【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.28

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1名無しさん@お腹いっぱい。
アニメでも大活躍し、過去リプレイ作品で異世界慣れした我らが“下がる男”柊蓮司……
そんな彼や他の登場人物達がもしも○○の世界に飛ばされたらor○○キャラが第八世界にやって来たら…?
そんなナイトウィザードのifストーリーを語るスレです。

■ 注意事項 ■
・不要な荒れを防ぐ為に、sage進行で御願い致します。
・冥魔(荒らし)に反応するあなたも冥魔です、スルーしましょう。
・次スレは>>975を踏んだ方、若しくは475kbyteを超えたのを確認した方に御願い致します。
 また、重複防止の為に次スレを立てる人は立てる前に宣言を御願い致します。
・荒らし、カッコ悪い。
・Q.ナイトウィザードって○○のパクリ?
 A.とりあえずほぼ全て何かのパクりです。初版が2002年3月発売なのでそこから判断してください。

■ SSを投下する方へのお願い ■
・NWキャラをクロスさせたい作品世界に送り込むも良し、
 逆にクロスさせたい作品のキャラをファー・ジ・アースを中心とした
 きくたけワールドに招いてNWキャラ達と掛け合い活躍させるも良し、
 SS創作者(GM)の想像の赴く儘に楽しめる物語を書き込んで下さいませ。
 但し、NW関連スレと云う事で片方は「ナイトウィザード」で御願い致します。
・801等、特殊なものは好まない人も居るので投下する場合は投下前にその旨を伝えましょう。
・各作品の初投下時は、クロスする作品名を最初に御願い致します。
 そうすれば読者も読み易いでしょう。
・SSの内容が18禁の場合は地下スレ(検索ワードは「卓上ゲーム」)へ。
・NW側からのホストキャラはNW公式作品に登場しているキャラを主軸として、
 SS創作者オリジナルのキャラをストーリーに絡める場合はあくまで脇役としての
 立場で参加させて下さいませ。
・御互いの作品を尊重しましょう。一方的なクロスは荒れる原因ですよ。

■前スレ

【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.27
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1262277234/l50

■関連スレ
ナイトウィザード-NightWizard!-セッション45
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1261397730/l50

きくたけセブンフォートレスナイトウィザード101
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1265951282/l50

■関連リンク
http://www.fear.co.jp/nw/(原作ナイトウィザード公式)
http://www.nightwizard.jp/(TVアニメ公式)
http://www42.atwiki.jp/nightwizard/(アニメ版まとめWiki)
http://www32.atwiki.jp/nwxss/(過去SS保管庫)

■非クロス作品の場合は、卓上ゲーム板の専用スレへの投下も検討してください。

卓上ゲーム板作品スレその5
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1248526786/l50

■投稿規制時の代理投下、クロススレに投下するには微妙なネタや、荒らし等の緊急時は避難所へ。

ナイトウィザードクロスSS避難スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12795/1244722087/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 23:37:24 ID:77nCgbmW
>>1乙。
即死回避も含めてネタフリー。

実は去年の今日がレギュレーション『学園世界』発足の日だったんだよな。<vol.14 >>659
そんなこんなで1年も続いた『学園世界』について思うところとか好きな作品とか語ったらいいんじゃねぇかな!

個人的には最初らへんのgdgd感から考えるにこんなに続くと思ってなかったんだぜ!
そんな自分が一番好きなのは騒動日程。あとメガネはメガネ。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 23:51:47 ID:XG5k/7HW
>>1
学園世界は、学園と言う縛りはありながらも、懐の広さも併せ持ってたからね
ごった煮好きの俺としては大変たのしゅうございましたし、これからもよろしくと言う感じ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 00:18:31 ID:WPhw3uD/
執行委員、騒動日程、影殻守留と好きな作品ばっかりで絞りきれんww

とりあえず鐘の字は俺の嫁。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 00:24:20 ID:DmF7flRR
>>4
馬鹿な、お前はねこさんと血で血を争う戦いをしてでも鐘の字を嫁にするというのか……(わなわな)っ!
まぁ、ノーチェは俺の嫁なわけですが。

あと好きなのっていうと、学園世界のSOS団員が好きだなぁ。正確に言うと休日の過ごし方?
6名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 06:18:02 ID:bZwkKwQ0
学園世界も結構息が長いなあw

別の何かに(勝手に)流用しようかなあとか思ってるが
さすがにまずいか。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 14:32:48 ID:P0ABs2dy
>1乙
8名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 19:24:02 ID:NXG1RYTW
うちの卓だと学園世界を狭界扱いでステージとして
割と長い事使ってたりするなぁ

あと、俺はろんぎぬす店主の常連!と叫んでみるテスト
9名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 23:14:51 ID:WPhw3uD/
>>6
いいんじゃね?
架空戦記のネタにしてみるとか、考えてた馬鹿がここにいるしw
10名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 23:18:00 ID:RLLbCK/8
流れぶった切るようで悪いんだが
バビル2世はナイトウィザードとクロスさせようとすると
どんなクラスになるんだろう?
転生者なのか異能者なのか・・・
あの人は単に制服着てるだけだから学園世界にはあれだが
11名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 23:20:15 ID:YbfTOBet
>>10
経由して両方のLv持ってるとかにすりゃいいんじゃね?正直バビル2世が1Lvってこたあ無いと思うしw
12名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 00:18:10 ID:1V6g1IDi
まあ転生者は外せないな、三つのしもべ的に考えて。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 21:47:36 ID:1qC3XEqJ
ついでに大いなるものも入れるとビッグファイア様的な人にもなれるぜ!
14名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 22:29:45 ID:Yx5bC3p9
記憶や知識の移植だけじゃ強化人間にはあてはまらない・・・よね?
15名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 22:46:22 ID:CptlI3Fw
あいつはもっとおぞましい何かだと思うww
16名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 11:51:22 ID:dn4oMXMH
ふと、迷宮商店街と言うネタが頭をよぎった。

迷宮商店街。それはラビリンスシティの一角に作られた、無数の入口が立ち並ぶ場所。
その入口は、魔王が(本人の許可なしに)選んだ異世界の『特別な店』に続いている。

HOLICの店、ザールブルグのアトリエ、地獄堂、BARレモンハート、サルトフィニート、ガネーシャ…そんな、一風変わった店に訪れる、奇妙な客人たち。
どこからやって来たのかと首をかしげつつもウィザードや魔王と言った来訪者に応対する、店主・店員たちとの奇妙な交流みたいな感じ。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 12:21:01 ID:F1ZfPm1y
アイデアは悪くないけど、SSとしては正直わざわざ多重クロスにする点を生かせなさそうな気が…
18名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 22:46:18 ID:wWrxtDrm
「だんじょん商店会〜伝説の剣はじめました」って昔のPSゲームが、勇者とか魔王とかやってくる街でお店をやるゲームだったな。
一般冒険者とか町の人から買い取ったアイテムを陳列してると勇者とかヴァンパイアハンターとか魔王候補生とかバンパイアとかが買い物にやってくる。

マジックリッチな世界のキャラが売りに来たものを魔法が珍しい世界のキャラに高値で売りつけるだけで良い儲けになるな。
ドラクエ9勇者「すいませーん、川崎ロッカーで溜め込んだメタスラの剣買って欲しいんですけど。えー、ダブついてるからってそんな値段?…仕方ない、それでいいです」
 ドワーフの赤熊さんに頼んで錬金してメタキンの剣に
ギルガメッシュさん「おお、これはすばらしい。400000ギル?買った!」

こんな感じで。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 23:00:43 ID:1DNcr5/0
>>18
ガルフ姐さん自重

だがエリー嬢あたりは実に幸せそうなので、それはそれでありかもしれんww
20名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 23:15:44 ID:5j70l360
>>18
ご存知かもしらんが、そのゲームのデザイナーさんは
TRPG方面でも有名な人だぜ。

そういえば昔、RPGマガジンでアイテム関連の特集があったときに
「いろんなTRPGの世界を渡り歩いている二人組」の話があったなあ。
ライトファンタジーの感覚でクトゥルフRPGの魔道書を読んじゃうとか
世界観の違いを忘れて失敗ばかりしている、って設定だった。
2118:2010/03/01(月) 00:41:15 ID:eVY1u3ys
>>19
や、だんじょん商店会には赤熊さんもフンバルトさんもカールスさんも出るですよ。
赤熊のところに「王者の剣」と「ミスリル鉱石」を持ち込むと「伝説の剣」を作ってくれます。

>>20
ささりょー絵でジャケ買いした俺に隙はない

逆にクトゥルー系の名前がどうでも良いアイテムとかに使われてる作品もあるよね。
テイルズオブシリーズの武器:本にネクロノミコンとか。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 01:53:06 ID:JwKqKX/n
多分一番扱いの悪いのはダゴン
ほとんどがただのタコモンスターじゃねーか
23名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 11:01:41 ID:sjfOqsy3
「たのみこむ」でリメイク希望が出てる……と、デザインの人がゆってた。


>>22
何年か前の戦隊でラスボスになってたような。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 20:59:26 ID:L2fqd4Ez
>>23
あれはオリジナルのペリシテ人の神の方だろ
25名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 23:50:55 ID:nYnDyZja
どうでもいいから、そろそろスレタイを確認しような
26名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 00:26:15 ID:fyQKSyII
前スレでやるべし
埋まってないから
27名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 01:23:43 ID:giB5+YsQ
学園世界の極上生徒会総会ってどんなんだろう。
各学園の生徒会長と役員が一同に揃うのは壮観だろうな
28名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 20:25:16 ID:H+v+yCJu
そういや夜ねこさんの話では極上の輝明学園代表はくれはなんだっけ?
29名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 22:08:31 ID:H7hNEMwU
>>27
なんかでっかい会議場があるんじゃなかったか?<極生
円か扇型の方が会議はしやすいんじゃないかと思うけど、そのへんは決まってなかったと思われ

>>28
そんな描写があったよーな気もする
理事長の代理なのになんで生徒会がメインの極生に代表でいるのかは謎だが。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 22:33:36 ID:BOT0B0sC
>>16
ソフトハウスキャラの
「ブラウン通り三丁目」を思い出した
そーいや何気にベルさまってゴールドアイだな(マテ
31名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 22:36:15 ID:YE+l83Ie
八坂のあっきーは仕事しなそうだから、くれはに厄介ごと押しつけ……じゃねぇ、理事長代行に代理頼んだんじゃね?
もしくは普通に八坂が輝明学園の代表で、くれはは理事長とは別に極生の特別役職についてるか。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 00:00:47 ID:AzxydifT
GSの愛子も極生だったっけ?

各学校の生徒会以外にも重要なキャラは極生っぽいな?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 00:22:18 ID:ATIzDSaV
極上生徒会の会長って誰なんだろう。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 11:41:56 ID:sCsaLzAm
>33
かわいそうに……灰を吹き散らされちゃって……(つД`)
35名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 22:54:58 ID:96o8bHML
ふとサンデーを読んで思ったが
回想時点でしかないが
綾崎兄と柊が行動を共にすることで
両者の行動が化学反応的に増大するとしたら
それこそ世界の危機レベルではないかと(ryu
36名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 00:38:24 ID:W7SsCrSC
>>33からちょっと連想した事だけど……

星鐵学院の三郷雫、
箱庭学園の黒神めだか、
陣代高校の林水敦信、

学園世界最強の『生徒会長』を決めるとしたら、誰になるだろう……?
戦闘力のほか、統率力とか政治力とか情報収集能力とかも含めて
37名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 01:04:36 ID:53h1PNxB
>>36
その三人の中に最強がいるとでも?

……って冗談はともかく。
結局そのへんは執行委員誰が最強論議とかと同じく「状況によって変化する」としか答え出ないと思う
五段階複数項目なパラメータ式にした方がまだしも話はスムーズにいく気がするけどね?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 01:09:20 ID:tPLO00Rs
そして多分、「最強」に興味なさそうだからなぁ、その人達
39名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 01:19:44 ID:UwT54Jve
そら、VIP高校の戦う生徒会長だろう
http://www.tsunbaka.com/
40名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 01:27:54 ID:coMjzUzC
巨大学園をまとめている実績と武力で考えると、リオフレードの生徒会長がトップじゃなかろうか。
蓬莱学園の生徒会長は半年持たせたハッタリが未だに語りぐさになってるようなポストだから特定キャラの名前を上げにくい。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 02:44:51 ID:Jt5IRRry
>>38
極上生徒会の頭さえ潰せばどうとでもなると思って執行委員がいない時に会議強襲したらすごい勢いで返り討ちにあったでござるの巻

…ってネタなら考えたことがある。
実際生徒会長って戦闘能力が高い人割と多いからね。
迅速高校とかサンクルミエール学園とか白皇学院とか聖クレス学園とか。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 02:56:01 ID:3dWnw1Yf
話はいきなり変わるが、映画に触発されて久しぶりにハルヒの消失を読んでみたが、消失長門の世界って結構学園世界とイメージ被るのな。
学園世界のままだとハルヒの欲求も満たされるから、古泉もバイトする必要がない、長門もエラーの溜まる観察の必要がない、みくるも未来からの操り人形になるような指示がない、とか。
一見してみんな幸せになれてるように見えるんだよなぁ……そのうち本当に元の世界に帰らなくても良いとかハルヒを含めSOS団全員が思いそうだなw
43名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 03:01:07 ID:WGCZ6fM/
>>41
執行委員より強いやつらがわんさかwww
その上、かなりの数の生徒会長、役員が来てるだろうから数もわんさかwww
それなのに来た輩南無
44名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 10:38:41 ID:53h1PNxB
>>43
他人に合掌する前にとりあえずsageれ

でもとりあえずサイキョー論議は答えでないから不毛すぎてあんまり……
だってみんな「俺の好きな話のキャラサイキョーw」しか言わないんだし。ヒロイン議論並に……いやそれ以上に答えでないぜ?作品限定されないから


とゆーことで、学園世界で誰が最高の乳か語ろうじゃないか!
個人的には箱庭のめだかちゃんと軍学校の姫さんとクレアあたりがいいのではないかと!
45名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 10:46:59 ID:GQazW945
>>44
クッキー消したこと忘れてた
すまん
46名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 18:15:28 ID:uzlFHQzj
>>42
そして立ち上がるキョン
とか?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:07:24 ID:0osuwkPP
サイキョーはオレンジハイスクールのグレートサイヤマンでいいんじゃなかろうか
48名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 21:40:19 ID:3dWnw1Yf
>>46
問題は立ち上がっても味方が極端に少なさそうな事だなw

実際問題、学園世界にいたままの方が幸せそうな奴結構いるし、学園都市がある時点で自給自足など問題なさげだしね
49名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 21:53:51 ID:Jt5IRRry
吾妻兄妹とかは学園世界にいた方が幸せに暮らせそうだな…帰ったら第3部開始だし。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 23:42:57 ID:UmLpD5pV
『とある科学』の黒妻が執行委員にスカウトされてみたり。

そして、八神はやてと乳談義。やきもきする固法。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 23:45:51 ID:UwT54Jve
>>50
再び追いかけられるくれは。

とやればしっかりNWクロスだなw
52名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 03:40:48 ID:i5Cz+95o
>>44
それはもちろん我らがベル様さ>最高の乳
サイズこそミニマムだが美しさ的には……おや? こんな時間に誰か来たみたいだ
53邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:01:26 ID:G/MN3oyJ
8時半から投下します。
54邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:29:42 ID:G/MN3oyJ
―――輝明学園購買部"跡"

目の前に広がる、晴れ渡った青い空。
それをどこか呆然として見ながら、選抜隊の腕章とバッジをつけた薙原ユウキは顔をしかめる。
「…大分人が集まってきたな…」

「うお!?なんだこりゃ!?」「え?あれ?購買部は…?」「にゃー。こんだけとんでもねえ天使の力は人工天使の時以来ぜよ」「なになに?なにがあったの?」
「なんか購買部が消えたらしいぞ?」「それって、神隠しってこと?」「まあ私達もある意味全員神隠しにあってるんだけどね。元の世界的には」「おい。あいつらってA級冒険者の…」
「あ、ほんとだ。あの赤毛って選抜隊の隊長だろ?」「ああ、冒険者部隊の」「そうだよ。母さん。選抜委員が来てる」「ってことはここの調査に来たってことか?」
「マジかよ…やばくね?」「そういやここの店員どうなったんだ?あのやたら食う黒髪の…」「ああ、あいつならさっき学食祭りでよその学校のやつと一緒にすごい勢いで食ってたぞ?」

がやがやと。

いつの間にかこの場には大量の野次馬が集まっていた。
無理も無い。これだけあからさまな異常事態が起これば、騒ぎにもなるだろう。

ここはつい数時間前まで空なんて見えなかった。
そう、ここには部屋が…店があったのだ。店の名は、輝明学園購買部。
ユウキたちのようなこの学園にあるダンジョン『スクールメイズ』に挑む冒険者にとっては馴染みの店である。
だが、今はその購買部が無くなったために空が見える。
輝明学園の購買部は、そこだけ切り取られたかのように消失していた。
「…ルーシー、何か分かったか?」
明らかな異常事態に、ユウキは傍らで熱心に跡を調べる、小柄なエルフの少女に尋ねる。
(これは…)
ユウキと共にこの場所を訪れたエルフの少女は、ユウキに答えを返さずに考え込む。
少女の名は、ルーシー=ミンシアード。
今回の異変をまっさきに"嗅ぎとった"有能なスカウトにして、A級冒険者パーティー『ルーシーだん』のリーダーである。
ユウキと共に冒険に訪れていたスクールメイズで今回の異変を察知し、この場所へ向かおうと言いだしたのは、彼女であった。
(…この匂いは…)
無意識のうちに辺りに身を潜めたモンスターや罠の違和感、隠されたアイテムを察知する『直感』。ルーシーの専攻であるスカウトには必須の才能である。
ルーシーは自らの直感を『匂い』と認識している。スカウトが感知せねばならない異常…特にある種のアイテムを、ルーシーは彼女にしか嗅ぎとれない匂いで見分ける。
その精度は極めて高く、タバサたちと挑んだA級冒険者への昇級試験のときには即座に課題の『ドラゴンスレイヤー』を"嗅ぎあてた"ほどだ。
そんな、彼女の嗅覚がルーシーに告げることは2つ。
1つは…これが極めて強力な魔法の力によって引き起こされたこと。
そしてもう1つは…
("儀式"の時の匂いと同じ…!?)
ルーシーにしか認識できない匂い、その匂いがなんであるかを彼女は知っていた。
かつて嗅いだこともある。それも1度では無く、何度も。
(しかし、こんなことはできないはずですが…)
そう、彼女の知る限り、"儀式"ではこんな直接的な現象は起こりえない。
なんにせよ、これをやった人間は…この世界では"光綾学園の関係者"でしかあり得ない、はずだ。
だが、それをユウキに伝えるのははばかられた。
10歳のころ、思い出してから数えれば始めて出来た"友達"であるユウキを巻き込むことは、できれば、避けたかった。
故に彼女は答える。
「…私にもわかりません」
無表情に、嘘を。
(…調べる必要がありますね)
密かな決意と共に。
55邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:32:09 ID:G/MN3oyJ
―――邪神の胎内 中心部

「たどりつくとはね」
部屋の中心。そこに漂うように地面から少しだけ浮かびあがり、魔人、白川由美は自分を見つめる3人を睥睨した。
「途中で力尽きるかも、とか思ってたんだけど、1人も欠けずに来るなんて、アンタら、良い腕してるじゃないか」
「嘗めないで頂戴。貴方の思い通りになるほど私は…私たちは弱くないわ」
どこか余裕のある表情で3人を褒めるユミにライズは表情を固くしたまま、答える。
その表情には、余裕はない。緊張感すらにじませながら、ライズは戦闘態勢を保つ。
ライズは知っている。魔人の強さ…手だれのカゲモリが4人掛かりで挑んでようやく対等だったと言う存在の、実力を。
そのライズの緊張を感じ取っているのだろう。空とフィルも戦闘態勢のまま、ユミを迎え撃つ。
「言うねえ。ま、そう言うはねっかえりは嫌いじゃあ無いけどね。さて…」
一見軽口を叩いているように見えるユミ。だが、ライズには分かっている。その行動に、隙がない。
お互い攻める切っ掛けを探り合いながら、ユミは今回の『暴走』の原因となったフィルに目を止める。
「アンタ、コイツに選ばれただけはあるね。まさかアタシ以外に『ifの未来』を見る奴がいるとは思わなかったよ」
「…ifの未来?」
ユミの言う、意味の分からない台詞に反応し、思わずフィルが聞き返す。
「そうさ。アンタらがさっき見た、クソッたれの未来…あれは、変えられる。てめえの選んだ選択肢次第ではね。
 考えてみりゃあ当たり前だろ?例えばアンタらが今すぐココで死んじまえば、アンタらが生きてないと見れない未来はその場で無かった事になる。
 けどね、稀にコイツは『もう変わってしまった、決して訪れない未来』を見せる。そいつが『ifの未来』…」
その問いかけに答え、ユミは静かに言葉を紡ぐ。
そして、顔を曇らせ、その言葉を口にする。
「最低最悪の未来だよ…」
言いたいことは言ったとばかりに、ユミがバサリと翼を鳴らす。
そして、それに呼応するように辺りに変化が訪れる。
「…あれ?なんだか、少し…寒くなったような…」
最初にそれに気づいたのは、空だった。人造人間が持つ周囲環境の分析能力が空に辺りの気温の急激な低下を伝える。
「アンタらは"3人"。で、倒したのは"2体"…それじゃあ計算が合わないだろ?」
パリパリと。
ユミが凍りだす。足もとを包むように氷が発生し、それは大きくなりとあるものを形づくり始める。
「最後の"3体目"である過去の幻影…そいつをぶっ倒さなきゃ、アンタらはここから出られない」
「…そんな、まさか!?」
徐々に肥大し、完成していくその姿に、最後の過去の幻影を知るもの…フィルの顔から血の気が引く。
フィルは知っていた。その過去の幻影は…人間の手でたやすくどうこうできるような代物じゃあ無いってことを。
「ふ、2人とも気をつけて!あ、あれは、アイツは!」
フィルの声が純粋な恐怖で震える。
「正直驚いたよ。まさかこんな代物と出くわして生きてるやつがいるなんて思わなかったからね」
それは、フィルの人生の半分を死の恐怖で閉ざした、恐るべき"雪と氷"の象徴。
完成しつつあるその肉体…その核たる部分と一体化し、ユミは3人を見る。
その視線に込められたのは、憐憫と…僅かな期待。
そして彼女は名を告げる。フィルの過去の幻影…恐るべき力を持つ、そいつの名を。
「…レラ・ペレス。そいつがコレの名前らしい。死ぬ気で掛かってきな…氷漬けで死にたくなかったら、ね」
その言葉と共に。

グゴホオオオオオオオオオオ―ン!

神話の時代から生きる、3つ首の巨竜が咆哮した。
56邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:38:44 ID:G/MN3oyJ
「まさかこんなのと戦うことになるなんて、ね」
咆哮に応えるように剣を構え、ライズは目の前の化け物を見据える。
レラ・ペレスの発する冷気で冷え切った空間にも関わらず、ライズの背中を一筋の汗が伝う。
ライズの勘が告げる。目の前の存在は…強い。
(実力は、恐らくはあの狐並みか…それ以上…!)
その威圧感が、かつて戦った中で最強の悪魔のことをライズに思い出させる。
チェフェイ。取り憑いていた少女の肉体と言う鎖を捨て、本性を現した狐の悪魔のことを。
(あの時は…手札が揃っていたわ)
そう、あの時には自分と斎堂に加え、様々な武器の扱いに長けた執行委員の青年とライズに勝るとも劣らぬ腕前を持つ剣士の少女、
そして的確な判断ができる冒険者の5人でもって万全の態勢で挑み、何とか撃退できた。だが…
ライズは隙を見せぬよう気をつけながら、ちらりと仲間たちの様子を伺う。

「…す、すごい…」
先ほどまで戦った2体の過去の幻影とは比べ物にならない、圧倒的な存在感。
実に20m近い巨体を見上げながら、姫宮空は思わず声を漏らす。
実感がわかない。こんな巨大な化け物がいること…そして、それを倒さねばならないなんて。

「ど、どうしよう…」
フィルはどうしようもない恐怖と過去の記憶に震える。
フィルは冒険者の卵である。実習の中ではモンスターとも戦ったことも何度もある。
だからこそ、分かる。目の前の化け物は…フィルの手ではどうしようもない。
「あんなの…ボクはどうしたら…」
その事実が、フィルを恐怖を与え、身をすくませる。何も分からなかった子供のころよりも強く。

そんな2人の様子を見て。
(…どうやらあの時よりも厳しい戦いになりそうね)
ライズは内心で溜息をつく。そして大きく息を吸い。
「2人とも!戦いを始めるわよ!」
凛と声を響かせる。鬨の声のように。
「ひゃいっ!?」
「…え!?あ、う、うん!」
その声に応えるように2人が我に帰る。その瞬間。

グゴホオオオオオオオオオオオ―ン!

レラ・ペレスが咆哮と共に行動を開始する!
57邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:44:47 ID:G/MN3oyJ
「うわぁ!?」
迫りくるレラ・ペレスの攻撃にフィルは怯えつつも咄嗟に腕をクロスさせ防御体制をとる。だが。
「きゃうっ!?」
凄まじい重さのレラ・ペレスの体当たりがフィルの軽い身体を思い切り弾き飛ばす。
「っつう…う、ら、ラヴェルよ!癒しを!」
その衝撃で一発で気絶に追い込まれそうになったフィルが半ば反射的に癒しの祈りを自らに施す。
それにより傷は消えた。だが、それは肉体だけ。
「つ、強い…強すぎるよ…」
その強烈過ぎる一撃は、フィルに恐怖を植え付けた。
グルルルル…
唸り声を上げ、鎌首をもたげる頭を前に、姫宮空は緊張感と共に相手をにらみ返す。
(や、やらなくちゃ!)
戦わなくては、やられる。そんな緊張の中で空は半身になって右手のランス…アームブレイドを構える。
(大丈夫…いけるはず!)
ウィザードの中でも特に攻撃力の高い人造人間の全力の一撃。
直撃すればいかにレラ・ペレスといえどただでは済まない。
レラ・ペレスも本能でそれを理解していた。それゆえに、待つ。
「きゃうっ!?」
「フィル!?」
目の前の敵の気がそれる瞬間を。
グゴホオオオオオオオオオ―ン!
攻撃を受け、悲鳴を上げたフィルに気を取られ、空が目をそらした瞬間、レラ・ペレスは大きく口を開く。そして。
ブオオオオッ!
思い切り息を…氷のブレスを空に叩きつける!
「きゃあああ!?」
ブレスの身を切るような冷気に、空は悲鳴を上げる。
強烈な魔法タイプのダメージに空の身体が、きしむ。
「くっ…こ、このお!」
とっさに膝を折って飛び、がむしゃらに反撃の突撃を繰り出す!
一飛びで3mは頭上にあったレラ・ペレスの頭までの距離を詰め、アームブレイドで鋼のように硬い鱗を貫く。
ギャオオオッ!?
その痛みにのたうちまわるレラ・ペレスを見て空は荒く息をつきながら、呟く。
「や、やった…」
だが、あちこちが凍りつき、大きなダメージを受けている空が不利であることは、明白であった。

ライズは静かに剣を構え、目の前のレラ・ペレスに向けて駆けだし距離を詰める。
グゴホホオオオオ―ン!
その素早い動きにブレスでは狙いを定めることができないと踏んだレラ・ペレスが牙をあらわにライズを噛み砕かんと迫る。
その瞬間を狙い、ライズは横へと飛び、かわしざまに斬り抜ける。鮮やかな一撃。だが。
「くっ…堅い!?」
ライズの細剣はレラ・ペレスの鋼のような鱗に阻まれ、表面に浅い傷をつけるにとどまる。
「ほらほら!どんどん行くよ…ブフダイン!」
斬りつけて、腕が痺れたライズに対し、今まで静観していたユミが攻撃を行う。
レラ・ペレスと一体化することで得た強力な冷気で巨大な氷弾を作りライズに向けて放つ。
「ちぃ!」
それをライズはギリギリでかわす。だが、その代償として体勢を崩す。
グゴホホオオオオ―ン!
その直後、咆哮と共に叩きつけられたレラ・ペレスの尻尾にライズは為す術なく弾き飛ばされた。
「がはっ!…ううっ」
壁に叩きつけられ、背骨がへし折れるかと思うほどの衝撃がライズを襲い、内臓への衝撃にライズは血を吐く。
飛びそうになる意識を無理やりに奮い立たせて立ち上がるものの、脚に力が入らず、よろける。
「ライズ!」
その様子に慌てて駆け寄った空がライズを支える。
「だ、大丈夫!?」
フィルが慌てて、2人に回復の祈りを施す。
「…無事、とは言い難いわね」
癒し切れず、怪我の残った状態で、ライズは悟る。
58邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:51:05 ID:G/MN3oyJ
(今の調子で戦えば…私たちは負けるわ)
ライズ、空、フィル。それぞれが今のように戦っていては魔人を…レラ・ペレスを打ち破ることはできない。
打ち勝つには、3人が持てる力を合わせる必要がある…そう、この半年の間"仲間"たちとそうしてきたように。
「空…それと、フィル。私に…力を貸して」
それを悟ったライズは自然にその言葉を口にする。半年前ならば決して口にしなかったであろう"お願い"を。
「はい!」「う、うん!もちろん!」
その言葉に決意を固めた様子の空と勇気を振り絞り、恐怖を何とか打ち消したフィルが快く頷く。
「…そう、感謝するわ」
返ってきた答えにライズはごく薄く…いつもの皮肉さを感じさせない表情で礼を言った後、真面目な顔に戻り、淡々と、言う。
「恐らく、私の剣ではアイツに致命傷を与えることはできない。けれど…マナよ。刃に宿りなさい」
ライズの言葉に答え、刃が…空のアームブレイドが蒼白く輝き出す。
「フィル…貴方も」
「うん。神の剣よ!」
フィルが攻撃力強化の祈りをライズの剣と空のアームブレイドに施し、更に攻撃力を増す。
「貴方の、魔術で強化したアームブレイドならば、あいつにも通用するはず。攻撃役(とどめ)は、貴方に任せるわ。
 私が援護する、だから貴方はただ全力であの化け物の頭を砕くことを考えていなさい」
「わ、分かりました!」
ライズの言葉に空が頷く。そして。
「それと、フィル。貴方は私たちを後方で援護して。あいつには近づかないように、気をつけて」
「…任せてよ!頑張ってね!2人とも!」
ライズの言葉に、内心安堵しながらフィルが笑顔で頷く。そうだ、これでいい。
「良い返事ね…始めるわよ!」
3人が頷きあうと同時のタイミングでフィルを残してライズと空が一気に距離を詰める!
グゴホオオオオオ―ン!
それに反応し、ユミとレラ・ペレスが再び咆哮し、近寄ってくる空とライズを捉え、中央の首が口を大きく開く。
「…ソラ、身をかがめて左に飛びなさい!」
「は、はい!」
ライズの言葉に反応し、空は横へと飛ぶ。
その次の瞬間、さっきまで空が立っていた場所に、強烈な氷のブレスが浴びせかけられる。
「私が左の首の目を潰すわ!空はとどめの準備を!」
「はい!」
ライズの言葉を受けて空がプラーナを開放し、脚へと集中させる。
「行くわよ…プレシズ・キル!」
先ほど、空を襲った左の首まで距離を詰めたライズは全力で突きを繰り出す。狙いはレラ・ペレスの目!
グゴホオオオオオオオオ―ン!
元々かかっていた魔法とフィルの祈りで強化された剣で折れるのではないかと言うほどの強烈な一撃を放つ。
その一撃は目を貫通し、レラ・ペレスの首が痛みにのたうちまわる。
「いっけえ!」
その隙を見逃さず、空はプラーナを開放した脚で跳躍する。
それにより空は一気に左の首の目前まで飛ぶ。そして。
「てえええええええええええええええい!」
アームブレイドを構えたまま、額に向け、先ほど以上の速度で突撃する!
グギュルッ!?
全長数mに及ぶ巨大な杭がレラ・ペレスの鱗と頭蓋を貫き、脳にまで達する。
その一撃にたまらずレラ・ペレスの首の1つが白目をむいて絶命する。
「はぁ!」
目から剣を引き抜いたライズが空へと放たれたレラ・ペレスの攻撃を剣と鎧を使って巧みに受け流す。
火花を散らせつつ流れをそらされた爪が地面へと食い込む。
「…つっ!フィル!」
受け流したとは言え、あの巨体の攻撃を受けて無傷とはいかない。
衝撃で先ほどの傷が開き、ライズがよろめく。だが、そこまで読んでいたライズは痛みに顔をしかめつつも、フィルの名を呼ぶ。
「任せて!ラヴェルよ!癒しを!」
その声に答え、フィルがライズへと癒しの祈りを施す。
「…次!」
フィルの祈りの力で傷を癒したライズは鋭い声を残し、ライズは先ほどフィルを襲った右の首へと向かう。
59邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/09(火) 20:52:07 ID:G/MN3oyJ
「は、はい!」
(すごい…)
そんなライズに返事を返し、その跡を追いながら、空は驚いていた。
先ほどまでの苦戦を感じさせないほど、空とライズの連携はうまく行っている。
(すごく…戦いやすい…)
空が全力で戦い、ライズがそれをサポートする。
そのスタイルに、空は慣れていた。なぜならば。
(まるで…一狼くんと一緒のときみたい)
それは、去年からの間に確立した、いつもの戦い方。
(やはり…ソラとの相性がいいスタイルは…これのようね)
ライズが真似た、斎堂一狼の戦い方…それは2人にとって慣れ親しんだ戦いのスタイルだった。

「やるじゃないか」
動きが変わった。
先ほどまでの動きとは明らかに違う2人の動きに、ユミは感心する。
「…あの子」
右の首に挑みかかる2人を見る。
右の首も、もうすぐ潰されるのは目に見えていた。空と呼ばれていた火力の高い茶髪の攻撃で、既にボロボロだ。
一体化しているユミにも鈍い痛みがガンガン伝わってきている。遠からず、首は潰されるだろう。
だが、注目すべきはもう1人。彼女に向かうはずの攻撃を引きつけ、遊撃により空の攻撃のタイミングを作る、ライズと呼ばれていた黒い髪のお下げ。
ライズの戦い方は連携と言うには少し違っていた。ライズが完全に空のフォローに回る動きで戦っている。
恐らく空の方はただがむしゃらに攻撃を繰り出しているだけ。そして、それで問題がないようにライズは立ちまわり続けている。
それが単純であるが故に強い空の実力をうまく引き出している。強敵だ。
「やっぱりあの子がリーダーで間違いなさそうだ」
ユミはずっと見ていた。彼女の2つの過去の幻影との戦いを。
その戦いにおいて、常に彼女は知恵を働かせ、持ち前の剣技と合わせて戦いの流れを作り続けてきた。
「…カゲモリの名は伊達じゃない、か」
2人に届かぬよう、小さな声で呟く。
かつてユミとチャーリーを追い詰め、佐藤を倒したカゲモリたち。
今回の件ではフィルとか言う邪神の加護を受けたエルフの少女に巻き込まれた、イレギュラー。
だが、対峙して実際に戦い、ユミは思う。彼女ならば、そして彼女に勝るとも劣らぬ実力を持つ彼女の仲間達ならば、魔神皇を倒すかも知れない。
そして自分を、この邪神から、あの訪れぬ未来の悪夢から解放してくれるかも知れない、と。
「だが、それにはまず…生き残ってもらう必要が…ある!」
そう、生ぬるい攻撃ではこの邪神を…"目覚めさせる"ことなど出来ない。
「本気で行くよ…ぶっ倒してみな!」
ユミが本気で行くことを決意する。
魔力の冷気が集まり、荒れ狂う。
「…!ソラ、フィル!」
それを見てとったライズが最大限の警告を発し、防御姿勢を取る。

「…えっ!?」
ライズの警告に、右の頭にとどめを刺した空がライズの方を見る。
「…うわ!?すっごい魔力!?」
フィルがユミに集まった魔力に気づき驚愕する。
そんな、三者三者の反応を見ながら。
「まとめて…凍りつけ!」
ユミはその魔力を開放し、冷気系の最強魔法を放つ。
「――――マハブフダイン!」
瞬間。
辺りに氷の嵐が吹き荒れた。



今日はここまで。前回の投下が去年だったのでえらい久し振りに。

ちなみに、過去の幻影のテーマは各PCの出典のラスボスだったりします。
レラ・ペレスもちゃんと戦えたり…まあ、ここまで強く無かった気がするのは、ご愛嬌w
60名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 00:23:08 ID:GxPYUUDN
>>59
乙乙!
お久しぶりっす!

いい流れになってきましたねぇ〜
61名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 09:22:27 ID:Ql0SzaIV
>>59
投下乙です〜
どの作品もよく知らないのですが楽しく読ませてもらっています。グランキニョルとみつめてナイトは持ってはいるんですが…
互いの能力を活かした戦闘描写は燃えますね! 次回も楽しみに待ってます。
62邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:19:51 ID:rDGRdVf+
11時半から投下します。
63邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:32:04 ID:rDGRdVf+
―――ifの未来

最初に視界に入るのは…一面の白。
それは身を焼きつくす熱を伴っていた。
「こんなの…こんなの、おかしいじゃないか!」
白く閉ざされた世界に再び色が戻ったとき、夢の中のユミは絶叫する。
その場に残るのは、熱く燻る瓦礫と…辺りに転がる無数の死体、そして、その死肉を食らう、悪魔の、群れ。
「なんでだよ!なんで…」
その中でただ1人、神クラスの悪魔の加護を得た、ガーディアン憑きであるが故に生き残ったユミは崩れ落ちる。
余りにも理不尽な、深い絶望。それに心を喰われながら、ユミはその理不尽を呪う。
「…魔神皇は…ハザマは、倒したのに…」
ユミのいる学園、軽子坂学園高校は魔神皇の手で魔界へ堕ちた。
それを行った、天才悪魔召喚師、魔神皇こと挟間偉出夫は魔界で得た強力な力を持って暴虐の限りを尽した末に…倒された。
ユミともう1人の天才悪魔召喚師、そして彼女の仲魔たちの手によって。
魔神皇を倒したことで学園は元の世界へ戻り、学園にいたものたちは平穏な暮らしを取り戻した。
「…それなのに…なんで」
その、わずか数週間後の出来事だった。
市ヶ谷で発生した自衛隊のクーデターと、その鎮圧を行っていた米軍の衝突。
ユミの手の届かぬ、遠い世界の出来事の果てに、その終わりを告げたもの。

…それは、1発のICBMと、それによる東京の壊滅だった。

「…あたしは…」
壊滅し、死の街と化した東京。
…その東京に現出し、死体を貪り僅かに生き残った人々を襲う、悪魔の群れ。
命がけの旅の果てに魔神皇を倒し、学園のみんなを助けだし、魔界と言う名の地獄を抜けた先に待っていたのは、慣れ親しんだ街が変貌した、また別の地獄。
「…あたしは…なんのために…戦ったんだ…」

絞り出すように呟かれたそれに答えるものは、誰もいなかった。

―――邪神の胎内

凍結した空気で白に閉ざされた世界。

嫌な景色だな。とどこか人ごとのように白川由美は思った。
レラ・ペレスと一体化し、絶大な氷の魔力を得たユミには、心地良くすら感じられるこの空気。
だが、これは魔界の…地獄の空気だ。あの悪夢と同じ、悪魔ならざるものの生を否定する世界だ。
その光景を苦々しく思いつつ、ユミはあの悪夢の光景を思い出していた。

あの、何度繰り返したかも分からぬほど見た、絶望の未来。
…もし、ユミがかつて夢想したように彼女が自分と共に戦う道を選んでいたとしたらどうなっていたのかを知ったとき、
そして、魔神皇を倒して、元の世界に戻ると言う事がどういうことなのかを知ってしまったとき…
ユミの強く優しい心は、その優しさ故に、折れた。
64邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:34:05 ID:rDGRdVf+
いつしか目を閉じていたらしい。
ユミはゆっくりと目を開く。
漆黒に染まった視界が色を取り戻す。その瞳に、ユミの使った魔法の結末が写る。
「…生きているのが、不思議なくらいね」
あちこちに凍傷を負い、その痛みに膝を震わせ、白い息を零しながら、ライズは呪錬制服の上からですら人を凍りつかせる魔人の魔法の凄まじさを改めて実感する。
「フィル…大丈夫!?」
自らも強烈な冷気で身を凍らせながらも、空は倒れたフィルに近寄り、慌てて抱き起こす。
「…だ、大丈夫…寒いのは…慣れてる…から」
空に抱き起こされ、弱々しく笑顔を返すフィル。だが、その身体にもはや力は感じられない。
強力無比な冷気の魔法に全身の体温を奪われ、倒れたフィルがもはやまともに動ける状態に無いことは、誰が見ても明らかだった。
にも関わらず、フィルは言う。笑顔を崩さずに。
「ボクは…大丈夫…だから…頑張ってね、2人とも」
その言葉を最後に、フィルは完全に気絶する。
フィルの言葉を受けて、ライズと空は同時に"敵"を見る。怒りと、殺意すらこめて。
「許さない…!」
「…どうあっても、倒さなければならないようね」
「…やっぱり生き残ったか」
その2人の瞳、危機的状況に追い込まれたにも関わらず勝ちを諦めない様子、自らが持ち得なかった"強さ"に対し、
燻るような苛立ちを抱えながら、顔にだけはうっすらと笑みをにじませ、ユミが言う。
「さあ…来なよ」
(そうさ。あたしは恐ろしい敵で良い。魔神皇に繋がる…化け物で良い)
絶望の可能性を知ってしまったユミは、もはや戦うことはできない。ならばせめて…希望を育てる餌となろう。
魔神皇を倒し、大切な友人たちを救えるものに託そう。
それこそが優しき魔人、白川由美の至った結論(みち)
「見せてみろ!アタシを倒して…道を切り拓く、力を!出来ないんなら…ここで死ね!」
その結論を胸にユミが吠える。凶暴な魔人の貌で!

再び臨戦態勢に入ったユミを前に、ライズは時空鞘より、愛用の剣の鞘を取り出す。
それに剣を納め、言う。
「…ヒメミヤソラ」
「…はい」
それに、立ち上がった空が静かに応じる。
空の迷いのない声を心地よく感じながら、ライズは目の前の敵を見る。
恐るべき力を持つ、氷の魔人と、それを守るように立ちはだかる、レラ・ペレスの最後の首を。
再びあの魔法を使われれば、3人はあの魔人の言ったとおり氷漬けで死ぬだろう。それをさせないためには…
「…ソラ。私は、貴方が次の一撃であの魔人を葬り去ることに私の命を賭けるわ。だから、貴方も賭けなさい」
ふぅ…と、緊張を解きほぐすように、息を吐く。
「私の剣が、レラ・ペレスを倒す。そのことに貴方の命を」
そう、これは賭けだ。ライズか空、どちらかが賭けに負ければ3人は死ぬ。そんな、無謀な賭けだ。
「分りました…私は…ライズを信じます。だから…絶対に、勝って下さい!」
そんな、空の言葉を背に。
「任せておきなさい」
ライズは最後の大博打に打って出た!
65邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:35:44 ID:rDGRdVf+
鞘におさめた剣を腰に持ってきて、走りながら構える。
(まさか、これを使う羽目に陥るなんて、ね)
ライズとユミを阻むように立ちはだかるレラ・ペレスにまっすぐ向かいながら、内心苦笑する。
うまく行く保障の無い技を使うと決めた、自らの無謀さに。
(けれど、あれを一撃で倒せるとしたら、この技しか無いわ)
それはライズがもっと幼い頃…本格的に剣を学ぶ前に夢想した…否、憧れた技。

距離を詰め切ったライズが剣を抜き放ちつつ斬りつける。
まっすぐに走る横一文字の軌跡。
鞘で加速された一撃は限界を迎えた剣に罅を走らせながら、軌跡の上にあったレラ・ペレスの目を引き裂く!
グオオオオオオオオオ!?
目を斬られ、痛みにのたうちまわるレラ・ペレスに対し、ライズは間髪入れずに剣を振り上げ、両手でしっかりと剣を握りこむ。
(お父様!その御技…お借りします!)
「――――――滅しなさい!」
叫び声と共にその剣を全身のバネを使い、思い切り振り降ろす。その縦の一撃は…目の前の敵に"破滅"をもたらすために!

キィンッッッッ!

澄んだ金属音が辺りに響き渡る。
「…ソラ、貴方は勝った、だから…」
根元から折れ、持ち手だけになった剣をその腕から零れ落としつつ、ライズが呟く。その次の瞬間。
ズゥゥゥン!
声すらもあげず、地響きを立てて脳天を割られたレラ・ペレスの首は地に伏した。
「…次は貴方の番よ。ヒメミヤ、ソラ…!」
全ての力を使いはたしてへたり込んだライズの背中の方から。
タンッ!
軽やかに魔人に向かって地を蹴った空の足音が聞こえた。

ライズが切り拓いた血路を越えて魔人に向かいつつ、空は誓う。空を信じたライズのために。
(私は…2人を守れるならば…兵器でもいい!化け物でもいい!だから…力を貸して!私の身体!)
その誓いに、姫宮空の肉体は…対侵魔用戦術兵器の肉体は答える。自らを修羅となすことで!
空の頭の中に声が響き渡る。
(―――絶滅社登録No.7284291より本機に敵対対象の殲滅命令が発令しました。これより、絶滅モードに移行。
全リミッターを解除します)
(―――敵対対象確認…2名を友好的対象として除外。殲滅対象…1)
(―――単機殲滅命令が承認されました。対魔王想定殲滅プロセスに移行)
それは、姫宮空が生まれたときからもっていた無数の機能(やいば)。
絶滅社が持てる技術の限りを尽くして作り上げた戦闘特化型人造人間の真骨頂。
戦闘用人格(あるじ)を失い、長らく沈黙を保っていたそれらが今、姫宮空と言う新たな主の求めに応じ、一斉に牙を剥く。
戦闘用人格をもたぬ空にはそれが何を言っているのか、まったく理解できない。
だが、そんなことは問題では無い。空がやらねばならないことは…たった1つ。
(―――警告。対魔王想定殲滅命令に基づき、コードレイジが発令されました。
登録No.7284291を稼働率255%まで強制ブーストします。登録No.7284291は反動に備えてください)
(―――戦術分析フェイズ完了。登録No.7284291記憶野情報と総合し、対象には火属性が有効と判断。
登録No.7284291の生体兵装に火属性を付加します)
(―――命中を確認。プラーナ循環経路変更。全プラーナを攻撃力強化に使用します)
「私は、帰る!2人と一緒にあの人の…」
アームブレイドが白い輝きを放つ。火属性の付与と、想定している限界を遙かに超えるプラーナを流しこまれたことによる、オーバーロード状態。
全リミッターを解除し、更に胎内の戦闘用ユニットまで暴走させた反動で空の身体が軋む。
その痛みに震えながら、空は。
「一狼のところへ、帰るんだあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
咆哮と共に、目の前の魔人に、アームブレイドを叩きつけた。
(―――対象の破壊を確認。絶滅モードを解除)

(―――残生命力が危険水準を下回りました。登録No.7284291の完全停止回避のため、生命維持を最優先し、休眠モードに移行します…)
66邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:37:30 ID:rDGRdVf+


本体であるユミが空によって粉砕されると同時に、レラ・ペレスは消失した。
それを見て、この場でただ1人意識を保っていたライズは、慌てて駆け寄り、倒れた空の様子を確認する。
ボロボロだが、死んではいない。力を使い果たしたらしく、眠っている。それを確認し、ライズは溜息をつく。
「…酷い状況だけれど…私たちの勝ちのようね」
そう、勝った。魔人を倒し、過去の幻影をすべて打ち破った。だが…
「この魔界が消えていないと言う事は…」
確か、異界は発生させたものが倒れれば消えると聞いていた。にも関わらず、消える気配はない。
そして、それに答える声が響く。

―――ああ、そうさ。アタシは…死んじゃいない。

「っ!?魔人…!?」
空間全体から響く声。それはあの魔人の声だった。
ライズの顔が緊張に歪む。手をやり、剣が折れたことを思い出し手舌打ちをする。

―――慌てなさんな。死んじゃあいないけど、コイツとアタシを隔ててた肉体は壊れちまった。…っと。

苦笑するような言葉と共に、世界が揺れ出す。

―――始まったようだね。

「はじまった…!?」
激しい揺れに思わず手をついたライズは自らの手が透け出していることに気が付き、息をのむ。

―――ああ、アンタらが散々暴れまわったお陰だ。アンタらは、コイツに『異物』だと判断された。だから、吐き出されるのさ。元あった場所に、ね。

肉体の透けは、既に全身に及んでいる。
見ればそれは空とフィルも同様であった。

―――帰ったら、アンタの…カゲモリのお仲間に伝えな。コイツの…邪神の力を。

「邪神…神?」
その言葉に、ライズは1ヶ月前の魔神皇の言葉を思い出す。神の力を手にすると言う、言葉を。

―――そう。とてつもない力持った本物の邪神だ。なにしろ…アンタらがここに来てから回った魔界…それ自体がコイツの正体。ここは…邪神の腹ン中なんだよ。

「なんですって!?」
ライズは思わず驚愕の声を上げる。この異界そのものが邪神だとすれば、その力はライズの想像できる範囲をはるかに超えている。

―――恐らく魔神皇は遠からずコイツを使って何かするはずだ。最もその頃にゃあ、アタシの自意識なんてものは無くなってるだろうけどね。

辺りが暗くなる。戻るときが近い。それを悟ったユミの意識は…最後の言葉を伝える。

―――コイツの名は…邪神ディー。本物の神だ。止めてみせろ。カゲモリ。

その言葉を最後に。
ライズの視界は暗転した。
67邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/14(日) 11:38:40 ID:rDGRdVf+
今日はここまで。
てなわけで邪神編、次回のエンディングフェイズで終了。
さて、レス返し。

>>60
ありがとうございます。この話もようやく佳境に入ってまいりました。

>>61
どの話も私は大好きです。空可愛いよ空。
戦闘については今回のメインテーマは空とライズのコンビだっただけに、2人の関係と力については結構気を使ってます。
才能と火力はぶっちぎりの空に対し、知恵と技で戦うライズと言う振り分けになってます。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 13:18:52 ID:8ZdB5E0M
>>67
いかん、空がかっこええw
ライズも、抜刀術からの十字斬りっってきっつい技持ってますなぁw

ところで、Ifの世界について。よく考えると酷い世界観ですよねぇ、女神転生・・・・。
まあ、後藤隊長好きなんでなんでもいいですがw
69名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 18:19:48 ID:zu2BnT9o
乙様ですー。
前スレ埋めた人も乙様ですー。

気付いたら邪神編だけで結構な長編に。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 22:32:06 ID:ZBeawxhw
そういやあ昨日はホワイトデーだったのか…
柊は素で忘れるタイプかこの前はあんがとな。無自覚にほい、これ手作り。とばかりに大量に作った菓子をばらまくタイプなのか…
71名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 01:36:21 ID:oLZRLfbn
今まで、ホワイトデーに身体が空いたこと、無いんじゃない?
72名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 02:23:10 ID:okDhM56P
キリヒトの体に穴があいたことはあったよ。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 09:42:39 ID:fjatUUUM
>>70
素で忘れてて周囲をやきもきさせるが、夕方頃にふとしたことでホワイトデーと知って大慌てし、必死に駆けずり回ってどうにか帳尻を合わせるのに間に合うタイプ
74名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 09:59:05 ID:t7JktmOX
貰ったモノのお返しという点では義理堅そうだがモノの内容までは気が回らなくて女性陣にKY呼ばわりされる未来が見える
75名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 17:09:12 ID:LhLq8elf
>>70
灯「……柊蓮司にそんなスキルがあるとでも?」
76名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 22:04:05 ID:0vlkCIOb
なんとなく、エリスみたいな料理は無理でも男の一人暮らし的な簡単な奴は結構うまく作れるイメージがあるな。
カレーとかチャーハンとか野菜いためとか。

執行部だと後は、素で渡しに行って森を慌てさせる植木と、レーション辺り持って行って千鳥に無言でハリセンでぶっ叩かれる相良軍曹だなw
77名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 22:17:14 ID:PEuj9wwZ
>>74
俺、「三倍返しのサンタ」のイメージが強いせいか
少なくとも当人同士では問題ない気がする
78名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 00:30:10 ID:l8ygC6fZ
>>76を元に考えてみた執行部の義理チョコ事情。

美琴:なんかデパートとかでテキトーに見繕ってきた高い菓子を置いてみる。割と好評。
初春:お嬢様にあこがれているのでデパートに行っていいのを探そうとするもののなんか微妙な評価のを買ってくる。
エリー:自作。みんなに食われてみんなに好評。
ベホ:チロル箱買いしてどんと置く。女性らの餌食に。
楓:何故か和菓子を持ってくる。
イリヤ:衛宮家のチョコレート(セラ作と士郎作)を持ってくる。好評。自分は食べる専門。
美遊:フライパン一つで何故かチョコレートケーキを完成させる。好評。
ハヤテ:ものすっごい凝ったチョコ系の手作りお菓子を置いて、他の義理チョコを配りに行く。
長門:スーパーのチョコレートの詰め合わせを持ってくる。自分は食べる専門。


ノーチェ:言わずもがなの食べる専門。

こんな感じ?
79名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 00:43:04 ID:gJt8zNxk
ナチュラルにハヤテが混ざっているwww
魔王バーレン=ティウスがいるなら魔王ホワイ=トゥデイがいてもおかしくない
80名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 05:48:29 ID:CW5UPcAS
>>79
その魔王の名前に
きょ〜うはなんの日、ふっふ〜♪
というフレーズが浮かんだ
81名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 21:48:09 ID:WiXluDen
>>78
本命は美遊とエリーに教わって各自完成させるのか(ベホと初春は除く)

…まあ、若干一名結局渡せ無さそうなのがいるけどw
82名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 22:08:21 ID:du1wZJZq
>>81
ハヤテくらいしか渡せそうなのが思いつかん・・・・w
後は皆、踏ん切れずに自家消費しそうだwww
楓は知らないけどw
83名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 22:40:31 ID:l8ygC6fZ
楓はなぁ……みずまんじゅうの唇に渡すのか、弟分の犬っころに渡すのかもよくわからんし。
美琴は初春と佐天さんがいれば黒子を引き離す役と上条さんを連れ出して美琴の前に引っ張っていく役に別れれば渡すくらいはイケそうな。
イリヤは家に帰ればなんとかなるんじゃね?
そして早く帰ってしまう乙女たちの代わりにいつもよりもキツい仕事して帰ってきて、ベホやノーチェと一緒に残ったチョコでカロリー補給する野郎共。

……そしてそこに襲来する朴念仁にチョコを渡すのが目当ての女の子たち。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 22:47:15 ID:hARRNy+9
ブルームメイデン購入で
「卒業ってええええ!?」
と思ったのはこのスレに影響されすぎかもしれない
85名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 11:54:57 ID:gR9DfL9m
ブルメネタかー……

高町さんちのお嬢さん・イリヤ・未来ちゃん・木之本さんちのお嬢さん・サクラと小学生魔法少女たちの話が作れそうなあたりは、学園世界にまた一つネタができそうだなと。
砲撃・射撃・万能・突貫と割と役割分担できてるし。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 15:18:14 ID:MHIXr71/
サミーとミサも入れとこうぜw
87名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 15:35:23 ID:XqKSxRDl
高町さんちのお嬢さんってどっちだw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 20:51:22 ID:Tck3JXfw
>>85
魔法少女みこみこくれはスペシャル!みんな友達、奇跡の魔法少女(小学生限定)大集合ですね!分かります!

…報道部でドラマとか特撮とったら凄そうだよな。ガチのアイドルや女優が結構な数いるし、
魔法とかでエフェクトバリバリいけるし、怪人とか巨大ロボとかも特殊な学校の生徒から素で調達きくしで。
問題は学園世界の特性上中年以上が極端に少なめなことだけどw
89名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 22:59:13 ID:BehKz5wf
>>87
ちゃんと‘砲撃’って書いてあるじゃないかw
90名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 23:30:04 ID:CurE/lwj
神山@クロ高「中年をお呼びだそうで」
前田@同上「こっちみんな」

たわば@あ〜る「おれぁまだわけぇよ!」

錆びる女@ALG「いや、流石にお父さん付いてこないから……多分」

栗山深春@「だからくんな」
91名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 01:08:39 ID:+UCxLYIJ
中年かー。
ネギまのニクマン・アンマン・フカヒレマンとか唱える小太り教師が一番に脳みそ出てきたが。
92名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 16:17:27 ID:yiP+5vbp
93邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 17:38:38 ID:hCQGvp0l
6時から、投下します。
94邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 17:57:33 ID:hCQGvp0l
―――極上生徒会保健室

薬品のにおいが幽かにただよう、暗い部屋。
その部屋のベッドで姫宮空は意識を取り戻し、ぼんやりと天井を眺めていた。
「え?っと…」
空は困惑して、辺りを見回す。
「私は…」
「帰って来たんだよ。それで、保健室に運ばれたの」
困った様子の空に、声が掛けられる。
「…フィル?」
その声に答え、空は声の方向を見る。
「うん。3人とも…あ、ちなみにライズも無事だよ。怪我の治療だけ受けてさっさと帰っちゃったみたいだけど」
そこには既に蒼い冒険服に着替えたフィルが笑顔でベッドに腰かけていた。
「ああ、そっか…私…気絶しちゃったんだ」
それで空は思い出す。
あの巨大なドラゴンとの命がけの戦いと、それと合体した女の人を全力で攻撃して、倒したと思って安心したら、意識が飛んだことを。
「疲労と力を使い果たした反動だって。2〜3日は無理しないように、って空が起きたら伝えてくれって言われてたんだ」
「…無理は、どっちにしても難しいかも」
フィルの言葉に、空は自然と自らの状況を確認する。
傷はすべて塞がっているが、ちょっと身体を動かすだけで引き攣るような鋭い痛みが走るし、身体が重くてしょうがない。
戦闘での負傷の経験は余りない空でも無理しない方がよさそうだと分かる。
「うん。よろしい。じゃ、ボクはもう行くね」
そこまで伝え、フィルは軽やかにベッドから飛び降りる。
「もう、動いても大丈夫なの?」
「いや、まだ身体のあちこちが痛いし、疲れてるけど…」
そこで一旦言葉をきり、少しだけ意地悪な顔になって言う。
「空たち見てたら、すぐにでもユウキのところへ行きたくなっちゃった」
「…たち?」
その言葉に空はゆっくりと辺りを見渡し。
「い、一狼くん!?」
ベッドのすぐそば。空の傍らでかすかな寝息を立てる少年に気づいた。
「しーっ。病院では、お静かに。一狼君が起きちゃうよ」
意地悪な笑みのまま、心持ち小さな声でフィルが口元に指を当てる。
「な、なんで一狼くんが…?」
フィルに指摘され、かなりトーンダウンした声で、空がフィルに問う。
そんな、空の問いかけにフィルが笑顔で答える。
「気絶したボクらを運んでくれたんだってさ。ボクをユウキが運んで、空は一狼君が運んだって。
 帰ってくるまでずっと心配してたんだってさ。それで、空が中々目を覚まさないからってずっとついてたんだよ」
「そっか…」
フィルの言葉を聞き、空は身を起し、慈しむように一狼を撫でる。
「一狼くん…」
空の心に温かいものが満る。改めて思う。彼がいるから、自分はここに帰ってこれた…何があっても帰ろうと思えた、と。
「…空は一狼君が大好きなんだね」
そんな空の様子に自分を重ね、フィルがと言う。
「…うん。私は、一狼くんが大好き、だよ」
その言葉にいつもだったら照れて口ごもるところだが、心の中に温かいものに満ちた空はそれに動かされるように素直に答える。
「ふぅ〜ん。だったら…ね」
それに何かを思いついたらしきフィルが耳元に口をよせ、空にごにょごにょと何かを伝える。
「へぅあ!?」
それを聞いた空が耳まで真っ赤になり、思わずフィルの方を見る。
「そ、そんなの…え!?でも!」
「大丈夫大丈夫。ユウキもあれで結構まんざらじゃ無かったみたいだしさ…きっと喜んでくれるって」
まるで、いたずらをたくらむ子供のような笑顔で、フィルが空に促す。
「それじゃ頑張って…またね!」
そして、言いたいことを言うと、保健室から颯爽と去っていく。
そして、その場に2人だけで取り残された空は。
「…うん。せっかくだし頑張ってみようかな」
顔を真っ赤に染めたまま、ごそごそと動きだした。
95邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:00:22 ID:hCQGvp0l
―――ドルファン学園女子寮

夜中。
「…まだ、疲労が残ってるわね」
エヴァたちに今回の事件を報告し、ドルファン学園の女子寮に戻ってきたライズは、冷静に自らの状態を診察する。
急激な負傷と治療を繰り返した影響か、身体の節々が痛む。
保健室で治療を受けたお陰で傷そのものは痕すら残っていないが、それでも明日は療養する方が賢明だろう。
「まったく、飛んだ災難だったわ」
そう結論づけたライズは、眉を潜めて言う。
思えば、今回の事件は"カゲモリ"として依頼を受け動いたわけではない。
偶然が重なり、巻き込まれたものだ。そして、その発端は…
「剣も早く調達しないとならないわね」
「だと思った〜」
ライズの呟きに答えた声の方を、時空鞘から咄嗟に護身用の短剣を抜いて、ライズは見据える。
「…だれ?」
月灯りに照らされてそこに立っていたのは、ピンク色の髪を短く切りそろえた女だった。
年は一見ライズとそう変わらないように見えるが、その瞳から幽かにうかがえる老獪な瞳は、数十年の経験を感じさせる。
更に、話しかけられるまでまるで気配が感じられなかった。恐らく純粋な隠密としての腕はライズ以上。
「もう、そんなに怖い顔しちゃダメダメよ〜?」
貼り付けたような、能面のような笑顔にライズは見覚えはない、だが…
「どもども〜。謎の行商人さんで〜す♪」
その声と、ふざけたような軽い口調に、ライズは覚えがあった。
「…貴方、光綾学園のフィクサーね?」
あの時のふざけた姿…全身をフルプレートアーマーで包み、着ぶくれした姿とは今一つつながらないが、声と口調は同じ。
間違いない。
「さてさてどうでしょ〜。ただ〜、女の秘密には気安く触れない方がいいと思うの。そう思わない?サ・リー・ちゃん?」
ライズの問いかけを軽く受け流し、女は気安くライズに話しかける。それに対しライズは溜息をつき、言う。
「…そうね。それには同意しておくわ。行商人と言ったわね?商品を見せていただけるかしら?」
カゲモリのメンバーにも話していない自らの『異名』を知っているそぶりを見せる女相手に、下手な詮索は危険だ。
そう判断し、ライズは目の前の女の正体を探るのを諦める。
96邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:01:46 ID:hCQGvp0l
「はいはいは〜い。こちらをどうぞ、騎士様」
そんなライズの様子に満足したのか女はどこからか一振りの細剣を取り出して膝を折り、ライズの前に恭しく差し出す。
従者が騎士に剣を渡すように。
「試させてもらうわ」
それを受け取り、眺める。美しい刀身が、月の光を反射して星のようにキラキラと輝いている。
ライズが手にしていた短剣を刃にそっと押しあて…その瞬間。2つに"斬れ"た短剣の刀身が軽い音を立てて床に落ちる。
「なるほど斬れ味と強度は前以上。ならば…」
剣を握り直したあと、一度だけ呼吸を整えたライズは舞うように剣を振る。剣を持ったライズの演武。
それは1度として狭い室内の調度品に当てること無く、またほとんど音すら立てること無く繰り出される。
「すご〜い」
その演武を見てなお、女は笑顔を崩さず、ぱちぱちと拍手をする。
「なるほど、押し売りに来るだけはあると言ったところかしら」
剣をゆっくりと鞘に納め、ライズは言う。
時間にしてわずか数分振っただけで、この剣の素晴らしさは理解できた。
剣は触った瞬間、まるで一体化したかのように手に馴染み、ライズの思ったとおり…否、それ以上の動きで剣は閃いた。
「でしょでしょ?これは〜、コルウェイドで伝説作ったパーティー『夜を護るもの』が使ってた武器の1つ、星の刃『サン・テグペジュリ』。
 その刃に貫けぬものはなし、なんて言われてる逸品よ〜」
女が笑顔のまま、解説しつつ、電卓を取り出す。
「それで、肝心のお値段はねぇ…これぐら〜い♪」
手早く操作してその数字を見せる。
「…輝明学園の戦闘用箒がフルチューンで買える値段ね」
それを見て、ライズは無表情に言う。
「ライズちゃんにとってはそれだけの価値がある。違わない?」
対する女も笑顔を崩さず言う。2人の間に無言の空気がしばし流れる。そして。
「…いただくわ」
ライズは懐から0-Phoneを取り出して女の方に向ける。
「…まいど〜♪」
それに女も0-Phoneを取り出して応じる。
お互いが素早く操作して電子マネー化された大金のやり取りをあっさりと終え、サン・テグペジュリはライズのものとなった。
「それじゃ、お大事に〜。あ、それと…」
これで用事は終わりとばかりに女はすっと窓の縁に腰かけて、ライズの方に顔をむけて言う。
「うちの学校の生徒、助けてくれてありがとね〜」
そう伝えた瞬間。その時だけ女の表情が変わる。貼り付けたような笑顔から、純粋な感謝が込められた微笑みに。
その微笑みを残し、女は窓から飛び出していく。乱立する学生寮の壁や屋根を器用にわたり、あっという間に見えなくなる。
「…別に、そんなつもりは無かったのだけれど」
その場に残されたライズは、その手に握られた剣を見て1人呟く。
「確かにこれからを考えるのならば、これ以上ない報酬だわ」
ライズはもう1度だけ、剣を軽く振り、時空鞘へと納める。
魔人、悪魔、魔人皇…そして邪神。
それらとの戦いの予感を感じながら。
97邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:03:15 ID:hCQGvp0l
―――極上生徒会保健室

朝。
カーテンの引かれていない保健室の窓から差し込む朝日に、斎堂一狼は目を覚ました。
(ああ、なんだか温かいな…)
昨日の心労の反動か、いつもとは比べ物にならぬほど暖かい布団の中で一狼はまどろむ。
昨日は本当に酷かった。
姫宮空が謎の時空転移に巻き込まれたと聞き、慌てて駆けつけたものの、原因も分からず、無事なのかも分からぬ不安な数時間。
その後、ライズと共に死にかけで帰って来たときは心臓が止まるかと思った。
慌てて空を抱えて保健室に駆け込み、治療をしてもらった後も目を覚まさぬ空に、まさかこのまま2度と目を覚まさないんじゃないかと不安なまま共に過ごし…
(…あれ?)
まどろみながら、一狼は違和感に気づいた。
(僕はいつの間に寮に戻ったんだ?)
空のベッドのそばに座っていたあとの記憶が無い。
そして、その違和感に気づいたことを引き金に、一狼は恐るべき状況に徐々に気づいて行く。

余りにも変なのだ。

鼻腔をくすぐるのはどこかで幽かに嗅いだ覚えのある、甘い香り。
耳に届くのは、穏やかな心安らぐ呼吸の音。
寝ているベッドのシーツは一狼には覚えのない白い清潔なシーツ。
…と言うか。
(今、僕の周りにあるあったかくてやわらかくてすべすべした感触は…)
それは、一狼が生まれてこの方覚えのない感触であった。それは忍者として並の男子を遙かにしのぐ筋力を持つ一狼でも振り払えぬほどがっちりと固定されている。
その事実に確信にも満ちた恐怖すら覚えながら一狼は目を見開き…
(○×□〒*+QWWDFJOGSVJGIOIJB,;…!?)
その恐るべき事実に一狼は声にならない叫び声を心の中であげ、その事実に耐えられなくなった精神は強制的にブラックアウトした。

…数分後

「…ん」
何か叫び声のような声を聞いたような気がする。
それに反応し、姫宮空はゆっくりと目を見開いた。
そして、しっかりと抱き抱えたそれに目をやり、安心していまだ眠る彼を起こさぬように小さな声で言う。
「おはよ。一狼くん」
昨晩、フィルに教えてもらった秘策。それを忠実に実行した空は、耳まで真っ赤になりながらも満足な気分であった。
「昨日はよく眠れたかな…そうだったら、嬉しいな」
まるで気絶したかのように目を覚まさぬ一狼に対し、空は密かに秘めた決意を口にする。
「あのね、一狼くん、私、決めたよ…」
表情が引き締まる。
「一狼くんが私を守ってくれるのならば…私は一狼くんを守るよ」
その顔はいつもの温和な"姫"ではなく、強い心を持つ"戦士"のそれ。
「私、強くなる。一狼くんを守れるくらい、強く」
脳裏に浮かぶのはあの凍るような絶望しか無い未来。
それを振り払うように、空はほほ笑む。堅い決意と共に。
98邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:09:00 ID:hCQGvp0l
―――エヴァの茶室

月曜日の放課後。
「邪神ディー。それが敵の狙いだそうだ」
ライズからの報告を受け、傍らに茶々丸を侍らせたエヴァは目の前の茶室に備え付けられたテーブルについた、カゲモリのメンバーたちを見る。
男女混合、何人かのメンバー。カゲモリの中でも特に"諜報"に長けたものたちと、"魔術"に詳しいものたち。
魔神皇対策のために選ばれた、エキスパートである彼らは静かに、エヴァを見る。
「属する世界は『光綾学園』と言う学園のものだと見てほぼ間違いない。そうだな。タバサ?」
エヴァの問いかけにそのうちの1人であるタバサが頷く。
「以前光綾学園に所属する友人から聞いた。光綾学園の世界には4柱の神がいる。
 人間に信仰によって奇跡を起こす、神術を教えたそれら4柱の神の名は、パヴァーヌ、クープラン、ラヴェル…そして、ディー。
 彼らは始祖ブリミル…1つの世界の主神クラスの力を有していると思われる」
淡々と告げるタバサの言葉に、無言の緊張が走る。
無理も無い。如何に常軌を逸した実力の持ち主が揃っているカゲモリと言えど、神を相手にしたことがあるものなど、数えるほどしかいない。
それが収まるのを待ち、エヴァは言葉を続ける。
「ここにいる連中は知っているだろうが、魔神皇は化け物クラスの召喚術士だ。アクションが鈍すぎることから察するに何かしらの準備は必要だろうが、
 神を支配する方法と実力は持っていると考えて動いた方が良いだろう。私たちでも止めきれるかは微妙なところ、だろうな」
そこで一旦言葉を切り、待つ。カゲモリに強制任務は無い。受けるのも去るのも…すべては本人の意思に任せられる。
その原則にのっとり、各自が結論を出すまでの時間を。
「…話を続けるぞ」
1人として席を立たなかったことを少しだけ意外に思いつつもエヴァは話を続ける。
「もちろん、私とて黙って指をくわえて見ている気はない。対策を講じ、魔神皇が邪神の力を手にする前に叩き潰す。そのために…」
エヴァが傍らに茶々丸を見る。それにうなずくことで応じ、茶々丸は案件を説明する。
「現時刻を持ってカゲモリが組織として活動する案件が追加されます。
 内容は『邪神ディー』の対策研究、『光綾学園』の内偵、『対魔人皇攻略戦』の準備。以上3案件となります」
「対策研究班には邪神ディーの資料を調査してどういう神かを見極めてもらう。これにはタバサと翻訳に茶々丸。
 それと元春、お前、前に一応は"教会"の一員だとか言ってたな。お前にまかせる。
 光綾学園の内部調査は卑怯と羽月、お前らに任せる。光綾学園は冒険者学校だ。教師や生徒に気づかれないよう慎重に動け。
 最後に対魔神皇の人選。これは組織のメンバーに詳しい私とさつきが当たる。説明は、以上だ」
エヴァがそう言うと同時にあるものは席を立ち、またあるものは残された"同僚"たちと話を始める。
陰が動き出した瞬間だった。
「首を洗い、待っているがいい。魔神皇」
そして、陰の中でエヴァが不敵に嗤い、言う。
「カゲモリは指を加えて待っているほど、甘くも、悠長でも無いぞ」
その嗤みは、暗く、深く、そしてそれ故に何色にも染まらぬ陰の色を宿していた。
99邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:10:15 ID:hCQGvp0l
―――軽小沢学園高校 最上階

「暴走はおさまったか…完成だな」
暴走の果てに魔人を完全に取り込み、知性を得たそれを、魔神皇は満足げに眺める。
オオオオオ…
漆黒の人型。
それは器であった。真の神を降ろすために用意された、神の器。
「名乗れ。邪神。今のお前ならば可能なはずだ」
マグネタイトと悪魔の肉で出来たそれに、魔神皇は言い放つ。
「ワ…レ…」
その言葉に答え、それは名乗る。
「ワ…レ…ハ…邪神…ディー…コンゴトモ…ヨロシク…」
「そうだ。ディー。僕こそが…今のお前の主だ」
真に完成し、従属した邪神。それこそがこの学園世界で魔神皇が真の力を手にするための第1歩。
そして。
「…ご報告します。神の力を呼ぶための神の遺産。『光綾学園』なる学園にて発見いたしました」
次なる1歩のため。男が報告する。
「そうか」
その言葉に魔神皇は更に嗤みを深め、言い放つ。
「…1ヶ月後。学園世界においての新月の日、光綾学園を魔界に堕とす。その時こそ、僕は真の神になる」
最終段階の宣言を。
「…分りました…ところで、魔神皇様」
それに男は深く頭を垂れたのち、言葉を口にする。
「なんだ?」
「用済みになりました我が科学的魔界はいかがなさいますか?」
そこに込められたのは、期待。男は期待を込め、魔神皇の次の言葉を待つ。
「…好きにしろ」
そして、魔神皇は男の期待通りの返答を告げる。
「ありがとうございます!実は私には、貴方様の力をさらに増すための案が1つございましてですね…」
「それも好きにするがいい。あの魔界は貴様にくれてやる」
「はい!」
喜色満面といった風情で男は立ち上がり、自らの策へと動き出す。

「…そう、あんなもの、ディーの力を手にしてしまえば、どうでもいい」
それをどこか冷やかに見つめ、魔神皇は1人呟く。
「ディーの力。それさえ手に入れれば、俺は無敵となる。ありとあらゆるものに負けぬ力を手にする。そして俺は―――」
その瞳に宿るは燃えるような決意。妄執にも似たそれを宿し魔神皇はその願いを口にする。
あの戦いで失った全てを思い出したが故の、願いを。

「――――――世界を救う」

かつて破れ、果たしきれなかったそれを。
カゲモリと魔神皇、2つが激突する日は、近い。



以上。これにて邪神編終了。

>>68
ライズさんのアレはお父様の必殺技を参考に編み出されています。実際のゲームでは出てこないので注意。
筋力が足りない分をスピードと技で補って無理やり使うのは学園世界に来てからの発想だったり。

>>69
邪神編ようやく完結です。
次の次くらいで魔神皇との決戦の予定。次のシリーズは伏線の回収。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 18:15:46 ID:yiP+5vbp
支援……しようと思ったら終わってたっ
101邪神は学園世界の夢を見る@学園世界:2010/03/22(月) 18:18:38 ID:hCQGvp0l
>>100
急ぎすぎましたすみませぬ。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/23(火) 00:27:52 ID:rVr56fBO
まあ引っかからずに投下できたならそれに越したことは無いさw
乙。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/26(金) 01:01:28 ID:CRXd6RLu
しっかし過疎ってんなぁ……

ネタ振りでもしてみるか。
もうすぐ四月だし、学園世界で花見とか。
正確に言うと、花見の場所取りでひと悶着とか。そこで奮闘する選抜委員のみなさんとか。
ファンタジー世界の住人の桜に対する談義とか。
104ギアス×NW:2010/03/26(金) 15:48:41 ID:twwoVb8C
ネタ投下
ある程度構想が纏まったら書くかもしれません。


今回予告

行動の先には、結果が待っている
人の身でありながら神をも味方につけ、魔王の名を冠した彼は
この世の総ての悪を背負いこの世を去った。
その結果さえも背負い未来は続いて行くのだとしたら
彼は再び咎を背負ってでも立ち上がるだろう。
ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア。
これは総てを壊し、総てを創造した男の見る最期の夢。

ナイトウィザードクロスSS アンラ=マンユの魔王

紅き月が昇る時、新たな魔王がこの世に生まれる


ハンドアウト
PC@
コネクション:"金色の魔王"ルー=サイファー 関係:恩人
クラス:転生者 ワークス:学生
君は、一つの世界の総ての悪を背負い、死んだ
それでも君の魂は消える事なく、世界の狭間を漂い続けた
やがて、一つの声が君を呼ぶ
「もう一度の生に興味はあるか?」
君は断った。
それがまさか、こんなことになるとは…

PCA
コネクション:赤羽くれは 関係:親戚
クラス:箒騎士 ワークス:ロンギヌス魔導具評価試験隊付試験飛行隊
君はロンギヌスの新人パイロットであり
新型箒、ヴァルキリーシリーズの一機"シュベルトライテ"に選ばれた箒騎士だ。
新しい家族を得て、賑やかになった家族を襲った冥魔
そして君は、新たなウィザードの覚醒を目にすることとなる

PCB
コネクション:瀬尾先生 関係:好意
クラス:勇者 ワークス:学生
君はごく普通の女子高生だ。
海外から輝明学園秋葉原分校に留学した君は
初めての日本の筈なのにどこか懐かしさを感じていた。
恐らくは日本語を簡単に覚えられた事もそれに関係しているのかもしれない。

PCC
コネクション:赤羽くれは 関係:主
クラス:強化オレンジ ワークス:騎士
君はオレンジ畑を耕していた、異世界の強化人間だ。
ある日君は、トラックのエンジンを開けた際中へと吸いこまれていき
気がついたら異世界に居た。
右も左もわからない君を助けたのは異世界の城主代行、赤羽くれはだった。
君は何の代償も求めず君を助けた赤羽くれはに新たな忠誠を誓った。
105名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/26(金) 15:58:42 ID:VcemvIRL
クラスちょっと待てw
106名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/26(金) 20:00:38 ID:u0J72t8z
メイオの部下の人はいないのか…
107名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/26(金) 22:23:35 ID:8Kl4wHQz
ルル山さん+魔王だとナイトメアオブナナリーのマッチョゼロさんを思い出すぜw
108名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 00:37:40 ID:IlaDCtvx
コンプエースでリリなのとプリズマのコラボ漫画が掲載された。
やっぱり魔法少女全員による全力必殺技乱舞とか燃える展開だよなー、と思って。

学園世界魔法少女バトルロイヤルとか楽しそうですねと思いました、まる。
チーム分けするとすると、
近接白兵・遠距離砲撃・遊撃系万能・カレイドあたりでチーム組んだら楽しそう。

ベホイミ・なのは・さくらちゃん・美遊チーム対サクラ・マユリ・フェイト・イリヤ・

一人だけ「……少女?」って年な気がしなくもないが気にするな。
109ギアス×NW:2010/03/27(土) 01:42:06 ID:b+7LOSfO
二時頃に投稿開始します
110ギアス×NW:2010/03/27(土) 02:03:00 ID:b+7LOSfO
オープニング

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは死んだ。
死んだ先にも不思議と意識はあった…いや、理論的にこれがどういう現象であるのか
ルルーシュは理会できていた…しかし認めたくはなかった。
父が破壊を目論んだもの、集合無意識、あるいは神…
そう、自分は死して集合無意識の一部へと還ったのだ。
だからこそ、ルルーシュはそれを認めたくなかった。
それは在ってはいけない力、両親が自分を捨てた理由…その総てを肯定することになるからだ。
しかしこれはどういう事だろう、感じるものは絶対的な孤独感のみだった。
もし此処がCの世界だったならば、父も、母も、自分が殺したシュナイゼルもユーフェミアも、ロロも
そして、シャーりぃも…死んだ皆が此処に居る筈なのに
此処は…何処までも孤独なのである。

「それが魔王の最期というものではないか」

ルルーシュに語りかける少女の声さえも、かえってルルーシュの孤独感を助長した。
彼女は人間ではない、かといって父やCCのような不老不死の存在でもない
会った事もない筈なのにその余りに強大な存在感だけで、彼女は人間ではなく…
そんなものすら軽く踏みつぶせる、神に近い存在だと言う事が解るからだ。
人間の孤独を本当の意味で埋める事が出来るのは、人間だけだ。
だからこそ未だルルーシュは孤独感を感じていた。
神に近いものを前にして恐れを抱かないのは、自分がもう既に死んでいるからだろう。
寧ろルルーシュは、最早自分の消滅さえ望んでいた。

魔王…そうだ、ルルーシュは魔王として死んだのだ。
暴力と知略と、そして呪われた王の能力―ギアス―で世界を支配した。
そしてこの世の総ての悪と、呪詛の矛先を世界から根こそぎ奪って、自ら背負い
得られた名は"悪逆皇帝=ルルーシュ"。
そして、自らの命を…唯一の親友であるスザク=ゼロに断たせた。
孤独の理由がようやく理解できた、自分はもう人間ではない。
"悪"そのものなのだと。
ならば死後人間と同じ世界に歩めるなどおこがましい事甚だしい。
ならばきっとこの少女も魔王に違いない。
やっと、親近感が持てた。

「ふん、矮小な生しか生きなかったお主に親近感を持たれても
我は嬉しくとも何ともないのだがな…」

即否定された。
111ギアス×NW:2010/03/27(土) 02:05:01 ID:b+7LOSfO
「まぁお主が逸材である事は確かだ、それでこそ此処まで遠くに足を運んだ甲斐があると言うもの
我も感じるその執着、智謀、世界を相手に反逆する度胸…多少は気に入った」

少女は微笑んでルルーシュの"存在しない筈の"頬に優しく指を触れた。
するとルルーシュの頬から徐々に、まるで力が浸透するように温かい感覚が広がっていく。
ルルーシュはそっと目を開けて辺りを見る。
暗い、冥い、暗黒のみの空間。
しかし不思議とその少女と自分だけが、まるで写真だけを切り貼りしたようにはっきりと見えた。

「これは…?」
「消えかけていたお主の魂にプラーナを分けてやった
こんなところを消えずに漂っているなど、とんだ執着としか言いようがない

まぁ、そんな状態だったからこそお主の記憶も覗きやすかったがな」
返す言葉に視線をやると、そこには金色に輝く髪をした幼い子供の姿があった。
恐らく先ほどから一方的な問答を繰り返していたのはこの少女だろう、ルルーシュはそう思い少女の顔を見た。
恐らく少女の体は人間のものとそう変わらないのだろう。
長時間のアニメを二期分夜通しで鑑賞したかのように、その目元には隈ができていた。
しかしそこさえ無視すれば確かに少女には神とも魔王ともとれる強大な威厳が感じられた。
そう、まるで神さえ殺そうとしたあの父のように。

「もう一度の生に、興味はあるか?」

…少女の問いを、ルルーシュは吟味した。
もう一度の生、即ち、この魔王は自分を再び生き返らせる事が出来るとでも言うつもりなのだろう。
実際、不老不死の魔女や死のうが他人にとり憑き生き延びる能力―ギアス―を持った母も居た。
死者の蘇生など、神や魔王なら…それこそ本物の魔王なら可能であってもおかしくないだろう。
事実、ルルーシュの混濁していた魂とやらの意識を覚醒させて見せたように。
しかし…

「…断る」「…何…?」

「貴様の言う執着が何故私にあるのか…
それは甚だ疑問だが、私は世界から既に消えるべくして消えた存在だ。
それに何より父に言われた言葉でね、誰かに与えられた生など死んでいるも同然だ
そんな生など私は要らない。
私の記憶を見たのなら、それくらい解るだろう?」

前者は、恐らく自分のエゴを事情で包み隠したのだろう。
自分でそう思った、そもそも少女の言葉を信じるなら…
本心から消えるべきと考えていたのなら此処で消えていたはずだ。
後者は本心だった。
何より、この少女からは父と似たような匂いがした。

「しかし、本心はそうではないようだな?」

少女は意地悪く笑って言う。
112ギアス×NW:2010/03/27(土) 02:06:00 ID:b+7LOSfO
「ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアよ、お前は何もわかっていない
我が気に入ったのはその生き汚さ、ギアスで刻みつけたものでも魔法で確立したものでもない
何よりお前自身の願望が為に父をも殺すその眼だと言うのに…」

少女は腕を振り上げて、掌に光を集める

「安心しろ、これよりお主が生まれおちるのはお主の生まれ育ったものとは違う世界…
そこで考え苦悩し、我に素直に従わなかった事を悔いるが良い」
「な、待て!!俺はもう…!!」

ルルーシュが言いかけたところで、少女の掌の光が爆ぜた。
闇一色だった世界は金色の光一色に染まり、ルルーシュの視界を染め上げる。
しかしルルーシュを襲ったのは神秘に対する賛辞ではなく、罪を背負いながら二度目の生を受ける恐怖
ルルーシュは恐怖し、慟哭し、目を焼くような金色の力の奔流に目を押さえ
少女に対する怒りを露わにした。

「貴様ァァアアアアアア!!
二度までも…二度までも俺を世界に…捨て去る気かァァァアアア!!!!」

しかしルルーシュの呪詛の声も最早聞き飽きたかのように、少女は扇子をはためかせ
優雅にチョココロネを口にした。
そして、冷やかな視線をルルーシュに向けて言う。

「無礼者。
テスラ=陽炎=フラメル、金色の魔王と呼ぶが良い」

反逆の魔王は金色の魔王を、その姿を
その呪い―ギアス―の宿った双眸に焼きつけるように目を見開き、誓いの言葉を口にする。

「金色の魔王ゥ!!忘れんぞ、忘れるものか!!!
この俺を再び世界に解き放った事を、いずれ後悔させてくれる!!」
「ふふ…その時を楽しみに待っているぞ、反逆の魔王…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア!!」

それは二人の宣戦布告、再び反逆の火ぶたが切って落とされ

それと同時にルルーシュは、再び世界に生誕した。
113ギアス×NW:2010/03/27(土) 02:08:33 ID:b+7LOSfO
はじめまして、先ほどネタとしてハンドアウト投下した者です
これだと恩人というより宿敵の方があっているような気もしますね。
とまれ、以上でルルーシュのオープニングは終了です。
誤字や脱字と縁の深い私でございますので、その辺のツッコミは軽くしてやってください。
これからどうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>

次はPCAのターン!!

>>105
すいません、書いてる途中で思いつき、自重できませんでしたww

>>106
あえてネタばれは回避しますw

>>107
私も思いました
114名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 22:39:06 ID:nbccWIIZ
そういえば学園世界に
瀬尾先生の存在は
ここの皆許容出来るんだろうか
115名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/28(日) 08:43:28 ID:/a6zMyvy
どうもサクラ・ヴァンシュタインは存在してるみたいだから別にいいんじゃね?
メイオルティス様 対 冥王様とかやってもいいだろうしさ。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/29(月) 03:27:10 ID:wifQO5bY
>115
眉毛を巡って争うのか。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/30(火) 22:01:35 ID:VQrbZG42
ネタを振ってみる。

学園世界で都市並みのでかさの学園の中によその学園が転移してくると言う電波が飛んできた。

禁書の学園都市にバリバリのファンタジー系が転移してくるとか、魔法系のエンダネス島やアリアドネーに現代系の学園が転移してくるとか。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 20:57:14 ID:/vObh0Uf
ちょっと考えてみたが……
「隣」に出現する現状の学園世界と比べて、「中」に出現してもあんまし差別化はできないかなー?
仮にならではの展開が思いついても、割と出オチだし
119名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 21:23:59 ID:2D1TV/ge
その日、過去最大規模となる"学園"が、この学園世界に出現した。
場所は地上より800m上空。

決して広いとは言えないが、それでも数々の学園を許容してきた狭界全土を
一瞬にして暗闇が包み込む。
生徒たちがパニックになるのも当然であった。


  ナイトウィザード学園世界
   「キャンパスを覆う影」

――学園墜落まで、あと24時間。



こんな感じで。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 21:37:20 ID:eVyycvKK
>>119
そこまででかい学園…大運動会の大学衛星とかロイヤルワンダー学園星ごととかかw
121名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/31(水) 23:22:59 ID:gQzhltDy
マジックアカデミーならそんぐらいいかね?
122名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 18:09:55 ID:0dsW80v8
ここに投下されたSSのネタでセッションをやる猛者が居るなんて。。。
123名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 18:13:01 ID:832OpHo9
保管庫がwww
124名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 21:20:22 ID:tCQjpBkg
シャイマール様降☆臨
125名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 21:34:49 ID:0dsW80v8
>>124
しゃいまーる?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 21:40:39 ID:nVlwpglN
>>122
kwsk

リアルで学園世界セッションやってるって人はたまにいるけど、リプレイとかはアップされてないんだよな…
127名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 21:51:46 ID:LWaFY5oN
四月馬鹿ネタやってくれてんのはここの保管庫と、アニメwikiと……ねこさんちのアレは四月馬鹿なの? マジなの?
128名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 22:05:33 ID:0dsW80v8
ラースフェリア食糧難と、英魔さまのお仕事関係
129名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/02(金) 02:57:19 ID:LZENXpxI
>>122
割とよく聞く話だけど。学園世界設定でセッションやってますー、とかSSのネタ使ったセッションしましたー、とか。
結構ほんとはそんな猛者いるもんなんじゃね?

>>126
たぶんメガネ大邪神がリオフレードに降臨しましたのセッションレポじゃないかと。リプレイってほど詳しくは書かれてなかったはず。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/02(金) 17:16:50 ID:1Qrmrbq6
ねこさんとこもやってたのk、気付かなかったぜ
131名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/05(月) 17:12:55 ID:TmIn6wjb
昔、気の迷いで投下したやつを読み直してみたら、気が狂いそうになった
終章、ならびにおまけ書きあがりました。
よろしければ21:10頃から投稿したいと思います。
終 章  日常 _trouble_days_again_

 薄暗い部屋で、上条当麻は目を覚ました。
 いつもの病室(スタート地点)―――、いつもの第七学区に建つカエル顔の医者が居る病院の一室には、薄明の光が差し込んでいる。

「………病室(ふりだし)。か――――」

 何の気なしに呟いた上条当麻は、盛大に頭を抱え、右手を覆ったギプスが直撃して悶絶し、身を捩って胴体を固定する包帯が締まり、激痛を発した。

「………………………………………………。不幸だ――――」

 涙目で呟く。
 何が不幸かといえば、ソレはもう、ナチュラルにこの病室で目が覚める事に慣れてしまっている自分だったり、気絶している間に施された治療だったり―――、
 第七学区に建っている馴染みの病院の、カエル顔の医者の腕は良く知っているから、後遺症とかそーゆーのの心配は無いとは思うが、

「………どんくらい掛かるんだろ?」

 主に、治療費とか療養期間とか。
 上条当麻はただでさえ、エンゲル係数激高な居候を抱えている貧乏学生である。其処に加わる医療費が家計を逼迫する割合は、実際問題シャレになっていない。
 そして、何よりも、上条当麻は一般的な高校生なのだ。
 学園世界などと言う訳の解らない状況であっても、平日は授業があるし、こうやって入退院を繰り返していては、単位が足らなくなるかもしれない。
 つまりは、留年の危機。
 同時に入学した連中を先輩と呼ばなければならない屈辱は、正直耐え難い。
 土御門や青ピなどは、ここぞとばかりに先輩風を吹かすだろうし、そして、吹寄には軽蔑の視線を向けられ、姫神は哀れんだ顔で見てくるのだ。

「うあーッ!!! 考えたくねぇ!! 序でに小萌先生あたりはグチャグチャに泣きながら怒りまくる気がしてきたぁ!!」

 『上条ちゃーん!!』と、目をむくチビロリ教師の幻影に、頭を抱えた。右手をぶつけると痛いので、気分だけだが。
 高校生上条当麻に訪れる非常な大ピンチ。けれど、まぁ……

「正直、どれもこれもしゃーねーんだよなー」

 恨むべきは首を突っ込んだ自分自身であって、しかし、やらなきゃ良かったと思うような事も無い。
 なので―――、

「そーゆーことだから、そんな所で縮こまって無くても良いぞ?」

 声をかけた先、パテーション代わりにベッドを取り巻く白いカーテンの向こうから、ビクリと震える気配が届いた。
 しばしの諮詢を挟んで、彼女は恐る恐る顔をのぞかせる。

「……気づいてたの?」

 覗く、瞳の色は暗褐色。白い肌に映えるアッシュブロンド前髪の下から、少女――アゼル・イヴリスは上条を見つめた。

「……………」
 困ったように上条は頬をかく。
 薄暗いと言っても部屋には薄明(あさひ)が差し込んでいる。カーテンの裏になど居れば当然、影絵のようにシルエットが描かれていた。
 
「ま、お互い無事で何よりですなー」

 上条は、茶化す風に笑う。
 騒動の夜は明けた。
 最後の最後で気絶した上条は、アゼルの無事な姿を見て初めて、それを自覚する。

「うん。上条君も……、元気そうでよかった」

 はにかむようにアゼルも笑った。

「お疲れさま。上条君。『旗』を壊してくれてありがとう。
 君がいてくれて本当によかった。
 君は、この世界を救ったんだよ」

 そして、私のユメも―――。
 声に出さず口の中で呟くアゼルに、上条の目は丸く見開かれた。
 褒め殺しかそれは。いくらなんでも過大評価のしすぎというものだ。

「んな、大袈裟な。
 俺がやったのは、あの『旗』ぶっ壊したことだけ。それだって、柊さんや美琴に助けてもらわなきゃ無理だったし。
 何より、あのブッソーなお子様をぶっ飛ばして世界を護ったのは、まぎれもなくアゼル、おまえなんだろ?
 だから、もっと胸張れよ。いてくれてよかったって言うなら、それはお前のことなんだよ。
 お前がいなけりゃ、こんな朝なんて迎えられてないんだからさ」

「………。」

 少女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。

「うぇっ!? アゼルさん!?
 何故泣いておられますか!? ご、ごめん! 俺なんか変なこと言った!?」
「ううん。……。ごめんね、大丈夫。ただ、嬉しかったから―――」

 うれしい時でも涙が出るって、ほんとだったんだ。
 アゼルは目尻をぬぐって、花のように笑む。

「ありがとう。それだけで、私は救われる」
「はぁ……。なんというか、いちいち言うことがオーバーなんだよお前は」

 ため息が漏れる。純情少年としては照れて布団に顔を押し付けたい気分だ。
 
「でも、上条君。ほんとに大丈夫なの?」
「? えーと、大丈夫って何が?」
「その、怪我とか―――、さっきもなんだか唸ってたみたいだし……」
「あー」

 上条の視線が泳ぐ。
 体に残る痛みも、鉛のような疲労感も、達成感を得た今となっては心地よい疲れに変わっていたが、控えめに見ても割とどうしょうもない状況ではなかろうか。

 再び沈黙。
 大丈夫。と、やせ我慢する前に、アゼルの瞳が揺れた。
(うぅわ、気まず。なんでここで黙っちまうんだ、俺は! なんか気の利いたこと言って話そらさなって、うわぁああ!! アゼルまた涙目になってるよ!
 ま。マテ、話せばわかる! だから早まるなって、意味不明なこと言ってバグってる場合じゃねぇよ!! デンジャー、デンジャー、至急応援求む!!
 天使でも悪魔でも、土御門でも青ピでも吹寄でも姫神でも、何ならインデックスでも誰でもいいから!
 ってか、美琴と柊さんどこ行った!! 俺ここに運んだのあんた等なんだろうからこんなときにもスパッと現われてサクッと助けてくれぇ!!)

 その時、コンコンと上条の支離滅裂な脳内絶叫を聞き届けたわけではなかろうが、病室の扉をノックする音が響いた。
 上条には、それが福音のように聞こえた。

「あ、開いてますよ!」

 藁にも縋る気持ちで声を返す。入室を告げる声と共に、扉が開いた。

「?」

 部屋に入ってきた来客の、その面子に上条は首をかしげた。
 今自分がいるのは早朝の病室だ。こんな時間、こんなところに来るのは見舞客ですら稀だろう。
 せいぜいが回診に来たカエル顔の医者か、見回りに来たナースさんかと思っていたら。扉をくぐったのは二人組。
 赤い長い髪の少女。そして、黒髪に巫女服の女性。
 首をかしげていた上条は、横でアゼルが体を強張らせていた事に気付かなかった。

「初めまして、だね。上条当麻君………。で、合ってるよね」
「ええ。そうですけど」

 巫女服の女性は告げる。

「私は赤羽くれは。一応、輝明学園の代表ってことで極上生徒会に加わってる者だよ。こっちは私の護衛で、紅樹星ちゃん―――」

 よろしくね。と、言う赤羽くれはから一歩引いて、赤い髪をサイドでまとめた紅樹星も、ともに頭を下げる。
 意外な人物の登場に、よろしくお願いします。と、返しながら、しかし上条の疑問符はより大きくなった。

「で? そのゴクセーの人が何の用っすか?」
「ちょっと話しておきたいことがあってね―――」

 まぁ、所謂『事情聴取』ってやつだね。と、くれはの視線は上条から身を強張らせるアゼルへと向けられる。

「アゼル。ちゃんと、お礼は言えた?」
「………。ええ。時間をくれてありがとう。」
「どういたしまして。
 ちょっと心苦しいけど、そろそろ時間だよ。星ちゃんと、先に行っててもらえる?」
「……わかった―――」

 決意を固めたような、諦めたような奇妙な表情に、上条は眉根を寄せる。

「……アゼル?」
「……大丈夫。大丈夫だから気にしないで」
「―――いや、気にすんなって……」

 そんな、無理やり笑ってるような貌でそんなこと言われても、それこそ無理だ。
 けれどもそれを言葉にするより早く、彼女は星に伴われて病室を出ていった。
「って、おい、アゼル!?」
「上条君、いいかな?」
「いや、今それどころじゃねぇって、あんたも見てただろ!」
「うん。見てたし、その原因も解ってるから」
「解ってるって……、」
「今から教えてあげる。と、言うより、これから話したいことはそのことだから」
「そりゃ、どういう意味だ?」

「つまり、極上生徒会は、アゼルを『処分』するつもりだってこと」

 上条は、その言葉の意味を取り損ねた。

「え? 『処分』って―――?」
「そのままの意味だね。
 この世界にとって脅威である侵魔(エミュレイター)『荒廃の魔王 アゼル・イヴリス』の写し身を破壊して、裏界に追い返す―――。
 解り易く言えば、『あの』アゼル・イヴリスを―――『殺す』ってこと」

「――――――――――。は!? いや、まて、ちょっと待てよ!!」

 あまりに唐突に伝えられた事に、上条は混乱しながらも、くれはに食い下がる。

「如何言う事だよ! アゼルを殺すって! あいつは―――!!」

 殺されなくちゃならないほど、悪い奴じゃない。そりゃあ、第六学区を壊滅させて、そこにいた人たちを死なせてしまったけれども、

「それだって、ルー・サイファーとか言うのが勝手にやったことだ。
 第六学区が壊滅するなんて被害になっちまったのは、ベール・ゼファーってのが魔殺の帯を偽物にすり替えてたからだ。
 俺は、はっきりとそう聞いた。アゼルは、ただ利用されただけなんだ」

 上条が言いつのるセリフに、けれども、くれはは眉一つ動かさず。

「だろうね。そんな事だと思った」
「は?」

 その口から出た予想外の台詞に、上条当麻は硬直した。

「アゼル・イヴリスに悪意は無い。けれどもこれだけの被害を出してしまった。そのことを、極上生徒会は危険視しているの。
 アゼルは、もともとルー・サイファーの一部だった存在(モノ)だから、そして、ベール・ゼファーの駒でもある。
 彼女の意思とは関わりのないところで、大量殺戮の引鉄を引かれてしまう。
 いくら、今はその力を制御できているとは言え、そんなものが、隣にいるのは怖いって、そう言うのよ」

 ここにはいない、金色の魔王の腹積もり一つで、炸裂させられる強烈な爆弾。アゼル・イヴリスという存在を形容するならば、それ以上に適切な言葉もない。
 だから、

「この世界を曲がりなりにも管理していかなければならない極上生徒会としては、その危険性を見過ごすことはできない―――」
「………。だから、殺すってのか―――」

 まるでゴミのように。遊び終わって、飽きた玩具を捨てるかのように。

「もともと、侵魔(カノジョ)は人間の敵。その上、単体で世界の危機を作り上げる魔王だもの。それが、大多数の意見、かな?」
 赤羽くれはは、夜闇の魔法使いの総元締めはそう言った。

 みんな、怖いんだよ。と、

 危険なものがそばにあることは認められない。だから、アゼル・イヴリスを『殺す』。


「……………………けんな。」


 静かな声がした。噴火の予兆のように、小さく揺れる大地のような。

「へ?」
「ふざけんなっつったんだよっ!」

 爆発。上条当麻は怒鳴りつける。
 吐く声に、熱が混じる。
 体の芯に、火が付くのが解った。
 怒りを燃料にして、胸の奥で何かが回り始める。

「さっきから聞いてりゃ勝手なことばかり言いやがって、アゼルが危険だ? だから殺すだ? ふざけてんじゃねぇぞ?」

 魔王パール・クールの出現、それだけで、昨夜のうちにこの世界が終っていても不思議ではなかったのだ。
 それを、

「あの物騒なお子様を叩きのめしたのはアゼルだろうが! あいつがいなけりゃどうなってたと思ってんだ!!
 あんたが、ここで俺と話してんのだって、アゼルのおかげじゃねぇか!」
「裏界は群雄割拠………。アゼルがいるベルの陣営は、パールと敵対している。だから、彼女は戦ったのかもしれない」
「違う!」
「どうして、そう言い切れるの?」
「もしも、パール・クールを斃すことだけが目的なら、俺なんて必要ない! 俺に右手はあいつの枷にしかならないんだから」

 上条当麻の幻想殺し。アゼルがそれを求めたのは、もうこれ以上世界を壊さないためだったのだから。
 
「…………どうして、そこまでアゼルに肩入れするの?」
「決まってんだろうが、俺は、あいつの味方だからだ」

 それは、
 この世界が大好きだと、この世界のみんなが大好きだと、護りたいのだと、そういった彼女の言葉だとか。
 自分を犠牲にしてでも、上条を守ろうとした決意だとか。
 魔法も異能も使えない状態にも関わらず、腕を身体を、青黒く腫らし傷つけてでも、上条を庇った事実だとか。
 命を狙われ、武器を向けられても周りが敵だらけでも、死んで欲しくない、殺したくないと、決して握り締める事を止めなかった、この右手に残る左手の感触だとか。

 そんな、魔王らしからぬ彼女の優しさを―――、上条当麻は知っている。
 だから、アゼル・イヴリスを殺すなんてこと、 

「ああ、そうだ。認めらんねぇよ」

 異世界の事情に、深く踏込む事は不毛だけれど、第八世界の住人(赤羽くれは)達と、どれだけの確執がアゼルに在ったのかなんて知らないけれど。
 それは、自分だけ安全圏に居るからこそ、言えただけの科白なのかもしれない。
 それは、実情を知らない者の、ただの戯言に過ぎないのかもしれない。
 けれど、瓦礫の中で、荒廃する世界の中心で、彼女は一人震えていた。
 巨大な力に打ちのめされて、自分ひとりではどうにもならないと、子供の様に怯えていた。
 だから上条には、アゼル・イヴリスが一万以上の人を望んで殺すような、怪物だとは思えない。
 犠牲者が出たのは事実だ。一万もの人が命を奪われたのも事実だ。ソレが罪だと言えば、紛れも無い罪だ。と、理解している。
 償わなければならない罪業(モノ)だと、解っている。

 それでも、コレだけは決して―――。彼女の傍に居た上条だけは―――、認めてはならない。

「それで、君はどうする気なの?」
「決まってんだろ」

 麻酔の切れかけた体を、無理やり動かす。

「危ねぇからって、そんな理屈にもなってねぇことでアゼルを殺すってんなら、それがあんた等の意思だってんなら―――!」

 右手の包帯を解く。
 握りしめる拳に、縫い合わせたばかりの傷口が、疼いた。


「そのふざけた幻想は、この俺がぶち殺す―――ッ!!」


 そして、上条当麻は立ち上がった。優しい魔王の幻想(ユメ)を守るために。

* * *


「……………で? 結局、極生の全員が、上条に説得されちまったってのかよ」

 ベッドの上から上体だけ起して、柊蓮司は呆れたような声を出した。
 学園都市、第七学区の病院の一室。とある理由でぶっ倒れた柊は、その一室で赤羽くれはと向かい合っていた。
 無事に上った朝日が、くれはの苦笑を、はっきりと浮き立てる。

「はわ、一応そーなるかな……しぶしぶにしろ全会一致じゃなけりゃこんなことは決められないよ」

 極上生徒会は、各校の代表が集まる合議制の会議である。
 決議は、民主主義の法則に則って、多数決で行われるが、世界全体の行く末に多大な影響を及ぼすであろうものは、全会一致が原則となっている。
 今回、魔王アゼル・イヴリスの処遇を決める事のように。

「しっかし、おまえも黒くなったよな、くれは」

 柊は半分閉じた目で、幼馴染を見据えた。

「確かお前が言い出したことだろ? アゼル・イヴリスを味方にするってよ。
 それを、あたかも上条が言い出したみたいになぁ?」

 柊の半眼に突き刺されて、守護者代行は「はわわわわ」と、再度苦笑った。

「はわ。そりゃ、世界の守護者代行見習心得なんてもんやってればねー。多少の腹芸は覚えちゃうよ。
 それに、そもそも危険(リスク)ってのは、排除するものじゃなくて、管理(コントロール)するものでしょ?」

 アゼル・イヴリスに悪意はない。
 産まれてから何千年、あるいは何万年以上も彼女は誰とも接触をとらずにいた。親友ベール・ゼファーとかかわり始めたのも、ここ二、三年の出来事だ。
 ゆえに、自分から悪意を向けるほど、自我が発達しきっていないのだろう。
 それなのに、今回、パール・クールとの戦闘では随分と自発的に動いていた。その理由は簡単に推察できる。
 アゼル・イヴリスは孤独な存在だ。その身に宿した荒廃の力、近づくものから無差別にプラーナを奪いつくす呪われた能力によって、誰とも関わることが出来なかった。
 しかし、この学園世界に現れたアゼルは、どうしてだか荒廃の力の発現が無かった。なぜ金色の魔王がそんな事をしたのか、その理由は分からない。
 しかし、少なくともアゼルは、この世界で人間のように学校に行き、語らい、遊び、誰かと触れ合うことができていた。
 それが、彼女の孤独を、どれほど癒しただろうか。
 故に昨夜、アゼル・イヴリスがパール・クールと鎬を削ったのは、この世界を守るためだったと結論付けて構わないだろう。

「どうせ写し身を壊しても、来ようと思えば裏界の魔王はやって来れちゃうもの。
 だったら、首輪つけて世界を守るのに協力してもらったほうがよっぽど良いじゃない。
 パール・クールみたいな裏界の魔王だけじゃなくて、闇界から冥魔が来ることだってあるんだから、強い味方は多いほうがいいでしょ?
 ま、専門用語で言うところの『しほーとりひき』ってやつね。
 実際、林水君なんかもそう考えてたみたいだし。
 でもまぁ、ただ問題だったのが、『恐怖』ってやつだったのよ―――、」
 そう、問題だったのが、アゼル・イヴリスへの恐怖。学園都市第六学区を消滅させた、荒廃の力への生理的な恐れだ。
 人知を超えた強い力。それも、相手は魔王だ。第八世界の『人間』と戦い続けてきたモノの力。それが、こちらに向けられることがないと、言いきることは出来なかった。
 だから極上生徒会は、アゼル・イヴリスは『殺す』他ないと、結論付けるしかなかった。
 けれども、

「そこで上条君の登場。アゼルの一番近くにいて、彼女が戦ってるのを見てた彼の言葉なら、説得力あるでしょ?」
「まぁ、そりゃあなぁ……。
 でもよ、アゼルが怖いってーのは、つまり感情論だろ? 理屈で何とかなるもんなのか?」
「はわ。うんその辺私も予想外だった。
 なんというか、傑作だったよ。スパーンと上条君が啖呵切っちゃってさ、それに一切反論できなかったんだから」
「………いったい、何言ったんだあいつ」
「えーっとね――――」

―――俺から見たあんた達と、あんたたちから見た俺達と、いったい何が違うんだよ―――

「―――だったかな?」
「―――んなこと言ったのかあいつ!?」
「うん。違う世界の超越者。その力で世界を滅ぼすこともできる。そんなやつ学園都市にだっているぜって。
 ほかの学校にも、結構居たみたいだねそーゆー人が。で、そう言う人たちとふつーに生活してるのに、アゼルを怖いって言うのは変じゃないかって」
「それで収まったのか?」
「結局、上条君のだってアゼルサイドに居る第三者の感情論だしね。下手したら泥沼化する恐れもあったけど、上手く行って良かったよ。
 ま、いくらか不満や不安は残ってるでしょうけどね。
 でも、パトリシア・マルティン使った郵便サービスだってやってるんだから、その辺の事情も加味してってとこかな?
 と、まぁそう言うワケで、極上生徒会に蔓延ってた恐怖(げんそう)は、すっかりぶち殺されちゃったわけなのよ」

 ま、これからバランスとりが大変だけどね。と、三度苦笑。

「………なるほどな。
 で? その上条とアゼルは今どうしてんだ?」
「はわ? 二つ隣の病室だけど? 上条君、怪我酷いのに無理したからぶっ倒れてちゃって、アゼルはそれに付き添ってるよって、柊!?」

 そうか。と呟き、ベッドから立ち上がった柊に、くれはの視線が突き刺さる。それに思わず、柊は後ずさった。

「……な、なんだよ?」
「柊、あんたなんで立てるのよ。
 同じ目にあった流君なんかまだそこで寝込んでるじゃない!?」

 くれはが指さす隣のベッドでは、紅樹星に付き添われて、短い茶髪の青年がうなされている。

「………ゴキブリ並みね、柊」
「失礼なことぬかすなぁっ!!」

 怒。
「はわっ!? だって賢者の石になるまでプラーナ抜かれて、ピンピンしてるほうがおかしいじゃない!」
「やかましい!! 前にアンゼロットに似たようなことされたからなぁ! 体が順応しちまったんだよっ!!」
 注)パワーオブラブ参照。
「………。はわー、柊。あんたって――――」
「な ん だ よ!」
「相変わらず、幸が薄いんだねー」

「お前が言うなぁあ!!! ってか、いい加減言い飽きてんだが、俺は自分を不幸だと思ったことは一度もねぇんだよッ!!」

 早朝の病院には、迷惑な大声が轟いた。

* * *


 早朝の澄み渡った空気は、音を良く伝える。それが、静寂であるべき病院であるなら尚更だ。

「………柊さん、なに叫んでんだ?」
「さ、さぁ……?」

 病人服でベッドに横たわった上条と、椅子に腰かけた制服姿のアゼルのこめかみに、冷や汗が一筋流れる。

「しっかし、あの人スゲーよな。あんだけ悲惨な目にあったってぇのに、自分を不幸だとか思ってないって……」

 見習うべきやもしれん。と、月匣での八面六臂の大活躍を思い返して、上条は「今度、兄貴とか呼んでみようかな」などと、冗談を飛ばした。

「上条君。柊蓮司のこと、好きなの?」
「ぶほっ!」

 咽る。

「い、いきなり何を言い出すんですかこの娘さんは!!」
「………嫌いなの?」
「嫌いじゃねーよ! てか、あの人の事はそんけーしてる。ふつーに尊敬できる男キャラって、今まで俺の周りにあんま居なかったからさ」

 女キャラは結構居るのはまぁ、この際置いておこう。

「おれの交友関係のなかじゃ、かなり珍しい存在だな。
 でも、好き嫌いっつってもそーゆーのだからな、決して特殊系女子が黄色い悲鳴をあげる方向性じゃないぞ」
「あ、それ知ってる。『はちまるいち』って言うんだよね」
「なんでそんなこと知ってんだ裏界の魔王!!」
「似たようなのに『ひゃくあい』ってのがあるんだよね?」
「それ違うから! 読み方間違ってるから!! ってか、どこでそんな知識手に入れたんだお前は!!」

 興奮の度合いを深める上条に、クスクスと声をたてて笑うアゼル。

「荒野にたちっぱじゃなかったのかよ、あんたは!」
「うん。ちょっと前まで、十六年ぐらい人間やってたことがあるから」

 それは、それまでの孤独な時間の中に輝く、宝物。
 そして、形は違えど輝かしいユメはこれからも続いてゆく。
 目前で目を白黒させている、上条当麻の働きで。
 アゼルは、首に巻いたチョーカーに付けられた、二つの宝石に指を触れた。
 そう、紅樹星に伴われ、糾弾の場に引き出されたアゼルのもとに、彼はやってきた。

 まるで氷の海に浸かっていたかのように青ざめた顔。
 体中に巻かれた包帯は無理な運動のせいか所々ずれていて、赤いものが滲んでいる箇所すらあった。
 満身創痍。病院のベッドに括り付けられている状態から、上条当麻は、赤羽くれはに伴われて、極上生徒会へと乗り込んできたのだ。

 そして彼は言った。ただ一言、「それでいいのか」と。

 その言葉は、絶望と諦観に塗り固められた心に罅を入れ、その奥の本心を引きずり出そうとした。予想外の上条の登場で、動揺していたアゼルに抗う術はなかった。
 ―――私は、ここに居たい。

 漏れ出た本音は、塗り固めた諦観(ウソ)を、容易に押し流す。
 けれど、不可能だ。そんなことは分かっている。

 一万人を殺した。街を此処まで破壊した。
 もう、私は此処には居られない。そんなこと、誰も許さない。
 人殺しの怪物は、人間の傍にはいられない。

 その思いは、胸に刺さった抜けない棘だ。

「……ル。おい、アゼル?」

 鼓膜を揺らす声に、ビクリと体が反応する。
 どうやら、物思いにふけっていたようで、ベッドの上から、上条がいぶかしげに
覗き込んでいた。

「大丈夫だよ」

 心配しないで。と、告げる言葉にも、上条は顔色を変えない。どうやら、ずいぶんと内心が貌に出ていたようだ。
 だから、

「いいのかな? って」

 ここに居たいと願うのは、紛れもない本心だ。けれど、それを重荷に感じる自分も、確かに存在する。
 パールを退けた後、武器を向けるウィザードに抵抗しなかったのは、もしかしたら逃げ出したかったからかもしれない。
 ぽつん。と、漏れ出た弱音に、しばしの沈黙を挟んで、上条は。

「…………」

 何も、言うことが出来ない。
 それを決めるのはアゼルなのだ。
 それによって、背負うものもあるだろう。もしかしたら、失うものだってあるかもしれない。けれど、そう言った全てをひっくるめて、それを為したいと願うなら、
 それによって得られる、喜びも悲しみも、愛も憎しみも、絶望も希望も、すべてアゼルだけのものだ。

 上条当麻(たにん)が口をはさめる問題では無い。

 けれど、アゼルを引きとめたのは上条だ。他にいろいろな要因があったとはいえ、上条が願い動いた結果が現在だ。
 だから、他ならぬ上条当麻がやるべきことは、

「ま、辛くなったら言えよ。力になれる範囲で力貸すからさ」

 倒れそうになれば、その体を支え、道を誤りそうになれば、ぶん殴ってでも連れ戻す。全力で、出来得る限りに―――。

「……。ありがとう、上条君。でも、いいの? これ以上―――」
「当たり前だろ。友達なんだからさ」
「………。トモダチ――――――?」

 アゼルは首をかしげる。

「……おい、その反応はフツーに傷つくんだけど……」
「え? いや! そうじゃなくて、
 私のこと……友達って言ってくれるの?」
 今度は、上条が首をかしげる番だった。

「何をいまさら」

 心底からそう思っているのが、声音に表れていた。
 だから、その声を耳がとらえた一瞬で、アゼルの心が何もかも漂白された。そして、気づいた時には熱い雫が目尻からあふれていた。

「えっ!? 泣くほど嫌だった!?」
「ち、ちが……」
「す、すまん。なんも考えずに言ってた。そんなに嫌がられるなんて思って―――」
「違うの! 嬉しいから。私をそう言ってくれた男の子って、あなたが初めてだから」

 涙を拭って笑む。

「ありがとう。その、これからよろしくね?」
「嗚呼。よろしく」

 差し出された右手と右手が、結ばれる。
 握手した其処から、ばきん。とガラスを砕くような音がして、

 アゼル・イヴリスの裸体が、上条の網膜に飛び込んできた。

「あ」
「ぶはっ!? ちょっと待てなんでこの流れでそんなオチ!? 麗しい友情で閉めんじゃねぇの!?
 それよりアゼル!? ナニその淡白な反応!? ってかなんで服が破れんだよ!!」

 盛大に噴き出して、首にチョーカー巻いただけの姿から顔をそむける上条に、アゼルは

「服、無かったから。呪錬制服、着てたんだった」
「あー、そっか……つーかこれで二度目、そうか、柊さんのマッパはこの警告かってそうじゃなくて、なんだってそんなに落ち着いてんだお前は!!
 いや、悲鳴を上げられたいわけでもぶん殴られたいわけでもないですがッ!!」
「……私の体―――、なにか、変?」
「変つうか! 男の前なんだからもうちょっと前隠すとか! いや、早く隠せ!」
「……隠すの?」
「うん! 上条さんの不幸を甘く見るなよ!
 今迄の経験からして、タダでこんなハッピーなイベントが起きるわけがない!
 もし起きるんならそれはこのあと訪れるであろう壊滅的な不幸イベントの入り口でしかあり得ないッ!」
「あの……、ごめん。
 ときどき君が何言ってるのか分からない時があるんだけど?」

 「でも、分かった」と、いまいちよくわかっていない顔で、アゼルは六枚の羽を月衣から引っ張り出して胸や腰を覆った。
 勿論、アゼルにも人は服を着るものという常識は知っている。脆弱な人間が、肌を守る為に手に入れた文明の証。
 しかし、荒廃の力を常にまとい、素肌の上は魔殺の帯だけ。と、いう姿で永い時間を過ごしてきたアゼルにとって、謂わば服とは人間にとっての宝石や貴金属と同じ。
 着飾るための装飾品なのだ!
 故に、全裸の羞恥などあろうはずもない。

「……これで良いの?」
「……あ」
「?」

 上条の顔が青ざめる。それは、病室に天使というトラウマものの過去イベントを思い出した反応。ではなく。
「へぇ、ハッピーなんだ」

 病室の入り口から届いた、そんな、低い声が原因だった。
 地獄の底に吹き荒れる風。そんな声を出した、カエル模様のファンシーパジャマを着た、亜麻色の髪の少女は、車椅子に乗って髪の先からバチバチ放電している。

「人が、全身筋肉痛を押して見舞いに来てやったってーのに………女の子病室に連れ込んでそんな如何わしいことしてるなんてね……」

 睨みつけるその横に、

「ねぇ、とうま」

 成金趣味のティーカップのような白い修道服を着た少女の姿が一つ。

「とうまは、どうして何時だってどんな時だってとうまなの?」

 二人とも、キャットファイトでも繰り広げた様にボロボロだが、ただその二つの瞳だけが爛々と輝いていた。

「美琴……、インデックス……。どうしてここに?」
「どうして、ですって?
 ……ふーん。遺言はそれでいいのね?」

 バチバチィッ! と、花火のように火花が散った。

「ちょっ、ここ病室!! 強い電気お断―――いやマテ落ち着け! 話せばわかる」
「……もう、遅いんだよとうま。懺悔は最後の審判でやってね?」
「ちょっと待てこの居候! 家主に向かってなんだその物騒なセリフ!! つーか、今頃出てきてとんでもない事言ってんじゃじゃねぇ!!」

 テンパった上条が叫んだ瞬間、びきり。と、何かが壊れた。
 少女の瞳で爛々と輝いていた光が超新星(スーパーノヴァ)の如き、更に危険な光に進化する。

「………。いや、マテ、おまえも落ち着け分かったから、俺が悪かったから、そのぷりちーなかおのデッサンが崩れるほどに大口開けんなってキャァアアアアアアア!!!!!」
「そんなに、巨乳が好きかぁああああああ!!!」
「私だけ置いてったクセにッ!! とうまの頭骨をカミクダクッ!!」
「ぎにゃああああああああああああ!!!!!」

 びりびりと電撃が走り、がっつりとインデックスの顎が上条の頭に齧りつく。
 尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげて、上条当麻はのたうち回った。

「……えーっと」

 いきなりぶっ飛びだした展開についていけず、アゼルは呆然とするほかない。いわゆる蚊帳の外。
 荒れ狂う二人の少女と、蹂躙される上条に声をかけようとした所で、がちゃりと病室の扉が開いた。
 扉をくぐって現れた天敵に、アゼルの顔が少々ひきつった。

「………。柊、蓮司?」
「……なんでお前らは人のことをいちいちフルネームで呼ぶんだ?」
「はわー、あたしもいるよ〜」

 赤羽くれはを伴って現れた柊蓮司は、上条を中心に広がる地獄絵図に冷や汗を流し、

「はわっ、派手に暴れてるね〜」
「って、呑気に言ってる場合か!」
「そうだね、がんばれ柊!」
「って、おい、くれはテメぇ! ぎゃああああああああああ!!!」
 戦場の中心に放り込まれて、断末魔の悲鳴を上げる。
 くれはの血も涙もない行動に、アゼルの表情は引き攣り度を更に増した。

「あ、あの……。何しにきたの?」
「はわ? うん、一応結果を通達しとこうと思って」

 こほん。と、くれはは咳払いを一つ。

「極上生徒会は、一応条件付きであなたを受けれることに決めました。
 で、引き続きその首輪をつけ続けてもらいます」

 無意識にアゼルは首元のチョーカーに手を伸ばした。
 紫紺の布地に白い宝石が二つ、豪華な装飾のようにも見えるが、見た目通りの物では決してない。
 それは賢者の石―――アゼル・イヴリスの天敵たる、桜間流と柊蓮司から取り出したプラーナの塊。
 それを取り付けたチョーカーは、極上生徒会の決定一つで彼女の体に猛毒を流し込む、魔王の行動を管理するための文字通り首輪。
 アゼルがこの世界にあり続けるための、代償であった。

「で、上条当麻からなるべく離れないこと。そのために。あなたの身柄は正式に学園都市あずかりになるの。
 いろいろ細かいことは後で文章に成って来ると思うけど、ひとつだけ今のうちに言っとかなくちゃならないことがあってね」
「……それは、なに?」
「簡単なことだよ。一つだけ私と約束してほしいんだ」

 くれはは言葉を切って、アゼルをまっすぐに見つめた。


「私たちの事はともかくとしても、上条くんだけは裏切っちゃだめだよ?」


 くれはをまっすぐに見返して、アゼル・イヴリスは、応えた。



 そして、数日後。

 学園都市第七学区のとある高校に、輝明学園から転校生がやってきた。
 彼女の存在はまたひとつ騒動を引き起こし、それが収まった日には旗男(かみじょうとうま)の名は、さらに名高く、確固たるものとなっていた。

―――異界の日々(トラブルデイズ)は、まだ終わらない。
繋 章  支配者ノ箱庭 _a_garden_

 リノリウムを打つ靴の音が、規則正しいリズムを刻み、赤羽くれはの言葉に韻を刻み込む。

「はわー。もしかしてとは思ってたけど、やっぱり出てきてたんだTISちゃん」
「ああ。俺たちが偽情報で引っかき回されてるってことを教えてくれたんだけどな……」

 歩調を合わせ、柊蓮司は回想する。

「そりゃ、ここは『学園世界』っつっても狭界だし、あいつが無関係ってことはないとは思ってたけどよ、聞いてたか? お前」
「ううん、初耳ー。校長先生も他のジジイ四天王(おじいちゃんたち)も、そんなこと一言も言ってなかったよ」
「お前もそうか……。
 と、なると。ジジイ共も知らなかったのか、それとも―――」
「知ってて隠してたのか―――」
「どっちにしたって、俺達に与えられた情報ってのもそんなに多くはないってわけだな」
「ちょっと独自で調べてみる必要があるね。
 ま、それはこっちで何とかしてみるから、柊はいつもどおり執行委員のお仕事お願いね?」
「おう。任しとけ。
 に、してもだ。エミュレイターを仲間に引き入れようなんて、ちょっと俺達の常識じゃあ測りきれねぇな」
「はわー。そうかもね。でも、侵魔って意外に話せる人らは話せるから、状況次第じゃないかな?」
「そんなもんか?」
「そんなもんだと思うよ。
 それに、もしかしたら、表界(私たち)と裏界(彼女たち)の関係も、そろそろ見直す時期に来てるのかも」
「かもしんねぇな。ま、向こうがどう思ってるか解んねぇけど―――」

 言ったところで、二人は目当てのドアに辿り着き、騒がしい病室に入って行った。


 そして―――、


 第八世界、ファー・ジ・アース。
 かつては『表界』に在り。しかし世界結界に弾かれたものたち。
 彼らの集う世界、『忘却世界』。それらをまとめ呼称する名称、即ち『狭界』。
 その狭界の中で、最大勢力である忘却世界は、その名をラビリンスシティと言った。
 嘗て金色の魔王が作り上げた、“別荘”にして“庭園”。そこには名のある魔王たちが、各々の領域を創り上げている。

 ラビリンスシティの中央にそびえる宮殿。
 かつて金色の魔王の居城であり、今は誘惑者エイミーが見出したウィザードを、玉座に戴く城。
 その城の一室で、螺旋くれた角を生やした彼女は、扉を開けるなり言い放つ。

「かくて演目は日程を消化し千秋楽へ、次の舞台に期待を乞う―――」
「………。」
「―――と、そんなところだろう?」
「………。」

 反応を返さない金の少女に半眼を向けて、彼女は呆れた口調で溜息をついた。

「あのな。目の前で会話をふった相手を無視して菓子パンを頬張るなよ」
「………。貴様相手に繰り言を応酬するのと、絶品であるこのチョココロネを賞味するのと、どちらが重要か、比べられるとでも思うてか?」
「……………。私はカカオと小麦粉以下か」
 口角をひきつらせて、螺旋くれた角の女性は部屋のソファーに身を沈める。乱暴に預けられた体重に、スプリングが軋んだ音を発てた。
 その後、少女が菓子パンを全て平らげるまで数分。指についたチョコレートを舐めとって、金色の魔王ルー・サイファーは、部屋に居座る闖入者をねめつける。

「なんだ、まだ居ったのか。
 貴様を呼んだ覚えはない、疾く去ぬが良い」
「つれないことを言うなよ、ルー・サイファー。少々訊きたいことが出来ただけなんだから」
「……。なんだ? 答えられることならば答えてやる故、早々に申せ」
「うわぁ、不承不承の御尊顔。まぁ、いいけどな。
 で? お前さ、どこまで解った?」
「“何も”だ。
 仮説を立てられるほどに、情報は手に入った。しかし、比較対照するには試料が足りん。
 現状何かを語るということは、戯言を垂れ流す事と変わらんな」
「それでもいいから」
「即答しおって……。
 ならば、何から語ったところか――――。
 そうだな、貴様、この舞台の最大の矛盾に気づいたか?」
「矛盾?」
「そうだ、幻想殺しに関する大きな矛盾に」
「えー。あー、そう言えばレッサーデーモン共は一撃で倒していたが、アゼルとかは能力は封じても、消すまでには至ってたかったな。
 それと、下っ端が『神定ナントカ』とか何とか言ってたが―――」
「『神定秩序(ヴォータンズスピア)』。つまり、『ヴォータンの槍』だな」
「……。ワーグナーがどうかしたんだろうか?」
「ヴォータンの槍。歌劇『ニーベルングの指輪』を神と人の戦いの物語と捉えるなら、それは古き権威の象徴だ」

 そして物語中盤、英雄ジークフリートの魔剣によって、件の神の槍は折られ、神々の黄昏が本格的に加速し始める。

「それが……。どうしたんだ?」
「ローズ・ビフロなりに精一杯、詩的に表現したつもりであろう。
 ヴォータンの槍は秩序の象徴。すなわち、幻想殺し(イマジンブレイカー)とは、『穢れ』を祓う力だとな」
「???」
「この場合、『穢れ』とは波平恵美子のハレ・ケ・ケガレの三竦みではなく、メアリー・ダグラスの既存の秩序を破壊、もしくは加速させる要因という意味―――」
「いや、ちょっと待て」

 彼女は、いったん休息(ブレイク)を申し入れた。

「さっきまでニーベルングの指輪(ワーグナー流北欧神話)の話だったのが、今度はいきなり文化人類学か。ぶっ飛ぶのも大概にしとけ」

 金色の魔王はため息をひとつ、察しの悪い聴者にもわかるように解説を加える。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/05(月) 22:18:36 ID:izLvy+dJ
しえん
「日常と非日常と言えば分り易いか? かの右手は日常に紛れ込んだ非日常を追い払うものであると。
 ありえたかもしれない法則を再現した超能力。違う次元の力を呼び込む魔術。そう言ったものを何者かが在るべきと望んだ姿に戻す。もっとも起こり易い法則を顕現させる」
「………なるほど、あの右手は、そーゆーもんだと仮定したわけだ。
 それで?」
「その観点から説明すれば、今、貴様が上げた事象を説明出来る。
 レッサーデーモン共は、裏界よりパール・クールが連れ込んだもの。『あの世界』にとっては非日常の存在だな。故に、イマジンブレイカーは彼奴らを『祓った』。
 学園世界(システム)に割り込んだ侵魔(ウイルス)を取り除いたと、譬えればよいか。
 勿論、アゼルやパールもその類いだ。しかし、仮にも魔王。あまりにも複雑であり膨大な彼女らを拭い去るには、人間の右手如の処理能力(スペック)では足りなんだのであろう」
「…………なるほどなるほど。
 で?」
「そこで疑問が生まれる。
 幻想殺しが生を受けた世界では無い、あの忘却世界での日常の基準とは何処に在るのだろうか?」
「……成程。そりゃあそうだ。もともとが彼にとっては非日常の集まり。片っぱしから消し去りそうなもんだけどな。けどそんな事にはなってない。それは何故か………。
 もともとの彼の世界の常識か、それとも最初に転移した輝明学園のある表界の常識か。
 あー、確かに。これ以上考察するにはデータが足りないな」
「そうだ。彼の右手がどのようなものかわからぬ今。このような考察は、すべて戯言だ。
 だが一つだけ、非常に興味深い矛盾がある」
「ん? なんだそれ?」
「それがどんな理由であれ、どんな力であれ、彼の右手はあらゆる異能を消滅させる。
 ならば何故に、幻想殺しは世界の垣根を越えて、かの忘却世界に現れたのだ?」

 異界の存在を忘却世界(ファー・ジ・アース)に呼び込むなど、紛れもなく異能の力の結果で在るのに。

「…………。
 あー、あー、あー、尤もだな。
 けど、そこに突っ込んだらどうしようもなくないか?」
「そうだな。
 幻想殺しは、確かにそこに居る。その現実は否定できない。しかし、理屈に合わん。
 しかし。と、もうひとつ逆接を重ねるが、その矛盾を解決する存在を我々は知っている」
「………………………。
 オイ、それはナシだろう。いくらなんでも、それをオチに持ってくるのは酷過ぎる」
「ああ。我もそう思う。しかし、あらゆる荒唐無稽をたった一言で解決できるのはアレしかおるまい」
「……、なるほど。確かにな。そう言われてしまえば、私もそれ以外は思いつかないよ」
「我が語ることが出来るのは以上だ。満足したか?」
「うん。満足満足。話の礼は、今度知り合いに頼んで旨いチョココロネを持ってくることにしよう」
「そうか、それは楽しみだ」

 彼女はソファーから立ち上がり、金色の魔王の部屋を辞そうとドアに歩み寄る。

「あ、そうそう」

 その背中に、ルー・サイファーは声をかけた。

「もしも、我の考えが正しいとした場合―――」

 振り向いた瞳をまっすぐに見据えて。

「あの忘却世界(ユメ)は、いったい誰の夢なのだろうな?」

 きしむ音をたてて、ドアが閉まった。

* * *


 そして―――、裏界。
 空間のすべてが、どこまでも広がる無限の青―――蒼穹によって支配される領域の、その中心にたゆたう古城。
 裏界第二位の実力者、蠅の女王がおわす宮殿。
 時計のように回転を続ける歯車のような装飾。その手前の玉座に、薄暗い闇の中で蒼穹の主たる大魔王、ベール・ゼファーは座していた。
 そして―――、

「あんたがあたしの心配するなんて、百年早いわアゼル。
 え? うん。うん。そう、ま、良い心がけだと褒めてあげるけどね」

 玉座に鎮座ましまして、0-phoneで通話中だった。
 何時も通りの服装のせいか、まるでその辺の女子中学生のような雰囲気を纏ったその姿に、大魔王の威厳などの欠片もねぇのである。

「ん? ………。そうそう、あたしはちょっと休んでるから、その間は好きにしてなさい。てゆーか、あんたは少し人間の間で揉まれた方が良いわ」

 電話の向こうは、学園世界に残してきたアゼル・イヴリス。あの溢れんばかりのヒロイン属性も、人間生活をしていれば少しはマシになるだろう。
 決して嫉妬している訳ではない。念のため。

「うん、そう。ちょっと家主に代わって? 言いたいことあるから」

 受話器越しに、携帯電話を手渡す気配が伝わり、アゼルの身柄を預かっている異世界人がスピーカーの向こうに現れた。

「一つだけ言っとく事があるわ上条当麻。
 しばらく、アゼルを預けてあげる。だけど、変なことしたら承知しないわよ―――」

―――生きたまま、全身に蛆を涌かせてやるから覚悟なさい。

 宣告して通話を切る。そのタイムラグになんだか悲鳴が聞こえたような気もするが知ったことじゃあない。
 0-phoneを月衣に放り込み、うーん。と、伸びをした。

「……一人きりなのも、久しぶりか―――」

 リオンもいない己の城の中は、なんだか妙に広く感じた。

「あー、やめやめ。とっとと眠って回復しましょ」

 パン。と手を打って玉座から降りる。
 人間には理解できない幾何学で建築された回廊を抜けて、寝室のドアを開ければ、

「よう」
「って、なんであんたがいるのよ!!」

 ベッドに腰かけた、螺旋くれた二本の角が、肩までかかるウェービーヘアから突き出し、六対十二枚の黒翼を背負っているグラマーな女性の存在に、渾身の突っ込みをかましていた。

「うん?」

 腰掛ける女性、悪徳の七王が一柱、『大公爵』アステートは、ベルに向けて流し目を飛ばす。
 蠅の女王は、それだけで固まった。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/05(月) 22:24:15 ID:lJBMUv+U
しえん
「あ、あすてーとさま、なにゆえここにいらっしゃるのでせうか?」
「いや、別に? ただお前の様子を見に来ただけだがな」
「じゃあ、なんであたしの寝室に居るのよ!」
「なに!? 私がお前のベッドに居てはいけないのか!?」

 衝撃を受けた様に立ち上がり、よよよ。と、大公爵は泣き崩れる。

「なんとつれない。昔はあんなに可愛かったのに。新しい恋人が出来たら昔の女など、路傍の芥と変わらんのだな―――。
 相手は誰だ! ルーか!? リオンか!? それとも本命のアゼルか!? 
 は、もしやメイオルティスではないだろうな!! お母さんは冥魔など許しませんよ!」
「なに訳分かんないこと言ってんのよぉっ!!!!」

 ベール・ゼファー、魂の絶叫。
 アステートは嘘泣きを引っ込めてカラカラ笑った。

「まぁ、お前を弄るのはこれ位にして。で? 調子の方はどうなんだ?」

 こめかみが引き攣る僅かな沈黙を挟んで、

「……。ま、七割ってところね。休む必要もないけど、一応大事をとってってとこかしら」
「そうか。私はてっきり一時的にでもアゼルへの影響力を減らすためだと思った」
「は?」
「お前にべったりなままでは、わざわざ<小さな奇跡>を使ってまで、人間の中に放り込んだ意味がないだろう?」

 それは、望んだわけでは無い力の所為で、人生経験の少ない彼女を、学園世界という坩堝に放り込み、あらゆる価値観に触れさせ、考えさせて、人の中で成長させるために。
 その心に宿す、何よりも鋭い意思の剣を、研ぎ澄ませるために。
 だと言うのに、今もっともアゼルへの影響力が強いベール・ゼファーが近くに居れば、間違いなくそちらに惹かれるだろう。
 それでは、何のために学園世界に放り込んだのかが分からなくなる。

「ま、その結果アゼルがお前から離れるかもしれないが……。それとも、そうならないという確信があるのかは知らないけどな」
「御高説ぶちかました後で申し訳ないけど。
 残念だけど大外れよ」
「照れ隠し?」
「違うわよ!!」
「そうか、違うのか」

 至極あっさりと頷く態度に、ベルのこめかみがひくついた。余計な手間、取らせるな。

「用はそれだけ? なら帰ってほしいんだけど? あたしもそろそろ休みたいから」
「おいおい、最初に言っただろう? お前の様子を見に来たって……」

 ベッドから立ち上がったアステートは、ベルの腕をつかむ。そして、彼女が反応を返すその前に、

「!!!!!」

 ベルを抱き寄せ、その桜貝のような唇に、自分の唇を重ね、暴れる矮躯を押さえつけて、舌を滑り込ませる。
 口内(たいない)を大公爵の舌が蹂躙し、その感触がベール・ゼファーの白い肌に桜色を灯す。

「〜〜〜〜〜ッ! ぷはッ!!」

 肺が空気を求め、解放された口元で、破裂したような音が発った。

「…………。如何言うつもりよ―――」
 頬を紅潮させ低く唸るベルに、アステートは飄々と、

「なに、本来の役目とは逆だが、たまには悪くないだろ?
 じゃあな、あったかくして寝ろよ」

 体液交換を通じてプラーナを送り込んだアステートは、ベルに背を向け、その場から消え去った。

「あ、そうそう。お前の次の陰謀(ぶたい)、楽しみにしてるからな」

 残された言葉を反芻して、ベール・ゼファーは不敵に笑う。

「相変わらず、上から目線で、傍観者のマネゴトか。
 いいわ、大公爵。最高の舞台に仕上げて、観客(そっち)を選んだことを後悔させてあげる」

―――祭りは、参加するのが一番面白いんだから。

 果てぬ蒼穹の中心で、新たな火種が産まれ落ちた。
以上です。支援有難うございました。

………長かった。
五年使ったパソコンが寿命を迎えたり、某似非MMOの第一作を廉価で購入してレベルが下がるのを堪能してみたり。
なんやらいろいろあって、一年かかりましたが、完成にこぎつけられたのは応援して下さった皆様のおかげです。
ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。m(_ _)m

いか、おまけです。
『グランサスエルウェシー』
習得CL:‐
重複取得:可(12)
タイミング:常時
判定値:自動成功
難易度:なし
対象:効果参照
射程:効果参照
代償:効果参照
効果:
無差別にプラーナを吸収する『荒廃の力』が効果を及ぼす対象を、自身を含め、一体からSL体まで、任意の数の対象を指定できる。
自身以外を荒廃の力の対象に選んだ時、魔殺の帯を解いた全開状態では、自分のメインプロセスが廻ってくる度に100D6、魔殺の帯を使っていても1D6のHPダメージを受ける。
対象に自身を含めた場合は、1ターンごとに、魔殺の帯を解いた全開状態では100D6、魔殺の帯を使っていても1D6ずつプラーナを失う。
HP、またはプラーナが0になると、この能力は使用できなくなる。
解説:
学園世界のみで使用可能なアゼル・イヴリスの新機能。
ベール・ゼファーのプラーナを吸収した際、に使えるようになっていた<小さな奇跡>を無意識に行使した結果、取り込んでいた学園世界のプラーナで作り上げた翼のような器官。
荒廃の力が効果を及ぼす対象を限定できるようになるだけの能力なので、プラーナ吸収能力そのものをコントロール出来るわけではない。
荒廃の力の対象を自身に限定することで、他の存在を侵す事が無くなっただけで在る。
自分だけに力の対象を限定することによって、自分のプラーナを循環させることになるが、一部がルー・サイファーに流れるためそのうちプラーナが枯渇する。
そのため、定期的にプラーナを補充する『食事』をしなければならない。
おそらく、その対象は『学園世界の敵』になるだろう。

アゼルの新機能。
一応データ化してみましたが、かなり出鱈目です。フレーバー程度にどうぞ。
そして、おまけのおまけ↓
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』
習得CL:1
重複取得:可(5)
タイミング:常時
判定値:自動成功
難易度:なし
対象:自身
射程:なし
代償:なし
効果:
この特殊能力を習得したキャラクターは、「幻想殺し:●」と付くもの以外の、あらゆる特殊能力、装備魔法、発動魔法を習得できず、その効果を受けることもない。
また、右手には、武器、防具を問わず、魔導具や特殊能力で取得するアイテムを持つことはできない。
上条当麻の代名詞たる特殊能力。あらゆる異能を打ち消す力。


『幻想殺し:攻』
習得CL:1
重複取得:効果参照
タイミング:メジャーアクション
判定値:命中
難易度:なし
対象:単体
射程:素手
代償:なし
効果:
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を習得していないキャラクターは習得できず、また『幻想殺し(イマジンブレイカー)』のSLを超えて習得することは出ない。
幻想殺しで攻撃する特殊能力。
攻撃が命中した場合、対象は防御ジャッジに魔法、特殊能力、魔導具の修正を加えることが出来ない。

『幻想殺し:防』
習得CL:1
重複取得:不可
タイミング:リアクション
判定値:【防御】
難易度:なし
対象:自身
射程:なし
代償:なし
効果:
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を習得していないキャラクターは習得できない。
幻想殺しで、物理攻撃を防ぐ能力。
この特殊能力を習得したキャラクターに対するダメージロールでは、魔法、特殊能力の修正を加えることが出来ない。
また、この能力で防がれた攻撃が、魔導具または特殊能力で取得した武器で行われていた場合、その武器を、シナリオ終了まで使用不能にする。
『幻想殺し:護』
習得CL:1
重複取得:効果参照
タイミング:リアクション
判定値:【命中】
難易度:なし
対象:自身
射程:なし
代償:なし
効果:
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を習得していないキャラクターは習得できず、また『幻想殺し(イマジンブレイカー)』のSLを超えて習得することは出ない。
幻想殺しで、魔法攻撃を防ぐ特殊能力。
魔法攻撃の命中判定の際、【抵抗】の代わりに【命中】で判定する。
1ラウンドにSL回まで使用可能。

『幻想殺し:攫』
習得CL:1
重複取得:不可
タイミング:メジャーアクション
判定値:効果参照
難易度:なし
対象:単体
射程:素手
代償:なし
効果:
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を習得していないキャラクターは習得できない。
幻想殺しで、対象の特殊能力を打ち消す能力。
物理攻撃の命中判定を行った後、攻撃が命中した場合、対象にダメージを与える代わりに対象に適用されている魔法、特殊能力のすべての修正を除外する。
同時に、あらゆる特殊能力、装備魔法、発動魔法の使用が出来なくなる。
この効果は、対象がこの特殊能力を使用したキャラクターとの【筋力】ジャッジに勝利するまで続き、その間対象とは常に同じスクエアに存在する。

装備魔法
『幻想殺し:竜』
魔法レベル:10
種別:攻撃(−)
命中:+10
回避:+10
攻撃:+10
防御:+10
魔導:+10
抵抗:+10
魔攻:+10
魔防:+10
魔法力:-50
行動値:+10
射程:効果参照
価格:購入不可
効果:
この魔装は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を習得していないキャラクターは取得できない。
戦闘中、瀕死状態になった時、即座に1シナリオに一回だけ使用できる。
最大HPを固定値とした属性のない絶対命中の魔法攻撃を行い、一点でもダメージを与えれば、気絶、重圧、狼狽、邪毒、捕縛、マヒ、放心のバッドステータスを与える。
この魔装を使用した後、瀕死状態から回復しても『幻想殺し』と名の付く特殊能力、装備魔法、発動魔法は一切使えなくなる。
幻想殺し(イマジンブレイカー)に秘められた謎の一端。

こちらもかなり出鱈目。フレーバー以外の何物でもありません。

では、このあたりで。
本当に、今までありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/05(月) 22:53:42 ID:lJBMUv+U
完結お疲れ様です。
アゼル可愛いよアゼル。

…そして数か月後、そこには上条さんばりの説教能力を身につけたアゼルがw
160名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/05(月) 22:59:12 ID:izLvy+dJ
完結お疲れ様です。

>アゼル・イヴリスの天敵たる、桜間流と柊蓮司から取り出したプラーナの塊。
流はともかくまだ生きてたんだ柊のその設定!?w
161名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 06:53:46 ID:fjyDsbIR
ついに完結ですか! おめでとうございます。
やっぱりベルはカッコカワイイのが一番だと思ってます。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 07:14:36 ID:XJcCmOck
お疲れ様です
163名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 08:25:20 ID:NGdDEBp1
そか、アゼルは柊のプラーナに拒絶反応起こしたんだっけかw
164名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 21:33:13 ID:bVulndXI
下がる男ととある男乙です。
つか家主ってことはあの部屋に更に居候が増えるのか
165名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 21:48:44 ID:fMUhWQqK
禁書目録vs荒廃の魔王・・・・またぞろ執行委員が苦労するハメになるのかw
とりあえず柊超逃げてw
166名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 22:50:11 ID:tc6KcbpG
柊逃げたら本格的に誰が止めるんだよw
そんなわけであいつは逃げることすら止められてるのであった。可哀想なナマモノである。
……まぁ、禁書勢なら美琴がなんとかしてくれるんじゃね?

そしてお疲れさまでした騒動日程様。
思えば、第一章の投下後にどんどん設定が増えていく中、よく対応しきられたと思います。
お疲れ様でした。

……ところで、学園世界はクロスオーバーな恋愛ネタってマズいんだろうか?
ちびっ子金髪先生の片思いネタなんだけれども。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 23:17:32 ID:fkpi4Z+V
このスレでそれが許されぬ道理はない。

スレ以前に許されざる仲というものもあるとはおもうが。
168名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 10:24:21 ID:arMhIY21
そうか、上条さんは魔法防具クラッシャーなんだよな
・・・これが広まったら利用しようとする奴出そうだなあ
と思った
169名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 22:01:13 ID:TNIJ8wtq
禁書クロス完結して、ふと、こんなネタを思いついた。

荒廃の力の暴走により滅んだ学園都市第六学区。
文字通り何も無くなった荒野と化したその場所を埋めるように多数の新たな『学園』が転移してきたのはその3日後のことだった。
現代、未来、SF、ファンタジー…様々な世界観と技術、魔法の混じり合う混沌の地。
それは学園世界全体ではよく見られる光景であると同時に科学と能力で作られた学園都市の中では非常に珍しい光景であった。
そして彼ら新たな『入居者』と学園都市が交差するとき、物語は始まる。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/08(木) 16:26:37 ID:K2FC+/W4
それは普通に学園都市内に学園とかが転移する禁書クロスで良いのではないかw
171名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/08(木) 21:33:34 ID:BMbCcWHo
>>169
>>117-121

ま、それはそれとして。
今年に入ってアニメ映画ラッシュだし、アニメ映画系とクロスオーバーさせたらどうなるかと思って
かぶき町でスナックの二階でよろず屋やってるところに元の世界に帰りたいと言って無茶な願いを割り込ませにきたキョンが
聖杯戦争に巻き込まれ赤いコートの人間台風を召喚し、
金髪ツインテな魔法少女と魔砲少女の争いに巻き込まれかけて人斬りと同化した妖刀に斬られそうになったところを落っこちてきた柊が助けるという
……あまりにも無茶があるぶち込み電波が飛んできたんだけど、飛ばしたのはどちら様でしょうか?

ちなみにイツワリノウタヒメとプリキュアと遊戯王はどうやっても繋がらんからあえて除外した
172>>170-171:2010/04/09(金) 06:22:59 ID:st5OaUBH
―――ヴァナルガンド「…不幸だ」

さかな さかな さかな〜♪

鮮魚コーナーから聞こえてくるおさかな天国がBGMに流れる戦場。
手にした“武器”でピアスをつけた男を精肉コーナまでぶっ飛ばした『彼』は名もなき狼たちを屠りつつ、その場に残った中では屈指の力を持つであろう2頭の狼を見据え、言う。
「…不幸だ」
凄まじい勢いで乱戦で暴れまわる目の前の若い雌の2頭の狼…髪の長さ以外顔のつくりは同じだがその顔に浮かぶ表情は正反対。
そんな、知り合いの中学生を思い出させる恐らくは2頭で1対なのであろう双子の狼。
抜群のコンビネーションと両の手に持った武器…計4つにも及ぶそれでもって彼女らは名もなき狼たちを屠り去っていた。
これだけの強さと特徴をもった狼…間違いなく“二つ名”を持っているであろう実力者だ。
それほどのものを覚えている限りでは数か月の間この戦場(なわばり)を駆け続けてきた『彼』が知らぬはずはない。だが、知らなかった。
それが意味することは1つ。
「…第6学区の狼にこんな奴がいたとはな」
第6学区。一度は荒野と化し、その後無数の学園により再生を果たした、学園都市内に生まれた異郷。
そこからやってきた狼だ。しかも第7学区でもまず見られないほどの実力を持った化物。
それを打ち破ろうというのならば、手にした重さわずか5kgの武器では心もとない。
「アゼル、荷物持っててくれ」
そう判断した『彼』は次々と狼たちを倒しながら右手に持っていた武器を左手にうつし、戦いに巻き込まれないよう離れて見ていた少女に渡す。
「あ、うん…気をつけてね。上条君」
それを受け取り、心配そうな表情を浮かべたまま、少女は再び離れる。
「さて、と…」
武器を下ろし、身軽になった『彼』は再び戦場に目をやる。
そこではちょうど2頭の狼が最後の名もなき狼をふっ飛ばした直後だった。
その2頭の内の1頭…長い髪の狼は手にした武器を捨てた『彼』を見て、怪訝そうな表情をする。
それに答えるように『彼』は拳を握りしめる。
「…なんとなく、言いたいことは分かる」
疾走。空腹の加護を受け、恐るべきスピードで距離をつめる。
「だがな、教えておいてやる」
剛拳。幾多の敵を倒してきた右手で相手の武器を殴り飛ばす。長年の、身にしみた経験とごく最近の無数の死闘で磨かれた拳。
その一撃でもって狼は体勢を崩してしまう。
「素手の俺の方が弱い、そう思ってんなら…」
干渉。左手で体勢を崩した狼の武器をつかみ、その崩れた体勢を『彼』は戻させない。
とどめの一撃をはずさないように。
「…その幻想は、俺がぶち壊す!」
必殺。体勢が崩れたままの狼の顔面に思い切り右手を叩き込む。
幾多の敵を沈めてきた一撃。それは狼を精肉コーナーを越えた先の乳製品コーナーまで吹き飛ばす。
「姉さん!?」
あっけに取られた残った狼の隙を突き『彼』は目的のもの…今宵、わずか2つしか残らなかった半額神の恵みを手にする。
「さて、帰ろうぜ。アゼル」
戦いは終わった。『彼』は殺気を捨て、どこか哀愁を漂わせる表情を浮かべながら、手にしたそれを少女の持つ武器の中へ入れる。
「あんまり待たせると俺の頭骨が持たないからな」
そう、『彼』は可及的速やかに帰らねばならない。
最終下校時刻を越え、更には半額刻印時刻(ハーフプライスラベリングタイム)すら過ぎたこの時間。
部屋で待つ居候の腹と堪忍袋の緒はもう、限界を迎えているだろうから。

『彼』の名は上条当麻。
戦場(スーパー)の狼たちは彼を『ヴァナルガンド』と呼んだ。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 07:18:07 ID:o3LWMrvo
凄いのだが哀愁漂うな
174名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 23:25:06 ID:Xes6O68I
>ヴァナルガンド
って何?
175名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 23:30:09 ID:3TAopZnv
R-TYPE TACTICSの巡航艦の名前。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 14:23:20 ID:DBqvczHC
弱者臭のしない上条さんなんて………
177名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 12:40:00 ID:2EbgCUkR
ナイトウィザードの学生キャラで学園世界にまだ出てないやつらって、何やってんのかなー
マユリとか、京介とか、百合子とか。

……こう考えると、逆に出てる奴の方が多いのか。すげーな学園世界。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 15:58:50 ID:97xyCbaU
むしろオリジナル世界観の学園世界がクロス元として優秀すぎて、本来のクロス元である世界観のナイトウィザードの必要性が薄いという部分もけどな
179名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 16:21:02 ID:PkhyF/lH
「元学生だぜ!」
「学生でありますよ」
「俺は卒業したはずだっっ!?」
180名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 16:02:24 ID:+UvL0YJ+
そう言えば、「貧乏学生」というイメージで、大十字九郎が思い浮かんだんだが、さすがにミスカトニック大学は来てないのかな? 一応、瑠璃エンド後設定なら大学生してたと思うが。
(鬼械神のない九郎が役に立つのかという疑問もあるけど)

全然話題変わるけど、某WIZモドキの「剣と魔法と学園モノ」とかもありだろうか? いや、NPCのディモレアとかパーネ先生とか学園世界でいかにも暗躍しそうな人たちが……。
学生連中でもマクスターとかオリーブとかコッパとかおいしいキャラ多いし。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 16:52:38 ID:RXVXd1WN
>>180
俺も似たようなことは考えてはいるが、今のところミスカトニック大学を出した作品はないな
考えているといっても、九郎ちゃんらしい九郎ちゃんは学園世界的に難しいので、脇役あたりでシュリュズベリイ博士を出そうかくらいのもんだが
……まあ、そも巨大ロボによるパワーバランス問題があるが……リオフレードが来てる→グレズが既にいる、と考えた場合、微妙に今更感はあるんだよなあ……。書く際に細心の注意が要ることに変わりはないけど

ととモノはアリじゃね?
個人的にはむしろ積極的に支持するが
182名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 17:05:42 ID:5GYYOV2N
>>181
生身で巨大ロボットと同じくらいの大きさの敵と平気で戦うやつもいるしパワーバランスはどうにでもなるだろ
183名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 17:28:29 ID:RXVXd1WN
>>182
俺もまったくもって同感だぜ

ただ、いつぞやの流れを見るかぎり、その辺りを気にする方はやはり居るようだし、サイズ差による優位性なんかは良くも悪くも大切なギミックだからさ
他人に強いるつもりはないが、やはり配慮は要るというか、無頓着ではいられないかな、と
184名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 18:20:20 ID:IGq5qdY6
>>180
ちらほらと、あるらしきことは描写されてたりする。種族名とか<ととモノ

そういやあ冒険者学校ってエルクレストと光綾、あとパルタクス以外にはどんなところがあんのかな?
むげファンには確か冒険者学校が出るサプリがあった気がするんだが。
185180:2010/04/14(水) 19:55:35 ID:+UvL0YJ+
>181
やはり同じようなこと考える人はいるもんじゃね。

クトゥルーはクトゥルーでも、「デモンベイン」ではなく、最近人気の「ニャル子さん」を出すとかならイケそうかな。
ニャル子達は本家の伝承ほど人間離れした存在ではない、ただの(?)宇宙人だし。
(NW的には、真尋は明らかにウィザード予備軍だろうと思う、母親的に)
あるいは萌えクトゥルフの草分け的マンガ「エンジェルフォイゾン」からススムの通う学校というのもアリか。アレのクトゥルー神たちも、NW的にはせいぜい魔王クラスっぽいし。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 23:20:59 ID:GRU/TXQc
そういや、卓ゲ系で使いやすそうな真女神転生TRPGリプから来てないな。
退魔生徒会でも古代ちゃんでも使いやすそうだが。

鱗くんは今頃立派なニャル様になってるんだろうか
187名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 03:03:19 ID:pr07p1Il
大十字九郎かー。
飛翔設定でも大学生やってたはずだけど、出てきたら適当な魔王辺りに「あんたみたいなのは食傷気味なのよ」とか言われそうな気がするなwww

あと、OBというか、中退者は学園世界的に出演出来るのかな。いや、小説版ではあの○チガ○もミスカトニック大学に居たことがあったらしいんで。
第八世界からの行き来は出来なくはないらしいから柊たちは例外としても。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 03:13:05 ID:FXDEU0KR

個人的に、宇宙の中心でロリを叫んだ男よりは、その息子コンビがいいと思うんだぜ。
ニトロコンプティークで学園世界的な世界にディケイドのごとく来ていたし、生徒会長に年齢下がったマスターテリオンもいるから、年齢的にも登場人物的にも学園世界の主要メンバーと合ってるはず

問題はあいつら来るとニャルさまがニャル子の貌を利用して学園世界を蹂躙しそうな事だがw
いや、個人的にはカゲモリの人が女神転生繋がりでハザマがペルソナ罪罰なニャル様出すと予想して見事に外れたから出て欲しいがw

あと、柊やノーチェが加わった学園世界初期の混沌の頃ならともかく、今は流石に中退者とか卒業生とか出したらアカンやろ
189名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 03:56:07 ID:3e4HuCAB
柊+くれは+九朔+ペルデュラボー+ニャル子+くー子……

なんというか、突っ込みすぎて精根尽き果てた柊と九朔が幻視(み)えて、涙が止まらないんだが……
190名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 04:33:26 ID:FXDEU0KR
>>189
よし、ここは真尋さんを突っ込みに追加して二人の負担を軽くしようぜ!
あとは歩くエロ本こと紅朔をボケに回せばバランスがいいはずw
191名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 05:49:29 ID:3e4HuCAB
>>190
殿、そのバランスはどう見ても男衆が恥辱凌辱の限りを尽くされてしまう配置でございます……!
192名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 07:08:30 ID:U0TF8i1P
そういやあ異世界出身でNWの魔王(写し身)とサシでいい勝負以上の実力がある奴ってどれくらいいるんだろうな?

まだ生きてるならとりあえずアラハバキとかニュクスとかの基本ラスボス系か…
後はエンダネス島のギルドマスターも本気でやればいい勝負かな?神の次に強いアンチクリーチャーの一柱だし。
193名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 07:29:06 ID:gzRuyuQ+
NWの魔王(写し身)は基本的に魔王本体の本気度によって変化する(GMの都合が良い)強さだから、
正直一般人に毛が生えた程度一人で圧倒できる可能性もあれば
かなりの強キャラ数十人集まっても背後すらとれないって可能性もあるからなぁ
多分その考察は無意味な気がするZE……
194名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 07:39:46 ID:U0TF8i1P
>>193
んじゃあ、武闘派の執行委員が複数人で挑んでも苦戦するか負けるレベルで。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 08:11:30 ID:Nv0ufxPh
原作ゲーム本編終了後なマリエりからきてっるっぽい錬金術師のマリーさんは「魔王」より強いよね。

銀八先生は主役補正で相手がなんだろうと勝っちゃいそうな気もする。

あと、メタな話をすると迷宮キングダム系のキャラはクリティカル表の結果次第でシャイマールだって1発で。

>>188
ニャル様はメガテンTRPGだと「魔法全般反射・剣/ガンに弱い」だから柊に瞬殺されそうww
196名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 13:56:52 ID:+zRvBeka
カレイドの戦闘方法が魔力攻撃しか描写されてない点に疑問を持ったんだが、あのチートステッキ共ならもっといろんなことに使えると思うんだ。仮にも魔導元帥の造った礼装なら。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 14:33:21 ID:s7HwVOWZ
>>194
名前付きならともかく、きくたけ世界じゃエリート部隊は「うわー、もうダメだー」の枕詞だからなぁ。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 14:45:44 ID:RG6ydX/a
少なくとも強さの序列を一本の棒の上に並べるのは無理だな
199名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 15:35:03 ID:FXDEU0KR
>>196
色んな事ねぇ…果たしてメタギャグ的な事か、攻撃方法的な事なのか気になる所だ

とりあえず前者なら大陸壊そうが次元壊そうがTRPGによくある妄言として俺は気にしないw
200名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 16:02:30 ID:bk13NeBq
相手が「神」なら黄金剣持って寿司で無限行動する九龍ならいけるかもしれない
201名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:38:12 ID:U0TF8i1P
>>197
無名キャラもいるのは選抜委員の方で執行委員は全員名前付きじゃね?

イメージとしては…柊、ベホイミ、美琴、ノーチェかエリーの4人くらいでPT組んで戦って厳しいくらい?
202名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 18:47:40 ID:RG6ydX/a
>>201
しかし学園内の評判では選抜委員の方が頼りになるとか
203名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:09:53 ID:+zRvBeka
>>202
物騒で不器用そうなメンツだからな、執行委員。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:19:41 ID:3e4HuCAB
>>202
構成人数の関係上、選抜委員の方が身近になりやすいから、そういった傾向も発生するかもな

とはいえ中〜大規模の決定的な局面では執行委員の方が圧倒的に存在感があるだろうから、そんなこともないかもしれないが
205名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:20:24 ID:+zRvBeka
>>199
姉ステッキは普段からしてメタなことを言うヤツですがねwwwww

普通に属性を持った魔術や、それの飛躍したありえん(笑)な出来事ができないかなー、と。
簡易的の確実な未来予報ができることは証明されてるから、戦術予報士みたいなことも出来ないか、って。
まあ、未来を予測する程度ならそこらの作品でもやれそうだが………ネギまの占いとかwwwwww
儂の貧困な発想じゃ他に思いつかんに………。なんかないかねぇ。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:31:33 ID:3e4HuCAB
>>205
あのステッキ共は、中の人のせいもあって、とても凄い能力や機能があってもしょーもないことにしか使わないからなあ……特に割烹着っぽい方
207名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:50:49 ID:FXDEU0KR
>>206
むしろそのメタな所があのステッキのウリだと思うぜ、だから真面目な戦術考察は……あれだ、柊力とか真面目に考えるのと同じでネタものでなくなる危険性があるからやらないとかじゃねぇかなw
208名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 23:51:55 ID:+zRvBeka
>>206
それを日常的なネタに使えんだろうか………。
そういやあのステッキがおくすり作る場面があんまないなぁ。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 01:23:58 ID:Bg6Gw5s4
あのステッキならばハレグゥのステッキとも仲良くできるんだろうか…
210名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 01:50:38 ID:+hrN6V75
>>208
おくすりを作ったり取り出したりばかりしていると、マジカルステッキならぬケミカルステッキというサムシングになってしまうからなァ……

だが、まききゅーXを投与されたユリとかは見てみたい
211名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 21:45:16 ID:SIoGDWXr
魔法少女はもはや職業名な時代だからなー

ルビーちゃんがもしもナイトウィザードキャラを魔法少女にしてしまったら!
……個人的に、サクラ&伊吹コンビ、ドリームキッド、マユリ、舞ちゃんあたりはそんなに違和感ない気がする
212名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 23:34:46 ID:iCO3XUdc
>>211
敢えてのアゼル

最近、ヒロイン属性を獲得したらしいしw
213名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:11:20 ID:uSkWYbnQ
そもそも魔法少女にする以前に、ほとんどのNWキャラはやろうと思えば魔法少女になれると思うのは俺だけ?
月衣で一瞬で着替えもできるし、月甲を使えば空も飛べる。最近のニーズに合わせて戦闘力も高い…
一番の問題点は性別の壁とマスコットキャラといったところ
214名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:38:53 ID:yT8HU6Om
>>213
魔法少女、ではなく「魔法少女(ルビーのおもちゃ)」って意味なんじゃね?
あのプリティとデストロイ、コミカルとケミカル、ミラクルとクリティカルとブラッディが混在した謎の杖のマスターになって、いろいろ振り回されるポジ
215名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 06:12:17 ID:TMM5ulsL
時代は魔法少女と聞いて、これはと思った女子を魔王少女(落とし子)にしようとするベル。
悪魔の蠅がお供のマスコットだなw
216名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 08:48:01 ID:cquf54/t
>>213
大丈夫だ、某月刊・刃にボディビルダーの男が魔法少女に変身する作品が(ry
217名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 09:01:28 ID:yT8HU6Om
>>216
「なにをおっしゃいますやら、私にも選ぶ権利とゆーものがあります。
 とゆーわけで、さあさあうれしはずかしあまずっぱーいアンビバレンスな恋するオトメ、かつかわいらしいオーマイリトルガールをマスターに。
 ほらほら遠慮なさらず、ずずぃとこのルビーちゃんにその体を捧げる乙女ちゃんをご紹介くださいな♪」
218名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 14:53:01 ID:EjzYedij
>>217
つ「綾崎ハーマイオニー」
つ「準にゃん」

つ「井上成美」
219名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 21:42:51 ID:blIzKrKi
>>212
・・・最近、か?
220名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 21:52:15 ID:TMM5ulsL
余りにも普通に魔法少女が存在するせいで本気で「みこみこくれは」に変身できると思われているくれは、と言うネタが頭をよぎったw
221名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:33:27 ID:3tYvQHLW
月衣があるから、変身だけなら可能なんだよなぁ
…ロンギヌス裁縫部隊辺りが衣装作って渡しておけばw
222名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 00:57:41 ID:e2zeVBwp
みこみこくれは×ストロベリィールビー
ヒットマンあかりん×洗脳(真)サファイア

あれ、違和感無い。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 08:07:50 ID:BGpVj9I5
そしていつのまにかその中に違和感なく混ざってる柊連司がいるんですねわかります
224名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 09:22:01 ID:CwDtZZ0L
NWで一番魔法少女してるのは竜之介だと思うんだ
ヴァリアブルウィッチで瞬間着替えしてたぞあやつ
225名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 12:48:06 ID:scyDkj05
>>224
>瞬間着替えしてたのはじいちゃんの方じゃなかったっけ?
226名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:11:38 ID:e2zeVBwp
こうして見ると、NWには魔法「少年」の方が多い気がしてくる………。
227名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 23:36:03 ID:TrbBJQVy
正統派魔砲少女も用意してございます
228名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 00:02:20 ID:tBvCCRV6
というかアンゼロット様自身がかつては魔法王女系キャラだ
229名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 07:16:15 ID:do4WifvA
>>220
巫女系魔法少女の座を賭けて
くれはに勝負を持ち込むちゃん様(完全に言いがかり)
という図が浮かんだ
230名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 10:38:25 ID:nGUZJrx0
よし、セーラーマーズも……と思ったが変身後が巫女衣装じゃないから除外なんだろうか。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 22:40:14 ID:J9g48WuW
むしろ、くれはは巫女服がデフォなので、制服姿にコスプ…もとい変身するのではなかろうか
232名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 22:54:15 ID:stJYuwVk
>>231
今のくれはの制服ってえと…くれは黒ゴス似合わねえw
233名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 23:10:24 ID:oH4I/zuM
そもそも巫女服じゃないくれはなんて、フルメタのカナメやDXの椿に良く似たそっくりさんでしかないじゃないか
234名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 23:11:49 ID:6L54b6Gd
ハリセンぶんまわすのがかなめ嬢
正中線五段突きするのがくれは
緊縛プレイするのがつばきんぐ
235名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 23:35:04 ID:stJYuwVk
>>233
本物は1人だけ乳がちいさうわなにするやめr…
236名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 10:21:14 ID:pAqQIrL+
つばきんぐは間違いなく巨乳だろうけどかなめはどうだったっけか
237名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 10:24:51 ID:66PzJxFa
>>236
作中の表記を引用すれば「ロケットおっぱい」
238名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 22:34:58 ID:r+9IQD9I
アニメだと巨乳なのに………。
239休日の過ごし方@学園世界:2010/04/23(金) 22:46:11 ID:wAVmYa+l
ようやく前スレのあれが出来たので投下します。11時から。
240休日の過ごし方(温泉編)@学園世界:2010/04/23(金) 23:01:04 ID:wAVmYa+l
休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や麻帆良、蓬莱など"学生の遊び場"が充実している学園に遊びに行くもの。
学園世界に点在するダンジョンや様々な依頼をこなし"冒険"に明け暮れるもの。
"研究者の楽園"ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
居住区で、出会った異世界の同好の士たちと様々な"同好会活動"を行うもの。
学園海や学園都市で"アルバイト"に精を出すもの。

そして"魔剣使い:柊蓮司"が選んだ休日の過ごし方は…

―――極上生徒会 管理棟

ある晴れた日曜日の昼下がり。

プスン

柊蓮司の休日は、そんな、どこか間の抜けた音から始まった。
「…え?」
音を立てて、それっきり沈黙した魔剣に、柊は茫然としたまま硬直する。
タイミングが実に悪かった。
日曜日だと言うのに、居住区で始まってしまった学生同士のマジ喧嘩。
かたや拳1つで一騎当千の力を魅せるD-1ファイターで組織された特選隊『両成敗』の闘士。
かたや剣1本でパワードスーツだろうとドラゴンだろうと斬り倒す侍特選隊『剣友会』の剣客。
突如勃発した地獄のようなマッチメイクに、執行部にスクランブルがかかった直後。
いつものように管理棟5階から出動しようと、窓から飛び出した瞬間。
まさにそんな、ある種神かかったタイミングで、愛用の箒仕様魔剣の推進機構が壊れたのだ。

推進機構の故障。
極上生徒会の管理棟5階。
窓から飛び出した直後。

これだけの条件がそろった結果、極上生徒会管理棟前に1つの人型の穴が開いた。
その落ちっぷりはまさに『下がる男』の異名に恥じぬものだったと言う。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:01:44 ID:zwCSjNa9
今週のビックリどっきり支援
242休日の過ごし方@学園世界:2010/04/23(金) 23:04:04 ID:wAVmYa+l
―――D地区 学園世界 人工温泉

ラースフェリアとファー・ジ・アース、そして学園世界。
柊の魔剣は箒へと改造されてから現在まで、休む間もなく無数の戦いをくぐり抜けてきた。
柊自身の手でアンゼロットから貰ったマニュアル片手にメンテナンスこそしていたものの、
『並みのロンギヌス10年分』とも言われる度重なる命がけの戦いを主と共にくぐり抜けたことで魔剣の箒部分は限界に来ていた。

『推進機構の故障事態はすぐに直せると思います。単純な故障ですから。けど…こりゃ〜またいつ、どこが壊れるか分からん状態ですわ。
 あちこちガタがきとります…ちゅうわけでオーバーホールしてピッカピカにするんで今日一日預からせてもらいます。ええですね?』

開発部で、箒の専門家にそう言われては断れるはずもなく。柊は晴れて『1日ただの使い』へとクラスチェンジを果たすこととなった。
その後、執行部室へ戻ったところで『そう言うことならば…今日こそちゃんと書類の書き方を覚えて貰いましょうかね?』
と山のような書類を抱えた某執行委員からゴゴゴゴゴッと擬音が聞こえてきそうな笑顔を向けられて慌てて逃げ出し、現在に至る。
「へぇ〜やっぱりひれ〜な」
腰にタオルを巻いた他は全裸の柊が辺りを見回して感嘆の息を漏らす。
前から気にはなっていた。学園世界D地区にある、巨大な人口温泉。
学生用と言う事でアルコールこそ置いていないものの、お手軽な入浴料と豊富な種類と高い薬効のお湯。
やたら充実した牛乳系飲料(乳酸菌&キワモノ含む、ビンのみ)等々のお陰でそこそこ繁盛している学園世界の憩いの場である。
平日の夕方ともなれば部活帰りの学生であふれ返るこの大浴場(男湯)は今、日曜の昼下がりと言うこともあってか閑散としている。
「ふぅ〜、生き返るぜ…」
身体を洗って湯につかり、腰に巻いていたタオルを頭にのせて柊は盛大に息を吐き出した。
「やっぱたまにはこういうのもいいな…」
管理棟のシャワーや近くの銭湯も悪くないが、やはりでかい露天風呂の開放感は別格だ。
そんなことを考えながら、辺りを見渡す。
「にしても人いねえな…って、そりゃそうか」
見れば辺りには全然人気がないことを確認して、柊はとあることを思い出して苦笑する。
「日曜のまっ昼間だもんな。わざわざ風呂入りになんてこねえよなあ」
昔…と言ってもほんの数年前。柊がまだただのちょっと不幸な男子学生だったころ。
その頃は休みともなれば学校の野郎友達やくれはを誘ってはあちこちに遊びに行っていた。
金は無かったが暇は腐るほどあったので色々やったが、少なくとも風呂入ってまったりするなんて発想が出た記憶は一度も無い。
それが、今日は休みと聞いて真っ先に出てきた案が、露天風呂に入ることだった。
「…まいったな。俺まだそんな歳じゃねえはずなんだけどな」
この数年でウィザードに覚醒し、色々あって凄まじい勢いで成長したせいか、ちょっと老成しかかっている柊蓮司。
昔とは違う休みの感覚に、ちょっと複雑な気分を覚える、ギリギリ未成年なお年頃。
「今度の休みには他の連中誘ってどっか遊びにいってみっかな…次の休みがいつかはわかんねえけど…ん?」
たまには若者らしい遊びもしないとな、とある意味物凄くじじむさい考えを起こしていた柊はそれに気づき、眉をひそめる。
湯船に誰かいることに気づいたのだ…つい先ほどまで感じられなかった、気配がある。
(…誰だ?)
今の今まで気づかなかった気配が現れた。
そのことに対し、歴戦の魔剣使いとしての経験が柊の身体に強張らず、されど迅速に動けるだけの適度な緊張を与える。
そして、柊は相手の次の行動を待ち…
「やあ。こんな所で会うなんて珍しいな、柊」
…その声と共に現れた姿に緊張を解いた。
「なんだお前か…」
目の前の少年を見て、柊はあからさまにほっとした表情で言う。
若干整ってはいるが基本的には平凡な顔立ちと、それに見合わぬ鋭い眼光。
普通そうに見えてその実一切の無駄をそぎ落とされている、すらりとした体格。
よく手入れがされ、使いこまれた実用刀のような印象を与える少年の名は…
「驚かせるなよ。マモル」
「ごめんごめん。まさか柊とは思わなかったから、一応気配消してたんだ」
陰守マモル。かつて柊と共に1度だけ戦ったすご腕の忍者であり、学園世界を陰から守る特殊部隊、カゲモリの隊長である。
243休日の過ごし方(温泉編)@学園世界:2010/04/23(金) 23:07:29 ID:wAVmYa+l
「んで、今日はなんでまたこんなところに来たんだ?」
立場は違えど世界を守るもの同士の男2人。
知らぬ仲ではないのもあって、2人は雑談に興じる。
「ま、一言で言えばいつも通り、だな」
柊の問いかけに、マモルは肩をすくめ、言う。
「ここのバナナ牛乳が絶品なんだってごくつぅに書いてあったらしいんだ。
 んで、ゆーなが行きたがって、それじゃあってことで、学校の友達と一緒に来たんだ」
「なるほどな…ん?」
マモルの言葉に納得がいかず、柊は首をかしげた。
「のわりにはお前1人か?いやまあ、あのゆうなって子は女湯にいるんだろうけど」
学校の友達と来たなら、マモルがこうして1人で入ってるのはおかしいと思ったのだ。
「ああ、学校の友達って言っても僕の他はみんな女の子だよ。だからみんな、女湯の方に行ってる。
 昔から結構忙しくてね。特殊な友達しかできないんだよ。昔っから」
「…お前、苦労してたんだな」
「割とね」
マモルは溜息をつく。
四六時中トラブルに巻き込まれる幼馴染の護衛として、いつでも一緒だったことと頭おかしいんじゃねえか?ってくらいの激しい忍者としての修行。
生まれたと同時にそれを課されてきたマモルに、友情をはぐくむ時間はほとんど残っていなかった。
そんなわけで、マモルには普通の友達と言うのは、全然いなかったりする。
「ま、こっちに来てからは"特殊な友達"がやたら増えたけどね。組織の方のカゲモリのメンバーとか、お前とか」
カゲモリが組織されてから半年。最初は4人しかいなかったメンバーもだいぶ増えた。
組織の方にはあまり顔を出さないマモルが知っているだけでもカゲモリの数は優に両手の指の数を越える。
結構な数のメンバーが今日も人知れず世界を守っているのだ。
「そっか。それならいいけど、そっちも気をつけろよ」
「大丈夫だよ。僕は基本的にゆうなの護衛しかやってないから…」
(そのせいで結構な数の世界の危機を救う羽目になったけど)
後半は言わずに心の中で呟きながら己の中に宿った、確かな、たった1つの信念にマモルは苦笑いする。

マモルが生まれたときから密かに守り続ける幼馴染の少女、紺若ゆうな。
道を歩けばヤバい薬の取引現場を目撃し、1人で帰れば誘拐され、おつかいに行けば宇宙人に攫われ、キャンプに行けば悪霊にとり憑かれ、家の庭を掘れば地下の巨大迷路を掘り当てる。
彼女はそんな、奇跡に近い確率でとんでもね〜ことに巻き込まれる天才である。
それは学園世界に来てからも全く変わらず、マモルが「お隣を守るために」カゲモリの案件を片付けたことも10回や20回ではきかない。
彼はいつでも溜息をつき、しょ〜がね〜なと言いつつゆうなを助けに行く。決して見捨てない。
「形無し」と謳われた最強の忍びの一族、陰守忍者の力と技は何のためにあるのか、ちゃんと知っているから。

「それより柊も気をつけろよ。お前、あちこちで無茶してるって聞いたぞ?」
「…まあ、確かにな。これでも気をつけてんだけどな」
(つっても実際当たっちまったら無視できねえけどな)
マモルの言葉に、柊もまた、後半は口に出さずに苦笑いする。
柊もまた知っている。目の前で自分が何か出来ることを見て黙ってられない自分の性分を。
そのせいでずいぶん苦労もしてきた。命の危機だって何度もあった。
だが、柊はそれでも決してその生き方を曲げない。
出来ることがあるなら最後まで全力でやり抜く。それが、柊が自ら見出した、シンプルな信念(こたえ)だから。
「…お互い損な性分だな」
「おう。まったくだ」
言葉に出さずとも伝わるものはある。
柊とマモルはお互いに言わなかったことを何となく察して笑いあう。
それは、まさに共に死線を乗り越えた戦友同士の笑みだった。

そして、男2人の静かな時間は…
244休日の過ごし方(温泉編)@学園世界:2010/04/23(金) 23:12:33 ID:wAVmYa+l
ドゴ――――――――――――――――ン!

轟音と共に破られた。
「な、なんだ!?」
爆発音に思わず反応し、柊は立ち上がり音のした方を見る。
それに対して、事情を知っているマモルは落ち着き払って言う。
「ああ、あれならどうってことないよ。多分誰かが地雷でも踏んだんだろ」
「ああそっかそれなら…っておい!?」
一瞬納得しかけ、直後に突っ込んだ柊に対し、マモルは相変わらず落ち着いて、カゲモリのメンバーから聞いた事情を説明する。

野郎どもの持て余した青い欲求を打ち砕き、女の敵に天誅下す。女性だけの特選隊として有名な「209」。
彼女たちと燃えたぎらんばかりの野郎どもとの戦い。
その、最も熱い戦場が若い女子学生の利用客も多いこの人工温泉の女湯である。
捕まえてもお仕置きしても一向に減らないNOZOKIを撃退すべく209の手で仕掛けられた無数のトラップ。
非致死性なのが唯一の救いの鉄壁の防壁に、野郎どもの情欲は無残に打ち砕かれる。そう思われていた。
だが、学園世界のNOZOKIどもはそれでもなお諦めない真の馬鹿野郎だったのだ!
ただの学生から冒険者、超能力者、魔法使いに犬神使い、ゴーストスイーパーにブラストハンド。
数々の能力者たちが鋼鉄の鉄壁に守られた聖域(サンクチュアリ)を目指したのだ。
その先に待つ、桃源郷(エルドラド)を拝むために。
そして繰り広げられるのは外部から頼んだ助っ人の手で更なるトラップの強化が図られてはそれを突破する、
NOZOKIと209とのいたちごっこ。
それは螺旋を描くがごとく、堂々巡りと高度化を繰り返す。かくして。

「…そんなわけでここの女湯の周りは今、トラップがすごいことになってるんだ」
そんな言葉と共に、話を締めくくる。
「なんて言うか…アホだろそいつら」
無駄に壮大で馬鹿すぎる戦いに、柊が疲れたように溜息をつく。
「まあな。ちなみに執行部からも助っ人が出たらしいぞ。確か相良と長瀬って言ったかな?」
補足するように、マモルが執行部で1、2を争うトラップの専門家の名を上げる。
「…そういや前に選抜から何か頼まれたとか言ってたなあ、あいつら」
謹厳実直な仏頂面で、およそ戦争に関係するものなら幅広く精通しているプロの傭兵相良宗介と
のほほんとしているように見えてすご腕の忍びである長瀬楓。
確かにあの2人が仕掛けたトラップなら効果たけえだろうななどと遠い目をして柊は思う。
覗きの趣味など微塵も持ち合わせていない柊(朴念仁)にとっては割と人ごとである。
「ま、そんなわけだからさ。気にしなくて大丈夫だよ」
「…そうだな」
今日一日はゆっくりするか。
そう思い、柊は再び湯につかる。

マモルともども束の間の休日を満喫するために。

かくして柊には珍しい穏やかな休日は、ゆるやかに過ぎていくのだった…



今日はここまで。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/23(金) 23:20:56 ID:KeHQn2G2

ゆっくりする柊と言うのも新鮮だw

                           パ  チ  モ  ン
前スレの指定の漢字が間違ってたから、柊によく似た別の誰か
の話になるかとおもったw
246名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 23:54:00 ID:CXEy1kue
GJ!
ゆっくり休んでいく柊……だと………?
いまんとこは大丈夫っぽいが、これからなんか起こりそうな気がしないでも、ない、かな…wwwww
247名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 23:56:38 ID:8aV0pdne
ユックリ柊じゃあるまいか
248名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 00:20:11 ID:7zwPwTPN
>>246
俗に言う江戸川効果だな。

…一般人なのにどんな事件にでもいるので学園世界7不思議に数えられている針山姉弟と言う馬鹿ネタをちょっと考えたw
249名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 00:31:05 ID:YwmnzBSZ
披露院菜乃さんがいるからなー、そのポジション
250名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 01:53:00 ID:2c3CAHEU
>>247
ゆっくり下がっていってね!

>>248
または、柊も歩けば世界の危機にあたる
ベル様も歩けば・・・・あれ? 魔王なのに普通に歩いてる?
251名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 02:00:18 ID:NI2NDlIR
>>244
さらっと混ざるなブラストハンドw
252名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 02:20:17 ID:2c3CAHEU
>>251
よく見りゃヨコシマと川平の坊ちゃんまでいるしw
253名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 16:26:21 ID:7Qf9HRsm
>>250
柊は魔王を上回るトラブル体質だと言うのかw
トラブルをつくるのか、引き寄せるのか、巻き込まれるのか・・・
254名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:04:11 ID:hv7whHCA
よし、ここで発想を転換して、トラブル体質の魔王、紗伊阿九斗と柊を組ませてだな
255名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:23:21 ID:73dz8GGN
柊はどちらかというとトラブル体質というよりトラブルを押し付けられる体質なイメージ(例えるなら避雷針
トラブルメーカーやトラブル体質と組んだら騒動に巻き込まれる率は150%。
一度巻き込まれて、その関連にまた巻き込まれるが50%という意味
256名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 21:57:57 ID:7zwPwTPN
どっちかと言うとトラブルに突っ込んでって円満解決を助けるイメージ。黒皇子とかアニメとかがそのパターンだったし。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 22:07:52 ID:IXANW1+K
突っ込んでくっつーか、関わってしまったものは最後まで面倒見ちゃう感じ
触りの部分では必死こいて逃げてるし
258名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 01:31:26 ID:ZbotUh3C
>>257
それはほとんどの巻き込まれ型主人公が持つスキル<主人公補正(デウスエクスマキナの恩寵)>だと思うが……
柊は大体において部外者ポジからスタートするのに、いつのまにか中心にいてメインを鼓舞しながら特攻していくから困る。

そんな『柊そのもの』が『世界を滅ぼす引き金(とらわれのひめ)』になる状況になったら、学園世界はどうなるだろうねぇ(渡辺明乃声で)?
259名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 07:21:56 ID:Ojy9lki9
「はわー、柊力を強化して、世界滅亡の可能性を下げれば大丈夫だよ、柊」
「ちょっと待て、くれは。なんだそのアンゼロットの顔がプリントされた缶紅茶は」
260名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 16:33:04 ID:Zj2xuiEz
ジャッジメントですのがルール的に出来るようになったと聞いたですの
261名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:05:51 ID:JfEc4OUv
>260
つまり、ALGでSC:シヴィルサーバントだねっ!

と、妙に嬉しそうな錆びる女が。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 21:28:52 ID:BSm4XBSs
>>251
だが、ちょっと待ってほしい。こんな線は考えられないだろうか?
「分かってくれもみじ…これは男の本能なんだ!本家ブラストハンド!」
「以蔵君!そこだけは同意するが美しき情景はすべて僕のものだ!元祖ブラストハンド!」
「ヒーローにも息抜きは必要なんだ!ザ・主人公ブラストハンド!」
「俺を待つ美少女のためなら209だろうがナチスだろうが怖くない!帝都の純情ブラストハンド!」
「モテたいから麿は陰陽寮で学んでおるのだ!陰陽師武羅須唐藩怒!」
「愛があれば有機無機の壁だって越えられる!メカブラストハンド!」
「ヒャッハー!裸だ女だぁ!モヒカンブラストハンド!」
「ウッキー!」

「あんたらいい加減にしなさい!一部明らかに学生じゃないの混ざってるでしょーが!?」

…そういやあ柊でも似たような現象はあり得るのか。レンとかいるし。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 22:13:06 ID:ZbotUh3C
>>261-262
はいはいそういうのは自分でss書きあげましょーねー。もちろんナイトウィザードをきちんとからめてからお願いしますよー?

264名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 22:15:08 ID:4nzkW1UR
> レンとかいるし
……ふぅ

病弱な分、湯治も結構やってそうだね
265名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 23:17:26 ID:t7KwjY4b
えっちなロリぬこと聞いて
266名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/28(水) 23:22:35 ID:7oPrWkj8
ヤヌ子さんと聞いて
267名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 00:50:18 ID:2o/tbnao
地下池

ところで今期アニメはどの辺がクロスできそうなあたりなんだ?
268名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 01:38:32 ID:wWk6z9yw
学園物なら『Angel Beats!』や『いちばんうしろの大魔王』とか?
269名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 01:45:25 ID:CR6a2t18
ベル様がツンツンしながら転入してくる話にしか見えないから困る>いちばんうしろの大魔王
270名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 02:46:29 ID:VTAkeKbe
風の吹き込む窓側の席?
271名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 04:16:04 ID:SJM3mpzb
AB!は、確か第2話だったかに、ダンジョン探索のエピソードがあったよな。



細長い通路の向こう側から、轟音と共に傾斜を転がってくる。
いわゆるレイダース・トラップ――とある冒険映画の名を冠した、あまりに有名で、かつ凶悪な悪魔だ。
ただ愚かな侵入者を膨大な質量で押し潰すというだけでなく、その存在感は彼らの冷静な判断力をもあっさりと奪い取る。
そう、本当の恐怖は、犠牲者の意図しない場所へと誘いこむことに他ならない。

柊蓮司はそう冷静に考えていた。
他の面々とともに、とりあえず潰されないよう全力でダッシュしながら。


(…追いつかれる!)

諦めそうになった瞬間を見計らったかのように、不意に現れる通路の隙間。
チームのリーダーを自称する少女――ゆりっぺと呼ばれているらしい――は、仲間にたちにそこへ避難するように指示を出す。
そして後続たちが次々とそのスペースへと飛び込み。

ゴォォォォォォ!!!
次の瞬間、彼らの真横を岩石が通りすぎていく。
まさに間一髪。

「気をつけろ! 本当の罠は――」

柊が叫ぶ。

…。
……。
………。

「…本当の、罠は?」
「へ? あれ?」

もちろん何も罠がなかったというのは喜ばしいことではあるのだが、
なんとなく拍子抜けする柊蓮司であった。

(うひひ)

どこかからそんな声が聞こえた。




終ワル。
272名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 10:43:47 ID:VTAkeKbe
何か企んでる! 企んでるよこの人ー!w
273名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:06:28 ID:hGQqNVzD
きくたけだと
横道に爆破トラップのスイッチとかシュートとか仕掛けそうだな

というか、柊が入りこむと
1話のトルネードで掴んだ食券が「梅茶漬け」とか普通にありそう
274名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:27:05 ID:HynemMEK
>>273
ですよねー。


つい最近、同じようなシチュエーションで、
明らかに何かありそうな演出(壁の汚れとか)だったのに、何もなかったことがある。
もちろん、そのせいで他のトラップに引っ掛けられたんだけどな!
275名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 01:30:51 ID:/CL2K5Jl
ふと、学園世界修学旅行と言う電波が頭をよぎった。

…行先は学園海に浮かんでる島系の学園とかどっかの学園都市とかなんだろうか?
276名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 04:09:48 ID:zLXjBg2f
一時的に修学旅行の目的地にだけ行けるようになるのかもしれん
277名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 11:00:57 ID:/CL2K5Jl
それもいいかも知れんが、う〜む。

そういや都市級の学園って禁書の学園都市とネギま!の麻帆良とアリアドネー、後は蓬莱島くらいしか思いつかないんだが、
他にはどんなところがあるんだろうね?
278名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 18:10:38 ID:ASnmnXCn
大物だと、カオスフレアのリオフレード学院かな? 
空に浮かぶ島(というか巨獣)の上にある、あらゆる勢力の出身者が共に学び、青春を浪費し、ダスクフレアに立ち向かう学校。

後は卓ゲ系だとデモンパラサイトにも学園都市があるんだけど、手元にサプリがない。
279名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 20:17:49 ID:frjCoKha
ハヤテの白皇学園とかハリーのホグワーツとか
あとちょっとランクは落ちるがFF8のバラムガーデンとか神知るの舞島学園高校とか
それとDXの瀬戸川学園も、フレーバーだけは学園都市扱いだった気が…
280名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/06(木) 15:12:37 ID:6heE5rCD
付属学校が多い、という意味では明稜帝の明稜高校とかGAの彩井高校大運動会の大学衛星とか。
ちょっとずるいがガンダムF91でクロスボーン・バンガードの士官学校的な役割を持ってた職業訓練学校もかなりの規模だな。
281278:2010/05/06(木) 19:56:43 ID:Dal3I12B
悪い、リオフレード学園は海上の島だな。
空の上に浮いてるのはアルシャードffの万色学園だった。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/09(日) 13:39:55 ID:gcCiLsNV
機動学園が暴走してその暴走を止めるシナリオとか作ったら面白そうだね。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/11(火) 23:13:19 ID:qxuIc7cu
学園世界だからちっとやそっとのモノじゃ学を修められんだろう。
謎な敷地がホイホイある白皇学院や麻帆良学園のアトラクション風ダンジョンツアーがよろしいかと。
ダンジョンなら卓ゲっぽいだろ?
284名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 04:08:34 ID:pEDru7Mu
卓ゲ板じゃねぇぞ、スレタイ万回見直してこい

……つーかほんと勢い死んでるなこのスレ。前スレはもっと勢いあったよな?
規制も今と同じくらいかかってたけど、なんでこんな勢い死んでるんだ。なんかあったのか
285名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 06:50:31 ID:Ob7KvCP7
前回と同じ人間が規制されているわけじゃないし
286名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 07:00:33 ID:elVSBdxo
投下が無いからなあ。アイディアはあるんだけどまとめてる時間がねえ。

せめてネタ振り。

輝明学園の天文部とかペルソナとか夜来るとか、学園の中で密かに戦う部活や生徒会などに見せかけた小集団って結構見かけるけどさ、
こういう人たち同士で交流したら楽しそうだなと思う。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 10:49:19 ID:T7mFmAXB
そういえばクェイサーに、サトリナ演ずる柊という女の子が出てきたなあ。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 19:00:56 ID:bhqCuFkl
学園世界のインフラ整備(上下水道や発電所等)で春風高校土木研究会の活動というネタはあったのだが
どうにもNWと重ねられずに挫折したことが……
289名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 21:53:37 ID:EiIdgd9S
500円で売り飛ばされた柊蓮司ですね、分かります。

つ [米穀通帳]
290名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/12(水) 22:38:47 ID:elVSBdxo
>>287
学園世界で生徒会長サイモン・マーガスが学園世界にいる「柊」の柊力を集めて一騒動と申したか。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/13(木) 00:37:34 ID:PzGUiR5c
>>277
鋼殻のレギオスの学園都市ツェルニがあるな。
あの都市は足があって動いているが、都市の動力となる「セルニウム」が学園世界にあるかが問題かな?

個人的には学園退魔物のクロスなら考えたことがあるな。
『風の聖痕』の綾乃やそのTRPGのキャラ達や『HUNTEDじゃんくしょん』の聖徒会の面々。
GSのメンバーに地獄先生ぬ〜べ〜とか。
ただ、肝心のNWのキャラが思いつかずに構想が停滞しちまっているんだよな。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/13(木) 01:09:11 ID:wAGCAsJp
>>291
退魔といえば蒼穹のエンゲージの古都……って、あいつはロンギヌスか。
つーか、よく考えたら赤羽家って退魔じゃねーけど、それに近いんじゃねーか?
293名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/13(木) 02:54:13 ID:uklzYe0a
>>291
HUNTEDじゃんくしょんは割と絡め安いんじゃない?
悪魔でも友好的なら受け入れるし
作中に魔界とか霊界道とか出てるから魔王も出しやすそう

あと、なんだかんだでキャラが素直だから動かしやすいと思う
GSの濃い面々や聖痕のカズマとかに比べたらねw
294名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/13(木) 09:01:30 ID:lQRrnPma
退魔系と言うと、『豪血寺一族』の矢部野彦麻呂か。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/13(木) 18:51:49 ID:Xx+RSQQa
>>292-294
そこまで思いついてんなら自分で書けよ、ぐだぐだ言ってないで。
296名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/16(日) 09:40:11 ID:V4fqzVtO
待て待て、退魔と言ったら某七夜の血をひく眼鏡を忘れてはいかんだろう。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/17(月) 07:03:02 ID:fYKKKBEt
ふと、学園世界で「簡単に強くなれる方法」としてαトランスや合成促進剤ばらまいたりペルソナ様のやり方が流通したりしたらやばそうだなと思った。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/18(火) 00:54:57 ID:fEg4dsZl
ペルソナ様はなんだかんだで意思が強くないと降りてこないからまだマシ
失敗しても害はないからな
299名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/18(火) 23:33:54 ID:Hf9bO45m
バンチョニウム製学生服でも着るといいよ。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/19(水) 01:00:50 ID:7bkEDJZ1
柊のコミュは21種類それぞれに4個くらいづつありそうだなw
301名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/19(水) 07:56:14 ID:ZQw6kw1/
>>299
それ動けるの?
302名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/19(水) 14:05:02 ID:UKXRH1Xv
>>300
PSP版ではなくPS2版のリバースやブレイクしないための調整が面倒そうだ
303名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/19(水) 21:16:01 ID:003WVd5q
>301
何しろ番長学園なので、鼻紙より弱いバンチョニウムとか普通にある。(マテ
304名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 02:54:12 ID:3GMMgINm
女神転生系でナイトテイルとか退魔生徒会とか、神様や準神様がチームワークを
活かして、装備を整えて戦ってる状態って、今までSSに出てきたコンシューマー系
メガテンから来てるキャラから見ればなにがなんだかわからない状態だろうな、と思う。

ニャル様になった鱗なんて滅びの未来への分岐を回避するのを合法的にやってるし。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 03:00:18 ID:VPLd7DxE
退魔関係だと『ほうかご百物語』の県立高校が来たせいで妖怪達が自然発生する様になるとか?
306名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 03:00:38 ID:ZLeVwYN4
でさー、いつになったらナイトウィザードのクロスの話がはじまるのんー?
それともやっちゃいけないギアスでもあんのかここには
307名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 04:45:16 ID:Iol/k5d2
怪談とかでありがちな、よく似た異世界に飛ばされる執行部の誰か。そこは何かが違う別の学園世界だった。
そして、途方に暮れるそいつにさしのばされる手の持ち主は…

「大丈夫。僕が手伝うから!」

こちらの学園世界の執行部代表「柊レン」だった!と言うネタは前に考えた。ちょっとだけ。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 07:16:10 ID:ejmaRWv/
>>306
正直ナイトウィザードのクロスを書きたい人はクロス先の方へ行くとかしてると思う
309名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 08:17:53 ID:DcrOLVrW
>>306
別に禁止なんかされてないんだから、いつでも好きな時に初めてもらって構わないよ?
310名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 22:20:51 ID:Iol/k5d2
ふと、学園世界TVの撮影中に事件に異界化に巻き込まれた青葉が、撮影のために来ていた学生アイドルたちと協力して事件を解決すると言うネタが頭をよぎった。

…戦えるアイドルはそこそこ思いつくけど、前衛が春日野うららくらいしかいねえやw
311名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 23:10:44 ID:xMsw/JR9
FtEにはDear…のキャラだった日本刀相当の歌声持ちのアイドルがいるじゃないか。
あと、ラジオネタだけどロンギヌス・ベタ&フラッシュとか。
312名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/23(日) 04:01:14 ID:6UW5kvSi
Dear…誰か出してたっけ?
313名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/23(日) 23:20:03 ID:7TtGa5zO
>>308
まぁ、確かに軒下を貸したら母屋をとられたというか……

たまに「学園世界で書きたいけど、NW混ぜなきゃいけないのが面倒」と思いかけている最近だからなぁ
314名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/24(月) 20:23:01 ID:CBT1beCj
いっその事、SSスレ避難所に『学園世界スレ』を作る?
315名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/24(月) 21:39:19 ID:5OYIufqK
創作発表板に学園ものクロスってスレが……ちょっと違ったか。

【小中】学園クロスオーバー【高大】
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220108165/l50
316名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 01:42:49 ID:+hWeDhOA
そんなコメにもまったく反応しないほど人が減ったか……

何がよくなかったんだろうねー、前スレと比べて。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 02:18:58 ID:ATnYxSdm
単純に規制食らってる期間が長くて過疎ったってのもあるかもしれん
どこもかしこも勢いなくなってる感じ
318名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 02:58:55 ID:k3dj4oIa
ふっと、

田中ぷにえ / 近接専門のアタッカー魔法少女@大魔法峠
サクラ・ヴァンシュタイン / 空間機動+突撃を得意とする魔法少女@NW
高町なのは / 砲撃専門魔法少女@魔法少女リリカルなのは
プリティ・ベル / 敵の弱体・防御・近接をこなすオールラウンダー魔法少女@魔法少女プリティ☆ベル

という魔法少女パーティってな電波が
319名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 10:10:58 ID:Vg7KjBpY
まって、そのプリティ・ベルは『どっち』なの…?
どっちのプリティ・ベルもいささか強すぎる気がするので
同じ万能型ということでプリティサミーの方を
実はコマンド・サンボの使い手なんだぜ>プリティサミー
320名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 11:56:09 ID:O9Q3rOiK
今の所、学園世界で柊にフラグたってるのはレベッカくらいなのかな?
普通に作品中で好意を持ってるっぽい男キャラがいる女の子だと
あんまり勝手にフラグ立てるわけにもいかないだろうからなー
けいおんとからきすたみたいなほのぼの日常系の作品だと
その手の男キャラって出てこないからワリと何とかなりそうな気もするけど
その辺どうなんだろうね?
321名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 12:16:49 ID:OSmvN9kZ
レベッカって書かれると一瞬誰か分からなかったw
322名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/26(水) 22:57:44 ID:fruRkLJ8
レベッカと言えば普通はロアナプラの二挺拳銃だよなぁ。
このスレ的には惑星エニウェアのエンフォーサー娘かもしれないが。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 00:36:03 ID:uri5HZmu
元々は、ぱにぽにとのクロスの『桃月町の魔法使い的日常』からきてたんだっけ?
324名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 01:24:51 ID:cG+MgXCr
というか、桃魔と学園世界ってつながってんのかな。ベホイミウィザードっぽいことやってないようにも見えるけど。

>>320
基本的にはクロス先が女の子だらけのところに別作品の男がクロスで出てきてモテるって展開は嫌われる元だからなー
恋愛系に話が発展するところを見ただけで反射的にブラウザ閉じる人もいるらしいし生理的に抵抗がある人もいるんだろう。


まぁ俺は学園世界でのベッキーと柊の絡みをぜひとも見てみたいんだがなっ!
325名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 08:02:11 ID:qoFFf7rh
なるほど、そういうもんなのか
その辺の事よく知らんかったんで、つまらん事言って
すまんかったね
俺みたいにアニメでちろっと見ただけの人間には
その辺のファン心理ってのは推し量り難いものがあるのかもな
326名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 10:21:18 ID:vQr/wYiv
ベッキー……ベッキー…バッドラック ベッキー……!(違います
327名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 10:28:53 ID:2EAMLu38
なついなおい
328名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 21:49:14 ID:pdV+PjyY
やる夫AAストーリー系だと、割と見かけるね、作品世界を越した組み合わせ

ところで本屋に行ったらなんかアニメの聖地巡礼ガイドブックみたいのが並んでて、
ナイトウィザードのページもあったのに感動した
329名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 23:04:53 ID:cIP9IIs6
ナイトウィザードの聖地ってーと、ケバブとか、おでん缶の自販機とかイエローサブマリンのRPGプレイスペースとかか?【炎砦はS=Fである】
330名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 23:45:53 ID:vQr/wYiv
>>328
詳細
331名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 23:53:05 ID:S9xNixaq
そういや、イリヤと美遊ってやっぱカードの使用が規制されてるんかね?
332名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 07:23:33 ID:hZnRb3vy
コロコロ・ボンボン系の世界の命運をかけてオモチャやカードで勝負してる小学生どもの周囲はカオスだろうと想像してみたり
333名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 07:27:49 ID:VvKZLuvr
エンジェルvsメダロットとかすげえカオスなバトルが展開されてたりなw
334名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 11:31:29 ID:6povM7bP
そんな玩具で世界を救う小学生たちに混じって本気でバトってる要いのりさん

小学生相手にムキになってる姉に悲しむべきか
それとも部屋から出るようになっただけマシになったと喜ぶべきか
とても複雑な気分に陥ってる妹の要ねがいさん

そしてそれらをまとめて蹴散らす遊びには全力傾ける執行部の吸血鬼

「ああっ、メタビーっ!?」
「私のベティベア(初回限定版)が……オクで高かったのに……」
「何だあのゴーフバレットめちゃめちゃ強いぞ!?」
「ふははははははーわたくしの魔改造ゴーフバレットに怯えるがいいのでありますー」
335名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 19:23:05 ID:VvKZLuvr
>>334
いつの間にやら執行部ではやって…

最初に始めたのに勝てなくて涙目のイリアとイリアのために魔改造に走る美羽。
武装に実弾使おうとしてかなめに突っ込まれる宗介。
マリーの手でいつの間にかパーツ単位で生きてるシリーズに改造されてるエリー。
しょうもな…などと言いながら実は一番どはまりしている(けど弱い)美琴。
超近接戦重視使いのベホイミ。
効率重視で総合力では鬼のように強い初春と長門。
ついて行けない植木と楓。
お嬢様謹製のバランス悪い機体で、持ち前の勘で善戦するハヤテ。

…そして色んな意味で普通すぎて逆にネタにならない柊w
336名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 21:16:28 ID:1GTvWO0/
>>330
ttp://akiba.keizai.biz/headline/1922/
良く覚えてないけど多分これ
エリスのマンションとかくれはんちの神社とか輝明学園のモデルになったのは
ここだよーな紹介がしてあった
337名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/29(土) 08:52:19 ID:ZwWNE2lj
学園世界の試験前に、アホ3人(植木、楓、ベホイミ)が勉強教えてくれと言うネタが頭をよぎった。
…柊はダメだが、他は結構頭いいしな。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/29(土) 12:01:27 ID:WTqsi5oJ
植木はアホだけど勉強に関しては自分でなんとかする努力家だからなぁ……
楓は別段気にしない派&いざとなったらネギが教えにくるし
ベホは……無駄知識は多いけどインド独立の父をランボーとかチャックノリスって答えちゃう残念な子だから……

ん? 確かベホって高1でそんな彼女に教えられるとしたら高校生の宗介かマスターランクのエリーくらいしかいなくね?
宗介も苦手分野あった気がするし、エリーは理数系はともかく現代系の学校で高校生が学ぶような文系の類はほぼアウトだろうし
カバーしきれんのか、これ。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/29(土) 12:09:44 ID:ZwWNE2lj
>>338
外部枠の長門とハヤテは知識レベル鬼だぞ。

あと、常盤台の授業は普通に大学レベルらしい。中学なのに。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/29(土) 12:37:44 ID:jatuZCMW
御坂さんちの美琴ちゃんは最高レベルの電撃使いだけあって電子工学並びにコンピュータ関連チートレベルで修めてる人
そんな彼女にプログラム制御で勝てる初春マジパねぇ
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/29(土) 14:25:46 ID:farZBi1W
バッカ、
学問なら、小五レベルの円と三角形の関係を三角関数で問いちゃう美遊さんの出番だろ。
あのパーフェクト小学生なら植木や楓のカバーはもちろん、下手すりゃ学園都市の人たちの面倒見れるかもしれんぞ。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/30(日) 23:12:09 ID:rSVWiT8q
いまさらなんだが
>>172のネタってもしかしてベン・トーか?
343名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 12:20:49 ID:LCf8mDNv
だと思うが
……って俺も大概今更だよなw

ところで二次にもいろいろ種類があるけど、再構成とか主役を俺キャラにとか他ジャンルでは人気なのにナイトウィザードではあんまり見ないのはなんでだろーね
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 13:26:23 ID:u8D7RM21
だってそんな俺キャラ書くならセッションするしw
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 19:26:10 ID:yaf1EgPw
……まぁ、大概そうだよな>俺キャラはセッションで

【書きかけの再構成もの(くれはが幼なじみじゃなくノーチェがヒロインな柊サーガ)を隠しつつ】
346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 19:47:23 ID:LCf8mDNv
>>345
ねこの人乙w

つか、ヒロインになりうるのかあの柊とは別の意味で恋愛感情とは無縁のナマモノ
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 20:06:17 ID:kfokUfBN
まぁヒロインが必ずしも主人公と恋愛しなければならない訳でもないし
この場合のヒロインとは物語の重要キャラとかPC2とかのポジを意味してるのではないかと
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/04(金) 01:57:06 ID:afFb7Ae5
>>345
待ってるよー

それはそれとして柊の相棒ポジにノーチェか……さすがに幼なじみにするのは無理があるし、仕事の時だけ一緒にいるとかだと結構カッコよくいけんのではとか勝手に思う
349名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/04(金) 22:15:14 ID:rUkiZsuf
ふと思った、ノーチェの声が新井里美だったらどんな方向にシフトするのか、と。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 03:30:24 ID:vuL23Dkr
黒子ダインさんの声の人か
351名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 05:30:00 ID:h8O0CfDH
どんなシフトって言われても、別に百合方向にシフトしたりはせんと思うが……

とは言え、アレの中に男女の概念があるかははなはだ疑問と言えば疑問だな
352名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 09:02:12 ID:nHqfxygo
>>351
生物学的な差異の知識はあってもジェンダー的なものはすっぱりさっぱり、てなイメージは確かにあるなァ……
353名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 10:03:51 ID:o2a7XZ3t
ところで、俺の脳内ノーチェはCV:小島めぐみ
354名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 14:37:17 ID:q8zO8wyo
どうがんばってもナベクミにしかならない
355名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 01:39:02 ID:iqSxAb4j
よし、ノーチェをヒロインにする方法を考えるんだ

ところで……何を用意すればヒロインになれるんだろ?
356名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 01:46:45 ID:ampFLAfJ
み、みこの称号…?
357名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 01:56:52 ID:gsqQkugx
こはまーを連れてくる…?
358名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 09:21:05 ID:wgHRAGCh
中の人にスパルタで恋愛ロールを叩き込む
359名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 10:02:34 ID:jPGHs+bb
なぁに、それならさなえがいれば勝つる
【レズ展開になったという】
360名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 12:27:13 ID:l1XhOmLU
そっか? さなえはあくまでNPCになったキャラを落とした感がある(というか王子PC時に落としたわけじゃない)から、俺的にそこまで評価高くないんだよなぁ……

ともあれ、昔の偉い人は言ったんだよ
ヒロインに必要なのは、読者をひきつける『体・顔・性格』がそろっていなければならないと!

……つまりノーチェをボンキュッボンにして、顔はまぁいいとして、性格を読者受けするように改造すればいいんじゃね?
361名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 15:19:50 ID:wgHRAGCh
これが本当にノーチェか? 自分の知ってるノーチェらしさがどこにもない……

一体これは、どこで獲れたノーチェなのだ?

え? ボンペイ? イタリアの?

ああ、だめだだめだ、やはりノーチェは秋葉原に限る
362名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 20:02:43 ID:fZQNR1fT
そしてこれがサンマの刺身で御座いますww
363名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 20:09:13 ID:aWebk9MO
>362
ディアぽん(黙って押し寿司に加工する。こんな鮮度で刺身に出来るか!)
364名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/12(土) 11:41:06 ID:Qe7m3diG
>>349
妙にしっくりきたぞコノヤローww
365名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/14(月) 07:08:53 ID:CfXq8ku4
>364
来るなよ。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/18(金) 00:43:29 ID:RUGa+oGu
唐突に、ノーチェ+アイギス@P3という電波を受信した


……さて、この二人の手にかかる犠牲者を誰にしたものか……
367名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/21(月) 01:57:56 ID:F8SojCkV
1回ホシュ
368名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/22(火) 14:07:58 ID:WDDLTzD5
このスレの趣旨は柊を他作品に放り込んだら、というのだけど、ノーチェも結構便利なキャラだと思う。
クロス先のヒロインとくっつくなんてありえないし、前衛キャラじゃないから主人公の見せ場を奪うなんてこともなさそうだ。
369名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/22(火) 15:48:03 ID:5v+28mpw
むしろノーチェは魔法とかない世界行ってのほほんとしながらひっかきまわして何事もなかったかのように戻ってくる日常系クロスの方が似合う気が……

しかし問題はノーチェをノーチェらしく書ける人はきっと公式とあと数人しか思いつかないという点だ
370名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/22(火) 23:17:35 ID:iLfvCYCa
逆に考えるんだ
ノーチェじゃなくてカエル軍曹として書いて、後で名前を置換すれば…
【ガノタなノーチェが生まれたという】
371名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/22(火) 23:26:48 ID:al+3Uca2
学園世界で「ああ、なんか軍曹を思い出すなあ」と言われるノーチェ。

…冬樹に「あなたの知らない学園世界」とかやらせたら、ちびっ子涙目だろうなあw
372名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/23(水) 02:32:57 ID:b8pLB1R2
ちびっ子だけじゃなくて、大の大人も涙目だと思う。
でも、学園世界じゃ学校の怪談が本当に実在する学校が多数あるんだろうな。
373みつやん:2010/06/25(金) 12:09:48 ID:Z8B7cklT
どうも、ご無沙汰です。一応生きてた、みつやんです(汗)

とりあえず、今はちょっと時間が押しているので、投下予告だけ。
今日の20時くらいから、LOMクロスの続きを投下する予定ですー。
例によって例の如く、無駄に長いので、時間のご都合がつく方、どうぞご支援のほどを……(ペコリ)
374名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 13:05:32 ID:8ovIW9Lv
うぉぉ、生き神様じゃ、生き神様が降臨なされたぞ!
全裸(待機)祭じゃー!!
375名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 14:53:34 ID:slmrwWhy
まってたー!
376名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 15:00:28 ID:EKLf3j6n
うおおおー。
オンセしながらになるけど支援したい。
377みつやん:2010/06/25(金) 19:59:31 ID:Z8B7cklT
気がつけば、LOMクロスの前話投下から、既に一年以上経過しているこの事実(汗)
待っていてくれた方、本当にありがとうございます!
前投下時にGJをくれた方も、今更ですが本当にありがとうございました。

他にも言いたいこと言うべきことはありますが、それは投下終了後に回させていただきます。

ということで、投下開始!
《キョウシャの森 〜stronger/coward〜》

 三百六十度、見回す限り、見えるのは熱帯植物の濃い緑。立つ足元には、道もない。
「……ひーらぎ……なんか、同じとこぐるぐるしてる気、しない……?」
「奇遇だな、くれは。実は、俺も全く同じこと思ってた」
 引きつった笑みで問うくれはに、柊はげんなりした声で答える。
「どーすんだよ〜……ししょ〜……」
「って、元はといえば、全部あんたのせいでしょーッ!?」
 情けない声を上げるバドを、コロナが堪えかねたように怒鳴りつけた。
 喧嘩しだした双子へ、くれはが慌てて宥めに入る。その光景を見ながら、柊は思わず自問した。
(一体全体、何だってんだよ……この状況)
 しかし、実のところ、事態は単純明瞭だった。単に、彼ら自身、そう認めたくないだけで。
 とどのつまり――四人は、密林の中で遭難していた。


 そもそものきっかけは、この小一時間前まで遡る。

  ◇ ◆ ◇

 その日、バドは珍しく、自身の実験を事前に師匠二人に申告した。
 理由は単純。実験に使用する媒体が、柊の手元にあるものだったからなのだが。
 その媒体というのが──
「──獣王のメダル、ねぇ?」
 獣の顔が彫られた小さな円盤。手の中のそれをまじまじと見て、柊は呟いた。
 くれはと合流した日の前日、悪徳商人から有り金全部と引き換えに押し付けられたガラクタの一つである。今日まで他の
ガラクタと一緒に、柊の寝室のテーブルに放置されていた。
 しかし、バド曰く、これはガラクタどころか、希少な魔法アイテムである可能性が高いという。
「“獣王”っていうのは、七賢人の一人、ロシオッティの二つ名なんだ」
 何やら分厚い本を抱えたバドが、立てた人差し指を軽く振りながら、講義するように言った。
 現在、一同がいるのは、家畜のいない牧場である。異邦人二人と双子は円――というか四角を描くような形で、互いに
向かい合って草の上に座っていた。
 言いだしっぺのバドは勿論、声を掛けられた柊とバドの魔法の師であるくれはまでは当然として、普段バドの実験を邪険に
しているコロナまで同席したのは意外だったが、
「だって、柊さんたちが一緒なら、そうそう危ないことはないでしょうし」
 それなら興味の方が勝るというコロナの発言に、俄か保護者二人は、自身たちに寄せられる信頼の深さに些か苦笑した
ものだった。
 と、正座でバドの話を聞いていたくれはが、やおら手を上げる。
「はわ〜、先生、しつも〜ん」
「なにかね、くれはくん」
 くれはがおどけて問えば、バドも乗っかって応じる。
「七賢人って何ですか〜? こっちの世界の有名人?」
「あ、それは俺も聞きたい。その名前は知ってるが、どういう立場のヤツなのかまでは知らねぇんだ」
 胡坐の上に魔剣を抱えた柊も同調する。異邦人二人の発言にバドは目を見開いた。
「そっか、まずそこから説明しなくちゃいけないんだよな。
――えぇと、七賢人って言うのは、妖精戦争で活躍した、七人の英雄と賢者のことなんだ」
 言葉を探すように空を睨みながら、バドは解説する。
「妖精戦争って言うのは、九百年前に大魔女アニスがきっかけで起きた、人間と妖精――ひいては全種族を巻き込んだ
大戦争のこと。その後五期に渡って続いて、集結したのがつい二百年前」
 二百年前、と柊はその時間を口の中で呟く。――微妙な年月だ。
(人間なんかにゃ大昔でも、長生きな種族には『ちょっと前の話』くらいの感覚だよな、それって)
 片や遠い祖先のことと忘れかける種がいる一方で、片や己がこととして記憶している種がいる。そんな、微妙な年月。
 現に、バドは二百年前のことを『つい』と表現した。長命な彼らの種にとっては両親か祖父母の代の出来事なのだろう。
 ただ、おそらくバド自身は授業で習うか本で読むかして、単なる史実として覚えたのだろう。直接身内から語り聞かされて
いたら、こうも他人事の調子では語れまい。
 そのバドは、軽く首を捻って記憶を辿りながら、解説を続けた。
「で、その妖精戦争の四期――大体今から四、五百年前だったかなぁ?
その頃活躍した英雄達が、七賢人って呼ばれてるんだ」
 言って、バドは指折り数えてその名を列挙し、その歴史を語った。

 命吹き込むもの、“傀儡師”アニュエラ。
 始まりの賢人、“大地の顔”ガイア。
 次元の渡り手、“海を渡る亀”トート。
 語り部、“詩人”ポキール。
 道を示すもの、“風の王”セルヴァ。
 貫くもの、“獣王”ロシオッティ。
 死を教えるもの、“奈落の王”オールボン。

 ──アニュエラは、妖精戦争の火種となったアニスの娘。
 力を得るためなら何事も躊躇せず、ついには世界戦争の火種にまでなってしまった母に反発した娘は、各地を放浪し、
その『命を吹き込む』力で様々なものに命を与えた。
 ある時、アニュエラが崖の岩壁に命を吹き込んだとき、そこに現れた顔は彼女にこう告げた。
「お前が命を吹き込んでいるのではない。ただ、お前は目覚めさせるだけ。全てのものには最初から命がある」と。
 始まりの賢人、ガイアの誕生だった。
 アニュエラはガイアの言葉と深い知識に自身の驕りを知って恥じた。そして、彼を“賢人”と称し、やがて自らも“賢人”を
名乗り、ガイアの推挙や自身の判断で選んだ五人と共に“ガイアの知恵”という組織を作り上げた。
 この七人が、現代の七賢人である――

「ただ、妖精戦争が終結してからしばらくして、アニュエラは亡くなってしまったから、今は六賢人になっちゃってるけどね」
 そう、バドは話を締めくくった。
「で……このメダルが、その一人の“獣王”と関係ある、と?」
「その通り!」
 柊がまとめれば、バドは勢いよく頷いた。
「アニュエラは、優れたアーティファクト使いだった。
――あ、アーティファクトっていうのは、人の思念を封じ込めた魔導具のこと」
「……思念?」
 魔力じゃなくて? と首を傾げるくれはにバドは頷く。
「魔法楽器は魔力を込めてあるけど、アーティファクトに込められているのは思念なんだ。
込められた思念に同調して、想起することで、その思念を具現化する。そういう魔導具」
 アニュエラは、物に自身の思念を送ることで、あらゆる命を目覚めさせた。その応用で作られたのがアーティファクトだった。
「アニュエラはアーティファクト作りの祖にして、最高のアーティファクト使いだった。
 戦時中には、アーティファクトを作れる人も使える人も結構いたらしいけど、誰もアニュエラには遠く及ばなかったって」
 当時はアーティファクトも実に多種多様で、中には死者の蘇生を可能にしたものさえあったと伝わっているが、作るのにも
使うのにも素質がものをいうために、扱いが容易な魔法楽器の普及と共に廃れてしまったのだという。
「アニュエラは多くのアーティファクトを遺した。中には、仲間の賢人を模して作ったものもあるって記録が残ってる。
――これ見て」
 言って、バドは手した本を他三人に見えるように開いて見せた。
「――これ……!?」
 そこに描かれた精密画に、三人は思わず異口同音に叫ぶ。
 柊の手の中にあるものと、寸分違わぬ円盤が、そこに記されていた。
「アニュエラがロシオッティを模して作ったアーティファクト、“獣王のメダル”。
このメダルを使いこなせれば、いつでも“獣王”と話せる、って書いてある」
「はわ〜……“獣王”の声を伝えてくれる分身みたいなもの、ってことかな」
 精密画の下に書かれた解説を読み上げるバドに、くれはが軽く首を傾げた。
「けどよ、これ、形だけそっくりな模造品ってこともあるんじゃねぇの?」
 思わず柊は疑念を口にする。これを押し付けてきた相手を思うと、ひたすらその可能性の方が高い気がする。
 う、と呻くバドに、コロナが更に追い討ちをかけた。
「そもそも本物だったとしても、アーティファクトは使うのも難しいんでしょ? バドに使えるの?
何にも起きないのはまだいいけど、暴走とかさせるくらいだったら、やめといた方がいいんじゃないの?」
「――やる前から、お前にはできない、みたいな言い方するなよ!」
 ムキになったように叫ぶバド。喧嘩を始めそうになった姉弟に、くれはが割って入って宥める。
「はわ〜、まあまあ、落ち着いて。バド、コロナはバドが心配なんだよ。いっつも無茶して怪我してるんだから。
でも、コロナ、今回は黙って見ててあげてもいいんじゃない?
お喋りするだけのメダルならそうヤバイことは起きないよ、きっと」
 くれはのフォローに、双子が互いに顔を見合わせて口を閉ざす。柊は、くれはの言葉に乗って笑った。
「まあ、そうだな。喋るだけのメダルなら、本物でも偽物でも、失敗しようが成功しようが大したことじゃないだろ。
――バド、やってみろよ」
「――はいッ!」
 師匠の許可に、バドは目を輝かせて準備に入った。
 牧草茂る大地の上に、バドは大きな羊皮紙を広げる。そこには、緻密な魔法陣が描かれていた。
「この本に載ってたアーティファクト使いの魔法陣なんだ。アーティファクトの思念を増幅させるんだって。
アーティファクトのいくつかは、“眠って”しまっているのもあるから、その眠りを覚ます効果もあるんだ」
 アニュエラはこんなの要らなかったみたいだけど、と少し自嘲気味に言いながら、バドは柊から手渡されたメダルを持って
魔法陣の上に立つ。両手で強く円盤を握り締め、祈るように目を閉じた。
 刹那――魔法陣が、淡く輝いて――消えた。
「……あれ?」
 しばしの後、目を開けたバドが呆けた声を漏らす。もはや、何が起こる気配もない。
「はわ〜。もしも〜し、賢人さ〜ん?」
 くれはが、バドの手の中のメダルに声をかけてみるも、うんでもすんでもない。
「……やっぱ失敗じゃん」
 それとも偽物? という姉の言葉に、バドはがくりと膝をついた。その手からメダルが転げ落ちる。
「まあまあ、誰も怪我しなかっただけいいじゃねぇか。家に戻って昼にしようぜ」
 柊は苦笑しつつ、魔法陣の上で項垂れるバドに歩み寄り、落ちていたメダルを拾い上げた。――刹那、

『ようこそ、我が森へ――歓迎しよう、異邦の子よ』
 ──深く濃い緑の中、石造りの玉座に伏せる赤い獣が、見えた。

 瞬間、柊の足元に、光の魔法陣が展開した。
「はわ……ッ!? 柊ッ!」
「――来んなッ! 双子連れて逃げろ!」
 突然の異常事態に、顔色を変えて駆け寄って来るくれはへと、柊は咄嗟にバドを突き飛ばす。
 しかし、この行為は、結果的に何の意味も持たなかった。
 次の瞬間、足元の魔法陣は牧場全体に広がって、閃光が満ち――

 視界が回復した時、見えたのは、一面の濃い緑だった。

 牧草とは違う、背の高い濃緑の植物が見渡す限り生い茂っている。
「……へ……?」
 見知らぬ土地にいきなり放り出された四人の、呆然とした呟きは――湿った土の匂いを含む生温い風に、ただただ流れる。

 そして、冒頭へと繋がるわけである。

  ◇ ◆ ◇
381名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 20:04:47 ID:wROghJQ5
支援開始!
 とりあえず、四人でしばらく道か人を探してうろついてわかったことは。
 辺りの植物と、肌にまとわりつく大気からして、ここが亜熱帯の密林だろうということ。したがって、どう考えてもここは家の
近所じゃないこと。
 そして、何の備えもない状態で未知の土地を闇雲に動き回っても、疲れるだけで何の益もないということだ。体力のない
子供連れなら、なおさら。
「……あとは、とりあえずこのメダルは本物だったってことだな」
 疲れた声で呟いた柊に、もめていた双子とその間に入っていたくれはが振り返る。
「はわ?……あ〜、まあね〜。ここに飛ばされたのは、どう考えてもソレのせいだもんね〜」
 柊の言葉にくれはが頷く。あのタイミングからして、現状とメダルが関係ないとは思えない。
「でも、なんでいきなりこんなとこに飛ばされるんですか? 本には“獣王”と話すための道具ってあったのに」
 コロナの言葉にバドもかくかく頷く。
「うん、確かに本に書いてあったこのメダルの効果は、『使いこなせればいつでも“獣王”と話すことが出来る』だったよね。
それで、あたしは“獣王”の代わりに答えてくれるお喋りメダルだと思ったんだけど……」
「俺もそう思った。けど、そもそもその解釈が間違ってたんだな」
 くれはの言葉に、柊が溜息混じりで続ける。
「今のこの状況からして……多分このメダルは、“獣王”のところに使い手を転送する道具なんだろうよ」
 あ、と双子が目を見開いて声を上げた。
 『いつでも“獣王”と話すことが出来る』というのは、即ち『いつでも“獣王”と会うことが出来る』という意味だったのだ。
「……ってことは、この近くに“獣王”がいるってこと!?」
「なら、助けてもらえるんじゃ……!」
「……まあ、少なくともこのジャングルのどっかにいるとは思うんだが……」
 興奮した声のバドと、期待を込めた声のコロナに、柊は疲れた声で答える。
「メダルの発動が完全だったら、“獣王”のすぐ傍に出るだろ。
これだけうろついて出くわさないってことは、メダルの発動が不完全だったのか、俺らが見当違いの方向に来ちまったのか、
もしくは“獣王”自身が身を潜めているか、同じことに留まらず移動してるか……」
 どれにせよ“獣王”に会うのは難しいだろうよ、とぼやくように言った柊に、双子はがくりと肩を落として項垂れた。
 柊としては、最後の二つの合わせ技では、という気がしている。というのも、姿こそ見えないものの、この密林に来てから
時折、すぐ側に奇妙な気配を感じるからだ。それはくれはも感じているらしく、度々あらぬ方を振り返っていた。
 その気配が“獣王”であるなら、姿を現さない以上、あちらからはこちらに接触する気はないのだろう。
 根拠の詳細は省いたもの、柊の言葉に淡い期待を砕かれて、双子は見るからにはっきりと落ち込んだ。
「は、はわっ! ひーらぎ、追い討ちかけてどうすんの!?」
「嘘ついたって現状は変わらねぇだろ。だったら状況を整理して、今できることを探るしかねぇだろ?」
 双子の様子にくれはが慌てるが、柊は苦い顔で溜息まじりに返す。
「はわっ……確かに、そうだけど――」
 言いかけて、くれはは言葉を切る。同じくそれに気づいて、柊も辺りを見回した。
「……また、だな」
「でも、今度は声みたいのも聞こえたような……?」
 例の気配か、と眉を寄せて呻いた柊に、くれはが応えかけた時、

「――プ」

 妙に気の抜ける、珍妙な鳴き声が足元からした。
「――はわッ!?」
「――ぅおッ!?」
 向かい合って立つ二人の間、いつの間にか居た小さく丸っこい何かに、幼馴染二人は声を上げて飛び退いた。
 サッカーボールほどの大きさをした淡い桃色のボールに、つぶらな瞳と小鳥のような嘴、小さな手足がくっついている
――そんな印象だった。頭には、帽子のように卵の入った鳥の巣を乗っけている。
「は、はわぁ〜〜〜〜〜! 可愛いぃ〜〜〜〜〜ッ!」
 くれはが歓声を上げて、その生き物の前にしゃがみ込むのに、柊は慌てた。
「お、おい! くれは! 得体の知れないもんに……!」
 この世界には愛らしい容姿で容赦ない攻撃してくるモンスターがいることを、柊は既に身をもって学習している。現に、
目の前の珍妙な生物は、小さな手に槍のようなものを手にしていた。
 しかし、そんな柊の焦燥を余所に、
「はわ〜、怖くな〜い、怖くな〜い」
「プ?」
 言いながら手を伸ばすくれは。その生き物は攻撃はおろか、逃げるそぶりもない。あまつさえ、抱き上げられてもされるが
ままだった。
「はわ〜、可愛いよぅ〜! 」
「く、くれはさん! わ、わたしにも抱っこさせてください!」
 くれはの腕の中で大人しく抱かれている愛らしい生き物に、コロナまで手を伸ばす始末だ。
「……モンスターじゃねぇみたいだが……なんだ、あれ?」
「……あれ、なんかの本で見た気がするんだけど……」
 誰に問うでもなく呟いた柊に、バドが首を捻って応える。
「ねね、ひ〜らぎ〜、この子連れて帰っちゃダメ〜?」
「ダメに決まってるだろーが。いくら大人しかろうがどういう生き物かわからない以上、飼える訳ないだろ。
餌も世話の仕方もわからないのに、無責任に連れて帰る気かよ?」
 渡されたコロナの腕の中でも大人しくしている珍妙生物を見つめてのくれはの言葉に、柊は子供をしかりつける風に言う。
 う、と柊の正論にくれはは呻いて項垂れた。
「……はわぁ〜、そうだよね〜……きっと、仲間もいるもんね……」
 はぁ、と落胆の吐息と共に心底残念そうに呟く。再びコロナから受け取ったその生き物を抱き上げて、泣きそうな声で
呼びかけた。
「バイバイ、ぷーちゃん……元気でねぇ〜……」
「もう名前まで付けてたのかよ!」
 柊のツッコみは華麗にスルーし、くれははその生き物を放す為、近くの茂みに歩み寄り――その瞬間、
「――豆一族ぅ〜〜〜〜〜ッ!」
「――はわぁッ!?」
 そこから飛び出してきた影と思いっきり激突し、綺麗に引っくり返った。拍子に、その手から珍妙生物が放物線を描いて
飛んでゆき、離れた茂みの向こうに落ちる。
「はわ、いたたた……な、何〜?」
「くれは! 大丈夫か!?」
 慌てて駆け寄ってきた柊の手を借りて身を起こしつつ、くれはは自身にぶつかってきた相手を見やる。
「も、申し訳ありまちぇん! 急いでいたもので」
 そう舌っ足らずな高い声で言ったのは、垂れた耳を持つ、小柄な犬の獣人だった。
 さっきの珍妙生物と負けず劣らずつぶらな瞳。体躯に対して大きすぎ、袖や裾の余った青いスーツが、背伸びした子供の
ような愛らしさを醸し出している。
「――かッ……」
「って、やめぃ」
 可愛いぃ〜〜〜! と再び絶叫しそうになったくれはの口を片手で塞ぎ、柊は呆れ顔でツッコんだ。
「あああ、本当に申し訳ありまちぇん!」
 その二人のやり取りが、怒鳴ろうとしたのを止めた風にでも見えたのか、獣人はひたすら平身低頭で謝ってくる。
「いや、もうそれはいいんだけどよ……あんた、ここらの人か?」
「いいえ、違います。わたしは魔法都市にあるクリスティー商会、会長秘書兼執事のサザビーと申します」
 くれはを抑えたまま問う柊に、獣人はそう名乗った。見た目や言動の幼さとは裏腹に、大した肩書きの持ち主である。
 ともあれ、ここに来てやっと出会った言葉の通じる相手である。柊が、これ幸いとサザピーに問いを重ねようとした時、
「……さっき、豆一族って言ってたけど」
 バドが、硬い声でそうサザビーに声をかけた。
 その一言に、サザビーははっと我に返った様子で、
「そうです! わたしは豆一族を追っかけていたんでちた!」
 見ませんでちたか!? と言われて、柊たちは顔を見合わせる。
「豆一族って――」
「あっちに走って逃げてったよ」
 何だ? と柊が訊くのを遮って、バドが珍妙生物のすっ飛んで行った方向の真逆を示して、サザビーに告げた。
「なんと! 情報ありがとうございます! 捕まえた暁にはあなた方にも謝礼を!」
「あ、おい!」
 では〜! というが早いか、サザビーはそちらに駆けて行き、茂みの向こうに消えていく。慌てて呼び止める柊の声も虚しく、
出会った情報源は走り去ってしまった。
「ちょっとバド! 何のつもりよ!」
 せっかく人に会えたのに! と弟をしかりつけたコロナは、そこで弟の異様に険しい顔に気付く。
「はわ、バド……?」
 ようやっと柊に離してもらったくれはも、その様子に気づいて声をかけた。
「思い出したんだ。――さっきの丸い生き物、豆一族だ」
「って、さっきの桃色ボールか?」
 なら、なんでサザビーを逆方向に? そう問う柊にバドは硬い声で答える。
「豆一族は警戒心が薄いんだ。追い掛け回されれば驚いて逃げるけど、普通に近寄る分にはどうもしないくらいに」
「はわ……まあ、確かにすんごく大人しかったけど」
 バドの言葉が正しいことは、先程女性陣のなすがままとなっていたあの生き物の様子から容易に知れた。
 思わず呟きを漏らしたくれはへ顔を向け、バドは言葉を続ける。
「その人懐っこさと見た目の可愛さのせいで、愛玩動物として人気になって、一時期ものすごい勢いで狩られたんだ。
そのせいで今じゃ野生の豆一族は殆ど残ってなくて、狩りは禁止になってる。けど、それで余計に希少価値が上がって、
高額で裏取引されてるって」
 バドの言葉に事情を悟り、一同は表情を険しくした。
(じゃあ、サザビーは、あの桃色を捕まえて売る気だったのか)
 柊は顔をしかめて、走り去る間際にサザビーが残した『謝礼』という言葉を思い出す。あれは『分け前』という意味だったのだ。
「わたしも思い出した……クリスティー商会のオーナーって、お金のためなら何でもやるって有名よ」
 コロナもまた、眉をしかめて言った。
 なるほど、そういうオーナーならば、絶滅危惧種だろうが何だろうが、金になるなら躊躇わないだろう。
「ひどい……あんな可愛い子をお金のために……!」
 怒りでか、くれはが声を震わせる。
 と、それに応えるタイミングで、その足元から気の抜ける声がした。
「プ」
「って、はわ!? ぷーちゃん!?」
 くれはを呼ぶように鳴く豆一族に、くれははおろか、他の一同も目を見開く。
 この生き物は、わざわざすっ飛ばされたところから一同の元に戻ってきたらしい。
 柊は、思わず呻く。
「……まさか、くれはに懐いちまったのか?」
 正体はわかったものの、絶滅危惧種ではやはり連れて帰るわけには行かない。どうしたものか、と考えあぐねいていると、
「プ。プ。プ」
 しきりに何かを訴えるように豆一族は声を上げ、手にした槍で一方を示す。そうして、そちらへと歩き出した。
「……一緒に来い、ってことか?」
「プ」
 柊の呟きに、その通り、という風に豆一族が振り返って鳴く。
 思わず一同は顔を見合わせるものの、結局は右も左もわからない現状で、選択肢などあってないようなものだった。
 結局、一同はその小さな桃色の影を追い、そのちょこちょことした歩みに合わせて、ゆっくりと歩き出した。

  ◇ ◆ ◇

 豆一族について歩き始めてすぐ、あっけないほど簡単に道へ出ることができた。『どうしてこの道に気付かなかったんだ』と
柊とくれはが自責と不審を覚える程に。
 しばらく道なりに歩き、豆一族が歩みを止めたのは、緑が開けた小さな空間だった。
 辺りを囲う木々は背が高く、ちょっとしたドームのようになっている。
「ぷーちゃん、ここって……」
 問いかけたくれはの声を遮って、明るい声が響いた。
「あはははは、おかえり〜。って、お客さん?」
 木の陰から現れた声の主は、歩み寄ってきた豆一族を抱き上げながら、柊たちに目を留めて言った。
 バドやコロナとそう変わらない小柄な背丈の影だった。その姿は、獣人というか、鳥人というか――むしろ、
「……ペンギン?」
「あははははは、そーよ〜。あたし、森ペンギンのしるきー。あなたたちは?」
 柊とくれはが思わず漏した呟きは、そう当たり前のように返された。
 異邦人二人は咄嗟に双子を見やるが、二人は平然としている。その様子にこちらでは珍しくない種族なのだろうと察し、
『“森”ペンギンって何だ』という喉まで出かかったツッコみを飲み込んだ。
 代わりに、相手の言葉に応えて名乗る。
「俺は柊。柊蓮司」
「赤羽くれはです」
 バドとコロナもそれぞれ名乗ると、四人をまじまじと見つめていたしるきーが軽く首を傾けた。
「あなたたち、妖精に会ったでしょ?」
「……妖精?」
 眉を寄せた柊と、首を傾げたくれはの声がまたハモる。しるきーは軽い仕草で頷いて、
「妖精の呪(まじな)いがかかってるもの。この子に会うまで随分歩き回ったんじゃない?」
 この子、とは豆一族のことだろう。
 しるきーの言葉に、幼馴染二人は顔を見合わせる。
「つまり、その呪(まじな)いのせいで、あたしたち、同じとこぐるぐるしてたの?」
「ってことは……あの妙な気配は、妖精だったのか?」
 二人の呟きに、しるきーはまた首を傾けた。
「あら? あなたたち妖精が見えないの?」
「はわっ……ふ、普通は見えるものなの?」
「いや、気配はわかるんだけどよ……お前ら見えたか?」
 珍しい、というような口調に、何となくバツが悪くなって、くれはと柊の口から言い訳じみた言葉が口をついて出る。
 柊の言葉に、気配も感じなかったと双子が首を横に振ると、しるきーが、あははははー、と笑った。
「別に見えなくても悪いことじゃないの。わたしも、術なしじゃ見えないし。
見えないってことは、単にあなたたちが妖精に害意を持ってないってだけのことだから」
 へ? と声を漏らした一同に、しるきーは言葉を続ける。
「妖精はね、基本的に、自分に害意がある相手の前でのみ姿を見せるの。
まあ、生まれつき妖精が見える目を持ってる人とかもいるし、気まぐれで姿を現す妖精もいるけどね」
「……普通、逆じゃねぇ?」
 害意のあるものから隠れるってんならならわかるけど、とツッコむ柊に、しるきーはまた声を上げて笑った。
「そ〜よね〜。でも、妖精も相手を傷つけるような強い魔法は、姿を隠したままじゃ使えないのよ、多分」
 姿を隠すのにも魔力を使うから、とさらりと物騒なことを笑顔で言われ、一同は絶句する。
「それからすれば、あなたたちは無事で済んだ方かもね。
多分、妖精たちは、迷子にさせるのが目的じゃなくて、自身達の住処の方へ来ないように呪いをかけたんだわ」
 危険がない相手でも、人と関わること自体を妖精は嫌うから、としるきーは結論付けた。
 害意のない相手からは自身が隠れ、害意のある相手は全力で排除にかかる。妖精は徹底した排他主義を貫いている
ということだ。
「けど、そのわりには、あんたは妖精について随分と詳しいよな」
 事情を飲み込んで、柊は思わずしるきーに向かってそう言った。関わりを頑なに避ける相手について知るのは、いうほど
容易なことではない。
 しるきーは相変わらず軽い調子で、笑いながら答えた。
「あははー、この森は妖精の森と繋がってるから、妖精と関わる機会も多いの。
それに、最近妖精の様子がおかしいから調べてくれって獣王様に頼まれたし。色々妖精についても調べたの」
「へぇ……って、獣王!?」
 さらりとした調子に思わず流しかけ、はたとそのワードに気付いて柊は叫んだ。他三人の声がそれに重なる。
 しるきーは一同の反応にきょとんとして、それから何かに気付いたように柊を見た。
「あ〜、だからこの子はあなたたちを案内してきたのね。あなた、“獣王のメダル”持ってるでしょ」
「――わかるのか?」
「主にゆかりの品だからね〜。意識すれば、魔力(マナ)の波動くらいは」
 気にしない状態じゃスルーしちゃうかもだけど、と、柊の問いに対してしるきーの答えはどこまでも軽い。
「なら、あなたたちは獣王様に会いに来たのね」
 当然のようにそう言われて、柊たちは思わず、気まずげに顔を見合わせた。
「いや……それがそういう訳でもなくてよ……」
「はわ……来るつもりはなかったんだけど……間違って……」
 歯切れ悪く言う柊とくれはの言葉に、しるきーは一瞬きょとんとして、ついで声を上げて笑った。
「あははははー、メダルが暴発しちゃったのね。でも、もう来ちゃったんなら、せっかくだしお会いしていけば?」
 多分、帰りの足もどうにかしてくれると思うわ、と言われれば、否と答える理由もない。
「そうだな。ここに、会いたくてうずうずしてるヤツもいるし」
 先程からそわそわと落ち着かないバドを見やって言えば、言われた相手は悪戯っぽく首を竦めた。
「じゃ、まず、妖精の呪いを解いちゃうわね〜。そのままだとまた迷子になっちゃうし」
 はい、としるきーは一同に向け、その片手(というか、羽根の退化した片翼)を振るう。
 目に見えて何があったわけでもないが、すっと両肩が軽くなったような、視界がクリアになったような感覚を柊は覚えた。
見れば、他三人も同じような感覚だったらしく、目を瞬いたり、感覚を確かめるように肩を回したりしている。
「わたしは獣王様のお使いが終わってないから一緒に行けないけど、この子が道案内してくれるわ」
 プ、としるきーの言葉に応えて豆一族が声を上げた。
 しるきーは身長の近いコロナに豆一族を手渡すと、軽い調子で手を振って、
「じゃあ、またね〜。――獣王様は、きっとあなたたちのことを待ってるわ」
 無造作に茂みの向こうに消えて言った。――再会を確信した別れの挨拶と、意味深な言葉を残して。

  ◇ ◆ ◇

 コロナに抱かれた豆一族が槍の穂先で示す道順を辿ってしばらく、
「ちっくしょ〜、ああもう疲れた。ハッソン、あとは一人で頑張れよ」
「てめぇ、ヘイソン! 一人でサボる気か!?」
 向かう道の先から侃々諤々とした言い争いが聞こえて、柊は咄嗟に豆一族を隠すようにコロナを背に庇った。声の主が
サザビーのような人種である場合を警戒しての行動だった。
 まず見えたのは、ひょろ長い体形をした森人らしい若者。
その隣に、彼と歳こそ似たものだが、体格は正反対に単身でがっちりした、種族のよくわからない男がいた。
「ドワーフ? 山から出てくるなんて珍しい……」
 厳つい男を目に留めてのバドの呟きが聞こえたのか、二人は一同に気付いて振り返る。
 森人の若者が、露骨に不審な顔つきで、
「……なんだあんたら?」
 その声は、先程最初に聞こえた声と同じもので、それで、こちらがヘイソンと呼ばれた方であると知れた。
「てめぇらこそ、なんだ。密猟者か?」
 柊が殊更決め付ける風に言ったのは、二人の手にした狩猟用の罠のためだ。
 二人のむっとした視線が柊に向けられる。――背に庇った豆一族には気付かれていない。
「密漁じゃねぇよ! ドゥ・カテの尻尾を捕りに来ただけだ」
「別に、ドゥ・カテの狩りは禁止されてねぇだろ?」
 ドワーフの男――ハッソンが怒鳴れば、ヘイソンが補足するように告げる。その言葉に、バドが目を剥いた。
「た、確かに禁止はされてないけど……ドゥ・カテをたった二人で!?」
 無茶だ! というバドに、ヘイソンとハッソンは嫌そうに顔を見合わせる。
「しかたねぇだろ、このバカのせいで法外な借金こさえちまったんだ」
「俺だけのせいか!?」
 ヘイソンの呆れたような声音に、ハッソンが怒鳴る。
 聞いた双子が思わず首を竦めるような怒号だったが、ヘイソンはけろりとした様子で、
「少なくとも俺だけのせいじゃねぇ。――まあ、一番悪いのはあのクリスティーのババアだけどよ」
 そう言うと、ひとつ頭を振って柊たちに向き直った。
「ともあれ、あんたらにゃ関係ねぇ。
あんたたちこそ、子連れでうろつけるほどこの森の奥は安全じゃない。引き返したほうがいいぜ。――行くぞ、ハッソン」
「うるせぇ! 命令すんな!」
 怒鳴り返しつつも、ハッソンは踵を返したヘイソンに続く。そのまま、二人は分かれ道の向こうへ足早に立ち去った。
「はわ……クリスティーって言ってたけど……」
「やっぱり、クリスティー商会のオーナーのことじゃないでしょうか」
 二人が立ち去った後に呟いたくれはに、コロナが応える。
 この森で、既にクリスティー商会のサザビーに会っている。と、なれば、やはり『クリスティー』の名を口にしたヘイソンたちも
そこの関係者と考えるのが妥当だろう。
「何か事情がありそうだったが……つか、ドゥ・カテって何だ、バド」
 柊の問いに、二人が立ち去って行った方を呆然と見やっていたバドは、我に返った風で振り返った。
 そうして、完全に血の気の引いた顔で叫ぶ。
「まずい……! あのままじゃあの二人、下手したら死んじゃうよ! 師匠、助けてあげて!」
「お、おい! 落ち着け、どういうことなんだ!?」
 尋常でない様子に、柊は思わず叫ぶように問い返し――
387名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 20:13:25 ID:K2kPyLuo
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「――アエニュラの子よ、お客人か?」
 バドが答えるより早く、先程二人が去って行った方とは反対の道の先から、よく通る声が響いた。
「プ」
 その声に応えるように豆一族が一声鳴いて、コロナの腕から抜け出してそちらへと駆けていく。
「はわ、ぷーちゃん!」
 慌てて駆け出したくれはを筆頭に、一同はその後を追いかけ、

 その先にあったのは、鮮やかな緑の中でかえって目立つ、くすんだ色の石の玉座。

「ようこそ、我が森へ」

 その上に伏した深紅の獣が、よく通る低い声で、そう告げた。

  ◇ ◆ ◇

「はじめまして、客人たち。私はロシオッティ。一応、この森を治める立場にいる者だ」
 獅子に似た深紅の獣は、その猛々しい容姿とは裏腹に、実に丁寧かつ理性的な自己紹介を告げる。
 笑みの形に細められた瞳には、穏やかな知性が見て取れた。
「あ、ど、ども。柊蓮司っす」
「あ、えと、赤羽くれはです」
 そんな獣の言葉に、異邦人二人はつい畏まってぺこりと頭を上げてしまった。そうさせるだけの威厳が彼にはあった。
(ロシオッティ――“七賢人”の一人、“獣王”か……)
 なるほど、“王”だ――そう、柊は納得する。この威厳は、“王”を名乗るに相応しい。
 一方、幼い双子はかちんこちんに固まっている。彼の姿に怯えているのか、その威厳に竦んでしまっているのか。
「そんなに硬くならなくても構わないよ、森の子たち」
 そんな二人の様子に気づいて、密林の王者が声をかける。子ども達を気遣う、優しく穏やかな声だった。
「はははは、はいっ! お、俺……いや、ぼくはバドと申しますっ!」
「コ、コロナですっ、はじめましてっ」
 その言葉に、双子もやっとこさ名乗る。その声が上擦っているのは、まあ無理もないことだろう。
 史実の中の生ける伝説を目の前にして、緊張するなというほうが酷な話だ。
「よろしく、バド、コロナ。――それに、蓮司とくれは。遠いところから良く来てくれたね」
 双子に笑いかけてから続けられたロシオッティの言葉に、二人の異邦人は息を呑む。
「……俺たちのこと、知ってるのか?」
「ああ、蓮司はガイアに会ったろう? 彼の話を、ポキールから聞いた」
 私もガイアも、お互いの場所から動かないからね――そう、“七賢人(なかま)”の名を告げて、“獣王”は笑う。
「さて、君らがこの森を訪れた用件は何かな? 私でよければ力になるが」
「あ、いや……用、というか……」
 穏やかに尋ねられ、柊は思わず口ごもる。用があって来た訳ではない、と正直に答えるのは失礼に当たるだろうか。
 しかし、その様子で“獣王”には十分答えになったらしい。一瞬、きょとんと柊を見つめた後、やおら声を上げて笑った。
「ああ、なるほど。アニュエラの遺産が、私の意思に共鳴して強引に招待してしまったようだな。どうも申し訳ないことをした」
 帰りの足はこちらで用意しよう、そう請け負う“獣王”の言葉に、しかし柊が首を傾げた。
「……『私の意思に』ってことは……あんたは、俺に何か用があるのか?」
「君に、というより、誰か力ある者に手を貸して欲しいことがあるのだ」
 その言葉に、柊たちは目を剥く。“獣王”と呼ばれる者が、他者の助力を求めるとは一体どんな大事か。
「いや、それほど大それたことではないのだ。
だが、私の部下達は荒事向きではないし、私が直接動くと大事になりすぎてしまう。それで些か困っていてね」
「……部下って、しるきーのことか?」
 柊の問いに、“獣王”は嬉しげに破顔する。
「彼女に会ったのか。ああ、しるきーも、私の目となり耳となってくれる者の一人。そして、今一人が……」
「――お客様ですか? 獣王様」
 と、呼応するタイミングで、玉座近くの茂みから小柄な影が現れた。その姿に、柊たちは目を瞬いた。
「――しるきー?」
「へ?」
 こくん、と首を傾げるのは、先程分かれたしるきーそっくりの森ペンギンだった。しかし、その声は若い男のもの。
「彼は、えもにゅー。しるきーの兄だよ」
 “獣王”が笑って告げる。ついで、えもにゅーに柊達を紹介した。
「ああ、妹がどうもお世話になったようで。はじめまして、えもにゅーです」
「え? いやいやいや、世話になったのは俺らの方で……」
 ぺこりと頭を下げられて、柊は慌てる。世話したどころか、自分たちの方が一方的に助けられたのだから。
「プ。プ、プ」
 と、先程まで玉座の脇で大人しく黙っていた豆一族が、やおら声を上げた。その声に、えもにゅーが破顔する。
「ああ、あの子もお礼を言っていますよ。変な余所者に追いかけられていたところを助けてくれたんですね」
 ありがとうございます、と礼を告げるえもにゅー。と、『余所者』という単語に、バドが思い出したように叫んだ。
「あっ! そうだ、さっきの二人! ───師匠、大変だ! 助けてあげないと死んじゃうよ!」
「……死んでしまう、とは穏やかではないな。何事かな、バド?」
 首を傾げるえもにゅーの横から、“獣王”が問う。
 バドは焦りからか、先程までのしゃちほこばった態度を忘れたように答えた。
「さっき、たった二人でドゥ・カテの尻尾を狩るっていう狩人に会ったんだ! 無茶だよ、死んじゃうよ!」
 その言葉に、えもにゅーが目を剥き、“獣王”も微かに息を呑む。
 事態が飲み込めない異邦人二人が、慌ててタンマをかけた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「大事だっつーのは話の流れでわかったが……ドゥ・カテってなんだ?」
「え、知らないんですか!?」
 えもにゅーが驚いたように声を上げる。その中に、微かにだが呆れるようなニュアンスがあるのに、異邦人達は気まずい
思いをしたが、
「えもにゅー。他者の無知を嘲ることは、無知よりもはるかに恥ずべきことだぞ」
 静かだが、重い“獣王”の言に、逆にえもにゅーの方が気まずげな顔になった。
「すいません……えと、ドゥ・カテっていうのは、密林に住む凶暴な大猿です。
尻尾が薬の材料とかになるんですけど、普通の狩人だと十人がかりでやっと太刀打ちできるようなレベルで……」
「はわ、十人!?」
「そんなのに二人で挑む気なのか、あいつら!?」
 ようやっと事態を飲み込み、柊達は目を剥いた。
 あの二人は荒れた道をよろけずに歩けていた点からして、身体能力はそれなりにありそうだったが、荒事慣れした気配は
なかった。並みの狩人どころか、あの当人達の口ぶりからして、俄か猟師なのは明らかだ。
 戦士としての技倆も、猟師としての知識もない。そんな二人で凶暴な野生動物に挑むなど、無謀にもほどがある。
「どうしましょう、獣王様。ドゥ・カテを懲らしめてくれるならいいですけど、たった二人では逆に殺されてしまいます」
 焦ったようなえもにゅーの言葉に、柊たちは目を瞬いた。
「“懲らしめる”?」
「ああ――先程言った、私の困っていることというのがそれなのだ」
 柊の問いに、えもにゅーではなく、“獣王”が答えた。
「ドゥ・カテは強い。強いものが弱いものを狩り、血肉とするのは森の掟でもある。
しかし、糧にするでもなく、身を守るためでもなく、子に狩りを教えるためでもなく、ただいたずらに命を奪うことは掟に反する。
ある一匹のドゥ・カテが、その掟に背き、ただ己の愉悦のために他者を嬲っているのだ」
 静かな声音で、“獣王”は森の掟を語る。
「森の掟は自然の摂理。生きていくための守護。背く者は、いずれ自然に裁かれる。
いたずらに森の命を奪えば、いつかは森の命の調和が崩れ、己の糧を失い、死に繋がる。
そう諭したのだが、一向に聞く耳を持たない」
 そうして、森の王は、憂える吐息を漏らす。
「掟に背いたドゥ・カテが自滅するのは構わないが、それまでに失われる命は無視できない。
森を治める者として、掟を守る者が、掟を守らぬ者の巻き添えで死ぬのを黙ってみている訳にはいかないからな。
だが、この森には私以外にそのドゥ・カテをどうにかできるものもおらず、かといって私が軽々しく動くと、それこそ森の
調和を乱しかねない。
それで、力ある森の外の者に、そのドゥ・カテを懲らしめてもらえぬものかと思っていたのだ」
 穏やかに落ち着いた声音で、しかし冷厳な言葉を紡ぐ“獣王”。
 一見筋が通っている王の言葉に、しかし、柊は疑問を感じて、恐る恐る問う。
「ちょ、ちょっと待て。余所者から森の生き物を守るのが、あんたの役目なんじゃないのか?
つーか、狩人相手だと最悪、懲らしめる、ってレベルじゃなくて、そのドゥ・カテが殺されちまう可能性もあるんじゃ……」
 というより、そもそも野生の獣にとって、負傷はそのまま死に繋がることが殆どだ。
 弱ったところを外敵に襲われればそれまでだし、動けなくなっても、誰かが代わりに糧を運んできてくれるわけもない。
 身体の一部(しっぽ)を取られるほどの負傷を負えば、遠からず命を失うのは想像に難くない。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 20:17:11 ID:wROghJQ5
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391名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 20:31:28 ID:EKLf3j6n
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 しかし、森の王は気負いのない様子で、柊の問いに答える。
「無論、いたずらに嬲るだけの狩りならば、許しはしない。
しかし、営みのために狩るならば、まだ森の掟の範疇だ。無論、森の調和を崩さぬ範囲で、という条件がつくが。
何より―――」
 密林を統べる者は、一拍置いて、冷厳に言い切った。

「―――森の掟に背いた者は、もはや森の外で生きる者に等しい。その命は、もはや私の関知の外だ」

「――――」
 言い切られた言葉に、柊はもはや返す言葉を失くした。
 目の前にいる者は理知的で穏やかなだけの統治者ではない。切り捨てるべくは切り捨てる、冷酷さをも持ち合わせた
“自然”の権化だった。
「さて、蓮司。君は十分力ある者だ。そして、いたずらに他者の命を奪(と)るような者でもないと見受ける。
できるなら、その狩人達を助け、ドゥ・カテを懲らしめてやってくれないだろうか」
 無論、ささやかだが礼はしよう、そう告げる“獣王”に柊はしばし沈黙する。
 ロシオッティの性格からして、ここで断っても、柊達を家まで送り届けることはしてくれるだろう。
 だが、断る理由がない。さっきの二人が危機的状態だと知ってしまった以上、見過ごすのは寝覚めが悪い。そして、
ドゥ・カテをこのまま放置すれば、この森にとって有害なのもよくわかった。
 そう考えて、柊がくれはに目で問えば、彼女も同じ結論に達したらしい。顔を見合わせて頷き、柊が口を開いた。
「……いいぜ、引き受けた。ただ、出来るだけ尻尾で済ませてやるつもりだけど、それだけじゃすまねぇかもしれないし、
 ドゥ・カテのところに行くまでの道筋で別の奴に襲われたら、場合によっちゃ返り討ちにしちまうぞ?」
「構わない。自身の命を守るために戦うのは、相手の命に対する冒涜には当たらない。森の掟の範疇だ」
 鷹揚に森の王は頷き、そうして、厳かに告げた。

「遠き地からの客人たちよ。この森の命を、君たちの血肉とすることを許そう」

  ◇ ◆ ◇

(ああ、もぉ畜生。 なんでこんなことになったんだ)
 ヘイソンはひたすら頭の中で悪態をつきながら、やる気のない足取りで歩みを運ぶ。
 その傍らに相方(ハッソン)はいない。目標を探す最中で喧嘩になって、別行動になったのだ。
 一人でうらうらと、緑の中を歩き回る。目標はあっても目的地はない。目的地を割り出すだけの狩りの知識がないのだ。
 ただ、一面緑の世界を歩くうちに、亡羊と、故郷のことを思い出していた。
 故郷も、緑に囲まれたところだった。
 山奥のひなびた田舎。自身の生まれたその村が、どうしても好きになれなくて、こんなところで一生を終えてたまるか、
都会で一花上げてやると、同じ想いを抱えていた幼馴染(ハッソン)と一緒に故郷を飛び出した。
 魔法都市と名高い都会で一番デカい美術商。ここなら食いっぱぐれまいと思い、雇ってもらえるようオーナーに直談判した。
あっけないほどあっさりと雇い入れられたその時は、自分たちにはやはりそれだけの器があるのだと思い上がったものだが。
 今思えば、あの蛇女(クリスティー)は最初から、田舎出の世間知らずを食い物にするつもりだったのだ。
 いくつかある蔵のうち一つの管理をいきなり任されて。だが、ろくな知識もない素人に、美術品の管理など出来るはずもなく。
 当然のように手入れや保管法を間違って、幾つも商品を駄目にして。
(けど一番多かったのは、ハッソンが陶器を割っちまうことだったよな。つーか、俺がダメにしたのってほんの一部だし)
 自身の責任を回避するように、相棒の鈍臭さを思い返す。
 その度に、あの蛇女(クリスティー)は、まあ仕方ないわね、と笑っていたけれど、あの笑いは文字通り、蛙(エモノ)を前に
した蛇の笑いだったのだ。
 しばらくの後、いきなりオーナーの右腕である子供オヤジ(サザピー)に呼び出され、壊した商品の弁償額を突きつけられた。
 それはそれは法外で、真っ当な勤め人では一生かかっても返しきれない金額。雑用仕事の安月給の身で返せる訳が
ないと叫べば、ではもっと給与のいい仕事を回しましょう――そう言われて。
(最初から、あいつらは危険な仕事を回すための捨て駒を作るために、俺らを騙してやがったんだ……)
 地獄耳のヘイソンは、他の使用人たちが話していた『真実』を耳聡く聞き留めていた。
 自分達が任された倉庫は、一山幾らのガラクタばかりしか置いていなくて、倉庫の商品の総額で、自分達が負わされた
借金の十分の一にも届かないのだということを。
 だが、それがわかったところでどうしようもない。詐欺だと訴えたところで、何の後ろ盾もない自分達。司法関係にも顧客を
持つあのババアは、ありもしない証拠をでっち上げて、こっちを逆にブタ箱にぶち込むくらい、朝飯前に違いないのだ。
 だから、結局、どうしようもなくて――結果、こんな密林の奥で、ぶうたれながら歩き回る羽目となっている。
「……どうして、俺がこんな目に遭うんだよ」
 脳内を巡る過去を見返して、ヘイソンは声に出して愚痴った。
 だが、その疑問の答えなど、本当はとっくにわかっていた。
 ───甘かったのだ、自分たちは。
 田舎を飛び出したときも、働き口を探していたときも、『何とかなる』とただただ楽観的に、自分の都合のいいようにしか
考えていなくて。
 だから、普通に考えてうますぎる話を目の前にぶら下げられた時、怪しむどころか、『ほら、やっぱりうまくいった』としか
思わなかったのだ。
 結局、自分は馬鹿だったのだろう。思い知った。世の中そんなに甘くない。
 勿論、騙すほうが悪いに決まっている。だが、騙された自分たちも、ある意味自業自得だったのだ。
 だけど、それでも、こんな森の中で、獣の餌になって死ななきゃいけないほど、自分は悪いことをしただろうか?
「――んなわけあるか!」
 憤然と、呻く。
 いっそこのまま逃げてやろうか――そんな思いが脳内を掠めた。
 このまま行方をくらましても、獣の餌になったか、遭難したかとして、追っ手はかからないのではないだろうか。
 お目付け役の子供オヤジ(サザピー)も、ドゥ・カテに出くわすのを嫌ったのか、森の奥までついては来なかった。
 ここで万一うまくやったとしても、借金は終わらない。あんな蛇女に一生こき使われて終わるくらいなら、田舎に帰って
のんびり畑でも耕すほうが、どんなにさえなくとも、まだずっとマシだ。
 商会(みせ)の連中には、上京したばかりの身だとは話したが、自身の郷里について具体的に話したことはない。万一、
追っ手がかかったとしても、故郷がばれる心配はないはずだ。
(――今なら、逃げられる)
 浮かんだその思いは、抗い難いほど魅力的だった。
 だが――
(ハッソンは――?)
 別行動となった幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。
 この広い森の中、お目付け役に見つからぬよう、うまく合流できるだろうか?
 いや、そもそも合流できたとしても、いざ一緒に逃げることとなったら――
(むしろ、足手まといなんじゃねぇか……?)
 幼馴染は頑健な体躯と怪力を誇るが、その分動きは鈍重だ。もし逃げる最中にお目付け役に見つかれば、彼の足では
逃げ切れまい。
 一緒に逃げる算段を説明した上で、そこで見捨てて逃げてしまったら、彼の口から郷里の情報が漏れるかもしれない。
 だが、自分から説明しなければ、あの脳味噌筋肉馬鹿に、自分の考えが読めるとも思えない。自分が嫌って飛び出した
郷里に戻るなど、彼には思いつきもしないだろう。
(だったらいっそ、何にも言わないで一人で逃げたほうがいいんじゃないか……?)
 そう思いつくのと、その考えを採択するのに、ほとんどタイムラグはなかった。
(一人で、逃げよう)
 その考えが良心に障るものであることは自覚していた。それでも、彼はその選択を選んだ。
(自分の命がかかってる状況で、他人(ひと)のことまで気遣ってられるかってんだ!
そうだよ、そもそも店でこさえた借金は、大半があいつのヘマなんだから――)
 既に決断したというのに、つらつらと、脳内に言い訳を並べ立てる。
 わが身可愛さで友人を見捨てながら、自分は悪くないと必死に言い聞かす。
 良心の呵責から――自身の心からさえ、彼は逃げた。

 何もかもから逃げようとしている自分が、どうしようもない臆病者と知りながら――それでも、森の脅威に怯える若者は、
逃げる以外の術を見つけられなかったのだ。

 それは、ある意味自然の摂理に適った行いだったかもしれない。戦う術のない“弱者”が逃げに徹することは。
 だが、そんな“弱者”を、森の無法者は見逃してくれなかったのだ。

 彼が逃げようと踵を返した瞬間――木々の陰からのそりと現れた巨大な影と、目が、合った。

「――へ……?」
 間の抜けた声が、ヘイソンの口から漏れた。
 その巨大な影は、まさしく、つい先程まで自分が探していた獲物であり――今まさに、何もかも捨てて逃げんとした、
恐るべき脅威の具現だった。

 そうして、命を懸けた鬼ごっこが始まった。

  ◇ ◆ ◇

 走る。駆ける。ひたすら逃げる。
 どれくらい逃げたのだろう。永劫のように長くも感じられたが、実際には数分程度かもしれない。
 視界が滲む。ああ、これは風が目に痛いからだ。恐いからじゃない。恐くなんかない。恐いもんか!
 恐いと認めた途端、恐れで足が竦んでしまいそうで、ヘイソンはひたすらに自分を鼓舞する。
 だが、ヘイソンの足は、脳内からの必死の鼓舞も空しく、過労を訴えてストライキを起こしてしまった。
 もつれた足を立て直せず、ヘイソンはその場で突っ伏すように転んだ。
 背後からは、荒々しい大猿(死神)の足音。
 それを振り返るのが恐くて、うつ伏せのままぎゅっと身を竦めた。
(ああ、俺、ここで死ぬのか)
 よぎった思いに、思わず自嘲(わら)う。木々しかない故郷の中で終わりたくなくて飛び出したのに、結局森の中で死ぬのか。
 そう、思った時。
 ごすッ、とえらく鈍い音が背後からしたと思うと、ずんッ、という重い音が、伏せたすぐ横の大地から響いた。

「――こっちだ、この化け猿め!」

 怒りを帯びた獣の咆哮を貫いて、低い怒鳴り声が聞こえた。
「……ハッソン!?」
 よく知るその声に驚いて顔を上げる。
 さっき音がした身体の真横には、先刻までは確かに存在しなかった大岩。振り返れば、額に傷を作った大猿が、横手に
向かって走って行くところだった。
 その先には、他でもない幼馴染の姿。
 それだけで、ヘイソンは事態を理解した。自分が踏み潰されそうな場面に出くわした幼馴染が、持ち前の怪力で大岩を
投げつけて、大猿の気を引いたのだ。
「――バカか! 逃げろ、ハッソン!」
 ヘイソンは思わず怒鳴る。
 あの幼馴染のことだ。投げた大岩が下手すれば自分に当たるかもとか、気を引いた後どうするかとか、全く考えてなかったに
違いないのだ。
 案の定、ハッソンは突進してきた大猿にうろたえ、慌てたように踵を返すが、彼の鈍足では逃げおおせるべくもなく。
 瞬く間に、自身のリーチにハッソンを捕らえた大猿が、その前肢を振りかぶって――真っ直ぐに振り下ろした。

 狙い違わず、幼馴染の上へと。

 頭が――真っ白になった。

 さっきまで自分は彼を見捨てて逃げる算段をしていたこととか。
 彼が囮になってくれたのだから、その隙に逃げるべきだとか。

 普段なら瞬く間に巡る思考――打算さえ、何も浮かばず。

 何もかもが、真っ白になって、一つの感情に塗りつぶされた。

 ───恐怖。

 見知った存在が、圧倒的な暴力によって、一瞬で消し去られた事実。
 このままなら、自分もそうなるという現状。

 その、圧倒的恐怖が、彼の思考も、動きも、凍りつかせて――

 だが、新たな獲物へと振り向くはずの獣は、あらぬ方を睨んで、不機嫌な呻き声を漏らした。
「――……?」
 ヘイソンは、動かない身体をぎしぎしときしませながら、その視線を追い――

 そこに、見慣れぬ衣装を纏った男女と、彼らに庇われた、無傷の幼馴染の姿があった。


  ◇ ◆ ◇
「ぎりぎりだったな、おい」
「はわ〜、ホントにね〜」
 間一髪で救い出したハッソンを庇いつつ、柊が苦笑気味に呟けば、くれはは安堵の声で応えた。
 双子を“獣王”の元に預け、件のドゥ・カテの縄張りだという一画に向かったところ、いきなりさっきの二人が、その大猿に
襲われている場面に出くわしたのだ。
 今まさに叩き潰されそうだったハッソンを、くれはが防護魔法で攻撃を凌いでいる隙に、柊が大猿の射程から連れ出した。
 助け出されたハッソンも、獣の後ろで倒れていたヘイソンも、事態が理解できていないのか、目を白黒させて、柊たちと
大猿を見比べている。
「さぁて、と――出来ればさっさと尻尾だけちょん切って、それで終わりにさせて欲しいんだが……」
 呟きつつ、柊が見やった先には、怒り猛った様子の大猿の姿。
「――あっちは、それで済ませてくれる気はねぇみてぇだな」
 不敵な笑みと共に、背の剣を抜き放つ。間を置かず、駆け出した。
 大猿は、本能的に向かってくる敵の危険性を悟ったのか、近づかせまいと前肢を振るう。
 柊はまだ射程の外。大猿が打ったのは、柊の上へと枝を伸ばす、木の幹だった。
「――おぉっ!?」
 柊の頭ほどもありそうな大きな木の実が、柊の頭上に雨あられと降り注ぐ。
 実の表皮はいかにも硬そうで、当たればただではすまないだろう。
 降り注ぐ数も多く、避けるにしろ、剣で捌くにしろ難しいが――柊は意外な攻撃に驚きこそしたものの、焦りは全くなかった。
 自分は、一人で戦っているわけではないのだから――と。
「彼(か)の者に鋼の守護を――《ディフェンス・アップ》!」
 背後から聞こえたくれはの声と共に現れた光の膜が、柊が捌き損ねた礫を弾いて防いだ。
 そうして、礫の雨でも歩みを止められなかった柊は、瞬く間に大猿の懐に飛び込む。
 森の猛者は、目の前の小さく生意気な獲物に苛立ったようにその前肢を振るうが――赤と青の線を伴った白銀の弧が、一振りの元にその肢を斬り払う。

 ───森の王の加護を失い、身体の一部を欠くような負傷を負えば、もはやこの獣が生き延びることは難しいだろう。

 そうとわかった上で――柊は、返す刀で刃を振るう。

 慈悲深く――冷酷に。

「―――《魔器解放》」

 呟きと共に輝きを纏った刃は――確かに、獲物を断ち切った。

  ◇ ◆ ◇
396名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 21:06:48 ID:wROghJQ5
支援
 獣の苦痛に満ちた叫びを、ヘイソンは呆然と聞いた。
 幼馴染を庇った、見慣れぬ長外套姿の男。
 彼は抜刀するなり、降り注ぐ果実の雨をものともせず、あっという間に獣に駆け寄り、振り下ろされた前肢を斬り払って、

 脇を駆け抜け様、その尾を一撃で断ち斬ったのだ。

 前肢に深い裂傷を負い、尾を断たれた獣は、傷口からとめどなく血を流して、自らの毛皮を紅に染めている。
 一瞬の出来事に脳味噌がついていかず、ヘイソンの頭の中は再び真っ白になっていた。
 ただし、今回脳内を塗りつぶしているのは、恐怖ではなく、驚愕だったが。
 そんなヘイソンを余所に、獣と改めて向き合った男は、剣を構えたまま、静かに言葉を紡いだ。
「どうする、ドゥ・カテ。このまま戦り合って、俺に一撃で斬られるか。万一助かる可能性に賭けて、この場は退くか」
 退くなら、俺は追わねぇぞ――そう、男は告げた。
 獣に、そんな言葉が通じるのか。そんなことだけが、やっとこさヘイソンの頭に浮かんだ。
 しかし、獣はその言葉を聞き分けたように、じり、と間合いを開くように男から下がり―― 一気に跳んだ。
 男とは真逆の方へ。そのまま茂みの中に跳び込むと、負傷した前肢を庇うように、その場から駆け出した。
 その姿は、すぐに濃い緑の向こうに隠れて見えなくなる。
 あとには、無傷の人々が四人と、獣が残した大量の血痕と、切り落とされた尾。
 緑に映えるその赤に、ヘイソンはふと思った。
(――あの傷で、助かるのか……?)
 前肢の傷は深かったし、尾にいたっては完全に切断されている。
 目の前に広がるこの赤が、その出血の激しさを物語っていた。
 血の臭いは肉食獣を招く。あの大猿であれば、下手な肉食獣など蹴散らしてしまうだろうが、それは五体満足での話だ。
あの状態で、他の獣に襲われて、助かるかどうか――
 もし、運よく外敵に襲われずとも、出血が止まらず、そのまま失血死する可能性の方が高い。
(ああ――だから、“万一”なのか……)
 先程の男の言葉を思い出して、ヘイソンは納得した。そうして、剣を収めた男を見やる。
 男の行いは、はたして慈悲深いのか、残酷なのか。
 命を絶たずに逃がしたのは慈悲深くも見えるが、その先に待ち受ける獣の運命を思えば、いっそ残酷だった。
 獣の去った先を見つめるその表情は、獣の行く末を憂いているようにも、冷たく突き放しているようにも見える。
「――おい。あんた、大丈夫か?」
 と、不意にその男が視線を転じ、自分へ声をかけてきたことで、ヘイソンは我に返った。
 うつぶせに顔だけあげていた状態から立ちあがろうとして、足に力が入らずへたり込む。
「立てねぇのか? ほら」
 歩み寄り、案じる表情と共に差し出される手。
 しかし、ヘイソンはその手を取ることなく、思わずへたり込んだ姿勢のまま後退ってしまった。
 恐かったのだ。圧倒的な力を持つ、目の前の相手が。
 理解できなかったのだ。慈悲深いとも冷酷とも見える、この男が。
 しかし、怯えて後退った自分に、男は憮然とした表情を見せた。
「んな、猛獣見るような目ぇすんなよ……いきなり斬りかかったりしねぇって」
 猛獣をあっという間に退けたのは誰だ――反射的にそう思ったが、口をついて出たのは別の言葉だった。
「なんで……あいつに止めを刺さなかったんだ?」
 ヘイソンの言葉に男はきょとんと目を瞬いた。
 差し出していた手でがりがりと頭を掻きながら、困惑した表情を見せる。
「あー……『懲らしめてやってくれ』っていう依頼だったからか?
生死は問わないみたいなこと言われたけど、だからといって、別に命まで奪(と)れとは言われてねぇし……」
「なんで微妙に疑問系なんだよ。つーか、依頼って?」
「いや、この森の関係者に、あんたら助けて、調子乗ってるあのドゥ・カテを懲らしめてくれって頼まれたんだけどよ。
なんつーか……はっきりした理由があったわけじゃなくて、なんとなくだったからなぁ」
 曖昧な返答に、一瞬恐怖も忘れてヘイソンがツッコむと、男はますます困惑したような表情になった。
「なんつーか、結局、あのドゥ・カテのことって、本来は密林(ここ)の問題なんだよな。
余所者の俺が完全にケリをつけちまうのは、何か違うような気がしたんだよ。
最後はこの森自体が、あいつをどうするか決めるべきだと思ったのかもな」
 でもまあ、あいつがあの時、俺らやお前らに襲いかかってきたら、んなん関係なしに斬ってたけどな――あっさりと、そう
告げる男に、ヘイソンは呆然と呟いた。
「……あんな化け物と対面してるときに、んなこと考えてたのかよ……」
 理解不能の存在に対する恐怖は既に振り切れて、呆れに転化してしまった。

 ───これは、ただの馬鹿だ。

 そう思った。力があるからいいようなものの、常人だったらまず長生きできないタイプの馬鹿だ。――それとも、なまじ
力があるから、こういう馬鹿な考えになってしまうのだろうか?
 ヒトなんてせいぜい、自分自身の面倒さえ見きれれば十分なのだ。自分を持て余して他人に迷惑さえかけなければ、
それで上等。それ以上は分に過ぎるというものだ。
 だというのに、この目の前の男は、自身の命がかかった局面で、他人の面倒を気にかけていたのだ。
 自分には理解できないし、寧ろ理解しないほうがいい。
 そういう相手なのだと、ヘイソンは結論付けた。
(──もしかしたら、こう思う俺の方が愚者(バカ)なのかもしれないけどな)
 ちらりと脳裏を掠めたその思いは、なかったことにした。そのほうがきっと、長生きできる。
 何に対してか自分でもわからないまま、ヘイソンは深く吐息をついて、
「肩貸してくれ。――膝ががくがくなんだよ」
 理解不能ではあっても、危険はない男に対して、そう告げた。
「おう! とりあえず、安全に休めるとこまででいいか?」
 破顔して応えてくる男に、苦笑を抑えられないまま、ヘイソンは頷いた。

  ◇ ◆ ◇

「――というわけで、あとの始末はこの密林でつけてくれ」
「ああ、わかった。ありがとう、蓮司、くれは。これでもう、あのドゥ・カテが悪さをすることはないだろう」
 玉座に伏し、柊からの報告を受けた“獣王”は、穏やかにそう言って、その後ろに視線を移す。
「狩人たちよ、その尾は君らに譲るが、これに懲りたら無謀な狩りは止すことだ」
 運んできた尻尾(お宝)をしげしげと眺めていたヘイソンとハッソンは、“獣王”の言葉に慌てて姿勢を正した。
「自然の理の元で過つことは、そのまま死に繋がるのだ。――あのドゥ・カテのように」
 冷厳に告げられる自然の摂理に、二人は顔を強張らせる。
「あ、ああ……」
「ただ、幸いにも君らは自然の理の元でなく、ヒトの世に生きる者だ。
ヒトの世なら、命さえあれば、何度でもまたそこから始める機会が与えられる」
 ふ、と柔らかな笑みをこぼし、自然の権化は告げる。
 穏やかに、優しく――僅かな羨望を滲ませた声音で。

「――ヒトは、許し、許され、手を取り合って生きていけるのだ。弱者も強者も、対等に」

 その言葉に――狩人二人は顔を見合わせ、
「……あのババアに、そんな情があるのかよ?」
「通じねぇなら、あのババアは獣の理屈で動いてるってことだろ? じゃあ、こっちも獣の流儀で返してやるだけさ」
 ハッソンの弱気な言葉に、ヘイソンは不敵な笑みをこぼす。
「文字通り、死ぬほど恐ろしい目にあったんだ。あのババアなんかもう怖くねぇ。弱肉強食、上等だ」
 とんとん、と指先で己のこめかみを軽き叩きながら、臆病で卑怯で――それ故に強(したた)かな青年は、告げる。

「俺の悪知恵に、お前の馬鹿力――これだけ揃って死ぬ気でやりゃ、ヒトの世に慣れたぬるい獣なんて、どうとでもなるさ」

 それは、臆病で卑怯な人間ならではの宣戦布告――己の生き方を、己で見つけた故の、力ある言葉。
 そうして、彼は振り返る。自身には理解不能な――しかし、自身の生き方を明確にするきっかけをくれた眩しい存在へ。

「じゃあな、お人好しの兄ちゃん。――ヒトの世でヒトらしく生きるのは、あんたみたいな人間にこそ似合ってるよ」

 そう言って、彼は笑う。
 意地の悪い――それでいて、不思議と見る者の胸が透くような――そんな、笑みで。

「許して、許されて、助けて、助けられる――そんな不器用な生き方ができる、あんたみたいな人間にこそ、な」

 不思議そうな顔で目を瞬く柊に、彼はただ笑い――そうして、お宝を担いだ相棒と一緒に去っていった。
 彼らが、この後どうするのか、どうなるのかは、柊たちにはわからない。
 けれど、不思議と『大丈夫だろう』と思わせる何かが、去り行く彼らの背にはあった。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 21:12:36 ID:wROghJQ5
支援

  ◇ ◆ ◇

「さて、蓮司、くれは。君たちには礼をしなければならないな」
 狩人二人の背を見送って、しばし。おもむろに“獣王”が口を開いた。
 その声に合わせて玉座の左右の茂みから、えもにゅーが、何やら見慣れぬ生き物を連れて現れる。
 一羽に人が二人は乗れそうな大きさの鳥が、二羽。柊たちが知る生き物で言えば、ダチョウが一番近いだろうか。
 しかし、その首はダチョウより太く短く、その上に丸っこい大きな頭部が乗っている。
 全身を覆う羽毛は黄味がかった明るい金色。ぱっちりとした大きな瞳は人懐っこく、また賢そうな色をしていた。
「チョコボ、という鳥だ。翼が退化してしまって空は飛べないが、地を飛ぶように駆けることができる」
 “獣王”が柊たちにそう告げている間に、当のチョコボたちはとてとてと柊たちに歩み寄り、懐っこい仕草で頭を差し出す。
『撫でて、撫でて』と甘えるように。
「……随分、懐っこいんだな」
「うん、可愛い〜っ」
 当鳥(?)の希望通りに頭を撫でてやりながら言う異邦人二人に、えもにゅーが笑いながら告げる。
「野生のチョコボは気が荒くて、賢い上に力も強いですから、群れになんか出くわしたら一大事ですよ?
ただ、この子達はヒナの頃から人に育てられたんで、人に慣れてるんです」
「へぇ……この森の関係者か?」
 軽く相槌を打つ柊に、あっさりと“獣王”は答える。
「その二羽の育ての親は、ユウだよ」
「―――ッ!?」
 余りにもさらりと告げられたため反応の遅れた柊に、“獣王”は更に続ける。

「彼は、彼の巫女、そしてこの二羽と共に世界中を旅していた。――ある、目的のために」

 気負いなく、淡々と告げられ声音。しかし、その声は重みを持って柊の耳に響く。

「そして、ある日――彼らはこの二羽を私に預けていったのだ。
『自分達はもう、この子達の世話をして上げられないから』――と」

 その言葉に、柊たちは息を飲む。
 それでは――まるで、
「なんだよ……その、これから死にに行くみたいな物言い……」
 思わず漏れた、柊の呟き。しかし、“獣王”はその呟きには答えることなく――続ける。
「この子たちならば、問題なく君たちを家まで送り届けてくれるだろう。道順も覚えているだろうしね。
帰ったその後は――できれば、家族として、この子達を世話してやって欲しい」
 つまり、そのまま貰ってやってくれ、という“獣王”の言葉に、柊は堅い声で返す。
「それは構わねぇよ。こいつらがいてくれたら、遠出することになっても助かるだろうしな。けど――」
「――それ以上は問わないでくれ」
 ユウは、どういうつもりで――そう問いかけた柊の声を、賢人はぴしゃりと遮った。

「――私には、答えられない」

 それは、答えを持たないという意味なのか、答えを口にすることが出来ないという意味なのか。
 どちらにせよ――その声には、これ以上と訊いても無駄だとわかる強固な響きがあって――
「……わかった……」
 柊には、結局そう告げることしか出来なかった。
「――え、えーっと、じゃあ、この子達が“獣王”さんからのお礼ってことだよね!
可愛い家族が増えて嬉しいよ!ありがとう!」
 落ちた重い沈黙を振り払うように、殊更明るい声で告げるくれは。
 その声につられるように、硬い表情を崩した。
「いや、その子らは君らの帰りの足に過ぎない。礼は別にある」
 そう告げながらの“獣王”の目配せに応え、えもにゅーが柊たちに歩み寄り、小さな包みを差し出す。
「どうぞ、開けて見てください」
 声に促され、受け取った柊が包みを開くと、二つの品が現れた。
 一つは、細かい砂を固めて模ったらしい精緻なバラの細工。もう一つは複雑な記号が刻まれた、何かの石版の欠片。
「これは……?」
「私の手元に残っていたアニュエラの遺産――アーティファクトだ」
 えッ、と双子が息を飲む。
「ちょ、ちょっと待て! アニュエラの遺産って……ようは仲間の形見だろ!? 受け取れねぇよ!」
 伝説級の魔導具という理由ではなく、“獣王”個人にとっての価値という点で固辞する柊に、“獣王”は柔らかく笑う。
「いいのだ。アーティファクトは使い手の元になければ意味がない。それは君が持つべきだろう」
「……は?」
 “獣王”の言葉の意味が上手く咀嚼できず、柊は間抜けな声を漏らした。
 そんな柊に、賢人が一人である獣は、面白そうに笑いを漏らしながら、告げる。

「気付いていなかったのかね? ──君は、アーティファクト使いだ。少なくとも、その素質がある」

「――はぁぁぁあああああッ!?」
 柊だけでなく、くれはや双子の声も伴った大絶叫になった。
「……ちょ、ちょっと待て! 何で、そう……!?」
「私の“メダル”で、ここまで飛ばされた時、“メダル”を持っていたのは誰かな?」
 混乱する柊に畳み掛けるように、“獣王”は告げる。
 そう問われれ、思い返せば――“メダル”が発動したのは、柊が手に取った瞬間だった。
「その“メダル”を含め、何か品を手に取った時、知らぬはずのイメージが脳裏によぎったことは?」
 積み木の街、翡翠の卵や壊れた車輪――手に取った瞬間に過ぎった、知らぬはずの光景。
「……心当たりが、あるようだ」
 声もなく、ぱくぱくと金魚のように口を開閉させるしかない柊に、“獣王”は苦笑気味に結論付けた。
 異邦人二人はただただ困惑し、双子は驚愕と尊敬の混じった眼差しで柊を見つめる。
 そんな柊たちの様子を面白そうに見つめながら、
「アーティファクトは、使い手の元に集まるものだ。
もしかしたら、知らぬ間に手に入れているアーティファクトが他にもあるかもしれない」
 改めて、持ち物を確認してみるのもいいかもしれないな、と“獣王”は言った。

  ◇ ◆ ◇

 ちなみに。
「みんな、今までどこいってたんですか。お家の庭で迷子になった?」
 密林から何とか無事帰宅した後、自室に入るなり告げられた無邪気なサボテンの一言に、根こそぎ気力を奪われた
柊が、ベッドに倒れこんだのは――まあ、余談である。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 21:15:54 ID:wROghJQ5
支援
403名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 21:32:46 ID:K2kPyLuo
投下完了?
404みつやん:2010/06/25(金) 21:34:03 ID:Z8B7cklT
ほんじつはここまで!
支援、ありがとうございました!空気読まずにさるさん来たけど(泣)

以下、色々と言い訳です。すみません……

投下前にもちらと書きましたが、本当に長く間を空けてしまってすみませんでした。
理由はいろいろありますが、
1.今年の頭からリアルトラブル続きでライフ尽きてた。
2.別ジャンルに心が浮気してた。具体的には某バーテン服着た取立て屋さんとか(汗)
ですが、とりあえず、どっちも落ち着いてきたので、次の更新はもうちょっと早くできると思います。

そして、重ねて申し訳ない報告になるのですが、自分が書いてる学園世界作品、
【堕ちし囁きの美籠】は続きが書けなくなりました。
というか、できれば、現在倉庫にある分も下げさせていただくつもりです。
こちらも理由は多々ありますが、
1.続きもののクロスを二つも同時に書くスペックが自分にないと気付いた。
2.他の書き手さんによって投下された素晴らしき学園世界作品と構想が被っていた。
というのが大きいです。
2は、学園世界という同じ下地で描いている以上、「被りが起きて当然」と開き直ってしまえばいいのでしょうが、
その作品を呼んだことにより、自身の構想の稚拙さを自覚してしまいました。
そして、今の自分ではそれ以上のものが書けないのです。
あんな拙作でも続きを待っていた方がいて下さったかもしれません。
それを思うと本当に申し訳ないのですが……書けないのです。

その代わり……にはならないかも知れませんが、このLOMクロスは完結まで書き上げます。
それはもう、死ぬ気で。本当に。

長々と言い訳ばかりで失礼しました。
この続きを、一日でも早く投下できるよう、頑張りたいと思います。
では!
405名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 21:49:33 ID:wROghJQ5
お疲れさま。そして、おかえりなさい。

続きについては気長に待ちますので、お体に気をつけて、ご自分のペースでゆっくりと満足のいく作品を書いてください。

次回も楽しみにしています。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 22:05:08 ID:EKLf3j6n
そーいやプレステ様の機嫌治りました?
動作不安定とか言ってましたが。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 22:26:27 ID:dIYrKvQj
Twitterで流れてたんだけど、LOMがPSアーカイブスで配信されるらしいね。
シリーズ自体やったことないんだけど、ちょっと興味が沸いてきた
408名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 22:26:40 ID:72Mp7p11
GJ!
帰還乙!
面白かったです!
409名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/26(土) 00:40:05 ID:YqTLGpuu
GJ!随分大きな話になってきましたねぇ。いっそこのまま"世界の危機"までやっちゃいましょうw

【原作知らないから好き勝手逝ってます】

"美籠"の連載中止は残念です。何か新しい構想が湧いたら、またよろしくですノシ
410名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/27(日) 18:51:51 ID:HYVxGdb0


サwボwテwンwwwwww
411名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/29(火) 17:49:42 ID:SwOkb1zM
「堕ちし囁きの美籠」は連載中止ですか。残念です。
学園世界は面白いのですが、クロスオーバーの見所の一つである別作品とのファーストコンタクトが既に済んでしまっているのがほとんどなんですよね。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/29(火) 20:01:19 ID:prDlWQkE
クロスSSはファーストコンタクトの場面がないと駄目だとか言っているわけではありません。念のため。
413名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/29(火) 20:43:24 ID:NHZHCp9v
いいからsageを覚えてくれ。
できるなら匿名掲示板でID変えながら自己主張するのを覚える前に
414名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/29(火) 21:49:09 ID:xnFt18no
バカデ○ー見て思ったが、
ファージアースのウィザード・エミュレーター間で一、二を争うのは
柊(映像提供:アンゼ)とベル(提供リオン)だったりするのだろうか?
415名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/30(水) 02:20:25 ID:cFZZFkfc
すみません。無知でした。
416名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/30(水) 07:44:55 ID:heCn6SNW
わあうざい
417名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/30(水) 19:49:13 ID:d2I8xBth
ふと、こんなネタを思いついた。

PC1
推奨クラス:人造人間
コネクション:ローズ=ビフロ

君は、この学園都市で暮らす、魔王の一柱である。
数え切れないほどの孤独な時間から抜け出した君は今、この世界で守りたいものとの穏やかな暮らしていた。
束の間の、平和なひととき。だがそれは破られた。第19学区に現れた、魔王によって。
“事件”の前日、奴は現れ、言った。すべてを失う原因となった君に復讐する、と。
そして君がこの世界で暮らすために受け入れた“首輪”を起動し、去っていった。
君からすべてを奪い、この都市(まち)を己がものとするために。
君は戦わねばならない。大切なものを守るために。
たとえ毒に蝕まれ、弱体化した身体であっても。

PC2
推奨クラス:魔剣使い
コネクション:駒場利徳

君は死神武器専門学校、通称“死武専”に通う武器職人である。
今回の“事件”において、全面的に協力することを決めた死神様に従い、
相棒たる武器と共にこの学区に溢れた大量の死者を狩っていた君は出会う。
額に開いた穴と割れた仮面、そして身の丈ほどもある大刀を持つ、死神のような男。
その特徴を告げた君に、極上生徒会から驚愕と共にその正体を告げられる。
目の前にいる存在、それは異世界の法則により化け物と化した魂、虚(ホロウ)
その中でも最強の存在である『破面(アランカル)』だと。

PC3
推奨クラス:異能者
コネクション:フレンダ

君はこの学園都市で暮らす、能力者である。
“事件”の前日、君は出会うはずの無い1人の少女と出会う。
かつて、同じチームに属していた仲間だった彼女は裏切りの代償として“粛清”され、死んだはずだった。
だが、彼女は再び君の前に現れた。かつての姿のまま、隠しきれないほどの死の匂いを漂わせて。
余りに強い“未練”を“性(さが)”に変え、能力の如き“呪い”を身につけた
『呪い憑き』の屍と化した彼女と君は再び会わねばならない。
彼女に再び死(ねむり)を与えるために。

PC4
推奨クラス:聖職者、陰陽師、魔物使い
コネクション:死者の根源

君は極上生徒会心霊部の依頼を受けて今回の作戦に参加した、霊能者である。
第19学区に溢れた、死者の群れ。それの原因となったものの調査と排除が君の任務である。
そして同じく心霊部から依頼を受けた学生や教師たちと共に、君は調査と除霊に乗り出した。

PC5
推奨クラス:魔剣使い、龍使い、異能者
コネクション:事件の黒幕

君は極上生徒会執行部に所属する、執行委員の1人である。
今回の事件では、執行部は待機をすることになっていた。
だが、学園世界の危機を黙ってみているわけにはいかない。
君は事件解決のため飛び出した。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/03(土) 11:16:36 ID:nVi7rjG0
>>236
・・・・あー、すまん。勝手に夜ねこ氏だと思ってたが、違うみたいだ・・・・。
俺が思ってたのは、学園世界の最初のほう。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/03(土) 11:18:24 ID:nVi7rjG0
すまん、避難所の誤爆だorz
420名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/03(土) 15:35:43 ID:hYwxSHJm
ローズ=ビフロ、生きてたのか。パール=クールに抹殺されたと思ってた。それとも最後のチャンスでももらったのかね。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/03(土) 23:59:22 ID:cQC8zZwI
とある世界の騒動日程のエピローグがまとめwikiに登録されてないが………。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/04(日) 23:47:06 ID:yU2iDB1D
確かに、ない。
だけどこの場合、どうすればいいんだ?誰か知ってる?
避難スレに管理人が永久規制くらったとかいう書き込みがあるんだが。
423保管庫:2010/07/05(月) 15:22:56 ID:u/tXj3CK
                   ト、_ト、_ト、_ト、_/|_/|_/|_/|イ、
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            弋´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: フ   【保管のお知らせ】
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             >::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::>
          <::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: <
           >:::::::::::::::::-:::::::イ::/|::::::::::/|ヽ ∧:::!:::i:::::::::::::::::::>   レギュレーション無し
          <:::::r-、::::::::::::/`_イ、|:::::::/斗十〈:::|、:l:::::::i:::::::>
           <:{  ム::::、,代で){ |ヽ/´ <(う'ヾ小|、::::|::ヽ     ●アンラ=マンユの魔王 #0 #1
        _     ム  ヘ∧/  ̄/ { |     ̄   |j ):j}:::‐     ●LOM〜あるいはある異邦人の物語〜 #5`
.       { \    ´、  ∨、  ,  .{ l|       j 'イ-ヾ     ●>271 Angel Beats!
       \. \    ヽ  ヾ /   { `        /|/|j
         \ \   j   ∨  j -―--    / \_
          \   ̄´      }   ̄   <__  ヽ \――.、
          /ノ        , ハ> ‐<__.   \ }   /  / \     学園世界レギュレーション
.     ( ̄ ̄ ´  ノ     -―‐'      ̄ ̄´  } 彡' ∨ ノ /  / \
        ̄ i ̄ ̄人 ´ ̄ '´ ノ      ィ― ´―――´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄` 、   ●学園世界の戦い(魔神皇編)#6-5〜#6-7
.         j _/ ∧          / ,                     ヽ ●とある世界の騒動日程(トラブルデイズ) #11 #12
       / /     >―、――― ´                         } ●休日の過ごし方 #8
.       { |         >―‐ ´`ヽ______             _ノ ●>119 キャンパスを覆う影
       ヽ ヽ      /  ヽ   ヽ/ /   /      ̄、 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ }   ●>169 学園都市第六学区
        ∨ >―― イ     、   / / ,イ/      ∧  ̄ミ、_     ノ   ●>172 ヴァナルガンド
        ヽ____ イ|     ヽ 〈 / / /        /ヽ_       /    ●>417 ハンドアウト


今年2回目の保管作業です。遅くなってすいません。

ちなみに>422の永久規制というのは、避難所の管理人さんですね。
そういう自分も絶賛規制中(1ヶ月コース?)ではあるんですが。

424名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/05(月) 23:07:58 ID:+BijZNPc
おつおつ
425名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/06(火) 02:24:41 ID:3hhSN9ln
お疲れ様でーす。
上条さん、相変わらずつんつんしてるなぁ。髪が
426名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/06(火) 14:02:29 ID:DgzW0oQd
とある世界の騒動日程って色々と気になる設定があるんだよなー。
続編の構想あるのかね。続編が出たら歓迎するのがここに少なくとも一人いるよ。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/06(火) 15:47:11 ID:3hhSN9ln
シェアワールドなんだから続きくらい自分で書けばいいのに
428名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/06(火) 21:56:53 ID:Pgmt5Z4u
自分で書ける気はしないんだよな……
自分も続きがあったらいいなと思ってる。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 00:50:03 ID:SfCWix8q
ちゃんとした長編じゃなくても、このスレは受け入れてくれるはずだよ。

1レスに納まる程度のSS、キャラの会話文だけのSS、TRPGのシナリオ風(今回予告)などの形態は、
TRPGユーザなら誰でも書けるんじゃないかな。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 02:02:36 ID:dYXOYiTm
アニメから入ってきたひとかもしれんじゃないか

という冗談はさておき、そういう言い方もどうかと最近思う
なんていうか「TRPGやったことない人とは違うんだから」みたいな空気が漂ってて
もし相手がやったことない人だったら疎外感与えそうな気がする
431名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 02:13:37 ID:SfCWix8q
それもそーか、すまん
432みつやん:2010/07/07(水) 16:44:07 ID:UnhIAK8x
投下予告に参りました!
LOMクロス【5.イトナミ(後)】を本日20時に投下いたします〜。

以下前回のレス返しです。

>>405
暖かい言葉ありがとうございます。
お言葉に甘えてマイペースでやらせていただきます〜

>>406
プレステ様はご臨終なさいましたorz
今はプレイ動画様とアルティマニアに頼って書いてる状態です(汗)

>>407
自分の駄文でLOMに興味を持っていただけたのが嬉しいです。
アーカイブス配信マジですか!?
とりあえず、プレステ様がご臨終してしまったので、私は配信されたら即買いですw

>>408
GJのお言葉、ありがとうございますw
その一言だけで励みになります!

>>409
世界の危機? ハハハ、聖域に侵魔がいる時点で(ry

美籠の方は申し訳ありません。その分LOMの方は頑張らせていただきます!

>>410
サボテン君オチは毎回考えて楽しいので、ウケてもらえたなら嬉しいですw

>>423
毎度乙です〜。
管理人様、【美籠】の件でもお手数おかけしました(汗)
433みつやん:2010/07/07(水) 19:49:27 ID:UnhIAK8x
どうも、こんばんは。今日も無駄に長いです(どんな挨拶だ)
っていうか、段々一回投下ごとの長さが長くなってるような気が……
前投下分が保管庫で2話分に分けられてるのをみて、どんだけ無駄に長いんだと自分にツッコミ(汗)
レス食いまくってすみません……

では、予告時間より少々早いですが、さるさん避けに投下開始させていただこうかと思います(汗)
《オモイの形 〜His love/Her wish〜》

「……マジか、バド」
「はい……多分」
 場は、家のリビング。柊が引きつった顔で問えば、バドも固い顔で頷いた。
 くれはとコロナも、緊張した面持ちで同席している。
 一同の視線は、テーブルに並んだ品々に。
 積み木の町、翡翠の卵、石の目玉、ホタルブクロのランプ、壊れた車輪、消えぬ炎を宿すランタン。
 そして、先日の事件の発端となった“獣王のメダル”に、その“獣王”から譲り受けた砂バラと石版。
「これ全部……アーティファクトみたいです」
 興奮が振り切れて返って青褪めてしまった弟子の言葉に、柊は思わずテーブルに突っ伏した。


 先日、アーティファクトの暴発――というより、“本人”の意を汲んだ召還によって果たされた“獣王”との
邂逅。
 その際の「アーティファクトは使い手の下に集まる。持ち物を確認してみるといい」という“獣王”の言葉に
従い、柊は持ち物を検めることにした。
 しかし、肝心の『アーティファクト使い』である柊は、魔導関連はさっぱりである。いわんや、異界の技術。
 では、片っ端からそれっぽい品を触って、魔剣を使うように意識を同調させてみようか――とも思ったのだが、
先日の“メダル”の件からして、それは少々リスキーであると結論付けた。
 また、勝手に知らぬ土地に飛ばされたり――それ以上の何かが起こったらたまらない。
 そこで、バドが一計を案じた。
 先日使った増幅の魔法陣で、確かめられるのではないか、と。
 あれはあくまでアーティファクトの増幅陣。アーティファクトでなければ反応しないし、もし本物だった場合、
魔法陣は反応するが、魔法陣の行使者がアーティファクト使いでないバドである以上、アーティファクト自体の
機能は発動しないのではないか。
 上の推論は、先日の“メダル”事件の際を振り返ってみれば、確かに筋が通っているように見えた。
 じゃあ試しに、と柊がこちらの世界に来てから入手した品(流石に消耗品の類は除外した)を、バドが片端
から魔法陣に掲げ――
 その結果、上の9品が魔法陣に反応した、というわけである。
「はわ〜……まさか、こんなにあるとは」
「これだけあると、なんかもう、ありがたみとかないですね……」
 呆れた声を漏らすくれはに、引きつった笑みを浮かべるコロナ。
「積み木と翡翠と車輪はそうじゃねぇかなぁ、とは思ってたけどよ……」
 柊はテーブルに突っ伏したまま呻く。
 柊が挙げた3品は、手に取った瞬間に“イメージ”が駆け抜けた、心当たりのある品だった。
 しかし、それ以外にも、これだけの数のアーティファクトが自身の手元に集まっているとは思わなかったのだ。
 予想外の事態にげっそりしている柊の横で、くれはがまじまじとそれらの品を眺めながら呟く。
「ホントに“集まる”ものなんだね〜。でも、皆何に使うものなんだろ?」
 知らぬ間に手元に集まっていた分は当然として、“獣王”から譲り受けた2品も、“獣王”も効果は知らないと
いう話だった。
「一応、文献をざっと漁ってみたけど……“メダル”以外は見当たらなくて」
 わかんないっす、と項垂れるバドに、くれはは慌てて手と頭を一緒に横に振る。
「バドが気にすることじゃないよ! っていうか、全部バド一人にやらせちゃって申し訳ないくらいなんだから」
 あたしも手伝えればいいんだけど、と今度はくれはが項垂れた。
 くれはは、柊と違って魔導関連に対する知識や理解力は高い。しかし、彼女は別の問題を抱えていた。
 魔剣と同化しているユウによって自動翻訳されている柊とは違い、くれはにはこの世界の文字が読めないのだ。
 双子に習えればいいのだが、いかんせん、姉は家事、弟は上記の調べもので忙しい。
 では柊ならどうかというと、彼自身、こちらの世界の語学を理解しているわけではなく、元の言葉に重なって
翻訳された『意味』が見えるだけ。
 そのため、単語は教えられるが、文法が理解できていないので、文章になると上手く説明できないのだ。
 そんなわけで、くれはのこちらの世界の文字への理解力は、日常単語の読み書きがやっとで、街中の看板が
何とかわかるかなー、というレベルなのである。
 そんな状態で、ただでさえ専門用語が多くて難解な魔導関連の文献など、読めるわけもない。
 結果として、アーティファクトに関する調査は、バドが一手に引き受けている状態なのだ。
 しょぼくれ、頭を垂れたくれはとバドにコロナが慌てたように声を上げ――それに合わせるように、むくり、
と柊が突っ伏していた頭を上げた。
「つーか、まあ、この際、効果はどうでもいいんだよな。
 俺の持ち物にアーティファクトがあるなら、それがどれなのか特定したかっただけだから」
「……へ?」
 意外な柊の言葉に、くれはと双子の声がハモる。
「いや、この前の“メダル”みたいに、知らないうちに俺が触って発動しちまったら面倒だろ。
 だから、アーティファクトはまとめて、くれはに預けとこうと思ってよ」
「へ? うん、いいけど――って……」
 頼むな、と軽く言われて、思わず頷いてから――くれはは我に返り、ジト目で言った。
「……あんた、さては、アーティファクト自体には全く興味でしょう?」
「あー……正直、わりとどーでもいいな」
 幼馴染二人のやり取りに双子が「はあッ!?」と驚愕の声をあげた。
「――ききき興味ないって……!」
「伝説級の魔導具ですよ!?」
 ガクガクと顎を震わすバドに、目をむくコロナ。しかし、柊は気のない様子で、
「いや、正直、伝説級の代物とか、何か食傷気味になるぐらいお目にかかってきてるしなぁ……
 使い手だって言われて驚きはしたけどよ、別に喜ぶようなことでもねぇっていうか……」
 俺にはもう相棒がいるからなぁ、とそんなことを言う。
 というか、実際、その彼の愛剣自体、『神殺し』の能力(ちから)を与えられた、伝説級の代物である。
 あまりにも淡白な柊の様子に、もはや双子は声もない。
 同じく『伝説級の代物』に耐性のあるくれはだけが、思案しつつ口を開く。
「でも、ユウを助けられるようなアーティファクトも、探せばあるんじゃない?」
「それは俺も考えたけどな。多分、それはねぇと思う」
 ぎし、と椅子の背もたれにもたれながら、柊は告げる。
「密林から帰る道すがら、バドが改めてアーティファクトについて説明してくれたろ?
 あの説明聞く限りじゃ、期待できそうもないんだよな」
 曰く、アーティファクトは人の思念を込めた魔導具である。
 曰く、作り手の込めた思念を使い手が想起することで、辺りの魔力(マナ)と同調し、思念を具現化させる。
 曰く、一つのアーティファクトに込められる思念は一つである。よって一つにつき能力も一つである。
 曰く、その性質上、アーティファクトの能力は、作り手が想像できる範囲の事象に限られる。
「ユウの身に起こった事態は、前代未聞の出来事だって確証が取れてるからな。
 ユウを元に戻せるようなアーティファクトは作られてないだろ」
「はわぁ……そっかぁ……」
 柊の溜息混じりの返答に、くれはもがっくりと肩を落とす。
「まあ、そんな訳だから、頼むな」
「……ん、了解」
 再度柊に促され、くれははテーブルの品に手を伸ばす。
「――へ!?」
 彼女が手に取った瞬間、手品のようにアーティファクトが姿を消していくのに、バドがぎょっと目を剥いた。
 その横で、コロナが、同じように目を見開きながらも確かめるように問う。
「……月衣、ですか?」
「そ。そういえば、実際出し入れする場面を見せたことはなかったね〜」
 アーティファクトをしまいながら、笑って答えるくれは。その手元を、バドは食い入るように見つめている。
「すっげぇ……ホントに師匠たちってすげぇよ……」
「いや、これは俺らの故郷の魔法使いにとっては、基本中の基本っつーか、出来て当たり前のことなんだけどよ」
 そんな感動されても、と柊が苦笑し、くれはもちょっと困ったように笑う。
「まあ、とりあえずアーティファクトに関しては、今言った方針で扱うっつーことで」
 柊がそう締めくくり、その場は解散となる。

 そして、その夜――正確には、翌日の朝。

 それは、起きた。

  ◇ ◆ ◇
 七歳にして一家の衣食住を取り仕切る主婦、コロナの朝は早い。
 窓の外ではまだ日が昇りきらず、朝靄が漂っている。
 隣で寝ている弟を起こさぬよう、静かにベッドを抜け出し、手早く着替えを済ませる。
 音を立てずに梯子を降りて、やはりまだ寝ている保護者代わりの青年を起こさないように気をつかいながら、
二階の部屋を抜け、一階へと続く階段を下る。
 いつもなら、そのまま台所に直行して朝食の準備に入るのだが、今日からは事情が違う。
 昨夜、夕食の席で柊がコロナの料理を褒めた際に放った『くれはも見習えよ』という一言に、くれはが反応。
言い合いが勃発。結果、珍しく言い負かされたくれはが、『文句言えないような美味しいご飯作って、ひーらぎに
目にモノ見せてやるー!』と気炎を上げ、コロナに料理の手ほどきを頼んできたのである。
 『さっそく明日の朝御飯からよろしく!』と言われていたため、とりあえずコロナはくれはを起こしに彼女の
部屋へ向かう。
 ノックをするが、反応なし。ノブに手をかけると、鍵はかかってなかったのか、あっさりと回った。
「くれはさ〜ん、失礼しますよ〜」
 一応声をかけながらドアを開けると、案の定、部屋の主はまだベッドの中だった。
「くれはさ〜ん! 一緒にご飯作るんでしょう? 起きてくださ〜い!」
 耳元で声を上げるが、くれはの静かな寝顔は揺るぎもしない。
「……くれはさん、意外に寝起き悪い?」
 苦笑気味に呟いて、コロナはふと、やはり寝起きの悪かった母のことを思い出した。
 魔法学校に入学して寮に入る前は、いつも寝起きのいいコロナが母を起こして、一緒に朝食の準備をしていた。
 母は怒鳴っても揺さぶっても起きないため、まだ小さかったコロナは、勢いをつけて彼女の胸にダイブして
起こすというダイナミックな手法を用いていた。またそれは、弟に気兼ねせずにできる、母への甘えでもあった。
 勿論、目の前で寝ているのは亡くなってしまった母ではない。しかし、コロナにとっては姉のように思える、大事な“家族”であることは間違いない。
 何だかんだ言って、自分や弟に甘い彼女のこと、ちょっと甘えても許してくれるはず。
「くれはさ〜ん、起きなさ〜い!」
 ていっ、と気合一発。コロナはくれはの胸に勢いをつけて倒れこむ。
 突然の衝撃に、くれはは慌てて飛び起きる――と、コロナは想像していたのだが。
「……くれはさん?」
 間近で覗き込んだくれはの顔に、思わずコロナは強張った声を漏らした。
 起きるどころか、くれはは微動だにしない。苦しげな声を漏らすでもなく、ただ静かな顔のままで。
「――くれはさん!?」
 流石に異常を感じて、コロナは悲鳴じみた声を上げながら、くれはの肩を揺さぶる。
 しかし、彼女は静かな表情のままに、されるがままで――その様はまるで、命亡き人形の如く。
「――っ……」
 コロナは大きく息を飲み、くれはから飛び離れた。
 何が起きているのか、どういう事態なのか、思考がついてきていない。ただ、感情が空回りする。
 完全な恐慌状態に陥りながら、それでも、どうにかしなくては、何かをしなくては、という思いが、コロナの
身体を突き動かした。
 勢いよく踵を返し、転がるような勢いでコロナは部屋を飛び出し、階段を駆け上がった。

  ◇ ◆ ◇

「柊さんッ!」
「――ぐへっ!」
 悲鳴じみた声と共に、胸に乗った重さで柊は目を覚ました。
「げほっ……な、何だよ一体!?――って、コロナ?」
 完全な不意打ちに咽かけつつ、身を起こした柊は、自身の胸に縋りつくようにして突っ伏す少女の姿を認め、
眉を寄せる。
 柊の声に顔を上げたコロナの目には、今にも溢れそうな涙が湛えられていた。
「お、おい! どうした!?」
 一目でただ事でないとわかる表情に、柊の中にあった起こされ方への不満も、僅かに残っていた眠気も、一瞬
で吹っ飛んだ。
「く、くれはさんが……くれはさんがっ!」
「――くれは?」
 それだけ言って声を詰まらせるコロナに、柊は表情を険しくする。
 この状態のコロナから、これ以上何かを聞き出すのは無理だ。しかし、とりあえず、くれはに何かあったのだ
ということはわかる。
 柊は、縋りつくコロナを抱きかかえるような状態で飛び起きると、そのまま階下へと駆け下る。
 目に付いたのは、開け放たれたままの、くれはの部屋のドア。
「――くれは!?」
 叫びながら部屋に駆け込んだ柊の視界に映ったのは、ベッドに横たわって、ただ静かな表情で眠るくれはの姿。
 何でもない、何の異常も見当たらないその光景だというのに。
 柊はその光景に、ぞわり、と背が粟立つような悪寒を覚えた。

 閃くように、一つの記憶が、目の前の彼女の姿に重なる。

 ──老いた桜の巨木の根元に伏した巫女。ただ眠っているかのように見える静かな顔。
 傍らに立つ少年の姿をした神が、静かに彼女の死を告げる――

 浮かんだ不吉な連想に、柊は一瞬棒立ちになり――

「……バタバタうるさいなぁ……どーしたんだよ……」
 後ろから聞こえた、眠そうに間延びしたバドの声で我に返った。
(――何だってんだ、縁起でもねぇッ!)
 強く頭を振って、脳裏に浮かんだ記憶を振り払うと、顔に苦笑を貼り付けて戸口のバドを振り返る。
「――いや、コロナがな、くれはがどうかしたって言ってんだけど……どう見ても、寝てるだけだよな、これ」
 強張る声を誤魔化すように軽い調子で言えば、コロナが弾かれたような調子で叫んだ。
「起きないんですッ! 何しても……怒鳴っても、揺さぶっても、身体に飛び乗ってもッ!」

 刹那、ぴしり、と――柊は凍りつくような音を聞いたような錯覚に陥った。

 もしかしたら、それは柊自身の表情が凍りついた音だったかもしれない。
 荒い足取りでくれはの寝台に歩み寄り、乱暴に彼女の肩を掴む。
「――おいッ! 起きろ、くれはッ!」
 怒鳴りながら、肩の関節が外れそうな勢いで、思い切り揺さぶった。けれど、彼女の寝顔は揺るぎもせず――
 脳裏に再びちらついた、不吉な光景が、柊の焦燥を爆発させた。
「――ッ!」
 気付けば、不吉な記憶を打ち払うように、柊は右手を振るっていた。
 バチンッ! と小気味よくも耳に痛く響く音が部屋に反響し――それを聞いて、柊は初めてくれはの頬を打った
自身の行為を自覚する。
 ぎょっとしたような双子の気配が、背中越しに伝わってきた。
 非常事態とはいえ、遠慮容赦なく女性の顔を平手で打ったことに、柊は自身の狼狽度合いを自覚し、羞恥とも
焦燥ともつかない感情を覚え――

 その時、寝台に横たわる彼女の瞼が震えた。

「――くれはッ!?」
 彼女が反応を返したことへの安堵と、平手への報復を予感した恐怖。それらが複雑に混じりあった声で、柊は
彼女の名を呼び――
 彼女の顔を覗きこんだ先で、交わった眼差しに、息を飲んだ。

 どこまでも深く、柔らかな――青の双眸に。

「――く、れは……?」
 呆然と、目の前の幼馴染の名を呼びながら――柊は、その呼びかけには意味がないと、直感的に悟っていた。

 今、目の前にいる、幼馴染の姿をした者は――しかし、自分の知る幼馴染とは別人だと。

 声もなく、青い瞳を見返す柊の手に、暖かいものが触れた。
 葉を思わせる流線型の紋様を甲に持つ“彼女”の手が――柊の手を握る。

「――伝えて、異界の騎士――」
 よく知る幼馴染の声音で、知らぬ誰かが言の葉を綴る。

「貴方の巫女に――思い出して、と――」
 切々とした響きが、静まり返った空気を振るわせる。

「――私は、ここに――」

 その言葉を最後に――ふ、と力をなくしたように、その瞼が落ちた。

  ◇ ◆ ◇

「――んー……?」
 ふと、誰かに呼ばれたような気がして、くれはは目を覚ました。
 寝ぼけ眼を擦りながら、布団の上に身を起こし、枕もとの明かりを点す。
 花を模した、愛らしく、それでいてどこか神秘的な気品を感じさせるランプ。
 点った明かりで畳の上に生まれた影は、見慣れた家具のものだけで、自身以外の何者も見当たらない。
 廊下に続く襖もきちんと閉じていて、特に可怪しいところはない――はずなのに。
「……なーんか、変な気が……」
 何故だろう。見慣れた自分の部屋にいるのに、いるはずのないところにいるような、強烈な違和感がある。
 何だろう――何か、何か大切なことを忘れているような――
 度忘れで言葉が出てこないときのようなもどかしさを覚え、くれはが眉を寄せた時――異変が、起きた。

 ゆっくりと、ゆっくりと――
 障子越しに差し込む、やわらかな月光が、夜の闇の中に人影を模して―― 一人の女性の姿となった。

 淡く青白い輝きを放つ石で胸元を飾ったその女性は、くれはより幾つか年長に見えた。
 澄んだ銀の髪に、月夜のような深い藍色の瞳。気品ある凛とした美貌を、憂いの色で翳らせていた。

 彼女を見た瞬間、くれはは目を見開く。
 唐突な出現に驚いたのではない。すわ心霊現象かと思わせるこの事態に対して、くれはは自分でも訝しく思う
ほど平静だったのだ。
 ならば、何がくれはの目を見開かせたのか。
 それは――既視感だった。
 彼女の顔は、確実に初めて見るものだ。考えるまでもなく、初対面だと言い切れる。こんな美貌を目にして、
そうそう忘れられるものではない。
 けれど――この表情を、あの瞳に浮かぶ感情を、いつか、どこかで見たことがある。
(あれは――いつ、どこで――誰が)
 先程感じた以上のもどかしさと焦燥に、くれはが額をおさえた、その時。
 声が――聞こえた。

『――私は、ここに』

 それが、目の前の女性のものなのか、記憶の中の誰かのものなのか判然としないまま。

 揺さぶられるような感覚と共に――視界が暗転した。

  ◇ ◆ ◇

「――……いっ! くれはっ!」
「……んー……?」
 がくがくと肩を揺さぶられる感覚と、至近距離から響く、馴染みある声。
 重い瞼をゆっくりと開けば――目の前に、ドアップで幼馴染の顔があった。
「――っ! くれは、気ぃついた――」
「……はわぁぁぁぁぁあああああッ!?」
 何やら言いかけた相手の言葉を最後まで聞く余裕もなく、くれはは反射で思いっきり柊を突き飛ばしていた。
「え、何!? なんなの!?」
「……それはこっちのセリフだ、この寝ぼけ巫女……ッ!」
 混乱したまままくし立てれば、床に引っくり返った幼馴染の悪態が応える。
 詳しい事情を聞こうと口を開きかけた時、起こした身体に二つの影が飛び込んできた。
「くれはさんっ!」
「師匠、よかったぁーっ!」
「はわ!? コロナ、バド、どうしたの!?」
 半泣きになって飛びついてきた双子に、くれはの混乱はますます深くなる。
「どうしたの、じゃないよ!」
「くれはさん、何やっても起きなくて……やっと目を開けたと思ったら、なんか目の色が変わってて!」
「なんかよくわかんないこと言ったと思ったら、またいきなり気絶するみたいに目を閉じちゃうし!」
「それでまた柊さんが揺さぶって、今やっと普通に目を覚ましたんです!」
「は、はわぁッ!?」
 交互にまくし立てる双子の言葉を聞いて、くれはは目を点にした。
 全く自覚はないが、さっきまで自分はかなり異常な状態だったらしい、ということはとりあえず理解して――
そこで、ふと片頬にひりひりと痺れるような感覚を覚える。
「っていうか……なんか頬っぺたが痛いんだけど」
「あ、柊さんがさっき引っ叩いた――」
「あ、バカっ!」
 コロナが反射のように答え、バドが慌てて制止するが――既に重要な単語は、くれはの耳に届いた後だった。
「引っ叩いたぁッ!? ひーらぎ、あんた、女の子の顔に何すんのよ!」
「だぁッ! 首! 首絞めんな!?」
 くれはは寝台から飛ぶように降りて、床に座り込んでいた柊を締め上げる。
「確かに悪かったよ! けど、怒鳴っても揺さぶっても起きなかったんだから、しょうがねぇだろッ!?
 つーか、お前だって今、俺のこと思いっきり突き飛ばしたろーが!?」
「うッ……むー……しょーがない、非常事態ということで許す」
 くれははしぶしぶ手を離し、幼馴染を解放する。
「ったく……まあ、そんだけ暴れる元気があるなら、心配ねぇ――」
 解放された幼馴染は、苦笑気味に言いかけ――その表情を凍りつかせる。
「え、なに――ッ!?」
 ただことではない表情に、声を上げかけたくれはの手を、柊が乱暴に掴み、自身の方へと引き寄せた。
「な、なななななにッ!?」
 一瞬、真っ赤になって慌てふためいたくれはだが、無意識に彼の視線を追い―― 一瞬で頬を冷ました。

「――目は戻ったのに、こっちは消えなかったのか……」

 険しい色の、柊の呟き。

 その視線の先には、くれはの手の甲に刻まれた、翠の流線型の紋様があった。

  ◇ ◆ ◇

「……で、夢の中に、このアーティファクトが出てきたんだな?」
 険しい表情で問う柊の視線の先には、テーブルの上に置かれた小さなランプ。
 真珠姫から譲り受け、つい昨日伝説級の品だと発覚し、くれはに預けた――ホタルブクロのランプだ。
「うん……これだったと思う」
 言葉は頼りなさげだが、確かな声でくれはは肯定した。


 くれはが昏睡から醒めた後、一同は一旦それぞれ自室に引っ込んでから、リビングに再集合していた。
 何せ、起き抜けで起きた事件だったため、全員寝巻き姿だったのである。
 とりあえずそれぞれ身支度を整えてからリビングに集まり、先程の事態について話し合う形となり――
 ふと、くれはが思い出したように告げたのだ。「夢を見た」と。
 場所は元の世界にある実家の自室、そこで出逢った不思議な女性。
 そして、その場を照らしていた――そこにあるはずもない、このホタルブクロのランプ。
「――『私は、ここに』か。一瞬目が覚めた時の青い目の“お前”も、そんなこと言ってたな」
「でも、夢に出てきた人は青っていうより、藍色の目だったんだけど……」
 暗かったから見間違えたのかな、と首を傾げるくれはに、柊は苦い顔でがしがしと頭を掻く。
「しかし、お前の夢に出てきたヤツとお前を乗っ取ったヤツが、同じだとしても、そうでないとしても、
 正直、言葉の意味がわからねぇ。
 『ここ』ってどこだ、って話だ」
 そう言ってから、深い溜息をつく。
「……これ以上、“お前”の言葉にも、お前の夢にも手がかりが期待できないとなりゃ――これしかねぇ」
 苦い声で告げ、睨みつける先には――明かりの灯らぬ小さなランプ。
「……何が起こるかわかんねぇからな。前と同じように牧場でやる。お前らはここで待ってろ」
「あたしも一緒に行くよ」
 柊の言葉を速攻で拒否したのはくれはだ。
「あたし自身の身に起きたことなんだから、柊任せにできないよ」
「……わかったよ」
 その目は、何を言っても無駄だと言っていて、柊もそれ以上の説得は諦めた。
「バド、コロナ。二人はここで待ってろ」
「……でも!」
 ハモって声を上げる双子に、柊は有無を言わせぬ視線を向ける。
「もし、こないだみたいに知らねぇとこに飛ばされて、そこがモンスターの群れの只中だったら?」
「……ッ……」
 怯んだ双子に、柊はふと表情を緩め――苦笑に似た表情で、告げた。
「まあ、そういう状況でも、俺とくれはだけなら切り抜けられる自信はある。
 でも、お前らを守ってやれるか、って言われると、ちょっと自信がねぇんだよ」
 遠回しに足手まといになる、といわれ、双子には返す言葉がない。
「――じゃ、ちょっと行ってくるな」
 項垂れた二人の頭を、くしゃり、と両手で撫で――柊は傍らに立てていた魔剣を手に取り、ランプを持った
くれはと共に、家を出た。


「クェッ!」
「クェ?」
「おー、チョコ、ボコ、元気だなー」
 牧場に移動した二人を出迎えたのは、放牧されていたチョコボたちだ。
 チョコとボコ、というのは、“獣王”から聞いた二羽の名前だ。名付け親は当然ユウである。
 安直ではあるが覚えやすい名前であるのは確かだ。
「お前らにもちょっと付き合ってもらうことになるかもな」
「よろしくねー」
 言いながら頭を撫でれば、二羽は嬉しそうに目を細める。
 この懐っこい姿からは想像し難いが、この二羽が歴戦の猛者であることは、先日の密林からの帰路で確認済みだ。
 何せ、小型のモンスターなどその鍛え上げた足で容易く蹴散らすのである。大型のモンスターに出会っても、
恐慌を起こすことなく、その俊足を生かし、逆に翻弄する。
 さすが、ユウ達と共に世界中を旅して回ったというだけはある。双子には悪いが、この二羽の方が旅の供と
しては頼もしいのだ。遠方に飛ばされてしまった際の帰宅手段、という意味もある。
「さて――」
 それぞれ、月衣の中の持ち物などを確認。更に、柊は背に負った剣の感触を確かめる。
 問題ない、と頷きあって――くれはは、手にしていたランプを柊に差し出した。
 目を伏せ、一つ深呼吸し――柊は、ランプを手に取った。

 瞬間――意識を凝らした指先から、流れ込むイメージ。

 ───欠けない月に照らされた、永久に明けない夜の町。

「――ロア」

 脳裏に浮かんだその町の名を、柊が呼んだその瞬間、

 先日の“メダル”の際に見たのと同系統の魔法陣が牧場を包み――
 閃光が消えた後、その牧場には、誰の影も存在しなかった。

  ◇ ◆ ◇

 深い夜闇を、ぽかりと浮かぶ真円が、皓々と照らしている。
 月明かりが落とした影を、柔らかい灯りが照らし、夜の色がまたそれを惹き立てる。
 闇と光が溶け合う町――そんな印象だった。
「……ここは?」
「ロア――明けない夜の町、だそうだ」
 目を瞬かせるくれはに、柊が先程感じたイメージのままに答える。
 柊たちが現れたのは、少し開けた広場のらしき場所のようだった。
 と、二人に寄り添うように佇んでいたチョコボ達が、建物の影に視線を向けて首を傾ける。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:08:20 ID:y5NzCzw9
支援!
「クェ?」
「クェ!」
「――ま?」
「ぐま!」
 その声に応えるように、二つ、三つと、小さな影が灯りの下に現れた。
 子供ほどの背丈に、クマを愛らしく模したぬいぐるみのような容姿。
 小さな差異はあるものの、見分けがつかない程度に似た様な姿の彼らは、ちょこちょこと柊たちに――というか
チョコボたちに歩み寄ってきた。
「ぐ〜 まぐまぐ ま?」
「クェ!」
「ぐ〜 ま〜 ぐまぐまま ま?」
「クェッ!」
 何やら問われては、チョコボが答えるように鳴いている、というニュアンスは伝わってくるのだが、
「……これ、会話成立してんのか……?」
「さ、さあ……?」
 明らかに別言語同士でやりとりしている人外二種族に、人類二人は首を傾げる。
 まあ、とりあえず、彼らの間に漂う友好的な空気からして、このクマグルミ(仮名)たちに敵意はないようだ、
と異邦人二人が結論付けた時、
「おお! そこの君〜!」
 妙に大仰な響きの声が、柊たちの耳に届いた。
「――ぐげ」
 と、楽しそうにチョコボたちと会話(?)していたクマグルミ達が、一斉に嫌そうな顔になり、隠れるように
建物の影に散っていった。
 と入れ替わるように新たに現れた影に、異邦人たちは軽く目を瞬く。
「……ケンタウロス?」
 現れた影は、まさに『半人半馬(ケンタウロス)』と称すべき容姿をしていた。
 人の上半身の下に、馬の胴と四肢。
 その若い男の顔の造形は、まさに美貌と讃えられるに相応しいものなのだが――神秘的なその容貌の割りに、
纏う空気はどことなくナンパと言うか俗っぽい。
 被った鍔広帽子も、手にした弦楽器も、吟遊詩人というより、故郷のうらぶれたストリートミュージシャンを
連想させる。
 どうにもちぐはぐな印象に、柊達が面食らっているところへ、当の青年はお構いなしに言葉をかけてきた。
「やあやあ、ようこそ、我らがロアの町へ。見たところ旅のお方のようだが、ランプに興味はあるかい?」
「……は? いきなり、何――」
「いやいや、君の手にしたものが既に答えだ。言葉による答えは必要としていないよ〜」
 柊の手にしたホタルブクロのランプを示し、青年は一方的に決め付ける。
 ひくり、と柊の――そして隣にいたくれはの頬が、奇妙な角度で引き攣れた。
 その気障ったらしい言い回しといい、人の話を聞かない態度といい――
(……う、うっざい……こいつ……)
 幼馴染二人の表情が、心の声が、今、見事にシンクロした。
 なるほど、彼の声が聞こえたなり、クマグルミ達が去っていったわけだ。
 しかし、青年は二人のそんな微妙な空気など気付いた風もなく、更に一方的に言葉を続ける。
「そんなランプ好きの君に耳寄りな情報だ! この町にはリュミヌーという素晴らしいランプ職人がいるのさ〜。
 ボクは彼女自身が一番の芸術品だと思うけどね〜」
 うっとりと語る青年の様子に、やっと柊たちは何故自分達が声を掛けられたのか理解できた。
 つまり、この青年はそのリュミヌーという想い人だか恋人だかのために、客寄せをしようとしているのだろう。
 ただうざったいだけではなく、中々にいじらしい面もある青年ようだ。ただ、思い込みも激しいようなので、
一歩間違えるとストーキング行為に走りかねない感じもするが。
 まあ、それはともかく――
(――そのランプ職人には会っといた方がいいか……?)
 軽く目を伏せて、柊は一考する。
 当然、この“ランプ”はアーティファクトであり、普通のランプではない。しかし、そのアーティファクトの
能力(ちから)でこの町に飛ばされてきた以上、この町に何らかのゆかりがあるだろうことは間違いない。
 しかし、それ以上の手がかりがない以上、とりあえずはこの形状を手がかりに当たってみるのもいいだろう。
「……ちょっと興味あるな。その店ってどこにあるんだ?」
「お〜、来てくれるんだね〜! ならば案内しよう、我が愛しきリュミヌーの店へ!」
 柊の問いに、大仰に喜びを示すなり、ポッカラポッカラ蹄を鳴らして歩みだす青年。
 異邦人二人は、妙に疲れた笑みを交し合うと、チョコボ達を連れて、その半人半馬の後姿を追って歩き出した。

  ◇ ◆ ◇

「……ランプ、売れないなぁ……」
 リュミヌーは、深々と嘆息しながら愚痴を漏らしていた。
 狭い店内には、壁一面の棚に個性的なランプが並んでいるだけで、客の姿はない。
「あーあ……」
 もう一度嘆息して、こてん、とカウンターに突っ伏す。
 その暗い心境をそのまま反映してか、背中の翼も心なしか萎れている。
「やっぱ、私だけじゃダメなのかな……」
 その萎れた花の翼の先を、指先で摘まみつつ、リュミヌーはぼやいた。
 リュミヌーは、鳥乙女(セイレーン)である。
 “海の魔女”と畏怖を込めて呼ばれることもある彼女らは、本来海辺に暮らす種だ。
 麗しい女性の上半身に、艶やかな羽毛に覆われた鳥の下肢。その背には、生花で出来た羽根を持つ種族。
 その美しい翼で海上を舞い、その唇から天上の調べの如き歌声を紡ぐ。
 そんな、この世のものとは思えない麗しさに、船乗り達が心を奪われた結果、船が難破するということも多々
あるほどだ。
 しかし、彼女たちは悪意を持って歌を紡いでいる訳ではない。歌うことは、セイレーンにとって呼吸に等しい
行為であり、それを怠れば、背中の翼が萎れて枯れてしまうのだ。
 だが、結果として、自身の歌声のせいで船乗り達が犠牲になるという事実に、胸を痛めるセイレーンもいる。
 リュミヌーに言わせれば、歌に聞き惚れて操舵を疎かにするような奴は、そもそも船乗りの資格などない、と
いう感じなのだが。
 ならば、そんな海辺で歌うことに何の罪悪感もないリュミヌーが何故、こんな内陸の町に居を構えているかと
言うと――理由はこのランプたちである。
 数年前、まだ海辺の町にリュミヌーがいた頃、その町にふらりと現れた旅人。
 月明かりのような銀髪に、夜空を思わせる深い藍の瞳。仲間の美貌を見慣れているリュミヌーですら、思わず
息を飲むような絶世の美女だった。
 ムーン、とその容姿に相応しい名を持つ彼女は、魚市で廃棄される貝殻や珊瑚の欠片を引き取って、新たな形
で生まれ変わらせたのだ。
 見るものの心に灯を点すような、麗しくも優しい輝きを放つランプに。
 貝や珊瑚に限らず、どんなガラクタでも、彼女の手にかかれば素晴らしいランプに生まれ変わる。
 リュミヌーは、彼女を魔法使いだと思った。
 彼女はリュミヌーにとって、どんな大魔法使いよりも、素晴らしい魔法を使う魔法使いだったのだ。
 彼女の魔法に魅せられたリュミヌーは、やがて町を離れようとしていた彼女へ、同行したいと申し出た。
 セイレーンは歌わなければ翼が枯れるが、逆を言えば歌さえ歌えればどこへでも行けるのだ。別に海辺でしか生きられないわけではない。
 彼女は最初こそ戸惑い、断っていたが、リュミヌーが粘り続けると、最後には折れた。
 そうして、あてもないらしい彼女の旅に同行し、ランプの作り方を教わり始め――
 そうして、この町にたどり着いた。
 この町が気に入ったらしい彼女は、ここに店を持とうと思う、と言った。リュミヌーに否はなかった。この町
ほど彼女に、また彼女のランプに相応しい町はないと、リュミヌーも思ったのだ。
 そうして二人でこの町にこの店を構え、それなりに顧客が着いて生活が安定し、リュミヌーも一人でランプが
作れるようになった頃――彼女は、姿を消した。
 彼女の最後の言葉を、リュミヌーははっきりと覚えている。

『昔の知り合いから呼ばれたから、会ってくるわ。ちょっと長くなるかも』
 必ず、帰るから――最後に、そう付け足して。

 最初の一年、彼女が帰ってこないことを、リュミヌーはそれほど気にしなかった。
 彼女の時間感覚が、どうも人よりかなり悠長なことを、長い付き合いで知っていたからだ。
 締め切りや待ち合わせなど、具体的な時間を示せばきっちり守るのだが、曖昧な表現で時間を指定した場合、
リュミヌーの――そして、世間一般の感覚とかなりずれていたのだ。
 例えば、彼女が『ちょっと前』とか『もうすぐ』とかいった場合、その範囲は半年前後。具体的に訊いた事は
なかったが、そのことで、リュミヌーは彼女が自分よりもずっと長寿な種族なのだろうと漠然と察していた。
 だから、そんな彼女が『ちょっと長くなる』と言った以上、一年くらいは帰らないだろうな、と思ったのだ。
 悩みの種は、売れるのは彼女が作り置きしていったランプばかりで、自分のランプがあまり売れないことだけ。
 早く彼女に帰ってきてもらって、素敵なランプの作り方を教えてもらいたい――そう暢気に思っていた。
 けれど――二年が立ち、彼女のランプが全部売り切れてしまった今でも、彼女は帰ってこない。
 そして、彼女の最後のランプが売れた半年ほど前から――リュミヌーは「必ず帰るから」という彼女の言葉が、
酷く気になり始めたのだ。

 ───何故、彼女は、そんな言わずもがなの台詞を、わざわざ告げたの?

 そもそも、時間感覚が互いにずれていると理解した頃から、二人の間では曖昧な時間表現は避け、できるだけ
具体的に時間を指定するようにしていたのに、何故、あのときに限って――
 考えれば、考えるほど、リュミヌーは不安になる。

 ───彼女は、もう帰って来れないんじゃないの?

 彼女が、自分の意志で帰ってこない、ということはないと思う。彼女は本当にこの町が好きだったから。
 けれど、何かの事情で、戻って来れなくなる可能性は――ないとは言えない。
 そんな風に考えてしまうと――ふと、揺らいでしまうのだ。
 売れないランプと苦しい生活を送りながら、いつ帰るか――帰ってくる保証もない彼女を待ち続ける日々に。
 ただ、一月前ほどから一人だけ固定客がついた。
 そのギルバートと言うケンタウロスの青年は、毎日のようにリュミヌーを口説きに来ては、ついでのように
ランプを買って行く。
 好意を持たれることに対しては悪い気はしないが、同時にランプ職人としては悔しい気もする。
 こんな半端な生活を続けるくらいなら――
「……こんな店閉めて、別の町にでも行こうかしら」
 どこか、海の見える街に――そんなことを呟いた時、
「おお〜、ハニ〜! なんてバカなことを言うんだ〜」
 この一ヶ月で聞き慣れた、どこか大仰に響く気障な声が飛び込んできた。

  ◇ ◆ ◇

「……こんな店閉めて、別の町にでも行こうかしら」
 青年に連れられ、柊がその店のドアに手をかけた途端、そんな言葉が店内から聞こえてきた。
 途端、柊を押しのける勢いで青年が店内に飛び込み、
「おお〜、ハニ〜! なんてバカなことを言うんだ〜」
 悲嘆にくれる様を大げさに身振りで示しながら、気障ったらしい口調で告げる。
「キミはボクのことも忘れようと言うのかい〜? この愛の詩人、ギルバートのことを〜。
 ボクはこの町の星空の下で、君と語り合う甘い時間がなければ生きて行けないよ、ハニ〜」
 奇妙な抑揚の口調で語りかける青年――ギルバード。本人は『歌うように』語りかけているつもりなのだろうが。
「……っていうか、人を突き飛ばしといてスルーか、コラ……」
 顔面をドアの脇へ強かにぶつけた柊は、思わず恨みがましく呻く。
 しかし、ギルバードより先に、リュミヌーの方が反応した。
「え、ウソ、お客さん?」
「まあ、半分はそこの兄ちゃんに引っ張ってこられたってのもあるが……」
 苦笑気味に返す柊の脇をすり抜け、店内に入ったくれはが目を輝かせる。
「うわ、すご〜い!」
 棚一面に並んだ商品を眺め回しながら、
「あ、柊、見て見て! こっちのなんか燈籠(とうろう)や提燈(ちょうちん)みたいじゃない!?」
「おお、ホントだ。こっちにもこういうのあるんだなぁ〜」
 些か郷愁の念も含みつつも、和気藹々と棚の商品を眺める異邦人二人に、リュミヌーが躊躇いがちな声を掛ける。
「……私の他にも、こういうランプを作ってる人がいるの?」
 その言葉の意味に即座に気付き、異邦人二人は目を見開いた。
「コレ、あなたのオリジナルなの!?」
「え、ええ……」
 くれはの問いに頷くリュミヌーに、柊は感嘆の声を漏らす。
「へぇ……いや、俺らの故郷じゃこういうデザインも結構あるんだけどな。
 えらく遠くて、行き来もままならねぇようなところなんだけど」
「はわ〜、ちょっと嬉しいよね〜、こういうのに出会えると」
 破顔して語り合う柊とくれは。と、ギルバートがぎょっとしたような声を上げた。
「リ、リュミヌー、どうしたというんだい〜?」
 何事かと振り返った異邦人二人が目にしたのは――両手で顔を覆い、肩を震わせるリュミヌーの姿。
「え、ちょ、どーした!?」
「え、え!? あたしたちなんか変なこと言った!?」
445名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:18:36 ID:y5NzCzw9
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「ちがっ……違う、違うのよ」
 慌てたように声を掛ける異邦人たちに、リュミヌーは小刻みに震える声を返す。
「そんな風に嬉しそうに私のランプ見てくれる人、初めてだったから、嬉しいの!」
 ぱっと上げられた顔には、満面の笑み。くすくすと嬉しそうな笑みで、喉を震わせながら。
「……もしかして、あんまりこの店、繁盛してないのか?」
「正直言うと、最近のお客はそこの彼だけ」
 つい柊が疑問をそのまま口にすると、リュミヌーはさらりと返してきた。
「だから、お店を閉めて故郷に帰ろうかな〜、とか思っちゃったりもするわけ。
 正直、おマンマも食い上げ状態だし」
「うわ、洒落になってねぇ」
 軽く告げられたリュミヌーの言葉に、柊は引きつった笑みを返し、
「……じゃあ、あたしたちが手伝うよ!」
「はあ!?」
 唐突にくれはが告げた宣言に、笑みを消して目を剥いた。
「ちょ……! 何言い出すんだよ、くれは!」
「だってほっとけないじゃない!
 それに、故郷に似た雰囲気のものがこっちでも流行ったらちょっと嬉しくない?」
「……いや、まあ……確かに……」
「じゃ、決まり!」
 くれはにあっさり言いくるめられてしまい、柊は嘆息しつつも、その顔は笑っている。
 結局、柊自身、放っておけないのだ。
 と、二人のやり取りを見ていたギルバードが、感極まった様子で大げさな身振りをつけながら、
「ああ〜、なんと素晴らしい人達なのだろう〜。やはり君たちに声を掛けたボクの目に狂いはなかったね〜!
 もう安心だよ〜、リュミヌー」
 柊達を褒めているように見えて、間接的に自分の手柄にしている。アピールに抜け目のない男である。
 取りえず、恋に生きる馬男は放っておいて、異邦人二人は具体的な行動計画を立て始める。
「多分、店への呼び込みより、商品を持って街中で売り歩いたほうがいいんじゃないかな」
「ああ、かもな。ここの店、あんま広くねぇし。やっぱ、人が集まるようなトコがいいよな」
「……ひと、っていうか、アナグマ達のたまり場になってる酒場ならあるけど」
 二人の会話を聞いていたリュミヌーが、ぽつりと呟くように話に入ってきた。
「アナグマ?」
「ええ、人の子供くらいの大きさの、クマに似た容姿の種族。
 普通は洞窟とか鉱山とかに住んでるんだけど、この町はずっと夜だから、彼にとって住みやすいみたい」
 ここの住人の八割くらいは彼らよ、リュミヌーは言う。
 なるほど、この町に来た直後にチョコボたちと意気投合していたクマグルミたちは、アナグマという種族らしい。
 しかし、リュミヌーは憂えるような表情で言葉を付け足す。
「ただ、言語が独特で……私にはわからないのよね。酒場のマスターなんかはアナグマ語も話せるみたいだけど」
「おお〜、ボクもだめだったよ〜。なんと声を掛けても『ぐげ』の一言で逃げてしまって〜」
 わかりやすい落胆のポーズでギルバート。
 しかし、異邦人二人の脳裏に、閃くものがあった。
「もしかして……」
「……いける、か?」
 二人して振り返った先には、店の外で大人しく待機しているチョコボたちがいた。

  ◇ ◆ ◇

 結果として、酒場での出張販売は大盛況となった。
 人々には甚だ通じているのか疑問な言葉の応酬で、アナグマ達とチョコボ達は意気投合した。
 どうも、酒場のマスター曰く、元々アナグマ達は月や星などを愛し、それを髣髴とさせるランプなどの光源も
好むのだという。
 チョコボたちと馴染んだアナグマ達に商品を見せ、筆談で値段を示せば(数字は通じた)アナグマ達は各々に
気に入ったデザインのランプを買っていった。
 言葉が通じないなりに、ランプを身振りで褒めているらしいアナグマ達の様子に、リュミヌーは満面の笑みを
浮かべ、歓喜に震えて言った。
「嬉しい……! こんなに売れるなんて!」
「良かったね、リュミヌー!」
 その横で、あからさまに別ベクトルで喜んでいるギルバート。
 その彼に軽く微笑んで、リュミヌーは言う。
「私、もう少しランプ屋としてこの町に留まってみるわ」
 てっきり狂喜乱舞するものかと思えば、ギルバートは意外にも頭を振る。
「ハニ〜、ランプ屋としてじゃないよ。気がついているだろう?」
 そうして、リュミヌーの肩を抱き、空いている片腕を空に掲げて告げた。
「ボクのパートナーとして、愛を歌うギルバートを照らす! 愛の光としてさ!!
 さあ、ハニー、星屑のシャワーを浴びよう!
 この世界は今日という一日のために生まれたのさ! 僕たちの愛のために!」
(……う、うわぁあぁぁ……)
 傍で聞いていた異邦人二人がどん引くのを余所に、機嫌がいいリュミヌーは、その台詞を好意的に受け入れる
ことができたらしい。
「そうね、ここの所ずっと店に篭もっていたから、外でお話しするのもいいかも」
 そうして、二人は星の良く見える高台の方へと連れ立ってゆく。
 そして、その二人を追う一つの影――
「――って。何やってんだ、くれは」
「はわっ!」
 さり気なく二人を追おうとしていたくれはの襟首を引っ掴んで止め、柊は呆れた声を漏らす。
「だってだって、やっぱ気になるじゃん! 二人が上手くいくかどうか〜」
「だからって、んな覗きみたいなマネ……」
「いや、けど……もし話がこじれてギルバートが変なことしようとしたら、リュミヌーを助けないと!」
「……お前、それはギルバートに対して酷くねぇ?」
「でも、ギルバート、思い込み激しそうだし……」
 そう言ったとき、くれはの目に奇妙な不安の色がちらついたのを見て、柊は思い出す。
(そういや、くれはも前、ストーカーにあってたな……)
 だとすると、くれはのこじつけのような理由も、案外本気で心配しているのかもしれない。
「……遠くから見るだけだぞ」
 仕方ない、と柊がそう告げれば、くれははぱっと破顔して、
「さっすが、ひ〜らぎ! となれば、さっそくれっつご〜!」
 柊のコートの袖口を引っ掴んで、二人の去っていた方向へ走り出す。
「って、うぇ!? 俺も!?」
 引っ張られるまま、一緒に駆け出した柊は、さっきの不安の色は気のせいだったのかと、わりと本気で疑った。

  ◇ ◆ ◇

「ねぇ、リュミヌー、ボクの夢を聞いてくれるかい?」
「ええ、ギルバート、二人の夢を語り合いましょう」
 リュミヌーの店のすぐ側にある、星空と街並みを見渡せる高台。
 そこで、ギルバートとリュミヌーは語り合っていた。
「道行く若者に声をかけて、君のランプを売らせれば、手間をかけずにランプは売れる」
 たまたま声をかけただけで、上手くランプを売りさばいてくれた旅人達の存在を思い浮かべて、青年は言う。
「私のランプが好きな人は、ほんの少しだけど、遠くからわざわざ買いに来てくれるの」
 嬉しそうにランプを買って言ってくれたアナグマ達の反応に、苦しい生活で忘れかけていた事実を思い出し、娘は言う。
「ランプなんて、その辺のアナグマに作らせれば、手間をかけずに売れる」
 わざわざ君自身が労力を使うことはないだろうと思いながら、青年は言う。
「一個一個、手作りで作る、手間ヒマかかる作業についついのめりこんじゃう」
 なんでもないガラクタ達が、自分の手で新たな形を成していく楽しさを思い浮かべながら、娘は言う。
「都会からデザイナーを呼んで、最高に素晴らしいランプを作ろう!」
 一部の人間にだけでなく、万人に評価されるものを作るべきだと考え、青年は言う。
「そのへんのガラクタを集めて、キミョウなカタチのランプを作るの」
 ガラクタに新たな命を吹き込む――師から教わった感動を、己の誇りにかえて、娘は言う。
「そうすればボクら、働かなくてもいつの間にか大金持ちさ!」
 労なく生活に窮することもなく、二人で愛を育めるだろうと、青年は言う。
「毎日遊んでる気分。お金はないけれど、これが私」
 例え生活が辛くとも、好きなことをやって生きていく楽しさを思い出して、娘は言う。
 その娘の言葉に、青年はしばし沈黙し――ややあって、切なげな声音を紡いだ。
「……キミには夢がないのかい? キミと話していると、ボクはさびしくなってしまう……」
 その言葉に、今度は娘が沈黙し――ややあって、哀しそうな声音で告げる。
「――私は毎日、楽しい夢を見ているわ。あなたと話していると、今の自分が否定されてるみたい」
 せっかく、あの感動を、楽しさを、誇りを、思い出したのに、それを否定されて、哀しいと。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:23:02 ID:y5NzCzw9
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 しかし、青年は首を振る。娘の言葉が理解できないと。
「夢を持とうよ、リュミヌー。このまま閉じこもっているのは良くないよ……」
 娘は青年を見る。そして、その瞳を見つめ、気付いてしまった。
「私の見る夢、夜見る夢、楽しい夢、それは全部、あなたには見えない、嘘の夢なの?」
 ───ああ、この人は、“私”を見てくれていない。理解しようともしていないんだ。
 青年は、娘の言葉に再び沈黙し――不自然なほど明るい調子で告げた。
「ねえ、リュミヌー! 二人のハーモニー、上手く奏でることが出来ないね!」
 そうして、娘から視線を外して、続けた。
「ボクはこの町を出るよ! 新しい愛を探しに行くよ! ボクには愛が必要なんだ!」
 青年の変わり身の早さに、娘は怒るよりも呆れるよりも先に、納得してしまった。
 ───やっぱり、この人は、“私”を見てくれていなかった。
 彼はひたすら捜し求めるのだろう。自分の“理想”をただ受け入れ、自分と同じものだけを見て、自分の夢を
否定しない、そんな都合のいい誰かを。
「ギルバート、あなたって少し軽薄かも」
 少しの悲しみと――それ以上の警句の意味を込めて、娘は告げた。
 手作りのランプに一つとして同じものがないように、全く同じ世界を見ている人なんてきっといない。
 ───あなたはきっと、それに気付かず、探し続けるんでしょうね。
 相手の意思を無視して。自分に都合のいい幻想だけを重ねて。――それが、愛だと信じて。
 そして、娘には、そんな青年の愛を受け入れてあげることはできない。
 だから、別れの言葉を告げる。
「あなたがいなくなったら、私も少し沈むかもしれないけど、それぞれの愛を探しましょう」
 青年は、それに笑顔で振り返って答えた。
「さよなら、リュミヌー! 君のことは忘れない!」
「さよなら、ギルバート――さよなら」
 静かな娘の言葉を受けて、青年はその場を立ち去ってゆく。
 その背を見送ることもなく、娘も自身の愛する店へ向かった。
 ───あなたのお陰で、私は私の生き方を思い出したから。
 そう、感謝の念を持って、娘は青年と決別した。

  ◇ ◆ ◇

「……うわぁ……」
「なっにあれーッ!」
 二人のやり取りを影からきいていた異邦人二人は、片や呆れた声を漏らし、片や憤りの声を上げる。
 なんともあの二人の愛称は最悪だったんだなー、と柊は引きつった笑みを漏らし、くれはは余りに早すぎる
ギルバートの変わり身に憤慨している。
「好きだったんじゃないの!? 夢のために応援してたんじゃないの!? 何あの勝手な言い草!」
「落ち着けよ、くれは。
 ――確かに勝手だけどよ、強引にリュミヌーの生き方を変えようとしなかっただけ、まだマシだろ」
 くれはを宥めるように、柊は言う。
 あの二人の望む生き方は、余りにかけ離れすぎていたのだ。妥協点が見つからないほどに。
 それでも共に生きようとしたなら、きっとどちらかがどちらかの生き方に合わせて変わるしかなかっただろう。
 けれど、あの二人は、それぞれの生き方を譲れなかった。だから、別に生きるしかなかった。
 ままならないものだなぁ、としみじみ思う柊の腕を、くれはががしりと掴む。
「こうしちゃいられないよ! ひーらぎ、リュミヌーを慰めに行くよっ!」
「は!? ちょ、おまっ――!?」
(そんなことしたら盗み聞きバレんぞ!?)
 そうツッコむ暇もなく、くれはは柊を引き摺って、リュミヌーの店に飛び込む。
 ドアを突き飛ばす勢いで飛び込んできた珍客に、リュミヌーは一瞬目を剥くも、すぐに笑みを浮かべて、
「あ、あなたたち――さっきはありがとう」
「そんなのは気にしないでいいよ! それよりも、あんな好き勝手言われてハイさようならでいいの!?」
 くれはにいきなりまくし立てられ、リュミヌーは一瞬きょとんとなるも、すぐに合点が言ったように苦笑する。
「ああ、聞いてたんだ、さっきの」
「――あッ……」
 今更ながらに自身の失言に気付いてうろたえるくれはに代わり、柊が苦笑気味に謝罪する。
「盗み聞きみたいな真似して悪かったな」
「いいわ、気にしないで」
 さらりと返される言葉は、気を悪くした風もない。
 しかし、ほんの一瞬、リュミヌーの表情に影がよぎる。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:39:19 ID:y5NzCzw9
支援!
451名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:40:59 ID:N9b36CxY
おお、アナグマ語のイベントこうやったか。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 20:49:51 ID:N9b36CxY
さるさんくらっちゃったかな?
453名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 21:08:04 ID:SfCWix8q
うきっ?
454名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 21:10:34 ID:dYXOYiTm
みつやん に さるのよめ の しょうごう が あたえられた!
455名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 21:11:47 ID:SfCWix8q
避難所で続き確認。
どうやら、さるさん&規制コンボを食らったらしい。
「ギルバートって、少し変だったけど、悪い人じゃなかったわ」
 その切なげな笑みに、くれはも、柊もどう声をかけていいのかわからなくなり、ただ彼女の言葉に耳を傾ける。
「彼はもっと大きなランプが欲しい人なのに、私のランプはとても小さいの」
 彼女は手で自身の作ったランプをかざしながら、語る。
「ランプが大きくても小さくても、本当は関係ないはずなのに。
 だってそうでしょう? ベッドに入ったらランプは消すでしょう?」
 柊には、夢を見るのにその大小など関係ない、といっているように聞こえた。
 その深い言葉にしみじみと頷きかけて――隣の幼馴染が耳まで真っ赤になっているのに気付いた。
「……お前、何赤くなってんだ?」
「はわっ!?――ななななんでもないっ!」
 声をかければ、わたわたと手と頭を横に振って叫ぶ。
 一体全体くれはが何に慌てているのか理解できず、柊は首を傾げ――そんな二人のやり取りに、リュミヌーが
くすくすと笑みをこぼした。
「やっぱり、同じ世界を持つなんていないのよね。言葉一つの受け取り方さえ、こんなに違うんだもの」
 でも、彼女は続ける。
「それでも、一緒に生きて行けるのね。お互いにお互いを認め合えれば。それぞれの差を受け止めあえれば」
 あなたたちみたいに――と、嬉しそうに笑った。
 柊には、一体何のことかぴんと来なかったが――とりあえず、落ち込んでいたリュミヌーが元気になったので、
それでよしとすることにした。
 ようやっと頬を冷ましたくれはも、同じ結論に至ったようで、嬉しそうに彼女の笑顔へ笑い返している。
「本当にありがとう。あなたたちのおかげで、私は大切なことを思い出したし、知ることが出来たわ」
 恩人さんたちの名前を聞いてもいいかしら、と問われて、柊とくれはは自分達が名乗っていなかったことに
気が付いた。
「あ――俺は柊蓮司」
「赤羽くれは、くれはでいいよ」
「そう。蓮司、くれは、私に、何かお礼できることはある?」
 そう問われて、はたと二人はこの町に来た当初の目的を思い出した。
「ああ、そうだ、このランプ」
 慌てて柊がホタルブクロのランプを出して見せると、リュミヌーは軽く目を見開く。
「これ……」
「――知ってるのか!?」
 思わず声を上げれば、彼女はあっさりと頷く。
「うちの店で売ったランプだもの。私の作ったランプじゃないけど」
 軽く記憶を辿るように首を傾けながら、リュミヌーは告げる。
「半年くらい前かしら。目つきのきつい若い男と、ふわふわした印象の女の子の二人連れ。
 このランプ、棚の奥の方に入り込んでて、私でも存在に気付いてなかったのに、女の子が目敏く見つけてね」
「……その二人、もしかして、胸元に大きな宝石つけてなかったか」
 もしやと思って柊が問えば、リュミヌーは大きく頷く。
「ええ、男の人は蒼、女の子は純白の宝石を。――知り合いなの?」
「ああ。ちょっとしたことで手助けして、礼にこのランプ貰ったんだ」
 瑠璃と真珠姫のことだと確信して、柊は頷く。
「でも、このランプがどうかしたの?」
「いや……それが……」
 改めて問われると、どう説明したものか、と柊は頭を悩ませ――
「……あら?」
 そのランプをいじっていたリュミヌーが首を傾げる。
「これ、明かりの部分に光源じゃないものが入ってる」
 これじゃ点かないわ、とリュミヌーは笠の中にはめ込まれていた球体を取り出した。
 無色透明のガラス玉にしか見えない何か。柊たちは、てっきり電球みたいなものだと思っていたのだが。
「……何かしら、これ」
 リュミヌーが問いつつ差し出してくるのに、柊は無造作にそれを受け取って――刹那、

 ───『私は、ここに』

 聞こえた声が、イメージの奔流となって、辺りを包み込んだ。

  ◇ ◆ ◇


 気がつけば、目の前に、一人の女性が立っていた。
 銀の髪に、藍の瞳。光と影が溶け合うこの町が、具現化したような絶世の美女。
 何より、柊の目を惹いたのは――その胸元を飾る、青白い宝石。
 胸元に直接埋まっているかのように見えるそれは、瑠璃や真珠の石と同類に見えた。
(瑠璃たちの仲間か……?)
 そう、思ったとき、

「私のたった一人の愛弟子、リュミヌー、聞いていますか?」

 澄んだ声音が、遠くから囁くように、しかし確かに聞こえた。
「この声を聞いている方、もしその場にリュミヌーがいないのならば、どうかお願いです。
 ロアの町のリュミヌーというランプ屋に届けてください。
 このオーブを入れたランプは、ロアの町と場をつなげるアーティファクトです。
 この声を聞けているあなたならば、きっとこれを使ってロアに飛べるでしょう」
 あっさりと告げられた言葉の意味を、柊は一瞬把握しかね――気付いた瞬間目を剥いた。
 このガラス球――オーブも、アーティファクトなのだ。
「さて、ここからは、リュミヌーが聞いているという前提で話させて頂きます。
 ───リュミヌー、私が姿を消してしまって、あなたは落ち込んでいるでしょうか。心配しているでしょうか。
 それとも、のんびり屋の私のことだからと、いつかひょっこり帰ってくると思っているでしょうか」
 静かに、淡々とした声音で、声は言葉を紡ぎ続ける。
「あの日、私はあなたに『昔の知り合いに呼ばれたから会ってくる』といって家を出ました。
 それは嘘ではありません。
 ですが、その知り合いは、私が故郷を滅ぼした仇であり、広い世界を知るきっかけをくれた恩人でもあり、
 そして何より、私達珠魅一族を、誰よりも憎んでいる人でした」
(――珠魅! やっぱり、この女性(ヒト)は、瑠璃たちの……)
 柊が予想を確信へと変えている間にも、彼女の声は続く。
 どこか泣きそうな憂いを瞳に湛えながら、どこまでも優しい笑みを口許に浮かべ。
「あの人に会えば、私がここに帰ってくるのはとても難しいこととなるでしょう。
 でも、私はここに、必ず帰ります。
 愛しいロアの町に。可愛い弟子であり、大切な友人であるあなたの元に」
 そういって、一度閉じた瞼を開いたとき、彼女の瞳に、もう憂いはなかった。
「あなたに会って、私達が失くしたものが何なのか、わかりかけてきたような気がするの。
 私は、答えを見つけるのに、時間が足りなかったけれど……
 いつか、私のように人と関わった珠魅の誰かが、きっとその答えにたどり着く。
 そうしたら、私はきっとあなたの元に帰れるわ」
 ただただ、優しい笑みで、彼女は言った。
「リュミヌー、そして、この声をリュミヌーの元に届けてくれた優しい人。
 できれば、あなたたちのような誰かと、私の仲間が出会えますように」
 そう、祈るように告げて――

 その声を最後に、イメージは途切れた。

  ◇ ◆ ◇


「――今の……」
 呆けたようなくれはの声に、柊ははっと我に返った。
 見ればリュミヌーも呆然とした表情で、柊の手にしたオーブを見つめている。
「……今のムーン……? なんで……今のは……?」
「――このオーブが見せた、あんた宛のメッセージだよ」
 心ここにあらずといった風に呟くリュミヌーに、柊はそのオーブを手渡す。
 しかし、リュミヌーは困惑した表情で頭を振りながら、
「でも、わからないわ。ムーンが何を言おうとしたのか……
 珠魅って何? ムーンの故郷って? 仇って? ムーンたちが忘れたものって何?
 珍しくいっぱい話してくれたんだから、もっとわかりやすく言ってくれればいいのに!」
 最後には憤慨したような調子で告げる。――どうやら、ムーンは本来無口な性質らしい。
 子供がむずがるように頭を振り続けるリュミヌーに、柊は笑って告げる。

「言ってたじゃねぇか、わかりやすく。――必ず帰るから、待っててくれってことだろ?」

 瞬間、リュミヌーは息を飲み、ぽかんと固まった。
「結局、ムーンが言いたかったのは、それだけだろ?」
 不敵に笑って柊が決め付ければ、リュミヌーはじわじわとその表情を溶かし――
「もう……もう! なんなのよ!
 普段はしゃべらなすぎてよくわかんないのに、今度は話しすぎてわけわかんないとか!」
 怒ったように――けれど、笑いながら告げる。
「あー、もう! ……わかったわよ、待ってるわよ! だから早く帰って来ーいっ!」
 どこか遠くにいる待ち人に怒鳴ってから、リュミヌーは柊たちに向き直り、笑う。

「本当にありがとう、蓮司、くれは。私、この町で頑張っていくわ」

 おかげでお客さんも増えたしね、と茶目っ気まじりに付け足す彼女の表情に、憂いの色はなかった。

  ◇ ◆ ◇

「やあ、こんばんは」
 リュミヌーの店を辞去し、チョコボに跨りって帰路に着こうとしていた柊たちに、声がかかった。
 そこにいたのはマントと鍔広帽に身を包んだ、影のような姿。わかるのは、その声が男のものであり、覗いて
見える嘴から、鳥人なのだろうということくらい。
「こ、こんばんは?」
「……誰だ? あんた?」
「名乗るほどのものじゃあないが、名乗らぬことが失礼となるなら名乗ろうか。私はポキール」
 反射で返すくれはと訝しげに問う柊に、詠うように名乗る男。
 どこかで聞いた名前だ、と柊たちは記憶を探る。
 しかし、答えにたどり着くより早く、男が問いを投げてきた。
「君は、生きたまま奈落に行けるとしたら行くかい?」
「……は?」
「はわ……奈落って、死者の国とか、そういう感じの?」
 突拍子もない質問に、柊はただ目を点にし、くれはは確認するように問う。
 鳥人は嘴を縦に振って、その確認に肯定の意を示す。
「そう、その奈落」
「……いや、行きたくないだろ、普通……」
 思わずぼやくように答えた柊と、その横でうんうんと頷くくれは。
「まあ、生者の行く場所じゃないしね」
 あっさりと柊たちの意見に同意しつつ、彼はマントからその片手を現す。
 その手は、銀に輝くものが握られていた。
 一瞬、刃物かと二人は見紛えたが、よくよく見れば、それは、
「――スプーン……?」
「匙(さじ)さ。震え銀匙」
 いいながら、彼はくれはへとそれを差し出した。
 くれはは戸惑ったように柊を見るも、柊とてどう対応すべきか判断がつかない。この男に敵意がないことは
わかるのだが。
 結局、くれははおずおずとそれを受け取る。確かに、名の通り微かに震えているようにも感じられた。
 これは一体何なのだと疑問符を浮かべる異邦人二人に、男は踵を返しつつ、告げる
「私が預かっていたアニュエラの遺産だよ。
 今の君たちには必要ないかもしれないが、私が持つより意味があるだろう」
「え、それって――」
 その意味に気付いた柊の言葉が終わるより早く、男は、影の闇に溶けるように姿を消した。
「――ポキール……そうだ、七賢人の……」
 呆然としたくれはの呟き。
 呆けたように立ちつくす二人に、チョコボ達が不思議そうに一声鳴いた。
ほんじつはここまで!
【5.イトナミ】はこれにて終了です。
前回書きそびれましたが、前のエピソードは『獣王』、今回のエピソードは『精霊の光』に当たります。
しかし、【5】は前後ともどもオリジナル解釈爆発で、かなり好き勝手書いてます(汗)
今回は特に、本編にないアルティマニアの設定をわりと無理やりねじ込んだので、
話のまとまりが悪くなっているかもしれません(汗)

このクロスを書くに当たってLOMを見返していると、子供の頃わからなかったことに気付いたりして驚きます。
今回のリュミヌーの台詞も、子供の頃は普通に作中の柊と同じ解釈をしていましたが、今になって見返すと、
思わず赤面してしまうような解釈もできるのだと気付きました。
まあ、直前のお馬君との会話からして、前者だと思うんですがw

次回から珠魅編本格始動!(予定)


っていうかホントに、何でこのタイミングで規制とか……
意味がわかりませんよ……orz


461代理投下:2010/07/07(水) 21:28:45 ID:19u3Czjg
作者氏が代理投下を望んでたから勝手にやった。後悔はあんまりしてない。

……ってか、[代理]とかつけなきゃいけないんかな。初めてだったから色々礼を失してるかもしれないけど、申し訳ない。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/07(水) 21:43:09 ID:y5NzCzw9
くれはわ、耳年増だなぁ。


みつやんさんも代理の方もお疲れさまです。

相変わらず読みやすい綺麗な文章がすばらしい。
ストーリーも進み始めてきたようで続きが楽しみですが、気長に待ちますので、どうかご自分のペースでお書き続けください。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 00:28:17 ID:dxxHO046
GJ!
急がずゆっくり仕上げてください!
464名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 22:16:35 ID:Ib5kfCP2
夏の祭典まであと一月ほどだが、このスレ的においしそうなもの出してくれるとことかないかなー……
465名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:09:56 ID:enhWTX70
近年明らかになったSDガンダム外伝の裏設定っぷりはナイトウィザードと相性よさそうに感じた。
466 ◆xdkSnUtymI :2010/07/16(金) 23:17:01 ID:PDJ6v39U
誰か投下する予定の人はいますか?
いなければ10分後くらいに投下したいのですが。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:27:47 ID:iEtCZTbs
GO!
468 ◆xdkSnUtymI :2010/07/16(金) 23:31:03 ID:PDJ6v39U
どなたも投下されないようなので。

だいぶ以前に投下していた「闇祓う光明」の第6話をお持ちしました。
以前のお話はまとめWikiに入ってますので、そちらも読んでいただけるとうれしいです。
469闇祓う光明 ◆zFmLIKh7VedV :2010/07/16(金) 23:32:20 ID:PDJ6v39U
「でええいっ!」

気合のこもった声と共に、ウィッチブレードを振りぬく蓮司。
巨大な刃が紅い光跡を作り出し、風切り音と共にキマイラを切り裂く。

ギェェェェ……

断末魔の叫びと胸焼けのする怪しげな気配、そして鈍い輝きを発する赤い石を残して消えていく。

バシュッ! バシュッ!

少し離れた場所では光の弾丸に打ち抜かれ、消えるキマイラ。
蓮司と灯が、1体、また1体と倒していくが、ずくに新手が呼び出されてしまう。

キシャーッ!

咆哮と共に、目の前に立つ獲物に鉤爪のついた腕を振り下ろす。
あわてる様子を見せることなく、ガキリとウィッチブレードで受け止める蓮司。
直後、その腕をはじきとばし、返す刀でキマイラを一刀両断!

また1体を倒すことに成功していた。

「くそう、こんなんじゃキリがないぜ」

何体ものキマイラを倒したため、蓮司の顔も体も汗まみれである。
だが相次ぐ任務の連続で鍛えられたおかげか、疲労を感じるまでには至っていない。
とはいえ、このままではジリジリと追い詰められていくであろうことは、火を見るより明らかだった。

魔剣使い・柊蓮司と砲撃手の強化人間・緋室灯。
直接的な攻撃手段を持っているウィザードは彼らしかいないのである。

夢使いのナイトメア、陰陽師の赤羽くれはと柊みきは、後衛で支援に回るタイプ。
いろいろと手を尽くしてはくれているものの、そういつまでも続けられるのではない。
そんな戦いのさなかに発生した、まばゆいばかりの紫色のプラーナの輝き。

新たに目覚めたウィザードが前衛タイプであることを、だれもが期待していた。

だが、かがみに目覚めた力は陰陽師としての能力。
そのすぐそばで片方の目に光を宿しているつかさも、目覚めたのは大いなる者としての能力であった。
しかもつかさには戦うだけの気力があるようには見えず、戦力としてはまったく期待できなかった。

「間に合ってくれよ……」

戦いながらつぶやく蓮司。

残る希望はただひとつ。
月閘が現れた時に、蓮司の視界の端でナイトメアが0-Phonで連絡した相手。
増援を要請したふたりのウィザードが来てくれることに望みをかけるしかない。

ひとりは確実に戦力になる上、もうひとりも支援系ではあるものの直接的な攻撃能力を持っている。
大幅に戦力がアップするであろうことに、蓮司は望みをかけていた。



そんな血煙の吹きすさぶ戦場をその目に映して、かがみは立っていた。

スポーツや勉強をするときに見せる、きりりと引き締まった顔。
片腕を胸元に引き寄せ、開いた腕を肩に寄せる。
まるで、今にも走り出しそうに。
470闇祓う光明 ◆Q4leHvMi80e4 :2010/07/16(金) 23:33:45 ID:PDJ6v39U
そんなかがみの姿を見たつかさがポツリとつぶやく。

「お姉ちゃん、かっこいい……」

恐怖をようやく克服することができたのだろう。
自分と姉のカバンを抱きしめ、少しうっとりとした顔でかがみを見つめる。
その表情は、運動会で好成績を残したときの姉を見つめるときと、まったく同じものであった。

事実、脅威に力強く立ち向かうその姿はつかさの目にたのもしく映っていたのだ。
もし自分が同級生の男子だったら、恋人になりたくなってしまいそうなほどに。

だがそれは見た目だけ。
実態は薄皮を一枚はぐだけでまったくの別物であった。

引き締まっているように見える顔も、よく見れば引きつっているだけ。
しっかり大地を踏みしめているはずの足も、小刻みにふるえていた。



かがみは内心の恐怖を必死に押さえ込む。
つかさを守らなければという思いで必死に。

いのりはそのことに気づくと、困ったように軽くほほえむ。
まだまだ面倒を見てあげなくてはいけないなと思いながら。

カタカタと歯を鳴らしそうなほどの緊張を見せるかがみに、いのりは話しかける。

「だいじょうぶよ、かがみ。みんながいるんだから」

「えっ?」

「戦っているのはアンタひとりだけじゃないってこと。
何のためにこんだけ人数がいると思ってるのよ。
だいじょうぶ、私がそばにいて教えてあげるから、戦い方を」

その言葉を聞いて、ぎこちないながらも笑顔を取り戻すかがみ。
ほっとしたいのりは満面の笑顔でかがみをからかう。
それが妹を元気付けることになることを信じて。

「やっと笑ったな。
よし、そんだけ余裕があればなんとかなるって!
私を信じなさいって!」

そしてかがみは、姉の軽口に答えるように軽口で返す。
引きつり気味の笑顔と共に。

「ま、今回は信じてあげるわよ。
いろいろ教えてくれた代わりにね」

「素直じゃないなあ。そんなんだからこなたちゃんに『ツンデレ』って言われるんだよ」

「なっ! いきなり何を言い出すのよ!」

とはいえ内心の緊張を表すかのように、汗にまみれた顔は蒼白なまま。
心臓も、まるで壊れてしまったかのように早く動いている。
体のふるえ自体も収まってはいない。

それは、そばで見ているいのりにも一目瞭然であった。
471闇祓う光明 ◆npQ696nz6iMV :2010/07/16(金) 23:37:34 ID:PDJ6v39U
平静を装ってはいても、かがみが今にも倒れかねないことには変わりはない。
だが、これ以上どうしたらいいのかまるっきり思いつかなかった。

(ああ、もう、どうしたらいいの? このままじゃかがみは……)

あせりだけが、いのりの心を占領していた。

(あ、あれは!)

そのとき、視界の端に見えた影に希望の光を見い出す。
それは、いまのかがみを落ち着かせる役割に、もっともふさわしい人物の姿。
そしていま、最も必要としている戦力の持ち主でもあったのだ。

(どうやら間に合ったようね)

上空から近づいてくるその姿に、いのりは笑みを浮かべずにはいられなかった。



いのりとは対照的に、かがみの心に周囲に気を配る余裕はなかった。
見えているのは、目の前で繰り広げられている戦いのみ。
せいぜいつかさの様子に気を配るのが精一杯。

そんな周りの状況すらよくつかめていない状態で、かがみは己の恐怖を押さえ込んでいた。
カラカラに渇いた口の中、存在しないはずのつばを何度も飲み込む。

(こなた、みゆき、もしかしたら私、ここで死ぬかもしれない。
でも、絶対にこの世界を守ってみせる!
私の命に代えても!)

目を硬く閉じ、三回大きく深呼吸。
くわっと目を見開き、ついに戦場へと足を踏み出そうとしたそのとき!

「ちょおっと待った、かがみ!」

「柊姉、まだ行ったらあかん!」

聞きなれた声がかがみを止めた。
思わず振り返るとそこには、ここにいるはずのない人物の姿を見ることに。

「なっ……!」

信じられないものを見るような目でかがみがみつめる、ふたりの人影。
それは、毎日の生活の中でとても見慣れた姿であった。

世界史の教師にしてつかさの担任、黒井ななこ。
そして、つかさとの共通の友人であり、いちばんの親友。
誰よりも今、もっとも会いたいと願っていた人物。

泉こなた。

ふたりの顔を見たとたん、かがみの頭の中が真っ白になる。
しかも、それまでからだ中を暴れまわっていた恐怖も、どこへやら。
それまでの悲壮な決意も、かき消すように消えてしまったのだった。

「なんでこなたと黒井先生が?」

かがみは叫ぶように問いかける。
だかその質問に答えたのは、こなたでもなければ黒井でもなかった。
472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:38:09 ID:iEtCZTbs
久しぶりに支援
473闇祓う光明 ◆3VXHogAxPHX5 :2010/07/16(金) 23:39:00 ID:PDJ6v39U
「ふたりとも、私たちと同じウィザードよ」

声が聞こえてきたのはかがみの背後。
声の主は姉のいのりであった。

「マジなの? いのり姉さん」

いのりは無言でうなずいた。

いのりの言葉に一瞬固まったようになるかがみ。
だがすぐに、あきれ顔でため息ひとつつく。
ガチガチに緊張していたのが情けなく思えて仕方なかったからである。

そして、ポツリと一言。

「で、これからどうする気?」

かがみの質問にこなたが答える。
初陣のウィザードを単独行動させるわけには行かない。
自分は初心者のウィザードの面倒をよく見ている。
だから、自分たちといっしょに戦って欲しい、と。

「それ、いいかもね。つかさは私が見てるし、そうしなさいよ」

こなたの言葉を受けて、少し早口で話すいのりの笑顔が硬いことに気づく。

「いのり姉さん……」

かがみはここにいたってようやく理解した。
自分が姉にどれだけ心配かけていたかということに。
苦笑しながらこなたたちに話しかける。

「わかった。こなた、黒井先生、行きましょ。いのり姉さん、つかさをお願い」

いつになく素直に言葉が出てくる。
そしてなにより、安心して一歩を踏み出せるようになった。
これでもう大丈夫だ、そんな言葉が頭に浮かぶ。

「オッケー! んじゃ、経験値稼ぎに行きますか!」

「こんなときまでゲーム感覚かよ!」

いつもの調子で言葉を交わす、こなたとかがみ。
ふたりの間には笑顔があった。
それは、かがみが平常心を取り戻した証でもあった。



直後、いつにない真剣な表情でこなたは言う。

「じゃ、私がいちばん前で先生はすぐ後ろに。
かがみは少し離れたところからついてきて」

ふりかえることなく、近くに現れたキマイラへと走り出すこなた。
そして、あわてることなく走り出す黒井。
ためらいのない行動が、ふたりが戦い慣れしていることを示していた。

結果、初陣のかがみだけが一呼吸遅れて走り出すことに。
474闇祓う光明 ◆AMGzaMTUzh9o :2010/07/16(金) 23:39:53 ID:PDJ6v39U
とはいえ、そのことは予想済みだったのだろう。
少し開けたところで周囲を見渡し、こなたはかがみの来る方向をふり返る。

「先生の指示に従って弓を構えて! 言われたとおりの術の名前を言えば効果が出るから!」

大声で追加の指示をした後、右手に走り出す。
目指すはすぐ近くに現れたキマイラ。
だが、その手には何も持っている様子はない。

かがみは思わず息を呑んだ。

キマイラの鼻先と言っていいくらいまで近づくこなた。
その小さな姿がさらに小さくなる。
どうやら、跳び上がるべくからだを縮めたようである。

「はあああっ!」

そして気合一閃、キマイラめがけてジャンプする!

ドゴッ!

赤く輝く拳が、鈍い打撃音を放つ。
それはまるで、炎の塊がぶつかったようであった。

グォォォ……

悲鳴をあげ、あっという間に姿を消していくキマイラ。
殴りつけた反動を利用し、クルリと回って着地するこなた。
その予想外の強さにかがみは驚くばかりであった。



「みきさん!」

キマイラのいたあたりを走り抜け、みきに走り寄るこなた。
みきはこなたに気づくと、いつにない真剣なまなざしで話しかけてきた。

「気配は本殿のあたりみたい。戦いながらだからこれ以上は探れなかったわ」

そしてため息ひとつついて、近づいてくるかがみに言葉をかけた。

「細かいことはあとで話してあげる。だから、まずは生き延びなさい、この戦いを」

みきの言葉に、かがみは力強く、無言でうなずいた。

わずかな時間で交わされた、母と娘の会話。
だが、その一瞬の隙をキマイラたちは見逃さなかった。
かがみの背後、少し離れたところから1体のキマイラが出現。
直後、大きく開かれた口に生まれる紅蓮の炎。

「柊姉、そいつに『ダークバリア』や!」

「はっ、はいっ! 【ダークバリア】!」

かがみの目の前に闇の塊としか表現のしようのない黒い球体が現れた。
直後、キマイラめがけて勢いよく飛んでいく球体。
かがみに向けて放出された大量の炎を吸い込みながら。
475闇祓う光明 ◆RRGGMcNS7NFT :2010/07/16(金) 23:40:54 ID:PDJ6v39U
炎を吐いた直後にできる、ほんのわずかなスキ。
それを見逃すことなく、こなたが走り寄る!

「はあああ…… はあっ!」

直後、赤く輝く拳を叩きつけられたキマイラが悲鳴をあげる!

グェェッ!

背筋の凍るような叫び声。
キマイラの倒れる重い音もつかの間、まるでSFX映像のようにその姿は薄れていく。
そこにはまた新たな宝石が転がることになった。

その間にも黒い球体は、夜の闇に溶け込むように消える。
かがみはその光景に目を奪われていた。

「ようやった。けど、呆けとるヒマはないでえ。次のお客さんや!」

「はいっ!」

元気よく答え、かがみ。
だがその直後、そこにいる全員が意外な光景を目にすることに。

「な、なんだ?」

「こ、これはいったい?」

蓮司やみきたちのどよめく声をよそに、周囲は静まりかえっていた。
まるで、そこでは何も起きていなかったかのように。

「逃げた…… だと?」

ナイトメアが信じられないといった表情でつぶやく。
なぜなら、周囲に満ちていたエミュレイターの気配が、拭い去られていたのだ。
完璧といっていいほどに。

優位な状況を放り出しての逃走。
ふたりの増援を考慮に入れても、それはあまりにも不自然であった。

「……」

巨大な武器を小脇に抱えたまま、無表情でたたずむ緋室灯。
ただひとり、冷静に状況を分析しているように見えた。

だが、ナイトメアがその表情に気づいていたら、驚いていたはずである。
なぜなら、灯が焦りの表情を浮かべているからである。
つきあいの長い者だけが、ようやく読み取れる程度にうっすらとではあるが。

西の空でただひとつ輝く満月の下で、全員が途方にくれていた。



鷹宮神社から離れること数キロの地点の、はるか上空。
白いローブを着た人物が、そこにはいた。

いた、というより飛んでいる、と表現するのが適切であろう。
翼を持たないにもかかわらず、空中に浮かび、どこかへと移動していたからである。
しかも、かなりのスピードにもかかわらず、ローブが大きく揺らぐ様子はない。
まるで、低予算の合成シーンを見ているかのように。
476闇祓う光明 (7/8) ◆xdkSnUtymI :2010/07/16(金) 23:42:00 ID:PDJ6v39U
おそらく、目にした人全員が『何かの見まちがえ』ですませそうな光景が、そこにはあった。

フードをすっぽりとかぶっているため、素顔はわからない。
だが、わずかながらに覗く口元が、小柄なその人物がかなり若いことを示していた。
もちろん、こんな場所に特別な装備なしに存在できる者が、ただの人間であるはずはない。

白いローブの人物は、先ほどまで鷹宮神社でキマイラを操っていた張本人である。
魔術を駆使し、何人ものウィザードと戦っていたはずのその姿に、疲れや焦りは見えない。
汗一つなく、その軌道によろめくところがないところからみても、まだまだ余力を残しているようであった。
戦いを打ち切った理由は他にある、と言わんばかりに。

不敵にも口元にかすかな笑みを浮かべながら、その者はどこかへと飛び去っていった。



その姿を見つめる姿がひとつ、その足元とも言うべき場所にいた。
アイドリング状態のアメリカンバイクにまたがり、口元をガーゼのマスクで隠した、特攻服姿の長髪のレディース。
はるか上空を見上げ、獲物を見つれた獣の目で微笑み、ドスのきいた声でつぶやく。

「面白そうなことをしている奴がいるわね。
ま、今回は、高みの見物をしゃれこませてもらおうかしら。
ふふふ…… 柊蓮司たちが右往左往する様が、今から楽しみねえ」

小声でくぐもった笑いを漏らし、視線を前方に向ける。

「 ……さて、と」

スロットルを回してエンジンをふかし、クラッチをつなぐ。
少し前にかかってきた要請に応えるべく、彼女はバイクを走らせはじめた。

要請の内容は、テレビ番組「らっきー☆ちゃんねる」で起きたトラブルを解決してほしい、というものであった。

「小神あきらと白石みのるが番組の収録中に大喧嘩、ねえ。
あいつら、ちょおっと調子に乗りすぎてるみたいだし、たっぷりしてあげなくちゃね、お仕置きを」

よく知るものが見たら、震え上がるような笑みを浮かばせてアクセルを開ける。

彼女の呼び名はゴットゥーザ、それなりに顔の広い女性である。
そんな彼女の正体はベール=ゼファーの現身(うつしみ)のひとつ。
戦うことより、表界(ひょうかい)を観察することを目的として作った分身である。

結果として顔が広くなっていた彼女は、いろいろと頼み事をされることが多い。
今回の連絡もそんな依頼のひとつであった。

連絡をよこしたプロデューサーに対しての貸しを増やすのも、悪くないかもしれない。
そう考えながら彼女はマシンを駆り立て、夜の闇へとまぎれていった。



コト……

静寂に満ちた柊家の広間に、小さな音が響く。
すっかりぬるくなったお茶を飲み干したかがみが、湯飲みを座卓に置いた音だ。
その視線の先には、先ほどまで境内にいた関係者が全員そろっていた。

もちろん、先ほどまで手にしていた物騒なものはしまった上でのことである。
さらにナイトメアは、戦闘をはじめる少し前まで着用していたライダースーツに、着替えさせられていた。
そうしないとつかさがおびえて話がはじめられなかったからであった。
477闇祓う光明 (8/8) ◆xdkSnUtymI :2010/07/16(金) 23:42:59 ID:PDJ6v39U
かがみとつかさは今、ウィザードとエミュレイターの歴史を聞かされていた。

自分たちの世界が非常な危険と隣り合わせであること。
平穏な暮らしを守るためにウィザードがいるのだということを。
ふたりには、ウィザードになるための素質があるということを。

「 ……そう、だったんだ」

「えっと、なんだか話が凄すぎて」

戸惑いの抜けない顔で、みきを見つめるかがみとつかさ。
だが対照的に、ふたりを見つめるみきのまなざしは、とても真剣なものであった。

「信じてくれる?」

不安そうに問いかけるみきの顔を、かがみはしばらく見つめる。
やがてため息ひとつついた後、苦笑いをしながら答えた。

「目の前であんなことがあったんだもの、信じないわけにはいかないでしょ。ねえ、つかさ」

「ふぇっ !? う、うん」

不意に声をかけられ、戸惑うつかさ。
その様子をよそ目に、みきはかがみとつかさに問いかけた。

「で、どうするの? もし、これ以上関わりたくないというのなら、それでもいいわよ」

「えっ?」

「別にあなたたちが無理して戦う必要はないの。
ウィザードは大勢いるんだし、『あなたたちでなければ』ってわけでもないのよ。
映画や小説じゃないんだしね。
それに、いざって時の足手まといになられても困るのよね」

みきの真剣なまなざしに、かがみとつかさは言葉に詰まる。
いきなりのことで頭がついてきていないのだ。

「……」

うつむき、考え込むふたり。
重苦しい沈黙が広間に満ちる。
どう答えていいのが、考えがまとまらないのだ。



「やるわ!」

「うん! 私も!」

ふたりの力強い宣言が重苦しい空気を吹き飛ばし、かわりに安心と不安の入り混じる空気があたりを満たす。
みきたちは顔を見合わせると、かがみとつかさに告げた。

「わかったわ、でも、すぐに実戦ってわけじゃないから安心して。
しばらくは学校から帰ってきた後で特訓ってことになるわ。
ある程度力を使いこなせるようになってもらわないと、足手まといにしかならないんだし。
それに、あなたたちの能力がわからないと、誰と組み合わせるのがいいかわからないのよ。
あななたちはこなたちゃんと組みたいんだろうけど、それを判断するのはもうちょっと後、ということになるわね」
478 ◆xdkSnUtymI :2010/07/17(土) 00:02:15 ID:PDJ6v39U
さるさんの馬鹿……orz


今夜は以上です。
トリップのつけ方をミスしてしまい、申しわけありません。

リアルで色々あったんでだいぶ間があきましたけれど、
完結まで持っていくつもりですので今後ともよろしくお願いいたします。

ところで、まとめさんを読んでたら学園世界スレっぽくなってて
自分が場違いのような気がして仕方ありませんw


第七話が書きあがったら投下しに来たいと思います。
では!
479名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 08:19:10 ID:1eWqhEG6
GJ!
続き楽しみにしてます。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:53:13 ID:DngrLQn+
GJ!!
うおおおお!続ききた―!
待っておりました!次回も待ってます!
481名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 03:00:05 ID:q8xQdj8/
ちょwwwゴットゥーザ様www
482 ◆xdkSnUtymI :2010/07/21(水) 22:39:30 ID:oQLrI2Bw
>>479、>>避難所268
ありがとうございます。
完結まで頑張ります!

>>480
お待たせしました!
覚えててくださって、こちらも感激です!

>>481
後藤邑子さんが、両方に出演されてることからキャスティングしてみましたw
まあ、らき☆すたの方は半ば本人役でしたがw
483名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/24(土) 23:19:09 ID:pwQCv8QD
ふと、学園世界で修学旅行と言うネタが頭をよぎった。

京都とか北海道とかはないから行き先はどっかの学園都市とか学園海とか辺境学区とかだろうか。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 10:44:17 ID:mCCiGyFY
>>483
おっと、そいつは既に>>275が通り過ぎたネタ振りだぜ?

むしろ時期的に、学園世界の夏休みで一体どんな騒動が起きるか考えようぜ?
とりあえずはデートや海や嫉妬や世界の危機やデスマーチあたりから
485名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 11:11:55 ID:ODutdjzk
そういや海の家でアイス売りのバイトして稼ぐ翠とかあったな
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 11:28:33 ID:kl6Rixks
ところで、学園海の設定ってどんなだったっけ?
保管庫にはないんだけど。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 12:06:02 ID:qDXn9Ku7
ふと心に浮かんだ言葉

学園飯田線の旅
488名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 17:53:42 ID:GFgVpfUa
飯田線か。

撮影旅行に行ってとても人前では言い出せんようなしくじりをしそうになったのも懐かしい思い出……

鳥坂「というわけで、撮影旅行に行くぞ」
上条「……何で俺が……」
夜見「脈絡のない人選だな」
フミ「えーと……ライブRPG?」
489名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 19:15:27 ID:8+saxMZz
夏といえば肝試し。

…そして「夜中に1〜2人で墓地などの幽霊が出るといわれる場所に向かって散策する」という内容を聞いて、
対アンデッド向けの訓練か何かと勘違いしてフル武装(対アンデッド)して現れる冒険者学校の生徒という馬鹿ネタが頭をよぎった。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 19:55:35 ID:rWNq5oK3
>>488
鳥坂先輩、やっぱり学園世界にいるんだな。
市役所職員のはずなのに。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 21:00:07 ID:7qaf/yhD
>>490
柊(正式には学生じゃない)とかノーチェ(まったくもって学生じゃない)とかリンカイザー(学生じゃない)とかユーノくん(学生じゃない)とかがいるんだから別に学生じゃなくてもいていいと思うが
492名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 22:22:35 ID:GFgVpfUa
鳥坂先輩がいる事に違和感が生じる余地があったのですか。奥が深い。

専門学校に入学したけど通ってはいないたわば先輩はどうだろう。
493490:2010/07/25(日) 23:39:25 ID:rWNq5oK3
違和感は感じてないんだ。「ああ、やっぱり」と思っただけで。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 23:52:29 ID:7qaf/yhD
「違和感が生じる余地」とか言ってるところを見ると「違和感? 感じるの? そんな余地あるわけないじゃん(笑)」って言ってるように見えなくもないんだよなー……
ってか、そう言ってると感じる余地のある発言だと思いますが?
495名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 00:57:24 ID:LghZDOhM
学園山じゃイベント作れないかな?
496名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 16:46:40 ID:rKdUIhnC
怖いお兄さんその他が管理・監視してる学園海の砂浜と違ってモンスターとかがやばそうだな<学園山

まあ、そういう意味では錬金術師とか金持ちとかに雇われた冒険者ガイドってネタはいけるかも。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 19:45:12 ID:WuGCVd4k
学園山脈は人外未踏の地なんだろうな。
謎の古代文明の遺跡があったりとか?
498名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 21:08:55 ID:rKdUIhnC
>>498
そらおめえ学園があるんだろう。学園山脈ってくらいだから。

…実際辺境学区並に僻地に転移した学園とかは転移後しばらく発見されないでサバイバルしてたりとかなw
499名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 21:34:16 ID:cCNeLAZF
山のような学園があったな。
エレベーターが止まってて「エレベスト」と呼ばれている……

後、札幌駅の真上にあって冬山の如き偉容を見せつける高校も。
500名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 21:37:26 ID:cCNeLAZF
……書き込んでから気がついたが、学園世界には札幌駅があると言う事か。
でも、JRタワーは無くてまだそごうなんだろうなぁ……劇団四季がいたりして。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/26(月) 22:32:23 ID:2qH9vixB
誰も言わないみたいだから言うね?

とっとと自分で文章書いて出してから言えよ
お前の妄想ぐだぐだされても盛り上がらねーんだよ
いたりして、じゃねーっつーの。書いて出してから物いえよ鬱陶しい
502名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/27(火) 17:48:09 ID:Qksh4qWe
>>501
あんたの方が鬱陶しいです><
503名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/28(水) 13:27:16 ID:IMrDAqhG
>>501
こういうレスが過疎る原因の一つなんだが、当人は正義の味方気取りというかぶっちゃけ自治厨だから自覚がないっていう

個人的には、雑談から出てくるネタを絡めてSS書くのが楽しいんだけどなあ
いま書いてるのもそういうのだし

……それにしても良い言霊だな、学園山脈
こう、妄想もとい夢が実に膨らむ
504名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/28(水) 18:24:10 ID:+EGEGjIn
この空気の中、投下をするのは非常に苦しいんだけど……

勇気を出して投下。
注意事項・かなりアレな内容です。苦手な人は注意。
「はあ……」

 井上準は、公園のベンチでまた一つため息をついた。
 待ち合わせの相手はまだ来ない。
 約束の時間はもう過ぎているというのに。
 彼は今、一つの恋をしている。
 彼女のことを知ってから、彼の人生で出会ってきた女性の誰よりも輝いていた。

「はあ……」

 また一つため息をつく。これで何度目のため息になるのか、もう数えるのも億劫になってきた。
 ふと、彼の中で不安が立ち上る。
 もしかして、俺はすっぽかされたのか。
 待ち合わせる相手のことを考えれば、それも容易に想像できる。
 だが、あえてここは、もう少しの間だけ、このベンチで待つことにする。

「はあ……」
「何辛気臭いため息なんてついてるのよ」

 ふと、可憐な少女の声が準の耳に届いた。

「っ……」

 顔を上げる。そこには彼の待ち人が、不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。

「待たせたわね」
「い、いや、全然問題ない……」

 準は取り繕うように相手の少女――ベール・ゼファーに言う。

「それで? このあたしを捕まえて話があるということだけど、一体何?」
「あ、ああ、すまん……」

 準は自分を落ち着かせるように、一つ、また一つ深呼吸をする。
 相手は魔王なのだ、呑まれるわけには行かない。

「こんなことを他の誰にも頼めねえ、あんたにだけしか頼めないんだ」
「へえ……」

 ベルは目を細める。
 彼女の予想では彼の頼み、例えば誰かの暗殺、謀殺。
 こんな後ろ暗い依頼なのだろう。
 それも楽しそうだ。ここしばらく退屈していたが、ちょっとは面白くなる予感に、ベルは心を躍らせる。

「頼む、俺に……」

 さあ、言え。お前の願いを。
 悪魔的な思考でベルは準の次の言葉を待つ。

「俺に、シアースたんを紹介してくれ!」



 その日。
 学園世界の公園で、謎の大爆発が発生した。
 幸いにも被害者は一人で済んだのが奇跡的だったが、次の日に、やけに不機嫌なベルとそれをなだ

めるアゼルの姿が目撃され、ウィザードは何らかの関連性を疑った。
「あー、畜生、やっぱだめか……」

 病院のベッドで準はぼやく。

「お前は何考えてるんだ?」

 見舞いに来た柊は、あきれたようにそう準に言う。

「シアースに一目ぼれして、そいつを紹介してもらおうだなんて、呆れて物が言えねえよ」
「あんたに何が分かる! 小さい子だぞ! しかもずっと小さいままなんだぞ! 最高じゃねえか!


「分かりたくねえよ」

 冷ややかな視線を向けて柊は、花瓶に花を添えた。

「あー、俺の理想なんだけどなあ、シアースたん……」

 惜しそうに準はまた呟く。
 柊は、今度こそ準を虫を見るような目を投げかける。

「じゃ、俺はもう行くぞ」

 もうこれ以上ここにはいたくない。柊は無言で病室を後にした。
 しかし、話はここで終わってはくれなかった。
準が全快して、しばらく経ち。

「今度は俺に何のようだ?」

 柊はうんざりしたように、待ち合わせた準に語りかける。

「なあ、極上生徒会にノーチェ、って子がいるだろう?」
「……何だ、まさかノーチェにお近づきになりたいとか、そういうんじゃないだろうな」
「ああ! 一つの恋が破れた今、俺は新しい恋に生きることにしたんだ!」
「じゃあな」

 柊は踵を返して立ち去ろうとするが、その手を力いっぱい掴みあげて、準は無理やりにでも彼を引き止める。

「頼む! 他に頼れるのは先輩くらいしかいないんだ! 俺の精一杯の頼みを聞いてくれ!」
「離せ! もうお前と関っていられねーんだよ!」

 柊は背中を向けてこの場を立ち去ろうとする。
 しかし、準はその背中にすがり付いて、柊を逃がそうとしない。

「頼む、生徒会の接点は、もう先輩だけしかいねえんだ! あんたを男と見込んでお願いしてんだよ!」
「そんなことで俺を頼るなああああああああ!」

 柊の心からの絶叫が公園に響いた。それは近隣にまで届いたのだが、「ああ、いつもの柊だ」と誰もが納得し、それ以上の騒ぎになることはなかったという。
あー、ノーチェ、ちょっといいか?」
「はひ?」

 アイスを加えてご満悦なノーチェに、心底疲れきった柊が呼び止める。甘いアイスを口の中に流し込み、そのリストラ直前のような顔をした柊に、いぶかしげな顔を浮かべる。

「どうしたでありますか、そんな公園のブランコで黄昏てるようなサラリーマンのような顔をした蓮司ははじめて見るでありますよ」
「俺はリストラされた親父か!? じゃなくてだな、あー、その、なんだ……」
「歯切れが悪いでありますね。はっきり言うであります」
「……お前に会いたいって、やつがいるんだが……」
「はい?」
「おい、出て来い」

 柊が投げやりに呼びかけると、緊張した面持ちの準が、どこかで買ってきたのか、花束を抱えて姿を現した。

「は、はじめまして、ノーチェさん! 俺、川神学園の井上準って言います!」
「川神? ああ、あそこでありますね。なんか変わった校則があるという話は聞いたことがあるでありますよ」
「はい、知っててもらって光栄です!」

 裏返った声で元気よく話す準だが、そんな様子の彼に、柊は肩を落としてこれまでの経緯を思い出す。
 結局あの後、3時間に渡って、彼に幼女の素晴らしさをとうとうと語られ続け、いい加減心が荒みかけた柊が根負けして、ノーチェを紹介する段取りを取り付けると約束し、タイミング的に重なった今日まで、ひたすら電話による催促が続き、柊の疲労はピーク寸前だった。
 ようやくこの心労が報われる。ついでにこいつからようやく解放される。それがたまらなく柊には嬉しかった。

「その井上準が、一体なんでありますか?」
「はい! 今日は是非、ノーチェさんに聞いていただきたいことがあるんです!」

 準はこの日のために用意した台詞を頭の中で反芻し、深呼吸して精神を落ち着かせる。
 花束を差し出して、準は溜めに溜めた言葉を一気に解放する。

「ノーチェさん、俺の妹になってください!」
「……はい?」

 ぽかんとするノーチェ。

「一目見たときからずっと貴方が俺の理想の妹像と重なるんです! お願いします! 一度でいいから俺のことを“お兄ちゃん”って呼んでください!」
「……蓮司、どういうことでありますか?」
「どういうことも、そういうことだよ。これ以上俺に言わせるな」

 視線を合わせずに柊はそう言う。
 準の熱い視線に、薄ら寒いものを感じたのか、ノーチェの全身の毛が総毛だった。

「う、うひいいいいいいいい! き、気持ち悪いであります! 寄らないでほしいであります!」

 ノーチェは力いっぱい準を突き飛ばし、猛ダッシュで逃げ出した。突き飛ばされた衝撃で頭を打ったのか、準はその場で気を失っていた。

「……あいつも災難だよな」

 もう見えなくなったノーチェに、同情の視線を向ける柊だった。



 その後、準の猛烈なアタックは延々と続き、大人しいノーチェが完全にキレて魔法で彼を追い払うまで、ノーチェは夜も眠れない日々が続いたという。
 そして、新しい恋を見つけたと柊にまた別の相談が彼に寄せられるのだが、今度こそ柊は彼をグーで張り倒した。 

畜生、ちょっとおかしいところが出ちまった。

投下終了。こんな腐った内容で申し訳ない。
それと一つお願いです。まとめに乗せるときには、こっそりでいいのでおかしくなった箇所を修正して?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/28(水) 22:11:42 ID:dSG1YCXZ
乙!
いやあ、実にひどい話だな!(褒め言葉)
511名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/30(金) 06:07:17 ID:AvPiqoUU
相変わらず酷いオチだwGJ。

そういえば魔王が自分と相性のいい特定の学園にピンポイントで現れるとか結構ありそうだな。
パッと思いつくのはメイド養成学校に現れて「私が本当のメイドというものを教えてあげます」というエイミーとか。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/30(金) 21:53:43 ID:sYlpKJGj
大体分かった。

札幌駅の真上の学校をシメたはいいが、他に駅がないので列車が来ず、ちっとも楽しくないリオン=グンタか。

「……そんな理由でか。蓬莱学園の二級生徒を買い漁ったのは」
「鉄道工事と言えばタコ部屋ですから」
513名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/01(日) 01:39:04 ID:VcqiefnI
>>512
……鉄道管理委員会を乗っ取れよ
その方が楽しいと思うぞ
514名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/01(日) 02:32:36 ID:ftqadRck
ヒント:学園世界のリオンは一般人or謎の教師(どちらもそんなに戦えない)
ヒント2:学園世界で鉄道や線路の権利を持ってる学園にはまず金では対抗できない(例:白皇・麻帆良・学園都市)
515名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/01(日) 10:05:05 ID:n2TTfusH
>>514
休日の不思議探索のときは必ず電車の走ってる学園都市を提案する群田さんw
516名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/10(火) 17:44:46 ID:TdqumQPF
学園山脈…その中には学園高原や学園湖とかもあるのだろうか?
517名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 12:07:10 ID:Do1W4DW+
まぁ、あるとしたら遠足とかできるわな

もともと学園世界のイメージも各人によるところが多いし、SSの一つでもないとちと共有イメージにはなりづらいと思うけど
518名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 12:38:37 ID:99RsW8Ap
>>516
高原にある学園や湖の上にたたずむ学園があればいけるんじゃね?
具体的な名前は出てこないけど、まあ、バラムの動くガーデンとかでかい化け物の上にあったりとか変な立地の学園も多いからね。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 17:39:26 ID:tKkWe69F
採取地も敷地内に入る落ちたアルレビス学園も海や山とかあるな
520名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 23:01:01 ID:M0KkmMrw
まぁイザとなればダンジョン設定でそこらへんはいくらでも捏造可ではあるけどね>山や高原や湖
ほら、某ダンジョンゲーだと洞窟だけじゃなく森とか丘とか城とかダンジョン扱いだったりするし
521名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 23:27:48 ID:Do1W4DW+
ダンジョンだとできるにはできるけど、もうちょっと安全にピクニックとかできる場所も必要だと思うんだがなー……
異能者だけが学園世界にいるわけでもなかろうに
522名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 23:44:14 ID:5FDxTT69
小学校の裏山の一本杉ですね、わかります。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 00:23:57 ID:JB/32b4+
>>521
忍たま乱太郎とかいいかもね。
あの世界の忍者何気にあんまり現実離れしないリアル志向だし、見習いの訓練用の山ならそこまで酷いことにはならないだろう。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 00:48:22 ID:7elNoncO
>>523
斎堂とかマモルあたりが修業時代のトラウマ抉られて酷いことになる悪寒w
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 22:20:09 ID:kZQG+6pG
>>522
でも「裏山」って、ゴルフ場建設候補地になったり、無敵砲台が設置されたり、魔法の石像が落ちてきたり、
タイムホールが繋がったり、宇宙船が着陸したり、メガネザルの化石が見つかったりと危険イベント満載じゃないか。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 22:34:11 ID:0sTZZjO0
それ狙って言ってんだろ<裏山

まー、安全な遠足先とかないと困るし、それとは別にならあってもいいんじゃね?
527名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 22:45:01 ID:5A7Jn0oc
『二十四の瞳』や『機関車先生』などの学校なら余所の児童生徒にゃピクニック気分。

因みに自分の通ってた小学校の一つは町外れの山の中で、近くに墓場があった。

まあ、どんなに危険が危なくても、校舎が泥炭地にあるせいで傾いているよりはずっとまし(実話)。


 【万色学園から目を逸らして】
528名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/12(木) 23:40:12 ID:AhNjKPex
RPGの超序盤にありそうな、一般人数人で楽に対処できる程度の危険レベルという設定のダンジョンなら
安全なピクニックうんぬんはまぁ解決しそうな気も…
529名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/13(金) 00:35:54 ID:oJidjaoT
ヌルレベルのダンジョンの内部に即死レベルのダンジョンがあったって、何もおかしくはない
530名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/13(金) 00:43:59 ID:zDMXb8XQ
だから、一般人しかいない学校どうすんだっつってんだよ
なんでそう殺したがるんだ、ちっとは舞台としてマトモなところを作ろうって考えは働かないわけですか
531名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/13(金) 02:05:30 ID:whez8YSN
いやまあぶっちゃけ本気で安全なとこ出したいなら特に何の注釈もいれずに「山に行きました」とかだけ書けばそれで済むし……
532527:2010/08/13(金) 14:24:43 ID:gZ3gec+5
校舎の傾きが名状し難いので夕方に首無し幽霊がうようよする程度なら、無力な生徒でも何とかなる(実話)。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 14:27:30 ID:3p84Hc3r
ここは発想をかえて柊達が別の世界に行くんじゃなくて別の世界から何かが来るってのはどうよ
例えばある日長野の山中で幻想郷が発見されるとか、そんな感じで
534名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 15:26:46 ID:Qvxcj5z4
発想を変えるも何もそもそもここってそっちも扱ってるはずだけどな>別世界から来訪
535名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 19:42:00 ID:3p84Hc3r
そーなのかー
536名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 20:39:39 ID:aPQCEj5V
>>535
わかったらとりあえずsageような

しかし東方とナイトウィザードねぇ
プリキュアクロス並に完結しないものの代名詞だよな。作品数の少ないこのスレで、両方とも複数あるけど一つたりと完結どころかキリのいいところまですらいってない

それはそれとして、全域を持ってきてクロスさせるのはさすがに至難だぞ
一人からグループあたりでファージアース入りさせた方がまだ現実的だ
学園世界的な手法を使えば幻想郷全域を〜とできなくもないが、ぶっちゃけ東方に詳しくてクロスで二次書こうって奴はこのスレにはそこまでいないだろう

それはそれとして
・あかりんと普通の魔法使い
・ノーチェと悪魔の妹
・エリスと風祝
・流鏑馬弟と冥界の庭師
・柊とバカルテット

あたりは普通に面白くいけると思う
537名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 21:57:00 ID:Qvxcj5z4
東方はキャラの組み合わせ的なキャッキャッするだけのSSは数多いけど
異変というか戦闘というか、STG部分をメインとした長編SSとなると数がグッと減るし
正直、戦闘がメインになりやすいNWとのクロスは茨の道になりそうな気がするなぁ
538名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/16(月) 22:42:06 ID:ywx73N5Q
博霊大結界はルーラー八雲紫コア博霊の巫女な月匣だったんだよ! とかなトンデモネタは思いつくがそれを文章に纏めきれない
539名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/17(火) 20:06:50 ID:EJgx+vq0
あげ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/21(土) 15:56:53 ID:dOMtFn8p
俺の場合は、博麗大結界は世界結界の『常識』によって、消えていく定めだった妖怪や非常識な存在が生きていける。常識外の存在も総てを受け入れる最後の楽園…とかは考えたな
541装填完了―――:2010/08/28(土) 19:45:07 ID:yT0grtbK
ばんわー。予告から二ヶ月遅れの予告ブツ、JGCの一週間前になんとか完成したZE!
というわけで大盤振る舞い二本立て。投下開始します!

注意!
※学園世界ものの短編二本立てです。
※一つ目はクロスオーバーカップリング要素に見えなくもないので、そういうのが苦手な方は今すぐIDをボッシュートしてください。
※作者の過去作を読んでいるとちょっと面白いかもしれません。
542夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:46:10 ID:yT0grtbK
 夢だ。
 これは夢だ。


 鉄の打ち合う音。空気の爆ぜる音。肉を引き裂く音。
 さっきまで響いてた音たちは嘘みたいに消えうせて。
 今聞こえるのはただの呼吸音。目の前のぼろぼろのコートを着た、傷だらけの背中をこっちに向けてる血まみれの青年の荒い息だけ。
 鉄を溶かしたような、赤い色を思わせる赤錆じみたニオイ。
 そいつはこちらを振り向くと、一つ大きな息をついた。
 どこか安心したような、場違いなため息。
 その仕草が、どうしようもなく胸を揺さぶった。


 夢を見ている。
 この世界に来て何度目かの同じ夢。
 展開はまったく同じで、この先どうなるのかも理解してしまっていた。


 男はこちらに近づいてくる。
 子どもの相手が得意なようにはとても見えないけど、それでもこっちを安心させようとしているように片膝をついてしゃがみこんだわたしと目線を合わせてきた。
 その不器用な一生懸命さを見て、体中のが血が一瞬滞ってから強く送り出されたみたいに、どくりと強く脈打った。


 この先は見たくないのに。
 何度だって見るこの先の光景は、どうやったって変えられない。
 何度も何度も見せつけられる。
 それは―――この夢がきっと、『現実にあった』ということが原因で。
 この夢は自分の記憶に焼きついてしまったことを何度も繰り返すことで整理しようとする心理機構の一種。
 つまり、この夢はわたしがこの光景に何かしらの処理しきれない感情を抱いているという証拠でもある。
 そんな状況判断ができても、この先を 繰り返し(リピート)せずにすむわけでもない。
 見たくない。
 目をそらしたい。
 こんな夢を思い返すこと自体が不快だ。


 そしてその夢は、『いつもの通り』に赤錆色に染まった。


543夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:48:54 ID:yT0grtbK
 ***

 間の抜けた鐘の音が聞こえる。
 彼女が薄く目を開ければ、そこにはいつもの光景があった。

「おいベッキー、授業終わっちゃったぞ?」
「抜き打ちテストで一時間終えちゃうとか、教師としてどーなのよ」

 そう声をかけてくるのは彼女の教え子にして年上の少女たちだ。
 年上の少女、である。間違ってない。年上、だ。
 彼女―――レベッカ宮本は、弱冠十歳にして桃月学園高等部で教鞭をとっている教師なのだった。

「……別にいいだろ。だいたいこの辺はつまづきやすいんだから、理解度をはかりなおして重点をおく部分をふるいにかけるのに必要なことなんだぞ」
「もっともらしいこと言ってるけどテスト中に寝てることの言い訳にはなってないぞ」

 そうツッコむのは丸眼鏡のスタイルのいい少女、教え子の一人で最近は桃月学園以外からも『(伊達眼鏡の)魔女』の異名で呼ばれるようになった橘玲。
 その隣から、額を出したヘアピン娘こと上原都が眉根を寄せて玲に続く。

「どうしたのよベッキー。最近ほんとにテストと居眠り多いわよ、健康に気を使った方がいいんじゃない?」
「そうです、健康第一ですよ宮本先生」

 どこかズレた意見でそれを援護するのは三つあみ学級委員の一条さん。
 いつもの面子が集まってきたな、と思うレベッカ。
 彼女たちは口ではこう言っているものの、抜き打ちテストの毎日が嫌というよりはレベッカの体調を心配している面が強い。
 レベッカは高校の教壇に立てる頭の良さがあるものの、体力面では確かに年相応……というより、同年代から見てももやしっ子のカテゴリに入る。
 体力もそれ相応のものしかないため病気や疲労には人一倍弱い。そんな彼女のことをよく知っている教え子たちは、レベッカが倒れたりしないか心配しているわけだ。
 もちろん、レベッカもそういう心配をかけているだろうという自覚がある。
 ため息をつくと、彼女は少女達に言い放った。

「大丈夫だよ。ネトゲからは足を洗ってるし、深夜の通販番組も見てないし、メンテナンスタイムの隙を狙ったサーバのクラッキングもやってないから」
「前二つはまだかわいいで済むけど、最後のひとつは子どものイタズラの例示にしては極悪すぎるわよ……」
「じょーだんだって都は本当に冗談が通じないなー。まぁともかく夜はちゃんとベッドに入ってるから平気だよ」
「それじゃアレ? 不眠症ってヤツ?」

 今の今まで近くにいたにも関わらず存在を明言されていなかった地味キャラポジの桃瀬くるみがそうたずねてくる。
 その発言に、テストで精魂尽き果てていたはずのアホ毛娘こと片桐姫子がレベッカにタックル的に抱きついた。

「ベッキーが不眠症っ!? これは一大事だよみんな。ベッキーの不眠症解消に向けて、さー、みんなで考えよー!」

 ネタ古いよ。

 閑話休題。
 ともあれ、レベッカはいつもの通りに姫子を強引に引き剥がすと噛み付き気味に言い放つ。

「はーなーせっ! だからなんでお前は不確定な情報でそこまでテンションがあげられるんだよ、落ち着け!」
「あぁん、ベッキーのいけずー」
「意味わかって言ってるのか、姫子」

 マホの二文字を浮かべながらはがされた姫子は、しかしすぐに復活すると立ち上がってレベッカにたずねた。

「不眠症じゃないの? でも寝不足は寝不足なんだよね?」
「夜遊びもしてないみたいだし、何か別に原因があるってこと?」

 くるみがそうつけたすと、レベッカはむむ、とうなる。
 どうせわかっていたことだ。絡まれた時点で逃げ切るのは不可能。女子高生のしつこさはこれまでのことで身にしみてよく知っている。
 それでも口に出すのはためらわれた。子どもじみた意地だとわかっているが、それでも口に出すことは目の前の少女達に知られてしまうということ。
 その事態だけはどうしても避けたかった。だから彼女は、核心は言わずに軽くだけ口にすることにした。

544夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:51:30 ID:yT0grtbK
「本当にどうでもいいことなんだよ。単にちょっと夢見が悪いってだけの話だ」
「ゆめみー? 夢美ちゃん?」
「誰よそれは」
「姫子(バカ)にもわかりやすく説明すると夢見が悪いっていうのは『よくない夢を見る』って意味の言葉だよ」
「んじゃ、ベッキーは最近ヤな夢見るから寝れないってわけか」

 姫子の素ボケに都がツッコみ、玲が補足してくるみがまとめる。
 くるみのまとめを聞いた『子どもらしい子どもが萌えポイント』な姫子がマホーンという擬音を上げてテンションを全開に跳ね上げた。

「もー! 怖い夢見て寝れないとかベッキーかわい過ぎー!! 萌え萌えだよお姉ちゃんはー!」
「いつからお前が私の姉になった! ていうか子ども扱いするなー!」

 再びレベッカを抱きしめてあふれんばかりのパッションを伝えようとする姫子。
 レベッカはそれを何とかかわすと、廊下に向けて走り出す。

「逃げなくてもいいのにー。お姉ちゃんが添い寝して嫌な夢なんか忘れさせてあげるってば」
「お前は本当に一回脳をテラフォーミングしてもらえ!」

 捨てゼリフを吐いてレベッカは全力疾走。姫子はそれを追いかけようと走り出し、

「だから、もーちょっと落ち着けって」

 と言いながら玲がその進行方向上にすっと出した足によって姫子は体勢を崩し、その勢いのままレベッカが閉めた戸に激突する。
 ガギゴっ! と、やけに人間からするには激しすぎて『みせられないよ!』的な音を立てて戸に正面衝突した姫子は、ずるずると戸とこすれあいながら床へと崩れ落ちる。

 一瞬教室を包みこむ沈黙。
 ぽつり、と一条さんが誰もが思ったことを口に出した。

「……殺人事件ですか?」
「いやいやいやいや! 事故だろ事故! ギャグ漫画畑のキャラはこの程度で死ぬほどヤワじゃないって!」

 必死にそう弁明する玲。その頬には冷や汗が伝っているところを見ると、彼女もこれほど激しいことになるとは思っていなかったのだろう。
 いやー、と都も頬をかきつつ続ける。

「まさかこれほど綺麗に決まっちゃうとはねー……どっちにしても過失にはなっちゃうんじゃないの?」
「玲ー、どうすんのコレ。クラス中が目撃者みたいなモンだよ?」

 くるみの言葉に振り向けば、C組のクラスメート全員がこちらを見ている。
 皆一様に暑くもないのに汗を浮かべているところを見ると、言い逃れができるような次元ではなさそうではあった。
545夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:55:07 ID:yT0grtbK
 玲はだらだらと汗を流した後、意を決したように拳を握り宣言した。

「―――もみ消すっ!」
「事件をですか? 死体をですか?」
「六号さんサラっと怖いこと言わないでっ!?」

 そもそももみ消せる類の事件ではないと思われる。
 ともあれ。そんな騒ぎの只中にあるC組の、姫子の頭が載っている戸ががらりと開かれた。

「こりゃ、何を騒いでおるんじゃお主ら」

 そう言いながら入ってくる白ひげをたくわえた老人。隣のD組の担任の御年おくつかもわからないおじいちゃん先生だった。
 目撃者が増えたことに頭を抱える玲、そんな玲の肩を叩くくるみ、嘆息する都、表情の変わらないただ一人の学級委員一条さん。
 C組の少女達の百面相を眺めていまいち状況のわかっていないおじいちゃん先生は、ふと足元に目をやる。
 そこには、C組いちのトラブルメーカー片桐姫子が倒れている。彼は手に持った杖でこんこん、と床を叩くと姫子に声をかける。

「これ片桐。そんなところで寝ておると風邪ひくぞい」

 へんじがない ただのしかばねのようだ。
 閑話休題。反応のない姫子にやれやれ、と彼は嘆息すると耳元でぼそりと呟いた。

「……片桐や、早く起きぬと玉ねぎと試験を同時に食らわすがよいかの?」
「いや―――!!!」

 マッホマホー、と勢いのいい擬音を上げながらがばりと立ち上がる姫子。
 そしてその頭上に立っていたおじいちゃん先生のあごにがつりとぶつかり、先生がひっくり返る。
 しかしそんなことは意にも介さず、彼女は大きく身をよじりながら叫ぶ。

「テストと玉ねぎだけは、テストと玉ねぎのダブルパンチだけはもう、もうイヤなの―――!」
「お、生きてた」
「よかったじゃない玲、殺人犯にならなくて」
「おめでとうございます玲さん」
「喜んでいいところなのか迷うところだな……」

 そう言いつつも内心ほっとしている玲は、とりあえず立ち上がった姫子に声をかけた。

「おい姫子、頭バグってないか?」
「あれ、玲ちゃん? テストの玉ねぎによる玉ねぎのためのテストは?」
「なんだそれは」

 と、そこでうまく再起動がかかったのか姫子はきょときょととあたりを見回す。

「そういえばベッキーは? 添い寝してあげないといけないのに」
「やめなさいよ嫌がってたでしょうが」
「宮本先生でしたら姫子さんが気絶してらっしゃる間に廊下を走っていってしまわれましたが」

 都がとがめるように言うものの、一条さんの一言でこうしちゃいられないと姫子は再びとび出た。

「待っててねベッキー!」

 ドップラー効果を引き連れて、姫子は廊下へ駆け出した。
 その勢いに呆然としていた一同の中で、くるみがぽつりと呟く。

「……どうすんの、これ」
「ほっとくわけにもいかんだろう。手分けして二人を探すぞ」

 そういうことになり、5人はそれぞれ教室を出て行くことになったのだった。
 ……哀れおじいちゃん先生。
546夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:56:47 ID:yT0grtbK
 ***

 姫子がクラスの戸に激突する数時間前。
 空の中ほどに、鋼の塊が浮いていた。
 正確には、鋼の塊に寄りかかるようにしてやけにぼろぼろな人影があった。
 どろりと重苦しい息を吐き出して、人影はぼやく。

「あ゛ぁー……つかれた」

 彼はつい先ほどまで空中で爆発物の仕掛けられた意思を持つ無人式武装飛行船に殴りこみをしかけていた。
 その中から囚われた学生を助け出して先に簡易転送符で転送して武装飛行船を破壊するまでが彼の仕事であり、その後飛行船の爆発からなんとか逃げ切ったのがつい先ほどのこと。
 ちなみに。その任務の数十分前には矢と弾丸の飛び交う鉄火場を収めに行き、さらにその一時間前は居住区に沸いた亡者を潰して回っていた。

「…朝から合計八回出動は、さすがに久しぶりだな……」

 言って、少し苦笑する。
 彼がこの仕事をはじめた頃は一人で全てをやっていた。体を引きずるようにして次の仕事へと向かっていったことも少なくはない。
 今日の午前中は他の仲間が全員学業の兼ね合いで出払ってしまっているため、彼一人が実務に向かうことにあいなったわけである。
 鈍ったというべきなのか、甘えているというべきなのか。どちらにしろ、日頃に感謝を覚えるべきなのだろうと思ういい機会となったと言えなくもない。
 ともあれ、そろそろそんな殺人スケジュールも終わりに近づいた。
 0−Phoneのメールを確認すると、孤軍奮闘している事務担当が『そろそろみんな来たから任せてちょっと休め』という内容のメールをよこしていた。
 その言葉に甘え、休んでから帰ると返信。
 正直戻るだけの体力も気力も尽き果てている。
 どこか適当なところで休もうと眼下を見下ろし、そこで見知った顔を見つけた。脱力し、降下する。桃月学園の屋上に彼は降り立つと、そこにいた知人に声をかけた。

「よ。元気かメディア」

 あらあら、と屋上に立っていたメイド服の少女こと1−Dのメディアは空から降りてきた相手を見て口元をほころばせた。

「元気ですよ、そちらもお元気ですか……とは、聞きづらい状況のようですねぇ」
「色々あってな。ちょっと聞きたいんだが、ここの屋上って誰か使うか?」

 その質問にいいえー、といつものほわほわとした笑顔で彼女は答える。

「お昼時に屋上に来る人なんてあんまりいませんし、鍵がかかってると誰も入ってきませんよ」
「ちょっと横になれる場所探してたんだよ。悪いが誰も来ないようにして二時間くらい貸してくれると助かるんだが」
「それは構いませんけど、ちゃんとベッドのあるところで休んだ方がいいですよ?」

 心配そうに眉を下げてそう言った彼女に、彼は苦笑しながら答える。

「硬い寝床は慣れてるし、できるなら今すぐにでも寝ちまいたいくらいなんだよ。どうも戻るまで色々と持ちそうにねぇ。
 仲間にも許可もらったし外で休んで帰ることにしたから、ありがたくここ借りるな」

 その言葉にわかりましたと気合をこめて返事をすると、メディアは屋上の出口に向かって歩いていく。

「誰も入らないように外から鍵をかけておくので、ゆっくり休んでくださいね」
「助かる。ありがとうな」

 礼を返すと、彼女はどういたしましてと言いながら扉を閉める。
 がちゃりと鍵の回る音を聞いて彼は内心で手を合わせ。相棒を月衣にしまいこむと、そのまま後ろに倒れこむようにして横になる。
 昨日の夜も午前4時まで仕事をこなしている。あまり眠れているとは言えない状況だったため、目を閉じればすぐさま眠気がやってくる。
 そして彼は、コンクリ打ちっ放しの灰色のそこへ寝転んだまま睡魔に逆らわずに落ちるように夢の世界へとなだれ込む―――。


547夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 19:59:26 ID:yT0grtbK
 ***

 時は変わって最後の授業も終わり、追ってくる姫子から大きくアドバンテージを得たものの彼女の添い寝から逃げるために走るレベッカ。
 姫子も体力はないが、こういう時の彼女はムダに鋭くムダにエネルギッシュだ。近づけば隠れてやり過ごし、できる限り彼女のいない方向へと向かう。
 そんな逃げを続けていても、レベッカは10歳だ。体力の限界の底は近い。
 どうするべきか考えていると、自分の味方になってくれそうな人影を見つける。すかさず駆け寄った。

「メディアっ!」
「宮本先生。どうされたんですか? 廊下は走っちゃダメなんですよ?」

 と、すっとぼけた天然さを発揮するメイド服の少女。
 彼女はレベッカの恩師のところで助手をやっており、優雅に見えて武闘派で、天然でありながら常識人でもある。
 そんな彼女にかくかくしかじかでナカニダレモイマセンヨなんだよ! と伝えると、困ったように苦笑した。

「先生のことを心配してのことだと思いますが、ちょっといきすぎてると思いますね」
「本当に私のことを思ってやってると思うか? あれは絶対自分が添い寝したい口実を見つけただけの野獣の目だぞ」
「それはちょっと言いすぎかと……。
 ただ、今鉢合わせるのはあまり宮本先生には楽しい状況にはならなさそうですね」
「なるかっ! というわけだからメディア、お前どこか姫子に見つからなさそうないい隠れ場所知らないか?」

 いい隠れ場所ですかー、とうなるメディア。
 彼女らしくマイペースにしばらく考えていたが、やがて妙案が浮かんだのかぽんと手を叩いた。

「そうだ先生、屋上はどうでしょう?」
「屋上?」
「はい。最近はベホちゃんと秘密のお話をする時に使いやすいのでよく使ってるんですよ。
 あんまり人も来ないですし、鍵をかけちゃえば誰も入ってきませんしねー」
「職員室に鍵取りに取りに行ったら誰かに見られるだろ、無理無理」
「はい、ですからここに合鍵がですねー」

 そう言って彼女がどこからか取り出すのは真新しい鍵。
 レベッカは鍵を見て、彼女を見上げると胡乱げな目つきで一応言ってみる。

「……なんでこんなものがここにあるんだよ」
「ベホちゃんと秘密のお話をする時に便利なもので」
「職員室から拝借して合鍵作ったのか? お前それはマズいだろ」
「そんなことしませんよ。ピッキングして鍵の形覚えてから再現したんですっ」
「そ、そうなのか……」

 メディアは少し怒って返すものの、その怒りはちょっとズレている。
 レベッカとしてはちょっと呆れはするものの、確かに今の状況ではこの鍵は助かるものであったし、自分も学校の配線をいじったり防衛システムを作ったりしているので強く言えない。
 じゃあ、とありがたくその鍵を拝借することにした。

「この鍵、とりあえず明日まで借りてていいか? さすがに一日経てば姫子のバグもなおるだろ」
「わかりました。その代わり、鍵のことはヒミツにしておいてくださいね?」
「あぁわかってる。メディア、とりあえず姫子に私のこと聞かれたら知らないで通してくれ」

 わかりました、といつもの笑みを崩さず答えるメディアを置き去りに、彼女は駆け出す。
 あまり使われない階段を使い、息を荒げながら走って、走って、走って、その扉へとたどり着く。
 後方確認。音や気配はない。逃げ切れたことに感謝しつつ、彼女はメディアから預かった鍵を使って屋上の扉を開き、中に入って後ろ手で鍵を閉める。
 一息。空を見上げれば、雲がのんきに空を流れている。先ほどまで張り詰めていた気持ちが、ひどく緩む気がした。
 そしてそのままゆっくりと床へ視線を下ろし。
 レベッカはひととき呼吸を忘れた。


 そこには。
 ―――夢の通りに倒れている茶色い髪の青年こと、柊蓮司の姿があった。

548夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 20:02:04 ID:yT0grtbK
 どくん。
 現在(ゲンジツ)が、過去(ユメ)に侵食されていく。
 どくんっ。
 青空の下の太陽のにおいが、赤い鉄錆のにおいに冒されていく。
 どくんっ!
 一際力強く鳴った自分の心臓の音がきっかけになって、彼女は呼吸を思い出した。
 はっ、はっ、と数秒止まっていた呼吸を思い出したように酸素を肺が取り入れていく。
 侵食を振り切り、現実感のない夢を追い払うようにして一度目を閉じ深呼吸。どっと汗をかきながら、彼女は夢を夢として切り捨てる。

 目を開く。そこにはやはり倒れている青年がいるものの、一瞬幻視したような赤い色はどこにもない。
 まだおさまらない鼓動。ぎゅっと胸を押さえながら、恐る恐る柊の方へと歩いていく。
 すやすやと寝息を立てているその様子は夢で見た不吉なイメージとはまったく違っていて、ほっと息をつく。
 心配して損をした気分になったレベッカは、不満そうに頬を膨らませてその場にしゃがみこむ。

「バカ面下げて眠りこけて、何様だお前は」

 ぽつりと呟くがその声に相手が起きる様子はない。よほど疲れていたのか、深い眠りに落ちているということだろう。
 レベッカは眠っている彼の顔をじっと見てみる。
 いつもはこんなに近くでまじまじと見る機会はない。一度だけ意識のない柊を見たこともあるが、その時は非常事態だったこともあり観察という視点で見つめることができなかった。
 初対面の人間には八割の確率で『目つきが悪い』と評価される目は、眠っている今は当然閉じられている。それだけでいつもとだいぶ印象が違う気がする。
 このまま止まっていればそんなふうに言われることもないだろうにな、などとせん無いことを考える。


 どれだけじっと彼を見ていただろうか。不意に、柊の懐からけたたましい電子音が響いた。
 うひゃあっ!? と驚きもあらわにレベッカはその場でひっくりかえる。
 電子音のせいか、レベッカのどたばたが床に響いたか。柊は小さく身じろぎすると、音源に向けてゆっくりと手を伸ばし携帯電話と思しきものを取り出す。
 んー、とまだ眠気の残った気だるい声を発しつつ画面を確認する。

「……なんだこれ、『もうあと1時間潰してから帰れ』? 向こうで何かやらかしたか?」

 先の電子音は目覚まし代わりのアラームで、メールを確認したら執行部の方からそういう通達が来ていたということだった。
 ため息と共にそれをしまうと、ふと人の気配を感じてそちらの方を見る。
 そこには当然のことながらしりもちをついて状況についていけずに顔を真っ赤にしたレベッカがいる。
 メディアからここに人は立ち入らないと聞いていた柊は、とりあえずその疑問を直接ぶつけてみた。

「あれ。レベッカ? なんでお前がこんなとこにいるんだよ、鍵かかってんじゃねぇのか?」
「そ……それは私のセリフだっ! なんでお前がこんなところにいて、しかも寝てるんだよ!?」
「おぉっ? えっと……俺は色々あって仕事で疲れきってたから、メディアに頼んで寝るためにここの学校の屋上借りてた、んだが」

 顔を真っ赤にした十歳児の剣幕に押され、柊はとりあえず自分の事情を説明する。
 泣く子と地頭には勝てないものなのだ。泣いてないけど。

 閑話休題。
 メディアの意図に気づいて心の中で恨み言を吐くレベッカ。
 ちなみにそのころのメディアはものすごく上機嫌でスキップなどしていた。
 柊はといえば、レベッカがここにいる理由についてはこの学校の教師であるため屋上の鍵を手に入れることもできなくはないだろうと勝手に納得した。
 となると次に気になるのは彼女が『なぜこの場所に来たのか』ということだった。時計を確認し、たずねる。

「そういえば、お前はなんでここに来たんだ? 今ちょうど終業終わるくらいだろ。教師がほっつき歩くには少し早いんじゃねぇか?」

 う、とうめくレベッカ。
 少しばかり痛いところをつかれた。目の前の相手は学生時分は『不良』と呼ばれるカテゴリにいたはずだが、意外と学校や授業についてはきっちりとしたところがある。
 とはいえ柊は純粋に不思議がっている様子で、別にいいだろうとはねつけるのもいい印象を与えないように思えて気が引ける。
549夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 20:05:14 ID:yT0grtbK
 結果、レベッカは目線をそらしながら端的に答えた。

「ちょ、ちょっとクラスの連中から追われてるだけだよっ。あいつら一度エンジンかかるとしつこいんだ」
「追われてるって……なんでまた。なんかしたのか?」
「何もしてないっ! ちょっと最近ヤな夢見るからって話したら―――」

 半分勢いでそこまで言って、彼女はあわてて口をつぐんだ。


 彼女が見る嫌な夢は、過去に実際あったことがそのまま映像として再現されているもの。
 しかもそれは目の前の青年が死に瀕していた時のことだ。
 何もできずに守られて、そのまま目の前で永遠に命が失われようとしていた時のこと。
 彼の血の気のない顔も、苦しそうな呼吸も、自分の頬に飛び滴っていた熱い赤い飛沫も、全てがリアルすぎるくらいリアルに思い出せる、悪夢。


 そのことをまた思い出しかけ、また彼に深く追求されたくないから口をつぐんだレベッカ。
 レベッカの想定通り、柊はヤな夢? とオウム返しにもらす。
 しかし。レベッカの様子を見ていた彼は困った時によくやる頭をかく仕草をすると、よしと頷いた。

「―――なあ、今から少しヒマか?」

 そのあまりに意外な一言に、レベッカは思わず間の抜けた声を上げていた。

「は?」
550名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 20:06:22 ID:TYzLvA1r
紫煙y=~
551夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 20:06:56 ID:yT0grtbK
「俺、今から一時間は潰さなきゃ戻れなくなっちまったからな。お前も学校の中には戻りたくないんだろ? ちょっと付きあわねぇか」

 え、う、と意味のつながらない音が口から出る。あまりに論理がつながらなくて、混乱したままたずねた。

「き……聞かない、のか? 追われてる理由とか、夢の話とか……」
「話したくないことを無理に聞き出す趣味はねぇよ。それが切羽つまってたりとかすりゃ話は別だが」

 そんなに考えなしにしゃべってるように見えんのか俺、と彼は少し苦笑すると続けた。

「話して気が楽になることならいつでも話せよ。答えを出すには役に立たないだろうが、聞くだけならできるからな。
 それで、話を戻すがこれからちょっと付いてくるか? 気分転換のためにはどっか行くのもいいだろ」

 ほら、と差し出される手。
 レベッカはしばらくその手をみつめる。
 どうせ相手は本当に気分転換のために誘っているのだろうが、これはつまり柊がレベッカに向けて一緒に出かけようと言っているわけで。
 一般的に言うところのデートと同じことになるんじゃないだろうか、と思い当たると同時真っ赤になってうつむく。
 とはいえ、そんな機会はきっとこれから先何度あるものでもない。チャンスはつかめる時に掴まなければと怪訝そうにこちらを見ている青年の手を取ると、下を向いたまま呟く。

「し、しょうがないからだぞっ? このまま学校の中に戻りたくないし、お前が誘うから、しょうがなくなんだからな?」
「わかったよ、学校からなんか言われたら俺が仕事で連れてったとか言っとけ」

 そう柊は苦笑して、どこからともなく鋼の塊を取り出す。
 乗れ、と言われてレベッカは恐る恐る彼の後ろに足を揃えてその鋼の塊に腰掛け、しっかりとしがみつく。
 彼らが乗っているのは柊の愛機である箒だが、箒そのものに乗るのがはじめてなレベッカの緊張振りが通じたのか、彼は後ろのレベッカに向けて声をかけた。

「手、離すなよ」
「わ、わかってるよ! お前こそ無茶な運転して振り落とすようなマネ絶対するなよ!?」
「誰がするか!? ……たく、バカやってないで行くぞ」

 それだけ言うと、ふわりと空へ浮かぶ鋼鉄。
 足が地面から離れたことで反射的にしがみつくレベッカの手に力がこもる。
 どくどくと掌から伝わる相手の鼓動。それがわかることにほっとして、自分の行動に赤面する。
 言い訳がましく相手にそれを告げようとして、相手はこちらの様子にまるで気づいていないと悟る。
 少し損をしたような気持ちになりつつも、だったら相手に少しくらい強く抱きついてもいいかと思い直してさらに近づき強く腕に力を込める。

 よしと呟くと、柊は箒をゆったりと飛ばした。
 ひとまず上へ、そのあと進路を向けるのはどこにしようかと考え、とりあえず人目の多くないだろう海へと向かう。
 レベッカがこの近くでうろうろするのはマズいだろうという判断と、何かに悩んだらとりあえず海というなんとも単純な動機であった。


552夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 20:09:03 ID:yT0grtbK
 ***

 数十分後、満面の笑みを浮かべて屋上に再び戻ってきたレベッカ。
 彼女はこの数十分柊を思う存分振り回すことができたため、ご満悦なのだった。
 とはいえ、ここに戻ってきたということは別れの時間だということでもある。柊は時計を見て呟いた。

「……そろそろ俺は戻らないといけないけど、なんかやり残したこととかあるか?」

 その言葉に、レベッカの胸が高鳴った。
 おそらく相手は子どものわがままの延長としてこんなことを聞いているのだろうと理解できているが、それならそれで遠慮してやる必要はないとも思う。
 思うには思ったが、彼女が口に出したその一言は、彼女にとってこれまでの人生で十本の指に入るほどの勇気を必要とした。

「そう思うなら、なんかよこせ」
「は?」
「お前一応魔法使いだろ。
 だったらなんか魔法のアイテム的なもの出してみろよ、これから先嫌な夢とか見なくて済むようなお守り的なもの」
「俺は猫型ロボットか何かかっ!?」

 ツッコミを決めながらも柊は呆れたように嘆息する。
 レベッカも知っている。彼は望んだものを出してくれるシンデレラの魔女のような魔法使いではない。
 それでもそう口にしたのは、今日の思い出を形にして残したかったからだ。悪夢を見ないお守りというのは建前で、思い出に形が欲しかっただけのこと。
 柊としてはそんなマジックアイテムに心当たりはない。そもそんなことの専門は夢使いであって、まったくそちら側の心得のない彼にそんなご利益を求めること自体がおかしい。
 しかし、レベッカの様子を見る限り諦めろの一言で諦めてくれるようには見えない。
 どうしたもんかと思案しながら、月衣の中に片手をつっこむ。何かしら子供だましでもいいから出てこないかと思っていると、手の先が柔らかな布の質感に触れた。


 思い出すのは夏祭りの光景。射的の屋台。墨染めの地に優雅に咲き誇る彼岸の華。オモチャのコルク銃を横から奪い取る。


 数々の光景が脳裏によぎると同時、その物体の正体に確信を抱く。彼女が納得するかはともかくとして、とりあえず聞いてみるくらいはアリのはずだ。
 そう思って彼はそれを掴み、月衣の中から引きずりだした。
 途端、レベッカの目が点になる。理由は柊が月衣から出したものが彼のイメージからあまりにそぐわないもので、ギャップについていけなかったのだ。
553夢をはらう茶色い猫:2010/08/28(土) 20:12:36 ID:yT0grtbK
 全体は薄めの色素の茶と雪のような白、それに黒目の猫のぬいぐるみ。
 柊はそれを確認すると、片手でそれをレベッカの方に投げ渡した。運動の苦手なレベッカは取り落としかけながらなんとかそれを掴む。

「昔、射的で取ろうとしたのと一緒に取れたやつなんだけどな。そんなもんでよければやる。
 俺が持ってるのも似合わないし、もらってくれると助かるんだけどよ」

 そんなものを渡されると思っていなかったレベッカはしばらく呆然とその猫を見ていたが、次第にこみあげてくる嬉しさに笑みを抑えきれなくなる。
 にまにまと笑みをたたえ、口では仕方ないなと言ってやる。

「お前のとこにいるよりは大事にしてやる。それに、外国の言い伝えでは猫は悪いものを追い払ってくれるっていうしな」
「ほー、そんな話があるのか」
「おい魔法使い。っていうか私の専門は神話学じゃないんだぞ、なんでお前の方が知らないんだ」
「うるせえよ!?」

 そんな様子を見て思い切り笑う。ひとしきり声を上げて笑った後、不敵に笑みを浮かべてやった。

「ほら、行ってこいよ正義の味方。お前を待ってる奴らがいるんだろ」
「そんな大層なもんじゃねぇっての。
 ……ったく。とりあえず戻るけど、何かあったら俺たちを呼べよ。どんなことだってなんとかしてやるから」

 そう自信を込めて言った言葉は誇らしげで。自分と仲間たちを信じきっているように見えた。
 そんなだから正義の味方って言われるんだよ、と一人内心で呟いて。レベッカは暖色に色づき始めた空へ駆け上がる青い流れ星を、見えなくなるまで見送った。
 

 ***

 彼女の枕元に薄茶の猫のぬいぐるみが彼女の枕元に置かれたその日以降、レベッカは赤錆色の夢を見なくなる。
 そのぬいぐるみの何が彼女の悪夢を追い払っているのか。それは彼女にもよくわからない。


 fin
554夜ねこ:2010/08/28(土) 20:16:44 ID:yT0grtbK
とまぁそんなわけで一話完結短編、『夢をはらう茶色い猫』でした。
これまで自分が学園世界ものの中でちょいちょい描いてた『ある事件』のもたらしたものと、ベッキーのアンニュイな日々のお話。
メディアさんは学従連認定第一種メイド。そして柊、いつか本当に刺されるんじゃなかろうか。まぁやらせてんのは俺なんですが。
そしてこれでも作者はベッキーからは憧憬/不安であり、柊からは庇護/脅威でしかないと言い張ります。
……恋愛ものらしい展開できないから、恋愛ものにはなんないんですよね。

そういうわけで、短編はこれでおしまい。
もうひとつは今年一月からずっと企画していたものです。詳細は投稿後に。
次は9時ちょっと前から開始予定です
555名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 20:18:33 ID:TYzLvA1r
GJ!こういう距離感って実に良いよね
556よるとろんぎぬす・OP:2010/08/28(土) 20:47:40 ID:yT0grtbK
 学園世界の休日とは、基本的に学生たちの休日と同義だ。
 たいていどの学校にも何日かごとに一日ないし二日の休日が設定されており、また、極上生徒会の意向によりその休日を大体の学校が合わせるのを推奨している。
 これは学生同士の交流を深めたり、大きなイベントを開催しやすくする目的のもと行われている方策である。

 とまぁ、そんな小難しい理屈は置いておくとして。

 学校が休みならば、その休みをどう過ごそうかと考えるのは当たり前。
 『彼女』も、優等生っぽく学校で出た宿題を終わらせてから、特に親しい友人たちと遊べるかどうか確認をとったが、いっそ見事なまでに全員すでに出かけていて。
 それぞれ個人的な趣味の用事だったり、役職としての任務であったりしたため、押しかけるのは気が引けてしまい。
 そういえば冷蔵庫の食材がそろそろ心もとなくなってきているし買い物にでも行こうか、とほとんど無計画に家を出たのであった。

 彼女がこの世界にやってきて数ヶ月。
 新しい友達がまったくいないわけではないのだが、休日に連れ立って歩くほどの仲ではないと思っている。
 周囲のみんなはそんな相手をどんどん見つけていっているような気がして、少し置いていかれたような気分だ。

 黒のニーソックスに白のキュロット、マオカラーに大陸風の白糸刺繍の入った濃紺のシャツ。
 そんな格好で外を歩く。
 服を買うときに選んでくれたのは一緒に服を買いに行った友だちだが、その相手は今日は『愛犬家友の会』に行っている。
 相手は彼女が今日電話した時、半分テンパりながらひたすら謝っていた。
 が、彼女としてはその友だちに新しい友だちができることはいいことだと思っているため、そっちを優先させるように笑いながら答えた。

 空を仰げば中天にかかるお日様。
 またちょっと暑くなりそうだ、なんて詮無いことを考えながら、ただ歩く。
 彼女の住んでいるD地区の居住区は、近場に生鮮食品を扱う店が少ない。しかもちょっと高めだ。
 理由としては、その地区が主に学生用の寮よりも、教職員やそれに類する人々が暮らす住まいが占める割合が高いことが挙げられる。
 自分たちで生活資金を稼いでいるため、少しいいグレードのものや、嗜好品を買ったりすることが多い。そのため自然とそういう店が多くなるのだった。
 おかげでというべきか、彼女の住む学生寮の近くには学園世界ではレアリティの高い酒屋や骨董品屋、質屋、呉服屋、コーヒー豆や茶葉の専門店などもある。

 彼女は暇つぶしの散歩代わりにその道を歩いていた。
 ゆったりと過ぎる時間。元の世界では見られないような物品に視線をやりながら、特に行き場や目的も設定せずに歩くというのは、彼女にとって新鮮でもあった。
 だからそのゆったりとした時間が帰るまで続くものと思っていた。

 けれどここは学園世界。いつでも誰でもどんな騒ぎにでも巻き込まれる特殊な場所。
 平穏が崩れるのが唐突なのはある意味当然なのだった。
557よるとろんぎぬす・OP:2010/08/28(土) 20:50:18 ID:yT0grtbK
 がたがたっ、と何やら激しい音がする。音は角の左の細道を行ったところあたりからしているようだった。
 なんだろうと不思議に思った彼女は、首だけ出してそちらを覗こうとして。

 白と黒のまぜこぜになったそれが勢いよく彼女の方へと飛び込んでくるところだった。

「わわっ!?」

 あわてて身を引くものの、運動の得意でない彼女はその白黒の突進から完全に逃げきれない。
 真横にぶつかられることはなかったものの、足が残っており白黒がそれに端を引っかけて見事に空に浮いてそれは宙を転がる。
 空中を一回転するとそれは地面へと激突。さらにごろごろと道を転がり、四回ほど転がると分解して広がった。
 彼女は呆然としながらそれを眺める。正確には理解が追いついていないといった方が正しいが。
 なに? なにが起きたの? あれはなに? ほわっと?
 そんな思考が駆け巡るのも数秒のこと。状況に頭が追いつくと同時に自分のせいであの大惨事が起きたのではないかと思い至ると、あわててその白黒の塊へと駆け寄る。

「だ、大丈夫ですかっ!?」

 しかし彼女がそれにたどりつくよりも早く、白黒は空中にぶらりとぶら下げられた。

「……何をやってるんスか、こんなところで」

 それを片腕一本でぶらさげながら呆れたように言うのは、眼鏡にお下げの冴えない少女だ。
 『彼女』にとっては見知った相手であり、年上の面倒見のいいお姉さんという認識である少女は白黒に向けてじっとりとした視線を送っている。
 少女の手にぶら下げられた白黒からは返事がない。『彼女』がその様子を伺い見ると、どうも気絶しているようだ。
558よるとろんぎぬす・OP:2010/08/28(土) 20:53:01 ID:yT0grtbK
 やれやれと肩をすくめる眼鏡少女は、仕事サボって何してるんだかとボヤきながらふと『彼女』の方に視線を向け、今気づいたようにその名前を呼んだ。

「なのはちゃん。こんなところでお散歩っスか?」
「こんにちは、ベホイミさん。
 えぇと……そんなところなんですけど、さっきノーチェちゃんと接触事故みたいな感じになっちゃって……。
 とても激しく転んでたみたいなんですけどっ、その、ノーチェちゃんは大丈夫ですか?」

 『彼女』こと高町なのはは眼鏡少女・ベホイミに向けて礼儀正しく挨拶し、本題についてたずねる。
 先ほど大回転を見せていた白黒の塊はベホイミと同じく執行委員の銀髪ゴスロリことノーチェであったことについさっき気づいたなのはは彼女の身を案じてそうたずねた。
 心配そうななのはを見て安心させるように、眼鏡娘は苦笑しながら手をぱたぱたと振る。

「そんなに心配しなくっても、ノーチェさんのしぶとさはここでも三本の指に入るレベルっスよ。今は目を回してるだけみたいなんで、そこまで心配しなくても平気っス」

 胸を撫で下ろすなのは。そんな様子を微笑ましげに見ながら、ベホイミは片手でノーチェをぷらぷらさせながらなのはに話しかける。

「なのはちゃんはオフっスか?」
「あ、はい。友だちがみんな愛犬家友の会の会合とかボランティア活動とかで出かけちゃってまして。
 体を動かすのもリハビリには必要だそうなので、たまには一人で外に出てお散歩でもしてみようかと思ったんです」

 高町なのはは小学三年生であり、また『魔導師』でもある。学園世界に数ある『魔法』の中で、『ミッドチルダ式』と呼ばれる魔法を用いる魔法使いだ。
 なのはたちのような『魔導師』は体内にリンカーコアと呼ばれる魔力の蓄積・放出を行う器官を備えており、それを利用して魔法を扱うことのできる者を指す。
 しかし今現在なのはは魔法を使うことを禁じられた状態にある。
 彼女は魔法に目覚めて一年もしない内にさまざまな出来事に巻き込まれ、それに負けまいと訓練を課し、またその出来事を戦い抜いてきた。
 本人が魔法を上達させることに夢中になったという一面もあるが、その際かかった負担のせいで体に歪みが生じてしまっていたため、治療を受けた先の魔法使いからドクターストップを受けたのがその原因。
 ただでさえ体や精神の成長・変化のある時期で不安定になりやすいのに、そこに一年そこそこで一線級の魔導師に追いつけるだけの修練を課したり、その魔導師と戦ったりしてきたのだ。
 歪みが生じるのも無理からぬことと言えるだろう。
 発見が早かったため致命的なことにまでは至っていない。そのため、なのはは時折担当の魔法医のところに時たま通院し、その他は普通の小学生と変わらない生活を送っている。

 ちなみに担当医が軽い運動を勧めたのは運動の苦手ななのはなら無理な運動はしないだろうという読みと、体を動かすことでストレスの解消や体力づくりにつながるといいという願いが込められていたりする。
 今のところ前者は上手く機能しているようだが、後者についてはあまり期待できないといったところだろうか。

 閑話休題。
 そんな風にノーチェをぶら下げたまま世間話をしている二人。そのうち、ベホイミが先に物音に気づいた。
 ノーチェが転がり出た細い路地からごそごそと音がして、人影が現れたのだ。その人物を見て目を丸くしたベホイミにつられるようになのはもそちらへ視線を向ける。
 そこには一人の男が立っていた。
 色素の薄めのオールバックに、神経質そうに映るフレームの眼鏡の男。年頃は青年というには少し遅れ、中年というにはやや早いくらいだろうか。
 彼は息を切らしながら肩をいからせ、びしりとベホイミの方に―――正確にはベホイミがぶら下げているノーチェを指して、叫んだ。

「今日という、今日こそは、逃がさねぇぞ、食い逃げ常習犯っ!」

 なのはもベホイミもその相手が誰かを知っていた。
 大体の事情を理解したベホイミはため息をつき、状況が把握できていないなのははぽつりと呟く。

「……『ろんぎぬす』の、マスターさん?」

 それは、近所にある昼は定食屋で夜は居酒屋になっている騒がしいことで有名な店の店主である男だった。


 ***

 居酒屋ろんぎぬす。
 この学園世界にやってきた時は居酒屋業一本だったものの、ここに来て昼間は定食屋もはじめた店。
 居酒屋業の少ない学園世界ではなかなかに繁盛している店である。
 定食屋としての業務が始まる二時間ほど前である現在、開いているはずもない店内には二人の少女がカウンターに座っていた。

 もちろんなのはとベホイミである。
 なのはは居酒屋業の時はもちろん昼の営業時間帯も店を訪れたことがなかったためあちこちを落ち着かない様子で見回し、ベホイミは何度か来た事があるのでそんななのはを苦笑しながら眺めていた。
 彼女たちがこんなところで何をしているかといえば、この店のマスターに是非礼をさせてほしいと頭を下げられたことが原因だったりする。
 なぜ礼をしたいと彼が言い出したかと言うと、

「う〜……わたくしとしたことが、不覚をとったでありますよ」

 ゴシックロリータ服にろんぎぬすと刺繍された丈夫そうな黒のエプロンをした少女こと、ノーチェを捕まえたことに起因する。

 この白黒娘、よく飲み食いをする際にツケで済ますことが多い。
 特にこのろんぎぬすにおいては学園世界にやってくる以前からツケで飲み食いをしまくっている。
 今日も朝からたかりに来て、さらに店主の神経を逆撫でしまくり堪忍袋の緒を切らせてしまったのだ。
 それだけならこれまでも何度かあったのだが、いつもはノーチェが軽く店主をあしらって撒いて逃げ切り、その後プレゼントでご機嫌を伺うというパターンで終わっていた。
 しかし今回はなのはとベホイミの活躍(?)のおかげで逃げ切られることなく捕まえることに成功したのだ。
 店主は感謝の念をこめて二人に軽いまかないを出させてほしいと願い出て、店へと連れて行くことになったわけである。

「黙れツケ発生装置。もっと腰をいれて掃除しろ」

 なお、ノーチェは今日一日ろんぎぬすでしっかりと働けば多少はツケを減らしてやるという条件でタダ働きを約束させられている。
 店に運びこまれた当初ノーチェは執行部の仕事を理由に無理と主張したものの、同じ執行委員のベホイミにより執行部に確認をとってみようとの提案が出され。
 実際確認してみれば、
 『今日は私も長門さんもいますし、一通り事務仕事も出来るメンバーが揃ってるので別に構いませんよ』
 とまったく心配なさそうな声音で元気に初春に応対され、あまつさえ『一日キリキリ働いてきてくださいね!』とエールじみた最終宣告まで受けてしまっていた。
 ノーチェを一日使い倒す権利を得た店主は実にいい笑顔でエプロンを渡すと、次から次へと雑用を申し渡している。

「うぅ……継母や義姉たちにこき使われるシンデレラの気持ちがわかるでありますなぁ……」
「人聞きの悪いことを言うなっ!」
「っていうか、自業自得っスよ」

 心外だと言い返す店主と苦笑しながらツッコむベホイミ。
 そんな二人を乾いた笑いを浮かべながら見ているなのはの前に、ことりとほうじ茶が入った湯のみが置かれる。
 出したのは店主で、彼は疲れと共にため息を吐き出しながら少女たちに向けて告げた。

「いやあ助かった。これまで何度も逃げられてきたからな、少しは溜飲が下がったよ」
「うーん……嬉しいような、ノーチェちゃんに悪いようなで、ちょっとフクザツです……」
「いいんスよ、たまにはいい薬になるっスからね」

 ベホイミが苦笑しながら言った言葉に力強く頷く店主。
 実家が飲食店をしているなのはとしても食い逃げという行為そのものは許しがたくはあるのだが、先ほどノーチェを大回転させた罪悪感もあってちょっと困るところなのだった。
 ベホイミの鬼ー、としばらくじっとりとした目で彼女をののしった後、テーブルをごしごし拭きながらノーチェはなのはに話しかける。

「そういえばなのはは今日あんなところで何してたでありますか?
 ベホイミがジョギング終えてその辺散歩してるのはいつものことでありますが、なのはが一人でいるのは珍しいでありますよな」
「あ、あはは。ちょうどみんなこっちでできた友だちのところに行ったり、ボランティアしてるみたいでね。
 一人で部屋にいてもつまんないから、近くくらいは散歩してようかなーと思って」

 そう困ったように笑ったなのはの顔を見て、ノーチェはベホイミと顔を見合わせてからもう一度彼女の方を見た。

「なのはは、隠し事が下手でありますな」
「ふぇっ!? い、いきなり何を―――」
「うーん、なんというのか。
 こうやってきちんと話すのがはじめてに近いわたくしに無理してるのがモロバレな時点で、長い付き合いのある周りの人たちにはもうバレまくってると考えた方がいいと思うでありますよ?」

 赤い酸漿のような瞳がなのはをとらえる。
 その目は邪気がなく、さらにある真相をそのまま告げているだけといった様子に映る。
 相手を心配させたくないからこそ、心配そうにのぞきこまれればその心配を否定しようとするなのは。けれど、ノーチェのその視線はそんな強がりや優しさすらも透かして見通してしまうようで。
 そんなことない、といつもならすぐ出るはずの言葉がその目に呑まれて上手く出て行かない。
 なのはが返事を返さないのを見て、ベホイミがずずりとほうじ茶をすすりながらなんでもないような口調で告げる。

「―――ま、ここで会ったのも何かの縁ってことで。
 何かしら友だちには言いづらいことがあってそれでも苦しいってことなら、聞くくらいのことはするっスよ。
 答えを出せるのは本人だけでも、悩みを解決するために誰かに相談したり、苦しいって言っちゃいけないなんて決まりはないっス」

 それに、とウインク。

「女の子は笑ってんのが一番っスけど、それが無理な笑顔じゃお茶がおいしくのめないじゃないっスか。
 お節介ってヤツは、たまに厄介になっとくとそれで十分喜ぶんスよ」

 となりの年上の少女の笑顔が、なのはにはとても魅力的に映って。
 くすりと、思わず笑みがこぼれた。

「ベホイミさんって、優しい人なんですね」
「面と向かって言われると恥ずかしいっスけど、そもそもどんな人に見えてたのかの方が気になるっス……」

 そんな、最近の自分の学園世界における物騒なあだ名に心当たりのありすぎる眼鏡娘はがくりと肩を落とすのだった。


 ***

 それは小さな願いでした。
 ひとつの出会いから手に入れることになった魔法の力。
 魔法と出会うまでの彼女には、やりたいこともすべきことも見当たらなくて。
 『自分にしか使えない』力を手に入れたことがとてもうれしいことだった。
 自分の力で助けることが出来た人。自分の意思で助けになろうと決めた人。自分が心から伝えたい気持ちを抱いた人。魔法と出会ったおかげで、そんな出会いがたくさんできた。
 痛いこともあったし、苦しいこともあった。この胸をかきむしりたくなるくらい、悲しいことも確かにあった。
 だから。自分にしかないこの力で、もっともっとこれから出会う誰かを守ったり助けたりできるようになったらいい。
 そんな、小さな願い。

 けれどこの世界にやってきて間もなく、魔法の力は封じられた。
 時がくればもう一度使えるようにはなるのだろうけれど、空を飛べる翼を取られてしまったようなもどかしい気持ち。
 禁じられている間は、何をどうやったって魔法を使うことはできない。誰かを助けることなんてできないと、そう告げられたような気がした。
 友だちはすごく心配してくれたけれど、このもどかしさは自身で乗り越えるしかない。笑って、そしてますます相手の顔を曇らせてしまったことも一度や二度じゃない。
 そんな自分が情けないと、時折ひどく思う。


「とまぁ……そんなわけなんです」

 苦笑しながら、なのははそう言った。
 その表情は自分を責めているようにも見えて、健気ゆえの痛々しさのようなものを感じさせる。

「執行部のお手伝いに行ってるフェイトちゃんやユーノくんを見てると、胸の辺りが苦しくなるんです。
 二人とも誰かを守るために魔法を使ってる。わたしだけが同じところに立てなくて、誰かを助けたりすることができない。
 本当は助けられる力があるのにそれができない。それで……」
「どうしようもなく落ち込んでる、と」

 ベホイミがなのはの胸の内の葛藤を一言でまとめてそう言うと、しおれるようにそうなんですとうなだれてしまうなのは。
 ちなみにノーチェはカウンターふきが終わったら今度はテーブル席の掃除をするように命じられて近くにはいない。
 つまり今なのはの話を聞いているのはベホイミ一人なわけで、本気で落ち込んでいる様子の少女を前にしている彼女はちょっぴり声がかけ辛い。

 高町なのはという少女は律儀で真面目な性質を持っているのだが、それもこういう時にはマイナスに働きがちだ。
 それもストレスを上手く発散できるタイプではない融通の利かなさを備えているため、落ち込む時は本当に本気で悩んで葛藤して周囲のことが何も見えなくなってしまうほどに。
 ちょっとした衝撃で崩れ去ってしまうような脆さはないものの、悩みや落ち込みを外に出して誰かと共有しようとすることがあまりない。
 これは、彼女が一時期家族に甘えることができないことがあった時期に形成された性質でもある。
 ベホイミはそんな彼女の過去までは知りはしないものの、なのはが誰かに心配をかけないように立ち振る舞うその姿を見てため息をついた。

「―――なのはさんは、『魔法』ってどんなものだと思ってるっスか?」
「……へ?」

 あまりに唐突な質問に目を点にしたなのはに、口元を緩ませてベホイミは続ける。

「これでも、私も『魔法少女』を名乗ってるっス。
 なのはさんみたいに魔法らしい魔法も使えないし、おとものマスコットもいない。
 一時期は『魔法少女』ってなんなのかわかんなくなってやめようと思ったこともあったっス。それでも、今も『魔法少女』だって名乗り続けてるんスよ」

 なのはも知っている。
 目の前の相手は学園世界における荒事中の荒事を請け負う『執行部付き執行部』の執行委員の一人だ。
 オフの日に学園都市に行った際ある映画の評価を巡り、こと近接戦に限れば 超能力者(レベル5)に届くとも言われるとある 大能力者(レベル4)と変身抜きで渡り合うほどの実力者なのである。

 ……もっとも、その大能力者も
 『変身しない? 超上等じゃないですか。ナメられてると超判断しました、私もハンデ超つけてやりますよこの超似非魔法女郎!』
 とか言ったため、お互いハンデをつけた状態で(窒素装甲はアリだったらしいが)ひたすら殴り合いダブルノックアウトというカオスなことになったらしいが。
 閑話休題。
 ベホイミは、茶をすすりながらなのはに視線は向けずに語り続ける。

「私は戦い方があんな感じっスからね、これまで色んな人に『お前魔法少女じゃないだろ』ってツッコミじみた存在否定を食らったこともあるっス。
 そりゃそう言われれば悲しいっスし、正直名乗り続けるのが苦しい時だってあるっスよ。
 ―――それでも、今のところやめろって言われてやめるつもりはさらさらないっス」

 そこで言葉を止めたベホイミの横顔は少し照れが混じっていたものの、誇らしげに見えて。
 まるで吸い込まれるように、なのははたずねた。

「なんで、ですか?
 誰かに否定されても、苦しくっても、自分自身で違うと思ってても―――なんで、ベホイミさんは『魔法少女』って名乗ってるんですか?」

 そう問われて、ベホイミは満面の笑みを浮かべてなのはの方を見た。


「みんなを笑顔にしたいからっスよ」


 その笑顔はまるで太陽のようにあたたかくて、ひまわりのように鮮やかに、なのはの心に焼きついた。

 一番はじめは『憧れ』だったのだという。
 困っている人を助けたり、人の夢をかなえたりする、そんな『みんなを笑顔にするキャラクター』への、子どもじみていて、けれどキラキラに輝いている憧れ。
 時が流れ、苦難のどん底にあい、人を傷つけ、己を守り、世間にもまれて、誰もが懐かしさと共に届かないことを知って諦めていく、子どもの頃しか持てない輝き。
 ベホイミもまた過酷な環境の中に身を置き、生き抜くことだけが頭の中にあった時期があった。
 傷つけて、傷つけられて。守ろうとして、守りきれなくて。共に笑った相手を看取ったこともあれば、死に目にあえなかったこともある。

 そんな日々を生き抜いて。本来ならばとっくに擦り切れていたはずの『憧れ』が、不思議なことに彼女の中には残っていたのだという。
 もしかしたら自分を変えるためのきっかけとしてすがりたかったのかもしれないし、本当は心の中では自分がそうなれると信じきれていなかったのかもしれない。
 それでも憧れは憧れのまま残った。
 そして今では、そんな自分の憧れをサポートしたいと手伝ってくれる連中まで現れた。
 まるで奇跡のように、その胸に抱いた一つの思いはつながり続けている。
 ベホイミ自身は知る由もないが、困っている人の力になり誰かのために本気になる、そんな彼女の背中を見て『憧れ』を抱き『魔法少女』を名乗る少女もまたいる。

 だから名乗り続けると。
 誰かの笑顔を守る戦いに身を投じる時。誰かの涙を止める戦いに赴く時。
 なんでもない、どこにだってある、続いていくべき毎日を守って守って守り抜く、そのための戦いをする時にこそ、彼女は名乗る。
 誰かの笑顔を守り、誰かの願いを守る存在―――『魔法少女』だと、己が二つ名のように名乗りを上げる。ゆえにこそベホイミは、戦う時は必ずその号を名乗る。
 きっと、みんなが笑顔になるその時まで。
 誰に否定されようと構わない。自分がそうしたいからそうするのだ、気にすることはあっても、絶対にやめる気はない。

 そう言ったベホイミは、ぽぅっとこちらを見つめているなのはに照れたように頬をかきながら話しかける。

「えーっと……ちょっと私の話が長くなっちゃったっスけど。
 つまり何が言いたいかっていうと、なのはさんは魔法が使えて、それで人助けをしてきて、今は魔法がないからなんにもできないって落ち込んでるんスよね。
 けど本当は魔法なんかなくたって人助けはできるし、誰かのために立ち上がることはできるっス」
「……はい」

 返事には少し時間があった。
 なのはにもわかっている。魔法とは結局手段であって、魔法がないからといって自分が何もできないなんて言い訳にはつながらない。
 けれど今まで出会ったものの中で一番自分に向いていると思えるものであったし、今では自分の杖であるレイジングハートと別れて別の道を歩むことは考えづらい。
 なのはの顔がくもったのを見て、ベホイミは苦笑しながら言葉を続けた。

「魔法を使うのをやめろとか言うつもりはないっスよ。
 ただ、私はなのはさんが自分にとって『魔法』ってなんなのか、きちんと考えるいい機会になるんじゃないかなーと思うんス」
「わたしにとって魔法がなんなのか、ですか?」

 目を丸くして、なのははたずねる。
 そんなことを言われたのははじめてで、確かに考えたことのない問題だったのだ。
563名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 21:09:24 ID:TYzLvA1r
C
 使いこなせたら嬉しくて、友だちやライバルと一緒に磨いてきた技術。自分の性質に一番合うと思う、誰かを助けるための力。
 出る答えといえばそれくらいで、またそれで十分だと思っていた。
 ベホイミは頷いて答えを返す。

「なぜその力を使うのか。他の力じゃダメなのか。
 その力を使うことの意味を、自分なりに理由を見つける必要があるっス。
 力っていうのは心がともなってはじめて『力』になるんスよ。
 なのはさんは優しいからそんなことはないと思うっスけど、心次第で簡単に力は『災厄』に変わってしまう。
 心があっても力がぶつかりあうことはある。その中でどうやって自分の『力』を信じるか。
 すぐに答えを出す必要はないんスよ。むしろゆっくりゆっくり、時間をかけて自分なりの答えを見つけるべき問題っス。
 悟ったとか、決めたとか、そういうことを時間をかけずに思い込んだらダメな問題なんスよ。
 悩んで悩んで悩み抜いて。迷いも胸に抱えながらそれでも前に進んでいけば、きっとなのはさんはもっと強く魔法を使えるようになると思うっスよ。
 ゆっくり考えていいんスよ。だってまだ―――なのはさんは小学三年生じゃないっスか」

 これは年長者の意見っスから聞いといて損はないと思うっス、とベホイミは微笑んだ。

 『なぜ戦うのか』という問題に対して答えを出したことはなのはにもあったものの、切羽詰った時に他の迷いを振り切って決めた 覚悟(こたえ)ばかり。
 頭の中で悩みぬいたかと言われると少し自信がない。
 状況に巻き込まれながらも自分の意思を貫こうとしてきたからこそ覚悟じみた決意になった。
 それが間違いだとは思わないが、これからも魔法使いを続けるのなら『一時の覚悟』だけでは必ず矛盾が生じることになる。
 だから『力の意味』に対して思考停止せずに考え悩むことは大切で、それを自分なりに納得できるようになれば、なのはの 魔法(ちから)はより迷いなく強い輝きを放つ。


 そう。
 いずれは月のない闇夜を照らし、迷いを貫くしるべを示し、伝え語り継がれる物語を持つ―――煌く星のごとき輝きを放つような。


 だから彼女は頷いた。
 ベホイミの言うことに実感はわかなかったがその言葉は確かになのはのために言ってくれた言葉だと思ったからで、そのことは確かにありがたいと思ったから。

「……わかり、ました。わたしと魔法のこと、もっとちゃんと考えてみようと思います。
 もっときちんと、これから先もずっと魔法と付き合いたいから」

 その瞳はやっぱり真摯で、ベホイミは満足げに頷いた。

「それがいいっス。
 幸い、この学園世界は色んな力を持った人たちが色んな思いを持ってうろうろしてる場所っスからね。
 色んなところに行って、色んなものを見て、色んな経験をしてみるのも答えを出す一つの道かもしれないっスよ。
 あと、子どもの仕事は遊ぶことっスから遊ぶのも忘れちゃダメっス」
「あはは、そうですね」

 困ったように笑うなのは。けれどその表情には痛々しさのようなものはない。
 それはきっと今の状況に前ほどの罪悪感を抱かなくなったからで、誰かに悩みを打ち明けることで気持ちが楽になったためでもあるだろう。
 子ども扱いはしてほしくないが、それも自分のためを思っての言だとわかっている。

 と。
 味噌汁とご飯の椀が目の前に差し出された。
 カウンターを挟んだ先に、すでに別の皿におかずを盛り付けはじめているマスターの顔が見えた。

「まぁ、何をするにしろ腹ごしらえは必要だろう。
 さっきも言ったように食い逃げ犯を捕まえてくれた礼だ。成長期なんだし、遠慮せずに食っていきな」
「遠慮なんてしないっスよー?ありがたーくくいただくっス」

 言いながら、両の手をあわせていただきますと告げるとベホイミは本当に遠慮することなく朝食を平らげはじめる。
 その様子を横目に見て、なのはは内心少し悪い気がしてたずねる。

「わたしは大したことしてないんですけど、本当にいただいちゃっていいんですか?」
「遠慮するなって言っただろ。周りがワガママ言っていいっていってるんだから、限度を超えない限り文句を言う奴はいねえさ。
 それにあんまり謙虚すぎると人生損するぜ」
「そうそう、人生図太く生きてる方が長生きするでありますよー」
「あんまり図太すぎると余生が寂しくなるぞ、嬢ちゃん」

 と、横から掃除を終えて戻ってきたノーチェがやってくる。
 店主のじっとりとした視線もなんのその、彼女はなのはの横に陣取って椅子に腰を下ろす。

「ご心配なくでありますよ。わたくし、この店よりは長く現役でいるつもりでありますから」
「心配なんぞしてない。ていうか、なんで座ってるんだ。まだまだやることあるんだぞ?」
「腹が減っては戦はできないのであります。というわけでわたくしにも戦場を生き抜くためのカロリーぷりーずでありますよ」
「玄関掃除が終わったら用意してやるからさっさとしてこい」
「そう言うと思ってもう終わらせてきたのでありますっ! というわけでご飯ご飯」
「俺は嬢ちゃんののそういうところが嫌いだ」

 言いながらもよそわれたご飯にわーい、と素直に歓声をあげるノーチェ。
 そんな様子を見ながら、高町なのはは久しぶりの騒がしい食卓を過ごす。


 食事を終えた後ノーチェを置き去りに二人でろんぎぬすを出たところを鈴原未来に目撃されてひと悶着が起きるのは、その数十分後のことであり。
 さらにたまたま加わったベホイミのクラスメイトのメディアの四人で学園世界のまだ行ったことのないところを一日満喫して、新しい友だちを作ることになるのはさらにその先のことであった。

 fin.
566夜ねこ@告知付き:2010/08/28(土) 21:18:35 ID:yT0grtbK
あい、終了ですー。久しぶりだというのにやっぱりさるくらいました。やっぱ大嫌いですさる。
学園世界ろんぎぬす短編集OPと第一話「魔法少女×2 −魔法と心、力と意思−」でした。
以前砲撃の方の高町さん家の娘さんとノーチェで何か、と言われたから書こうとしたのですが、なぜかベホイミが出張ることに(汗)。
なんというか、アニメ見てて思ったんですが小学生なのはさんにノーチェをぶつけるのって劇薬与えるようなものな気がしまして。
ノーチェは物怖じせずずけずけ口にするタイプなので、内に内に溜め込む気質のなのはさん(小)には性格的な相性悪すぎるんです。
で、考えてみたのですが間にクッション入れないと単になのはさんがやりこめられる話になってしまって面白くない。
ならば別の相手の話を主軸にして、『とある魔法少女の憂鬱』様の設定をお借りし、さらにはなのはさんが『大人』になるのに必要なステップを混ぜてみた。
周囲に影響を与える人間になるには、相応に周囲から影響を受ける必要がある。流されるだけでなくて、自分から周囲を見て学び考える時期が必要になる。
メタな話をするならばなのはさんは13話ですごく強くならなくちゃならない制約があって、ズルい言い方をするならそれでは置き去りになるものが必ずあるはずなんです。
その補填をする一助になるような話を書いてみようという実にズルい話。
なのはさん(小)が教導という人を教え導くための仕事をするのに必要なものを、この世界で手に入れてくれたらいいなと思います。
……いや、数年後に繋がる的な意味でね(汗)? 別に三期を否定したいわけじゃないですからね? むしろ結構好きですからね?

さて。告知というかお知らせタイムです。
先も述べました通り、このお話は「短編連作」の一編です。同じくらいの量のSSが、あと三篇用意してあります。

これを同人誌にしてだします。

これを同人誌にしてだします。大事なことなので二回言いました。
予定時期は秋から冬。正確には短編連作+αですのでもうちょっと長いかも。
それで、これまた告知になってしまって申し訳ないのですがその学園世界ろんぎぬすの同人誌で「挿絵を描いてくれる方」を募集しています。詳しくはHPで。

ちょっと肩の荷が下りてすっきりしたので、夏の終わりの祭りにでも行って来ようかなぁ。
それでは、また。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 21:28:36 ID:TYzLvA1r
再びGJ!とりあえずろんぎぬすで初の長編という事に大いに期待ッ
過去スレであったような店主が戦うシーンがある事ももちろん待ってるぜ!
568名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 21:34:54 ID:IJILn6fM
乙ー

学園世界らしいふんわり感に満ちてましたね。


ところで、
『螺旋人リアリズム』の表紙がベネットに見えて、で、思い付いた。

『ルネス殺人事件』よりベネット。
『青春マインカンプ』より“デスモスチルスの娘”リリィ。
『ナイトウィザード』より“狼の王”マルコ。

名付けて『けもみみボンクラーズ』!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/29(日) 08:00:09 ID:FZSREaFK
おお、投下来てた。乙でありますよ!
570名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/29(日) 08:50:29 ID:mSiR90Vw
GJです。ベホイミかわええけど確かに魔法少女っぽくないよね。関節じゃなくて打撃系だしw
571名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/29(日) 11:45:03 ID:CAd46SXR
GJ−。

それはそれとしてJGCパンフ見ててこのスレ的に思ったこと。
最終日のライブRPG、輝明学園・銀誓館学園・尚敬高校・門星明華学園で「100年に一度の世界に危機が訪れない日」を利用した盛大な学園祭が開かれるらしいんだけど、これなんて学園世界?
572名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/30(月) 10:28:21 ID:kW5mly58
GJですー
ベッキー可愛いなあ

フルメタがとうとう(やっと)完結しましたね
宗介の学園世界でのますますの活躍期待しています

>>571
そんな内容だって知ってりゃもっと希望順位上げてたんだけどなあ
まあ入りたい陣営(輝明学園)に希望して入れるわけでも無いと思うので
言ってもしゃーないかなと思いますが
573名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/30(月) 22:10:01 ID:G0dH2txV
>>566
ういやっほー!きたきたきた!ノーチェ×なのはさん!
なんかベホイミ×なのはさんっぽいけどいいやw

(この二人なら餌付けされるノーチェとかもありかと思ったけど・・・・まぁいーやww)

しっかし、何気にテレーズ涙目な気も・・・・まぁいいやw
574名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/31(火) 22:38:03 ID:EsY0Mo8g
>>572
宗介か…

実は人型兵器を乗りこなすパイロットであることが分かって、人型兵器つながりで芝村舞と仲良くなり、
それを見たかなめがもやもやするってネタは考えたことがあるw

まあ、最後は舞が速水とラブラブで無問題なんだけどね。
575名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 01:07:24 ID:Ws3P2Uqz
んー第五世界の兵器は左手の結晶体とリンクさせなきゃ使えないんじゃなかったっけ?
KMFはすぐ乗りこなせそうなんだけどな
576名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 01:41:03 ID:XHo+xSA+
先輩諸兄に質問であります!
ノーチェが可愛いのですが、何を読めば良いでありますか!
577名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 01:54:07 ID:D4LwTnHc
よし、とりあえず夜ねこさんの書いたSSを片っ端から読め。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 02:14:43 ID:XHo+xSA+
では早速ノーチェの大活躍する様を堪能してくるでありますよ。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 02:31:59 ID:XHo+xSA+
あ、公式ってRfS以外に出てましたっけ?
580名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/01(水) 07:03:47 ID:jvT/pXn0
>>575
多分舞なら宗介の戦争ボケにもついてけるんじゃないかな、と。ある意味同類的な意味でw

NWキャラを絡めるとなると…やっぱり光明かな?技術職だし。
そして、サイトやスザク、宗介などそうそうたる男子パイロットたちと仲良くなり、嫉妬される、と。
581名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/02(木) 23:10:10 ID:J/XAR1Bt
ふと、転生の果てに学園世界にたどり着いたトウガが、柊憎しで執行部に敵対する裏執行部を立ち上げるという電波が飛んできた。

とりあえずむぎのんとぷにえちゃんはライバルっぽいのが執行部にいるからメンバーに向いてるかなと思った。
他のメンバー思いつかないけどw
582名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/02(木) 23:33:49 ID:HfdYFJey
トウガ→そもそも人をまとめられるだけの才がなさそうだから勝手に逆恨みして勝手に死ぬのがオチ。ついでに自分から徒党を組むキャラでもない。あと学生になるのに無理やりすぎ
むぎのん→優先順位は美琴<<<<<(超えられない壁)<<<<<浜面。暗部を自分から離れてでもわざわざケンカ売るようなことするくらいなら浜面おっかけて三千里してるはず。統括理事長も浜面なら止めないし
ぷにえ様→利用しやすいお人よし集団かつ自分の逆鱗に触れるようなことのない相手にケンカ売るメリットがないから、相手からケンカ売られるまで放置してるに決まってる。あの方の真の恐ろしさは関節技よりもむしろ腹のド黒さ


……何ぞ反論があるか?
583名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/02(木) 23:49:42 ID:J/XAR1Bt
誰が得するんだ?その指摘は。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/03(金) 11:34:28 ID:ZOPEhyP0
>581
「お兄ちゃん何やってるのよ!」とか言いながら彼を回収するトウガ妹、まで読んだ。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 10:39:45 ID:IB1vlcBl
>584
なんか、ネタが増えてるし。

トウガは蟹アーマーなのか、どこぞの特製鎧のどちらなのだろうか。
変身もののノリで装着するならお子様には人気が出そうだw
586名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 05:20:04 ID:mRLglE+u
そういや、ファージ・アースをパラパラ読みながら思ったけど今のナイトウィザード世界観のクロスってないんだな……まぁナイトウィザードクロススレと言いつつ、ナイトウィザードの世界観じゃなく学園世界の世界観がメインになってるから仕方ないんだろうけど
587名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 10:04:33 ID:eJFtJZ0I
また学園世界かとかグチるくらいならyou書いちゃいなよ!


……っていうか、どこまでを2nd環境にしてるかって話になってくるなーそれは
とりあえず魔装出してるSSはあるよ
588名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 12:07:33 ID:rf1g0od7
アニメ系の板だし、アニメ前後の時間の方がやりやすいというのもあるな
589名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 20:16:54 ID:Ubp3lR33
ちょっとを通り越して、一月以上も早いネタなんだが、投下いきます。

すべてはJGCで偶然遭遇した夜ねこ氏に捧ぐ……
590竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:19:11 ID:Ubp3lR33
トラックオアトルネード!」
「…………は?」

 柊の目の前の物体は突然そんな意味不明の言葉を投げかけてくる。
 物体と言ったのは、そう形容するしかなかったからだ。
 それは白いシーツのような布に身を包んだような物体で、おそらく口と目に当たる部分には、ぽっかりと穴が開けられている。
 そこから覗く顔は多分、女の子なのだろう。声も女の子のそれだし。
 ただ、胸部から腹部にかけてでかでかと、妙に達筆で書かれた「諸行無常」の文字がなんとも異彩であった。
 柊よりも随分と小柄なそれは、両手と思しきものを柊の前に差し出した。

「…………なんだお前は?」
「お菓子くれ」
「はあ?」
「んだよ、わかんねーのかよ。ハロウィンだよハロウィン」
「ハロウィンだあ?」

 言われて柊は思い出す。確かに世間ではもうそんな季節になったんだっけ、と。
 忙しかったから忘れていたが。

「ああ、ようやく分かったぜ。それはなんかの仮装か」
「おうよ! 地方妖怪マグロ。人間社会に溶け込んで生活する知性派の妖怪さね」
「聞いたことねえよ」

 中の人はそう自慢げに説明するが、生憎と柊には通じなかった。

「今日はお化けの仮装してたら合法的にお菓子をもらえる日なんだぜ。いい日だと思わねーか?」
「おい、微妙にハロウィンを誤解してるぞお前」
「だからお菓子くれ」
「ああ分かった分かった。ちょっと待ってろ」
591竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:20:42 ID:Ubp3lR33
 柊は月衣に手を突っ込んで、適当なものを探り当てる。

「おお、あったあった」

 柊の手に治まったのは、せんべいの袋。

「おお! せんべいか!?」
「ああ、くれはに頼まれたものなんだけどな。しょうがねえからお前にやるよ」
「んあ? くれは? それって赤羽くれは?」
「ああ、そうだけど?」
「……おめー、もしかしてウィザードってやつか?」
「……ああ、そうだが?」
「もしかしておめー、柊蓮司か?」
「だったらなんだよ?」
「うおおおお! マジか!? 有名人じゃねーか! 写メだ写メ!」

 シーツの中の人は携帯を取り出して、遠慮なく柊をカメラに納める。

「やべー、レオのやつに自慢できるぜ!」
「おい……」
「なあなあ、ツーショット撮ってくれやツーショット!」
「聞けよ人の話!」

 柊のツッコミを無視して、シーツは柊をかがませて、携帯のカメラで勝手に柊とのツーショットを撮影する。
592竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:21:29 ID:Ubp3lR33

「つ、次はこれにサインしてくれよ!?」

 今度はシーツの端を掴んでそんなことを要求する中の人。

「そういうのはやってねーよ!」
「んだよけちけちすんなよ。サインくらいいいじゃねーか」
「……ああ、分かった分かった!」

 柊はうるさそうに、ペンをとって、適当にサインする。

「これで気は済んだか?」
「おう! あんがとよ!」
「やれやれ……」

 どっと疲れが押し寄せたようにため息を吐いた柊。
 そのポケットから携帯の呼び出しが鳴る。
 悪い、と目の前の物体に断りを入れて、柊は電話に出る。

「おう、何だ? ……何い? カボチャの被り物したパンツ一丁の変質者が『トリックオアトリート』と言いながら女の子に迫ってる?」
「………………」
「ああ、分かった。俺もそいつを取り押さえに行く。 ……悪いな、ちょっと用事が出来た。俺はもう行く」
「柊蓮司」
「なんでフルネームなんだよ!」

 柊のツッコミを完全に無視し、シーツはその下で親指を下に向けて、

「ボクが許可するぜ。そいつ、ヤッチマイナー」
「何でお前に許可をもらわないといけないのか分からんが…… まあ、了解だ」

 それだけ言うと、柊は仲間の元一刻も早く駆けつけようと走り出した。
 残されたシーツは、

「ああいう幼馴染を持ったのがボクの人生の恥だね」

 誰に言うでもなく、そう呟いたのだった。


593竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:22:08 ID:Ubp3lR33
 竜鳴館生徒会室。

「おーっす、戻ったぜー!」

 上機嫌でドアを開いたカニこと蟹沢きぬ。その手には大量のお菓子の袋が抱えられている。

「お帰りー、カニっち」

 書類を書きながら、会長である霧夜エリカが労う。

「大量みたいだねー」
「おうよよっぴー! みんなで分け合おうぜー!」
「あんな馬鹿な仮装でよくここまでやるもんだな」
「あーん……?」

 冷ややかな声が投げかけられ、とたんにきぬの顔色が怒りに染まる。
 無論、そんなことを言ったのは、やはり書き物をしていた彼女の後輩、椰子なごみだ。

「んだよココナッツ、ボクの魅力に嫉妬してるんか?」
「馬鹿馬鹿しい」

 きぬの顔を見もせずに、なごみは言う。
 それが余計にきぬの神経を逆撫でした。

「また始まった……」
「ほっとけレオ、いつものことだろ」

 それを離れたところで見ていたレオとスバルは心底疲れたように遠巻きに見てるだけだ。

「こういうとき、乙女さんがいれば止め役に回るんだがなあ」
「まあ、乙女先輩は今見回り中だから仕方ないだろ」
「ココナッツ、今日こそてめーに上下関係をその体に刻ませてやろうじゃねーか」
「はん、やれるもんならやってみろ」

 にらみ合いに発展し、きぬは中指を立て、なごみが挑発的な笑みを浮かべる。
594竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:24:14 ID:Ubp3lR33
「……どうする、スバル?」
「仕方ねーな……」

 スバルは前に出て、きぬの肩を掴んで制止する。

「おいカニ坊主、落ち着け」
「止めんなよスバル! ボクはこれからこのココナッツに縦社会の厳しさを体に教え込まないといけないんだよ!」
「ふん…… やれるものならやってみろと言っている」
「おい椰子、お前もそう煽るな。カニ、こいつをやるからここは引け」

 スバルは懐からきぬ用のビスケットを取り出し、数枚きぬの手に握らせる。

「……ちっ、仕方ねー。スバルに免じて今日はここで引いてやるぜ。感謝しろよココナッツ」
「ふっ……」

 あくまで冷ややかに笑うなごみに、またしても両手を上げて怒りをぶつけようとするきぬだったが、今度こそスバルがそれを止める。
 スバルの腕でもがきながら、きぬはなごみに罵倒を投げかけるが、なごみは無視して仕事に取り掛かった。

「……あれ? カニっち、この銀色の包み箱、何かな?」
「んあ? それ?」

 佐藤良美は、きぬがもらったお菓子の山から、リボンに包まれた小さな銀色の箱を発見し、疑問に思う。
 触れてみると、紙ではなく、金属のように冷たい感触が伝わって、何か異様に不安を誘う。

「あー、誰にもらったやつか忘れちまったけど、確か手作りクッキーとか言ってたぜ?」
「ふーん、じゃあ今日のお茶請けはこれにしよっか」
「おー、じゃあ、ボクがそれを開けるぜ!」

 きぬは満面の笑顔で銀の箱のリボンを解き、無雑作に箱のふたを開け、

「キシャアアアアアアアアア」

 ぴしゃりとふたを閉めた。
595竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:26:09 ID:Ubp3lR33
「………………」
「………………」
「………………」

 嫌な沈黙が生徒会室を支配する。

「さ、よっぴー、お茶にしましょ」
「ええええええ!? エリー、なかったことにするの!?」
「何のこと? 私たちは何も見ていない。そうでしょ」
「…………そだね」
「佐藤さんもなかったことにした!?」
「……まあ、なかったことにするのはいいとしてだ、どうするんだよこれ?」

 あくまで冷静にスバルは、銀の箱に視線を落とす。
 あの中には、先ほども見た得体の知れない物体が蠢いているのか、たまにかたかたと動いているのが、なおさら不気味だ。

「……うーん、とりあえず埋めちゃおっか?」
「えー、なんかしばらくしたらもっと怖い化け物になって襲い掛かってきそうで嫌だなあ……」

 エリカの提案は良美が嫌な顔を浮かべて拒否する。

「それに一応食べ物らしいですし、粗末にするわけにはいかないでしょう?」
「……誰が?」

 レオがぽつりと漏らした一言に、一斉に、とある人物に視線が注がれる。

「……ボク?」
「まあ、もらってきた本人が責任取るのは基本でしょ?」
「むむむむむむ無理無理無理! こんなもの食ったら絶対どうにかなっちまうぜ!」

 恐怖に顔をゆがめながら首を振って拒絶するきぬ。

「それにこういうのはレオやスバルに食わせりゃいいじゃねえか!?」
「何で俺たちに振るんだよ!?」
「んだよ、幼馴染のピンチに手ぇ貸そうとは思わねーのかよ!?」
「自分のまいた種くらい自分でどうにかしろ甲殻類!」

 口論に発展したレオときぬをあーあ、と言わんばかりにスバルは首を振る。
 二人の口論はより苛烈さを増していき、次第に取っ組み合いまで始めだした。

「おいよせ、二人とも!」
「止めるなスバル!」
「そうだぜ! こいつには一度どっちが上か体に教えこまねーと前から思ってたところだったぜ!」
「あー、もうこりゃ駄目だな……」

 いよいよスバルもさじを投げかけたそのとき、
596竜鳴館に轟くは地獄からの叫び◇学園世界:2010/09/06(月) 20:26:59 ID:Ubp3lR33
「おい、何の騒ぎだこれは?」

 凛とした声が生徒会室に木霊する。
 全員がその声の主に、一斉に注目する。

「お、乙女さん……」

 レオがポツリと呟いた。
 乙女と呼ばれた少女、鉄乙女はきぬに掴みかかっているレオを冷ややかに見つめて、

「レオ、どういう理由があるとはいえ、女の子に掴みかかるとは、お姉ちゃんはそんな風にお前を育てた覚えはないぞ?」
「……育てられた覚えもないけどな」

 とはいえ、乙女の本気にレオが敵わないことは熟知しているのか、渋々ながらもレオはきぬから手を放す。

「で、これは一体どういうことだ?」
「ああ、それは……」

 レオはこれまでの経緯を説明する。

「……ふむ、つまりそのクッキーとやらをどうにかすればいいんだろう?」

 乙女は何のためらいもなく、さっききぬが封印した箱を開ける。
 またあの奇声が生徒会室に響き渡った。

「ふむ、なかなか変わったクッキーだな」
「ええええええ!? 言うことそれだけ!?」
「はっはっは、山篭りしているときにはどんなものでもご馳走だったからな。このくらいどうということはない」
「おお、乙女先輩やっぱり頼もしい!」
「どんなに奇妙な物体だろうが食べ物には違いないんだ。気合を込めればこんなもの……」

 無雑作にクッキーもどきを掴んで、躊躇なくそれを口に放り込んで見せる乙女。
 それをじっくりと咀嚼して……

「…………」
「お、乙女さん?」
「…………うん、なかなか変わった味……」

 それだけ呟いた乙女の体が、突如真横に傾いた。
 そして、ごとん、と嫌な音を立てて、それきりピクリとも動かない。

「お、乙女先輩!?」
「……やべえ、瞳孔が開いてやがる!」 
「た、担架! 担架ー!」



 3日後、奇跡的に意識を回復した乙女は遠い目をしてこう言った。
 「世の中に困難は気合で乗り切れる。そんな風に思ってた時期が私にもありました」と。
 残された奇声を放つクッキーらしきなにかはその後、全身に傷を作り、顔面を変形させて戻ってきたフカヒレの口に全て治まり、竜鳴館

は、最大のピンチを乗り切ったのだった。
 ちなみに昏倒したフカヒレが意識を回復したのは、それから一月後のことだった。
597名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 20:27:29 ID:S/qRC8Uy
偶然にしては羨ましすぎる!支援。
598名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 21:57:18 ID:rf1g0od7
さるさん代理
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12795/1244722087/276-277
----------

修正。

> 3日後、奇跡的に意識を回復した乙女は遠い目をしてこう言った。
> 「世の中に困難は気合で乗り切れる。そんな風に思ってた時期が私にもありました」と。
> 残された奇声を放つクッキーらしきなにかはその後、全身に傷を作り、顔面を変形させて戻ってきたフカヒレの口に全て治まり、竜鳴館 は、最大のピンチを乗り切ったのだった。
> ちなみに昏倒したフカヒレが意識を回復したのは、それから一月後のことだった。

まとめサイトに乗せるときにはこっちでよろしく。

以上で投下終了。

FEARセッションの予約時に、なぜかどっかで見た事のあるハンドルネームをぶら下げた人が……
思い切って声をかけてみるとビンゴ。
そのときに「あっちにまた投下する」と約束しちゃったので、今回決意の投下。
夜ねこさん、約束は守りましたよ。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/07(火) 01:50:36 ID:cOkbc79u
GJ! これは大変良いカニでござる。
「ねぇ、アレ嫁に貰ってくんない?」
「シーツかぶって街を徘徊したうえ柊蓮司からせんべいをせしめる娘はちょっと」
「そうよね、私が男だったら絶対イヤだもの」
そんなサムシングを幻視した

そしてあの乙女さんですら撃沈するあかりんクッキー、まじパネェ。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/07(火) 03:03:04 ID:GizGU1E5
中盤までこいつら誰だっけ? と思ってた(具体的には乙女姐さんが出るまで)・・・・スマン。一応アニメはチラ見してたハズなんだがw

閑話休題。
あそこ、普通の学校だったと思ったけど・・・・よくあかりん弁当食って生きてたなw(そっちか
そして姐さんでもダメだったか・・・・w
601名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 10:32:53 ID:G3TpFBB4
このスレもなんとか終わりが見えてきたなー(容量的な意味で)ってところでネタでもふってみる

「極上生徒会催事担当部長の役職も持つ輝明学園理事長代理赤羽くれは。
 そんな彼女が音頭を取り、日本式夏祭りを開くことになる」

とゆーのを思いついた。

・その日は祭に参加する場合のみ完全下校時間が遅くなる
・祭に参加するためには『女子は全員浴衣、男子は祭らしい服を着用する』のが義務
・しっと団は消滅済み
・祭を事件的に騒がした主犯は最低10年間コールドスリープの刑
・祭の警備の人間も参加者だから服装規定を適用。ちなみに相当品ルールは認めません

あたりでどうか。
つきものの花火については実はこれまで出てきた奴の花火師の家に生まれた上技能仕込まれてる奴がいるから問題なかった。
602名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 10:59:24 ID:i/rnJZDt
それでも騒ぎが起きるのが学園世界、てなもんでやんすな?

花火師技能持ちって誰だろう……花菱烈火?
603名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 11:17:49 ID:G3TpFBB4
>>602
YES<花火技能持ち
火薬ってことなら他にも専門家はいるかもしれんけど、芸術品としての花火のノウハウ持ってんのってあいつくらいしかいないよね

まぁアレだ。どっからを「事件」とみなすかは祭のトップのくれは次第だから、ナンパとか喧嘩とかくらいなら大目にスルーされるだろう。
軽犯罪に関してはそも警備の選抜の範囲だし、実は事件らしい事件を起こしてくれはの目に余るようなことしたらどうなるかわかってるだろーなって牽制くらいの意味だったりする<コールドスリープ
604名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 11:22:43 ID:xK2/8KyH
花火師と言えば、ほら、『僕らの七日間戦争』にもいたな。
605名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 19:33:36 ID:ucc6Kc8J
需要と供給、これら2つは商売における絶対の要素である。
これら2つの要素が寄り添う販売バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかなずれ。
その僅かな領域に生きる者たちがいる。
己の資金、生活、そして誇りを懸けてカオスと化す極狭領域を狩り場とする者たち。

―――人は彼らを《狼》と呼んだ。

という話を8時くらいから投下します。
606ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 19:51:39 ID:ucc6Kc8J
女神「それじゃあみんな…よい夕食を」

―――9:01 第7学区 セブンスマート

上条当麻には特殊な右手(ちから)がある。
魔法、超能力など、常識より外れたあらゆるものを否定し、破壊する右手。
幻想殺し(イマジンブレイカー)と呼ばれるそれは彼を幾度と無く戦いに巻き込み、
幾度となく勝利への決定打(とどめ)となった。だが。
「…っく!」
ぶつかり合った当麻の右手がその特性ゆえに彼女の左手によって弾き返される。
そう、それは酸素の無いところで人が生きていけぬように、沸騰したコーヒーを浴びた銃身が熱膨張で歪むように、
そして何より半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)に半額弁当を求めて狼が争うように、当然のこと。
「お前が《毛玉》が言っていた狼か」
目の前の前に立つ女の力の根源は人…否、生物ならば必ず持っている常識的(あたりまえ)なものであり。
「確かに強いな」
拳(グー)は掌底(パー)に勝てないのだ。

掌底でもって当麻の拳を弾き返し、今宵の2つの半額弁当(めぐみ)を視界の端に収めながら、
女は油断なく当麻の前に立ちふさがる。
見覚えの無いデザインの制服と、ワイルドに整えられた髪、ファッションというには少しごついブーツ。
そしてなによりすさまじい強さ。
これだけの力を持った狼が無名なはずが無い。コイツは…二つ名持ちだ。
そこまで考え、当麻の脳裏に30分前に別れた強敵(あいぼう)の言葉がよぎる。

『いや、今日はセブンスマートはやめとくぜよ。流石に《氷結の魔女》と《ヴァナルガンド》相手に取れると思えねー』

第7学区屈指の実力を持つ狼、《ヴァナルガンド》
本人も何故そう呼ばれるようになったか忘れたそれが当麻のこの戦場(スーパー)での名らしい。
となれば、目の前の女の正体は、1つしかありえない。
「やれやれ。昨日に続いて今度は氷結の魔女と戦うことになるなんて。
 上条さんのこのところのエンカウント率の高さは陰謀か何かですか?」
目の前に立ちふさがる魔女をじっくりと見ながら、魔女が弁当を取ろうとした瞬間に阻止できるギリギリ、半歩分だけ下がる。
魔女は弁当と当麻からまったく目を離さずに、じっくりと構える。
昨日当たった双子の狼は、カゴを捨てたことで不意をつけたから何とか奪えた。
だが、目の前の魔女は既に自分を知っているらしい。油断を見せない。
既に立っているのは当麻と魔女のみ。
周りには当麻と魔女の激戦に巻き込まれて斃れた狼たちがうめき声をあげて屍をさらしている。
つまりはもはや半額印証時刻の乱戦は終わった。
残るは、一騎打ち。目の前の魔女さえどうにかすれば、当麻は弁当(めぐみ)を手にできる。
「いいぜ。氷結の魔女。俺が勝てないと思うなら」
当麻がゆっくりと拳を固める。顔に浮かぶのは不敵な自信。
彼の無意識は既に見つけていた。魔女がわずかに見せる隙…執着とでも言うものを。
間違いない。魔女は、今宵の夕食を既に決めている。ならば。
「まずはその弁当(げんそう)を奪い去る!」
《ヴァナルガンド》が駆け、弁当を手にする。
「なに!?」
《氷結の魔女》槍水仙(やりずいせん)は予想外のヴァナルガンドの行動に思わず驚愕の声を上げた。
だが、意識を無視して仙の狼としての身体(ほんのう)は為すべきことをする。
弁当を手にしたことで敵ではなくなったヴァナルガンドから目を離し、弁当コーナーから奪取する。
今宵“2つ”しか残らなかった弁当の片割れ。

…『月桂冠』が燦然と輝く弁当を。
607ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 19:55:27 ID:ucc6Kc8J
―――8:45 第6学区 スーパー「ろんぎぬす」

僕、佐藤洋(さとうよう)が通う片田舎にあった烏丸高校が突然、
人交社長がゲーム業界の制圧を宣言してそうな未来都市にやってきたのは、2週間前の平日の授業中のことだった。
突然窓の外に広がった異様な光景に慌てる僕らの元に今、僕らは異世界にいると言うとんでも情報を持って訪れたのは
極上生徒会の執行委員だという二次性徴が憎いでおなじみの霧島君がフィーバーしそうなってか実際したくらいの年の女の子。
彼女がどこぞの軍曹っぽい口調で言うにはここは学園世界。
10,000を超える学園と数千万人の数の学生が暮らすと言う、とんでもない世界だという。
その学園世界に街そのものが学園であるとして転移してきたのが今、僕がいる学園都市。
何でも街をあげて『超能力』を研究していてテラドライブがガチで作れるくらいの技術力を持つ科学万歳の街…らしい。

ちなみに興味本位で近くの学区の連中に超能力って何ができるの聞いたらマジで手からビーム的なものが出たり
某有名RPGの黄色い鼠もびっくりな電気の使い手だったり気合で原理不明の波動拳的なものを出せたり、
仮にそれら全部を一斉に食らっても「やったか…!?」と言われつつ煙の向こうから無傷で姿を現す位に無敵な方々とかがいるらしいのだが、
幸か不幸かそんな方々には出くわさず僕の周り2〜300mに限って言えば割と平穏な日々を送っている。

変わったことと言えば精々が僕の住んでいる烏丸高校から200mほど離れた場所に丸富大学が付属高校付きでほぼ同時に転移してきたため、
従姉の著我(しゃが)が前より頻繁にHP(ハーフプライサー)同好会の部室を訪れるようになったとか、
『学園都市で“愛ゆえに性別の壁を乗り越える乙女の会”と言う同好会を立ち上げた“白”なんとかさん』の噂を聞き、
生徒会長として我が高の学園代表にご就任あそばされた“白”梅様を戦慄のまなざしで見たかどで平手を食らったりとか、
『ほほう…執行部の細マッチョ×細マッチョ。これはなかなか…あ、ちなみに佐藤さんは柊さんと相良さんならどっちの筋肉の方が好みであぅ!?』
とパソコンを眺めながらよく意味の分からない質問をしてきた白粉(クリーチャー)の後ろ髪を引っ張ったりとかする以外はごく普通の日々を送っている。

そう、日々学校に通い、休日には遊びに繰り出し…そして、半値印証時刻には狼として狩りをする。
そんなごく普通の日々を、狼である僕は送っている。

8時45分。
二階堂から事前に聞いた情報によれば、この店の半値印証時刻、15分前。
その時間に僕は1人スーパーの自動ドアを抜け、店へと入る。
店は出来てからまだ1ヶ月ほどと言うこともあり、どこもかしこもピカピカで、少しだけ気後れを感じる。

きのこの このこ げんきのこ

妙に耳に残るきのこの唄を聞き流し、純粋工場培養しめじ1パック78円也を横目に僕は目的の場所をごく自然に通り過ぎ、
今宵の弁当を確認する。3割引のシールが貼られた残りの弁当は、3つ。
大きめのカツと、通常の小袋の3倍はあるサイズのソース袋が目立つ「すず川洋風カツレツ弁当」
大きく浅い容器に盛られた黄金色とそこに走る夕焼けのようなオレンジがかった赤が美しい「お兄ちゃんのオムライス(しょうゆ味)」
いかにも食べ応えのありそうな、濃いタレに染まった「宇宙人絶賛!沖縄風豚焼肉弁当」

608ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 19:59:18 ID:ucc6Kc8J
学園都市の外の学生たちからレシピを募って作られたという3つの弁当をしっかりと記憶し、
僕は1リットル入りシャリオミルクの紙パックを見ながら、今日の獲物を考える。
どれもうまそうだ。だが…
「しょうゆ味のオムライスってのは気になるなあ」
ごく自然に僕の隣に立つ、丸富付属の制服を着た、ぼさぼさの金髪と眼鏡の女子高生。
僕の従姉である著我(しゃが)あやめがムサシノ牛乳の紙パックを見ながら僕の気持ちの一方を代弁する。
「あたしはそう思うんだけどだけど佐藤はどうする?」
何気ない調子で、眼鏡をケースにしまいながら著我が僕の方を見て尋ねる。
だがその碧眼は語っている。狙いが被るんなら、容赦しない、と。
そんな著我の問いかけに、僕は素直に応える。
「…僕としてはあのソースの袋の大きさが気になるかな」
そうなのだ。確かにオムライスも気にはなったが、それ以上にあの、カツにかけるには量が多すぎるソースの袋が気になっていた。
「…ん。了解。後で少しくれ」
僕のいわんとしたことを理解したのだろう。著我は再びムサシノ牛乳に目を向ける。
「お前もな」
僕もとなりのシャリオチーズ(6P入り)に目をやりゆっくりと時間を待つ。
そんなときだった。
「よぉ。佐藤、それに麗人じゃねえか。元気にしてたか?」
僕らを見つけ気さくに隣の特盛乳酸菌ヨーグルトに目をやりながら、アフロが話しかけてくる。
耳掻きの梵天のように膨らんだアフロの男。この男を、僕は知っている。
「《毛玉》じゃないか。何か久しぶりだな」
僕は目線を向けず、ちょっとだけ驚いた表情を作りながら毛玉に返す。ここ1週間ばかり顔を見ないと思っていたが。
「なんか噂じゃあ大学の講義サボって“外”見に行ってるって聞いたけど」
著我が僕の言葉を継ぐように毛玉に言う。
その言葉に毛玉が頷き言葉を返す。
「おうともよ。ここも良いが、外もすごかったぜ。
 麻帆良の《オッドアイ》の嬢ちゃんとかC地区の《暴れ牛》とか、管理棟の《柊蓮司》とか二つ名持ちがごろごろいやがった。
 んで、しばらくは外を中心に回るつもりだったが、この辺りににかなりの大物がいるって聞いてな。戻ってきたんだ」
そこで一旦言葉をきり、毛玉は何かを思い出したかのように著我に尋ねる。
「そういや麗人は確か丸富の高校の方に行ってたよな?」
「ん?そうだけど…それがどうかした?」
何が言いたいのか分からない。著我も同じだったらしく、毛玉に聞き返す。
そんな著我の問いかけに、毛玉は真剣な表情でその言葉を口にする。
「いやなに…《ヴァナルガンド》について、何か知らないかと思ってな」
ヴァナルガンド?聞きなれない響きに僕は首をかしげた。
今までの流れからして恐らくは狼の二つ名だと思うけど…
「ヴァナルガンド?いや、聞いたことないけど。どんな狼?」
「ああ、ここの隣の第7学区の狼らしい。俺も詳しくは知らないが、《オルトロス》を倒したって聞いた」
「あの2人を!?」
僕は驚いて思わず毛玉の方を向いて聞き返す。
《オルトロス》こと沢桔(さわぎ)姉妹は僕と著我の友人でもある。
丸富付属の生徒会長と副会長であり、学園代表とその補佐でもある2人は、僕の知る限りでも10本の指に入る強さを持つ狼だ。
本気になった彼女らは、槍水先輩や《魔導士(ウィザード)》ならともかく、今の僕では正直勝てる気がしない。
それを打ち負かしたとなると…
「ああ、昨日偶然遭遇してやりあったと二階堂が…その様子だと知らないみたいだな」
僕らの様子を見て、事情を察したのだろう。毛玉がすいっと背を向け、言う。
「しょうがねえ…第7学区にいるって言う《フヴェスルング》って狼を…」
そこまで行った、毛玉の顔に緊張が走る。それは、僕らも同様。空気が、変わった。
「どうやらお喋りは終わりのようだな。時間だ」
毛玉のそんな言葉と共に。

バフンッ

音を立てて聖域(スタッフルーム)への天岩戸が開き…神がその姿を現した。
609ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:03:14 ID:ucc6Kc8J
―――8:57 ろんぎぬす 調理場

真壁翠は、神である。

壊滅直後に発生した、学園の大量転移と言う異常事態を経て、異常な速度で再生を果たした第6学区。
そこに1つの店があった。

スーパー『ろんぎぬす』学園都市支店。
オクタヘドロンが世界魔術協会と共同で資金を出し、空白地帯となった学園都市第6学区にこの店を構えたのが1ヶ月前。
今ではこの学区に住まうこととなった新たな住人はもちろん、学園都市では売っていない学園都市の外の商品が売ってたり、
割と良心的なお値段だったりすることから近隣の学区からも客が訪れる、隠れた名店となっている。

「ふう、よし。掃除はこんなもんであとは…そろそろかな」
その高校生とは思えぬほど発育した肢体を支給品のバンダナとエプロンで包み、
粛々と聖域(スーパー)の奥に築かれた調理場の清掃をしていた真壁翠はゴム手袋をはずし、時計を見上げ呟いた。
時計が指し示す時刻は完全下校時刻の9時まであと3分…ろんぎぬすの半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)だ。
それを確認した翠はポケットにシールを詰めこんで売り場へと向かう扉を開く。

バフンッ

大きな音を立てて扉が開いた瞬間、緊張感と無数の目線が翠の産毛を逆立たせる。
かつて感じ続けた、戦場の気配。慣れ親しんだその気配に一瞬目を閉じた後、翠は目的の場所…惣菜売り場へと向かう。
その動きは流れるようにその手は的確かつ素早く乱れた惣菜の並びを整える。
(…今日は荒れそうだなあ)
店の好調を示すように、その数がやや少ないことに波乱の予感を感じながら、翠はシールを取り出す。
シールは正確にすでに張られていたシールの上に重ねられ、3割引きであった商品が祝福を受けて半額へと変わっていく。
「…さてと」
惣菜すべてにシールを張り終え、翠はいよいよメイン…弁当売り場へと赴く。
綺麗に並べなおし、残った弁当を確認する。
濃厚そうなソースの入った、小袋と言うにはいささか大きすぎる袋が目立つカツ弁当。
浅くて大きな容器に入れられ、鶏のから揚げが添えられた黄金色に輝く卵に包まれたオムライス。
メインの、濃厚そうなタレに包まれた肉厚の焼肉がてらてらと光を返す焼肉弁当。
今宵の半額弁当(めぐみ)に翠は手際よく半額シールを貼っていく。
翠が動くたびに強烈に強くなる気配と、張り詰めた空気が生み出す、不気味なほどの静寂。
野菜売り場からのきのこの唄がまるで遥か遠い異世界から聞こえてくるようだ。
翠はそれを知っている。この領域(フィールド)はかつて翠が慣れ親しんだ秋葉原のそれとほぼ同じだ。
(それじゃあみんな…)
故に半額神としての誇りを持って言葉は発せず、ゆっくりと戦場(うりば)から離れ…
(よい夕食(たたかい)を)
バタンッと扉を閉じる。直後の、狩りの合図を告げるために。

真壁翠。輝明学園3年、ウィザード生徒。
放課後から閉店までをスーパーろんぎぬすで働き、狼への祝福を司る『半額神』である彼女を狼たちは《女神》と呼んだ。
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 20:04:49 ID:G3TpFBB4
着眼点面白いラノベだよねー支援
611ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:05:21 ID:ucc6Kc8J
―――9:00 ろんぎぬす 戦場

マッちゃんを思いださせせるバンダナとエプロンという正装に身を包んだ《女神》の動きの1つ1つを固唾を呑んで見守る。
茶髪ともためを張るほどに発達した見事な肢体。だが、今はそんなことはどうでもいい。
今、この場に必要な3大欲求は1つだけなのだから。
闘いが始まる。その直前、僕は一瞬だけ目を閉じて思い浮かべる。
大きなソース袋がついた大き目のカツと、油を吸わせるために下に敷かれたパスタ。
付け合せに添えられた大き目の人参とジャガイモのゴールデンコンビ。
洋風の名に相応しくパセリで緑の化粧を施されたたっぷり目のご飯。
鮮やかな緑で存在感を主張するブロッコリー。
それらが鮮やかに脳裏をよぎり、口中の湿り気が増す。
腹の虫が痛いほどに僕に要求する。闘いと…その後の歓喜を。
ああ、そうだ。これでいい。これで僕は…戦える。

カッと目を見開いたのと、《女神》が聖域へと戻る扉をくぐったのは、ほぼ同時。
その直後に鳴り響いた合図(ゴング)を受けて僕は駆ける。
弁当に手を伸ばし…当然のように弾かれる。
そちらを向けば見知らぬ、耳の尖った小柄な男。
近くにあるファンタジー系の学校の狼なのであろう男が、返す刀でカツ弁当に手を伸ばすが、やらせない。
僕は男の手を弾く。だが、それだけでは終わらせない。
僕はそのまま腰を落とし…肩を思い切り男に叩きつける!
全身を使った、重い一撃。その一撃は男を大きく…鮮魚コーナーまで吹っ飛ばす。
「佐藤!油断するな!」
その直後、身体を低くした僕を押しつぶそうとしていた男に横合いから蹴りを入れて僕の背中の後ろに立つのは、
転移前、東区で名をはせた狼、《湖の麗人》…著我あやめ。
「悪い!助かったが…その言葉は返す!」
地面に降り立った直後、体勢を整えきっていない著我に足払いをかけようとしていた女の狼の顔を殴りながら、僕は言葉を返す。
「言うじゃん。けど本番は…!」
「ああ、これからだ!」
そして僕らの足の下を素早くくぐろうとしていた子供くらいのサイズの男をダブルで蹴り飛ばし、僕らは弁当へと向かう。
それを阻止しようとする狼たちが入り乱れ、いつもの乱戦になった。

…10分後

『彼』は弁当を手にして去っていく2頭の狼を、グラサン越しに見送っていた。
「…あれが《湖の麗人》、それに《変態》か…」
第7学区…上条当麻が行ったスーパーに姿を現したという《氷結の魔女》を避けてやってきたこの店で出会った、2頭の狼。
その2人、特に黒髪の少年に『彼』の視線は向けられる。
「あの力…あいつならば或いは取り戻せるかも知れないな」
普段は温厚。だが、いざ牙をむけば凄まじい力を発揮する狼…ある種の似たもの同士。
そんな男に、『彼』は一筋の光明を見出した。
「カミやんの…《ヴァナルガンド》の誇りを」
1匹の狼に、忘れたことを思い出させることが出来るかも知れないと。
そして、そんな独り言を最後に、男は歩き出す。自らの部屋へと戻るために。
今宵手にした「宇宙人絶賛!沖縄風豚焼肉弁当」を味わうために。

『彼』の名は、土御門元春。
第7学区の某高校に通う無能力者(レベル0)の学生。イギリス正教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の陰陽博士。
学園都市の暗部『グループ』の一員。学園世界における裏の治安維持部隊『カゲモリ』の1人。そして…1匹の狼。
数多くの顔を持つ彼のことをスーパーの狼たちは《フヴェズルング》と呼んだ。
612ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:10:09 ID:ucc6Kc8J
―――9:25 烏丸高校部活棟 502号室

今日は白梅に誘われたので管理棟で食べてきてしまったと、白粉から連絡があった。
そのまま寮に戻ったようなので白粉は来ない。
その代わりと言ってはなんだが当然のように著我が居座ってる。
そして、弁当が入ったビニール袋を前にし、暇そうに先輩を待つ著我に背を向けて
僕は真新しい地図に丸と文字を書き足していた。
「なにやってんの?」
「一応HP同好会の活動ってとこかな…よし」
第6学区と隣の第7学区にまたがる大きめ白い地図に新たな文字が書き込まれる。

スーパーろんぎぬす 9:00

「ああ。この辺りの半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)の地図ってわけか」
それを見て著我にもこれが何か分かったのだろう。僕は著我の言葉に頷いた。
「そういうこと。今までのは使えないからね」
そうなのだ。
学園世界に転移という異常事態の結果、当然ながら近隣のスーパーの配置は完全に変わってしまった。
それでは不便なので、HP同好会では近隣のスーパーの半値印証時刻を調べ、書き込むことにしていた。
「そういやあうちの大学でも元ガブリエルラチェットが中心になって情報集めてるって言ってたなあ。
 組織だっての動く気はないけど、情報の共有は必要だって」
著我がそんなことを呟いていると、HP同好会の扉が開く。
「佐藤。戻ったぞ。それと…うん?今日は著我も一緒か」
当然のように弁当の入ったビニール袋を手にした先輩が戻ってきた。
「お帰りなさい、先輩。どうでした?」
「ああ、第7学区のセブンスマートはなかなかの品揃えだ。学生の客が多いらしく、ボリュームも多い」
そんなことをいいながら僕が手渡したサインペンのキャップを外し、さっさと文字を書いていく。

セブンスマート 9:00

「あ、やっぱり半値印証時刻は最終下校時刻ですか」
「ああ、そこが難点といえば難点だな。リカバリィがきかん」
僕の言葉に、先輩が頷く。

そう、この街には最終下校時刻なる時間があり、この時間を過ぎると公共交通機関が全部止まる。
そのためか地域密着がモットーのスーパーなどでもこの時間を意識した運営をなされていることが多く、
自然と半値印証時刻が重なりやすいのだ。
「そう言えば、白粉はどうした?」
地図に新たな情報を書き込んだ先輩が後ろを向き、僕に尋ねる。
そんな先輩に僕は白粉は今日は白梅と一緒に管理棟で夕食を取ったらしいと告げる。
「そうか…少し残念だな」
そういうと先輩はいつもの席に座り、ビニール袋から弁当を取り出す。
その弁当に僕らは驚いた。そこに張られている、ひときわ豪華なシール。圧倒的な存在感。
間違いない。
「マジかよ…」
思わず呟いた著我に、先輩は頷き、堂々と応える。
「ああ、あの店の半額神、《錬金術師》の月桂冠だ」
初めてのスーパーで月桂冠を取ってきたというのか…何という実力と強運。流石は先輩だ。
「どうやら今日はお湯はいらないようだな…いただくとしよう」
先輩がちらりと僕らの前に置かれた弁当を見ていい、気を取り直して僕らは頷いた。

613ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:15:28 ID:ucc6Kc8J
…そして5分後

僕は温め終わった弁当のプラスチックのパックを開ける。すると、いきなり僕の鼻に濃厚な香りが飛び込んできた。
どこか懐かしく、幼い頃を思い出させる香り。こってりとした、甘みを感じさせる香り。
「これは…バターか?」
そのバターの香りは温められたご飯から漂ってくる。そうこれは…洋風の名に相応しいバターライスだ。
これはずるい。いきなりの不意打ちだ。思わずメインのカツより先に手を伸ばしたくなる。
だが、やはり最初はメインのカツから。そう考え、僕はずっしりと重いソースの袋を手に取る。
『電子レンジで一緒にあたためてください』
ソースの袋に書かれていた指示に従い、電子レンジで温められたソースは、熱くなっている。
火傷せぬよう、慎重にフチを持ち…マジックカットの施されたソース袋を破る。
「ふおう!?」
その瞬間、ぶわぁと漏れ出した香りに僕は思わず声を上げる。
様々な材料が複雑に絡み合った、だがソース特有の酸味を感じさせない濃厚な香り。
どこかで嗅いだことがあるその香りがなんだったのかと考えながら、僕はソースをカツにかける。
キツネ色に揚げられたカツに茶褐色のソースをかけ、そのうちの1つを弁当についてきた先割れスプーンで突き刺し…口に運ぶ。
歯を伝わるのは、パスタが余計な油を吸うことで生まれる、予想通りのさっくりとした食感。だが。
「これは!?」
一体何度僕を驚かせれば気が済むというのだ。この弁当は。
口の中に広がるのは、濃厚な…ドミグラスソースとしっかりと塩胡椒で味付けされた肉の肉汁。
そう、肉。それが、僕を3たび驚かせた。
「…牛肉だと!?」
洋風カツレツ。その言葉を関東育ちの僕は無意識のうちにとんかつと読み替えていた。
だが、そんな僕の予想を裏切り、洋風カツレツは脂身の少ない、たっぷりと肉汁を含んだ牛肉でできていたのだ!
念入りに下ごしらえをしたのであろうカツはあくまでもやわらかく、
しっかりと塩コショウされたカツそのものが持つ肉汁が牛骨をはじめとした
多数の材料を丹念に煮込んだとおもしき複雑な味わいのドミグラスソースと一体化してえもいわれぬ極上の味となる。
それはいつもの、うちで食べるカツとは違う余所行きの味。
例えるならば、ちょっぴり高め、だが庶民的でもある昔ながらの洋食屋で出されるような逸品だった。
そのカツの味わいに満足しながら僕はバターライスを口に運ぶ。
うまい。バターの濃厚な味がどっしりとしたカツの味わいを正面から受け止めて1つの料理となる。
そう、バターライスとカツに使われた牛肉。そして濃厚なソースが合わさったこれはまた別の西洋の味。ハヤシライスの味だ。
その事実に僕は悟った。この弁当につけられたたっぷりのソースは調味料ではなく、立派に1つの料理であったことを。
「なるほど…しょうゆ味ってのは、こういうことか」
隣では同じくオムライスを先割れスプーンで口に運んだ著我がぼそりと呟く。
「まさかケチャップじゃないとは…でも確かにうまいや」
納得したように頷き、著我は僕の方を見て、言う。
「ところでさっきからアホみたいに驚いていたけど、そっちはどうよ?」
著我の問いかけに僕は黙って弁当を差し出す。その意味は…
614ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:19:21 ID:ucc6Kc8J
「なるほど、食えば分かるってか」
そういいつつ著我もまた、手にしたオムライスを差し出し、代わりとばかりに僕の差し出した弁当のカツに手を伸ばす。
そして僕もまたオムライスを一口すくい上げ、口に運ぶ。
最初に広がるのは、卵のやさしい味わい。淡白なそれは最近の流行のとろりとした半熟ではなく、柔らかく、だがしっかりと火を通されたもの。
そしてその卵から現れるのは、口の中に香るしょうゆ味。
鶏肉に刻んだ長ネギという鉄板の具としょうゆという日本人の英知が組み合わされたそれは、
オムライスでありながら焼き飯の風味を感じさせる。
濃い目の味付けをされた、それだけで食べたら少し濃く感じるであろう焼き飯。
だが、それは飯を覆う淡白な卵とあわさることで、バランスが整えられ見事な味へと変わる。
それだけではない。焼き飯の油をしっかりと焼いた卵に吸わせることでパラッとした食感を出している。見事だ。
そして僕はもう1度オムライスを掬い上げる…先ほどケチャップじゃないと著我が断言したソースと共に。
それを口に運ぶ。そして知る。これを炒飯ではなくオムライスにした意味を。
かかっていたのは赤いが、確かにケチャップではない。辛味と酸味。そう、これは中華風のチリソースだ。
酸味と辛味。この2つがチリソースによって付与された飯が、先ほどとは違う顔を見せる。
それはあたかも昼と夜で顔が変わる街のように。ソースを使わない温かく、やさしい味が昼だとしたら、
チリソースの刺激的な、だが同時にかすかに昼のぬくもりを残したこの味は、夜。そして、昼と夜の比率は自在に変わる。
共に口に運ぶ、ソースの量によって。そのためには、オムライスという形が最適だったのだ。
「おお、こっちもうまいじゃん。付け合せにソースがよくあってる」
カツとご飯、そして付け合せの半分に割ったジャガイモを食いながら、著我が…っておい!?
「馬鹿!食いすぎだ!」
慌てて著我から洋風カツレツ弁当を回収する。まったくコイツは油断も隙も無い。
僕ですら一応遠慮してチリソースと絡めるとさらにおいしい鶏のからあげには。
「っておい!?あたしのから揚げまるごと1個いったのかよ!?3個しかないのに!?」
…1個しか手を出さなかったというのに。
「…どうやら2人とも当たりだったようだな」
お互いに慌てて弁当を引っ込めにらみ合う。
615ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:20:55 ID:ucc6Kc8J
そんな僕と著我の醜い争いに苦笑しながら、今日のメインイベント…先輩が弁当を開ける。
途端に漏れ出すのは、芳しい豚肉と味噌の香り。それは甘く、力強い香りでもって、圧倒的な存在感を示す。
「先輩…それが…」
息を…否、唾を飲み込み、その存在感に震えながら僕は先輩に問う。
それに先輩は頷き、その名を言う。
「『豚肉と味噌、そしてご飯。三味一体で奏でる聖歌。豚の味噌漬け弁当』…あの店の、月桂冠だ」
ついに開かれたそれ、まず最初に目と鼻に入ってくるのは、脂と混じって良い香りを発する豚の味噌漬け。
麹味噌と交じり合った黄土と、肉本来の白。そしてなにより脂身の透明がかった白が一枚の絵のように見るものを魅惑する。
「まずはメインからいかせてもらおう」
その言葉と共に先輩の箸がとんかつ用の大きな一枚肉を贅沢に焼き、食べやすいよう短冊状に切りそろえられたうちの一片をつまみ上げ、
その形のよい唇へと運び…噛み千切る。
「んっ…」
その味に思わず声を漏らし、満面の笑顔でそれを咀嚼しつつ、先輩の箸は素早く純白に輝くご飯をつまみ上げ、口に運ぶ。
そしてご飯と共に、転がすようにそれを味わい…先輩は豚肉と共にご飯を飲み込む。
「ど、どうですか…」
先輩の白い喉が動くのにあわせ、自然にたまった唾液を飲み下しつつ、僕は先輩に味を問う。
「ああ…すごいぞ?」
帰ってきた先輩の半疑問系の答え。僕はこれを知っている。そう…かつてアブラ神の月桂冠を食べたときと同じ反応。
つまりは…言葉にもならないくらいすごいのだ。となれば、することは1つ。
「あの…先輩」
「分かっている…口をあけろ」
いたずらっ子の先輩が豚肉をつまみ上げ、僕の前に突き出す。
それを僕は親鳥から餌をもらうように口をあけ…いれる。
それは絶品だった。
しょっぱい味噌と豚肉の脂身が持つ甘みが渾然となって力強く…とろける。
長時間味噌に漬け込み、限界まで柔らかくなった豚肉は、たやすくほぐれ、口の中に広がる。
これは旨い。旨いが…大事なものが足りません。
目でそう訴える僕に、先輩は分かっていたとばかりに再び箸を…純白のご飯をのせて突き出す。
僕はそれを口の中に放り込み、豚肉と味噌の味わいにご飯の優しい甘みが加わることで、真の三味一体が完成する。
なんという旨み。これがセブンスマートの…第7学区の底力だというのか。
「な、なあ仙。あたしにも…」
先輩と僕の様子に著我も黙ってはいられなくなったのだろう。若干慌てた様子で先輩に言う。
そんな著我に、先輩は笑みを深めて、言う。
「…相応の対価はもらうぞ?佐藤もな」
その笑みの意味。僕らは黙って今宵の獲物を差し出す。
そして、素晴らしき晩餐が再開された。
616ベン・トークロス@学園世界:2010/09/12(日) 20:25:57 ID:ucc6Kc8J
―――10:35

至福の時間を終え、1時間ほどゲームをして去っていった著我を見送った後、僕は毛玉の話を思い出し、
先輩にヴァナルガンドについてたずねていた。
「ヴァナルガンド?…ああ、あいつか」
僕が先ほどスーパーで聞いた噂を聞いた先輩は合点が言ったというように、頷く。
「先輩、知っているんですか?」
「ああ、実は第7学区に行く途中で毛玉と会ってな。似たような話は聞いた後、
 セブンスマートでちょうどお前くらいの背格好の狼と闘りあった。
 実力からすると、アイツがヴァナルガンドで間違いないだろう」
そのときのことを思い出したのか、先輩の目がかすかに泳ぐ。
「強かったんですか?」
「強いな。だがそれ以上に奇妙なやつだった」
「奇妙?」
狼の評価としてはあまり聞かない類のものだ。それに興味を引かれ、僕は続きをさらに尋ねる。
「ああ、実力は本気を出されれば私でも苦戦は免れなかっただろう。だが、どこか本気を出し切っていなかったように思う。
 それに…最後がな」
「最後?」
「ああ、そいつは、私より先に弁当を争奪して去っていった。それが引っかかる」
「先輩より早かったって…」
最後。先輩より早い。そして、先輩が取ってきたのは月桂冠。ということは…
「…まさか月桂冠が2つも出たんですか!?」
馬鹿な。イベントでもない平日にあれか、あれに匹敵するものが2つだなんて。
第7学区の食料事情は一体どうなっているんだ!?
「いいや、月桂冠がそんな簡単に出るわけが無いだろう。だから奇妙だと言っている」
だが、そんな僕の驚愕に、先輩は首を振る。そして呟くように、続きを言った。
「そう…奴は私より先に弁当を取って去っていった。戦える力を残しながら、月桂冠ではないほうを、だ」
そう呟く先輩の横顔には二つ名持ちとして、否、そもそも狼としてまずありえない。そんな気持ちがたっぷりとこもっていた。



今日はここまで。
次回は未定。一応最後まで考えてはいるんだけど、時間が…

ちなみに、ろんぎぬすの弁当はレシピ考案者が全部元ネタありと言う設定だったり。
…お陰で次回以降困る気がするんだけどね。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 23:23:10 ID:vvg2TkJR
乙〜。

ところで烏田高校じゃなかったっけ?
618名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 10:17:23 ID:igcEfnST
>管理棟の《柊蓮司》
それ二つ名じゃねぇwww
てか、柊も半額弁当のお世話になってんのか・・・
619名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 10:35:29 ID:pr7B/Unl
乙であります!
グルメ描写が実にイイ……!


ところで。
ハーフプライスラベリング時、直前に確保しておいた3割引き弁当を手に、
「翠、この弁当にもシール貼ってほしいであります」
などと戯けた事をのたもうた銀髪ゴスロリ吸血鬼が見えた気がするんだが……気のせいだろうか。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 21:27:38 ID:XMy9bP3t
<<幻想殺し>>、あんだけ身の回りに女っ気溢れてるのに半額弁当かよ・・・・(ほろり


閑話休題。
翠はどこでもたくましいねぃ・・・・w 割とどこでもろくな目に遭ってない気がするけど。
ベルにぶっ飛ばされたり、ベルにぶっ飛ばされたり、ベルにぶっ飛ばされたり。

そして、野球娘まできてたのか・・・・w


>>619
おかしいな。
俺はその隣で、満面の笑みのツインテ吸血鬼と十字架ぶら下げた黒髪長髪の美少女が揃って弁当突き出してるのまで見えたんだが・・・。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 21:35:45 ID:qhWB2YhU
で、それを見て眉間を押さえるディア店長か。
622名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 00:17:49 ID:MW4uShM0
C地区の『暴れ牛』っていうのがよくうわからない
623名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 09:36:58 ID:4rxr+nEY
誰かのネタだろ、これを期に一度全部読み返してみてはいかがか
624名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 13:07:09 ID:RTQMovkc
ベホイミでは。
625ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:49:35 ID:WGUIh3Gv
寝る前に、投下しようと思います。スレ立てられなかったんで、誰か次スレたのみます。
626ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:50:58 ID:WGUIh3Gv
―――8:00 スーパーろんぎぬす

『彼女ら』は、キュラキュラと音を立てる、戦車(タンク)を伴い現れた。
「ここなのね!安くておいしいものがたくさん買える穴場って言ってたのね!きゅい!」
くるくると変わる表情に笑みを浮かべながら、蒼い髪を揺らし、少女…というには少しトウの立った女性が言う。
『彼女』は案内人…同好の士と共にここを訪れていた。
「…そうね。それは事実。ある意味ではだけど」
果物やトマト、きゅうりなどの一部の野菜…いわゆる生で食べられるものにばかり目をやって彼女は言う。
ストレートの長い黒髪と乏しい表情は古式ゆかしい日本人形を思わせる。
だが、着ているのは和服ではなく特徴的な紫の制服。それが『彼女』の正体の一端を現していた。
瑞々しい林檎を手に取りながら、思わず口に運びそうになり、慌てて元に戻しつつ、疑問を問う。
「…だが、私には腕がない。それは貴方も同じでは?」
『彼女』の料理の腕前は、凡庸だった。レシピさえあれば簡単なものなら普通に作れる。
そう普通、だ。下手では無い。だが上手くも無い。
少なくとも自らの舌を満足させるには程遠い。
製造(たんじょう)から1週間でその結論に達してから、『彼女』は滅多に台所には入らなくなった。
「料理なんて出来なくても大丈夫なのね!」
だが、そんな彼女の無表情の憂鬱を吹き飛ばす笑顔で言う。
「だって、あそこのは、全部出来上がっているのね!きゅい!」
そう言って蒼い髪の女性はその一角を指差す。
その光景に黒髪の少女は目を奪われる。
そこに立ち並ぶのは、地味な色合いのパッケージに包まれた、商品の群れ。
それがここで売られていることは知識としては知っていた。だが…
「…3割引?」
彼女の常識には無い存在…パッケージに張られたシールの存在に目を見開く。
そう、ごく僅かな時間、この領域(フィールド)でのみ見られる現象(そんざい)を、彼女は知らなかった。
世界はなんと…奥が深い。
「ここのべんとーとそーざいはすっごくレベルが高いって言ってたのね!きゅい!」
驚いた様子の『彼女』に女は嬉しそうに付け加える。
「…それは、分かる」
そう、見ただけでも『彼女』には分かった。それのレベルの高さが。
ゆえに『彼女』は思わずごくりと喉を鳴らし…動き出す。『彼女ら』の異名にあるとおりに。

『彼女』の名は鈴鹿葉月。輝明学園に通う、オクタヘドロン謹製の人造人間。
そしてもう1人の彼女の名はイルククゥ。誇り高き風韻竜の末裔にして、とある魔術師と契約し、シルフィードの名を得た使い魔。
『彼女ら』は知らない。自らの忌み名を。
ほとんど接点の無い、ただ1つの共通項で結ばれた『彼女ら』のことを、狼たちは恐れを込めて『大蝗(アバドン)』と呼んだ。

―――8:45 スーパーろんぎぬす

疑問は感じていた。この時間にも関わらず、妙に狼の気配が薄いことに。
だが、その光景を目にし、絶句と共にその理由を知った。
「馬鹿な…」
半値印証時刻15分前にスーパーを訪れた僕の眼前に広がった予想外の光景に、僕は思わず息を呑む。
目を凝らしてもう一度見るが…間違いない。弁当どころかお握りと惣菜まで全滅(うりきれ)だ。
一体なにが、どうなって…!?
「こりゃあ大蝗(アバドン)の仕業だにゃ〜」
僕とほぼ同時に来店した男が肩をすくめ、怪しげな口調で言う。いかにもアテが外れたという様子で。
そいつは、一言で言って怪しい男だった。
ごく普通の学生服に著我とは違う明らかに染めたと思しき金髪。そして夜だと言うのにグラサンという非常に怪しい格好。
だがそれ以上に身のこなしが僕にとってごく近い身内…親父や祖父さんに近い何かを感じさせる。
その独特の気配は狼には違いないのだが、どこか狐を思わせる。
「…だれだ?」
待っていたかのように声をかけてきたその男を警戒しながら、僕はたずねる。
半ばその正体に感づきながら。そして男は思ったとおりの答え(なまえ)を口にする。
「―――《フヴェスルング》。兄ちゃんに名乗るんならそれが一番相応しい」
スーパーでの名、狼としての二つ名を。
627ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:53:06 ID:WGUIh3Gv
―――8:50 第7学区路地裏

『今夜、まだ戦う気があるんなら、ついてくるにゃ〜』

あのあと、怪しげな口調に戻ったフヴェスルングに誘われ、僕は第7学区へ抜ける近道を疾走していた。
「アバドンってのは何なんだ?」
見覚えの無い裏路地を走りながら、僕は前をゆくフヴェスルングに問いかけた。
アバドン。少なくとも“向こう”にいた頃は聞いたことが無い名だ。
どこかの狼だろうか?だが、それでは半値印証時刻より前に弁当が失せていた理由が説明できない。
「ああ、第6学区には基本いないからにゃ〜。知らんでもおかしくないぜよ」
そんなことを言いながら、結構な速度で走っているにも関わらず息ひとつ切らさずに、
長距離走時の雑談のノリで気楽に答える。
「大蝗(アバドン)ってのは…一言で言えば大メシ喰らいのことぜよ」
そして、相変わらず変わらぬ速度で走りながら、アバドン…大蝗と呼ばれる存在について語りかける。
この学園世界には、稀に凄まじい大食漢が現れるという。

例えば、学食のカレーを10皿ぺロリと平らげる、女子高生。
例えば、特選隊に所属する、回転すしを回らなくしたという伝説を持つ女子高生探偵。
例えば、驚異的な魔法の使い手であり、同時に驚異的な胃袋を持つ、2人の魔道教師…

そんな、TVチャンピオンで優勝が狙えそうな胃袋の持ち主がその日の夕食をスーパーの弁当に定めたとき、
彼女らはすべてを奪う災厄と化し、スーパーの弁当は食い尽くされる。
その根こそぎ奪いつくして去っていく様子から狼に飢えをもたらす災厄、大蝗(アバドン)の名が与えられたという。
なるほど、それは大体分かった。だが…
「でも、なんでその大蝗が第6学区に?」
今までの約2週間、僕は大蝗に出会ったことは無い。
それどころか最長で1ヶ月ここで暮らしているという第6学区の狼たちからもそんな話は聞いたことがなかった。
それが何故…
「それが、1匹だけならまだ残る希望もあったんだがにゃ〜…」
どこからか、あの店、ろんぎぬすの弁当のクオリティの高さを聞きつけた大蝗がいたという。
そしてその大蝗は仲間の大蝗と2人して連れ立って現れ…
「あの惨状ってわけぜよ。まああいつらには基本的な狼の掟『1度に獲る弁当は1つまで』が守れないから、
 半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)には現れない。その意味では大猪よりはマシかもにゃ〜…っと」
そこまで話し、フヴェスルングは立ち止まる。
「ついたぜよ」
その言葉と共にどこを走っていたのかも分からぬ裏路地から出て、大きな道にでる。
その道の向こうに、それはあった。
暗い夜道を明るく照らす、希望の光。その光に照らされて、かすかに見える文字は…『セブンスマート』
「ここが今夜の…狩場(せんじょう)だ」
どこか楽しげに、フヴェスルングは、言った。
628ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:55:33 ID:WGUIh3Gv
―――8:55 第7学区 セブンスマート

さかな さかな さかな〜 魚を食べると〜

妙に耳に残るその唄と共に、店内からは緊迫感が漂ってきた。
強烈な気配に僕は悟る。今、ここには二つ名持ち級の狼がいる、と。
「じゃ、ここからは頑張ってにゃ〜」
そう言うとフヴェスルングは僕を置いて一直線に弁当コーナーに向かう。
どうやらここから先は1人で戦わねばならないようだ。
そう、判断してフヴェスルングを追うように、僕は弁当を確認する。
今宵、祝福を待つ弁当は3つ。
僕はそのうちの1つ「ボリューム満点レベル5、スペシャルハンバーグ弁当」に狙いを定め、お菓子コーナーに立つ。
目の前の「ゲコ太のロンド」という、コアラのあれを思い出させる菓子を見ながら店内を伺う。
…ざっと10といったところか。
その中に、256茶特価2リットル138円のポップを眺めている金髪のフヴェスルングを確認しつつ狼の様子を観察する。
ちらほらとあちこちに見える狼の他は精肉コーナーで豚コマを物色する学生カップル位。閑散としたものだ。
半額印証時刻から1時間もすれば閉店であることを考えればこんなものか。
そう思い、僕は静かに時を待つ。やがて訪れる、その時間を。
そして、その時間は訪れた。
バタンと言う音と共に、半額神が降臨する。
緑色の髪と柔和な笑顔を浮かべた、若い男。
確か先輩が《錬金術師》と呼んでいた半額神が残った3つの配置を整え、次々と半額シールを貼っていく。
それに伴い増していく緊張感。辺りに剣呑な空気が漂い、僕も含めた狼たちが臨戦態勢に入っていく。
そして、仕事を終えた半額神が聖域へといたる扉を開き…閉じる。
辺りに響く狩り(たたかい)の合図。僕は弾かれるように飛び出した。
精肉コーナーのそばを走りぬけ、弁当へと向かう。
当然そこには既に殺到した狼たちが揃って…僕の方を見ている!?
その瞳に宿った、半ば恐怖とすら取れるほどの殺気に、僕はとっさに身体を堅くしつつ反転。
そして、その正体を知る。
「なん…だと!?」
精一杯の防御をしながらその光景に息を呑む。そう…

先ほどまでただの学生カップルだと思っていた男が振り上げた、中身入りのカゴの一撃をその身に受けながら。

629ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:57:56 ID:WGUIh3Gv
―――9:00 セブンスマート 

開始直後、とりあえず目に付いた狼を2匹ほど吹き飛ばしながら、上条当麻は弁当コーナーへ向かう。
中身入りのカゴ。10kg入りの米袋を筆頭に今宵13kgにも達したその武器は、立派な凶器。
当麻とて加護のあるこの時間でなければ振りまわすことなど敵わぬ品だ。
それは戦神が振るう戦槌の如く、狼をなぎ払う。
「カミやん!相変わらず凶悪な武器だな!」
巧みにその戦槌の効果範囲から外れながら、見知った顔が笑う。
その顔に、当麻は苦笑を返した。またか、と。
土御門…否、《フヴェスルング》。
今日はギリギリまで姿を現さなかったので現れないかと思ったが、アテが外れたらしい。
彼の義妹が手料理を振舞わなかったときにのみ現れるこの狼は、第7学区では特に腕の立つ狼だ。
少なくとも、これではしとめられないだろう。
中身入りのカゴ。それは当麻に絶大な攻撃力を約束する…他の全てを代償に。
大振りにならざる得ないが故に命中精度が悪く、振り回すたびに慣性に引っ張られて大きな隙を生む。
重い武器は動きを鈍らせ、おまけに手までふさがるので防御力も半減だ。
そこいらの名無しの狼を駆逐するには役に立つが…名うての狼と闘うのにはむしろ邪魔。
それが、当麻にとってのカゴという存在だった。
(あいつらとはえらい違いだ)
数日前、一心同体にして、攻防一体。そんなカゴ捌きを見せた第6学区の双子の狼がいた。
二つ名持ちだと、後で聞いた。名前は確か…《オルトロス》
(どうする?捨てるか?)
捨てれば攻撃力以外の全てがあがる。
(…いや、今日は3つある。それなら十分…ぐぅ!?」
そんな考えが吹き飛ばされる。わき腹に走った鋭い衝撃に。
慌ててそちらを見れば、そこには、見知らぬ狼(つわもの)がいた。

630ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 22:59:37 ID:WGUIh3Gv
油断した。『中身いっぱいのカゴ』という凶器を予測できなかった僕は為す術も無く吹っ飛ばされた。
身体が痛い。防御してなかったら、終わりまで目を覚ませなかっただろう。
恐ろしい武器だ。重さが段違い。
そしてそれを使うものと言う意味で、僕はあの男の正体に気づく。
「…《ヴァナルガンド》」
ヴァナルガンド、それは涎で河を作るほどの大きさを持つ、巨大な狼の怪物だと言う。
その力は…確かに並みの狼を遥かに凌駕する。
今分かった。奴の力の根源は、空腹の加護だけでなく、カゴを満たすほどの『生活力』
だが、男子学生である奴のそれは専業主婦の…大猪の力には及ばない!
「う、おおおおおおおおおお!」
思い起こす。数日前、奴と戦った、先輩のことを。
そう、先輩は奴と戦い…勝った。
ならば僕とて…無様に寝ているわけには行かない!
僕は立ち上がり、ヴァナルガンドに向かう。狙うのは、ヴァナルガンドがその大きなアギトを振るった瞬間…今!
カゴを振り下ろし、体勢が崩れた瞬間を狙い、僕は渾身の拳をヴァナルガンドに叩き込む。
不意をついたその一撃にヴァナルガンドがその場に膝をつく。
その横を駆け抜けながら、僕は最前線…弁当コーナーへ向かう。
そこに待つのは…
「流石は《変態》!そう簡単には倒れないか!」
「やっぱり知ってたのか!ってかその名前で呼ぶな!」
激しく手を弾きあい、周りの狼と乱戦を演じながら、不敵な笑みを浮かべる《フヴェスルング》と、弁当を奪い合う。
ろんぎぬすに現れたこの二つ名持ちは、僕をこの場に誘おうとしていたのだろう。偶然を装いながら。
何を考えているかは分からないが、厄介な相手だ。
それは今、このときも感じていた。
「当たらなければ、どうということは無い!なんてな」
まるですり抜けるかのように、フヴェスルングは茶化すように言う。
そう、厄介だ。弁当に向かう攻撃は確実に迎撃しながらも、巧みに自らへ向かう攻撃は避けている。
その動きは、どこか白粉を思わせる。最も白粉の場合は戦闘を避けるが…
「ぐわぁ!?」
フヴェスルングは、乱戦を利用し、積極的に戦う。
時に自分に向かっていた攻撃を別の狼に当てさせ、外したように見えた攻撃はその実、的確に別の狼に綺麗に当たったりする。
それによって崩れた狼をとっさの盾にし、有利な位置にもぐりこむ。
乱戦の達人。それがフヴェスルングと言う狼だった。
強い。その二つ名は、伊達ではない。そして…
「そうそう、ひとつだけ、言っとくことがあるにゃ〜」
弁当に向かった僕の右手を左手でがっちりと押さえ、残った右手で…弁当を掻っ攫う。
「もし、あれでカミやんを…ヴァナルガンドを倒せたと思っているなら」
抑えていた右手を放し、弁当を手に弁当コーナーを去ろうとしつつ、ちらりと後ろを見て、その言葉を発する。
その言葉と共に僕は凄まじい気配を感じ…
「そんな幻想、ぶち壊されろ」
ヴァナルガンドの一撃…カゴを持たない、右手の一撃をまともに受けて、僕は意識ごと、吹っ飛んだ。
631ベン・トークロス@学園世界:2010/09/16(木) 23:00:50 ID:WGUIh3Gv
―――9:05 セブンスマート

「お〜い。生きてるか〜?生きてたら返事してくれると上条さん的に感謝感激!」
とりあえず頬を軽く叩いてみるが、駄目だ。目を覚まさない。完全に気絶している。
「…とりあえず、十字教式と陰陽式、どっちで埋葬するぜよ?」
「縁起でもないこというなよ畜生!」
やりすぎた。って言うかあんなに綺麗に決まると思ってなかった。
「カミやんのパンチは魔術師平気で気絶させるからにゃ〜」
弁当の入ったビニール袋を抱えつつ、面白そうに土御門が笑っている。
「上条くん。どうするの?」
傍らに立つアゼルが、心配そうに見ている。
「…仕方ねえ」
多分、今までのパターンからして第6学区の狼だ。
目さえ覚めれば歩いて帰れるだろう。多分。
「アゼル。悪いけど会計済ませて先戻っててくれ」
弁当を乗せたカゴと財布を渡し、アゼルに言う。
「あ、うん。上条くんは…?」
「コイツを背負って帰る。こんなところに捨ててく訳にはいかないだろ」
よっこらしょっと背負い、持ち上げる…ゴツゴツしてて、結構重い。
「ああもう、何が悲しくて上条さんは野郎なんぞ背負っているのでせう…」
なんか泣けてきた。
「ああ…不幸だ〜」
ぼやきながら、えっちらおっちら歩き出す。
「まあまあ、カミやんらしくていいんじゃないかにゃ〜」
「うっせえ。ってかお前も手伝えよ土御門!」
からかってきた隣人に悪態をつきながら、当麻は家路を急ぐのだった。



今日はここまで。そしてレス返し。

>>617
ですね。まとめのときになおしときます。

>>618
・料理の腕は普通
・やたら忙しい
・庶民的な金銭感覚の持ち主
…可能性は高いと見たw

>>619
それをやると次回以降狼に凄い勢いでマークされる諸刃の剣。素人にはお勧めできない。

>>620
ええ。半額弁当です。
それと翠のたくましさは異常。貧乏属性ぱねえってことで。
…それだとまほうせんせいも日夜戦ってたりするのか?狼的に考えて。

>俺はその隣で、満面の笑みのツインテ吸血鬼と十字架ぶら下げた黒髪長髪の美少女が揃って弁当突き出してるのまで見えたんだが・・・。

実は原作には影の薄さがある種強さの源な二つ名持ちの狼がいてだな…

>>622-624
ベホイミです。実際狼やってそうだな、と。
632名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 23:04:25 ID:g7/FZlmY
感想、の前にとりあえず立てに行ってみるな。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 23:12:54 ID:g7/FZlmY
500近いしとりあえず誘導。実は人生初スレ立てなのでうまくリンク張りかえられてるかとかは不安……

【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.29
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1284646213/

なんとか立ったみたい……?
634名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 23:42:19 ID:4rxr+nEY
>>631
乙ー。ていうか、これでCV杉田キャラは三人目か……w
かみやん意外と外道かと思いきややっぱり上条さんでした。二期もだがこの連載も心から楽しみな上条成分補給になりつつあります。次も待ってますー。

ノーチェはアレだ。半額でも自分で出すくらいなら廃棄流してもらうかたかるか物々交換の三択な気がする……
もしくは『狼』たちに『大蝗』情報を流して、その分どっかから見返りもらってそうw
635名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/17(金) 15:15:18 ID:DZz42rzq
スレ立て乙ー
636ベン・トークロス@学園世界
     キラーン
        ∧ '" ̄ ̄ ` 、
        <   > ::     ヽ
       / ∨  ‥  __  ',
        i   \   ∠......   i
        l  " ̄ ノ   \     ト,
        /i!    ( , 、       i! }
       ヽ.i!   r==-、    i!/   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        l!      "       /  < 埋めです
        ヽ   人__ イ     |
          l ̄    / |- 、    \_______
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