うおっ、書き込めてる!?
なんだったんだ今回の規制は……
>>2は、避難所にあったテンプレ案の代理投下ですよっと
>>1乙
かなり規制がきてるなぁ
花札の人まだかのぅ
だれか
何だ
過疎りすぎワロタorz
月末までネタがない
前にスカリエッティに協力するサーヴァントなんて自我のないバーサーカーか主人に忠実なハサンぐらいしかいねーよ、と言ったが、
エクストラのお陰で善人悪人を分け隔てなく扱うエル・ドラゴや悪もまた良しとする李書文とか色々出てきたな。
エル・ドラゴは確かに協力しそう。気持ちのいい悪役っぷりが望めそうだ
ツッコミ役は誰なんだろ?
ヴィヴィオにネロ、アインハルトにエミヤを召喚させて・・・とか思ったけど
何故か集まったらおっぱい談義しかネタが浮かばなry
>>13 「つまり、このでかい艦を動かすために幼女には人身御供になってもらうという訳だ。いやはや、手前の為に子供を平気で犠牲にするとは大した悪党だねアンタ」
「なに、全ては科学の進歩の為さ。それに犠牲とは人聞きの悪い。聖王陛下はゆりかごと共に復活し、聖王教徒達のイコンとなるのさ永遠にね」
「永遠ねえ・・・そんな物に何の意味があるんだか。金も酒も人生も使い果たす為にあるってのに」
即興だがこんな会話が思い浮かんだ。
器用貧乏と言えば聞こえは悪いが、一通りの事はできる執事体質のエミヤ。
見た目はあまりよろしくないが、ホロウで実は介護技能が有ると判明した元々は宗教指導者の真アサシン。
そしてvivid二巻で芸が細かい事が判明したがリュー。
この三人が揃えばアルピーノ親子が送られた無人世界もいつかは凄い事になりそうだ。
>>16 > 見た目はあまりよろしくないが、ホロウで実は介護技能が有ると判明した元々は宗教指導者の真アサシン。
ハサン先生ってホロウに出てたっけ?
リリブラ復活きたあああああぁぁぁぁぁ
さぁレッツ避難所
??? ―――
次元の狭間にたゆたい、禍々しい全容を横たえる聖王の揺り篭レプリカ。
かつて古代ベルカにおいて最強を誇った偉大なる王をまるで敬畏せぬ偽りの玉座。
今、その内部の広間の薄暗い一室にて―――
――― パンパン、パン、!!!―――
―――と、クラッカーの弾ける音が鳴り響いていた。
――――――
「「……………」」
クラッカーの洗礼を受けたのは二体のサーヴァントであった。
色彩彩の紙屑が彼らの頭にファサリと落ちる。 まるでワカメを被っているようだ。
小学校の学芸会を思わせる趣。 生体ポット部分にかけられたさもしい垂れ幕には「おいでやす」という手書きの文字が。
紙ふぶきが宙を舞い、蒼躯の男と紫紺の女の頭上に降り注いだ後……再び部屋を静寂が支配する。
「「「「……………」」」」
熱烈な歓迎を受けた者達は只々、無表情。
歓迎の意を表した者達もまた同様に次のアクションを起こさない。
場は再び膠着状態へと移行する。
(おい、大丈夫なんだろうなチンク? これは俗に言う、ドン引きというやつではないのか?)
(問題ない……私を信じろ。 短い期間だったが局の人間と接触を持った身。
人を歓迎し、迎え入れるとはこういう事だと学んでいる)
英霊の眼前には、理想的なフォームで対象にクラッカーを撃ち込んだトーレ。
さながら敵陣にアサルトライフルをぶっ放す突撃兵のような身のこなしは見事の一言。
そして剣の英霊の時のような失敗は二度としないと意気込むチンクは意味不明などや顔。
隅では苦笑する長女ウーノと――――「くっだらない…」と一言、タンバリンを放り捨てるクアットロの姿があった。
「―――――――――何だ、こりゃ?」
「私が知るわけないでしょう」
長髪を湛えた頭を犬猫のようにぶんぶんと振るライダー。 被った紙葛が床に落ちる。
「だろうな……おい!」
機人に手を引かれるままに付いてきたサーヴァント2体―――ランサーとライダーは呆気に取られたままだ。
だが決してこのような茶番の舞台に上げられるために来たわけではない。 槍兵が口を開く。
「まずは説明してもらおうか……」
「はい。 では私から」
「いや、他の奴は取りあえず引っ込んでてくれねえか……なあ!」
長女ウーノが一歩前に出てランサーの問いに答えようとするも、男はそれを切って捨てる。
常時は享楽的な槍の英霊だが、今は瞳に冷徹な光を宿している。
周囲に気を許さずに前方を睨み据える双眸は、まさに臨戦態勢のそれに相違ない。
「暫く見ねえうちに女に囲まれて大層な身分じゃねえか――――なあ、言峰よ」
そして長椅子に悠々と腰掛けているカソックの男に吐き捨てるような言葉を投げかける。
その姿を認めるなり、男は湧き上がった敵意を微塵も隠さなかった。
得体の知れない者達の歓迎など頭から吹き飛んでいたのだ。
「暫く、か………その様子では時間の概念を語るほどに己を掴めているかも怪しいな。
痴呆と語るゆとりは私には無いぞ、ランサー」
「………クソが」
意味深々な言葉をちらつかせて相手を弄ぶ男の様は相変わらずだ。 ランサーの苛付きは増すばかり。
記憶の混在、自身すらあやふやな現状の把握を、と付いてきた槍兵と騎兵。
てっきり冬木の教会辺りにでも搬送されるのかと思っていた二人だったが、いざ連れて来られた場所は彼らの予想の範疇を遥かに超えていた。
この冗談みたいな空間は何だ?
明らかに「世界」そのものが違うと、英霊二人は即座に理解した。
雑多に並べられた計器の数々。 モニターに映るのは―――今まで自分らが歩を構えていた地球であった。
「もはや誰でも構いません。 どういう事か説明して貰えないでしょうか?
私に理解、納得出来るようにハッキリと」
「宜しい! ならば私から説明しよう!」
大仰に一歩、前に出たのは言峰綺礼の隣に座していた男。
神父とは対照的な白衣に身を包み、明らかに正気と一線を隔す眼光を彼らに向ける。
今やこの世界の創造主にして神である―――ゲームマスター・ジェイルスカリエッティが初めてサーヴァントと邂逅した瞬間だった。
男が立ち上がった瞬間、周囲の壁面だと思われていた部分に映像が投写される。
360度モニターが彼らを囲み、様々な3D映像を場に映し出す中で―――
「ようこそ英霊諸君! ここが世界の心臓だ!」
無限の欲望と呼ばれた男が歪な笑みを浮かべるのだった。
――――――
神々の遊戯盤―――
次元を犯し、融合させて世界を創り、双方の名だたる闘士を招聘して闘わせる、ただそれだけのロストロギア。
誰が何のために造ったのか分からない。
それは、あるいは本当に神に等しい存在が遊戯に耽るためだけに生み出した戯れの品なのかも知れない。
歪なまでに巨大なゲームデッキとも言えるそれ。
このゲームを行うにあたって今回、遊戯盤によって招聘された<駒>の役目を果たすのがサーヴァントだった。
彼らは第五次聖杯戦争という一つの事象における様々な可能性、様々な結果を元にして
ロストロギアがデータ化して作り上げた勇猛なる兵士たちである。
このゲームを勝ち抜くためにまず必要な事が、彼らを使役し使いこなす事だ。
その方法は幾つかあるが、そのうちの一つとして――――
――――――
目まぐるしく写っては消える左右上下の映像をまじまじと見せ付けられるサーヴァント達。
「ありゃ……俺じゃねえか」
ややもして口を開いたランサーの第一声がこれだった。 ライダーの隠された双眸も驚愕に染まっている。
そこには彼ら……否、彼らだけではない第五次聖杯戦争のサーヴァント達が死力を尽くして相争っている様が映し出されていた。
槍兵は見据える―――セイバーとの初戦、アーチャーのアイアスと激突するゲイボルク、一昼夜にも及ぶ黄金の王との戦い
騎兵は見上げる―――エクスカリバーに焼かれる自分、アサシンとの邂逅、相見える黒き騎士王との闘い
だが……だが、おかしい? もはやその違和感は確固たる矛盾となって英霊達の頭を苛む。
「ちょい待て! ちょい………少し整理させろ!」
豪胆な英霊をして浮き足立つのも無理は無い。 ただでさえ、場違いな空間にて居心地の悪い思いをしているのだ。
俗に言う、映画やアニメなどで見る近未来SFを模した舞台装置。
そんなモノが実際に起動しているだけでもおかしいし、古き神話の英霊達を囲う鳥篭としてこれほど似合わぬものも無い。
「体中がムズムズしやがる……紅茶に納豆ブチ込まれるくらい、肌に合わねえ」
「田舎者は辺境の島国で槍でも振っている方がお似合いだという事でしょう。」
「お前、変なとこでスレてるよね……」
どれだけ都会慣れしているかの指標は即ち、ハイテクに対する垢抜け方で決まる。
その点、彼女は衛宮家においてただ一人、ウォシュレットの直撃に眉一つ動かさなかった女傑である。
「何にせよ話を続けましょう。 私達サーヴァントを顕現させたのは聖杯ではなく、そのロストロギアとかいう代物―――
この身を召喚したのはマスターではない……貴方の言う事を総括するとこうなりますが?」
「そう、取りあえずはコレがキミ達の知っている聖杯戦争ではない事を頭に入れて欲しい。 細かいルールはおいおい説明するが……
正規の召喚に基づいた物でない証の一つとして、キミ達の令呪……機能していないだろう?」
言われて確かめるまでも無い……今やはっきりと知覚出来る。
自分達が冬木の奇跡によって招聘されたサーヴァントではないという事実が。
「とんでもねえ事をサラリと言いやがったな……通例として、こういうのは少し勿体付けるもんだと思ってたが」
「これ以上待たせてキミの槍が我慢出来るとも思えなかったのでねぇ。 我ながら賢明な判断だと思うよ……フフ」
サーヴァントは令呪という首輪を付けられる事によってマスターに使役される。
これが聖杯戦争の不文律となるルールだったが、スカリエッティはその大前提をあっさりひっくり返した。
だが、そうならばシグナムとフェイトに対してランサーが全力で戦えたのも説明できる。
彼は本来、主である言峰によって「初見の相手と全力で戦うな」という縛りを設けられていたのだから。
質問を続けるサーヴァント達。
「様々な次元だとか言ったが……そりゃまさか…」
それはつまり「並行世界」という事なのだろうか?
その概念を曲がりなりにも犯しているなどと、聞き流せるものではない。
「恐らくはパラレルワールドと言っても良いだろう。 キミらの記憶の混雑はそのためだよ。
一つの器に、多岐に渡る異なる自己を容れたとあっては当然、混乱を招くだろう。
まあ、これは展開・状況によって天と地ほどもパラメーターの異なるサーヴァントに対する救済措置とでも思ってくれて構わない」
状況、状態によってはまるで力を発揮出来ないサーヴァントもいるだろう。
ライダーが鮮血神殿、キュベレイの魔眼、騎英の手綱と紛う事ない全開を出せたのもこのためだ。
間桐慎二がマスターではきっとこの半分の力も出せていなかったに違いない。
全てはバトルを公平に規すための措置だと博士は言うが―――
「それって―――場合によってはとんでもない事にならねえか?」
「現世において並行世界の運営は魔法の域だと聞いています……それをこうも容易く」
「ふむ……良いんじゃないかな。 人ならざる神の手による逸物だからねぇ、コレは。
運命の行き着く先もまた神のみぞ知る! 実に面白い!」
「適当な話だなオイ」
それはみだりに踏み込んで良い域ではない……ましてやこのような戯言で。
魔術協会が聞いたらダース単位で殺し屋を差し向けてくるような発言だったが、博士の口調に緊張感は全く無かった。
得もすれば根源に抵触する事態であろうとも、この男にはさして興味が無いのだと一目で分かる。
「冗談じゃねえぞ……意識したら余計に頭がイカれて来やがった」
「要するに私達はお遊びのために作成されたゲームキャラクターに過ぎないと?
急場凌ぎで作られた器に記憶と力を詰め込まれただけの」
「有り体に言えばそうなる。 理解が早くて助かるよ」
いけしゃあしゃあとのたまう博士だった。
英霊に対する敬いも畏れも微塵もありはしない。 神聖なる彼らの身を冒し尽くしているという罪悪感も同様に。
ランサーもライダーも別に自らが尊敬されたいと願う気性の持ち主ではない故に気にも留めないが―――
この男と英雄王辺りをかち合わせたら、それはもう最悪だっただろう。
気だるげに頭を振るランサーに、腕を組み何かと考えているライダー。
取りあえずこの世界についてこれ以上聞いても今は整理がつかないだろう。 他に気になる事もある。
「ところで俺らと戦ったあの嬢ちゃん達だが……」
「彼女達は何者ですか? アレもどこかから集めてきたデータだと?」
「あれはキミ達の対戦相手にして、私達の対局相手。 駒にして指し手。
この次元犯罪者ジェイルスカリエッティを追ってきた時空管理局の魔導士。
それも個々の力が一軍に匹敵すると言われるSランク魔導士たちさ」
「ジクウカンリキョク? ああ、そういやそんな名前出してたな奴ら」
「サーヴァントでも魔術師でも無い、全く別の勢力だったというわけですか……道理で会話が成立しなかったわけです」
「その力はキミ達の味わった通り。 英霊諸君と相争うに不足の無い駒だと思うのだがどうかね?」
「どうも何も―――」
冷笑を返す騎兵。 そんなモノと何の意味も解さぬまま、息も絶え絶えに戦わされていたのだ。
間抜けな話であり、本来なら文句の一つも言ってやりたいところだが―――実りある出会いもあった事だし、ここは大目に見よう。
「しかし………妙ですね。 駒である我々と対戦すると共に、貴方がたとの対局も兼ねると仰いましたが?」
ライダーの疑問は真っ当なものだ。 サーヴァントが駒であり、盤上で敵の駒を倒す兵隊だというのは分かった。
しかし、故に彼らには指し手としてゲームを動かす権限は与えられていない。
というのに魔導士たちは、駒と指し手の両面から戦わなくてはいけないとでも言うのか?
それが有利なのか不利なのかすらランサーとライダーには分からないが、取りあえず妙な話ではある。
「元々、管理局とまともな勝負をしようだなんて思っていませんの、私達は。
奴らをこの虚偽空間に引き入れ、一方的にゲームに巻き込んで
敵が状況を把握する前に叩き潰してしまおうというのが当方の魂胆ですわ♪」
その疑問に、タンバリンを足で弄びつつ答えたのは4女クアットロ。
そう、これは互角の勝負では断じてないのだ。
互いに顔を突き合わせての対局ではなく、いわば詰め将棋。
盤面に配置した敵を、味方の駒でどう詰めるかという戦いなのだと機人の少女は言う。
「なるほどな…………要はお前ら卑怯者か」
「そう言われても仕方の無い所だがな……残りのガジェットも含めた我々と時空管理局の相対戦力比は、もはや語るまでも無い。
これに勝ったとて次、次に勝ってもそのまた次、恐らく敵は途切れる事なくやってくるだろう」
「だけど揺り篭という切り札を失った私達には、もはやこんなゲリラ戦法でしか局と戦う術は残っていません」
「展望は正直言って厳しいけれど、それでも希望はゼロじゃない。
このゲームで回を重ねる毎に、掬い取った駒を戦力に引き入れ、徐々に管理局に相対する無敵の兵団を作り上げる。
貴方たちをリアル空間に顕現させる術も八割方、完成している今………
当初は雲を掴むようだった話が、決して夢物語では無いところまで来ているの」
「要は実益を兼ねたゲーム……いや、レジャーという名の博打ですわね。
その栄えある一回目の相手が、あの憎き機動6課の面々というのは何の因果か……
こちらも説明書片手にプレイしているようなものですし、初めはもうちょっと弱っちい相手とやりたかったというのがホンネなのだけれど♪」
博士に続いて次々と言葉を重ねていくナンバーズの姉妹たち。
並行世界? 神秘の具現たる聖杯戦争を模して作られた遊戯盤?
ほとんど冗談のような話だ……一体どこまで信じれば良いのか。
顔を見合わせる両サーヴァント達だったが、続けて男が思い出したように口を開く。
「さし当たって聞きたいことは山ほどあるんだけどよ……
取りあえず―――――――何でソイツがそこで踏ん反り返ってんだ?」
顎で指して黒衣の神父を見据えるランサーである。
「仮にもマスターに対して、その口の利きよう。 不快に過ぎるな。
不忠のサーヴァントここに極まれりと言ったところか、ランサーよ」
「こいつらの話が本当なら既にマスターじゃねえだろうが、てめえは」
「彼は我々の説明書、とでも言えば良いのか……案内役であり私の話相手だよ。
場が聖杯戦争という事で最も相応しい人物を盤に求めた結果が彼だった。
しかしまあ、呼んでみるとなかなかに面白い男でね。 未だ数ヶ月弱の付き合いだが良い友人になれそうだよ……フフフ」
「物好きなこった…………………ところで言峰よ―――改めてお前に聞きたい事があるんだが」
「何だ? 私に答えられる事などそうはないぞ」
「俺のこの身が聖杯戦争の様々な可能性の集合体と言ったな? ならば当然、俺が勝利した未来もある筈だな?」
「無きにしも非ず。 よほど上手く立ち回ったのならば有り得たかも知れん」
周囲のスクリーンを一望して、槍兵は大仰に問う。
取りあえずこの世界の諸所諸々の情報は得たが―――言峰綺礼を前にした槍兵にとって、そんな事は二の次だった。
ランサーが神父に叩き付けたい言葉は今、一つしかない。
「さっきから必死に記憶を探ってるんだがよ………お前に騙し打ちにあった俺の元マスターだ。
あいつと共に戦い、勝利した記憶が欠片も引っかかって来ねえのはどういうわけかな、こりゃ………?」
そうだ……この男はランサーにとって主の仇に他ならない。
英霊の言葉の裏に潜んだ物騒な殺気に機人達が息を呑む。
客人がこのサーヴァントの主であると聞いて安心していたのだが………実際引き合わせて見るととんでもない。
「ク………クックックックック……」
これは―――この二人は、間違っても主従の契りに結ばれた間柄などには見えない。
くぐもった笑いを返す言峰綺礼。 ランサーはまるで噴火寸前の火山のようだ。
「それは簡単な事だランサー………あの女はな、ありとあらゆる事象で私に令呪を剥ぎ取られ
早々に野垂れる運命にあったのだろうよ。 ただの一度の例外なく、私を疑わなかった愚かな女というだけの事だ」
「――――――――――て、めえ………ッッ!!!!!」
猛犬が歯を噛み鳴らす音が場に響いた。
もはや令呪による縛りもない。 彼の槍が神父を貫くのに何の障害もありはしない。
一触即発の空気……言峰綺礼の前に壁となって立つナンバーズの3と5と7。
彼は博士の客人だ。 殺させるわけにはいかない。
「…………女の尻に隠れやがって………」
後ろ手に構えた槍を下ろすランサーである。
あれは百回殺しても飽き足らないモノだったが、今はまだ暴れる場面では無いと踏んだのだろう。
胸を撫で下ろす機人達であった。
「よりによってソイツを自陣に引き入れるとは馬鹿な奴らだぜ。
お前ら全員、内蔵から腐れて死ぬぞ………断言する」
「何にせよ私には関係の無い話ですね。 お遊戯でも何でも好きにすると良い」
「待てっ!」
踵を返そうとするライダーに対し、3女トーレが立ち塞がった。
首を傾げる騎兵を戦闘機人の鋭い眼が射抜く。
「言った筈だ。 もはやお前達に選択権は無い……帰る場所もな」
「怒りはもっともだが、もはや私達はお前らの力に縋るしかないんだ……力を貸してはくれないか?」
それぞれ異なる態度で接して来る少女たち。
当のスカリエッティとかいう首魁よりも彼女達の方が積極的に見えるのは気のせいか?
どうしたものかと肩を竦めるライダーだったが―――
「…………サクラは」
ともあれ、初めて彼女らに自発的に口を開く騎兵。
倦怠に塗れた様相が、その名を口にした時だけ様子が変わる。
「我がマスターはこの件に関わっているのですか?」
「いや………基本的にマスターと呼ばれる人間は呼ばない。
呼ぶメリットがないし、お前たちサーヴァントを我々が使役する邪魔にしかならない」
「―――――そうですか」
取り合えず彼女が考える第一はそれだった。
間桐桜までもが、この怪しげな空間に囚われたとあってはのんびりと構えている余裕は無くなる。
「で? 俺たちに何をしろってんだ?」
「取りあえずランサーには姉妹達が動く際の手助けを。 ライダーには同じく輸送・運搬をお願いしたいのだが」
「俺がパシリで―――」
「―――私がアシですか」
「不満かね? これは綺礼の助言を元に適材適所を見越して当てた役割なのだが……」
「不満を垂れる道理などなかろう。 どの道、それ以外の役には立たぬ奴らだ」
「「殺す」」
ハモるサーヴァント2体。
再び、なだめるナンバーズ達の苦労と心労が涙を誘う。
巨頭と巨狂の板ばさみ……円形脱毛症になる姉妹が出ても不思議ではないと思われる。
「で、その申し出―――俺らが断ったらどうするよ?」
「どうもしないさ」
「ああん?」
「それもまた一つの選択……私の構築したゲームをNPCとして存分に楽しんでくれ給え」
「泳がせようってのか? ここまで大仰な仕掛けを打っておきながら……信じられねえな」
「私は私の手足に制約をつける事を好まないというだけの話だよ。
助力が欲しい時はキミ達に依頼するが、それを受けるも断るも自由。
フフフ、自身の駒があるいは自分に刃を向けてくる埒外もまた……命の揺らぎが齎す必然というわけさ」
魔犬の双眸がスカリエッティを射抜くが、白衣の男はどこまで行っても掴み所が無かった。
言って愉悦と狂気を孕んだ笑みを向けるジェイルスカリエッティ。
奇妙に歪むランサーの相貌に写す感情は―――
――― ワケの分かんねえのが二人に増えやがった… ―――
で、ある。
――――――
一通りの問答を経た後、二人は艦内の割り振られた部屋に連れていかれる。
「意外でした。 貴方があの監視役を殺さなかったのは」
「奴など何時でも殺れる……正直、そんなどころじゃねえってのが感想だ。 それに―――」
ランサーにはセッテが、ライダーにはトーレがそれぞれ傍に付いていた。
目付け役、見張りと言ったところだろう。
「あの用心深い根暗野郎が何の策も無しに俺の前に立っている、というのがどうにも解せなくてな。
取りあえずは様子を見る事にした」
「…………」
「で? 正直、ありとあらゆる状況にまだピンと来ないわけだが……どうするんだ、お前は?」
「愚問です。 サーヴァントは己がマスターにのみ仕える。 あのような輩に飼われてやる義理はありません」
「そのマスターがいないんだとよ………俺はいるけど」
「おや? この者達の世迷言を鵜呑みにするのですか?」
「「………」」
見張りの前だというのに今後の方針を平気で語り合う英霊たち。
こちらに聞かれても一向に構わないという事だろうが、豪気な話である。
顔には出さないにせよ後ろに付く機人たちの心胆も決して休まることはない。
「まあ、それはそれで―――私はしばらくここに身を置こうかと思います」
「言ってる事が違うじゃねえか」
「暫くは状況の推移を見るために潜伏します。 傷も治りきっていませんし、ここにいれば何かと不自由しなさそうですからね。
彼らが私を制御するためにサクラに気概を加える可能性もまだ捨てきれない」
「なら俺は白衣野郎の言葉通り、好きにさせて貰うかね。 おい、外には出れるのかい?」
「……………可能です。 但し監視と制限は付けさせて貰いますが」
「そうか――――ま、ヨロシクな」
「ヨロシク」
ニィ、と不敵な笑みを向ける英霊2体。
「「……………」」
友好的とは程遠い笑みだったが、無言で答えるトーレとセッテ。
得体の知れない状況に置かれているというのに何という堂々たる態度だろう。
というより…………ず太いのか……色々と。
様々な思惑の元、こうして2体のサーヴァントが機動6課の宿敵ジェイルスカリエッティの食客として招かれた。
顔を突き合わせる4者4様。
表面上は平静を取り繕っている機人であったが、このじゃじゃ馬を乗りこなせるか否かによって自身らの命運が決まるのだ。
今、彼らには令呪の縛りが無い。 だが――――その先をスカリエッティは敢えて口には出さなかった。
――― 未知なるルールにはサーヴァントの「令呪」をも復活させる方法がある ―――
これこそサーヴァントを使役するための攻略法に他ならない。
モノにしなければ………英霊を従属させる事など夢のまた夢であろう。
果たして彼らは心強い駒となるのか、それとも自身らを滅ぼす災厄の札となるのか―――
決して易くは無い手綱を握るであろう両の手を今、しかと握り締めるトーレとセッテなのであった。
偽りの玉座が虚空に浮かぶ。
刻は開戦より1月と13日。
盤上では新たなる戦の火蓋が切って落とされる――――――
――――――
――――――
渡り鳥は幼い頃に生まれ育った町並みを決して忘れない――――
彼女が雛鳥だった頃、それはとてもとても大きな巣として常に彼女の眼前にそびえ立っていた。
そこでの暮らしは決して良い事ばかりではなかったけれど、それでも雛鳥にとってはかけがえの無い思い出の場所。
だから―――――――頭の中が真っ白になった…………
病み上がりの体が火がついたように熱い。
ビルの谷間を一心不乱にひた走る黒衣の背中を美しい金髪が叩く。
まさか――――――まさか―――――
形だけを似せた同型のものなどいくらでもある。
だけど、他ならぬ自身が生まれ育った庭園……幼い脳裏に焼きついた郷愁。
景観、色彩、破損している箇所までもが彼女の脳裏に焼きついたものと同一であるならば?
それは間違いなく自身の知るあの庭園であると、彼女を確信させるに余りあった事だろう。
眼前に広がる災厄の嵐。
本能が――――あれが他人事ではないと告げる。
かつて雛鳥だった彼女は走る。 ひたすらに走る。
この先に待ち受けている、身を引き裂かれかん程の過酷な運命を知らずに――――
――――――
遮二無二、疾走するフェイト。
目指す先にて広がる崩壊の亀裂。
時は、その一刻ほど前に遡り―――
ガィィィィンッッ!!!!!!!、と――――幾度目かになる爆光が周囲を奮わせた。
sword dancing ―――
そこは適度に茂った草木以外、地平の果てまで視界を遮るもののない寂れた郊外だった。
見晴らしの良い平野部にて、分にして10を数えぬうちに起こった力と力の激突。
邂逅は既に百を超え、辺りには「彼ら」の牙である剣が地に突き立つ。
対峙するは黄金の鎧に身を纏ったあの暴君である。
金色の王気を纏いて立つその姿は変わらず万夫不倒。
高町なのはとセイバーを同時に相手取り、退けるというバケモノじみた所業を示した魔人―――ギルガメッシュ。
全ての事象が我のためにあると言って憚らない偉大なる英雄王がそこにいた。
「――――――贋作者(フェイカー)」
そして―――忌々しげに呟かれた彼の視線の先で佇むのは………
赤い外袴を身に纏う一人の騎士だった―――――――
――――――
GILGAMESH,s view ―――
この茶番を偶然によるものと考えるほど我は暢気では無い。
我が身はかの箱庭における猛毒に他ならぬ。
自浄作用としての抗体が働き出すのもそろそろだと思っていたが―――
まったく我が御前に立つ者として「コレ」を選ぶとは、なるほど愚物も少々の知恵を働かせてきたという事か。
「相変わらずだな英雄王。 万物を見透かしたような素振りだが―――ひとまず、私にも状況を説明してくれないか?」
「貴様に賜ってやる言葉など無い。 失せろ」
虫を払うかのように右手を払う。
10を超える宝具が奴に向かう。
それを小賢しくも相殺してのける奴。
忌々しい………相変わらず姑息に立ち回る下郎よな。
「ふむ、まあ私とお前がこうして出会ったならば談笑に花を咲かせる意味も必要性も皆無――重々、理解している。
こちらとて敵をむざむざ逃がす気は無い。 すぐに決着をつけるのも吝かでは無いが
趣を尊ぶ英雄の王らしからぬ振舞いには少々、違和感を感じている。 さて……」
「薄汚い贋作を相手どっての趣などに興味は無い。 だが、そうだな……一つだけ教えてやろう。
それはな――――貴様の道化ぶりがついに神域に達したという事だ」
肩慣らし程度に並べた宝具を悉く打ち返す贋作。
不愉快に過ぎる光景ではあるが―――ク………
「その嘲笑のままに、また道化に屠られるか英雄王?
茶飲み話も出来ぬとあらば、面を突き合せるのも不愉快であるのはお互い様。
挨拶はこの程度にして―――貴様を早々に屠ってしまっても構わないかね?」
雑兵がほざく。 既に自己を喪失した人形である事を自覚出来ない駒の分際で。
見るも無残、聞くも無価値な残骸風情が、この我の手を煩わせるというのか?
セイバーの時と違い、このような手合いに今更感じる因縁など無いが……
「ふん……まあ、この王を阻むべく用意した駒であるならば致し方無い」
英雄王に踏破される覇道の第一歩を――――
この不埒物の血で染め上げるとしようか。
――――――
――――――
錬鉄の騎士アーチャーと英雄王ギルガメッシュの戦いは突然にして始まった。
既に双方、相手に語って聞かせる事もなく、出会えば互いに滅ぼし合うしか無い間柄。
邪魔者も制止するマスターもいない以上、出会いと同時に己が刃をぶつけ合う以外の選択肢が彼らにあっただろうか?
「ゲートオブバビロン」
それが例え――――片方にとって最悪の相性となる戦いであったとしても。
「I am bone of――」
アーチャーが己が内に埋没する。 その度に投影されていく無数の剣。
それらが数分の狂いもなく英雄王の宝具を迎撃する。
徐々に徐々に激しさを増していく投射においても、その光景は揺ぎ無い。
互いに手の内を知り尽くした者同士、拮抗は易く―――其が破綻するのもまた一瞬だろう。
空間に浮かぶ赤き射出口から吐き出される魔弾を、既にそこにある剣で迎撃し続けるアーチャー。
己が内にある世界、丘に突き立つ剣を引き抜き、投げ放ち……
放つままに双方―――
――― 王は無造作に、弓兵は豪壮にゆっくりと敵の方に向かい歩き出す ―――
手にはそれぞれ新たに抜き放たれた一刀。
ぶつかり合う宝具により、連鎖爆発を起こす周囲。
その爆炎の只中で、まるで無人の野を往くかのように二人は距離を詰め―――
「ハッ、!!!!!!」
「応ッッッ!!!!!」
――――手に持つ牙を力任せに叩き付けたのだ!
――――――
一際大きな力場の衝突が大地を震わせた!
英霊同士の戦いの壮絶さを今更言葉で揶揄するまでもない。
そして神代の兵器とも言える宝具を使い捨てにする彼らの激突の苛烈さも同様に。
不遜の行進を不退の背中が迎え撃つ。
衝撃で双方が後ろに弾かれる。
だが何事も無かったように二人はまた歩き、そして刃を交わす!
技も術も無い、それは原始を思わせる荒々しい闘争のカタチ。
互いに負ける事など頭の片隅にもない、敵に劣っている事など有り得ないと断ずる
そんな確固たる意思が彼らの歩から後退の意を外す。
「ふんッッ!!!」
「ぬあッ!!!!」
二合、三合、四合、五合――――!!
天帝を守護した大蛇矛が、雷帝の力を封じ込めたヴァジュラが、氷山の深奥にて眠る槍が、魔竜の腹を破って生まれし魔剣が次々と場に具現し、消える。
大地が煎餅菓子のように容易く裂けていく様は圧巻の一言。
周囲にて踊り狂う射撃はそのままに、爆炎の中心地にてぶつかり合う二人のアーチャー。
これは当然、紅き弓兵にとって望むべき形。
黄金の弓兵の宝具に対し、自分が勝ちを収めるにはこうした乱戦に持ち込むしかなく、また最善でもあるのだ。
(………………ぬうっ!?)
だが…………だが、おかしい?
王とてそれは承知の筈。
ゲートオブバビロンと無限の剣製―――アンリミテッドブレイドワークスでは、その性質上、後者の方が一歩速い。
英雄王にのみ有利に働くカードを持つが故に、唯一ギルガメッシュと互角以上の戦いが出来るのがこの錬鉄の英霊。
「どうしたアーチャー? 何やら当てが外れたという顔だが?」
である筈なのに―――王の口の端が歪む。
そう……今、この剣戟において英雄王の挙動が弓兵に遅れる事はなかった。
ジャンケンにおけるグーとパー。 こんな事は有り得ないというのに何故?
(英雄王………………よもやッ!)
その異変にいち早く気づくアーチャーが舌打ちする。
蔵の中より引き出す王の財宝よりも、既にある物を振るう自身の方が先に届く。
これがアーチャーが有利な理由。 単純だがそれ故に絶対の理。
……ならばその理を潰すには?
(――――簡単な事だ。 技の優位で遅れるならば単純な肉体の優位で補えば良い……)
こちらが先に取り出せるなら、向こうは腕の振りを2倍にすれば事足りる。
破顔するギルガメッシュの表情が雄弁に物語る。
この男にはその手のフォローをする手段などいくらでもある。
奴は―――その蔵の中にてパラメーター上昇の宝具を無数に機動させているのだ!
「パンが無ければ菓子……キミはマリーアンワネットか?」
「たわけ! ただ栄華を与えられ、与えられるがままの生に沈んだ唾棄者と我を同列に語るか!
有り余る財も、権も、自身の手で掌握してこそよ――――そら、挫けよフェイカーッ!」
一閃! 翻るは北欧の巨人の手によって振るわれた巨大な槌!
偉大なる王の渾身の一撃に、今―――
拮抗を崩されたアーチャーが、轟音と共に吹き飛ばされた!
――――――
真紅の礼装を纏った体が宙を舞う。
宝具の衝撃を打ち返せずにその身に受けた。
幾ばくかの相殺が成った故、致命の一打にはならなかったものの―――決して遅れの取らぬ筈の初太刀にて、まさかの不覚。
自身の一振りを手から弾かれ、5m後方に吹き飛ばされるアーチャー。
膝を付きこそしなかったものの、こめかみからの流血が頬を濡らす。
「ち……」
「ク、……どうしたアーチャー? 我に対する絶対の自信の程を見せるのではなかったか?
まさかこれで終わりではあるまいな? 猿真似が化けの皮を剥がされたにせよ
仮にも英霊の末席を暖める身。 少しは意地を見せてみよ!」
「空元気が過ぎるぞ英雄王。 我が剣製の極致……こんなものではない。
それは他ならぬお前が一番良く知っている筈だが?」
優位の一つを敢え無く砕かれたというのに相変わらずの自信を崩さぬアーチャーも流石であった。
舌打ちするギルガメッシュだったが、弓兵の言葉はまだ続く。
「しかしながら――――ギルガメッシュよ。 このままでは程なく雌雄は決せられる。
故に一つ聞いておきたいのだが……キミは本当に本物の英雄王ギルガメッシュなのだろうな?」
よりにもよって王の眼前、のたまった言葉である。
これにはさしもの黄金のサーヴァントの緋の目も怒りに燃える。
「戯言を聞いてやろう――――貴様の命と引き換えにな」
声色は悠然なれど心胆は憤怒に震えている。
しかしてそんな王の眼前、臆する事無く弓兵は佇む。
「何、お前があまりにも必死だったものでな……私の感じる違和感に更に拍車が掛かったまでの事だ。
私の剣製に対し、対策を講じたとしか思えない先の在り様。
本来の英雄王ならば相手に対応する事、それ即ち弱者の証と吐き捨てる筈だが?」
自分のような「雑種」は素の力のみで蹂躙してこそ王。
そんな輩に対策を講じるなど屈辱の極み、と言い放つ。
それが英雄王ギルガメッシュではなかったか?
モノの本質を見抜く目………属性は全く違えど、彼もまた王に負けない選球眼、というよりも解析眼を持っている。
だからこそアーチャーはこの世界において、ギルガメッシュと同様の異を抱いた……否、抱けたのだろう。
「今のお前には<王気>がない。 王としてのあり方を損なっているが故に強壮であっても偉大ではない。
上辺の強さと引き換えに何をどこに置いてきたのかは知らんが、王で無い貴様になどもはや何の脅威も感じぬ。
眠っているのなら今すぐ起きておけよギルガメッシュ―――またもうっかり命を落とす羽目になっては流石に気の毒だ」
「吼えたな…………雑種!!!!」
ギリっと王の口の端が釣り上がる。 顔に映すは果てない憤怒。
やはりこの弓兵は彼にとって特別カンに障る存在だった。
それはどんなに世界を違えても決して変わらぬ事実らしい。
「その言い様―――我の事のみならず、自身の在り様にも思い至るところがあるのであろうな!?」
「……………」
しかし王より返されたその言葉には、真紅の弓兵の口からも余裕の笑みが消える。
「何にせよ履き違えるなよ贋作……仮に我が策を講じたとして、だ。
この我が貴様如きに渾身を期すとでも思っているのか?
我が相対するは無礼にして不遜なるこの世界そのもの―――貴様の背後に座す存在に他ならぬ」
対して弓兵のその後ろを指すように手を翳し、雄大に語る王。
「戯言ついでに語って聞かせよアーチャー。 何時の世も走狗としてしか己の価値を示せぬ下郎よ。
此度は誰の尻拭いをするためにここに足を運んだか?」
「……………」
沈黙を余儀なくされるアーチャー。 その相貌は果てしなく険しい。
――― 遠坂凛……… ―――
第五次聖杯戦争において彼を使役する事になる魔術師の少女である。
この弓兵とは並々ならぬ絆を示した紅き主従。
今もなお、彼の胸中には少女の面影が消えてなくなる事は無い
(凛…………)
しかし、そのマスターの存在をこの地に感じる事は無かった。
自身に通っているパスも、令呪の存在も全て不明瞭。
霞掛かった思考には、ただ一つの命令―――
――― 目の前のバグを消去せよ ―――
という――――強迫観念めいた思考のみ。
自分を、この弓兵のサーヴァントをここに配置したのは断じて遠坂凛ではなかった。
恐らくは英雄王ギルガメッシュに対し、唯一拮抗出来る存在としてこの身を選んだに過ぎない。
「ハ! つくづく走狗とはお前のためにあるような言葉よな!
自己を喪失して首輪をつけられ、のた打ち回る様に疑念を抱けたまでは褒めてやる。
だが、その腑抜けぶりでは何も為す事は叶うまい!」
―――敵を打破、若しくは足止めせよと自分に命じたのは………
王の言葉に沈黙を通すアーチャー。
自己に埋没し、深く深く、その内に―――やがて辿り着いたのは……
「それにしても揃いも揃って情けない事よ。
英霊と呼ばれし者共が、たかが器に2、3、余分に容れられただけでこうも自己を喪失するとは。
所詮、貴様らと我とでは平時より背負いしモノが違うのだ」
その影は………漆黒を纏った、亡霊のような――――女?
「アーチャー。 貴様にはセイバーのような猶予は与えぬ。
穢れた贋作はこの場で打ち捨てるに限る。 朽ち果てよ………永久に!」
埋没するアーチャーに対し手を翳し、再び王の蔵を起動させるギルガメッシュ。
弓兵の眼前に広がる真紅の射出口。
見据える一面を覆い尽くす宝具という名の凶器の群れ。
「……………」
だが――――吹き飛ばされて一歩引いたその地点から見据える弓兵の双眸。
鷹の目が映し出したのは目の前のゲートオブバビロンの脅威ではなかった。
それに気づけたのは深い深い思慮がアーチャーに齎した懐疑故。
英雄王が立つ場よりも更に、更に後方――――ギルガメッシュの死角。
全くの逆方向に突然にして発生する時空の歪み!
その歪みが巨大な孔となり――――同時、アーチャーの経験が特大の危険を彼に報せたのだ!!
「ちぃっ!!!!!」
その場を飛び退る弓兵。
「口ほどにも無いとはお前の事だぞアーチャー! 今更臆したところで―――」
――――王は気づかない。
普段であればその視野は全てを見透かす神の眼であろう。
だが、いかに王とて宿敵の弓兵相手では全霊にならざるを得なかったのだ。
ギルガメッシュが敵の後退を嘲笑い、赤き背中に宝具を降らせようと翻った、その時―――!
「――――――、!??」
気づいて振り向いた時には…………………もはや手遅れだった。
―――、、、、―――
英霊二人による殲滅戦は神域だった。
手に持つ戦力=「戦争」とまで比喩されたギルガメッシュと同等の手数を持つアーチャー。
王の財宝と無限の剣製の激突はもはや余人の手出しを許す域には無かった筈。
だが………だが、そんな英霊の戦いを嘲笑うかのように、天空よりも遥か彼方―――
虚空の狭間より降り注ぐ、巨大な、あまりにも巨大な…………
――― 落 雷 ! ―――
闇を纏ったような黒ずんだ紫色の稲妻――――
次元跳躍砲――――――THUNDER RAGE
赤と金色のサーヴァント二体を敢え無くあっさりと飲み込んだ暴威の雷が
審判の塔のような威容を以って…………フィールドに突き刺さったのである――――
前編終了です
規制さえ解ければ他の住人さんの手を煩わせる事も無いのですが……
ではまた
代理投下終了
ついにリリカル最強とも噂されるプレシア母さんが参戦してしまったか…
続き楽しみに待ってますぜ
代理乙!
復活おめでとう。ずっと待ってました
これまで一度に100レス以上あった投下が嘘のようにスリムになってますね
ギルに焦り?
何で生きてるのママン?
守護者補正付きアーチャーでも勝てそうにない我様パネェ
こちらではフェイトと弓が共同戦線?
シグナムにこの先出番は…果たしてどうなる?
久々で何かコメントに困るw
次回も楽しみにしています
リリブラの人と代理投下の人乙です
プレシア何故生きてるし。あれか、英霊にでもなったのか?
そもそもそれ言っちゃうと言峰が生きてるのもおかしいぞ
ディバイド・ゼロ
ディバイド・ゼロと冠された各種攻撃は、結合分断の力を自分の体表面だけでなく周囲にまで及ぼす特殊なもの。
この能力は、EC因子適合者の中でも特に「ゼロ因子適合者」と呼ばれる者にしか使えず、今の所トーマのみがそれに該当する。
その効果範囲内では、魔力は言うに及ばず、機械や人間の「動力エネルギー」や「生命活動」も、同類である適合者達の「リアクト」までも分断して停止させてしまう。
Forceのトーマの能力は何となく直死っぽい?
志貴と対比すると面白いかも
直死ってよりゲイジャルグじゃね?
テスト
44 :
len=111:2010/08/31(火) 21:31:05 ID:TTG9P7eY
#1
数日後の日本、冬木市
「お疲れ様でした」
「はい、おつかれさま」
アリシア・テスタロッサはアルバイト先を辞し家路についたところだった
亡き母と、生活の支援をしてくれていた神父の残してくれた生活費はあるが、
それに甘えるのは良くない、少しずつでも自立しなくてはいけないと
中学卒業を気にアルバイトを始めたが、高校生との二重生活はなかなか厳しい
いっそ中退して働くべきかとも考えたが、バイト先の皆や中学時代の担任にも異口同音に
「少なくても高校は出た方がいい」
と言われて思い直したものだ
自立するにも学歴が無ければままならないのだから仕方あるまい
「―――どうしたんですか先輩、こんなところで?」
「あ……」
ヴェルデの前を通りがかったところで難しい顔で考えて事をしている衛宮士郎を発見し、
先日と構図が逆だな、などと思いながら彼女は声をかけた
士郎によれば海外留学の下準備で渡英中の遠坂凛が自分に用事があるとのことで、
探していたらしい
「遠坂も一人暮らしで言峰が後見人だったからな、
その辺りで何かあったのかもしれない」
「そうなんですか?」
それなら帰国してからで十分ではなかろうか、
なぜ士郎に伝言を頼む必要があったのか
「あれ、
フェイトちゃん?!」
首を傾げたところで声をかけられそちらを振り返ると、
小首を傾げながら見慣れない女性がこちらに歩いてくるところだった
あれ? と苦笑しているところを見るとどうやら人違いだと途中で気づいたようだ
「ごめんね、
あんまり似てるから、知り合いと間違えちゃった」
「あ、いえ……」
気にしないでくださいと続けようとして、
今度はアリシアが目を丸くして隣のポスターと女性とを見比べる
どうしたのかと士郎もそちらに向き直り、ポスターを見て―――
「……なんでさ?」
二人がその事実に気づいたことを見て取って
えへへとどこか子供っぽい笑みを浮かべながら女性を胸を張った
「クリステラ・ソングスクール校長兼、クリステラソングス会長
フィアッセ・クリステラです、よろしくね」
「あ、は、はい、
アリシア・テスタロッサ、です」
「衛宮士郎です」
差し出された手を握り返す、
握りながらフィアッセは士郎の名をうれしそうに繰り返した
何でも子供の頃から交流のある父の友人と同じ名前なのだとか
「勘違いだったけど、なんだかうれしいな」
「そんなに似てるんですかその子?」
「うん、もうそっくり、
双子って言われても信じちゃうぐらい」
ポケットを探って写真を取り出す
翠屋という看板を掲げた店の前での記念撮影らしい
その中のちょうど士郎達と同年代と思われる何人かの中に、
確かにアリシアそっくりの少女が写っていた
写真の端に書かれた日付から一年ほど前のものの様だが、
コレで見分けろと言うのは確かに難しい
「これは……」
遠坂が彼女を確保しろと言ったのはコレと関係あるのだろうか?
口にしかけた疑問をかろうじて飲み込むと、士郎は視線を感じて後ろを振り返った
「先輩、どうしました?」
「其処の物陰に誰か居る、
―――おい、用があるなら出てきたらどうなんだ?」
アリシアに答えながら二人を背中に庇うようにしつつ声をかける
あまり友好的な雰囲気ではないのは夜という状況だけではないだろう
この距離で視線を感じるほどに悪意ある相手と考えた方がいいかもしれない
士郎の懸念通り、現れたのはいかにも何かありそうな揃いの黒スーツを着た
三人の男たちだった
「―――アリシア・テスタロッサだな?」
開口一番の威圧的な確認にアリシアが身をすくませる
こちらの声に姿を現した割りに士郎たちを無視したかの態度からして、
マトモな相手とは思えない
「なんだお前ら?」
後ろ手に二人を庇いつつ問いかける、
状況を飲み込めないながら、あまり良くないと理解できたのか、
フィアッセがアリシアを抱き寄せるようにして後ろに下がった
「我々は当局のものだ
―――十年程前、そいつの母親は凶悪事件を起こして逃亡中でな
そいつ自身も不法滞在者という訳だ」
「証拠はあるのか?」
びくりと肩を震わせるのを感じながら
士郎は男たちの説明が不十分だと感じて言い返した
「部外者にこれ以上の説明が必要か?」
「当たり前だろ、
お前らの説明だけじゃ詐欺師と替わらないぞ」
仮に不法滞在者というのが事実だとしても、それはまず日本の警察や裁判所の仕事である
流暢に日本語を話しているが、どう見ても彼らが日本の司法組織の人間には見えない
そもそも当局とはなんのことかという説明が何も無いのだから、
これで彼らを信じろと言うのが無理な話である
「あなた方の言う凶悪事件というのは
『プレシア・テスタロッサ事件』のことですか?」
「―――あ、あぁそうだ」
士郎が男達と睨み合う中、
アリシアを抱き寄せた姿勢で事の成り行きを見守っていたフィアッセが口を開いた
「知ってるのか?」
聞き覚えの無い事件の名前に士郎が問う、
男たちの反応とアリシアの驚いた顔から、
プレシア・テスタロッサと言うのが彼女の母親のことなのは間違いないようだ
頷いて、一度アリシアに微笑みかけてから、
フィアッセは懐から携帯電話を取り出した
「この携帯には、貴方達が言うところの『当局』の偉い人の番号が登録されています」
フィアッセの物言いに全員が困惑する、普通であれば一笑に付すべき所だが、
『プレシア・テスタロッサ事件』の名を彼女が口にしたことで、
一気に信憑性を帯びてしまった為である
「馬鹿を言うな!」
「そう思うなら、試してみましょうか?」
困惑から、立ち直ってフィアッセの言葉を否定する男に対し、
彼女が携帯のアドレス帳をスクロールさせながら答える
その指が発信ボタンに掛かるのと、
男の一人が懐から金属製のカードを取り出すのとはほぼ同時だった
「動くな」
言いながらカードを構えた男の手元で、カードが一杖の杖に変化する、
他の男たちも舌打ちしながら同様に杖を取り出すと、
足元に幾何学模様を浮かび上がらせた
「魔導師……」
アリシアが震える声でそう言い、躯をこわばらせる
見たところ銃器には見えないが、
士郎達に対し、男たちが実力行使に出ようとしているのは確かだった
―――やるしか、ないか
一般人の前で使うべきではないのだが、二人を傷つけるわけにはいかない
躯の内側、魂に仕掛けられた撃鉄を一つたたき起こす
「動くなといった!」
踏み出そうとした士郎の動きに男の一人が威嚇のため光弾を撃つ
それに対し、かざした右手に白い短剣を構えると、士郎はそれを叩き落した
切っ先が衝撃でひび割れ、白い剣―――陰険莫耶が霧散する、
「逃げろ!」
「うん!」
士郎の言葉に頷くと、フィアッセが強引にアリシアの手を取り走り出す
こういう状況に慣れているのか、士郎を信用してなのか、
フィアッセの動きには迷いが無かった
「追え!」
男の一人がそう言いながら光弾を数発ばら撒くように発射する
横っ飛びに転がってそれをかわすと、撃鉄をもう一つたたき起こす
「投影、開始」
立ち上がり様両手に双剣を投影し、追いかけようとする男達に投げつける
片方はまっすぐに飛んで一人を直撃し、もう片方は男の張った障壁に受け止められた
「小僧、ふざけやがっ―――」
障壁で受け止めた男が反撃に出る前に踏み込むと、
解いた瞬間に顔面に強化をかけた学生鞄を叩き込む
鼻の骨が折れたのか鈍い手ごたえを感じたが、
先に手を出したそちらが悪い、と開き直ると
士郎は男の取り落とした杖を拾い上げ、悶絶する二人を殴り倒した
「まだやるか、
言っとくけどこっちも容赦しないぞ」
杖の構造を解析しながら残った一人に警告する
電子機器に近いが、打突には十分に使えるのは見ての通り、
安定性で多少不安のある投影よりは手ごろな得物だろう
「ちぃ―――」
舌打ちして、歯軋りしながら残った一人が逃げ出す
倒れた二人は捨て置くつもりらしいなと思いながら、士郎は息を吐いた
サーヴァントのような出鱈目さや言峰のような実戦慣れしたもの特有の威圧感
そういったものは感じられなかった
暴力を振るう経験はあっても反撃を受けたことはあまり無いのかもしれない
手ごたえの無さにそんなことを考えた瞬間だった、
男の逃げ去った方向から青白い魔力光が瞬き何かが空に舞い上がった
「何だ―――?」
疑問を口にしながらも踵を返す、
逃げ去った方向から来た光である以上先ほどの逃げた男がなにかしたのは間違いない
つまり―――逃げたのはフェイントという訳である
飛んでいく方角からして未遠川の方である
おそらくフィアッセたちもあちらの方角に逃げたのだろう
こうしてはいられない、
光の飛び去った方に向けて、士郎もまた走り出した
今回は以上です
代理投下終了
名前欄のタイトルミス失礼
クッキー登録所のエラーの模様です
代理投下開始します
第3話『秘剣、燕返し』
母なる大地、地球。その大地の片隅にある寺の山には、願えば叶う温泉が湧いている。
忘れた頃になって、いつのまにか出現する神の御業である。
七天にも届くであろう魔力を抱えた湯を『ヴァルハラ温泉』といい、その威容は、かの聖杯になぞらえられた。
霊長を救うためにこそ生まれた杯(さかづき)は、皮肉にも人々の激しい争いを呼んだ。
この戦いこそ『聖杯戦争』。
最小にして最大の戦争である。
殺戮者が、軍隊が、悪神が戦いに引き寄せられ、それら達も無残に敗れる程の戦闘。
温泉の加護を担う星神は、ようやく惨状に気がついた。
そして御言を発した。
「花札で、おk」
これが、みんな大好き『花札戦争』、いわゆる『聖杯戦争』の起源である。
そして、育児放棄者『言峰綺礼』はこう言った。
「奇跡を欲するならば、汝。最強を証明せよ」
湧き出した温泉は、十分な数の敗者を数えた後に出現し、一番湯にのみ魔力を宿す。
願いを叶えるのは、たった一組なのだ。
かくて今回も、聖杯戦争の幕が上がった。
『間桐慎二』に敗北した『高町なのは』は、黄金の少年と出会った。
管理者の一人である彼から得られたものは、逆境と、一筋の希望。
『宝具』に目覚めたインテリジェント・デバイスを手に、少女は必勝を誓う。
しかし、魔女の一手が、もう目の前に迫っていたのだった。
+ + + + + + + + + + + +
秘剣、―――――燕返し。
空を自在に舞うツバメをも切り落とすと云われる、剣豪・佐々木小次郎の魔剣技である。
架空の剣士、架空の奥義ともされる伝説だが、それを可能とする者がいた。
彼こそ、『佐々木小次郎』なるサーヴァントであり、生前は津田の小次郎と呼ばれた人間である。
いったい、燕返しとはどのような技なのか。
「燕返しを再現できる」という一点で『佐々木小次郎』となった男が言う事には、ツバメを刀で斬ることは誰にも不可能だという。
曰く、奴らは風を読む。
曰く、奴らは風に乗る。
即ち、如何に疾き剣であろうとも、斬ることはできぬ。
―――――では、どうやって斬るというのであろう。
風より疾き一閃?そんなモノは最初の初めから避けられた。
男の刃の切先は、音そのものを亀と呼ぶほどに速い。
しかし、切先が届く頃には、ツバメは音斬りの太刀が生まれる前の風に乗り、遥か先に進んでいる。
考え抜いた末に、男は燕が舞うべき空そのものを切ることにした。
一つ、二つの太刀筋でツバメを囲い、三の太刀で仕留める。
そうと決めた男は、ひたすらに剣を振り、後の太刀が先の太刀を追い越すかのような斬り返しを求めた。
やがて、三の太刀が一の太刀に追い付いた時、ツバメに刃が届くのであった。
それが小次郎という男が、人間五十年の歳月で成し遂げた唯一つの偉業であり、誰も知ることのないはずの伝説であった。
小次郎にしてみれば、一回、二回、三回と連続して刀を振っているのみであるが、傍から見れば「全く同時」に三つの太刀が現れる魔法の剣。
何故そんなことが可能かと彼に訊けば、「五十年も刀を振っていれば誰でもできる」「疾く剣を振るのだ」とでも言うだろう。
――――それは違う。
魔剣を成立させるのは、同じ型なら出来るような『技術』でも、速ければ出来るような『速度』でもないのだ。
強いていうなら、『彼が成した神秘』と言う他にあるまい。
さて、そんな幻の剣技を持った男が、聖杯戦争に呼び出されどうしているか。
その様子を観てみよう。
+ + + + + + + + + + + +
「働きたくないでござる!絶対に働きたくないでござる!」
「いいから!さっさとお聴きなさい!」
冬木市は円蔵山、その山頂に位置する柳洞寺の敷居には、修業を行う坊主達が居た。
静謐を良しとする山寺の朝、そんな風景に似つかわしくない大声を上げているのは、藍色の陣羽織に身を包んだ侍と、彼の耳を引っ張っている魔女だった。
彼らもまた、聖杯戦争に呼び出されたサーヴァント。
ただし、青年の方は、自身もサーヴァントである魔女(キャスター)によって反則召喚された『サーヴァントのサーヴァント』である。
当然、召喚した魔女はサーヴァントの身でありながら召喚者でもあり、青年、つまり『佐々木小次郎』は魔女に従属を強いられる立場にあった。
「花札など知らん!仕合いをさせよ!でなければ構うな!酒を寄越せ!」
小次郎は、一つに括った長い髪を振り回しながら、イヤンイヤンと暴れていた。
こんな騒ぎが起これば、坊主達も何かと思って女を止めに入るのではないかと、淡い希望を青年は描いたが、魔女はとっくに隠匿魔術を発している。
逃げ場はない。
「……そう。それなら、いいわ。アサシン」
「――――【潰れよ】」
「っ………」
―――ゴフリ、と。
女が小さく呟いた瞬間、青年(アサシン)は鮮血を口の端から垂らす。
古代ギリシャの伝説の魔女『メディア』の神言魔術が、アサシンの内を潰したのだ。
静かに痛みに耐える男に、マスターたる魔女は、重ねて命令する。
「次にゴタゴタと口答えをするならば、―――男としての尊厳を奪います」
「 ! ? 」
その宣告に、今度こそアサシンは言葉を失い、恐怖に慄いて大人しくなった。
「いいかしら。私には貴方ごときの我侭に付き合っている暇はないの」
「昨日の時点で発生した大規模な魔術―――まず、間違いなく探査―――、の行使者を特定したわ」
「貴方達には、今から、その相手の偵察にいってもらいます」
「また、『マスター』と共に、か?」
「ええ、彼と共にお行きなさい」
「………これまでの戦いで、私の令呪の残りはない。よいのか?」
アサシンは、柳洞寺の山門に居座る門番役として、あるいは魔女の尖兵として十を超える勝負を行ってきた。
門番時では彼自身の天性の勘に、攻めこむ際には優秀な参謀である相方に助けられて勝ち越してきたが、必然的に勝ちばかりというわけにもいかず、ギリギリ瀬戸際の立場にある。
ここで敗れれば、聖杯出現の肥やしとして二度目の生を終えるだろう。
「ええ、構わない」
「……………」
権謀術数のサーヴァントであるキャスターが、ここで自分という手札を手放しかねない行動に出るならば、何らかの理由があるはずである。
と思いたいものだが。
「(だが、私には関係ない)」
「さて」
「…………いくか」
こうして、剣豪『佐々木小次郎』は、花札をするために山を下るのであった。
門の傍で待っている、相方の参謀、キャスターにより令呪を宿された少年と共に。
+ + + + + + + + + + + +
「宗一郎兄は、女性に甘くすぎるのではないか?」
「しかり」
「花札戦争に参加するというから手伝っているが、メディアさんを守るために、我々がいったいどれだけ厳しい相手ばかりに戦いをしているのかを、知っておられるのであろうか?」
「ふむ、言われねば知らぬ、であろう。あれはそういう男だ、一成」
「せめて、メディアさんの方から、我々の苦労を、少しでも伝えてくれれば報われるというものなのだが……」
「はっはっは。それは無理であろう」
「かの雌狐も宗一郎の前では骨抜きの女よ」
「我らのことなど頭の隅にも残っておるまい」
「そのような詮無いことより、参謀殿には今回の相手の話を聞かせていただこう」
「む、……喝。たしかに詮無いことであった」
冬木の街を二人組が歩いていた。
一人はアサシン・佐々木小次郎その人であり、もう一人は柳洞寺の次男坊こと柳洞一成である。
一成は、聖杯戦争に参加するという葛木宗一郎、柳洞寺に居候しているキャスターのマスターの助けとなろうと、度々アサシンと組んでは花札勝負に精を出していた。
小次郎は、聖杯の補助によりルールこそ知っているものの、花札勝負の経験などないに等しかった。
そんな彼に付き合って、花札勝負を練習したのも、一成の良い思い出である。
根が真面目で規律を重んじる一成と、他人事など気にも掛けない小次郎、こう言うと相性の悪そうな二人だが、意外なことに馬が合った。
初めは、魔女の意向で組まされたペアかもしれないが、聖杯戦争という戦いを通じて、二人は無二の相棒同士となったのだ。
現に小次郎は、一成を苦境から救うためなら、自身の得物である物干し竿を折ることだってできるだろう(もっとも、折った剣すら振るえず、野垂れ死ぬのは御免こうむるが)。
小次郎が信頼する参謀に今回の対戦相手の情報を求めたことに応じ、一成はキャスターに示された獲物の情報を述べていく。
「我々が狙うのは、『高町なのは』という名前の女人だ」
「なんでも強力な魔術師という者らしいのだが、サーヴァントを連れている様子がないらしい」
「だが、メディアさんによれば、そんなことがあり得るほど聖杯戦争は甘くはない」
「おそらく、何らかの隠し玉を持っている…………。ゆえに、早々に叩き、あわよくば隠し玉の情報を得ておくわけだ」
「なるほど。して、戦法は?」
「不明だ。だが、何としても勝つ。そこで、」
「「先手を獲る」のだな」
花札は自分の手番においてしか『あがる』ことができない。
また、『あがる』ための『役』を作る持ち札を得るのも、自らの手番である。
その為、手番が多く回りやすい先手、いわゆる『親』が非常に有利となる。
よって、この『親』になるための駆け引きが存在する。
一つ、役を成した後に上がった者が次の『親』となる。
二つ、対戦する両者が役を作って上がれない(互いの手札7枚が尽きた)ときに交代する。
これらのルールがあることで、プレイヤーは小さな役に満足してでも親を維持していく戦術が成立するのだ。
「しかしながら、小次郎殿の『気配遮断』は便利なものよ」
「うむ。千里の先を見通すという魔術も透かして見せようぞ」
しかし、先程の二人の言葉は、そういう意味ではない。
聖杯戦争に則った特別ルールを利用しての作戦。彼らの常套手段であった。
通常の花札では、一番最初の『親』を公平な方法で決定する。
札を引いたり、あるいはジャンケンでも良い。
だが、聖杯戦争は違う。
敵のマスターを先に見つけた者が、『親』を決定する――――すなわち、『親』となることができる。
例外として、両者とも気がつかないまま接近した場合、星神の意によって決まる。
当然、一成はこれに目を付けた。
初めに、キャスターにより敵の位置の絞り込みを行い、対象からやや離れた位置を確保する。
次に、気配遮断のスキルを持つ小次郎を張り付かせ、令呪の交感を利用して、任意のタイミングで相手に襲いかかる(?)のだ。
相手の隙が見えないなら、小次郎がいきなり気配遮断を解くことで、無理やりに隙を作る。
二人はこの作戦によって、ほぼ全ての勝負で先手の『親』を獲得してきた。
ゆえに、今回の相手も、彼らに先手を打たれるのは間違いないだろう。
「自分にも、坊主の卵として気配遮断のような芸があれば……今回のような話は最後まで無かったかもしれない」
「そうすれば、もっと興味深い話が貴方から聞けただろうに」
「気にするな。我々は、その最後という時まで勝ち抜けばよいのだ」
「…………喝」
「確かに。勝てばいい」
「そうだろう?」
「ああ」
「っと、そろそろ会敵しそうな位置まで来てしまったな………」
二人が目指すカフェテラス。
それは、すぐそこにあった。
「では、行ってこようぞ、一成」
小次郎に任せ、物陰で待つ一成。
傍目には、夏の暑さに涼を求めた一般人にしか見えなかった。
+ + + + + + + + + + + +
アサシンは、空調の効いたカフェの店内に入っていった。
「なかなかに快適である。クーラーの神秘なるかな」
店員に呼び止められることも、他の誰の眼差しを集めることもなく、陣羽織に構えたサムラーイが進んでいく。
ジューサーに近寄って、蜜柑汁の甘露を用意し、ゴクゴクと喉を潤しながら周りを見渡す。
アサシンの目に、若者の集団が見つかった。女2人に童が男女で一人ずつ。
年長の女と競うかのようなスピードでミートボール・スパゲッチィを掻き込んでいる赤毛の少年に音も無く近付く。
すかさず、少年の皿上の肉を、神速の手捌きで摘まみ食いする。
ついでに、いくつかの肉団子を、競争相手の青髪少女の皿に転がしておく。
「ほほ、ひひはひ(おお、美味なり)」
こんな感じに現代を楽しみながら、店内を回っていくアサシン。
最初に入店してから5分が経過しようとしていた。
+ + + + + + + + + + + +
「!!」
「(オカシイ。オカシイぞ一成殿!)」
確かに、おかしい。
アサシンは店内を一周したが、聖杯戦争に参加したマスターらしき気配を全く感じなかった。
なにか、大きな間違いを犯した。
そんな予感が、アサシンの脳裏から離れない。
「くっ―――まさか―――――」
――――瞬間、音が消えた―――。
巨大な結界が発生。
アサシンを取り込んで、衆合の喧騒から分離させたのだ。
「ぬかった……すまぬ!」
小次郎は、ガラスを割って店から飛び出ると、結界の発生源へ走り出した。
+ + + + + + + + + + + +
オフィスビルの陰に立って、小次郎からの反応を待っていたマスター・柳洞一成。
その頭上から、より濃い影が差した。
そして、一成が頭上を見上げるより一拍早く、花札勝負の結界が発生した。
参加者と、彼らのサーヴァントを包こむよう、急激に膨張して世界を切り取る。
一成は思わず口を開けた。
「―――しまっ」
彼を見下ろすのは、彼女。
白い戦闘服に桃色の魔力を備えた、高町なのは。
一成とアサシンの標的の少女だった。
「見つけたよ!参加者さん!」
「―――――――――(縞!!!!)」
硬直する一成の前に魔術師が、いや、魔法少女が降り立つ。
一成は指一本も動けずにいた。
アサシンの令呪へ彼の緊張が伝わった時、その前から駈け出してきたアサシンが追い付いた時、その後の数秒、ずっと動けなかった。
策が破れた動揺などではない。
ただ―――、その光景に心を奪われていた。
「私は高町なのは」
「さあ……勝負!」
「―――どうやら、聖杯によれば、私が『親』になれるみたいだね」
「ふぅ。こうなっては仕方あるまいな、一成?」
勝負が開始するその時にも、一成は一言を出すのが精一杯であった。
「……美しい」
一成は、心奪われていた。
+ + + + + + + + + + + +
+ + + + + + + + + + + +
全力全開!粉砕!玉砕!大喝采!チーム
高町なのは MP:5/20
『魔導師の杖・昂翼』(レイジングハート・エクセリオン)
消費MP:5 開始1ターン目のみ使用可能。
使用した勝負でアガると、ダメージが+1〜2文強化される。
こいこいする毎に、強化の最大値が+1文上昇する。
+ + + + + + + + + + + +
ボーズ・ミーツ・サムライ チーム
アサシン:佐々木小次郎 MP:0/3
+ + + + + + + + + + + +
+ + + + + + + + + + + +
なのはにとっては幸運だった。
ギル君との会話後、カフェを出て魔力サーチを行ったところ、微弱な反応が近くに迫っている事に気が付いたのだ。
すかさず、店の裏で偽装用魔法をレイジングハートから発動した なのはは、マスターと思われる少年を特定し、ビルディングの隙間から空へと一時避難した。
もっとも、なのはは単純な魔力運用ならともかく、「便利」な魔法がそれほど得意ではない。
よって、偽装用魔法は最も簡単なものを使用した。
この魔法は必要魔力と簡易さが異様に優れるため、ミッド人なら誰もが使用できる。
しかし、唯一にして最大の欠点があるため、ミッドチルダでは子供騙し扱いされていた。
ここが地球ゆえに助かった。
これもエースの幸運というやつだろう。
街を行き交う人々の視界には、上空へ飛び上がるダンボールが存在したはずだが、気にする者はいなかったのだから。
+ + + + + + + + + + + +
「私のターン!カートリッジロード!」
―――魔導師の杖(レイジングハート)―――――昂翼(エクセリオン)―――
マガジンから送られた魔力が炸裂し、なのはの威圧が一段と強くなった。
その姿と魔力は、翼を昂ぶらせた天使の威容にも見える。
「フルドライブでいくよっ!レイジングハート!」
《マスター……》
「大丈夫!今は、エクシード、いらない、操れる!」
段階的なセーフティを設けたエクシードモードと異なり、旧来のフルドライブそのままエクセリオンモードは負荷が大きく、その濫用が、なのはが重症を負った原因の一つでもある。
それなのに、レイジングハートのマスターは、いつも以上に涼しい顔をしている。
余裕すら感じられる様子は、自己ブーストたるフルドライブの負荷が存在しないかのようだ。
レイジングハートがチェックしたバイタル・データにも、あり得ないほどに乱れがない。
おそらく、聖杯の補助とやらが働いているのだろう。
「手札から『桜のカス』を場の『桜に幕』のコウ札に合わせ、ドロー!」
《山札から1枚引きます》
「山札から『菊に盃』、場の『菊に青短』と合わせます!」
《トランプのスーツにあたる、札の『花』が合ったことで、これら2組4枚を持ち札に》
「『桜に幕』、『菊に盃』から、役『花見酒』が成立!」 役ダメージ:3文
「加えて、『こいこい』!!」
レイジングハートの先端に魔力光が収束し、球体を形成していく。
美しい桜の魔法陣が広がり、濃密な魔力が蜃気楼を発生させた。
「これは……これは」
「どうやら今度の的(てき)は燕の早さは持っているようだ。一成?」
アサシンは、一成に視線を向けた。
「…………」
侍の傍に控えるマスターは沈黙を保っていた。
ただ、両目はいっそう見開かれ、汗を垂れるままにしている。
「一成?」
「………………(うつくしい…………)」
返事はない。
仕方がないので、小次郎は自分のターンを進めた。
「………………私の番だな」
ピッ、と。小次郎が物干し竿を抜き放ち、五尺の長さを片手で振るう。
瞬間。手札と山札から1枚ずつ、場札に萩(はぎ)と柳の二つ組みが揃っていた。
両方、カスと短冊である。
「わ!すごい……」
《……背中の長刀を抜き、一動作で札を揃えたようです》
《見事な技ですが、武具として無駄な長さと使用法かと》
「ふふ、秘剣・林檎颪(りんごおろし)とでも言おうか」
「今なら、梨も剥けるぞ?」
技の冴えも見事ながら、一瞬で引いた札を判別した視力も異常である。
また、軌跡も見せぬ太刀筋は、不可視であるに関わらず、剣士でない者も魅了する美しさがあった。
「そら、次はそなたの手番よ」
なのはは、魔力を収束させたまま、レイジングハートを握り直した。
この男に手加減はいらない、宝具の全力全開をぶつけるべき敵であると判断したのだ。
実質的には何の意味もない小次郎の行動だが、花札勝負とはいえ、なのはの魔力を前にして此れほどまでに自然体な人間などいなかった。
余裕を以て“対処した”先達たちなら存在したが、ここまで目の前の魔力を気にしていないというのは有り得ない。
それが、なのはの更なる本気を引き出した。
「私のターン、さらにカートリッジロード!!」
《私の効果を、『こいこい』により強化します》
そのまま、
「場に芒(ススキ)を出して、ドロー!します!」
「『芒に月』!さっきの持ち札『菊に盃』と合わせて、『月見酒』成立!」 役ダメージ:3文
《合計した役のダメージは6文になります》
「ぬぅぅ」
「なんたる強運…………」
「………………(ぴんく……であった)」
人間大だった魔力の光球が、大きく膨張していく。
1番目の勝負で既に、12文のライフの半分。
ここまで勢いを持って行かれることは、予想外のアサシンチームであった。
しかも、成立しやすい『盃』を用いた速攻では、佐々木小次郎の心眼が働く暇もない。
如何に明鏡止水の心であってもお手上げである。
「まいったまいった。見事なり」
「しめて6文、そして次の『親』もおぬしだ」
こうなっては、次の勝負以降で挽回するしかない。
が、参謀殿の様子がおかしい。
最後の勝負なら派手にいきたいが、一成の復活にはしばらく掛かりそうだ。
小次郎は目を伏せ、ため息をつこうとした。
「まだ終わりじゃないよ」
《次は貴方がたのターンです》
「『こいこい』します!」
さらにビッグとなる魔力光。
「え?」
びっくりする小次郎。
「…………ハッ、私としたことが、いったい」
目を覚ます一成。
「次のターンで、『三光』、します」
宣告する少女。
《私達が勝つでしょう》
宣言するデバイス。
…………………
……………
……
…
+ + + + + + + + + + + +
その後は語るまでもないだろう。
『花見酒』『月見酒』『三光』が揃えば、3・3・5の11文となる。
「11文なら1文残る。小次郎殿!」
「嫌な予感がするのだがなぁ」
そして、
「宝具『魔導師の杖・昂翼』!により、追加ダメージをシュート!」
《こいこい2回で、4文までのランダムダメージを付加させていただきます》
こうして、
「ディバイーン―――――――――――」
「―――――――――――――バスター!!!!」
追加ダメージは4文を示す。
合計15文による一撃。
なのはは、圧勝した。
+ + + + + + + + + + + +
「あれは……………ナノハ?」
+ + + + + + + + + + + +
魔導師が放った砲撃魔法は、結界を越えて、丘を掠めて空に消えた。
その、一瞬の光を捉えた者は多くない。
だが、その中に存在した。
桃色の砲撃を知る者が。
彼は高層ビルの上に立っていた。
長い金髪と黒いマントが風に揺れ、美貌は汗ひとつ流していない。
手には黒い戦斧を持っていた。
身体全体のシルエットは優美だが、無骨な凶器が戦いに生きる者であることを匂わせる。
「…………彼女なら、『バルディッシュ・アサルト』の力を確かめられるかもしれない」
遥か下界では、結界が解かれ、『エース』と対戦したマスターの姿が現れた。
そこにはサーヴァントの影はない。
「…………しばらく、様子を見ていよう」
屋上からならば、彼は飛んで逃げることも可能である。
会話するにせよ戦うにせよ、相手が一人になってからの方が都合がいい。
赤い瞳が、じっとエースを捉えていた。
第4話『襲来、閃光の戦斧』につづく
+ + + + + + + + + + + +
ボーズ・ミーツ・サムライ チーム
アサシン:佐々木小次郎 MP:0/3
『燕返し』
消費MP:3 自ターン開始時に使用可能。
相手の役「タネ」「猪鹿蝶」を無効にする。
今回は以上です
遅れてすいませんでした
ところで、花札勝負の内容は、自分の技量では非常に難しいのですよ
半ば運に任せて、ペしぺし捲ってるだけですからね
萩とか芒とか言われても、訳がわからない
技量さえあれば済む問題ですが、自分では無理です
そこで次話からは、さらにイメージ映像変換してお送りいたします
書き込めるか
au王
あ、なんか規制解除されてる!
というわけで避難所にリリブラの人が投下あったので、代理投下してみる。
十分くらいから。
前回は代理の方ありがとうございます。
そして、もう一ヶ月近くも規制に巻き込まれているので
今回もこちらへ投下します。
ギルVSプレシアに行く前に、前置きでなのはさんと青子さんのお話を挟みます
小高い山を少し越えた平野――――
「さて、何を見せてくれるのやら。 素手で熊とでも戦うのかね?」
「いや、それは流石に出来ない……」
見晴らしの良い一面の空を見上げながら魔法使いが二人、言葉を交わす。
「アナタならそのくらいやりかねん。 それとも、まさか人をここまで引っ張って来といて綾取りでも見せようっての?」
「うう……何かみるみるハードルが上がっている気がするよ」
「つまらなかったら即、帰るからよろしくー」
腕を組んで木陰に寄りかかりながら高町なのはを囃す蒼崎青子。
だが、ここまで来たら体当たり。 いつも通り、全力で言いたい事を伝えるだけだ。
桃色の尾を引いて今――――――魔導士が飛び立った!
――――――
――――――時は一刻ほど前に遡る
「うおっ! マジでかわいいじゃないの」
携帯電話の画像フォルダ内に保存されていた一枚の写真。
そこに写っている少女を見て、青子は感嘆の呻きを漏らした。
それを受けて満面の笑みを称えながら頷くのは高町なのは。
少女を褒められた事が本当に、自身の事のように嬉しいのだろう。
「うん……名前はヴィヴィオ。 高町ヴィヴィオ」
「…………………富士重工製の何かか?」
「違うってば……」
軽い溜息を付いて、なのはは同居人のボケを相殺する。
この手の突っ込みは故郷の家族や友人達からも散々受けている。 もはや今更だ。
「いや何にしてもさ……私は母親なんて一生縁が無いと思っているけれど
アナタに先を越されてるという事実は悔しい。 よしレン、今日から私の事は青子ママと」
「―――死ねば?」
「反抗期か……傷つくわー」
大仰に手を挙げて被りを振る青子に、魔導士は「たはは…」と苦笑を浮かべる。
だが次いで思いついたように、なのははつっけんどんな少女に目線を合わせて、中腰で言葉をかける。
「初めに青子さんじゃハードル高すぎたのかも……
練習してみようか。 試しになのはママって呼んでみて」
「お前、今失礼な事言ったよね?」
「じょ、冗談じゃないわ……お断りよ」
鼻を鳴らしてそっぽを剥く少女であったが、目の前の女から何か異様な雰囲気を感じてハっとなる。
眼前の人間の目が心なしか非常にリリカルな輝きを放っているのだ……鼻息も荒い。
「何事もチャレンジチャレンジ! さあ……!」
「な、なのは……………マ、マ」
100年級の使い魔をして圧殺せんほどのプレッシャーを受け、反射的に言葉を漏らしてしまうレン。
「〜〜〜〜〜〜〜!」
「キャーーーーーーーーーーーーー!!!!???」
しかして――――上気して赤くなった顔を擦り付けながら、絞め殺さんばかりに白い少女をハグするなのはさん。
夢魔の絶叫が―――――――小屋内部に響き渡った。
――――――
「人の使い魔に何やってんだコラ」
「いや、つい……」
世界の終わりを感じさせる恐慌を身に帯びて一目散に逃げてしまった少女。 その背中を物惜しげに見つめる一児の母である。
彼女の声はとにかく愛しの娘ヴィヴィオに似ていて、特に先ほどの「なのはママ」はヤバ過ぎた。 100万ボルトの電気ショックに匹敵した。
「欲求不満かね? あんな不意打ちじゃなくて直接言ってやればガッポリ吸って貰えるのに」
「そういうのじゃないから……」
とまあ、前途多難な日常を思わせない和やかな昼下がりである。
談笑する二人の魔法使い。
同居生活も一ヶ月を過ぎ、だいぶ体にも馴染んで来た感がある。
(……………………)
だが―――なのはの胸の内には、とある秘めた思惑があった。
自分は任務中に行方をくらませた遭難者なのだ。
そう、責任感のある彼女は、現状の馴染んでしまっている自分に対する危機感が常に先立っていた。
こんな所でくつろいでいてどうする? いつまでもふざけている場合ではないだろうという焦り。
付近の調査は続けているが悉く空振り、仲間とは相変わらず音信不通。
ならば今、少なからずやれる事は何か? 一つ一つでも片していける物はないのか?
そう思い煩っていた高町なのはは故に今日―――今日こそは大事な話を同居人としなければならない。
気難しい魔法使いの女性は、なのはにとって何処にスイッチがあるか分からない爆弾のようなものだ。
柔らかい笑みを灯している魔導士だったが、実はその表情に先ほどから緊張を称えているのもそのためだった。
「ところで青子さん、あとで時間を作れないかな? 一手だけ、胸を借りたいのだけれど……」
「またその話? 断る。 だるい」
彼女と同居を始めてから一ヶ月、模擬戦の申し込みは今日もあっさりと断られる。
でもあきらめるわけにはいかない。 教導官はあくまでも食い下がっていく。
「そんな事言わないで……異なる体系の使い手同士、お互いのレベルアップにも繋がると思うよ」
「キョーミないわね」
「なら、見学だけでも……まずは私が一人でトライアルをやって見せるから。
とにかく青子さんもたまには体を動かさないと」
まずはどうにかして壁を壊していかなくては話にならない。
これなら展開によっては軽い手合わせ、という流れに持っていけるかも知れない。
そうして渋る青子を半ば引きずるように、なのはは外に連れ出した。
魔法使い達の教練は―――――こうして始まる。
――――――
「ええいっっっ!」
<Nice. Good shoot>
なのは自らが朝早くから準備していた特設コースにて、トラアルは既に始まっていた。
基本に忠実なマニューバから、飛行しながらの射撃を行う空戦魔導士特有の演習だ。
あらかじめ設置していたオートスフィアを仮想敵に、空のエースがその力を存分に発揮する。
異世界の魔法使いの目に自分の戦技はどう移るのだろう?
あれほどの使い手を満足させる技を見せる事が出来るのだろうか?
久しくなかった緊張は程よい高揚感となって、なのはの翼に躍動を与える。 それは武道の演舞の如し。
形だけを真似て行う未熟者のそれとは一線を画し、真に極めたものの気迫、闘気の篭った演舞は見る者の魂を震わせる。
古来より技を極めたものの術技は武道というより武「芸」として人々の胸を打ち、芸術として扱われて来た。
空戦における戦技もまた多聞に漏れるものではなく、空を舞う高町なのははまさに艶やかに咲き誇る一輪の花を思わせる。
(体は動く……良い感じ!)
決して器用では無い彼女が蒼崎青子に向けた、それは同盟の証でもあり
自身を超える術技を有した相手に対する挑戦状でもある。
そんなメッセージを技に込めつつ、彼女は大空を舞い続けるのだ。
トライアルも早くも中盤を過ぎ―――――
ミッドチルダの魔導士ならば一度は見たいと泣いて懇願する、エースオブエースの全力全開。
視界を覆うほどの魔弾の嵐が大空に飛び交い、重低音と空を切り裂くカン高い音が同時に大地を、鼓膜を叩き続ける。
凄まじい光景だ………これは人間一人が起こし得る現象を明らかに超えているといって良い。
だが、しかし……………
そんななのはが、今まさにメッセージを宛てている相手をチラっと見て―――
上げたテンションが行き場を失う羽目になる。
「………………ポテトチップス……」
カルビー銘菓のスナック菓子の名前をポツリと呟いたなのはさん。
そう、当のミスブルーは頭上に展開された華麗な技など興味ないとばかりに週刊誌を広げ
バリバリと暢気にスナックを頬ばる音を―――木陰の清涼とした空気に響かせていやがったのだった。
――――――
<Master!>
「きゃっ!?」
遺憾の念から言葉に詰まり、思考が凍った一瞬―――
空戦トライアルはその一瞬の油断が明暗を分ける。
危うく設置したスフィアに直撃しそうになったなのはが、寸でのところで挙動を建て直す。
修正する白き翼が桃色の魔力光を場に散らす様は、突如として乱れた彼女の思考を体現するかのよう。
全く関心を持っていない? 心に響いていない?
自分のトライアルは彼女にとってそんなに程度の低い、関心を示す価値もないものなのか?
「レイジングハート……本気出すよ。 なんとしても振り向かせてやる!」
戦場で刃を交し合う以外の戦いもある。
自身の演舞が相手の心を震わせるか否かを賭けた、これもまた紛う事なき戦いだ。
基本を踏襲した堅実な舞いが、荒々しく変化する。
ギリギリを通す攻防の見切り、高速で最短距離をカットする大胆なライン取り。
空気が変わる………なのはが――――――本気になった!
ピンク色のスフィアを周囲に纏いて空を駆ける彼女の様は、舞い散る桜の花びらを遊ばせる天女のようだ。
気は昂ぶっていても一糸乱れぬ挙動は美の極致。 流石としか言いようが無い。
あくまで優雅さはそのままに舞踏は戦舞となり、空に描く激しいリズムはロックバンドのドラムの激しさそのもの。
「仕上げ! おっきいの!」
アクセルシューターで全ての仮想敵スフィアを打ち抜きながら、なのはは規定位置に設けられた着地地点に舞い降りた。
勢い良くドズン!と地面に亀裂を作り、滑るように接地しつつ、設けてあったポイントに数分違わず降り立つ。
そしてレイジングハートを正面の山に向けると、標準を合わせた紅玉の杖の先端が集束された光の束を造り上げていく。
「スターライト……………!」
タイムロスはほとんど無し。
接地時の激しい衝撃の中で微塵も乱れぬ魔法詠唱。
ほぼ完璧なパフォーマンスを披露したエースの、最後の仕上げは当然これだ!
「ブレイカァァァァーーーーッッッ!!!!!」
彼女が得意の集束砲を今―――眼前の対象に叩き込んだ!!
――――――
華奢な女魔導士の脇に抱えられた、大口径カノンと化したインテリジェントデバイス。
その先端から極大と言って余りある砲撃が放たれた。
バックファイアが後方の大気を、大地を豪壮に抉り取る。
なのにそれほどの衝撃を支える彼女の両足は地面に根を張ったように微塵もぶれず、動かない。
対象である山が目の前で灰燼と化すまで約5秒―――全力斉射にて放たれた桃色の奔流が視界全域を覆い尽くす。
…………………………………!!!!!!!
前方の視界一杯を文字通りの更地へと変えてしまう程の――――Sランク空戦魔導士・戦技トライアルはこうして幕を閉じた。
破壊の化身と化したなのはが、デバイスの柄でタンと地面を突く。
それは自らの戦舞の終了を示す挙動に他ならない。
「ふ、う………」
体力と集中力を限界まで注ぎ込んだ体は激しく酸素を求めていた。
だが乱れた息を周囲に悟られるのは三流の所業だ。
2、3、短い深呼吸だけで悲鳴をあげる肺に酸素を送り込み、戦技教導官は揺ぎ無くその場に佇む。
これだけの「動」の世界を体現したにも関わらず、一瞬で場を凛とした「静」の空気へと変えてしまう。
齢20にしてこの魔導士は既に玄妙の位―――達人の域へと足を踏み入れていると言えよう。
なのはが今見せたのは、スタンドアローンの魔導士に課せられるトライアルの最高峰の一つ 「キラー・ビー」
アサルト&デストロイ―――敵の砲火を掻い潜り、戦艦や要塞の中枢に無双の一撃を叩き込む
危険なミッションを想定した最も難しい型の一つである。
砲撃魔導士でこれが出来る者はそうはいない。 ここまで完璧にこなせる者となると局内部でも両手で数えるほどだ。
それを見事に完遂したなのはが、レイジングハートを優雅に回して胸の前で止め、残心の意を表す。
あれだけの全開運動を行ったのだ。
早鐘のように波打つ心臓がドンドンと彼女の胸の内をノックするが―――
(これでどう……?)
今、彼女が気にしているのは採点者の動向だ……それを待たずして気を緩めるわけにはいかない。
期待を込めて観覧者の方を振り向くなのは。 我ながら快心の出来だった。
青子という人物が大仰な拍手を降らせてくれる人でない事は重々承知だが……
いくら何でもここまでやって無反応という事はない筈――――――
「…………」
だが―――――
上気して紅く染まった相貌を向けた、視線の先には――――
食べかけのスナック菓子がポツンと転がっているのみであった。
蒼崎青子は既にその場を立ち去っていたのだ…………
――――――
NANOHA,s view ―――
シュンと肩を落としながら丘を後にする自分の姿は、誰かが見ていたら相当みすぼらしく移ったと思う……
左手には一緒に頑張ってくれたレイジングハート。
右手には同居人が置いていった週刊誌とポテチの袋。
途中で帰るなら、せめて自分のゴミくらい片そうよ……青子さん。
「頑張ったんだけどなぁ……」
自分は不器用だし、彼女は決定的に私とは考え方やタイプが違う。
なら、上辺だけの言葉で飾り付けても伝わらない。
互いに戦いに従事する者同士、この方法が一番良いと思ったのだけれど、当てが外れたかなぁ。
正面から体でぶつかるという試みが常に功を奏すわけではないけれど、ちょっと……かなり残念。
空を飛んで帰れば小屋まであっという間なんだけど、どうもそんな気になれない。
頭を垂れて山を下る私………高町なのはは今相当、凹んでます。
「―――――――」
「…………!」
とその時、頭上に気配を感じて私は宙を見上げる。
「レン………」
覚えのある鈴の音を聞き間違えることはない。
木の枝に純白の少女が座っていた。
「――――つくづく大したタマね。 アレをああまで挑発してのけるなんて……
知らずにやってるんだとしたら相当の天然よ。 貴方」
言葉を紡ぐ少女。 敵意と警戒心を称えた声色は変わらない。
でも、挑発? 確かに挑戦的な意味は含めたけれど決して青子さんを愚弄するような感情を込めた覚えは無い。
それが途中で帰ってしまった原因なのだとしたら……一体何が気に入らなかったんだろう?
「アレはアレなりに魔法使いなんて大層な肩書きを背負って周囲に振舞っているわ。
元がどんなに奔放な性格だって、魔法使いという言葉の重さを感じ取れないような奴があの域にはいられない。
でも――――あれで芯はまだヤンチャな小娘なのよね………珍しく他人に対して反骨心を露にしてる」
「反骨心? 誰に?」
「貴方によ。 気を落とす事は無いわ。
メッセージは青子にちゃんと届いてる―――臓腑を抉る勢いでね」
オウム返しになってしまう私の問いかけに意味あり気な答えを返してくるレン。
青子さん……ああ見えて私の気持ちに気づいてくれたのかな?
「でも、ポテチ食べてたよ?」
「ポーズに決まってるじゃない。 アンタなんかに興味ありませんよーっていう。
貴方が<魔術>や<神秘>に対してアプローチをかけたい以上に、青子は貴方達の事を知りたがって……とと、今のナシ」
「………そっか。 有難うレン。 教えてくれて」
「別に……私はみっともなく右往左往する青子が珍しくて面白がってるだけ。
せっかくだからもっともっとアレを引っ掻き回して欲しいわ―――笑えるもの」
クスクス、と意地悪い笑みを残して白猫は森の奥へと消えてしまった。
「…………首尾は上々、だったのかな?」
少し安心した……自分の意思はどうやら少しは彼女に届いていたようだから。
そしてくたびれ損でなくてよかったと気を抜いた瞬間、ドっと疲労が沸いてきた。
うう〜……ホントに疲れたよ。 あれは私の持ち技の中でも、とっておきだったんだから。
あれで届かなかったら正直、お手上げだっだ。
「とにかく……少し間をおいて、夕食時にでも改めて話を切り出そう」
そう思い立ち――――私は帰路につく。
その足取りは心なしか軽いものとなっていた。
ヴィヴィオと性格は全然違うけれど、やっぱりレンの声は凄く落ち着く。
私にとっては今や癒しそのもののあの少女ともう少し仲良くなりたいな、なんて思いながら―――
私は山地を後にする。
――――――
――――――
そして今は夕刻の食事時―――
卓に並べられた簡素な夕餉を黙々と平らげていく二人。
――― 空気が……………重い…… ―――
租借し舌鼓を打つ音と、カチャカチャと食器の擦れる音だけがダイニングに木霊する。
野菜と炭水化物と蛋白質のバランスの取れた、調理者であるなのはの性格が伝わってくるような品揃え。
だが談笑に花を咲かせるでもなく、無言で箸を勧められては食材にも申し訳が立たないというものだ。
「青子さん……その、昼間の事なんだけど」
意を決してなのはは話を切り出した。
「……………」
「どうだったかな? 貴方ほどの術技を持った人から見たら全然未熟だったかも知れないけれど……
出来れば今後のためにも忌憚ない意見を聞かせて欲しいんだ」
「……………」
「ねえ教えて青子さん。 私の戦力は………貴方の世界ではどの程度、通用するのか」
「……………………む」
「む?」
遠慮がちに、だけどはっきりと相手に言葉を投げかける高町なのは。
しかして――――
「むきゃーーーーーーー!!」
「ひゃあっ!?」
返ってきたのは怪鳥音と――――――ドレッシング。
プラスチック製の容器が、ダッキングで避けたなのはの頬を掠めて壁にぶっ刺さった…………
――――――
AOKO,s view ―――
――― ああ………嫌なもん見せられた ―――
全く持って苛々が収まらない。
対面にちょこんと座ってインゲン豆をポリポリ口に運びながら、しきりにこちらをチラ、チラ、と見てくる女。
我がむかつきの原因である魔法少女、高町なのはさん(20)である。
会話を切り出したくてしょうがないといった風体だが、どーせ昼間の事だろう……ああ、腹立つ。
「青子さん……その、昼間の事なんだけど」
―――――そら来た………
彼女が色々と悩んでいたのは知っていた。
暇さえあればああして出かけていって、汗だくになって帰って来て、玉ッコロと反省会などをしてた。
常にどこか陰を落とした表情は、遭遇した困難―――どうにもならない壁を目の当たりにして相当の衝撃を受けたのだろう。
この一ヶ月、互いに自身の手札を隠したまま何とか相手の情報を引き出そうという
ささやかながらの情報戦が狭い小屋内で行われていた。
両者とも秘匿せねばならない事項を抱えた身。 すんなり打ち解け、交流しましょうというわけにはいかない。
そして今日、相手がついに現状に痺れを切らしてアクションを起こしてきたってとこ。
この子は今―――どうしても魔術の事が知りたいのだ。
………………
しかし昼間、ああして改めて奴の力を見させられたわけだが………コノヤロー。
一体、私と戦った時はどんだけ手加減してたっていうのよ………
結果、英霊と互角に戦ったという彼女の言葉の真偽はめでたく証明されたわけだが。
はっきり言って私と五分程度の力で英霊なんかと闘えるもんじゃない。 あれは基本、ヒトがどうにか出来るものじゃない。
十分な用意と下地と勝算を以って臨んだならばともかく、道端でばったり出会って戦闘になった場合、対応できる相手では断じて無い筈。
だからせいぜい方々の体で逃げてきたんだろうな、くらいに思ってた………昼の彼女のパフォーマンスを見るまでは。
結論、この女はマジでヤバイ―――英霊なんてモノと互角に戦い兼ねん力を本当に持っていた。
私との戦いは互いに遊びみたいなものだったけど、それでも私は「まあ、死ななきゃいい」くらいの気持ちで撃ち込んでいた。
だいたい5分〜6分、といったところだろうが、対して彼女は蟻を摘むかのような細心の注意を払って私に臨んでいたに違いない。
この私を………相手にして………ッ!!!
「むきゃーーーーーーー!!」
「ひゃあっ!?」
むかついたんでドレッシング投げてやった。 避けくさった。
魔力ダメージという便利な機能を有しているといっても、その効能はぶちかましや爆風の破片にまでは至らない。
衝撃波だけで戦闘ヘリの一つや二つ、簡単に吹っ飛ばせる奴が
BJとやらを纏っていない私を大怪我させずに無力化させるのにどれだけ苦心した事か………
高町なのはの「敵をなるだけ傷つけない」という制約を外した本来の動きが昼間のアレなのだろう。
認めざるを得ない……まともに戦えば、私はなのはに到底、適わない。
いや、アレが向こうさんの技術力の賜物だというのならば、魔術師そのものがミッドチルダ式魔導士には適わない。
その事を今日、存分に思い知らされたのだ。
くそー……同世代で私をキッチリ殺せそうなのは姉貴くらいかと思っていただけに、はっきり言ってショックだわ。
これじゃ井の中の蛙じゃないの……悠々とあれだけの力を見せ付けておいて 「どの程度通用するのか♪」 だってさ。
しえん
イヤミな奴め……お前なんかキライだ。
爆発してしまえ。
――――――
NANOHA,s view ―――
怒ってる……何か凄く怒ってる……
私が話を切り出した途端、あからさまに不機嫌になっていく青子さん。
これ以上、踏み込んでくるなという意思をひしひしと感じる。
でも………今日はこのくらいじゃ引き下がらないよ。 私にだって事情があるんだから。
「青子さん……私達がこの地に降り立ってからもう一月近く。 互いに牽制する時期はとうに過ぎていると思うんだ。
正直に言うと私は生き残るために貴方の協力が必要なの。 そして貴方も私に何か聞きたい事があるよね?」
「そんなものはない」
「嘘」
ブラウンレッドの髪の毛が心なしか逆立っている……
凄い威圧感。 正直、かなり怖い。
「上手い事言って丸め込もうとしても駄目よ。 魔術は知られざるが故に魔術。
貴方が―――時空管理局とやらが味方であると決まったわけじゃないのに、ほいほいと情報を渡すと思う?
英霊や私にいわされたのがショックだったのは分かるけど……ま、諦めなさい」
「……………」
レンといい、本当に抜け目無いなぁ。 やっぱり隠し切れてなかったか……
そう、サーヴァントを相手取っての二連戦に、目の前の魔法使いとの一戦。
運も手伝って生き残っては来たけれど、自身の無力をこれほど痛感した事は久しく無い。
偶発的に出会ったものであればここまでの焦りは無かったと思う。 世の中、私以上の使い手なんていくらでもいるんだから。
だけど…………カンと言ってしまえばそれまでだけど
これは紛れも無い、自分達に降りかかってきた新たなる戦いなんだっていう予感がある。
あのセイバーさんのような凄まじい戦士と……
あの恐ろしい戦力を持った英雄王と……
青子さんのような不思議で不可解な使い手と……
―――また幾度となく刃を交える気がしてならない。
自分だけじゃない……音信の途絶えた仲間達も同じ状況に陥っているのだとしたら?
磨き抜いてきた戦技が通用しなかった………「彼ら」は何かが違う。
私達の使う魔法に対して根本的な部分でアドバンテージを持っているように思えてならない。
だったら、まずはそれを知らないとお話にならない。
だから異世界の魔法使い、青子さんとの出会いは私にとって天恵だった。
閉じた世界からの脱出、仲間の捜索に関しては今すぐどうにかなるものじゃないけれど、こちらは別。
もう形振り構ってはいられない。 彼女から魔術の、神秘の何たるかを必死に学び取らなきゃ。
次に、あの英雄王レベルの敵と出会ってしまったら―――
たぶん、私は生きてこの戦いを終える事は無いだろうから。
「青子さん」
「あによ?」
居佇まいを正して目の前の相手と向き合う。
依然、彼女の視線は厳しく、これでもかってくらい眉間に皺が寄っている。
そんな彼女に対し、テーブルに手をついて私は深々と頭を下げて言った。
「改めてお願いします! 私に魔術を………貴方の魔法を教えてください!」
「はきゃーーーーーーーー!!」
「ひゃああああああああっ!?」
…………………時速400Kmの速度でお味噌汁が飛んできた………
――――――
AOKO,s view ―――
「いい加減、今のは本気で危なかったよ! あと食べ物を粗末にしたら駄目!」
なのはが不平を露に叫ぶ。
むふう、飛び散る液体までも綺麗に避けるとは……
こういう無駄にハイスペックな所がまた癪に障るのよねー。
「カルチャーギャップで許せる事と許せない事があんのよ。 気を使ってる私が馬鹿に見えるレベルのKYね、アンタは」
「へ? き、気を………使ってる? 誰が?」
「きーさーまー」
もう我慢ならん。 先生が教育してやる!
テーブルを跨いで飛び掛る私。 逃げるなのは。
狭い部屋で追いかけっこをするハタチの女二人であった。
棚の上でニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべているレン。 何がおかしい……
「し、失礼だったのなら謝るよっ! でも私、今日は踏み込むって決めたから!
腹を割ってお話しようって決めたの! だから!」
「アンタの踏み込みは遠慮が無さ過ぎて先生困っちゃう!
オープンなのは結構だけど、ちょっとは地雷踏むかも、とか考えないのか!?」
魔術師に「魔術教えて♪」なんてやったら普通は味噌汁じゃ済まない。 魔法使いに「魔法教えて♪」もまた同様。
いざとなったら惜しげもなく自分のカードを切れるのは、つまりは向こうの方が余裕があるという事だろうが……それがまた腹が立つ。
「全くアナタらしからぬ言葉だわ。 仮にも戦闘のプロフェッショナルが、付け焼刃に魔術なんか習って何の足しにしようっての?」
「これまでにセイバーさんや貴方との会話の断片から聞かされてきた魔術の深奥……
戦うにせよ守るにせよ、私たちにはその対抗手段があまりにも無さ過ぎる。 せめてそれらに対する足がかりが欲しいの」
正直な子ねぇ……交渉相手に、そちらの弱点と利点を教えてくれだなんて普通言わないぞ。
まあそういう所も含めて誠意を表しているつもりなんでしょうけど。
「言っておくけど、リンカーコアの有無で私にミッド式が使えないのと同様―――貴方に魔術は使えないわ。
今まで基盤にしてきた力の土壌が、綺麗に魔術と正反対の方向を向いているもの。
二足のワラジにだって両立できるものと足を引っ張り合うものがあるけど、コレは間違いなく後者。 混ぜ合わせたってマイナスにしかならないわ」
「それはやってみなくちゃ分からないよ。 例え、ものにならなかったとしても、それがどういうものか知る手がかりにはなる。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。 戦術を立てるのにこれは絶対に必要なことなの」
「溺れる者は藁をも掴むか―――それだけの力を持っていながら………
まさか根源に興味が沸いたとか言わないでしょうね?」
「私の力なんて全然だよ……まだまだ全然……
私の魔法はサーヴァント達に全く通用しなかったし、青子さんとの戦いだってほとんどこちらの負けだった」
全く謙虚も度を過ぎるとイヤミにしかならないわ……ことに、この女は本気で「そう」思っているからタチが悪い。
高町なのはは妙に自分の力を過小評価する節がある。 謙遜などという言葉では到底追いつかないほどに。
だからこそ、若くしてこんな域にまで登り詰めちゃったんだろうけど……
過信や慢心で身を滅ぼす馬鹿に比べたらずっとマシとはいえ、答えに窮するわ。
恐らくは 「自分の使う技が神秘に、魔術に対して決定的なアドバンテージを取られている」 とでも思っているのだろう。
ま、確かに私との戦いではつい「反則」使っちゃったからねぇ。
生真面目で真っ直ぐな子が搦め手で足を引っ掛けられると案外、立ち直るのに時間がかかる。
豪傑ほど策に嵌り易いセオリー。 今、この子がどうして良いか分からないという状況に陥っているのも無理は無いのかも。
「貴方の力はサーヴァントには通用しなかった?」
「うん……」
「なら闘うという選択肢を捨てればいいじゃない? 基本、アレは人間がどうにか出来るもんじゃないんだし」
「私も出来れば戦いは避けたいよ。 でも次に遭遇したらどうなるか分からない。
特に金色のサーヴァントからは相当恨まれちゃってるみたいだし、スカリエッティが彼らにアプローチをかけている可能性も捨て切れない。
例え最悪の事態に陥ったとしても、天命を受け入れる前に出来るだけの人事は尽くしておきたいの」
「うはは! ご愁傷様。 線香くらいはあげてやろう」
「もう……人事だと思って」
こう、話していてもつくづく「こちら側」の人間とは意識が違うのよね。
魔術師にとって英霊と遭遇したなんてのは、天災に出会ったようなもの。
闘ってどうにかしようなどと―――ましてや再戦してどうにかしようなどという思考がそもそも湧かない。
だが、この子は 「完敗だ、相手の方が上手だ」 と言いながら、次にやったら勝つ方向で話を進めている。
根本から我々とは立っている土台が違うのよ。
はっきり言ってしまえば私にとって不利ね……この手札の見せ合いは。
なのはは英霊という神聖なるものに出会い、畏れ、戦慄を覚えた。
それはいわば、霧に覆われた山に遭遇した登山家だ。
霧が晴れるまで目の前の足場さえ確かでない状況はさぞかし恐ろしいだろう。
対して私の方は目の前に超絶巨大な山が現れたという感じ。
あまりにデカ過ぎて、その全容が分からない。
踏破するにせよ、迂回するにせよ、せめて標高くらいは分からないと話にならないといった風。
二人の置かれたスタンスはこんなところ。
うわー……言うまでも無くこっちに分が悪いじゃないの。
霧は晴れてしまえばどうって事は無い。 全体が見えてしまえば攻略は容易。
だけどこちらは、標高が分かった所で事態はあまり好転しない。
魔導士に対して魔術が、ミッドチルダ世界に対して地球が立っている優位とは実はその程度のものでしかない。
その意味をなのはに気づかせてやるべきか………果てしなく気が進まないなぁ。
かといって現状、まさに命の危険に晒されているこの子をシカトして見殺しにするのも心が痛むし……うーむ。
「真正面からあのサーヴァントと戦って勝てる魔導士はそうはいないよ……
あれが今度の事件の敵として立ちはだかるのだとしたら、仲間も苦戦じゃ済まない。
だから私は皆と合流するまでに少しでも情報が欲しいの………」
本質的に悪い子じゃないしなぁ………作る飯も美味いし。
協力を拒む理由が今のところ無いのよね。
―――――仕方ない。 当たり障りの無いところで相談くらい乗ってやるか。
「なのは。 私たちの間でも英霊は破格の存在よ。
例え、どれほどの武装に身を包んだとしても奴らを正面から打破するのは難しい。
なら、ヒトと英霊を≦で隔てる決定的なものとは何か分かる?」
「……………宝具。 未知の武装と、圧倒的な身体能力」
「ブー。 武装の威力だったら現行兵器でも上回るものはいくらでもある。 出力でもね。
そんなものよりもっと根本的な問題から、ヒトは英霊には勝てないと言われてる。 その要因とは何?」
「………分からない」
彼女は険しい顔で思考に没頭する。
全く見当すらつかないみたい。
「それはズバリ―――――――ハッタリよ」
「………………は?」
バカみたいな表情で唖然とするなのは。
うふふ……何か久しぶりに先生モード入っちゃった。
生徒のこういう反応、ゾクゾクするわー。
「だからハッタリ。 ≦の<の正体」
「青子さん……私、真面目に聞いているんだけど」
「失礼な。 私も珍しく真面目に答えてやってるのに」
彼女は今、英霊に対して過剰なほどの威容を感じている。 明らかに自分よりも上の存在だと―――
星間国家なんて冗談みたいなモノの武装隊として、あらゆる次元、あらゆる星に降り立って、色んな敵と戦ってきた彼女がだ。
それだけの戦地を渡り歩き、当然、英霊を超えるバケモノとも戦った経験があるにも関わらず。
「なのに百戦錬磨の魔導士さんが、そいつらを差し置いてサーヴァントが今までに無い強敵だと錯覚してる。 何故?」
「錯覚…………分からない。 あの威容、あの重圧はとても一言では説明がつかない。
明らかにこちらより数段上手の使い手だと思ったよ………それがハッタリだなんて信じられない」
「英霊とは人によって祭り上げられた神様みたいなもの。
神の存在を明確に定義づける理論は存在しないし、巨大に膨れ上がった畏怖こそ奴らの力の源。
要はでっかいハッタリの効いたオバケみたいなものなのよ」
「私が彼らに抱いた評価はまやかし……? そんな馬鹿な……」
「ハッタリや誇大解釈がそのまま具現化したのが英霊だからね。
人の持つ畏敬や恐怖が形となったモノ――――そんなもんを相手取って勝てる人間いる?
他ならぬ自分たちが思い描いた、最強の概念がカタチになって襲ってくるのよ?」
「じゃあ、私はハッタリや虚仮脅しの類でスターライトブレイカーを弾き飛ばされたの?
切り札のつもりで磨いてきた、私の拠り所だった魔法……それを三回、続けて防がれたのも?」
ふむ……納得のいかない顔をしている。
この娘は未だ、神とか悪魔といった存在と戦った経験はないようだ。
典型的な現代兵器っ子ね。
「良い機会だからそれについても説明するわ。
エクスカリバーが何ぼのものだとしても、元は人間の王様が持ってた一本の剣よ?
それが御伽噺の中で城一つ吹き飛ばす剣として祭り上げられ、山一つ吹き飛ばすアンタの砲撃に実際に相対してきた。
その水増しされた力の元とは何か?」
「それは断じてハッタリなんかじゃない………あの黄金の砲撃の凝縮率は段違いだった。
貫通力を増すための収束の訓練は私もしているけれど、まるでケタが違う。
全開の砲撃をカステラみたいに切られたよ」
「カステラぁ? うははっ!」
「嬉しそうだね……」
ジト目を向けてくる生徒。 いや失礼……私も魔術の子か。
スペース仕様の魔法少女相手に勝利を収めた英霊につい喝采を送りたい気持ちになる。
つうかこの子、意外と面白い事言うのね。 ちょっと吹いちゃったじゃないの。
しかし大仰に語ってみたけれども実際、聖剣はあの砲撃の威力すら超えるのか……
なかなかどうしてヒトの想念も捨てたもんじゃないわ。
「時代は移り変わっても最強の概念は健在か―――――
さぞや爽快な光景だったんだろうなー。 特等席で見たかったわ」
「むー! 私、死に掛けたんだよ?」
「安心しろ……アンタは象に踏まれても死なない。 私が保証する。
ともあれ面白くなって来たわ、なのは。 前に概念武装の事についてちょっと触れたわよね?」
「何かの概念を込める事によって特殊な効果を発揮する武器、だったっけ?
不死の敵を倒すとか、実態の伴わない敵に届かせるとかetcetc.」
「そう、その中でも宝具っていうのは神代の伝承が具現化したものだからね。 ほとんど反則よ。
聖剣エクスカリバーなんて特に顕著な例で、超一級の概念兵器。
古より世界中の騎士はおろか、民衆に至るまでが<最強たれ>と願い想い、その結晶を星の息吹が具現化させた存在がアレ。
アーサー王とアナタとの戦力が拮抗していようが目じゃない。 常軌の物差しで図れない特急の概念がアナタの自慢の砲撃を切り裂いたのよ」
幻想とは時にゼロであり時に無限。
簡単に言ってしまえば人が「凄い!」と思った思念を、ノーブルファンタズムはそのまま力にする。
だからこの子が奴らを 「凄い凄い」 って思ってるのも、まさに思う壺なのだ。
その畏怖すら奴らは揺ぎ無い力として具現化してくるのだから。
「何かオカルトだね……じゃあ、エクスカリバーに結集されたその思念の総量……
火力に換算したらどれくらいになるのかな?」
「だから換算出来るもんじゃないっつてんでしょうが!」
この火力馬鹿! 私の話を微塵も理解してないな!
「そんな事言ったって具体的な数字が出ないと対策の立てようが無いよ」
「だから数字に置き換えられるもんじゃ無いの! 約束された勝利の剣は、勝利を約束されているが故に無敵。
それを打ち消すというのなら、剣に込められた無敵の概念を覆すか、超えるモノを用意しなけりゃならないの。 分かる?」
「そんな無茶な……それじゃ、やっぱり概念の篭らない私達の魔法ではどうしようもないって事?」
肩を落とすなのは。 必死な双眸が痛々しい。
全てを数値とロジックで計算して勝率を叩き出す輩には一生、頷ける話じゃないのかもね。
気丈に振舞ってはいるが実際、おっかないんだろうなぁ……
この子は多分、今までほとんど決定的な負けを経験した事が無いのかも知れない。
毎日のように何らかの練習をしているのを見るに、勤勉で努力家なのも間違いない。
例え負けても次は絶対に勝つ、という明確な意思を打ち立てられるだけの土壌がこの子にはある。
だけど今、彼女はその指標が立てられない。 理解の及ばない敗北の呪縛に苛まれてしまっている。
あのバカでかい魔砲だって絶対の自信を担う切り札であった筈。
それを……英霊は知らんが、私との戦いでは「あんな搦め手」で返されたのだから―――――そりゃパニくるわよね。
「神秘はより強い神秘によって打ち消される。 これが私達の魔術の基本にして揺ぎ無いルール」
英霊とは星が使役する最強最大の戦力に他ならない。
この世で英霊に勝るものなんて、同じく星の触覚として上位に位置するアレとか、それこそ魔法、とかそんなところ。
「ましてや神秘を持ち合わせていない貴方の術では幻想を打ち消せる道理がない。
かと言って今更、貴方が魔術を習ったところで尊き幻想に届く筈もない。
私達の常識に照らしたら八方塞がりよね、実際」
「……………」
唇を噛むなのは。 ええい、そんな顔をするんじゃない。
何か私が苛めてるみたいじゃないの………
――― てかさ、ここまで言って気づかないかな? この子は ―――
「で、あるにも関わらず―――貴方はあのアーサー王やギルガメッシュなんて超一級の英霊たちと戦い、生き延びた。
私達の常識では考えられない戦果を残したのよ、貴方は。
奴らも面食らったでしょうね……地球ではあり得ない、人の手による兵器がずいっと自分たちに並んできたのだから」
「………え?」
「これはあくまで私の独り言のつもりで聞きなさい。 実は神秘を否定する方法はもうひとつあるの。
…………いや――――――ある、とされているのよ」
知らず声色の変わった私の言葉に少し驚いた表情を見せるなのは。
ここから先は私達にとって面白い話じゃないし―――魔術側の人間が認めてはならないタブーだ。
「神秘はより強い神秘で上書きされるのがルール。
だけど、神秘は―――それを遥かに上回る人の営みでも犯す事が出来るのよ」
「人の営み……人間が神様とかそういう存在に影響を及ぼす事が出来るの?」
「これは禁句なんだけどね。 我々魔術に携わる者が決して認めたくない、痛い事実とも言うべきものよ」
「それは、どうやって………?」
「かしこまらなくて良い。 何も難しい事じゃないんだから」
この理屈は謂わば古き尊き神聖なる物を犯す、卑しき真実―――
神代の時代、人と神と魔が等しく存在し、幻想が幻想でなかった時代があった。
だけど悠久の時を経て今現在、地球上に神秘の存在する場所なんてほとんど無い。
「―――それは何故?」
先に話したように、神聖なるものがヒトに対して絶対的な優位を誇るのならば、何故その力はここまで衰退してしまった?
地球は神でも魔でもなく人間が席巻する星となった―――
「―――それは何故?」
宝具は現代兵器に取って変わられ、魔術は科学に押しのけられた。
かつてあらゆるものがそう認知されていたにも関わらず―――魔法は今はもう五つを残すのみとなった。
「―――それは何故?」
サーヴァントが人間の現行兵器に対して優位に立てる理由は、彼らが人間に対して圧倒的に優れているから?
………………そうじゃない。 むしろその逆―――――
「其は、ヒトの進化の行程において忘れ去られた存在であるが故に認識されない。
幽霊も、神も、悪魔も、ヒトが見ようとしないからその視線から逃れる事ができる。
兵器がそういうモノを想定して造られていないから、彼らは陽の射さぬ日陰を隠れ蓑として人の手の届かぬ場所にいられるのよ」
ずいっと身を乗り出して、食いつくような視線で私の話を聞いているなのは。 ええい、近い近い!
うう……仮にも魔法使いが口に出して良い内容じゃないのよね、コレ。
皆、うすうす理解している事とはいえ、取りあえず協会に聞かれたら異端諮問で八つ裂きにされてもおかしくない内容だ。
「言い換えれば眼中にないと言った方がいいわね。 取るに足らないものなのよ……人にとって今や、神や魔なんてモノは。
実際、貴方のいるミッドチルダでは神や悪魔がその力を以って猛威を振るう事なんてある? 本気で神様を信じ、崇めている人はいる?」
「崇めるという意味ではもっと直接的なものがあるけど、ミッドはなにぶん、あまり歴史を重ねていないから……
大昔に神様や悪魔が跋扈したなんて伝承は聞かないよ……」
「そう……でも多分、古代より続く歴史があったとしても、今のミッドチルダという土地に神は降り立てないでしょうね。 魔法もまた同様に。
それだけの力を手にしたヒトは例外なく神秘を捨てるのだから。 必要ないと切り捨てるのだから」
魔術に携わる者は、今やそうやって人が不必要と捨ててきた部分にこそ根源を見出そうとする。
ヒトが捨てたモノに深奥を、ヒトの営みの裏に隠された真理を見出し、求める。
だけどその営みは……あくまで人の進化から逆行した流れでしかないのだ。
「故に神秘が人に対して絶対の優位を誇ると言う事は無いのよ。 貴方の術が英霊に利いたのが何よりの証拠。
地球の科学力ではまだ無理だけど、貴方達の技術はもはや何らかの形で地球の神秘を犯す所まで来ているのね」
科学が神を超えたか否かの線引きは非常に難しく、諸士説々ある。
そんな中で最も有力なのが 「人類が母なる地球から飛び立つ時こそがヒトが神から巣立つ時」 とかいうもの。
ははは……まるでSFだわ。 確かに星に依存しなくなった時点で、星の縛りを受ける義理も道理も無くなる。
「抑止」も「根源」も超えるっていうのはそういう事なのかも知れないわね。
そして――――ミッドチルダの魔法は、言うまでもなくその域を超えている。
彼らの刃は………既に届くのだ。
「ミッドチルダの魔法は世界に直接働きかけて自然の理にプログラムを上書きして発動する力……」
「多分それよ。 アーサー王の対魔をぶち破ったのは。
アレは伝承上、剣も魔術も利かない不死身の騎士王って話だもの。
そも殴り合いが成立する相手じゃない筈なのに、貴方は互角に戦えた」
「互角ではなかったけど、それにしても……………
聞けば聞くほど英霊っていうのはとんでもないね。 瞬殺されなかったのが不思議なくらいだよ」
とんでもないのはアンタらの術式でしょうが。 勿論、私の説は仮説に過ぎないけど。
実際はなのはの力だけじゃなく、この歪な世界が英霊に変調を齎した可能性も十分にある。
要は私らサイドから見ると、こいつらの世界にはこびる力そのものが、こっちの力を飲み込み、侵食してくる印象を受ける。
基本、科学で編まれておきながら魔的な要素にまで介入してくるミッド式こそ、神をも畏れぬチートなのだ。
「なのは………私は未だにアナタが魔法使いを名乗ると腹が立つのよ。
どうやったってアナタのソレを魔法だと認識出来ないし―――正直、その力、キライなの」
「…………」
私の纏う空気がまた変わったのを察知したのだろう。 なのはの目が険しくなる。
幾多の死線を当たり前のように潜ってきただろう戦士の目。
相変わらず、それに関しては一歩も引かないという意思を見せている。 小癪な……
「多分、魔術師は皆、アナタ達に同じ嫌悪感を抱くんじゃないかな。
狭い世界でさえ利権や力の独占に病的に固執するような奴らだってのに
その上、決して相容れない力を持った勢力が<管理>だ何だとのたまえば、ね」
なのは……一方的に負けた、神秘の脅威に晒されている、というのはアナタの勘違いなのよ。
二つの力はどこまで行っても交わらず、迎合する事の無い、謂わば天敵同士。
だからこそ――――
「言っておく。 魔法使い蒼崎青子は、魔法使いを名乗る高町なのはに絶対に負けたくない。
もしも今度戦う事があったなら―――その時は本気の殺し合う事になるわ」
「私も戦うならば負ける気はないけど……殺し合いというのはどうかと思うよ」
「睨まない睨まない♪ それだけ私がアナタに脅威を抱いてるって事よ」
アナタに負けたら私も商売あがったりだしね。
せいぜい敵にならない事を祈るわ。
「そうそう、昼の演舞は凄かった。 正直、鳥肌が立った。
時間をかければ私も山の一つくらいは塵に出来るけど、機動力と一撃の火力では適わない。
今度ウチに来たら、水星から来たクモの怪獣とでも戦ってみなさい……いい線行くかも」
「…………え?」
厳しい視線を崩さなかったなのはがキョトンとした表情を作る。
何だそのツラは……私がお褒めの言葉をひり出したのがそんなにおかしいか?
「まあ、そういう事だから………あとは自分で考えなさい。
立場上、余所者に大した情報をくれてやる気は無いから今日はここまで。
アナタの旅の無事に少しでも役立ってくれれば重畳よ」
…………………………… しまった。
こんなん言ったけれど、つい先生モードが暴走して大した情報を与えまくってしまったぞ……
敵になるかも分からない相手にいらん事をペラペラと―――――アホか私は。
「ありがとう……とても参考になった。
青子さん。 私のほうからは何をすれば……」
「いいわよ、また今度で。 ミッドチルダの良い男の話をたっぷりゆっくりと聞かせて貰うから」
くう……周りにドクサレしかいなかったせいか結局、こういうイノセントな子に弱いのよね私は。
余裕を見せてクールに決めてるわたくし蒼崎青子は、油断して取り返しの付かない事を喋ったりしてないか非常に不安です。
仮にも世界の深部に抵触する人間なのに……「他」の人達が殺しに来なきゃいいけど。
「アナタは危険な悪女だわ。 これ以上、弄ばれてペラペラ喋らされる前に寝る」
「へっ? あ、うん………お休みなさい」
「それから模擬戦だっけ? 痛いのは苦手だけど、たまには特訓に付き合ってあげても良いわよ」
「え? 本当に!?」
目をぱぁっと輝かせるなのは。 結局、こういうのは人徳とでも言うのかね。
何か周囲が放っておけない、つい気にかけてしまう……この子にはそういう魅力があるのかも知れない。
もういい、しょうがない。 乗りかかった船だ。 情報戦だの何だのもいい加減、馬鹿馬鹿しくなってきた事だし―――
明日から私もオープン路線でいこうかなっと。
喉に詰まった小骨が取れたような爽快感を感じつつ―――
私は寝室へと引き上げていくのであった、まる。
……………戸棚の上でレンが肩を震わせて笑いを堪えていた。 何がおかしい!
――――――
――――――
「言ってみるものだね………」
徐々に気長に距離を詰める――そんな長期戦を覚悟していただけに
蒼崎青子の背中を黙って見送るなのはの顔には意外の念が浮かんでいた。
どうやら今日の所はここまでのようだ。
城門は堅かったけれど、突撃した甲斐は十分にあった。
あの魔法使いの協力を取り付けられたのは大きな収穫といえる。
まだ完全に心を開いてくれたわけでは無いのだろうが―――
「ぷっくく………よ、よかったわね」
「うん……レンのおかげだよ」
何故か涙の滲んだ目尻を擦っていた少女が、優雅に居佇まいを正してなのはに向き直る。
「英霊に挑む自殺志願者を前に、偏屈頭も同情の念が先立ったのかも知れないわね。
まあ、でも今日の話はある種、何の進展も齎さない内容よ。
具体的に道が開けたわけでも指針が示されたわけでもないもの」
「分かってる。 正直、雲を掴むような話で実感が沸かないよ」
「クスクス―――せいぜい頑張る事ね」
棚の上の猫はそう言って、虚空へと消える。
そして場には一人―――なのはだけが残った。
「………………」
行われた会話の意味を繰り返し、頭の中で反芻する。
レンの言う通り、具体的な対策が練れたわけでも敵の弱点が分かったわけでもない。
この対話に収穫を見出せたのか判断が付きかねているところもある。
にも関わらず――――――
(きっと青子さんは大事なことを話してくれた………重大なヒントをくれたんだ)
高町なのはにはある種の確信があった。
霧の中、手探りで先をまさぐる手に触れた、か細い糸。
光明は未だ見えず―――――
だがいずれ踏み越えなければいけない万里の第一歩。
それを踏み出すために必要な種火を―――――
「よし……やる事はいっぱいある。 明日から頑張ろう!」
なのはは手に入れたような気がした。
386 : リリカルブラッド ◆ nndTJKAYOs 2010/09/05(日) 14:48:52 ID:oVaMYxn2
何か妙に重かったなぁ……
終わりです。
中編の続きは早いうちに。
ではまたノシ
93 :
代理 :2010/09/06(月) 14:02:11 ID:eVXPrKki
そんなわけで代理投下終了。
二度さるさんにひっかかったけど、正直、配分ミスってのもあった。
そんなわけでリリブラの人GJでした!
代理投下乙。
リリブラさんGJ。
つまり、サーヴァント美形多すぎワロタってこと?
規制緩んだ?
作家さんたちgj!
どぼちて、ろっかにはだんでぃもじゅぐじょもいないのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!
ごじさーう゛ぁんとざんもわがずぎでしょお゛お゛お゛お゛お゛お゛!
ザフィーラ「呼んだか」
アイナさんは…まだ若いか
半熟女?
年に一回使用可能な予言スキルの使用回数からすればカリムはなかなかn
リリブラの人と代理の人乙です!!なのはさん、英雄王みたいなやからそうそういないから
>「初めに青子さんじゃハードル高すぎたのかも……
練習してみようか。 試しになのはママって呼んでみて」
「お前、今失礼な事言ったよね?」
「じょ、冗談じゃないわ……お断りよ」
鼻を鳴らしてそっぽを剥く少女であったが、目の前の女から何か異様な雰囲気を感じてハっとなる。
眼前の人間の目が心なしか非常にリリカルな輝きを放っているのだ……鼻息も荒い。
「何事もチャレンジチャレンジ! さあ……!」
なのはさんって幼女趣味?実は淑女なのか?……ん夜なのに光g
本当に規制くらってみんな書きこめなかったんだな…。
よーし、近いうちに何か小ネタ書き込もう。
ミッド的には同性で子供作っていいのかな
フェイト「やっぱり赤ちゃんは可愛いね!」
なのは「ヴィヴィオはお姉ちゃんになるんだよ」
ヴィヴィオ「見て!赤ちゃん動いてる!」
フェイト「ミルクあげるよ」
なのは「はーい、ゆっくり飲んでね〜」
ヴィヴィオ「あっ、ミルクぽいしちゃった」
ろあ「おっぱーい」
なのは、フェイト「 ! ? 」
やっと規制解除か・・・。
>>100 フェイトはなのはの嫁はよくネタにされるが、同性婚は生々しくて引く。
しかしその子供は色々と不味い。
102 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/08(水) 17:11:10 ID:apgANzsI
テスト
誤曝スマン
104 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/09(木) 00:51:10 ID:bRsktzR9
解除されとる?
書き込めるの何カ月ぶりだよ
思わずサゲ忘れちまった
なのは「魔法使いの夜を予約したよ!青子さんを攻略しようね!」
フェイト「魔法の秘密がわかるね」
菌糸類「その幻想を延期(ラック)する」
はやて「意外にセイヴァーってイケメンやない?」
闇王「……PSPならAsポータブルだろう」
なのははポータブルでなんか色々とネタが広がったって感じだよね。
マテリアル娘たちには色々と可能性を感じる。
闇の書の残滓も忘れないでほしい
超ネガティブフェイトとか凶暴ヴィータとか野獣ザフィーラとか
全く変化の無かった人もいるけど
ヴィータルートのなのはさんのまったく変わらずの全力全開っぷりには感動すら覚えたw
挙句に大切なことまでヴィータに教えてあげちゃうし、さすがとしかいいようがない。
ランサーに闇の書の残滓が影響したら伝説上の姿になるのかな
四肢が増えて関節はグルグル回り、炎を全身から出して、額からは光、頭から吹き出す血が霧となって影となる
たぶん武器は剣
やだ、かっこいい
デバイスのモードチェンジみたい
第五時サーヴァントだとランサーのクー・フーリン、バーサーカーのヘラクレスが有名どころですが、大抵の英雄譚には怒りで我を忘れた、まさに暴走とも言えるエピソードが含まれているかと。
……キャスターも、ヘラによる洗脳が解けた後、イアソンへの怒りで理性があったか疑問ですし。
クーフーリンは戦への高揚で変化(但し、怒りでもパワーアップ)
ヘラクレスは呪いや奮起、悲嘆
メディアは親類をバラバラに引き裂いたけど、なんか違うような
男には分からない何かがある……
アルスターの男たちは陣痛の痛みの呪いで戦えなくなったというが、女の抱えるられる物の大きさは二人分以上あるというか
なのはさんは場面ごとに男女をスイッチしてそう
あと、狂化したら髪止めが取れて、髪が波打ちそう
アルクってバーサーカーのクラスよりもファニーヴァンプのクラスのほうが強いよね
とりあえずマスターがあれじゃなきゃゲーム時より強くなるんじゃない?
あのクラスだったら、あのマスターだったら、生前の武具が揃っていたら
あると思います
つまり
サーヴァント一同「エミヤ爆発しろ」
六課でクラスに大きな影響うけるのははやてくらいか
テスト
聖杯が混乱するとこうなるのか
アルトリア=ランサー:装備は名槍ロンと名盾プライウェン、宝具なし
エミヤ=バーサーカー:装備は干将莫耶オンリー、宝具は使用不可
クー・フーリン=アーチャー:装備はスリング(投石紐)、宝具は炎の車輪(沼を渡れる)
メデゥーサ=キャスター:装備なし、手綱なし
メディア=セイバー:陣地形成なし
佐々木小次郎=ライダー:小舟に騎乗
ヘラクレス=アサシン:宝具は完璧な女装
うおおお、書き込めたぞナノハあああ!!
ソフトバンクうううう!!
ところで、ko-j氏のカレイドスコープ外伝はどういうオチになるんだろうね
アリシアがなんか関係あるのかな
舞台はミッドなんだよね
長編連載はたいてい気になるよな。
ここの連載はみんな質が高い上に設定もそれぞれ独自色があってよい。
規制も解除されてるし、そろそろ新しい投下がほしいところだ。
Nightとかすごい気になる。ティアナと士郎の間の溝が埋まるのかとか、
初対面で共闘と押し倒しイベント発生させたギンガが士郎とどう接するのかとかww
エロゲーの主人公だから当たり前といえばそうだが、士郎のフラグは何処でも発生するなw
Nightは事件の全容が登場人物のみならず、読者にもなかなか解んないというのがミソだよな。
描写も丁寧だし。
そろそろ続きが着て欲しいよ。
士郎はホントは押し倒される側だと思うんだよね
本番が獣でも、終わるとシクシクしそう
つーか、Fateのヒロイン達の男のツボはよくわからん
一見して士郎はむさ苦しくもないし顔立ちも悪くない。
性格は誠実で真面目で仕事も嫌がらない。
正義の味方になりたいんだ、とガキっちいこといいつつも世事もきちんとこなしていて現実感がありそうに思える。
これだけならそこそこスペック高いと言えるだろうな。
それだけで終らずに色々となんかズレてるから、まあ問題があんだけど。
リリカル側は変にフラグたてて欲しくないが…三人娘は特に。
だけどスパティアは別にいいかって気はする。
衛宮士郎に戦う者としての才能は無い。
クロスするなら……シグナムあたりにその事を指摘されて、才能のない人間が何処まで強くなれるのかをティアナが知る。というのはアリですかね。
そこから憧れの勘定が発生し、やがてはクロススレからエロパロスレへ――
才能がない言うても大英雄や天才の師匠たち基準やないすか
なのはさんの謙遜とは違うタチの悪さっす
あれで近接も才能だけでわりとこなせるギルガメッシュさんをこき下ろすくらいの基準ですわ
目はスキルになる程、剣才はサーヴァントから見てそれなり、自他共に認める悪運、成長期にはぐれメタルは狩りまくりと
正道ならディルあたりのが教えるのに向いてると思いますー
他のサーヴァント?
感性頼りや放任主義、弟子=道具、遊び好きなんてのばかりっすよ
ギルガメッシュは……
ホロウ準拠のギル(釣り場仕様)なら、子供時代のなのはやフェイトに良いお兄さんをしてくれるとは思うんですよ。
ただ、はやては夜天の「王」ですから、下手をすると怒りを買う事態に?
>>127 ずっと気になってたんだけど、はやてって夜天の「主」じゃなかったっけ?
「王」はマテリアルの統べ子の方では……?
sts公式では「最後の夜天の主」になってるね
王は聖王ヴィヴィオ(オリヴィエ)・覇王アインハルト(クラウス)・冥王イクス・闇統べる王
そして二次補正の魔王なのはさん
>>126 そもそも本編の士郎は自分の事を才能ないと言った事は一度も無かった様な・・・。
接近戦はセイバーに筋があると言ってもらえるくらいだから全くの無才というわけでも無い。
ティアナの師匠ねえ・・・二丁拳銃繋がりでEXライダーとか。
まあ才能無いのは概ね合ってるだろう、本編は主人公補正バリバリだしアーチャーですら後数合打ち合ってたら〜とかそんなひどい後付的なのかまされまくりだし
この場合問題なのはティアナこそ自分がダメダメだと思い込んでるだけの天才肌なことじゃなかろうか
「私、才能無いから・・・」とか言われても士郎が目を丸くして呆れるレベル
>>128 一応ヴィータが一度「夜天の王」とも言ってるが、まあそこら辺は特に種明かしはされないだろうな
王者の槍は王者に中る
個人的には夜天の主より王の方がかっこいいかな。
けど主はやてと呼ばれてもいるし、まあどっちでもいいかと。
とりあえず士郎はあの弓の腕前は恐ろしすぎる。
さすがアーチャーになれただけはある、と思う。
アーチャーの条件と弓の腕前はあんま関係ないみたいだけど。ギルガメ的には。
以前にキャロが竜繋がりでセイバー召喚するとかいう感じの小ネタあったかな?
使い魔か……
八神はやては猫猫トレーナーである
師匠から奪ったアリア(♀)とロッテ(♀)を連れて、ミッド地方を旅している
初めて捕まえた野生猫のカオス(♂)、同い年のライバルで短パン小僧のマキデラ、チャンピオンで白レン(♀)使いのレン
暗躍する27キャットに、出番のないザフィーラ
様々な出会いと別れ、そして伝説が君を待つ
目指せ猫猫マスター
>>134 猫猫図鑑の声がアサシンでナレーションがタイころ版葛木なんだな?
「私はロワイン教授。みんなからは獣博士と呼ばれているよ」
士郎は素直に遠距離戦に徹しとくべきだろ。
乱戦時に赤原猟犬とか放てばいいと思う。
>>135 言峰あたりが博士になるのかな
はやて
「はかせ、シグナムは?」
獣博士
「猫を 666種類だけ あつめたら あわせて やろう!」
>>137 赤原猟犬は、速すぎて急カーブ不可、アチャレベルでないと標的変更不可、標的を視認しつづける必要あり、と条件がそれなり
魔力を込めまくると滅茶苦茶はやいけど、乱戦だと味方を一緒に挽肉にしてしまうかも
はやて「ここが、なかう本店……」
猫アルク(原種) が あらわれた!
* くくく アチシ を つかまえ たければ
* ニボシ を もって くるがよい
* あと つきひめ2 も よろしく
はやて は めのまえ が まっくら に なった !
大丈夫ですか?はやてちゃん
やっと起きましたね
私です
シャマルですよ
なんだか
うなされていましたね
わるいゆめでもみていたんですか?
きょう は とても たいせつ な ひ
あなたの 19さいの たんじょうび
ギルガメッシュおう に あいさつして たびに でる ひ です
さあ
クライドさまの ような
りっぱな やてんの あるじに なるのですよ!
前回、前々回と代理投下感謝です
ようやっと規制も解けたようなので
フェイトルート中編―――ギルVSプレシア母さん、投下します
虚空より来たりて――――巨大な塔の如く大地に突き立った紫電。
身の毛もよだつ轟音を響かせて天より飛来する、あまりにも雄大な幾億ボルトの稲妻は
戦闘状態にあったサーヴァント2体を物のついでのようにあっさりと飲み込んだ。
巻き上がる粉塵、震える大地、大気を走る無数のプラズマ。
濛々と立ち込める熱気と爆炎の残滓の中で、落雷地点の平野には歪で巨大なクレーターが生成されていた。
ミサイルでも打ち込まれたような凄まじい威力を思わせるそれは、半径50mほどを一瞬で灰燼と化した暴威の雷による所業に他ならない。
その場にいた者の命運など―――もはや語るまでも無いだろう。
「―――――、」
―――――――――と、そう思われた矢先…………
必須の滅びを思わせるクレーターの中央にて佇む影が一つ―――
「―――――、」
纏う鎧はその王気を象徴するかのように潸然と輝いていた。
腕を組んだ不遜な様相もまるで変わらなかった。
自身が定めた不倒不滅の理は、この大破壊の中にあっても折れず朽ちず。
顔を庇うように添えていた手を払い、何事もなかったように―――
英雄王ギルガメッシュが佇む。
「―――――――、……!」
だが、突如、バキンッッッ!!と、甲高い音が場に響く。
彼は、彼だけは敵の脅威などという瑣末な事象に微塵も揺るぐ事のない英霊だ。
だから今―――その場に傅き、苦悶の表情を作る彼の様相は天すらも予想しえぬ事態。
そして男の体を覆っていた不抜の護り。
上半身のアーマーや無数の盾がばらばらと足元に落ちる様を、どうして信じられようか?
それぞれが名だたる宝具として銘を遺した一品だ。 それらが役目を終えたかのように地に堕ち果てる。
焦げ付いた異臭を放つそれらからは、もはや些細な力すら感じ取れない。
「王の……鎧にィ―――!!!」
全身から被雷の黒煙をあげながら、それ以上に滾り怒り狂う王。
各々の役目を必死に果たし、場に粉と散る装具に労いの意をかける暇もなく天を仰ぐ。
高町なのはの砲撃すら凌いだ神代のアーティファクトの数々を、あの稲妻は一撃にて貫いたのだ。
間違いない――――
敵……彼をして「敵」と呼ばしめる存在が――――来る!
不敬にも我を高みから見下す無礼者を決して許さじと断ずる灼眼の双眸。
その視線の先に今……
――― 大小様々の多数のゲートが開く! ―――
虚空より穿たれた多数の門から、まずは無骨な腕が……次いで堅牢な胴体が次々と這い出て来る!
ギチギチと金属を擦らせる音を場に響かせて―――刺客の放った王の討伐部隊が姿を現したのだ。
やがて門より完全に姿を現したる無数の軍勢。 地を踏みしめるモノもいる。 空を駆けるモノもいる。
その手に敵を屠殺する凶器を称えた、彼らに共通するモノ―――それはおおよそ人の意思の通わぬ事を想像させる無機質さ。
場は、金が1分に雑色が9割9分。
サーヴァントの眼前を埋め尽くす、無骨な四肢を称えて出揃う大小無数の傀儡兵。
これこそ、このフィールドにて偉大なる王を討滅するべく遣わされた殺人機兵団 <マーダーオートメイル>。
―――――準備はこれにて整った。
彼を護る堅固な鎧は剥がれ、外界に晒す柔肌はもう人のそれと変わらない。
晒した肉体に槍の一本でも突き入れれば例えサーヴァントとて滅びは免れまい。
サーヴァントにとっては、期せずして訪れた絶体絶命の窮地―――
「我に対して―――――戦を挑むと?」
其を前にして…………しかし暴君は―――
かの者共の愚かさを笑わずにはいられなかった。
目の前の無数の門に相対するかのように、ギルガメッシュの後方にも多数のゲートが現れる。
色は赤一色。 もはやその威容、語る必要も無し。
王の財宝――――ゲートオブバビロン
アーチャーとの激闘で相当数の消費をしているにも関わらず、其の宝具の貯蔵は未だ十全に過ぎた。
「雑種を屠るにはこの十分の一でも事足りるであろう……だが喜べ。
王の体に傷をつけた罪―――文字通りの万死を以って償わせてやろう!」
ギルガメッシュと謎の敵との開戦はこうして静かに、ただ無造作に―――
鋼鉄の歩兵の一体目と宝具が衝突した炸裂音を鬨の声として―――
開始の火蓋が切られたのである。
――――――
??? ―――
「分かった……健闘を祈る。 キミの手腕に期待しているよ……フフフ」
先方との通信を終えて――――――
ジェイルスカリエッティは黒衣の神父の待つソファの対面へと戻ってきていた。
「いよいよ彼女がキングの駒と交戦を開始するようだ」
「そうか」
「どうかね? あらためて彼女を見た感想は?」
白衣の男の探るような視線。
それはこの異郷の友人の目に「彼女」がどう映ったか――興味津々といった風体であった。
「見たところ壊れてはいるが―――先天的では無いな。
さして珍しいモノには見えん。 少なくとも、お前や私の如き汚泥とは比べるべくもない」
「確かに……彼女は元はそこいらにいる凡百の存在に過ぎなかった。
だが、とある出来事を境に彼女は別のモノへと変容する。
感情のふり幅を大きく超える事によって、元の素養など見る影も無い傑物へと進化を遂げたのだよ」
それこそが「揺らぎ」を命題とする、この科学者が考える、ヒトのヒトたる所以。
感情の、生命の揺らぎこそ深遠たる謎にして、其より生まれ出ずるモノこそ男の永遠の研究対象である。
「それはそうと―――勿体つけずに話したらどうだ?」
綺礼が博士に促した事は言うまでもない。
件の話題に出ていた女とギルガメッシュを当てると言ったスカリエッティの意図である。
ミッドチルダ世界のトップクラス魔導士ですら歯が立たなかった存在を、彼は屠ると豪語した。 揺ぎ無き自身と共に。
その根拠―――サーヴァントに、或いは英雄王そのものに対し圧倒的優位に立てる何かを、あの女は有しているという事だろうか?
例えばアーチャーの「無限の剣製」のようなものを。
「気になるかね? キミの元サーヴァントの末路がそんなにも?」
「気にして欲しいのだろうが。 相手の聞いて欲しい事を予め引き出してやるのも優れた聞き手の役割というものだ」
「弁えたものだねぇ。 ならば教えよう! 彼女が無敵の英雄王に対し、絶対的優位に立てる要素は………」
大仰に手を広げ、相手の反応を楽しむスカリエッティ。
神父の顔を覗き込み、ニタァ、と粘つくような笑みを灯し………そして―――――
「無い」
一言―――――静まり返る応接室………
「…………」
――――――言峰綺礼の発した溜息だけが、ただっ広い応接室の空気を空しく震わせた。
――――――
――――――
(アーチャーは――――?)
先の先まで楯突いてきたサーヴァントの所在が掴めない。
あの一撃で討ち果たされたか、無様に逃げ延びたか―――
「ふん……どちらでも構わぬ。 あれしきで野垂れ死んだならそれまでよ。
わざわざ我が手を下すまでも無かったという事だ」
多少は気になったにせよ、今の彼には些細な事だった。
先程より始まった、冬木の地では望むべくも無い大規模かつ広範囲に渡る戦闘行為。
それは紛う事なき 「戦争」 と呼ばれる人類最悪の殺し合いに他ならず
開かれた戦端は、蹂躙・征服者としての男の側面を存分に刺激して余りあるものだった。
「我が玉座の対面に立とうなどと思い上がった愚か者が!
身の程を知るが良い! 雑種どもッ!!!」
開始数秒の邂逅で、敵の先陣を薙ぐように発したゲートオブバビロン。
目の前に展開された数10機を見事、打ち落とした王が吼え滾る。
彼の意思のままに、まるで豪雨のように降り注ぎ、噴水のように打ち上げられ、あらゆる角度から飛来する刃、刃、刃!
ターゲットであるサーヴァントの頭上を取って有利な位置にいる筈の大軍勢であったが
それはこの英霊を相手にしての思惟の無意味さを痛感させられるのみ。
ポジションなど何の意味も為さない。
各々、思考の術は持たずともA〜AAランクのスペックを持つ兵たち。
それが塵芥のように砕かれる光景は、豪放にしてどこか現実から乖離したものだった。
まるで勇壮な壁画にて綴られた一風景のように――――王は伝説の力を場に描き示す。
無数の宝具、その一つ一つが地を割り、空を裂き、神魔を討ち果たし、一国に名を遺した一品の原典と言うべきものだ。
それらが惜しむ事なく弾奏に篭められ、一発一発の弾丸として戦場に降り注ぐ。
最強の魔弾の射手―――アーチャーとして冬木の地に顕現した人類最古の魔人。
彼の紡ぎ出す宝具斉射の威容は破りようの無い無双の宝具。
数多の英霊を含めて、未だかつて誰も踏破した事のない無敵の弾幕である。
「そら、せいぜい足掻けよ! お次はこれだ!」
二の足を踏めない鉄機達を嘲笑いながら、王の手に握られたのは怪しげに霞がかった陽炎の鎌―――?
間髪入れずに其を振るわば、柄の先が虚空に溶けて消え、間合いを無視して翻る。
そしてその凶刃は遥か後方に位置する狙撃兵を真っ二つにした。
お次は重力を変動させる大槌だ。
巨大な漆黒の断面が大気を叩くと、羽持つ急襲兵が為す術も無く落ちて砕け散った。
王の喉に剣を突き立てる大命を果たす事なく、ひしゃげるボディ。
それはまるで神の手によって落とされたリンゴの実のように呆気なく無情。
生半可な質量の弾では宝具の弾丸に拮抗出来ず、射撃兵は悉く打ち負ける。
突撃兵は歩を進める事すら許されない。
重厚な鎧と耐久力を持つ装甲騎兵は10の宝具をその身に受けて原型を留めず微塵にされた。
「久方ぶりに我自らが矛を取ったというのに――――これでは余興にもならぬぞ!
ゼンマイ仕掛けのブリキの木こりの方が、まだ物の機微を弁えているというものだ!」
地に根を張る黄金の具足。 その足元にゴロゴロと無残に転がり落ちる、心無き兵の頭部。
それをグシャリ!と無造作に踏み潰し、王は敵の不甲斐なさを嘲り笑う。
屍の上に屍を重ね、残骸の山を築き、それが常の光景だと断じて憚らぬ傲岸不遜―――
これがもし命ある軍勢だったらと思うとゾッとする。
垂れ落ちた潤滑油は血潮、せり出したモーターは臓器、メタリックな骨格は白骨……
この世の地獄のような光景が展開されていたであろう。
そう、軍を以って英雄王と相対するほど愚かな事はないのだ。
どれほどの軍勢を揃えようと、かの王に対して質、量で優位を握る事など叶わないのだから。
無尽蔵に蓄えられた財宝こそ彼の軍―――その総量は現存するあらゆる軍の威容を凌ぐ。
王の目利きに叶った宝具の数々こそ死をも恐れぬ彼の精兵―――その質は錬兵された騎士を一蹴して余りある。
故に機動兵達がなす術もなく打ち落とされていくのも道理。
巨大な砲撃兵がハリネズミのようにされて、朽ち果てるのも道理。
全ては――――当然の成り行きである。
「ハハハハハハ! ハ、ハハハハハハハハッ!!!!」
暴君の狂笑が場を振わせる。
もはや馳せ参じた軍の群れは彼の強大さを彩る装飾でしかなく――――
――――――――――悪夢のような光景が果て度も無く、続く…………
――――――
??? ―――
「どうしたのかね綺礼? 質問が止まってしまったが、まさか拗ねてしまったのかい?」
「拗ねるも何も、貴様が無いと言うのなら無いのだろう。
私としても、別にあの女がくびり殺されようが興味はない」
「まあ待ち給え。 少し問答をしようじゃないか」
くるくると場にステップを刻みながら、神父の正面に座り直す白衣の男。
いつもよりも幾分、高揚しているようだ。
それは、この一戦に想い馳せるスカリエッティの心情を如実に感じさせる。
「私なりに今までの魔導士とサーヴァントの戦いを見て、考察を続けていたのだよ。
此度の戦いはその重要なターニングポイントとなる。
そこで綺礼、質問がある。 英霊というのは第97管理外世界における最強無比の戦力と見て相違ないのかね?」
「語弊があるな―――星の息吹が紡ぎ出す守護者に分類される護り手としては、最上位の存在ではある」
「ふむ、そこの所は今一つ理解が及ばぬが……質問を変えよう。
ならば、あの星の人間の現行兵器と比べてはどうか? 人間の持つ戦力は英霊に到底、太刀打ち出来ないものなのかね?」
スカリエッティが独自に調査したところ、闘争に限って言えばあの星の技術、向上心は見るものがある。
ことに質量兵器のカテゴリーにおいては管理局も無視できないレベルまで、あと一歩だろう。
地球人がもし星の海へ進出するとなれば―――ミッドチルダも彼らを非管理対象として無視出来なくなると推測される。
「私の見る限り、少なくとも性能面では彼らの戦力が英霊に大きく劣っているようには見えない」
確かに一撃で家屋を吹き飛ばし、音を超えて駆け、千軍を薙ぎ払う英霊は恐るべき戦力だ。
だが性能だけを取ってみれば、もはや人の手でそれを再現出来ないわけではない。
世に出ている近代兵器は人間を一瞬で血煙と化し、既に音速の翼を持つに至り、空爆は瞬く間に都市を焼き払う。
戦車の装甲は鋼鉄の弾丸を弾き返し、対物ライフルはその戦車を一撃で貫き、熟練した狙撃兵の最大射程距離は2qを超える。
そして大陸すらも一瞬で蒸発させる滅びの火をヒトは持つに至った。
その総戦力は決して――――英霊達に見劣りするものではないのだ。
「意外とサーヴァントなどより、あの星の軍隊を招聘した方が強いかも知れない。
なのに何故、遊戯盤は彼らを星の最強戦力として迎えたのだろうね?」
「愚問だな。 英霊の強さは性能面に寄るものにあらず。
例え火力で勝ろうと、それだけでサーヴァントは貫けん」
「それだ! 彼らは決して圧倒的なスペックを有しているのではない……そこまで不抜の戦力では無いのだ。
ましてや地球の技術力を遥かに超えるミッドチルダ管理局が派遣した魔導士達が相手となれば
一惑星の土着の英雄などに遅れを取る筈がないのだよ!」
そう……だが一回戦から二回戦の頭を見るに、最強を誇る管理局武装隊はサーヴァントに圧倒された。
スペックで勝る筈の彼らが、まるで不可解な壁に当たって膝を折るかのように敗走した有様は
英霊の強大さを演出するに余りあるものだった―――そう、本来のスペック差以上に。
「既存の兵器では神秘を犯せない………英霊はヒトに打破されるようなモノではない……
キミは初めにそう言ったね? ならば神秘を犯すとは? 神を殺すとは何か?」
どんなに優れた兵器を持ったとしても人は英霊には勝てない。
それは謂わば、ヒトに対する絶対的優位性の保持に他ならず、「人よりも優れている」という概念の力が英霊には働いているのではないか?
他ならぬ、人間の最強を具現化した存在だからこそ――
人が強いと思い描く幻想が形となった存在だからこそ――
英霊はヒトよりも強い。 ヒトがそう決めてしまったから―――
「ところで言峰神父…………神は、いると思うかね?」
「さてな」
「キミの立場上、そこは即答する所ではないのかい?」
「お前がどのような神を指して言っているのか不明だったのでな」
人が都合よく作り出した創作物であるところの神など男の与り知るものではない。
そも、世界の管理者である絶対の存在を、余人如きが知覚出来る筈が無いと彼は考える。
そのかざはしに手をかけられる人間など、もはやニンゲンを辞めた存在以外に無いだろう。
「フハハ! 聖職者なのか無神論者なのか分からない発言だねぇ!
私はね、綺礼……神とは人の心に住まうものだと思っているのだよ。
あくまで仮説に過ぎないが、定款と啓畏の入り混じった、神や魔に対する人の持つ原初の感情……
それは人が設計される段階にて生じる、生まれながらに持つ回路ではないだろうか?」
神や、魔に裁かれる――人知を超えたモノを前にした人間の抱く恐怖。
それは銃口を向けられた時の死の恐怖などとはある種、一線を隔すものだ。
死や滅びに際し、頭を垂れて祈り、赦しを乞わずにはいられないあの感覚は、単純な言葉で言い表せるものではない。
その人の肥大した感情、思考が、神をより雄大に形成していく。
そして人は神を、魔を、超えられないと断じ、自ら膝を折り、己を律する。
「それこそが人に対して英霊が不抜としている要素だと私は仮定した。
人は、神や魔を前にした時、知らず己にリミッターがかかってしまう。
人間が己の身を踏み外さぬように、己の身分を越えないように」
決して超えられない存在を自らの深奥に住まわせる。
言うなれば人という種がその身に生じさせているリミッターとでも言うべきか……
ならばどれほどの装備に身を包もうと、人が英霊に勝てないのは当然の摂理だ。
「なるほど……フラスコ越しに世界を覗く人種の言いそうな事だ」
神父は頷く。 彼の考察は現代において、人間が神という存在を定義づけるのに最もポピュラーで合理的な切り口の一つ。
神が人を作ったのではなく、人が神を――という、究極の無神論である。
神代から古代、中世、近代と時を経て、人間の心に浸透していったその理論。
不確かなモノを確か足らしめてきたそれは、進化の歩みを止めなかった人間の力の源であり、魔的な物を切開するメスだ。
故にその力に神秘が宿る事はもはや無い。
無いが……その力の基盤となっている思想―――
――― 神、何するものぞ ―――
その徹底した不信神もまた、神秘と相対するカタチで成り立つ強大な概念なのだ。
「合点がいった。 貴様らの魔法とやらは、つまりはそういう事か」
ならば、そんな強烈な人の意思……否、ニンゲンの毒を浴びながらに生み出された力が
神秘を覆す事になったとしても不思議ではない。 英霊をも弄ぶ、この遊戯盤の存在にも合点がいく。
優れた科学は魔法と変わらないとはよく言ったものだ。
地球の科学力がまだ未熟で幼いが故に、その土壌において人の与り知らぬモノが芽吹き続けられる理―――
だが地球よりも果て無き先を行くミッドチルダのそれは文字通り、神魔にまで及ぶ人の魔手。
「不遜極まりない人間の業の行き着く先こそが、神秘を穿つ切り札だっだとは盲点だな。
なるほど、確たる力の後押しさえあれば、人は神を殺す存在になれるかも知れん」
未だ神聖なるモノに縋り付く未熟な星の住人である言峰綺礼としては
その事実が業腹なのか、人の可能性に祝福を送るべきなのか判断に迷うところであった。
「実際はそう容易い事ではなかったがね。 だから私は初戦で大層、驚かされたものだよ。
ミッドの技術によって武装された魔導士のあの体たらく……
この星の出身ですら無い、闇の書の守護騎士ですら、英霊に飲み込まれる始末だ。
ふむ……………こうなってくると、騎士や魔導士ではダメなのかも知れないと私は思ったのだ」
騎士、魔導士という類では彼らに対してアドバンテージを得られない―――
彼らには明確に信奉する神はいないが、武を目指す者特有の信仰がある。
自身が思い描く理想の武、究極の技。 そういったものを夢想し、彼らは己の肉体を苛め抜いているのだ。
「肉体の鍛錬のみで力を求めるなどという非効率な行為……信仰無くして為せる狂気とは思えないからねぇ。
だからこそ、究極の体現である英霊の威容に引きずられ、同じ土俵にまんまと乗せられてしまうわけだ。
一個の人間、一個の駒としてアレらと相対する事が、そもそもの間違いなのかも知れない」
「随分と色々考え抜いたものだ……まったく科学者という人種は99%の無駄の中から1%の真理を探り当てるというが
お前を見ていると納得せざるを得んな」
素直に感心する神父だった。
魔術や神秘に全く触れてこなかった類の異世界の人間が、独力でよくここまでの仮説に行き着いたものだ。
その理論の幾つかは確実に真理のかざはしに切り口を入れているのだから本当に大したものである。
特に人と英霊を結ぶ「<」の考察については興味深かった。
人が英霊に対し、神聖なるモノに対し、「勝てない」という因子を埋め込まれているという理屈は面白い。
とある獣が持つ「霊長類に対する絶対殺害権」と同種の力が英霊にも働いていると、この男は知らず言い放ったのだから。
「そこで綺礼、最後の質問だ。 人の持つリミッター………即ち <神> を踏破し、禁断の域を常に冒してきた人種を何という?」
「…………」
「その科学者さ」
スカリエッティの口元が歪に釣り上がり、双眸が大きく見開かれる。
神殺し―――人と神魔を隔てる壁を次々に撤去してきた人種。
遺伝子に組み込まれた枷を物ともしない、神を恐れず、最も冒涜してきたモノ共の総称こそ「科学者」。
「もう一度いうが、彼女に英霊と相対するだけの魔的な要素は何も無い。
私はただ、神秘という毒に犯されず、ミッドチルダの技術力、戦力を余さず使いこなせる人材を求めただけさ。
そして私の眼鏡に最も適ったのが彼女だった」
神代の時より長い年月を経て増え続けてきた人類が
鉄と火を持って大地を犯し、神を汚し、追いやってきたように―――
どれほどの威容を目にしても、全てを試験管のフラスコの中の出来事と断じ、高みから物事を観測できる者。
幻想の入り込む余地の無い生粋のオカルト殺しとは、神秘を殺しつくす知識の探求者に他ならない。
戦って勝つのではない。 英霊などという現象は、あくまで処理するもの……消し去るモノだ。
化けの皮を剥いでしまえば良い。
「神秘」というベールを剥がれれば、あれは兵器を超えるものでも何でもないのだから。
「故に覚悟しておいてくれよ綺礼……キミのサーヴァントはあっさりと五体を裂かれるかも知れない。
ピンセットで摘まれる虫けらのように、惨めに、呆気なく」
「……………」
「彼女は生きながらにして、私のいる高みに手をかけた逸材さ。
凶器と死の狭間で私の研究の残滓を拾い上げ、一つの奇跡を成し遂げた。
まあ、その成果は彼女の満足には程遠かったようだが……」
どうやって生き延びてきたのか―――?
その不可能に等しい探求を虚数空間にて延々と、頭の中で巡り巡らせて来たであろう彼女―――
「unknown! unknown!! unknown!!! 久しぶりに脳髄に痺れが走るッッ!
どのようなモノに変容を遂げているのか……ああ……あの頭を切り開いて存分に観察してみたいッ!」
天を仰いで狂笑に咽ぶ科学者ジェイルスカリエッティ。
こうなってしまったら、暫く会話にならない。
幾度目になるか分からない溜息をつき―――言峰綺礼は今一度、終わり無き血みどろの闘争を求める盤に目をやった。
期せずして、高町なのはが異世界の魔法使いの助言から
英霊という存在の端に手をかけたのと―――
一人の科学者が、盤に降り立ったのは――――それは同日の出来事。
天秤が再び、揺れる。
果たしてどちらに……?
その答えは盤だけが―――
――――――
Emptiness ―――
降臨したその姿を――――まず初めに見た彼が思わず漏らした歓喜の叫び。
それこそ、この狂気の科学者でさえ予想のつかないモノになって現れた「彼女」に対する
男の最大級の賛辞に他ならない。
「ああ、プレシア……キミの頭の中は今、どうなっているのか……」
男の探究心を刺激せずにはいられないほどに―――今の「彼女」は反則だった。
かつて一流の魔導士でありながら、優れた科学者でもあった「彼女」。
幻想の入り込む余地のないほどにロジックを収めた彼女が―――
とある理由から不可能の領域に、不可能と知りつつ、不可能を可能にするために奇跡を求めた。
その果てに非業の死を遂げた筈の彼女が、今わの際に望んだ事――それを与り知る者はいない。
分かっている事は、ミッドの技術・戦力を満遍なく学び担える逸材でありながら
晩年の「彼女」の在り様は、まるで魔術師に近い位置にあったという事。
狂気と絶望の果てに、死の海へと投げ出された彼女の瞳は―――その後、何を映していたのだろうか?
最古の英雄―――神秘の具現を犯すものの名は………
いや、よそう。 もはや「彼女」自身、己が名に微塵の意味すら感じていない。
かつて俗世に生み遺した雛鳥が自身の元に迫ってくる事など露知らず―――
全てを虚へと置いて来た筈の親鳥は再び………届かぬ奇跡を求めて羽ばたいた。
――――――
――――――
「……………むう、」
王の総身に痺れにも似た感覚が走った。
それはすぐに消えてしまったが―――
彼の思考を余さず向けさせるに足る凄まじいモノだった事は確かだ。
「何と卑賤な――――飢えたケダモノですら、もう少し品位というものを心得ているぞ」
どこよりか無遠慮に纏わり付く視線を感じる。
また無礼者どもが覗いているのかと思ったが―――すぐに違うと思い至った。
いつもの奴腹とは明らかに違う、粘り、絡みつくような視線……何と卑しく、直情的に対象を射抜く感情だろう。
舌打ちを漏らすサーヴァントの相貌に、これ以上無いほどの不快感が灯る。
「それにしても――――――飽いてきたわ」
依然、代わり映えのしない破壊の渦の只中に立つ黄金の王。
凄絶の一語に尽きる光景も、数時間と繰り返されれば趣を失うのも無理からぬ事。
無様に四肢を?がれ、地を転がり這う鋼鉄の兵の残骸が、足の踏み場も無いほどに積み上がっている。
既に一刻を過ぎた辺りで、王の狂笑はピタリと止まっていた。
何時まで―――何時までこの茶番を続けるつもりか?
もはやどれほど繰り返そうと王の威容は崩せぬというのに。
相も変らぬ戦の趨勢。 既に討ち果たした傀儡の数は200を超える。
舞台の中央で指揮棒を振るうかのように佇む奏者であったが、彼を中心に滅びの舞いを踊る演者は一向にその数を減らさない。
エルフの森に伝えられし破魔の矢が、弓を要さずに宝庫より打ち出される。
フィールドを抜いて敵陣を真っ二つに切り裂く妖精郷の神器。
だが、せっかくの宝具のお披露目も、その豪壮さに驚き震え、かしづく心すら持たぬ輩が相手では郷が乗らない。
討ち果たされた、その上から次々と沸いて出る傀儡兵はまるで穴倉から這い出る虫の類だ。
男の口から今一度、舌打ちと共に嫌悪の呻きが漏れる。
「頭数だけか………我と相対するに足るものは―――小賢しい」
ゲート反応は未だ衰えず、次々とフォールドアウトしてくる敵。
このような物をいくら並べ立てようと王にとって脅威にはなり得ない。
蹂躙掃射が始まってより数分間―――形だけは未だ崩れない拮抗に、男も苛立ちを感じていた。
これは千日手の兆候か?
いや、無限の戦力などというものがそう有り得るはずが無い。
やがてどちらかが所持する戦力を吐き尽くし、場に屍を晒す事になるだろう。
王はその点、自身が遅れを取る事など微塵も思ってはいない。
その蔵には古今あらゆる宝具が眠っており、世界を席巻した最古の宝物庫の総量は、そのまま世界中の宝具の総数と同意。
かの蔵こそまさに、星の財産がそのまま眠りし巨大な揺り篭に他ならないのだ。
だが――――だが、問題が一つ………
「どこにいる……我の目に届く範囲にはいないようだが」
王が雑兵に詰まされる事など間違っても有り得ない。
だが、そもそもこれは序盤の配置からしておかしかったのだ。
敵は……片方は――――――
――― そも、盤に詰むべき王将を並べていない…… ―――
――――――
これがゲーム盤であるならば、それは反則などというレベルの話ではない。
片方に勝利条件が伴わないゲームなど、ゲームとして成り立たない。
先ほどから世界を統べからく見通す王の目を以ってしても、敵の位置を掴めない。
これではいかにギルガメッシュとてどうしようもない。
双方、決して詰まされる事のないゲーム―――即ち千日手。
だが、いかに鉄壁を誇ろうと戦場に首を晒していれば万が一、という事がある。
対して自身の位置すら相手に示さぬプレイヤー。
どちらが有利か不利かなど論ずるまでも無いだろう。
彼が揺ぎ無い事を考慮に入れてなお――――このままではいずれ天秤は傾く。
「我を見下し―――頭上より次々とゴミを投げ捨てるかのような振る舞い……
赦さぬ…………赦す道理が見つからぬ!」
倦怠が再び怒りとなって王の双眸を灯し、天を仰ぐ。 ギリギリと歯を噛み鳴らす男。
もはや彼とて感じずにはいられない。 敵の尽きせぬ不遜を。
偉大なる王を啓蒙せぬ無礼極まりない悪行を。
その微かに乱れた思考の隙に――――
「―――――、ええいッ」
全身をなますにされながらも、数体の傀儡が王の頭上に辿り着いていた。
第何十陣になるかという敵の攻勢がついに報われた瞬間である。
「……無駄だというのが分からぬか!」
だが、それまでだ。 攻防一体の宝具は揺ぎ無い。
弾幕と共に鉄壁の防壁が王の周囲に張り巡らされる。
常に闊歩蹂躙してきた彼がこのように守りを固めるのは珍しい。 久方ぶりの戦場故、慎重になっているのだろうか?
何にせよ、こうなったギルガメッシュはまさにバビロニアの黄金要塞―――付け入る隙が無い。
手足を、胴を串刺しにされながらも敵を直下に迎えた物言わぬ兵士達。
彼らに許された攻撃は、その手に携える得物をギルガメッシュに向かって1投するのみ。
それだけで、時を置かずに放たれたバビロンの斉射によって彼らは粉微塵と化す。
「―――、ハ」
あまりにも無力に過ぎる相手に、かの非情な王とて哀れみを感じずにはいられない。
放たれた数本の槍、斧、大剣が王の直下に降り注ぐも、あんなものは引いてかわすまでも無い。
瑣末な投擲は、彼にとって流れ弾ほどの脅威も無く、張り巡らされた盾に容易く阻まれて惨めにその役目を終えるのみだ。
……………………、、、そこで王は、一瞬―――弛緩した
――― そして、その時……… ―――
「な、にィッッッ!!!!?」
サーヴァントの、その瞳が盛大に歪み――――
保たれていた均衡があっさりと崩れ落ちる兆候が、場を支配したのである。
――――――
余裕にして優雅さすら感じさせていた英雄王の相貌が、驚愕を称えて歪む。
「貴様っ………アー………チャーッ!!!」
地の底から響くような怨嗟の声を紡いだ英雄王。
その視線の遥か、遥か先にて―――
ギリ、ギリ、と両腕の筋肉を軋ませて弓矢を構える、あの英霊の姿があった!
標的は――――もはや言うまでも無い。
時間の流れが圧縮される―――
秒が分に、刹那が永劫に感じられる―――
近代兵器のライフルを精度、威力で遥かに上回る、弓のサーヴァントの狙撃。
伏して待った好機を不意にするような愚鈍ならば彼は弓兵などとは名乗っていない。
手向けの言葉すら発する事無く、既に中つ事を約束された宝具の矢が今――――
アーチャーの手から放たれたのだ!
――――――
緩やかに、緩やかに、時という名の壁を切り裂いて王の下に飛来する矢。
ゆっくりと、ゆっくりと、引き伸ばされた時間の波を泳ぐように―――
だが引き伸ばされたのはあくまで体感時間のみ。
ギルガメッシュが新たなる宝具を取り出す暇などある筈が無い!
既に展開した防護陣―――堅牢鉄壁なのは言うまでもなかったが
其が元々、別々の宝具を寄り合わせて形成された防壁である以上、継ぎ目は隠しようも無い。
ならば防御と防御の隙間を穿つは弓兵の得意分野。
弓矢の威力の常識を超えた 「壊れた幻想」 ブロークンファンタズムによる一撃が―――
「がァッッッ!!!??」
ギルガメッシュの防壁の隙間を穿ち、数個の盾をまとめて散り散りに吹き飛ばしたのだ!
弓兵とは、敵の鎧と鎧の継ぎ目をすら狙い打つ化け物の総称だ。
そんな針の穴を通す一射を宝具の弓でやられたのだからたまらない!
破壊の飛沫が王の尊顔を犯し、傷つける。
辛うじて踏み止まりはしたが、膨大な魔力を持つ複製された宝具の爆発により爆ぜた上半身はバランスを崩し
展開したバビロニアの城塞防壁が余さず吹き飛ばされ、手甲が粉々になるに留まらず、王の腕の付け根が抉り取られる!
苦痛よりも勝る憤怒に顔を歪ませる英雄王。
この世で最も尊い肉体の流血―――認められる筈が無い。
怒声はくぐもって声にならず、横槍を入れた贋作を憎しげに睨みつける。
その視線の先……弓兵がニヤリと嗤い――――指先をスッと天に向ける。
攻防共に愚昧を寄せ付けぬからこそ王。
だが圧倒的であるが故に――――――
――― 玉座とは一度、傾けば脆い ―――
「っ!? しまっ………!?」
それが天の裁可だ、といわんばかりの弓兵の表情に臍を噛んだ時にはもう遅い。
やがて凝縮された時の流れが元の速さを取り戻し―――
彼の直下、完全無防備となった肉体に、傀儡兵より投擲された数本の刃が降り注ぐ。
――― ズド、ガッ、グシャ、 ―――
――――――――千日手は………いとも簡単に覆された。
戦場を彩ってきた豪壮なそれとはあまりにも相反する呆気なさ。
あっさりと………場に、肉体を肉隗へと変える音が響き渡ったのだった。
――――――
ARCHER,s view ―――
「………………」
敢え無く決着を見た戦場―――そこから四里ほど離れた藪の中に私はいた。
「………呆気ないな、英雄王。 キミは一体、何度同じような終わりを迎えれば気が済むのか?」
弓を番えたままに乾いた笑いが漏れる―――――
この身は人類最古などと比べるべくもない、今より先の時代より遣わされたサーヴァント。
人々から崇拝はおろか、理解もされぬままに英霊となったが故に至った境地がある。
その心の有り様もまた、奴とは一線を隔すもの。
現代においては―――英霊などというモノは思うほどに磐石でも絶対でもないのだ。
それを理解しているが故に、宝具の相性以前に私は奴など敵ではないと断言出来る。
未だに最強無比の夢に惑い、呆けた王の寝首を掻くなど造作も無い。 今までの仕事に比べればラクなものだ。
いい加減、次があるなら学んでおけよ英雄王―――いらぬ誇りや慢心など、蛇にでも食わせてしまえ。
「しかし………私を囮に英雄王を釘付けにし、鳥篭に囲って安全な場所から敵を殲滅。
惚れ惚れするほどに見事な手際だな」
どのような状況であれ、奴を生かしておいて好転する事態など絶無。
ここで倒せるならばそれに越した事はない故、馬の骨とも知らぬ輩の手管に乗ってやった。
この結果に唱える異など持ち合わせてはいない。
さて、通例ならばこれで終わりの筈だが……
出来る事なら、このまま永久に黄泉平良坂へ堕ちて欲しいものだ。
散り際を弁えぬ英霊ほど無様なモノもあるまい。
義理は果たした―――
この私を囮に使い、あまつさえ共に討ち抜こうとした輩。
話せば案外、気が合ったかも知れんが………
ともあれ、あとは野となれ山となれだ―――好きにするが良い。
――――――
こうしてマスターでもない「司令者」に最低限の義理を果たした後、弓兵は闇に消える。
その背中を追う黒衣の燕尾の影に――――気づかないままに。
舞台は再び、決着を見た戦場へ―――
――――――
「酷いなぁ………みんなして寄ってたかって」
場に、緊張感の欠片も無い間延びした子供の声が紡がれた。
「一応これ、ゲームなんでしょう? やり過ぎは白けますよ?
まあ日頃の行いがアレなので、報いを受けているのは理解してるんですけどね」
決着はついた筈だ。
盤に沸いたバグ―――英雄王ギルガメッシュの掃討はここに果たされた。
――― では、ならば……………この子供は何なのか? ―――
先に斃れた英雄王と数分違わぬ金の髪に灼眼の双眸。
その表情は比べようも無い、穏やかで慈愛すら感じさせるもの。
「いや、散り際云々と言われても困るんですよ。 何せ、ここでの <死> は本当に不味い。
ついうっかりで死ぬわけにはいかないじゃないですか?
大人の僕でも流石にその辺は弁えているようで……ねえ?」
だが同時に、子供の纏う威圧感は彼らが同一人物であることを微塵も疑わせなかった。
いずれは神すら脅かす最古の暴君となる―――その前の、見違えるほどに尺の縮んだ彼。
縮んだが故に、額を、心臓を、肩を、袈裟架けに裂く筈だった刃は素通りし
一歩も動かなかった少年の肉体を、刃が自ずと素通りしたかのような異様な光景を場に映し出した。
まるで天意が味方し、ここに少年を討つ事を拒否したかのような―――
「あたた……ちょっと体が削られていますね……」
彼の両の瞳が、自身に迫る無機の兵団を―――その先にある敵の姿を見据えて射抜く。
既に制空権は敵のものだ。
数百を超える鉄騎兵が空を埋め尽くし、蒼を鋼色に染め上げていた。
その直下にて、ギルガメッシュ少年は先ほどの気配。
虚空を超えた先にある存在感を今一度、確かに感じ取る。
「まったく大人の僕にも困ったものです。 コレしかないと分かっていても、気にいらない相手には使えないだなんて……
まあ本来、今の僕には到底扱えない代物ですけど―――
今回はパラメーターUP使い放題だというし、何とかなるのかな?」
紡がれた盤上が興奮に身悶えし、更なる闘争と血肉を求める中で―――
少年は、小さな手には不釣合いな円柱の剣を構えて笑う。 朗らかに、人懐っこく哂う。
決して翻弄されぬ神秘を背負いし少年王が―――
「さあ行きますよ、エア―――恐い人を引きずり出しちゃって下さい」
―――――――――――――虚なる者に、逆王手をかけるのだった
中編終了です
次回も出来るだけ早く投下したいと思います
ではまたノシ
油断がなくなってさらに厄介に
しかも能力アップのアイテム使い放題とかどうしろと
リリブラさんGJ!
さすがに補正ない相手には生き汚いな英雄王
アーチャー、トドメ差してけ!
いや、プレシアいるから正解手なんだけどね
さて、黒い影は何者なんだぜ?
>>157 大と違ってバビロン大量展開やノーリスクのエア連発はできなそうだから、連撃で封殺できればなんとか
いや、そうならないように立ち回られるだろうけどさ
王気が減った分、気迫勝負にもっていくとか
皆様こんにちは、以前おっさんよびを書いた作者です。
なんとなしに書いた短編を投稿してよろしいでしょうか?
リリブラ氏の様な名作の後に、
暇潰しで書いた様な自分の作品を載せるのは腰が引けまして・・・。
>>159 おお、黄泉路が開いて戦士が帰ってきた!
個人的には気にしないっす
少し時間あけて、土日にするという手もありますが
>>160 自分を待っていてくれた人がいたなんて・・・感無量です。
それならもう少し手直しをするので、今日の九時あたりに投稿します。
OK
遠慮なくやっちゃって下さい
少し遅くなりました。それでは思いつきで書いた短編、A&Aを投下します。
それじゃあ今日の授業はここまで。明日も元気に登校して下さいね」
「起立、礼」の号令が終わった途端、教室がざわめきに包まれた。ここ聖祥小学校では放課後に塾や習い事に行く生徒が大半だが、
普通の小学生の様に放課後にクラブ活動をしたり、遊ぶ約束をする子供も少なくない。
教室のあちこちから、「公園でサッカーやろうぜ」や「新しく出来たお店に行かない?」といった声が聞こえる。
「なのはちゃん、今日はお稽古がお休みの日だから家でゲームをやらない?」
「ごめん、すずかちゃん。今日は用事があるの」
月村すずかもその例に漏れず、親友の高町なのはを誘おうとするが、なのはは寂しそうに断った。
「え、また?なのはちゃん、最近忙しいみたいだけどどうしたの?」
そう、最近なのはは用事があると言ってこちらの誘いを断ることが多くなった。それにどんな用事かと聞いても、
適当にはぐらかしてしまう。もしかして自分達を避けているのだろうか?
「うん・・・本当にごめんね」
そんなすずかの考えを察したのか、なのはは申し訳なさそうに謝った。それでも理由は言わない。いや、言えない。
なにしろ今は同居人でもある友人に秘密にして欲しいと頼まれたし、それ以前の話で、
(実は魔法少女をやってます、なんて言ったって信じてもらえないよね・・・)
しかしこのまま何も話さずにお誘いを断るのも良くないだろう。
すでに三回続けて理由なく断っているから、そろそろ誤魔化すのも限界があるとなのはが思案していると、
「仕方ないじゃない」
ふと、もう一人の親友アリサ・バニングスがそっぽを向きながら答えた。
「なのはにもなのはの事情があるんでしょ。無理に誘ってもなのはも困るだけよ」
おや?となのはとすずかは内心で首をかしげた。アリサの性格を考えると、つっかかて行き事情を問いただそうとするだろう。
少なくともこんな風にあっさりと身を引かないはずだ。
「アリサちゃん、その、本当にゴメ・・・」
「そのかわり」
それでも申し訳なさそうに謝りかけたなのはの顔の前に、ピンと人差し指を立てられた。
「絶対に無茶はしないこと。あんたは向こう見ずと言うか、猪突猛進な所があるしね」
「あー、分かる分かる。なのはちゃん、頑固なところがあるから」
「そ、そんなことないよ!?」
いーや誰がみても頑固だ、そんなことないってばぁ!などと、賑やかに言い合いながら放課後の時間は過ぎて行った。
あの後、今度は必ず遊びにいくとなのはが約束し、とりあえず今日は解散となった。
今は執事の鮫島を下がらせ、アリサは自室で寛いでいた。
「それで、見た感じどうだった?」
不意に、アリサが虚空に向かって話しかけた。
今、アリサの部屋には彼女自身しかいないのだから、当然返事が返ってくるわけがないのだが・・・
「――ほぼクロだな。彼女は十中八九、街中の妙な魔力と関係がある」
返答と共に虚空から男の姿が浮かび上った。
浅黒い肌にオールバックに刈り込んだ白髪、長身で精悍な顔立ちだが、
鎧にも見える黒いインナースーツの上に赤い外套を着込むというおよそ日常では見ない出立ちだった。
「その理由は?」
だがアリサは突然現れたことにも、男の奇妙な服装にも別段反応を示さず、男の返答を促した。
「以前から高町なのはの魔力は高かったが、最近は魔力の流れが制御され始めている。
あのフェレットが只の魔力を持ったフェレットだという線はなくなったな。おそらく使い魔の類だろう」
「そう・・・最近付き合いが悪くなったのも、元気がないのもそれが関係してるのね」
知らずアリサは唇を噛んでいた。やっぱりなのはは無茶をしていた。
なぜ話してくれないのか。あの子はどうして一人でなんでも抱え込んでしまうのか。
しばらくして、アリサは意を決して口を開いた。
「アーチャー、頼みがあるんだけど・・・」
「影ながら高町なのはのサポートをしたい、か?」
男・・・アーチャーはやれやれといった表情で先を続けた。
「さっきもそうだったが意外だな。君の性格を考えるなら真っ先に高町なのはに問い詰めると思ったが?」
「今のなのはに無理に問い詰めても答えないでしょ。・・・私は魔術のことなんて分らないわ。
でも友達が悩んでいるなら、力になってあげたい。いつか話してくれるまで、影で支えてあげたい」
ふむ、とアーチャーは頷いてアリサの顔を見た。
・・・生前、もはや残滓を残すのみとなってしまった自分の過去で同じ瞳をした少女がいた。
彼女もまた、自分の妹を影ながら見守っていたな、と遠い目をしながら。
「了解だ、マスター。期待に応えるとしよう」
この日、紅き弓兵は幼きマスターと共に再び戦場へ乗り出した。
その先に、一人の少女と狂った悲しい願いがあるのを、まだ彼等は知らない・・・。
投下終了です。
しかし書いてる内は気付かなかったけど、こう見ると意外と短い・・・orz
前作のおっさんよびをwikiに登録してくれた方、ありがとうございます。
恥ずかしながら自分ではwikiに登録するやり方が分からなかったもので・・・///
GJ!
そして二人は出会ってしまったというやつですね
弓「フェイトーーーー君を愛している」
フェイト「アーチャー、どうして貴方はエミヤなの」
アリサ「アーチャーを返して!この泥棒猫!」
鮫島「(お嬢様……)」
セイヴァー☆おにいさんがプレシアママンに慈悲してくんないかなー
>>167 けっこう手探りでなんとかなるですあるよ
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>>156 GJ
英雄は見栄と意地の張り合いなら最強無敵か
いやまあ、確かにテンションの高さが戦力に直結する脳味噌の人たちですが
>>167 GJ
と、言いたいところだが、アナタには義務がある
アリサをもっと書かねばならない
さあ、アリサちゃんをどうしたいかキリキリ殻が良い
>>167 GJ
バーニングアリサがまさかの聖杯戦争参戦ですか
庭園で殴られた借りとばかりに大聖杯の前で取っ組み合う、なのはとアリサが見えた
予想外の反響・・・感謝感激です。
>>168 自分の中でセイヴァーは聖☆お兄さんよりも手塚治虫の漫画のイメージが強いのです。
魔法尼僧プレシア〜涅槃を求めて〜、始まります。
……ゴメン、流石に無理。
>>169 ありがとうございます。お陰で無事wikiに登録できました。
>>170 ううむ、実は一発ネタのつもりだったのですが……こうも期待されたらやるしかない、か?
>>171 ええと、Sサイズの赤原礼装は、と。
プレシアさんのSっぷりは、第五次キャスターのメディアさん、もしくは荒川アンダーブリッジのマリアさんに通じるものがあると思う。
型月世界とリリカルがクロスするなら、やはりプレシアさんが伽藍の堂に接触できたときの事を考えますよね……。
プレシアが橙子に接触
↓
ヒュードラ+デバイス+傀儡兵+人形+建築
↓
アラヤマンションが大仏型の巨大ロボに
>>169 こういう作品登録方法もテンプレやWikiの目立つとこに置いとく方がいいのかな
そこんとこ皆どう思う?
遅くなったけど、リリブラの人、A&Aの人、乙! そしてGJ!
Fateキャラの中ではあるいは一番強いんじゃね?とかいわれたりする子ギルと、コスモパワーを得た総統フューラーみたいなプレシアさんとの対決か…。
ギル様のうっかりがない分、どう転ぶかわかんねえ……次回も期待してます!
あとアーチャーの相棒はどう足掻いてもツンデレなんだなーとそこはかとなく納得しました。
ガチなら子ギル>ギル>大英雄>子ギル>・・・のループじゃねえかと思ってる
>>174 それで参加者が増えるならいんじゃね
自分は、まとめトップに載せるのがいい
テンプレにはいらないとオモ
ただでさえ相性の問題を宝具を出して覆せるバビロンを、より有効に使える子ギル。
勝てる英雄とかなかなか思いつかねえ…バサカならスペックでなんとかするかもしれんが。
そういえばフェイトルートだっけ。
もしかしたら本性知らずに子ギルとフェイトが接触するとかの展開があるかもと予想してみる。
この小ギルがなのはさんと接触した時の反応が気になる
子ギル「ボクの家臣、というよりお目付役になってみません?」
子ギル「ほら、せっかく10年で電子の新世界も発達した所なのに、
大きいボクが必要もない聖杯に手を出してウッカリ死んだら、嫌でしょう?」
子ギル「嫌なら(後顧の憂いは)死んでくださって結構です」
ってリリカルブラッドか
ニコニコしながら、ヒントみたいなこと言いつつ付いてきて品定めか?
……やっぱり、魔剣あたりでグサッとしそうな気もする
それか、いきなりキス
子ギルの好みは三枝さんのような、守ってあげたくなるタイプらしい。
しかしリリカルの登場人物のほとんどがセイバータイプのような気がする。あえて言うなら……キャロ?
>>181 キャロもキレたらドラゴン召喚しちゃうからなぁ……
>>181 すずかは条件にピッタリだろ。
大人の我様でも吸血種など些細な問題だと言うだろう。
雑種に区別などない、という意味で。
大にはアリサとかいいんじゃね
金髪だし相性悪くなさ……マシそう
ところで、リンディにピッタリのサーヴァントがついに現れたな
その名も緑茶、ことロビン・フッド
超メジャーのアーチャーだぜ
リンディ茶&宝具による毒強化=???
エクストラの新鯖は聞き及ぶ限りでも突っ込みどころありまくりらしいからなあw
はやてとか「なんでやねん」とかいいそうなのばかり。
色々と面白そう。
五次は安定して強い、四次はほっとくと厄介、フェイクは一芸
対して、エクストラは相性にハマったら凶悪
ネロ「魔法くらい使える!空戦ぐらい出来る!デバイスくらい作れる!」
主役のセイバーからして、これで魔法☆皇帝の誕生しかねん変態
チート使いなんだが、チートと呼ぶ程でもないというのが多い
八極拳?全ハサン涙目
皇帝特権によるスキル付加か
派手な砲撃だけA〜AAAランク、あとはD〜Bランクとかになりそう
ぼくの考えたエクストラはやてちゃん!
クラス:マスター
キーワード:ベルカの剣十字、機動六課
筋力E耐久D敏捷E魔力A++幸運D
闇の書EX→×:際限のない魔導の力を授ける書。使用不可。
夜天の主EX:戦闘を召喚した疑似サーヴァントに委任可能。出番が減る。
蒐集A++:闇の書により蒐集した魔導の行使。
氷結の吐息MP60:魔力ダメージ。筋力低下。
ミストルティンMP70:魔力ダメージ。AGBの内、ランダムで2つスタン。
デアボリック・エミッションMP80:魔力ダメージ。敵マスターのMPを0にする。
リイン召喚MP50:リインUを召喚。対応スキルの開放。
ユニゾンMP10:ユニゾンして敏捷を除くステータスを強化。
騎士召喚MP60:ヴォルケンリッターを一人召喚。対応するスキルを開放。
宝具ラグナロクMP99:召喚されたヴォルケンリッターの構成に応じた魔力ダメージ。
なんだかマイナス補正の多いサーヴァントだな…。
出番が減るのはスキルなのか……
なんという鬼性能のスキル……
これでHP(エッチポイント)さえ高ければ無敵だろ
ふと、ザッフィーにモフモフする騎士王を幻視した。
というか、出番はなくともあの守護獣、見えてないところでみんなにモフられているんではないろうか…。
>>192 俺はライダーさん(5th)の馬になるザッフィーが思い浮かんだ。美女にまたがられて満更でもないザッフィー
ザフィーラって結局、犬なの狼なの
それとも
ザフィーラとかの使い魔は生殖できるのかな
>>188 つえええええええええええ!!!
と、思ったが普通の殴り合いが鬼門か
ザッフィーは漢。
使い魔とか犬とか狼とかじゃなくて漢。
漢だから幼女とかの世話やいたりモフられたりするのがお仕事。
ザフィーラが犬だった場合、その区分は間違いなく座敷犬……
流れ斬るようで悪いけど
カレイドスコープ二十話『並行』の準備が出来たので投下するよ
ではスタート
#1
新暦96年某所―――
足元の感触を確かめるように踵を鳴らす、
久しぶりの転送でつい不安になってしまったが、無事到着したようだ
「あのな、ヴィヴィオたちが心配なのは分かるけど、
毎度毎度お前が何処か行くたびに呼び出されるあたしの身にもなれっての」
暇じゃねぇんだよ、とお決まりの文句を続ける相方をなだめながら洞窟の奥へ進んでいく、
もう十では足りぬ年月を経たと言うのに変わらぬこのやり取りに笑みを浮かべながら、
顔なじみの調査班と挨拶を交わしつつ、漸く開けた場所に出た
「なのはさん!」
こちらに気づいて開けた場所の真ん中で“それ”を見上げていた一人が振り返る
その声で気づいたのか、一人、また一人と周囲に居た者たちが集まってきた
「なんだよ皆雁首揃えやがって、
同窓会かってーの」
「まぁまぁ、ヴィータちゃん、いいじゃない」
ヴィータのいうとおり、元六課フォワード部隊全員が揃っていた、
なのは同様第一線を退いたものも中にはいるが、全員決して暇を持て余す立場でもない
「通信の目処が立ちそうだって聞いたけど、どう?」
「うん、いまユーノとシェリーが頑張ってるところ」
フェイトに促されて“それ”のところまで行く、
稼動状態ではないのか魔力反応らしきものは無い
「あれ?」
「どうしたんですか、スバルさん?」
“それ” ―――ロストロギア『カレイドスコープ』の本体を間近に見て、
首を傾げるスバルにエリオが声をかけた
「うん、あの子達と一緒に十二個の端末が落ちたんだよね?」
「そのはずですけど―――あれ?」
首を傾げながらスバルの見ている祭壇―――端末の収められていた場所を見ると
「そう、二十一個全部あるんだよね」
「ユーノ君、どういうこと?」
祭壇の手前に立つ、四十になろうかと言うのに未だに貫禄の付かない優男に問う
以前、一度髭を生やしてみたものの身内全員に爆笑されてやめた過去があるのだが、
そのあたりは余談だろう
「推論の域を出ないけど、
このロストロギアは平行世界同士で自分自身を補完しているんじゃないかな」
もちろん伝え聞くとおりの性能があればだが
並行世界Aで起きたトラブルに対し、起きていない並行世界Bの情報を上書きすることで
無かったことにする、と言うわけである
「それだと理論上壊せない訳ですよね?」
「うん、移設も難しいだろうから、
コレを封印するにしてもどうしたものだろうね」
ロストロギア指定されるものは使い方次第によっては極めて危険な代物ばかりであるが、
このような辺境の無人世界に観測員以外の人員を配置し続けるのもあまりメリットが無い
果たしてどうしたものか
「まぁその辺はお偉方の判断次第だろ、
それで、本題はどうなんだよ?」
難しい話に面倒になったのかヴィータが話を戻す、
これで最前線では部隊指揮官だったりするので不思議である
「大体できたよ、後は試してみるだけだね、
『カレイドスコープ』を中継して普通の次元通信の要領でデバイスに送れるはずだから」
だれかやってみる?
と手元にコンソールを呼び出しながら問う
「どうしようか?」
「なのはさんどうですか、ヴィヴィオ達心配でしょ?」
それを言うならスバルもだけどねと言いながら、
特に反対意見も無い様なので頷いてユーノに指示を出す
「さて、それじゃ始めるよ」
キーを叩くユーノにあわせカレイドスコープに薄い明かりがともる、
さて、繋がるかなと思いながらなのはは空間モニターを開き呼びかけた
#2
新暦78年―――
聖王医療院
「あ―――」
目を開けて最初に飛び込んできたのは、
泣きそうな顔で自分の手を握るフェイトの姿だった
「フェイトさん……」
「よかった……
ずっとうなされてたから心配したんだよ?」
酷く寝疲れをしているが、魘される様な夢を見ただろうか?
内容が思い出せないが、夢の内容を常にはっきり覚えている人間は居ない、
大方、軟禁されていた頃の夢でも見たのだろう
「皆に伝えてくるね、
あ、何か食べるもの持ってきた方がいいかな?」
勇んで席を立つフェイトに苦笑する、
空腹なのは事実だが、やはりフェイトから見ればまだまだ子供の域を出ないのだろうか
「いい女じゃねぇか」
病室の窓から聞こえた声にそちらを向くと、
窓枠に人がぶら下がっていた
「何でそんなところに居るんですか?」
「なに、やれ検査だなんだと面倒なんでばっくれたところでな、
で、通りがかったら逢瀬の最中だったんで」
空気を読んで窓の外で見てた、と窓枠に腰掛けて言う男
一般論として、人それをデバガメという……
「そりゃ日ごろからあんな女の世話になってりゃ肉付き薄い女に興味もわかねぇか
それで、坊主―――もうやったのか?」
「んな……なななな」
「何を」と男の言葉に返しかけ、その内容を直感的に察して、
エリオは耳まで真っ赤になって言葉に詰まった
「なんだよ勿体ねぇな―――それともあれか、
他に囲う女が……」
「プラズマザンバー!!」
轟音立てて振りぬかれた雷光の剣から身をかわす、
病室がずいぶん風通しがよくなった気がするが気にしてはいけない
「子供に! 何を!! 吹き込んで!!! いるんですか!!!!
貴方は!!!!!」
いつの間に戻ってきたのか、肩を震わせて叫ぶフェイト
「ネンネじゃあるまいしそんな目くじら立てるもんじゃねぇだろ、
それとも―――その歳で“まだ”なのか?」
もしくはそっちの趣味かなどといぶかしむ男、
実際にそういう噂が立っているのは間違いではないのだが
「ここにいたのかランサー」
その時、
この状況に対し、どこから突っ込めばいいのかと言った表情でアルトリアが顔を出した
「フェイト、食事はこの荷車で良かったのでしょうか?
一人分にしては些か多すぎる気がするのですが」
「あ、うん」
運んで来たカートの積荷(食べ物)に頷く、
状況を無視したかのようなアルトリアの態度だが、
どうやらフェイトに冷や水を浴びせる効果はあったらしい
この男―――ランサーとフェイトの相性はあまり良くない
粗野と几帳面と言う性格面の齟齬は言うに及ばず、
こうした下世話なやり取りとなるとフェイトは些か潔癖過ぎる
「では荷車はこの辺に置きます、
―――待てランサー、どこへ行く」
「もともと声をかけたのはついでの寄り道なんでな、
うるさいのが来る前にふけさせて貰うぜ」
言うなり窓枠に手をかけて出て行くランサー、
サーヴァント最速の名は伊達ではないのかあっという間に見えなくなる
「逃げられましたか」
間一髪で出遅れた形でシスターシャッハが病室に現れた
こちらの方は既に石化の影響は無いらしく、
取り立てて怪我も無い為いつも通りの法衣姿である
「追います、シスターは下を
あの英雄は生き延びることに関しては最優と言って良い、
森の中でサバイバルとなれば恐らく並みの騎士では歯が立たないでしょう」
医療院の敷地の外はそれなりに木々なども生い茂り、自然豊かな山並みもある
そんなところに逃げ込まれれば並みの魔導師では見つけることすら困難である
それ故に、逆に下に飛び降りたのではなく建物の上に登っている可能性もある
「手伝った方が良いのかな?」
「いえ、それには及びません、
ランサーにしてもここに現れたのは彼なりにエリオを認めた故でしょう、
あるいは此処に戻ってくる可能性も否定できません」
その時は任せます、と言うと、
こちらも窓枠に足をかけ、一蹴りで飛び上がる、
数度とかからず屋上へ消えていくその速さは一陣の風のようであった
「あぁいう男の人にはなっちゃ駄目だからね、エリオ」
みなが立ち去り、食事の用意をしながらのフェイトの言葉に
エリオは苦笑いしながら、はいと頷いた
どちらかと言うとヴァイスに近い性格なので
自分には到底真似できないだろうというのもあるが、
―――槍技に関しては教えを請いたいほどなのだが、きっと反対するんだろうなぁ
などと思いながら、少年は箸を手に取った
#3
ミッドチルダ地上本部八神はやて二等陸佐執務室
「はい、どうぞ」
ノックの音にはやては作業の手も止めずにそう言った
「失礼します、
シグナム二等空尉、スバル・ナカジマ防災士長両名、
本日より現場に復帰いたします」
ならんで入るなりびしりと隙無く敬礼する二人に頷く、
二人とも重症では済まない傷であったはずだが、突貫工事で治してきてくれた様だ
正直に言って本来なら当面休ませてやりたいところなのだが、
現実問題として人手が足りないのでそういうわけにも行かない
「早速で悪いけど、こっちが今現在分かってる分の資料になってる、
それと、近日中に地球に出張してもらうかも知れへんから二人もそのつもりでな」
「はい」
「了解です」
二人が資料を受け取った所で誰かが入ってきた、
「シグナムさん、スバルさん、
おかえりなさーい!」
「ただいま、ヴィヴィオ久しぶり……って、
増えてる?!」
見覚えの在る金髪とオッドアイの―――二人組に面食らい、
目を丸くして、スバルはとりあえず大きい方のヴィヴィオの頬を引っ張った
「ひひゃい、ひひゃい〜!」
「変身魔法とかじゃないみたいだけど、どうなってんの?」
機人モードのセンサーまで使ってひとしきり確認し、
とりあえず変装の類でないと理解して、スバルは改めて問いかけた
「なんだ、お前は聞いてなかったのか?」
「目を覚ましてすぐ調整やって、荷物整理したらこっちに直行でしたから、
詳しいことは何も」
移動中は寝てましたし、と言うスバルにシグナムはそうだったなと頭を掻いた
「まぁなんと言うか、
―――ちょっと違う未来から来たヴィヴィオなんよその子、
あと一緒にヴァイス君とスバルの子供いうんも来てる」
「私の子供、ですか?」
それは、会ってみたいような怖いような、とスバルが興味深げに呟く、
実際問題としてそもそも真っ当な生殖、出産が可能なのか不安なのが怖い理由である
「みんな向こうで待ってるんだよ」
「そうだな、面倒なところは私と主はやてで片付けておく、
お前は先にみなに顔を見せて来い」
シグナムにそう言われ、ヴィヴィオ(×2)に連れられて休憩室に向かう、
途中、大雑把に二人に説明を受けたがいま一つ駆け足過ぎて理解できなかった
で―――
「あの子が、そう?」
休憩室のベンチに座りボーっとしている少女を指しての問いに皆が頷く、
ヴァイスの子供だという青年の話によれば普段はもう少し明るい子であるらしい
「機人モードの制御とか、
いろいろこっち来る前から思いつめてるとこがあったからなぁ」
心配なんだけど、どうしよう? と言うヴィヴィオ(大)に対し、
大丈夫任せてと、胸を張って答えるスバル
まったく持って根拠の無い自信であるのだが
「ほんとに大丈夫、あんた?」
「大丈夫だよティア、平気ヘイキ」
一度なのはに目配せしてから、心配そうなティアナに向けて笑いかけ、
無警戒にひょいとスバルは少女の隣に腰を下ろした
「……お母さん―――」
「は〜い、お母さんですよ」
隣の気配に気づいてようやく首を巡らせた少女に対し、暢気にそう答える
「怪我は―――いいの?」
「大丈夫だよ
そっちこそ手、大丈夫?」
振動破砕の過負荷は並ではない、
骨格系が一撃で全損などということもありうるのである
それをよく知るだけにスバルの心配は少女の体のほうだった
「平気だよ、そんなの……」
いま一つ会話のリズムが悪い、かと言って拒絶している訳でもない
なんと言うか―――
「何か、不安?」
「ふぇ?」
成長に実感が無かったり、能力が制御できなかったりする状況で、
不安でないはずが無いだろうと思いながらも聞いてみる、
返答は無いがなんとなく当たりかなとスバルは思った
「いいんじゃないかな別に、
ヴィヴィオも、アルバート君も、別にそれで怒ったりしないでしょ?」
「そうだけど……」
「苦しかったり、悲しかったり、悩んでたりする時に傍に居て支えてくれて、
嬉しかったり、楽しかったりするときに一緒に喜んでくれる
ずっと、そうしてくれる人達なら、迷惑掛けても言いと思うよ
いつかその人が苦しかったり、悲しかったり、悩んでたりする時に傍に居て支えてあげて、
嬉しかったり、楽しかったりするときに一緒に喜んであげられれば」
それが友達で、家族で仲間ってことだよと締めくくる
別に捻ったところの無い唯ありきたりの常套句だがそれゆえに真実だとも言える
「なんか、綺麗に纏めたような、単に他力本願な様な……」
「別にどうでもいいだろ、お前の頭で考えて答えが出るわけでもあるまいし」
「ひどいカズ君、なんか私馬鹿みたいじゃない」
「馬鹿みたいって、
―――そもそも頭よくないだろお前」
む〜と唸ってそっぽを向く、
その様に誰かが笑い出し、気が付くとその場に居た全員が笑っていた
「ふむ、なにやら知らんが纏まった様で何よりだな」
「そうですね」
なのはも彼らの様子に笑みを浮かべながらライダーの言葉に頷く、
何だか士気が上がってきた気がするのは気のせいではなかろう、それは良いことだ
しえん
「なんでアルバート・グランセニックなのに“カズ君”?」
スバルの問いにアルバートが目をそらす、
その問いは彼が此処に来てから幾度と無く繰り返され、
ヴィヴィオ(小)も躍起になっている謎であるのだが
本人が黙秘を続けるため分からないままである
追求しようとスバルが身を乗り出しかけたその時だった
「アル、デバイスに通信が入ってるよ?」
ヴィヴィオの言う通り、
テーブルに置かれた待機状態のアルバートのデバイスに小型の空間モニターが開き、
着信を告げている
「発信者は―――あれ?
レイジングハートになってる」
当の本人、レイジングハートとそのマスターは目の前に居るのだから
そんな通信をする必要性はまるで無い、つまり―――
“The communication from the other party ties.”
「まてRヴァリスタ―――なんかやな予感がする」
マスターの指示を豪快に無視してデバイスが通信を接続する
当人(機?)いわく“It is a most immediate priority”.との事で、
マスターよりも上位の命令によるものであるらしい
「18年後の私か、
どんな人になってるんだろ?」
接続に時間がかかるらしいRヴァリスタの映すモニターのノイズに目を向けながら、
期待と不安を乗せた言葉をなのはが口に出す
一応一つの可能性に過ぎないためそう“成る”とは限らないが、
皆思いは同じらしく、固唾を呑んで見守っている
そして、
“The communication ties.”
Rヴァリスタが報告し、モニターに一人の人物が浮かび上がった
今回は以上です
なお、続きは近日中の予定
カレイドスコープの人乙!
平行世界を挟んだ同一人物の会話というと凛のそれを思い出しますが、このなのは同士だとどういうことになるのか楽しみです。
次回もお待ちしています。
GJ
槍……「もうやったのか?」は無いだろうw
下トークのオープニングに関しては人類は石器時代から一歩も前に進んじゃいないな
やらないか的な意味で進化しなんでもない
>>211 GJ!
ランサーもう馴染んでやがる
逃げるっつーか、また出待ちする気かコノヤロ
さて、時を越えてなんか来ちゃったがどうなるんだこれ
そろそろ、SS書きのみんなには戻ってきてほしいんだぜ。
ショートストーリー?
現スレの投下密度は好調だと思うんだが
いや、連載していた人は他にも何人かいたので。
今投下してくださってる方々を否定するわけではないが、
はやてルートとかLyrical Nightとか、若にも色々な作品が連載されてて、ここ数ヶ月音も沙汰もないのが残念。
あとSSは二次創作小説の通称。ショートストーリー、サイドストーリーとか諸説あり。
現在ではそういうのの略称ではなく、ただとにかく二次創作小説をSSと言ってる感じ。
ファンフィクションの略としてFFってのもあるけど一定のジャンル以外では広まってない。
なる
作品自体はけっこうあるから
「短編もっとちょうだいね!」
かと思ってしまったんだぜ
まあ投下があるだけ幸せと思え
それは贅沢な不満だ
食えるだけでもありがたや
ゲイボルク・ラヴ
ちょっかいを出しては追い掛けられ颯爽と逃げ回る
なんという兄貴らしさ
近日中ということは1スレで2話やるのか
まあこの進行速度ならアリだな
書き込めてる吃驚
>>211 投下おつー
ランサーは逃げてしまった
ランサーはいなくなった
シャッハは0の経験値を手に入れた
しっかしランサーの適応能力は異常だな
まあ、四次五次の鯖連中はどいつもこいつも現代にたいがい適応しているけどなw
四次キャスターはアレだけど。
バゼットがマスターの時にも、ランサーは古代ケルトスーツで昼間の街中歩き回ってたんだっけ
ミッドだったら、ベルカの騎士がBJ着たまま店先回ってるように見えるのかな
サーヴァントの衣服ですか。
全員が日常を生きているホロウはさておき、Fateだと霊体化できないセイバーは凛のお下がりを着ていますし、ライダーはHFエンディングでシンプルなトレーナーとジーンズ。あとはギルガメッシュが二種類ほど。
第四次だと、やはり霊体化できないセイバーが男装していますが、ライダーが自分の趣味のTシャツとウェイバーの懇願でジーンズを履いていましたっけ。
バリヤジャケットも、聖杯戦争関係者から見たらサーヴァントの人に見えるんだろうな
アルバが おきあがり
なかまに なりたそうに こちらを みている!
なかまに しますか?
>>227 ランサーにも軽鎧の上にコートを着て隠すぐらいの良識はあるだろ。もしくは……
「へい、牛丼汁だく大盛りお待ちっ!!」
「おう!サンキューな、おっちゃん」
「ところで兄さん、変わった格好だけどアレかい、ここら辺でヒーローショーでもやってんの?」
「あん? まあ……そんなトコだな」
「はあ〜〜、新都が出来てから冬木もドンドン賑わっていくもんだねえ」
こんな感じで誤魔化されたりして。
ランサー最新のファッションはゴールデン冬木くんなんだよね
>>229 ジェイク・スカル・エンテイ氏
「ウチの工場で管理人をしてほしい。
最近、物騒な人達が周りにいるので、
直属の部下を引き上げてしまったからね。
ちょうどよかった」
ランサー「俺よりザフィーラのがヤバい」
ディルムッド「光の御子の格好は全くおかしくないな」
ランスロット「ファッション。男らしい……」
ギルガメッシュ「むしろ、露出が少ない」
ヘラクレス「紳士の服ですか」
イスカンダル「ザフィーラは色気があるのぅ」
アーチャー「クー・フーリンは普段、マントをつけていたらしいな」
フェイト「ね!全然おかしくなんてないよ」
なのは「」
>>232 「ある意味勇者」の出で立ちというわけかw
今まとめwikiでリリカルブラッドを読み返してたんだが
投下されたときと比べてかなり変更されてるんだな
読みやすくなってると思うが、具体的にどこが変わったかは殆どわからんー
いや、それでいいのだろうけれど
今回のvivid読んで来た。
なんか案の定、古代ベルカの血筋というのがちらっと出てた。
あとザフィーラの弟子とかも。
魔法少女アニメの漫画のはずなのに、いつの間にか格闘ものに…別にいつのまにかじゃなかったか。
結構使えそうなキャラが増えてて、先が楽しみ。
格闘漫画か
格闘でバインド破壊、格闘で魔力弾受け流し
これって剣術でもできるやついるのかな
EXアサシンの中国拳法は受け流しとかと全く別ベクトルだよなあれ
>>235 例えばシグナムがライダーの結界破壊するとこ
ランサーのゲイボルク投擲が無くなってる
へー
まあ、鮮血神殿は異常に強化されてたから、そっちのが自然に見えていいや
>>237 そんな器用そうなことやる魔法剣士はランスロットくらいじゃね
他の人できそうな人はやらないと思う
カイザーアーツもAランクで修得レベルのスキルになるとか?>中国武術
ところで、無二打は相手を気で呑んだ上でのショック性・超クリティカルヒットでいいんだろうか
つーか、気ってなんなの
教えて社○先生!
>>237 バインド破壊、魔力弾を拳で弾く、斬撃を叩き落とす。
今回のプリズマイリヤでバゼットがやっていた。もうダメットとは呼ばせない。
でもプリズマですから
キャスターの弾幕にも体力切れまで粘れ、壊れた幻想や射殺す百頭を使う士郎も倒すバゼット女史
だが、ダメットたる所以はそこじゃねえという
バゼットさんのステータスは攻撃・防御・敏捷・魔術がほぼMAXなのに、日常生活が限りなくゼロに近いんだろうな。
良くある円グラフ表記だと、まるでパックマンみたいな形になってるはず。
彼女は男を見る目がない
どん底のときのフェイトちゃんくらいのメンタル防御
>>234 『雷光始動』を読み直したらかなり編集されてて驚いた
変わった所に「ランクにしてB+〜A」って表記があったんだが、リリカル式の評価だと対象の割に低い
Fate式だとB+は一時的に倍加だから>Aになる
A〜B+の間違いかしら?
あと、ランサーは魔眼対策ルーンでバッチリ、怪物退治属性、貫通投擲の投げボルクはベルレに相性いいっぽいという予想を菌糸類は否定しなかったというライダー涙目の情報があるけど誰も知らないよね
え、ランサーA+ランクのキュベレイ効かないのか?
ルーンはBじゃなかったか
とある雑誌の仮想vs企画で兄貴とライダーは兄貴優勢
魔眼はルーンで完封
怪物退治はお手の物という兄貴に魔物としての属性があるライダーは相性が悪い
ベルレに関してはきのこ自身言及してないが兄貴優勢ってことからして絶対の決め手にはならないっぽい
サンクス
知らなかった
兄貴は作中外でのフォローが他を寄せ付けないからな
・最高ランクの魔眼だろうとルーンで対策万全
・ルーンのバックアップがあればゴッドハンドは突破可能で、バーサーカーにはかなり不利だがいくらかの勝ち目がある
・セイバールートの教会地下にて、ギルを半日以上足止めし、それなりのダメージを与えていた
・作中では“当たらない必中の槍”だった刺しボルクだが、その性能は幸運が高くても稀にしか外れない代物であった
作中だけでしか知らない人にはえ!?っていうような情報が以外とあるんだよね
>>248 逆のベクトルにひどいフォローをされまくってる赤い人は泣いてもいいんじゃないかな
本編であれだけやらかしたアーチャーに情けはいらぬ
まあ結局、スペックがどんだけ高かろうと、物語の中での必勝は約束されないということだな……。
手直しに関しては大まかな部分はそのままに色々と変えています。
表現をマイルドにしたり、なのはさんの漢分がちょい上がってたり。
何よりの目的は今後の続編とサイズを合わせるためにやりました。
いきなり短くなるのも不自然だと思ったもので……
ではギルVSプレシアさん後編、投下します。
――― 虚の空 ―――
そこには何も無い――――――
物質という物質が等しく無に帰すディラックの海。
色彩もなく光も闇も指さないそこでは個は個として存在する事を許されない。
そこへ堕ちた者は生きる事はおろか、人として持ち得る最低にして最後の権利―――安寧の死すらをも失う。
かつて肉体だったそれは溶けて腐り落ち、分解される事も出来ず
物言わぬ、生物とも鉱物とも無機物とも有機物とも言えない「塊」となって永遠に宙を彷徨うのだ。
まさに生物としての死すら超えた、完全なる死……
「彼女」もまたそうなる筈だった。
――――――
Desire ―――
故にこれは、死する時まで抱き続けた唯一つの想いが――――9つのジュエルシードに宿ったとでもいうのだろうか?
堕ち行く「彼女」が最期に抱いた想いとは、純然にして明瞭――――「まだ死ねない」
願いを叶える石はそのあまりにも愚直な想いに反応した。
膨大過ぎる力ゆえ、それは人の明瞭な思考を汲み取る事しか出来ない出来損ないの願望機。
そんな石が「彼女」の「命を繋ぐ」という願いだけを愚直に、忠実に聞き届け―――そして叶えた。
―――絶望と苦痛はそのままに。
―――袋小路に陥った身はそのままに。
本来ならば留めて置けない肉体は渇望という名の檻の中で自壊せずに残り
無間の闇に堕ちながら、虚数の海を漂いながら、五感は抱いた願いを決して忘却せずに稼動を続けた。
呼吸も出来ず、発狂するほどの恐怖と焦燥に苛まれながら、それらを切なる願いで塗り潰し
思考の限界から解き放たれた思考が、ただ一つの目的を達するための可能性を模索し続け
時間の概念すら忘れ去られた空間で―――――永劫の時を「彼女」はそうして彷徨った。
堕ち行く「彼女」がただ一つ、抱えていたモノ―――
………■リ■■
その手に遺った感触だけが――――――「彼女」を「彼女」として繋ぎ止めていた糧。
もはや幾度めの夢か現か、定かではないが……
ここがきっとそう………次こそがきっとそう……
此処こそが焦がれ求めた伝説の都アルハザード。
失われた秘法の数々が眠り、死者すらも蘇らせるという―――
眼前に広がる神秘の数々を求めて―――「彼女」は幽鬼のように盤に降り立った。
――――――
???,s view ―――
「………………」
薬液に満たされた水槽の中で、私は「再び」目を覚ました――――
視界を覆う薄翠の景色。
自身が何者であり、どのような役目を担って生まれたかを反芻する。
主人とのリンクは正常に働いている。 魔力の供給も正常だ。
生成時、プログラムレベルで遺伝子に組み込まれた様々な情報回路を洗い直し―――ただ一つのあり得ないイレギュラー。
この身に…………既に在る記憶に思い至る。
「……………プレシア」
こうして生み出されたのはこれで二度目だった。 間違いない…………全て思い出せる。
水槽より液が徐々に抜かれていき、意識が鮮明になればなるほど、その記憶もまた夢や幻ではないと確信する。
私はかつて一人の少女を立派な魔導士として育て上げるために生を受けた。
他ならぬ主人の娘である彼女に、自分の持てる全ての技術を教え授ける事を旨に生成された使い魔だ。
その過程で彼女達……悲しい親子の背負った宿命を知りつつも、何も出来ず
せめて彼女達が幸せな未来に辿り着けるよう祈りながら―――役目を終えて消えた筈。
ならば今ここに居る自分は何なのか? これは一体どういう………?
「プレシア……?」
かつてと同じ、主人である彼女の背中が見える。
覚醒した私の視界に一番初めに飛び込んできた、黒い長髪を称えた背中。
細くしなびやかで頼りない後姿は記憶と何ら変わらない。
10間ほどもある実験設備の中で、手を伸ばすには遠い彼女に向かって二度、名前を呼んだ。
知りたい事がある。 聞きたい事がある。
貴方は……?
私は……?
そして―――フェイトは?
次々と湧き出す疑問を口に出そうとする前に………彼女、プレシアテスタロッサがゆっくりと振り返る。
………………
………………
……………………………
…………………………………………!!!!!!!!!???????
「………………あ」
…………待って……
待って、下さい………ねえ…
「ああ………あああああああ………」
脊椎に氷柱を差し込まれた――――
そんな絶望と共に―――
私は主人の顔を垣間見―――――そして悟った。
私が抱いたささやかな願いは……………果たされなかったのだ、と。
――――――
――――――
自身が思い描けないほどの最悪の結末を迎えたのだ―――
主人の貌を見て、その答えに行き着くしか無かった使い魔リニス。
「今度の夢は長いのかしら……?」
長い時を経て久しぶりに聞いた声は、かつて鼓膜を揺らしたそれとはどこか違っていて……
リニスの両の瞳からは止め処無い涙が溢れ出す。
「夢でも現でも漕ぎ出せばどうせ瞬き一つ分。 リニス……私のためにまた働いて頂戴」
主人の「顔」をこれ以上見たくないと下を向く使い魔。
その感情が届いたか否か、主の女は棚の上にあった虚の仮面を顔に被せる。
めくられる事を忘れた、壁に吊るしたカレンダー。
記された最後の暦から―――実に10年の刻を刻んだ今日
「彼女」はかつての使い魔と共に決して報われない航海の始まりを告げる――――
――――――
心優しい山猫の使い魔リニス―――
彼女に悲嘆に暮れる時間など与えられはしなかった。
激動の数週間――――
以前の記憶とはあまりにも懸け離れた世界。
以前に与えられたものとはあまりにも懸け離れた役目。
主に対する疑問も心配も二の次だった。
彼女は己が身に与えられた役割―――
マスターと時の庭園を稼動させる「部品」としての様々な機能を、短時間で無理やりに、その細い体に詰め込まされた。
強引なインストール。 肌に焼きゴテを押し付けられるような苦痛の嵐にただ耐え続ける。
大魔導士と称されるほどの主人を持つリニスの個体スペックは総じて高い水準を誇っていたが
その彼女をしてオーバーフローを起こすほどの過負荷。
絶え間無い苦痛の中で、彼女はかつて暮らしたなつかしい住処を眺めていた。
あらゆる部分が戦闘用に改築されて見る影もない。
あくまで護衛として所持していた機動兵が大きくその数を増やし、格納庫を埋め尽くしている。
肉体改造に等しいアップデートの日々で、艦内のすえた異臭が渦巻く中で、朦朧とした意識の隅でリニスは思う。
ここはまるで……還らぬ旅路に向かう冥界の方舟のようだと…………
――――――
一体、主人は何をしようというのか―――その答えはすぐに目にする事となった。
機動兵数100機を一瞬で灰塵にする、ヒトの形をした怪物を目の前にして。
今までの準備は、あんなモノを敵として迎える旅路に備えたものだったのだと理解した。
身体が猛烈な拒否反応を起こす。
人類最古の英雄王。 その偉業をミッド生まれの彼女が理解する事はなかったが
しかし野生の本能がアレと敵対する事の愚行さを如実に教えてくれる。
場は英雄王ギルガメッシュ討伐作戦の真っ最中。
金髪灼眼の少年がソレを一振りした瞬間、割れた世界。
それを目の当たりにした彼女が―――
――― 夢? ―――
今一度、願望交じりに己が正気に問うたとしても……誰も彼女を責められる筈も無い。
――――――
KING VS ・・・ ―――
この世に有り得てはいけない現世と隔世を繋ぐ狭間の世界。
空間の裂け目から覗くものはまさしくそれだった。
創世の、滅びと再生を司る原初の河。
日本で言う三途の河とは、人が死の狭間に見たあれを指して言ったものに違いない。
「きっついなぁ、コレ」
もはや場は紅風渦巻く嵐の渦中。
空を埋め尽くしていた傀儡兵は悉く機能を停止し、敵に魔弾の一つも放てずに裂け目に飲み込まれていく。
円柱の剣を振り抜いた少年は渋い表情で顔をしかめる。
その顔から決して宝具の本来の力を出し切っているとは言い難い。
だが、それこそ兵達にとってはあまりにも些事だろう。
天と地に切り分けられた世界の、橙の断面に飲み込まれた彼らを待つ結末など、どう足掻いたって一つしか無いのだから。
「そろそろ出てきてくれないかなぁ……この歳でドーピングって結構キツイんですよね」
盤上にて暴虐の限りを尽くす原初の剣。
其を振り上げながら少年は太陽のような笑顔を裂け目に向ける。
(通常空間に出なさい)
リニスの脳裏に念話による声が飛ぶ。
初めの一言以降、主人は使い魔に対しての意思疎通を念話で行っていた。
抑揚は無いが、聞き間違いようのない女性の声に対してリニスが真っ青になって叫ぶ。
(そんな!? いくら庭園が強化されてるからってあの現象に巻き込まれたら持ちませんよ!)
(早くしなさい。 あの剣は世界をその基盤ごと切り裂くわ。 ミッドの魔法と名のつくものは全て効力を失う)
リニスも気づき、蒼い顔から更に血の気が引く。
その言葉の意味する所は一つ。 データに相違が無ければアレは魔法を全てキャンセルする広範囲兵器。
当然、魔力を動力とするユニットにも有効に働く。 魔導エンジンすらその例外ではない。
このままでは時の庭園は異空間に取り残されて漂流する!
(だ、だけど……!)
使い魔としての知性と野性の本能の双方が、ここでワープアウトを非とする。
あのサーヴァントに対し、この異空間こそが自身らの安全を確保する絶対の城壁だった。
それを取っ払われて、あんな……あんなモノの眼前にノコノコと飛び込めば……紛う事なき自殺だ。
だが、だがこの状況が一刻の猶予も無い事もまた分かる。 一瞬の判断の迷いで、自分たちは次元の藻屑と消えるのだ。
(信じます、プレシア! 通常空間にフォールドアウト、よろし!)
オペレーターの紡ぐ言葉はもはや悲鳴に近かった。
火中に飛び込む巨大要塞。
通常空間に展開すると同時にシールド出力をマックスへと設定。
無駄だと知りつつも、艦の周囲に数層の対艦用フィールドを張り巡らし
時の要塞は少年王の待つ通常空間へとフォールドアウトを開始する!
半ば、死を覚悟するリニス。
だが―――――プレシアが動く!
「!?」
使い魔が絶句するその前で、彼女の黒衣に隠された背が盛り上がり
否、何かが生成され―――広がり、はためいたのだ。
――――――
「……へぇ…?」
少年の感嘆の声。 それは目前の予想外の結果に対するもの。
乖離剣の紡ぎ出す倶風。 紅一色に染まりつつあった世界に新たなる力が流れ込んできたのだ。
宙空に穿たれた地割れをまるで外から押さえ込むように、ほつれ破けた布を縫い、修復せんと翻る膨大な力。
それは漆黒を帯びた紫紺の魔力によるものだ。
「プ、プレシア……それは?」
リニスが、プレシアテスタロッサの背に抱えたモノを見て絶句する。
悪魔…………否、堕天使を思わせる漆黒の翼。
主人の醸し出す退廃的な雰囲気から、その光景は彼女がまるで人を脱した存在に脱皮し、昇華したかのようだった。
だがよく見るとそれは魔力で生成された擬似的なギミックに過ぎない。
かつてリンディハラオウンが似たようなフォルムを、暴走したジュエルシードを押さえ込む際に展開したがそれと同種の御業だ。
艦のバックアップを得た黒衣の大魔導士がした事。 それは膨大な量のデータを世界という名の図面に上書きする事。
確たる滅びの概念を更なる概念をぶつけて相殺する、相手のルールに乗っ取った方法ではない。
あくまでミッド式魔法の真髄。 修正液で塗り潰すかのように、天空に空いた亀裂を問答無用で消し去る魔力の渦。
それを少年はただ黙って見守っていた。
「器用だなぁ……それが裂かれた世界の修復の仕方ですか?」
航空戦技等とは違う分野だが、これもまた高位の魔導士のみが為し得る魔法の一つ。
動力源によっては天変地異すら押さえ込むレベルで発動できる次元修復術式。
それがエヌマエリシュによって断ち切られた空間―――断層面をみるみるうちに塞いでしまったのだ。
少年はただ事実のみを受け止める。
やはり基盤が向こうのものである以上、これくらいの芸当はしてくるのだろう。
世界の構造を熟知した向こうの方が、事全てにおいて有利な位置にいるのは言うまでもない。
それに地球史最強最悪の宝具と言えど、こんな細腕で撃ったのではたかが知れている。
これの全開出力を氾濫した大河に例えるならば、今のはせいぜい氷層に生じたちっぽけなクレヴァス程度のもの。
もし全力で撃っていたのなら、それでも果たして敵は同じ芸当が出来たのだろうか? 興味は色々と尽きないが―――
そう、だが今はいい。 フィールド上の大気を雄大に押しのけて、場に巨大な質量が現出しようとしていたからだ。
ゴゴゴゴ、と鈍い音をなびかせて、透明化が溶けた山のように。
蜃気楼の幻であったものが突如、具現化したように。
敵はその威容を今、ギルガメッシュの元に現したのである。
あまりにも巨大な――――歪な黒薔薇を思わせる機動要塞。
無数の傀儡兵を送り込んできたであろう、あれが敵の拠点に違いない。
これほどの質量を大気圏内で飛ばすなど少年の住まう星の技術ではまだ叶わない。
「始めまして―――異郷の星を渡る人達。
面白いものを見せて貰いました。 まずは挨拶を」
切り札を返されたにも関わらず少年は柔和に微笑み頭を下げる。
まるで口惜しさを感じさせない、はにかむように紡がれた口調。
それは今この場で殺し合いを演じている者には到底そぐわない。
「ともあれ、こうして対面した以上、顔くらい見せてもバチは当たらないと思いますよ?」
相対と呼ぶにはあまりにもサイズの違う両者。
何せ巨大要塞と小さな少年だ。 その光景は言うまでもなく歪。
だがサイズ差に反比例して、力の天秤は信じられないほどに拮抗していた。
挑発ともごく自然な提案とも取れる彼の言葉。 艦内―――黒衣の女が動く。
「なっ!? 駄目ですプレシア! 危険すぎる!」
リニスが悲鳴をあげる。
コンソロールに映し出されたデータと格闘していた手を止め、主人のローブに手を伸ばそうとするが
その姿はまるで幽鬼の様にリニスの手をスルリと避けて立ち消える。
挑発に乗って敵の前に、あんなバケモノの前に姿を現すなど言語道断だ。
既に転送を終えてしまった彼女を追おうとも思ったが、ここを離れるわけには行かない。
ここで出来る限りのフォローをするしかない、と思い立つ使い魔。
そんなリニスが見上げる先にて――――虚の女は王と相対した。
――――――その日、全てを塗り潰す漆黒と、世界を統べる黄金が出会う。
――――――
「恐いなぁ……」
少年が見上げた先。 要塞の艦橋にて白い無貌の仮面を被った女が佇んでいた。
纏うは黒衣。 髪も漆黒。
溢れるように全身から発する紫の魔力光はおぞましい瘴気のよう。
それは英雄王の王気とは対極に位置する力にも感じられ、ギルガメッシュは居心地が悪そうに鼻を鳴らす。
「大人の僕は切って捨てていましたが―――前に戦った白いお姉さんのアプローチは決して間違いではないんです。
神秘を打破するために、より強い神秘を以って相対するというのが僕らの世界のルールですけれど
でも、そのルールでは人間が神秘の結晶たる英霊に勝てる道理が無い。 全くズルっこい話ですよね」
わざとらしく顔をしかめる少年。 肩を竦める仕草が人懐っこくて憎めない。
「ならば人がそれに並ぶには結局、人の叡智を積み上げていくしかない。
―――――そこの所、貴方はよく分かっている……強敵ですね。
僕らを<僕ら>として全く畏れず、かと言って甘く見ているわけでもない。
全ての事象を正しく理解し、なお揺ぎ無くサーヴァントの前に立っている」
エアの起こした空間断裂に躊躇い無く手を突っ込む行為を見て、流石に驚いた。
この女性には乖離現象でさえも、水路の決壊くらいにしか見えていなかったのではなかろうか?
「うーん……だけど、ただ叡智の粋を極めただけでそこまでイッてしまうものですか?
貴方にはもっとこう、根本的に壊れた要因がある筈です。 心の在り様はどこか僕らの世界の魔術師に近いモノがありますし。
ひょっとして―――なにかの間違いで<至っ>ちゃいましたか?」
「坊や」
「何でしょう?」
「蘇生の宝具を渡しなさい」
ギルガメッシュの言葉を遮り、違和感のある肉声で女は言った。
「それが貴方の願い――望むものですか?」
慈愛すら感じさせる声で少年は返す。
「無理ですよ。 サーヴァントの宝具は基本、本人にしか使えない。
更に、アレは大人の僕が僕のためだけに財と粋を集めて生成した秘法らしいですから。
反魂なんて代物はそれこそゲームみたいに、呪文唱えて、はい生き返った!なんてやれるものではないんです」
反魂―――――
その魂に合った、その魂だけの処置を、膨大な時間と叡智をかけて積み上げる。
地脈と霊脈を考慮に入れた一等の霊地を儀式の場に選び、厳しい条件をクリアして初めて為せると言われる奇跡。
まさに神の御業。 人の手で成し遂げる事は摂理に反する、神に対する反逆行為に他ならない。
そして―――――それだけ。
会話はそれだけ―――――――
少年が言葉を終える事は無かった。
彼に二の句を上げさせる事なく――――
「―――――、」
巨大な要塞が突如、動き出し、少年へと迫る!!!!!
大気に響く低音は、そのまま世の終わりを思わせる冥界の調べを思わせ―――
―――――――、ズズ、―――――ン…………! ――――――
地殻を鳴動させる音と共に、庭園は大地に体当たりし、地表に突き刺さり―――――
――――――――少年をゴミのように押し潰した。
――――――
「な、何て………無茶を……!」
要塞を何の迷いも無く大地に叩き付けた!? あんな小さな少年を潰すためだけに!?
その所業に声を上げる暇もない。 リニスは艦内を襲う衝撃に身を投げ出され、しこたま壁に叩きつけられる。
人一人を押し潰すにはあまりに巨大な質量の、ほとんど墜落といってもよい着陸だ。
その衝撃たるや並大抵のものではない。
「キ、キングは……!?」
反撃は………………来ない。
コンソロール共に何の反応もなく、状況に新たな動きも無い。
さしものサーヴァントもまさかあのタイミングで要塞が特攻してくるとは思わなかったのか?
もっとも、あれでは剣の雨を展開しても止められない。
無残に跡形もなく擦り潰される以外の選択肢はなかったであろうが。
「勝った……?」
一時の静寂の後、ふうっと溜息一つ。
極度の緊張から解放されて、ひとまずは旨を撫で下ろすリニスである。
(それにしても………)
艦のコアに接続されているジュエルシードというロストロギアを含め、戦闘用に改築された庭園を顔色一つ変えずに手足のように扱う主人。
一目見た時から感じていた―――あの英霊という存在から滲み出る以上の「反則」をプレシアテスタロッサからは感じる。
病魔に冒された陽炎のような儚さと、悪魔そのもののような威圧感を同居させている今の彼女。
――― 恐い………………… ―――
忠誠心よりも恐怖が先走ってしまう。
目を伏せるリニスの心胆はいかばかりのものか。
「ク、―――フハハハハハハハ」
「なっ!!?」
だが、端末が拾った音声に使い魔は再び息を呑む!
物思いに耽る暇など無かった!
それは押し潰された要塞の下ではなく―――
「上!?」
上空―――天照らす陽光のように黄金に輝く光。
諸共に響き渡るのは、かの耳障りな高笑い。
眩いばかりの光に目を焼かれつつも凝視する先―――それは小型の飛行船。
その上に腕を組んで佇む、少年の姿から再び立ち戻った英雄王の姿があった!
「異邦の民よ―――」
男が言葉を紡ぐ。
「我との謁見を自ら放棄するとは馬鹿な奴腹よ。
ならば已む無し―――今一度、己が心臓を命の秤にかけよ!」
まずい―――上を取られた! 唇を噛むオペレーター。
他ならぬ自分が注意力を切らしたせいで……今に至るまでの異常とも言える入念な準備を考えれば
あんなもので大人しく潰れてくれる相手じゃない事は分かっていた。 それなのに!
「開け――――!!!!」
王の号令の下、上空に穿たれた穴から顔を出す原初の宝具たち。
あれは極悪な性能を秘めた質量兵器そのものだ。 剣の雨は地に這う者全てに等しく死を齎す。
その威容、使い魔として生きた半生を以って走馬灯を感じずにはいられない―――ッ!
(弓兵は?)
(今……追わせています!)
(そう)
プレシアの短い問いに答えるリニスの声は半ば絶望に染まっている。
早々に消えてしまった弓のサーヴァントに舌を打つも後の祭だ。
あれはシールドでは防ぎきれない。 かと言って生半可な弾幕では相殺も出来ない。
主人に許可を取るまでも無く、今こそ、あれを使う時なのだが―――
コンソロールを汗で滲む手が滑る。 ぶっつけ本番、果たして成功するのだろうか?
とリニスが思慮に及ぶと同時――――
要塞の甲板に身の毛もよだつほどの魔力光が立ち昇り、プレシアを中心に巨大な魔方陣が形成される。
彼女の背まで垂らした長髪が虚空に翻り、紡ぐ呪文は電子音のような無機質さを以って大気を揺らす。
そして、やがて漆黒の女の周囲に無数の、大量の魔力スフィアが生成されていく。
「……………ファランクス」
リニスが呟く。 あれこそかつて、プレシアから創られたリニスによってフェイトに受け継がれた魔法。
雷を主武装とするテスタロッサの魔法の中でも手数において最大規模を誇る広域殲滅術式。
天空を埋め尽くす紅い孔に相対するかのように、要塞を守護すべく遣わされた紫電のフォトンスフィア。
言うまでも無い。 プレシアが艦橋から出たのはこのため―――彼女はやる気だ!
迎え撃つつもりなのだ! あの英霊の殲滅兵器を!
相手の切った札を見下ろし、ニィ、と哂う英雄王。
表情に灯るは無駄な抵抗に勤しむ雑種に対する侮蔑か、哀れみか。
支援
「ゲートオブ――――――バビロン!!!」
今、天の裁可をここに問う!
英雄王の殲滅掃射宝具が―――唸りを上げて、地上に降り注いだのだ!!!!
――――――
Rinis,s view ―――
「来たッッ!!!」
敵の大量殺戮兵器が火を噴いた! 私とプレシアの頭上で!
管理局のSランク魔導士ですら、アレの前には為す術もなく敗れ去ってしまったと聞く。
あんなものの前に身を晒す事の不運を嘆くと共に、我が主を立たせている不明を呪わずにはいられない!
こんな事、容認できる筈もないけれど……でもやるしかない!
「対空砲火! バックアップします! アイ・ハブ・コントロールッ!」
艦の中枢と繋がるプレシアのリンカーコアに膨大な、人に受け止め切れないレベルの情報がダウンロードされる!
そして程なく、彼女から処理されたデータの解答が矢継ぎ早にこちらに流れてくる!
凄い! 普通の人間なら脳が焼き切れてもおかしくないのに……!
「ユー・ハブ・コントロールッ! A・S・G始動!!!」
プレシアが上空、無量大数の刃に向かって手を翳す!
「セーフティロック解除!! 全行程オールグリーン!!!!」
互いの処理に一片の不備でもあれば、プレシアと私は庭園ごと打ち抜かれてお終い……
だけど見直している時間も余裕も無い!
あとは全てを主に任せ―――私は掛け声と共に安全装置を解除した!
――――――
飛行船ヴィマーナと時の庭園を挟んだ空間に―――
今―――幾百、幾千の花火が轟音と共に咲き乱れた。
押し潰さんと上空から降り注ぐ宝具の嵐。
押し返さんと打ち上げられる対空砲。
王の財宝―――盤に降り立ってより常に無敵を謳われた宝具が……今、完全に受け止められた瞬間だった。
――――――
「や、やった………! 成功です!」
無意識に呟いた途端、リニスの全身から汗がドッと噴き出す。
身の毛もよだつ光景とはこの事だ。
一対一とはいえ近年、質量兵器の撤廃が進んだミッド世界において、これほどの実弾兵器に晒された艦があっただろうか?
ファランクス<アンチ・ソードガトリンク>――――
あの不抜の兵器に対抗するためにプレシアテスタロッサとジェイルスカリエッティが共同で立案、開発した
魔導士専用・付加思考ルーチン・バックアッププログラム<A・S・G>。
膨大な時間と手間を要して二人の天才の合作によって齎された対英雄王決戦兵器だ。
ゲートオブバビロンは無敵の兵器。
その特性はあらゆる属性を秘めた、宝具と呼ばれるアーティファクトによるつるべ打ち。
内包する属性は多種多様にして無数無限。 土金木火水に光闇、対神対魔に因果逆転虚数と何でもござれだ。
火を克服しても水、風を使役出来ても土と、敵のあらゆる弱点に対応したチート兵器。
単純な威力で見てもそれは他の追随を許さない。 一撃が爆裂撤甲貫通弾並の高威力砲弾を湯水のように発射してくる仕様。
そして、弾切れナシ………スペックを並べれば並べるほど冗談のような性能に泣きたくなる。
おおよそ考えられる、個人で展開出来る最強レベルの武装。
それを前に、同じく最大規模の弾幕を誇るSランク砲撃魔導士の敗北を以って
ミッド式魔法でこれに相対する事―――魔導士の弾丸でアレを打ち落とす事は不可能との結論が一度は出た。
しかしながら、その宝具が一度でも拮抗、破られた例が存在するのなら
どんな夢想じみた仮説であれ、対応策を講じる事は可能なのだ。
夢物語を現実のものとしてしまう、天才と呼ばれる人種がこちらには二人もいるのだから。
ゲートオブバビロンを相手にし、個人でもそれに届いた記録。
投影魔術というモノを用い、敵の武装と全く同じものをぶつけて相殺に至ったという……
サーヴァントでもない一人の魔術師が、あの不抜の兵器に相対して見せたのだから驚きだ。
だが、ならばこちらの技術の粋を結集して似たような状況を作る事は出来ないか?
出来ないと断ずる理由はない。 人間業で可能な事ならば、技術の粋を集めて出来ない事など無いのだ。
もし仮にあの一発一発の刃の全てに対し、こちらも同等……否、匹敵するものをぶつけられれば
属性で優位に立つ魔弾を、その一つ一つにぶつける事が出来れば、打破とまではいかなくても計算上、4:6以上の拮抗は保てる。
あの惑星の伝承の全てを網羅しているのが敵の兵器の特徴ならば
こちらもまた、その全ての伝承を網羅してしまえばいいだけの話だ。
網羅し、理解し―――敵の弾質を秒単位で解析し、例えば火属性には水属性と言った具合に
最適な属性を付けた魔弾を用意してぶつける事が出来れば……魔弾と宝具の威力の差を属性で勝る事によって差は埋まり、相殺は可能。
ゲートオブバビロンは――――――破れる!
膨大なデータ、膨大な逸話、その中に出てくる全ての宝具のデータを今、この艦は有している。
それだけのデータを現地から吸い上げ、一つ一つインプットしたのだ。
これらにより、膨大な情報を余さず使いこなし、本来ならば雷属性のみであるファランクスのスフィアにあらゆる属性を付加させて
プレシアテスタロッサは魔導士単体では到底無理な魔法行使を可能にした。
そして今―――王の財宝は庭園の主に受け止められた。
要塞の周囲に張り巡らされたフォトンスフィア。
通常、術者の魔力光一色であるそれらが、艦より送られてくるデータに応じて様々な色へと変化する。
敵の宝具に勝る属性へと変化し、打ち出されていく。 その様はまるで聖夜の木々に飾られる色彩彩のライトのよう。
ダインスレブ、ハルバート、あらゆる宝具のデータが術者であるプレシアの脳に送り込まれ
庭園のメインコンピュ−ターとの間で幾百幾千のデータが行き来する! その速度、もはやTbでは換算出来ないほどだ!
「――――健気なものよ……誉めてつかわす」
流石は王自身が敵と見初めただけの事はあるという事か。
財宝の初撃を見事、受け止めた事にまずは惜しみない賛辞を現すギルガメッシュ。
神秘に頼るでもなく、根源に至るでもない。 これは全て人の御業による所業。
細めた緋の目に今、彼はどのような感情を写すのか―――
―――――かつて受肉した際、男は再び世を席巻し、治めよという天恵を聞いた
そして王は現代に生きる有象無象との、世の覇権をかけた戦いに思いを馳せた。
彼は不遜だが、決して不明では無い。
現世の戦力を平らげる聖戦が決して容易ではない事を十分に理解していた。
そう、恐らくは――――――雑種どもはこうやって抵抗するのだろう。
自らの叡智を結集し、策を弄して我が力に相対して来るに違いない。 今のこの相手がやっているように。
見下ろす先、仮面の女が全身で、最古にして最強の蹂躙を一身に受けている。
容易く手折れそうな細腕で我に相対してくる健気さ。 やがて、再びほくそ笑む黄金の王。
興が乗った――――ならばこの粗大ゴミは世界征服への予行練習の相手に相違ない。
「知恵の実を喰らって幾星霜……ニンゲンも大層、小道具の扱いには長けるようになったのだな。
だが我が財は無限にして不滅である―――その悪足掻きがどこまで続くか」
上空の英雄王。
見上げる要塞。
刃の爆撃に対空防御。
凄まじい魔弾の打ち合いは空間を削り、大地を震わせながらに続く。
嘲笑の英雄王に無貌のプレシア。
その対峙を、全身を覆う冷たい汗と共に見つめるリニス。
常識も道理も通用しない滅茶苦茶な相手との交戦を開始して、もはや時間の感覚は麻痺している。
空間を世界ごと切り裂き、飛んだり、大人になったり子供になったり―――頭を抱えるオペレーター。
本当に気が変になりそうだ。 最新鋭の装備と技術を以って次元すら超える手段を持つ自分達と
辺境の惑星の古代人如きが同じ天秤の上に乗る事自体、有り得ない筈なのに。
大丈夫だ……こちらの方が強い……メッキはすぐに剥がれる!
もはやリニスの独り言には祈りの如き響きすらある。
「これで押し返せれば……お願い!」
「――――無駄だ」
「っ!?」
まるで自分の、焦燥に駆られた思考、呟きを見透かして返答したとしか思えない王の言葉。
ギョっとする使い魔。 モニターを見ると、灼眼の瞳は確かにこちらを向いていた。
怖気が走る。 山猫のフォルムであったなら迷わず毛を逆立たせていただろう。
「分かっておらぬな……貴様ら雑種は我を―――我が域を犯す事の意味をまるで理解しておらぬ。
そも次元だ時空だとのたまうが、高次元の存在を正しく認識しているかも疑わしい」
男は紡ぐ。 善戦は認めよう、と。
取りあえずは最強最古の力に拮抗してきた叡智も賞賛に値する、と。
だが所詮、雑種は雑種。 その力は拮抗はしても決して英霊の祖を超越する事はない。
時空管理局、多次元国家などと嘯く、我が頭上を狭しなく飛び回る有象無象に王が告ぐ。
この現世が三次元で形成されている事は誰もが知る所だが、二次元の存在が三次元に影響を与える事はできない。
三次から二次に存在を移行させる事は出来る―――三次に居を置く存在が、自身を図面に描けば良いのだ。
「我と貴様らの関係とは即ちそれだ。 それほどの開きが王と雑種の間にはある」
本来の高次の存在である英霊が下の次元に位を下げて
人ならざるものが人の世に降り立つ方法として、クラスを下位にシフトさせて
初めて人と英霊は、その言葉を、意思を交わすに至る。
サーヴァント召喚とはつまりはそういう事だ。
人間の脳に認識できるよう、高き者が低き所へチャンネルを合わせる。
人の世の、人に使役できる域にまで位を落として、人に認識できる器を要して使役させる。
そんな本来の個体をデチューンしたモノがセイバー、アーチャーといったサーヴァントの全容なのだ。
ならば本来の自分達と有象無象の人間達との差など語るのも馬鹿馬鹿しい。
わざわざレベルを下げて相対してやっているこの身に必死に縋り、拮抗したと喜ぶ輩―――何と卑賤で矮小な事か。
「貴様らは何かと神を超えた、踏破した、などと思い上がっているがな。
その最も高位にいる……そうだな。 だいたい9〜10次元辺りに在る存在の総称を、神と呼ぶのだ。
我が半身はその神の血を宿し―――」
「宗教に興味は無いわ」
唖然として聞き入るリニスとは対照的に、男の高説をプレシアテスタロッサはまたも一言で切って捨てる。
電子音のような声には変わらず何の感情も乗ってはいない。
轟音と爆発と刃の擦れる音がひしめく中、女は男に対し、静かな排斥の意を示すのみ。
「そんな御託が通用するのは辺境の小惑星の中でだけ。 滑稽ね………化石の王様」
静かに吐き捨てた言葉は相手に対する嘲りですら無かった。
言うなれば煩わしいノイズに苛まれ、いらついて口を突いた独り言以上の価値も無い。
「神なんていない……あの子を生き返らせる事も出来ない宝物なんて路傍の石ほどの価値も無い。
だからもういい……消えて頂戴。 あの深い深い、海の底に………」
うわ言のように紡ぐ言葉は夢遊病者のよう―――
「廃棄してあげる」
しかして諸共に放たれたファランクスの一投は凄絶の一言!
数多の刃の雨を抜けて今―――雷の矢が、英雄王の頭部に直撃したのだ!
「や、やったっ!」
思わず席を立つリニス。
サ−ヴァントの右耳の上方を抜けた雷の矢―――
遅れて彼の頭部から鮮血が飛び散る。 打ち抜いた!
「――――――、」
…………いや、浅い! 何事も無かったように振り向くサーヴァント。
ヘッドショット失敗。 どうやら魔弾は敵のこめかみの横を通り過ぎただけだったようだ。
だが兎にも角にも男の体に攻撃が届いたという事実!
それはプレシアの力が相手の宝具を徐々に押し返し、凌駕しつつあるという事に他ならない!
終わる……この戦いはもうすぐ終わる!
対して、女にその身を傷つけられて尽きせぬ怒りに身を焦がす………かと思われた王。
だが鬼相に、憤怒に染まっている筈の顔は―――
「解せぬか――――哀れよな」
その相貌に浮かぶは――――悲哀……?
それは至った者が、決して至らぬものを見る時の表情。
哀れみ、悲哀、慈悲に満ちた顔だった。
「一つだけ教えてやろう―――かけがえの無いものとは二度と取り戻せぬからこそ尊いのだ」
女の渇望、その先に視ているモノを理解し、だからこそ王は語る。
その理だけは決して覆す事は叶わないと。
天を超え、星の海に至ってなお人はその業から逃れられない。
逃れられずに、あのような浅ましい幽鬼と化す。
最古の王……人間の祖と言うべき英霊は、進化の果てに在るであろう者達の
未だ未熟に過ぎる姿に尽きせぬ哀しみを感じずにはいられなかった。
残されし者が尊き者に報いる方法はただ一つ――――己が、身に抱いた尊さに決して負けぬ事。
悲しみに、喪失感に、己を損なわぬ事こそが逝った者に対する手向け。
彼が原初に示した通り、どれほどの力を有そうと出来る事はそれだけなのだ。
女――――この女は俗世にて、他ならぬ自分の行いによってどれほど己が尊き存在を辱めたのか?
これほどの力がありながら、ただ滅びをのみ撒き散らし何も掴む事叶わない。
哀れだ――――これほどに惨めな存在があるものか。
「貴様は醜悪だ。 求め焦がれる者を、自身の手で汚泥に塗れさせる亡者よ。
その渇望を世が聞き届ける事は―――――永遠に無い」
「…………………ッ」
その男の言葉に――――プレシアを取り巻く大気が歪む。
女は盤に降り立ってより初めて自身の感情を灯す。
仮面より覗く蛇香の瞳が怪しく光り、体から溢れる瘴気が倍近くに膨れ上がる。
大地を覆う紫電の雷が世を腐らせる毒のようにフィールド上に迸り―――
―――― AAAAAAAAAAAGHAAAAA ――――
長い髪を逆立たせ、虚の仮面の女は黒衣をはためかせて―――歪な吼え声を上げた。
その凄まじき怨嗟の声に、使い魔であるリニスは指先一つ動かせない。
ガタガタと身を震わせて主人から流れ出てくる負の感情に耐え忍ぶのみ。
唸り声にも似た咆哮は、しかし実際、彼女から発せられたものではなかった。
プレシアは一言も発してはいない。
変わりに怪物のように鳴動したのは―――彼女と接続された要塞の方。
世を覆うほどに肥大化した未練が怨念と化し、彼女と繋がる庭園の中枢を歪に震わせているのだ。
その姿、災厄となって世界に仇なす怪物に比するおぞましさを場に醸し出す。
「来るが良い雑念――――英雄王が情けをくれてやろう」
―――あの程度の怨霊、飲み干せずして何が王か。
見るものの魂すら凍らせる怪物の如き女を前にして
眼下を見下す王の瞳もまた絶対者としての自負が揺らぐ事は無い。
全てを手中に収めし王と、ただ一つの願いを求めてさすらう亡霊―――
その戦いは激しく、何よりも激しく―――――――ここに佳境を迎える
――――――
――――――
紅い外袴をなびかせて戦場から離脱しつつあった彼―――
「…………」
その歩みが今、茂みを抜けた平原にて止まっていた。
「何故、戦線を離れるのですか?」
自身を追ってきた、黒衣の燕尾の法衣を纏う影……一人の少女の姿を認めたからだ。
少女――まさにそうとしか言えない年頃の、金の髪を両サイドで留めた彼女。
追跡者がまさかこんな子供だとは思わず、微かな驚きに目を見張るアーチャー。
「務めは果たした。 これ以上、私があの場に留まる理由は無い筈だが?」
「まだ……敵は健在です」
「ほう―――――だが、それこそ私の知った事では無いな。
最後の雷……私はあの一撃で死んだ身だ。
これ以上、死者からの手向けを期待されても困る」
「貴方はこの作戦の要……配置を違えば、私達の勝ちはなくなってしまう」
「そうか……だがどの道、勝負は見えた。 英雄王がエアを抜き放った以上、もはや勝ち目はない。
何より私はこれでも主持ちでね―――主従の契りも無い者とこれ以上、共闘を続けると彼女の悋気を買ってしまう」
相手の目的も分からぬ以上、この剣に誓うべき信念を見いだせない。
ならば正義の味方がこれ以上、振るうべき剣はこの戦場には無いのだ。
「どんな手を使って私を借り出したのか知らんが、令呪の縛りも無いままにサーヴァントを従属させようとは舐められたものだ。
事情を聞かせろとは言わん。 即刻立ち去り、キミの主に伝えるが良い。
他者の背中を狙うならば、己が背中を他者に打たれる覚悟を忘れるな、と」
「そう………ならば貴方に令呪を施します」
「! なんだと……?」
感情が希薄なのか、皮肉じみた弓兵の言葉にまるで付き合わず自身のペースで話す少女。
要求を突き付けてくる、まだあどけなさを残す表情には何の躊躇いも無い。
体に不釣合いな長物―――金色に輝く刀身を称えた鎌を構えて少女は言った。
「力づくでも従ってもらいます……サーヴァント」
「止めておけ、幼き少女よ。 サーヴァントはポケ○ンでは無いのだぞ?」
「貴方がたはそういうものだと聞いています」
弓兵渾身のボケは華麗にスルーされる。
「どこの情報だ、それは………何にせよ、サーヴァントを甘く見すぎだ。
まだ幼くとも、相手が力づくで従う存在かどうかくらいの思慮分別は―――」
――――男が最後まで言葉を紡ぐ事は無かった。
(なにっ!!!?)
少女がそれをさせなかったのだ!
放たれた脅速の斬撃を、胸の前で辛うじて受け止めるアーチャー。
凄まじい打ち込みは、年相応の少女のそれでは断じてない!
投影した二刀を以って辛うじて受けたものの、その心胆に冷たい汗が滲み出る。
斬り抜けた少女がそのまま天に舞い、アーチャーを見下ろすように空に佇む。
「貴方を倒して契約する……少し痛いかも、だけど……我慢して下さい」
黒衣の魔導士―――幼き金髪の少女
彼女の名はフェイトテスタロッサ――――
未だ光を知らぬ、希望に出会う前の少女が――――感情を称えぬ声でサーヴァントに宣戦布告をした。
完結編に続きます。
ランサーに限らず、こうすればああしていれば無敵というキャラを扱う際
どれだけ踏み込んでいけばいいのか迷うところです。
取りあえずプレシア、ギルさん、それに今後出てくるチートキャラに関しては
あまり悪乗りしない程度に踏み込んでいきたいなと……
ではまたノシ
GJ!
虚ろな煉獄から来たプレシアさんマジチート
そして意外すぎる2名
神の呪いにより、死を決定された友が残したモノ
死の恐怖、悲しみ、ほんとうに求めるべき一瞬の永遠
口では神だの言ってても、中身は人間の王であるギルガメッシュでしたとさ、まる
ぶっちゃけ宝具・神器には魔法・聖杯のように死者蘇生可能なのもあるだろうけど、使うくらいなら壊すだろうな男サーヴァント共とクロノ、リンディは
キャス狐の鏡は、神落ちしたせいで死者蘇生に権能が足らんらしいね
>かけがえの無いものとは二度と取り戻せぬ
別の話でも見た価値観だがなんかわかるんだよなぁこういうの
大事な失ったら取り戻したいと思うのは当然だけど、何もかもを投げ打ってでも取り戻したいと
思うほどのものなら尚更何を代価にしても決して釣り合わない
取り戻せたとしても大事なものを捨てて行ったもの程度の価値に貶めることになる
まあ、それでも取り戻したいと思う弱さを持つのが人間であるわけだけど
まさかのロリフェイトさんktkr
そしてギル様が相変わらずで何よりw
取り敢えずリニスさん、マジでお疲れ様です。主に無理矢理蘇生させられた上に敵も怖ければ味方も怖い。
ロリフェイトはプレシアがまた作ったのか? だとしたらもうプレシアは完全に破綻しているな。
掛け替えの無い物は二度と取り戻せない、か。ギルガメッシュにとってエルキドゥは財宝より尚尊い物だったな。
しかしサーヴァントをポケ○ン扱いねえ……マスターボールでも無理そう。
ポケモンは最強クラスがトンデモらしいからサーヴァントくらいは余裕かも
と思ったが最強クラスってボールで捕まるのか?
妹の持ってた赤しかやってないから分からん
リリブラの人GJ!
なんというチートプレシア。
恐ろしい。
そして王様がなんかカッコイイこと言った―――ッ!?
恐らくギルの所持する宝具を駆使すれば擬似的にも蘇生はできる…気がする。
だけど、仮に蘇らせることができたとして、果たして「本当に蘇らせることができたのか」を疑いだしそうな感じも。
人は記憶を捏造するものだし。プレシアさんとかそういうことしそう。
もしかしたらギル様の言葉はそれを見越した上で言ってのかもしれない。
とか思ったりしました。
とにかく続きが気になるです。
お待ちしています。
>>275 余裕は無いな。英霊の中にはランサーの様な魔獣殺しを得意とした奴もいる。
他ゲーの話は余所でゆっくりやってね!!!
スターライトブレイガ―――――!!!!????するよ!
リリブラ氏乙です。
プレシアさんマジはんぱねえ。9次元とか10次元ってどんなとこ?
エミヤ、ポケモン知ってるんだ。確かエミヤって記憶摩耗してるはずじゃ。それなのにポケモン知ってるとは
問題は記憶が磨耗したエミヤの記憶になお残るほどなのか、それとも召喚されてから知ったのか……どちらにせよポケモン恐るべし。
景品でゲーム機当てて、士郎や桜を中心にポケモンが流行して凜にやらせるSSがあったな。
……あれ、そういえばどうしてフェイトがポケモンを知っているんだ。まさかプレシアさんが具体例として教えていた?
>>279 次元の話はギルガメッシュのホラ話くらいに思ってた方が
イリヤ他が高次元存在であるように、物理的な次元とは別物のアレで
アヴァロンより数字が高いのは、また別物ということで
エミヤは五次聖杯戦争時に知ったんじゃ
フェイトの「そういうものだと聞いている」はあくまで「倒して従わせる」という部分に対するもので
ポケモンの部分は完全スルーなのでは?
どちらにせよ日本語って難しい・・・
型月世界にも怖い怖いネズミさん達はいると予想される
そして、世界に刻まれているともね
メレムの悪魔も、自分は世界で三番目に美しいネズミと言っている
おっと、これ以上は抑止力に止められているんだ
>>270 GJ!!
アーチャー、どうやって生還したんだキミは
そして、プレシアとスカリエッティは随分と話し合ったみたいだがどういう打算なんだろう
>>275 ポケモン自体が弱ると狭いところに入る性質があるらしい
ロリフェイトの、アーチャー対策は自分の容姿とか言わないよなw
なんせ元の人物が、イリヤの水着姿にどきどきする奴だぜw
アチャー「戦う金髪幼女だと?!――――凛、魔力を回せ!!ハアァアアア!!!」
ロリコンじゃない主人公なんていません
リニスが苦労人過ぎるw
そういやギル様は死者蘇生には反対なお方でしたね。
そういやアーチャーもやり直しノゥな人だしプレシア一味には絶対に協力しないだろうなあ。
エミヤって確か未来英霊だから、今発売されてるホワイトとかブラック持ってたかもよ
摩耗してもなお概要を覚えているほど、ポケモンはすごいんだろ。
世界からの知識にポケモンが含まれている可能性もあるが。
過去はやり直せない系の意志の強さとかは主人公キャラだな、やはり。さすがは英雄。
つかプレシアさんとか闇の書の見せる安らかな夢とか見せられたら、ぜってー抜け出せないw
英霊エミヤは未来の英雄……人間・衛宮士郎だった頃にリリカルなのはのストーリーと関わっていた場合、かつ僅かでも記憶に留めていた場合、彼はどう行動するのか。
Fateルートで言峰に対して過去を変えることを否定したとはいえ、未来に悲劇が待っていることを知っていて何もしない男ではないだろうし。
近くに士郎がいるかいないかでもだいぶ変わるからね
聖杯戦争の時は幾分トチ狂ってたが、本来はエクストラのような面倒見の良いサーヴァントみたいだから
とりあえず、鷹の目を活かして、1km先のビルでじっと観察してそう
死者蘇生についてのイメージ
全面反対派:士郎、ギルガメッシュ、聖堂教会のみなさん
積極的反対派:クロノ、アーチャー、式、ハサン
消極的反対派:リンディ、ランサー、アルク、シエル
中立:なのは、凛、ヘラクレス、イスカンダル、切嗣、コクトー、ヴォルケンリッター、ワラキア、小次郎、葛木、魔術師
消極的賛成派:フェイト、セイバー、志貴、ライダー、桜、はやて、ランスロット、ディルムッド、スバル
積極的賛成派:プレシア、キャスター、スカ博士、蟲爺、ジル・ド・レェ、秋葉、27祖のみなさん
解脱派:セイヴァー、坊主のみなさん
全面肯定派:ランルーくん 「オイシイモノ、アレ、マタ、タベタイ、ナア…」
黒ランサー「妻よ、煉獄で休ませておいてやれ」
全面賛成派:アヴェンジャー、クライド、ドゥーエ
>>291 所詮はどうあがこうとも、エミヤシロウの成れの果てだからなw
死んだって治らない類だw
過去をなかった事にするならともかく、人一人生き返らすのに絶対反対するかな(ギルガメッシュ除く)
クロノ含めて文句は言いそうだけど
剣の丘ならぬ杖の丘ってかw
これが一斉に喋りだしたらと思うと
エクストラのアーチャーは重度の月厨をして「なんか気持ち悪い」と言われるほどの面倒見の良さだからな
後半とか完全にいい兄貴ポジだぜ。知り合いいないから伸び伸びしてるのがよくわかるくらいだw
輪転する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)って、熱線を出すらしいけど、これも光の一種じゃないのかと
火属性で区別されてるのかな
擬似太陽内蔵とはいえ、魔力炉心のないガウェインが連続で使ってるから、さすがにセイバーのカリバーに比べたら火力低そうだね
兄弟剣でも、カリバーの陰に埋もれたらしいし
シグナムに炎の仲間が増えたよ!
工場長でもエレガントおじさんでも、鬼でもない太陽の騎士!
やったねシグナム!
火はノーマル、風はノーブルとか誰が言ったんだよ!
烈火の将がぶっ飛ばしてやんよ!
ニートじゃねーぞコラ!
>>311 鮮花叔母さんは泣いていいよ
303 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 00:50:15 ID:PBJ3/tbT
>>301 ねっ‐せん 【熱線】
1 熱せられた金属線。
2 「赤外線」に同じ。
赤外線でしょうね。
sage忘れ失礼しました。
>>303がデジタル大辞泉からの引用です。
>>301 連続使用は単にゲーム上の都合だろ
あとレオが極めて優秀なマスターってのもあるかな
セイバーだって鞘を持ってる状態とか凛がマスターならカリバーを連発できる
単純ダメージではなく、割合オーバーキルただし防御可能なガラティーン
約束された勝利の剣のように大地が消し飛ぶわけでなく、吸収熱による内部ダメージと追加の火炎で攻撃してくるイメージに見えたな
ゲームで一撃必殺の技とか出したら、そりゃあもうどうしようもなくバランス悪いからな。
アンリミとかBOAでもそうだが、本編の必殺技が必殺にならないのは仕方ない。
エクストラの場合もそこらを考えからSSにするといいかもね。
しかしMPが足りない!
しかし攻撃は外れた
ポータブルでは高火力型シャマルハンドが登場
無理して使わんでも新必殺技を設定してやれよと思った
>>302 炎使いの赤い工場長なら既にぶちのめしてるぞ
チョコレート大好き?さん「もうロリを襲ったりなんてしないよ」
エクストラのサーヴァントのマスターはAs以前よりstsキャラに合いそう
超中華ロボ(呂布):スバル
海賊女王(ドレイク):スカリエッティ、メガネ
八極拳(李書文):ゼスト、トーレ
緑茶(ロビン・フッドA):ティアナ、ゲンヤ
アリス(ナーサリーライム):?
伯爵(ヴラドV):レジアス
太陽の騎士(ガウェイン):カリム
救世者(乙女座の聖闘士):?
>>311 聖☆おにいさんの片割れならわかるが慈悲の心を持たないバルゴの人持ってくるのははなんか違うwww
容赦の無い乙女座……無印と『NEXT DIMENSION 冥王神話』と『THE LOST CANVAS 冥王神話』のどれだろう。
無印の乙女座はだめだろw
逃げられない防げないな天舞宝輪をどうしろと
一に還る転生だって防げねえよw
あれ、輪廻から外れた英霊本体を転生させるとしたら魔法以上だな
蘇生のあるゴッドハンドでも用をなさないかも
なんで、解脱して転生から外れたはずの聖☆おにいさんが転生させてくるんだって感じだが
一からやり直して解脱しろって慈悲か・
カリムにガウェインはいいかもしれないが、きれいすぎて不気味だ
どう考えても無印です
本当に三ツ矢雄二でした
>>315 解脱して無いマスターには効く
→マスター初期化
→鯖消滅する(本体に情報は行く)
→マスター鯖ともに最初(セーブポイント)から再開
たぶん管理者権限があるんだと思う>おにいさん
あくまで記録してあるデータに則って本体の生前を「再現」しているにすぎないので
本体には影響ないんじゃね?
ムーンセルはラプラスの魔、完全観測による完全予測を用いた未来の選択が副産物だった
本当にコンピュータって感じだな
冬木と違って、必ず殺し合いなのが不安だったが、サーヴァントやトワイスのようなデータコピーなら登場させやすいかな
そろそろ
なのは「聖杯でイリヤちゃんを長生きさせよう!」(四次or五次)
な展開が来るべき
イリヤのライフスタンス=「したいけどできない。できるけどしたくない」
この小悪魔を聖杯で救うのはかなりの難事だと思うよ
バーサーカーが生きてると、第三魔法復活と士郎コロコロを目指す
バーサーカーが死ぬと、あっさり諦めるが余計なことは話さない
ついでに、その心臓を怖い金髪とモジャモジャと爺が狙ってる
戦争前半戦の内にイリヤと「おはなし」して、バーサーカーをけしかけてくる中で根負けさせないとならん
漢って生き物は目の前に(心の)壁があれば拳をぶつけたくなるものなのさ
花札の人マダカナー
あれ?
聖杯起動=イリヤオワタじゃなかったっけ
生まれる前から既に聖杯として機能しやすい様に改造されているしね。
唯一の生存ルートでもあるFateでもあの後何年生きれたのか……。
でも大切なのはどれ程の時間を生きたかではなく、どんな思いで日々過ごせたかなので士郎と過ごした余生が幸せなものだったらいいと思います……あれ? 作文?
イリヤかキャスターが勝者になればソレ含めて大抵のことはなんとかできる
一応、アンコじゃイリヤが勝者になってたし
セイバールートでも最終的には壊されたが、聖杯自体は起動してた
リズとセラも重要キャラか
なのはさんなら、タカマチならなんとかしてくれる・・・!
てst
やっと規制解除か。
イリヤを救うヒーローがいるとしたら、衛宮士郎に他ならない。
イリヤルートが出来たら俺、結婚するんだ・・・・
現実性が無いので、その死亡フラグ成り立たない
よかったね
>>328 死んでも構わないと思ったのは生れて初めてだぜ・・・。
命を捨てる覚悟はよし
だが、それだけで届くほど甘い壁でもなし
イリヤをなんとかしたいなら四次に介入するほうが得策ですよナノハ
そこで何故なのはさん、命懸けくらいならやるかもだけど
彼女なら見つけて災厄の根源を→ブレイカーで済ますんじゃないかな
実も蓋もないが
でも彼女のスタンスや行動はけっこう神秘だな
送るのか救うのか、逝くのか逝かぬのか
>>331 力ずくでどうにか出来るなら戦争なんて起こらんよ。それが例え魔術師達の儀式であっても。
仮に大聖杯を壊したとしても、桜ルートで凛が大聖杯を破壊した事で査問されたぐらいだから魔術協会から追われる身になる。
汚染された聖杯に、純粋な善意から誰かを生き返らせてって頼むとどうなるんだろう
例えば、はやてが勝者になって、聖杯戦争中に冬木で活動停止した生命の復活を願ったら
死者の蘇生術式を構築するのと実際に運用するのに必要なエネルギーを
周囲の人間から無理やり吸い上げ良くてまともに動けないくらいの衰弱
悪ければ肉体も残さずに消滅するといった被害が周囲の市町村から大量に出るとか?
たぶん生き返ったっぽい感じにはなると思う。
中に詰まってるのは悪意の泥だろうけど。
月姫の死者と似たような感じじゃない?
七天の聖杯なら叶えられるんだろうけどね
主人公と同じく再現データという形で
七天の聖杯は望む未来を引き寄せられるっぽいから
平行世界に生き返って欲しい人が死なずに生き延びていた歴史があれば
現在を書き換えてというかその平行世界に移動するという形で再び会うことも出来るかな?
七天の聖杯はずっと昔から地球を観測していて
その観測をし続け情報を蓄えまくった結果聖杯としても機能するようだから
地球が直接関わっている事限定で好き放題できるようなもんだと思っているけど
死者蘇生が近い内に半科学的に可能となる未来を引き寄せるかもしれない
肉体クローンとムーンセルに記録された人格で
>>334 冬木の聖杯にもエネルギー程度ならもともとあると思う
>>333 生まれ変わりの人物の人格をぶっ壊して、魂、次いで肉体を再現するとか
時計塔教授クラスの魔術師ならちゃんと制御できると思う
あるいは、願う者の執念で
願う者の内面によっては「死者蘇生を願う原因」が消去されるかもしれない
モノリスに願えばええねん
死んだあいつに会わせてくれと
橙子人形は死者蘇生と別物か
死者が蘇らないのは、この世で最も尊い理だ
ってハラオウンさんが言ってた
転生しちゃいなよYOU!
まあ死者を規定する科学的医学的基準が違うことはあるようだが
いわんや魔導科学文明が進んでいれば、どこまでが死者でどこまでが生者なのか
魔法を使おうが何を使おうが蘇生できないのが死者。
蘇生できるのは植物状態とか、心停止と同じ事。
止まった心臓を心臓マッサージや電気ショックで動かすか、魔法で動かすかの違いでしかない。
これは極論過ぎるかな?
いや、正しい
そこを覆そうと神様に願うのが人間か
ただ、ベルカ関係はヴォルケンの存在やアインハルトの記憶継承がある
プレシアが目指した死者の再現による擬似的な死者蘇生に
ミスった
ただ、ベルカ関係はヴォルケンの存在やアインハルトの記憶継承がある
プレシアが目指した死者の再現による擬似的な死者蘇生に届くと思うんだよな
でも、クロノの話では死者蘇生のロストロギアはないっぽい
これはどういうことなんだろう
・クロノの願望
・情報封鎖
・古代でもコスト、倫理問題で研究中止
・レアケースすぎて残ってないだけ
・死者蘇生しても、誰も満足しなかった
死者の「再生」「再現」「複製」は出来ても「復活」は出来なかった、とか。
もしくは「≒」で満足できない人間が禁忌を犯したから問答無用で弾圧、資料は焚書されたとか。
オリジナルが生きてても作動するらしい完璧なコピーなら作れるようだが
>>343 ヴォルケンは闇の書が元々夜天の書と呼ばれていた事を覚えてなかったし、アインハルトにしても途切れ途切れな記憶としてしか残ってないない等、記憶の継承には不備があるよ。
そもそもプレシアはアリシアの記憶を転写させたのに、利き腕、魔力資質の有無等の食い違いがあるフェイトが出来たから絶望した。
まあ、記憶というビデオが同じでも、見る人間によって感想が変わるから別人になったのはある意味当然かな。
些か哲学的な領域にもなるが、果たして完全に記憶を継承していたとして、プレシアがフェイトをアリシアと認識したかどうかはかなり怪しい。
自分の中のイメージとの齟齬は生じるだろうし、人格は一定していない。ただ記憶が連続しているから連続した自我があるように錯覚しているだけで。
まあそこらはいいとして、フェイトはアリシアの記憶は完全にはもってなかったみたいだよ。
移植された記憶自体は完全なはずじゃなかったか
一回プレシアが再調整して弄ったとはいえ、
後に深層に残ってた記憶から闇の書の中でオリジナルと言って差し支えないらしいレベルでアリシアが再現もされたし
あれは後付けとはいえ、元になる技術が人造魔導士向けだった辺りがまずかったんだろうか
スカエリッティ博士自体は幾らでも自身の完全なコピー作れるようだし(ここらへんも実はできてみると似たような差異が出ないとも限らんが)
アルハザードはだんだん空気になっていくな
古代ベルカばっかりや!
ポンポン出していいものでもないしな
天秤の剣士 サイト移転 ついでに本編更新
そんな更新報告で大丈夫か?
大丈夫だ。問題ない
受肉したランサーが真面目に子作りを頼んだら、リリカル女性は応えてくれるだろうか
ただし、結婚はしない
>>354 妊娠期間は仕事ではないので断ると思うよ。
みんなワーカーホリックっぺーし。
どもです。
フェイトルート第二章、完結編投下します。
大概、独自設定が酷いわチートやりたい放題だわで見苦しい所もありますがご容赦下さい。
あと、また昔の悪いクセが出て長めかも……
Girl of Fate&Blade Worker1 ―――
赤い影が疾風のように大地を駆け、双刃が煌く度に光の矢は次々と撃ち落とされていく。
対して上空からそれを猛追する金色の影。
落とされてなお倍する雷弾を赤い外袴の男に放ち続ける。
アーチャーと金髪の少女の戦いは既に始まっており、サーヴァントである男をして苦戦を強いられる少女の技が冴えを見せていた。
「ぬぐっ!?」
魔弾の的を散らすため、動き回ろうとする弓兵に何かが絡みつく。
少女の技量もさる事ながら、弓兵を真に苦しめていたのは所々に設置されていた罠。
その空間に踏み込んだ瞬間、手に足に絡み、肉体を拘束せんとするチェーン型の捕獲魔法であった。
(もう一人いるか……いや、この足音は人間のものではない)
どうやらこちらが藪を抜け、平地に出てから仕掛けてきたのも相手の計算のうちだったようだ。
舌打ちする弓兵。 幾多のトラップが仕掛けたここにみすみす追い込まれてしまうとは……
相手は、幼女と舐めてかかれる技量ではない。
信じられない事にあの歳でサーヴァントと刃を交えるに不足無い実力を持っている。
窮地に追い込まれたアーチャーが、何時もの様に己が運命を双剣に賭ける―――のだが……
(まったく……子供相手にとんだ醜態だな)
ド級のフェミニスト気質、少女にドキドキ体質、どうやら共に死後にも持ち越されたようである。
彼がまず超えなければならない壁。
それは女のコを相手に本気で喧嘩をしなければならない―――
その背徳感と尽きせぬ葛藤であった事は言うまでもない。
――――――
――――――
管理局の技術でも超えられない、境界に隔てられた2つの世界。
異世界同士がロストロギアの力によって絡み合い、邂逅を果たしてより1ヶ月―――
ミッドチルダにおける最強戦力「魔導士」と、第97管理外世界……否、ガイアといわれる星の意思によって現世に蘇った英霊。
死の盤上に上げられた開戦の狼煙より、既に激突する事三度。
いずれも死闘と呼ぶに相応しい闘争の極限を場に映し出す。
しかして此度のそれは間違いなく、異なる世界の者が出会ってより起こった最大規模の戦闘行為に他ならず
互いの叡智と、歴史と、誇りと、意地を以って相手を屈服させる、闘争を超えた戦争であった。
盤上にて踊る両世界の駒達。 もはや彼らの殺し合いは止め得ぬ所まで来てしまったのだろうか?
運命のサイコロが無情なまでに彼らを弄ぶ中で―――
最古の王と狂えし亡霊の終の序曲が奏でられる。
War1 ―――
「我の事を姑息に嗅ぎ回ったのであれば、我が宝物において居並ぶ対城宝具の数々―――当然、識り及んでいよう」
数百の弾幕が絶え間なく飛び荒ぶ戦場。 その中で英雄王ギルガメッシュが敵に問うた。
対城宝具―――それは一般に騎士王のエクスカリバー等、膨大な出力で対象を薙ぎ払う破格の神具に付けられる称号である。
城といっても近世に残る力の失った遺跡ではない。 古の防壁がまま生きた要塞クラスの代物を指しての物だ。
故にそれを一撃で薙ぎ払う神威の宝具は、今ならば山一つを灰塵に化して余りあるものばかり。
「だが偏に対城と言っても内訳は様々でな。
出力、性能で対人から対城までこなせる万能のものもあれば、ソレ以外の役割を果たさぬものも多々ある」
男の言葉と共にその手が再び宝庫、ゲートオブバビロンの鍵を開く。
途端、力場は拮抗している筈なのに――――
「……………ああ」
時の庭園のオペレーター、使い魔リニスが震える声を漏らす。
その耳にサーヴァントの話など全く入っておらず
「敵の新たなる射出口展開!」と、告げようとした口が開いたまま固まっていた。
あれ? あれ? 何か、サイズが―――
瞬きを忘れてそれを見やるリニス―――
初めは他の孔と同じ大きさに見えたのだ。
だがそれは、機器より送られてくるデータによって、敵の遥か後方に現れたものだとすぐに分かる。
だから、つまりそれは間抜けな話……所謂、遠近感というやつだった。
眼前に居並ぶ宝具の射出口よりも、だいぶ離れた場所で雄大に口を広げるソレ―――
――――――――――直径10mに及ぶ巨大な孔
「て、敵の新たな武装の展開を確認! お、大きい……巡洋艦クラスっ!?」
今度こそリニスが絶叫交じりに現状を報告する。 血を吐くような叫びだった。
今までは一様のサイズだった敵の弾丸の中に、明らかな規格外!
人には到底、振るえるものじゃない巨大な刃が姿を現したのである!
対人宝具ではない、彼の言った文字通りの対城宝具とはコレか?
確かにこれならば城や要塞をそのままの意味で薙ぎ払う、問答無用の暴力の具現であろうが―――
こんなモノを一体、神話上のどんな英雄が手に持ち、振るえたというのだ?
「元々、宝具とは決まった規格を持たぬもの。 ノーブルファンタズムと謳われる幻想の産物よ。
疑問に感じた事は無いか? 世に知られる名剣、神槍の類は伝承によっては巨人が振るう事もあれば神の手で薙がれる事もある。
世の摂理すら捻じ曲げるアーティファクトと呼ばれる神器とは即ち―――
齎された際、主の手に収まるべくして収まる形無き力の塊。 幻想が人の世に顕現する力そのものの総称なのだ」
ギルガメッシュが所持する宝物は今でこそ王の手に愛でられるため一様の規格で蔵に収められている。
だが元々、その大小に際限などはなかったのだ。
マテリアライズ――――幻想は使い手が最も望んだ大きさ、カタチへと姿を変えて世界に顕現する。
しえる
「故にアレもまた、人の手に渡る前のとある宝具の原型よ。
天空より遣わされた巨大な石刳れに過ぎなかったそれは、後に不死不滅といわれた聖者を貫く宝具へと姿を変える。
曰く、聖なる者を十字架に張り付け、血を浴びた事により確たる神格を得るに至った、その御名こそ―――」
―――――――神槍ロンギヌス
あの巨大な槍?こそは、救世主<セイヴァー>と呼ばれた聖者を貫いた破格の宝具。
もっとも目の前のアレはライズされる前の姿ゆえ宝具としての格は低い。
きっと類稀なる聖遺物を、無骨な岩くれなどに使用するのをギルガメッシュ自身が嫌ったが故の措置だろう。
だがどの道、そんな事はどうでも良い!
問答無用の巨大質量は、それだけで見るものに恐慌を超える諦観すら感じさせる。
魔法の弾丸などではどうしようもない圧倒的な破壊の権化―――その事実が今の彼女らに齎された全てだった。
「かつて世界は瞬く間に我の足元に平伏した。 故にな、生涯の大半は挑まれ迎え撃つ戦だったのだ。
よって我から攻め入る戦の何と久しき事………胸が高鳴るぞ」
王の無慈悲な神託の元に―――
天空が揺れ動き、空が堕ちてくるが如き威容を場に現すソレ。
「さあ、覇者の城攻めをとくと見よッ!!!」
即ち、大型航空機ほどもある巨大な槍が! 庭園に向けて射出されたのだった!
――――――
Girl of Fate&Blade Worker2 ―――
(いけそうかい、フェイト……? そろそろ私も仕掛けようか?)
幼き雷光と弓兵の戦いが続く。 その最中で少女は使い魔からの念話を受信した。
(機先は制したよ……アルフの張ってくれたチェーンバインドのおかげ。
もう少し空から削るから、暫く様子を見てて)
(でも大丈夫かねぇ……サーヴァントってのは大層、強いらしいじゃないか?
リニスは説得出来なきゃ帰って来いって言ったけど)
フェイトの顔に微かな苦渋が浮かぶ。 師匠であるリニスの言いつけを破ってしまっている後ろめたさからだ。
しかし説得出来ればどんなに良かったか知れないが、こちらは男の背中を一度、撃ってしまっている。
普通に考えて説得の言葉など聞いてくれるわけがない。 自分ならばそんな相手の言葉など絶対に信じない。
だから彼には悪いが連れて帰るにはこの方法しかない。
未だ言葉の重みも温かみも知らない幼い魂―――硬く閉ざした相手の心を開く言葉など持っている筈がなかった。
(良い地形に誘い出して罠も張ったし、しかも向こうは疲れてる。
6分以上のアドバンテージは取った……あとは連携と戦術次第。 頑張ろう、アルフ!)
(う、うん……フェイトがそう言うなら)
神話の英霊などという謎めいた相手に刃を向ける―――それに危険を感じない筈が無い。
だが、データによるとあのアーチャーは金色のサーヴァントには相性が良いらしいが
他のサーヴァントと比べて、そこまで強力な個体では無いという話だ。
時は一刻を争い、彼を連れて行かなければ帰るべき自分の家が……母親の身が危ない。
ならば英断。 稀薄な感情の内に並々ならぬ決意が灯った。
確固たる意思を以って少女は、弓兵のサーヴァントに闘いを挑んだのだ。
その瞳に優しかった母の面影を写して―――
未だ手に入らぬ愛を求めて彷徨う、健気で儚い翼がそこにあった。
――――――
War2 ―――
射出された巨大宝具がプレシアの雷の矢を余さず弾き飛ばし、王自身の放った宝具すらも蹴散らして進む!
威容極まりない質量が大気を押しのけ、その気圧だけで要塞をゴリゴリと地面に押し付ける。
五分の位置で展開されていた弾幕の嵐も確実に庭園側に偏っていく。
属性付加されたファランクスの矢はあくまで規格内の宝具に対しアドバンテージを握る為の備え。
テスタロッサの魔法の弱点は防御と出力にある。 当然、あんなものを想定して組み立ててはいない。
バリアで防ぐなど論外。 あんなものを受け止められる防壁がこの世に存在する筈が無い。
あれが庭園に突き刺されば問答無用でお終いだ。
綺麗にカッティングされて3、4つに割れるか、巨大な田楽刺しの出来上がりだろう。
あの手の巨大質量を叩き返すには、高位の砲撃魔導士のフルドライブショットか、もしくは―――
「…………」
無言のリニス。 その表情に浮かんだのは死の恐怖か悔恨か―――
――――――――いや…………
(予想の範疇………だけど)
そう、糞の役にも立たない男の薀蓄はさておき、持ち得る武装についてはこれくらいの想定はしていた。
何せ並々ならぬ相手に戦いを仕掛けようというのだ。 この程度の事は予想していなければ始まらない。
人類史に登場した全ての兵器を所持していると言って憚らない敵サーヴァント。 古代の宇宙船まで引っ張り出してくる反則。
彼女が調べ得ただけでも、現代までの人類の戦争の歴史において、バリスタ、怒、投石機など巨大質量に任せた兵器は数多く登場する。
ならば攻城兵器、対要塞武装を奴が所持していても何らおかしくはない。
当然、それに相対するものも、こちらは用意してきたわけだが――――
「……」
それでもリニスは無言だった。 モニター上の主人の顔を仰ぐ……躊躇いと戸惑いの意思を称えて。
迫り来る破滅を前にして、狼狽にも似た心境に苛まれる使い魔は、唇を固く引き結んで何かを憂いて動かない。
(いいんですか……? 本当に……?)
それは謂わば、ミッド世界に住まう者全てが持つ倫理の根底に根付いているものなのかも知れない―――
ロストロギアの所持など問題にならぬ最大最悪の大禁忌がある。
かつてのプレシアも魔導士としての矜持か、その必要がないと判断したのか定かではないが
管理局と事を構える位置にいてなお、その一線を踏み越える事はなかった。
――― だが今、主であるプレシアから庭園中枢に魔力が送られてくる ―――
今までこちらが魔力を送っていた、その供給を逆流させてきた事の意味。
もはや確認するまでもない……彼女には何の躊躇いも無い。
これを撃てば、プレシアテスタロッサの名は決して拭えぬ罪と共に後世に悪名を遺してしまうというのに―――
ヒトの生んだ悪魔の鉄槌――――――即ち、
――― 質量、兵器 ―――
――――――
覚悟を………決めるしか無いのか?
例え後に地獄の裁きを受けようと、今これを使わねば死ぬだけだとしても。
主と共に煉獄へ堕ちようなどと考える使い魔ではない。
あくまで主人の幸せのみを願う彼女は必要ならば主人を諌め、窘める事も厭わない。
だが事ここに及んで、今は生き残るために悪魔に魂を引き渡さねばならいのだろうか?
「………バレルオープン。 時の庭園、中央射出口より………主砲開きますっ!」
躊躇は実際には一瞬。 リニスは結局、外法に身を染める事を選ぶ。
兎にも角にも、今は主人を害する脅威を取り払うのが先決だからだ。
「見せてあげますよ……古代の英霊。 進化の極みに達したヒトの恐ろしさを」
リニスの指が高速でコンソロールを滑る。
すると共に歪な機動音を響かせて、庭園中央から巨大な円筒状の造物が突き立つ。
この浮遊建造物がもはや住居ではなく、戦闘要塞として生まれ変わった確たる証―――「主砲」
長大な割り箸を二つ連ねて重ねたような奇妙な造形の、ソレこそ人類の叡智の究極!
近代兵器において最強の一角に数えられる、その名も―――
「大口径・超電磁・高速弾頭射出砲ッ!!!!! ショートレンジ・モード! 撃ち貫きますっ!」
超電磁砲――――即ち――――レールガン。
速度において光速への到達すら可能と言われる近代兵器の粋。
もっとも弾頭、砲塔共に光速に伴う膨大なエネルギーに耐え得る方法が未だ確立されていないため
光の速度とは机上の空論なのだが、それでもこれが最速の兵器である事に変わりは無い。
娘が最速の翼を、親が最速の兵器をそれぞれ選ぶとは何という皮肉か。
ともあれ、プレシアの魔力量、電撃という資質を考慮するに、この大魔導士にこれほど相応しい兵器は他に無い。
既にPT事件で名を知られ、局の艦隊と事を構える事も辞さない彼女の―――狂気を称えた新たなる牙であった!
「レディッッ! …………ファイアーーーーーーーーーッ!!!!」
最終安全装置を解除! 目と鼻の先に迫った神人の槍を前に、リニスはついにその引き金を引く!
イイイイイイイイイイ、―――――キュイイッ、!!という、大気を擦り、削り取るかの如き共鳴音!
「くっ!!!」
大気を残らず持っていってしまうような衝撃に庭園が揺らぐ! 伏して耐えるリニス!
そして射出されるはアーチャーの矢すら上回る、初速15q/秒を超え、更に加速する破砕弾っ!
迫り来る無骨な槍の中央に、あまりの驚速に時をも置き去りにした弾丸が、パキン―――!!!、と……甲高い音と共に突き刺さった!
深々とめり込んだ破砕弾―――
その打ち込まれた箇所を中心に―――
槍は空中で時を止めたかのように制止し―――
まるでガラス細工のように中央から亀裂を生じさせ、敢え無く三つに砕けてヘシ折れたのだ!
――――――
「主砲命中ッ! 対象、爆砕しました! 出力は80%をキープッ!!」
使い魔が昂ぶった心を抑えて叫ぶ!
英雄王の目前でズズン、ズズ―――ン、……と―――
地面に突き刺さって果てる神の遺物、ロンギヌスの槍の前身。
砕けて堕ちた、いずれは聖遺物として世に広まる神槍の残骸は、まるでストーンヘンジのように無骨でもの悲しく
古代の秘法を近代兵器が撃ち砕いた瞬間を場に映し出す役割を果たすのみとなった。
「…………………」
尊き幻想、その歴史をこよなく愛する英雄王。
その双眸に何を称えるか―――
口に紡がれる言葉が、なかなか発せられる事は無かった。
「――――――見事だ」
だが―――――――――やがて、愉悦。
「見事だぞ雑種。 こうでなくては我自らが出向いた価値が無い」
宝具の残骸を背に佇む王の言葉に虚勢は無かった。 本心からの言葉を紡いだ。
人の叡智の行き着く先もまた男にとっては己が宝で有り得るのか。
愛でるべき自身の世界の一部に過ぎないが故の、この問答。
初めは下らぬ茶番に堕ちると思われた舞踏―――
敵は曲がりなりにも王に拮抗するだけの戦力を揃えてこの場に立ったのだ。
それでこそ敵。 それでこそ戦争が成り立つ。
強大であるが故に、およそ一人を除いて並ぶ者すらいなかったその身にようやく炎が灯った瞬間だ。
これほどの高揚はいつ以来か……
あの征服王との一戦以来、感じた事も無い「戦い」に対する気の昂ぶり。
自身が敵と認める者の奮闘は、王にとっては脅威ではなく、飽くなき愉悦の肴と同義である。
「負け惜しみを……このまま押し込みます!」
叫ぶリニス。 その余裕は相手にとってはこれ以上なく不気味で不快なものだった。
「振り絞れ――――――出し尽くせ雑種。 我の前にて、培った全てを見せてみよ」
満面の愉悦を称えて王が下知を下す。
男がパチンと再び指を鳴らすと、巨大な孔がまたも口を開ける!
また打ち落としてやる!と身構えるリニス。
だが、その瞳に写ったのは―――
同じように顔を覗かせる巨大宝具………
その数――――――――――――――――8つッ!
もはや大小問わぬ宝具の数々が空を埋め尽くしていた!
調和も雅も自重も無い!
敵を圧する事のみを目的に馳せ参じた刃の群れ!
「こ…………この……」
淑女である使い魔がワナワナと震え、山猫の本性そのままに牙を剥き出して唸る。
「この、成金………ッッ!」
そして男に思わずこんな罵声を浴びせてしまったとしても……
誰も彼女の不躾を責められよう筈もなかった――――――
―――――――――戦争は、続く………
――――――
Girl of Fate&Blade Worker3 ―――
少女によるサーヴァント捕獲作戦は佳境へ入りつつあった。
弓兵を追いすがる影は既に2つ。
爆撃機さながらの空爆を降らせる少女と、橙の毛並みを持つ獣が地上からアーチャーに迫る。
相手の消耗に合わせて少女が使い魔を投入し、一気に詰めにかかったのだ。
(いける…………)
ほぼ初陣となる任務を、フェイトは完璧にこなしつつあった。
その冷徹にして冷静な手腕はとても歳相応の少女のものではない。
全ては母のために。 実戦経験こそ無いが、生まれてより厳しいトレーニングを欠かさず直向に努力してきた成果だ。
弓を番えられない弓兵など物の数ではない。
地雷式のチェーンバインドに俊敏な狼の爪と牙、そしてフォトンランサーのつるべ打ち。
防戦に苛まれるアーチャーの陥落はもはや時間の問題だった。
(追い込んで……そう……そこ)
使い魔との密接な連携で敵の動きをコントロールし
今、奮闘を続けるサーヴァントの四肢をライトニングバインドにて―――捕らえた!
磔の様に手足を四方向へ伸ばされ、肢体を拘束される弓兵。
終始、無言で振るい続けた双剣もまた沈黙を強要される。
「……………勝負ありましたね」
「フ、―――」
その笑みは諦観の現れか。 不敵な表情のまま、サーヴァントアーチャーは少女の下に降る。
(………よし)
胸を撫で下ろすフェイトテスタロッサ。
さて…………これから先はどうすれば良いのか?
情報が確かならば、この後――――――
少女は英霊を眼下に置きつつ、自らの手の甲を見据えて「兆候」を待つ―――
――――――
Archer,s view ―――
大したものだ――――さして手を抜いた覚えも無いが……
事実、私は防戦一方のままこうして囚われの身になっている。
信じられんな。 あの歳であの技量。
真っ当な戦闘力ならば熟練の魔術士を遥かに超える。
さりとて10にも満たない幼子に遅れを取ったとあってはマスターに何を言われるか分からん。
人間の少女に敗れたなどと聞けば、そんな石潰しの役立たずは
鍋の具にでもなってしまえ、くらいの事は平気で言うだろう。 我が不肖のマスターは……
(仕方が無い……気は進まんが、そろそろ―――私らしく行こうじゃないか)
幸い相手はあの獣も含めてほとんど実戦の経験が無いと見える。
力はあっても攻めに嫌らしさが無い。 真っ直ぐで、それ故にいくらでも捻じ込める。
そういえば、豊富な弾幕に飛行能力、そして拘束術……似たような相手と刃を交えた記憶があるな。
抱える武装が似通うと展開も似通うものか。 いずれにせよ我が積み重ねてきた百戦を超える棋譜。
その膨大な経験から紡ぎ出す読み筋を、少女は超えられなかったという事だ。
勝利を確信するには百年早かったな―――
無理も無いか…………相手はまだ子供だ。
「―――――けろ」
「………え?」
自身の手の甲を見つめていた少女が、私の言葉にきょとんとした表情を返す。
「たわけ! 避けろと言ったのだキャス……では無い、少女よ!」
――――――
幼い魔導士がハッと気づいた時―――既に敵の反撃が喉元に迫っていた!
左右から飛来するのは夫婦剣、干将と莫耶!
互いに引き合う性質を持つ中華の陰陽剣がフェイトに牙を剥く!
(い、いつの間に……!!?)
息を呑むフェイトだったが、そこは彼女の動体視力の賜物。
「はあっ!!」
何かに気を取られていたとはいえ、警戒を怠ってもいなかった。
同時両方向から飛び荒ぶ短剣を大鎌で一閃、迫る刃を切って落とす!
男の掛け声があったとはいえ、その技は賞賛に値するものだろう。
だが―――――――!
その間、コンセントレイトの乱れた瞬間を弓兵は逃がさない。
フェイトの電付加拘束術式を気合一閃、何と砕いて抜けたのだ!
そしてその手に番えるは、戦場を共に駆けた――――弓!
(まずい!)
フェイトとアルフに戦慄が走る。
アーチャーの名を冠するならば、当然その真髄は弓術であろう。
故にそれだけはさせぬよう、戦いを進めてきた。 ここでむざむざ撃たれるわけにはいかない!
「させるかよぉ!」
更なる魔弾を降らせようと構えるフェイトよりも速く、間髪入れずに襲い掛かるアルフ!
男との距離は一足分。 至近から剥き出しの牙を翻し、怒号をあげて狼は弓兵に覆い被さる!
「!!」
フェイトが追い討ちの詠唱を止めて息を呑む!
弓兵の肩口に、今―――――アルフの鋭い牙が食い込んだのだ!
――――――
War3 ―――
とても大きな、剣、槍、斧、槌―――
攻城兵器と呼ぶにはあまりにも原始的な、故に明快な攻撃方法。
巨大質量をぶち当てるという単純にして凄まじい破壊力。
宝具堕とし、とでも呼べば良いのか……あの威容は?
ともあれ眼前に展開される、10機を越えるジャンボジェットが特攻してくるかのような光景。
それを仰ぎ見て戦慄を感じない人間はいないだろう。
「重装騎兵は左右に展開! フィールド最大出力っ! 1秒でもいいからアレを阻んで下さい!」
恐慌に押し潰される寸前でリニスは踏み止まり、機動兵士全AIに指示を飛ばす!
「ショートレンジ! 射線オールグリーン! 第6射ッ……………ファイアーーーーーーッ!!」
大地を覆うほどの影を落として迫る刀剣の、6つ目を主砲が撃ち抜いた!
ピキィ―――という亀裂音の後、砕かれ力を失って墜落する神代の宝具の起源達。
く。読むのを我慢して支援だ!
む。支援遅かったか。さるさんか
先の神槍を初め、砕いた刃はいずれも神話に名を遺した、もしくは残す事になる前の代物だったのだろう。
あの大きさで、その本来の性能を発揮されていたら間違いなくアウトだった。
担い手であるギルガメッシュの手にある宝具の数々は、バビロンの斉射でも相当の性能を発揮していたのだが
あそこまで人の手に余るモノへと零れ落ちた以上、王の手に「担う」事すら出来ないという事か?
もっとも、それでも何の慰めにもならないが。
戦線は如実に押し返され、戦力の底が見え始めてきたのは庭園の方だった。
(ファクトリーの生産も追いつかない……このままじゃ!)
プレシアの所持していた9つのジュエルシードのうちの1つ。
その膨大な出力を以って稼動を続ける無限工場<ファクトリー>
果てなく回り続ける生産ラインからは今もなお、新たなる機動兵が生産されているのだが、今その生産速度をゆうに消費が超えている。
そも機動兵一体一体の性能とて、決して急場造りのロースペックな物ではないのだ。
元々の設計図にスカリエッティの齎したガジェットドローンの技術を流用して造られた完全軍事用キリングマシン。
ともすれば初めに男を包囲した時点で、対象を圧殺できるだけの性能を発揮してもおかしくなかった。
それなのに、結果は見ての通り。 図工で作った紙の兵隊のように
虎の子の機動兵団はガラクタ同然に薙ぎ払われた。 その様は悪夢以外の何物でもない。
王に挑むためのカード―――質、破壊力、量。
その全てを揃えて戦いに望んだ筈だった。
負ける事など考えていなかった。 だのに………
プレシアとてファランクス対空弾幕を張り続けながら、主砲へ魔力供給をも同時に行っている。
その体が何時まで持つか……このままでは押し潰されるのは明白だった。
(リニス)
その時、使い魔の脳に主人から念話が飛ぶ。
(そのまま劣勢を演じなさい)
(演じるも何も、見たまんまの劣勢です! このままじゃ揃ってペチャンコにされますよっ!)
(なら、このままの状態を維持し続けなさい。 出来ないとは言わせないわ)
(5分も、持ちませんよ……庭園も……貴方も!)
切迫の事態だった。 勤めて事実だけを述べる使い魔の声には抑え切れない苦渋の念が混ざる。
虎の子の主砲であのサーヴァントを撃ち抜ければ良かったが、これは後々管理局の戦艦との戦いすら視野に入れた
あくまで巨大兵器や圧倒的質量を対象にした切り札だ。 斧でハチを狩れる狩人はいない。
発射後の弾速は無双無類のレールガンだが、英霊連中を撃ち抜くには予備動作と小回り、そして照準に難があり過ぎるのだ。
「……………」
艦橋にて佇む影……プレシアテスタロッサ。
見据える先では、砲線が徐々に徐々に要塞側に押し返され、熱波が鼻先にまで届くに至っている。
肌をじりじりと焼く爆風を嫌うように、彼女は艦橋から姿を消した。
英雄王に背を向けて、まるで万事休すとでも言うかのように―――
「死に場所を決めたか―――――よかろう。 その岩刳れを貴様の墓標にしてくれる!」
王の財宝が一層の激しさを増して降り注ぐ!
これ以上はあるまいという願いにも似た予想を嘲笑う、際限無き侵攻蹂躙部隊。
進退窮まった要塞の防壁に、ギルガメッシュがついに手をかけたのだ!!
――――――
――――――
ミッド式魔導士は通例、強大な力を制御するためにデバイスを従えている。
だがしかし、この闘いにおいて彼女はあれほどの力を駆使しておきながら―――己がデバイスを振るってはいなかった。
インテリジェント、ストレージ、アームド……どの種別のデバイスもその身に装着してはいなかった――――
――――――
時の庭園中枢―――玉座の間。
王の住まわぬ方舟で「玉座」などと何の洒落にもならないが、ともあれプレシアはそこにいた。
そして彼女の虚空を称えた瞳が見上げたその先に―――それは在った。
伽藍の天井に近い場所に、太陽の如き白光を称えた巨大なモノ。
ヴヴヴ―――、と低い稼動音とプラズマを伴って輝き続けるのは
この要塞を司る9つのジュエルシードに護られし、庭園の中枢コアである。
アリシア………
声無き声で彼女は最愛の名を呼び、頭上に燦々と輝く白光に手を伸ばす。
すると光球は答えるように彼女に光の触手を伸ばし返す。
数百本では利かない粒子状の触手がプレシアの周囲を、身体を繭のように覆っていく……!
海底で踊るイソギンチャクの戯れのような、それは幻想的な神々しさと、おぞましさを同居させる光景。
前言を撤回する。
彼女は――――――初めからデバイスを使用していたのだ。
中枢コア―――この庭園そのもの。 それこそが彼女のデバイス。
名を 『アリシア』 ……
闇に沈んだ彼女が永遠に仰ぎ続ける陽光―――
二度と傷つけさせない……
誰にも、何にも犯させない……
光り輝く繭がプレシアの身体に完全に同化した瞬間―――
紫電の魔力光が、くすんだ黒雷へと変化し、部屋中を駆け巡るっ!
爆雷! 閃光! その雷の猛り狂う様を一体、どのように比喩すれば良いのか!?
ダムの氾濫のようにところ構わず漏れ出て暴れ狂う暴力的なまでの魔力の渦!
やがて己が体内にて猛り続ける黒ずんだ紫電を、彼女は―――掲げた両の手に集束させる!
右手に集うは不滅の雷―――
左手に集うは無敵の雷―――
紡ぐ魔法はThunder Rage―――
究極の域にまで昇華したプレシアテスタロッサ唯一無二の剣。
黒炎の如き、漆をぶちまけた様な毒々しい黒が、紫の魔力光を侵食して食い尽くす!
それはあの高町なのはが、「ある状態」で体から立ち昇らせる焼け付くような赤熱の光に酷似していて―――
母さんが………護ってあげるから
その細腕に最強の王をも葬り去る剣を称えて!
……………母はもう一度、娘の名を呼んだ。
答えなど返ってくる筈が無いのに――――それでも呼んだ。
陽光は沈黙を守り、ただ彼女を照らすだけ。
荒れ狂う稲妻の大河の只中にて―――
狂気のみを称えていた彼女の麝香の瞳が―――優しく、穏やかに微笑んだ………気がした。
――――――
Rinis,s view ―――
逃げた――――――――
あのプレシアですら、サーヴァント最強の個体には敵わなかった―――
どうにもならなくて、殻の中に篭ってしまった――――
―――――――――――――――いや…………………違う。
艦とリンクしているから分かる。 あの人が、ついに自身最大の剣の柄を握った事を……
――――――あの科学者によって齎された最後の剣。
愉悦に満ちた狂人そのものの男が、悪魔の囁きみたいな言葉と共に齎した力を
プレシアは全て受け入れてしまった。 目的のために。 目指す奇跡の成就のために。
サーヴァント戦においてミッド式魔法が極めて有効に働くのはデータでも分かっていた。
だからこの戦いにおけるラストカードは、やはりプレシア自身の魔法以外には有り得ない。
そして膨大な演算機によって出された、あのサーヴァントの思考・行動ルーチン。
それを頼りに最後の賭けに出る時が来た。
エアを解き放ったキングの行動パターンは、大別してそう多くはありません。
彼は王の財宝で倒しきれない場合、そのまま押し潰さずにかなりの可能性で「その行動」を取る。
きっと彼のプライド……一方的な蹂躙に慣れ過ぎた思考が、己の軍が相手と拮抗する事実を許さないのでしょうね。
あと、もう少しで―――――60〜70%の確率で、英雄王は「エヌマエリシュ」を解禁する。
きっと……いや、絶対。
ここでその確率を引けないようならそれで終わり。
天運に見放されたと思って諦めるだけの事。
もはや拮抗を許さない戦況だけれど、それでも食らいついていく時の庭園。
<A・S・G>を付加したファランクスを抜け、1本、2本と要塞の外殻に突き刺さる宝具。
その内包する魔力が爆発を起こして庭園を揺さぶる。 削り取られる外壁。 もう一刻の猶予も無い……!
サーヴァントは個体差はあっても総じて隙の無い、人間を超えた超闘士達。
でも彼らに一様に隙が出来る瞬間がある………それが宝具発動時!
(カウンターチャンスはもうそこだけ……!)
あの最強宝具を敢えて撃たせるなど正気の沙汰ではないけれど、成功すれば見返りは十二分。
最も無防備な所に最大戦力をぶつける……レールガンすら超えるアレを!
「ク、フハハハ――――我に二度、これを抜かせるとは贅沢者よな。
常ならば、冥土の土産には過ぎた賜り物だと弁えて然るべきなのだが」
!!!!!
「この我に全力を出させた事をまずは誇るが良い。
英雄王との戦争をこうして成り立たたせた貴様らの蓄積と労使。
そして健気にも蓄え続けた叡智を―――我は決して哂いはせん」
来たッ!!! ご丁寧に台詞付きっ!
ギルガメッシュがゆっくりと紅い孔の中に手を突き入れ、そしてあの恐ろしい円柱状の剣を取り出した!
既に起動を開始している歪な刃の3重重ね!
その刀身に纏わり付くように、紅き倶風が集約されていく!
「今こそ仰げ明星を! 醜悪な亡霊ではあったが最期は艶やかに送ってやろうッ!」
打ち放たれたら後が無い!
主砲は今もなお巨大宝具を撃ち抜いている最中!
速射性と破壊力であの宝具発動を潰せるのは、もうアレだけ―――ッ!
「エヌマァァァ――――――」
――――――
「プレシアッ! 今ですっ!!!!!!!!!!!」
搾り出したリニスの叫びがブリッジに木霊する――――
――― ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ―――
よりも早く――――この世の全てを無音へと帰す、落雷の轟音が第2セクターに響き渡った。
――――――
次元跳躍法――――
プレシアが艦のバックアップを経て行う魔法の中でも、最大最強最悪を誇る破壊術式の総称。
戦技とは異なる高度な理論構築と、卓越したセンスを要する人道的に反するとまで言われる反則行為。
序盤にアーチャーとギルガメッシュを撃ち抜いたのと同様―――いや、それ以上に巨大で禍々しい雷が英雄王の頭上に落とされた。
初めの一撃は、無限の剣製を警戒していた王が数多の防具を予め備えていた。
そして弓兵もまた、それを利用してギルガメッシュを盾にする形で逃げ延びた。
故に狙われた双方共に生き残れたが、今度は違う。
完全に意外の外。 宝具発動にカウンターで合わせたのだ。
タイミングもドンピシャ。 宝具の鎧一式と幾多の神盾を6枚を貫いた稲妻を生身にまともに喰らえば―――
「いかに我とてひとたまりも無い―――そんな所であろう?」
その戦術を、男は雄弁に、小賢しく弄した当の相手に語って聞かせたのだった。
――――――
カチカチと、恐怖で歯の根を震わせるリニス。
怯える子猫そのものの瞳だった。
その彼女の眼前に見据える―――口元を引き上げて哂う王。
まるで健在のギルガメッシュ。
頭上に張り巡らせた20近い守護、防壁宝具が役目を終えて、バラバラと地表に落下していく。
「うつけ。 よもや遊びとでも勘違いしたのではあるまいな?
どこの世界にこれから切り札を放つと宣言して撃つ馬鹿がいるか」
冷め切った口調で男は言った。 胸躍る熱戦の、よりにもよって最後に打った敵の悪手を嘲るように。
「そんな……フェイントってアナタ……」
―――パクパクと口を開くも二の句が繋げないリニスである。
正論だった。 その口を突いて出たのはこれ以上無いほどの正論だった。
でも、駄目だろう…? 何を言っているのだこいつは……そんなの卑怯だろう?
圧倒的過ぎる力を持つ者が、そんな普通の事をしちゃ駄目に決まってるだろう……?
「コレがそんなにも恐ろしかったか? 恐怖に呑まれ、詰めを違えるとは所詮、雑種……
いかに叡智を積み上げようと恐れ苛まれる者に勝機など訪れぬ」
やはり我の敵ではなかったな、と溜息を付く男。
この王に対等に見られる事がこんなにもどうしようもない事態だったとは……
誰が勝てるというのか? この油断も隙も無い最強に―――
もはや命運尽きたとばかりに、力無く座して最期の光景を見据える使い魔。
対して再びエアを構える男。 もはやそんな必要も無いというのに……
こちらの張っていた弾幕は既に無く、バビロンの一斉射を次々と受けて剥がれる庭園の外壁。
思い出の住居が壊されていく……爆発は既に内壁をも削り取り、間もなくこのメインルームに届くだろう。
だのにハチの巣にしただけでは飽き足らず、この上、あの宝具を解放するなんて容赦が無さ過ぎる。
英雄王の掛け値無しの全力全開、全戦力解放状態。
天地波濤す終局の刻―――
ウト ・ ナ ビ シ ュ テ ム
男は完全に、跡形もなく、魂すら一片も残さずにプレシアを殺滅する気なのだ。
「―――――――――終わり、だ」
勝利を確信するギルガメッシュ。
終の号令を宝具に下そうと口を開き―――
そして―――――――
「…………なっ!!?」
リニスの口から漏れた驚愕の言葉が、その決着を如実に物語るのだった。
――――――
「―――――、ぉ」
省みよ―――省みよ……!
この世で王気に勝る力こそ―――子を想う母の母性。
子を傷つけられた母は鬼子母神となりて目前の全ての敵を砕いて食らう。
それはギルガメッシュに二の句を上げさせる事すら無かった―――
即ち、無間の地獄より這い出て黄泉返った亡霊の一撃。
光の上を歩いてきたものにはそれは決して見えず、聞けず、感ぜず、故に防げない!
一撃目を完全に防いだと誰もが思った瞬間―――
王に……………敗北を告げる光の奔流は突然に訪れた!
黒紫電の稲妻は、再び男の「真横」から翻り―――
飛行船ヴィマーナ諸共、王を薙ぎ払ったのだ!
黄金の舟を巻き込み飲み込む、大河の氾濫の如き稲妻―――
――――――吼える落雷は………悲しき悪霊の慟哭のように。
――――――
Girl of Fate&Blade Worker4 ―――
顎部の筋肉が引きつるほどに食い込んだ牙―――
敵に全体重を乗せたバイティング。 突き立てた犬歯の根元に鮮血が染み渡る。
右の肩口を狙って噛み付きを敢行したフェイトの使い魔アルフ。
人間であれば間違いなく戦闘不能に陥れるほどの傷を負わせた、そんな彼女が―――
(コ、コイツ………捨て身で……!?)
今、その目に驚愕を称えて呟いた。
そう、鎖骨すら噛み砕く狼の咬合をアーチャーは敢えて受けたのだ。
傷口から勢い良く血が噴き出し、右の頭部から耳にまで鮮血に塗れ、それでも弓兵は変わらぬニヒルな笑みを浮かべていた。
「信じられない……私が喉笛を狙ってたらどうするつもりだったんだいっ!?」
「愚問。 繰り出す攻撃の悉くに必倒の気合はあれど―――必殺の意思は無かった。
ならばそんな腑抜けた攻撃の一つや二つ、体で受け止めても支障は無い」
――― その勝利と引き換えに ―――
「あっ!? ぎゃんっっっっ!!!!」
飛び退こうと離れたアルフの口から悲鳴が響く。 陰陽の二刀が狼の脇腹を凪ぎ払ったのだ!
「アルフっ!!!!!」
大事なパートナーを傷つけられ、悲痛な声をあげるフェイト。
すぐに敵を撃たんと手を翳すが、使い魔の死角になって―――いや!
あの男がアルフの喉笛を鷲掴みにして盾にしているが故に、少女は手に秘めた砲撃魔法を解放できない!
怒りか焦りか、もしくはその両方が脳内に渦巻き、幼い魔導士の戦術は霧散した。
自身が傷を負ったのであればここまで動揺する事は無かっただろう。
だが大事な仲間のそれに対しては彼女はあまりにも脆かった―――
これが才能も素質もなく、それでも戦場で不敗を誇った男の戦いだ。
泥を啜りながら、常に自分よりも強く、多く、強大な相手に挑んで、単身……勝利してきた修羅。
自愛など微塵も無い、男が病的なまでに積み重ねてきた勝利を理解できる者はなく―――
その孤高の剣の一端を垣間見せた男。
狼の死角に隠れた彼の手に、今――――黒曜の輝きを放つ弓矢が番えられた。
――――――
War4 ―――
大空に二対の稲妻が咲き誇り―――
無残に撃ち抜かれた飛行船ヴィマーナが空中分解し、残骸となって墜落していく。
直角に突き立ったプラズマと、大地と並行に薙ぎ払われたプラズマ。
中央でクロスしたそれはまるで、宙空に十字架を描いたかのようだった。
限りなく黒に近い紫色の、それは背徳の十字架であろう。
そんな神々しさすら感じられる光景を呆然と見据えながら―――
「プ……プレシア……貴方は」
使い魔は掠れるような声で主人の名を呟いた。 カラカラに渇いた喉。 その声帯は震えている。
全身を覆う冷たい汗と震えは、決して九死に一生を経た事、自分らが勝利に至った事による歓喜の震えではない。
「聞いてない……聞いてないです……ここまで……!」
うわ言のように呟き、モニターに写された玉座の間に佇む主人を見る。
「自己ブースト」をかけた限界突破・魔力行使による次元跳躍砲。
リニスが聞き及んでいたのはそこまでだった。
――――――
―――――そう、その先は荒唐無稽な素人の与太話でしか無かった筈だ……
魔導士の常識など全く弁えない科学者の夢想じみた戯言。
子供がメカを模した玩具に積載量と容量を超えた、非現実的な武装を付けて喜んでいる姿はよく見かける。
―――そういう類の話だった。
思い出したくも無いが…………
あの時、彼は何て………ほざき散らしていたんだっけ?
キミの魔法からは何人たりとも逃れられない。
英霊の中には未来予知じみた回避力を持つ者もいるというが
空間、間合いすら無視して「四方八方」から降り注ぐ死神の雷を防げる者などいないだろう。
どこまでも獲物を追いつめ、幾度となく冥府へと誘い続ける……さながら亡霊のように!
「オーバードライブ―――Mode・FANTOM」 キミに相応しい名称だとは思わないかね!
………………
あまりにも荒唐無稽で聞くに堪えない物言いだった。 だから耳を貸さなかった。
主人だって、まさかあんな妄言に耳を貸すだなんて考えもしなかったのだ。
同時連装―――オールレンジ―――次元、跳躍砲―――
キミなら使いこなせるだろう……さあ、証明しておくれプレシアテスタロッサ!
絶望と執念を究極まで煮詰めた者が一体どれほどの力を見せてくれるのか!
…………………
――――――
「………………ぁ」
魂の抜けたような声を漏らし、使い魔は回想から戻ってくる。
画面を凝視する双眸を向けた先で―――
―――― バキン、と ―――――
何かが破裂するような音が響いた。
それは聞き間違いでなければ、間違いなく主人の体内から響いたものであり―――
―――――――佇む黒衣の魔導士の、到る所から……亀裂の生じたような音が………
プレシアテスタロッサVSギルガメッシュ
ギルガメッシュ撃墜
プレシア勝利―――――――?
――――――
「プ………プレシアァァァァーーーーーっ!!!!」
蒼白と表すしかない面持ちで玉座の間に転送してきたリニス。
メインルームの制御などそっちのけだった。
未だ立ち尽くす主人に駆け寄り、その身を後ろから抱き止めたのである。
すると何事もないかのように佇んでいた主人の体が……
使い魔に抱かれた瞬間、力無く崩れ落ち、リニスに為すがままに体重を預けた。
その肉体は常軌を逸した熱に苛まれ、蛋白質の焼けるような匂いを場に醸し出す―――
跳躍法の多方向からの連射―――1発ですら全霊をかけて撃たねばならない大魔法のつるべ打ち。
オーバードライブと呼ばれる決戦モードによって叩き出された出力は
そんな埒外を 「取りあえず」 可能にするだけの魔力量を確保するには至っていた。
「何て……何て馬鹿な事を……! しっかりして下さい!」
だが、どんなフィジカルを持とうが魔力が足りていようが無茶は無茶なのだ。
これは人類が間違いなく踏み込めない域の魔力行使。
そもそもプレシアテスタロッサのフィジカルデータはあくまで10年前と変わっていない。
なのにPT事件の頃より遥かに進化した、管理局の開発した最新鋭モードをその身に無理やり搭載させたらどうなる?
10年前のクルマにニトロのついた最新型エンジンを乗せて全開走行させたらどうなるというのか……?
その結果が目の前のそれだ。
連装跳躍砲の2発目のトリガーを引いたところで―――彼女のリンカーコアに、その肉体ごと亀裂が入った。
左脳と、砲身である両腕の毛細血管が破裂し、滴り落ちる鮮血が介抱するリニスの衣服を朱に染める。
そして制御不能に陥った雷撃が術者である彼女自身を襲って牙を剥いたのだ。
(………………軽い)
脱力し、じっとりと汗ばむ主人の体の――――嗚呼………何と軽い事か。
ほとんど中身が詰まっていないのでは、と思わせる彼女の体は
まるで糸の切れたマネキンのように力無く、無造作に手折られた小枝のように脆弱で頼りなかった。
怨執の鎧を身に纏い、英霊すら飲み込まんとした女渦―――その女の等身大の姿だった。
そう、忘れるものか……この感触。
使い魔はかつて、そんな病に蝕まれつつある主人の身を何度となく抱きかかえ、ベッドに寝かしつけたのだ。
この肉体はあの時から止まったまま。 そんなボロボロの器に、極限まで肥大した色々なモノを無理やり詰め込んで……
何て…………何て………無茶で無為で、悲惨な有様なのだろうか。
(息苦しいでしょう……今、マスクを外しますから)
幸い他に誰も見ているものはいない。 その貌を―――誰かに晒す事も無い。
苦しげにヒュ、ヒュ、と気道を蠕動させているプレシアの背中を摩りながら、リニスは仮面に手をかけ―――
―――― ガコン!
「っ!!」
その音にビクンと肩を震わせる使い魔であった。
それは中央のモニターより響いた音、か?
何かがぶつかる音―――そこに映し出されているのは
サンダーレイジによってバラバラに砕かれた黄金の舟の残骸だった。
ゴクリと唾を飲み込むリニスの視界にて、炭化し、藻屑となった飛行船ヴィマーナの……
ひしゃげた出入り口が―――今、勢い良く蹴り飛ばされたのだ!!
――――――
吹っ飛んだ入り口から、据えた匂いを放つ黄金の具足が見える。
ズリ、ズリ、と引き摺るように這い出てくる人影が見える。
その体を外に運ぼうとして、残骸に挟まれた肉体―――炭化した右半身を呆然と見やる男の姿がある。
「――――――――――お、お……」
何を見ているのか理解できない。
何を見ているのか信じられない。
コレは何だ―――この醜く焼け爛れたモノは?
よもやそれが、この世で最も尊い肉体の手であると―――
よもやそれが、この世で最も尊い肉体の足であると―――
ゆっくりと、男の理解に浸透していくにつれて―――
やがてその表情に、言うまでもない一つの感情が浮き出てくる。
呆然とソレを見やる使い魔の眼前で―――
息も絶え絶えに、瓦礫と化したヴィマーナから無理やり自身の体を引き抜く。
ブチブチ、と肉体の腱が切れる音が場に響き渡る。
「おのれ…………おのれ―――――――おのれ、おのれ、おのれ………」
手負いの王が――――
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
―――――世界を滅さんばかりの絶叫を上げた。
支援
―――――外した…………
リニスは自身、体中の力が抜けていくのを実感していた。
やはりプレシアほどの魔導士であっても、あれだけの魔力行使をぶっつけ本番で成功させるのは無理だったのだ。
ただでさえ照準の難しい跳躍砲。 その暴れ狂う出力を制御出来ずに、僅かに直撃軌道から右に逸れ―――
サーヴァントの急所である首を、心臓をスレスレで巻き込まずに、僅かに外れてしまっていたのだ。
「仕留めきれなかった………」
こんなに頑張ったのに……
主人がここまで全てを投げ打ったというのに……
涙ながらに結果を見据える使い魔の心胆はいかばかりのものか。
瀕死の状態に追い込んでも、倒し切れなければ意味が無い。
あのサーヴァントは「攻、防、支援、癒し」の全ての要素を内に持つからこそ最強なのだ。
あれだけの致命傷を受けてなお、蘇生レベルの復活を果たすだろう。
その余地も許さぬほどに、一度に葬り去らねば勝ちは無いと分かっていながら………
もはや何も出来ない自分達には、歯噛みするしか術が無い。
「あと一手、あと一手あれば……」
――― 詰め将棋は手順を一歩間違えれば王を詰ます事は出来ない ―――
その事を痛感せずにはいられない。 今、思えば弓兵を切るのが早すぎたのだ。
アレを捨て駒にするのは決まっていたが、ギルガメッシュを相手に拮抗すら出来なかったが故に
早々に見切りをつけて序盤で早くに捨てしまった。
それ故のこの結果。
シミュレーションに対して駒が一つ足りないのだから、詰めきれなくて当然だった。
とはいえ、この悔しさと口惜しさは到底、受け入れられるものではない。
(リニス)
「!」
自身を抱える使い魔にプレシアが念話を送る。
その声はやはり憔悴に落ちくぼみ、まるで生気が無い。
(そろそろスカリエッティが援軍を寄越すわ。
あの男も今、私という防波堤を失うのは死活問題だから)
(喋らないで下さい……! もう神経も血管もズタズタなんですよ!?)
(だから、それまで貴方がアレの相手をしておきなさい)
………………………
「………………は?」
思わず肉声で返してしまう使い魔であった。
――――――
「雑ぁぁ種ゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーー!!!」
王が周囲に残存していた傀儡兵を怒り任せに―――1薙ぎで全滅させていた。
――――――
Rinis,s view ―――
「アレの…………ですか?」
思わず聞き返してしまう私。 念話だけに聞き逃すなんて事はなかったのだけれど……
脳が現実を受け入れるのを拒否しているというか何というか―――
(昔の貴方はとてもすばしっこい猫だった。 怒りに我を忘れた牛をあしらうくらい、どうとでもなるでしょう)
「ど……ッ!」
どうともなりませんよ、あんなもん!
とんでもない事を言ってくる主人に対し、言葉を詰まらせる!
ていうか神牛を相手に暴れた英霊を牛呼ばわりって……笑う所ですか、ひょっとして!?
(やりなさい。 私やフェイトの居場所を護ってくれるのでしょう?)
「う、ぐう………っ」
こちらの言葉なんて聞く耳持たないご主人様。
ええ、思い出しました。
忘れるものですか……こういう所もまるで変わっていない。
………………………………………………………………こういう、鬼みたいな所も。
「分かりましたよ……ええ、了解ですとも! メインコントロールを私に回してください!」
(いい子ね)
まるで心の篭っていない労いの言葉を残し―――
未だに降って湧いたような展開を信じたくない私を残して、プレシアの体は腕から掻き消えてしまった。
恐らくは医務室にテレポートしたのでしょう。
嗚呼―――――ノーと言える使い魔になりたい……
――――――
明らかに自身には荷が勝ちすぎる相手を前にリニスは立った。
不平不満はあったにせよ(それはもう盛大に)、彼女は聡い使い魔である。
状況を正確に理解すればするほど、それしか無いという事を理解していた。
当然だ。 ここで自分が踏ん張らなければプレシアとフェイト、それにアルフの居場所を守れない。
結局、主人に言われるまでもなく、無茶で無理だと分かっていてもやるしか無かったのである。
「庭園、浮上! ファクトリーのラインに残った戦力も全て出して下さい!
機動兵を前面に出しつつ、徐々に後退!」
幸い、敵の足は潰した。 舟を壊され、あの体では追い足は無いに等しい。
怒り狂い、瀕死の重傷で、見るからに正気を失っている敵サーヴァント。
あれならば撤退戦に限定すれば何とかなるかも知れない。
徐々に引きながら―――慎重に時間を稼げれば……!
――――――
「ヴィマーーーーーーーナッッッ!」
英雄王が吼え狂うように宝具の名を叫ぶ。
後方より穿たれた孔の中より――――再び、黄金に輝く古代の舟が現れた………
――――――
「………………」
ヘナヘナと崩れ落ち―――――
山猫はコンソロールに突っ伏していた。
「何、隻、持って………」
早くも心が折れて砕けてしまいそうだ。
今更とはいえ、節操が無いにも程があるだろう……
「が、頑張ろう……………頑張るしか、無いじゃないですか……」
あまりにも重過ぎる責務と、要塞全体の負荷がリニスの体を苛む。
何分持つか分からない。 魔力が足らない。
庭園全てに張り巡らされた回路に送り込む動力にしても、自分ではまるで確保できない。
こんな有様ではまともに動かせるとは到底思えないが………ともあれ、やるだけの事はやろう。
絶望的と呼ぶのもおこがましい戦力差を前に―――
使い魔は己が愛すべき人達の玄関を守るための奮闘を決意する。
例え、それが業火の前の水鉄砲に等しい、ささやかな抵抗だったとしても――――
プレシアテスタロッサVSギルガメッシュ
ギルガメッシュ辛くも生存
プレシア重症・魔力エンプティにより退場
時の庭園の全権をリニスに委譲
戦闘継続――――――
(フェイトは……弓兵を説得出来たのでしょうか?)
今からでも遅くは無い。 あの弓兵が再び参戦してくれれば、まるで話が違ってくるのだが……
まさに覆水盆にというか―――虫の良い話だとは思う。
だがそれでも可能性として無いわけではない以上、期待してしまう。
であると共に、母の力になるために動いてくれた優しい娘の安否をリニスは気遣う。
そんな少女の決意深き戦いの決着もまた―――――既に、、
――――――
Girl of Fate&Blade Worker5 ―――
「ハァ……ハァ……ハァ………っ」
血糊が、地面を赤く染める―――
抉られた脇腹から、太股を、ふくらはぎを伝って滴る命の液体。
弓兵と称されるサーヴァントの渾身の1投は想像を超えて余りあるものだった―――
少女は避ける事も凌ぐ事も出来なかったのだ。
何とか急所だけは外れているようだが、英霊を相手に戦える状態に無い事は自身が一番良く分かっていた。
(作戦は………間違ってなかった……だけど)
生まれてよりずっと厳しいトレーニングを続けてきたフェイト。
この年齢で推定AAA前後の実力を持つ彼女は、そこらの大人の魔導士よりも遥かに強い。
恐らく持って生まれた資質は、あの弓兵よりも上だろう。
だが―――それでも経験値はゼロ。
戦火の中で鍛えられてきた弓兵とは引き出しの多さと厚みが違う。
咄嗟の機転と、極限状態における爆発力。 そこに天と地ほどの差がある。
故にこれは埋めても埋めきれない、実戦経験の差が生んだ結果。
(戦術次第だなんて……その分野で上を行こうなんておこがましい話だった…
全部、私のミスだ……ごめん、アルフ)
フェイトにとって不運だったのはスカリエッティから齎された情報の不明瞭さもある。
この英霊が他のサーヴァントよりも弱いという、数値のみで出した情報しか持ち得なかった事。
このアーチャーこそは基本スペックや先天スキルで他の英霊にあけられた溝を
特異な資質と戦術を駆使して埋め、互角の闘いを展開するに至った英霊だ。
彼の生涯において楽な戦いなど一つとしてなかった。 その一戦一戦で培われた思考の柔軟性と瞬発力。
それこそがピンチを凌ぎ、チャンスをモノにするのに一番必要になるもの。
男は絶対の窮地を凌ぎ続け、フェイトはアルフの負傷を含めた窮地に動揺して凌げなかった。
せめて5年、10年―――少女にも積み上げてきたモノがあったのならば、こんな結果にはならなかっただろう。
(ごめんなさい………母さん……リニス)
年端もいかない少女に酷な出血は、それでも何とかしようと奮い立つフェイトの意識を無慈悲に刈り取り―――
母親と、優しい師匠の顔を思い浮かべながら―――彼女の精神は闇に沈んでいった。
――――――
「フェイトぉぉぉーーーッッ!!」
盾にされ、あまつさえ屈辱にも地面に打ち捨てられた狼。
その断末魔にも似た絶叫が木霊する。
「こんの…………野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」
怒りに打ち震える使い魔。
浅くない負傷を無視して立ち上がるアルフ。 猛り狂うその瞳に写るは憎っくき敵の姿。
少女の使い魔が牙を剥き出しにして弓兵に突進する。
(…………)
対して構えるアーチャーはもはや磐石。
フェイトの空爆と罠があったからこそ、地上戦で狼相手に手こずったのだ。
それが失われた今、彼女は弓兵の敵ではない。
双眸に怜悧な光を灯し、男は獣を仕留めようと双剣を翻す。
「むっ!!?」
だが突如、アーチャーを襲う焦燥と戸惑い!
獣の姿だった敵が目の前で人間の―――女の姿に変異したのだ!
一瞬の虚を突かれたアーチャーが双刃を引き下げ、ガードを上げる。
その防御に対し、アルフは己が拳骨を力いっぱい、骨まで砕けよ!とばかりに叩き付けたのだ!
「ぐっ……!」
横殴りに殴られ、後方の木まで吹っ飛ばされて叩きつけられるアーチャー。
生来の馬鹿力に、更に魔力を込めた右拳の一撃は鉄をも砕き割る。
「二刀流相手ならこっちの方がやりやすい……!
遠距離専門相手に殴り合いで舐められてたまるかよ!」
弓兵の前に現れたのは、獣の姿だった時の毛並みと同色の、燃えるような長髪を称えた女だった。
豊満なボディに、機能美に溢れた力強い四肢を備え、天を突く怒髪を逆立たせて主を傷つけられた憤怒に燃える女性。
(人語を解する故、もしやと思ったが―――案の定か)
「立てよ……フェイトの仇だ! そのスカした面をボコ殴りにしてやるっ!!」
野性味溢れるワイルドな肢体を翻す獣耳の娘。
獣の時と同様、アルフは犬歯を剥き出しにして弓兵に襲い掛かる!
――――――
Arf,s view ―――
―――そんなこんなで突っかかったまでは良いんだけどさ………
半分は本当に怒りだった。
マジでぶっ飛ばしてやろうって思った。
でももう半分は―――虚勢だったよ……
だって分かっちまうんだ。 コイツには勝てないって。
二人係でどうにもならなかったものを私一人で倒せるわけが無い。
今だって拳を交えてすぐに分かった。 コイツ強いって。
怒り任せに叩き潰してやろうとマグマみたいに煮え立った感情が、ヘンに冷静さを取り戻しちまうほどに。
ちくしょう……! サーヴァントってのは使い魔だろう!?
私と似たようなものの筈なのに、数値からして違い過ぎるじゃないか!?
初めは馬鹿力で押し込んでいたけれど、今じゃもう受け流されて鋭い反撃を食わないようにするだけで手一杯。
こんなのを生け捕りにするなんて初めから無理だったんだよフェイト!
「このっ! このっ!!」
私のパンチが悉く空を切る。
木を凪ぎ倒し、地面を抉り取る拳も肝心のヤロウには掠りもしない!
当たれば何とか、なんて期待を持つ方が馬鹿だ!
ここまで完璧に見切られてる以上、万に一つのまぐれも起こらない!
「っ!!?」
くそ……ッ! 懐に!
私の防御のリズムさえ読んで、薄くなった所を的確に狙い打ってきた!
白黒の刃がまるで霞のように私の四肢を通り過ぎ―――
「つっ!? ぎゃう……ッ!!」
手足の腱近くを綺麗に切り裂いていきやがった……!
痛っ……! 傷口から血がぶしゅーって景気良く飛び散る。
諸共に膂力を失っていく手足……
「こ、こんなの………効くかぁ!!」
こちらを随時、観察するような怜悧な両目はまるで鷹だ……何とかその顔色くらいは変えてやりたいけれど……
参ったよ……何も出来ないのかい。
いくらでも斬ってみろと相手を挑発する私だけど当然、強がりだ。
先に食らった腹の傷と合わせて既に6箇所。 もう、コイツの動きに付いていけない。
「…………」
くっそう……澄ました顔しやがって!
でも私が倒れたら次はフェイトが止めを刺される番だ!
前言撤回、へこたれてなんかいられない!
敵わないまでも、何度でも立ち上がって食らい付いてやるさ!
膝を付かない事が私のせめてもの抵抗―――
――――――
悲痛な表情で、倒れ付す少女の壁になるように立ち上がり続けるアルフ。
「去れ」
「……………………え?」
その顔が、男の言葉に呆然となる。
「無益な殺生は好まん……幸いにして、お前もあの少女も急所は外れている。
互いに刃を交わす間柄とて、こうもはっきりと優劣がついた以上―――何も死ぬまで斬り合う必要もなかろう」
「……え、えと………見逃してくれるって、言うのかい?」
信じられない。 一方的に襲い掛かって、罠を張って窮地に陥れ、散々痛めつけられた対象を
逆襲にて圧倒しておきながら、こちらを見逃がすと男は言ったのだ。
少女もアルフも英霊なんて謎めいた輩にここまでの事をやった以上、負ければ命を取られるくらいの事は覚悟していた。
それだけに、使い魔は男の言葉を咄嗟に飲み込めない。
「どうする? これ以上続けて無駄に命を散らせたい、というのならば……私は一向に構わんが」
鷹の目が一層鋭く獣娘を射抜く。
「ぐっ」と喉の奥からくぐもった声をあげるアルフ。
こうなってしまったら選択の余地なんて無い―――
(あのババアはともかく、リニスを困らせる羽目になっちまうけど……)
当然の事ながら命にはかえられない。
頭を垂れる使い魔。 ピンと立っていた耳も尻尾も、しなれるように垂れる。
それが獣の完全なる戦意喪失を意味する事は言うまでもない。
「言葉に……甘えるよ。 そう言っておいて後ろから撃たないでおくれよ?」
「そんな事をするくらいなら今ここで仕留めるさ……
早く行け。 ただし―――――次は無いぞ? 仲間にもそう伝えておけ」
「…………分かった。 恩に着るよ…」
苦しそうに地に付しているフェイトを抱きかかえるアルフ。
(早く手当てしないと……ちょっとの辛抱だからね、フェイト)
戦いに完全に負けた悔しさよりも、今は命が助かった事に安堵しつつ―――
(それにしても……アイツ、良い奴じゃないか)
ことにフェイトが殺されなかった事に胸を撫で下ろしながら
狼の使い魔は一度、チラリと弓兵に向き直った後、その場を後にする。
――――――
from Fate to Fate ―――
「………………………………………………行ったか」
傷ついた少女を抱えて飛び去った獣女。 その背中を見据えて、アーチャーはポツリと呟く。
こちらが約束を違えない事を本当で信じているようだ。 もはやあの獣には男に対する警戒心などまるで無い。
素直で結構。 駆け引きで容易くこちらの思い通りに動いてくれる。
ことに獣は正直だ。 純然たる力の差を見せ付けてやれば、よっぽどの事が無い限り牙を剥いては来ない。
それに今、見逃してやった恩を感じているのならば再度こちらを狙って来た時でも、あの拳を全力で振るう事は難しいだろう。
「ふう……やれやれ」
女のハンマーパンチで切った口から、ペッと血泡を吐く男。
一息つくと、ようやく彼特有のふてぶてしい態度が戻った………かのように見えたが―――
木に寄りかかるアーチャーは何と、そのままズルズルと地面に座り込んでしまったのだ。
英雄王との一戦。 跳躍砲による奇襲。 そして今の戦い―――
いずれも決定的な損傷は無かったものの、蓄積されたダメージは確実に弓兵を苛んでいたのだ。
特にあの稲妻の奇襲と、少女の雷矢。 掠っただけで、その身がカンナで削られ喪失したようなダメージを受けていた。
未だ撃たれた箇所は感覚が戻らず、両手の握力もほとんど残っていない。
ミッド式の魔力ダメージはサーヴァントに有効に働く。 ましてアーチャーの対魔力は最低ランクである。
それを受けてしまった場合、セイバーやライダー、ランサーなどよりも遥かに深刻なダメージを負ってしまうのだ。
もしあの獣が長期戦を仕掛けてきたならば実は危なかったのは男の方だっただけに、素直に引いてくれたのは大助かりだった。
流石にこれ以上は勘弁してくれよ………そう願う弓の英霊だったが―――
「勘弁………してくれんか」
星の巡りの悪さも筋金入りだな、と苦笑するサーヴァントである。
自身に高速で接近してくる者を、再びその鷹の目が捕らえたのだった。
恐らくは敵の第三波だろう。
「悪いが、これ以上は容赦も加減も出来ん。
この握力では馬鹿正直に切り結ぶわけにもいかんのでな―――悪く思うな」
まったく、こちらに何の恨みがあるのか知らないが降りかかる火の粉は払わねばならない。
迫る影はあからさまに、先ほどの少女と同系の武装を持った……女だった。
分かりやすくて何よりだ。 重い体を引き摺り、樹林が立ち並ぶ湿地帯に転がり込むアーチャー。
その木の枝に飛び乗って―――
「―――せいぜい上手く避けろ。 死なぬ程度にな」
弓のサーヴァントが再び、愛用の武装を敵に向ける―――その先には……
――――――
Fate,s view ―――
次元振に酷似した反応を感知し、それを辿って来た私はそこで信じられないものを―――
かつて家族と暮らしていた巨大次元航行船、時の庭園を目撃する。
驚愕、郷愁、混乱―――
私の思考を、脳を、ぐちゃぐちゃにしてくれた物をそのどれかに特定するのは難しい。
あるいは喜怒哀楽全ての感情がごちゃ混ぜになって頭の中を掻き乱したのかも知れない。
だってあそこには全てがあった……喜びも悲しみも……私を形成する全てがあったのだから。
逸る気持ちを、冷静に…!と必死に言い聞かせて踏み込んだこの地にて―――
眼前に広がっていたのは「戦闘」と………「戦争」。
私から見て近い方の、森に隣接した広場では戦闘。 詳しい状況は分からない。
そしてそこより奥まった平原で繰り広げられていた戦争の方は、状況なんて一目瞭然だった。
時の庭園と、ナニかが文字通りの雷撃戦を繰り広げていたんだ……
幾つにも連なる爆発。 その熱波が顔を叩く。
遠目に見ているこの付近にすら届く爆炎と、巻き上がる灰と、そしてモノの焼ける焦げ臭い異臭。
鉄と火薬が花と散り、大気を鳴動させる―――紛う事なき戦の奏べ。
そして私の記憶に残る思い出の庭園が、巨大な一門の砲塔を掲げて質量兵器を撃ち放ったのを見た時……
大事にしていた記憶、宝箱にしまっておいた欠けがえの無いものが捻じ曲がってしまった気がした。
「な………何が起こっているんだ? ここで…」
誰に問うでもなく呟いた言葉。 当然、答えは返って来ない。
動機が収まらない。 あそこに行かなくてはと思い、急くように飛んで来ておきながら……
今、私の心を苛むのは 「踏み込んでしまったら後戻りは出来ない」 という、湧き上がるような恐怖だった。
「どうしよう……二箇所で起こっている戦闘行為……どちらに行けば…」
セオリーで言えば……………手前の小さな戦闘に先に介入するべきだ。
奥の大規模な方へと踏み込んで、手前の連中がどちらも敵だった場合、挟み撃ちを食らう羽目になる。
そう、理屈を並べて私は手前を選んだ―――
―――――庭園に突入する事の恐怖から………逃れるために。
――――――
そして戦闘が行われている地点から程無い距離までさし迫った時―――
<Sir caution please>
「なっ!?」
まだ相当数の飛距離があると安心しきっていた私の心胆を、バルディッシュの切迫した音声が叩き起こす!
どれだけ離れた場所から来たのか想像も付かない―――
それほど遠くから、超高速で飛来する物体が今まさに目と鼻の先に迫っていた!
「撃って来たっ!? くううっ!!!」
体を無理やり捻り込んで、無様なツイストで何とか直撃をかわす!
ソニックブームと共に体の下を抜けていき、ぞぶりと―――下腹から胸にかけてのBJをこそげ取っていく何か!
遅れて寒気と共に、ドッと冷たい汗が全身を覆う……!
続けて2射、3射と撃ち込まれる矢が次々とBJを裂いて肉体を傷つける! 必死で回避する私!
狙撃手……!
戦いにおいて最も恐ろしい、防ぎようが無いとまで言われる凶手の名称だ。
その恐るべき殺し屋の射程に、迂闊にも足を踏み入れてしまった事を私はようやく思い知る。
後悔、先に立たずとはこの事。 どうやら私はババを引いたみたいだ……!
ここで今更、止まったり引き返したりしたらそれこそ狙い打ち。 体に風穴が開いておしまい。
あの初弾を見ても分かる。 相手は神業のような腕前を持っていて、こちらの1秒の躊躇をも見逃さない凄腕だ!
(もう………このまま行くしかない!)
「バルディッシュ! 敵の位置特定と回避は私がやるから
相手武装の発射の感知とタイミングのみに全センサーを回して!」
<Yes sir. be careful>
「頼んだよ……! 狙撃が相手じゃ視覚に頼るのは自殺行為だから。
今はデバイスの高速演算機能だけが頼り……!」
正面―――目的地に見えるのは、まばらに木が生えた湿地帯。
いかにもゲリラが潜んでいそうな、あそこに……敵がいる!
「全速! フルドライブ!!」
駆ける私。
その魔境の先に何が待っているのか、未だ知らずに―――
ただ胸を焦がすような焦燥に苛まれ……飛び立った。
――――――
未だ雛鳥か―――
それとも雛以上の何かになれたのか―――
震える大気か、それとも揺れる彼女の心自身が―――フェイトにそんな問いを投げかけた。
「フェイト」の名を冠する娘。
――― その日、彼女は運命に出会う ―――
終わりです
戦闘継続となっていますがギル対ママの最大戦力での戦いはこれで完結です
セイバーオルタと士郎の決着みたいなニュアンスです
リニス頑張るっ!のパートもあったのですが尺の都合で割愛しました
次はまたフェイトの物語に戻りますがその裏で頑張る事になりそうです
ではまた
GJ!!
鑑定眼に絶対の自信を持つギルガメッシュ
「敵」の実力・性根は見切れても、いきなりのパワーアップには対応できないか!
もはや、ボス補正というより1サーヴァントとしての幸運で生き残った英雄王
ラッキーだな英雄王
神槍は隕鉄の神性を我ネーミング?
プレシアさんは言うことがないナイスファイト爽やか
幼フェイト達は……
フェイトは、どうみてもプレシア勢力の増援に見えるよね
死神マントな格好がね
時間をおけば異常な復活力を見せるが、難敵との連戦には向かないステータス傾向のアーチャー
なんか、必殺系の狙撃でもしない限り負けフラグ濃厚だぞ!
スカリエッティ、増援ってまさかフェイトじゃねえだろうなー?!
なんかえらいことになってますな
乙でした
あんだけやってまだ本人と蔵に余力アリとかリリブラ仕様英雄王マジパネェ
一方、苦手な幼女に喧嘩売られて渋々撃退したらキレられ、一息つけると思ったら新手(誤解)参上のアーチャー
金ピカから少しは幸運パラメータを分けてもらってこの運命を捻じ曲げたらと言いたくなるような不運ぶりが実にエミヤらしい
なんというか、果てしないパワーゲーム!
というか、ギル様はどんな有利になってもうっかり死にそうな緊張感がたまらねえw
今回も投下乙&GJでした!
test
リリブラ氏乙。GJと言いたい所だけど、長く続いてるせいか少しダレて来たかな。
あと強さ議論したいわけじゃないけど、互角の戦闘をしたいあまり、無理矢理こじつけている様に見えました。
乙乙
ようやくの主人公?到着ですな。過去の思い出とどう決着を付けるのか、楽しみにしています
フェイント我様に爆笑した
確かに仰る通りでございますwww
リリブラ氏乙です。
ギル様がフェイントとは。いやまあ言ってることはギル様のおっしゃる通りだけど…
リニス、そのなんだ、頑張れb
とあるママンの超電磁・・・・いや、何でもな(ry
フェイント入れて「やって」、せっかく講釈「してやって」るというに横から雷撃
キサマーコロスーな気分だろうな
乙〜
すげえ色々頑張ってるけどリリなのものでのStS以降の
ストレートに大人Verがいるから子供Verは〜みたいな展開はやっぱあんま好かんなあ
これってけっこう害悪だ。まあ俺の勝手だけど
>「この、成金………ッッ!」
確かにごもっともww
どれだけ準備しても返されるww
なのはに関しては大人Verと子供Verが出会って何かするSSはいくつもあるな
現行ではカレイドスコープがその展開か
まあ中には大人Verというよりすんごい磨耗した英霊ナノハさんだったりするんだがw
ただなのはは自分に勝てるだろうけどフェイトはあっさり潰れそうな印象が
未来、全盛期の自分にガチで勝率ある子供なんて、まずいねーッス!
肉体不変かつ理想に溢れていたローティーンのアルトリアくらいじゃね
あとギルガメッシュ
なのはさんは魔法少女だから仕方ない
>>402 けっこう同感
StSあるのが前提みたいな感じで9歳Verがやたらいじめられてる作品はなんだかなーって思うわ
>>406 >StSあるのが前提みたいな感じで9歳Verがやたらいじめられてる作品はなんだかなーって思うわ
そんなのもあるのか。知らなかった
オリーシュものを避けているせいだろうか
リリブラのギルはなんかあれだ
毎度サンドバッグ役ご苦労様です
ギルさまの使い勝手はいいからなあ。
どんな強敵にも勝てそうな安心感があるのに、そこそこの強さのキャラにもうっかり負けそうな緊張感があるw
意外とこのスレではエリオが主人公ってないよね。
やっぱり使い勝手が悪いのかな。
原作でやっちゃってる面は多少ある
幼少期からどれだけ成長したかってのを示すために、相対的に未熟な部分ばかりクローズアップされたのは
一番大きいのは、アーチャーの戦い方が、相手の最も都合のよい部分を無理やり引きずり出し、自分自信は役作りで鼓舞し、心眼(真)で地の文を侵食することだと思うの
エリオを主人公にするってどうしたらいいんでしょう
空の境界あたりでコクトーと一緒に行動すれば、活躍の機会は多いかな
ミッドが舞台だと、達成目標が少ないから……
なのはは原作からして強さに関してはけっこうまぜっかえすからなあ
それで無理にヒエラルキー的に強さを割り振れば、当然違和感は出るかもね
特に中心人物たちが実力に天地の開きがあっても心が折れるどころかがっつり食いついていくような天才ばっかだし
心が折れてなお立ち上がることを不屈っていうらしいぜ!
というのはともかくとして、諦めが悪いとか薄い勝機にくらいついていくのは天才とかいうのは違和感あるな。
エリオは確かにつかいにくいな。
エリオは弄くらないと主人公の立場になりにくいんだか、立場変えるのが可哀相でなぁ
自分がエリオ主人公にするなら↓のどれかだわ
特攻するぐらいグレさせる・孤立無援・すれ違いから村八分・早々に片腕など吹っ飛ぶ・改造人間・キャロほか死亡・記憶改竄・秘密にアヴァロン所持&瀕死連続
グレない良い子のままだと、親の庇護や幸せを無くす逆境展開に
エリオはキャラ的にすっきりしすぎて使いにくい。原作だってエリオが主人公だったら1クールで終わりそう
エリオよりかは、まだキャロとかルールーのが話は作りやすくはあるか。
あとヴォルケンでいうと、シャマルはなんとなく創りにくそうだね。
シャマルのお料理教室
湖の騎士(シャマル)のお見合い騎士団編
シャマル&鉄仮面男「「…………(気まずい……)」」
職場リーダーのシグナムさん「息がぴったり…だと……!?」ざわ…ざわ…
同僚のヴィータちゃん「マジはんぱねぇな」ざわ…ざわざわ……
親友のガウェイン君「ランスロット!さっさと挨拶を――――!」ガサゴソ
上司のアルトリアさん「なんかイライラする」ガサゴソ
湖の騎士同士かぁ、とか思ってみてたが
オイ、男の方
お前上司の奥方を略奪しておいて何やってんだw
アルトリアさんものんきに見てないでくださいw
キリー「違うんだ! あれは只の同僚で――……フォークは仕舞ってください」
イメージするのは常に最高の自分だ
いくぞミッドチルダ
女の貯蔵は十分か
我が恋路は捻れ狂う―――
別に―――――、一夏のアバンチュールで済ませて構わないのだろう?
――――ついて来れるか
大丈夫だよ■■
オレも、これから頑張って就職するから
ニートなのかよ!w
ニートwww
くそすれ
シグナム×アーチャー的なモノをですね
「なんて、まっすぐなヤツなんだ―――」
「アーチャー?」
「それでいて、艶めかしくも優美な曲線。ツンと張った魅力をも備えている」
「ぅ、エミヤ…私は、烈火の……なのだから、」
「レヴァンティン、お前は美しい」
『Danke scho"n(ありがとうございます)』
ちょっと待て、そこの剣フェチ
いますぐ、レヴァンティンとひとつにしてやるぞッ!そぅら!
カラダがムゲンのツルギでできているッな!
@烈火の将
しょーもない剣フェチだな
ところで男のロマン、ドリルとハンマーは如何でしょうかアーチャーさん
ヴィータは グラーフ・アイゼンを てんに かざした !
ドリルが はげしく まわっている !
アーチャーは ヴィータに いちばん ドキドキした!
アーチャーは かおを あからめた !
アーチャー・・・あんなにシグナムのことを愛していたのに(笑)
ユーノ・クロノ・エリオ「(アーチャーに対して一言↓)」
「やるな!」
「聞きしに勝る弓兵よ!」
「そなたこそ万夫不当の英雄よ!」
メディア「(#^ω^)殺すぞマジで」
理想郷にて昔日のリリカルfateが別名でUPされてる
以前別名義で書いてたって在るけど本人だろうか?
たまーに昔の作品でみれなくなったのとかを、自分の名前で勝手に投下するアホもいるからなあ。
で、なんてタイトル?
Yume:作『リリカルFate』
完結した後削除してmixiに移したらしい
これとほぼ同じのが
U.Y◆d153a06c:作『【習作】管理外世界における聖杯戦争』
過去に別名義にて連載していたとはある
ありがとう。
見てくる。
本人のだとしたら、いいな。
以前に当人のmixiで読んだことはあるが、なかなか、いい作品だったよ。
雷刃「なんかヘンなの拾った」つ円柱ドリル
よーし、よしよしよーしよし
それ、ちょっと聖王教会のロッサお兄さんに渡してくれるかな?
ギルガメッシュ「最近、宝物庫があらされている気がする」
緊急特報!
ロストロギア『秘宝の鍵』を発見したスクライア氏の重大発表
アルハザード以前?超古代の魔法道具の数々は新品同然
惚れ薬や毛生え薬、ダイエット薬も
幸せを呼ぶ壺あります
人類はなかなか進化しないというか、歴史は繰り返すというか、原点に戻るというか
原点に返ってギル様が支配する世の中に…はならないな。さすがに。
型月勢はキャラが無闇に濃いから話は作りやすいが、リリカルはいい人っぽいから主要キャラ以外ではちょっと面倒。
ナンバーズとか悪役とかだと…どうかな
いい人≠薄味ッスよ
いい人が染まる
それもギャグだインド
厭待て、実は止むに止まれぬ事情系のエピソードに事欠かぬが都築ワールド。
そこで敢えて、強制的に止むに止まれぬ事情が付加される素敵ロストロギアとかどうよ?
型月勢のアレな人格とかアレな思想とかアレな所業を聞いても、
「つまり【ほにゃららら】な事情があってそんな凶行をせざるを得なかったと・・・なんという悲劇・・・」
と、反論の余地なく、強制的に事実化しちゃう素敵勘違い流布、
コトミーとかねじ曲がり悪役に、超居心地悪い空間が強制展開される仕様で。
・・・ギャグにしか使えないかw
>>446 めだかボックスの黒神めだかなら、お得意の性善説でそんなことになりそうだな・・・型月もリリカルも関係ないけど
>>447 某めだかはあんまり外道だとキレるから意外とバランス取れてるんじゃないか?
世界全体がずっとあのノリで進行して、取り込まれた方にお構いなしでエンディングまでシナリオ決定、とかで
・・・衛宮'S やら凜やらだと、普通に王道展開で虚構を拒絶し打破するルート一直線な気がしてきた
意外とシリアス向けか
セイバーって特別、剣に特化した英霊がなれるんじゃなかったっけ?
赤セイバーがセイバーのクラスに召喚されるのに違和感
某セスタスを読んでると特に
剣の類が使えて基本ステータスが一流(近接B、他がまあまあ)であればいい
ネロが皇帝特権EXを行使しても届くか微妙な条件ではある
だが、エクストラはムーンセル大先生による聖杯戦争の真似事だから大丈夫
ネロは対魔力があり得ないレベルだし
皇帝特権の力でセイバーになってても別におかしくない気がする
どうでもいいがネロって聞くと未だに教授しか思い浮かばない俺がいる
セイバーは全ての能力値が優秀なやつがなる、とかだっけ
でもさ、人格とかは評価対象じゃないのね
リリカルメンバーってさ、第4次聖杯戦争に召喚されたらやっていけるのかな
あんなんで勝てるわけねーしw
とでも言ってもらいたいのかと穿ちたくなるような質問だなあ
攻防速魔と十分じゃない?
で思ったが白兵戦で全方位から同時に襲い掛かってくる誘導弾とかけっこう鬼やな
きのこならある意味で砲撃よりもとんでもない脅威として描写しそうだ
>>454 それプラス剣にまつわる有名な伝説が無いと
ムーンセルの聖杯戦争だしステータスの条件とかないんじゃない?
敏捷Eのランサーや、ハサン以外のアサシンが普通にいるんだし
四次はボスクラス言ってるが一芸特化が多くて、(ギルガメッシュを考慮しなけりゃ)、高耐性+一撃必殺な五次のがヤバいんだぜコレ
性能がワンランクダウンしてるのばかりだけど歴代トップクラスは伊達じゃない
ゾォルケンさんも言ってた
>>456 菌糸類なら間違いなく砲撃プッシュ
弾幕は不遇
誘導弾持ちなら距離を離し続け、地形を利用するべし
地形を制する者が聖杯戦争を制する
四次に魔法少女を召喚っていったら触手プレイのことじゃないのか?
>>459 地形を変えるくらいの砲撃もしくは無関係な範囲攻撃を攻略ですね
四次の上空はスペック関係ない墜落フラグだから更地を作るのはお勧めしかねる
リリカルメンバーは「召喚」されたら例外なく不利だろ。自力での魔力回復は微量だし、存在の維持にも魔力が必要だし
五次のセイバーみたいな感じかね。
まあでも、王道展開には持っていきやすいかもしれない。
つまり令呪全部使っての「最初で最後の全力全開」の犠牲者が出るとな・・・
なんだろうある人がおのれーと絶叫してるビジョンが
聖王、騎士王、英雄王と征服王だとイスカンダルだけ悪者みたいだな
覇王と冥王もそれっぽいな
夜天の王なんてのもいたっけ。
マスターもサーヴァントも王だらけの聖杯戦争で、未熟な王が育っていく話とか。
闇統べる王「誰か忘れておらぬか塵芥?」
闇統べる王と英雄王による、聖杯問答のように武以外のものを競う戦い……対談なら所々を台本形式のようにしないと、どちらの発言か分からなくなりそうだ。
別に夜天も統べ子も王じゃないからそれらに入るのは凄く違和感が
これらはただの通り名みたいなもんだろ
クー・フーリンのパーティーが戦士・御者・馬それぞれの王者って言われるようなものか?
うーん
なんか違う気がする
戦国大名?
555 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 16:10:37 ID:A0FKEgFkO
コンマテ3を購入
・一次聖杯戦争はサーヴァントが従わず瓦解
・ウェイバー=エルメロイU確定で2010大聖杯解体
・空:天体、エーテル属性
・無:虚と同じく架空元素、物質化するという点で異なる
・シングルアクション(指パッチンなど<1秒)、1小節(発声>1秒)、テンカウント(≒10秒)
・投影は「能力」が下がる
・アーチャーからは鞘のイメージが抜けて投影不可
・守護者契約は20後半〜30前半
・スキルは補正入りワールドランク、土地とマスターで多少変化
・矢よけ:全体攻撃≒広範囲爆発
・神獣:白鯨、テュポーン
・オリジナル双剣は対モンスター、ゴルゴンlv100も海魔もバッサリ <ズバズバに訂正される
558 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 16:16:51 ID:A0FKEgFkO
魔法
1:最古、詳細不明だが幹部魔術師には常識の内容、直系は存命
2:ゼルレッチ
3:魂の物質化、完全不老不死、無尽の魔力
4:使い手&内容は不明、魔法使いはみんな実在を認める
5:青子の魔法・青、使い手の特性から破壊関係と噂されるが
561 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 16:28:34 ID:A0FKEgFkO
パラメータ
・筋力=肉体強さ
・耐久=ダメージ耐性
・敏捷=素早さ、反応
・魔力=運用可能魔力量
・幸運=うんのよさ
・宝具=所持宝具の強さ
・++は一時的に三倍
・四次セイバーはキリツグすら魔力が足りないので、マスターの生き様に引きずられて幸運ダウン
・魔力の他に土地と知名度により、強さが伝承に近づく
・スキル・装備・宝具追加あり
・ アイルランドのランサーなら城・チャリオット・不眠の加護などが追加される
575 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 16:53:53 ID:A0FKEgFkO
・士郎の魔術特性が剣なのは鞘の仕業
・アーチャーはエア、カリバーの神造兵器複製は不可、型落ちはあるかも
・起源が剣になりつつあるので、剣製は白兵戦縛り
・実はコルキス竜はあんま強くないので、仮に竜召喚できても地位は五次中堅までしか上がらない
・妄想心音を防ぐには高い魔力か幸運、もしきは間合いに入らないこと
・盾のナインライブズ
・ヨーロッパではアルトリア、ヘラクレスもランサーと同じくパワーアップ
・アルトリアとクーフーリンはイングランド・アイルランドで性能がクルッと逆転
・黒セイバーは性能アップというか暴走車
・時臣ェ
・アーチャーは生前に影タコみたいな存在と対峙し、なすすべなく撤退した
・レンジャークラスなアーチャーヘラクレスがヘラクレス最強
596 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 17:19:43 ID:A0FKEgFkO
・魔術の名門とその特性(読んでね
・属性により強化の用途は異なる、士郎は特殊
・アーチャーは英霊になる前は強化魔術(剣製系列とは別?)を使うのにも苦労していた
・ランサーの半日以上足止めは戦闘続行による粘り強さが一因
・矢避けは投擲なら範囲攻撃(爆発など)・超リーチ武器の攻撃でなければ、宝具でも避ける
・キュベレイは【対魔力】C以下石化(誤記?
・流派ナインライブズの本質は超高速9連撃、ヒュドラ百頭殺しの弓の模倣、刺しボルクの仲間
649 :僕はね、名無しさんなんだ:2010/10/27(水) 18:20:32 ID:A0FKEgFkO
魔術基盤だが、地域宗教っぽい感じで効果をバックアップする
一番広い範囲で減衰しないのが洗礼詠唱
ただし、家独自の秘伝などは全地球で効果発揮
以上、某所から転載
魔術関係の情報が多いらしいね
面食らったが、今から楽しみ
ランサー兄貴の城って……
クロス的には、ミッドで召喚すれば、ヘラクレスからゴッドハンドをオミットできるかもね
土地補正が凄い
宝具や装備が増える(伝承より減る)とは……
なのは達が地球でサーヴァントだと相対的に弱体化するのか
リリブラさんみたいな不思議時空なら、ディルムッドもモラルタを使って構わないってことか?
いくつか作中の描写と著しく矛盾している気がするんだが
まあ、設定と作中描写が矛盾するとかよくあること…。
別に型月にかぎった話でもない。
そこらは広い心で適当にスルーするんだ。
真実を知ってるキャラクターが一握りで、彼らも一部の事実や真実の裏を知らないのが型月
地の文も嘘つくことあるからね
まあ、切り札がきのこラック
いずれ長期に展開している作品ではよくある話なんだけどな。
型月とかなのはにかぎった話でもないが…月厨は妙に設定に拘るから困る。
マテリアル娘たちとか、なかなか使いでがあるキャラだと思うんだが、まだクロスではほとんど使われてないなあ。
きのこ作品の魅力の一つが世界観なんだから設定にこだわるのも当然だと思う
>>478 どこが?
アーチャーがエクスカリバー複製できないとか?
対決企画でも投影限界はエクスカリバー「クラス」の聖剣だし、アーチャーと士郎はセイバー絡みで違うから矛盾してないと思ったけど
知名度での影響が大きいのは大英雄特有で、しかも本編は凛の主観セリフだよな
あと、何かあるかな
UBWルートでキャスターが退場した後、セイバーとアーチャーが対峙した時に完全でないとしてもエクスカリバーを複製して見せると発言していたような。
ランスロットのアロンダイトはエクスカリバーに匹敵する剣とも言うし、結構、投影が困難な武器もあるんだろうな。
アーチャーはよくハッタリかますから
起源が剣になりつつあるってどういうこと?起源って生まれ持った魂の方向性みたいなものじゃなかったっけ?
後天的に変わるものなのか?剣が起源っていうのもよくわからないけど
たぶん、起源が【模倣】か【無価値(らっきょの巴)】あたりだったところで死にかけたからこそ、鞘と融合した影響が大きく出たんじゃないか
アーチャー(30前後〜死亡)だと属性どころか起源まで変わってきたのは、固有結界の剣製が関係しそうだけれど
キャス狐「男の子って、そういうの好きですねぇ
ご主人様、あんなビッチが表紙の本なんかより、私と話しませんか?」
「そう、あれは雪の降る夜―――」
―――もし。そこな御方。私のご主人様になりませんか!
「浮き世の厳しさは星も選ばぬもの」
「私はミッドチルダの街中で、いる筈もないマスターとなって下さる方を探しておりました」
―――もしもし!私の話を聞けぇ!
「そのときです」
―――あれは…、レジアス中将……
「傾国の女として蔵高き殿方の傍に侍るのは、反省しておりました……が!」
―――なに?この、あなスピリチュアルな感覚?
―――なにかが違う!
―――まさか、彼が理想のご主人様!?逃がすかボケェ!
「しかし、あの男の隣には若い女が……」
「ま、そこまでは問題にならなかったのですが」
―――…………娘ぇ?!チッ、コブ付きかよ
「その後、たまたま出会ったのがご主人様なんですよ♪ユーノ様♪」
なのは「なんだ、ユーノくんって結婚してたんだぁぁ」
なのはと玉藻の泥沼な争いがwww
そういや誰が先走ったのか映画とゲームの第二段の情報が漏れてたな
一瞬で消されてたが超高度な釣りでもない限りはさすがに本決まりか
ここでそれを話題に出せば二次災害だぞ?
避難所の代理投下を始めるよ。
皆様、こんばんわ&お久しぶりor初めまして!!
私は以前、おっさん呼び、A&Aという短編を書いた作者です。
今回、ここに投稿されてる作家の方達に触発されて長編にチャレンジしてみました。
タイトルは、『Fate/EXTRA 白い魔導師』。
もし月の聖杯戦争になのはさんが呼ばれたら? というSSです。
長編の執筆は初めてなので、文章の表現や書き方に可笑しな点があると思いますが、
今後の為にも指摘していただけると幸いです。
また、このSSはゲームとは違った展開や独自解釈、
キャラ設定の変更を含みますのでご了承下さい。
それでは、『Fate/EXTRA 白い魔導師』、
頑張って完結させるので、どうか宜しくお願いします。
かくて閉幕の鐘は鳴る。
兆しの星、来る。
鐘楼は何処にあるのか?
最近、おかしな事ばかり起こっている。
例えば、学校の制服を着てない生徒が何人かいるとか。例えば、担任の藤村先生は毎回同じ場所でコケるとか。
例えば、学校へ向うまでの経緯を全く覚えてないとか。例えば、ここ最近からいつも頭痛がするとか。
例えば……その頭痛のせいか、とうとう視界にノイズが走る様になったとか。
「いや、絶対におかしいって、これ」
その日、いつも通りの通学路で、あたしは立ち止まった。いつも通りの時間、いつも通りの天気、
いつも通りの周りの生徒達のおしゃべり。何もかもが『いつも通り』過ぎる。
「――――ッ」
その『いつも通り』の光景に違和感を覚えた瞬間、頭痛が一際強くなった。
警鐘の様に脳に鳴り響く頭痛に耐え切れず、近くの電柱に寄り掛る。
何か、何かがおかしい。でも……一体何がおかしいんだろ?
あたしの名前は鳴海 月(ユエ)。月海原学園の二年生で身長150センチと同年代の子と比べれば小さいけど、
背中まで伸びたウェーブがかかった茶色の髪はちょっとだけ自慢。
所属部活はなし、自分で言うのも難だけど真面目に授業を受けているから成績は結構良い方。
それでも学園のアイドルのミス・パーフェクトこと遠坂さんや友達の慎二に比べたら全く適わないけど……。
あれ? ちょっと待って。慎二とあたしが……友達? あたしと慎二って……
ドウシテトモダチニナッタンダッケ?
「んっ…あ、くっ……」
ズキズキと、更に頭痛が酷くなった。警鐘なんてものじゃない、誰かが頭の中をかき毟っているみたいだ。
何時、何時あたしは慎二と友達になったんだろう? どうして友達になったのか思い出せない。
そもそも今日は何月何日? 分からない解らない判らないワカラナイ――――。
まさかのEXTRA
「おはよう! 今朝も気持ちのいい晴天でたいへん結構!」
ハッとなって顔を上げると校門の前に友人であり、生徒会長である『と記憶している』柳洞 一成が立っていた。
(……いつ校門まで来たんだっけ?)
どういうわけか、あの後どうやって校門の前まで来たのかまるで覚えていない。
それどころかどれくらい時間が経ったのかすら曖昧だ。
「先週の朝礼でも言ったが、今日から学内風紀強化月間に入った。悪いが、チェックさせてもらう」
「え? 一成、それは、」
それは昨日も言っていた事だ。そう口にしようとした瞬間、頭痛と共に思い出した。
昨日どころではない、一昨日も、三日前も、先週も。一字一句間違えずに同じ内容を繰り返している……!
「袖よし! 襟よし! ソックスも……よーし!」
「っ、一成、ゴメン!」
あまりに同じ過ぎる行動(シチュエーション)に気持ち悪さを感じて、一成の横を通り過ぎる。
荒い息を整えて後ろを振り返ると、
「次は鞄の中身だが……うむ、違反物の欠片も見当たらんな。たいへん結構!」
一成は誰もいない虚空に向かって手を動かしていた。
寒気がした。同時に確信した。
何かが、何かが絶対におかしい。だから早く、早く目覚めないと――――!
夕方になっても視界はノイズだらけだった。それどころか時間と共に頭痛と焦燥感が増していく。
あたしは行かなきゃいけない。ここに居たらいけない、それは分かっている。
でも、一体どこに行けば………。
ふと、砂嵐の様な視界の隅に人影を見た。
(あれって、新聞部の子と……転校生の…レオ?)
一階の廊下を横切って行ったのは、同じクラスの新聞部の男子生徒と紅い制服を纏った転校生のレオだ。
正確には廊下を歩くレオを追いかける様に新聞部の子が目の前を横切って行った。
確か、この先は一年生の教室があるだけだったはず。転校してきたばかりのレオが一年生に用があるとは思えないんだけど……。
「転校早々、一年生の子に告られたとか……ないか」
レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。愛称はレオ。昨日転校してきたばかりの生徒で、なんだか説明の出来ない存在感を醸し出している男の子だ。
朝、クラスの女の子達に囲まれていて(と言っても勉強を教えていただけだけど)、慎二が面白くなさそうに愚痴をこぼしていたっけ。
(でも女の子に人気があるのも分かる気がするんだけどなあ……。紳士的だし、誰にでも平等に接するし、
何より顔はかなりのイケメンだし。砂金の様なブロンドの髪と翡翠の様な翠の瞳も相まって、白馬の王子とか似合いそう――――)
「って、今はそんなことどうでもいいし」
とりあえず後をつけてみよう。情報通だった新聞部の男子生徒が追いかけるということは、何かあるのかも知れない。
何より――思えば、初めて会った時からレオからどこか違和感を感じていた。もしかすると現状を打開する手掛かりとかつかめるかも……。
レオ達は一年生の教室は素通りし、廊下の突き当たりの行き止まりまで来ていた。とりあえず曲がり角の陰に隠れて様子を窺うと、
「本当によく出来てますね。ディティールだけでなく、空気までここではリアルだ。ともすれば、現実よりもずっと現実らしい。
ねえ……貴方達はどう思います?」
なんてことをレオ君が言ってくれました。貴方達って、あたしがいることバレてる?
「学校という経験は悪くないものでしたが、僕はもう行かなくてはなりません。
さようなら、と言うべきでしょうが、何故か貴女とはまた会える気がしている。ですから、また今度」
そう言ったレオは一瞬だけど、確かにこっちを見てた。はい、やっぱりバレてました。
レオは踵を返すとそのまま突き当たりの壁に向かい――――すり抜ける様に消えた。
(ええええええええっ!?)
驚いていると、もう一人の男子生徒もレオを追いかける様に壁の中へ消えた。
二人が消える瞬間、ジジッと視界のノイズが強くなり、脳に衝撃が走る。
これは一体……どういうことだろう?
「七不思議にあった『異世界の入り口』ってやつかな……?」
呟きながら、問題の壁の前に吸い寄せられる様に立った。レオ達が消えた壁は、見たところ何もおかしなものはない。
でも何故か、ここがあたしが感じていた違和感の終着点だと理解できた。多分この先にあたしが求める答えがあるのかもしれない。
ただし、この先へ行ったら最後、二度と今までいた場所にはもどれない。そのことも何故か理解できた。
(どうしよう……そもそもここに入って無事に出れる保障なんて無いんだよね?)
得体の知れないものに近づくのは怖い、今までの日常を捨てることになるのは怖い。
見なかったことにすればいい。君子は危うきに近寄らず。
さっきの光景は頭痛のあまりに見た白昼夢。早く家に帰ってゆっくり休めば明日には治るはず。
「〜〜〜〜〜ッ、よし、決めた!」
得体の知れないものに近づくのは怖い、今までの日常を捨てることになるのは怖い。
でも―――このまま真実から目を背けるのはもっと怖い。
思い出せ。
いるはずもない人間、消えていく生徒。?がれていく世界観(テクスチャー)。
真実は何か。
あたしの知る世界は何なのか。
ここに居る、その意味を。
あたしは目を逸らしてはいけない―――。
壁の中へ飛び込んだ瞬間、世界は一変していた。
そして今まで感じていた違和感と頭痛も嘘みたいに消えた。
「うわあ………」
思わず声が出てしまった。壁の中は平凡な放課後の校舎など霧散していた。
そこにあるのは息苦しさを感じるほど荘厳な広間と大聖堂にある様な巨大なステンドグラスだった。
きょろきょろと周りを見回していると、人が倒れているのに気付いた。
あれは、さっきレオを追っていた男子生徒―――!
「ちょ、ちょっと君! 大丈……え?」
あわてて助け起こそうとしたとき、気付いてしまった。
体が、冷たい。それどころか、息を―――してない!?
「ど、どうして………!?」
その時だった。疑問に答える様に、カタカタ、と不気味な音が聞こえた。
音をした方向を振り向くと、妙な人形が立っていた。
大きさは人間と変わらないのに、顔も体ものっぺりとしていて漫画家とかが使うモデル人形みたい……。
と、悠長なことを考えていたら、こっちに向かって突っ込んで来た!
「ちょ、いきなり、きゃあ!?」
慌てて床に転げる様に避けると、さっきまであたしの頭があった空間を人形の腕が貫いていた。
あんな槍みたいに尖った腕が当たったら、首から上が吹きとぶって……!
とにかく、立ち上がって体勢を立て直さないと―――
ザシュッ!!
でも、それは出来なかった。さっきとは比べ物にならない速さで人形が距離を詰め、あたしの胸を貫いていた。
「あ――――――」
辛うじて声に出たのはそれだけ。そのまま崩れ落ちるあたし。
痛い―――貫かれた場所を中心に、体が燃える様に痛い、熱い……。
『ふむ。君も駄目か』
遠のいていく意識の中、何処からか声が聞こえた。
『君の落選をもって、予選を終了するとしよう』
予選……? 何の事か分からない。でも、もうその疑問を考える力もなく、ボンヤリと床を見つめることしか出来ない。
死ぬ、のかな。あたし。
このままここで、さっきの男子生徒みたいに冷たい塊になるのかな……。
このまま倒れていれば、痛みも熱さも、意識と一緒に薄れて消える―――。
(………消えたくない)
そう思って起き上がろうとしても、体中に激痛が走って全く動かない。
それでも―――
(……消えたくないっ)
全身に駆け巡る痛みは許容の範囲外。燃えるなんて生易しいものじゃない。体中が爆発してるみたい。
でも、それでも―――!
(諦めたくない!!)
全身に駆け巡る痛みは許容の範囲外。貫かれた胸は何故か傷痕も出血もないけど、
見えない血が流れ出てるみたいに今も激痛を訴えている。
でもそれが何だ。何も分からずに消えるくらいなら痛い方がマシ。
あたしは真実を知りたくてここまで来た。それなら分からないまま諦めるなんて許せない。
何より、あたしは、
「まだ何も始めてすらいないんだから……!」
穴の開いた水槽の様に力が抜けていく身体をどうにか奮い立たせ、必死で地面に手をつく。がくがくと震える足を叱咤して、必死で立ち上がろうとする。
しかし顔を上げた先であの人形が、今度こそ息の根を止める、と言わんばかりにこっちに向かってくるのが見えた。
立ち上がっても今のあたしじゃどうにも出来ない――――!
「くっ……!」
まるでローリングソバットの様な動きで飛び蹴りをしてくる人形に、思わず目を瞑って棒立ちするしかなかった。
数秒と満たず、あたしの身体に襲いかかる衝撃に身を固くし――――
『Protection』
―――機械的な音声と共に、衝撃音が耳に響いた。
「…………え?」
恐る恐る目を開けて見ると、桜色の光の壁が人形とあたしを遮っていた。
「良かった……間に合った……」
ふと、暖かみのある声がした。
振り向くと、人が立っていた。
清廉さを感じる純白のスカートとジャケットが、
胸元に飾られた真紅のリボンが、
端正な顔立ちとツインテールに纏めた栗色の髪が、
その人を際立たせていた。
女の人、らしい。歳はあたしより一回り上かどうか……。
「よく頑張ったね、偉いよ」
手にしている紅い宝石のついた金属の杖を人形に向けているということは、
目の前にある光の壁を出したのはこの人だろう。
なのに……どうしてかな?
「もう大丈夫だよ」
助けられたのはあたしなのに、どうしてこの人は目に涙を溜めて喜んでいるんだろ?
まるで……。
「安全な場所まで、一直線だよ」
まるで助けられたのは、あたしじゃなくてこの人だと思えるくらい、
心の底から安堵した笑顔だった。
これがあたし、鳴海 月と、生涯のパートナーとなった『アーチャー』との出会いだった。
投下終了です。
今までSSは読み専門でしたが、いざ自分で書いてみるととても時間がかかりました。
リリブラ氏やLyrical Night氏の様な長編連載には頭が下がる思いです……。
自分は遅筆なので読者の方には迷惑をかけるかもしれませんが、
頑張って完結はさせるので、どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。
次回は出来れば、年内には更新したいかな……。
GJ
月だとストライクカノンはオミットかな?
さて、英霊タカマチを脳筋に魂改竄する作業を始めるか―――
作者&代理乙!
早々にEXTRAクロスを読めるとは嬉しい
これはStS時のなのはさんかな
EXTRAとのクロスについては話題に上がっていたけど、どうもっていくのか楽しみ
フェイト等も出てくるんだろうか
外見なのはなエミヤにはならないでほしいな
キャスターでなくアーチャーとな
スキルとかステとか気になるところ……と思ったけどオールEから始まるのかな?
507 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 19:55:31 ID:H9tMZomH
Extraのクロスか
対戦相手が必ず死ぬという難点をどうするかが注目
原作でアーチャーが遠坂を普通に殺したのには驚いた
上げてしまってすいません
GJ!
新たな長編の投下に胸がドキワクなんだぜ!
なのはさんにもなんか精神系防御スキルありそうなんだが、いまいちパッとくるのがないんだよね
心眼とか直感はなんか違うし、無窮の武練は肉体の運用てちょっとズレる
透化というには熱いものを抱えている
そこそこしっくりくるのは勇猛だが、必要ない火中の栗を拾うほど進んで全速前進するタチでもない
不屈に近いのは信仰の加護なんだが、うーん
国一番の英雄なランサーもないし、別にいいのか?
戦闘続行じゃね
遠い昔に話題になった気がする
戦闘続行を持つほどの生き汚さはないと思う
普通にミッドチルダ式魔法じゃないかな
あとは心眼(真)とか?
エクストラとのクロスか。筋力Aになり、RHが鈍器化するのかな
時系列を歪ませてでもアサシン戦の保健室のシーンを早く読みたい
発狂するほど読みたい
展開は原作通り進むのかね
それとも何かイレギュラーが起こるのか
エクストラの舞台はクラスの人数縛りが無い分、自由度が高そう
実は主人公が魔法少女好きで、アーチャーの正体はキャスター=ナーサリーライムだったり
だったらいっそ、ジャバウォックの役どころになのはさんを投入
一撃でオーバーキルされるのw
ヴィヴィオを連れて行くと弱体化
待望のエクストラクロスに期待が高まって仕方がないんだが作者氏の負担にならないか心配だ
エクストラプレイ
女主人公の名前を「高町なのは」にしてしまった
二週目は男で「えみやしろう」でアーチャー選んだけど何のドラマもなかったぜ
アーチャーは女のがいい、キャスターは男のがいいって言ってた
ディルムッド「光の御子よ、エリオは一人前ではありませんか」
クーフーリン「いきなりどうした?確かに竜騎士とは大したモンだが……」
ディルムッド「そろそろ彼も天地海へ、戦士の誓いを立ててよいと思うのです」
クーフーリン「禁戒(ゲッシュ)は人に言われてするもんじゃねえぞ」
ディルムッド「しかし、彼の真っ直ぐな精神を見るに、加護の誓いをつけるに相応しい矜持の一つや二つ、既に心にあるに違いありません」
クーフーリン「なるほど、確かに」
バゼット「話は聞きました!さぁ、エリオ君のところに急ぎましょう!」
えーと、
・竜の肉は食べない
・女性の頼みを断らない
ニア・年上からのプロポーズを断らない
ゲッシュって何かいいことあるの?行動束縛されるだけなんだし。
ハンターハンターの念能力みたいなものというか
ゲッシュは本来戦いの加護を神に祈る為とか『己の矜持』の為にある
『神に誓って破りません』ので我に勝利をってこと
ゲッシュというと破った場合のことばかり取りざたされるけど
当の本人たちはやるだけの意義のある願掛けなのじゃよ
元はケルトの文化的タブー(月の名を直接言わないなど)
ケルト騎士の叙任で誓うほか、誰かの信頼を得るため、戦意・決意を示すため、借りに応えるために使われたりもする
ちなみに、宣誓では
「星輝く天が落ちて我らを潰さぬ限り、大地が裂けぬ限り、海原が満ちて地を呑み込まぬ限り、〜〜する!」
と声に出せば完全成立
ケルト人が如何に天変地異を畏れていたかわかる
無茶な約束とか男の醍醐味っす
その無茶な約束を果たせるか
果たすが何かを失うか
果たせずとも何かを次に繋ぐか
人それぞれよねー
リリブラ氏、花札氏の投下はまだかのぅ
test
どうも、「Fate/EXTRA 白い魔導師」の作者です。
wikiへの作品投稿が終わったので報告します。
さて、次話を書き上がるのは何時やら・・・年内には更新しますけど。
無理せず頑張ってね
お腹を空かせて待ってます
なのはさんのぱんつ見ながら待ってまs
ランサーのアルスター式育児放棄についてタカマチさんから一言お願いします
クー・フーリン被告は「悪気はなかった」「強過ぎて殺すしかなかった」など意味不明なコメントを残しており――
『・・・・・・』
この人きっと、おんなじ理由で人の飼い犬もやってるよね
そこんとこどう思われますか、フェイトさん
まあそちらの件に関しては
自分が代わりに犬になると言ってますので
ですがやはり自分の子殺っちゃうのはいかんでしょう
実際コンラってマジで強いらしいな
幼少期で既にクーフーリンと五分だからな
滅茶苦茶にもほどがあるw
ランサーと、師匠のライバルだったアイフェの子供コンラ
父の指輪を嵌めるほど大きくなったら、『真っ直ぐ』『決闘を断らず』『名を名乗らず』(ランサー曰わく息子として最低限のゲッシュ)アルスターへ行かせる約束
小舟の上からスリングで鳥を落として遊びながら、未見の父の言い付け通りアルスターへ
それをたまたま見たアルスター王まじビビる
赤枝騎士団が順次派遣されるも、ワザと外したスリングの風圧だけで全員ノックダウン
とうとうクーフーリンと戦うが剣はほぼ互角、前髪を切り落とす
力は父を僅かながら上回り、川へ投げ落とすがゲイボルクで瀕死、父と騎士団全員と別れの挨拶をして死亡
生きてたら父とローマに征服に行くつもりだった
なのはで言うなら、大人ヴィヴィオがいきなり六課を訪ねて、仲間をみんな遊びで瞬殺してくる感じか
死ぬだろ
>父の指輪を嵌めるほど大きくなったら
つか成長速度が尋常じゃないなw
どの指用の指輪か知りませんけど、小指用の指輪を親指に嵌めていた可能性も?
母が神に近い魔女で、影の国で成長してるあたりいろいろあるんだよきっと。
ゲイボルグ以外の全てをマスターしてたり、意外と時間はあったのかも。
>>537 ヴィヴィオがランサーの教えで育つとそうなるかもね。
素直な子供たちだ。
どんな育ち方だよ?
のり的にはアインハルトの方が似合う気がするけど
エピソード『カレイドスコープ』二十一話『差異』
投下準備できたよ
という訳ではじめます
#1
「おう、早かったな」
屋上にたどり着くと、ある意味で予想通り、ある意味予想はずれなことに、
ランサーはあっさりと見つかった
「どう思うよ、お前さん?」
「何がだ、ランサー?」
要領を得ない質問である
どう思う、とはこの世界についてか、それとも―――
「例えば、
今のお前であの“セイバー”に勝てるのか、とかな」
「それは―――」
不可能だとしか言いようが無い
武器の質も魔力量も向こうが確実に上である
今のアルトリアは多分に精霊に近い存在だ、
発揮できる肉体のスペックは同等といって良いだろう
だが、それはあくまで肉体だけだ
彼女はサーヴァントと違い自分で魔力を生成し、
現世に干渉できる実体を確保しているが、
それだけでは受肉したサーヴァントとさして変わらない
例えそれがこの世界の基準で言うところのSランク魔導師を
貯蓄量、生成量で軽く上回っていたとしても
自家発電する魔力の量などたかが知れている
対して今のこの世界に現界しているサーヴァントは実質的に魔力切れの心配が無い
ロストロギア『カレイドスコープ』による魔力供給は事実上無制限であり、
保有する個数に応じて多少の誤差はあるものの、
例え限界ギリギリまで消耗したとしても一呼吸の間があれば十二分に回復できる
武器の質はそれ以上に重要である
なし崩しにユスティーツアから譲り受けたデバイスはそれなりに頑健な名剣ではあるが、
やはり星の聖剣とは比べるまでも無い
「まぁ、そのあたりは仕方がねぇさ、
無いなら無いで何とかすりゃ良い」
自分から言っておいてよくもまぁ、と彼女は思ったが口には出さなかった
彼の言う通り、無いのなら無いなりにどうにかするしかない
「いっそ金ぴかとかち合ってくれれば楽なんだがな」
「それはあまり期待しない方が良い
現状、あの男がおとなしくしてくれていること自体行幸だ」
「はっ、違いねぇ」
言った端からもっと荒唐無稽なことを言うランサーにそう返す
かち合えば互いに潰しあうだろうとは思うが、
それが街中であった場合周囲の被害が保障できない
クゥと、その時奇妙な音がした
「お腹がすきました
ランサー、続きは食堂でしませんか」
「あん?」
建物の一角、泊り込みの見舞い客や職員用の食堂を指していうアルトリアに眉を顰める
ならさっきのは腹の虫かという些かあきれの混じった反応である
「おまえさんとメシってのも色気のねぇ話だ、
立ち話なら此処で十分だろう?」
「光の御子よ、それでは聖誓を破るつもりですか?」
聖誓を持ち出されては聞き捨てなら無い
更に眉を顰めるランサーにアルトリアはすました顔で答えた
「御身の聖誓は犬の肉を食べないことと目下の者の食事の誘いは断らないことのはず
―――年功序列です、それに加えて御身は神霊の血統もある
私が王であるということを差し引いても、
霊格としてそちらが目上と呼んで差し支えは無いでしょう?」
物は言い様もいいところである
とは言え世代で言えばクランの猛犬の時代はブリテンの王の時代よりはるか過去、
こねた屁理屈の筋は、屁理屈なりに通っているといえなくも無い
「わかったよ
―――ただし、言ったからにはお前の奢りだからな」
「承知しています」
言いながら一足先に屋上から降りるランサーを追い、
アルトリアも屋上から身を乗り出した
#2
“The communication ties.”
Rヴァリスタが報告し、モニターに一人の人物が浮かび上がる
向こう側も映像がつながったのか、眉を寄せて小首をかしげていたその人物は、
ほっとしたように息を吐くとにこやかな顔で口を開いた
『あぁつながった、
一臣、お母さんだよ―――』
ガッシャーンと盛大に、それこそコントのような見事さでアルバートがすっ転ぶ
直後、猛然と起き上がると真っ赤な顔で彼は叫んでいた
「言うに事欠いて第一声がそれかアンタは!」
空気読めとはまさにこのことである、いろんな意味で緊張感が台無しだった
『酷いなぁ心配だったんだよ、
ヴィヴィオとナノハは其処に居る? モニターからは見えないんだけど』
「いるよ、三人とも大丈夫、
こっちだって子供じゃないんだから、もうちょっと言い方を考えろよ“母さん”」
デバイスがモニターの角度を調節する、
映像の送信も調整されたのか女性は納得したように頷いた
「成る程ね、そういうことか」
傍らで様子を見ながら女性とアルバートのやり取りになのはは納得した
モニターに映るのは十八年後の自分で間違いあるまい
我ながら驚きである、ヴァイスとはそれなりに付き合いがあるが、
どこでどういう経緯があってそういう関係になったのだろうか?
正直自分がそうなる訳ではないとは言え、
自分の可能性のことだけに流石にその辺に疎いといわれる自分でも気にはなる
「納得してんじゃねぇよなのは、おかしいだろアレ」
「なんで? “私たちの未来”だと決まったわけじゃないんだし、
何が起きててもおかしくは無いんじゃない?」
突っ込みを入れるヴィータに首を傾げる、
相対的に未来であるとは言え、決定したものではない
別段糾弾するようなこともあるまい
「いや、そこはいいんだ、後でアレを締め上げて吐かせりゃ済む話だし、
あたしが言いたいのはな―――歳いくつだよ、あいつ?」
『だよなぁ、やっぱ其処を突っ込むよな』
かけられた声にあわせてモニターが調整される、
一歩下がったところにどう見てもなじみの面々が映っていた
「そういうヴィータちゃんが一番変わってないけど?」
『あたしは歳とらねぇんだよ!
お前分かってて言ってんだろ』
『まぁまぁヴィータさん抑えて抑えて
―――フェイトさんとエリオは?』
こちらのなのはの突っ込みにエキサイトする未来のヴィータ、
それをおさえて未来のティアナが話題を変える
「エリオが倒れてフェイトさんはそっちの見舞いに行ってるよ
そっちのエリオは?」
スバルの問いにはいと画面の奥で手が上がる
赤毛以外はほとんど別人な長身の青年に成長した為、
一見しただけでは分からなかったのだ
『そろそろ本題に入っていいかな……』
誰がどうしたと続ける彼女たちをさえぎるように穏やかな声が割り込む
モニターが視点を移し、なのはたちに代わって身なりの良い優男が映った
「あ、えっと……ユーノ君で、いいのかな、
“カレイドスコープ”のことだよね?」
呼び方はお好きにどうぞと言いながら、
なのはの返答に頷いて画像を切り替える
ロストロギア・カレイドスコープの本体の全体像を映したもののようだ
『ロストロギア・カレイドスコープだけど、
伝説上の魔導師シュバインオーグにまつわる物で間違いない』
本人じゃなくて弟子の系譜に当たる人が造った物みたいだけどねと続けるユーノ
魔導師シュバインオーグ―――無限書庫の記録に時折現れる謎の人物で、
記録上の容姿はいずれも高齢の男性であるとされているが、
古代ベルカ史を含め、現れた時期に一貫性が無く正体がつかめない
「シュバインオーグ……
確か、宝石とか万華鏡って言われてる人だよね」
なのはの相槌にユーノが頷く
今回のロストロギアの名前も万華鏡(カレイドスコープ)である、
なるほど、言われてみればつながっている
『平行世界同士で量子的に繋がっている状態になっているから、
破壊や封印―――ひょっとしたら移設も難しいかもしれない』
造られた本来の目的は平行世界干渉、
つまり可能性を自在に操ることだったようだが、
現在はいろいろと付け足された結果大げさな干渉は出来ないらしく、
本来の用途に使うには動いているカレイドスコープ同士を“認識する”必要があるらしい
「私達が帰るにはこっちの本体を見つけないと駄目ってこと?」
『そうなるね、まぁ座標自体は分かってるから、
後はそっちに回収した端末を収めればいいはずだよ』
「そううまく行けば良いけどな」
その“端末”を少なくても一つ、
万全な状態のシグナムを返り討ちにする存在が持っているのである
ヴィータならずとも楽観できる要素は少なかった
『あと伝えておくことがあるとすれば、
これをもともと所有していた人物は日本人だってことかな』
記録には日本語で遠坂なる家の者がこれを所有していたこと、
それとマキリ、衛宮、アインツベルンなる人物の記述があったらしい
いずれも心当たりのある名前である、
地球に行った際には彼女たちにその辺りを聞いてみようとなのはは思った
あとは―――とユーノが言葉を続けようとしたところで不意に映像がぶれた、
デバイスによると通信が不安定になってきているようだ
試験的な通信だから仕方がないという彼らの言葉に頷く
調整の為一旦切るという彼らに頷いて通信を終了する、
次はフェイトも交えてゆっくりと話したいなぁと、なのはは暢気な感想を持った
そこへ―――
「ありゃ、皆さんおそろいで」
タイミングが良いのか悪いのか、シグナムと話しながらヴァイスが休憩室に現れた
途端、全員の視線が集中し、彼は事態が飲み込めず首を傾げた
「いいところに来た、ちょっとツラ貸せヴァイス」
アルバートの首根っこを引っつかんだ状態で言うヴィータに対し、
反射的に回れ右して逃走姿勢に入るヴァイス
その襟首を黙って彼の隣に立っていたシグナムが掴んだ
「なにやら面白いことになっているな、
―――そろそろテスタロッサも戻ってくる頃合だ、
じっくり話を聞かせてもらうとしよう」
あれ、俺なんか悪者っぽい?
と事態が飲み込めず、とりあえず目の前のなのはに視線で助けを求めるも
「あ、あははは……頑張ってね、二人とも」
と苦笑いと共に送り出されてしまう
その顔が赤いのは気のせいだと思う、心当たりなど無いし
―――多分、隣の奴のせいだろうなぁ
と思いながらヴァイスはずるずると引きずられていった
おお
#3
「冬木か……ずいぶんと懐かしい町の名だ
もっとも私は其処で生まれたわけではないがな」
ユスティーツアの話に男はそう答えると祭壇へと向き直った
「霊器盤に一つ印が出た、
アサシンめが器を満たしたようだ」
「以前からアレには三つ持たせていたはずだが、今頃になって漸くか」
「なにぶんああも何体も居てはそれが単一の英霊とは聖杯も認識できなんだのだろう、
―――それで、その冬木の管理者は遠坂“凛”で間違いないのだな?」
「管理局側の話によればその筈だが」
「そうか、そうなのか!」
ユスティーツアの返答に叫ぶようにそう言うと男は狂ったように嗤い始めた
そのままひとしきり嗤い続けると男は祭壇の最上部を仰ぎ見た
「ならば此処にはある、
本物の聖杯がまだこの世に存在するということだ!」
ロストロギア『カレイドスコープ』は大元の機構に付け加えるカタチで
聖杯を模倣したものに過ぎない、ゆえに真実“魔法”を扱う物であるとは言え、
その役割においてはオリジナルには及ぶべくも無い
「―――」
最上部の乙女が目を覚まし、磔の枷を軋ませながら声を上げる
数日前に比べると明確にもがいているように見えるのは気のせいではないようだ
「行くか……」
男の言葉にユスティーツアは珍しいなと思った、
この場から片時も離れたことの無いこの男が自ら出向くなど本当に珍しい
「月並みな質問だが、どういう風の吹き回しだ?」
「なに、ただの挨拶だよ
偉大なる先人への、ね」
煌々と輝く左腕の刻印を掲げてそう答える
だが、男の目的が決してそれだけでないことを、
その瞳がはっきりと物語っていた
今回は以上です
物語的にはそろそろ折り返しかな?
乙
そしてやっぱりハラペコ王
乙ー
女に目が無いランサーなのにどうしてセイバーにはピクリとも反応しないのだろうとか
花より団子なんじゃねーか?
この場合団子はバトることだが
ランサーは思う存分力が震える戦いが出来るなら自分の骨が一、二本折れても気にしない気がする
戦う前に骨折?
まぁ、それでも戦いたい相手、戦うべき時には戦うでしょ
セイバーは不老でちっさいから…
>>551 GJ!
合縁奇縁だが、パラレルワールド……
そして年を取ってもアニメ肌ななのはさん
戦った結果敵の攻撃で負傷してっていうつもりだったんだが書き方がまずかったか
同じ魔力供給条件下でも通常セイバーよりオルタの方が上なんだっけ?
じゃ、カレイド側のセイバーにアルトリアが勝てる要素が無いな
同じ供給・武装なら通常セイバーのがバランスいいし、風王結界の応用力、直感と対魔力で強いと言える
ただ、精神耐性で直接対決はオルタ優位と思われる
アンリマユの影響がないオルタは色々不明か
>>557 そりゃ骨の一つや二つ気にしてたら戦えないさ
伊達に戦闘続行スキルついてるわけじゃないっしょ
基本的にみんなタフだよね
>>558 それは一概に言えないんじゃね
そもそもにオルタの強い理由として挙げられるのが無限供給なわけだからな
リンカーコアの外部供給っていうとカートリッジや艦との連携か
人間の身体には悪そうだよね過剰魔力
魔力は飲んでも飲まれるな
もっとドロドロの人間関係が見たい
やっぱ、士郎関係かな〜
>>565 フェイト「士郎は渡さないから」
はやて「ふ……フェイトちゃん、私は本局の二佐やで。階級と給料はフェイトちゃんより上や。士郎を養っていけるのは私しかおらへん」
フェイト「………胸は無いくせに」
ビキィ!
はやて「ふ、ふん、重要なのはスタイルや。胸なんてブクブク太った脂肪の塊やろ」
ブチィ!!
フェイト「………………………」
はやて「………………………」
士郎「ふ、二人とも落ち着いて……」
フェイト&はやて「「士郎は黙ってて!」」
士郎「は、はい……」
こんな感じですか、分かりません!
テロリスト、衛宮士郎がミッドで見かけた子供は、管理局の重要参考人だった
管理局を探りつつ、なのはに保護された少女を観察してみると、士郎は違和感を抱く―――固有結界?
ヴィヴィオの新しい友達、もしかしたら妹になるかもしれない女の子は、なのはママと同じ名前だった
彼女、ナノハは、なのはの目を盗んで、ヴィヴィオに秘密のデバイスを見せてくれた
それは、間違いなくレイジングハートそのもので……
荒野の青年が、少女の夢を砕く
それは大人への一歩か、それとも悪夢か
映画『魔法少女ヴィヴィッド†ヴィヴィオ〜街と夢と剣フェチと〜』絶賛放映中!
>>566 喧嘩するくらいなら―――千切って分けてしまえ!
>>566 前フェイトで後ろはやてでいいじゃん
それよりかはディル召喚みたい。一気にスカちゃんやレジアスが何もしなくても内部崩壊するだろうけど
「斬刑に処す−−−と、しまった、奇数じゃ二等分出来ないな」
戦闘ものばかり描いていると気分がささくれ立ってしまうので
クロスならではのキャラ同士のちょっとしたやり取りも描きたいなと思いつつ
また短編に挑戦してみました。
オールスターで旅行に行くというお話です。
「えー、本日はお日柄もよく、と……我ながらお約束の挨拶やなぁ」
「な、なんでやねーん」
「ヴィータ〜、そこ突っ込むトコちゃうよー」
独特の柔らかいイントネーションの関西弁。
機動6課部隊長、八神はやてと守護騎士ヴィータの漫談に、バス内にてドっと笑いが込み上げる。
些か拙いやり取りと赤面するヴィータの様子からも、二人がこういう事に慣れていないのは明白だった。
「凄いお歴々が集まってくれたからなぁ……柄にもなく緊張してますー。
ほら手汗で壁に張り付きそうや! スパイダーマンや!」
「な、なんでやねーん」
「ヴィータちゃん頑張れー!」
「う、うるせえよっ!! そこ!」
だが稚拙の中に見る愛嬌とでもいうのか苦戦するヴィータがやけに愛らしい。
こうして八神はやての開式の挨拶は比較的、温かい雰囲気で迎えられた。
ミッドチルダ時空管理局と第97管理外世界―――地球。
星間を跨ぐ広大な組織である管理局と、辺境の一惑星の中で独自の発達を遂げてきた世界。
両世界の交流が始まって幾年。 その友好と繁栄を願う声も今では大きい。
そこで今回、はやて達地球出身の魔導士が一役買って立ち上げたのが、この合同親善交流旅行である。
つまりはちょっとした慰安旅行の意味合いを込めた交流会で、寝食を共にして皆で仲良くなろうという企画だ。
参加者は1号車、2号車、3号車と分けられて現地に向かっている最中。
団体行動を嫌う連中や「サイズ」の問題でバスに乗り込めない者など、後から合流する者を含めれば信じられない大所帯になる。
「堅苦しい事は抜きですー。 今日から三日間、日頃の因縁とか放っぽって肩の力を抜いて楽しみましょうという事や。
ほんなら次はスケジュール説明に写らせて貰います。 手元に冊子が行ってると思うんやけど……」
3台のバスが練馬インターから高速に入る中
1号車では、はやてがスピーチを終えたところであった。
激動のガチンコ交流旅行。 その幕が今―――上がったのである。
――――――
1-B ―――
バスの席は右と左の二列から構成されており、1-Bとは1号車のB席を指す。
右にA〜J席。 左にK〜T席という典型的な観光バスの設計となっており、それぞれ二人駆けで最大40名が乗車出来る計算だ。
「ふあーあ……」
その右から2列目のB席。 欠伸の声を上げたのは着物姿の少女だった。
遠慮のない大欠伸、それは普段から気だるげな彼女の人となりの表れでもある。
「疲れた? 両義さん」
「式でいいよ。 苗字で呼ばれるのは好きじゃない」
相席の女性が少女―――両義式を慮って声をかける。
「悪いな。 アンタの連れの話を蔑ろにしてるわけじゃないんだが、どうも堅苦しいのは苦手だ。
学校の遠足とか修学旅行とか全くの無縁だったから」
「構わないよ。 はやてちゃんも言ってる通り、堅苦しいのは無し。
皆で親睦を深めようっていうのが今回の旅行の目的なんだから」
「親睦ねぇ…………」
これだけの面子を一所に集めて親睦? どう見ても蟲毒の壷にしか見えないが……
第一、自分達にしても平和を守る公務員と殺人趣向家の組み合わせだ。
どう考えても同じ食卓に付ける人種ではない。
「まあ、いいや。 色々と毛色の違う奴らがいるし退屈はしないだろ。
実際、お前も相当強いって話だしな」
「式こそ噂はかねがね。 貴方の魔眼は範囲、規模こそ最小レベルだけど
局ではレアスキルを飛び超えてロストロギアにカテゴライズされるほどだよ」
「この眼を除けば俺は普通の人間の範疇だけどな」
(普通の人間が高層ビル間を飛び回って、敵と立ち回ったりはしないと思うんだけど……)
相変わらず「向こう」の人達は普通の基準がズレていると苦笑するなのは。
他にもこの少女、サーヴァントを100人ほど辻斬りしたとか、けったいな噂が数多くある。
物騒な話ばかりが先行していて、なのはも初めは緊張していたのだ。
だが、こうして話していると案外、落ち着いた雰囲気を持つ少女として接しても問題無さそうだった。
「………ちょっとオープンに暴れただけでガセネタ流されるんだから世知辛い世の中だ。
常識で考えてみろ? 俺は確かにこの世界のほぼ全てを<殺せる>けれど
目の前でガトリンクガンでも斉射されたら為す術も無くケシ飛ぶレベルなんだぞ?」
宝具ですら「線」を通せば殺せる直死の魔眼ではあるが、単純なスピード・パワー・技巧はあくまで人間レベル。
そこに敵との差があれば一撃必殺の刃も用をなさない。 線を通さねば直死は成らないのだから。
故に「 」と接続しているならばともかく、銃弾並の速度で動くサーヴァントを虚仮にする力など持っている筈が無いのだ。
「別のトコに、のこのこゲストで出向くと色々やらされるって良い例だ。
ピンク色に塗装された客寄せパンダか? 俺は」
シートにもたれ掛かって愚痴をこぼす魔眼の少女。
口を尖らせる仕草が可愛くて、なのはもついクスっと笑みが漏れてしまう。
「笑ってるけど、お前の方こそ悠長な事言ってる場合か?。
凄い噂が飛び交ってるぜ。 管理局の白い悪魔さん」
式の反撃。 なのはが「うっ」と言葉を詰まらせる。
「友達や部下や娘も容赦なくケシ飛ばしたんだってな。 恐ろしい女だ……
俺もこうして普通に話しているが、実はちょっと緊張してるんだ」
どうやらお互い様だったようである。 居心地悪そうに赤面する教導官。
そう言えばこの前、シャーリーの拾ってきた動画にも凄いのがあった。
「うふふふ……今度はこの星にするの♪」 などと言いながら、惑星破壊クラスの砲撃を撃ちまくる
どう見ても自分にしか見えない―――白い魔導士の創作物が出回っていた。 ……酷い。
「悪魔でいいよ―――」
ボソッと少女の口から出る言葉。 思えばアレが発端か。
「……神様だって殺して見せる」
しかし、なのはも負けずに返す。
何とも言えない沈黙が二人の間に流れるのだった。 つくづく言葉の力は恐ろしい……
そういえば信長の「第六天魔王」も、元は彼が洒落で言った言葉が収集付かなくなった結果だとか。
「何てこった。 俺とお前がこうして並んでしまった今、三千世界がピンチじゃないか
どうする管理局? 世界の危機だぜ?」
「サーヴァントの知名度補正ってこういう風に付くものだったんだね……」
「こりゃいいや! 今度、一緒にどこかの神様でも殺しに行くか?
手始めに外宇宙から来るアレとかコレとか」
「たはは……遠慮しておくよ。 これでも一応、公務員だから」
「懸命だわ。 お互い、発言には気をつけましょう」
口調が一転、女言葉へと変わる少女。 クスリと漏らす小悪魔チックな笑みに中世的な魅力が垣間見える。
からかわれた、と思うも後の祭り。 酷い自虐ジョークもあったもんである。
お互い、苦労しているんだなぁとしみじみ思わせる会話だったが、事のほか楽しい時間が過ぎていく。
「ぶーぶー! さっきから聞いてれば余所行きも甚だしいわよ式!」
しかして突然、後ろから入る茶々。
「彼女相手にあまり迂闊な事言ったら駄目よ魔導士さん。
貴方の方はどうか知らないけれど、コレに対する噂は往々にして洒落にならないものばかりだから。
アナタ、楽しめると見るや私だって殺しかねない殺人鬼でしょう?」
「何だいきなり……………まあ、そうだな。
お前程度の神様だったら100体でも200体でも殺してやるよ」
「…………言ったな、コノー」
乱入したのは明るい女性の声だった。
肩越しに振り返る二人。 すると後ろの座席と眼が合う。
式に茶々を入れたのは素朴な白の上着と紺のスカートで身を包んだ―――
その素朴さでは到底、覆えないほどの美しさを備えた女性であった。
荘厳と言っても過言ではない、西洋の切れ長な瞳と鼻立ち。
王族の姫君と言っても差し支えない気品を、天真爛漫というアンバランスさでぼかした歪な美。
そして高町なのはもまた、その人と眼が合って微笑む。
姫君の隣に座す、自分が最も信頼を置いている細身の男に対して。
――――――
1-C ―――
「ふーんだ!」
北欧系の眉目秀麗な顔立ちがふくれっ面を作っている。
何と可愛らしい事か。 奔放に振舞う月の姫は、まるで駄々をこねる子供のようだ。
相席の若者もこれには苦笑するしかない。
「それにしても八神はやてだっけ? そちらの部隊長さんはハッキリ凄いわね。
曲がりなりにもこれだけの面子を集めちゃうなんて……一体、どういう手を使ったのかしら?」
「行動力で、はやての右に出る者はいないからね。 あと人脈と人徳かな」
「人徳かぁ……」
「こんな面子」の最たる存在である姫君からの最大級の賛辞。 冥利に尽きるというものだろう。
確かに、若いながらも八神はやての徳―――器は誰もが認めるところだ。
歴史上、大徳とも呼ばれる器になると、武も知もそこそこでありながら国を治める王になった輩が数多くいる。
夜天の書に齎されたレアスキルよりも、初めから持ち得た人間性こそが彼女最大の武器であろう。
「でも私と式を一所に集めるなんて、あまり趣味が良いとは言えないわね。
危険物を一緒にして監視されてるようで今一、気乗りがしない〜」
「それは俺も同じだ。 少し黙ってろ吸血鬼」
「<志貴>なら全然OKだったんだけどなぁ。 これ多分、貴方のせいよ式。
気乗りがしないなら今からでも帰れば? そこの窓から飛び降りて」
「お前が飛び降りろ化け物。 高速の真っ只中だが、タンクに轢かれてもお前なら全然、余裕だろ」
「まあまあ、僕じゃ役不足かも知れないけれど、せめて向こうへ着く間だけでもエスコートするよ。
書庫で学んだ事とか、子供の頃に回った遺跡の話とかネタは残ってるんだ」
「うん……しょうがない部分もあるからね。 それに星の外に広がる世界の話は楽しいし興味あるよ」
真祖の姫君アルクェイドブリュンスタッドの相席に座る若者の名はユーノスクライア。
高町なのはの魔法の師匠であり、かけがえの無い友達の一人だ。
「優しそうな人でよかった! 少しの間だけど、よろしくね、ユーノ!」
奔放な吸血鬼を相手に司書長も上手くやっているようである。
彼を一目見た両義式の 「コクトーに似てる……」 という呟きが表す通り、相手を選ばぬ社交性が彼の魅力だ。
怒らせたら英雄王以上にやばいと噂される地球最強の個体が相手といえど、ユーノならば決して間違いを起こさないだろう。
「よーし、たまには浮気しちゃうぞー! せいぜい嫉妬するが良い志貴ー!」
「……………おい、いいのかアレ?」
「まあ、ちょっとドキドキするけど………ユーノ君なら安心だ」
うんざりしながら後ろを指す魔眼の少女だが、なのはの瞳には微塵の憂いもない。
彼に揺ぎ無い、全幅の信頼を置いている―――そんな眼差しだ。
「―――――――綺麗なもんだ……」
「え?」
「何でもない」
不貞腐れたようにそっぽを向く着物の少女。
対象を殺しかけ、身投げしてクルマにハネ飛ばされて、ようやっとマトモな関係を築けた輩にとって
こういう健全な奴らは眩しくて堪らない。
こいつとは深い部分で一生理解し合える事は無いだろうな、と思いつつ
殺人鬼は、殺人衝動とも殺し愛とも無縁な公務員との道中に身を委ねるのだった。
――――――
1-K ―――
「ふう……」
ゆっくりと息を吐いて自分の席に戻った八神はやて部隊長。
キャリアを積んだ高位の魔導士として演説慣れしているつもりだったが、流石にバスガイドの真似事をした事は無い。
「おう、ご苦労であった!」
そしてそれを出迎える相席の声は、はやてよりも頭一つ……いや、ゆうに三つ分は高い所から発せられる。
「あ、イスカさん。 どうも〜。 いやぁ、界隈に名だたるお偉方を前にしての挨拶や。 凄く緊張したなぁ」
「確かに壮観の顔ぶれではある。 これほどの手勢を配下に収められれば、どこまで征服出来るか想像もつかぬわい」
言うまでもないライダー、征服王イスカンダル。
この親父は相変わらず、頭の中は征服蹂躙で一杯だ。
「もっとも最果ての海など知り尽くし、星の海にすら進出している輩も多いからなぁ……
こやつらを導くには、どこを目指すとぶっちゃければ良いか本気で悩んでおる。
のう、お主はどう思う? 夜天の王よ」
「そうやなぁ……宇宙の果て、なんて良いのとちゃいます?」
「それだ!」
明確な目標を得た豪傑の双眸が紅蓮に燃える。
彼ならばいつか本気で真空の海を越えて、宇宙の最果てへと辿り着くだろう。 ……多分。
「いや、しかし先ほどのすぴーち……なかなかどうして見事なものだった。
その若さで国随一の紅蓮隊を指揮するだけの事はあるわい」
「そうやろか? いっぱいいっぱいの漫談やったけど……そう言って貰えると嬉しいなぁ。
あと愚連隊とはちょう違いますから……」
「だが言わずもがな、一端の王の宣託にはほど遠い。 まだまだ遊びが足りんわ!」
2mを超える巨体の男が悪戯小僧のような顔をすると、はやても負けずに不適な笑みを返す。
「相当遊んだつもりやけど……あれでまだ足りないん?」
「足りぬ足りぬ! 王の宣言とは、これ一種のえんたー、ていめんと、よ!」
何せ言動の悉くが歴史に残るのだ。 ああも、しゃっちょこばっていてはとても後世には残せんわ!
―――――――兵の指揮もまた然りであるぞ!」
これに伴い、中断していた「戦場指揮とは何たるか」の議論も再会だ。
征服王イスカンダルとの同席―――これほどの英霊と問答出来る機会はそう無い。
自身の指揮能力の未熟に悩んでいたはやてにとっては彼と相席になった事は僥倖であった。
「せやけど、指揮官として人の命を預かる人間が遊び好きというのはどうやろ?
冷静な判断力と思考を常に望まれる大将はむしろ、徹底的に無駄を省いた用兵を心がけるべきやと思います」
まずは正論。 軽いジャブだ。
管理局でも彼女達はそう教育された。 常に最速、最善。 遊びや洒落の入り込む余地は無い。
ある種、機械的な冷徹さを備える事こそが指揮官に求められる要素。
極論だが、目の前で身内が落とされようと顔色一つ変えず、決して崩れない鉄壁さが求められるのだ。
「キカイ―――ふん、感情を廃したキカイに己が大望を預けて付いて行こうとする者などおらんわ」
だが、そんな現代の指揮官に対して渋い感想を抱く古の王だった。
「間違わなければ、それで良いというものでは無かろう?
戦場で己が命を預けても良いと思える将……その者に何よりも必要なものはだな――――面白さよ!」
「面白さぁ? これはまた、けったいな……」
はやてが目を見張り、首を傾げる。 当然、局の教えにはそんなセオリーは絶無だ。
「やれ正確、やれ正解と躍起になった挙句、部下に不安を持たせて破綻してしまう輩も多い……あれは少々いただけんな。
あくまで我らが率いるのは人間だ。 怒り、恐れ、慄き、喜び勇むヒトなのだ。
そこに、クソ面白くも無い規律で兵を雁字搦めにして、理屈で動かそうとするのは無粋だと思わぬか?」
大将が兵を動かすのではない。 大将の背中を見た兵が、各々の意思で動く。
無双の軍勢とは皆が一つの細胞として機能しなければ成り立たない。
最強を誇った王の軍勢――今で言う多国籍軍を意のままに操ったライダーの用兵論がこれだった。
「頭が完璧たれ!、と気張りすぎると大概、長続きせずに破綻するものよ。
軍の戦闘に立つものは豪壮に怒り、狂い、猛り、その意を後に続く者に示せば良いのだ。
冷徹、冷静はむしろ参謀の役目―――つまり大将を長く続けたければ優れた女房を娶れってこった」
「おい、イスカのオッサン! そりゃちょっと違……」
「ヴィータ」
反論しようとしたヴィータをはやてが制する。
(何で止めるんだよ、はやて! このオッサン、戦争と治安維持の違いを分かってないぜ!)
(イスカさんがそんな馬鹿なわけないやろ。 時代や背景に違いがあるのは百も承知や)
戦乱における行軍と、治安維持を旨とする管理局の人員配置の差異。
攻めて制する侵略戦と、守り救う防衛戦。 それらが水と油だという事を二人は当然、理解している。
した上で理屈をぶつけ合っているのだ。 鍔迫り合いを楽しむかのように。
(でも、ライダーの言う事にも一理あるわ……
私は起こった問題を全部、自分の手で解決しようと躍起になりすぎて正直いっぱいいっぱいやった)
その挙句、勇み過ぎてレジアス中将と話し合う余地を残せず
6課を一度、壊滅の憂き目に合わせてしまったのだ。
(女房役かぁ。 今にして思えばグリフィス君に相当助けられとったんやな……私は)
自分の未熟な部分、足りない部分をあの副官は全てカバーしてくれていた。
レアスキル任せで高ランク指揮権を取得した自分とは違う、地に足のついた指揮能力―――
冷静さも正確さも彼は自分より遥かに上だった。
ならばいっそ、沈着な処理という面では彼に全任してしまえばよかったのではないか?
自分はもっと違うアプローチで部下に接していれば、まるで違った用兵展開が出来たかも知れない。
無双の軍勢―――イスカンダルのアイオニオン・ヘタイロイのように。
「うーん、せやけど私は昔からポーっとしてるからなぁ。
怒り、猛り、かぁ……とてもイスカさんのようには出来へんよ」
「出来んと思うから出来ぬのだ! 試しに想像してみよ! 己が号令を心待ちにする部下たちの姿を。
千の軍勢を前に悠然と立つ自身の姿を思い浮かべるのだ!」
小難しい理論や理屈など二の次―――
その者達の心胆を奮わせる魂の怒号を発するが大将の務めなれば―――
「その時が来れば自ずと腹の底から滾る思いが湧き出して来ようぞ!
炎を吐き出すように叫べば良いのだ! さあっ!」
「ようし……」
スウっと肺一杯に空気を入れたはやて。
顔を真っ赤にしながら、自身の滾る想いを溜めて溜めて―――
「聞けい! 下僕共ぉぉぁああ!!!!」
夜天の王が全てを一気に吐き出した。
ヴィータが飲み掛けのジュースをブッと噴き出す。
「我が求むるは完全無欠の揺るぎ得ぬ勝利のみ! 敵は有象無象の塵芥っ!
重きも速きも我の前には用を為さぬ。 ふはは、制圧前進こそ我が真髄っ!
我に付いて来い下僕ども! 砕いて拉いて進むのだぁぁーーーーーーーーーー!」
……………………
突然の部隊長の怒号―――否、乱心だった。
「「「…………」」」
車内が凍りついたように静まり返っている。
後部席のなのはが硬直したまま、持っていた携帯をポロリと落とす。
更に後方、金髪の少女の碧眼が目を見張り、唖然と口をパクパクさせていた。
「はぁ、はぁ、…………ど、どうやろか?」
えへへ、と顔を紅潮させて―――上目使いに男に問う八神部隊長。
羞恥と慣れない怒号にむせて上気している顔にはある種の達成感。
はにかむ仕草が殺人的に愛らしい。 だが、しかしながら―――――
「………そりゃ、駄目だろ」
目が点になったまま暫く硬直していた巨躯の王が、はやての渾身を一刀両断する。
「そ、それはあんまりやよ……私なりに精一杯、頑張ったつもりなんやけど」
「………おい、念のために聞くがな……それは一体、ナニを参考にした?」
「あ、分かります? えへへー……私の知る限り、最も偉そうな人の芸風をパクってやったんやけど」
(やはり、か……)
ライダー、極め付けに渋い顔。 目尻を抑え、深い苦悩に苛まれる征服王であった。
何故ならば、この愛らしい少女に一瞬、いけ好かん野郎の面影がちらついたからだ。
「いかん! いかんぞ年若き王! あんなモンの影響を受けて良い事など一つも無い!
ここは一つ、余とじっくり話し合うとしようぞ!」
「イスカさん目が恐いわ……」
(案の定、前途有望な若者に悪影響を与えまくっているではないか! あの金ピカは!
有害図書野郎が……次に再戦する時こそ、何としても我が手で叩き潰さねばならん!)
人類の起源とのたまい、広めてきたあの芸風を是正しておかなければ、今を生きる若者の未来は無い。
新たな使命感に燃えるライダーと八神はやての予想だにしなかった凸凹コンビは
まあ―――それなりに上手くやっているようである。
(そうだ………今ので思い出したわ)
1号車はこんな感じで概ね平和であったが、他はどうなっているだろうか?
はやてが後方の2号車に念話を送る。
――――――
??? ―――
「ゲートオブ―――――バビロォォォン!!!!」
「うわ、出たぞGOB!」
「つくづく馬鹿の一つ覚えよねぇ……ペガ○ス流星拳かっての」
「黙れ雑種ども! その使い古した十徳ナイフでも見るような目は何だ!?
常に究極の一を備えているが故に我は偉大なる王。 故に無敵! どこに目新しさを求める必要があるっ!?」
「凛! 士郎! 逃げて下さい! 確かに飽きの来る展開ではありますが
アレが脅威である事に変わりは無い! 初撃だけは何としても私が―――」
決死の覚悟で王の財宝の前に立つセイバー。
例え自身が串刺しになっても、守るべき主だけは守って見せると立ちはだかる剣の英霊。
「セイバー!」
「シ、シロウ!? 何を――!?」
「づおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
カキンカキンカキンカキンカキン―――!
息を呑むセイバー。 凛もだ。 最強のサーヴァントであるセイバーを事もあろうか押しのけて立つ彼。
言うまでもない無茶無理無謀の3、3、7拍子を起源に持つ男、衛宮士郎である。
間違いなく自殺行為でしかないと思われた士郎の蛮行だったが、何と次の瞬間、皆が言葉を失った。
愚行の主は何と宝具斉射に真正面から突撃し、全弾切り払ってしまったのだ!
「な、な………ッ!?」
ワナワナと震える英雄王。
「な、何してくれちゃってるのよ士郎っ!? アンタ頭おかしいんじゃないの!?」
王が言葉を発するより早く、仲間の凛から批難の声が上がる。
「…………ま、まずかったか?」
「当たり前でしょうが! アンタ、自分で何をしたか分かってるワケ!?
これじゃ、バランスブレイカーもいいとこじゃないの!」
「何故か今日はイケると思ったんだよ……天恵って言うのかな?
無理を通して道理を蹴っ飛ばす感じで突撃してみたら案外、出来ちゃった、みたいな」
「何でセイバーに出来ない事をアンタが鼻歌交じりに出来るのよ!?
主人公補正で片付く限度、超えてるわーー!」
「……シロウ……私の立場をどうしてくれるのです……?」
批難轟々の衛宮士郎。 涙目のセイバー。 サーヴァントを泣かせる主など最低である。
「そ、そうだ! 俺に出来るのならセイバーだって軽い筈だ!
もう一度来い英雄王! どうせ宝具の貯蔵は十分なんだろう!?」
「了解だシロウ―――ならば英雄王! 今一度ッッ! カモン!」
「ぬ、ぬう………ゲートオブ――――バビロォォン!!」
「であああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!」
カキンカキンカキンカキンカキン―――!
「……………で、出来た」
セイバーも難なく切り払い成功。
無尽蔵の宝具が力なく場に散らばっていた。
「やった、士郎! やりました! 私にも出来ましたよっ!」
「何だ本当に大した事なかったんだ。 よし!
次、アーチャー行きなさい! モチ、固有結界ナシで!」
「ふむ、メッキの剥がれた王の末路か……では私も期待に答えるとしよう。
さあ英雄王! 宝具の貯蔵は――――むしろ、そんな装備で大丈夫か?」
「ゲ………ゲートオブ―――」
――――――
2-G ―――
「お、おにょれ……おにょ、れぇぇ……っ」
2号車右側の7列席―――苦虫を噛み潰したような表情でうなされ続ける男がいた。
彼の名はギルガメッシュ。 言わずと知れた人類最古の英雄王である。
しかし男の今の様相はまるで、堀に突き落とされた裸の王様が棒で突付かれ虐げられているかのような―――
「ガッ―――――!?」
男が、短い怒声と共にビクンと覚醒する。
たった今まで最悪の悪夢にうなされていた紅蓮の双眸が、極限まで見開かれていた。
「夢――――? 寝汗だと……? この我が?」
何だ? 何だ今の冗談は? サーヴァントは夢など見ない。
ならばあの悪夢のような光景は一体?
「……大丈夫か? 随分とうなされていたようだが」
相席から辛気臭い(男にとってそうとしか思えない)女の声がかけられる。
荒い息を整えるように意識を覚醒させていく英雄王。
(―――コレ、か……)
すぐに悪夢の出所が分かった。 隣に座ったコレの仕業だ。
といってもこの女がこちらに害意を催したのではない。
内に秘めた強大な力を抑え切れず、その残滓がこちらに影響を与えているのだろう。
大方、他人に夢を見せる下卑た機能でも有しているのだろう。 この小道具は。
「ふん……」
問答を受けてやる気分でもない。 男は彼女の声を黙殺する。
「気分が優れないようだな……ガイドの者よ。 すまないがエチケット袋の用意を」
「―――――待てい」
おもむろに車内前部に手をあげて合図する女を、灼眼の瞳がギロリと睨む。
「貴様……よもやソレで我に何をさせようというのだ?」
「無理はしない方が良い……道中は長いのだ。
幸い、私は極小単位での防音結界の作成が可能だし、音が外部に漏れる心配は」
「うつけがっ!! 古書風情が下らぬ戯言を弄するでない!
これ以上、王を愚弄するならば跡形も無く消し炭にしてくれるぞ!」
「……すまない」
「――――チッ」
怒鳴り散らす暴虐の王が、再びそっぽを向いて目を瞑る。
先ほど見た悪夢の口直しだろうか? 女は然したる覇気もなく頭を垂れる。
「今度は良い夢を見られると良いな」
「黙れ」
「……すまない」
「後ろ……悪いが、もう少し静かにしては貰えんかね?」
「……すまない」
隣から、前の座席からとフルボッコである。 気の弱そうな女は先ほどから謝り通しだ。
しかしながら―――誰が信じられよう?
この気弱な女性こそ2号車の治安を単騎で引き受ける、6課最強戦力を持つ個体であると。
「お待たせ―――ヘド袋がご入用と聞いて」
ガイドの女がバス旅行の必需品を引っさげて来た。
くすんだ黄金の瞳がG席の男と女を見下ろしている。
カソックに身を包んだ、透明な印象を受ける女の神父だった。
「シッ……今、眠ったところだ。 悪いがそれは不用になった」
「そう―――普段、偉そうな王様がどんな情けない面でゲーゲーやるのか楽しみにしていたのだけれど」
神の使いが酷い事を言う。 捻じ曲がった趣向の持ち主である事は疑いようがない。
「それにしても貴方、大したものね。 コレ相手に破綻もせず、まっとうに相手をしながら他の席にも気を配っているなんて。
普通の人間なら、とっくに胃が溶けて無くなってるところだわ」
「丈夫なだけが取り得なのだ。 それに普通の人間でもない。
だが、悉く彼の不興を買ってしまう……上手くいかないものだな」
女神父―――カレンオルテンシアはそのサーヴァントのマスターでもあった。 だから英雄王の心胆も大方の予想がつく。
この王にとって彼女のようなタイプはやりにくいのだ。
自身に匹敵(あるいは凌駕)するほどの力を持ちながら、ここまで低身低頭、腰を低くされては突っかかりようが無い。
まるで暴虐の対にいるような女―――彼女はそこにいるだけで、王の傲岸不遜を上手く相殺していたのであった。
(これを狙っての配置だとしたら、八神はやてという娘……相当のやり手だわ)
「おお……我が友よ――――セイバーも、近う……」
……どうやら今度は当たりを引いたようである。
王の天使のような寝顔が横にあった。
「きもちわる……」
「シッ………」
侮蔑の言葉は、唇に人差し指を当てられて制されてしまった。
悪魔のような羽と退廃的な銀髪を称えた、その相貌にまるで相応しくない―――
――― 貴方、ベビーシッターみたい ―――
カレンが思わずそう呟きそうになるほどに、温かい風を纏う彼女こそ
かつては闇の書―――今は祝福の風の名を持つ魔導書の管制人格であった。
(それにしても見るに耐えないマヌケ顔……醜態もいいところだわ)
己のサーヴァントが、赤の他人に子守をされてホイホイ寝こけている光景はやはり面白くない。
せめて一言、何かを言わずにはいられなのだが、この子守に分かる言葉を紡ごうとすると制されてしまう。
故に、ここでカレンが口に出す言葉は一つしかない。
「ポルカ・ミゼーリア」
「どういう意味だ? それは」
「親愛なる者に畏敬や尊敬の念を込めて……そんなニュアンスの言葉。
貴方も今度、使ってみるといいわ」
「そうか……それは良い事を聞いた」
祝福の風リィンフォースは柔らかく微笑む。
彼女にとってそんな言葉を送れる相手は一人しかいない。
丁度、今その主に念話で定時報告を飛ばしていたところだった。
取りあえず今は―――
「良い夢を―――始祖たる王」
優しい夢に包まれて寝息を立てる隣人の夢を妨げないようにするのみである―――
――――――
2-F ―――
「なあ、ガイド……納得いかんのだがな」
後部席とのやり取りが終わって定位置に戻ろうとするカレン。
眼鏡の理知的な女史がそんな彼女に声をかけた。
「何かご不満でも?」
「あるとも。 まずは車内分けがどういう基準で為されたかを聞きたいな。
右を見ても左を見ても、死人と、死に損ないと、外道と、化け物と、死にそうにない連中しかいないのだが?
何故、私がそんなモノの中にカテゴライズされている?」
「驚いた……貴方、自分がまともな人間のつもりなのね?」
「血も吸わなければ宝具をぶん回すわけでもない。 首を?げば普通に死ぬ。
どう見たって善良な一市民だろうが? 私は」
「2号車を化け物の巣窟というカテゴライズで集めたわけではないの。
3つに分かれた割り振りの基準は……基本、<絶対に出会ってはいけない者>を区分して分け隔てている。
このグループ間には相当強い結界が為されていると聞いたわ。 それこそアストラルサイドにまで根を張る極め付けのやつが」
「ハッ……狂犬同士が噛み合わないよう、檻に囲われての親善旅行か。
交流を深めるとぶち上げた割にはしょっぱい事するねぇ」
「気持ちは分かるわ―――私も、この狂乱の宴の末に子羊達がどんな結末を迎えるかが楽しみで同行したのだから」
「なるほど……2号車は総じて人外か、人間のクズが集められたというわけだ。
ついでによく分かった。 要は私はあのバカの煽りを食ったという事だな。
―――タバコ、吸っても良いかね?」
「遠慮して頂戴」
納得したのか諦観したのか、シガーケースを取り出す人形遣い蒼崎橙子。
次いで隣に喫煙の許可を求めるが、相席の妙齢の女に断りを入れられる。
「………備え付けられた灰皿が見えないのか? これがあるという事は喫煙OKの場所だ。
私がタバコを吸うのを妨げられる理由は何かね?」
「申し訳ないわね。 私は貴方の言った<死に損ない>なの。
死期の近い病人が隣にいるのに毒煙を撒き散らすのはマナーに反するわ」
「そういう輩はまず外出を控えるのが筋だろうが?」
「こんな茶番に興味は無いのよ。 でも、集まる知識は見過ごせない。
もしかしたら、あの子を生き返らせる術が見つかるかもしれない……」
へぇ、と……当代一の人形師はほくそ笑む。
誰が考えたか知らないが、この女と自分を相席にした奴の捻じ曲がり具合は相当だ。
「運命の悪戯か……そういう事なら、いの一番に私と相席になったのは貴方にとって僥倖ではないか?
貴方の欲していそうなモノを私は数多く有しているぞ。 無論、ただとは言わないが―――」
「人形はいらないわ」
まずはケチケチせずにタバコくらい吸わせろ、と要求する筈だった橙子だが
その一言にピシっと心の中の入れてはいけないスイッチが入る。
「―――人形に文句があるのか?」
「別に……もう失敗作は沢山というだけ。 本物よりも遥かに劣化した人形なんかに用は無いの」
「それは単に貴方が本物の人形を知らないだけだろう」
「人形なんて皆、本物の劣化コピーでしょう? あの娘の優しい笑顔も仕草も何一つ再現出来ない紛い物よ」
「はっはっは……面白い事を言うねぇ」
あくまで余所行きの皮を被っているつもりだったが―――人形使いの眼鏡の淵が光る。
丁度良い……暇を持て余していたところだ。 この無礼な女を懲らしめてやろう。
「狭量な見解だな。 大方、死者蘇生か何かに御執心の様子だが……
これまた単純無比にして、人の願いの原初に位置する命題だ。
神界、冥界あらゆる自然の摂理に喧嘩を売る、人間が踏み越えてはいけない域だ。
シケモクの煙にさえ怯むような女に、そうそう超えられる壁だとは思えんね」
「もう少し……もう少しで………」
うわ言の様にブツブツと口ずさむ幽鬼のような女。
ヒューヒューと呼吸音がかなり怪しいが、構わず橙子は続ける。
「第一、何を以ってホンモノと言い、何を根拠に偽者と断ずるのか……確たる論拠も無しに
砂利を漁るように知識だけを求めるなど、私に言わせれば飢えた餓鬼と変わらんよ。
傍から見てこれほど無様でみすぼらしい事も無い。 自分の様を少しは理解しているのか? 貴方は」
「…………」
一気にまくし立てる橙子。
オリジナルが死して魂が抜け落ちた時点で、その肉体もまた土塊以上のものではない。
その後、いかな技術を駆使して作り上げたモノであろうと、この女の理論で言うならば―――
全てが偽者。 全てが人形という事になってしまうではないか?
彼女は己が言動の矛盾にすら気づいていないのだ。 これが笑わずにいられるか。
「クローン体の生成……記憶の転写……実際、大したものだよキミらの技術は。
こちらの科学力では、まだ確立の目処すら立っていないオーバーテクノロジーだ。
だがしかし、使う人間がトチ狂っていては宝の持ち腐れだな。 そもそも肉体と魂の定義とは―――」
これからが良いところだとばかりに、ビシっと人差し指を突き立てる人形師―――で、あったのだが……
「……………」
「…………おい」
―――その弁を聞く者は居なかった。
「……………おい、私は今、凄まじく重要な事を言おうとしているのだが……」
手を開け閉めしながら、パクパクと開いた橙子の口。
所在無く指した親指がプルプルと震えている。
「普通、寝るかっ? ここでっーーー!!!」
久しぶりに歯ごたえのありそうな相手と激論を戦わそうと思ったのも束の間
彼女は既に電源が落ちたように寝息を立てていた。
きっと本気の言い合いは色々やばいのだろう。 余命とか。
「…………ふ」
知識を求めると言っておきながら、封印指定の人形使いをアウトオブ眼中とは……
して、力いっぱい振り上げた拳の置き所はどこへいけばよい?
彼女はもはや、死人のような、寝息すら立てずに眠る女を忌々しげに見下ろすより他に術が無い。
(トドメ刺してやろうか……この女)
「あの……少し静かにしては貰えないだろうか?」
「分かっているっっ!!」
後ろの羽の化け物から注意が飛ぶ。
それに忌々しげに答えつつ、人形遣いはシートにドッカリと寄りかかるのだった。
つまらない道中になったものだ……洒落も色気もありゃしない。
おまけにタバコも吸えないと来た。 カリカリと禁煙パイポをかじりつつ―――
(くそ……あのバカのせいで……あのバカの!)
人類の至高の域に達した頭脳と技術を持つ者同士―――初日、全く噛み合う事無し。
殺気を辺りに撒き散らしながら……橙子は寝た。
――――――
1-H ―――
「ぶえっくしょい!」
先行する1号車で盛大なくしゃみが響く。
「風邪? 暖房、効かせようか?」
「んにゃ……大丈夫。 多分、どっかのバカが悪口言ってるだけだから」
ズズッと鼻を啜ったのは魔法使い、蒼崎青子。
その仕草を心配そうに見つめる黒衣の魔導士は―――
「良いから話の続き続き! だからさあ、ねえ? バルバロッサ」
「テスタロッサです」
執務官フェイトテスタロッサハラオウン。
異色の組み合わせだが、同じ射撃・砲撃を嗜む者としてこの魔法使いは高町なのはと親交がある。
その経由でフェイトともちょっとした知り合いの間柄となっていた。
「貴方は家族ってモンに対して重く見すぎっていうか……神聖視してるのよ。
家族なんて実際、面倒臭い事のが多いし、ロクなもんじゃないわよ?」
「そんな事無いよ。 家族はやっぱりあったかくて優しいよ。
常に支え合って共に築いて来た絆は何物にも変え難い物だと思う」
「近づき過ぎてイヤな部分も赤裸々になるけどねー。 要は全て巡り合わせ。
上手く回れば言う事は無いけれど、悪い方に転がると見るも無残に転落していく―――それが家族ってもん」
「ちょっとしたボタンのかけ間違いは誰にだってあるよ。 でも、どんなに時間がかかっても修正出来ると思う。
だって血を分けた親子兄弟………仲良くしたいって思わない人はいないもの」
それは理想論だ―――ボリボリと頭を掻く魔法使いは大層、居心地が悪そうである。
青子とてこのような理論、相手を知らなければただの馬鹿として処理しているところだが
この娘は確か……そんな甘い理屈に酔って漬かれるような少女時代を送って来なかった筈だ。
家族を思い出すと血の味が脳裏を過ぎる―――そんな自分に全く引けを取らないヘビーな過去を背負って生きてきた筈だ。
だがしかし、こうして顔を突き合わせて議論をぶつけ合うほどに、二人は全く別の答えに行き着いている。
「そう簡単にいけば、金属バットで親を殴り倒す子供も、子供をロッカーに放置する親もいないでしょう?
んじゃ聞くけどさ、どれだけ愛を叫ぼうが、自分を決定的に嫌悪してくる相手はいるのよ。
その時点で絆なんて破綻してる。 そんな状態の相手とアナタ、どうやって絆を育むの?」
「それは……」
自身の過去と向き合うように、きゅっと唇を噛むフェイト。
いくら手繰り寄せても届かない汚泥のような少女時代――
だが、あの頃とは違う。 フェイトは既にその答えを得ていた。
この理想は絵空事ではなく、そうであって欲しいと願う彼女の強烈な信念だ。
理想を理想と切り捨てず、現実のものとする強固な意志の元に紡がれた言葉。
それは青子の突きつける現実の刃を以ってしても簡単に切れはしない。
「こうするんだよ………」
慈愛を称えた表情でフェイトは微笑む。
―――数年前の事を思い出す。
とある施設に預けられ、誰も信じられず狂犬のように周囲に牙を剥く少年がいた。
辺り構わず感情を吐き散らし、余人では近づく事も出来ない彼を相手に、フェイトは躊躇わずに―――
「…………」
―――――こうした。
「…………」
時間が凝固し、止まったように沈黙した。
青子の、へ?という愕然とした息遣いのみが聞こえた。
ミスブルーの体を優しく包み込むようにフェイトはその体を抱き締めたのだ。
言葉は要らない。 肩と腰に手を回し、息遣いを感じるほどに密着した優しいハグ―――
問答無用の愛情を示すのに、自分が傷つくのを恐がってちゃ駄目だ。
子供の頃の自分は弱かった。 自分が傷つくのを恐れて一歩、踏み出せなかった。
今は違う。 相手の言葉で抉られようと牙が突き刺さろうとかまわない。
自身の愛を、好意をただ示す。 相手の氷の心を溶かすのに必要な温もりはこうやって伝えるのだ。
…………
…………
「キャオラーーーーーーッッ!!???」
「あうっ!? あうっ!?」
ただし、愛情に慣れていない人間が相手だとこうなるので注意が必要。
無償の愛は時に劇薬、毒薬と相成るのだった。
「き・も・ち・わ・る・い・事をするなぁぁぁ!!!」
「い、痛いよ……青子」
投げ抜けを成功させた青子さん。
強烈なモンゴリアンチョップを脇腹に食らい、涙に蒸せながら抗議の声をあげるフェイト。
しかしてフェイトが再び青子に近づこうとすると、彼女は猛禽のように髪の毛を逆立たせて威嚇する。
あの構えは蛇形門―――! 鎌首をもたげる手刀の先がフェイトの急所に狙いをつけて揺るがない。
(お、おかしいな……やり方を間違えたかな……?)
心底、不思議そうに首を傾げながら引き下がる執務官である。
蒼崎妹もぷいっと窓の外に視線を移してしまう。 その様相は不貞腐れているようであり
しかしながら口に手を当て、決して表情を見られないよう顔を背けた仕草の裏側は―――
(やば……濡れた……)
―――こんなんだった。
フェイト―――恐ろしい娘。 彼女は紛う事なき天性の魔性だ。
王子様にも、お姫様にも、母性に溢れた保護者にもなりえるマルチ・コマシ・タスク。
局にいる数多くのファンが「両性」にまで及ぶわけである。
不覚にも未だドキドキしてしまっている自分の心臓を握り潰したい青子さん。
確か、不幸の境遇にあった彼女をなのはが助けた、という事になっているが
その実、なのはの方がこの娘に引っかかっただけじゃないのか?と本気で思う。
「じゃあこれだけは教えて、青子」
「あによ」
「分かり合いたいけれど分かり合えない……思いをぶつけたくてもどうしようもない……
生きていれば、いつか必ずそんな相手に出会うと思う。 いや、もしかしたら既に出会っているかも知れない。
そんな時、青子はどうするの?」
「トルネードアッパー」
腕を組んで即答するブルー。 その自信と潔さは悟りの境地。
「…………」
「ええいっ! この私を哀れんだ目で見るなっ!!」
しかして、アフリカの飢民を見るようなフェイトの瞳から全力で逃れようともがく様は、お札を翳された悪霊のよう。
所詮、愛に対する身の置き所が違うのだ。 分かり合える筈もない。
(家族ねぇ……)
ちょっと騙されたと思って想像してみよう。
この蒼崎青子と、あの蒼崎橙子が、目を潤ませて……
互いを抱きしめ合うその姿を――――
「――――――――――ギギギ」
電気椅子にかけられた囚人の如く、ビクンビクンと跳ね上がるブルーの肢体は一瞬で致死にまで至った。
「青子? 青子!? どうしたの!? 大丈夫っ!??」
「………ぎ、ぎぼぢわるい……」
「大変だ! ………ヨモギとか噛む?」
「いらねーよ! あんたのせいだかんねっ!! 私を酔わせた責任、取って貰うんだからっ!!」」
車内前列から 「真似すんなーっ!」 と、怒声が飛んでくる。
家族を愛する者と、家族など屁とも思っていない者。
三日間……そんな二人が打ち解けるのに要する時間としては短いのか長いのか、余人に計れるはずも無いが――――
バスが外環を経由し、東北道に入る。
目的地までもう間もなくであった。
――――――
1-O ―――
(高町なのはもテスタロッサも上手くやっているようだな)
車内後部に陣取るのは烈火の将シグナム。
彼女が自らはやてに申し出たポジションは、バスの中を一望するには持ってこいの席だった。
しかし相席については特に何も言わなかったのだが―――まさか彼女が来るとは予想だにしなかった。
「シグナム………ハヤテは一体、どうしたのですか?」
「聡明な方だ。 何らかの意図があったのだろう」
隣に座った、砂金のような髪に碧眼の瞳の少女……その問いかけに答える。
騎士王セイバー―――全ての騎士の誉れたるブリテンの王だ。
(……主も粋な事をしてくれる)
歴史の闇を渡り歩いてきたヴォルケンリッターとはまさに正反対の、王道を体現するかのような光の騎士。
彼女と相席できるとは一騎士として光栄の極みではないか。
「そうですか……しかしどのような意図があれ、ああいった物言いは宜しくない。
何か悪いものが憑いた可能性もある。 気をつけた方が賢明かと」
「分かった。 あとで進言しておくとしよう」
先の八神はやての大喝に、騎士王は今も目を白黒させている。
何か怨敵にでも出会ったような形相をしているが、よほど気に障る事があったのか?
ともあれ、当たり障りの無い話を交わしながらもチラチラとセイバーを見やるシグナム。
将らしからぬ不振な仕草であったが―――
局内では、なのは教導官と交友の深いサーヴァントとして特に有名になりつつあるセイバー。
その付き合いからか、なのはの教導にゲストとして呼ばれる事も少なくないらしい。
そして日は浅いながらも驚くべきは……模擬戦の勝率、実に10割!
未だ負けなしのパーフェクトレコードの持ち主だというから凄まじい。
あのなのはやフェイトでさえ引き分けに持ち込むのが精一杯だという彼女の実力は未だ計りが知れない。
(…………私の剣ならばどうか?)
その彼女を見て―――こう考えない騎士はいないだろう。
全ての騎士の頂点に立つと言われる剣の英霊。
一介の剣士として剣を交えてみたいと思うのは至極当然の事だった。
(交流会のプログラムを見るに……良い機会かも知れんな)
湧き上がるバトルマニアの血の滾りは留まる事を知らない。
何時、話を切り出すかを様子見している烈火の将。
意中の相手にラブレターを渡そうと悪戦苦闘する中学生の心境とはきっとこういうものだろう。
「…………」
ゴシャゴシャ―――
だが見れば、先ほどから何か音を立てている隣。
セイバーが袋のようなものと格闘している。 何だろう? あれは………
「む、う……」
小さな呻き声をあげる少女。
よく見るとそれは真空パックに包まれたコンビニのおにぎりだった。
鮮度を保つために工夫を凝らした包み袋。 しかしてそれを排除しなければ戦果へは辿り着けない。
目前の城壁を破ろうと躍起になっている姿を、黙って観察するシグナムだったが……
「………あ!」
少女が小さな吐息を漏らした。 手に持つ袋がビリっと歪に破けてしまい、白米は分離して床へ―――
「…………」
あれでは海苔が絡まず、おにぎりにはならない。
あからさまに肩を落とした後、騎士王は分離した海苔を、そのままモシャモシャと口の中に入れた。
哀愁漂うその様子。 思わず点になるシグナムの両眼。
今度はツナ握りを手に、再びトライするセイバー。
千の敵を前にしたような彼女の形相は必見だ。
だが再度―――――ビリ!と、またも同じ末路を辿る真空パックと握り飯。
「………不器用、だな」
ボソっと、率直な感想を漏らしてしまった。
見られているとは思わなかったのか、ハッとなった後、頬を染めて俯いてしまうセイバーである。
「願望と結果が必ずしも一致するわけではなく―――文明の利器とは思いの他、手強いものですね……」
シロウにも散々、教わって来たのですが、と付け加える王様。
しかしあれほどの剣技の持ち主が、古の城門を一振りでブチ抜く豪傑が
おにぎりの真空パックに阻まれ、手も足も出ないというのはどうだろう……
「雑、ですか……? 私は?」
「雑だ。 貸してみろ」
シグナムとて浮世に身を置いて長い。 コンビニのおにぎりを剥くなど造作も無い。
ひょいひょいっと手際よくパックを取り払い、まるでエサを待ちわびる小動物のようなセイバーに明太子握りを渡してやる。
「おお……見事な!」
お預けを食らったリスがようやっと飯にありつけた―――そんな感じか。
少女は握り飯を受け取ると、モシャモシャと一心不乱に被りついた。 とても幸せそうだ。
たまらず窓の外へと視線を移すシグナム。 笑いを堪えるためだった。
(これが、模擬戦無敗か……)
フランス人形のように可憐な少女が、一心不乱に飯を頬張る姿がシュール過ぎて
つい笑みが漏れてしまうのだ。 まるで手のかかる妹が出来たようである。
「これも食べるか?」
言ってイチゴのジャムパンを差し出す将。
「よ、良いのですか?」
「かまわん」
「是非、お言葉に甘えましょう!」
更に自分は今から、この少女に今生一代の挑戦状を叩きつけようというのだから―――なお、おかしい。
「ただし………条件がある」
緊張していたのが馬鹿みたいだ。 心に留めていた本題をぶつける事にしよう。
「条件?」
「旅行の冊子は見たな? 今回のこの行楽、両世界観の交流を深めるために様々な催しが用意されている。
その中に体験教導演習会というものがあっただろう?」
もむもむと口を動かしながら頷くセイバー。
「そこの第3班を任されたのが他ならぬ、この私なのだ。
そこで、だ……噂に名高い剣の英霊に是非、一手ご教授願いたい」
ギラリと光る烈火の将の双眸。 それは紛う事無き戦士の顔。
セイバーとて戦に生きた伝説の英霊だ。 彼女の言葉の意味を取り違える事は決してない。
和やかな行楽の車内にジリッと大気の焼ける匂いが充満する。
さっきまでの平穏な空気など何のその。 一瞬で鉄と血の支配する戦場の雰囲気が二人の周りを支配する。
セイバーが、緑色の双眸に炎を灯し―――
「ほほむほほろでふ」
ほっぺにジャムをつけたまま―――挑戦を受けた。
「食べてから喋れ……」
大丈夫か……この娘?
今一、緊張感に欠けるやり取りではあったが、まあ伝え聞く風聞通りならば期待外れの心配は無いだろう。
言うべき事は言った。 騎士の誉れたるこのサーヴァントが約束を違える事は考えにくい。
肩の荷が下りたようにシグナムはシートに身を横たえた。
「……………」
(そう言えば3号車……ティアナからの定時が来ないな)
やるべき事をやって、そして思い出した事は、密接に繋がる機動6課の連絡網だ。
次はティアナランスターから自分への回覧だった筈で、それはもうこちらへ回ってきても良い頃合だ。
何の気なしに窓の外の景色、そこへ次ぐ3号車を視界に捉えようと見回し―――
「…………………………なっ?」
将の口から驚愕の吐息が漏れるのだった。
その―――ボディ、バンパー、ミラーに至るまで、煌びやかに輝く黄金と化したバスを見て―――
(また、あの迷惑千番な英雄王が何かやらかしたか……?)
とも思ったが、奴は2号車だ。
しかもリィンフォースが付きっ切りで接待(という名の監視)をしている。
そして、眼を凝らすと一瞬、車内の様子を垣間見る事が出来たのだが……
「おいセイバー……」
「知りません」
まだ何も聞いていない。 だが、セイバーはそっぽを向いて完全にシャットアウトモードだ。
「しかし、何というか、今チラッと人影が見えたのだが………お前がいたぞ」
「他人の空似でしょう」
あの下品な黄金車の前部分で演説めいた事をしていたのは彼女―――セイバーに瓜二つの少女だった。
アレはどう見ても最低、3親等内の縁者だ。
違う所と言えば色が赤いトコと、艶かしい太股を曝け出した騎士らしからぬ破廉恥な服装のみ。
「アレとアーサー王伝説に繋がりを持たせる後世の歴史家も多いと聞きますが―――
あの放蕩王と私は完全に別人です……ええ、天地神明に誓って。
これ以上、文句があるのなら、この世界の造物主にでも言って下さい」
わけの分からない事を言ってムクれてしまうセイバー。 迷惑な話だと言わんばかりの態度だ。
どうやらあのサーヴァントと似ていると言うのは禁句らしい。
有名人は顔や風聞によって同一視されると、謂れの無いクレームや誤爆を受ける事もしばしばだ。
もしくはドッペルゲンガー現象で、互いに認識するとどちらかが死ぬのだろうか?
とにかく、そんなこんなでセイバーは全く取り付く島が無い様子。
(こちら2号車、シグナムだ。 ティアナランスター、応答しろ)
仕方ないのでこちらからティアナに念話を送ってやる。
(ティアナ、定時報告が遅れているぞ? 聞こえていたら……)
(こ、こちら……ティアナ、ランスター……れぇす)
気の抜けた声が……返ってきた。 それはもう信じられないほどに!
ズルっと、シートからズリ落ちそうになってしまうシグナムである。
(……何だ、その腐抜けた返事は? 貴様、まさかアルコールを摂取しているのではあるまいな?)
(そ、そうじゃなくって……はひゃ!?そ、そこはいいって……)
将の怪訝な顔の、眉間に皺が寄っていく。
(何だ? そことはドコだ? 状況を明確に説明しろ)
(……なな、何でもないれすぅ……何でもぉ)
「たるんでいるな……」
何が原因か知らないが、ここは一発、喝を入れてやらねばなるまい。
盛大なのを入れてやろうと、彼女はスウっと息を吸って―――
――― キシャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!! ―――
「ぬおわっ!?」
―――とんでもないカウンターを食らった。
衝撃で上体がズレる! 念波!?
リンクしていた先から強大な念が逆流して来てシグナムを貫いたのだ!
こめかみを打ち抜かれたように弾け飛ぶ将の上半身! 次いで、ぬごんっ!!!という快音!
それは吹き飛んだシグナムがドミノ倒しのように、隣のセイバーにヘッドパッドをかました音だった。
鈍器が割れたような音と共に二人の騎士は昏倒して―――その場にノックダウンした。
「く……おぉ…」
流石に効いた………ぐったりとシートにもたれ、グロッキー状態になる最強の騎士と騎士。
目の前を火花が飛んでいる。 暫く意識を飛ばされるほどのダメージが二人を襲う。
「シグナム………わ、私は――――何か貴方の不興を買ったのか……?」
「すまん……他意は無い。 気にしないでくれ……」
頭を押さえ、恨みがましい目を向けるセイバーに謝罪を入れる将。
彼女には悪いが、本当に何が何だか分からないのだ。 未だにガンガン痛む側頭部を押さえつつ―――
(何だ……今のは?)
シグナムは今の出来事を反芻する。
ティアナの仕業、ではない。 念話を攻撃手段にする技など彼女は持っていない筈だ。
むしろ何らかの要因で、極めて乱れまくっていたティアナの思念。
彼女に一喝しようとした途端、外部から強制的に念話をカットしたナニかの仕業か?
得体の知れない、とてつもない力で念話のラインを引き千切った……いや、噛み千切った。
一瞬だが、その獰猛極まりない凶悪なシルエットが今も将の目に焼きついている。
(あれは狼? ジャッカル? いや………)
それは白面金毛の、雄々しい尻尾を称えた―――
金ぴかに光るバスを見やり、得体の知れない存在を感じつつ、唸り声をあげるシグナム。
――――バスは県境を超えて、栃木へと入る。
――――――
3 ―――
「ふむっ! 優雅さの欠片も無い護送車であったが、これで少しは見栄えが良くなるというものだ!」
「あー、その……セイバーさん? このバス、レンタルなんですけどね」
「何を言う! 借り物だろうと皇帝たる余を運ぶ荷車であるぞ! 他よりも煌びやかに飾らなくてどーするか!?
2号車にはあのバビロニアの王が乗っかっていると聞いたが、奴には負けん! ミューズの加護は我にありだ!」
今時、族車でもこんな下品なゴールドカラーリングは見た事が無い。
しかし善人代表、黒桐幹也がなだめるも効果は全く無し。
黄金の劇場と化したバスの内部でセイバー(赤)が高らかに猛威を奮っていた。
ここはアエストゥス・ドムス・アウレア―――皇帝特権の全てがまかり通る場所。
もはや途中退場(下車)は出来ませんのであしからず―――
そんなアナウンスすら聞こえてきかねない封絶の結界内。
言い換えれば―――要するに暴君の体の良いバスジャックである。
――――――
3-E ―――
「全く施術中に話しかけてくるなんて不躾にも程がありますね。
せっかくご主人様にリラックスして貰っているのに台無しじゃないですか」
―――どうして……こうなっちゃったんだろう?
限界まで後ろに倒したシートにうつ伏せに寝かされる自分が、今に至る経緯を必死に反芻する。
全身にびしりと浮かぶ冷たい汗は不可解な状況に対する恐怖からか。
隣にちょこんと座ったのは、露出の多い着物に獣耳の可愛らしい娘だった。
腰の低い、礼儀正しい娘と彼女はすぐに打ち解け―――
激務に勤しむ日常の話から始まり、日頃の疲れが抜けなくなっているという方向へ話題が流れ
良いツボを知ってますとか、そういういう話になって……気がついたらこんな体勢に……
そう、同席した少女は彼女の事を「ご主人様」と呼んだ。
彼女―――ティアナの背中を、そんな少女の手がピアノの演奏者の如く滑る。
「ん、んっ………!」
「どうですかご主人様? このタマモの絶技―――最近、流行のエステ、整体なんてメじゃないでしょう?」
(ヤ、ヤバイ……マジで気持ち良、すぎる……)
体にまるっきり力が入らない。 舌も呂律が回らなくなってきている。
これはほとんど魔性、魔技の域だ。
シグナムとの念話を「外から強制的」にぶった切られた驚愕も次第に薄れていく。
「人を繰るに指先一つあれば事足りる―――人体をグルグル回る経絡を熟知すれば
相手を尽きせぬ快感に溺れさせる事も、死に至るダメージを与える事も自由自在なのでございます。
まあ、古来よりインドや大陸の方で発達した淫遁の極、房中の応用なんですけどねー」
「いん、とん……ぼう、ちゅ…?」
「端的に言うとエロい技です」
「っ………!!?」
ガバっと跳ね起きようとするティアナ。 だがやはり力が入らない。
体の隅まで掌握されたとはこういう事か、水揚げされたカエルのように手足をバタバタさせるのが精一杯だ。
「時の権力者をかどわかし、色に溺れさせた狐の化生―――彼女達は須らく、こういった業を駆使すると言い伝えられています。
けどぉ、失礼千万というか! まるで悪行の権化みたいに言われるのは心外かとっ!
これはあくまで私の献身の心から身に着けたテェクニック! それ以上でも以下でもありえませんから!」
ヨヨヨと泣き崩れる謎の少女―――キャスター。(さっき、名前を漏らしたような気もするが)
所謂、夢魔・淫魔というやつか? こうも簡単に内側への侵入を許すなんて……
ミッドチルダの防壁は物理攻撃には滅法、強いがアストラルサイドの侵入には弱い。
向こうの連中と接する際に注意が必要だとあれほど教えられてきたのに何という迂闊か。
「そこに込められた想いは、ご主人様に円還の陶酔を味わって頂きたいという真心のみだというのにっ……!
あー、ガイドガイド。 E席、最高級のローションを所望です。 とっとと持って来て下さいな」
「お客様、残念ですけど当車にはそんなもん、ありません。
どこの世界にローション売ってるバスがあるのか逆に教えて欲しいものですが?」
「ちっ……使えねぇ売り子ですねぇ」
手売りのボックスカーを引いてきた少女に対し、蝿でも追い払うようにシッシッという仕草を見せる獣耳。
こめかみに青筋を浮かべながら、冷ややかな視線をティアナに落とす売り子さん。
「良いご身分ね、ティアナ」
「す、好きで……こうなってるわけじゃ……察してくれると嬉しいな、なんて……」
「あっそう。 せいぜいバカンスを愉しむといいわ。 執務官候補さん」
この体勢では何を言っても説得力がまるでない。
紅い服に身を包んだ売り子はフン、と鼻を鳴らして行ってしまう。
「感じ悪い売り子ですね…………ブサイクッッ!!!」
狐がオーバースローで缶をぶん投げる。
放物線を描いた、中身の詰まったコーラは見事、売り子の後頭部に直撃!
カコーンという小気味良い音が響き、次いでブルブルと怒りに震える肩がはっきり見えた。
「ひええ……ちょっと、まずいって、あれ……」
「知りません。 あんなの放っておいて楽しくやりましょう♪
三日間という短い期間ではありますが、精一杯ご主人様の良妻として仕えとう御座います」
良妻―――ちょっと待て……何かが決定的におかしい。
今まで生きてきた自身の認識が間違っていなければ
この身は心身ともに人類ヒト科の雌にカテゴライズされる存在で―――
「かまいません。 性別は問題ではないのです」
「こ、こちらが構うっ! 何で私なのよっ? 理由はっ?」
「特に無いです」
「無いんかいっ!」
「強いて言うなら隣に座ったから?」
「ぐはーー………」
「あとはご主人様の人柄でしょうかねー。 当たり障りの無いドライなお付き合いが出来そうなので。
この夢現のような3日間を無難に乗り切るのに大変、都合の良いご主人様なんですよ。 貴方は」
「なんつう言い草よっ……3日間くらい我慢すればいいでしょうが! んっ……ッ」
「我慢……我慢ですか」
コリコリと仙骨の辺りに指が入る。 喘ぐティアナ。
まるで体の中をまさぐられている様だ。
「暴走気味だという事は自覚してるんです。 普段ならそうするんですけどね―――
これから行く所に少々問題があるというか、まさかこの私をアソコに招待する馬鹿がいるとは夢にも思いませんでしたから」
少女の背中に瘴気のような物が立ち込めているのは気のせいか?
瞳にも深い闇が灯っているような……?
「なのでぇ、常に良妻モードで自分を抑えておかないと危ないんですよ♪
何かの弾みで力を取り戻したりしようもんなら、ここに集まった連中、サクッと皆殺しにしちゃうかも…………ぐふふふ♪」
む、夢魔じゃない……淫魔でもない……
自分が引いたのは、引き当ててしまったのは―――もっととんでもない何かだ。
その言葉が決してハッタリではないと感じ入るにつれ、ティアナの心に氷柱が突き刺さったような寒気が襲い来る。
「そういう事です。 つまりご主人様は責任重大なのです。
拒否権はありません……タマモの愛を是非、受け取って下さいね♪」
つまり奉仕という名の捕食だこれは……
それに運悪く、自分が生贄になったというだけの事。
まずは助けを……上から助言を仰いで、それから―――
「ティア、楽しそうだねー」
「こんの、バカスバルッ!! 何をどう見たら、そういう風に見え……いひひゃ!?」
すぐ横から見知った声がする。 顔だ。 顔がすぐ横にある。
人の気も知らない暢気な声に反論しようとするが、今度は肩甲骨に指が入った……グリグリと。
覗き込まれる青髪のボーイッシュな容姿は古くからの相棒のもの。
シートを目一杯後ろに倒せば当然、後部座席の人間が下敷きになる。
故に、もれなく座席を挟んだ向こうにいる長年の相棒、スバルナカジマは
座席のサンドイッチになっても不平一つ漏らさない良い娘であった。
「だってこんなにトロトロしたティアの顔、見た事ないもん」
「み、見るな……今の私の顔を……っ」
必死に自分の顔を手で覆うティアナ。
この弛緩し切った表情を相棒にだけは見られたくない。
意地というか、スバルの前では何時だってクールな自分でいたいのだ。
「ねえねえ、タマモさん! 私もトレーニングで肩の辺りが凝っちゃってるんですよ! あとで私にも……」
「ぜってぇ、やだ」
「へ? 何で?」
ティアナに接している少女は本当に幸せそうだった。
だが、しかし一転、スバルと目が合った瞬間の剣呑な表情に描かれるは絵に描いたような嫌悪のみ。
「犬系は私の天敵なので。 はっきり言って近づかれるだけで虫唾が走るんですよ。
気安く私の名前、呼ばないで貰えます? アンタなんか三遍回って―――」
ズイっ――――
「ワンと泣いたら――――」
ズズイっ―――
「そのまま死にやがれーーー!」
ズズズイっ―――!と、スバルに顔を近づけ、益体の無い罵声を浴びせる少女だった。
「ティアー……」
「知るか……」
涙ぐむスバルを慮る余裕などティアナには無い。
二人の問答が一人芝居に聞こえるほど頭がぼうっとしている。 もう、野となれ山となれ、だ。
「あれ……そういえば、スバル。 貴方の相席は?」
朦朧とする意識の中で、最後にこんな質問をしたのだけは覚えている。
「いるよ」
「いないじゃない」
「いるんだよ……ちょっと信じられないけど」
空席になっている相棒の隣が気になったが―――それも狐のエステの心地よさの波に呑まれ、消えていく。
ティアナランスター、間もなく撃沈。
将来、エリート執務官となる優秀な魔導士が屍同然と化すまでにかかった時間は、実に15分と36秒。
「狐の指圧は母心〜♪」
彼女の朦朧とする意識に、暢気な鼻歌だけが響き渡っていたのだった。
――――――
3-F ―――
恐慌と混濁と、得体の知れない快楽の狭間に落ちていった親友ティアナランスター ――――
と…………そう感じていたのは恐らく本人だけだっただろう。
スバルが全く動かなかったのが良い証拠である。
これが微塵でも友達に危害を加えるような事態であったなら彼女が悠長に構えている筈がない。
「んしょ……よいしょっ……」
何より、少女のこの顔が―――印象的だったのだ。
ティアナの体の不調。 コリや張った筋を丹念にほぐしていく時の彼女の一生懸命な顔。
それがあまりにも嬉しそうで、眩いばかりの笑顔に邪な物など一切、感じられない。
言動こそ物騒だが、少女のティアナに対する好意は本物だった。
確かに最近の相棒は執務官になるための勉強と日々の激務に苛まれ、相当の無理をしていた。
後で分かった事だが、この日のティアナの容態は決して良い物ではなく
本来ならば自分が気づいてやらなければいけない事を、このサーヴァントは真っ先に気づき、慮って見せたのだ。
そこに友人として感謝の気持ちが無いわけがない。 スバルはこの少女を一目で好きになってしまった。
「はん、何と無防備な姿よのう―――わしが刺客だったらこの娘、死出の旅路に出る事、百を超えておるわ」
隣(にいるであろう)のサーヴァントが呆れたような声を発する。
「ゴルァ、ヤクザ拳法家! 何抜かしよんねん、ワレェ!!
ご主人様に何かするつもりなら、百代までバリバリ呪うからそのつもりで来いやーー!」
「荷荷ッ―――そう、ビクつかんでも何もせんわい。 現地に着けば強者どもがひしめいておる、この祭典。
わざわざ死に掛けの相手に凶手を下す必要も無く、こんな窮屈な場所で功を奮う必然性も無し!」
「じゃあ、その初めての相手は私で決定! 予約しましたからね! 約束ですよ、アサシンさん!」
「ほう? 娘よ……わしの拳は一打必殺。 ぬしのような細身の娘が一撃でも受ければ、命を拾う術など無いぞ?」
「望むところです! 体だけは丈夫に出来てますんで! こっちだってストライクアーツの真髄を見せますよ!」
交流にも様々な形があるが、やはり基本は拳と拳か。
この面子―――素直に温泉に漬かって、まったりしてくれる者の方が少なそうである。
こんな感じでバス内、既に心躍っているバトルマニアがチラホラと……
―――バスは料金所を抜け、会津東街道に降りる。
――――――
3-A、B ―――
「……こちら遠坂凛。 はやて、聞こえる?」
3号車の責任者……になってしまった魔術師、遠坂凛が携帯に話しかけている。
よりによって一番やっかいで読めない新参者どもがひしめく組にぶち当たってしまった。
これも相方のお人よしの鶴の一声によるものだろう。 いつもの事だとはいえ……
声がイラついているのは後頭部に生じたタンコブのせいだけでは無い。
「結論から言うわね……貴方が送ってくれた部下は物の見事に、クソの役にも立たなかったわ」
「あれ? お、おかしいなぁ……そんな筈ないんやけど。 二人とも、うちの次期エース候補やよ?」
「そのエース候補とやらは、狐に鼻ならぬ肌を摘まれてアヘアヘ言ってるわよ。 ほれ」
すかさず取ってやった写メを送ってやる。
これは酷い……恍惚の表情でエステを受ける部下の姿が……
「ぶわははっ! 面白ぇなオイ! ここまで見事に戦地でくつろぐような奴は余の部下にも一人もおらなんだぞ!」
「ティアナ、疲れてたんやなぁ……悪い事したわ」
「片方の下敷きになってる娘も良い味出しとる! 何だ、お前さんの部下にもユーモアの効いた輩がおるではないか?
これはアレか? ストライキってやつか?」
「こういう事に気づいてやれんのが、私がまだまだだという証や……凹むわー。
今度、武装隊全員にシャマル先生の辛口整体リンパマッサージ券、配ったろ」
駄目だ……駄目だこいつら。
携帯を乱暴に切ってやると再び、目の前の騒然たる有様を見据える羽目になる凛だった。
「―――今日ほど、幼稚園の引率の先生を尊敬した日は無いわね」
「まあ、な。 だがこれで前回、宝石剣の暴発で
局のアンテナ施設を蒸発させた事をチャラにしてくれるんだ……安いもんだろう」
「はん、全部アタシのせいって事? アンタだって、なのはに借りがあって頭が上がらないから
カッコつけて一番のドツボを引いてきたんでしょうが!?」
「そ、そんな事はないぞ……勝手が違うとはいえ聖杯は聖杯、サーヴァントはサーヴァントだ。
あくまでこいつら相手には、俺達の方が事態に対処出来るだろうという確固たる考えの下にだな……」
「じゃあ、その立派な考えに基づいた結果を見せて貰いたいわね衛宮くん。
優雅じゃない―――の一言で、セイバー(赤)に一瞬で嫌われたようだけど」
「う……」
「さしずめ安定の1号車、波乱の2号車―――吐き溜めの3号車ってところですかね? うふふふ」
「おい桜。 そりゃあんまりだ」
接待する側とされる側はまさに天国と地獄である。
ことに人外どものバカンスともなれば、大半が一般庶民とは一線を隔す奴らだ。
相当の浪費家、放蕩家である事は言うまでもなく、上がってくるオーダーも我が侭放題し放題だった。
「だいたい、ウォシュレットにすら戦慄を覚える私が霊子ハッカー? 馬鹿も休み休み言えってのよ!
ニコニコ動画? 何それおいしいの!?」
「胸を張って言える事じゃないぞ……」
「試しに髪の毛を金色にしてみたらどうですか?」
「それは名案ね、桜。 丁度、純粋な怒りでスーパー遠坂人に目覚めかけていたところだし」
「リン、疲れた。 下らない事を言っとらんで、こっちへ来て余の肩を揉むのだ」
「うっさいコンパチ! 馴れ馴れしく話しかけるな! アンタなんか知る、もごっ!?」
桜と士郎があかいあくまの暴言を慌てて止める。
すかさず、赤セイバーの方へフォローに回る黒桐幹也。
パタパタと手を振ってくる仕草は「こっちは心配要らない」という合図だろう。
「あの暴君っ……向こう着いたらギルガメッシュとカチ合わせて共食いさせてやる……!」
「それにしても幹也さんがいてくれて助かったな。 あの人、大人というか……何があっても揺るがないし」
「雨にも風にも負けなかった、ストーカーさんですからねー。 うふふふ」
…………まずい。 さっきから桜の言動がかなり怪しい。
相当キてる。 下手をすると鬱憤を表に出せない姉よりもずっと。
3号車の喧騒は、留まるところを知らずにエスカレートしていき―――
――――――
3-F付近 ―――
「うわぁ……本当に何の気配も感じない。 信じられない……ママとどっちが強いかな?」
「ふはは! 中華最大を謳われたわしと並ぶママがいるとは、興味深いぞ娘!」
「こら外道拳法家! 子供に暗殺拳の手ほどきなどするでない!
娘よ……そんな事より芸術だ。 余の劇場を見て何か思うところは無いのか?」
「劇場……そう言えばこの前、ママの映画を見に映画館に行ったよ?」
「何と! お前の母は壇上に舞う奏者であったか!? そやつとは大層、話が合いそうだぞ!」
ぐおおおおおおおおっ
「………何か……凄い声が聞こえたんですけど?」
「ああ、あれは我がマスターだ。 最近、多くてな……気にするでない」
――――――
3-J付近 ―――
「俺は……俺はこんな所では死ねん!」
「ガウェイン。 兄さんが限界のようだ。 酔い止めのスピリタスを持ってきて下さい」
「すみません主……目を離した隙に賊に盗まれてしまい―――」
「べらんめぇい! 国税局が何ぼのもんだってのさっ!?
強奪したお宝にまで所得申告の対象になるとか舐めんな!
そんな事、抜かしやがる奴はカルバリン砲で海の藻屑だろ実際!」
「貴様、海賊っ! 王の所持品に手を出すとは極刑を覚悟しての所業であろうな!」
「ハッ! 今度は飲酒運転で引っ張ろうってのかい? イヤだねぇ、現代は生き難くてさぁ!
海ってのは、もっと自由で奔放でデカイもんだろう!? さあ――――そろそろ行こうか、ゴールデンワイルドハントッ!」
――――――
3-A、B ―――
これは―――駄目かも分からない。
衛宮士郎の両脇でカカシの様に立ち竦む遠坂凛と間桐桜。
彼の持つボキャブラリーで、今の二人の顔をどう例えれば良いのかは分からないが―――
それでもあえて例えるのならば―――
二人は……南極に置き去りにされたペリカンのような顔をしていた。
――――――
現地 ―――
「聞いての通りだ。 三号車は心身共に限界に近い。
定刻までにそこに辿り付けなかった場合、脱落したと見て捨ててくれて構わない」
「馬鹿な事言ってないで持たせて下さい。 仮にもあの聖杯戦争の勝者と時計塔のエースがいるんでしょう?
泣き言は一切、聞かないからそのつもりで」
連絡を受けた痩身の令嬢が現地にて佇む。
年若いながらも、その威厳は既に1等の霊地を任されるに足るものだ。
遠野家当主―――遠野秋葉が翡翠、琥珀を従えて悠然と構えていた。
「全く、名門・遠坂家の者がこの体たらくとは情けない……」
「こっちは何とか無事にインターを降りたわ。 特に問題はなさそうね」
「矢板〜塩原JC間の通行止めを解除しました」
「結構。 案外、大人しい連中で助かったわ。
ガチガチに打ち合いながら東北本線大橋を叩き落すくらいはやる連中だって聞いてたけれど……」
その認識は残念ながら否定できない。 恐ろしい事に。
聖杯戦争中ならば、そのくらいの事は普通にやっていただろう。
ともあれ、秋葉に並んで腕を組んで立つのは月村忍。
海鳴町の裏を支配する夜の一族の代表だ。
年が近い事もあり、その筋の社交界では秋葉と忍は良きライバル関係でもあった。
「遠野と月村―――こうして揃ってしまったからには、ただの給仕に甘んじるつもりはありません。
どちらが来賓により質の高い接待が出来るか勝負よ、忍」
「望むところね秋葉! そちらのメイドが極めて優秀なのは承知しているけれど
今回は三日間の長丁場! 持久戦になった場合、どう考えたって生身の肉体の方が不利でしょうに!」
「あの、忍様……今回ばかりは過去の遺恨を捨てて、協力して事に当たった方が得策かと」
「そうですよ秋葉さま〜。 混血? 夜の一族? プギャー(笑)な連中が、もうじき大挙して押し寄せてくるんですよぉ?
仲違いなんかしてたら二人揃ってぺしゃんこにされますよ〜?」
「「黙らっしゃいっ!」」
そんなことは分かっている。 実際、このやり取りも緊張を隠すための空元気でもあるのだ。
言われるまでもなく、背後の物々しい警備を見れば事の大きさはイヤでも感じざるを得ない。
お嬢様同士のやり取りを苦笑しながら見つめる、カソックのシスターと目が合い、フン、と目を逸らす秋葉。
各々から派遣されてきた腕利き達―――その中にはあのシエルもいた。
「大仰な事ですねぇ。 G7でもここまでの配備はありえませんよ」
「仕方ないさ。 ある意味、世界の首相や大統領よりもずっとビップな連中を出迎えるのだから」
代行者、シエル。 それに並ぶはリーズバイフェ・ストリンドヴァリ。
弓と盾―――最強のドラクルアンカーを並べて配置してきたのだ 教会は。
「何かの冗談としか思えない配置ですが、教会が取り得る最善の措置と言えるでしょうね。
本当は大挙して押し寄せたかったのでしょうが―――管理局と事を構えて良い事など何もありませんし」
「実際、冗談めいているにも程があるよ。 平時ならば率先して打ち滅ぼさなきゃいけない連中まで警邏?
なあ、代行者シエル――――――これは悪夢かい?」
「………」
「悪夢になるか、良い夢になるかは私達次第でしょう」
二人の後方、聖王教会の居並ぶ騎士団。
その先頭に陣取るカリムグラシアが答える。 脇には側近のシャッハヌエラの姿も。
「壮観ですね……なんとも」
「一騎当千のお二人には及びませんが、こちらも頭数では負けませんよ。
このお勤め、聖王教会の全霊を以って当たらせて頂きます」
「頭数だけとは思えない。 そちらのおかっぱさんは相当やれる人と見たけれど」
信じる物の異なる信徒達―――その大仰な顔合わせが行われている。
現地組はまだまだ増えそうだ。
高町家の面々が翠屋出張、店舗をあげての支援に乗り出して現地入りする予定。
久しぶりになのは達に会えると聞いてアリサやすずかも合流すると聞いている。
此度の催しはとにかく大所帯だ。 その人員管理だけでも想像を絶する手間がかかる事だろう。
だが、言うまでも無く一番重要なのはとにかく来賓を迎える事。
インターを降り、山を一気に登って、頂上から少し降りた所。
開けた盆地のようになっているのが、此度の祭の開催地。
その山の下りを折り返した地点――――バス三台の頭がようやく見え……
「………何か」
見えた途端――――そのダウンヒルに、甲高いエキゾーストノートが響き渡り……
「暴走してない?」
その瞬間、猛烈なダウンヒルアタックを敢行する三台のバスの姿があった!
――――――
3 ―――
「良い舟だ! 砲塔を左右に10門………あとは細かな微調整を施すだけ。
それだけで、すぐにでも大海原に繰り出せるじゃないかっ! ははっ! ご機嫌だねぇ!」
「繰り出せるわけ無いでしょう!? 日本の観光バスが水陸両用になった歴史なんてありませんからっ!」
「あとは、そうだな。 この煩わしい金箔を削ぎ落として全てをアタシ色に染め替えれば完璧だ!
このエルドラゴ最大の見せ場に呆けているほど阿呆じゃないんでね!
アンタの兄貴には大層、かわいそうなことをしたが―――」
大航海時代の先駆者。 無敵の女海賊が髪を掻き揚げて猛る。
さっきの気付けが利いているようだ。 大層、酒臭い。
「せめて妹のアンタには勝利の味を教えてやるさ!」
「おい桜! 何とかしてくれ! ライダーの扱いには慣れてるだろう!?」
「無理です先輩ー! 属性的に一個も響き合うモノがありませんー!」
「あーはっはっはー。 もう、どーにでもなぁれー」
凛がラリっている。 右手を見ると水割りもしていない純度100%のアルコールが。
ドレイクの杯を摘んだのだ……俗に言うヤケ酒である。
「つくづく無責任な小間使いですねっ! さっさと行ってあの海賊を締め落とすなり何なりしてきなさいっ!」
ほら、行った行った!とキャスターが凛の臀部を蹴っ飛ばす。
ゲシゲシと、黒字のスカートにプリントされていく狐の足跡……
「………」
おもむろに無言で振り向く凛。
そのまま、背筋を総動員して後ろに反り返り――――めこすっ!
「ぴゃっ!!!?」
キャスターの鼻面に強烈な頭突きをかますのだった。
可愛い悲鳴をあげてのけぞる獣耳。
後方にたたらを踏んで、暫く何をされたか理解できずに、キャスターは顔を抑えてワナワナと震えている。
「ひーーーーっ!? とと、遠坂さん何をっ!?」
「荷荷―――ッ、今のは心意把かよ!
見事な一撃だが、あと半歩、踏み込まねば必殺とは相成らんな!」
唖然と、あかいあくまを見据えているキャスターと
どっかりと目の座った遠坂凛が暫く、無言で見詰め合っていたが―――
「ここ、こんのぉーーーーーーっっ!!!」
「やってやろうじゃないのっ!! 大妖がナンボのもんよ!!
その白面を鼻血で真っ赤に染めてやる!!」
やがて当然の帰結とばかりに、狭い車内で取っ組み合う二人であった。
「こらこら、ここはコロッセウムでは無いのだぞ? この場に相応しいのは舞闘ではなく優雅な舞踊。
歌えや踊れ、艶やかな天女の舞いを。 もっと余を楽しませるのだ」
「アンタはさっさとこの三文劇場を畳めっ!!」
「なな、なんだとっ!!?」
これを以って、3号車は完全に破綻―――――
終わりだ……目尻からホロリとしょっぱい液体が一筋。
飛行機事故さながらの喧騒を、どこか現実味の無い心境で見つめつつ―――
「俺が死んだら、墓石には無銘とでも記しておいてくれ―――」
衛宮士郎は瞬く星に願いを一つ―――
ヘアピンに突っ込むバスを遠い目で見守るのだった。
――――――
2 ―――
「なあ蛇の君? あれはドリフトというやつだろう?」
「違うな欲望の! ありゃモンキーターンってんだ!
陸でアレを見られるとは……地球に着いて早々、旦那はラッキーだよ!」
「流石は無限転生者……博識だねえ。
それにしてもあの機動は素晴らしい。 開発中のISの旋回パターンはアレを基盤としよう!」
妙に馬が合っているロアとスカリエッティを乗せた2号車は、既に3号車を猛追する姿勢を見せている。
長い車体が限界を超えたドライブによってギシギシと歪な音を立てていた。
「おい、大丈夫なんだろうなコレは?
桜ちゃんに会うまで俺は死ぬわけにはいかないんだっ!」
「大丈夫なんじゃないですか? 彼らは」
神父の女が他の座席の面々を見回して素っ気無く答える。
「くそ………どいつもこいつも緊張感の無い顔しやがって!
これも全部、時臣のせいだ! 俺がキアヌリーブスにでもなるしか無いのかっ!?」
「ポルカミゼーリア(黙れ蟲野郎)」
身の程知らずに罵声を浴びせるカレン。
そして―――運転席では、長髪を腰まで垂らした背中がカタカタと震えていた。
「ねえ―――駄メドゥーサ」
「は、はい……姉さま」
「分かっているわね? 駄メドゥーサ―――
私、例え遊びであっても負けるのは大嫌いなの」
「は、はい……姉さま」
「お利巧さん―――貴方は昔から速く走る事しか能が無いんだから
それで負けたら存在価値無いものねぇ。 セリポス峠最速と言われた疾走を、下々の者に見せてやりなさい」
「でも、もし負けたら――――」
双子の姉の一人、ステンノがライダーの耳たぶをカプリと噛む。
「ひ、ひいいぃぃぃぃぃぃいいいいいいっっ!!!」
彼女の悲鳴が、ディーゼルエンジンの限界を超えた有り得ない咆哮と重なる。
黒煙を上げて急斜を駆け下りるバス。 この暴走を止められそうな者は―――
「くっ、この会談だけは何としても成功させねばならんというのにっ! ここはわしが……」
「無茶です中将!」
「その通りだ中将閣下……危険だから、シートベルトを締めて席に座っていて欲しい」
「貴様、闇の書の管制人格ではないか!? そのような者の言う事など聞けるか!
此度の不肖は貴様の主ともども査問にかけてやるぞ!」
意気込みも往々に気勢を吐くレジアスゲイズ中将。
これでリィンフィースの太股に必死にしがみ付いている状態でなければ、格好もついたのだが……
「だいたい、このような重大な会合でドライバーに妖怪を雇うとは何という不手際か!
才あれば出自もろくに問わん海の体質が今日の失態を生ん………う、ぶっ……ぼええええええええ!」
「中将! 父さぁぁぁぁんっ!!!」
「………………」
副官オーリスの悲痛な叫びが木霊する。
同時、閣下の名誉を守るためにリィンの雄雄しき羽がはためき広がる。
躊躇う事無く、中将の「全て」を受け止める漆黒の翼……
これも過去に犯した大罪の償いだと思えば、どうということは無い―――ちょっと悲しくて、臭いだけだ。
ともあれ、こんな感じで6課最強戦力は、レジアスによって完全に無力化されていた。
「これは……死ぬわね」
フッと笑みを浮かべるカレン。
全車両が連なるようにテール・トウ・ノーズで第二コーナーへと突っ込む中
紫陽花の女は胸の前で――――静かに十字を切った。
――――――
1 ―――
「出遅れたっ! まさか、このタイミングで勝負を仕掛けてくるとは……征服王が何たる不手際か!」
「イスカさんイスカさん。 日本の公道はバスで20キロ出して走るようには出来てへん……きゃわっ!?」
はやての冷静な突っ込みは氾濫する重力の波に掻き消される。
「あかん……舌噛む」
「なあ、はやて……信じていいんだよな!?
本当にコイツ、ノリと勢いだけで生きてる愉快なオッサンじゃねえんだよなっ!?」
「ちょう……自信無くなって来たわ」
「おいコラっ! てめえ、いい加減にしろよ!」
ステアリングを奪われたヴァイスが怒りの声をあげる。 そうだ。 こんな傍若無人が許されてなるものか!
一度、ドライバーとして運転席を任された以上、乗車員を無事に目的地まで届けるのが彼の誇りなのだから。
「だからバカの一つ覚えのイン攻めじゃ埒が明かねえってのっ!
次のコーナーだ! フェイントかけて揺さぶって、アウトからまくれっ!」
…………前言撤回。 グランセニック、ノリノリである。
「……ヴァイス陸曹。 貴様、何を言っている?」
「止めねえで下さいシグナム姉さん! 男にはね、引けない時ってのがあるんです! なあ、ストームライダー!!」
<Yes I will become fastest together>
「よく言った異郷の益荒男よ! 我、ここに同士を得たりっ! いざ往かん――――オケアノスの海へ!!!!」
「ひえええええええええっ!? 目的地は山やよ〜〜!??」
先行する二台の間に突き込むように、1号車が車体のフロントを捻じ込んだ。
総勢40名弱を乗せた鉄の塊が身を軋ませ、ベタ踏みされるアクセルの要求に全力で答え―――
―――三台は揃って最終コーナーに突っ込んだ。
――――――
現地 ―――
「――――――やっぱり悪夢だったようだね」
一言。 盾の騎士の呟きが、現地で待ち受ける人々の心胆を如実に表す。
全員が呆然と見上げ、立ち尽くす中で―――言うまでも無く、バス三台は連なって接触し……
共に最終コーナーのインを突こうと閂のように突き刺さったフロントが固定されたまま
荷重移動という名の暴力的な力がテコの原理で襲い掛かり、長い車両を真っ二つに引き裂いた。
そのまま横倒しに倒されるバス3台が最後の峠のガードレールを突き破ってゴロゴロゴロ―――
その残骸と化した観光バスの成れの果てが、彼らの前に無残に横たわったのが……ついぞさっきの事だった。
「な、なな………なぁのぉはぁぁーーーーーー!!!」
「お、お父さん落ち着いて!」
「なのはが! なのはがぁぁ!!」
先ほど到着した高町一家の主、高町士郎が半狂乱でバスの残骸に駆け寄る。
速い。 間違いなく、神速とか使っている。
そんな中、ひしゃげた窓ガラスを割ってのそのそと這い出て来る影を、遠野秋葉が呆れた表情で見下ろしていた。
「はぁ………死ぬかと思ったわ」
「お早いお付きで……元気そうで何よりだわ。 リンシャン狸」
「はは、お久しぶりやなぁ……秋葉ちゃん」
「ったく……貴方が付いていながら何てザマよ。 ―――とと、に、兄さん!
翡翠、琥珀! 他は良いから、さっさと兄さんを掘り出しなさい!」
「あちゃ……えらい事になったわ。 流石にやばくない、コレ?」
月村家付きのメイド部隊も迅速に行動を起こすが、目の前の大惨事だ。
流石の女豪主も最悪の予感に心胆を凍らせるが―――
「―――――全く下品な乗り心地であったわ」
―――そんな惨事の、オチをつける声がまず上がったのが2号車だった。
残骸の天井を蹴り破り、何事もなく出てくる者がいた。
既に何なく脱出していた者がいた。
自力で脱出の敵わなかった者の周囲にも、球体のフィールドが生成され、その身を魔法の障壁によって守られていた。
「たは、……酷い目にあったよ」
「でも、なのはの合図のおかげで僕も迅速にフィールドの生成に取り掛かれたよ。 皆、無事だよね?」
「念のために点呼を取ろう。 万が一、負傷した者は申し出て……」
「ヴァイス、貴様は減給だ。 あとで旅館中のトイレの床でも磨いていろ」
「死ぬ前に一度……く、悔いはねえですっ! キャノンボールは男の浪漫ですから!」
案の定 、こんなクラッシュ事故でどうにかなってしまうような連中ではなかった。
かすり傷を負っている者すらいなかった。
「アインス、何か匂うわよ貴方?」
「名誉の負傷……そう思いたいな」
2号車から、そして3号車からも次々と這い出てくる人影。
何も無い空間にフォン、フォン、と空間の歪む音が響き、転移してくるモノたちもいる。
残骸を掘り起こすと、互いの頬を引き千切らん程につねり上げたまま繋がっている化石―――遠坂凛と狐と皇帝が発掘される。
「危なかったー! クルマってあの速度でも横転しちゃうんだ……結構、不便なのね」
「お前な、こうなる前に止められなかったのか?
道中の安全を頼まれていたのに、これじゃ秋葉に顔向け出来ないじゃないか」
「う……だって、ちょっと楽しかったんだもん……」
アルクェイドが向こうの方から眼鏡の学生を肩に担いで歩いてくる。
瞬間移動じみた速度で車間を飛び超え、3号車にいた遠野志貴を救って脱出したのだ。
「見ての通り……全員、無事到着や!」
あとは頼んだとばかりに親指をビッと立てて朗らかに笑う八神はやて部隊長。
後ろには百鬼夜行のワールドワイドバージョンみたいな連中が―――
「早くも、バス3台か……」
一つの仕事をやり遂げた達成感に満ちているはやての顔は、両家お嬢様の引きつる顔と対照的だった。
「規定範囲内です。 むしろ予定より軽微な損害かと」
「それも、そうね……あら、どうしたの秋葉? 膝が笑ってるわよ?」
「忍こそ、さっきから歯の根が噛み合ってないけど? 歯槽膿漏かしら?」
「いやー、持つべき者は太っ腹の出資者とブルジョワの友達ですねぇ」
「「五月蝿い!!」」
シエルの冷やかしの言葉に両家の令嬢が罵声を浴びせる。
バトンは託された。 今度は自分達がこの厄介者の面倒を見る番なのだ。
はは、と乾いた笑いを浮かべる現地組の憂鬱を他所に―――
奈須高原・塩原温泉旅館―――リゾート・リリブラ
夢の三日間が幕を開けるのだった。
以上です。
続きはフェイトルートが終わった後に改めて描きたいと思っています。
だいたい一日目、二日目、三日目と三つに分かれると思います。
ではまたノシ
GJ! GJ! GJ!
なんかもう、旅館に着く前からカオスを極めたらこうなりました、と言わんばかりですね!
EXTRAサーヴァント勢を一足早くこのスレで見られたのが感無量です!!
GJ!
間違いなく現在最大の被害者はリイン
デカい追加者はフリード大?バーサーcar?超中華ロボ?白天王?まさかのゴールデン冬木くん?
志貴が最後にいきなり出てきたあたり、バスにはまだまだ登場してないキャラクターが乗ってるかもしれないなコレは
カレンの女神父を見て、女神・父かと思ったワタシ
素直にシスターで、大丈夫だ問題ない
エクストラの英霊までいるのかよwww
カオスwww所々誤字あった気がするけど十分面白いです
続き楽しみにしてます
入浴シーンはあるんですか?
互いの噂にドン引きしてるなのはさんと式w
実際、式の強さってどれほどなんだろうね
型月最上位クラスって声もあるし
というか無敵モードの詳細が難しすぎてよく分からん
一般に
通常式:ナイフ式
「両儀式」:刀式(自己暗示で人格フラット化)
“両儀式”:根源直結かみさま
として
ナイフ式は、元天才剣道少女(異常な若さで五段)と同じ剣の腕だが、ナイフはなんちゃって、筋力は一般人並み
荒耶マンションのゾンビに無双、鉄骨とかビョンビョン飛ぶ野獣リオにやや優位
刀式は、ナイフ式に無双、シエルに届くかどうか、火力系B宝具サーヴァントに防衛戦は難しい、未来予知レベルの直感持ち
根源式は、戦闘に関してアルク以下の自由度だが、サーヴァントを除いた登場キャラNo.2で他人の身体をいじくったり、世界改変とか可能
青子や軋間、ネロどころか、黒桜さえ(アヴェンジャーとしてサーヴァント扱いでなければ)凌ぐ可能性がある
基本的に直感が強いが、対処法は横っ飛びなどで戦士としては盤石ではない
北斗のトキのように、病気とか治す方が魔眼の有効活用になるがやらない
傍目ほど達観してない
まとめると『人妻』
あ、モンスターとかいうバグキャラは知らないからな
バビロンを剣で弾きまくる映画士郎や、格ゲーの英霊トオサカみたいなもんだ
「せやけどそれは只の夢や」 byはやて
よかったね我様
GJ!!
最近続編の投下来ないなーと思ったらまさかのギャグ短編とな
劇場版ネタはやめれw
エクストラも妄想が広がっていいなぁ
しかしフェイトルート完結までお預けとは厳しいが…
えぇ待ちますとも
実際のところプレシアって、仮にオリジナルのアリシアと全く同じ人格で蘇生なりクローンなりを作れても、こいつは別人だって言いそうな気がする
そこらへんは、しょうがないよね
フェイトに対する正の感情もあったぽいけど、心も身体もボロボロとあっては、本人であって本人でない
たぶん、アリシアに何もかもを謝って死ぬことが一番の幸せなんだろう
>>607 投下乙です
そうか、赤セイバーの宝具の敵ステータスダウンの正体はジャイアン・リサイタルだったのかー
レジアス中将がいるので、いろいろ追加者が出るかな
こうして書いてもらうと、狐は一人でエクストラ枠を喰いかねない強力キャラクターですな……
>>612 人妻になっても鍛えてるのかな?
どんな形であれ、プレシアとフェイトが和解するエンディングは見たい
でも簡単にごめんなさいフェイト、母さんってやると安っぽくなってしまうし
山岡と海原雄山並に面倒臭い親子だな
オシリスを鼻クソ扱いで眼鏡にハァハァ人妻
怪物スペック娘をマタドールしながら眼鏡をターミネーター未婚母
>>616 狐は初め出た時は絶対人気出ないと思ってたがド直球で可愛かったねーw
しかし日本三大妖怪って九尾の狐とあと何なのかしら?
ぬらりひょんと鬼太郎?
なのはさんがプレシアと話すシーンがこれっぽっちも無いのよね
見たい
スカ博士も無かったな
>>607 言い忘れてました
×ストームライダー
〇ストームレイダー
故人さえも当たり前のようにいることだし、マテ娘なんかもいるんだろうか
三大妖怪、三大怨霊は
・玉藻前(九尾
・酒呑童子(鬼大将
・崇徳上皇(大天狗
・菅原道真
・平将門
・崇徳上皇(兼任!
言峰神父はおられないのだろうか
あそこの家族関係はリリなの組が余計なおせっかいでなか取り持とうとして空回りしたりして面白そうなんだが
>>620 サンクス!
九尾は他作品でも凄い優遇されてるな。
YAIBAでもうしおととらでも日本列島並の化け物だし
ヴラド三世は出てきたら、教会組みにはどう接されるのかな
YAIBAの日本列島は八岐大蛇だったよね?
関東の守護神将門様はネタにするとやばいのは知られているが
崇徳帝はそれ以上にやばいと言われている
まあそんなのをラスボスしてる漫画が現在連載中ではあるが^
>>625 平将門がボス格なのは柴田亜美の漫画のかな?
アレに出てきたのって明治天皇だっけ大正天皇だっけ
>>626 明治帝だなでてきたの
まあアレでは将門を静めるために出てきた感じだけど
崇徳帝がラスボスの方は今月号からヨーロッパの退魔組織らしきものが出てきたな
あの崇徳とギルガメが妙にキャラが被って見えて仕方がない
まあめだかちゃんの王土ほどじゃないけど
ヤマタノオロチが妖怪に数えられないのは……
ベルカでも、戦乱時代の王の呪いロストロギアとかありそうだな
ヤマタノオロチだのスサノオになってくると神、邪神のカテゴリだからねー
時代も日本最古の神話の話だし妖怪ってレベルじゃなくなるかも
三大妖怪は
玉藻前 酒呑童子 大嶽丸
じゃなかったけ?
大獄丸も中世三大妖怪だね
自称最強の鬼で、3振りの宝剣を鈴鹿御前に籠絡されて奪われ首チョンパ、宝剣取り戻して復活したが首チョンパ
ただ、東北でメジャーかもしれんが、全国マイナーなのでよく落とされる
なまはげの方が知名度高いぞ絶対
口裂け女、人面犬、トイレの花子さんが三強
メリーさん>人面犬
って何のスレだよ!
どこかで聞いたが一番のメリーさん対策は焼却炉を背にすることだそうな
そういう妖怪とか出して、最初に管理局側が対処しようとするけど失敗して、
そこに型月組が合流して手を組むって言う話なら自然だな。幽霊・妖怪系なら
月姫か空の境界辺りがよさそうだね。ありがちな気もするけど。
どっちかってーと、なのは側はパワー型で型月は変化球、というか魔球な感じだから
しょうがなのかも知んないけど。
のっぺら坊とか最強の知名度補正を受けても戦闘力皆無だもんな
>>636 どっかでメリーさんがなのはさんにボコられて、はやてに使われてるSSあったな
某スレでメリーさん鯖化ってあったけど、強そうに見えない。英霊なんかちょっと刺された程度じゃ死なないし、BJ貫けるか怪しいし
>>639 ろくろ首ならやってくれる!!
「私李書文。今あなたの後ろにいるの」
イスカンダル「―――む」ブブフゥッ!
はやて「屁くっさ!……って、なんか変なあんちゃんがいるー!」
はやてちゃんマジ放屁なの
644 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/21(日) 18:50:32 ID:pNrkHaEH
>>641 背後に近づかれた時点で死亡確定じゃね?
ラニのお師匠ってシオンなのかね?
シオンではないがエルトナム
シリアム・エルトナムだったな
呂布を使うとしたらどんな役割がいいかな
マスターはやっぱりスバル?
>>648 むしろティアナではなかろうか
スバルという赤兎馬を乗りこなす意味で
役割は・・・中ボス?
スバルは馬かよ!
馬の使い魔を使う魔導師もいるのかな
使い魔のスペックは種族に依存しないんだろうか