アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part15

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@お腹いっぱい。
このスレはリレーSS企画、アニメキャラ・バトルロワイアル3rdの本スレです。
企画の性質上残酷な内容を含みますので、閲覧の際には十分ご注意ください。


参戦作品リスト
 【咲-Saki-】
 【新機動戦記ガンダムW】
 【Fate/stay night】
 【けいおん!】
 【戦国BASARA】
 【空の境界】
 【ガン×ソード】
 【とある魔術の禁書目録】
 【化物語】
 【機動戦士ガンダム00】
 【コードギアス 反逆のルルーシュR2】
 【逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】


SSのまとめwikiはこちら
http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/

規制時の避難所はこちらのしたらばです
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13136/


前スレ
アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part13
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1260106032/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 03:55:29 ID:jA315KXG
4/6【けいおん!】
 ○平沢唯/○秋山澪/●田井中律/○琴吹紬/○平沢憂/●中野梓

3/6【咲-Saki-】
 ●竹井久/○天江衣/○福路美穂子/●池田華菜/●加治木ゆみ/○東横桃子

5/6【新機動戦記ガンダムW】
 ○ヒイロ・ユイ/○デュオ・マックスウェル/○張五飛/○ゼクス・マーキス/○トレーズ・クシュリナーダ/ ● リリーナ・ドーリアン

3/6【戦国BASARA】
 ○伊達政宗/●真田幸村/○織田信長/○明智光秀/●本多忠勝/●片倉小十郎

4/6【とある魔術の禁書目録】
 ○上条当麻/●御坂美琴 /○白井黒子/○一方通行/●月詠小萌/○海原光貴

5/6【Fate/stay night】
 ○衛宮士郎/○セイバー/○アーチャー/○バーサーカー/○ライダー/●キャスター

3/5【空の境界】
 ○両儀式/●黒桐幹也/○浅上藤乃/○荒耶宗蓮/●玄霧皐月

3/5【ガン×ソード】
 ○ヴァン/○レイ・ラングレン/●カギ爪の男/○ファサリナ/●プリシラ

2/5【逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
 ○伊藤開司/●利根川幸雄/●兵藤和尊/●安藤守/○船井譲次

5/5【コードギアス 反逆のルルーシュR2】
 ○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./○ユーフェミア・リ・ブリタニア/○アーニャ・アールストレイム

3/5【化物語】
 ○阿良々木暦/○戦場ヶ原ひたぎ/●八九寺真宵/○神原駿河/●千石撫子

2/3【機動戦士ガンダム00】
 ●刹那・F・セイエイ/○グラハム・エーカー/○アリー・アル・サーシェス

50/64

※書き手枠で決定した下記の12名は、バトルロワイアル内で参加者に支給されてた名簿には名前が記載されていません。

中野梓@けいおん!、片倉小十郎@戦国BASARA、月詠小萌@とある魔術の禁書目録、
海原光貴@とある魔術の禁書目録、玄霧皐月@空の境界、プリシラ@ガン×ソード、
兵藤和尊@逆境無頼カイジ、安藤守@逆境無頼カイジ、船井譲次@逆境無頼カイジ
ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス、アーニャ・アールストレイム@コードギアス、千石撫子@化物語
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 03:57:27 ID:jA315KXG
バトルロワイアルのルール

【原則】
 64名の参加者が残り一名になるまで殺し合う。

【スタート時の持ち物】
 各人に支給されたデイパックの中身は以下の通り。
 地図、名簿、食料、水、メモ帳、筆記用具、ルールブック、デバイス、腕時計、懐中電灯、
 応急処置セット(絆創膏、ガーゼ、テープ、ピンセット、包帯、消毒液が詰められた救急箱)、ランダム支給品(各人1〜3個)。

【名簿について】
 64名中、52名の参加者の名前が記載されている。
 未掲載の12名については、第一回放送の際に発表。
 龍門渕透華の名前は最初から掲載されていなかった。

【ルールブックについて】
 ルールが書かれた小冊子。開会式中でインデックスが語った内容とほぼ同一。優勝特典についても記されている。

【デバイスについて】
 現在自分がいるエリアがデジタル表記で表示される機械(【A-1】といった具合に)。方位磁石としての機能も兼ね揃えている。

【禁止エリアについて】
 六時間に一回の頻度で行われる放送ごとに、三つずつ増えていく。
 参加者が禁止エリアに踏み込んだ際、首輪が起爆する(爆破までに時間差や警告があるかどうかは不明)。

【優勝者への特権について】
 優勝者には賞金として10億ペリカ、そしてその賞金で買い物をする権利が与えられる。
 ペリカの使い道は以下の通り(これはルールブックにも記載されている)。
 ・元の世界への生還――1億ペリカ
 ・死者の復活―――――4億ペリカ
 ・現金への換金――――9億ペリカ
 ・その他の願い―――――要相談
 ※1ペリカ=10円。10億ペリカ=100億円。

【作中での時間表記】
 【深夜:0:00〜1:59】
 【黎明:2:00〜3:59】
 【早朝:4:00〜5;59】


 【朝:6:00〜7:59】
 【午前:8:00〜9:59】
 【昼:10:00〜11:59】


 【日中:12:00〜13:59】
 【午後:14:00〜15:59】
 【夕方:16:00〜17:59】


 【夜:18:00〜19:59】
 【夜中:20:00〜21:59】
 【真夜中:22:00〜23:59】
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 03:58:11 ID:jA315KXG
書き手向けルール
 ※詳細はまとめwikiにて確認をお願いします。 http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/24.html


【状態表について】
SSの最後には下記の状態表をつけてください(服装と備考の欄は、必要なければ省略してください)



【エリア/場所/経過日数/時間】


【キャラクター名@作品名】
[状態]:
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:
1:
2:
3:
[備考]



【予約について】
予約をしたい場合はしたらばの予約スレ(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1256477871/)に
トリップをつけて予約したいキャラ名を書き込んでください。


予約期限は3日(72時間)です。予約期間中に申請すれば2日(48時間)の延長ができます。
予約の延長は、一回の予約につき一度だけ利用できます。


あるキャラの予約が行われた時点で、他の書き手はそのキャラを含んだ予約または作品投下が出来なくなります。
予約は予約期限切れ、予約破棄宣言、対応する作品投下のいずれかを持って解除されます。
予約期限切れ、予約破棄宣言の場合、その時点を持って予約されていたキャラの予約が可能になります。
対応する作品投下の場合、その作品に対して24時間以内に修正・破棄の要求がなければ、その作品のキャラの予約が可能になります。



【支給品・キャラの能力に関する制限について】
まとめwikiの制限一覧を確認してください。 http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/23.html



★企画に興味を持ったら★
当企画への参加に資格は必要ありません。どなたでもどんどんどうぞ。
但し、企画の円滑な進行のため、守るべきルールは存在します。
特にSS書き手として参加される方は事前にまとめwikiの「書き手用ルール」のページをお読みください。


企画への参加は「SSを書く」、以外にも「絵を投稿する」「MADを投稿する」「感想を書いてスレを盛り上げる」
等様々な形があります。そういった形での参加も大歓迎。みんなの技術を持ちよって企画を楽しみましょう。
5 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 03:59:06 ID:jA315KXG
と、>>2の残り人数の修正を忘れてしまいました、すいません。
それでは投下再開かな。
6 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:00:30 ID:jA315KXG
「はじめましての挨拶も無しとは礼儀のなっていない人ね。
 そう思ったけど良く考えたらこの島では私含めてそんなもの聞いた事は無かったわね」
「ああ、すまないな。 私はアーチャー。
 無論本名ではないがこの場ではその名で呼ばれるのが正しいからそれで覚えてくれ。
 周辺の偵察を行ってきたが、少なくとも今このエリア内には我々以外の人間は居ないようだ。
 近くのエリアで概ね危険ではない他者と接触はしたが、それほど情報は得られなかったな」
「ああ、そうか」

長く答えないのは賢いからか圧倒されているからか、今のところは両方にあたりをつけるひたぎ。
口ではどれだけやっても女性には敵わない事を理解している故に黙るアーチャー。
からかう相手が居るわけでもないので自分から話す事も無いC.C.
情報の交換などは上条当麻を交えて行うべき事であるから、三者とも会話を行わない。
ただ、沈黙が辺りを支配するのみ。


最も、その沈黙は思ったほどは長くは続かなかった。

「その、ありがとうな……って誰だ?」

玄関のドアを開き、上条当麻が姿を現したからだ。
感謝を述べる言葉は疑問によって中断されたが、それでも気を使われた事を理解しながら。

「彼の名はアーチャー、無論この呼び名も通称、本名は全くを持って不明、さんよ上条くん。
 長いからブラック☆ロリコンと呼んでくれとのことよ」
「……アーチャーだ。 上条当麻、だな?」
「ああ、そうだ」
「単刀直入に聞くが、御坂美琴を殺した相手をどうしたい?」
「なっ!?」

ひたぎを無視してアーチャーは述べる。
その言葉が、彼の怒りを生み出すであろう事を想定して。
それは、聞いておかなくてはならない事だから。

上条当麻。
聞いた話を総合するなら、恐らくは衛宮士郎に近しい性質を持つ少年。
不快なことだが、その性格ならばこの状況においては信用出来る相手ではあるだろう。
だが、信用と信頼はまるで違う。
その性格は信用できるものであったとして、果たしてそれは同行者として信頼出来る相手なのか?
衛宮士郎はこの点は完全に失格である。
お人好し過ぎる上に、他者を助ける為に自分を捨てる性質。
それは、自分のみならず同行者の命すらも危険にさらすもの。

流石にそこまで破綻した人間というのは少ないだろうが、それでも何らかの要素が加われば危険にもなる。
復讐に身を焦がし、自分を含む全てを燃やし尽くすような人間であるのなら。
それは、とても信頼など出来る相手ではないのだから。

「どこにいるか、知っているってのか?」
「いや、私が向かった方角では補足出来なかった。
 だが、それでも大まかな方向は推測出来るし、顔も知っている」
「アンタは、そいつと戦ったって事か?」
「ああ、その通りだ。
 そして御坂美琴の死は私の油断が無ければどうにかなっていたかもしれないな
「お、おいアーチャー」

アーチャーの言葉にC.C.が何事かを述べようとするが、それは当麻の耳には入らない。
一瞬、激情からアーチャーにつかみかかりそうになる。
だが、懸命に堪える。 それは、八つ当たりでしか無いのだから。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:02:22 ID:CyH3M+Li
 
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:02:24 ID:gfYyYlPy
 
9 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:03:00 ID:jA315KXG
そしてそれよりも、重要な事がある。
すなわち殺した相手をどうしたいか。

「許せねぇよ。 可能なら、ぶん殴ってやる」
「ふむ、殴るだけ、か?」
「ああ、それだけだ。
 戦場ヶ原にも同じ事を聞かれたよ、けどよ、そんな復讐なんてしてやるものかよ。
 御坂が死んだ事は確かに悲しい。 でも、それは俺が復讐していい事にはならねぇ。
 出会ったらぶん殴るし土下座させて侘びを入れさせてやる。 でもそんな復讐なんて方向には逃げねぇ。
 俺にはどうしてもやらなくちゃいけない事がある。
 だから、俺は復讐はしないしそれを目的にする事もしねぇ!」

言い切る。
かつて戦場ヶ原ひたぎに言われた時と同じように。
その答えは変わらないと。

「……御坂さんを目の前にしても、そう言うのね上条くん」
「ああ、御坂にはすまねぇとは思うけどよ、それでも俺はそうする。
 アイツだって、きっと復讐を望んではいねぇ筈だ」
「……やっぱり、厳しい人ね上条くんは」

ダメ押しのように問うひたぎの言葉にも、そう答える。
いくら聞かれようとも、その意思を曲げるつもりなど無いと。
ひたぎが理解した上条当麻という性質そのままに。

「…………一つだけ聞くが、お前は御坂美琴の事を大事だと思っているのだな?」
「……当たり前だろそんな事」
「そうか、なら私から言う事は一つだけだ、彼女の事を忘れないでやってくれ」
「……?
 当たり前じゃねぇかそんな事」
「ああ、そうか……そうなのだろうな」

そう、当然なのだ。
上条当麻にとっては当然すぎる事。
C.C.が弱さ故に問うた事など、彼は疑いもしなかった。

「…………」
「何だよ」
「……何でもない」

無言で何かを考えているアーチャーに当麻は問いかけるが、答えは無い。
少なくとも、アーチャーに答える気は無いのだろう。

「それで、彼女を、御坂美琴はどうしたい?
 どこか、他者に荒らされない様な場所にでも埋葬しようと思っていたのだが」

上条当麻に聞くべき事は既に聞いた。
概ね思った通りであった事に僅かに苛立ちを覚えるが、今は口に出す時ではない。
それよりも、実務的な話に移っていくべきだろう。
そう考えてアーチャーは話を進めた。
誰とも判らぬ相手よりも、親しんだ相手に送られた方がよいだろうという常識的な問いかけ。
いや、その筈だった。
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:03:08 ID:gfYyYlPy
 
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:03:44 ID:7s0uCYuF
 
12 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:03:55 ID:jA315KXG
「埋葬? そんな事出来るわけないだろ」
「……何?」

その問いかけは、アーチャーの思いも寄らぬ言葉で返される事になる。

「葬らないというのか?
 それとも宗教上か何かの理由で火葬か水葬でも希望するのか?」
「いや、そういう変な理由は聞いた事はないんだが……」

何か、変な事を聞かれた、とばかりに戸惑った返事を返す当麻。
ボリボリと少し頭を掻いて一拍置いて、

「そうじゃねぇだろ」

告げた。

「ああ、もちろん野ざらしなんて論外だ。
 キチンと葬式をやって墓に埋めてやらないといけないだろうよ。
 ……でもよ、それは帰った後の話だろ。 コイツが眠るべき場所は、間違ってもこんな所じゃねぇ!」

理解出来ない言葉を。
その場の誰も考えて居なかった事を言ってのけた。

「……一応聞いておいてあげる、遂に脳みそどころか蟹味噌すら空になった?」
「いや、もうどこに突っ込めばいいんだよ」
「八丁味噌にも判るようにいうなら正気なの?」
「正気に決まってんだろ!」
「……冗談、では無いというのか」
「ああ、というかお前らこそ正気かよ!?」

少しの沈黙の後に続けざまに放たれる問いに、叫ぶ。
全身から力を発散するように、叫ぶ。

「コイツが、後輩や妹達に慕われていたコイツが、こんな島で人知れず埋められていいはずがねぇだろ!
 ちゃんと帰るべき場所に返してやって、そこで眠るのが筋ってもんだろ、違うかよ!?」

ああ、それは確かに当然の事ではある。
野ざらしの墓標に無縁仏のように葬られるのではなく。
帰るべき場所、眠るべき場所が、御坂美琴にはあるのだから。

「ああ、そうだ、 確かに俺のヒロインはコイツじゃ、御坂じゃなかったかもしれない。
 けどよ、だからって、それは俺がコイツの事を思っちゃいけない事にはならねぇだろうが!
 俺は御坂の復讐なんてしない。 俺は御坂を居るべき場所に、ちゃんと連れて帰る。
 この島の殺し合いなんて仕組みをブチ壊して、インデックスを助け出して、帰る。
 それが、復讐なんかよりも遥かに大事な事だろ!」

けれど、それは

「インデックスっという少女を救いたい、というのはどうするのだ。
 お前はその手に他の女を抱きながら、最も大事な相手に会いに行くというのか?」
「俺の手は二本あるんだぜ。
 この島の幻想をブチ壊してインデックスを救う右手の他に、もう一本。
 正真正銘何の力も無い左手でも、それでも、美琴を。
 掴めなかった右手の代わりに、抱いて行く事くらいは出来る筈だ」

とても正気の沙汰とは思えない。
主人公と、正義と呼ぶに相応しいその言葉は。
だからこそ、言うものの正気を疑わせる。
それでも、やはりその瞳に宿る力に揺らぐ気配は無い。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:03:56 ID:zQqJaQX3
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:03:57 ID:CyH3M+Li
  
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:03:57 ID:gfYyYlPy
 
16 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:04:53 ID:jA315KXG
「そうか、よくわかった」
「ああ、そうだろ。
 っても流石に持って移動する事は出来ないから、シーツでも掛けておいて……」
「貴様はここで倒れろ、上条当麻」

だから、

――神速の踏み込みで近づく。

アーチャーは、

――両の手を構えて、短く唱える。

当麻に向けて、

――構成は一瞬を待たずに完成する。

その手に生み出した剣を向けた。

――上条当麻の首目掛けて振り下ろした。





「アーチャー!?」

数拍遅いC.C.の叫びが辺りに木霊する。
ひたぎも目を丸くしていて言葉を生む気配は無い。

「っ! いきなり何しやがるてめぇ!」

動かぬ女性陣とは対照的に、大きく動いた男達の片方。
地に尻餅を付いた当麻が叫ぶ。

「告げた通りだ。
 御坂美琴への義理もあるから命を奪いはしない。
 だが勝手な行動をしないように片腕くらいは頂く」

答えるアーチャーの声は対照的に静かなもの。
だが、その内に明らかな怒気を含んでいた。
左の双剣を当麻の首筋に宛て、もう片方は身体の前に構えて。

「何勝手な事言ってるんだてめぇ!
 いきなり意味も無くそんな事言われる筋合いはねえだろ!」

上条当麻がアーチャーの一撃をかわせる道理は無い。
ありとあらゆる幻想を打ち砕く右手を持っていても、肉体的には少し頑丈なだけのただの人間だ。
英雄とまで呼ばれるほどの存在に、身体能力で勝てる筈が無い。
制限により弱まった身体能力差を考慮すれば、一度か二度は何とかなるだろう。
それでも、不意打ち気味に放たれた一撃をかわすなど、不可能だ。
つまるところ、アーチャーは手加減をした。
彼の言う御坂美琴への義理によるものか、それとも他の理由からか。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:05:26 ID:CyH3M+Li
  
18 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:05:37 ID:jA315KXG
「意味なら充分にある。
 上条当麻という毒を消すという意味がな」
「毒だと……」
「ああ、お前は毒だ。 毒を、撒き散らす存在だ。 
 他の人間を、自分自身を、全てを殺す毒をばら撒く」
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇてめぇ! 俺にそんなものがあるかよ!」
「ある、それは言葉の毒だ」

当麻の怒気を受け流しながら、アーチャーは答える。
その言葉はどこまでも静かだ。

「ふざけんなっ!」
「むっ!?」

本人からすれば思わぬ言葉に耐えかねて、当麻が動く。
それにあわせて腕を動かそうとしたアーチャーだったが、突如その手にあるはずの重さを感じなくなった。
見れば、左手の黒い剣が消えている。 異常な事態ではあるが、その状況への驚愕は一瞬で失われ、瞬時に状況を判断する。
当麻は左手を使い起き上がろうとしている。 握り締められた右手がアーチャーの顔に向かって伸ばされている。
その拳をかわす位置に動きながら、右手の白い剣を振るが。
それもまた消えうせる。 その軌道上に位置変更された、当麻の右手によって。

「む……なるほど、それがお前の自信の源か」

それがどのような現象なのかは不明である、だが、それでも対処は簡単。
振りかぶって殴ってくるだけの相手など、

「うわっぷ!?」

足を引っ掛ければ簡単に転ばせられる。
当麻はあっさりと地面にダイブする。
そこを追撃するのは容易いが、あえてそうはしなかった。
ただ、自然体で当麻の方を向き、起き上がるのを待つ。

「……説明、しやがれ」
「ふむ、彼我の能力差を理解する位の能はあったか」
「そんな事はどうでもいいだろっ! それよりもどういうつもりだってんだ!」

待たれている事を理解した当麻は飛び掛る事は無い。
剣を用意した魔術を打ち消す事は出来ても、純粋に格闘能力が劣っている以上、当麻が向かって行ってもどうしようもない。
そして何より、当麻はまだアーチャーの言葉を聞いてない。

「お前の言葉は、毒だ」
「……どういう意味だよ」
「お前の言葉は、確かに一見すると正しい。
 だが、それは単なる理想でしかない。
 お前の言葉はその甘さ故に多くの理解者を生むだろう。
 だが、その甘さに潜む毒は、いずれその全てを屍に変える事になる」
「…………」
「お前の考えそのものが間違いとは言わん。 だが、それでも人の力には限界がある。
 お前がその理想という毒を捨てないなら…………理想を抱いて溺死しろ」



19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:06:18 ID:zQqJaQX3
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:06:28 ID:CyH3M+Li
  
21 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:07:09 ID:jA315KXG
アーチャーは、英霊■■■は、物語の主人公だった。
彼は、正義の味方になりたかった。
死に瀕し、何もかも無くした自分を救ってくれた人が居て。 その姿に、憧れた。
空っぽになってしまった自分でも、こうして誰かを救えるのなら、それは、とても素晴らしい事ではないかと。
だから、彼はその道を歩んだ。 膝を付いた事もあったし、倒れ伏した事もあった。
苦しむ全ての人を救いたいという理想を掲げ、自身は何の見返りも求めない。
そのあり方を異質に思われた事も幾度となくあったし、利用され、裏切られた事も当然あった。
それでも最後まで、最期の時までその道を歩みとおした。

そう、文字通り、『最期』の時まで。

彼は全てを救おうとした。 だが、人の力には当然限界がある。
そうして、当然のように訪れた破局。
彼の小さな手では、当然救いきれない程の命が失われようとして。

だから、彼はそれを救う事の出来る方法を、選んだ。
代償として、自分の命を、存在を『世界』に売り渡して。

それが、ある正義の味方の物語。

生前、彼はその選択に、小さな希望を抱いていた。
自分の小さな手では救いきれないものも、『世界』というシステムの一部になるなら救えるかもしれないと思って。
だが、その希望は叶えられなかった。

世界というシステムは、人を救うものではなく、世界を維持するもの。
そして、世界を滅ぼすような事象を起こすのは、何時だって人だ。
人を救いたいをいう願いを持った少年は、
正義の味方になった少年は、


永遠に、人を殺すだけの存在になった。





理想は、人を救う事は無い。
人を救うのは、何時だって人だ。
けど、だからこそ人は理想に憧れる。

理想という太陽を追い求めて、だが行き着く先は地に落ちるか、火に焼かれるかのみ。

上条当麻に言いたい事は判る。
規模の大小こそあれ、アーチャーとて似たような構想を考えない事もなかった。
だが、その中にあるのはあくまで冷徹な思考によるものだ。
アリー・アル・サーシェスのような男を生かしておく理由など無いし、御坂美琴もどこかに埋葬するつもりであった。
上条当麻の言葉は決して許容されるものではない。

「……いやだね」

だが、そのアーチャーの怒気を、まるで感じないとばかりに、当麻は告げた。
いや、逆に当麻の言葉から怒気が消えた。

「つまりだ、てめぇは諦めたのか」
「諦めではない、この状況と、得られた情報と、私の力による判断だ」
「それを諦めっていうんだよ!!」
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:07:28 ID:CyH3M+Li
  
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:07:40 ID:zQqJaQX3
24 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:08:12 ID:jA315KXG
いや、消えたとように見えていただけだ。
上条当麻は、憤っていた。 何故、そんな簡単に諦めきれるのか。

「良く考えたのか!? 出来る事を全てやってみたのか!?
 知らねぇうちに勝手に出来ないと信じ込んで諦めてねぇか!」
「……考えたとも」
「俺は諦めたりしねぇ!
 こんな仕組みなんて物は簡単に打ち破る事が出来るって信じてる!」
「それが理想に溺れているというのだ!
 少々特殊な能力を持っていようが、その程度の力で何をそこまで誇る!!」

苛々する。
己の身の程を知らぬ者が。
救いきれないものは確かに存在することを知らぬものが。
何も知らない■■が何を言う。
もはや一時とも喋らせては置けぬ。
そうアーチャーが走り出し、剣を作り出そうとしたところで。

「ならてめぇが力を貸しやがれ!!!」
「!?」

足が止まる。
予想していなかった。
想像もしなかった言葉が、当麻の口から飛んだ。

「てめぇがにどんな考えがあって、どんなものを見てきたのかなんて知らねぇ!
 でもよ、そう言うって事は、てめぇは本当は諦めたく無かったんだろ!!
 そのために、それだけの力を手に入れたんだろ!!」

何を言っているのか。
他人を救えればそれで良かった。
自分の理想が身勝手なものだってくらい理解していた。
だから、そこに誰も巻き込もうとは思わなかった。
理解してくれる人が居た。
止めようとした人が居た。
けれど、自分なんかの為にその人に重荷を背負わせていいなんて思えなかった。

「俺の言葉は毒だって、全てを壊す毒だって、そう言ったな!
 ああ、だったら俺は毒をばら撒いてやる!
 全てをぶち壊す毒で、俺はこの島の仕組みを殺してやる!」

呆けているアーチャーに当麻は走る。
簡単な、実に簡単な足し算を見逃している男に。
当麻なんかよりも遥かに理想を追い求めるに足る力を持つ相手に。


「俺のちっぽけな力じゃ、毒じゃ足りないっていうなら、お前が足りない分を補えよ!
 お前でも足りないなら、ひたぎもいるしC.C.だっている! 他にも何人もいるんだ!」

少しばかりキツイ、眠気覚ましを。

「だからよ!!」



25 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:08:59 ID:jA315KXG


上条当麻はただ許せなかっただけだ。
右手を除けば、何処にでもいる普通の少年は、ただ許せなかった。
十万三千冊の魔道書も、学園都市最高のレベル5の能力も無い、全てを救う知識や能力など何処にも無い少年。
それでも、ただ、彼は許せなかった。
それが最善だと。
仕方の無いことだと。
そんな幻想が、許せなかった。

主人公だから、とかそんな事ではなくて、ただ、そうしたかったから。

上条当麻には世界も、ヒロインも救う能力は無い。
ちっぽけな右腕では世界なんて救えない。
救ったヒロインからの祝福を受ける資格は失っている。

だから、当麻は救わない。
彼に出来たのは、何時だって、たった一つだけ。

幻想を、
世界を、ヒロインを縛る残酷な仕組みを、
あらゆる幻想を打ち砕く右腕で、ぶち壊してきただけ。





だから、ぶち壊す。
意味も無く縛られている幻想を。
アーチャーの抱いている幻想を。
そして、

「まずその殺し合いなんてくだらねぇ幻想をぶち壊すっ!!!!」

握った右手を、呆けているアーチャーの左頬に叩き込んだ。



言葉は無い。
殴ったほうも殴られたほうも、
見ている二人もただ彫像のように立ち尽くすだけ。

「……この程度の拳では、全ては救えんな。
 途中で、誰かに殺されるだけだ」
「そうかよ」

動かぬままに、アーチャーが告げる。
当麻は、ゆっくりと右手を降ろす。

「いいだろう、お前の言う言葉が間違いであったと。
 救いきれる相手には限りがあると、それを、ゆっくりと証明してやろう」
「へっ、そうかよ」

当麻が笑う。
アーチャーは、笑うというには皮肉すぎるものを浮かべたのみだったが。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:09:03 ID:zQqJaQX3
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:09:17 ID:CyH3M+Li
  
28 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:10:04 ID:jA315KXG
「ああ、だからその時にせいぜい溺れ死ぬがいい。
 亡骸くらいは回収してやろう」
「そうかよ、俺はアンタは重くて持てねえぞ」

右手で、アーチャーの腕を軽く叩いた。

「一見、落着ということか」
「あら、そもそも男の子同士が無意味な意地を張り合っていただけではなくて。
 身長とかアレの大きさとかどうでもいいことを比べたがるものだから」
「いや、あの意地の張り合いというものは彼らにとってはそれはそれは重要なものだぞ。
 有史以来それでどれだけの血が流された事か」

そんな軽口を叩きながら、ひたぎとC.C.が立ち上がる。
まずは情報交換でもしようか、そんな事を考えて一瞬目を逸らしたC.C.
だが、そんな彼女が目線を戻したとき、一つだけ違和感が存在した。

アーチャーは、赤いのだ。
肌は黒いし髪は白いのでまるで赤くないが、それでも一番目立つ色は外套の赤だろう。
それは決して消える事のない記憶故か、はたまた苦手意識故にあえて赤い色の外套を纏う事で克服できると思ったからか。
いずれにしろ、赤いはずの弓兵が、

「あ」
「へ?」
「む?」
「あー…ちゃー…?」

赤くなかった。
いや、腰から下は赤いのだが、その上は黒い地肌が見えている。
さて、赤い外套は一体何処に消えたのか。
聖マルティーンの聖骸布を用いていて、高い加護と防御力を持つ『強力な魔術の込められた』外套は、どうなったのか。

「え、ちっちょっと待て、お前まさかそれ何か魔術が込められてたのか!?」
「何かとは何だ! これは、いやそもそもその言い方だとまさか!」

幻想殺しという代物に触れた幻想は、どうなるのか。
答えは、アーチャーの足元に落ちている赤い布が知っているかもしれない。

「ぷっ、ククククッ
 何だ、意外と赤くない姿も似合っているではないかアーチャー」
「貴様ーーーーー!?」

一つ目の叫び声が、辺りに木霊した。

「どうでもいいけどとりあえず私の半径5キロ以内に近寄らないでくれるアッー!チャーさん。
 どこか遠い所でシモ条くんと仲良くしていて」
「てめぇ今下の言い方が変だったぞコラ!
 いやそれよりも何で筋肉質で引き締まった男の腕なんて見ないといけねぇんだよ!?」
「まあいい、代金の換わりに貴様のその右腕を頂くとしよう」
「ま、待て、やめろ、ふ、不幸だあっーーーーーーーー!!!!」


続いて、それは二つになった。

29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:10:51 ID:CyH3M+Li
  
30 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:11:06 ID:jA315KXG
【E-5/市街地 一軒家/一日目/昼】
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、傷修復完了(健康)
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語
    ピザ(残り63枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
   不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:とりあえずは情報交換だろうか。
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
4:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う


[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。


【阿良々木暦のマジックテープ式の財布@化物語】
 御坂美琴に支給。
 初期支給時の三十六枚という異様に多い小銭の数から察するに、かなりパンパンである。
 原作にて阿良々木暦がマジックテープ式の財布を使った描写はなく、この財布が本当に彼の物である証拠は皆無である。
 だが名目上は彼の所有物である、ということになっている。バリバリ、やめて!


【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:疲労(小)
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、スフィンクス@とある魔術の禁書目録、
    アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式、不明支給品(1〜3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
 1:上条当麻に協力。会場内を散策しつつ阿良々木暦を探す。
 2:神原は見つけた場合一緒に行動。ただし優先度は阿良々木暦と比べ低い。
 3:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。
 4:正直、C.C.とは相性が悪いと思う
 [備考]
 ※登場時期はアニメ12話の後。
 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。
 ※安藤の死亡によりギャンブル船に参加者が集められているかは怪しいと考えています。

31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:11:26 ID:gfYyYlPy
 
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:11:42 ID:zQqJaQX3
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:12:01 ID:CyH3M+Li
  
34 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:12:03 ID:jA315KXG
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[服装]:学校の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。
 0:不幸だーーーーーー!!
 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。阿良々木暦を探す。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する
 2:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
 3:壇上の子の『家族』を助けたい 。
 4:そういえば……海原って、どっちだ……?
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。




何かが変わった訳ではない。
ただ、一つだけ思い出した事がある。
俺の事を救いたいと、俺の助けになりたいと言ってくれた人がいた。

ただ、自分にはそんな資格なんて無い事はわかっていた。
だから、その先の記憶は無い。

でも、もし。
もし、あの時一人ではなかったなら、
誰かの力を借りていたなら、
俺は、もっと多くの人を救えたのだろうか。

上条当麻は迷うことなくそうだと言うだろう。
なら、衛宮士郎はどういうのか。

衛宮士郎と上条当麻が出会ったとき、果たして何かが変わるのか。

そしてそのとき、俺の願いは叶うのだろうか。

【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小) 空気を読み過ぎた
[服装]:赤い外套、黒い服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1(確認済み)、臙条家の鍵@空の境界、虎竹刀@Fate/stay night
[思考]
基本:本当の“答え”を見つけ出す。
1:C.Cの元に戻り『D-6・駅』へと送り届ける。
2:『E-6』付近で御坂美琴を弔える場所を見繕う。
3:この場において過去の改竄は無駄。
4:単独行動を取り情報を集めながら衛宮士郎を捜し出す。【絶望の城】を優先的に調べる。
5:3の過程でルルーシュ、アーニャ、ユーフェミア、戦場ヶ原を見付けたら12時までならD-6駅、3回目の放送なら象の像へ集うよう伝える。
6:臙条家の鍵の合う場所を探す。
7:荒耶、赤毛の男(サーシェス)、に対し敵意。
35 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:12:48 ID:jA315KXG
[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。
※デイパックの容量に限界が無いことに気付きました。
※「死者の眠る場所」を墓地と捉え、そこに御坂美琴を弔うのが望ましいと思っています。ただしそこまで運ぶのは困難とも認識しています。
※「絶望の城」は殺し合いを促進させるための舞台と考えています。
※「臙条家の鍵」は何らかの重要施設、武器が隠されている扉を開けるものと考えています。
※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。
※スザク、駿河、レイと情報交換を行いました。「絶望の城」については伏せてあります。
※駿河の左腕のレイニーデビルに気付きました。名称や詳細は知りませんが暴走の危険性はないものとひとまず判断しました。


【臙条家の鍵@空の境界】
小川マンションの住人、臙条巴の部屋の鍵。「405 臙条」と書かれた名札付き。
エレベーターの仕掛けにより実際の「臙条巴」の部屋は410室なのだがその仕掛けがこの場で適用されてるかは不明。


【虎竹刀@Fate/stay night】
藤村組組長の一人娘にして穂群原学園英語教師にして2■歳でありながら剣道5段の猛者にして虎でタイガーで
ヒロイン候補ですらない衛宮士郎の姉貴分、藤村大河の愛用する竹刀。
鍔に虎のストラップが付いておりおかげで公式試合に出られないこと数度。
これさえなければ剣道界にタイガーの名が全国に轟いたであろう曰くつきの品。
何の変哲も無い竹刀だが担い手である大河が手にすると大地震を防いだり巨大隕石を弾いたり
ミカン一個分の魔力で固有結界を発動するなど縦横無尽、八面六臂の活躍をする、らしい。
36 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 04:14:02 ID:jA315KXG
投下終了しましたー。
支援ありがとうございました。

誤字脱字などございましたら指摘お願いします。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:18:03 ID:d7EfKHM5
投下乙
シモ条さんの毒属性の説教マジぱねぇっす
アーチャーは上半身裸ってことでおk?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:39:20 ID:MvDene4v
投下乙
ここで説教とは何という原作再現ww流石上条さんウザ格好良ウザいwww
そしてこのドS女達に勝てる奴は居るんだろうか。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:42:39 ID:jL+9kKAd
投下乙
新勢力、上条組か……。
士郎との邂逅に期待。
刹那とヒイロは結局会えなかったからなあ……。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:52:02 ID:pZxfM2z1
投下乙です。

男同士がぶつかり合って仲良くなるのは王道ですね!

気になった点ですが。
アーチャーの思考5にあるように、アーチャーは前話にて神原からひたぎの名を知っているはずなので
名前を聞いた時ても特に反応がなかった点がきになりました。
備考を見ると暦の事も聞いてるのかな?
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 05:03:54 ID:jf/REz+D
投下乙ー
……刹那ァァァァ!!!
ホンダムゥゥゥゥゥ!!!
そしてとばっちりの馬イクゥゥゥゥゥゥ!!!wwwww
なんて熱さだ……

上条さんスーパー説教ターイム!!
これでアーチャーも気合いが入るかな?
後、重箱の隅を突きますけど、アーチャーの装備に赤い外套がありますけど、そげぶされた衣服って破ける筈じゃ……
ま、まさか安全ピン!?
なんだそのアイアンメイデン!?
42 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:08:30 ID:IQ3T+bwz
投下乙です。
完璧な上条さん再現にしびれました。

ではファサリナヒイロ投下します。
43 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:10:15 ID:IQ3T+bwz
玄関を開けてすぐのところにソレはあった。
様々な種類の草木が周囲に生い茂る、外見だけがおんぼろな山中の洋館。
その出口から出てきたヒイロとファサリナを出迎えたのは少女の死体だった。
茂みの真ん中に投げ出された血まみれの死体だ。
上等な服にいくつもの銃創。そこから溢れ、すでに生乾きの赤黒い液体。
よく見れば身体のそこかしこに死斑が浮き出ており、耳や鼻から血液混じりの体液が垂れ流され始めている。
生前はさぞかし見目麗しい少女であっただろう。
だが今は誰もが目をそむけるほどに死の気配を振りまいているだけの物体に成り果てた。
これが死だ。
人がモノになる。
そこに幻想はない。
人が腐り果てる。
そこに美しさなどない。
ソレはもう人ではない。

「リ……リリー……ナ……」

それはヒイロの掠れた声だった。
ファサリナは少なくともここで出会ってから、この少年のこんな声を聞いたことはなかった。
鍛え上げられ、引き絞った若い身体が微かに震えている。
何があろうとも動揺とは無縁と思われた鉄面皮のこの少年が、だ。
それだけでファサリナはヒイロの心中を察した。
この死体の首元を見れば、自分たちと同じ境遇であることは容易く知れる。
そしてヒイロの知る人物であることも彼の反応を見れば一目瞭然だ。
ファサリナにその名前を教えなかったのは警戒していたが故だろう。
ゼクス、トレーズなどの名前とは違う、迂闊には教えられない大事な名前だったはずだ。
その名前の持ち主である少女。この目の前の死体が……リリーナ。
下手に声などかけられない。
ゆえにヒイロの呟きを最後として、この場に空虚な静寂が満ちていった。
今は彼は何を思うのだろう。
ファサリナがヒイロについて知ることはあまり多くない。それゆえにその心中を慮ることなどできなかった。
佇む少年は動かない。まるで一枚の写真のようにファサリナの見る風景は固まっていた。


「…………少しお伺いしてもよろしいでしょうか、ヒイロ」


無視しているのか聞こえていないのか、反応はなかった。
ただ立ち尽くして少女の死相を凝視している。
その視線を遮るようにしてファサリナはかつてリリーナと呼ばれた少女の遺骸へ、そろりと身を寄せた。
その手には洋館の内部から携えてきたカーテンの布地がある。
ヒイロが動かぬ間に館の中から調達してきたのだ。
それをイスラムの女性が纏うスカーフのようにしてリリーナの身体へ巻きつけていく。

「何のつもりだ……」

弱々しく呟くように。
その声には力がなかった。

「この方は貴方の大事なひとなのでしょう……?」
「何のつもりだと聞いている」

やや強い声。
だがいまだに虚ろな感情を隠せるほどのそれではない。

「弔う前にせめて死化粧を」
「……化粧?」
「ええ、この方の姿を見ることができるのはこれで最後。ならば出来る限り美しく、貴方の想い出の中へ刻んであげたいと思います……」

手櫛で髪を軽く整え、顔の汚れをカーテンの裾で丁寧に拭きとってやる。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:10:54 ID:7s0uCYuF
 
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:12:11 ID:7s0uCYuF
 
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:12:57 ID:7s0uCYuF
 
47 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:13:19 ID:IQ3T+bwz
ヒイロはその作業を邪魔しない。佇み、ファサリナがリリーナを清める作業を言葉ひとつ発さず見つめていた。
自分の背後に立つ少年は今、悲しみとともにこの少女の記憶を己の脳裏に焼き付けているのだろう。
それでいい。肉体は死んでもその生前の記憶は誰かの心の中に残る。
ならばその死者はその思い出の中で永久に生きることになると、同志たるカギ爪の男はそう言っていた。
ファサリナの記憶の中にはあの優しげな微笑が今でもはっきりと思い出せるほどに深く刻まれている。
そう、例え肉体は死んだとしても自分の中で同志は生き続けているのだ。
だからこその理想のために躊躇わずこの身を捧げることができる。平和と調和を目指すその想いが胸の中にある。
ヒイロにもそうあって欲しい。この少年は強い。安々と悲しみに折れるような人間ではないだろう。
だがこの島に連れ去れられてきた現状のファサリナにとっての唯一の希望たる彼には、自分と同じ気持ちを理解して欲しい。
無愛想だが妙に誰かの気持ちに敏感なところのある不器用な彼に、自分の気持ちを理解して欲しい。
汚れた女だ。自覚はしている。
よりによって、少女の死によって悲しみにくれるヒイロ・ユイにこの自分を理解して欲しいと、浅ましくもそう言っているに等しい。
だってこの哀しみは一人で背負うには重過ぎる。傷の舐めあいでもいいから誰かの理解が、温もりが欲しかった。
同志が生きているにせよ死んでいるにせよ、その理想のために自分がやるべき事は多く、道は険しい。
その道をたった独りで行けというのか。誰かを頼りにするのはそんなにもいけないことなのだろうか。
そんなはずはない。ヒイロでも、異常とも言えるほどの強靭な精神であろうとも、そんな気持ちを少しでも抱かないはずはない。
だって彼は、ああ見えてとても優しい子だとファサリナは思うからだ。
ヒトは結局自分のことしか理解できない。
ゆえに自分の弱さを真っ直ぐに見つめられればこそ、誰かの弱さを汲み取れる優しさが生まれるのだから。
それができるなら、きっと――、


――ごめんなさい。


この少女がヒイロにとってどんな存在なのかは知らない。
だがこころの中で謝りの言葉を呟いて、ファサリナはリリーナの唇に彼女自身の血で紅をひいた。
半ば乾いたその血は赤というより暗褐色に近い。
生前は清楚で明るい雰囲気を纏っていたと思われる快活そうな少女の猊は、白蝋と見紛うばかりの青白い肌にダークな口紅という組み合わせによって、妖艶ともいえる気配に包まれていた。
血に汚れてボロボロのドレスはその全身を包んだカーテンの布地によって隠されており、その顔はファサリナの化粧によって見違えるようだ。
茂みの緑に覆われたローブ姿の美しい少女がそこにあった。

「なぜこんなことをする」

ヒイロの質問は先ほどと同じ。
ファサリナは全ての作業を終えて振り向き、少年の真ん前まで歩み寄る。
相手は微動だにしない。だからこちらからさらに一歩近づく。

「……答えろ」

互いの瞳の中に向き合う相手の姿が映る、それほどの近さ。
ヒイロの瞳は揺れている。それがファサリナには見えた。

「ヒトは死んでしまってもその人を大切に思う人間の記憶の中で生き続けます。それこそが思い出というものではないでしょうか」
「……否定はしない」
「それに……女は想いを寄せる殿方には一番美しい姿を見せたいと思うものです。この方もきっとそう思うでしょう」
「何を勘違いしているか知らないが、俺とリリーナは――」

ファサリナがさらに一歩踏み出した。
顔と顔が触れ合う距離。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:13:38 ID:7s0uCYuF
 
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:14:48 ID:7s0uCYuF
 
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:16:04 ID:7s0uCYuF
 
51 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:18:04 ID:IQ3T+bwz
ふわりと柔らかな風が女の匂いを含んでヒイロの肌に触れた。
そしてその発生源たるファサリナの肌も触れ――――なかった。


「ええ、ですからこれは私の一方的な勘違いです……ごめんなさい、ヒイロ」


まさに触れるか触れないかの距離で、生めかしい薄桃色の唇が言葉を紡いだ。
その言葉をくだらないと切って捨てる、そういうことをヒイロはしない。
ただ無言で答えを隠す。否定ではなく、答えることを拒絶。

「――同志が生きている確率は……殆ど無いと言っていいでしょう」
「何?」

すっと距離をとってから視線を外して、ファサリナは言った。
冷静に考えればわかることだったのだ。

「同志を付け狙う者の名前を覚えておりますか」
「ヴァン……だったか」
「ええ、彼は思い返せば同志のことを『カギ爪』と呼んでいました。おそらく彼は同志のお名前など知らないのでしょう」
「そうか……俺とお前の情報のみによる推測だが、この島には何人かの括りごとに何らかの面識がある人間同士が集められている」

名簿にファサリナの知る名前は、自分自身の他にいくつかある。
ヒイロも数こそ違えど知る名前が複数あるという。
つまり知り合いが全くいない人間はここにはいないのではないだろうか。
この何でもありのサバイバルにおいて、面識のある知り合いという存在は、徒党を組んで身を守る上でとても有効だ。
それにヒイロにとってのリリーナのように、ファサリナにとってのカギ爪のように、守りたい存在があるならばこそ自ら捜索のために動くだろう。
その逆としてヴァンという男のような誰かの命を付け狙う人間という存在にとっても、理由こそ違えどその誰かを探しに自ら動く動機となる。
自分だけの命が大事なら、どこかに引きこもっていれば生存確率は格段にアップする。
だが皆がそうしていたら、ほとんどのプレイヤーは遭遇する確率が激減、殺し合いも発生する確率は同様に低くなる。
結果、帝愛の言う『ゲーム』はつまらないものになるだろう。少なくとも自分たちを監視して殺し合いを眺める存在にとっては。
ヒイロもファサリナも知人の捜索にあたって一人での単独捜査に限界を感じているからこそ、こうして行動をともにしているのだ。
それがないならわざわざ危険を承知で歩きまわったりはしない。見知らぬ誰かと組むこともなかったろう。
帝愛はそれを見越してこのような人選をしたのだとしたら。

「ヴァンという男が名簿を見たとき、カギ爪の本名が書かれていたとしてもそれが目的の人物とはわからない……」
「ええ、ですから彼にもわかるように『カギ爪の男』と書いたのでしょう」

理屈は合う。
ヒイロもそれを認めた。
だがそれを認めるということはファサリナ自身が最も認めたくない想像を認めることと同義だ。

「お前はそれでいいのかファサリナ。それを受け入れてこれからお前はどうする気だ」
「同志の理想を果たすために動きます。同志の想いは私の胸の中で生きている。私はそれを実現させなければなりません」
「生き残って同志とやらの代わりを果たすために動くか。それがこのゲームに乗るということなら……」


――お前を殺す。

52 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:20:18 ID:IQ3T+bwz
ヒイロは無言でそれを伝える。
その瞳の中に最早、揺れは無い。

「ヒイロ、貴方の中のリリーナさんは貴方に何を望むのですか?」
「質問の意味が理解できかねる。わかるように言え」
「貴方が最も守りたかったヒトはもうこの世にいないのですよ? そしてそれは私も同じ」

ファサリナはそっと悲しげに眼を伏せた。長いまつげが濡れた瞳に被さり、眼から透明な液体を溢れさせる。
ヒイロ・ユイはたしかに強い。だがその強さはその若さには余りにも似あわず、ゆえにファサリナの眼には歪に映った。
感情を肯定するも、自身の感情そのものは完全に制御しているように見える。
まるで恐怖を知らない、完璧に訓練された兵士のようだ。
そんな彼が揺れたのはこの少女の死を見つめた時だけだった。
土壇場でも揺らぐことなく、自分の生き死にの境目ですらクールに状況を見つめることができるにも関わらずだ。
リリーナという少女がヒイロの大切な人物だということは誰にでもわかる。
しかしそのような人間らしい感情を持ち合わせているのに、なぜこうも自分を生き死にの埒外へと捨てられるのか。
ファサリナには未だにヒイロ・ユイを完全に理解することはできない。
だが完全に理解せずともアキレス腱を握れればそれで十分。
それゆえにここでカードを切ったのだ。

「……そうだ、だから何だ」
「私たちは……協力できるのではないでしょうか。もし主催の力が死者を生き返らせることが可能であるなら――」
「ありえない」
「それをいうならば、私達がここへ連れ去られた事自体がすでにありえないことです」

それを完全に否定する意見をヒイロは持っていないはずだ。
ファサリナ自身、世界中で暗躍するカギ爪の組織では幹部といってよい。
そんな組織の最重要人物を拉致など、少なくともファサリナの知る世界の人間にできるわけがない。

「……だとしたら、どうする。優勝賞金の十億では、お前と俺の求める人物をそれぞれ五億×2で蘇生・帰還させればそれで終わりだ」
「私はそれで構いません。同志の胸の中で私はあの方の記憶となって、そして一つになるのですから」
「……」

きっとこの少年も同じはずだ。
少なくとも彼にとって最も大事な存在は己ではないのだ。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:20:52 ID:7s0uCYuF
 
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:22:56 ID:7s0uCYuF
 
55 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:23:17 ID:IQ3T+bwz
だから例え自身がどうなろうとも、リリーナという名の少女のことを最優先にするだろうという確信があった。

「先程、私に手榴弾を分けていただいたお返しです……もし協力していただけるなら、これを」
「ゼロシステムだと……!?」

前もって確認しておいたファサリナの支給品のひとつだ。
携帯できるようにメット型になっており、これをかぶる事で効果を発揮できるらしい。
だがいまいちデザインがごつくて気に入らず、そして説明書きに書いてあったリスクの大きさゆえに今まで使おうとは思わなかった。
だが強靭すぎるほど強靭な精神を持つこの少年ならば、もしかしたら有効に使えるのではないだろうか――そう考え、ヒイロに渡そうと思ったのだ。




「ククク……ハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」




メットを手にとって説明書きを読み終わったヒイロは突如として笑い出した。
彼のこんな行動など全く予測していなかったファサリナは思わず首をかしげながらも問う。

「ヒ、ヒイロ? いったい……」
「……いいだろう。ならばお前の選んだ未来が正しいかどうかゼロに聞いてやる……!」

戸惑うファサリナをよそに、皮肉気な形に口元を歪めながらヒイロはおもむろにそのメットを被ってスイッチを入れた。
ブゥン、という起動音と、続いて甲高い電子音が連続で響き渡る。
その連続する音はモーターが回転数を上げるように、どんどん激しくなっていった。

「ぐっ……」
「ヒイロ……!?」




――――そして少年は血塗られた未来を垣間見る。


   ◇   ◇   ◇
56 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:25:52 ID:IQ3T+bwz
殺した。

殺し続けた。

ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で、モビルスーツで。

貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。

一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、弱者の声なき声の代弁者として、己の感情など一切顧みることなく。

地球政府に立ち向かい、凶弾に倒れたコロニーの英雄――ヒイロ・ユイの名を与えられたのはそのためだ。

少年の肉体はコロニーのためにあった。

少年の感情は平和を求めるものたちのためにあった。

少年自身のために少年が動くことなど何一つとしてなかった。

だからこんなことはいつもどおり。

いや――もしかしたら名もなき少年は今、初めて己自身の中から沸き起こった感情に従ったのかもしれない。

平和を創り上げるのは彼女の役目だ。

自分は戦うことしかできないから。

だから平和をもたらすことができたなら、彼女に自分は必要ない。




「命なんて安いものだ…………特に俺のは」








――――――――――リリーナ。



57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:25:59 ID:7s0uCYuF
 
58 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:28:28 ID:IQ3T+bwz
【C-3/憩いの館(地下ゲーセン内)/1日目/昼】

【ファサリナ@ガン×ソード】
[状態]:健康
[服装]:自前の服
[装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1個(確認済み)
    M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした)
    軽音部のラジカセ@けいおん(こっそりデイバックに入れた)
    
[思考]
基本:ヒイロと協力、無理だと判断した場合単独で殺し合いに乗る
0:B-2の間欠泉へ向かう
1:ヒイロと共に行動する
2:間欠泉を調べ終わったら、早く新しい同士を集めたい
3:「カギ爪の男」が本当に死んだのかを確かめる
4:新たな同志が集まるまではなるべく単独行動は避けたい
5:明確な危険人物の排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。
6:ゼロを名乗る危険人物の排除
[備考]
※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。
※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています
※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています
※同志の死に疑念を抱いていますが、ほとんど死んだものとして行動しています
※「ふわふわ時間」を歌っている人や演奏している人に興味を持っています
※ラジカセの中にはテープが入っています(A面は『ふわふわ時間』B面は不明)


【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:左肩に銃創(治療済み)
[服装]:普段着(Tシャツに半ズボン)
[装備]:基本支給品一式、ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW
    コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした)
[道具]:B-2と記された小さな紙切れ@現実
    『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム〜戦場の絆〜』解説冊子
[思考]
基本:ファサリナと組み、リリーナとカギ爪を蘇生させるためにあらゆる手段で優勝を目指す。
0:B-2の間欠泉へ向かう
1:ゼロを名乗る危険人物の排除
2:今のところはファサリナと協力する
3:ユーフェミアは……
[備考]
※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。
※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。
※ヴァンを同志の敵と認識しています
※ファサリナの言う異星云々の話に少し信憑性を感じ始めています。
※ファサリナのことは主催に対抗する協力者として認識しています。それと同時に、殺し合いに乗りうる人物として警戒もしています。

【ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW】
正式名称「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)。
分析・予測した状況の推移に応じた対処法の選択や結末を搭乗者の脳に直接伝達するシステムで、端的に言うと勝利する為に取るべき行動を予めパイロットに見せる機構である。
高性能フィードバック機器によって脳内の各生体作用をスキャン後、神経伝達物質の分泌量をコントロール。
急加速・急旋回時の衝撃や加重等の刺激情報の伝達を緩和、或いは欺瞞し、通常は活動できない環境下での戦闘行動を可能とする。
更に外部カメラ、センサーによって得た情報を、パイロット自身の視聴覚情報として伝達する事も可能である。
しかし本システムが提示する戦術とは、基本的に単機での勝利を目的としたもので、目的達成の為であればたとえ搭乗者の意思や倫理に反する行為も平然と選択する。
状況によっては搭乗者自身の死や機体の自爆、友軍の犠牲もいとわない攻撃など、非人間的な選択が強要される事もあり、これがパイロットの精神に多大な負担をかける。
そのため、ただゼロシステムを使うだけではシステムに命令されるがまま暴走するか、もしくは負荷に耐え切れず精神崩壊・廃人化を招く恐れがある。
本システムを体験したデュオ・マックスウェル曰く、「まともな人間に扱える代物ではない」とのこと。
ヒイロはエンドレスワルツの五飛戦において、このシステムの命令を完全に捩じ伏せながら戦っていた。
このロワ内では携帯できるようにメットの中にシステムが内蔵されている。外見デザインはTV版最終決戦でドロシーがかぶったものを参照。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 07:28:46 ID:7s0uCYuF
 
60 ◆mist32RAEs :2009/12/14(月) 07:30:16 ID:IQ3T+bwz
投下完了。支援感謝。
ご意見ご感想ありましたらよろしくお願いします。
タイトルは「思春期を殺した少年の翼」で。
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 09:20:50 ID:M93RsBrY
上条さんのSSってタイトルあった?
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 09:47:28 ID:GtJnC0wu
投下乙

>上条組
ついに溺死vsそげぶが見られた・・・!
ここに来てようやく上条さんの説教スキルが炸裂したなw
双剣も赤い外装も一発で消せるなら、まさしくサーバントキラー

ライダーがふじのんを切り札にしたように、
アーチャーも上条さんを切り札にして前で闘えるわけか

これは楽しみな組み合わせだ


>ヒイロ組
リリーナと御対面か・・・
ファサリナいい女だなぁ

そして刹那が太陽炉に出会ったように、
ヒイロもゼロ・システムと出会ったか・・・
これぞロワの醍醐味だよな


俺ホン組の興奮冷めやらぬ中、二作品とも良作でした
投下乙でありました
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 10:33:17 ID:UiNoN4LK
お知らせします。
昨晩、議論の結果により件の作品の再修正稿を最終稿として、
投票にて通しか破棄かを決定する事と相成りました。
投票は避難所議論スレ、投票期間は本日19時ジャストから23時ジャスト、
23時ジャストにて投票を締め切り火曜日0時までに
集計して結果発表、
その結果を踏まえて火曜日0時ジャストに予約解禁
というスケジュールです。
皆様の清き一票をお待ちしております。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 11:30:41 ID:P2YCI0LO
>>63
件の?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 11:42:18 ID:1n4oaLSu
>>64
一方とサーシェスのSS
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:08:50 ID:GtJnC0wu
まだやりあってたのか・・・
重箱つつきは放っておけばいいのに
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:24:00 ID:jL+9kKAd
ヒイロ組投下乙
しかし、ファサリナの思考に矛盾を感じます
もともとカギ爪が死んだものとして行動していて
ヒイロと主催の力を奪ってカギ爪を蘇生させるスタンスだったファサリナが
ここで、いきなり殺し合いに乗り出すのには非常に違和感があります。
これではまるで第一回放送直後からの状況に見えます。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:32:44 ID:T75QMRuL
>>28で一つ気になった点が
アーチャーは外套の下には黒い服を着ているはずだと思うのですが
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:34:56 ID:T75QMRuL
すまん、68は忘れてくれ
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:39:59 ID:qRIb+65K
>>67
議論スレか質問スレで言おうぜ
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 14:14:00 ID:7Wvy4yqw
議論スレは今日は予定があるから
質問スレじゃないと駄目じゃね?
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 14:29:56 ID:1n4oaLSu
質問スレに誘導されたな
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 16:00:56 ID:embke4hO
みなさん投下乙です

>ガンダムVSガンダム ◆LwWiyxpRXQ
アリオスゥゥゥゥゥ…もしかしたら操縦者よりも目立っている気がする…
そしてゼクスが火消しのウィンド化か、あとエピオンは個人的にWで一番好きな機体
そういや『自分は戦うのが仕事、みんなをまとめるのは別の人に委ねる』って思考の人今回結構見かける気がする

>麻雀黙示録カイジ 衣編 ◆6lyiPawAAI
誤解は未だ解けずで麻雀で判断か
それにしても前回までの黒服は一体どうなったんだろう
ソア=SOAで、紫炎姫=沢村智紀なんて最初読んだ時は分からんかったw

>それは不思議な出会いなの ◆jjkBJLIXVM
やっぱりというかヴァンは名前をまともに覚えないのなwww
そして海原ァ!おまえなんてものを拾っているんだwww
あとかじゅなら男服でも違和感ない気が(ry

> ◆L5dAG.5wZE
(これだけ感想が長くなるが他の書き手氏すまん)
なんだこの迫力!バーサーカーとホンダムの戦いは凄まじいの一言に尽きる、いや尽きない!
ジャイアントスイングでバスターホームランとか荒技すぎるwwwそして直後の復活がまさに絶望そのもの…
そして一方の一転して生身の戦いもお互いの主張がぶつかり合って良い感じだった
それにファングで推進力を得るのも唖然としたが、 G N ホ ン ダ ム 可 翔 式 !!!!!
もう一連のドッキングシークエンスとか盛り上がりすぎるだろ、そしてアレルヤの名前が出てさらに歓喜!
いやいやどこからこんなアイデア出てくるんだwww
最後の太陽光発電所に突っ込んでトランザム太陽炉にゲフィオンディスターバーに輻射波動とかオーバーキルにも程があるだろwww
生き残ったトレーズがどうなるのか不安な一方で、馬イク南無…

>◆00PP7oNMRY
上条さんはなんとか自分なりに美琴と向き合えてなにより
そして理想を抱いて溺死しろvsその幻想をぶち殺す
だが最後のオチで緊張感がwww

>思春期を殺した少年の翼 ◆mist32RAEs
ここにてヒイロが殺し合いに乗ってきたか
でもリリーナが綺麗な姿になれて良かったな
そしてゼロシステムで見た未来が血ぬられたものなのか…
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 16:07:24 ID:embke4hO
いくつか気になった点

>「黄昏の破壊者」「破壊者達の黄昏」「Beyond The Grave」◆L5dAG.5wZE
時間が放送越えて日中になっていますけど昼のミスかな?

>◆00PP7oNMRY
タイトルが見当たらないんですが…

>思春期を殺した少年の翼 ◆mist32RAEs
最後のパートが抜けている(ヒイロが殺し合いに乗る場面がない)気がするのですが…
ただ違和感を覚える程度でこのままでも通じるので自分の勘違いならすいません
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 18:14:36 ID:GtJnC0wu
え、ヒイロ乗ったの?
乗った場合の未来をゼロで見ただけじゃなく?
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 18:30:32 ID:ZSouqo7H
>>58のヒイロの基本思考が優勝狙いになってるけど>>57でそうなったの?
それともゼロシステムの示した最も効率的な未来?
話を読み飛ばしたのじゃないかと思う程分かり難いです。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 18:44:38 ID:WU9TWtd8
ん?確かに状態票が変だな
まぁ大したことでもないしwikiで直せば?
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:01:03 ID:ZgO/0mhj
お知らせします。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1260644329/にて
書き手◆1ZCuwzjAYc氏のサーシェス×一方通行(『決意の朝』)SSについて。
昨晩、議論の結果により件の作品の再修正稿を最終稿として、
投票にて通しか破棄かを決定する事と相成りました。
ガイドライン:投票期間中は原則投票レスを一人一レス
集計作業中は原則確認アンカーレスを一人一レス
作品が本スレにて正式採用された書き手氏が鳥出
しで投票したなら二票分
、それ以外は投票対象の書き手氏本人(本スレにて正式採用された作品が無
いため対象外)も含めて
一票。
投票レスについて制限は特に無し。「通し」「破棄」
のみでも自己主張込みでもご自由に。但し、なるたけ
手短に。
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:02:34 ID:zQqJaQX3
トランザムバーストの影響が他参加者と矛盾しないように日中にしたとか?
あれだけ戦った上に空飛んで移動までして、しかもトレーズもバサカも気絶や復活で更に時間かかってるだろうから違和感なかったけど>日中
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:22:28 ID:ya0ebgg5
それかもな>トランザムバーストの影響
あんだけバトルすれば時間跨いでも違和感は無いw
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:41:51 ID:ovoJ4wFx
トランザムバーストって会場全域に広がったのか?
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:44:35 ID:GtJnC0wu
いやいやいや
ヒイロマーダー転向は大したことだろ

その肝心な部分がないのに判定できないでしょ
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:49:13 ID:qRIb+65K
だから質問スレ行こうぜ
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 19:51:52 ID:NnLd5u4l
投票の実況スレと聞いて(ry
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 20:00:25 ID:IU7/bl3e
もう退場したけどかわいいキャス子さんとか赤外套無しのアチャとかホロウ風味多めだな今回のFateは
そのうちアヴェンジャーコスの士郎さん出て……さすがにないかw
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 20:45:12 ID:OayTw6R3
新スレ乙せずにはいられないな
87 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 21:27:20 ID:QtKWy63c
沢山の感想ありがとうございます。

えーと、タイトルは『神浄の恋せぬ幻想郷』です、すいません。

>>40
えーと、その辺りの情報交換は後回しにした、ということです。
そういう一文を入れておくべきでしたかね、すいません。

>>41
えーと、黒い鎧は着ています、はい。
そこの描写はしておくべきでしたね。
状態表はミスですすいません。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 21:28:43 ID:ZSouqo7H
もやしと船井、どっちがハーレムをより充実させるか
89 ◆00PP7oNMRY :2009/12/14(月) 21:32:04 ID:QtKWy63c
と、ミス。
そういうわけで一部だけ修正して仮投下に落としますね。
修正と言っても2,3行程度ですが。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 21:33:08 ID:1atmSTiR
ついでに投票でもしてきたらどうだい?
まあ、大勢は決してるけど。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 21:56:49 ID:5QTE1nmk
たぶん、なにがしかの大切な想いの籠った概念武装だろうに……
アーチャーカワイソス
92 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/14(月) 22:05:39 ID:DMKPG0e8
>ガンダムVSガンダム ◆LwWiyxpRXQ氏
スパロワじゃねーぞここw
やっぱガンダム系参加者はロボ乗ってこそ輝くなーw

>麻雀黙示録カイジ 衣編 ◆6lyiPawAAI
カイジってあんまり麻雀してる感じないんだよな
しかしついに衣が麻雀勝負か・・・ざわ・・・ざわ・・・

>それは不思議な出会いなの ◆jjkBJLIXVM
海原とヴァンもようやく話に搦めそうだな
そして上条さんが不幸だw

>神浄の恋せぬ幻想郷 ◆00PP7oNMRY
ロワ内での埋葬っていうある種の儀式に一石を投じる上条さんパネェ
アーチャーからしたらそりゃ気に入らんだろうなぁw

>思春期を殺した少年の翼 ◆mist32RAEs
ヒイロにゼロシステムとか鬼に金棒ってレベルじゃ(ry
優勝狙いコンビかー。ゼクスとは逆の方向行っちゃたんだな

みなさん投下乙です。
で、投下したSSですが
>>79-80
正直なところミスです・・・が、それでよかったんじゃないかとは思います。
まず昼に限定してしまうと他のキャラの行動にすぐに反映させなければならないため、他の書き手氏に負担になるかもしれません。
現在プロットがある方の邪魔はしたくないし、また予約中の方の作品でそれ以上に時間が進めば矛盾として現れるかもしれないからです。
>>81
トレーズのいる距離くらいまでは確実、それ以上はお任せ・・・といったところです。

他に細かな修正は収録後に行いますが、大きい一つとして
「破壊者達の黄昏」→「破壊者たちの黄昏」となります。元ネタはちゃんと確認しておくべきですね。
あと伊達軍の馬は直前に思いついたので、予約したいという方がおられましたら当方は削っても構いません。

あと、ご支援ご感想ありがとうございました。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:07:34 ID:EorqMbDs
>>91
どうせサーヴァント自体がコピーだ

しかし、馬が・・・南無
94 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:08:20 ID:LicfAVGR
ども、荒耶宗蓮投下します。規制解除記念も兼ねて
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:09:37 ID:embke4hO
>>92
放送直前にしたらどうでしょうか?
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:10:42 ID:embke4hO
 
97「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:14:43 ID:LicfAVGR
陽が高々と昇る時刻においても、この街は静寂に包まれていた。


人々のざわめきも、自動車のクラクションも、この世界には無用だ。コンクリートの樹木が林立していながらその森の住人である人間の姿はない。
この街で、周囲のあらゆる人工物の群れの中で、人間という存在は完全に消え去っていた。

いや、訂正しよう。確かにこの『会場』内に人間は存在する。会場の広さに反して非常に数は少ないが確かにここには人がいる。
もっとも、あと1日も経過すれば本当の意味でこの場は無人となるだろう―――60余の骸を残して。

そんな無人の市街に足音もなく歩み続ける長身の男。街中が陽に照らされる中、その男の周囲のみが光を避けているかのように周囲が沈殿していた。
日差しのある昼に全身黒衣はそれだけでも目立ちやすいが、それ以上の存在感をもって魔術師―――荒耶宗蓮はそこにいた。

主催者の一因たる禁書目録からこの殺し合いに積極的に参加、もしくは参加者を扇動するよう要請を受け、
手始めに琴吹紬をその道へ引き込んだ後、荒耶は北の橋へと向かっていた。

「死の蒐集と観察」という表向きの目的を通すため、望ましくない積極的な活動を強いられた荒耶だが、実の所この要請は僥倖ともいえた。

東側には荒耶の真の目的たる両義式がいる。それを悟られぬようあくまで偶然を装い遭遇するという慎重な行為が必要とされていた。
だが計らずも他ならぬ主催者側から両義を捕らえる機会を荒耶は得たのである。
より殺し合いを促進させようとするなら参加者の過半数が集まる東側へ赴くことはごく自然のこと。同じく東側にいる式へと無理なく接近できる。
一気に近づいた自らの目的を達成するべく、だが決して焦ることなく歩を進めていく荒耶。
このまま悲願を成就せんと改めて鋼の意思を固めた矢先に、


「―――!」


それは、掛け値なしの不意打ちだった。突如体が、正確には体内の魔術回路が突如痙攣をする。

「……これは」

驚愕する荒耶。だが原因そのものは彼には、魔術師には慣れ親しんだ感覚だ。
この会場の、自身と主催側にとって重要な箇所に張り巡らした幾つもの結界の1つ、そこに何者かが近づくと自身にそれを知らせる、
いわば警報ブザーとして機能するよう備えた結界が破られた。「場」ごと力ずくで破壊されて。
強引に式を打ち破られたフィードバックにより魔術回路が乱脈に陥いったのだ。
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:16:35 ID:ZSouqo7H
99「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:17:48 ID:LicfAVGR
荒耶は瞬時にこの事態について思案を組む。結界が壊された。即ちその場にある決して悟られてはならないもの―――
例えば魔術師の工房へと続く『門』の存在―――を参加者に知られる事に他ならない。

すぐさま結界を崩された場所を探ろうと身を隠し意識をその場へ飛ばそうとして、その必要のないことに気付いた。
遠くに聞こえる崩落の音。視界から消えていく建造物。

「安土城か」

予想の通りの結果に―――表情は変わらないが本人にしてみれば―――苦虫を噛み潰した顔になる。
確かにあそこには自身の工房に繋がる『門』が設置されている。
その気になれば無意識にそこへ近づくことを禁じさせる結界を作成することも出来たが、誰も近づかないようにしたらそこに施設を建てた意味がない。
故に術者に警告する程度の弱いものしか張ってなかったがそれ以外の、物理的な仕掛けは数多く設置されている。
元々オリジナルの安土城にあった極悪な罠の群れ、構造上決して視界に入ることのない隠し扉、さらにカモフラージュとしての意味も持つ宝物庫。
会場の各施設に幾つか設置された門のうち、安土城は最も発見されにくい場所のひとつであった筈なのだ。
それを真っ先に露呈されたことに頓着する間もなく現場を直に確認するべく荒耶は崩れ去った「元」城へと意識を飛ばした。







視界に移ったのは、圧倒的破壊の跡。それだけだった。
自身の権力を後世に伝えるべく建てられた豪華絢爛、難攻不落の城は見る影もなく瓦礫の山と化していた。
この破壊の惨状がたった1人の男により引き起こされたという事実を果たして何人が理解し、納得できるだろうか。
だがなにも城砦を跡形もなく破壊し尽す程下手人の力が超越的なのではない。その城を支える文字通りの大黒柱を素手で引き抜いたことにより支えを失った階層が落下したに過ぎない。
その時点で超越的だという指摘は、この場においては野暮というものである。

そんな冗談みたいな真似をしでかす男を荒耶は知っている。この殺し合いの参加者の中でここまで殺戮を行うのに適した者もいまい。

バーサーカー。理性なき狂戦士。もはや参加者というよりこの会場に設置された無差別殺戮装置とでも形容すべき存在。
そんな狂戦士が城の柱を引き抜いて何をするのかと思えば、柱を背負い、森を一気に降りていく。そうやら武器として使用する気らしい。
確かに現代で発見されれば国宝級の価値を得るであろう代物。バーサーカーの腕力を存分に振るえる質量と強度を持つだろう。

結界を暴いた主が狂戦士であることにひとまずの安堵を覚える荒耶だが油断は出来ない。あれ程の破壊の様、多かれ少なかれ参加者の目を引くであろう。
何者かがあの場にたどり着く前に『閉じる』必要がある。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:18:50 ID:ZSouqo7H
 
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:19:18 ID:embke4hO
 
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:19:26 ID:DMKPG0e8
 
103「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:21:17 ID:LicfAVGR
そんな打算を構築する荒耶の視界で突如バーサーカーの動きが止まる。そしてその悪鬼のごとき形相を、こちらに向けた。



“―――――――”

反射的に、本能的な恐怖により意識を引き戻す。
理性を奪われたといえどその身はギリシャ神話に名を刻む大英雄。肌で覚えた戦闘本能で気付いたか。
如何に荒耶といえどその身はいまだ人間の範疇である。自身より上位の存在など幾度となく見てきた。大抵はその肉体を代償にして。

肉体に意識が戻りきった荒耶は歩みを再開した。
転移は、使えない。すぐさま工房へ移動し対処するのが優先と断じつつもその行為は主催者達に不審を抱かせるだろう。
監視の範囲を把握できない以上無闇に使うわけにはいかない。
そしてこのまま城の跡を監視し続けるのもナンセンスだ。如何に状況を把握できるといってもその間肝心の肉体が昏睡状態とあっては行動に移せない。
何者かの接近を感知してもその後動いては手遅れだ。

故に荒耶はただ歩く。監視を警戒する身としてはここにきて走り出すという明らかに異常が起きたと見せびらかす行為は禁じたい。
幸いにして他の門は近い。このまま徒歩でも5分とかかるまい。その間に侵入者が入り込んでいるようならその場で撃破するのみ。
魔術師の工房に長居するという行為がどれだけ愚かな行為なのかを知らしめる意味も込めて。


そうして目的の施設へたどり着く荒耶。主催者は訝しむやも知れないが上手く口裏を合わせる他ない。矛盾点を孕まずにすれば支障はない。
僅かな焦りの念を抱きつつ、だが確固たる意思は些かも崩れることなく、黒衣の僧は政庁の中へと消えていった。






◇―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


政庁の中は静かだった。壁やソファーに銃弾の跡が残ってはいるものの血の匂いも、それを噴き出す死体もここにはない。

“―――侵入され(はいられ)たか”

工房内に侵入者が現れたことを知らす警告が荒耶の体を鳴らす。だが急ぐことなく、
地図には目もくれず蛍光灯に照らされたフロアを勝手知ったるように迷いなく進む魔術師。
入ったのはエレベーター。だがそれは正面のではなく、丁度照明が当たらず扉の隙間も見えない構造上の死角、
一目では、いや2目3目見ても発見できるかも怪しい隠し扉の先にある方だ。
押すボタンは地下と1階の2択のみ。当然、地下のボタンを押す。



おーーーーーーーーーーーーーん。



やけに、不自然なまでに大きい駆動音。それはここが政庁から異界に繋がった証に他ならない。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:21:23 ID:DMKPG0e8
 
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:22:14 ID:embke4hO
 
106「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:27:46 ID:LicfAVGR
扉が開いた先は、重苦しい闇。熱せられた鉄板に水滴が落ち、蒸発する。それだけが明かりであり、それだけが音だった。

ここが荒耶の工房。点在する施設のいずれかにある門を辿って転移していく魔術師の研究室。

己の工房に足を踏み入れた荒耶はすぐさまに周囲に気を配る。
……人の気配はなし。大規模な破壊の跡もない。最も懸念していた事態の一つである蒼崎橙子の首も依然そこにある。

唯一つの確かな変化は、採取した標本を込めていた棺が横一文字に両断されていたのみ。

「……被害は中野梓のみか」

それ以外に変化がないことを確認した荒耶は再び意識を飛ばす。侵入経路であろう、安土城跡へと。

予想通り、侵入者はそこにいた。蒼の甲冑に身を包み、腰に携えるは六の爪、隻眼なれど残った左目は竜のそれ。欧州筆頭・伊達政宗。
足元には先程まで標本にされていた少女。豪奢な一重に身を包み、掘られた土に身を任せ、閉ざされた両目は死者のそれ。しがない女子高生・中野梓。

金銀財宝を振りかけ最後に土をかけ、目を閉じうつむいている。黙祷をしているらしい。
その後、気合の口上一閃、すさまじい速さで山を降りていく。目的地は、この場では未だ判断できない。



「―――愚かなり、伊達政宗。戦いに生きる修羅が情にほだされたか」

これ以上監視は無用と意識を戻した荒耶は、誰に聞かせたわけでなく竜の行いをわらう。
この会場にいる政宗以下の武将を荒耶のいた世界の史実と同一視することこそ拒むが、動乱の時代を生きてきたという点は共通だろう。
戦国の世こそ体験してないものの荒耶もまた200年を超える時を生きてきた。その間に幾つかの戦にも顔を出すこともあった。
銃器が台頭した頃とはいえそれでも多くは己の手と手で殺し合いを行ってきた時代。戦の後に残るおびただしい死体の群れ。
それより遡ること更に200年、そんな場でどれだけの命が血と共に流されていったか。その手の爪で如何程の命を啜ってきたのか。
同じくこの場にいるサーヴァントも同様だ。英霊と救世主などともてはやされてもそれは即ち如何に多く人を殺めたかの証に他ならない。

弔いなど無意味なのだ。人に救いはない。人はどうしようもなく死ぬものだ。
罪のない者が殺されたことに憤るというのならその理論は破綻だ。
何もしない、そもそも気付いていないという事こそが罪なのだ。壊れていく世界に気付くことなく、目先の快楽に耽るばかりの者。
だがそのいずれもが無意識に世界を害なすモノを排除する。誰も知りえぬが故に誰もがその可能性を抱く「守護者」。
それこそ抑止力。人の世を如何なる手段を以ってでも存続させようとするアラヤの行く手を阻み続けた霊長の集合無意識。それこそが宗蓮の打倒すべき敵だ。


そうして荒耶は作業に移った。まず城にある門の経路を断つ。門の配置、及び遮断の決定権は荒耶にある。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:28:10 ID:gEbi+Cce
もうさるか?
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:29:29 ID:embke4hO
 
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:29:33 ID:DMKPG0e8
 
110「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:33:16 ID:LicfAVGR
城からの転移の道を切り離したことにより、もう二度とあの場所から工房に入り込む事は出来ない。ただ扉だけが意味もなく佇むだけだ。
一度破棄したら二度と使うことも出来ないが、伊達政宗に知られた以上あそこを工房への通路にすることは断念せざるを得ない。

そして新たに門を配置することは出来ない。主催者側からそこら中に逃げ込む穴があったのでは不公平に過ぎるということで門の数に制限を課され、新たに作成することも禁じられている。
それに作成自体も可能ではあるのだが、一室丸ごと転移させるというのは中々に難儀であり最低でも1日ほどかけなければ完成出来ない。
この会場は荒耶の体内であるという比喩になぞらえれば工房は内臓、門は血管のようなものだ。動かしたり作り直すのは容易ではない。

既に中野梓の遺体に関して荒耶は一切の興味を失っていた。
棺より出され完全に生命活動を停止した時点でもう直しは効かないし、遺体を保管していた理由の一つである参加者の身体への仕掛けの調べも済んでいる。
結局それらしい細工は見られなかったが何の力もない非力な少女だったこともあり細工の必要性がなかっただけとも考えられる。
今後は何らかの能力者を確保すべきかもしれない。その程度の認識でしかなかった。



工房に入る前の道中、荒耶は禁書目録に対して自身の―――正しくは中野梓の支給品であるパソコンを手早く起動していた。
多くの魔術師は近代機器を軽視ししているが荒耶は現代に溶け込むため怪しまれない程度の社交性と一般常識を備えている。
かつて両義式が入院していた病院に心療内科医として在籍していた経緯も持つ。そのためある程度は機械を扱う術も心得ている。
既に送られていたアドレスを使いメーッセージを作成する。唐突に工房へ戻る事を訝しむやもしれぬ事への保険として。



“安土城の崩落により会場の結界に僅かな齟齬が生じた。修正にかかるため一時工房に戻る。”



言い分としては申し分ない。事実構成に僅かといえど綻びが生じたのは確かだ。一度結界を見直す必要はある。
わざわざ工房に戻らなくとも調整は効くのだがそこまで向こうは与り知らぬ。周囲の目を気にせず時間をかけるためという理由ほどにしか至らないだろう。

殆ど時を過たずして、返信が来た。



“分かりました。こちらで異常は認識できませんのでそちらに任せます。ですが余り時間をかけずに。僅かというなら10分ほどでお願いします。”


簡素に打たれた文章。やや釘を刺された書き方だがこちらの思惑には気付いていないようだ。

荒耶が禁書目録の使う「魔法」を把握し切れていないように禁書目録も荒耶の「魔術」を理解し切れていない。
もうしばらくは水面下の化かし合いに立ち回ることになろう。
ちなみに安全な工房内でなく外で遣り取りをしたのはあらゆる干渉を防ぐ工房内では電波の届きも遮断されるからだ。
仮に通ったとすればそれは主催に己の工房の位置を教えるようなもの、断じて見過ごせない
111「 」に挑む意思  ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:37:35 ID:LicfAVGR
10分で済ませろとされたが実際は5分もかからない。亀裂は本当に僅かなものでしかないのだ。放っておいても良いくらいなのだが慢心は禁物だ。
ここは自分の元いた世界と違う。荒耶には思いもよらない事態に会うとも知れぬ。万全を期するべきだ。

調整が済み次第、改めて東に進む。参加者を殺し合いに引き込み、そして両義を捉える。
順序は構わない。最終的に式の元へたどり着ければいいのだから。

それと―――


「伊達政宗―――対処しておくべきか」

恐らく本人には魔術師の工房の意味など理解できていないだろうが、それでも己の本拠地を知られていることは決して益となる材料ではない。
早急とまでは言わないが、道中でまみえるようならば、始末しておきたい。





熱気が立ち込める闇の中、瞑想に入った高僧のように微動だにせず荒耶は己の世界の検分を始めた。



【D-5/政庁 地下(荒耶宗蓮の工房)/一日目/昼】

【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:黒服
[装備]:ククリナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(6/6)、.38spl弾x53、鉈@現実、パソコン、荒耶の不明支給品(0〜1)、
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は参加者たちを扇動する
1:結界の確認、調整を行う。
2:殺し合いが動きやすくなるように東へ向かう。
3:必要最小限の範囲で障害を排除する。
4:機会があるようなら伊達政宗を始末しておきたい
5:利用できそうなものは利用する。
※首輪はダミーです。時間の経過と共に制限が緩んでいきます。
※B-3の安土城跡にある「荒耶宗蓮の工房」に続く道がなくなりました。扉だけが残っており先には進めません。
※D-5の政庁に「荒耶宗蓮の工房」へと続く隠し扉があります。

112 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/14(月) 22:41:14 ID:LicfAVGR
以上で投下終了です。……うん、短いな。
どうやったらあんだけ膨大な文章を書き切れるのか……尊敬の念を込めらざるを得ません。

今度は10レス分位は伸ばしたい物だ。サーシェス・一方さんも決着が付く所だし
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:46:18 ID:JpxwWqAq
まぁ無意味に長いよりは短くまとまっていた方がいいんではなかろうか
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 22:53:06 ID:gEbi+Cce
投下乙です
俺も短い方がいいかも

あらやんはやっぱり暗躍してるな
しかしこいつは変に悟りくさってなんかムカつくなw
そして政宗が危ないかも
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 23:24:31 ID:embke4hO
投下乙です
あらやんは相変わらず不気味に行動するな
地味に政宗がターゲットにされているw
あと長ければいいってもんではないですから短くても大いに結構ですよ
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 23:56:07 ID:njCICW6A
破棄んなったのは別にいいんだけどさ
ID:e9WLIhycとID:la0eYcrcがUZEEEEEEEE

ありゃ萌豚以上の癌だな
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:02:56 ID:wkdU3fRK
         | V /  ィ_ノ: / : /. : .   /:  . :{从ィソ.   帰ってきたぜ!
        V/ ,'  廴_ ィ : l: : :  . l . :/   \: . .    久しぶりだなあ!
        {{ |    . . : : : : |: :  : l : :/  __ V: :    みんな、応援ありがとよ!
          ` |  . . : . : : イ : | | : : : : 、_廴/≦   V:
        ,    | . : : : : : : lノ∠l∧: | : /r≦ィ矛了   //    :   .
       {、_ノ /. : : : : : : l´r弋仗 ゝ:|  二 ̄   /イ:   . :     : .
       ゙ー‐ イ: |: : : : : : :ゝ  ̄  ヽトゝ      { V  . : :    :
              l: :|ヽ : : : : : 三ソィ  ′           ノ  : : :  :   :
          ゝ:{  \: : : : 彡'   l          ゝ   : :  : . . : :
\          `\  ヽ: : : :ヽ   ヽ,,`,,, ; ; ;_,;z;; ;,  、) : . :   : : : :
  `ヽ ̄ ̄ ̄`  、     ノ: : : : : \ 、;;='''゙゙"~´    ∠ゝィ: :   : : : :
     :.      \___{ : : : : : 厂∧ イ ̄ヽ   /ヽ./{: : : .  : : : :
     ::..      \  \rzく  j : \j: : : : \/: : : : } Y |: .  : : :
      :::i::..      ヽ  丶ヽヽ.V: : : : : : : : : : : : : : :/ /ヽlヽ  : : :
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:06:49 ID:1QZz4GTJ
>>117
サーシェスかっこえええええええええええええええええ
惚れる!
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:21:08 ID:f5OMGnK8
>>117
OO見把握だったけどサーシェスってこんな顔だったのか
今までのイメージが崩されたぜ
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:28:41 ID:s2q/+HPW
投下乙

繋ぎの話はこんくらいの長さでいいと思うよ
あらやん絶賛暗躍中だな
121 ◆qh.kxdFkfM :2009/12/15(火) 00:53:09 ID:zdCOunUe
>>92
>あと伊達軍の馬は直前に思いついたので、予約したいという方がおられましたら当方は削っても構いません。

それでは予約したいのでそのように配慮願えますか?

>>106
>予想通り、侵入者はそこにいた。蒼の甲冑に身を包み、腰に携えるは六の爪、隻眼なれど残った左目は竜のそれ。¥欧州¥筆頭・伊達政宗。

政宗がヨーロッパを平定しちゃっていますね。これは当方も制作時やってしまい、慌てて直した覚えがあります。

122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:59:10 ID:c3577dLr
やった……
馬が……
馬がぁああああああ
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 01:03:08 ID:Ln2y5dD8
サーシェスに続いて馬イクも復活か!
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 01:10:11 ID:6Jj61d4l
馬イク復活ktkrww
そして筆頭は欧州と言っても不自然じゃないな。口調が口調だし。
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 01:21:18 ID:s2q/+HPW
欧州筆頭ワロタwww
まあ、Wiki収録時に直せば大丈夫だよ
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 01:52:55 ID:m7PiiDdm
それセイバーでも通用するなw>欧州筆頭
騎士道の模範みたいな扱いだし
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 02:01:46 ID:hnBCqRCK
蘇ればまさに風雲再起だな
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 08:15:00 ID:Ln2y5dD8
やはり、馬イクにべルレフォーンか・・・!
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 08:35:17 ID:oK2w1J5V
ひろし
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 12:59:33 ID:SWBcNAo5
サーシェス・一方通行、拘束解除おめでとう!
馬イク復活おめでとう!……で、いいんだよね?
さーて、ウラシマエフェクトをどう解消するか
そして、マサムネ欧州平定おめでとう!www
131 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:50:02 ID:1QZz4GTJ
平沢唯、船井譲次、福路美穂子、琴吹紬、明智光秀、秋山澪投下します。
あんなこと書いておいて長くなりすぎました。
132切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:52:01 ID:1QZz4GTJ
皆さんの願いはなんでしょうか?
金?地位?ちっぽけな自尊心の成就?それとも、命ですか?
その願いを叶えられるとしたら、
貴方はなにを望みますか?

ここにある男が居ます。
名を明智光秀。皆さん勿論ご存知ですね。
ただこの明智光秀は、あなたがたの知っている光秀とはちょっと違います。
まさに世界が違うのでしょうか、彼は己の快楽のためにならどんな労苦も厭わない、
まぁわたしからしてみれば、変態でしかない人間です。
ただこの御仁がただの変態と違うのは、腕が立つ、と言う点です。
馬鹿に刃物、と言う言葉もありますが、
こう言った手合いは、モラルを前提とした人間社会の中では非常に厄介な存在でして、
また、ある種の人間たちにとっては非常に有能で、魅力的な人物でもあります。
人間と言うものはおそらく環境によって、重要性や価値が異なるのでしょう。
戦場において、いくらチェスが上手くても、それだけでは砲弾にバラバラにされるだけでしょう。
平時において、いくら腕が立っても、それだけでは銃を錆びさせて、そのまま人生を終えるでしょう。
その点に置きまして、現在の彼はまさに適材適所。
彼の願いは、変態的とまで言える己の弑虐心の充足。
このバトルロワイヤルと言う状況そして環境は、まさに彼の願いと合致していると言えます。

傍らには黒髪をたなびかせた白衣の天使。少女の名は秋山澪。
光秀がこのゲームに最も適応した人物の一人であるのに対して、
この秋山澪と言う少女は、ゲームに対する適性に関しては、最悪と言ってもいいでしょう。
そんな彼女がゲーム開始から八時間以上経った今も無事であるのは、まさに幸運と言っていいでしょう。
もしくは彼女が持つ、ある種の才能によるものと言えなくもありません。
それは恐怖。
ある時は庇護欲を、ある時は弑虐心を相対するものに掻き立ててきた、
コレこそが彼女の才能と言って、差し支えないでしょう。
そんな彼女ですが、今はやや趣が異なります。
蘇生の魔法を、フフ、いえ失礼。魔法を使って友人を生き返らせる、
そのために、他の全てを殺そうと、行動しているわけです。
恐怖という大波に必死に抗いながら、死の草むらをかき分ける。
なんとも健気ではないですか!
しかし当然普段の彼女の行動原理からしてみれば、この行動は矛盾しています。
バトルロワイアルという非現実的状況。
光秀と言う名の逼迫した死への恐怖。
なにより荒耶宗蓮の仕掛けた狂化の術。
これら二重三重の仕掛けにより、哀れ、黒髪の少女は狂気にその手を絡められたのです。
忌むべきはバトルロワイアル!

話を戻しましょう。
光秀は先の戦闘で回収した観光ガイドをペラペラとめくり、まるで物見遊山の様子。
「狂おしいですねぇ。まさに選り取りみどりではないですか。コレでは選べません。」
ふと何かに気づいたかのように同行の秋山澪に振り返り、短く説明すると、
秋山澪は手渡された観光ガイドを、バラバラとめくり始めました。
「そこまで」と光秀が告げますと、ガイドを捲る手が止まり、
「円形競技場ですか。なかなかよろしいですねえ。」と喜ばしげに頬を緩ませると、
秋山澪も載せた赤揃えの軍馬は、一路コロシアムへと向かいました。


133切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:53:26 ID:1QZz4GTJ

わたしは一人、円形競技場へ、唯ちゃん達が待ってる場所へ歩いていた。
ベンツはもう動かなかった。
そもそもエンジンの動かし方すら、わたしは死らなかったから。
船井さんには謝らないと逝けないかも。お気に入りみたいだったから。
座り心地も今思い返してみると、物凄く良かった気がする。
わたしはずっと寝ていたから、あまり覚えてないけど。

嗚呼それにしても、早く四人殺さなくちゃ。
四人。
唯ちゃん、船井さん、美穂子さん。
アレ?一人足りない。
そうか、あと一人殺さなくちゃダメなんだ。
難しいなぁ。
あと一人、誰を殺そう。
知ってる人のほうが、警戒されずにコレ、青酸カリを飲んでくれるよね。
梓ちゃんは死んじゃったから、やっぱり澪ちゃんか律ちゃん、かなぁ?
唯ちゃんは青酸カリだって言って渡しても、きっと喜んで飲んでくれるよね。
だって友達だもの。
だってみんなで生きて帰るために、死ぬんだもの。
わたしはその手助けをするだけだから。きっと喜んで殺されてくれるよね。

嗚呼嬉しいなぁ。
学校での時はわたしは、ただ殺されるだけの存在だったのに。
唯ちゃん、やっぱりわたし、生き延びた意味があったんだよ。
だって、今わたしは殺す立場に居るんだもの。
そうだね、まずは唯ちゃん達を安全に、確実に殺さなくちゃ。
一人ひとり隔離して、一人ひとりに紅茶を配る?
いや、それじゃもし悲鳴を上げて死んだら、他の人に紅茶を飲んでもらえなくなる。
やっぱり三人同時に紅茶を飲んでもらうしかないよね。
どうしたらいいんだろう。悩むなぁ。やっぱり殺すのって難しいかも。
手伝ってくれないかなぁ、唯ちゃん。

そんなこんなを考えていると、アレ、もう着いた。
闘技場の一番てっぺんの、一番高い座席から唯ちゃんが手を振っている。
わたしも笑顔で手を振り返す。
待ってて、唯ちゃん。
確実に安全に、いつもの唯ちゃんのままで殺してあげるから!

134切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:54:38 ID:1QZz4GTJ

昼まではあと2時間以上もある。
わたし、福路美穂子は貧乏性なのでしょうか、
なにもせずに待っている、と言うことが出来ませんでした。
闘技場の中を、もう一回見回ってくると船井さんに告げると、平沢さんを連れて、部屋を出ました。
平沢さんを連れてきた理由は二つ。
わたしが船井さんを信用していないから、と言うこと。
あと一つは、単純に話し相手が欲しかったから。
船井さんを一人にしておくのは、やや不安でもあるけど、
平沢さんとふたりっきりにしておくのはもっと危険だと、わたしの勘が伝えていた。
今も船井さんは、一人で良からぬことを考えているのでしょうか。
でも船井さんの好きにはさせない。せめて平沢さんだけでも守らなくちゃ。

え?

守る?

自分でつぶやいた言葉に、今更のように驚く。
わたしは今、何を言ったのだろう。
わたしのような何もできないただの女子高生が、
他の誰かを、この異常な世界で、守ることができると言うのだろうか。
あの素晴らしい上埜さんだって、わたしの分身でもあった華菜だって、
そしてわたしを護ると言ってくれた小十郎さんだって、
そしてあまり面識はないけど鶴賀の、確か部長さんだった加治木さんも、
このくだらないゲームの中で死んでいってしまった。
誰も彼もわたしよりよっぽど素晴らしい、才能のある人ばかり。
わたしは、といえば、
いつも華菜に心配をかけてばかり、上埜さんにからかわれてばかり、小十郎さんに護られてばかり。
そんな自分が、平沢さんを護ることができるのだろうか。
せめて華菜が生きていれば、上埜さんが微笑みかけてくれれば、小十郎さんが励ましてくれれば、
わたしも誰かを護ることはできたかもしれない。
でももはやわたしはその三人に合わせる顔も無ければ、ふたたび会うことすら出来ない。
なら何故、わたしは守るなどと。
ふと階段を登る足を止め、後ろを振り向く。
そこには何故か顔を手で隠し、耳まで真っ赤にした平沢さんの姿があった。
135切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:56:44 ID:1QZz4GTJ

白いぷにぷにとか、なんで穿いてないの、とか
よく分からない事を平沢さんは言ってたけど、まぁとにかく私たちは観客席、その最上段に着いた。
空の青さが目にしみる。
こんな凄惨なゲームが行われているというのに、空はわたしの知っている世界と少しも変わらない。
眼下に広がる競技場、そして観客席のパノラマ。
外に目を向けると、すぐ傍まで迫った木々と山々が、これでもかと私たちを包んできた。
吹き渡る風が、頬を駆け抜けていく。
気が付くと、今まで鬱屈していた気持ちがすっと収まっていた。
なんでだろう。今まで見たこともない風景だけど、何故か懐かしい。
あぁそうか、学校から見える風景と雰囲気が似ているんだ。
ゴールデンウィークの強化合宿中は、このくらいの時間から麻雀部のみんなの買い出しに一人で出かけてたっけ。
そんな風にわたしが思いを馳せている一方、平沢さんはひと仕切りはしゃぐと、南側に走っていった。
あ、琴吹さんを迎えるためね。
わたしも平沢さんを追って歩く。
華菜もあんな風に、わたしの前をくるくると回りながら走ってたっけ。
ぼてっ
ああいう風に、こけたりはしなかったけど。
わたしはそんな平沢さんの、いつも通りであろう様子が素直に羨ましい。
あまりに自分が変わってしまったから。
だからこそ、そんな平沢さんが変わらないように、お手伝いをしたい。
こんな風に、転んだら起こして上げたり、
例えば悩みを聞いて上げたり、例えば他愛もない世間話をしたり。
恋愛話は、ちょっと経験がないから無理だけど。
手を貸すとか力を貸すとかなら、"守る"よりはまだ現実的かしら。
「ありがとう、みほみほ先輩!」
手を引かれて起きた平沢さんは、わたしを見上げてそういった。
え、っと。私のこと?そんなあだ名を付けられたのは流石に初めて。
思わず笑みがこぼれる。
考えてみれば、なにも考えずに笑うのも久しぶりな気がする。
でも同じ高校でも無いんだから、"先輩"はなくてもいいと思うわ。

そして二人で外に向かって立ち、琴吹さんの帰りを待ちながら、他愛も無い話をする。
文化祭のこと、麻雀のこと、ライブのこと、インターハイのこと、夏休みのこと、右目のこと。
唯さんの話は抽象的で分かりづらいけど、目の輝きや妙なテンションだけで楽しい。
わたしの話は面白いことなんてなんにもなくて退屈だろうに、唯さんは全身でリアクションを取ってくれた。
聞き上手で、話上手なんだろう。気がついたら、わたしは唯さんに引き込まれていた。
だからなのかな。話の流れとはいえ、上埜さんのことを話したのは。
今ではもう、悲しい思い出でしか無いのに。
ひと仕切り話しあって、ふと現実に目が向く。まだ琴吹さんは来ない。
「琴吹さん、大丈夫かしら」
わたしはいつになっても、人の気持ちが分からないみたいだ。唯さんはその一言で爆発してしまった。
「ムギちゃんはきっと無事だよ!あずにゃんだってきっと何かの間違いで、どこかできっと生きてるよ!」
今まで唯さんは突きつけられた現実を、必死で受け止めていた。
でも普通の女の子だったら、そんなの無理だよね。
自分の力じゃどうしようも無い理不尽に、文句も言いたくなるよね。
おそらくは人前ではめったに見せないであろう悔し涙を、
こんなわたしの前で流してくれた唯さんを、どう慰めてあげていいのか、分からなかった。
上埜さんだったら、一番いい慰め方とか分かるんだろうな。
でもわたしは上埜さんじゃないから、不器用に唯さんを後ろから抱きしめてあげるしか出来なかった。
唯さんはとても暖かくて、柔らかかった。

とくん、とくん

唯ちゃんとわたしの心臓の音が重なる。
それだけで強くなれる気がした。
唯ちゃんを守る。
現実的であろうがなかろうが、出来ようが出来まいが、そんなことはどうだって良かった。
そのためにだったら魔法だって使って見せる。悪魔にだってなってみせる。
だから
136切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 15:58:14 ID:1QZz4GTJ



ある神話、いや、民話に竜の誕生を描いたものがあります。
それによると竜は生まれ落ちたときはただのトカゲでした。
ただ外敵から身を守るために強固な鱗で身を固め、
ただ逃げるために翼を生やし、
ただ巣を狙う暴漢から卵を守るために、鼻から炎を吐く術を得ました。
そして卵から孵った小さなトカゲを育てる段になって、竜は気づきました。
自分がトカゲとは全く異なる存在になってしまったことに。
身を変えてまで守り、産んだ子どもたちを育てる術を、最早もっていないことに。
竜は死にゆく子どもたちの姿を見て絶望し、ついには火山に身を投げましたが、
その強固な鱗ゆえに死ねません。
それからと言うものその火山は、咆哮とともに怒りをまき散らす恐怖の山となったわけです。

お伽話はどうでもいい?そうですか。
ともかく琴吹紬の帰還に、平沢唯と福路美穂子はすぐさま出迎えました。
慎重なはずの福路美穂子が、その反対側から迫る、まだ小さな騎影に気づかなかったのは、
まさに不運だったとしか言いようがありません。
いや、知っていてもあまり結果は変わらなかったかも知れませんが。

船井譲次はその時、控え室に居ました。
しかし貴方がたも危ないものを薬局に置きましたね。
オリジナルのブラッドチップですか。
このレポートを提出する元となったアレより、よほど厄介なものと思いますが。
言い訳はどうでもいい?そうですか。
まぁ船井譲次に関しては服用しなくてよかった、と言えるでしょうね。
ベンツの件にしてもそうですが、彼には運がある。
おかげで最悪、ベンツに隠されていた爆弾で爆殺される所を、回避できたわけですから。
さすがメルセデス(慈悲深き)ベンツです。
それともこれから始まる惨劇を、メルセデス・ベンツは見る気がなかったのかもしれませんね。
まぁ船井譲次としては、事前に給湯室を確認していたことから、ここで事を起こす気だったのでしょう。
平沢唯はどうとでもなるとはいえ、福路美穂子の存在は彼にとって厄介この上なくなってきてましたから。
いや、しかし十時間以上も、死と隣り合わせの状況で一緒に居たら、
普通は友情だの信頼だのが、芽生えると思うのですがねぇ。
船井譲次にとって彼女たちは、最初から最後まで駒に過ぎなかった、と言うことなのでしょうか?

137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 15:59:04 ID:BtOcMjpn
138切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:00:40 ID:1QZz4GTJ

「どこ行ってたんや、なんぞとは言わん。よぉ帰ってきてくれた。みんな心配してたで」
船井さん、ありがとう。心にも無いって事が、よく分かる。
いま殺す立場になって、ようやく分かってきた。
この人は私たちを利用することしか考えてないクズだ。
だから殺す。

「ムギちゃぁぁぁぁあああああん、よかったああああああああああああああ」
もう唯ちゃんったら、大げさすぎだよ。
でもそれも、わたしを騙すためのポーズなんだよね。
もう分かってる。
梓ちゃんのことを隠してた貴方のことなんて、もう信じられない。
今までの唯ちゃんだったらそんな、騙すだなんてしなかったのに。
きっとこの状況が唯ちゃんを変えてしまったんだね。
大丈夫。わたしが救ってあげるから。
安心して死んでね。

ふと視線を感じて扉の方を見ると、美穂子さんが片目でわたしを睨んでいた。
気にくわない女。
だから殺す。

「いやぁ、俺らも悪かった!やっぱり隠し事はアカンかった、っちゅうことやろ?」
あぁ騙していたことが、わたしがここを飛び出した原因だって分かってるんだ。
「名簿がトイレの前で落ちてたわ。ごめんなさい、あなたを騙す気なんてなかったの」
いまさら取り繕うところが白々しい。やはりこの二人で共謀してたのね。
殺す。

「せや、だからな。みんなもう隠し事とか無しや。その証に、みんな持ってる支給品を机の上に出しぃ!」
手をピシャリと叩いて船井さんが言う。
打ち合わせ通りなのだろう。
美穂子さんがため息をつきながら、
唯ちゃんが軽くジャンプして勢いをつけながら、
船井さんが慎重に一つづつ、
みんなが支給品をディバックから取り出した。
視線がわたしに集中する。

まずい。殺される。
支給品はどれも恐ろしそうなものばかりだ。
そしてわたしの持っている武器は青酸カリと笛とティーセットだけ。
とてもかないそうにない。
こいつらは机の上に置いた支給品で、わたしをズタズタにするつもりなのだろう。
みんなが笑いながら、わたしを切り刻む図を予想して、わたしは軽く身を震わせる。
最早一刻の猶予も無い。やや不自然だが実行に移すべきだろう。
ここに来るまでに練った、殺人計画を。

「す、すみません。その前に、ちょっとトイレに行ってきていいですか?」
わたしはついてこようとする唯ちゃんを丁重に断って、一人でトイレに向かった。
給湯室はその途中に、ある。
ここからが本番だ。
わたしは周囲を見渡し、深呼吸をしてから、給湯室の扉を音が出ないよう、慎重に開けた。

139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:02:02 ID:BtOcMjpn
140切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:02:26 ID:1QZz4GTJ

明らかに琴吹さんの様子は変だった
表情筋が強ばっていた。
また発作が起こったのかと思ったけど、あれはそんなもので片付けられるものではないわ。
ベンツで出て行った先で、よほど怖い目に会ったのだろううか。
それにあの生気の無い、それでいて、なんだろ。あの自信に満ちた表情は。
わたしはディバックから支給品を取り出しながら、ずっと考えていた。
船井さんが寄ってきて、もう少し景気のいい顔をしろ、と言う。
この人にだけは言われたくない台詞だわ。
互いの信頼を得る手段として、「支給品」を全部出すと言うことに関しては、同意出来る部分はある。
だけど、この人が言ったのはあくまで支給品。
薬局で手に入れた薬品に関しては、おくびにも出さない気なんだろう。
なにかよっぽどのものを手に入れた、と言うことかしら。
わたしも内ポケットにしまった『魔法の薬』は出す気はなかったから、
お互い様、と言うことになるのだろうか。
結局のところ、信頼できる人間は唯ちゃん以外にはいない、と言うことになるのかしら。
唯ちゃんを見ると、実に嬉しそうに支給品を並べていた。
琴吹の帰りで、いつもの調子を取り戻したのはいいけど、ちょっと浮かれすぎじゃない?
わたしは軽く琴吹さんに嫉妬しているのかもしれない、とも思いながら一つため息をついた。

そんな時に、琴吹さんがトイレに行くと言ってきた。
年頃の女の子にしては、はっきり言うのね。
でも部屋を出るときに見えた表情がとても恐ろしくて、わたしは思わずあとを追いかけようとしたけど、
船井さんが微妙にわたしと扉の間で牽制するものだから、なかなか部屋を出られない。
そうこうしている間に、通路を走る足音は遠くなってしまった。
デリカシーの無いやっちゃな、と船井さんが言う。
そんな気遣いをこの人がするものか。
やはりこの人は今、ここで何かをするつもりなのだ。そう確信出来た。
その間に、と船井さんは続ける。
「机に出した支給品について、ざっと説明せぇへんか?」
一刻も早く情報を得たいと言うのだろうか。焦っているようにも見える。

「は〜い!わたしのはね、【ジャンケンカード】!すごいんだよ、みほみほ、船井さん。ほら!」
と言って唯ちゃんが十数枚あるうちの一枚を投げると、それは控え室の壁に突き刺さった。
「なんや、懐かしいなぁ。ってアホか!なんでこんなコーティングしてんのや!」
先程聞いてはいたが、確かにすごい切れ味だ。力を入れなくても、大根くらいは容易に切断出来るかもしれない。
「あとねぇ〜コレ!【法の書】!なにが書いてあるかチンプンカンプンだけど」
説明書によると、守護天使から伝え聞いた内容を書き写した魔道書の写本、とある。
注意書きとして「絶対に読むべからず。発狂注意!」とあるけど、よく唯ちゃんは無事だったものだ。
唯ちゃんの支給品は以上の二点。

続いて船井さんが支給品を出す。
【桃太郎の絵本】?【2ぶんの1かいしんだねこ】?
「なんで二つとも絵本なんです?」
「まぁ、だから君らの力が必要と思ったんよ」
船井さんは首筋をボリボリかきながら苦笑する。
あとの一つ、【ベンツの鍵】は薬局で乗り捨てられたベンツの中にあるから、
船井さんの支給品は、今はこの二つだけ、ということになる。
この人もゲームの理不尽さに悩んでいたんだ。なんとなく同情してしまう。

それでは、とわたしが支給品の説明に入ろうとしたところで、扉が開いた。
琴吹さんだ。
両手で支えるお盆の上には、ティーカップが4つ。
ティーカップからは、暖かそうな湯気がたっぷりと立っていた。
わたしと船井さんの表情が、にわかに曇った。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:02:48 ID:10+zs0se
sien
142切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:03:58 ID:1QZz4GTJ

わたしもあまり人の気持ちが分からない方だとは思うが、流石にこの状況で紅茶をいれて来る程ではない。
今は疑心暗鬼に陥っているみんなをなだめすかせる状況であり、
つまりは今みんなが疑心に満ちている状況だと言う前提の上で、話し合いがもたれているわけで。
そんな中で実際に紅茶を入れている様子も見せずに、紅茶の入ったティーカップを持ってくると言う事は、
わざわざその場を乱そうとする行為に、ほかならない。
琴吹さんは慣れた手つきで四枚のソーサーを各々に配り、カチャカチャとティーカップをめいめいに配る。
場の空気に流石に気づいたのか、琴吹さんはお盆を胸の前で抱えながら、
ややきょとんとした様子で私たちを見ている。
ここは船井さんに任せるのもいいだろう。あの人だったらこの紅茶は絶対飲まないだろうし。

数秒の沈黙が控え室を支配した。

なぜだろう。船井さんはティーカップをのぞき込みながら、押し黙って一言も発しない。
唯ちゃんは周りの空気にキョロキョロしている。
あぁそういう事か。
つまり船井さんは先を越されたというわけだ。
おそらくは薬局で手に入れたであろう薬物を、私たちに飲ませる手段として考えていたに違いない。
ここで紅茶を断れば、あとで自分がお茶を差し出したときに同じ理由で拒否される。
策の一つが潰れるわけだ。
もう少しは疑われないやり方を考えていただろうけど、それも水の泡。
あの様子からすると代替案は用意してないか、この場では使用出来ない次善案しかないのだろう。
とはいえ、あんな様子を見せてしまっては、もう誰もあなたの手には乗らない。
かと言って紅茶を飲むわけにも行かない。
慎重なあの人が、どんな細工がしてあるか分からないものに口をつけるはずもない。
ジレンマに陥っているわけだ。
当然わたしも飲む気にはなれないので、船井さんに言わせようとした言葉を琴吹さんに伝える。

みんなが手の内をさらすために集まっている場で、隠れて紅茶をいれてくるべきではない、と言うこと。
そしてこれからも団体行動するというのなら、その紅茶を今すぐ捨ててくること。
みんなが見ている前で紅茶を入れ直すべきだ、と言うことを提案した。

琴吹さんはお盆を抱えたまま放心したかのように、ヘタリと椅子に座り、
そのまま泣きじゃくりはじめた。
わたしとしては自分の身もそうだが、唯ちゃんの安全が第一だから、ここで折れるわけにも行かない。
船井さんはといえば、ややほっとした様子にも見える。
唯ちゃんは、
ちょっとなにをしているの、唯ちゃん!
「船井さんも、みほみほも、なんでムギちゃんのいれた紅茶を、なんでそんなに飲みたくないの?!」
唯ちゃん落ち着いて、あなたのために言ったことなの!
だから落ち着いて!座って!
「ムギちゃんは私たちのために紅茶をいれてくれたんだよ!
 軽音部では毎日ムギちゃんのいれた紅茶を飲んでいたんだよ?!
 なんで二人とも、そんなムギちゃんのいれた紅茶を飲まないの?!」
考えてみれば唯ちゃんは既にギリギリの状態だった。
先刻二人だけで話していたときに、それを確認したばかりのはずだったのに。
琴吹さんと船井さんを注視し過ぎていた為に、肝心の唯ちゃんへの注意を怠っていた。
やはりわたしは人の気持ちを考えられない人間なんだ。

唯ちゃんはティーカップを震える手で持ち上げた。
カチャカチャと陶器同士が微かな音を立てる
ティーカップは唯ちゃんの胸元まで来た。
ダメよ、唯ちゃん。お願いだからやめて!
「ムギちゃん、わ、わたし、ムギちゃんのこと信じてるから!だからこの紅茶を飲むね。
 だからわたしが飲んだら二人とも、飲んでくれるよね?」
琴吹さんの方をガタガタと震えながら振り向いた唯ちゃんは、
唯ちゃんは、
ダメよ、そんなこと許されない!
「やめてええええええええええええええええええええええ!」
わたしの絶叫をよそに、唯ちゃんは紅茶を飲み干した。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:04:54 ID:BtOcMjpn
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:05:36 ID:s2q/+HPW
これは……
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:06:56 ID:BtOcMjpn
146切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:07:39 ID:1QZz4GTJ

カチャン
唯ちゃんがティーカップをソーサーの上に置いた。
「うえ〜。ムギちゃん、ちょっとこの紅茶濃いよ。あとわたし、砂糖入ってた方がいいな」
舌を出しておどけて見せる。

よかった。

わたしは椅子にどっかりと座り直した。
改めて考えてみると、別に毒が入っていることが確定していたわけじゃない。
唯ちゃんのこととはいえ、取り乱しすぎていた。
わたしも相当このゲームに毒されてきている、と言うことなのだろう。
わたしの不安が唯ちゃんにも感染し、あのような事をさせる結果になったわけだ。
もう少し、唯ちゃんのおおらかさを見習わなくちゃいけないかな。

唯ちゃんは、わたしと船井さんに目線を送った。
もうこの状況じゃ、飲まないわけにも行かないよね。
船井さんも、それはしぶしぶ理解したようで、ティーカップに口をつけズルズルと下品にすすった。
わたしもそれにならって紅茶を口の中へ送った。
その瞬間、琴吹さんの口の端が凶悪に釣り上がったように見えた。


147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:08:48 ID:s2q/+HPW
支援
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:09:40 ID:BtOcMjpn
149切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:09:42 ID:1QZz4GTJ

あれ?甘い?それになに?この酸っぱさ。
たしかさっき唯ちゃんは、砂糖が入ってないって言ってた。
なのに、なんでこの紅茶は甘いの?

ガタン
船井さんが立ち上がって、琴吹さんに掴みかかろうとする。
「おどれ、なにを仕込みくさったぁ!」
琴吹さんは前蹴りで思いっきり、船井さんの胸を蹴飛ばす。
予想だにしない強力さで蹴られた船井さんは、そのまま2メートルほど吹き飛ばされ、無様に転ぶ。
琴吹さんは三日月状に口を歪ませている。
あんな恐ろしい笑顔、見たことがない。
服のポケットからコンパス、ナイフ、モンキーレンチなどなど、がぞろぞろと出てくる。
船井さんは急いでナイフを拾い上げ、立ち上がろうとして、
いきなり全身を痙攣させて、再び転倒した。

わたしも全身の震えが止まらない。
激しい嘔吐をもよおし、床に吐瀉物をぶちまける。
世界全てが揺れ回り、最早立っていることも、座っていることもままならない。
胸のほうで何かが割れる感触がする。
最早そんな事はどうでもいい。
耳がジンジンしてもうなにも聞こえない。
目の前もどんどん暗くなっていく。
視界の端に唯ちゃんの姿が映った。
なにが起こっているのか分からない様子だ。
涙を流して何事かを叫んでいる。
ごめんね、唯ちゃん。もうなにも聞こえない。
でも良かった。唯ちゃんに騙されたわけじゃないんだわ。
最後の力で琴吹の方を見る。

琴吹。 琴 吹 。  琴  吹  !
貴方だけは許さない。絶対に殺す。

いえ、唯ちゃんが語っていた琴吹は、このような詐術を行うような人間ではなかった。
ならばやはり許せないのは、このくだらないゲームを企てた者たちだ。

 殺 す 。

このゲームの主催者を殺す。
わたしのこの身体がちぎれようとも、殺す。
唯ちゃんを殺そうと殺到する、このゲームを殺す。

あぁそうだ、唯ちゃんだ。
わたしは唯ちゃんを守らなくちゃいけない。そう誓った。
だから、こんなところで死ぬわけにはいかない。
誰かを殺すと願いながら死ぬより、誰かを守りたいと思いながら死にたい。
こんなままでは上埜さんも華菜も小十郎さんも、わたしを許してはくれないだろう。
そんなのはいやだ、このまま死にたくない。
生きて唯ちゃんを守りたい。
誰よりも純粋な唯ちゃんとお話したい。
抱きしめると暖かくて柔らかい、唯ちゃんと一緒に居たい。
わたしと言う存在など、どうでもいいから唯ちゃんを守りたい


 ゆいちゃん を まもりたい




【福路美穂子@咲-Saki-:死亡】
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:10:48 ID:BtOcMjpn
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:12:25 ID:1QZz4GTJ



小娘に蹴り飛ばされてオレは無様に寝転んだ。
これでハッキリした。
あの紅茶には毒が入ってた。

まんまと乗せられた…!

だが、まだ望みはある。
あの小娘の懐に解毒剤があるやもしれん。
その望みにまだまだ食らいついたる!
殺生沙汰は苦手やけど、四の五の言うてる時間はもうない。このナイフで殺したる。
まず立ち上がって、

なんや、地震か?!大きいで、こりゃ!
あかん、机の下に隠れんと。
だめや、身体が動かへん!
動きはするけど痙攣して、
あ、
地震やのうてオレの身体が痙攣しまくっとんのや!
胃も腸も肺も体中全ての臓器が身体の中で暴れとる。
胃液が血液が呼吸が逆流する…ッッ!
もう我慢出来へん!
どしゃあとオレの口から真っ黒なもんが大量に飛び出してくる。

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

こりゃ血やないか!
あかん、もうアカン!なんでや!なんで俺がこんな目にあわなアカンのや!
誰よりも慎重なオレがなんでこんな目にあわなアカンのや!
あぁ遠くの方で女の絶叫が聞こえよる。
福路とか言う女も毒盛られたんやな。
大した騙しテクニックや、平沢言う女にまんまと騙された。
あいつらやっぱり最初からぐるだったんや。

『よう考えてみい。じょうちゃんのその友達らは殺し合いに乗る思うか? 』
『それはない。少なくとも自分を殺そうとはって思えるやろ。つまり、会ったら説得の必要もなく仲間になるっちゅう人材 』
『こういうんがいるのがどれだけええことか』

そうや、最初にあの平沢言う嬢ちゃんにそう言った。
あの嬢ちゃんは俺の言うとおり、琴吹いう嬢ちゃんを仲間にして…!
俺は、俺を殺すテクニックを、あの嬢ちゃんに教えてたってことか…!
「こんな馬鹿なことがあるか…!」
俺はこれから薬局で、たんまり手に入れたあの麻薬で操って…!
あの嬢ちゃんたちを生贄に捧げる…!俺が力を得る為に…!
一杯やらなあかんことがあるんや…!まだまだ…!山ほど…!
「俺以上にこのゲームについて考えておる奴はおらんやろ…!」
なのになんでこんなハメになるんや!
おかしい!理不尽や!こんなことになるはずあらへん!
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」




【船井譲次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor:死亡】
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:13:54 ID:BtOcMjpn
 
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:15:01 ID:BtOcMjpn
 
154切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:15:52 ID:1QZz4GTJ



男女の悲鳴が部屋を占領する中、わたしは拳を握り天井を見上げていた。
コレ以上ないほどの計算通り。
頭に描いていた通りの地獄絵図。
文句のつけようのない完全勝利。
ライブ終了後のような恍惚とした幸福感が、お腹の底から沸き上がっていた。
わたしは今、どうしようもない弱者、食いつぶされるしかない弱者、殺されるために追い回される弱者、
弱者からの脱却を果たしたのだ。
最早わたしが弱者を追い回し、蹂躙し、食い潰す立場だ。
いつしか口から笑いが飛び出してきた。

「ムギちゃん、なんで、どうしてなの?」
そっか。まだ殺さなくちゃいけない弱者が居たんだっけ。
「唯ちゃん、ありがとう。おかげで安全に確実に、美穂子さんと船井さんを殺せたよ」

仕掛けた罠は至って単純。
最初から唯ちゃんの紅茶だけには、青酸カリを入れてなかった。それだけ。
唯ちゃんだったら、わたしが窮地に陥ったら行動してくれる。
結構な賭けだったけど、それでも唯ちゃんを信じられた。
だって友達だもの。同じバンド仲間だもの。同じ軽音部の部員だもの。

「だから、唯ちゃんもご褒美に殺してあげるね。こんな狂ったゲームから逃がしてあげる」
わたしは唯ちゃんのティーカップを手繰り寄せると、
わたしのティーカップの中身を注ぐ。
「すっかり冷めちゃったけど、飲んだらこの二人みたいにすぐ死ぬから」

もうピクリとも動かない船井さんと美穂子さんを見下ろしながら、わたしは唯ちゃんに紅茶を差し出す。
船井さんは自分で吐いた血の中で、うずくまりながら死んでた。
美穂子さんは机に突っ伏したまま死んでる。
机の上には支給品が散乱しているから、あとでディバックに全部入れとこう。
えぇっと、ひーふーみー、なんか数があわないけど机の下にでも落ちたかな?
ふと、もう飲んだか気になって、唯ちゃんの方を見る。
アレ?まだ飲んでいない。どうして?

「唯ちゃん、なんで飲んでくれないの?さっき、みんなの前で飲んでみせたのは、なんだったの?」
唐突に裏切られた感覚に陥る。非常に不愉快だ。
「そっか、唯ちゃん甘くないと駄目なんだね。ちょっと待ってて。もう一本青酸カリ入れるから」
どうせ四人殺すだけなんだから、十本あってもしょうがないよね。
そう思ってスティックシュガーをもう一本、唯ちゃんのカップの中に入れ、スプーンで乱暴にかき回す。
甘くてしょうがないだろうけど、唯ちゃんだったら甘ければ甘いほど嬉しいよね。
口をつける様子がない唯ちゃんに腹を立てながら、わたしはティーカップを唯ちゃんの口元に近づける。
わたしは優しいから、唯ちゃんがこんな風に反抗しても、全く怒ることはない。
「早く飲んでよ、唯ちゃん。友達の言うことが聞けないの?」
唯ちゃんはただただ、歯をガタガタさせるだけ。バカにしているのかしら。
そんな唯ちゃんの態度に業を煮やしていると、控え室の扉が開いた。
誰だろう?私たちの他には、この円形競技場には誰もいないはずなのに。
扉から入ってきたのは、白衣の天使。
あれは
「澪ちゃん!」
よかった。四人目が来てくれたよ、唯ちゃん。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:17:11 ID:BtOcMjpn
  
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:17:50 ID:f5OMGnK8
 
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:18:09 ID:s2q/+HPW
ここで光秀投入かよ!
158切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:18:13 ID:1QZz4GTJ



ここまで、琴吹紬の行動になんら落ち度はありません。
いえ、人間性と言う点では、いくらでもありそうなものですがね。
強いて言えば自らが弱者でないと、そう自己評価を下した点くらいです。
まぁアレは、あの人は自然災害なようなものです。運が悪かったとしかいいようがない。
秋山澪の登場に、一人の供物が自分からのこのこ来たと喜ぶのも、分かるところではあります。

部屋の中の惨状を、秋山澪は扉を開く前には想像出来ていたでしょう。
ものすごい悲鳴でしたから。もがき苦しみながら死ぬ人間の声ほど、鮮明でおぞましいものはない。
後ろから肩を叩かれた程度で腰を抜かしてしまう、そんな彼女でしたから、
普段でしたら扉の前で気絶していたでしょうね。
より凄まじい恐怖が、すぐ後ろでスーツを着て待っていましたから、それも出来ませんでしたが。
ですが扉を開けて、さらに深い絶望が待っているとは、なかなか思えないでしょう。
最悪は常に今。
秋山澪は部屋の中に親友二人、琴吹紬と平沢唯、の姿を見つけたわけです。
友人ふたりとの再開が、これほどまでに歓迎出来ないと言う事態も、なかなか珍しいと思いますよ。
小声で、最悪だだの、なんで二人がだの、呟いている秋山澪の脇を縫って、
明智光秀が抜き身の大剣を片手に、スーツ姿でヌッと現れたのは、
平沢唯が琴吹紬のティーカップから逃れ、秋山澪に助けを求め、
琴吹紬もティーカップを両手で持って、秋山澪を迎えた、その時です。

「これは失礼致しました。まさかまだ宴の途中だったとは」
粘っこい、聞いたものの耳にこびりつくような声で、光秀は奇しくも集まった桜が丘高校軽音部三人に語りかけます。
秋山澪と同行してきていたものですから、平沢唯、琴吹紬の両名が、
緊張感なく無抵抗で、光秀を控え室に迎え入れてしまったのも仕方がありません。
無論、そのような効果を狙って、光秀は秋山澪を先行させたわけですがね。
「毒殺ですか。しかも目の前で、と言うことはそれなりに信頼関係を築いた後でのことですね」
船井と福路の死体を見た光秀は、理解不能なことに恍惚に身を震わせた。
ただ今不適切な表現がありました。震わせる、と言う表現は正しくありませんね、すみません。
恍惚に身をくねらせた、と言う表現がしっくりきます。
「嗚呼なんと美しいのでしょう!信頼しきった関係がたった一杯の毒でもって崩壊に結びつく!
 きっと安心して飲んだのでしょうね。信頼が絶望に、驚愕に変わったのはどれくらいかかりましたか?
 その間の刻々とした表情の変化を、しっかりとその二つの目で捉えておかれましたか?
 先程の絶叫は、外で検分していた私たち二人の耳に届くほどに、麗しい響きでしたからねぇ。
 さぞや素晴らしい宴だったのでしょう。わたしも是非、観覧せしめておきたかったものですよ。
 お邪魔をしたようで申し訳ございません。ささ、わたしなぞは気にせずに、存分に宴をお続け下さい」

独特の抑揚で綴られる光秀の賛美は、平沢唯と琴吹紬の警戒心を極限まであげるのに十分でした。
「澪ちゃん、逃げて!」
平沢唯と琴吹紬が、二人して叫んでしまうのも無理はなかったでしょう。
その声に光秀がニタァと本当に嬉しそうに微笑みました。
「お友達ですか?」
秋山澪の脳裏には、田井中律の生首とその虚ろな双眸がはっきりと浮かび上がったでしょう。
いくらゲームに乗ったとはいえ、友人の死は二度と見たくはない。
「違う、違うんだ!だから!紬、唯!逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
秋山澪が全く矛盾した言動をとってしまったのも、仕方のない話です。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:19:42 ID:BtOcMjpn
  
160切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:20:06 ID:1QZz4GTJ



澪ちゃんが叫んで、唯ちゃんが立ちすくんで。
わたしはといえば、窓から飛び降りようと背を向けて走ろうとしていた。
競技場の外に向かって開かれている窓は、暖かな陽光に照らされた木々と葉で満たされていた。
この控え室はそれなりの高さにある。
このまま窓から逃げても、大怪我か、最悪死んじゃうかもしれない。
でもディバックの中にある、あのグライダーに変形する笛さえあれば大丈夫。
助かる術は全て、わたしの中にある。
でも、唯ちゃんはもう助からない。
あそこに居る白髪の男の人は、学校で出会ったあの恐ろしい魔人、浅上藤乃よりも直接的な意味で、危ない。
立ちすくんでしまった唯ちゃんは、直線的に殺されるだろう。
とっさに逃げることが出来たのは、唯ちゃんとわたしの経験の差。
唯ちゃんとわたしとでは、死線をくぐり抜けた圧倒的な差がある。
もしくは食い潰されるだけの弱者と、蹂躙する立場である強者の違いだろう。
獲物を二人、澪ちゃんと唯ちゃんを、みすみす逃すのは惜しいけど、殺されるよりは遥かにマシだ。
あと一跳びで窓から脱出出来る。
この薄暗く、死が充満したこの部屋から、あの暖かい世界へ、逃げ出すことが出来るんだ。

その瞬間、胸に強い衝撃を受けたかと思うと、わたしの足が空をきった。
なんだろう、あまりに慌ててたから、転んだのだろうか。
早く体勢を立て直さないと、殺されちゃう。
足を前に出さなくちゃ。
でも胸がドクドクと痛い。痛くてたまらない。
手足に力がもう入らない。ダラリ、と四肢が垂れているのが自分でも分かる。
肺が苦しい。呼吸が出来ない。息が吸えない。呼吸が出来ないと死んじゃう。

死ぬのは嫌だ!

胸元から口にかけて異物感と嘔吐感で一杯になる。
吐き出す力も最早ない。痙攣と脈動とともにドロリと口から溢れ出す。
血と埃で汚れすぎた制服が、さらに汚くなってしまう。
窓を見る。明るい未来がそこにあったはずだ。
でもそこに映ったのは、体の中央から大剣を突き刺されて手足をダラリと下げている、女の子。
まるで昆虫標本だ。
それは間抜けな顔をして、口から赤黒いものをダラダラと、だらしなく垂れ流している。
涙を流している。
こんな汚ならしい物体でも涙を流すんだ。意外。
もう首にも力が入らない。一つ痙攣を終えると、妙な浮遊感とともに床に倒れる。
随分長い間、床から離れていた気がする。

視界に唯ちゃんと澪ちゃんが引っかかる。
二人とも無力に泣ている。
なんでわたしより、あの二人が長生きしているの。
荒耶さん、わたしは捕食されるだけの弱者から、脱皮したんじゃなかったの。
撫子ちゃんや、加治木さんや、梓ちゃんや、その他大勢の弱者と言う立場から逃れたのではなかったの。
嗚呼もうダメだ。目の前が真っ暗になってきた。
これじゃ、撫子ちゃんや梓ちゃん、律ちゃんに唯ちゃんや澪ちゃんを救うことが出来なくなる。
なにより自分が死ぬのが一番、いや。


嫌なの。






【琴吹紬@けいおん!:死亡】
161切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:20:44 ID:1QZz4GTJ



「あなたが逃げろ、だなんていうから」
大剣でゴロリと琴吹紬だったものをひっくり返す。
「死にました」
光秀は実に悲しそうに顔を歪ませた。
まるでNGワードを一発目で言ってしまった回答者に対する、司会者のような、
黒ひげ危機一発で、一刺し目に黒ひげを脱出させてしまった人間を見つめるような、
そんな残念な人間を見るかのような、哀れみの表情。
「こんなことでは享楽を長く楽しめませんねぇ。あなたに期待したわたしが、いけなかったのでしょうか」
不出来な生徒を窘めるように、落第した生徒にトドメを刺す教授のように、冷徹に。
平沢唯は未だに状況を呑み込めていないのか、涙を流しながら呆然とするばかり。
一方、酷評を受け続けている生徒、秋山澪は最早我慢の限界を超えていた。
「ふざけるな、ふざけるなよ!律に続いて紬まで!いったい何人わたしから奪うつもりなんだ!」
それを聞いて、狂乱の一歩手前でなんとか踏みとどまっていた平沢唯が、揺らぐ。

「え、りっちゃん?りっちゃんがどうしたの、澪ちゃん!?」
「死んだのですよ。この澪殿が殺したのです」

間髪入れずに光秀が囁く。まるで予め用意していたかのようにスラスラと。
平沢唯は明らかに怯えた様子で、秋山澪を見る。

「騙されるな、唯!わたしが律を殺すはずないだろ!」

騙されたわけではない。平沢唯に浮かぶ表情は秋山澪への恐れではなかった。
平沢唯は信頼の手綱を、必死に手繰り寄せようとしていたのだ。
しかし秋山澪の口から出た言葉は単なる弁明、否定。
誤魔化しと取られても仕方のない、空虚すぎる言葉。
秋山澪の根底には、やはり自分が田井中律を死に至らしめた、と言う引け目があったと言える。
平沢唯の包容力に甘えていた、と言う面もあるのだろう。
だが彼女の心は既に容量の限界を迎えていた。

「うぁ?あう〜」

圧倒的な情報量と、悲しみと狂気の欠片、そして軽音部で培われた信頼に打ち込まれた楔が、
無尽蔵とも思われてた、彼女のキャパシティをぷすぷすと崩壊せしめんとしていた。
そして平沢唯の脳は、コレ以上の精神への負の浸蝕を止めるべく、最後の手段に出た。
ぼてっ
気絶、である。

「あぁ、また澪殿が変なことを言うものだから。興を削ぐ結果となってしまいました」
最早なんの期待もしてないADに向かって、ダメ出しをするでもなく、
次のADをどう教育しようかと思案しているかのように、光秀は嘆く。
「違う、わたしのせいじゃない。わたしのせいじゃない!」
秋山澪は、拳を震わせ足元を見ながら、涙を堪えることもせずに唇を噛み締めた。
「責任をとってもらえませんか?なんのことはありません。前と同じですよ」
そう。前と同じようにニードルガンを手渡す。
目標は前と同じように、自らの友人。
なだめすかせるように肩を叩いて、光秀は横たわっている平沢唯を指さした。
秋山澪は涙を流しながら、今度は光秀の言うとおりに銃を構え、そして引き金を引いた。
恐ろしいほどに引き金は軽く、反動もなにもなく針は平沢唯に殺到した。

しかしそれが平沢唯に突き刺さることはなかった。
漆黒の、まさに黒き弾丸のように光秀、秋山澪、そして平沢唯の間に立ち塞がる。
左腕の肘から先があまりにもアンバランスに膨れ上がっている。
しかも人の身体ではありえないような獣毛で包まれたそれは、まさしく異形だった。
ルビーとサファイアの瞳を持つ少女。

福路美穂子である。
162切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:21:23 ID:1QZz4GTJ





結論から言いましょう。
福路美穂子の支給品には"アレ"はありませんでした。
忍者刀にリボルバー、そして【猿の手(レプリカ)】があったのみです。
落ち着いて下さい。ここからが本題です。
彼女が内ポケットに隠していた、魔法の薬。アレがミソなのです。
誰があそこに置いたかは知りませんが、まさに規格外のものですよ、アレは。
決して誰にも見つからないだろう、とでも思っていたんじゃないですかね。
そういえばあの薬局は"門"でしたな。いえ、こちらの話です。

手っ取り早く言えば、あの薬品をかけた物体の神性を極限まで高めるものです。
わたしも専門じゃないから分かりませんが、
戦車のプラモデルにかければ、本物の戦車にでも変わるんじゃないですかね。
とにかくも、福路美穂子が机に倒れ伏した際に、
あの魔法の薬の瓶は割れて、中身が漏れ出したのです。
それがちょうど上手い具合に左腕の傍にあった【猿の手(レプリカ)】にかかったのですよ。
結果、神性が極限にまで高められ、"アレ"が導き出されたわけです。
神性とは真逆の存在のような気もしますがね。

偶然が重なりすぎるんじゃないか、ですって?
我らがジョーカーが、こう諭されたそうじゃないですか。
「偶然というのは神秘の隠語だ。知りえない法則を隠す為に偶然性という言葉が駆り出される」
私流にアレンジするならば、
「偶然が重なって奇跡が起きた場合、それは最早偶然ではなく、神秘でしかない」
ですかね。
俗っぽすぎる?本質を捉えてない?そうですか。


163切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:22:31 ID:1QZz4GTJ


福路美穂子はニードルガンから放たれた全てを"左腕"一本で跳ね返した。
緊張の糸が切れたのか、秋山澪もまた、己の意識を断った。
あとに残されたのは左右の色が違う双眸を、全く隠すことなくランランと輝かせる少女と、
黒いスーツに身を固めた大剣の所持者のみ。

福路美穂子から発せられる殺気から、光秀は実に六時間ぶりの『食事』の機会を得たことを確信した。
とはいえ、大剣を振るうには控え室は狭く、突きしか狙うことは出来ない。
無論、天井や壁を破壊しながら殺到することは、いくらでも可能であろうが、
それでは折角残してあるオヤツを、食べることなくみすみす潰してしまうことになりかねない。
まぁそれくらいのハンデは許容出来る相手であった、と言うことも事実かもしれない。

突きは一撃必殺の技術であり、外さば一旦剣を引くまで攻撃の手段も防御の手段もない。
元々光秀の戦い方は防御を度外視したものではあったが、
強者相手においてはその限りではなく、むしろ固めた防御の中から勝機を見いだす戦い方もある。
リスクジャンキーではあったが、勝算なく死地に飛び込む真似は、
例えばご馳走を目の前にした時以外は、選ばないこともある。
全く無いといえないところが彼の恐ろしいところですが。
ともあれ、通常は突きのみの戦闘など、未知の相手に仕掛ける戦い方ではない事を、前もって念を押しておく。

加えて、福路美穂子は奇妙な"左腕"を持つものの、徒手空拳。
この狭い空間内では圧倒的な有利の中にある。
直線にしか攻撃出来ない光秀に比べて、福路美穂子はこの空間をフルに活用出来る。
そもそも腕と言う時点で自由自在、変幻自在。
初太刀を当てれば光秀の勝利。避ければ福路美穂子に勝機がある、と言う具合か。
無論、一般的な戦いの上では、である。

光秀は常識外の使い手だった。

狂気の笑い声とともに繰り出される一撃は、一撃ではなく百撃。
返しの隙も、間も、全く見せずに、彼の前方全てが大剣の突きで埋まった。
まさに一人槍ぶすま。
オリエント世界、そして地中海世界を五世紀もの間、席巻したファランクスを、光秀はたった一人で体現した。
究極の攻性防御。それが大王・アレクサンドロスの偉業を支えたファランクスである。
光秀はさらにそれを、神速の脚力でもって推し進める。
駆け抜けたあとには草一本生えぬ。
その信念で射し込まれたファランクスは、障害物など無いかのように突進し、邁進し、
直線上にある壁を完全に破壊する。

瓦礫と化した前方に見切りをつけ、確信をもって振り返った光秀は、
思い通りにならぬ現実に恍惚となり、身を極限までくねらせた。

福路美穂子は無傷で立っていた。

無数の突きを"左腕"一本で受け流し、弾き返し、飛翔し、くぐり抜けていた。
キャスターを葬った全力の一撃であれば、その神速と剛力に福路美穂子は反応出来なかったかもしれない。
仮にも英霊を一撃で沈めた攻撃である。なにも出来ないまま、串刺しになっていたであろう。
しかしファランクスであれば、一見逃げ場はないものの、神速の一撃に比べれば力は圧倒的に弱く、
また一旦狭い攻撃半径から逃れれば、比較的安全とも言えた。
つまりは部屋の狭さと、彼の武器と、彼女の武器と、彼の油断が生んだ必然である。
164切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:23:48 ID:1QZz4GTJ

光秀は肩ごし平突きに構えると、ゆっくりと場を見極めた。
福路美穂子は狭い控え室をさらに狭くしている長机、つまりは支給品が山と積まれた机越しに光秀と対峙する。
"左腕"は剛力だけでなく、戦い方すら福路美穂子にレクチャアした。
足捌き体捌きに関しては、ほぼ"左腕"任せである。
最初は多少の混乱はあったものの、ファランクスを止めてみせた。
あれは彼女の観察眼無しには、達成出来なかったであろう。
(天江衣のように場を支配することは出来なくても、場を利用することならわたしにも出来るはず)
妙な自信があったが、さりとて無謀でもなかった。
それを可能にしたのが自身の、もはや能力に近い把握力と"左腕"、そして平沢唯の存在。
「唯ちゃんを諦めてはくれませんか」
「諦めれば、あなたを逃がすことになります。それはもったいないですねぇ」
会話だけ聞けば痴話喧嘩、痴情のもつれ、三角関係。
ゆらりと間を詰める光秀に、あくまで距離をとる福路美穂子。
対峙しながら部屋を回るうちに、福路美穂子は自身のディバックと、小十郎の形見【六爪】を回収し終えた。
(出来ればあと一点。それで脱出の駒は揃う)
無論、ここまで状況を揃えさせたのは光秀の慈悲だ。
脱出の一手前で美味しく頂く。その時のこの少女の無念の表情は、どれだけ美味であろうか。
想像するだけで身がくねりそうになる。
光秀にはその最後の一手が読めていた。
(机の上に無造作に散らばるカードですね。彼我のリーチ差を補い、さらに奇襲にもってこいです)
故に福路美穂子と【ジャンケンカード】の間に隙を作る。
確かに福路美穂子の狙いは【ジャンケンカード】であった。

だが福路美穂子はいきなり机を飛び越した!
狙いは光秀の死角、左肩ごしの平沢唯!
傍らの見知らぬ少女まで抱えることは出来なかったが、
一人くらいなら"左腕"でなくとも抱えることは可能。
風越80人分の食料を、一人で抱え山道を毎日歩いた自分になら出来る!
追撃の一撃をなんとか"左腕"で防ぐと、二撃目が到達する前に、それは投げられた。
すなわち平沢唯のスカートポケットにしまい込まれた、たった一枚の【ジャンケンカード】。

光秀の二撃目は、その投擲を跳ね返すために浪費された。すぐさま三撃目の体勢に入る。
その隙だけで、今の福路美穂子には十分すぎた。
平沢唯を抱き抱えて一気に駆け抜け、陽光差す円形競技場の外に向け、"左腕"で窓を粉砕する。
そのまま落下して行く福路美穂子と平沢唯に向けて、光秀は三撃目を放つことはなかった。
今度は慈悲ではない。

「まさにまさにまさにまさに!切り札と言うわけですねえええええええええええええええええ!!」

光秀は恍惚と身をくねらせるので忙しかっただけだ。
165切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:24:33 ID:1QZz4GTJ



落ちゆく中で"左腕"を壁にめり込ませて減速し、わたしは円形競技場からの脱出に成功した。
右腕の中の唯ちゃんもどうやら無事だ。
自分の中に起こったことを理解することは、おそらくわたしには無理だろう。
あのような恐ろしい人と対峙して、逃げ得る力も技術も体力も、わたしには無かったはずだ。
しかし、この醜い"左腕"は受け入れるしか無い。
おそらく、これは唯ちゃんを守る力なのだから。

外は明るい日差しで一杯だった。
ふと見れば草を食む立派な馬が居た。
わたしが近づくと、その馬は身を低くしてきた。
「乗れってことなの?でもわたし、馬なんて乗った事ないのよ?」
立派なお馬はブルルルと鼻を震わせ、催促する。
どうやら乗らないと通してくれそうにないわね。
わたしは唯ちゃんを馬の上に乗っけると、馬にまたがった。
鐙に足をいれて、手綱を右手で握る。"左腕"は唯ちゃんを抱き抱える形で固定した。
"左腕"を通して唯ちゃんの温かさと鼓動が伝わる。
馬はゆっくりと立ち上がると、どちらへ行くのかとわたしに振り返った。
ここは船井さんの案に乗っておくべきかしら。
「山伝いにギャンブル船へ」
手綱を引くとわたしの意図した通り、北北西に向かってくれた。
ちょっと上下に激しく揺れるけど、ありがたい移動手段を持てたのかもしれない。
ベンツとかわたしが運転しても、もしかしたら爆発しちゃうかもしれないものね。

腕の中の唯ちゃんの寝顔は安らかだ。
柔らかくて暖かい。
あの時のように鼓動を重ねたくて、軽く抱きしめる。

あれ?

不自然さに気づいたわたしは、愕然とする。
今度は自分の胸に手を当ててみる。
"左腕"は脈動しているというのに、

なんでわたしの心臓は動いていないの。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:25:27 ID:svNyDhw6
 
167切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:25:43 ID:1QZz4GTJ



「以上がこの件に関するレポートです」
私は報告書をバサリと壇上に投げた。
「レポートにしては主観が入りすぎてないか?」
主催者の一人である遠藤が茶々を入れる。
「主観無き情報などありえませんよ」
私は持論を言い放った。
「それに私を雇った時、エキサイティングでスリリングなエンターティメントにしてくれと、
 そういったのは貴方がたではなかったかな?」
虚勢に過ぎないが、虚勢も張れない人生など真っ平御免だ。
見た目14歳に見えるシスターが話し出す。

「ありがとう、ディートハルト・リート。見事な情報収集です。
 さすが冠絶した人材と評されるだけの事はあります」
いちいち癪に障る小娘だ。
「ありがたき幸せ。それで貴方がたのご意見はどうなのです?
 偶然とはいえ"アレ"を二つも顕現させてしまったわけですが」
わざと慇懃無礼に振舞う。情報収集は嫌いではないが、他人に命令されてやるのは嫌いだ。

「例えば、だ。神原駿河のものと合わせて、三つの願いが成就可能なわけだが、
 その願いで、例えば首輪の解除方法を聞き出す、などと言うことは出来るのかね?」

悪魔と言うのは嘘を言ったら死んでしまうそうだ。
ただ嘘でなければ大丈夫らしい。こいつらは悪魔の資格十分であろう。

「願いを叶えると言ってもたかが低級悪魔。
 魔法と魔術で固めた貴方がたの首輪の解除方法までは分からないでしょうよ」
なるほど、私は悪魔にはなれそうにも無い。

「ならば問題はないだろう。次の放送まで間が無い。仕事に戻れ」
私は恭しく頭を下げ、踵を返す。
その通路の中で私は不遜にも思う。

貴様らは撃たれる覚悟も無しに、これだけ多くの有望な人材を死に直面させているのか。
だが、
撃っていいのは撃たれる覚悟のあるものだけだ!

だから!

【船井譲次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor:死亡確認】
【琴吹紬@けいおん!:死亡確認】
【残り40名】

【???/???/一日目/昼】
【ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]: 健康
[服装]:
[装備]:???
[道具]: ???
[思考]
基本:カメラを回せ!全ての責任は俺がとる!
1:当面はディレクター作業に専念
2:ゼロに注目。暇さえあればゼロ総集編を作る勢い。
[備考]
ゼロとその現象への熱気に取りつかれている時期です。
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:26:17 ID:svNyDhw6
 
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:27:19 ID:svNyDhw6
 
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:28:26 ID:svNyDhw6
 
171切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:29:02 ID:1QZz4GTJ
【C-4/一日目/昼】

【平沢唯@けいおん!】
[状態]:健康、気絶中
[服装]:桜が丘高校女子制服(夏服)
[装備]:
[道具]:
[思考]
 基本:みんなでこの殺し合いから生還!
 1:澪ちゃん……
 2:妹を探す。でもどんな状況にあるかはあんまり考えたくない……
 3:あずにゃん…… ムギちゃん……
 4:魔法かあ……アイスとかいっぱい出せたらいいよね……
[備考]
 ※東横桃子には気付いていません。
 ※ルルーシュとの会話の内容や思考は後の書き手さんにお任せ
 ※浅上藤乃と眼帯の女(ライダー)の外見情報を得ました

【福路美穂子@咲-Saki-】
[状態]:前向きな狂気、恐怖心の欠如、健康だが心音停止
[服装]:血まみれの黒の騎士団の服@コードギアス、穿いてない
[装備]: レイニーデビル(左腕)
[道具]:支給品一式、六爪@戦国BASARA、武田軍の馬
[思考]
基本:唯ちゃんを守る
1:主催者を殺す。ゲームに乗った人間も殺す。
2:ひとまず魔法と主催の影を追う
3:力を持たない者たちを無事に元の世界に返す方法を探す
4:対主催の同志を集める
5:伊達政宗を探し出して六爪を渡し、小十郎の死を伝える
7:阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら?
8:張五飛と会ったらトレーズからの挨拶を伝える
9:トレーズと再会したら、その部下となる?
[備考]
登場時期は最終回の合宿の後。
※ライダーの名前は知りません。
※トレーズがゼロの仮面を被っている事は知っていますが
 ゼロの存在とその放送については知りません
※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています
※浅上藤乃の外見情報を得ました

【黒の騎士団の服@コードギアス】
黒の騎士団発足時に井上が着ていたコスチューム
超ミニスカ

【レイニーデビル@化物語】
魂と引き替えに三つの願いを叶える低級悪魔。
自らの意志は持たないが、所有者の表の願いの裏に潜む願いすらも叶えようとする。
叶えることが不可能と判断した場合、契約を返上する。
なお、福路美穂子の肉体は既に死亡しているが契約により生かされている状態である。
また、何らかの理由でレイニーデビルが去った場合、福路美穂子は死亡確定となる。
福路美穂子の願い
表1:平沢唯を守る
裏1:主催者を殺す
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:29:13 ID:svNyDhw6
 
173切り札 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:29:42 ID:1QZz4GTJ
【D-4/円形闘技場控え室/一日目/昼】

【明智光秀@戦国BASARA】
[状態]:ダメージ(中)、傷は応急処置済み
[服装]:上下黒のスーツに白ワイシャツ
[装備]:信長の大剣@戦国BASARA、武田軍の馬@戦国BASARA 、九字兼定@空の境界
[道具]:基本支給品一式×6 ランダム支給品0〜2個(未確認) 、バトルロワイアル観光ガイド 、下着とシャツと濡れた制服、
ブラッドチップ・2ヶ@空の境界、桜が丘高校軽音楽部のアルバム@けいおん!、モンキーレンチ@現実、ニードルガン@コードギアス 反逆のルルーシュ 、
桃太郎の絵本@とある魔術の禁書目録、2ぶんの1かいしんだねこ@咲-Saki-、法の書@とある魔術の禁書目録、忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA×2、軽音楽部のティーセット、シアン化カルシウム入りスティックシュガー×5
[思考]:前菜を片っ端から頂く。
1:殺しを行いながら澪を更に絶望へ追い込む。
2:信長公の下に参じ、頂点を極めた怒りと屈辱、苦悶を味わい尽くす
3:信長公の怒りが頂点でない場合、様子を見て最も激怒させられるタイミングを見計らう
[備考]
※エスポワール会議に参加しました



【秋山澪@けいおん!】
[状態]: 精神的ショック(大)
[服装]: ピンクのナース服@さわ子のコスプレセット
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、特上寿司×20人前@現実、 さわ子のコスプレセット@けいおん! 桜が丘高校の制服@けいおん!
[思考]
基本:もう一度律に会いたい。
1:今は光秀についていくしかない。
2:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
3:死者は蘇る……?
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました
※エスポワール会議に参加しました
※光秀が一度は死んだ身であることを信じています。

【桃太郎の絵本@とある魔術の禁書目録】
【法の書@とある魔術の禁書目録】
どちらもインデックスが所有する103000冊の魔道書のひとつ。
【2ぶんの1かいしんだねこ@咲-Saki-】
龍門渕透華が天江衣に読み聞かせた絵本。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:30:11 ID:svNyDhw6
 
175 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/15(火) 16:30:20 ID:1QZz4GTJ
以上投下終了です。
ご支援ありがとうございました。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:30:53 ID:svNyDhw6
 
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:38:05 ID:s2q/+HPW
投下乙です

いや、なんちゅうかすげえな……
前半では完全に欝話だったのに、後半で盛り返すとは……
しかしすさまじい切り札だな
主催の内情もありの、すごく盛りだくさんでした
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:41:46 ID:SWBcNAo5
投下乙……です……
やべえ、いろんな意味で泣けてきた……
ただ、一言……グッッッジョブゥ!!!
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:50:59 ID:Ln2y5dD8
ディートハルトきたああああああああああああああああああああああああ

マジでジェット・ストリーム・ジョージ(J・S・J) (←みおんではない)にするつもりかw

唯の装備欄にあったジャンケンカードが決めてになるとは・・・侮れん、唯の強運
キャプ覚醒、かっこいいぜ
そして紬死亡で、一連の学校組はここで全滅か・・・

初期を牽引した船井組、ここで崩壊か
ハーレムおっさん、お疲れ様
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:13:38 ID:zK+i6aPU
主催者側も充実してきたな。他にも人材を揃えているのか楽しみだな。
そしてさすがは明智光秀、恍惚に浸りすぎて敵を取り逃がすとはまさにロワをよくわかってらっしゃる
船井組はお疲れ様としか言えない。
しかしけいおん参加者だけで殺害者がうなぎ登りだな。知らない人が殺害ランキングだけ見たら
間違いなくバイオレンスアニメだと勘違いするレベルだw
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:16:08 ID:6Jj61d4l
投下乙
船井さん南無……。これでカイジ勢はカイジだけか。
紬は運が無かったな。光秀は流石に無理過ぎる。
何より美穂子、それは強化に見せかけた暴走フラグだww
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:39:53 ID:oiaioVOy
投下乙!
うっわあ、紬が最悪だなあ…
安藤に慰めてもらいなさいな
船井は…ねえ
危機感あっても甘いんだよなー
唯はまだ理解が足りないようで
もうひとりのユイとはえらい違いだな
そして美穂子覚醒か!?
どうなるやら

明智やべえよー、澪不憫
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:49:40 ID:tQn5DlX6
投下乙!
フラグは消化され、ついに美穂子が戦闘要員に!
伊達の馬も復活を果たし、生き残った彼女等はギャンブル船へと向かう!!
船井と紬はおつかれさんだな
光秀は相変わらずだし、そして主催者側にも動きありか、
なんにせよ、先が楽しみでしょうがないぜ!
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:52:56 ID:m4Rz1alq
投下乙
圧倒的ともいえる心理描写に終始引き込まれた
軽音勢、特に澪はホントに災難だな。再会のたびにここまで大惨事が起こるのも珍しい
序盤からちょこちょこ出てきて語り手コイツ誰だ?と思ってたらお前か!
まあ主催者側に居てもおかしくない自然な人選だな、微妙に思うところあるようだし動向が気になるところ

しかし放送で船井組半壊を知ったら、ルル自分の手柄と勘違いして調子乗りそうだなw
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:23:39 ID:M+kp8isk
てめえ馬イク、はいてない美穂子乗せたってことは直か!直に当たっているのかああ!!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:44:46 ID:7XkDwQTJ
状態表をよく見るんだ
武田軍の馬だから馬イクじゃないよ
…まぁ羨ましいことに変わりはないが
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:47:59 ID:c93+GG2/
光秀の状態表にも武田軍の馬があるけどこれはミス?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:50:26 ID:zdCOunUe
武田軍の馬「残像だ」
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:51:26 ID:Ln2y5dD8
いや、明智が乗ってたのは船組から借りた武田の馬でしょw
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:53:09 ID:M+kp8isk
え、じゃあ美穂子の馬は何処から……?
馬が武田で武田が馬で……アレ?
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 18:57:59 ID:svNyDhw6
投下乙です
紬は完全に狂気に落ちて毒殺したと思ったら光秀やってくれるぜw
美穂子は奇妙な状態になったな、そして澪はまた親友が目の前で殺されるとか涙目すぎるw
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:20:12 ID:Ln2y5dD8
>>190
明智の乗ってきた馬をキャプが奪って逃げたのでは?
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:32:23 ID:xyHqAUDe
金でディートハルトを雇う→荒耶と交渉して会場を作らせる→ジョージ声で型月を買収する
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:33:24 ID:Ln2y5dD8
このロワを仕切っていたのはピザ屋ではなくジョージ軍団・・・!
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:42:02 ID:svNyDhw6
武田軍の馬はたぶん状態票のミスなのかな
つまり今光秀は馬なし

そういえば美穂子はこれゾンビ状態か、そのうち身体が腐ってくるな
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:51:54 ID:cW9xVFRL
ジョジョのブチャラティみたいなもんじゃね
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 19:55:54 ID:ucJbWLnW
>>194
マーボーまだ出てないぞ、いや勿論今後出ない保証は無いがw
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:25:10 ID:EvqLMwmn
ディートハルト来ちゃったのかよw
しかも腹に一物もってやがるし

参加者に本物のゼロがいるとわかったらスタンスかわりそうだなコイツ
199 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/15(火) 20:43:24 ID:ypHznqck
wiki収録、修正一通りすがりの仮面ライダーだ・・・覚えておけ!完了しました。

変更点は
伊達軍の馬の削除
誤字の修正
時間帯を日中から昼、放送直前に

です。できる限りは編集したのですが、手が出せなかった部分もあるのでお手数ですがどなたか時系列順の編集などお願いします。
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:44:19 ID:ypHznqck
wiki収録、修正一通り完了しました。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:48:40 ID:SWBcNAo5
>>199
おのれ、ディケイドぉぉぉっ!!by鳴滝

収録乙です
貴方も仮面ライダーファンですか
俺もです byラジオ書き手
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:49:20 ID:svNyDhw6
修正お疲れ様でした
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:50:19 ID:svNyDhw6
アニロワには全く関係ないが俺も仮面ライダー好きだ
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:52:41 ID:ayxnmEml
修正乙です

しかし有望な人材か
彼から見たらここに居る全員がキャラ立ちしていて面白いドキュメントとか作れるだろうとか考えてるだろうな
こんなことで潰すのはもったいないと感じてるのかもな


205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:52:43 ID:s2q/+HPW
修正乙です
次作を楽しみにしてます
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 20:58:23 ID:qmMo65VA
これは……マーボーを出せというフラグなのだろうか。出しちゃおっかな……本当に。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 21:01:54 ID:SlSIAGzY

連絡事項

議論スレにて、◆mist32RAEs氏の『思春期を殺した少年の翼』の内容についての発議が行われています。
◆mist32RAEs氏ならびに意見のある方は、したらば議論スレまでお願いします。

また、ルールに関する議論スレにて、予約破棄・期限切れ時の再予約ルールならびに自己リレーに関し、
ルール設定が必要かどうか、必要であればどういった内容にするかの議論中ですので、意見をお願いします。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 21:37:14 ID:5wOy20Ly
美穂子と唯のコンビは見てて和むな
いい母娘だ
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:05:50 ID:6Jj61d4l
いや、和めるような状態か?w
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:18:38 ID:UiBL01vV
依存関係が美穂子→唯の片思いなのがアニメ版美穂子らしくていいな
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:23:33 ID:Ln2y5dD8
唯は誰をも求め、その実、誰をも求めてないからな

憂があれこれ世話しないでも、メガネさんが心配せずとも、
澪達が世話焼かないでも、どこでもやっていけちゃうような子だからな
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:25:35 ID:svNyDhw6
でも今回目の前でで死を見たから今まで通りにはいかないだろう
これでもなお今まで通り振舞えるなら逆に凄すぎる…
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:29:00 ID:c93+GG2/
ふと、「穿いてないキャプテンと穿いてない衣。お馬さんごっこするなら、どっちを選ぶ?」
というネタを受信した。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:32:31 ID:GoENNp5I
>>212
凄いというか恐すぎる
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:35:11 ID:TwvfdSp0
それは平然と人殺し回る連中より異常だ
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:48:25 ID:c+wG87yH
なにげに魔道書読んでチンプンカンプンで済むって凄くないか?w>唯
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:50:16 ID:vqSsPLQ2
何故発狂しないwwwww
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 22:51:04 ID:Ln2y5dD8
思ってる以上に精神的にタフというか、異常だと思うんだがなあ、唯は
放送中、アンチから精神障害者とか揶揄されるくらいだもの
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 23:24:18 ID:FYK4qbm9
>>134

>そしてあまり面識はないけど鶴賀の、確か部長さんだった加治木さんも

部長はワハハだ(笑
悪意のないいやみとは、さすがはキャプテン。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:01:57 ID:lPdG0TB0
これで残り40人か
元の人数とかも考慮したらハイペースだな
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:10:19 ID:94/rXpAm
つーか、一気に魔道書二冊登場とかすごすぎるんですけどw
しかも持っているのが光秀という、まさしく宝の持ち腐れ状態w
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:21:27 ID:Mz1x+2jU
支給品にいちゃもんつける気はないが
原作でもよく効果の分からんもんは扱いに困るような気が

【種別】
魔道書
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/161.html
【元ネタ】
実在する本「LIBER AL vel LEGIS」から。訳は「法の書」。
著者はアレイスター=クロウリーで、あの言葉もしっかり収録されている。
何でも筆者が突如神がかって自動書記で記されたため本人でも内容がよくわからないらしい。

【初出】
七巻

【解説】
エドワード=アレキサンダー(またの名をクロウリー)という伝説の魔術師が記した魔道書。
彼が召喚した守護天使エイワスから伝え聞いた、人間には使えない「天使の術式」を書き記したものだとか、
「解読と同時に十字教の時代が終わる」ほどの天使の術式が記されている等々、その内容には様々な学説が存在する。
しかし、その一番の特徴は『誰にも内容が解読できない』という点にある。
この魔道書の記述は恐ろしく複雑な暗号で記されていて、それらしい文章になるダミーの解読方法が100通り以上存在するため、
解読したと思った所で実際の物とは大違いである可能性が高い。
インデックス曰く、「既存の言語学で解明できるようなものではない」。
その複雑さは暗号解読の専門家であるインデックスやオルソラ、シェリーでも解読はできなかった程。
よって、『禁書目録』内には未解読のまま暗号文章が詰め込まれている。

あまりの難解さ・解読法の多さから、冒頭には、

「汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん」

と記されている。

9月8日(7巻)、「ローマ正教のシスター・オルソラ=アクィナスが本書の解読に成功した」という情報から、
ローマ正教・イギリス清教・天草式が激突することになった。

なお、その内容を伝えた存在とされるエイワスも
「汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん」
の一文を多数引用することから、エイワスが何らかの形でアレイスターと接触したのは間違いないようである。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:27:03 ID:5/m97IR1
ディート登場で、直属の部下な咲世子さんの登場をちょっとだけ期待してしまう俺がいる。
224223:2009/12/16(水) 00:35:37 ID:5/m97IR1
出すとしたら、ナナリーを人質に取られて無理矢理参加させられたら、ルルが参加してたっていう板挟み的な状況が自然か。

書いてもらうつもりはないけど。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:46:03 ID:ZsHqAOSm
あ、そうか。法の書はアニメ化されていない7巻の話かw
226 ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 00:57:26 ID:un98+kS/
ユフィ、アーニャ投下します。
227きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 00:58:39 ID:un98+kS/

ユーフェミアとアーニャの二人はボートで小島に来た後、G2エリア一帯の陸地を占める太陽光発電所に訪れた。
屋根に敷き詰められたソーラーパネルと「発電所」と冠された施設名を持つ。
ならば、なんらかの通信装置もあるのではないかと思ったユーフェミアの提案により、二人の少女たちはその地に訪れたのだ。

発電所の中央部分に位置する扉から内部へ入った二人。
彼女たちはあまりに大きいこの施設を隅々まで調べるのは不可能だと思い、二手に分かれて探索にあたることにした。
アーニャが中央から時計回りに施設の北部を探索。
対してユーフェミアが反時計回りに南部を探索。
放送前に、入口付近で合流という計画で二人は工場のような発電所を探索することにした。


◇ ◇ ◇


連絡装置を探してめぼしい場所を探索するユーフェミア。
ゴウゴウと重低音を響かせる場所へ向かい歩いて行く。
その先にあったものは円型の部屋の中央部に置かれた、円錐の先に三角錐にとがったデザインのデザインをしたものだった。
彼女が知る由もないが、それはGNドライブと言う、とある世界にて無限に近しいエネルギーを生み出す装置であった。
それも、このバトル・ロワイアルが始まったばかりの時、刹那・F・セイエイが発見したものとは別の――
すなわち、0ガンダムに搭載されているものであった。
だが、そんな事実を知らないユーフェミアにはそれはなんの興味の対象ともなりえない。
彼女は太陽炉の周りを歩く形で、入口と反対方向へとある扉へと向かって行った。


◇ ◇ ◇
228きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:00:43 ID:un98+kS/

一方、北部を探索するアーニャは通信施設に加え、他にもとある物の存在を期待していた。
すなわち、KMFである。
この工場並みともいえる発電所の規模ならば、あるいはKMFも存在するかもしれない。
そう、思ってこの地の探索というプランに乗り切ったのである。
だが、通路や訪れる部屋は発電に関している機械と思しきものばかりで、KMFのある気配は一切なかった。

「もう一時間ね」

ふと、時計を確認したアーニャはそう呟く。
ここまで探索して目的のものは何もなかったのだ。
それが見つかる可能性も低く、これ以上の探索はユーフェミアとの合流にも遅れる可能性を考慮して、元いた場所へと歩み始めた。


◇ ◇ ◇


ユーフェミアが訪れたある部屋。
それは鮮烈な既視感を彼女にもたらした。
一瞬の思考の後、その正体を確信する。
それは、この会場に来た際に自分がいた小部屋。
この忌まわしき殺しあいのルールを告げる少女と男、そして見せしめに殺された少女の姿を思い出す。

「でもどうしてこの部屋が――」

今思い返すと妙な話だが、あの部屋を出た瞬間、自分は見知らぬ地に立っていた。
後ろを振り返るも、その部屋はなんの痕跡もないまま消えていた。
あるいは、何かこの殺し合いの謎に迫る鍵ではないかと考え、ユーフェミアはこの部屋の存在を記憶した。


◇ ◇ ◇


行き先と同じ道を辿りながら、発電所の入り口を目指すアーニャ。
見飽きた無機質な機械たちに見向きもせずに、その足を進める。
――瞬間、彼女の意識は途絶えた。

アーニャの表層へと現れた、マリアンヌの意識。
微かな頭痛と時計の示す時間を確認し、彼女は内心でほくそ笑む。
ユーフェミアと離れた今、ギアスの能力も好調である。
ギアスにかけられ、今後厄介となりかねないユーフェミアと完全に離れるためには絶好の機会だ。
彼女よりも早くボートに乗り込み、陸地から離れてしまえばこっちのものだ。
そう思い、彼女は駆けていく。


◇ ◇ ◇
229きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:01:25 ID:un98+kS/


一通り発電所を探索し終えたユーフェミアは、さきほどのこの会場に来た時にいた部屋に酷似した部屋にいた
彼女は突如の轟音に気づき、扉を開けた。
そこには光輝く先ほど見た装置に類似したもの――すなわちガンダムエクシアのGNドライブがったる。
その上空には薄黒い巨体を捉える紅い光を散らす機体と鹿の角を思わせるシルエットの機体があった。

――声が出なかった。

圧倒的すぎるその存在に、ユーフェミアはただ立ちすくむだけだった。
薄黒い巨体はこちらに気づく素振りも見せず、二つの機体を睨みつけている。
二つの機体も目の前の巨体を拘束し続け、こちらの存在など知る由もないだろう。
この戦いを止める力など一国の世間知らずの皇女にはない。
同行者の安否すら気にする間も与えぬほど、ユーフェミアは目の前の光景に見入っていた。

気づくと、緑色に輝く閃光が目前の装置が溢れ出し、粉雪の如く舞っていた。

「―――なんて綺麗なのかしら」

この状況にも関わらず、ユーフェミアはGN粒子の鮮麗なり輝きにそう呟いた。
そして、その輝きに包まれた彼女はトランザム・バーストにて広がる、刹那・F・セイエイと本多忠勝の想いを見た。

戦争根絶のために武力介入する者たちを――
戦国乱世を絆の力で収めんと槍をとる武士たちの姿を――
圧倒的な暴力の嵐にも臆さずに完全平和主義を掲げる少女の意志を――





――――――――――――――――――――――――未来を切り拓く!





頭の中に木霊したその声を最後に、太陽光発電所は狂戦士の担う約束された勝利の閃光に飲み込まれた。
それはその場にいた、皇女の姿も例外なく―――





【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2 消滅】




◇ ◇ ◇
230きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:02:22 ID:un98+kS/

「ふふ、やっと着いたわ」


アーニャの意識を乗っ取るマリアンヌは、ユーフェミアと離れた地点まで戻っていた。
ユーフェミアに対しなんの感慨を抱くこともなく扉を開けて、彼女はボートへ向かわんとする。
しかし、扉を開けた瞬間彼女が見たものは降り注ぐ緑の光の粉――すなわち、GN粒子である。

そして、彼女にも刹那の意識は届いた。
その中には自分の知った光景、それどころか自分の姿もあった。


「これは…!?ギアスの力…なの!?」


そう思案したマリアンヌだが、ギアスの効果が表れているユーフェミアと出会った際の頭痛がないことに気づく。
上空には、先に遭遇した黒い巨人と本多忠勝の姿があった。
そして、そこから眩いほどの光が発せられる。


「―――え!?」


約束された勝利の剣が放つ必勝の閃光は、発電所もろともマリアンヌの意識を持ったアーニャの肉体を消し去った。



◇ ◇ ◇
231きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:03:05 ID:un98+kS/


人々の“こうであって欲しい”という想念が込められて星に生み出されたその宝具、エクス・カリバー。
それが生み出した、何も残らない蹂躙の跡。
そこに残る虚無こそ、“こうであって欲しい”と人々が望んだ結果ではなかろうか?
そうであれば、実に愉快なのだがな―――

さて、アーニャ・アールストレイム――いや、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの死と言うべきだろうか。
あれは言うなれば、ただの事故――あるいは災害に巻き込まれたとでも言えようか。
まるで無自覚のうちに人間に潰される蟻のように――
あるいは突然の奇襲の爆撃にさらされ消えてしまう戦場の人間のように――

この場合は、彼女を踏みつぶした狂戦士も、その狂戦士を彼方へと突き放さんと高速で狂戦士を追いやったイノベイターと戦国最強もこの事実を知らない。
そう、これは殺人ではなく、ただ災害に巻き込まれた、と言うべき話なのであろう。

ただ、そこにひとつだけ救いを見出すのならば―――
その身体を散らしたアーニャ・アールストレイムの意識を奪っていたマリアンヌがその死を受け、
本来の人格であるアーニャ・アールストレイム自身がその死を体験することはなかったこと――だろうか。

――だがそれも考えようだ。

とある対極の名を持つ家系の、複合二重人格者は言った。
”人は一生にかならず一度は人を殺す。自分自身を最後に死なせるために、私たちには一度だけ、その権利がある”
彼女は人間として、自らの死をも迎えることができなかった。
それは果たして幸福であるのであろうか?
人間が与えられた、自らの死を迎えられるという権利まで彼女は剥奪されたのだ。

ならば、その生にいったいなんの意味があったのだろうか?

彼は言った。
”人間は救われない。世界に救いなどない”
しかし、その魔術師はそれに意味を見出すためにこの殺し合いを行っている――とも言った。
――ならば、この報いのない死のも意味が在るというのだろうか?
それを見届けるためにも、このバトル・ロワイアルを検分させてもらうとしようか。





魔術師、荒耶宋蓮よ―――







【アーニャ・アールストレイム@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】


◇ ◇ ◇
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:03:31 ID:O5nl6+R5
 
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:05:45 ID:Js9ln/nf
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:06:01 ID:O5nl6+R5
さるったかな
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:06:55 ID:Js9ln/nf
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:07:26 ID:O5nl6+R5
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:08:00 ID:UkGrLoiI
 
238きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:08:55 ID:un98+kS/

真のイノベイターとして覚醒した刹那はエクシアのGNドライブを覚醒させた。
それは彼が発電所に、エクシアのGNドライブがあると知っていたからこそ行えた行為である。
時間を惜しんで発電所を去った彼は、その地にもうひとつある0ガンダムのGNドライブを発見することはなかった。
よって、それを意図して発動することもなかった。

だが、彼がトランザム・バーストを行おうとした時に、0ガンダムのGNドライブも本人の知らぬ間に起動していた。
それにより、本来はツイン・ドライブ機能を持ち合わせた00ガンダムでないと行えない、トランザム・バーストが行えたのだ。

一瞬だが、その効果があって太陽光発電所は疑似的ではあるが00ガンダムと同じ様に機能した。
刹那が行った、意識の拡散もその効果によるものなのである。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:09:35 ID:O5nl6+R5
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:09:40 ID:Js9ln/nf
241きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:10:32 ID:un98+kS/


それは、初めに参加者を隔離していた部屋に類似した部屋にも現れた。
その部屋にいた当人は知る由もないがあの部屋にも、とある仕掛けがあり、トランザム・バーストにより機能した。

それはユーフェミア・リ・ブリタニア、彼女がエクス・カリバーの光に飲みこまれる寸前の話である。
あの部屋は、”量子化による転送装置”であった。
彼女は量子化して、エクス・カリバーにより消える前にあの場から脱出。
光速であの場から離れ、ワープしたのだ。

先ほどまでとは違う目の前の光景に、混乱する彼女のもとに二回目の無情な放送が響かんとしていた。



【???/一日目/昼、放送直前】


【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康、決意、唖然
[服装]:さわ子のスーツ@けいおん!、
[装備]:アゾット剣@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、H&K MP5K(SMG/40/40発/予備40x3発)@現実、H&K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数2/12発/予備12x2発)@現実、豪華なドレス
[思考]
基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する。自分にできる事をする
特殊:日本人らしき人間を発見し、日本人である確証が取れた場合、その相手を殺害する
0:トランザム・バーストによる一連の現象に混乱
1:偽ゼロの存在を全参加者に知らせる
2:政庁で放送施設や通信施設を探し、全参加者に呼びかける
3:殺し合いには絶対に乗らない
4:アーニャ安否が気がかり
[備考]
※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。
※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。
 現在は弱体化しているため、ある程度の意識レベルで抵抗すれば解除可能。
 今後も発動中に他の発動しているギアスと接近すれば弱体化、あるいは相殺されます。時間経過により回復。
 会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間に影響が出ているかは不明。
※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。
※トランザム・バーストの作用で彼女のいた”量子化による転送装置”が作動し、ワープしました。
 現在地は次の書き手に任せます。

※アーニャの死体および持ち物はすべて消滅しました。




242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:10:37 ID:O5nl6+R5
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:10:48 ID:Js9ln/nf
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:11:41 ID:UkGrLoiI
 
245きらめく涙は虚無に ◆quk2SNagNM :2009/12/16(水) 01:12:19 ID:un98+kS/
投下終了。
途中の語りはもしかしたら”あの人”かもね!
量子化ワープはありなのかな?
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:12:57 ID:C4pT87CW
終了?
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:13:48 ID:O5nl6+R5
投下乙
あちゃー、巻きこまれて死んじゃったかと思ったらまさかの量子化wwww
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:16:24 ID:UkGrLoiI
GN粒子なら仕方ないな。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:17:05 ID:Mln6vrgq
GN粒子にはよくあること
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:18:19 ID:jSEiLqiw
爆発は巻き込まれるもの
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:23:30 ID:DhSLKoDj
マリアンヌが閃光に消えた
閃光の如く死んだ
正に『閃光のマリアンヌ』だったな……
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:29:05 ID:Mln6vrgq
本編といいここでの扱いといい散々だな母ちゃんw
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:31:10 ID:NGz9l9nx
トランザム・バーストのもうひとつの太陽炉による補足的描写、それを使った量子化……
リレーSSならではのアイデアが映える作品でした
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:31:20 ID:DDlpV407
乙!
量子化の技術を持ってるってことは、主催にイノベが絡んでたりして?!
ディートハルトも出てきたし、まだまだ主催陣営は謎が多いな
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:34:50 ID:UkGrLoiI
リボンズ的には、刹那さえ葬ってしまえば、後はどうとでもなるしな
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:37:00 ID:3Nrta7bo
やっぱりマーボー主催側にいるのかw
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:50:52 ID:XQSMG7mp
太陽炉自体は数十年かければまた作れるんだっけ?
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 01:52:54 ID:NGz9l9nx
>>257
木星に行かないと無理
本編中では木星往復って何年かかるんだろう
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 02:09:05 ID:b5VcBB5I
往復で82年
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 04:00:17 ID:MzhQasGs
投下乙です
うわー、とんだとばっちりw
アーニャもったいなーw
生き残ったのは、対日本人用兵器・ユフィ爆弾www
さーて、何処に着弾するかなー
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 04:22:53 ID:jwpZh2A7
本命…船組、白黒、唯美穂子

対抗馬…ルルーシュ組、スザク組

大穴…光秀、信長、バサカ、魔眼組


個人的にはスザク組辺りが面白そう。
ただスザク組は魔眼組、一方さんと予約されてるからどうなるか。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 06:26:35 ID:Mkx0kiic
リボンズは量子化技術持ってないし、オリジナルGNドライブを会場に放置なんてしないだろう。思い入れあるし
これはアレだな、あげゃげゃげゃさんの仕業に違いない
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 08:31:52 ID:ZsHqAOSm
投下乙です
まさかあのトランザムバーストにユフィとアーニャが巻き込まれていたとは…と思ったらユフィは量子化でギリギリ助かったか
それにしてもユフィ爆弾がどこに行き着いたのか楽しみだw
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 08:33:07 ID:h7uXoz11
麻婆出て来たかw
今回の黒幕はジョージ軍団か
どいつもこいつも油断ならねえw
265 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/16(水) 15:05:47 ID:4lLyHdTB
>>173において光秀に武田軍の馬が装備されていますが、コピペミスです。
現在武田軍の馬は福路美穂子の装備であり、光秀は装備していません。
また、光秀の道具欄は「法の書@とある魔術の禁書目録、」の後で改行させて下さい。

さらに同>>173
> どちらもインデックスが所有する103000冊の魔道書のひとつ。

> どちらもインデックスが所有する103000冊の魔道書のひとつの精緻な写本
に変更させて下さい。

ええっと、仮投下スレに書くべきなんでしょうか。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:15:22 ID:Mz1x+2jU
>>265
法の書については、アニメでは未登場の魔導書の上、
原作においてその実用性も明確にされていない支給品なのですが

後に続く書き手の為にもう少し詳しく登場させた意図を説明頂ければ幸いです
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:35:04 ID:94/rXpAm
アニメで登場すらしてない設定使っている作品もあるのに
つっかかるところかねぇ?
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:42:42 ID:nioPWaYI
具体的にどんなだよ
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:53:40 ID:Mz1x+2jU
原作の描写に於いては内容が解読不可能とされてる魔導書なので
原作準拠の描写であるならなんら意味のないアイテムとなります

(インデックスの記憶内でも暗号そのままに収録されている)



270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:55:18 ID:h7uXoz11
論点はそこじゃない

原作を知ってても使い道がよくわからないものだから、でしょ
書き手が扱いに困るから、後続の為に補足書いてねってことかと
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 15:58:19 ID:Js9ln/nf
ここでやんな
議論スレ池カス
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 16:02:04 ID:94/rXpAm
使い道に関しちゃ魔道書の特性だけでもいいような気がするけどね
そーゆーのもアステカ人と、まぁあらやんくらいしか知らなさそうだが
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:18:40 ID:NGz9l9nx
サーシェスのAAがかっこよすぎて惚れました。
彼を対主催にして大活躍させたいのですが、どうすれば良いでしょうか?
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:19:32 ID:Mz1x+2jU
>>273
ギアスで洗脳する
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:20:54 ID:NGz9l9nx
なるほど。
ただ洗脳などではなく、純粋な対主催にしたいのです。
そして最後に「みんな、ありがとな!」と言わせたいんです。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:27:35 ID:ZsHqAOSm
そこからは自分で考えてください
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:27:41 ID:Mz1x+2jU
むしろ洗脳でもしない限り無理だろう

ガンダム00でも今更悔い改めるほど迷いある生き方をしてた訳じゃないし
殺し合いに快楽を感じちゃってるし

無茶な方向転換はキャラ崩壊の上それこそ死亡フラグ
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:54:11 ID:Mkx0kiic
ルルーシュ「対主催の善人になれ!」
アリー「お断りだぁ!」

誰か「主催者より多くの金を用意しますが」
アリー「詳しく話を聞こうか」
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:58:35 ID:Mz1x+2jU
【優勝者への特権について】
 優勝者には賞金として10億ペリカ、そしてその賞金で買い物をする権利が与えられる。
 ペリカの使い道は以下の通り(これはルールブックにも記載されている)。
 ・元の世界への生還――1億ペリカ
 ・死者の復活―――――4億ペリカ
 ・現金への換金――――9億ペリカ
 ・その他の願い―――――要相談

 ※1ペリカ=10円。10億ペリカ=100億円。

誰が100億出せそうかなぁ
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 17:59:52 ID:nioPWaYI
別に金を求めてる訳ではないぞ
純粋に戦闘とか虐殺が好みなだけ
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 18:00:43 ID:w7x75r06
>>279
紬死んだ時点で終わっとるがな
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 18:01:55 ID:twEUlyh/
つ死者スレでバトルロワイヤル
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 18:21:11 ID:p043icJo
そもそも対主催で活躍なんて言ってる時点で……
パロロワならマーダーで大活躍の方が正しいだろ
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 18:47:39 ID:NGz9l9nx
財閥の令嬢、琴吹紬とサーシェスを組ませる、そう考えていた時期が僕にもありました
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 18:59:44 ID:YGmArvSn
連絡。
したらばの避難所スレで、第一回放送までのSSやキャラの人気投票やろうって話題が出てるので
興味ある人は確認してみてください。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 19:56:35 ID:AlAi3HZR
>>279
>そしてその賞金で買い物をする権利が与えられる。
この一文ってある意味引っかけだよな。たとえ100億ペリカロワ中で稼いでも
買い物できるのは「その賞金で」、つまり10億ペリカ分だけって言い逃れできるんだから
287名無しさん@お腹いっぱい。[:2009/12/16(水) 21:00:34 ID:i1H59LAe
>>286
それ帝愛の手口w
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 21:28:12 ID:u4/qaK/8
MAPで見ると黒が目立つなw
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 21:52:54 ID:aa4BS+3a
>>◆LJ21nQDqcs氏
氏の「切り札」をwiki収録する時、
長すぎとなってしまうようです。
すみませんがどこで区切ったらいいかを指示してもらえないでしょうか。

290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 22:18:17 ID:AlAi3HZR
>>287
え?主催者帝愛じゃなかった?
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 22:45:36 ID:krI0INlR
買い物は1ヶ月後か半年後か
帝愛の気分次第でいくらでも先延ばしするんですね

待ってる間に次のロワへ放り込まれたりなw
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 22:49:39 ID:h7uXoz11
この胡散臭い情報を信じてる(信じざるを得ない)参加者ってどのくらいいるんだ
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 23:00:12 ID:ocHAJtKl
えっと、澪、モモ、ファサリナ……以上?
いや、黒子とかヒイロも微妙だけど……。
ていうか上の三人も両手放しで信じてるわけじゃないしなあ。
100%信じてるやつは皆無かもしれん。やはりうさんくさすぎるのか。
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 23:14:53 ID:cA+pSE7U
何の疑いもなく信じたら脳みそお花畑過ぎる
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 23:34:30 ID:W5wFhl09
アニメ最萌トーナメントについて語るスレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime4vip/1260711182/384-387

384 名前:メロンさんex@ご利用は紳士的に[sage] 投稿日:2009/12/16(水) 14:20:51 0
ロワ厨消えろ

385 名前:メロンさんex@ご利用は紳士的に[sage] 投稿日:2009/12/16(水) 14:20:55 0
ロワ厨消えろ

386 名前:メロンさんex@ご利用は紳士的に[sage] 投稿日:2009/12/16(水) 14:21:03 0
ロワ厨消えろ

387 名前:メロンさんex@ご利用は紳士的に[sage] 投稿日:2009/12/16(水) 14:21:16 0 ?2BP(2)
ロワ厨消えろ

そげ部in東方 ★
beポイント:2
登録日:2007-07-02
紹介文
            / ̄\
            |    |
            \_/
        __     |        __
        |_|=/  ̄  ̄ \=|_|人類に逃げ場なしなら
         |_|/__\::::/__\|_|まずはその  
         |_| |   ヽ::::::::/  | |_|シュバルツバースを
         |_|   ̄(__人__) ̄  |_|ぶち壊す
        ⊂二二二「 ̄|二二二⊃
296 ◆LJ21nQDqcs :2009/12/17(木) 01:44:53 ID:DJNNWHGq
>>289
>>154ラストの
>よかった。四人目が来てくれたよ、唯ちゃん。
までを前半という形にして頂けますでしょうか
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 03:57:05 ID:XGX//W8i
仮投下スレに投下されてたので、代理投下します
(……多少は落ち着いた、か……)

無言でハンドルを握り、アクセルを踏みながらグラハムは一人考える。
先程までに比べれば、黒子は少なくともその言葉の様子から察するには、平静を取り戻している。
士郎がどの様な形で彼女に接したのかは分からない。
彼女の心がどこまで癒えたのかもまた、見当はつかない。
しかし……少なくとも、今はこれでいい。
心に受けた傷を癒すのには、時間が必要なのだ。
長い時を共に歩む事で、徐々に傷口を塞いでいくしかない……そしてその役目を担うのに相応しきは、傍らの少年だ。
ならば、グラハムには彼女の為に何が出来るか。

(そんなものは決まっている……天江衣とも、約束したからな)

自分は戦う術を知る軍人だ。
そして軍人の役目とは、人々を脅威から守り敵を討つ事。
元凶たる帝愛グループを討ち、彼等が背負っている痛みを少しでも無くしてやらねばならない。
その為にも、こうして運転をしている今もグラハムは、思案を続けている。
帝愛を討ち取る為に、成さねばならぬ事は何かと。

(やはり厄介なのは……こいつか)

そんなグラハム―――恐らくは全ての参加者にも共通した悩みではあるが―――にとっての最大の課題が、首輪だ。
これを嵌めている限り、己が命は主催者達に握られているも同然。
主催者に戦いを挑んだところで、返り討ちにもならずに犬死だ。
また……主催者に反抗するというその意志は、間違いなく既に知られているだろう。

(告げられた放送と、先のギャンブルルームでの一件……敵は我々の動きを把握している。
恐らくは、この首輪からとみて間違いないな)
主催者は、参加者全員の動向をある程度監視できている。
その証拠となるのが、第一に死者を告げる放送だ。
誰が生き、誰が死んだか……それを把握できていなければ、まず放送なんて出来るわけが無い。
ならば考えられるのは、この首輪が参加者の生死を判別しているという事だ。
脈拍や血圧など、ここから何かしらのバイタルサインが送られているのは間違いない。
そう考えれば、軍人であるグラハムにとって、次の段階を予想するのは難しくなかった。

(首輪に参加者の状況を判別する装置を組み込むのであれば、カメラや盗聴器の類が共にあってもおかしくはない。
いや……必ずある……!!)

グラハムには確信があった。
先程利根川から聞いた話によれば、帝愛はギャンブルを好んでいる。
それはギャンブル船やペリカの存在からしても明らかだ。
ならば、そんな連中がこの殺し合いを見聞きせずに放っておくわけなどない。
事実、先程ギャンブルルームで介入行動が行なわれたではないか。
勝ちすぎたカイジと利根川を止めるために……!!

(だとすれば……ここからの発言は、少し考え物かもしれんな)

余興として楽しむ為、また当然の事ではあるが、殺し合いを円滑に運ぶ為。
確実に見張られている……その為に最も適した道具は、常に参加者と共にある首輪だ。
触った限りだとレンズの様なものは無さそうな為、少なくともカメラは仕掛けられていない。
だとすれば、あるのは盗聴器のみか。
ならば、ここからは慎重に行動を行なう必要性がある。
例えば主催者達の本拠地や、首輪を解体する具体的な方法論を迂闊に口にすればどうなるか。
その瞬間、首から上は無くなり魂は黄泉路へ招待されるだろう。

(しかし、単に奴等を打倒すると口にしただけならば、流石に爆破はされない……
高をくくっているか、そういう我々の態度もまた楽しみということか。
 まあ、一々そんな事で爆破を行なっていたのでは、先程の会議なんてどうなっていたやら分からんものな)
余裕の表れ、とでも言う所だろうか。
他にどれだけの参加者が殺し合いを良しとしていないかは分からないが、
少なくともあの船に集った大人数は、この殺し合いにおける一大勢力と言ってもいいだろう。
あの場では様々な情報を得られた上に、ペリカまで大量に手にしている。
それを野放しにする辺り、帝愛という組織は余程……

(……帝愛……?)

そこまで考えて、グラハムがある違和感に気付いた。
利根川の話が確かならば、彼は魔法も超能力もモビルスーツも、何も知らなかった。
それが彼等にとって常識だ。
そして利根川は、かつて帝愛の幹部だった……だとすれば、やはりおかしい。

(なら……どうやって、帝愛は魔法の存在を知った?)

魔法を買うには、まずは魔法という力がある事を認めなければならない。
しかし、帝愛にとっては現実からかけ離れたその存在を彼等はどうやって知ったのか。

(現実離れした、強力な力……まるでGNドライブだ。
 あの動力炉は結局、何者かからの提供で軍は手に出来たという事だったが……)

ふと、自分の経験とを当て嵌めて考えてみる。
GNドライブという、それまでのテクノロジーを大幅に覆す強力な力。
あれもまた、人知を超えているという点においては、魔法とも同等だろう。
それにも関わらず、その魔法を軍部が手に出来た理由は、謎の提供者がいたからこそだった。


ならば……今回の一件もまた、同じではないのか?



――――――なにせ我々は……《金》で《魔法》を買ったんだからなッ!!
――――――なにせ我々は……《金》で《魔法》を買ったんだからなッ!!



「っ!!」

最初に告げられた、遠藤の言葉。
それを思い出した途端に、グラハムはブレーキを踏み車を止めた。
反動でその車体は揺れ、当然ながら後ろにいる二人からは驚きの声が出てくる。

「ど、どうしたのですか!?」
「グラハムさん、何かあったのか!!」

荷台から告げられる声に、グラハムは少しばかりの猶予を置いた後に答える。
この事実……二人にも告げる義務がある。

「二人とも、少し待っていてくれ……話さなければならぬ事がある」



◇◆◇



『ここから先、重要な会話はなるべく筆談で行なう』

運転席から荷台に移り、腰を下ろしたグラハムから最初に告げられたのは、紙に書かれたその一文だった。
士郎と黒子も、それが何を意味するのかはすぐに理解できた。
首輪を利用しての監視及び盗聴、確かに考えられる事だ。
二人は一瞬息を呑んだ後、その対応へと移る。

「それでグラハムさん、話というのは?」
「ああ、これから回る進路についてだが……」
無言で筆談に移ったのでは怪しまれる。
それを察して、三人はカモフラージュとなる会話を挟みつつの筆談に出た。
無論、口から出てるのはその場しのぎの出鱈目だ。

『この殺し合いなのだが、帝愛グループが開いているものではないのかもしれん』

単刀直入に、グラハムは二人へと己が考えを述べた。
彼が抱いた違和感……それは、帝愛が本当にこの殺し合いの裏にいるかという事だ。
しかし、いきなりこんな事を言われたとしても、士郎と黒子は状況が飲み込めない。

『帝愛じゃないって……どういう事ですか、グラハムさん?
 最初の広場じゃ確かにあいつら、自分達の事を帝愛って言ったじゃないですか。
 それにカイジさんや利根川さんの話なら、ギャンブルルームに用意された専用ギャンブルも、ペリカだって……』

士郎の反論は最もだった。
敵側が自分達が帝愛であると明示している。
カイジや利根川の話だって、その駄目押しになっている。
その上で帝愛が主催者ではないなど、言葉の意味が分からない。
しかし、グラハムはそれに冷静に言葉を返す。

『すまない、言葉が足りなかった。
 私が言いたいのは、帝愛の裏に何者かがいるのではないかという事だ』
『え……?』
『あまりにも当たり前の事過ぎて、今まで失念していた……二人に質問しよう。
 商売に当たって、大切な存在は何だと思う?』

脈絡無く告げられる、グラハムからの問い。
商売において大切な存在とは何か。
その答えを、士郎はやや考えるが……そうしていると、先に黒子が答えを出してきた。

『売り手と買い手……ですわよね?』
『ああ……奴等は、金で魔法を買ったと言ったな。
 ならばそれは、その魔法を奴等に売った人間がいるという事じゃないか?』
「!!」

グラハムの一文が、士郎を驚かせる。
黒子は答えを出した側というだけあって、どうやら少し早くその事実に気がついたようだが……そう。
この当然の事実を、誰もが失念していた。
帝愛という買い手がいる以上、彼等に魔法を売った売り手がいるのは当然ではないか……!!

『魔法なんてものを信じられぬといった利根川の言葉からして、帝愛が自分から魔法を探したとは考え難い。
 ならば売り手の方から、帝愛に接触したのは明らかだろう』
『じゃあ、その売り手は金欲しさに帝愛に協力を……?』
『金目当てだけなら、帝愛でなくとも他に宛は幾らでもあった筈だ。
 魔法の力なんて、誰もが大金を出して欲しがる……それでもなお、帝愛を選ぶのには理由がある』

金なんて、魔法の力があれば手にする方法は幾らでもあるに違いない。
そもそも帝愛と協力なんかしなくても、個人で大金を稼ぐ事だって出来る筈だ。
にも関わらず、帝愛を選んだとすればその理由は……

『あ……ギャンブル!!』

売り手が帝愛を選んだ理由は、彼等がギャンブルに精通しているからではないか。
そう考えれば、筋が通る。
この殺し合いもまた、帝愛が楽しむギャンブルの一つとして通す事が出来るのだ。
事実、カイジや利根川達は何一つ疑問を抱く事無く、そう思っていた。
彼等から情報を告げられた自分達だって同じだ……だとすれば。

『殺し合いを開くという条件の下なら、帝愛が最も適した存在といえる。
 だから魔法の力を提供し、殺し合いの開催を持ちかけた。
 この前提で行けば、帝愛そのものは殺し合いを開く為のただの協力者、もしくは傀儡にすぎん。
 そして魔法の売り手こそが、この殺し合いを計画した首魁……そう考えられるのではないか?』
【D-7/C-7との境目の砂浜/一日目/昼】
【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30、軍用ジープ@現実
[道具]:基本支給品一式、五飛の青龍刀@新機動戦記ガンダムW
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退
0:ひとまず砂浜に沿って南下する
1:島を時計回りに移動しながら、士郎らと共に仲間を探す(エスポワール組の知人優先)
2:張五飛と接触したい
2:主催者の思惑を潰す
3:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける
4:地図が本当に正確なものかどうかを確かめるために名所を調べて回る
5:衣の友達づくりを手伝う。ひとまずは一万ペリカを手にいれ、『麻雀牌セット』を買ってやりたい
【備考】
※参戦時期は1stシーズン25話「刹那」内でエクシアとの最終決戦直後です
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました
※エスポワール会議に参加しました
※張五飛がガンダムのパイロット、少なくともソレスタルビーイングのメンバーであると知れないと考えています
※帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいるのではないかと考えています。
 そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があったのではとも思っています。

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]: 健康、額に軽い怪我(処置済み)
[服装]: 穂村原学園制服
[装備]: カリバーン@Fate/stay night
[道具]: 基本支給品一式、特上寿司×20人前@現実
[思考]
基本:主催者へ反抗する
1:島を時計回りに移動しながら、グラハムらと共に仲間を探す(エスポワール組の知人優先)
2:黒子を守る。しかし黒子が誰かを殺すなら全力で止める
3:女の子を戦わせない。出来るだけ自分で何とかする
4:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※参戦時期は第12話『空を裂く』の直後です
※残り令呪:1画
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました
※エスポワール会議に参加しました
※帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいるのではないかと考えています。
 そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があったのではとも思っています。

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、精神疲労(中)、空虚感
[服装]:常盤台中学校制服、両手に包帯
[装備]:スタンガン付き警棒@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:なるべく普段通りに振舞う(スタンスは決めあぐねている)
1:島を時計回りに移動しながら、士郎らと共に仲間を探す(エスポワール組の知人優先)
2:お姉さまを生き返らせるチャンスがあるなら……?
3:衛宮さんはすぐに人を甘やかす
4:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
5:少しは衛宮さんを頼る
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限
 距離に反比例して精度にブレが出るようです。
 ちなみに白井黒子の限界値は飛距離が最大81.5M、質量が130.7kg。
 その他制限については不明。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました
※エスポワール会議に参加しました
※美琴の死により常に空虚感があります
 空間転移は正常に使用できない可能性が高いです
※帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいるのではないかと考えています。
 そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があったのではとも思っています。
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 04:05:53 ID:XGX//W8i
300 名前: ◆lDZfmmdTWM[sage] 投稿日:2009/12/17(木) 00:12:07 ID:3sRimg6U
以上、仮投下終了です。
タイトルの元ネタは、仮面ライダーWの主題歌「W-B-X」の歌詞です。
もしも問題点等が無さそうでしたら本投下をお願いいたします。


以上で代理投下終了です。
投下乙でした。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 07:24:44 ID:ZnLx6Alc
代理投下乙!

おお・・・グラハム・・・!
ようやく、帝愛の裏側に気がついたか
ジョージーズも表に出てきたし、物語としても楽しみになってきたぜ

グラハムがかっこよく描かれていて良かったです。
グラコロコンビ復活のその日まで、乙女座の男頑張ってくれ
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 09:32:06 ID:xyIM6TxD
ディートハルトは音声だけであのレポート作ったのか
さすが冠絶したry
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 10:52:50 ID:rLwcxZUn
投下乙です
グラハムカッコいいな、本編だと半ばネタ扱い気味だったのに
はてさて帝愛に魔法を売った輩は何者なんだろう
とうの帝愛はなんか完全に傀儡っぽいが…
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 11:04:30 ID:/wbxSaG0
>>308
ジョージに不可能はない
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 14:54:40 ID:o73M7drX
首輪とは別にディートハルト専用小型偵察ロボでもいるんじゃないか?

光学迷彩した飛空艇が真上を飛んでるわけだし

(J・S・J)だけじゃなく、技術面でも一枚噛んでる奴らがいるんだろう
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 17:45:52 ID:rLwcxZUn
もしくは会場の方々に隠しカメラでもあるんじゃない
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 18:00:39 ID:KquOmi1p
トランザム・バースト後のハムがどう動くのか楽しみだ
てか原作同様いろんなキャラに影響与えそうだな
314 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:25:06 ID:lhwk+mty
平沢憂、東横桃子、ルルーシュ・ランペルージ、投下します。
315船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:28:21 ID:lhwk+mty
東横桃子、平沢憂、そしてルルーシュの三人は揚陸艇に乗り込んだ後、それぞれ別々の行動を取った。

桃子はルルーシュの用意していた湯やシャンプー、ボディソープを使って身体を流し、
憂はルルーシュが作った朝食を食べ、
そしてルルーシュはおもし蟹から力を奪った後、そのまま格納庫に残り、もう一度船内を調べ直していた。

ルルーシュはここまで、身体を流すための湯を用意したり、爆弾や盗聴器作り、さらには朝食作りに情報交換など、
色々な事に追われていて、この格納庫を含めればかなり広い揚陸艇の船内を隅々まで確認したわけではなかった。
桃子と憂が動けない今、迂闊に船を動かすのは得策ではないし、船内を探索するにはいいタイミングだった。

「やはり、あったか」

そうして格納庫の中を確認していくと、黒の騎士団で使っていた耳に引っ掛けるタイプの通信機をいくつか見つけることが出来た。

試しにスイッチをオンオフしたり、マイクを叩いたりしてみる。
どうやら問題無く使えそうだ。

薬局に向かった後に憂とはぐれてしまったことから、次は通信機でも作ろうかと考えていたルルーシュだったが、自分で作る必要は無くなった。

(……さて、そろそろだろう)

そんな収穫もあり、時間もある程度経過したところでブリッジに戻ろうとしたルルーシュは、
その途中、ブリッジの少し手前で立ちつくしている桃子の姿を見つけた。

「桃子」
「わっ!……ル、ルルさん?」

ルルーシュは普通に、アッシュフォード学園の学生であった頃の口調で呼びかけただけだったが、桃子は声をあげて驚いた。
ぼんやりしていたところに声をかけられたからか、あるいはこうして呼びかけられること自体に慣れていないせいかもしれない。

「もう体は流し終えたようだな」
「はい」
「それで、どうした?入らないのか?」
「いや、中にはゴスロリさんがいるっすから……」
「憂か?…同世代の女の子同士、仲良くすればいいだろう」
「むっ、無理っす!」

事も無げに言ったルルーシュの言葉を、桃子は全力で否定した。

「さっきのゴスロリさんとルルさんの会話、マトモじゃなかったっすよ!!一体何なんっすか、あの子!?
 それにルルさんも、なんであんなに平然とゴスロリさんの相手が出来たんっすか!?」

確かに憂の言動は、平和に暮らしてきた者にとって刺激が強すぎたかもしれない。
まして、ルルーシュが止めなければ桃子は出会った瞬間、憂に殺されていたところだったのだ。

「まあ待て…そうだな、まず憂の状態についてだが」

信じられないといった様子で矢継ぎ早に訊いてくる桃子を制しながら、ルルーシュは順番に質問に答えることにした。

「憂は、自分自身の変化に少々興奮しているんだろう」
「変化?興奮?」

どういうことっすか?と言うように首をかしげる桃子に、ルルーシュは説明を続ける。

「俺の口からお前に語っていい事じゃないと思うから詳細は省くが、憂は今までずっと思い悩んでいた。
 おそらく、この島に来てからずっと、だ。
 その思いを、あの蟹に出会ったことで断ち切った」
「あの蟹さんに出会って?」
「ああ、桃子はあの蟹がどういう存在なのか理解出来たか?」
「何となくっすけど、人の思いと重みを持って行っちゃう…神様みたいなものっすか?」
316船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:30:56 ID:lhwk+mty
「そうだな、あれはそういった力、人の思いを引き受け、断ち切る力を持った蟹だ」
「はあ」
「まあ、あの蟹については深く考えずに、そういうものだと思っておけばいいだろう。
 それに、今はその力も失われている。問題は無い」
「失われているって、分かるんっすか?」
「ああ、後で見てみるといい。色や雰囲気が変わっているぞ」

ルルーシュはそこで蟹の話題をいったん打ち切り、憂の話に戻った。

「さて、少し話が逸れたが、
 要するに憂は、この島に来てから心の中を占めていた思いが唐突に消えたことで急に心が楽になり、
 それまでの反動で興奮している…ハイになっていると表現すれば分かりやすいか?」
「あー、そうっすね。」
「興奮が治まってくれば、桃子の言うマトモじゃない状態も改善するだろう。
 食事を取っている間に、多少は落ち着いたんじゃないか?」
「だと、良いっすけど」

そうして話が一段落したところでルルーシュはブリッジへ向かって歩き出し、桃子は慌ててそれを止めた。

「ストップっす、ルルさん!出来ればもう一つの質問にも答えてほしいっす」
「なぜ俺が平然と憂の相手が出来たか、だったか?」
「はい」
「俺は、今まで色々な奴を相手に色々なやり取りをしてきた。時には命がけで、な。それだけのことだ」
「……い、命がけっすか。ルルさん、元の世界では何をしてたんっすか?」

命がけという言葉に若干ビビりながらも、桃子は疑問を口にする。

「それは、必要があればその内教えてやる。
 さて、あんまり憂を待たせても悪い。ブリッジに戻るぞ」
「あ……」

ルルーシュは桃子の疑問には答えず、今度こそブリッジへと歩きだし、桃子は渋々後について行った。

「あ、ルルーシュさん」
「憂、食事は終わったか?」
「はい、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「そうか、それは良かった」

ブリッジの中で待っていた憂と、ブリッジへ入ったルルーシュはごく当たり前のあいさつ、当たり前の会話を交わした。

(う〜、誰々をブチ殺すとか言ってた人となんでこんなに平然と会話できるんっすか? 私には真似できないっす)

そんな事を考える桃子を余所に、ルルーシュと憂はしばらく、料理は得意だのといった他愛の無い会話を交わしていた。

「それで、これからの事なんだが、しばらく俺達三人は行動を共にする。それはいいな?」
「はい、良いですけど…三人って?」
「ああ、桃子!」

どうやら、憂には桃子が見えていないようだ。
ルルーシュは後ろを振り向くと、出入り口のドアに寄り掛かっていた桃子の名を呼んだ。

「は、はいっす」
「ああ、あなたは、さっきの」
「東横桃子っす」

名前を呼ばれ、仕方なく姿を現した桃子は憂に軽く会釈すると、ルルーシュの側に寄って行った。

「ルルさん、やっぱり私も話に加わらないと駄目っすか?」
「当り前だろう」
「はぁ。…でも、今ルルさんには私が見えてたみたいっすね。ゴスロリさんには見えてなかったのに」
317船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:33:44 ID:lhwk+mty
「ああ、少し慣れてきたかな」

「あのー」

そんなことを話している二人に対して、憂が少し不満げに声をかけた。

「それで、これからどうするんですか?」
「ああ、その前に憂、それに桃子も、これを持っておけ」

ルルーシュはデイバッグの中から先ほどの収穫、通信機を取り出して二人に手渡した。

「これは?」
「何っすか?」
「通信機だ。もしまたはぐれたら、これを使って連絡を取り合う。
 通信範囲は、この島くらいなら端から端までカバーできるはずだ」
「あ、はい、わかりました」
「了解っす」

そして、ルルーシュは簡単に通信機の使い方をレクチャーした後、今後の話に移った。

「さて、今後の行動についてだが、まずは二人の意見も聞いておこう。何かあるか?」
「いえ、私はルルさんにお任せするっす」

桃子は即答だった。

「そうか、憂はどうだ?」

視線を向けられた憂は、一呼吸間をおいてからそれに答えた。

「私は、早く阿良々木さんをブチ殺してギターを取り返したいです」
「…………!」
「フム、そうだったな。詳しく話してみろ」

そんな桃子の言葉に絶句する桃子と、当然のように応えるルルーシュ。
その反応は対照的だった。

(ダメだ。やっぱりこの二人にはついていけないっす)

そうして、憂がルルーシュに阿良々木暦と出会ったときの事を話し終えるまで、
桃子は二人の会話を聞き流す事にした。

「阿良々木暦と戦ったのが二時頃、場所はC-6か。」
「はい」

そんな桃子にはお構いなしに、憂とルルーシュの会話は進んでいく。

「五時間以上経っているな。流石にこれでは行き先を絞り込むことはできない。
 五時間あればこの島のどこへだって行ける」
「けど、お姉ちゃんを見つけたら戻ってくるって書置きが残ってましたし、
 一度、様子を見に戻ってみたいなって思います」
「なるほど、分かった。しかし、その書置きだと憂の姉が見つかるまでは戻らないとも取れるな」
「あ、確かにそうですね」
「可能性の問題だが、その阿良々木という奴が憂の姉…唯といったか?
 唯を見つけてその場所に戻ってくるとなると、今度は五時間では短い。そう急いで戻ることも無いだろう」

阿良々木暦と平沢唯が、少なくとも一時間ほど前の時点では出会っていない事を知っているルルーシュだったが、
流石にその事は口にせず、可能性は低いと言うだけに留めた。

「う〜ん」
「そんな顔をするな、行かないとは言っていない。近くまで行ったら立ち寄ってみよう」
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 19:35:09 ID:KquOmi1p
  
319船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:37:20 ID:lhwk+mty
「んーはい、分かりました。それでいいです。
 それで、ルルーシュさんはこれからどうしようと思っているんですか?」

憂は完全には納得できていないようだが、とりあえずルルーシュの考えも聞こうと一旦引いた。

「そうだな、とにかくこの地図にある施設を調査しようと思っている。
 憂は見ただろうが、この船も元はF-6の展示場に隠されていたものだ」
「はい」
「他の施設にも、同様に何かが隠されている可能性は高い。
 それに、地図にこうやって地図に記載されているんだ。
 他の参加者、例えば唯や阿良々木もこういった施設を目指すんじゃないか?」
「あ、そうですね」

唯と阿良々木の名前が出ると、憂もなるほどと頷いた。

「それで、どこから調べるんですか?施設といってもいっぱいありますよ?」
「ああ、施設の重要度を予測して優先順位を付けることは出来るが、それは所詮予測でしかない。
 実際のところ、手近な場所から順番に潰して行くしかないだろう」
「そうですか、近いところというと展示場、は、ルルーシュさんが調べたんでしたよね」
「そうだが、少し確かめたい事ができた。まずは展示場に向かう」
「え、何ですか?確かめたい事って」
「世界について、だな」
「世界?」
「桃子」
「は、はい」

今まで、全く会話に参加していなかった桃子が突然名前を呼ばれ、肩をビクッとさせた。

「あ、居たんですか」

憂には、また桃子が見えていなかったようだ

「お前は名前を呼ぶたびに驚いているな。
 まあいい、さっきお前と話した世界の事について、憂に教えてやってくれ」
「わ、私がっすか?」
「俺はこれから船を動かす。そっちは任せたぞ」

そう言うと、ルルーシュは船を操作するために席を立ち、桃子と憂の二人に背を向けた。
船を動かすといっても、同じブリッジ内で操作するのだから会話は可能なはずだが、説明は桃子に任せたという態度だ。

「何ですか?世界についてって」
「えっと、どうもルルさんと私とでは住んでる世界が違うみたいなんっすよ」

仕方なく、説明を始める桃子だったが。

「確かに、ルルーシュさんって独特の雰囲気ですよね。なんか、私達とは住む世界が違うっていうか」
「あ、いや、そう言う事じゃなくて…いや、それも言えてるっすけど、え〜と、ルルさ〜ん」

結局、桃子はひとりではうまく伝えることが出来ず、何度かルルーシュにフォローしてもらいながら、
どうにか憂に“別の世界”の事を教えたのだった。

「よし着いた。下りるぞ、二人とも」
「はい」
「了解っす」

そうこうしている内に、船は展示場の近くに接岸し、ルルーシュは二人を促しながら船を下り、
憂と桃子もそれに続いた。

「で、その蟹さんも連れて行くんっすか?」
320船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:41:11 ID:lhwk+mty
桃子と憂が少し遅れて船を下りると、そこにはあのおもし蟹を連れたルルーシュが立っていた。

「ああ、この手綱で操れるのは分かったが、どの程度動けるのか知りたいからな。
 手持ちのスペックは把握しておくべきだろう。…憂」
「はい」
「お前が乗れ。元々、こいつに手綱を付けたのは憂だからな」
「あ、はい。分かりました」

そうして、三人と一匹(?)は展示場へ向かったのだが、その途中もルルーシュは憂との会話を桃子に任せ、自分は黙々と前を歩いて行った。

「へぇ、東横さんって大人っぽく見えるけど、私と同い年だったんだね。
 桃子ちゃんって呼んでいい?」
「モモでも桃子でも、お好きなように呼ぶといいっす」
「うん、桃子ちゃん」

おもし蟹に立ち乗りしている憂の顔は、地面から約2メートルの位置にある。
桃子はそんな上から降ってくる声に答えながら、横の蟹を見て思った。

(うぅ、消えていたいっす)


展示場の中には、様々な宇宙に関わる物の模型が解説付きで展示されていた。
アポロやH−Uといったロケットや人工衛星、スペースシャトルに宇宙ステーション、
更には、軌道エレベーターやスペースコロニーといった物まである。
少し毛色の違った物では、ヨロイと呼ばれる機動兵器を衛星軌道上の倉庫に打ち上げるため奮闘した者達の事例が紹介されていたりもした。
そんな展示を見ながら、ルルーシュが二人に向かって口を開いた。

「これらはどれも、俺の世界には無かった物だ。お前たちの世界ではどうだ?どれか知っている物はあるか」

ロケットとは、言わば高度に計算された火薬の塊だ。
サクラダイトを利用した超電導技術が進歩し、ナイトメアフレームのような人型機動兵器が存在する一方で、
火薬類に関してはあまり発達していないルルーシュの世界において、ここにあるようなロケットは存在していなかった。
憂や桃子と出会う前にここを訪れた時、ルルーシュはこれらの展示にあるような物が実現しているとはとても思えなかったが、
異なる世界が存在するの可能性を知ったことで、もしやと思ったのだ。

「はい、アポロとかH−Uとかは聞いたことあります」

ルルーシュの問いに、まず答えたのは憂だった。

「こっちの、人工衛星や宇宙ステーション、それにスペースシャトルもニュースとかで見たことあります。桃子ちゃんは?」
「私も同じっす」
「そうか、もしかしたら憂と桃子は同じ世界の出身なのかも知れないな。
 こっちの軌道エレベーターやスペースコロニーはどうだ?」
「そっちは知らないです。桃子ちゃんは?」
「私も知らないっす。それに、西暦2297年なんて、もし同じ世界でもずーっと未来の話っす」
「だよね。こっちのアフターコロニーっていう年号は聞いた事も無いし。そっちのヨロイとかも見たこと無いです」

二人は、展示の説明文にあった年号などを見て、口々に言った。

「なるほどな、そういえば今は何年だ?自分の感覚でいい」
321船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:43:51 ID:lhwk+mty
「200*年っす」
「200*年です」

桃子と憂の声がほぼハモった。

「年号は、西暦か?」
「「はい」」

続けて聞いたルルーシュに、今度は二人の声が完全にハモった。

「えっと、ルルさんは自分の感覚だと何年なんっすか?」

少しの間、恥ずかしそうに憂と顔を見合わせていた桃子が照れ隠しのようにルルーシュに尋ねた。

「俺の感覚だと、今は皇歴2018年だな」
「皇歴?」
「2018年、ですか」
「ああ、聞いたことは…無いようだな。俺の世界ではよく使われている年号なんだが」
「嘘…じゃないですよね。ルルーシュさんって、本当に別の世界の人なんですね」
「ああ、これでハッキリした。主催者は別世界への移動、または別世界からの召喚が可能。
 そしてこちらは未確認だが、タイムスリップもできるのかもしれない」

その後、三人はトイレなどの休憩のついでに、少々雑談をした。

「そういえば、ルルーシュさんって外国の人ですよね?日本語お上手ですね」
「ここの展示なんかの説明も全部日本語で書いてありますけど、読めてるみたいっすね」
「ああ、もう九年以上日本で暮らしているからな。日本語は問題ない」
「ルルーシュさんの世界にも日本ってあったんですよね?」
「ああ、その辺りはあまり変わらない。
 世界が違うというよりは歴史が違うと言った方が正しいのかも知れないな」

そんな雑談を交えつつ、三人はこれからの行動を確認した。

「さて、この後だが…俺はこの近くの施設だとD-5の政庁が気になっている。
 しかし、そこでの成果によるが、その先は陸路を行く事になるかもしれないから、
 まずは先に船で回れる南側のホールやタワーの探索を済ませておこうと思う。
 その後は、政庁とその周辺の施設を調査し、C-6、憂の言っていた民家へ向かう。それでいいか?」
「はい」
「いいっすよ」

地図を広げて説明するルルーシュに、二人とも納得したようだ。

「よし、では船に戻るか」
「「はい」」

再び、憂と桃子がハモった。



「ルルーシュさーん、桃子ちゃーん、早く早くー」

憂を乗せたおもし蟹は颯爽と駆け、あっという間に船にたどりついてしまった。
憂はおもし蟹を操るのにだいぶ慣れてきたようだ。

「はぁ、あの蟹さん、見た目より速いっすね」
「どうやら、憂ともだいぶうち解けたようだな、桃子」
「え、まあ普通に話してる分には、その、普通の子っすね」

「早くー、早く阿良々木さん見つけて殺すんですからー」
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 19:44:32 ID:N9ZMPRJZ
 
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 19:45:44 ID:N9ZMPRJZ
 
324船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:46:57 ID:lhwk+mty
「……ああいうところは普通じゃないっすけど」
「フッ、だがもうそれほど怖くは無いだろう?」

ルルーシュの言う通り、最初は憂を怖がっていた桃子だったが、何度か声をハモらせているうちにその恐怖心はだいぶ和らいでいた。

「まさかルルさん、それを狙ってここに立ち寄ったんっすか?私とゴスロリさんがうち解けるように」
「さあな」
「はぐらかさないで欲しいっす」
「…いくら徒党を組んでも、烏合の衆では意味が無い」
「やっぱりキザな人っすね。言い方が」
「だから放っておけ……。む!」
「どうしたっすか?」

ルルーシュは突然黙り込むと、耳に手を当て、ゼロスイッチ(仮)とCDプレイヤーを取り出した。

「あ、クチビルさんの方、何かあったっすか!?」

桃子は知っている。
ルルーシュの耳には盗聴器が拾った音を伝えるイヤホンが入っており、CDプレイヤーは船井達の車に仕掛けた発信機の情報が表示され、
そしてスイッチは、車に仕掛けられた爆弾の起爆スイッチだという事を。

「静かに!」

だから、そう言われたら素直に黙る。

「……どうやら、車に仕掛けた爆弾は無駄になりそうだ」

しばらくしてルルーシュは顔を上げ、そう言った。

「それって?」
「車は乗り捨てられた。それと一つ情報だ」
「何っすか?」
「名簿に名前のあった荒耶宗蓮。こいつは魔術師で、このゲームの主催者側の人間らしい」
「ええ!?」
「今さらそんなに驚く事じゃない。
 参加者の中に魔術師がいるのも、主催者サイドの人間が紛れ込んでいるのも想定済みだ」
「そ、そうっすか」
「浮かない顔だな。何を考えている?」
「その、ルルさんは違うっすよね?」
「主催者サイドではないかという意味か?…違うと言えば信用するか?」
「それは……」
「では、もう俺は信用できないか?」
「……いいえ、そんなことはないっす!」
「ほう」
「今、私を不安がらせると、一番危険なのはルルさんっす。私、銃も持ってますから。
 もしルルさんが主催者側だったら、わざわざそんな危ないことはしないっす。
 ルルさんは多分、盗聴器で聞いた情報を正直に教えてくれんだと思うっす」
「フッ、わかっているじゃないか。説明する手間が省けたぞ」
「でも、聞くだけ聞いて黙っててもよかったのに、どうしてわざわざ教えてくれたっすか?」
「決まっている」
「?」
「俺たちは仲間だろう?」
「なっ」

意地の悪い笑みを浮かべてそう言ったルルーシュに対して、桃子は二の句が継げなかった。


【F-5/海上/一日目/午前】

325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 19:47:35 ID:N9ZMPRJZ
 
326船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:48:34 ID:lhwk+mty
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:アッシュフォード学園男子制服@コードギアス反逆のルルーシュR2
[装備]:ゼロスイッチ(仮)@コードギアス反逆のルルーシュR2、CDプレイヤー型受信端末、リモコン、イヤホン@現地制作、
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、ミニミ軽機関銃(183/200)@現実 、
ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュR2、“狐”“泥眼”“夜叉”の面@現実、
サクラダイト爆弾(小)×9、サクラダイト爆弾(灯油のポリタンク)×2@コードギアス反逆のルルーシュR2、
盗聴機、発信機×9@現地制作、単三電池×大量@現実、通信機×5@コードギアス 反逆のルルーシュ

[思考]
基本思考:枢木スザクは何としても生還させる
1:東横桃子、平沢憂と行動を共にする。
2:殺しも厭わない。東横桃子、平沢憂、スザク、C.C.、ユフィ以外は敵=駒。利用できる物は利用する。
3:スザク、C.C.、ユフィと合流したい。
4:南側の施設(ホール、タワー)を調査した後、政庁に向かう。
5:偽ゼロの放送を利用して、混乱を起こし戦いを助長させる。
6:“金で魔法を買った”というキーワードが気になる。
7:首輪の解除方法の調査、施設群Xを調査する?
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※参加者が異なる時間平面、平行世界から集められている可能性を考察しています。
※モモから咲の世界の情報を得ました。主要メンバーの打ち筋、スタイルなどを把握しました。
※自分のギアスも含めて能力者には制限が掛っていると考えています。
※おもい蟹が怪異たる力を全てルルーシュに預けました。どんな力を使うかは後の人にお任せします。
※モデルガン@現実、手紙×2、遺書、カギ爪@ガン×ソード、皇帝ルルーシュの衣装@コードギアス反逆のルルーシュR2、
 シティサイクル(自転車)、ジャージ(上下黒)、鏡×大量、キャンプ用の折り畳み椅子、消化器、ロープ、カセットコンロ、
 混ぜるな危険と書かれた風呂用洗剤×大量、ダイバーセット、その他医薬品・食料品・雑貨など多数@ALL現実
 揚陸艇のミサイル発射管2発×2機、ミサイル×4発@コードギアス反逆のルルーシュ
 現在支給品バッグに入れています。
※揚陸艇の燃料…残り23キロ分
※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。



【東横桃子@咲-Saki-】
[状態]:健康、ステルス解除
[服装]:鶴賀学園女子制服(冬服)
[装備]:FN ブローニング・ハイパワー(自動拳銃/弾数15/15/予備45発)@現実
[道具]:デイパック、基本支給品(-水1本)、FENDER JAPAN JB62/LH/3TS Jazz Bass@けいおん!、通信機@コードギアス反逆のルルーシュ
    遠坂凛の魔力入り宝石@Fate/stay night×10個
[思考]
 基本:加治木ゆみを蘇生させる。
 1:ルルーシュを利用し(利用され)、この場での生き残りを考える。
 2:覚悟完了。ステルスを使う時は麻雀で対局相手の当り牌を切る時の感覚を大事にする。
 3:ルルさん、キザっすね。ゴスロリさんは、少し怖くなくなったっす。
[備考]
 ※登場時期は最終話終了後。
 ※カギ爪の男からレイに宛てて書かれた手紙は中身を確認せずに破り捨てました。
 ※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。


327船旅 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 19:49:35 ID:lhwk+mty
【平沢憂@けいおん!】
[状態]:健康、拳に傷、重みを消失、ふわふわタイム(少し落ち着いてきた)、満腹
[服装]:ゴスロリ@現実
[装備]:ギミックヨーヨー@ガンソード、騎英の手綱@Fate/stay night、拳の包帯、おもし蟹@化物語、
[道具]:基本支給品一式、日記(羽ペン付き)@現実、桜が丘高校女子制服、カメオ@ガン×ソード、
COLT M16A1/M203(突撃銃・グレネードランチャー/(20/20)(1/1/)発/予備40・10発)@現実、
    果物ナイフ@現実(現地調達)、阿良々木暦のMTB@化物語、包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor  
    通信機@コードギアス反逆のルルーシュ
[思考]
基本:ルルーシュとバンドを組みたい。皆を殺す。
1:ルルーシュさんの作戦、言う事は聞く。お姉ちゃんは無理には殺さない。
2:モモさんはルルーシュさんが仲間だと言っているので殺さない。
3:阿良々木さんに会ったらブチ殺して、お姉ちゃんのギー太を返して貰う。


[備考]
※ルルーシュの「俺を裏切るなよ」というギアスをかけられました。
※中野梓についていた「おもし蟹」と行き遭いました。姉である平沢唯に対する『思い』を失っています。



【通信機@コードギアス反逆のルルーシュ】
黒の騎士団が使っていた、耳に引っ掛けるタイプの通信機。
328 ◆aCs8nMeMRg :2009/12/17(木) 20:01:15 ID:lhwk+mty
以上、投下完了です
何か、矛盾や問題点などありましたら、ご指摘お願いします
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 20:29:30 ID:M4aLYh5v
投下乙です

とりあえずルル組は纏まってきたみたいだな
車の爆弾は無駄になったがあらやんの情報は知ったか
ルルは想定済みだったようだが奴は一筋縄ではいかんぞ
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 20:40:08 ID:rLwcxZUn
投下乙です
桃子も徐々にこういう異常な集団に慣れていくんだなあ
車の爆弾は無駄になったが代わりに荒耶の情報を手に入れたがどうなる
331 ◆zZobvbdlGE :2009/12/17(木) 20:46:42 ID:bfCfzlvo
投下乙です!
ゴチャゴチャして分かりにくかった拙作を
綺麗に解き解して下さって感謝です。

船井さんが盗聴機を見つけてさわざわする姿を見たかったのですがw
死んでしまって残念です。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 21:04:58 ID:h67fnaW9
              ヽ、、  、、,r;、  ノ|
               ヽ丶、ツノハヾミく ノ    / 時 .あ ま ヽ
                ゝ彡" ,へ ヾミ、     |  間 .わ だ  |
                "/l l ヽノ  ,ヾ    | じ て    |
                 ハぅ、  {!   fj、    .|  ゃ る     |
                ,イ{ト、i   jl_   jl     |  な よ     |
               "'イl lヽ, '´ ハ`ヽll    ヽ い う    /
                 jlト、y'  { j  jl     \   な   /
                ,jltぅヽl r; 八、}ヌr、_        ̄ ̄
             ,. -"7l   ヽ ヽノ jヽ. ヽ、
            '"  / l   ,ゝ--',}  ヽ. `
      〃/ '" !:!  |:| :、 . .: 〃  i // `   ヽヾ
     / /     |:|  ヾ,、`  ´// ヽ !:!     '、`
      !      |:| // ヾ==' '  i  i' |:|        ',
     |   ...://   l      / __ ,   |:|::..       |
  とニとヾ_-‐'  ∨ i l  '     l |< 天  ヾ,-、_: : : .ヽ
 と二ヽ`  ヽ、_::{:! l l         ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 21:22:24 ID:s7Vs3SiX
投下乙
さすが天然ジゴロだ
女子二人を籠絡する事なんてルル山には造作もないぜ
そこにシビれる(ry
このPTは戦力低いからなぁ
達人クラスに当たったら一発で瓦解しそう
光秀とかw
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:11:33 ID:o73M7drX
憂はかなり底上げされてるけど、
光秀や魔眼コンビはキツイわな

ただ、ルル山さんの戦力差をひっくり返す「あの」戦術は見たいw
例によって例の如く、サクラダイト印の爆弾もあることだし
335 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:40:24 ID:5heacXw1
信長投下します
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:40:57 ID:rLwcxZUn
 
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:41:44 ID:rLwcxZUn
 
338 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:41:48 ID:5heacXw1
見据える先に島がある。
今立つこの崖からおおよそ100m。橋も船もなく、ただ視線のみがそこに届く。



城――ショッピングモールから出陣した魔王、織田信長。
その足が向いた先は、南東。
裏切り者マリアンヌが進言した廃ビルとやらに出向くつもりはさらさらなく、時間を置いた今ならあの化け物も移動しただろうという目算があった。
ショッピングモールを攻め落とした際、信長の前に立ち塞がった者はいなかった。
休息を取っている間に有象無象どもは我先に逃げだしたのかもしれない。
そう思った信長は行き先を島の東、施設が多く集まる市街地へと定めた。

十分ほど走っただろうか、何やら徹底的に破壊された鉄の道――線路へと出た信長。
鉄のダルマのようなものがいて、


『線路の破壊に伴い、D-2からF-3間の列車運行はストップします。
 F-3からB-4間はダイヤの調整のため一時列車をストップし、第一放送後から運行を再開します』


という掲示を行っていた。
この面妖な鉄の塊は立札の一種か、と見た信長は珍しく刀を抜くこともなくしげしげと見つめ、その内容を吟味する。
荷物から地図を引っ張り出して位置を確認。

「れっしゃ……馬車の類いであるか? が……肝心のれっしゃが見当たらぬな」

東へ向かおうと思えばF-3の駅からその列車に乗るのが一番手っ取り早いだろう。
信長は休憩がてらショッピングモールから大量に持ち出してきたハンバーガーへと齧りつく。
それほど腹は減ってはいないが、ここに来るまでの十分で既に軽い疲労を感じている。
万全を維持するために、食料はいくらあっても無駄にはならない。温存など考えず、瞬く間に数個、胃袋へと収めた。

「……ん?」

そして線路上を歩き始めた信長が見つけたのは見覚えのある蹄の跡。信長が数刻前に駆っていた馬の蹄痕だ。
マリアンヌと、彼女と結託した小娘によって奪われた信長の馬。どうやら奴らが逃走した道らしい。
湧き上がる赫怒。もはや追いつけまいとはわかっていても、信長はゆるりとその後を追うように歩き出した。

やがて崖に立つ。
島を見下ろし信長はどうにか渡る方法がないものかと思案する。
橋も船もないのは先に言った通り。
泳いでいくことは不可能ではないだろうが、鎧と刀を着て水練というのも馬鹿馬鹿しい。
何より無様に濡れ鼠になるのは御免だ、この征天魔王ともあろうものが。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:42:16 ID:44BJvd/T
 
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:42:26 ID:rLwcxZUn
 
341 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:42:39 ID:5heacXw1
しばし考えて、信長は崖を下り水面近くの浅瀬へと降りた。
鎧を脱ぎ、デイパックへ入れる。刀や装備も同様に。
このデイパック、いかなる技術によるものかいくら物を入れても底が見えず、中に入れたものの重量を無視することもできるらしい。
ショッピングモールでの戦利品はかなりの量になるのだが、口に手を突っ込み望む物を思い浮かべれば吸い付くように手の中に収まってくる。
ともかく身軽になった信長は軽く屈伸し、身構えた。
そして、

「この征天魔王の前に壁は無し――いざ往かん!」

走り出す。
超人的な脚力は石砂を爆発させたかのごとく吹き飛ばした。
小石が落ちるその前に信長の脚が伸び、神速で引き戻される。
水面を叩いたかと思えば一瞬で離れる。
しかし反動は確かに脚を押し上げ、身体が沈むことはない。

右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足。

霞むような速度で踏み出される一歩は硬質の音を響かせ過ぎる。
音が一つ鳴るたび、信長の身体は着実に前へ。

「おおおおおお――――」

水柱が次々に生まれ、噴き上がる。
傍から見ていれば何が起こったかわからないだろう。いや、わかっていても納得できるかどうか。
上半身を剥き出しにした壮年の男が、狂笑を浮かべ駆けていく。
ただ一つ異質だというなら、それは大地の上ではなく水面であるということ。
当然ながら、人は水に浮くような生き物ではない。
死体になり身体からもろもろのガスが抜ければ別だろうが……基本的には体重に負け、沈んでいくものだ。
しかし、沈むよりなお早く脚を踏み出せるのならば話は違う。

トカゲの一種には水面を走るものがいる。
彼らの脚には小さな毛が無数に生え、水に触れると開き抵抗を増す。
その上で1秒に20回という数のステップを踏み、それでようやく水面を走れるのだという。

「――――おおおおおおおおおお――――」

しかしこれはあくまで水上走行に特化した末の進化。当然人に当てはまる公式ではない。
人が水上を走ろうと思えば毎秒30mを走り抜けるほどのスピードが必要であると、とある雑誌Sで発表された。
人間が本来持つ脚力の、およそ15倍。

100mを10秒で走ることができればアスリートとしては最上位に近いと言っていい。
1秒に10m。要求されるのは更にその三倍。
いくら鍛えたところで到底人間が到達できる領域ではない。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:43:05 ID:44BJvd/T
  
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:43:08 ID:rLwcxZUn
 
344 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:43:31 ID:5heacXw1
だが、

「――――おおおおおおおおおああああああああああああああああァァッッ!」

ここにいるのはもはや人と同じ物差しで測ることすら馬鹿らしいほどの不条理。
その拳は岩を砕き、その蹴りは大地を割る。
刀を取れば嵐を起こし、雷轟き紅蓮舞う。

そう、戦国の世に生きる武将とは既にタダビトにあらず!

跳躍、着地。ドバッと砂浜に穴が開く。
瞬く間に海面を走破し、信長は孤島へと降り立った。
振り向けば最初の水柱がようやくにして霧散した。続く柱も呼応するように次々にその身を崩し、飛沫となって飛び散った。



再び刀と鎧を身につけ、信長は島の捜索を開始した。
痴れ者がいれば即座に斬り捨てる気であったが、意気と裏腹にどこにも生者の気配はなく。
遺跡の入り口らしき巨大な石扉の前で信長は捜索を切り上げた。

「ふん……無駄足であったか。まあいい、なれば東へ向かうのみよ」

マリアンヌとユーフェミアなる小娘の痕跡は既になく、この石扉も封じられているのか押しても引いても開きはしない。
斬るか、と考えた信長だが堅牢な扉を壊すには相応の力を必要とするだろう。
見たところ最近開けられた形跡もない。この中に誰ぞいる可能性は低いと見ていいだろう。

余計な手間を踏んだ、と信長は手近にあった岩を蹴り飛ばした。
苛立ち紛れに八つ当たりされた岩は哀れにも粉微塵に砕け、破片も瞬時にマントの一撃によって消え去った。

「……ん?」

しかし、短慮が功を奏したか。
岩が砕けた後、そこにはぽっかりと口を開けた奥へと続く穴があった。
どうやら隠し通路らしい。

「ふむ……よかろう、物のついでだ」

言って、魔王は深淵へと分け入った。


345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:43:50 ID:rLwcxZUn
 
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:43:51 ID:44BJvd/T
 
347 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:44:33 ID:5heacXw1
          ◆



「ぬう、ここは寺院か?」

隠し通路を抜けた先は開けた場所だった。
どこまでも果てがないかと思える暗い空間。石畳の床に石柱が立ち並び、おごそかな空気を感じさせる。
奇襲を警戒したものの、やはり人の気配はない。
せめて宝物の一つや二つないものかと信長は目を細めたが、装飾品や儀礼用の道具さえも見当たらず。
完全に、空振りだ。
階段を上り――信長は気付かなかったが、その階段は宙に浮いていた――信長は祭壇の天頂へと立つ。
足元の石を投げてみるが、どこにも当たった音はしない。

「奈落……か。チッ、余計な時間を食ったわ」

踵を返しす信長。
脚が一歩、階段を下りた瞬間――

「……ぬっ!?」

空間が輝きに満たされる。
闇が払われ陽光が満ち、閉ざされていた視界が明瞭になった。

それはまるで――そう、黄昏。

遥か彼方に日が落ちて、二重螺旋の塔が昇る。
浮かび上がったのは神殿。誰の記憶からも忘れ去られる、いつか朽ちゆくモノ。
名を、思考エレベータ。
人の無意識を繋ぎ心の壁を取り去る世界。

信長は知らない。ここが外界より隔絶されたある種の異空間であるが故に。
南の地で炸裂した太陽の破壊を。
変革者と戦国最強が、狂戦士に挑んだ一連の経緯を。
拡散したGN粒子は停止していた思考エレベータに吸収され、一時的に復活させた。
そう、全ての粒子が思考エレベータへと供給され、信長へは届かない。
だから届かない――彼らの想いも、託したいその意志も。

起動した思考エレベータが本来の用途とは別の働きを見せる。
すなわち、空間の接続。

信長の眼前に扉が開いた。
異なる場所と場所を繋ぐワームホール。
視界に映ったのは墓標。死者を弔うある種の儀式だ。信長が何の価値を感じることもない、負け犬の行き着く場所――

「む、おっ……!?」

ぐにゃりと映像が歪む。内側に、歪む。
砂時計の砂が下に流れ落ちるように、空間ごと吸い込まれる信長。抵抗する間はなく、抗えるほどに易しい力でもなかった。
激しい閃光。思わず目を閉じた。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:44:37 ID:rLwcxZUn
 
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:45:13 ID:44BJvd/T
  
350 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:46:22 ID:5heacXw1


――そして、目を開いた時そこは既に未知の景色。

四方を壁に囲まれた、日本風の間取りに囲炉裏、水瓶といった家具。
信長にも馴染みが深い、ごく一般的な民草の家だ。

「……なんだと言うのだ。ここはどこだ……?」

戸惑いつつも引き戸を開けた。手は刀に置かれいつでも抜き放てる。
そこで信長が見たのは、先ほど目にしたばかりの墓石の群れ、墓地だ。

家を出て、辺りを確認する。
ぽつぽつと見える民家、墓石、そして草原。
明らかにあの孤島ではない。

日は穴に入る前と位置を変えた様子はない。さほど時間は経っていないようだ。
地図を参照するに、この景観に当てはまるのはC-6、『死者の眠る場所』というところだろう。
さきほどの孤島から数えておおよそ4、5エリアの距離を一気にまたいだことになる。

「面妖な……これも帝愛の成せる業か?」

一瞬にして離れた場所へ移動する技術。
これは信長の天下取りに置いて非常に有益な技術に成り得るだろう。心中に湧き上がる興奮。
ここなら市街地に近い。おそらく群れ集まる弱者どもも容易く見つけられるだろう。

「ククッ……よかろう、帝愛よ。今は貴様らの計らいに礼を言ってやろうではないか。
 だがその力、必ずこの信長がもらい受ける。首を洗って待っているがいい……!」

歩き出す信長。
やがて視界の端にきらりと光るものがあった。
近寄って見るとそれは鎌だ。生乾きの血がこびり付いた、信長も見覚えのある大鎌が、樹に突き刺さっていた。

「これは……」

風に乗って微かに血の匂いがした。おそらくこの鎌に斬り裂かれた者が近くにいるのだろう。
引き抜き、その方向へと足を向ける信長。
さほどの時間もかけず、信長は哀れな犠牲者を発見した。
裏切り者を思い起こさせる桃色の髪をした少女。全身を斬り刻まれ、既に息絶えている。

「……ふん。やはり貴様か、光秀」

鎌の斬れ味、そして光秀の腕を持ってすればこのような小娘の命など一瞬で刈り取れるはず。
であるにも関わらず、嬲るように全身に散りばめられた斬撃の痕。
殺すことではなく、痛みを与えることを目的とした傷。間違えようもない、これはあの下種の所業だ。
351いざや開かん、冥底の門 ◆L5dAG.5wZE :2009/12/17(木) 22:48:13 ID:5heacXw1
「ククク……ハハハハハハッ! いいぞ光秀、未だ息災であるようだな!?
 貴様の首を落とすはこの信長よ――死ぬでないぞ! すぐに余が喰ろうてやるわ!」

ブンと鎌を一振り。奴の鎌で以て奴の命を絶つ――中々に興をそそるではないか。
右に長刀、左に大鎌。
魔王は東の地に降り立ち、獲物と元部下を追い求め動き出す。
亡骸にはもう目もくれず、手近にあった筒を斬り飛ばした。

「いざや開かん……冥底の門!」

弾けた黒い液体が少女の遺体を汚す。そして噴き出した闇が一帯を消し飛ばす。
飛び散る雫を舌で舐め取り、信長は次なる贄を探すべく疾走を開始した。




【C-5/死者の眠る場所/一日目/昼】


【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:健康、全身に裂傷、満腹
[服装]:ギルガメッシュの鎧、黒のマント
[装備]:物干し竿@Fate/stay night、桜舞@戦国BASARA、マシンガン(エアガン)@現実
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン91本(合計100本×各30発)、予備の遮光カーテンx1 、マント用こいのぼりx1
    電動ノコギリ@現実 トンカチ@現実、その他戦いに使えそうな物x?
[思考]
基本:皆殺し。
1:いざ戦場へ ……。
2:目につく人間を殺す。油断も慢心もしない。
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
4:首輪を外す。
5:もっと強い武器を集める。
6:ちゃんとした銃器を探す。
8:高速の移動手段として馬を探す。
9:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
※ルルーシュやスザク、C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。
※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。
※トランザムバーストの影響を受けていません。
※思考エレベータの封印が解除されましたが、GN粒子が近場に満ちたためです。粒子が拡散しきれば再び封印されます。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:50:00 ID:5heacXw1
投下終了
支援ありがとうございます
タイトルは>>351の通り、「いざや開かん、冥底の門」です
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:58:56 ID:5heacXw1
と、書き忘れましたがいくらなんでもGN粒子はそんな万能じゃないと思われる方もいらっしゃるだろうと思いますので代替案は考えてあります。
少々展開は変わりますが大筋では一緒ですし
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:02:34 ID:M4aLYh5v
投下乙

偶然から信長が激戦区へワープか
これは次に会う奴次第で何人か死ぬかも
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:06:40 ID:o73M7drX
GN粒子なら仕方ない
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:17:58 ID:AucCO57G
GN粒子が一瞬でやってくれました
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:25:28 ID:7AnBl7u+
GN粒子なら余裕
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:25:45 ID:xyIM6TxD
今現在の状況見ると船井案マジ秀逸だったな
コロシアムから抜け出せればかなり生き残る可能性はあった
ムギと唯を連れションに行かせなければ…
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:26:05 ID:vx9G1Y+q
驚きの効果!真のイノベイター刹那パワー!
◆GN粒子で必ず幸せになれる!!◆

--刹那GN粒子ご利用者の声--

○ルイス・ハレヴィさん(MSパイロット)
「私、戦争で家族を皆失って…仇を討つために軍人になったんです。
 でも、刹那GN粒子のおかげでそんな不毛な気持ちも消え去りました。
 今は彼氏と二人、とってもハッピーな毎日です♪」

○ラッセ・アイオンさん(砲撃手)
「僕は戦争で敵に撃破されたり、不治の病に冒されたり、スパイに撃たれたりしてずっと
 様々な疾患に悩まされていたんです。
 でも刹那GN粒子のおかげで今は完全な健康体。秘蔵のビキニで泳ぎに行こうかな」

○ビリー・カタギリさん(開発者)
「4年間つきあってたのに行方をくらましてた彼女が帰って来ました!
 非科学的なものは信じない僕ですが、刹那GN粒子だけは本物ですね!」

○ティエリア・アーデさん(機械端末)
「最近の僕は、ヴェーダからもはじかれ、使えない子扱いされてプライドもズタズタでした。
 今は刹那GN粒子の力で自分がヴェーダになれました!感動です!」

○ハブラレルヤ・ハブティズムさん(のけ者)
「刹那GN粒子のお陰で幼馴染の記憶も戻り、いまでは楽しく登山生活を満喫しています!
 えっ、贖罪? 気が向いたら受けますよwww」

360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:32:01 ID:M4aLYh5v
>>358
言われてみれば確かにw
でもその後が続くかどうか…

>>359
ワロタw
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:44:39 ID:rLwcxZUn
投下乙です
GN粒子マジ万能w
一方さん、信長が缶コーヒー足蹴にしたと知ったらキレそう
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:51:50 ID:XGX//W8i
仮投下スレに投下されていたので、代理投下します。
363(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:52:41 ID:XGX//W8i
 地を駆けるものが、空に舞う光に気付き、見上げる。綺麗だ。しかし、雪でも霙でもなければ、蛍でもない。この淡い光は何だろうか。
疑念を抱きつつ見上げるものに、光は容赦なく降り注ぎ、身を包む。それは傷口も例外ではない。光はそこから侵入し、

 
 やがて傷諸共消えた。



「何だこの粉」
 だるそうにテンガロンハット越しに空を見上げ、男が呟く。名はヴァン、人呼んで、『不死身のヴァン』。
先程まで文字通り体の一部である愛機、《ダン》を探し、疾走していたのだが、やがて疲労が蓄積し、現在は猫背でだらだら歩いていた。
「味は……ない。冷たくもない。……まあいいか」
 雪でも砂糖でもないようだが、苦くも痛くもないし、問題はないだろう。今はダンを探さなければ、ヴァンは歩みを止めず、大地を見たまま進み続ける。
 しかし、これがすでに間違い。海原光貴から行き方も聞いた。地図を見て名称と位置は理解できた。だが、肝心なものが足りていない。
それが不足していては、勝手知ったる土地であるならまだしも、未知の土地で目的地へ向かうのは難しい。現時点の彼に必要なものそれは――――。
 
 ――――方角である。

 これがなければ、どうしようもない。それは目を瞑って数メートル歩けば分かるだろう。
自分はまっすぐ歩いているつもりなのに、気がつけばズレて予想外の方向を進んでいた。学生がバリアフリーなどを知る上で体験することなのだが、
当然ヴァンにそのような経験はない。いつだって行き当たりばったりの彼に、そんな観念があるかどうかさえ疑わしい。
方角を知る道具は参加者全員に支給されているのだが、この男がそれを記憶しているわけもなく、
結果、彼の進路はズレにズレ、最終的にはG-4あたりの堤防に行きつくだろう。

 ――――どなたか、どなたか!

「んあ?」

 ヴァンは進めていた足を止め、背を伸ばす。周囲を見回すが、人影はなし。しかし何度もその声は聞こえたので、応えてみることにした。
「いるよ」

 ――――おお、どなたかは存ぜぬが、馳せ参じる故、しばし待たれよ。

 やがてぱからぱから、と蹄の音が大きくなり、ヴァンは昔自分が乗ったロバを思い出した。パリカール、あいつ元気にしてるかな……。
しかし馬に乗ってるなんて変わった奴だな。ヨロイじゃないにしても、他に乗り物はあるだろうに。
 そんなことを考えながら待っていると、はたして馬は粒子舞う中から現れた。しかしその上にいるであろう人物の姿はない。
 ――――そなたが拙者に呼応した者か。

「あ……?」
 見回すが、やはり人の姿はない。通信機のようなものも見当たらなかった。ヴァンがその不可解な現象に途方に暮れていると、馬がブルルと鳴いた。
 ――――ああ、すまぬ。先に釈明致すべきであったな。
 右脚の蹄が馬の頭部を指す。ヴァンは驚き、口を大きく開けた。恐る恐る目の前のそれに問う。
「お前がしゃべってるのか……?」
 ――――いかにも。拙者は伊達軍は総大将にして奥州筆頭・伊達政宗が愛馬ぞ。

 礼儀正しく、その馬はヴァンに礼をし、そう名乗った。しばし男は、その光景に沈黙という名の思考停止を行わなければならなかった。


364(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:53:35 ID:XGX//W8i


 理屈や理由は存ぜぬが、されど人と喋れるのは好都合。伊達軍の馬、通称馬イクはこの状況にたいした疑問は持たなかった。
平素も奇奇怪怪な武人と相対す戦場にいるのだから、当然といえば当然かもしれない。
あの奇妙な光を見てから、急激に体の調子がよくなった。これなら通常――いや、それ以上の力が出せるだろう。
しかし問題はにおいが綯い交ぜになり、主君がいずこか知れぬこと。ならばと取った策は、先刻獲得したこの能力の行使。すなわち、聞き込みである。
今まで聞いた会話から、片倉小十郎がすでに亡き者というのは承知している。つまり、目下のところ探すべき御方は伊達政宗のみ。
馬イクはそこから聞きだすことに決めた。
 
 ――――率直に問おう。我が主君、伊達政宗はいずこか。
「ダテマサムネ?」
 ――――『独眼竜』の異名を持つ、蒼色の鎧を身に纏う、隻眼の男よ。
 黒衣の男は依然光舞う中天をしばらく見上げた後、ぽつりと、
「悪い、覚えてねえ」
 ――――そうか。
「すみません」
 ――――気に病むことはない。そなたも探し人あるなら申してみよ。
「ダンを探してる」
 ずいぶん変わった名前だな、と馬イクは鬣を揺らす。だん、団、弾、段……おそらくは男の名前だと思うが。
 ――――何か特徴はないのか。
「ヨロイだ」
 鎧……。武人の類か。まるで自身の主君のようななりをしているな。しかしそのような風体は、主の敵である織田信長しか知らぬ。馬イクはすまなそうに頭を垂れた。
 ――――すまぬ。そのような者存ぜぬ。
「そうか」
 明らかに残念そうな顔で頷き、男は「じゃあな」と歩きだす。しかしこのまま彼と別れるのは得策ではない。馬イクは素早くそう判断し、思念を飛ばす。
 ――――待たれよ。その『だん』とやらのあてはあるのか。
「『宇宙開発局』にいるかもしれない」
 ――――ならば拙者を使うとよい。中々の駿馬と自負しておる。そなた、名は?
「ヴァンだ。今は『不死身のヴァン』で通ってる」
 ――――ではヴァン殿、拙者の背に。
「いいのか。お前も人を捜してるんだろ?」
 ヴァンが跨りやすいように脚を曲げた馬は首を縦に振る。
 ――――然様。しかしいずこかは知れぬ。ならばヴァン殿と共に捜すも一理。それにこの身では何かと不自由多く、ヴァン殿の手を借りたい時もあるやもしれぬ。その時はお頼み申す。
「悪いな。じゃあ行ってくれ」
 その背にヴァンが乗ったのを確認した時、馬イクは何かを察した。素早くそちらを向き、蹄で地を蹴る。
 ――――ヴァン殿、すまぬ。拙者の探し人を見つけたやもしれぬ。
 しかしおかしい。そうであるなら、たとえこんなに胞子のような光が舞っていようと、気付けるはずなのに。いやににおいが希薄だ。
 何もなければいいが……。


 イオリア・シュヘンベルグは来るべき異種との対話に備えて、人類に革新を行う計画を考案し、後の世代に残した。
それはいつまで経っても争いを止めない人類を統一し、その状態で外宇宙へと進出させるための計画。GN粒子やリボンズ・アルマークなどのイノベイドは、その布石でしかない。
人類を進化形態である『イノベイター』に移行させ、戦争という愚かなシステムから脱却させる。それが彼の狙いであった。
 
 ――――そう、あくまで人類という種にしか、彼は想定や想像をしなかった。他の種は度外視されている。しかしそれも当然である。
他の生命は食物連鎖という流れに従って争うが、ヒトは四六時中自己の利益のために環境も時勢も無視して戦う。
当人は違えど、ヒトというカテゴリーはその規模を拡大しつつ、貪欲に戦い続ける。それは他の種に見られない傾向。
だからイオリア・シュヘンベルグはそれを危険視し、計画を考案した。故に彼もまた知らなかった。
他の種にGN粒子がどのように作用するかを。『イノベイター』というカテゴリーが人類だけに及ばないということを。
365(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:54:22 ID:XGX//W8i
「死んでる」
 ――――然様か……。
 ヴァンの背にいるのは、主君の懐刀である『竜の右目』――片倉小十郎であった。
さすがに駅には入れず、馬イクはヴァンに捜索と、もし発見できたなら自分のところへ連れてくるよう頼んでいた。
わずかに漂う死臭と、生気のまるでない顔を見ては、さすがにこの傑士の死を馬は認めざるを得ない。
 ――――拙者の背に乗せて下され。
「埋めないのか」
 馬イクは首をゆるゆると横に振った。ヴァンは不思議そうな顔で馬の背にその亡骸を載せる。
死後硬直がすでに始まっていて苦労したが、なんとか落ちないようにはできた。
 ――――小十郎殿は、奥州の地で眠らせてやりたい。
『伊達軍は一人も欠けてはならない』。これは主君や小十郎が言っていたこと。なれば、骸であろうと奥州ないしは伊達政宗のところに届けるべきだ。
馬イクはそのように判断した。そこでふと、この馬の鼻が何かを感じ取る。この芳しく、甘美な香りはいったい……。
 ――――ヴァン殿、小十郎殿に巻かれた包帯を拙者の鼻に。
 すでに馬上にいた男は、小十郎から包帯を無遠慮に取り上げ、それを敏感な鼻腔へと近づける。

(なんと! これは……!)

 そこで馬イクは桃源郷を観た。その残り香に、幻想的な何かを見出したのだ。この濃厚かつ芳醇な異香はまさしく美女のそれ。会ったこともないのになぜわかるか? そんなもの当然ではないか。


 美 女 が く さ い わ け が な い!


 もう一度言おう。


 美  女  が  く  さ  い  わ  け  が  な  い  !


(―――トレース・オン)

 残された香りを抽出……解明。現在空気中に滞留するものから該当するもの……解明。そこから導き出される根源の位置……解明。

 捉えた!

 ここから北北東を現在移動中。速度からいって徒歩ではない。――馬か。しかし追いつけないスピードではない。今の自分なら備中から摂津まで三日で走破できるだろう。
理由も理屈も分からないが、なぜかそんな気がする。
366(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:55:22 ID:XGX//W8i


 大気中のGN粒子が、刹那・F・セイエイ同様、この軍馬にも変革を起こしていた。馬イク自身の自己の発達――革新を求める心に呼応し、その身を強靭に、賢明にしていく。
人間と違う点は、劣悪な環境で生きてきたため、それに対抗するだけの抵抗力が備わっていたということ。これが肉体の成長にも結びついた。また、優れた適応能力は早々にGN粒子を体に馴染ませる。
ちなみに人類は環境を改善することによりその必要はなくなったが、かわりにその持て余された能力がアレルギーなどを引き起こし、悪影響になってしまっている。
その代替がナノマシンだ。人類はそれに頼ることにより、一層生物そのものが本来持つ力を失っている。
 ともかく、そうして獲得した新たな能力――異性の匂いに含まれるフェロモンを手掛かりに、対象の位置をリアルタイムで特定し、その光景を脳裏にフィードバックする――高度な空間認識能力を無駄遣いし、馬イクは目標の居場所を特定してみせた。



 ――――いざ! いざ! いざ! いざ! いざ――――!

 咆哮とともに、軍馬は大地を飛翔するがごとく駆ける。その急激な加速には馬イク自身驚愕したが、それ以上に驚いたのは手綱を握る男。
「お、おい! ダンはそっちじゃねえ!」
 自身の行くべき場所(どちらにしろ間違ってはいるが)を指して叫ぶヴァン。しかし馬イクはどうということはない、とでも言うように、
 ――――いえ、その『だん』とやらはこちらにあります。
「本当か」
 ――――はい。拙者、感知いたしました。これよりそちらへ向かいます。
 もちろん嘘なのだが、ヴァンは嬉しそうに頷く。急激に成長した頭脳は、こういった姦計にばかり使われていた。しかし考えてみれば当然ではないか。
理性や品性とは、成長して必ず養われるというわけではない。ヴァンがいい例だ。無垢な赤子に学者レベルの知性を与えれば、欲望の赴くままにその知能を使うであろう。
いわば、知的なエゴイスト。ただのスケベな馬鹿より数段タチが悪い。人類が今日までの技術や文化を生み出したのはまぎれもなく『利を求める心』であるが、いつだってその『欲』を私利私欲に使おうとするものがいるものだ。
まあ、ありていに言えばそういった『才能の無駄遣い』をこの馬はやっているのだった。現在進行形で。

 史実おいても、神話においても、女は男を惑わすもの。傾国の美女、楊貴妃がそうであるように、アーサー王の王妃、ギネヴィアがそうであるように。
どんなに重要で高位な身分であろうと、どんなに屈強で誠実であろうと、それはあまりに逆らい難い。男所帯で生まれ育ったものなら尚更だ。
刑務所ではラジオで女の声が聞こえただけで歓喜することもある。それほど、異性の存在は偉大なのだ。
さらにまるでそういった耐性がないとなれば、もうどうしようもない。表面で掲げた大義など、内面で膨れる情欲で容易く消し飛んでしまう。馬とそういう関係になりたがる人がいれば、その逆も然りだ。
向かう先に美女がいる。そう考えるだけで、色々と逆立つのはしようがない。むしろ、健康であると、元気であると称賛すべきであろう。もう何もかもがビンビンである。
367(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:56:18 ID:XGX//W8i


 ――――――――以下、想像――――――――




 間一髪であった。悪漢に襲われ、絶体絶命の彼女を私は颯爽と助けたのであった。

「危ないところを助けていただき、ありがとうございます。ですがお礼できるような品は何もないのです……」
 すまなそうにしている彼女に、私は前髪(鬣)をかき上げ、爽やかに言う。
「HAHAHA。そんなものいりませんよ。弱きを助け、悪を挫くのが私の務めですから」
 どうということはない。こんなもの、赤子の手を捻るようなもの。
無様にのびている賊(真田幸村 ※友情出演)を尻目に巧笑する私に彼女は潤んだ瞳を向けて、
「あの、ですから私を貰っていただけませんか……?」
 ふふふ。私も罪作りな男だ。こんな美しい女を虜にしてしまうなんて。だが、私達には絶対的な壁がある。
それがあっては、どんなに崇高で強大な愛であったところで、何の意味も持たないだろう。悲しいことだが、それが世の常、真理なのだ。
私は憂いを浮かべた顔で、悲しい宣告をしなければならなかった。本当に、私は罪作りだな。
「しかし私達は種が違う。結ばれるべくもありません」
「そんなもの! 愛に種族は関係ありません!」
 嗚呼、何と健気な。私はそっと彼女の小さな肩に手(蹄)を回す。彼女の小さく整った顔が朱に染まる。それは暮れなずむ空のせいではあるまい。
私はその美女の耳にそっと唇を近付け、囁く。この胸に秘めた想いを、叶わぬと諦めていた恋慕を。
「負けたよ。今度は僕の口から言わせてほしい」
 夕陽の海岸をバックに、私は真摯な視線を愛しい女性にぶつける。抱きつつ、放つべきではないその心情を、私は臆せず述懐する。
「僕の子を産んでほしい」


 〜数年後〜


「はい、パパ」
 愛娘の作った花の王冠をかぶる私。それを優しげに見守る妻。
 何のことはない。いつもと同じ、平穏な日々。
 ああ、しかし、三人というのはやはりさびしい。
 今まであんな大所帯で暮らしていたからだろうか。
 新しい家族について娘に聞こえぬよう打診すると、
 彼女は顔を真っ赤にして私の胸元をぽかぽか叩いた。
 不思議そうにしている娘に向かって私は微笑みながら問う。
「弟と妹――――どっちが欲しい?」



【馬イク@戦国BASARA――――――――――――――HAPPY END】




 ――――――――以上、想像――――――――



(ふっ、俺も甘い夢を見たものだな)
 その思考とは裏腹に、原型が分からない程にゆるみきった笑顔である。よだれもだらだら垂れている。もう本当に原型が分からない。
 

 変わっていく。馬イクがGN粒子とともに変わっていく。馬イクが、変わっていく……。
368(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:57:35 ID:XGX//W8i


 この物語に題名をつけるなら、様々なものが用意できよう。

『勇者は再び』
『ハートに火をつけて』
『その絆に用がある』
『夢の途中』
『輝くは電流火花』
『キャプテン逃げて』
『ワンダフル・ユニバース』
『誰がために』
『血風大戦地! 小十郎絶対絶命』
『報われぬ魂』
『美女鹵獲作戦』
『教義の果てに』
『性者の帰還』
『決意の朝(昼)』
『折れた翼』
『悪意の矛先』
『通報しました』
『絆』
『馬を止めて』
『終わりなき詩』
『天馬再臨』
『戦う理由』
『傷痕』
『再会と離別と』
『無垢なる歪み』
『これはひどい』
『拭えぬ過去』
『天の光』
『戦場で待ってる』
『美女攻略戦』
『匂いが嗅げる(原題:歌が聴こえる)』
『悲劇への序章』
『散りゆく光の中で』
『交錯する想い』
『イノベイターの影』
『アニュー・リターン』
『革新の扉』
『未来のために』
『命の華』
『変態』
『BEYOND』
『再生』

 もっとも、どのようなタイトルが付けられるかは、結末次第なのだが。

 光を放つ瞳が映す未来はいかようなものか。

 はたして――――。
369(代理投下)その絆に用がある ◇qh.kxdFkfM:2009/12/17(木) 23:58:57 ID:XGX//W8i


【C-3/一日目/昼】



【伊達軍の馬@戦国BASARA】
[状態]:イノベイターの兆し ヤる気満々
[服装]:なし
[装備]:ゲイボルグ(メタファー)
[道具]:片倉小十郎@戦国BASARA   
[思考]
基本:乗せるなら美女。乗るなら美女。
0:お前(福路美穂子)を俺の女にする! 嫌とは言わせないぜ。
1:匂いの根源(福路美穂子)のもとへ向かって駆けるッ!
2:俺は! 美女(福路美穂子)と! 添い遂げるッ!
3:それから後はヒヒーンする。
4:■■■を■■■■。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜省略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
110:え? 筆頭? ああ、筆頭ね、ひっとー……。会ったら乗せるよ、うん。多分、きっと、もしかしたら、万が一……。
[備考]
※バイクのハンドルとマフラーっぽい装飾類を失くしました。見た目では普通の馬と大差ありません。しかし、色々な意味で「馬イク」です。
※主催の調教の効果消失。乗せる人間をある程度選ぶようになりました。
※飼い主(伊達政宗)がものすごく近くにいることにまるで気付いていません。
※GN粒子の影響下において意思の交信が可能です。こちらが伝えようと思ったこと以外は相手に伝わりません。可能領域・限界時間については不明です。
※GN粒子の影響で身体に変化が起きました。少なくとも身体能力や新陳代謝は向上しています。
※ライダーのにおい(■齢■)は本能的に拒絶し、認識しませんでした。


【ヴァン@ガン×ソード】
[状態]:満腹、ダンを奪われた怒り
[服装]:黒のタキシード、テンガロンハット
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[道具]:基本支給品一式、調味料×大量、徳用弁当×6、1L入り紙パック牛乳×5
[思考]
基本:ダンを取り戻す
0:パリカールとはえらい違いだな。
1:とりあえずこの馬と一緒にダンを探す。
2:機械に詳しい奴を探す
3:向かってくる相手は倒す
3:上条当麻を探して殴る
4:主催とやらは気にくわない
[備考]
※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。
※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。
※死者が蘇生している可能性があることを確認しましたが、結論は保留にしました。
※馬イクに騙されていることに気付いていません。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 23:59:44 ID:XGX//W8i
311 名前: ◆qh.kxdFkfM[sage] 投稿日:2009/12/17(木) 20:39:46 ID:WXeBT.HE
 以上で投下を終了させていただきます。
問題なければ代理投下お願いいたします。


   あ…ありのまま 起こった事を話すぜ!
         
 『おれは主君の元へ颯爽と駆ける馬の話を書いていた
  と思ったらいつのまにか何と言っていいかよくわからないものができていた』
       
    な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
    おれも何をされたのかわからなかった…
    
    頭がどうにかなりそうだった…
   
  その場の勢いだとか酔った勢いだとか
  そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 結論:ギアス怖い


−−−−−
以上で代理投下終了です。
投下乙でした。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:03:23 ID:Wb6InxiP
馬ぁぁぁぁぁかじゃねぇの?!!!!!(AA略)

アホすぎるw
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:05:08 ID:HPkBukxA
投下乙

これはwwwwwwwww
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:12:25 ID:oAuYWrjl
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『馬イクがロワに参戦したと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか(悪い意味で)クロミラ化していた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |


な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
思考する支給品だとか牛に化けて女に近づいて孕ませたギリシャ神話の主神だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:32:32 ID:e5ov5bVu
皆さん、投下&代理投下乙

>船旅
ルル組がまとまってきた感があるな
さて、この先で彼らの見つけるものはなんだろうな
しかしこの憂にはなかなか馴れん

>いざ開かん、冥底の門
信長こぇぇー
武器も手に入り、体力十分、いざ激戦地に……
怖すぎる

>その絆に用がある
次の一言をもって感想に替えさせていただきます

馬イク自重wwwwwwww
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:34:47 ID:UjHkF5DI
螺旋力覚醒の次はGN粒子で覚醒ですね、分かります
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:44:31 ID:mxb8UjFs
GN粒子なら仕方ないなw
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:50:39 ID:vzrmxJT3
投下乙です
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 00:59:22 ID:vzrmxJT3
途中送信失礼。
◆qh.kxdFkfM、投下乙です。
孤立していたヴァンが馬に乗れたのはいいですね。これで大きな話に絡めそうです。

ですが、いくつか受け入れがたい点もございます。
1、GN粒子が万能すぎること
2、支給品である馬が一個のキャラとして確立してしまったこと
3、馬の思考があまりにもふざけすぎていること
です。
ネタとして見るならとても面白いです。が、これをリレーしろというのはあまりに酷ではないでしょうか。

GN粒子で傷が回復する、馬がイノベイターになる、伊達政宗よりも女性の捜索を優先する・・・
正直なところ全て行きすぎという感じがします。

回復するならそもそもバーサーカーのゴッドハンドが削れたり刹那や本多忠勝が死ぬこともなく、
一度粒子を浴びただけでイノベイターになれると言うなら会場にある他の動物(武田軍の馬やおもし蟹)なども例外ではなく、
また思考はもう前話のそれと乖離しているとかそういうレベルですらありません。

正直なところ、これらは修正が必須ではないかと私は考えます。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:09:59 ID:JHnaOVPG
馬自体が元々ネタから発生したようなもんだから俺は余裕で許容できるがなあ
これでヴァンも他のキャラと絡めそうだしいいんじゃないか
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:11:04 ID:mxb8UjFs
             /)
           ///)          /
          /,.=゙''"/、______//
   /     i f ,.r='"-‐'つ______/  スモールなことはノーサンキュー!!
  /      /   _,.-‐'~/ \__/⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃■■  (●)V\
   /    ノ    il゙フW:::⌒(__人__)⌒:::W\
      ,イ「ト、  ,!,!|VW   |r┬-|     V|\
     / iトヾヽ_/ィ" ̄ ̄|===`ー'´=====/\\
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:12:26 ID:vzrmxJT3
>>380
茶化したいのなら黙っていてもらえませんか?
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:13:09 ID:JHnaOVPG
てかリレー上でも馬の思考的にも全く矛盾がないだろ
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:13:51 ID:Wb6InxiP
おぉ怖い
小便ちびっちまいそうだぜ
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:14:34 ID:bjsJK4NY
ありとは思うけど、
主人を察知して奮起したのに女に欲情して主人なんかどうでもいいよww
ってのは、前SSの流れを無視しすぎとは思う。
まあ次SSで軌道修正はされるだろうけど。
さらに悪化して美穂子襲ったりしたらこのロワはそういう企画なんだと認識させてもらうがw
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:21:39 ID:VkPYOqhN
投下乙です
とりあえず 馬 イ ク 自 重 し ろ !!!!!
こんなひどい状態表見たのは久しぶりだwwwww

修正は別に要らないと思う
どうせ支給品の一つだから次からばっさり状態表なくしても良いわけだから
少なくとも俺が書き手ならそうする
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:27:48 ID:lwUrRBBd
全く問題なし
細かいこと気にするケツの穴の小さい男はママのおっぱいでも吸ってろ!
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:27:56 ID:Q8VrxxSg
つーか、これで筆頭と合流しないですれ違ったら色々とあれなことになるなw
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:29:37 ID:JHnaOVPG
会えそうでなかなか会えない。
すれ違いこそロワの醍醐味だな
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:46:29 ID:HPkBukxA
したらばの議論スレより書き手mist32RAEs氏の「思春期を殺した少年の翼」へのSS修正要求が纏まりました

・ヒイロの思考欄の基本方針を曖昧にして次の書き手に任せる方向に修正する

今回は以上です
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 02:59:56 ID:DJSX4E4I
議論厨は市んで
391 ◆mist32RAEs :2009/12/18(金) 04:20:40 ID:nulEssFW
>>389
了解しました。修正にかかります
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 05:33:58 ID:PfLS8sem
>>385
そういうことは書いてから言えよ
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 09:21:59 ID:uWDa5Eyb
投下乙どすえ

まあ、思考ブッ飛んでるといえば、2ndで

・首輪の電撃を喰らい過ぎた天才少年が幻覚を見た揚句全ての考察を忘れたり

・椎茸っぽいキノコを食べた魔物とアニキと鰤が暴走したり

といった「ふざけんな!!」といった内容の妄想だって通った前例があるんだぜ
それに比べりゃこの程度許容範囲内だお
だが、もし美穂子と(自主規制)しやがったら……まあ、可能性は低いかw
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:05:39 ID:iLJdHOnA
これぐらいやってもらわにゃそのうち参加者達のもっと濃い話に埋もれていくからな…
このSSなら今ロワの特徴の一つとして馬イクの存在を読者に刻み込めるしいいんじゃないか?
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:15:30 ID:qX4lLYFj
たまに見かけるけど、
仮投下では何も言わずに、
本スレに投下されてから文句を言うヤシって
何なの?
気に食わないなら、本スレに投下される前に反対
すればええやん。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:20:12 ID:VkPYOqhN
単に仮投下されていた事に気付いてないだけなんじゃない
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:35:25 ID:NCXNdLcu
その為の仮投下スレなのにな

どうやって難癖つけてやろうか、っててぐすね引いてる人は、
ちゃんと仮投下を確認することを怠らないで欲しい

少なくとも今回のは賛成が多く、反対もないから投下されたんじゃない
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:36:45 ID:nAJaqb0K
議論する気があるなら、そのくらい気付いとけと個人的には思うけどねー
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 11:13:05 ID:VkPYOqhN
本スレ中心で見ている人とかいると思ったが昨今そんな人もいないか
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 11:15:32 ID:uWDa5Eyb
今回は仮投下されて半日位は経ってる筈だし、代理で投下されてるから書き手に責任は無い
仮投下に気付かなかった時点で後手だよ
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 11:20:14 ID:+irOol1S
馬は意思アリ支給品の範囲内でやって欲しい

あんまり悪ノリされると拒否反応が出るのは分かるだろ
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 11:22:03 ID:Wb6InxiP
つまり今回は全くセーフって事ね

…レイニーデビルに意志持たせるのは、やめておくかな
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 13:32:36 ID:191Dp1sT
必要以上にオリキャラ出されても萎えるしなー
正規参加者活躍のための道具だと思って使わなきゃ
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 14:18:02 ID:eGDpbTzt
まぁ傍目から見たらヴァンが馬に乗って北上しただけに見えるわけだし
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 14:25:06 ID:74aFzp4p
ヴァンの今の名前ってバカ代表のヴァンじゃねーの?
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 14:30:30 ID:w2j7la4V
>>405
鉤爪の男の手紙ではそうかかれてそうだねぇ

色々と伏線が張られていってるが結末をまとめんのって企画無しでいくんかな?
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 15:30:16 ID:eGDpbTzt
今勝手にラスト近くのプロット書いたりしている私
多分ポシャるけどw
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 16:12:14 ID:T1grkZJf
>>407
気が早いにも程があるw
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:04:30 ID:WiMGLo6m
>>400
馬のやつなら半日もなにも四時間程度しか経ってないんだが
ずっとここに張り付いて入れらる人ばっかりでもないし
問題がないから代理投下したというより悪乗りしたやつが気付かれる前に代理投下したっていうふうにしか見えないよ

なんつーかさぁ、参加者が支給品の影響で自発的に行動方針や目的地変えるのが普通だろ
でも支給品が勝手に参加者の行動歪めるとかないわ・・・
他ロワのことはあまり引き合いに出したくはないが、2ndの鰤にしたってあくまで自分から影響与えるんじゃなくて他の参加者に活用させるって活躍だったろうに
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:11:04 ID:191Dp1sT
一回くらいなら許してやれよw
何度も続くようならアレだが
あくまでも主役は参加者、そのことを忘れなきゃOKさ
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:25:25 ID:Wb6InxiP
>>409
おぉ怖い怖い
あらやんの狂化にかかってるな
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:29:48 ID:EZqIsF5U
代理投下したの自分だけど、悪乗りしたとかじゃなく、時間帯的に考えてそれなりの人数が目を通してるだろうと思ったんだ。
避難所スレにも、あのSSへの反応レスあったけど、その中に反対意見はなかったし。

それでも四時間じゃやっぱり早かったかな……今後はもっと時間を置くようにする。
迷惑をかけたようで申し訳ないです。
413 ◆6lyiPawAAI :2009/12/18(金) 17:30:39 ID:nAJaqb0K
腹に据えかねるほどの異論あるなら発議してくれ
馬イク組を組み入れるか否か考えてる所だから
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:33:56 ID:qX4lLYFj
>>412
別に迷惑だなんて思って無いよ
ドンマイ
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:41:51 ID:KSMjKYKf
俺は破棄するほどとは思えないんだが
悪乗りが嫌いな人もいるのは知ってるが破棄は止めて欲しいぞ
組み入れてくれ
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:49:25 ID:74aFzp4p
4時間程度で目が通せるのは専ブラにしたらば登録してる奴だけだろ
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 17:49:55 ID:JOa7zuOQ
海渡ったあたりで覚醒したと思ってたら今回でエロ馬に逆戻りだもんな
やきもきする人がいてもおかしくはない
 
でも所詮はネタ支給品
上手く転がせるなら使って、面倒なら少し強い馬として扱えばいい
何にしても次の書き手次第だろ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:06:43 ID:lwUrRBBd
議論厨はケツの穴の小さいゆとりが多いなぁ
死ねばいいのに
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:09:56 ID:Wb6InxiP
俺なんか馬イクの最期すらもうプロット書ききったぜ
だいぶ先の話になりそうだがw
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:19:29 ID:EZqIsF5U
四時間じゃなくて三時間ちょっとだった。
重ね重ね申し訳ない……

本当に、代理投下早すぎましたね。すみませんでした。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:19:40 ID:mk0le4vZ
俺のプロットでは、最後に生き残るのは馬イクだけなんだぜ
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:19:41 ID:qX4lLYFj
まぁそもそも修正発議自体されて無いので
もう少し様子を見て何も無ければそのまま
通しで粛々と進めればええんとちゃう?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:47:57 ID:JHnaOVPG
それでいいだろ、どんなSSでも一人位は不快に思ってもしょうがないし
騒ぐほどの事じゃない
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:55:50 ID:nTeVDeBc
ノリがいいのと何も考えてないのはちがうんだよな
まあ糞書き手を全部追い出してたらキリがないから通しでおk
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:57:00 ID:rHoRJ2BB
>>424
この場合は前者だけどな
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 18:59:30 ID:nTeVDeBc
どう見ても自覚がない後者です本当にありがとうございましたし
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:04:02 ID:lwUrRBBd
書き手じゃないなら文句言うな
書き手ならこんなゆとり作者いらねーから消えろ
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:06:24 ID:6v7laJG7
カギ爪の一話自殺
ヴァンの孤立
信長マリアンヌ組の結成話の次で解散
レイの強引な対主催化
馬のオリキャラ化

どう考えても後続の書き手のことなんて考えてないだろあの書き手
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:12:00 ID:191Dp1sT
そもそも今のアニ3に空気読んでる書き手の方が希少だわw
良くも悪くも、自分の書きたい展開だけを書いてる人が多い気がする
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:12:49 ID:G+VLdHui
思うところがあるのはよく分かるが、適切な場所があるだろ
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:15:16 ID:x9GHph/u
よし、はっきりと言ってやろう。
毒吐きへ行け。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:16:36 ID:lwUrRBBd
毒吐きでもこんなカスいらねーよwwwwwwwwww
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:17:12 ID:qX4lLYFj
どうでもいいから続きは毒吐きスレで頼むわ
本スレを毒吐きスレ化させんといてぇな
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:19:38 ID:x9GHph/u
>>432
お前もな。さっさと移動しろ。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:23:55 ID:aAZCgXWl
何も考えてねーのはkskみたいなとこだろ
どんな展開が来てもチャットクラスの書き手がフォローしてくれるアニロワ舐めんな
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:25:48 ID:rHoRJ2BB
書き手以外は文句言うなよ
「読者様」きめえ
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:26:06 ID:nulEssFW
>>428
ついでに言えば揺れてるセイバーをいきなり対主催に引き戻したりしてるが月儲ばっかりだから叩かれないんだな。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:27:03 ID:U1nSkoCg
面白くはないけど書き手は面白いと思って馬をああしたんだろうし
あんまり叩くのはどうかと思う
同じ事されたらどんな気持ちになる?
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:28:22 ID:rCJY0Gw1
矛盾さえなければどんなアレな展開でも通るのがパロロワ
本当に害しかない展開なら一方サーシェスみたいに粗探しして潰すけどな
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:28:44 ID:lwUrRBBd
>>436
同意
書き手以外は文句言うなよ
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:30:34 ID:ivBzZrxJ
一応釘を刺しとくが書き手なら文句言ってもいいって事じゃないからな?
空気読まずに酉出して他の書き手を叩く奴はフルボッコされると理解しておいた方がいい
あと他のロワを貶すのはやめろ
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:32:25 ID:YiH71tPV
あんまり調子に乗られてこういう展開を連続されても困るから、投票でワースト作品も決めないか?
やりすぎてる書き手への牽制にもなるからいいと思うんだが
破棄させようと議論に持ち込むよりは健全だろ
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:35:17 ID:ekeZv0lQ
いやいや困らねーだろ
他の書き手がなんとかするだろうからそういうネガティブな企画はやめたほうがいい
書き手を自主的に追い出す制度とか考案するなカス
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:39:59 ID:x9GHph/u
もう一回だけ言うけれど。
お前たち、荒らしの自覚がないなら毒吐きに行け。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:42:59 ID:/7oWoy0j
こういうくだらない書き手や読み手に企画を阻害されるのは何度経験しても苛々するわ
荒れる展開を書く書き手や企画運営に口出しする読み手はくたばれ
書き手は作品だけ書いて読み手は感想だけ言ってろ
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:44:26 ID:nulEssFW
自覚があるからここにいるんだとおもうが
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:45:50 ID:ihU6HSoH
みんなーーーーおちついてぇぇぇぇーーーーー

読み手はリレーをつなげる書き手の苦労を考えて欲しいし、
書き手はそのSSを読んだ人がどう思うかも考えて欲しいよ
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:51:00 ID:CnbHndHC
バカばっか
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:52:48 ID:sbkvnTjb
>>428
カギ爪は自殺させる以外どうしようもなかったような気もするけどな
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:58:40 ID:Zem39L1M
/|  |     /| | |  /   |  |  /
  |  |   /  | | |/     |  |     /     ふ……
  |  |   /  | | |     /|  |   /
  |  | /    | | |   /  |  |            ふざけるなよ…!
/|  |     /| | |     /|  |  /
  |  |   /  | | | /    |  |/
二|_|二二二二二l二二二二二|_|二二l'玉}、二   戦争だろうが…
     \      ___    \    〔l`ーイ
      \_______________\  /丁WYヾヽ
                      ,ハノ-―ー|ハ   疑ってるうちはまだしも
―――――――――――――‐ /ゞイ      ト-'
                   _ r‐' / 丿     |      それを口にしたら……
                 /´V 屶|} /`ー‐┬‐イ
                 \\ ヾ_i/ ,/  | _,|
                   \___/|  |   ヽ ヽ     戦 争 だ ろ う が っ・・・・・・!
                   ┌|__,|    ゝー<
                     `‐┘    └‐┘

451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:33:12 ID:n3rbhFl0
みんな落ち着け、ここはこのロワで一番おっぱいが大きいのは誰かについてだな
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:35:32 ID:Q8VrxxSg
咲では美穂子、ギアスではユフィ、イヒではガハラさん
けいおんは誰がどれくらいとかあるんだっけ?
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:35:55 ID:VkPYOqhN
身体と比例してバーサーカーなんじゃない?
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:36:40 ID:VkPYOqhN
咲は乳比べ図があるから一目瞭然だな
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:37:48 ID:Q8VrxxSg
>>454
あれは同人誌だから清澄以外はあまり当てにならんぞ
とはいえ説得力充分だが
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:39:02 ID:VkPYOqhN
え、あれ同人だったのか(ずっと公式が出したものだと思っていた)
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:40:09 ID:dk/Tl4uV
>>452
憂と澪あたりが大きいんじゃなかったか
だがまぁバサカさんには到底及ばないがな。胸囲が150cmあってもおかしくないだろあれ
あ、ホンダムは機械だから除外な
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:45:10 ID:sbkvnTjb
咲の乳比べってこれ?
ttp://blog-imgs-41-origin.fc2.com/y/u/n/yunakiti/vl2_135775.jpg
とおもったけど
同人誌ってのはこっちか。
ttp://blog-imgs-18-origin.fc2.com/m/a/r/marutopic/20090817200831c9e.jpg
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:48:04 ID:ihU6HSoH
ファサリナとかライダーは大きいんじゃないか?
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:00:13 ID:G+VLdHui
ファサリナは103cm(公式設定)
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:04:45 ID:Q8VrxxSg
>>458
まぁどっちにしろ公式ではないわな
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:13:09 ID:KSMjKYKf
お前ら胸の話は止めろよ


向こうでセイバーさんが泣目だぞw
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:14:51 ID:Q8VrxxSg
セイバーさんとか、食いしん坊キャラすらインデックスに奪われた人なんて知らないよ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:17:45 ID:351ymOng
胸は適度に大きくて形がいいのが最強だよ
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:32:49 ID:LCdJ5DGv
参加者の中ならモモくらいが一番理想。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:39:05 ID:Uz9R/usU
>>463
公式でバーサーカー以上とか言われたのにな……
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 22:57:15 ID:ihU6HSoH
>>465
体は細いけど胸は結構あるよね、モモは
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 23:02:32 ID:Q779iW1A
おっぱいの話になった途端に一致団結……こういうの見るとまだまだ人類って大丈夫だなって思う
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 23:38:27 ID:DAiM5/zA
俺がおっぱいだ
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 23:41:46 ID:74aFzp4p
智紀の裸は良かったな
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 23:59:47 ID:Wb6InxiP
プロポーション的にはかじゅの方が上
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 00:10:19 ID:6f2wbuGH
セイバーは肉体的には15歳前後だし、食糧事情のよくない時代の生まれだから、身体が育っていなくても仕方がない

それより大昔のライダーとキャスターがスタイルいいのは気にしちゃだめだ
神話に片足突っ込んでる人達だからしょうがない
ライダーさんの姉2人はツルペタのサドロリだというのに……
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 00:17:41 ID:56q/xAMB
おっぱい話で盛り上がっている中恐縮ですが、したらば避難所スレよりのお知らせです

そろそろ第二回放送が近づいてきたため、第二回放送をどうするかの話し合いをしたらばの避難所スレにて行っていますので第二回放送について意見のある人はしたらばの避難所スレまでおこしください

また、それと平行して先日お知らせした投票の話し合いも行われているので、そちらに意見のある人もしたらばの避難所スレまでおこしください

以上、避難所スレからのお知らせでした
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 00:27:35 ID:C4vj7CUD
バーサーカーの逞しい胸板こそ至高
彫像になっても美しいレベル
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 00:36:55 ID:vKrE6ODU
>>472
まぁふつーに考えて暗黒時代のえげれすよりは
グレコローマンのほうが食糧事情は圧倒的にいいわな
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 00:52:56 ID:Q76xkiGT
>>474
いやいやアーチャーも捨てがたい
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:04:41 ID:sZZTQb7i
アーチャーの魅力は肩甲骨にあり
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:05:51 ID:vKrE6ODU
あの英語かどうかすらわからない変語こそがアチャーさんの持ち味
なんか声聞いてるとウナギ犬っぽいし
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:42:24 ID:C4vj7CUD
アーチャー役の諏訪部さんは、アーチャーを演じる為に英語を練習したらしいな。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:43:51 ID:vKrE6ODU
DJのくせに英語ができなかったこと自体が驚きだわい
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 01:47:43 ID:d1jRM5X7
FateのPS2版とか、収録にどんだけ時間かかってるんだろうな
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 02:32:35 ID:sZZTQb7i
元々英語が得意でオーディションでUBW詠唱したとか聞いた気がするが
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 02:55:12 ID:49WV683H
>>437
それは1stのせいだろ
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 03:05:42 ID:tOsvskaL
>>483
ちょ・・・ID追ったらまたあの人かよ・・・
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 03:21:41 ID:vKrE6ODU
ウハw
おれも今気づいたw
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 06:14:15 ID:d1jRM5X7
ミストさんww
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 08:43:30 ID:azVumD3Y
潔すぎて惚れそうだ……
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 10:15:03 ID:Q76xkiGT
なんというリアルアトリーム人w
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 10:26:17 ID:aSwnM7jU
ミストについて産業で
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 11:38:20 ID:TCcR/h40
MS戦の描写には定評のある
唯我独尊の
大魔王バーンの肉体を預かっている男
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 13:26:59 ID:vKrE6ODU
こんなうまそうな身体にいつでも変身出来るとは
エツァリの野郎、アステカ人の癖に生意気

ttp://ranobe.com/up/src/up420253.jpg
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 14:39:51 ID:i6WOyspC
政宗美穂子で光秀にリターンマッチかなぁとか予約スレ見ていて思っていたが
考えてみれば美穂子も唯も光秀の名前知らないんだな
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 15:39:35 ID:eTMEzhSF
まぁ風貌伝えれば政宗は光秀だとすぐに分かるだろう
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 16:11:58 ID:vKrE6ODU
しかしまぁ合流したら美穂子はまたも行動ルートを曲げることになりそうだ
三時までに象の像に集合って言うプラン取るなら、あまり東側に行ってる時間も無いだろうし
でも筆頭は政庁で単独行動の方がいいって言ってるし、どうなるかまだ分からんか。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 16:35:34 ID:FlwXylSG
その行動方針を覚えて書いてる書き手なんかいないんじゃないか
6時間あれば何処からでも集まれそうだけど
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 17:49:00 ID:MzIf9+7Z
>>489
地球人に守る価値なんか無いと言い放つ。
差別や迫害なんてどこの惑星にもある事だからどうでもいいと思っている。
大量虐殺の現場に向かって被害を食い止めようとする仲間に「根本的な解決になってませんよね?」とゴネる。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 17:53:08 ID:yPykhaBc
勘違いされてるけど、(こんな地球人に守る価値はあるのか……?)
っていうシーンは本当はないんだよなw
確か「俺……こんなんじゃ地球人を守りたくなくなっちゃうよ……」
だったか

キャラ自体は悪くなかったと思うよ、ライターがアレ過ぎただけで
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:07:42 ID:MQX2x77i
今夜、投下来るかな……
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:40:43 ID:vE2iHpet
やはり注目はスザク組・一方通行VS魔眼組だな
神原&レイ兄さん逃げてー超逃げてー
スザクは逝ってヨシ(ヒデェ
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:49:36 ID:NUIuSRGb
>>494
筆頭は、単独行動の方がいいってよりは、単にD-6駅チームには興味持てなかっただけかも
あのチームの目的は今のところ、主催打倒とかロワからの脱出じゃなくて人探しだから
まあ、同盟やグループ結成するにしても、誰かの下につくとはあまり思えないがw
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:53:24 ID:K/dmDS5w
いやいや、バカ馬とキャプテン唯コンビ、筆頭の遭遇とかあらやんvsルル組にセイバー&ありゃりゃぎさんとかも捨て難いぜ
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 00:59:43 ID:XDUrUqd7

 ★ 連絡事項 ★

放送についてですが、第二回放送も第一回放送と同様、複数の放送案が投下された場合は
短時間投票で決定することになりました(一回放送時は投票案がひとつだけだったので実際は投票はなかったですが)。
放送案の募集は、したらばの仮投下スレにて行います。

募集期間に関しては、週明けくらいに避難所スレにて話し合いを行い、改めて本スレで告知します。
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 01:01:01 ID:muwFkS2n
バカ馬ってすげぇ言いえて妙なコンビ名だなw
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 02:36:08 ID:XfWtA54H
バカ馬、唯美穂、筆頭の予約一まとめになりました
一気に合流っすか
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 14:26:38 ID:Fs1ohjO7
731 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:06:13 0
なぁ五飛とヒロシのSS読んだんだが
あれが本当にお前らの望んだ世界なのか

所詮素人に毛が生えた程度だから何ともいえんが
お前ら本当であれでいいのか

もしもあれでいいとしたら見限って正解だったよ

732 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:07:17 0
>>731
ちょいと微妙な出来でもリレーしちまえばどうってことはない
ポルノSSで証明した事だ


733 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:07:46 0
>>731
正直あれ破棄したいんだけどどうすればいいだろう


734 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:08:04 0
つかっちゅどうした?

738 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:09:08 P
皆で寄せ集めていくもので一々ケチつけてたら何も進まんな


740 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:09:32 0
なんつーのかな
職場で仕事しながらプロット練って
寝る時間や休み削って作品投下してる自分が馬鹿みたいに思ったわ

好きにやれ

741 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:09:38 0
神原あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

747 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:11:13 0
唯が天罰術式発動で光秀殺害・キルマークゲットのあれはつかっちゅのプロットかよw

756 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:12:58 0
>>747
俺のプロットだと唯がほぼ確実に死ぬ

772 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:19:09 0
>>773
致命的な矛盾を発見したので破棄しますでO.K.

779 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:20:30 0
レイニーデビル本領発揮キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!1

先に使われちまったなぁ…

780 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/12/20(日) 01:21:33 0
ロワ厨はなんで騙るに帰省してるの?早くロワスレに戻れよ
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 19:04:46 ID:XDUrUqd7

 ★ 連絡事項 ★

◆mist32RAEs氏の『思春期を殺した少年の翼』の修正稿が仮投下スレに来ています。
議論スレが別件で使用中の為、本来のスレの使用用途と異なりますが
通しでいいか再修正が必要かどうかだけ、仮投下スレにレスをお願いします。
再修正が必要との意見が出た場合は別スレへ誘導を行います。
通しでOKというレスが5つ以上集まり、かつ投下から24時間以内に反対意見が出なかった場合は
通しということで本投下を行い、その時点で予約解禁となります。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 19:26:06 ID:nTQtJb2o
あげておく
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:02:06 ID:sjQEfLBT
このスレは上げる必要ないと思う
そこまでして人の目に触れてもらうようなものではないから
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:07:27 ID:0hUuWe4G
ていうか上げちゃ駄目
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:17:02 ID:nTQtJb2o
スマソ
511 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 22:57:29 ID:BHmaDiQA
式、デュオ投下します。
512 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 22:58:26 ID:BHmaDiQA

「なるほど、そういうことか」

『敵のアジト』と称されたマンションの螺旋を階段を下る中、両儀式はそう呟いた。

「どうした、式?なにかあったか」

突如の静寂を破った式の呟きにデュオが返す。

「ああ、このマンションにはもう用はないと思ったけど。ひとつだけ確かめておくことができた」

式は先ほど手に入れた首輪をデュオに渡し、エレベーターのスイッチをそれに押し乗り込む。

「入口で見張って置いてくれ。それとその首輪をよく『視て』おくんだな」

閉じるエレベーターの扉越しに一方的に告げられる式の言葉はそこで途切れた。

「…って、おい。勝手に言うぜ、まったく」

一人マンションのホールに取り残された、デュオ。
彼の口からは、発言する間も与えずに去った式に対する不満の言葉が虚しくホールに響いた。

(だけど、この首輪…)

デュオは右手に握られた首輪を眼前へ移し、思考の対象を首輪へと移し替える。
ガンダムパイロットである彼は、特殊工作員としての側面も持ち合わせる。
愛機のデスサイズの管理に必要な工学関係の知識、敵組織へ侵入するためのコンピューターや機械への知識。
それらをフル稼働すれば、この首輪もあるいは…と彼は一瞬考えた。
だが、主催者の言った『魔法』としか思えないような現象をこの会場に来て目の当たりにしているデュオはその可能性をすぐに否定した。
そもそも、自分のような機械に詳しい者がいるとわかっている以上、解析されたらあっさり解除――なんてチャチな首輪など作らないはずだ。
この殺し合いを進めることができるのは一重にこの首輪の拘束力の恩恵である。
当然それを解除しようと考える者は出てくるだろうし、死者から首輪を奪うことも想定はしているだろう。
それも、これは「魔法を金で買った」など最初から声高々に叫ぶ男が開催しているゲームだ。
この首輪が主催者の言った『魔法』とやらの力を持っている可能性はおおいにあり得る。

(魔法だとか…超能力だとか…よくわんねえけど…)

デュオには魔法・魔術・超能力、そういった類の知識は確かにない。
だが、彼には科学のもたらした機械や技術に関する卓越した知識がある。
彼の世界で未知なるものは考えてもわからないだろう。
しかし、首輪をあくまで「機械」として捉えるとしたらどうだろうか?
宇宙開発の進んだ未来における工作員としての知識を持つデュオの右に出る者は、おそらくこの会場でも数人いるかいないほどであろう。

(要はこいつはタダの「機械」なんだろう…!)
513 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 22:59:10 ID:BHmaDiQA


デュオは『魔法』の存在を完全に度外視して、首輪を自分の知る世界での常識を基準に判断することにした。

円形の首輪をゆっくり回したり、触ったり、目との距離を変えながら、彼は首輪を観察する。
サイズは、横幅5mm、縦幅が1cmほど…といったところだろうか。
その形はこれ以上ないほど綺麗な正円形に見える。
もっとも、人の目は錯視といった現象もあることを考慮すると、正確に測ってみなければ断定はできないが。
材質は見た目と手触りから金属に思える。
だが重量はとても軽く、なるほどこれなら参加者の首に余計な肉体的な圧力をかけずに済むなと、納得できるほどである。

一通り首輪の外観を観察し終えたデュオは、次に首輪の中身について思考する。
首輪には溶接の跡はまったく見られない。
重さも均一で、どこに何が入っているかも全く想像がつかない。
いや――あるいはこの軽さだ、中身が空っぽと言われても不思議ではない。
ICチップなどの情報端末が入っているのならばまだ頷けるが、これが人を殺すための爆薬を中に秘めているとは到底思えない――
やはり、そこは『魔法』とやらの力か。

そこまで考えたデュオだが、エレベーターから降りてきた式の姿を確認したきり、首輪の考察は一旦途絶えた。


 ◇


パネルにはめ込められた「10」の文字が点灯するとほぼ同時に、目前の扉が開く。
扉から出るとすぐに左折し、エレベーターのあるスペースを半周する形で逆の通路へと向かう。
そこにあるものは小川マンション最上階の西塔――すなわち、荒耶宋蓮がかつて両儀式を監禁した場所――だ。
式は西塔一帯を使われたその部屋へと足を踏みいれる。

「やっぱり、そう簡単にはいかないよな―――」

そこには式がかつて見た光景はない。
その部屋は空――ただのがらんどうの空間だった。
だが、薄暗い空っぽの部屋の中央で密かに輝く魔方陣を式は見逃さなかった。

「いくらなんでも、わかりやすすぎだろ、これ―――」

式は床に書かれた魔方陣に向かって短剣を突き刺す。
死の線を捉えられた上、魔術破戒の宝具に突かれた魔方陣は輝きを失う。
それを確認した式は、気だるく歩きながらエレベーターへと戻った。


 ◇
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 22:59:18 ID:Os8SV6Pz
 
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 22:59:27 ID:6gw5IQ/g
516 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 22:59:59 ID:BHmaDiQA


式が考えたことは単純だった。
荒耶宋蓮が、この殺し合いの根底に関わっているのかもしれないという前提。
それを確かめるために、自分がかつて監禁されていたマンションの最上階へ向かった。
ギャンブルルームの設置という前例からも、このマンションが本来とは違う形であることはわかっていた。
ならば、工房として機能していたあの空間もなんらかの手が加えられている可能性は否めない。
そしてその想像通り、最上階は工房の面影は微塵もない代わりに、魔法陣が仕掛けられていた。
あれがどのような効果をもたらすものかは式は知らないが、あの場所に魔法陣があったという事実さえ知れば彼女にとってはどうでもよいこととも言えた。

荒耶宋蓮がこの殺し合いの根底に関わっている―――

この予測が式の中で、ほぼ確信へと変わったのだから。
そして、その確信が新たな推測を引き出す。
荒耶は以前は小川マンションを結界とした。
そこで人々の最後の一日を繰り返すという実験を行っていた。
それはすなわち、自身の結界内でのあらゆる死の観察であった。

――この殺し合いもまったく同じ。

ささいな条件は違えど、この殺しあいも本質は似たような状況である。
あのマンションを自分の体内のように扱えた魔術師だ。
この会場も似たように自分の結界で作り上げているに違いない。

しかし――

「敵のアジト」と称された小川マンション、その最上階にあった魔法陣。
それに式の直死の魔眼に課せられた制限。

――あまりに上手く出来すぎだ。

あまりに自身に気づけと言わんばかりの仕掛け。
過去に倒したはずが、この殺し合いに参加している荒耶宋蓮。
あるいは荒耶自身はただの材料にすぎないのかもしれない。
だとすれば、彼をも傀儡としている存在がこの殺し合いにはいる――

懸念することはまだまだあるようだ。
だが、荒耶が殺し合いの根幹に関わっていることと、この会場のカラクリは確信した。
ならば、前と同じように、結界を破り荒耶を再び殺すのみだ。


 ◇
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:00:31 ID:Os8SV6Pz
  
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:00:35 ID:6gw5IQ/g
519 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:00:41 ID:BHmaDiQA

「おう、式。戻ってきたか」

その言葉に式は目線で返し、そのままマンションへの出入り口向かって歩く。
デュオも式のその冷淡な態度には慣れてきたのか、そのまま式を追いかけ歩いて行く。

「ところで、あの首輪、見た感じさっぱりだったぜ」
「ああ、そうだろうな」

さもそれが当然のように式は言う。

「って、それどういうことだ?」
「ああ、あれは『視えにくい』ように細工されてるんだ。おそらく、目だけじゃなく、他の五感にもな」
「それも例の魔法とやらか?」

それに式は首肯で返した。

「ハハッ、そりゃあ、お手あげだな」

デュオは頭をかく動作をしながら、自嘲気味に言った。

「いや、そうでもないみたいだ」
「ハァ!?どういう意味だ」

式はその問いには答えずに、早々とバイクに乗り込む。

「時間はまだ十分あるみたいだな。『神様に祈る場所』に寄っていってくれ」

デュオは式のペースにやれやれと思いながらも、彼女の意向に同意する。
まだ放送まで時間は十分ある。
その時間で他の施設を探索しておくのも良いだろう。
それに彼女はこの『敵のアジト』のことを知っていた。
あるいは、何かこの殺し合いの手掛かりを得た上で、次の目的地を決めたのかもしれない。
彼女にその意を聞いても答えてくれない性分であることを理解していたデュオは、それを無理に聞くよりも彼女と行動して引き出す方が得策だと考えた。

「ああ、わかったぜ」

式とデュオを乗せたバイクは、『神様に祈る場所』へ向かって走り出した。


 ◇
520 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:01:27 ID:BHmaDiQA


それは、原初の、あるいは終わりの白い風景。
そこには見慣れた、普遍を形にしたような彼が立っていた。


――長い、静寂。


ゆっくりと、白く広がる夜の果てを見つめた。
そう、彼は限りなく普通であるがゆえ―――
誰も深く彼のことを理解しようとはしない。
誰にも嫌われないかわりに、誰も惹きつけることもない。
幸せの結晶の様な彼。
なら、ひとりきりなのは、果たしてどちらであったのだろうか?



「あたりまえのように生きて、あたりまえのように死ぬのね」






ああ、それは―――






「なんて、孤独―――」






終わりのない、始まりさえない闇を見つめて。
別れを告げるように、■■■はそう言った。


 ◇
521 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:02:15 ID:BHmaDiQA


「着いたぜ、式」

声が聞こえる。
数時間前に出会ったデュオ・マックスウェルと名乗る男の声だ。
眼前には教会と思しき建物がぼやけて見える。

どうやら、私は眠っていたみたいだ。
ここに来て薄々感づいてはいたけど、直死の魔眼を使用すると普段よりも少し疲労する。
さっきの魔法陣を視た際に一気に負荷がかかったのかもしれない。
気づかないうちに眠っていたようだ。
幸いなのは隣にいたのが、この陽気な男であったことか。
今はその巡り合わせに少しだけ感謝しよう。


教会の扉の隙間から漏れる赤い液体。
それが血であることは、何よりも「死」を識っている私にはわかってしまった。
そして、それが誰のものか、私はよくわかっている。
その血の匂いはずっと忘れたことのない―――


「ああ――。死んだのか、おまえ」


無気力に呟いて、私は扉を開ける。
そこには予想通り、あいつの姿があった。


なまじ、死を識っているからこそ、わかってしまった。
もう、あいつは死んでいるんだって。生きていることなんてない。
流れた血液はまだ乾ききっていない。
おそらく、あいつが斬られたのは数十分前のことなんだろう。


――ああ。



こんなに身近で、こんなに近い時間で――






――私はあいつを失ったんだ。






 ◇
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:02:32 ID:Os8SV6Pz
 
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:02:35 ID:6gw5IQ/g
524 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:03:15 ID:BHmaDiQA

「よかったのか?」
「ああ――」

式とデュオが神様に祈る場所にいたのは時間にして数十分程度だった。
デュオに関しては、教会内に立ち入ることもせず、外で見張りをしているだけだった。
それというのも、冷静で身内のことも一切話さなかった式が黒髪の青年の死体を見た瞬間、彼女がまるで生気をなくしていくように感じたからである。
もとより、彼女の素性も何も知らないデュオには彼女を励ますなどという考えが浮かぶはずもなく、黙って身を引き、彼女に教会の探索を任せたのである。

その後、式は教会の中で死んでいたという他の参加者の首輪を2つ持って出てきた。
式の知り合いを含め、教会の中の死体はカーテンを被せるだけで済ませたという。

「どちらにせよ、目的の物は殺してきた。あいつが見つけたんだろうな…。おかげで、視えやすかったぜ」

教会にあった魔法陣。
それは普通にしていれば気づれぬよう、魔法陣自体に認識されにくい結界が施されていた。
だが、探すことにかけては天賦の才を持つ青年は、それをなんなく発見した。
それもそのはず、彼は人除けの結界をもろともせずに、とある魔術師に雇ってもらったという経歴を持つ者なのだから。
そして、その人除けの魔術は一度誰かに認識されてしまうと意味を為さないという制限つきだった。
ゆえに、式はその魔法陣を容易に発見し、破壊することもできたのだ。

「なあ、そろそろ教えてくれないか?何か、気付いてるんだろう?」

バイクは森を抜け、政庁らしき建物が見えた地点で停止する。

「ああ、そうだな。お前らがこの殺し合いを止めるって言うんなら…。いいぜ、教えてやる。その代わり―――」

式はD6駅のある方角とは反対方向の空を睨み呟いた。

「――――独りにさせてくれ」


 ◇
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:04:01 ID:Os8SV6Pz
  
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:04:06 ID:6gw5IQ/g
527 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:04:29 ID:BHmaDiQA

かつて両儀式と対峙した荒耶宋蓮。
彼は小川マンションという結界内で住人達に最期の一日を繰り返させることで、死に関する実験を行っていた。
その果てに両儀式の体を乗っ取ることで、己の目的を成し遂げようとした。
だが、その理由さえとうに忘れた観念に取りつかれた魔術師は、両儀式がその手で殺した。
――はずなのだが。
この殺し合いに参加し、この殺し合いの舞台を作り上げている本人である可能性が高いというのだ。
それも、彼は結界に特化した魔術師で、この殺し合いの舞台は結界を複雑に積み重ね作り上げているものだと式は予測している。
その確信に至った理由は、彼女が小川マンションで監禁された際にいた場所に魔法陣があったから――だという。
どちらにせよ、その魔法陣がこの舞台に何らかの効果をもたらしている可能性は高いので、それを壊していけばあるいは突破口が見えるかもしれない。

以上がデュオが式から得たおおまかな情報である。
その真偽を判断できるほどの知識はデュオにはなかった。
だが、式の能力の片鱗や、やけに達観している性分、さらに式が意味もなく嘘をつくような人間に思えないことから、デュオはその話をおおむね信じることにした。

「しかし、あいつ…。まさか殺しあいに乗ったりしねえだろうな」

自分を殺人鬼だと称したり、冷淡な彼女をして動じさせるほどの仲の者の死体を見ているなど、式にはまだ解りかねている部分も多い。
だがそれを言うなら、こちらも名前以外はほとんど情報を与えていない。
むしろ、それでこの数時間を共に過ごせたことがおかしいと思えるぐらいだ。

「とりあえずはD6駅でセイバー達と合流と行きたいが…、そう上手く行きそうもねえなあ」

まだD6駅から少々距離がある地点にはいるものの、響き渡る轟音や、周辺の民家が壊れているところを見れば、駅周辺で何かが起こったことは容易に想像がつく。
このままD6駅に行って、セイバー達と合流出来ずに、化け物のような参加者に襲われてしまっては笑いごとではすまない。

「さあて、どうしようか…」


【D5/北東/一日目/昼】

【デュオ・マックスウェル@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:牧師のような黒ずくめの服
[装備]:フェイファー・ツェリザカ(弾数5/5)@現実、15.24mm専用予備弾×93@現実、
    BMC RR1200@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式×2、デスサイズのパーツ@新機動戦記ガンダムW、メイド服@けいおん! 、首輪×2
[思考]
基本:なるべく殺したくはない。が、死にたくもない。
0:どうしようか…。
1:D-6の駅に正午までに戻り、セイバー達と合流する。
2:荒耶宋蓮に警戒。
3:明智光秀、平沢憂には用心する。
4:首輪の解析は現状の段階ではお手上げ。
5:デスサイズはどこかにないものか。
[備考]
※参戦時期は一応17話以降で設定。ゼクスのことはOZの将校だと認識している。
 正確にどの時期かは後の書き手さんにお任せします。
※A-5の敵のアジトが小川マンションであると分かりました。
※以下の情報を式から聞きました。
 ・荒耶が殺し合いの根幹に関わっている可能性が高い。
 ・施設に点在している魔法陣が殺し合いの舞台になんらかの作用があるかもしれない。
 ・首輪にはなんらかの視覚を始めとした五感に対する細工が施されてあるかもしれない。



 ◇
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:04:43 ID:Os8SV6Pz
  
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:04:46 ID:6gw5IQ/g
530 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:05:46 ID:BHmaDiQA


―――きみがいて、わらっているだけで、幸せだった。


 人は一生に必ず一度だけ人を殺す。
 自分自身を最後に死なせるために、一度だけその権利がある。
 人は、一人分しか人生の価値を受け持てない。

いつかの教えが私の頭の中で木霊する。

 人を殺せるのはただ一度だけ。
 そこから先はもう意味のない事になる。
 たった一度きりの死は、大切なものなんだ。
 誰かを殺してそれを使いきった者は、永遠に、自分を殺してあげることができない。
 人間として、死ねないんだ


―――きみがいて、あるいているだけで、嬉しかった。


私が人を殺した時――私は自分を殺せなくなった。
私は独りきりでの死を、淋しい空っぽの葬列を迎えないといかなくなってしまったんだ。

 …でもかまわない。
  言ったろ、君のかわりに背負ってやるって

でも、あいつはそう言ってくれた。
私が死ぬまで、私が死ぬ時まで、決して独りきりにしないように。
私を許さないと――――


―――それはほんとうに。
     夢のような、日々でした。


あいつが私の死を受け持ってくれるからこそ、私はあの日々に融けることが許された。
まほろばのような、幻想のような、そんな幸せな日々に。
だけど、あいつはその約束を破って、私の知らないところで勝手に死んだんだ。
私が殺人鬼になることなく、幸せな日常へと留めさせてくれたあいつは―――もういない。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:05:58 ID:Os8SV6Pz
  
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:06:02 ID:6gw5IQ/g
533 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:06:31 ID:BHmaDiQA


「これじゃあ、後戻りだな」


あいつを殺して、許されない幻想をこの手で殺そうとしていた頃と。
殺人でしか生の実感を得られないと信じていた頃と。

そう―――
――あいつがいないのなら、もう、生きていく意味なんてなくなってしまったんだ。


「幹也。お前を―――許さない―――」


そう呟いて、私はあいつのために使うと決めていた涙を流した。
宝石のような小さな粒が落ちていく。
今はもう叶わぬ未来の中へ。




【D5/草原/一日目/昼】

【両儀式@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:私服の紬
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、首輪、ランダム支給品0〜1
[思考]
0:幹也。君を許さない―――
1:とりあえず今は1人でいたい。
2:荒耶がこの殺し合いに関わっているかもしれないとほぼ確信。
3:荒耶が施したと思われる会場の結界を壊す。
4:光秀と荒耶に出会ったら、その時は殺す。
5:首輪は出来るなら外したい。
[補足]
※首輪には、首輪自体の死が視え難くなる細工がしてあるか、もしくは己の魔眼を弱める細工がしてあるかのどちらかと考えています。
※荒耶が生きていることに関しては、それ程気に留めてはいません。
 しかし、彼が殺し合いに何かしらの形で関わっているのではないかと、確信しています。
※藤乃は殺し合いには乗っていないと思っています。
※A-5の敵のアジトが小川マンションであると分かりました
※以下の仮説を立てています。
 ・荒耶が殺し合いの根幹に関わっていて、会場にあらゆる魔術を施している。
 ・施設に点在している魔法陣が殺し合いの舞台になんらかの作用がある。
 ・上の二つがあまりに自分に気付かせんとされていたこと自体に対しても疑念を抱いている。
 ・首輪にはなんらかの視覚を始めとした五感に対する細工が施されてある。
534 ◆CcfuOxf30g :2009/12/20(日) 23:09:07 ID:BHmaDiQA
投下終了です。
タイトルは「君が 光/闇 に変えて行く」です。
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:13:30 ID:+tZ4+5iN
投下乙です

ああ、しんみりした雰囲気が傷心の式を表現しててらしいな
単独行動になって先が心配だ
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:46:52 ID:8s0r9tQj
乙です
考察が進むな、このコンビは
いいねぇ式

それにしてもやっぱ太刀筋で分かるのね
537 ◆pLbG2WtY4FT5 :2009/12/20(日) 23:54:14 ID:8c0+T/Dh
test
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 00:01:53 ID:NGs48KS9
サーシェス、五飛を代理投下します
539協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:06:26 ID:NGs48KS9
 バイクに乗った張五飛は予定していた次の目的地に到着しました。
 彼のいる場所はE-7の学校です。
 学校の作りは今どき珍しい木造建築で、1階建ての簡素な作り。昭和のにおいを感じさせます。
 五飛は不安になりながら、学校へ入ることにしました。
「ここも俺に収穫を与えてくれるのだろうか」
 五飛が話している収穫とは、ホールにあったような参加者へのお助け要素のことです。
 ホールには5つの部屋があったことは、みなさんもご存知でしょう。
 五飛はあの5つの部屋のすべてを開放させるために、この島にある施設を調査することにしました。
 ホールで荒耶宗蓮に襲われたので、慎重に行動することを選んだのです。
 もし、五飛がこのまま順調に施設の調査をするとどんな利益が手に入るのでしょう。
 それはホールの第一の間である『平和の広間』の開放がぐっとしやすくなるのです。
 だって施設で身を潜めている人を助けてあげれば、その人から協力をえられるかもしれません。
 『参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者が2人以上必要』 の条件クリアに大きく貢献できます。
 それだけではありません。
 五飛の調査はもうひとつホールの部屋を開放できる要素を持っているのです。
 その広間とはホールの五番目の広間。通称『連荘の広間』です。
 『地図に名前入りで記載されている施設を8ヶ所以上通った者のみ入室可能』という条件を持っています。
 この島を満喫した人だけが美味しい思いをできるんです。隠れている人には一生無理です。
 探検した時間を無駄にさせない、なんという親切機能でしょう。
 五飛はすでにタワー、ホール、学校とこれで三連荘で施設をまわっています。
「人の気配がしない。こんな偏狭の地こそ隠れるには打ってつけだと思ったが、読みが外れたか」
 どうやら今回は誰も見つけることが出来なかったようです。
 人を探すことが最優先事項、というわけではないのですが、学校は五飛を満足させる情報を持っていないみたいです。
「何か見落としていたとしても、今の俺にはそれを見つけるだけの情報がない。
ホールのようにわかりやすい手がかりが無い以上、ここに留まるのは時間の浪費だ」 
 五飛は気持ちを切り替えて次の目的地を目指すためにバイクに乗ります。
「ム」
 このとき五飛に電流が走ったようです。
「調査に時間がかかりそうだから、と後回しにした展示場まで戻るべきか」
 実は五飛はまだ展示場の調査をしていません。彼は時間のかからなそうなホールを優先したのです。
 しかし短い時間で調査を終えるはずだったホールは、予想以上の大きさと収穫を持っていた。
 それがここにきて彼を迷わせます。
「それとも公園、政庁、円形闘技場、薬局と一周したあとに行こうか」
 五飛は仕方なくバイクを西へ進ませませることにしました。

○ ○ ○
540協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:08:52 ID:NGs48KS9
「すっきりしたぜ」
 アリー・アル・サーシェスはまだデパートの中にいました。
 彼はさっきまで市販の薬用クリームでひげを剃っていました。今はあごに手をあてながら鏡を見ています。
 一見すると早朝の男のたしなみのように思われますが、彼の狙いは別にあります。
 それは変装です。
 キャスターやアーチャーと戦ったサーシェスは、彼らとの再戦を願いながらも会いたくないとも思っています。
 サーシェスは自分が彼らを討ち取るほどの武器や装備を持っていません。
 こんな状態で再戦しても結果を変えることは出来ない。今、彼らと再会は避けたい。
 彼らと会ったときの格好をサーシェスは捨てることにしました。
「あまり劇的にチェンジすると、ゼクスに怪しまれるかもな。奴に会う前に姿形を変えとくんだった」
 私服は処分され、デパートにあった安物のトレーナーとズボンと靴に着替えています。しま○ら価格です。
 ガンダム搭乗時のスーツとまでは行きませんが、比較的動きやすい服装でしょう。
「ゼクスが俺の姿形を話すんなら、このへんが限界だろう」
 コンセプトはアーチャーたちが遠目で見たら勘違いするようにということらしいです。
 トレードマークの髭も綺麗に剃っています。ぼさぼさだった髪も少し切りました。
 本来の姿形にかけ離れないように考えたのでしょうか。
「さてと。使えそうな物は適当に集めたが『魔法』に勝てるかってーと、いまひとつだな」
 デパートで手に入れた品物がディバッグに入っているのを確認しながら、サーシェスは目的地を探します。
 南は赤い剣士(アーチャー)がいますし、西は魔法使い(キャスター)がいます。彼らとの遭遇は避けたいところ。
 サーシェスは地図に指を走らせて、自分のルートを書きはじめました。
「ん!? なんだ今の音は」
 その時です。デパートの外でとてつもない音がしました。
 サーシェスは窓から下の様子をのぞきます。
「あの砂煙は駅だな。電車のトラブルでもおきたか!? 」
 サーシェスが聞いた音は、D-6の駅でセイバーと真田幸村が暴走した列車を止めた音だったのです。
 いくらサーシェスでも、ライダーのせいで電車が暴走していたことは夢にも思っていないでしょう。 
 もうもうと上がる煙と、何かと何かがぶつかりあう音が、駅の異常事態を表しています。
「誰かが無茶をしやがったかな? 」
 サーシェスは意気揚々とデパートの階段へ走り始めました。
「行ってみますかね」
 どうやらD-6の駅に向かうようです。
 騒ぎが起こるところに人あり。戦争が起こるところに人あり。
 サーシェスは情報搾取の手がかりをてっとり早く見つけようとしているのでしょう。

○ ○ ○
541協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:09:58 ID:NGs48KS9
『凶がれっ! 凶がれっ! 凶がれええええええええっ!!』
『曲がらんっ! 曲がらんっ! 曲がらあああああああんっ!!』
 地平線にまで届きそうな叫び声。
 駅から離れたサーシェスにも充分に聞こえています。
 デパートで仕入れた望遠鏡で覗いてやっと見える距離なのですから驚きです。
「なーるほど。こいつはやべぇ。今すぐ駅に向かうのはヤメだ」
 駅の幸村組VS藤乃組の戦闘を目の当たりにしたら、誰だってそう思います。
 彼らが異能の力を持っているのは事実です。
 どちらが先に戦闘をしかけたのかはわかりませんが、彼らと関わるのは危険です。迂闊な接触は命を落とします。
「とりあえずあの男と女2人は後回しだな。それよか駅から逃げた兄ちゃんと鎧のお嬢さん。冷静っつーか戦い慣れてやがる。
戦場で無謀な奴は、戦うたびに心の底から楽しめるんだが長生きしねぇ。
俺が会いたいのは戦場で謙虚な奴だ。話ぐらいは聞かせてくれるだろうよ。会っといて悪くねぇ――」
 サーシェスは駅から逃げた2人(セイバーと暦)に追い付くために北に向かうことにしました。
『うおおおおおおお!』
「すげー叫び声だな。いちいち叫ばなきゃ戦えねーのかよおい」
『うおおおおおおおおおおおお!』
「はいはいわかったわかった」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「あ? 」
 サーシェスは後ろを振り返りました。
 彼が鬱陶しく思っていた叫び声が段々近づいてきているような気がしたからです。
 それは本物でした。彼が聞いていた叫び声は幸村と藤乃のものでは無かったのです。
 窓から顔を出して大声をあげながらバイクを運転している男のものだったのです!
「アーッ!? 」
 断っておきますが、サーシェスはバイクのエンジン音を聞き逃していたわけではありません。
 むしろやってくるバイクにヒッチハイクでも頼もうか、という可能性も考えていたくらいです。
 まさかバイクが自分のところに突っ込んでくるとは予想していなかったのです。
「どこ見てるんだ! 」
 サーシェスは咄嗟に回避できました。ちょっとでもタイミングが遅れていたら轢かれていたでしょう。
 バイクは勢い余って店に突っ込んでいきました。
 運転手はかろうじて座席から飛び降りて受身をとったようです。死んでいません。
542協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:12:42 ID:NGs48KS9
「……」
「……」
 二人の目と目が合いました。お互い、黙ったまま見つめ合ってます。
「あ、失礼。私はアリー・アル・サーシェス。しがない傭兵です。これは一体どういうことでしょうか」
 先に口火を切ったのはサーシェスです。口調とは裏腹に非常に苛立っています。
「張五飛。これは事故だ」
 相手の青年はバツが悪そうに話していますが。サーシェスを見ようとはしません。謝る様子もありません。
「張五飛! あなたはひょっとして、あのゼクス・マーキスのお知り合いで? 」
「――! ゼクス・マーキスだと……奴を知っているのか! 」
 サーシェスが譲歩して接しているのに、五飛はまるで自己本位的です。
 サーシェスは必死に感情を抑えながら、人(ゼクス)と人(五飛)とのつながりの調査を優先しました。
「ええ、先ほどそこのデパートで彼から対主催戦力の収集を依頼されまして。
あなたがゼクスさんと知り合いなのは承知です。出来ることなら、あなたから彼について詳しい話を聞かせてほしい」
「奴について話すことなどない! 組織を裏切って寝返るような男など、俺の眼中には入らん」
 五飛はゼクスがOZという組織に一員でありながら、自分を同士として引き抜こうとしたことを怒っているようです。
 実はゼクスはすでにOZの一員として生きるつもりは無かったのですが、融通の利かない五飛に誤解されてしまったのです。
「へぇ、しかしゼクスさんは色々と私に話をしてくれましたがね。自分のことも。あなたのことも」
「戯言を! あいつなんぞに俺たちの何がわかる! 」
 真実は別にありますが、このチャンスをサーシェスが見逃すはずがありません。
「じゃあ、教 え て く れ ま せ ん か ね。私の聞いた話がどこまで嘘で本当なのか」
「見ず知らずの貴様に話すことなどあるか」
「そこを頼みますよ。ゼクスさんの話だけでいいんで。雇われの身は、上の素性を知りたくなるもんです」
「…………フン」
 五飛はゼクスについて知っていることを、悪意まじりにサーシェスに話しました。
 ゼクスの意外な生い立ちにサーシェスは少し驚きましたが、彼は満足していました。
 ゼクスの話と五飛の話には食い違いが見られましたが、それはお互いの知る人物像の違いについてだけです。
 つまり、彼らが住む世界については何の違いも見られなかったのです。
 サーシェスはゼクスの言葉が真実味をおび始めていることに、少し焦りを感じました。
(OZとかアフター・コロニーとか、こいつも大真面目に話してやがる。口裏を合わしているのか?
いや待て待て。だったら敵対するフリ必要がない。これも帝愛さんの仕業ってやつかねぇ?
ま、ゼクスが食わせ物だってのがわかれば充分だ。それに新手のガンダム・マイスターがわかったしな) 
 サーシェスはゼクス・マーキス、張五飛とガンダムで殺しあう日が、いつか来ることを期待しているようです。
 そんな感情をまったく表に出すことなく、サーシェスは五飛に手を差し伸べます。

「危うく死にかけたが、あなたとお近づきになれたのは幸いだ」
「勘違いするな。俺は馴れ合うつもりはない」
「でも、あれが壊れてしまったら、あんたはどうするんです?」
 サーシェスは住居に突っ込んだバイクに向かって指を刺します。
543協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:13:38 ID:NGs48KS9
「…………」
 五飛は何も答えません。
「さっき私の所に突っ込んできたのは、ハンドルが利かなかったからでしょ? 何があったんです」
 眉間に手をあてながら、五飛はため息をしています。
「線路を横切ろうとした」
 五飛は手に力を込めています。そうとう怒っているのでしょう
「横からやってきた電車がいきなり脱線したから、とっさにハンドルを切った。衝突を避けるために」
「そいつは危なかったですね――あれ?」
「しかしどうだ。電車は自分から線路戻ったんだ」
「は、はぁ? 」
 サーシェスは首をかしげて、思わず間抜けな声を出してしまいました。
「気がついたら電車に追いかけられながら線路の上を走っていた」
 電車を見事に裁いたライダーの運転技術は、人知れず迷惑をかけていたようです。 
 五飛はE-6の公園を目指すはずが、ノーマークだった電車のせいで進路変更をせざる得なかったのです。
 かわいそうな五飛。 
「結局、駅のそばで脱線しやがって。そのせいでこっちは電車に弾かれてしまったがな!」
 五飛のバイクのハンドルが利かなくなった理由は、どさくさで電車の事故に巻き込まれたからでしょう。 
 五飛本人がこうして何事もなく会話をしていること事態が奇跡です。
「……デパートの駐車場で見つけた車とかあるんですけど」
 駅に向かわなくてよかった、とサーシェスは痛感しました。
 いまさらデパートに戻るつもりはなかったのですが、サーシェスは話しておいたほうがいいと判断したようです。
「よかったら使います?」
 彼に恩を売るために。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 00:13:43 ID:TqlIXcGX
こういうしっとりしたの大好き
その上デュオにはしっかり考察させてるし
式は自棄起こさずに頑張ってほしいところだけど……

短すぎず長すぎない、でもしっかり書かれているいいSS投下乙です
545協議の果てに迷える戦士達 ◇IXsb2rHJg6 代理:2009/12/21(月) 00:15:35 ID:NGs48KS9
【D-6/中央部/一日目/午前】
【張五飛@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:マリーメイア軍の軍服
[装備]:ラッキー・ザ・ルーレットの二丁拳銃(4/6)@ガン×ソード、干将・莫耶@Fate/stay night、防弾チョッキ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、ゼロの仮面とマント@コードギアス、USBメモリー@現実
[思考]
1: バイクを捨てるか、デパートに行くか、それとも……
2:トレーズの存在と『魔法』に対する疑念
3:人間の本質は……戦おうとしない者と弱い者への怒り
4:MSの可能性がある施設を探す (地図に名前が載っている施設(展示場も含む)はなるべくよりたい)
5: 扉を開く条件を満たしたらまたホールに戻りたい
※参戦時期はEndless Waltz三巻、衛星軌道上でヒイロを待ち構えている所です。

基本:オレが参加者の脅威となる!
1:殺し合いに乗ったものは倒す。
2:ゼロとして『戦う意思』のない者達を追い詰める。……それでも『戦う意思』を持たなければ――

※サーシェスにガンダムWの世界観を話しました(サーシェスがゼクスから聞いた話を大まかに事実と認めました)。
※ハンドルが故障した刹那のバイク@機動戦士ガンダム00が住居につっこんでいます。
 修理可能なのかは後の書き手さんにお任せします。

【ホールについて】
内部に五つの広間を有する巨大な施設、各広間にはそれぞれ入場条件がある。
右の扉から順に

1『平和の広間:参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者が2人以上必要』
2『四暗の広間:参加者を四人以上殺害した者のみ入室可能』
3『一発の広間:ゲーム開始から6時間以内のみ入室可能、6時間経過後に室内に居る者の首輪は爆破される』
4『国士の広間:第六回放送後のみ入室可能』
5『連荘の広間:地図に名前ありで記載された施設を8ヶ所以上立ち寄った者が入室可能』

条件を満たした者に同行していれば、誰でも入室可能?
扉の内部では謎の機械音が響いている。
『一発の広間』は一番小規模な広間で、机が一つとアイテムが三つ有るだけの部屋、アイテムは現在、五飛がすべて回収済み。
それ以外の広間の中身は後の書き手さんにお任せします。


【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ、髭をそった、髪を少し切ってイメチェン
[服装]:安物の服とズボンと靴(動きやすさは抜群)
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数50% 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 
[思考]
基本:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
1:更に周辺を見て回り、できれば組める相手を見つける。 それが最適な選択になるならば、組んだ相手を騙すことも。
2:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。
3:ゼクスは胡散臭いが、彼の知り合いに接触する価値はある。 恩を売っておきたい。
  余裕があればセイバー、暦に接触してみたい。幸村&藤乃&ライダーは少し警戒。
4:アーチャーとの決着をいずれつける。
【備考】
※セカンドシーズン第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※五飛からガンダムWの世界の情報を取得(ゼクスに関してはやや誤解あり。ゼクス=裏切りもの?)。真偽は保留にしています。
 情報収集のためにヒイロ、トレーズ、デュオ、一方通行、伊達政宗、神原駿河と接触する方針を続行。
※この世界の違和感(言語の問題等)は帝愛のせい、ということで納得しているようです。
※D-6のデパートには駐車場(車あり)があるようです。

投下終了です
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 00:20:41 ID:OucJyV9J
「ここも俺に収穫を与えてくれるのだろうか」

「人の気配がしない。こんな偏狭の地こそ隠れるには打ってつけだと思ったが、読みが外れたか」

「何か見落としていたとしても、今の俺にはそれを見つけるだけの情報がない。
ホールのようにわかりやすい手がかりが無い以上、ここに留まるのは時間の浪費だ」 

「調査に時間がかかりそうだから、と後回しにした展示場まで戻るべきか」

「それとも公園、政庁、円形闘技場、薬局と一周したあとに行こうか」

      /\___/\
    / ⌒   ⌒ ::\
    | (●), 、 (●)、 ::|
    |  ,,ノ(、_, )ヽ、,   :::|
    |   トUU‐ァ'   .:::|
    \  `ニニ´  .::/
    /`ー‐--‐‐一''´\
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 00:37:53 ID:29NNM2s3
投下乙です

>君が 光/闇 に変えて行く
式は放送前に幹也の死体と対面か
どうなるんだろ、これ…
それにしても幹也が見つけたのはそれだったのか

>協議の果てに迷える戦士達 ◆IXsb2rHJg6
あっちこっちと五飛も大変だな
まあいきなり電車来たら仕方ないか
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 00:56:54 ID:YTtoyrzX
>君が 光/闇 に変えて行く
直死の魔眼とルールブレイカーのどっちかだけで魔法陣は無効化できるのにー
ヒイロが怪しいのでデュオには軽いフットワークで頑張って欲しいところ。

>協議の果てに迷える戦士達
文章の出来がちょっと酷いと思う。
これを通すなら五飛とサーシェスの行動を箇条書きにしてくれるだけの方が……
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 01:04:22 ID:NGs48KS9
告知

『協議の果てに迷える戦士達』の書き手の◆IXsb2rHJg6氏
代理スレに投下した作品の書き手の◆1U4psLoLQg氏

指摘が入ったが修正するか否かが完全にわかれているので書き手氏自身の判断を仰ぎたいので連絡お願いします
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 01:12:39 ID:KXTlmnGr
>>549
誘導するのはいいけど、要望をまとめずに、さあログ全部読んでくれ!
ってのも結構酷い話だと思うんだがw
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 01:38:33 ID:wKkmiYUz
投下乙

>君が 光/闇 に変えていく
デュオと式、それぞれの描写がよくできたいい繋ぎの話だと思います
式……
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 02:05:47 ID:LH526j8L
 ★ 連絡事項 ★

今さらという気もしますが、第一回放送までの人気投票を実施します。
対象となる作品、日程等は下記の通りです。

対象作品:第一回放送までのSS 000話『オープニング――《開会式》』〜105話『夜明けのゼロ』
投票部門:【SS部門】【セリフ部門】【死亡キャラ部門】
投票方法:
 ・【SS部門】【セリフ部門】は1位〜5位までを投票。1位を5ポイント、2位を4ポイント……5位を1ポイントで集計。
 ・【死亡キャラ部門】は1位〜3位までを投票。1位を1ポイント、2位を2ポイント、3位を1ポイントで集計
投票期間:22日(火)0:00:00〜25日(金)23:59:59
投票場所:したらばの投票用スレ(今はまだ無いです)
結果発表:26日(土)の夜 たぶん21時くらい

夜に投票用スレを立てたら、また改めて告知をします。
投票に関する細かい注意事項等はその際に発表します。


あと、別件となりますが報告。
仮投下スレに◆1aw4LHSuEI氏の投下が来ています。意見はしたらば避難所スレまでお願いします。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 06:56:33 ID:/F4eOTpw
どうでもいいがマップの現在位置wwwwwww死神さんがスタンド使いの吸血鬼になってんぞwwwwww
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 07:05:21 ID:9uZP/5y1
書き手枠があと海原とユフィだけか…
両者とも結構美味しい役回りを獲ているが
なんとなく第二回放送直後に死にそうだなぁ
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 09:53:14 ID:bFifDXk8
第一回放送後からしばらくして、人数が減らない減らない言われていたけど、
気がついたらめっさ減っていたでござる
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 10:39:52 ID:cm0yHznV
光秀さん頑張ってるからな
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 10:40:06 ID:LH526j8L
◆mist32RAEs氏の『思春期を殺した少年の翼』の修正稿に関し、通しでいいという意見が五人以上からあり
仮投下スレ投下後24時間経過しましたが反対意見はなかったので、代理投下します。
玄関を開けてすぐのところにソレはあった。
様々な種類の草木が周囲に生い茂る、外見だけがおんぼろな山中の洋館。
その出口から出てきたヒイロとファサリナを出迎えたのは少女の死体だった。
茂みの真ん中に投げ出された血まみれの死体だ。
上等な服にいくつもの銃創。そこから溢れ、すでに生乾きの赤黒い液体。
よく見れば身体のそこかしこに死斑が浮き出ており、耳や鼻から血液混じりの体液が垂れ流され始めている。
生前はさぞかし見目麗しい少女であっただろう。
だが今は誰もが目をそむけるほどに死の気配を振りまいているだけの物体に成り果てた。
これが死だ。
人がモノになる。
そこに幻想はない。
人が腐り果てる。
そこに美しさなどない。
ソレはもう人ではない。

「リ……リリー……ナ……」

それはヒイロの掠れた声だった。
ファサリナは少なくともここで出会ってから、この少年のこんな声を聞いたことはなかった。
鍛え上げられ、引き絞った若い身体が微かに震えている。
何があろうとも動揺とは無縁と思われた鉄面皮のこの少年が、だ。
それだけでファサリナはヒイロの心中を察した。
この死体の首元を見れば、自分たちと同じ境遇であることは容易く知れる。
そしてヒイロの知る人物であることも彼の反応を見れば一目瞭然だ。
ファサリナにその名前を教えなかったのは警戒していたが故だろう。
ゼクス、トレーズなどの名前とは違う、迂闊には教えられない大事な名前だったはずだ。
その名前の持ち主である少女。この目の前の死体が……リリーナ。
下手に声などかけられない。
ゆえにヒイロの呟きを最後として、この場に空虚な静寂が満ちていった。
今は彼は何を思うのだろう。
ファサリナがヒイロについて知ることはあまり多くない。それゆえにその心中を慮ることなどできなかった。
佇む少年は動かない。まるで一枚の写真のようにファサリナの見る風景は固まっていた。


「…………少しお伺いしてもよろしいでしょうか、ヒイロ」


無視しているのか聞こえていないのか、反応はなかった。
ただ立ち尽くして少女の死相を凝視している。
その視線を遮るようにしてファサリナはかつてリリーナと呼ばれた少女の遺骸へ、そろりと身を寄せた。
その手には洋館の内部から携えてきたカーテンの布地がある。
ヒイロが動かぬ間に館の中から調達してきたのだ。
それをイスラムの女性が纏うスカーフのようにしてリリーナの身体へ巻きつけていく。

「何のつもりだ……」

弱々しく呟くように。
その声には力がなかった。

「この方は貴方の大事なひとなのでしょう……?」
「何のつもりだと聞いている」

やや強い声。
だがいまだに虚ろな感情を隠せるほどのそれではない。

「弔う前にせめて死化粧を」
「……化粧?」
「ええ、この方の姿を見ることができるのはこれで最後。ならば出来る限り美しく、貴方の想い出の中へ刻んであげたいと思います……」

手櫛で髪を軽く整え、顔の汚れをカーテンの裾で丁寧に拭きとってやる。
ヒイロはその作業を邪魔しない。佇み、ファサリナがリリーナを清める作業を言葉ひとつ発さず見つめていた。
自分の背後に立つ少年は今、悲しみとともにこの少女の記憶を己の脳裏に焼き付けているのだろう。
それでいい。肉体は死んでもその生前の記憶は誰かの心の中に残る。
ならばその死者はその思い出の中で永久に生きることになると、同志たるカギ爪の男はそう言っていた。
ファサリナの記憶の中にはあの優しげな微笑が今でもはっきりと思い出せるほどに深く刻まれている。
そう、例え肉体は死んだとしても自分の中で同志は生き続けているのだ。
だからこその理想のために躊躇わずこの身を捧げることができる。平和と調和を目指すその想いが胸の中にある。
ヒイロにもそうあって欲しい。この少年は強い。安々と悲しみに折れるような人間ではないだろう。
だがこの島に連れ去れられてきた現状のファサリナにとっての唯一の希望たる彼には、自分と同じ気持ちを理解して欲しい。
無愛想だが妙に誰かの気持ちに敏感なところのある不器用な彼に、自分の気持ちを理解して欲しい。
汚れた女だ。自覚はしている。
よりによって、少女の死によって悲しみにくれるヒイロ・ユイにこの自分を理解して欲しいと、浅ましくもそう言っているに等しい。
だってこの哀しみは一人で背負うには重過ぎる。傷の舐めあいでもいいから誰かの理解が、温もりが欲しかった。
同志が生きているにせよ死んでいるにせよ、その理想のために自分がやるべき事は多く、道は険しい。
その道をたった独りで行けというのか。誰かを頼りにするのはそんなにもいけないことなのだろうか。
そんなはずはない。ヒイロでも、異常とも言えるほどの強靭な精神であろうとも、そんな気持ちを少しでも抱かないはずはない。
だって彼は、ああ見えてとても優しい子だとファサリナは思うからだ。
ヒトは結局自分のことしか理解できない。
ゆえに自分の弱さを真っ直ぐに見つめられればこそ、誰かの弱さを汲み取れる優しさが生まれるのだから。
それができるなら、きっと――、


――ごめんなさい。


この少女がヒイロにとってどんな存在なのかは知らない。
だがこころの中で謝りの言葉を呟いて、ファサリナはリリーナの唇に彼女自身の血で紅をひいた。
半ば乾いたその血は赤というより暗褐色に近い。
生前は清楚で明るい雰囲気を纏っていたと思われる快活そうな少女の猊は、白蝋と見紛うばかりの青白い肌にダークな口紅という組み合わせによって、妖艶ともいえる気配に包まれていた。
血に汚れてボロボロのドレスはその全身を包んだカーテンの布地によって隠されており、その顔はファサリナの化粧によって見違えるようだ。
茂みの緑に覆われたローブ姿の美しい少女がそこにあった。

「なぜこんなことをする」

ヒイロの質問は先ほどと同じだった。
ファサリナは全ての作業を終えて振り向き、少年の真ん前まで歩み寄る。
相手は微動だにしない。だからこちらからさらに一歩近づく。

「……答えろ」

互いの瞳の中に向き合う相手の姿が映る、それほどの近さ。
ヒイロの瞳は揺れている。それがファサリナには見えた。

「ヒトは死んでしまってもその人を大切に思う人間の記憶の中で生き続けます。それこそが思い出というものではないでしょうか」
「……否定はしない」
「それに……女は想いを寄せる殿方には一番美しい姿を見せたいと思うものです。この方もきっとそう思うでしょう」
「何を勘違いしているか知らないが、俺とリリーナは――」

ファサリナがさらに一歩踏み出した。
顔と顔が触れ合う距離。
ふわりと柔らかな風が女の匂いを含んでヒイロの肌に触れた。
そしてその発生源たるファサリナの肌も触れ――――なかった。


「ええ、ですからこれは私の一方的な勘違いです……ごめんなさい、ヒイロ」


まさに触れるか触れないかの距離で、生めかしい薄桃色の唇が言葉を紡いだ。
その言葉をくだらないと切って捨てる、そういうことをヒイロはしない。
ただ無言で答えを隠す。否定ではなく、答えることを拒絶。

「――同志が生きている確率は……殆ど無いと言っていいでしょう」
「何?」

すっと距離をとってから視線を外して、ファサリナは言った。
冷静に考えればわかることだったのだ。

「同志を付け狙う者の名前を覚えておりますか」
「ヴァン……だったか」
「ええ、彼は思い返せば同志のことを『カギ爪』と呼んでいました。おそらく彼は同志のお名前など知らないのでしょう」
「そうか……俺とお前の情報のみによる推測だが、この島には何人かの括りごとに何らかの面識がある人間同士が集められている」

名簿にファサリナの知る名前は、自分自身の他にいくつかある。
ヒイロも数こそ違えど知る名前が複数あるという。
つまり知り合いが全くいない人間はここにはいないのではないだろうか。
この何でもありのサバイバルにおいて、面識のある知り合いという存在は、徒党を組んで身を守る上でとても有効だ。
それにヒイロにとってのリリーナのように、ファサリナにとってのカギ爪のように、守りたい存在があるならばこそ自ら捜索のために動くだろう。
その逆としてヴァンという男のような誰かの命を付け狙う人間という存在にとっても、理由こそ違えどその誰かを探しに自ら動く動機となる。
自分だけの命が大事なら、どこかに引きこもっていれば生存確率は格段にアップする。
だが皆がそうしていたら、ほとんどのプレイヤーは遭遇する確率が激減、殺し合いも発生する確率は同様に低くなる。
結果、帝愛の言う『ゲーム』はつまらないものになるだろう。少なくとも自分たちを監視して殺し合いを眺める存在にとっては。
ヒイロもファサリナも知人の捜索にあたって一人での単独捜査に限界を感じているからこそ、こうして行動をともにしているのだ。
それがないならわざわざ危険を承知で歩きまわったりはしない。見知らぬ誰かと組むこともなかったろう。
帝愛はそれを見越してこのような人選をしたのだとしたら。

「ヴァンという男が名簿を見たとき、カギ爪の本名が書かれていたとしてもそれが目的の人物とはわからない……」
「ええ、ですから彼にもわかるように『カギ爪の男』と書いたのでしょう」

理屈は合う。
ヒイロもそれを認めた。
だがそれを認めるということはファサリナ自身が最も認めたくない想像を認めることと同義だ。

「それを受け入れてこれからお前はどうする気だ」
「同志の理想を果たすために動きます。同志の想いは私の胸の中で生きている。私はそれを実現させなければなりません」
「生き残って同志とやらの代わりを果たすために動くか。それがこのゲームに乗るということなら……」


――お前を殺す。


ヒイロは無言でそれを伝える。
その瞳の中に最早、揺れは無い。

「ヒイロ、貴方の中のリリーナさんは貴方に何を望むのですか?」
「質問の意味が理解できかねる。わかるように言え」
「貴方が最も守りたかったヒトはもうこの世にいないのですよ? そしてそれは私も同じ」

ファサリナはそっと悲しげに眼を伏せた。長いまつげが濡れた瞳に被さり、眼から透明な液体を溢れさせる。
ヒイロ・ユイはたしかに強い。だがその強さはその若さには余りにも似あわず、ゆえにファサリナの眼には歪に映った。
感情を肯定するも、自身の感情そのものは完全に制御しているように見える。
まるで恐怖を知らない、完璧に訓練された兵士のようだ。
そんな彼が揺れたのはこの少女の死を見つめた時だけだった。
土壇場でも揺らぐことなく、自分の生き死にの境目ですらクールに状況を見つめることができるにも関わらずだ。
リリーナという少女がヒイロの大切な人物だということは誰にでもわかる。
しかしそのような人間らしい感情を持ち合わせているのに、なぜこうも自分を生き死にの埒外へと捨てられるのか。
ファサリナには未だにヒイロ・ユイを完全に理解することはできない。
だが完全に理解せずともアキレス腱を握れればそれで十分。

「……だから何だ」
「私たちは……協力できるのではないでしょうか。もし主催の力が死者を生き返らせることが可能であるなら――」
「馬鹿げている。冷静になって考えろ」
「それをいうならば、私達がここへ連れ去られた事自体がすでに馬鹿げたことです」

それを完全に否定する意見をヒイロは持っていないはずだ。
ファサリナ自身、世界中で暗躍するカギ爪の組織では幹部といってよい。
そんな組織の最重要人物を拉致など、少なくともファサリナの知る世界の人間にできるわけがない。

「……だとしたら、どうする。優勝賞金の十億では、お前と俺の求める人物をそれぞれ五億×2で蘇生・帰還させればそれで終わりだ」
「私はそれで構いません。同志の胸の中で私はあの方の記憶となって、そして一つになるのですから」
「自己犠牲か……俺もそうだと何故お前は考えられる?」

きっとこの少年も同じはずだ。
少なくとも彼にとって最も大事な存在は己ではないのだ。
だから例え自身がどうなろうとも、リリーナという名の少女のことを最優先にするだろうという確信があった。

「貴方は平和を求める同志のお考えを私から聞いたときに、その思想を肯定して下さいました。
 ですが貴方はその一方で、このゲームを主催する帝愛に戦いを挑むことを躊躇っているようには見えません」
「怖気付いたのかファサリナ。奴らは確かに強大だが、お前がその力に屈するというなら、敵として排除するまでだ」
「そうではありません、貴方自身のあり方のお話をしているのです」
「俺自身だと……!」

なぜファサリナがヒイロ・ユイの事をそう思ったのか。
それは一つの疑問がきっかけだった。
平和を肯定し、だが戦いに躊躇いを見せない――矛盾したように見えるこの二つの要素は少年の中でどうやって並びたっているのか。
争いを忌避するから平和を求めるのではないのか。
ならば何故迷いなく闘争の中へ飛び込む決断を下せるのか。
その答えはおそらくこれだ。


「貴方は平和を肯定する――ですが、その平和の中に貴方が入ることを考えていない」


ヒイロは答えない。
だがその平和を担う存在がヒイロ自身でないことはファサリナにも解る。
その研ぎ澄まされたナイフのような闘争技術と冷徹な意思は、戦争のためだけに存在するものだからだ。

「貴方の言うように行動して、結果として勝利するに至ったとしましょう。ですが、その確率はどれほどのものなのでしょうか?
 怖いのではありません。私の存在の全ては同志のためにあります。同志が理想を追い求めるのならば、その理想のためにこの身を捧げます。
 ですが私は貴方とは目的を違えるものと思っていました。貴方が何のために戦っているのかわかりませんでしたから。
 ゆえに言い出せずにおりました。貴方は強い……そして……貴方のような殿方の敵になるのは辛いことです。
 ですから――」

ちゃきり。
コルトガバメントの冷たい音。

「ヒイロ……」

少年の右手が構える暗い銃口がまっすぐにファサリナを狙っている。

「もういい、わかった。お前は俺とは道を違えた。ならばここで殺す」
「いいえ、違いません。貴方は私と同じです!」
「違う。俺は、己の妄執と作戦目的を混同などしない」
「ならばなおのこと貴方の冷静な判断で見極めて下さい! 貴方の言うようなことで同志が生き返る確率はどれほどのものですか!?
 私達を拉致してきた彼らの言う事を鵜呑みにすることは確かに危険かも知れません。
 ですが普通は、わざわざここまで大規模な仕掛けを施してまでこんな回りくどいことをするでしょうか!?」

そうだ。
相手は――帝愛は普通ではないのだ。
どうやって自分たちを連れさってきたのか分からない。
どうやっていつの間に爆弾首輪を取り付けたのか分からない。
どうやってこのデイパックに質量を無視した荷物を入れられるようにしたのか分からない。

「彼らに勝てますか? よしんば勝ったとしても私達の求める人間を生き返らせることができなければ、それは勝利でも何でもありません。
 つまり彼らが生き返らせる技術を持っていることを信じなければ、貴方の作戦は成り立たない。
 貴方は帝愛の常軌を逸した『魔法』を信じているのです! 人を、人間を生き返らせることが可能だと!」
「……!!」

ヒイロの表情が変わった。
眉間に険しい皺がよって、その秀麗な眉目を歪ませている。
ぎりっ、と歯が軋む音が聞こえてきそうなほど唇の端に力がこもっているのがわかる。

「もし貴方が……自らの命すら捨ててこの方を救いたいと願うのならば、私たちは協力できるはずです。
 二人で生き残りましょう。私達全てを生きながら拉致した相手と戦うよりは、勝率は遥かに高いのではないですか?」
「…………最後に残ったお前が俺を裏切り、同志と二人で生還する可能性もありえる」
「その時はどうぞ……約束のとおりにしてください」


――お前を殺す。


以前、ヒイロはファサリナにそう言った。
ファサリナの提案では、優勝者となるのはヒイロ・ユイ。
そして望みはリリーナとカギ爪の蘇生と帰還。
自身の生死は度外視。
だがファサリナとて何の計算もなしでこの少年を信じたわけではない。
このようなことを約束しようと、最後まで生き残ることができなければ一切の意味を成さないのだから。
今の段階ではどうとでも言えるただの口約束でしかない。
その時になってヒイロが信じるに値しない相手と分かったならば、その時はその時だ。
だが彼がファサリナが感じた通りの人間だったなら――ヒイロに殺してもらえるのは悪くないことかもしれないとファサリナは思っていた。

「先程、私に手榴弾を分けていただいたお返しです……もし協力していただけるなら、これを」
「ゼロシステムだと……!?」

前もって確認しておいたファサリナの支給品のひとつだ。
携帯できるようにメット型になっており、これをかぶる事で効果を発揮できるらしい。
だがいまいちデザインがごつくて気に入らず、そして説明書きに書いてあったリスクの大きさゆえに今まで使おうとは思わなかった。
だが強靭すぎるほど強靭な精神を持つこの少年ならば、もしかしたら有効に使えるのではないだろうか――そう考え、ヒイロに渡そうと思ったのだ。




「ククク……ハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」




メットを手にとって説明書きを読み終わったヒイロは突如として笑い出した。
彼のこんな行動など全く予測していなかったファサリナは思わず首をかしげながらも問う。

「ヒ、ヒイロ? いったい……」
「……いいだろう。ならばお前の選んだ未来が正しいかどうかゼロに聞いてやる……!」

戸惑うファサリナをよそに、皮肉気な形に口元を歪めながらヒイロはおもむろにそのメットを被ってスイッチを入れた。
ブゥン、という起動音と、続いて甲高い電子音。
その連続する音はモーターが回転数を上げるように、どんどん速くなっていった。

「ぐっ……」
「ヒイロ……!?」




――――そして少年は血塗られた未来を垣間見る。


   ◇   ◇   ◇


殺した。

殺し続けた。

ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で、モビルスーツで。

貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。

一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、弱者の声なき声の代弁者として、己の感情など一切顧みることなく。

地球政府に立ち向かい、凶弾に倒れたコロニーの英雄――ヒイロ・ユイの名を与えられたのはそのためだ。

少年の肉体はコロニーのためにあった。

少年の感情は平和を求めるものたちのためにあった。

少年自身のために少年が動くことなど何一つとしてなかった。

だからこんなことはいつもどおり。

いや――もしかしたら名もなき少年は今、初めて己自身の中から沸き起こった感情に従ったのかもしれない。

平和を創り上げるのは彼女の役目だ。

自分は戦うことしかできないから。

だから平和をもたらすことができたなら、彼女に自分は必要ない。

殺した。

死んだ。

殺した。

死んだ。

殺した。

死んだ。

たくさん、たくさん、たくさん、たくさん――――だから、どうした。
 



「命なんて安いものだ…………特に俺のは」








――――――――――リリーナ。




   ◇   ◇   ◇


「ぐううっ! はぁっ……はぁっ……」
「ヒイロ!」

息も荒く、ヒイロは膝をついてかぶっていたそれを脱ぎ捨てた。
どさりと草のうえにヘルメットが落ちる。
そこへファサリナが心配そうな表情で駆け寄った。

「大丈夫ですか!? 貴方ならと思ったのですが、やはり……」
「いや……問題ない」

ゼロが見せた未来はすでになく、ヒイロの目の前にはファサリナの心配そうな表情と、そしてリリーナの遺体。
状況を確認する。訓練によって身体に無意識レベルで染み込んだ行動。
身体能力問題なし。
精神面、ゼロシステムからの回復まで数秒。
肉体の動きを確認するようにゆっくりと立ち上がった。


「ファサリナ――」
「はい」


第二回の放送が近い。
太陽が真上でギラギラと輝きながら二人を見つめていた。
その光に照らされたファサリナは、どこか写真のようにぼんやりとヒイロの瞳に写っていた。




「答えは出た。俺は――――」
C-3/憩いの館/1日目/昼】

【ファサリナ@ガン×ソード】
[状態]:健康
[服装]:自前の服
[装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1個(確認済み)
    M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした)
    軽音部のラジカセ@けいおん(こっそりデイバックに入れた)
[思考]
基本:ヒイロと協力、無理だと判断した場合単独で殺し合いに乗る
1:ヒイロと共に行動する
2:間欠泉を調べ終わったら、早く新しい同士を集めたい
3:なるべく単独行動は避けたい
4:ゼロなどの明確な危険人物を排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。
[備考]
※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。
※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています
※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています
※「ふわふわ時間」を歌っている人や演奏している人に興味を持っています
※ラジカセの中にはテープが入っています(A面は『ふわふわ時間』B面は不明)




【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:左肩に銃創(治療済み)
[服装]:普段着(Tシャツに半ズボン)
[装備]:基本支給品一式、ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW
    コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした)
[道具]:B-2と記された小さな紙切れ@現実
    『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム〜戦場の絆〜』解説冊子
[思考]
基本:???
1:リリーナ……
[備考]
※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。
※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。
※ヴァンを同志の敵と認識しています
※ファサリナの言う異星云々の話に少し信憑性を感じ始めています。
※ファサリナのことは主催に対抗する協力者として認識しています。それと同時に、殺し合いに乗りうる人物として警戒もしています。

【ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW】
正式名称「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)。
分析・予測した状況の推移に応じた対処法の選択や結末を搭乗者の脳に直接伝達するシステムで、端的に言うと勝利する為に取るべき行動を予めパイロットに見せる機構である。
高性能フィードバック機器によって脳内の各生体作用をスキャン後、神経伝達物質の分泌量をコントロール。
急加速・急旋回時の衝撃や加重等の刺激情報の伝達を緩和、或いは欺瞞し、通常は活動できない環境下での戦闘行動を可能とする。
更に外部カメラ、センサーによって得た情報を、パイロット自身の視聴覚情報として伝達する事も可能である。
しかし本システムが提示する戦術とは、基本的に単機での勝利を目的としたもので、目的達成の為であればたとえ搭乗者の意思や倫理に反する行為も平然と選択する。
状況によっては搭乗者自身の死や機体の自爆、友軍の犠牲もいとわない攻撃など、非人間的な選択が強要される事もあり、これがパイロットの精神に多大な負担をかける。
そのため、ただゼロシステムを使うだけではシステムに命令されるがまま暴走するか、もしくは負荷に耐え切れず精神崩壊・廃人化を招く恐れがある。
本システムを体験したデュオ・マックスウェル曰く、「まともな人間に扱える代物ではない」とのこと。
ヒイロはエンドレスワルツの五飛戦において、このシステムの命令を完全に捩じ伏せながら戦っていた。
このロワ内では携帯できるようにメットの中にシステムが内蔵されている。外見デザインはTV版最終決戦でドロシーがかぶったものを参照。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 11:08:21 ID:LH526j8L
以上で代理投下終了です。
修正要求に関するルールに則り、現時点をもってファサリナ、ヒイロ・ユイの予約が解禁となります。
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 11:23:34 ID:pidOKQL4
投下乙です
状態表や細部が変わっただけで随分印象が変わりますね
GJです!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 13:05:30 ID:7lCJXVy5
がんばってください
楽しみに待ってます
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 19:47:06 ID:559mW6aI
乗るか否かは次の書き手次第か
さてどうなる
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 23:46:03 ID:LH526j8L
 ★ 連絡事項 ★

【投票について】
昨夜告知しました通り、一回放送までのSSを対象とした人気投票を実施します。
場所は、したらばの「投票用スレ」です。 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1261406175/
投票に関する詳細はこのスレの>>2にあるので、内容を確認のうえ、ご参加ください。

【放送案募集について】
22日(火)0:00より、二回放送の放送案の募集を開始します。
放送案の投下は、したらばの仮投下スレにしてください。
放送案の締切ならびに放送後の予約解禁は年明けを予定しています(現在したらば避難所スレで日程調整中)。
572徒物語〜ももこファントム〜:2009/12/22(火) 03:00:05 ID:uXWWPU4Z


「最後に教えよう。――おまえの起源は“孤独”だ。東横桃子」

 静かな部屋に男――荒耶宗蓮の声が響く。
 語りかけられたのは女――東横桃子。
 しかし彼女はじっと彼を見詰めるだけで、それに応えようとはしない。

「――そう、おまえは元より誰とも交わることのない人間だ。それ故、おまえは他人に求められない。他人を求めようとはしない。
 父や母といった肉親でさえ――おまえには無関心だ。そして、自身もまた肉親に対し無関心だった。
 友人が、教師が、肉親が、当然のように与えるはずの情を――おまえは知らない」

 やはり、東横桃子は応えない。
 しかし、その瞳に揺れる色だけが、荒耶を認識していないわけでないということを象徴している。

「“それ”を、疑問に思ったことはなかったのか。辛いと感じたことはなかったのか。

 ――あろうはずもない。

 “それ”こそが、おまえの起源であり、何よりも自然な状態であったのだから」

 目を閉じて、そして開く。
 そして、彼女は彼と向き合った。

「だから――」
「む――」

 そして、初めて。
 こうして顔を合わせてからから初めて。
 東横桃子は荒耶宗蓮に応える。

「――だから、それが、私にとって、何だっていうんすか」
「――意味などない。おまえの行為が、同じく無価値であるように」

 果て無き時を生きる魔術師は不愉快そうに告げる。

「死者蘇生――それがおまえの望みであったか。
 ――――愚かな。
 無意識ながらも起源を自覚し、利用しているおまえが。今更、何を求めようというのだ。
 おまえには最初から、絆などと呼べるものは存在しない――」


573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 03:13:52 ID:uXWWPU4Z
522 :名無しせずにはいられないな:2009/12/21(月) 19:38:12 ID:HjxAsN8A
そもそもキャラが復活するって時点でロワの基本ルールに触れると思うが
1stの長門を引き合いに出す奴がいるかもしれないが、あれは膨大なフラグが積み重なった結果だから
今回みたいに一人の書き手の独断で超展開をやるのはどうかと思う
まあとりあえず書き手に一言
奇抜なことやればいいってもんじゃないよ、あなたの無責任の尻拭いをさせられる他の書き手のことも考えてね

541 :名無しせずにはいられないな:2009/12/21(月) 21:43:28 ID:AgIg2CSo
>>520
最初のマンション内での式戦、式に左腕の肘から先を斬り飛ばされましたがアラヤが一言呪文を唱えると即座に左腕が元通りになっています。
それとアニメでの空間圧縮は基本的に右手で、左手で空間圧縮を行ったのは右手が使用不能になった場合のみです。
加えて、右手でも空間圧縮を行えるにも関わらず、ギアスにかかる危険性を犯してまで接近戦を挑むのはなぜでしょうか。

551 :名無しせずにはいられないな:2009/12/21(月) 22:22:28 ID:HTPXxw1M
正直全体的に描写が不足していて、最後のインパクトで押し切ろうとしている感は否めないからね
書き手さんが修正してもっといい作品にしたいなら読み手の俺はいつまでも待つけど、他の書き手はそうもいかないだろうし
このまま通しでいいんじゃないかな


554 :名無しせずにはいられないな:2009/12/21(月) 23:50:35 ID:9S/WwwuM
んーと、ファントムについていくつか気になった事としては……。

まずトイレに行くというのを女性に言いにくいからルルに言ったのはいいとして、それでも一緒に行動していた人が一人だけ離れたら気づくのでは?
まだ探索中なビルの中なのに、一人離れるならその場で待つと思いますが。 
ましてやさっき会ったばかりのルルの言うことに従って探索を続けるというのはどうかと。

次に、空間圧縮はアラヤの肉体の中の現象と言われても、文言唱えて空間圧縮している時点で神秘の部類に属するのではないでしょうか?
空間圧縮自体はキャスターにされても無効化してましたし。

それと、ルルに言われて、そちらを向いてギアスに掛かっていますが、
戦闘中、それも明らかに強敵な相手から目を離すとは思えないのですが。

まあここまでは正直いちゃもんレベルですのでどうでもいいのですが、一つだけ、
セイバーの参戦時期的に、死に際でも士郎を愛している、とは言わないと思います。
確かに好意は抱いているでしょうし、フォローもされていましたが、
それでもその後の教会での聖杯否定がなければ、セイバーは己の道を悔いたまま次の聖杯戦争に向かったでしょう。

50 :名無しせずにはいられないな:2009/12/21(月) 23:49:41 ID:1MVMalXM
俺は恐らく月厨と呼ばれる類の者だが、この流れはどうなんだ
ただ思った事を質問しただけで重箱厨だの破棄厨だの叩かれまくりだぞ
しかも悪意を隠そうともしない書き込みでボコボコに言われるし
破棄させるつもりも企画を停滞させるつもりもサラサラ無いのになんでこんなに嫌われないといかんのだ

おそるべき、議論ロワ。月厨と重箱厨は今日も元気!
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 06:59:06 ID:Ibgx7ol6
せいばあ脂肪話をあえて投下した書き手の勇気に乾杯
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 07:48:45 ID:07nPcwIA
セイバーさんが食べ過ぎで肥る話と申すか
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 08:12:59 ID:ZCLZRx3l
>>575
死因はメタボかw
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 12:37:48 ID:8ZF4hoyn
おまえら、せいばあ殿をメタボ扱いか
「約束された勝利の剣」が怖くないらしいなwww
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 16:41:32 ID:Cr4NYG26
一般人が大金星挙げたらペリカボーナスってのは無しになったの?
安藤とカギ爪の時にそんなのがあった覚えがあるけど。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 16:58:14 ID:SQmmu3t9
>>578
そもそもペリカでジープくらいしか買ってない
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 17:16:00 ID:3K3VUrPs
>>578
wikiに収録されてるのでは削られてるから、修正したんじゃない?
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 18:13:11 ID:A5jiZATv

 ★ 連絡事項 ★

◆IXsb2rHJg氏の『協議の果てに迷える戦士達』に対し、したらば議論スレで下記二点の指摘がされています。
 ・サーシェスが幸村と藤乃の戦闘の最後部分を目撃しているのに、
 その後電車に追いかけられてバイクで五飛が突っ込んでくるのは時間的にありえない。
 ・この五飛はEWの時期から参戦なのに今更ゼクスがOZを裏切った云々で怒ってるのがおかしい

また、仮投下されていた◆1aw4LHSuEI氏の『徒物語〜ももこファントム〜』ですが、指摘を受けての修正稿が仮投下されています。
意見はしたらばのちょっとしたことを質問スレまでお願いします。

 
582 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 19:32:47 ID:PiCHDyJG
今日8時までだったのですが少し遅れそうです、スミマセン。

このスレの住人さんは大人だから、0zvBiGoI0kの投下が遅れても荒らそうなんて気持ちにならないよね・・・?
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 19:43:53 ID:3K3VUrPs
そういうのは予約スレで聞くべきじゃないだろうか
俺は気にしないけどさ
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 19:48:29 ID:WVuJMkPd
どっちにしても放送前+年末でまったりモードだから良いと思う
585 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:28:32 ID:PiCHDyJG
お待たせしました。
というわけでC.C.、戦場ヶ原ひたぎ、上条当麻、アーチャー 投下します。
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:29:36 ID:bOIYVmsq
支援
587 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:29:55 ID:PiCHDyJG
結論から言って、上条当麻の右腕は切断されずに済んだ。

「当たり前だ!」

何故か条件反射的に叫んでしまった。

「いきなり何を叫んでるのかしら上条君。とうとう妄想癖が幻覚幻聴を起こすほどに進行してしまったのかしら?
昔からさぞ周りから冷ややかな目で見られていたのでしょうね。同情するわ。周りの人に」

そしていともたやすく紡がれるえげつない暴言。
くそ、油断した。この状況でこんな奇行をすればどんな罵りを受けるかなど分かっていた筈だというのに!

「っ違う!今のは俺のせいじゃ―――って、そうだ待て戦場々原!」

反論をしようと―――したところで効果がないのは分かっているが―――戦場々原に詰め寄った所で、本来の目的を思い出し踏みとどまる。

「なにかしら上条君、今は貴方の妄想漫才に付き合う気はないわよ。
私は早く駅で圧死しているかもしれない阿良々木君に会いに行かなければならないのだから。
……って今のもツッコミに含まれるのかしら。困ったわね。弓兵(ゆみへい)さんの言った通り感染毒を撒き散らしているんじゃないかしら、貴方」

「持ってねえ!漫才する気もねえ!あと話を逸らすな!そしてゆみへいって誰だ!俺はちょっと落ち着けってお前に―――」

「その言葉は鏡の前で言ってなさい。どう見ても説得力というのがないわよ。
私は冷静よ。冷静に情報を理解して吟味した上で行動に移っているわ。貴方と違ってね。」

「ぐっ」

そう言われて言葉を喉につまらせてしまう当麻。緊迫した状況においては妙に口が回るが日常生活においてそれが役立つことは余りない。

「それに愛しい人が死の危機に瀕してるかもしれないというのに落ち着いているのも人としてどうなのかしら。
すぐさまその人の下へ馳せ参じたいと思うのが自然だと思うのだけれど」

相も変わらずの毒舌を撒く戦場々原。だが当麻の言う通りにその心中は穏やかでなかった。



消失した聖骸布に割と真剣な怒りを抱いたアーチャーだが
「少なくとも腕一本分の働きをして見せろ」と代償行為を求めた所でひとまず矛を収め、改めて情報交換に踏み切った4人。
アーチャーの持ち帰った情報の価値はそれなりといった程度だが、
ただ1人戦場々原にとってはとても重要なものであった。というより最優先事項であったといっていい。

588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:30:44 ID:bOIYVmsq
 
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:31:28 ID:bOIYVmsq
 
590 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:31:36 ID:PiCHDyJG
D-6駅に阿良々木暦がいる事、その駅に神原駿河が合流しにきたこと。
自分の捜している人物が2人同時に見つかったのだ。それもかなりの近くで。

どちらもわたしにとって大事な人。特に阿良々木君。一刻も早く彼に会いたい衝動に駆られる。
咆哮癖のうえ妄想癖まである上条君なんかよりよっぽど頼りに……は、どうでしょうね。
芯はあるけど基本ヘタレなのは両者共通だし。ひょっとして2人出会ったら意外と気が合う?
まずいわね、上条君には私及び阿良々木君の半径5000キロメートルは近づかないように脅迫しておかないと。
やたら叫んで妄想に耽り込む阿良々木君なんて見たくないわ。2つとも素養は持ってそうな辺り特に。
え?神原?……そうね、まあ可愛い後輩ね。生きているならそれに越したことはないけど、私より先に阿良々木君に会うというのは少々癪ね。
泥棒猫の様な真似はしないだろうけど、吊り橋効果というのもあるし、ちょっと心配ね。
まあそんなことになっていたら2人を殺して私も死ぬけどね。

とまあ長々と心情解釈したが、要するに阿良々木暦も神原駿河も戦場々原ひたぎにとってはとても大切な存在であるということだ。

だからそこが暴走電車に突っ込まれて瓦礫の山と化したと聞いたときは、自分の中に亀裂が生じた音がした、ような気がした。
その後のアーチャーの補足を話し終えた途端に席を立ち外へ出ようとしたら上条に呼び止められた所で現在の状況に至る。


「とにかくそちらも落ち着きたまえ戦場々原ひたぎ。今回ばかりはこいつが正しい、業腹なことにな」

悔しそうに、本当に悔しそうに当麻を肯定するアーチャー。「何でそんなに残念そうなんだ!」という声を無視して。

「わざわざフルネームで呼ばないで下さい露出狂さん。そもそもあなたが報告を後回しにした事が原因じゃない。
意地の張り合いをして肝心なことを忘れ挙句男に脱がされて興奮してるなんて、物事の順序が逆ではないかしら。
理性よりも下半身の欲求を優先するなんて猿並の行動理念ね」

「……判断のミスは認めよう。だが先も言ったとおり状況はさほど絶望的ではない。
駅には私が知る限り参加者の中でも腕が立つ者がいる筈だし、私が遭った別行動中の者達も今頃駅についている頃だ。
余程襲撃者が強大か、余程運が悪くない限り阿良々木暦が死亡している可能性はまだ少ない」

節々の暴言には目を瞑りつつ諫めるアーチャー。事実あの駅で最悪の事態になっている確率は低い。

ヒトの領分を越えたサーヴァントにおいても最優と称えられる騎士、セイバー。
直にまみえ、その剣を受けた自分は彼女の強さを知っている。
彼女の身体能力、未来余地にも等しい直感を以ってすれば突然の襲撃にも対応できるだろう。
そして彼女が彼女である限り目の前の命をみすみす死なせる真似はしない筈だ。
それに自分が情報を交換した3人組は時間的にもう駅に着いてる頃だ。更にもう1組別行動をした者もいるという。
数の差では圧倒的に優位であることは間違いない。
つまりは初撃―――電車の突撃を凌ぎさえすれば危険性は幾分落ちることになるのだ。
無論、それが一番難しい事なのだが。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:32:17 ID:bOIYVmsq
 
592 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:33:45 ID:PiCHDyJG

襲撃犯はライダーの可能性が高い。線路の破損で運休状態の電車を動かすなんてのは自殺行為でしかないが、
騎兵の名の通り最高の騎乗スキルを持つライダーならばあるいは、と考えていた。
単独でそんなあからさまに目を付く行為をする以上衝突する場に誰がいろうと撃破する自信があるのだろう。
強力な支給品か、それとも協力者を得たのか。



―――ちなみに現在のアーチャーは上着の聖骸布を当麻の幻想殺し≪イマジンブレイカー≫によって僅かな布を残して消され、
腰にも聖骸布が巻き付かれてあったが上着が消えた今は取り外している。
投影魔術を駆使すれば新しい物を構成することは出来るのだがこの会場ではせいぜい2時間程度しか維持できないので控えることにしている。
服装は袖のない模様の入った黒服と同じく黒のズボンという先程とは一転の黒一色だ。
その際「露出狂」「視覚的陵辱」と戦場々原に散々罵声を浴びせられたのは言うまでもない。



「可能性がある、という点で十分だわ。
そもそも私の現時点での目的は阿良々木君に会うこと。そしてそこに阿良々木君がいるというのなら私はそこに向かうだけ。
危ないから行くな?そこまで貴方に行動を制限されるいわれはないわよ。
どこにいたって危険なのは変わりないでしょう。同じ死ならせめて阿良々木君と一緒に死にたいわ。

それじゃあごきげんよう。……ああ、それと。阿良々木君の居場所を教えてくれたことだけは感謝します、アーチャーさん」

一応、彼女なりに正直な感謝の言葉を伝えて玄関に手をかける。
が、そこから先の動きが止まる。正確には止められる。今まで蚊帳の外にいた当麻の右腕に。

「待てよ戦場々原、何でお前が1人で駅に行くって前提になってんだ」

腕を掴む当麻にすかさず右手から仕込んでいたシャーペンを取り出し男の目へ突き出す戦場々原。
当然芯は出ている。

「許可なく腕を掴まないでくれないかしら、痣になるでしょ」

「っ……聞いてんのは俺だぜ。質問に質問で答えるなよ」

「私の言ったことをそのまま引用するなんて、貴方オウムぐらいにしか知能がないの?
それに今のは質問じゃないわ、命令よ」

眼球から数ミリあるかないかの距離に凶器を突き立てられているが、当麻は怯まない。
ここで折れたら一生後悔することになると自分の一番根っこの部分が騒いでいる。
一応話は聞く姿勢を取ってくれるらしいので、手は離す。向こうはまだ構えたままだが。

「……それじゃ改めて聞くけど、何でまたいきなり戦場々原さんは1人で行動しようとしたわけですか?」

「あら、ようやく同じ性癖の持ち主に会えてベストフレンドになれていたる所に水をさすほど私は無粋じゃないわよ」

「どこをどう見て俺とアイツがベストフレンドに見えるんですか!?」

「顔」

「即答!?見た目で人を判断しちゃいけません!」

「それは違うわね上条君。あなたは無精髭にだらしなく背広を着ている男を会社に採用する?
髪を染めて顔中にピアスを開けている女性が清楚に思える?
身だしなみが良くなければこの不景気まともに就職になんてありつけないわよ?」

「話を逸らすな!そんなのは今はどうでもいいだろ!」

ツッコミという名の咆哮と共に前に踏み出しそうになるがそのまま進んじゃうと右目にブスリなのでギリギリ踏み止まる。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:35:00 ID:bOIYVmsq
 
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:35:20 ID:SQmmu3t9
私怨
595 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:35:59 ID:PiCHDyJG

「言っただろ!阿良々木って奴を探してやるからお前も俺に協力しろって!」

それは上条当麻と戦場々原ひたぎとの最初の邂逅の際に交わした協定。大それたものでもないが2人の行動指針を決めた言葉。

「あなた如きが阿良々木君を呼び捨てにしないでちょうだい。それとさっきの会話を聞いてなかったの?
阿良々木君を見つけたのはそこの突然現れた元・赤い変人さん、今は黒い露出狂のアーチャーさんじゃない。
つまり約束は無効というわけよ。
彼から情報を聞かなければ今頃駅にてスプラッタと化していることにも気付かずいもしない阿良々木君を探し回って
昼の放送でそれを聞かされ絶望のあまりこの殺し合いに乗って手始めに貴方を殺してしまうことになるかもしれないというのに。
……ああ、そういう点ではあなたも彼に感謝しておくべきでしょうね」

と冗談でもないことを口にする。……本当に、冗談ではないのだろ。
確かに阿良々木暦の所在を見つけたのは共にいた当麻でなく今し方出遭ったばかりのアーチャー。
ならばここで2人の関係も終わることになるのか?

「ああ、そうだな。けどそれでハイサヨウナラなんて別れられると思ってんのか?
そんな見捨てるような真似が出来ると思ってんのか!?それにもう一つの約束はまだ間に合うだろ!」

「……もう一つって何かしら」

訊ねる戦場々原。阿良々木くんと会わせる以外にそんなものを交わした覚えはないけど。

「お前と阿良々木くん、どっちも絶対に守るって約束だよ。覚えてねえのか?」

一瞬、戦場々原の瞳が揺れる。
ああ、そのことか。
駅にて食事中にポツリと漏らした一言。だが少なくとも彼にとってはこの上ない決意の表れ。

本気だったんだ。てっきり独り言のようなものだと思ってたのに。というか私は何も返してないのに、
それって約束っていうのかしら?

「お前も阿良々木くんも殺させない。もちろんお前が誰かを殺すのも許さねえ。
大切な誰かが殺されて、そのために誰かを殺して、その誰かの仇を討とうとまた誰かが殺して、そんなの何の意味のねえ!
俺はそんな堂々巡りにお前を、この会場にいる奴を巻き込ませたくねえんだよ!
もう死んじまった奴はどうにもならないけど、お前なら、阿良々木くんならまだ間に合うかもしれないだろ!
いいか、もう一回言うぜ戦場々原。

―――お前も阿良々木くんも、絶対に殺させない。」




「―――――――――」

暫くの沈黙の後、戦場々原は凶器を持っていた手を引く。
ようやくこの暴虐女王サマもキチンと人の話を聞き入れてくれたか―――なんて安心している上条の額に、ひどく女性的な笑みで戦場々原は、



引いた手を、大きく戻した。



「あだあーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」

眉間に出来た第3の目を押さえ今日何度か目とも知れぬ絶叫を上げる。そんな当麻を尻目に戦場々原は言葉を紡ぐ。
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:37:07 ID:bOIYVmsq
 
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:37:28 ID:SQmmu3t9
支援
598 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:39:09 ID:PiCHDyJG
「二度も三度も恥ずかしいセリフを吐かないでちょうだい、
阿良々木君ならともかくあなたにそんなこと言われても怖気が走るわ。
……まあ、それだけ大層な言葉を言ったのならお言葉に甘えさせてもらおうかしらね。ブラックコーヒーの糖度位には」

棘は抜けないものの、それは当麻との同伴を認めた証。額を押さえながらも上条は満足げに笑みをこぼす。

「―――ああ、男の約束だ。二言はねえ」

「一時代前のセリフね、御幣のバリエーションの少なさが知れるわ」


◇――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ソファに横たわる御坂美琴の遺体にシーツをかける。死者に対してこれだけの施ししか出来ないことに僅かに歯噛みする。

「ちょっとだけ待っててくれ御坂。こんなくだらないこと、すぐに終わらせて連れ帰ってやるからさ」

死人に口なし。死者は生者には何も伝えられない。ただ眠るように、柔らかな笑みを返すのみだ。

振り返らずにドアを開ける。外には既に出ていた3人と、天上にまで達した太陽が当麻を待っていた。

「別れは済ませたか」

アーチャーは問う。

「別れじゃねーよ。後で連れ帰るからな」

玄関に、目印として適当に部屋にあった帽子をかける。

「……そうだったな」

簡潔だが意志のこもった当麻の言葉に、アーチャーは何を思ったか。
御坂美琴の遺体についてはアーチャーはあれ以上追求しない。
上条の意を認めたのか、この場で言い合おうとも意味のないものとしたのか、それは本人しか知り得ぬことだろう。



4人で手早く協議をした結果、まずアーチャーとC.C.が先に駅へ向かい、状況を把握、
その後を当麻と戦場々原が追うという形に落ち着いた。
4人まとまって行動しても、駅の襲撃犯と鉢合わせする可能性があるからだ。

上条当麻は異能を打ち消す異能以外には一般的な学生に過ぎない。それでも打たれ強さは人並み以上だが。

戦場々原ひたぎはかつては陸上部のエースとして名を馳せていたがそれでも達人というわけではないし戦闘経験などあろうはずもない。

C.C.は不死であることを除けば身体能力は常人のそれだ。そしてその不死性もこの場ではあまり意味を成さない。

身体能力においてはこの中で最も優れたアーチャーが先行するのは自然ともいえた。
もともとC.C.を彼女の知り合いがいる駅へ送り届けるつもりだったし、
アーチャーも対主催の拠点となりつつあった駅を失うのは良い事態とはいえない。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:40:14 ID:bh3lNTtZ

600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:40:32 ID:bOIYVmsq
 
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:40:54 ID:SQmmu3t9
支援
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:41:57 ID:WE262Dnh
 
603 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:42:09 ID:PiCHDyJG
散り散りになった者達と合流して、態勢を整える膳立て位はしておくか。

「まったく、何が悲しくて中年男に抱えられなくちゃならないんだか」

「あら、よくお似合いよ。そのまま付き合っちゃえばどうかしら。応援するわよ」

「茶々はそれ位にしておきたまえ。あと私は中年ではない、付き合う事も一切ない」

ちなみにC.C.が同伴する理由は、もともとアーチャーと共に行動していた、
上条1人では下手人相手に2人を守ることは出来ない(アーチャー談)、あと2人ともあまり相性が良くない、
ストレスで上条の胃に穴が開く危険がある(口には出さないが)、等々色々ある。

「ああ、ソレはしまっておけ。持ったままでは運べんぞ」

ソレ、とはC.C.の抱えるハロのこと。C.C.は明らかに不満そうな顔をするが、アーチャーに睨まれしぶしぶデイパックに詰める。

「ナニヲスルキサマー!ナニヲスルキサマー!」

「ちょっとだけ我慢してろ。すぐに出してやるから」

「ヌワーーッッ!ぬ」

全身が飲み込まれたところで途端に声が途絶える。底なし沼に落ちたみたいで、なんか怖い。最後だけ親父臭かったのは気のせいだろうか?

「さて、では私達は先に行かせてもらう。この一帯は調べたが危険がないという保証はない。襲撃も充分にあり得る。
気付けば救援に向かってやるが、見栄でも誓うといったのだ。目の前の女くらいは守り抜いてみせろ」

「―――ああ、言われるまでもねえよ」

アーチャーの皮肉な笑みに、当麻もまた皮肉に笑う。信頼というには程遠いがお互いに感じ入るものがあるようだ。
無論、性的な意味は全く無い。

「それじゃあ僅かな間とはいえお別れだ。運悪く襲われないことを祈るとしよう」

「魔女に祈られても不幸しか起きなさそうなので結構よ。
けれどグゥレイトォなマッチョ中年に抱きかかえられて衆人に見世物にされるのは同情するわ」

「さっきは祝福するとかいってなかったか?まあいい、労いの言葉として受け取って於こう」

結局、お互いの名を呼ぶことなく別れる二人。この先また合流した後でも名前で呼び合うことにはなりそうにない。
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:42:52 ID:WE262Dnh
 
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:42:56 ID:bOIYVmsq
 
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:43:22 ID:SQmmu3t9
支援
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:44:05 ID:WE262Dnh
 
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:45:30 ID:WE262Dnh
 
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:46:13 ID:WE262Dnh
 
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:47:21 ID:WE262Dnh
 
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:48:18 ID:WE262Dnh
 
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:50:12 ID:WE262Dnh
 
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:50:30 ID:SQmmu3t9
ゆっくりしていってね!
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:51:14 ID:cv+BhgtO
 
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:53:44 ID:WE262Dnh
 
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:55:54 ID:WE262Dnh
支援
617 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 21:58:16 ID:3FpvRdvd
すいません、完全に途切れちゃいました。
再開します。

このスレの住人は大人だから(ry
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:00:08 ID:WE262Dnh
 
619 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:00:10 ID:3FpvRdvd

「―――では行くぞ、つかまっていろ」

C.C.を肩に抱え、一足飛びで家の屋根へと登る。そのまま家々を飛び越えて走り出す。
人一人背負っているというのに速さに衰えがない。いや、衰えてもあれ程と表現すべきか。
駆け出した黒と碧の二つの影は瞬く間に小さくなっていった。

「……マジかよ」

高い身体能力を持っているとは思っていたが、まさかあそこまでとは思わなかった。
室内での一件を思い出す。あの時自分がどれだけ手加減を受けていたか今さらに思い知った。
あんな自分よりも遥かに強い奴が他にもいて、それが殺し合いに乗っている。



―――――――――それが、どうした。



自分の矮小さなど百も承知。今までだって、自分が相手にしてきた奴は自分なんかの手に届かない奴ばかりだった。
そんな相手に自分がしてきたことは何だ。そう、この右の拳をそいつにぶちかますことだけだ。
記憶にはなくても、体にはしっかりと憶え込まれている。

「やってやろうじゃねえか……」

1人、静かに呟く。
非力と無力は違う。右腕を振るうしか出来ない自分にも、出来ることはあるんだ。

それでも足りないなら、借りればいい。アーチャーに、戦場々原にC.C.にまだ見ぬこの殺し合いを壊そうとする者達に。
俺は、俺に出来ることを、全力でやり遂げるだけだ。

「なにブツクサいってるのかしら上条君、どうでもいいけどこの仔たち持っててくれない」

決意を固めてるところにに戦場々原から抱き上げていた猫を手渡される。
猫は名残惜しそうににゃーにゃーと鳴いている。くそ、三毛猫、お前もか。

「ああ、私が抱いてたからって臭い嗅いだりしないでね。気持ち悪いから。その仔たちだって嫌がるでしょう」

両手が自由になった戦場々原は何をするのかというと、髪を上げ、足を伸ばしたりと何故か準備運動をしてる。

「あの、戦場々原さん?」

「上条くん、さっきのを見てなかったのかしら?あの分じゃあの人たち、あっという間に駅に着いてしまうわよ。
徒歩で向かう人のことを考えて欲しいわね。まあそういうわけで私たちも少し急ごうと思うのよ。
いい運動にもなるし、何より阿良々木くんにも早く会いたいし」

色々いってるが一番の理由は最後の一文だろう。まあずっと探していた恋人の居場所がわかったのだから気持ちは分からないでもないが、

「なあ戦場々原、それは構わないんだけど俺はこいつらを抱えて―――」

「あ、これも持ってて。邪魔だから」

デイパックを投げつけてくる。確かに長距離走をする以上余計な荷物は外しておくべきだが
それはつまり、自分がその余計な荷物を持つことになるわけで―――
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:00:51 ID:WE262Dnh
 
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:01:32 ID:WE262Dnh
 
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:02:08 ID:SQmmu3t9
支援
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:02:22 ID:WE262Dnh
 
624 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:04:43 ID:3FpvRdvd

「おいだから戦場々原―――」

「それと上条君、自慢するつもりじゃないけど私昔は陸上部でエースって呼ばれてたから。
実力は―――参考までに私の知り合いは毎朝10キロダッシュ2本やってるそうよ。
まあそのコと陸上勝負したことは一度もないけど」

「―――――――――」

これは、つまり、あれか。




手荷物2つとこいつら(猫3匹)抱えて駅まで走れと―――――――――?




「あら、私を守ってくれる―――とかカッコイイことを言ってくれた気がしたのだけれど気のせいかしら。
そのまま突っ立ってたら一人走り出した私は孤立して悪い人に出遭ってしまい
成す術なく殺されてしまうことになるのだけれど、それでいいのかしら」

そう思ってるなら走ろうと思うな!

戦場々原にとって、結末は分かりきっている。
上条当麻では彼女には追いつけない。
デイパックを二つも背負い、手に猫を抱えている男に駅まで走り切ることなど出来ない。

自分の勘は正しい。
溜めに溜めた疲労は俺自身を裁くだろう。

だというのに、その背中は、




“―――――――ついて来れるかしら”




蔑むように、哀れむように、

俺の到達を、強制していた。



625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:05:59 ID:WE262Dnh
 
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:07:00 ID:WE262Dnh
 
627 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:09:05 ID:3FpvRdvd

「       ―――――――ついて来れるか、じゃねえ」

視界が燃える。
何も感じなかった体にありったけの熱を込める。
肺は、大気を巻き込むかの如く酸素を集め、




「頼むから、全力疾走はなしにしてくれ―――――!」

渾身の力を篭めて、桃色の背中に咆哮した。





【E-5/市街地 一軒家/一日目/昼】

【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:疲労(小)ポニーテール 疾走中
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、ヘアゴム
[道具]:なし(駅に着いたら上条に返してもらいます)
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
 0:―――――――ついて来れるかしら
 1:上条当麻に協力。D-6駅に向かい阿良々木暦、神原駿河に会いに行く。 もしくは生死を確かめる。
 2:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。
 3:正直、C.C.とは相性が悪いと思う
 [備考]
 ※登場時期はアニメ12話の後。
 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。
 ※安藤の死亡によりギャンブル船に参加者が集められているかは怪しいと考えています。
 ※ヘアゴムは民家から拝借しました。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:10:21 ID:WE262Dnh
 
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:11:16 ID:WE262Dnh
 
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:12:30 ID:WE262Dnh
 
631 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:19:36 ID:3FpvRdvd
上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康 疾走中
[服装]:学校の制服
[装備]: スフィンクス@とある魔術の禁書目録、
    アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式 X2 不明支給品(1〜3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達
[思考]
基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。
 0:頼むから、全力疾走はなしにしてくれ―――――!
 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。D-6駅に向かい阿良々木暦と会う。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する
 2:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
 3:壇上の子の『家族』を助けたい 。
 4:そういえば……海原って、どっちだ……?
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、傷修復完了(健康)
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語
    ピザ(残り60枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
   不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:アーチャーと共にD-6駅に向かう。 スザクには会っておくか
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
4:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:20:41 ID:WE262Dnh
 
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:20:42 ID:i9o74bMf
 
634 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:21:42 ID:3FpvRdvd
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小)
[服装]:赤い外套(下のみ)、hollowスタイル
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1(確認済み)、臙条家の鍵@空の境界、虎竹刀@Fate/stay night 、聖骸布X2@Fate/stay night
[思考]
基本:本当の“答え”を見つけ出す。
1:C.C.を連れて先にD-6駅へ向かう。周囲を警戒しておく。
2:この場において過去の改竄は無駄。
3:単独行動を取り情報を集めながら衛宮士郎を捜し出す。【絶望の城】を優先的に調べる。
4:3の過程でルルーシュ、アーニャ、ユーフェミア、を見付けたら12時までならD-6駅、3回目の放送なら象の像へ集うよう伝える。
5:臙条家の鍵の合う場所を探す。
6:荒耶、赤毛の男(サーシェス)に対し敵意。
[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。
※デイパックの容量に限界が無いことに気付きました。
※「絶望の城」は殺し合いを促進させるための舞台と考えています。
※「臙条家の鍵」は何らかの重要施設、武器が隠されている扉を開けるものと考えています。
※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。
※スザク、駿河、レイと情報交換を行いました。「絶望の城」については伏せてあります。
※駿河の左腕のレイニーデビルに気付きました。名称や詳細は知りませんが暴走の危険性はないものとひとまず判断しました。
※聖骸布の上着が幻想殺しによって壊れました。 一応布自体はまだ残っています。
※上条達とは一端別れC.C.と先にD-6駅に向かっています。助けにいける程度に距離は保っています。

【聖骸布@Fate/stay night】
アーチャーの赤い外套。上着と腰着(?)の2セット。
ある聖人の聖骸布で作られており、外敵ではなく外界に対する一級品の守りの概念武装らしいが
詳しい効果はわしにもわからん……
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:22:20 ID:WE262Dnh
 
636 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:25:27 ID:3FpvRdvd
以上で投下を終了します。題名は『ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ』
です。『』は含みませんよ。


ちょっと修正。
アーチャーの服装、「赤い外套(下のみ)」は外してます。スミマセン
637新たなる旅立ち ◇9kuF45dxA2 代行:2009/12/22(火) 22:25:55 ID:uXWWPU4Z
戦国最強は狂戦士に敗れた。最強は証明された。
そして、その戦いによって狂戦士が払った代償はあまりにも大きかった。
全ての装備を失い、多量の魔力を消費した。そして何より、狂戦士を最強たらしめていた『十二の試練』の消滅。
残る参加者は恐らく40余り、あの戦国最強以外にもかなりの手練が揃っている。
身一つでこれを殲滅しようとすればかなり厳しい戦いになることは間違いない。
そのためにも今のうちに体勢を整えることは必須。
いざ戦闘が開始すれば極僅かに残っている理性も吹き飛び、目標を粉砕するまで全力で動き続けることになる。
今後の事を考えての手加減や自身の状態を省みての撤退など思いもしないだろう。
現在、周囲に一切の気配を感じない。この機会に休息を取らずにいつ休むというのか。
そうと決まればまずするべきことは魔力の回復。
サーヴァントであるバーサーカーにとって魔力は水や空気よりも大切なもの。魔力が尽きれば自身を維持することすらできない。
逆に魔力さえあれば肉体は疲れを知らず、また傷の再生すらも容易い。
しかし困ったことに彼は効率よく魔力を回復する方法を考え付く事が出来なかった。
狂戦士が思いついた手段は他の生命から魔力を頂戴することのみ。必要なものが無ければ有るところから持ってこればいいだけのこと、至極単純な話だ。
当然ながらキャスターのような技術は持ち合わせていないため、魔力を含んだ肉体ごと取り込むという手段を取ることになる。
あまり効率的とは言えないが仕方がない。
肝心のモノについては心配無用。何しろ、この会場には既に10を超える屍が転がっているのだから。
638新たなる旅立ち ◇9kuF45dxA2 代行:2009/12/22(火) 22:26:47 ID:uXWWPU4Z













予想通り、目当てのものはすぐに見つかった。
G-3エリア工業地帯、とある建物の屋上に一人の少女が横たわっていた。
血が乾いていることを見れば、死んでから相当な時間が経っているだろう。
恐らく死因は転落死。何者かに突き落とされたか、はたまた自身から飛び降りたのか。
狂戦士にそれを知る事はできないし、また知るつもりもない。
彼にとって少女はただの肉塊と同義だ。
少女の足を掴み、その体を逆さ吊りにする。
だらりと力無く垂れ下がった腕、その指先から一口、二口。
ずらりと並んだ乱杭歯が華奢な腕をばりばりと豪快に咀嚼していく。
その行為は魔力の補充以外の何者でもなく、故に彼は何の感慨も抱かない。
“食事”を続けながら狂戦士は考える。


―――――この殺し合いはとんだ茶番だ。
主催者を信じるのならば、このゲームの優勝者となった者には賞金が与えられ、その金で買い物ができるという。
商品は様々だが、その中には「元の世界への帰還」という選んで当然の者まで含まれている。
普通の者ならば何も問題はない。元の世界への帰還を選んだ後、残りの金で好きに買い物を続ければいい。
だが、理性を失った者はどうなる?
仮に彼がこのゲームを制したとして、その後は一体どうなる?
選んで当然のものでも、主催者からみればあくまで任意。選択しなければそれまでだ。
そんな芸当は狂戦士である彼にできるかというと、答えは否。
賞金は与えられるだろう。選択肢も提示されるはずだ。
そしてそこで終わり。何も選択しないのなら、何も与えられることはない。
主催者は立ち尽くす彼を見て、笑いながらその場に放置するに違いない。
参加者達を殺して回ったところで彼の願いは叶わない。
ならばどうする。主催者を打倒して魔法を奪い取るか?
それこそ無理だ。相手は魔法を有している上、首輪によって監視されている。
何をしても首輪を爆破されるのがせいぜいだ。
それに主催者達の背後についても気になるものがある。
あの男は魔法を金で買ったと、そう言った。
買った者がいれば当然売った者もいる。普通に考えれば売り手は魔法使いだが、この線は考えにくい。



639 ◆0zvBiGoI0k :2009/12/22(火) 22:27:00 ID:3FpvRdvd
さらに追記。
実は私、元 ◆QmnDyrAS0E です。ちょっとした手違いで消えてしまったので……
640新たなる旅立ち ◇9kuF45dxA2 代行:2009/12/22(火) 22:27:38 ID:uXWWPU4Z
魔法使いに金で魔法を買わせてくれと言っても笑いながら撃ち殺されるのがオチだ。
最上の神秘ともいえる魔法の価値は金で計れるようなものではない。
いくら金と時間を注いでも決して到達できないからこそ魔法なのだ。
しかし現実として主催者は魔法を買った。
魔法使いが売ったのでなければ、可能性は一つしかない。
魔法は奪われたのだ。連中に魔法を売った、何者かの手によって。
現在このゲームで使用された魔法は二つ。並行世界の運営と時間旅行。
この事から考えるに、『宝石翁』及び『マジックガンナー・ミスブルー』は撃破、ないし捕獲された可能性が高い。
“月落とし”を止め、死徒二十七祖にも名を連ねる宝石翁。
攻性魔術“無限回転”を操り、破壊の魔女と称されるミスブルー。
双方とも、魔法使いであると同時に卓越した魔術師でもある。
その二人を捕獲し、魔法を奪い取った上でそれをあっさり売り払うなど正気の沙汰ではない。
魔法使いを打倒しうる武力、それを利用できる技術力。会場に存在する設備もその何者かによる提供なのだとしたら、その総合力は計り知れない。
主催者がその何者かに助けを求めたらもはや打つ手は無い。救援要請からほどなくして参加者は悉く殺される。
以上のことから考えるに、彼はどうやっても元の世界への帰還は叶わない。
ゲームに乗っても、主催者に立ち向かっても、待っているのは死のみだ。
ならば、せめて。
この身に与えられた使命を完膚なきまでに全うしよう。
彼を道具と侮った連中に、その力を見せつけてやろう。
もしあの少女が彼の結末を知った時、彼はやはり最強であったと胸を張れるように。
思うままに力を振るう獣では無く、明確な意思の元に狂う戦士として。
それは意地。駒と成り下がった大英雄の、最後の誇りだった。








641新たなる旅立ち ◇9kuF45dxA2 代行:2009/12/22(火) 22:28:42 ID:uXWWPU4Z
ほどなくして食事は終わった。
少女はその全てを食い尽され、そこに一人の人間がいたという名残は黒ずんだ血だまりと、傍らに転がるデイバックのみ。
そして狂戦士の視線は、そのデイバックに注がれていた。
中を検めてみると、入っていたものは基本的な支給品を除けば小さな瓶に入った赤い液体のみ。
一見すればワインか何かのように見えるかもしれない。
だが狂戦士はその液体に秘められた膨大な魔力を見逃しはしなかった。これは、召喚儀式の触媒だ。
狂戦士はためらいなくその瓶を握り潰す。弾けた硝子片に混じって落下するかと思われた血は、しかし赤く輝きながら形を為してゆく。
それは魔法陣。血は明滅を繰り返しゆっくりと六芒星を空に紡ぎ出す。
蒸気化した魔力が迸り、魔法陣に巨大な目が現れる。血が一段と眩い光を放ち、現世と異界を繋ぐ門が完成した。
「――――――――――」
現れたものは、天馬。紫紺の騎兵の愛馬にして切り札。
頭を垂れ、従順の意を示す天馬を狂戦士は冷静に吟味する。
この天馬は膨大な魔力を秘めている。これを食せば魔力の回復はおろか、十二の試練の再構成すらも可能とするかもしれない。
しかし魔力量に比例するかのように、天馬の性能は凄まじいものがある。
積み重ねた年月により、その体には強大な神秘が宿っている。神格ならばそこらの英霊程度には引けを取るまい。
このような強大な道具を魔力回復のためだけに浪費するのは惜しい。
今でこそ狂戦士として現界しているものの、本来彼はアーチャーやライダーに適する英霊である。
理性を失ったとはいえ大英雄。染み付いた感覚で十二分に天馬を操ることができる。
狂戦士は天馬に跨り、その手綱を握り締める。
彼の檄に天馬は力強く地面を蹴り、ついに300kgを優に超える狂戦士の身体は重力に打ち勝つ。
黒い巨人を乗せた純白の天馬は大空に舞い上がり、蒼穹の彼方へと吸い込まれていった。


【G-3/南部/一日目/昼】
【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(中)、狂化
[服装]:全裸
[装備]:天馬@Fate/stay night
[道具]:長曾我部元親の碇槍@戦国BASARA
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、その力を示す。
2:キャスターを捜索し、陣地を整えられる前に撃滅する。
3:余裕があれば武田信玄の軍配斧を取りに行きたい。
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3は使い切りました。以降は蘇生不可能です。
 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
  現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
       おもちゃの兵隊、ドラグノフ、大質量の物体、一定以下の威力の刃物、GN粒子を用いた攻撃、輻射波動、ゲフィオンディスターバー
※狂化について
 非戦闘時に限り、ある程度の思考能力を有します。
※天馬により飛行中です。行先は後の書き手さんにお任せ。


【ライダーの生き血@Fate/stay night】
瓶詰めにされたライダーの血液。瓶を割ると天馬を召喚することができる。

【天馬@Fate/stay night】
ライダーの愛馬。本来は魔獣クラスだが、積み重ねた歳月により神獣の域にまで達している。
召喚者に従うよう調教しなおされているため騎乗の経験がなくても乗りこなせる。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:30:35 ID:WE262Dnh
 
643新たなる旅立ち ◇9kuF45dxA2 代行:2009/12/22(火) 22:31:51 ID:uXWWPU4Z
以上で代行は終わりだ。
喜びたまえ月厨――


「最後に教えよう。――おまえの起源は“孤独”だ。東横桃子」

 静かな部屋に男――荒耶宗蓮の声が響く。
 語りかけられたのは女――東横桃子。
 しかし彼女はじっと彼を見詰めるだけで、それに応えようとはしない。

「――そう、おまえは元より誰とも交わることのない人間だ。それ故、おまえは他人に求められない。他人を求めようとはしない。
 父や母といった肉親でさえ――おまえには無関心だ。そして、自身もまた肉親に対し無関心だった。
 友人が、教師が、肉親が、当然のように与えるはずの情を――おまえは知らない」

 やはり、東横桃子は応えない。
 しかし、その瞳に揺れる色だけが、荒耶を認識していないわけでないということを象徴している。

「“それ”を、疑問に思ったことはなかったのか。辛いと感じたことはなかったのか。

 ――あろうはずもない。

 “それ”こそが、おまえの起源であり、何よりも自然な状態であったのだから」

 目を閉じて、そして開く。
 そして、彼女は彼と向き合った。

「だから――」
「む――」

 そして、初めて。
 こうして顔を合わせてからから初めて。
 東横桃子は荒耶宗蓮に応える。

「――だから、それが、私にとって、何だっていうんすか」
「――意味などない。おまえの行為が、同じく無価値であるように」

 果て無き時を生きる魔術師は不愉快そうに告げる。

「死者蘇生――それがおまえの望みであったか。
 ――――愚かな。
 無意識ながらも起源を自覚し、利用しているおまえが。今更、何を求めようというのだ。
 おまえには最初から、絆などと呼べるものは存在しない――」


645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:35:07 ID:WVuJMkPd
支援

「……嘘。違う、違う、違うっ」

 突然に。
 今までの静寂が嘘であるかのように。
 髪をかき乱し、頭を振って桃子は声を上げた。
 聞きたくない。
 違う。
 そんなはずはない。
 私は、確かに先輩を――

「そう、だって、それでも先輩は、私を――!」
「認められぬか、東横桃子。おまえの起源を。だが、それでもおまえは辿り付かない。
 おまえが望んだものは、最初から、偽りだったのだから――」


 その言葉を言い終わるより先か、それとも後であったのか。
 銀色の光が煌めき、吸い込まれるようにナイフが胸を貫く。

 ごふ。
 赤い血が口から漏れる。
 命が、奪われていく。
 命が、失われていく。

 それを、どうしようもないほどに感じて。

 東横桃子の目は虚ろに涙を流し。
 荒耶宗蓮は、揺るがない。


 そうして。
 ここでまた一人の人間が死に至る。
 所詮、有り触れた光景。
 それもまた歴史の1ページに過ぎなかった。



 卍  卍  卍


647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:36:44 ID:WE262Dnh
>>644>>646
ちょっと待った。
それは書き手本人が投下する旨を宣言しているので代理投下しなくていい。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:36:44 ID:3K3VUrPs
おい、何勝手やってんだよ
ももこファントムは書き手が本投下するって書いてるだろうが
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:36:57 ID:EIhXvvq0
その代行ストップ!!

1aw4LHSuEI氏はしたらばで、自分で投下すると言っている!!!
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:38:09 ID:uXWWPU4Z
なんと!
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:39:27 ID:5U/3kdI6
誰でもいいから早く投下白
チンカス型月厨がごねるんだから先に投下して既成事実作ればいいだろ
頭悪いのかお前ら
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:40:36 ID:8ZF4hoyn
ついに痺れを切らしたか!
ラウさん、早く来てー!
653 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 22:41:46 ID:wx7wH3lm
申し訳ありません。
細い表現や、指摘のあった箇所の修正を、二度目の仮投下以後も行っておりますので、
投下は自分で行いたいと思います。
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:41:47 ID:lkRDFdl6
早く投下しろよ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:42:31 ID:EIhXvvq0
とりあえず、上2作の感想書こうよ
ももこファントムは、本人による本投下版が来るのを待ってさ
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:42:49 ID:uXWWPU4Z
代理投下すれば、修正屋さんも修正要求まとめて発議しなきゃならんから、早めに投下しようと思ったのに…
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:42:54 ID:WE262Dnh
まあ前の作品の感想がある程度ついてからと言っているから感想書こうや

>>653
了解しました
焦らずにきてください
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:44:28 ID:SQmmu3t9
ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ


・ひたぎさんの上条さんへの試練来たああアアアアアアアアアアアアアアアア
それでも上条さんなら・・・上条さんなら駅についた途端に心臓麻痺で死んでも走り抜けてくれる!
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:46:01 ID:5U/3kdI6
>>656
同意
早く投下すべき
ラウ氏はすぐ投下してくれ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:46:03 ID:YHuDHU+y
バサカの投下早すぎだろ
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:46:50 ID:SQmmu3t9
ゆっくりしていってね!
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:47:31 ID:WE262Dnh
投下乙です

>ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ ◆0zvBiGoI0k
上条さんは相も変わらず苦労人だな
何だかんだ言って上条さんとひたぎのペア好きだ

>新たなる旅立ち ◆9kuF45dxA2
バーサーカーのカニバリズム…この死体は久か…
それにしても天馬もあんな巨体を乗せてご苦労な事だ
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:47:55 ID:uXWWPU4Z
>>『ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ』
上条さんがパネエっす!
ただ、アーチャーの聖骸布の説明の「詳しい効果はわしにもわからん……」の一文は要らぬ論争を起こしかねないかと…

>>新たなる旅立ち
カニバリズムですね。
ただ、バーサーカーが天馬召喚についてはいいのかな?まあバサカが不利にならないから議論にはならないとは思いますが…
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:52:24 ID:EIhXvvq0
>ひたぎクラブ/とうまブレイク/■■■アーチャー/???ウィッチ
しかし、駅にはもうあらぎさんは居ない……もうだいぶ近くにいるのに、ガハラさんは恋人とすれ違ってばかりだなー
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:59:25 ID:WE262Dnh
感想でああ書いたが今回出てきた死体って久で合っているよな?
それならデイパックは既にその場に無いはず
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:07:47 ID:8ZF4hoyn
久の死体が握ってた事にすれば?
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:08:41 ID:SQmmu3t9
>>666
Beyond The Grave  ◆L5dAG.5wZE氏の状態表

【F-2東部/一日目/昼】
【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)、狂化
[服装]:全裸
[装備]:長曾我部元親の碇槍
[道具]:なし

竹井久のバックは♪Falling reinforced concrete ◆MAKO.0z9p.氏で

【中野梓@けいおん!】
 [状態]:健康、体重1/10、存在感(薄)
 [服装]:桜が丘高校女子制服(冬服)
 [装備]:
 [道具]:デイパック、基本支給品、鉈、おもし蟹、不明支給品(0〜1)
     :デイパック、基本支給品、S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(0/6)、.38spl弾x60、不明支給品(0〜2)

梓が持っていってるな

バーサーカーは一体誰のバックを漁ったのか?
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:09:22 ID:WE262Dnh
>>666
無理
そもそもあの場にデイパックは一つもない
久のは梓が持って行ったから
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:10:16 ID:WVuJMkPd
>>666
それはダメでしょう。
最後銃持ってたし
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:10:47 ID:8ZF4hoyn
あー、確かに
修正要求出す?
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:12:19 ID:SQmmu3t9
>>670
これは作品がどうのってよりは過去のリレー結果に反した単純な矛盾だからな

修正は必要でしょうリレー小説だし
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:13:42 ID:WE262Dnh
もう出ている>修正要求
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:14:17 ID:8ZF4hoyn
了解です
じゃあ、議論スレに持ち込みますか
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:20:10 ID:8ZF4hoyn
因みに、俺が>>666で久の死体が握ってた事にすればと言ったのは、天馬召喚の触媒の入った瓶の事だ
瓶だけならとりあえず服のポケットや手の平に収まってもおかしくないだろう
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:26:22 ID:nx9cA/hS
部長の支給品すさまじいな
さすがだ
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:26:54 ID:SQmmu3t9
>>674
矛盾螺旋◆PV.nOaaCrQ氏の状態表

【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:黒服
[装備]:ククリナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(6/6)、.38spl弾x53、鉈@現実、パソコン、荒耶の不明支給品(0〜1)、
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は参加者たちを扇動する
1:殺し合いが動きやすなるように東へ向かう。
2:必要最小限の範囲で障害を排除する。
3:利用できそうなものは利用する。
※首輪はダミーです。時間の経過と共に制限が緩んでいきます。
※久の支給品はシアン化カルシウムです

この一文で使いきったと見るべきか
小瓶だけ取り出して握ってたと考えるべきか

それが問題ですね
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:43:42 ID:WE262Dnh
でも持ったままなら落ちた衝撃で割れているだろう
678 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:47:27 ID:wx7wH3lm
投下します。
お手隙の方は支援していただければ幸いです。
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:47:44 ID:SQmmu3t9
私怨
680徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:48:20 ID:wx7wH3lm


「最後に教えよう。―――おまえの起源は“孤独”だ。東横桃子」

 静かな部屋に男―――荒耶宗蓮の声が響く。
 語りかけられたのは女―――東横桃子。
 しかし彼女はじっと彼を見詰めるだけで、それに応えようとはしない。

「―――そう、おまえは元より誰とも交わることのない人間だ。それ故、おまえは他人に求められない。他人を求めようとはしない。
 父や母といった肉親でさえ―――おまえには無関心だ。そして、自身もまた肉親に対し無関心だった。
 友人が、教師が、肉親が、当然のように与えるはずの情を―――おまえは知らない」

 やはり、東横桃子は応えない。
 しかし、その瞳に揺れる色だけが、荒耶を認識していないわけでないということを象徴している。

「“それ”を、疑問に思ったことはなかったのか。辛いと感じたことはなかったのか。

 ―――あろうはずもない。

 “それ”こそが、おまえの起源であり、何よりも自然な状態であったのだから」

 目を閉じて、そして開く。
 そして、彼女は彼と向き合った。

「だから―――」
「む―――」

 そして、初めて。
 こうして顔を合わせてからから初めて。
 東横桃子は荒耶宗蓮に応える。

「―――だから、それが、私にとって、何だっていうんすか」
「―――意味などない。おまえの行為が、同じく無価値であるように」

 果て無き時を生きる魔術師は不愉快そうに告げる。

「死者蘇生―――それがおまえの望みであったか。
 ――――愚かな。
 無意識ながらも起源を自覚し、利用しているおまえが。今更、何を求めようというのだ。
 おまえには最初から、絆などと呼べるものは存在しない―――」
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:48:54 ID:SQmmu3t9
支援
682徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:49:00 ID:wx7wH3lm

「……嘘。違う、違う、違うっ」

 突然に。
 今までの静寂が嘘であるかのように。
 髪をかき乱し、頭を振って桃子は声を上げた。
 聞きたくない。
 違う。
 そんなはずはない。
 私は、確かに先輩を―――

「そう、だって、それでも先輩は、私を―――!」
「認められぬか、東横桃子。おまえの起源を。だが、それでもおまえは辿り付かない。
 おまえが望んだものは、最初から、偽りだったのだから―――」


 その言葉を言い終わるより先か、それとも後であったのか。
 銀色の光が煌めき、吸い込まれるようにナイフが胸を貫く。

 ごふ。
 赤い血が口から漏れる。
 命が、奪われていく。
 命が、失われていく。

 それを、どうしようもないほどに感じて。

 東横桃子の目は虚ろに涙を流し。
 荒耶宗蓮は、揺るがない。


 そうして。
 ここでまた一人の人間が死に至る。
 所詮、有り触れた光景。
 それもまた歴史の1ページに過ぎなかった。



 卍  卍  卍
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:49:38 ID:WE262Dnh
 
684徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:49:40 ID:wx7wH3lm


「なあ、セイバー」
「……なんですか、コヨミ」

 このことについてセイバーとそろそろ語り合わねばならない頃だと思う。
 僕にはきっと、その義務がある。
 僕らが拠点としていた駅に襲撃者が現れた。
 それは、衝撃的であったし、また壊滅的でもあった。
 いずれにしても僕らは運が悪かった。
 いや、それは無責任な言い方であり、僕が悪かった、と素直にいうべきなのかもしれない。
 結局、僕が一般人でなければ。いや、一般人であると偽ったりしていなければ、これほど悪くはならなかったはずなのだから。

 真田幸村という名前の、どこか歴史の本にでも載っていそうな仲間が、僕たちにはいた。
 先ほどまでは。
 襲撃があった際に、セイバーに僕を保護しろと言い残し、単身その場に残り敵を相手にとったらしい。
 ……馬鹿野郎。
 「ここは俺に任せて先に行け」、だなんて。
 お約束過ぎて笑えねえよ。
 そんなことをしたら、死ぬに決まっている。
 死亡フラグとか、そんなチャチな話じゃない。
 常識的に考えて、だ。
 ああ、本当に。
 千石やあの子のことも併せて、笑えないことばかりだ。

 そして、僕らがなにをしているのかと言えば―――現在、駅に向けて帰還しているはずの、枢木との合流だった。
 このまま彼が駅に移動すれば襲撃者と相対してしまう。それを防ぐことと、こちらの戦力強化が主な目的となる。
 勿論、両儀やデュオのことを考えないでもなかったが、距離的に考えれば早く帰ってくるはずの枢木よりは優先順位は低い、と判断した結果だ。
 そのため、僕たちは政庁に向かって移動していたのだが……。

「……やっぱりさ、入れ違ってると思うんだけど」
「…………」

 そうなのだ。
 D−6エリアの駅にいた僕たちは襲撃者を避けながら北周りに移動を開始して……そして、今はD−5エリア。
 それも、政庁と呼ばれる建物が肉眼視できるほどの距離まで来ている。
 もう少ししたらいるかも、戻ったら襲撃者が追ってきているかも―――? なんてことを思いながらずるずると進んでしまった。
 だがしかし、未だ枢木には出会えていないわけで……これは明らかにすれ違っていると考えられた。
 途中の民家で休憩するついでに、幾つか道具を回収も出来たけど……。やっぱり北側に迂回したのがまずかったかなあ……。

685徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:50:22 ID:wx7wH3lm
「で……どうする? セイバー」
「……ここまで来てしまった以上、政庁を調べていきましょう。調査が長引いた彼が未だ留まっている可能性もありますし……。
 他の参加者がいる可能性もあります。なんにせよ情報は欲しいですし」

 セイバーの意見は建設的に聞こえるけれど、結局は次善の策というか、その場しのぎというか。
 他人のことを言える筋合いではないのだけれど、結構セイバーって、でたとこ勝負だな、なんてことを僕は思った。

「―――何か不満でも、コヨミ?」
「いえ、滅相もありません」

 じとっ、と僕を睨むセイバー。
 移動中に話していて分かったが、武術をやっていたせいかセイバーはやけに勘がいい。
 こちらの気配を読んでくるというか……言いたくないことまで伝わっていることがある。
 やっぱり武道をやってる人ってのは違うのかな。うちの妹も妙に鋭いときがあるし。

 …………はあ。
 気軽に突っ込めない相手は、やっぱり少し疲れるな。
 八九寺あたりが恋しい……。

「……コヨミ? どうかしましたか?」
「ん、いや、何でもないよ。少しこれからのことについて考えてただけさ」

 そんな他愛もないことを話しながら僕たちは政庁に向かう。
 このとき僕はまだ、枢木に忍野に、もう一人同じ声の奴がそろってトリオになったら嫌だなあ、とか。
 そんなどうでもいいことを考えていられた。
 このときは、まだ。


 卍  卍  卍
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:50:22 ID:WE262Dnh
 
687徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:51:02 ID:wx7wH3lm


「―――それは災難でしたね。セイバーさん。阿良々木さん」

 ルルーシュ・ランペルージ。
 政庁に入ってすぐに出会った、僕と同年代に見える彼はそう名乗った。
 八九寺なら面白く噛みそうな名前だ、なんて思ったが他にもっと突っ込みどころがある。
 その格好だ。
 足元まで届くマントっていうのは、ルルーシュの国では普通なんだろうか。
 ほら、ポンチョとか、あんな感じの一品。すごく似合っていない。
 それとも何か止むに止まれぬ事情でもあるのか。
 その態度はとても爽やかなものだから、余計にそのギャップに戸惑った。
 顔はいいのに、なんでこんな珍妙な格好なんだ。
 外国人のようだし、なにか宗教上の理由とかそういう奴かもしれない。
 セイバーは平然としてるし、ひょっとするとどこかの国では常識なのかも。
 まあ、真田の名前および格好をスルーした僕だ。これぐらいはどうってことないさ。
 ……というわけで、それには深くは突っ込まないことにした。

 閑話休題。

 とにかく。
 僕たちが警戒しながら政庁へと到着したとき、対称的に全く警戒の様子も見せずに姿を見せたのが、このルルーシュだ。

「初めまして、ルルーシュ・ランペルージです」

 爽やか笑顔はまるで俳優のようである。

「…………」
「…………」

 うさんくせえ……。
 忍野とは別の意味でうさんくせえ……。

 だが、まあ、敵意はないようだったので、こちらも警戒心ばりばりってわけにはいかない。
 こちらも敵意をないことを伝えた。

 すると。
 先ほどは全然警戒していない……というようなことを言ったけれど、最低限、気を使う気はあったらしい。
 後から隠れていた女の子が現れた。

「どうも、東横桃子っす」

「…………」
「…………」

 ……何キャラ?
 今時その語尾って、体育会系なのだろうか。
 神原とキャラ被りは……ないな。あれとは被らない。
 あんな百合マゾ変態は一人でお腹いっぱいだ。

 しかし、二人組みともなれば、そこまで警戒しなくてもいいだろう。
 1Fにちょうどロビーがあったので、僕達はソファに座って今までの情報を交換し合うことにした。
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:51:31 ID:6C9jU/ud
モモ大好きだ
689徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:51:43 ID:wx7wH3lm

「はあ……。つまりキタローさんたちはD−6駅を拠点に行動していたんすね?」
「待て、キタローって僕のことか?!」

 確かに独特な髪型はしているけれど!
 前髪で片目が見えなくなってるけど!
 別に目玉になった親父を連れていたりはしねえよ!

「じゃあ、墓場鬼太郎さん」
「印象が悪化した!」

 せめてゲゲゲでお願いします!
 でも、突っ込めるっていいな!
 東横、ありがとう!

 そんな感じにグダグダ気味に、僕たちは情報を交換した。
 僕とセイバーはD−6駅を中心に同盟を組んだこと、そこで得られた危険人物や等の情報を。
 ルルーシュと東横は宇宙開発局辺りを中心に動いていたようで、僕たち以外の参加者を見たの初めてだ、とのことだった。
 だから、どうも緊張感に欠けているように見えるのだろうか?
 にこにこと笑いながら、殆ど一人で話しているルルーシュを見てそんなことを思った。

「しかし……枢木さんでしたか? その人と再会できるかも分かりませんし、とりあえずこの施設を調べませんか?
 僕たちもここに来てからあまり経っていないし、情報は得られるときに得ておきたい」

 こっちもそのつもりだったし……と。
 僕とセイバーはその提案を二つ返事で受け入れる。

 どこかに枢木がいるかもしれないってことで、階段を使っての一階ごとに調べていく。
 そんな念入りに調べる必要があるのかとも思ったけど、ルルーシュの話を聞いてるうちに、そんなものかな、と思ってしまった。
 そうして四人で政庁内を探索していたんだけど……。


「―――なんで、僕だけ何時の間にかみんなとはぐれてるんだ?」


 そんなことをトイレの前で呟く男子高校生がそこにはいた。
 ていうか、僕だった。

 まいったな。
 この年にもなって迷子ってのはどうなんだろう。
 いや、向こうもトイレに行ってる間にいなくなってるとかちょっと酷いよな……。
 やっぱり少し気恥ずかしいからって、東横とセイバーには黙って行ったのが悪かったのか?
 でも、ルルーシュにはちゃんと言っといたのに。あのイケメンめ。
 同じ建物内なんだし、このまま会えないってこともないだろうけど。
 顔を右に向けて階段についている階数表示をちらりと見る。
 どうでもいいけど階段とトイレって大体近くに設置されてるよな。
 法律で定められていたりするんだろうか。今度、羽川に聞いてみようかな。

 そして、現在の階数は、3F、か。
 それを確認した僕は階段場に向かって足を向ける。
 まあ、1Fのロビーで待ってても戻ってくるだろう。
 先に下りておこうか。
690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:52:01 ID:6C9jU/ud
百合マゾ変態じゃなくてヤンデレ百合レズ変態でした!
691名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:52:10 ID:WE262Dnh
 
692徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:52:28 ID:wx7wH3lm


「―――阿良々木さん、見ぃつけたー」


 漠然と、そんなことを考えていた僕の耳に、背後から聞き覚えのある声が届いた。


 …………。


 ドクン、と。心臓の音がやけにはっきりと耳に響く。
 同時に、全身の毛穴が開いてそこに氷水を流し込まれた様な、冷たさ。
 思い出す。いや、忘れない。
 それは、このゲームが始まって、僕が最初に出会った参加者。
 そして、決して忘れることの出来ない、見逃すことの出来ない僕の罪の証。
 ゆっくりと振り向いて確認する。


「―――平沢、憂」


 そんな僕を見て、彼女は少しだけはにかんだ様に笑い―――言った。

「えへへ。正解です。―――じゃあ、阿良々木さん。さっさと死んでください」

 言葉と同時に、とんでもない重さが横向きに僕にかかって、吹き飛ばされる。

 激しい衝撃。
 そして、舞台は暗転する。


 卍  卍  卍
693名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:52:44 ID:6C9jU/ud
憂ちゃん、どうしてこうなった…
694徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:53:08 ID:wx7wH3lm


 東横桃子っす。
 私たち三人は、紆余曲折の後に、タワー、ホールを探索し、政庁に着いたんすよ。


 ……いや、流石にこれはあまりな気がするし、もう少し説明するっす。
 本題ではないといえ、伏線は張られておくものだと思うんで。

 さて。まず、私たちは予定通りにG−5のタワーに向かったっす。
 宇宙開発局の管制塔になってるらしくて、色々と使えるものもあるんじゃないかって、ルルさんは期待してたみたいっすけど、
 タワー自体にはあまり大した物はなく、肝心の権限もほぼ凍結されている。
 ルルさんも少しがっかりしてたみたいっすね。
 それでも一応使えそうなものを適当に持っていく辺りは流石、ルルさん。せこいというか、用意周到というか。
 ……そもそも私に言わせれば、ルルさんは今まで支給品以外で強力なアイテム手に入れすぎなんすよ。
 揚陸艇とか盗聴器とか。
 まあ、私もそのおこぼれに預からせてもらってるんすけど。

「ねえ……早く行きましょうよー」

 ゴスロリさんには、機械ばかりのタワーは退屈だったようで、しきりに急かしてきた。
 そんなに阿良々木って人を殺したいんすかね。

 ゴスロリさんが急がせることもあって、私たちは早々にタワーを後にしたっす。
 一応、駐車場で足も確保。
 ……いやあ、まさか、ここにこれがあるとは思わなかったっすけど。
 パスワードも一発正解。役満成立。
 でも、予想通りとはいえ少し苦笑させられる。
 それを聞いたルルさん。
 よくやったぞ、桃子。だなんて、爽やかに。
 何故かその顔を見て。
 ああ、この人の笑顔はイマイチ信用できないな、と。
 失礼なことを考えた。


 揚陸艇に乗って、次にたどり着いたのはF−7のホール。
 そこは5つの扉があるだけという先ほどにもましてシンプルな構造。
 そして、扉の前には麻雀の役を模した入室条件が示されてたっす。
 それぞれ。


1『平和の広間:参加者を一人も殺害していない者のみ入室可能、ただし同行者2人以上が必要』


2『四暗の広間:参加者を四人以上殺害した者のみ入室可能』


3『一発の広間:ゲーム開始から6時間以内のみ入室可能、6時間経過後に室内に居る者の首輪は爆破される』


4『国士の広間:第六回放送後のみ入室可能』


5『 』
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:53:30 ID:WE262Dnh
 
696徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:53:49 ID:wx7wH3lm


 色々とルルさんは試してたんすけど(蟹アタックとか)、やっぱり条件があった扉しか開かないということが判明。
 とりあえず、今のところ誰も殺していない、かつ同行者二名という条件を満たしているため、平和の広間に入室。
 同行者は人を殺していていいのかと、不安ではあったけれど、開いたってことは問題ないようで。
 警戒も半ばに入らせてもらったっす。
 そして、そこで得たものは結論から言うと……。
 うーん。USBメモリ、『服』、『武器』、マント。
 だったっす。
 詳しい説明は後ほど。

 ついでにここでお互いの荷物を交換。
 持っていても使いどころのなさそうな道具を他人の使いやすそうなものと再分配。
 互いに信頼が無いと難しいこの行為。
 ルルさんがここまでそれをしなかったのは、多分、私の警戒心が薄れるのを待っていたからかな、と。
 少し思った。

 そこからまた揚陸艇での移動。E−5の岩陰に揚陸艇を隠してそこからは陸っす。
 陸路もタワーにて入手した車でらくらく。
 蟹は車に入らなかったんで、一旦デイパックにしまったっすけどね。

 というわけで。
 私たち三人は、紆余曲折の後に、タワー、ホールを探索し、政庁に着いたんすよ。

 またしても使えそうなものや施設の情報を漁っていたルルさん。
 それを余所につまらなさそうにして、受け取った双眼鏡で外を見ていたゴスロリさん。
 特に何もしてなかった私。
 そして、暫くすると、ゴスロリさんが嬉しそうに飛び込んで言ったっす。

「阿良々木さんが、こっちに来てます!」

 確認してみたところ、阿良々木暦さんとその同行者が政庁に近づいてきているようで。
 もう、そのときのゴスロリさんといえば、おおはしゃぎだったっす。
 こうしてると、普通に可愛い女の子なのに。
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:54:14 ID:WE262Dnh
 
698名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:54:25 ID:6C9jU/ud
そっか、このモモは個人戦終了後か
そうじゃなくても団体戦前に出掛けてるか
699徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:54:31 ID:wx7wH3lm

「今すぐ、ブチ殺しましょう!」

 と、意気込むゴスロリさん。
 ……やっぱり、ちょっとひく。

「まあ、待て。殺すのはいつでも出来る」

 それに待ったをかけて、作戦を伝えるルルさん。
 まず、顔の割れていない私とルルさんで接触。
 情報収集の後に、ここの探索を提案。
 そして、阿良々木暦と適当なところではぐれさせて……。
 そこをゴスロリさんがズガン。

 さっさと殺してしまいたいのか、ゴスロリさんはちょっと渋ったっすけど、

「いいから、俺を裏切るな」

 と、言われたら素直にうなずいてたっす。
 ……なんか弱みでも握られてるのかってぐらい素直で不気味っすね、しかし。

 で、始めた作戦は今のところ成功。
 上手いところキタローさんをこっちの金髪さんと分断できた。
 はっきり言ってルルさんの演技が寒すぎることを除いたら、問題はなし。

 ……優勝狙いの私としては、金髪さんもどこかで殺せたら。
 なんて、思うんすけど。

 ―――この人、なかなか隙を見せてくれない。

 んー。さて、これからどうするっすかね?

 以上、回想終わり。


 卍  卍  卍
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:55:03 ID:erXohd4A
ただのヤンデレだ何も問題ない
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:55:14 ID:6C9jU/ud
よく考えてみるとおもし蟹はあずにゃんと憂ちゃんの友情パワーで繋がったわけだな
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:55:18 ID:WE262Dnh
 
703徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:55:52 ID:wx7wH3lm


「う、おおおおおおっ!?」

 攻撃を喰らって叫ぶだけの余裕が自分にあったことに驚く。
 吹き飛ばされ、壁に叩きつけられながらも、僕は「それ」を見た。
 「それ」は巨大な蟹。その蟹が振り回した鋏が、自分にぶつけられたのだということを知る。

「―――おもし、蟹?」

 驚きながら、僕は言葉を紡ぐ。
 そう。それは、戦場ヶ原に取り付いた思いと体重を奪う蟹。
 あのときの僕には視認出来なかった蟹が、今は、見えている。
 ……奪われたい思いが、今の僕にはあるってことなのだろうか。
 千石を失い、僕のせいで誰かを死なせてしまったという事実から逃げたいのか、僕は。
 僕のせいで人が死んだのは、別に初めてではないのだけれど。
 やはり、それは何度重ねても慣れていいことではないのだから。
 でも、この思いはやれないな。と、口に出さずに僕は思った。
 まるで。
 どこかのヒーローのように。

「あれ? 知ってるんですか、神様のこと」
「……幸いにも、よく知ってるよ」
「これ、私の言うことを聞いてくれるんですよー」

 憂ちゃん……いや、平沢は、そう言って哂う。
 おもし蟹を使役している? 仮にも、神を……?
 いや、それよりも。
 何があったのか、それとも何がなかったのか。
 僕には分かりはしないけれど、平沢は初めて会った時と、同じ人物にはとても見えなかった。
 言葉や態度、雰囲気も勿論だけど……なによりもその格好が。
 ……ゴスロリ?
 まあ、それもいいや。
 変な格好には突っ込まないと決めている。
 壁に手を当てながら、僕は何とか立ち上がった。
 体中が痛くて仕方ないけど、骨や筋に傷がいったりはしてなさそうだ。
 まだ、動ける。
 平沢を見ると、少しは会話をする気があるのか、これ以上すぐに攻撃を仕掛けてくる気はないようだ。

「―――やっぱり、まだ誰かを殺そうとしてるのか」
「はい。まずは阿良々木さんを殺しますよ」
「どうして、だ? やっぱりお前の姉さんのため―――」
「違います」

 きっぱりと。
 平沢は僕の言葉を否定した。

「私が人を殺すのは、私が死にたくないからです。お姉ちゃんは関係ありません」
「……そっか」

 あの時とは違い、言葉に嘘が込められていない。
 姉に対する、思いがなくなっているのか。
 おもし蟹に思いを奪われた。
 そういうこと、なのだろう。
 しかし、それは。
 彼女は、自分の姉を重みと思っていた、ということで。
 関係はないけれど、少しだけ、それを悲しいと思った。
704徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:56:32 ID:wx7wH3lm

「因みに、阿良々木さんはお姉ちゃんのギターを取っていったのと、私の胸を触ったから殺します」
「…………」

 割と台無しだった。
 というか、気付いてたのかよ。
 気付いてたのかよ!
 不可抗力なのに!

「……僕にもさ、お前を止めなきゃならない理由がある」
「はい?」
「……僕と会った後、人を殺しただろ」
「殺しましたよ」

 あっさりいう彼女に、やはり僕は自分の罪を確信する。
 この子を、放置しちゃいけなかった。
 人を殺した彼女。
 人を殺そうとする彼女。
 それを見逃したというのなら。
 彼女の罪は、僕の罪も同然だ。

「だったら、これ以上、僕はお前を見逃さない」
「…………」

 人を殺すことはいけないことだ、なんて今更、言うまでもない。
 だから、僕は単純に、一言で語る。


「平沢、お前は僕がここで倒す」
「…………っ」


「はははははは!「はは!「あははは!」


 一瞬の絶句の後に、爆笑。
 そして静寂。
 無表情になった平沢は手にする手綱で蟹を駆り、僕に差し向ける。

「―――主人公みたいなことを言うんですね」
「…………まあな」
「―――殺す。殺す。殺す。ここであなたを殺して殺す、私がっ!」

 ……上等だ。
 僕だって。
 その蟹やお前のことを。
 殴り飛ばしてやりたいと、ずっと思っていた―――!

 轟ッ―――!
 風を切る音が響き渡り。
 そうして、本当に久しぶりの、僕の異能バトルが幕を開けた。


 卍  卍  卍
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:57:01 ID:WE262Dnh
 
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:57:16 ID:6C9jU/ud
さすが最強クラスの怪異とやりあってるだけあって落ち着いてますなそろろぎさん
707徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:57:20 ID:wx7wH3lm


 無数のパソコンにコンピューター。
 さまざまな情報を掌るこの政庁の中心となる部屋。
 ―――情報管理室。

 その部屋の端で。
 壁に向かい何やら刻んでいる人影。
 それは紅い赤い朱い、魔法陣。
 司るは結界。定めるは制限。
 失われたXを補うように。
 いまここに新たな陣が築かれる。

「剣士のサーヴァント、セイバー。そして、ギアスの継承者、ルルーシュ・ランペルージ。
 『ステルス』、東横桃子、か」

 自分の人間がついにこの部屋へと侵入してきたことを感じて。
 苦悩に満ちた眼差しを携えた男は振り返り、そう言った。

「……何物だ、貴様」

 ここは最上階である7F・情報管理室。
 暦とはぐれてしまった後。すぐに探そうといったセイバーを制して、分散した結果さらにはぐれては、まずい。
 同じ建物である以上、再会は難しくないだろうから、とりあえず探索を続けよう、と言ったルルーシュ。
 セイバーは少し何か言いたそうにしていたが、結局は「もう子供ではないのだし」と折れて探索を続けていた。

 そして、ここに来て。
 この黒い男と相対した。
 その気配で。……いや、そこにいるのに、まるで気配が感じられないという事実で。
 セイバーは察する。
 この男、常人ではない。

 背にした魔法陣は赤く輝き。
 セイバーの問いに対して、その男は眉一つ動かさず答えた。

「魔術師―――荒耶宗蓮」

 言葉は重々しくこの場に響く。
 名乗りを聞き、ルルーシュと桃子が息を呑む。
 それは、二時間ほど前に得た情報。
 主催者側からの、介入者。
 ルルーシュは考える。
 こいつは、出来ればここで捕らえて、聞きた出したいことがある。
 そのために、名前どおりに剣の心得があるらしい、セイバーの協力を得たいところだ。

「……セイバーさん、こいつは主催側の人間だ」
「―――それは、真実ですか。ルルーシュ」

 魔術師から目を逸らさずにセイバーはルルーシュに問い返した。
 そこにはルルーシュに対する当惑と疑惑も含まれている。
 何故、そんなことをルルーシュが知っているのか?
 この殺し合いの舞台に連れられてきてから、殆ど参加者と接触せず、情報も得ていないはずではなかったのか。
 当然のように、疑問を思い浮かべる。
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:57:41 ID:WE262Dnh
 
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:58:03 ID:6C9jU/ud
>>700
どこら辺にデレがあるんだアアアアアアアアアアアアア!!!!
710徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:58:09 ID:wx7wH3lm

「―――然り。私は、確かに主催者側の存在だ」

 しかし。
 呆気なく魔術師はその言葉を肯定する。
 セイバーはその疑いを一先ず後回しにし、魔術師を強い眼光で見据える。

「馬鹿な。―――では、何故貴方も首輪を受けて参加者に混じっているのですか。魔術師よ」
「私には私の目的がある。―――故に、おまえたちにはまず、ここで死んでもらう」

 まるで平素と変わらぬ様子で魔術師は殺人宣言をする。
 魔術師の目的、両儀式の奪取のため、それを邪魔するだろう対象、セイバーは殺しておくべきだ。
 さらに、主催者側からつつかれたこともある。ここで、星を稼いでおくことは悪くない。
 何、それほど分の悪い賭けではない。
 ここは荒耶が体内にして、工房にも近い。
 それ故に建物ごと潰すような真似はできないが……地の利はこちらにある。
 さらにセイバーのサーヴァントは接近戦が主。現在は宝具も持っていない。
 増して先ほどの戦いで消耗しているとくれば……対抗する手段は、充分にある。
 そのほかの二人も厄介な能力こそあるが、身体的には常人を脱してはいない。
 警戒さえ怠らねば、ものの数ではないのだから。

 そう、この荒耶宗蓮は元より世界人類六十億の意志を敵に回す覚悟をした。
 今更、三人相手とて恐れることがあろうか―――。

 死んでもらう、という言葉を聴いたセイバーは即座に反応して七天七刀を抜き、インビジブル・エアを纏わせる。
 風が、刀身を隠していく。これこそがセイバーの持つ宝具にして能力、風王結界―――!
 そして、同時に展開するのは自身の体の一部ともいえる魔力で紡いだ鎧。
 これにより、耐魔力スキルと相まって、物理、魔術ともにセイバーを傷つけることは難しくなる。
 それは、刹那の間。
 それだけの時間で戦闘の準備を完成させ、構えまで取ろうというセイバーはまさに英霊。人間を超えた存在だと言ってもいいだろう。
 ―――だが、そこまでだ。

「―――粛」

 魔術師の、左腕を突き出しての、短い呟き。
 その言葉とともに閉じられた左腕は、何かを握りつぶすような動きを見せた。
「―――ッ!」
 同時に、セイバーが装着したばかりの鎧に、ビシリと罅が入り、体中に圧力がかかる。
 僅かな動作と呪文のみでの攻撃。
 全ての方向からの目に見えぬ衝撃。
 裂けていく体の痛みを感じながら、セイバーは即座に攻撃の正体を察する。
 それは、空間そのものの圧縮。
 セイバーのいた空間そのものを周囲から握りつぶしたのだ。
 しかし、何故耐魔力が働いている様子がないのか―――?

 セイバーは知る由もなかったが、それはこの会場が荒耶の体内そのものであったからだ。
 自分の体内の空間を潰すのは、最早魔術ではない。
 それはただの運動だ。
 そう、魔術はセイバーにかかっていたわけでも、潰された空間にかかっていたわけでもない。
 最初から、この会場にかかっていたというわけだ。

711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:58:15 ID:j3z8H7LW
 
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:58:29 ID:6C9jU/ud
空気を読まない男
あらやん登場
713名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:58:56 ID:j3z8H7LW
 
714徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:59:00 ID:wx7wH3lm

「――――ぐ、まだっ!」

 しかし、流石はサーヴァント・セイバー。
 体が裂け、鎧に罅を入れられた。
 だが、その程度で止まるはずもない―――!
 膝を付き掛けた足を、強引に振り上げ、裂帛の気合を持って踏み込む。
 彼我の差は精々10メートル程度。
 セイバーならば一足にして移動できる距離である。

 相手とて、一撃を放った直後。
 そして、この威力、自らの耐魔力すら上回る魔術判定。
 現代に生きる魔術師として考えられる常識を超えている。
 ……恐らくは、攻撃魔術に特化している魔術師の全力の技だろう。
 そうでなくては説明が付かない。
 だというならば、その直後。
 今ならば充分以上の隙がある!

 そして、一瞬にして間合いに踏み込み、振り上げた剣を降ろそうとして―――

 ―――“静止”する。

「不倶、金剛、蛇蝎、」

 短く紡がれる迷いなき苦悩の言葉。
 そして浮かび上がる三重の結界。

(真逆。結界を体に纏って―――!?)

 結界。
 それ本来であれば、場そのものを守るためのものだ。
 故に、それが動くことなどありはしない。
 しかし、この魔術師はその常識を覆す。
 そう、こと結界という一点に関して言うならば、荒耶宗蓮は世界最高峰の魔術師である。
 相手の得意分野を見誤った。
 それが、ここで騎士王が魔術師に遅れをとることになった要因の中で、最も大きなものだった。


 荒耶の、動乱を生き抜いた男の鍛え上げた拳が、華奢な少女の胸を貫いた。


 卍  卍  卍
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:59:10 ID:WE262Dnh
 
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:59:43 ID:6C9jU/ud
そういやぁセイバーの特殊スキル「腹ペコ」って今回発揮されたんだろうか
717徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/22(火) 23:59:46 ID:wx7wH3lm


 そして僕は、
 逃げるんだよォォォーッ!
 と、ばかりに、後ろを向いて脱兎の如く走り出した。
 尻尾を巻いて、と言い換えたっていいだろう。
 とにかく、どういう形容でも構わないけれど。
 僕は平沢憂から逃走した。

「…………」

 流石に、少しの間だけ平沢は驚いたように固まった。
 あれほど格好を付けて大見得切った相手が。
 まさか、一瞬のためらいもなく退却を選ぶなんて誰が思うだろうか。

「……あはははははははははははっ!!」

 そして、爆発。
 平沢は手に持つ手綱を引き絞り、おもし蟹を追走させた。


 轟轟轟轟――――ッ!!


 逃げる僕の耳に響いてくるのは空気を切り裂く音。
 まさか音速を超えているということはないだろうが、あの蟹はかなり俊敏だ。
 僕は、戦場ヶ原の一件でそれを充分に知っていた。

 だから、こうする。


718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:59:52 ID:WE262Dnh
 
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 23:59:57 ID:i9o74bMf
 
720徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:00:26 ID:wx7wH3lm
「ふあうっ?!」


 悲鳴。それに加えてドガンっ、という音。
 振り返らなくてもそれが何の音かは分かる。
 加速した蟹の気配を察して、横向きに僕が飛びのいた結果。
 壁にぶつかったのだ。
 あの蟹は確かに早いけど、精密性にかける。
 そもそもあの神は大雑把な性格らしいし、操られようともその辺りは余り変わってないんじゃないかと考えた。
 どうやら実際にそのその通りだったようで、コーナリングは苦手らしい。
 それは、もしかしたら平沢が未だ蟹の使役に慣れていない、ということだったのかもしれないが。
 とにかく結果としては上手くいった。
 さて。
 問題はここからだ。


「―――どうした! 僕を殺すんじゃなかったのか?」
「っ―――! 言われなくてもブチ殺してやりますよっ!!」


 振り向かずに挑発してそのまま走る。
 衝突のダメージなんてたかが知れている。
 特に蟹のほうはあの程度じゃ、少しも衝撃を受けちゃいないだろう。
 僕は後々の伏線のために挑発をしながら、階段を駆け上がる。
 この階段は、直線が多数の部位に折れ曲がった形、一般的な階段と同じ形をしている。
 だから、あの蟹で僕を追おうと思うなら、少し安全運転しなければならない。
 もっとも、階段にはいずれ終わりが来るけれど……。
 そのときまでには、何かいい案が思いつくはずだ。
 もしくは、セイバー達と合流できるはず。
 うん。

 というわけで、阿良々木暦は自身の伝統的な戦い方。
 『逃走』を今のところ選ぶことにした。


 卍  卍  卍
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:00:44 ID:6C9jU/ud
注意を怠らなければって思いっきりセイバーしか意識してないじゃないか、あらやん!
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:01:06 ID:HS28LQbB
 
723徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:01:07 ID:wx7wH3lm


「なるほど」

 感嘆の声を上げるのは、魔術師―――荒耶宗蓮。
 そして、それを上げさせたのは剣の英霊―――セイバー。

「魔力放出。それにより我が結界より逃れるか」
「―――残念ながら、避けきることはできませんでしたが」

 セイバーの持つ魔力放出スキル。
 これは、本来己の動きにあわせて使用して、身体能力を倍増、いやそれ以上に見えるほどに強化する、という使い方が主である。
 だが、それだけしか出来ないわけではない。
 魔力そのものを放出し、推進剤のように利用することとて可能だ。
 荒耶宗蓮の結界内で静止するのは生物のみ。魔力放出による移動を防ぐ方法はない。
 もっとも、本来の力を制限されさらに消耗している現在では、それは充分とは言えず。
 心の臓を貫くはずだった腕を僅かに逸らすに留まったが。

 攻撃の勢いと再びの魔力放出により、間合いを離すセイバー。
 元の間合いである10メートルほどとまではいかないが。
 その半分ほどには離れた地点へと舞い戻る。
 しかし、攻撃から逃れたとはいえその息は荒く。
 七天七刀を支えにして、やっと立っているような状態。
 ……当然といえば当然のこと。
 サーヴァントであるために、その核を潰され消滅するまでは死ぬことはない。
 しかし、バーサーカーやランサーのように、セイバーは戦闘続行スキルを持っているわけでもない。
 致命傷を喰らえば、やがては動けなくなり、死に至る。
 そして胸の穴が開いた状態を、致命傷でないかというと。
 それは、サーヴァントをもってしても言い難いものだ。

 だが、即死ではない。
 ―――ならば、まだ戦える。

 人々を守らなければならない。
 その為の、自分の剣はまだ折れていないのだ、と。
 セイバーは魔術師を見据えてそう断ずる。

「ルルーシュ。モモコを連れて逃げてください」
「なっ……?」
「ほう」

 セイバーは脇で驚いたような顔で固まっていたルルーシュに声をかけた。
 彼らは何の能力も持たない一般人。
 自分が守らなくてはならない。
 しかし、この相手は―――強い。
 自分も出し惜しみをせず、全力を出していくしかないだろう。
 すると、彼らを巻き込むかもしれない。
 だから、逃げろと。
 そう告げる。
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:01:40 ID:i9o74bMf
 
725徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:01:50 ID:wx7wH3lm


 その言葉を聞いて、ルルーシュ・ランペルージは考える。
 逃げるべきか。戦うべきか。
 それを考える。
 正直、目で追うことすらやっと、というレベル。
 本当に、こいつらは人間なのだろうか?
 それがルルーシュのこの戦闘に関する偽りなき感想だ。
 完全に侮っていた。
 魔術師と、そしてこの女、セイバーを。
 
(この先、こんな奴らを相手にしなければいけないというのか……?)

 ナイトオブゼロ。枢木スザクすら、彼らの前では分が悪いだろう。
 真っ当に対抗しようと思えば、自分などKMFでもなければ戦闘に介入できる気がしない。
 もしも敵に廻られれば、非常に厄介だ。
 ギアスの力を使おうと隙を窺っていたが、魔術師はまるでルルーシュを見ようとはしない。
 意識的に、視線を向けないようにされている。
 ―――能力や、プロフィールは知られている、ということか。
 覚悟はしていたことだが、やはり辛い。

 ……なんとかならないか。
 いや、しなくてはならない。
 俺が、この先望みを叶えるために。

「……いやだ、セイバーさんを見捨てられるわけがないだろう」

 こいつには聞き出したい情報がいくつもある。
 まだ、策は尽きていない。だというのに、逃げ出すわけにはいかない。
 ―――そう、この魔術師をここで打倒する!

「―――何を、言っているのです。ルルーシュ! 貴方がいたところでなにも変わりはしない! だから……!」

 しかし、出来れば相手の能力を知っておきたい。
 さきほど使ったのは、空間の圧縮、そして接近した場合に強制的に動きが止められる魔術、か。
 拳の威力から、接近戦も充分に可能。そして、空間の圧縮には左腕を用いた動作が必要、といったところか。
 それが荒耶宗蓮の現在測ることの出来る能力。
 もっとも、未だ隠している札があるかもしれないので、詳細は不明瞭だが。
 …………。

 これなら、どうだ。

「ルルーシュ……!」

 なんとか説得しようと、一瞬だけ振り向いた彼女に、語りかける。
 自らの策。荒耶宗蓮を破る策を。

「――――――!」

 魔術師に聞こえないように、しかし、聞き間違えや解釈違いのないようにはっきりと。
 ルルーシュはその言葉を口にした。

「―――分かりました」

 一瞬の硬直ののち、
 セイバーは言葉を聞いて、再び見えない剣を構える。
 これで無理なら、いよいよ逃げる手段を考えなくてはいけないな。
 と、ルルーシュは心のどこかで考えた。
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:02:17 ID:WE262Dnh
 
727徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:02:31 ID:wx7wH3lm


 荒耶宗蓮は待っていた。
 一撃の機会を。
 式にすら、一度見せれば対応された。
 スペックで言えばその上をいくサーヴァントに、空間圧縮は二度は通じまい。
 動作を見た瞬間に範囲外に逃れられてしまうだろう。
 しかし、相手も傷ついた身の上、足手まといを抱えている。
 その上、剣士だ。
 遠距離戦は望むまい。
 ならば、接近戦にて、我が結界で静止させ。
 今度こそ、撃ち貫いて見せようと。
 その機会を待つ。
 そして、その機会はきた。
 セイバーが、先ほどと同じく何も考えていないかのように突撃してきたのだ。

「―――たわけが」

 その様子に少々の失望を覚える。
 サーヴァントとは英霊。常人の域を凌駕した存在。
 何度も苦渋を飲まされた、抑止力に近しい存在。
 それが、この様に無様な特攻をするしかないのか。

 飛び込んでくるセイバーに併せて自らも前進する。
 それに伴い移動する結界。

「、戴天、頂経、王顕」

 それを展開し、今度こそ英霊の息の根を止めようとした所で―――

「なに―――?」

 気付かされる。
 セイバーの目に光る、赤い色。
 何を自己思考することのない瞳。ギアスの証。
 その事実に関わらず、神速の踏み込みはそのままで。
 荒耶宗蓮の結界まであと一歩というところ。
 英霊は、命令に従い風王結界を解き放った。

 交叉。

 暴風が、形をもって室内に吹き荒れる。
 風圧で割れるモニター。壊れていく精密機器。
 もはや、それらが使いものにならないことは、誰の目をもってしても明らかなほどに破壊される。
 しかし、それらは余波に過ぎない。
 本流の行き着く先は、黒の魔術師。
 そして、その仏舎利を備えた左腕。
 刀を使い覚醒した両儀式にすら容易には傷つけられぬその聖人の加護を。
 強引に、ただ膨大な魔力による風の刃が切り開く。
 これこそが、騎士王アルトリアが宝具の一つ。
 ―――【風王結界】の解放である。

728名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:02:33 ID:6C9jU/ud
ここで王すらも身の危険に晒すのがルルの唯一といっていい美点
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:03:03 ID:HS28LQbB
 
730徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:03:21 ID:K8G/TJZy
 ―――しかし、荒耶宗蓮も、それを座して見ていたわけではない。
 最後の一歩を詰め結界へと英霊を捉える。
 切り裂かれゆく左腕を見ても、顔色ひとつ変えることなく。
 残された右腕で少女の胸を撃ち貫く。

 ぐしゃり。
 鈍い音がして二つのものが、落下する。
 一つは肩口より裂かれた荒耶宗蓮の左腕。
 一つは小柄な少女の肉体。
 とっさに右腕での攻撃へと変更したため。
 未だセイバーは死にいたってはいない。

 だが、どちらが大きな被害を負ったかは明白で。
 そして、どちらがことを思惑通りに動かせたのかも、また明白であった。


「―――まさか、サーヴァントを捨て駒として使うとはな」
「切ってこその切り札だ。―――そうは思わないか、魔術師?」


 ルルーシュ・ランペルージはそう言って愉快そうに。
 全ては計画通りとでも言うように。
 唇を吊り上げ、顔を歪めた。


 卍  卍  卍
731名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:03:46 ID:HS28LQbB
 
732徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:04:02 ID:K8G/TJZy


「ぐっ……はああっ!?」
「随分、逃げ回るのが好きなんですね。阿良々木さん。格好いい台詞を吐いた割には」

 いくらおもし蟹が全力で走れないといっても……僕の身体能力はそれほど高いわけじゃない。
 体力の問題だってある。残念だけど、いつまでもは逃げ切れない。
 ここ5Fを目前とした踊り場で、ついに追いつかれて殴られてしまった。
 軽く腕を振られたに過ぎないっていうのに、僕の体は面白いほどに吹き飛ばされる。
 そして、壁に激突。本日二回目だ。
 隙を作ってくれればなんとかなる方法はある……と思うんだけど。
 なかなかどうしてどうにもならない。

 あー。
 畜生。なんで僕がこんな目にあってるんだ。
 胸を触ったから?
 それぐらいで殺すっておかしいだろ。全く。
 八九寺だったら喜んで体を差し出すだろうし、羽川だって……あ、いや、ごめんなさい。

「あーあ。なにかやってくるのかと思ったら逃げ回るだけだし。もう、殺しちゃいますね。阿良々木さん」
「……嫌だ」
「は?」

 おもし蟹。
 それを睨んで僕は言う。
 死ねない。
 僕は、
 誰かの重みになんて、なるわけには、いかない……!

「嫌だ、っていったんだ。……僕は、お前に殺されるわけにはいかない。
 僕が死んだら忍が死ぬ。僕が殺されたら戦場ヶ原が復讐しようとするだろう。
 僕が死んだら妹達が泣く。僕が死んだら八九寺を誰がかわいがってやれるんだ。
 僕が死んだら、神原に誰が突っ込んでやれる? 僕が死んだら―――千石に、合わせる顔がない」

 死にたくない理由だって増えた。
 人間強度は地に堕ちた。
 だけど、
 これが、強くなるってことなんだ。
 だから、僕は、春休みなんかより、
 きっとずっと、強くなった……!

「―――僕は、死ねない。僕は死なない。お前なんかに、殺されて、やれないんだ」
「……知ったことじゃないですよ。私は私の理由で阿良々木さんを殺します」

 そう言って。彼女は手綱を振り上げる。
 その一瞬に考える。

 あの蟹に正面から攻撃されたら痛いだろうな。
 違う。
 あれは不可抗力なんだって!
 そうだけど、違う。
 戦場ヶ原、愛してる。
 今、考えるべきはそれじゃない。
 彼女が、僕に執着する本当の理由は―――。
 そうだ、
 そういえば、

 それだ。鍵は。
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:04:11 ID:6C9jU/ud
そういいながら切り札を都合よく残しているのがルルの一番いやなところw
734徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:05:23 ID:K8G/TJZy


「待てよ」


 僕は平沢を制止する。

「何ですか……?」

 これで待ってくれるって本当結構素直な子だな、なんて思いながら。
 僕はふらつきつつも立ち上がり、デイパックからそれを取り出した。

「これ、欲しいんだろ」
「…………!」

 反応から見ると、やっぱりそれなりに興味は引けるらしい。
 彼女の姉のギター(名前は忘れた)。
 はっきり言って重い。
 邪魔だな、うん。

「ほら、やるよ……!」

 だから、思い切り平沢に向かって投擲する。
 @振りかぶって――A下半身の力を上半身に乗せて――B腕を振りぬく!
 阿良々木流投球術はあまり上手くいかないことが多いんだけど、今回の結果は悪くない。
 ぐるぐると回転しながら、ちゃんと平沢に向かって一直線に飛んでいった。

「え、わ、あれ? きゃっ」

 なんとか、それをキャッチする彼女。
 それでいい。
 そのために手綱から両手を離した。
 そう。これだけやられれば分かる。あの手綱を使って蟹を操っている。
 だから、手を離したこの瞬間―――おもし蟹は動きはしない!
 腕を振りぬいたポーズからすぐに僕は走る!
 この一瞬だ。
 この一瞬だけ、僕には勝機がある!
 おもし蟹の目の前まで走り、そして目を丸くしている平沢を押し飛ばす。

「わっ」

 なんかまた柔らかいところに手が触れたような感触がしたけど、きっと気のせいだ。
 平沢が離れた蟹はじっとしている。
 だけど、ここで完全に動けなくする!
 そして、僕はその場でデイパックをひっくり返した。


「どジャアア〜〜〜ン!」


 テレビパソコン冷蔵庫ピアノエアコンテーブル食器棚本棚電子レンジベット勉強机椅子電気スタンドスコップ竹箒
 柱時計回転椅子ソファホットプレート柔らかいクッション箪笥ストーブ広辞苑六法全書ラジカセ靴箱蝙蝠傘肖像画
 DVDデッキパソコンラックゲコ太のストラップオーブン包丁優勝トロフィー脚立自転車草刈り機全自動卵割り機
 エトセトラ!
 最後に、ポンと転がるようにエトペンが飛び出してくる。

 それら、僕が何かに使えるかもしれないと民家から拝借した家電・家具の類が、全ておもし蟹の上に積み重なっていく。
 セイバーに変な目で見られながらもかき集めた甲斐があったってものだ。
 ……こんな使い方を想定してたわけじゃないけど。
735徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:06:03 ID:K8G/TJZy
 しかし、思った以上に多すぎる。一気に出すとこんなことになるのか。
 ……おもし蟹は、もう身動きできないだろうけど、僕と平沢も壁際まで押し出されることとなる。
 やばい、ちょっとやりすぎた。
 内心の動揺を隠して僕は冷静に平沢に語りかける。

「……さて、お前の頼りにしてた蟹は潰しちゃったけど。どうする、まだやるのか?」
「――――。……あ、当たり前です! 死ね死ね死ねっ!」
「っ!」

 少し呆然としていたようだけれど、彼女はすぐに怒りの色を見せた。
 そして、彼女は殺意を持って右手を振る。

 ―――ギミックヨーヨー。

 僕は、名前なんて知らないけれど。
 確かな回転数と、仕込まれた刃を持って命を奪う凶器。
 それが、僕の脳天に目掛けて飛んでくる。
 勿論、命中すれば命はないし、使用者の意志で軌道を変更できるので回避も困難だ―――

 ―――避けられない!
 ずしゃずしゃずしゃり!
 刃は僕の肉を切り裂いていく。
 痛みが走り、血が、肉が、飛び散る。

「いってえ……」
「―――え?」

 ―――だから、僕はそれを左腕で掴んだ。
 そもそもヨーヨーは距離が使用者から離れるほどに回転数・速度が上がる。
 それを元にしたこの武器の威力も、使用者から離れるほどに上がるのだろう。
 だから、こんな至近距離で放てば威力も速度も大したことはない。
 唯の高校生に過ぎない僕が受けられるぐらいには。
 ……何てことは後付の理由で、必死になって左手を出したら偶然収まっただけなのだけど。

 ギミックヨーヨーは僕の左手に刃を突き立てる。
 手のひらを刃が貫通して血が流れる。
 だけど、僕はやせ我慢が得意なんだ。
 もう、離さないように、ヨーヨーを強く、握り締める。
 歯を食いしばって耐えて、平静を装い、言った。

「平沢、それがお前の答えか」
「あ、あ、あ……」

 彼女の右腕はギミックヨーヨーが装着されている手袋。そして、左腕には姉のギター。
 どちらも、即座に放り出すことは出来ない。
 チェックメイト。
 この距離この状況。
 片手の開いている僕の勝ちだ。


「―――残念だ」


 ズガンッ!


 乾いた音。
 勝利の合図は、そんな安っぽいものだった。

 卍  卍  卍
736徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI :2009/12/23(水) 00:06:51 ID:wx7wH3lm


「愚かな。サーヴァントに任せておけば、私を打破する手段はまだあった。
 それを左腕一本と引き換えに棄てるとは。よほど彼我の戦力差が理解できぬか」
「ただ勝利しても意味がない。……俺が主導権を握れるように勝たねばならないからな」

 ルルーシュは笑い、荒耶は笑わなかった。
 ルルーシュは、セイバーに「荒耶宗蓮の左腕を切り飛ばせ」と命令をした。
 出来るだけ確実な方法で、と付け加えることも忘れず。
 そうしてセイバーはそれを実行する。
 本人にすら思いつかないかもしれない、最高にそれを叶える方法を持って。
 確かに左腕は荒耶の戦闘における中核をなしている。
 攻撃、防御とも起点はまず仏舎利を埋め込んだ左腕である。
 確かに、それが無いと言うのなら、荒耶の能力は大きく減衰したと考えても良い。
 しかし、それでも武装した兵如きなら圧倒できる。
 ここから、どうしようというのか。ルルーシュ・ランペルージ。

「……こうするのさっ!」

 そう言ってデイパックよりルルーシュが取り出したのは、ミニミ軽機関銃。
 軽とは名ばかりの重厚さ。人に命中すれば唯では済まないだろうその威力。
 無論、左腕に存在する仏舎利の加護を失った魔術師とてその例外ではない。
 ―――命中すれば、だが。

「―――そんなもので、魔術師を殺せるとでも思ったのか、ルルーシュ・ランペルージ」
「…………ちっ!」

 早い。
 サーヴァントにこそ及びはしないが、この魔術師とて動乱の時代を生き延びている。
 放たれた拳銃の弾丸を撃たれた後から躱すことのできるこの男。
 使い慣れない銃など、取り出している間に間合いを詰めることなど造作もない――!
 ルルーシュは慌てた様子で下がろうとするが、そんなことを許されるはずもない。
「、王顕」
 結界に捕らえられて体が動かなくなる。

「くっ……!」
「さらばだ。ルルーシュ・ランペルージ。愚かな男よ」

 そう云って、右腕を胸に突き刺そうと振り上げるその瞬間、
 ルルーシュ・ランペルージは唇を吊り上げて微かに、だが確かに―――哂った。

 攻撃に移るその一瞬、荒耶はルルーシュと目を合わさざるをえない。
 それは、確実に急所を捉えるために、一撃必殺の為には仕方の無い犠牲であった。
 無論、魔術師荒耶宗蓮とてそれは理解している。
 その上で、ギアスがかかろうとも問題がないと判断したのだ。
 荒耶宗蓮はこの場にいる参加者の能力、その制限を把握している。
 そのため、ギアスは本人が死亡すれば無効となることを、知っている。
 この一瞬の間に例えルルーシュに何を言われることがあっても、この拳を途中で止めることは出来ない。
 慣性と体の覚えた経験により、技は放たれる。
 その拳に貫かれれば、所詮は一般人でしかないルルーシュは即死する。
 ならば、どのようなギアスだろうと、関係はない。
 撃ち貫くのみである。

 そして、ギアスが紡がれる。
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:06:58 ID:6C9jU/ud
この優勝トロフィーが清澄高校のものだったら何かと悲しい気持ちになるなぁ
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:10:09 ID:HS28LQbB
 
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:10:20 ID:ExqEOGXD
 
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:10:48 ID:QChKVz/X
一家に一台、全自動卵割り機
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:10:51 ID:HS28LQbB
 
742名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:11:48 ID:HS28LQbB
 
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:12:44 ID:ExqEOGXD
 
744:2009/12/23(水) 00:18:40 ID:z4I5Ne+5
私怨
745名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:19:47 ID:HS28LQbB
 
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:20:14 ID:ExqEOGXD
 
747名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:21:19 ID:HS28LQbB
 
748徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:22:58 ID:oPMqZDaR

「―――お前は魔術を使用するな!」
「―――承知した」

 その言葉に従い荒耶の纏っていた結界が消える。
 と、同時に荒耶より一瞬消えゆく意識。
 しかし、練り上げられたその体は意識の有無ごときでは止まらない。
 鍛えられた肉体は覚えた型のまま技を繰り出す。
 いや、だがしかし、確かにその速度は先程よりも僅かに―――鈍い。

 ルルーシュの体は自由になり、攻撃速度も落ちた。
 しかし、それだけで達人の一撃を回避し切ることなど、やはりルルーシュには不可能だ。
 精々が右腕を割り込ませて攻撃から胸をかばうぐらいが関の山。
 そんな程度では、結果としてはさほど変わらない。

「が、あああああああっ!」

 受けた腕は砕け、その力は体にも伝わり、回転しながらルルーシュは床に叩きつけられ。
 バウンドし、コンピュータを薙ぎ倒して、やっと動きが止まる。
 凄まじい衝撃。
 完全に意識を失い、無様に地に倒れ伏せた。
 ―――だが、死んでいない。

「……なるほど、おまえの余裕はそこにあったのか」

 意識の戻った魔術師は、伏せるルルーシュに目を向ける。
 倒れた彼のマントが肌蹴て、そこから下に来ている服が見えた。
 それを見て、荒耶はルルーシュの態度を合点する。

 『歩く教会』

 ルルーシュ一行が、ホール平和の広間にて手にした『服』。
 荒耶の得意とする三重の結界のように、教会という結界そのものを小型、軽量化して修道服として編んだ最高級の防御霊装。
 主催者の一人、禁書目録が着ているものと同デザインのその品は、本来ならば荒耶の拳程度では貫けはしない。
 だが、ここにも制限がある。
 防御性能は大幅に下げられて、拳銃や包丁の単純な攻撃程度なら防げるが、それ以上の威力、刀やショットガンのような武器相手ではダメージを軽減するだけに終わる。
 この黒い魔術師の拳の威力は拳銃や包丁の比ではないのだ。
 命こそ拾ったが、暫くは立ち上がることが出来ないだろう。

 荒耶は苦悩の顔を変えず、ルルーシュに近づく。
 何をされたのかは不明だが、まずは、己にかけられたギアスを解除しようと、そう考えた。
 歩く教会の防御範囲に露出している範囲は含まれない。
 顔を攻撃すれば絶命させることは容易だろう。

 ―――しかし、左腕を接合するためにまたしても工房に行かねばならないだろうな。
 今度はなんと口実をつけるか―――。


 ぬ?
749名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:23:07 ID:ExqEOGXD
 
750徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:23:23 ID:oPMqZDaR
 ずるり、と。
 荒耶宗蓮の体がずれる。
 ―――上半身と、下半身が分断された。
 先ほどの斬撃ですら比ではない。
 圧倒的な熱量を持って、切り裂かれる。
 仏舎利の加護すら失った魔術師は。
 耐える術など持ち合わせていない。

 これ、は―――。

「そうか。おまえの能力は、意識されなくなること、であったな」

 影のように静かに。
 東横桃子はデスサイズを構えてそこにいた。


 卍  卍  卍
751徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:23:33 ID:oPMqZDaR


 荒耶宗蓮は分断され地に倒れ。
 東横桃子は、それを黙ってじっと見ていた。

 小型ビームサイズ。
 それこそが平和の広間に存在した『武器』。
 この武器はただガンダムデスサイズの持つビームサイズを小型化したものではない。
 重さは物干し竿と同程度にしかなく、普通の人間でも振り回すことが出来る。
 その分、柄の部分の強度は下がってしまったし、ビームの持続時間は5分間と短い。
 しかし、GN粒子によるチャージ機能がつけられており1時間程度で再利用が可能となるという優れもの。

 その威力は静止の起源を持ち、半ば不死ともいえる荒耶をあっさりとバターのように切り裂くほど。
 本来はMSを破壊するためのモノで、人間相手に使用すれば、そうなることはある種必然であったが。


 命が、失われていく。死が、与えられていく。
 魔術師は、自らの運命を悟り、東横桃子に呪いを与えようとする。
 自分の意識からすら外れたこの少女に。自分を死に導くだろうこの少女に。
 言葉を贈るのもまた、一興かと、考える。
 奇しくもそれは、青崎燈子が荒耶宗蓮に、死の直前に残そうとしたものとまた、同じものであった。


「最後に教えよう。―――おまえの起源は“孤独”だ。東横桃子」

 静かな部屋に男―――荒耶宗蓮の声が響く。
 語りかけられたのは女―――東横桃子。
 しかし彼女はじっと彼を見詰めるだけで、それに応えようとはしない。

「―――そう、おまえは元より誰とも交わることのない人間だ。それ故、おまえは他人に求められない。他人を求めようとはしない。
 父や母といった肉親でさえ―――おまえには無関心だ。そして、自身もまた肉親に対し無関心だった。
 友人が、教師が、肉親が、当然のように与えるはずの情を―――おまえは知らない
 “それ”を、疑問に思ったことはなかったのか。辛いと感じたことはなかったのか。
 ―――あろうはずもない。“それ”こそが、おまえの起源であり、何よりも自然な状態であったのだから」

 ぎり、と。
 歯をかみ締めるような音が聞こえる。
 それは、聞く必要の無い死にぞこないの言葉だったはずだ。
 だというのに、どうしてだろうか。
 この言葉は、妙に心に訴えかける。
 東横桃子には起源が何なのかなど分かりはしない。
 そのような知識などはない。 
 だが、言葉に思い当たる節でもあったのか。
 必死で表情を、心を殺していた。
752名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:23:53 ID:ExqEOGXD
 
753徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:24:08 ID:oPMqZDaR

「だから―――」
「む」
「―――だから、それが、私にとって、何だっていうんすか……。
 起源とか、そんな話は知らない。私は、私は絶対に先輩を生き返らせる―――!」

 きっと、答えてはいけなかった。
 その問いに魔術師は不快な様子を見せる。

「死者蘇生―――それがおまえの望みであったか。
 ――――愚かな。
 無意識ながらも起源を自覚し、利用しているおまえが。今更、何を求めようというのだ。
 おまえには最初から、絆などと呼べるものは存在しない―――」
「うるさい。五月蝿い煩いうるさいっ!」

 否定する。
 桃子は荒耶の言葉を否定する。
 それを認めてしまえば、きっと。
 東横桃子は、もう東横桃子でいられなくなってしまう。
 荒耶はそこに漬け込むように言葉を続ける。

「私は、先輩が……。先輩だって私を……っ!」
「認められぬか、東横桃子。おまえの起源を。だが、それでもおまえは辿り付かない。
 おまえが望んだものは、最初から、偽りだったのだから―――」


「違う!」


 ぐさり、と。
 果物ナイフが荒耶の胸に刺し込まれる。
 ビームサイズの効果時間は切れた。
 そんなときのため、受け取っていたものだ。
 そんな安っぽい武器とも言えぬようなものが。
 荒耶宗蓮に止めを刺す。

「私自身とか、両親とか、クラスメイトとか。そんなのはどうでもいいんすよ」

 静かに、瞳から涙を流しながら桃子は応える。

「でも、私は本当に先輩が好きだ。だから、私を見つけてくれて嬉しかったっす。一緒にいてくれてすごく楽しかったんすよ……!
 起源とか、そんなことはどうでもいい。例え、この世の全てが嘘だって、この気持ちだけは偽れない。
 だから、

 私は―――お前を殺す。

 みんなを殺す。―――そして、先輩を必ず……」

 それは決意だった。
 それは勝利宣言だった。
 それは最終通告だった。


 荒耶宗蓮は、その言葉に何を返すこともなく。
 目を見開いたままで絶命した。



 卍  卍  卍
754名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:24:28 ID:HS28LQbB
 
755名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:24:51 ID:ExqEOGXD
 
756名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:25:10 ID:HS28LQbB
 
757徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:26:09 ID:oPMqZDaR


 夢を、見ていた。
 それはありえない平穏の日々。
 当たり前のように気を許せる隣人と笑い会える。
 毎日のように豊富で美味な食事が出る。
 人々が、幸せそうに平穏に暮らしている。

 でも、きっと。
 それはただの夢だった。
 私のようなものが。
 自分の統べた国すら救えなかった私が。
 見ていいような夢じゃ、なかったのだ。

 厳しくも優しい赤い少女がいた。
 陽気で快活な虎を想起させる女性がいた。
 残酷で純粋な白い女の子がいた。
 愚直で誰よりも近しく感じた少年がいた。

 ―――シロウ。
 私は、貴方をどう思っていたんだろう。
 貴方に否定されて、悲しかった。
 貴方だけは分かってくれると思っていたから。

 でも。それも夢だった。
 私の夢は、決して叶うことはないのだろうか。
 そんなことはない。
 そう、信じたい。
 いつか、この果てなき世界のどこかで。
 私の答えが、見つかると信じていたい。

 白く。世界が染まる。
 真っ白に閉じていく。
 だけどまだ、あと少し。
 一言、言い切るぐらいの時間は残っている。
 そんな時に、最後に思うのは。
 きっと……。


 そうだ。最後に、一つだけ伝えないと



 シロウ―――――貴方を…………。




 卍  卍  卍
758徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:26:12 ID:oPMqZDaR


 きらきらと輝いて。
 光の欠片が大気に踊る。
 刃の付きたてられたセイバーは。
 その鎧も、髪も、頭からつま先まで余すところなく。
 光へと返った。
 それはとても幻想的な光景で。
 僕にはそれが現実なのか。
 一瞬、自信がもてなくなる。
 セイバーの全てが分解されきった後。
 乾いた音を立てて。
 戒めの象徴である首輪がその場に落ちた。
 僕はそれを、ただ静かに見ていることしかできなかった。


 あの後、平沢を倒してからすぐに、上のほうから轟音が聞こえてきた。
 何かあったのかと、急いで階段を上ろうとしたが、ぶちまけた家具が邪魔で仕方がない。
 出来るだけ手早く詰めなおして、7Fまで走ってきた僕の目に映った光景が。
 それだった。

「―――セイ、バー……?」
「あれ、キタローさん?」

 気高かった少女はその言葉に答えることはない。
 代わりに彼女にナイフを突き立てていたあいつが、こっちを向いた。
 ルルーシュとともに出会ったばかりのこのゲームの参加者。
 久しぶりに突っ込みをさせてくれた愉快なやつ。
 だけど、その雰囲気はさっきまでとはまるで違う。
 平然としているのに、泣いているようで。
 どこか、他人を拒絶するような、希薄な雰囲気が漂っていた。

「……今の何だよ、東横。セイバーに何をしたんだ!?」
「さあ……普通にナイフ刺しただけなんすけどね」

 私もちょっとびっくりしてるんすよ?
 と、東横は軽く答える。

「ナイフで刺した、って……」
「ああ。私、優勝狙いっすから。……そっちこそゴスロリさんはどうしたんすか」
「ゴスロリ……平沢と、仲間だったのか?」
「ええ、まあ」
「……あいつなら、僕が倒した」
「……そうっすか」
759名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:26:16 ID:ExqEOGXD
 
760名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:26:20 ID:HS28LQbB
 
761徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:26:23 ID:oPMqZDaR

 事も無げに言う彼女はぐるりと周囲を見渡す。
 それにつられて僕も辺りを見回した。
 よく見れば、パソコンやコンピューターでその殆どを占められたこの部屋は傷跡でいっぱいだった。
 コンピューターは破壊されていて、無事に使えそうなものなどありそうも無い。
 壁や床、天井にまで何かがこすれたような後。
 そして気付く。
 倒れていたのはセイバーだけでない。
 コンピューターをなぎ倒して、ルルーシュが倒れていた。
 その、二、三歩程前に体が真っ二つになった見知らぬ男。
 二人とも、ぴくりとも動きはしない。

「ちょっと……待ってくれよ。何だよ、これ……」

 分からない。
 想像の範囲外すぎて、理解が追いつかない。
 東横が、こんなことをしたのか。
 一人で?
 いや、平沢と仲間で?
 みんなを……殺した?
 セイバーを?
 ルルーシュを?
 見知らぬ男を?
 どうやって?
 ていうか、この男は誰だ……?

「ああ……待つならもう少し待って欲しいんすけど」
「え?」
「だって、もうすぐ放送っすから」

 冷静に告げる彼女を見て、ますます混乱する。
 誰かが慌ててると逆に冷静になる、っていうのの逆パターンか。
 だけど、東横の言葉で、一つ思い出す。
 そう、もう放送の直前だということに。

 僕はそれにどう答えるべきなのか、少し迷う。
 ああ、わかったと妥協するか。
 いや、殺人者を少しでも放っておけないと取り押さえるか。
 しかし、時間は待ってはくれず。
 第二回放送は始まった。


【荒耶宗蓮@空の境界       死亡】
【セイバー@Fate/stay night   死亡】
762名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:26:58 ID:ExqEOGXD
 
763名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:27:01 ID:HS28LQbB
 
764徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:27:05 ID:oPMqZDaR

【D-5/政庁7F・情報管理室/1日目/昼(放送直前)】

【阿良々木暦@化物語】
[状態]:疲労(大)、全身に打ち身(治癒中)、左手に大きな裂傷(治癒中)
[服装]:直江津高校男子制服
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ギー太@けいおん!
    (適当に回収したため何が残っているかは不明、後の書き手にお任せします)
[思考] 誰も殺させないし殺さないでゲームから脱出。
基本:知り合いと合流、保護する。
0:……わけがわからない。
1:東横から話を聞きたい。
2:放送を聞く。
3:戦場ヶ原、八九寺、神原と合流したい。他にも知り合いがいるならそれも探す。
4:憂の姉を見つけたら、憂の下に連れて行く。
5:……死んだあの子の言っていた「家族」も出来れば助けてあげたい。
6:支給品をそれぞれ持ち主(もしくはその関係者)に会えれば渡す。
7:千石……八九寺……
8:太眉の少女については……?
[備考]
※アニメ最終回(12話)終了後よりの参戦です。
※回復力は制限されていませんが、時間経過により低下します。


【東横桃子@咲-Saki-】
[状態]:ステルス解除、疲労(中)
[服装]:鶴賀学園女子制服(冬服)
[装備]:FN ブローニング・ハイパワー(自動拳銃/弾数15/15/予備45発)@現実、果物ナイフ@現実(現地調達)
[道具]:デイパック、基本支給品(-水1本)、FENDER JAPAN JB62/LH/3TS Jazz Bass@けいおん!、通信機@コードギアス反逆のルルーシュ
   蒲原智美のワゴン車@咲-Saki-(現地調達)、小型ビームサイズ@オリジナル(現地調達)
[思考]
 基本:加治木ゆみを蘇生させる。
 0:放送を聞く。その後、阿良々木をどうにかする。
 1:ルルーシュを利用し(利用され)、優勝する。
 2:もう、人を殺すことを厭わない。
 3:覚悟完了。ステルスを使う時は麻雀で対局相手の当り牌を切る時の感覚を大事にする。
 4:先輩が好きだ。それだけは譲らない。
 5:そういえば、魔術師さん生け捕りにしろって言われてた。……どうするっすかねー。
[備考]
 ※登場時期は最終話終了後。
 ※カギ爪の男からレイに宛てて書かれた手紙は中身を確認せずに破り捨てました。
 ※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。
 ※自分の起源を知りました。

【蒲原智美のワゴン車@咲-Saki-(現地調達)】
 咲-Saki-22話にて。鶴賀学園麻雀部部長蒲原智美の運転したらしいワゴン車。
 パスワードは「wahaha」

【GN小型ビームサイズ@オリジナル(現地調達)】
 平和の広間にて回収された、ガンダムデスサイズのメイン武装を小型化したもの。
 軽量化に成功しており、女性でも振り回せる。その分、柄の強度は下がってしまったが。
 連続稼動時間は5分間だが、GN粒子を蓄えるように仕様の変更が行なわれているため、一時間ほどで再起動可能。
 しかし、擬似GN粒子が漏れているため、細胞障害を起こす可能性もある。注意。
765名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:27:42 ID:HS28LQbB
 
766徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:28:10 ID:oPMqZDaR
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(大)、右腕の骨折、気絶中
[服装]:歩く教会@とある魔術の禁書目録、ポンチョのようなマント@オリジナル(現地調達)
[装備]:ゼロスイッチ(仮)@コードギアス反逆のルルーシュR2、CDプレイヤー型受信端末、リモコン、イヤホン@現地制作、
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、ミニミ軽機関銃(183/200)@現実 、
ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュR2、“狐”“泥眼”“夜叉”の面@現実、
サクラダイト爆弾(小)×9、サクラダイト爆弾(灯油のポリタンク)×2@コードギアス反逆のルルーシュR2、
盗聴機、発信機×9@現地制作、単三電池×大量@現実、通信機×5@コードギアス 反逆のルルーシュ
アッシュフォード学園男子制服@コードギアス反逆のルルーシュR2、USBメモリ@現実(現地調達)、阿良々木暦のMTB@化物語、

[思考]
基本思考:枢木スザクは何としても生還させる
1:荒耶宗蓮から情報を聞き出したい。
2:駅に受かったというスザクと合流したい。
3:東横桃子、平沢憂と行動を共にする。
4:殺しも厭わない。東横桃子、平沢憂、スザク、C.C.、ユフィ以外は敵=駒。利用できる物は利用する。
5:スザク、C.C.、ユフィと合流したい。
6:南側の施設(ホール、タワー)を調査した後、政庁に向かう。
7:偽ゼロの放送を利用して、混乱を起こし戦いを助長させる。
8:“金で魔法を買った”というキーワードが気になる。
9:首輪の解除方法の調査、施設群Xを調査する?
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※参加者が異なる時間平面、平行世界から集められている可能性を考察しています。
※モモから咲の世界の情報を得ました。主要メンバーの打ち筋、スタイルなどを把握しました。
※自分のギアスも含めて能力者には制限が掛っていると考えています。
※おもい蟹が怪異たる力を全てルルーシュに預けました。どんな力を使うかは後の人にお任せします。
※モデルガン@現実、手紙×2、遺書、カギ爪@ガン×ソード、皇帝ルルーシュの衣装@コードギアス反逆のルルーシュR2、
 シティサイクル(自転車)、ジャージ(上下黒)、鏡×大量、キャンプ用の折り畳み椅子、消化器、ロープ、カセットコンロ、
 混ぜるな危険と書かれた風呂用洗剤×大量、ダイバーセット、その他医薬品・食料品・雑貨など多数@ALL現実
 揚陸艇のミサイル発射管2発×2機、ミサイル×4発@コードギアス反逆のルルーシュ
 現在支給品バッグに入れています。
※揚陸艇の燃料…残り10キロ分
※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。
※Fー7ホールの平和の広間にてUSBメモリを入手しました。

【歩く教会@とある魔術の禁書目録】
 法王級の防御礼装。あらゆる物理、魔術的干渉を吸収する。
 しかし、その能力は大幅に制限されてしまっている。
 デザインはインデックスが本編で着ているものと同じ。
 しかし、誰でも着れるように御使堕し(エンゼルフォール)時の青髪ピアスのようなフリーサイズのものである。

※荒耶宗蓮とセイバーのデイパック、及びその装備品は回収されず、床に落ちています。

 卍  卍  卍
767名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:28:18 ID:ExqEOGXD
 
768名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:28:33 ID:HS28LQbB
 
769徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:28:51 ID:oPMqZDaR


「あぁぁああぁああぁあー……もう、殺す殺す殺すッ!」


 物騒な声が、他に人影のない踊り場で響く。
 平沢憂。
 あの後、頭を殴られて気絶した後、目が覚めてみれば、洗濯紐で縛られていた。
 ……まあ、それはいい。
 平沢憂は妥協する。
 一応、自分のやったことは理解しているのだ。
 拘束されるぐらいはやむなし。
 むしろ、それぐらいで済んだことを感謝すべきかもしれない。

 しかし、
 何ゆえ、
 何ゆえ、亀甲縛りなのか?!

 なんか、動くと変なところに食い込んで……ああ、もう!
 ちょっと変な気分に……。って、そんな場合かー!


「殺す殺す殺すぅ……絶対に、殺してやるっ!」


 じたばたと暴れてみるものの拘束は解けず。
 ますます阿良々木暦に対する怒りは募るばかりだった。

【D-5/政庁5−6F間の階段踊り場/1日目/昼(放送直前)】

【平沢憂@けいおん!】
[状態]:健康、拳に傷、重みを消失、いらいらタイム、亀甲縛り(神原直伝)
[服装]:ゴスロリ@現実、洗濯紐@現地調達
[装備]:ギミックヨーヨー@ガンソード、騎英の手綱@Fate/stay night、拳の包帯、おもし蟹@化物語
[道具]:基本支給品一式、日記(羽ペン付き)@現実、桜が丘高校女子制服、カメオ@ガン×ソード、
COLT M16A1/M203(突撃銃・グレネードランチャー/(20/20)(1/1/)発/予備40・10発)@現実、
    包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor、双眼鏡@現実(現地調達)
    通信機@コードギアス反逆のルルーシュ、遠坂凛の魔力入り宝石@Fate/stay night×10個
[思考]
基本:ルルーシュとバンドを組みたい。皆を殺す。阿良々木さんはもう絶対殺す。
0:とにかく、拘束をなんとかしたい。
1:ルルーシュさんの作戦、言う事は聞く。お姉ちゃんは無理には殺さない。
2:モモさんはルルーシュさんが仲間だと言っているので殺さない。
3:阿良々木さんをブチ殺して、お姉ちゃんのギー太を返して貰う。

[備考]
※ルルーシュの「俺を裏切るなよ」というギアスをかけられました。
※中野梓についていた「おもし蟹」と行き遭いました。姉である平沢唯に対する『思い』を失っています。
※ルルーシュがデパートから回収した雑貨の中から双眼鏡を受け取りました。
※おもし蟹は大量の家具、家電等で押しつぶされています。そのダメージがどの程度かは次の書き手に任せます。

 卍  卍  卍
770名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:29:14 ID:HS28LQbB
 
771名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:29:38 ID:ExqEOGXD
 
772徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:29:48 ID:oPMqZDaR


 荒耶宗蓮の肉体は死んだ。

 体を両断されて、胸にナイフを突き立てられ、どうしようもないまでに、死んだ。

 だが、荒耶宗蓮はそれだけでは終わらない。

 そう、予備の肉体さえあれば、この魔術師は意識を移し生き延びることが出来る。

 用意周到なこの魔術師が……保険も容易していないわけがない。

 そうだ。それは、予備の体は、存在する。

 だが……そんなことを主催者側が許すのか?

 一度しかない命を奪い合うから面白い。そうではないのか。

 主催者の一員だからと、そこで特別扱いはしない。

 違うか。

 然り。

 しかし、気付かれなければいい。

 それが、荒耶宗蓮の予備の体だと、気付かれなければ、いい。

 使わないで済むのなら、それに越したことはなかったのだろうが。

 この期に及べば仕方はない。

 そう。それはもう登場している。

 我らの前に、登場している。

 君ももう、知っているはずだ。

 誰の意識もない。人形のような体で。荒耶の予備とはとても思わない肉体を。

 そう。

 それは―――『蒼崎橙子の人形』である。


【荒耶宗蓮@空の境界   蘇生】
773名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:29:56 ID:HS28LQbB
 
774徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:30:03 ID:oPMqZDaR


【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:新しい体への適合中
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は参加者たちを扇動する
0:新たな体に適合する。その後、状態の把握。
1:殺し合いが動きやすくなるようにする。
2:必要最小限の範囲で障害を排除する。
3:機会があるようなら伊達政宗を始末しておきたい
4:利用できそうなものは利用する。
5:会場の結界を修復する
※首輪はダミーです。時間の経過と共に制限が緩んでいきます。
※B-3の安土城跡にある「荒耶宗蓮の工房」に続く道がなくなりました。扉だけが残っており先には進めません。
※D-5の政庁に「荒耶宗蓮の工房」へと続く隠し扉があります。
※蒼崎橙子の人形は、荒耶に適合するように改造がしてあります。その詳細はのちの書き手に任せます。
775名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:30:37 ID:HS28LQbB
 
776徒物語〜ももこファントム〜 ◇1aw4LHSuEI代理:2009/12/23(水) 00:31:23 ID:oPMqZDaR
482 名前:徒物語〜ももこファントム〜 ◆1aw4LHSuEI[sage] 投稿日:2009/12/23(水) 00:19:29 ID:NizKvg1I
以上で投下終了です。
代理投下よろしくお願いします。
また、wiki収録時は、
本スレ>>723(そのものを含む)までを(上)、それ以後を(下)としてください。

483 名前: ◆1aw4LHSuEI[sage] 投稿日:2009/12/23(水) 00:20:18 ID:NizKvg1I
失礼しました。上記は含まない、の間違いです。

485 名前: ◆1aw4LHSuEI[sage] 投稿日:2009/12/23(水) 00:23:35 ID:NizKvg1I
代理投下よろしくお願いします。
また、非常にわかりにくい書き方で申し訳ありませんが、本スレ>>680->>720までを(上)としてください。
慣れていないもので本当にご迷惑おかけします。
777名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:33:41 ID:oPMqZDaR
このような傑作を書かれた◆1aw4LHSuEI氏に最大限の賛辞を。
このような傑作を代理投下させていただけた幸運に感謝を。

そしてセイバーには花束を。
778名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:34:44 ID:oPMqZDaR
486 名前: ◆1aw4LHSuEI[sage] 投稿日:2009/12/23(水) 00:30:08 ID:NizKvg1I
あ。支援ありがとうございました、と追記して下さい。
遅れてすみません。
779名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:42:34 ID:h0OIVksD
代理投下乙
780名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:46:08 ID:rZia7Aso
何このクソスレ
きも
781名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:52:55 ID:ExqEOGXD
ラウ氏、及び代理投下乙です
ありゃりゃぎさんが危ないと思ってたけど助かったか
でもセイバーが…まぁあらやん相手じゃなぁ
でもルル組が、つっても憂の別行動で実質二人だがあらやん倒すとは驚いた
策と連携の勝利だな、素晴らしい
モモにデスサイズってのも実にイイ!
ステルスも相まってなんというか映える
でも最後に復活かぁ、まさか橙子さん人形をそう使うとは
最後に…亀甲縛りとかありゃりゃぎさんなにしてんのwww
って思ったら神原直伝かよwwなら仕方ないなwwwwww
782名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 00:58:47 ID:9mGyfltL
乙でした。
最優(?)のサーヴァントを捨て駒にし、自らも囮にするルルーシュは流石。
この時点でモモが自分を裏切ることは絶対に無いと確信してこそなんだろうな。
憂はエロス担当というより辱め担当か。

荒耶がモモに色々言ったのは怒らせて自分を殺させようとしてたんだよね?
783名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 01:10:57 ID:GlOFg7w3
投下及び代理投下乙でした

細かく切り替わる場面転換や各キャラの描写が非常に秀逸です
他の書き手諸氏が扱いに困っていたであろう燈子人形を使って復活というアイデアも見事でした

本当にお疲れ様でした
次回のSSも楽しみにしています
784名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 03:04:48 ID:Ut8xZduJ
修正&投下&代理投下乙でした!
セイバーさん御亡くなりになられたか……しかもトドメはモモw
とーこさん人形の使い方も秀逸ですね
構成、設定、文章の全てがハイレベルな力作でした
GJです!!
785名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 07:30:30 ID:ZSQspbrh
投下乙です

ルル&モモ
やってくれた!
現時点で戦国武将以外にサーヴァントや荒耶を殺せるのはお前らくらいだと思ってたけど、見事にやってくれた!
ルルーシュが自分を囮にしてモモが背後からって連携もよかったー


「―――阿良々木さん、見ぃつけたー」
ホラーだ……
ってか憂はそろそろ落ち着け!いい加減キャラ崩壊だw(※修正要求ではありません)

阿良々々木さん
怪異相手のこの人は落ち着いてるよなー
しかし亀甲縛りって……縛ってる間もいろんなところ触ったんだろうな

荒耶
とりあえず、デイバッグから出られるかどうかが当面の課題か?

セイバー
うん、らしいといえば……とっても彼女らしい!
786名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 09:42:15 ID:2yUBg3uV

 ★ 連絡事項 ★

現在、議論スレにて◆9kuF45dxA2氏の『新たなる旅立ち』に対し、修正要求の発議が行われています。
修正要求の内容に関してはだいたい纏まっていますが、昨夜発議が行われた為、修正要求の議論ルールに基づき
今日の夜に修正要求の内容が正式決定される予定になっています。
議論スレを確認のうえ、他に問題点等あれば早めの指摘をお願いします。

◆IXsb2rHJg6氏の『協議の果てに迷える戦士達』に対しても議論スレで指摘がありました。
こちらはまだ修正要求を行うか否かも含めて内容が纏まっていない状態なので、意見のある方は議論スレまでお願いします。


また、指摘が行われていた◆1U4psLoLQg氏の『疾走する本能』の修正版が仮投下スレに投下されています。
現在は議論スレが別件で使用中の為、本投下を行っていいかどうかのレスを
本スレもしくは、したらばの避難所スレまでお願いします。 (問題点の指摘がなされた場合は、別途誘導を行います)
787名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 09:54:23 ID:HS28LQbB
投下乙です
さすがルルーシュ、策を張り巡らせて荒耶とセイバーを葬るとは…
だけど結果的には本人気絶しているし、荒耶はモモが半ば衝動的に殺した形な辺りルルーシュらしいというか
でもステルスモモにビームサイズとか…まんまデスサイズやんけw
その一方であららぎさんは一人奮闘…なのに亀甲縛りってwww最後の最後で印象がwwww
「―――阿良々木さん、見ぃつけたー」は結構ゾクッてきたわ
そういや結局セイバーは士郎と会えずに死んでいったのか、南無

そしてあらやんまさかまさかの予想外の形で復活!?とりあえず海原逃げて!?
788名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 09:59:11 ID:2yUBg3uV

 ★ 連絡事項(追加) ★

仮投下スレに◆6lyiPawAAI氏(政宗、美穂子、唯、ヴァン、馬イク)のSSが仮投下されています。
「問題なければ本スレへの投下をお願いします」とのことなので、
こちらのSSについてもしたらば避難所スレまで意見をお願いします。
789名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 12:40:48 ID:Ut8xZduJ
1stの『るるるのルイズ』、2ndの『くすくすシータ』に続き、今、3rdにキャラ崩壊狂マーダーが誕生した……
その名も、『ブチ殺憂』!!
……語呂が悪いねw
誰か、いい名前募集
790名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 13:07:06 ID:cEY9dn/k
嫉妬の憂アタンでいいよ
791名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 14:07:58 ID:QChKVz/X
カニライダー憂とか

ルル山と桃子は異能に対する覚悟ができたのが大きいと思う
キャスターみたいに油断してザックリのフラグが減った
でも、ルル山は突発的なアクシデントに弱いから分からんね
792名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 14:27:34 ID:fmFcc4DK
>>789
狂レベルが上がればもっと素敵な口癖が生まれるだろうから、それまで待てばいいんじゃね?w
793名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 14:37:47 ID:0Y1o7goL
うんたんうんたん、お姉ちゃん大好き
うんたんうんたん、お姉ちゃん大好き……
794名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 14:49:01 ID:FsXvuJAB
ルル山には足場サクラダイト爆破をやってもらうまで死んでほしくないw
795名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 17:21:52 ID:2yUBg3uV

  ★ 連絡事項 ★

仮投下スレに投下されている下記二作に関して、引き続き本投下を行って問題ないか意見募集中です。
指摘がある場合はその旨を、本投下を行って問題ない場合はその旨を
本スレもしくはしたらば避難所スレまでレスお願いします。

 ◆1U4psLoLQg氏の『疾走する本能』
 ◆6lyiPawAAI氏の『揺れる片の眼 悲を呼ぶ邂逅!』


あと、投下の際にはこのスレでは容量が足りなくなるので、少し早いですが次スレです。

アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part16
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1261556057/
796名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 18:32:21 ID:9mGyfltL
MS少女デスサイズモモ
797名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 20:38:14 ID:ZSQspbrh
憂は一応改心フラグも無いことはないんだが、使われる事はあるのだろうか?
798名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 20:50:12 ID:2yUBg3uV
仮投下ならびに仮投下スレに投下があった旨の告知からたいぶ時間が経ちましたが
特に問題点の指摘は無いようなので、まずは◆1U4psLoLQg氏の『疾走する本能』を代理投下します。
(仮投下スレでトリバレして次から使用するトリが示されているので、新トリで代理投下します)

長めなので、お手隙の方がいれば支援をお願います。
799[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:51:50 ID:2yUBg3uV
アーチャーと別れ、商店街の出口に差し掛かった所で、
スザク達三人は瓦礫の山と化したD-6駅を目撃した。

「これは……!」

驚愕の声を漏らしたのは枢木スザク。
自分が少し離れていた間に、こうも駅側の状況が一変しようとは、予想もしていなかった。
無理も無い、まさか運行停止中の筈の電車を、突っ込ませる者が居るとは普通予測できない事だろう。

「どうやら……襲撃されていたようだな」

その様子を見つめながら、レイ・ラングレンは冷静に状況を分析する。

駅前ロータリーには、いくつかの人影が見える。
殺し合いに乗っていると見られる。ボディコンスーツのような格好の女と、黒い洋服姿の女。
そして、横たわる真田幸村。

「どうする?」

レイがスザクに問う。

「あの奇妙な姿の女。おそらく、アーチャーが言っていたサーヴァントとやらだろう?」
「……でしょうね。彼が話していた特長と一致します、おそらくはライダー……」

言いながらスザクは歯噛みする。
状況は一目瞭然、最悪だ。
皆の中継地点であるD-6駅が、よりにもよって、最も恐れていた人外クラスの敵に襲撃された。
そして、その襲撃は成功を収めたのだろう。
現に、駅は瓦礫の山と化し、サーヴァントに対抗しうる強さを持った幸村が倒されている。
駅の周囲にセイバーと阿良々木の姿は無い。
楽観的に見て、既に逃げ出したのか。
最悪、死んだか。

「枢木殿……」

そして、スザク以上にこの状況を恐怖する人物がいた。
神原駿河の絶望感に満ちた声が、商店街に響く。

「それでは……阿良々木先輩は……!」

神原にとって、これは正に悪夢の様な光景だった。

「まだわかりません。しかし……」

――恐らく、無事では無いだろう。
スザクは、その言葉を飲み込んだ。
あの面子の中で、一番戦いに不向きなように見えた阿良々木。
あんな無茶をやらかした襲撃者達を相手に、生存率は低い。
神原も、それは言わずとも分かっているのだろう。
拳を握り締め、唇を噛みながら駅の方向を見据えている。

「選択肢は二つだ、退くか、攻めるか。お前が決めろ。」

レイがスザクに判断を委ねる。
スザクは暫し逡巡した後に、

「――攻めます」

そう、決断を下した。
800[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:53:18 ID:2yUBg3uV




崩壊した駅、そのロータリーに、二人の女性がいる。
脱線した電車の手前に立っている紫色の髪の女の名は、ライダー。
隣に座る黒髪の女の名は、浅上藤乃。
その凶悪なる魔眼の力で、強敵を討ち取った彼女達は、未だロータリーに留まっていた。
傍らには、物言わぬ男の死体がある。
大の字に倒れ、天を仰ぎながら死んでいる男、生前の名を真田幸村。
日本一の兵(つわもの)と呼ばれた彼も、サーヴァントと超能力者の力を前に、その命を散らしていた。

「これは好機です。このままセイバーの追撃に移りましょう。アレが魔力を回復する前に討ち果たすのです」

この戦いで受けたダメージ、消費した魔力、それらを確認しながらライダーが次の行動を宣言する。
しかし、そう言った直後に彼女は気がついた。

「む……大丈夫ですか?フジノ?」
「…すみません。ちょっと、待って……もらえませんか……」

パートナーの疲労が限界に来ている事に。
超能力の過度にわたる連続行使。それは、藤乃に大きな疲労を感じさせていた。
幸い、歩けない程ではない。しかし足元はおぼつかず、少し視界が霞んでいる。
これ以上、連続して戦うには少々心許ない状態だった。
しかし、それはごく当たり前のことだ、藤乃はライダーとは違う。
いくら強力な魔眼の力を使えようとも、その肉体は所詮ただの人間。
人の身には強大過ぎる力を、そう何度も使えば、このように疲労困憊にもなるだろう。

「……わかりました。そこでしばらく休息を取ってください。
 敵が逃げた方向は分かっていますから、少し時間を置いて追撃に移りましょう。」

「……はい」

と、一言だけ返事を返し、藤乃はどさっと地面に足を投げ出して、座り込んだ。

もしこれが、一撃で真田幸村の首を凶げる事が出来ていればどうだったろう。
藤乃がこの場に座り込む事は無く、彼女達はすぐさまセイバーの追撃を開始できた筈である。
だが、幸村の必死の抵抗が、結果的に彼女達の足を止めさせ、少しの間、この場に留まらせた。
それが一体どのような影響を及ぼすのか。
答えは、そう遠くない内に示されることになる。

「ライダーさん!男が一人、こっちに来ます!」

藤乃がそれに気づいたのは
少し休憩し、能力がちゃんと使えるか確認する為に、千里眼を使用した時だった。
やはり、体への負担は大きく、一瞬ロータリーの周囲を見渡す事しか出来ない。
しかし、その一瞬で男の姿が確認できた。
ライダーも藤乃が指す方向を見る。
確かにいた。
マントをはためかせ、白い正装姿の男が一人。駅前商店街の方向から、こちらに向かって近づいてくる。
片手に拳銃をぶら下げ、目に宿る戦意を隠すこともなく、真っ直ぐにこちらを睨みつけていた。
ライダーはすぐさま『参加者詳細名簿』を開きながら、藤乃に指示を飛ばす。

「その様子では能力も満足に行使出来るか怪しいでしょう、私が一人で対応します。
 もう一度、近くの民家の陰にでも隠れ、回復に努めてください。ただし、私の声が聞こえる範囲に居るように」

藤乃は頷くと、ゆっくりとライダーから離れていった。
彼女が隠れるのを見送った後、ライダーは男と向き合った。
男は五メートル程前方で、足を止めている。
801[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:54:11 ID:2yUBg3uV

名簿によると、男の名は『枢木スザク』というらしい。見た目通りの軍人、いや『騎士』であると記されている。
――『ナイトオブゼロ』、ブリタニア皇帝直属の騎士。
ライダーは聖杯戦争に参戦するにあたって、現代の知識を得ている。
しかし、そのような言葉は聞いたことも無かった。
だがなんにせよ、当然サーヴァントでもなければ、戦国武将でもなさそうだ。
今のところ、ライダーの脅威には成り得ない存在に見える。

「正義の騎士様の登場ですか。ここに何をしに来られたので?」

だから、ライダーはこの男が、ここに現れた理由に興味があった。
駅の状態と転がった男の死体を見れば、彼女達が危険人物であるのは明白。
こうも、真正面から姿を現すのは余程の馬鹿か。
それとも、勝つ自信があるというのか。
スザクは、幸村の死体を見つめながら答える。

「自分は別に『正義の味方』を名乗るつもりはない。ただ、騎士としての勤めを果たすだけだ。
 その人を――真田さんを殺したのは、貴女達ですね?」
「ふむ、なるほど。仲間の敵討ちです――かッ!」

その言葉を最後まで聞き終わる事無く、スザクはライダーの顔面に向けて発砲していた。

しかし、その銃弾がライダーの額を打ち抜く事はない。
忍者刀を握るライダーの片手が、弾速を上回る速さで跳ね上がり、迫り来る銃弾を弾き返す。
跳ね返された銃弾が、スザクの頬を掠めた。
それを前にしても、彼は落ち着いた様子を崩さない。
ただ、戦意だけを込め、ライダーを睨んでいる。
その様子に、少しばかり彼女は感心した。

「ただの騎士にしては、随分と肝が座っているようですね……」

だが、お喋りの時間はもうお終いだ。
ライダーは忍者刀を逆手に構える。
ここに現れた理由も分かった今、もうこの男に用は無い。
後で「再利用」出来るほど無力な一般人でもなさそうだ。
さっさと殺して、セイバーを追うべきだろう。
そう、ライダーが考え、行動に移そうとした寸前。
スザクが、口を開いた。

「こちらからも一つ、質問がある。貴女はライダーのサーヴァントか?」

こちらの実力を理解せずに向かって来た。と、考えていたライダーにとって、
この発言は、少なからず意外な物だった。
彼女は振り上げようとしていた手を止め、会話を続ける。

「確かにそうですが。……貴方は、それを知った上で私に挑んで来たのですか?」
「確証はなかったけど。予測はしていた」
「それは、もう肝が座っているどころではありませんね……。その拳銃一つで、私に勝てると?」
「やって見なければ分からないことだ。――それにっ!」

言いながら、スザクはマントを投げる。
大きく広がった黒い布地が、ライダーとスザクを隔てた。

「銃は、ひとつだけじゃない」

前方へと突き出されたスザクの両手、その両方に拳銃が握られている。
そう、彼が所持していた拳銃は一挺だけではない。
右手に握るはベレッタM1934。そして、左手に握るはGN拳銃。スザクの二つ目にあたる支給品。
802[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:55:12 ID:2yUBg3uV

そして、同時に火を噴く二つの銃口。
連射される実弾とエネルギーの弾丸が、二人を隔てるマントを突き破り、ライダーの顔面へと殺到する。
マントを貫くまで読めない弾道。そして突然増えた銃口は、確かにライダーの不意を突いていた。

「それだけですか?」

だがしかし、まだ足りない。
放たれる、銃弾とGN粒子の悉くは、ライダーの眼前で切り落とされ、弾かれていく。
ライダーが拍子抜けるのも当然だろう、拳銃が二つに増えたからどうした。
マントで不意を突いたからどうした。
それしきで、人とサーヴァントの圧倒的差は埋まらない。
これほど強気で向かって来るものだから、何か能力を隠しているのかと思えば、何のことは無い。
ただの不意打ちと、拳銃二つか――。

数秒の間、銃声は鳴り続けた。

やがて、銃声は止み、弾雨に曝されたマントはボロ布と化して、地面に落ちる。
二人は再び、お互いの姿を視界に納めた。
スザクは大きく足を開いて地面に屈み、撃ち尽くしたベレッタを持つ右手を地面に付け、
まだエネルギーの残るGN拳銃を、斜め前方のライダーの額へと向けていた。
一方、ライダーはスザクから打ち込まれた銃弾、全てを防ぎきり、顔の前で武器を構えた状態を保っている。

「な……に……?」

しかし、驚いた声を漏らしたのは、意外にもライダーの方だった。
視線を下へとずらし、己の足を見つめる。
両足の太腿、間接部、脛、それぞれに赤い点が三つ。
撃たれている。
有り得ない筈の銃痕が、そこにあった。
瞬間、ライダーは何が起こったのかを理解する。

ライダーは確かに防ぎきった。
二挺拳銃による同時連射、その全てを。
いくら視界が塞がれようとも、気配と銃声で弾丸の軌道は読める。
スザクは下方向に大きく屈んだ状態から、斜め上にあるライダーの脳天と心臓を、左右それぞれの拳銃で狙ってきていた。
しかし、それとまったく同時に、有り得ない方向から、第三者の弾幕が飛来したのだ。
三つ目の銃口、すなわち――狙撃。
ライダーの斜め上方向から飛んできた銃弾は、まるでX印を描くかのように、スザクが放つ弾幕とクロスして、ライダーの足を打ち抜いていた。
マントも、GN拳銃も、スザクが単身で現れたことも全て囮。
この狙撃こそが本命だったということか。

「これは少々……騎士道に反するの行為なのではありませんか?」

皮肉を混ぜながらも、ライダーは口内で小さく舌打ちした。

これは正直、忌々しき事態だ。
足を撃たれた事、それだけではない。
己の体が銃器によって傷つけられた、その事実。

本来サーヴァントは、現代兵器で傷つけられる存在ではない。
基が霊体であるであるため、通常攻撃の類が全て無効化されるのだ。
それが『冬木の聖杯戦争』における絶対的法則だったはず。
そしてサーヴァントの、人間に対する圧倒的な優位性の根本となるもの。
本来なら銃弾などかわす事すら不要。
だが、受肉した今のライダーに銃弾を無効化する事は不可能だ。
銃器の類が十分脅威になり得る。
ライダーは、それを分かっていなかった。
スザクの初撃を、反射的に防いだ時点で、気づくべきだったのだ。
防ぐということは、すなわちそれを本能的に脅威と見なしていたのだから。
803[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:56:27 ID:2yUBg3uV

ライダーはこのバトルロワイアルにおいて、アーチャーや戦国武将、超能力者といった超人達と連戦してきた。
だがその一方で、現代兵器の使い手との交戦回数はゼロである。
それが災いした。ライダーは「自分に近代兵器は通用しない」という固定概念を捨てる事が出来ていなかった。
サーヴァントや戦国武将、非科学的な力を警戒する一方で、単純な現実兵器への警戒を怠っていたのだ。
それに加えて、一瞬とはいえ、ライダーを相手に虚を突いたスザクの身体能力。
それに乗じた、レイ・ラングレンの精密な狙撃技術。
様々な要因が奇跡のように重なり、この展開をもたらした。

スザクはベレッタに予備の弾丸を送り込こんでいく。
同時にGN拳銃のエネルギー残量も確認。

「自分が貴女と戦う理由は、敵討ちじゃない。
 さっき言ったとおり、騎士としての勤めを果たすためだけだ。
 その為なら、手段を選ばない」

スザクはそう切り返す。
ルルーシュに危険が及ぶ要素は排除しなければならない。
それが例え、人を超えた存在であろうと。

ゼロレクイエムを完遂させる為に――

「あなたを排除します」

宣言と共にスザクは駆け出した。
ライダーを回りこむ様に走りながら、両手の拳銃を撃ちまる。
対するライダーも迫り来る弾丸をかわしながら、片手に掴んだクナイを投げ放つ。
彼女の怪力から投げられたそれは、銃弾にも劣らぬ勢いを伴ってスザクに迫っていく。
とても常人にかわせる物ではないが、スザクもまた常人かと問われれば、それは否。
たとえ、魔法や魔術が使えなくとも、その性能において、スザクは既に達人の域に達している。
天才的な武の才能、そしてひたすらに鍛え上げた肉体の出力は、一般人の目から見れば十分に異常であろう。
その身体能力に加え、人の身でありながら銃弾すら見切る動体視力をもって、彼はその回避を実現した。
反射的に横へ飛びながら、空中で体を捻る。
紙一重でクナイをかわしながら、スザクはライダーに向かって発砲する。
が、やはり当らない。
ライダーは脚部から血を流しながらも、なお高速で動き、スザクの銃弾をかわし続けている。
狙撃も防がれ続け、これ以上のダメージは期待できそうになかった。
完全にジリ貧状態。

しかし、攻めあぐねているのはライダーも同じだ。
現状、接近しなければ、スザクに決定打を打ち込む事は出来ない。
スザクがベレッタをリロードする。
そのタイミングを狙い、一気に距離を詰めようとするが、すぐに横槍の狙撃に邪魔をされ、また距離を離される。
足のダメージは、少なからずライダーのスピードを殺していた。
無傷であれば、ライダーは狙撃すらも回避し、スザクの首をはねる事も容易だったろう
しかし、制限の影響もあってか、手負いの足では、銃弾を回避する速度は出せても、銃弾を掻い潜る速度は出せない。
両足からは、血が流れ続けている。

ライダーにとって、受肉した弊害は、現代兵器が脅威となった事だけに留まらない。
治癒力の欠落。
魔力をもって、傷を回復させる事が出来なくなっている。

それは同時に、彼女からロングレンジの狙撃に反撃する術を封じていた。
ライダーの切り札の一つ、『ペガサスの召還』
その行使には、ライダー自身が大量の血を流す必要がある。足の出血などではまだまだ足りない。
首の頚動脈を切り裂く位の大量出血でようやく召還できる。
通常ならその位の損傷を負っても、魔力を込めるだけでたちまち傷は回復した。
だが今の状態で、頚動脈を切り裂くなど自殺行為に等しい。
よって、近接射撃はかわせても、視界の外から飛来するレイの遠距離射撃は防御するしかないのだ。
804[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:57:15 ID:2yUBg3uV

更にライダーから見ても、スザクの速さは本物だった。
足の負傷と、援護狙撃が加われば十分ライダーと対抗しうる。
最早彼女にとって、スザクとレイのコンビネーションは、舐めてかかれる相手ではなかった。
銃弾がライダーを捕らえるのが先か、それともスザクの弾切れが先か。
戦いは、ここに拮抗する。
だが、戦況を決定付けるのはそれだけではない。
スザクとレイ、二人がかりでようやくライダーと互角の戦い、しかしライダーには一人の味方がいる。

浅上藤乃。

彼女は民家の影に隠れながらライダーとスザクの戦いを見ていた。
魔眼を仕掛けようと狙っていたのだが、隙がない。
藤乃からスザクまでは距離が離れすぎている。
実態が見える今の魔眼では、容易くかわされてしまうだろう。
かといって、接近しようと飛び出していけば、狙撃の餌食だ。
銃弾を防ぐ芸当など、藤乃には出来ない。
ライダーが接近戦に持ち込めない現状、スザクの動きを止める事も出来ない。
ならば、

(あの狙撃を止められれば……)

と、藤乃は思考する。
藤乃は疲労を黙殺しながらもう一度、千里眼を使用する。
次々と浮かび上がる、エリアD-6の景色。だがそれは藤乃の疲労のせいか、ひどくぼやけた物であった。
限界直前、商店街にある民家の屋上で、大型の銃を構える金髪の男を発見できた。
しかし、これ以上千里眼を行使し続ける事は出来なかった。
目覚めたばかりの能力の使用は、藤乃に相当の集中力を要求する故に。
だが場所が分かれば十分だ。直接出向いて凶げればいいのだから。
そして、藤乃は動き出した。
戦況を変えるために。

「なっ?!待ってください!フジノ!」

それを察知したライダーの制止の声も、届かない。
藤乃は既に、商店街へと走り出した後だった。



駅前商店街、とある民家の屋上。
そこにレイ・ラングレンと神原駿河はいた。
レイは腹這いになって、ドラグノフを構えている。
神原はその背後から、観測者として、レイのフォローに当たっている。
レイが覗き込んだスコープの向こうにはスザクと、彼が対峙するライダーの姿がある。
たしかに奇襲は成功した。
だが、決定打には至らなかった。
両足を打ち抜かれても尚、敵はあれだけの速度で動き、こちらは致命傷を与えられない。
状況は膠着状態、いやレイ達の方が断然不利だ。
こちらは銃弾が切れた時点で手詰まり。
そして、あの黒服の女がレイ達に近づいてきている。
GN首輪探知機には、こちらに向かって真っ直ぐに近づいてくる光点が映っていた。
あの化け物の様な身体能力の女と組むぐらいだ、おそらく只者ではあるまい。
この拮抗状態は、スザクの身体能力と、レイの狙撃が揃っていなければ成り立たない。
このままレイが襲撃を受け、狙撃が止んだ時点で敗北は決定する。
狙撃を気にする事がなくなったライダーは、たやすくスザクに接近し、くびり殺すだろう。

「神原、お前は逃げろ」

レイは神原に逃走を促した。
当然、彼女は抗議の声を上げる。
805[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 20:58:48 ID:2yUBg3uV

「なっ……それは出来ない!私にレイ殿や枢木殿を、見捨てて逃げろと言うのか?!」
「足手まといになると言っている」
「し……しかし」
「早く行け、気が散る」

神原に背を向けたまま、レイはドラグノフの引き金を引き続ける。
こちらの銃弾がきれる前に、敵を仕留める事が出来る可能性は、恐らく三割と言った所か。
だがその前に、敵の刺客がこちらに到着するだろう。
その際、神原を庇いながら戦う余裕などない。
その意図が伝わったのか、

「レイ殿……どうか死なないでくれ」

背後から声が聞こえ、神原が階段を下りていく気配がした。
それに振り返る事も無く、
レイはじっとスコープを覗き込みながら、最適のタイミングで引き金を引く。

「さて枢木、お前の『結果』とやらは、ここで死ぬ事なのか?
 まあいいさ、どうせ死ぬまでの暇つぶしだ、ゆっくりと見物させてもらおうか……」



壁に手をつきながら、荒い息で藤乃は商店街の路地を進んでいく。
元々の疲労に加え、ここまで全速力で走ってきた事が、かなりこたえていた。
自分の意思に反して、体の動きが鈍い。
心臓の鼓動がどくどくと、うるさい。
このまま、座りこんでしまいたい衝動に駆られている。
しかし、彼女は意志の力で前に進んでいく。
一歩一歩、前へ。

(先輩……先輩……。大丈夫です、私はまだやれます。まだ、殺せます……)

そうだ、こんな所で立ち止まってなどいられない。
殺さなければ。もっと殺さなければ。
もっと、もっと、殺さなければ。
大切な、先輩の為に……。

「先輩の為に、殺さなくちゃ……」

そう言った藤乃の口元は、小さく歪んでいた。
彼女はゆっくりと、しかし確実に進み続ける。
幾つかの路地を抜け、
ようやく目的の民家まで、あと少しと言うところまでやって来た。
そこに――

「やあ、奇遇だな。」

見知らぬ少女が立っていた。
806[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 21:00:14 ID:2yUBg3uV

「勝手にこんな事をしては、枢木殿に怒られてしまうだろうか……」

何かを言っている。
藤乃には良く聞こえていないが。
自分の障害となる事は、なんとなく理解できていた。
うっとうしい。
とても、邪魔だ。
藤乃は、ありったけの殺意を込めて少女を睨みつけた。

「しかしまあ、私はこの通り体育会系女子でね。じっとしては居られないタチなのだよ」

そんな藤乃の視線を気にする事も無く、少女は軽い調子で喋り続ける。
なるほど、その健康そうな体つきは確かに体育会系であろう。
短めの青い髪の毛。そして包帯が巻かれた左腕。

「悪いが、ここを通す訳にはいかないな。――お引取り願おう」

路地の中央、神原駿河が立ち塞がっていた。

807[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw:2009/12/23(水) 21:01:00 ID:2yUBg3uV

駅前ロータリーでは未だ、魔女と騎士の攻防が続いている。
状況は未だに拮抗していた。
スザクは既に30発以上の銃弾を放っているにも関わらず、
いまだライダーは最初に撃たれた脚部意外、無傷である。
ライダーも幾度と無く接近を試みたが、その度に弾幕に阻まれていた。
双方共に、焦りを感じている。

スザクは徐々に弾切れが近づいてきている事を意識していた。
己が放つ弾幕の尽くを回避し、レイが放つ狙撃の全てを打ち落とす。
そんな敵を前に、弾を温存する余裕などあるはずも無い。
スザクも、レイも、この状況を保つだけで手一杯だ。
問題は他にもある。、
黒い服の女が商店街に向かったのを、スザクも見逃してはいなかった。
もうじき、レイは襲撃者への対処に追われ、狙撃が絶える。
そうなれば、積みだ。
これ以上持久戦を続けるわけにはいかない。
勝ちの目があるのは今しかない。

そして、ライダーにとっても持久戦は望むところではない。
応急処置していない足の傷口からは、常に血が流れ出し、彼女の体力を削り続けている。
狙撃手のところに、一人走っていった藤乃の事も気がかりだ。

先に業を煮やしたのはスザクの方だった。
膠着状態を打破する為、
スザクはライダーの挙動に注目する。

(隙は……どこかに隙は無いのか!?)

やがて、体力の低下がそれを呼び起こしたのか、ライダーが何かに躓いた。
それは転がっていた幸村の死体。
そのタイミングを逃さず飛んできた狙撃に、彼女は一瞬、対応が遅れる。
なんとか防御は間に合ったものの、不完全な形で銃弾にぶつけた忍者刀の刀身が砕け散った。
この期を逃すスザクではない。
スザクは拳銃を乱射しながら、ライダーへと突貫していく。

(ここで、一気に勝負を決める!)

その意志は、ライダーの方も同じだった。
銃弾をかわしながら、体制を整える。
そして、彼女の手には、いつの間にか新たな武器が握られていた。
808[代理投下]疾走する本能(修正版) ◇6HuSfG/Ykw

「――っ!?」

それは、大型の十字手裏剣。
幸村の死体の隣に置かれていた、ライダーのディパックの中に入っていたもの。
それを見てようやく、スザクは気づく。
先程の躓きが、フェイントだったことに。
ライダーは幸村の死体に躓き、武器を失うフリをしながら、デイバックの中から新たな武器を取り出していた。
全てはスザクの接近を誘い、ライダーの間合いへと持ち込む為。

「しまっ――!」

もう遅い。
既に手裏剣は投げられた。
それは真っ直ぐに、スザクの首へと向かって迫る。
この距離で、回避は間に合わない。
迎撃しようにも、拳銃ではアレを撃ち落とす事が出来ない。
絶体絶命。
瞬間、スザクは己の死を確信した。


(――ろ!)

その刹那。
声が聞こえた。
その声は、スザクの脳裏だけに反響する。

(――きろ!)

声の主はスザクの親友にして、現在の主君。
スザクが生かさなければならない存在にして、
殺さなければならない存在。

(――生きろ!)

そうだ、スザクはまだ死ぬわけにはいかない。
生きなければならない。
自分にはまだ、やらなければならない事が有る。
ここで死んだら、今まで何の為に戦ってきたのだ。

(――生きろ!!)

同調する。
スザクの身に仕掛けられていた絶対遵守の力と、スザク自身の意志が複合する。
彼自身の体に、半強制的に、生きる為に最適な行動をとらせる。
その目が、赤く染まった。

「俺は――、生きる!」

抱えていたディパックを、頭上へと高く振り上げる。
スザクはそこから、最後の支給品を召還した。