の縄を解き、彼女達を解放した 「さぁ、皆…今の内に逃げるよ。」 「で、でも…外にはあんな化け物が…それに、竜も…。」 馬車の外にいる怪物とイルククゥを交互に見ながら、ジャンヌは怯えて外に出ようとしない 他の子達も同様に怯えるばかり… 「大丈夫、この子は何も悪い事しないから…それに、此処にいたらあの怪物に喰われるわよ。」 さあ、早く…と、ジェシカは少女達に逃げるよう呼びかける それを聞き、彼女達は怯えつつも馬車の外へと出た
馬が使えない以上、兎に角遠くまで歩いて逃げるしかない 少女達は怪物に背を向け、ゆっくりと逃げ出す 「落ち着いて逃げるのよ、気付かれたらおしまいだからね。」 「う、うん……イタッ!?」 そんな矢先、一人の少女が恐怖で足が縺れて倒れてしまった その物音を聞きつけ、怪物はジェシカ達の方を振り向く 「グルルルルル……。」 この怪物は捕らえられてから、今日まで何も食べていなかった だから、空腹を満たしたい…その本能から、ターゲットを向こうへと変える ファラとの戦いを止め、怪物はジェシカ達に向かって走っていく 「あっ、ちょっと…待ちなさいよ!!!」 ファラが呼びかけても、怪物は止まらない…ジェシカ達に襲い掛かっていく 少女達の危機…そんな中、イルククゥが彼女達の前へ出る 「そうはさせないのね!!!」 大きく息を吸い込むと、怪物に向かってブレスをはきかける ブレスの直撃を受け、炎が怪物の体全体を焼きつくそうとする 「グオオオオオッ!!!!」 炎から逃れようと、悲鳴をあげながら怪物は体を動き回す やがて観念したのか、その場に蹲ってしまった 「やったのね、意外と大した事ないのね。」 得意げになるイルククゥ…だが、そうは上手くいかなかった 怪物は突然立ち上がると。体を大きく回転させた その時に起こった風によって、自身を焼く炎を消火する 「な、なんて奴なのね…こうなったらもう一度…。」 「グルル…グオオオオオオオッ!!!」 イルククゥが再びブレスを吐きかけようとした時、怪物は雄叫びをあげた それは只の雄叫びではなく、衝撃波となって周囲に襲い掛かる 関所の壁にヒビが入り、馬が悲鳴を上げながら倒れる ファラやジェシカ、他の女の子達も耳を押さえて耐えるしか出来なかった 特に間近にいたイルククゥはその叫びをもろに受け、フラフラになる 「ぐ、グググ……す、凄い叫び声なのね…。」 怪物の雄叫びでまともに動く事が出来ないイルククゥに、怪物は腕を振るった 振るっただけでも、それだけで衝撃波が生まれ、イルククゥを吹き飛ばす 「キャン!?」 衝撃波に飛ばされ、関所の壁に叩きつけられたイルククゥは地面に蹲る そんな彼女に、怪物はゆっくりと近づく…まずは彼女から食べるつもりだ 「イルククゥ!!!」 反響する叫びに耐えながら、ファラはイルククゥに向かって掛けだした だが、その前に風が襲いかかり、反射的に避ける 風が来た方を向くと、女頭目が此方に杖を向けていた 「貴方…目が覚めたの?」 「ああ、あの化けモンのお陰でね…にしても、なんだいあれは?」 怪物の叫び声で目が覚めた女頭目は、苦々しい表情で自分を起こした張本人をみる 「あの積み荷にやばいモンが入ってるってのは聞いたけど…予想外の代物じゃないか。」 どうやら、彼女達もあの積み荷の中の詳細を知らなかったらしい けど…と、女頭目は怪物からファラへ視線を向け、杖を構える 「こうして目をさます事が出来たんだ…もう一回勝負だよ!!」 「ちょっと待って…こんな時まで戦うなんて。」 「こんな時だからこそ、スリルがあって楽しいんじゃないか!!」 決闘に酔いしれるこの女はルーンを唱え、攻撃を開始する 無数の風がファラに向かい、その風を避ける 「このままじゃ、イルククゥが……。」 こうしている間に、怪物はイルククゥのすぐ傍へと辿り着いていた 涎を垂らしながら、ゆっくりと腕を彼女に向けて伸ばす 「(わたし、こんな所で死ぬのね…お父さん…お母さん…。)」 彼女の頭の中で、思い出が走馬灯となって駆け抜けていく 最後に、自分がメイジの使い魔になる事を反対した両親の顔が浮かんだ そして、怪物がイルククゥの身体を引き裂いて食べようとした時… 雪風が舞った
「グオオオオオオオオオオッ!?」 怪物は突然の雪風に驚き、イルククゥから離れた 腕を振り回して払いのけようとするが、それだけで雪風は消えない 「えっ、これって……。」 最初何が起こったのか解らなかったが…あの怪物を襲った雪風を見て気付いた あんな事が出来るのは…直後、彼女の前に一人の女の子が降り立った 青髪にマントをした、小さな女の子… 「ち、ちびすけ……。」 イルククゥが見た先には、杖を構えているタバサの姿があった 続いて、隣にユーリとラピードが降り立つ 「何とか…間一髪で間に合ったって感じだな。」 「ワウワウ!!!」 ユーリは鞘のみを投げ捨て、宙に舞う刀を手にとって構える その隣に、ワイバーンに乗ったエステルが降り立つ 「ありがとうございます。貴方は空で待機していてくださいね。」 「キューン。」 エステルが降り立つと、ワイバーンは再び空へと舞い上がっていった そして、後ろに倒れているイルククゥの元へと駆け寄る 「イルククゥ、大丈夫ですか?」 「エステル……私の事…。」 「話は全部タバサから聞きました。待っててください、今治しますから。」 そう言うと、エステルはイルククゥに向けて手を翳し、詠唱を始める すると、温かな光が彼女を包み込み、痛みが消えていく 「………。」 「お前の使い魔はエステルに任せておきゃ大丈夫だって。俺達は…。」 そこまで言うと、ユーリは怪物の方へと目をやった 相手はまだ、タバサの雪風に苦しめられている 「んにしても…何だってこいつがこんな所に?」 「ユーリ!!」 その時、ファラの声がユーリ達の耳に入る 少し離れた所で、ファラが女頭目と戦っているのが見えた 「ファラ、大丈夫そうだな…こいつはどういう事なんだ?」 「うん、事情が色々あって…きゃっ!?」 「余所見してんじゃないよ。」 相手の風の魔法が掠り、ファラは後ずさる…ゆっくりと話をしている余裕は無い 「取りあえず、そっちを先に片付けろよ…話はそれからだ。」 「うん、解った。」 そう言うと、ファラは拳を構えて突撃を図った 女頭目は魔法で応戦するが、ファラはそれを悉く避けた やがて、相手の間合いに入り込み… 「やっ!!!」 まずは女頭目の杖を叩き折った…相手の顔が驚きに変る 間髪いれずに、今度はハイキックを彼女に叩き込んだ 「あぎゃ!?」という声と共に女頭目は意識を失い、再び地面に倒れる 相手を倒した事を確認すると、ユーリ達の下へと駆け寄った 「終わったよ。」 「はい、ご苦労さん。それで、どういう事なんだ?」 何事も無かったかのように、会話を交わす二人 メイジを殆ど労せず倒すなんて… 「(やはり、エステル達は……。)」 「グオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」 そこで、怪物は自分を覆っていた雪風を吹き飛ばす 空に向かって咆哮を上げ、タバサ達に襲い掛かった
支援〜
ユーリ達と怪物との戦いは始まった 前衛のユーリとファラが攻め、後衛のエステルとタバサは術で攻撃・援護を行う 「巨大獣〈ギガントモンスター〉…その名の通り、通常の魔物とは違って巨大な体格と強大な力を持つ魔物の事です。」 此処で、エステルの怪物に関する解説が入る その間にも、怪物は腕を振るってユーリとファラに攻撃を仕掛けた 二人は散開して、相手との間合いを取る 「そして、あれはグリーンメニス…その体格とは裏腹に俊敏で、プレス攻撃や雄叫びは動きを止められてしまう、です。」 「解説ご苦労さん…ってなワケだ、解ったか?」 ユーリがタバサに尋ね、タバサはこくんと頷く そんな時、怪物…グリーンメニスは腕をユーリに向かって突き出してきた ユーリはその攻撃をジャンプして避け、切りかかる 「でやっ!!!」 「グギャア!?」 ユーリの刃が相手の片目を切り裂き、グリーンメニスは痛みに吼える 続いてファラが足を蹴り、相手の体勢を崩した 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」 その間、タバサはスペルを唱え終え、巨大な氷の槍を生み出す ラインスペル、ジャベリン…それが真っ直ぐグリーンメニスに向かって飛んでいく そのまま胸を氷の槍が貫くかと思われたが… 「グルル……。」 グリーンメニスは片方の手でジャベリンを受け止めた 潰れていないもう片方の目でタバサを睨み、掴んでいたジャベリンを投げ返す ジャベリンは唱えたタバサ本人の下へ向かっていく… 「堅牢なる守護を……バリアー!!!」 エステルが呪文を唱え、タバサの周囲にバリアーが張られる ジャベリンはそのバリアーと接触し、粉々に砕けた タバサは無事だ 「グオオオオオオオオオオッ!!!!!!」 再び咆哮をあげるグリーンメニス…その咆哮に、一同は動きが鈍る 「っ……相変わらず、うるせぇ奴だな…うおっ!?」 急にグリーンメニスが突進を図り、ユーリと衝突する 巨大獣の突進に、ユーリの身体は宙を舞う 「ユーリ!!!」 「!?」 エステルが叫び、タバサは驚く…普通なら、あの一撃を受けて生きている筈がない そう、普通なら… 「……きかねぇなっと!!!」 吹き飛ばされる中、ユーリは空中で体勢を整え、地面に着地した そんなユーリに、グリーンメニスは再度攻撃を図った 「そう何度も喰らうかよ…蒼破ぁ!!」 ユーリが刀を払うと、剣先から風弾がグリーンメニスに向かって飛んでいく その一撃を受け、身体を軽くのけぞらせる 「蒼破追蓮!!!」 続けて、先程の技を今度は二回放ち、それを受けて大きくグリーンメニスはよろけた 「もういっちょ、オマケだ…蒼破牙王撃!!!」 更にもう一度風弾を放ち、今度はユーリ自身も突撃を放った 今度の一撃で完全に体勢が崩れたグリーンメニスの腹部に、ユーリの拳がめり込む 「グガァ!?」 短い悲鳴をあげ、グリーンメニスはその場に蹲る その間にユーリは後ろへ下がり、体勢を整えなおす しばらくしてグリーンメニスは起き上がり、諦めずにユーリ達へ向かっていった
支援だ支援
支援といえば出目4〜6で1D6ビームキャノン 出目3でG弾2でD弾、12で誤爆 というのが自分のイメージにあるな
「それにしても…凄いね、あんたのご主人様達って。」 彼等から離れた所に、ジェシカとイルククゥ、それに女の子達の姿があった 彼女達の前には、万が一の為に短剣を構えるラピードの姿がある 「あんな化け物相手に互角以上に戦うなんて…本当、大したもんだよ。」 「ワンワン!!!」 「勿論、あんたもね…私達の護衛、しっかりお願いね。」 「ワウ!!」 ジェシカに返事を返し、ラピードは構えを取り直した 「………。」 その隣で、イルククゥは友だちと主の戦いを黙って見守っていた 彼女が受けた傷は癒えており、その瞳には自分の主であるタバサの姿が映っている 長く続く巨大獣との戦い…その戦いは、今終わりが来ようとしていた 「聳えよ望楼、鋭き頂に心眼を持て……アスティオン!!!」 エステルが術を発動すると、一瞬だけタバサはピラミッド状の透明な壁に包まれる 同時に、自身の中で魔力が高まっていくのを彼女は感じた 「エステル、これは……。」 「これで魔法を使ってみてください…効果が上がった筈です。」 エステルの言葉を信じて、タバサはもう一度スペルを唱えてみた 唱えた呪文はジャベリン…先程以上の強力な氷槍が出来上がる それをグリーンメニスに向けて放つ…今度の氷槍は敵の胸を貫いた 「グオオオオオオッ!!?」 苦痛から雄叫びをあげるグリーンメニス…だが、まだだった 致命傷を受けたというのに、此方へ向かって前進してくる 「そろそろ終わりにしようぜ…天狼滅牙!!!」 ユーリは前へ出ると、無数の剣撃でグリーンメニスを切り裂く 致命傷を受けたグリーンメニスは抗う事も出来ず翻弄され、ユーリはその場から素早く離れる 「ファラ、止めは任せたぜ!!」 「任せて!!」 グリーンメニス正面には、既にファラが拳を構えていた…彼女は地面を蹴って走り出す 「殺劇舞荒拳!!!」 神速による拳の嵐…それがグリーンメニスに襲い掛かる 素早く、そして確実に…ファラの拳は相手の身体を殴打していく やがてその拳は炎を纏い、最後の一撃で彼女は宙を舞った 「グオオオオオオ……オオオッ…。」 その一撃が決め手となり…周囲にグリーンメニスの断末魔の叫びが響く 緑の獣はその場に倒れこみ、二度と起き上がる事はなかった 「凛々の明星!!」 「大勝利だよ!!」 「やりました!!」 勝利した事で、ユーリ、ファラ、エステルが勝ち鬨を上げる タバサも一息つくと、今度はイルククゥの方を向く 「………。」 無表情な顔と瞳…それがイルククゥの瞳に映る それが何を語っているのか…この時、イルククゥには解らなかった
支援を兼ねて
>>645 ウルトラ兄弟に使ったようなものを使わせてもらうなんてリュッシモンにはもったいない
バルタン星人の赤色固定光線あたりで充分でしょ
それから…後の事はあっという間に過ぎていった グリーンメニスの死体の片付けと捕まえた人攫い達の処遇、捕まった女の子達… それらの事を警邏の騎士達に全て任せる事にし、タバサ達は先に王都に向かった ジェシカは騎士達に事情を話す為に残った イルククゥの件については「恩人だから、詳しい事は聞かない」という事で見なかった事にしてくれるという ……… 大地から離れた空の上…その空を二匹の竜が飛んでいた イルククゥの背にタバサとユーリとエステル、ワイバーンの背にはファラとラピードがいる 「…というわけで、私達は間に合う事が出来たんです。」 王都に着くまでの間、エステルがこれまでの事情をファラ達に話していた その間、タバサは持ってきていた本を読み、ユーリは刀を磨いている 「そうなんだ…ありがとう、タバサさん、お陰で私達助かったよ。」 「タバサで構わない…。」 「うん、解った…ありがとう、タバサ。」 もう一度タバサに感謝するファラ…タバサは本を読み続けた 「あ、あの…。」 そんな時、イルククゥがおずおずと口を開いた 此処に来るまでの間、口を開かなかった彼女がゆっくりと喋りだす 「ちびすけ…じゃなかった、タバサ様…本当に、ありがとうなのね。」 改まった態度でイルククゥが感謝の言葉を告げる 彼女がいたからファラもジェシカ達も…そして自分が助かったのだから だが、タバサは何も言わない…黙々と本を読み続ける態度に、イルククゥはますます不安になる 「や、やっぱり怒ってるのね…迷惑を掛けたから…。」 「そりゃあな、心配掛けたから当然だろ…家のファラみたいにな。」 此処でユーリは磨き終えた刀を鞘に戻し、ファラを見る ユーリの言葉でファラから笑みが消え、彼女は頭を下げて皆に謝る 「ごめんなさい…皆に迷惑掛けちゃって。」 「全くだ…お前の無茶でこっちは大変だったんだぞ。」 ファラの謝罪に対し、ユーリは彼女を許さないという態度を見せる ごめん…と再度謝るファラに、ユーリは容赦なく言葉を続ける 「ファラ、俺達の掟は知ってるよな…義を持って事を成せ…。」 「不義には罰を…うん、解ってる。」 凛々の明星として仕事を始める際、ユーリが言った言葉 これに反したら、例え仲間だとしても、重い罰を下すと… 「ファラは悪くないのね、ファラは皆を助けようとしただけで…。」 「…ファラ、今からお前に罰を言うぞ。」 イルククゥの言葉を無視し、今ユーリはファラに罰を与えようとした エステルが二人を見守り、イルククゥがおろおろする中、彼が下した罰は… 「これから一ヶ月の間、家の仕事…掃除から飯まで全部お前が受け持ちな。」 「えっ、それだけ?」 ファラは驚いた…もっと重い罰をさせるのかと思っていたから 「何だ?これだけじゃ不満か?」 「だって、私…皆に迷惑を掛けちゃったから、もっと重い罰が来ると…。」 「……一人はギルドの為に、ギルドは一人の為に。」 疑問を浮かべるファラにユーリの真意を伝えるため、今度はエステルが口を開く 彼女の言葉…それもまた、凛々の明星に入った時に聞いたもう一つの誓いだ 「ファラはギルドの目的の為に行動した…だから、重い罰則を出す気は無かったんですね。」 「ファラの無茶には苦労するが、お陰で仕事は達成出来たからな…そういう訳だ。」 二人の言葉にファラは胸が熱くなった…自然と涙が出てくる この異界の地で出会った二人は、確かな仲間なんだと思うと 「ユーリ、エステル…ありがとう、これからもよろしくね。」 「はい、よろしくお願いします。」 「まあ、ほどほどにいこうぜ。」 「ワン!!」 「うん、ラピードもね。」 涙を拭くファラの言葉を、ユーリもエステルも、ラピードも受け容れる これで、彼等凛々の明星の話は決着が着いた
「で、お前はどうするんだ?」 此方の話は終わった…次はお前の番だ ユーリはそういう意味を込めて、イルククゥの処遇をタバサに尋ねる 「………。」 ユーリに尋ねられて、タバサは読んでいた本を閉じる だが、タバサはすぐには口を開かず、沈黙のみが流れる イルククゥは不安を感じ、他の皆が様子を見守る中、ようやく彼女は口を開く 「………シルフィード。」 「…へ?」 ようやく出た言葉に、イルククゥは間抜けな声を出してしまう シルフィードって? 何かの罰の名前だろうか…等と考えていると、彼女は言葉を続ける 「貴方の此方での名前…ずっと考えていた。」 「え、名前……あの、罰は…。」 イルククゥの問いかけに、タバサは首を横に振ることで答えた それはつまり、彼女に罰を与える事はないという事である 「シルフィード…風の妖精という意味ですね。彼女にピッタリだと思います。」 エステルが微笑みながら、パチパチと手を叩く 「シルフィード…私の新しい名前……。」 今の状況を受け容れるのに、少し時間が掛かった だが、やがてそれを理解した彼女は嬉しさのあまり声を上げる 「きゅい、きゅい、素敵な名前なのね。シルフィード、私の新しい名前、なーまーえー♪」 イルククゥ…いや、シルフィードは主がくれた新たな名を受け入れ、はしゃぐはしゃぐ その様子を皆が笑って祝福する…タバサも僅かだが、笑っている 「騒がしい奴だな…でも、何でイルククゥって名前があんのに、別の名前なんかつけるんだ?」 「ユーリは解ってないです。こうする事で、タバサとシルフィードさんとの絆が確かな物となるんです。」 「ふーん…そんなモンなのか。」 解るような、解らないような…って言うか、もうエステルの奴、シルフィードって呼んでるし 取りあえず、ユーリは納得する事にした…そうしているうちに、彼等の視界に王都が見えてきた 「おっ、もう到着か…早いな。」 王都の入り口近くで、ユーリとエステル、ファラ、ラピードは降りる ワイバーンは向こうの森へと飛んでいき、タバサを乗せたシルフィードは再び浮上する 「タバサー、シルフィードさーん、またいらしてくださいねー。」 「またご飯一杯ご馳走するからねー。」 エステルとファラが空へ飛んでいくシルフィードに向かって声を掛ける ラピードが吼え、ユーリも軽く手を振っている シルフィードは翼を羽ばたかせ、魔法学院へと飛んでいき…やがて見えなくなった 「…終わりましたね。」 「ああ、人攫い事件は解決した…さっさと魅惑の妖精亭に行こうぜ。」 「うん、スカロンさんもジェシカ達が無事だってと聞いたら元気になるよね。」 「きっと、抱きついて来る位に元気になりますよ。」 「うげぇ、あのおっさんの抱擁は勘弁してほしいなぁ。」 談笑しながら、ユーリ達の姿もまた王都の中へと消えていった
彼等を王都へと送った後、タバサは学院に向かっていた 嬉しそうに空を飛ぶシルフィードの背の上で、再び本を読んでいる 「(今日の事…彼等も見た事のない力を使っていた。)」 本を読みながら、タバサは先程の戦いの事を思い出す 彼等の戦い方はどう見ても、この国の…いや、この世界のものではない 彼等もまた、クラースと同じ別世界から来た人間なのだろう 「(私は知りたい…彼等の事、彼等が持つ力を。)」 彼等と出会い、触れ合う事で…自分はもっと多くの事を知る事が出来るかもしれない 彼等と共に戦う事で、新たな力を得る事も出来るかもしれない そうして得た知識と力を、何時か…… 「お姉さま、何を考えてるのね?」 シルフィードの呼びかけに、タバサは一度思考を中断する 気が付けば、彼女は首を伸ばして此方を覗き込んでいた 「何でもない…それより、お姉さま?」 「はい、私これからタバサ様の事お姉さまって呼ぶ事にしたのね。それが良いと思ったから…駄目かしら?」 シルフィードの問いかけを拒否する事無く、タバサはこくんと頷いた その返事にシルフィードは喜び、翼を大きく羽ばたかせて更に加速する 風を感じながら、タバサは思った…先程の続きを 何時か…得た知識と力を使って伯父王を倒し、母の心を取り戻す… 決意を新たに、タバサはシルフィードと共に魔法学院へと戻っていった ……… ようやく第七話終了、長かったです 此処からはある程度執筆と構想が出来ているので、もう少し早く投稿出来そうです 次回は主役である才人&クラースの出番、モット伯の話です では、また次回をよろしくお願いします
乙 綺麗なモット伯・・・じゃないよな
正直のごほうびに、きれいなモット伯をあげましょう
やったぜルイズ砲、今思いついた。 サイト「やったぜルイズ!へへ……へ…」 ワルド「ガンダールヴ!今、女の名前を呼ばなかったかぁ!?」 サイト「わ、ワルドトップ(本体)!?」 ワルド「戦場でなぁ!恋人や女房の名を呼ぶときというのはなぁ!瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよ!!」 フーケ「ワルドぉ!その使い魔野郎は私にやらせろ!」 ワルド「……!!」 フーケ「ワルド!あたしだ!土くれのフーケだ!」 ワルド「我等の戦いの邪魔をするものは誰一人として許さァん!」 フーケ「これが『閃光』のやる事かァ!?」
665 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/28(火) 17:08:57 ID:8Tt8aKaA
仁の南方先生が召喚されました! 緒方先生=コルベール先生といったところでしょうか?
テイルズの人、乙でした。 大勝利! やっぱり仲間と力を合わせて強敵に挑むってのは燃えるなあ。
某テキサス兄妹を呼んでみたくなる
>>667 あの某お祭りゲームで変な訛りが定着して
OVAで久々の登場したら訛りっぱなしだった兄妹?
大使館はアメリカの領土だっつってでっかい棺桶埋めてた
次回はクラースもエギンハイム村の疲れがとれたころかな
ハンターハンターのキャラが呼ばれてないのは意外
念は素人相手だと無双すぎて温すぎる でも温いとハンターじゃない
ジャンプ系は更新止まってるのも合わせたらそこそこだけど サンデーやマガジン系は殆どないし、チャンピオンにいたっては
>>658 ディーンツにしみに変えてもらうのが一番いいと思う。
てか、「いやーん」「アッハーン」とか女声で言うからギーシュあたりが真っ先にひっかかりそうだが。
チャンピオンか・・・恐怖新聞でも召喚するか もしくは宅配人か、神を宿す少女もしくはその兄
チャンピオンといえばBM(バイオミート)だろ…
呼んだ瞬間に殺せなければ世界が終わるぞ
風石って金属じゃないよな…… チャンピオンならALから牙王、は無理として風の衆の慈円姉さんでも
ふと思ったけどハルクってガンダールヴと相性が良さそうだよな。 相性が良過ぎてデルフの耐久力が心配になるくらいに…
Marvelのハルクだとデルフが死んじゃう〜><
チャンピオンならアニメにもなる人気キャラがいるじゃなイカ。戦闘力も高いでゲソ。
エコエコアザラクってチャンピオンだっけ?
ああ、無敵看板娘か。確かに強いよな。
683 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2010/09/29(水) 20:07:56 ID:EUG20wEQ
聖帝様まだ〜?(AAry
チャンピオンでは弱虫ペダルとバチバチが好きだが、どっちもスポーツものだから不可だなぁ あとはケルベロスから雪房くらいか
>>675 >>676 契約の瞬間にルイズが真っ先に犠牲になり
コッパゲ先生が即焼却処分してくれればどうにかなりそうだが
まぁ普通に考えて食い尽くされるとまで考えずに対処が遅れて
魔法学院周辺が丸裸になり一週間立たずにトリステイン絶滅か
アルビオンが世界最後の生き残りになりかねんな
ルイズが召喚したワケではないが 竜の羽衣の正体が零戦ではなくジパングに 出てきた海自の可変翼哨戒機「海鳥」だったら 離陸するのに滑走路がいらなくなり 哨戒機だから才人がトリステイン上空の 哨戒をするくらいになるだけか
一体だけなら腕一本で前者になりそうな気も。タバサとか腕ごと切断してくれないかな。 むしろUSBMの方が危ない?
BMの場合、直射日光下では動きが鈍い描写があったから、 もしかしたら、持ち上げずに丸まっている状態のアレに キスするだけなら大丈夫かもしれない。 問題は、寮に持ち帰り、何か食わせてからだと思う。 分裂して増えたBMには契約による忠誠心の植え付け効果がないだろうから。
問題は食欲しか無いような奴に知能があるのかどうか あとU・S・B・Mだと糸状になって脱出したりしてたが焼け残りが糸程でもあったらあんな状況になるのかどうか…
白炎さんならきっと何とかしてくれるさ
「ふん、衰えていないな隊長殿」 「……君もな。あの時のままだ」 撤退戦の殿となり、最後には全方位をBMに囲まれて戦う……背中合わせに全く相手に心を許さず、しかし心強いと感じながらBMを焼き払う二人の姿が浮かんだ。
そうだ、人間を召喚したと思ったら M16担いだUSAGIでした! 「おいおい、うさぎになったと思ったら今度は異世界かよ」
USA君召喚。後に米軍がやってくる
皆さんお久しぶりです。 ずっと待ってた人、申し訳ありません。既に忘れてしまった人、ごめんなさい。 日替わり使い魔14話がようやっと完成しましたので、10分後から投稿します。 今回はコメディが一切なし。心理描写多数で、全体的に沈んでます。あと、少しだけ空行を少なくしてみました。これ以上詰めたら読みづらくなるかな? また、作中でリュカとウェールズが『僕/私』、ルイズが『私/わたくし』と、それぞれ二種類の一人称を混在させている形になってますが、作者の間違いではなく故意です。公人と私人の使い分けをしていると解釈してください。 レス数は10を予定しています。普通に投稿するとさるさん食らいそうな数なので、23:00をまたいで投稿です。
ヒャッハー日替わり様のお通りだぁーーー!!
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待っていたぞ、さあこのまま連日投稿するんだ。 はい →いいえ すまん、よく聞こえなかった。 もう一度言う。 さあこのまま連日投稿するんだ。 はい →いいえ
忘れてしまった人のために、前回までのおさらいを簡単に。 ・ドラゴンクエスト5のED後主人公を召喚。名前は小説版からの引用で『リュカ』ですが、小説版との因果関係はありません。なお、嫁はフローラ。 ・息子と娘の名前はPS2版以降のデフォルトネームを使用。他は基本的にゲーム準拠。 ・リュカのルーンはガンダではなくヴィンダ。 ・現在ゼロ魔2巻ストーリー進行中。ただし主人公おいてけぼり。 ・双子無双。ワルド涙目。タバサ×2が紛らわしいので、片方は仮名としてシャルロットを名乗る。でも実は本名。 ・ルイズ組、ギーシュ組の行動は原作参照。リュカが急いで追い上げ中。レコン・キスタの陣中を単身で突破。 ・シェフィさんの正体がゲマ。 ・恋愛状況説明 『リュカ→(結婚)←フローラ』 『リュカ←ルイズ(自覚は薄い)』 『ルイズ←レックス』 『レックス←タバサ妹(重度のブラコン)』 いわゆる一つの 『恋の一方通行』 状態。 ・第一話投稿から21ヶ月も経っているのにまだ原作2巻も終わってないヘボ作者。 ・シーザーがリュカの乗り物と化してます。「マスドラよりはやーい」 以上です。では、本編をどうぞ。
――時間は少しだけ遡る―― 「――当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」 返されたその言葉に、ルイズとその後ろに控える双子は、揃って絶句した。 ここはニューカッスル城、天守の一角にあるウェールズ皇太子の部屋。そこでルイズは、くだんの手紙を手渡された。そして、その直後にルイズが投げかけた 「死ぬおつもりですか?」 というニュアンスを含んだ問いに対する答えが、先の一言である。 ルイズは怒鳴りたくなる気持ちに駆られたが、直後に背後から同様の気配を感じて背後を一瞥する。そこには予想通り、今にも叫び出しそうな様子の双子の姿――ルイズは制止するように二人の前に片手を向け、自らの気持ちごと二人の叫びを圧し留めた。 呑み込んだ言葉の代わりに、ルイズは努めて平静に一礼する。 しかし、そこで素直に引き下がるつもりはない。ルイズにはアンリエッタのためにも、確認しなければならないことが一つだけあった。 「殿下……失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」 「なんなりと申してみよ」 「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは――」 促され、ルイズはそう切り出してウェールズとアンリエッタの仲を推察したことを告げる。先に根拠から、そして結論という順番で。 姫様と殿下は、恋仲なのではありませんか?――言葉の締めとして投げかけたその問いに対し、ウェールズは 「昔の話だ」 と言葉を濁しながらも否定はしなかった。 「……殿下! 亡命なさりませ!」 その答えを聞いたルイズは、そこでとうとう抑えきれなくなった。感情の促すままに叫び、ウェールズに詰め寄ろうとする。 ワルドが諌めるようにその肩を押さえるが、ルイズの剣幕は収まらない。 「それはできんよ」 「殿下、これはわたくしの願いではございませぬ! 姫さまの願いでございます! ご幼少のみぎりより親しくさせていただいたわたくしには、姫さまのお気持ちがよくわかります! その手紙の末尾には、亡命を勧める一文が添えられているはずです! それに、わたくしの使い魔が申しておりました――戦いにおいては、勝つか負けるかの二択では済まされるほど、単純ではないと! 命を賭けるべき時は、そう多くはないと! 明日の勝利のため、今は逃げ延びるのも一つの選択ではありませんか!?」 詰め寄るルイズ。しかしウェールズは答えず、静かに目を伏せて窓際へと向かった。 ルイズたちに背を向け、視線の先は窓の外。空に浮かぶ双月の月明かりが、哀れむかのように彼の横顔を照らす。 「ラ・ヴァリエール嬢。君は……大使には向いていないな」 「殿下!」 「王家の名誉、ひいては姫と私の名誉に誓って言うが、君の言うようなことは一行たりとも書かれていなかった。 だが、君の使い魔……確か、そちらの少年少女たちの父親、だったかな。その人物は良いことを言うのだね。しかし、その言葉に共感を覚えるからこそ……私は、逃げるわけにはいかないのだよ」 「殿下……っ!」 さらに詰め寄ろうとするルイズを、今度こそワルドが押さえた。両肩をがっちりと両手で押さえられ、ルイズはそれ以上ウェールズに近付けなくなる。 そのワルドに、ウェールズはちらりと振り返って視線だけで感謝の意を見せ、ワルドは無言で小さく頭を垂れる。 「さて、そろそろパーティーの時間だ。君たちは我らが王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」 言外に 「話は終わりだ」 と突き放すウェールズの言葉に、ルイズは小さな絶望を覚える。そして彼女は、ほんの数秒の逡巡の後、同じく後ろ髪引かれる思いである様子の双子を伴い、静かに一礼して部屋を退出した。 ルイズに続いてレックスとタバサがとぼとぼと出て行き、最後にワルドが残った。しかし彼は退出しようとせず、「僕も殿下とお話があるから」 とルイズたちに告げた。 「――しかし――」 ワルドがノブに手をかけ、ルイズたちを押しやるかのように扉を閉めるその最中、ウェールズは口を開きながらくるりと振り向いた。 「君の真っ直ぐさは、あるいは亡国の大使には適任かもしれないね――」 「…………っ!」 その言葉を最後に、ルイズの目の前で扉がパタンと閉まる。 扉が閉まるその直前、ルイズの視界に飛び込んできたウェールズの顔――それは、泣き笑いのような、痛々しい笑顔であった。
よく知らないけどIVやるとマスドラの株価が大暴落するって言いますね。 支援
――ルイズはウェールズ皇太子のことがわからなくなっていた。 燭台の明かりと月光がほのかに照らす廊下の中、ルイズは一人、佇んでいた。 執り行われたパーティーは、とうに抜け出した後だ。死を覚悟した者たちの、悲しくなるほどに賑やかな宴。その空気が痛々しくて、いたたまれなくて、耐え切れなかった彼女は逃げるようにホールを後にした。 いや、頭ではわかっていた。父親、母親、そして一番上の姉――厳しい三人に叩き込まれた貴族としての教えが、そして、魔法が使えないならばせめてと勉強し続けて得た知識が、ウェールズ皇太子の主張が正しいと告げている。 ウェールズ皇太子は、討ち死にするつもりだ。それは意地ではなく、ましてや自暴自棄になっているわけですらなく、ただトリステインの――アンリエッタ王女の身を案じてのこと。 はっきりと「そう」と言われたわけではない。むしろ、逆の言葉を告げられた。トリステインの事情など一言も言及せず、ただ王家の誇りと名誉のため、と。 だが彼女にはわかる。それを語った彼の目を見ればわかる。 そして――あの部屋で最後に見せた表情を見れば、わかる。 ここで彼がトリステインに亡命すれば、それはレコン・キスタがトリステインに攻め入る格好の理由足り得る。だからこそ彼はここで戦い、少しでも多くレコン・キスタの士気と戦力を削ぐつもりなのだ、と。 そうすれば、トリステインがレコン・キスタに対抗するための準備期間が稼げるから。アンリエッタ王女の身の安全が、少しでも高まるから。 少し前、自分が無謀にも30メイルのゴーレムに立ち向かった時とは、似ているようでまったく違う。 認められたい。馬鹿にされたくない。その一心で虚栄を張っていた自分を彼と比べるなど、おこがましいにも程がある。全てを見据えた上で立ち向かうことを選んでいる彼に比べて、見えるものも見ようとしていなかったあの時の自分の、なんと小さいことか。 ――戦いっていうのは、勝つか負けるかの二択で済ませられるほど、単純じゃないんだ。 命を賭けてまで勝たなきゃならない戦いってのは……そう多いものじゃない―― ウェールズにも言った、あの時リュカの台詞。それが、頭の中で繰り返される。 リュカの言葉とウェールズ皇太子の取った態度――二つを比べれば、ルイズにだってなんとなくわかってくる。 ウェールズ皇太子にとって、命を賭けるべき戦いというのは、まさに今この時なのだろう。そして彼は、勝敗とは違った場所に、この戦いの意味を見ている。 あの言葉を告げたその時、ウェールズはルイズの思惑とは逆に、その意志を固めてしまったようにも見えた。 皮肉にも、彼を止めようと告げた言葉が、彼を後押ししてしまったかのようであった。 ――そう。 頭ではわかっている。わかっているのだ。 だが―― 「だけど……だけど、こんなの……納得、できない……!」 愛し合う二人が結ばれることが叶わない。想い合うがゆえに死なねばならない。 そのジレンマを理屈で納得させることなど、いまだ年若いルイズには到底出来ないことであった。 そう。本当にわからないのはウェールズ本人のことではない。愛し合う二人が引き裂かれねばならないこの世の不条理が理解できない――いや、理解したくなかったのだ。
「ルイズ!」 と――そんなところに、背後からレックスの声がかかった。 ルイズはいつの間にか目に浮かんでいた雫を指で拭い、背後を振り向く。 そこには、両目いっぱいに涙を浮かべた、双子の姿。 「レックス、タバサ……」 どんっ、と。 なぜここにと問うより先に、タバサが体当たり気味にルイズの胸に飛び込んできた。 彼女はルイズの胸に顔を押し付け、すんすんと声にならない泣き声を上げている。レックスはさすがにそこまではしていないが、一歩引いた位置で立ち止まり、今にも泣きそうな顔をこちらに向けていた。 ――この様子だけでわかる。この二人も、自分と同じなのだと。 「やっぱり……二人も、納得いかないのね」 「当たり前だよ!」 確認するようなルイズの言葉に、レックスは激昂して叫んだ。 「なんでみんな、最初から諦めてるんだよ! どうして、笑って死にに行けるんだよ! それで……それで、誰が救われるんだよ! わからない……ボクにはわからないよ!」 「レックス……」 その叫びは、ルイズにも共感できる。彼女自身、つい先ほどまで考えていたことだ。 胸の中で泣いているタバサからは、「嫌、こんなの……嫌」 と小さくつぶやいているのが耳に届いた。 何か言ってあげたい。そうは思うも、今のルイズには彼らに向けて言える言葉は持ち合わせていなかった。 マニュアル通りの『名誉』や『誇り』を説くのも、同意して共感を得るのも、どちらも何かが違う。そもそも、自身でさえ答えの出ていないことを、どうして答えられようか。 (こんな時……あんたならどう答えるの?) 胸中でそう問いかける相手は、ここ最近顔を合わせていなかった自分の使い魔――リュカ。 だが彼はここにいない。いない人間を頼ることはできない。 けど、それでも―― ――バサッ。 「…………?」 窓の外から何かが羽ばたく音が聞こえ、ルイズは窓に視線を向けた。 淡い月光に照らされたニューカッスル城の前庭――彼女が視線を向けたちょうどその時、そこに月の光を受けて輝く黄金の鱗を持つドラゴンが降り立った。 見張りに立っていた兵士たちが、にわかに騒ぎ出す。彼らが次々と駆けつける中、そのドラゴンは前のめりにゆっくりと倒れ、重い地響きと共に地に倒れ伏した。 ルイズたちにとって、そのドラゴンには見覚えがあった。そして、その背から降り立つ人物のことも。 ――三人はそれぞれ顔を見合わせると、互いに無言で頷き、駆け出して行った。
「ごめんね、シーザー。ホイミン、彼についていてあげて」 ――無理をさせすぎた。 ニューカッスル城に辿り着くなり、シーザーは倒れた。それを見てリュカが悔恨の念と共に思ったのが、その一言だった。 それも当然だろう。シーザーは元々、人を乗せて飛ぶようなドラゴンではない。にもかかわらずリュカの無理を聞いてくれて、ここまでの相当長い距離を一息に飛び続けてくれたのだ。 彼は右手に刻まれたルーンを一瞥する。それからシーザーの方を再び見やり、そしてまた、ルーンに視線を戻す。その表情は、なぜか苦々しげに歪んでいた。 ――だが、考えることは他にもある。 「……あれは……」 ぽつりとこぼし、彼は自分が通ってきた方向に振り返り、その向こう側で浮かんでいる巨艦――レコン・キスタ旗艦 『レキシントン』 号に視線を向けた。 脳裏に浮かぶのは、つい先ほど自分に向かって放たれた赤黒い火球。直撃はしたものの、防具の呪文威力減退効果、そして回復呪文のエキスパートたるホイミンの治療により、事無きを得ている。 ――あの火球には見覚えがあった。 忘れもしない、『あいつ』の放つメラゾーマにそっくりだったのだ。妻の放つ、太陽のようなオレンジ色のメラゾーマとは似ても似つかない、血のように赤黒いメラゾーマ。 だが―― 「……いや、まさか……気のせいだ。奴は死んだはずだ。僕の目の前で……」 「き、貴様! 何者だ!」 不安げに瞳を揺らし、つぶやいた――その瞬間、彼の背後からそんな怒声が投げつけられた。 考えることを一旦止めて振り返ってみると、複数名の兵士やメイジが、手に持った槍や杖をリュカに向けている。 「……このような夜更けに騒々しく城内に立ち入った無礼、お許しください」 しかしリュカは、そんな兵士たちの剣呑な態度に臆した風も見せず、一瞬で気持ちを切り替えて優雅に一礼した。 その堂々とした態度に、周囲を囲んでいた兵士たちは出鼻をくじかれたように鼻白む。リュカはそれを見て、更に言葉を重ねた。 「私はトリステイン大使、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが使い魔、リュカ。我が主人がご訪問中であると存じますが、お取次ぎ願えないでしょうか?」 「つ、使い魔……だと?」 彼の名乗りに、兵士たちの一部が顔を見合わせる。 だが、よく訓練された大部分の兵士――特にメイジはうろたえることなく、それどころか疑わしげに眉根を寄せた。 「戯言を……! 人が使い魔などとは、聞いたこともない! 嘘をつくならもう少しマシな嘘をつけ! 貴様さては、貴族派の手の者だな!」 メイジの一人の一喝で、改めてリュカに武器が向けられる。 リュカが内心「失敗したかな?」と思いつつ、この場をどう切り抜けるか考えていると―― 「リュカ!」 「「お父さん!」」
折り良く、兵士たちの向こう側から、リュカの主人――ルイズと彼の子供たちが、揃って駆け付けてきた。 リュカを責め立てていたメイジは、自分が偽りだと断じたことがまさか真実であったとは思わなかったのか、ルイズたちの方を向いて固まった。 彼女たちは、そんなメイジには一瞥もくれず、そのまま兵士たちを掻き分けるように真っ直ぐリュカの方へと向かって来た。 そして三人は、にっこりと笑うリュカの目の前へと到着し―― ――ゴンッ。ゴンッ。 「「いったぁっ!?」」 迎えたリュカは、笑顔のまま双子の脳天に拳骨を落とした。 「リュ、リュカ!?」 「ルイズ、ちょっと待っててくれない? ――さて、レックス、タバサ。何か言い訳はある?」 「「お、お父さん……」」 あくまでも笑顔を崩さないリュカに、二人は顔を青くしてビクビクと震え始めた。 今の拳骨の威力と、何よりも彼の額に浮かび上がっている青筋が、その内面の怒りを如実に表している――あからさまな怒りの表情ではない分、レックスたちは逆に恐怖を感じていた。頭の痛みも加わり、すっかり涙目である。 リュカは、何に対して怒っているのかは口にしていない。しかしレックスもタバサも聡い子であり、言わずとも通じていた。 そしてしばし、互いに見詰め合い―― 「「ごめんなさい……」」 「よろしい。ま、お説教はまた後にしとこうか」 素直に謝った二人に、今度こそ親愛の笑みを浮かべる。もっともそこで終わりとはしないあたり、親として締めるところは締めているが。 と――そこでリュカは、ルイズの表情に気付いた。伏し目がちになり、どことなく雰囲気が暗い。子供たちの方も、よく見れば親に怒られただけではない、何か深刻な悲しみの雰囲気を纏っている。 (悪い予感が当たった……かな?) 人間同士の戦争を体験するには、いささか早過ぎる――クックルとメッキーから事情を聞いた時から思っていたことだが、懸念した通りのことが起こったのかもしれない。もっとも、話を聞かないことには判断のつかないことではあるが。 何にせよ、とにかく状況の把握が急務である。リュカは振り返り、近くにいた兵士に声をかける。 「すみません。その子たちが休める場所を提供していただけますか?」 言って指し示すのは、プックル、シーザー、ホイミンの三匹。特にシーザーの疲労は深刻なようで、ホイミンの回復呪文で呼吸は安定しているものの、いまだ目を覚ます気配はない。 声をかけられた兵士はその要求に戸惑い、判断を仰ぎたそうにリュカの主人と言っているルイズに目配せした。その視線を受け、彼女が 「言う通りにしてあげて」 と言うと、そこでようやっと動き始めた。 メイジたちが数人がかりで『レビテーション』を使い、シーザーを運んでいるのを尻目に、リュカは再びルイズに向き直る。 「遅れてごめん。事情……話してもらえるかな?」 「……うん」 力なくうなだれるルイズの肩をそっと抱き、リュカは子供たちを促して城内へと向かう。 ――そんな彼らの様子を、ワルドが上階の窓から、冷たい眼差しで見下ろしていた――
数人の護衛を伴い、薄暗い廊下を歩くウェールズは、その顔に笑みを浮かべていた。 彼の脳裏に浮かぶのは、先ほどの宴。そして、こんな時であるのに自分を訪ねてきてくれた心優しい大使。 彼女のような女性が傍にいてくれるなら、きっと愛しの従姉妹は大丈夫であろうという安心感が芽生える。 その安心感が、宴の酒を一層美味いものにしてくれた。これほど良い気分で酔えたのは、一体いつ以来だろうか。 これで安心して逝くことができる――そう思えば、自然と頬も緩むというものだ。 (これで怖いものなど何もない。さあ、恥知らずの貴族派ども。明日は目にもの見せてくれようぞ――) 改めて胸中で気合を入れ直す。気分はいつになく高揚していた。 と――その足が、不意に止まる。 彼の視線の先、向かっていた自室の扉の前に、誰かがいるのに気付いたからだ。 「誰だ!」 護衛の一人がウェールズを庇うように前に出て、誰何(すいか)の声を上げる。 その声に応えるかのように、人影が一歩前に出た。燭台の明かりに照らされた横顔は、彼らの知らないものであった。 だが、ウェールズたちの警戒は一瞬で終わった。その人物の傍に、先ほど自分たちが歓迎していた客人たち――ルイズ、レックス、タバサの三人の姿があったからだ。 それで、ウェールズはこの人物の正体に当たりをつける。ルイズの本来の使い魔である勇猛果敢な竜騎士が、単身レコン・キスタの陣を突破してここまで辿り着いたと報告を受けたのは、耳に新しい。 「もしかして……君が、ラ・ヴァリエール嬢の使い魔という?」 「はい。リュカと申します」 「話は聞いている。単独で貴族派五万の陣中突破を成し遂げて来たと。まるで 『イーヴァルディの勇者』 のごとく素晴らしき偉業だ」 「……僕は 『勇者』 じゃありません」 「謙遜しなくていい」 「いえ……」 朗らかに笑うウェールズに対し、リュカは複雑そうな表情で自身の息子を盗み見る。その様子にウェールズは気付いたが、その視線に一体どのような意味と想いが込められているかなど、彼には知りようもなかった。 「それで、私に何か?」 「はい。遅れて参上することになってしまいましたので、一言ご挨拶に。それと……恐れ多くも一個人として、殿下とお話したく参りました」 その言葉に、護衛が 「分をわきまえろ」 とばかりに怒気を見せるが、ウェールズはそれを制した。 渋々下がる護衛と入れ替わるように前に出て、ウェールズはリュカににっこりと笑いかける。 「こんなところで立ち話もないだろう。ちょうど、ラ・ヴァリエール嬢の話を聞いて、君と一度話してみたいと思っていたところだ。私の部屋でゆっくりと話そうではないか」 言って、自室の扉を指し示すウェールズ。彼が護衛に目配せすると、護衛はその扉をゆっくりと開け、ウェールズに道を空けて一礼する。 彼はそのまま自室へと入り、扉の外にいるリュカに振り返って 「さ、入りたまえ」 と入室を促した。 「リュカ……」 「お父さん……」 「……約束はできないよ。たぶん、僕でも無理だと思うから」 そんな短いやり取りの後、部屋に入ってきたのはリュカ一人であった。彼に続いて入室しようとした護衛の一人をウェールズは手で制し、部屋の外で待つように告げる。 大人しく指示に従い、退室する護衛。部屋にはウェールズとリュカだけが残り、パタンと扉が閉じられた。
支援だ!
「質素な部屋で申し訳ない。なにぶん、仮住まいなものでね。ベッドにでも腰掛けて楽にしてくれたまえ」 「恐縮でございます」 木製のベッドに椅子とテーブルが一組しかない部屋で、その一つきりの椅子に腰掛けたウェールズは、リュカにベッドを勧めた。その言葉に甘え、リュカはベッドに腰掛けた。 ゴトリ、と重い音を立て、リュカの持っていた『光の盾』が、足元に立てかけられる。それを見てウェールズは 「ほう」 と小さく感嘆のため息を漏らし、次いで彼の服と杖に視線を向けた。 「立派な服だ……それに杖と盾も素晴らしい。ラ・ヴァリエール嬢が君に与えたものかな?」 「いえ、実家より持ち出したものです」 「となると、君は名のある家の者なのかな? それほどの意匠を凝らした物を個人で所有できるとなると、ただの貴族ではあるまい」 「トリステインでは何の地位もない、ただの田舎貴族でございます」 「ふふ……韜晦(とうかい)するか。まあいいさ。それで、話というのは?」 所有物に関しては何か事情があるのか、正直に話そうとしないリュカに、しかしウェールズは微笑を漏らすのみ。どの道本題ではないのでさっさと切り上げ、少しだけくだけた口調で本題を促した。 「明日の決戦について、お聞きしたいことが少々」 「君の主人からは聞いていないのかい?」 「一通りは。ですが、あなたの決意をじかに聞かせていただきたいのです」 「……君も、僕を止めるつもりかい?」 「それは、話を聞いてから判断します」 その返答に、ウェールズは 「ふむ」 と少しだけ考えた。 どうやら彼は、主人であるルイズよりも理性的に考え行動することができるらしい。まだ若いがゆえに感情の抑制がつたない彼女とは対照的に、彼はこちらの問いに即断を避け、慎重にこちらを見極めようとしている。 そしてウェールズは 「よろしい」 と一つ頷き、パーティーの前にルイズたちに話したこととほぼ同じ内容を、リュカに話した。 「…………」 「と――いうわけだ。ちなみにラ・ヴァリエール嬢は、アンリエッタからの手紙に、亡命を勧めるような一文が添えられていたはずと主張していたが……王家の名誉に誓って言うが、そのような文句は一行たりとてなかったよ」 「そう……ですか」 締めとして付け足された言葉に、リュカは歯切れ悪く頷いて、そっとまぶたを閉じて少しだけ考え込む。 時間にしてほんの数秒。その数秒の沈黙の後、目を開けた彼は真っ直ぐにウェールズの目を見て、ゆっくりと口を開いた。 「亡命を勧める一文などなかった……『アンリエッタ姫にそう伝えて』 おけばいいということですね?」 告げられたその言葉に、ウェールズは一瞬驚き――しかし次の瞬間には、満足げに微笑んだ。 ――思った以上に聡い人物である。 実のところ、ルイズが指摘したことは真実である。しかし王族である以上、あのような一文は 『なかったこと』 にした方が色々と都合が良いのだ。 そんなこちらの思惑を、目の前の人物は正確に汲み取ってくれた。言葉にしてはいけないことを、言葉にしないまま伝え合うことができた。 これは楽しい会話になりそうだ――そんな期待が、むくむくと膨れ上がる。 彼がルイズに教えたという言葉を聞いて興味を持っていたが、少なくとも期待はずれにだけはならなさそうであった。 「君はかつて、ラ・ヴァリエール嬢に言ったことがあるそうだね。戦いとは、勝敗の二択で済ませられるほど単純ではなく、命を賭すべき場面は多くない――と。 僕もその通りだと思うよ。必ず反撃の機会が訪れると信じ、首都ロンディニウムを手放したかつての敗走の心境など、まさにそれだ。しかし現実は甘くはなく、ろくな反撃もできないまま、ここまで追い込まれた。 このまま何の抵抗もせずに逃げて国を明け渡し、地下に潜って反撃の機をうかがう――そんな手段も考えた。しかし果たして、一度でも逆賊に国を明け渡した王族に、玉座に返り咲く資格はあるのだろうか? 答えは否だ。他のブリミル直系の王族は、そんな恥知らずを許さない。我が国民も同様だ。何より、父上も僕自身も、許せるはずがない。内憂を事前に払えずに敗北した王族が、同じ過ちを繰り返さないなどと、どうして約束できようか。 だからこそ、我々はここで命を賭すのだ。もはやここにしか、命を賭すべき場所は残されていないのだから」
決意を胸に秘め、そう告げたウェールズに、リュカは答えず少しだけ瞑目した。 「あなたは……いえ」 「どうしたのかね? 何か言いたいことがあれば、遠慮なく言ってくれたまえ」 「…………」 何か言いかけ、しかし言葉を濁すリュカに、ウェールズはその先を促した。だがリュカの方はすぐには答えず、目を閉じたまましばし考え込む。 その間、彼の口が小さく動く。ほとんどは聞き取れなかったが、「国を追われた王族……か」 といった、どこか懐かしむような小さな呟きだけが、かろうじてウェールズの耳に届いた。 ややあって、リュカはゆっくりとまぶたを開く。そしてそこで、ようやっと口を開いた。 「殿下……あなたには、もっと早くに出会いたかった」 「嬉しいことを言ってくれるね。それはなぜだい?」 「今の話を聞いて、是非ともあなたを僕の親友に会わせたくなったからです」 「君の親友?」 「ええ。今のあなたの告白に、明確な形で返せる 『何か』 を持っている男です。けど残念ながら、彼に会うには今からでは到底間に合わない……移動時間だけならカットする手段はあるけど、それ以外のことに時間がかかりすぎる」 「そうか……それは、僕としても残念なことだ」 移動時間をカットする手段、とやらに若干の興味が惹かれたし、何より 『自分の想いに返せるものを持っている』 というその人物には、それ以上に興味が湧く。 だが、彼の言う通り、時間が足りなさ過ぎた。明日には終わる身なれば、多くを望むことなどできようはずもない。 「ですから、代わりと言ってはなんですが……僕から一つ、英雄譚をお話しいたしましょう」 「英雄譚?」 「はい。これは一年前に、ハルケギニアの外――僕の出身地にて、実際に起こったことです」 ハルケギニアの外で、実際に起こった英雄譚。 それもまた、非常に興味をそそられる内容だった。彼がハルケギニアの外の人物であるということ自体も、驚きではあったが。 ウェールズは顔を綻ばせ、「是非お願いしよう」 と促した。 リュカはコクリと頷くと、目を閉じてすぅーっと息を吸い込み、静かに口を開く―― 「……かつて、『巨悪』 がいました。 『巨悪』 は多くの魔物を操って人々を苦しめ、数え切れないほどの命を喰らいました。 また一方では 『巨悪』 は神を騙り、しもべを使って教団を興し、人々に偽りの希望を与えていました。 世界は 『巨悪』 によってコントロールされ、人々は虚構の希望にすがりつきつつ、永い苦しみの時を過ごしていました。 ――そこに、『勇者』 が現れました。 『勇者』 は各地を回り、『巨悪』 のしもべたちを倒しながら、『巨悪』 そのものへと近付いていきました。 『巨悪』 の根城、邪悪の根源、悪魔の住まう山――エビルマウンテン。 ハルケギニアで言えば、火竜山脈というのが最もイメージに近いでしょうか。普通の人間なら十人単位でかからなければ相手にもならないような強力な魔物が、数千数万とひしめく魔境です。 そしてそんな危険な山に、『勇者』 は信頼できる七人の仲間と共に、足を踏み入れました。 彼我戦力差は絶望的――しかし 『勇者』 一行はそんなことお構い無しに、『巨悪』 を目指して一直線に突き進みました。 絶え間なく続く、数え切れないほどの激闘がありました。しかしそれらを制し、『勇者』 一行はエビルマウンテンの最奥へと辿り着くことに成功すると、その勢いのままに 『巨悪』 とぶつかりました。 それまでの激闘がほんのお遊びにしか思えない――それほどの死闘が、幕を開けました。 何度攻撃を受けたでしょうか。何度苦境に立たされたでしょうか。どれほど戦っても崩れない 『巨悪』 の姿に心折れそうになったことも、一度や二度ではありません。 しかし 『勇者』 は決して諦めず、戦い続けました。 そして最後には 『勇者』 の剣は 『巨悪』 の喉笛を貫き、死闘が幕を閉じたのです。 『巨悪』 が倒れたその時、『巨悪』 が操っていた者どもは一斉に抵抗をやめ、いずこかへと逃げていきました。 かくて永く続いた苦しみの時代は終わり、世界に平和が訪れたのです――」 詠うように、流れるような口調で話し終え、リュカはふぅと一息ついた。 黙って聞いていたウェールズは、物語の終了を察すると、微笑を浮かべながらパチパチと拍手を送る。