あの作品のキャラがルイズに召喚されました part268
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part267
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1264937258/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
そんなわけで、立ててみました。
テンプレは
>>1までということで。
乙
4 :
時の使い魔 代理:2010/02/15(月) 11:18:53 ID:bUR7w3vd
>>1 乙です。
では新スレ記念ということで、サガ・フロンティアの時の君を召喚のものを代理投下したいのですがよろしいでしょうか。
ほかに予約などなければ10分後にはじめます。
支援
6 :
時の使い魔 代理:2010/02/15(月) 11:28:15 ID:bUR7w3vd
―――時のリージョン―――
時の君は暇を持て余していた。以前はこの止まった時の中で永遠に術の研究をする事に
苦もなく、むしろ楽しんでいたのだが、この止まった時を動かし仲間に誘いに来た酔狂な
奴等との旅は、今までの時の君の生活に劇的な変化をもたらした。
旅の目的も果たし、皆ちりじりとなって、またこのリージョンに戻ってからというもの
以前の様にただ研究することに飽きてしまった。
「…なんだこの鏡は?」
目の前に突如光る鏡が現れる。
「どこかのリージョンと繋がっているな…誰かが呼んでいるのか?」
それも面白い。またあのときの様に…そう思いながら、光る鏡に手を差し出した。
―――トリスティン魔法学院―――
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ、神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は
心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」
杖を振り下ろし、お決まりの爆発が起きる。ある生徒は呆れ、ある生徒は嘲笑し、ある
生徒は苦い顔をする。三者三様の反応をしながらも、また失敗したという思いはみな同じ
だった。
「またルイズが失敗しやがった!」
「もう何度目だよ…いい加減にしてくれよ。」
「その爆発じゃあ仮に呼び出せていても粉微塵だぜ!」
しかし、嘲笑されている当の本人は少しも諦めない。
「うるさい!まだ時間はあるわ、必ず成功させて見せる…?ちょちょっと待って、何か
いるわ!」
爆煙が次第に収まりだすと、煙の中に影が見える。ルイズは急いで駆け寄った。
「私を呼び寄せたのはお前か?」
「な、何で人間が…」
爆発で抉れた地面の中心には青年が立っていた。キョロキョロと辺りを見回している。
ルイズは、様子を見守っていた頭の寂しい中年の男に大声を上げた。
「ミスタコルベール!召還のやり直しを要求します!」
「それは駄目だ、ミスヴァリエール、決まりなんだよ。伝統なんだ。春の使い魔召喚は
神聖な儀式。やり直すことは認められない」
「でも人間を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
「だが、ちょっと待って下さい。彼は見たことのない格好だが、マントを着けている。
もしかしたら、貴族かもしれない。もしそうなら色々問題がある。」
「え、貴族!?あなた貴族なの?」
コルベールも青年に近寄り、話しかけた。
7 :
時の使い魔 代理:2010/02/15(月) 11:30:20 ID:bUR7w3vd
「失礼ですが、あなたはどちらかの国の貴族ですか?」
「貴族?支配階級かどうかという事なら違う。下級妖魔だからな。」
「よ、妖魔!?」
時の君の答えにコルベールや生徒の間に緊張が走る。コルベールは、時の君と距離を
とり杖を構えた。
「ミスヴァリエール!危険だ!彼から離れてください!!」
「で、でも!」
ルイズは考えた。メイジの実力を見たければ使い魔を見よ、という言葉もある。妖魔を
呼び出した例など聞いた事がない。もしかしたらこれは凄い事なのではないだろうか?
今までの努力がやっと実った気がしてくる。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。五つの力を
司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」
「な!?」
コルベールは驚いた。自分を妖魔だと言った青年に意識を集中させている間にミスヴァリ
エールがコントラクト・サーヴァントの詠唱をし、ジャンプして口付けをしてしまった。
「感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生無いんだから。」
「さっきからなんの話をしている?何の用で私を呼び寄せたのだ?…っぐ!?何をした!?」
左手を押さえ、その場にうずくまる。
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。すぐに収まるわ。」
「ミスヴァリエール!成功したからいいもののかなり危険でしたよ!」
杖を収めコルベールが再び近寄ってきた。
「すみません。でももうルーンが刻まれましたから、私の言うことを聞くはずです!」
「まあいいでしょう…ふむ、珍しいルーンの形だな」
スケッチを取り出したコルベールにうずくまっていた妖魔が起き上がり問いかけた。
「で、結局なぜ私を呼び寄せたのだ?使い魔がどうこう言っていたが、私を使い魔に
しようというのか?」
答えようとしたコルベールを遮り、ルイズが答えた。
「そうよ!もうあなたは私の使い魔なの!左手に使い魔のルーンが刻まれてるでしょ!
もう決定なの!」
左手を見ながら時の君は答える。
「使い魔か…まあいいだろう。」
自分を殺しにきた相手にも「好きにしろ」で済ませる時の君である。(抵抗はするが)
自分の身分くらい軽いものである。
「そろそろ次の授業が始まるな…ではとりあえず解散しましょう。」
スケッチを描き終えたコルベールが、皆にそう伝えるとフライを唱え宙に浮いた。
続いて生徒たちも次々とフライを唱え宙に浮き学院へ向けて一斉に飛び去っていく。
「…空術か?あれも時術と一緒で資質は一人しか持てない筈だが…」
呆然と空を眺めていた時の君へルイズが問いかける。
「別にフライくらい珍しいものでもないでしょう。それよりあなた名前は?」
「…時の君と呼ばれていたな。」
しえん
9 :
時の使い魔 代理:2010/02/15(月) 11:32:28 ID:bUR7w3vd
「時の《君》ぃ!?ずいぶん大仰な名前ね…そうだ!妖魔って先住魔法を使えるんで
しょ?ちょっとやってみてよ!」
「先住魔法?なんだそれは?」
「はぁ…そういえば下級妖魔とか言ってたもんね…じゃあ何が出来るの?」
「時間を操る事が出来る。」
「ほ、本当に!?凄いじゃない!やって見せてよ。」
「…無理だな。魔力が空だからな。」
常時オーヴァードライブ状態の時のリージョンである。止まった時の中では消費される
事のない魔力も一歩外へ出ると使った分の魔力が一度に消費される。常時術の研究をして
いるので、魔力が残っているはずもない。
「もう!本当は何も出来ないんじゃないの?時間を操れるなんて嘘なんでしょ、そもそも
先住魔法の存在自体知らないなんておかしいし…ま、まさか妖魔って言うのも嘘なんじゃ…
ただの平民とか…貴族の振りをして遊んでいるところを呼び出されて、貴族の格好をして
いるもんだから平民だって言う訳にもいかず思わず妖魔って言っちゃったとか…妖魔って
人間と区別が付かないっていうから確かめようがないし…」
ぶつぶつと認める事が辛い考えを呟いていく。
「そんなことより、皆戻って言ったが、お前は戻らなくていいのか?」
「え!?そうね、早く戻りましょ。ここで考えててもまとまらないわ、後で考えよう…」
ルイズは、一旦思考を中断し学院に向けて歩き出した。
「お前は飛ばないのか?」
「は!?う、うるさい!いいから行くわよ!」
魔法がまともに使えない上に、使い魔がただの平民だったら…追及してみたかったが、
もし平民だと開き直られたら…それは怖い…ルイズは暗澹たる気持ちで学園へと向かっていく…
以上です。
時の使い魔の人、代理の人、乙でした。
暇をもてあました妖魔か
どんな話になることやら期待
ノ´⌒`ヽ
γ⌒´ \
// ""´ ⌒\ )
.i / ⌒ ⌒ i )
i (・ )` ´( ・) i,/
l .::⌒(_人_)⌒:: | 前スレのラストに荒らし沸いたね
\ ヽ_./ /
7 〈
ルイズ=ドラムスコ=ハトヤマ
,..--‐‐‐‐‐‐‐‐---..
/::::ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)
|::::::::::/ ヽヽ
|::::::::::ヽ ........ ..... |:|
|::::::::/ ) (. |
i⌒ヽ;;| -=・=‐ .‐=・-.|
(. 'ー-‐' ヽ. ー' | 荒らすなら任せろ
ヽ. /(_,、_,)ヽ |
|. / トエェェェェエイ |
∧ヽ |ュココココュ| .|
/\\ヽ ヽニニニニソ/
/::::::::::\ \ヽ. ─── /:::::\
壊し屋ドワル
(( / ̄ ̄ ̄~`v´~`ヽ
| ,、__ノ|ト、 } ♪
)) | / ノノ `ヽ |'
| | ━━ ) ━‐ |
(/ -=・=, ,-=・= | ))
(( | "'''" "'''″|
| (__人_) | ♪
♪ ヽ `ー´ __/
((. ( つ ヽ、
〉 と/ ) )) ♪
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馬の骨オカラ
前スレでAAは問題ないみたいな結論に至ったようだけど、こういう政治系のは不味いんじゃなかったっけ?
AAに限らず、投稿以外で容量食う書き込みは
マナーとして自粛だと思う。
テンプレに入れる以前のことだし。
マナーについてkwsk
別にまた立てりゃ良いんじゃないの?
なわけないでしょ。
ssの投下もできる雑談スレにAAは無粋つかいらんってだけの話
雑談もできる、SS投下&感想スレだろ
>>13 政治系がマズい理由はコピペのマルチポストだからじゃない?
マルチポストに便乗するから一発で規制されたりする
疾走する魔術師のパラベラム ◆wyhCAjKHg6:2010/02/15(月) 00:27:25 ID:2.IJFKnM
規制が解けないのでどなたか代理投稿お願いします。
まだ始めなんだからサクサク行きたいのになんだかなぁって感じですが。
では次より。
とのことなので、代理いきたいのですがよろしいですか。
問題なければ15分くらいからいきますが。
なにも 問題は ない
第三章 ゼロの牙
0
魔法/[Magic]――メイジが扱う技術。四つの系統があり、それぞれの得意分野が異なる。杖が無いと使えない。火、風、水、土の四系統から成り立つ。
P.V.F/[P.V.F]――《パラベラム》が精神から生み出す銃器。現時点ではエゴ・アームズとイド・アームズの二種類が確認されている。
1
翌朝、ルイズは目を覚ました。朝の気持ちのいい風が、昨日から開けたままだった窓から部屋に入り、カーテンを揺らしている。まだ強くはないキラキラとした雰囲気を感じさせる日差しが眩しい。
冷たく清潔な空気に満たされた部屋でルイズは目を覚ますことができた。
今はもう苦しみは無く、左手に感じた熱さも無い。
体を起こして、ゆっくりと深呼吸。吸って、吐いて。首をぐるりと半回転。コキコキと音が出る。変な体勢で一晩過ごしたために、体が硬い。立ち上がって、ため息を一つ。
体のどこにも問題は無い。脳も、いつも通り働いてくれている。
ルイズには《パラベラム》の素質があったようだ。
左手には、複雑な模様のルーンが刻まれている。
――『使い魔とメイジは一心同体』、文字通りそうなったわけだ。私は。
口元には自然と笑みが浮かんでいた。
もうルイズは無力ではない。確かな力を手に入れた。
何かが変わった。
漠然とした何かがルイズの胸にある。それは、確信、予感、前兆。どう表してもいいだろう。とにかくそんな何かがルイズにはあった。
もしかしたら、それは自信かもしれない。
右手を水平に伸ばす。ルーンの力か、やり方は頭に自然に浮かんでくる。
使い魔である錠剤を飲むことで手に入れた力、《P.V.F》。
意識を落ち着けて、武器をイメージ。
――うまく・・・・・・いって。
意識を集中し、ルイズは自身の《P.V.F》を展開――できなかった。
「ヴァリエール? あんた、いつまで寝てるのよ。急がないと朝食に間に合わないわよ」
部屋の扉をドンドンと強めにノックする音とともに、隣人であるキュルケの声がルイズの耳に伝わる。
集中力を乱されたルイズは、思わず手を下ろしため息をついた。
「わかっているわよ、ツェルプストー」
確かにそろそろ部屋を出なければ、朝食には間に合わない。
あまり食欲は沸かないが、学生であるルイズには当然、授業が午前からある。空腹で授業を受けるのは避けたい。
メイジの象徴でもある杖とマントを身に着け、ドアを開く。ルイズには魔法が使えないために部屋の鍵も『ロック』の魔法ではなく、平民と変わらない鍵をつかっていた。
ドアを開ければそこには当然、キュルケがいた。
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ルイズの宿敵にして、隣人。
背はルイズよりも高く、スタイルも抜群。
顔立ちも整っており、男ならば是非隣にいて欲しいだろう。腰は無駄なくくびれており、胸は重力に逆らって大きく張り出している。褐色の肌はそれらを引き立て、豊かな赤毛とのコントラストは見事の一言に尽きる。
ルイズとはまるで対照的な女生徒。
ルイズは思わず視線を落とし、何にも遮られること無く見える自分の足を見てへこんだ。もちろん、精神的な意味で。泣きそうになった。
「――山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんか・・・・・・って聞いてるの?」
キュルケの言葉に我に帰る。いつの間にかキュルケの隣には、大きな蜥蜴がいた。
サラマンダー。尻尾の先に炎を揺らめかせ、細かな鱗からは確かな熱気を感じる。赤く大きな体は、キュルケの髪の色と相まってお似合いだ。
はて? どこかで見た覚えがある。どこだったか?
「ツェルプストー、そのサラマンダーは?」
「・・・・・・やっぱり、私の話を聞いて無かったのね。せっかくフレイムを紹介してあげたのに」
「フレイム?」
「この子の名前よ。本当に話を聞いてなかったのね・・・・・・」
キュルケによしよしと撫でられ、フレイムは嬉しそうな鳴き声を上げる。
その様子を見て思い出した。このサラマンダーは昨日、キュルケが召喚したサラマンダーだ。
どうやらさっきしていた話というのは、要するに使い魔自慢だったらしい。
「素敵でしょう、私の属性にピッタリ」
「あんた、『火』属性だもんね」
キュルケは火のトライアングルメイジ。まだこの年齢でトライアングルというのは優れている証拠だ。使い魔がサラマンダーだというのも納得がいく。
「ええ、この『微熱』のキュルケに相応しいわ。ところであなたの使い魔は? なんでも植物を召喚したとか聞いたけれど?」
「植物じゃないわ」
「へぇ? じゃあ何を召喚したのよ?」
反射的に言い返してから、ルイズは自分のミスに気がついた。
――しまった。つい口を滑らせた。
あの錠剤もパラベラムの力も異端の力である。下手を打てば、先住魔法や異教扱いされ処刑されかねない。
どうやって誤魔化そうか。
「・・・・・・マジックアイテムよ。使ったメイジの才能を引き出す、ね」
「へぇ、『ゼロ』」にはピッタリじゃない。使い魔って、やっぱりメイジに合わせたものが召喚されるのね」
結局、嘘は付かずにある程度暈して喋った。
才能を引き出すというのは嘘ではない。メイジに限ったことではないが。錠剤を飲んでパラベラムになれるかどうかは、単純にパラベラムの素質があるかどうかっだ。才能に貴賎は無い。貴賎があるのならば、有力貴族の娘であるルイズに無いはずが無い。
「で? どうだったの?」
「何がよ?」
「『ゼロ』のルイズの才能よ。使ったんでしょ?」
そういってキュルケはルイズの左手を指す。そこには使い魔と一心同体となった証であるルーンが刻まれている。
ルイズは内心舌打ちしそうになる。キュルケに急かされて、自分の左手のルーンのことを忘れていた。
「・・・・・・まぁね」あとで手袋を嵌めよう。確か薄手のやつがあった筈だ。
「で、系統は?」
「・・・・・・ツェルプストーの人間に話す気は無いわ」
ルイズがそう言った途端、キュルケはあからさまに白けた顔した。やれやれといった様子で首を振る。その仕草がまるで小馬鹿にされているみたいで腹が立つ。
「呆れた。系統くらいは教えてくれてもいいじゃないの。どうせすぐにわかるんだし」
「・・・・・・はやく食堂に行きましょう。朝食に遅れると言ったのはあんたよ」
そう言うとルイズはキュルケとフレイムを避けて、食堂へ向けて歩き出す。キュルケはそんなルイズを見て、わざと聞こえるようにため息をついた。
そんな主人の様子を見て、フレイムが心配そうにキュルケを見上げる。キュルケはそんなフレイムをゆっくりと撫でてやる。
「・・・・・・土よ」
ルイズの姿がキュルケの視界から消えようかという頃に、ルイズの呟きがキュルケの耳に届いた。
それは先程のキュルケの問いに対する答え。呟いたルイズの耳は僅かに赤く染まっていた。
「まったく・・・・・・素直じゃないんだから」
ルイズの後ろ姿を追いかけながら、キュルケは苦笑交じりに呟いた。その呟きを聞いたのは傍らにいたフレイムだけであり、それを聞いたフレイムは楽しそうに喉を鳴らして返事をした。
2
食堂で豪勢な食事を、特に味わいもせずに淡々と口に運びながらルイズは今朝の出来事について考えていた。
ルイズは使い魔の力で、《パラベラム》となった。それは確かだ。
左手の甲に刻まれたルーンは確かにルイズに刻まれたものであり、ルイズが今こうやって思案に耽ることができるのもパラベラムの素質があったからだ。
邪魔が入ったせいで、自分の能力である《P.V.F》がどんなものなのかはまだ確認できていないが。ハルケギニアにおいて異端であるこの力を、知られればその日のうちにルイズはお尋ね者になるだろう。
パラベラムの力があれば、メイジや賞金稼ぎの追っ手を逃れるのはそう難しくはないだろうが、そもそも追われずに済むのが望ましい。
それにいざ、アカデミーなり、賞金稼ぎなりの追走から身を守るとなった場合、一人では無理がある。精神力を使うのは魔法と同じなので、しつこく追い回されることになれば先にスタミナが切れるのはこちらの方だ。
不利なのはこちら。味方はおらず、敵は世界。勝ち目などはなからあるわけがない。
今朝、キュルケに尋ねられた時は『マジック・アイテム』と誤魔化した。とりあえずはそれでいいだろう。
問題は《P.V.F》だ。
精神力は必要だが、杖は必要ない。ハルケギニアにおいてはまだまだ信頼性と攻撃力、その他諸々の弱点から軽視されている銃としての形を取る能力。ほかにもありとあらゆる事がこの世界では異質だ。
どうやって誤魔化すか。
この問題はパラベラムとなったルイズが一生頭を悩ませるものとなりそうだ。
――とりあえずは『才能を開花させるマジック・アイテム』とでもしようか?
そんなことを考えながらの朝食を済ませ、教室へと向かう。途中、手袋を取りに一度部屋に戻る。
今朝の続きをしようかとも思ったが、もうすぐ授業が始まってしまう。ルイズは渋々教室へ向かった。
今日の一時間目の授業は、ミス・シュヴルーズの『土』。内容は一年生の復習。退屈極まりない。
ルイズは魔法が使えない分、座学を含むあらゆる分野の努力を積み重ねている。事実、ルイズの座学の成績は学年でもトップクラスだ。
そんなルイズにとって、この授業は退屈で苦痛だった。
ルイズが教室に入ると、それまで雑談に興じていた同級生たちの視線がルイズに集まる。その瞳に浮かぶのは決して好意的な感情ではない。蔑み、嘲りといった『ゼロ』に向けられるものだ。
ルイズはそんな視線に注意を払うことなく、席についた。
「ズが召喚に成功し――って珍しい何かって聞いたぞ」「あな――らないの? なんで――つの種とか」「種? 種って――だ物とかの中に入っ――ロのルイ――」「でも――ベール先生が珍し――」「無い無――ってゼロだぞ? どう――ら拾って来――」
途切れ途切れではあるが、耳に会話が入ってくる。
内容は嘲笑の類。いつもと変わらないルイズの心を傷つける言葉。憎悪や悪意が込められたのはほんの僅かで、ほとんどは学院で過ごす中での退屈凌ぎ。今日は使い魔について、だ。
彼らのそんな話を聞いてしまっても、ルイズは特に行動は起こさない。
話題の中心となる『使い魔』は決して無能などではない。『ゼロ』ではない。
――私はもう『ゼロ』じゃない。
ルイズが自分の力に考えを巡らせようとしたところで、鐘の音が鳴り教室に中年の女性が入ってきた。紫を基調とした服に身を包み、頭には帽子を載せたこの女性がシュヴールズである。
「はいはい、お喋りの時間はもう終わりですよ。席についてください」
話す内容は平民などと大して変わりはしない生徒たちも、シュヴールズに従いすぐに口を閉じて席につく。
その様子に満足したのか、シュヴールズはうんうんと頷くような仕草をしながら教壇につく。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」
シュヴールズの言葉を聞き、何人かがクスクスと忍び笑いを漏らす。
「ゼロのルイズ! 植木鉢はどうしたんだ? せっかく召喚できたんだ、傍においてやれよ!」
一人のお調子者の発言で、今まで抑えるようだった笑いが大きくなり質が変わる。太り気味の風のメイジ、マリコルヌ。
思わずカチンと来た。
「風邪っぴきは黙ってなさい。せいぜい食べ物を離さないようにしなさい。焼き鳥にされたんじゃ使い魔が可哀相だわ」
今度はルイズの発言を聞き、何人かが笑い声を漏らした。思わぬ反撃を受けたマリコルヌは顔を上気させてどなりつける。
「風邪っぴきだと!? 僕は『風上』のマリコルヌだ! ミス・シュヴールズ、ゼロのルイズが僕を侮辱しました!」
顔を真っ赤にしたマリコルヌが椅子から立ち上がり、ルイズを睨み付ける。ルイズはその視線を真正面から受け止める。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・グランドプレ」
お互いの手が今にも杖に伸びようかという雰囲気の中で、緊張を破ったのは教師であるシュヴールズであった。
「みっともない口論はおやめなさい。学友を侮辱するものではありませんよ」
シュヴールズの言葉で、頭に上っていた血が冷えたルイズは素直に席についた。ここで教師に逆らっても何の得もない。
マリコルヌの方は一瞬怯んだが、口を閉じることはない。
「ミセス・シュヴルーズ! 僕の風邪っぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です!」
その言葉を火種に、また嘲笑がルイズに向けられる。
自分の注意の効果が薄かったことを理解したシュヴールズは、ため息をつきながら杖を取り出した。小声でルーンを唱えながら、小ぶりの杖を振る。するとマリコルヌとルイズの事を笑っていた生徒たちの口に赤土が詰められた。
「あなた達はその格好で授業を受けなさい」
口の中を粘土で満たされた生徒たちを見回し、静かになったのを確認すると気を取り直すように咳払いをしたシュヴールズは中断されていた授業を再開する。
支援
3
「さて、私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴールズです。『土』系統の魔法をこれから一年、皆さんに講義します。魔法の四大系統はご存知ですね? ・・・・・・ミス・タバサ?」
教室の隅で静かに本を読んでいた青い髪をした眼鏡の生徒は、本から僅かに顔を上げて教師の問いかけに短い答えを返す。
「『水』『風』『火』『土』の四つ」
それだけを素っ気無く答えると、また本に視線を戻してしまった。
シュヴールズはそんな態度に僅かに眉を顰めたが、特に何も言わずに授業を続ける。
「そのとおり。今は失われた『虚無』を加えて全部で五つの系統。今は使うものがいなくなった虚無を除いて、四大系統と呼ばれているのは皆さんもご存知ですね。私はこの中でも『土』の系と――」
――やっぱり退屈だわ。
メイジなら誰でもが知っている常識の復習に、土贔屓の授業。自分の系統に誇りを持つのは当然だが、そんな授業は退屈だ。
系統魔法は適正があり、人によっては特定の系統の魔法を全く使えない、というメイジも珍しくない。現に土を苦手をする何人かは既に集中力が切れている。
ルイズも自分の知っている知識をなぞる授業に意識を向けることをやめて、《パラベラム》について考えを巡らせることにした。
使い魔の錠剤に関しては『マジック・アイテム』で構わないだろう。
本来、召喚の儀式では生物以外は呼び出されることは無いが、ルイズは『ゼロ』だ。
多少のイレギュラーは、不本意だがこれで誤魔化す事ができるだろう。
何かを作り出す、という点では土系統に似ているから――
「――リエール!」
「は、はい!」
「ミス・ヴァリエール、授業に集中しなさい。授業を聞く必要が無いというのでしたら、あなたにやってもらいましょう」
ルイズは舌打ちをしそうになるのを堪えた。たまたま考え事をしているのをシュヴールズに見咎められたらしい。
シュヴールズの前にはピカピカと光を反射する鉱石が置いてある。金色に光るそれは一見すると黄金のようにも見えるが、黄金はスクエアクラスでも錬金するのは一苦労のだから、おそらくあれは黄鉄鉱や真鍮の類だろう。
どうやら錬金をやってみせたようだ。
「この石を何でも好きなものに錬金してみてください」
シュヴールズは石ころを取り出し、静かに机の上に置いた。
――ちょうどいいわ。試したいこともあるしね。
「わかりました」
「先生、やめておいた方が・・・・・・」
ルイズが机に向かおうとするのをたまたま近くに座っていたモンモランシーと呼ばれる少女が止める。
「どうしてですか?」
「危険です」
不思議そうな表情を浮かべるシュヴールズと違い、モンモンランシーの顔には焦りと恐怖の色が浮かんでいる。
「危険? どうしてですか?」
「先生は、ルイズを教えるのは初めてでしたよね?」
「ええ。でも彼女が努力家ということも聞いてます」
どうやらシュヴールズはルイズの魔法が爆発するという事を知らないらしい。誰も彼女に教えなかったのか、それとも誰もが知っていると思っていたのか。どちらにしてもいつものルイズならば爆風に巻き込まれて医務室行きだっただろう。
「さ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何も始まりませんよ?」
「ルイズ、やめて」モンモランシーが蒼白になった顔で止めようとするが、ルイズは取り合わない。
リラックスした様子で机まで歩み寄って杖を取り出た。
ルイズがシュヴールズの隣に立つと、シュヴールズが微笑みかける。
「いいですか、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く、心に思い浮かべるのです」
「ええ、わかりました」
だが、ルイズには何かを錬金するつもりなんてさらさら無い。
ルイズが魔法を使うのは、もう避けられないと悟ったほかの生徒たちが我先にと机の影に隠れる。ただ一人、机に隠れなかった生徒がいたが、ルイズが彼女に気づくことは無かった。
杖を軽く握り、ルーンを唱え振る。
ルイズの詠唱をする声を聞いた生徒の間に緊張が走る。
石ころが一瞬閃光に包まれ、爆音を教室に響かせる。
そして爆風に煽られたルイズとシュヴールズは、仲良く後ろに倒れこんだ。
予想外の出来事にシュヴールズは目を丸くして驚き、机の影で怯えていた生徒たちは不思議に思う。
「・・・・・・いつものより、小さくないか?」
普段ならばシュヴールズもルイズも纏めて、教室の壁に叩きつけるほどのできる爆風を起こすルイズの失敗魔法の規模が明らかに小さい。
「これが・・・・・・あなたの、その・・・・・・『失敗』ですか?」
「ええ、これが私の魔法です。ミス・シュヴールズ」
これ以上、何も起きない事を確認して恐る恐るといった様子で机から頭を出す生徒たちが見たのは、綺麗に机の上にできた丸い焦げ跡だけだった。
爆風により机上に置いてあった私物などが吹き飛び、嵐が通ったあとのようにはなっていたがいつもよりも明らかに被害は少ない。
いつもなら爆発によっていくつかの机がダメになるのだ。
生徒たちは不思議に思いながらも、今回の爆発の規模が小さかったことに安堵の表情を浮かべる。
しえん
――上手くいった。
ルイズは心の中で微笑みを浮かべる。
この錬金の魔法でルイズが望んだことは『爆発の制御』。
《パラベラム》となった今、ルイズが魔法に拘る理由は随分と少なくなった。
もちろん、今でも魔法には憧れを抱いているし、使いたいとも思っている。しかし、ルイズにはもう焦る必要は無い。
魔法が貴族を支えている最大の理由たる『力』、それをルイズは手に入れた。
ならば次に必要なのは自身という戦力の把握。その上でルイズの『爆発』は大きなウエイトを占める。
威力。命中精度。射程距離。連射性能。消費する精神力。この『爆発』はどれだけの戦力を秘めているのか。
今までは成功させることに必死で、バカスカと闇雲に撃つだけだったが、この『爆発』は戦力として見るならば中々のものだ。
詠唱は短く、威力は莫大。精神力の消耗も桁違いに少ない。込めた魔力によって爆発の規模もある程度操作できることもこれでわかった。
どんな詠唱でも爆発が起きるために、攪乱などの効果も期待できる。
何よりもこの『爆発』は『相手が知らない攻撃手段』である。対処は難しく、回避も反撃も容易ではない。
確かめることはまだ山積みだが、少なくてもこの『失敗魔法』は使える。
「・・・・・・授業は中止です。教室がこの状況では仕方がありません。ミス・ヴァリエール」
しばらく顔を顰めて、頭を抱えていたシュヴールズだったがようやく現状を把握したらしい。
肝心な事を教えてくれなかった同僚たちを恨みながら、眩暈のするようなこの状況を何とか収めようとする。
「なんでしょう、ミス・シュヴールズ」
「あなたに責任の全てがあるわけではありませんが、あなたの魔法が原因なのは確かです。よってこの部屋の後片付けを命じます」
ルイズは若干、嫌そうな顔を浮かべたが教師の言うことだ。従うしかない。それにルイズにはこうなることがわかっていたが、やめようとはしなかったので非が無いわけではない。
「しかし、ミス・モンモランシの忠告を聞かなかった私にも非はあります。あとでメイドを一人、手配しておきます。昼までに終わらないようであれば、残りはメイドに任せなさい」
――一人なら《P.V.F》を展開できたのに。
そんな事を思いながら、ルイズは表面上は素直に頷いて見せた。
だが、この教室を一人で片付けるのは骨が折れそうだ。素直に喜ぶべきかもしれない。
教室を出て行く同級生を眺めながらルイズは、自分の力の有り方に考えを巡らせていた。
以上で終わりです。
ああ、ギーシュとフラグ立てるところまで行くつもりだったのに・・・・・・。
そろそろP.V.Fを出したいんですがね。
次回は少々間が空くかもしれません。それでは。
パラベラムの人、代理の人、乙でした。
乙であります
ただ一人机に隠れなかった生徒はキュルケか
ウルトラに成りすませなくなったら今度は黒魔道士か、節操のせの字もないな
今日、電波を受信したような気がした
が文才ないので諦めた
―――時のリージョン―――
時の君は暇を持て余していた。以前はこの止まった時の中で永遠に術の研究をする事に
苦もなく、むしろ楽しんでいたのだが、この止まった時を動かし仲間に誘いに来た酔狂な
奴等との旅は、今までの時の君の生活に劇的な変化をもたらした。
旅の目的も果たし、皆ちりじりとなって、またこのリージョンに戻ってからというもの
以前の様にただ研究することに飽きてしまった。
「…なんだこの鏡は?」
目の前に突如光る鏡が現れる。
「どこかのリージョンと繋がっているな…誰かが呼んでいるのか?」
それも面白い。またあのときの様に…そう思いながら、光る鏡に手を差し出した。
―――トリスティン魔法学院―――
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ、神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は
心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」
杖を振り下ろし、お決まりの爆発が起きる。ある生徒は呆れ、ある生徒は嘲笑し、ある
生徒は苦い顔をする。三者三様の反応をしながらも、また失敗したという思いはみな同じ
だった。
「またルイズが失敗しやがった!」
「もう何度目だよ…いい加減にしてくれよ。」
「その爆発じゃあ仮に呼び出せていても粉微塵だぜ!」
しかし、嘲笑されている当の本人は少しも諦めない。
「うるさい!まだ時間はあるわ、必ず成功させて見せる…?ちょちょっと待って、何か
いるわ!」
爆煙が次第に収まりだすと、煙の中に影が見える。ルイズは急いで駆け寄った。
「私を呼び寄せたのはお前か?」
「な、何で人間が…」
爆発で抉れた地面の中心には青年が立っていた。キョロキョロと辺りを見回している。
ルイズは、様子を見守っていた頭の寂しい中年の男に大声を上げた。
「ミスタコルベール!召還のやり直しを要求します!」
「それは駄目だ、ミスヴァリエール、決まりなんだよ。伝統なんだ。春の使い魔召喚は
神聖な儀式。やり直すことは認められない」
「でも人間を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
「だが、ちょっと待って下さい。彼は見たことのない格好だが、マントを着けている。
もしかしたら、貴族かもしれない。もしそうなら色々問題がある。」
「え、貴族!?あなた貴族なの?」
コルベールも青年に近寄り、話しかけた。
「失礼ですが、あなたはどちらかの国の貴族ですか?」
「貴族?支配階級かどうかという事なら違う。下級妖魔だからな。」
「よ、妖魔!?」
時の君の答えにコルベールや生徒の間に緊張が走る。コルベールは、時の君と距離を
とり杖を構えた。
「ミスヴァリエール!危険だ!彼から離れてください!!」
「で、でも!」
ルイズは考えた。メイジの実力を見たければ使い魔を見よ、という言葉もある。妖魔を
呼び出した例など聞いた事がない。もしかしたらこれは凄い事なのではないだろうか?
今までの努力がやっと実った気がしてくる。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。五つの力を
司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」
「な!?」
コルベールは驚いた。自分を妖魔だと言った青年に意識を集中させている間にミスヴァリ
エールがコントラクト・サーヴァントの詠唱をし、ジャンプして口付けをしてしまった。
「感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生無いんだから。」
「さっきからなんの話をしている?何の用で私を呼び寄せたのだ?…っぐ!?何をした!?」
左手を押さえ、その場にうずくまる。
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。すぐに収まるわ。」
「ミスヴァリエール!成功したからいいもののかなり危険でしたよ!」
杖を収めコルベールが再び近寄ってきた。
「すみません。でももうルーンが刻まれましたから、私の言うことを聞くはずです!」
「まあいいでしょう…ふむ、珍しいルーンの形だな」
スケッチを取り出したコルベールにうずくまっていた妖魔が起き上がり問いかけた。
「で、結局なぜ私を呼び寄せたのだ?使い魔がどうこう言っていたが、私を使い魔に
しようというのか?」
答えようとしたコルベールを遮り、ルイズが答えた。
「そうよ!もうあなたは私の使い魔なの!左手に使い魔のルーンが刻まれてるでしょ!
もう決定なの!」
左手を見ながら時の君は答える。
「使い魔か…まあいいだろう。」
自分を殺しにきた相手にも「好きにしろ」で済ませる時の君である。(抵抗はするが)
自分の身分くらい軽いものである。
「そろそろ次の授業が始まるな…ではとりあえず解散しましょう。」
スケッチを描き終えたコルベールが、皆にそう伝えるとフライを唱え宙に浮いた。
続いて生徒たちも次々とフライを唱え宙に浮き学院へ向けて一斉に飛び去っていく。
「…空術か?あれも時術と一緒で資質は一人しか持てない筈だが…」
呆然と空を眺めていた時の君へルイズが問いかける。
「別にフライくらい珍しいものでもないでしょう。それよりあなた名前は?」
「…時の君と呼ばれていたな。」
「時の《君》ぃ!?ずいぶん大仰な名前ね…そうだ!妖魔って先住魔法を使えるんで
しょ?ちょっとやってみてよ!」
「先住魔法?なんだそれは?」
「はぁ…そういえば下級妖魔とか言ってたもんね…じゃあ何が出来るの?」
「時間を操る事が出来る。」
「ほ、本当に!?凄いじゃない!やって見せてよ。」
「…無理だな。魔力が空だからな。」
常時オーヴァードライブ状態の時のリージョンである。止まった時の中では消費される
事のない魔力も一歩外へ出ると使った分の魔力が一度に消費される。常時術の研究をして
いるので、魔力が残っているはずもない。
「もう!本当は何も出来ないんじゃないの?時間を操れるなんて嘘なんでしょ、そもそも
先住魔法の存在自体知らないなんておかしいし…ま、まさか妖魔って言うのも嘘なんじゃ…
ただの平民とか…貴族の振りをして遊んでいるところを呼び出されて、貴族の格好をして
いるもんだから平民だって言う訳にもいかず思わず妖魔って言っちゃったとか…妖魔って
人間と区別が付かないっていうから確かめようがないし…」
ぶつぶつと認める事が辛い考えを呟いていく。
「そんなことより、皆戻って言ったが、お前は戻らなくていいのか?」
「え!?そうね、早く戻りましょ。ここで考えててもまとまらないわ、後で考えよう…」
ルイズは、一旦思考を中断し学院に向けて歩き出した。
「お前は飛ばないのか?」
「は!?う、うるさい!いいから行くわよ!」
魔法がまともに使えない上に、使い魔がただの平民だったら…追及してみたかったが、
もし平民だと開き直られたら…それは怖い…ルイズは暗澹たる気持ちで学園へと向かっていく…
「ヴァリエール? あんた、いつまで寝てるのよ。急がないと朝食に間に合わないわよ」
部屋の扉をドンドンと強めにノックする音とともに、隣人であるキュルケの声がルイズの耳に伝わる。
集中力を乱されたルイズは、思わず手を下ろしため息をついた。
「わかっているわよ、ツェルプストー」
確かにそろそろ部屋を出なければ、朝食には間に合わない。
あまり食欲は沸かないが、学生であるルイズには当然、授業が午前からある。空腹で授業を受けるのは避けたい。
メイジの象徴でもある杖とマントを身に着け、ドアを開く。ルイズには魔法が使えないために部屋の鍵も『ロック』の魔法ではなく、平民と変わらない鍵をつかっていた。
ドアを開ければそこには当然、キュルケがいた。
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ルイズの宿敵にして、隣人。
背はルイズよりも高く、スタイルも抜群。
顔立ちも整っており、男ならば是非隣にいて欲しいだろう。腰は無駄なくくびれており、胸は重力に逆らって大きく張り出している。褐色の肌はそれらを引き立て、豊かな赤毛とのコントラストは見事の一言に尽きる。
ルイズとはまるで対照的な女生徒。
ルイズは思わず視線を落とし、何にも遮られること無く見える自分の足を見てへこんだ。もちろん、精神的な意味で。泣きそうになった。
「――山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんか・・・・・・って聞いてるの?」
キュルケの言葉に我に帰る。いつの間にかキュルケの隣には、大きな蜥蜴がいた。
サラマンダー。尻尾の先に炎を揺らめかせ、細かな鱗からは確かな熱気を感じる。赤く大きな体は、キュルケの髪の色と相まってお似合いだ。
はて? どこかで見た覚えがある。どこだったか?
「ツェルプストー、そのサラマンダーは?」
「・・・・・・やっぱり、私の話を聞いて無かったのね。せっかくフレイムを紹介してあげたのに」
「フレイム?」
「この子の名前よ。本当に話を聞いてなかったのね・・・・・・」
キュルケによしよしと撫でられ、フレイムは嬉しそうな鳴き声を上げる。
その様子を見て思い出した。このサラマンダーは昨日、キュルケが召喚したサラマンダーだ。
どうやらさっきしていた話というのは、要するに使い魔自慢だったらしい。
「素敵でしょう、私の属性にピッタリ」
「あんた、『火』属性だもんね」
キュルケは火のトライアングルメイジ。まだこの年齢でトライアングルというのは優れている証拠だ。使い魔がサラマンダーだというのも納得がいく。
「ええ、この『微熱』のキュルケに相応しいわ。ところであなたの使い魔は? なんでも植物を召喚したとか聞いたけれど?」
「植物じゃないわ」
「へぇ? じゃあ何を召喚したのよ?」
反射的に言い返してから、ルイズは自分のミスに気がついた。
今日の一時間目の授業は、ミス・シュヴルーズの『土』。内容は一年生の復習。退屈極まりない。
ルイズは魔法が使えない分、座学を含むあらゆる分野の努力を積み重ねている。事実、ルイズの座学の成績は学年でもトップクラスだ。
そんなルイズにとって、この授業は退屈で苦痛だった。
ルイズが教室に入ると、それまで雑談に興じていた同級生たちの視線がルイズに集まる。その瞳に浮かぶのは決して好意的な感情ではない。蔑み、嘲りといった『ゼロ』に向けられるものだ。
ルイズはそんな視線に注意を払うことなく、席についた。
「ズが召喚に成功し――って珍しい何かって聞いたぞ」「あな――らないの? なんで――つの種とか」「種? 種って――だ物とかの中に入っ――ロのルイ――」「でも――ベール先生が珍し――」「無い無――ってゼロだぞ? どう――ら拾って来――」
途切れ途切れではあるが、耳に会話が入ってくる。
内容は嘲笑の類。いつもと変わらないルイズの心を傷つける言葉。憎悪や悪意が込められたのはほんの僅かで、ほとんどは学院で過ごす中での退屈凌ぎ。今日は使い魔について、だ。
彼らのそんな話を聞いてしまっても、ルイズは特に行動は起こさない。
話題の中心となる『使い魔』は決して無能などではない。『ゼロ』ではない。
――私はもう『ゼロ』じゃない。
ルイズが自分の力に考えを巡らせようとしたところで、鐘の音が鳴り教室に中年の女性が入ってきた。紫を基調とした服に身を包み、頭には帽子を載せたこの女性がシュヴールズである。
「はいはい、お喋りの時間はもう終わりですよ。席についてください」
話す内容は平民などと大して変わりはしない生徒たちも、シュヴールズに従いすぐに口を閉じて席につく。
その様子に満足したのか、シュヴールズはうんうんと頷くような仕草をしながら教壇につく。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」
シュヴールズの言葉を聞き、何人かがクスクスと忍び笑いを漏らす。
「ゼロのルイズ! 植木鉢はどうしたんだ? せっかく召喚できたんだ、傍においてやれよ!」
一人のお調子者の発言で、今まで抑えるようだった笑いが大きくなり質が変わる。太り気味の風のメイジ、マリコルヌ。
思わずカチンと来た。
「風邪っぴきは黙ってなさい。せいぜい食べ物を離さないようにしなさい。焼き鳥にされたんじゃ使い魔が可哀相だわ」
今度はルイズの発言を聞き、何人かが笑い声を漏らした。思わぬ反撃を受けたマリコルヌは顔を上気させてどなりつける。
「風邪っぴきだと!? 僕は『風上』のマリコルヌだ! ミス・シュヴールズ、ゼロのルイズが僕を侮辱しました!」
顔を真っ赤にしたマリコルヌが椅子から立ち上がり、ルイズを睨み付ける。ルイズはその視線を真正面から受け止める。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・グランドプレ」
お互いの手が今にも杖に伸びようかという雰囲気の中で、緊張を破ったのは教師であるシュヴールズであった。
「みっともない口論はおやめなさい。学友を侮辱するものではありませんよ」
シュヴールズの言葉で、頭に上っていた血が冷えたルイズは素直に席についた。ここで教師に逆らっても何の得もない。
マリコルヌの方は一瞬怯んだが、口を閉じることはない。
「ミセス・シュヴルーズ! 僕の風邪っぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です!」
その言葉を火種に、また嘲笑がルイズに向けられる。
自分の注意の効果が薄かったことを理解したシュヴールズは、ため息をつきながら杖を取り出した。小声でルーンを唱えながら、小ぶりの杖を振る。するとマリコルヌとルイズの事を笑っていた生徒たちの口に赤土が詰められた。
「あなた達はその格好で授業を受けなさい」
口の中を粘土で満たされた生徒たちを見回し、静かになったのを確認すると気を取り直すように咳払いをしたシュヴールズは中断されていた授業を再開する。
――上手くいった。
ルイズは心の中で微笑みを浮かべる。
この錬金の魔法でルイズが望んだことは『爆発の制御』。
《パラベラム》となった今、ルイズが魔法に拘る理由は随分と少なくなった。
もちろん、今でも魔法には憧れを抱いているし、使いたいとも思っている。しかし、ルイズにはもう焦る必要は無い。
魔法が貴族を支えている最大の理由たる『力』、それをルイズは手に入れた。
ならば次に必要なのは自身という戦力の把握。その上でルイズの『爆発』は大きなウエイトを占める。
威力。命中精度。射程距離。連射性能。消費する精神力。この『爆発』はどれだけの戦力を秘めているのか。
今までは成功させることに必死で、バカスカと闇雲に撃つだけだったが、この『爆発』は戦力として見るならば中々のものだ。
詠唱は短く、威力は莫大。精神力の消耗も桁違いに少ない。込めた魔力によって爆発の規模もある程度操作できることもこれでわかった。
どんな詠唱でも爆発が起きるために、攪乱などの効果も期待できる。
何よりもこの『爆発』は『相手が知らない攻撃手段』である。対処は難しく、回避も反撃も容易ではない。
確かめることはまだ山積みだが、少なくてもこの『失敗魔法』は使える。
「・・・・・・授業は中止です。教室がこの状況では仕方がありません。ミス・ヴァリエール」
しばらく顔を顰めて、頭を抱えていたシュヴールズだったがようやく現状を把握したらしい。
肝心な事を教えてくれなかった同僚たちを恨みながら、眩暈のするようなこの状況を何とか収めようとする。
「なんでしょう、ミス・シュヴールズ」
「あなたに責任の全てがあるわけではありませんが、あなたの魔法が原因なのは確かです。よってこの部屋の後片付けを命じます」
ルイズは若干、嫌そうな顔を浮かべたが教師の言うことだ。従うしかない。それにルイズにはこうなることがわかっていたが、やめようとはしなかったので非が無いわけではない。
「しかし、ミス・モンモランシの忠告を聞かなかった私にも非はあります。あとでメイドを一人、手配しておきます。昼までに終わらないようであれば、残りはメイドに任せなさい」
――一人なら《P.V.F》を展開できたのに。
そんな事を思いながら、ルイズは表面上は素直に頷いて見せた。
だが、この教室を一人で片付けるのは骨が折れそうだ。素直に喜ぶべきかもしれない。
教室を出て行く同級生を眺めながらルイズは、自分の力の有り方に考えを巡らせていた。
以上で終わりです。
ああ、タバサとフラグ立てるところまで行くつもりだったのに・・・・・・。
そろそろオリジナルの超獣を出したいんですがね。
それでは。
∧
| ヘ
| ヘ
| ヘ
∧__∧−\
/,----、二i'''´ ̄\
| | ,---、 /三\ /| ウルトラの作者乙でした!
| |/-,ー >―'彡ニニ)ヘ \/ .|
,、/ ノ /w二ニニ)ヘ \ |
l www二二二二ニ) /|
ゝソソソヽ二二二二二ニ)\/ |
,----、 (二二二二二二ニ)\ |
/ ̄ ̄ ̄ ヽ⌒ll⌒ll⌒(_____∠二ニ)\ /|
| (> (>i i i ( `ーーー、ヘ / /
ヘ (> l / / /\_____/ ̄ ̄\l / /
`'''''(>(>__(>/`''´`''´ゝ / ̄ ̄ ̄\\|\ / /
/\___,---´ ̄`、 |/ / /
l </ | j\/\/ /
この粘着はかつてのエセテンプレ暇人DTニートに匹敵のうざさだな
ウルトラの人乙!
>>43 バキシムかっこいいな!
こんなAAあるんだ
誰か著作権侵害で訴えてくれないかな。面白いから。
容量オーバーがしょっちゅうあるスレだから
容量使うAA、しかも粘着荒らし相に使うのはやめてくれ。
乙です。
素晴らしい。実にGJ。
遅くなりましたが
トキノくん乙
そういやチートスペックだけど定義上は彼って下級妖魔なんでしたね・・・
クラスは生まれつきの力で決定されて
ゴサルスやトキノくんみたいになまじ努力して優れた力を持っても一切評価されないと
サイレンスは一応上級でしたっけ?
あいつ呼んでも面白いことになりそうですなぁ、小ネタ以上に広げるのは難しそうですが
えー、
>>49のトキノくんで思い出したのですが
タンノくんやシミズくんは呼び出された場合亜人扱いなのでしょうか
それとも本人たちの自称で妖精呼ばわりされたりするんでしょうか
学園が随分生臭くなりそう
その訊きかただと「ノボルにきけ」って返したくなるぜw
未知の化け物呼ばわりじゃないかなー
やつらをナマモノ以外にどう呼べと
今荒らしに乙してるやつも荒らしの自演でいいんだよな
わざわざ触って話題にするやつも自演かい? HAHAHA
冗談だ
>>53 読んでないけど、とりあえず乙する
ってのがあるんじゃね
後でまとめられてから読む場合もあるし、読まないけど単に労いの意を込めてもある
>>49 ゴザルスか、ルイズはLP高そう(しぶとそう)だから
ちょっとぐらい武具買っても大丈夫だね
>>56 そしてオスマンとコルベール先生は見た感じLP少なそう
特にコルベール先生は消耗し過ぎ、アレ的な意味だけでなく
さて、生命力と引き換えに力にする、ときて
何か無いかと思ったが
修羅神、は多分無理なので
エスカフローネを召喚して契約
数あるロボ物でも性能的にハルケギニアで無理ないレベルと思える(むしろスパロボに混じったのが奇跡)
修理する度に激痛に喘ぐルイズが!!
・・・修理パートだけ避難所行きになったりして
ワイルドアームズTVのARMSも生命消費だったっけな
ルイズがARMS入手してもシャイアン召喚してもデルフの出番が無くなりますが
>>9 GJ。時の君はチート過ぎる。続きも期待して待ってます。
どうなるんだろう。原作準拠ならガンダールヴよりもサポート向けだが。普通の剣技も使えないしね。
棍棒持ってるからデルフを鞘に入れて振り回しそうな気がする
ワイルドアームズTVのARMSは、適性が無い人間が使うと一気に生命力を消費して死ぬんですよね。
そういえばエンディングでシャイアンが結構成長してましたけど、月を穿つ攻撃をしてからどの位の時間がかかっていたのだろうか。
……この空白の時間をルイズに召喚されていた、とすれば?
ノ´⌒`ヽ
γ⌒´ \
// ""´ ⌒\ )
.i / ⌒ ⌒ i )
i (・ )` ´( ・) i,/
l .::⌒(_人_)⌒:: | 荒らし、いくない!
\ ヽ_./ /
7 〈
ルイズ=ドラムスコ=ハトヤマ
,..--‐‐‐‐‐‐‐‐---..
/::::ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)
|::::::::::/ ヽヽ
|::::::::::ヽ ........ ..... |:|
|::::::::/ ) (. |
i⌒ヽ;;| -=・=‐ .‐=・-.|
(. 'ー-‐' ヽ. ー' | リーク、いくない!
ヽ. /(_,、_,)ヽ |
|. / トエェェェェエイ |
∧ヽ |ュココココュ| .|
/\\ヽ ヽニニニニソ/
/::::::::::\ \ヽ. ─── /:::::\
もう強制捜索勘弁のドワル
(( / ̄ ̄ ̄~`v´~`ヽ
| ,、__ノ|ト、 } ♪
)) | / ノノ `ヽ |'
| | ━━ ) ━‐ |
(/ -=・=, ,-=・= | ))
(( | "'''" "'''″|
| (__人_) | ♪
♪ ヽ `ー´ __/
((. ( つ ヽ、
〉 と/ ) )) ♪
♪ (___/^ (_)
馬の骨オカラ
>>60 ライラもといジーナの外見から察するにさほどの時間は経ってないと思われ
まぁありがちな感じでせき止められたものが溢れたって感じかと
つーかあの身体が成長することが驚きでしたわい
まぁ時間が違ったとかそーいうことにすれば
適正は強化人間がちょっと保ったり保てなかったり
今更だけどもあのアニメはゲームからのゲストの扱いがひでぇ・・・
善玉キャラがほとんど悪役になった挙句みんな死んでます
・・・普通に無難にリザード星人とか社会の窓が開いてる人とか呼んだほうが楽しいかもしんない
宝物庫は狂気山脈かジャベリンで
タルブにはアースガルズ・・・4の
仮面ライダーゾルダこと北岡秀一召喚
あの人何気にお人好しだからルイズを放っとけないと思う
金はガッポリ戴くけど
ルイズ金持ちだから何の問題もない。
というか、現地の法律学んで顧問弁護士に収まりそうだ。
でもダメだ、ハルケにはガンダムがない。
【GM所スレに帰れ】
模型雑誌に連載持ってるんだっけ
原作読んでて、シエスタの「才人は平民でも貴族に勝てる可能性を見せてくれた」ってくだりで、タイタニアを思い出した。
才人も自分の意思に関わらず担がれてるなぁ、と。ファン・ヒューリック召喚だとヤンと被るかな。
追われてる時点だとむしろ帰りたがらなそうだが。
そう言えば「別に帰らなくてもいいや」的なキャラはよく見かけるけど、
「俺はずっとハルケギニアにいるんだい」みたいなキャラって記憶にないな。
元いた世界では追われてる身で平穏な場所を求めているキャラか
あるいはハルケでやりたい事を見つけなきゃね
タバ冒だじょ
王蛇は、『こんなにおおっぴらに戦えるなんていいとこだ。』とか
言ってた記憶がw
続きまだかなぁ
>>67 ファンはヤンよりかなり活動的だし、性格も違うからまた違う話になると思うぞ
>>69 ユーゼスはハルケギニアの自然が気に入っていたな。
74 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/16(火) 16:22:31 ID:Pqdh2xYh
されど罪人の続き書いてくれないかな
sageろ罪人?
CAST IN THE NAME OF GOD
(神の名においてこれを鋳造する)
YE NOT GUILTY
(汝ら罪無し)
なんやかやでルイズにも最低の烙印を押されるロジャー
始祖の真実を求めてロマリアで暗躍するシュバルツバルト
フーケと一緒にコソ泥三昧のベック
テファの家で安らかな日々を送るエンジェル・・・しかし・・・
ってな感じだろうか
おマチさんはベックと手を切りたくなるだろうけど
ベックはそーいう時に容赦しないんだよなぁ、神回のおかげでギャグキャライメージ定着したけど
>>65 まとめスレに「リファインの使い魔」と言うのがあってだね…
違うか
銀英伝からユリアン召喚
帰ってきたらカリンのトマホークが待っている
>>81 いや、若きカリーヌ・デジレといい感じになるも、
ゲルマニアの男爵家の娘カーテローセ・フォン・クロイツェルと(ry
この男爵家、元はアンハルツ・ツェルプストー家の支流であった。
>>63 でも彼は病を患って残り僅かな命だからなあ。
もっとも水メイジの力で治せるかもしれないけど。
龍騎の話が出たのでドラゴンナイト・ゼロの代理投稿いってみる
銀英伝なら原作中全知全能に最も近いとまで評されたオーベルシュタインをっ…!
すぐルイズなりトリステインそのものなりを見限ってよそに行っちゃうか
テーブルの上には豪華な料理。床には残飯。
龍騎は赤い目を擦り、再び状況を確認した。
椅子に腰掛けるルイズの目の前には、大きなチキンやマスのパイ包み焼き、ワインに色とりどりの果物が載せられた籠。
床に胡坐を掻く龍騎の前に置かれたのは、薄いスープの注がれた器に、触ればぼろりと砕けそうなパン。
天国と地獄だってここまでの落差はないだろう。
龍騎は少し考えると、手を伸ばし、ルイズのローブの裾を引っ張った。
手に脂で濡れたナイフとフォークを持ったルイズが顔を向けてくる。
「何よ?」
「何発までブン殴っていい?」
ここはアルヴィーズの食堂。
広い空間に学年別に長いテーブルが三つ配置された、生徒達の空腹が満たされる場所。その真ん中のテーブルで、もうすぐ血の雨が降りそうだった。
「言いたい事は分かるわ。酷い食事ね、ホント酷い」
「犬だってもっといいもん喰ってるだろーが! そっちよこしやがれ!」
龍騎が地団太を踏んで暴れるので、二人はたちまち注目の的となった。当然、視線には冷ややかなものが含まれていたが。
貴族の子弟の目には、龍騎は粗野な山猿が如く映るに違いない。
居心地が悪いのか、ルイズはこほんとわざとらしく咳をつくと、
「ねえ龍騎。あんた、昨日私に何したか覚えてる?」
「顔面に蹴り入れた」
「百点。よく出来ました。じゃあ理由は分かるわね」
「えー! あれも仕事の評価の内に入ってんの!?」
龍騎は心外だとばかりに目を剥いた。あの時点では、まだ使い魔では無かった筈だ。
見知らぬ相手に警戒してのことだし、情状酌量が適用されてもいいのではないか。
しかしルイズの瞳には、罪人に死刑執行の判決を下す裁判官のような光が湛えられていた。
「仕事の態度も褒められたもんじゃないけどね、あんた第一印象が最低なのよ。地に落ちたどころか地中に潜ってる状態ね」
要するに、もっとマシな物喰いたきゃ真面目に働けということだ。
龍騎は小さく舌打ちすると、自分に与えられた食物と向き直った。
まあ、パラレルミラーワールドではイモばかり食べていたから、まだ良い方かも知れない。少なくとも文化的だ。
次に服を渡す時は顔面ではなく、もうちょっと下の方を狙う事にしよう。
そう思っている内にパンは無くなり、スープの器は空になってしまった。
質にはこの際目を瞑るとしても、食べたという実感が生まれないほど、量が少なかった。
腹が膨れないのは由々しき問題だ。空腹に苛立ってルイズをうっかりあの世に送ってしまうかも知れない。
そうなれば、きっとこの学園には入られなくなる。主無しの自由は魅力的だが、安定した収入も捨て難い。
ではどうするか。答えは簡単に見つかった。
無い物は、ある所から奪えばいい。龍騎の目が、ライダーらしからぬ悪の輝きを帯びた。
切り分けたチキンを口に運んでいたルイズは、不思議な現象を目にした。
右隣に座っていた男子生徒の手から、パンが幻のように消えたのだ。
パンにかぶり付こうとしていた男子生徒は、目標を失い指を噛んでしまった。
また、左隣の女子生徒のフォークから、チキンの欠片が失われた。ワインを飲んでいる彼女が異変に気付くのはもうすぐだろう。
(誰か悪戯でもしてるのかしら?)
魔法を使っての悪戯はよくあることだが、大抵は生徒と使用人の間で行われる。
貴族の過半数にとり、平民など路傍の石くれも同然なのだ。石くれを蹴ろうが突こうが、誰も見咎めはしない。
ルイズも、その節が無いとは言えなかったが。
しかし、貴族から貴族へとは……これも無いとは言えないが、相手が気に喰わないなら決闘に持ち込めば済む話だった。
実力で劣っているが故に、悪戯で気を紛らわせる者もいないとは限らない。
しかし、このアルヴィーズの食堂に生徒だけではなく教師もいる事を知った上で、そんなくだらない真似をする者がいるだろうか。
その時、ルイズの頬を風が撫でた。
何かが、高速で傍を通り過ぎたような感じだった。しかし、一体何が?
首を傾げたルイズは、またしても異変に気付いた。
正面に置かれた果物の籠から、リンゴが一つ消えているのだ。
今し方のパンやチキンのように。
気のせいではない。リンゴが置かれていた個所が、ぽっかりと空いている。
「………まさか」
ふと思い当り、ルイズは後ろを振り向いた。
そこでは、予想通りの光景が繰り広げられていた。
パンを齧りチキンを喰らい、リンゴにかぶり付く龍騎。
一連の犯人は生徒などではなく、他ならぬルイズの使い魔だったのだ。
彼女は知らなかったが、龍騎は一瞬相手に触れただけで、持ち物を盗み取ることができる。
人間よりも遥かに感覚機能が優れた仮面ライダーに比べれば、鍛えの無い生徒達など木石も同然である。
「私の言った事をまったく理解してなかったようねこの駄犬!」
「チッばれたか……いいだろお前の取ったわけじゃねーんだから」
「そういう問題じゃないでしょーが! ほらぺっしなさいぺっ!」
どったんばったんがっしゃん。
椅子を蹴立てて龍騎に飛び掛かるルイズは、まるで山猿のようだった。
「……なにやら、食堂の方が騒がしいな。龍騎の奴が何かしてなければいいが」
自分の予感が当たっている事も知らず、ドラグレッダーは校舎の外にいた。
本当は彼が龍騎の傍にいて面倒を見なければならないが、ルイズによれば、使い魔はアルヴィーズの食堂とやらに入ってはいけないのだという。
龍騎が同席を許されたということは、一応人間とは認められているのだろうか。
(ま、あいつは仮面ライダーだけど)
ドラグレッダーは、龍騎を仮面ライダーにした事を未だに後悔していた。
いたいけな少年を戦いに巻き込んだからではない。最強最悪の危険人物をこの世に生み出してしまったからである。
幸い、シャドームーンと手を組むほど大人しくは無く、世界征服の計画を立てて実行するほど飽きにくい性格ではなかったが、それでも連発可能な核ミサイルが自由気ままに歩き回っているようなものだ。
その点に関して、ドラグレッダーはルイズに期待していた。
ドラグレッダーが見た限りでは、龍騎とルイズの精神年齢は大して変わらない。
ならば、悪のライダー顔負けの卑怯さなV3や守銭奴の響鬼と仲が良かったように、ルイズとも気が合うのではないか。
今の所、龍騎が大人しく……比較的大人しく使い魔をやっているのが、その証しかもしれない。まだ一日目で、飽きたらどうなるかはわからないが。
「それにしても……」
思考を切り替え、ドラグレッダーは長い首で辺りをぐるりと見回した。
彼の周りでは、昼食が運ばれて来るのを待つ使い魔達が群れを成している。先端に刃が生えた尻尾は危なくて振れず、うかつに欠伸も出来ない。
群れと言っても、一つの種族で構成されているわけではなかった。
梟や猫、鴉に巨大な蛇などの動物や、六本足の蜥蜴、下半身が蛸の触手の人魚といった怪物など様々である。
その中でも、ドラグレッダーは一際異色を放っていた。何せ、メタルレッドの金属質ボディだ。
ライドモンスターで有機物の体を持つ者を探す方が難しいが、ここでは逆らしい。
他の使い魔達の自分を見る目がやたらよそよそしいのは、気のせいではないだろう。
(向こうでも喋れたのはワシだけだったが、さて)
尻……ではなく、尻尾の据わりが悪い。牙を剥いたところで、どうにもなるまい。
「ご飯ですよー」
声に振り向いたドラグレッダーは、ほうと少しく驚いた。
与えられた食事にがつがつと喰らいつく使い魔達を足元に、一人の少女が立っていたのだ。
カチューシャで纏めた黒髪に、白と黒の給仕服。
手には、丸焼きの牛の足が入った桶。
素朴な顔に添えられたそばかすが愛らしい。
ライドモンスターは交配で増えるわけではなく、異性というものを意識する必要はないが、好ましいと思う感情は備わっている。
「ありがとう、お嬢さん」
ドラグレッダーが頭を下げると、少女は驚きを露わに飛び退いた。
「しゃ、喋った!?」
「やっぱり、珍しいものなのか」
「い、韻獣っていう生き物がいるって聞きましたけど、私は見たこと無くって……」
とにかく、マイノリティであることは確かだ。
これからは、あまり人前で喋らない方がいいのかも知れない。
「驚かせて悪かったな。ワシはドラグレッダー。間違っても人を襲うようなことはしないから、安心してくれ」
ドラグレッダーは、出来る限り優しげに聞こえるよう声を絞った。
人類の守護者である仮面ライダー。その相棒となるべくして生まれたのがライドモンスターである。
その人間に恐れられるのは、少し悲しい。
果たして、ドラグレッダーの想いは少女の胸に届いたようだった。
笑顔の花が、一輪咲く。
「私はシエスタっていいます。貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいてます」
使い魔達に餌を与えるのも、仕事の一つだという。
人間と同等の知能を持つドラグレッダーとしては、餌という表現は気に食わないが、文句を言える立場でもない。
ドラグレッダーは長い首の先についた頭を下げ、シエスタが持つ桶の中の肉に噛みついた。
二口目で全体を口の中に入れ、骨ごとばりばりと噛み砕く。
「ドラグレッダーさんは、ミス・ヴァリエールの使い魔でしたよね?」
「む?………まあ、そうなるな」
ドラグレッダーは口の中の肉を飲み込んだ。
正確には相棒である龍騎を介してだが、わざわざ言う必要はないだろう。
龍騎がルイズを殺害するまで、とは付け加えた方がいいかも知れないが。
「知り合いなのか?」
問われて、シエスタは控えめに首を横に振った。
「そういう訳ではないのですが……ミス・ヴァリエールは他の貴族の方とあまり仲が良くないようなので」
それで心配しているのだと、彼女は言った。
確かに、今朝のキュルケとのやりとりを見る限り、ルイズは尊敬の対象ではないようだった。
恐らくは蔑称の、ゼロのルイズというのも気になる。キュルケは軽い気持ちでからかっていたが、周りが全てそうなら、シエスタが心配するのも無理はない。
そこに龍騎が加われば、もはや地獄だ。
「ミス・ヴァリエールのこと、助けてあげてくださいね」
シエスタの期待に、ドラグレッダーは返答することができなかった。
何故なら、人を痛めつけることに関してはプロフェッショナルなあの男こそ、ルイズの本当の使い魔なのだから。
「あんたのせいで先生達から怒られまくったじゃない! この駄犬!」
「じゃあ次からはもっとマシなもん喰わせろ!」
教室に向かう道すがら、龍騎とルイズはみっともなく怒鳴り合っていた。二色の音の塊が、廊下のど真ん中を歩いているかのようだ。
二人の後ろを、同類だと思われたくないドラグレッダーが少し離れながら低く飛ぶ。
廊下の脇には嘲笑を隠そうともしない生徒達が何人もいたが、今更それを気にするルイズではない。笑われる理由が、一つ増えただけのことだ。
笑いを消すチャンスは、この先いくらでもある。その一つが、ルイズの目前に迫っていた。
「そういや、給料っていつくれるんだ?」
龍騎を忠実な使い魔にするチャンスも来ればいいのに、とルイズは思った。もしくは、殺すチャンスだ。
教室の前に到着したルイズは、扉を押し開けた。この前までは中に入るのが嫌で、その分重く感じた扉が、今日は幾分か軽い。
石造りの教室には、既に多くの生徒達が席に着いていた。食堂で先生にこってりと絞られていたルイズより遅いのは、亀やカタツムリくらいなものだ。
「おー、広いな教室。俺が通ってたとこの五倍はあるぜ」
腕を後頭部で組みながら、龍騎が感激したように辺りを見回した。
学校に通ってた? 平民が? という言葉を、ルイズは寸前で飲み込んだ。
龍騎は、異世界のそのまた異世界からやって来たのだ。
彼の出身地である以上、楽園とは真逆な世界である可能性は高いが、学校くらいはあるだろう。
「そういえば、あんたって何歳なの?」
「俺? 九歳」
「きっ、九歳!?」
ルイズは愕然とした。
自分より年上ではないと思っていたが、予想以上に幼い。九歳でこれなら、将来は地獄の魔王になれるだろう。
「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね」
広い階段状の教室の最下段で、穏やかな声が湧いた。
声の主は、紫色のローブを身に纏う中年女性。何時の間にか教室に入って来た、教師のシュヴルーズだ。
ルイズは慌てて席に着いた。
龍騎は、食堂で学習したのか下に降りるための階段に腰掛けていた。膝頭に肘を立て、顎を拳の上に乗せている。
ドラグレッダーがその背後に浮かぶ。
「このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですのよ」
そう言いながら、シュヴルーズは教室全体を見回した。好奇の視線が、龍騎とドラグレッダーを射止める。
ルイズは生まれて初めて、始祖ブリミルに今すぐ教師の両目が潰れるようにと祈った。
一方は誰に見られても恥ずかしいどころか誇らしいくらいだが、片方はどう説明すればいいのやら。
「ミス・ヴァリエール……ええと、どちらが使い魔かしら?」
「ド、ドラゴンの方ですわ先生」
ルイズが慌てて答えると、教室中が笑いに包まれた。
笑い方は様々だが、指し示す所は一つだ。
「使い魔の使い魔だろゼロのルイズ! 嘘つくなよ!」
そう言ったのは、後ろの方の席に座るマリコルヌだった。球体に近い体を揺すりながら、目尻に滲んだ涙を拭っている。
ルイズは負けじと席を立って言い返した。
「つ、使い魔の物は主人の物よ!」
「主人だって? 顔面蹴られたくせによく言うぜ。さすがゼロ、お似合いの使い魔だ!」
「おい、黙れ非常食」
鋭い声がマリコルヌを貫く。
真紅の目に怒りの炎を燃やして立ち上がったのは、意外にも龍騎だった。
ルイズは感動と共に龍騎を見つめた。彼はどちらかと言えば、生徒と共にルイズを罵倒する側だと思っていたのだが。
龍騎は右足を上の段に乗せ、マリコルヌに人差し指を向けた。
「いいか、ルイズのことは何とでも言えばいい。だが俺を悪く言うのはやめろ!」
「って普通逆でしょコノヤロー!」
認識が甘かったと言わざるを得ない。
龍騎は使い魔だが、自分を心身ともに痛めつける方法で頭が一杯になっているような奴だ。
拳や足が飛んで来ないだけマシかも知れない。
龍騎を永久的に忠実な使い魔にする方法を考えるのに忙しくて、五割増しになった生徒達の笑い声は気にならなくなっていた。
「はいはい皆さん、みっともない真似はおよしなさい」
龍騎がマリコルヌに馬乗りになって拳を振り上げたところで、シュヴールズが軽やかに杖を振った。
それまで笑っていた生徒達の口元が、赤土の粘土で覆われる。龍騎はマリコルヌを盾にしてやり過ごした。
「さて、静かになったところで、授業を始めましょうか」
新学期になったとはいえ、最初の授業はメイジにとっては言わずもがなの内容だった。
火、水、土、風、そして虚無の五つの系統のこと。
スクウェアやトライアングルなど、メイジの属性のこと。
特に、ルイズは復習と予習に余念がない。
知識だけなら、同級生の誰にも負けない自信があった。
……………そう。知識だけなら。
(意味が無いなんて、思いたくないけど)
周りに同意見の者がいないからこそ、これまでルイズは嘲笑され、辱められてきた。
魔法が使えないから。どんな魔法も爆発に終わるから。
メイジは皆、天秤の上にいる。
簡単な話だ。強い魔法を行使できる者は重きを置かれ、弱い魔法しか使えない者は軽んじられる。
平民は、そもそも天秤の外だ。わざわざ計るまでもなく、貴族の下であるが故に。
だが、とルイズは考える。
一歩貴族という傘の下から出れば、ろくに魔法も使えない自分は、もしかしたら平民と同列なのではないか、と。
(でも、サモン・サーヴァントもコントラクト・サーヴァントもちゃんと……………うん、一応できた。他の魔法だって、きっと使える筈だわ)
もちろん、確信はない。
今まで使えなかったのに、突然使えるようになるなんて甘い話は、幼児向けの物語の中にしか存在しないだろう。
それでも、ルイズは信じたかった。
龍騎という破天荒極まる使い魔と契約したことで、何かが変わったのだと。
使い魔の手によって、精神的ダメージに加え肉体的ダメージを受けるようになったことだけではなく、もっと、大きな何かが。
「ぐごー、ぐごー」
………変わったことが、一つある。
隣から、みっともない鼾が聞こえるようになった。
「龍騎このバカ! 授業中に何寝てんのよあんたは!?」
「ふわあ……だって俺にはかんけーないし」
「こらっ! そういう態度がまずライダーらしくないというんだ!」
「んだよドラグレッダーまでうっせーな」
ぎゃあぎゃあ、わあわあ。
授業中の喧嘩を放置しておくほど、トリステイン魔法学園は世紀末ではなかった。
シュヴルーズがぱんぱんと手を叩いて場を収める。
「はしたないですよ、ミス・ヴァリエール。使い魔と喧嘩する暇があるなら、あなたにやってもらいましょうか」
「え?」
ルイズは目を丸くした。
やってもらう? 何を。
「そうですね……まずは、ここにある石ころをあなたの望む金属に変えてごらんなさい」
来た。心臓がどくりと高鳴る。
ルイズは席を立つと、錆びついたゴーレムのようにぎくしゃくと下の教卓に向かった。
途中、キュルケが小麦色の肌を蒼白にして声を投げてくる。
「ルイズ、お願いだからやめて。またアフロになりたいの?」
「だまらっしゃい! 今回は大丈夫よ!」
キュルケに噛みつきながらも、心の中で、たぶん、と付け加えることを忘れない。
今のルイズを前に進ませているのは、召喚と契約に成功したという事実だけなのだ。強がってはみても、今の彼女は薄氷の上にどうにか立っているに過ぎない。
一歩教卓に近づく度に、心臓の動きが激しくなっていく。
「さあ、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
いよいよ教卓の上に置かれた石を目の前にした時、もはやシュヴルーズの声はルイズに届いていなかった。
私は大丈夫。私は大丈夫。私は大丈夫。心の中で、ひたすら自分に言い聞かせる。
ルイズは目を閉じて集中力を高め、短くルーンを唱え、石に向けて杖を振り下ろした。
ずどん。
以上、代理終了
代理さん乙です
>>85 癇癪持ちのDQNの子守を無給でできる人間のが少なかろうよ
>>83 ハルケを死後の世界にすればその問題もクリアできね?
そうしたらハルケに留まる理由も出来るだろうし
ひょっこりハルケ島
故・丹波哲郎を召喚とな?
冥界の宣伝マン・木原マサキを
ドラクエ6のマジンガ様
「使い魔になってほしかったらこの私を倒して行くがいい」
「では、いくぞ」
\(^o^)/
ルイズじゃスライムにも苦戦しそうだ
ではスライム冒険記から召喚するか
死後の世界、ときたら浦飯幽助
105 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/17(水) 15:50:23 ID:iXWKAAS3
死後の世界、といえばやまさき拓味の「ラブZ」
鬼柳京介「俺のことを忘れたかッ!?」
まとめwikiを見ていると、ハルケギニアが死後の世界に見えてくる。ふしぎ。
なにいってんだ?
死んだら皆二次元の世界にいくんだぜ?
ほら、トラックとか神とかよくあるだろ
実はハルケギニアの海と大地の狭間にある世界だったん(ry
×実はハルケギニアの
○実はハルケギニアは
つまり死んだルイズたちが後世ハルケギニアに転生して、ジョゼフ率いるガリア第三帝国と戦うんですね。
>>110 となると、破壊の杖の人やシエスタの祖父ちゃんとかは、
リーンの翼とかが使える、天然モノの聖戦士なワケだな
>>85 まともな生活を保障してくれるのはルイズしかいない
誰かに登用でもされない限り、金銭を獲得する手段のない銀英伝キャラはルイズから離れられんぞ
ただ、オーベルシュタインは話の中心に置き難い。積極的に動かせるキャラじゃないしね
教皇の側近にいる方が似合いそう
主人公側に設定できそうな銀英伝キャラはこんなもん?
正統派:ミッターマイヤー(王道一本)
原作の続編的:ユリアン(この場合はルイズ主人公→継承者or別の路線)
変化球:ロイエンタール(幼少期にトラウマがあるコンビ)
たまに甲斐性のある、手に職がある、そんなキャラが独立心を発揮してルイズや契約から逃げ出すのがありますね。
トリステイン国内で働く時、身分証明とかはどうなっているんだろう。結構緩かったりするのかな?
「あいつの目を見りゃわかる! ありゃあ、嘘をつく目じゃねえ!」wwww
だろ。
>>104 幽助ってワリといい奴だからルイズの相手してくれそうだな
なんだかんだで面倒見はいいよな
でも年齢的にはあまり変わらないのか、幽助は
たまに忘れそうになるが幽助と桑原は中二なんだよな
忘れがちだけど一話の段階であいつら中学生だったのよね・・・
普通にパチンコ行ったりする(親公認)から忘れてたけど
考えてみれば高校生であんだけサボってたら退学だしね
中学生主人公って、普通にちょっと前までランドセル背負ってたって考えると
今更ながら凄い連中だよ
なめたモンじゃないね「中学生パワー」(by.早瀬浩一)
ルイズはあれで今幾つだったっけ
終盤で独立してラーメン屋と探偵の二足を草鞋を履くのか
幽白の面子は、終盤物凄いチート状態でしたから……召喚されるタイミングを間違うと、戦力になったりならなかったりするんだろうなぁ。
>>120 確か初登場時で16
普通の高校生と同じだな
>>96 ダークシグナーを呼べばハルケギニアを地獄にしてくれるよ!
>>123 15だったかと記憶してたが16か
サンクス
下手すれば幽助より年上の場合にも・・・
ハルゲって歳の数え方どうだっけ?
年齢詐称キャラならジョルノとか結構いるな
どう見てもルイズより年上だけど年下という
>>114 ポプランとシェ―ンコップもたぶん大丈夫だよ!
速攻でルイズよりキュルケと意気投合しそうだけど。
あと帝国側ならメックリンガーを召喚すると後世に史料扱いされる日記を書いてくれる。
年齢詐称は車田作品が顕著
例を挙げれば、アイオロスはあんなので14歳
アイゼナッハのことディスってんのか。
死人で思い出したが、キルヒアイス、ファーレンハイト、ルッツ、シュタインメッツ、メルカッツも割といい線いくんじゃないか
アルデバランがあれで20歳とかな
アイオロス存命時はいくつだったか
たしか回想シーンで黄金聖闘士になりたてで、ガキどもがゴールドクロスをつけて集合している
なかなかシュールなシーンがあったと記憶している
城戸沙織お嬢様 13歳のエロさとルイズを並べてみたい物だ
ライバルキャラっぽく登場したのに有象無象に格下げされてしまった
一角獣星座の邪武のこともたまにでいいので思い出してあげてください
>>135 うっかりその人召喚なんぞしちまったら聖闘士達が全力で救出しに来て大変な事になるけどな。
>>136 こんな光景しか想像できない。
邪武「ルイズお嬢様!私めの背中にお乗り下さい!」
>>131 >>133 >>135 嘘をつくなぁぁああああああああ!!!!!
いるかあんな14だの20だの13だの!!?!?
今まで気にも留めてなかったが知ったからには納得できんぞぉぉぉぉぉ・・・・・・
普通にありえんぞ
そういえば年齢詐称キャラといえば幕張の板垣もアレで17歳と言ってましたな
実はエルフだの魔族だのとかそーいう設定抜きで外見と実年齢がかけ離れたキャラって結構いるけど
車田のはいくらなんでも・・・・・・
そしてふと思い出したがスターオーシャン4のリムルとか外見・精神年齢6歳の15歳だったっけ
そんで天才呪紋師
てけとーなタイミングで召喚したらルイズの自尊心を破壊しまくってくれるかもしれん
アンバランスなKISS(契約)を交わして 愛(奴隷)に近付けよ
>>132 キルヒアイス以外は物語を作れんような
キルヒアイスにしても、対立軸にラインハルトが欲しい
元々、ラインハルトのキャラ像を固めるために使われてたし
キルヒアイスの信じる道とラインハルトのそれを比較し、間にルイズを入れるのが面白そうだな
理想を押し付け合っている二人にルイズが異を唱える感じで
ゼロ魔の原作で自分の筋の話をしていたしね
>138
ユニコーンって処女に弱いし。
逆にペガサスは、相手が気に入らないと容赦ないから。
でも、先々々代は義理堅く情に厚い熱血漢ですよ。
どうせならLCから亡くなった黄金聖闘士を呼べばいいんじゃないか。
本家と違って全員男気に溢れる連中だしさ。
男気溢れてるからこそ
何故か生きてる→急いでアテナの所に戻らなければ!
ってなるんじゃね?
*************【 急 募!! 】*************
仕事内容
ヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズの使い魔(主に旗を立てるお仕事、軽作業です)
期 間
主人の寿命終了まで
勤 務 地
ハルケギニア・トリステイン(採用決定後、現地へ直行していただきます)
給 与
応談(結果に応じてボーナスあり)
採用条件
日本国籍を持つ、国内または国外プロリーグ在籍者
文句を言わない方
Jリーグで100ゴール以上・代表で50ゴール以上挙げてる方
やる気のある方
水精霊騎士隊に魂を注入できる方
君が代を熱唱できる方
ペナルティエリアで果敢に勝負できる方
KINGの称号を持っている方
ブラジルのプロリーグ在籍経験者、ポルトガル語堪能な方は特に優遇
※W杯未経験者大歓迎!期日が迫ってますので大至急ご応募を!
尚、エースナンバー11番のユニフォームをご用意しております。
申込み先
日本サッカー協会(担当:川渕)
オーベルシュタインの頭脳はチートクラスだからルイズのもとに留まるにせよ出て行くにせようまく対処できるんじゃなかろうか
だが確かにルイズに召喚されるよりは教皇に召喚されて絶対零度っぷりでルイズやサイトを鼻白ませる方が似合ってるな
オベは自分の身体にコンプレックスがあって劣悪遺伝子排除法を制定したルドルフのゴールデンバウム朝を滅ぼすべく奮闘した面もある
下手にその身体や能力を評価しないor馬鹿にすると敵に回る可能性もあるな
義眼の参謀総長閣下はむしろハルケギニアの貴族主義やブリミル教の影響を嫌悪する立場だろうから、
余程のことがない限りルイズや教皇の下で使い魔に甘んじることはなさそうだよね。
身体的欠陥だけを根拠に自分がゴールデンバウム王朝の祖法である劣悪遺伝子排除法によって社会的に
抹殺されかねないことを恐れ、同時に、そんな馬鹿げた法が存在する帝国など滅ぼしてくれようってのが
彼の基本的なスタンスだし。
特にロマリアなんかやばいだろ。
妻帯しないはずの坊主どもが愛人との間に作った私生児がゴロゴロしているらしいから、歪んだ社会の底辺で
つま弾きになった子どもたちに自分の姿を重ねて、そういう社会悪に無視を決め込むような国家は滅びるべきだし、
無能な指導者どもには死をもって報いてやろうぐらい考えそう。
そのためだけに教皇の下に留まって獅子身中の虫になる道を選ぶとかならありかも知れん。
ハルケを廃人時の内面世界にして
テッカマンブレードのDボゥイを召喚
作中描写を見る限りオーベルシュタインの義眼は寿命短くて頻繁に交換が必要っぽいから長丁場になるとキツそうだ
>>148 内面世界って
どこまでオタクでロリjコンなんだDボゥイ
ゴールデンバウム王朝を滅ぼさんとするラインハルトにつく理由として
義眼云々を自ら語っていたけどそれが本音かどうかは正直わからん気がしてた。
他の登場人物と違ってとにかく内心が描写されることがないキャラだったからなぁ<オーベルシュタイン
一番ハルケギニアに適応能力あるのはトリューニヒト、ド・ヴィリエ、ルビンスキーたちじゃないか?
三人ともやり方と目的はともかく口八丁で底辺から最高権力を握ったからしぶとさは天下一品だぞ。
あと、リッシュモンの手先にラングとかよく似合いそうだ。
話は変わるが藤堂兵衛もあっという間に裏社会のボスに成り上がりそうだ。
藤堂兵衛はやば過ぎる。宮下補正的な意味で。
その内ハルケギニア全ての悪の黒幕だったと言われても納得せざるを得なくなる(w`
江戸伸介と若宮弓香を召喚しハルケギニアに下着革命
そしてマリアンヌが夫との思い出を胸にトリステインを率いる決心をしたり
シェフィが下着の力を最大限に引き出した結果ジョゼフの心が溶けたり
エレオノールに婚約者ができたりスカロンの母性と父性がアップしたり
大店長を召喚。フーケは死ぬ
振りなさーい、振りなさい、デルフリンガー振りなさい!
>>152 男塾の悪のカリスマだからな
おまけに江田島平八と渡り合った数少ない一人、もしガリアの違法カジノの元締なんかやらせたらタバサじゃ歯が立たんだろう。
にしてもやっと規制解除されてほっとしたわ、今のうちだけかもしれんが。
予約など無いようですので、15分後くらいに投下させていただきたいと思います。
これが初投稿になります。よろしくお願い致します。
クロスオーバー元は『NINKU―忍空―』で
>>144 逆に考えるんだ
実はルイズこそハルケギニア世界におけるアテナの化身だと
だから覚醒するとバストも沙織お嬢様のように成長するのだと
空は快晴、風は無風。屋外での実習には絶好の日和。
この良き日に、サモン・サーヴァントは取り行われた。自らが今後の人生を共にするパートナー、使い魔を召喚する儀式である。
その日、誰もが彼女の成功を疑わず、彼女自身もそれは同じだった。遠巻きに教師と他の生徒が見守る中、彼女は高々と杖を掲げる。
詠唱、続いて閃光。瞬間、ふわりと優しい風が頬を撫でた。止んでいた風が再び吹き始めた。
まるで風達が"それ"の来訪を歓迎しているような――不思議とそんな錯覚を受けた。
閃光に目を細めて数秒、何かが落ちる音がした。そよ風が土煙を運び去った直後、どよめきが場を支配した。
現れた"それ"に生徒も教師も、彼女自身も、誰もが一様に言葉を失う。召喚されたモノの前で立ち尽くすのは、
誰もが失敗を予想していた『ゼロのルイズ』こと、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールではない。
同学年の中でもエリート中のエリートであり、成績優秀な彼女が、まさかこんな謎のモノを召喚するとは思いもよらなかっただろう。
「おい、なんなんだ……あの物凄い顔の生き物は……」
誰かが言った。彼を皮切りに次々と、声を潜めて生徒達が囁き合う。
彼らもルイズならば堂々と笑えたが、なまじ秀才の彼女なだけに、囃したてるのもはばかられたのだ。
様々な憶測が飛び交うが、概ね意見は一致しているらしい。
「カエルだろ、どっから見ても」
「カエルが服着てるかよ」
「亜人じゃないかしら?」
「顔以外は全部人間だけど……」
「いやいや、まさかそんなはずは」
「あのベロはどう説明するんだよ」
「カエル顔で、異常に目がでかくて、舌が長い人間だっているかもしれないだろ」
「いねーよ」
「人間の子供よ、きっと……たぶん……もしかして」
「こやつめ、ハハハ」
「もうカエルでいいよ」
「カエルの何が悪いってのよ」
などと、外野は口々に勝手な陰口を叩いている。だが、それすらも彼女の耳には届いていなかった。
別にショックで何も聞こえなかった――わけではない。目の前に横たわっている子供が、地の底から轟くような大いびきを掻いていたからだ。
やがて担当の教師、ミスタ・コルベールがあたふたと生徒の塊を割って歩み出る。コルベールは、禿げ上がった頭に玉の汗を浮かべていた。
困惑も露わに近付くそれは、顔以外は普通の少年。オレンジのシャツ、深緑の半ズボンと、同色の鍔付きの帽子を前後逆に被っている。
見慣れない服装だ、異国人の可能性もある。首から上は見慣れないどころか、四十年余りの生涯で一度も見たことがないほど奇妙な顔だったが。
160 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:15:13 ID:OLeXTiT4
コルベールは、おもむろにディテクトマジックを唱えた。するまでもなく、結果はある程度予測できていた。
案の定、数秒の思案の後立ち上がった彼は、
「残念ですが間違いありませんね……この少年はただの人間です。魔力も無い、ただの平民……」
首を振りながら呟き、無言の視線で儀式の続行を促した。
「カエル人間!? あの娘……とんでもないものを召喚したわね……!」
囁き合う生徒達の塊から離れて、ルイズは戦慄した。
ルイズにとっては、平民であることよりもある意味では重要事項。なんせカエルは大の苦手、
似た顔の人間であっても駄目だ。自分の召喚する使い魔は、カエル以外である事を願うばかりだった。
さて、彼女には悪いが、内心ルイズはほっとしてもいた。ゼロだなんだと馬鹿にされていたが、
あれの後なら何を召喚しても大丈夫。どんなものでも、あれよりかはマシ。格上の使い魔ならなお良し。
そこまで考えて、自らの志の低さ、卑屈さに嫌気が差して首を振る。こんなことでは駄目だ、と。
そんな惰弱な考えは、ルイズの背丈より数倍高いプライドが許さなかった。
「そうよ、わたしは上手くやってみせるわ……!」
ルイズは迫る順番に、決意も新たに一人拳を固めた。
珍妙な使い魔を前にしても、少女はいつもと変わらぬ鉄面皮。だが、一サントにも満たないほどだが、
ハの字に下がった柳眉。ごく僅かに落ちた肩。ささやかながらも確かな変化。しかし、よくよく注視しなければ気付かないだろう。
唯一、少女の数少ない友人を自負するキュルケだけは、彼女のポーカーフェイスに隠された落胆を察していた。
あら……珍しくへこんでるわ、この娘。でもまぁ、無理もないわね。てっきり風竜かグリフォンでも召喚するかと思ったんだけど……
キュルケは呆れ混じりに彼女の顔を見て溜息を一つ。そう、なんだかんだいって、彼女は感情表現が下手、不器用なだけなのだ。
おそらく、無表情の裏に相当鬱屈した事情を抱えていることは想像に難くない。頑なに殻を作り上げるしかなかったのだろう。
尤も、想像の域は出ないし、彼女が何も言わないので、敢えて聞きはしなかったが。
ふと、キュルケの目が少年の腕に留まった。顔のインパクトが濃過ぎて誰も気に留めていないようだが、
少年は大きな籠を手に引っ掛けていた。彼の持ち物だろう。
一応人間みたいだけど……あの籠の野菜はなんなのかしら?
鮮やかな緑の皮に包まれている棒状の野菜。隙間から覗いた黄色い果実は、一粒一粒が丸々と太り、艶めいている。
四本だけ入った籠を、少年は大事そうに抱き直した。
少女の名はタバサ。二つ名を『雪風』のタバサ。
キュルケの読みは見事に的中。タバサは実際、落胆していた。
周囲の嘲笑も、好奇の視線もどうでもいい。使い魔だって別段、高望みをしたつもりはない。
ただ任務の為に、自分の目的の為に、役に立ち、頼れる使い魔が欲しかっただけなのに。
足元に転がっているのは、顔を除けば、明らかに年下の少年。足手纏いになりこそすれ、とても役立ちそうになかった。
起こそうと思い揺すってみても、まったく起きようとしなかった。
やり直させてくれと言ったところで、取りあってはもらえないだろう。神聖な儀式、やり直しが利く性質のものでもない。
こほん、とコルベールが咳払いをして言う。
「コントラクト・サーヴァントを」
遠巻きに眺めていた外野も今は沈黙。全員がタバサを見守っている。
仕方ない、このまま契約してしまおう。腹を括ったタバサは片膝を付き、格式張った呪文を唱えた。
次に、相も変わらずいびきを掻いて眠っている少年に、ゆっくりと顔を近づけていく。
なんだろう……この物凄い顔の生き物……
見れば見るほど変な顔である。男というよりペットにキスするようで、別段何も感じなかった。
タバサが舌の付け根に口づけると、少年のいびきが止まる。全ての音が消え、
微かに風が草を揺らす音だけが残った。そして――。
「あちちちちち!!」
右足の甲を押さえて、少年がじたばたともんどりを打つ。なるほど、ルーンの位置はそこか。
タバサはしゃがんだ姿勢のまま、しばらくその様子を眺めていた。
やがて少年はひとしきり暴れると、動きを止め、ピクリとも動かなくなった。
まさかまだ寝足りないのか――タバサがどうしたものかと思案していると、少年は突如、むくっと起き上がる。
やはり舌をベロンと垂らし、魚のようにまんまるの目からは一切の感情は読み取れない。
周囲を見回した少年は大欠伸をし、一番近くにいたタバサに焦点を合わせ第一声。
「腹減った」
風の使い魔 第一章「輝きは君の中に」1-1
なんとなく徒労を予感しつつも、タバサは少年に使い魔のなんたるかを掻い摘んで説いた。
どうやらこの少年、魔法も貴族も無いような国から来たらしい。その為、
ここが何処かから説明しなければならなかったのだが、話を聞いているのかいないのか、終始首を傾げていた。
たぶん、話の半分も理解していないだろう。実際彼は三分の一も理解していなかったのだが。
「つまりおめぇが俺を呼んだ。そんで俺に助けてもらえねぇと困るってことか?」
「そう、お願い」
何を助けるのか、ちゃんと理解しているのかは甚だ怪しいものだが、取りあえず、使い魔になってくれないと困るという点は分かっているようだ。
「そういうことならいいぞ。まぁ婆ちゃんも最近は元気そうだし、畑はポチや村のみんなが面倒見てくれてるだろ」
意外なことに二つ返事だった。使い魔は最初から主人に好意的だというが人間も同じなのだろうか。
「私はタバサ。あなたは?」
「俺は風助ってんだ」
「よろしく」
形だけの挨拶を交わして、タバサは風助から離れた。風助はその場で座り込んだままだ。
これと信頼関係を築けといわれても、どうすればいいのやら。決して顔には出さないが、始まりから暗礁に乗り上げた気分だった。
「話はつきましたか?」
と、尋ねるコルベールに無言で頷く。
「では、最後は……ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
ルイズが緊張の面持ちで進み出る。その顔にはタバサの召喚前に比べ、確かな自信が宿っていた。
杖を掲げ、ささやかな胸を張り、祈るようにルイズは唱える。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ……」
その後、ルイズも平民の少年を召喚したが、特に誰も驚きはしなかった。むしろ、
「良かった……普通の人間で……」
と、胸を撫で下ろしたくらいだった。それほどまでに風助の衝撃は尾を引いていた。
162 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:19:18 ID:OLeXTiT4
ともあれ、こうして使い魔召喚の儀は無事? に終了。生徒達は学院に帰る為、次々に『フライ』の魔法で空に舞う。
「おー、すげぇなぁ。藍眺みてぇだ」
悠々と空を飛ぶメイジ達に、風助は最も親しい友達の一人を重ねた。
感嘆の声を漏らしている風助にも取りあわず、空に浮かんだタバサは風助にもレビテーションを掛けた。
ふわりと風助の身体が地面から浮きあがる。
タバサは風助の手を握った。初めての空中浮遊。パニックになったり、
バランスを崩して事故を起こしては面倒だったからだが――結論から言うと、その必要はまったく無かった。
「おおっ!? ふは、はははっ。おもしれーな、これ」
それは風を掴むとでもいうのだろうか。レビテーションを掛けて浮き上がった風助は初めてにも関わらず、
下手なメイジよりも上手くバランスを取って、宙を泳いだり、くるくると回ったりしている。
そのはしゃぎっぷりは、他の生徒の視線も集めていた。
「遊ばないで」
ぴしゃりと注意した。普通のつもりだったが、声に苛立ちが篭ってしまったことは否定できない。
若干棘のある言葉にも、風助は気を悪くした様子は無い、たぶん。ただ感情の分かり辛い顔を傾げて聞いてきた。
「ひょっとして急いでんのか?」
「少し」
本当はそうでもない。が、これ以上遊ばれても困るし、その方が都合がいいと判断した。
相手は子供、もっと積極的に接した方がいいのだろうか。しかし子供の躾など、どう考えても苦手な分野。
できないことはないだろうが、得意不得意ではない。やりたくなかった。
「それなら走った方がはえーぞ。どっちに行くんだ?」
まさか、最初はそう思った。思ったが、つい今しがた接し方を考えたばかりである。取りあえず好きにさせてみようと、
タバサは無言で進行方向を指差し、言う通りに術を解いて地面に下ろす。
「んじゃ、先に行ってっぞ」
言うなり風助は走り出した。短い手足を機敏に動かして、まるでネズミのよう。だが、すぐに馬にも迫る速度まで加速した。
まさに風の如き速さだが、遠目にも無理や息切れの様子は見られない。
タバサは目を見張ったが、呼び止める間も無く、風助は一人遠ざかっていく。そして、
「あっ……」
という間に小さくなってしまった。
「頭はあんまり良くなさそうね……」
タバサのほんの僅か険しくなった顔に、キュルケは思わず苦笑いを禁じ得なかった。
ともかく掴みどころのない使い魔に、大いに戸惑っている。彼女が初めて見せる生の表情。
これは面白くなりそうだ――そう感じずにはいられないというもの。
幸い、学院は近くだし、周囲は見通しも良い。草原は見渡す限り青々と広がり、大きな建物は学院のみ。
まっすぐ進むだけなら、まさか迷うこともあるまい。そう思って数分後、タバサが学院に戻っても使い魔の姿はどこにもなかった。
「あれ? そういやどこ行きゃいいんだ?」
果てしなく広がる草原で、風助は立ち止った。こんなに風の心地いい草原は久し振りだったので、少しはしゃぎ過ぎてしまった。
足がかつてないほど軽やかに動いたせいもある。
163 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:21:04 ID:OLeXTiT4
「えーっと……あそこに行きゃいいんだっけ」
本人は真っ直ぐ走っていたつもりだった。それがどういうわけか、ほぼ直角に曲がり、現在学院は背後に見えている。
何故、目標に真っ直ぐ走っていてこうなるのか、
「ま、いいか」
深く考えず、改めて学院に向けて歩きだす風助。暫く歩いていると、遠くに二人並んで歩いている人間を見つける。
一人は、タバサや大多数の者と同じ服装の少女。もう一人は、比較的見慣れた服装の少年だった。
「よー」
「ひっ! タバサのカエル人間!?」
召喚した使い魔――平賀才人と一緒に、学院へとぼとぼ歩いていたルイズは、声を掛けられるなり才人の背中に隠れた。
ルイズにパーカーの袖を掴まれた才人は、自分の後ろにこそこそ隠れる主を訝しげに見つめる。
「お前、何やってんの?」
「ううううるさいわね!」
才人からすれば、何をそんなに怯えることがあるのか不思議でならない。確かに目の前の少年は奇妙な顔をしているが、
散々他の使い魔に驚いた後なので今更驚きはしなかった。何より自分の置かれている、この状況が一番奇妙だ。
「おめぇらあそこに帰るんだろ? 一緒に連れてってくんねぇかな?」
「ああ、別にいいけど……」
「ちょっと!? なんであんたが答えてんのよ!」
「なんだよ、どうせ同じ所に帰るんならいいじゃねぇか」
「う、それは……そうだけど……」
弱点を知られたくない、これ以上情けない自分も見せたくなかったルイズは、
「分かったわよ! 好きにすれば!」
そう言い捨てると、早歩きで風助から離れる。才人と風助は顔を見合わせると、揃って首を傾げた。
才人は改めて風助の服装に注目した。マントやローブでなく、普通のシャツと膝丈のズボン。
被っているのは野球帽だし、靴はどう見てもスニーカーだ。
もしや、彼も同じ世界から召喚されたのだろうか? 才人はその場で追求しようとしたが、
「何やってるのよ! さっさと来なさい、この愚図犬!!」
前を歩くルイズがうるさいので、深く追及はしなかった。
同類相憐れむ。才人は隣を歩く風助を見下ろし、わざとらしく肩を竦めてみせた。
「そんじゃ行こうぜ」
「おー」
この状況に順応しているのか、それとも何も考えていないのか。風助は笑顔で右手を突き上げた。
その夜、タバサに付いて風助は食堂に入った。床で食べるのは苦でもなんでもなかった。元々気にする性格でも生活でもない。
何より風助の関心は食堂に入った瞬間から、食事のみに向けられていた。
風助に出した食事は、貴族の物には幾分劣るものの、そこそこの量と質はあった。少なくとも、固いパンと薄いスープだけ、
というようなことは断じてない。
それなのに風助ときたら、それをほとんど一口で平らげると、開口一番、
「足んねぇ」
「我慢」
タバサも、一秒と間を置かず答えた。
なんとなく予想はしていたのだ。だが甘やかせば限が無い、自分だって皆と同じ量なのだから。
「部屋に戻る。時間までは好きにしてていいから」
言いながら、タバサは席を立った。既に寮での基本的な生活は説明してある。果たして理解しているかは、やはり謎だったが。
そして、食堂に一人取り残される風助。満腹にはほど遠いが、動けないほど空腹でもない。
「さて……どうすっかな」
考えてみれば、ここはまったく知らない国の知らない場所。腹ごなしでもないが、探検するのも面白そうだ。そう思った風助は食堂を出て、ふらふら敷地内をぶらつく。
164 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:23:06 ID:OLeXTiT4
目的もなく彷徨っていると、寮の中庭に出た。ずらりと並んだ部屋の窓のほとんどに明かりが灯っている。
その明りに照らされて、見た顔が木にもたれて座っているのが見えた。
「よー、なにやってんだ、おめぇ」
「ああ、お前か……」
座っていたのは、ルイズの使い魔、才人。彼は風助を一瞥すると、あからさまに不機嫌な顔で答えた。
「ちくしょう、あいつに口答えしたら部屋追い出されちまった。掃除に洗濯、なんでも俺に押し付けるんだぜ?」
「そんなに嫌なら、やんなきゃいいんじゃねぇのか?」
風助は才人と同じ木にもたれながら、事もなげに言った。
風助の言うことも当然といえば当然。しかし同意を期待していた才人は、ふて腐れて横になった。
「そう簡単に行くかよ。この世界に知り合いも友達もいねーんだ。追い出されたら行くところもねぇ。お前だってそうだろ?」
「まーな」
「お前はどうなんだよ。嫌になんねぇのか? そもそも何で使い魔なんてあっさり引き受けたんだ?」
「俺は別に嫌じゃねぇぞ。引き受けたのは……わかんね。たぶん、そうだなぁ……あいつに助けてくれって言われたからだぞ」
それは風助自身にも形容し難い、不確かで曖昧な、直感とも言える何か。当然伝わるはずもなく、才人はその言葉を額面通りに受け取った。
「お人よしなんだな、お前」
「そうか?」
「お前の……タバサ、だっけ? あの娘は当たりだよ」
「おめぇはハズレなのか?」
逆に風助に質問され、困り顔で唸り出す才人。自分で言っておいてなんだが、彼女をハズレだと言い切ることには一抹の抵抗を覚えた。
或いは、この世界の貴族とはああいうもので、誰でも大差は無いのかもしれない。数十秒唸って考えてみたが、やはり、
「ハズレ……なんだろうなぁ。ああ……腹減った。晩飯も食ってねぇってのに」
「なんだ、おめぇ腹減ってんのか。んじゃちょっと待ってろ」
「あ、おい!」
才人のぼやきを耳にした風助は立ち上がり、寮に入っていく。突然のことに、才人はただ見送るしかなかった。
およそ十分後、風助は手に何か持って帰ってきた。
「わりぃ、迷ってて遅くなっちまった。ほら、これ食え」
才人が手渡されたのは、緑の皮に包まれたトウモロコシ。一応洗ってはあるが、生だった。
「これ……トウモロコシじゃねーか。へー、この世界にもあるんだなぁ」
手に取ってしげしげと眺める。やはり、自分の知るトウモロコシと寸分違わないものだ。
「連れてってくれたお礼だぞ」
「連れて来たのは俺じゃなくてルイズだけどな」
「いいから食え。うめぇぞ。死ぬほど」
死ぬほどかよ、と苦笑する才人。風助は頭の後ろで手を組み、どこか得意気な様子で才人が食べるのを待っている。
魚のような目は変わらないが、うずうずしているのが見て取れた。
促されるままに齧りつくと、生なのに小気味良い歯応え、甘い汁が口の中に溢れる。一口ごとに、空だった胃袋が満たされていくのを感じた。
「俺のお師さんの畑で、俺が作ったんだ」
「ああ、すげー旨いよ。でも、お前なんでこんなの持ってたんだ?」
「んー、俺の十一人の友達はな、毎年お師さんのトウモロコシ食うのを楽しみにしてたんだ」
その時才人には、語る風助が、ふと遠い目をしたように見えた。
「だからお師さんが死んじまった後は、俺が畑を受け継いで、みんなに配りに行ってんだぞ」
「え? そんな大事な物だったのか……じゃあ俺が食ってよかったのか?」
と言っても、もう半分以上食べてしまったが。
「気にすんな、ちょうど全員に配って済んだ余りだ。それに……」
風助はにっこりと笑う。変な顔だと思ったが、なかなかどうして、笑うと愛嬌のある顔だ。
満面の笑みの風助に、才人はそんな感想を抱いた。
「おめぇも、もう友達だぞ」
その言葉で、才人の胸にぐっと熱いものが込み上げた。何か言おうと思っても、上手く言葉が出てこない。結局、
「そっか……ありがとな」
言えたのは一言だけだった。
165 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:24:35 ID:OLeXTiT4
いきなりこんな異世界に飛ばされ、主人と名乗る少女は横暴。ちょっと反抗すれば部屋を叩き出され、
かと言って他に行く当ても無く、知り合いもいない。これでも、多少心細くはあったのだ。
一人ホームシックになっていたところへ似たような身の上の少年が現れ、友達と呼ばれた。
それが無性に嬉しくて、涙が滲みそうになった。
才人は照れ臭さから鼻を啜り、顔を背けて目元を拭う。そして風助に右手を差し出した。
「そういや、名前も聞いてなかったっけ。俺は才人、平賀才人だ。よろしくな」
「おー、俺は風助ってんだ。よろしくな」
握り返す手は自分のものよりずっと小さく、しかし温かだった。
その後、風助はポケットから小さなハーモニカを取り出した。口に当て、ゆっくりと空気を吹き込むと、そこに音が生まれた。
カエルの口から奏でられるのは、美しくも優しい旋律。どこか懐かしい音色に、才人は目を閉じる。
そうやって感じる夜風は涼やかで、元の世界と何ら変わりなかった。
メロディーは風に乗り、閉じられていた部屋の窓が一つ、また一つと開き、生徒達が顔を覗かせる。中には、
扇情的な寝間着姿を惜しげもなく晒すキュルケの姿もあったが、この時ばかりは男子生徒の視線も彼女には向かわない。
時間にすれば五分にも満たなかったが、誰一人声を発する者もなく、寮のほとんどが風助の演奏に耳を傾けていた。
だが、その中に彼らの主人である二人の少女はいない。ルイズはいつまで経っても帰らない才人を探し歩き、
タバサは外の音を遮断して読書に耽っていた。
二人の少女はこの夜の出来事を知らず、二人の使い魔もまた、それを知ることは無かった。
この日、ほとんどの人間がハズレを引いたと考えていた。周囲の生徒も、タバサ自身も。
ルイズは、自分の使い魔はまだましだったと思うことにした。
キュルケは面白そうな使い魔だと思っていたが、それだけだった。
才人にとっては、異世界で出来た初めての友人だった。
ちなみに、召喚された当人は何も考えていなかった。
誰もが、夢にも思わなかっただろう。彼がタバサを様々な軛から解き放つ風となることも。
彼がまさしく雪風に相応しい……風竜と同じく、或いはそれ以上に風に愛されし存在であることも。
この時点ではまだ、誰も――。
166 :
風の使い魔:2010/02/18(木) 19:26:39 ID:OLeXTiT4
以上で終了です。長々と失礼しました。
更新は遅いかもしれませんが、よろしくお願いします。
投下乙です
期待してますよ
書き忘れてました。クロス元 『NINKU―忍空―』 から、キャラ 『風助』 を召喚。
原作FIRST STAGE終了後、釈迦の証を所持している状態です。
失礼しました。
おおとうとう忍空から来ましたか
投下乙!
新作乙です
才人もいる作品は良作の法則が発動する予感
>>170 またお前か
他人を語って楽しいか?
なぁ楽しいの?
誤認逮捕わろた
鳥バレしてるから無意味
まあ即バレするようなトリップ使う方も悪いよ。
調べる気にゃならんけどどーせ特撮関連の固有名詞でも入れたんだろ?
騙る奴はもっと悪いけどな
そりゃそうだw
新世紀エヴァンゲリオンよりアダム召喚
やっと召喚できたと思ったルイズだが、土煙の中から現れたのは
グロテスクな化け物の胎児。
ヤケになってそれを飲み込んだルイズだが…。
初期ルイズの心の壁は厚そうだからなぁw
あるいはシト育成的に成長させてみる展開も面白そうな・・・
ハシバミ草ばっかり与えてたら赤目のタバサになりましたーとか
っていうか、LCLが無いわ、水の秘薬?
>>179 ヤケになったからってなんで飲み込むんだw
>>181 ル「飲んで消化しちゃえば召喚のやり直し出来るんじゃね?」
ルイズに幽助
タバサに蔵馬
キュルケに桑原
モンモンに飛影
>>180 なんとなく水の精霊で代替出来そうな気が
うおっ、忍空の召喚モノが来ていたとは!
作者さんGJです!サブタイトルがまたアニメ版の主題歌を彷彿とさせてくれますなあぁ。
風助と才人の二人はなかなか良いコンビになれそうですね。
蔵馬と飛影はやめとけ
DQNだがいい奴の桑原や元は人間の幽助と違って
あいつらは別にいい奴でも何でもないから
ヘタすると使い魔になれなんて言ったその場で死亡かそれより酷い事になるぞ
幽助も最終的には「そんなに人間食いてーんだったら俺が何とかしてやるよ」とか言ってたし、
ベターなのは桑原だろうな。
桑原が居る時点で四人そろってお帰りコースですよ
世紀末リーダーはあの顔で小一か…
戸愚呂弟を
兄のほうで
グルメ能力付の兄のほうで
「なぜだ、なぜ死なね〜」
暗黒トーナメント編後あたりから召喚なら、
幽助は隔世遺伝覚醒もないから人間味あるし、
桑原は次元刀まで進化してないし、
飛影もいい感じでデレてる頃だし、
蔵馬は言うまでもない
ルパンキャラも面白そうかも
次元刀から次元と連想したから、ルイズと次元が思い浮かんだんだけど、次元はタバサと合いそう。
次元とルイズも良さそうだけどね、つーか次元は誰とでも良さそうだw
五右衛門はティファだな。
避難所のほうにも最近投稿あったケンシロウも登場時18歳設定ですよっと
同じ北斗の拳からトキを召喚
北斗神拳と水系統を組み合わせたまったく新しい医療を編み出してちい姉さまが快癒したり
ワルドの攻撃で瀕死のウェールズ皇太子に刹活孔を突いて獅子奮迅の活躍をさせたりできそう
しかし有情拳でマチルダが気持ちよくなったり
手合わせしたアニエスが有情断迅拳で気持ちよくなったり
シェフィールドが有情破顔拳で気持ちよくなったり
女性との戦闘描写はやたらとアレになるかも
え?原作で荼毘に伏されたのにで生きてるわけないって?
昔俺がセガサターンでryちにゃ
ジョインジョイントキィ
バートゥーワン デッサイダデステニー
だがアミバ出現
相棒の人の代理投下します
自分●持ちなんでさるさん支援は特に必要ないです
以下代理
お久しぶりです。
第3話ができましたので、お届けさせていただきます。
前話以上に長くなって、我ながら話をまとめる力のなさを
痛感しましたが、お読みいただければ幸いです。
では、次のレスから始まります。
プロローグ
突然の右京消失事件は、目撃者である尊(と角田)の耳を疑うような証言によって、警視庁内で耳目の的になっていた。
以下の会話は、警視庁捜査一課に所属する通称「トリオ・ザ・捜一」の伊丹憲一、三浦信輔、芹沢慶二らが
今回の事件について話しているところを記録したものである。
芹沢:先輩、大変ですよ!
伊丹:なんだ? 事件か!?
芹沢:事件も事件、大事件っすよ! 杉下警部がいなくなったんです!
伊丹:はぁ? それの何が大事件なんだよ?
三浦:警部殿が勝手にいなくなるなんて、いつものことじゃないか。
伊丹:ったく、血相変えて何事かと思えば、くだらねえ…。
芹沢:それが違うんですよ! 警部が部屋から出ようとしたら、突然姿が消えちゃったんですって。
三浦:どういうことだ?
芹沢:なんか、鏡のようなものが警部の前に現れて、それに入って消えたっていう話なんですけど…。
伊丹:お前、なに言ってんだ? わけがわかんねえ。
芹沢:俺も又聞きなんでよく知らないですけど、目撃者がそう証言してるんですって。
伊丹:誰なんだ、その目撃者ってのは。
芹沢:神戸警部補と角田課長です。
伊丹:おいおい。ソン(尊のこと。括弧内筆者)はともかく、課長までなに寝ぼけたこと言ってやがるんだ…。
特命なんかと仲良くしてるからだよ。
三浦:正気か…。そんなこと、刑事部長が信じるわけないだろう。
芹沢:案の定、正直に話して大目玉くらったらしいですよ。杉下警部が今日中に見つからなかったら特命係は解散だって。
伊丹:へっ。そいつはいいや。警部殿のいねえ特命なんざ、金棒のねえ鬼みたいなもんだからな。
三浦&芹沢:……。
伊丹:な、なんだよお前ら…。
芹沢:先輩…。鬼は金棒なくても強いじゃないですか。だから婦警さんたちに「ちょっと頭の弱いイタミン、かわいい!」なんて陰で言われるんですよ。
伊丹:う、うるせえ! 一丁前に文句つけてんじゃねえよ!
三浦:そのニュアンスでいうなら、「翼をもがれた鳥」ってところだな。
芹沢:プッ! やめて下さいよ…そんな洒落た表現使ってる伊丹先輩とか、ありえないっすよ…あはははは……。
伊丹:笑ってんじゃねえ!(芹沢を叩く)
三浦:やめろ、お前ら。…まぁしかし、警部殿ならどこに行っても変わらずにやっているだろう。
なんせ「警視庁随一の変人」だからな…。
芹沢:ああ、あの人はどんな場所でもどっこい生きてそうですもんね。
伊丹:つうか、警部が寿命以外で死ぬなんざ想像できね……へっくしょい!
芹沢:ちょっ…唾飛ばさないでくださいよ! 汚いなぁ、もう…。
三浦:誰かがお前の噂してるんじゃないか?
伊丹:(鼻をすすって)噂か…。こりゃいよいよ俺の結婚も近いか。ふふふふ…。
三浦&芹沢:…………。
第三章
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが、使い魔として杉下右京をハルケギニアに召喚してから、最初の朝が来た。すがすがしい朝の光が部屋に差し込んでくる。
「ミス・ヴァリエール。朝です」
起床を促す声を聞いて、ルイズはまだ眠たそうに目をこすった。
そして、自分を見下ろしている男を見て驚き、寝ぼけた声で怒鳴った。
「……って! 誰よあんた!」
「昨日あなたの使い魔として召喚された、杉下右京です。おはようございます」
右京は相変わらず冷静に、紳士的に応じた。
「そっか、昨日、召喚したんだっけ…おはよう…」
ルイズは起き上がってあくびをし、体を伸ばした。
「じゃ、服出して」
そう言ってネグリジェを脱ごうとして、昨日のことを思い出した。
見たくないなら目を逸らしていればいいから、と注意した。いちいち着替えの度に部屋を出られては面倒くさくてしかたがない。
下着を右京から受け取り、身につけていく。彼はその間に制服を持ってくる。
ルイズは、制服が丁寧にたたまれていることを不思議に思った。自分はたたんだ覚えがない。いつも椅子にかけておくだけである。
となると、たたんだのは右京に違いない。そういえば、彼の服も皺や汚れがつかないように細心の注意が払われていることに気づいた。
主人のためというよりは、彼自身が几帳面なのだろう。
「失礼します。確か貴族は、下僕がいる場合は自分で服をお召しにならないはずですから」
「あら、わかってるじゃない」
本当によく知っている。やっぱり異世界から来たというのは嘘なんじゃないか、と思いたくなるくらいだ。
着替え終わり、ルイズは朝食をとるため部屋を出た。右京は部屋を確認すると施錠し、後に続く。
廊下に同じような木の扉が壁に並んでいる。そのうち、ルイズの部屋の隣の扉から出てきた赤い髪の少女を確認するや、ルイズは顔をしかめた。
右京はその人物に見覚えがあった。昨日、中庭で契約前のルイズに声をかけていた同級生だった。“ゼロのルイズ”といったのも彼女だ。
名前は確か、キュルケといったか。
「おはよう。ルイズ」
キュルケはルイズを見ると、にやりと笑みを浮かべて挨拶した。
「…おはよう。キュルケ」
ルイズも挨拶を返す。いかにも不機嫌さを抑えているといった感じだった。
「おはようございます。私、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔をしております、杉下右京と申します。よろしくお願いいたします」
「あら、どうもご丁寧に…キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。よろしくね」
キュルケは、思わぬところからの丁寧な挨拶にも動じず、ルイズのときとは違うにこやかな笑顔で挨拶を返した。
「もう! そんなやつにいちいちバカ丁寧に挨拶しなくていいの!」
「と、いいますと?」
なぜ挨拶したことをルイズが怒るのか理由がわからず、右京は尋ねた。
そんな二人の様子がおかしくて、キュルケは笑い出した。
「あっはっは! ルイズぅ? そこの使い魔さんはただあたしに挨拶しただけじゃない。それを怒るなんてかわいそうよ」
「あんたは黙ってて! ツェルプストー!」
「やだ怖い。下僕より礼儀がなってないなんて、ヴァリエールの名が泣くわよ? あなた、彼にマナーを教えてもらったほうがいいんじゃなくて?」
「余計なお世話よ!」
「『余計なお世話』ってことは、自覚はあるんだぁ。ふふふ」
二人が他愛もない口論をしている横で、右京はキュルケが連れている大きな赤いトカゲのような生き物に興味を向けていた。好奇心に目を輝かせている。
「これは…かのパラケルススが『妖精の書』の中で提唱した四精霊のうちの火の精霊、サラマンダーに似ていますねえ。体はかなり大きいですが」
右京のつぶやきを耳聡く聞きつけたキュルケは、ルイズとの口げんかを打ち切って、優越感に浸りながら自慢し始めた。
「その通りよ。しかも見て、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。名前はフレイム」
「火竜山脈?」
「ハルケギニアの中で最高品種といわれるサラマンダーが住んでいるところよ。属性的にもこのあたしにぴったり」
「属性?」
「キュルケは『火』属性なのよ」
右京の疑問に、ルイズがぶすっとした顔で答えた。
「自分で言うのもなんだけど、これほどの幻獣を誰かさんと違って一発で召喚しちゃうなんて、
さすが“微熱”の二つ名は伊達じゃないって感じよねえ。ねぇルイズ?」
得意絶頂のキュルケは、手を顎にそえて、色っぽく首をかしげて笑った。
ルイズは答えず、そっぽを向いた。
「いや、不慮の事故とはいえ、こうして想像上の存在を目の当たりにする日がこようとは…素晴らしい!」
右京は、普段の冷静さもどこへやら、昨日『フライ』を見たときと同じように、感動と興奮がない交ぜになったような声を漏らした。
「ちょっと、なに感動してんのよ! あんたはわたしの使い魔でしょ!」
「うふふ。よくできた、いい使い魔じゃない。あなた、ただでさえ友達が少ないんだから、大切にしてあげなきゃだめよ、“ゼロのルイズ”?」
右京の反応と、悔しそうに声を荒げたルイズにますます気分をよくしたキュルケは、相手の使い魔を褒める余裕さえ見せた。
そして、扉に施錠のコモン・マジック『ロック』をかける。
「では、お先に失礼」
そう言い残して去ろうとしたキュルケは、右京に「すみません」と呼び止められた。
「なに? ええと、スゲシタ……」
『右京』で結構ですよ、と前置きし、キュルケに質問を投げかける。
「今、扉に何かなさっていたようですが、魔法ですか?」
「ええ。コモン・マジック『ロック』よ。扉に鍵をかける魔法なんだけど…」
まさか知らないのかとキュルケは問おうとして、ルイズを見て合点がいったようだった。
「ああ、しょうがないか。ルイズはいまだに鍵を持ってるんだものねえ」
意地の悪い笑顔を向けるキュルケを、ルイズは睨みつけた。
「では、この学院の生徒さんは、全員魔法で施錠するのですか?」
「『全員』ではないわね。正しくは『“ゼロのルイズ”以外』」
「そうですか」
「もういいかしら?」
キュルケはきびすを返して立ち去ろうとした。
「あ、もう一つだけ」
右京が指を立てて、彼にとって一番肝心な質問をした。
>>195 蔵馬は前にも名前が出たが
敵には一貫して容赦ない奴だぞ
飛影もはっきり一番敵に回したくない男だといってる
いきなり異世界に飛ばされて呼んだ元凶を許すほど優しい奴でもない
「このハルケギニアと、違う世界を繋ぐことのできる魔法、またはそれを知っていそうな方に心当たりはありませんか?」
「ち、違う世界…?」
この質問にはさすがのキュルケもたじろいだ。右京が何を言っているのか理解できなかったからだ。
あと一つだけなんて言うからなにを聞いてくるのかと思ったら、ハルケギニアと違う世界?
あたし、からかわれてるの? なんの冗談? ここ、笑うところ?
そんな彼女の思いとはうらはらに、右京も、後ろにいたルイズも真面目だった。
キュルケは、ルイズに耳打ちした。
「ねえルイズ…この人、ちょっとアレな人…?」
「あんたの気持ちはわかるけど、たぶんほんと。月が一つしかない画を持ってたし…」
「月が一つ!? うそでしょ…?」
右京に聞こえないように二人はひそひそ話していたが、やがてキュルケが真面目な表情で右京に提案した。
「ウキョウ…」
「はい?」
「あたしにも、証拠を見せて。月が一つしかないっていう画を」
「…わかりました」
右京は携帯電話を取り出し、例の写真を見せた。
「……!」
キュルケは写真を見た瞬間目を見開いたが、それ以外は微動だにせず、一言も発しなかった。鋭い目で写真を見ている。
話を聞いて覚悟を決めていたからなのか、昨夜のルイズのような動揺は見せなかった。
右京は、キュルケの様子を油断なく見つめていた。
ルイズは、内心当惑しながら対峙する二人を見比べていた。
少しして、キュルケはふう、と悩ましげに息を漏らした。
「ウキョウ、ごめんなさい。あたしも知らないわ。ここと違う世界を繋ぐ魔法なんて聞いたことない」
キュルケは伏し目がちに言った。
「そうですか」
「知ってる人がいるとしたら…学院長のオールド・オスマンとか、ミスタ・コルベールあたりでしょうね…。
あと、もしかしたらタバサも知ってるかもしれない」
「タバサさんというと、昨日、あなたの隣で本を読んでいた方ですね?」
「え? そうだけど…なんでわかったの?」
「昨日、あなたがミス・ヴァリエールに声をかけたときに、『ねぇ、タバサ』とその方を呼んでおられたので」
「ウキョウは頭がよくて、記憶力がすごいの。わたしが忘れてたようなことまで憶えてるんだから」
驚きを隠せなかったキュルケに、ルイズがここぞとばかりに勝ち誇った。
それを聞いたキュルケは、手を口元にそえて目を細めた。手で隠れた唇の端がつり上がった。
「なるほどね…でも、あなたじゃタバサから直接話を聞くことはできないわよ。あの子、クラスメイトともほとんどしゃべらないからね。
あたしから聞いておいてあげるわ」
「ありがとうございます。そうしていただけると、非常に助かります」
感謝を示す右京に、キュルケは「それじゃ、またね。お・じ・さ・ま」と耳元で囁き、意味深な笑みを残して去っていった。
サラマンダーが、その巨体の割にちょこちょことした可愛らしい足取りで彼女の後を追った。
キュルケが去ってから、ルイズはなんとも複雑な気分であった。
確かに、右京には使い魔の仕事に支障がない範囲で、自由に行動することを許した。
そして、彼は昨日から今朝の時点で――少々自分の心に正直なところは見られたものの――仕事においては手際のよさと微に入り細を穿つ気配りをみせ、ルイズを感心させた。
だから、彼が元の世界への帰還方法を自分で探すことを止めることはできないし、そのつもりもない。ルイズは右京が帰れる方法など知らないのだから。
しかしながら、なぜ右京はキュルケに「ハルケギニアと異世界を繋ぐ魔法」のことを聞いたりしたのか。
よりにもよって、犬猿の仲であるツェルプストーの者に聞かなくてもいいだろう。彼女だって知っているわけがない。魔法の知識に関しては、ルイズとキュルケに大した差はないのだ。
それとも、右京は道行く人全員に聞いて回るつもりなのだろうか。証拠の画があるとはいえ、全員が信じるとは限らないし、余計な混乱を招くだけではないか。
この頭の回る紳士が、そんなことに気がついていないはずがない。
ルイズは、心の中に生じたもやもやした気分を抱えたままでいられるほど器用ではなかった。それに相手は使い魔なのだ。遠慮する必要はどこにもない。右京に自分の気持ちをぶつけてやろう。
ルイズは廊下を歩きながら、首を右京のほうに向けて尋ねた。
「ねえ、ウキョウ」
「はい?」
「どうして、キュルケにあんなこと聞いたの? キュルケが信じなかったらどうするつもりだったの? みんなにああやって聞くつもり?」
右京もまた、歩みを止めることなく答えた。
「もちろん、全員に言うつもりはありません。僕が見た限り、彼女ならば話しても冷静に受け止め、信じてくれるだろうと思ったからです。実際の反応は予想以上でしたが」
「どういうこと?」
「ミス・ツェルプストーは、あなたと口論しているさなかでも、サラマンダーに興味を示している僕に目を配っていました。お二人の口論にしても、
あなたは終始感情的に怒鳴っていたのに対し、彼女はあなたをからかっているようでした。
また、異質な存在である僕からのいきなりの挨拶にも、まったく動じることなく対応していました」
ルイズは言葉に詰まる。頬にさっと朱が差した。
「これらのことから僕は、ミス・ツェルプストーは常に余裕と冷静さを保った強い精神と、
周囲の状況を複眼的な視点で把握し対応できる能力を持った、信頼のおける人物だと判断しました。
その証拠に、例の証拠写真を見せたとき、彼女には少なくとも表向きは、昨夜のあなたのような動揺は見られませんでした」
「あああんた、もしかして、わたしを馬鹿にしてる…?」
ルイズの声は怒りで震えていた。頬が引きつっている。
「しかし、それは僕が信頼をおけるというだけの話です。仮に彼女と一対一で話をしていたら、あの証拠写真を見せても信じなかったでしょうねえ」
右京の意外な言葉に、ルイズの怒りはたちまち吹き飛んだ。代わりに心を満たしたのは、大量の疑問符だった。
「で、でも、キュルケはあの画を見て信じたじゃない!」
「では、ミス・ツェルプストーが僕の話を信じた根拠は何か。その根拠こそが、僕が彼女に話をした決定的な理由でもあります」
「だから、あの画を見たからでしょ? 違うの?」
右京の言わんとするところがまるでつかめず、ルイズは狼狽した。
「違います。それは、あなたがおられたからですよ。ミス・ヴァリエール」
「え? わたしが…?」
右京の口から出てきた答えを聞いたルイズは、呆然となった。
「ええ。ミス・ツェルプストーは、あなたを信じているから、僕の話も信じることができたのです。僕にも、お二人と同じような関係の友人を持った部下がいましたから、すぐにピンときました」
右京は、穏やかな笑顔をたたえて断言した。
彼の話の中で出た「同じような関係の友人を持った部下」とは、神戸尊が特命係に入る前の部下で、右京を「相棒」と呼んだ男、亀山薫である。
右京は、薫と捜査一課の刑事・伊丹憲一のことを思い出していた。
同期でライバル関係にあった彼らは、会うたびに憎まれ口をたたいて、いがみあっていた。それでも、いざというときには長く組んできたようなチームワークを発揮して事件を解決したのだった。
心の底では、互いの刑事としての実力と良心を信頼していたからである。
ルイズとキュルケの様子に、右京は薫と伊丹がダブって見えたのだ。
だが、ルイズは何回も首を振って、彼の説を完全否定した。
「ば、馬鹿なこと言わないでよ! あいつが、キュルケがわたしを信じてるなんて、絶対、ぜったいありえないわ!」
「そうでしょうか?」
「そうなの! だってわたしとキュルケ…ううん、ヴァリエール家とツェルプストー家は、先祖代々対立してきた、不倶戴天の敵なんだから!」
「不倶戴天の敵とは、穏やかではありませんねえ。理由をお聞かせ願えませんか?」
「いいわよ。よーく聞きなさい!」
ルイズの話はこうである。
キュルケの家、フォン・ツェルプストー家は、トリステイン王国の貴族ではなく、隣国ゲルマニアの貴族なのだという。
そして、ツェルプストー家の領地はヴァリエール家とは国境を挟んで隣同士であるため、両国が戦争になれば、真っ先に両家が衝突し、激しい戦闘を繰り広げてきた永きにわたる歴史があった。
そのため、ルイズは両親から「ツェルプストー家の者とは仲良くするな」と教えられて育ってきた。だから彼女はツェルプストーもゲルマニアも大嫌いだった。キュルケもまた同様だという。
「それだけじゃないわ! ツェルプストーの一族は『恋する家系』なんていって、散々ヴァリエールの名を辱めてきたのよ!」
激しく憤るルイズによれば、二百年前にルイズのひいひいひいおじいさんがキュルケのひいひいひいおじいさんに恋人を奪われ、次の高祖父の代には、ヴァリエールはツェルプストーに婚約者を奪われた。
さらに次の代では、曽祖父のサフラン・ド・ヴァリエールが、やはりキュルケの曽祖父であるマクシミリ・フォン・ツェルプストー(あるいはその実弟のデゥーディッセ男爵)によって、妻を取られたのだという。
「なるほど。つまり、恋愛においてはヴァリエール家はツェルプストー家の後塵を拝してきたわけですね」
「あっさりまとめるな! …とにかく、そういうわけだから、キュルケがわたしを信じてるなんてことは、例え天地がひっくり返ってもありえないことなの!」
ルイズは反論の余地はないといわんばかりだった。
しかし、それでもなお右京は自説を曲げなかった。
「確かに、ミス・ツェルプストーもお認めにはならないでしょうが、彼女は心の奥底ではあなたを信頼しておられると思いますよ。そして、あなたも」
「ななな、なによそれ…! あ、あんた、わたしの話聞いてた!?」
自分の話をあっさり否定された憤りと、右京がここまで自信を持っていうことに、ルイズは不気味さを感じ、慄いた。
「なるほど、両家の長年にわたる因縁もあって、お二人ともお互いに友情を感じたこともなければ、それを育もうなどと考えもしないでしょう。
しかし、僕は先ほどのやりとりから、お二人の間には表には出なくとも、深い信頼と友情があると感じました」
ルイズは反論をあきらめた。短い時間ではあるが、こういうときの右京に何を言っても無駄だとわかったからである。
「僕がそう感じたのは、先の話の中でのミス・ツェルプストーのあなたに対する二つの発言からです。僕の記憶に間違いがなければ、確かこうおっしゃっていました。
一つめは『使い魔さんはただあたしに挨拶しただけじゃない。それを怒るなんてかわいそう』。そして二つめは『あなた、ただでさえ友達が少ないんだから』と」
「それがどうしたのよ?」
「悪口として聞き流すこともできなくはない表現になってはいますが、『不倶戴天の敵』とまでいう人物に対するものとしては、この二つの言葉はいささか違和感を覚えます」
「違和感?」
わたしはあんたの話のほうに違和感を覚えるわよ、と言いたい気持ちを抑えて、ルイズは続きを促した。
「そもそも、心の底から憎んでいる相手には、話しかけることすらしないのではないでしょうか。先祖代々戦いを繰り返してきた歴史があるのなら尚更です。
相手の態度をたしなめたり、『友達が少ない』などという言葉を去り際に付け加えたりはしないでしょう。
馬鹿にするのならば、もっとふさわしい言い方がありそうなものですからねえ」
「そうかしら…」
「ですが、ミス・ツェルプストーはあなたにそのような言葉をかけた。僕の印象では、意識してのものではなく、自然に口から出てきたように聞こえました。
発言の意図はどうあれ、彼女があなたのことを普段から気にかけているからこそ、そのような言葉が出たのだと思いませんか?」
問われたルイズは、いい反論が思いつかずに押し黙っていた。
右京は、それを「話を続けろ」という意思だと判断し、説明を再開した。
「それに、お二人の口論は互いに憎しみあっているというよりは、自分の言いたいことや感情を素直にぶつけ合っているように見えました。
そのようなことは、お互いに相手を認め、信頼している者どうしでなければ、できることではありません」
「そんなの…あんたの思い込みじゃない…」
ルイズは使い魔の考えを否定したものの、いかにも苦し紛れにひねり出したようで、その声は小さく弱々しかった。
「いいえ。お二人が僕に内緒で話をしていたことで確信しました。内容は聞こえませんでしたが、前後の文脈から察するに、ミス・ツェルプストーは僕の頭が正常かどうかを尋ねておられたのではありませんか?」
「え? そんなことまでわかるの…?」
「僕の話だけでは信用できない。だからあなたに相談した。そしてあなたが僕を信用しているとわかって、自身の目で証拠を見極め、信用し協力することを決意した。
一見反目していても、主張を遠慮なく言い合え、いざという時には肩を寄せ合って相談できる。そのような関係は、まさしく互いを深く信頼する良きライバル、あるいは親友と呼べるのではないでしょうか」
自分がこれまで思いもかけなかったキュルケとの友情を右京に理詰めで指摘され、ルイズは彼女と仲良く笑いあっている様を想像して眩暈がした。
彼の噛んで含めるような話は、聞いているうちに正しいように感じられ、本当はそうなのかもしれないとさえ思えてくる。
だが、幼いころから植えつけられ、魂に刻まれたツェルプストーとゲルマニアへの憎悪を捨てることも彼女にはできなかった。
理屈での賛同と感情での拒否。二つの相反する心が、ルイズの中で葛藤していた。
そんな過程を経てルイズが選んだ方法は、主人という優位を利用して使い魔の論理を無理やり否定して、話を打ち切ることであった。
ルイズは顔を右京から逸らすと、怒ったような調子で言い放った。
「へ、平民がわかったようなこと言わないで! 貴族にはねえ、あんたなんかにはわからない、複雑なお付き合いっていうのがたくさんあるの!
下手なことをすると家まで巻き込む問題になりかねないから、どんなに嫌なやつでも同じクラスで隣同士である以上、無視したり邪険にするわけにはいかないってだけよ」
「なるほど。そういうこともあるかもしれませんねえ」
「そんなことより、気をつけなさいよ」
「なにをでしょう?」
ルイズは呆気にとられた。今までの経験から、これだけいえば右京なら言いたいことはわかっているだろうと思っていたからだ。
「最後のキュルケの顔、見たでしょ? 新しい獲物を見つけるとああいう顔をするの。あんた、あいつに目をつけられたのよ。
あんたはわたしの使い魔。わたしのものは、小石一個だってキュルケに取られてたまるもんですか! ご先祖様に申し訳が立たないわ!」
右京は、口元に手を添えて目を細めたキュルケの顔を思い出した。そういわれれば、獲物を見定めて、狙っていたように見えなくもない。
「そうでしたか。しかし、なぜ僕が目をつけられたのか、皆目見当がつきませんねえ」
「どうせ、あんたに『一目惚れした』なんて言い寄るつもりなのよ。あいつ、惚れっぽいから。誘いに乗ったりなんかしたら、学校中の男子を敵に回すことになるわよ」
ルイズの話を受けて、右京は考え込んだ。
「ミス・ツェルプストーが、僕に一目惚れをした…? 親子ほども歳の離れた僕に惚れるなどということはいささか考えづらいですが…一応、気をつけておきましょう」
まるでピンときていないような右京の姿に、ルイズはこのとっつきにくい変わり者の新しい一面を見た気がした。
どうやら彼の頭脳は、いわゆる恋愛の方面は苦手らしい。ここまで飲み込みの悪い右京は初めてだ。
主人として一緒にいるにもかかわらず、得体の知れない男の意外な弱点を知ったことで、ルイズとしては少し右京という人間に近づくことができた…はずである。
トリステイン魔法学院の食堂は、その敷地内で一番背が高い、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中には、百人は優に座れるであろう長いテーブルが三つ並んでいる。二年生のルイズたちは、真ん中のテーブルだった。
左隣のテーブルには少し大人びた感じの紫色のマントをつけたメイジたちが、右隣には茶色のマントをつけたメイジたちが座っている。
一階の上にはロフトの中階があった。そこは教師メイジたちの席のようだ。
全員がまだそろっていないからか、皆話に花を咲かせていて騒がしかった。ルイズの周りでは、誰が誰の恋人なのかとか、メイジの盗賊が高名なメイジが作ったポーションを貴族から盗んだといった話をしていた。
右京はルイズの椅子を引いた。ルイズが腰掛けてから、彼は理解した様子で語った。
「なるほど。学院内のメイジは教師も生徒も全員、ここでお食事をなさるというわけですね。ミス・ヴァリエールのクラスが二年生ということから考えて、紫色のマントは三年生、茶色のマントは一年生でしょうか」
右京の頭脳は正常な活動を取り戻したようだ。
「それにしても、さすが貴族が召し上がる食事だけのことはありますねえ。内容も装飾もとても豪華です」
感嘆した右京が言ったとおり、テーブルの中心には大きな鳥のローストが鎮座ましましていた。ワインや鱒の形をしたパイも見える。飾りつけも、いくつもの蝋燭が立てられ、花が飾られ、フルーツが盛られた籠がのっていた。
右京の目を楽しませるにじゅうぶんな煌びやかさだった。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
右京の様子に気づいたルイズが、得意げに指を立てて解説した。とび色の目がいたずらっぽく輝いている。
「メイジはほぼ全員が貴族なの。ここでは『貴族は魔法を持ってその精神となす』のモットーのもと、魔法と同時に貴族たるべき教育も受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないってわけ」
「『ほぼ全員が貴族』ということは、例外のメイジもいるのですか?」
「ほんと、細かいところに気がつくわね…。いろんな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、身をやつして傭兵になったり犯罪者になったりするの」
犯罪者と聞いた右京は、警察官として俄然興味がわいた。
「魔法を使う犯罪者とは厄介ですねえ。先ほども、魔法を使う盗賊がいるという話を聞きました」
「ああ、『土くれ』のフーケね。貴族だけを狙って、高価な品や高名なマジックアイテムを盗む泥棒よ。王室衛士隊の魔法衛士も手を焼いてるんですって」
「『土くれ』の二つ名はどういった由来でしょうか?」
「…悪いんだけど、もうすぐ朝食の時間だから、後にしてくれる?」
ルイズは、廊下でのキュルケの一件のせいで少し疲れていた。
話を終えようとした右京の目に、壁際にある精巧な小人の彫像が飛びこんできた。
「すみません、もう一つだけ。あの壁にある非常によくできた彫像は何でしょうか?」
「『アルヴィーズの像』よ。夜になると踊りだすの。この『アルヴィーズの食堂』の名前はあれからきてるのよ」
「なんと、踊るのですか? これは、今夜ぜひ見に行かなければなりませんねえ」
「しっ! 朝のお祈りが始まるわ。頭が高いわよ」
ルイズに注意され、右京はとりあえず空いている隣の椅子に座った。生徒たちが渋い顔を右京に向けた。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
全員で祈りの声が唱和される。ルイズも目をつぶり、両手をあわせてそれに加わっている。祈りを終えると、一斉に皿に食事をとりはじめた。
右京がルイズに耳打ちした。いつの間にか手に皿とフォークを持っている。
「ミス・ヴァリエール。食堂に他の使い魔が見当たらないのですが、僕はよろしかったのですか?」
「使い魔は普通は外だけど、あんたは人間だから、わたしが特別に取り計らったの」
「それはまことにありがたいのですが、お気持ちだけ受け取っておきます。やはり使い魔の僕が今この場にいるのはよろしくないと思いますので、表で待たせていただきます」
「そう。あ、ちょっと待って。はい」
ルイズが右京の皿にレタスを3枚ほど置いた。
「よく気がついてくれるから、ご褒美」
ありがとうございますと言い残して、右京は退席した。
彼が持っている皿には、元々は申し訳程度に肉のかけらが浮いているスープと、見るからに硬そうなパン二切れという貧相なものだったが、
今しがたルイズがくれたレタスがそれに彩を添えていた。
この皿は、テーブルから取ってきたものではなく、床においてあったものだった。
人間とはいえ、貴族でも客人でもない使い魔という身分の者と同じ卓を囲むわけにはいかないから、床で食べさせるつもりだったのだろう。
失礼極まりないことであるが、今の右京にとってはそんなことはまったく瑣末な問題であった。なぜなら彼の心は、不愉快さを打ち消して余りあるほどの期待感と楽しみに満ちていたからだ。
右京は、ルイズに授業を見せてほしいと提案していた。彼女は最初は乗り気ではなかったが、説得して参加を承諾させた。
右京にとって、ハルケギニアや魔法は彼の好奇心を刺激してやまない魅力的なものであった。帰る方法は当然探すが、どうせならハルケギニアで少しでも多くのものに触れておきたいと考えていたのである。
その第一歩が授業参観だった。
自分の好奇心を満たすためには手段を選ばない。それが右京という男だった。
右京はわきあがる感情をこらえて、朝食に手を伸ばした。
「授業なんて、あんたが聞いても面白くないと思うけど?」
「そんなことはありませんよ。むしろ、どのような話が聞けるのか非常に楽しみです。なにしろ僕の中での魔法は、黒魔術などに代表される呪術的なものか、奇術、手品という意味でのものか、
あるいは妖術や仙道が使う仙術といったイメージしかありませんから。ああ、考えただけで感奮を禁じえませんねえ」
「…あんた、もしかして楽しんでる? あれだけ帰るって言ってたのに」
「もちろん帰りますよ。ですが、異世界に召喚されるのは得がたい体験ですからねえ」
声を弾ませて教室の扉を開ける右京に少し呆れながら、ルイズは教室に入った。
魔法学院の教室は、大学の講義室を石で造ったものと思えばいい。講義を行う教師のメイジが一番下の段に位置し、階段のように席が続いている。
二人が中に入っていくと、先に教室にいた生徒たちが一斉に振り向いた。くすくすと小さな笑いが起こる。
ふと目をやると、キュルケがいた。周りを取り囲んだ男子と談笑していたが、ルイズたちの姿を認めると、笑みを浮かべて小さく手を上げた。
ルイズは、クラスメイトたちの使い魔と自分のそれを比べ、改めて劣等感にさいなまれた。やっぱり連れてこなければよかったと思いながら隣を見ると、使い魔が消えていることに気がついた。
右京は幻獣を連れた生徒と話をしていた。バグベアをまじまじと見つめたり、スキュアやバシリスクを撫でたりしていた。そして、小さなノートを取り出しては一生懸命メモをしていた。
話しかけられた生徒の反応はしたり顔、訝しげな顔、困惑といろいろであった。細かいことを聞かれているのか、辟易している者もいた。
「ちょ、ちょっと! 何やってるのよ!」
暴走する使い魔の裾を掴んで、ルイズは自分の席へ無理やり連行した。教室中が笑いに包まれた。
ルイズは自分の隣の席に右京を座らせた。本来はメイジが座る席だが、また勝手に話しまわられてはたまらない。
「いくら“ゼロのルイズ”でも、使い魔の管理くらいちゃんとしなさいよ」
近くの席に座っていた、見事な巻き髪とそばかすを持った少女が、ルイズを嘲った。
ちなみに、彼女の使い魔はカエルだったので、右京に話しかけられてはいなかった。
「うるさい、『洪水』のモンモランシー」
「なんですって! わたしは『香水』よ! 『香水』のモンモランシー!」
モンモランシーがいきり立った。カエルも主と感情を共有しているのか、盛んに喉を鳴らしている。
「あんたにかまってる暇はないの! ウキョウ! いったい何をしてたのよ? あんたのせいで笑われたじゃない」
モンモランシーを黙らせて、ルイズは右京を小さな声で叱りつけた。
「申し訳ありません。本物の幻獣に触れられる機会などもう二度とないと思うと、矢も盾もたまらなくなってしまいまして。実に貴重な経験をさせていただきました」
右京が謝罪した。だが、満足げな表情からは反省している様子は感じられない。
「勝手なことしないでって言ったでしょ! 人の気も知らないで…!」
ルイズは拳を震わせた。
「…気になさる必要はないと思いますよ」
右京が、ルイズにだけ聞こえる声でつぶやいた。
「え?」
「たとえ今はどう思われていようと、あなたは他の人にはない才能を秘めている。僕はそう思えてなりません」
そう言って、右京はいつもの穏やかな笑顔をルイズに向けた。さっきまでの興奮した様子はどこにもなかった。
ルイズが意味を問おうとしたとき、扉が開いて先生が入ってきた。
中年の女性だった。紫色のローブに背の高い帽子という、いかにも魔法使いといった格好だ。ふくよかな頬が、優しい雰囲気を漂わせている。
女性は教室を見回すと、にっこりと微笑んで言った。
「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、さまざまな使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
ルイズが表情を曇らせて、俯いた。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズが、右京を見てとぼけた声で言うと、再び教室中がどっと笑いに包まれた。
「“ゼロのルイズ”!召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
ルイズがぎりっと歯を鳴らして立ち上がろうとする前に、隣の右京が立ち上がった。
「差し出がましいことを言うようですが、私がここにいるのは、他の方と同じくミス・ヴァリエールが召喚魔法に成功した結果です。その点においては、私も他の使い魔たちとなんら変わりはありません。
どうか先生におかれましては、我が主人が私のことで必要以上に好奇の目にさらされることがないよう配慮していただければ幸いに存じます」
右京の思わぬフォローに、教室がしんと静まり返った。ルイズも、彼の行動に驚いて怒りが解けてしまったので、おとなしく座り直した。
右京はシュヴルーズに一礼し、着席した。小声でルイズに囁く。
「学業第一です。口論になっては、大切な授業時間が少なくなってしまいますからね」
「ウキョウ…」
ルイズはお礼の言葉が出てこず、名前をつぶやくことしかできなかった。
勝手に動き回って迷惑をかけると思ったら、こういった心憎いフォローをしてくるのだから対応に困る。
「私の言い方が悪かったようですね。ミス・ヴァリエール、申し訳ありませんでした」
シュヴルーズが真摯な声でルイズに謝罪した。そして仕切り直すように明るい声で授業開始を宣言した。
「では、授業を始めましょう!」
そう言ってシュヴルーズが杖を振ると、机の上に小石がいくつか現れた。
「自己紹介が遅れましたが、私は今年度からこの学院に赴任しました、ミセス・シュヴルーズです。属性は『土』。二つ名は『赤土』のシュヴルーズ。これから一年、皆さんに『土』系統の魔法を講義します。
では早速ですが、一年次の復習です。魔法の四大系統はご存知ですね?」
シュヴルーズの質問に、金色の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た気障な少年が挙手し、立ち上がった。
「はい。『火』『水』『土』『風』の四つです。ああ、そしてなんたる奇遇! 僕の系統もミセスと同じ『土』! 二つ名を『青銅』のギーシュ・ド・グラモンと申します。お見知りおきを」
ギーシュは芝居がかった口調で流麗に答え、ポケットに入れていた薔薇をくわえてシュヴルーズに流し目を送ると、満足したように席に着いた。
シュヴルーズは、ギーシュに簡単に挨拶を返して、講義を続けた。
「今は失われた系統魔法である『虚無』を合わせて全部で五つの系統があることは、皆さんも知ってのとおりです。五つの系統の中でも、『土』は最も重要なポジションを占めていると私は考えます。
それは、私が『土』系統だからというわけではありませんよ。私の単なる身びいきではありません」
そのとき、「よろしいでしょうか?」という声とともに、挙手した者があった。教室がざわつく。ルイズも目を見張った。
「静かに。なんでしょう? ミス・ヴァリエールの使い魔さん」
指名された右京が立ち上がり、口を開いた。
「杉下右京と申します。『右京』で結構です。『属性』と『系統』には、どういった違いがあるのでしょうか?」
「なかなかいい質問ですね」シュヴルーズが笑みを浮かべた。
『属性』とは、メイジが生まれつき持つ力の傾向のことである。一方『系統』は、魔法自体が属する力の傾向のことをいう。
シュヴルーズの場合は、『土』系統の魔法を使うのに適した『土』属性の魔力を持っているということになる。ただし、実際にはどちらもほぼ同義語として扱われているため、違いを意識することはほとんどない。
「自分自身の属性を把握し、どの系統が適しているのかを知ることは、メイジにとってたいへん重要なことです。使い魔召喚は、そういった意味で大きな意義を持っているのです」
「なるほど。それで召喚儀式は神聖なものとされているわけですね。では、『火』『水』『土』『風』の四つの系統のそれぞれの役割は何でしょうか?
『フライ』や『ロック』といったコモン・マジックといわれるものも四系統に属するのでしょうか?」
教室がざわついた。平民の、しかも使い魔が生徒同様に授業に参加し、魔法について質問をしている異常事態が繰り広げられているのだから、当然といえば当然だった。
「ウキョウ! 座ってなさい!」
「構いませんよ、ミス・ヴァリエール」
右京の袖を引いて座らせようとするルイズを、シュヴルーズが止めた。
「使い魔とはいえ、ここまで積極的に授業に参加してくれる生徒がいるというのは、教師として非常に嬉しいことです。それではせっかくですから、魔法の基礎についても復習しましょう。基本は大事ですからね」
コモン・マジックは系統に関係なくメイジなら誰でも使える基本的な魔法である。鍵の開閉や明かりといった簡単な魔法のほか、「サモン・サーヴァント」「コントラクト・サーヴァント」もコモン・マジックの一種だという。
なお、四系統の魔法は魔法語(ルーン)の呪文を詠唱する必要があるが、コモン・マジックは一般的な口語(コモン)の詠唱によって発動する。
『火』系統は、生活の上でなくてはならない火を操る魔法である。また、戦闘に最も適した系統でもある。
『水』系統は、生命の生存に不可欠な水を操る魔法である。傷や病気の治療といった魔法はこの系統に属する。また、心に作用する魔法もこの系統である。
『風』系統は、風や空気を操る魔法である。他の系統と組み合わせて使うことでより力を発揮するので、最も汎用性が高い系統とされている。ちなみに『フライ』はこの系統に属するので、厳密にはコモン・マジックではない。
ここでシュヴルーズが、重々しく咳をした。
「そして、『土』系統は、万物の組成を司る重要な魔法です。この魔法がなければ、重要な金属を作り出すことも、加工することもできません。
大きな石を切り出して建物を建てることもできなければ、農作物の収穫にも手間取ることでしょう。このように『土』系統の魔法は、皆さんの生活に密接に関係しているのです」
右京は得心がいった。ハルケギニアでは、魔法が彼の世界での科学技術に相当するらしい。メイジが貴族として支配階級にいるのは、彼らが人間の文化的・文明的な社会生活を営むために欠かせないからだろう。
ノートに熱心に書き込む右京を、ルイズをはじめとする周りの生徒たちが奇異な目で見ていた。右京自身が「必要以上の好奇の目」にさらされていた。
「そこで今から皆さんには、『土』系統の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます。一年生のときにできるようになった人もいるでしょうが、先ほど言ったように基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致しましょう」
シュヴルーズは、石ころに向かって杖を振り上げた。そして短くルーンをつぶやくと、石ころが光りだした。光がおさまったとき、机には石ころはなく、代わりにピカピカ光る金属があった。
右京は目を見開き、「まさか…こんなこと…」と驚嘆の声を漏らした。それを聞いた生徒たちがくすくすと笑った。
隣にいるルイズが、恥ずかしそうに頭を抱えた。
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
キュルケが身を乗り出して、裏返った声をあげた。
「違います。これはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…」
もったいぶったようにまた咳をして、シュヴルーズは言った。
「『トライアングル』ですから」
「ミセス・シュヴルーズ!」
興奮した声が教室に響き渡った。やはり右京である。
「もういいから…」とルイズが力なくぼやいた。
「なんでしょうか、ウキョウ」
今度はどんな質問が来るのか楽しみだといった表情で、シュヴルーズは指名した。
「『スクウェア』や『トライアングル』というのは、メイジとしてのレベルを示しているのでしょうか?」
「正確に言えば、系統を足せる数を示しています。その数によってメイジのレベルが決まります」
シュヴルーズによれば、例えば『土』系統の魔法は単体でももちろん使えるが、『火』系統を足すことで新しい魔法になるのだという。
一系統しか使えないメイジは『ドット』メイジ、『火』+『土』のように二系統を足せる者は『ライン』メイジ、そしてシュヴルーズの『土』+『土』+『火』のように、三系統を足せる者は『トライアングル』メイジと呼ばれる。
そして、四系統を足せる『スクウェア』メイジが最高クラスのメイジである。ちなみに、同じ系統を足すとその系統の魔法がより強力になるということだ。
「なるほど。ではもう一つ」
質問を重ねる右京に、ルイズは「まだあるの!?」と心の中でつっこんだ。しかし、授業中であり、また右京がこの教室の中で誰よりも勉強熱心な生徒である以上、ルイズに彼を止められる理由はなにもなかった。
「先ほどの『錬金』の魔法では、卑金属を貴金属に変えることができるようですが、いわゆる霊薬、あるいは賢者の石と呼ばれるものを作ることもできるのでしょうか?」
教室は、水をうったような静けさだった。さすがのシュヴルーズも、聞きなれない言葉を次々出されて、目を白黒させていた。
ルイズはとうとう机に突っ伏してしまった。
始祖ブリミルよ。なぜわたしにだけこのような試練をお与えになるのですか。わたしにはこの使い魔を御する自信がありません。
「…そういった専門的なお話でしたら、授業の後か、図書館でお調べになったほうがいいと思います。いかがでしょう?」
「わかりました。どうもありがとうございます」
右京は、笑顔でシュヴルーズに謝辞を述べて、ようやく着席した。ルイズが、顔を真っ赤にさせて右京をねめつけた。
と、シュヴルーズがルイズの名を呼んだ。
「ミス・ヴァリエール」
「は、はい!」
「あなたは、本当にいい使い魔を召喚しましたね。努力家のあなたに影響されてか、とても勉強熱心です」
「あ、ありがとうございます…」
「そこで、『錬金』をあなたにやってもらいましょう」
シュヴルーズがそう言ったとき、教室が再び騒然となった。不穏な空気を、右京は敏感に感じ取った。
「先生! やめといたほうがいいと思いますけど…」
キュルケが、珍しく困ったような声で言った。
「どうしてですか?」
「危険です! ルイズがやるくらいならあたしが…」
キュルケの言葉に、教室の全員が頷いた。
「危険? 『錬金』の何が危険なのですか? ミス・ヴァリエール。失敗を恐れていては何もできませんよ。やってごらんなさい」
「やります!」
ルイズは、緊張と決意を張りつけた顔で立ち上がると、教壇へ歩いていった。
右京は何も言わず、様子を見守っていた。
「ルイズ、やめて!」
顔面蒼白になったキュルケの制止にも、ルイズは聞く耳を持たなかった。
恐怖にかられたクラスメイトたちが、一斉に机の下に潜った。まるで避難訓練でもしているようであった。
いや、一人だけ机に潜らない者がいた。タバサだった。彼女は分厚い本に目を通したまま、混乱する教室を出て行った。
「彼女は…」
右京がそれに気づかないはずはなかった。立ち上がり、タバサの後を追って教室を出る。
タバサは本を読みながら、自分の部屋に向かっていた。後ろから「ミス・タバサ」と声をかけられたが、無視した。
声の主が、タバサの前に立ちはだかった。
「ミス・タバサ、無礼をお許し下さい。ですが、まだ授業は終わってはいません。戻られたほうがよろしいのではありませんか?」
右京に前を塞がれて、タバサはようやく顔を上げた。能面のような無表情であった。
「もう終わる。教室にいると危険」
タバサは、感情も覇気もない声で言った。
「危険? ミス・ツェルプストーもそうおっしゃっていましたね。どういうことなのでしょうか? ミス・ヴァリエールと何か関係があるのですか?」
「すぐわかる」
そう言うと、タバサは再び本に目を落とし、右京の脇をすり抜けて歩いていってしまった。
右京は、今度は無理に引き止めなかった。タバサやキュルケが言っていた「危険」の意味を考えようとしたとき、後ろで爆発音が鳴り響いた。
驚いた右京が振り向くと、教室の扉から煙が漏れ出していた。
教室には火の気やガスはなかった。事故ではありえない。
だとするならば、可能性は一つ。
教室に仕掛けられた爆弾、あるいは爆発魔法が使われたテロだ。
表情を引き締め、右京は教室に走った。
「ミス・ヴァリエール!」
右京は扉を開けるや、主の名を叫んだ。
教室は、阿鼻叫喚の大騒ぎであった。キュルケのサラマンダーが、炎を口から吐いていた。マンティコアが飛び上がって窓ガラスを叩き割り、外に飛び出していった。
そこから大ヘビが入ってきて、誰かのカラスを飲み込んだ。
右京は、急いで教室中を見回した。使い魔たちはともかく、生徒たちは煤で汚れてはいたものの、怪我人はいなかった。
爆発は、教壇周辺で起こったようだ。黒板が歪み教壇は粉々になっていたが、生徒たちの机には被害はなかった。爆発の規模が小さかったのと、
生徒たちが机に隠れて避難していたのが幸いした。
右京は煙が上がっている教壇へ駆け下りていった。教壇にはシュヴルーズと、そしてルイズがいたはずだ。最悪の事態になっていてもおかしくはない。
「僕としたことが…!」右京は、自分がいながら、みすみすテロの被害者を出してしまったことに悔悟をかみしめた。
教壇に着いた右京は、まず倒れているシュヴルーズに気づいた。
緊迫した面持ちで、口と鼻の上に手をかざした。ほっと息をつく。シュヴルーズは気絶しているだけだった。
右京が続いてルイズに目を向けると、彼女は今まさに立ち上がっているところであった。
服が破れてボロボロになってしまっていたが、命に別状はないようだ。
右京は犠牲者が一人も出なかったことに安堵した。
「ミス・ヴァリエール! 大丈夫ですか? 教室は危険です。外に避難しましょう!」
ルイズに早口で伝えると、右京は気絶したままのシュヴルーズを背負い、生徒たちに呼びかけた。
「皆さん! 教室は危険です! 外へ避難して…」
「だから言ったのよ! ルイズにやらせるなって!」
右京の避難指示は、キュルケの叫びに遮られてしまった。
キュルケに続いて、他のクラスメイトたちも口々にルイズを非難しはじめた。だが避難するものはいない。
右京は戸惑いを覚えながらも、再び生徒たちに避難を促した。
「皆さん! 外に避難して下さい! 第二の爆発が起きる可能性があります! 早く避難して下さい!」
「ウキョウ! いいの、たいしたことないから…」
後ろから右京を制止したのは、ルイズだった。
「…どういうことですか?」
「今の爆発はルイズのせいなのよ、ウキョウ! “ゼロのルイズ”のね!」
キュルケが、吐き捨てるように言った。
「ちょっと失敗しただけよ」
顔についた煤をハンカチで拭き取りながら、淡々とした声でルイズは言った。
「何がちょっとだよ! “ゼロのルイズ”!」
「今まで成功の確率ゼロじゃないか!」
「“ゼロのルイズ”! お前のせいで俺のラッキーがヘビに食われたんだぞ! どうしてくれるんだよ!」
クラスメイトたちが猛然と反撃した。
右京は状況を理解した。教室の爆発はテロではなく、ルイズが魔法を失敗したことが原因であると。
タバサやキュルケが言っていた「危険」とはこのことだったのだ。生徒たちがいち早く机に隠れたのも、それを見越していたからだ。
タバサが授業が「終わる」といった理由もわかった。背負ったシュヴルーズを見る。これでは授業を続けることは不可能だ。
「とりあえず、ミセス・シュヴルーズを医務室に運びましょう」
「わたしが案内するわ」
生徒たちの罵倒を背に、ルイズとシュヴルーズを背負った右京は教室を出ていった。
以上です。
毎度のことながら、次回以降は未定でございます。
シエスタ、ギーシュ関連イベントは、決闘になると右京さんっぽくなくなるので、
何か別のイベントを起こそうと考えていますが、なかなか思いつかず、難航しております。
これからどうなるのかは私にもわかりませんが、気長にお待ちいただければ幸いに存じます。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
以上代理終了です
乙
>>195 幽助は分からんけど、桑原は雪菜さぁ〜んだろうし他二人も従う理由が無い。
飛影がデレてるとかわけからんし、いきなり召喚された上に偉そうにされて黙ってるとは思えない。
蔵馬はコルベールやオスマン相手に情報収集やらするだろうけど、帰れないと知ったら何をするか分からない。
乙
乙
乙であります
右京さん相変わらず絶好調ですなw
乙です
違和感なく右京さんの声で再生できますね
続きも期待してます
風の人&相棒の人乙です
新たに召喚されたのは風助ですか。風対風のワルド戦に期待。
右京さんは相変わらずのマイペース。フーケの謎解きが楽しみです。
風助VSワルドかぁ。どっちが強いんだろう。純粋に風の術ならスクエアのワルド。
スピード、忍空術と技も加えれば風助ってとこか。銃弾砲弾くらいは避けれるんだし。
ただ真剣勝負なら、風助甘いし、簡単に本気になれないから隙を突かれるかも。
風助は本当に外道な奴なら容赦ない、氷刹とか黄愁
ワルドはどうなんだろう、戦いはするけど殺しはできないか
避難所に投下されてる北斗の拳でケンシロウが召喚されたSSなんですけど、
まとめサイトに登録したいんですけど第1話がどこかわからないんですが、
どなたかご存知ないですか?
聖帝様のSS同様、北斗物が大好きなんで大変期待してるんですけどね。
某所じゃ拳王様も召喚されてるし、北斗はやはりいいな〜。
>>228 確かに。殺すだけなら空手裏剣で決まりだしな。
ワルドはそこまで外道でもない気はする。まだセーフライン。
実は先住魔法とは忍空だった、ってことはないか。
外道……外道……おのれ外道衆!てことでシンケンジャーから一人召喚するなら、
実力No.2で一人で巨大戦もこなせるシンケンゴールドか。
外道……外道……糞して寝るか
ハルケをOZの一角にしてサマーウォーズから小礒健二をだな
>>228 フーケには一発、ワルドにはタコ殴りで済まし
リッシュモンには躊躇なく首飛ばしそう
シンケンジャーと言えば、殿様って爵位で言えば公爵家ぐらいか?
近い身分でありながら、その地位を「時代錯誤だ」と切って捨てて
剣にもモヂカラ(=ルイズ視点からだと殆ど魔法)にも優れた殿と
まさにその時代の中の生まれで、地位や身分に囚われきっていて
実力が伴わず空回りしているルイズとの齟齬や対立とか、
上手く書ければいい感じのネタになりそうだな。
>>231 ( 水)シンケンジャーNo.2なら私だろうjk
>>221 幽白の4人だと蔵馬が1番やべぇよな
性格怖すぎるからマジで何するかわからない
飛影はルイズなんか相手にしないでどっか消えるかもしれんが
ジョゼフはアクマロ辺りかね
>>237 自分自身の命やら、自分の近くにいる人の体裁とか、ありとあらゆるものに優先順位をつけていて、
より上位の物のためなら、それ以下の存在はなんであっても躊躇なく切り捨てるタイプだからな。
母親という心理的ブレーキが最上位にあるから、温厚そうに見えるだけで。
デレって言ったら一輝兄さんだろ
彼、ああ見えて不幸な生い立ちの女の子に弱いから、
ルイズが身の上を話せば態度が急に変わるかも知れんぞ
それこそ、冥界編のパンドラの時のように
だってあのひと走り方変なんだもん
242 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 04:48:56 ID:SFD5eVtw
幽白か…
自分に文章力があれば飛影召喚やりたかったんだけどな(不遇なキュルケが召喚、ルイズはサイト)
強者を求める飛影だからなんとかとどまってくれそうだし。
>>196-197 ゼロの斬鉄剣くらい?ルパン関係は
243 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 07:40:51 ID:uvtaCZNh
244 :
ゼロの視線:2010/02/19(金) 12:06:17 ID:uSiF4UvX
おーい、予約はあるかー
なければ十二時十分から投下しちゃうぞー
ぞー
ぞー
245 :
ゼロの視線:2010/02/19(金) 12:16:14 ID:uSiF4UvX
はい参ります
六話
「ふむ」
水キセルをぷかぁとふかしながら一同を見回すオールド・オスマン。
こういった老人は苦手だ、と弦之介は思う。
どこか祖父を思い出してしまう。
・・・・・・・ただ忍法帖の名が朱腺で消されてた、ただそれだけの祖父の死を
「それにしてもスッゴいですね!」
「40メイルものゴーレムがイッパツで消し飛ぶんですもの」
「ウチに一個欲しいなぁ」
「この杖があれば全ての戦が変わる。 船はもちろん城すらも存在意義を失う」
なにやら興奮している生徒たちに向かって弦之介は声をかける。
「それは無理よ。その『破壊の杖』とやらは使い捨てじゃ」
「「「「「ほへ?」」」」」
珍妙な声を上げる一同。特にミス・ロングビルのほへ具合は尋常なものではない。
「この筒はさほど異様なものではない。 材質は見た事がない物であるがな。
いわば持ち歩く大筒なのだがこれが強力なのは、込める弾が全てじゃ。
そして使ってしまった以上」
「するとこの杖をもう一度使うためには・・・・・・」
「どこかで弾を探してくるしかないの」
「「「「そんなぁ」」」」
ヘナヘナと床に座り込む生徒一同+1
「さて、今宵はフリッグの舞踏会じゃ。皆は準備をするがよい」
「「「はーい」」」
「あ、ちとゲンノスケどのはまたれよ。聞きたい事があるでな」
「で、聞きたいこととはなにかの」
支援
247 :
ゼロの視線:2010/02/19(金) 12:20:22 ID:uSiF4UvX
ちと訂正
この筒はさほど異様なものではない。 材質は見た事がない物であるがな。
いわば持ち歩く大筒なのだがこれが強力なのは、込める弾が全てじゃ。
そして使ってしまった以上もはやただの管でしかない」
「何でそんな事わかるのよ」
「何故か、と問われても何故かわかる
「するとこの杖をもう一度使うためには・・・・・・」
「どこかで弾を探してくるしかないの」
「「「「そんなぁ」」」」
ヘナヘナと床に座り込む生徒一同+1
「さて、今宵はフリッグの舞踏会じゃ。皆は準備をするがよい」
「「「はーい」」」
「あ、ちとゲンノスケどのはまたれよ。聞きたい事があるでな」
「で、聞きたいこととはなにかの」
「何ゆえ、フーケを見逃した?」
さりげなく「気」をロングビルに向けていることから、ほぼ全てを見抜いているようだ。
「些少ではあるが話をした。そして信用できる、と。
もし今一度『ふーけ』とやらが盗みを働けばわしが殺す」
「ほっほっほ、信用したものよな。
まあよい、ではミス・マチルダ」
「は、はいっ」
自分の正体が全てオスマンに見抜かれていることを知る。
「多少ではあるが今月からおヌシの給金にイロつけてやろう。
二度と盗みなどするでないぞ」
「・・・・・・・・・承知しました しかし」
さりげなく自分の尻をなでようとするオスマンの手を掴み、そのまま流れるようにチキンウィングフェイスロックへと移行するロングビル。
その見事なまでに流麗な動きは、弦之介をもってして感嘆させる。
「それとこれとは別ですからね。この学園に腰を据える以上、学長にはその地位に相応しい品格を!持って!頂きます!」
「ギブギブ!ギブってばキブじゃ!」
泡吹いて倒れたオスマンを放置して外に出た弦之介を追ってロングビルもまた部屋を出る。
周囲に誰もいないのを確認して問うてみる。
「自分で言うのもナンだけどさ、なんでアンタあたしを見逃してくれたんだい?」
「あえていうなら・・・・・・目よな」
「目ェ?」
「うむ・・・・・・お主と似た目をした娘を知っておるのじゃ。
己が力量もわきまえず己が愛するもの全てを守りたい、と願った娘の目に」
248 :
ゼロの視線:2010/02/19(金) 12:22:24 ID:uSiF4UvX
華やかな音楽が流れる。
ふりっぐの舞踏会とやらが行われているようだ。
面倒な事は御免蒙る、というわけで月を肴に屋根の上でマルトーに貰った徳利を傾ける眩之介
で、これよりいかがなさるおつもりか
「ふむ、とりあえず甲賀に変えることも適わぬでな。暫しの間『はるけぎにあ』とやらに腰を落ち着けてみようと思うておる」
眩之介さまのこの先、如何なる事になるのか星が読めませぬ
わしとしてはあのきゅるけなる娘子とお近づきになりたいものですなぁ
どのみち我等甲賀者に平穏なぞありえぬ 放っておいても戦いが向こうからやってくるわい
だれもおらぬ暗がりで、一人杯を干す眩之介でした
249 :
ゼロの視線:2010/02/19(金) 12:24:12 ID:uSiF4UvX
はい、短めですがここまでです
ワルドとの戦いはよ書きたいのですがそこになかなかたどり着けなさそう
とりあえず頑張るッス
乙でござった!
遅ればせながら、相棒の人GJ!
>>203は裏相棒仕様で脳内再生余裕でした。
それにしても右京さん、異世界ライフ満喫しすぎだ(w`
そして、「あ、もう一つだけ」「僕としたことが…!」もキター!
しかし授業シーンでここまで活き活きしてくるキャラはそうはいないよなあ…。
今、一番続きが気になる作品です、次回の更新を楽しみに待っています。
>>240 でも、瞬がピンチに陥ったら、一輝はルイズを無視して瞬を助ける為に次元の壁を乗り越えて帰ると思うw
兄さんは弟がピンチに陥ると、どこへでもやってくるからな。
アンドロメダのピンチを感じた時、時を超え、次元を超え、フェニックスが召喚される。
フェニックスは地上全てのエネルギーとシンクロし自然現象さえも変えるパワーを出す事が可能となるのである。
>>252 こう考えるんだ!
「それが最終回だ!!」
冥界の最深部に唐突に現れる兄さん、マジバネェ
視線乙!
こんなに早く続きが読めるとはおもわなんだ。
続きが気に期待してるでござる。
右手にミギー、左手にARMS、血中にヌーサイト、
頭に遊星からの物体X、腹にエイリアン
…の、ルイズ
風ならサイクロンジョーカー
よし、アンドロメダを召喚でいこう。
「7万のアルビオン軍が迫っているんだ」
「よし、虚無を身代わりにしよう」
「つつしんでお受けいたします」
「無謀だ、やめろ」
「みんなのために、行かなければいけないの」
「ならば代わりに行こう」
「そんな、いくらなんでも勝てるわけないわ」
「心配はいらない。必ず帰る」
「ありがとうアンドロメダ……土方艦長……」
「目標、アルビオン軍7万を確認、距離2.0宇宙キロ」
「拡散波動砲、発射用意!」
ガイアメモリはベルトで制御していないと持ち主を侵食して精神を狂わせるという。
……初期ルイズがガイアメモリを手に入れても誰も区別できそうに無い、なんて気がする。
虚無だから精神力が並外れてるし、だから大丈夫って理屈で
止めてやるよ、俺が・・・・いや、俺達がだ。
ルイズがドーパント側のがいいかw
>>262 クロムウェルが勝手に作った「かくあるべき」歴史書に従って歴史を改変しようとするんですね
投稿できそうなので、第五話の前半を50分に投稿します
今回は15レスと長いですが、よろしくお願いします
269 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 15:48:08 ID:bXiCbBMd
>>262 いつ「じゃあ俺が」「いや、俺が」「それなら俺が」「どうぞどうぞ」が始まるかと思ったぜ
第五話 人と翼人と異邦人とハーフエルフ
翌日の早朝…ガリア王国アルデラ地方エギンハイム村
まだ鶏も鳴かないこの朝早くから、ぞろぞろと森へ入っていく男達の集団があった
彼等が向かう先は…
「おい、皆…準備は良いか!!」
男達のリーダー格である、体格の良い男が皆に掛け声をあげる
彼の名はサム…この村の村長の息子で、村一番の力の持ち主だ
「おお、今日という今日はもう我慢ならねぇ!!」
「俺達は待った…領主様が王宮に騎士を派遣するよう頼むってのを!!」
「だけど、肝心の騎士は全然来ない…領主様も騎士もあてになんねぇ!!」
「このままじゃ、俺達は飢え死にだ…やるしかねぇんだ!!」
そうだそうだ、と屈強な男達は口々に叫ぶ
何ヶ月も待たされ続けた彼等は、自分達だけで翼人退治をしようとしていたのだ
「よーし、その粋だ…いいか、今日こそ翼人共を皆殺しにするんだ!!」
おお〜〜〜、とサムの声に対して男達は雄叫びを上げる
しかし、その中の数人は、少し怯えた様子を見せていた
「け、けどよサム…もし、魔法を使われたり…あいつ等が出てきたらどうするんだ?」
「なーに、寝込みを一気に襲っちまえばこっちのもんよ、魔法を使われねぇうちに倒しちまうんだ。」
じゃあ、行くぞ…と、サムは声をかけて男達と共に森の中へ入ろうとした
だが、その矢先に一人の男が彼等の行く手を遮った
「待ってよ、皆待って…サム兄さんも。」
「ヨシア、お前…。」
彼等を遮ったのは、サムの弟であるヨシアという青年だった
弟を睨み付けるサムだが、彼は一歩も引かない
「何で同じ森の仲間同士で争うんだよ、もっと話し合えば…。」
「仲間だぁ!?何馬鹿な事を言ってやがる!!」
サムはヨシアに近づくと、その襟首を掴んで黙らせようとする
「良いか、奴等は鳥だ…鳥を殺って何が悪い。それに、問答無用で魔法をぶっぱなすあいつ等とどう話せってんだ?」
「そ、それは…僕達が最初に彼等に矢を射掛けたから…。」
チッ、と舌打ちをすると、サムはヨシアを横へ突き飛ばした
兄に比べて体の細い弟は、そのまま地面に尻餅をついてしまう
「ヨシア、仲間ってのは柵の内側にいる人間の事だ…お前も親父の息子なら、もっと仲間の事を考えろ!!」
弟にそう言い放つと、サムは男達を率いて翼人達の所へ向かった
誰もがヨシアに振り返る事無く、森の奥へと進んでいき、やがて見えなくなった
彼等が去っていくのを見る事しかできず、ヨシアは拳を地面に打ち付けた
………………
「よーし、ついたぞ…奴等はまだ寝ているようだな。」
村から三十分程離れたライカ欅の森…その中で一際大きい欅の前でサム達は止まる
その欅こそが、翼人たちが住処として使っているものだった
「良いか、俺がこいつを投げつける…んで、落ちてきた所を一気に仕留めるんだ。」
作戦の最終確認を行うサム…彼の横には大岩があった
全員が理解しているのを確認すると、ボキボキと手を鳴らした
「じゃあ、行くぞ…奴等に人間様の力を思い知らせてやる。」
そう言って、サムは大岩を持ち上げて…ライカ欅に向かって投げつけた
勢いよく投げられた大岩は、本来ならそのまま幹にぶつかる筈だったが、それを一つの影が遮った
それは持っている物を一閃し、大岩を真っ二つに切断する
「な、何!?」
サムは驚いた…自分が投げた大岩が切断された事に
そして、その間から見えた巨大な斧を見て、彼は自分の斧を構えた
「畜生、出やがったな…この野郎!!」
「野郎というのは不適格です…私は女ですから。」
サムの言葉に対し、巨大な斧を持った人物は冷静な声で答える
彼等の目の前にいる人物は、ピンクのツインテールをした女の子だった
>>268 「前半」だけなのに15レス・・・・だと・・・・?
何やらシンフォニアキャラ登場とな支援
一方、その頃…黒い森の上空にイルククゥの姿があった
もうそろそろ日が昇るこの時間帯に、ようやくタバサ達は目的地に到着した
「此処が黒い森なのね、もうすぐ目的地に到着するのね♪」
目的地が目と鼻の先である事に、イルククゥはウキウキしながら喋る
何せ朝早い時間に起こされ、朝ごはんも食べずに出発したのだ
村についたら、腹一杯食べるつもりである
「静かに…彼が眠っている。」
はしゃいでいるイルククゥをタバサは宥めると、後ろを振り返る
彼女の後ろには、突起したイルククゥの背骨にもたれているクラースの姿があった
「………………。」
クラースは落ちないように体を固定した状態で、眠っている
一晩中火の番をしていたので、到着までの間仮眠を取っていた
「そうなのね…でも、もう着いたから起こすのね。」
「まだ駄目…村に到着するまで…。」
「う、うーん……。」
二人が話していると、クラースから唸り声が聞こえてくる
起こしてしまったか…もう一度後ろを振り返るが、クラースはまだ眠っていた
「絶対…帰る方法見つけてやるからな…才人…待ってろよ…ミラルド…。」
今度はぶつぶつと、寝言を呟く…最後の方で呟いた名前は女性のようだ
この人は夢の中でも、帰る方法を探しているのだろう
使い魔の少年の為に…待っている人の為に
「………頑張って。」
そんなクラースに向けてぽつりと、タバサは励ましの言葉を送った
偶然か、それを聞いたクラースの寝顔が若干和らいだ
「ちびすけ、大変なのね!!」
その時、自分を呼ぶイルククゥの声が聞こえ、反射的にタバサは下を見る、s
すると、眼下の森で煙が上がっており、大きな木が一本倒れるのが見えた
「あれは……人間が戦っているのね。」
目が良いイルククゥは、眼下の森で何が起こっている
どうやら、村人が自分達の到着を待てずに翼人に戦いを挑んだようだ
「どうするのね、ちびすけ?」
「放ってはおけない…私は先に降りる。」
そう言うと、タバサはイルククゥから飛び降りて地上へと降下を始めた
勿論、地面と接触する寸前に『フライ』を唱えるつもりだ
「え、えっと…私はどうすれば良いのね!?」
残されたイルククゥは叫ぶが、もうタバサは下の方まで降りている
おろおろしていると、騒動を聞いたクラースがゆっくりと覚醒する
「ん…ん〜〜〜、眠ってしまったなぁ。」
目を覚ましたクラースは首を回し、肩も回す…その度に、ポキポキと音がなった
「初めて竜の背中で眠ったが…眠り心地はあまりよくなかったな。」
「余計なお世話なのね…それより大変なのね!!」
「おお、イルククゥか…タバサは何処だ?もう目的地についたのか?」
「もうとっくに着いてるのね、ちびすけは先に下に降りてるのね。」
イルククゥが質問に答えると、クラースは体を固定していたロープを外し、下を見る
眼下の森では、既に戦いが始まっている事を確認する
「もう始まっているのか、早まった事を…これは、急がないと不味いな。」
「そうなのね、それで私達はどうすれば良い?」
「そうだな…私も下に降りる、君は此処で待機だ。」
「わ…解ったのね。」
イルククゥに指示を与え、クラースもまた下へと飛び降りる
勿論、地面にぶつかる前にシルフを呼び出すつもりだ
風をその身で感じながら、クラースの体は大地へと落ちていった
「畜生、こんな…こんな筈が……。」
地面に片膝をつくサムは、目の前の光景に愕然とする
戦いが始まってからしばらく経って…仲間達は全員地面に倒れ、呻き声をあげていた
全員が軽い傷を負っただけで、死人や重傷者は出ていない
「何で、負けるんだよ…こんなガキ共に!!」
そう叫んで、サムは目の前にいる二人組を睨み付ける
片方は先程サムの投げた岩を斬った少女で、もう片方は少年だった
髪は銀髪で、手には見た事もない武器のようなものを持っている
「もう、これで十分だよね…お願いだから、引き上げてくれないかな?」
銀髪の少年がサムに向けて、引き上げるよう勧める
少女の後に現れたこの少年は、メイジと同じように魔法を使ってきた
仲間達は少年の魔法と少女の斧に抗う事が出来ず、皆やられてしまった
「くそ、ガキのくせに…俺達の邪魔すんじゃねぇ!!」
持っている斧を杖代わりに立ち上がると、サムはそれを二人に向ける
どうしても、やる気らしい
「無駄です…今のこの状況で貴方が勝てる確立は皆無です。」
「うおおおおおっ!!!!!!」
少女の言葉を無視して、サムは斧を持って突っ込んでいく
斧が振り下ろされる直前、少女は持っている自分の斧を振るった
彼女の斧はサムの斧を砕き、彼を後ろへと吹き飛ばす
「うっ、げほげほ……くそ…ま、まだだ…。」
力の差を見せ付けられても、サムはまだ立ち上がる
傍に落ちていた仲間の斧を拾い、ふらふらと二人に向かって歩き出す
「もう、分からず屋だなぁ…プレセア、どうする?」
「ジーニアス…仕方ありません、解らせるまで戦いましょう。」
だね、と答えると二人は自分の持っている武器を構える
二人がサムに攻撃を仕掛けようとしたその時、上の方から声が聞こえてきた
幼い少女のような声が二人の耳に届き…その直後、雪風が二人を襲う
「うわっ!?」
激しい雪風が二人に向かって襲い掛かるが、間一髪で二人は雪風から逃れる
そして、片方の少女…プレセアが即座に上を見上げた
「ジーニアス、上です。」
彼女の言葉に、銀髪の少年…ジーニアスも上を見上げる
上空から、杖を構えた少女…タバサが降りてくるのが見えた
彼女は『フライ』の呪文を使って、ゆっくりと二人の前に降り立つ
「君は…まさか、今のは君がやったの?」
ジーニアスが尋ねるが、タバサは答えずに杖を構えて詠唱を始める
杖の先端から突風が起こり、二人に襲い掛かる
「あっ…え、エアスラスト!!!」
即座にジーニアスは呪文を唱え、自分達の前に風の刃を発生させる
タバサの突風とジーニアスの風の刃はぶつかりあい、互いに相殺する
「あ、危なかった…いきなり魔術を使ってくるなんて、あの子は一体…。」
「お、おお…騎士様だ、領主様がお城に頼んでいた騎士様が来てくださったんだ!!」
ジーニアスの疑問に答えるように、倒れていた男がそう言った
それを聞いた他の男達もサムも、活気を取り戻す
「あんな子どもが…でも、さっきの雪風は確かに魔法だった。」
「やったぜ、騎士様が来てくれれば怖いものなしだ!!」
「騎士様、そんなガキ共やっつけてください!!」
騎士なんか当てにならないと言っていた男達は口々にタバサを賞賛し、応援する
子どもとはいえ、メイジである彼女の魔法を目の当たりにして、考えが変わったのだろう
「騎士って…もしかしてあの子、メイジって事?」
「そのようです…ジーニアス、気を引き締めて戦いましょう。」
「う、うん…相手が誰であれ、僕達は負けるわけにはいかないもんね。」
話し合った後、二人はタバサに向かって構えをとった
対峙するタバサも、杖を向けながら状況を分析する
「(あれが、衛兵が言っていた…正体は二人組の子どもだった…。)」
自分と同い年くらいの少年少女…だが、そんな二人が後ろにいる男達を倒したのだ
油断してはいけない、詮索は後で…タバサは杖を握り締め、二人を見据える
彼等が対峙して少し経った後…最初に動いたのはタバサだった
素早く魔法の詠唱を行い、突風を起こして二人を襲う
だが、二人はそれを散開して難なく避ける
「中々の魔法だね、だけど僕だって負けないよ…ファイアボール!!!」
ジーニアスが持っている武器を構えると、無数の火の玉が出現する
火の玉…ファイアボールは目標であるタバサ目掛けて飛んでいく
それをタバサは氷の刃を飛ばし、相殺する
「爆砕斬!!」
その間に間合いに入り込んだプレセアが、斧を振り下ろした
タバサはバックステップで避けるが、振り下ろされた斧は地面を砕く
砕かれた土は周囲に飛び散り、タバサの頬を掠める…血が流れた
「(此方は一人、相手は二人…力量から考えて、此方が不利…。)」
シュヴァリエとして幾多の経験をつんだタバサは今の手合わせから、長引けば此方が負ける事を悟った
少女は自分の体格程の斧を軽々と扱い、少年は魔法を見事に操っている
それに、彼等は巧みな連携によって、戦力を上げている
「(まずは後衛を倒さなければ…。)」
流れる血を拭うと、ターゲットをジーニアスに絞り、タバサは詠唱を開始した
杖の先から竜巻が発生し、ジーニアスへ向かっていく
「エアブレイド!!!」
対するジーニアスは即座に詠唱を唱え、圧縮された空気の塊を放った
その刃はタバサの竜巻を切り裂いて彼女を狙うが、当たる直前に避ける…
「そこです。」
が、そこへ斧を振りかぶったプレセアが攻撃してくる
一撃、二撃、三撃と見た目よりも素早い攻撃を紙一重で避ける
「続けていくよ、フレイムランス!!」
ようやくプレセアの追撃を逃れた所に、今度は炎の槍が襲い掛かってきた
タバサは風で障壁をつくり、炎の槍を直前で受け止める
「前からが駄目なら、下からだ…グレイブ!!」
間髪入れずにジーニアスが素早い詠唱を終えると、タバサの足元から鋭い岩石の槍が襲ってくる
幸いすぐに回避行動に出た為軽い傷を受けただけだったが、これによって風の障壁は消えた
遮られていた炎の槍はまだ消えておらず、壁が無くなった事でタバサへと飛んでいく
「!!」
タバサがそれに気づいた時…槍は彼女の傍の地面に着弾した
同時に爆発が起こり、激しい土煙が舞う
「き、騎士様が…。」
次元の違う戦いに見守る事しか出来ないサム達は、この時タバサが負けたと思った
ジーニアスとプレセアは、土煙で見えなくなったタバサの動向を探っている
「やったかな…威力は弱めてるけど、あれを喰らったら立てない筈だよ。」
「………。」
ジーニアスの言葉に対して何も答えず、プレセアはじっと土煙を見つめる
何も起こらない…かと思われたその時、目の前の土煙が不自然に揺らいだように見えた
「!!」
それを察知したプレセアが斧を構えると、煙の中から巨大な氷の槍が現れた
ライン・スペルの一つ、ジャベリン…その氷の槍は、プレセアを狙っている
「はっ!!」
プレセアは構えていた斧を振り払い、氷の槍を打ち砕いた
もう少し構えるのが遅ければ、串刺しになった所である
「プレセア……ええい!!」
ジーニアスは土煙を睨むと、風を操ってそれを吹き飛ばす
あっという間に土煙は消え、隠れていたものが明らかになり…
「…………。」
そこには未だに立っているタバサの姿があった
だが、無傷であるとは言えず、先程の攻撃で所々ボロボロになっている
彼女はそれを気にせず杖を構え、スペルを唱える
「危ない!!」
再び雪風が舞い、二人目掛けて襲ってくる
それを避けながら、プレセアもジーニアスも次の攻め手を考えた
「(思ったよりダメージが大きい…これ以上続ければ、確実に負ける…。)」
タバサもまた、この二人に勝つ方法を考えていた
無表情であるが、先程のフレイムランスの一撃がかなり効いており、痛みを感じている
ロアから貰った薬を使いたい所だが、この二人相手に隙は見せられない
「孤月閃!!」
そこにプレセアが攻撃を仕掛け、タバサは一度思考を中断する
後ろに下がると、プレセアに向けて杖を構える
「ラナ・デル・ウィンデ…。」
そしてスペルを唱えてエア・ハンマーを発動し、彼女を攻撃する
放たれた魔法は、真っ直ぐ彼女目掛けて飛んでいくが…
「獅吼滅龍閃!!!」
プレセアは斧を振り回し、迫りくる空気の塊に向かって闘気を放った
闘気は獅子の形となって、タバサのエア・ハンマーを打ち砕く
「……っ!?」
流石のタバサも、これには驚きを隠せなかった…自分の魔法が獅子によって打ち砕かれたのだ
あれは一体…そう考えている間にもプレセアは斧を構え、此方に向かって再度攻撃を仕掛けてくる
これ以上ダメージを負うのは危険だ…タバサは攻撃を避け続ける
「プレセア、下がって……燃えちゃえー、イラプション!!!」
ジーニアスの声でプレセアが一度退くと、タバサは足元が熱くなるのを感じた
危険を察知して即座にフライを唱えて飛び上がると、自分のいた地面が噴火を始める
その様子を見ながら、タバサは木の枝に乗り移った
「(此処まで来れば、攻撃は出来ない筈…。)」
そして、タバサは冷静に現在の状況を分析する…あの二人は、自分の想像以上だった
どうやって、あの二人を倒せば良いのか…タバサは思考を巡らせる
「(………やはり、彼の力を借りる必要がある。)」
考えた結果、彼等に勝つにはクラースの助力が必要であるという結論に至った
彼が来るまで、何とか持ちこたえないと…
「ああ、あんな高い所に…プレセア、どうしようか?」
「少し乱暴ですが…無理やり降りてもらいます。」
その間にも、下にいる二人は次の行動へと移ろうとしていた
プレセアが目で合図を送ると、それを理解したジーニアスが詠唱を始める
彼女は斧を構え、その時が来るのを待つ
「………よし、プレセア、行くよ!!!」
「はい…全てを屠る、この一撃…」
互いに準備を整え、ジーニアスが魔法を唱えた…その力は、プレセアの斧に宿る
彼女は斧を振り上げると、タバサがいる木に向かって…
「「クリティカル・ブレード!!!」」
斧を振り払った…その一撃は、目の前の大木を屠る
タバサは自分が乗っている木が倒れるのを感じ、枝から飛び降りた
二人から離れた所に降り立ち、杖をかまえようとするが…
「ジーニアス、動きを。」
「解った…アイシクル!!」
ジーニアスが先に呪文を唱え、それによってタバサの足元が凍ってしまう
それでも呪文を唱えようと、杖を向けるが…
「アイスニードル!!!」
それを許さないジーニアスの氷の刃が、杖を弾き飛ばす
自由を奪われ、杖も手から離れ…タバサは完全に無力化された
「や、やっと終わった…確か、メイジは杖がないと魔法が使えないんだよね?」
「その筈です…これで私達の勝ちです。」
プレセアの言葉を受け、ジーニアスが良かったと胸を撫で下ろす
「騎士様が…騎士様が負けちまった…。」
最後の希望であったタバサが敗れ、サム達は絶望に打ちひしがれていた
それは、タバサ自身も同じであった
「(負けた…私が…。)」
幾多の任務をこなし、生還してきたのに…負けてしまった
此処で私は終わるのか…タバサはこの時、死を覚悟した
「さて…僕達が勝ったわけだけど…。」
戦いが終わり、プレセアとジーニアスはゆっくりとタバサの元へと歩いていく
タバサの杖をプレセアが拾い、ジーニアスがタバサと顔を合わせた
「あのさ…もう一度言うけど、お願いだから翼人達の住処を荒らすのは止めてくれないかな?」
「貴方達がこのまま帰れば、私達も彼等も危害を加えません…杖もお返しします。」
このまま命を奪われるかと思ったが、二人の申し出にタバサは驚いた
改めて二人を見つめ…やがて、疑問の言葉を口にする
「…貴方達は何者?何故翼人達の味方をする?」
「それ…普通最初に聞くものじゃないの?」
ジーニアスが呆れた口調で尋ねるが、タバサはジッと此方を見つめてくる
「まあ、村の人達のお願いで着たんだから仕方ないよね…僕達は…。」
「ジーニアス、プレセア!!」
ジーニアスが質問に答えようとすると、二人の名を呼ぶ声がした
その場にいる全員が声の方を見ると、向こうから走ってくる男の姿があった
「えっ、まさか…嘘、クラースさん!?」
現れたのはタバサの後を追って飛び降りたクラースだった
彼の登場にジーニアスとプレセアは驚いた表情を見せる
「間違いない、ジーニアス・セイジにプレセア・コンバティール…何故君達が此処に?」
「それはこっちの台詞だよ、何でクラースさんが…」
此方まで走ってくると、タバサそっちのけで彼等は話し合う
此処は君達の世界なのか、貴方の世界じゃないのですか、それとも…
目の前で交わされる会話に、タバサは混乱する
「(君達の世界、貴方の世界…一体何を言っている?)」
そんな時、ようやくクラースがタバサの方を向き、彼女がどんな状態であるかに気付いた
「タバサ、これは……まさか君達、彼女と戦ったのか?」
「う、うん…だって、いきなり攻撃を仕掛けてきたから…この子、クラースさんの仲間なの?」
「ああ、そうだ…二人とも、彼女を解放してくれないか?それから杖も返してやってくれ…頼む。」
「えっ、それは………うーん、まあクラースさんの仲間なら…プレセアは良いかな?」
クラースの申し出に困った表情でプレセアに尋ねると、彼女は頷いて答える
そして、ごめんねと謝りながらジーニアスはタバサの枷とした氷を溶かした
プレセアが杖を差し出すと、彼女は何も答えずに黙って受け取る
「すまなかったな、タバサ…まさか、知り合いがいるとは思わなかったんだ。」
大丈夫か…と心配して近寄るクラースから、タバサは一歩後ろに下がる
その表情には、疑いの眼差しが込められていた
「タバサ…?」
「貴方は…貴方は一体何者?何処から来た?」
「それは……何者かと聞かれても、私は遠い東の地から来た…。」
解っている、彼女の言いたい事は…彼女は頭も良いし、感も鋭い
それでも、クラースは誤魔化そうとするが、彼女の眼差しは解けない
「私は貴方なら母を元に戻せると思った…だから貴方に協力しようと思ったし、私の事を話した。」
でも…と言って、タバサはジーニアスとプレセアに視線を向ける
「彼等の仲間だというのなら、私は貴方に杖を向けなければならない。」
「それは………まいったな。」
どう答えれば良いか解らず、クラースは困った顔をしながら頭を掻くしかなかった
「騎士様…これは一体どういう事です?」
その時、見かねたサムがタバサに声を掛けてきた
後ろには、動けるようになった男達が二人ほど、同じように此方を疑るように見る
「その男はあんたの知り合いらしいが…その知り合いが、そのガキ共を知ってるってのはな…。」
「唯の偶然とも思えねぇなぁ…返答しだいじゃ、俺達も黙っちゃいねえですぜ?」
先ほどとは一転、責める口調で問いただしてくる
後ろの男達は、持っている武器を強く握り締め…一触即発の状況となった
「それは……。」
「うわあああああああ!!!!!!」
タバサが答えようとすると、後ろから男の悲鳴が聞こえてきた
声の主である男は上を見て驚いており、タバサ達もその視線の先を見る
すると、上空には翼を生やした男女が数人、此方を見ていた
支援
TALES OF SHIEN
みじん支援にしてやるぜ!
「あれが翼人か…羽が生えている以外は人間そのままだな。」
翼人達を見ながらぽつり、とクラースは感想を漏らす
彼等は騒ぎが起こってからずっと此方の様子を見ており、今になって姿を現したのだ
やがて、彼等の中から一人、亜麻色の髪をした女性の翼人が此方に降りてきた
「あっ、アイーシャさん。」
ジーニアスとプレセアが彼女の傍へと駆け寄り、反対にサム達は恐れて後ろに引き下がる
アイーシャと呼ばれた翼人は、心配そうに二人を見つめる
「ジーニアス、プレセア…二人とも怪我はない?」
「うん、大丈夫だよ…ちょっと予想外の事は起こったけどね。」
チラッとクラースとタバサ、両者を見ながらジーニアスは答える
クラースはその様子を見ながら、今の状況を整理する
「(そうか、昨日タバサが言っていたのはこの二人の事だったか…あの男じゃなくて良かったが…。)」
とはいえ、今の状況がとてもややこしい事であるのには変わりはない
どうしたものかと考えを纏めていき…ある一つの方法に至った
「………おい、この中で代表者は誰なんだ?」
クラースの問いに、戸惑いながらサムが前に出る…クラースはサムの方を向く
「…自己紹介が遅れたが、私はクラース・F・レスター…このガリア王国騎士のタバサ殿の友人だ。」
まずは自分達の素性を明らかにする…チラッと横目でタバサを見る
彼女はクラースの出方を見るようで、何も言わなかった…なので、そのまま話を続ける
「私は彼女の協力者として今回の君達の依頼に参加した…そして、あの二人は私の知り合いだ。」
その言葉に、サム達の間にどよめきが走るが、構わずクラースは更に話を続ける
「もし、良ければ…私達と彼等をエギンハイム村まで案内してくれないだろうか?」
「な、何だって!?」
サムが驚き、後ろからも批判の声が上がる…その為、クラースはもう少し大きい声で続きを喋る
「まだ私達は詳しい事情を把握できてはいない…だから、両者から話を聞きたい。そして…」
「貴方は…話し合いでこの件を解決するつもり?」
クラースの意図が解ったタバサが尋ねると、クラースはそうだ、と答えた
「ふざけんな、そんな事出来るわけが…。」
自分達に怪我させた相手と話なんか…感情的にサムは却下を言おうとした
が、クラースは引き下がらずにずいっと彼の前へ出る
「君達もその身をもって知っただろう、あの二人の力を…その上翼人まで相手にするつもりか?」
「そ、それは……。」
「このまま続ければ無駄死にだ…しかし、話し合いで決着がつけば、双方ともに死人は出ない。」
どうだ、と言われてサムはうーんと唸りながら考える
仲間達が見守る中、しばらく考えてようやくサムは口を開いた
「…解った、悔しいがあんたの言う通りだ…仕方ねぇけど、話し合いには応じてやるぜ。」
良いか、お前ら…とサムが声を掛け、男達は顔を見合わせる
しかし、この状況で戦っても勝ち目がない事は理解していたのでしぶしぶ了承した
彼等は傷ついた体を互いに支えあいながら、この場からの撤収を始める
「すまんな、こんな複雑な状況の中で私の意見を採用して貰って…。」
「全くだ、次から次へと…後でちゃんとした説明をしてもらうからな!!」
未だ納得しない様子を見せつつ、サムは倒れている仲間を担いでその場を後にする
彼等が先に行ってしまったのを見て溜息をつくと、クラースはジーニアスの方を振り向いた
「というわけで、君達は翼人達の代表というわけで来てもらう事になるが…構わないかな?」
「そう言われても、それで話が進んじゃったから断れないよ…アイーシャさんはこれで良い?」
「彼等が話し合いに応じてくれたのなら構わないわ…本当なら、貴方達にあの事を伝えて欲しかったのだけど…。」
アイーシャが落ち込んだ様子を見せると、その手をプレセアが優しく握った
「折角クラースさんが作ってくれた機会です…最後まで諦めてはいけません。」
「プレセア…ありがとう、その通りね。話し合いは貴方達に任せるわ。」
だから、お願いね…とアイーシャは優しく微笑み、プレセアは頷いて答える
これでこっちは大丈夫だ…後は、とクラースはタバサの方を振り向く
「タバサ…勝手に話を進めたが、これで良かったかな?」
「……交換条件。」
そう言って、タバサはクラースの瞳を覗き込む…透き通った瞳にクラースの顔が映る
「本当の事を話して欲しい。貴方が本当は何者で、何処から来たのかを…。」
「それは…まあ、君は私に全て話してくれたからな。私が話さないのはフェアではないか。」
少し困った表情を見せながら…クラースは真実を話す事にした
「別の世界から来た?」
エギンハイム村への道のりを歩きながら、クラースはタバサに自らの秘密を明かした
此処とは違う、別の世界からルイズに召喚された事を…少し驚いた様子を見せる
「ああ、そうだ…こんな事を言っても信じて貰えないだろうが、これが事実だ。」
「つまり、平行宇宙…色んな可能性によって成り立った世界が幾つも存在していて、その一つから僕等はやってきたんだ。」
クラースに続き、ジーニアスが説明を付け加える…こんな事を言っても信じてもらえないと思ったが
「この世界とは違う、別の世界から…そう。」
タバサは納得した様子で呟く…あっさり納得された事に、クラースとジーニアスは拍子抜けする
「えっと、その…今ので納得して貰えたのかな?」
「貴方達が別世界の人間なら決闘の事や先程の事も少しは納得出来る…それに、貴方達の瞳は嘘を言っていない。」
取り合えず納得したようだ…普通なら、頭が可笑しいとか嘘だと思われるだろうが
良かった、と安心するジーニアス…しかし、まだタバサは腑に落ちないといった顔をしていた
「でも…何故別世界同士の貴方達が交流を持っている?」
「ああ、それは…説明すると長くなるから簡単に言うと、もう一つ別の世界の人間に呼ばれたんだ。」
「滅茶苦茶になる世界を救って欲しいってね…その時にクラースさんや色んな人達と出会ったんだ。」
そう、自分達の旅が物語となって語り継がれる世界に
物語を歪める者達と戦い、その戦いの裏にあった真実…
そして、かつてその世界を震撼させた魔王との戦い…
「まあ、それは今度ゆっくり話そう…それでジーニアス、プレセア、君達も誰かに召喚されてこの世界に来たのか?」
この世界に来る方法がサモン・サーヴァントによるものだと思ったクラースは、二人もこの世界のメイジに呼ばれたのだと思った
しかし、クラースの質問にジーニアスは首を横に振る
「ううん、違うよ。僕達はエミ…えっと、ある人に頼まれて魔族の動向を探っていたんだ。」
「魔族?」
ジーニアスは頷くと、今度はこれまでの自分達の出来事を話し始めた
世界を巡る戦いの後、二人は仲間達と共に元の世界での旅を終わらせ、新たな旅路へと進んでいた
その旅路の中でも様々な問題が起こり、その一つが魔界にいる魔族達の侵攻だった
一度は食い止める事が出来たのだが、それでも諦めない魔族達は侵攻を画策していた
それを察知したある人物に依頼され、魔族の侵攻を防ごうと動いていた矢先…
「僕とプレセアが指定された場所に調査に行ったら、突然光に包まれたんだ…そして、気付いたら…。」
「この世界にやってきた…というわけだな。」
代わりに答えたクラースの言葉に頷くジーニアス…続いてプレセアが口を開いた
「途方に暮れていた私達を助けてくれたのが、アイーシャさんでした…彼女は此処に来た時に負った傷を癒し、食べ物も分けてくれました。」
「あの人は命の恩人だから、翼人達の手助けをしようと思ったんだ…それで、何度か村の人達と対立したりして…。」
「私とも…戦った。」
今度はタバサが答えると、ジーニアスは申し訳なさそうに彼女を見る
「ごめんね、手加減はしてたんだけど…随分君に酷い事しちゃったね。」
「構わない、貴方達は貴方達が正しいと思った事をしただけだから。」
そう言いつつも、タバサは内心悔しかった
あれだけの力量を見せながらも、彼等はまだ本気ではなかったというのだ
今回は運が良かったが、次もこうなるとは限らない
「(世界は広い…もっと強くなりたい…。)」
心の中でそう誓うタバサ…自然と、持っている杖を強く握った
「まあ、でも話し合いにもっていけたんだから良かったよ…成功しない可能性もあるけど。」
「ジーニアス、あまり後ろ向きに考えるのは止めましょう…これが失敗したら、アイーシャさん達は…。」
「う、うん…そうだね、何とかしなくちゃいけないよね。」
プレセアの言葉にそう答え、ジーニアスはしっかりと前を向く
「そうです、その調子です…それに、村には翼人達の事を理解してくれる人もいます。」
「ほぅ、そうなのか…それなら、話し合いも上手くいくかもしれないな。」
とはいえ、先程あんな事があったばかりだ…確実とはいえないだろう
今後の展開に不安を覚えつつも、クラースもまた村へ向かって歩き出した
『戦友との再会』
クラース「しかし、まさか此処で君達と再会できるとはな…何年ぶりだろうか。」
ジーニアス「時間の進みが同じか解らないけど…あれから3年くらいは経ってるかな。」
クラース「3年か、私と同じだな…通りで、二人とも背が伸びているわけだ。」
ジーニアス「へへっ、これでもあの頃より10センチくらい背が伸びたんだよ。」
クラース「それに、プレセアも…あの頃より雰囲気が変わったな。」
プレセア「はい…皆さんからは明るくなったと言われています。」
クラース「そうか…こんな私だが、家庭を持った…変わっていくのだな、皆…。」
ジーニアス「クラースさん、結婚したんだ…おめでとう。」
プレセア「おめでとうございます…もし、よろしければ何かお祝いの品を作りますが。」
クラース「いや、気持ちだけ受け取っておくよ…それよりもまず、目先の問題を解決しないとな。」
プレセア「そうですね、アイーシャさん達の為にも…頑張りましょう。」
『この世界のエルフとハーフエルフ』
ジーニアス「ねぇ、クラースさん…この世界にもエルフがいるんだよね?」
クラース「ああ、東の砂漠…聖地と呼ばれる場所を巡って、ハルケギニアの人々と対立しているらしい。」
ジーニアス「そうらしいよね…今回の事といい、異種族同士が対立するのは何処の世界も同じだね。」
クラース「自分達とは違う存在に恐れを抱くのは、ヒトの潜在意識なのかもしれないな。」
クラース「それよりジーニアス、君は大丈夫なのか?君は…。」
ジーニアス「うん、大丈夫…こんな容姿だから、僕の素性がばれるって事はないと思うよ。」
ジーニアス「それよりも…この世界にも、ハーフエルフっているのかなぁ?」
クラース「どうだろうな、対立しているわけだから…いたとしても、どうしているか…。」
ジーニアス「もし、この世界にもハーフエルフがいて、困っていたら…手助けしてあげたいな。」
プレセア「ジーニアス、私達は私達の世界があります…だから、何時かは帰らないと…。」
ジーニアス「解ってるよ…けど、この世界も僕達の世界みたいに…ミトスのような子が生まれる世界にはなって欲しくないんだ。」
プレセア「ジーニアス……。」
『レッツ・コミュニケーション』
ジーニアス「えっと、タバサ…だよね、僕達は…。」
タバサ「ジーニアス・セイジとプレセア・コンバティール…さっき彼が言っていた。」
ジーニアス「う、うん、そう…さっきは本当にごめんね、怪我させちゃって…。」
タバサ「それはもう気にしてない…貴方達は貴方達の最善をつくしたのだから…早く村に行く。」
ジーニアス「う、うん………うーん、中々会話が続かないなぁ。」
プレセア「ジーニアス…大丈夫です、貴方の言いたい事は彼女に伝わっている筈です。」
ジーニアス「プレセア…ありがとう、僕達も急がないとね。」
プレセア「はい………それにしても、あの子は…自分の心に鍵を掛けている。」
プレセア「それは、悲しい事なのに…どうして?」
『一応、世界認定の武器です』
タバサ「貴方の杖…変った形をしている。」
ジーニアス「これ?違うよ、これは杖じゃなくて剣玉っていって、僕達の世界の玩具なんだ。」
タバサ「…玩具?」
ジーニアス「そう、こうやってカン、カン、カンって…こんな具合に遊ぶんだ。」
タバサ「何故…玩具を武器に?」
ジーニアス「これだと、精神集中しやすいからかな…後、この玉で敵を攻撃したりするし。」
タバサ「玩具…私は玩具に負けた……。」
ジーニアス「え、えっと…大丈夫、タバサ?」
プレセア「精神的ダメージを受けたようです…やはりその武器で戦うジーニアスは凄いですね。」
ジーニアス「…ごめん、褒められても嬉しくないよ、この場合。」
『遅れて登場がヒーローのお約束?』
クラース「しかし、すまなかったな皆…私がもう少し早く来ていれば、戦わずにすんだのだが。」
タバサ「すんでしまった事をとやかく言っても仕方ない…だけど、何故遅くなった?」
クラース「いやぁ、それが…風が思ったより強くてな、遠くの方に吹き飛ばされたんだ。」
クラース「何とか着地は出来たんだが、場所が悪くてな…鳥達の巣だった。」
クラース「卵泥棒と勘違いされて、散々追い回されて…やっと逃げきれた時にあの場所へ到着したというわけだ。」
タバサ・ジーニアス・プレセア「………。」
クラース「な、何だ君達その目は…あの鳥達の嘴から逃げるのは大変だったんだぞ。」
ジーニアス「…いこうか。」
プレセア「そうですね。」
タバサ「………。」
クラース「お、おい、ちょっと待て。この歳でそんな反応されると辛いんだぞ…おーい。」
しえーん ふりふーり もんがもんがー
片道三十分かけて、クラース達はエギンハイム村へと到着した
話し合いはサムの家…つまり、村長の屋敷で行われる事になり、主だった面子がその場に席を置いた
頼んでいた騎士が来た事、村で噂になっていた少年少女が来た事で多くの村人が村長の屋敷へ集まった
「はぁ、はぁ…成る程、そういうわけですか。」
奥の席に座る村長が困った顔をしながら相槌をうつ…今、全員に大まかな説明を行った所だ
とりあえず、二人はクラースの知り合いであり、腕利きのメイジと戦士であると説明した
そして、今回の件にはクラースとタバサは関与していない事も理解して貰えた
「翼人達は今子育ての時期で、その為にあの辺で巣を作っているんだ…だから、今動くわけにはいかないんだ。」
「へっ、そんなの知ったこっちゃねえな。」
ジーニアスが翼人達の言い分を伝えるが、早々にサムが突っ返す
「お前達は奴等の生活の為に俺達が飢え死にしても良いって言ってるもんだぜ…んなの納得出来るか。」
そうだそうだ、と周りの男達が口々にそう叫ぶ
ムッとなるジーニアスだが、プレセアがそれを制して代わりに話を続ける
「この辺りは森林の密集地帯です…別に翼人達の住む辺りではなくても、売買や加工に使える木は他にもあるのではないですか?」
「素人に何が解る…そこんじゃそこらの安物の木なんかで俺達が生活出来ると思ってんのか?」
「解ります…私、きこりですから。」
そう答えるプレセア…サムも、後ろにいる男達も顔をきょとんとさせた
しかし、次の瞬間にサム達は大声で笑い出した
「お嬢ちゃん、馬鹿言っちゃいけねぇ…お前みたいな細い腕できこりだって?」
サムはそう言って立ち上がると、近くに立てかけてあるプレセアの斧を手に持った
「どうせ、この斧だってマジックアイテムか何かだろ?だから…うおっ!?」
片手で持ち上げようとしたサムだったが、重さから滑り落としてしまった
持ち上げようとするが、重くて持ち上がらない
「どうしたんだよ、サム?」
「な、何だこれ…重くて持ち上がらねぇ。」
両手を使ってでも持ち上げようとするが、完全に持ち上げる事は出来なかった
サムが四苦八苦していると、見かねたプレセアが斧を持ち上げる
「片手で持つと危ないですよ…これ、すごく重いですから。」
そう言って片手で持つと、元の場所へと立てかけた
サムは呆然とそれを眺めていたから、しばらくして憤慨しながら口を開いた
「と、兎に角だ…あそこの木を売らにゃ、俺達は生活出来ねぇんだ、これだけは譲れねぇ。」
そう言い放つと、サムは元の自分の席へと戻り、ドカッと音を立てながら座る
話し合いは難航しそうだ…クラースは辺りを見回してみる
隣に座っているタバサは、何時もの無表情な顔で話し合いの流れを見つめている
他にも見回していると、ジーニアスが辺りを見回している事に気付いた…誰かを探しているようだ
「ん…お前、何してる?」
「えっ…あっ、ううん、何でもないよ。」
その姿をサムに咎められ、ジーニアスは適当に答えるとそれ以上誰かを探すのを止めた
そして、話し合いはその後も続いていき……
………
「結局…駄目だったね。」
森への入り口付近で、何時間にも渡って続けられた話し合いの結果を、ジーニアスが告げる
あれから何度も説得しようと頑張った二人だったが、サムを中心とした村人達は首を縦に振らなかった
あの場所を立ち去るか、戦うか…その二択しか許されなかったのだ
「すまんな、二人とも…折角話し合いが出来たというのに…。」
本当なら味方したかったクラースだが、立場上それは許されなかった
出来たのは話し合いの纏めと、森へ帰る彼等の見送りだけだった
「残念ですが、こうなってしまっては仕方ありません…村の人達の総意はアイーシャさんに伝えます。」
「そうなると…やはり、翼人達や君達と戦う事になるのか?」
「それは……。」
プレセアが答えようとした時、横から投げられた何かが彼女の頭に当たった
当たったそれによって、彼女の頭は赤く彩られた
「プレセア!?」
ジーニアスが驚き、プレセアは当たった何かを触ってみる…それはトマトだった
三人が投げられた方向を見ると、そこには幼い男の子と女の子の姿があった
「この野郎…よくも父ちゃんに怪我させやがったな!!」
「お、お兄ちゃん…止めようよ。」
男の子は手に持ったトマトを握り締め、女の子が止めようと腕を押さえている
この幼い兄妹は、今朝の翼人討伐に参加した男達の家族らしい
「ちょっと、プレセアに何するんだよ!!」
子ども達に向かって怒ろうとするジーニアス…だが、それをプレセアは止めた
彼女はジッと二人を見つめた後、ゆっくりと彼等に向かって歩き出す
「な、何だよ…く、来るなよ!?」
男の子は声を震わせながらそう言うが、プレセアは何も答えずに近づいていく
表情に感情の色が見えない彼女に、男の子は怖くなって持っているトマトを再び投げつけた
投げられたトマトはプレセアの顔に向かっていくが、ぶつかる直前にそれは捉えられた
「ひっ!?」
恐怖のあまり腰が抜けてしまった男の子は、その場へ尻餅をつく
女の子も怖がって彼にしがみつく…そんな二人にプレセアは…
「………食べ物を、粗末にしてはいけません。」
優しくそう言うと、プレセアは投げられたトマトを男の子に差し出す
「……えっ?」
何かされると思った男の子は驚き…戸惑いながら彼女の顔を見た
そこには、彼女の真剣な眼差しがあった…不思議と、怖いとは思わなかった
「………。」
呆然とそれを見ていた男の子だったが、我にかえると差し出されたトマトを取る
そして、怯えている妹の手を引っ張ってその場から立ち去っていった
「プレセア…大丈夫?」
彼等の姿が見えなくなった後、ジーニアスが心配しながら駆け寄る
はい…と答えると、持っているハンカチで汚れた顔を拭く
「…あれで良かったのか?」
「はい…理由がどうあれ、私達があの子達の親を傷つけたのは事実ですから。」
クラースにそう答えると、拭ったハンカチを見つめる…真っ白だったハンカチはトマトのせいで赤くなっている
「それにしても…。」
「ん?」
「今の場合…ロイドさんだと大ダメージだったでしょうね。」
プレセアのその言葉にぽかんとなるクラースとジーニアス…しばらくして、苦笑を漏らした
これが彼女なりの気の紛らわせ方なのだ…先程の事と、これから起こる事への
「では、戻りましょう…ジーニアス。」
「うん、そうだね…クラースさん、また…。」
二人はクラースに別れを告げ、翼人達のいる森の奥へと去っていった
それを見送るクラース…彼等が去った後、後ろを振り返った
「………。」
何時からいたのか、タバサが立っていた…ジッと此方を見ている
そんな彼女に何も答えず、クラースはゆっくりと彼女に向かって歩き出す
「…結局、話し合いは失敗した。近い内に翼人達やあの二人と戦わなければならなくなる。」
「そうだな…そうなるかどうかは、二人の報告を聞いた彼等の動き次第だが。」
クラースは帽子を深く被りながら答えると、彼女の横を通り過ぎる
「そうなったら…貴方は戦える?」
「…さあ、どうだろうな。」
タバサの問いにはぐらかしながら答えると、彼は一足先に村長の屋敷に戻っていった
そんな彼を見ていると、近くの物陰から一人の男が現れた…サムである
「騎士様…あなたのご友人だが、本当に当てになるんですかい?」
サムがタバサを疑う事はもう無かったが、クラースへの疑いは晴れてなかった
あの二人と知り合いであるという事実は変わらないから…最悪、裏切る可能性だってある
「解らない…彼が戦うのか、戦わないのか…私達を裏切るのか。」
クラースの事をよく知らないタバサは率直な意見を返す…そんな、とサムは文句を言おうとした
でも…と、サムの文句を遮ってタバサは話を続ける
「彼はきっと…やる時にはやる。」
彼は戦士だから…そう言って、タバサもまた村長の屋敷へ向かって歩き出した
その意味が解らないサムは、呆然と彼女の後姿を見るしか出来なかった
支援
いやあ、バルバトスじゃなくてよかったw
その後…何も起こる事なく、夜がやってきた
タバサとクラースは夕食を終えると、それぞれの部屋へと入っていった
そして、今は……
「………。」
タバサの部屋…彼女は寝巻きに既に着替え、ベッドの上に寝転がっていた
手には持ってきていた本があり、ペラペラと捲って読んでいる
「………。」
その隣の椅子にはクラースが座り、同じように自分の魔術書に目を通していた
今後の翼人への対策を話し合うというわけで此処にいるのだが、まだ話を始めていない
タバサがページを捲り、クラースもページを捲る…そんな事がしばらく続いた
「………もし、彼らと戦う事になったら。」
何度かページを捲った後、タバサが口を開いた
彼女の言葉にクラースは手をとめると、横目で彼女を見る
「勝算は…どの程度ある?」
「そうだな………森の中で戦うとしたら、勝算はまずないといった所だな。」
戦う相手が翼人達とジーニアス・プレセアと考えての、クラースの意見だった
プレセアの斧とジーニアスの魔術は、前衛のいないこちら側にとっては恐ろしく脅威だ
更に先住の魔法を使える翼人達…地の利を生かす彼等の戦法も加われば、攻めれば確実に負ける
「此方にも前衛となる者が二人ぐらいいれば何とかなるだろうが…残念ながら、この村の男衆ではその役は酷だ。」
「そう…貴方の魔法、風の精霊なら何とか出来ない?」
「シルフか…セフィーを前衛、ユーティスを中衛にして、フィアレスが私達を守る盾とすれば…。」
クラースは今の立場を理解している…その上で、彼等と戦う場合を想定して作戦を考える
やはり、彼は戦士だ…タバサは彼の作戦を聞きながら、そう思った
そんな時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた
「ん、誰だ?」
「あ、その…失礼します。」
ドアが開き、外から一人の青年が入ってくる…サムの弟のヨシアだった
ヨシアはおどおどしながらも、二人の下へ歩み寄っていく
「は、始めまして、自分はヨシアと言います…兄のサムを助けて頂き、ありがとうございます。」
深々と頭を下げるヨシア…すぐに顔を上げると、彼は話を続けた
「本当なら、俺も話し合いに参加したかったんですが…邪魔だからと兄に参加させて貰えなくて。」
そこまで言うと、彼は顔を俯かせた…悔しそうな表情を二人に見せる
「兄さんも、皆も馬鹿だよ…折角分かり合える機会があったのに、それを不意にして。」
そう呟きながら、ギュッと拳を握り締める…その様子に、クラースは今朝の事を思い出した
「(そう言えば、プレセアは村人にも理解者がいると言っていた…もしや、彼が…。)」
「それで…貴方は何の用で此処に?」
考えるクラースに対し、タバサは手っ取り早く此処に来た用件を尋ねる
「え、えっと、その…貴族の方にこんなお願いをするのは失礼だと解っていますが…。」
「翼人討伐を止めて欲しい、だろ。長々と前振りを言わなくても良いから、はっきり言ったらどうだ?」
クラースがあっさりと代弁し、それに驚いた様子でヨシアは彼を見る
「どうして、それを……。」
「君だろ、翼人を理解している村人というのは…プレセアが君の事を言っていたからな。」
「あの子が…そう言えば、貴方様はあの子達と知り合いだそうですね。」
その口調だと、彼もあの二人と親しいようだ…続けざまに、クラースは彼に質問する
「この村の住人は翼人達を憎んでいると思っていたが…君は何故彼等と親しいんだ?」
「そ、それは……。」
クラースの問いに、ヨシアは戸惑う…どこと無く、顔を赤らめている
何故彼がそんな顔をするのか…何となく理由が解った
「まさか、君は翼人と…。」
その理由を言おうとしたその時、窓の方に人の気配を感じ取った
全員が窓を見ると、窓の外に人影があった…それは…
「アイーシャ!?」
ヨシアが彼女の名前を叫ぶ…ジーニアスとプレセアが親しくしていたあの翼人だった
反射的にタバサは杖を掴むが、クラースが手を出して彼女を静止する
「待て、タバサ…恋人同士の会合を邪魔するのは無粋なもんだ。」
「…恋人?」
その間にヨシアは窓を開け、アイーシャの手を取った
彼女を中に招き入れると、ヨシアは不安そうに此方を見る
「さて…どういう事なのか改めて説明してもらおうか。」
クラースの言葉に安堵すると、ヨシアは説明を二人にはじめた
「成る程…そういう事か。」
数分後、ヨシアとアイーシャから事情を聞き、クラースは頷く
彼の読み通り、二人は恋仲だった…以前、森で怪我をしたヨシアをアイーシャが助けた事がきっかけらしい
説明をする間、二人は仲睦まじく寄り添っている
「あの子達とはそんな時に出会いました…二人で森の中を歩いている時に、僕が倒れている二人を見つけて…。」
「私が彼等の手当てをしました…彼等とも仲良くなって、このブローチを頂きました。」
そう言って二人は、つけているブローチをクラースに見せる
確かトンガリマダラトビネズミとかのブローチだな…と以前彼女が作っていたのを思い出す
ヨシアのはペンダントになっている…ペアルックとして作ったらしい
「はいはい、解った解った…つまりは、愛する人の為に討伐を止めて欲しいってわけだな。」
「そ、それだけじゃないですよ…俺は翼人達と協力すれば、もっと良い暮らしが出来るようになるって思ったからなんです。」
ひやかし口調のクラースに対し、ヨシアは顔を赤らめながら答える
ほぅ、と呟くとクラースは話を進めるよう促すと、彼は自分の思いを語り始める
「村の皆は翼人達の事を嫌っているし、翼人達も俺達の事を馬鹿にしているって事はアイーシャから話は聞いています。」
「ヨシア……。」
「でも、俺は彼女と会って…色々と知らない事を教えて貰って気付いたんです。分かり合えば…お互い協力すれば得る物は多いんだって事を。」
力強く発言するヨシア…その表情はとても活き活きとしたものだった
そうか、とクラースは彼から話を聞き終えて今度はタバサを見る
「と言うわけで、討伐を止めて欲しいそうだが…その案は通るのか、タバサ?」
クラースが尋ねると、タバサは口に出さずに首を横に振るだけだった
「ど、どうしてですか!?」
「そりゃあ、彼女は村人からの依頼を受けて来たわけだからな…村の総意でなければ、討伐を止めるわけにはいかんさ。」
勝手に止めれば任務放棄とみなされ、最悪処刑される…その事はクラースにも解っていた
そんな、と俯くヨシア…アイーシャは両手を握って俯いている
「…その様子だと、それを一番解っているのは彼女のようだな。」
「えっ、どういう…事ですか?」
「よく考えてみろ…何故彼女が危険を犯してまで此処へ来たのかを。」
もし、他の村人に見つかれば命がないというのに…それでも彼女は此処へ来た
ヨシアはアイーシャを見つめる…重苦しい空気の中、彼女は口を開いた
「ヨシア…今日はね、お別れを言いに来たの。一族で話し合ってあそこから立ち去る事にしたから。」
「そんな…どうして!?君達は子育ての時期だというのに…それはどうするんだい?」
「争うくらいなら、増えない方が良いって…精霊の力を、争い事には使いたくないから。」
涙ぐみながらアイーシャは答え、ヨシアは呆然となった
だが、すぐに我に返ると、タバサに向かって膝をついた
「お願いです騎士様、どうかお引取りを…俺が村の皆を説得してみせますから。」
必死になって頭を下げるヨシア…それでも、タバサは首を縦に振らなかった
ヨシア…と彼の名を呟きながら、アイーシャは彼に寄りそう
「(このままいけば、私達が翼人達や二人と戦う必要はなくなる…しかし、それではこの二人が…。)」
そんな彼等を見つめながら、クラースは考える…考えて……
「………ヨシア君、と言ったな。君は真剣に彼女の事を愛しているか?」
その後にクラースはヨシアにそう尋ねる…頭を上げた彼は疑問を浮かべている
「えっ、それはどういう……。」
「良いから、質問に答えるんだ…それとも、君は彼女の事を愛していないのか?」
「そ、そんな事ないです…俺は彼女を、アイーシャの事を愛しています!!」
クラースの言葉に真剣に、拳を握り締めながらヨシアは答える
それを聞くと、今度はアイーシャに尋ねる
「それで…アイーシャ、君はヨシアの事を愛しているのか?」
「それは……はい、私も彼を愛しています。ずっと一緒に居たいと…。」
本当は別れたくない…アイーシャもまた落ち着いて、しかしヨシアと同じく真剣に答えた
「なら、思考を回転させろ…一緒にいられるよう、私達が翼人討伐をしない方法を考えれば良い。」
彼等の答えを聞き、かつての師の口癖を言いながら二人にそう告げる
二人が戸惑いながら顔を見合わせていると、タバサがあっ…と声を漏らす
「どうやら、タバサは思いついたようだな…タバサ、君の答えはどう出た?」
それを聞き逃さなかったクラースが、タバサに尋ねる
二人も見守る中、タバサは自分が思いついた案を答えた
支援
「人間と翼人が協力する必要性を村の皆に見せる…ですって!?」
それが、クラースの言葉をヒントに出したタバサの答えだった
ヨシアとアイーシャは、その答えに目を丸くさせる
「そうだ、翼人が村人達の脅威でないと解れば討伐は中止…彼女も咎められる事はないというわけだ。」
「そ、そんな事が可能なんですか。」
「それ以外に討伐の依頼を白紙にする方法はない…君には何か考えはあるのか?」
クラースの言葉にヨシアは考え…結局思い浮かばず、顔を横に振る
「で、ですけど…必要性を見せるってどうやって…。」
「そうだな…それはシルフに頼んでみるか。」
「シルフ?シルフって一体…。」
ヨシアの質問に答えず、クラースは召喚術を唱え始めた
詠唱が完了すると、彼等の前にシルフ…セフィーが姿を現した
『お呼びですか、マスター?』
「シルフ…すまないのだが、君に頼みたい事があってな。実は…。」
初めて見る召喚術に二人が驚く中、クラースは彼女に用件を伝える
「………という訳で、彼等の為に一役買ってくれないか?」
『そうですか…解りました、二つの種族の共存の為なら喜んで協力しましょう。』
事情を聞き、それに了承するとシルフは二人の方を見る
戸惑っている二人に向かって優しく微笑むと、彼女は姿を消した
「良いか、二人とも…明日の朝、シルフが村の中で暴れる。それをタバサと私が止めようとする。」
「けど、私達は負ける…そこへ、貴方達が出て風の精霊の怒りを静める…。」
クラースとタバサが、明日の芝居についての大きな流れを説明する
「まあ、こんな感じでいこう…アイーシャもそういう事でプレセア達や仲間達に話を通してくれ。」
「は、はい。」
こうして、どんどんと明日の計画が出来上がっていく
しかし、そんな中でヨシアは不安そうな表情をしている
「でも…上手くいくのでしょうか?」
「上手くいくもいかないも、必ず成功させなければいかん…でなければ、このまま何も変わらないぞ。」
「ですが……。」
不安を口にするヨシア…クラースがそう答えても、彼の顔は曇ったままだった
「……勇気は夢を叶える魔法。」
「えっ…。」
そんな時、タバサが口を開いた…何時もと違う、はっきりとした声で
その言葉にヨシアだけでなく、アイーシャとクラースも彼女へ視線を向ける
「昔、私の命の恩人が教えてくれた言葉…貴方が持つ勇気という魔法で、夢を叶えれば良い。」
翼人達との共存、彼女との未来を…タバサはヨシアを見つめる
その言葉と眼差しを受けて、ヨシアは顔を下に向けるが…やがて、顔を上げる
「解りました…騎士様、クラース様、アイーシャ…俺、やってみせます。」
もう迷わない…ヨシアは此処で決意を固めた。それをアイーシャは笑顔で受け入れる
こうして明日の流れが決まり、この場での話し合いはお開きとなった
アイーシャは森へ、ヨシアは自分の部屋へと帰り、クラースとタバサが残る
「これであの二人や翼人達と戦わなくてもよくなるわけだ…良かったな、タバサ。」
クラースの言葉に、タバサがジッと見つめてくる
それは、貴方が一番嬉しい筈…と語っており、クラースは軽く咳払いする
「まぁ、その…それにしても、勇気は夢を叶える魔法か…良い言葉じゃないか。」
視線を逸らせる為に言ったのだが、クラースの言葉にタバサは頷いた
そして、彼女はこの言葉を教えてくれたあの人の事を思い浮かべる
赤い髪に、眼鏡を掛けたあの人…今どうしてるだろうか、と
「…では、私もそろそろ寝るとするか。」
そしてクラースもまた部屋を出ようと、ドアの取っ手に手を伸ばした
「ん、待てよ…タバサ、私達は何か忘れてないか?」
部屋を出る前に、今日此処に着てからの一日を振り返って、クラースはその疑問を口にする
何か…何か大切なようなそうじゃないような事を、忘れている気がしたのだ
「別に…私達には忘れるような事は何も無いはず。」
「そうか…私の気のせいか。すまない、忘れてくれ。」
タバサの言葉にそう言うと、おやすみと言ってクラースは自分の部屋へと戻っていった
しばらくしてタバサも本を閉じると、明かりを消してベッドに横になり、そのまま深い眠りについた
その夜、森の中に潜む一つの集団があった
兜にジャケットという簡易的な装備をしたこの集団は、武器を手に持っている
「おい、もう一度資料を見せろ。」
そんな集団の中で、一人の男が部下に指示を出す
指示を受けた部下は、持っている資料を渡した
「ふむ、エギンハイム村…人口は二百人ほどか、中々の数だな。」
「素材としては多いにこした事はありません…何せ、失敗する事が多いので。」
「そうだな…どうも、此処の人間どもとでは愛称が悪いらしい。」
男は自身の手の甲を見つめる…そこには赤い宝石が埋め込まれていた
「しかし、成功すれば良質なものが出来るからな…もっと人間どもを集めなければ。」
そう言うと、彼はもう片方の手で包み込み、握り締める
しばらく目を瞑り…その目を再び開けて、部下に指示を出した
「よし、現状のまま待機、明朝に作戦を開始する…抵抗する者以外はなるべく殺すな。」
「了解…所でリーダー、あの村の近くには翼人と呼ばれる亜人が住み着いていますが…。」
「亜人か…今の我等の人数では狩れんな、放っておけば良いだろう。」
奴等が向かってこなければ…そう言うと、部下の男は引き下がった
リーダーと呼ばれた男は腰につけている鞭を取ると、その手入れを始めた
その途中で、彼は森の奥を見つめる…その視線の先には、エギンハイム村があった
…………
はい、これで今回の分は終了です
パソコンは何とか借りたので、投稿続行は出来そうです…時間は掛かりますけど
今回登場したのはテイルズオブシンフォニアのジーニアス・プレセア組です
前衛・後衛の組み合わせで、タバサを苦しめました
彼等はなりきりダンジョン3でクラースと競演し、面識があります
また、その時のメンバーはその事を覚えているという設定にしています
クラースが想像したあの男も勿論出てきますが、登場はもう少し先です
そして次回は物語の後半、クラース達の作戦に反し予想外の展開になります
謎の男達の襲撃、その目的は…それは、次回を楽しみにしていてください
では、また
追記
色々あって投稿時間が長くなった事をお詫びします…さるさんも受けちゃったし
投下乙
「エルフ!?」
「天使!?」
この両者が穏やかに接触できて何よりだw
皆さん乙っした
ふと今日の仕事中に考えちゃったこと
脳波コントロールするロボットなどを所持した奴が召喚されて
当人が既に兵器の域にまで改造された人間がガンダールヴになった場合
ガンダールヴ効果によって操作系がオーバーフローしたりして
かえって満足に扱えない、暴走気味なんてーハンデを背負ったら面白そうだなぁ、と
まぁガンダールヴは武器や兵器の情報(過去?)を読み取って最適な扱いを学ぶようだから感情の揺れ幅によって出力変動はともかく
反応限界突破的な自体はなさそうとは思うんだけど
それに該当するキャラが鉄仮面(F91)しか思い浮かばなかったし
ラフレシアじゃ重力下で使えんw
>>264 ゼロ魔で言う『精神力』はマジックポイントみたいなもんで、『意志の強さ』って意味じゃないぞ……。
なんか一輝兄さんの事がよく話題にあがってるが・・・
ルイズの方が一輝より年上なんだよな・・・・
一輝がタバサと同い年とはどうしても思えないw
聖闘士星矢の年齢詐欺っぷりは異常w
現在22歳だがアルデバランが年下だなんて絶対納得できんwww
シオン「ふははは、ハーデスの力によって18歳の肉体でよみがえったのだー」
あの外見で18……だと……?
>>297 原作であれなのに、アニメは声が堀秀行さんで更に体感年齢が上がるしな。
セイントって百歳(猛虎、シオン)と20代半ば以下ばかりという
かなり歪んだ年齢分布なんだっけ。
聖闘士の年齢分布は
青銅…十代
黄金…二十代
白銀…オッサン分を一手に担っております
老師は261歳だけど18のころから心臓を一年で10万回しか動かしてなかったから
ほぼ18歳の頃の肉体が復活した
アレはいまだに納得できない
一年で10万回って医学的に考えると有り得ないんだよな。
心拍数がどうであれ細胞の動きに大した差はないわけで。
鉄腕バーディかー。
ルイズに召喚させたらどうなるのかね。つとむとセットか、ルイズと合体させるか
さすがに漫画を医学的に考えたら負けだと思うが、
いつも座ってばっかのジジイがいきなり18歳になるとかリアルタイムで読んでた子供はどう思ったんだろうか
失礼。プリキュアスレとごっちゃになってた
リアルタイムだったけど、老師が若返った時は、ただ凄いとしか思わなかった。
車田・ゆで・男塾に常識は通じませんよ
規制とけた、やった!
というわけで何も無ければ48分から二話投下します
決闘からしばらくして、虚無の休日を迎えたのでルイズは買い物に向かった。
目的は本である。
別にタバサの様な本の虫ではなく、コルベールの様な学者であるからではない。
単に、とある位の高い貴族の女性(男性という説がある)が付けた日記の小説が現在貴族間で人気を呼んでおり、ルイズもファンの内一人というだけである。
何処ぞの自堕落なものとは違いその内容は丁寧で、貴族として理想的な生活が書かれているものだ。 水の秘薬を買う機会が無かったのでお金に余裕がある。
本を買った後は、普通に学院に戻った。
とある店のとあるインテリジェンスソードが店の主人といつもの会話をしていたが、ルイズには全く関係無い。
学院に戻ったルイズが目にしたのは、なんとギーシュを含む生徒達が少年達と遊んでいる姿。
それも、あの凶器としか思えない球でだ。
あの球が直撃すれば、当たり所が悪ければ死んでもおかしくないのにその根性は見上げたものである。
しかしルイズが一番驚いたのは、生徒達に混じってなんとタバサが居た。
更に見ればルイズにとってはにっくきツェルプストー、キュルケにいつもなら自分の部屋に引きこもるコルベールも居た。
一体何があったのかしら、とルイズは首を傾げた。
それにしても楽しそうである。
ルイズには友達と呼べる人物が居ない。
かろうじて、トリスティンのアンリエッタ王女とは幼少頃の遊び相手だっただけ。
学院内には、友達なんて居ない。
だから少しだけ羨ましかった。
ふと、少年達のリーダー(ではなく、キャプテンらしい)の円堂が声をかけてきた。
サッカーやろうぜ、とまぁ彼の後々の活躍を知る者であればトラウマの様な恐怖を抱えてしまってもおかしくない台詞だった。
ルイズには一緒にやりたい、という気持ちが多分にあったが何せツンデレである。 いやツンデレでなくても素直ではない。
彼女はやらないわ、と言った。 内心後悔しつつも。
>>306 もっと早ければ聖闘士ゴッコで座ってるか天秤座の武具以外の役が出来たのにと思った中二の私
そんな彼女に追い討ちの様な救いの手を差しのべたのはなんとキュルケだった。
「あらヴァリエールの娘がツェルプストーの私に背を向けるなんて、情けないわね」と。
勿論それで黙るルイズではない。
やってやろうじゃない! と声を張り上げてルイズは仲間になった。
「これは一体どんな魔法で?」
「魔法じゃなくて必殺技なんだけど」
「先住魔法が使える……?」
「必殺技、なんだけどね」
近くで聞いてみれば、コルベールとタバサは遊びつつもそんな事を言っていた。
この二人はあくまでも興味が大きいらしい。
何が必殺技よ、魔法じゃないと思いつつも、とりあえずギーシュを倒した事については評価して誉める事にした。
名前を知らないので、あんた、とマフラーの少年に声をかける。
「凄いじゃないの。 あんな簡単に杖を折れるだなんて」
触ってみて分かったがあの球は少し硬い。
硬い、が杖を真っ二つにするには足りず、弾力がある。
あの球で真っ二つにするには、どれほどの力を必要とするのだろうか。
相手は、女子が苦手なのかはたまたルイズが苦手なのか、少し苦笑いを浮かべた。
彼曰く、魔法なんて使っていない。 練習すれば誰にでも出来る事だよ、と。
そんな事を言われても、ルイズにはアレが魔法にしか思えない。
なのにほぼ全員が平民。
彼らの居たニホンでは、平民なのに魔法を使えるのかしらと、嫉妬しながら思った。
ルイズはふと思い出す。
そういえば私、全員の名前を知らないわと。
夕方になった頃、ルイズは全員を集めた。
改めて自分の名を名乗ると、全員の名を問う。
全員の名を知った後、円堂という少年が古びた紙を見せた。
確かに古いがルイズが今まで見たよりもずっと質の良い紙に、ペンに近いもので書かれた内容。
ちなみに、全く読めない。
ルイズにも、キュルケにもギーシュにもタバサにもコルベールですら読めない程に恐ろしく汚い字(たとえ綺麗に清書されていたところでルイズ達には読む事が出来なかったが)と、何かが飛び出している様なぐにゃぐにゃとした同じく汚い絵。
何処かで見た事がある。
これが何なのよ、と言うとどうやら本当はこれと似たような内容の書かれた紙が数枚あったらしい。
だが、此処に来て見てみればその紙しか無かったという。
念の為に探しに行ってみたが、無かったらしい。
「…………それについての報告は何もありませんね。 君達の大切な物で?」
「俺の爺ちゃんの必殺技ノートなんだ」
必殺技? とルイズとキュルケとギーシュは首を傾げる。
必殺技とはどういう物か、決闘の時の様な物かとコルベールが尋ねてみれば、あっさりと見せられたのが二つの技だった。
まずタバサのそれに比べればやや褪せて見える青い髪とキュルケより黒い肌、他の面々と違って服の裾を捲った少女、一ノ瀬リカ(即座に否定が入った)と、赤みのある桃色の髪に帽子を被った快活そうな少女、父がソウリダイジンだと言った塔子の技。
二人はボールを蹴り上げて、フライかレビテーションでも使ったのかと思う程に高く飛び上がると、手を繋いだ。
「バタフライドリーム!」
二人の背後には、幻にしては現実味がある、黒と黄、そして青の羽をした華麗なる蝶。 コルベールとタバサはやはり先住魔法かと疑った。
二人、全く同時に球――ボールを蹴る。
その勢いはまるで風を切るかの様だ。
ドット、いいえラインクラスの風系統だわ、とキュルケは思う。
ボールが向かう先には円堂。
力を入れて踏ん張る様に足を開く。
足元と彼から黄色のオーラの様なものが吹き出した。
光の様なものが飛び出すと彼の周りを軽く一周して、手の中に溶ける様に入る。
その手を開いて、高く高く突き上げた。
それと同時に、背後に現れたのは筋肉が隆々とした非常に逞しい上半身のみの男。
「マジン・ザ・ハンド!!」
二人同時に手を強く突き出す。
次の瞬間には、ボールが強く回転しながらも円堂の手の中に収まっていた。
もう片方の手で回転を止めると、これが必殺技だとにっかり笑った。
「先住魔法……では、ないんですよね……」
コルベールは驚きつつも言う。
先住魔法、にしては何かが違う。
しかし、もしかしたらコルベールの思う先住魔法と本来の先住魔法とは違うのかもしれなかった。
それに彼らの居た場所、つまりニホンでは魔法は魔法ではなく必殺技という名前なのかもしれない。
ボールが杖の代わりとなっている。 そう考えれば簡単だった。
コルベールの次に言葉を発したのは、意外にもタバサだった。
「その必殺技……治療は出来る?」
治療。 その言葉に僅かながら反応したのはルイズだった。
先住魔法だろうが必殺技だろうが、もしかしたらちぃ姉様の治療に役立てる事が出来るかもしれない。
今までヴァリエール家が様々な国から呼んだ水のメイジや秘薬を使っても治療出来なかった。
今まで見た事が無かった先住魔法や必殺技なら、もしかしたら、完治には至らずとも治療する事が出来るなら、是非ともルイズの実家に来てほしい。
しかし、彼らの誰もが言った。 治療は出来ないと。
もし治療が出来たなら、今はチームから離れている豪炎寺の妹もとっくに治っていたし、チームの内一人の一ノ瀬という少年はかつて事故でサッカーが二度と出来なくなる程の怪我をしたがその怪我も治っていた。
彼らの必殺技では治療が出来ない。
「そう……」
残念そうにタバサは言った。
もし出来たなら、誰かの治療を頼んだのだろうか。
そういえば私、この子の出自はよく知らないのよね、とキュルケは思う。
特に詮索しようとも思わないが、タバサだなんて名前はどう考えても偽名。 わざわざ偽名を使うという事は、やむを得ない事情があるということ。
その事情の中には、タバサはさる大貴族の当主が悪戯にメイドに生ませた子だという悪意の噂もある。
一度それ関係で過去に少し問題があったのだが、タバサは今も気にしていない。
治療したい誰かが、それに関係あるのかもしれない。
ルイズは肩を落とした。
ちぃ姉様を治療出来ると思ったのに、出来ないと言う。
父は適度に甘やかすが、母と上の姉はルイズに対して(その中に確かな愛情があったとはいえ)厳しい中、優しくしてくれるのが下の姉。
優しいちぃ姉様に何か恩返しがしたくてたまらないのである。
タバサとルイズの二人が、タバサは僅かに分かる程度とはいえ落ち込んだのを見て、円堂達は困った。
事情は知らないが、何かがあるのだろう。
「あ、あっ、そうだ!」
円堂がまるで苦し紛れであるかの様に叫ぶ。
「えっと、フットボールフロンティアの予選決勝で、俺がちょっと落ち込んでた時豪炎寺が!」
腹を思いっきりボールで蹴り飛ばした!
と、慰めにもならない事を言った。
そんな事ちぃ姉様に出来るわけが無いじゃない! とルイズは叫んだ。
――――――――
豊かに生い茂る森。
そこは、空を浮かぶアルビオン王国に存在する。
アルビオン王国、サウスゴータ地方、ウエストウッド村。
親を失った子供ばかりが居るその村の最年長である少女は、緊急時でもないのに、静かな夜一人拓いた場所に立って杖を握っていた。
輝く様な金髪に、薄緑のこの地方どころかアルビオンでも珍しい服装。
優しげな顔立ちと、何よりも目立つ正に革命的な胸。
とても美しい少女だった。 あと数年もすれば、更に美しくなるだろう。
少女は、それを誇るどころか気にすらしていない。
その容姿について、一般的価値観を持つ第三者に見られた事がほとんど無いのが大きい。
見たところで、少女のある部分を見れば誉める言葉を無くしてしまうのである。
ハルキゲニアでは見る事がまず無い尖った耳。
それはある種族の特徴。
そう、ハルキゲニアでは吸血鬼や翼人以上に恐れられる先住魔法の使い手、エルフの特徴なのだ。
正確には少女はハーフエルフなのだが、言ったところで誰も聞き入れはしないだろう。
少女、ティファニア・ウエストウッドはその日とある決意をしていた。
自分はハーフエルフ。 だから他の町や村には出られないし、自分の姿を見られては危険。
いつもは自分が唯一使える魔法でなんとか追い返していたのだが、先日現れた傭兵崩れらしき者達は徒党を組んでおり、もう少しティファニアが魔法を唱えるのが遅ければ一緒に居る子供達が危険だった。
ただでさえも長い呪文を、これ以上早く言う事は出来ない。
唱えている間、襲いかかる者を食い止める事が必要だった。
まさか子供達にそれをやらせる訳にもいかないし、唯一頼りになる女性は何処かへ出稼ぎをしている。 大変なのにわざわざ呼び出すわけにもいかない。
そこでティファニアがとった方法というのが、かつて父とその女性――マチルダ・オブ・サウスゴータから聞いた魔法だった。
サモン・サーヴァント。
ハーフエルフの自分が召喚するのだから出るかどうか分からないし、もしかしたら戦う力も無い小動物かもしれない。
それでも、子供達やマチルダに頼るよりずっとマシであると判断した。
そうして彼女が、わざわざ子供達が眠っている夜にたどたどしい呪文で呼び出したその使い魔。
オレンジ色のパーカーを着た少年だった。 足元には白と黒の、少し焦げたボールが転がる。
二人の視線が合って、まさか人間が出ると思わなかったティファニアが咄嗟に耳を手で隠しながら少年に名を尋ねる。
その少年は答えた。 豪炎寺 修也と。
これで良いのかな、マチ姉さん……とティファニアはすぐ傍にある将来を大変不安に思いながら思う。
――――――
ちょうどその頃。
たとえ血は繋がらなくてもティファニアにとっては姉の様に頼りにしている女性、オールド・オスマンの秘書でミス・ロングビル、本名マチルダ・オブ・サウスゴータは、最近トリスティンを賑わす『土くれ』のフーケとして働いていた。
狙いは勿論、トリスティン学院宝物庫に眠る宝。
秘書として働く以前に、何故か自分がフーケであると知っていた人物から、盗んで様に依頼された。
拒否しようとしたが、妹の様に可愛いティファニアの事を持ち出されては逆らえない。
それにしても何を考えているんだろうねぇ、あの依頼人は。 フーケは一人思う。
顔は知らないが、メイジだった。 その様子には依頼されて行動している様な節がある。
あの依頼人には更に依頼人が居るのだろう。
それも貴族か、それ以上の。
貴族には恨まれはしても感謝はされないだろう事をしてきた自覚がある。
なのに、何故わざわざ自分に依頼したのだろうか。
それに、何故盗む対象があんなものなのか。
一体何に使うというのか。
他にも凄いマジックアイテムはあるというのに。
依頼人は、大きな力を持つものだと言っていた。
どうしても気になる。
何故あんなものが必要なのか。
だが、どう考えてもアレはただの――……。
試してみるしか無いね、と思った。
学院関係者の誰かが使い方を知っているだろう。
まさか秘書の自分がフーケとは思うまい。
対象を盗んでから、フーケは思い出した。
「そうそう、忘れるところだったよ……」
いつもの、アレを。
――――――
翌日学院を騒がしくさせたのは、『土くれ』のフーケが宝物庫の物を盗んだ事だった。
盗まれた物を聞いて、ルイズはああ! と叫んだ。
「そうよ、何処かで見たと思ったのよ!」
宝物庫にはフーケが残したメッセージ。
『ロバ・アル・カリイレの紙をいただきました』
その紙というのは、昨日円堂達に見せられたあの紙にとてもよく似ていた。
――――――
投下終了!
とりあえず、全員に見せ場が欲しいです、ありがとうございました。
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イレブン乙!
力作ですな! 本当に先が楽しみな展開です。
>>320 わわ、ウルトラの人だ
ありがとうございます
最初の予定では一話の小ネタ、無理っぽいから二三話、でも今の段階ではもう少しかかりそうです……
頑張ります
ウルトラさんのって鳥バレしてたっけ?
本物と騙りの見分けつかねーよ……
さぁ、闇のゲームの始まりだ
来週ちゃんとしたトリップ持って来てくれるでしょ
本物さんは基本コテ付けたままレスするのは希でしょ
ましてエセは話数までつけてるし
>>324 日曜以外に来るのは十中八九偽物。
仮に本物ぽいと思ってもスルーしておいた方が良い。
テイルズの人乙
シリーズ全部やった訳じゃないからかもしれないけど、プレセアとまともに話せるジーニアスは新鮮だな
それにあの人も来てるのか
そして忘れられてるシルフィード涙目
あ、騙りなんですか……(´・ω・`)
本人は頑なに鳥変えようとしないし、日曜以外は荒らしと同視しても問題ないよな実際。
もちろん直接的には騙りの方に帰責すべき事柄だけど、ウルトラ氏が鳥変えれば済む問題と思うともにょる……。
自分は確かめてないけどなんか特撮系鳥で結果としてわかりやすいらしいじゃん
本人確認の証明の為にも鳥変えてほしいよなホント
コピペ連投荒らしで通報できんじゃね?
>>332 誰が言ったか知らんが特撮系じゃないぞ
ある意味もっとたち悪いローマ字だけ
>>331 頑なに変えようとしないって、鳥バレしてから本人が来てるの?
ところでもにょるって何?
なんか新食感の食べ物みたいな語感だね。
もょもとと関係があるのは確定的にあきらか
>>335 「お腹がモニョモニョする」の略
まあ微妙に納得行かないとか、そんなニュアンスだと思えばいいかと
もとは腐女子界隈の言葉だったと思うが
そうなんだ、ありがとう。
新食感では無かったか、むしろ食べたら食中毒にでもなりそうだな。
『犬夜叉』の殺生丸召喚。
天生牙を手に入れた後でないとルイズが殺されるかも。
『金剛番長』の金剛番長召喚。
どんな状況でも「知ったことかー!!」で解決。
>>327 稀っつーか、投稿以外でははコテ外すって本人が明言してる
>>331 頑なにも何も、今週の日曜に初めてトリ付けてから来てないじゃんw
明後日の投下時には別のトリ付けんじゃねぇの?
ガッシュのティオ召喚して魔界の王を決める戦いに参加するもよし
ハヤテのナギ召喚して二人でヴァリエール家に引きこもりするもよし
じゃあ、マリみての松平瞳子呼んでも良いんだな。
>>1でやめてくれって言っている作品でないならなに喚んでも構わんが、
それである程度区切りつくまで書けるなら頑張れ。
あえてゼロ使のアニメ準拠のストーリーラインで書くのもありなのかね。
忘れがちだがモット伯ってー便利キャラもアニメオリジナルなのよね
新刊が出るまでにゲームでもやってみるかな
>>336 ルイズが怪我したら買い込んだ薬草。相手がどんな化け物でも技や魔法ではなく通常攻撃か。えらく淡泊な使い魔だなw
どれどれ。
>>345 モット伯って、首飾り事件のがモデルなのかね?
名前がモットで伯爵だと、それしか思い浮かばんが。
>>254 怒りのエネルギーが頂点に達すると、一輝は次元の壁を超え聖衣を呼び寄せるのである。
聖闘士は聖衣を身に纏うことによってその力を数十倍に発揮できるようになるのだ。
ってこれ違う兄さんだよ。
なんつーわかりやすいトリップ
ヒャッハー
名前欄にコピーしたトリップ入れて書き込むTest
ちゃんと区別ついたな
つかなかったら意味が無いだろ……
むほー!
わざわざ書き込まなくても専ブラならプレビュー使えばすむだろ
突然失礼します。
あの、キングダムハーツとのクロスってディズニーだからまずいですか?
>>346 しかし会心が出れば数回で破壊神を破壊する
そういえば某漫画の破壊神を破壊した男はよく話題になるけどその主人公は全然出ないな
>>358 マジレスするが、ディズニーは別に二次創作を禁じていないぞ。
請求されたって学校はマスコミに大々的宣伝していたとか言うしな。
ラスボスだった使い魔読んだがひんぬー姉さまに萌える日がくるとは思わんかった(*´Д`)
もう結婚しちゃえばいいのよと思える数少ない作品だ
363 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 07:00:25 ID:so3zbZpv
2ちゃんねるなどでの2次創作読みの初心者です
よく作者さんが投稿される時に読者の皆が「支援」と言い書き込んでいるのを見ますが何か意味があるのでしょうか?
バカバカしい質問かもしれませんが…
>>363 同じ人が連続で書き込むとシバラク書き込めなくなる連投制限があります。
途中で割り込むとキャンセルできるので割り込んでそれを回避させるのが「支援」です。
短い投下なら無くても大丈夫なときもあります
版権でやたらうるさいのは、ディズニーじゃなくてオリエンタルランドの方だって聞いたことがあるけど
367 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 08:40:45 ID:so3zbZpv
>>364 ありがとうございます。
連続書き込み不可能対策か…
よく考えれば分かる事だった…orz
神話っつーか、今はもうそういうネタになってるよな
無限の彼方へ、さぁ行くぞ!
ミッキー
って書いたら引用する時にそこだけ
>検閲削除
とかそういうノリだな
ディズニーの二次創作(良心的な物)をネットで発表
↓
大人気に!
までは容認の範囲内。そこから調子に乗り掲載をダシにして宣伝やアファリエイトや同人誌販売なんかをやると結構な賠償を払う事になる。
あと二次創作という性質上、〇〇はそんな事言わない!ってのが必ず沸く。
ディズニーともなると、ぴちがいレベルの信者が居るから気をつけた方がいいだろうな。
昔ある小学校で生徒がプールの底にミッキーを書いたらディズニーに抗議されて消した
というのを聞いた
プールの底にミッキーなんていませんよ。夢を見ていたんです
>>372 代わりに生徒をディズニーランドに招待した、って話も聞いたな。
著作権ってかブランドイメージを守るのにうるさいって印象
ディズニー系でゼロ魔とのクロスに向いてるキャラって誰だろ?
ファンタジアのミッキーなら魔法世界とも親和性が高いかもと思うんだけど、
それ以外ならスティッチとか辺りとか。(言葉を喋る韻獣って事でルイズも喜ぶぜきっと)
>>363>>367 初心者さん、質問の前にはテンプレくらい読んだ方が良いですぜ
だいたいのスレはテンプレがありゃ
>>1以降に載ってますんで、まずはそこに目を通してからするもんでさあ
いや今回の質問の答えは載っちゃいませんがね、テンプレにsage進行って書いてありますでよ
グーフィー
相性の良さだけで言うなら、ムーシュー(ムーラン)とかも悪くないかもな。
一応ドラゴンだし、口うるさいけどw
Mr.インクレディブルなら英雄になれる
>>379 それ相性良すぎてヤバすぎ。トリステイン終わったw
ネバーランドって歳取らないんだっけな。ピーターはウェンディの孫と結婚するってのは憶えてるが
トムとジェリーとかのカートゥーンを召喚しても面白そうだな
ワルキューレに切り刻まれてもゴーレムに踏み潰されても
ルイズの爆発に巻き込まれても首をぶるぶるっとふったり段落が変わったら元に戻る
幼ルイズやカトレアの部屋で彼女たちと遊ぶウッディやバズも微笑ましそうだ
「サーイート、サイト助けてぇ」
「わぉ、ルイズなんてこったい ワルドめ、もう許さないぞ」
てれれってれー てれれってれー てれれれれれれーてれれってれー
ディズニーつながりでピクサーのモンスターズインクの連中喚んでも面白そうだなと思ったけど、
似たような設定?の充電ちゃん喚んでも面白いかも知れない。あ、でも電線がねぇ。
>>384 トムとジェリーかぁ…懐かしすぎる。
というかあいつらなら火石の爆発に巻き込まれても生きてそうだww
一騎当千のキャラを呼んだら
着替えを調達するのが面倒そうだな
そこはケンシロウさんの上着方式で
>>358です。
とりあえず、文章ぐらいなら大丈夫そうなので明日あたりにキングダムハーツとのクロスss投下してみたいと思います。
参考になる意見ありがとうございました。
>>358 どうしてもやりたいのならここでやるより自分でブログでも作ってそこでやる事を強くお勧めする。
ここだとどうしても周囲から色々と言われやすい、要するに荒れる原因になる恐れがあるから。
>>390-391 着替えを調達するのが大変てどういう意味かと思ったら、そういうことか。
格闘系のキャラだと同じようなの他にもいっぱい居そうだな。
一話完結にすれば服なんて気にしないでバンバン破れば良いと思うよ
上着は破れるけどなんでパンツとか下は破れないんだろうといつも思う
DQシリーズで妄想
多分頼めばW主人公とY主人公は使い魔になってくれそうだ
右京さん召喚を見て、古畑任三郎召喚を想像した・・・が
正直想像がつかんw
『木下部長とボク』から木下部長を召喚。
召喚そうそう「なぁ、もう帰ってええか?」と聞いてくる。
ルイズ「今日からあんたはわたしの使い魔よ!」
木下「おお、ええんちゃう? ほな、俺帰るわ」
ルイズのお仕置きはまったく効果がないことだけは確かだろうな。
>>397 タイミング次第じゃね?
6主人公は物語開始当初ならなんとかなるだろうけど、エンディング後だと、城に帰っただろうし。
7の主人公も世界を見たがっている開始当初なら。。
4主人公は、逆にエンディング後なら付き合ってくれるかもしれない。
3、9の主人公も、エンディング後。
1、2、5、8は無理。
>>393 それはおかしいだろ?
荒れそうだから出て行け、が通用するんならアンチが一人でもいる作品とのクロスはここで一切できなくなるぞ。
実際に荒れることが多い東方やFATEを隔離してるのとは話しが違う。
>>397 物凄い勢いでクエストを片付けてる俺のIX主人公もきっと頼まれごとは断らないぜ!
ディズニーで思い出したんだが、今のところアメコミの(またはアメコミが元の映画)
キャラで出てるのって、wikiとかよそ含めると
・ヴェノム(映画スパイダーマン3/マーベル)
・スポーン(スポーン/イメージコミックス)
・ロールシャッハの覆面と日記(ウォッチメン/DCコミック)
・ディディ/デス(サンドマン/DCコミック)
あと他になんかありますかね?
百合好きには堪りませんね>一騎当千キャラ召喚
>>403 6の主人公は幻の大地から落ちた時も、結構冷静だったし、
7の主人公も、とりあえず世界見たがっているし、石板の中に行った時も普通だったよ?
4は、エンディング後どうするよという状況だな。
3、9はそもそもエンディング後だと帰れないし。
W主人公ならいけるかも
ED後のシンシアが幻だったらだけど
故郷を滅ぼしたピサロを許せたし
Y主人公も夢世界ベースだしレイドック城生活がいやになってたら案外いけそう
1,2,8は無理だろうけど
2主人公なら結構いけるぞ
なんせ「破壊神を破壊した男」なんて呼ばれて居場所がなくなった男だ
逃避行の末ハルケに召喚なら良い方だろ
まあモンスターズ+前提だが
20ターン以内にダークドレアムを倒すルイズ
もともと個性無いんだから、どうせ俺主人公になるに決まってるだろ
Dokkan Dokkan パラダイス
>>403 別に寝てるところを問答無用に攫われる訳じゃないぞ。
喚ばれて応えるだけだ。
何かアクション起こさない限り鏡には吸い込まれないし。
だいたい、サイトみたいな一般人ならともかくファンタジー世界の住人なら
魔法的存在な鏡に警戒心持つはずだ。
ガンダゴア
ヴィンダゼレーニン
ミョズニアーサー
憚れヒメネス
>>403 ルーラ、もしくはキメラの翼で帰れると思われます。
ルイズ「知らなかったのか? 大魔王からは逃げられない!!」
日替わりの人来ないかなぁ。
アモっさん召喚すりゃええねん
ギャグセンスあるし
変身できるから韻竜みたいなもんだと勘違いしてルイズも大満足な推定20後半から30代
しかしキュルケの誘惑にはサイト以上にホイホイ乗っかる
>>408 神崎まさおみのボッツ(Y)とかアルス(Z)を召喚すればよかよ
サンデーで釣り男が漫画化されるんだな
ルイズの代わりに足止めの任務をこなすものの、防戦一方でいつまで経っても勝ちが見えてこないので
オーバーラップして敵大将の首を取る釣り男が召喚される日も近いな!
宝物庫には、お茶漬けもJリーグカレーもサンバも無いと言うことで絶望し休眠状態のまさお
タルブには、日本代表が無いということで張り合いを無くしボケボケ状態のセルジオが居る
破壊の杖に喧嘩サッカー、零戦にウィングと原作とのアレもバッチリだぜ!
>>417 その漫画から召喚したら
「な…なあこれ本当にアイスジャベリンじゃなくてアイスニードル…?」「アイスジャベリンは城壁一つ貫くだーよ」
こんな描写になりそうだなw
VIIは小説が良いな。
「人が生まれて死ぬところ。その全てが僕のエデンだ」がすごい好き。
そりゃエーデンな
>>410 突然現れた不審なブツを
敵の陰謀と捉えて攻撃魔法ぶち込んで向こう側のルイズ即死とかありそうだな
鏡系の魔物と勘違いして斬りかかってとか……
抜けた先でずんパラサりんかw
多分ライフコッドの人達ならワルドにもタイマンで勝てる
ダイナマンを呼べば
どこでも爆発起こり放題
名乗っただけでも爆発
いてつく波動でゲートが消されまくるルイズ…
そういやDQ3の主人公って、ED後に姿くらましたって設定だったっけか
>>430 故郷には物理的に帰れないし、その後姿を見た者はいないし、
適当に引っ張ってきても困らないキャラではある。
子孫がいないと、後世の人が困るかもしれんが。
>ダイナマン
ああ、ギャグ王じゃなくて科学戦隊のほうか
なるほどダイワマンXか
>そこはケンシロウさんの上着方式で
ケンシロウはアニメ版では自分で上着を裁縫して直してる
>>432 俺、ギャグ王のダイナマンしか、思い浮かばなかった
>>379 ネバーランドと聞いて子供の国に逆召喚ではなく
スパロボOGのトライロバイト級召喚とか考えてしまった俺
巨大戦艦の半分が堕ちてきて
現れたエロ女と赤ん坊を引き取ることになったルイズの明日は
一方でガリアにもう半分が落っこちて大変なことに
または最近サガフロンティアの時の君が召喚されたわけだが
対の空の麒麟召喚とか、もしくは麒麟のリージョンに逆召喚
空術の資質を得るのと引き換えに行き場の無い子供たちを犠牲にして
ルイズは「これでいい・・・」なーんて言えるわけもなく
まぁそれ以前に麒麟に勝てるわけがないが
サガフロ…鋼の人元気かね
>438
>麒麟召喚
コントラクト・サーヴァントを延々と唱えるルイズと、
それをひたすらヴォーテクスで打ち消す麒麟の姿が浮かんだ。
双子座のカノン召還
何だか誰も勝てそうにない
人外がデフォの聖闘士の中でも黄金聖闘士は別格だからな
双子座の俺は勝ち組
自分は天秤座
老師を召還したらキュルケはどんな反応するのだろうか
最近株が上がったかに座の俺は昔からデスマクスも好きだった。
マンモス哀れな奴とか言っていたら自分が聖衣に見限られて哀れになってしまったネタキャラ具合といい、
聖闘士には珍しい直截死をもたらす積尸気冥界波という必殺技の厨ニ具合といいい大好きだったわ。
誰が来ても面白そうだけど、個人的にはワルドとの戦いが見てみたい。
光速や音速を超えた化け物連中に閃光(笑)のワルドさんがどれだけ食いつけるか見物だw
本編開始時点で既に死亡してる上にLCのおかげでロリコン呼ばわりされる射手座の俺に隙はなかった
聖衣は使い手を選ぶマジックアイテム的な扱いになるか?
生きてて戦える=アテナのとこへ帰らないと
だからとりあえず滞在してもらう理由がいるよな
下手するとアナザーディメンション使えなくても力ずくで空間に穴空けて無理やり帰還しかねない
聖闘士勢はみんな「アテナと地上の平和を守る」至上の使命があるからなぁ
魔鈴なら弟が来てる可能性を匂わせれば暫くは滞在してくれるかも
「地上の平和を守るのも大事だがこの少女の心を守るのも」
と思ってもらえればアイオリアなんかは可能性有りそう
しかし薔薇族な私は原作もLCも問題ありすぎて困っちゃう
原作は勿論LCは「契約」なんぞしたら死んでまうわ、ルイズ
しかし、仮に何らかの理由でハルケギニアにとどまることに同意したとしてだ。
絶対に、国同士の戦争に関与しないぞ、あいつら。
ルイズが自分で何かするのを止めはしないだろうし、相談されれば助言はしてもおかしくない。、
もしかしたら、戦闘訓練ぐらいなら付き合ってくれたとしても。
ルイズのボディガード?ルイズに降りかかる災難を払う以外はしないっぽいな
とりあえずワルドくらいはボコってくれそう
リアルタイムの放送時は射手座ということで「××のくせに生意気だ」とか言われてた俺が通りますよ。
心の虚無(コスモ)を開放して戦うルイズか…。
あと一度みた技は二度と通じないとか。
爆 裂
エクスプロージョン
粉 砕
みたいな感じかな。
やべぇ。黄金伝説やりたくなってきた
少年はみんな聖闘士星矢なので少年じゃないルイズは心の小宇宙を抱きしめて
奇跡を起こす事は出来ません
ギャラクシアンエクスプロージョン
追放オンリーの世界扉「アナザーディメンジョン」
双子座さんほど虚無合致する人もいない
MOVIE対戦→Stay the ride alivePV後のもやしことディケイド召喚
向こうはWに任せてハルケに留まるんじゃなかろうか
黄金聖闘士なら最も神に近い男乙女座のシャカ
ルイズだと五感を剥奪されたり六道に落とされかねないので
召喚相手は胸革命のハーフエルフさんに
聖闘士…
つ幽閉中のカノン
つサガの悪の心
つ暗黒聖闘士
あと聖闘士以外で
つポセイドン編後のソレント
これ位か?
無論従うかどうかは別だがw
暗黒聖闘士は基本悪人だからやばいけど
紫龍戦後の友情を信じてみる気になった黒龍なら……?
サガの悪の心って実体内からむしろ召喚者にとりつくじゃないの?
狂気じゃなくって純粋悪に染まったジョゼフとか見てみたいけど
>>457 > サガの悪の心って実体内からむしろ召喚者にとりつくじゃないの?
うん。ルイズかジョゼフに憑いて…というのを考えたが…チート過ぎて止められる奴がゼロ魔に居ないんだよなぁw
強すぎる上に洗脳も出来るしw
今思ったが
ルイズ…カノン
ジョゼフ…テンマの親父
教皇…サガの悪の心
テファ…ソレント
これならバランスとれるかも?従うかどうかは別だが。
一番のお人よしである瞬だったらルイズも守りそうだなあ。
炊事掃除洗濯は普通にできそうなイメージあるし。
なんとなくおマチさんが瞬にデレそうなイメージあるんだよな〜。
原作でもジュネという年上の女の人の心を射止めてたっぽいし。
サガの悪の心は海外放映版だと戦神アーレスが憑依したのが理由なんだぜ
岡田版ではクロノスの干渉が原因だし
>>462 クロノス干渉が理由で出来たのではなく元からあって
ただそれにクロノスが目を付けて利用しようとしただけ
>サガの悪の心
誰に憑依するにしろ憑かれたほうは常時虚無パワーMAXになりそうだ
いずれにしても危険なことこの上ないけど
皆さんこんにちは、第88話が完成しましたので投下してもよろしいでしょうか。
問題なければ15:50より開始します。
それからトリップは、先週のものはトリバレしたらしいので付け替えました。
トリップは先週まで使ったことなかったし、まさかザラブ星人でもあるまいに偽者が
でるとはまったく思っていなかったので、急いでやり方だけ調べてきて失敗して
しまいましたが、一応勉強してきましたので多分今度は大丈夫だと思います。
待ってました。まあ、騙り荒らしはお気になさらずに
第88話
舞い降りる不死鳥
変身超獣 ブロッケン
一角超獣 バキシム 登場!
ハルケギニアを拠点として復活を果たした異次元人ヤプールは、ウルトラマンAへの
復讐に燃えて、超獣ベロクロンをはじめとして数々の怪獣、超獣、宇宙人をこの世界に
送り込み、幾度となくこの世界を守ろうとするエースと死闘を繰り広げてきた。
だがそうした攻撃の一方で、ヤプールはひそかに別の計画も進めていた。それは、
内戦を続けていた浮遊大陸国家アルビオンの戦いに介入することによって、
その混乱から生まれるマイナスエネルギーを収集し、同時に宇宙から怪獣を
呼び寄せる時空波を放射する石柱と、同じ能力を持つボガールを復活させる
ことによって戦力を増強する。むろん、最終的にはこの国を完全に滅ぼすことが
定められているのはいうまでもない。
それは、内乱の最終段階においてブラックテリナの能力を使うことによって
完全に成功しかけたが、ウルトラマンAと勇敢な人間たちによって阻止された。
しかし、計画の失敗などはヤプールにとってはさしたる問題ではなかった。
なぜなら、そのときすでに充分なマイナスエネルギーを吸収した超獣は完成
しており、数え切れないほどの人間が集まったここでそれらを解放すれば
エースは必ず現れると踏んで、その読みは見事に的中してエースは逃れられない
戦いに引きずり込まれてしまった。そう、このアルビオンの内戦そのものが、
エースへの復讐のための壮大な囮だったのだ。
そして、その総仕上げとしてパワーアップされた超獣ブロッケンとバキシムが、
数十年に一度の皆既日食が迫る中で、消え行く太陽をエースの墓標としようと
しているように雄たけびとうなり声をあげて、数ある超獣の中でも最強クラスの
破壊力をもってエースに挑み、地獄へと引きずり込もうと攻撃を続けていた。
「ウルトラマンAよ、我らの作戦にまんまとはまったな、もうエネルギーもろくに
残っているまい。貴様に滅ぼされた我らがヤプールの怨念を思い知れ!
さあ、ゆけぇーバキシム、ブロッケン! 光線を放て、光線を撃つのだ!」
異次元からのヤプールの怨念を受け取り、二匹の超獣は復讐の雄たけびを
あげて荒野の上に立つエースに狙いを定めると、バキシムは鼻腔と腕から放たれる
大量のミサイルを、ブロッケンは両腕と二本の尾の先から放たれる四条の
破壊光線を放って襲い掛かっていく。
「ヌォォ……!」
ダメージを受けたエースには、その圧倒的な弾幕をかわす力は残っておらず、
連続する爆発と肌を焼く高エネルギーの乱打が、射的の的のように彼を打ち倒していった。
(エース!)
(エース!)
ゆっくりとひざを突き、地面を手で支えるエースに才人とルイズの声がかかるが、
失ったエネルギーは返らずに、肉体が受けたダメージは消えはしない。しかも
当然ながら二匹はエースにわずかな回復の時間も与えまいと、猛烈な勢いで
突進してきて、バキシムの巨木のような足がエースを蹴り上げ、ブロッケンが
跳ね飛ばしていった。それでも、不屈の闘志を持つウルトラ戦士であるエースは
立ち上がり、起死回生をかけて光線技を放とうとするが、かつてエースに首を
跳ね飛ばされて倒されている二匹は、そうはさせないとミサイルとレーザーを撃ち込んで来る。
しえん
「ウワァッ!」
光線技のエースと異名をとるエースも、あまりの手数の違いには圧倒される
しかなかった。カラータイマーの点滅はますます速くなり、反比例して二匹は
元気を増して攻め手を強化していく。
「卑怯者め! 二匹がかりでなぶるなんて、お前たちには誇りというものがないの!?」
残酷で、情け容赦のないブロッケンとバキシムにキュルケの声が飛ぶが、当たり前
ながらそれは届かず、アニエスの悔しさをにじませた声が彼女の感情をいさめた。
「無駄だ、奴らは地上に現れた悪魔そのものだ。奴らにとって、誇りなんてものは
冷笑の対象にしかなりはしない」
残酷、卑怯、卑劣、猟奇、狂気、そんな人間にとって踏み入れてはならない
領域から、ヤプールは人類の破滅を狙ってやってくる。奴らは正真正銘の悪魔
そのものなのだから。
ミサイルが大地を砕き、レーザーが大気を焼く、それをかわしてもバキシムの
両手の間と、ブロッケンの鼻から吹き出される高熱火炎がエースの体を燃やしていく。
二大超獣の猛攻の前に、エースはなすすべもなく追い詰められていき、それは
もはや戦闘と呼べるものではなく、一方的なリンチに等しいものであった。
その絶望的な光景を、アンリエッタもウェールズも唇を噛み締めて見ていたが、
通常の軍隊の装備では超獣には歯が立たないことが証明されているので、
手を出すことができなかった。
「エース、がんばって……」
アンリエッタの声も弱弱しくなり、兵士たちの歓声もしだいに絶望を帯びたものへと
なっていく。しかも、天はさらにエースに過酷な運命を強いてきた。
(くそっ……太陽が……)
日食が進むことで、ウルトラ戦士の力の源である太陽光線が弱まり始めたのだ。
カラータイマーの点滅はさらに速くなり、闇が濃くなって喜ぶかのように二大超獣は
目を不気味に輝かせて、雄たけびをあげる。
(畜生、あいつら調子に乗りやがって)
(エース、お願い。ここで敗れたら姫さまたちも……)
エネルギーの消耗とダメージの蓄積は、すでに同化している二人の生命力を
削るところにまで悪化してしまっていた。このまま戦えば、二人とも命の危険を
ともなう。しかし、逃げることもできなかった。
「トァァッ!」
渾身の力を込めて飛び蹴りを食らわせても、もうバキシムの巨体は揺るぎもせずに、
逆に弾き飛ばされて倒れたエースを、ブロッケンが鋭い牙の生えた腕で引き起こして
バキシムがとげつきの腕で殴りつける。
「グッ、ウォォッ……」
高層ビルでも一撃で穴だらけにするバキシムの攻撃を受けて、わき腹を襲った
激しい痛みとともに、全身の力が抜けてエースはブロッケンに放り投げられて
地面を転がった。
「グゥゥ……デュワッ!」
ともすれば飛びそうになる意識を奮い起こしてエースは起き上がり、残った
力を振り絞って指先を額のウルトラスターに当て、突進してきたバキシムへと
光線を放った。
『パンチレーザー!』
断続発射型の速射タイプのパンチレーザーが、直進してくるバキシムの左目へと
命中し、緑色に発光しているその目玉を吹き飛ばして、調子に乗っていた奴を
大きくひるませた。
「やった!」
ようやく敵に与えたダメージらしいダメージに誰ともたがわずに歓声があがった。
バキシムの目はレーダーになっていて、これで敵の位置を正確に把握して攻撃を
かけてくる機能をもっているだけに、それを失った奴はバランスを失ってエースを
攻撃することができずにふらついている。
しかし、半端な反撃はより強大な反撃を受ける結果を招来してしまった。
バキシムを行動不能にしはしたもののブロッケンにまで攻撃を仕掛ける余力を
残していなかったエースへと向けて、そのブロッケンからパンチレーザーの
十倍にも及ぶのではないと思われるほどの、完全に手加減を除外した破壊光線の
集中砲火が叩き込まれたのだ。
「ウワァァーッ!」
衰弱していたところにこの攻撃を食らっては耐えられず、エースは大地にひざをつき、
なんとか倒れるだけはするまいと力を込めたが、そこを残った右目を怒りに燃え
上がらせたバキシムが蹴り飛ばして、まるで小石のようにエースは地面を転がされた。
しかも、それで怒り収まらないバキシムはなおもエースを蹴り続けて、とどめに
巨大タンカーにも相当する体重で、カラータイマーの点滅ごとエースの命を踏み消す
ように何度も踏みつけた。むろん、エースは必死でバキシムを押しのけたが、
今度はブロッケンがバキシム以上の体重で踏みつけてくる。二匹の超獣に
休む間もなく攻め立てられたエースは、タイマーの点滅を急速に早めて、
もはや戦う力が限界に近づいてきていることは誰の目にも明らかだった。
だが、誰にもどうすることもできないと思われたにもかかわらず、恐れを怒りと
情熱の炎で焼き尽くし、敗北の先にある破滅の未来を水のような冷徹な目で
見据えて、二人の若いメイジが立ち上がった。
「もう我慢できないわ! タバサ、行きましょう。ここで黙って終わりを待つなんて、
あたしにはできないわ」
「うん」
シルフィードを呼び寄せ、キュルケとタバサはムザン星人と戦ったときのように
空へと飛び立つ、だが二大超獣に比して、彼女たちはあまりに小さくて儚げであった。
「いけない! 戻って」
アンリエッタの叫びも届くことはなく、二人は攻撃を仕掛けていく。数々の実戦を
勝ち抜いて、スクウェアクラスに近く成長した二人の攻撃魔法はすさまじく、王党派の
メイジたちをもうならせる勢いを見せたが、カリーヌは憮然としてつぶやいた。
「無理だ。とても威力が足りない」
自分の魔力をすべて使い尽くすほどの大魔法でも、サタンモアにとどめを刺す
ことはできなかったのに、それより劣る二人の魔法ではとても効果があるとは
思えず、実際見た目の派手さとは裏腹に、超獣の皮膚を貫くには不十分で
二匹はほとんど気にも止めていなかった。
だが、二人の勇気は戦うことを躊躇していたアンリエッタたちに、一歩前に踏み出す
決意をする勇気を与えた。
3週間ぶりのウルトラ支援
「ウェールズさま。わたしたちはこのままでいいのでしょうか? 力が及ばない
からといって、こうして安全なところで見守っているだけで、それでいいのでしょうか!?」
「しかし、あの巨大な怪物を相手に兵を無駄に死なせるわけには……」
「わかっています。わかっていますけど……」
冷静に判断すれば、二大超獣に戦いを挑めば、ベロクロンを相手に全滅した
旧トリステイン軍と同じ末路しか待っていないのはわかる。未熟ながら戦術家としての
彼女の理性は、動いてはいけないと告げるが、たとえ戦っても勝てない相手と
わかっているからといって、奴隷として生命をまっとうすることと、自由と誇りを
懸けて死地に赴くのではどちらが人として尊いことなのだろうか。
アンリエッタはすがるようにカリーヌのほうを見つめたが、鉄仮面は表情を
隠して何も答えてはくれず、それは彼女が初めてヤプールの脅迫を跳ね返した
ときの自分の言葉を思い出させてくれた。
「断ります!! 誇りを捨て、奴隷となって服従するなどするくらいなら死んだほうがましです。
私達は断固として戦い、この国を守り抜きます!!」
あのとき、降伏を要求するヤプールの圧力を、自分は毅然として跳ね返したのに
今はどうだ? ウルトラマンAに頼りきり、彼がピンチだというのに救いにいくことすら
できないでいる。なんとも、情けなくなったものだ……
「ウェールズさま、申し訳ありませんが、わたくしのわがままをお許しください。
これからわたしのやろうとすることは、きっと途方もなく愚かなのでしょうけれど、
わたしは友人の危機を見捨てることはできません!」
「アンリエッタ、君は……」
「わかっています。けれど、わたしは彼に何度も国を救われてきました。その恩義を
返すこともですけれど、自分の力で戦う努力もしないで、どうして世界を平和にする
などとおこがましいことが言えるでしょうか」
他人に戦争をさせて自分は平和を賛美だけすることほど、恥知らずで情けない行為はない。
それは、ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長が言い残した「地球は人間自らの手で
守り抜かねばならないのだ」という精神にもつながる。たとえ蟷螂の斧しかなくても、
平和の奴隷と成り下がるよりはましだとアンリエッタは自身を恥じて、その手の中に
ある杖を握り締めた。
「トリステイン軍一千、よく聞きなさい。今、我々の恩人が危機にさらされています。
これを座視できるという者は、今すぐここから去りなさい。ですがわたしはこれから
あの超獣に挑んで、あるだけの魔法で彼を援護するつもりです。さあこの中に、
ヤプールに我々人間がウルトラマンに頼るだけしかできない生き物ではないということを
示す勇気のある者はいますか?」
歓呼の大合唱が、アルビオン王党派をも含めた多数の人間からあがったとき、
ウェールズはアンリエッタの肩を抱き、彼女の杖に自分の杖を添えた。
「ともに行こう、我らの手で平和をつかみとるために」
貴族としての誇りではなく、人間としての誇りを守るためにウェールズと彼の
部下たちも立ち上がり、それを見てカリーヌも仮面の下でうなずいていた。
「そうだ、それでいい」
たとえ勝ち目なんかなくても、戦わなければならないときもある。彼女は残り少ない
精神力ながら、ギマイラに戦いを挑んだときのように杖を振りかざし、まだ傷の癒えて
いないノワールに乗って飛び立っていき、彼女に続いてアニエスとミシェルをはじめ
トリステイン軍、王党派軍も突撃していく。
正直に言えば、どうやって戦えばいいのかをわかっている者など一人もいない。
だがかつてウルトラマンが地球に現れる以前にも、人類は知恵と勇気で怪獣と
戦ってきたように、心までも負けるわけにはいかなかった。
ラルゲユウスの体当たりを食らって、バキシムはブロッケンにのしかかるように
倒れこみ、突撃してきた人間たちの魔法や矢の雨がバキシムとブロッケンに降り注ぐ。
もちろんこの二匹からすれば、そんなものはかゆみすらもたらさなかったが、エースの
最期という絶望的な状況を見せ付けて人間たちを恐怖のどん底に陥れようと
もくろんでいたヤプールは、恐怖に縮こまって動けないどころか立ち向かってきた
人間たちに困惑していた。
「なんだ、人間どもめ、気でも狂ったか!?」
ヤプールにとって、人間たちの勇気という心は完全に計算外の代物だった。
人間たちに恐怖と絶望が生まれなければ、ヤプールはそこから生まれるマイナス
エネルギーを得ることができない。そしてその逆に、人間の勇気という心の光こそが
ウルトラマンの力であった。
「テャャァッ!」
ラルゲユウスの突貫によって袋叩きから助け出されたエースは、彼らが
与えてくれたほんのひとかけらの力を振り絞って、バキシムを殴り倒し、
ブロッケンの巨体を投げ飛ばした。
「おのれっ! そんな力がまだどこに?」
ヤプールだけではなく、バキシムやブロッケンも驚き、立ち向かってくるエースに
向き直るが、そこへまたラルゲユウスが体当たりして蹴り倒し、動けないように
地上から縄や鎖が放たれて、氷の魔法が動きを封じようとする。
確かに最新科学兵器ですら歯が立たない超獣に、数だけはそろっていてもレベルの
低い魔法や、ましてや弓や槍ではかなうはずもなかったが、人類の勇気はそんな
理屈を超えた未知なる力を生み出して、悪の軍勢を攻め立てた。
「私たちを愚かでとるに足りないものだと言ったな、だがお前たちが人間の邪悪な
心が生み出した魔物であるなら、人間の力で倒せないはずはない」
ウェールズは、恐怖をねじ伏せるようにして二大超獣を見上げるくらいの距離で
陣頭指揮をとっていた。正直、ちょっとでも気を抜けば失神してしまいそうな恐怖が
全身の血管を凍りつかせそうになるが、こういう場合に指揮官が安全な後方に
とどまっていては兵士たちは命を懸けてはくれない。それに、彼にもある男の
どうしようもなく救いがたい性だが、見守ってくれている女性に格好悪いところを
見せたくはないという、譲れない意地があった。
「攻撃の手を緩めるな。あるだけの武器を叩き込め!」
前線のそれぞれの隊長たちは、レコン・キスタとの戦いに使っていた大砲も
銃も矢も槍も、すべて使い切るように叩き込む。むろん、メイジも平民に負ける
わけにはいくかと、残っていた精神力をすべて注ぎ込んで可能な限りの魔法を
炎や風、氷に変えて送り込む。それは、小山に油を撒いて火をつけたような
壮絶な光景であった。
だが、人間たちの攻撃は気迫と勢いで二大超獣を圧倒したが、やはり決定打を
与えるにはいたれずに、いらだったヤプールは怒気を含めて二匹に命令を飛ばした。
「ええいこざかしい、バキシム、ブロッケン、目障りだ、そんなやつら蹴散らしてしまえ!」
一時の混乱からヤプールの叱咤で覚めた二匹は、その命令に従って、拘束を
力づくで破って起き上がると、まずは足元に群がるこうるさい虫けらどもを始末しようと、
攻撃を開始した。
ミサイルが軍隊の真ん中で炸裂し、地を走るレーザーが人間たちを巻き上げる。
それでも、愛する国を、家族を守るために彼らは立って戦いに望んでいくが、
高熱火炎に呑まれた人間は瞬時に骨も残さず消滅し、歩くだけで地響きが
生じるほどの重量を持つ二匹に踏みつけられたものは地底に化石同然に埋葬された。
「いかん、全軍後退しろ!」
態勢を立て直しつつある二匹を相手に正面攻撃を続けては犠牲が増えるだけと、
ウェールズとアンリエッタはいったん攻撃を中止させて、後退するように命じたが、
撤退は攻撃の十倍難しいものなのである。なぜなら、撤退するということは自分が
負けているということを否応なく自覚してしまうものであるし、なにより敵が逃げる
こちらをのんきに見送ってくれることなど、どれほど楽観的な思考の持ち主でも
期待することはないだろう。まだ若い二人は、目の前で吹き飛ばされる兵士たちを
見て反射的にそう命じてしまったのだが、そこまで思いをいたらすことができなかった。
「だめだ! 今兵を引いてはいかん」
上空から軍が後退しはじめるのをカリーヌが確認して叫んだときには手遅れだった。
人間たちが逃げ始めたことを見て取った二匹は、蟻に足を噛まれた子供が蟻の巣に
するように、憎悪をそのままに解放して人間たちを蹴散らし始めたのだ。
(やめろっ!)
戦闘から虐殺へと一方的な下り坂を転がり始めるのをエースは見ていることは
できずに、食い止めようと人々に向かいつつあるバキシムに後ろから組み付いたが、
バキシムは目障りだといわんばかりに剣のように巨大で硬質な尾を振り回して
エースを吹き飛ばしてしまった。
「ヌワァァッー!」
勢いよく跳ね飛ばされたエースは、骨格にまで響き渡るほどの衝撃に、全身が
しびれて立ち上がれなくなるほどのダメージを受けてしまった。
(く、くそぉっ!)
人間でいえば、コンクリートの壁に叩きつけられて呼吸が麻痺したときのような
状態になっては、いかにエースの闘志が折れていなくても、肉体がそれに
ついていくことができなかった。さらにカラータイマーの点滅も、ほとんどタイマーが
赤一色に染まっているように点滅が早まり、同化している二人の生命力までも
危険に近くなっていく。
(せめて、太陽が出ていれば……)
空を見上げても、ウルトラ戦士の力の源である太陽はすでに九割方日食に
覆い隠されて、その恵みの光を地上に届けることはできなくなっていた。
立ち上がることもできないままで、復讐に猛り狂う二匹を睨みつけるしかできない。
阿鼻叫喚、その風景を一言で表すのならばその四文字が使われるだろうが、
その四文字が一瞬ごとに散っていく数百の命の叫びを表現することはできない。
地球でも、怪獣が暴れるたびに街が破壊され、そこに住んでいる人の命が
奪われていくのと同じ光景が繰り広げられて、それ以上の悲劇が大量生産されていく。
オルトラ支援ナンバーシックス
「止まれぇーっ!!」
ラルゲユウスの可能な限りの速度でカリーヌは二匹に体当たりを加えさせ、
自らも平常時の1/10ほどまで減少してしまった精神力で、二匹の体組織を
麻痺させて動きを止めようと電撃魔法を使うが、捨て駒となったサタンモアの
犠牲のせいで威力がまったく足りず、ほんのわずかに二匹の気を逸らしただけで、
ノワールごとブロッケンのレーザー攻撃を受けて撃ち落されてしまった。
「なっ!? あの『烈風』までもがやられた!」
二人の王子と王女と並んで、彼らの心の支えであった伝説の騎士であるカリーヌが
やられた影響は瞬時に全軍に伝わり、それまで抑えられていた絶望感を一気に
解放してしまった。「もうだめだ」「殺される」「助けてくれ」という叫びが轟くと、
一部が後退から壊走に転落しはじめたばかりでなく、カリーヌに従って戦っていた
残りの竜騎士の思考力と状況判断力も麻痺させて、次は自分たちが狙われる番
だということに気づくのを遅れさせてしまった。二大超獣がその気になれば、
タックアローなどよりはるかに遅い竜騎士などを叩き落すことは造作もなかったのである。
ほんの数分のうちに、彼らもミサイルとレーザーの餌食となって全滅して、最後に
残ったシルフィードもミサイルが至近で爆発して、即死こそしなかったが乗っていた
二人もろとも撃ち落されていた。
「タバサ、無事?」
「わたしは……それより、シルフィードがひどい怪我」
不時着の寸前に、レビテーションでショックは軽減したが、爆風を二人の代わりに
もろに受けてしまったシルフィードは大火傷を負い、きゅいきゅいと苦しそうに
鳴いている。これでは、飛ぶことはおろかもはや戦うことなど到底できそうもなかった。
いや、それ以前に精神力の尽きたタバサとキュルケも自分が戦力にはなり得ないと
自分でわかってしまっていた。
「こんなときに戦えないなんて……っ」
「……」
以前戦ったムザン星人やガギなどとは、生物兵器として作られた超獣のパワーは
根本から違っていた。怒りにまかせて飛び出し、いつものようになんとかなるだろう
という甘い見通しは打ち砕かれて、シルフィードを守ることしかできない二人の見ている
前で、惨劇はその度合いを増していく。
一瞬で、その命を絶たれた者はむしろ幸せだったかもしれない。なぜなら、
乗っていた飛行機を爆発させられた人間は痛みを感じる余裕もないが、崩された
ビルの下敷きになって生き残ってしまった人間に待っているものは、生き埋めにされた
苦痛と恐怖と絶望だからである。
焼死や爆死を免れた兵士たちも、体の一部を失った自分の姿を目の当たりに
しなければならないという残酷な現実を突きつけられた後で、緩慢に迫ってくる
死の恐怖の中で母親を呼びながら息絶えていく。
その、凄惨と呼ぶにもあまりにも過酷な状況にありながら、アンリエッタたちは
それまで最前線であったところから、一気に殿になってしまった場所で、一兵でも
多く逃がそうと奮闘していた。
支援。
「水のトライアングルよ!」
「風のトライアングルよ!」
ヘクサゴンスペルが炸裂し、二匹の動きがわずかに止まるが、超重量を誇る
二匹は吹き飛ばされはせずに、氷嵐の大竜巻の中でかすり傷ひとつ負わずに
立ち続けている。
「なんて奴らだ……」
「ウェールズさま、頑張って……」
みるみるうちに削られていく精神力と体力の消耗に耐えながら、二人は全力で
二匹を閉じ込めた氷竜巻を維持し続けた。だが、ヘクサゴンスペルの長時間
使用などは前例がなく、二人は自分の魔法に命を吸われていくような感覚を
覚え始めていた。
「みんな、早く逃げて」
すでに二人の力は底を尽いていたが、ここで魔法を解除すれば解放された超獣は、
今度こそ止める術はないままに人々を蹂躙していくだろう。一人でも多く逃げて
生き延びてくれ、それだけを祈って二人は力を振り絞った。
しかし、そうして命を削る二人の姿を忌々しく見つめていたヤプールは、
歯向かう者にはすべて死をと、禍々しい声で命令を放った。
「こしゃくな真似を、バキシムよ、その二人が人間どもの要だ! そいつらを
殺せば人間たちは完全に絶望に沈む、やれぇー!」
その瞬間、氷竜巻の中で脱出を図っていたバキシムの右目が緑色の輝きを
放つと、突然バキシムは前傾姿勢をとって頭をアンリエッタとウェールズに向けた。
「え……?」
最初彼女たちは、それが何を意味するのかわからなかった。しかし、レーダーに
なっているバキシムの目は、そのときにはすでに二人を完全にロックオンしており、
その頭頂部に生えた一本角が、巨大なミサイルと化して発射されたときには
もう手遅れとなっていた。
「ひっ……」
角ミサイル、一角超獣の別名をもつバキシムの、これが最大最強の隠し技であった。
氷竜巻をぶち抜いて、一直線に音速で飛んでくるそれを相手に、お互いの名前を
叫ぶ時間すらそこには無かった。死ぬ直前にはそれまでの人生を走馬灯のように
見るとか、自分が死ぬ瞬間を時間を圧縮されて見るなどというが、アンリエッタが
見たものは自分に向かって飛んでくる、巨大な塔ほどの大きさがあるミサイルと、
自分に覆いかぶさってくるウェールズ、我が身を捨てて壁となっていくアニエスと
ミシェルの姿だけだった。
”わたくしは、ここで死ぬのですね”
奇妙に冷静な思考の中で、アンリエッタはふとそんなことを思った。けれど、愛しい
ウェールズさまに抱かれながら死ねるのなら、それも幸せかもしれない。しかし、
結局何一つなしえないままに死んでは、残された人々はどうなってしまうのだろうか。
種を撒くだけ撒いて、収穫は他人任せ、それではあまりにも無責任すぎる。
以前の何も知らなかったころなら、それでも気に止めはしなかっただろうが、
今はそんな自分を支えて引き上げてくれた人たちを思うと、胸の奥が針で刺されるように痛む。
”ごめんなさい、ルイズ……”
最後の瞬間、アンリエッタは親友の名を呼んだ。
誘導能力を持つミサイルは一寸たりとも狙いを外さずにこちらへ向かってくる。
あの超大型ミサイルの爆発力の前では人間の壁など何の役にも立たず、付近一帯
もろとも自分たちは消し飛んでしまうだろう。
だが、すべてをあきらめて目を閉じようとした瞬間、アンリエッタの目にミサイルと
自分たちのあいだに割り込んできた銀色の影が映った。
「デャャァッ!」
その瞬間、巨大な爆発が引き起こり、真っ赤な炎が空気を、草原を焼き尽くそうと
膨れ上がったが、その炎はアンリエッタたちに届くことはなかった。そこには、
最後の力を振り絞って、その身を盾に、ミサイルをその背に受けたウルトラマンAが
立ちふさがって、すべての衝撃を代わりに受けていたのだ。
「エースが助けてくれた……」
数秒かかって、そのことを理解したアンリエッタは、安堵のあまりウェールズに
支えられたままで、やっとそうつぶやいた。しかし、呼吸を整えて礼の言葉を
発しようとした彼女の喉は、絶対零度の風を受けて凍結することとなった。
両手を広げて巨神像のように悠然と人々を守って立ちふさがっていたエースの
胸の赤い灯が燃え尽きたようにふっと消えると、同時にその目から輝きが消えて、
巨体が朽ち果てた巨木のように軽く揺らめき、そして……
「ああっ……!!」
彼女たちも、エースによって救われたほかの兵士たちも、言葉を発することができなかった。
これまで、いかに傷つこうとも立ち上がって最後に勝利を収めてきたあのウルトラマンAが、
大地に崩れ落ちてぴくりとも動かなくなってしまったではないか。
「まさか、こんな……」
「立て、立ってくれよ!」
「頑張れ、起きるんだ!」
何度もエースの戦いを見守ってきたトリステインの兵士たちの中から、アルビオンに
来てなお救いの手を差し伸べてくれたエースに、必死の叫びが送られるが、
もうエースにその叫びに応える力は残されてはおらず、それに答えたのは
歓喜に震えたヤプールの遠吠えにも似た悪魔の叫びだった。
「ふわっはっはっはっ!! 馬鹿なやつめ、わざわざ死にに来るとはな! だがこれで
貴様にはもはや指一本動かすエネルギーも残ってはいまい、貴様にはお似合いの
死に様だ! ゆけえバキシム、ブロッケン、エースにとどめを刺すのだぁ!!」
その声が終わるのを待つまでもなく、二大超獣は歓呼の雄叫びをあげて
横たわるエースに駆け寄ると、まるでサッカーボールのように蹴り上げて
地面に叩きつけ、踏みつけては放り投げと、無邪気で残酷な子供が笑顔で
人形の腕をちぎって遊ぶように、エースの体を考えられる限りの方法で
痛めつけていった。
「人間どもよ、我らヤプールに歯向かった者の末路を見ておくがいい。
我らに逆らうものは、皆こうやって死んでいくのだ!」
積もりに積もった怨念を一撃一撃に込めて、バキシムとブロッケンは凶暴性
という単語を超えた残忍さで、無抵抗なエースを嬉々として痛めつけていた。
殴りつけ、蹴り飛ばし、炎で焼き、ミサイルの標的にして吹き飛ばす。それは
もはや嬲るというよりも、遊んでいるといったほうが適切な光景で、見守る
ことさえできなくなった幾人かが、思わず目を逸らしてしまったことを誰も責められまい。
才人とルイズはエースの中で、活動するエネルギーは失ったが、かろうじて
意識だけは残しているエースとともにいたが、そこにも確実に死は迫っていた。
(ちくしょう……もうエネルギーが……)
カラータイマーの点滅は、あくまでエネルギーの残量を示すものであって、
タイマーが消えたことがそのままウルトラマンの死を意味するものではない。
しかし、敵を前にして動けないのでは意味がなく、攻撃の痛みを一身に
受けているエースだけではなく、同化している二人の生命力さえも猛烈な
勢いで削っていた。
(寒い……なんだ、まるで凍りついたような)
(まだ、戦わなきゃならないのに……お願い、立って……た……)
(お、おいルイズ眠るな! 意識を失ったら、起きるんだ!)
肉体の死は、そのまま心にも死を強いてくる。精神世界にいる二人にも、
真冬の海に浮かんでいるような冷たさが忍び寄ってきていた。しかし、
二人に代わって攻撃を受け続けるエースの苦痛は、それらさえ比ではなかった。
二つの月は残酷にも、ひとかけらの光もよこさぬと完全に太陽を隠して漆黒の
天体に変えて、闇の中に閉ざされた光の戦士を悪魔が力の限り攻撃する。
「やめて! もうやめてください!」
みせしめにしても残酷すぎる仕打ちに、アンリエッタが血を吐くような叫びを
あげても、その声もまた轟音の中にかき消されていく。
もはや、王党派、トリステイン軍に余剰戦力はなく、『烈風』が倒れ、キュルケと
タバサも力尽き、アンリエッタとウェールズの魔法の力も尽きた今、人間たちに
エースを救う術は何一つ残ってはいなかった。
そして、ぼろくずのようにエースの体が放り投げられて地面に転がると、
ヤプールは復讐の最終段階に入った。
「ふっふっふ、ようしそのあたりでよかろう。ふふふ、ちょうど太陽も隠れて闇も
いい塩梅になってきたな。そして闇といえばエースよ、ゴルゴダ星を覚えているか?
我々は貴様ら兄弟を極寒のゴルゴダ星におびき寄せて全滅させようとしたが、
貴様だけは兄弟からエネルギーをわけてもらって脱出に成功したな。だが、
今度はお前一人で死んでいくがいい! 見よ」
すると、中空の空にひび割れが生じ、異次元の裂け目が現れたかと思うと、
そこから全高七〇メイルにはなろうかという巨大な十字架が現れて、地面に
突き刺さり、どこからともなく伸びてきた鎖がエースの四肢を絡めとって、
磔にしてしまったのだ。
「ああ、もうだめだ……」
無残に十字架に四肢を縛り付けられ、力なく首を落としているエースの姿は、
人々から最後の希望を奪うのに充分だった。わずかに動く気力のある者は
逃げ出し、気力のない者は絶望してひざを突く。
カリーヌも、なんの魔法も出せなくなった杖を握り締めて仮面の下で歯軋りをし、
キュルケとタバサも、シルフィードを守りながら自分たちの無力さを痛感していた。
アニエスやミシェルも、これまで修練を重ねてきた剣も杖も何の役にも
立たないことに、血がにじむほどこぶしを握り締め、絶望の歌がすべての
人間を覆っていく。
そしてヤプールはついに、二大超獣に最後の命令を下した。
「さあ、今こそ復讐が完遂する時だ! エースを殺せ! バラバラにして
跡形も無く粉砕してしまうのだぁーっ!」
バキシムのミサイルが、ブロッケンのレーザーが飛び交い、死人同然となった
エースの体に集中していく。
「人間どもよ、お前たちの守護神であるウルトラマンはこれから死ぬ。そして、
我らヤプールがこの世界を暗黒に染めるこのときを、絶望して見ているがいい!」
かつて、これほど残酷な処刑があっただろうか。復讐とともに、光を闇に染め、
希望を奪い、絶望をばらまく。ヤプールは、エースをハルケギニア侵略のための
人柱にするために、これほどの手間と労力をかけて罠に嵌めたのだ。
なんたる絶望的な戦い。
だがそれゆえに、しえーん。
すでに誰にも、戦う力も武器も残されていない。カリーヌも、キュルケやタバサも、
アニエスやミシェル、ウェールズや数々の勇敢で強い将兵たちのすべてが、
ヤプールの計画のままに、絶望の沼地の中に沈み、エースの命ももはや風前の
ともし火であった。
そんななかでアンリエッタはただ一人、ひざを突き、祈っていた。
「神よ。始祖ブリミルよ、どうか、我らの恩人を、この世界を闇からお救いください。
今日が、奇跡の起きる日だというのならば、わたくしの願いをお聞きとどけください。
そのためなら、わたくしの命でも差し出します。だから、どうか……」
答えるものはなく、神は降臨したりはしなかった。二大超獣の攻撃はますます
激しさを増して、十字架ごとエースを粉砕しようという勢いで、火力を集中する。
そしてついに、二匹はエースの命を完全に絶つべく、ミサイルとレーザーの
照準をすべてカラータイマーへと向けた。
(もはや、これまでか……)
エースも含め、誰もの心を絶望が覆い尽くした。全力を出し切ったことについては
なんらの悔いもないが、実りを残すことができなかったのでは言い訳にもならない。
ヤプールの侵略を阻止するという使命を果たすことができずに、ここで倒れれば
やがてハルケギニアを滅ぼしてマイナスエネルギーを蓄えたヤプールは、
地球、光の国へと侵略の手を伸ばし、最終的には宇宙全体を巻き込んだ争乱と
なっていくだろう。そうなれば、もはや失われる命の数はこのアルビオン内乱などは
比にもならない規模に膨れ上がる……
戦場だった空間には、絶望と悲嘆に満ちた七万人の亡者のような声が流れ、
その心から生まれるマイナスエネルギーに満ちた空に、ヤプールの哄笑だけが
響き渡る。
終わった……誰もが、あきらめて最後を覚悟した、そのときだった。
”兄さん、あきらめないで!”
突如、心に響き渡ったその声に、エースははっとして目を覚ました。それは、
ウルトラ一族が持つテレパシーの波動、その響きを持つ声の主を、彼はよく
知っている。しかし、なぜここに? 空耳か、いや違う!
(太陽……?)
彼は最後の力で、今にも攻撃を開始しそうな二匹の超獣から、視線を天空に
黒い穴のように存在する日食へと向けた。そこは、一点の光も見えない虚ろな空間。
しかし、その漆黒の虚無の空間の中に、ありえべからざる光が輝いた。
それは、最初夜空に瞬く小さな星のように儚げに見えたが、闇の中にあって
消えることは無く、生まれたばかりの若い恒星が宇宙に新たな息吹となって
いくように、強く明るく光を増していき、滲み出してきた光は幻ではなく形をなしていく。
希望は無いと誰もあきらめた。奇跡は起きないと誰もがあきらめた。
しかし、絆がある限り、どんなに闇が深かろうと光は必ず差し込んでくる。
虚無の闇の中から次第に近づいてきたそれは、銀色の翼に不死鳥のような炎の
シンボルをまとった、希望の姿となって現れた!
支援
支援
(あれは!? まさか!)
ありえない、ありえるはずもないシルエットに、才人は幻を見ているのではないかと
思ったが、それは大気を切り裂き、闇の中でも赤々と燃え盛るファイヤーシンボルを
猛らせて彼の視界を埋めていき、困惑が確信に変わった時、彼は心から叫んでいた。
(ガンフェニックス・ストライカーだ!)
奇跡が、起きた。ブースターを全開にして、急降下してきたその炎の翼を、
忘れることなどできようはずもない。それこそ、CREW GUYSの象徴にして、
地球の平和を守り続けてきた平和の不死鳥。先頭にガンウィンガー、後方に
ガンローダー、さらにその上方にガンブースターを合体させた、人類の英知の
結晶が生んだ最強の戦闘機が今、ハルケギニアの空に飛び立ったのだ!
そして、舞い降りてきたガンフェニックス・ストライカーは地上のエースと二大超獣を
認めると、幻でないことを誇示するかのように、全ビーム砲門の一斉射撃、
バリアントスマッシャーを輝かせた。
「な、なんだあれは!?」
天からの光芒が大地を砕き、爆風が二大超獣をもたじろがせると、地上の人々も
ガンフェニックスの姿に気づき、いっせいに空を見上げた。
「速い! あれはなんだ!?」
「赤い、火竜か?」
「いや、大きすぎるし速すぎる! あんなもの見たこともないぞ」
戦闘機などを見たこともないハルケギニアの人々は、ガンフェニックスの正体が
わからずに戸惑い、新しい敵かとどよめいたが、見慣れない翼はさらに光線を
放ってバキシムとブロッケンを打ちのめしていく。そして彼らの頭上を信じられない
スピードで飛び去っていった、その翼に刻まれた炎の紋章を見て、アンリエッタは
自然と心に浮かんできた名をつぶやいていた。
「不死鳥……?」
だが、一番驚き慌てたのは当然ながらバキシムとブロッケンである。今にもエースに
積年の恨みを晴らそうとしていたのに、突然現れた戦闘機によって妨害されて
平静でいられるはずはない。あれはなんだ、どこから現れた!? いや、あれは地球の
ものだ、それがどうしてこんなところに現れる!? 人間以上の知能を持った二匹の
超獣は、事態を把握できなくて混乱に陥った。
しかし、悪意の塊であるヤプールは、突然のガンフェニックスの出現には驚いたが、
その原因などよりも、それが現れたことによって起こる結果を瞬時に見抜いて、
その前に復讐を果たそうと、二匹に怒鳴るように命じた。
「なにをしている! はやく死にぞこないのエースにとどめを刺せぇ!」
その叫びで我に返ったバキシムとブロッケンは、ガンフェニックスの攻撃に
驚いたショックから立ち直って、ミサイルとレーザーを全弾発射した。
「死ねっ! ウルトラマンAよ!」
炎を引きながら迫る数十発のミサイルと、蛇のようにしなるレーザーが
一直線に十字架上のエースのカラータイマーに向かう。しかし、確実な死が
迫っているというのにエースに恐れはなかった、なぜなら、空気を切り裂く衝撃波を
生みながら、二大超獣とのあいだを飛び去っていったガンフェニックスの、
ガンウィンガー部分のコクピットに座っている、ウルトラ十番目の弟が光に
変わる姿を、確かに見たのだから。
「メビウース!」
ヒビノ・ミライの掛け声とともに、金色の光がガンフェニックスから飛び立ち、
光の球がエースを守るように十字架の前に立ちはだかり、ミサイルとレーザーを
すべてはじき返す。そして、光が爆発し、その中から立ち上がるのは、
宇宙警備隊が誇る、若き不死鳥の勇者!
「ヘヤアッ!」
闇の時間が終わり、再びさんさんと降り注ぎ始めた美しい陽光を浴びて、
ウルトラマンメビウスが二大超獣を前に恐れのかけらもなく、しっかりと大地を
踏みしめて降臨する。ウルトラ兄弟VSバキシム&ブロッケン、最終ラウンド。
今、反撃の時は来た!
続く
以上です。今日もまた、数多くの支援を即座にしてくださって、本当にありがとうございました。
原作ではマザリーニのハッタリだった不死鳥・フェニックスがこの作中では本当に
降臨してしまいました。今回前半を書いているときは『危機迫る横浜』などを
聞きながら、後半は『ウルトラの奇跡』や『栄光のティガ・ダイナ・ガイア』などを聞きながら
書いたのですが、やはり聞きながらだとスピードやノリが違いました。音楽の力
というものはすごいですね。
なお、才人とルイズが消えているのに誰も気にしていないのはお約束ですので
ツッコミは不要です。
では、次回はアルビオン編のクライマックスです。
ウルトラ乙
盛り上がってきた
ウルトラの人投下乙でした!
来週が相変わらず待ち遠しいです。
ウルトラの人は我等を燃え殺すつもりに違いない
支援は出来なかったけど乙
>>486 はなから使い潰すのが前提ならともかく、雑魚はいくら強化してもあくまで雑魚。
取り憑くなら元から強いか潜在能力の高い方が良いと思う。
虚無以外で虚無パワー出るかは知らんが。
ウルトラしえ〜ん。
これも巧妙な騙りだったら笑えるなw
燃える街にウルトラチョップ
乙
>>492 過去の有名画家の「新作」を作り出せる売れっ子贋作者というのはちょっと前にNHKで見たけどさw
そんなレベルの騙りがいたら、それはもはや才能の凄い無駄遣いだろうw
/ヽ//
/ヽ / / ,、 __
∧| ヘ / /´ ∧// \ `ヽ、__
\ ヘ ヽソノ | / // / ヽ ヽ、 `-'ヽ. ノ/
ヘ ヘ ヽヽ | | / く / ) 、_  ̄ ̄''''''''''‐‐‐--、
ヘ ヘ ヽヽ ̄`''// ̄ヽl ,,ーー'i ( ()) 〔〔 ‐‐‐'''''''´ 最高に面白い!
ヘ ヘ l \i/ヽ / / /ソソソソソソ,ーーーー、___,-‐'''´ヽー´
ヘ ヘ 三/\ Θ θ,'_ / ウルトラの人乙! /ソソソソソソー-、__\
ヘ ヘ 三/;:;:;:;:/ /,-,ヽヽ三 /;: /ソソソソソソソソヽーー'
ヘ;:;:;:;:;:三/;:;:;:;:ヽl ∨ ソ三/ ,--/ソソソソソソソソ/
ヘ叭W_从 :;.:;/叭ヘ/ /ソ/ソソソソソソW_从 :;.:;
(ヘ,l|二|;,:;,ゞ;;,,从 :叭叨ヘ ,,,----‐'ソソソヽソソソソソソ,l|二|;,:;,ゞ;;,,从 : <ドーン
/ /ニニ。,,::从ゞ;;,;;;/*;:;:/`ヽ /ソソソソソソ,-/ ゙iソソソソ。,,::从ゞ;;,;;;/* ̄ ̄iヽ
/ ./⌒`...;:.:〃l,l;、;.:;.w:;:;:トニニニヽ ___ ソソ,-‐''´/lミミミソソソソ...;:.:〃l,l;、;.:;.w  ̄`‐‐、
/ ヽ ;。/从∵]ヽ,.,:;:;:| ヽニニ/ ̄\ \ '''´ソ,/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;。/从∵]ヽ,., ,_/_,\
/ l ̄´;:;:;:;:;:;:ゝニニニニ);:;:;:゙iヨ\〈___/__/ ソ/´l l´´´\|ソソソ \_ ヘ
/ |三;:;:;:;:;:;:;:|ニニニニニ);:;:;:;:|ヨ /ソソソソソソ ゝ ヽソソソソソソソj二二> \ ヘ
,,
ヾヽ ノ l ,,,-;;;;ヽ
ヽヾv .\" ,,,-"
_/ ヾ/
.)\ ・ヽ
'ノ \ ・">
\ \,,,;ヽ/ソ
/ 'ミ<ゞ)ヽノ)l 俺はカッコイイだろ!
|\ | |ヽ-,,,,, _ ノ
| ヽ ヘ ノ/;;;ヽ/ヽ"ヽ';∧
| .| ヾ∧""";;;;;;;;;;;;;\ || ノ ∧∧,,,
| | ,,,,|ヾ;;;;;;ゞ;;;;;;;;ソミ(ヾ""'ヾ;;;;彡彡》,,,,
| ヽ_,,-"∴∴;;;;;;;;;;;;;;巛◎彡;;;;;ミミ《ゝ>>>,,
/| ヽ,\∴∴∴;;;;;;;;;;;;◎》>>>;;;;;;>》》ヾ>>ゝ,,,_,_ノヾ-,,,,,,,,
巛( / |∵∵ゞ;;;;;;;;◎≦彡》;>;;;;>彡彡∴;///ゞヽ巛巛/ヾヽ
巛;| | ノ‰‰ゞ;;;;;;;;;ミ彡>>>>;;;;;;;)》/ミ>;;;;;;ノ;/;/ |,,, ノ ̄"""
::彡| | /∂∞ノ;;;;;;;ノ,,,,,,,,》》,,,,>ヾ;;;;;;;)_,,ヾ;;;|;;;|;;;;;;;;;;| ヽ,,ゞ
ー";;ヾノ∨∨ゞ""ミ彡彡ミ ミミミミノ ヾ∨;;
/1
/ !
/ :;;l
/ト-、ハ^ハ
/レヽ`´ ̄ヽヽ.
/ くこニ1r;;;;;;;):ノ バキシムはカッコイイ!
| くにニヽl;;;l.-´
| くにニニヽフ
_/ くにニニニ) __
ヽ/ ヽ>にこニニニ) .ノ<)ヽ
| |>)こニニニニ)、_ハ/<)_<)1
ゝ /) 一一一一一) ) !ハ{__<)_ノ
ゝ// 一一一一一)ノ ノ,.-´ ̄
| 一一一一一-) ̄
ゝ | -一一一一一-)
/1
/ !
/ :;;l
/ト-、ハ^ハ
/レヽ`´ ̄ヽヽ.
/ くこニ1r;;;;;;;):ノ どれくらいカッコイイかというと
| くにニヽl;;;l.-´
| くにニニヽフ
_/ くにニニニ)
ヽ/ ヽ>にこニニニ)
/1
/ |
/ |
/ |
/ |
/ へ
/ト____ ハ ハ
/│丶:::::::/ ヽ
/ レ  ̄  ̄\ \
│ くこニ | ウルトラマンの三倍以上!!
│ くにニ1r;;;;;;;;:;:;:;:;ノ::::ノ
│ くにニ 丶:;:;:;:;:;:;:;:;:; γ
│ くにニ二\|:;:;:;:;:;:;:;|
│ くに二二二二二二)
│ くに二二二二二二二二)
∧ _
ヘ l\ / l ∧/ 二>
/ ゝ、 ヽヽ´\ |/ /l
ヽ ヽ ゝヽ彡 lフ οi/ オレの登場はまだかな?
_ ヽ ヽ <二二巛 ヘ ノ> ∧
\ ̄<< \ ヽ / ̄'''///ヘ\二、 /l |__| ∧
_<<<<< 丶 `ヾ //ミミ彡ヘヘヘ> / / | | ノノ
_\<<<<< ヘ´ .. ''../\ミ\_// \ヽ/ ̄\"/ ∧
\ <<<<<<< ヽ ヽミミミヽ_/彡/ /´ ̄\ノ /l |__| ∧
< < <<<<<<\ヽ\ミミミ彡/l . /´ ̄\ノ´ / / | | ノノ
゙>─'´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ \ \ミミ彡丿丿| '/´ ̄\ノ \ヽ/ ̄\"/
:゙i.._(⌒) (⌒) (⌒) ー、ゝ、 _ ノ彳 | _/´ ̄\/ /´ ̄\ノ
_ /´´\、/l\ ノ ゙''ヘ _广 / /´ ̄\ノ . /´ ̄\ノ´
ヘ_/ヘ / | / ̄\ ノ )( l _/´ ̄\ノ '/´ ̄\ノ
/j \/ \ |/ノヘヘヘ _、)( l'''‐-、__ /´ ̄\ソ _/´ ̄\/
_..r/ __ヘノノノ ノ ノ )(、 ノ / /\ ̄ヘ_ノ /´ ̄\ノ
∧∧ ∧ _,へ|丿 / ̄\___ノ_ _ ノ丿 0 リ( ノ、 / / / ヽ'‐-、__ _/´ ̄\ノ
\ヽヽ丿ノ/\ ヽ`'/ `'''ー―,,,,,,ー' \ 0 0ノ ゝく / / / / /\ ノ´ ̄\ソ
_ ,-‐‐‐\ \/ ̄ 〈____〉 / \___/i`i`ヘ\ ,`く / / /  ̄ ̄ ̄ヘー-----、
`゙`ー‐‐= ゞ´ ヘ..lく 〈____〉ヘ/  ̄\ ,' i`i`ヘ/ `く `/ _ ――、l___\
i ヘ / \ 〈___ lヘヘ  ̄\ ヘi ,' i`i`/ ヘ  ̄ヽ--\ ――l、_ \
──l. -‐‐‐ヘ / /`-、,ヘ,ヘ/〈____ィ  ̄\ / `'‐‐‐/ /ソ ヘ`-、,ヘ,ヘ/〈_`‐-、 /ヘ \ \
 ̄ `\_ヘ ヘ'~~\_/ヘ 丿 ノ __..:ヘl___ノ_ ヘ ヘ'~~\_/\ ヽ、 `\|
ーー ヘ ヘ_../ l ノ ノ ヘ ‐'ゝ、 ーー ヘ ヘ_../ \゙i
ノへへへ/-‐' ヘ" ヽヽヽヽ
/ヘヘヘ/ | ∧∧、
./_ _ i '-、__ / ヘ \_
/ ヘ/ ヘ `ーー、_\\
..| i i_
ゝ ハ ノ
>>492 コピペでないのにそう思わせたいからには、君何かやらかしたの?
ここぞとばかりにAA乱発をするアホが鬱陶しくて仕方ない
騙ってた奴だろうな
ここは、超放置的措置で見なかったことにしておこう
法規的措置ではないよ?
こういうの見てると、ここに投下しようって気が微減してくるぜ……。
なんで触れちゃうかなぁ
わざわざ阿呆を喜ばせるようなこと言わんでもよかろうに
507 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 17:57:26 ID:asqlNO+x
ともあれ、ウルトラの人乙
まだ、構想だげだけど漏れもウルトラマンのクロス考えてるわw
508 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 18:08:38 ID:XdmLwKHf
ウルトラ乙
ゼロ魔キャラが空気! 存在価値がまったくないところがすばらしい!
なんでここにいるの?
ウルトラの人乙。
ところで、ハルケギニアではウルトラマンのエネルギーはハルケギニア人と合体しないと一分しか持たないんでしたよね。
一分以内に超獣2体倒せるかどうかとっても気になりますがそこは次回のお楽しみと言うことで。
あと、『ガンフェニックス・ストライカー』ではなく、正しくは『ガンフェニックストライカー』です。
コスモストライカーとコスモスストライカーみたいなもんか
ガンフェニック的な何かか
ナイトレイダートリステイン支部
>>493 ああ!こんなところにヒポタマリスナーが!
って違う?
>>410 普通に「旅の扉」だと思うんじゃね?
何の警戒もせずにくぐる姿しか浮かばない
賢い犬リリエンタールの日野兄妹を召喚……
フツーに帰ってしまうがなw
とはいえ、奴等がリリエンタールの能力で帰るという事は
ハルケギニアと日本の行き来がかなり楽になるという事で……
日本にやって来たルイズたちのアレやコレやってな話になるなら……
リリエンタールである必要ねーなw
対黒服での戦闘にルイズたちが動員されるとかあるかもしれんが、
基本的にてつ子だけで対処可能な筈の連中にはゼロ魔の魔法なんてオーバーキルも良い所w
やっぱなしか。
ゼロの使い魔にDies iraeのキャラが召喚されたらどうなるんだろう?
セイバーマリオネットの乙女回路搭載マリオネットを召喚したらどうなるかが気になるんだが
ディエス・イレ・・・?
宇宙船を奪われた挙句に巨大ロボットに改造された哀れなじーさん?
または魔術を用いず超人の域に到達した執事さんの奥義?
Diesキャラとか、全員我が強くて誰一人として従わんやろ。
聖遺物召喚のがまだいい。
遅ればせながらウルトラの人乙です。
あなたと一晩中ウルトラマンを語り合いながら呑みたい・・・
関係ないがあるゲームの設定で
翼人種(フェイゾン)と人間のハーフは翼が小さかったり片翼の奇形が生まれやすいというのがあり、外伝話を見る度に
『これから苦労もあるだろうが上手くいけばいいな』と思い
エルフと人間のハーフは出生率が低いものの人間側が産む場合に出生率が上がるというのから
『ティファニアはまさに偶然の産物だなー』と思ってしまう。
しかしハルケギニアで一番ゴースト系に近い生物ってなんなんだろう。吸血鬼の下僕だろうか。
ウルトラの人乙です
たまたま見てないだけかもしれんが、そーいや最近は某提督みたいな露骨なアンチものは見かけなくなったね。
まあギーシュとモット、フーケとワルドが酷い目に合うのは様式美なので除くとして、
クロスに見せかけて嫌いなキャラを痛めつける断罪ものとかやっぱり見てて気持ちのいいものじゃないからねえ。良い傾向かな。
ゼロ魔第四期始まったらまたルイズとアンアンあたりにガーッと増えそうな予感がするのが気がかりだが。
>>516 途中でSSの作者が変わる
原作にいたはずの登場キャラがごっそり減る
8回以上読んだら料金を請求される
さあどれだw
アニメ第4期もいいが、シャナみたいに映画化しないかなあ。
ゼロ魔には、まだまだ無限の可能性がある気がする。
シャナの映画は昔見に行ったが、痛い大きなオトモダチばっかりで
家族連れとかかわいそうだったぞ?
あんなんになるくらいならしない方がいい。
無限の可能性の中に実写映像化だけは含まれないでほしい…
ハリウッドで映画化を
家族連れのが異端じゃないのか、それは
そこでまさかの声だけオリジナルキャストですよ!
>>525 いぬかみ!と同時上映の時点でどっちかって言うと家族連れお断りじゃね?
>>530 そういえば実写版ヤッターマンはドロンボーのオリジナルが出てきた。
つまりドロンボーが二組揃ったことになるから驚いたぞ。
物語の主役級とか強敵なんかが召喚されがちだけど、
ガンダールヴ補正あるなら、それこそ主役にまとめて蹴散らされる雑魚敵でも活躍できるよね。
そういうキャラ召喚されないのはやっぱり魅力が薄くてファンが居ないからなんだろうか?
キャラの性格がしっかり描写されてる雑魚キャラってのも珍しいだろうし……。
目立ちたがりで不死身のヒーローとか?
雑魚キャラというか純戦闘系作品じゃなくてもやっていけるってことだよね
逆に戦闘系作品だとジュリオがその作品に出てくる凶悪なモンスターを支配したり、
シェフィールドがその作品に出てくる特殊武器の繰り手として底上げもできそうだけど
霊界探偵ルイズ
伊達にあの世は見てないぜ
>>536 一行目を読んで思いついたのがロックユーのワットだったw
ガンダールヴになれば思う存分「痛みを」与えられるだろうなw
あとはジョゼフにアダマー、教皇にチョーサー、そしてテファにコルヴィル
>>522 まぁアンチだのヘイトだのが消えたおかげで
どれもこれも似たり寄ったりの二番煎じなテンプレだらけになったがな
二次創作なのにオリジナリティというのは変な話かもしれない
その辺難しい
テンプレ書くような人はアンチ・ヘイトでも内容はテンプレでしかないから
おかげでってのは気のせいだ
>>540 今ここで書いてる人たちを貶すようなセリフをのたまうなら
二番煎じでもヘイトでもないオリジナリティあふれる作品を書いてからにしてくんないかな?
>445
原作からして
シャカ「少し手を貸してくれないか?ちょっと次元の狭間に落ちてしまってね」
ムウ「貴方なら自分で戻れるのでは?」
だからなぁw
自力で世界の壁を越えて戻るくらい確かにやりそうだw
っと、規制解けてると思わず亀レスしちまったorz
ウルトラの人乙ー。ついにあっちとこっちが繋がったか。
エヴァからミサトさん呼ぼうぜ
実力的には自衛隊員二、三人相手にタメ張れるし
ルイズの部屋がたちまちゴミ屋敷と化しかねんが
>>518 漫画版超兄貴とか懐かしいなぁ
あれだ、ジョゼフがボ帝様を召喚して、レコンキスタを筋肉の王国にするとかw
超が付く脳筋のミョズという、全く新しい使い魔になるな
>>547 だが、兄貴達の主食のプロテインはどうする?
聖地に伝説のプロテインが埋蔵されているという風聞を流すのさ……
まあ、漫画版だと主食ってほど必要とされてないし
雪花菜で代用できるんだっけ?
>プロティン
原材料も大豆だったはずだが。
不味いと評判の人工肉でどうにか
鍛冶屋とか陶工とか、コルベール先生に軍事に関わらない火の利用を示唆できる人いないかな
佐々木さんポジでタルブ職人村でもいい
>>551 そう言うのって、ハルケギニアじゃ大概の場合錬金でどうにか出来ちまうからな。
アルビオンの地下には伝説のプロテインが埋蔵されていて、その無限力のおかげで
あのドでかい大陸が浮いているのさ・・・・・・
予約などなさそうなので、時の使い魔の代理やらせていただきます。
「で、あんたどこから来たの?」
本日の授業も終わり、ルイズと時の君は部屋に戻って来ていた。
「時間妖魔のリージョンだ。」
「聞いたことが無いわね。」
「まぁ、知っているやつの方が少ない。位置的には、ムスペルニブルが一番近い。」
「ムスペルニブル?判らないわ…もしかして、ロバ・アル・カリイエの方かしら?」
「ムスペルニブルを知らない?…ここは、トリニティの管理下にあるリージョンでは
無いのか?」
指輪の君ヴァジュイールは妖魔の君の中でも三本の指に入るほど有名な妖魔である。
通常、知らないはずは無い。
「トリニティ?リージョン?何それ。全く聞いたことが無いわ。どうやらとんでもない
田舎から来たようね。」
「リージョンという概念自体が無いのかどうか…ふむ…まぁどうでもいいか。」
上級妖魔は、単独ならリージョン移動が出来る。時の君は下級妖魔だが、努力により
下級妖魔としては稀な、上級妖魔と同等の力を持つ。 なので、どこにいても、どこに
でも移動できるので未知のリージョンだからといって、特に困った事ではない。
「そんな田舎者に、使い魔としてすべき事を教えてあげるわ。」
「そうだな。何をすればいいんだ?」
そういえば、使い魔の契約はしたが何をすればいいのかまだ聴いていない。
「使い魔はまず、主人の目となり耳となる能力を与えられるわ。」
「見たり、聴いたりした事を伝えればいいのか?」
「そういうことじゃないわ。視覚や聴覚を共有できるの。…無理ね、何も見えないわ。」
「そうか。」
「それと、主人の望むものを見つけてくるの。秘薬の材料との硫黄とかコケとか…出来
る?」
「地理が判らないから無理だな。いずれ何とかしよう。」
「そうよね…」
一瞬、がっくりとうな垂れたが、立ち直り言葉を続けた。
「そしてこれが一番重要なんだけど、使い魔は主人を守る為の存在なのよ、その能力で、
主人を敵から守るのが一番の役目!……あんた妖魔なのよね?……なら、大丈夫よね?」
見た目はただの人間にしか見えない。やはり不安になってくる。
「妖魔だが?護衛か、まぁ大丈夫だろう。」
「な、何か証拠とか…そう!証拠を見せなさい!」
聴きたくないが、聴かなければならない。いざというとき人間でした。では話になら
ない。
「証拠といわれてもな…そうだ、私の血は青い。人間は赤いだろう。」
そういうと、唇の一部を歯で噛み切った。唇の切れた部分から、青い血が滴り落ちる。
「うわっ痛っ、あ…本当だ血が青い…本当に人間じゃないのね…そうだ!タオルタオ
ル!」
クローゼットからタオルを取り出し、時の君の口に当てる。
「血が止まるまで当ててなさい。人間じゃないことは判ったわ。後は、あなた強いの?」
「弱くは無いつもりだ。並みの妖魔にはひけはとるまい。」
「でも、先住魔法は使えないんでしょう?その代わり、時を操れるとか何とか言って
たけど…」
「他の術もある程度は使える。今は魔力が無いが、明日には回復するだろう。護衛に使え
るかどうか、明日見せよう。」
「そうね、明日見せて貰うわ。ふぅ…今日は疲れたわ、もう寝ましょう。」
眠そうな顔でルイズは服を脱ぎだし、時の君へ服や下着を投げてよこした。
「それ、洗濯しておいて。あとこれをあげるわ。」
そういい毛布を投げると、よほど疲れていたのか横になった途端、寝息を立て始めた。
「寝たか…今日は魔力も無いし大人しくしているか…」
妖魔である時の君には、休息は必要だが寝る必要が無い。この未知のリージョンの妖魔を
見てみたかったが、大人しく休むことにした。
朝になり、時の君は部屋にあった籠に洗濯物を入れ外へ出てきていた。
「そういえば、場所を聞いていないな。」
洗濯物を持ってウロウロしていると、同じく洗濯をするのであろう荷物を持ったメイドが
前から現れた。
「洗濯はどこですればいい?」
「ひゃっ!あぁっ!」
急に声を掛けられて驚いたのか、洗濯物が散乱してしまう。
「す、すいません。びっくりしてしまって…あっ、拾って頂いてありがとうございます。
洗濯場はあちらです。私もこれから行きますので、ご案内致します。」
「助かる。よろしく頼む。」
「では、行きましょう。…そういえば初めてお会いしましたが、どちら様でしょうか?」
「…ヴァリエール様に昨日召喚された者だ。」
「あぁ!ミスヴァリエールの!昨日噂になっていましたね、何でも妖魔を召喚したとか。
……妖魔?」
メイドの顔がみるみる青ざめていき、また洗濯物を落とした。
「ひぃっ!い、命だけは命だけは助けて下さい!わ、私の仕送りを待っている家族がいるん
です!き、兄弟が多くて私が稼がないと!ど、どうか…」
がくがくと震え、その場にへたりこんでしまった。
「落ち着け。洗濯場を聞いただけだろう。」
散乱した洗濯物を拾いながら、パニックになっているメイドに釈明する。
「せ、洗濯場で私の血を…!」
「何を言っている、目撃者も居なかったんだ。襲う気なら初めに会った時に襲っているだ
ろう。」
「ひぃっ!目撃者の居ない洗濯場で私の血を吸う気なんですね!?」
もはや、混乱しすぎて会話が全く通じない。
「…秘術《杯》」※秘術《杯》:状態異常を治療する。
突如、上空にカードが現れ、カードに描かれた杯から溢れ落ちた水がメイドの頭に当たった。
「安心しろ。人間を襲う気は無い。」
「はっ…す、すみません!急に取り乱してしまって…そうですよね、襲うならこんなに騒が
れる前に襲いますよね。」
「判ればいい。じゃあ案内してくれ。」
手を貸しメイドを立ち上がらせ、服に付いた土を払ってやる。
「あ、ありがとうございます!それに洗濯物まで拾って頂いて…」
思わぬ行動に、やや赤くなりながら深々と一礼し、そしてようやく洗濯場へ向け歩きだした。
「さっきは本当にすみませんでした。妖魔と聞いて吸血鬼を連想してしまって…」
the・shien
「別に構わないが、吸血鬼は相当恐れられているようだな。」
「ええ…最悪の妖魔と呼ばれています。人間と全く区別がつかなくて、先住魔法を使う
のでメイジでも返り討ちにあったりするんです。あっ洗濯場はここです。」
洗濯場に到着し、並んで洗濯を始めた。
「まだお名前を伺ってませんでしたね。私は、シエスタと申します。」
「時の君だ。」
「時の君様ですね。」
「時の君はあだ名だ。様は要らない。」
「ではお名前は何と言うんですか?」
「長い間一人だったからな、忘れてしまった。」
「自分の名前を忘れちゃったんですか!?ふふっ可笑しな方ですね。」
「妖魔の中でも変わり者と言われていたな。」
二人は話しながらも手際よく洗濯をこなしていく。
「それにしても、言い方は失礼ですけど、妖魔と並んで洗濯をする事になるなんて思っても
見ませんでした。」
「そうだろうな。」
「しかも洗濯物を拾って頂いたり、手伝って頂いたり、話しに聞いていた妖魔とは全然違い
ます。」
「私は前に人間達と旅をしていたからな、特殊なんだろう。」
「人間と妖魔が旅を!?本当に変わった方ですね…今度、機会があればその時の話を
聴かせてください!」
やがて、洗濯を終えて時の君は部屋へ戻った。
shienn
部屋へ戻ると、すぐに周りの部屋でも人が起き出した気配がしたので、ルイズを起こす事に
した。
「朝になったぞ。そろそろ起きろ。」
「…んん?」
「周りの人達も起き出して来ている。」
「はっ!だ、誰!?」
突如知らない人が目の前に現れ、ルイズは動転した。
「昨日、お前に呼び出された者だ。」
「ああ、そう、そうだったわね…ていうか、お前って呼ぶのはやめなさい!ちゃんと御主人
様と呼ぶのよ!」
「わかった。」
この使い魔は妙に物分りがいい。ルイズは、色々教育方法を考えていたのだが、どうしよう
か迷ってしまう。
「…とりあえずいいわ。着替えるから、下着と服を持ってきて。そこのクローゼットにある
わ。」
言われたとおりクローゼットから服と下着を持ってくる。
「これでいいのか?」
「着替えさせて。」
そういい、両手を前に出す。
「人を着替えさせたことは無いな…どうやるんだ?」
「しょうがないわね…いい?ちゃんと覚えるのよ。」
着替えを終え、朝食を取るために食堂へ向かった。
「あんたの食事はこれよ。」
指を差した足元には、スープとパン切れが二つある。いくら従順だとはいえ、今後の為にも
上下は、はっきりさせておく必要がある。明らかに少ないが、我慢も覚えて貰わなくては…
「そうか。」
そういうと、床に座り文句ひとつ言わず食べ始めた。
「…それで、足りるの?」
ここまで従順だと、いくらなんでも罪悪感を覚える。
「今はこれでいい。いずれにせよ、普通の食事じゃあ効率が悪いんだ。」
ルイズは『効率が悪い』という言葉に不安を覚える。…妖魔、人間、血…
「ま、まさか人間を襲うの?」
周りに聞こえないよう小声で話す。
「そんなことはしない。私たち妖魔は、栄養は必要ないが生命力が必要だ。例えば、生きた
人間の血を奪ったりするのはその為だが、別に人間である必要は無い。だから、人間を襲う妖
魔等から生命力を頂くさ。それならいいだろう?人間も助かるだろう。」
「そ、そう…い、いいわ。でも、これも食べなさい。効率が悪くても、少しは足しになるん
でしょう?」
一応は安心?したが、妖魔が見つからなくて腹が減ってきたら人間を襲うかもしれない。や
はり、妖魔は危険な存在なんだと改めて実感した。
さるったか? 代理の代理いる?
代理の代理行きます
----
食事も取り終わり、授業に出るため教室へと移動する。教室に入ると、ルイズと時の君の方
を見やり微かに笑っている生徒がいる。
「ところで、私はどこにいればいい?椅子に座ってもいいのか?」
「そうね…ここはメイジの席だし、とりあえず後ろのほうにいなさい。」
そう言われ、後ろにある壁によりかかる。まもなく教室に教師らしき女性が入ってきた。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって新学
期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ。」
シュヴルーズと名乗った教師は辺りを見回し、時の君へと目を止める。
「随分、変わった使い魔を召還しましたね。ミス・ヴァリエール、何でも妖魔だとか?」
シュヴルーズがそう言うと、教室に笑いが起こる。
「おい、ゼロのルイズ!本当は妖魔じゃなくて、平民を召還したんだろう!」
その言葉を受け、ルイズが立ち上がる。
「違うわ!あいつは妖魔よ!」
「嘘をつくな!お前が妖魔なんか召還できるわけないだろ!そもそも召還できたのかも怪し
いぜ、その辺の平民を連れて来ただけだろう!」
「ちゃんと召還も成功したし、あいつは妖魔だって言ってるでしょ!」
「だったら証ムグッ!」
シュヴルーズが杖を振ると、ルイズを囃し立てていた小太りの生徒の口に、赤土の粘土が押
し付けられる。
「お友達を侮辱してはいけませんよ。さあ、授業を始めましょう。」
授業が始まり、各種の魔法の説明がなされ、時の君は、自分が知っている術とは違う魔法に、
研究欲を駆り立てられていた。どうやらこのリージョンでは、他のリージョンと交流が無い為
に独自の魔法体系になっているらしい。
「今から皆さんには、土系統の基本である、《錬金》を学んでもらいます。そうですね、実
際にどなたに見せて頂きましょう。えー、ではミス・ヴァリエールお願いします。」
ルイズの名が出ると、教室に緊張が走った。生徒たちがざわめき出す。
「はい、わかりました。」
そのルイズの答えに、赤い髪の少女が立ち上がった。
「先生、危険です!」
「ミス・ツェルプストー、何故ですか?」
シュヴルーズは、疑問を口にする。
「ルイズを教えるのは初めてですよね?とにかく危険なんです!」
「確かに初めてですが、努力家で座学も優秀だと聞いています。ミス・ヴァリエール、失敗
を恐れずやってみなさい。」
「わかりました。」
ルイズには自信があった。召還も成功したし、何より皆は信じないが妖魔を呼び出したので
ある。
時の君は明らかな周りの変化に疑問を持った。ルイズが教壇に近づくにつれ悲鳴が起こり、
机の下に隠れたり、教室を出て行くものまでいる。
「何だ?」
時の君が辺りの様子を伺っている間に、ルイズが教壇に立ちシュヴルーズの時と同様に杖を
振り上げ、そして、短く呪文を詠唱し杖を振り下ろした。
瞬間、轟音とともに、目が眩むほどの閃光が起きた。爆風が巻き起こり、使い魔の生物達が騒
ぎ出す。そして、シュヴルーズ教師は大きく吹き飛ばされ目を回していた。
生徒達は避難していたので被害は軽微だった、爆心地であるルイズは体中を煤だらけにして
呟いた。
「ちょっと失敗したみたいね。」
「どこがちょっとだゼロのルイズ!」
shienn
ルイズは散乱した部屋の後片付けを命じられていた。
「何でゼロのルイズって呼ばれてるかこれでわかったでしょ。座学は得意でも、一度も魔法
が成功した事がないの。」
俯き、一瞬手を止める。
「さっきの爆発は魔法じゃないのか?」
「はぁ?皆の反応を見れば判るじゃない!あれは失敗したのよ!馬鹿にしてるの!?」
軽く苛立ちを憶え、時の君の方へ向き直る。
「違う、そういう事じゃない。確かに、土の魔法は失敗したんだろう。だが、爆発という結
果は魔法なんじゃないのか?」
机や壁の破片を集めながら疑問に感じた事を口にした。
「それは魔法でしょう。失敗だけど…」
「普通、失敗すると爆発が起きるのか?あれだけの威力が只の失敗とは思えないが。」
只の練金の失敗で片付けるには教室の惨状は凄まじい。
「え?普通は何も起こらないわ…爆発するのは私だけよ。」
時の君は、何やら考え込み掃除の手を止める。
「何考え込んでるの、手を動かしなさい!終わらないじゃない。」
再び片付けを始め、考えまとめた事をルイズに語った。
「…推測だが、あの爆発こそが御主人様の魔法なんだろう。」
「何よ、どういうこと?」
「私のいた所の術は相反関係にある術は習得出来ない。仮に、四大魔法とあの爆発が相反関
係にあるとすれば…」
時の君の言葉を遮り、ルイズが声を上げる。
「じゃあ何だって言うの!?私には普通の魔法は使えなくて、あんな失敗魔法しか出来ない
って言いたいの!?」
ルイズは、今まで従順だった使い魔にまで馬鹿にされた気がして、うっすらと目に涙を浮か
べた。
「あくまでも推定の話だ。術と魔法が同じものかは判らないだろう。ただ、相反関係の可能
性があるという話だ。」
「じゃあ、その推定が正しければ、私は爆発させる事しか出来ないって事じゃない…」
確定した訳ではないのに、何故かもう爆発しか出来ない気がしてくる。
「そうとは限らない。推測が正しいとしても、あの爆発が、空気の燃焼に依るものか、魔力
が暴発して起きるのか、それ以外の起因により引き起こされているのか、その原因を突き止め
られれば、空気の燃焼なら火の魔法が使えるだろう。魔力の暴発なら暴発しないよう形を整え
る。それ以外の起因に依るものでも、その対策を打てばいい。そうやって擦り合わせていく事
で応用の幅は広がる。爆発が基本でも、使い方は様々だ。」
「爆発の使い方…」
「そうだ。座学の成績は優秀なのに、今まで対策を打てなかったのはその前例が無かったか
らだろう。無ければ自分で一から創ればいい、魔法を。」
「自分で魔法を創るぅ?随分壮大な話しになったわね。」
「まぁ前提が推測だからな、こういう考え方もあるという事だ。ただ、これから行き詰まっ
てしまったらもう一度思い出してくれ。」
「もうずっと前から行き詰まってるわよ!どれだけ努力しても爆発しか起きないわ!このま
ま普通の練習をしても、もう…。」
涙を堪え、力強く言い放つ。
「だから協力しなさい!時の君も術だっけ?魔法みたいなもの使えるんでしょ、何か参考に
なるかもしれないわ。ていうか、まだ何も見せてもらってないわ…試しに今使ってみてよ。本
当に使えるんでしょうね?」
人間でないことは判ったが、まだ術は見ていない。
「そうだな…その前に、もう正午だ。掃除も終わった、とりあえず昼食が済んでからにしよ
う。」
ルイズが話しに夢中になっている間も手を止めずに掃除をしていたのであろう。すっかり教
室は片付いていた。
「もうそんな時間?そうね、昼食が終わってからゆっくり見せてもらうわ。」
そう言って二人は教室を後にした。
代理の代理
以上です
しえーん
乙
小動物のように縮こまるシエスタに不覚にもサド心がうずいたw
代理の人乙
野球大好きトキノクンのバッティング(戦闘)シーンが今から楽しみだ
代理の代理の人、どうもすみませんでした。
『マスク』からマスクを召喚
ルイズがそれを召喚した日から夜の間だけ学院に出現する超人的な魔法を使う緑の女
みなさん乙
キュルケイベントが某アニメでの白き天使とその黒い弟みたいに削れてるなぁ
そしてトキノ君が妖魔武具での吸収とかすんのかな、と思ってるうちに
一度もトキノ君を仲間にしたこと無いことに気付いた
ブルー編で麒麟よりも攻略が楽っぽいという理由で殺してました
オーヴァドライヴDSC最高
あとヴァジュイールの二つ名も初めて目にしたような気がした
せっかくだから久しぶりにプレイしてみようかな
>>572 小ネタを見るとキミはしあわ・・・複雑な気分になるかもしれない。
ボクらの太陽(GBA)で考えてみる
ジャンゴ 一番無難か
サバタ 多分従わない
ザジ 下手すれば帰りかねない
リタ デルフの出番がない…書きやすそうではある
おてんこさま 虚無の担い手=太陽仔 とか?
リンゴ・ダーインetc 主役以外の設定が少なすぎだぜorz
シャギア「サイトとルイズのラブラブの邪魔をするのだ」
オルバ「宿命のライバルだからだね、兄さん」
エドワゥ
「宿命のライバルとしては・・・・・・タバサ、彼女を手に入れねばなるまい あとテファニアも
これは私がライバルキャラとして宿命を果たそうとしているからであってけっして他意は無い」
時の君だが、開発段階ではフィオロという名前だったらしい。
ソースは裏解体新書。
男子高校生の日常から
ルイズ→タダクニ、
キュルケ→ヨシタケ
タバサ→ヒデノリ
フーケどころか決闘すら起こらず、ルイズの下着で遊び、
三人そろってひたすらグダグダな日々を送る
急ごう風が止む前に
どうやら電波がスレにとんでもないアイデアを運んできてしまったようだな・・・
>>572 いいな、くぎゅ声で「チキチキブンチキチキブン♪」とノリノリで歌って踊ってくれるのか
もしも、ルイズの召喚したのが爆弾岩だったら!
「メ・ガ・ン・テ」
うわーっ、ルイズが使い魔を爆発させたぞーっ!
って言える奴は残ってないのでは?
>>584 「馬車の中」にいれば安全
つまりメガンテは恐ろしい威力があるように見えて板一枚、布一枚で防げます
>>585 まて、メガンテは「自分の命を犠牲にして相手全体を消滅あるいは瀕死状態にさせる呪文」だ。
爆発自体が威力ではなくて、爆発に触れたものに効果を及ぼす……つまり、性質としてはザキに近いのかもしれん。
確かゲーム中では「音も無く崩れ去った!」とか描写されるからな
9ではどうだったか知らんが。…怖いから出会い頭に即爆弾岩ぶち殺してたから…
でもたしかマホカンタ使ったらバグる
ま、一つだけはっきり言える事は「爆弾岩がメガンテを使ったらその時点で話は終了」と言う事だな。
蘇生魔法が無いハルケギニアでは死んだらそれまでだし。
まあ、その辺に関しては学院の宝が世界樹の葉だったとか、ザオリクかザオラルを使える僧侶か賢者辺りが
シエスタの曽祖父で、その魔法がシエスタにも伝わってたとかすると言う手も有るかも知れんが、
前者は回数制限がやたらと厳しいし、後者はハルケギニアの状況じゃそんなの発覚したら先住魔法扱いされて
シエスタ自身のみならず、家族や親類縁者に至るまで大変な事になるのは明白だから迂闊には使わせられない。
そもそもその状況じゃ、少なくとも学院を働き口に選ぶ可能性は皆無に等しいし。
何せそれがばれたら、最低でも学院中のメイジが即座に敵に回ると言う物騒極まりない職場だからな。
余程な理由が無い限りそんな馬鹿な真似はしない。
つーか、基本的に爆弾岩は出オチキャラの部類だからなぁ。
あれからメガンテを取ったらキャラ的には文字通りほぼ何も残らなくなるし。
何でも先住扱いとか大間違いすぎる
杖もってりゃ単純に謎の上級系統扱いされるだけ
現時点で「謎の系統魔法」など存在しません
系統魔法は全て先人の模倣でしかなく、先人の模倣以外の魔法を
研究することは最大級のタブーです
アカデミーですら「どうやればよりよく先人の模倣ができるか」を研究する場所ですから
ワルド「待て、虚無は命を司る系統だと聞いたことがある」
メガンテ→サモン・サーバント→メガンテ
そもそも「系統魔法」と判明してるんなら(たとえそのメイジが独自に開発したオリジナルの魔法でも)、謎でも何でもないような……。
日替わりでタバサ(グランバニア)がルイズの返答次第で置いていこうとしてて噴いたw
爆弾・・・・・・
浜本、アキ、その他大勢の犠牲者たちを・・・
もしくは逆転させてヒイロとかレイとかボスとか
話が大きく逸れるけど、ウィンキー時代のままだったら秋津マサトにも最後は『自爆』が付くと思うの
明後日には発売のアレから横取りする感じでアクセルでも召喚しますか
レモン撃墜してない状態で
ソニックシリーズから
ルイズ=ソニック
タバサ=テイルス
キュルケ=ナックルズ 召喚
ゼロ戦が超ハイテク戦闘機に変形するようカスタムしたり
ニラ饅頭にチリドッグが学院で大流行したり
デルフがテイルスに鍛えなおされたりするんだろうか
ところで杖持たずに不思議なことしたら先住魔法扱いってネタはよく見るけど
これって原作にそういうシーンあったっけ?
シエスタが香水拾う話みたいな二次創作限定ネタかな?
杖持ってねーのに不思議なことしたら、先住魔法や魔道具だと思うだろ常考。
魔法使う時はほとんど全員がこれみよがしに杖を見せてんだし。
吸血鬼という人間と見分けがつかない妖魔もいるわけで。
吸血鬼、という疑いを掛けられて殺された親子のこと思い出し
疑心暗鬼にかられ〜みたいなので
SAWからジグソウ(ジョン)召喚
学院の貴族たちが次々と拉致され彼のゲームの被験者に・・・・・・物件確保することが出来るだろうか
無理っぽい
ジョゼフが召喚して自ら進んで被験者になって・・・も、ジョンが彼をパートナーにはしない気が
ゲームには生き残るだろうが彼の意図には当てはまることは無いだろうな
ああ、いっそジョゼフが沖田とヒロ君呼べばいいか
あいつらなら仲良くなれる
>>597 読者が知っている、魔法以外の不思議な現象が先住魔法しかないので、理解不能の出来事を先住魔法と
誤解させる手法がパターン化しただけ。
ただし、先住魔法でなにが出来るかということについて、ハルケギニアの魔法使いが無知であるとは
原作には明記されていない。常識的に考えると、長年敵対してる割に交流もある上、別に先住魔法使うのは
エルフだけじゃない以上、魔法学校の教師レベルでは知っててもおかしくないと思うが……その辺突っ込んだ
二次創作は見たことないな。
>>600 といっても宗教がかなり強いからなぁ
異端に関するものは積極的に排除していく傾向があるんじゃないだろうか
色々思惑があったとはいえ新教徒狩りが名目として通ってしまう世界だし
謎の系統魔法もちゃんとありえるんだよね
コッ禿がやったみたいに独自開発とかちゃんと存在するから
そういうのは初見だとどうしても謎の系統魔法になる
でも一般的に認知されてないだろうし、普通は異端と考えるだろう。
ハルケの貴族に柔軟な発想の持ち主は希少だし、殆ど自分の物差し、
枠にはめるやつばかりだろうから説明するだけ無駄。
まあ作品によっちゃなんとかご都合にもってくのもあるだろうけどさ。
604 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 03:57:53 ID:zrqvHBmC
ヒョードルを召喚したらどうなるの?
>>601 >新教徒狩りが名目として通ってしまう世界
新教徒狩りを目的に、だけど表向きの理由は疫病ということにして、部隊を動かしたって例はある。
だけど、新教徒狩りを名目にして虐殺を行ったことはないだろ。少なくとも原作の時代だと。
>>603 ハルケ一柔軟な発想の持ち主で、魔法の独自開発もしてる禿が召喚に立ち会ってる事をまるで無視してないか……
メンヌヴィルとか元素の兄弟のことを鑑みるに、上位のメイジともなればどこの忍法帳だよと突っ込みたくなるような摩訶不思議なのも結構いるだろうさ。
>>601 疫病を名目として新教徒狩りをしたのであって
新教徒狩りが名目として通ったわけではないだろ
16,7の小娘が異端狩りを目的に女王にすらツテを持つそれなりに地位と名声のある人物を
ぐつぐつお鍋で美味しく煮込むことがまかり通るのは確か
>>602 >>605 コッパゲのあれは新魔法じゃなくて、既存の魔法の組み合わせ。
火系統だけど土系統の練金も得意らしいコッパゲならではの応用技。
アルビオン行く途中にタバサのアイデアでキュルケとギーシュがコンビで使った技と同じもの。
コッパゲはそれを一人でやっちゃうところが凄いのさ。
新魔法というからには呪文から作らないといけないと思うが、それこそ禁止されているんじゃないか?
そう言えば、ある程度の権限さえあれば独断と偏見で異端審問やっていいんだっけ。
特にロマリアでは。
>>609 新魔法じゃなくて、既存の常識から外れた謎の系統魔法という可能性の話をしてるわけ。まあ、新魔法も含むけど。
あと、禁止されてるんじゃないだろうか、という推測から話を作るのは良いけど、それを常識として語るのはどうだろうかというあたり。
>既存の常識から外れた謎の系統魔法
ずばり、虚無扱いじゃね?
ちなみに、系統魔法はルーンで唱えるが先住魔法は口語で唱えるという対比がある。
あれギーシュって確かアニメの方で口語で呪文と撫でてなかったっけ
「土の精霊よ云々」みたいな。
>>613 そこはアニメ版の中でも1・2を争う突っ込みどころじゃなかったっけ?
>>614 だね
あとサモン・サーヴァント等のコモン・マジックは口語でOKだった筈
ポケモンのアニメで、泣き声がゲーム基準じゃなく、ピッカチューとか種族名を叫ぶのと一緒で気にしたらあかん
>>613 DVD版だと修正されたよ
流石にツッコミがスタッフにも届いたらしい
>>610 異端審問ができるというより貴族だからできるとゆーのが正しいんじゃないか?
貴族は事実上平民を手打ちにしてもお咎めは無いのだから
もし異端の疑いをかけられてるのが有力貴族なら勝手に異端審問して許されることはないだろうし、
逆に相手が平民なら名目が異端審問でなくて貴族に無礼を働いたからとかでも殺せるはずだ
逆にギーシュさんは実は精霊魔法の使い手だったと考えるんだ
…っていうかそういうネタで話作ったのがあったような?
もう「ゆでだから」でいいよ。
代理投下よろしいでしょうか?
代理投下いきます
ルイズ・フランソワーズにとって、今体験している不可思議な出来事は一生忘れられないだろう。
別の世界で巫女さんをしているという霊夢を召喚してからというもの、色々な事があった。
ギーシュとの決闘騒ぎやフーケ退治、挙げ句の果てには戦争中の他国にまで行く始末。
しかもその出来事の全てに霊夢も関わり、いつの間にか全部霊夢が片づけてくれた…気がする。
そして全てが終われば霊夢は学院の外へ飛んでいき、気が向けば自分の部屋にいてお茶を飲んでいる。
きっとそんな光景は、いずれ終わるだろうと。ルイズは思っていた。しかし…
(だからといって、これは不可思議を通り越して摩訶不思議ね…)
ルイズは心の中でそう呟き、大きな溜め息を盛大についた。
今彼女は霊夢の家―――― つまりは博麗神社…の外れにある社務所の居間にいた。
先程寝かされていた部屋と同じような感じの造りをしており、初めて見る物である。
居間の丁度真ん中には大きな机が置かれており、その周りには座布団が三枚ほど敷かれている。
そしてその座布団に崩し正座で座っているルイズの他にはきちんと正座で座っている霊夢と、先程からルイズの顔を見てニヤついている紫がいた。
数分前―――
先程の自己紹介の後、まず紫はルイズに色々と話したいことと聞きたい事があると言った。
ルイズは紫の能力と不気味な笑顔をみた後では強気な態度は出せず、コクリと頷くことしかできなかった。
頷いたルイズを見た紫はウンウンとひとり頷くと二人を連れて居間へと移動した。
それほど長くもない廊下を歩いている最中に、窓から外の景色を見ることが出来た。
まず最初に目に入ったのが、見たことのない造りをした建物であった。
あんな形の建物はハルケギニア中何処を捜したって見つかりはしないだろう。
「アンタ、何を見てるのかと思えば私の神社を見てたのね」
ルイズの後ろにいた霊夢は、窓から自分の神社を見ているルイズに気づいたのか、さりげなくそう言った。
一方のルイズは、聞いたことのない単語にキョトンとした。
「ジンジャ…って何よ」
「う〜ん、なんと言ったらいいか。とりあえずアンタたちで言う教会みたいな所かしら」
霊夢はそこまで言った後、何かを思い出したのだろうか。「そういえば、しばらく見てないわねぇ…」と呟いていた。
彼女の呟きが何なのか判らないルイズはとりあえず肩を竦めるともう一度窓から外の様子を見ることにした。
その時になって気づいたことは、まだ外は薄暗いがどう見ても夜中でなく未明の時間帯であるという事だった。
(私が意識を失ったのは夜中だから…もしかしたら五、六時間ぐらい過ぎてるのかしら?)
そんな事を思っていると、今まで黙っていた紫が突然ルイズに話し掛けてきた。
「突然こんな所へ連れてきて申し訳なかったわね。本当ならもっと時間を掛けて接触しようと思ったのだけれど…
時間が無かったから少し予定を変更して、博麗の巫女と一緒に無理矢理連れてくることにしましたの。」
クスクスと笑いながらそう言う紫を見て、霊夢は呆れた表情になった。
「全く、それならそうともっと早く来れなかったの?アンタぐらいならすぐでしょうに」
「あら?随分と買いかぶられているようですね。所詮私の力は境界を操る゛程度゛なのよ」
「よく言うわねぇ…」
紫の言葉に霊夢は肩を竦めつつも移動し、居間に到着した。
この間わずか一分ぐらいであったが、ルイズにとってはその一分が少しだけ長く感じられた。
居間へついた三人の内一人(霊夢)は、最初から居間に座布団が敷かれている事に目を丸くした。
(おかしいわね…召喚される前には座布団を三枚敷いてた覚えは無いんだけど)
不思議そうに座布団を見つめる霊夢を見て、紫はテーブルの右側に敷かれた座布団に座りつつも霊夢に説明した。
「心配ご無用。藍に敷いておくよう言っておいたのよ。『向こうの世界』で随分のんびりしてたからね」
紫の言葉を聞いた霊夢は安心したのか「あっ、そう」とだけ呟き、左側の座布団に座った。
そして残った一枚は先に座った二人から見れば上座の位置に敷かれている。
ルイズは二人が座ったのを見て、崩し正座ながらも残った一枚に座る事にした。
そして時間は今に戻る―――
紫はルイズが座ったのを確認すると口を開いた。
「まずは、貴方に聞きたい事が一つあるのだけれど、よろしくて?」
そう問いかけた紫の言葉に、ルイズは不安そうな顔で頷いた。
「そう。じゃあ最初に聞くけど、貴方が霊夢を召喚したのね?」
うっすらと笑顔を浮かべつつ紫はそう言い、ルイズはその質問に対し、どう言おうか迷った。
先程の隙間――つまりは紫の能力――を見た限り、相手がタダ者では無いことは確かである。
そんな未知の相手を前に、下手なことを言えばどんな目に遭ってしまうのかわからない。
(それに…自己紹介の時に人攫いが趣味って言ってたし…)
どう答えようかと悩みつつも心の中でそう呟いた時、突然紫がクスクスと笑い、ルイズに向かってこう言った。
「フフフ…人攫いと言ってもそんな無闇に人を攫うような事は致しませんわよ?」
「―――!?」
その言葉にルイズは驚きを隠せず、目を見開くとビクッと体を震わせた。
一方の霊夢はそんな二人のやり取りを見て、何が何だかわからず首をかしげる。
「どうしたのよ突然驚いちゃって…?」
「別に何でもないわ霊夢。ただこの娘、考えることが全部表情に浮かんじゃうだけよ」
霊夢にそう言った後、驚くルイズに「で?質問の答えは…」と言った。
ルイズは目を見開いたまま先程の質問に答えた。
「ぇ…え、ぇ…そう、私よ。私がレイムを召喚したのよ。は…春の使い魔召喚の儀式でね」
「使い魔の召喚…ね。だとするとアレは不慮の事故って事かしら?」
思い切ってそう言った後、紫は真剣な顔つきになると手に持っていた扇子を机に置いた。
一方のルイズは「不慮の事故」という言葉を聞き、首をかしげる。
それを見た紫の口元に笑みが浮かび上がり、口を開いた。
「どうやら意味がわからないようね。まぁこれから色々と説明するから、その合間に話すことにするわ。」
紫はそう言い、ルイズにここは一体何処なのか、そして今どういう状況になっているのかを話しはじめた。
◆
紫の丁寧な説明を聞きつつ、私は驚くことしかできなかった。
まず最初に伝えられたこと。それは、ここが「ハルケギニアとは全く違う異世界」だという事。
当然私は驚愕したのだが。驚く暇すら与えず紫はこの異世界について淡々と説明し始めた
ここは幻想郷と呼ばれているところで。人間…それに「妖怪」という聞いたこともない種族や「妖精」といった伝説上の存在が住んでいるらしい。
彼らはこの幻想郷でしか住むところが無く。回りから大妖怪と一目置かれる紫がこの世界を創ったというのだ
そして博麗の巫女である霊夢がその世界を結界(私も何度か見てきたあの光の壁みたいな物)で覆い、守っていると言うことも。
私はその説明を聞いたとき、自分の目の前にいる紫が人間ではなく「妖怪」と呼ばれる存在なのだと気づいた。
(でも…今になって思い出してみると。あの変な隙間とか不気味な笑顔で人間じゃないって気づけたんじゃないのかしら?)
そんな風に心の中であの裂け目の中の目や不気味な笑顔を思い出し、ブルッと体を震わせた。
しかもこの世界を創造したと言っているのだ。もはやそれは妖怪というより神に近い存在では無かろうか。
更に今まで私の部屋で一緒に過ごしてきた霊夢はその世界を維持する結界を張っているというのだ。
私の世界で例えれば、始祖ブリミルとロマリアの教皇に謁見しているのと同じ事である。
(イヤでも…この二人ってそれ程堅苦しい性格には見えないし…何より始祖ブリミルに失礼ね。
どっちかというと名のある土地の領主様とそこの治安を守る腕利きのメイジとの会合ってところかしら?)
そんな風に考えている私の心を読んでか、紫はクスクスと笑いつつ、説明を再開した。
次に紫が話したことは、私の行った召喚の儀式で霊夢が私の世界に喚ばれてしまったという事。
結果、幻想郷全体を覆う「博麗大結界」が不安定な状態となり、幻想郷崩壊の危機に陥ったというのだ。
つまりは、今目の前にいる霊夢は、この世界の中枢と呼ばれる存在なのだ。
その話を聞いた私は、自分の顔色がどんどん悪くなっていくのを直に感じていた。
「もしかしたら私は、この世界の住民に…大変なことをしちゃいました。…ってところ?」
私は自分の顔が青くなっていくのを自覚しつつ、確認するかのように紫に向かってそう言った。
何せ今目の前にいるのはこの世界の中枢とも呼べる存在が二人もいる。霊夢はともかくきっと紫はかなりご立腹に違いない。
そんな風に思いつつ、私はどんどんと顔色を悪くしていく最中…紫は言った。
「別にあなたが悪いとは私は言ってないわよ?むしろ好都合だったわ」
「……えっ?―え―え、えぇ〜…?」
てっきりキツい罵声が飛んでくると覚悟していたルイズは拍子抜けしてしまった。
拍子抜けするのも無理はない、何せこの世界の創造者は怒りもせず、更には好都合だと言ったのだ。
「好都合?ちょっとどういう事よ紫、私にはサッパリなんだけど」
ワケがわからないのは霊夢も同じだったようで、顔を顰めている。
「まぁそうよね〜。私にとっても降って沸いた偶然なのだから。まぁ話しておいた方が良いかしら?」
そう言うと紫は良くわかっていない霊夢に説明をした。
少女説明中―――――
寄せ鍋(ヨシェナヴェ)でも食べながら待っていてください。
「…ふーん。妖怪達の生活向上ねぇ」
紫からの説明を一通り聞いた霊夢は興味が無いと言いたげな表情でそう言った。
一方の紫は霊夢とは真逆に嬉しそうな顔である。
「えぇ…。あの世界を調べていく内にわかったのだけれど、向こうの技術は幻想郷と相性が良いのよ」
「だから今回の件は無かったことにするって事ね。私は別に良いけどレミリアとかはどうなのよ?」
霊夢の言うとおり、レミリアのようにプライドがあって尚かつ自らの住処を荒らされるのを良しとしない者が黙っているはずが無いのだ。
今回のことを許せば貴方達の生活はもっと良くなりますよ、と言って素直にはいそうですかと言うワケがない。
幻想郷に住む妖怪達にとって此処でしか住む所が無いのだ。
しかし、霊夢の質問に紫はその顔に微笑みを浮かべつつ言った。
「流石の私もあの娘の説得には骨が折れそうだったけど何とかなったわ。
後のことはもう一度会ってみなければわからないけど…まぁ多分何とかなるわね。」
紫はその言葉でふぅ…と一息つくとルイズの方へと向いた。
何が何だかわからず、今まで置いてけぼりだったルイズは何故か身を強ばらせてしまう。
◆
ガリア王国――
ハルケギニア大陸のほぼ中央に位置するその国は人口約1500万人を抱える魔法先進国である。
日々職人達が様々なマジックアイテムを作成しているのだ。
中でも人形作りに関しては特筆すべき所があり、各国から届く注文の手紙は絶えない。
平民達も満足した生活が出来ているその国の宮殿は首都リュティスから離れた所に建てられていた。
ヴェルサルテイルと呼ばれる宮殿の中に青いレンガで作られたグラン・トロワという宮殿がある。
そのグラン・トロワの一番奥の部屋には、この国の王がいた。
その男の名はジョゼフ。現ガリア王国の国王である。
青みがかかった髪と髭に彩られた顔は、見る者をハッとさせるような美貌に溢れていた。
均整のとれたがっしりとした長身が、そんな彫刻のような顔の下についている。
今年で四十五になるのだが、どうみても三十過ぎにしか見えない若々しさ。
そのような美髯の美丈夫は自らの寝室に一人の女を招き入れていた。
黒い艶やかな髪が特徴的なその女は、あのシェフィールドだった。
「あなた様の指示を受け、クロムウェルが神聖アルビオン共和国の初代皇帝となるようです」
シェフィールドは、クロムウェルやボーウッドの前でとった時とは180度違う態度でジョゼフにそう報告した。
その報告に満足したのか、ジョゼフはその美しい顔に微笑みを浮かべると口を開いた。
「どうやら、世界は俺の読み通りに動きつつあるな」
誰に言うとでも無くジョゼフはそう呟きつつ、部屋の真ん中に設置されたテーブルの上に置かれている一本の杖へと目を向けた。
騎士が使うようなレイピア型のそれには、どす黒く変色した゛血゛が大量にこびり付いている。
ジョゼフはその杖を手に取ると既に固形化している血液を指先でツンツンとつついた。
「確か、これをやってくれたのは…トリステインの元子爵、だったかな?」
「ハイ。今現在は重傷を負い寝たきりの状態ですが後一週間もすれば回復するとのことです」
シェフィールドは淡々と報告しながらも、ジョゼフの顔をジッと見つめていた。
その報告を聞いたジョゼフはウンウンと頷きつつ、手に持っていた杖をシェフィールドに手渡した。
「良し、その子爵には俺の財布で新しい杖を買い与えてやろう。これ程の偉業は無いからな」
「了解しました。して、この杖…もとい付着している血液は゛実験農場゛に送れば宜しいのですね」
言いたいことを先にシェフィールドに言われてしまったのか、ジョゼフは目を丸くした。
「さすがは余のミューズだ。もう心を読まれてしまったか!」
大げさに驚いているジョゼフを見て、シェフィールドは薄笑みをその顔に浮かべた。
「そうでなければ。貴方様の使い魔として生きてゆけませぬ」
「相変わらず可愛い奴だ!とにかく、それぐらいの量なら科学者共の力で充分作れるだろう」
ジョゼフはそう言うと窓の方へと近寄り、遙か空の上にある双月を仰ぎ見た。
「俺は作り出してやろう。埋もれた歴史の墓場に佇んでいた伝説の存在を…」
そう言った瞬間、ジョゼフはバッと両手を広げ大声で叫んだ。
「そして今の時代をその伝説で壊してやる!俺がこれから指してゆくゲーム盤の上に潜ませてな!!」
◆
「さてと、次は貴方に聞きたいことがあるのだけれど…」
その言葉に、ルイズはとりあえず頷いた。
「まずはあなたがさっき言ってた春の使い魔召喚の儀式について質問だけど。それには一体何の意味があるのかしら?」
これが本題だと言わんばかりに興味津々な眼差しで紫はルイズに聞いた。
突然そんな事を言われたルイズは戸惑いつつもその質問に答えた。
「あれは、私たちが二年生になる為の必要な行事よ」
「成る程…進級行事というわけね。それで、使い魔を召喚したその後は?」
少し机から身を乗り出し、紫は更に詳しい説明を要求した。
「そのあとは…召喚した使い魔によって今後の属性を固定し…それぞれの専門課程へと進むのよ
グリフォンや風竜の子を召喚したら『風の属性』の専門課程へ。サラマンダーを召喚したら『火の属性』の専門課程。という風に」
そこまで聞いた紫は満足したかのようにウンウンと頷いた。その顔はまるで昔話を聞いて喜ぶ子供のようである。
「成る程、貴方の世界ではそういう行事があるのね。聞いてて飽きないわ」
更にその後、紫からの質問が何度か行われた。
貴方が住んでた世界は一体どんな所で、どんな国があるのか。
どんな種族がいて、どのようにして暮らしているのか。
マジックアイテムのような特殊な道具はあるのか。
製鉄や造船などの技術がどれくらい進んでいるのか。とか等々c…
座学においてはタバサと一、二を争うルイズは数々の質問に、とりあえず知っている限りの事を教えた。
そんなこんなで軽く一時間が過ぎ、(ルイズにとって)長い長い質問攻めは…突然腰を上げた霊夢によって終わりを告げた。
二人のやり取りの合間に淹れてきたお茶を眠たそうな顔で飲んでいた霊夢の表情は、真剣なものになっている。
紫の質問に答えていたルイズはどうしたのかと霊夢の方へと顔を向けた。
一方の紫も、ルイズの゛記憶゛の一部からでしか見れなかった異世界の話を楽しんでいたのだが、ふと霊夢と同じく表情を変えた。
しかしその表情は真剣な顔つきの巫女とは違う。面白い物が見れるといった感じである。
一体何なのかとルイズはキョトンとしたが、辺りを見回してもおかしい所は何もない。
ルイズは首をかしげつつも霊夢の方へと顔を向けたその瞬間――
インストール文ふいた支援
「ハァッ!」
キ イ ィ ン ッ ! !
威勢の良い霊夢の声と共に金属特有の甲高い音が直ぐ傍から聞こえてきた。
突然のことにビクッと体を震わせつつルイズはその音の方へと視線を向ける。
そこには、いつの間にか青白い結界を張っている霊夢がいて――その結界にはナイフが刺さっていた。
ナイフと言ってもかなりの大きめの物である。刺さればかなりの深手を負う事間違いなしである。
ただ、その刃先はルイズ本人には向いてはいない。
霊夢が結界を張っていなければ丁度彼女の頬を掠って背後の壁に突き刺さっていただろう。
「ひっ… ひぇぇ……」
気づかぬ間に自分のすぐ傍に刃物があった事に気がついたルイズは気を失ってしまった。
「はぁ〜…全く、相変わらず手の込んだ事をするわね。挨拶ならもうちょっと工夫しなさいよ」
霊夢は気絶したルイズを見て溜め息交じりにそういうと結界を解除し、そのナイフを手に取った。
そして部屋の中を見回し、いつの間にか開いていた窓に気づくとそちらの方へとナイフを投げ捨てた。
放射線を描きながら音を立てて回転ナイフはそのまま外へと飛んでいき、勢いよく地面に刺さった。
それから間もなくして、メイド服を着た銀髪の女性が突然現れ、地面に刺さったナイフを抜きそれを手に持っていた鞘に収めた。
鞘に収めたナイフを腰に差すと、メイド服の女性、咲夜は窓からこちらを睨み付けている霊夢に話しかけた。
「どうせ貴方が防ぐと思ってしたまでの事よ。それに直撃もしなかったと思うし」
平然と言う咲夜に霊夢は嫌悪感丸出しの態度で返事をした。
「だったら刃物なんか投げないで頂戴。壁に刺さってたらどうしてくれたのよ」
「それは面白そうね。当たったら何か景品でもくれるのかしら?」
「はいはいそこまでにしときなさいな。戦いたいのなら後にしなさい」
霊夢の横からちらりと顔を出した紫が突如二人の会話に割り込んだ。
咲夜は肩をすくめながらも今度は紫に話し掛ける。
「私は別に戦いたくはないわ。ただお嬢様から一足先に軽い挨拶をして来いって言われただけよ」
「成る程…やっと交渉が成立したと思ってたけどまだ根に持ってるようねあの我が侭お嬢様は」
「何なら今ここでお嬢様の開放できない怒りを貴方にぶつけても良くってよ?」
少し危なっかしい会話の最中、今度は霊夢が割り込んできた。
「ちょっと紫ー。ルイズが気絶してるんだけど」
霊夢はそう言うと気を失って倒れているルイズの頭を小突きながらそう言った。
咲夜も近づいて窓から覗き込み、本当に気を失っているのを見て「あらら、子供には刺激が強すぎたかしら」と呟いた。
あの後、霊夢は気絶したルイズを再び客間へと移し、寝かせることにした。
咲夜はレミリアが今夜にでもルイズへ挨拶しに来ることを伝え、そさくさと帰ってしまった。
「ホント、あっという間に帰っていったわね」
紅魔館へと飛んでいくメイドの後ろ姿を神社の境内から見ながら、霊夢はポツリと呟いた。
同意と言わんばかりに横にいる紫も頷き、口を開いた。
「そのようね…さてと、私も一旦帰ることに致しますわ」
紫はそう言うと隙間を開きその中へ入ろうとしたが、思い出しかのように突然こんな事を言ってきた。
「そうそう霊夢、結界の事について話したいことがあるから今夜辺りにもう一度来るからそれだけ覚えておいて頂戴」
それだけ言うと紫は隙間の中へとその身を入れ、その隙間もまた消滅した。
結果、一人神社の境内に取り残された霊夢は溜め息をつき、頭上にある空を仰ぎ見た。
薄暗いが、いつも見慣れている幻想郷の空を見て、霊夢は幻想郷へと帰ってきた直後の出来事を思い出していた。
◆
ルイズと一緒に幻想郷へと戻ってきた直後
紫はすぐに霊夢へ結界の異変について一通りの事を話した。
霊夢がいなくなって暫くした後、まるで白紙に描かれた絵の上に更に絵を描いたように、結界の上に未知の力が覆い被さったという。
調べてみたところ、霊夢を連れ去った召喚ゲートとよく似た性質だったという。
その未知の力が、驚くべき事に幻想郷を覆う博麗大結界を浸食しているらしい。
「大結界を飲み込んでるって…それじゃあ全部飲み込んだらどうなるのよ」
紫と共に境内に佇みながら霊夢はそんな質問をした。
一方の紫は、いつになく真剣な表情で、こう答えた。
「こんな事は私にとっても今まで生きてきて初めての事だわ…つまり」
「つまり…?」
霊夢は首を傾げた。
「私にも予測がつかない、という事よ」
とりあえずは応急処置と言うことで浸食されていた部分を元通りにする作業が始まった。
結界に小さい穴が空いたり、結界が脆くなってしまうのは良くあることである。
そんな部分を見つけるたびに修復する紫(最近は藍に任せっきりだが)。そして結界を創り、補強する博麗の巫女の手に掛かれば…
浸食してしまった部分を元に戻す作業は、わずか四時間で済ますことが出来た。
紫だけでも結界を直す事は可能だが、下手にそんな事をすれば結界は崩壊していただろう。
こうして、たった四時間を費やしとりあえずは未知の力から博麗大結界を守ることに成功した。
◆
「…まぁ応急処置だけだったから、ついでにあちこち補強するんでしょうねぇ」
あぁヤダヤダ、と呟きながら霊夢は大きな欠伸をした。
そういえば今日はまだ寝てなかったな〜と思いつつ社務所へと戻り始めた。
「久しぶりの布団…あぁはやく横になりたいわ」
眠たそうに目を擦りながらそんな事を呟き、また一つ大きな欠伸をかました。
それから大体四時間が経過しただろうか。
太陽もようやく顔を出し、布団で横になっていた霊夢も起きて朝食(久しぶりの和食)を食べた後。
社務所の縁側で途中からやってきた二人の知り合いと一緒にお茶を飲んでいた。
未明頃に考えていた事など、すっかり記憶の片隅に追いやって談笑している。
「…そんなこんなで、今も寝てるというワケよ」
霊夢は横でお茶を飲んでいる二人に、今までの出来事もとい思い出話を丁度語り終えたところであった。
「ふ〜ん。つまり、そのルイズとかいうのは異世界があるのを知ってビックリして気を失ったというワケか」
いつも被っている帽子を傍らに置いてある魔理沙はお茶を飲みつつもそう言った。
魔理沙の言葉に、隣にいたショートヘアの少女――アリス・マーガトロイド (以後アリス)―が突っ込んだ。
「あんた全然霊夢の話聞いてなかったでしょ?どう聞いてもメイドの挨拶が原因でしょうに」
◆
霊夢が幻想郷に帰ってきたことは未だに多くの者が知らない。
知っているのは八雲紫やレミリア、それと紅魔館で話し合っていた者達だけである。
当然部外者であるアリスや魔理沙は霊夢が帰ってきた事等全く知らなかった。
それなのに何故、この二人が偶然にもこの神社へ一目散に来たのだろうか。それに対し魔理沙が勝手に答えてくれた。
「どうだアリス、霊夢はやっぱり帰ってきてたぜ。この賭は私の勝ちだ!」
霊夢を指さしながら嬉しそうに言う魔理沙とは正反対に、アリスは不機嫌であった。
「ふぅ…全く、お陰で昼食を奢る羽目になっちゃったわ。ま、とりあえずおかりなさい。とでも言っておこうかしら」
どうやら、魔理沙の運勢がただ良かっただけらしい。
結果、魔法の森に住む普通の魔法使いと人形遣いは紫と咲夜の次に霊夢と顔を合わせた。
◆
アリスのさりげない突っ込みに、魔理沙はコロコロと笑った。
「確かにそれもあるが、ホラ何だっけか?確か外の世界から来た大抵の人間も幻想郷に来たらすぐに気絶するんだろ」
それと同じようなもんだぜ。と言った直後、ふと横の方から写真機のシャッター音が聞こえてきた。
外の世界では゛古物゛と呼ばれている写真機はある程度流通している幻想郷では少し珍しい音である。
更に、人里から充分離れたこの神社でシャッター音を鳴らす者を、三人は良く知っていた。
「いやはや、聞き慣れた声が耳に入ったので飛んできてみれば…これは正に一大ニュースですね」
元気そうな声の主はそう言いいつつ首からぶら下げていた写真機から手を放す。
白いブラウスに黒のショートスカートは、一見すれば魔法学院の制服とよく似ていた。
黒髪のショートヘアがよく似合う頭の上には小さな赤い帽子(いわゆる天狗帽子)を被っている。
何よりもまず目にはいるのが背中から生えている黒い翼であった。
幻想郷ではまずもってそんな翼を生やしているのは、「鴉天狗」と呼ばれる者達だけだ。
「よぉ文。相変わらずこういう事にはえらく速いんだな」
「あっ、魔理沙さんじゃないですか!それにアリスさんも…こんなところで出会えるなんていやはや、奇遇ですねぇ」
魔理沙は微笑みつつ片手を上げつつ、神社にやってきた鴉天狗に挨拶をする。
次いで文と呼ばれた鴉天狗も人を喜ばせれる笑顔で魔理沙とアリスに挨拶した。
「誰かと思ったらアンタか、一体何の用よ?」
一方の霊夢はというと、半ば呆れた感じで目の前にいる鴉天狗に声を掛けた。
「いえいえ、私はただ風の噂で貴女が゛異世界人゛と一緒に帰ってきたというのでつい…あぁ、後コレを」
丁寧な口調で鴉天狗――射命丸 文(以降 文 )――はそう言うと左手に持っていた新聞をポイッと霊夢の方へ放った。
ほぼ反射的にその新聞を受け取った霊夢はしかめっ面になった。
「ちょっと、何勝手に放り投げてるのよ」
「貴方がいなかった時の文々。新聞です。どうぞ読んでみてください」
嬉しそうに言う文に勧められ、霊夢は嫌々新聞を広げ最初に目についた記事のタイトルを読んだ。
「紅魔館一同、来るべき日に備えて戦闘訓練…―――って、何よコレ?」
デカデカと新聞の一面を飾るタイトルと槍を持った紅魔館の妖精メイド達の写真を見て霊夢は驚いた。
紫の話を聞き幻想郷が結構大変な事になってたと知っていたが、まさか自分がいない間にこんな事があったとは全く知らなかったのである。
(まさかレミリアの奴、本気で異世界にまで行くつもりだったのかしら?)
そんな事を思っている霊夢の隣から新聞を見ていた魔理沙はつい先々日のレミリアを思い出して目を細めていた。
「あぁ〜そういえばこんな事もあったわね。あの時は本当に戦争が起きるのかと思ったわ」
一方のアリスはというとまるで他人事のようにそう言いお茶を啜っている。
「でしょでしょ?さてと、折角お会いしたことですし一つお話を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか?」
その時、ふと誰かが霊夢に声を掛けてきた。
「あら?なんだか社務所の方が騒がしと思ったら…随分とおそろいの様ね」
その大人びた雰囲気の声に霊夢は顔を上げると、予想通り永遠亭の薬師である永琳がいた。
彼女の後ろには弟子の鈴仙・優曇華院・イナバ(以降 鈴仙)がおり、赤十字が目立つ白い薬箱を両手で抱えている。
「あら、お久しぶり。永夜異変の時以来じゃないのかしら?こうやって顔を合わすのは」
「久しぶり。…というのは貴女の物理的視点から見ればでしょう。私はもう何百回も貴女の顔を見てるわ」
永夜異変以来に見た永琳と鈴仙の姿に霊夢は素っ気ない挨拶を送った。
一方の永琳は良くわからないことを言い、ふと辺りを見回した後霊夢に話しかけた。
「ねぇ、貴女と一緒にやってきたという異世界の少女は何処にいるのかしら?周りには知ってる顔しかいないんだけど」
「ルイズの事…?それなら奥の客間にいるけど――まずは先に何をするのか聞かせて貰いたいわね」
そう言って疑いの眼差しで睨み付けてきた霊夢に、優曇華は後ずさったが一方の永琳は涼しげにこう答えた。
「疑ってるようね?私はあの吸血鬼と違って痛い目に遭わしてやろうなんて思っちゃいないわ。ただ八雲 紫から軽い検査をしておくよう頼まれただけよ」
霊夢は薬師の口から出た大妖怪の名前に目を細めた。
「紫が?なんか怪しいわね。…でもまぁ、特別変な事しなけりゃあ私は何も言わないけどね」
先程文が渡してくれた新聞を見た所為か霊夢は少し永琳を疑っていたが、それはただの勘繰りすぎだったようだ。
「ご理解感謝致ししますわ。じゃ優曇華、後の方はよろしく頼むわ」
「あ、はい。わかりました」
巫女の了承がとれ、永琳は自分の弟子である鈴仙に検査をしてくるよう指示した。
鈴仙は丁寧に縁側で靴を脱ぐと薬箱を抱えて客間の方へと歩いていった。
自分の弟子が行ったのを見届けた後、永琳は魔理沙の横に座り霊夢の顔を見た途端、大きな溜め息をついた。
「…全く。幻想郷は大変だったというのに朝からお茶を飲んで談笑しているなんて、暢気な巫女さんねぇ」
永琳の口から出たその言葉に、霊夢は一瞬だけ目を丸くしたのだが、すぐに反論した。
「私だってただ紅茶とか飲んでぐーたらしてたワケじゃないのよ。色々大変だったんだから」
霊夢はそう言いつつ、ハルケギニアでの出来事を思い出そうとしたが、突如魔理沙が割り込んできた。
「どうせその大変な事だって、お前はタダ見てただけなんだろ?」
ワルドやギーシュとの戦いを思い出そうとして妨害された霊夢はムッとした表情になった。
「何言ってるのよ魔理沙、むしろ見てたのはルイズの方よ。本当あっちの連中はそれなりに強かったんだから」
ま、もうこれで終わりだけどね、と呟いた後お茶を飲もうとしたが、今度は永琳が話し掛けてきた。
「貴女、もしかしてこれでめでたしめでたし。とか思ってるんじゃないでしょうね?」
「―――――――――――は?」
緑色の渋い味がする液体が後一歩で口にはいるという時に耳に入ってきたその言葉に、霊夢はキョトンとした。
そんな霊夢の表情を見て、永琳は呆れた表情をその綺麗な顔に浮かべると霊夢にこう言った。
「今夜にでも教えられると思うけど。多分もうしばらくは向こうの世界で過ごす事になるわよ」
カチャン!
永琳がそう言った後、ふと横から甲高い音が聞こえた。何かと思いそちらの方へ顔を向けると…
湯飲みを取り落として割ってしまったのにもかかわらず、キョトンした表情のまま硬直した霊夢がいた。
これにて、29話の投稿を終わります。
29話は、最近のゲームで例えると「数十分ぐらいのムービーシーン」という感じです。
つまり「ゲームをプレイしてる筈なのに映画を観ている」という気分で書いていたと思います。
霊夢が久しぶりに出会った魔理沙達との会話や幻想郷の様子、そして動き始めるガリア。
自分が今回の話に入れる予定だった内容を全部入れる事が出来ました。
さて次からは、魅惑の妖精亭もといトリスタニアの街を中心に話が進んでいきます。
永琳や紫、咲夜の言っていたこと等は、次回以降から話の合間に書いていく予定です。
それでは皆さん、またお会いしましょう。
以上で代理終了。霊夢の人乙でした
>>617 まじか DVDだとどんな呪文になったの?
無重力&代理の人乙でした
ジョゼフが何か霊夢の血で何かおっぱじめようとしてますが、結界異変(仮名)の犯人は誰?
次回からは幻想郷のメンツがハルケギニアでどんな騒ぎを起こすのか、一ヵ月後を楽しみにしております。
無重力&代理の人、お疲れ様でした。
短い間にこれだけ完成度の高い作品、執筆速度には本気で尊敬します。
そしてなにより、これほど読んで後味のよい、心温まるお話を読ませていただけて、ありがとうございました。
悪に生まれた者が、いろんな人々との出会いで成長して主人公側の味方になるという話はよくありますが、
原作も合わせて悲劇的な結末になることが多いですが、救われてくれて本当にうれしいです。
ウルトラ5番目の使い魔、評判が良いので自分も読んでみましたが
これは確かに面白いですねぇ。単にウルトラマンvs怪獣の図式だけではなくて、
平和を脅かす脅威に対して力及ばずも敢然と立ち向かう人々という、
ウルトラマンシリーズに通ずるテーマがゼロ魔世界に上手い融合させているのが凄いなぁと感じされられます。
ウルトラ5番目の使い魔を読んで思ったんだが
トリスティンってメトロン星人がいたら侵略せずに帰ってしまいそうな状態だな。
「やあ、サイト君にルイズちゃん。君たちが来るのを待っていたよ」
「侵略する必要はない。貴族達自らの行動で国が荒れて、人の心が荒み、そして滅んでいく」
セブン系の展開も期待してます。
セブン対メトロン星人はウルトラシリーズの中でも屈指の名場面
マックスで出てきた時に偶然見てなかったら特撮にはまらなかったかもしれない
ウルトラの人おつかれさまです!
実際40mの巨人ってどんな感じなんだろう
東京タワーの8分の1くらいの高さだな
赤いしイメージしやすいんじゃない?
俺はある程度までは25mプール何個分の長さとかで考える
まあとにかく、原作でも30メイルの巨人に立ち向かった奴等マジ勇者
ジャイアントロボやガオガイガーと、同じ大きさなフーケのゴーレム……
そりゃ普通のメイジはフーケに立ち向かいたくないわな
スパロボで言うところのスーパー系はおしなべてデカいな。
ってかサイコガンダムがガオガイガーより大きいって事に改めて驚いた。
お台場ガンダムの二倍近いデカさか
むしろそこまでデカいのをロケラン一発で吹っ飛ばせるものなのか?
>>646 一応もとは土だし、撃ち込んだのが榴弾だったらできるんじゃね?
>>645 見た目モビルスーツチックなヴァルホークがガオガイガーとほぼ同じサイズというのも
地味な驚きを覚えたものよ
カズマさんが召喚されたらおマチさんもワルドになんぞひっかからずに済むのだろうか
ちっちゃい山吹き飛ばすようなもんだし普通は無理だ
ハルケギニアの重力が異常に小さかったりカッサカサに乾いた土だったりすれば違うかもしれんが
特殊な合金で作られた敵機体の爆発程度ではそう簡単に吹き飛ばないロボットと
魔法的な結合はあるとはいえただの土で出来たゴーレム
どっちならロケットランチャーで吹き飛ばせると思う?
どっちも無理
お前塹壕舐めんなよってことかな
質量がやばい。お前のロケットランチャーで周りが危ない
アルビオンとの戦争のときは10〜20メートルのゴーレムが何体も暴れてて、
ヨルムンガントは25メートルだっけ?それがロマリアのときは10体か
あちらの人は巨大ロボに慣れてるのかもしれないw
ガンダールブ補正でいいんじゃね?
巨大ロボで思い出したが鋼鉄神ジーグの宙さんは新ジーグが苦戦した相手を生身で倒してたな
零戦をビッグシューターにすれば書け…宙さんってメンテナンス必要だったっけ?
原作のインフレが進んだら飛んできた銃弾を錬金で砂にしたりするのかなあ
砂が体を貫通しそうだ
10mってのがどんだけデカいか作者自身が把握してないんじゃないだろーか
5m(人間の3倍くらい)程度の大きさでも十分過ぎるほど威圧感がある巨大ゴーレムとして通用するはずだが
30mなんていったら、デカすぎてゴーレムだかなんだかさっぱりわからんし対抗しようとか言う気も起きないような
アニメ版のフーケのゴーレムはあの大きさだと10mもないように見えたし
>>650 >特殊な合金で作られた敵機体の爆発程度ではそう簡単に吹き飛ばないロボット
マジンガーZしか思い浮かばない俺は(ry
>656
砂鉄が関節に詰まりそうだ。
>>656 変身しない限りはメンテする必要ないんじゃね? サイボーグにされてたってことに長い間気付いてなかったぐらいだし。
5mや10mの大きさがある鉄とかのゴーレムをブチ壊せるほどメイジの魔法に威力があるのならば、
別にライトニングクラウドでなくても人間が喰らえばたとえ鎧着込んでいようと一発でミンチかヘタすりゃ血のシミと化すのは必定
でもたまにサイトとかの登場人物が喰らっても全然死んでないのを見るとそんなに威力が強いようには思えないんだよな…
たとえスクウェアメイジの魔法でも戦車砲には遥かに劣るようだし、AK47程度でも強力な武器として通用するみたいだし
結局あの世界のメイジの魔法はどの程度の威力があるものと考えればいいんだろ
密度が小さいんじゃね?
高密度にすることもできるけど精神力を大きく削る予感
でも大きさだけは相手を威圧するためにでかくしている
だからでかさの割りに質量は小さい
と5秒ぐらいで考えてみた
ゴーレムは人型を維持してる「魔法の力」を壊せれば勝手に自壊するんじゃないの?
じゃなきゃ30mの人型の土の塊がバズーカ一発でぶっ壊せたりはしないだろ流石に
そういえばギーシュのワルキューレも確か
「中までぎっちり詰まってる」のか「中はがらんどう」なのかははっきりしてなかったね
話ごとに作者さんによって解釈が違ったりするみたいだし
まあ、タバサがタイマンで死に掛けた火竜をあっさりミンチにしたゼロ戦機銃が、
ハルケギニアでは信じられない威力の武器クラスだから、やっぱりメイジの魔法の威力はさほどでもないのか
有効射程に関してもメイジと戦い慣れた傭兵は射程外から弓などで攻撃できる=弓よりも短いみたいだし
人を殺すだけなら過剰な威力はいらないしね。
>>667 ていうか、弓の威力を軽く見すぎだと思うね
反応できないんじゃないのかな。いくら魔法が強くても、唱える前に当たりそうだけど
ぶっちゃけどの魔法かや使用者によるとしかいいようがない気もするけどね>魔法の射程や威力
鋼鉄を一瞬で溶かしたりやオーク鬼の頭部を炭化させたり
遍在の射程なんていっちゃえばラ・シェール―トリスタニア間だとか
AK銃が当たるまでに当たるところに硬化施せるやつとかいろいろだから
フーケのゴーレムって本当に30メートルなのかも疑わしいと思ってるのは俺だけ
30メイルですからね
メーター表記じゃないです
30フィートで丁度よさげ…
それはかなり問題あるぞ。しかも根本から
照井竜召喚
質問は一切受け付けない
ガンダムの最終回のガンダム並に強い39男が召喚され、ルイズがルチャ・ドーラ!
ちなみにシエスタの爺ちゃんは同撃酔拳を使う
なぜわざわざルチャなんだw たしかに適応力は高そうだが
空中で爆発を起こしてそれで宙を舞うルイズを想像したがゼロ魔世界ではなんの意味もなかった
>>677 落ち込んでいるギーシュやマルッコイノ相手に語り、年齢を聞かれ
「来年40だ」と答える絵が浮かんでしまったんだ
キン肉マンだったら安いプライドコンビとしてタッグトーナメントに出そうな二人も良いよね
ジョンさん召喚して八極拳でフーケのゴーレムを一撃で粉砕
対フーケゴーレム戦では、金次郎の「気合」もデカくなるんだろうな
本当に一撃で粉砕してしまい本人もビックリ
そして次に行ったのがアルビオンを震脚でボッキリ
>>677 ルチャマスターの格好よさは異常
金ちゃんの時は痺れまくりですよ
鉄のゴーレムってなにがいたっけ
>>681 よしルイズがルチャ、金次郎、サイトを召喚に決まりだな
ルチャとサイトは当たり前のようにアキバに居て、金次郎はシズナの荷物持ちをしてたら遭遇
サイトが鏡に引き込まれる所で思わず手を出してしまった二人が巻き込まれる
考えてみると、サイトも結構そっち側だよな
>>683 その組合せだとサイトがただのリアクション役で麗一ポジションに納まってしまう
アルトネリコクロス、第2話です
アルトネ3プレイの合間に書いてるので更新が遅いのは仕様です、ご勘弁ください
今回、元ネタにある宿会話っぽいなにかを実装してみました
それでは、予約などなければ2:45頃に投下開始します
「クローシェ様、ルカ。失礼します」
一人の騎士が扉を叩く。
彼は大鐘堂の騎士、クロア・バーテル。騎士隊のエースであり、ルカとクローシェにとってかけがえのないパートナーである。
「…? クローシェ様? ルカ?」
返事がない。外出中だろうか? しかし、先ほど帰還したとの報告を受けているし、外出の予定もない。
「失礼します!」
返事を待たずに扉を開ける。やや不躾かとは思うが、何か問題が起こってからでは遅い。
そして、どうやら問題はすでに起こってしまった後のようだ。
「…いない?」
御子室はもぬけの殻だった。
−ざわめく動悸−
時間が止まった。
とにかく皆、なにが起こっているのかを把握できず、身動きすることすら出来ずにいる。
その中で、最初に動き始めたのは、先ほどルカに突き飛ばされたクローシェだった。
「あ、あなた! 一体何をしているの!!」
その叫び声で、止まっていた時間が動き出す。
ルイズとルカはぱっと離れた。周りの生徒たちは騒ぎ出している。コルベールはなにやら考えているようだ。
クローシェは、一番近くにいる少女−ルイズ−に詰め寄る。
「ちょっと、これはどういうことなの!? 説明なさい!」
ルイズも何かを話そうとしているが、うまく言葉にならない。口をパクパクさせるだけだ。
その時
「熱っ!」
横にいたルカが悲鳴を上げ、しゃがみこむ。
「ルカ! どうしたの?」
「なんか、手に突然痛みが…」
見れば、左手に不思議な文様が浮かんでいる。
「これは… 一体?」
「あ… 収まった」
クローシェは勢いよくルイズの方に向き直り、鬼の形相でルイズを責め立てる。手は腰のレイピアへと伸ばされている。
「さあ、説明してもらうわよ! 事と次第によってはただでは「あー、申し訳ない。ちょっとよろしいでしょうか」
あわててコルベールが間に入る。
このままではルイズに危害が加えられかねない。教師として、監督官として、それを見過ごすわけにはいかなかった。
「私はトリステイン魔法学院の教師でジャン・コルベールと申します。私の方から説明させていただきたいのですが…」
教師。ということは、彼女たちは学生なのだろう。
少なくとも、この少女と話をするよりは、まともな話が聞けそうだ。
クローシェはそう判断し、ルイズに詰め寄るのをやめ、コルベールとの話をはじめる。
「…いいでしょう。納得のいく説明をしていただきますよ」
「ありがとうございます、ミス… ええっと」
羽の意匠の付いた純白の衣装に、太陽を模したと思われる冠飾りを付けた女性が名乗る。
「私はクローシェ・レーテル・パスタリエ。こっちの子は…」
「あ、ルカ・トゥルーリーワースです。よろしくお願いします」
ピンク色のひらひらとした衣装に、月を模したと思われる冠飾りを付けた女性が名乗った。
「ミス・パスタリエにミス・トゥルーリーワースですね。ミス・ヴァリエールも名乗りなさい」
「わ、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
コルベールは、ひとまず生徒たち−ルイズを除く−を教室へ戻らせる。
これから話す内容が、場合によっては秘匿せねばならないこととなるだろうからだ。
さて、と話を始めるコルベール。
「単刀直入に申し上げます。あなた方はこのミス・ヴァリエールに召喚されたのですよ」
「召喚?」
聞き慣れない言葉にクローシェは首をかしげる。
「はい。我が学院では、2年生の春に使い魔を召喚し、契約を行う儀式が行われています。
本来ならば、ハルケギニアの幻獣や魔物などを呼び出すのですが、なぜか人間であるあなた方が召喚されてしまった。
私の知る限りでは、人間が召喚されたという事例は聞いたことがありません」
「あの… ハルケギニアって、なんですか?」
ルカがおずおずとそう問うと、ルイズが「何を言ってるの」といった風に答える。
「この世界のことに決まってるじゃない」
「この世界って… アルシエルじゃないの?」
「アルシエル? 聞いたことのない名前ですね」
「あんた達の住んでたところでは、ハルケギニアのことをそう呼んでたわけ?」
「そ、そうなのかな…」
どうにも話がかみ合わない。仕方がないので、クローシェが次の疑問を口にする。
「それについてはおおよその事情は分かりました。それで、なぜ私たちを呼び出したのです?」
「それは…」
コルベールが言いよどむ。
「どうか、気を悪くしないで頂きたい。あなた方は彼女、ミス・ヴァリエールの使い魔となっていただくために呼ばれたのです」
「使い魔? あなた方は勝手に召喚して勝手に使い魔にしてしまうというの?」
「いえ、本来なら獣の類が召喚されるので、それほど問題にはならないのですが…」
「しかし、現実に私たちは召喚された。明らかな人権侵害ではなくて?」
「ええ、はい。しかしこれは伝統儀式でして…」
「私たちには拒否権もないと。そういうことですか」
「いえ、契約を交わすまでは使い魔と認められないのですが」
「契約?」
「はい。『コントラクト・サーヴァント』という呪文を唱え口づけを交わすことで契約が成立するのです」
「つまり…」
2人の視線がルカに集まる。
「ルカが、ということね」
「はい、その通りです」
「え、それじゃあ。私が使い魔になっちゃったの!?」
ルカの驚きの叫びが響き渡った。
「私たちには重大な使命があります。このような場所で使い魔などやっている暇はありません!」
「そうだよ! 早く戻って『メタファリカ』を紡がなきゃ!」
クローシェとルカがそれぞれ言うが、コルベールとしては答えようがない。
「残念ながら、『サモン・サーヴァント』で呼び出された使い魔を元の場所へ還す方法はないのです」
「そんな! それじゃあどうすれば…」
「あなた方が住んでいた、アルシエルという場所がどちらにあるのか分かりませんが、
東へ馬を飛ばすか、もしくはフネを使えば、あるいはたどり着けるかもしれません」
じっと考え込んでいたクローシェがコルベールに尋ねる。
「ジャン・コルベールさん。ひとつ伺いたいことがあります」
「コルベールで結構ですよ、ミス・パスタリエ。で、何でしょう?」
「このあたりに、『塔』はありますか?」
「塔、ですか?」
「そうです。空をも貫く巨大な塔」
「いえ、この国にそのようなものは存在しませんが」
「そうですか…」
「どうしたの、クローシェ様?」
「どうやら… 私たちは、異世界に呼ばれてしまったみたいね」
この言葉に、ルカだけでなく、ルイズとコルベールも驚き、言葉を失った。
「い、異世界、ですか…? それはいったい」
学院の教師であり、研究者でもあるコルベールにとっても、異世界など聞いたことがない。
「私たちの世界は、大地は死の雲海と呼ばれる雲に覆われ、空はブラストラインというプラズマに覆われた世界
唯一、世界に存在する3本の塔に張り付くようにして人が生活している世界です」
「なんと…」
「明らかに、ここは私たちの住んでいた場所とは別の世界… すなわち、異世界なのでしょう」
「俄かには信じがたい話ですが… とはいえ、嘘をついているようにも思えません。
ミス・パスタリエにミス・トゥルーリーワース。学院長の所までお越しいただけますか?」
驚きから立ち直ったコルベールが、そう提案する。
「この問題は、私の手に余る問題のようです。学院長も交えて話をしたいのですが」
「そうですね。私たちにとっても、少しでも解決の糸口が見えるのなら、それに越したことはありません」
「ミスタ・コルベール! 私はどうしたら…」
蚊帳の外に置かれていたルイズがコルベールに詰め寄る。
「もう授業の時間も終わりですね。ミス・ヴァリエールは寮に戻っていなさい」
「でも、私の使い魔が…」
言いながら、ルカの方を見る。
「しかし、彼女たちに話を聞かないことには」
「でも、このまま寮に戻ってもバカにされます!」
「そうは言ってもだね…」
ルイズとコルベールのやり取りを傍で見ていたルカが「それじゃあ」と提案する。
「私がこの子−ルイズちゃん、だっけ−と一緒に行くから、クローシェ様が話をしてきてよ。
ほら、私は難しい話をされてもわかんないし、偉い人と話したりするの苦手だから」
思わぬところから救いの手が伸ばされたことで、ルイズは驚くと同時に顔を輝かせる。
「よろしいですか、ミス・トゥルーリーワース」
「はい。あ、それと、出来れば「ルカ」って呼んでください。ミスとか呼ばれるの気恥ずかしくって」
「分かりました。それではミス・ヴァリエールと共に寮に戻ってください。ルカ君、でよろしいかな」
「はい。それじゃいこ、ルイズちゃん」
「ちょっと、待ちなさいよ! 使い魔のくせに!」
寮の方へ歩いていくルカと、それを追いかけるルイズ。
「おっと、ルカ君、ちょっと待ってもらえるかな」
「なんですか?」
「君の使い魔のルーンを写させてもらえないかな? ちょっと調べてみたいのでね」
「これですか?」
ルカが左手を差し出し、コルベールがそれを観察する。
「ふむ、珍しいルーンだ。こんな文様は見たことが… いや、どこかで…」
つぶやきつつ筆を走らせ、スケッチを終わらせる。
「はい、終わりました。なにか分かればお知らせしますよ」
頷き、ルカは再びルイズと共に寮へと歩いていく。
「さて、我々も行きましょうか」
ルイズたちの姿が小さくなった頃、コルベールとクローシェも学院長の元へ向かった。
「はぁ、まったく。せっかく召喚が成功したと思ったら、なんで平民なんか」
歩きながらルイズが不満を口にする。
「え〜 そんなこと言われたって、こっちだって驚いてるんだよ」
ルカも不満を漏らす。
「何よ! あんたがあの時割り込んだりしなければ、あっちの貴族? と契約できたのに!」
「それはしょうがないよ。妹に危険が迫ってると思ったら、体が自然に動いちゃったんだから」
「妹?」
「うん、そうだよ」
ルイズはルカの頭から爪先までを観察し、もうひとりの貴族らしき女性−クローシェ−と比較する。
身長は一回りほど小さい。胸は… 胸も、一回りほど小さい。
「あんたの方がお姉さん?」
「……ルイズちゃんが何を言いたいのかだいたい分かるから、それ以上は言わなくていいよ」
どうやら自分でもコンプレックスに思っているらしい。ちょっとだけ悲しそうな顔でルカは会話を打ち切った。
自室に着くと、早速ルイズはルカとの話に興じる。
「さて、あんたは私の使い魔になったわけだけど」
「あ、そういえば。使い魔って言ったけど、何をすればいいの?」
「まず第一に、感覚の共有。あんたが見たもの・聞いたものが私にも分かるようになるの」
「へぇー。てことは、今私が見てるルイズちゃんの姿が見えるの?」
「そのはずなんだけど、見えてこないわね」
ただでさえハズレを引いたというのに、使い魔としての能力もないなんて。
あからさまに表情に出しはしないものの、失望していることに疑いはない。
「第二に、主人が望む物をいろいろとってくる。秘薬とかね」
「とってくるのはいいけど、私この辺の地理には全然詳しくないよ」
「…というわけで、これもダメと」
となれば最後のひとつだが…
「最後は、主人の身を護る。といっても、無理よね…」
「うーん、ちょっと難しいかも」
「はぁ、しょうがないわね」
使い魔としてはハズレだが、契約できただけ僥倖だと思おう。
ルイズはそう思うことにした。
「それじゃ、家事でもやってもらおうかしら。」
「料理とか洗濯とか?」
「大抵のことはここのメイドたちがやってくれるけど、自分の従者がやってくれるんならそれに越したことはないわ」
「私ちょっと不器用だから、うまく出来ないかもしれないけど、それでもいいならやってみるよ」
「それじゃ、任せるわ」
ルイズはまだ知らない。ルカの料理の腕を。
お婆ちゃんが言っていた
「支援」とは友の手に爪を立ててでも支えると書くと
「それにしても、異世界から来たなんてね… とても信じられないわ」
「私だってそうだよ。鏡みたいなのに吸い込まれたと思ったら、突然見たこともない場所にいるんだもの」
そういえば、とルカがルイズに質問する。
「さっき学校の生徒たちが教室に戻るとき、みんな飛んでたじゃない。もしかして、ここの人たちってみんな飛べるの?」
「みんなじゃないわ、メイジだけよ。メイジになれるのは貴族だけだから、平民はみんな飛べないわ」
貴族でも飛べない者はいる、とはあえて言わない。
「へぇ〜 そうなんだ。私たちの魔法じゃ空は飛べないから、羨ましいなぁ」
なんとなく鼻が高いような、それでいて惨めなような複雑な気持ちになる。
と、ルカの放った何気ない一言に、聞き捨てならない言葉が混ざっていたことに気付く。
「魔法? あんた、魔法が使えるの!?」
「え、使えるけど。どうしたの?」
「何で平民のくせに魔法が使えるの? もしかして、貴族なの?」
「平民っていうか一般庶民だけど、魔法は使えるよ」
「ホント!? それじゃ、あんたの魔法見せて頂戴よ」
「うーん、まあいいけど」
『Ma num ra selena , knawa yorr sarla(私はあなたが魔法を知るために詩を奏でる)』
すっと立ち上がると、窓の外に向かい、両手を高く突き上げながら、歌を謳う。
「…歌?」
不思議な、聴いたことのない旋律の歌をルカが謳うと、ルカの真上に氷の弾が現れる。
『Ma num ra exec sosar colga(氷の魔法を実行します)』
呪文と共に、氷の弾が窓の外の木に向かって飛んでいく。
手加減して放たれた魔法は木の表面を僅かに凍らせるにとどまったが、ルイズに与えた衝撃は計り知れない。
「凄い… ホントに魔法を使ったわ」
「ね、ホントでしょ」
ルイズは気が付いた。これはもしかして大アタリだ、と。
身なりこそ平民のそれだが、魔法を使える使い魔。もしかすると、今日召喚された中で一番かも。
「そ、そうね… まったく使えない使い魔じゃないってことは分かったわ」
素直になれないルイズは、精一杯の虚勢を張った。
ふぁっ、とルイズが欠伸をひとつ。
「さて、と。今日は疲れたし、そろそろ寝ようかしら」
「ねえねえ、ルイズちゃん?」
「なに?」
「あのね、私はどこで寝ればいいのかな?」
そういえば… この部屋にはベッドはひとつしかない。
使い魔の寝床にしようと藁を敷き詰めた床ならあるが、さすがにそこに寝かせるのは忍びない。
一緒のベッドで寝ようか… とも考えたが、それほど大きくないし、第一それでは示しが付かない。
「仕方ないわね、今日はこの毛布でも使いなさい。明日にはメイドに用意させるから」
そう言って毛布を渡す。
「ありがと。えへへ、ルイズちゃんって優しいね」
「な、なに言ってんのよ! 使い魔が風邪でもひいて使い物にならなくなったら困るだけよ!」
やはり素直になれないルイズである。
「それじゃ、寝るから。服、脱がしてちょうだい」
「…え?」
「早くしてよ。着替えさせてちょうだい」
「え、ええええええ!?」
今日何度目かの絶叫を残し、最初の一日の幕が閉じた。
※トークマター『妹?』をゲット!
※トークマター『脱げないの?』をゲット!
※トークマター『歌? 魔法?』をゲット!
そしてその夜、皆が寝静まる頃…
「ねぇ、ちょっと話でもしない?」
「うん、いいよ。何か話題あるかな?」
『妹?』
「そういえば」
「何? ルイズちゃん」
「さっきあんた、妹って言ってたじゃない? クロ… なんていったっけ」
「クローシェ様のこと?」
「そうそう、クローシェ。何で妹なのに様付けで呼ぶわけ?」
「うーん、説明すると長くなるんだよね… いずれちゃんと話すよ」
「なによ、ご主人様に隠し事?」
「そういうわけじゃないんだけど。クローシェ様が戻ってきてから、ね」
「しょうがないわね。ちゃんと後で話してもらうわよ」
『脱げないの?』
「ねえ、ルイズちゃん」
「どうかした?」
「ルイズちゃんって、服の脱ぎ方を知らないってわけじゃないよね?」
「はぁ? そんなわけないじゃない。自分の服も脱げない人なんてそういないわよ」
「そっか、そうだよね」
「何でそんなこと聞くわけ?」
「クローシェ様ってさ。出会った頃、自分の服の脱ぎ方知らなかったんだよ」
「…ホントに? 世間知らずってレベルじゃないわよ」
「うん、私もそう思うよ…」
『歌? 魔法?』
「魔法が使えるんなら私の護衛、出来るんじゃないの?」
「だけど謳ってる間は無防備だから。むしろ私が護って貰わないとね」
「歌? 歌はいいから魔法使いなさいよ」
「だから、謳って魔法を使うんだってば」
「は? 意味分かんないわ。まあいいわ、歌は今度聞いてあげるから、ちゃんと魔法使いなさいよ」
「だからぁ…」
以上で投下終了です
もろ後衛キャラにガンダールヴとか付いてますが、一応仕様です
元ネタの世界がゼロ魔と同等かそれ以上に魔法至上主義な世界なので、とにかく前衛要員(もとい壁)をと
宿会話っぽいものについては、まだ試作段階です
いまいちだったりネタが出てこなかったりしたら、何事も無かったかのように消滅します
延命剤ですが、ネタは用意してあります
やや強引ですが、アルトネリコらしいネタを使っていきたいと思ってます
さて、アルトネ3絶賛プレイ中で次回更新はいつになるのやら
テンションあがってすぐにでも書きあげてしまう可能性も少しはありますがw
なんにせよ、プレイしてこっちに還元できそうなネタがあれば盛り込んでいきたいなと思っています
>>684 それでもサイトなら……ギーシュ相手に死にそうになっても譲らなかったサイトならきっとなんとかしてくれる
あの二人に揉まれることで、原作とはまた別のベクトルでスゴイことになってくれるはず!
あと、あの二人だと女っ気0だしね……相手が巨乳だと金ちゃんが多少興味を持って下さるくらいか
あとギーシュはルチャに使われまくるんだろうな
>>694 すいません、更新を忘れてました
乙です
>>694 詩魔法って塔からエネルギー供給してもらわないと使えないんじゃ・・・・?
その辺考えてあるなら問題無いけど
遅ればせながら乙
メタファリカ紡いでないのかよ!
どうすんだメタファルス。
>>697 それどころか自分たちの塔の有効範囲外だとヒュムノスすら理解できなくなるし第三世代はただに人間に戻るよ
律史前月読を自力で使えるならドットスペルのまねごとくらいは出来るけどさ
設定に突っ込みだすと、そもそも波動で物質が構成されているアルトネ世界の人間が
現代と物理法則がおんなじなハルゲに行って存在が崩壊しないのとか、そうなるからなあ
何、この世界の物質も突き詰めたら波だという話らしいから問題ない
風助が召還されるのは何回妄想したことか
うれしすぎるううううううううううううううううううううううううううううう
おめでとう
作者にありがとう
富樫にさようなら
そして全ての住人に
おめでとう
グリードアイランド+専用機を召喚
精神力を高めると念と判断されてゲームスタート
ルイズはタバサと一緒にクリアして大天使の息吹を持ち帰りましたとさ
めでたしめでたし
>>705 タバサ、ワルド、ジョゼフ、教皇は、死者への往復葉書にも興味を持ちそう
ワンダープロジェクトJ2からジョゼット(実績100%)を召喚。
ワルキューレ相手でも余裕
ジャンプする度に男性赤面
シエスタはミミさんの子孫
・・・などのアイデアは出てくるが書くのは駄目。
そんな、書くのは禁止だなんて!
>>706 ワンクリアで3種類の持ち帰りが可能ですよ。
ルイズの系統は強化よりの放出系かな。
>>707 100パーセントならいいが実績によっては始祖の祈祷書食べるんじゃなかろうか。
強化系:加速
放出系:爆発、記録
操作系:忘却
具現化:幻影、世界扉
変化:
特質:解除、瞬間移動
こんばんは。
只今、無限のフロンティアEXCEEDをプレイ中なんですが、ネージュとアルフィミィのあの如何ともしがたいエロさはどういうことなのでしょう。
それでは、他にご予約の方がおられなければ、22:45より第46話の投下を行います。
・前回のあらすじ
メンヌヴィルは倒したけど、コッパゲがアニエスに刺されちゃったよ。
事前支援するのも私だ
朴念仁北!これで勝つる!前支援
待ってたぜ
事前支援&確認 >今回容量何Byte? 現在約430KB
「おお……」
コルベールは浮遊していく。
肉体が、ではない。
意識が身体を離れ、空に浮かんでいるのだ。
「……これが『死ぬ』ということか?」
そう呟く間にも、コルベールの意識は浮遊を続けた。
自分の身体や、それを剣で突き刺しているアニエスを見下ろし。
食堂の屋根をすり抜け。
トリステイン魔法学院の上空を通りすぎて。
雲の高さまで上昇してもなお止まらず。
あげくの果てにはトリステインどころか、ハルケギニアの形が分かるほどの高度に達する。
「む……止まったか」
ようやく止まってくれたことにホッとしつつ、コルベールはこれからどうしようかと首をひねった。
自分は先程、アニエスに刺された。
そしておそらく死んだ。
それはいい。
だが、それからどうすればいいのだろう。
「しかし、ヴァルハラ……いや、地獄とは意外にあっけないところなのだなぁ」
ヴァルハラ。
『天上』などと形容されることもある、死後の世界。
清く正しく生きていれば死んだ後にはそこに召されるらしいが、あれだけの罪を犯した自分がそんな場所に行けるわけがない。
つまりここは、いわゆる『地獄』という場所のはず。
「うぅむ……」
しかしその『地獄』らしき場所で、自分はただプカプカと浮かんでいるだけだった。
ある意味、予想外である。
「…………どうしたものか」
さすがに死んだ後のことまでは考えていなかったので、途方に暮れるコルベール。
と、そこに聞き覚えのある声が響いた。
「―――今のところはどうする必要もない」
「何?」
声のした方に振り向いてみれば、そこには虹色をした半透明の四角い箱のようなものに包まれた、
「ゴッツォ君……?」
「……こうしてじっくりと話をするのは初めてか、ミスタ・コルベール」
ユーゼス・ゴッツォがそこにいた。
兎に角、支援だ! 支援をしろ!!
sien
>>716 43KBってとこです。
「? なぜ君が……い、いや、ちょっと待ってくれ。どういうことなんだ?」
コルベールは右手で額を押さえながら状況を整理しようとするが、どうにも理解が追いつかない。
自分は死んだのではなかったのか。
それとも何だ、実はこのユーゼス・ゴッツォという男は地獄の水先案内人とでも言うのか。
「混乱しているようだな」
「……当たり前だ」
まあ無理もないか……などと呟きつつ、ユーゼスは『虹色の箱』に入ったままでコルベールに語りかける。
「お前がミス・ミランに刺された瞬間に、お前の精神を一時的に肉体から切り離し、位相が微妙に異なる空間に移したのだ。……私がこの空間にいるのも同じ理屈だな。ちなみにこの間、通常空間では全く時間が経過していないので安心しろ」
「は?」
「む、理解が出来ないか?」
「…………おそらくハルケギニア中を探しても、今の言葉を理解出来る人間はいないと思うよ」
「そうか。まあ理解したところで、今の状況ではあまり意味がないのだが」
「……………」
プカプカと浮きながらハルケギニア大陸を見下ろしつつ、コルベールは困惑する。
理屈はサッパリ分からないが、この現象はユーゼスの仕業によるものらしい。
……いくら始祖の使い魔とは言え、これはガンダールヴの能力ではあるまい。確実に自分の―――ハルケギニアの理解を超えた力によるもののはずだ。
この目の前の白衣の男が、なぜそんな力を持っているのか。
その力はどれだけのことが可能なのか。
そして何より解せないのは、
「これだけのことが出来るというのに……君は、どうして……」
今までほとんど何もしてこなかったのか。
そんなコルベールの強い疑問に対して、ユーゼスは無表情に答える。
「……確かにハルケギニアという世界において、私のこの力は異質すぎると言えるだろう」
「そうだろう、ならば……」
「だが人々が生きている世界に、超絶的な……神のごとき力など不要だ」
「何?」
「そんなものなどなくても人々は生きているし、世界は存在し続けている。……むしろ突出した力を持つ存在は、世界に無用な混乱を撒き散らしてしまうのだ。その精神や行為の善悪に関わらずな……」
「……ゴッツォ君?」
コルベールは四十二歳である。
決して長く生きたとは言えない年齢だったが、それでも軍人として、隊長として、教師として、若者に何かを伝える人間として、『それなりに』人生経験を積んできたという自負はあった。
そのコルベールが今のユーゼスに抱いた印象は……。
(……まるで老人だ)
しかもオールド・オスマンのような『老いてなお盛ん』というタイプではなく、『やるべきことを全てやり尽くしてしまった』タイプのそれだった。
少なくとも自分よりは若く見えるこの男に、そんな印象を抱くとは。
いや、もしかするとこの男の年齢は……。
「……いかんな。久し振りにシステムを本格起動させたせいで、思考まであの頃のパターンをなぞりつつある」
ユーゼスは首を振ると、あらためてコルベールに向き直る。
コルベールもそれを見て、今は余計な詮索はするまいと正面からユーゼスの視線を受け止めた。
「それで、この現象が君の……その、力によるものだとして、一体何が目的なのだ? こんな形で私と会話をすることに何の意味がある?」
ユーゼスは端的に呟いた。
「お前に選択権を与えに」
「選択権?」
「そうだ。お前の肉体は、このままでは確実に死ぬ」
「……それは……」
まあそうだろうな、とコルベールは思う。
何せさんざん殺しに慣れていた自分が『これは死んだ』と思ったほどなのだから。
しかし『選択権』とは何だろう。
「何を私に選択させるつもりなのかね?」
「簡単なことだ。……このまま通常空間に復帰して死ぬか、それとも新たな命を得て再びの生を歩むか。それを選ばせるために私はこの場を用意した」
支援
私怨…じゃない!支援だ!
「『選ばせる』? なぜそんなことを?」
「火の塔近くでメイジと戦闘した時、お前の助けがなければ私は死んでいたからな。その借りを返しに来たのだ」
「…………なるほど」
律儀と言うか、変に義理堅いと言うか。
コルベールはある種の感心を覚えると同時に、
(今の口振りからすると、彼は生命すら自在に操ることが出来るのか……)
このユーゼスという男に対して、軽い畏怖すら抱き始めた。
だが、この男は『自分の力を積極的に使いたくはない』と言い、自分の力を忌避しているようにさえ見える。
まるで『火』を人殺しに使いたくはない、と言っていた自分のように。
……いや、自分は『火』の平和的な利用方法を模索していたが、ユーゼスは自分の力そのものを嫌っているのか。
この男の過去には、一体何があったのだろう。
「……このような選択をさせずに、問答無用で生き返らせてもよかったのだが……ミス・ミランに刺される直前に杖を捨てたことからして、お前は自分から死を選んだように見えたのでな。……死にたがっている人間を、無理矢理に生き返らせるわけにもいくまい」
「……………」
自殺でもされてはあまりにも意味がない、とユーゼスは言う。
そう、確かに自殺に意味などはない。
ないのだが……。
「……ダングルテールの一件以来、私は研究に打ち込んだ」
「む?」
コルベールはゆっくりと語り始める。
「多くの罪なき人々を焼き払った……その罪の償いをしようと、一人でも多くの人間を幸せにすることこそが私に出来る贖罪だと考えた。そうして私は、誰もが使えるような新しい技術の開発を目指した」
「傲慢だな。……そんなことをしようと死んだ人間は生き返ったりなどしないし、過去が消えるわけでもない」
「その通りだ」
ユーゼスに指摘されたことに動揺することなく、むしろ肯定すらするコルベール。
「どれほど人の役に立とうと考え、それを実行しても……私の大きすぎる罪は決して赦されることは決してない。罪は消えぬ。いつまでも消えぬ。この身が滅んでも、罪は消えぬ。『罪』とは、そう言ったものなのだ」
「……………」
「だから、これは『義務』なのだと。生きて世の人々に尽くすことが私の『義務』であり、死を選ぶことも赦されぬと、私はそう思った。……いや、今でもそう思っている」
「ならば生きることを望むか?」
「―――いいや」
「?」
ユーゼスは首を傾げ、怪訝な顔でコルベールを問い質す。
「……明らかに矛盾しているぞ。『死を選ぶことが赦されない』と言うのに、『生きることを望まない』とはどういうことだ?」
「それは……あのアニエス君だ」
「……………」
「私にとっては、死を選ぶことすら傲慢だが……唯一、私の死を決定することが出来る人間がいる。彼女だ。あの村の唯一の生き残りであるアニエス君だけが……私が焼き尽くした彼らの慰めのために、私を殺す権利を持っているのだ」
「ふむ」
アトリームにも支援はありましたよ。それも、地球より大きなものがね
⇒支援する
ユーゼスは無感情な目でコルベールを見る。
その内心は呆れているのか、笑っているのか。あるいは全く別の感情を抱いているのか。
表情の動きからそれを窺うことは出来なかったが、やがて小さく息を吐いて言葉を紡いだ。
「……お前がそれで納得する言うのなら、私としても構わんが」
するとコルベールは、照れくさそうに頭を掻き始める。
「いや……こうして格好のいいことを喋ってはみたが、本当のところは死に場所を探していただけだったのかも知れん」
「そうなのか?」
「ああ。彼女に殺されて何となく肩の荷が下りたと言うか、ホッとしているのも事実だしな」
「……因果の鎖から解き放たれた、か」
少し感慨深げに言うユーゼス。
一方、またいきなり理解の出来ない単語が出て来たのでコルベールはキョトンとした顔になった。
「どういう意味かね?」
「……何、ただの独り言だ。気にする必要はない」
「むう」
そういう言い方をされると、むしろ余計に気になってくる。
もっとも、気になるのはユーゼスの言動だけではなく、素性や能力や正体に関してもそうなのだが。
「まあ、今更惜しい命でもないからなぁ。未練はそれなりにあるし、『火』の新しい使い道のヒントくらいは見つけたかったが、『死に場所』に遭遇してしまってはどうしようもない」
「『往生際が良い』というやつか?」
「いいや、ただ単に見切りをつけるのが早いだけだよ」
と、ここまでユーゼスと会話して、コルベールの中で一つの好奇心が首をもたげてきた。
この短い会話の中で生まれた、数多くの疑問。その中でも最も強いもので、そしてコルベールが『もしかしたら』と思っていることがある。
それは……。
「―――ゴッツォ君、最後に一つだけ聞かせてくれ」
「何だ?」
「君はもしかして……その……、いわゆる『神』なのか?」
「………………『神』だと?」
ユーゼスの目が見開かれる。
予期していない質問をぶつけられたせいで、驚いたのだろうか。
「―――――」
ユーゼスは沈黙して何かを考え込む。
そして十秒ほどそうした後、ためらうような口調でコルベールに回答を告げた。
「……あいにくと人間だ。他人の目にはどう映るか知らんがな……」
「そうか」
それならそれで、別に構わない。
コルベールは疑問の一つが解けたことに充足感を感じていた。
一方そんな様子のコルベールを見て、ユーゼスは少し惜しそうに言う。
「もう少し早くこうして話をしていれば……いや、お前の研究対象が私の主義と真っ向から反するものでなければ、あるいはお前を友と呼べていたかも知れんな」
「そうだな……。色々と心残りはあるが、一番の悔いはそれかも知れない」
分野こそ違うが、何だかんだ言っても同じ研究者同士だ。
たとえ主義や信念が異なるものだとしても、前からもっと意見をぶつけ合わせるなりしていれば、今とは違った関係になっていた可能性は十分にあっただろう。
と、言うか。
「しかし、私の研究内容が君のお気に召していなかったとは初耳だな。そうならそうと言ってくれればよかったものを」
「言う必要性を感じなかったものでね」
「……そういうところは直した方がいいと思うぞ」
「考えておこう」
「考えておくって……君なぁ……」
……さて、そろそろ語るべきことも無くなってきた。
あとは『もういい』とでも言えば、コルベールの意識はすぐに魔法学院の食堂にある身体へと戻り、次の瞬間には死を迎えるのだろう。
「……………」
「……………」
だがコルベールは何を言わず、ユーゼスもまた沈黙をもって相対する。
体感時間にしてみれば、わずか数秒ほどのこと。
そして。
「さらばだ、ジャン・コルベール……」
「……ああ。君も達者でな、ユーゼス・ゴッツォ」
最後の最後に『ミスタ』も『君』も付けずにフルネームで呼び合って、二人は別れたのだった。
さよなら、ジャン… 支援
「ぅ……っ、ぐ……」
「…………!」
ズ、とコルベールの胸から剣を引き抜くアニエス。
その身体にはコルベールから流れ出た血がベッタリと付着してしまっているが、それを気にした様子はない。
「―――――」
倒れこむコルベールの身体はアニエスの身体をすべり、床へと崩れ落ちていく。
「っ」
アニエスはうずくまっているような体勢のコルベールを蹴飛ばし、強引に仰向けにさせた。
そしてまた剣を突きつけ、強い口調で問いかける。
「……なぜ、杖を捨てた!? お前は刺される直前、やろうと思えば私を倒せたはずだ!!」
どうしても納得が行かない、と彼女の全身が告げている。
そんなアニエスに対し、コルベールは息も絶え絶えに話しかけた。
「き、君には……私を、殺す……権……利が、ある……」
「何だと!!?」
「わ……私を、ここで、殺すのは……別に、構わない。……だが……、これを最後に、もう……人を殺すのは……、やめて……くれ」
「貴様……何をぬけぬけと!!」
激昂し、もう一度剣を構えてコルベールに突き刺そうとするアニエス。
コルベールはそんな彼女から視線を離さずに喋り続ける。
「……あの時、初めて……罪に、気付いた。……命令に従うのが、正しい……こ……と、だと、思っていた……」
アニエスの憎き仇、そして魔法学院の教師でもある男。
彼は最後の力を振り絞り、何かを訴えかけようとしていた。
「だが……! たとえ、どんな正当な……理由が、……あっても、人を……殺すのは……罪、だ……!」
対するアニエスは、憎悪の表情のまま。
とてもコルベールの言葉が届いているとは思えない。
「だ……、だから……」
しかしコルベールはそれでも喋り続けようとして、
「っ……――――」
そのまま動きを止めた。
「……………」
冷ややかな目でそれを見つめるアニエス。
彼女は目を開けたまま微動だにしなくなったコルベールの肩を突き刺し、更に身体をまた蹴り飛ばしまでしてから一つの結論を下す。
「やった……」
20年越しの敵討ちは、今ここに果たされた。
彼女は人生の宿願を果たしたのだ。
しかし。
「…………終わった、のか」
呆然と呟くその言葉には、不思議と力がこもっていなかった。
支援
(『死に場所』か)
ユーゼスはコルベールが息を引き取る瞬間を見守りながら、特殊空間で聞いた彼の言葉を思い出していた。
(私の本当の死に場所は、一体どこなのだろうな……)
人の命を奪うことが罪だと言うのならば、ユーゼスも罪を犯している。
それもコルベールとは比較にならないほどの数をだ。
直接ではないが……自分の行為が原因で都市の10や20は軽く壊滅させてしまったこともあれば、歴史を捻じ曲げたりもしたし(最小限度に抑えるように尽力はしたつもりだが)、あとは組織を乗っ取るために因果律を操作して邪魔者を排除したりもしたか。
しかしその罪と引き換えという訳でもないだろうが、自分は二度ほど死んでいる。
身体の大部分と、本来の顔を失った一度目の死。
イングラムとガイアセイバーズによって打ち倒された、二度目の死。
しかし二度の死を迎えてもなお、自分はこうしてここに生きている。
コルベールの言葉によれば、死んだところで決して罪は消えないし、赦されないらしいが……。
(……まさか私は、永遠に死と生を繰り返すのではないだろうな)
ある意味、地獄である。
……いや、いくら何でもそれはないか。
(『ユーゼス・ゴッツォ』という存在が全ての並行世界から完全に消滅することはないにしても、『この私』の終わりはあるはず……)
あるいは、自分は本当に死ぬためにこのハルケギニアという世界に存在しているのかも知れない。
いや、それならそれで別に構わないが、だったら二度目の時に素直に死なせてくれれば良かったものを。
『宇宙の意思』……確かどこかの世界では『アカシック・レコード』とか呼ばれていたモノは、一体『このユーゼス・ゴッツォ』に何をさせたいのやら。
まあ、少なくとも『贖罪』という線はあるまい。
今更そんなことをしたところで、何の意味もないのだから。
(……まったく)
何にせよ、よく分からないことだらけである。
だが……。
(少なくとも、それは今考えることではないか)
自分の存在意義や生存理由など、真面目に考え始めたら一生かかってしまう。
そんなことはそれこそ死に際にでも考えればいい。
「やれやれ……」
溜息をつきつつ、食堂のある本塔から出るユーゼス。
ただでさえ戦闘で疲れているのに、これ以上疲れることを考えたくはない。
取りあえず部屋に戻って、睡眠でも取ろう。
そう思って寮へと足を向けると、
「……む?」
物陰からコソコソとこちらを窺っている人影を発見した。
そろそろ白み始めてきた空のおかげで、その人影の特徴である見事なブロンドやら眼鏡やらが、キラリと光っている。
……と言うか、顔をほぼ丸ごと壁から出してしまっていては『物陰に潜んでいる』意味がなくなってしまうのだが。
おまけに寒さ対策のためか、寝巻き姿の上にマント(おそらくどこからか持ってきたのだろう)を羽織るという格好をしているため、ヒラヒラしていていて隠密性もへったくれもない。
まさに素人丸出しの隠れ方だった。
「…………何をやっているのだ、お前は」
呆れつつ、顔見知りのその人影に話しかけるユーゼス。
するとその人影はビクッと反応し、おそるおそると言った様子で返事をしてきた。
「だ、だって……あの連中が、まだいるかも知れないでしょ」
「……私がこうやって無防備に外に出た時点で、おおよその察しはつくのではないか?」
「伏兵とかがいる可能性だってあるじゃないの」
「…………その伏兵以外の戦力が全滅しているのでは意味があるまい。仮にいたところで、撤退していると私は見るが」
「そうかしら?」
「そうだろう」
まあ、素人判断ではあるのだが。
ともあれその物陰に潜んでいた人影は、おっかなびっくり姿を現す。
ユーゼスはそんな彼女に内心でほんの僅かに苦笑しつつ、取りあえず不安を払拭させるために声をかけた。
「安心しろ。仮に敵がいたとしても、その時は……」
「その時は?」
「……二人で戦えば何とかなるはずだ」
「………………あのねえ、ユーゼス。そこは『私が守ってやる』とか、そういうセリフを言うべきだと思うんだけど?」
「利用が出来るものは可能な限り利用する、というのが私のスタンスでね」
「……前に『私は戦闘に向いてないから戦闘メンバーから除外する』とか言ってなかったかしら?」
「非常事態だ。仕方があるまい」
サラッと自分を戦力に組み込んだユーゼスに対して、金髪眼鏡の美女はジロリと白い目を向ける。
だがユーゼスは気にした風もなく、
「しかし……意外と臆病だな、エレオノール」
「……慎重と言ってちょうだい」
目の前のエレオノールに対して、そんな指摘をする。
エレオノールは何となくバツが悪そうにそっぽを向くが、ユーゼスは構わずに彼女に話しかけた。
「御主人様は無事か?」
「ええ、ルイズならいつでも学院から逃げられる場所に置いてきたわ。何だかやたらと落ち込んでたって言うか、辛そうだったみたいだけど……」
「あれだけのことがあったのだ、無理もあるまい」
「ただでさえあの年頃は色々と微妙でもあるし……変な影響とかが出なければいいんだけど」
「『あの年頃』か」
精神年齢68歳くらいのユーゼスとしては、10代後半の頃などはもう遠い彼方である。
あまりにも遠すぎて、もはや何も思い出せないほどに。
一方、エレオノールはその言葉を曲解したらしく、ジト〜ッとした目をユーゼスに向けていた。
「……何が言いたいのかしら?」
「特に他意はない」
本当に他意はないのだが、納得いかない様子のエレオノールはユーゼスに視線を注ぎ続ける。
すると、不意にその目が『チクチクと刺すようなもの』から『心配そうなもの』へと変わった。
「何だ? 外見的にそれほどおかしい点はないと思うが」
「……いえ、けっこうボロボロよ、あなた」
「む?」
言われてユーゼスが自分の身体や衣服を確認してみると、確かにボロボロだった。
無理もない。
食堂に入る前にはメイジ二人と交戦し、その後にはメンヌヴィルの炎にあぶられ続けていたのだから、特殊加工も魔法もかけられていない普通の白衣がボロボロにならない方がおかしいだろう。
もちろん、そんな普通の白衣の下にある普通の身体にもダメージはあるわけで。
「……そう言えば火傷も各部に出来ているな。当然と言えば当然だが」
「『そう言えば』って、他人事みたいに言うんじゃないわよ! ああもう、顔についたススくらいは拭いておきなさい!」
言うなり、指でユーゼスの右頬のススをぬぐうエレオノール。
「……やっぱりちゃんとした布で拭いた方がいいわね。これだと私の手も汚れるし。それじゃあ、取りあえず……」
そして医務室にでも連れて行くつもりなのだろう、そのままユーゼスの腕を掴むと、
「ところでエレオノール」
不意にユーゼスから声をかけられる。
「何よ? ……まさか『大した火傷でもないから放っておけ』とでも言うんじゃないでしょうね?」
「いや、倒れてもいいだろうか」
「え?」
その言葉の意味を問い質すよりも早く、ユーゼスの身体がエレオノールに向かってフラリと倒れこむ。
エレオノールはその倒れてくる男の腕を掴んでいるので避けるわけにもいかず、わたわたしながらもユーゼスの身体を抱きとめてしまった。
おぉ 支援
「……………」
「は? え? ちょ、ちょっと……えっ、ええぇ!!?」
たちまち顔を紅潮させて混乱する金髪眼鏡の美女。
だがしどろもどろになりながらも、何とか状況の説明だけは要求する。
「なっ……ななな、なっ、何するのよ、いきなり!? こっ、こういうことは恥ずかしいから、外にいるときじゃなくって部屋の中で……じゃないっ! とにかく、何事よ!!?」
唐突に抱きつかれてドキドキ状態、その上いっぱいいっぱいな様子のエレオノールだったが、抱きついているユーゼスは割と落ちついている様子で質問に答える。
「……先程のやり取りで完全に気が抜けたというか、緊張の糸が切れてな。一気に身体の力が抜けてしまった」
「は、はあ?」
実を言うと、ユーゼスは心身ともにもう限界に近かった。
いくらガンダールヴのルーンで強化されているとは言え、ユーゼスは宇宙刑事のようにコンバットスーツを身にまとっている訳でもなければ、ガンダムファイターのような戦闘用の身体でもない。
火の塔近くでのメイジ二人との戦いと、メンヌヴィルとの戦いとの連戦は『本職が研究者』であるユーゼスにはかなり厳しいものがあったのだ。
特にメンヌヴィルとの戦いは最初から最後までかなりギリギリの展開だったし、その間は精神が張り詰めたまま、体力は消耗しっぱなしだった。
そんな状態でいきなり気が緩んだりしたら、こうなるのも仕方がない。
とは言え。
「……一人であんな危険な相手に向かっていくような無茶をするからよ、まったく」
「その危険な相手に一人で食って掛かっていった、お前にだけは言われたくないセリフだな」
「あ、あの時は何て言うか、反射的にそうしちゃったんだから、仕方がないでしょう!」
「だろうな。私もそうだ」
『倒れこんでいるユーゼスとそれを抱きとめているエレオノール』という構図なので、傍から見ているとこの二人は抱き合っているようにしか見えなかったりする。
もっとも、二人の内の片方にそんな自覚は全くないのだが。
「ん……」
と、ここでエレオノールが軽くよろめいた。
どうやらほぼ脱力しきっているユーゼスの身体が重いようだ。
「……どうでもいいけど……いえ、よくないけど。仮にも男が、いつまでも女の私にしがみついてて情けないとか思わないの?」
「思わん」
「……………」
呆れるエレオノール。
こうまで相手が冷静と言うか、何にも感じていないようだと、ドキドキするのも間が抜けているような気がしてきたらしい。
そして『もうその辺に放り出ちゃおうかしら』などということを本格的に考え始めたあたりで、
「それに意外と悪い気分でもないしな」
「んなっ!!?」
いきなりそんな爆弾が投下された。
たちまちエレオノールの心拍数は跳ね上がり、ドキドキが再加速し始める……が、そのドキドキさせている張本人は涼しい顔。
「どうした、いきなり狼狽などして。何か問題でもあったか?」
「っ、問題だらけよっ!」
「?」
エレオノールは無自覚な彼に腹を立て、ユーゼスはそんな彼女に首を傾げる。
ちなみにアレコレ言い合いつつも、お互いに抱き合っている身体を振りほどこうとはしていない。
「まったく……! 大体ね、もう何度も言ってる気がするけど、あなたはもう少しデリカシーというものを…………って、あれ?」
「―――――」
ユーゼスほどではないにせよ『マトモな恋愛経験』が皆無に等しいエレオノールは、それに気付かないままユーゼスに不平不満をぶつけようとして、そのユーゼスに起きている異変に気付いた。
力の抜けきった身体。
閉じられた瞳。
ゆっくりと繰り返される呼吸。
つまり、ユーゼスは。
「―――――」
「ユーゼス、あなた……」
「―――――」
「…………もしかして、寝てる?」
「―――――」
エレオノールにもたれ掛かりながら、睡眠に突入しているのであった。
祝!エレさん、押し倒されるw 支援
まあ、一晩中どこかに(ユーゼスがカトレアの屋敷にいたことをエレオノールは知らない)出かけていて、学院に戻って来たと思ったらいきなり前述のような緊張状態が続き、しかもその緊張の糸が切れれば睡魔に襲われて当然ではある。
「……………ぅぅう」
当然ではあるのだが、エレオノールはどうにも納得がいかない。
「ね、寝るって……。いきなり何の脈絡もなく、寝るって……。いえ、そりゃあ休ませてあげたい気持ちも少しはあるけど……それにしたって、いきなり寝ることはないでしょ……」
細い身体にズッシリとのしかかるユーゼスの重みにまたよろめきながら、ブツブツと文句を呟くエレオノール。
「……………」
「―――――」
改めてユーゼスの顔を覗き込んでみると、何ともまあ無防備な顔で眠りこけていた。
いつも難しい顔をしていたり、斜に構えた態度を取ったりするユーゼスのこういう一面を見るのは、ある意味で貴重なような気がする。
エレオノールはそんなユーゼスを見ていると、何だか胸の奥がチクチクするような、締め付けられるような、どうにも上手く言い表せない気持ちになってきた。
「ぁぅ……」
今更ながら、『自分とユーゼスは抱き合っている』という自覚が芽生えてくる。
少し耳をすませば自分と密着しているユーゼスの呼吸音と、それよりも大きな自分の心音が響いている。
そして頭の中をグルグルと巡るのは、
―――「あの男に『近付かれる』以上の事はされなかっただろうな?」―――
などというユーゼスのセリフである。
とは言え、本人に『そういう自覚』があるのかどうかは定かではなく、その真意は分からない。
「………………もう、馬鹿」
拗ねるような口調でポツリと呟く。
幸か不幸か、そんなエレオノールの呟きはユーゼスの意識に届くことはなく。
また、彼女の唇が彼の右頬に触れたことにも、気付かれることはなかった。
コルベールの死を納得できない生徒たちも居るだろうから
アニエスはこれからが大変だ
「……何やってるんだか、あの二人は」
物陰から様子を窺っていたミス・ロングビルことマチルダ・オブ・サウスゴータは、ユーゼスとエレオノールのやり取りを見てそんな感想を漏らした。
半分素人のユーゼスにも見破られてしまったエレオノールの隠れ身とは違い、こちらは完全に気付かれていない。
「『初々しい』って言えば、聞こえはいいけど……」
確かあの二人は、自分よりも年上だったはずである。
だと言うのに、やり取りの内容は十代前半のそれだ。
今時はこの学院の生徒だって、もっと過激なことをやってるのに、あの年でああいう『友達以上恋人未満』みたいな微妙な関係を見ていると……じれったく感じるような、ヤキモキしてくるような、イライラしてくるような。
『もう押し倒しちまえ』だとか、『とっとと抱くなり何なりしろ』などとは言わないが、せめて正式に恋人同士になれよと言いたくなってくる。
「……ま、他人の色恋に口を出す趣味はないけどさ」
自分が口を出すことでこじれてもバツが悪いし、ここは当人同士で何とかしてもらうのがベストだろう。
「―――って、んなことはどうでもいいとして、だ」
銃士隊によって解放されたマチルダは、そのまま身を隠すと見せかけて食堂の近くに潜み、『前職』で身につけたスキルを活用して気配を殺しながら食堂内の推移を見ていた。
別に勝敗が気になったり、危なくなったら手助けしてやろうなどと考えていたわけではない。
いよいよもって危なくなったら、真っ先に魔法学院から逃げ出すためである。
この場合、必然的に学院の女子生徒たちを囮に使ってしまうのでマチルダとしても少々良心が痛まないでもなかったのだが、あいにくと縁もゆかりもないお嬢ちゃんたちにくれてやる命など、持ち合わせてはいない。
マチルダが自分の身を犠牲にしてでも助けたいと思う少女は、別にいるのだ。
こんな所で死んでたまるか、というのが正直な気持ちだった。
とは言え。
「死んでたまるか……はそうだけど、しかし、あのコルベールが死ぬとはね……」
妙な研究ばかりやっている変わり者ではあったが、しかし悪人ではなかった男。
学院の宝物庫について調べた時には、あの男に話を聞いたりもしたか。
それに授業自体は真面目にやっていたし、どうしてか学院長もかなり信頼していた。
「結局は『よく分からない男』で終わったけど……まあ、墓には花か酒の一つでも供えてやるか」
もっとも、死んだシチュエーションは少々謎なのだが。
自分はやや離れた位置から食堂の中を窺っていたので声を拾えず、詳しい事情はよく分からなかった。
……どうも色々と因縁のある相手があの場所に集まっていたらしく、何だか複雑な人間関係があったようである。
そして、最終的にはあの銃士隊隊長の平民がコルベールを刺し殺した。
「あの女の様子からして、相当恨みをかってたようだけど……」
コルベールの過去に何があったのか、マチルダは知らなかった。
余計な詮索はされるのもするのも好きではないし、深入りだってしない方がいいだろう。
人に歴史あり。
しかし歴史に関わりすぎてもあまり良いことはない。
何せ自分自身がその歴史の裏側……王の弟がエルフを愛人にしていたという事実に少なからず関わっていたのだから、実感もこもるというものである。
「ま、どうせ無関係だしねぇ」
本当に死んでしまったか・・・さらば先生
そうしてマチルダは思考を切り替えると、今回の件を改めて振り返り始めた。
「……………」
何にせよ、まずは自分が手を下すことがなくてよかったと言える。
それなりの使い手だということがバレてしまうと、この魔法学院にいづらくなりかねないのだ。
……そもそもこういうトラブルに見舞われたこと自体が不幸だと言えなくもないのだが、ここは不幸中の幸いということにしておこう。
「色々と仕事は増えそうだけど……」
ボロボロになってしまった食堂の修繕、この事件の事後処理、関係各所への説明……などなど、片付けなくてはならない問題はいくつかある。
しかし、食いっぱぐれるかも知れないことに比べれば些細な問題だ。
ウェストウッド村への仕送りだって続けられるだろう。
この戦時下であの村の子供たちの安全そのものが気にかかりはするが、まあ、シュウもいるのだから大丈夫なはず。
そのはずだが……。
「一応、様子を見に戻るべきかね」
何と言うか、まあ、心配なものは心配なのだ。
そろそろお互いに子離れ親離れしなきゃいけないかなー、とは思うものの、そのタイミングも上手くつかめないし。
ああもう、世の父親母親は皆こんなことで悩んでいるのだろうか。
「ふぁ……」
とりとめもなく色々なことを考えていると、不意にマチルダの口からあくびが漏れる。
そう言えば、自分のように人質となった者たちは夜中に叩き起こされたのだったか。
「…………眠い」
気が付けば、太陽はもうすっかり顔を出していた。
時間的にはそろそろ朝食のはずなのだが、食堂であんなことが起きた以上は普通に出される可能性は薄いだろうし、自分で用意するのもかったるい。
「寝るか……」
数瞬の思考の後、食欲よりも睡眠欲を優先することにしたマチルダ。
ふと向こうを見ると、エレオノールが顔を真っ赤にしながらユーゼスを『レビテーション』で運んでいる。
この後に向かうのは医務室か、それとも彼の部屋か。
……まあ、何にせよ二人の中が急進展ということはないだろう、多分。
「やれやれ」
マチルダはそれを苦笑まじりに眺めたあと、魔法学院を照らす朝日に目を細めながら、あくび混じりに歩き出すのだった。
マチルダがウェストウッド村の安否について思いを馳せた、半日ほど後。
そのウェストウッド村では、シュウ・シラカワが神妙な顔で考えごとをしていた。
「……ふむ。やはりネックとなるのは発動させるためのエネルギーですか」
ハルケギニアとラ・ギアスを往復して持ち込んだ電子端末を操作し、シュウは『目下の研究対象』にして懸念事項に取り掛かる。
「ゲッター線は下手をすると取り込まれる危険性がありますし、アンチA.T.フィールドも一歩間違えればハルケギニアの住人がLCLになってしまう……。ムートロンもポテンシャルを十分に引き出せるのはライディーンのみ……」
とは言え、『研究対象』の仕組み自体は既に解析が完了していた。
『研究対象』が存在する場所についても、すでに絞り込みは出来ている。
最初は自分の愛機であるネオ・グランゾンを疑ってみたが、よくよく考えてみれば『このネオ・グランゾン』にはエアロゲイター……ゼ・バルマリィ帝国のものを元にした技術は使われていても、それ以外の異星人の技術は使われていない。
むしろゼ・バルマリィ帝国製のブラックホールエンジンを元にして、対消滅エンジンを自分で作って搭載したのである。
『この世界の』グランゾン、およびネオ・グランゾンについては、開発者である自分が一番よく分かっているのだ。
自分の機体には、妙な仕掛けは施されていない。
つまり求める『研究対象』は、ハルケギニアのどこかに存在していることになる。
あとはどこに存在するのかの調査になるが……まあ、それだけ分かってしまえばそれほどの手間ではなかった。
「……………」
しかし問題は、そのために必要なエネルギーだった。
出来ればタキオン粒子に似た性質を持ち。
エネルギー自体が成長するようなもので。
なおかつ、扱いやすいものが望ましいのだが……。
「……私の知識にあるものでは、どうにもならないようですね」
候補として上がったのは、性質に興味をそそられても扱いがきわめて危険だったり、あるいは特定のロボットや人間にしか扱えないようなものばかり。
いくら何でも、『研究対象』の解決と一緒にハルケギニアも崩壊させるのはよろしくない。
また、出来れば余計な因子をこれ以上ハルケギニアに持ち込みたくもない。
要するに、シュウが独力で何とかしなければならないというわけである。
「ここは一度、地上に出る必要がありますか……」
シュウが地上……いわゆる『地球世界』に出たのは、イージス計画の阻止のために月面に上がったのが最後だった。
色々な手段を使って入手した情報によると、あれ以降にも地球には様々な事件が起こり、新たな技術やエネルギーが開発・発見・活用されたりしたらしい。
その中に必ずしもシュウの目的と合致するものがあるとは限らないが……いずれにせよそれらの新技術・新エネルギーについて興味はあるし、知識を得て損はないだろう。
そうと決まれば、ハッキングの準備でも進めておくか。
今後の行動指針をそう決定し、準備に取り掛かり始めると……。
「シュウさん、いますかー?」
コンコン、という控えめなノックと共に、これもまた控えめな少女の声が響く。
シュウは端末を操作する手を止め、その少女の声に応じた。
「おや、もう夕食の時間ですか?」
「はい。……こっちの部屋に持ってきた方がよかったですか?」
わずかに開けられたドアから、金髪に長い耳の少女がヒョイと顔を出す。
少女……ティファニアに対してわずかに微笑みながら、シュウは作業の手を止めて立ち上がった。
「いえ、ちょうど研究も一段落したところですからね。気分転換も兼ねて、皆さんと食事を取るとしましょう」
「はいっ」
お、久しぶりにシュウサイドか
そうして二人は連れ立って食卓へと向かう。
ごく短い距離を移動する間、心なしかティファニアの表情は弾んでいるようであり、また彼女の様子を見てシュウも薄くではあるが笑みを浮かべていた。
しかしそれと同時に、シュウはティファニアの出自について考えを巡らせてもいた。
……この少女はこう見えて、なかなか数奇な人生を歩んでいる。
王族の父と、異教徒の母。
周囲からは迫害される宿命を持ち。
幼い頃は母親に守られ。
そして今は王族を追放され、世の中から隠れるようにして暮らしている。
「……………」
シュウとしては、何とも既視感を覚える生い立ちだった。
まるで何者かの意思が働いているような気さえ起きてくる。
だがラ・ギアスとハルケギニアの間には、自分以外の接点はないはずだ。
当然、二つの世界を又にかけた思惑なども……少なくとも今の所は存在していない。
ということは。
(偶然、ですか……)
辟易しつつ、改めて『研究対象』を片付ける考えを強くするシュウ。
この案件をこのまま放っておくのは、ハルケギニアやラ・ギアス、地上、バイストン・ウェルなどの様々な世界……そして何より自分に対しても決して良い影響を与えるとは限らない。
あの快男児のように、世のため人のため―――などというつもりは毛頭無いが、他でもない自分を巻き込んでしまった以上は……。
「どうしたんですか、シュウさん? なんだか難しい顔してますけど……」
「む……」
決意を新たにしていると、隣を歩いていたティファニアから声をかけられた。
どうやら顔に出てしまっていたらしい。
「……いえ、少し考えごとをしていただけです」
「?」
まあ、焦る必要もないと言えばない。
地底から古代の帝国が侵攻を開始したとか、植民地扱いされた移民が大規模な独立戦争を起こしたとか、異星人が何種類かまとめて侵略に来たとか、知的生命体を滅亡させるために天文学的な数の宇宙怪獣が飛来したとか、超重力衝撃波が迫っているとかでもないのだし。
強いて言うならアインストが気にかかるが、脅威と言うほど脅威でもあるまい。
巨大なサイズならともかく、2、3メートル程度の大きさならハルケギニアの人間でも対処出来るはず。
遠からず片付けることは決定していても、今すぐに行わなければならないほど切迫した状況というわけではないのだ。
(それに、なるべくなら多くの人間に目撃していただく必要がありますからね……)
そんなことを考えながらシュウはティファニアと共に食事用の小さな家に到着し、村の子供たちが集合している食卓に参加する。
「おや? ここにいましたか、チカ」
「あ、御主人様。お先にいただいてまーす」
シュウのファミリア(使い魔)であるチカは既にテーブルの上にちょこんと乗っており、小さな水入れにクチバシをつけて水分を補給していた。
なお余談ではあるが、ラ・ギアス製のファミリアは一ヶ月程度ならば飲まず食わずでも大丈夫な作りになっている。
「それではいただきますか」
「はい、どうぞ」
そうしてシュウは子供たちのワイワイとした声を聞きながら、ティファニアの用意した食事を口に運び始める。
最初の内はウェストウッド村の子供たちもシュウの得体の知れなさを何となく感じ取っていたのか、微妙に警戒していたりしたのだが、特に害はないということが分かると、こうして抵抗なく食卓を共にする程度のことは出来るようになっていた。
とは言っても好奇心の強いジャックやサマンサあたりはともかくとして、気の弱いエマには相変わらず距離を置かれているし、ティファニアに好意を抱いているジムなどには事あるごとに睨まれたりしているが。
(あの年頃は、色々と難しくもありますからね……)
シュウがあれくらいの年齢の時と言えば…………あまり思い出したくない事件の頃、ちょうどチカを作った前後あたりであろうか。
無垢と言うほど無垢でもないが、穢れと言うほど汚れてもいない頃。
ある意味、『最も自由だった』かも知れない期間。
……こうして年齢を経てからあらためてその年頃の子供たちを見ると、ある種の羨望を覚えてしまう。
そして思い出す。
王宮。従兄弟たち。クリストフだった時の自分。そして自分に『シュウ』という名をくれた、あの―――
>出来ればタキオン粒子に似た性質を持ち。
>エネルギー自体が成長するようなもので。
ゴーショーグンのビムラーですね、わかります
(フ……。今更そんなことに思いを馳せたところで、どうにもなりはしませんか)
過ぎ去った過去を苦笑とともに振り払い、シュウは現在のこと、差し当たっては目の前の食事に集中する。
と、その時、ティファニアがあることを思い出した。
「あ、そうだわ。あの人たちにも食事を持っていかなくちゃ」
「あの人たち? ……ああ、彼らですか」
「はい。もうそろそろ傷も完治するはずですよ」
ティファニアは自分の長い耳を隠すため部屋の隅に置いてあった帽子を被ると、子供たちに手伝ってもらいながら数人分の食事を運んでいった。
「……………」
『あの人たち』というのは、作戦行動中に撃墜され、瀕死の重傷を負った状態でこのウェストウッド村の近くに墜落してきた竜騎士たちのことである。
一週間ほど前に子供たちによって発見された彼らは、村まで運ばれ、ティファニアの母の形見である『先住の魔法』の水の力とやらで治療を施されたのだ。
その甲斐あって、竜騎士隊は快方に向かっている。
あとは折を見て彼らの記憶をティファニアの魔法で奪い、一匹だけ生き残った竜(竜騎士隊は全員生存していたが、彼らが乗っていた竜は一匹を除いて全滅していた)に乗せて帰還させればこの一件は落着する。
なお、そのティファニアの行動についてシュウは特に口を出していない。
これはシュウがこの件に何の興味もないということもあったが、ティファニアの意思を尊重したいという思いもあった。
ティファニアは自分やマチルダに依存している節がある。
特に自分に対してはその傾向が強い。
これは両親がすでに故人であること、ハーフエルフという人間にもエルフにも忌み嫌われかねない存在であること、またウェストウッド村の子供たちの面倒を見なければならないという重責……などなど、色々なストレスの反動のようなものであるとシュウは分析していた。
要するに、甘えられる相手が欲しかったのだろう。
そんな彼女が自分で考え、自分で決めたことなのだから、そこは大事にしてやりたかった。
何と言うか、妹がいたらこのような感じなのかも知れない。
……ちなみに親しかった従姉妹であるセニアとモニカも自分より三歳ほど年下ではあるが、あの二人は『妹』と言うよりも『幼馴染』あたりの方がしっくり来るのである。
閑話休題。
何にせよ、あの竜騎士隊は明日にでもこの村を出ることになるだろう。
まさに『先住の魔法』に込められた精霊の力の恩恵と言うべき結果だ。
(そう言えば……)
シュウは『精霊の力』というキーワードから、水の精霊からアンドバリの指輪の奪還を依頼されていたことを思い出す。
……アルビオンの現皇帝であるクロムウェルがそれを持っているらしいが、戦争中という今の状況からすれば奪還は難しいと言えるだろう。
ここは様子を見つつ機会を待つべきだろうか。
(……いえ、むしろ今を逃せば奪還が困難になるかも知れませんね)
戦争中ということは警戒が厳しくなるということであるが、同時に混乱が起こりやすいということでもある。
自分もかつては戦争のドサクサにまぎれて誘拐行為を行ったり、優秀な人材を引っこ抜いたりしたものだ。
ならば今の内にクロムウェルの所に行き、手早くアンドバリの指輪を盗むなり強奪するなりしておきたい。
だが。
(モニカを連れ出した時はラングランの神殿に忍び込んでプラーナを察知するだけだったので簡単でしたが、今回は勝手の分からないハルケギニアのこと……。しかもプラーナの探知に頼ることも出来ませんし……)
プラーナやオーラ力という『特殊な力』の概念そのものが無い世界ではプラーナの特徴は判別しにくいし、何よりクロムウェルのプラーナなどシュウは知らないのである。
(誰かに案内を頼めればいいのですが)
しかしクロムウェルがいるであろうアルビオンの王宮、もしくは重要拠点に詳しい人間などシュウの知り合いにいただろうか。
(ティファニアに期待するのはさすがに酷ですしね……)
いくら王族の血を引いているとは言え幼少時は屋敷に閉じこもりきりで、今は小さな村で暮らしているような少女にそこまで求めるのは無理だ。
と、なると。
(……ふむ)
「行って来ましたー」
シュウが案内人となる人物に当たりをつけたところで、竜騎士隊に食事を持っていったティファニアたちが戻って来た。
子供たちは食卓につき、ティファニアは台所に立って、このあたりで採れる果物である桃りんごの皮をナイフでむき始める。おそらくデザートにするつもりなのだろう。
そういやαからのシュウなんだっけ
ゴッツオもプリスケンもだが色々あちこちに居すぎて混乱するぜ
このシュウはビムラーはまだノーチェックか
そしてティファニアが桃りんごの皮をむき終わり、実の方を切り始めたところでシュウが彼女に声をかける。
「ティファニア」
「はい、どうかしましたか?」
「マチルダのことについて、少々お聞きしたいのですが」
「……………」
ざくっ
ティファニアによって真っ二つに両断される桃りんご。
一方、場の空気から『何か』を感じ取ったチカはブルブルと小刻みに震え始めていた。
「……マチルダ姉さんがどうかしたんですか、シュウさん?」
「ええ。今度、彼女をお誘いして二人で出かけようかと思いまして」
「…………あら、そうなんですか?」
「ハルケギニア……と言うよりアルビオンについては彼女の方が詳しいですからね。太守の娘という立場上、城やどこかの砦などに足を運ぶ機会もあったのでしょう?」
「………………ええ。多分、そうだと思いますけど」
「それは重畳。……しかし本来ならば女性をエスコートするのは男性の役目なのですが、今回の道案内はマチルダにまかせきりになってしまいますね」
「……………………うふふ。しょうがないですね、シュウさんは」
ティファニアはニコニコと笑いながらシュウと受け答えをする。
ちなみにその受け答えの最中、彼女の手元にある桃りんごはざっくざっくと切断され続けていた。
「……………」
ティファニアは切った桃りんごを皿に盛り付けてテーブルの上に置くと、この場から飛び立とうとする青い小鳥に笑顔のままで声をかける。
「チぃ〜カちゃぁ〜〜ん?」
「ひいっ!!?」
「あら、どうしたの? ……せっかくデザートに桃りんごを切ったんだから、食べてくれるととーっても嬉しいんだけど……。確か好きだったわよね、桃りんご?」
「え、えええ、えっと、確かに好物ですけど、あの、ティファニア様、そういうセリフは、せめてナイフを手に持たないで、その、言っていただけないで、しょうか……?」
「もう、チカちゃんったら。別にわたしがナイフを持ってるからって、どうということはないでしょう?」
「いや、何て言うか……そのナイフからしたたり落ちる果汁が、何かを暗示しているような……」
「『何か』って、なぁに?」
「うっ……。い、いえ、何でもございません……」
妙な雰囲気を撒き散らしつつ会話を行うティファニアとチカ。
シュウはそんな彼女たちの様子を横目で見ながら、今後のことについて考えを馳せる。
(それでは近日中にトリステイン魔法学院に行くとしますか。……マチルダのこともそうですが、ユーゼス・ゴッツォとも話はしておきたいですからね)
ついでのような扱いになってしまうが、ユーゼスと定期的に接触しておく必要はある。
……自分のいた世界のユーゼスとは様々な面が異なっているとは言え、アレは『ユーゼス・ゴッツォ』なのだ。
動向を把握しておくに越したことはないだろう。
(やることや気になることは色々とありますが……さて、これらの要素がどのような結果をもたらすのか……。そして、私がこの世界に召喚されたことにどのような意味があるのか……)
いずれは明らかになるにせよ、今の段階では誰にも分かるまい。
シュウにも、ユーゼスにも、そして『それ以外の存在』にもだ。
(……それらが一体どのような答えを出すのか、興味はありますが……)
しかし。
シュウ・シラカワの最終目的はその『結果』でも『意味』でも、ましてや『研究対象』の解明・解決でもない。
何よりも果たすべきは、
(ティファニアは特に意識して私を召喚したわけではないのですから構わないとしても……。アレを仕掛けた人間には、この私を巻き込んだ報いを受けていただかなくてはなりませんね……)
内心で復讐心を湧かせながら、シュウは静かに微笑を浮かべるのだった。
さすが変態だな>シュウ(CV子安的な意味で)
以上です。
……さすがに体勢とかエレオノールのキャラ的な問題とかで、唇にキスは無理でした。
寝てるルイズにキスが出来る才人の凄さを、改めて実感している次第です。
いや、寝ぼけて強引にキス出来るサンドリヨンも凄いか。
つまりノボル先生は偉大だってことですな。
で、シュウの『研究対象』ですが、昔のスパロボに詳しい人なら「ああ、そういうことね」と分かってくれたと思います。
いや、ご都合主義にも理由はいるかな、と思いましたので。
取りあえずOG3でやられる前に打ち出すことが出来てホッとしております。
それでは皆様、支援ありがとうございました。
さて、EXCEEDやるか……。
乙
色々とまた状況が動き出しそうですな
乙でーす
昔のスパロボか・・・ゼゼー何とかさんの部下に優しい設定とかOGで蘇る日がくるのかしら
EXCEEDは今日届きましたが、明日は飲み会に拉致される予定で明後日の昼まで下手すりゃお預けですよぅ・・・orz
とりあえず今はチカの無事とコルベール先生の冥福を祈ります・・・
追記
wikiページ容量オーバー 分割する箇所はどこが良いでしょうか?
ラスボスさん乙でしたー。
マチルダさんの心境が理解できます。ただ上手くルイズのフォローをしておかないと大変なことを引き起こしそうで怖いですが。カトレアさんとご両親も。
>>752 wikiへの登録、ありがとうございます。
分割はマチルダパートの直前でお願いします。
第89話
アルビオン決戦 烈風vs閃光 (前編)
古代怪鳥 ラルゲユウス
円盤生物 サタンモア 登場!
才人とルイズたちが時空間に囚われていた間に、事態は大きく動いていた。
レコン・キスタ艦隊はすでにロンディニウムを後にして、王党派陣営を直撃するために
進撃中だという。
「どういうこと? アルビオン艦隊は風石不足で動けないはずじゃあ」
「ヤプールもなりふりかまうのをやめたってことだろ。どのみち正攻法じゃあ
レコン・キスタの逆転がなくなった以上は、適当に使い切ってポイ捨てってとこだろうな」
ゼロ戦をシルフィードとともに飛ばしながら、才人はこの先始まるであろう
血みどろの戦争を想像して吐き捨てた。彼らが時空間にいる間に敵艦隊は
この場所を通過して、今やずっと先にいるはずだった。むろん、そのときは
タバサたちの前を通り過ぎていったのだが、さすがに艦隊相手には手が出せず、
森に隠れてやり過ごした後に才人たちが戻ってきたのだ。
二人はレコン・キスタ艦隊がすぐには風石不足で動けないと、甘く見ていた
ことを後悔した。
「もっと速く飛べないの?」
「だめだ、時空間内でいろいろ無茶をやったツケが回ってきやがった。これ以上
加速するとエンジンが止まるかもしれん」
ゼロ戦は時空間脱出の後から、一定以上にトルクを上げようとすると異常振動を
起こすようになっていた。どうやらエンジンのどこかを損傷したのか接触が
悪くなってしまったようだが、元々放棄されていた上に、エアロヴァイパーと
あれだけ激しく戦ってなお飛び続けられたことこそ奇跡に近い。
かといってシルフィードも翼を怪我したままで、エースもコッヴとの戦いで
エネルギーを消耗している。一行は、行きに比べて遅くなった足で、焦りながら
来た方向へと飛び続けた。
だがそのころ、才人たちのはるか前を航行するアルビオン艦隊は、もはや
レコン・キスタの全戦力となった一万の兵力を全て乗せ、窮鼠猫を噛むの言葉を
自ら実践するために殺気を撒き散らしながら進んでいた。
「進め進め、今敵は油断しているだろう。勝利は我らの前にあるぞ」
艦隊旗艦レキシントン号の艦橋から全艦に向かって流されたクロムウェルの
士気を鼓舞するための演説を受けて、各艦のレコン・キスタ派の貴族が
大きく歓声を上げるが、この艦の艦長、サー・ヘンリ・ボーウッドらのような
非レコン・キスタ派の人間はもうやる気を失っていた。
「いったい、なんのために戦うのか?」
もとより革命などに興味のなかった彼のような人間は、もはや趨勢を
変えようもない今になっても、戦い続けなくてはならないことに疑問を
抱かずにはいられなかった。
確かに、ここでウェールズら王党派の首脳陣を抹殺してしまえれば
王党派は力を失うが、後に残されるのは国内の混乱と国力の疲弊、
それにともなう税率引き上げによる圧政だ。一部の者のみを喜ばせる
ために国の将来を犠牲にする戦いに、彼のような実直な人間は苦悩したが、
その軍人としての実直さゆえに彼は上官たるクロムウェルに逆らえなかった。
「索敵の竜騎士から連絡、前方距離四十万に王党派軍を確認」
「全艦、砲雷撃戦用意!」
ボーウッドの命令が全艦隊に伝達され、将兵は配置につき、大砲に砲弾が
装填されていく。彼は本来この艦の艦長にしか過ぎないが、本来の艦隊司令官である
サー・ジョンストンが主力軍全滅の報を聞いて、脳溢血で卒倒してしまったので
ほかに艦隊指揮のできる人間もいないことから、不本意ながら司令官代理を
勤めて、かつて忠誠を誓った相手に挑まなければならない羽目に陥っていた。
「後世の人間は、私のことを恥知らずな裏切り者と記すかもしれんな。だが、
それが私の運命ならば、もはや仕方あるまい」
唯一の救いは、彼らはもはやクロムウェルが人間では無く、レコン・キスタも
王党派もこの世から消してしまおうとしていることを知らずにすんでいることだろう。
破滅へ向かって、様々な思いを乗せながら、レコン・キスタ艦隊はついに
王党派陣営を空からその視界に捉えようとしていた。
その一方で王党派陣営も、再編を完了して行軍を再開しようとしていたが、
上空警戒中の竜騎士が大型戦艦を中心とした大小六十隻の大艦隊を
山影のかなたに発見して、即座に行軍準備の完了を待っていたウェールズと
アンリエッタの元へ報告していた。
「この局面で艦隊を投入するだと? 敵は何を考えているのだ」
報告を聞いたウェールズは呆れかえった。ここでいささかの損害を王党派軍に
与えたところで、現在ほとんどの拠点を王党派が抑えている今となっては
補給もできずに艦隊はすぐに行動力を失う。むしろ戦略的にはロンディニウムで
持久戦に入り、艦隊の強大な攻撃力と防御力を防衛に活かし、戦局の転換を
図るべきなのに、なぜわざわざ長躯して艦隊をすりへらそうというのか?
彼は常識的な人間なので敵の意図を読みかねた。むしろそこが用兵家
としての彼の限界を示しているのかもしれなかったが、彼より客観的に、かつ、
貴族というものの負の面を彼より見慣れてきたアンリエッタには想像がついた。
「追い詰められて冷静な判断力を失い、無謀な冒険に出てきたのでしょう。
おそらく、わたしたちの首をとれば逆転できると考えて……まあ、あながち
間違いではありませんが、ともかく、艦隊戦力を持たない今の私たちには強敵です。
すぐに迎撃の準備をしましょう」
ここでハルケギニアのことをまだ詳しく知らない才人なら、空を飛ぶ艦隊に
なすすべを失っただろうが、ハルケギニアでは空中艦隊は当たり前である
以上それに対抗する手段も当然ながら存在し、敵襲の報はすぐさまアルビオン軍
七万に伝達され、「全軍、対空戦闘用意」が下命された。
また、アンリエッタもアニエスにトリステイン軍一千五百も戦闘参加することを命じた。
そのときアニエスはレコン・キスタ軍が来たことで才人たちが失敗したのかと、
彼らの身を案じていたが、冷静な軍人の部分の彼女は冷徹にアンリエッタの
命令を遂行していった。
砲兵に配備されている大砲は、アルビオンの冶金技術で作られたものは
射程が短く対空用に使えないために後送されてカモフラージュの布をかけられて
隠され、輸入品であるゲルマニアの少数の長砲身の大砲は榴弾を装填されて
高射砲へと変わっていく。
さらに、チブル星人によって与えられた銃は星人の死によってハルケギニアの
標準的な性能に戻っていたが、銃兵は弾を込めて待機し、弓矢や槍しか持たない
平民の部隊は即席の蛸壺を掘って、その中に避難していった。砲弾による被害と
いうものは、大部分が爆風と破片によるもので、地中に隠れれば直撃でも
受けない限りは安心だ。陸兵が無事なうちは、敵も兵士が無防備となる
降下作戦には移れないだろうので、これでも充分に敵への威圧になる。
そして、頼みの綱はやはりメイジだが、火や風の優れた使い手は火炎や
風弾を数百メイル飛ばせるために攻撃に、やや劣る使い手や土の使い手は
防御壁となるために、水の使い手は消火および救護要員にと、指揮官さえ
復活すれば熟練した軍隊の動きを取り戻して、きびきびと配置についていく。
それらは、地球でも航空機が戦争に使われるようになってから見られる
ようになった光景と、ハルケギニアならではものを合わせた軍事行動であったが、
敵は空に浮かんだ艦隊、この程度で対抗できるのだろうか。
そんなとき、参謀の一人がもっとも対艦戦に有効な竜騎士が足りないと言ってきた。
「殿下、敵の射程に入るまでにはあと三〇分ほどと思われますが、現在
戦闘可能な竜騎士はおよそ一〇〇騎、いささか心もとなく存じますが
いかがいたしましょう?」
ブラックテリナとノーバの影響で、竜騎士は大部分残っていたが、肝心の
竜のほうが暴徒化した人々に襲われたり逃げたりして、半数もの数が
使えなくなっていたのだ。
だが、アンリエッタの助力を得て、名誉挽回に燃えるウェールズは、
ほんの少し前まで廃人の一歩手前だったとは思えないほど果敢に攻撃を命じた。
「かまわん、全騎を出撃させろ。数だけにものをいわせる烏合の衆などに
先手をとらせるな!」
そのウェールズの攻撃的な姿勢に、病み上がりに不安を抱いていた参謀は
驚いたが、それでは竜騎士を無駄死にさせるだけだと反論した。
「待ってください。一〇〇騎の竜騎士は我が軍の唯一の空中戦力です。
これを失ってしまえば……」
「わかっている。正面きって激突すれば我がほうは数で負ける。しかしな……」
そこでウェールズはアンリエッタと、彼女のそばで控えているアニエスから
教えられた、アルビオン軍の弱点と、魔法の使えない銃士隊がメイジと戦って
これた戦法を応用して、その弱点を突く作戦を説明していき、全部を聞き終えた
参謀は今度こそ本気で驚いた。
「そんな、しかしそんな戦法では我が軍の誇りに傷がつきましょう」
「馬鹿者! 負ければ奴らは我々のことを臆病で惰弱な愚か者だったと世界中に
言いふらし、あらゆる歴史書にそう書き残されるであろう。そうすれば我らの
誇りなど闇に葬られる。それに空から地上の人間を虐殺しようとしてくる敵に、
なんの遠慮がいるのか!」
宮殿の端整な貴公子から、戦場の猛将のものに変わったウェールズの
怒声に、参謀は目が覚める思いがすると同時に、彼への評価を改めていった。
「わかりました。では命令を徹底しましょう」
「そうだ。あとは地上からの対空砲火で敵艦隊を漸減していく」
「それで、あの艦隊と戦えますか?」
「そこはやりようだ。敵とて無理をしてここまで来ている上に、艦隊に乗っている
一万程度の戦力では七万の我々を制圧することはできないから、艦隊さえ
なんとかしてしまえばレコン・キスタの命脈はそこで尽きる」
ウェールズは残された時間でいかにして敵艦隊を迎撃するか、脳細胞を
ここで使い切るくらいに考えた。こちらの持っている戦力はすべて把握
しているから、あとはそれをどれだけ効率よく使い、敵の弱点をつけるか
どうかで勝敗は決まる。彼は王党派の命運がかかっているのもあるが、
とにかくじっと見守っているアンリエッタにみっともない姿は見せられないと考えていた。
「婦女子に戦争の手ほどきをしてもらうようでは、アルビオンの男は天下に
大恥をさらしてしまうだろう」
それは、敵襲の報告を受けてすぐのこと、ウェールズは復帰してから調子を
早く取り戻そうと、焦りながらもてきぱきと指示を出していっていたが、
艦隊を相手にしては、とりあえず対空戦闘準備を命じたものの、すぐには
続いて出す有効な手立てを思いつけなかった。
だが、そうして悩むウェールズに、参謀が伝令のために立ち去って、人目が
なくなったことを確認したアンリエッタは優しげに話しかけた。
「ウェールズ様、今はわたしもここにいます。あなたの苦しみはわたしの苦しみ、
わたくしにもあなたの苦しみをわけていただきたく存じますわ」
「いや、アンリエッタ、君の気持ちはうれしいが、軍事上のことを君に相談しても
仕方が無い。ことは君のような可憐な人には似合わない、殺伐とした世界のことなのだ」
「いいえ、確かに敵は強大ですが、敵は隠しようも無い弱点をいくつも持っています。
それを突けば、勝利は遠くありませんわ」
アンリエッタは驚くウェールズに向けて、レコン・キスタ艦隊の弱点を一つ一つ
説明していった。
空を飛ぶ艦隊は地上の軍隊にとって天敵と思われがちだが、決してそんなことはない。
確かに、まともにぶつかれば力の差は圧倒的だが、巨艦をそろえたら強いので
あれば駆逐艦や巡洋艦はいらなくなるし、陸戦でも歩兵より戦車が強いのなら
歩兵はいらなくなるが、実際にそんなことはない。なぜなら、巨大であることは
メリットだけでなくデメリットでもあるからだ。
「ある意味、追い詰められたのは彼らでもあるのです。なにせ、危険物を満載した
当てやすい目標に潜んでいてくれるのですから」
そう、戦艦とはいわば動く火薬庫で、もしそこに攻撃が命中すれば一瞬にして
炎は自らを焼き尽くす。地球でも過去に不沈とうたわれた多くの巨大戦艦が、
弾火薬庫への引火で沈没している事実からも、それは疑いない。また、図体が
でかい分だけ攻撃をこちらから当てやすいというのもあり、舵、姿勢制御翼、
マスト、指揮艦橋など、一発でも攻撃を受ければ艦の機能に著しい障害を
与えるところはいくらでもある。
それに対して、防御を固めた七万の兵隊を高高度からの砲撃だけで全滅させるのは
困難で、精密射撃を試みたり陸兵を下ろそうと低高度に下りようとすれば、降下中が
絶好の攻撃のチャンスとなる。
「それに敵は指揮する貴族は後がなくなってヒステリーになっていますし、兵士は
勝つ価値の無い戦いに厭戦気分が高まっているでしょう。そこにもつけいる隙はあります」
それらの考察は、軍事の専門家を自負するウェールズをうならせるのに充分な
もので、勝機があるどころか王党派の優勢をも示すそれには、発想を転換して
みればピンチはチャンスにもなるという、もう一つ言うならば心に余裕を持てという
アンリエッタからのアドバイスであった。
荒しっぽいのが来たから次スレ立ててみよう
「敵は数の半分の力も出せないでしょう。油断さえしなければ、恐れるべきものはありません」
「うむ。君の洞察力は、僕の想像を超えているようだ。けれど、君はそれほどの見識を
いつのまに身につけたのだい?」
「ウェールズさまのお役に立てるのでしたら、わたくしは何でもいたしますわ。
ただ、ちょっとわたくしは軍事顧問の先生に恵まれましてね、ほほ」
軽く口を押さえて上品に笑うアンリエッタを、ウェールズは唖然として見ていた。
両軍が激突したのは、それから二〇分後の、双方の竜騎士隊の接触からである。
「撃ち落してくれる!」
「全騎、迎撃せよ!」
レコン・キスタ軍二一〇騎、王党派軍一〇〇騎の火竜、風竜の大部隊同士は
正面きって激突した。
たちまち竜のブレス、魔法の応酬、竜同士の牙と爪の組み合い、さらに
近接しての騎士対騎士の肉弾戦があちこちで繰り広げられる。だが、最初の
戦局は数で圧倒的に勝るレコン・キスタ側が優勢に進めた。
状況が変わったのは、戦闘開始から十分ほど経ってからである。敵側の
竜騎士はレコン・キスタ派の貴族が多数であるから、文字通り必死になって
攻撃してきたが、ウェールズから作戦を与えられた王党派陣営の竜騎士隊は
敵軍の凶熱をまともに受け止めようとせずに、戦力を温存しながら負けて逃げ帰る
ふりをして、追いかけてきた敵を友軍の銃兵の射程に誘い込んで撃墜していった。
「追撃戦をしているときこそ、一番敵の奇襲を警戒せねばならんものだ」
これはアニエスがまだ無名であった銃士隊の原型の部隊を率いていた頃
使っていた戦法の一つで、一部が負けたふりをして逃げ帰り、敵を逃げ場の無い
十字砲火の巣に引きずり込んで殲滅するというもので、これに一度誘い込まれれば
メイジだろうがオーク鬼だろうが反応するまもなく蜂の巣になるのだ。
「卑怯な!」
レコン・キスタ側の竜騎士は怒ったが、王党派の竜騎士は彼らとは反面、
はぐれメイジやレコン・キスタに親兄弟を奪われた貴族の生き残りがその多数を
占めていたから、勝つためには手段を選ばずに、そのほかにも二、三騎で一騎を
袋叩きにしたりと、数で勝る敵軍と互角の空中戦を演じた。
そして、とうとうやってきた艦隊に対しての王党派軍の反撃は、卑怯な戦い方を
してきたレコン・キスタのやり方を跳ね返すような徹底したものが加えられた。
「ごほっ! ごほっ! くそっ、煙幕とは」
接近して大砲を撃ってこようとしてきた艦隊に、風向きを計算して、二千の兵が
油や木材を焚いて放たれた煙幕がもうもうと襲い掛かる。これは一見地味だが、
軍隊なら必ずあるタバコの葉や竜など動物の糞を乾燥させたものをくべることで、
催涙ガスともなって、煙の上がっていくほうにいる艦隊の将兵の目と喉を痛めつける。
「おっ、おのれ! 風のメイジは煙を吹き飛ばせ」
それぞれの艦の艦長は当然の命令を出したが、これもまたウェールズの
作戦のうちであった。密集した艦隊のそれぞれから放たれた『ウィンド・ブレイク』
などは確かに煙を吹き飛ばす働きをしたが、同時に煙の先にいた味方に
当たって、敵の攻撃と誤解されて逆に風の槍を返されるという同士討ちが
あちこちで見られた。
「うろたえるな、高度を上げて振り払え!」
熟練の指揮官であるボーウッドは、味方の醜態に舌打ちしつつ艦隊を守ろうと
命令を飛ばすが、彼より爵位の高い貴族の艦長の操る船はその命令に従おうとせず、
バラバラの方向に転舵して、挙句の果てに味方同士が衝突して沈没するという
最悪の展開を生み出した。
ラスボスの人乙
先生…
しかしやはりシュウはこうやって陰で暗躍するのが似合うな
「連中は素人か、なにをやってるんだか」
王党派のパリーという老いた将軍は、まともに統率すらとれていないレコン・キスタの
艦隊に呆れかえった。敵の大艦隊が接近中の報を聞いたときには、皇太子殿下を
お守りして名誉の戦死をとげようと覚悟していたのに、相手がこれではもったいなくて
到底死ぬ気にはなれなかった。
だがそれというのも、全体の司令官たるクロムウェルが艦隊戦はわからんよと
早々に命令を出すのを放棄して、あとは戦意だけはあるが協調性がない艦長たちが
司令官の命令をあちこちで無視したり、戦意不足な兵士たちがサボタージュを
したりしたので、アンリエッタの予言どおりにせっかくの大艦隊も、その実力の
半分も出せてはいなかった。
それでも、まだ艦隊は健在であるので、今度は本格的な攻撃が艦隊に襲いかかった。
「高射砲隊、撃ち方始め!」
地球の基準からいえば、それは多少長く見えるだけの鉄の筒にすぎないが、
王党派がありったけの財力と交渉を駆使してもたった四門しか手に入らなかった
その砲は、射程八リーグ、砲弾到達高度三〇〇〇メイルと、砲兵器では砲亀兵と
呼ばれる部隊が持つ、射程たった二リーグほどしかないカノン砲が最強クラスの
ハルケギニアでは、とにかくバカ高いことをのぞけば、戦艦殺しとして大いに
期待される新兵器で、それが一斉に高度一〇〇〇のアルビオン艦隊に向けて放たれた。
「着弾! すごい威力だ」
放たれた四発の砲弾のうち、三発は外れてかなたの森に火柱を上げるだけに
とどまったが、護衛艦『エンカウンター』の右舷艦首付近に命中した一発は、
艦首の兵員室を吹き飛ばした後に、二本あるマストの前部を倒壊させて、
八〇〇トン程度しかないこの船を、即座に戦闘続行不能、総員退艦に追い込んだ。
「全砲、射角調整急げ! いける、この砲なら戦艦でも沈められるぞ」
だがそれでも、数にものをいわせた敵艦隊は、おそるべき対空砲火に
犠牲をはらいながらも、高高度から王党派軍主力の頭上に砲弾を降らせようと
艦首付近の砲門を開き、砲弾を装填した。
「見ておれ、下賎なるものどもに鉄槌を下してくれるわ!」
怒りに燃えているレコン・キスタの若い貴族の士官は、ともすれば手を抜こうとする
兵士たちに杖を向けて脅しながら砲撃準備を整えさせると、やっと煙幕を
脱して視界に捉えた王党派の陣地に向かって、「砲撃開始」と怒鳴った。
火薬が砲内で一瞬にして燃焼して、そのガス圧で音速近くまで加速された
球形の砲弾が数十発撃ち出されて、さらに重力の助けも借りて地上に這いずる
敵兵を粉砕した。
「やったぞ、ようし、あの敵兵が固まっているところにどんどん撃て」
調子付いた彼は、旗が何本も立って人影の多く見えるところへの砲撃を命じ、
周りの艦の同じような若い士官もそれに続いた。
だが、彼らにとっての敵は阿鼻叫喚どころかほくそえんでいた。
「馬鹿な連中だ。人形だということに気づいていない」
そう、それは土のメイジが作った等身大の泥人形に、華美な貴族風衣装を
着せたダミー人形で、本物の人間は別のところに目立ちにくい格好で分散して
いたので、人的被害はほとんど発生していなかった。
これが、熟練したボーウッドのような指揮官であったら即座に見破って
無差別砲撃を加えていたであろうが、ダミーやカモフラージュといった戦法は
効果、歴史ともに深く古いものであって、たとえば三国志の諸葛孔明が
赤壁の戦いでかかしを積み込んだ船に攻撃させて十万本の矢を集めたり、
近代でも爆撃から守るためにニセモノの工場や飛行場をわざわざ作ったり、
停泊している航空母艦を迷彩ネットで覆うばかりか、甲板上に小屋まで建てて
島に偽装した例が実際にあるので、若くて血気盛んだが経験不足な士官たちは
こんなものでもあっさりとだまされてしまったのだ。
ボーウッドは味方が見当外れの方向を攻撃していることに気づき、忠告して
やめさせようとしたが、その隙に王党派軍の攻撃部隊は艦隊の真下にまで
潜り込んでいた。
「目標は直上、全員撃て!」
空に浮かんだ敵艦への最短距離である真下に陣取ったメイジたちは頭の上に
向かって総攻撃を開始した。火球を投げつける者、空気の槍を発射する者、
ガーゴイルを体当たりさせるものなどいろいろだが、目標は船にとって死命を
決する最重要の木材である竜骨に集中していたのだけは変わりない。
以前才人たちの乗った『ダンケルク』号が竜骨が折れかけて沈みかけたように、
竜骨が折れればそのまま船は真っ二つになる。むろん軍艦は重要な部分の
部品には念入りに『固定化』がかけられているが、それも同等以上のクラスの
高レベルのメイジの連続攻撃に耐えるには限度があり、外れても船底は
もっとも防御が薄い部分であるために、艦内に飛び込んだ魔法が被害を与えていった。
「真上と、真下、さて、もろいのはどちらでしょうか?」
戦いは、情け容赦なく敵の弱点を突け、アンリエッタは彼女の軍事顧問から
叩き込まれた鉄則を忠実に実行して、レコン・キスタ軍をすり減らしていっていた。
これが、能力、士気ともに万全であったなら、レコン・キスタ軍は王党派に
大打撃を与えられたかもしれないが、積極性を欠く指揮官と、実戦経験の薄く
士気の低い将兵に操られていたのでは、そもそも勝てる道理がなかった。
だが、まだ旗艦レキシントンほかの多数の艦が健在で、往生際悪く
砲撃を続けてきて、こちらにも無視できない死傷者が出ている。アンリエッタは、
敵が損害の大きさに驚いて撤退してくれればいいがと期待していたが、それが
かなわないと悟ると、味方と、そして敵の犠牲をこれ以上拡大させないために
切り札を投入することを決断した。
「やはり、使わざるを得ませんか……すみませんが、よろしくお願いいたします」
「御意」
アンリエッタの命を受けて、それまで彫像のように直立不動の姿勢で彼女の
傍らに立ち続けていた鉄仮面の騎士が、ゆらりと最敬礼の姿勢をとった。
それから五分後、硬直状態にある戦場で、その姿を最初に見つけたのは
レコン・キスタ艦隊の戦艦『レパルス』の見張り員であった。
「なんだ……鳥?」
太陽の方向にちらりと見えた影が一瞬陽光をさえぎったので、手で光を
さえぎりながらそれが何かを確かめようと見上げたが、次の瞬間にその影が
今度は完全に太陽を覆い隠すと、それが鳥どころかドラゴンより巨大であると
気づき、反射的に絶叫していた。
「ちょっ、直上から敵襲ぅっ!」
しかし、彼の叫びは艦長の命令ではなく、その鳥の方向から放たれてきた
『エア・カッター』によって返答された。彼がまばたきしている間に、空気の
刃はレパルスの四本あるマストと甲板上にある人間と救命ボート以外の全てを
バラバラに切り刻み、さらに舵をも破壊することによってこの船を瞬時に戦闘不能に
追い込んだのだ。
「レパルス大破! 戦線を離脱します」
ボーウッドの元にその報告が届いたときには、すでに第二第三の犠牲者が
レコン・キスタ軍の沈没艦リストに予約を確定させていた。巡洋艦『ドーセットシャー』が
特大の『エア・ハンマー』で甲板を押しつぶされ、戦艦『リベンジ』が『エア・カッター』で
真っ二つにされて墜落していく様は、何人もが目をこすってほっぺたをつねってみたほどだ。
「いったい何が……」
破壊された三隻から、乗組員たちが救命ボートで脱出を図っている。彼らにとって
さらに信じられなかったのは、攻撃を受けた三隻ともに轟沈にはいたらずに、
戦闘不能かゆっくりと墜落していくことになったので、乗組員のほとんどが
無事に脱出できていることだった。
が、それも三隻の艦を撃沈せしめた上空の敵が降下してきたときには、甲板上の
全ての大砲を向けろという命令にすりかわって、彼らは対空用の榴弾を込めた
大砲を謎の敵へとぶっ放した。
「二時の方向、仰角六〇度、距離五〇〇……撃てぇ!」
いっぱいに上を向かせた大砲が硝煙と炭素の混じった黒煙を撒き散らしながら、
小さな鉄の弾を数百数千と上空へ打ち上げていく。それらは徹甲弾に比べれば
威力は劣るが、鉄の小弾丸が高速で当たるので竜の皮膚をも打ち抜く威力を誇る。
「落ちろ!」
太陽を背にしているせいで、何がいるのかはよくわからなかったが、数十門の
一斉射撃である。これにかかればどんな竜でもグリフォンでも逃げ場なく撃墜
されるものと思われた。
だが、数千の鉄の豪雨の中から姿を現したのは、血だるまになった
ドラゴンなどではなく、戦艦にも匹敵する広大な翼を広げながら、死神の
鎌のような巨大なカギ爪を振りかざして急降下してくる怪鳥だったのだ。
「巡洋艦『ベレロフォン』、轟沈!」
哀れにも最初の犠牲者になった二本マストの巡洋艦は、巨大なカギ爪に
船体をつかまれると、そのまま大鷲に捕まった子牛が肉を引きちぎられる
ように、無数の木片をばらまきながら真っ二つに引き裂かれたのだ。
「巡洋艦を一撃でだと!?」
軍艦の構造体には固定化がかけられていて、並の鉄骨くらいの強度が
あるはずなのに、それを気にも止めずに力任せに引き裂いた怪鳥に、
隣接していた艦から何人もの愕然とした声が流れたが、惨劇はそれで
終わらなかった。それからわずか一〇秒の後に。
「戦艦『インコンパラブル』『インディファティカブル』、護衛艦『アキレス』
撃沈! 戦艦『テメレーア』大破、戦線離脱します」
四隻もの艦が撃沈破されたという信じられない報告がレキシントンの
艦橋に届けられたとき、冷静沈着を持ってなるボーウッドも、思わず杖を
落としてしまいそうになった。