アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part12

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566名無しさん@お腹いっぱい。
ふと気がつくと福路は麻雀卓の前に居た
周囲を見渡すと間違いなくここは風越の麻雀部部室
十卓以上が立ち並ぶ部室の中は騒然としていて卓の中の声しか聞こえない
周りに流されること無く麻雀に集中できるすばらしい場所
そして日々の戦績がそのままランキングに直結する激しいせめぎ合いの場
福路の対家に座るのは…

「上埜さん?!」

思わず立ち上がり叫んでしまう
目の前にいるのは紛れも無くおさげを結った竹井久
しかしその身に包むのは清澄高校の制服ではなく…風越の制服
「どうしたの、美穂子。さぁもう半荘いくわよ」
竹井にそう薦められると片目の少女は腰を落ち着かせ頬を赤らめると胸に手を置いた
心臓の音が手を伝わなくても体中に響く
「この半荘は焼き鳥だったから…でも今度こそ和了るわよ〜」
闘志をむき出しにして、それでも微笑を浮かべて竹井が宣言する
「一度も和了れないなんて竹井さんらしくもない」
福路もまた微笑み返す
卓の中央に牌を入れ洗牌する。同時に卓上に牌山がせりあがる
―――楽しい
素直にこの空間がいとおしく思った
「そうねぇ…でも」
牌を四つ取りながら竹井が切り出す
「不死鳥はその身を焼き滅ぼして、その炎から新しく生まれ変わり飛び立つのよ」
福路もまた牌をちょんちょんと取りながら答える
「そう簡単には行きませんよ?私も負けませんから」
理牌して手元を見る

(あら?)

牌が読めない。白牌ばかりという意味ではない。読めないのだ
困惑する福路を見て竹井が神妙な顔で言う
「知ってる?夢の中では新聞って…読めないのよね」

瞬間全てが崩れ去りあたりは上も下も分からない真っ暗な空間が広がるだけになる
ここに居るのは体中に血がこびりつき、髪も振り乱して六本の刀を腕に抱いた福路と
清澄の制服を身につけたいつもの竹井のみ

「お互い、本当にもう交わることさえ出来ない所まで…来てしまったのですね」
血塗られた腕を交差して胸に押し付ける。直前までの幸せも先刻までの狂気ももうそこにはない
「そうね…自棄(やけ)になって危険牌を振り込むような人とは一緒に卓を囲みたくも無いわ」
―――やはり私のことを怒っている
―――ゲームに乗ろうとした私を許せないんだ
第一放送を聴いたときとはまた違った、そしてそれ以上の絶望感が福路の足元をぐらぐらと揺らす
そんな福路を見やりながら竹井は微笑みながら人差し指を傾ける
「でもまだ終わりじゃない。あなたにはまだ点棒が残ってる
 あなたの所の池田って子は持ち点が0になってから頑張ったじゃない
 それに比べたらまだリーチが出来るだけ希望はあるわよ」
無茶苦茶な慰め方だが福路にとっては竹井がまだ自分を見捨ててないという事実が重要だった
「ここからまた飛びたてるのでしょうか?」
嬉しさと悲しさが交差して何が何やら分からない。自然と涙が零れてきた
竹井は福路の涙を指で掬うと、右手を取る
「出来るわ。だってあなた名門風越のキャプテンじゃない」

そこで景色が光に包まれていった。竹井の姿も光の中に消え去っていく
「待って上埜さん!わたしは―――!」
福路は光に向かって叫ぶ
「もう一局だけでもいいから、あなたと打ちたかった…っ」
あとはもう光しか見えなかった