あの作品のキャラがルイズに召喚されました part273

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part272
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1270045158/
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 18:36:18 ID:lJWnPYzM
>>1
3名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 19:33:01 ID:PatcOjUc
>>1
4名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 19:41:55 ID:IHc8ntAw
5名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:20:11 ID:7Xfdz1L9
だから?
6名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:33:32 ID:XR8VZqum
デビルマン、懐かしいですね……
スラムさんのデビルマンへのリスペクトが感じられました。
読者を引き込む文章もまた素晴らしい。

次回の更新を楽しみにしています。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:34:21 ID:TB0uLfP8
上手い。
ひたすら上手いね、なんだこれは。

続き楽しみにしてます。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:37:31 ID:7sCSkKGx
文章を読んでいて、ルイズの可憐な描写にドキドキします。
それでいてエロチック。
なにか江戸川乱歩などの倒錯小説を呼んでいるような気分になります。

次回も楽しみにしていますね。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:38:08 ID:fGpmkdvL
作者の自作自演を装った嵐か
10名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:46:54 ID:z4t53CQl
エログロな表現があるからって余所に移動済みだろ
作者の自作自演なんか装えてねぇよw
11名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:49:28 ID:yk9FQH5M
もうルイズが明にメロメロですね
まあ強いし優しいし野性的だし仕方ないか
ワルドが完全に忘れられてwカワイソス
12名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:50:22 ID:fGpmkdvL
確かにw
自作自演を装うとした嵐か
どう考えてもばればれだからな
13名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:51:54 ID:fGpmkdvL
ってよく見たらただ感想掲示板をコピペしてるだけか
どっちにしろ嵐だな
14名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:52:10 ID:+WC8OXnv
ギターがデーモン化した!?明は何処まで行くのやら…。
なんかこの調子で行くと、宿でワルド、空賊船でウェールズ一行殺してしまわないか心配だ。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:53:40 ID:oqlxoZJS
ポコポコID変えてご苦労なこったw
16名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:54:30 ID:xKcs304X
>>4
オチスレで名前が上がってたから読んでみたが、面白いなこのSS
17名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 20:59:08 ID:+iWJAGVe
>>16
とりあえず3話くらい読んでみたらとても俺のツボにストライクだった
好みってのは全くひとそれぞれだなw
まあでも人に勧めるタイプの作品ではないな
18名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:03:17 ID:g8S+UhE1
今時こんな自演をする奴がいるとは…
19名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:06:04 ID:lWGZa41S
原作であれだけガードの堅かったルイズも明(アモン)の魅力にメロメロですね〜^^
自分はこの作品を読む時、どうしてもアニメのEDの曲が頭に流れてしまうのですが、このアモンもどこか哀愁のようなものが漂っていますね…
これからも応援していますw
20名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:06:55 ID:E0NfoQqQ
あれ、春休みってまだ終わってなかったっけ?
21名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:08:14 ID:LYXo+hfY
毎日が日曜日なんだろう
22名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:09:17 ID:FnqQoHbd
流石は永井さんの作品のクロスなだけあって、迸るエロス!
小さい頃に家族でアニメのキューティーハニーを見て何とも言えない雰囲気になったのを思い出しますw
23名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:11:36 ID:Fd9+eFMO
つーかデビルマンの人は、ちゃんと宣言して移動したから問題ないだろう

パタポンだっけ?好き勝手移住して、突っ込みいれられてから報告したあれは叩かれても仕方ないが
24名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:13:08 ID:uxSFXCaB
『常識』『倫理』。そんな常識を建前にする二次創作の主人公達……
そんな中に一石を投じる作品だと思いました。

人で無い者達が凄く魅力的で何回も読み直しちゃう。
シルフィが可愛くて仕方ない…サブヒロインだと思ったw

ハルゲニアの新しい標語『アモンなら仕方ない』ですね分かります。
でもチョトえっちぃからR-15の表記は必要かも?
25名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:20:51 ID:PatcOjUc
原作では船での戦闘は全部空戦で、普通の海戦ってないよな(まだ追ってる途中だけど)
ワンピや海皇紀みたいに、海を中心にした話ってやりにくいかな。
海皇紀は同じ世界でもいけそうな気がしなくもないんだが。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:35:15 ID:zGNdzVuH
>>25
どうだろう。海皇紀世界では火薬やカノンが失われた魔導の技術だし。魔法以外でも、ちょっと技術レベルでは劣ってる。
海の一族は世界中の海にいるから、ハルケギニアを知らないはずないだろうし。となると色々問題が。
けど、森守や土武者が魔法で倒せるかは気になる。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:37:16 ID:PmzyBnT7
ワンピってのがワンピースなら、あれは海が中心といえばそうかもしれないけど、
海戦なんてほっとんどやってないだろ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:46:14 ID:S2V99l18
>>26
いやあ、遠距離から虚無で仕留めなきゃ無理じゃね?
森守ってビームでフーケのゴーレムでも吹っ飛ばせそうだし、
装甲が馬鹿みたいに堅いのに、
トゥバンと張り合える近接戦闘能力持ってるとかヤバすぎるだろ。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:48:50 ID:XcJYHyd+
それは、アレか
聖地にある虚無の装置とやらに森守が配備されてたりするのか
30名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:49:46 ID:lJWnPYzM
原作の騎士姫でムール貝の料理が出て来たから海はちゃんとあるんだろうけど、
それでも明確に海が舞台になったことはまだないよな。

え、三美姫の特別編? そんなもん知らんよ。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 21:58:05 ID:zGNdzVuH
>>28
というか、超高速でレーザー吐く未来の戦闘ロボットに、剣で渡り合うトゥバンが人間じゃないww
>>29
エルフは先住魔法以外にも、魔導(近代)の兵器で武装してたり。聖地落とせなそう。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:09:09 ID:fGpmkdvL
ハルケは航海技術は低そうだなあ
六分儀やクロノメーターとかもなさそうだし、岸伝いに進むしかないんじゃないかな?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:29:57 ID:vkxc3L51
風石の空中船は航続距離短いみたいだし、空を飛んでの大航海時代は来そうもないな。
空賊みたいなのはいるみたいだから、紅の豚やラピュタの空賊たちには案外住みいい世界かもしれない。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:34:22 ID:wZ4Hqp1K
風石に前に進む力があるのなら海でもあの船は普通に進みそうだよね
35名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:42:59 ID:e4DUM6N1
更新が止まっている物で

アクマがこんにちわ
PERSONA-ZERO
ルーン・ゼロ・ファクトリー
SERVANT'S CREED 0 ―Lost sequence―
とある魔術の使い魔と主
虚無と狼の牙

など更新されないだろうか・・・
自分はこの辺が好きなんですよ。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:44:51 ID:g2+rgP0G
>>32
六分儀なんかは、目印のない外洋で自分の位置を把握するために発達したわけで、
空を飛んで山中の港に着陸するフネを利用する以上、発達させる必要がないんだろう。
どうせ港にたどり着くのが目的なんだから、わざわざ外洋に出たら遠回りじゃないか。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:45:27 ID:IsT4Q6/x
テファが森守召喚して本当の「森守」になりました

みたいなことを妄想した
38名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 22:54:58 ID:fGpmkdvL
>>36
だから外洋にでる技術が発展してなさそうだと言いたかった
39名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 23:48:13 ID:vkxc3L51
ワンピースの金獅子のシキは空飛ぶ海賊船でグランドラインをまたにかけてたから、ハルケギニア征服に乗り出すとかやりそうだ。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 23:51:59 ID:nEA2rNiF
>>36
海岸線の地形にも因るけど、海岸沿いに航海するより一度外海に出た方が早い場合も多々ある。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:17:07 ID:VER6f/yq
新大陸が発見されたらハルケギニアにも性病が蔓延するんだろうな…。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:24:58 ID:eJAK0zVc
もしハルケと地球が同じような環境なら、まだハルケには唐辛子はないな
アメリカまで到達してなさそうだから
43名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:33:23 ID:Q0fWSG4L
んなこと言いだしたらジャガイモもトマトもねーよ
44名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:44:29 ID:+PULcYLq
ジャガイモもトマトもないんじゃない?それに似たような別の植物とかはありそうだが
聞き覚えのない種類のベリーとか苺とかがある世界だからな…
45名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:49:07 ID:VER6f/yq
ケティが街でジャガイモの原種らしきものを見つける話があったな。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:50:22 ID:+PULcYLq
・ハルケギニアは妙に書物が普及していて識字率が高い(活版印刷があるとは思えないが…)
・大砲やフリントロック式の銃はあるがリボルバーなどはまだない
・平均寿命や衛生状態なんかは現実の中世よりかなり良さそうに見える(治癒の魔法とか魔法薬があるからか?)
・武器が異常に高い(家より高かったりする。魔法のせいで鍛冶の技術が低いから?)

とか、色々と現実世界とは違う点があるから
47ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 01:52:35 ID:FeuRsTWO
こんばんは
空いてるようなので55分ぐらいから投下します
48ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 01:54:50 ID:FeuRsTWO
 

「ヒ、ヒイラギ……」
 柊の腕に抱きかかえられたまま、ルイズは呆然と声を漏らした。
 そんな彼女をよそに柊は僅かに眉を顰めて手にした魔剣――デルフリンガーを睨みつけて唸る。
「お前……"喰い"すぎだ」
『すまねえ。何しろ初めてだもんで加減がわからんかった』
 言葉とは裏腹にデルフリンガーは愉しそうに漏らすと、くつくつと笑い声を上げた。
『しかし《生命の刃》か……こいつはゴキゲンだな。まさかこのカラダで食事なんてモンができるとは思わなかったぜ』
 生命力を流し込まれてご満悦のデルフリンガーに柊は苦々しく舌打ちすると、改めてルイズを見やった。
「てか、お前も一体何やってんだよ」
 溜息混じりに漏らしながら柊は抱きかかえたルイズを降ろそうと身を屈めたが、彼女は柊にしがみついて頭を胸に埋めた。
「お、おい――」
 そこで柊は気付いた。
 必死にしがみついて来るルイズの身体が震えている事に。
「……もう大丈夫だから。とりあえず退くぞ」
 柊が宥めるように言うが、ルイズは柊の胸に顔を埋めたまま拒絶するように頭を振る。
 普段の強気な態度が見る影もないほどに小さい声で、しかし彼女は言う。
「フーケ……捕まえ、ないと」
「だからって無茶だろ。魔法も使えねえのに」
 柊の言葉にルイズの肩がぴくりと震えた。
 胸元を掴む彼女の手の力が強まり、その一方で彼女の声は一層弱々しく――まるで嗚咽しているように響いた。
「逃げたって、そんな風に言うくせに……!」
「……言わねえって」
「言うわ。今までだってずっと言われてきたもの。ゼロだからって、魔法が使えないからって……!」
「……」
「フーケを捕まえればきっと皆も認めてくれる。それに――」
 言ってルイズは顔を上げた。
 鳶色の瞳に涙を浮かべて、柊の顔を見つめる。
「――エリスだって、あんただって、認めてくれるでしょ……?」
「お前……」
 じっと見つめてくるルイズに柊は咄嗟に言葉を返せなかった。
 おそらくはエリスもそこまで深刻に考えて言った台詞ではないだろう。
 しかしずっと誰かに認められる事のなかったルイズにとって、それは話半分で済まされる事ではなかった。
 彼女を追い詰めていたという点において柊達は彼女をゼロと呼ぶ人間達とある意味同類だった。
 柊は大きく息を吐いて、口を開いた。
「……お前はホンット人の話を聞いてないのな」
「な……」
 ルイズが反応するよりも早く柊は半ば落っことすようにして彼女を地面に降ろした。
 ぽかんとしたまま見上げているルイズの頭に、軽く手を乗せる。
「そんなんじゃねえって言ったろ。魔法なんか使えなくったってお前にゃできることあるだろうし、色々やってんだろ?」
「で、でも……」
 口ごもるルイズに柊は僅かに難しい表情を浮かべ、そして唐突に彼女に背を向けて一歩を踏み出した。
 背中越しにこんな言葉を投げかけて。
「……認める認めねえってんなら、エリスとか俺のために服を買ったことの方がよっぽど認められるぜ」
「えっ……」
 言われた事の意味がいまいち理解できずルイズは呆然と柊を見やる。
 魔剣を携えた青年の背中の向こうに、巨大なゴーレムが聳え立っていた。


49名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 01:57:16 ID:+PULcYLq
支援。
支援といえば個人的には1D6ビームキャノン(何
50ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 01:57:17 ID:FeuRsTWO
 

『なんでえ、結局手伝ってやんのかい』
「……押し込み強盗の現行犯だ、見て見ぬふりって訳にゃいかねえだろ」
『そういう事にしてやんよ』
 笑いを押し殺したようなデルフの声に柊は舌打ちすると、改めて眼前のゴーレムを睨みつけた。
 破壊したはずの右腕が再構築されている。
 まあルイズとの会話でそれなりに時間があったので不可能ではないだろう。
 そのゴーレムを挟んで反対側、本塔の傍にローブ姿の人間がいた。おそらくアレがフーケとやらだ。
 意趣返しとでも言うのだろうか、どうやら逃げるつもりはないらしい。
『しかしあのサイズのゴーレムを創った上に腕を丸ごと再構築するってことは相手はかなり上位のトライアングル……スクエアクラスかもわからんね。
 要するに化物だ。ぶっちゃけ創られた時点で負け確定なんだけど?』
「……問題ねえ」
 言いながら柊はデルフリンガーを真横に構え、その刃に手を当てる。

 柊 蓮司にとって相性の悪い相手は素早くて攻撃が当たり難い相手か、そもそも根本的に物理攻撃が通用しない相手だ。
 そういった意味でこのゴーレムの巨体は非常に相性が良い。
 先程は不意打ちだったので右腕を破壊できたが、正面から相対した場合の防御力は断定することは難しい。
 だが、それも柊にとってはなんら問題ではなかった。
 なぜなら――

 刃に押し当てた掌に光が灯る。
 力強い光はその輝きを増してデルフリンガーの全身に纏わりつき、そして染み込んでいく。
 それはプラーナとは別種の力。彼自身の生命力。
 己が命を《刃の供物》に、魔剣の力を増大させる。
『――くくっ』
 裡から際限なく湧き上がっていくその迸りに、デルフリンガーはくぐもった歓喜の声を上げた。
『なるほど、問題ねえ。向こうも化物だが、相棒も大概バケモンじゃねえか……ええッ、ウィザード!!』
 デルフの叫びと同時に柊は剣を振った。
 まるで露を払うかのように魔剣が空を切る。
 たったそれだけで触れてもいない脇の地面が爆散した。
「俺はこれしかできねえからな。その分、ほかに譲る訳にはいかねえだろ」
『なんという攻撃馬鹿(アタッカー)。だが気に入った――ブッ潰せ!!』
 デルフリンガーの吼え声と共に柊は地を蹴った。
 巨大なゴーレムが腕を大きく振りかぶる。
 瞬間、腕が鋼鉄に変化して黒く染まった。
 馬鹿正直に正面から突っ込んでくる柊に向かって鉄の拳を振り下ろす。
 巨大すぎるその一撃を柊は真っ向から受けて立った。
 デルフリンガーを《振りかぶり》、迫ってくる拳に向かって半月を描くように地を抉り振り上げる。
 数多の死線を潜り抜けた魔剣使いの《見切り》が過たずゴーレムの《死点を撃》つ。
 2メイルに満たない人間と30メイルの巨人の激突――その光景も結末も、まるで出来の悪い騙し絵のようだった。
 魔剣使いの青年が振り抜く《生命の刃》がプラーナを纏って迸る。
 その力の奔流がゴーレムの鋼鉄の拳を打ち砕き、
 腕を崩壊させ、
 肩を粉砕し、
 更に右上半身、その頭部に至るまでを完全に吹き飛ばした。

51ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 01:59:14 ID:FeuRsTWO
 

「――化物がっ!!」
 フーケは戦慄と怨嗟を込めた叫びを吐き出していた。
 意味がわからない。
 30メイルのゴーレムと真正面からぶつかって破壊する剣士など存在する訳がない。
 だが、自らの生み出した力の結晶が完膚なきまでに破壊されたのは覆しようのない現実だった。
 粉砕された土くれが砂のように降り落ちる中、魔剣を構えなおしてこちらを見やるウィザードと目が合った。
 瞬間、ぞくりと背筋に寒気が走り抜ける。
 彼が地を蹴ったのと彼女が杖を振ったのは同時だった。

 フーケに向かって走り出すと同時、巨大な残骸に成り果てたゴーレムが再び動き出した。
 両者の間に割り込むように倒れこんで来る。
 半分ほどを破壊したとはいえ未だに20メイルに届こうかという巨体だ、完全に倒れてしまえばフーケとの距離を隔てる壁になるだろうし、下手をすれば押し潰されかねない。
 ――が、その残骸を作り出した張本人である柊にとってはそれも問題ではなかった。
「……っ!」
 走りを緩めないまま彼は再びデルフリンガーに力を纏わせ、力任せに叩き斬る。
 倒れこんで来るゴーレムの身体が真っ二つに裂けて打ち砕かれ、フーケへの道が開いた。
 フードの端から覗く口元が屈辱と怒りに歪むのが見えた。
 フーケは逃げようと身を翻したが、その動きは以前少しだけ立ち合ったギトーよりも鈍い。
 柊は委細構わず間合いに踏み込む。
 フーケの雰囲気が驚愕に歪んだ。
 柊は刃を返して掬い上げるようにデルフリンガーを振り抜き――不自然に加速したフーケの身体を掠めて空を斬った。
「……ち!」
『器用な真似しやがる!』
 フーケの異常な動きを眼で追いながら柊は小さく舌打ちする。
 柊が斬撃を放つまさにその寸前、フーケが自らの足元に四足の獣型のゴーレムを生み出していたのだ。
 フーケはソレに乗る形でその場から緊急離脱したのだ。
 ゴーレムの生成速度も動きの速さもギーシュが生み出すものの比ではない。
 20メイル程の距離を駆け抜けるとゴーレムは動きを止め、土くれとなって崩れていく。
 柊は忌々しげな視線を送ってくるフーケに向き直ってデルフリンガーを油断なく構え……そして不意に表情を曇らせた。
「あんた……?」
 柊の斬撃は完全に避けられた訳ではなかった。
 ダメージを与えるようなことはなかったが、掠めた刃でフードが裂かれフーケの素顔が露になっていたのだ。
 その貌は険しく普段彼が見ている彼女の面影はまるでない。
 だが、その顔は間違いなく――
「ロングビル先生、だよな」
「……」
 ロングビル――フーケは答えなかった。もはや顔を隠そうともしていないし、それに動揺するような事もない。
 ただ鬼気迫るような表情で柊を睨みつけているだけだ。
 彼女は手にした杖を握り締め、歯を食いしばって呻くように漏らした。
「どいつもこいつも邪魔をする……!」
「……?」
 フーケの声に柊は思わず眉を潜めた。
 実際ゴーレムを作って本塔を破壊し、ルイズを握りつぶそうとしたのだから冗談というわけではないだろう。
 つまり柊が知っていたロングビルという女性は彼女が装っていた仮面という訳で、柊は『フーケ』の人となりを知っている訳ではない。
 が、どうにも彼女の様子はおかしい。
 殺気立っているというよりは、焦燥に駆られているという方が正しいかもしれない。
 フーケとしての仕事を邪魔した柊に対して苛立っているというのはあるだろうが、何か違うモノに対してのような気がする。
 しかし柊はその答えである彼女の先程の体験を知らなかったし、その時間も与えられなかった。


52ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 02:01:16 ID:FeuRsTWO
 
「メイジをなめるんじゃないよ、ウィザードッ!!」
 叫びと同時にフーケが杖を降り、二体のゴーレムが生み出された。
 サイズは2メイル程度の人型。左右に分かれて柊に向かって疾走してくる。
 柊は思考を切り替えてデルフリンガーを握り締めた。
 迫ってくるゴーレムを待ち受ける事なく地を蹴って間合いを詰める。
 右のゴーレムが反応するよりも早く刃を翻した。
 この程度の相手なら先程のように魔剣使いの能力を使う必要はない。
 実際ゴーレムは呆気なく真っ二つに断ち切られ――
「……ぶっ!?」
 異様な手応えと同時に、全身に液体が叩きつけられた。
 斬られた瞬間ゴーレムの身体が水に変化して、勢いそのままに柊の身体に浴びせられたのだ。
 そして、
『来るぞ! "錬金"だ!!』
 デルフリンガーが弾けるように叫び、
「イル・アース・デル!!」
 フーケの力ある言葉と共に、柊の動きが凝固した。
「なっ……!?」
 全身に被った水が鉄に変わり、柊の身体を縫いとめたのだ。
 その寸隙を狙って二体目のゴーレムが襲い掛かってくる。
 だが、いかに鉄に変化したとはいえ身体に張り付いたのは薄皮一枚程度のもの。
 その瞬間は驚きこそすれそこまで動きを拘束するほどではない。
 とはいえその一瞬で後手に回ったのは事実。
 柊はこびりついた鉄を無視してデルフリンガーを翻し、振り下ろされたゴーレムの腕を受け止めた。
 硬い衝撃が剣を通して柊の身体に伝わる。
 今度は変化しない――いや。
 ゴーレムの腕がゴムのようにぐにゃりと折れ曲がり受け止めたデルフリンガーに絡みついた。
 反射的に振り払おうとするが、それよりも速くゴーレムが今度は柊自身に組み付いてくる。
 魔剣を絡め取られていて引くことができずに柊は半ば羽交い絞めされる格好になってしまった。
 ゴーレムの身体が黒く変質し鋼鉄になる。
「野郎……っ!?」
 プラーナを使って弾き飛ばそうとして、柊はそれを見た。
 跪いて大地に手を付き、空いた手で杖をかざすフーケの姿を。
「――沈め!!」
 フーケが叫んだ。
 柊を中心にして半径約5メイルの地面が丸ごと水へと変貌する。
 ゴーレムに拘束され動けない柊は、生み出された即席の池に飛沫を上げて落ち込んだ。


『対人レベルの土メイジで一番怖ぇのはゴーレムじゃなくて錬金だ。何しろ元がドットだからな、本職の土メイジなら効率が半端ねえ。
 発想が利く高ランクの土メイジならまさしく万物の組成を司るに相応しい――』
(先に言えよこの馬鹿!!!)
 口で喋っている訳ではないからだろうか、水中でもお構いなしに語りかけてくるデルフリンガーに柊は心の中で叫んだ。
 錬金そのものは基本の魔法なので柊も知っていたが、まさかここまで"何でもアリ"だとは思わなかった。
 何にしろ一刻も早く脱出しないと非常にまずい。
 この水を土に戻されればこのまま生き埋めだし、鉄などに変えられると擬似コンクリ詰めの出来上がりだ。
 効果範囲に深さまで計算に入れていたらしく、組み付いたゴーレムが重石になって身体はどんどん沈んでいた。
 デルフリンガーを一旦月衣に収納し再び取り出すことでとりあえず腕の自由は取り戻す。
 とはいえ、身体に密着しているこのゴーレムを吹き飛ばすのに能力を使うと自身も巻き込まれてしまう。
 柊はプラーナを解放し底上げした力で一気に振りほどこうと試みる。
 が――
「……っ」
 ところどころが砕かれはするものの、破壊する事はできなかった。
 柊の身体が水底へと到達する。その深さは、約5メートル。

53ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 02:04:46 ID:FeuRsTWO
 

「――っ」
 フーケは途切れかけた意識を唇を噛んで引き戻した。
 いかに効率がいいとはいえ、30メイルのゴーレムを創造し腕を丸ごと再構築した後にここまで大規模な"錬金"を行えば精神力が底をつきかけている。
 だがこのまま放置しておくはできない。
 組み付いたゴーレムは先程のことを踏まえて念入りに"固めて"あるが、あのウィザードとやらが一体何をしでかしてくるのか全くわからない。
 確実に仕留めておかなくてはならない。
 フーケは荒く深呼吸を繰り返し、精神を落ち着かせた。
 丸ごと鉄に錬金してしまえば確実なのだが、それをやると恐らく即座に意識を失ってしまう。
 そうなればそこらで傍観しているルイズなり駆けつけてくる警備なりに簡単に捕まってしまうだろう。
 土に戻して生き埋めにする。それで十分だ。
(……なんでそこまで?)
 落ち着いてきた意識が、ふとそんな疑問を投げかけていた。
 はっきり言ってここまでやる必要など全くなかった。
 彼女の目的は『破壊の杖』を手に入れる事であって、ルイズや柊を殺す事ではない。
 最初のゴーレムが破壊された時点で逃げを打つのが最上だったはずだ。
 フーケは自分の中の歯車がどこか狂っているのを感じていた。
 だがこうしてここまでやってしまった以上、引き下がることはできなかった。
 フーケは大きく頭を振って深呼吸すると、目の前の水溜りに向かって杖を向けた。
 そして彼女は意識を集中し、言葉と共に自らの行動を完了させる――
「あ、あ、あぁあああっ!!」
 それ以外に意識を向ける余裕がなかったのだろう、フーケは横合いから飛び込んできた少女に反応することさえできなかった。
 衝撃を受けて受身も取れずに地面へ倒れこむ。
 組み付いてくる小さな身体。
 夜闇に映えるピンクブロンドの髪が視界に入った。
「ぐっ……離せ!」
 杖を持った手に必死にしがみついて来る彼女をフーケは引き剥がそうとした。
 だが彼女――ルイズは遮二無二フーケにくらいつき決して離そうとはしない。
 魔法を使おう、とは思わなかった。
 失敗の結果ではあるが一応爆発という現象は引き起こせる。
 が、その命中精度は先程自身が生み出した中庭の惨状で思い知っているし、威力もてんで予想がつかない。
 そして何より、あの時柊は言ったのだ。
「魔法……魔法が使えなくったって……!」
「この――いっ……!?」
 フーケが腕にしがみつくルイズの頭に手を当て押しのけようとすると、激痛が走った。
 何をされたのかを理解してフーケは驚愕の表情を浮かべる。
「噛んだ!? お前、それでも貴族か!?」
 まるで子供のような行為に呻いたフーケを睨みつけ、ルイズは叫ぶ。
「魔法を使えるのが貴族じゃない……!」
「このガキ……!」
 カッとなってフーケはルイズを殴りつけた。
 手加減なしに出された拳がルイズの顔を強かに叩きつけられる。
 ひぐ、とくぐもった悲鳴と共にルイズの力が緩み、フーケはそれを逃さずに引き剥がすと無防備な腹部を蹴り飛ばす。
 ルイズの小さな体が地面に派手に転がった。
 今まで経験した事のない『本物の暴力』とその痛みに気力が一瞬で萎え、体が動かなくなる。
 芯にまで響く苦痛にルイズの顔が歪み、咳き込みながら地面に這いつくばる。
 フーケはそんな彼女を一瞥して―――――ようやく我に返った。
(あたしは一体何をやってるんだ……?)
 そもそもの『元凶』を直接叩きのめしたためなのか、それまで自身を駆り立てていた苛立ちが急速に冷えて力が抜けた。
 力と一緒に意識まで失いそうになって、フーケは大きく頭を振る。
 もういい。これ以上やる必要はない。
 目の前で蹲っている少女も水中にいるあの男も放って退散すべきだ。
 ようやく思考と感情を一致させて彼女がその場から離れようとした、その瞬間。
 錬金で生み出されていた池が爆発した。

54ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 02:07:48 ID:FeuRsTWO
 

 巨大な水柱が天を突き飛沫が雨のように降り注ぐ中、フーケは呆然とそれを見上げた。
 腹部と頬に走る痛みを感じながら、ルイズも顔を上げて夜空を見上げる。
 空に浮かぶ紅の月を遮る一つの影。
 鋼鉄のゴーレムを身体に纏わせたまま、身の丈を越える大きな杖を手に柊 蓮司が夜空に浮かんでいた。
 杖の先から零れる淡い燐光を呆然と見ながら、フーケは呟いた。
「……『破壊の杖』?」

 ファー・ジ・アース……一般的に地球と呼ばれるその世界には、一つの風説がある。
 曰く、魔法使いは箒に乗って空を飛ぶ。
 その風説になぞらえて箒と名付けられたのか、あるいは箒があったゆえにその風説が生まれたのかは定かではない。
 ただ事実として、ウィザード達の使う魔導兵装たる『箒(ブルーム)』は一部を除いてほぼ例外なく武器としての機能と同時に単独での飛行能力を搭載しているのだ。

 柊は地上からこちらを見上げているフーケの姿を確認すると、手にしていた箒を月衣に収納して大地に向かって落下し始めた。
 空いた手にデルフリンガーを再び取り出し、握り締める。
 もうフーケには一体何が起きているのか、柊が何をしているのか全くわからなかった。
 剣士のくせに30メイルのゴーレムを破壊したり、何処からか『破壊の杖』を持ち出したり消し去ったり、全然意味がわからない。
 戦意も失いかけていた彼女は柊の構える剣に反射的に杖を構えて、そして己のミスに気付いた。
 滑空してくる柊が空を斬るように魔剣を振り下ろしていた。
 その切っ先から放たれ自分に迫ってくる衝撃波。ゴーレムの腕を粉砕するほどの破壊の暴圧。
 もはや回避しようのない状況、引き伸ばされた一瞬の中で彼女は最後に「あ、死んだ」と酷くあっさりした感想を漏らした。


 ※ ※ ※


「なんだよコレ、術者を倒しても解けねえのかよ……」
『錬金の持続は術者の気合だかんね、よほど怨み骨髄に入ってたんだろうよ』
 大地に着地した柊は組み付いた鋼鉄のゴーレムを引き剥がしながらぶちぶちと漏らした。
 腕部を抉り取った後胴体部分を池に放り投げて一息つくと、デルフリンガーを地面に突き刺した後昏倒しているフーケに歩み寄る。
 フーケは傷を負って意識は失っているようだが、致命というほどのものではない。
 流石に人間相手にそこまでの大火力は必要なかったし、自身の生命力を消費する以上そうそう好き勝手に出しまくれるようなものでもないのだ。
 念のために彼女の手から零れていた杖を取り上げると、次いで彼は傍で蹲っているルイズに眼をやった。
 柊が池から脱出する際に噴出した水飛沫を全身に浴びた彼女は、それを気にする風もなく柊をじっと見つめている。
 よくよく見てみれば、頬が赤く腫れ上がっていた。
「大丈夫か?」
 柊が片膝をついてルイズに手を差し伸ばす。
 と、ルイズの手が閃いて、乾いた音が響いた。
 手を払いのけられた柊が呆然と見つめる中、彼女は顔を俯けて唇を噛み身体を震わせた。
 殴られた頬と蹴られた腹部がずきずきと痛む。
 だがそれよりも、心が酷く痛んだ。
 結局何も出来なかった。
 魔法を使ってもゴーレムに何ら対抗できなかったし、魔法に頼らずにやってもフーケに文字通り一蹴された。
 目の前でそのゴーレムを完全に破壊し、そのフーケを打ち倒した光景を見せ付けられて思い知らされたのだ。
 やはり自分は何も出来ない『ゼロ』なのだと。
 悔しさと情けなさで視界が潤む。
 柊から顔を隠して拳を強く握り、嗚咽をかみ殺そうとした。
 そんな彼女の頭に、僅かな重みがのしかかった。
「ありがとな、ルイズ」

55ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 02:12:06 ID:FeuRsTWO
 
 聞いたことのないコトバにルイズの肩がびくりと揺れる。
 僅かに顔を上げると、その場に座り込んだ柊が見えた。
 どんな表情で自分を見ているのかはわからない。
 そこまで顔を上げて表情を確認するのが、眼を合わせるのが怖かった。
 ただ、頭に乗せられた彼の手はどうしようもなく無神経で――暖かかった。
 ルイズは小さく息を呑んだ後、囁くように問うた。
「……なにが」
「その顔。よくわかんねえけど、時間稼いでくれたんだろ? おかげで生き埋めにならずにすんだ」
『まったくだ。危うく鉄くず共から解放されたその日に埋葬される所だったぜ』
「うるせえな……」
 脇から横槍を入れたデルフリンガーに柊は小さく舌打ちすると、ルイズの頭から手を離す。
 そして彼は一つ息を吐くと、改めてルイズに向かって語りかけた。
「ま、とにかく無事に先生……フーケも捕まえられた。お前のおかげだよ」
「――」
 それは嘘だ、とルイズは思った。
 きっと自分があそこでフーケの邪魔をしなくとも、柊は自分でなんとかしてしまっていただろう。
 根拠なんて何もない。
 強いて言うのなら――ゴーレムに握り潰されそうになり、そこから助け出された瞬間の安堵感だ。
 身体を包まれた時の暖かさと力強さ。
 そして「大丈夫」と言った彼の声が、心に響いた。
「あ、」
 言いかけた言葉を飲み込む。
 僅かに頭を傾けて怪訝そうに覗き込もうとしてきた柊が見えて、ルイズは大きく息を吸い。
 そして叫んだ。
「当たり前よ、この馬鹿! 盗賊なんかにあっさりしてやられてんじゃないわよ!」
 顔を上げてきょとんとしている柊を睨みつける。
 頭を動かした弾みか、声を出して気がそれたためか、瞼で堪えていたものが零れだした。
「おかげで殴られるし! 蹴られるし! 痛いし!! あんたはわたしのゲボクなんだからちゃんと守りなさいよ!!」
「へいへい。すみませんでした……」
 呆れ顔で漏らした柊にルイズは更に眉を険しくして肩を怒らせた。
 だが、その一方で眼から零れた雫はどんどんあふれ出してくる。
「何よその態度……! わたしがいなかったら死んでたんだからね! もっと感謝しなさい! わたしのおかげで助かったんだから!」
 言いながらルイズは慌てて目元を擦った。
 しかし涙は止まらない上、勢い余って殴られて腫れた頬を擦り上げてしまう。
 走り抜けた痛みにルイズは表情を歪め蹲った。
「大丈夫かよ……そんな痛かったのか?」
「……いたい。ホントに、痛い。泣くほど痛いんだから。全部あんたのせいよ……」
 柊は小さく呻くルイズをしばし見つめた後、軽く笑みを浮かべてから息を吐いた。
 そして子供を宥めるように頭に手を置き、ピンクブロンドの髪を優しく撫でる。
「そうだな。俺を助けるために頑張ってくれたんだよな」
「……そうよ。だからもっと感謝しなさい、このばか」
「……ありがとな、ルイズ」
「――」

 ……エリスが柊を無条件に信頼する理由が少しだけわかったような気がした。
 おそらくこの男は本当に馬鹿なんだろう。
 馬鹿で愚直で、だからこそ言葉が真っ直ぐに心に響く。
 頬と腹部の痛みは引く事なく、むしろ強まっているような気もする。
 ただ、今の彼女にはそれがどこか心地いい。
 それはほんの僅かだったかもしれないけど、余分なことだったかもしれないけど、自分のやった事が認められた。
 身体で疼く痛みと彼の言葉が、それを示しているような気がしたから。

 遠くでエリスがルイズ達を呼ぶ声が聞こえた。
 柊は立ち上がって彼女に向かって何事かを呼びかける。
 その傍らに座り込んだまま、ルイズは柊を見上げた。
 そして彼女は、二つの月を背負うような夜闇の魔法使いをずっと見つめていた。
56ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2010/04/16(金) 02:14:10 ID:FeuRsTWO
今回は以上。意訳すると「もっとホメろ」
戦闘での錬金をゲーム的に表現するならおそらくトラップ設置能力。すなわち柊にとって鬼門
ストロングスタイルなら柊の方が圧倒したんでしょうが・・・もうしばらくお待ちください
以前本作の柊は空砦仕様と言いましたが一部リビルドを施しております
基本的には変わらないんですが武器変更に伴って箒回りの能力を振り替え。
ほぼ同等の攻撃力を維持してます(色々弱体化してますが)

最後にTRPG的ボツネタ
GM:では30メイルのゴーレムがぐいんっと大きな腕を振りかぶり・・・眼から光線を放つ! くらえフーケビィィーム!!

ダメですかそうですか
57名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 02:31:20 ID:+PULcYLq
GJ!
58名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 02:33:28 ID:Hj6Pbx8K
作品一番乗り乙です
錬金で戦うフーケが新鮮でした・・・ガープスを思い出すような?

>フーケビィィーム!!
フーケでできたゴーレム……だと?
59名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 08:01:59 ID:Uql2TpSJ
下がる男の人おつでした!
トラップが鬼門……、確かに戦闘中にピンポイントでトラップ設置して回るとすれば、
≪漢探知≫で片っ端からトラップ発動させてしまう柊連司にとって最悪の敵、ですね。
それにしても、おマチさんがゴーレムを色々弄くって(鉄で表面加工等)戦闘してた作品はよく目につきますが、
錬金トラップで攻撃してたのは滅多にないかも(防御してたのは、これまたたまに見ますが)

>最後にTRPG的ボツネタ

ゴーレムビームはナイトウィザードじゃなくてアリアンロッドで映えるかと(マテ
あー……でも、魔王ビームとか普通に撃ってるからなぁ……ドシリアスなBoAでも魔神ビームしてたし(苦笑
60名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 11:51:54 ID:dIeUQCOD
北斗の無双のトキを見ていたら病気の心配もなく普通に使い魔ライフを送れるような気がしてきた
片手でトレーラーのタンクを持ち上げるやつが病人なわけ
61名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 12:11:19 ID:g1zf7tlT
別に病気のままで喚ばなくても構わないと思うが。
そういう効果が契約にあったとかしちゃえばいいだけだし。

まぁどう考えても文字通りの無双になるから面白くするのは難しいだろけど。
62名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 12:25:07 ID:gAhiCDlG
戦闘ばっかでトキの慈愛の心は問題にしないのね。
あの人はバトル以外の道でもやりたいことはあるでしょう。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 12:33:35 ID:mKpwgi6A
バスケットとかな。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 13:39:04 ID:HqbjRLeu
新スレじゃなくても出来る雑談は前スレでやった方が良くね?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 14:07:57 ID:GjK8acJJ
北斗「信じて下さい、俺は見たんです。ヤプールの黒い野望を!
    今すぐこの学院の警備を強化するべきだ!」
オスマン「君、夢でも見てるのではないのかね?」
ルイズ「あんた、よそでそんな寝言言ってみなさい、あたしの爆発で肉片も残らずにしてあげるわ!!」
コルベール「君は少し疲れてるんだ、休んで来なさい」
66名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 14:37:15 ID:tS6B6ELq
夜闇の人おつー
30メートルゴーレムの片腕爆散ってすげぇな、と思ったが
赤羽神社をカバーリングゥゥゥゥゥ! ほどじゃあないなぁという笑撃。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 15:02:01 ID:DWn4s6wt
遅くなったけど夜闇の人乙でしたー。
つか錬金性質悪いなw
水を鉄にするとかありえねえw
今更いうことじゃないが質量保存則とか完全無視だものなあ。おマチさん、恐ろしい子…!
68名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 15:10:39 ID:A6clm2w8
夜闇の人乙であります!
《生命の刃》が内部破壊っぽいのがなんか新鮮
土メイジは何気に殺傷力高いよなあ

>>66
隕石切り払ったり、300mの魔王の尻尾斬り飛ばしたりも
69名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 16:29:30 ID:tS6B6ELq
ルールに従ってあらゆる非常識が許される世界結界。
でも実際の卓で天プレイとか勘弁な!
70名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 20:43:19 ID:4hvWs/F8
「魔法」をよく知った魔剣と剣士の会話が楽しいな。
卓ゲだとクロイツェルとカイルの会話を思い出させるノリで。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 00:15:33 ID:m8zIVBCq
特になければ、短いですが投下します。
二分後くらいに。
72ゼロと電流 第七.五話:2010/04/17(土) 00:17:36 ID:m8zIVBCq
「幕間〜ガリアの王女〜」



 ガリア王都リュティスの東端にそびえる巨大かつ壮麗な宮殿ヴェルサルテイル。
 さらにその中心グラン・トロワ。
 ガリア王族が住み暮らす宮殿と、その中心かつガリアの政治中枢でもあるグラン・トロワ。
 そこから少し離れた位置に存在する小宮殿プチ・トロワへ、一人のメイジが姿を見せた。
 美男子ではあるが骨細ではない。騎士としての力強さすら感じさせるその姿は、彼の実力そのままを現していた。
 彼の名はバッソ・カステルモール。ガリア東薔薇騎士団の若き花壇騎士である。
彼は今、ガリア王女イザベラへの報告を携えて現れたところだった。

「報告いたします」

 王女への礼を作法通りに済ませ、カステルモールは報告書を手に取った。
 報告と言っても、殆どはわかり切ったことの再確認に過ぎない。プチトロワ周辺の様子、王女の予定、グラン・トロワからの連絡などである。
 カステルモールの実力ならば、ここで使い走りのようなことをしている場合ではないのだ。同年代のガリア騎士の中で屈指の使い手である彼ならば、最前線に出たとしても手柄は立て放題だろう。
 しかし、彼はイザベラの側に置かれていた。
 国王ジョセフ直々の命令である。逆らうことは無論許されない。
長いが省略を許されない形式的な報告の途中で、イザベラは席を立つ。

「姫殿下?」
「もういい。次からは通常と変わったことだけ報告しなさい」
「しかし、この報告は通例として……」
「意味のない通例は廃止。私が今決めた、文句ある?」
「滅相もございません」

 イザベラは気が短くやや癇癪持ちではあるが、頭は決して悪くない。
 廃止するのが本当に拙いものならばそう簡単に廃止などしない。実際に無駄だと判断した上で、速攻決済しているのだ。

「それに、そろそろ完成する頃だしね」
「完成、ですか?」

 そういえば、ここに来る途中の中庭では、数人の土メイジがゴーレムを作っていた。しかも、数人かがりで一つのゴーレムを作っていた。
 聞いてみると「とにかく大きくて堅い土ゴーレムを作れ。動かなくてもいい」と命令されたらしい。
 そこで、王女の命令なのかと尋ねてみる。
 あっさりと、認められた。

「土くれのフーケが捕まったそうよ」
「トリステインでしたか。噂は聞いております」
「フーケのゴーレムを破壊したメイジがいるって話でね」
73ゼロと電流 第七.五話:2010/04/17(土) 00:18:57 ID:m8zIVBCq
 解呪でなく、破壊。文字通り、物理的な破壊だったのだ。
 イザベラは、土くれのフーケ捕縛の顛末を印したという報告書の束を丸めて、自分の肩を叩いている。

「近くで捕縛を見てたガーゴイルからの報告さ」

 イザベラがガーゴイルと呼ぶ少女を、カステルモールは知っている。
 確かに、あの御方ならばトリステインと縁の深い場所にいらっしゃるだろう。
 
「挑戦しがいがあるじゃないか」

 言いながら兜を被る王女に、カステルモールは微かに眉をしかめる。
色遣いのデタラメな趣味の悪い兜には、未だに目が慣れない。
 あの兜こそ、ガリア王家に古来より伝わるマジックアイテムである、という噂もあるが眉唾物だ。そもそも、あの赤青黄色、三色の悪趣味な兜など、ガリアのどんな文献にも載っていない。本当に王家古来から伝わっているものなら何処かに記録があるはずだろう。
 そんな兜を被ったイザベラは、さらに妙な筒を小脇に抱えて早足で歩き出す。

「カステルモール、ついておいで」
「は。お供します」

 できたかい、とイザベラは中庭に顔を出す。
 土メイジを指揮していた一人が、イザベラに気付くと姿勢を正し、今し方できあがったばかりだと報告する。

「で、これが本当にフーケとやらのゴーレムより堅いんだろうね」
「土のライン十数人が総掛かりで、堅固さだけを考えて作ったものです。動きこそしませんが丈夫さだけなら随一かと」
「まあいいさ」

 イザベラは運んできた筒を持ち直す。
 その筒を見ているカステルモールの視線に気付くと、ニヤリと笑い、

「こっちには魔法はかかってないよ。異世界の科学とやらで作られたものさ」

 どうしてわかるのか、と尋ねれば、自分の被った兜を示す。

「お父様にいただいたこれが教えてくれるのさ。マシンバッハとバッハボルトの力をね」

 数分後、見事に、しかしあっさりと破壊されたゴーレムを見つめ、王女は溜息をついていた。

「こんなもんか……だったら、ザボーガーってのも大したこと無いんだろうね」

 ヘルメットをぺしぺしと叩きながら報告書に目を通すイザベラ。
 聞き慣れぬ言葉に、カステルモールは眉をひそめる。

「失礼ですが姫殿下。ザボーガーというのは、土くれのフーケを捕縛した者の名前でしょうか?」

 それだけの腕を持つメイジが一朝一夕に生まれたとは考えられない。何らかの形で名前が轟いているはずだ。あるいは、偽名か。それとも訳あって隠されていたか。
 まさか一人前ですらない学生が主であるとは、カステルモールには想像もつかない。

「いいや。捕縛した奴の、使い魔さ」
「使い魔ですと?」

 ならば、主がいる。使い魔の主が。その主が、どれほどのメイジなのか。
カステルモールの思いに応えるように、イザベラは唇を嘲笑の形に釣り上げた。

「どうでもいいのさ、糞忌々しいメイジのことなんて」

 ルーンが怪しく輝いたような気がして、カステルモールは眉をひそめる。

「ザボーガーがなんであろうとも、それがマジックアイテムである限り、このわたしに使いこなせないはずがないんだからね」
74ゼロと電流 第七.五話:2010/04/17(土) 00:20:44 ID:m8zIVBCq
以上。かなり短めですが、幕間でした。
次回からは、今度こそ第二部です。

おまけ

マシンバッハとは……
 シリーズ後期「電人ザボーガー対恐竜軍団」シリーズに登場した、取り外し可能な小型強力バズーカ「バッハボルト」二門を備え付けたバイク。
 後に改造され、マシンザボーガーと合体してストロングザボーガーとなる。
 元々誰が何のために作ったのか、作品では一切語られていないので不明。

ちなみに、「怒りの電流」=「虚無」である本SS設定では、ザボーガー共々、一応マジックアイテムといえる。
 ただし、実際に「虚無」で本格稼働されるまでは、本体自体に魔力はないのでディテクトマジックには反応しない。そのため、召喚当初のザボーガーはマジックアイテムだと思われなかった。
 
75名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:04:39 ID:+zRvBeka
電流氏と下がる男の人氏乙であります!

なにこのデルフ真面目じゃん。デルフらしくない(爆)
<<三千世界の剣>>は………駄目だよね、うんw
76名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:10:36 ID:22/U9pOi
代理行きます
77疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:11:16 ID:22/U9pOi
第六章 覚醒

   0

決闘/[Duel]――二人の人間が、何かの為に生命を賭して戦うこと。果し合い。
78疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:11:38 ID:22/U9pOi
   1

「その香水をあなたが持っていたのが何よりの証拠ですわ!」
 乾いた音の後に、そんな少女の声が聞こえた。
「さようなら!」
 そんな震えた声を聞いて、何事かと声のする方向を見れば目立つ金髪が見える。
 そしてルイズの隣を走り去る一年生の少女。慌しく、その後ろを何人かの生徒が追いかけていった。
 すれ違っただけだが、少女は泣いていたようだった。
「・・・・・・何があったの?」
 騒動の中心らしき場所には人垣が出来ていて、ルイズの席からではどうなっているのか、伺うことはできない。
「ギーシュのバカが二股掛けてたのがバレたみたいね」
「・・・・・・なんで、あんたが私の隣にいるのよ」
 いつの間にかキュルケが隣に立っている。ルイズの身長では見えないが、キュルケの身長ならば見えるのかも知れない。癪だ。
「あなた、『土』の才能に目覚めたとか言って、あの有様でしょう? 確かに爆発の規模は小さくなってたみたいだけど・・・・・・おかげ様で後ろに引っ繰り返って、頭打っちゃったじゃない」
 後頭部を擦っているところを見ると、結構強く打ったようだ。しかし錬金を使う時は全員、机の下に隠れていたはず。それにいつもならともかく、今回は随分と力を絞った。そんな目にはまず遭わないはずだが。どうして――
79疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:11:58 ID:22/U9pOi
「食べ終えたみたいだし、外であなたの魔法を見せなさいよ。ヴァリエールがどこまでやれるか、気になってしょうがないんだから」
 そういってあのからかうような目線と笑みをキュルケは投げかける。
 他人の色恋沙汰、ましてや二股が原因の修羅場の見物なんて悪い趣味は持ち合わせていない。それにルイズも自分の《P.V.F》がどんなものなのか、確かめたくてうずうずしていた。
 人目にはあまり晒したくはないが、相手がキュルケなら、そう悪くはない。
 今まで散々からかわれてきたのだ。見返してやろうじゃあないか。
 昼食の後なので、当然この後は昼休みだ。力を試すなら好都合だろう。
「ええ、見せてあげるわ。私の『使い魔』をね」
「決まりね。じゃあ、メイドに八つ当たりしているようなバカは放っておいて、どこか適当な広場でも行きましょ」
 何か、何かが引っかかった。
「なんですって?」
「どうやらメイドに責任を擦り付けて、誤魔化そうとしてるみたいよ? まったく、あの黒髪のメイドも災難ね」
 黒髪。ルイズが知っている黒髪は一人しかいない。
 嫌な予感がする。頭の中で警鐘が鳴っているような気がした。今、向かわなければ後悔する、そんな気がするのだ。

「あら、ルイズ?」
 キュルケがルイズの様子に気づいた時には、もうルイズは騒動の中心へ向かって歩き始めていた。人垣を押しのけて、そう長くない距離を詰める。
 押しされた貴族が文句を言おうとするが、ルイズの威圧的な雰囲気に圧されて口を閉じた。
 そう時間は掛からずに、ルイズは騒動の中心へ辿り着いた。
80疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:12:19 ID:22/U9pOi
「止まりなさい」
 目の前には怯えてしゃがみ込んだシエスタと、なぜか髪からワインを滴らせたギーシュがいる。
 シエスタの体は恐怖からか、震えていた。
 頭の奥底から怒りが沸いてくるのを感じる。周囲の視線も気にせずに、ルイズはギーシュの前に立った。その小さな背中でシエスタを庇うように。
「・・・・・・ミス・ヴァリエール」
 背中からシエスタの呟きが聞こえた。少し震えている。
 シエスタは怯えている。『貴族』であるギーシュが怖くて。

――ふざけるな。

 魔法が使えるものは貴族だ。それはハルケギニアのどこを見ても変わりはしない。
 しかし、けれど。
「ルイズ、邪魔をするな。僕は、これからそこのメイドに『教育』しなければならない」
 こんな理不尽で、シエスタを怯えさせるような人間が『貴族』なのか。
 怒りを吐き出すようにため息をついた。自分を落ち着けるために。
「ギーシュ、あんた最低よ」このままだと怒鳴りつけてしまいそうだった。
「なんだと?」
 ギーシュの顔から笑みが消えた。変わりに浮かんだ表情は怒り。
 本来、端整な顔立ちは歪み、ルイズにはそんな表情がどこか滑稽に映った。
「二股かけてた挙句に、バレればメイドに責任転嫁? それも自分の面子を保つためだけに?」
「違う。僕は彼女たちの名誉を守ろうとしている。そこのメイドがほんの少しでも、機転を利かせることができたならばケティもモンモランシーも傷つかずにすんだのだよ」

――ふざけるな。
81疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:12:40 ID:22/U9pOi
 ギーシュ・ド・グラモンはそれなりに優秀なメイジだ。古くから続くグラモン家は、多くの軍人が血と杖で国を守ってきた。ギーシュもドットの中では優秀な部類に入る。
 血筋と魔法、貴族にとって最も重要視されるといっても過言ではないその二つの要素をギーシュは兼ね備えている。
 家柄は立派だが魔法の使えないルイズとは、違うのだ。
 だが。
「・・・・・・何が名誉よ。あんたが本当に大切なのは自分の身でしょう? 本当に愛しているなら、どうしてすぐに追いかけないの? あんたに貴族を名乗る資格は無いわ。平民にも劣る誇りしか持ち合わせていない男にはね。もう一度、言うわ」

――ふざけるな!

 ギーシュからは誇りは感じない。ただ自分の面子の為だけに、自分より弱い平民のメイドに矛先を向けている。貴族の誇りである杖を、向けている。
 ルイズには、それが許せない。
 ルイズが魔法を使うことができない。いくら努力をしようと魔法が成功することはなかった。
 アンロックも、ファイヤーボールも、エアカッターも、錬金も、治癒も。どんな魔法も成功しなかった。
 だけどルイズは杖を振る事をやめなかった。誇りがあった。それはどんなものにも譲れない。変えることができないものだ。
 だが、ギーシュは今、シエスタに杖を向けている。
「最低よ、ギーシュ・ド・グラモン」

――こんなものは私の目指す『貴族』じゃない。
82疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:13:01 ID:22/U9pOi
 今、牙を突き立てなければ私の中の『何か』が死んでしまう。
 ルイズは漠然と、そんな考えが頭のどこかに浮かんでいた。
 食堂から音が消えた。誰も、口を開かない。重く、冷たい沈黙が流れた。

「・・・・・・魔法すら使えない『ゼロ』に、貴族の誇りについて説教されるとはね。少々、気が動転していたようだ。このような事態になったことを恥ずかしく思うよ。貴族のような機転を、そこのメイドに求めた僕が馬鹿だった。
ルイズの侮辱も許そうじゃないか。魔法の使えないそこの『二人』の平民は下がっていいよ」
 ギーシュは肩をすくめてそう言った。
 ルイズを『ゼロ』と、ルイズを『平民』と呼んだ。
 紛れもない侮辱を受け、それでもなおルイズの芯の部分は冷えていった。怒りが消えたわけではない。冷静になったわけでもない。
 ただ感情の温度が急速に下がった。
 それはやっぱり怒りだ。
 もちろん、ルイズを『ゼロ』と呼び、ルイズを『平民』と呼んだ。それに対しての怒りも確かにある。だがそれならば、ルイズの怒りは熱く煮詰まったものになるだろう。
 だけどルイズの感情はただ冷たくなっていく。
 それはきっと、シエスタのためだから。
 ギーシュはシエスタを侮辱した。シエスタを自分よりも劣る、と。シエスタを取るに足りないモノだ、と。
 この怒りはきっと、自分の為ではない。これは『誰か』の為の怒りだ。
 ルイズは少し、嬉しかった。

――私は、誰かの為に心の底から怒ることができる。

 ルイズはなかなか素直になることができない。他人に対しても、自分に対しても。
だから、少しだけ。ほんの少しだけ、そんな当たり前なことができるようになった自分が誇らしかった。
83疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:13:26 ID:22/U9pOi
「待ちなさい」
 ルイズの声を聞いて、ギーシュが振り向いた。ギーシュの胸にルイズは手袋を放り投げる。
 ぱさり、と小さな音を立てて、手袋はギーシュの胸に当たり、床に落ちた。
「何の真似だい? ミス・ヴァリエール」
 聞くまでもない。この食堂の誰もが知っている。
 手袋を投げつけるのは、決闘の作法だ。
 先ほどとは違い、ギーシュは丁寧な口調だ。わざわざ『ミス』までつけている。
 ギーシュにしてはなかなかどうして、面白い趣向じゃないか。ルイズもその趣向に乗ることにした。
「貴方のお好きな騎士の真似事ですわ、ギーシュ・ド・グラモン」
 努めて優雅に。舞台で歌う歌姫のように。観客はこの食堂にいる全員だ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという貴族はここにいる。『誇り』を胸に今、ここに立っている。
 ルイズは、そこまで言ってギーシュに背を向けた。

 ルイズの役柄は『騎士』だ。だったら――
『お姫様』の手を取る名誉は譲れない。

 ルイズは目の前でしゃがみ込むシエスタに、左手を差し出す。
 シエスタはルイズの手を取り、立ち上がった。ルイズの小さな手に収まる手は仕事で荒れていて、力強い手だ。その手はもう、震えていない。
「決闘よ」
 ルイズは優雅に振り向いて、そう静かに告げた。
 シエスタの驚いた顔があんまりにも可愛らしくて、こんな時なのについ、笑ってしまった。
 驚いたシエスタの大きく見開かれた黒い瞳には、怯えの色は見えなかった。
 笑ってしまった本当の理由は、それが嬉しかったからなのかもしれない。

 結局、ルイズはシエスタを助けたかった。ただそれだけだったのかもしれなかった。
84疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:13:57 ID:22/U9pOi
   3

「コルベールです。オールド・オスマン、お話が」
 本塔の最上階、学院長室のドアの前にコルベールは立っていた。
 あの後、『丸薬』の項目を読み、コルベールは一つの仮説を考えた。だが、この仮説はもしかするとルイズから使い魔を奪うことになるかもしれない。
 ただの教師であるコルベールにはどうしていいか判らずに、学院長であるオスマンの報告に来たのだ。
「入りなさい」
「失礼します」
 重厚なつくりのセコイアのテーブルの向こう側に、トリステイン魔法学院の学院長、オールド・オスマンはいた。
 長く白い髭と髪、顔には生きてきた年月を感じさせるしわが深く刻まれている。噂では百歳とも二百歳とも言われている。そんな酒の肴にしかならないような噂話でさえ、この長い年月を見てきたであろう紫の瞳を見ると本当かも知れないと思ってしまう。
 部屋の隅に置かれた机では、秘書のロングビルが羽ペンを忙しなく動かしている。翡翠のような輝きを持つ髪と凛々しい顔立ちの美人だ。理知的な印象を与える眼鏡が良く似合っている。
「どうかしたのかね? ミスタ・・・・・・あー、なんじゃったっけ?」
「・・・・・・コルベールです。人の名前ぐらい覚えておいてくださいよ」
「すまんのう。年を取るとどうでもいいことは、すぐに忘れてしまうんでな」
 コルベールは色々と言いたい事があったが、ぐっと飲み込んだ。
 文句を言いたいが、この老練な魔術師を相手にしていては話が進まない。
「ミス・ヴァリエールの召喚した使い魔についてお話したい事があります」
「席を外しましょうか?」
 書類から顔を上げて、ロングビルが問いかける。気を利かしてくれたのだろう。
 コルベールの話はルイズの使い魔に関わる重要なことだ。耳する人間は少ない方がいいかもしれない。
「すみません、ミス・ロングビル。お詫びに昼食でもいかがですか?」
 食事をするのなら一人より二人の方がいい。それが美人ならなおさらだ。
「いえ、私は仕事が残ってますので」
 ロングビルはそれだけを素っ気無く言い残して、部屋から出て行ってしまった。
「ほっほっほっ、フラれたのう。ミスタ・コルベール」
 オスマンは水パイプの煙を燻らせながら笑っていた。
85疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:14:17 ID:22/U9pOi
「そ、それはともかく。オールド・オスマン、これをご覧ください」
 セコイアの机に図書館から持ち出した『エルフの薬草』を広げる。開くページは『丸薬』。薬草をハチミツなどのつなぎを使い、粉末にした薬草などを球状にしたものである。
 ハルケギニアにおいて傷の治療は水のスペルで行う。魔法を使えない平民などが薬草を使うのだが、平民にとってハチミツは高級品のため、手が届かない。
 この本には『デンプン』というものでも代用できるそうだが、この『デンプン』がなんなのかがわからない。ハルケギニアにはないのかも知れなかった。
「『エルフの薬草』とは、また危ないものを持ち出したの。で? これがどうしたのじゃ?」
 このようなエルフに関する書物は本来、あってはならないものだ。歴史の中では焚書に指定されていたこともある。そんな本が学院の図書館に納められているということはオスマンの力量を示している。
 ほかにも世には出回らないような様々な本が図書館には納められていた。フェニアのライブラリーの閲覧が制限されているのは、そのような本があるからだ。
「使い魔召喚の儀式でミス・ヴァリエールが召喚したモノは、もしかすると何かの『丸薬』かも知れません」
「ふむ・・・・・・」
 本に載っている『丸薬』は黒い球体、ルイズの『使い魔』は白い楕円をしていた。しかしコルベールは同じものだという推測を立てた。
 絵に描かれているものと違うのは、材料となる薬草が違うから。ほかにもいくつかの根拠はあるが、一番の理由はコルベールの勘だ。

「ミス・ヴァリエールの使い魔は『薬』かも知れません。しかし・・・・・・『毒』かも知れないのです」
 使い魔の役割は大きく分けて、三つある。
 一つ目は『使い魔の主人の目となり、耳となること』、これは鳥などの使い魔を斥候とする。軍などで重宝される仕事だ。
 二つ目は『主人の望むものを見つけてくること』、これは水のメイジや土のメイジが秘薬作りのさいに役立つ能力。
 そして三つ目、『主人を守る』、これが問題なのだ。
86疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:14:42 ID:22/U9pOi
『毒』はその性質上、力も技術も要らない。毒を使えば少女にも人は殺せる。ルイズのような少女にも。そして守るのに一番、確実な方法は殺される前に殺す事。
 魔法の使えないルイズには、ある意味これ以上無いほどの力だ。
「確かにのぅ・・・・・・しかしなぁ、彼女から使い魔を奪うのは忍びないの」
 確かに『ゼロ』と呼ばれるルイズが、唯一の成功の証なのだ。
 それを奪えば、ルイズの心が壊れてしまうかもしれない。そもそも今まで勤勉だったのが不思議だったくらいなのだ。
「ディティクトマジックの結果は?」
「何の反応もありませんでした」
 ディティクトマジックは探知の魔法だ。これを使うことにより、魔力の有無がわかる。反応がなかったということはルイズの使い魔に魔力は込められていないという証拠になる。
 一応、念の為に召喚の儀式の時にディティクトマジックは掛けたが、反応は無かった。
 水の秘薬などの魔法が込められた薬ではないということだ。だからといって安心はできない。植物の中には致死性の毒を持つものある。
 メイジ殺しと呼ばれる戦士は、刃や矢にこういった毒を塗ったりするという。
「どうしましょう?」
「どうするかのう?」
 春の日差しが差し込む学院長室で、う〜むと中年と老人が頭を抱えた。

 そんな学院長室にノックの音が響く。
「誰じゃ?」
 扉の向こうからは、先ほど席を外したロングビルの声が聞こえた。
「私です。オールド・オスマン」
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっていたので、教師が止めに入ったようですが、生徒が興奮しており手がつけられないようです」
「まったく、暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい」
 トリステインでは法により、貴族同士の決闘は禁じられているが、学院でも度々こういった事態が起きてしまう。
「で? 誰が暴れておるのかね?」
87疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:15:35 ID:22/U9pOi
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
 オスマンの口から盛大なため息がこぼれた。
「あのグラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「いえ、相手は女性です。もう一人は、ミス・ヴァリエール」
 オスマンとコルベールが顔を見合わせた。思わぬ事態だが、渦中の人物であるルイズが騒動の中心らしい。
「教師たちが決闘を止めるに『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
 オスマンの目が鷹のように鋭くなったが、コルベールがそれに気づくことはなかった。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
 コツコツと規則的な足音が遠ざかっていった。
 コルベールは唾を飲み込む。
「オールド・オスマン」
 コルベールの意図を察して、オスマンが杖を取り出す。
「うむ」
 オスマンを杖を振った。すると壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。
 オスマンの秘蔵の一品、『遠見の鏡』の力だ。鮮明な映像はオスマンの魔力の高さを表している。コルベールはオスマンの若い頃を想像して、身震いする。
 もしもオスマンが若い時に戦場に立った場合、自分はどうすればオスマンを殺せるのか。
 今は平和の中に生きている。それなのにこんな事を考えてしまう自分がコルベールは嫌いだった。

――私はやはり、罪人だ。

 コルベールはそれ以上考えるのをやめ、鏡に集中した。自分の可愛い生徒を見守るために。
88疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:16:02 ID:22/U9pOi
   4

 ヴェストリの広場はトリステイン魔法学院の『風』の塔と『火』の塔に間にある。
 そこでルイズとギーシュは向かい合っている。
 ルイズたちが立っているのは、学園の西側の中央の辺り。本来、人気の無い場所だがこの時、この学院の生徒である貴族で人垣ができていた。
 ざわめきは広場を包んでいるが、向かい合う二人は意にも介さない。
 二人とも杖を取り出し、構えている。
 緊張感が高まり、見物人が我慢を切らしそうになった時。
 食堂で決闘をするわけには行かず、このヴェストリの広場に移動したのだ。
「本当に降参しないのか」ギーシュがこう聞くのは、これで二回目だ。
 ギーシュが口を開いた。
「ええ」
 ルイズが頷く。
「君はゼロだ。今ならこちらも矛を収めよう」
「くどいわ。私はゼロじゃない。早く始めましょう」
「・・・・・・いいだろう、ゼロのルイズ」
 ギーシュは、薔薇を模した造花の杖を振る。杖から花弁が一枚、はらりと地面に落ちた。すると花弁は、ゴーレムへと変化を遂げる。細かい装飾を施された美しい鎧を身に纏った女騎士の青銅像。両手には何も持っていない。
 ギーシュは土のドットメイジだ。これだけ精密な像を作ることができるメイジはドットには少ない。周囲の静かな感嘆の声が漏れた。
「これが、僕の『ワルキューレ』。ゼロノルイズ、君にはこの一体で十分だろう。魔法の使えない君に勝ち目は、無い」
 確かにルイズに魔法は使えない。しかしルイズはもう、無力ではない。
 ルイズは《パラベラム》だ。
89疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:16:28 ID:22/U9pOi
――思ったよりも集まっているわね。

 二人の周囲には食堂で集まった貴族たちが、そのままこちらについて来てしまったのだ。むしろ話を聞いたのか、増えているかもしれない。
 だが、それも好都合だ。ショーは派手な方がいい。
「ギーシュ、一つ約束してもらえるかしら?」
「何をだい?」
「私がこの決闘に勝ったら、三人の女性に謝罪しなさい」
 ルイズは守るために今、ここに立っている。
「ああ、わかった。僕に勝てたら、ね。・・・・・・そうだ、これを使いたまえ」
 ギーシュがまた杖を振った。花弁に魔力が流れ、一本の剣に変わる。『ワルキューレ』と同じような趣向の装飾が施されているのは、さすがといったところか。ギーシュはその剣を掴み、ルイズの方へ投げた。剣はルイズの手前の地面に刺さった。
「ルイズ、せめてもの情けだ。その剣を取りたまえ。そうじゃなかったら、一言こう言いたまえ。ごめんなさい、とな。それで手打ちにしようじゃないか」
 ギーシュはそこで一度、言葉を切った。そして芝居掛かった仕草で両手を広げ、観客に聞かせるように言葉を続ける。
「わかるか? 剣だ! つまり『武器』だよ。平民どもが、せめてメイジに一子報いようと磨いた牙さ。噛み付く気があるのなら、その剣を取りたまえ。その、平民の牙を」
「お生憎様、牙なら自前のがあるわ」
 ルイズは無力ではないのだ。使い魔の召喚に成功し、《パラベラム》となった。
「もしかして、その杖のことを言っているのかい? ハハハッ、ゼロに扱える魔法は無いよ!」
 ギーシュの笑いに同調して、観客からも笑い声が上がる。
 しかし、そんな笑いさえもルイズには、もう聞こえてはいない。

 ルイズは右腕を伸ばした。やり方は自然と頭に浮かんでくる。
 意識を集中し、武器をイメージする。頭に思い浮かべるのはこの世界ではない、どこか遠くの異世界の武器。

――私はもう、『ゼロ』じゃない。
90疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:17:07 ID:22/U9pOi
「『錬金』」ルイズはその呪文を『読み上げる』

 杖を持ったルイズの右腕が、輝きに包まれる。
 閃光の粒子は弾け、半透明の装甲を形作っていく。
 装甲はルイズの右腕を包み込み、機関部を一瞬で形成。ダンダンダン、と虚空から生まれた装甲が幾重にも重なり合い、より明確なシルエットを作り出す。
 武器が、そこに生まれた。

「な、なんなんだ・・・・・・それは?」

 さっきまで何も無かった場所に、魔法のように銃器が現れたのだ。この広場でルイズの手にするものが銃器だと、分かる者は一人もいなかったが、それは確かに銃だった。
 ルイズが手にするのは、巨大な銃。

 長い槍を思わせるフォルム。
 力強さと優雅さを両立したようなデザインの三本の銃身と巨大な機関部は、鮮やかな青と深い黒で彩られ、装甲の隙間からはルイズの髪のような明るい桃色の光が漏れている。
 一・八メイル以上の大きさがあるのに、ルイズは全く重さを感じなかった。それでいて、銃を構成する全ての部品は確かな鋼鉄の質感を持っている。
 機関部の部分にはラウンドシールドまでついているが、これも大きさが異常だ。直径一メイル近くもある盾には、幾何学的な模様まで施されていた。
 銃の本体部分である機関部と、構えるルイズの手の甲に沿うようにできた盾の裏側には、こんな文字が刻み込まれていた。

《cal90 Shield of Gandalfr》

輝くルーンが刻まれた左手で刻印をなぞりながら、ルイズはようやく、ギーシュの質問に答えた。

「九○口径シールド・オブ・ガンダールヴ」

 それが、この銃の名前のようだった。

――《パラベラム》とは?
 自分の殺意や闘志を、銃器の形にして物質化することが可能な特殊能力、およびその能力者である。
91疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/17(土) 01:18:38 ID:22/U9pOi
以上で六章は終わりです。
やっと一章と繋がり、ルイズの《P.V.F》を出すことができました。
由来はまぁ言うまでも無く。
原作主人公のP.V.Fである『デンジャラス・ラビット』にしようかとも思ったのですが
パラベラムの精神に依存するようですし、こうなりました。
ちなみにモデルはコブラの下についてるアレです。
もし原作のほうに興味を持たれた方がいましたら
wikiの方にリンクを設けましたので、良ければどうぞ。
また原作に沿いP.V.Fの名前は英語表記になっていますが実際にはハルケギニア言語です。


ここまで、代理終了
……ミスって代理スレのほうに一つ落としてもーた
92名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:22:51 ID:lS+N0/Wv
投下&代理乙 次も楽しみだ。

・・・ひょっとして、ギーシュって二次創作含めると世界一かまされてる犬なんじゃないだろうか
93名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:24:48 ID:lS+N0/Wv
ごめん。上げた。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:39:01 ID:rb2215b5
しっかし、このギーシュは相当性格悪いなぁ。
だからこそ負けっぷりが際立つわけだけど。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:40:33 ID:BaA+bPmC
>>92
残念ながらまだエヴァのサキエルには及んでないと思う。
全盛期のエヴァSSの量産っぷりはマジで凄かったからね。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 01:50:15 ID:ndI6Qjz4
投下&代理乙でしたー。
深見作品は好きですので、この作品も続き大期待です。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 03:10:01 ID:vnPjHFjt
ギーシュはショッカーの戦闘員の皆さんかよ。
いっそ噛ませ犬五人集揃って
ギ、フ、ワ、モ、エ「イーッ!」
98名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 03:48:34 ID:FpW50NOs
パラベラムの人乙。強化ルイズは大好きだ。
さて、この作品でのデルフの扱いはどうなるやら……w
99名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 04:00:44 ID:APPXldLm
パラベラムの人乙です。決闘で機銃系が出てくるのは久々ですね。
さて、ふがくの短機関銃からは逃れられたギーシュはもっと凶悪なこれからは
逃れられるんだろうかw
100名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 09:10:49 ID:zEs96zkj
パラベラムの人乙!

相変わらずこのスレは人が多いから暇しないな

なのはの人マダー
101名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 10:58:21 ID:vhMboBOm
魔法使いサリーを召喚。いやサニーでもいいけどさ

サリーは平民どころか王女の上、魔法もチートだからルイズがやっかむかねえ
102名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 11:54:25 ID:Ceqqvx6L
サニー・ザ・マジシャン

次期十傑衆候補だったような。
魔法使わずとも強そうだ。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 13:12:54 ID:vnPjHFjt
ブラックマジシャンガールを召喚
104名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 13:29:00 ID:h/v1eB/w
>>103
「甘いぞユーギ」
105名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 13:43:12 ID:Er/iRCkj
リバースカードオープン!!
エネミーコントローラー!!
106TALES OF ZERO 作者:2010/04/17(土) 13:46:46 ID:4smSSkLj
投稿出来るかテスト
出来たら、13時55分より投稿を始めたいと思います
107TALES OF ZERO 1/12:2010/04/17(土) 13:56:42 ID:4smSSkLj
第六話 二人の使い魔の日常


クラースが学院に戻って、数日が過ぎた
二人はルイズの使い魔として、才人は召使のように働かされ、クラースは知識を習得している
そんな使い魔達の日常は、こんな具合である

………………

「クラースさん、起きてください…クラースさん。」
朝…トリステイン魔法学院女子寮のルイズの部屋…
床で眠っているクラースの耳に、才人の声が聞こえてくる
クラースが目を覚ますと、彼とルイズがそこにいた
「ん…ああ、才人…それにルイズも…おはよう。」
二人に朝の挨拶をしながら、クラースは起き上がる
その拍子に、体の上に乗せていた本が幾つかパラパラと落ちる
「全く、主人の私より起きるのが遅いなんて使い魔失格よ。」
「仕方ないだろ、最近徹夜続きなんだ…これを読む為にな。」
クラースの周りにあるのは、図書館から借りてきた本だった
魔法関連から歴史書、地理、法律、伝説など、ジャンルは様々である
「何せ、私はこっちの事を全く知らないからな…学ぶべき事は沢山ある。」
「だからって限度があるでしょ!!」
「仕方ないって…クラースさんは一旦こうなると、ストップ効かないし。」
クラースは時間さえあればその全てを研究に費やすので、生活能力が全くないのだ
ミラルドがいなければ、碌な生活を送れなかったであろう事は想像に難くない
「もう…こうなるんだったら字なんか教えなきゃ良かったわ。」
「ハハハ…それにしても、ほんの数日でよく文字を覚えられましたよね。」
才人の言う通り、クラースはこの数日間でハルケギニアの文字を殆どマスターしてしまった
今ではこうして、複数の本を読む事も字を書く事も可能になっている
「学者だからな、覚えるのは得意な方だ…というか、基本が解ればどんどん理解が深まっていくんだ。」
「へぇ、そんなもんなんですか?」
「そんなの、私が教えるのが上手かったからに決まってるでしょ。」
えっへんと、ルイズは胸を張って自身が偉大であるかのように振舞った
無い胸張って…と呟いた才人をしばくのも、勿論忘れていない
「兎に角…勤勉なのは良いけど、もう少し限度ってものを考えなさい、良いわね?」
「ん?ああ、解った解った…努力はしよう。」
気の抜けた返事を返すクラース…絶対無理だな、と才人は思った
「所でルイズ、今日の授業は何なんだ?」
「今日?今日は最初に魔法の授業があって、後はないわね…最初の授業しか出ないでしょ?」
「ああ。」
クラースは魔法を使う授業だけ、ルイズに同席する
それ以外はこうして本を読むか、散歩するのが此処での彼の日課だ
「じゃあ、早く食堂に行くわよ。私もうお腹空いてるんだから。」
それに、早く食べに行かなければ授業に遅れてしまう
「馬鹿犬、あんたはご飯抜きだから残って掃除・洗濯しなさいよね。」
「はいはい、解ってるって。」
ただ一人、才人だけは部屋に居残りとなった…理由は、昨日ルイズを怒らしたからである
「またか…今度は何をやらかしたんだ?」
「いやぁ…無茶苦茶言うからあいつの服のポケットに、玩具の蛙を忍ばせといたんですけどね。」
「懲りないな、君も…あまりそういう事はするもんじゃないぞ。」
とはいえ、飯抜きになっても才人には苦ではない事をクラースは知っている
が、前のように本当にルイズを傷つけない限り、告げ口する気はなかった
「ほら、何してんの。さっさと行くわよ。」
既に扉を開けて外に出たルイズが呼びかけてくる…昨日の事を思い出したのか、口調が荒い
「ああ、解った…じゃあな、才人。」
「いってらっしゃい、クラースさん…ついでにご主人様も。」
最後だけは付け足して、才人は二人に向かって手を振った
ふん、とルイズは勢いよく戸を閉めると、ずかずかと食堂に向かって歩いていく
やれやれ、と呟きながらクラースもその後に続いた
108TALES OF ZERO 2/12:2010/04/17(土) 13:58:10 ID:4smSSkLj
朝食を終えた後、ルイズとクラースは本日最初の授業に出席した
開始まではまだ少しだけ時間があるので、講師の先生は着ていない
「おい、ゼロのルイズが来たぞ…使い魔のメイジも一緒だ。」
生徒の一人がそう言うと、ほぼ全員がルイズとクラースに視線を向ける
あの決闘騒ぎ以来、彼等のルイズを見る目が変わった
腕の立つ異国のメイジと凄腕の剣士を召喚したとして、彼女の評価は確かに上がったのだ
彼等の眼差しに、ルイズは上機嫌になりながら席を探す
「さてと、何処に座ろうかしら…。」
「此処なら空いていますわ。」
そんな時、上の方にいたキュルケが声を掛けてきた…確かに、彼女の隣の二席は空いている
「何であんたの隣に座らなきゃいけないのよ。」
「あら、私はあんたじゃなくてミスタ・レスターをお誘いしたつもりだけど?」
キッとキュルケを睨むルイズ…そんなルイズを他所に、クラースは歩き出した
そして、空いているキュルケの隣の席に腰を掛けた
「ちょっと、クラース先生…何でツェルプストーの隣なんか…。」
「もうすぐ授業が始まるんだ、空いているならさっさと座った方が良いだろ。」
違うか、と言われてルイズはしかめっ面になりながら唸る
しばらく唸った後、結局彼女はクラースの隣に大きな音を立てながら座った
「あら、あのルイズが言う事を聞くなんて…それに、先生?」
「私は彼女の個人教諭をする事になってね…それで、先生と呼ばれている。」
ふーん、と納得したキュルケはクラースとルイズを交互に見る
「成る程ねぇ…なら、私もクラース先生、と呼ばせて貰っても構いませんかしら?」
「駄目よ、絶対駄目…あんたが言うと嫌らしく聞こえるから。」
「だから、あんたに聞いてるんじゃないのよ。」
クラースを挟んで、キュルケとルイズは喧嘩を始めそうになった
そんな時、クラースは反対側の席が空席になっている事に気付いた
「ん、キュルケ…タバサはどうしたんだ、今日は一緒じゃないのか?」
キュルケとタバサはどういうわけか親友で、一緒にいる事が多い
他の席に座っているのかと教室を見回してみるが、何処にも彼女の姿は見えない
「タバサ?あの子なら何処かに行きましたわよ。あの子ったらふらっといなくなるから。」
どうやら、また国許の任務か何かで出かけているらしい
納得して頷いていると、ルイズがジッと見ている事に気付いた
「先生って、最近タバサと一緒にいる事が多いようね。」
「ああ、まあな…彼女には色々と教えたり、教えてもらっている。」
嘘は言っていない…正直に答えるが、相変わらずルイズはジッとクラースを見つめる
「お、教えたり教えて貰ったりって…まさか、先生…。」
「言っておくが、内容は学問が中心だからな…変な事を考えてないだろうな?」
「へっ…や、やあね、私がそんな変な事考えるわけないでしょ。」
ルイズは慌てて作り笑いをしたが、全然誤魔化せていなかった
そんな彼女に、やれやれとクラースはため息をつくしかなかった
「タバサったら、何時の間に…思わぬ所でライバル出現ね。」
キュルケはキュルケで、勝手にタバサを恋のライバルに認定してしまっている
「私と彼女はそんな関係じゃないのだがな、唯利害が一致したからで…。」
「あの…そろそろ授業を始めたいのですが……。」
そんな時、教卓からこの時間の授業を受け持つ教師の声が聞こえてきた
既に時間は始まりを過ぎており、騒いでいるのはこの辺りだけだった
それ以上喋るのを止め、クラースは授業に集中する事にした
109TALES OF ZERO 3/12:2010/04/17(土) 13:58:56 ID:4smSSkLj
授業が終わった後、クラースはルイズと別れて図書館へと来た
読み終えた本を司書に返すと、ある記述を探して中へ入る
「ふーむ……これは違うな。」
ある本棚でペラペラとページを捲った後、クラースは本を元の場所へと戻した
次の本を手にとって見てみるが、首を横に振って元の場所へと戻す
「これも、これも…これも違うか。何処にあるんだろうな。」
「何をしている?」
それを何度か繰り返していると、クラースを呼ぶ声が聞こえた
後ろを振り返ると、そこにはタバサの姿があった
「タバサ…出かけたと聞いていたが、帰ってきたのか?」
クラースの問いかけに、タバサは黙って頷いて答えた
そうか、とクラースは持っている本を戻し、再び本を探した
「実はな、今私やジーニアス達のような者がいたかどうか調べている所なんだ。」
「貴方達のような…それはつまり、別世界の来訪者?」
「そうだ。過去にも似たような事があったとすれば、帰る方法が見つかるかもしれないからな。」
そんな人物が何処から来て、何処へ向かったのか…
その『何処へ向かった』が解れば、帰れる確立は高くなる筈である
「しかし、中々見つからなくてな…この辺にはないのかもしれんな。」
持っている本を元に戻し、クラースは図書館の中を見回してみる
此処の蔵書量は半端ない、読破にどれだけの年月が掛かるか解らない程だ
「あると思うんだがな…これまでの事を考えると、過去に何度かあっても可笑しくない筈だ。」
それが過失か故意によるものだとしても…クラースはそう確信していた
「タバサ、君は何か知らないか?」
豊富な知識を持つ彼女なら、何か知っているかもしれない
そう思って尋ねてみたが、彼女は首を横に振る
「解らない…別世界の来訪者なんて、聞いた事がない。」
「そうか…やはり、そう簡単に答えが見つかるわけがないか。」
ふぅ、と溜息をついてクラースは本を探すのを中断すると、改めてタバサの方へと振り向いた
「さて、と…タバサ、授業に行かずに私の所に来たという事は…あれか?」
黙って頷くタバサ…それを見て、クラースは『あれ』の続きを行う事にした

……………

「クラースさ〜〜ん、何処ですか〜〜〜?」
昼食が近い頃、掃除を終えた才人がクラースを探して図書館へやってきた
膨大な数の本棚を見回しながら、クラースを探して歩き回る
「きっと此処にいると思うんだけどなぁ…それにしても、本当頭が痛くなる位の本の山だよな。」
そんな事を呟きながらこの広い図書館を歩き回って数分…ようやくクラースを見つけた
「あっ、クラースさん…此処にいたんですか、探しましたよ。」
クラースは読書用のスペースで、タバサと並んで座っていた
タバサは字を書いており、クラースは才人の声に顔をあげる
「ん…ああ、才人か…もう昼食の時間か?」
「そうですよ。放っておいたら、飯も食べずに調べ物をしますからね…で、二人して何を?」
「書き取りだ。私の持っている術書を理解して貰う為に、彼女に私の世界の文字を教えている所だ。」
成る程、彼女が書いている字に見覚えがあると思ったわけだ
今も書き取りを続けているタバサに、才人は近づいた
110TALES OF ZERO 4/12:2010/04/17(土) 14:00:21 ID:4smSSkLj
「よう、タバサ。」
才人が呼びかけるが、タバサは返事も返さずに書き取りを続ける
クラースとタバサが関わるようになって、自然と才人も彼女に関わるようになった
とは言っても、今のように碌な会話は今の所出来てはいない
「それにしても…クラースさん、こいつに本当の事全部喋っちゃったんですよね?」
クラースの傍に回り込み、タバサに聞こえないよう小声で才人は話す
この前の大まかな事は、クラースから聞かされている
「良かったんですか?俺達の事喋ったりして…。」
「そうでもせんと、彼女の協力を得られなかったからな。」
「ふーん……あれ?」
書き取りを行うタバサを見ていると、才人はある違和感に気付いた
しかし、彼女はその違和感に気付いていないようである
「なあ、タバサ…ちょっとそれ見せてくれよ。」
無視されるかもと思ったが、才人の言葉に初めてタバサは顔を上げて彼の顔を見た
しばらくじっと才人の顔を見ていたが、書き取りの用紙を渡す
それを受け取ると、才人はじっと書かれたアセリアの文字を見つめて…
「ああ、やっぱり…お前、此処のスペル間違ってるぜ。これだと変な文章になるから…。」
そう言うと、傍にあった予備のペンを使って字を修正する
修正したそれを返すと、タバサは修正された字を見つめる
そして、自分が間違っていた事が解ると、少し驚いた表情で才人を見た
「何だよ、そんなに意外か?俺もクラースさんに召喚されてから字の勉強させて貰ったからな。」
才人の脳裏には、子ども達に混ざってミラルドから勉強を受けた時の事が過ぎる
意外な所で役に立ちました、と改めて彼女に感謝した
「ほぅ、ちゃんと勉強の成果は出てるようだな。」
「ミラルドさんの教えが上手ですからね…クラースさんは専門すぎてチンプンカンプンだし。」
「よく言われる…私としては解り易く説明しているつもりなのだがな。」
そう言って、二人は笑いあった…その様子を不思議そうにタバサは見つめる
彼等はメイジと使い魔という関係の筈なのに、全然そうは見えないからだ
「さて、勉強は此処までにして…昼食を食べに行くか。」
ようやく此処で区切りを入れると、クラースはテーブルの上の片づけを始めた
タバサも片づけを始める中、才人はある事についてクラースに話した
「ああ、それなんですけど…さっきマルトーさんから、厨房に来るようお誘いがありましたよ。」
「そうか…なら、今日も厨房の連中に見せてやるかな。」
そんな中、タバサは自分の荷物を片付け終えると先に図書館から出て行こうとした
折角だし…才人はタバサに向かって呼びかける
「タバサ、お前も来るか?来たら面白いもんが見えるぜ。」
「…面白いもの?」
「まあ、来れば解るって…美味いもんも食えるし。」
ですよね、と才人がクラースに振ると、ああ、との返事が返ってきた
それが何の意味かよく分からないタバサだが、美味しい食べ物というのには興味を持った
断る理由も特にないので、頷いて答える
「決まりだな…じゃあ、厨房に行くぞ。」
こうして、三人は厨房に向かう為に図書館を後にした
111TALES OF ZERO 5/12:2010/04/17(土) 14:01:27 ID:4smSSkLj
「おお、来たか。我等の剣と本よ!!」
三人が厨房に入ると、魔法学院の食を纏めるコック長のマルトーが出迎えてくれた
他のコックやメイド達も好意的に、三人を受け入れている
「我等の…剣と本?」
「ああ、何かあの決闘以来俺達此処じゃ人気らしくてさ…皆からそう呼ばれてるんだ。」
平民が魔法を使う貴族を倒したという事は、彼等にとって賞賛に値する事であったからだ
しかし、メイジ(と周囲から思われている)のクラースも受け入れられているのは、それだけではない
「我等の本よ、今日も俺達の知らない料理を見せてくれ。」
「ああ、解った……じゃあ、今日はアレを作るとするか。」
空いているスペースへ歩み寄ると、クラースは包丁を手に取って料理を開始する
「…料理?」
「そ、クラースさん料理得意でさ…前に披露したら大受けだったんだ。」
「はい、どの料理も絶品ですし、何よりマルトーさんが唸るくらいですからね。」
続けて答えてくれたのは、シエスタだった…仕事を終えて一旦戻ってきた所だ。
「こんにちは、才人さん…それに、ミス・タバサもいらっしゃったんですね。」
「ああ、俺達が誘ったんだけど…悪かったかな?」
「構いませんよ、貴方達二人の紹介ならマルトーさん達も納得してくれますでしょうし。」
取りあえず、料理が完成するまで気長に待つ事にした
半時間後…才人にとって馴染みのある匂いが厨房に漂い、完成した料理がテーブルに置かれる
「これが今回の料理か…我等が本よ、これは何という料理だ?」
「これは遥か東の地で秘伝とされている方法で作られている、カレーライスというやつだ。」
そう、クラースが作ったのはカレーだった…あの短時間でよく出来たなと、才人は思った
周囲を見回してみると、誰もカレーの事など知らないようである
「ほほぅ、カレーライスというのか…どれ、一口…。」
スプーンで一口分すくうと、マルトーはそれを口の中へと入れた
ある程度口を動かした後、急に動きが止まり…そして…
「むっ…こ、これは…辛い、辛いがそれだけじゃない、この辛さは舌を刺激するだけでなく、体の隅々まで行きわたっていく!!」
料理漫画のように解説しながら、マルトーは夢中になってカレーを食べ始める
豪快にカレーライスを全て食べきると、スプーンと皿を置いて手を合わせた
「ふぅ、ご馳走様でした…しかしまぁ、今日も驚かされちまったな、我等の本には。」
「グルメマスターの称号は伊達ではないという事さ。」
「グルメマスターか…料理人にとって憧れの称号、まさかお前さんが取得しているとは驚きだな。」
この世界でも、その称号の価値は料理人達にとって高く評価されている
クラースが彼等に受け容れられたのは、この料理の腕によるものが大きい
「流石、グルメマスター…此処まで来ると、正に至高の料理だよな。」
「いや、至高より究極だろ、この場合。」
「何にせよ、魔法も凄くて料理も凄いってんだもんなぁ…偉大だぜ。」
わいわいと、周りのコック達がクラースの事を褒め称える
クラースもクラースで、テンションが高くなっているのか上機嫌である
「フフフ…そう、歌って踊れて召喚術も使えて、更に料理も出来るクラース・F・レスターとは、私の事だ〜〜〜!!!!!」
遂には両手を挙げて高々とポーズを取る始末…しかし、マルトーを含めた全員が、拍手喝采を送る
「「「…………………。」」」
目の前の異様な盛り上がりぶりに、三人はとてもついていけなかった
シエスタと才人は苦笑いし、タバサはジッと見つめるだけである
「というわけで…今日の昼ご飯はカレーだぞ、二人とも。」
くるりと、此方に振り向いたクラースは二皿についだカレーを差し出した
「あ、はい…じゃあ頂きます。けど、まさか此処に来てカレー食べれるとは思わなかったなぁ。」
椅子に腰掛けると、馴染みのあるカレーをスプーンですくって食べ始めた
モグモグと口を動かすが、しばらくしてその動きが止まる
「うっ…か、カラッ、滅茶苦茶辛いっスよこれ。」
「ああ、本場仕込みのカリーだからな…しかし、癖になるだろ?」
そうは言っても、辛いものは辛かった…隣にいるタバサは平然と食べているが
み、水…と呟きながら飲み物を探していると、クラースはフルーツジュースを差し出した
「此処では飲み物は酒が主流だが、君は未成年だからな…これで我慢してくれ。」
そう言う間にも、飲み物を欲する才人はフルーツジュースを飲み干した
クラースもまた自分の分をついで席に座ると、昼食を食べ始めた
112TALES OF ZERO 6/12:2010/04/17(土) 14:02:55 ID:4smSSkLj
午後からは授業はなく、生徒達はそれぞれ自由に時間を過ごしていた
昼食を終え、ルイズと合流したクラースは彼女に個人授業を行っている
「良いか、落ち着いてやるんだ…魔法を使うのに必要なのは精神力と集中力だからな。」
「解ってるわよ、それくらい。」
解りきった事を言われて、ルイズはクラースに向かって怒鳴る
二人から離れて、才人とタバサが見学していた…最も、タバサは本を読んでいるが
「何であの子まで一緒にいるのよ…先生はさっきまであの子と一体何を…。」
「ほらほら、文句は後で聞いてやるから…まずは、目の前の事に集中するんだ。」
クラースの言葉に話はそこまでにして、ルイズは目の前の標的に目をやった
それは、魔法練習の為にクラースが作った藁人形だ
「さあ、ルイズ…ファイアーボールを唱えてみるんだ。」
軽く頷くと、ルイズはルーンを唱えだした…落ち着いて、落ち着いて…と、心の中でも唱えている
そして、ルーンを唱え終え、目標に向かって杖を振るった
直後に爆音が響き、目標となっていた藁人形は木っ端微塵に吹き飛んだ
「おお、人形が吹っ飛んだ……で、あれってファイアーボールなのか?」
「違う。」
確かに魔法は発動し、藁人形に命中した…が、あれはファイアーボールではない
その名の通り火球を飛ばす魔法なのだから…決して爆発する魔法ではない
「ああ、もう…どうして成功しないのよ!!」
失敗した事に腹を立て、地団駄するルイズ…クラースは爆破された藁人形を見て、口を開いた
「そうだな…まあ、今のは10点といった所だな。」
クラースの評価を聞いて、ルイズは目を丸くさせた
まさか、これくらいで得点がもらえると思わなかったからだ
「確かに、ファイアーボールは発動しなかったが、目標には当たったからな…努力点というやつだ。」
今までのルイズの魔法は、目標とは見当違いの場所が爆発を起こしていた
木だったり、壁だったり、噴水だったり…今だって、周辺の土が抉られている
今のは珍しくも目標に当たった…それを評価しての10点である
「そう…ま、まあ、慰めぐらいで受け取っておくわよ。」
初めて魔法の事で褒められたのに、素直に嬉しいと言えないルイズ
ふと、ルイズはクラースの召喚術の事で疑問を浮かべた
「ねぇ、クラース先生…先生が使える魔法ってあの妖精みたいなやつだけなの?」
「シルフだ…まあ、前に話したように今はオパールの指輪しかないからな。シルフしか呼び出せん。」
召喚術の話を始めたので、興味を持ったタバサは二人に歩みよった
才人もその後へと続き、クラースは続きを話す
「精霊は多種多様に存在する…地水火風、分子、闇、光、月、そして根源を司るもの、様々だ。」
「そんなに…先生って、それを全部使役してたの!?」
「まあな…しかし、私が精霊達と契約出来たのは仲間達がいたからこそだ。」
クレス達と出会ったからこそ、彼は偉大な召喚士としてその名を残す事が出来たのだ
出会わなければ、その名が知られるどころか、召喚術が完成していたのかどうかさえ危い
「ふーん…ねぇ、私でも先生の召喚術が使えたり出来るの?」
「どうかな。私も数々の手順を踏んで使えるようになったし…簡単に使えるのはエルフぐらいだな。」
実質、前にハーフエルフであるアーチェは自分が契約した精霊を簡単に召喚してみせた
しかも三体同時召喚まで…あの時ほど、エルフとの差を実感して涙目になりそうだった事はない
「そう…なら、良いわ。先生みたいにそんな悪趣味な刺青と格好はしたくないし。」
「またそんな事を…良いか、これは私が研究に研究を重ねた末に考案した召喚士の…。」
「失礼するよ。」
そんな時、彼等の耳にキザったらしい声が聞こえてきた
振り返ると、そこにはギーシュの姿があった
「ギーシュ、何であんたが…。」
「僕はミスタ・レスターに呼ばれて来たんだ…君の力を貸して欲しいってね。」
「ああ、もうそんな時間か…じゃあ才人、始めるか。」
突然、自分が名指しされた事に驚く才人…クラースは道具袋に手を伸ばした
一体何を…そう聞く前に、クラースはロングソードを取り出した
「さあ…剣の稽古の時間だ。」
113TALES OF ZERO 7/12:2010/04/17(土) 14:05:33 ID:4smSSkLj
「だ、大丈夫なのかな…俺。」
ロングソードを両手で持ち、才人は目の前の相手を見つめる
そこには、ギーシュが作り出したワルキューレが一体佇んでいる
「準備は良いか……よし、始めてくれギーシュ君。」
「解りました…行くよ、才人。」
クラースの言葉に、ギーシュはワルキューレを操りはじめた
剣を構え、ワルキューレは才人に接近する
「わっ、来た!?」
向かってくるワルキューレ…一気に間合いをつめ、剣を振り下ろしてくる
咄嗟に才人は剣を構え、ワルキューレの攻撃を受け止めた
「くっ…このっ!!」
左手のルーンが輝く…受け止めた剣を弾き返し、バックステップで才人は後ろに下がった
そして、反射的に決闘の時に見せたあの技を繰り出す
「魔神剣!!!」
剣を振り払うと、剣圧がワルキューレに向かって地面をかけていく
その一撃を受けたワルキューレは、ごとんと地面に倒れこんだ
「おおっ、あれだ…あの時、僕のワルキューレを吹き飛ばした…。」
ギーシュはまたあの技を見て驚いていた…それはルイズも同じである
「あれって、一体どういう仕組みで放てるの?魔法?」
「そうだな…解りやすくいえば闘気と言う、人間の中にあるエネルギーを剣に集中させ、剣圧として飛ばしているんだ。」
解るような、解らないような…とりあえず、魔法とは違う事は理解した
その間に才人はワルキューレに接近すると、続けて技を繰り出す
「飛燕連脚!!!」
二連撃の蹴りと剣による突き…その攻撃に、ワルキューレは破壊される
「ああ、僕のワルキューレが…。」
「はぁ、はぁ、はぁ…ふぅ。」
落ち込むギーシュに対し、才人は呼吸を整えて剣を振るう
一度、二度…と剣を振り回し、最後はくるりと回して高々と掲げる
「それにしても…まさか、僕のワルキューレを使って剣の稽古とはね。」
そう、ギーシュが此処に呼ばれたのは、才人に剣の稽古をさせる為だった
クラースが帰ってきた時に、彼は彼らしい長い謝罪を行った
その全てを振り返ると長くなるので省略すると、彼は何でもすると言ったのだ
自分に出来る事でお詫びがしたいと…その結果がこれである
「ほぼ実戦に近い状況で才人を鍛えられるからな…今後の為に鍛錬は必要だ。」
この未知の世界にある脅威…それに備える為に
いざという時は、才人は自分自身でその身を守らねばならないから
「さて…ギーシュ、次を出してくれ。」
「解りました…今度は負けないよ、サイト。」
再びギーシュは才人に向かって薔薇の杖を振った
花びらが一枚、地面に落ちて新たなワルキューレを生み出す
「次か…よし、こい!!」
一体倒して自信がついたのか、剣を構えなおして才人は新たなワルキューレに挑む
相手の攻撃をかわし、慣れているかのように剣技を繰り出す
「(あの剣技、やはりアルべイン流…動きも、何処となくクレスに似ているな。)」
そんな才人の動きを見ながら、クラースは考えを巡らせる
今の彼は剣を持った事のない、素人とは思えない動きを見せている
「(まともに剣を振るえなかった彼がああなるとは…伝説のルーンの力とは凄いな。)」
クラースは左手の甲を見る…そこには、才人と同じルーンが刻まれている
同時に、オスマンから聞かされた話を思い出した
114TALES OF ZERO 8/12:2010/04/17(土) 14:06:52 ID:4smSSkLj
『ガンダールヴ?』
『そうじゃ、お主らの手に刻まれしルーンはかつて、伝説の使い魔に刻まれしルーンなのじゃ。』
帰って来た後、クラースはコルベール経由でオスマンに呼び出された
そこで、自分と才人に刻まれたルーンが伝説の使い魔のものである事を知らされた
『そのルーンを宿した使い魔は、ありとあらゆる武器を使いこなしたという伝説があるでな。』
『成る程、コルベール教授が言っていたのはそれか…それなら、才人の事もある程度納得出来る。』
決闘の時に見せた才人の力の源を、クラースはようやく理解した
が、すぐに新たな疑問が生まれる
『そんな使い魔のルーンが刻まれたのは…ルイズが召喚したからですか?』
『解らん…その辺の事は全く解らんのじゃ。何故ミス・ヴァリエールなのか…』
うーむ、とオスマンが唸る中、クラースはその答えの手掛かりについて考えた
爆発しか起こらない魔法、異世界人である自分達を召喚した…
そして、伝説の使い魔のルーン…彼女は他のメイジとは違った、特殊なメイジなのかもしれない
『兎に角、お主だけには伝えておこうと思ってな…じゃが、くれぐれも…。』
『解っています…時がくるまでは誰にも言うな、ですね。』
『うむ、これが公になれば色々と不味い事になるからの…当然君達もじゃ。』
この事は、ルイズと才人にも秘密にしておいた方が良いだろう
話した所で、今はまだその事実を受け止めきれないだろうから
『ところで…ミスタ・レスター、お主等は一体何処から来たのじゃ?』
『何処と言われても…私は貴方達が言うロバ・アル・カリイエから来たのですが…。』
建前上の、本来自分達の出身地ではない東の国の名を口にする
『では、君がグラモン家の息子と決闘した際に見せたあれ…あれは一体何なのじゃ?』
『あれは…東で生み出された新たな魔法のようなものです。事情により詳しい事は言えませんが。』
召喚術の詳細を言えず、そういう事で誤魔化そうとする
だが、オスマンはそれで納得したようではなく、鋭い眼差しを向け続けている
『そうなのかのぅ…ワシにはあれは魔法とは思えんのじゃがなぁ。』
『………。』
クラースは思った…この老人に、本当の事を話すかどうかを
しかし、彼は学院の最高責任者で国との繋がりもある…迂闊に話さない方がいいのではないか
そう思考を巡らせていた時、ノックの音が室内に響いた
『む、誰じゃ?』
『私です、オールド・オスマン。』
ドアが開き、ミス・ロングビルが学院長室に入ってくる
『王宮の勅使、ジュール・ド・モット伯が御出でになられたのでお伝えに来たのですが…。』
『おお、そう言えば今日じゃったな…忘れておったわい。』
そう言うと、改めてオスマンはクラースの方を見る
『すまんな、王宮からの使いが来たようでな…話はこれくらいにしようかの。』
『はい…では、これで…。』
取りあえず話が終わったので、クラースはすぐに退室しようとする
その際、ミス・ロングビルがジッと見つめている事に気付いた
『ん、何か?』
『あっ、いえ…素敵な指輪をされていると思ったので…。』
指輪…とは、クラースが嵌めているオパールの指輪の事である
唯一の契約の指輪なのでなくさないよう、クラースは肌身離さず身につけている
『これか…これは、私が魔法を使う上で重要な術具なのでね。』
『そうですか…でしたら、さぞ貴重な品なのでしょうね。』
そう言ったロングビルの目が、一瞬獲物を狙う獣のように見えた
瞬きすると、そこには普段彼女がする美しい表情があった
『ふむ……では、オールド・オスマン、それにミス・ロングビルも…失礼。』
気のせいだと思い、二人に一礼するとクラースは学院長室を退室した
しばらくして一息入れると、後ろを振り返る
『(オールド・オスマン…流石この学院の学院長をしているだけあって、鋭いな。)』
それに、普通の人とは違うオーラと言う者を纏っているような気もする
侮れない…そう思った時、扉の向こうから大きな音が響いた
『あだっ、ミス・ロングビル、年寄りをもっといたわらんかい。』
『オールド・オスマン、今回ばかりは我慢の限界です。貴方は何度セクハラすれば……。』
ロングビルの怒声とオスマンの情けない声が聞こえてくる…そこに先程の威厳は微塵も無かった
自分の勘違いだったか…等と考えつつ、クラースはその場を後にするのだった
115TALES OF ZERO 9/12:2010/04/17(土) 14:08:51 ID:4smSSkLj
「…生、クラース先生!!」
ルイズの声が聞こえ、クラースはそこで回想を中断して顔を上げた
「どうしたの?何か考え事してたみたいだけど…。」
「ルイズ…いや、何でもない。さて、才人の方は…。」
彼女の質問をはぐらかして才人の方を見ると、彼の周りにワルキューレの残骸が点在していた
クラースが回想している間に、既に6体のワルキューレを倒していたのだ
そして、七体目のワルキューレとの模擬戦も終わりを告げようとしていた
「魔神飛燕脚!!!」
魔神剣と飛燕連脚を組み合わせた奥義…それが、最後のワルキューレに炸裂する
前回同様、ワルキューレは奥義を受けて粉々に砕けちった
「ま、負けた……こうまであっさり倒されると、僕は自信をなくしそうだよ。」
今自分が作れる7体全てを倒された事に、ギーシュは軽くショックを受ける
「へへ、楽勝だ…ぜ?」
得意げになる才人だが、突然彼の身体を疲労感が襲ってきた
自身を立たせる事が出来ず、地面に尻餅をつく
「サイト、大丈夫?」
ルイズが心配そうに声を掛けるが、前のように気絶はしなかった
立ち上がろうにも身体が上手く動かせず、地面に座りこんだままになる
「な、何か急に疲労感が…何で?」
「無理をしたな…まだ十分な鍛錬もしていないのに、奥義なんか使うからだ。」
クラースはアップルグミを取り出して、才人に渡した
グミを頬張る才人…疲労感もある程度なくなり、立ち上がる
「あ、ありがとうございます……で、それってどういう事ですか?」
「そもそも奥義とは、元となる特技を極限まで鍛えた上で初めて使えるものだ。」
「だから、まだ鍛錬の足りない貴方にはそれを使いこなす事が出来ない…。」
クラースの言葉を理解したタバサが補足する…その補足が正しい事を、クラースは頷いて答える
「極限までって…どれくらい鍛えれば良いんですか?」
「そりゃあ、使用率100%にすれば良いんじゃないかい?」
身も蓋もない言い方をすれば、ギーシュの言うとおりである
「まあ、君に奥義はまだ早い…鍛錬を続けるんだな。」
「はーい…まあ、こうやって剣を使うのも何か楽しいし。」
剣を振るう事に楽しさを覚えた才人は、剣を振り回す
素人に比べれば上なのは確かだが、クレスに比べるとまだまだ動きが雑である
今はまだ見習い剣士…しかし、今後も鍛えればそれなりに上達するだろう
「ああ、此処でしたか。」
そんな時、本塔の方からコルベールが此方に向かってやってきた
「コルベール先生、どうして此処に?」
「いえ、ミスタ・レスターが此処にいると聞きましてね…それにしてもこれは?」
眼鏡を掛けなおしながら、コルベールは散乱するワルキューレの残骸を見る
「ああ、才人の鍛錬にとね…彼のワルキューレを使わせてもらった。」
「結果は、僕のワルキューレが前回同様全部やられましたけどね。」
「ほほう、それはすごい。流石はガンダー…モガッ!?」
危うくガンダールヴの事を話しそうになったコルベールの口を、クラースが止める
「えっ、何?ガンダー…。」
「気にしなくて良い、こっちの話だ。そんな事より…コルベール教授、私に何か用かな?」
「モガモガ…は、はい、今日もミスタ・レスターの話を伺いたいと思いまして…。」
一言一言を強調した言い方に、自分の失態に気付いたコルベールは本題に移った
彼は時折、クラースから色々と故郷の事について話を聞きにやってくる
情報交換の為、故郷の事をはぐらかしながら彼との交流を行っていった
「そうか…皆、今日は此処までだ。私はコルベール教授の所に行ってくる。」
「解ったわ…でも、この前みたいに夜遅くまでにはならないでよ。」
了解…と答えると、クラースはコルベールと一緒に彼の部屋へと向かっていく
そしてこの場がお開きになったので、4人もそれぞれの場所に帰っていった
116TALES OF ZERO 10/12:2010/04/17(土) 14:12:33 ID:4smSSkLj
「うーむ……遅くならないようにとは言ったんだがな。」

その日の夜、そろそろ学院の者達が眠りに着く時間……
女子寮へ向かって歩きながら、クラースは呟く
コルベール教授と話しているうちに、すっかり夜が更けてしまった
「色々興味深い話は聞けたが…これでは、またルイズに説教されてしまうな。」
頭の中で自分が説教される姿を浮かべ、苦笑するクラース
そろそろ女子寮が見える…そんな時、ドサッという音が聞こえた
「ん、何だ?」
それは女子寮から聞こえ、気になったクラースは足を速める
その間にも、小さな悲鳴と共に再び落下音が聞こえてきた
「まただ…一体何が…。」
ようやく女子寮が見え…クラースはジッと暗闇の先を見てみた
すると、女子寮の前で男が二人、黒焦げになって倒れていた
服装からして、学院の男子生徒のようである
「これは…まさか、何者かが学院に…。」
一瞬、そう思ったクラースだったが……
「キュルケ、そいつは誰なんだ!恋人はいないっていってたじゃないか!!」
突然、上空から声が聞こえ…クラースは上を見上げた
女子寮の三階付近…ある一角で三人の男子生徒が浮かんでいる
「なんだ、あれは…一体何をしているんだ?」
まさか、覗き…だとしたら、何て大胆な
その間にも押し合い圧し合いしながら何か叫ぶ彼等だが、突如炎が彼らを襲う
炎に飲まれ、魔法を維持できなくなった彼等は地面に落下した
「おおっ、落ちた…大丈夫なのか、彼等は?」
放っておく事も出来ず、取りあえず彼等の元へと駆け寄ってみる
焼かれて三階から落ちたにも関わらず、一応彼等は生きていた
ピクピクと動く5つの物体…その一つにクラースは近づく
「おい…大丈夫か?」
「畜生、キュルケの奴…やっぱり俺の事は遊びだったんだな。」
クラースの言葉が聞こえてないのか、生徒は独り言を呟く
キュルケの名が彼の口から出たので、他の四人を見てみる
「よく見れば…全員キュルケの取り巻きの男子生徒達だな。」
恋多き女性を自称するキュルケが、何人もの男子生徒をキープしているのを知っている
此処にいるのは、よく授業や食事の時などに彼女とよくいる美青年達だ
「んん…あっ、お前はゼロのルイズの使い魔!?」
その時、倒れていた生徒がようやくクラースの存在を認知した
「ようやく、私に気付いたようだな…大丈夫か?」
「くそぉ…あんたももう一人の使い魔みたいにキュルケとよろしくやるつもりなんだろ?」
「もう一人の使い魔…才人の事か?彼がどうしたんだ?」
「とぼけるなよ、さっきもう一人の使い魔がキュルケと一緒にいるのを見たんだぞ。」
彼の話から察するに、今キュルケの部屋には彼女と才人がいるらしい
こんな夜遅くに、歳若い少年少女が一緒とは…
「教育上良くないな…ルイズとの事もあるし、見過ごすわけにはいかんな。」
キュルケとルイズの家の関係を思い出し、女子寮の中へ入ろうとする
その前に、此処に倒れた五人を放っておくのは忍びない
「そうだ…君、彼等にこれを食べさせてやってくれ。」
クラースは道具袋からアップルグミを取り出し、五つ分を彼に渡す
「それを食べれば元気になる…君の分もあるからな。」
じゃあな、と後の事をその生徒に任して女子寮の中へと入っていった
この少年がギムリである事をクラースが知るのは、まだ先の話である
117TALES OF ZERO 11/12:2010/04/17(土) 14:16:27 ID:4smSSkLj
「さて…此処に才人がいると言われて来てみれば…。」
女子寮に入り、三階に上がってキュルケの部屋の前にクラースはやってきた
中に入ると、際どい下着をつけたキュルケ、その彼女に押し倒されている才人がいる
「あら、ミスタ・レスターじゃありませんか。」
「く、クラースさん…助けて……。」
キュルケの胸に埋もれながら、クラースに助けを求める才人
そんな彼の姿に、クラースはため息を吐いた
「まったく…見損なったぞ、才人。まさか君がそんなに節操がない男だったとは…。」
「ち、違いますよ。俺はただ、帰りが遅いクラースさんを迎えに行こうと思って…そしたら…。」
キュルケのサラマンダーに捕まり、此処に連れ込まれてしまった…
そう言おうとした時、キュルケが更に胸を押し付けた
「見ての通り、私達は取り込み中ですの…何でしたら、ミスターも一緒に如何ですか?」
「悪いが遠慮させてもらうよ。それに才人にとっても教育上良くないから連れ帰らせて貰う。」
即答すると、クラースは二人に歩み寄ってあまり乱暴にならないように引き剥がした
「さあ、帰るぞ才人…こんな所ルイズに見つかったらどやされるぞ。」
「は、はい…でも、どやされる前に手と足が出そうですけど。」
彼女が怒ると言葉より先に手と足が出る事は、才人自身が身をもって経験している
違いないな、そう言って二人はキュルケの部屋から立ち去ろうとする
「ちょっと、お待ちになって…ミスタ・レスターは読書がお好きなのですよね。」
帰ろうとする二人を呼び止めると、キュルケは近くにあった箱に手を伸ばした
がさごそと中身を探し、その中からあるものを取り出す
「でしたら、これを差し上げますわ…私には不要な物ですので。」
「ん、それは?」
「これは『召喚されし書物』と言って、我が家の家宝ですの。」
そう言って、手に持っている本をクラースに差し出す
気になったクラースはそれを受け取ると、どんなものかと見てみる
「召喚されし書物って…どういう本なんだよ。」
「何でも、魔法の実験中に偶然召喚された物だそうよ…それを、私のおじい様が買い取ったの。」
「……これは鍵が掛かっているな。」
よく見ると、これはケースになっていて問題の本はこの中に入っているようだ
だが、クラースの言うとおり鍵が掛かっているのでケースは開かない
「鍵なら此処にありますわよ。」
何時の間に忍ばせていたのか、胸の谷間からケースの鍵を取り出す
わざわざ本体と鍵を分けたという事は、単にプレゼントするというわけではないらしい
「成る程、本体はくれると言っても鍵までとは言ってないな…で、交換条件は?」
「察しが良いですわね。今宵私と付き合っていただければこの鍵を差し上げますわ。」
キュルケとしては、クラースを自分の男にしたいとの魂胆である
周囲の男子生徒や教師とは違うその知的な所と魔法、そして大人の雰囲気に惹かれたからだ
えっ、俺は…等と呟く才人を他所に、クラースは本をキュルケに突き出す
「そういうのならお断りだ…これは返す。」
キュルケに本を押し付けると、才人を連れて出て行こうとする
断られると思わなかったのか、彼女は目を丸くして驚く
「えっ、ちょっと…ミスターはこの本が欲しくないの?」
「気にはなるが、そうまでして欲しくはないな…それに、後が怖い。」
女の怒りと恨みは恐ろしい事を、クラースは32年の人生から熟知している
それでも諦めきれないキュルケは、自身の胸をクラースに押し付ける
「そう仰らずに…私、ミスターに十分すぎるほどの興味を持っておりますの。」
「だから、私は……ん?」
しつこいキュルケを一喝しようと、クラースは振り返る
だが、その時初めて彼女が指輪をしている事に気づいた
「キュルケ、その指輪は?」
「これですか?これはこの本と同じく我が家の家宝の一つ、炎のガーネットですわ。」
そう言って、彼女は指に嵌めたガーネットの指輪を二人に見せる
蝋燭の炎に照らされ、宝石は淡い輝きを放っていた
118TALES OF ZERO 12/12:2010/04/17(土) 14:23:18 ID:4smSSkLj
「炎のガーネット?それって唯の指輪じゃないの?」
「ええ、火の魔法の効果を高める作用があるの。普段はおめかし位にしか使ってないけど。」
自分の魔法には自信があるから…ドーピングのような真似はしたくないらしい
ふーんと何でもないように見つめる才人に対し、クラースはジッと指輪を見つめている
「それは…そのガーネットの指輪は……すまん、ちょっと見せてくれ。」
急にクラースは態度を一変させ、指輪をよく見ようと近づいた
だが、そんなクラースにキュルケは抱きつき、顔を近づける
「ただでは見せられませんわ…ねぇ、ミスター?」
「いや、だからその指輪を……。」
クラースの喰い付きに、ここぞとばかりに色気を振りまくキュルケ
先程のように振りほどこうとせず、クラースは戸惑いを見せている
「クラースさん、どうしたんですか?その指輪が一体……。」
才人が尋ねようとした時、後ろのドアが突然開いた
誰だろう…と、才人が振り返り、それを見て驚いた
「る、ルイズ!?」
入ってきたのは、ルイズだった…しかし、それだけで才人が驚いたわけではない
彼女は今、誰から見ても解る様に、どす黒いオーラを身にまとっている
クラースもキュルケも、ルイズが入ってきた事に気づいて振り返る
「ルイズ、丁度良かった。実は彼女が……。」
クラースが何か言おうとしたが、彼女の気を察知して何も言えなくなった
その間に、ルイズがずかずかと二人に近づいていく
「クラース先生…この馬鹿犬なら兎も角、まさか貴方がツェルプストーの色香に惑わされるなんて。」
「ま、待てルイズ、私は唯彼女の指輪が……。」
「物につられたってわけ!!!」
更に怒り出すルイズ…普段人の話を聞かない彼女は、怒ると更に話を聞かなくなる
取りあえずキュルケから離れると、才人に話を振った
「才人、キュルケの指輪に見覚えがないか?」
「ええっ、ちょっと…何も俺に話振らなくても。」
「そうじゃない、よく見てみろ。」
そう言われて、才人はジッとキュルケの指にはめられた指輪を見る
蝋燭の火によって淡い輝きを見せるガーネットに、才人も気付いた事があった
「あっ、そう言われると何処かで見た事が………ひょっとして!?」
「ああ、間違いないと思う…まさか、こんな近くにあったとは。」
二人の会話にキュルケは疑問を浮かべるが、相変わらずルイズは怒ったままだ
「ちょっと、サイトも先生も…この期に及んで言い逃れする気?」
「ルイズ、昼間話しただろう。私の召喚術は契約の指輪を使って行うものだと…。」
「それと今の状況が何の関係があるのよ!!」
怒っているルイズには、クラースの言葉を理解する事が出来なかった
仕方なしに、才人がルイズに解りやすく伝える
「だから、今キュルケがしてんのがクラースさんの契約の指輪かもしれないって事だって。」
「それがどうしたって……えっ、ええ〜〜〜〜〜!!!!!!」
才人の言葉に、ようやくルイズも理解できたらしく、大きな声を上げる
三人の視線がガーネットの指輪に集い、キュルケ自身もそれを見つめる
「これが、ミスタ・レスターの?でも、これって先祖代々から続く品だと聞いていますけど?」
「まあ、似ているだけかもしれんが…ちょっと貸してみてくれないか?」
手を差し出し、クラースはガーネットの指輪を渡すよう頼む
だが、キュルケはそんなクラースの手から指輪をはめた手を遠ざける
「構いませんけど…タダで、というのも味気ないですわね。」
「ツェルプストー、あんた…。」
ルイズの反応を見て笑みを浮かべながら、彼女は少し考える
しばらくして、「そうだわ」という声と共に、ある考えが彼女の脳裏に閃いた
「私のお願い事を聞いて下されば、この指輪を貸してあげますわ…何、簡単な事ですから。」
「お願い事?」
「そう、明日は虚無の曜日、つまりお休みだから……フフフ。」
三人に向けて、キュルケは微笑む…蝋燭の火に照らされたその微笑は、とても艶美なものだった
119名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 14:28:02 ID:4smSSkLj
第六話投稿、無事終了しました
イフリートと契約する指輪、ガーネットはキュルケが持っていました
次回はガーネットの指輪を手に入れる為に、クラースはキュルケと…
それは、次回をお楽しみに
120ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:24:10 ID:yk+2gpmH
御無沙汰しておりました。
3週間ぶりでしょうか。初めましての方も、そうでないかたも、どうもです。
新人さんや懐かしい方々の投下ラッシュが続いているようで、嬉しい限りです。皆さまGJでしたっ!

4月は忙しいですねー。
部署異動に、FF9のアーカイブ発信決定ときたもので!
ひやっほう!な気分でございます。
さて、それでは72幕、投下と参りたく存じます。
15:40より失礼いたします。
今までで一番長い話になってしまいましたので、少々ゆっくり参りますのはご容赦を。
どうかよろしくお願いいたします。
121ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:40:25 ID:yk+2gpmH
投下開始です
----
吸い寄せられるような風。
何枚もの薄くて見えないカミソリが、巻きつくように集まっていく。
飛ばされないように、ただ必死だった。

「くぅっ!?」
「なんと心地よい……満たされていくぅっ!!」

ワルドの魔力が、膨れ上がったのを感じた。
記憶の世界で、白い帆が風を受けて暴れ出す。
避けなくちゃ、そう思うんだけど、思うように動けない。
風に煽られるようにして、足に踏ん張りが利かない……!

「くっ……」
「サァッ!」

ワルドの合図で集められた風の剣が、吹雪のように飛んできた。
流れに、デルフを立ててしのごうとする。
ギィンッって金属と金属が触れあったような音が、世界いっぱいに広がる。

「ワァァァァ〜〜〜〜……」
「くぅぅ……」

押される。見えない風の刃に、押される。
体がどんどん後ろに後ろに下がっていく。
立てたデルフを持った腕が、押し流されて……
まずい、スキができて……

「ルァアアッ!!」
「ぅうわぁぁっ!?」

間一髪、って言うのかな。ほんっとにギリギリだった。
ボクの体より長いデルフの、長いデルフの柄。
なんとか、そこに当たってしのぐことができた……と思いたいなぁ……
腕がかなり重く感じる。
デルフを持つ腕が、いつも以上にずっしりと重い。

「デルフっ!デルフっ!しっかりしてっ!ねぇっ!!」
「……」

デルフは、応えてくれない。
ワルド相手に、ボク一人じゃ勝てそうにない。
だから……

お願い、デルフ。目を覚まして!!


ゼロの黒魔道士
〜第七十二幕〜 足りないならば

「はぁ〜い?よそ見はダーメダメ?ですよぉっと!」
「ぐぁぁあ!?」

目の前に、ワルドの足。それは風よりも速かった。
それがボクを蹴り上げたとき、一歩も動くことができなかったんだ……
122ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:42:27 ID:yk+2gpmH
「けきゃきゃきゃ!い〜ぃ悲鳴だねぇ〜♪何度でも聞きたいききたいキキターイ!!」

跳ねながら、落ちた。
なんとか……まだ、立てる。
大丈夫。ボクは、大丈夫。
でも……

「く……デルフッ!!」

左手に握り締めたデルフは、応えてくれない。
ボクよりも、よっぽど大丈夫じゃない。
自分の思い出したくない記憶を思い出してしまってから、
ずっと大丈夫じゃないんだ……

「……悪ぃ、もうちっとそっとしといてくれや。
 心まで錆ついちまった臆病者の剣のことなんかよぉ……」

……良かった、応えてくれた。
でも、デルフがこんなに弱音を言うなんて……

「デルフは臆病者なんかじゃないよっ!」

臆病者、って言うなら、ボクの方がずっとずっと臆病者だ。
本当のことを言うと、怖くてしょうがない。
今だって、ワルドと戦うことが怖いし、
ルイズおねえちゃんと離れてしまったことが怖い。
怖いから、デルフが必要なんだ。
ボク一人じゃ……足りないから。

「臆病者の根性無しよぉ!
 自分ぇの記憶すら怖がって怯える……最低野郎だっ!
 あぁ、ちきしょ、勇気なんざこれっぽっちも出てきやしねぇ……」

デルフの声が、泣きそうに震える。
左手を伝って、その悲しみが聞こえてきたんだ。
自分が、大好きだった人が、自分の目の前で死んで、それが守れなくて……
すごく、分かる。
ボクだったら、きっと、耐えることなんてできないだろうなって思う。
ルイズおねえちゃんに、タバサおねえちゃん、ジタンに、ダガーおねえちゃんにエーコ……
みんな、みんな、目の前で死なせてしまったらと思うと、怖くてしょうがない。

でも、ボクは……怖く感じなくて済む方法を知っている。

「デルフ……じゃぁ、勇気を、『足せば』いいんだよね?」
「は?」

帽子を、ぎゅっと右手でかぶりなおす。
でも、ボクは、独りなんかじゃ、ない。

「弱っちぃのが寄ってたかって、なーんのご相談?」

いつの間にか、ワルドの影。
本当に、ボク一人だけだったら、絶対逃げだしそうな状況だ。
でも……ボクには、デルフがいる!ルイズおねえちゃんがいる!

「ボクの『勇気』を、足せば良いっ!!」
「ぎょっ!?危なぁいですねぇー……」
123ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:44:26 ID:yk+2gpmH
『足りないなら、足せば良い』。
デルフが言った言葉。それが、ボクに勇気をくれる。
独りじゃないからこそ、足すことができる。
それが、ボクに、勇気をくれる。

「デルフ、言ったよね?
 『相棒に足りないのが速さなら、俺っちが足してやる』って!
 だから……」

小さいかもしれない。全然、これっぽっちも足りないかもしれない。
でも、ボクの左手でほんのり光るルーンがこう言っている気がしたんだ。
『頑張れ』って……なんか、あったかく、そう言っている気がする。
だから、だからボクは……

「ボクの『勇気』、デルフのために使うよっ!!」
「相棒……いや、サー……シャ……?お前か……?」

デルフを握る手に、もう一度ぎゅっと力をこめた。
距離をとったワルドに、付きつけるように真っ直ぐ構える。
ボクは、サーシャさんになれない。
でも……デルフの『相棒』でいたいと思う。
足りないものを、足すことのできる、そんな、『相棒』に。

「あー、くさーい……青くっさーい!!
 くっだらない茶番やってるなら、とっとと死にやがれぇええ!」

ワルドの声が、記憶の中の青空に舞う。
それに答えるように、カミソリのような風が集まっていってしまう……

「……くだらない?茶番だ?」
「デルフ?う、うわっ!?」

デルフの声が、また震えた。
ボクの左手ごと、ぶるぶると、震えだす。
持つのがやっと……ルーンの輝きが、優しいものから、だんだんとまぶしいものに……

「……俺ぁ、生まれてこの方、本気じゃ無かったことなんざねぇよっ!!
 相棒もそうだ!それを……茶番だぁ!?ザケたこと抜かすんじゃねぇっ!!」
「うぉ、まぶしっ!?」
「デルフっ!!」

どんな花火よりも、どんなお星さまや太陽なんかよりも眩しい光が、
ワルドの風なんかも吹っ飛ばすぐらいに明るく破裂した。

「……でる……ふ?」

光の中、ゆっくり、ゆっくりと目をあける。
デルフが……記憶の中のデルフ、いやそれ以上に、輝いていた。
空よりも青い刃が、クリスタルよりも透き通って輝いて……
ガンダールヴのルーンが、それと同じような光で輝いている。

……そっか、サーシャさんが、足してくれたんだ……
なんとなく、そう思った。
右手で、ルーンをさする。
ボクには、みんながいる。
ボクは、足りないことだらけ、でも、まだまだ足すことができる。
それが、ボクの、ボク達の勇気になる。
だから、ボクは……
124ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:46:25 ID:yk+2gpmH
「相棒、待たせたなぁ!すまねぇ、ちょっくら沈んでた!
 さぁて、見せ場だぁ!派手に遊んでやろうかっ!!」
「うんっ!」

「五月蝿いですね〜……弱っちいのはボクちんに楽しく壊されちまいなぁっ!!」

もう、怖くない。
さぁ、ワルドを、フォルサテを倒すんだ!
ボクに勇気をくれる、みんなのために!

----
ピコン
ATE 〜波沫魅漢粋(なみしぶき みせるおとこの こころいき)〜

粘度の高い液体が混じる音が、絡みつく。
鍛えられたはずの筋肉が弛緩し、重力に引かれるがまま放り出され、
紅潮した頬を、汗混じりの涎が逆さまに伝って涙と合流し、地面へと落ちていく。

「うひょひょ〜!ほな、手始めに身体検査と参りまひょかー?」
「うぐ……」

トリスタニアの路地裏で、彼女は辱められていた。
抵抗しようとすればするほど、バネのように刺激は蓄積され、感じてはならぬ快楽となって弾け飛ぶ。
寄せては返す感覚の波の中、アニエスの意識は辛うじて耐えていた。


「こうねー……一気に剥くっちゅうのもワイルドで男前やねんけどー……
 焦らしに焦らして丁寧に一枚一枚っちゅうのも捨てがたい……
 あぁ、今日はどっちでイッたら、えぇのんや……オルちゃん、迷っちゃ〜う♪」
「ひ……ふぁ……」

八本の足が、一本一本執拗に絡みつく。
鎧の下の柔肌までも、器用にこすりつけながら分け入り、
吸盤でもってズウズウチュルリと吸い尽くす。
湿気を帯びた熱い吐息が、その度にアニエスの口からこぼれ落ち、
魂までも手放してしまいそうになる。

「ほな、まずはその『ガッチガチやぞ!』な鎧から外させてもらいまひょかー♪
 うひょー!ひょひょひょひょひょひょ      ひょぐぉっ!?」

唐突に下劣な笑いが途絶えると、宙吊り状態のアニエスを持ち上げていた縛めが解ける。
顔にわずかにかかるは、しっとりと優しい水飛沫。
蛸頭で弾けたそいつが、アニエスを自由にした。

「ひぁ……っ?」

感じたのは、わずかながらの浮遊感。
それが『落ちている』ということと気付く前に、アニエスは何者かの腕の中に落ち延びる。

「散々、暴れてくれたようだね、このタコ助野郎が……」

腕の主が唸る。
あくまでも紳士的に、しかし、抑えきれぬほどの怒気をそのバリトンにこめて。

「水玉ちべたいやないかーっ!おどれ、誰やっ!?   ちゅうかタコ違うッ!?オルちゃんやっ!?」
「知らざれば、言って聞かせてみしょうぞ己が名……その耳かっぽじって震えながら聞くが良いっ!!」

アニエスは、恐々と目を開けた。
そこに映った人物は……知らざる者では無かった。
125ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:48:25 ID:yk+2gpmH
「一つ!人妻、メイド、お姉ちゃんっ!来るものは決して拒まず!」

黒髪つややかに油が乗り、ピンッと伸びたモミアゲの先まできっちりと整えられている。

「二つ!フラれたところで決して諦めず!」

モミアゲ同様、奇妙なカールを描いた眉毛と髭が、男のゆるがなき奔放さを示していた。

「三つ!みーんなみんな吾輩の嫁っ!! それを手篭めにしようとしやがったタコ助野郎っ!!」

アニエスの体を、蛸の縛めから救ったのは、
決して善玉とは呼べない男。むしろ悪玉と呼ぶが常道というような男。

「退治てくれよう、このジュール・ド・モットぉっ!!」

呼ばれて無いのに出てきやがりましたは、
トリステインが誇る助平、変態、お下劣なる蝦蟇親分。

「も……っと……伯?」

アニエスは戸惑う。
何故、貴族が、自分を救おうとしたのかと。
何故、こんな男が自分を助けようとしたのかと。

「なんやー、タダのド変態か……」

「お前が言うなっ!!それに私は変態という名の紳士だっ!!
 大体貴様ぁ、触手でしかも粘液とな!?さらにさらに複数相手とな!?
 ぬるぬるのぐちゃぐちゃと……なんとうらやまけしからんことをっ!?しかもこの私の領域でだと!?
 羨ましさ余って憎さ八百万倍っ!許すまじからずにべくやっ!?」

「なーに言うとんかサッパリやわ」

「許すん!!」

「いやどっちやねん」

「な……ぜ……」

訳が分からない、というのはアニエスも同じであった。
ルイズやギーシュといった例外は別として、未だ多くの貴族を信じられなかったアニエスにとって、
この状況は、脳が過剰な感応器の処理に追われているとはいえ、理解しきれるものではなかったのだ。

「案ずめされるな、レィディ!淑女の危機を救うのが古来より男の役目!」
「あんたの場合、下心もあるでしょうがっ!」

グワンッとい銅鑼にも似た音と共に、別の影が舞い降りる。

「うぉっ!?あ、頭が頭痛で目ばちこ火花ぁ〜!?」

「あれま、しぶといタコねぇ……調理のしがいがありそうだわ」
ズドンッとばかりに地面を踏みしめた巨漢。
隆々たる筋骨を体のラインの浮き出そうなピッチリした衣服と、
フリルがほどこされたヒラヒラのエプロンに身を包んだ男。
手にはエプロン同様ピンクのハートマークつきのフライパン。
使い込まれた証拠の薄いバターの香りと、丁寧に扱われた証拠の鈍い黒光り。

今日は馬鹿に見知った輩に出会う日だ。
アニエスはフラフラの意識の中そう思った。
126ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:50:26 ID:yk+2gpmH
「すか……ロン……てんちょ……?」
「ノンノンノン!ミ・マドモワゼルと呼んでちょうだいな!」

妙に艶めかしいハイトーンの声が、キンキンと脳に響く。
だが、蕩けそうな感覚に溺れていたアニエスにとって、それはむしろ具合が良かった。
幾分か、脳がスッキリしてくる。

「下心は否定せぬよ。
 しかし、店長が出てくることは無いのでは?私で十分カタは……」

「店の女の子さらわれてて黙ってるミ・マドモワゼルじゃないのよぉっ!!
 大体、あんたも店のツケ溜めたまま久方ぶりすぎるわよっ!!散々妖精さん達口説いておいて!」

「これはしたり!しからば、今宵の労働で対価を支払えぬだろうか?」
「マケても半額!それ以上はニコニコ現金払いしてもらうよっ!」

静かに降ろされながら、男共の会話を聞くに、
こやつらも知り合いであったらしい。
世間は狭いものだと、アニエスは呆れる。
呆れながら、どこか安堵する。

「毛、もじゃもじゃ……
 筋肉、モリモリ……
 男キラーイッ!!オドレらワイのハーレムに寄るんちゃうわーっ!!」
「どこがっ!!」
「あんたのハーレムなのよっ!!」

色欲魔獣の海産物野郎に立ち向かうは、トリスタニアが二人の雄。
アニエスはフラフラの意識の中、どこかそれを頼もしげに見つめていた。

----
ピコン
ATE 〜仲間をもとめて〜

分け入っても、分け入っても、死臭。
墓場キノコの胞子が肺腑を満たすレイスウォール共同墓地。
激しく敵の陣を切り裂いてきた二名の異端者にも、
じわりじわりと死の香りが浸み渡ってきていた。

「ぁーぅー……血がたりなーい……おなかすいたー……」
「くっ……」

群がる敵を、屠れども、屠れども、そいつらは立ち上がる。
極限まで乾燥した骨を軋ませ、爛れ腐れた肉をぶら下げて。
元より屍、屠るというのに語弊もある。
モスフングスの匂いが染みついた墓土を体にまとわせたそいつらは、既に人ではない。
泥人形。人間であった名残が辛うじて残る肉体を媒介とした、泥の塊。
そいつらが群れ襲う様は一つの流体のごとく。まさに、毒の沼。
じわりじわりと、足のかかった異端者共を蝕む、蟻地獄。

「我が使命のため、お前達は処理させてもらう。
 蛮人を導く、崇高なる使命のためにな」

悠然、といった様子で、沼の外側からする声は、偽者のビダーシャルのもの。
先住の力をその体に宿す者達に対し、この土人形望んだものは『緩やかなる死』。
強大な力を一度にぶつけるでなしに、減った分を次々と足していく。
積み重なる疲労と、ごくごく僅かなダメージで、確実に相手を蝕んでいく。
127ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:52:25 ID:yk+2gpmH
「ぁー、イチイチムカつきー……でもツッコむ気力もないー……」

対してこちらは無尽蔵の死者の群れ。
長引けばそれだけ土人形共に分がある。
吸血鬼の少女は改めて不平の声を漏らした。
ビダおにいちゃんこと本物の方のビダーシャルはと言えば、
同じ姿の者に自身の醜い一面を提示され精神的に押されている。
魔法戦となると精神力の差が物を言う。これは大きな痛手だ。

エルザ自身はと言えば、血が足りない。
彼女の精神力の源は、いかに『満ち足りているか』ということ。
単純に言えば満腹感がそのまま出力に繋がる。
これが生物相手の戦ならば、相手の血を啜って回復することもできよう。
が、相手は腐った土くれだ。血の一滴すら通っていない。
普段よりもはるかに消耗の速い戦いに、エルザは舌打ちを打った。
流れが悪い。
泥沼から逃れる術が、見えない。

「安心せよ、お前達の骸も使わせてもら――」
「申し訳ございませんがお客様、お引き取りやがって、もらえますか?」

淀み切った場の空気が、偽ビダーシャルのご高説とやらと一緒に途切れる。
スッと一筋、閃いて流れる鋼が光。
屍共の群れを縫い、真っ直ぐに穿たれる破魔の杭。
ナイフの一本が、土人形の喉を貫いた。

「む?っ――」
「こちらの方々、我々の仲間でございまして」
ザザザン、と土人形が声をする前に、その喉元からナイフの花が咲く。
同じ場所を、正確に、この密集した場で放った腕を持った男は、
銀色の長髪を温い風になびかせて、墓石の上に立っていた。

「糞以下にくだらない妄想ぶちまけていらっしゃるド腐れ脳味噌のお客様は――」
給仕服を着た彼が指を鳴らす様は、さながら特注の品を厨房に指示するようで。
パキィンという小気味の良い音が、淀んだ空気をナイフのように切り裂いた。

オーダーされた品は荒い鼻息と共に。
偽者エルフの背に、熱く湿った風が落ちる。
振り返る、という作業は必要無い。というよりも、できなかった。

「下がっていろ、という話だ」
ギチチと軋む筋肉の音が、肩から腕、腕から手の先へと連なるように拡がる。
瞬間、極限まで溜められたバネは弾け飛び、斧を持った手が風の速さをも越える。

「ぐぁっ……――」
悲鳴が上げられたことは、むしろ奇跡だ。
普通の人間相手ならば、首と胴体が離れたことすら、そのエモノが斧であることすら気付かず死んだだろう。
牛鬼の筋力は、それほどまでに凄まじいのだ。
ましてや、既にトマが投げたナイフで、崩壊点を指摘されている。
その体が粉微塵にバラバラになる間に、悲鳴の音が漏れ出たことこそ奇跡的なのだ。

トマと、ラルカス。
すらりとしたフォーマルな給仕服姿の男と、
猛る筋肉をむき出しにした牛鬼の男。
対照的とも言える二人が、仕事を終えて駆けつけた。
この事実は、エルザにとってまさに僥倖と呼べるものだった。
128ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:54:25 ID:yk+2gpmH
「あー……ちょうどいいところにー……ラルちゃん、ちょい顔かしてー……」
「ら、ラルちゃん?」
勝手につけた仇名で呼びながら、牛鬼の身体にしがみつく。
体格で言えば巨象と子猫。
一種異様とも言えるハグである。

「ぬっふっふ〜……この際味は気にしなーい……ちゅぱっ」
「ぬぉっ!?」
ぴちゃぴちゃ、ぺろぺろ、
とラルカスの筋肉のと筋肉の隙間を縫うように、その小さく可憐な舌先が這う。
本当ならば、血を飲むのが一番、それも若い女のものが一頭上等なのだが、
事態が事態だ。万が一にもラルカスに貧血になられても困る。
汗は血ほどではないが、その想いを肉体の外に出す魔力の源。
少々牛臭いのは仕方が無い。
一舐めするごとに、毛細血管の一本一本が踊り出し、細胞の一つ一つが歌い出すのが分かる。
涸れかけていたエルザの力が、フェニックスのように甦る。

「ぷっはぁあぁーっ!生き返ったぁあっ!!エルザ復活ぅぅ!!」
満タン、とまではいかないが充分。
エルザの顔に、再び少女のような屈託のない笑顔が戻った。

「遅くなりました、孤児院から城までは遠くて……で、エルザ様、どういう状況で?」
「ビダお兄ちゃんは少しお疲れ。あとは馬鹿1匹と、そいつが動かしているまっずそうなのたっくさん!」
「理解いたしました」
トマおにいちゃんの理解は早くて助かる。
エルザはコクンと頷いた。
賢い人は味方にするに限る。
ムラサキヨモギの香りがする夜を思い出し、改めてそう思った。

「馬鹿、とは……我のことか?」
バラバラになった、偽エルフの首が再び形作られ、持ち上がる。
時の流れが逆になったように、元の姿へ。
やはり、本体を、ビダおにいちゃんの血を吸った土人形を叩かないとどうしようも無いようだ。
エルザはふんっと肩をすくめた。
気付けば、また屍人や偽エルフに囲まれている。

「あんたに決まってるでしょうがっ!!」
そんな中、エルザは吠える。
味方は賢い方が、敵は馬鹿な方がありがたい。
だから、今はものすごくありがたい状況だった。
その安心感を背に、彼女は吠えた。

「賢くて、美味しい人間さん達をねぇっ!家畜扱い?
 オマケのオマケで『導いてやる』?脳味噌湧いてるんじゃない?」

エルザにとって、人間は食料であると同時に、一定の敬意を示すべき好敵手なのだ。
最早伝説と化したダルシニとアミアスという姉妹吸血鬼の例もそうだし、
エルザとタバサの例もそうだ。
狩る者と狩られる者ではあるが、それさえ無ければ結局対等の立場であると、エルザは信じていた。

「吸血鬼風情が……」
「あんただってエルフ風情じゃないのさっ!しかもあんたは血も通ってないしさーっ!
 生き物なんて、みんな変わらないっわよっ!大事なのは、心臓でしょうが、心臓!味的な意味でもっ!」

ただ、『生』を共に受くる者同士、エルザは人間を自分達と区別しない。
それが貴族でも、平民でも、ミノタウロスであろうとも、あるいはエルフなどの亜人であろうとも関係無い。
ただ必要なのは、美味しい血であるかどうかと、背中を安心して預けられるかどうか、それだけだ。
それを血も通わない土人形と、血も涸れ腐った死体共が、『導いてやる』?
『生』を第一とするエルザにとって、それは許しがたき愚行であった。
129ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 15:56:25 ID:yk+2gpmH
「それが、貴様の理か?家畜を食らうだけの害獣よ。
 ――穏やかなる死を拒むならば、早々にその血肉を我に預けるが良い」

モスフングスの焼けつく香りが一層濃くなる。
屍共の輪が、二重にも三重にも分厚くなる。
だが、エルザは安心していた。

「ラルちゃん、トマおにいちゃん、いっくよぉー!」
「元よりそのつもりです!」
「それはいいのだが……ラルちゃん……うー、むぅ……」

頼れる仲間。
孤独であった今までの人生からは考えられないほど、素晴らしき『生』の証。
エルザは、もしかしたら血よりも大切なものを今いただいているんじゃないかなぁと、
ペロッと舌を出して笑ってみせた。

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ピコン
ATE 〜老兵は去らず〜


トリステイン魔法学院、中庭の陣。
強大なる業火の一撃が師弟を完全に捕えているはずであった。

「あぁん?」

ズブリ、と塊が崩れ落ちる。
だが足りない。そこにあるべき空気が足りない。求むる香りを求めて真っ赤な舌がしゅるしゅる蠢く。
期待したはずの芳しき焼けただれた肉の臭いがしないことに、メンヌヴィルは怪訝な表情を見せた。

「……え……」
「これ……は……」

驚いたのは、命を永らえた師弟も同じだ。
折り重なるように、かばい合うように体を重ね、
彼らの身代りとなったその物体を、ただただ呆れて見上げていた。

装飾も何も無い、土そのもの。
それが単純に『生えてきた』と言う風に、地面からそびえていた。
高さで言えば、12,3メイルといったところだろうか。
土の隆起を促す呪文など、土魔法の中では基礎中の基礎にあたるが、
炎が襲いかかる刹那の間に、これだけの土を動かすことはスクウェアクラスでも困難なはずだ。
一体、どこの誰が……

「やれやれ、すまなんだのう、ミス。それとコルベール君。
 少々、遅くなってしもうたわい。ちと他所の掃除もしとっての」

コルベールは薄れゆく視覚で、メンヌヴィルは微かな匂いをその嗅覚で感じとった。
しわがれた声に、間違っても巨躯とは言えぬ細めの身体。
やや枯れ切った体から感じられるのは、ほんのり薄い加齢臭だけ。
どうその見場を高く評価したところで、老紳士と言った風情。
それがオールド・オスマン。
学園長という職務をのらりくらりと過ごしているだけの男。
昼行燈とも好々爺とも揶揄される普段通りの声姿。
危険の香りもしない、ただ普通の男の絞り滓のような老人。
まさか、彼が?
130ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:00:02 ID:yk+2gpmH
「キュルケっ!大丈夫っ!?」
「モンモランシー!?あ、わ、あたしは大丈夫!それよりっ!」

だがその後から駆け寄った、巻髪の少女には成しえない仕事なのだ。
第一、彼女は水メイジ。
メンヌヴィルは匂いでそれを見通していた。
治療はできたとして、それ以外の取り柄はさして無いはず。
実力から言っても、それは間違いない。

「え、この人……コルベール先生っ!?どうしたってのよっ!?」
「話は後っ!早くダーリンを助けてあげてっ!お願いっ!!」

しかし、回復役が増えたか。
メンヌヴィルは忌々しげに荒い鼻息をふんっと鳴らした。
鼻息すらも炎を産み、ジュッと空気中の水分を焼き飛ばす。

もちろん、これは正式な決闘の形式には則っていない。
だが、それでも一定の敬意と尊厳が存在するはずなのだ。
メンヌヴィルはそう疑ってやまなかった。
元来、火メイジ同士の戦とはそうあるべきなのだ。
純粋なる力と力のぶつかり合い。
それこそがメンヌヴィルが求めたもの。
それが二対一だろうと百対一になろうと構わない。乱入だって全く問題ない。
真正面から立ち向かってくる相手なら喜びこそすれ拒むことは無い。
真っ直ぐと向かってきた力を、持てる全てで叩きのめす。それが良いのだ。
全てを焼き払い、鼻先の敵を屠り、その焼け焦げた屍の上で絶頂に達することが望み。

だからこそ、それを可能とする力を、人智を越え全てを焦がす力を手に入れたというのに。
だのに、

「なんだぁ?爺ぃは引っ込んでろ、えぇ?死に急がねぇでもお迎えはすぐだろうが!」

それを邪魔をするというのか、水や、土ごときが。
眼前に立った土メイジとおぼしき老人を罵倒する。
こういった手合いはつまらない。メンヌヴィルはそう認識していた。
彼奴等は小賢しく人形遊びで場をごまかすなど、戦いに向ける『熱』というものが足りない。
極限まで極めた武や力のぶつかり合いといったものを純粋に楽しめない。
メンヌヴィルの炎は憤りでさらに燃え上がりそうであった。
心から楽しんでいたところなのに。
メインディッシュを真横からかっさわれた気分だ。

「生憎、お迎えの馬車がちぃとばっかり遅れておってのう。
 お主らのせいで渋滞中かのう……」

そんな気持ちをさかなでるかのように、飄々、といった調子でオスマンは答える。
流石は年の功といったところか、あるいは何も考えていないのか。
グツグツと、メンヌヴィルの吐く息が煮える。
枯れ木ごときが、何を抜かしていやがる。
燃やし甲斐も無さそうな、死に損ないが。

「……しっかし、見事にバケモノに成り下がっておるの、お主。
 人間でおれば、ワシに劣るとはいえ男前じゃったろうに、もったいないのう」
「言うねぇ、爺さん……はーん、地獄への直通便を御望みかい?」

一々癇に障ることを。
成り下がっただ?冗談じゃない。これは、進化だ。
武の極みをさらに越え、万物を炎で飲み干せるだけの力を手に入れた。
その力を、その武を馬鹿にするというのか?
ボケ爺が。目どころか脳味噌まで腐ってやがる。
131ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:01:04 ID:yk+2gpmH
「あぁ、お主の、な」
「抜かしやがれ、ポンコツ爺ぃがっ!!
 戦いすら経験したことの無さそうなド素人が!どうする気だ、えぇ!?」

ドウッと激昂の鼻息がキノコ状の炎となり迸る。
嗚呼、イライラする!
どこの糞だ、このポンコツは。
この豪熱を感じているはずなのに、畏れも恐れも感じとれない。
どんな武人ですら、灼熱の炎を目前にすれば、身体に緊張感が走り、
それが場の空気や熱と重なって極上のスパイスになるというのに。
実におもしろくないではないか。

ただ感じるのは『見つめられている』という実感だけ。
まるで土塊人形を相手にしているみたいだ。
トロル相手にした方がまだ魂が震える。
老い先短い身でボケきったか、あるいは力の差すら推し量れぬボンクラか。

「確かに、人間相手はお主より少ないかのう。じゃが……」

『ズン』。
メンヌヴィルの身体が、一瞬傾いだ。
蛇腹と化した足下から伝わる振動。
腹の底に響いてくるずっしりとした鼓動。
同時に目の前の老人の『温度』が変わる。

「バケモノ退治は、昔とった杵柄じゃて」

熱いわけではない。火メイジの専売特許とも言える苛烈な炎は感じない。
当たり前か、目の前の爺は土メイジだ。
これは、熱とは対極。質量のある、『冷え』。
鋼や水晶といった、揺るがない硬さや芯を秘めた、重たい冷気。
それが地面を伝わって、臓腑を揺るがす。
これが、気迫とでもいうのだろうか。
特段魔法を行使したわけでもあるまいに、ただ気を吐くだけで地を揺らすだと。
ただのボケ老人と思っていたが、これはとんだ狸だ。
メンヌヴィルは目の前を『枯れ木』から『獲物』と認識を変え、シュルリと紅炎の舌で唇を舐めた。

「ほーぅ?ちーとは楽しませてくれるってわけか?こりゃ楽しみだなぁ、えぇ!?」

肉ではなく、土や鋼という類ならばそれも上々。
ただの枯れ木よりは燃やし甲斐があろうというもの。
どんな匂いで燃えてくれるんだ。
あるいは火薬のように激しく燃え上がるのか。
嗅ぎたい。それが焦げ付きるまでの熱を感じたい。

「人間の意地というものを、見せてやるわい」
「いいぜぇ!持てる力の全てでかかってこい!!望み通り、お前をウェルダンにしてやるよぉっ!!」

隊長殿よ、この『選手交代』、受け入れてやる。
だからせいぜい楽しませてみせろよ!
メンヌヴィルは炎気を上げた。
景色が歪むほどの熱がこもったそれは、天蓋までも焦がす火柱であった。
132ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:02:02 ID:yk+2gpmH
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ピコン
ATE 〜私は飛べる〜

キリが無い。
クジャはそう呟き天を仰いだ。
少しは薄れてきたような気もするが、相変わらずの歪んだ虹模様。
そこに舞うは魂より生れし飢えた竜もどき。

美しさはもちろん、力でも劣っているわけではない。
もしこれが平地での一戦であったならば、もっと楽にケリがついたことだろう。
もし、これが。
戦いの場に『もし』は無く、本来優位に立つべき者が劣勢に立つのも珍しくは無い。

「ちっ、足場が狭いとやりにくいねぇ……」

ただ、それだけ。
たったそれだけの差が、勝敗を分ける。
敵は空を悠々と踊る翼を持つが、こちらは飛空挺の甲板にその足をしがみ付かせるだけ。

狭い舞台は動きに制約を付ける。
前に出るも、後ろに退くも、自由自在というわけにいかぬ。
足枷をつけたまま闘っているようなものだ。
おまけに銀竜達が襲い来るたびに、甲板が削られ足場はますます狭くなる。
そこらで板床がめくれ上がり、穴が開けられ、荒れ放題と言っても差支えない。
ジリ貧も良いところだ。

「いくぞワルキューレ部隊っ!!『画・竜・点・睛』っ!!」

真後ろでギーシュが跳び上がる。
自分の作ったゴーレムのリフトと魔導アーマーの脚力で、高く跳んだ。
確かに、防戦一方というわけにはいくまい。
こちらから攻めねば物量差に押し負ける。
ギーシュの選択自体は間違っていない。
戦略的に考えれば至極妥当な解答と言えよう。

「っ、と、届かないっぃいいっ!!ぅぁああああああ!?」

だがそれも、その剣が届けばの話である。
ガシャンという今日何度目かの落下音に、クジャは呆れ顔を渋くした。
ギーシュ達ハルケギニアのメイジも『フライ』という魔法で空を飛べなくはない。
だが、それを他の魔法と組み合わせるのは、至極困難だ。
姿勢の制御と位置の維持。
それに加え、地で戦うのとは違い自分の魔法による反力が影響する。
ワザと隙を見せ敵を誘えるという訳で無し、好んで空中戦を挑める状況ではない。

「艦長、まだ時間は?」
「『かかります!これでも出力限界ぎりぎりで……壊れる寸前ですよっ!?』」

伝声管からの情報も芳しいものではない。
まだまだこの場で踏ん張り続けなければならない。
四面楚歌。
半歩足をずらすと、めくれた板床に足が引っ掛かる。
守らねばならない船も、そう長くは持たないようだ。

「ふん、ポルカすら踊れないか。せめて飛び回って攻撃できたらねぇ」

無い物ねだりなことは分かっている。
それでも、翼が欲しいと不平も出ようもの。
133ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:03:01 ID:yk+2gpmH
「てて……そんな、竜じゃあるまいし……うわぁっ!?」

また一頭、元気が良いのが突貫を開始している。
銀色の翼を折りたたみ、急降下。
身全体を巨大な弾丸として獣が降ってくる。

「ちぃ……」
「ひぃいっ!?ふ、防げワルキューレっ!!」

これを防ぐには、真正面から受けるのではなく、横から軌道を反らす必要がある。
それができない。そのような位置取りができないのだ。
愚を承知で前より止めねばなるまい。
しかもこの動き、今度は甲板を抉られるだけに留まらず、機関室まで届いてしまう。
足場が完全にバラバラになる。
防ぐか、さもなくば死か。
せめてものシールドを張ろうと、クジャが手に魔力を振り分け……

「GREWOO!?」

銀の弾が、蒼い流星によりその勢いを止めた。
散った白銀の鱗が塵星のごとく舞う。

「きゅきゅきゅっきゅいぃ〜!!」

ファンファーレのごとく、軽く甲高い鳴き声。
聞き覚えのあるその声に、クジャはニヤリと笑い、手にこめた魔力を霧散した。

「間にあった」

欲を言えば、もう少し早い到着を望んでいたが、充分だ。
その青髪の少女の言うとおり、『間にあった』。

「おやおやおや」
「た、タバサ君!?それとシルフィード!?」
「感謝するのね、キザっ子野郎!お姉さまとシルフィが助けに来てやったのね!」

まったくもって、プリマドンナは出番を外さない。
予定していたシナリオでは彼女の登場は無かったはずだが、これは嬉しいサプライズだ。

「これは、ジョゼフの命令かな?」
「違う」
「……ふむ、『糸』は切ったか」

しゃべる風韻竜の、その背にちんまりと乗った青髪の少女。
その少女の瞳に、沈んだ闇が無いということにクジャは気付く。
人形では無い、生ある人間のみが持つことのできる、美しき光が満ちている。
それを見て、舞台作家の血が騒ぎ、緻密な脚本に一筆が加えられる。

「――任せるよ?」
「任された」
「シルフィとお姉さまにかかれば、ギンギラギンの趣味の悪い子たちなんてちょちょいのちょいなのねっ!!」

彼女を利用しない手は無い。
横入りした役者に、クジャは役を与えることとした。
すなわち、

「よし――行くよ、ギーシュ君っ!」
「え、い、行くって、う、うわぁあああ!?」
134ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:04:02 ID:yk+2gpmH
鎧の首の部分をがっしと掴み、引きずるように宙へ。
落下する、と、同じぐらいの速度で、水平に風に乗る。
目指すは、彼の『最高傑作』が頑張っているはずの、『悪魔の門』。
自身の最適な配役は、彼らのサポートであると、今判断した。

「あ、あなたも飛べたんですかっ!?」
「滑空だけだよ!自由に飛び回るのは『風』の方が上さ!」
「『風』ぇ!?」

適材適所。空は『風』に任せるのが一番良い。
クジャも滑空こそはできるが、小回りは効かない。
だから彼女に任せる。今の彼女ならば大丈夫。
なに、己の審美眼には自信がある。

全てが好転したことを感じ、クジャはほくそ笑みながら、空を滑るように飛んでいく。
抱えられたギーシュは何のことやらと混乱した表情のままであったが、お構いなしに。

 ・
 ・
 ・
一方の、『任された』方、
青髪の少女は大きく息を吸った。

「シルフィード」
「きゅいっ?なあに?」
「よろしく」
「きゅ、お姉さまっ!?」

タバサは、飛んだ。
いや、より正確には、『落ちて』いった。
自由落下。
糸も、何の支えも無い、まさに自由なる物理現象。

「……」

それが心地よい。
体を包んでは通り過ぎる風が、今までの束縛を洗い流していく。
耳元を通り過ぎる風の唸りも、まるで祝福のファンファーレのようだ。
タバサは全身全霊で感じていた。
どんな物語を読んだときよりも、
果てしない喜びを。素晴らしい充足感を。

「……♪」

これは、他の誰の物語でも無い。
誰かに、命令されたりしたわけでも無い。
これは、自分自身で望んだ、自分自身で描いてゆくことができる、
彼女の『物語』なのだ。
135ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:05:02 ID:yk+2gpmH
「GYAAAAAAAAAAAAAM!?」
「GWOOO!?」

自由を手にした『雪風』は、遠い春を呼んで軽やかに舞う。
大きな杖が、いつもよりもさらに軽く感じる。
ずっとずっと、素早く、鋭く、敵を狩る。
唱える呪文が、鼻歌のようにスゥっと自分体を抜けて空気に広がる感覚。
自分自身が旋律であるように、空と1つになる感覚。
高揚感、解放感、幸福感。
タバサは、『タバサ』になって、いやそれまでの人生で、初めての感覚に、酔いしれた。
どこへでも、行ける。何にでも、なれる。何でも、できる。
この愛おしいまでの浮遊感を、いつまでもいつまでも、その小さい胸いっぱいに抱きしめていたかった。

「む、無茶しすぎなのね、お姉さまっ!?」

ふわり、と風の抵抗が止んだ。
下から優しく受け止めたのは、大きく拡げられた蒼い翼。

「――シルフィード」
「な、何なのねっ!?」

タバサは、ゆっくりとその瞳をあけながら、自分の使い魔の名を読んだ。
うっとりと、幸せの余韻を胸に抱きしめながら。

「……ありがとう」
「きゅ、きゅいっ!?お、お姉さまから感謝の言葉!?明日は地震雷火事オヤジなのねっ!?」

タバサは、今までの感謝を、直接その唇を震わせて言った。
感情を封じたはずの雪風が、思うとおりに言を紡いだ。
錠前つきだった彼女の心、それを解き放った鍵。
『仲間』。
自らの危険を顧みず果敢に彼女を救いにきてくれた、『仲間』。
閉じ込められた雪風に、暖かい光を差し伸べてくれた『仲間』。
決して自分を利用するでもなく、自分を支えてくれる『仲間』。

春の太陽のごとき温もりは、彼女を縛りつけていた氷の縛めを溶かした。
あるがままの運命を受け入れ、ただ耐えるだけだった彼女を変えた。
運命の糸に操られるままだった人形に、自ら歩める力を与えた。

「GRRRRRRRRRRRRR……」
「GRYAAAA!!!!」

猛る銀竜の群れを一瞥し、スゥっと息を吸う。
訪れた幸せに浸るのは堪能した。
ここからは、なすべきことを、自分がしたいことをする時間だ。
タバサの目に、ナイフよりも鋭い光が宿った。

彼女は、今自分自身の意志でここにいる。
彼女を操る糸はもう存在しない。
彼女は、彼女の『仲間』を助けたい。
誰に命令されたわけでも、誰に操られたわけでもない。
それが、彼女の願い。それが、彼女の意志。
これが、彼女の『物語』。

「倒す」
「きゅいっ!シルフィもがんばっちゃうのねぇえ!!」

どんな風よりも自由に、雪風とその竜が舞う。
聖地の上、淀み切った空を塗り替えるように、
軽やかに、そして、嬉しそうに。
136ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2010/04/17(土) 16:06:02 ID:yk+2gpmH
〜〜〜〜〜

にんぎょうげきが おわっちゃう!
にんぎょうげきが おわっちゃう!
ぼっちゃん、じょうちゃん どうしよう?
にんぎょうげきが おわっちゃう!

タバサは じぶんを あやつる いとをきり
タバサは じぶんで あやつり いとをきり
じぶんの はねで おどりだす!
なかまの ために おどりだす!
もうだれも とめられない!
あぁ、どうしよう!
これじゃ にんぎょうげきに なりやしない!

あぁ なんて はらだたしいんだろうね!
かってに おどられて いるというのに!

あぁ なんて あたまにくるんだろうね!
かってに うたわれて いるというのに!

こんなにも、きれいだなんて……

----
本日は以上です。
しかし、無駄に長く続けたものだなと思います。
避難所にもいくらかお叱りの言葉をいただいたようで……

例1:「くどいんだよ、てめぇの駄作はっ!!」
例2:「いい加減終われこの糞虫がっ!!どんどん文章がど下手になってくじゃねぇかこのイカレ野郎!」
(注:上記例文はあくまでも書きこみを元にしたイメージです)

えぇ、全く返すお言葉が……orz
計算したところ、あと5,6話で終わる算段になっておりますので、それでご勘弁を……
せめて、それまで私のくどくてど下手な文章にお付き合い願えれば、とそう勝手に願う次第でございます。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 16:31:24 ID:evC+qRBZ
まあFF要素がかなり濃くなってるから人を選ぶ罠
138名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 16:53:02 ID:8c+tUrNE
>>137
クロスにしてもゼロ魔の上にクロス先を乗っけてるのか、クロス先の上にゼロ魔を乗っけてるのかって話だな。
本当はロープみたいに絡み合わせるのがいいんだろうけど、それが簡単に出来りゃ苦労はせん。
139名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 17:53:01 ID:1jeaI/3N
まあプロでも普通は長期連載すればダレて見れたもんじゃなくなる。引き際は早いうちに見極めねーとな
140名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:06:37 ID:vnPjHFjt
そういうことは毒吐きで言え、スレの雰囲気を悪くするな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:14:20 ID:mKiae6Bh
>>139
途中で盛り上げる力があっても、そもそも読むのをやめられちゃぁどうしようもないしなぁ
142名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:28:34 ID:U8tKJFbn
クロスものでよく言えることは登場人物の顔や容姿、術式を使う風景がよく分からないことが多いってことかね
でもそこに文句言うなら初めからクロスものなんか見ないよ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:34:03 ID:evC+qRBZ
というか避難所でのお叱りの言葉って多分毒吐きだよね?
あそこで言ってること気にしてもしょうがないでしょ
単に自分の好みじゃないんで不満を言ってるケースが大半だろうし
144名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:38:50 ID:9Xdhg2Dg
毒吐きのいちゃもんは様式美みたいなもんだ
145名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:39:56 ID:8c+tUrNE
拙者は毒吐きなんて恐ろしくて見れないでござる。
146名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:48:10 ID:UpB5qFvJ
>>136
なるほど。
言われた御本人様がそう聞こえたんなら仕方ないね。ごめんなさい。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:02:14 ID:dB9+A/ez
なるほど、毒吐きに対する毒ならここで吐いてもいいのか
でもって堪らず向こうが本スレで反論したりした日には思う存分に非難が出来るとな
いやあ〜、最高だねえ
148名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:10:17 ID:jDckWOxR
というか、毒が怖かったら2ちゃんなんて利用できませんよ
149名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:17:28 ID:h/v1eB/w
とりあえず落ち着け

俺のように仮面ライダーV3を見ながら
150名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:18:24 ID:1+c1IzVm
>>142
ゲームやアニメのノベライズと同じで、元作品を知っている前提で書かれてる場合が多いからなぁ
もっともこのスレの趣旨を考えると、ゼロ魔は知ってて当然としても、クロス相手を知ってるかはまた別問題
かといって、いちいち文章で描写されてもクドイだけってことも多いのが悩みどころ
151名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:26:59 ID:nAf+/mL8
>>149
あ〜、俺って赤いもの見ると興奮するからダメだわ
152名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 19:52:15 ID:FG19YKSe
世界観を変えてしまうのはさすがにまずいよね
ハルケを揉め事は全てカードゲームとか麻雀とか爆丸で解決する世界にとか
153名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:01:34 ID:+AOoJGa2
>>151
もー(鳴き声)、赤んわってか
154名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:01:42 ID:eJAhi3Om
やるんだったら小ネタだろうなあ
一発ネタ以外だと使いづらいだろうし、そういうの
155名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:03:52 ID:71FMRkvf
>>153
【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'
156名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:03:54 ID:nAf+/mL8
>>152
別にここに拘る必要も無いんだぜ?
157名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:12:57 ID:7QHE9+8l
>>152
まとめに編集されてる作品でもあしたのジョーとかキン肉マンとか世界改変してるのは結構あるし。
面白ければそれで良し、だと思うな。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:16:49 ID:TUd+6nOb
┌─────┐
|判定 ピコワロス|
└─────┘
  ∩∧,,∧∩
   (´・ω・`)
   (    )
    u-u
159名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:21:40 ID:XSr5fkRm
>>152
なんか某虎の固有結界みたいだな
160名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 20:28:25 ID:nAf+/mL8
実はゲー魔王を殺すことで能力者まで死んでしまうというのが狙いだったんだよな
161名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 21:39:34 ID:Er/iRCkj
相手の切り札のパワーダウンと足止め等々が狙いなんですね。わかります。

ところで、あれってエロゲでも使えるんだろ?
162名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 21:42:33 ID:XxzDQzU+
>>150
基本的に元ネタ知ってるヤツしか読まないけど、
稀にポロロッカしちゃう場合もある。
元ネタ知ってる前提で書いてもらって問題ないと思うけどね。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 21:52:34 ID:jumkfSKc
幽助と桑原さんってルイズはおろかタバサより年下なんだよな
164名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 22:13:33 ID:vnPjHFjt
クロスが元で原作を読みはじめるということもあるんじゃないか?
俺は瀬戸の花嫁やローゼンメイデンやサンレッドはここのクロス小説で興味を持って見はじめた。

黒魔導師の人も乙
モット伯とスカロン、いいタイミングというべきか、余計なことをというべきか…
165名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 22:24:56 ID:m8zIVBCq
>164
ノシ
そもそもゼロ魔に入ったのすら二次創作からだったりする。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 22:27:32 ID:MJmrN4U7
>>164
たぶん夜天の魔導書が召喚されなかったら、俺はゼロ魔を敬遠したままだった
167名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 22:50:53 ID:OzMGiJGE
最初にタイトル見たときは、「ゼロの焦点」とかのイメージで推理小説かと思ったw
168名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 22:52:29 ID:o01itw0u
さすがにそれはない
169名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:04:11 ID:OzMGiJGE
えー
170名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:51:48 ID:aNESe2Qg
俺は瀬戸花やローゼン等→このスレ→ゼロ魔→いろいろ
って感じだな
このスレのおかげで家にあるマンガやラノベが結構増えた
171名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:56:02 ID:w8hile/a
ご立派様から……
172名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:59:34 ID:3nrE7aWM
ダースベイダーからここ→なのはだな
173名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 00:02:55 ID:QwjntcbN
というかサイトがな…
熱いときはいいんだが普段がたらしすぐる
174名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 00:25:42 ID:WNv7A7hK
俺はイチローからだった気がするな…だから面白ければいいと思ってしまっているのかもしれない
175名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 00:30:17 ID:LEGo2Rrh
俺は「ルイズ ティルトウェイト」でググったらここのまとめサイトに辿り着いた
176名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 00:37:08 ID:abFDSvdr
テイルズの人乙です。
何故かブルーアースを発動するサイトを幻視したw
177名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 01:59:41 ID:DyQhCwma
テイルズの人乙です。
実質ファンタジアの続編であり、初代なりダンのリメイクであるなりきりダンジョンXもあって、
いつも楽しみにしてます。
キュルケの家系に伝わってたということは、時代的な意味でも散らばっているんでしょうか?
178名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 04:02:48 ID:e3Uv5WUn
そもそも、ゼロ魔の原作もアニメも見たことない。
どうやってここにたどり着いたのか自分でもわからん。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 04:11:29 ID:mjhfSAhB
>>178
クロス先の作品が好きで、ここにたどりついたという奴は結構多い。
そして、このスレを契機にゼロ魔の原作を見て、面白くないと評価した奴もそれなりにいたりする。


俺見たく、ここに来る前にゼロ魔の原作を見て、趣味に合わないと思ったのに、
ここのssは面白いなと居付いた奴は少数派だろうが。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 05:22:11 ID:WMvcTsgN
自分は特!のガタ召→ゼロ魔クウガ→たまに理想まで足のばす
までやった原作は一巻冒頭しか手を出していない…
181名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:02:48 ID:ApESGO97
>>179
俺もいるぞ!
おれはジョジョの仗助のssからだな
182名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:12:37 ID:8uwXT+Fn
俺はデジモンのメガドラモンの奴から来たな
それ以降どっぷり漬かってる
183名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:12:44 ID:QoBZ6Qtc
シグルイのSSを探していたら使い魔グルイに辿り着いたのが2007年の暮れだった。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:23:50 ID:9rDXLbTJ
俺も二次から入った口だなあ
原作読み始めたのはSS読んで一月後ぐらい
185名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:24:02 ID:fRsoyZ9u
>>181
それだと辿り着くのここじゃねーじゃねーか!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:25:28 ID:xCfLsk8E
一度ゼロ魔から足を洗いかけたはずなのに、ここのSSを見たせいで再燃したのが15巻が発売された頃だった。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 10:26:47 ID:ko/mcHik
よし、いつか俺がラノベ書くときはクロスとオリ主召喚しやすい設定のハーレムもの書くことにしよう
188名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 11:18:15 ID:Ajqf8bz/
>>179
仲間だ。
イマイチ原作はあわない。面白い部分はあるのだけどトータルだと微妙。
でも、SSは書きたくなったからちゃんと原作(+タバ冒)全部買ったよ。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 11:53:20 ID:mjhfSAhB
>>188
俺の場合、キャラも世界観も設定も好きだが、ラブコメが嫌い。
読んでいて頭が痛くなってくる。
ゼロ魔というより最近のラノベ全般に向いていないのかもわからん。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 11:59:11 ID:qkEeGPTP
なるほど、原作やクロス先に対する毒ならここで吐いてもいいのか
191名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 12:03:16 ID:5FWBiRsJ
はい、いいですよ
192名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 12:19:51 ID:16aYVpo1
>190は もうどくの きりを はいた!
しかし>191は うちはらった!
193名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 13:36:06 ID:xISFFZ5x
俺はアニメ第3期の頃に”その時期にやってたアニメのサンプル”として
(1話だけ)撮ったのからゼロ魔を知って、情報収集の途中でここを知ったな。

ここで時折出現して特定作品を叩く厨やストーリ的テンプレを押し付けようとする
類にはいい加減嫌気が刺すが、既知のクロス先(バイオハザード、メトロクロス、
銀英伝 その他...)との良質な二次創作や、クロス先のおかげで新たに知った
作品群(なのは、稲中、女神転生シリーズ その他...)があるので感謝はしてる。

あと、原作小説も現行までの分は一通りそろえてるが、一番感謝してるのは
巻末にある”あとがき”(天使作者の回とかw)と、他作品広告にあった”けんぷ
ファー”を知るきっかけを得たことかな。

原作は普通に面白いけど、アニメ第三期の最後はどうかなぁ・・・と。
(8.8cm FlaKと思わしき高射砲の弾を弾くとか・・・これでロマリアでのティーガーI
の活躍する14巻部分がそのままでは映像化できなくなったな・・・)
194名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 13:40:14 ID:16aYVpo1
つ※画像はあくまでイメージです 実際の商品とは異なる場合があります
195名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 14:07:29 ID:tsed0psW
というかだなお前等。
そういう話するなら取り敢えず前スレでやらないか?
196名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:02:34 ID:LEGo2Rrh
>>193
ガンダールヴに「砲弾の威力上昇」の効果を追加するか
197名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:06:30 ID:jMuvuhwD
ドラッグオンドラグーンのカイムとアンヘルがキュルケに召喚されるSSどこいった?

読み直そうと思ったら見当たらないんだけど…
198名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:27:46 ID:gIt2/Tod
>>197
色々あって自サイトに撤退した。
理由は面倒だから省くけど、別にどうでもいいだろ?

というかだなお前。
そういう話するなら取り敢えず前スレでやらないか?
199名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:42:58 ID:mag6wQp6
本日日曜、ウルトラの日

…15時50分か16時50分あたりに来るかな
200ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2010/04/18(日) 15:43:25 ID:UGgPvw29
皆さんこんにちは、96話投下準備完了しましたので進路よろしいでしょうか。
10分おきまして問題なければ15:50より開始いたします。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:46:01 ID:3ufCYUzP
よろしくないです
202名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:48:07 ID:mag6wQp6
オレは宜しいです

って予想が当たったー!!?

事前支援
203名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:49:38 ID:tO9zM6MB
ばっちこーい
 第96話
 一人の変身
 
 ウルトラマンメビウス
 ウルトラマンヒカリ
 彗星怪獣 ドラコ
 肉食地底怪獣 グドン
 再生怪獣 グロッシーナ
 バリヤー怪獣 ガギ
 マグマ怪地底獣 ギール 登場!
  
 
 才人とルイズ、地球とハルケギニアや、宇宙の様々な人々の思いを乗せて、
夜の帳は二つの月が沈むまで続き、そして東の空に真っ赤に燃える太陽が
登ったとき、全宇宙の未来を左右するかもしれない運命の日の朝は明けた。

 遠くに見える山すそから登った太陽が黄色い光で魔法学院を照らし出す。
その窓枠の隙間から差し込んできた朝日をまぶたの上に受けて、才人は
目を覚ますと、ベッドから降りて窓を大きく開け放った。
「朝、か……」
 見渡す限りの清浄な青空と、それに照らされた学院が、半年間見慣れたままの形で
眼下に広がっている。しかし、広大な中庭の中に着陸しているガンウィンガーを
見ると、昨日までのことが夢でも幻でもなく、今日この世界と別れて地球へ帰らなければ
ならないのだということを、あらためて覚悟させられた。
「ルイズ、起きろ朝だぞ」
「うーん、あと五分……」
 気分を変えようとしてルイズを揺さぶった才人だったが、ルイズはまだ寝ぼけて
いるらしく、布団にしがみついたままで動こうとしなかった。
「こいつは……」
 こんな日だというのに、まるで緊張感のない一言目の台詞に、才人は思わず
このまま帰ってやろうかと、少々腹立たしい気分になった。そりゃあ、一睡も
できずに朝まで目を腫らしたままでいてほしいとか、そんなわけではないが、
それにしたってあんまりというものがあるだろう。
 めんどうくさくなった才人は布団をひっぺがそうかと思ったが、ふとちょっとした
いたずらを思いついて、ルイズの耳元で声真似をした。
「こらルイズ、ちびルイズ! 起きなさい」
「ひぎゃ!? ご、ごめんなさいお姉さま、いますぐに! あ、あれ?」
 もっとも苦手とする姉エレオノールの物真似に、寝ぼけていたルイズは
飛び起きると、才人がニヤニヤしながら隣に座っているのを見て、混乱する
頭で状況を整理して、十五秒後に自分がだまされたことに気がついた。
「あ、あんたねぇーっ!」
「大成功っと、王宮で一度見ただけだけど、お前の姉さん怖そうだったしな。
普段ならひっかからないだろうけど、さすが寝起きじゃ判断できなかったか」
「よ、よくもだましてくれたわね。しかもよりによって、エレオノールお姉さまの
声で……か、覚悟はできてるんでしょうねぇ」
「お前がいつまでもぐーすか寝てるからだろ! こっちは早くに目が覚めちまった
ってのに、ずいぶんと深くお休みのようですいませんでしたねえ」
 憎憎しげに言う才人の言葉に、ルイズははっとなって昨晩のことを思い出した。
あのとき、母親からのメールを見て泣き崩れた才人を見て、彼の家族を
離れ離れにしてしまった罪悪感と、もう才人をここに引き止めておくことは
できないという悲しさから逃れようとして、思わず子供の頃のように
毛布を頭からかぶってうずくまってしまったのだが、どうやらそのまま昼間の
疲れから眠り込んでしまったようだ。
「そうか、あんた今日帰るんだったわよね」
「そうだよ、やっと思い出したか? それをまあのんきにぐーすかと、たいへん
幸せそうでけっこうでしたねえ」
「なによそれ……わたしがどんだけあんたのために……ああそうよ、だって
同然でしょ、たかが使い魔一匹親元に帰すだけで、このわたしがメソメソする
とでも思った? 思い上がりもはなはだしいわ」
「ふん、どうせおれはいくらでも代わりのいる使い魔なんだろ、とっとと帰って
やるから、あとはドラゴンでもなんでも勝手に呼び出しやがれ」
 売り言葉に買い言葉、憎まれ口の応酬を始めてしまった二人は、才人は
自分が帰るというのに平気な態度をとっているルイズに、ルイズは何食わない
顔をして帰ろうとしている才人へ、共にいらだちを言葉に込めて叩き付けた。
 それが収まったのは、『アンロック』で部屋の扉を開けて無遠慮に踏み込んできた
乱入者の、炎の魔法の一発によるものであった。
「目は覚めた?」
 キュルケがそう言うと、髪の毛の一部を焼け焦げさせた二人は、黙って
コクコクとうなずいた。水で酔いを醒ますのは聞いたことがあるけれど、
炎で目を覚ますことになるとは思わなかった。
「まったく、なにかぎゃあぎゃあと騒がしいと思って来てみたら、あんたたちは
ほんといついかなる状況でも、マイペースというか、進歩というものがないわねえ、
おかげでこっちの目もばっちり冴えちゃったわよ」
 やや論点はずれているが、てっきり昨夜は最後の夜だから男と女でいいところまで
行ったんじゃないかと期待していたキュルケは、欠片の進歩も無く予想を裏切って、
普段どおりのケンカをしていた二人に、失望もあらわにため息をついた。
 けれど二人からケンカの理由を聞いたキュルケは、一転して猫のように
くすくすと口に手を当てて笑った。
「そう、つまりお互いに、相手に心配してもらいたいって思ってたんだ。じゃあ
わざわざケンカする必要なんかないじゃない」
 図星を指された二人は、仲良く「ひぐっ」と、情けない声を出して顔を赤くした。
まったく、いつまでたってもまともに本心を表せない二人の嫉妬や甘えなど、
百戦錬磨のキュルケの目にかかれば、特殊噴霧装置で色をつけられた
クール星人の円盤のようなものだった。
 人間というのは不思議なもので、これから人生を左右するような大変なことが
起きるとわかっていても、そのときまではなぜか至極普通に日常を送れてしまう。
ルイズと才人は、やはりどう周りが転ぼうとルイズと才人以外の何者でもなかったらしい。
 よく見れば、キュルケの後ろにはタバサも来ており、いつものように身長より
ずっと大きな杖を抱えて、無表情で立っていた。
「時間……」
 はっとして時計を見ると、時刻は早くも朝の七時に迫っていた。GUYSが
最後にこちらにやってくる時間が九時に予定されていることを考えると、
時間はほとんどないといっていい。
「アルヴィーズの食堂に、朝食を用意していただいてるわ。二人とも、さっさと
着替えていらっしゃいな」
「ええ……」
 あっさりときびすを返してキュルケとタバサが部屋から出て行くと、二人は
大急ぎで服装を整えて食堂へ向かった。
 
 学院は、この時期ほとんど無人ではあるが、ここに住み込んでいるオスマンや、
警備兵のためにごく少数の使用人が残っており、食堂にはいつもの貴族用の
豪華なものとは比べ物にならないが、湯気を立てた朝食が六人分用意されていた。
「ミライさん、セリザワさん、おはようございます」
「おはよう、才人くん、ルイズちゃん」
 すでに席についていたミライとセリザワにあいさつをして才人はルイズと並んで
席に着いた。見ると、二人の上着や手のひらには洗ってはいるが黒い油汚れが
ついており、多分日の出とともにガンウィンガーの整備を済ませたに違いない。
「あの、迎えのほうは?」
「すでに地球との連絡はとった。九時には予定通り、ここにやってくる。君も、
用意を怠らぬようにな」
 恐る恐る尋ねた才人の言葉に、セリザワは余計な修飾は一切つけずに
簡潔そのもので答えた。それは、もう決めたことには口出しはしないのだと、
突き離されたように才人は感じたが、万一トラブルが起きて地球に帰れなく
なったらと、期待していた部分があったのも事実ではあった。
 六人は、ルイズたちは始祖へのお祈りの後に、才人たち地球組は
「いただきます」とあいさつして、黒パンや野菜スープの朝食に手を付けていった。
しかし、食事を始めたあとも誰も一言も発せず、ただでさえ広すぎる食堂に
六人しかいないために、場の空気はやたら重苦しいものになっていった。
 そのときである、才人の左向かいの席で皿に盛られたサラダを黙々と口に
運んでいたタバサのところから塩の小瓶がこぼれて、才人の足元にまで
転がっていった。
「とって」
「うん? ああ」
 頼まれて、才人はかがむと小瓶を拾い上げて、タバサに手渡そうと手を伸ばした。
「ほら、もう落とすな、よ……?」
 不思議な既視感が才人を襲った。なんだ、前にもこんなことがあったような? 
こぼれた瓶を拾って渡そうとして……そうだ、あれは。
 
”落し物だよ。色男”
 
 思い出した。忘れもしない、召喚された翌日の昼休みのこと。
 あのとき、突然召喚された上に主人と名乗ったルイズにぞんざいに扱われて、
イライラしていた自分は、唯一優しくしてくれたシエスタに恩返しをしようと、
手伝いを買って出て、それで食器運びの最中に偶然、まだ名前も顔も知らなかった
ギーシュが落とした香水の小瓶を拾って……
207名無しさん@支援いっぱい:2010/04/18(日) 15:55:48 ID:tO9zM6MB
 
208名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:55:52 ID:8iPA4SJi
しえん
209名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:56:06 ID:3ufCYUzP
ダメつってんのになんで投稿するの?アホなの?
210名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:56:33 ID:mag6wQp6
>>209
アホはおまいだろーが

ウルトラ支援
「サイト、どうしたの?」
 小瓶を持ったまま固まってしまった才人に、ルイズが声をかけると、彼ははっとして
タバサの前に塩の小瓶を置くと、一度ぐるりとアルヴィーズの食堂を見渡して、
微笑を浮かべた。
「懐かしいな、ここはあのときのまんまだ。覚えてるか? あんときは、お前は
あのへんの席に座ってて、おれはその隣の床でメシ抜きにされて、そんでギーシュの
やつが向こうのほうでバカな話で盛り上がってたよな」
 次々に指差して語る才人の言葉に、ルイズも彼が何を言おうとしているのかを
記憶の奥底から蘇らせていった。
「ああ、思い出したわ。けど、あれはあんたが悪いんでしょ。わたしが魔法を
使えないゼロだって言ったら、ルイルイルイズはダメルイズ。魔法ができない
魔法使い。なんてイヤミな歌を作るからでしょうが」
「う、お前ってほんと記憶力いいよな。でもしょうがねえだろ、あのときおれは
お前のことが大っキライだったからな」
「い、言ったわねぇ!」
 ルイズの手が杖にかかったが、才人は落ち着いたままで思い出話を続けた。
「あのとき、まではな。けど、お前はまだ魔法の怖さを知らないおれが、無謀な
決闘をしようとしてるのを必死で止めてくれたし、おれがボロボロにされた
ときには泣いてくれた。気を失っていた三日間、看病してくれたって聞いたとき
には本気でうれしかったんだぜ」
「なっ、なななっ!?」
 一気にまくしたてた才人の思いもかけない言葉に、ルイズは振り上げかけていた
杖を持ったままで、顔を真っ赤にして硬直してしまった。
 そして、才人はもう一度食堂をぐるりと見渡した。
 思えば、このハルケギニアでの冒険は、この食堂から始まったのかもしれない。
 もしも、あのときの決闘がなければ、ギーシュや悪友たちとの友情が芽生える
ことはなかっただろう。
 決闘に勝ったごほうびとして、トリスタニアへ剣を買いに行き、ベロクロンの
襲撃に遭ってウルトラマンAと出会う機会もなかったはずだ。
 それに、ルイズともいがみ合ったままで、打ち解けるのもかなり先になり、
下手をすれば放り出されるか、飛び出していくかして、二度と会わずに
別れ別れになったかもしれない。
 一気にこみ上げてきた思い出からか、饒舌になって話す才人に、ルイズは
怒るべきか喜ぶべきかわからずに、手を振り上げたままで固まっている。
「思えば、おれたちが今こうしていること自体が奇跡みたいなもんだな。普通に
考えたら、おれとお前なんか、三日もあれば破綻してるぜ、うんうん」
「む、そりゃあんたが一〇言った中の三もできないようなグズだからでしょう。
ヴァリエール家にも何百人と使用人はいたけど、あんたほどの無能は
一人もいなかったわよ」
「だから、おれは元々召使でもないただの学生だったって、何度も言った
だろうが! 夢にも思ってなかったことが、一日や二日でうまくなるか」
「はっ! 無能の言い訳の常套句ね……けど、だったらなんであんたは
今日まで、わたしのところから出て行かなかったの?」
「……大嫌いだったのは、あのときまでだって言っただろ。一応、おれは
受けた借りは返す主義なんでな」
「そう……」
 所詮、才人が自分に付き合ってくれたのは、恩返し、ただの義理だったんだと
ルイズは肩の力が抜けた。しかし、才人はそこでふっと笑うと。
 
「けどな、理屈じゃねえんだよ……す……な、人のそばにいたいって気持ちは」
「えっ……今、なんて?」
 
 一瞬、何かとんでもないことを言われたように感じたルイズは、聞き
取れなかった部分を、もう一度言うように才人に迫ったが、才人はもう、
「ここまで言ったんだ、あとはちっとは察しろ!」とばかりに口をつぐんで、
乱暴に食事を口にかっこんでいった。
「ちょっと! 今なんて言ったのよ! もう一度言いなさいってばあ!」
 ルイズが詰め寄っても、才人はそっぽを向いたままで、つんっとして
答えない。けど、それを見ていたキュルケは、そ知らぬ顔でサラダに
塩を振りかけているタバサに耳打ちした。
「タバサ、あなた図ったわね」
「デジャヴュ……」
 塩の小瓶は、タバサの利き手の反対側の、普通なら絶対触って転がしたり
しない位置に、”最初と同じように”置かれていた。どうやら、二人とも見事に
タバサの手のひらの上で踊らされていたらしい。まあ、二人とも単細胞な点では
共通しているから、こういう手にはもろいだろう。正面から門を開けることが
できないのならば、隣の塀を乗り越えるなり、穴を掘ってもぐりこむなりすればいい。
 なお、恋愛感情というものに対してうといミライは、人間の心ってやっぱり
とても複雑なものなんですねと、感心したように言ってセリザワに、お前は
やっぱりもうしばらく地球で勉強したほうがいい、と言われていた。
 タバサの姦計で、互いに心の一丁目くらいまでは到達した才人とルイズ、
しかし二人にとって本当に知りたい心の深淵部は、まだまだ多くの扉を
超えた先にあった。
「サイト! 言わないとぶっ飛ばすわよ」
「うるせえ! 言ったら……言ったら……」
 ただ、普通の恋人同士ならば、それらの扉は時間をかけて一つずつ開けていく
ことだろうが、そうした段取りさえ、他人から見ればおよそくだらないとしか
言いようのない見栄や意地で乗り越えられないでいる二人が、本当の意味で
信頼しあうのには、あと何が必要なのか、本人たちもその答えを欲しながら、
時間は無情にも柱時計の鐘が九回鳴る時間へと進んでいった。
 
 
「来たな」
 きっかり地球時間で午前九時に、ミライのメモリーディスプレイからの
誘導電波を受けて、ガンローダーとガンブースターは学院外の草原に着陸した。
今回、こちらに来ているメンバーは、才人を連れ帰るためのガンスピーダーの
座席一つ分を空けても、リュウ、ジョージ、テッペイ、マリナが揃ってやってきて、
フェニックスネストでオペレートに残ったコノミをのぞいてGUYS JAPANが
勢ぞろいしたことになる。
 才人は、とうとうやってきたその瞬間に、大きく深呼吸すると、幼児が初めての
予防接種を受けるときにも似た、逃げ出したくなる不安感の中で両のこぶしを
汗で湿らせながら握り締め、彼らがここに到着してから、この世界の調査分析を
済ませて出発するまでのあいだに、どうすごそうかと考えていた。
 だが、急いで降りてきたリュウたちはミライたちの姿を認めると、すぐさま駆け寄って
なにやら話すと、才人に驚くべきことを伝えてきた。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 15:58:52 ID:mag6wQp6
支援
「予定が早まったですって!?」
「ええ、来る前にゲートの閉じる時刻を再計算したら、今からあと三十二分後に
ゲートはガンフェニックスの通れる大きさでなくなって、五〇分後には完全に
閉じてしまいます。すみませんが、急いでもらえますか」
 テッペイから慌てたように教えられた事実に、才人たちはガンフェニックスが安全に
ゲートにたどり着くまでの時間を考えると、ここにいられるのはあと二十分足らずという、
そのあまりにも短い時間に愕然とした。
「準備はできてるか?」
「あ、はい……」
 才人はノートパソコンなど、地球に持って帰る品物を詰めたリュックを背負って
待っていたが、その顔には地球へ帰れるという喜びよりも、やはりルイズたちを
残していくことへの憂いが浮かんでおり、リュウたちは地球に帰らなければならなく
なった才人を、以前光の国に帰還命令を受けたときのミライとだぶらせたが、
同時にあのときのミライとはどこか違うとも考えていた。
「いいのか、本当にこれで?」
 余計だと思ったが、リュウはそう言わないわけにはいかなかった。
 その目はこう言っていた。
 
”いいのか? こんな中途半端な終わり方で?”
 
”いいのか? お前の仲間たちを悲しませて?”
 
”思い残すことはないのか?”
 
”それで本当に後悔しないのか!?”
 
 彼が去った後にこの世界に残る数々の歪みは、容易にリュウたちにも想像できる。
 以前のミライは、今の才人のように義務と感情の板ばさみで苦しんでいたが、
自分の選んだ道のためには迷わず命を懸けるだけの覚悟を持っていた。対して、
お前はどうか、それほどの意思と覚悟があるのか。どうなんだと鋭い視線で
問いかけられて、才人はびくりとしたが。
「……はい! これでいいです、連れて……帰ってください」
 それは、決して明朗でも快活でもなかったが、意思を示された以上、もう彼らには
不満は残っても、それを拒否する権利はなかった。
「わかった! だったらさっさとあいさつくらいはすませちまえ」
「あっ、はい!」
 もう、知らん! とばかりに怒鳴られたことで、才人は雷光を受けたように飛び上がると、
慌てて沈痛な顔で見送ろうとしているルイズたちの前に立った。
「なんだよみんな、別れに涙は禁物だぜ。今生の別れってわけでもないんだし、
また必ず機会はくるってばさ」
 それが、から元気だということは言った本人が一番よくわかっていた。けれども、
タイムリミットが来てしまった以上、もはや気休めは何の意味も持たない。
もうそんな上っ面の言葉はいらないと、厳しい目つきで訴えてくるルイズたちを見て、
才人はついに観念した。
215名無しさん@支援いっぱい:2010/04/18(日) 16:00:01 ID:tO9zM6MB
 
216名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:00:29 ID:mag6wQp6
 
「みんな、さよならだ」
 それが、彼が選んだ決別の言葉だった。
「それだけ?」
「うるせえ、気の利いた台詞を言いてえのはやまやまだが、おれは国語の成績が
”2”だったんだ。キュルケ、タバサ、お前たちには借りが山ほど残ってるけど、
返しきれなくてすまねえ。それにデルフ、これまでありがとな」
 才人は、背中に背負っていたデルフリンガーを下ろすと、ルイズに手渡した。
「なあ相棒、ガンダールヴのこととか、もっと教えてやるからここに残れよ」
「悪い、けどおれが向こうに帰ったらこのルーンも消えるかもしれねえ。そうしたら、
また別のガンダールヴとやらを探してくれ」
 まだ、才人がルイズの使い魔となるきっかけとなったガンダールヴのルーンの
謎は武器の使い方が達人級になることと、身体能力を極限まで引き出すこと以外には
ほとんど解けていない、普通の使い魔のルーンには主人に服従するようになる、
一種の洗脳効果があるらしいが、前にエースに聞いてみたところでは才人の精神に
外部から干渉が加わってはいないようだった。もっとも、忘れっぽいデルフに期待
してはほとんどいないのだが、地球に帰ってしまえばそれも変わった刺青くらいの
意味しかなくなる。
「ギーシュたちには、適当に言っておいてくれよ」
「はいはい、けどきっと残念がるでしょうね。知ってる? 彼ら、ああ見えてけっこう
義理堅いのよ」
 自称、水精霊騎士隊、通称WEKCと名づけてやった悪友たちの顔を思い出して、
才人は苦笑した。この世界に来てから、貴族はみんないけすかない野郎ばかりかと
思ってい たが、ギーシュと決闘してからいつのまにやらぞろぞろと集まってきた
ギムリやレイナールといった連中は、日本の高校に通っていたときの友達と
なんら変わることはなかった。
「アニエスさんやミシェルさんたちにも、悪いけどよろしく頼む」
 銃士隊の隊長の、あの勇敢な女騎士にも才人はいろいろなことを教わった。
戦うことの厳しさ、自らに課せられた責任を守りきらねばならないつらさ、
体を張って戦う人間がどういうものか、肌で体感できた。もしも、彼女たちとの
あの三段攻撃の特訓がなければ、その後の激しい戦いにガンダールヴの力
だけで生き残っていけたか自信はない。
 それに、ミシェル、彼女と会えなくなることもつらい。初めて会ったときは
誰も寄せ付けないとげとげしさをまとっていて、かわいくないなと思ったりも
したけれど、その内にはとてももろくて傷つきやすく、そして優しい心を隠していて、
そのひたむきさゆえに道を誤りもしたが、だからこそ守ってあげたいという気になった。
彼女を頼むというアニエスの頼みを反故にしてしまうのは、罪悪感でいっぱいだが、
心の中で謝る以外に方法はなかった。
 ルイズは、確実に才人に好意を持っているであろう彼女に伝えていいものかと
思ったが、それも才人の主人としての義務だと、自分に言い聞かせた。
 ほかにも、コック長のマルトーや、魅惑の妖精亭のジェシカたちなど、言い出せば
きりがないが、それまで言っていては本当に決意が揺らいでしまうかもしれないと、
頭を振って打ち切った。

 そして最後に。
「ルイズ」
「サイト」
 互いに相手の名だけを言い合って、二人はそれぞれの右手を差し出した。
そこには、ともに中指にはめられたウルトラリングが銀色に輝き、これまでの
二人の絆を象徴するように存在していた。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:01:59 ID:mag6wQp6
 
 才人は、覚悟を決めたように左手を伸ばすとリングを抜き取り、一度ぐっと
握り締めるとルイズに向かって差し出した。
「これからは、お前が」
「うん……」
 リングを受け取ったルイズは、一瞬躊躇したが左手の中指に一気にはめ込んだ。
その瞬間、リングを通してルイズの体に何かが入ってくるような熱さが駆け巡った
かと思うと、才人の指の太さに合わせて大きめだったリングが、彼女の体の
一部だったかのように、ぴったりと細い指に納まっていた。
 これで、二人の体に別れていたウルトラマンAは、ルイズ一人の体に
一体化したことになる。もちろん、傍で見守っていたキュルケやタバサには、
今の二人の行為が何を意味していたのかはわからないが、それが二人にとって
何か重大な儀式のようなものであったことを理解していた。
「じゃあ、またな」
「うん、じゃあね」
 周りの人間が予想、あるいは期待していたのとは異なり、二人の別れの言葉は
実に無個性な、短いもので終わった。
 才人は、ルイズに背を向けて、ガンローダーのほうへと歩いていく。その後姿に、
ルイズは衝動的に、何か言わなければいけないのではないかと思った。けれど、
何を言えばいい? 行かないで? ここにいて? いや、それは言ってはいけない……
 
”どうせ無駄……”
 
 タバサの厳しい言葉が脳裏に蘇り、焦燥感が急速に増していくが、それなのに
喉はからからに渇き、舌は凍りついたように動かない。しかし、才人はどんどんと
遠くへと行ってしまう。
「もういいのか?」
「はい」
 リュウに頭を下げた才人は、振り返らずにガンローダーへと歩いて行き、
ほかの誰もがその後姿を無言で見詰めて、ルイズはぐっと、歯を食いしばって
ガンローダーに乗り込もうとしている才人を感情を無理矢理押し殺している顔で
見つめていたが、その沈痛な表情にテッペイは隣のジョージに向かってぽつりとささやいた。
「なんか、僕たち悪者みたいですね」
「なんだ、気がついてなかったのか? ドラマとかだったら間違いなく憎まれ役だよ。
けどな、大人は子供のために憎まれ役を買って出なきゃいけないときもあるんだよ。
お前にも、思い当たる節はあるだろう?」
「まあそりゃあ……小さいころは、父さんや母さんの言うことがいじわるばかりに
聞こえたこともありましたが、ジョージさんもそうだったんですか?」
「……」
 ノーコメントらしいが、誰にでも親にせよ先生や近所の大人からにせよ、
やれああしろこうしろ、またはあれやこれはするなとか、うるさく言われたり、
なかば強制されたりして大人を憎んだことはあるだろう。だが、それらは本当に
憎らしくてやっているわけではない。その子のことを大事に思っているからこそ、
厳しい顔で迫るのだ。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:03:38 ID:mag6wQp6
 
 今も、才人にとって帰るべき場所があり、そこへ戻ることを彼が選択した
というのならば、たとえ彼の友人たちから恨まれようと、それをかなえてやる
のがつとめだろう。
 また、エースを補助してボガールを撃破するためにこの世界に残ることになる
ウルトラマンヒカリ=セリザワに、リュウはくれぐれもお気をつけてと伝えていた。
「隊長は、これからどうなさるつもりですか?」
「ボガールがいるならば、必ず怪獣を呼び寄せて事件を起こすはずだから、
しばらくはここで下働きでもして世界観に慣れながら情報を集めるつもりだ。
それに、仮にいなかったとしても、ヤプールやほかの宇宙人が騒ぎを起こせば、
すぐに駆けつけるつもりだ」
 宇宙警備隊員は、地球のような惑星に長期滞在して防衛する際には、その星の
住人になりきって生活して、陰から平和を守っていかねばならない。これは
宇宙警備隊の基本任務であり、本来たまたま地球に立ち寄ったウルトラマンや
ウルトラセブン、地球に亡命したレオを除いて、ウルトラマンジャックから
メビウスまで連綿と受け継がれてきたことである。それに、本来科学者である
ヒカリにとって、魔法という未知の法則が息づくこのハルケギニアは、
観察対象として興味をそそられる部分があった。
「わかりました。では三ヵ月後に必ず迎えに来ますので、よろしくお願いします」
 現在、完全なディメンショナル・ディゾルバーRの完成を、フジサワ博士以下
GUYS科学陣の総力を挙げて研究しているが、ただでさえ不安定な時空を
数十年に一度の皆既日食という触媒すらなくして固定するのは、天才と
呼ばれた彼女をもってしても容易なものではなかった。しかも、最短のチャンスと
予想されている三ヵ月後の日食にしても、半分も欠けない部分日食である
ために今回よりも可能性は低く、もしかしたら二度と戻れないかもしれない
異世界に、尊敬するセリザワを残していかねばならないリュウはつらかった。
「地球は、お前たちに任せたぞ」
 だが、リュウたちGUYSクルーの迷いは、セリザワの一声で払われた。
そうだ、地球とて安全なわけではない。むしろ、ヤプールの復活で活性化した
宇宙人や怪獣の猛威にさらされていく可能性が、これからはどんどん大きく
なっていくのだ。それをメビウスと力を合わせながら食い止めて、三ヵ月後には
ゲートを再度開いてヤプールを一気に撃破しなければならないのだ。
「じゃあ、これを持っていってください」
 リュウは最後に、二個のアタッシュケースをセリザワに手渡した。一つは、
トライガーショットの整備キットなど、この世界で必要になるものなどを
コンパクトにまとめたもので、セリザワは中身を確認するとすぐ閉じたが、もう一つの
ケースのほうは、なぜかリュウと軽く目配せをしただけで中身を改めようとはしなかった。
 そして、別れの時間はやってくる。
「飛ぶぞ、準備はいいか?」
「はい!」
「ガンフェニックス・バーナーオン!」
 垂直噴射で草原を焦がしながら、ガンローダーは離陸し、空中でミライの操縦する
ガンウィンガーやガンブースターと合体し、ガンフェニックストライカーの形態となる。
その光景を、セリザワは無言で見つめ、キュルケとタバサは手を振り、ルイズは
唇を噛み締めながら見守っていた。
「これでいいのよ……これで」
 ルイズの脳裏に、キュルケから聞かされた昔話の少年の姿が蘇る。だが、なんと
言われようと、あんなに才人のことを心配してくれている母親の元に才人を帰さない
わけにはいかない。これが才人が一番幸せになれることだと、ルイズは信じた。
信じようとした。
 
 
 しかし、飛び立とうとするガンフェニックスを、学院の城壁の上から憎悪を込めて
見下ろしている、黒衣の人影があることに、そのときまだ誰も気づいていなかった。
「おのれウルトラ兄弟に地球人どもめ、よくも我らの計画を台無しにしてくれたな。
このまま帰すと思うなよ」
 アルビオンでのウルトラマンA抹殺計画を、突如出現したウルトラマンメビウスと
CREW GUYSによって失敗させられ、現有戦力の大半を失ってしまった
ヤプールが、そこにいた。
 奴はこれまで、まったくの予想外にこの世界に現れたウルトラマンメビウスたちが、
どうやって地球とハルケギニアを往復しているのかを慎重につきとめて、その
方法がこの不安定な亜空間ゲートだと知ると、迷わず復讐の攻撃に打って出て
きたのだ。
「まさか、人間ごときが亜空間移動を可能にするとは予想外だった。しかし、
そのゲート発生装置は未完成のようだな。恐らくは、今度閉じたら数ヶ月は
開くことはできまい。ふっふっふ……ならば、当分は光の国からの援軍は
来ることはできなくなる」
 ヤプールが地球では正面きって超獣を出現させて攻撃に出なかった理由が
ここにあった。確かに、復活が不完全で作り出せる超獣の数が揃いきっていない
というのも大きいが、かつてUキラーザウルス・ネオでメビウスとウルトラ四兄弟を
追い詰めながら、ゾフィーとタロウの参戦で逆転されてしまったように、
地球を下手に追い詰めてウルトラ兄弟の総がかりを招いたらまず勝ち目は無い、
しかも宇宙警備隊に属しているのは当然ウルトラ兄弟だけではなく、その気に
なれば兄弟と同格の実力を持つ別の戦士を送り込むこともできるのだ。
 しかし、次元で隔離されたこのハルケギニアでならば、前回の様によほど
特異な状況でもなければ救援に駆けつけることはできずに、たとえウルトラマンが
三人もいたとしても各個撃破も夢ではない。ヤプールは不気味に笑うと、右手を
高く掲げて、マイナスエネルギーをそこに集中させていった。
「くっくっく、ウルトラ兄弟よ、先の戦いで私が戦力を使い果たしたと思っている
だろうが甘いぞ。確かに、バキシムの再生もまだで、今投入可能な超獣は
残っていないが、まだこういうこともできるのだ。さあ、この世界にうごめく
邪悪な魂よ! 破壊を、殺戮を喜びとする凶悪な心を持つ者たちよ。ここに
集まれ! そして全てを破壊するのだあ!」
 ヤプールが手を握り締めたとたんに、紫色の邪悪なエネルギーは四方に
飛び散り、数秒の間隔を置いてその影響を現世に現し始めた。
 
 はじめに、その異変に気がついたのはタバサだった。高位の風と水の
使い手である彼女は、自分をとりまく空気に普段とは違った、べたついて
くるような不快な感触を覚え、さらに同じような気配を感じ取ったシルフィードが
主人に言った。
「お姉さま、風の精霊が、悲鳴をあげてるのね。なんかとっても、ぞわぞわする
ような悪いものが大気の中に渦巻いてるのね!」
「わかってる。この不快な気配……キュルケ!」
「ええ、最後まで平穏無事にすむとは思ってなかったけど、やっぱり仕掛けて
きたようね。ほんとに、涙の別れをなんだと思ってるのよ!」
223名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:06:00 ID:mag6wQp6
 
 見えない手で肌をなでられているような不快感を感じ、即座に杖を構えて
戦闘態勢を整える二人の足元から、明らかにただの地震とは違う不気味な
振動が少しずつ伝わって、大きくなり始めた。
 
 そして、人間の第六感とほぼ前後して、科学の目も異常事態に気がつき、
警報を鳴らしていた。
「これはっ! リュウさん、強力なマイナスエネルギーとヤプールエネルギーが
発生しています」
「なにっ!」
 テッペイの叫びに、リュウはとっさにガンローダーの計器を見渡すと、
レーダーにまだ微弱ながら、大型の生命反応が多数映し出されているのが
目にはいってきた。
「ミライ!」
「間違いありません、奴です」
 ミライも、かつて間近で感じたヤプールの気配を強く感じて、鋭くあたりを
見渡した。一見、それらはのどかな自然と中世の城を描いた絵画のように
平和に見える。だが、ミライの目は空高くを見上げたときに、ガンフェニックスの
レーダーよりも早く、宇宙空間から大気圏に突入してくる巨大生物の姿を
捉えていた。
「リュウさん、左十時の方向、宇宙から怪獣が降りてきます!」
「ちっ! 俺たちを帰らせないつもりか! 仕方ねえ、やるぞみんな!」
「G・I・G!」
 帰還コースへの自動操縦を解除して、戦闘モードに入ったガンフェニックスは
急速旋回し、ミライが捉えた敵怪獣に対して備える。
 だが、突然の怪獣の来襲に驚いたのは、彼らよりもむしろ才人のほうだった。
「えっ? あ、ちょっと、どういうことなんですかミライさん」
「ヤプールだ、怪獣が迫ってきてる。しかも、一匹や二匹じゃない!」
「なんですって!? 待ってくださいよ、ここはまだ学院の上空じゃないですか! 
てことは……ルイズ!」
 才人は愕然とし、眼下に見える学院を見下ろして、広大な草原のあちこちから
複数の土煙が吹き上げるのを見た。それは、紛れも無く地中から巨大な物体が
地表に現れようとしているサイン。
「ミライさん、地底からも怪獣が!」
「えっ!? あ、あれは!」
 彼はその一つの中に、まず前方に向かって大きく伸びた巨大な角と、真っ赤に
輝く瞳の無い目を持った頭を見て、次に土砂を弾き飛ばすように現れた、二頭の
大蛇のような太く長大な鞭状の腕を確認して叫んだ。
「地底怪獣、グドン!」
 そう、そいつこそかつてウルトラマンジャックを一度は倒し、東京を壊滅の危機に
落としいれた凶暴な地底怪獣で、さらに新GUYSが初めて戦った怪獣として
記憶にも新しい肉食地底怪獣グドンだった。
 しかも現れたのはグドンだけではない、土煙の柱の中からはさらにグドンより
巨大で同じように鞭を持つ怪獣や、角ばった頭部を持つ二足歩行型の恐竜型怪獣、
扁平な体を持つ土色をした甲殻類のような怪獣が続々と這い出してきたのだ。
「よ、四匹!? テッペイさん、あいつらは?」
 才人はグドン以外は見たこともない怪獣軍団に、自分よりはるかに専門知識のある
テッペイに助けを求めたが、そいつらはテッペイの知識にもGUYSのアーカイブドキュメント
にも記録されていない、異世界の種類だった。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:07:31 ID:mag6wQp6
支援
226名無しさん@支援いっぱい:2010/04/18(日) 16:07:45 ID:tO9zM6MB
 角ばった頭部を持つ恐竜型怪獣は、ウルトラマンダイナと戦った怪獣グロッシーナの
同族怪獣、また平たい体を持つものはウルトラマンガイアと戦った怪獣ギールの同族で、
どちらも地中をテリトリーにする性質と高い凶暴性を持つ。
 さらに、最後の一匹がその姿を完全に地上に現したとき、キュルケとタバサは
二本の巨大な爪のあいだから鞭を生やし、前に突き出した一本角を持つ特徴的な
シルエットに、あのエギンハイム村での戦いを戦慄とともに思い出していた。
「タバサ! あの怪獣は!」
「……生きてたの」
 そう、ムザン星人によって操られ、エギンハイム村と翼人の森を荒らしまわった
バリヤー怪獣ガギに間違いない。サイクロメトラは反物質袋を取り除かれていたから
爆発に巻き込まれることはなかったが、いずれ寄生され続けていた反動から
死ぬはずだったのが奴の生命力が上回ったようだ。
 四匹の怪獣は地底から現れると、そろって雄叫びをあげて学院に向かって
進撃を始めた。
「あいつら、学院を狙ってる!」
 ヤプールによって呼び出されたからには、それは当然の行動であったが、
ほかの三匹はともかく、ガギとは一度戦ったことがあり、その破壊力や能力を
熟知しているキュルケとタバサは、なんとか食い止めようとシルフィードで飛び立った。
 むろん、GUYSとて黙っているわけではないが、ガンフェニックスは空中から
襲い掛かってきた、昆虫のような翼を持つ黒色の怪獣に追撃されていた。
「テッペイ! あれも未確認の怪獣か!?」
「いえ、ドキュメントSSSPに記録があります。彗星怪獣ドラコ、かつて地球に
接近したツィフォン彗星から飛来した怪獣で、レッドキングと戦ったこともあります」
 これで、確認された怪獣は総勢五体! GUYSもかつて経験したこともないほどの
大軍団だ。しかも、その半分以上はデータのない未知の敵、タイムリミットの迫る中、
リュウはGUYS隊長として決断を迫られていた。すなわち、このままゲートへ
向かって地球へ撤退するか、それとも。
「テッペイ、ゲートが閉じるまで、あと何分だ?」
「あと……十五分です!」
「てことは、フルスピードで飛ばしたとして、とどまれるのは十分ぐらいか……
よし、俺たちのためにこの世界の人たちに迷惑をかけるわけにはいかねえ、
総力戦で一気に叩き潰すぞ! GUYS・サリー・GO!」
「G・I・G!」
 ガンフェニックストライカーが分離し、甲高い鳴き声を上げながら追尾してくる
ドラコを三方向に分かれてかく乱する。
「ジョージさん、僕も行きます!」
「ミライ、よしガンウィンガーは俺にまかせろ」
 敵の数を見て、ガンフェニックスだけでは手に余ると判断したミライはリュウの
指示を待たずに変身を決断した。メビウスブレスを輝かせ、金色の光が
コクピットから飛び立つ。
「メビウース!」
 空中でその姿を現したメビウスは、突進してくるドラコを正面から受け止めると、
空中から引き摺り下ろそうと翼を掴んで、もろともに草原の外れに墜落した。
 さらに、草原に残ったセリザワも、前進してくる怪獣軍団を睨みつけて、
右腕に出現させたナイトブレスに、ナイトブレードを無言で差し込んだ。
「あれは、ウルトラマンヒカリ!」
 四大怪獣の前に青い光とともに立ち上がったヒカリの姿に、コクピットから
覗き込んでいた才人が叫ぶ。見ると、地面に叩き落されたドラコもメビウスから
離れて怪獣軍団に加わり、メビウスもヒカリに並んで学院を守ろうと構えをとる。
 しかし、いくらメビウスとヒカリといえども相手は五匹もの大軍団、しかもどいつも
一筋縄ではいかない強敵ばかりだ。半分ずつ請け負い、ガンフェニックスの
援護があるといっても一対二、一対三の圧倒的不利な戦いを強いられる。
 だが、これを打ち崩す手が一つだけあった。
「わたしが、やるしかないんだ……」
 草原の端に、一人だけ残ったルイズは、こみ上げる悪寒にも似た気持ち悪さの
中で、ぐっと胸の前で祈るように握り締めた両手を見ていた。そこには、半年間
右手に輝き続けたリングと対を成すように、左手に才人のはめていたリングが
冷たく銀色の輝きを放って、ルイズが決断する瞬間を待っていた。
「わたしが……わたしが、やるんだ」
 ルイズは、自分自身を叱咤するようにつぶやいたが、その声は震えていた。
 怖い……才人がいないことが、このリングが光るとき、いつも才人がそばに
いてくれた。そうすると、どんな強敵が相手でも、すうっと勇気が湧いてきたのに、
今は何も感じない。どうして、自分はこんなに臆病だったのか? 力はある、
戦えるはずなのに、勇気だけが欠け落ちたようにからっぽだった。
「サイト……ううん、これからは、わたしが一人でトリステインを、ハルケギニアを
守っていかなきゃいけないんだ。あんな……あんな使い魔の一人が欠けたからって
なによ。わたしは、ルイズ・フランソワーズ! 『烈風』の娘よ!」
 そのとき、ルイズはかっと目を見開くと、両手を大きく広げて、こぶしを握ると
胸の前で突き合わせて、リングの光を一つにつなげた。
「ウルトラ・ターッチ!」
 光がほとばしり、メビウスとヒカリの前に輝いた光の柱の中からウルトラマンAが
その銀色の勇姿を現す。三人のウルトラマン対五匹の怪獣軍団、しかし、才人の
欠けたウルトラマンAは、果たしてこれまでどおりに戦えるのだろうか?
 タイムリミットは、刻一刻と迫りつつあった。
 
 続く
229ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2010/04/18(日) 16:11:26 ID:UGgPvw29
今週はここまでです。(まだ出てきてないけどビダーシャル風に)支援に感謝を。
100話まで間近で、物語も重要な局面に入ってきましたので、登場する怪獣も大盛りでいきました。
今回のお話は、初めて学校に一人で行ったりとか、親元を離れて一人暮らしを始めたときとか、
誰にでもあるそんな機会をイメージに入れてみました。恥ずかしながら私にも経験がありますが、
前日までは平気だとか心配するなとか言うんですが、いざ当日になるとめっちゃ不安になりました。
まして、この二人は原作でも互いの絆を認め合うのに信じられないような時間をかけてますからね。
アニメ第一期のラストとロマリア編を混ぜたような感じで作っているこの場面、二人がどういう
答えを導き出すかについてまではまだ書いてませんが、筆者なりに責任を持って最後まで
書ききろうと思っています。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:12:52 ID:mag6wQp6
乙でしたー
231名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:18:04 ID:8iPA4SJi
乙でした。
本当に才人が帰っちゃうのか、ドキワクしながら読んでました。
来週が待ち遠しいです。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:45:58 ID:LiOz8sOj
ウルトラの人乙です。
まさかこれだけの大軍勢を出してくるとは・・・
金曜発売の銀河伝説のDVDと同じくらい次回が楽しみです。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 18:23:53 ID:xCfLsk8E
乙。

……ヤプールはGUYSの連中が帰ってから学院を襲撃すればよかったんじゃね?
と言ってはいけないんだろうなぁ……。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 19:27:51 ID:GFBREG7U
TACの山中隊員かMATの岸田隊員をハルケに放り込みたい
235名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 23:51:57 ID:Qd1r4ImR
ドラコといえば銀河伝説でアギラに倒されてたなあ。
ミクラスはベムスターを倒すし、あの映画の敵怪獣の弱さは異常。
あれならタバサくらい実力あったらタイラントを倒せるかもしれん。キメラドラゴンと同じ合体怪獣だし。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:31:01 ID:nS5Fn9CB
あの映画で一番強かったのはシャプレー星人だろう。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:51:13 ID:NGTp77WV
まあ映画に出てきた敵怪獣は再生モノだし
238名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 01:22:28 ID:EB7I4Ixh
原作では体長18メイルくらいのドラゴンに人間は絶対勝てないとかビビッて殺されかけていたタバサが、
身長40m前後はある怪獣に勝てるわけは普通に考えれば無いのだが…まあ二次創作だしな
239名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 01:25:43 ID:EB7I4Ixh
第一作のウルトラマンでも、ジェロニモンが蘇らせた再生ドラコは拳銃のスパーク8で殺されてたし
まあジェロニモンもスパーク8でやられてたけどさ
タロウに出てきた再生べムスターは再生怪獣とはいえ結構強かった覚えがあるが、ドラコは元から弱いよーな
240名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 01:38:02 ID:4pkebehC
>239
初代ウルトラマンでは希少な宇宙怪獣のなのに、レッドキングに簡単にやられてるしなあ。
まあレッドキングは地球怪獣じゃ結構強い方だけど。

逆にパワードドラコの強さは凄かったが
241名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 02:13:57 ID:foyZzP6Q
だからお前らそういう話題こそ埋めついでに前スレでやれと…。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 09:50:40 ID:pd6YGMi9
まったくだな
243名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 13:34:52 ID:Fiz5CekD
ウルトラマン3人に怪獣5匹の大乱闘か、
朝イチで薬をおろしに行くって言ってた彼女は戻ってきたとき「巻き込まれずにすんだぁ〜っ!」って泣いて喜ぶんだろうな。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 22:21:10 ID:sRYiN+EA
仮面ライダーが全然・・・
245名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 22:24:35 ID:sjWJ4I3W
平成連中は結構いるじゃないか。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 22:27:11 ID:nzU/TTbl
出てないの響くらいなんじゃね
247名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 23:29:59 ID:7qYLvmfl
テス
248名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 23:35:29 ID:7qYLvmfl
お、書き込めた
仮面ライダーは昭和世代だとメンテの問題があるしな
小説版一号が死んだのもメンテ不足が原因だし
249名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 23:39:16 ID:7RIIKzVL
6th適能者 キュルケ
7th適能者 タバサ
8th適能者 ルイズ
250名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:03:36 ID:V6aPK9v5
>>246
ヒビキさん召喚→色々あって弟子入り、鬼の修行開始→中盤で出てきた嫌なヤツが最終的に鬼に、ルイズドロップアウト
251名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:06:41 ID:7scTcUlS
世界の破壊者がやってきた別世界ではルイズが鬼になっているわけだな
252名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:07:38 ID:U5vfI3ap
鬼の方がドロップアウトな気がするんだが。

歩夢は医者を目指すんだっけ?
そっちの方がライダー的にともかく、世間的に普通だと思うが。
こっちでも立派な貴族、立派なメイジを目指すのが正しい道だと思うぞ・・・・
253名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:50:06 ID:0nJrYYcI
>>252
別の道へ進むルイズがいてもいい
自由とはそういう者だ

人間をやめたルイズから私立探偵になったルイズ、キ○ガイヒーローになったルイズなどなど選り取りみどりです
254名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 01:03:38 ID:i0pSY3Ao
ルイズはハルケの財団と戦います。弱点は火系統
ただし周りのエネルギーを取り込んで自分のものにできちゃいます
255名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 01:15:07 ID:U5vfI3ap
>>254
>弱点は火系統

敵はツェルプストー?
256名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 06:03:46 ID:39NMBKNg
>>254
改造兵士=元素の兄弟ですね。わかります
257名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 09:01:53 ID:BiIDA8go
ルイズ「その命、ブリミルに返しなさい」
258名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 10:06:51 ID:7RlcK5a9
ルイズ「私をゼロと呼ぶのはやめなさい!」



…ハルケにも妖怪ボタン毟りがw
259名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 10:41:45 ID:7scTcUlS
「ポコとあそぼう」のポコを召喚
260名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 11:41:57 ID:uRwiaMx+
無口な上に台詞が漢字二文字縛りの真改さん(ACfa)を召喚
書き手殺しだな
261名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 12:14:40 ID:0paEKYBA
>>248
その辺、厳密に考えてるのは映像作品だとスーパー1くらいだけどな。
むしろ改造のおかげ(せい)でちょっとした傷ならみるみる治っていくのが昭和ライダークオリティ。

>>254
変身のたびに服が!
262名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 12:32:24 ID:nEKlIhu3
仮面ライダーSPIRITSで昭和ライダーを知った年代、というのも中にはいると思う。
……BADAN時代のZXの自己修復能力は凄い物がありましたね。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 14:11:25 ID:kS4Y5yv4
仮面ライダーでメンテが必須なのは、リメイク版2号だけだしな。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 14:25:10 ID:YArY9RVI
召喚というか、ゼロ魔のキャラで空中元素固定装置を手に入れて使うことになるとしたら誰がいいかなと考えてしまう今日このごろ。
265名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 16:27:02 ID:kxIi2nZ6
匿名希望
(空中元素固定装置・・・・・アレさえあれば・・・・・・・アレさえあればわたしもちいねえさまやテファと同じサイズに・・・・・・・)
266名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 17:06:27 ID:zOML8Rkb
でもあれはおしりの小さな女の子の筈だぞ
いいのか本当に
267名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 17:09:36 ID:R7w82sua
GODHANDのドMことジーンを召喚
結局、Sにこき使われるはめに
268名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 19:48:10 ID:nyoEUonI
ライダーも栄養を摂取しないと生きていけないからどのライダーもメンテは必要
269名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 20:11:14 ID:otlJ17qC
石ノ森つながりで、
『サイボーグ009』のゼロゼロナンバーサイボーグを召喚。
誰を召喚するかによって展開に違いがでてきておもしろそうだけど、
人間と戦えるのかという根本的な問題があるな・・・。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 21:36:37 ID:NMfuPQJN
>>56
ゴーレムがビームを使うのが当然な世界は、きくたけ世界だけにしてあげてwww
271名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 21:41:51 ID:yVxe+gFT
カニアーマー召喚だと!?

ルイズ「蟹光線(イブセマスジーーーー)」
272名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 21:57:15 ID:y1ZVpmQj
BLACKからケラー軍曹召喚
273名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:00:02 ID:loEYWta2
銃夢からノヴァ教授召喚
274名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:07:33 ID:bA7g2Cnx
>>273
コッパゲとは仲良くなりそうだが、しかし、ほっとくとメイジの脳をチップに替えても魔法が使えるか?とか実験やりそうだなぁ。
あと、プリンはあるのかあの世界。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:16:19 ID:y1ZVpmQj
バックトゥザフ―チャ―からデロリアン召喚してルイズが若い頃のカリンちゃんに出会うSSとか面白そう
276名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:17:27 ID:1DDzTWny
むしろサイトが過去に戻っちゃって
カリンちゃんとなんかいい感じ→ルイズがヤバイ!
的な感じで
277名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:26:04 ID:VzDd0Klr
エレ姉だけサイトの娘という事にすればいい
いやヴァリエール姉妹全員そうなのもそれはそれで(r
278名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:43:16 ID:37/j8NMg
Tick Tackじゃないんだから
279名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:59:20 ID:wySh7tDd
>270-271とか夜闇の人を見てるとヴィットーリオが呼んだのがグィーd(血飛沫で続きが読めない)


…しかしBBBから吸血鬼召喚するなら誰が適当かな。
闘将の血族はチートだし賢者はまずいし月匠は死ぬし…
280名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:04:22 ID:IygO8hxR
>>279
前にカーサ召喚があったな
召喚しただけで止まったが
281名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:04:41 ID:HnZxGDF6
> グィーd
そういや剣士でディフェンダーなのよね。ガンダールヴでも可笑しくは……ない?
282名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:10:28 ID:RIRB/wm5
>>277
エレねえを娘と知ったらなんだか急に可愛く見えてきて優しくしたら
エレ姉がデレてしまってさあたいへんということですね
283名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:20:06 ID:V6aPK9v5
代理投下行きます
284ゼロの銃 第2話(1/9) 代理:2010/04/20(火) 23:20:57 ID:V6aPK9v5

目  目    目
目玉
無数の目玉が、ギースを見つめていた。
闇魔法『ブオーゾ』
怪物に喰われ咀嚼された人間の、目玉が蛙の卵のように連なり敵を見つめる。
それは罪悪や恐怖心といった人の心の影を縫い付ける魔法。
『ぎゃああああああああああああああああああああ』
『ひぃいいぃぃいいっ!!』
傍らに立っていた味方が、胸から上を抉られ喰われた。
地獄の剣谷のような鬣を持ち、己が肉を喰らう大蛇を纏う六つ目の獅子。
降り立つ大地にねばついたタールを撒き散らす。
喰われた兵の足元は影の代わりに黒い蛇がまとわり付き、肉を食まれて骨が見えている。
『神獣ギャンベロクウガ』悪意の塊とも言えるその怪物の王は、齢17の少年だった。
ギャンベロクウガは敵を喰らい肥え続け、少年は呪いのように次の怪物を呼び出している。
向けられた5万もの兵を、あの少年は『何割』削いだのだろう。
戦闘開始から大して時間が経っていないのに、そこここで積みあがった『肉片の塔』を見、ギースの背筋を恐怖が走った。
「殺せ!!死ね!!しね―――」
少し前まで交渉をしていた相手を……否、自分の傲慢さ故に生きて欲しいと願った相手に曇りの無い殺意を投げる。ナイフほどの力も無いそれが、ギースの心を燃え上がらせる。
最初に会ったときは普通の子供だった。青い理想論を振りかざし、無謀とも言える戦いを挑んできたのだ。
今も彼は、曇りの無い理想を抱いて、あの闇を吐き出し続けているのだろう。
ぎろりと、ブオーゾの睨みに据えられる。罪を暴く審判者のようにギースを大地に縫い付ける。
おまえの罪はなんだ。オレの罪は、この目をどこで見た!?

『どうしたのギース?』
母の優しい目がぼくに向けられた。
甘ったれの弟から視線を奪うことが出来たのに、ギースの心は満たされた。
途端に弟が喚きだす。鳶色の瞳が悔しそうに潤う。
『おかあさん! ぼくのレースを見てよ! 今日は一番うまくできたんだ!』
幼い嫉妬に歪んだ目、それが鬱陶しくて意地悪な気持ちになる。
「それでうまくだって? 目はばらばらだし、椿がまるまった紙くずみたいだ!」
『ばか! おにいちゃんのばか! 』
『おまえら止めろ! 母さんが困ってるだろ! 』
兄の怒った眼がこちらを向く。兄さんは怒るととっても怖い。
お母さんは笑っている。兄さんは怒っている。プルートは

頭 か ら 血 を 流 し て、瓶 に 入 れ ら れ る
声を上げそうになったところを、背後にいた兄に口を塞がれる。
『仕方が無いんだ。こうしないとオレたちまでガリアン人にされてしまう』
外ではスラファト兵が騒いでいた。スラファトがガリアン人を連行している噂を、大人たちがしていたのを思い出した。それでも混血が多いこの村が、振り分けにかけられるとは思いもしなかった。
弟は一人だけ、髪の色が亜麻色だった。他の家族は血を薄めたような赤毛なのに。
スラファト人の特徴は燃えるような赤毛だ。対してガリアン人の髪は麦の穂の亜麻色――
それでも肉親であることは変わらない。幼い頃取り上げられたばかりの弟を抱いたことを今でも覚えている。
今、弟は血を流しながら、母に抱えられ瓶に入れられていく。
目が、合った。
家族によって殺されようとしている弟が、薄目を開けてこちらを――――――
285ゼロの銃 第2話(2/9) 代理:2010/04/20(火) 23:21:38 ID:V6aPK9v5
「――――っ! 」
ざわり、と無数の目で睨まれたような寒気に、ギースの意識は覚醒する。
目なんてどこにも無い。窓から覗くのは朝焼けの光だけだ。
「…………」
嫌な夢を見た。冷や汗で毛布が湿っている。……服も
しかし現実とどちらがマシだろう。比べても虚しいだけだが。
まだ起きるには早い時間のようで、ベッドの上の少女は健やかな寝息を立てている。
床で寝るのは結構体に負担がかかることのようだ。節々が軋んで仕方ない。ふと傍らに放られている下着を見つけ、自分の置かれてる状況に思いっきり眉をしかめた。
「くそっ! 」
毛布を払いのけ、千切るように下着を掴み取る。
……折角だから毛布も干しておくか。あと汗も拭いたい。
ドアの鍵を外し、出て行こうとしてふと思いつきベッドへと戻る。
天蓋の豪華なベッドで惰眠を貪る新たな主、ルイズを見る。
淡い光を弾く白いかんばせ、シーツに広がるローズ・ブロンド。伏せられた瞼の奥には鳶色の瞳――
(この世界に来て初めて見たものが、こいつの目だった)
なぜか弟と間違えて、思わず名前を呼んでしまったのだ。
縋るようなその目を、弟は死の際まで見せなかった――見せてくれなかったのに。
この少女も、あんな不安そうな目をしたということは、何かを耐えられない重圧を背負っているのだろうか?
(だとしても、オレには関係ない)
只でさえ奇妙な自体に混乱しているのだ。これ以上厄介事は被りたくない。
ドアに向かいノブに手をかけ、一瞬止まり……静かに部屋を出て行く。

出てきたはいいが、洗い場の場所なんか知るわけが無い。
人気の無い女子寮の廊下を、コツコツと革靴の歩く音が響く。
すると、通りかかった部屋のドアがガチャリと開いて一人の少女が出てきた。
「……」
ルイズよりも小柄で特徴的な水色の髪をした少女は、いるはずの無い男の存在に驚愕することもなく、一瞥して去ろうとした。
「待ってくれ、一つ聞かせて欲しい。……洗濯をしたいんだが、洗い場はどこにあるか教えてもらえないか? 」
「………」
不躾な物言いかと思ったが、それを不快に思ったかを表情から悟ることは出来ない。
青髪の少女は無言で持っていた杖を窓に向ける。
その先を見ると、メイド姿の女性が洗濯をしているのが見えた。
「ありがとう。助かった ――そうだ。これを」
「…… ?」
シャツのポケットからレースのリボンを取り出し、小さな手に握らせる。
「他にやれるものが今は無いんだが……女の子はこういうのが好きだろう」
「………」
無言で手の上を見つめているが、嫌悪感のようなものは見られない。
「……外に出るのはどっちに向かえばいい?」
思い出してもう一つ質問する。リボンに伏せられた瞳をあげ、あっちというように杖を廊下の先へ向ける。
再び礼を言うと、もう用は受け付けないとばかりに別方向へと行ってしまった。
寡黙な少女だが、不躾というわけではない様だ。誰よりも早く起きて、あんな巨大な杖を持って何をしにいくのだろうか。
思案にふけるのもいいが、今は己の仕事をしよう。
示された方へ向かって歩き出した。
286ゼロの銃 第2話(3/9) 代理:2010/04/20(火) 23:22:14 ID:V6aPK9v5
外に出ると、朝霧の引いた後の空気に爽やかな気持ちになった。
(満月より滴る王女のヴェール、淵に沈む聖女の息吹……)
水魔法《目覚め》の詠い始めを、そらでなぞる。
水分を含んだ空気を水底に沈められた水の精霊王、メルメットの王女の息吹に見立てた魔法式だ。発動すれば感覚が研ぎ澄まされ、また軽度の怪我なら回復する。
水の素質があまり無いギースでも、状況が揃えば封呪できる。
川の傍や湖のほとり、雨や朝霧の引いた後など漂っている水のロクマリア(魔法元素)が多いときのみ、威力は弱いがカートリッジに封呪出来るのだ。
(……カートリッジも、代わりになる銀も宝石も無いがな)
くさる気持ちが抑えられない。出来ることといえば、小娘の下着の洗濯だけとは……
一時でも惜しい――そんな体で洗濯をしているメイドの少女に声をかけた。
「すまないが……」
「っ! きゃっ!」
突然声をかけられて驚愕したらしい少女が、手に持っていた洗物物を落としてしまう。
ぼちゃん、と水しぶきをあげて金盥の泡の中に沈んでいく。
「あ、あ、申し訳ございません! 貴族の方と話すのにこんな格好で!」
泡に濡れた裾をはらいもせず戸惑いながら頭を下げる。
「いや、急に声をかけたのが悪かった。頭をあげてくれ。それに私は貴族でもなんでもない 」
「えっ!でも、この学院に平民なんか……護衛の傭兵ですか? 」
「……それも違うんだが」
10代そこらの小娘に召喚された使い魔です。と申告する勇気は無いし、平民だとか貴族だとか、重要な問題とは思えなかった。
「洗濯をさせて貰いたい。邪魔でなければ盥の端を貸してくれ」
「せっ! 洗濯なら私がさせていただきます! 今は使用人の分を洗ってるんですけど、とても貴族の方にそんな真似は」
させられません!と悲鳴のように宣言する彼女の気迫に、危うくルイズの下着を渡しそうになる。
『早朝仕事をしていたら、女子寮から出てきた不審な男が女物の下着を渡してきたんです!』
どう見ても下着ドロです。本当にありがとうございました。
(……冗談じゃない)
自分が新聞の記事になってるのを想像し眩暈がした。新聞がこの世界にあるのかは疑問だが。
「本当に貴族じゃない。そもそも、この世界の人間ではないんだ」
「世界……? 不思議なことを仰るんですね」
言外に失笑されたのを気取り、ギースの眉がつりあがる。咄嗟にズボンのポケットからハンカチを取り出して、メイドの眼前に掲げた。
「わぁ……すてきなレースのハンカチですね」
「スカロップエッジング」
「え?」
ぽつりと呟いた言葉は、呪文か何かだろうか?
「クロッシェ・タッチングは古く、歴史を辿って歴史書が一冊書きあがるほど変容してきた技術だが、その歴史の中で研磨された最新の技術がこの一枚に透けるようだろう。
見ろ!この華やかでありながら決して押し付けがましくない淑やかな可憐さの薔薇を!!」
得体の知れない『なにか』に押されて、火を噴くサラマンダーのようにレースへの美辞麗句が飛び出す。
本格的にレースの商売を始めてから、似合わないことをする羞恥心は消え失せたようだった。
「この技術は、歴史はこの世界に無いはずだ!」
くわっ!と凄むギース。異様な熱気に加え生来の目つきの悪さで、恐ろしさ5割増しである。
「よくわからないけど……すてきですね」
そんな熱気を物ともせずにうっとりとハンカチを眺める少女にガクッとギースの肩が落ちる。(そもそもレースに証拠を求めるのがお門違いなのだが)
が、尚も羨望のまなざしで見つめる少女に幾分溜飲が下がった。
「……欲しいならやってもいい。それは一昨日私用に作ったばかりだが、一度も使ってない」
「えっ!そんな、いいんですか!?でも、高価なものなんじゃ」
少女の顔が喜びに湧き、次いで不安げな色がそれをかき消す。……価値がどれくらいのものか尋ねられたが、金を求める気にはなれない。
「言っただろう、私用に作ったものだと。」
素っ気無い言葉だったかもしれない。気を悪くしたか?と思って少女を見ると
「うれしい……大切にします!」
嬉しくて堪らないといった体の顔を向けられた。真っ向から向けられる好意が気恥ずかしくて顔を逸らす。
「盥と、井戸の場所を教えて欲しい。……石鹸もあれば」
「はい、どうぞ。――お名前、聞いてもよろしいですか?」
「……ギース=バシリスだ 」
「ギースさん……私、シエスタって言います!」
そう言ってシエスタは派手ではないけど愛嬌のある顔を、可憐に綻ばせた。
287ゼロの銃 第2話(4/9) 代理:2010/04/20(火) 23:23:01 ID:V6aPK9v5
ギースが洗濯を終えて部屋に戻ると、ルイズは起きていたがあまり朝が強くないらしく、寝ぼけたような顔でぽつりと呟いた。
「……あんた誰だっけ?」
「……まだ頭が眠っているようだな。貴様に無理矢理呼び出された哀れな一般人だ」
「ああ、仕立屋だったわ。仕立屋、服着せて」
「ッ! 仕立屋では無いと言ってるだろうが!!」
噛み付くような恫喝も軽くあしらわれる。
怒りを堪えて辺りを見遣ると、椅子に大雑把な具合に掛けられてる制服があった。
それを取ると、ベッドの上のルイズに渡してやる。
「先に下着取って。そこのクローゼットの一番下に入ってるから」
「……羞恥心の消失はいつかお前を破滅させるぞ」
下着を洗わされたギースに戸惑いはもう無い。不本意であることは変わらないが。
クローゼットを探ると適当に取って乱暴に放り投げる。
「……ちょっと! なにすんのよ!……ハッ」
運悪く顔にぶつかってしまい、粗雑な扱いに抗議するが
(5段レースの下着!?)
投げられた下着を見て驚愕した。適当に取ったように見えてきっちり選んでいたのでは?と思うと、言葉が出なかった。

「着せてと言った割には、随分素直に着替えてたな」
「……うるさい。わたしの許可無く喋ったらご飯抜くわよ」
「傲慢というより暴君か貴様!?」
憤慨を通り越してただ驚愕する使い魔に、言ったばかりのことも覚えられないのかと鼻で笑う。いや、あんまりな言い草に驚くしかなかったんだろうけど。
最初に呼び出してから随分と感情を出すようになったなと思った。分が悪い立場にいてもずけずけと物を言うし、声を荒げることも多い。こんな他人は……初めてだ。
ルイズの周りにいる『他人』は、能力について馬鹿にしてくる奴か、家名に媚びへつらう狐ばかりだ。そのどちらも疎ましいと思ってたし、突っぱねることが出来ない自分を歯痒く感じていた。
この男は、わたしのことを殆ど知らない。わたしが『ゼロ』と呼ばれていることも。
『ゼロ』のわたしに仕えることを、嘆くだろうか?
魔法が使えたという、この世界の貴族と同じく実力を示さないと評価されない世界で生きてきたこの男……
疑問――不安は止め処なく溢れる。焦燥や悲哀と共に黒々とした釜から出てくるのだ。。
隠さないと、こんな思いは。貴族の誇りが傷ついてはいけない。
「……朝食を楽しみにしてなさい」
にやりと口元に笑みを張り付かせて言う。男…ギースは言葉も出せず凶悪な眼光をむけてくる。
何か言いたそうな瞳を無視し、ドアを開けて廊下に出ると、ちょうど今起きてきたらしい隣人の、キュルケ・ツェルプストーと鉢合わせた。
「げ」
下品なうめきが出て後悔するが、音が戻って来る訳がなくキュルケに届いてしまった。
「げっ…て、蛙でも潰したのかしら?」
胸元にかかる赤毛をかきあげて気だるげな目線を向けてくる。そのいちいちの仕草が胸焼けするほどの色気を放っていてうんざりする。褐色の肌とメロンのような巨大さのバスト、その谷間を惜しげもなく覗かせて数多の男を毒牙にかけるのだ。
(まさに食虫植物のような女だわ)
南国の奥地に咲くという巨大なラフレシアを脳裏に浮かべる。褐色のラフレシアは値踏みするような視線をルイズ……否、ルイズの後方に注いでいた。
嫌な予感がしてキュルケの顔を見上げると、ふふんとバカにしたような笑みが浮かべていた。
「ルイズも意外とやるわねぇ。部屋に男連れ込むなんて。ルイズの成長が嬉しくてたまらないわ!」
祈りを捧げるように胸の前で手を組むキュルケ。……とうとう脳にいくはずの養分まで胸に吸い取られたのかしら?
「でも知らなかったわ。ルイズって年上が好きなのね。だから勉強ばかりしてたのかしら?同級生なんか相手にならない?」
はた、と止まりすべての意味を理解した。こここ、ここ、この女――!!
「な、何言ってんのよ!ああああんたって奴は何でも色恋沙汰にしないと理解できないの!?脳内万年発情期も大概にしなさいよね!!」
「照れなくていいのよ? 人生には愛が必要なの。時には熱に浮かされることも」
「……盛り上がってるところ悪いが、私はただの使い魔だ。」
騒々しい喚き合いに剣を刺すように、不機嫌な声が割り込む。
「初めまして元気なお嬢さん。想像力に溢れててとても愉快な方のようだ。あなたのような人がいてルイズもさぞ楽しい生活を送れていることだろう」
胡散臭すぎて布で擦れば簡単に禿げそうな爽やかな笑顔と、一見絶賛してるような最低の皮肉の羅列に、案外こいつ子供っぽいなと頭が冷える。
「ふふ、面白い使い魔さんね。……そういえばあなたは何を召喚したの?」
ギースの言ったことを冗談と受け取ったらしい。ギースにまだ濡れた視線を注いでいる。
288ゼロの銃 第2話(5/9) 代理:2010/04/20(火) 23:23:43 ID:V6aPK9v5
「……だから、これよ。名前はギース。職業、仕立屋」
「 仕 立 屋 じ ゃ な い !!」
「…………」
いちいち訂正するギースと、聞いたきり固まるキュルケ。彼女の中にも色々と葛藤があったらしい。なにか言う前にギースの左手を掴んで眼前に晒す。何をするんだ!と言いたげなギースを目で黙らせる。
「ほら、使い魔のルーンよ。」
「……ルイズ、あんたがここまで思いつめてると思わなかったわ。そんな、恋人を使い魔なんて言って連れてくるなんて…っと、フレイム、ごめんね。お腹すいた?」
まだ誤解が解ききれてないキュルケのマントが、背後に引っ張られる。のそりと出てきた巨体は――鮮やかな赤色のサラマンダーだった。
「あたしの使い魔はこのコよ。『微熱』に相応しい使い魔だと思わない?」
誇らしげにサラマンダーの背を愛撫するキュルケ。熱くないのかしら?顔と同じく手の皮まで厚いの?
「これは……サラマンダーか !?」
驚愕の声をあげたのはギースだ。双月を見上げたときのような驚きを瞳にたたえている。
「あんたの『世界』にもサラマンダーがいたの?」
「……本物を見るのは稀だが、火の初歩魔法だからよく――なっ!? 熱!」
急に叫んだギースを見ると、サラマンダーにズボンの裾を噛まれ……というか、舐められていた。
「やっ!やめろ!!舐めるな!!ズボンが溶けてる!?」
右足の脛の辺りだけ特徴的な透かしが入れられたズボンは、かっちりした印象だったギースにあいまって、その、なんというか自己愛者のようなザマになっていた。
「あっはははははははははははははは! 片足だけ透かし入り! あははははははははははははは!! ださい!!」
「サラマンダーの舌は焼け石の熱さなのよ。駄目よフレイム!舐めちゃ駄目!」
「あっははははははははははははははは!」
「いつまでも笑ってるなァ!!」
「フレイムは人懐っこいコだけど、こんなに好かれるなんてあなた、火の血が流れてるのかしらね?」
くすくすと笑いながら愉快気にギースを見る。
「……火属性の濃い血なんだ。」
「あら、貴族なの?どちらの方かしら?」
あまりこの話題は――したくない。
「……行くわよ、ギース」
「お、おい」
会話を強引に途切れさせて、不満な様子のギースの手を強引に引いて歩き出す。
背後で、「またお話しましょう」とキュルケが告げた。

ルイズより早く朝食を平らげたギースは、優雅に食事を続けるルイズを適当に言いくるめ食堂から抜け、朝洗濯をした洗い場へと向かった。
綺麗に整列して干されたシーツを突風がはためかせている。
誰もいないことを確認し、一人嘆息した。…ひどい朝食だった。
豪奢な食堂に迎えられ、磨かれた銀食器が並ぶ席に着こうとした途端、椅子をひかれ尻餅をついた。椅子を引いたのはルイズで
「使い魔の癖にメイジと同じ食事とる気でいるんじゃないわよ」
と見下ろした時の冷たい目を忘れない。
続いて床に並べられたほぼ具無しのスープと、硬い二切れのパン。あまりの硬さにレストランのディスプレイかと思ったほどだ。
(味以前に、量が足り無すぎだ……オレは犬か!?)
空腹のせいで気が立って仕方ない。イラつきを散らそうとズボンの腰ポケットに忍ばせたあるものを取り出す。
「《網のようよりは切っ先のように、からまるのではなく研ぎ澄まされよ。かの風神ゼノクレートの息吹はかくも凄まじ……》」
吹きすさぶ風の中、てのひらに魔力を寄り合わせる。シーツをはためかせる風は、故に乱流になって他方向から撫で荒れる。
詠唱が終わると、手の中に《鎌鼬》を封呪した銀のスプーンが出来上がった。
続いて井戸の傍にいって水魔法を封呪しようと踵をかえすと
「ギースさん?何をやってるんですか?」
「!?」
はためくシーツの向こうから、黒髪のメイド――シエスタが顔を覗かせる。
「なんでスプーンなんて……あっ!まさか朝食の後足りなかったの!?」
「こ、これには深い訳が」
朝食時にテーブルに置いてあった銀食器一組をこっそり盗んでいたのがばれて、あたふたする。
といってもスプーン・フォーク・ナイフを、沢山あるうちからデザート用やら肉用に分けられたのをバラバラに忍ばせたのだが、やはり分かってしまったらしい。
289ゼロの銃 第2話(6/9) 代理:2010/04/20(火) 23:24:23 ID:V6aPK9v5
「…まぁ、気持ちは分かります。私たち平民が手も出ないような高級な銀食器が、あんなに並んでるんですもの」
ため息をつきながら、ギースの手の上のスプーンを取りあげる。
「か、返してくれ!」
「駄目ですよ。このスプーン、まだ黒ずんでいないじゃないですか」
「何?」
「銀食器は使っていると黒ずみが出るんです。それを悪魔がとりついたって言って嫌う貴族の方が多いので、黒ずんだ奴は捨ててるんですよ」
なんとも贅沢な話だと思った。銀は変色しやすい金属であり、それは空気中の硫黄と反応したために起こる為なのだが、表面だけなので正しい研磨をすれば元の輝きを取り戻す。
「だから黒ずんだ銀が溜まると商人を呼んで買い取って貰うんですけど、売る前にちょっとねこばばしちゃってます」
いたずらっぽく笑ったシエスタの、手を握る。
「な、なんですか?」
「……その銀を譲ってくれ」
シエスタの黒い瞳を見つめる。真剣な眼差しに当てられてドギマギしてしまう。
「た、沢山はあげられませんよ?」
「代償は払う。君に――」
シャツのポケットに手を差し込むと、レースのリボンを取り出した。
朝もらったハンカチとは意匠の違う可憐なレースにシエスタは心惹かれた。
「君の髪は刺さるような長髪なんだな。黒に白いレースはとても映えるよ」
「ひゃ、あ、あの」
気障な台詞を吐きながらシエスタの髪をひとふさ掴み、編みながら結わえていく。顔の右側だけみつ編みにした髪の束に、レースのリボンを絡ませる。
「とても似合っている。……銀食器、譲ってくれるか?」
「はう、は、はい…」

シエスタに廃棄予定の銀食器を貰い、食堂に戻ると誰もいなかった。
……どうするべきか。
窓際に寄り校舎を眺める。歴史を感じられる古城のつくりに、ジノクライアの城の方が堅実で美しい――などとしょうも無い比較をする。
生徒の集まるところにルイズがいるだろう。と思い外を見たのだが、赤いものを見つけて閃いた。
食堂を抜け出し門を潜ると、使い魔フレイムを連れた少女―キュルケと言ったか?―と出会った。
「あらルイズの使い魔さん。おひとり?」
「ルイズとは…はぐれた。君は?」
「これから授業があるからフレイムを連れに行ってたのよ。新学期だから使い魔を披露しないと」
「よろしければ、ご一緒してもいいかな?」
「供を申し出てくれるなんて悪い気はしないけど…まだ帰らないの?」
眉根を寄せてギースを見る。どうやら本気で誤解してるらしい。
「…私も帰りたいさ。でも、方法が無いから仕方ない」
「どういうこと?」
「ルイズに異世界から召喚された。…本当に使い魔だ」
ポケットから銀のナイフを取り出し、フレイムの尻尾の炎を借りて加熱させる。銀全体が熱されると、ナイフが弾けて声が聞こえてくる。
《澄む流れは純真、濁る溜りは肥沃 めいめいに汝をすくい、飲み、吸い上げ、汝は血となり大地を廻る》
「え!?何?」
放たれたゲルマリックとロクマリアは『水』を示したものだ。きらきらとキュルケの周りを踊り……詠唱が終わる。
「……なんか、凄く気分スッキリしたような…」
「水魔法《源流》だ。井戸で封呪したから出来はそんなものだな」
放った魔法の出来を不満げに評するギースを、不審そうに見やるキュルケ。
「私の世界ではこうやって魔法を銀に封呪するんだ。…言っとくが貴族じゃないぞ」
いちいちこの世界は貴族というものを気にするから先に釘をさしておく。するとキュルケが感嘆したように呟いた。
「魔法が使える平民がゼロのルイズの使い魔ねぇ…いい拾い物なんだか、可哀想っていうか…」
「ゼロ?ルイズの姓はヴァリエールだったと思うが」
歯切れ悪く言うキュルケの態度が気になって、独り言に割り込む。
「それも知らないのね…いいの、気にしないで!」
手を振って話を終わらせようとする…まぁ、いいか。と頭を切り替える。
歩き始めるキュルケに合わせ、足を進めながら考えていたことを話す。
「私の世界のサラマンダーは殆ど絶滅してて……魔法研究に乱獲されたらしくて、実際に本物を見るのは初めてだ。サラマンダーの鱗は火打石のように、すり合わせると発火するというのを文献で読んだんだが本当か?」
「……どうかしら?確かにサラマンダーは色んな部位がマジックアイテムの加工に使われるけど……」
ギースは心中ほくそえむが、慎重に話さなければと思い言葉を続ける。
「見せたように私は魔法が使える。本来なら銃を媒介に銀の弾丸で使うんだが、丸腰で召喚されてしまった――今の私にあるのは知識だけ」
「………」
いかに不憫そうに見せるかが肝だ。それは魔法式を綴るように相応しい言葉を、感情こめて詠う。
290ゼロの銃 第2話(7/9) 代理:2010/04/20(火) 23:24:57 ID:V6aPK9v5
「なにも出来ない私は、君の言うようにただの平民なんだろう。ルイズはことあるごとに平民だ貴族だと喚き私を辛い気持ちにさせる。…お願いだ。フレイムの鱗を少しだけ分けて欲しい」
「…それは、可哀想だけどフレイムが痛がるようなことは……」
「痛くないようにする。サラマンダーは火の生き物だから水じゃないな、風魔法の治癒魔法を発動させながら採取すれば良い。頼む、役立たずのままこの世界で生きたくない――」
最後は特に語感強く必死そうに言った。役立たず、の辺りでキュルケの肩が震えた。
「……いいわ。鱗をあげる。でもひとつお願いがあるわ……あなたの名前を教えて?」
「ギースだ。ギース=バシリス」
「ギースね。ゼロのルイズの使い魔。…不都合な魔法の使い手。あなたがルイズの使い魔だということを、覚えておくわ」
そう言って皮肉に微笑んだキュルケに、言葉の意味もわからぬままギースは感謝の表情を浮かべた。

「ちょっと!今までどこに行ってたのよギース!使い魔のくせにご主人サマを放っておくなんて何様のつもり!?」
「お前の下着を洗っていたんだ」
「!? ななななんてことを人前で言うのよっ!少しは周りの目を考えなさいよね!」
顔を赤くしたり青くしたり器用な奴だ。当然遅れた理由は違うが、人の目以前に洗わせた事実の方が恥ずべきことだと思うが。
ちらりと教室内を見渡す。どうやらキュルケも同じクラスらしい。
ルイズと同年代の少年や少女が皆同じように使い魔を従えていて、古代幻獣図鑑でしか見たことが無い生き物を使い魔にしている者もいた。
ふと、早朝出会った水色の髪をした少女を見つけた。彼女は使い魔を連れておらず黙々と分厚い本を読んでいる。
「……ちょっと、変なとこで突っ立ってないでよ。目立つでしょ」
声を抑えてルイズが言う。確かに少なからず注目されていた。
(……視線の種類が気にくわんな)
好奇と猜疑と、多くの嘲笑。
この学園の全員が魔法使い、そして貴族だという。故にただいるだけで侮られると――
冗談じゃない。
無害無関係を装う視線すべてに敵意を向ける。眼光の鋭さは軍でも折り紙つきだった。あんまりキツイ目をするので上官にサングラスでもかけろと言われたほど……
めきょっ
「!!!!!!!〜〜〜〜」
「突っ立ってんなって言ったでしょ」
視線の半分が同情に変わった気がした。

「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュブルーズ、この春の新学期に、さまざまな使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
授業が始まったようだ。ふくよかで優しそうなご婦人が壇上にあがった。
ギースはルイズの隣の席に座っていた。最初は「使い魔は座るな!」とか抜かしたので起立していたら後ろの席の生徒から抗議が出たのだ。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したようですね。ミス・ヴァリエール」
「はい。ミス・シュブルーズ。服を新調したいときは是非この仕立屋に言ってください」
「お前はオレを何にしたいんだ!?」
半ば捨て鉢のルイズの発言に思わず反論する。シュブルーズと呼ばれた女性はあっけに取られたように固まっているが。
「ゼロのルイズ!召喚できないからってその辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
小太りのガラ声の少年がヤジを飛ばし、波打つような笑いが起きる。また嘲笑を当てられたと思い拳を握り立ち上がろうとするが
「座ってなさい」
隣のルイズがシャツの袖を掴み止めた。抑制する言葉のあまりの冷たさ……凍えて強張ってしまった手のような頑なな響きに、思考の全てを止められる。
「………」
思った反応が返ってこなかった失望にその場の空気が白けたようだ。静寂が訪れたのを感じ、シュブルーズが話し始める。
「私の二つ名は『赤土』。これから一年、皆さんに『土』系統の魔法を抗議します。ミスタ・マルコリヌ、魔法の四大元素を言ってください」
先ほどルイズをからかった小太りの少年が立ち上がる。
「は、はい。ミセス・シュブルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです!」
「そうですね。…今は失われた系統である『虚無』を合わせて全部で五つ系統があるのは皆さんもご存知の通りです」
(ん?)
気になる言葉があった。虚無?
ギースの世界には前述の四つの属性に加えて『闇』と『光』がある。光はそのまま、焼け付く光線や雷、流星の召喚などを可能にする属性だが、闇は特に異質だ。影や暗闇という意味のそれは、物質に留まらず心に生じる闇そのものをも表す。
「虚無ってどういう属性なんだ?」
小声で隣のルイズに話しかける。怪訝に眉をしかめられたが――素直に説明してくれた。
291ゼロの銃 第2話(8/9) 代理:2010/04/20(火) 23:25:35 ID:V6aPK9v5
「どんな属性って言っても……殆ど伝説の力みたいなものなのよ。始祖ブリミルが振るっていたって話だけど…何でも、ごくごく小さい粒みたいなものに直接干渉する力というのをどこかで読んだわ」
小さい粒というのは、ロクマリアのようなものなのだろうか?
大陸聖教のメンカナリンの研究によると、人の体を含む万物は、細かく複雑なゲルマリックのようなものが緻密に複雑に絡まって出来ていると言う発表があった。
我々が遺跡から掘り出し使っているゲルマリックの全ては、万物を創り上げた神々の言葉で、最も偉大な魔導師ベリゼルは神代に漂っていた魔法式を、『全て』掬い取り、感情ある怪物をいくつも従えたと言う。
(この世界の魔法はどうやって発動しているんだ?)
あるいはこの世界の魔法をギースでも使えるのかもしれない。銃なしで撃てる魔法を。
「今日は皆さんに『錬金』の魔法について授業したいと思います。」
だいぶシュブルーズの話を聞き流してしまった。しかしこれから実践で魔法が見られるらしい。
「『錬金』の魔法については、一年生のときに出来るようになった人もいることでしょう。二年生では『土』系統の基本魔法なので、第一に覚えてもらう魔法です。」
シュブルーズは教壇に載せられた石に向かって、手に持った小ぶりな杖を振りかざした。そして一言二言何かを呟くと―石が突如光りだした。
「―― !」
光が収まると、輝く黄金が教壇に鎮座していた。
「ゴ、ゴールドですか? ミス・シュブルーズ」
驚きを代弁してくれたのはキュルケだった。興奮に身を乗り出している。
「違います。表面を真鍮に変えただけです。ゴールドを『錬金』できるのは『スクウェア』だけですから」
出来上がった真鍮を手に取り、冷たいトーンで言った。真鍮を再び石に変え、教室内を見渡す。
「では、次は皆さんにやってもらいましょうね……ミス・ヴァリエール」
名指しされ隣のルイズの肩がビクッと震えた。
(ん……?)
いつも傲慢なルイズらしくない様子が気になり顔を見るが、見上げた顔はいつもの通り気丈な表情に変わっていた。
つり上がり気味の瞳には真摯さが宿っていて、纏う空気は張り詰めた糸というより――磨かれた刃のようだと思った。
「はい」
立ち上がるルイズに静止の声が掛かる。キュルケだ。
「先生、ルイズを教えるのは初めてですよね?それなら彼女にやらせるのは危険です!」
「ミス・ツェルプストー。確かに私はミス・ヴァリエールを指導するのは初めてですが、彼女がとても努力家だということは聞いてます。さぁ、ミス・ヴァリエール。失敗を恐れずにやって御覧なさい。」
「ルイズ、やめて」
キュルケは蒼白な顔をして止めさせようとするが、ルイズはつかつかと教室の前へ行ってしまった。
隣に立ったルイズににっこりと微笑み、シュブルーズは優しく話しかけた。
「錬金したい金属を心に思い浮かべるのですよ」
「はい」
真剣に教壇の上の石を見つめるルイズ。
「……?」
ふと、周りの生徒が机の下に入ったり、本を盾にしているのに気がついた。無言で教室を出て行ったのは水色髪の少女だ。
疑問に首を捻ったとき、教室の前の方から爆風が吹いてきた。パラパラと前髪が垂れてきて、爆心地を見やると――教壇に並び立っていたルイズとシュブルーズが黒板に叩きつけられ、石の乗っていた机は粉々になっていた。
爆発を受け生徒達の使い魔が暴れ周り、机の破片が壁に突き刺さっていたり、燦々たる様子だった。
「うわあああ!オレのラッキーが蛇に食われたああ」
「ゼロのルイズに錬金なんか無理なのよ!」
「ヴァリエールなんか退学にしてくれよ!命がいくつあっても足りない!」
生徒達の阿鼻叫喚の中に、ルイズへの誹謗が滲んでいる。どうやらこれが初めてでは無いらしい。
「ドット以下の『ゼロ』のルイズ!!」
埃と砕けた木片にまみれたルイズを見た。
その目は、がらんどうの穴のように――虚ろだった。

また――成功しなかった。
箒の柄を握りながらため息をつこうとするが、駄目だ。どうしてもため息じゃなく涙が滲んでしまう。
泣いてはいけない。自分の弱さを認めちゃいけない。
めちゃくちゃにしてしまった教室を、使い魔のギースと一緒に片付けているのだ。失敗した上に泣いたりなんかしたら、主としての矜持も失ってしまう。
ギースは何を言うでもなく、黙々と教室の掃除をしている。あの不名誉な二つ名やその理由を聞いてるはずだった。それでも何も言わない。嘲ることをしないというなら、今あるそれは『同情』だ。
我慢ならなかった。平民が貴族に同情など、この上ない屈辱だと思った。
292ゼロの銃 第2話(9/9) 代理:2010/04/20(火) 23:26:06 ID:V6aPK9v5
「……聞いてたんでしょう。わたしが『ゼロ』だってこと」
突然語りだしたことに、怪訝と視線を上げるギース。喋り出しの声が弱く震えていて、格好がつかなかった。
「あんたが召喚されたのは貴族なのに魔法を一つも使えない、貴族の面汚しだって言われてるの」
捨て鉢になったような台詞が飛び出す。
「なんだ。お前、慰めが欲しいのか」
「――――!」
咄嗟に、手近にあった本をギースに投げつける。……が、顔に当たる寸前で防ぎ取られた。
「……この世界のことはよくわからんが、貴族に生まれたら軍属に付くのが決まってるのか?」
「…必ず、という訳ではないけど、国の有事には駆り出されるわね」
それでもトリステインにおいての貴族の立ち居地は自領の統治が重要なので、王城には正式な魔法師団が設立されている。
「全員というわけでは無いのだろう?……権力という椅子に座ってふんぞり返っているような奴もいるだろう。……それで良いんじゃないか」
「ばッ馬鹿にしてるの!?」
「馬鹿に?そう見えるならお前自身がそういうのを嫌悪しているんだ」
見つめてくる目がきつく眇められる。
「持てる権力を行使することに問題は一つもない。それを嫌悪する理由はなんだ?」
権力の上の傲慢を嫌悪する理由――それは
「それは『誇り』だろう。家名が背負ってきた誇り、貴族として平民を統べ導くための誇り。それは、お前が無力だからといって、簡単に捨てられるものなのか?」
「……そんなわけないじゃない」
わたしのお母様はとても優秀な魔法騎士だった。エレオノールお姉さまも、ちぃ姉さまも……その人たちの誇りを、わたしが汚しちゃ――
「なら、生まれながらに魔法が使えない平民が、誇れるところの無い下卑た人間ばかりだと思っているのか?」
投げられた本を手に取り、開く。
「この本を刷っているのも平民、お前の服を作るのも平民。毎日口に入れるパンを作るのも平民だ。……彼らが下卑な存在なら、今持っているものを全て捨てるが良い」
「―――!!」
「出来ないなら、気がつけ。彼らを走らせるもの、お前を走らせるものの正体を。誰もが持っていて、振りかざすことが出来る剣の存在に気づけ」
気づけですって?平民のくせに、わたしが欲しくてたまらないものの正体を既に知っているというの?
再び黙々と片付けをするギースとは対照的に、ルイズは縛り付けられたようにその場で立ち尽くしていた。
それでもギースは咎めようとしなかった。見守るのではなく、彼女に撃ち込んだ弾丸を彼女が見つけるまで、彼女は動けないだろうと思ったからだ。
293ゼロ銃 代理:2010/04/20(火) 23:26:52 ID:V6aPK9v5
以上です。次の決闘ではそこそこ魔法使う予定です。
しかしギースとギーシュって名前が被っていることに気がついた



ここまで、代理終了
294名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 01:09:21 ID:P3nJp3ON
代理の人、ゼロ銃の人、投下乙でした!
295名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 01:48:37 ID:DMPMM2TN
乙っした!次回も楽しみにしてます!
296名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 01:52:40 ID:FkDmYTAO
……えぇと、グロだから避難所連載にするって言ってた人じゃないっけ? まぁ乙
297名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 03:05:27 ID:d600R+dF
>>296
それは別の人だ
298名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 15:09:35 ID:2tsqj1xA
メタルヒーローシリーズからは召喚されたのあったっけ?
例のごとしで整備の問題とかつきまといそうだけど、ブルースワットならヘルメットとボディアーマー程度だからなんとかなるかも
ディクテイターは自力で整備できるだろうし日本刀でもOK、ほかの兵器類は宝物庫に山積みにされてたってことでどうにか。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 19:42:48 ID:cPkukOPO
メタルヒーローシリーズ?
赤い髪のキュルケと青い髪のタバサが言い争いをしている所に
メタルダーが現れて仲裁するんですね、わかります
300名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 20:34:01 ID:MgvKrUqC
そういえば名前がルイスのキャラって今まで召喚されてなかったな
301名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 21:00:07 ID:mQ3QJdJk
>>300
00からでも呼ぶ?ナノマシン制御できないと酷いことになるけど。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 21:31:37 ID:xJpd9Qau
>>301
中のヒト的にもキャラ的にも良好な関係を期待できそうに無いのは
気のせいだろうか

あとルイスといえば
「勝手に俺にお前の視界でモノ見せんな、まだ慣れてねぇんだ!!」
「慣れてもらわなきゃ困るのよ!!」
こんなんだろうか
ウェールズの時にも
「なら与えてやろうじゃねぇか、奴らに生きた証ってもんをさぁ!!」
とか・・・
303名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:21:38 ID:r/s1SUMu
>>300
配管工兄弟の緑の目立たないほうは?
304名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:28:12 ID:hA1kuSJu
 特に重なる予定がなければ、二分後くらいから投下始めます。
305ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:30:45 ID:hA1kuSJu
「私の使い魔がフーケのゴーレムを倒しました」

 嘘ではない。
 フーケを引き渡した後、コルベールを交えたオスマンへの報告の中で、ルイズは誇らしげに言うのだ。

「トライアングルのフーケが作ったゴーレムを、私のザボーガーが倒しました」

 言葉を換えて、身振り手振りを交え、これで何回目か。
キュルケとタバサも否定はしない。嘘ではないからだ。
 ザボーガーの速射破壊銃によって粉々になったゴーレムを二人は見ている。間違えようなどない。
 さらに自分たちは人質になっていた。トライアングルの友人二人を救い、トライアングルの盗賊を捕まえたルイズは大金星だろう。

 しかし。

 キュルケは、ルイズのはしゃぎように危ういものを感じていた。
 これは、キュルケの知っているルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとは微妙に違う。
 それでも、許容範囲ではあるのだけど。
 力を持たずに高貴な心を育てたのなら、突然力を持てばどうなるのか。
 ルイズに限ってそんなことはない、とキュルケは信じたい。

「ふむ。見事じゃ。ミス・ヴァリエール。一学生の身分でなければシュヴァリエ(騎士)の称号すら申請できるくらいじゃ」

 従軍経験のない、血筋が優れているとはいえ本人は一学生に過ぎないルイズにはシュヴァリエの称号は与えられない。
 そこは国の決まりなので仕方がない、とオスマンは言い、代わりにと革袋を三つ取り出す。

「だからと言うて金で解決というのは些か優雅ではないが、金銭という物が大切な物であることには誰も異議は唱えまい。これは儂からの個人的な報償じゃ」
「でも、私たちは破壊の杖は取り返せませんでした」

 正確には取り返しているのだが、破壊の杖は一回こっきりの再使用不可な代物だったのだ。オスマンの手元に戻ったのは「もう二度と使えない」破壊の杖である。

「なに。これはいわば思い出の品。マジックアイテムとしての価値など儂にはどうでもいいのじゃよ」

 そして、オスマンは語った。
 かつて若い頃、不注意から単独でワイバーンと対峙した自分を救った謎の男の話を。
 謎の男は破壊の杖を複数持ち、その一つでワイバーンを撃退。しかし既に重傷を負っていた男はオスマンの目の前で息を引き取ったと。
 男の正体は未だにわからず、破壊の杖についても使い方くらいしかわからないのだ。

「逆にフーケが盗んだのがこれで良かった。他の物なら逃げられていたかもしれんからな」

 武器となるものだから、再使用不可だとは知らないフーケは試し撃ちついでの攻撃を選択したのだ。
 これが攻撃に使えない物なら、素直に逃走していたかも知れない。そうなっていれば追いつけたかどうか。

「追えますわ」
306ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:31:30 ID:hA1kuSJu
 それでも、ルイズは言う。

「私のザボーガーなら。ヘリキャットとマウスカー、シーシャークを駆使すれば、何処へ逃げても追いつめて見せます」

 ふむ、とオスマンは頷き、それ以上は何も言わずに三人に報奨金を手渡した。

「フリッグの舞踏会も近い。愉しむが良かろう」

 学院長室を出た三人、塔の下へと降りた三人を迎えるのは学園の同級生たちだ。
 すでに、三人がフーケを捕らえたという噂は学園中に広まっている。それも、中心とはあの、ゼロのルイズだと。
 タダの木偶の坊にしか見えなかったゴーレムが、とんでもない活躍をしたのだと。

「何よ、この騒ぎは」
「それがね」

 当たり前のように集団の先頭にいるギーシュ。

「皆が見たがっているのさ。土くれのフーケを懲らしめた、君の使い魔をね」

 集団の中心には、デルフリンガーをくくりつけられたままのザボーガー。

「おーい。嬢ちゃん、いったい何がどうなってんだ?」
「うわっ、ルイズのゴーレムが喋った!」
「違う、あれは……インテリジェンスソードじゃないのか?」
「そんなものまで召喚してたのか」
「いや、アレはきっとゴーレムに内蔵されてたんだ」
「使い魔が喋っているんじゃないのか?」

 喧々囂々の騒ぎに苦笑するキュルケと、嫌そうなタバサ。
 ルイズは喜び勇んで、集団に声をかける。

「しょうがないわねっ! そんなに見たいのなら、見せてあげなくもないわよ!」

 小脇に抱えていたヘルメットを被ると、インカムを引き、

「電人ザボーガー、GO!」

 変形するザボーガーに感嘆の声があがる。
得意そうに説明を始めるルイズに、キュルケはほんの少し表情を曇らせる。
307ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:32:13 ID:hA1kuSJu
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フリッグの舞踊会は宴たけなわだった。
 タバサはテーブルの上に並べられた皿それぞれの味見を終え、どの皿を腹に収めるべきかを思案している。
 キュルケはワインを片手に、次々と申し込まれるダンスの申し込みを断り続けている。
 そしてルイズは、一人きりでバルコニーにいた。
 電人を侍らせ、大きな椅子に座って月を眺めている。

「いいのかい、こんな所で一人っきりなんて。片っ端から申し込み断るなんざ」
「いいわよ。別に」

 ザボーガーに持たせたデルフリンガーに、ルイズは言う。

「不思議よね。こんなにダンスの申し込みが来るなんて」
「そりゃあ、嬢ちゃんの魅力だーね」
「魅力……ね。あ、そうか、デルフは知らないのよね」
「何を?」
「昔のここでの私」
「さあねぇ」

 ワインを手酌で注ごうとすると、ビンが浮いた。
 おやっと身を起こすと、シエスタがビンを持っている。

「お注ぎしますわ、ミス・ヴァリエール」

 ワインの香りが、ルイズを包むように零れていく。

「ねえ、シエスタ」
「はい」
「私、変わった?」
「と、申しますと?」
「貴方の名前を覚えてから半年くらい、かな。私はその間に何かが変わったと思う?」

 外見とか、言葉遣いとか、身長とか……胸とか……

「私にとっては、尊敬すべき御方、お仕えするに相応しい御方。それだけです」
「貴族らしくないから、なんて言ったら怒るわよ?」
308ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:33:33 ID:hA1kuSJu
 貴族らしくない、というのは一部の平民にとっては褒め言葉である。
 威張り散らす無能貴族とは違う、という意味なのだから。
 しかしルイズには違う。
 ルイズにとって、威張り散らす無能貴族とはすなわち貴族ではないのだ。
 貴族らしくないというのは、そういった貴族たちのことを言うのである。
 ルイズに対する褒め言葉はこの場合、

「真の貴族のようです」

 ということになる。
 そして、ルイズが目指すのもまさにそれなのだから。
 今では、シエスタもそれを知っている。
 魔法が使える者を貴族と呼ぶのではない。貴族として生きることを自分に課している者を貴族と呼ぶのだ。

「貴族のことは私にはわかりません。けれども、ルイズ様はルイズ様です」

 それは途轍もない褒め言葉だ、とルイズは思った。
 ヴァリエールの名は関係ない。貴族すら、関係ない。シエスタが見ているのはルイズ個人。そのうえで、ルイズを敬ってくれている。
 
「ねえ。シエスタ」
「はい」
「お料理とお酒を適当に見繕って、ここに持ってきてくれない?」
「ここに、ですか? 舞踏会はよろしいんですか?」
「ゼロと呼ばれるだけだった私には見向きもしないで、ザボーガーを召喚してフーケを捕まえたら今度は断るのも一苦労なくらいにわらわらと寄ってくる。いったい何が目当てやら。そんな人たちに興味はないわ」

 大きく溜息をついたルイズにかけられる声。

「しかし、君がフーケを捕まえたのは事実なんだろう? 胸を張ればいいじゃないか」
「問題は、張るほどの胸がないのよ、この子」
「仲間」
「ふーむ。なるほどねえ。ふーむ」
「何をまじまじと見てるのかしら、ギーシュ?」
「いや、待ちたまえ。これは……誤解だ、そう、誤解だよモンモランシー!」
「見られた」
「ミス・タバサ! 君はどうして、そういうときだけ口数が増えるのかね!」
「ギーシュぅううう」
309ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:34:18 ID:hA1kuSJu
 いきなり騒がしくなったバルコニー。
 キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシーの登場である。

「えーと、貴女……シエスタだったかしら? 私たちの分も何か適当にお願いね」
「ハシバミを忘れずに」
「かしこまりました」

 キュルケに頭を下げ、タバサのリクエストを耳に留め、シエスタはそそくさと厨房へ向かう。

「いきなり増えたねぇ、やっぱり人気あるぜ、嬢ちゃん」
「これって人気かしら?」

 いつものメンバーをうさんくさそうに眺めるルイズ。だけど、その表情は先ほどと違って明るい。

「しょうがないわね、ちょうど椅子も余っているし」

 タバサはさっさと椅子に座り、キュルケはそこに隣り合うように椅子を動かして座る。
 モンモランシーは首を傾げるギーシュを引っ張るようにして座らせ、自分はその横に。

 数分後、料理と飲み物を運んできたシエスタに強引にグラスを持たせるルイズ。

「あの、困ります。あの、まだお仕事が」
「だから、乾杯だけ。シエスタにも一緒に祝って欲しいの」

 ヘルメットを被ることに最初に気付いたのはシエスタ。それについてはルイズは素直に感謝しているのだ。
 それに、シエスタのお爺ちゃんが持っていたという『綺麗な絵』も、いつか確かめなければならない。

「仕事に少しくらいなら遅れても大丈夫よ。ギーシュに口説かれそうになって逃げてたって言えばいいから」
「ああ、良い考えだね。って、ミス・ツェルプストー、君はどういう目で僕を見ているんだい」
「キュルケの目は確か」
「うん。ミス・タバサ、君の寸鉄人を刺す口舌は本当に素晴らしいと思うよ。だけどそれを連続して僕に向けてもらうのは止めてもらえないかな」
「ギーシュ、いつの間にタバサとまで仲良くなったの……」
「モンモランシー、今のが仲良く見えるのかね君は……」
「というわけで」

 グラスを掲げるルイズ。

「フーケを懲らしめたことと、私のザボーガーに、乾杯」
310ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:35:05 ID:hA1kuSJu
 最初の一杯を一気に飲み干すと、どんとテーブルの中心にワインの瓶を一ダースほど並べるルイズ。ビンの周りには所狭しと並べられた料理。そしてハシバミサラダ。
 ハシバミサラダが一人の前に重点的に置かれているが誰も気にしない。それどころか喜んでいる。
 ホールの中から聞こえてくる音楽に耳を澄まし、六人の小さな食事会が始まった。
 六人はすぐに五人になる。シエスタは本当に仕事中なので、仕方がない。それ以上の無理強いはさすがに横暴の域だ。
 すぐに戻るわ、と言ってシエスタの後を追うルイズ。シエスタの故郷、タルブの村にあるという『綺麗な絵』を見せてもらう約束を取り付けるのだ。
残された四人のルイズが戻るまでの話題はザボーガーである。
 キュルケとタバサは間近でその力を見ているが、ギーシュとモンモランシーは見ていない。
 二人の言葉を信じない、と言うわけではないが、やはり信じがたいものがある。自らもゴーレム使いであるギーシュにとってはより以上だ。
だから、ギーシュはザボーガーの話を根ほり葉ほり聞き始める。
 そしてキュルケは、ギーシュにある小さな出来事を告げる。
 ギーシュはやや表情を曇らせると、真面目な顔で考え始める。

「……そうだね。その通りだ。僕も考えておくよ」

 言葉通りに戻ってきたルイズは、四人がザボーガーの話をしていると気付くと喜んで参加した。

「同じゴーレム使いとして、是非、話を聞きたいね」
「ギーシュ、それは聞き捨てならないわよ」

 やや飲み過ぎてご機嫌のルイズは言う。

「私のザボーガーは、トライアングルメイジのゴーレムを圧倒したのよ? ドットメイジのワルキューレと一緒にされては困るわ」
「なるほど」

 ギーシュはこともなげに言う。

「ミス・ツェルプストーとミス・タバサの援護があったとはいえ、確かに見事だね」
「援護?」

 ルイズの目が据わっている。

「そんなの、なかったわよ。二人はすぐに捕まってたんだから」
「では、君は本当に一人でフーケを倒したのかい?」
「そうよ、まさか、信じられないとでも?」
「さあ」
311名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:35:10 ID:Cors7+6I
規制開け記念支援
312ゼロと電流 第八話:2010/04/21(水) 22:35:50 ID:hA1kuSJu
 はぐらかすようなギーシュの言葉に、ルイズは何事か呟く。
 モンモランシーは、聞こえた呟きの内容に自分の耳を疑う。そして、キュルケとタバサはお互いの顔を見た。
 タバサは当然のように、キュルケは残念そうに。

「何か言ったかい? ルイズ」
「……の癖に」
「ん?」
「ドットの癖にって言ったのよ!」
「それは、僕のことかい?」
「そうよ。青銅のギーシュ、貴方のこと。ドットメイジの貴方のこと。ザボーガーに劣るゴーレムを操る貴方のこと!」
「僕に対する挑戦かい? ミス・ヴァリエール」
「貴方、フーケに勝てるのかしら? ミスタ・グラモン」

 ギーシュは立ち上がる。

「酔って口が滑ったとは言わせないよ」
「酔っぱらって本音が出たのよ」
「そうかい」

 己の杖でもある薔薇の造花を手に取り、いつものように気障な仕草で一礼。

「では、我が名誉を守るために。僕、ギーシュ・ド・グラモンは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに決闘を申し込む」
「ザボーガーに勝てる気?」
「いや、まさか」

 ギーシュは不敵に笑った。
 そこにいるのはいつものギーシュではない、青銅のギーシュでもない。
 そこにいるのは、トリステイン正規軍の重鎮、グラモン元帥の息子だった。

「僕が勝つのは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、君にだよ」
 
313名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:37:28 ID:hA1kuSJu
以上、お粗末様でした。
次回に続きます。

「ルイズ、ちょっと調子に乗っちゃった」の回でした。
314名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:49:06 ID:I4qF1IZX
>>313
おおっ。こう来たか。前に決闘イベントスルーしてたけど、これは新しい。
ギーシュが格好良いぞ!
315名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 23:38:23 ID:9VNIjcpD
最近かっこいいギーシュが増えてんなwwwwwwwww

さて、すっかり天狗のルイズにお灸を据えるキュルケと思いきや、ナイスガイギーシュがルイズに頭……冷やそうか………フラグか。
ヴァリエールの仇敵がどう動くか気になりますな!
316名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 09:39:09 ID:4R3b3s/g
ギーシュ「フハハハハハハハハッ」
テリー「ギィーーーーシュゥゥゥゥーー!!」
317名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 13:16:25 ID:hb+48kC0
ルイズ「らんらんルイズ♪」
タバサ「淡々タバサ」
ルイズ&タバサ「プローミネンスどれすあーっぷ」
318名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 13:40:12 ID:gyPO09Ae
双子ネタならせめてイザベラにしてあげて(泣 でも髪の色がなぁ……
319名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 16:15:03 ID:slbuP9Ua
>>303
兄さんばっかずるいやのヒゲかー!
320名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 17:37:25 ID:fZEthHD/
最近まとめwikiの更新遅いね
321名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:18:46 ID:FCloIfBu
              ____
           ./, - 、, - 、   ̄ ヽ
          ./-┤ 。|。  |――-、 ヽ
           | ヽ`- ○- ´ /  ヽ  |
           | -   |     ―   |  |
           |  ´  |    `ヽ  . |  |ヽ
  ∩      人`、 _  |    _.- ´ | .|  \
  |  ⌒ヽ /  \  ̄ ̄ ̄     ノノ       \
  |      |´      | ̄―--―― ´ヽ     _  /⌒\
  \_   _/-―――.| ( T )      `l     Τ(      )
       ̄       |   ̄        }      | \_/
             | 、--―  ̄|    /
FUCK YOU

ぶち殺すぞ・・ルイズ・・・・!

お前は、大きく見誤っている。
この世の実態が見えていない。
まるで3歳か4歳の幼児のように、この世を自分中心・・
貴族だと威張れば、回りは右往左往して世話を焼いてくれる、そんなふうに、
まだ考えてやがるんだ・・。臆面もなく・・・・!

甘えを捨てろ。

お前の甘え・・その最もたるは、
毎日のように叫んでいる、その、「あんた使い魔でしょ」「私は貴族よ」「私はゼロじゃない!」・・・だ。

努力すれば報われるのが当たり前か・・・・?
召喚すれば答えてくれるのがあたりまえか・・・・?
使い魔ならいうことを聞くのが当然か・・・・?
なぜそんなふうに考える・・・・?
バカがっ・・・・!
とんでもない誤解だ。世間というものはとどのつまり、
誰も他人の助けになど応えたりはしない。
二股がばれた腹いせを受けるメイド・・そのメイドをかばった少年にボコられるクソ餓鬼・・
食べ物を持て余しているくせに使い魔に犬の餌を食わせて金を無駄に摩るお前は、彼らの助けに応えてやったか?
応えちゃいないだろうが・・!
これは身近にないからだとか、そういうことじゃあない。目前にあってもそうなのだ。
何か得られるものでもない限り、他人を救ったりしない。それが基本だ。
その基本をはき違えているから、わざわざオレが召喚される羽目になったんだ・・・・!!

ゼロだと馬鹿にされるのが嫌なら爆殺しろ・・・
貴族だと自負するのなら魔法を成功させろ・・・
立派な使い魔が欲しいのなら・・・無口幼女からあのアホ竜を・・・奪ってみろっ・・・・!
322名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:25:37 ID:OxQt8bZe
>>321
ゼロの使い魔を読んだことないのに書いたのがまる分かり
323名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:25:40 ID:yFdwjt/5
>>300
そういやコードギアスのブリタニア皇帝シャルルも
一期の頃は媒体によってルイス=ラ=ブリタニアって名前も出てたっけな
仮に呼んでも決して従わんわけだが
324名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:29:12 ID:OJh1SLwK
>>322
立場が違うだけで同種の人間に落ちてしまっているのが理解できないやつはどの業界にもいるんだよ。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:34:05 ID:0CIr92uK
AA見て思い出したがそういえばギコ猫とかそーいうのは召喚されたことはないのかな?
326名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:37:19 ID:OJh1SLwK
小ネタで、トンファーキックのAAは呼ばれていたな。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:39:45 ID:fZEthHD/
宅間守やチョ・スンヒ呼んだらガンダ効果も相まって大惨事になりそうだな
328名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 19:07:44 ID:+KcEXOZk
ガンダ補正が付いたカンダタ
329名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 19:11:11 ID:FCloIfBu
ハートマン軍曹召喚
330名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 19:38:23 ID:46LNem2g
漫画版のルイズに召喚される直前のサイトを召喚したらおもしろそうじゃね?
331名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 19:49:20 ID:2a5ES0/s
つまりよーちえんのサイトを召喚してルイズお姉さんが危ない道に進みそうになるお話ですね?
332名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 20:00:10 ID:u+0f5HQp
「週刊トロ・ステーション」からトロを召喚して、ゲームとかアニメの紹介ニュースで出てきたキャラをゲストに展開して行ったら
超多重クロスあつかいになるかしら、やっぱり。

ルイズ含めてみんなでガウォークに変形してアルビオンまで飛んでくとか、タバサママを救助するために段ボールで潜入とか
三輪さんが魔法の講義に来てみんなから突っ込み入るとかどうでもいいネタが山のようにわいてるんだが。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 20:11:24 ID:yFdwjt/5
三輪・・・映像ソフト化を妨害して作中のみならずリアルでも邪魔をする長官か
小説だと主人公の(元)友達にヤられちゃった裏切り軍人とか

ええい、普通に竜崎か綾人呼んだほうがいいわ!!
竜崎は翼人のエピソードに絡めたらいいだろうなぁ、っていうかそれしか考え付かないが
334名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 20:17:29 ID:1yEx6AEJ
>>333
>>332の三輪さんは三輪清宗だろう
見た目だけならメイジ……なのか?
それとも実際に魔術師と言うべきなのか?
335名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 20:35:17 ID:pYT6YZlD
でもハルケの人間って、人間以外の種族に対しては三輪長官みたいな考え方がデフォなんじゃね?
336名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 20:40:33 ID:u+0f5HQp
>>333
残念ながら、ダイモスもラーゼフォンもトロステでは紹介されておらんな。
魔術考証家の三輪清宗氏は旧い血筋のシャーマンで、正当な魔術結社の一員という実在の人物である。
何処に行く時にも帽子にインバネスコート、スーツと黒ずくめな人。
実在の人物はダメかな、やはり。

キャプテン・サワダなら映画のキャラだから大丈夫だよね!
337名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 21:23:07 ID:4XR3+T0h
『パイナップルARMY』からジェド・豪士を召喚。
ハルケ世界でどんな戦闘訓練をするか楽しみ。
生徒たちがメチャクチャ強くなってそうw
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 21:30:15 ID:mFrez4x5
黙れ小僧! お前に二股などやり通せるか!
339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 21:32:02 ID:mFrez4x5
>>336
実在人物でも作品化されていれば大丈夫だよ
例えば、幕張のガモウとかさ
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 22:14:37 ID:AUyDCHB3
>>337
むしろ撤退の訓練をする前に、戦闘訓練だけで強くなったつもりになった学生達がアルビオンに出向いて…
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 23:13:29 ID:kKErWMQ8
>>340
全滅する結末しか見えねぇw
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 23:46:24 ID:8bY2kXSA
そして無茶な命令を出した上官を射殺して、せめてもの償いに送金を続けるというわけですね。
ヨルムンガンドがハインドDとかになりそうだ。
343名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 04:00:02 ID:hqnw3mmN
教官ならレオのモロボシ・ダンかメビウスor銀河伝説のおおとりゲン(ウルトラマンレオ)を召喚してだな
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 05:39:41 ID:dPZfvM+o
さて、ジープを用意しないと。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 10:06:10 ID:Ddx1Fc5o
「ルイズ!努力と根性だ!努力と根性をもって炎となった『ゼロのルイズ』は・・・・・・・無敵だ!」
346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 10:48:30 ID:CVb25rNI
>>337
トリステインレベルの状況なら、パイナップルARMYよりMASTERキートンの方が向いてないか?
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 10:50:10 ID:BufyNE+P
SEALs教官「2番とは何だ?」
生徒「負けの一番であります!」
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 11:03:37 ID:N+Zz5yqu
>>346
人に向けて銃は撃てないが鹿の角ブーメランで頭をかち割り鉄砲水でオーバーキルをするキートンさんか
…確かにハルケギニアでなら十分な力を発揮しそうだ

でももう召喚されてるのね
349名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 11:46:56 ID:tTKafJVK
>>317
淡々タバサで不覚にも噴いた。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 16:40:45 ID:Fx2OX7Zc
「こぉーの、バカ弟子がぁーっ!」
「師匠ぉーっ!」
 
 熱い、熱すぎる。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 16:54:28 ID:BBoBB/xz
北斗の拳のジュウケイ召喚
ルイズをカイオウの二の舞にしないよう今度こそ愛情込めて育てていただきたい
352名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 17:16:47 ID:Ddx1Fc5o
>>350
帰ってきてくれないかなぁ爆熱の人
353名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 17:24:08 ID:cMsf+XYD
>>344
あの特訓はヤバすぎる
当時演じていた真夏竜氏は後に「あれは演技じゃない。轢かれたら死ぬだろ!と本当に怒りで目を血走らせていたも同然」
と言わしめたほどガチ苦行だぞwww
354名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 17:54:34 ID:gwmWLFvI
>>350
激しく同意。
続きが読みたいです。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 20:58:57 ID:iwK+x7Jn
何故教官ネタでハートマン軍曹が出てこないんだ。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 21:00:14 ID:w1d2M23e
師匠とか特訓とかとは無縁だけど、あいまいみぃ!ストロベリーエッグの天和ひびきを呼んでみたい
357名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 21:00:19 ID:CiEhRoSU
2chから<丶`∀´>召喚
ギ―シュに逆切れされて決闘じゃなく謝罪と賠償を要求する姿を想像した
358名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 21:11:06 ID:/XFhhOp9
>>353
撮影初日にこいつら俺を殺す気だと思ったらしいね
359名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 21:58:33 ID:sqiCgw+B
MACはまったく頼りにならんし隊長がそもそもやる気がないせいで、ド素人の亡命者が一人で命を張らなきゃならん
とんでもねえ環境で戦ってたからな。光太郎がZATガン一丁で星人を倒したってのに人類側の弱体化がひどすぎた。

ところで今の水精霊騎士隊ならゴメスやナメゴンあたりなら倒せると思うのだが?
タバサやキュルケならギガスやチャンドラーまでならいけるだろう。
360名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 22:05:03 ID:N+Zz5yqu
>>355
なんかマリコルヌに殺されそうじゃない
361名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 22:25:19 ID:SrOH9ui0
ハートマン軍曹の鬼振りが全て演技だってのを理解して無いのは意外と多い
362名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 22:32:42 ID:P+9rjfBE
ハートマン・・・
バードマン・・・・・・ガレリアン召喚
でもクスリが無いと超能力使えないちょっと放射能に耐性のある丈夫な人間に過ぎないわけだが
レインハートだったらルイズが躾ければ仕えるようになるな
役にはたたんけど
363名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 22:52:56 ID:Pjwhbk7G
COPPELIONから円谷真奈を召喚

さて、何日でトリスティンが死の街になるかな
364名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:15:41 ID:xwllbdCZ
トリスティンは滅びんよ
何度でも蘇るさ
365名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:38:52 ID:GJXOBKVN
劇場版の電王が今年も公開される
366名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:41:34 ID:KrVW1BBH
>>364
作品のためにトリステインの現状や経過を分析すればするほど、何でこの国が滅びないのか分からなくなってくる。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:47:41 ID:FqLTqO+/
>>366
周りの国も上手い具合に疲弊したり内憂に悩まされたりしているから
その代わり自国内での領地の取り合いがえらいことになってそうだけど
368名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:55:15 ID:xwllbdCZ
>>366
実は世界の管理者がいて裏からパワーバランスをコントロールしているのさ
369名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 00:07:15 ID:gPCisXgP
>>366
自壊しない理由はおいといて、他から滅ぼされない理由だと……
滅ぼす労力に見合ったメリットがなかったんじゃないかね。原作開始までは。
ガリアのジョセフはメリットなんか考えてないだろうけど。動き出すのは原作開始後。
ゲルマニアは滅ぼすと言うより併合支配したいみたいだし。
アルビオンは友達だし。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 01:58:21 ID:gHkRsX4Q
周りに対して積極的に喧嘩売ってるならともかく、
そうでないのなら弱小国でも状況と流れ次第で生き残ることはありえるからね。
第二次世界大戦時のスイスとか、スイスとか、スイスとか。

色々と後付理論が出まくってるけど根源的な理由は
「偶然どの国にとっても攻め滅ぼすだけの理由も価値もなかったから」
という以上でも以下でもないからな。
永世中立宣言のお陰だとか平和ボケしたことをマジでいってる馬鹿が多くて困るがwww
371名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 02:28:49 ID:RBAsSP+k
>>369
少なくとも地理的なメリットは殆ど無さそうだなあ。
ガリア、ゲルマニアにとっては要衝とはいえなさそうな隅っこに接してるだけっぽいし。
アルビオンがどういう軌道で周回してるかであのへんの地勢的な重要度が変わってきそう。
内部崩壊しない理由は鳥の骨が出汁ガラになりそうな勢いで頑張ってることに尽きるんじゃないかね。

>>370
スイスの永世中立と、非武装中立を間違えてる奴も多いな。
故意なのかマジでかは知らんが。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 02:36:54 ID:dSDH5b3r
>>371
スイスって一家に一台ガトリング砲が常備されてて
男女問わず戦闘時には屈強な戦士に早変わりするらしいな
373名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 02:39:15 ID:CEpyGSrd
実在の人物を召喚したいなら
別にここでなくても幾らでも投下場所はあるんだけどね
このスレだけを見て「実在の人物はダメなのか・・・残念」と諦めるのは早すぎると思う
374名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 03:16:55 ID:G5Nt120N
>>372
畑から飛行機落とすようなミサイルとか出てくるんだよね
375名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 03:26:31 ID:BOSTtlWQ
>>374
畑に空からロボットが落ちてくるに見えた俺は多分ジブリ厨
376名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 05:58:43 ID:+HeV8tj5
>>372
スイスのサラリーマンは皆忍術を会得しているらしいな
377名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 06:02:01 ID:Ypu3XRO7
>>376
民間防衛すげえな
378名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 06:19:33 ID:+kZ1Y0ew
そのうつ機動兵器が開発されるが強奪され……たらいいな。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 07:49:55 ID:GMtYNB0d
>>371
コスタリカは常備軍を持ってないだけで、戦争を放棄してるわけじゃないってのを理解してないやつも多いな
380名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 10:17:39 ID:jqQsCNau
元々、ベネルクス三国あたりがモデルの国だし、独立している理由も同じなんじゃない?

つ『どの国が併合してもおかしくない=どこの国が併合しても他の国から文句が出るから』


後は、トリステインなんてほかの国に侵攻する時に通る道みたいなものだから、
必要な時に邪魔なものを吹き飛ばして通ればそれで十分、
いちいち、そんな道路を制圧して維持するなんて無駄だ。
という理由もあるかも。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 12:53:08 ID:L5E5Iy0t
>>368
ハルケギニアの技術レベルを超える天才が現れると
「大き過ぎる…修正が必要だ」
と謎の赤と黒のゴーレムが出てきて消される訳ですね。
そして聖地の地下奥深くに
「修正プログラム 最終レベル」
「全システム チェック終了」
「戦闘モード 起動」
なやつがいる訳ですね。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 12:56:54 ID:habkVwjs
海底鬼岩城のバギーを召喚。風石に向かって突貫していく姿が見えた
383名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 13:45:29 ID:AXTftV3H
>>381
H乙
384名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 14:34:32 ID:a/XidV50
風石の問題って鉱脈の一端に触れたら
うえきの法則の能力者の力でどうにかなんねーかな
ハバネロ錬金術師でもいいが
385名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 14:50:07 ID:kstv0TN8
>384
何となく、某カミジョーさんがその風石をブレイクしたら地盤沈下起こしたでござるとかいうアホな末路を想像してしまった。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 14:54:10 ID:rBkUKpiL
カカロットがトレーニングで気を開放→気が強すぎて地震発生→その刺激で大陸隆起、とか
387名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 15:00:32 ID:RP4g1LaB
>>381
排除排除排除排除
388名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 15:11:06 ID:6a1X9TeL
なんせ6000年以上も今の体制を続けてるわけだしな
何者かの意思が働いていてもおかしくは無い
389名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 15:41:09 ID:3hP76KOW
別に聖地を目指さなくても新大陸へ移住すればいい件。
地球の南北アメリカ大陸に相当する大地があるという前提の話だが。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 15:42:31 ID:gPCisXgP
風石が今いる大陸の下にしかない
風石が全ての大陸の下にある

納得しやすいのはどっち?
391名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 16:21:46 ID:BOSTtlWQ
一言だけ言おうか
「考えるだけ無駄、作者の勝手」
どうしてもやりたいなら設定考察スレのほうへどうぞ

そんなことよりアメリカから召喚だったらジェミニ・サンライズとか性格的に合うかもよ
392名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 17:21:33 ID:qV1SfUgr
考えるだけ無駄って言う方が無駄
393名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 17:28:35 ID:HJ6D0d48
考えるだけ無駄って言う方が無駄って言う方が(ry
394名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 19:00:13 ID:8e6hd9h6
マーベルのデッドプールを召喚したらカオスの極みだろうな。
持ち前の狂気性からハルケギニアでヒャッホィしながら、事あるごとに俺らに向かってメタ発言しまくる使い魔
395名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 21:05:37 ID:DqgKX9KZ
死ぬほどパンケーキを焼いてくれるデップーさんマジパねえっす
396名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 21:12:50 ID:RUpkJKur
>>394
狂気といえばソウルイーターだな
クロナとかどうだ
どうにかしてラグナロクだけ召喚しても面白そうだけど
397名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 21:14:19 ID:RUpkJKur
あげちゃった
ゴメン
398名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 21:45:25 ID:hgR5XdXH
オブリビオンの皇帝が召還されるSSって消えてる???
399名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 21:49:32 ID:hgR5XdXH
ごめんあった
400名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 22:33:10 ID:gPCisXgP
二分後くらいから投下したいと思います。
バッティングしそうなかた、ご注意ください。
401ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:35:18 ID:gPCisXgP
 キュルケとタバサ、そしてモンモランシーはギーシュの部屋のドアをノックした。
 ギーシュからルイズへの決闘申し込みは受け入れられ、時間は翌日の昼食後と決まった。ところがその当日、ギーシュは昼食を摂った後、何故か部屋に戻ってしまったのだ。

「ギーシュ、そろそろ時間じゃない?」

 ギーシュ側であるキュルケとしては、静観しているわけにも行かない。

「開けるわよ、ギーシュ」

 ドアに鍵はかかっていない。

「やあ、済まないね。どうしても夕方までに出しておかなければならない手紙があってね」

 中には、ちょうど一枚の手紙を書き終えたギーシュ。そして何故か、ケティが。

「あら」
「あ、お邪魔しています」
「お兄さんの用事かしら?」
「はい、ミス・モンモランシ」

 モンモランシーは、ケティがギーシュと時々会うことも、そしてその理由も知っている。すでに嫉妬の対象ではない。
 しかし、だ。

「ギーシュ、こんな時まで? 支部長のお仕事なの?」
「急ぎの手紙があったことを思い出してね。郵便係には、ケティが行ってくれるよ」

 学園付きの郵便係は、飛行可能な使い魔によって手紙を中継地まで運んでくれるのだ。人間の飛脚もいるにはいるが、魔法学園ではもっぱら使い魔の仕事である。人間より早いのだ。その分料金は張るので、とても平民が気軽に使える物ではないが。

「モンモランシー、おで……心が広いのね」
「今おでこって言いかけた?」
「いいえ」
「……いいわ。ギーシュとケティのことなら、仕方ないじゃない。支部長と秘書なんだから」
「支部長?」
「モンモランシー、後は僕に言わせてくれないか」

 ギーシュは手紙をケティに渡すと、大袈裟に両手を広げる。

「ああ、僕の才能を見こまれてね。是非支部長になってもらいたいと頼まれたのさ。知っての通り、僕は頼まれると断れない質でね」
「煽てに弱い」
「ミス・タバサ。いずれゆっくり誤解を解こうじゃないかね」

 咳払い一つで仕切り直し、

「僕は、モグラ愛好同盟トリエステン第二支部長なのさ! そして、前支部長がミス・ロッタのお兄さんだからね。今は補佐を勤めてもらっているというわけさ」
「決闘の時間、ちゃんと覚えているわよね」
「準備はできた?」
「ケティ、早くしないと使い魔郵便の昼の締め切りが過ぎるわよ」
「……君たち、総スルーかね」
「ごめんなさい。ギーシュ。今はモ愛同の件は置いておくわ」
402ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:36:04 ID:gPCisXgP
 モンモランシーの言葉にギーシュは肩を竦め、薔薇の造花を手に取る。

「いいさ。それじゃあそろそろ、行こうかね」
「こちらから焚きつけたことだけど、本当に大丈夫?」

 心配そうなキュルケにギーシュはニヤリと笑った。

「いいや、君の言ったとおりだ。今のルイズは、僕たちの知っているルイズじゃない」

 今のルイズにはお灸が必要だ、と言い出したのはキュルケである。そして、その言葉に乗って決闘を申し込む流れに持ち込んだのがギーシュというわけだ。
 お灸をすえる役はキュルケでも良いかも知れない。しかし、今のルイズに最も効果があるのは、ゴーレム使いであるギーシュに敗れることだろう。
 力の強さではなく、力をいかにして使うか。その意味では、ドットメイジにしてあれだけのゴーレムを操ることのできるギーシュが適役なのだ。
 因みに、ザボーガーの強さとそれを操るルイズの実力は二人とも充分に認めている。しかし、二人が認めていたのはザボーガーの強さを誇るルイズではない。
 力を持たずとも心を保つことのできるルイズをこそ、二人は認めていたのだから。
 因みにモンモランシーはそんなルイズを困ったものだとは思っているが、ある意味通過儀礼のような物だと割り切っている。無事に通過できなければ、ルイズという人間はその程度の人間だったと言うだけのこと。
 タバサに至っては、普通の貴族、いや、人間などそんな物だと諦観していた。今まで力を得たくても得られなかった人間が突然望む以上の力を得たのだ。増長するのが当然だろう。ルイズがそこから持ち直すかどうかは、彼女の問題であってタバサの問題ではない。
ただ、キュルケがそれを由としないのなら、最後まで付き合おう、とは思っている。キュルケが自分にとって唯一に近い、親友と呼べる存在であることをタバサは痛切に感じているのだ。

「今のルイズになら、僕でも勝てる」

 ザボーガーを得て、足下を見失ったルイズであれば。
 ギーシュにとっては恐るべき相手は、ゼロと呼ばれていた頃のルイズだった。
 自らの無力を知った上で、唯一の特技、魔法失敗の爆破を武器とする。そして、決して折れないと思わせるその心。その頃のルイズのほうが強敵となっていただろう……勝つことはできても、屈服させることはできない……とギーシュは考えていた。
 確かに、ザボーガーを倒すことはギーシュには無理だ。おそらくはキュルケにも、タバサにも。
しかし。

「そろそろ時間だね」

 キュルケ、タバサ、モンモランシーを従えるように現れたギーシュに、ルイズは格下に向けるような眼差しを隠そうともしていない。

「ふーん。皆ギーシュにつくわけ。そんなに私が強くなったのが嫌なんだ?」
「違うわよ」
403ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:36:49 ID:gPCisXgP
 キュルケが前に出る。

「貴方が本当に強くなったのなら、こっちも同じ高みに立ってみせる。ツェルプストーの名にかけて、ヴァリエールには負けられないのよ」

 だけど。
 真っ向からルイズの視線を受け止め、それをねじ伏せるようにキュルケは獰猛な笑みを返した。

「腐った水たまりに片足突っ込んだ貴女なんて、見るに忍びないのよ」
「そうよね、貴女はいつも、そうやってゼロだった私を馬鹿にしていた。だけど、それも終わりなの。今の私は、トライアングルすら退ける使い魔の主なのよ!」

 いきり立つルイズの視界に、薔薇の花弁。
 キュルケと繋がる視線を遮るように、ギーシュの薔薇が差し出されていた。

「ならば、ドットの僕を退けてみるがいいさ、ミス・ヴァリエール」

 ……ドットの癖に!
 ……フーケに捕まった癖に!

 ギーシュとキュルケに向けられた罵声が、やがてタバサやモンモランシーにも及び始める。

「……ちょっとこれは……」

「居心地悪いわ」と脂汗を流すモンモランシーと、いつもの無表情で「そうでもない」と返すタバサ。

「アレはいつものことだから」

 タバサの示す先では、風のラインであるヴィリエ・ド・ロレーヌが野次馬の先頭に立ってギーシュに悪口雑言をぶつけていた。
かつて風のトライアングルであるタバサに嫉妬した彼は、同じくキュルケに嫉妬した女生徒グループと共にキュルケとタバサを陥れようとして失敗し、酷い目に遭わされている。
 具体的には、髪と服を燃やされ、塔の天辺に釣り下げられたのだ。本人たちがその理由をひた隠しにしたため、事件の真相を知っているのはこの五人組と被害者たち、そしておそらくはオスマンだけだろう。

「彼、ちっとも懲りてないのね」

 ふんぞり返るその様子に、モンモランシーも気分がかなりマシになる。
 が、その背後に見える姿に再び肩を落とす。

「マリコルヌやレイナールたちもいるじゃない」
404ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:37:35 ID:gPCisXgP
 ギーシュとは割と仲の良い男子生徒たちもいるのだ。
 もっとも、モンモランシーは気付いていないが、集まっている野次馬が皆ルイズの取り巻きというわけではないし、アンチギーシュ、アンチキュルケというわけでもない。
 様子を見ているだけという者も決して少なくないのだ。
 よく見れば、ケティが急いで駆けつけたところも見えただろう。
 ギーシュは罵声に耳を貸さず、笑みさえ浮かべて、指定の場所へと歩いていく。
 ルイズは既に、電人ザボーガーと共に待っていた。
 そして二人は、決闘のルールを確認する。
 杖を落とす、あるいは折れれば負け。
 離れる二人。
 
「先にワルキューレを出させてもらうよ」

 四体の青銅ゴーレム、ワルキューレが薔薇の造花を振ったギーシュを取り囲むように生まれる。

「あら。七体出さなくて良いの?」
「君を倒すには三体で充分だよ、ミス・ヴァリエール」
「そう」

 ルイズの口調が冷たくなる。

「どこまでも、馬鹿にする気ね。大怪我しても後悔しないでね。モンモランシーの治癒呪文程度じゃ、治らないかも知れないけれど」

 治療費くらいは出してあげるわよ。
 貴方と違って、お金に困ったことなんて無いんだから。
 大変ね、家の面目を保つのは。
 軍の統括なんて、領地経営に比べればお金のはいる物じゃないし。

「ああ。安心したよ」

 唐突なギーシュの言葉に、ルイズは口を閉じる。
 その訝しげな表情に向けて、ギーシュは言った。

「実は君を傷つけることを心配していたのだけれど、その心配はないようだ」
「何言ってるの? 貴方のワルキューレにザボーガーが」
「今の君の世迷い言を聞けば、公爵も納得してくれるだろうね。娘がこっぴどくお仕置きされても」
「ギーシュ!」

 ルイズはヘルメットを被り、インカムを握りしめる。

「ザボーガー! やってしまいなさい!」
「僕のワルキューレ!」
405ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:38:21 ID:gPCisXgP
 一体のワルキューレがギーシュの傍に侍り、残る三体が三方向へ散る。
 ザボーガーの武装は基本的に一対一を想定されている。少なくとも、三体の同時撃破は不可能だ。
 しかし、ルイズは慌てずにその一体を狙わせる。
 チェーンパンチによって瞬時に砕かれるワルキューレの一体。砕かれた身体はパンチの衝撃で飛ばされていく。
 さらに、ブーメランカッターが左に動いたワルキューレの胴を切断する。切断された身体は、その場に立ちつくしていた。

「あはははっ! 弱い! 弱すぎるわよ、ギーシュ!」
「勝負はどちらかの杖が落ちたときではなかったかね!」

 ルイズは足下に向けられた杖を見た瞬間、背負っていたデルフリンガーを掴むと、瞬時に強化された身体能力でジャンプする。
 ギーシュの錬金は無駄に終わり、地面に生まれた青銅の罠は虚しく空を噛んでいた。
 ワルキューレに注意を向けさせて、足下への錬金で術者を捕らえる。確かに一つの策だが、それで捕らえられるほど自分は愚かではない。万が一捕らえられていたとしても、ガンダールヴの力ならば抜け出すことは不可能ではないのだ。
 何もない地面に着地し、ルイズは改めてデルフリンガーを構える。

「デルフ? 一応念のため、貴方も警戒しておくのよ。何か見つけたら言いなさい」

 返事はない。

「デルフリンガー! 主が言ってるのよ! 返事なさい!」
「聞こえてるよ、『ご主人様』」
「それなら、わかっているわね」
「ああ」

 いつの間にか、デルフリンガーはルイズを『嬢ちゃん』ではなく『ご主人様』と呼んでいるのだが、その違和感に気付く今のルイズではない。

「ギーシュ。痛いけど、我慢しなさいよ」

 残るワルキューレは二体。いや、ギーシュのワルキューレの限界は七体。未だ出していない物を含めれば残りは五体。
 後詰めのつもりか、それとも奇襲か。どちらにしろ、この状態では出すタイミングを逸しているだろう。
 
「ザボーガー! 速射破壊銃!」

 一体を破壊し、デルフリンガーを構えたルイズはギーシュへと飛び込む。
 目の前に現れたワルキューレを叩き伏せた瞬間、ギーシュは逃げた。
 あまりの無様な逃げ方に、ルイズは一瞬棒立ちになる。
 笑う野次馬。容赦なく罵声をあびせる者もいる。
406ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:39:12 ID:gPCisXgP
「……情けないにも、程があるでしょう! グラモンの名が泣くわよ!」
「ヴァリエールの名を辱める君に言われたくはないね!」

 巫山戯るな。
 ルイズはデルフリンガーを大上段に振りかざしながら走る。

「大怪我したくないなら、ワルキューレを楯にしなさい!」

 残る三体のワルキューレを出せ。
 言外の要求に、ギーシュは逃げる先で応えた。

「それは、無理な相談さ」

 最初の三体は、三方向に別れてルイズへ向かった。
 ルイズは、右をチェーンパンチ、左をブーメランカッターで撃破。正面を速射破壊銃で破壊して、ギーシュへと肉薄したのだ。
 そして、ギーシュは逃げた。左へと。
 チェーンパンチで殴られ、飛ばされたワルキューレではなく、ブーメランカッターで切断され下半身だけで立っているワルキューレの横を。
 それを追うルイズは、当然元ワルキューレの横を通る。

「『ご主人様』、深追いは止めときな」
「黙ってて。あいつは、私の家を馬鹿にしたのよ」
「そうかい」

 何かがルイズの視界の隅に動いた。
 軽い衝撃が、ルイズの後頭部に響く。

「え」

 外れたヘルメットが、地面を転がった。
 ガンダールブの力が消え、地面に膝をつくルイズ。

「なに……?」

 地面に転がるヘルメットへと近づく小さな騎士。
 それは、紛れもないワルキューレである。ただし、サイズはずいぶんと小さい。

「立ちっぱなしのゴーレムの中に、もう一体仕込んでたんだな。いや、見事だね、あの坊ちゃんも」
「なんで!」
407ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:39:57 ID:gPCisXgP
 どうして、警告しないのか。
 ルイズが叫ぶより早く、デルフリンガーは静かに言った。

「黙ってて。そう言ったのは『ご主人様』だぜ?」
「あ……」

 呆然と呟いたルイズは、自分の身体にかかった影に気付く。
顔を上げた彼女が見たのは、ヘルメットを抱えたギーシュ。
 薔薇の造花が自分に向けられている。

「終わりだ。ミス・ヴァリエール」
「嫌ぁああっ!」

 ルイズは、デルフリンガーをギーシュに向かって投げつけようとした。しかし、その重さを充分に扱えず、ただ地面に放っただけの結果に終わる。
 
「君は、ずいぶん弱くなったね」

 何故だ。
 野次馬たちの間に広がるざわめき。
 彼らは知らないのだ。ザボーガーを操るにはヘルメットが必要だと。
 ガンダールヴの力を発揮するには、ヘルメットが必要だと。

「返してっ! それを返して!」

 手を伸ばすルイズを哀しく見下ろしているギーシュ。彼はヘルメットをルイズの背後、キュルケに向かって投げ渡す。
 受け取ったキュルケは何を思ったかそれをタバサに被せた。
 不審そうに見上げるタバサだが、ヘルメットを脱ぐ気はないらしい。

「タバサ! キュルケ! お願い! それがないと、ザボーガーが……!」

 己の言いかけたことに気付いて口を閉じるルイズ。しかし、それは遅かった。

 ……おい、まさか……
 ……ああ、あれ、マジックアイテムか?
 ……あのゴーレムって使い魔じゃないのか?
 ……じゃあフーケを捕まえたのって、あの兜の力かよ。
 ……だよなぁ、ゼロのルイズだもんなぁ。
 ……なんだよ、やっぱりゼロはゼロか。
 ……うわぁ、騙された。
 ……ギーシュ知ってたんだ。
 ……だったら、キュルケとタバサがなんで。
408ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:41:16 ID:gPCisXgP
「ミス・ツェルプストーとミス・タバサがいなければ、多分フーケは同じ事をしていただろうね。僕なんかよりももっと早く、君のヘルメットのことに気付いていたはずだよ」
「返して……」
「二人がいたから、フーケは勝負を急いだんだ。二人が自由になれば、トライアングル二人を敵に回すことになるからね」
「違う。私が、フーケを捕まえたのよ! 私の力なんだから!」

 ……まだ言ってるよ。
 ……アイテムの力なのにねぇ。
 ……あーあ、これだからゼロは。

 口々に不満を漏らしながら、去っていく生徒たち。
 ルイズは気付いていた。彼らの自分を見る目が元に戻ったことに。いや、以前よりももっと、悪いものになっていることに。
 ザボーガーさえ使えれば、ガンダールヴの力さえあれば、皆は自分をもっと見てくれるのに。自分の価値に気付いてくれるのに。
 駄々をこねるように、泣き叫ぶようにギーシュに向かって手を伸ばすルイズを、ギーシュは泣きそうな顔で見下ろしていた。

「僕は……ミス・ツェルプストーは、こんな形で君に勝ちたかった訳じゃないぞ!」
「坊主!」

 ギーシュは思いがけない叫びに、声の主、デルフリンガーへと目を向けた。

「すまねえ。諫言一つできなかった俺が言えた義理じゃねえのはわかる。だがよぉ、今は、そっとしておいてやってくんねえか」

 ギーシュは無言でキュルケを見た。
 キュルケは頷く。

「デルフリンガーの言うとおりにしましょう」

 ヘルメットを被ったままのタバサの手を取り、キュルケはモンモランシーと歩き出す。
 その後を慌てて追うギーシュ。
 
「いいのかい、キュルケ」
「いいのよ。私の知ってるルイズなら、絶対立ち直るわよ。今度は、ちゃんとザボーガーを使いこなして、デルフリンガーと協力して、リベンジを挑んでくるわ」
「同感」
「そうだな。ルイズなら……って、ちょっと待ちたまえ」

 立ち止まるギーシュ。

「リベンジって事は、僕にかい?」
「そうね」
「闘ったのは貴方」
「ギーシュ」

 モンモランシーに呼ばれ、ギーシュは横を向く。

「ああ、心配してくれるのはモンモランシー、君だけ……」
「水の秘薬はたっぷり準備しておくわ。あと、保健室も予約しておくから」
「大怪我前提なのかい?!」
409ゼロと電流 第九話:2010/04/24(土) 22:42:23 ID:gPCisXgP
以上、第九話でした。

ルイズさん、どんどん落ちていきます。

次回、アンアン登場(予定)
410名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 22:44:00 ID:h3Pc1Eed
ルイズフルボッコ乙であります
最高にスカッとしました
もっと心身ともに痛めつけてやってください!
411名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 23:07:24 ID:5ONSPtwM
いい気になってる主人公が格下(ギーシュスマンw)に負けて落ち込むのは少年漫画の王道展開だな
さあ、ここからどう立ち直るのか?
…ワルドに誑かされて悪の道とかはないだろうけど
412名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 23:27:00 ID:f3CvBWli
格好良く決めても、レギュラー女性陣には結局遊ばれてるギーシュ。同情申し上げます。

……いや、モグラ愛好同盟とか時点で前回の格好良さは消えてるかw
413名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 23:48:03 ID:xjMlkMDN
電流の人、乙です。
まとめが溜まってたんで、まとめてみたんですけどミスったorz
すみませんorz
414名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 08:39:44 ID:eP+y3ouv
狂気ならショゴスでも喚ばせたらどうだろう
元々使役するための生物だそうだし地下鉄より速いそうだから十分強いだろう
415名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 10:10:10 ID:hpDvmyGJ
さりげなくネクロミノコン断章あたりを図書館に忍ばせてみたり
416名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 11:25:20 ID:2VeoZrdJ
ZOEのノウマンもかなり狂気に満ちてる
417名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 11:27:11 ID:7ODpcXY6
>>415
ここはもういっそ「腹腹時計」あたりを図書館に
418名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 11:53:09 ID:T2EEDmW1
アイテム召喚で「ゼロ魔」「タバ冒」「烈風」の文庫一式とか。
あれ。現実からの召喚になるからこのスレじゃアウトか?
419名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 12:14:12 ID:7ODpcXY6
>>418
「現実からの召喚はアウト」というルールは無かったと思うのです
「物語の振りをして書かれた予言の書」みたいな扱いでしょうか
面白いですが扱いに困りそうですね
「こんな野良犬に惚れるアタシなんてアタシじゃなーい!」とルイズが焼却処分してしまいそうだ
420名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 12:23:27 ID:1grz2JIm
未知の言語で書かれた書物を、挿絵とかエロ凡パンチとか佐々木さんの日記とかと照らし合わせ解読に明け暮れる日々を描くドキュメンタリー
421名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 12:27:01 ID:2jsXbFSr
あの作品なんで、現実はアウトだぞ?
それは、何度も問題提起されて、そのたびに駄目という結論になっている。

ゼロ魔っぽいラノベが出てくるブラックジョークアニメとかがあるんなら、問題ないかもしれんが。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 12:47:06 ID:+Bontcx3
人物以外の召喚もアウトだよな、ペットとか器物とか化け物とか不可。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 12:48:42 ID:VVl/e3Dr
そこは御都合主義で
424名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:04:48 ID:2jsXbFSr
ペットも、キャラと称するし、ありなんじゃね?
極端なこといえば、自意識さえあればキャラ扱いされるし、
ただのぬいぐるみでも、キャラ扱いされたりもするぞ?
425名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:06:18 ID:q24aYlh5
物召喚ならロールシャッハのマスクとか戦う史書の本もダメなのか
あれ面白かったのに
426名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:34:10 ID:pT5R4tB8
>>422
すぐ上で 「電流の人」が投下してるというのに・・・
427名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:38:23 ID:+Bontcx3
だってルイズが>>1で人物がやってくるifって限定してしまってるんだもの。
まぁ議論も荒らしもこのスレで管轄してることが多いし
スルーの魔法も虚無以上にレア魔法だからあまり気にする事ではないんだろうけど。
ルール内だろうとルール外だろうと俺は楽しく読ませて貰ってるし。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:38:28 ID:HDOPLtGt
戦う司書の本(モッカニア)の本と、ジョジョの石仮面の作品はあるね。
どちらも面白いと思う。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:39:03 ID:9qZ9fUQm
>>368
何と言う廃棄王女
430名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 13:41:45 ID:HDOPLtGt
ごめん、428の石仮面は、Wikiのリンク先のスレだった。
431名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 14:05:20 ID:bs0/U0JX
ペットも器物も化物もまとめに収録された作品何点もあるのに何を言ってるんだ
432名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 14:08:25 ID:HxpqT1fw
>未知の言語で書かれた書物を、挿絵とかエロ凡パンチとか
>佐々木さんの日記とかと照らし合わせ解読に明け暮れる日々を描くドキュメンタリー
6000年かかってもルーン文字を意味のある文字と認識出来ずずっと模様としか捉えられていない世界で解読は不可能だと思う
地図にまでルーンの説明文が書いてあるのにだぜ
433名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 14:36:32 ID:boU1/APq
となるとルイズ以外の召喚も駄目ってことになるのか?
434名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 14:57:52 ID:T2EEDmW1
ルイズ以外の召喚で、しかも物品召喚の
「きさくな王女様」
が大ピンチじゃないかっw
435名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:00:20 ID:PwmEVJ04
>>433
「ルイズに召喚されました」と書かれてはいるが、ルイズ以外のキャラについては全く書かれていない。
加えて言うなら「召喚されました」であっても「使い魔になりました」ではない。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:10:07 ID:7ODpcXY6
>>434
ルイズに召喚されはしたけど「人物」と呼ぶには尋常ならざる問題というか
・・・・その・・・まあ・・・・いろいろなご立派さまも大ピンチだっ!
437名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:37:50 ID:7b0wOFOp
ディスガイアからアイテム「馬のちんちん」を召喚するルイズ
全ステータスカンスト
高級高レベルイノセントが住まうレジェンドアイテム
とにかく凄いとディティクトマジックにより判断されるも
果たしてルイズはこれと契約し、装備することを決断できるのか!?
438ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2010/04/25(日) 15:42:15 ID:C/8Zyt8v
皆さんこんにちは、97話投下準備完了しましたので進路よろしいでしょうか。
10分おきまして問題なければ15:50より開始いたします。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:46:03 ID:fUAJSeGZ
おっと今日は日曜でしたな
進路オーケー

事前支援
440名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:47:41 ID:f3zBLvXg
ウルトラさん終わったら投下させていただきたいのですが…
1発ネタになるか、続くか未定ですが
 第97話
 孤独の重圧
 
 ウルトラマンメビウス
 ウルトラマンヒカリ
 彗星怪獣 ドラコ
 肉食地底怪獣 グドン
 再生怪獣 グロッシーナ
 バリヤー怪獣 ガギ
 マグマ怪地底獣 ギール
 吸電怪獣 エレドータス
 宇宙同化獣ガディバ 登場!
 
 
「ふっふっふ……やはり現れたなウルトラ兄弟! 待っていたぞ、お前たちに受けた
屈辱の数々、今ここで晴らしてくれる! ククク……さあ、我が暗黒の呼びかけに
応じて現れた怪獣軍団よ! ウルトラ兄弟を抹殺し、すべてを破壊するがいい!」
 現実世界に姿を現した異次元人ヤプールの哄笑が、平和だった学院の空に
木霊して、宇宙と地底から出現した五匹もの怪獣軍団の雄叫びが、立ちはだかる
ウルトラマンA、ウルトラマンメビウス、ウルトラマンヒカリの肌を震わせる。
 
 宇宙から襲来し、両腕の鎌を振り上げるのはかつてツィフォン彗星から来襲し、
今回は恐らく事前にボガールか時空波発生装置によって呼び寄せられていたと思われる、
日本アルプスを舞台にレッドキング、ギガスと激しい格闘戦を繰り広げた彗星怪獣ドラコ。
 太い二本の鞭、『振動触腕エクスカベーター』を振り回すのは、ウルトラマンジャックを
一度は撃退し、メテオールの攻撃にも耐える強固な皮膚を有する肉食地底怪獣グドン。
 さらに、ウルトラマンダイナが戦った初めての地球怪獣であり、猛烈なパワーと
強い生命力を持つ再生怪獣グロッシーナ。
 巨大な爪と二本の鞭、大きく鋭い角を持つのはウルトラマンティガと互角の
せめぎあいを繰り広げ、今回出現した個体もサイクロメトラの寄生から生還するだけの
強靭さを見せたバリヤー怪獣ガギ。
 最後に別世界で二人のウルトラマンを苦戦させ、この世界でも眠りをさまたげられて
怒り狂うマグマ怪地底獣ギール。
 
 どの怪獣もかつてウルトラマンたちを苦しめ、今やヤプールの放ったマイナス
エネルギーの影響でさらに凶暴化して、恐るべき敵となっている。しかし、
ヤプールの逆恨みによって、多くの若人たちの未来をになうこの魔法学院を
破壊させるわけにはいかない。
 
「シュワッ!」
「ヘヤッ!」
「セァッ!」
 
 メビウス、エース、ヒカリは威嚇してくる怪獣軍団に真正面から向き合い、
その上空をガンフェニックスが固める。今、ほとんど無人の魔法学院で、この
戦いを見とどける者は、学院長室からじっと見下ろすオスマンと、シルフィードから
見つめるキュルケとタバサ以外にはおらず、わずかな衛兵や使用人たちもすべて
逃げ去った。
 だが、圧倒的な敵の戦力に対して、ゲートが閉じるまでに残されたリミットは
あと一〇分足らず、ウルトラマンの活動時間が三分なのも手伝うが、その短い
時間で怪獣軍団を撃退せねば、メビウスやGUYSは地球に帰ることが
できなくなってしまう。
 そして、初めてたった一人で変身したルイズと、自分が宿っていないエースの
姿をガンローダーのコクピットから見下ろす才人は、離れ離れになって戦うことに
刺す様な胸の痛みを覚えながらも、戦いの渦中に身を投じようとしていた。
 
「テヤッ!」
 
 怪獣軍団とウルトラ兄弟の中で、先陣を切ったのはウルトラマンメビウスだった。
一度戦って、その戦法を知っているグドンへと向かい、地底を進む際に岩盤を砕く
ほどの破壊力を誇る振動触腕エクスカベーターの直撃を受けないように、
ジャンプして奴の背後に回りこむと、背中を掴んで地面に引き倒した。
「デャァ! ダアアァッ!」
 グドンに背中から馬乗りになったメビウスは、奴の後頭部をめがけてパンチの連打を
叩き込んだ! 目にもとまらぬメビウスパンチのラッシュ、ラッシュ、ラッシュ! 
グドンの皮膚はスペシウム弾頭弾ですら貫通できないほど強固だが、それならば
効くまで打ちまくってやると、集中攻撃が炸裂する。
 ただ、相手も伊達に彼の兄を倒したことのある怪獣ではない。さすがに背中に
向かっては振り回せない振動触腕エクスカベーターに血液を送り込んで硬化
させると、目の前の地面に突き刺して、その振動で吹き上がる大量の土砂で
メビウスを吹き飛ばして、怒りに燃えて起き上がってきた上に、先に空中戦で
苦杯をなめさせられたドラコも並んで、挟み撃ちの構えでメビウスに襲い掛かってきた。
 もし、ここでメビウスがどちらかに意識を集中すれば、正面の相手には対応できても
後ろから襲い掛かってきたもう一匹に攻撃されて、結局は二匹がかりで袋叩きに
されていただろう。が、数多くの実戦を潜り抜けて、ウルトラ兄弟の一員と認め
られるまで成長したメビウスは判断を誤らなかった。
「テアッ!」
 挟み打とうと鞭と鎌を振り上げて向かってくる二大怪獣にやられる直前、
メビウスは垂直にジャンプすると、空中で一回転して落ちてくるついでにドラコの
後頭部を蹴飛ばした。もちろん、全力疾走をしているときにそんなことをされれば
ドラコは前のめりに勢いがつきすぎて、そのまま勢いあまってグドンと正面衝突、
出会い頭のごっつんこみたいにはじけとび、左右対称に背中から倒れこむ。
 むろん、頭から激突させられたグドンは怒り、メビウスそっちのけでドラコに
むかって鞭を振り下ろし、ドラコも翼を広げて威嚇しながら、鎌で鞭を迎え撃つ。
見事に同士討ちを始めてしまった二大怪獣だが、もしドラコに人間並みの知能が
あったらこの戦法に屈辱を覚えただろう。なぜなら、突進してくる相手の直前で
ジャンプして、敵同士を激突させるという戦法は、初代ドラコが二代目レッドキングと
ギガスに使った戦法そのままで、お株をそっくりいただいてしまったものだったからだ。
 とはいえ、メビウスは二匹の対決をそのままのんびりと見物しているつもりは無く、
横合いからドラコにジャンプキックをお見舞いし、三つ巴の乱戦にもつれこんでいった。
 
「デュワッ!」
 
 メビウスとは反対側で、ウルトラマンヒカリもガギとギールを相手に戦闘に
突入していた。ナイトブレスを輝かせ、彼のシンボルともいえるナイトビーム
ブレードの金色の光を振りかざし、雄叫びをあげるガギの鞭をかいくぐり、
ギールの背中に剣を振り下ろす。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:54:59 ID:PwmEVJ04
なんか「結局地球には帰りませんでした、残念だけどよかったね」みたいな展開になるような気がするぞぅ。
「グアッ!?」
 硬質な音とともにはじかれたナイトビームブレードに、ヒカリはしびれた右手を
おさえて、平然としているギールを見下ろした。こいつの皮膚はまるで岩石だ。
実際に、かつての同族怪獣はXIGの主力戦闘機、ファイターの攻撃でも背面から
では一切ダメージを与えられなかった。これでは、いくらカミソリのような切れ味を
誇る日本刀でも石灯籠を切れないように、ナイトビームブレードも役に立たない。
 ギールは、無敵の鎧に守られていることに安心したのか、ナイトビームブレードを
恐れずに突進し、鉄筋コンクリートすらウエハースのように噛み砕く顎でヒカリの
足に噛み付こうとしてきた。
「タァッ!」
 突進を回避し、間合いをとったヒカリは態勢を立て直してギールを睨み返す。
奴は地底怪獣独特のスタイルで、地上での行動ではあまり素早さを発揮できない。
しかしガギは当然別で、今度は逃さないとばかりにヒカリに狙いを定めて、
巨大な角を光らせた。
「気をつけて! そいつは角から光線を撃つわよ!」
 キュルケの声が寸前で響いて、ヒカリはギリギリでガギの放った赤色光線の
回避に成功した。あれはエギンハイム村で戦ったとき、リドリアスに重傷を負わせた
威力がある。ヒカリも、ギールに気をとられていた今あれを喰らったら危なかった
かもしれない。
 ありがとう、そう言ったわけではないがヒカリはシルフィードに向かってうなずいてみせ、
ヒカリがそう言ったことを理解したキュルケも、頑張れと言う様に大きく手を振った。
 ガギは、最初の一発をはずされたことに腹を立てた様子ながらも、まだ鞭の
届かない間合いから二発、三発目の光線を放ってくる。けれども、威力はあるが
発射の際のチャージに一秒ほどかかり、そのタイミングで角が発光するために
ヒカリは今度は余裕を持ってこれをかわす。
「やるう……」
「けど……あの怪獣にはまだ武器がある……どうするの?」
 キュルケとタバサは、ヒカリの身のこなしを見ながらも、あのときに見たガギの
能力からそれだけでは勝てないと見ていた。離れれば光線、近づけば鞭で
締め上げて、肉薄しようとすれば巨大な爪にやられる。遠距離、中距離、
さらに近距離でガギには隙がない。
 しかし、科学者としてと、隊長としてとの両面でガギを冷静に分析していた
ヒカリは、ガギの鞭がグドンのような太く強靭で、主に相手を殴りつけるための
武器ではなくて、長くしなやかで、相手をからめとって動きを封じるための
ものだという結論を得ると、ギールが割って入ってくる前に、一気に間合いを
詰めようと、ナイトビームブレードをかざしてガギに向かって走り出した。
「正面攻撃!?」
「無茶な……!?」
 二人とも、いくらなんでも無策すぎると悲鳴をあげて、案の定ガギは向かってくる
ヒカリへ向けて二本の鞭で絡めとろうと巻き付けて来る。だが、縛り上げられる
瞬間にヒカリは右腕を腰まで下げて、鞭が巻きつく場所に刃がくるように仕向けた。
すると、切り払うよりも強く、ガギ自身のパワーで刃を締め上げた鞭はバラバラに
切断されて飛び散り、その隙に駆け寄ったヒカリは奴の顎を下から蹴り上げた
キックでふっとばし、よろめいた奴の胴体を掴むとギールの上へと投げ飛ばした。
「タアァッ!」
 地底の圧力に耐えるギールはその衝撃に耐えたが、溶岩大地の上のように
固くてゴツゴツしたギールの背中の上に投げ飛ばされたガギはたまらない。
背中を強打してもだえているうちに、ヒカリはギールの頭を蹴り上げて、
二足歩行になって向かってきたギールと組み合い、力の限りで押し返す。
 
 そして、四匹の怪獣を弟たちにまかせ、ウルトラマンAは怪獣グロッシーナと
戦いを繰り広げていた。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 15:56:20 ID:f3zBLvXg
支援してさしあげろ(名言)
「ヘアッ!」
 ストレートキックがグロッシーナの胴体に決まり、黄色く発光する腹に
めり込んで五歩ほど奴を後退させるものの、グロッシーナの腹は弾力性に
富んでいるようで、キックによる衝撃を緩和させてダメージを最小にして、
今度はエースに背を向けると長い尻尾をエースに打ち付けてきた。
「デヤッ!」
 エースはとっさにバックステップで回避したが、グロッシーナはさらに右へ左へと
尻尾攻撃を続けてくる。恐竜型怪獣の恐ろしいところは、人にはないその尻尾
という武器である。莫大な重量の体重を支えるために、太い骨と筋肉の塊であり、
腕や足よりも破壊力がある。
 連続攻撃を後方に跳んでかわし続けるエースだったが、いくら惑星が丸く
できているとはいえ、限界はすぐにやってきた。
(待って! 学院を壊しちゃう)
 感覚を共有しているルイズの叫びで、エースはすぐ後ろに学院の校門が
きていることに気がついた。これ以上下がったら、城壁を押しつぶしてしまう。
かといって右や左に逃げても、グロッシーナは勢いのままに城壁を破壊してしまうだろう。
(サイト、どうすれ……)
 助言を求めようとして、ルイズはもう自分の隣には誰もいないのだと思い出した。
いつも、困ったときには助言をし、そうでなくとも怒りを受け止めてくれた才人は
もういないのだ。
(なにを甘えているのよ、ルイズ・フランソワーズ! わたしが支えなきゃ、
エースはこの世界では戦えないってわかってるじゃない。そうでなきゃ、サイトが、
サイトが安心して帰れないじゃない……サイトが……)
 自分を厳しく叱咤するように言ったルイズの独語は、しかし逆に彼女の気持ちを
自分でも訳がわからないくらいにめちゃくちゃにかき回していった。
 だが、ルイズの葛藤に慰めの言葉をかけている余裕はエースにはなかった。
グロッシーナの尻尾は、初代ウルトラマンをスペシウム光線を撃つ暇もなく
叩きのめし、ゼットンを除いては唯一ウルトラマンに黒星をつけた古代怪獣
ゴモラのものに比較すればパワーは落ちるだろうが、その代わりに強力な
電流を帯びており、きれいに受け止められたとしても無傷ですむとは思えなかった。
 それでも、肉を切らせて骨を断つというように、ダメージを恐れていては学院を
守ることはできないと、エースは意を決して尻尾を受け止めにかかった。
「ヌウンッ!」
 右からすごい速さで飛んできた尻尾を受け止めた瞬間、坂道を転がってきた
丸太を受け止めたように衝撃が骨格を通して全身を貫き、足が地面を削り
ながら左へと押し出される。
(すごい力だ……っ! だが)
 殴られるよりはるかに強いショックを受けながらも、エースはグロッシーナの
尻尾を完全に掴み取ると、そのまま今度は自分の体を軸にして放り投げ、
ジャンプすると起き上がってきた奴の頭に急降下キックをお見舞いした。
「トアァーッ!」
 タロウのスワローキックほどではないが、空中からの一撃が炸裂して
グロッシーナがよろめく。しかし、奴はほんの少し後退するとすぐに態勢を
立て直して、エースに向かって口から赤い光弾を、ショットガンのように
撃ちだしてきたのだ。
「グワアッ!」
 光弾には爆発性があったらしく、着地直後でかわしきれなかったエースを
無数の爆発が包み、二発目、三発目の攻撃が直撃すると、エースはがっくりと
ひざをついた。
「グゥゥ……ッ」
 グロッシーナの光弾はショットガンに似た特性から射程は短いが、広範囲に
広がるために回避が難しく威力も高い。奴はダメージを受けて動きの止まった
エースにさらに攻撃を加えようと、腕を振り上げる。だがそこへ、GUYSの
援護攻撃が加えられた。
 
「ウィングレットブラスター!」
「バリアブルパルサー!」
 
 ガンウィンガーとガンローダーのビームが命中して、小爆発にひるんだグロッシーナが
後退した隙に、エースは奴の間合いの外へと離脱する。
「危なかった……」
 ガンローダーのコクピットから見下ろしていた才人が、ほっとしたようにつぶやいた。
変なものだが、彼にとって昔テレビで見た記録映像以外では、これが生まれて
はじめて見るウルトラマンAの戦いである。しかし、あそこでは今、ルイズが命を
かけて戦っていると思ったら、才人はないのをわかっているのに右手を強く
握り締めずにはいられなかった。
「がんばれ……」
 それは、エースにか、それともルイズに言ったものであったのか。才人には
自信を持てる回答がなかった。
 才人を乗せたガンローダーは、エースとグロッシーナの上空を一度旋回すると、
グロッシーナからの反撃を避けるために距離をとり始めた。不必要に慎重にも
見えるかもしれないが、ゲートが閉じるときにはガンフェニックストライカーに
なっていなければならないので、一機たりとて被撃墜されるわけにはいかないのだ。
 ただ、ガンブースターから才人とは違った目でエースの戦いを観察していた
テッペイは、奇妙な違和感が増大してくるのを感じ始めていた。
 
「おかしい……」
 
 それがなにか、具体的な答えはまだ出ていないが、才人よりも昔から
ウルトラマンの戦いを見慣れてきて、つい二日前のバキシムとブロッケンの
激闘もモニターごしとはいえその目に焼き付けたテッペイにとって、今は
何かが違う、そんな感じがし続けていた。
 また、同様の違和感はキュルケやタバサも感じ始めていた。
「なにか、変ね……タバサ、あなたはそう思わない?」
 タバサは無言でうなづいただけであったが、その目は否定していなかった。
 それぞれ二匹の怪獣を相手に互角に戦うメビウスとヒカリのちょうど中間に
あたる地点で、再開されたエースとグロッシーナの戦いは、確かに壮絶な
ものであった。
「トア!」
 短くジャンプして、グロッシーナの脳天にチョップを打ち込むと、即座に
グロッシーナは大きく角ばった頭部をハンマーのようにしてエースを打ち据え、
鋭い爪で殴りかかってくる。
「ダッ!」
 なんとか避けたエースは光弾を吐き出してこようとするグロッシーナの口を
めがけて、抜き手のように突き出した手の先から単発の白い光弾を発射した。
『スラッシュ光線!』
 グロッシーナが光弾を吐こうとした瞬間を狙い撃った一撃は、見事に奴の口内で
炸裂して、その爆発の勢いで大きく口の周りを焼け焦げさせて、ウルトラ兄弟一の
必殺技数を持つエースの器用さをまざまざと見せ付けた。
「やった! あれならもう光線は吐けない」
 口内から煙を噴き上げるグロッシーナに、才人が快哉をあげた。確かに彼の
言うとおり、口の中を見事に爆破されたのでは、光弾を発射することは不可能と、
テッペイもそう分析していた。だが、それもつかの間で、グロッシーナは傷ついた
口を炭化した皮膚をそぎ落としながら開くと、また赤色光弾をエースに吐きつけてきたのだ。
「グワアッ!」
「なんだと!?」
 直撃を受けたエースは爆発に包まれて、一瞬その姿が見えなくなった。むろん、
その程度でやられるはずもなく、煙が晴れた後には無事な姿を見せていたが、
そのときテッペイやキュルケたちが感じていた違和感は、具体的な形を持って
単語形成を始めており、グロッシーナがさらに光弾を吐き出そうとしているのを
見て取ったエースが、次にとった攻撃でそれは確定的となった。
 
『メタリウム光線!』
 
 赤、黄、青の三原色で構成されたエースの最大の得意技がグロッシーナの胴体に
吸い込まれて爆発を起こす。これで今度こそやったか!? と、才人はエースの勝利を
確信したが、そうはならなかった。なんと奴は光線の直撃した部分は醜く焼け焦げさせて
いるものの、まだ両の足でしっかりと立って、怒りの叫びをあげてくるではないか。
「やはり……なんてことだ」
「テッペイさん、どういうことなんですか!?」
 通信を通して聞こえてきた、テッペイのどうしようもない重病患者を前にしたような
うめきに、はじかれたように反応した才人の声はうわずって、冷静さを失っていた。
けれど、テッペイのようにガンフェニックスのセンサーに頼らなくても、キュルケや
タバサのように冷静に戦いを見守っていたら、それはおのずとわかることだったのである。
 
「エースのパワーが、急激にダウンしている」
 
 それが結論で、もはや疑う余地はどこにもなかった。最初から見返してみても、
グロッシーナはパワー、特殊能力ともに決定的といえるような強大なものは持っておらず、
その点でいえばバキシムやブロッケンのほうが格段に勝るだけに、互角の勝負に
なること自体がおかしかった。
 また、これは彼らには知るよしもないことだが、グロッシーナは実際にそれほど
たいした強さは持っておらずに、別世界での同一個体も、GUTSの攻撃で一度
撃退された後に、サイクロメトラに寄生されて蘇ったが、ウルトラマンダイナの
ソルジェント光線はおろか、スーパーGUTSの戦闘機、ガッツイーグルγ号の
光線砲ガイナーでさえ体を貫通されて大穴を空けられてしまうなど、エネルギー系の
攻撃に対しては脆弱であるのに、メタリウム光線が皮膚を焦がしただけに
終わるなんてありえるはずがない。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:00:06 ID:7ODpcXY6
「ウルトラー!」
「しえーん!」
 記録されたエネルギー数値を参考にすれば、現在のウルトラマンAのエネルギー数値は
先日の二大超獣と戦ったときの、およそ半分以下にすぎない。それでも、違和感を
感じさせるだけで、怪獣と互角にやりあえていたエースの基本ポテンシャルの高さは
たいしたものであったが、エースのパワーダウンを見抜けていなかった才人は驚いて叫んだ。
「エースのパワーが!? なんで」
 GUYSのクルーたちはさすがに「バカかお前は!」と怒鳴りたくなる寸前になった。
エースの弱体化の原因、それと同じものをGUYSクルーたちは過去に見たことがある。
以前メビウスが光の国に帰還を命じられたとき、メビウスは出現したインペライザーと
帰還命令を振り切って戦ったが、使命と感情の板ばさみになった結果、充分に力を
発揮できずに敗れている。
 そのとき、リュウたちGUYSクルーははじめてミライがメビウスであるということを知り、
彼の苦悩と痛みを分かち合い、共に戦っていくことを誓った。だから、まだ会って
数日しか経っていないが、ルイズという少女の気持ちもよくわかる。そしてリュウは、
そこまでなるほどに築き上げた絆の強さに、鈍感にも気がついていない才人に
かつてミライの気持ちに気づいてやれなかった自分自身に感じたものと同じ強い
憤りを感じ、お前本当に気づいてねえのか? それとも半年もいっしょに戦った
パートナーの気持ちが、本当にわからねえのか!? と、背中越しに怒鳴りつけていた。
「そんな、でもあいつは……」
「うわべと本音くらい、見分けてやれ。生まれた星は違っても、共に生きていれば
言葉を使わなくても伝わるものはあるはずだ。おれたちと、メビウスがそうだったようにな」
「あいつの……本音」
 叱り飛ばされて才人は、これまでは念じればなんとなくそばにいることを感じられた
ルイズの心を思ったが、今は何も感じることはできなかった。いやそもそも、
あのルイズが自分ごときに本音を隠そうとしていることが信じられなかった。
いつも余計なほど高慢で、かんしゃくもちで、少しでも気に障ることをしたら
遠慮なく暴力を振るってくるルイズが、よりにもよって本音を隠している? 
まさか、そんなことが……
 それに皮肉な話だが、もっともエースと近くにいた才人だからこそ、離れて
見ることによってエースの戦いの不自然さに気づくことができなかった。いや、
無意識に見ないようにしていたのかもしれない。
「ルイズ……ばかやろうが」
 忘れろとは言わない。もしも自分がルイズの立場だったら、悲しくてもその思い出を
一生の宝物としてずっと大切にしていくだろう。けれど、今はそんなことを考えてる
場合ではないだろう。少なくとも、これまで彼の前ではルイズは常に毅然として
貴族らしく気高く振舞っていて、どんな相手にでも立ち向かっていた。
 しかし、才人はやはりルイズと近くにいすぎたゆえに、自分が一つの大きな誤解を
していることに気がついていなかった。ルイズの勇気は何も誇りや名誉から、
無尽蔵に沸いてくるわけではない。彼女が誰にも負けない強さを発揮するには、
重大な条件が必要だった。ただ、それを理解するためには、才人には一つ、
絶望的なまでに欠けている要素があり、これまでの彼の振る舞いから、下手を
すれば二人の絆を修正不可能なまでに破壊してしまう危険性を感じ取った
マリナとジョージは、この小学生レベルの恋愛知識で四苦八苦している
青少年に、大人としてアドバイスをした。
「はぁ、才人くん。あなたって、もててる割には熱血バカ以上の鈍感ね。才人くん、
女の子の言うことを、そのまま真に受けちゃだめなのよ。特に、あれくらいの
年頃の子はね。」
「今回は俺もマリナに賛成だな。俺の見たところじゃ彼女はそう、なんていったっけかな、
表側ではツンケンしてるけど、本音は甘えたがってるってそんなタイプだ、思い出してみろよ。
それと、お前のほうは彼女の事をただのパートナーと、それだけしか思ってないのか?」
「えっ……」
「え、じゃない。この際だから聞いとくが、お前バレンタインでチョコもらったことないだろ?」
 才人の脳裏に「あるよ! お袋にだけど」という言葉が浮かんで消えた。ちなみに、
プロサッカー選手であるジョージのところには、毎年山のようにチョコが届けられている。
「やっぱりな。どうりで自信もててないわけだ……才人くん、君は自分ではわかってる
つもりだろうけど、大きな誤解をしてるぜ?」
「そうね、このままじゃ前にフェミゴンと戦ったときのテッペイくんの二の舞ね。
もしも、またこの世界に戻れても、そのときは彼女は君の事をきれいさっぱり
忘れてしまってるかもね」
「えっ!? ど、どうしてそんな?」
 わけがわからないという風に言う才人に、マリナは「嫌なこと思い出させないで
くださいよ」と言うテッペイの抗議を聞き流しながら、ジョージは軽くしてやったり
笑いを浮かべてそれぞれ答えた。
「残念だけど、それを私たちが言っちゃあ意味がないわ。あなた自身で、答えを
見つけなさい。けど、女の子はね、自分の本当の気持ちを知ってほしいと
いつだって思ってるものよ」
「じゃあ、俺も初級のレッスンをしてやるよ。そうだな、難しく考えるな。バカになれ、
お前なんかがうじうじ考えても無駄だ。心の中に隠してるもの全部吐き出して、
当たって砕けてみろ。女に向かって、勇気を示してやるのが男の義務だ!」
「えっ? ええっ!?」
 完全に困惑してしまった才人は、だったらどうすればいいんだと助けを
求めるが、マリナもジョージも、もう戦闘に頭を切り替えて答えてはくれない。

 ”ルイズの本当の気持ち、それにおれの本当の気持ち? なんだそりゃ、
全然わけわかんねえ! でも、なんでだ? なんで覚悟を決めたはずなのに、
なんでこんなに不安なんだ? 畜生、ルイズのバカめ、エースに下手な戦い
なんかさせやがって! これじゃ心配になっちまうだろう! お前にとって、
おれは何だっていうんだ? 使い魔? パートナー? それとも、それとも……”
 
 ルイズはいい奴だ、そんなことはわかっている。いろいろあって、ずいぶんと
わがままを言われたが、たまに見せる気遣いは彼女の理想とする貴族らしく、
とても気高くて優しかった。だからこそルイズの自分に対する感情はある一点
以上にいくことはないと、高根の花のように思っていた。
 けれど、それは逃げだったのかもしれない。違うと言われるのが怖くて、ルイズの
優しさに甘えて、彼女は自分がいなくても大丈夫な強い女の子だと決め付けて。
 ルイズの心……近くにいたからゆえに、気づかなかった。勝手に思い込んでいた。
自分の手から離れていきかけたとき、才人の中に急速にある気持ちが生まれ始めていた。
「ばっきゃろうが……」
 吐き捨てた言葉はルイズにか、それとも彼女の心の内を見抜いてやれなかった
自分に対してか、それとも両方か……
 
 ルイズと才人、切れかけた絆がもたらす苦しみの中で二人の若者が苦しむ中でも、
光と闇、ウルトラマンとヤプールの激闘は続く。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:02:40 ID:7ODpcXY6
「わたしの支援は凶暴です」
「デアッ!」
 グロッシーナの尻尾攻撃を回避し、接近戦で戦うエースだったが、パワーが
落ちた状態ではパンチやキックの威力も半減して、奴も弱った状態なのにまともな
ダメージを与えることができない。
 そして、半年ものあいだエースとともに戦ってきたルイズは、エースの力が
なぜ発揮できないのか、もうわかっていた。はじめてエースに変身したあの日、
エースはこう言った。
”君達のあきらめない強い意志が私の力となる”
 今の自分にそれはない。しかし、どうしてもルイズの心からは闘争心や覇気と
いった戦いに必要な感情が浮かんでこない。いや、ハルケギニアや、今この学院を
守りたいという使命感はあるのだが、それを支えるいわば土台の部分が抜け落ちた
みたいに虚ろで冷たいのだ。しかも、その原因が自分でわかっているのが、何よりも
腹立たしかった。
 エースは、北斗星司は黙して何も言わずに、ただ戦い続ける。
「ダアッ!」
 赤色光弾をサークルバリアで跳ね返し、力比べでは負けそうになるのを気合で
押さえながら、奴の腹の下に体を潜らせて、ひっくり返すように投げ倒す。
だがそれも、勢いにいつもの張りがなく、必殺の一撃を加えられないのでは
エースの苦闘は続く。
 
 そのころ、メビウスとヒカリもそれぞれ二大怪獣を相手に互角の戦いを繰り広げていた。
「ヘアッ!」
 メビュームブレードでグドンの鞭の一本を切り落として、ドラコに袈裟懸けに
斬りかけて黒々とした皮膚に大きな刀傷をつけ、さらに殴り倒したメビウスは
マウントポジションからドラコの胴体をめがけてパンチの猛攻撃を加えてダウンさせた。
 ヒカリも、キュルケとタバサの的確なアドバイスと、ときたま目くらましや足止めに
送り込まれてくる炎弾や氷風の援護で、ガギを相手に優勢に戦い、奴の角を
ジャンプキックでへし折って光線を封じた。だが、頑丈な表皮を持つギールには
ナイトビームブレードでも致命傷を与えられずてこずっていた。
「デヤアッ!」
 正面からでは、よほどの攻撃力がないと無理だと判断したヒカリは噛み付き攻撃を
かけてくるギールを避けて、首をかかえて持ち上げた。こういう四足歩行の生物は
だいたい背中は頑丈だが、腹はやわらかいと踏んだのだ。
 しかし、そのもくろみは半分は的中したが半分は失敗した。確かにギールの
腹は背中より装甲は薄かったが、そこには秘密兵器が隠されていたのだ。
「危ない! 怪獣の腹が開いてます」
 ヒカリに向かって腹部を向けたギールの腹の中央が観音開きに開き、そこから
巨大な琥珀のようなオレンジ色に輝く球体が現れたかと思うと、球体から
真っ赤に燃える無数のマグマエネルギー弾を乱射してきたのだ。
「グウッ!?」
 予想だにしていなかった攻撃にたじろぐヒカリの周りに、無数のマグマ弾が
着弾して爆炎を上げる。これが、ギールがマグマ怪地底獣と呼ばれている
ゆえんで、この攻撃にはXIGもだいぶ苦戦させられたものだ。ただし、諸刃の
剣のたとえのとおり、最大の武器は最大の弱点ともなる。ヒカリはマグマ弾が
発射数は多いが、狙いをつけることはできないと悟ると、奴の体内へと
直結していると思われる球体にナイトビームブレードの切っ先を向けて突進した。
「デァァッ!」
 
 そして、苦戦を続けていたエースもグロッシーナとの戦いの中で奴の動きを見切り、
奴が光弾を放つときの、エネルギーをためる一瞬の隙をついて、エネルギーを
右手に集中して、光輪状のカッター光線に変えると素早く投げつけるように発射した!
『ウルトラスラッシュ!』
 光弾とすれ違って飛び込んだ、ウルトラマンの八つ裂き光輪と同等の威力を
誇る切断光線は水平に高速でグロッシーナの首をすり抜けて、次の瞬間奴の首は
壊れた置物のように無造作に胴体の上から転がり落ちた。
「やった!」
 首の後を追うように大地に崩れ落ちたグロッシーナを見て、才人の歓声が飛ぶ、
グロッシーナは再生怪獣と別名を持っているが、自身に再生能力は持っておらず、
首をはねられたらもう蘇ることはできない。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:04:10 ID:fUAJSeGZ
支援
 だが、喜びもつかの間で、才人はエネルギーを大量に消費して、肩ひざをついて
息をついているエースの背後の林が何も無いのに倒れていき、ついでエースに
向かって草原の草が不自然になぎ倒されていくのを見て、とっさに叫んでいた。
 
「ルイズ! 後ろだ!」
 
 はっとしてエースが振り返った瞬間、エースはまるで後ろから何かに追突
されたように倒れ、さらに右足が何かに掴まれているように浮き上がり、後ろに
向かって引きずられはじめたのだ。
「ルイズ!」
「あれは!? テッペイ、どういうことだ」
 明らかに攻撃を受けたらしいエースは、引きずられていく右足を押さえて
ふんばっているが、相手の力のほうが強いらしく、なすすべも無く引きずられていく。
しかし、エースの周りには怪獣どころか足跡の一つすら見当たらない。不自然な
エースのやられ方に、才人の前の座席に座るリュウがガンブースターの
テッペイに説明を求めると、テッペイは慌てて叫んだ。
「しまった油断した。マリナさん、エースの周りを攻撃してください!」
 言われたマリナはガンブースターを旋回させて、エースに当てないように
注意しつつ、言われたとおりにエースの至近に照準を合わせてトリガーを引いた。
「いくわよ、アルタードブレイザー!」
 青色の光弾が、エースの周囲で炸裂し、多くは無駄弾となって草原を掘り返した
だけに終わったが、何発かは何も無いはずの空間で炸裂して、そこから緑色を
した巨大な亀のような怪獣が、エースの右足を咥えた状態で浮かび上がってきた。
「あれはやっぱり」
「吸電怪獣エレドータス!」
 それはかつてウルトラマンジャックと戦った、文字通り電気を吸収する特性を
持った怪獣で、溜め込んだ電気エネルギーを使った攻撃を得意とする。また、
それだけではなく、初代ウルトラマンが戦った透明怪獣ネロンガと同じように
自分の姿を透明にする能力も持っているのだ。
「くそ、見えない怪獣なんて反則だぜ」
 完全にふいを打たれた形になったジョージはガンウィンガーを旋回させつつ、
攻撃目標を、スッポンのようにエースの足に食いついて離さないエレドータスに向ける。
だが、同時にGUYSクルーたちは怪獣博士と異名をとるテッペイよりも早く怪獣の
名前を言い当てた才人の知識に感心していた。
”やるな、こいつ”
 一般人で、これだけ怪獣に精通している人間はそうはいない。リュウたちですら、
入隊当初はグドンの名前すら知らずに、テッペイの知識にはかなり世話になったものだ。
これほどの知識があれば、もしかしたら……GUYSクルーたちは才人の資質に
ある思いを抱いたが、そんなことはつゆ知らずに、才人は目の前で苦戦する
エースを見て歯軋りをする。
「畜生、おれがあそこにいたなら……」
 エレドータスの能力を知っている自分がいたら、ああも一方的に攻められることは
なかったはずだ。うぬぼれかもしれないが、これまでもヤプールの操る怪獣、超獣、
宇宙人の正体からその特徴を読み解き、サポートできてきたのに……だが、
言っても遅く、消耗したところを襲われたエースは抵抗できずに噛み付かれた
足から電撃を流されて苦しめられる。
 
「ウァァッ!」 
「エース兄さん!」
「ちっ! 邪魔だ、お前たち!」
 
 エースの苦境に、メビウスとヒカリも二大怪獣を相手にしながらも、もうおちおちしては
いられなかった。エネルギーを大量消費するのを覚悟で、二人はそれぞれ必殺光線を
敵に放つ。
『メビュームシュート!』
『ナイトシュート!』
 なぎ払うように放たれたメビュームシュートがグドンとドラコを同時にはじき飛ばし、
ナイトシュートの直撃を腹に浴びたギールは爆発四散、さらにガギも鞭を失って、
今の光線の破壊力を目の当たりにしてはかなわないと見たのか、その巨大な
カギ爪を地面に食いつかせて、あっという間に土中に逃げ去ってしまった。
「逃がすか!」
「待て、逃げるやつなんかほっとけ、エースの援護が先だ!」
 リュウは追撃を加えようとするガンウィンガーのジョージに指示を与え、三機も
メビウスとヒカリとともに、苦戦するエースへと援護攻撃を開始した。
「ウィングレッドブラスター!」
「バリアブルバルサー!」
「アルタードブレイザー!」
 光線砲の集中攻撃がエレドータスに集中し、ひるんだ隙にエースは脱出する。
「エース兄さん! 大丈夫ですか」
「ああ、すまないメビウス」
 メビウスの目から見ても簡単にわかるほど、エースの消耗は大きかった。テクニックで
カバーしてはいるものの、本来ならばあの程度の怪獣など真っ先に倒せていて
いいはずだ。
「エース兄さん、やっぱり……」
「何も言うなメビウス、それよりも、まだ戦いは終わっていないぞ」
 エースは、明白な自分の身の異常には何一つ言わずに、立ち上がると二人に
戦いに戻るようにうながした。なぜなら、北斗星司は信じていた、人の心は
時に自分でもどうしようもないくらいに大きく乱れることはあるが、それは同時に
人の心が大きく成長するチャンスであるということを。
 しかし、ともかくもこれで戦いはグドンとドラコ、それにエレドータスにとどめを
刺すだけだ。メビウスとヒカリはエースをかばいつつ、起き上がってきたグドンと、
叫び声をあげてくるエレドータスを見据え、攻撃態勢に入る。
 
 だが、怪獣軍団の劣勢を目の当たりにしながらも、予想外のウルトラマンAの弱体化に
ほくそえんでいたヤプールは、宿敵に復讐を果たす願っても無い好機に、手のひらに
強力なマイナスエネルギーを集めていた。
「ふふふ……なぜかは知らんが、ウルトラマンAめ、満足に戦うことができないようだな。
ならば、ここを貴様の墓場にしてやる。さあガディバよ、今わしの持てるすべての
マイナスエネルギーをくれてやる。ゆけぇーっ!」
 ヤプールの手から、正真正銘最後のマイナスエネルギーを込めた黒い蛇、
宇宙同化獣ガディバが空へと解き放たれた。そして、GUYSが強力なマイナス
エネルギー反応に気がついたときには、すでに遅かった。
「リュウさん! とてつもなく強力なマイナスエネルギーが!」
「なにっ!? しまった、あれは!」
 空を生きているような黒雲が走り、それが空から舞い降りてきたとき、真っ赤な
目を持つ漆黒の大蛇はGUYSも、ウルトラマンたちも止める暇もなく、半死半生
状態であったドラコの周りにまとわりつくと、その体の中に吸い込まれるように
消えていった。
「あれは、あのときの!」
「そうです。レジストコード宇宙同化獣ガディバ! 別の怪獣に乗り移ってその
体質を変化させる宇宙生物です!」
 GUYSはかつて、ヤプールがメビウスの戦闘データを採集するためにぶつけられた
どくろ怪獣レッドキングとの戦いで、ガディバを目撃していた。あのときは、倒された
レッドキングを生体構造を変化させ、古代怪獣ゴモラに作り変えたが、今度はいったい!?
 ガディバに取り付かれたドラコは、異物が体内に入り込んだことによって、生体の
持つ拒絶反応で苦しんでいたが、やがてガディバの持つ能力とマイナスエネルギーが
なじんでくると、まるでクレイアニメのように変化を始めた。
 メビウスにやられていた刀傷がふさがっていき、身長四五メートルの体が徐々に
巨大化し、六〇メートルまで大きくなるのにあわせて翼も三倍近くにまで大型化。
さらに愛嬌もあった顔は、口が昆虫のように横開きになって鋭い牙を無数に生やし、
瞳の色も白から真っ赤に変化した凶悪なものになり、腕もはるかに大型化して、
まるで別の怪獣のようにたくましく、威圧感をあふれさせた容貌になったのだ。
「で、でかくなりやがった!?」
「いや、それだけのはずがねえ……みんな、気をつけろ!」
 そうだ、あれだけのマイナスエネルギーを吸収したのが、見掛け倒しのはずがない。
だが、ドラコの急激な変化に危機感を抱いたのか、奴の前にいたグドンがきびすを
返すと、残った一本の鞭を振りかざしてドラコに襲い掛かっていった。
「よっしゃ! 同士討ちしやがるぜ」
 ジョージが、怪獣同士つぶしあいをしてくれるならちょうどいいと、歓声をあげた。
それに、グドンだって弱い怪獣ではない。残り一本とはいえ、振動触腕エクスカベーターは
ウルトラマンの体ですら簡単に叩きのめす威力を誇る。しかし、GUYSクルーや
才人たちの期待は最悪の形で裏切られた。
 ドラコは、グドンの鞭の一撃を微動だにせずに体で受け止めると、最大の武器である
鎌をきらめかせ、一瞬のうちにグドンの首筋を一撃! 急所を切り裂かれたグドンは
口元からつうっと血を垂らすと、魂を抜かれたように大地に崩れ落ちたのだ。
「なっ!? あ、あのグドンを、一撃で!」
「な、なんて防御力と攻撃力なんだ! あれは、あれはもうドラコじゃない」
 リュウとテッペイの驚愕の声が、ガンフェニックス全体と、三人のウルトラマンの
耳に響き渡る。ドラコは、ゆっくりと彼らに向かって前進をはじめ、本能的に
絶対勝てない相手だと気づいたエレドータスは、じりじりと後ずさりしていく。
しかし、残されたリミットはわずか、それまでに、彼らはこの恐るべき大怪獣を
果たして倒すことができるのだろうか。
 
 続く
459ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2010/04/25(日) 16:10:48 ID:C/8Zyt8v
以上で、来週に続きます。
いよいよ、クライマックスが近づいてきました。
数えてみれば、42話から始まったといえるアルビオン編、途中に外伝などをはさんだとはいえ
60話近くもよく続いたものですが、今その終わりの話を書いています。
それに、登場した怪獣も歴代数えて現在なんと86匹! 実にウルトラシリーズ2作分です。
小さいころからテレビの中でかっこよく活躍していたヒーローや怪獣たちがゼロの使い魔の世界で
活躍するという夢を、少しでも共感してもらえたら幸いです。
では、アルビオン編のとりを飾るラスボスも登場したところで、また来週まで、ごきげんよう。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:13:10 ID:PwmEVJ04
乙。

これがEX化ってやつか…。
461名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:13:16 ID:Yi4OYNO7

まさかのパワードドラコとは
462名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:13:56 ID:f3zBLvXg
乙です
463名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:15:25 ID:7ODpcXY6
お疲れ様でした
あいかわらず我等を燃え殺そうとするかのごとき熱き展開。
この燃えさえあればサザエさん症候群すら耐えられます、きっと
来週もお待ちしております


・・・・・・・また一週間が長いなぁ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:20:49 ID:f3zBLvXg
こんなタイミングで投下するなんて気が重いなあ……
短いのでお目汚しも失礼!
465名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:21:27 ID:7ODpcXY6
ガンバレ、ガンバレ!
466名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:22:39 ID:f3zBLvXg
異様な光景だった。
他の作品ならあるはずの、ルイズが呼び出した使い魔に対する批評が全く出てこない。
杖はなくマントを羽織ってはいないので平民なのは間違いないだろう。
だが、平民の『へ』すら誰の口からも発せられることはない。
立会いを勤めているコルベールすら動けないでいた。
それは単純明快な理由だ。
呼び出されたのは平民であるが、平民ではない。
どう見てもその筋の人間です。本当にありがとうございました。
当のルイズにしてから召喚してしまったことを謝罪したくなっていた。
というか呼び出してしまった自分を非難したい気持ちで一杯だった。
――あれだけ失敗した末にようやく召喚に成功したというのに。

メガネの奥には、細く鋭い剃刀のような目。
周囲を睥睨する鋭い眼光は、うかつな質問などはさませはしない。
――疵の中に顔があった。
左額から右頬にかけて、右頬から左顎にかけての、顔を縦横断する十字の疵。
唇の両端についた2つの疵。
両頬についた、何かが破裂して出来たような疵。
身長は2メイル近い―――文句なしの巨漢である。
その巨躯を包むのは、見たこともない縫い方をした、真っ白な服。
拳――何十年も武道に命を捧げてきた人間が持つような、異形の拳。
大きく、広く、太く、分厚い―――。
その異形の拳も痕だらけであった。

「あ、アンタ……誰よ?」
ルイスが、問う。
杖はない。マントを羽織ってもいない。ならば平民である。
たとえアウトローと言っても、メイジの威光に逆らうはずはない。
そう思って搾り出した、虚勢のみの言葉だった。
その証拠に足はおこりのごとく震えている。

その男、

非 武 装

非 鍛 錬

非 防 御

を旨とし、勝利ための努力自体を女々しい行為と断ずる――ッッ
曰く、超A級喧嘩師――ッッ
曰く、素手喧嘩日本一――ッッ
その男、名を……
「―――花山。花山薫だ…。」
身長191cm
体重166kg
藤木組直系花山組2代目組長、花山薫――ッッ


疵の使い魔 第1話「召喚」完









ギーシュ「え?これに決闘申し込まないといけないの?」
467名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:24:49 ID:f3zBLvXg
以上です

デルフ涙目
から思いついたネタなのでどうなるか不明ですが…
468名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:42:44 ID:ibzhLGwJ
やめてwギーシュのライフはもう0よww
469名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 16:43:17 ID:7ODpcXY6
ただ「薫さんが現れた」だけですから現時点ではなんとも評価出来ませんね
続きを期待してお待ちしております
470名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:03:05 ID:9l3SxvrZ
>>467
一発ネタの連続ならばこの雰囲気を持続できるかも
バキワールド期待
471名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:21:55 ID:biC86WtH
バキ世界では本部や烈みたいな武器を使っても強い連中はガンダよりもミョズ向きなイメージがある
472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:26:08 ID:1+XFNlWL
ガイアみたいな何でも利用するやつがガンダになったら砂を触ってもルーンは光るのか?
473名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:34:22 ID:tr02zyXO
474名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:49:21 ID:kj6ORiV8
>>466
自身の身体が武器の様な人たちですからね〜。
常時ガアンダ発動しっぱなしのような気も・・・。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 18:51:12 ID:Tei4GRLL
>>473
そこの作者を貶めて何したいん?
まぁ答えないだろうけど
476名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 19:13:53 ID:Z3WGC4uS
全身兵器のメカゴジラみたいなのがガンダになったらって議論も尽きねえな。
武器を使いたいって思ったときに発動すんじゃねの。
ところで花山薫ってこち亀に出てきた天罰じじいのこと?
477名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 19:36:15 ID:inbuzm0U
478名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 20:14:42 ID:Z3WGC4uS
なるほど同姓同名の別人でしたか。
てっきり珍妙な踊りをしながらアホみたいな呪文を唱える変態じじいが呼ばれたのかと思った。
479名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 20:17:02 ID:Z3WGC4uS
ぁ、間違えた。こち亀に出てきた天罰じじいは花山リカだった。
すいません、ほんとにすいません。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 21:42:18 ID:1mDwsped
>>470
バキって段階で出オチだよな
481名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 22:09:10 ID:7b0wOFOp
花・・・P4から花村を召喚
実質進行役として主人公のポジションにあったといっても過言ではない彼なら
面白く進むはずだ、ツッコミもこなすし
482名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 22:16:03 ID:k1zrJz2z
>>472
名前忘れたけど体内武器しこんだ死刑囚は武器手放せないから常時ガンダになっちゃうな
483名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 22:25:30 ID:NRpHeGB3
>>481
ペルソナシリーズは主人公しか呼ばれてないよな
あ、ガキさんは呼ばれてたかな

P4とかいいキャラ多いのにあんまよばれてないのな
484名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 22:26:52 ID:vZOQkS4b
>>482
ドイルだね
愚地独歩は自らの拳を武器と称していたがこれもどうなるんだろうか
485風の使い魔:2010/04/25(日) 22:37:32 ID:msZU9QJJ
なんやかんやあって久し振りになりましたが
22時50分から風の使い魔1-3を投下したいと思います。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 22:45:41 ID:R9liKMvi
こういう場合は「wktkしながら全裸で待機します」とでもいえばいいのか?
とにかく期待w
487風の使い魔:2010/04/25(日) 22:54:16 ID:msZU9QJJ
 MUROMACHI歴155年――両親を亡くした少年は、己の命と人生を懸けるに足る力と出会った。
 MUROMACHI歴157年――諸国に戦乱の兆しあり。いち早く戦の臭いを感じ取った男は、
素質ある若者達を『虹を翔る銀嶺』に招集した。時代を動かす力、最強の武術『忍空』のすべてを携えて。
 彼らはそれぞれの決意を胸に、一人、また一人と時代のうねりに漕ぎだしていく。
次々と邂逅を果たす十二人の弟子達によって、次なる忍空の歴史が刻まれようとしていた。

風の使い魔 1-3

「……なるほど。そして戦後、君は師の遺した畑の面倒を見つつ、故郷で暮らしていた。
収穫したトウモロコシをかつての仲間に届ける旅の途中、現れたゲートを潜ったと、こういうわけじゃな?」
 学院長、オールド・オスマンは、机を挟んで立つカエルと見紛う顔の少年に語りかけた。
少年は幼く、まだ十二かそこらであるが、彼が見た目通りの少年でないことは、部屋にいる誰もが知るところであった。
 少年――風助はオスマンの問いに、照れ笑いで頷く。とても戦闘集団の一隊長として戦場を駆けたとは思えない顔である。
「ああ、道に迷って腹減らしてたから、なんか食い物ねぇかと思って覗いたら吸い込まれちまってた」
 あまりに馬鹿馬鹿しい理由に一同溜息。しかし、一番溜息を吐くべき少女は、いつもの無表情で風助の横に立っていた。
 それは広場での騒動の後、タバサが風助と話そうと思った矢先のこと。駆けつけたコルベールによって、
タバサと風助は半ば強制的に院長室に、当事者だと主張して、ルイズとキュルケも強引に付いてきていた。
「未だに信じられません。あれが魔法でないということよりも、君が少年兵……しかも、
一部隊の隊長として戦場に立っていたことが……」
 同席したコルベールは、風助の過去を聞いて苦い顔した。オスマンもそれには頷く。
風助はとても人を殺せる、殺した経験があるとは思えなかったからだ。
 キュルケは感心した様子で、ルイズは半信半疑といったところか。相変わらず、タバサの表情は読めない。
 しかしほんの一瞬、タバサは表情を強張らせた。両親は戦争で死んだ――さらりと、事もなげに風助が言った瞬間だった。
 タバサの心情など知る由もなく、オスマンは引き続き風助を質問責めにする。
「それを可能にしたのが、忍空という武術なのかのう……。風助君、その忍空とやらを使える人間なら、
みんなあのような竜巻が出せるのかの?」
 そもそも忍空とは何か。まずはそこから説明しなければならなかった。風助は拙い表現で説明したが、要約するとこうなる。
 忍空――それは忍者の『忍』、空手の『空』。スピードとパワー、両者の長点を併せ持ち、増幅・発展させた武術。
武装は基本的になく、持ってナイフといったところ。
「強力な忍空技を使えるのは、隊長クラスだけだぞ。それに、空子旋を使えんのは俺だけだ。他は炎や氷、大地みてぇに使える力が違ってんだ」
 そして忍空組とは、天下分け目の大戦において数千数万を相手取り、縦横無尽の活躍を示した部隊である。
 隊員は約百人程度。子〜亥の十二支に対応した部隊に分けられ、それぞれの隊の頂点に立つのが『干支忍』と呼ばれる十二人の隊長。
「なんとまあ……。すると他の隊長も、それぞれ自然を操る能力を持っておるわけで。
あれほどの現象を詠唱もなしに引き起こせる。そら恐ろしいことじゃの」
 干支忍は単純な戦闘力においても、並の隊員をはるかに上回っているのは勿論、子忍の風、酉忍の空といったように自然を操る能力を持っている。
それこそが、忍空が忍空たる所以である。
488風の使い魔:2010/04/25(日) 22:56:05 ID:msZU9QJJ
「風助君、あの竜巻は魔力で出したのかね? 君には魔力がないはず……となると精霊との契約なのか?」
 と、これまで黙っていたコルベールが割って入った。
「せーれーってなんだ? 忍空の技は、龍さんの身体を触って使うんだぞ」
 コルベールは首を傾げる。そもそも、風助は精霊の概念を理解していなかった。
「竜? ドラゴンかね?」と、言ったのはオスマン。今度は風助が首を傾げた。
「風助君、その竜について聞きたいんだが……」と、次にコルベール。
 長くて、でかくて、太くて……と、とりとめのない説明に、一同首を傾げる。頭上に?をいくつも浮かべるルイズ、
妙な想像に微笑むキュルケ、やっぱり無表情のタバサ、それぞれである。
 が、よくよく話を聞いてみると、どうやら自然の中に宿る力のようなものらしい。
龍の身体、突く部位によって異なる技が発現するとのこと。
「しかし、一口に竜と言っても、こちらとは造形が違うのですな。文化圏が違うようですし、東国の辺りなのでしょうか……」
 しかし、風助は自分のいた国の名前も知らないらしい。場所も国名も分からないのでは、推察しようがなかった。
拙い説明で辛うじて理解できたのは、三年前MUROMACHIからEDOに年号が変わったこと。
技術レベルは比較的近くとも、文化は違うということだけ。
「ふぅむ……、自然に宿る竜、もとい龍か……」
「おそらく、精霊に近い存在と見ていいと思われます。万物に宿る意思、力の源……そういったものの力を借りて行使する点では、
先住魔法と似ていますね」
 意志と魔力で法則を歪めるのでなく、自然の力を引き出す術。その点では、確かに先住魔法に近いと言えよう。
「第一に必要なのは天賦の才。素養があっても、大抵は修行により龍を感じることで初めて見られる。
そして力を借りるに至り、自在に操れる域にまで達するには更なる修行……か」
 修行、修行、また修行。頂点まで登り詰めることができるのは、ほんの一握りにも満たない数名。面倒臭さ、育成の手間では魔法以上か。
やはり、それほどの使い手はごく僅からしい。
 オスマンは、ほっと胸を撫で下ろした。遠い遠い他国といえど、そんな怪物が何十人もおり、量産も可能となれば、
一国どころか大陸を制することさえ容易い。あのレベルの使い手が十二人でさえ、一国には十分対抗できる可能性を有しているのだろうが。
 ルイズとキュルケは、それぞれ目を丸くしていた。あの小さな身体に、どれだけの力が秘められているのか。正直疑わしかったが、
つい先刻の竜巻を見せられては信じるしかなかった。
「しかし風や大地はともかく、炎や氷はそうそう手元にあるわけでもあるまい。その辺りはどうなっとるのかね?」
 オスマンがそんなことを問う理由は、系統魔法で最も破壊力が高いとされるのが火であるからだ。戦場においても活躍する系統。
 火種や氷、ないしは水を常に持ち歩かないと力を発揮できないとなれば、風や大地と比べて利便性は格段に劣る。
489風の使い魔:2010/04/25(日) 22:57:59 ID:msZU9QJJ
 炎と氷と聞いて、風助が思い出すのは二人。
 一人は垂れ目の男。何時でも何処でも、火事の中でさえ寝ている、放浪の絵描き。
 一人は長い金髪の美形。虚弱体質でしばしば貧血を起こす、突発性自殺癖持ちのピアニスト。
 どちらもオスマンの想像とはほど遠いだろう。
 癖は強いが実力も結束も強い。今でも親しい干支忍の内の二人、炎の辰忍『赤雷』と、氷の午忍『黄純』だった。
「よく分かんねぇけど……龍が見えなくても、どっちも空気を操って氷や炎は出せる……みてぇに赤雷と黄純が言ってたっけかな」
 そう語る風助は、実に楽しそうな顔をしていた。
 破壊力に優れた火が制限されるなら、個々はともかく戦においての戦闘力はそれほどでもないかと思ったが、甘かったか。
ますます隙がないと感心してしまう。
 しかも、聞く限りでは四系統魔法の仕組みと共通している部分もあるかもしれない。まだまだ世界は広いと、この歳でしみじみ思う。
「じっちゃん……まだ聞くのか? さっきから説明ばっかで疲れちまったぞ」
 思案に耽っていると、風助がぼやいた。じっちゃん呼ばわりは違和感があったが、不思議と悪い気はしない。
「おお、すまんがもうちょっとじゃ。さて、ここからが本題。あれだけの騒動じゃ、君ら四人が頑張った結果、死傷者が出んかったのは僥倖。
被害が樹二本で済んだのは奇跡と言うより他ない」
 オスマンの視線が、風助とタバサを捉える。髭に隠れた口から出るのは、威厳と風格を併せ持った声。
 風助がごくりと息を呑む音が、タバサにも聞こえた。タバサも内心では緊張している。
「しかし、風助君、ミス・タバサ。君ら二人には、なんらかの罰が必要になる」
 未だにああなった経緯が理解できないルイズは傍観。キュルケもよほど重い処分でもなければ黙っておくつもりだった。
そしてタバサは、やはり沈黙。そんな中、一列に並んだ四人から一人、オスマンに進み出る者がいた。
「待ってくれ、じっちゃん! 悪ぃのは俺だ、タバサは関係ねぇ! だから、罰なら俺だけにしてくれ!」
 真っ先に進み出た風助は、自分でなくタバサの罰の軽減を訴えた。
 タバサ――初めて名前を呼ばれた。それだけ、自分は風助とのコミュニケーションを疎かにしていたのに。数えるほどしか会話していないのに。
「風助君、君の言い分は尤もかもしれんが、使い魔の責任は主の責任じゃ。主人と使い魔は一蓮托生。それは全うしてもらわんといかん」
「頼む、じっちゃん!」
 タバサは、下げた頭をなおも低くしようとする風助を、
「別に構わない」と手で制した。
 そんな主人を何故、そうまでして庇うのかは分からなかった。ただこの瞬間、初めてこの使い魔を信じてもいいと思えた。
「まあ聞きたまえ。不服を言うのは、それからでも遅くはないだろう?」
 コルベールが風助を諫め、一同オスマンの裁決を待つ。
 オスマンは長い髭を撫で摩り、
「そうじゃの……今後、学院内での忍空の使用は厳禁。後は……樹が二本じゃから、向こう二ヶ月の奉仕活動とでもしておくかの」
 と急に気の抜けた声で言った。危うく学院を崩壊させるところだった騒動の罰としては軽いものだ。
「ほうしかつどう……ってなんだ?」
「平たく言えば、掃除を始めとする学院の雑用じゃな。内容は必要な時に沙汰しよう」
 タバサは安堵よりも、その意図を疑わずにいられなかった。だが、そう思っていたのはどうやら自分だけらしい。
ルイズとキュルケは、互いに目を見合わせ苦笑。風助はいつも丸い目を、更に丸くしていた。
490風の使い魔:2010/04/25(日) 22:59:51 ID:msZU9QJJ
「そんだけでいいのか……?」
「当座はそれだけ、としておこう。手始めに、広場の樹の残骸を処分してもらおうかのう。
おお、それと図書館の司書が蔵書の整理をしたいと言うとったな。そっちはミス・タバサが得意じゃろう」
 無邪気な笑顔の風助が、オスマンの座った机に飛び乗って手を握る。
「サンキュー、じっちゃん! 俺がんばるぞ!」
「ほっほっほ……これ、机に乗るでない! 隠しきれるものでもあるまい。教師連中には私から説明しておこう」
 タバサの魔法としておく手もあるが、トライアングルで出せる魔法でもない。何よりも、風助が許さないだろう。
今は様子を見るべきとの判断だった。
 風助の嬉しそうな顔にコルベールも、ルイズもキュルケも微笑んでいる。そんな顔を見せられてはタバサも、
疑問は一時保留しておこうという気分になってしまった。
 無邪気な風助にコルベールが、
「忍空の使用を禁止されても困ることは少ないだろうが、使い魔としての役割も頑張りたまえよ。
困ったことがあれば、私もできる限り力になろう」
「ああ。それでおっちゃん、使い魔ってのはどうやったら終わりなんだ?」
 その答えに、室内にいた全員が固まった。
「は……?」
「え……?」
「まさか……」
「ふむ……」
 最初にコルベール。続いてルイズ、キュルケ。オスマンまでもが、意外そうに唸る。
 驚きの目が集中しているのに、風助は気付かない。一人、決意も新たに拳を握って意気込んでいる。
「俺、頑張って使い魔終わらせるぞ。けど、どうすりゃいいんだ? おっちゃん」
「まさか君は知らないのか? ミス・タバサ……君も説明してないのか?」
 コルベールが風助からタバサへ視線を移す。タバサはぶつかった視線を一旦は受け……やや気まずそうに外した。
しまった。
 顔は平静を装っていても、彼女がそう思っているのは誰から見ても明らかだった。
 使い魔は召喚された時から自分の役割を理解していると文献にはあったが、風助は何一つ理解していなかった。
だというのに、面倒だったので説明を簡潔に済ませてしまっていたのだ。
 ルイズは口に手をやって驚き、キュルケは悩ましげに額に手を当てた。
 きょろきょろと周囲を見回す風助にコルベールが告げる。気まずく、この上なく言い辛そうに。
「風助君……使い魔とは、メイジを一生サポートするパートナーなのだ。つまり……死ぬまで終わらない」
 風助の顔が歪み、
「うぇぇええええええええ!!」
 学院中に聞こえるかと思うほどの声がこだました。
 そのうち帰れるだろうと楽観的に考えていただけに、風助はこれ以上ないほど仰天した。
 それはもう、筆舌に尽くし難い顔芸で、驚愕を露わにしたのだった。


「君の国に帰れる方法も探しておこう。それまでは我慢してくれたまえ」
 コルベールに苦笑いで送り出された風助。その横にタバサ、後ろをキュルケとルイズが歩く。
前を歩く二人は、珍しく困り顔だった。
「一生は……ちょっと困ったぞ。ばあちゃんと……お師さんの畑もあるしなぁ」
 親代わりでもある隣の老婆は身体が弱く、臥せりがちである。最近は元気だし、村の人間は仲がいいので、しばらくは心配いらないだろうが。
 畑も面倒を見てくれる当てはある。忍空の里の忍犬、ポチはちょくちょく里を抜け出しているので、戻らなければ面倒くらいは見てくれるだろう。
 どちらも焦る必要はないと分かっていても、心配には変わりなかった。
 一方、タバサは申し訳ない気持ちを抱えていた。今更になって、自分のらしくなさが悔やまれた。かと言って、掛ける言葉も見つからない。
491風の使い魔:2010/04/25(日) 23:01:53 ID:msZU9QJJ
 見かねたキュルケは空気を変えようと、
「しかし、ヴァリエールはともかく、なんであなたは人間を召喚したのかしらねぇ?」
「ちょっと、ツェルプストー! わたしはともかくってどういう意味よ!!」
 敢えてケンカを吹っ掛けてみる。案の定、ルイズはすぐに乗ってきた。
 意図を汲み取った上で怒ってくれているのか、それとも天然なのか。多分後者だろうが、どちらにせよありがたい。
「カエルみたいな顔してるから、亜人と間違えられちゃったのかしら……なんて」
「そんなわけないでしょ!」
 怒るルイズ、さらっと流すキュルケ、いつも通りのやり取り。見ていた風助も、いつの間にか笑顔になっていた。
「んじゃ、俺は広場の片付けに行ってくるぞ。俺がやったんだから、俺一人でいいや」
 風助は三人と別れて外に出る。タバサは迷った末、彼の背中にたった一言問う。
「いいの?」
 それは広場の片づけを一人でさせることに対してか、使い魔を続けることに対してなのか。
言ってから、また言葉が足りなかったかと不安になったが、
「まぁな。くよくよしてもしょうがねぇし。それにここはここで、いろいろ面白ぇぞ」
 今度はちゃんと伝わったらしい。どちらの意味にも取れたが、きっと後者だろう。
能天気な笑顔の裏に秘められた逞しさをタバサは感じ取った。
「……わたしも次の講義は休むわ。先生には伝えておいて。治療の魔法の準備をしてもらわなきゃ」
 あんなバカ犬でも使い魔は使い魔だからね、と言い残してルイズも去っていく。残されたタバサとキュルケは暫し逡巡したが、
大人しく講義に向かうことにした。


 風助が迷いながらヴェストリの広場にたどり着いたのは学院長室を出てから約十分後。広場には杖を持った教師が二人と、
手作業で樹の破片を拾い集める男が二人、既に作業を始めていた。二人は貴族ではなく、いわゆる用務員。敷地の整備や雑務を担当する仕事らしい。
 四人に風助も混じり、散乱した木切れを集める。突然、子供が手伝いをしたいと現れたので教師達は訝しんでいたが、
コルベールから話は聞いていたらしく、事情を話すと驚きと共に迎えられた。
 作業は順調に進み、始めてから三十分後には広場は綺麗さっぱり片付けられた。へし折れた樹の幹は、
教師達が魔法で掘り起こし焼却。二人は土のメイジと火のメイジなのだそうだ。
「やっぱ魔法って凄ぇなぁ。なんでもできんだな」
 風助の素直な賛辞に教師は照れ臭そうに笑い、これには他の二人も頷いていた。
 作業を終えて四人と別れると、ぐぅぅと控えめに腹の虫が鳴くので、厨房に向かってみる。
この時、食後からまだ一時間も経っていないのだが、風助には関係なかった。
 厨房に向かい扉を開けると、マルトーが昼食を片付けていた。その隣ではシエスタも手伝っている。
「おっちゃーん、なんか食わせてくんねぇか?」
「おお、風助坊……っておめぇまた来たのか」
 振り向いたマルトーが呆れ顔で溜息を吐く。片やシエスタの表情には、感嘆と驚きと、ほんの少しの怯えが表れていた。
「あ……風助君、いらっしゃい……」
「ったくおめぇはどれだけ食うんだ……まぁ、ちょうど残りがあったところだ。食わせてやるから、座って待ってな」
「ありがとな、おっちゃん」
 呆れながらも準備を始めるマルトー。手近なイスに腰掛けると、こちらを見ているシエスタの視線に気付く。
492風の使い魔:2010/04/25(日) 23:04:05 ID:msZU9QJJ
「ねぇ、風助君。さっきの竜巻って風助君がやったの……? 風助君ってメイジだったの?」
 おずおずと話し掛けてくるシエスタ。流石の風助でも、声に帯びた不安の色を察した。
その対象が自分であることも。
「ああ。けど俺はメイジってのじゃねぇぞ。あれは忍空ってんだ」
「にんくう……?」
「ちょっと失敗して、あんなことになっちまったんだ。けど、もうここじゃ使わねぇから心配すんな」
「そうなんだ……」
 シエスタが躊躇いがちに頷く。詳しい説明を省いたからか、シエスタの不安は完全には払拭されなかった。
だが、たとえ力を持っていたとしても、風助が弱い者を傷つけるとも思えなかった。
 そこへマルトーが大きな器をドンとテーブルに置いた。入っているのは琥珀色に透き通ったスープ。
先程のシチューと違い、如何にも上品そうだ。
「ああ、シエスタから聞いてるぜ? やるじゃねぇか、ケンカの仲裁でどでかい竜巻を起こしたとかなんとか……それが魔法じゃなく忍空ってのか?」
 マルトーは、竜巻の暴威を目の当たりにしたわけではないので、特に畏れもしない。
「おー、罰として奉仕活動をしなきゃなんねぇんだ」
「奉仕活動? そりゃ難儀だなぁ。こんなガキをこき使おうなんざ、まったく貴族ってのは……」
「気にしてねぇぞ。することなくて退屈してたんだ、ちょうどいいや。元いたとこじゃ畑耕してたし、ただで飯食わせてもらうのも悪ぃと思ってたしな」
 子供っぽく笑う風助に、シエスタも次第に警戒心を解いていく。不思議なものだ、今日出会ったばかりだというのに。
「人の五倍は食べるもんね、風助君。また手伝ってくれると助かるな……」
 スープを掻き込みながら、
「おー、なんでも言え」とスプーンを振り上げて宣言した風助だったが、不意にピタリと食事の手を止めた。不意に背後のマルトーを振り向く。
「そういや気になってたんだよな。おっちゃんは、じっちゃん達のこと嫌ぇなのか?」
「嫌ぇって言うかだな……」
 マルトーは言葉に詰まった。この場合、風助の言うあいつらとはオスマン達個人の好き嫌いだからだ。
「じっちゃんも、坊主頭のおっちゃんもいい奴だったぞ。罰も軽くしてくれたしな」
 貴族は嫌いだ。我が儘で横暴で、身分を鼻に掛けている連中がほとんど。それはこの学院の生徒教職員も決して例外ではない。
しかし、貴族は嫌いだが、生徒や教職員達に特別恨みがあるわけではなかった。
 平民と貴族の関係ではあるが、教師とも時には関係を深め、連携を取ることはある。そうでなければ仕事も円滑にいかない。
 豪勢な料理だって、栄養には十分留意している。育ち盛りの生徒の健康を管理しているのは自分だという自負があった。
 何より、自分の料理を美味そうに食べる生徒達を見ると悪い気はしない。
 口ではなんだかんだ言っても、学院の食を司る身としては、すくすくと育ってくれるのは感慨深いものである。
 つまるところ、嫌いなのは貴族という身分であって、彼らではない。そこまで嫌いなら、どれだけ給料が良くても貴族の学院でなど働かない。
 故に、改めて嫌いなのかと聞かれると――。
「コック長……口に出てますよ?」
「おっちゃんも、やっぱいい奴だなぁ」
 どうやら柄にもなく考え込んでいると、口に出てしまっていたらしい。呆れ混じりの微笑むシエスタと、舌を出して笑う風助。
 顔を真っ赤にしたマルトーは、
「よせやい! こっ恥ずかしいこと言わせるんじゃねぃよ、このベロ!!」
 言いながら風助の後頭部にゲンコツ。思いのほか強い力に風助が、
「ん〜!! 前が見えねぇぞ」
「きゃー! 風助君、顔! 顔がはまってます!!」
 顔面からスープの器に突っ込む。ぴっちり顔にフィットした器は、風助が顔を上げても取れなかった。
493風の使い魔:2010/04/25(日) 23:05:51 ID:msZU9QJJ


「ふぃ〜、死ぬかと思ったぞ」
「ははは、悪かったなぁ、風助坊」
 ようやく器を外した風助の背中を、マルトーがバンバン叩いた。スープ塗れになった服は脱いで干し、今の風助は上半身裸。
にも拘わらず叩くものだから、背中に赤い手形が付く。
「いて! 痛ぇなぁ、おっちゃん」
 マルトーをジト目で見る風助に、シエスタが尋ねる。
「そういえば風助君……さっきは名前が出なかったけど、ミス・タバサは風助君から見てどうなの?」
「タバサは……無口でよく分かんねぇけど、いい奴だぞ。飯も食わせてくれるしな」
「風助君はご飯を食べさせてくれたらいい人なの?」
「まぁな。少なくとも、俺が腹減らしてた時、飯食わせてくれたおっちゃんやおばちゃんは、みんな優しくてあったかかったぞ」
 戦前、戦後と国は荒れ、民衆は貧しく、その日食べるものにさえ困窮する者もいた。
そんな時勢で、誰とも知れない子供に食べ物を恵んでくれるようなお人好しは十分信頼に値する。
 いつからかそう思うようになっていた。無意識的ではあるが、それは風助の人を見分ける術の一つだった。
「いつだったか……行き倒れてた俺に飯食わせてくれたおっちゃんは、どっかおっちゃんに似てたかもしんねぇな。飯は凄ぇくそまずかったけど」
「飯のまずい野郎と俺を一緒にすんじゃねぇよ! いい度胸じゃねぇか、このベロ!」
 またも風助がマルトーにヘッドロックされ、その頭を小突かれる。
「悪ぃ悪ぃ、けどおっちゃんの飯はうめぇぞ。ほんとだ」
 どちらも顔は綻んでおり、それが新愛の表現であることは、傍目にも明らか。
シエスタは感心してしまった。風助は、たった数十分でマルトーの心に入り込んでしまったのだ。
「おっちゃんもシエスタもタバサも、俺にとっちゃみんないい奴だ。だから困ったことがあったら、言ってくれりゃ手伝うぞ」
 それは自分も同じ。彼に抱いていた恐怖心、警戒心はものの数分で氷解していたのだから。
「うん、私はもうちょっとしたらサイトさんの看病のお手伝いに行くから、風助君手伝ってくれる?」
「その前に、こっちは薪でも割ってもらいてぇな」
「よし、そんじゃやるか」
 意気込む風助は裸のまま、マルトーと厨房の扉を開いて出ていく。彼が開いた扉からは爽やかな昼下がりの風が吹き、
見送るシエスタの髪を揺らした。


 時刻が夕刻に差し掛かる頃、風助はシエスタを伴ってルイズの部屋に向かう。手にはシエスタの用意した、大きな器一杯の湯。
 何しろ、風助はタバサの部屋に帰る道ですら迷う始末。一人では無駄な時間を食うばかりだった。
 ルイズの部屋の前まで来ると、僅かに開いたドアの隙間から光が漏れていた。二人は互いに顔を見合せて、隙間から覗きこむ。
 ベッドに横たわった才人。その横に教師らしき壮年の男性が立ち、隣には両手を組み合わせるルイズ。
「何やってんだ? あれ」
「サイトさんの治療中みたいだね。ちょっと待ってよっか」
 小声で会話しながら治療を見守る。やがて教師がルーンを唱えると、才人の身体を淡い光が包む。
「おお……むぐっ!」
 塞がる傷に感嘆の声を上げかけた口を、シエスタの手が塞ぐ。
「風助君、静かに。お邪魔になるわ」
「すまねぇ……。しっかし凄ぇんだなぁ……」
 子供のように(実際子供なのだが)目を輝かせる風助に、シエスタも微笑を漏らす。シエスタからすれば、風助も相当凄いことをしているのだが。
「あ、終わったみたい」
 二言、三言ルイズと会話を交わし、教師が向かってきた。二人はたった今来たように振る舞い、一礼してすれ違う。
 改めてドアを叩くと、ノックから数秒遅れて声が返る。
494風の使い魔:2010/04/25(日) 23:07:24 ID:msZU9QJJ
「誰?」
「あ、その、シエスタです。サイトさんのお湯をお持ちしました」
「開いてるわ、入って」
「失礼します」
 入ると、真っ先に部屋の奥のベッドが目に入る。ベッドに横たわる才人、隣にルイズが腰掛けていた。
振り向いたルイズは、一緒に入ってきた風助を見るなり、
「何よ、あんたも来たの?」
「おー、才人はまだ寝てんのか?」
「見ての通りよ」
 答えるルイズの口調はどこか棘があった。否、どこかではない。ピリピリと明らかに張り詰めた空気を、シエスタは感じた。
 風助は知ってか知らずか、ベッドでいびきを掻いている才人の頬を軽く突く。「しっかし……変な顔して寝てんなぁ」
 瞬間、ルイズの眉がピクリと跳ねた。同時に、シエスタの肩も寒気で跳ねた。
「ねぇ……シエスタって言ったわよね」
「は、はい!? 何かお手伝いすることはありますか!?」
「今は特にないわ。ちょっとこいつと二人にしてくれない……?」
「え……と……こいつって風助君ですか?」
 この場合、才人は数に入るのだろうか。シエスタは答えに窮したが、ルイズは無言。となると、おそらくは正解。
狭い室内を支配する重圧は、更に重みを増す。
 ルイズが何を言うのか、大方の察しはついていた。しかし、シエスタには何も言えない。
 事実だからだ。彼女の抱く怒りも、これから風助にぶつけるであろう言葉も。
「それじゃあ、失礼します……」
 一礼して去っていくシエスタを確認したルイズが、風助に顔を戻す。目を離した隙に、彼は仰向けで寝ている才人に跨って、
傷を確認しながら身体のあちこちを指圧していた。空気の読めるシエスタとは大違いだ。
「……何やってんの?」
「身体の回復力を高めるツボってのがあるんだ。ちょっとはましになるだろ」
「ふーん、それも忍空ってやつ?」
「まぁな」と言いつつ、風助は才人をひっくり返して背中も指圧する。
 されるがままの才人は苦しそうに唸っているのだが、二人とも特に気に止めていない。
 返答から暫くして、ぽつりと呟くようにルイズは話しだす。
「……あんたが、なんだか知らないけど凄いってのは分かるわ。
だったら、あんな大騒ぎしなくてもこの馬鹿犬を助けられたんじゃないの?」
 才人を指差す。爆睡中の使い魔は二回、三回と転がされても起きる気配はまるでない。
「死にかけたのよ? そいつもギーシュも、それにあの場にいた全員も」
 少しでも歯車が食い違っていたら、未曾有の大惨事になっていた。才人も、ギーシュも、タバサも引き裂かれていた。
暴風に絡め取られ、風龍の顎に噛み砕かれた広場の樹のように。
 一人になって想像すると、怒りにも似た感情が湧いてきたのだ。
 分かっている。止めようともしなかった観衆と、止められなかった自分の代わりに、彼は進み出た。
それを咎める資格はないのかもしれない、と。
 理解していても、やり場のない気持ちは溢れてしまう。唇を噛んだルイズは黙して風助を見た。
「そうだな……すまねぇ、余計なことしちまった。俺が手出しなんかしなくても、多分才人は勝ってたと思うぞ。
ただ、放っときゃこいつは死ぬまでやりそうだったからな」
「嫌味? 別にそんなつもりで言ったんじゃないわよ」
「俺だってそんなつもりで言ったんじゃねぇぞ……っと」
 才人を元の姿勢に戻した風助は、ベッドから飛び降りてドアに向かう。勝手に帰ろうとする風助を、ルイズは慌てて呼び止める。
「ちょ、ちょっとどういう意味よ!」
「俺にもよく分かんねぇぞ」
 ただ、あの暴風の中でギーシュを掴んでしがみ付くのは簡単ではない。ましてや満身創痍の身体で。同じことができる人間は、そうはいないだろう。
 そして何より、剣を握り締めて立ち上がった時の才人の表情が、力強い闘気が風助に確信を抱かせた。完全な直感であり、理屈は分かるわけもない。
 またしても頭上に? を浮かべるルイズに、風助は笑いながら問う。
「と、そうだ。一つ聞きてぇんだけど……」
495風の使い魔:2010/04/25(日) 23:09:23 ID:msZU9QJJ


 ベッドに寝た少年の傍らに座る少女。ここでも、ルイズの部屋と同様の光景があった。違うのは、
少年に外傷はなく、少女は心配などしていないという点。
「う〜ん、苦しい……。まだ回ってるような……君の水魔法で助けておくれよ、モンモランシ〜」
「はいはい、元はと言えばあなたのせいでしょ。付いててあげるだけでもありがたいと思いなさい」
「いや……これは僕のせいじゃなくて、あのタバサの使い魔が……」
「なんでそこでタバサの使い魔が出てくるのよ。言い訳なんて男らしくないわねっ!」
 ベッドの中から助けを求めるギーシュの手をぺしっと払い、そっぽを向くモンモランシー。
浮気をされて傷ついた彼女のプライドと機嫌はまだ直っていなかった。
 ギーシュが決闘で重傷と人伝に聞いたので駆けつけてみれば、なんのことはない、目を回して吐いただけだった。
今は流れで付き添っているだけ。こっちが負った傷は、かすり傷のギーシュなんかよりもはるかに深いのだ。
 ギーシュは泣きながら、起こし掛けた身体を横たえた。あの場にいなかったモンモランシーには、
何度事情を話しても理解してもらえなかった。聞いてさえもらなかった。
「うぅ……どうして分かってくれないんだい、モンモランシー……」
 ギーシュはわざとらしく大げさに落ち込む。意外なことに、これが効を奏した。
 気障な男が自分だけに見せる情けなさ。不覚にも母性本能をくすぐられそうになる。計算ではないのだろうが、天然だとしても大したものだ。
「まぁ……私も鬼じゃないしね。いいわ、聞いてあげる。話してごらんなさいな」
「あぁ……嬉しいよ、モンモランシー! 実はね……」
 今度は伸ばした手が振り払われない。
 重ねた手に、きゅっと力を込める。
 見つめ合う二人。近づく距離。
「えーっと……ここで合ってんのか?」
 そこへ、ノックもせずに闖入者が現れた。モンモランシーは素早く手を引っ込めた。心なしか顔は赤らんでいる。
 寝転んだ状態で手を伸ばしていたギーシュは、
「ぅぅぅうわぁぁあああああ!! タ、タバサの使い魔ぁぁぁぁ!!」
 一瞬でベッドから跳ね起き、壁に張り付く。
「なんだ、元気そうじゃねぇか。才人があんなだかんな、おめぇは大丈夫かって心配してたぞ」
 竜巻に巻き込まれた恐怖は、ギーシュの精神に半ばトラウマとして焼き付けられていた。
それこそ使い手の顔を見た瞬間に拒否反応をもよおすほどに。
 が、風助はまったく気付いてない。ギーシュの言動に疑問は呈したが、彼自身に恨みがあるわけでもなく、
巻き込んだ立場なので見舞いに来ただけだった。
「ぼ、ぼ、僕になんの用だ……まさかここで決闘の続きを……」
「なにこんな子供相手に怯えてるのよ。タバサの使い魔の……あなた、何しに来たの?」
 モンモランシーは、事情を知らなかった。竜巻が発生した時も広場から遠く離れていたので、大変な騒ぎがあったとしか。
「さっきはすまねぇな。それを言いに来たんだ」
「……へ?」
 ぺこりと素直に頭を下げた風助に、対するギーシュは間の抜けた声。
 それもそのはず。ギーシュにとって風助は、決闘に割り込んで痛いところを突いてきた奴。自分を挑発し、本気で怒らせた愚かな子供。
その程度の存在でしかなかった。竜巻を発生させ、自身を含めた三人を諸共に巻き込む瞬間までは。
「おめぇのことも気になってたから、才人の見舞のついでに部屋を聞いてきたんだ」
 今では畏怖の対象ですらあったが、それが何故か謝罪している。よく分からないが、自分が優位にあると知ったギーシュは咄嗟に取り繕い、
「なんだ、そんなことか……。ま、いいだろう。子供の不始末にいつまでも腹を立てているのも大人げないからね。
見ての通り、僕はあの程度では"まったく"堪えていないよ」
「さっきまで泣きついてたくせに、何言ってんだか……」
 髪を掻き上げて、精一杯の虚勢を張ってみせる。突っ込みには聞こえない振りでOK。
「おお、よかったぞ。そんじゃさっきの続きなんだけどな……」
 風助の言葉に、さぁっと血の気が引く感覚。
 あれから冷静に考えてみたのだ。才人を担いだ状態で一瞬にして背後に回り、竜巻の中では二人を支えていたと聞く。これは流石に分が悪い。
 青ざめたギーシュは、必死で説き伏せようと試みる。
496風の使い魔:2010/04/25(日) 23:11:33 ID:msZU9QJJ
「いや待て! じゃなくて待ってくれ!! 僕はもう気にしていない。君の無礼な振舞いは水に流そうじゃないか。
僕にも、その、ほんの少しは落ち度があったわけだし……」
「才人の傷が治ったら、またケンカの続きをしてくれていいぞ。俺はじっちゃんと約束しちまったからできねぇけど、
今度は才人一人でいい勝負になるかもしんねぇからな」
「はぁ……」
 怒りも水――もとい風に流されて、そもそも何故決闘をしたのかも忘れかけていたところである。
もう戦う理由もなかったギーシュであったが、屈託なく笑う風助に乗せられたのか、理由も分からず頷く。
 そして呆気に取られている内に、
「じゃあなー」
 風助は去っていった。台風の過ぎ去った後のように、二人は呆然と言葉もなく開け放たれたままのドアを見ていた。


 夜は更けて、食堂。相も変わらず、十秒で食事を平らげる使い魔。
「足んねぇ」
 タバサは言葉も返さず、物憂げな様子(といっても、いつもの無表情ではあるが)で食事を続けた。
考え込むあまり、風助の声もろくに聞こえていなかった。
 部屋に帰ってからは、ひたすら積まれた本を消化する。貪欲に知識を吸収するだけの普段とは異なり、
明確に求めていた情報があったのだが、期待した情報は見つからなかった。
 最初から分かりきっていた。蔵書の整理を兼ねて図書館を漁っても、結果は無駄骨だったのだから。
 昨日と同じ、そろそろ就寝時間が近い頃になって風助が戻ってきた。
「なんか元気ねぇな。腹でも痛ぇのか?」
「別に」
 そっけなく答えると、灯りを消してベッドに潜り込む。追及は来なかった。
 少ししてから響く、途轍もない"いびき"。風助が寝たのを確認後、杖を振ってサイレントを掛けると、あらゆる音が消えた。
 完全な無音の世界で、タバサは再び思考に没頭する。枕元には『使い魔召喚と使役の手引き 入門編』という題名の本。
 他にも『使い魔はどこから来るの?』『ご主人様のためなら死ねる』『系統と使い魔 傾向と考察』等々、
子供向けの絵本から高名な論文まで。広く目を通しても見つからなかった。
 使い魔契約を解除し、ゲートで元いた場所へ帰す方法。
 タバサは風助という人間を計りかねていた。両親を亡くし、戦場を駆け、人を殺した。多くは語らなかったが、
心身に深い傷を負ったかもしれない。それでも彼は笑っている。不思議でならなかった。
 そんな彼を血塗れの復讐に巻き込んでしまっていいのか? 純粋を絵に描いたような少年。
やっと戦争を終え、穏やかな日々を送っていた彼を裏の仕事に付き合わせることには、どうしても負い目を感じる。
 それに、これは彼の為だけではない。自分の為でもあった。
 風助は強力だ。それも、並の使い魔など比較にもならないほど。まだたった二日だが、思えば始めから予感はあった。
 頭だって、無知で惚けてはいるが、あながち馬鹿ではない……かもしれない。
 しかし純粋過ぎる。北花壇騎士の任務は欺き、欺かれるのが必定。そして、必ずしも正義ではない。 
 お人好しが騙されて危機に陥るのは避けたい。敵に回る可能性も……あり得ないとは言い切れない。
仮に戦ったとして勝算は五分。その分析も、風助の片鱗を見たに過ぎない現時点で、だ。
 ともかく、もしもの時、障害になってはことだ。可能なら別れた方がいい。
 と、理屈で説明付けるタバサだったが、胸の内にある感情にも薄々気付いていた。知っていて揺るがない為に、理論で武装したのだ。
 そう、タバサは風助と親しくなることを恐れていた。
 昼間、広場で倒れた彼に告げた言葉。
「話して」
 彼は約束通り自らの力と出自について語った。ならば、こちらも話さなければならないのか。
単なる学生ではないこと。隠している本当の名前と素性を、その真意を。
497風の使い魔:2010/04/25(日) 23:13:04 ID:msZU9QJJ
 単純に話したくないのも理由の一つ。だが、それ以上に風助を知るのが不安だった。
 父と母の復讐を誓って、心と笑顔を凍らせた。だからこそ、風助の過去を深く知るのが怖い。
彼の境遇が辛ければ辛いほど、落とした影が暗いほど、その笑顔と強さが眩しくなる。
 日陰に潜った自分と比較してしまった時、きっとバランスが崩れてしまう。
 頑なに強くありたいと固めた自己が揺らいでしまう。
 相反し、せめぎ合う感情。
 この二日間のらしくなさ。
 風助によってもたらされる変化。
 様々な戸惑いを振り切るように、タバサは目を閉じた。


 朦朧とする思考。目を開くと、徐々に鮮明になる視界。
 身動ぎしようにも、身体が思うように動かず、全身に痛みが走る。
「う……ん……」
「風助君、サイトさんが!」
 かすれた声で呟くと、自分でない誰かの声。周囲の音が戻ってくる。途端に、光を取り戻し始めたはずの視界が黒一色になった。
痛みが意識の覚醒を促し、ようやくその正体が掴める。
 それは胸だった。大きく、柔らかく、豊かな胸。
 認識した瞬間、才人は完全に目覚めた。こんなものが目の前にあれば、起きないはずがない。
 男として当然の帰結。まさしく本懐。
 瞼をカッと見開くと、視界の端に胸以外の何かが紛れこむ。
 一言で言うなれば『カエルと乳』。ある種異様なコントラストだが、才人には胸しか見えていなかった。
「サイトさん。起きたんですね。良かった……」
 声の主は、メイドのシエスタ。黒いメイド服に身を包んだ彼女が前屈みで正面から覗きこんでいた。
「よー、才人」
 ついでにカエル顔の少年。シエスタの反対側から、彼女の胸の下に潜り込む姿勢。というか後頭部が当たっている。羨ま……いや、けしからん。
「風助……」
「ミス・ヴァリエールはちょっと席を外してまして……今呼んできますね」
「は、どうでもいいとして……シエスタ……」
 嬉しそうに出ていくシエスタの背中を見送る才人。視線は熱を帯びていた。
「おめぇ寝過ぎだぞ、丸々二日も。俺がツボ押してた時も全然起きねぇし」
「彼女……いいよなぁ……」
 聞いてやしねぇ。
 目の前で手をヒラヒラと振っても反応がないので、仕舞いに頭突きを食らわせる風助。
「あいてっ!」
「おめぇ、そんなにシエスタが気になんのか?」
 才人は額を摩りながら、
「いや、そんなんじゃねぇよ。ただ、黒髪に黒い瞳だろ……。なんか……思いだすんだよな」
 しかも日本人に近い顔立ち。懐かしく、郷愁をそそられる。まだ四日程度なのに、日本が随分昔のような気もした。すると風助は帽子を取り、
「俺も黒い髪で黒い目だぞ」
 短く刈られた黒髪を見せる。どうでもいい。激しくどうでもいい。
 感傷に浸っていた才人は中断された上に、言葉に詰まってしまった。目を細めて、改めて対象の顔をまじまじと観察すると、風助は魚のような眼で首を傾げる。
「いや、お前は……」

 日本人とかじゃなく、人間の顔じゃないだろ。
 黒髪とか瞳とか、最早そんな次元じゃないだろ。

 そう言おうかとも思ったのだが、
「……?」
「……いっつも帽子被ってるからな」
 止めておいた。いくら親しき仲とはいえ、言っていいことと悪いことがあるのだ。
 手をついて身体を起こすと、全身が軋む。欠伸をして大きく伸びを一つ。身体の各所に痛みが走るが、今はむしろ刺激が心地良い。
498風の使い魔:2010/04/25(日) 23:14:59 ID:msZU9QJJ
「いてててて……けど不思議だな、思ったより痛くない」
「魔法でおめぇの怪我を治してたみてぇだぞ。いやぁ、魔法って凄ぇなぁ。あんだけの傷が治っちまうんだから」
 聞くところによると、風助は治癒魔法を掛ける現場を見て、いたく感動したらしい。なるほど、傷もほとんど消えている。
骨もくっついているし、関節の痛みもない。
「それと、ついでに俺が整体もしといたぞ」
「ああ、ありがとな……って」
 何気なく言う風助に、礼を言ってから初めて違和感に気付く。
「あれ? 俺、お前に聞かなきゃいけないことがあったような……」
 整体だのツボ押しだの、意外な特技を持っているものだと感心するが、何かを忘れている気がする。意識を失う直前の出来事で何か……。
 思い出しかけたところで、ぐぅと腹の虫が鳴いた。それだけで思い出しかけたものが霧散する。
「あー、なんか目が覚めたら腹減っちまったな」
「んじゃ、コックのおっちゃんのところになんか食わせてもらいに行くか」
「そうだな……」
 風助の誘いに暫し考えこむ。それも先ほどまでの疑問よりもずっと深く。
 腹が減ったと言えばシエスタが持ってきてくれるだろうが、病人食は御免だ。ルイズが帰ってくれば、まず間違いなく説教が飛んでくるだろう。
ならば多少の無理を押してでも、行かなければならない時ではないだろうか。
「よっしゃ、行こうぜ!」
「おー!」
 才人はそそくさと普段着に着替え、厨房に押し掛けようとする二人。いざ行かんとしたところに、シエスタが帰ってくる。
「サイトさん、すぐにミス・ヴァリエールが戻ってきますので……」
「ありがとな、シエスタ! ちょっと飯食ってくる!」
「俺も行くぞ」
「あ、ちょっとサイトさん! 風助君! 今は……」
 すれ違い様に一言告げて走り去る。呼び止めようとしたシエスタだったが、振り向くと既に二人は遠ざかっていた。
 一人残されたシエスタは才人の身を案じて溜息を吐く。まだ痛みはあるだろうに。しかし、食欲があるなら大丈夫かもしれないとも思う。
故にその溜息は、才人の怪我の具合を心配したものではなく。
「大丈夫かしら……怪我が増えないといいけど」
 食べ物をたかりに行った二人だったが、ちょうど時刻は昼食前。当然、厨房は多忙な時間帯。気が立っていたマルトーに、
「昼飯の後にしやがれ」と揃って叩き出された。頭にたんこぶを一つ拵えて。


 学院の中央、一番高い本塔からは景色が一望できる。寮や校舎――周囲に広がる草原――はるか遠くに見える街。
尤も、最後は彼でなければ見えなかっただろうが。
 厨房も含めて昼食を終えた風助は、手近な窓から外に出て陽の光を全身に浴びていた。最上階ともなれば相当の高さだが、
突き出た縁に腰掛けて平然と足を遊ばせている。
 コルベールに呼ばれて来た時から気になっていた。やはり、ここはいい風が吹く。
 あれから才人はルイズに見つかって説教。洗濯を押しつけられて悲鳴を上げていたが、
才人の元気な姿を見てルイズの機嫌は良さそうだったので放っておいた。そんなわけで今は一人、昼休憩だった。
 腹もそこそこに膨れ、春の日差しが眠気を誘う。うとうとしかけた頃、その背後、斜め後ろに人が立つ気配で風助は振り向いた。
 太陽の位置で廊下は陰になり、顔は窺い知れない。だが、見えなくとも風助にはそれが誰か分かっていた。
「よー、ここ凄ぇ気持ちいいぞ。おめぇも来るか?」
499風の使い魔:2010/04/25(日) 23:16:09 ID:msZU9QJJ
 タバサは答えなかった。
 丸一日考えた挙句、まだ答えは出ていなかったが、このまま悩んでいても仕方がない。風助の行きそうなところを探して、ここに来ていた。
「一昨日の広場、あの竜巻は、彼と触れた結果の事故」
 タバサはまず、ずっと疑問に思っていたことから聞いた。
「なんだ、ばれちまってたのか」
 風助は驚きもせず、悪びれた様子もなく答えた。タバサなら分かっても不思議はないと思っていた。
「才人まで怒られんじゃねぇかと思ったら言えなかったぞ」
 言えば少なくとも、ミスや暴発よりは格好がつく。だが言えなかった。たとえ、それで自分の罪が重くなったとしても。
 右も左も分からない未知の世界であれ、友達は友達。オスマンやコルベールは悪い人間には見えなかった。
それでも、あの馬鹿に累が及ぶのは避けたかった。
「けど、おめぇに迷惑かけんのも嫌だったんだ」
 結局、それは叶わなかったが。
「そういや、まだ謝ってなかったな。すまねぇ」
 答えを聞いたところで、そもそも今更問うこと自体に意味はなかった。
 風助という人間がまた一つ分かった。その意味では収穫はあったかもしれないが、タバサにとって、それはきっかけに過ぎなかった。

「――風助」

 初めて、その名を呼ぶ。

「聞いて欲しいことが、ある」

 口調に淀みこそなかったが、ここに来るまでには葛藤があり、その先を口にするには勇気と決意が要った。

「シャルロット……それが私の本当の名前。けど、呼ぶ時はタバサでいい」

 今はこれだけでいい。
 人との距離の詰め方はよく分からない。こんな風に自分を曝け出すのは、ほぼ初めての経験だった。
 彼を付き合わせると決めたわけではない。ただ、彼に黙っていることが不実に思えた。或いは、本気で風助と信頼関係を築きたいのかもしれない。
 と、曖昧な胸の内を自己分析した。
 言えたのは一言だけ。
 そして、返ってきた言葉も一言だけ。

「シャルロット……おー、なんか綺麗で……優しい名前だぞ」

 風助は口に出して響きを確かめると、長い舌を見せてにっこり笑った。
 父と母から与えられた大事な名前。
 多くのものを失って、たった一つ手元に残った宝物。
 それを、風助は綺麗だと言ってくれた。
 きっと彼には見えないだろう。口の端がごく僅かだが上がる気がした。
 そんな彼に伝えたい言葉もまた、一言だけだった。

「ありがとう……」

 シャルロット。
 どこか花のような、彼女に相応しい名前。
 しかし、気掛かりが一つあった。
――なんで本当の名前を使わねぇんだ?
 言い掛けて飲み込む。風助にしては珍しく気を利かせた瞬間だった。いつか必要になったら話してくれるだろう。話さなければ、それでもいい。
 風助は懐を探って、一つの巻物を取り出す。
 オスマンに話した忍空とこれまでの人生。そのすべてが偽りない事実。ただ、いくつか話していない事柄もあった。
 必要ないかと省いたが、あまり他人に話したくないと感じているのも確かだった。
500名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 23:17:10 ID:3iHeFF9v
支援
501風の使い魔:2010/04/25(日) 23:18:05 ID:msZU9QJJ

 それはEDO歴3年、各地に散った干支忍を訪ねる気ままな旅よりも、少し前に起こった出来事。
 戦後から召喚までの空白の期間は、決して穏やかな凪の日々ばかりではなかった。
心を通わせた人が死に、風助自身が手を血に染めたことも、一度や二度ではない。
 一つの旅の中で、風助は四人の干支忍との友情を確かめ合い、新たに多くの絆を結び、かつての同胞と戦った。
 それは国全体を巻き込んだ争乱ではなく、人知れず勃発し、人知れず収束した、忍空同士での秘された死闘。
 そして託されたのだ。忍空の守護者としての責務と、常に懐に入った巻物を。
 忍空の禁術が封印されし巻物は、唯一無二の最強の称号。忍空のすべての術を受け継いだ証明。
 その名を『釈迦の証』。
 その戦いを何と呼ぶのか、風助は知らない。
 だが、新たなる忍空の歴史の中心となるべき存在は間違いなく風助であり、そこにはこう記されることとなる。
 第二次忍空戦争と。


 
 以上、今回はこんな感じです。
 三話で初めて名前を呼び合いました。なんだか主役二人以外はとことん脇役ですが。
 今のところは風助の介入でキュルケ・シエスタ→才人が薄くなっているくらいで、ほぼ原作と同じ。
時系列はずれますが、タバサの冒険の話も交えつつ。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 23:39:00 ID:0zRMCSv/
投下乙です
面白かった 次回期待してます
風助とサイトはなんかいいコンビになりそうだ
503名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 23:58:35 ID:boU1/APq
懐かしいゲームのタイトルが見えた気がした。
ときに主役は風助とタバサ? 才人?
504疵の使い魔2:2010/04/26(月) 01:45:24 ID:fTQ6LzgN
なんとなく書いたので投下します。
我ながら酷い出来です。
505疵の使い魔2:2010/04/26(月) 01:47:07 ID:fTQ6LzgN
「いったい全体どうなってるって言うのよ!」
部屋に戻るなりルイズはベッドをゲシゲシと蹴りまくる。
倒れた人間の腹を蹴るような動きだ。
見事なサッカーボールキックである。
「なんでアンタには何度やってもサモンのルーンが出ないのよ!」
背後に立つ巨人に、指を突き出し言い放つ。
巨人――。
身長は2メイル近く、疵顔の巨人。
名を花山薫。異名を――素手喧嘩日本一。

そう、それはほんの数時間前のこと。
幾度となく失敗をした末に、ようやく召喚に成功したルイズは
「ミス・ヴァリエール!」
召喚した男の威圧感にしばし呆然としていたが、コルベールの呼びかけで我を取り戻した。
「早く!早く契約の証を!」
本人はひた隠しにしているが、歴戦の勇士であるコルベールが威圧感に気圧されて、
汗を垂らしながら、甲高い声で言う。言う、と言うのはつまり刺激を与えないよう叫んではいないということだ。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!なに言い出すんだこのハゲッッ!!』
ルイズは脳内で思いっきりコルベールを罵倒した。
『これを?これにキス……いやサモン・サーヴァントを行なえって言うのッッ!??』
改めてその任侠(おとこ)を見る。
自分のはるか頭上にある疵顔。美形ではないが、決して不細工ではない。男前と言うべきだろう。
修羅場をくぐってきた人間の顔だ。が、ルイズにとってはそんなこと関係ない。
あくまでそれは恐怖を煽る怪物の顔でしかない。
『無理無理無理無理無理無理無理ッッ!!』
こんなのを使い魔になんて絶対にできな―――ッッ
「ミス・ヴァリエールッッッッ!」
コルベールの2度目の呼びかけ。
目の前には自分の足跡。
ルイズ自身気づかぬうちに、少しずつ後退していたらしい。
「ミス・ヴァリエールッ。サモン・サーヴァントを拒否するのですか?
 召喚で呼び出した存在はどんな生き物であろうとも使い魔として契約せねばならない。
 あくまで拒否するというのならば、ミス・ヴァリエールは以降メイジとなる可能性を
永遠に剥奪されることになる。それでも良いのかね?」
「そ、それは……」
しばしの沈黙。
杖を強く握り締め、唇をかみ締めたルイズが花山のほうに向き直り、顔を上げた。
「か、勘違いしないでね。これはあくまで使い魔との契約なんだから。平民にこんなことをするなんて
例外中の例外なんだから!滅多にないことなんだからッ!」
小さな杖を振り、ルイズが呪文を唱え始める。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
そしてルイズと花山はお互いの唇を…
唇を……
唇……
「届かないじゃないの!」
身長差がありすぎてジャンプしようが何をしようが全く届かなかったのだったった。

「……まだやるかい…?」
花山が冷たく(実際にはそういうことはないのだが)ルイズに宣告する。
これで何回目のキスだろうか。話を進めるために花山にしゃがんで貰ったルイズは、あれからすでに
10回以上呪文を詠唱してサモンの儀式を行なっている。が、紋章が全く現れないのである。
「他のSSだと何だかんだでガンダルフの紋章が左手甲に光るのに、なんでそんな気配が微塵もないのよ!」
他の生徒はすでに学園に帰ってしまい、立会い教師であるコルベールだけが一人残って見守り続けていた。
念のために額やら右手やら胸も調べたのだが、どこにもルーンは現れていない。
「ミス・ヴァリエール……もういい。もういいんだ。今回は特例として使い魔契約を認めよう。」
「先生!あきらめたらそこで試合終了です!」
もう諦めろよ、とコルベールは冷たく思ったものの、可愛い生徒にそんなことなど言えようはずがない。
ああ。だが、今日は早めに終わって研究室で内燃機関の研究をする予定だったのに何と言うことだろう。
そもそもこのSSの作者は何を考えているんだ。
506疵の使い魔2:2010/04/26(月) 01:49:08 ID:fTQ6LzgN
「もう、いい。いいんだ、ミス・ヴァリエール。監督者権限で特別に彼を君の使い魔として認める」
「そんな!まさかガンダルフのルーンなしの素手で数百万の大軍と戦えって言うの!?」
「増えてる!増えてる!
 いいから今回は特例だ!このまま話を進めたまえ!」

「とりあえず!今日はもう寝るから!」
半分ヤケクソになったルイズがそう宣告してベッドにもぐりこむ。
普通ならば服を脱ぐ手伝いをさせるにしろ、下着の洗濯をさせるにしろ、何らかの方法で上下関係を
はっきり示そうとするのだが服は破いてしまいそうだし、下着を洗わせれば粉々になってしまいそうだ。
「アンタは急な事態で、通常の使い魔用に用意していた寝床しかないからそこで我慢して」
と言ってわら束を指差そうとして……見たことのない新品のキングサイズのベッドに目が行く。
「……なにこれ?」
冷たく言い放たれる。
ベッドから這いずりだして、キングサイズのベッドに近寄る。
その上に置手紙がある。
男子生徒一同より、となっている手紙にはこう書かれていた。
『男子生徒で運びました。使い魔殿のためにお使いください。』
「……はぁ?」
わけがわからない。
いや、たしかに機嫌を損ねないほうがいいとかそういう理屈はわかる。
だがわざわざ使い魔のためにメイジ見習いが寝床を準備するということがあるだろうか。
いったい何が男子生徒諸君を駆り立てたというのだろうか。
「……ま、まあいいわ。カオル、あなたの寝床は」
「これはお前が使え」
ルイズの言葉をさえぎって花山が口を開いた。
「……え?」
「このベッドは、お前が使うべきだ。俺は床で良い。」
「何言ってんのよ。アタシのベッドはちゃんとあるんだし、それに床でなんて……」
「上だ。」
「ふぇ?」
思わずルイズは間抜けな声を上げる。
「詳細はわからねえが、ルイズさんは俺の上なんだろ。上に立つものが下のものより良いものを使うのは当然だ。
 下のもんが上のもんより良い暮らしをしちゃあ規律が成り立たねぇ。」
そして、そのままわら束の中にもぐりこみ、横になった。
ルイズは知らなかった。
この男の背中に宿る任侠の魂、侠客立ちの左手の甲にガンダルフのルーンが光り輝いていたことを。
507疵の使い魔2:2010/04/26(月) 01:51:08 ID:fTQ6LzgN
逃げたい。
逃げ出してしまいたい。
このままこの学園から消え去りたい。
一昼夜走って海に出てしまいたい。はるか空の彼方のアルビオンに逃げ込みたい。砂漠の果てに逃げ出したい。
これまで何度敗北してきただろう。これまで何度噛ませ犬になってきたのだ。
スタンド使いに敗れ、超能力者に敗れ、ロボットに敗れてきた。
魔法使いに敗れ錬金術師に敗れ妖術師に敗れてきた。
宇宙人に、妖怪に、悪魔に敗れてきた。
化け物に敗れてきた。モンスターに敗れてきた。人外に破れてきた。
ありとあらゆる存在の噛ませ犬になってきた。
だが今回は違う。
相手はあの花山薫だ。曰く、日本一の喧嘩師。
ギーシュは知っている。ユーリ・アルバチャコフを屠り去った握撃を。稲城文之信の防御を無視して背骨を粉砕したあの打撃を。
「勝てる……はずがないどころか、死んじゃうじゃないか……ッ」
そうだ。花山薫ならば己の失態を誤魔化すために女性に難癖をつける男を見逃さないだろう。
下手をしたら本気で怒るかもしれない。
本気で怒らなくても、あの拳で殴られれば……
ギーシュの脳裏にスイカのようになって粉砕される自身の頭が浮かぶ。
「嫌だ!戦いたくない」
「ギーシュ……」
「ッッ?その、声は……」
部屋の隅で震えていたギーシュが声のほうに振り返る。
「モンモランシー……君か…」
「ギーシュ」
モンモランシーの頬から涙が零れ落ちる。金髪縦ロールを揺らしてギーシュに駆け寄り、抱きつく。
「可哀想なギーシュ。あんな、あんな化け物と戦わなくちゃいけないなんて。
 いいの、ギーシュ。私、明日二股に気づかないから。浮気なんてもういいの!
 ギーシュが……あなたさえ無事なら。 逃げましょう、二人で。どこか遠い場所へ。」
「も、モンモランシー……」
ギーシュの腕が震える。目を瞑り、顔をしかめて歯を食いしばる。まるで何かに耐えるように。
「モンモランシー……。い、良いんだ。」
震えながら、モンモランシーから離れる。
「大丈夫だ、ぼくは。」
「そんな!ギーシュ。だって、あんなに怯えて…」
「いいんだ。」
ギーシュの目がまっすぐモンモランシーを捉える。
「これは、ぼくの義務なんだ。召喚された相手と戦って、敗れ去るのはボクの役目なんだ。
 ここで逃げたらボクはボクじゃなくなる。役目を全うせず逃げ出した卑怯者になるよりも、
 ボクはギーシュ・ド・グラモンとして死にたい。」
「ぎ、ギーシュ……ッ」
モンモランシーの両目から更に涙が零れ落ちる。ギーシュはモンモランシーの頭を抱きかかえた。
「あんしんしてくれ。ボクはこれまで何人の親友と戦ってきたと思ってるんだ。
 才能では花山に及ばないかもしれない。だけど、戦ってきた相手はけっして彼に劣ってはいない。
 ボクは、ギーシュ・ド・グラモンは、役目を全うするよ。」
ギーシュの顔を見つめていたモンモランシーが、意を決したように、言った。
「わかったわ、ギーシュ。あなたがそこまで言うなら、私も明日の義務を全うするわ。
 明日、思いっきりあなたを軽蔑して絶交させていただくわ!」
「私もです!」
クローゼットを開けて黒髪おかっぱそばかすメイドが飛び出してくる。
「私も、明日は思いっきり目立つように小瓶を拾ってお渡しします!」
「んなッ!?」
突如現れたシエスタに驚くまもなくとんでもないことを言われて絶句するギーシュ。
「お、おま。おま、おまえは何を…ッ」
「僕も協力するよ!」小太りの男がカーテンを開けて現れる。
「なるべく花山から状況が把握しやすいように準備しておくよ!」
「わしもじゃ!」スケベそうなジジイが壁をすり抜けて現れた。
「決闘が速やかに行なえるよう準備と根回しをしておこう。頼むぞ、フー…いやロングビル」
「おまかせください。さきほどコッパゲにも連絡をしておきました」
「ギーシュ、骨は拾ってやる。後は任せろ!」「皆、明日はギーシュの死に様を見届けてやろうぜ」「おおおぉぉぉぉぉ!!」
「……誰か助けて。」
508名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 01:53:07 ID:fTQ6LzgN
以上です。

何考えてんだという内容ですがお目こぼしをなにとぞ…
509名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 02:07:16 ID:13a4Gn1a
確かに戦った相手だけならギーシュは世界最高峰だろうなあw

しかしふと思い出すと初登場時の花山さんってルイズの年下で
タバサと同い年なんだよね。ありえん(笑)
510名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 02:08:52 ID:7Z5oNRTG
疵の使い魔の人乙・・・
カオス過ぎんぞww
素直に一発ネタにしとけば良かったんじゃね?

どう収集付けてくれるのか、その手腕に期待するwww
511名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 07:07:52 ID:1v/GfTAC
ゼロ魔 黒き天使デビルマン スラム

この作品はエロティックでグロテスクな表現を用いております。
苦手な方は読まないように願います。R─17。

http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=0#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=1#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=2#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=3#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=4#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=5#kiji
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=6#kiji

更新です
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=17825&n=7#kiji

連絡
スラム◆c44dd1f6 ID:4a45094c
2010/04/25 23:21

次回の話を投稿と同時にXXX板に移動したいと思います。
要望などがあれば、是非お聞かせください。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 08:11:33 ID:9FGf2l3f
戦闘はバキ伝統の語りだろうな
513名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 08:21:28 ID:PfEeM5Dk
名もなき学生か学院教師がいやあ〜、あれには驚きましたよと口開いてことの一部始終を説明するんだな
514名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 08:27:18 ID:fkqcf6ej
酷い粘着振りだな
自分を振り返ってみる事を薦めるよ
515名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 09:18:15 ID:8ZdNueli
>>501
風の使い魔氏GJです!風助が陽、タバサが陰なんですね。
これからもちょっとずつ仲良くなってもらいたいと思います。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 10:50:42 ID:Jaw3vYW6
>>508
ガンダルフって何だよ
メタがウザイ
何故か花山が従って居たりとキャラについては指摘するまでも無い
それこそ、まだやるかい?って感じだ
517名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 11:32:33 ID:QwaVMsBD
まあ、ギーシュのくだりは面白かったけど花山である必要は皆無だな
518名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 11:34:10 ID:jqDfrQo3
たまにガンダルフとガンダールヴを混同してる人いるよね
519名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 11:36:30 ID:KsDN9Q2u
語源とスペルが同じだからね。
520名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 11:42:09 ID:jqDfrQo3
語源は同じだけど、スペルは微妙に違う
ガンダルフ Gandalf
ガンダールヴ Gandalfr
どっちも魔法を使う小人(ガンド・エルフ)って意味らしいけどね
521名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 12:33:38 ID:SDcAM8Gz
>>501
>『使い魔はどこから来るの?』『ご主人様のためなら死ねる』
どこのSEGAだwww
522名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 14:39:42 ID:RX5JGMlK
ヒッチコックの『鳥』から、鳥を召喚。
ルイズの召喚した鳥の群れがひたすら人々を襲いつづける、それだけのお話。
そしてルイズの日記の最後のページには一言「鳥を見た」という謎の一文が・・・
523名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 15:27:43 ID:INs19a+H
>>522
最後ウルトラQになってるぞw
524名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 15:45:44 ID:nDt7GCx7
>>522
最後が「窓に・・・窓にっ!」だったらもっと嫌だな
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 16:15:53 ID:bFh3fszO
悠長に日記書いてないで逃げろよ〜 と、ツッコミが入る某コズミック・ホラーですね。 分かりますw
526名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 17:01:44 ID:O8kTAtZi
そういや、息を吸うようにあたりまえに日記を書き綴る特技を持つ
秘密結社の首領なんてのがいたな
527名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 20:46:41 ID:jMrky8sk
日記といえばバイオの飼育員だな
ドラゴンボールからバーダック召喚を思いついたが使い魔になりそうもないなあ
神コロさまなら案外ちょうどいいかも
ナメック星人なら床の飯イベントも問題なさそうだ
528名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 20:51:14 ID:u04Ueaxk
あいつは意識を失ってても日記では思考を続けているというすごいやつだったな
あと日記に書いた事が全て現実になるつうか過去に起こった事まで改変する「死者の書」みたいなやつだった
529名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 21:01:06 ID:zP1FbGfO
>>522
ゼルダかと

>日記
狂乱家族だな
何かの間違いで全員召喚
お父さんと契約しようもんならお母さんと次女(三女)にぶっ飛ばされ
長男と契約しようもんなら長女(次女)に殺され
三男と契約しようとしたらトラウマ刻まれて
長女(次女)と契約しようとしたら全力で抵抗され
自称神のお母さんが貴族の下僕になぞならず
三女(四女)も同様
新参の長女が居たとして拒否、長男が身代わりを申し出る可能性が出る

次男が一番無難か
もう次女(三女)も離れてしまったし
530名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 21:30:58 ID:KsNZ/63U
> 日記
『天槍の下のバシレイス』から春瀬文彦……3巻マダー
531名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 23:15:00 ID:TyW40G1K
>日記に書いた事が全て現実になる
キン肉マンを思い出した俺はもうオッサン
532名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 23:24:15 ID:3Hkyy1v8
ウィングマンを思い出した俺もいる
533名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 23:34:55 ID:rj1gauRc
おれは晴れ時々ぶたを思い出した
534名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 23:53:42 ID:rnLVbQD4
>>533
おまおれ
535名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 00:08:54 ID:Kksy51eu
あれ?おれがいる?
536名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 00:51:10 ID:4uciHbgl
>>531
フーケを探しに行こうという会議に何食わぬ顔でフーケが参加していたり
ゴワゴワいいながらゴーレムが出てきたりするんですね?
537名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 01:03:22 ID:YMwrbJvz
ハルケギニアで未来日記をやるとか。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 08:07:27 ID:k4G1XSjn
日記か……
喋るネコ、みかん召喚か?
539名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 09:53:37 ID:E/1h/pFH
日記じゃないがデスノート召喚あったっけ?
540名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 10:41:45 ID:KSEbEHAF
デスノは異世界人に効くのかとか、人限定っぽいから
普通の人とは違いそうなメイジやエルフ等に通用するのかという問題があるから
難しいんじゃね
541名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 11:10:18 ID:/xcG5F2j
デスノートから、夜神パパの運転する装甲車を召喚と聞いて
542名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 12:15:44 ID:oBrgiV2j
デスノートは「相手の顔を知ってなければならない」
「書かれた本人が理解できる文字で書かねばならない」などの縛りがあるからな
マスメディアが発展してなくて写真とかが存在しないハルケギニアでは実力を
発揮するのは難しそうだ
543名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 12:23:40 ID:J9Q7oeFj
遠見の鏡なんて便利アイテムがあるんだぜ。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 12:45:59 ID:BduNEMUF
書かれた本人が理解できる文字で書かねばならないなら文字読めない奴には効かないのか
545名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 12:49:44 ID:xFaRg35Z
>>543
あれって極めて限定的な使われ方しかされてないよね。
あらかじめいくつか設定された定点観測ポイントしか見れないって感じ。それに距離がはなれた場所で使われてる描写も皆無だし。
546名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 12:55:01 ID:dhXzojzJ
他にある気配もないし、レアアイテムだからおおっぴらに使えないんじゃない?
547名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 13:03:14 ID:+dp/P2F1
>>544
文字を知らなくても、はたまた名無しであろうと、ノートに書けば殺せる名前は存在するという設定があったはず。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 14:42:41 ID:t6pPKz2K
>>542
権力の集中具合が半端ない中世ではよりいっそう効果ある気がするけど
549名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 14:53:42 ID:z4gufiCn
リュークにとってゼロ魔は「おもしろっ!」な世界なのだろうか?
550名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 14:56:43 ID:T+1AKZuF
虚無の使い手、売るよ!
551名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 15:15:57 ID:r8N8NMg+
いっそノートを拾う前の月を召喚したら
その場合ノートはシブタクにでも拾わせるか
552名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 16:53:44 ID:Sz7sTmjN
ハルケにリンゴはあるだろうか? まあスイカがあるくらいだから探せばあるか。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 18:47:52 ID:1Hit6EXE
カオシックルーンからデス様のカードを召喚
まあ召喚するなら刀使えてバイクな竜を召喚できるキョウゴのほうがおもしろそうだけど
554名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 19:06:36 ID:g+dCP2mO
>>553
デスレックス妄想したことある
完全オリシナリオになりそうで断念したけど
喰われたら消滅するとかが虚無といい感じにかかってるんだけどね
555名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 19:24:52 ID:9+Xs89l/
疵ww
スーツ一着しかないから丁寧に脱ぐの想像して吹いたw
556名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 19:48:40 ID:3WNpsD3U
デス様と聞いて魔界大帝が…
あんなの召喚したらハルケギニア終わるな
557名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 19:59:00 ID:5Q7sGeh5
デス・・・田中デスダーク召喚
外身を

エンディングの
558名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 20:27:36 ID:lhmbwyB/
デス様と聞くと>>539あたりと同じ名前をした最弱にして最強の魔王が……
559名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 20:50:43 ID:g+dCP2mO
>>558
俺はノートの部分でクリア・ノート思い出した
560名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 20:55:06 ID:IU6q1Sqx
「せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ」
561名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:13:00 ID:yaKNQ8VT
>>558
2度にわたって食われた魔王だな
562名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:26:53 ID:urrALn5G
オプーナさん召喚
563名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:28:05 ID:IXANW1+K
あの最強の能力、ハルケギニアと冥界を繋げられるのだろうか?
564名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:37:34 ID:nV3/4vHm
>>563
オプーナが?
565名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 22:14:37 ID:P51KAe0g
オプーナがどうこう言うやつはまず確実にプレイしてない
原作読まないでSS書こうとする奴くいらい寒い
566名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 00:37:18 ID:S5QHDDdq
そもそもプレイした人数なんか高が知れてるだろ、あれw
567名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 00:41:03 ID:GaTpl4Tp
やると普通のRPGだし特筆するほど悪い部分も無い

ただマリオギャラクシーと重なった上にwiiでRPGってのが…
568名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 00:44:18 ID:C9UMr/aa
センスが悪い
569名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 01:49:56 ID:3+e4Vf6n
歴代デュナミストの意志を継いでネクサスに変身するサイト
アカデミーをTLT的ポジに置けばそれっぽく見えそうな
570名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 02:28:57 ID:S5QHDDdq
リコ=ルイズか
571名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 09:37:22 ID:c2lLiQ/9
>>556
大帝と聞いて侵略大帝様が……
どうしよう、ルイズに良い様にこき使われて
洗濯しながら復讐妄想に浸るのが似合いすぎ
572名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 13:30:26 ID:JdVqbdL3
大帝「ルイズの中に宿る虚無パワーをパワー分離機で引き剥がしてくれる!」
573名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 14:24:20 ID:5Yx19+Eb
>>572
「おお、ルイズのバストだけが・・・・・・」
574名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 15:48:56 ID:o82jIVsP
>>571
大帝様に抵抗できそうなのが、テファくらいしか思いつかねえ
あと無能王?
権力欲を一切持たないピュアハートや、お人好し、世捨て人じゃないと問答無用で屈服だからなぁ
575名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 15:56:07 ID:PeEq6MbC
>>574
そういやクロスラインだとそんな能力持ってたな。
そして中身は結構イケメンなんだよあの人!
576名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 16:25:59 ID:c2lLiQ/9
ルイズは権力欲がある訳じゃないと思うがw
ただありのままの自分が人をこき使って当然と思ってるだけ
577名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 16:33:50 ID:4DgcCQ3E
>>573
タバサ、エレオノール、エルザとルイズと同年代から年配まで、ルイズ未満ってのはいるにはいるんだが。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 16:53:27 ID:aHhB9LSD
魔神大帝・ゴルディバス・・・はマイナーすぎか?
ルイズがポリンちゃんを召喚して親子喧嘩にトリステイン、否ハルケギニア全土が巻き込まれるwww



でも残念ながらルイズは男じゃないから女の居候が増えまくっても
「ロリコン!」とか「女殺し油地獄!」とか罵って貰えないぜw
579名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 16:56:50 ID:eWkIXuSO
そこはギーシュを巻き込んでですね
580名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 19:59:48 ID:TE0PfhaK
仮面ライダーW召還は誰か書いてる?
なかったら書こうと思ってる
才人で
581名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:14:57 ID:LF0wbFdm
Wとかまだ完結してないし、作中の謎もほとんど解けてないから難しそうだ。
未完のものは、短編ならともかく、原作を尊重して長編で作るなら大変だな。
ましてキャラの立ち位置を変えるなら余計に。
582名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:19:39 ID:46B++7IW
もう完結しない作品は読みたくなかとです……
583名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:26:45 ID:/U9UNyrv
見ない内から言うのもなんだが、
未完原作で、しかも設定改変の時点で形になるのか激しく不安だが……
584名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:35:04 ID:No6IhjG2
ゼロ魔の時点で原作が未完で
このスレの主旨が設定改変じゃないか
結局のところ、書き手の腕次第だと思うよ
585名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:40:22 ID:TE0PfhaK
580です
召還するのは才人とドライバーとメモリのつもりだから
いけそうな気がしたんですが…
586名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:48:33 ID:JRr7z2f+
>>585
Wはフィリップありきのシステムみたいだから難しいと思うんだ
587名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 20:51:30 ID:/U9UNyrv
>>585
ごめん、別に悪気があって言ったわけじゃない。
好きなんで誤解を招く言い方になってしまった。
忘れてください。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:25:43 ID:TE0PfhaK
いや、確かに難しいし…
589名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:47:54 ID:S6va3UqP
以前 SSは無いのに お絵描き掲示板に「W」の絵がUPされてた様な気が・・・
590名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:53:32 ID:NMu2Jcj+
自分で思い余って暴走するルイズには映画の
「自分で勝手に決めて行動した。それが君の罪。自分で何も決めず、行動しなかった。それが僕の罪」
って言葉を当てはめれば、Wになる資格と義務が与えられる要素は十分だと思うんだ

この場合、まず召喚されるのはオヤッさんだと思うけど。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:57:52 ID:TE0PfhaK
いや、おやっさんはオスマンをワイバーンから助ける人で
592名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 22:06:56 ID:JfEc4OUv
……オスマンを襲う先代の飛龍(NW)とか思いついてしまった。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 22:23:19 ID:4JgWaxA6
W おやっさん
ときたので
てっきり スパロボW→おやっさん→テッカマンブレードの本田さん かと思った
ルイズがDボゥイ
ジョゼフがシンヤ
テファがミユキ
教皇がオメガ
相羽ブラザーズ召喚とか今思いついた、最終回後で、体質はもうご都合的に水の秘薬すげーで
そして契約シーンを想像して、半分が酷いことになりそうだと思い
ヴィットーリオはオメガとの契約に失敗しそうにも思った
アレはオメガの顔に口付けで正解なんだろうか
それとも胸のケンゴ兄さんじゃなきゃ駄目だろうか、アレって透明の膜だか何かがあるみたいだけど
594名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 22:36:59 ID:DCV5YYJc
Wドライバーじゃなくてロストドライバーやガイアドライバーなら問題なく変身できるさ
595萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:10:33 ID:bYylJIzY
こんばんは。
進路クリアなら23:15頃より第19話を投下します。
596萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:15:14 ID:bYylJIzY
それではいきます。


 ルイズたちがニューカッスルへ到着した頃、トリステイン魔法学院では――

「……遅いな。もう出発する頃だと思うんだが……」
 学院の正門前。そこに一人の羽帽子をかぶったメイジが幻獣グリフォンを
連れて立っていた。彼の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
トリステイン王国の子爵にして、精鋭の魔法衛士隊グリフォン隊の隊長
でもある。
「……もう夜が明ける。僕のグリフォンでもあまり遅くなると今日中に
ラ・ロシェールに着くのが難しくなるんだけどな……」

「……なーにをやっとるんですかの?ワルド子爵は?」
 払暁の魔法学院。その中央本塔の最上階の窓からオールド・オスマンが
せわしないワルド子爵を見下ろしている。
「……そういえば、ワルド子爵には、昨夜ルイズ・フランソワーズの護衛を
お願いしていましたわ」
 窓際に立つオスマンを、ソファに座ったまま優雅な仕草で早めのモーニング
ティーに口をつけたアンリエッタ姫が見る。その仕草には少しも悪びれた
様子はない。
「そのミス・ヴァリエールは昨夜遅くに使い魔と一緒に旅立ってしまって
おりますな。
 ミスタ・グラモンも一緒に。
 ……昨日、この老いぼれは姫に忠誠を誓う貴族を信じることが必要とは
言いましたが、あまり勝手なことをされても困りますな。
 もっとも、すでに杖が振られた今となっては、我々にできることは待つ
ことだけ……違いますかな?」
「そ、そうですね……」
 そう言ってアンリエッタ姫を見下ろすオールド・オスマン。王族に対して
不敬ではあるが、普段の彼とは違うすごみのある威厳とその言葉に
アンリエッタ姫は返す言葉がない。彼の預かる貴族の子女を勝手に私用で
動かしたのは自分なのだから。だが……
「なぁに。彼女ならば、道中どんな困難があろうともやってくれますでな。
 ……今頃はもうアルビオンに着いておるかもしれませんな」
 オスマンはそう言うとアンリエッタ姫の向かいに腰を下ろす。そのとたん、
アンリエッタ姫の表情が真剣味を帯びた。
「あのルイズの?
 確かにあのガーゴイルはわたくしたちには及びもつかないメイジが
作成したものだとは思いましたが……どういうことです?」
 今にもテーブルから身を乗り出さんとするアンリエッタ姫に、オスマンは
ふほんと一つ咳払いをした。
「姫は始祖ブリミルの伝説はご存じかな?」
「通り一遍のことなら知っていますが……」
 得心のいかない表情のアンリエッタ姫。そこにオスマンはもったいぶった
様子でこう告げる。
「ではガンダールヴのくだりはご存じか?」
「……え?ま、まさか……」
 驚く姿とは裏腹に、アンリエッタ姫の瞳にそれまでとは違う色が宿るのを
オスマンは見た。それは、何かを確信したもの。それを見て少ししゃべり
すぎたと思い至ったオスマンは、その軌道修正を図った。
「いや……かのふがくは3億もの人口を誇る敵国を破壊するために生み出されたと
言うておりましての。さすがにその力を顕現させることはこのハルケギニアを
草木一本生えぬ瓦礫の山に変えて滅亡させることになりますでな。無益な
争いは起こさぬよう約束させておりますが……えーおほん。
 つまり、『ガンダールヴ』並に使える、と。そういうことですな……」
597名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 23:16:43 ID:9zjGXgmR
シエーン
598萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:17:16 ID:bYylJIzY
「な、なるほど……」
 具体的な数を出したのが効いたのか、アンリエッタ姫が得心した面持ちに
なるのをオスマンは内心安堵した。しかし――

(改めて言葉にしてみると、途方もない数字じゃのう。ちとしゃべりすぎたか……)

 オスマンとしてもふがくやその主人であるルイズを兵器として扱うことは
断固避けるべきだと考えている。今は子供の使い程度に思われているものを、
わざわざ最終兵器として認識させることもない。自国の民を安んじるために
その身を捧げようとしているアンリエッタ姫が、よもやそういうことを
考えるとは思いたくないが……とにかくこの話題はここまでとし、オスマンは
話題を変えることにした。
「……ところで、ワルド子爵はいかがするのですかの?さすがにあのままは
不憫ですわい」
「そ、そうですね。後でわたくしの部屋に来るようお願いできますか?」
「かしこまりました」


 ――一方その頃。本塔でそのような会話が行われていることも知らず……

「……一度ルイズの部屋に行ってみるか」
 すでに太陽は昇り、多くの貴族の子女の朝食の準備も滞りなく進められる頃。
待ち人来ずのワルドは、小さく溜息をつくとマントを翻しルイズの部屋に
向かおうとして……視界の隅にあるものを見つけてしまった。それは
こちらに向かってくる2頭立ての馬車だが、そこに掲げられている紋章が
ワルドの顔色を蒼白にする。
「……ま……まさか……」
 トリステイン王国の最精鋭との誉れも高い魔法衛士隊の一角である
グリフォン隊の隊長であるはずのワルドが冷たい汗を流している――
普段のワルドを知る者であれば、それは信じられない光景だろう。
だが、それは紛れもない事実だ。そして馬車が正門前で停止しても、
まだワルドはその場から動くことができずにいた。
「……あら?誰かと思えば、『泣き虫ジャン』じゃない。何してるのよ
こんなところで」
「……や、やあエレオノール……久しぶりだね……それに、その『泣き虫
ジャン』ってのはもう止めてくれないかな?僕ももうこれで魔法衛士隊の
隊長なんだから……」
 馬車から降りてきたのは、美丈夫のワルドにも負けないすらりとした
長身の女性――名門ヴァリエール公爵家の長女、エレオノール・アルベルティーヌ・
ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール。腰に届く流れる
ような金髪も美しく、縁のない逆三角形の眼鏡は彼女の知的な雰囲気を
より引き立たせている。だが……それらをもってしても、彼女からあふれ出す
苛烈な雰囲気を隠すことはできずにいた。
「……私にそんな口を利くのはこの口かしら?ねぇ?『泣き虫ジャン』?」
 エレオノールはつかつかとワルドに歩み寄ると、いきなりその頬を
抓り上げた。近くにワルドの部下や、学院の使用人がいなかったことは
幸いだろう。『閃光』の二つ名を持ち、26歳の若さでこの地位に上り
詰めたため、威厳を出そうと髭をたたえた美丈夫が、苛烈な雰囲気を
まとった年上の美人に頬を抓られているのだから……
「……ひ、ひたい!ひたいよネリーねえさん!ほ、ほくかなにをしたて
ひうん……」
「うるさい」
 さすがのワルドも言葉にならず、目には涙すら浮かべている。本当に
この場に誰もいない――実際には古株の御者は昔からのことなので見てない
ふりをしているし、本塔からアンリエッタ姫とオールド・オスマンが
一部始終を見ているのだが――ことに、ワルドは始祖に感謝した。
しばらく抓り上げて気が済んだのかワルドの唾液と涙が付いた細い指先を
ぴっぴと払ったエレオノールが、いらつきを隠そうともせず捲し立てた。
599萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:18:53 ID:bYylJIzY
「……だいったい、あのおちびが余計なことをして……学院からあんな
請求書が回ってくること自体、我が家の恥!しかもお父様の名代に私が
指名されるし!お母様は終始怒りっぱなしだし!」
「せ、請求書?何のことかな?」
 ワルドが虎の尾を踏まぬように、それでいて逆鱗にも触れぬように
慎重に言葉を選ぶ。何しろ父が戦死して領地を出たことで疎遠になるまでは
ワルドにとってエレオノールは『とっても怖いお姉ちゃん』だったのだから、
その接し方は堂に入っていた。本当に部下に見られなくて良かったと思う。
見られたらたぶん転げ回るどころか死にたくなる。とはいえこのままだと
誰か来るのは確実なため、ワルドは少しでも話を進めようとする。
「あのおちび、どうやったのかは知らないけれど、あの学院本塔に大穴
開けたらしいのよ。しかも基礎まで傷つけて……使い魔がロレーヌ家に
決闘を挑まれて受けて立ったって書いてあったから、どうせいつもの
失敗魔法でしょうけれど……ああ、なんであのおちびはこう迷惑ばかり
かけるのかしら」
「そ、それは……すごいな」
 これはワルドの正直な感想だ。魔法学院に入学したことのないワルド
でも、ここの本塔がスクウェアクラスの土メイジによって厳重に補強
された要塞並みの堅牢さを誇っていることは知っている。そこに大穴を
開けるとは……親同士の決めた許嫁とはいえ今は自身の野望のためルイズを
欲しているワルドにとって、それはある確信を抱かせるものであった。
 そこまで話が進んだとき、学院本塔から頭の寂しい中年教師――確か
コルベールとか言ったか――が二人のところに駆け寄ってきた。
「ワルド子爵、姫殿下がお呼びです……と、これはミス・ヴァリエール。
こんな朝早くに?」
「姫様が?分かった。すぐに行く。
 それではミス・ヴァリエール、積もる話はまた改めて」
 ワルドはこれ幸いとばかりに話を切り上げ、貴族らしい礼儀に適った
一礼をしてその場を後にする。
「え、ええ。そうね。私もそうかからない用事のはずだし、また後で」
 突然のことに面食らうエレオノール。そうしてワルドの背中が本塔に
消えた後、改めてコルベールに向かい合った。
「……お久しぶりです。ミスタ・コルベール。
 本日私は父、ヴァリエール公爵の名代として、先日届いた請求書に
ついてお話を伺いに来ました。
 学院長は今どちらに?」
 かつてこの魔法学院の優秀な生徒であったエレオノールにとって、
コルベールは恩師の一人。だが……
「……あ、相変わらずですね、ミス・ヴァリエール。分かりました。
一緒に行きましょう」
 学生時代の時と変わらず、エレオノールの視線は射貫くように鋭い。
コルベールはその視線をいなしきれずに気圧されたまま、エレオノールを
学院長室まで案内した――


「姫殿下。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、参りました」
 学院本塔最上階にある貴賓室。学院長室の対面に位置するこの部屋は、
今アンリエッタ姫のつかの間の執務室兼居室として機能していた。
なお、マザリーニ枢機卿は別室、他の従者たちも階下の別室に控えている。
ワルドがこの部屋に入ったとき、そこにはアンリエッタ姫が何故か学院の
黒髪のメイドに給仕させ、大きな窓際の豪奢なソファに腰を下ろしていた。
ワルドに気がついたアンリエッタ姫はメイドに命じてワルドを自分の
向かいに座らせる。黒髪のメイドの手慣れた手つきで淹れられた紅茶は
かぐわしい香りをワルドに届けるが、さすがに口をつける気にはなれなかった。
ワルドのカップがテーブルに並んだ後、アンリエッタ姫は親しげな笑みを
浮かべつつメイドを下がらせる。完全に恐縮しきったメイドが部屋を
後にし、完全に二人きりになってから、アンリエッタ姫が口を開いた。
600萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:20:37 ID:bYylJIzY
「今朝は大変だったでしょう。ワルド子爵。わたくしも知らなかったとは
いえ、手間を取らせましたね」
「い、いえ。私もルイズ……いやミス・ヴァリエールの護衛を姫殿下より
申しつかり光栄に思うだけです。当人が未だ出てこないのが残念でしたが」
 交わされる社交辞令。ワルドはアンリエッタ姫が何を言おうとしている
のかを図りかねていた。昨夜女子寮に入るアンリエッタ姫を見つけて外で
待ち伏せし、出てきた姫から直接話を聞き出し護衛任務を引き出したまでは
良かったものの、肝心のルイズは現れない。『手間を取らせた』とは
そのことだろうが、いったい何を知っているのか――内心そう考える
ワルドに、アンリエッタ姫はソファから立ち上がり、窓に向いたまま
その答えを示す。
「……わたくしも、まさかルイズ・フランソワーズの使い魔があのような
ものだとは思いもしませんでした。
 オールド・オスマンのお話では、もうアルビオンに着いている頃だとか……」
「な、何ですと!?」
 アンリエッタ姫の言葉にワルドは心底驚いた。自分が調べたところでは、
ルイズの使い魔は遠く東方の果てから召喚されたガーゴイルだとか。
だが、いくらなんでも一晩でここからアルビオンに到達できるとは……
もしそれが可能であれば、その使い魔はハルケギニア最速の風竜の3倍
以上の速度で飛んでいることになる。そしてアンリエッタ姫の言葉が
真実であれば、自分が『偏在』(ユビキタス)を使って仕込んだことが
すべて無駄になってしまう――ワルドはアンリエッタ姫が自分に背を
向けているのを幸いと、小声で素早く呪文を唱えた……


 同時刻。港町ラ・ロシェールのとある路地裏――

 カビ臭い臭いが充満し、よほどの物好きでもなければ近づかない路地裏に、
一陣の風が通り過ぎる。風が去った後に現れたのは、マントを身につけ、
顔を白い仮面で隠したメイジの男。白仮面のメイジが立ち上がり、街路に
足を向けようとしたとき――唐突に真後ろに現れた気配に白仮面のメイジは
素早く振り向いた。
「……よかったぁ。当てが外れたかと思った」
 それは若い女の声。見ると、少年のようにショートカットにした金髪で
右腕に包帯を巻き、太ももまで覆う革のロングブーツと黒い女性用鎧下の
上から布鎧とマントを身につけた銃士隊の出立ち。マントが白いと言う
ことは、小隊長クラスか。だが、白仮面のメイジが知る限り、銃士隊では
見ない顔だ。
「……お前は……」
「さっそくだけど……」
 白仮面のメイジの問いかけに銃士隊の女は答えず――白仮面のメイジは
その姿を見失う。白仮面のメイジはとっさにタクト状の杖を引き抜いたが、
その頃には銃士隊の女は彼の懐深くに潜り込んでいた。
 誰が想像できるだろう。杖を持たない平民が、駿馬の速度で間合いを
詰めてくることを。誰が想像できるだろう。ごきり、と顎に当てられた
冷たい鉄の塊が、すでに発射準備も整った短銃だということを!
 右眉の上にある小さな×印の古傷までしっかり見える距離で銃士隊の
女が引き金を引き、ぱあんと乾いた音がしたと思うと、吹き飛ばされた
白仮面のメイジの姿が風のようにかき消えた。
「……残念だったね。ボク、気配を消して隠れるのは慣れてるんだ。
散々練習させられたからね。
 とはいえ、間に合ってよかったけどね。これが噂に聞く風の最上位魔法
『偏在』(ユビキタス)かぁ。便利そうだけど、怖いね」
 銃士隊の女――シンがつぶやく。そうしているうちに銃声を聞きつけた
らしい足音が足早に近づいてくる。シンは近くの樽の裏に隠れ、じっと
息を潜め樽になりきる。昔はトラックになりきるよう特訓させられたのだ。
これくらいなんてことはなかった。
601萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:22:10 ID:bYylJIzY
「何事だぁ!……って、あれ?誰もいない?」
「……おっかしいなぁ。さっき銃声が聞こえたと思ったんだけど……?」
 それはシンと似たような出立ちの銃士隊の二人組。マントの色がカーキ色
なので一般隊員だ。任務の特殊性から公式の場に出ることもなく、銃士隊でも
あまり顔を知られていないシンだが、それでも表の顔でのつきあいはある。
よく見ると、二人組の片割れは新兵訓練で結構しごいた一人だ。警邏の
途中か、それとも別任務の途中か。それでも銃声からわずか数分で
駆けつけたことにシンは素直に感心した。

(初動が速い。さすが、アニエスさんもミシェルさんもボク以上に厳しいからなぁ。
 でも、まだまだだね……)

 任務を終えたシンは、二人が納得いかないまま立ち去るまでそこに
潜み続けた――


「……はっ!?」
「どうしました?ワルド子爵?」
 『偏在』を唱え終わり何食わぬ顔でアンリエッタ姫の他愛のない世間話に
つきあっていたワルドの顔が、急に陰る。

(馬鹿な。僕の『偏在』が、あんなにあっけなく倒されるとは!?
 いや、あれが平民の動きか?だが、動作を加速させる魔法など、聞いた
こともない……)

「お顔の色が良くありませんね?」
 ワルドの内心の動揺を察したのか、アンリエッタ姫が優しく声をかける。
しかし、次の一言でワルドは凍り付いた。
「……もしかして、あなたが放った『偏在』が誰かに倒された、とか……?」
「……なっ!?何をおっしゃいますか!?」
 アンリエッタ姫は優しく微笑んでいる。だが、それが何より恐ろしい。
ワルドはそう感じずにはいられなかった。
「あなたは平民の荷物に紛れ込ませれば足がつかないと考えたようです
けれど、少し運が悪かったようですね」
 アンリエッタ姫はそう言って立ち上がり、スカートのポケットから
一通の手紙を取り出す。それが何であるか、ワルドには分かりすぎるほど
理解できた。何故なら――手紙はアルビオン王国の叛乱軍、つまり
『レコン・キスタ』の紋章が捺された蜜蝋で封じられていた跡があった
からだ。
 一方でアンリエッタ姫も内心薄氷を履む思いでいた。このワルド子爵の
背信の証ともいえる密書は、ワルド子爵が『偏在』と連絡用の平民を
用いた上に民間船の荷物に紛れ込ませていたため、誰にも気取られることが
なかったのだ。それを手に入れられたのは、ワルド子爵が用いたフネが
『ゼロ機関』に連なるフネであり、また一部の平民が持つ高度な偽造技術で
複製されたニセの密書をワルド子爵が看破できなかったため――
アンリエッタ姫は数度の連絡を故意に看過させ、そうして密書を手に
入れた後で連絡役の白仮面のメイジ、つまりワルド子爵の『偏在』を
一度倒させるよう、『メイジ殺し』と呼ばれる腕の立つエージェントたちを
配置していた。その一人、ウェールズ皇太子との連絡役に当てていた
シンが母港に戻った直後に『偏在』を撃破できたのは僥倖だった――
そしてこの時点のアンリエッタ姫はその事実を知らない。ワルドへの
言葉はあくまでブラフでしかなかった――が、同時に最高のタイミング
でもあったのだ。
 目の前に『レコン・キスタ』総司令官オリヴァー・クロムウェルの
密書を突きつけられたワルドは混乱していた。自分が『レコン・キスタ』に
与することはもはや明らか。だが、アンリエッタ姫は手勢を呼んで自分を
捕縛しようともしない。何故だ?その理由が分からない。自分がとっさに
杖を抜かなかったからか?何故?
602萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:23:31 ID:bYylJIzY
 何度も自問し、混乱のるつぼにあったワルドの手を、アンリエッタ姫は
優しく包み込んだ。
「……ひ、姫殿下?」
「……あなたが真にトリステイン王国のことを思い、荒廃する国を憂いでの
行動の結果であるならば……その非はわたくしにもあります」
 アンリエッタ姫はワルドの手を取ったまま、その澄み切った青い瞳で
まっすぐにワルドを見る。その視線には侮蔑どころか怒りすらない。
「……それでも、子爵が自身を赦せないのであれば……話してもらえますか?
これまでのすべてを。
 わたくしも、その忠義に報いるよう、できうる限りのことをします」
 その言葉でワルドはアンリエッタ姫が自分に何をさせようとしているのかを
理解する。つまりは、背信の科(とが)を公にしない代わりに『レコン・キスタ』の
内情を話す――いや、二重間諜になれということか。
 ワルドの顔にふっと笑みが差す。いいだろう。これに従わなかったところで、
あのような刺客に狙われるだけ。名も知らぬ平民に討たれるよりは、
この麗しき姫君が僕の力を必要とするならば、そうすることで僕の願いが
叶うならば――もう一度、改めて僕はこの杖に誓おう。
 ワルドは改めてアンリエッタ姫に向き直ると、その前に両膝をついて
跪き、両手で恭しく自身の杖を掲げた。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。今、ここに改めて
この杖にかけてこの身を姫殿下に捧げることを誓う」
 ワルドの宣誓に、アンリエッタ姫は静かに杖を手にとって、その右肩を
軽く叩く。ワルドの宣誓は受け入れられた。面を上げるワルドに、
アンリエッタ姫は優しくこう告げる。
「『ゼロ機関』へようこそ。ワルド子爵」


「……まいったな。内情を聞いてみれば予想以上か……」
 すでに昼食の時間も過ぎ――執務のため先に王都に戻るアンリエッタ姫と
マザリーニ枢機卿を正門で見送ったワルドは、人知れず溜息をつく。
自分はアンリエッタ姫の特命で、ルイズが戻るまでこの学院に残っている
ことになった。『鳥の骨』と揶揄される枢機卿の顔に、またしわが刻まれた
ようにも見えたが、気のせいではないだろう。
 溜息の理由は、あれからアンリエッタ姫より聞いた秘密機関『ゼロ機関』の
内情だ。もちろんすべて聞かされたわけではないだろうが、いつの間に
あれだけのものを作り上げたのか、ほぼ平民のみで構成されていた
この情報機関は、諜報能力と秘密工作の実行力だけ言えば、かのガリアや
ロマリアにもひけは取るまい。だが……問題はこのトリステイン王国が
貴族主義であり、姫殿下もお飾りとして軽視されていることだ。おかげで
せっかくの情報がまるで生かせず、もっぱら防諜機関としてのみ機能して
いる有様。機関の存在を明かさず姫殿下がそれとなく重臣に指示しても、
それが全く聞き入れられていないのだ。これがもっと機能的に動かせて
いれば、アンリエッタ姫のゲルマニアへの輿入れなど行う必要すらなかった。
「……いや、内部からゲルマニアを切り崩し、一時的に領邦となりつつも
時間をかけて逆に併呑する……やりかねんな」
603萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:24:29 ID:bYylJIzY
 さっき枢機卿と話しているときに、よほどこのことを言ってやりたいと
思った。ゲルマニアとの同盟は枢機卿の策だ。表向き重臣の進言を聞いて
唯々諾々と実行しておきながら、裏でそれ以上の効果的な手を打っている――
それが今のアンリエッタ姫だ。すでに影ながら豪商を通じてアルビオン
王党派への継続的な支援を行っており、そして今またルイズすら本人の
知らぬ間に手の内に取り込んだ。今頃ルイズは王党派の亡命工作を行って
いることだろう。ルイズは聡い娘だ。アンリエッタ姫の言葉の裡に隠された
偽りの真意を慮って……命令されていないことを実行するだろう。
おそらく、ルイズの使い魔の能力も、ある程度は織り込み済みのはず。
それがどういう結果を招くか……
「僕も魔法衛士隊のひとつを任されているとはいえ、まだ中央に意見するには
若すぎる。
 ルイズ、そしてグラモン元帥の末っ子……会議室にこもる重臣よりも
最前線で進んで杖を振るう貴族がお好み、ということかな」
 こうなった以上は仕方ない。自分からももっと動いて……疎遠になっている
ヴァリエール公爵とのパイプももっと太くした方がいいか……姫殿下から
ではなく自分からの情報とすれば、まだ公爵も動いてくれる可能性がある。
もしかすると、自分が機関に引き入れられたのは、ヴァリエール公爵家との
つながりか――そうとも思えてくる。
「やるべきことは多い、か。
 ……ん?誰かこっちに来るな……げげっ!?」
 独りごちた後学院へ戻ろうとするワルドは、街道からこちらに向かってくる
一頭の馬を見つけ――それに乗っている人物の顔を見て思わず声を上げる。
 馬鹿な!確かに殺したはずだ!――ベローチェを知らないワルドは、
思わず声に出しそうになったことをかろうじて抑える。そして……

「……?」
 自分を襲った白仮面のメイジがワルドの『偏在』だと知らないマチルダは、
馬を引いて正門を通る自分を驚愕の表情で見つめたまま固まっている
見知らぬメイジ――ワルドに優しく微笑みながら会釈するのだった。
604萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/04/28(水) 23:26:29 ID:bYylJIzY
以上です。
今回はワルドさん女難(?)の日でした。
うちのワルドは真っ白ではありません。けれど灰色にも染まりきっていないような……
次回はまたアルビオンサイドに戻る予定です。

支援ありがとうございました。
605名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 23:31:51 ID:9zjGXgmR
乙です
アンリエッタがいい感じに肝が据わってるなwwwwwww
そしてワルド哀れwwwwwww
606名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 23:34:37 ID:l7DqV2af
>>585
おお、俺も同じこと考えてたよ。最も、文才無いから書く気は無いけど。

いいじゃないですか、多少の設定変更くらい。ぜひとも書いてくださいよ、お願いします。

でも、おやっさんの方が召喚するには適任じゃないかなぁというのも本音です。
丁度行方不明に近い状態で呼び出しやすいし、亜希子というルイズらに近い年頃の娘もいるわけだし。


607名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:38:29 ID:4Nc3sTsd
問題ないようなら5分後くらいに代理投下します

513 名前:疾走する魔術師のパラベラム ◆wyhCAjKHg6[sage] 投稿日:2010/04/16(金) 23:35:51 ID:WOfRfVYw
せっかくの決闘だというのに規制というこの現実。
今回もどなたが代理投下お願いしたします。
608疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:44:43 ID:4Nc3sTsd
第六章 覚醒

   0

決闘/[Duel]――二人の人間が、何かの為に生命を賭して戦うこと。果し合い。
609疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:45:25 ID:4Nc3sTsd
   1

「その香水をあなたが持っていたのが何よりの証拠ですわ!」
 乾いた音の後に、そんな少女の声が聞こえた。
「さようなら!」
 そんな震えた声を聞いて、何事かと声のする方向を見れば目立つ金髪が見える。
 そしてルイズの隣を走り去る一年生の少女。慌しく、その後ろを何人かの生徒が追いかけていった。
 すれ違っただけだが、少女は泣いていたようだった。
「・・・・・・何があったの?」
 騒動の中心らしき場所には人垣が出来ていて、ルイズの席からではどうなっているのか、伺うことはできない。
「ギーシュのバカが二股掛けてたのがバレたみたいね」
「・・・・・・なんで、あんたが私の隣にいるのよ」
 いつの間にかキュルケが隣に立っている。ルイズの身長では見えないが、キュルケの身長ならば見えるのかも知れない。癪だ。
「あなた、『土』の才能に目覚めたとか言って、あの有様でしょう? 確かに爆発の規模は小さくなってたみたいだけど・・・・・・おかげ様で後ろに引っ繰り返って、頭打っちゃったじゃない」
 後頭部を擦っているところを見ると、結構強く打ったようだ。しかし錬金を使う時は全員、机の下に隠れていたはず。それにいつもならともかく、今回は随分と力を絞った。そんな目にはまず遭わないはずだが。どうして――
610疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:46:06 ID:4Nc3sTsd
「食べ終えたみたいだし、外であなたの魔法を見せなさいよ。ヴァリエールがどこまでやれるか、気になってしょうがないんだから」
 そういってあのからかうような目線と笑みをキュルケは投げかける。
 他人の色恋沙汰、ましてや二股が原因の修羅場の見物なんて悪い趣味は持ち合わせていない。それにルイズも自分の《P.V.F》がどんなものなのか、確かめたくてうずうずしていた。
 人目にはあまり晒したくはないが、相手がキュルケなら、そう悪くはない。
 今まで散々からかわれてきたのだ。見返してやろうじゃあないか。
 昼食の後なので、当然この後は昼休みだ。力を試すなら好都合だろう。
「ええ、見せてあげるわ。私の『使い魔』をね」
「決まりね。じゃあ、メイドに八つ当たりしているようなバカは放っておいて、どこか適当な広場でも行きましょ」
 何か、何かが引っかかった。
「なんですって?」
「どうやらメイドに責任を擦り付けて、誤魔化そうとしてるみたいよ? まったく、あの黒髪のメイドも災難ね」
 黒髪。ルイズが知っている黒髪は一人しかいない。
 嫌な予感がする。頭の中で警鐘が鳴っているような気がした。今、向かわなければ後悔する、そんな気がするのだ。

「あら、ルイズ?」
 キュルケがルイズの様子に気づいた時には、もうルイズは騒動の中心へ向かって歩き始めていた。人垣を押しのけて、そう長くない距離を詰める。
 押しされた貴族が文句を言おうとするが、ルイズの威圧的な雰囲気に圧されて口を閉じた。
 そう時間は掛からずに、ルイズは騒動の中心へ辿り着いた。
611疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:46:51 ID:4Nc3sTsd
「止まりなさい」
 目の前には怯えてしゃがみ込んだシエスタと、なぜか髪からワインを滴らせたギーシュがいる。
 シエスタの体は恐怖からか、震えていた。
 頭の奥底から怒りが沸いてくるのを感じる。周囲の視線も気にせずに、ルイズはギーシュの前に立った。その小さな背中でシエスタを庇うように。
「・・・・・・ミス・ヴァリエール」
 背中からシエスタの呟きが聞こえた。少し震えている。
 シエスタは怯えている。『貴族』であるギーシュが怖くて。

――ふざけるな。

 魔法が使えるものは貴族だ。それはハルケギニアのどこを見ても変わりはしない。
 しかし、けれど。
「ルイズ、邪魔をするな。僕は、これからそこのメイドに『教育』しなければならない」
 こんな理不尽で、シエスタを怯えさせるような人間が『貴族』なのか。
 怒りを吐き出すようにため息をついた。自分を落ち着けるために。
「ギーシュ、あんた最低よ」このままだと怒鳴りつけてしまいそうだった。
「なんだと?」
 ギーシュの顔から笑みが消えた。変わりに浮かんだ表情は怒り。
 本来、端整な顔立ちは歪み、ルイズにはそんな表情がどこか滑稽に映った。
「二股かけてた挙句に、バレればメイドに責任転嫁? それも自分の面子を保つためだけに?」
「違う。僕は彼女たちの名誉を守ろうとしている。そこのメイドがほんの少しでも、機転を利かせることができたならばケティもモンモランシーも傷つかずにすんだのだよ」

――ふざけるな。
612疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:47:35 ID:4Nc3sTsd
 ギーシュ・ド・グラモンはそれなりに優秀なメイジだ。古くから続くグラモン家は、多くの軍人が血と杖で国を守ってきた。ギーシュもドットの中では優秀な部類に入る。
 血筋と魔法、貴族にとって最も重要視されるといっても過言ではないその二つの要素をギーシュは兼ね備えている。
 家柄は立派だが魔法の使えないルイズとは、違うのだ。
 だが。
「・・・・・・何が名誉よ。あんたが本当に大切なのは自分の身でしょう? 本当に愛しているなら、どうしてすぐに追いかけないの? あんたに貴族を名乗る資格は無いわ。平民にも劣る誇りしか持ち合わせていない男にはね。もう一度、言うわ」

――ふざけるな!

 ギーシュからは誇りは感じない。ただ自分の面子の為だけに、自分より弱い平民のメイドに矛先を向けている。貴族の誇りである杖を、向けている。
 ルイズには、それが許せない。
 ルイズが魔法を使うことができない。いくら努力をしようと魔法が成功することはなかった。
 アンロックも、ファイヤーボールも、エアカッターも、錬金も、治癒も。どんな魔法も成功しなかった。
 だけどルイズは杖を振る事をやめなかった。誇りがあった。それはどんなものにも譲れない。変えることができないものだ。
 だが、ギーシュは今、シエスタに杖を向けている。
「最低よ、ギーシュ・ド・グラモン」

――こんなものは私の目指す『貴族』じゃない。
613疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:48:16 ID:4Nc3sTsd
 今、牙を突き立てなければ私の中の『何か』が死んでしまう。
 ルイズは漠然と、そんな考えが頭のどこかに浮かんでいた。
 食堂から音が消えた。誰も、口を開かない。重く、冷たい沈黙が流れた。

「・・・・・・魔法すら使えない『ゼロ』に、貴族の誇りについて説教されるとはね。少々、気が動転していたようだ。このような事態になったことを恥ずかしく思うよ。貴族のような機転を、そこのメイドに求めた僕が馬鹿だった。
ルイズの侮辱も許そうじゃないか。魔法の使えないそこの『二人』の平民は下がっていいよ」
 ギーシュは肩をすくめてそう言った。
 ルイズを『ゼロ』と、ルイズを『平民』と呼んだ。
 紛れもない侮辱を受け、それでもなおルイズの芯の部分は冷えていった。怒りが消えたわけではない。冷静になったわけでもない。
 ただ感情の温度が急速に下がった。
 それはやっぱり怒りだ。
 もちろん、ルイズを『ゼロ』と呼び、ルイズを『平民』と呼んだ。それに対しての怒りも確かにある。だがそれならば、ルイズの怒りは熱く煮詰まったものになるだろう。
 だけどルイズの感情はただ冷たくなっていく。
 それはきっと、シエスタのためだから。
 ギーシュはシエスタを侮辱した。シエスタを自分よりも劣る、と。シエスタを取るに足りないモノだ、と。
 この怒りはきっと、自分の為ではない。これは『誰か』の為の怒りだ。
 ルイズは少し、嬉しかった。

――私は、誰かの為に心の底から怒ることができる。

 ルイズはなかなか素直になることができない。他人に対しても、自分に対しても。
だから、少しだけ。ほんの少しだけ、そんな当たり前なことができるようになった自分が誇らしかった。
614疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:48:58 ID:4Nc3sTsd
「待ちなさい」
 ルイズの声を聞いて、ギーシュが振り向いた。ギーシュの胸にルイズは手袋を放り投げる。
 ぱさり、と小さな音を立てて、手袋はギーシュの胸に当たり、床に落ちた。
「何の真似だい? ミス・ヴァリエール」
 聞くまでもない。この食堂の誰もが知っている。
 手袋を投げつけるのは、決闘の作法だ。
 先ほどとは違い、ギーシュは丁寧な口調だ。わざわざ『ミス』までつけている。
 ギーシュにしてはなかなかどうして、面白い趣向じゃないか。ルイズもその趣向に乗ることにした。
「貴方のお好きな騎士の真似事ですわ、ギーシュ・ド・グラモン」
 努めて優雅に。舞台で歌う歌姫のように。観客はこの食堂にいる全員だ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという貴族はここにいる。『誇り』を胸に今、ここに立っている。
 ルイズは、そこまで言ってギーシュに背を向けた。

 ルイズの役柄は『騎士』だ。だったら――
『お姫様』の手を取る名誉は譲れない。

 ルイズは目の前でしゃがみ込むシエスタに、左手を差し出す。
 シエスタはルイズの手を取り、立ち上がった。ルイズの小さな手に収まる手は仕事で荒れていて、力強い手だ。その手はもう、震えていない。
「決闘よ」
 ルイズは優雅に振り向いて、そう静かに告げた。
 シエスタの驚いた顔があんまりにも可愛らしくて、こんな時なのについ、笑ってしまった。
 驚いたシエスタの大きく見開かれた黒い瞳には、怯えの色は見えなかった。
 笑ってしまった本当の理由は、それが嬉しかったからなのかもしれない。

 結局、ルイズはシエスタを助けたかった。ただそれだけだったのかもしれなかった。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:49:32 ID:mtfkdOYq
既に代理投下されている物を、再度投下とか検索も出来ないのかねえ。
616疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 11:49:40 ID:4Nc3sTsd
   3

「コルベールです。オールド・オスマン、お話が」
 本塔の最上階、学院長室のドアの前にコルベールは立っていた。
 あの後、『丸薬』の項目を読み、コルベールは一つの仮説を考えた。だが、この仮説はもしかするとルイズから使い魔を奪うことになるかもしれない。
 ただの教師であるコルベールにはどうしていいか判らずに、学院長であるオスマンの報告に来たのだ。
「入りなさい」
「失礼します」
 重厚なつくりのセコイアのテーブルの向こう側に、トリステイン魔法学院の学院長、オールド・オスマンはいた。
 長く白い髭と髪、顔には生きてきた年月を感じさせるしわが深く刻まれている。噂では百歳とも二百歳とも言われている。そんな酒の肴にしかならないような噂話でさえ、この長い年月を見てきたであろう紫の瞳を見ると本当かも知れないと思ってしまう。
 部屋の隅に置かれた机では、秘書のロングビルが羽ペンを忙しなく動かしている。翡翠のような輝きを持つ髪と凛々しい顔立ちの美人だ。理知的な印象を与える眼鏡が良く似合っている。
「どうかしたのかね? ミスタ・・・・・・あー、なんじゃったっけ?」
「・・・・・・コルベールです。人の名前ぐらい覚えておいてくださいよ」
「すまんのう。年を取るとどうでもいいことは、すぐに忘れてしまうんでな」
 コルベールは色々と言いたい事があったが、ぐっと飲み込んだ。
 文句を言いたいが、この老練な魔術師を相手にしていては話が進まない。
「ミス・ヴァリエールの召喚した使い魔についてお話したい事があります」
「席を外しましょうか?」
 書類から顔を上げて、ロングビルが問いかける。気を利かしてくれたのだろう。
 コルベールの話はルイズの使い魔に関わる重要なことだ。耳する人間は少ない方がいいかもしれない。
「すみません、ミス・ロングビル。お詫びに昼食でもいかがですか?」
 食事をするのなら一人より二人の方がいい。それが美人ならなおさらだ。
「いえ、私は仕事が残ってますので」
 ロングビルはそれだけを素っ気無く言い残して、部屋から出て行ってしまった。
「ほっほっほっ、フラれたのう。ミスタ・コルベール」
 オスマンは水パイプの煙を燻らせながら笑っていた。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:50:49 ID:4Nc3sTsd
まじだうわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
日付みてなかった吊ってくる
618名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:52:45 ID:0czQGgR/
新手の荒らしw
619名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 12:00:20 ID:4Nc3sTsd
猿さんくらった
こっちだったorz

545 名前:疾走する魔術師のパラベラム ◆wyhCAjKHg6[sage] 投稿日:2010/04/28(水) 23:37:41 ID:ZCNJUTU6
せっかくの休日なんでちょっと前倒しで投下です。萌え萌えの人のあととか気後れしますが。
というかようやく、決闘だというのに規制というこの事実。
またもやこちらのお世話になることに。本当にすみません。
620疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:03:41 ID:4Nc3sTsd
第七章 ギーシュはバカだけど

   0

P.V.F/[P.V.F]――《パラベラム》が精神から生み出す銃器。現時点ではエゴ・アームズとイド・アームズの二種類が確認されている。

イド・アームズ/[Id Arms]――接近戦用で口径は小さめ。主に拳銃。

エゴ・アームズ/[Ego Arms]――中・遠距離用で口径は大きい。マシンガン、ライフルなど。
621疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:04:48 ID:4Nc3sTsd
   1

「紹介するわ、これが私の『使い魔』よ」
 体が軽い。こんな巨大な銃を持っているというのに、重さを感じないばかりか体が羽のように軽い。
 力が体の奥底から湧いてくる。
《P.V.F》を展開したその瞬間から、重力をコントロールできるようになったとしか思えない。それほどまでに体が軽く、全身に力が漲っている。まるで、生まれ変わったようだ。
「『使い魔』だと? 君の使い魔は、あの植物の種じゃなかったのか!?」
 ルイズが使った『錬金』に驚いて、先ほどまであれだけ騒がしかったギャラリーが今は静まり返っている。
 今、口を開けるのは事態を把握しているルイズと、恐怖と驚愕でテンションが上がっているギーシュだけだ。
「種なんかじゃないわ。私の使い魔はマジック・アイテムだったの。これは、それによって手に入れた牙よ」
 ルイズの言葉を聞いて、周囲がざわめいた。誰かが吹いた口笛の音が、やけに大きく聞こえた。
「た、たかが『ゼロ』が少し魔法を使えるようになっただけじゃないか! ・・・・・・だが、やっぱり失敗したようだな、そのトライデントのようなものには肝心の矛先がついていないじゃないか」
 ギーシュはやや引きつった笑いを浮かべながら、そんなことを言った。
 確かにギーシュの指差す三本の長い筒には、矛先などついていない。ただ暗い穴が開いているだけだ。
 そんなギーシュの言葉を聞いて、ルイズを普段から馬鹿にしていた何人かの生徒が安心した顔をする。
 彼らは今、こんな事を思っているだろう。『少し驚いたが、やっぱり失敗したのか』と。
 そんな彼らの反応を見ても、ルイズが怒ることはない。無知は罪ではない。知ろうとしないことが罪なのだ。

「第一、 君のような小柄な女性がそんな大きな槍を――
 ガシャン、と。
 そんな音がギーシュの言葉を遮った。
 それはギーシュのワルキューレが壁に当たり、地面に落ちた音だ。ワルキューレは曲がり、胴の辺りを中心に引き千切れそうなほどに変形している。
「・・・・・・え?」
622疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:05:30 ID:4Nc3sTsd
   2

 ルイズが一瞬でワルキューレとの間合いを詰め、シールド・オブ・ガンダールヴで薙ぎ払った。言葉にすればそれだけだ。それだけだが、それはあまりにも早すぎた。
 ギーシュや観客の目には、まるでルイズが消えたようにも映っただろう。
 圧倒的な質量を持って薙ぎ払われたルイズのシールド・オブ・ガンダーヴは、青銅製のワルキューレなどが耐えられるものではない。

「あら、もう終わり?」ルイズはからかうような微笑を浮かべ、そう呟く。
 左手のルーンは輝き、ルイズに様々な情報を届けてくれる。
《パラベラム》や《P.V.F》についての膨大な知識。それはハルケギニアに生きる者の想像や思考を遥かに超えたものだ。
 例えば内観還元力場。本来、《P.V.F》はとんでもない重量だ。ルイズのシールド・オブ・ガンダールヴは大口径であり《P.V.F》の中でも大きな部類に入るが、重量は約190リーブルである。
 当然、ルイズのような小柄な少女が振り回せるようなものでは無い。にもかかわらずルイズが軽々と扱うことができるのは、この内観還元力場が支えてくれているからだ。
《パラベラム》が《P.V.F》を展開すると、それを中心に内観還元力場が発生。この特殊なフィールドの中では、《パラベラム》は超人的な動きができる。ルイズはこの恩恵で、ほとんど重さは感じていない。
 そんなわけで。自身の腕を振るような気軽さで振るわれた190リーブルの『使い魔』はギーシュのワルキューレを容易く薙ぎ払った。
「わ、ワルキューレッ!」
 ようやく思考の追いついたらしいギーシュが、慌てて杖を振る。花びらが一瞬にして六対のワルキューレに錬金された。
 一体はハルバードを。一体はクレイモアを。一体はフレイルを。一体はファルシオンを。一体はクロスボウを。一体はカイト・シールドを。それぞれに手に持っている。
 ギーシュはクロスボウとカイト・シールドを持ったワルキューレをそれぞれ傍に寄せ、杖を指揮棒のように振ってワルキューレを操る。
 あの混乱した状況からこれだけの魔法を的確に使うことができるのは、流石は軍人の家系といったところか。魔法の手並みもドットとは思えない。
 ワルキューレが大きく振りかぶり、その自身の重量を乗せたハルバードの一撃を、ルイズは容易くシールド・オブ・ガンダールヴの巨大な盾で受け止める。
 金属と金属が激しくぶつかり大きな音を立てるが、ルイズは後ろに後ずさりすらしない。むしろワルキューレの方が力に耐え切れず、青銅でできたハルバードにひびが入った。
 ハルバードを受け止めたルイズを挟撃する形で、当たれば必殺の威力を誇るフレイルが迫る。
 だが、それも通じない。
624疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:12:56 ID:4xwvy6T8
 ハルバードを持つワルキューレを強引に、ただ力任せに押し返す。ハルバードの重さとルイズの力で、バランスを保てなくなったワルキューレは仰向けに倒れた。その隙に振り向き、後ろのワルキューレをシールド・オブ・ガンダールヴを槍のように扱い、突く。
 穂先は無くとも、今のルイズと力で放たれた突きは青銅の鎧を簡単に貫いた。
 このままだと邪魔になるので、思いっきりもう一度振る。簡単にワルキューレは抜け、学院の壁に当たり砕け散った。同時に銃口に入っていたと思われる青銅の欠片が、遠心力で飛び出る。
 飛んできたワルキューレに驚き、傍にいた生徒たちは慌てて『フライ』を使った。空中に逃げたのだ。賢明な何人かの生徒は既に浮かんでいた。
 倒れたワルキューレが立ち上がる前に、シールド・オブ・ガンダールヴを振り下ろす。強化された腕力で振り下ろされた190リーブルもの重さの銃器は、ワルキューレを地面へとめり込ませた。
 その衝撃に耐え切れずに、青銅でできた右の手首が千切れ飛ぶ。
 足元に転がってきた手首に驚き、ギーシュが一歩後退った。
 既にギーシュの顔は恐怖で強張っている。そんなギーシュの隣には、カイト・シールドを構えたワルキューレが庇うように傍に立っていた。
 どうやらワルキューレでは敵わないと察し、守りを固めるつもりのようだ。クレイモアとクロスボウを構えたワルキューレも、ルイズから距離を取りギーシュの周りに集まっている。
 クロスボウから青銅の矢が放たれるが、ルイズはそれを体を軽く逸らしてかわした。

 ギーシュは冷静を失っている。無意識の内に刃先は潰しているようだが、クレイモアやフレイル、ファルシオンといった武器は元々、刃の鋭さではなく刃物そのもの重量で叩き斬るための武器だ。
 おそらくギーシュに殺意は無い。これは学院で決闘だし、命をかけるほどの理由があるわけでもない。ギーシュは恐ろしかった、それだけなのだろう。
 それも仕方が無い、《P.V.F》はハルケギニアの常識を超えた存在だ。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 12:13:39 ID:Ig1nCnPr
こんなに酷い代理は初めて見た
626疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:13:57 ID:4xwvy6T8
――さてと、せっかくの銃なんだから試してみないとね。

 シールド・オブ・ガンダールヴはガトリング砲と呼ばれる銃の一種だ。銃身を回転させながら給弾、装填、発射、排莢を繰り返し行うことで、連続射撃を可能にする。
 ハルケギニアにおいては決して存在してはならない技術だ。こんなものがあれば、世界が引っくり返る。
 だが今、ルイズが手にするシールド・オブ・ガンダールヴはその一丁だ。ルイズもルーンを通してか、どういう扱いをすればいいのかはわかるが、今一つ実感が持てなかった。
 だがやはり、一度は試してみるべきだろう。やり方は自然と頭に浮かんでくる。
 左手に弾丸の入ったマガジンを想像する。
「『錬金』」足元から小石を一つ、拾い上げスペルを読み上げた。
 シールド・オブ・ガンダールヴを展開した時と同じように、左手に光の粒子が集まりマガジンを形成。驚くほど簡単だ。ルイズの左手に、一瞬にしてマガジンが現れる。
「なッ!?」
 ギーシュはあからさまに狼狽した。まぁ、無理も無いが。
 ルイズの作り出したのは円筒型の巨大なドラムマガジン。見た目は金属で出来た樽を思わせる。シールド・オブ・ガンダールヴと同じ鮮やかな青色だ。ワルキューレを相手取るので、中身は対物用にしておく。
 ドラムマガジンはルイズの小さな手でも扱いやすいように、指をかけられるようになっていた。重さもほとんど感じない。

「いいモノを見せてあげるわ、ギーシュ」
 流れるような動作で、シールド・オブ・ガンダールヴにドラムマガジンを装填。ガシャッという小気味のいい音がして、正しくセットされたことを教えてくれる。
 チャージングレバーを引き、薬室に初弾を装填。銃本体のセレクターレバーを『Sefe』から『Semi』を選び、切り替える。『Sefe』はセーフティのこと。安全装置である。『Semi』はセミオート、つまり単発射撃だ。『Full』と『S・S』は今は必要ない。
627疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:14:59 ID:4xwvy6T8
 サイトをクレイモアを構えたワルキューレに合わせ、ルイズは引き金を引いた。
 轟音と共に超高速の弾丸は放たれ、ワルキューレの装甲を食い破る。後ろに大きく吹き飛ばれたワルキューレは、弾丸により学院の壁に縫い付けられた。
 放たれた弾丸は、弾丸としては異常に長く、太い。本来は投擲用の槍、ジャベリンだ。青白く輝くそれは、ワルキューレの青銅の鎧を紙切れのように貫き砕く。
 三本の銃身は咆哮を上げながら、高速で回転し次々とジャベリンと空薬莢を吐き出していく。《P.V.F》特有の青白いマズルフラッシュが、ルイズの顔を青く照らした。
 そのまま射線をずらし、隣のクロスボウを構えたワルキューレを蜂の巣にする。そして、ギーシュを守るカイト・シールドを持ったワルキューレも同様に。
 弾丸が発射される度に、ルイズに反動が伝わる。内観還元力場が働いているので、ルイズの小さな体でも簡単に押さえ込めた。手ブレもほとんど起こさない。
 引き金を引く度に響くダダッ、ダダダダッという不規則な爆音が気持ちよかった。
 ライフリングによって回転を加えられたジャベリンは、凄まじい勢いでルイズの狙った場所に大きな穴を開けていった。
 ワルキューレは一瞬にして吹き飛び、ギーシュも巻き込んで後ろへ倒れこんだ。衝撃でばら撒かれた青銅の破片が、まるで臓腑のように見えた。
 何本ものジャベリンを受けたワルキューレたちはもう、ただの青銅のガラクタになっている。圧倒的な火力の前には、青銅製の装甲など無意味だ。
 三体のワルキューレは全て破壊され、ギーシュのワルキューレはこれで全滅した。
 銃声が聞こえてから、ほんの一瞬の出来事だった。
 シールド・オブ・ガンダールヴの空薬莢が地面の上を数回跳ねたあと、光の粒子になって粉々になり消えていく。
 広場には再び、沈黙が下りた。聞こえるのは、シールド・オブ・ガンダールヴの唸り声にも似た駆動音だけだ。
628疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/04/29(木) 12:15:58 ID:4xwvy6T8
   3

――なんなんだ、アレは!?

 ギーシュは混乱していた。
 ルイズが『錬金』を唱えたかと思ったら、強大な何かがルイズの右手に現れた。大きさだけなら、ワルキューレと同じくらいだろうか。
 鮮やか青と黒、そしてルイズの髪の色と同じ桃色の光が漏れるそれは美しかった。ドットとはいえ土メイジだ。アレがどれほど素晴らしいかくらい、見ればわかる。細かな造形、力強さを感じさせる質感、美術品のような装飾。ギーシュには、そのどれもが遠く及ばない。
 決闘の始めに作り出したワルキューレは一瞬で破壊された。
 慌てて様々な武器で武装したワルキューレも作り出したが、それも剣舞のような動作で次々と破壊された。
 青銅の重さを乗せたハルバードの一撃は簡単に防がれ、挟撃を仕掛けたワルキューレも呆気無く破壊された。
 足元に転がってきたワルキューレの手首を見て、頭の中が恐怖に染まる。

――怖い!

 ギーシュは怖かった。ルイズが『使い魔』と呼んだそれは、ギーシュの理解の範疇の外にいる。何もかもが常識外れだ。
 あの槍らしきもので貫かれれば、ギーシュの体には巨大な穴が開くだろう。あの巨大な盾で、叩かれれば身体中の骨が根こそぎ砕けるだろう。
 知らなかった。
 無知だった。
 自分よりも強いものというのは、こんなにも恐ろしいのか。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 12:27:22 ID:WtHhDXFh
またコピペ荒らしか
謝るとか、白々しい
630代理の代理:2010/04/29(木) 12:30:03 ID:dwNXbh03
 ほとんど期待はしていなかったが、矢を放つがあっさりとかわされた。もうどうしていいのか、なんてわからない。
 ルイズが突然、屈み込んで足元から何かを拾う。何をする気だ、と疑問に思った瞬間。
「『錬金』」
「なッ!?」
 まただ。閃光が弾けた次の瞬間には、ルイズの手には大きな金属製の円柱が握られていた。見た目はなんだか樽か、大きなチーズに似ている。
「いいモノを見せてあげるわ、ギーシュ」
 ルイズそんなことを言って、手に持った円柱を『使い魔』に取り付ける。一瞬で取り付けられたので、どうなっているのかまったく理解できない。

 だが驚くのは早すぎた。
 ルイズが『使い魔』をクレイモアを構えたワルキューレに、その矛先を向ける。
 次の瞬間、ギーシュが今まで生きてきた中で聞いたことも無いような巨大な音が、耳に飛び込んできた。
 筋肉が強張り、歯の根が震える。ルイズの『使い魔』が回転しているのが、かすかにわかった。
 気がつけば、さっきまで隣に立たせていた盾を構えたワルキューレがギーシュの上に倒れていた。
 青銅製のワルキューレはかなりの重量だ。ギーシュの腕力では動かすことができない。杖を振っても、間接が破壊されているのか、立ち上がることができない。
 かろうじて動く首を必死に動かし、周りを見渡すと立っていた場所からはずいぶんと離れた場所にワルキューレの残骸が見えた。
 巨大な穴がいくつも穿たれ、何本もの青白いジャベリンが刺さっている。何だか、冗談のような光景だった。
 何が起こったのかはわからない。だがワルキューレは全滅。無理に武器まで錬金したせいで魔力は空だ。
631代理の代理:2010/04/29(木) 12:30:47 ID:dwNXbh03
 ザリッと、土を踏む音がした。
 わかっている。これはルイズが一歩近づいた音だ。
 ザリッと、土を踏む音がした。

――どうして、こうなった? 僕はただ、なんとか場を誤魔化そうとしただけなのに。

 ザリッと、土を踏む音がした。

――そもそもなんで、ルイズはあの場面で割り込んできた? 日頃の恨みか?

 ザリッと、ザリッと、ザリッと。土を踏む、音がした。
 ワルキューレでほとんど塞がった視界の端に、ルイズの足が見えた。そしてあの青い『使い魔』も。
 風を切る音が聞こえ、ギーシュの上に乗っていたワルキューレが吹き飛んだ。たぶんルイズが『使い魔』でどかしたのだろう。
「私の勝ちね、ギーシュ?」
 可愛らしい仕草で首を傾げて訊ねているが、右手の『使い魔』はしっかり構えられていた。たぶんバリスタのようなものなのだろう。
 矛先などついていないはずだ。ここからあの美しいジャベリンが打ち出されるのだから。
 あのジャベリンなら、苦しむ事無く死ねるだろう。やっぱり痛いのは嫌だ。
 体が震えるのが止まらない。怖くて、怖くてたまらない。
『命を惜しむな、名を惜しめ』――とはグラモン家の家訓。
 だが、それがどうした。いざとなれば、この様じゃないか。
 自分でも滑稽に思うが、震えは止まらない。

――嫌だ。

 死ぬのは嫌だ。死ぬのは怖い。
 それでも逃げたくなかった。本当は逃げたかった。
 命乞いはしない。それはルイズに失礼だ。これは『決闘』なのだから。
 ギーシュは目を閉じた。自分の命を奪うだろうルイズの姿を見ているのが怖かったから。
 怖くて、怖くて、仕方が無い。
 たくさんの観客がいたが、誰も口を開くことができない。静かな広場で、ギーシュはその時を震えながら待った。
「ギーシュ!」
 最後に聞いた時と同じで、涙で震えた悲痛な声がギーシュに聞こえた。大好きなモンモランシーの声。
 心配してくれたのかもしれない。
 少し、嬉しかった。
632代理の代理:2010/04/29(木) 12:31:32 ID:dwNXbh03
   4

「えいっ」
 ピシリッと、小気味のいい音がした。
「へ?」
 目を開けると、左手を突き出したルイズが見えた。額がヒリヒリする。
 デコピン、だ。
「これでわかった?」
「な、何がだい? というか僕を殺さないのか?」

――訳が分からない。ルイズは僕を殺せたはずだ。

「はぁ? 何言ってんの、ギーシュ?」
 心底不思議そうに首を傾げるルイズ。そんな様子を見てますますギーシュは混乱する。
「え、ええ? ちょ、ちょっと、どういう事なんだい? 頼むから、分かるように説明してくれよ」
「どういうことって・・・・・・あんたは約束を守りなさいよ。なんで殺さなきゃならないのよ」
 約束。確かにルイズと決闘をする前に一つ、約束をしていた。
『私がこの決闘に勝ったら、三人の女性に謝罪しなさい』、それがルイズの取り付けた一つの約束だった。
「わかった、ケティにもモンモランシーにも謝罪する」
 せめて目は逸らさずにそう言うのは、見栄かもしれない。
「もちろん、君にも謝罪するよ。すまなかった。ルイズ、君は『ゼロ』などではない。今まで馬鹿にして悪かった」
「バカ、私に謝ってどうするのよ」
 肩をがっくりと落としてルイズは「はぁ」とため息混じりにそんなことを言った。
 ギーシュはルイズの反応が理解できない。
「全く、私が何の為に戦ったと思ってるのよ?」
「それは・・・・・・もちろん名誉の為だろう?」
 ギーシュはルイズを『平民』と呼んだ。それは許されがたい侮辱だ。魔法を使えない『ゼロ』だと馬鹿にしていた。
「違うわよ、私は守るために戦ったの。いい? あんたが謝るべきなのは三人。あのケティ、だっけ? その一年生。あんたが裏切ったモンモランシー。そして、あんたが侮辱したシエスタ」
「シエスタ?」
633代理の代理:2010/04/29(木) 12:32:08 ID:dwNXbh03
――誰だ?

 『そういう関係』、もしくはケティのような準備段階の女性には心当たりが無い。第一、今ここで名前を出す意味がない。
 そもそもその女性がギーシュにどう関係があるというのだ。
「あんたが責め立てたメイドよ」
 一瞬、思考が停止した。
 ルイズの言っている事が本当ならば、この騒ぎは一人の平民の為に起こしたというのか。
 平民の為に、禁じられている決闘を行い、矢面に立ち、ワルキューレに立ち向かったのか。
「ギーシュ、私にこのシールド・オブ・ガンダールヴを向けられて、どう思った?」
「・・・・・・怖かったよ。自分の力の及ばないものが、こんなにも怖いなんて知らなかった」
 もちろん思い出せる。あの戦慄も、恐怖も手に取るように思い出せる。汗で濡れたシャツが、やけに冷たく感じた。
「模範的回答ね。次の質問よ。もしも、貴族に杖を向けられた時、平民はどんな風に感じると思う?」
 ここまで言われればギーシュにでもわかる。答えはたった一つ。
「怖い、だろうね」
「ええ・・・・・・きっと、怖いでしょうね」
 ルイズが軽く手を振ると、右手の『使い魔』は光の粒子を周囲に散らしつつ、一瞬でバラバラになり、やがて煙のように完全に掻き消える。ルイズの右手には杖だけが残った。ルイズは杖を収めながらギーシュに問いかける。
「ギーシュ、あんたはシエスタに杖を向けたわ。シエスタには何の非も無いにも関わらずにね。あんたは貴族の誇りをシエスタに向けたのよ。ギーシュ・ド・グラモン」
 ルイズはそこで言葉を区切り、一言ずつを噛み締めるように言葉を紡ぐ。
「『力』は・・・・・・貴族の誇りである杖は、守る為にある。傷つける為では無いわ。私の目指す『貴族』はそんなものでは、決して無い! だから大切な人が傷つこうというのならば、私は守る為に戦うわ!
 それが『力』を持つ者の義務であり、責任よ。・・・・・・貴方はどう思う? 『貴族』を、『力』を、『誇り』を、貴方はどう思う? 『青銅』のギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。考えるのは貴方で、答えを出すのも貴方よ」
 ルイズがギーシュの目を見つめ、そう聞いた。その視線はどこまでも真っ直ぐで、美しかった。
「・・・・・・決まっている」
634代理の代理:2010/04/29(木) 12:32:43 ID:dwNXbh03
――ああ、そうだ。考えるまでもないじゃないか。

 幼い頃に見た父の背中。その姿は今でも目に焼きついている。
国を、民を、家族を守る男の背中は大きく格好良かった。

「僕は・・・・・・僕は誰かを守れる貴族になりたい。手に届く範囲なんてことは言わない。大切な全てを守る、そんな貴族を僕は目指そう」
 ルイズの顔をしっかりと見据え、そう言った。それは宣言であり、誓いでもあった。
 夢物語かもしれない。尻の青い子供の理想論かもしれない。だが、だがしかし。
 その理想を追い求めずして、どうして理想に近づけるというのだ。
「なんだ。いい顔もできるじゃない、ギーシュ」
 ルイズはそう言ってルイズは微笑んだ。

「ミス・シエスタ!」
 今まで静観していた観客に向かって、大声を張り上げる。
 ギーシュはバカだが、愚かではない。そして、自分のしたことを認めないほどの恥知らずでも無かった。
「は、ハイ!」
 人混みが二つに分かれ、一人の黒髪のメイドに視線が集まる。
 食堂で注目を集めていたシエスタだ。その目立つ黒髪は何人もの人間の記憶に残っていたのだろう。
「今回の件は完全に僕に非がある。僕は自分の不都合を誤魔化す為に、君を傷つけようとした。それは決してあってはならないことだ」
 ギーシュには、ルイズが食堂で関わりを持とうとした理由がわからなかった。だが今ならばわかる。
 ルイズは、この目の前の少女を守ろうとしたのだ。
「本当にすまなかった! 許してくれ、とは言わない。だが、二度とあんなことを起こさないとグラモン家の名に誓おう!」
635代理の代理:2010/04/29(木) 12:33:10 ID:dwNXbh03
 ギーシュは勢い良く頭を下げた。
 貴族が平民に謝罪するなど、本来は有り得ない。だがそれでも、ギーシュは頭を下げた。貴族だろうと平民だろうと悪ければ頭を下げる。
 それは建前や面子云々を抜きにして、正しいことだと感じた。そんなことも分かっていなかった。
「そ、そんな! 頭を上げてください、ミスタ・グラモン! 私のような平民に頭を下げるなど・・・・・・」
 恐縮して、慌てた様子のシエスタが頭を上げるように促すが、ギーシュは頭を上げようとしない。
 そんなギーシュの様子を見て、観客たちは信じられないものを見たような顔をしている。
「いや、これは僕なりのケジメだ! 僕は君に杖を向けた。君を力でねじ伏せようとしたんだ。それはどんな理由であれ、許されるものではない!」
 ギーシュにだって誇りはある。自分でその誇りを蔑ろにするところだった。
 ルイズが、『ゼロ』と呼ばれてもなお誇り高くあろうとした一人の『貴族』が、ギーシュにそれを気づかせてくれた。
「・・・・・・ありがとうございます。いえ、これは違いますね。こう言うべきでしょう、私は貴方を『許します』、ミスタ・グラモン」
「しかし、僕は君に杖を向けた。傷つけようとしたんだ」
 あそこでルイズが止めなければどうなっていただろうか。ギーシュにもそれはわからない。わからないが、ロクな事にならなかったのは確かだ。
「私たちは平民です。あんな事は多くは無いですけど、珍しくもないんです。私は幸運にもミス・ヴァリエールに助けられました。だからもう、いいんです」そう言ってシエスタは儚げに微笑む。

――情けない。

 シエスタの言った通り、こういった事は珍しくは無い。『貴族』が『平民』を、『力』で押さえつける。実に有り触れた、悲劇にもならないただの日常だ。
 その事実にギーシュは腹が立つ。そしてほんの少し前まで、ギーシュ自身も『そんな貴族』だった。
 そして目の前の少女に、こんな笑顔を浮かべさせたのは自分なのだ。
「・・・・・・すまない」
 だが今のギーシュには歯を食いしばり、ただ頭を下げることしかできない。
 そんな自分が悔しかったし、情けなかった。
636代理の代理:2010/04/29(木) 12:33:49 ID:dwNXbh03
   5

「少しは目も覚めたようね。ちょっと見直したわ」
「ああ・・・・・・目を開かせてくれたのは君だよ。ミス・ヴァリエール、ありがとう」
 ルイズは魔法が使えなかった。もしもギーシュが魔法を使えなかったら、ここまで気高く在れただろうか。
 ギーシュの感謝を聞き、ルイズはしばらく呆気に取られていたが、頬を掻きながらこう呟いた。
「・・・・・・私は別に何もしてないわよ」
 それは、誰が聞いてもわかる照れ隠しだった。

「そ、それじゃ片付けて、先生への言い訳を考えましょう。食事の後の体操にしては少々やりすぎたわ」
 広場は散々な様子だ。ワルキューレの残骸に、ルイズのジャベリン。まさに嵐が通ったような有様だった。
「その前にルイズ。君に一つ、頼みがある」
「なによ?」
 これだけは済ましておかなければならないと思うのだ。
「僕を殴ってくれ、ルイズ。決闘はまだ終わっていない。僕はまだ『参った』とも言っていないし、杖を持ったままだ。・・・・・・それに」
「それに?」ルイズは首を傾げる。
「自分で、自分を殴るのは難しいからね」そして。
637代理の代理:2010/04/29(木) 12:34:23 ID:dwNXbh03
――そして、僕は殴られでもしないと目が覚めないだろう。

 痛みを伴わない教訓には、意味が無いのだ。
「本当にいいの?」念を押すように、ルイズが確認する。
「ああ、遠慮は要らない。思いっきりやってくれ」
 ギーシュがそう言い終わった瞬間。躊躇い無く、ルイズは右の拳で思いっきりギーシュをぶん殴った。女生徒から短い悲鳴が上がる。
 ギーシュは足に力を入れ、その場に踏み止まった。本当に遠慮無しのいい拳だった。
 殴られたのは初めてではない。父に殴られた事も何度もある。幼い頃に粗相をすれば母に打たれた。兄たちと殴り合いの喧嘩だってした。力なら、父や兄の方が強い。
「・・・・・・痛いな」
 だけど今までで一番痛く、最も心に響いた。
「あんた、やっぱバカね」
 そんな呆れたルイズの声も今はなんだか嬉しかった。
「ああ、自分でもそう思う。でも、これでようやく気持ちよく言えるよ。『参った』、決闘は君の勝ちだ」
 腫れた頬を手で確かめ、観客に向かって堂々と宣言する。これぐらいの見栄は張りたい。
「諸君! 今回の件、全ての非はこの僕にある! ミス・ヴァリエールは決闘に勝利し、自身の正しさを証明した! この結果に文句のあるものは、この『青銅』のギーシュが相手になろう!」
 そこまで言い切った後でギーシュはふらついた。観客から飛び出てきたモンモランシーが慌てて支えてくれる。
 魔力切れ、だ。限界の七体のワルキューレを作ったうえに、無理をして武器まで作ったのだ。もう精神力は空っぽだった。
「ギーシュのバカー!」とか「心配かけて!」とか「なんですぐに降参しないのよ!」だとか。散々文句を言われた。
 モンモランシーに支えられ、医務室に向かう前にルイズに声をかけられた。
 その言葉を聞いて、ギーシュは呆気に取られる。

――まったく・・・・・・反則だよ。

 何かと思えば、ルイズはこんなことを言ったのだった。
『ギーシュ、あんたはバカだけど、謝った時の顔はちょっと格好良かったわよ?』
 そう言って微笑むのだ。ルイズに決闘で勝てなかった理由をギーシュは思い知った気がした。
 気づけばギーシュの顔にも自然と微笑みが浮かんだ。腫れた頬が痛かった。
638代理の代理:2010/04/29(木) 12:36:22 ID:dwNXbh03
諸君、私は王道が好きだ。
と、言うことで七章終了です。今回は今までで最高の量になってしまいました。
ちらほらと支援や応援が頂け、作者としては大変嬉しく思っています。
期待に答えることが出来るように頑張っていきたいもんです。
今回、初めて《P.V.F》をぶっ放したのですが、やはり深見先生のあの濃くも丁寧な描写には遠く及びませんね。
書いていて色々と不満の残る感じになりました。万分の一でも雰囲気が伝わればいいのですが。
ギーシュの見せ場も何とか作りましたが、なんだか不自然かもしれない。
wikiの方で加筆修正とかもするかもしれません。
では、今回はこの辺で。


ここまで、代理終了
639名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 14:00:51 ID:wR4csNSr
パラベラムの人乙です
しかしイド・アームズでこれならエゴ・アームズはどんな化物銃になるのやら
フーケやワルドの身が案じられる
640名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 15:47:56 ID:XAsHG17q
殺し屋1のジジイを召喚したと思ったら、いつの間にか洗脳されて「殺し屋ゼロ」へと改造されるルイズ。
そして「ルイズによる平和の王都(ハイキョ)計画」により、次々と血祭りに上げられていく王宮の貴族たち。

『いや、いやいやいや! 姫様は友達よ、殺したくない!』
『……そいつは違うぞルイズ、こいつが一番の“いじめっ子”だ。友達のフリして陰でお前を馬鹿にしてたんだ』
『!!』
『殺せルイズ!親友面した裏切り者を爆殺しちまえ!』


カッキー組長に相当するキャラは誰かなあ…
641名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 15:55:26 ID:P1qZ6O7W
乙であります
誇り高いルイズは見てて気持ちがいいね
いつになるかわからないけどスペシャル・ショットの出番にも期待
642名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 16:14:08 ID:AxjFP1Gm
>640
ジョゼフ王「待っていた……お前のような変態を……」
643名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 17:35:18 ID:UqAi7Fcl
パラベラムの作者氏、乙であります。
ルイズも格好良いですが、ギーシュも男を上げましたね。
やっぱり野郎って生き物は、敗北から学んでナンボなんだなぁ。
644無口っ子倶楽部:2010/04/29(木) 18:39:56 ID:WoYnHeJB
大昔のネタをサルベージしてきた。多少アレンジを加えたが覚えてる人がいたらすごい。
 
 
ルイズの召喚した使い魔たちはタバサと卓についていた。
 
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
 
一人やってきた。
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」

副官「コーヒー9杯」
 
一服して……
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」

瑠璃子「タバサちゃん、電波届いた?」
ルリルリ「バカばっか」
645無口っ子倶楽部:2010/04/29(木) 18:42:48 ID:WoYnHeJB
さらに。
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」
岩崎みなみ「……」
エリザベス「……」
カイジ「……っ!」
 
で……
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」
岩崎みなみ「……」
エリザベス「……」
呂布(恋)「……」
カイジ「……っ!」


G13 「……」 ―・~
 
THE END
646名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 22:36:59 ID:7LzHMs8Q
ピアスの少年とキタローとたっちゃんとマヤと番長先生も追加で
あとエイス=ゴッツオ
647名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 00:48:01 ID:H0ZFcf/p
>>644-645
クラーク「何か喋れよ! 何がしたいんだ、お前らは!  俺は戦場でもこんな孤独を味わったことはないぞ!」

from.無口会議 二
648名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 00:52:08 ID:hyYXXFNh
刹那「・・・・ガンダム」
649名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 01:36:19 ID:nrz6UqyR
最近のカジマさんは喋るぞ!?
650名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 02:22:50 ID:l9mOPjnL
うむ……最近のではないがチャンと喋る作品もあるからなぁ
ユウ「ッ……ガンダム!? 敵に鹵獲されたのか?」
とか、ねぇ
651名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 10:39:50 ID:q5mXU8/O
ギレンの野望でレイヤー中尉との絡みがあるな
652名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 13:06:30 ID:1rRj8ovQ
ユウ・カジマとマスター・P・レイヤーか
何からの召喚と言うべきなんだろうな
653無口っ子倶楽部2:2010/04/30(金) 13:46:10 ID:zG2TAx7i
勝手に適当に続き作ってみた


そのころ、他の卓では。
 
シエスタ「あ、あのー、お茶がはいりました」
 
白雪みぞれ「……」
ミストバーン「……」
ヘカテー「……」
ぼーちゃん「……」
リシド「……」
ステラ・ルーシェ「……」
ディアス・フラック「……」
サイレンス「……」
セフィロス「……」

シエスタ「ご、ごゆっくり(な、なに? なんなの、この気まずくて重苦しい空気は!?)」
654名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 14:33:21 ID:hyYXXFNh
アムロ「あ、このパーツをこう調整したらガンダムの速度も上がるかもしれないな・・・」
カミーユ「カミーユが男の名前で何が悪いってんだ・・・」
ジュド―「リィナ・・・」
バナージ「どこかズレている」
マフティー「クェス・・・」
シーブック「貴族の飯を食ってるからってそんなに偉いのかよ・・・」
ウッソ「どうしてさ・・・どうしてさ!」
ドモン「この男を知らないか?」
ヒイロ「・・・・」
ガロード「ティファ・・・」
ロラン「ディアナ様は大丈夫だろうか・・・」
キラ「やめてよね、こんな紅茶で僕のお腹が膨れる訳ないだろ?」
シン「大した茶の淹れ方の腕も無い癖に・・・」
刹那「ガンダム・・・ガンダム・・・」


この中に入っていくのは苦行だな
655名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 17:01:38 ID:k++fjpIC
カミーユが召喚されてガンダになったらカミーユに惹かれる女が次々戦死していきそうだな
ラスボスはワルドで体から湧き出る謎の力に圧倒されて貫かれる
656名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 17:07:59 ID:vV1F7t91
むしろ東方先生を召喚しようぜ
素手でヨルムンガントを打ち砕き火石の爆発を握りつぶして消すの
657名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 18:50:39 ID:su5FdzZ0
絶賛停止中≫東方先生を召喚
658名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:33:47 ID:SnFg569+
クロス先の作品で明確な設定がない場合は独自の解釈してもいいのだろうか
659名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:48:17 ID:nzrH8FfL
そんなの時と場合だろ
そしてその時と場合な判断出来ない程度の把握しか出来てない作品は扱わないほうがマシ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:50:12 ID:L1G62K/D
天然戦士GからGOG(ゴキヴリ・オブ・ゴールド)召喚
二つ名がGのルイズになって、ますます孤立化してしまいそうだw
661名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:09:50 ID:dii+GyNT
G・・・
英雄に憧れた英雄のプロトタイプ
台詞が詩的を通り越して電波過ぎて
書くのが難しすぎる
無理
FFCCよりジェネシス=ラプソードスを召喚

そうだ、シド全員呼ぼう
T〜]V、T、アニメ作品まで
ルイズがハイウインドと雷神とファルシの奴隷
ジョゼフが12シドとOVAシド
テファがUシド(列車付き)
教皇がバロンの技師
元騎士と冒険家とブリ虫と黄色雨ガッパは途中の町に
そしてブリミルの正体はTシド
662名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:30:36 ID:pmUO6RVp
>>661
お前がFF1をやってないのはよく判った。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:45:35 ID:t2p0rJOV
「私を使い魔に?おーっほっほっほっほっ…面白い事を言うおチビちゃんね…ワタクシ」

ブ チ 切 れ ま す わ よ ?

FF11から連邦の黒い悪魔ことシャントットを召喚とか…
664名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:59:20 ID:dii+GyNT
>>662
GBA版もDFFも大好きですとも

FFTのシドとDFFシドが同一人物らしいとの話

そしてよくよく考えれば13シドって仮に呼んでもいつかシ骸になっちゃうね
665名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:02:21 ID:B0QVxwSs
現在投下よろしいか?
特に問題なければ二分後投下します。
666ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:04:34 ID:B0QVxwSs
 ルイズはデルフリンガーを構える。
彼女の前に立ちはだかるのはギーシュ、キュルケ。

「まったく、ゼロの癖に調子に乗るからだよ」
「本当、目障りなんだから」
「何よ、なによなによ! あんたたち、集団で! 二人がかりなんて!」
「仕方ねえだろ? 嫌われ者なんだから。俺だって、お前さんになんか使われたくなんかねえよ」

手元からの声。デルフリンガーの言葉に、ルイズは剣を睨みつける。

「そう睨むなよ。俺だけじゃねえ。お前さんみたいな無能に使われるなんてまっぴら御免だとさ、ザボーガーも」

 その言葉に周りを見渡すが、ザボーガーの姿はない。
 いつの間にか、被っていたヘルメットもなくなっている。

「ここ」

 キュルケの背後でマシンザボーガーに乗っているタバサ。

「何やってるのよ、貴女」
「ザボーガーは私がもらった」
「どうして!」
「だから、お前さんみたいな役立たずなゼロが嫌なんだよ、ああ、頼むよ。俺のことも早く捨ててくれねえかな」
「役立たず」

 モンモランシーがルイズを指さす。

「どうして貴女が、貴女ごときがあの、名門の三女なの?」

 使い魔たちがルイズを取り囲んでいた。
 サラマンダー、風竜、カエル、ジャイアントモール、バグベア、蛇、フクロウ、鷹、狼、大ムカデ……
 使い魔の先頭に立ち、糾弾するようにルイズを指さすのはシエスタだ。

667名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:04:54 ID:DcvpMJtb
この予告パターンは駄作の予感。
668ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:05:24 ID:B0QVxwSs
「みんな言ってます。貴女のようなゼロに喚ばれたザボーガーが可哀想だって」
「ミス・ヴァリエール、君はいつになったら魔法が使えるようになるのかね? ここまでの劣等生だとは、さぞや父上も母上もお嘆きだろうね」
「まあ、錬金もできないのですか。なんてことでしょう。このような生徒が誉れ高き魔法学院にいて良いのですか?」
「フライもレビテーションもできない? 冗談は止めたまえ。そのような貴族などいるわけがない。もし私なら、とっくに首を括っているな」
「我が学院始まって以来の問題児じゃな。まったく、困ったもんじゃ、魔法を使えない貴族になどパン一切れの価値もないと言うのに」

 シエスタが、コルベールが、シュヴルーズが、ギトーが、オールド・オスマンがルイズを詰っていた。
 ヴィリエが指を指して笑っている。
 マリコルヌが、ケティが、レイナールが。

「ゼロ」
「ゼロ」
「ゼロ」

 ルイズはたまらず駆けだした。行く先などない。ただ、この糾弾から逃れたい。
 誰かがその手を掴む。
離して、と言いかけたルイズは掴んだ手の主に気付く。

「……姉さま」

 ヴァリエールの長女、エレオノールがルイズの手を掴んでいた。

「姉さまっ!」
「貴女、いつまでヴァリエールの名を辱め続ける気?」
「え」
「落ちこぼれは必要ないの。そして貴女には、ヴァリエールの名は不釣り合いよ」
「姉さま……」

 震えるルイズに触れる柔らかい手。
 見上げたルイズは、もう一人の姉に気付く。

「ちい姉さま!」
「ごめんなさい。そこをどいてください」
669ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:06:18 ID:B0QVxwSs
 次女カトレアが、ルイズの肩を横へ押す。

「姉さま、お久しぶりです」
「あら、カトレア」
「……ちい姉さま?」

 カトレアは、初めて気付いたようにルイズを見た。
そして微笑み、

「ごめんなさい、どなたでしたかしら?」
「ちい……」

 畳みかけるように、

「私には、魔法が使えなくとも立派な貴族になろうとする妹ならいます。けれど、力に溺れて自分を見失うような情けない妹なんていません」

 けくっ、とルイズの喉が鳴った。まるで、瞬時に締め付けられたように。

「エレオノール、カトレア」
「父さま、母さま」

 よく見知った別の二人へと、ルイズを無視して二人は駆け寄る。
 後から来た二人も、当たり前のようにルイズには目もくれない。

 ……そっか
 ……私はもう、ヴァリエールじゃないんだ
 
 周囲が黒く染まっていく。

 ……何もないんだ
 ……友達にも、姉さまにも、父さまにも、母さまにも、ちい姉さまにも……
 ……デルフリンガーにも、ザボーガーにも……
 ……もう、見捨てられちゃったんだ
 ……私、貴族になれなかった……

 黒い景色に塗り込められていく自分を、ルイズは何処か遠い視点から見つめていた。

670ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:07:11 ID:B0QVxwSs
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 おい。嬢ちゃん。
 嬢ちゃん。

「嬢ちゃん!」

 ルイズは身を起こす。
 ここは、自分の部屋。自分のベッドの上。

「手酷くうなされてたみてえだが、大丈夫かい?」
「……デル……フ?」
「おう。どした。まさか俺の名前を忘れたか」
「そこにいるの?」
「……また、夢か」
「……また……同じ夢」
「気にすんな。俺は嬢ちゃん見捨てる気ねえよ。キザ坊主だって、赤毛の姉ちゃんだって、青髪のちびっ子だって、くるくる頭だって一緒だと思うぜ。少なくとも、あれから反省してんだろ?」
「怖いの。私、怖いの。また、あんな風になることが」
「もうならねえよ。同じ間違いは二度しないだろう?」
「わかんない……わかんないの。魔法も使えない私がザボーガーを操って、また、自分の力を勘違いして……」
「嬢ちゃん。ザボーガーを召喚したのは嬢ちゃんだし、ガンダールヴのルーンの力が使えるのも嬢ちゃんだけだ。それは間違いねえんだ。嬢ちゃんに力があるのは現実だ」
「でも、でもっ!」
「嬢ちゃんが間違えたのは力の有無じゃない、力の使い方だ」

 しかし、言葉だけで納得できるものではないだろうということも、デルフリンガーは気付いていた。
 キュルケたちから聞いた、自分がここに来るまでのルイズの境遇。そして、自分が来てからフーケとの戦いがあるまでのルイズの様子と、その後の様子。
 魔法が使えないからこそ、貴族としての矜持を求め、実践していたルイズ。魔法を使えることで貴族になるのではない、その精神こそが貴族なのだと主張していたルイズ。
 その彼女が、ザボーガーという力を手に入れて増長していた。しかもその力は、格下であるはずのドットメイジにあっさりと敗れてしまった。
 屈辱と呼ぶことすらできない。まさしく無様だったのだ。
 己の言葉や信条すら裏切り、かりそめの力に酔いしれた痴れ者。
 ルイズの心は、自己嫌悪で悲鳴を上げているのだ。
 魔法が使えなくても友人はいた、優しい家族もいた。その全員を自分は裏切ったのだ。信頼を、土足で踏みにじったのだ。
 どうやって、皆に顔を合わせればいい。どんな顔を見せればいい。
 自分の望んだ貴族の姿に自ら背を向けて、どうすればいい?
 踏み外した自分は、どうやって戻ればいい?
 何もなかったような顔をして戻る?
 ああ。きっと認めてくれるだろう。キュルケも、タバサも、モンモランシーも、ギーシュも。他の連中は、どうせそもそものつきあいがたいしてない。
 だけどそれで良いのか。とルイズは自分に問う。
 彼女たちが認めてくれたとしても、自分は自分を認められるのか。
自分は、自分を認めなければならない。貴族の精神を、認めさせなければならない。
 だが、どうやって?

671ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:08:00 ID:B0QVxwSs
 個人が悩んでいても、組織は滞りなく進んでいく。時間は通常通りに過ぎていく。

 日が沈み、月が出て、日が昇り、朝になる。
 悩んでいても、空腹は訪れる。
 食堂へ。
 いや、部屋を出ることすら、ルイズは躊躇っていた。
 キュルケと偶然出くわしたら? どうする? 部屋は目の前だ。あり得ない話ではない。
 だけど、空腹が無くなるわけではない。
 結局ルイズは、マウスカーに手紙をくくりつけて食堂へ走らせることにした
 しばらくすると、シエスタが食事を運んでくる。

「大丈夫ですか? あの、ミス・アンナマリーに連絡しましょうか?」

 ミス・アンナマリーは、学院医務室付きの水メイジである。学院内ではトップクラスの水メイジで、コルベール、ギトー、シュヴルーズと並ぶ、学院内四大属性の代表であるらしい。
 マウスカーに付けた手紙には、体調不良だから食事を部屋まで運んで欲しい、と書いていたため、シエスタが心配しているのだろう。

「ありがとう。でも大丈夫だから安心して、シエスタ」
「はい」
「あ、それから、できれば今日は昼も夜も食事を部屋に運んできて欲しいのだけれど」
「かしこまりました」
 
 下がろうとするシエスタの背後に、ルイズは見知った人物が近づいてくるのを見つける。

「ルイズ!」

 キュルケとタバサの姿に、ルイズは慌ててシエスタを追い出すと扉を閉めた。  
 立派な引きこもりの完成である。

「何やってんのよ! ルイズ、開けなさい! こんなドア、吹き飛ばすわよ!」
「ザボーガー! ドアの前に立って! 誰も入れちゃ駄目よ!」

 ザボーガーを強行突破することはさすがのキュルケにもできない。部屋へ入るだけなら他にも手はあるのだが、そこまでの強硬手段は躊躇われるのだ。
672ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:08:50 ID:B0QVxwSs
「ルイズ、私は話がしたいだけだから。私が駄目なら、タバサでも、ギーシュでも、モンモランシーでもシエスタでも。とにかく部屋から出なさい!」

 ルイズは無言でヘッドに潜り込むと、毛布を被り耳を押さえ、目を閉じる。
 わかっているのだ。いつまでもこんな事はできないと。
 でも、今は駄目だ。自分を自分に証明できない今は駄目だ。胸を張って、背筋を張って、キュルケたちに向かい合いたい。
 だから、今は駄目なのだ。
 せめて、証明する方法を見つけるまで。思いつくまで。 

 翌日には、コルベールとアンナマリーが姿を見せた。
 話をするのはコルベールだけで、アンナマリーは教師といえど女生徒と二人きりで部屋にいるのは差し障りがあるとの判断で付いてきたらしい。

「まあ、そんな甲斐性がこいつにあれば、とっくに嫁を見つけて子供の二人もこさえてるだろうけどね」

 カンラカンラと笑う女傑に、ルイズもつい苦笑する。
 苦笑を通り越して毒気を抜かれた表情で、それでも優しくコルベールは尋ねた。
ただ一言。

「話せるかね?」と。

 ルイズは理解した。この人は、あの日の騒動を知っているのだと。そして介入なしに解決できることを望んでいる。つまりは、ルイズが自ら立ち上がることを望んでいるのだと。
 それを怠慢だとは思わない。それは信頼であり、試練だとルイズは考える。
 だからルイズはこう答える。

「話す必要はない。そう思わせるように努力します」
「そうか。では待つとしよう。院長には私から言っておく」
「ありがとうございます」

 立ち上がり、コルベールはふと立ち止まった。

「この学院に、アンリエッタ姫殿下が行幸なされることが正式に決まったよ。ゲルマニアご訪問のお帰りだそうだ」
「姫殿下が」
「歓迎式典の準備で皆が忙しくなるけれど、君を放置するわけではないことをわかっていて欲しいと思ってね」
「勿論ですわ」

 コルベールの背中を見送り一人になったところで、ルイズは思い出に耽る。
 自分が、幼少の頃に姫殿下の遊び相手を務めていたこと。ヴァリエールの家柄とはそういうレベルなのだ。
673ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:09:53 ID:B0QVxwSs
「ルイズは騎士になるの」
「はい、姫さま」
「悪いドラゴンを征伐に行きなさい」
「おー」
「オーク鬼を追い払うのです」
「おー」

 そうだ。私は騎士なんだ。
 思い出してルイズは笑う。
 アンリエッタの騎士。トリステインの秘密騎士。それはルイズ。
 ドラゴン退治を命じられてはトカゲを追いかけて、オーク鬼征伐を命じられると衛兵に悪戯を仕掛けに行く。
 王女アンリエッタと騎士ルイズ。二人の遊びはいつもそうだった。
 そして今も――

「お久しぶりですね、秘密騎士ルイズ」
「はいっ。姫殿下」

 しゃちほこばった儀式のように堅く名乗った二人は、言い終えるやいなや、どちらからともなく笑い始める
姫殿下行幸予定前夜、そっとルイズの部屋に忍び込んだ影は、辺りの様子を窺うとフードを外して正体を見せる。
 それこそ誰あろう、アンリエッタ姫殿下ご自身であったのだ。
 再会を喜び合い、互いに十年前にでも戻ったかのように笑いあう。そこにいるのは自己嫌悪に傷ついた貴族でも、務めに疲れ果てた王族でもない。仲の良い二人の少女だった。
 ルイズと会って、心ゆくまで語りたい。だからこそ敢えて、一日遅らせた日程で訪問すると学院には告げ、実際は一日早く姿を見せたのだ。
 一応極秘裏のうちに、最小限の護衛はついてきている。その一人は、アンリエッタの後ろに控えていた。
 髪を短く切った、目つきの鋭い銃士が一人。アンリエッタにより特設された女王付きの銃士隊の隊長である。
 魔法を使えずに身体を鍛えていたルイズの影響からか、アンリエッタは個人の戦技としての魔法には重きを置いていない。限定された状況での戦技ならば、訓練された平民がメイジを越えることは充分に可能だと考えている。
 アニエスもまた、その考えのもとに選ばれた元平民である。

「この部屋の様子を見て安心しましたか? アニエス」
「とりあえずの所は。しかし、どうしてもこの者と二人きりになりたいと仰せられるなら、窓は閉め切っていただきたいのです」
「狙撃されるとでも?」
「弓を使うメイジであれば、空中からでも狙撃はできるでしょう」
「わかりました、貴女は外で待っていなさい」
「失礼いたします」

 出て行くアニエスを目で追い確認すると、アンリエッタは改めてルイズに向き直る。
 そして、ザボーガーへと。
674ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:10:39 ID:B0QVxwSs
「あれが、噂に聞くルイズのゴーレムなのですか?」
「はい。ザボーガーと申します」
「ザボーガー。あのゴーレムとともに、フーケを捕らえたと聞きましたよ」
「いえ、私とザボーガーだけではありません。友人たちの助力の結果です」
「あら、ルイズも謙遜するのね」
「姫様……」

 半目でアンリエッタを睨むルイズ。

「どういう目で私を見ていたんですか?」
「いつも二人分用意されているおやつの半分以上を一人で食べてしまう人ね」
「うう」

 姫の分までおやつを食べていた常習犯に反論はできない。
 美味しかったんだから仕方がない、という言い訳も無意味である。
 そんなこととは関係なく、二人の話は延々と続く。小さな頃の話、近況、学院の噂、王宮での出来事。話すことはいくらでも湧いて出てくるようだった。
 しかし、ルイズはそこはかとない違和感を感じていた。
 アンリエッタの態度がどこかおかしいのだ。
 まるで、何か隠し事をしているかのように。一国の姫であるアンリエッタが、ルイズに対して何を隠しているというのだろうか。
 いや、隠しているのとは違う。これは、何かを言いそびれている。
 言えないことがある。
 それはきっと、アンリエッタのプライベートに関すること。
 国事に関することであれば、言えないのは当たり前である。その葛藤が表から見えることはないだろう。
 仮に国事だとしても、それはアンリエッタのプライベートに深く関わりのある内容なのだろう。

「私は無力かも知れませんが、話を聞くことくらいなら、口を噤んでいることくらいならできるつもりです」
「ごめんなさい、ルイズ」

 心配させてしまった友人として、無力な自分を見せてしまった王族として、アンリエッタは謝った。
 そして一瞬、ドアに目を向ける。ドア一枚向こうには、アニエスが待機しているはずだった。

「私はゲルマニア皇室に嫁ぐことになります」
675ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:11:27 ID:B0QVxwSs
 ルイズは絶句した。
 結婚。それ自体に不思議はない。自国の王女が、そして友人が結婚するのだ。これがゲルマニアでなければ素直に祝福することができただろう。
 それがアルビオンであれば、二人は手を取り合って踊っていたに違いない。アルビオンの王子であるウェールズ皇太子とアンリエッタとの互いの想いは、ルイズもよく知っている。
 しかし、しばらく前から政情不安を抱え、きな臭い噂だけが聞こえていたアルビオンである。今では反乱軍『レコンキスタ』によって王族が各所から撤退を余儀なくされている、とも聞こえているのだ。
現アルビオン王軍は敗れる。という意見が大勢であった。そのため、アルビオンを手中に収めるだろうレコン・キスタに対抗するためにゲルマニアと結ばなければならない。それがアンリエッタ婚姻の一因でもあるのだ。
 嫁ぐこと自体に不満がないと言えば嘘になる。それでもアンリエッタは、嫁ぐのは王族として正しいことだと自分に言い聞かせている。皇太子への想いを封じ込めようとしている。

「ですが、一つだけ問題があります」

 かつて、アンリエッタがウェールズ皇太子に送った恋文。
 それがレコン・キスタの手に渡ったとすれば? それを黙って手元に置いておくとは考えられない。必ずや、その存在を公のものとするだろう。
 果たして、ゲルマニアの皇帝はそれをどう思うのか。
 若さ故の過ちと笑い飛ばすか、不実だと王女を詰るか。
 それだけで即決裂とはいかないとしても、アンリエッタの、ひいてはトリステインの発言力は極端に減じられるだろう。
 それは対等の同盟ではない。傘下であり、属国への道である。当然、それをトリステインが望むわけもない。
 ではどうする?
 恋文を取り返す。どうやって?
 ウェールズ皇太子に会いに行く? 反乱軍に包囲された王軍に接触しろと?
 それが可能なら、恋文どころの問題ではない。アルビオンの王族を救うことができるだろう。
 しかし、手紙を取りに行けなどという命令に意味はない。ただ、死ねと命ずればいい。
 それは今の状況では同義だ。

「ウェールズ皇太子は聡明な御方。恋文は火にくべるなりして始末してくださっていると信じます」

 間に合わなければ?
 皇太子のアンリエッタへの気持ちも嘘ではない。己の心を鼓舞するであろう手紙をできるだけ手元に置いておきたいとしても、その気持ちを責めることなど誰ができようか。
 
「私にも覚悟はあります。どのような責も、この身一つの上でなら甘んじて受けましょう」

 仮に手紙が始末されていたとしても、自分のかつての想いが消えるわけではない。それに関して責められるならば、その責めは受けるしかない。かつての自分の気持ちに嘘は付けない。
 できることはただ、嫁いだ後の自分が決して皇帝を裏切らないという誓いだけ。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:23:16 ID:9qVB5Ca5
次スレ……
容量……
677名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:44:35 ID:N9OsRt0x
俺に出来るのは支援だけだ。誰かスレ建てヨロ。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:50:55 ID:vp9gaWXu
んじゃま、適当にチャレンジしてみよう
679名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:53:44 ID:vp9gaWXu
ほい、建立完

あの作品のキャラがルイズに召喚されました part274
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1272635567/
680名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:01:30 ID:kZJeLJO7
容量的にギリギリだが
代理行きます

564 ゼロと電流 第十話 [sage] 2010/04/30(金) 21:16:31 ID:mouzRtbw Be:
20以下にしていたつもりでしたが、規制されてしまいました。
申し訳ありませんがどなたかお願いできませんか?
681名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:02:11 ID:kZJeLJO7

「それで充分なのかも知れませんけれどね」

 ゲルマニア皇室が望むのは、アンリエッタという女性ではない。トリステイン王族という血筋なのだ。
 仮にアンリエッタの心を得ることができなかったとしても、その血統を手に入れることさえできれば望みの九割は達成したに等しいのだから。

「そんな……」

 ルイズに理解できないというわけではない。自分にしても、魔法を早々に諦めていれば領地に戻って必要な学問を学び、何処かに嫁ぐことになっているだろう。
 それでも、ここまで意に添わない婚姻をさせられることはあり得ない。ルイズはトリステインでもその名の知れたヴァリエール公爵家の三女なのだ。
 父はその名にかけて良縁を捜すだろう。それは十分に可能な話なのだ。例えゼロと揶揄される娘であっても、ヴァリエールと姻戚関係となることを望むトリステイン貴族がどれほどいるか。
 そして魔法が使えないという一点さえ除けば、ルイズは優秀な頭脳と貴族の誇りと優しさを兼ね備えた可憐な美少女なのだ。
 その一方、アンリエッタが自分の望む相手と結ばれるためには、その地位は高すぎた。高すぎる地位は、逆に枷となる。自由意思など、高すぎる地位に属した義務の前では雲散霧消するのだから。
 だから、今のルイズには何も言えない。いや、言うべき言葉などない。アンリエッタに覚悟があるのなら、その覚悟を認めることだけが今のルイズにできることなのだ。
 それ以上の言葉を持たないルイズに、アンリエッタは嬉しそうに言った。

「いいのですよ、ルイズ。私はトリステインの王族として生きるだけです。誰にも恥じることなく、我が国のために」
「姫殿下、私は秘密騎士です」

 突然のルイズの言葉に、それでもアンリエッタは頷く。

「せめて今夜は、あの頃のようにしてください。秘密騎士ルイズに、御命じください」
「手紙を取り返せと?」
「ええ」

 ルイズは大仰に、下手な大道芝居のように跪いた。

「姫殿下の秘密騎士として、手紙を取り返して見せますわ」
「ありがとう、ルイズ。その言葉だけで、私には充分よ。貴女のようなお友達がいるトリステインを、私は決して忘れません」
「姫殿下」

 二人は再び、ただの幼馴染みとなってお喋りに興じ、笑い、そして泣いた。
 お休みの挨拶と共に、再び王女に戻ったアンリエッタはアニエスを従えて去っていく。
 また明日、次は公式に会いましょうとの言葉を残して。

 翌日、歓迎式典の中にルイズの姿はなかった。さらにルイズの部屋からは、ザボーガーの姿も消えていた。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:02:53 ID:kZJeLJO7
566 ゼロと電流 第十話 [sage] 2010/04/30(金) 21:19:08 ID:mouzRtbw Be:
以上、第十話でした。
 焦りのルイズさん、アルビオンへ

 ギーシュに続いて姫殿下改造。

 電人ザボーガーの元世界でのパートナーは「秘密刑事」大門豊


おまけ 
 ♪あなたは鋼の機械でも 赤い血潮が流れてる
  あなたは私の使い魔なのよ
  挑む相手はレコン・キスタ 虚無を騙ったレコン・キスタ
  命の限り闘うの
  私が喚んだ 電人 電人ザボーガー
683名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/01(土) 14:50:58 ID:0MZkmMRC
支援
>>663
博士なら問答無用で魔法ぶちかましてくるなw
684名無しさん@お腹いっぱい。
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
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                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
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