あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part249

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part248
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1250772173/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃  `ヽ   .  ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 12:07:02 ID:Jt2RfLai
スレ立て終了。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 13:22:55 ID:5zbtgE8L
>>1超☆乙ッス
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:05:19 ID:9u2ZrCNE
>>1乙ー

ちょっと質問。
昔小ネタとして投下したものの続きを書きたくなったんだけど、元ネタの性質上
どうしても自己解釈、オリジナルを入れざるを得なくなる。

だから、理想郷に連載として小ネタを第一話〜として投下しようと思ってるんだけど、
その場合こっちのWikiの小ネタから作品消去しなきゃいけないのか?
個人的に初小説、初投稿の記念に残しておきたい気もするんだが…

あと、もし残していいなら「続きは理想郷でやってるからもし興味あったらどうぞ〜」的な文章
をネタの最後に付け加えるのってあり?
宣伝ぽくて不快だろうか。

5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:20:50 ID:Jt2RfLai
あっちこっちでやるより、どこか一つの場所でまとめてやった方が
読む方も楽だと思うから、
そういうはやめた方が良いと思う。
てか理想郷の規約なり慣習でもでもそういったことは推奨はしていないと思うが。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:21:57 ID:5afF8mFK
残すのはいいと思うけど、誘導はやめた方がいいかな
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:29:04 ID:+pQzf0jJ
おつおつ
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:30:19 ID:+pQzf0jJ
残すだけ残して気づいたらラッキーくらいでいいと思うよ
もしくはスレとかでその手の質問が来たときにだけそれとなーくぼかしていってみるとか
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:32:09 ID:5afF8mFK
ギャグネタなら最後に

「続きはwebで!」

って書いとけばいい気もする
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:36:33 ID:DLPOPrkN
>>1
このスレは どれくらい投下くるかしら
最近ちょっと控えめな気がする
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:48:02 ID:MPRAB2YN
>>4
不快に思う人がいるかもしれないなら、止めた方が良いと思わない?
124:2009/08/28(金) 15:36:59 ID:9u2ZrCNE
とりあえず、ネタは残して誘導はなしでいきたいと思います。
さすがに誘導はかまってちゃんみたいでやりすぎでしたね。
反省します。

いろいろな意見ありがとうございました!
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 15:37:28 ID:BuUs6UEG
>>4
自己解釈とオリジナルのせいで掲載不可ならば
それの宣伝行為も良くないんでないかな
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 15:42:48 ID:le+BZgz5
>>12
まぁ、これだけ宣伝できれは充分だろ?
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 15:57:44 ID:KcvP0YQn
一枚は闇マリクが城之内に使ったラヴァ・ゴーレムだと思うけどもう一枚はわからんな。
1615:2009/08/28(金) 15:59:24 ID:KcvP0YQn
前スレのことね
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 16:06:34 ID:qJUhfyEd
前スレの>>946

二度と見れないと思ってたぜ。教えてくれて有難う
…でも途中までしか更新されてないね…
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 16:14:27 ID:Cq8XLaEi
>>17
良い天気だから今日あたり更新されるんじゃないかな
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 16:22:04 ID:EDuSmqZc
>>15
もう一枚はユベルの使ってたトーチゴーレムだな
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 16:28:55 ID:sGfuQpCB
会話自体なりたたないと思うけど
R2-D2を召喚したってのはどうかな
最初は何言ってるか分からなかったルイズだけど
だんだん言葉が分かってくるようになるとか
コルベールが喜びそうだな
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 16:52:25 ID:cNvIvlW3
>>19
多分間違いないだろうが、その二枚は自分ではコントロールできないカードだぞ。どうやってロングビルは使ったんだろう?
さて、もうすぐダークダイブボンバーが消えてだいぶやりやすくなるな。死者蘇生がまた禁止になるのは残念だけど。
社長の人も帰ってきてくれないかなあ。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:07:23 ID:BnX0WTAS
洗脳解除か所有者の刻印でも持っていたのかな
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:25:05 ID:nwed2urP
前々から平成ライダーの誰かを召喚したいと思ってるんだが意外と相性良い奴いねーなぁ
戦闘嫌いが結構多いから動かしにくい。雄介とかフーケ戦以外多分戦わないよな
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:26:28 ID:Qw0oziGu
<<20さん

C-3POなら他の使い魔の言語も訳してくれるのではw
ルーンはヴィンダールブっすかねww
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:42:29 ID:J+3YfUAz
>>23
電王の御一行を召喚すればいいじゃないか
モモかリュウなら売られた喧嘩は確実に買うぞw
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:45:06 ID:Ac1dda9p
>20
ガンダの力で持ってたルークのライトセイバーが使えるようになったりしてな
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:45:58 ID:mAPHidsM
またライダーか。適当鉄雄?って言っときゃいいんだろ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:47:58 ID:KcvP0YQn
>>19
サンキュ
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:50:50 ID:Eo/if1bu
>>27
自分が嫌な話題ならスルーすればいいのに
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 17:52:00 ID:caQpziBq
「日替わり使い魔」
マスタードラゴンと出くわしたきゅいきゅいの反応が楽しみだ
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:07:32 ID:A0xbAbTI
>>23
555は「ハルケギニアにオルフェノク侵攻開始!」
剣は「ハルケギニア各地でアンデッド目覚める!」
響鬼は「ハルケギニアに古来より云々」

やろうと思えば結構出来るんでない?
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:17:18 ID:BuUs6UEG
それやると舞台がハルケギニアなだけになるから嫌なんじゃない?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:23:14 ID:BzB2lMXK
つーか、そう言うのは敵の戦闘能力や特性的にルイズ達が高確率でいらない子になるからなぁ。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:24:47 ID:sGfuQpCB
そうするとタルブにあった戦闘機はエピソードVに出てきた
ジェダイ・スターファイターかX-ウィングになるな 
R2が補助しながら主な操縦はルイズがすると
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:27:09 ID:VNt+fJny
無機物召喚系で、クウガの変身ベルト『アークル』を召喚してしまうとか。
龍騎のベルトだと、メイジが殺し合いを始めるだけですしね……それなら案外ジョゼフがオーディーン?
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:42:20 ID:nRQ9+nI9
ブラコンの使い魔がシスコン兄貴になるのか
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:46:33 ID:Z+JjkUdT
アギトなら・・・・・どうなるんだろう?
アンノウンはメイジを人間として見てくれるんだろうか?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:56:55 ID:ceHoxml2
ライダーか…
つアナザーアギト
つカイザ(中身は馬)
つライオトルーパー(中身は蛇)
つカリス又はジョーカー
つ斬鬼さん
つ753(遊び心あり)
とりあえず面白そうなキャラを挙げてみた。
蛇の人はルイズと相性はいい気がする。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 19:14:41 ID:6ZfzJ0IO
>>21
トーチはともかく、ラヴァの方は相手を籠に閉じ込めて
溶岩のゴーレムで焼き殺す魔法と思われてるんじゃないか?
普通相手が召喚したゴーレムを操れるとは思わないし、もし気づいても
ディスクが無ければ操れないのかもしれん
40使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:34:33 ID:Ru9xBSMu
どうもみなさんこんばんわ
特に投下予定がないようでしたら
19:40あたりから投下を行いたいと思いますが
よろしいでしょうか
41使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:41:21 ID:Ru9xBSMu
ほいだらぼちぼち始めますね
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 気絶したロングビル…『土くれ』のフーケから杖とナイフを奪い、逃げられぬよう小屋にあったロープでぐるぐる巻きにし終えれば、馬車まで運んで。
 一行は森を後にし、一路、魔法学院を目指した。
「にしても、『破壊の聖石』を『破壊』するだなんて、ルイズの魔法には、ある意味で恐れ入ったわ。で、これ、どうすんの?」
 馬車の荷台に座ったキュルケがぽつりと呟いた。その手の上で『破壊の聖石』こと、『核鉄』を弄んでいる。
そしてその『核鉄』は、表面がひび割れ、ところどころ欠けている、ボロボロの状態になっていた。
理由は言うまでもない、先刻のルイズの失敗魔法によるものである。
 そしてその魔法を放った当人は、あ、と声にならない声を上げた。そういえば、これは魔法学院の宝物庫に眠る秘宝であり、
フーケに盗まれたものであり、今しがた奪還したものであり、これから学院に帰って、学院長に渡さなければいけないものなのだ。
 ルイズの顔色が一気に真っ青になった。怒りに任せて杖を振り、結果それでフーケを捕まえるチャンスを生んだわけだが、
取り返すべき秘宝を破損してしまっては、意味がない。
「どどどど、どーしよう!ここっ、ここここ、壊れちゃったかしら!?」
 ルイズは見るも無残に動揺した様子で、キュルケから『核鉄』をもぎ取った。そして、改めてまじまじと『核鉄』の状態を確かめる。
「さー。どうなのかしら。見た目は壊れてるけど……ねぇ、カズキ?」
 自分が直接壊したわけではないからか、軽い調子でキュルケはカズキに尋ねた。カズキはこの中で唯一、『核鉄』の使い方を知っていたからだ。
 ルイズもキュルケの言葉に、御車台に座ったカズキに思わずハイこれ、と『核鉄』を手渡した。カズキは困ったような顔をした。
「んー…実はオレも、よくわかんないんだよね」
 カズキの記憶の限りでは、以前ブラボーがホムンクルス・金城の『武装錬金』を破壊した際にも、『核鉄』はこんな状態になってしまった。
そして、しばらくは『武装錬金』が使用不可能の状態だったと聞いている。
というか、そのときもこのLII(52番)の『核鉄』だった気がする。よくよく運のない『核鉄』である。
「でも聞いた話じゃ、自動で修復していくはずだから。一ヶ月もすれば、また使えるようにはなるんじゃないかな?」
「そ、そう。なら良…かないわっ!一ヶ月も、どこに置いておくのよ!いっ、今すぐなんとかしないと…!」
 カズキの返答にも、ルイズは首を縦に振らなかった。ううむ、どうしたものか。カズキは頭を抱えてしまった。
 キュルケがめんどくさそうに言った。
「表面だけでも、『錬金』の魔法で綺麗にすれば?」
「それよ!!」
 ツェルプストーの提案、というのが癪に障るとか、そんなことを考える余裕は今のルイズには皆無であった。
 ルイズが『錬金』してはヒビが広がるだけなので、発案者のキュルケが行うことになった。
「『錬金』はあんまり得意じゃないんだけどね………」
 そして、杖を『核鉄』に向け、瞳を閉じた。しばしの静寂……が、キュルケは瞳をぱちくりと開け、カズキに再度尋ねた。
「ねぇ、コレ、何でできてるの?」
 そして今度は、カズキが、あ、と声にならない声を上げた。さすがにそこまでは、カズキも知らない。
 キュルケは嘆息した。どんな金属かもわからない以上、『錬金』のしようがない。
イメージだけでも、限界はあるのだ。加えて、得意な系統でもない。いざ魔法をかけて、もっとひどい事になっては目も当てられない。
「最後の手段」
 それまで本を読んでいたタバサが、声を上げた。皆の視線が集まる。タバサは杖の先を、カズキに向けた。
「彼のと、交換」


 使い魔の達人 第十一話  三本腕の悪魔


 学院長室で、オスマンは戻った四人の報告を聞いていた。
「ふむ……。ミス・ロングビルが『土くれ』のフーケじゃったとはな……。美人だったもので、なんの疑いもせず秘書に採用してしまった」
「いったい、どこで採用されたんですか?」
 隣に控えたコルベールが尋ねた。
「街の居酒屋じゃ。私が客で、彼女は給仕をしておったのだが、ついついこの手がお尻を撫でてしまってな」
「で?」
 コルベールが促した。オスマンは照れたように告白した。
「おほん。それでも怒らないので、秘書にならないか、と言ってしまった」
42使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:43:38 ID:Ru9xBSMu
「なんで?」
 ほんとに理解できないといった口調でコルベールが尋ねた。
「カァーッ!」
 オスマンは目をむいて怒鳴った。年寄りとは思えない迫力だった。それからこほんと咳をして、真顔になった。
「おまけに魔法も使えるというもんでな」
「死んだほうがいいのでは?」
 コルベールがぼそっと言った。オスマンは軽く咳払いすると、コルベールに向き直り重々しい口調で言った。
「今思えば、あれも魔法学院に潜り込むためのフーケの手じゃったに違いない。居酒屋でくつろぐ私の前に何度もやってきて、愛想良く酒を勧める。
魔法学院学院長は男前で痺れます、などと何度も媚を売り売り言いおって……。終いにゃ尻を撫でても怒らない。惚れてる?とか思うじゃろ?なあ?ねえ?」
 そんな風に詰め寄られたコルベールもまた、先日ついうっかりフーケにその手をやられ、宝物庫の壁の弱点について語ってしまっていた。
そのことを思い出した彼だが、あの一件は自分の胸に秘めておこうと思いつつ、オスマンに合わせた。
「そ、そうですな!美人はそれだけで、いけない魔法使いですな!」
「そのとおりじゃ!君はうまいことを言うな!コルベール君!」
 そんなダメな二人のやり取りを、ルイズら四人は呆れた様子で見つめていた。
 生徒たちの冷たい視線に気づき、オールド・オスマンは照れたように咳払いをすると、厳しい顔つきをしてみせた。
「さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ……あー。まぁ、『破壊の聖石』に関しては、残念なことではあるが、きちんと取り返しはしてくれた」
 そんなオスマンが懐から出したるは、ボロボロになったLII(52番)の『核鉄』。
 そう。結局、ルイズたちはこの『核鉄』をオスマンに渡すことにしたのだ。

「や、それはちょっと……」
 帰路の中、カズキはタバサの提案した、自分の持つ『核鉄』と、破損したそれとの交換を拒否した。
「あら。ちょっとの間くらい、良いじゃない。直ったら、こっそり宝物庫の『聖石』と交換し直せば、わかりゃしないわよ」
 キュルケがそんなことを言ってきたが、カズキはやはり、首を横に振った。
 カズキの持つ『黒い核鉄』は、既にカズキの肉体とリンクして、交換はもちろん、簡単に取り出すことのできる状態ではない。
また、百歩譲って交換ということになっても、機能のほとんどが使用不可状態の『核鉄』を埋め込んでは、結局お陀仏である。
 キュルケは呆れたように言った。
「強情ねぇ。あたしは良いのよ?このままで学院長に渡しても。でも、壊した当のヴァリエールは、あなたのご主人様じゃなくて?
良いの?あなたのご主人様、大切な秘宝を壊したちゃったのよ?伊達に宝物庫に入ってるわけじゃないのよ?どんな罰を科せられるか……」
 それを言われると、答えに詰まる。カズキは気まずい面持ちで、ルイズを見た。
 ルイズも交換と聞いて最初は、その手があったと諸手を打った。が、カズキの事情も知ってはいたし、
それが事実であると、先ほど理解した以上……それは無理だと即座に断じていた。
「別にいいわよ。あんたも、気にしなくて良いわ」
 ルイズは覚悟を決めたらしく、力強く呟いた。カズキにも気負わせまいと、一声かける。
「あら、わりと潔いわね。流石、トリステイン貴族はラ・ヴァリエールの息女、ってところかしら?」
「何とでもおっしゃい。そこまで使い魔にやらせるわけには、いかないってだけよ。
こうなったら、罰だろうがなんだろうが、受けて立つわ。自分でしたことのけじめは、自分でつけなきゃ」
「ふうん」
 キュルケは、にやにやとそんなルイズを見据えた。不安の色が濃いが、凛々しい顔つきじゃないか。
「それも、さっきあんたたちが言ってた、‘まだ人間が’どうのこうの、ってのと関係があるのかしら?」
 キュルケの発言に、ルイズは渋い顔をしたし、カズキもまた苦笑を浮かべた。
ルイズにはやむを得ず説明したことだが、本来秘匿すべき内容である。この異世界でもそれをすべきかどうかは、わからないけれど。
 そんな二人の様子を見てか、キュルケはそれ以上追求してこなかった。
「まぁ、良いわ。‘聞かれたくないことを、無理やり聞き出そうとするのはトリステインじゃ恥ずべきこと’……だったわね?ヴァリエール」
 そういうキュルケに、ルイズは目を丸くして頷いた。
「え、ええ。そうよ」
43使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:45:00 ID:Ru9xBSMu
「いつか、あなたが話したくなったときが来たら、教えてちょうだいな。カズキ」
 キュルケは気持ちのいい笑みを浮かべた。カズキは、頬を赤くしながら頷いた。
 タバサはそんな二人に一瞬ちらと視線をやったが、直ぐに本へと戻した。
「ま、なんにせよ。ルイズ、あんたがそんなに覚悟決めてるんじゃ、あたしも引くに引けないわね」
 やれやれ、とキュルケは肩を竦めた。ルイズは更に目を丸くした。
「へ?ど、どういうことよ」
「あたしも一緒に、罰を受けてあげるってこと。そりゃ、壊したのはあんただけど。事情が事情だもの。
あんた一人に、責任全部丸投げするわけにもいかないでしょ」
 嘆息交じりにそう言うキュルケ。するとタバサも本を閉じ、ルイズに頷いてきた。
 ルイズはつい、目頭が熱くなった。なによそれ。ばっかじゃないの。わざわざ一緒に、罰を受けるなんて。
 カズキはそんな三人を見て、申し訳なく思った。そして、いざとなったら…などと考えていた。

 ボロボロになった『核鉄』を目の前に出されて、ルイズは震え上がった。
 果たしてどんな叱責が飛んでくるやら…一応フーケは捕まえたのだから、少しくらい、恩情は出てくれないのだろうか。
 自分はともかく、ほかの二人にまで厳しい罰が科せられることがないことを祈って、オスマンの言葉を待った。
「『破壊の聖石』は……こりゃまた、豪快にいったもんじゃのぅ」
 オスマンが笑いながら切り出す。四人はごくり、と息を呑んだ。コルベールは、ハラハラしながら見守っていた。
 三人の顔をじろりと見回した後、オスマンは言った。
「確か報告では、この『破壊の聖石』でフーケのゴーレムを打ち倒したそうじゃが…」
「は、はい…わたしの使い魔が、その『破壊の聖石』を用いて、ゴーレムを言葉通り破壊しました」
 さすがにカズキがもう一つ、『破壊の聖石』を持っていることは言わないでおくルイズ。一応他の二人にも、話は合わせてある。
 そしてオスマンは、カズキの顔を見た。コルベールも追従するように見やる。今度はカズキも息を呑んだ。
「で、その後、フーケに使われそうになり、ミス・ヴァリエールの魔法でこうなった…と」
「申し訳ありません。本来無傷で取り返すべき秘宝を、このようなことをしてしまって……」
 オスマンは『核鉄』に視線を戻した。やがて、一つ息をつく。
「………ま、ええじゃろ。今度のことは、我々の管理能力の甘さが招いたことじゃしの。
『聖石』一つに、塔の壁の修理代。高い授業料じゃが、学院の教師連中には、良い教訓にはなったんではないかの」
「よろしいのですか?」
 コルベールが驚いて尋ねた。トリステイン中の、ないし隣国からも、貴族の子弟が集うこの魔法学院の宝物庫。
 眠っている秘宝は、そんじょそこらの代物とは格が違う。どれもこれも、一級品揃いなのだ。
「かまわんよ。フーケに悪用され、彼女たちの命に危害が及ぶくらいなら……こうなった方がマシかもわからんしの。
それに、世間を騒がせていた盗賊フーケを捕らえたのなら、チャラじゃ、チャラ」
 四人とコルベールは、安堵の息を吐いた。
「フーケは城の衛士に引き渡した。そしてこの『破壊の聖石』もまた、一応は宝物庫に収まることになる。一件落着じゃ」
 オスマンは、一人ずつ頭を撫でていった。三人とも、照れくさそうに笑った。
「君たちの、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。
と言っても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」
 三人の顔が、ぱあっと輝いた。
「ほんとうですか?」
 キュルケが、驚いた顔で言った。
「ほんとじゃ。いいのじゃ、君たちは、そのぐらいのことをしたんじゃから」
 ルイズは、すっかり安堵の表情をしたカズキを見つめた。
「……オールド・オスマン。わたしの使い魔には、何もないんですか?」
「む……確かに、彼はゴーレムを直接打ち倒したわけじゃが…残念ながら、彼は貴族ではないからのぅ」
 そんな二人に、カズキは言った。
「別にいいっすよ」
「でも……」
 今度の件は、カズキがいなければ解決できなかったことだ。ならばカズキもまた、何かしら褒美をもらってしかるべきではないか。
「ミス・ヴァリエール。使い魔の手柄は、主人の手柄。君が『シュヴァリエ』の爵位を受けることが、彼への褒美にもなる。
それにこう言ってはなんだが、君たちは『破壊の聖石』を破損してしまっていることを、忘れてはいけないよ」
 コルベールがそう言うと、ルイズは引き下がった。
44使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:46:37 ID:Ru9xBSMu
 オスマンは一つ頷くと、ぽんぽんと手を打った。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり『破壊の聖石』も戻ってきたし、予定通り執り行う」
 キュルケの顔が、ぱっと輝いた。
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしていきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」
 三人は、礼をするとドアに向かった。
 ルイズはカズキをちらと見つめた。そして、立ち止まる。
「ゴメン。悪いけど、先に行っててくんないかな」
 カズキがそう言うと、ルイズはしばし心配そうに見つめていたが、頷いて部屋を出て行った。
 オスマンは、カズキに向き直った。
「なにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな」
 カズキは頷いた。
「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。君に爵位を授けることはできんが、せめてものお礼じゃ」
 それからオスマンは、コルベールに退室を促した。わくわくしながらカズキの話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。
 コルベールが出て行ったあと、カズキは口を開いた。
「その……今回、フーケが盗んだ『破壊の聖石』なんすけど……」
 オスマンの眉根が、ピクリと動いた。そして、手に持ったそれを、カズキに示す。
「これが、どうかしたのかね?」
「それ、実はオレが元居た世界の、代物なんです。名前は、『核鉄』――」
 すると、オスマンの眼光が鋭くなった。
「ふむ。元居た世界…とは?」
「オレ、こっちの世界の人間じゃないんです。それに……」
「それに…?」
 続きを促すオスマンに、カズキは首を振った。
「いえ、なんでもないです。…オレは、ルイズの『召喚』でこっちの世界に呼ばれたんです」
「ほぅ…そうじゃったか」
「『核鉄』は、オレの世界でかつて研究されていた、‘錬金術’という技術で精製されたものです。これが何故、この世界にあるのか……」
 オスマンは、しばしの沈黙の後、深くため息をついた。そしてカズキを見据え、口を開く。
「一つ訊くが」
「…はい」
「それは本当かね?」
「本当です」
 カズキが大真面目に頷くので、オスマンは瞼を閉じ、苦い表情を浮かべた。
「あ、あの…?」
「そうか……。ま、いつかはこういう日もくるわな」
 何かを悟ったようにオスマンは呟いた。そして、素面になればカズキに向き直る。
「あれを私に託してくれたのは……ある意味では、私の命の恩人じゃ」
「ある意味……?その人は、どうしたんすか?その人は、オレと同じ世界の人間…いや、オレと同じ、‘錬金の戦士’です。間違いない」
 LII(52番)の『核鉄』を持つ、‘錬金の戦士’……カズキに思い当たるのは、たった一人しかいない。
 カズキの師である、戦士長、キャプテン・ブラボーただ一人。
 まさか、ブラボーがこの世界に……?
「…そうか。君や彼は、‘錬金の戦士’というのか。まぁ、良い。彼は……死んでしまった。今から、三十年も昔の話じゃ」
「な…なんだって!?」
 カズキは思わず前に出そうになるのを堪えた。
 死んだ?三十年前?ワケがわからない……
 そんなカズキに、オスマンは追い討ちをかける。
「私が、殺した……そう。殺したんじゃ」
 カズキは頭が真っ白になった。だが、オスマンは苦い表情を浮かべて構わず続けた。
「三十年前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのが……」


45使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:48:22 ID:Ru9xBSMu
 深い森の中を、三十年後と変わらぬ容貌のオスマンは歩いていた。
 彼は、ある目的を持ってこの森にきていた。
 立ち寄った先の近郊で、数日前に出現した、人を襲う亜人を討伐するためだ。事のついでと、買って出たのだ。
 報告では、人を襲う亜人は、腕が三本ある、とのことだった。
 すると、木々が揺らめき…遥か上空から、一頭の飛竜ワイバーンが襲ってきた!
 予想外の方向からの、予想外の敵に戸惑ったオスマンは、しかし即座に杖を構え、魔法を唱えた。
 放たれる火球は見事に着弾するが、ワイバーンの勢いは止まらない。
 このままではやられる…そう思った瞬間である。
「覇ァァァァーーーッ!!」
 茂みから、一人の男が風のように飛び出してきた。体格の良い、両手持ちの大剣を構えた剣士…しかしその姿は、実に異様である。
 オスマンは目を見開いた。男の肩甲骨からは、もう一本の腕が生えていた。両腕を肩まで覆う鎧と、同じ様をした第三の腕が、力強く剣を掴む。
そして、三本の腕で大剣を支え、その人間離れした膂力を持って、ワイバーンを一刀を浴びせた。
 ワイバーンはその剣圧に、今度は血飛沫と叫び声をあげ、退いた。
「…ッ!大丈夫か、爺さん!」
 その剣士は息を荒げつつオスマンに声をかければ、ワイバーンに向き直り、その大剣を突きつける。
「やい、ドラゴン野郎!お前は‘ホムンクルス’じゃねえようだが、人間を襲って、空を飛ぶ化物である以上……
このオレ様と、オレ様の『アンシャッター・ブラザーフッド』が黙っちゃいねえ!!」
 そして、一足飛びに間合いを詰め、中空のワイバーンに再び剣を振るう。
「もらったぁっ!!」
 一閃!大剣は見事、ワイバーンの首を断ち切った!
 メイジでも苦戦する飛竜を、いとも簡単に仕留めるほどの剣士……オスマンは息を呑んだ。何かの魔法でも、使っているのだろうか?
「……っしゃあ!」
 勝利の雄叫びをあげ、男はこちらに向き直った。改めてみれば、随分と薄汚れた格好ではあるが、その肉体は実に鍛え上げられていた。
 なるほど、これほどの肉体ならば、あれだけの戦闘力を発揮するのも、少しは頷ける。
 加えて、肩から覗く三本目の腕の存在――オスマンは、油断なく男を見据えた。
 男は、人懐っこい笑みを浮かべながら、こちらに歩み寄ってきた。
「よう、爺さん!危ないところだったな!オレ様が来なけりゃ、あのドラゴン野郎に美味しくいただかれてたとこだったぜ!」
「う、うむ……まずは礼を言わねばな。ありがとう」
「ったく、ダメだぜ?こんなとこでウロウロしてたら…」
「すまんの。ちと、所用でな」
「ってまぁ、オレ様も迷ってんだけどな!数日前に目が覚めたら、森の中にいてよぉ…
なんとかその辺の村にたどり着いたんだけど、気がついたら、なんか別の場所にいたりするし!」
 男は豪快に笑いながら、さほど気にした風でもないように言った。
「なんじゃそりゃ。迷子と言うか変人じゃの」
「ちげえねえ!」
 オスマンは、今しがた自分を救った男を、睨めつけながら言った。
「ときにおぬし……人間かの?」
「あん?………あぁ、そっか。普通の人間は腕が三本もねぇしな!けど、オレ様のこれは、まぁなんだ、本当は秘密なんだが、まぁいいや。
……こいつは、オレ様が闘う時に現れる、オレ様の三本目の……いや、今はいねえ、オレ様の兄貴の腕なんだ」
 男は、自分の三本目の腕を、どこか切なげに見上げた。そしてすぐ、犬歯を見せて、オスマンに笑いかけた。
「ま!そーゆーワケで、オレ様は人間…人間だ!安心しな!」
 オスマンとて、伊達に齢を重ねているわけではない。人を見る目は、それなりにある。
 自分の窮地を救ったこの青年が、果たして人を襲う亜人なのか…オスマンには思えなかった。
 そして男は、森の外まで送る、と言い出した。しかしオスマンは、それを断ろうとした。
 その時である。男は急に苦しみ呻きだした。
「ぐっ…!また、きやがった……!!」
 頭を抱え、激しく体を揺する。オスマンもまた、男の突然の苦しみように動揺したが、その間に杖を振り、『探知』の魔法を使うことを忘れない。
 それにより、男が特に魔法の類を使用しているのではない、亜人が化けているわけでもないことはわかった。
「嫌だ……!なんだよこれ…!くそっ…爺さん、あんたが変なコト言うから……違う、そうじゃない!」
 突如、意味不明なことを口に出す。何故だろう。言葉の途中で、その容貌が一瞬、同じ人間とは思えないほど、野生を帯びたものに変わった気がした。
46使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:50:33 ID:Ru9xBSMu
 そして、事態は更に転じる。先刻より大物のワイバーンが、二人の前に姿を現したのだ。
 仲間を殺され激昂しているのだろうか。大口を開け、鋭い牙を?かせている。その咆哮が、大気を震撼させた。
「……!」
 オスマンは持ち前の胆力で、なんとかそれを乗り切った。
 杖を構えようとしたところで、男が大ワイバーンに、吠え掛かる。そしてそれは、オスマンの表情を驚愕のものに変えた。

「邪魔ヲスルナ!コイツハ、オレノ獲物ダ!!」

 はたしてそれは、如何なる意味を内包する言葉だろうか。すると大ワイバーンもまた、男に吠える。
 一触即発の空気になる暇すら、この場にはなかった。男は周辺の樹木を足場に獣のように跳ね、三本の腕で構えた大剣を持って切りかかる。
 大ワイバーンもさるもの、大きな翼を翻し、剣戟を巧みに避けては爪や牙を振るった。
 一進一退の攻防の中、オスマンはあることに気づいた。男の様子が、その表情が、更に鋭く、攻撃的なものへと変貌していく。
それだけではない。その鎧の腕が、立派な意匠だったそれが、三本とも禍々しい形へと…特に三本目の腕は、より巨大な、まるで悪魔のような形状へと変化していった。
「ガァァアアア!!」
 男の大剣と、大ワイバーンの爪が幾度もぶつかり合う。打ち合う衝撃に、変化の追いつかなかった大剣が半ばから圧し折れ、刀身はオスマンの足元まで飛んできた。
 得物が折れたと言うのに、男は一向に退く様子はない。相手の爪や牙もまた、その鋭さを欠いてきたからだ。
 男が凶剣を振るえば、飛竜もまた、爪を振るった。凄惨な戦いが、繰り広げられる。
 やがてその軍配は、もはや化物と言っても差し支えのなくなった男へ挙がった。
 あたり一帯は、まるで竜巻にでも遭ったのかと見紛うほどの荒れようである。木々は片っ端から折れ、暗い森の中のはずが、その一帯だけ陽光が差している。
 そして陽が照りつける中、二頭のワイバーンが折り重なるように地に伏していた。
 その傍らで、傷だらけになった男が息を荒げ、突っ立っている。悪魔のような腕も、あちこちが欠け、その爪にはワイバーンの血肉が付着していた。
「そんな……オレ様は、人間だ!違う!そんなハズがない!!」
 男の顔は、獣のそれではなく、人間のものに戻っていた。激しく狼狽し、頭を振っている。
しかしそのうちに、男は自身の肉体に何を見たのか。激しく喚き始めた。
「嫌だ…嫌だ!オレ様は……オレ様は、楽園を作るんだ!‘ホムンクルス’の居ない、楽園を!それなのに…それなのに……!」
 そして、男はオスマンを見つけると、泣きそうな顔を作りながら、言った。
「なあ、爺さん。オレ様は…なんだ?人間、だよな…?」
 オスマンは、どう答えてよいかわからなかった。男を見れば、容貌こそ出現時と同じ人間のものであるが、先刻までの戦いぶりは…その腕は、化物と言うに等しい。
また、破けた服の胸元に、何かルーンのようなものが見えた気がした。あれは、最初の頃はなかったものだ。
 オスマンが黙っていると、男は全てを悟ったような、悲しい表情を浮かべた。
「…違う、か。じゃあ、しかたねえ」
 男は、凶悪になった三本の腕を使って、半ばから折れたその大剣で、自身を刺し貫こうとした…が、それは適わない。
「ぐぅぅ…ガァアーーーーー!!」
 咆哮。男の中の化物が、再度表面化したのだ。もはや、留まることを知らない獣は、傷ついた肉体を癒すため、手近な栄養を摂取しようとした。
 手近にある栄養源…何故か地に伏したワイバーンの屍には目もくれず、オスマンに凄まじい勢いで襲い掛かる!
 オスマンは、二転三転する状況に混乱したのか、どの呪文を唱えるか迷ってしまった。
視界には、こちらに向かってくる獣。そして、地面に転がっている、大剣の欠けた方の刀身。
 命の危機を感じたオスマンは、めいっぱいの精神力を込め、短い呪文を唱えた。
 すると、刀身が魔力で浮き上がり……男の胸元に、そのルーンのようなものに、吸い込まれるように突き刺さった。
 悪魔の爪は、オスマンの鼻先にかかる直前で、止まった。
 そして……、やがて男は、足元から、塵になって崩れていく。
「爺さん…」
 男は、人間の意思を瞳に宿していた。
「あんた、すげえな……ありがとう、殺ってくれて」
 オスマンは、予想外の言葉に打ち震えた。そして、力なく頷く。
47使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:52:59 ID:Ru9xBSMu
「思い出したよ……オレ様、人を襲ってたんだな。それも、何人も。なりたくもねえ化物に、いつの間にかなっちまってた。
襲っちまった人達には、ほんとに詫びきれねえ。そして、あんたにも」
 すると男の両腕の鎧と、三本目の腕。そして、手に持った大剣と、胸に刺さった刀身が虚空へと消え…男の手に、六角形の金属塊が現れた。
 男は、申し訳なさそうな顔で、それを差し出した。
「ついででわりいが、こいつを……」
 しかし、言葉を続けることも、それを渡すことも適わない。いよいよ上半身も、塵となって崩れだしたからだ。
 金属塊は、男の手から零れ落ち、地面に転がった。
「あぁ、くそ…せめて一目……楽園を……」
 それが、男の最後の言葉となった。
 完全に塵となり、一陣の風が吹けば、そこに人がいた気配は、なくなっていた。
 そして、六角形の金属塊だけが、その場に残された。


「なにがどういう因果から、彼が人を襲うようになったのかはわからん。
少なからず、この石が関係したものと、当時の私は考えたんじゃろうな。
ワイバーン二頭を倒し、森の一帯を破壊した……あの惨状を作った彼が、塵と消えた後、
残ったこの石を、『破壊の聖石』と名付け、宝物庫にしまいこんだのじゃ。
そして、門外不出の品とするつもりだったんじゃが…今回のこの騒動、と言うわけじゃ」
 カズキは呆然とした表情で、話を聞いていた。そして、時間を置いて、口を開いた。
「‘ホムンクルス’が…この、世界に……!?」
 何よりも先に、いの一番に浮かんだのは、それであった。『核鉄』を持っていたのがブラボーじゃないことにも、疑問はある。
しかし…話を聞く限り、その大剣と三本目の腕は、おそらく『武装錬金』。その『武装錬金』で貫いて、塵となって消えたという話が事実ならば……。
「‘ホムンクルス’……彼も、言っておったの」
 オスマンの言葉に、カズキは頷いた。
「その『核鉄』と同じように、‘錬金術’で造られた、人を襲う化物です」
 カズキは‘ホムンクルス’について説明した。もともとは人間の脳に寄生する、小さな人造生命体であること。
 寄生された人間は自我を失い、肉体を‘ホムンクルス’に乗っ取られること。そして、食料として人間を求めることなど。
「こんなマークを見ませんでした?」
 カズキは紙とペンを借りて、‘ホムンクルス’の弱点である章印を描いて見せた。
 すると、オスマンの表情がみるみる変わった。
「これは、『人食いガーゴイル』のルーン!何故君がこれを…!?」
「人食い…『ガーゴイル』?」
 今度はオスマンが頷いた。
「うむ、ガーゴイル……『土』系統で作られた、魔法人形での。
ゴーレムが、ある程度自分の意思を持って動くもの、と考えてよいじゃろ。出来が良いものには、喋るものもあってな」
 カズキはやはり、とある自動人形を思い出していた。オスマンは、それはともかく、と言うと続けた。
「そのガーゴイルの中に、最初は精巧な人の姿をしておるんじゃが……人を襲うときに動植物の形に変わるものが、時たまおる。その際、このルーンが浮かぶのじゃ。
ガーゴイルは通常、製作者の魔力が宿る間だけ動けるんじゃが、そいつらは人間の肉体を喰らい、動き続ける。まるで、生きているかのようにの。
しかも、『探知』の魔法でも、引っかからん。人を襲うときに身体が変わるまで、『それ』とわからん、厄介な存在じゃ。
そんな、誰が作ったのかわからん『それ』を我らは、人食いガーゴイルと呼んでおったのじゃが……」
 そしてオスマンは、カズキを見た。カズキも頷く。
「そうか……。君の世界で造られたものが、こっちの世界に流れておったんじゃな」
 カズキは申し訳なく感じた。が、そうも言ってられない。
 今しがたオスマンは、‘そいつら’と言った。つまり、記録に残るほど出現していることになる。
「それで……‘ホムンクルス’は、どうしてるんですか?あいつ等は、普通の方法じゃ倒せない」
「普通の方法、というのは?」
「殴ったり、銃で撃ったりするだけじゃ、倒せないってことです。
あいつらは、‘錬金術’で造られているから、‘錬金術'の力以外は、受け付けない。
この『核鉄』を発動させて、出てきた『武装錬金』を使わないと、倒せないはず……」
 おそらく、尋常ではない数の犠牲者が出ているはずだ。カズキは息を呑んだ。
「『武装錬金』…それが、あの剣と腕のことなのかの?」
 神妙に頷くカズキにしかし、オスマンは困ったように額を掻いた。
「なんとも……うぅむ。それがのう」
「はい」

「倒せておるんじゃ」
48使い魔の達人:2009/08/28(金) 19:58:13 ID:Ru9xBSMu
 カズキは、オスマンが何を言っているのかわからなかった。
「……………ハイ?」
「なんというか、まぁ、その‘ホムンクルス’は、確かに人を襲いはするがその……こっちのメイジの魔法でなら、きちんと倒せておるんじゃよ」
 開いた口が塞がらなかった。
 なんだそれ?
 魔法って………そんなのまでアリなのか?
「でなけりゃ君、記録に残っておらんじゃろ?」
 そりゃそうだ。倒す方法のない、人を食う化物。そんなのが何匹もいたら、記録を残すどころじゃない。
しかし、まさか魔法で倒せるなんて…‘錬金術’だって、どこか魔法染みてはいたけれど。さすが本場は違うのだろうか。
 じゃあ、こっちの世界じゃ、‘ホムンクルス’は……。
「まあ、なんじゃ。君にはすまんが、杞憂だったわけじゃな。しかし、あの人食いガーゴイルがのう……
そういえば、あれらも倒すと塵のように消えるっちゅー話じゃったな」
 オスマンは、その長い髭をこすりながら言ってのけた。カズキは、なんだか偏頭痛もした。
「それにしても、君がこのルーンを見せてきたときは驚いたわい。そもそも人食いガーゴイルなんぞ、知っているメイジも少ないからの。
このルーンを知る者に至っても、ほとんどおらんし、倒したメイジにしても、変わった亜人だったっちゅー認識じゃろうな」
 なんとも呑気な話である。カズキは大きく項垂れた。
 なら何故オスマンが知っているのかと考えるが、そこは彼の肩書きからすれば納得、といったところか。
「しかし、そうか。今、この場に出た話が本当なら、私が倒そうと出向いて、私の危機を救ってくれ……
結局、殺してしまった彼は、元人間、ということになるのかの」
 その愁いを帯びた呟きに、カズキはハッとした。
 結局‘錬金の戦士’なのかわからないけれど、‘ホムンクルス’になることを拒んでいたらしい彼の男。
さっぱりワケがわからないが、そんな彼に、オスマンは手をかけたことになる。
「オスマンさん…」
 オスマンは、目を瞑ると、頭を振った。そして、カズキに向き直る。
「すまんの。君の仲間かも知れん者を、私は殺してしまったんじゃ」
「そんな……」
 確かに、その男は‘ホムンクルス’だった。だったら、これ以上人を襲う前に、なんとかしなくてはならない。
なら、仕方のないことだ……そう、割り切るしかない。
「そう、君は彼の仲間かも知れん……じゃから、コレを聞くのは、実にしのびない…が」
 オスマンは一呼吸置けば、眼光鋭く、カズキに尋ねた。
「お主は、人間かの?」


――――――――――――――――――――――――――――――――
以上です。
オスマンさんの昔話に出てきたのは、『武装錬金/Z(スラッシュゼータ) 夢見た楽園』で登場する
剣持真希士というキャラです。西洋大剣(ツヴァイハンター)の武装錬金「アンシャッター・ブラザーフッド」を使います。
ごめん真希士
お粗末
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:01:55 ID:x85Mdt5R

そんな作品あったんすねぇ・・・全然知らなかった
ちょっと探してみます
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:05:22 ID:/R/pi1iZ

ホムンクルスもどきか……動力は魔法かな。やっぱ。
しかしドキドキするね。実に。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:05:53 ID:ceHoxml2
達人の人乙です。
マキシ…
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:08:13 ID:lkJ9Dz9n
>達人の人
/Zの人か!意外だった…。//は手に入れたんだが古本屋探しても見つからなくて。


関係ないが、前スレで言われてた「サイヤの人」「絵」という単語を見てこれを思い出した

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=5746747
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:20:24 ID:lmFPo+q0
pixivって晒して良いのか?
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 20:21:26 ID:TqGAWYI/
ダメに決まってるだろ
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:05:34 ID:b0w7miXL
フタイチイチマル
21:10分に新作投下構いませんでしょうか。
元ネタ:日露戦争物語
キャラ:秋山真之
元ネタが分からない人多いと思うし、更新ペースはかなり遅いと思いますが。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:13:58 ID:HRwNBhCH
投下するなら支援するよ
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:15:49 ID:b0w7miXL
あ、プロローグですので大丈夫です、もうしばしお待ちください
58日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/28(金) 21:16:45 ID:b0w7miXL
「富士山見たら、日本にもんてきたいうておもうの――っ!!」

速力24ノットという当時最速の記録を打ち出した吉野が、今富士山を肉眼で確認できる所まで辿り付いた。
この巡洋艦が海軍に追加される事によって、日本の近代海軍はその戦力を更に増やす事になる。
しかし……。

「……んっ?風が止まりよったぞな?」

秋山が風が止んだ事を確認すると、他の士官や下士官も止まっている事に気づいた。
波すらも穏やかな状態で止まっていた。

「……なにやら雲行きが怪しいな、って雲も止まってるんじゃった!あっはっはー。」

しかし誰も笑わない。
が、その状況に変化は見られた。
目の前に突然光る鏡か何か分からない物が現れた。

「うぉっ!何じゃっ、えらく光よるのー。どうやって出来てるんじゃこれ、やっぱ英国製はガイな事が起こるのー。」

関係無いがこの時秋山26歳である。

「物…そうじゃ、軍刀…いや、しかしこれは…国民の血税から…むむ…壊れたら謝ればいいんじゃ、ということで。」

軍刀をゲートに差し込む…引き戻す。
軍刀は傷一つ付かず何もなっていなかった。

「通れるようじゃの。よし、どうにかならいな!と、その前に、煎り豆よし。軍刀、よし。そうじゃの、何か不安じゃから色々持っていこう。」

数分後

「よし、ここにいても何もならんがえ。いざ、いかん!」



「まだ待ちます、ゲートはそこにあります、希望は……あります。」

ミス・ヴァリエールはゲートの前に立っていた、さっきから失敗ばかりで他の生徒達からやじとため息が漏れる。

「分かりました、それでも無理でしたら、明日があります。」
「今日で成功させます。」
59日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/28(金) 21:19:06 ID:b0w7miXL
「無理だろ…さっきから不発の癖に。」
「うるさいわね、私が出来ない事と言えば、貴方に彼女を与える事くらいよ。」

周りからどっと笑いが漏れる、涙も漏れる。

「こ、この…―――。」

その発言が終わる前に、爆発が起こった、爆心地はゲート。
被害者は先生と生徒多数。

阿鼻叫喚の中、煙が薄れていく。
完璧に煙が空に溶け込んだときには。
また、笑いの渦が作られていた。

そこにはピシッとした服に包まれた肌が白くない人が、いた。

60日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/28(金) 21:22:39 ID:b0w7miXL
とても短いですがプロローグです。

バランス考えなかったせいで最後短すぎてすいません。

*ここの秋山さんがいる日本は別次元の日本です。現代の中の歴史とは何ら関係がありません。

61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:25:30 ID:oHLN0Jcx
>>35
龍騎のベルト召喚ならルイズにはオルタナ0を呼んで欲しいかなゼロ繋がりで
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:27:37 ID:TgUs/+xe
>>60
だが一話も投下してくれないかい?
短すぎる・・・
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:28:52 ID:yucIHbgE
乙です。
…シャンゼリオンの人、まだかなぁ…
待っています。『使い魔!!俺?』
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:30:06 ID:VkciotSt
達人の人、遅ればせながら乙
マ、マキシィィィッ!!
65日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/28(金) 21:38:21 ID:b0w7miXL
>>62
30分時間ください
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:40:13 ID:MN23oVX0
途中まではおもしろいぞ
途中までは
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:42:08 ID:TgUs/+xe
>>65
もし書いていると途中なら、書いてすぐ投下は遠慮して欲しい。
最低でも書いてから一日おいて、読み直してから投下して欲しいです。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 21:46:12 ID:AhBk1Sdd
>>65
これな何の釣りですか?
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:01:57 ID:b0w7miXL
なんか、すいません。
ゆっくりします。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:02:11 ID:fSBCDU1i
秋山参謀か、
あの有名な電文を作成した人で、坂の上の雲の主人公の一人ですね。
こういう人が大東亜戦争のときに残っててほしかったものです。
日本人で彼に匹敵する知将といえば、神重徳大佐や栗林忠道中将などがあげられるかな。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:08:06 ID:TRLiDk2T
>>69
面白そうな題材だから期待してる。
自分のペースで頑張れ。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:08:11 ID:JAXv9iGw
だが残ったのは…
牟田口廉也「やあ^^」
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:18:20 ID:b0w7miXL
>>72
出たな無茶口。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:27:49 ID:wk445Q3J
だから「虹色のトロツキー」から辻政信を呼べとあれほど
ちょうどラオスで行方不明になったし
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 23:22:26 ID:Ek3oGBy9
思いつき、ナイトウィザードから”秘密公爵”リオン・グンタ呼び出したら、と考えてみた

簡単に説明すると、黒髪ロングのアルカイックスマイルの無口な少女の外見だけど
名の知れた魔王で、持ってる本にはあらゆる秘密が書かれてる

そんなヤツを呼んだら全部ばらされて話にならないって?
大丈夫、ヤツは中途半端に情報を教えて余計な苦労をさせたり失敗させたりて
その光景を楽しみ、それを責められたら「だって、聞かれなかったしぃ」と嘯くと言う
ヤツなんだ

だから、例えばフーケ戦だって、フーケの隠れ家までは教えても肝心のミス・ロングビル
の正体は黙っててくれる
ワルドの目論みもルイズの虚無の秘密だって全部お見通し!
だけど、それを黙ってて悪戦苦闘するルイズを見て楽しむって展開になる

うん、改めてみるとヒデーなこいつ。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 23:24:29 ID:Cq8XLaEi
>>75
考えてみたんだったらここでべらべら説明してないで書いたら?
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 23:26:18 ID:ZA/nI90J
軍人キャラならredEysのグラハルト・ミルズを呼んで欲しいな。
小ネタで召還されてたけど、やっぱり長編も見たい。
子供には優しいから帰還を約束すればとりあえずは使い魔をやってくれそう。
SAAは破壊の鎧として宝物庫に入れとけばいいし。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:02:45 ID:hUGadPvt
元ネタ繋がりで(ダンタリオン公爵)、灼眼のシャナのダンタリオン教授を呼ぶよりはマシさね
あいつは、Drウェストと並ぶドリル狂科学者だからな……絶対にデルフがドリル化するw
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:07:10 ID:9xcAGxBx
ルイズ:ドクターウェスト&エルザ
テファ:ダンタリオン&ドミノ
ジョゼフ:トカ&ゲー

ハルゲニアを舞台に、超天才同士の戦いが始まる……!
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:14:08 ID:46oO1aub
>>79
マイトガインのドリル命な博士がアップを始めました


それにしてもリオン・グンタとかトッキーとか聞くと
霞のジョーにフォーク片手に脅し掛けてる姿が勝手に連想されて困る
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:14:52 ID:pHwSjToe
外堂の人まだかなー
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:15:04 ID:4qNVrfJ2
>>79
兆天災の間違いだろ……
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:23:15 ID:nJoydPOO
>>77

同志よ!
ってか、あれ書いてて思ったんだが、
いくら子供に優しいからって原作ルイズの扱いはひどすぐる
+
戦友置いてったまま勝手に呼ばれた
で、動かしにくいのよ。ルイズのいうことは聞かないだろうし。
普通に考えて魔法攻撃が当たるような感じもしないし、力ずくで従わせるなんて無理だし。
考え方によっちゃ、ある意味自由なバージルより動かしづらい。

神堂潤のファンだからあのやたらめったら細かい世界設定とかも忠実に再現してみたい、
だけど力量は圧倒的に足りない。

だから短編で戦闘だけってなったんだよね。
誰か上手い人、書いてくれないかなァ。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:25:26 ID:4jm8RQ7k
たとえ自分が上手くないと思っていても
ないなら自分で書くしかなくね
まぁ、ここで話に出してるだけな時点で
無理だろうことはわかりきってるけど
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:32:02 ID:nJoydPOO
まー、現状ジルだけで手いっぱいってのもあるし。



あ、エクスキャリバーみたいに、オービターアイズならやりやすいだろうけどねぇ。
ルイズって下手すると簡単に力におぼれそうだから怖い。
ルイズの、ルイズによる、ルイズのための国家建設とか。
なまじ眼と武器が一緒だから簡単に粛清できるから余計に。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:35:22 ID:KmaqdD2F
>>80
マイトガインは止めろって言ったんじゃ……命取りって意味かw
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:35:51 ID:WAZpMusl
ダンタリオンと聞いて魔道王思い出したオレ
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:38:57 ID:IoUQcIAf
達人の人乙 まさかここで小説版のキャラが出て来るとは

しかし魔法で殺せるのはある意味納得
錬金術しか受け付けない云々は倒しやすさの問題で、何らかの物質である以上、
度を越した破壊力があれば錬金術じゃなくても殺せるはずだからな
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:39:33 ID:0EOwCMO2
>>15>>19>>21>>39 亀ですまんが
ラヴァもトーチも、155話でユベルのデッキに入っていることが確認できるよね
相手フィールドにラヴァの生け贄が足りなければトーチで補えるしトーチトークンは盾にもなる
盗みを成功させるためだけなら、ラヴァによる撹乱だけでも十分すぎると思う
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:39:39 ID:nJoydPOO
真面目な、ってかシリアスな軍人は難しい。
あと戦友がいたりすると厄介。
ついでに軍規や軍機で動かなかったり。
ヘイデンは大丈夫かもしれないが。
投獄中のミルズならいけるか……
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:58:58 ID:Lt63cbTs
>軍人
元軍人だけど、狂四郎2030の狂四郎とかは? バベンスキーのポジションがデルフと言う事で。
召喚のタイミングは、ユリカと結婚する前なら、狂四郎にもダメージ少ないし。
……少なくとも、狂四郎が北海道を目指して旅に出た後の、あの二人を引き離すのは俺には無理だ……

>>86
ドリルを外せって言ったのはスポンサーだべ
つまり、>>79の割り振りからすると、最終回でドリル特攻喰らって
「だからドリルは取っておけと言ったのだ……!」を言うのはエイジス32世と言う事だな
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:04:46 ID:b6y+HPpU
やっぱ召喚するなら強いキャラがいいけどバランスがむずかしい
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:05:05 ID:r75UjHi4
「轟世剣ダイソード」のダイソードは本編イベントこなせないから無理か
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:10:46 ID:pHwSjToe
>>92
こまけぇことはいいんだよ!
サイト以外をよんでる時点でバランスなんて壊れているんだ。好きに調整すれば良い
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:11:57 ID:KmaqdD2F
>>91
マイトガインの博士は止めろって言ってたんじゃないの?
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:12:29 ID:a1sbj8ye
王太を喚べばセットで付いてきそうな気も。

とりあえず作者同様貧乳に偏見は持ってないみたいだから
何とかなるでしょう。
9795:2009/08/29(土) 01:16:00 ID:KmaqdD2F
申し訳ない、完全に勘違いしてた。
外せって言ったのは博士じゃなかったわ。
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:24:59 ID:Lt63cbTs
>>95
……んん? 俺が言ってるのはウォルフガング博士の事で、
最初は轟竜をドリル頭で設計してたのを、エグゼブ(「ドリルは取っておけと」を言ったキャラ)にデザインが気に入らないから外せって言われた
って事なんだけど。

マイトガインの博士って誰さ? 浜田君?
9998:2009/08/29(土) 01:29:58 ID:Lt63cbTs
あちゃ、リロードすれば良かった。誤解が解けて良かったさ

まあ、というか今思い出したけど、マイトガイン世界は設定が設定だからキャラを召喚するのは難しいわな
ジョゼフやエイジス32世の背後に、ブラック・ノワールがちらつきそうだわー
100ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:42:05 ID:6aQSGedx
お久しぶりです
空いてるようなので45分ぐらいから投下したいと思います
101ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:46:11 ID:6aQSGedx
 

「お、ぐふぅ!?」
 想定外の事態に完全に我を忘れていた柊は突進してきたワルキューレにまったく反応ができず、文字通りの鉄拳を叩き込まれた。
 たたらを踏んで傾いだ身体を立て直すと同時、追撃の拳が視界を掠める。
 柊は反射的にそれを――"魔剣で"受けようとした。
(――やべっ)
 当然ながら今の柊が魔剣を持っているはずもなく、拳はうなりを上げて柊を打ち据えた。
 身体は殴られるに任せて、地を蹴って後退する。
 距離を取ろうとしたが、できなかった。
 追いすがってくるワルキューレに僅かに対応できない。
 別に目の前のワルキューレが恐るべき性能を持っていると言う訳ではない。
 むしろ強さで言えば、かつて一山いくらで闘った事もあるクリーチャー ――侵魔達が使役する魔物――程度のものだ。
 にも関わらず柊は完全に後手に回っていた。
 理由はわかっている。これは――
(いかん、流れを持ってかれたっ!?)
 軽きはスポーツの試合から重きは命懸けの戦い、大規模人数による戦争に及ぶまでおよそ争いごとには『流れ』が存在する。
 天秤のように絶え間なく揺れ動くそれを上手く掴む事ができれば、明確な力の差を覆す事も……それこそ圧倒的な力を持つ存在に手も足も出させずに勝つ事さえできるのだ。
 魔剣を持っていない事で忘我した柊は機を失い、雑魚とさえ言ってもいいワルキューレにいいように翻弄された。


「弱い! 弱すぎるわヒイラギレンジ!!」
 ワルキューレに一方的に攻め立てられている柊を見つめながら、ルイズは楽しそうに声を上げる。
 召喚されてからこっち生意気な態度を取ってばかりの柊の醜態を目の前に、彼女の機嫌は上々だった。 
「アイツ、メイジより強い魔王とやらを倒してきたんじゃなかったの? あの程度で世界一だなんてファー・ジ・アースとやらも知れたものね!」
 得意げになってルイズが隣にいるエリスに目を向けると、彼女は僅かに肩を震わせてから口を開いた。
「……メイジを馬鹿にした事は謝ります。でも……でも柊先輩が強いのは本当です……!」
「何言ってるのよ、目の前でボコボコにされてるヒイラギが見えないの? あんなのの何処が強いって言うのよ!」
「うっ、うぅ……!」
 嘲りも露なルイズの声に、エリスは悔しさで唇を噛んだ。
 柊が苦戦している理由をエリスは理解していた。
 ハルケギニアに召喚される前に、柊とアンゼロットが魔剣について話しているのを聞いていたからだ。
 魔剣さえあれば……それでなくとも、剣さえあれば柊は多分勝てるだろう。
 だが既に戦いは始まってしまっており、止める術がない。
 エリスは祈るように手を組んで戦いを見守る事しかできなかった。


102ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:49:17 ID:6aQSGedx
 

 このヴェストリの広場においてルイズ以外に上機嫌な者がもう一人いた。
 ワルキューレを操って柊を打ちのめしているギーシュ・ド・グラモンである。
「あーっはっは!! どうしたんだい? あっちの彼女に持ち上げられてたワリには、全然たいした事ないじゃないか!」 
 煽るように両の腕を広げて彼は叫び、そして余裕の笑みを浮かべたまま離れているキュルケに顔を向けた。
 元より複数のゴーレムを同時に動かす事ができる彼にとって、一体だけの操作時ならば他に目を向けてもさほど支障はないのだ。
 殊更に周囲に聞かせるようにして言ったギーシュの台詞に、キュルケは不満そうに眉を歪めてから紅い髪をかきあげた。
「……そうね」
 実際彼女にとってはつまらない事態だった。
 メイジに喧嘩を売り、エリスにああまで言われた柊がどれほどのものか期待していたのだが、たった一体のワルキューレにさえ手も足もでないのでは話にならない。
 そうなるとこうまでして仕組んだ舞台がまるでルイズの手助けをしたようでなんとなく気に入らなかった。
 キュルケは失望に肩を落とし、ちらりと視線を落とす。
 視線の先のタバサはこの決闘にまるで関心を向けず、地面に座り込んで熱心に本を読んでいた。
「……どういう事、タバサ?」
 裏切られた期待の責任を問うようにして声をかける。
 決闘前に柊の事を尋ねた際、タバサは「多分勝てる」と言った。
 エリスの言に関しては恋する乙女の誇大妄想で済むにしても、タバサが謙遜でそんな事をいうはずがない。
 にもかかわらず、目の前に見える柊はトライアングルどころかドットの手抜きにすら及ばないという体たらくだ。
 しかし当のタバサはキュルケの視線と声を全く歯牙にもかけず、本から目を離そうとしなかった。
 キュルケは再びふうと溜息を吐き出した。
「……まあいいわ。適当なところで勘弁してあげなさいな」
「もちろんさ。いくら相手が平民だからって、こんなお遊びで命をどうこうするほど悪趣味じゃあない」
 無論謝罪は誠心誠意してもらうけどね、とギーシュは愉悦交じりに笑う。
 キュルケは既に決闘にも柊にも興味を失って、暇そうに髪の毛を弄りだした。
 それを見てギーシュは彼女から視線を切り、ワルキューレの操作に集中した。
 モンモランシーの香水を盾に決闘に担ぎ出された時はどうなる事かと思ったが、何も問題はなかった。
 むしろ少しばかり拍子抜けと言ってもいいぐらいだ。
 ともあれ、これで香水を取り戻し身の危険が回避されたのは喜ぶべき事だ。
 下手に騒がれたら気難しいモンモランシーの事だから大いに拗れていただろう。
「……そうだ。この決闘が終わったら花束でも贈ろう。この勝利はキミに捧げるよ、モンモランシー……なんてね」
 そんな事をギーシュが呟いた瞬間。


 唐突に甲高い破裂音が響き渡り、ギーシュの横を何か大きなモノが横切った。

103ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:53:32 ID:6aQSGedx
 

「……へ?」
 ギーシュは思わず間の抜けた声を漏らし、通り過ぎていった何かを目で追った。
 それは吹き飛びながら地面を二度三度跳ねて転がり、慌てて分かれたギャラリーの輪の間でようやく停止する。
 ギーシュの作り出したワルキューレだった。 厳密に言えば、かつてワルキューレだった青銅の残骸だ。
 いつのまにかヴェストリの広場が静まり返っている。
 何が起こったのかわからず、ギーシュはその残骸が飛んできた方向を鈍い動きで振り返った。
 視線の先には、怒気を孕ませた目で睨みつけている柊がいた。
「てめえ……人がちょっと気を取られてる間にボコボコボコボコ殴りやがって……!」
 ……おそらく、柊がワルキューレを殴り飛ばしたのだろう。
 それも青銅製のゴーレムを破壊した上、二十メイルにも及ぼうという距離を吹き飛ばした。生身の拳で。
 状況を見るとそうとしか考えられないのだが、ギーシュはそれを現実として受け入れられなかった。
 見れば握り込んでいる拳から、淡い光が漏れていた。
 魔法でも使ったというのだろうか。だが、柊の手に杖など握られていない。
「今……何をした?」
「あぁ? なんだっていいだろうが」
 吐き捨てるように言ってから、柊はギーシュに向かって一歩を踏み出す。
 しこたま殴られた後ではあるが、ダメージは戦闘不能になるほどではない。
 『攻撃に偏重するするあまり防御がおろそか』という自他共に認める評価を持つ柊ではあるが、それはあくまで同等以上の敵を相手取る時の話。
 明らかな雑魚相手の攻撃をそれなりに受けた程度で戦闘不能になるほどヤワではなかった。
 むしろ耐久力という点で言えば同レベルのウィザードと比しても余りあるほどなのだ。
「同じ巻き込まれたクチだから穏便に済まそうと思ったが……やられた分はやり返す! 歯ァ食いしばれ!!」
 宿願であった卒業を果たしたところで、急激に人間が成長するわけでもない。
 大人気なく激昂した柊は呆然とするギーシュの懐まで一気に飛び込むと、無防備な顔面に拳を叩き込んだ。
「ごふぁ!?」
 くぐもった悲鳴を上げて吹き飛び、地面に倒れこむギーシュ。
 彼は殴られた頬に手をあてて、思わず叫ぶ。
「な、殴ったな!」
「殴って悪いか? 殴られもせずに一人前になった奴がいるかっ」
 思い切り殴り飛ばして溜飲が下がったのか、柊はそう吐き捨てた後満足そうに息を吐いた。
「……で、まだやんのかよ」
「当然だ……っ!」
 ギーシュを見下ろしながら柊は一応尋ねてみたが、彼は即答して身を起こした。
 殴られた頬を腕で拭い、屈辱と怒りがこもった目で柊を睨みつけながら立ち上がる。
「平民ごときが、やってくれるじゃないか……!」
「……またそれか」
 唸るようなギーシュの声に、しかし柊はうんざりしたような嘆息を返した。
 ハルケギニアがそういう社会である事はルイズやマリコルヌ、他の生徒達の言動からも見て取れる。
 この世界にとっての異端は自分達の方だという事もわかっていたが、何度もそれを持ち出されるといい加減辟易としてくる。
 そんな柊の態度を侮辱と取ったか、ギーシュは手にした薔薇を振りかざした。
「ワルキューレを一体倒しただけで調子に乗らないことだ。僕の本気はあんなものじゃ――」
「なんだ、数でも増えんのか? 十体か? それとも二十体か?」
「え……いや、七体……あ、さっきやられたからあと六体」
「なんだぁ? 規模が小せえぞ?」
「くっ……いい気になるなよ!?」
 ギーシュは叫んで柊から大きく距離を取り、手にした薔薇を大きく振った。
 花から花弁が六つ飛び散り、地面に落ちる。すると最初の一体と同じようにワルキューレが生み出された。
 造形自体は最初のものと同じだが、今までと違うのはそれぞれが得物を持っている事。
 正面の三体が剣、両脇に槍を携えたモノが一体ずつ、そしてギーシュを守るように大きな盾を構えたモノが一体。
 彼の言の通り、六体のワルキューレが立ち並んだ。

104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 01:53:49 ID:0EOwCMO2
支援
105ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:56:49 ID:6aQSGedx
 

「見るがいい、この完全武装したワルキューレ達の華麗な軍勢を! これが『青銅』のギーシュの本気という訳さ!」
 大きく手を広げて歌うように叫ぶギーシュに、再び周囲が沸いた。
 とはいえ今度のそれは以前のような遊び半分の熱狂とは違う。
 何しろれっきとした武器を持ち出してきたのだ、場合によっては怪我では済まされない。
 事態の深刻さにどよめく者達とそれに気付かず囃し立てる者達の声がない交ぜになって、ヴェストリの広場を包んだ。
 事ここにいたってようやく柊も今までの遊び気分を払拭し、やや剣呑な空気でギーシュを見据える。
「……本気か?」
「さっきまでは遊びだったが、もう他人事じゃないんでね。平民にやられたままではこのギーシュ・ド・グラモンのプライドが許さないよ」
「……」
 ギーシュの言葉に柊は沈黙する。
 先程の十体二十体だのは半ば冗談めかして言った台詞だったが、武装したゴーレム七体を同時に相手取れば流石にまかり間違う可能性がある。
 正面にいる『剣』を持ったワルキューレに一度目をやってから、柊は真っ直ぐにギーシュを見据え、口を開いた。
「……メイジを馬鹿にした事については謝る。俺もエリスもあんまその辺の常識って奴をあんまり知らねえんだ」
「今更な台詞だよ、それは。もう『決闘』は始まってるんだ」
「そうだな。じゃああと一つだけ言っとくぜ」
 言いながら柊は僅かに身構えた。
 ”たった今”始まった決闘に空気が張り詰め、周囲の生徒達のざわめきが次第に小さくなる。
 相対する六体のゴーレム、その向こうにいるギーシュに向かって、
「……『平民』ってだけで相手を見くびるのはやめとけ。足を掬われる」
 『人間』というだけで相手を見下し、嘲ってきた侵魔達の足を掬い続けてきた青年は告げた。
「――掬ってみろよ!!」
 ギーシュが吼えて手にした薔薇を振るい、号令を出す。
 盾役を除いた五体のワルキューレが一斉に動き――

 身構えた柊の総身から光が迸った。
 それは万物の根源の力、『プラーナ』。
 物質非物質、可視不可視、現象や概念に至るまでありとあらゆるモノを構築する、『存在』を司る力。
 解放されたプラーナは爆発的な力と恩恵をそのモノに与え、常識を超越する。
 常人には持ち得ない高容量・高純度のそれを操る事こそ、ウィザードがウィザードたる所以の一つでもあるのだ。

 柊が踏み出すと同時に、地が爆ぜる。
 ギーシュが――彼が繰るワルキューレ達が動き出そうとしたその刹那に柊は正面にいる三体の女戦士の懐に入り込んでいた。
 その内の一体が持つ剣の柄を青銅の手の上から握り、そして空いている拳を胴体に叩き付ける。
 プラーナを纏った拳は最初の一体をそうしたのと同じようにワルキューレを跡形もなく吹き飛ばした。
 木っ端微塵になったワルキューレの遺品である剣を握り締める。
 地を強く踏み込み、円を描くようにして刃を振るい《なぎ払》う。
 纏った光と共に刃風が駆け抜け、至近にいた二体のワルキューレがばらばらに砕かれて広場に舞った。
 柊はワルキューレ達の末路を見届ける事なく更に地を蹴る。
 向かうは真正面にいるギーシュと、その間に立ち塞がる盾を持ったワルキューレ。
「――う」
 かろうじて反応できたのか、それとも本能的なモノか、ギーシュは僅かに後ずさり盾のワルキューレが柊の侵攻を阻むように前に出た。
 疾走したと同時に下ろしていた剣を跳ね上げる。地から伸びた斬撃がワルキューレを盾ごと真っ二つに両断した。

106ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 01:59:46 ID:6aQSGedx
 

 更に一歩。
 目の前に迫ったギーシュに、大上段から見せ付けるようにして剣を振り下ろす。
 大仰にすぎる柊の動作を見たギーシュが一歩退き、柊はそれを見計らって剣――ではなく、足を出した。
 剣だけに意識が集中していたギーシュはあっさりと足を払われ、尻餅をつく。
 そして柊は恐怖に怯えるどころか何が起こったかもわかっていないギーシュの呆けた顔に、ゆっくりと刃を下ろしてその鼻先に切っ先を突きつけた。
「……な? 掬われただろ?」
 そんな言葉が、ヴェストリの広場にやけに大きく響いた。
 場は完全に静まり返り、今度こそまじりっけなしの驚愕だけが支配している。
 誰一人として声を上げず、動かない。
 決闘の原因となった少女達も、僅かな喜色を称えたエリスを除いた全員が固まっていた。
 時間が止まったような静寂の中、次第に理性の色が宿り始めたギーシュの目を見て、柊は剣を引きそれを肩に担いだ。
「……あと二体残ってるけど、まだやるか?」
「……へ」
 ギーシュは言われた意味がわからずしばし呆然とし、ややあって両脇に位置していた槍のワルキューレが二体健在なのにようやく気付いた。
 だが、それが分かったからと言って四体を文字通り瞬殺した相手に何ができる訳でもない。
 それくらいの事は、ギーシュにもわかった。
「いや……無理……」
「なら、俺の勝ちでいいな?」
 忘我のままギーシュがこくりと頷くのを見て、柊は小さく嘆息した。
 最初に剣を奪取した時点で、後はプラーナを使わずとも十分に相手はできただろう。
 だが、青銅製のゴーレムを相手に同じ青銅の剣(作者まで同じだ)がどれだけ持つかも怪しい。
 それに何よりも、さっさと終わらせるには圧倒的な差を見せ付けてしまうのが一番手っ取り早かった。
 ふうと息を吐くと柊は今だ地面にへたり込んでいるギーシュに手を差し出す。
「立てるか?」
「あ、ああ」
 ギーシュが柊の手を取って立ち上がった。
 そして彼はおずおずと自分を一蹴した相手に向かって、尋ねる。
「君は……一体何者だ?」
 柊はギーシュから目を逸らし、半瞬考えた後、冗談めかした口調で言った。
「ただの『魔法使い(ウィザード)』だよ」

107ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 02:02:07 ID:6aQSGedx
 

「……ねえ、タバサ」
 キュルケは広場の中央にいる二人――ギーシュと柊を見つめたまま、隣にいる少女に声をかけた。
「彼、本当にルイズが召喚したの?」
 一般的に使い魔はそのメイジに相応しいものが召喚されるという。
 使い魔の儀式を経て己の属性を確認するというのもそれに倣っての事だし、事実トライアングルであるキュルケやタバサは他の生徒達とは一線を隔した使い魔を召喚していた。
 その例に則るのならば、魔法を使えないゼロのルイズが召喚するのはやはりゼロ……何の役にも立たない使い魔であるはずなのだ。
 だが、現実は違った。
 格付けでは一番下の『ドット』とはいえ、れっきとしたメイジであるギーシュに全力を出させた上で真っ向からねじ伏せた。
 トライアングルの自分だったらどうだっただろうか。
 他人に問われれば勝てると断言するだろうが、自問すればやはりタバサと同様に『多分』がつくだろう。
 ルイズがそれほどの使い魔を召喚した事が、キュルケには信じられない。
 返答のないタバサにちらりと視線を向けると、彼女はいつの間にか本から目を上げて、先程のキュルケと同じように二人を見やっていた。
 強いて違う点と言えば、キュルケのような驚嘆の目線ではなく珍しく『食い入るように』彼等を……というより、柊を見ている事だ。
「……タバサ?」
 いつにない彼女の強い視線が気になって、キュルケは眉をひそめて再び声をかける。
 が、タバサは声をかけられた事にも気付いていないのか、じっと柊を見つめたままだ。
 仕方がないのでキュルケも彼女の視線を追って柊に目を戻した。
 タバサが何を考えているのかは分からないが、興味深いと言う点は彼女も同じだった。
「にしても、さっきのアレ……何なのかしらね」
 ワルキューレを一蹴する際に柊が見せた奇妙な光。
 魔法にも似ているが、何か根本的に違うモノのような気もする。
 とはいえあの光の正体がなんなのか、という事はキュルケにとってあまり重要なことではなかった。
 重要なのはその光をまとってワルキュレー達を蹴散らした柊の姿が、刺激的だったという事だ。
 トリステインの魔法学院に来て一年、手持ち無沙汰に貴族達を囲ってはいたが終ぞこのような胸の高ぶりは感じた事がない。
 これこそ正に彼女が待ち望んでいた情熱――
「……なんだけど」
 キュルケはギーシュと分かれてルイズ達の下へ歩く柊を見つめた。
 その柊を、喜色を称えた表情で待ち受ける紫髪の少女、エリス。
 彼女が柊に向ける視線に込めている感情は、キュルケならずともすぐに気付くだろう。
 気付かないのは……おそらくそれを向けられている当人である柊ぐらいか。
「……うーん」
 キュルケはなんとなく複雑な気分になって紅い髪を掻き回した。
 相手にとっての一番には手を出さない、というのが色恋沙汰におけるキュルケの信条である。
 そしてエリスにとっての一番は――もはや一目瞭然。
 しかしそれはキュルケから見れば、本当の本当に『一番』ではないだろうとも思っている。
 勿論エリス自身は自覚などしていないだろうが、アレはどちらかと言えば『恋に恋している』状態なのだ。
 乙女なら誰でもかかるはしかのようなもので、ほんの少しの痛みと共に思い出に変わるような代物だ。
 だから自分が柊にアプローチして陥落させてもさほど問題はないだろうとは思うのだが――
 エリスが柊に向けている、尊敬と憧れに満ち満ちた純真な瞳。
 あんな純真な目をしていた時代が自分にもあったような気がする。
 いや、今でもキュルケは自身が純真であると自負しているのだが、それを”そう思っている”時点でもはや彼女には及ばない。
 かつてそうだった自分が経験した痛みを、今度は与える側になってしまうことにはいささか戸惑いを覚えてしまうのだ。
「……どうしよっかなぁ」
 キュルケはぼんやりと柊達を眺めながら、溜息混じりに呟くのだった。


108ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 02:12:11 ID:6aQSGedx
「柊先輩っ!」
 ギーシュと別れた柊を待っていたのは、喜色交じりのエリスの声だった。 その嬉しそうな表情に柊は小さく溜息をつき、駆け寄ってきた彼女――の額を、軽く小突いた。
「……っ!?」
 痛みよりも驚きで凝固するエリスに向かって、柊はこころなし咎めるように口を開く。
「なんでこんな事になったと思ってんだ」
「はぅ……ごめんなさい」
 しゅんとうな垂れて見上げてくるエリスを見て、柊は再び息を吐く。 そして彼は表情を引き締めた後、まっすぐに彼女を見据えて口を開いた。
「俺が何度も世界を救ってこれたのは、一緒に闘ってくれた仲間がいたからだ。
 お前の時だって、くれはや灯、ナイトメアにアンゼロット、他にも沢山……それにエリス、お前もだ。皆がいたから、世界を守れた。それは俺だけの力じゃねえ……そうだろ?」
「……はい。ごめんなさい」
「よし」
 真摯に頷いた彼女の頭に軽く手を乗せると、柊は満足そうに軽く笑う。 そして柊はエリスと共に待ち受けていたルイズへと歩み寄った。
 二人を待ち受けていたルイズは、信じられないものを見るような目で柊を凝視していた。
「……あんた、一体なんなの?」
「昨日説明した通りだよ。今日エリスが言った分はちょっとアレだけどな」
 言いながら柊が促すと、エリスは半ば呆然としたままのルイズに深々と頭を垂れる。
「何も知らずに勝手な事を言ってごめんなさい」
 エリスの謝罪にルイズは言葉を詰まらせ、そして改めて何事かを言おうとして口を開いたが、上手く言葉にできなかった。
 相手が多少なりとも我の強い相手であったなら反射的に強気の態度に出られるのだが、大人しい相手に対して意気高々な態度を取るほどルイズは大人気ない訳ではない。
 もしこの場にいるのがルイズとエリスだけであったなら、ルイズも素直に自分の非も認めただろう。 が、この場には彼女だけでなく、ギャラリーの生徒達や柊もいた。
「……コイツがそこそこできるって事だけは認めてあげるわ」
 彼女は精一杯胸を張り、なるべく尊大さを装って鼻を鳴らして見せた。 そして柊に目を向けると、一転して正真正銘尊大な態度で吐き捨てる。
「けど、調子に乗らないでよね! ギーシュみたいな『ドット』なんて、メイジの中では一番の小物なんだから!」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
 それに反応したのは柊でもエリスでもなく、少し離れた場所にいたギーシュだった。
 ルイズの声が大きかったのか、それとも彼が耳ざとく聞きつけたのか、ともかくギーシュはルイズの台詞を聞いて声を上げると、肩を怒らせながらルイズ達の方に歩み寄ってくる。
「『ドット』以下の『ゼロ』に言われる筋合いはないぞ!?」
「な、なによ。本当の事じゃない!」
「言っておくが、僕が負けたのはあくまでヒイラギ個人にであって、君とは関係のない事だ! 強い使い魔を召喚したからって――」
 言いかけてギーシュは不意に口を噤み、柊とルイズを交互に見やった。 その態度にルイズは怪訝そうにギーシュを睨みつけるが、彼はふふんと馬鹿にした笑みを浮かべた。
「そういえばヒイラギは君の使い魔じゃなかったな。それなら言うまでもなかったし、合点もいったよ」
「……合点?」
「僕を負かす程の男が、『ゼロ』のルイズを主と仰ぐなんてできる訳がないものな」
 途端、ルイズの表情が強張った。
 それは本来ならば彼女にとって喜ぶべき事だったはずだ。
 自分の召喚した使い魔はやたらと妄言を吐き出すだけの無能な平民ではなく、メイジを軽々と一蹴するほどの力を持った人間だったのだから。
 秘薬などの探索などは置いておくにしても、最も重要な役割である『主の護衛』という点においてはおそらく学院内でも類を見ないレベルのものだ。
 だがそれは大前提として『柊 蓮司がルイズと契約を交わした、正式な使い魔であった場合』の話。
 柊の力量を見せ付けられた今では、契約を拒絶されたという事実がよりルイズを苛立たせた。
 一心同体のパートナーであるはずの使い魔にさえ、自分が『ゼロ』だと言われているような気がするのだ。
「おいギーシュ。俺がルイズと契約しないのはそういうんじゃねえって」
 勝ち誇るように胸を反らしているギーシュに柊は咎めるような声を上げた。
 だが今のルイズにはそんな柊の態度でさえも白々しく見える。
「……じゃあどういう事なのよ」
「ルイズ?」
 顔を俯かせ、肩を震わせて呻くように漏らした声に柊は思わず彼女を覗き込む。
 ルイズは顔を上げてそんな柊を睨みつけると、
「私がゼロって以外にどんな理由が――」
 
 叫びかけたその瞬間、目の前にいた柊の身体が唐突に跳ね飛ばされた。
109ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 02:14:51 ID:6aQSGedx
 

「づ……ッ!?」
 まるで『見えない槌』で殴りつけられたような衝撃が叩きつけられて、柊は吹き飛ばされた。
 ルイズ達から数mは弾かれて、たたらを踏んで持ちこたえようとすると、不意に膝が折れる。
 なにしろルイズに意識がいっていて今の攻撃に対して身構える事さえできず、まともに食らってしまったのだ。
 加えて言えば先の決闘でワルキューレに好き勝手に殴られたダメージもあった。
 柊は地面に手を付いて倒れることだけは防ぐと、舌打ちして状況を見定めようと顔を上げた。
 瞬間、手を付いている地面がざわめいた。
 悪寒が走って転がるようにしてその場から離れる。
 地面から伸びた土の腕が今まで柊のいた場所で空を切った。
(魔法? ギーシュ?)
 ではない。
 実際、ギーシュもルイズもエリスも何が起こっているのか理解できず、つい先程までと全く同じ表情で固まっていた。
 そんな三人の脇、ギャラリーの生徒達の人波が分かれて杖を持った男女が現れた。
 小ぶりの杖を持った二人はこの場にいる少年少女達とは違う、大人。おそらくは教師なのだろう。
 長い黒髪の男は知らなかったが、女の方は柊の見知る人間だった。
 眼鏡をかけた青髪の女性――ロングビルは柊の視線に気付くと、僅かに表情を曇らせて首を振った。
 それで柊は状況を理解した。

「ミ……ミスタ・ギトー?」
 闖入してきた黒髪の男――ギトーを見やってギーシュは思わず間の抜けた声を出した。
 ギトーは吹き飛んで離れた柊を一瞥した後で呆気に取られているギーシュに目をむけ、これ見よがしに溜息をついてみせる。
「いくら決闘ごっことはいえ、メイジともあろう者が平民に遅れを取るとは……元帥の顔に泥を塗る気かね?」
「……っ」
 ギーシュの顔が紅潮し、怒りに歪む。
 だがギトーは彼の事をまったく意に介する事なく、広場の中央に進み出て杖を高く掲げた。
「生徒の諸君、休み時間は終わりだ。速やかに教室に戻りたまえ!」
 ギトーの宣言に生徒達はざわめきたった。
 しかしギトーが睨みすえるようにして周囲に視線をめぐらせると、生徒たちはしぶしぶと言った体で広場から立ち去り始めた。
 ギーシュはギトーに侮辱された事に納得言っていないのかその場に残ろうとしたが、ロングビルに促されて憤懣やる方ないまま肩をいからせ足早に歩き去った。
 そして残ったのはギトーとロングビル、ルイズにエリス、そして少し離れた場所にいる柊と――彼を挟んでルイズ達とは反対方向にいる、赤と青の少女達。
「君たちもはやく戻りたまえ」
 ギトーがそう言うと、キュルケはつまらなそうに小さく鼻を鳴らして自らの赤い髪をかきあげた。
「子供の遊びに大人がしゃしゃり出るなんて。風のメイジなら空気ぐらい読んで頂きたいわ」
「私とて不本意だ。だが、生徒一人のために授業の時間を削る訳にはいかないだろう?」
 不機嫌さを隠そうともしないキュルケの言葉に動じる風もなくギトーはそう言うと、今だに固まったままのルイズへと目を向けた。
 その視線で彼女はようやく我に返り、かけられた言葉を頭の中で反芻した後でおずおずと声を上げる。
「わ、私……ですか」
「その通り。まったく、昨日のうちに儀式を済ませていればこんな雑事などなかったものを……ミスタ・コルベールの及び腰にもまいったものだ」
 ギトーは不満を露にして肩を竦めて見せた後、警戒した柊と多少怯えている様子のエリスを一瞥し、そして再びルイズに向かって言った。
「さあ、ミス・ヴァリエール。速やかに儀式を執り行いたまえ」
「儀式……」
 それは昨日にもコルベールに言われた事だった。
 うやむやになった後も、彼女自身が望んでいた事でもあった。
「そうだ。そちらの娘か、あちらの男か、あるいは両方。『コントラクト・サーヴァント』で君の使い魔とするんだ」
 なのに、ギトーに言われたその言葉は、酷く冷たく感じられた。


 ※ ※ ※


110ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 02:18:25 ID:6aQSGedx
 

「……よろしいのですか?」
 『遠見の鏡』でヴェストリの広場の光景を眺めながら、どこか沈鬱な声でコルベールは口を開いた。
 彼が眼鏡越しに見やる相手――トリステイン魔法学院の学院長たるオールド・オスマンは机に肘を付き、じっと鏡の向こうの様子を眺めている。
「よろしいも何も。教員達の協議で決まったものをわしの独断で翻す訳にもいくまいよ」
「それはそうですが……」
 早朝に開かれた教師達による協議――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが召喚した人間達への処遇の件――はほぼ満場一致で『契約を断行すべし』との結論が出た。
 とはいえそれを強行に主張したのは現在ヴェストリの広場にいるギトーぐらいのもので、他の教員たちはそれに付和雷同しただけだ。
 表だって反対したのはコルベールだけであり、あとはシュヴルーズが『どちらかといえば反対』という態度を示した程度。
 オスマンは進行と取り纏めを行うために決には入らず、ロングビルは元より参加する資格がなかった。
 契約の履行に際しては当然ながら抵抗が予想されたので、立会いにはギトーが選ばれロングビルが補佐に当たる事になった。
 当初ギトーはそれを渋ったのだが、一番声を大にして主張していた以上断る事ができなかったのである。
「相手はただの平民……だったはずじゃが、どうにも雲行きがあやしいのう。ミスタ・ギトーで大丈夫かね?」
「……彼は仮にもスクエア・メイジですぞ?」
「そうじゃったか? 偉そうにしとるワリには口先ばっかりなんで覚えとらんわ」
 メイジの格付けとして『スクエア』は最高位とされているが、それはあくまで四つの系統を足す事ができより高度な魔法が扱えるというだけの話。
 無論それは大きなアドバンテージではあるが、実戦においてはメイジのランクが勝敗に直結するとは限らないのだ。
 そういった意味ではギトーは『優秀なメイジ』ではあっても『歴戦のメイジ』ではなかった。
 決闘の一部始終を見届けていたオスマンとしては疑問を呈する所だったが、問われたコルベールは目を伏せると小さく首を振った。
「……ミスタ・ギトーも実戦経験がない訳ではないでしょうから、『今の彼』ならば抑えられるのではないかと」
「『今の彼』とな」
 オスマンがコルベールを聞きとがめると、彼は目を細く開いて遠見の鏡、その向こうに映る青年を見据えた。
 それは普段の温厚そうなコルベールからは想像しにくい表情だった。
「先の決闘でもそうでしたが、どうやら彼は剣士なのでしょう。逆に空手での戦いはあまり慣れてはいないようで……。
 あの奇妙な光は不可解ですが、差し引いても恐らくは……剣なりといった武器があれば別でしょうが――」
 と、そこまで言ってコルベールは相手の力量を冷静に分析している自分に気付いた。
 どれほど平穏な時間に浸っていても、染み付いた忌まわしい習性がどうしても取れない事に彼は自嘲じみた表情を浮かべる。
「ふむ……武器、か」
 コルベールの仕草に気付かないのかそれともあえて無視したのか、オスマンは呟いてコルベールの視線を追った。
 鏡の向こうの彼は警戒の中に僅かな焦りも浮かばせて両の手の拳を握っている。
 ギーシュとの決闘で奪取した剣はそれが終わった時点で手放しており、一切の武器は持っていない。
 ――少なくとも、武器を持っているようには見えなかった。
「……死人が出なけりゃいいがのう」
「下手に抵抗をしてくれなければ、いくらミスタ・ギトーでも命を奪うことまではしないでしょう。無理に使い魔にしてしまうのは心苦しいですが……」
「いや、そうではなく」
「……?」
 怪訝そうなコルベールの視線を受けながらオスマンは背もたれに身体を預け、大きく溜息をつく。
 そして誰に言うでもなく、囁くようにして小さく零した。
「グラモンの馬鹿息子相手になら必要なかったろうが……『破壊の杖』なんぞ引っ張りだされたら洒落にならんぞ」
「……は? 『破壊の杖』がどうかしましたか?」
「んにゃ、なんでもない」
 手を振って話の終わりの意を示すオスマンをコルベールは首を傾げて見つめた。
 だが、齢幾百とも噂される老メイジの顔からは思惑の欠片も読み取る事ができない。
 コルベールは詮索を諦めると、オスマンと同じように『遠見の鏡』へと目を向けた。

111ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/08/29(土) 02:22:53 ID:6aQSGedx
以上です
決闘部分は書いててちょっと笑いが止まらなかった。というのも一方的に強い柊が果てしなく変・・・
ゲーム的に例えるならレベル1環境の所に柊(レベル10)がいるので妥当だと思うんですけど
なお本作では柊は2nd仕様(魔剣は持ってない)です。猫を抱いてすごしてる間に魔器解放を忘れてHPが通常の約2倍になりました
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 04:09:18 ID:q/Nlrmrt
乙です
どうなるか想像つかなくて続き気になる
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 05:00:23 ID:OZpHF4M2

柊は珍しい展開で飽きないな
剣があればハルキゲニア基準でどの程度強いんだろう
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 05:28:04 ID:VopZOvTi
下がる男乙です。
決闘イベントでギーシュお疲れと思ったのは初めてだw
正直先が読めないのでwktkしつつ正座待機。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 07:11:07 ID:WIE+cKVI
>>99
でもマイトガイン世界からブラック・ノワールとかやるとゼロ魔世界は実は・・・って
いや、ある意味では正しいかもしれないけど。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 07:48:43 ID:BIkeRDry
ゼロ魔の世界って何次元だ?
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 07:55:07 ID:kyouOdPy
2次元でしょう
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:01:14 ID:Qc33ohBx
下がる男おつですー。
大まかなストーリーは同じ方向なのに、流れ方がガラリと変わってるのは新鮮味ありすぎで期待大ですよw

やはり柊連司の最大の問題は魔剣がないことですね……。
一応、2nd環境下でも≪魔器召喚≫という読んで字の如くの魔剣使い用特殊能力はありますけど、
使いどころが限定されすぎて取る価値が大してない死にスキルw

>『攻撃に偏重するするあまり防御がおろそか』という自他共に認める評価を持つ柊〜〜〜
>猫を抱いてすごしてる間に魔器解放を忘れてHPが通常の約2倍になりました

(空砦リプレイ確認中)ああ、なるほど。確かにその通りでしたw
考えてみれば『必殺! 漢探知!』で片っ端から罠に引っかかって発見&解除する耐久力を持っていますから、
レベル1の敵が相手なら、ボコボコに殴られても早々は戦闘不能になりませんよね……ファンブルさえなければ(ボソ



>>113

ダメージ上昇系特殊能力と魔剣の箒(ウィッチブレード)のダメージ上昇系オプションをガチで使えば、
爵位もち魔王の標準的な現し身を一撃で撃破できる程度……のはず。
その切り札を使うタイミングを正確に測ることのできる実戦経験も踏まえると、
『現時点の柊連司≒10巻前後の平賀才人』程度と憶測で言ってみる。

あと、別の人の作品を例に挙げるのは考え物だと感じていますが、
『ナイトメイジ』で召喚されてる同作品のキャラ、『蠅の女王』ベール=ゼファー(の現し身)は
柊連司との直接戦闘の場合ある程度本気になって戦おうとしてるので、それも判断材料になるかと。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:03:42 ID:+CiZsiHi
乙です。新しい展開だー。続きが楽しみ。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:12:04 ID:WLkcwZ1B
>>77>>83>>85
遅レスで済まんが、召喚されたのが
「自由レギウム国民軍支配地域と関係者全員」ならどうだ?
代表でミルズがガンダになれば…うん、ハルケはトリスティンに、と言うか
レギウム・・・いやルーミス帝国になっちゃいましたとさ。W
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:13:11 ID:WLkcwZ1B
あっ 投下されてたっ 乙でありますっ
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:21:09 ID:9xcAGxBx
おつ!
あまりに違和感が無いwww
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 08:42:27 ID:IoCt50OH
下がる男の人、乙でした。
ギトー教諭と言えば授業で風至上主義である事、フーケによる盗難騒ぎで格上とは争わない事、それでもスクウェアという高位のメイジでが分かってますから、ここできっちりケジメをつければ五月蝿い外野を黙らせる事が出来そうですね。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 09:03:02 ID:4Wgcleif
ミルズさんなら生身でも戦い方が染み着いてるから話は進めそうなんだけど

何分歴史ものっぽい空白のないストーリーだからなあ
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 10:12:23 ID:t0H8eAti
夜闇の人乙ー
柊サーガはkonozamA から手違いで送られたフレイスと黒ミソしか読んどらんけど、これは面白い。

>猫を抱いてすごしてる間に魔器解放を忘れてHPが通常の約2倍になりました

魔器解放忘れたのかよっ! それでいいのか魔剣使いw
空砦の単行本は何年後になるのかのぅ
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 10:14:51 ID:3mWpZHew
魔剣を持った柊=最新刊の才人ぐらいの強さでいいんだよね?
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 10:19:11 ID:zBB4Wcp3
下がる男お帰りなさい
アニメで柊が真面目に主人公してて吹いた奴は俺だけじゃない筈
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 11:00:25 ID:bVg8FZPA
下がる男乙!
実績はすごいのにどんな相手に苦戦してても違和感がないのは人徳でしょうか?

>>125
> 空砦の単行本
柊出演の第1巻『惨劇の冥魔王』は本日正式発売であります
12998:2009/08/29(土) 11:22:53 ID:svFZLLGb
柊&エリスの人、お疲れさまでしたー

     それでは、次の任務でーす

それは冗談としてw
アニメ終盤の、エリスをロンギヌス(エキストラ)から庇う時の姿からするに、素手でもそこそこ戦えそうな気はするんですよね、柊蓮司
でも、10レベルキャラなのに、へっぽこな姿を見せても柊だからしょうがないと思わせてくれるのは、確かに人徳ですねw

>魔器開放
替わりの切り札は、ちゃんととってあるから安心さね
でも、取得特技”訓練:幸運”はさりげなく吹いたw
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 11:47:41 ID:Y+/3TYou
>>126
魔剣を持った柊=最新刊の才人(現代兵器装備中)くらいかね?
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 11:59:24 ID:cBUbVvrj
覚醒ミルズ+ガンダ補正=ミルズ無双……
片眼から血の涙流しながら戦艦を叩き落とせそうだ
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 12:02:26 ID:cBUbVvrj
ノ『この声……ルイズかァァァ!

ノ「戻れルイズ。お前は好きだ。
ル「反吐が出るわ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 12:10:09 ID:GIgmsSck
乙。
ずっと待ってたんだからね!
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 12:14:44 ID:svFZLLGb
ナイトウィザードは厨二要素を煮締めた様なもんだし、月衣の存在もあるから、強さ談義は難しいんだよなぁ……
月衣の効果(通常武器など、常識の範疇での攻撃の威力を激減する鎧と思いねえ)で、落下した人工衛星が直撃しても、柊ピンピンしてたし
2ndルルブが今手元に無いから何とも言えないけど、10レベル環境だとタイガー戦車でも雑魚エネミーだぜ?
少なくとも、紅巫女で第二次大戦時の戦車が出た時には3レベルエネミーだった
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 12:49:47 ID:1QOYt92n
素手柊≧現代兵器無、デルフ持ちサイト、ぐらい
戦闘経験や状況判断も含めて

魔剣あったら現代兵器持ちサイトでは、月衣と現代兵器の相性云々はさておいても
たぶん相手にならないんじゃないかなあ

あと蛇足かもしれないけど補足
月衣=常識での範疇の攻撃が基本無効なバリアみたいなもので、逆に非常識な「魔法」とかは通す
   幻想殺しの逆、みたいに考えるとわかりやすいかもしれない
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 12:52:45 ID:b6y+HPpU
魔剣といえば魔剣Xのキャラって召喚されたことあったっけ?
封剣士とか召喚したらメイジと誤解されることもできそうなんだが
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:08:03 ID:LMcPNMH7
エターナルソード「魔剣と聞いて」
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:10:18 ID:HSwcPIWE
FEAR系のゲームでサイトをデータ化したら、なにで作ってもかなり強いと思うぞ
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:18:25 ID:ApQ37+nA
>>91
>……少なくとも、狂四郎が北海道を目指して旅に出た後の、あの二人を引き離すのは俺には無理だ……


狂四郎単体で召喚 → 旅の途中にせよ後にせよ、ユリカと引き離されたことにプッツン。ルイズを惨殺して終了。

夫婦で召喚 → ルイズやその他のフラグはうっちゃらかして毎晩ユリカとセクロス。ルイズは良い迷惑。

ギーシュ戦 → M型遺伝子異常者差別のトラウマがよみがえり、食堂の時点でギーシュを惨殺。
          運良くギーシュが生き残れたら、女を泣かすぐらいならセンズリこけと尿道オナニーを伝授。

フーケ戦 → 普段はセンズリ好きの馬鹿だがこと戦闘においては冴えているので、Sの正体やさくらのMCを
         見破ったのと同様にフーケの正体を看破。戦いでユリカが怪我したりしたら、おマチさんを惨殺。

ワルド戦 → 原作サイトと同じく桟橋でライトニングクラウドを喰らうも、それで学習。
         巧遅拙速ということで、偏在の呪文唱えている間に接近してナマス斬り。やっぱりワルドを惨殺。

タルブ村での空戦 → 汚物は消毒だ状態。狂気が再発して「省エネで殺さなきゃ」と、効率よく殲滅する。

VS七万 → 対多数戦ではナチュラルチート発動の狂四郎。ガンダ効果も相乗して、下手すりゃ普通に皆殺しに。

聖戦展開 → ゲノム党の洗脳を思い出してユリカといっしょにトンズラこく。情が移っていればルイズも連れて。
          ユリカにちょっかいだした場合、ヴィットーリオやジュリオは『見せられないよ!』な感じに惨殺される。
          狂四郎を暗殺とか、無理ゲーというか死にゲーだろ……常識的に考えて。



ゴルゴ13や狂四郎、あずみの様に超能力や魔法みたいな特殊能力は持っていないけど、チートじみた強さを持つキャラって他にいる?
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:25:41 ID:4Wgcleif
>>137 お前なら時空くらい簡単に切れるだろw
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:28:11 ID:LoU88rnK
リーマン忍者パパとか元海兵隊のコックとかだな
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:37:38 ID:0EOwCMO2
>>136
封剣士や八卦を呼び出すより
マキーナ自体を召喚してゼロ魔キャラを次々とブレインジャックしていくほうが面白そう
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:40:25 ID:ggDT9Vfe
燃える、プラモ魂に不可能はないハズだ、だからチートじみてるんだよなぁ……狂四郎
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 13:49:44 ID:4e0Cu2B0
>>142
ブレインジャックして能力を最大限に生かせるのは面白そうだ。
ただブレインジャックされた方は精神が消滅してしまうからそこが困ったものだが。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:09:51 ID:b6y+HPpU
>>142
ブレインジャックされた側が死んだのと同じ状態になるのが困りものだぜ
フェイさんとか呼びだせば腹を貫かれても死なないし便利だとは思うんだが
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:12:22 ID:ARLkRcvV
>>132
「すばらしい…。この(虚無の)性能…この(主人の)フォルム」
「これこそ目指していたもの」
「ブリミルの究極の姿…」
「虚無の象徴…!!」

「ルイズはいい、あれは、想像を絶する」

敢えて江原ノウマンで。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:15:02 ID:XQam2L+4
魔剣といえば、なんでフェイさんはアンドレイのメスごときで死んだんだろう
マキーナ召喚ならルーンの効果でブレインジャックと折り合い付けると面白そうね
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:40:50 ID:rD1tv7aX
>>147
魔剣Xは林田球コミカライズのAnotherしか知らんが、漫画版だと上半身と下半身を切断されて、
イマージュでも再生できないレベルのダメージと描かれていたけど、ゲームではどんなだったの?
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:43:00 ID:0EOwCMO2
あ、そうか 忘れてた ブレインジャックされたら精神死ぬんだっけ……
自分の命を犠牲にしてでも成し遂げたい目的があるようなキャラなら大丈夫かな
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 14:49:28 ID:b6y+HPpU
>>148
ゲームだとチロティカナイフ連射されたケイを庇って死亡
イマージュを注入した後だったからかもしくは当たり所が悪くて死んだかだと思われる
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 15:04:14 ID:8E8IFgJq
「こんなもんか」
森の中、赤い髪の青年は倒れた熊を目の前にして青い刀身の剣を収める。
青年は、猟師だ。
彼は平凡を好み、己の身の丈にあった生活を好んでいた。
空を見上げると、青い空。
「今まで見えていた景色が無いと、何かもの足りねぇな…その景色を壊した原因が言うのもなんだけど」
青年は呟いて、倒した熊を担ぎ、村へと帰るため歩きだした。
少し歩くと、鏡が置いてあった。
「何で、鏡がこんなところに?」
それが、青年の最後の言葉だった。
青年は、担いでいた熊を残して、消え去った。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 15:06:42 ID:29ECSToU
投下宣言しろよ
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 15:06:51 ID:6ShieIVq
ハーシェルさん、テンプレ読んでから投稿しくさってください
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:30:25 ID:b/tHfgen
>88
なんとなく、普通の武器では壊せるけど一瞬で再生する気がする。
武装錬金でやられた傷は治りが遅いって言ってたし、下手すると普通の武器で章印壊されても再生しないかという不安。


>夜闇の人
おつーです。
…破壊の杖って実は元の所持者は箒だと主張してたりしますかね、ひょっとして…


>126
取り敢えず…『週刊・世界崩壊の危機』な世界がある。
そこでいろんな意味で鍛え上げられた最精鋭の神聖騎士団をマンガで言えば一コマ未満で吹き飛ばすようなのが割と居る。
そういうのを相手に数知れない死闘を繰り広げて生き抜いてきたのが柊といえば、素手状態であっても才人と差があるのは仕方ないんじゃなかろうか。
一応、柊は英雄級の実力だと言っておかしくはないはずなんだが…柊だしなぁ…

なお『最精鋭の神聖騎士団』へのツッコミ禁止。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:34:05 ID:tlNB68ib
onepieceとのクロスが意外と少ないのはなんでなんだぜ?
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:38:28 ID:Jj5Vv5cj
おっと、この流れはなしだ。(キリキリ
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:51:13 ID:9M8+nWU4
麦わら「ゴムゴムのピストル!」
ギーシュを倒した!

麦わら「ゴムゴムのおの!」
ゴーレムを倒した!

麦わら「ゴムゴムのガトリング!」
レコン・キスタ軍は全滅した!

麦わら「ゴムゴムのおおづち!」
ヨルムンガントは粉々に砕け散った!

いろいろと問題があって書きがいがない。
見せ場が戦闘シーンなのに当て馬が・・・・・・ねぇ?
ウソップでも召喚してくれ。"実"の能力者は色々とダメだ。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:55:20 ID:EkxgdM0P
ジャンプ系で長続きする作品って、ほんと無いよな。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:57:49 ID:1AYq7cN/
ルフィは戦闘能力より
ゼロ魔世界で動かすことの難しさが問題だろ
それなら、以前にあった悪魔の実の召喚の方がやり易い
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 16:59:16 ID:zBB4Wcp3
>>158
使い魔の達人はかなり期待してるぜ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:01:02 ID:jRO/sgcH
ルフィ召還ならショートで>>157みたいなのがあったなー
少し昔だからギアとかギガントとか無かったけど。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:01:22 ID:mNFex9MO
どっちか片方が完結してたら落としどころもあるんだろうけどねぇ…
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:06:56 ID:/4hGG91G
まあ、ルフィに限った事じゃないが、そのキャラの根幹に関わってくる、どうしても譲れない確固たる
目的があるキャラってのは使い魔になる事を承諾する可能性が極めて低いからな。

つーか、ルフィが使い魔と言う事になったら逃げ出すと思うぞ。
ルイズが。
主にルフィが余りにも多くのトラブルを立て続けに起す所為で。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:15:09 ID:tlNB68ib
じゃあいっそ船ごと召喚したらどうだろうか?
165151:2009/08/29(土) 17:25:15 ID:8E8IFgJq
みなさん空気を読まずに投下してしまいご迷惑をかけてしまいました。
すいません。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:37:12 ID:sDsJFo3G
ま、次からは気をつけてな。
「小ネタ投下します」の一言だけでも違うから。

成長&投下を期待してる。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:43:13 ID:52HdQ2s5
>>165
気にするな!
168151:2009/08/29(土) 17:47:25 ID:8E8IFgJq
ありがとうございます。
今度からはちゃんと気をつけて投下します。
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:49:07 ID:Z72jKeGB
勇次郎と才人なら才人のほうが強いよな
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 17:52:46 ID:c9KWeYfm
ワルドや元素ごときに苦戦してたサイトがかァ?
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 18:01:48 ID:kGJodRXG
才人よりキーボードクラッシャーの方が強い
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 18:22:45 ID:4H8rGq+/
浦安鉄筋家族から国会議員を召還

トリステインがウンコ塗れになって終了

浦安キャラが召還されたらまず間違い無くルイズがあかねちゃんポジションになる
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 18:32:31 ID:OE5d3BaE
>>139
ただ、狂四郎2030って基本的にロミオとジュリエットだから
二人が別れていないと話が転がりにくいというところが辛いな。
コルベール先生が頑張らないとルイズ惨殺エンドだ。

コッパゲ先生と徳弘作品は相性良いだろうな。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 18:59:15 ID:4e0Cu2B0
>>149
逆ブレインジャックならマキーナに吸収されないけど、
力関係でマキーナが致命的なまでにボロボロになるしなぁ。
マキーナ召還するなら天尊流星吸ったの理由にして
逆BJしても回復可能にするとか改変が必要かな。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 19:20:42 ID:vzZGHKNt
>>154
タルブ戦での、ゼロ戦で無双する時に竜騎士達が「うわー、もうだめだー!」と叫ぶ所まで見えた

>>173
ふぐマンを召喚して、契約のキスでルイズが「こんな全身が痺れるようなキスなんて……!(ビクンビクン)」になるわけですね
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 19:33:04 ID:aycQgWf+
>>154
一話でカズキが鉄パイプでホムンクルスを殴ったときにヒビが入ってたけど即再生してたような
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 19:34:17 ID:GIgmsSck
アルティメットサイト
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:09:43 ID:pHwSjToe
>>172
トリステイン総浦安化ですか
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:21:13 ID:mKlsch/3
そもそもサイト自体が戦闘経験もクソもない、普通の一般人Aだろ。
ガンダ効果入れても、元の能力差で大概のキャラよりも劣るのはしゃーない気がする。
作品中で成長しているとはいえ、ガンダ効果ないとアニエスの足元にも及ばんのに。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:27:51 ID:Z72jKeGB
最新刊の才人ならそこらのバトル漫画の主人公にも楽に勝てるだろ
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:29:44 ID:1aSiKIU5
まじめに読むに当たって、最初から完成されていて苦戦もしない主人公ほどつまらんものはないわ。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:33:42 ID:kGJodRXG
>>180
ジャンプで例を挙げると、越前リョーマ、小早川セナ、猿野天国、黒子テツヤ、両津勘吉あたりか。バトル漫画の主人公は
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:36:41 ID:WIE+cKVI
>>181
ではラスボスの人を。
あいつは戦闘能力は一般人並未満の能力しかなく直接戦闘となれば苦戦しまくり。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 20:49:12 ID:t0H8eAti
>>183
基本的に上から目線の極みで、自己欺瞞な手加減の末の無駄苦戦じゃねーかw いやあれはあれで好きだけどw
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:02:22 ID:2x9QeiVX
>>181
最初からパワーそこそこあるけど条件揃わないと苦戦しちゃうキャラか

イナズマンとか?
サナギマンに変身したはいいけどそこそこ体硬いだけで
エネルギー溜まるまで戦闘員にフルボッコ状態
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:06:39 ID:vzZGHKNt
完成されてない一般人か……

ラブやんのカズフサさんを……いや、ゴメンなんでもない
まあ、奴なら全力でルイズに仕えるだろうがなw

というかラブやんが探しに来て、普通に日本とハルケを行き来できるようになりそうな?
いかん、アルビオン編が崩壊するw
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:12:05 ID:vzZGHKNt
>いかん、アルビオン編が崩壊するw

アルビオン編が、の前に『ラブ穴(キューピッド達が移動に使うワームホールの様な物)のせいで』が抜けてたわ
……ああ、というかこれ手軽に仕える”世界窓”だから、ロマリアも涙目になるのか
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:16:55 ID:52HdQ2s5
>>184
ちょ、おま…
一瞬ラスボスの人に対する毒かと思ったんだがww
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:36:41 ID:W4mDd3bM
>>182
その中でもテニヌプレイヤーや両津には勝てる気がしないんだが
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:38:16 ID:FpRTXghI
>>182
最終回後のハイパーセナにガンダールヴが入るとヤバそうだぞ
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:38:53 ID:3mWpZHew
いくら才人でもピッコロ大魔王やサイヤ人襲来時の悟空には勝てると思うぞ
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:47:36 ID:58Uch1Mr
>>191
え?
月を破壊できる亀仙人<<<越えられない壁<<<<ピッコロ大魔王≒孫悟空
に才人が勝てるだと!?
193日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 21:48:45 ID:7+kUlPTE
22時に投下したいと思います
秋山異世界物語 天気晴朗ナレドモ風強シ(仮)



194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:49:07 ID:GIgmsSck
幼少期の悟空にも勝てるかどうかわからんだろ。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:49:50 ID:/uvELNHt
>>189
両さんは腕っ節の強さはともかくとして、異様に頑丈でしぶとい上に死んでも生き返る超人だからなあ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:50:10 ID:mKlsch/3
>>191
一人で(もしくは数名)で、現代科学に匹敵する文明を持つ地球を滅亡させるような連中に
匹敵はできんだろ。
殺そうとしてなかったとはいえ7万人は倒しきれてないし。
伝説でも相手に出来るのは1000人前後だし。
そもそもドラゴンボールは初期からチートの巣窟だろ。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:52:02 ID:66ewK5E6
>>184
能力全開にした場合は、確か因果律を操作して任意の存在(物だろうが人だろうが構わず)の抹消・復活・操作が自由自在なハズ。
で、多分オリジナル設定だろうが、素の身体能力は一般人を大きく下回る。

……何でこんな極端なキャラを選んだんだ、あの人。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:52:29 ID:S9ED8h1l
>>186
フサさんは実は肉体的には結構出来上がってなかったっけ

>>183
ユーゼスは科学者だからねぇ
ユキムラも医者、シュウは結構鍛えてることだろう
ある意味バンプレでは最もルイズと相性良いかもしんないジ・エーデルも
平行世界の自分の能力を統合してるそうだから、そこそこ高い設定だったか
(それでもゲームではゲイナーに負けることもあるので必ずしも最強ではないが)
ゼゼーナンは元々書記官だったそうだし身体能力は高いかどうか・・・まぁ何があっても使い魔になんぞならんだろうな
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:53:05 ID:4ykjhNVX
子供悟空>レッドリボン軍の超兵器>>現代兵器

核使ってようやく子供悟空倒せる程度でしょ
大猿には多分効かないけど。
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:55:00 ID:nvhNzV/r
>>191
レッドリボン軍の兵器と比べたらタイガー戦車なんて子供の玩具
サイトはとりあえずウサギ団からチャレンジすべき
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:55:07 ID:t0H8eAti
>>188
好きなものほど、第三者視点ぶった辛辣なツッコミを入れたくなるお年頃なのさー
正直スマンかった

>>192
まぁ待て。
スズメバチ(単体)だって人間を殺せるが、別に人間より強いわけではない。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:56:48 ID:r/hBG6hv
才人がテニヌや両津やピッコロ大魔王に勝てるとかどんなギャグだよww
光速移動したり小石とシャカのごとく五感剥奪するてにぬや
不死身の化身の両津や一振りで町を消すピッコロにサイトが勝てるなんてねーよ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:57:29 ID:pzQRrlCv
>>193
あの「地図のコピーをバックにひたすら登場人物のバストアップ」なアレからですか
どんな作品になるか全く予想できませんが、支援するであります
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 21:59:04 ID:RXlA6TbK
天国はワルドを完全にキャラ崩壊させるだろーな
ルイズといい感じになったら幸せクラッシャー沢松が召喚されてもないのに現れたり
女風呂のぞいて魔法の集中攻撃食らっても死なないだろーし
明美がどんな扱いになるかなー
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:00:25 ID:r30d7+iX
>>201
序盤の時点で銃弾をも跳ね返していたのが悟空だ
剣撃だけでなんとかなる相手なのだろうか
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:00:25 ID:W4mDd3bM
初期悟空ですらマシンガンが効かないからなー
初期ヤムチャぐらいなら勝てるだろうけど
207日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:00:58 ID:7+kUlPTE

「っつつ、いたいのー…。」

衝撃により吹っ飛んだ意識が戻される、そこには笑い声が溢れていた。

「くっ、くく。ぶぁっはっはっは!何で、人間がヒー、召喚されてホヒー。は、腹が吊るっ!」
「う、うるさいわね!もう、私ってばなんで、なんでこういうときに…。」

「こういうときにって、いっつもだけどね。」
「でも、農奴や町人の出身じゃなさそうね。軍人?」

もし、そうだとすれば大変な事態になりうる、この軍服からすれば、間違いなくトリステインの軍人ではない。
コルベールが恐る恐る秋山少尉に近づいていく、あんだけ沸いていた笑い声は徐々に反転、草原が静かになる。

「し、失礼だが。君は、誰だね?」

尻餅をついたような体制から、急に立ち上がり。秋山は敬礼をし、礼儀正しく質問に応じる。

「はっ――。日本海軍秋山真之です。」

その三人を囲んでいた子供達がざわついた。
そんな事気にもせず、秋山は言葉を続けた。

「2つか3つほど、質問をしてもよろしいでしょうか。」
「あ、あぁ…どうぞ。」

こういう、人が慌てそうな時に腹を鍛えていると腹がすわって良いとは秋山の言葉である。
確かに、今この白人に日本語が通じている、しかもやたら流暢に。そこらへんから既におかしいのだが、そこを考えるには情報が足り無すぎるのである。

「ここは、何処でしょうか。」
「ここかい?ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国だ。」

どこの国か聞いた事も無い、新大陸だろうか、だとしても。おかしい所がある。なんと、遠くに城が見えるのだ。
白人の国は基本先進国が、ヨーロッパと言わずハルケギニアというのには疑問が残る。なら、この世界が自分達がいた世界なのかを、確かめる必要があった。

「ありがとうございます。では二つ目、あなたはイギリスという国を知っていますでしょうか。」
「イギリス…イギリス…いや、知らないな。この大陸にはこのトリステイン王国とアルビオン王国帝政ゲルマニアクルデンホルフ大公国ロマリア連合皇国ガリア王国の国が存在する、が。イギリスとは聞いた事が無い。



イギリスを知らない、つまり白人社会じゃないのだろうか。それと白人なのに日本語が通じる、何故だろう。しかもよく聞くと、この国名の中に。アルビオン、英国の古名が入っていた。
よく見てみればゲルマニアもそうだ普国の古名だ、大英博物館の歴史書物に載っていたのを思い出す。

「ありがとうございます、大体は分かりました。」
「逆に質問してもいいかね?――君は軍人のようだが、尉官かね?」

もしこれが大佐以上のクラスにでもなれば、重大な国家間問題にもなりうる、逆に尉官以下なら、行方不明となって何も起こらないだろう、そう踏んだのである。
その上、こんだけ若い内に元帥だとか大佐はあり得ない、コルベールはその推測を頼りに、安心して質問したのだ。

「は、その通りです。」
208日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:02:16 ID:7+kUlPTE

読みは当たった、コルベールは胸を撫で下ろして安堵のため息をついた。

そこで、話についていけなかったルイズがようやく喋りだした。

「あの、本当にこの男と本当に契約を?」
「ん?あ、あぁ。一度出された物は死ぬまで変更は聞かないのだ、きまりだからな。」
「……。」

ルイズは諦めるように顔を下に向けた。
何か呟いているのが聞こえた。

「……なんで私がこんな男と…。」

見れば、身長はどうみても低い、確かに良い目をしてるけど。
どんな素性をしてるかも分からない。
もう色々面倒くさくなって諦めたルイズは突然秋山の目の前に立った。

「……?」

目の前に立った少女はとても不機嫌な顔をしていた、しかも威圧的だ。
いきなりその桃色の髪の少女が言う。

「少し我慢しなさい。」

そう言ってからルイズは突然秋山に接吻をした。

「うぉ、いきなりとは、情熱的な国じゃな――!…って、熱っ!熱いぞな――!!まるでボイラー室じゃなー!…。」
「ぼ、ぼいらー?…、ちょっと左手を見せてもらえるかね。」

コルベールがピクッと本能的にその魅力的な言葉に反応したのは言うまでもない。

と、言うとコルベールは手早く左手を取り手の甲を表に向けた。
そこで秋山真之は左手の異変に気づいた。

「おわっ!なんか変な文字がついちょるぞな!」
「あ、動かないでくださいすぐ終わりますので。」

コルベールはそそくさと手に書かれた文字を紙にメモすると、秋山に背中を見せ、子供達の方へ振り返り、次にすべき事を言った。

「さて、これで全員ですね、えらく長かったですが。全員教室に戻りましょう。」

コルベールが杖を振ると、空を飛んだ。それに続いて、生徒達全員、否。一人を除いて生徒達全員が飛んでいった。
飛んでいない人というのは、そう。いきなり接吻をかましてきた、髪がピンクの自分と同じ背丈の女の子だけである。
空からその女の子に対する嘲笑や嫌味等が聞こえた。

「御身さん、えらくいわれとるぞな、言い返さんと。」
「うるさいわねっ!どうせ私は空飛べないし魔法なんて使えないぞな、ってうつっちゃったじゃないの馬鹿!」
「この国はガイじゃのー、人が何も使わずに空が飛べるんかな。あいつにみせちゃりたいのー。」
209日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:03:01 ID:7+kUlPTE

言葉のキャッチボールがあまり出来ていない二人だった。
周りを見れば草原は既に二人っきりになっていた。

「何よそれ、貴族なら空飛べて当然よ?というかあんた誰よ、日本海軍?日本ってどこよ、そもそも空海軍じゃないの?」

空海軍、秋山達がいた国では海軍しかなかったはず、もしやこの大陸では既に飛行器(機)ができているのだろうか。
それにこの国はイギリスを知らない、日本を知らなくて当然だろう。
秋山は一応推測を二つ立てた、まだ英国とかが見つけていない新大陸の可能性、既にここは自分達が住んでいた地球とは違う所

「この国には飛行器があるんかいのー?」
「は?飛行器?何それ、確かに船は空を飛ぶわよ、けどそんな物聞いた事も無い。」

船が空を飛ぶ、この世界じゃ理で説明できない事ばっかりが常識になっているらしい。
理で説明できないものは信用しない主義だったが、目の前であんだけされてるんだから、もう適応するしかない。と諦めた。

「船が空を飛ぶんかいなー、ガイな船じゃのー。」
「貴方達の国じゃ船は空を飛ばないの?遅れてる国なのね、服は進んでいるみたいだけど。」
「これか?これはの、国民一人一人が汗水流して血が吐くほど働いてできた結晶じゃー。」
「ふーん、うちらじゃ農民とか町人が勝手に作ってるわ、貴族の為にね。」

素っ気無い返事。この国ではまだ貴族社会なんだろう、きっと陸で戦う兵士は散兵もできない位ドクトリンが遅れているのだろう。
そこら辺を見てもどっちが遅れてるかなんてすぐ分かる。が、貴族も侍もそうだが、プライドが無駄に高い為、相手を認める事が出来ないのだ。
秋山はここまで情報を聞いてもしっくり来なかった、ここは落ち着いてじっくり現在の状況を整理・理解する必要があった。

「そんで、教室には戻らんでいいんがか?」
「分かってるわよ!」

まずこのたちっぱなしの状況で話を続けてもどうしようもない。
進展させる為に教室に戻る事をうながす。
この時秋山は教室という言葉に自分がまだ書生をやっていたときの頃を思い出した。

「御身さんは書生なんか――?」
「書生って何よ、学生よ。えぇ、私は誇り高きトリステイン王国内のトリステイン魔法学院生よ。」

二人は草原の中を歩きながら話す。

「ほー、魔法っつーのは空を飛ぶあれとかかいな?」
「そうよ、本当に魔法も知らないの?どこの田舎から来たのよ。」

ルイズは「こいつはキチガイの顔ですよ、」とでもいいたげな表情を浮かべた。
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:03:19 ID:VopZOvTi
支援
211日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:04:17 ID:7+kUlPTE

「ちょっと部屋に戻ったら、あんたが一から理解できるように説明するわ。」
「うむ、頼む。」

この態度に腹が立つ、魔法も知らない芋軍人がこの私に対して、この態度。しかも身長は私より低い。しかし、今は我慢、なんてったって私は誇り高きルイズ・フランソワ(中略)なんですから!
魔法も使えない軍人に対して一々目くじらなんて立ててちゃ、貴族らしくないわ!
と、大人の態度を見せてるように見えたが、笑顔の中に血管が少し浮き出ていた。

「ありゃ、そういえば教室に戻るんじゃなかったかなもし?」
「いいの、どうせ教室についたときには連絡言って終わりよ、無駄無駄。」
「なるほど。」


そんなこんなで、ルイズの部屋へ。
家具やらベッドやら、全てがイギリスの家のようだった。
そしてルイズは一からこの世界と情勢、常識を秋山へと話した。

「ほうほう、なるほどな、この世界にゃ魔法を使う奴が偉くて、使えん奴は貴族にはなれん…と。で、あしは御身さんの使用人になったっちゅーわけじゃな。」
「そう、つまり貴方は私より位が低いの、それもとっても、もう表せない位。後、使い魔は主人には絶対服従、じゃなきゃ飯抜き。」
「…(こりゃ、この国は相当文化が遅れとるのー…。)」

こういうカースト制みたいになっている国は腐敗するのを待つだけで、進歩が無いのだ。
国が衰退した後、残るのは形だけの秩序と価値の無い誇りだけ。

「なんか言ったかしら?」
「やっぱりこの国は異世界なんじゃのーって思ったんじゃ。」
「異世界?信じられないわね、あなたはどうせ頭でもぶつけて大事な情報がぶっ飛んだだけだとおもうのだけれど、ところでそこにある大きな丸い布は何?」

ルイズはそういうと、風呂敷に手を伸ばした。

「あ、まがっちゃいかん。」
「え?どうして?」

何故伊予弁が通じるのか、あの変な光る鏡を通過した影響だろうか。

「いや、色々なもんがはいっちょる、どうせ見ても分からんもんばかりじゃろう。」
「何よ、この私を馬鹿にする気?いい度胸ね。」

と言って、風呂敷の布と布が結んである所を解く。
中には、豆の入った袋と本が多数、よく分からない物と、それと世界地図があった。

まずルイズは本を読んだ、分からない。
炒り豆が入った袋を開けた、分からない。
その炒り豆入り袋をルイズの手から取って、今それをルイズの使い魔が食べている、分からない。
世界地図を見た、何処か分からない。

「嘘だぁ…。」
212日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:05:05 ID:7+kUlPTE
「ここまで見て信じないとは往生際が悪い。」
「当たり前よ、異世界って何よ、私達のすむ世界だけしか信じちゃ駄目よ、頭いたい人になっちゃうわ。」
「柔軟な頭を持ってこそ、真の貴族ではないかの?」

少し髪がゆれた、真の貴族ということばに反応したのだろうか?ならとても扱いやすい人なんだろう。

「ま、面倒だし今は信じてあげる。はー……、疲れちゃったわ、一から説明してもう口がくたくた。」
「いやー、だんだん。助かったぞな。」
「礼はいらないわ、もう寝る、明日起きて敬語を使わなかったり、無礼な態度を取ったら飯を抜くから、よろしく。」
「そりゃあ、きついっちゃー、はっはっはー。」

豪快笑いをしている秋山を余所目に。ルイズは服を脱ぎ、ネグリジェを頭から被る。
それを見て秋山は少しだけ呆れて、皮肉を言う。

「女性が見ず知らずの男の目の前で着替えるとは、自由なんじゃなー、トリステインという国は。」
「あんたが使い魔だからよ、男がいたらそんなはしたない事はしないわ。」
「うむ、それを聞いて安心した。」

ルイズが横になって明かりを消す。すると突然、思い出したかのように。

「あんたが餓死したくなければ、基本的な家事は全部やってもらうからね。」

と言った。
秋山にとってはそんな事はどうでもいい、生きて日本に帰る為に必要な事だと妥協できる。
しかし、今必要なのは寝る所である。

「ところで、わいらの寝る所はどこかなもし?」

ルイズは今にも眠りそうな顔で横になりながら、こっちを向き、藁がたばねてあるところを指差した。

「あ、安心したぞな…こんな硬そうな床じゃと流石にわいらでも厳しいからのー!」

書生時代畳の上で寝る事もあり、甲板を寝床にする時もあった秋山にとって、藁みたいな物があれば寝る事は容易い事だった。


朝が来た、海軍候補生時代の時からずっと、早起きをしてきた秋山には朝等障害にすらならない。

「いい朝じゃー!さて、お上を起こしますか――!!はっはっはー!」
「…朝からうるさいわね、おきちゃったじゃないの。あんたの横にある衣服、それ洗濯物だからよろしく、制服と下着持ってきて、下着はそこ。」

そういってルイズはクローゼットを指差す。
秋山がそこを開けると、下着がたくさん入っていた、イギリスでみたことはあったが、触るのは初めてである。

「ほー、褌を少しすべるようにしたもんかー、ほー。」
「いいからとっとと取りなさい。」
「ほれ。」

秋山が投げた下着を、ルイズが手に取り身に着ける。

「服」
「そこにおいちょる。」
「着せて。」
「お上は人使い荒いのー。」

と、言いながら服をぱっぱと着せてく。

「下僕がいるときは自分で着なくていいのよ、貴族は。」
「ほーなんか、貴族様はえらい御身分じゃのー。」
「そりゃそうよ、愚かな平民達は貴族についていけばいいの。」
213日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:06:17 ID:7+kUlPTE
そう言ってルイズは部屋のドアを開けて廊下に出て行った、秋山はさきほどのルイズの発言に少し腹が立ったが、子に切れても仕方ない。
廊下には3つほどのドアがあり、その一つのドアが突然開き、中から身長の高くスタイルの良い赤髪の女子が現れた。

「あら、ルイズ、おはよう。そちらの方はルイズの使い魔さんでしたっけ?」

ルイズは一度使い魔を睨み不機嫌そうに挨拶を返す。

「おはよう、キュルケ。えぇ、そうよ。」
「あら、あら、あら。本当に人間を召喚したのねぇ!すごいじゃない!」

秋山は、もはや何言うこともなしと言った顔で、ただルイズの背中で無口になっていた。
怒りが腹から喉元まで出掛かっているのだ、この差別加減に。
が、子に罪は無く原因は国にありと、思った秋山の目には逆に生気溢れるものとなっていた。
そう、南方熊楠もイギリスで差別と闘っている、なら自分に出来ないことはありん。
と、考えているのだ。

「にしても、身長は小さいけど、なんか心なしか大きく感じるわね、何故かしら。」
「さぁ、軍人だからじゃないの?」
「いえ、私も祖国で空海軍軍人を見た事は何回もあるわ、体格は貴方の使い魔より二周り以上大きい癖に、なんかやたら小さく感じたのよね。」

それは何故か、忠誠心にさほど差はなく、国を思ふ事に差はない。
しかし、心に持っている志が違った。
我が国は大国だ。と、自惚れる将校と。いかなる状況にも怖気ず、日々国の安全を願う将校。
この軍人が何人その国にいるか、それが戦の勝敗を握る事もあり……とかなんとか。

「ま、いっか。貴方、名前は?」
「秋山真之少尉だ、逆に質問したい、そこにいる巨大ヤモリ?いや、トカゲ?は御身さんの使い魔とやらかな?」
「変な名前ねぇ…、あぁ、この子?この子はサラマンダーのフレイムよ、可愛いでしょ?」

秋山がフレイムに近づく、フレイムは一瞬警戒の目で見るが、すぐに秋山になついた。

「おー、かわいいのー。よしよし、はいお手。」

フレイムがぽんっと、秋山の手に手を置く。
ルイズが呆れながら聞く。

「熱くないの?」
「ボイラー室よか涼しいくらいじゃ。」

キュルケがアゴに手をあてがえて。

「使い魔どうしだから仲がいいのかしら?ま、いいわ。じゃ、お先に失礼。いくわよ、フレイム。またね、アキヤマとゼロのルイズさん」
「またのー。」

秋山がそういうとフレイムも寂しがるかのように鳴いた。

「果て、ゼロとはどういうこっちゃ?もしや御身さんこの世界で言う魔法が使えんのかな?」
「つ、使えるに決まってるじゃない、このルイズ様がそんな――。」
214日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:07:59 ID:7+kUlPTE
そんなわけで少し歩くと食堂だった中にはすごい長いテーブルが3列そこに椅子。
学年別で席が分けられているようだった。

「おーガイな食堂じゃなー、三桁はまず、座れるじゃろうな。」
「『貴族は魔法をもってしてその精神となす』」
「は?」
「は?じゃないわよ、貴族のモットー、貴族たるべき教育を、存分に受けるのが、このトリステイン魔法学校、ゆえに食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ。」
「ふむ、なるほど(ようするに無能者製造学校ってわけか…。)」

この国の社会システムはなかなか厄介だ、教育の場ですらこれだ。伝統を守る頭の古い奴しか高い所にいれない仕組み、これじゃ、わいらの世界で植民地にされるのも時間はかからないだろう。
そう、秋山真之は考えた、しかし。まず秋山少尉がいる世界ではないので、それはまず杞憂に終わるだろう、多分。

「ま、あんたみたいな芋軍人がこんな所普通はこれないのよ、感謝しなさい。」

ルイズの言うとおりに、感謝をしようとしたら、更に言葉が追加された。

「あ、ちなみにあんたが食べるとこはそこ。」

そこにあったのは肉のかけらが浮いたスープと、ぱんが二切れであった。

「…まぁ、兄上はこれより少ない食料で、今まで生きてきたんじゃ…大丈夫じゃろう。」

兄上…秋山好古は、本当に余分な食事を取らず生涯小食をつらぬいたのであった。
この食事程度なら兄上が食ってる分よりかはまだ量があるだろう。

「何ぶつくさ言ってんのよ…、偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします。」
「いただきます。」

どうだろう、この簡潔さ『いただきます。』
この一言で生産者、元となった食材、調理してくれた人、全てに感謝しているのである。
それに比べ『偉大なる(中略)』
これだけながいのに感謝しているのはブリミルとやらと女王陛下のみである。
礼に対する念の差である。
とにかく、秋山はこの料理を平らげる事に専念した。

「ごちそうさまでした。」
「速っ!」

なんと2分もかからず完食。
215日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:09:21 ID:7+kUlPTE
食べ終わると、秋山は突然キョロキョロしだして、そこらに落ちているパン屑を集めだした。

「おいおい、ルイズの使い魔が空腹のあまりパン屑にまで手出してるぜ!」
「HAHAHAHAHAHA」
「……馬鹿。」

ルイズがあまりの恥ずかしさに肩に首をうずめる。
そんな嘲笑も気にせずパン屑を集め終わると、それを皿の上で練り出し

「お嬢様。」
「おー。」

まずパン屑をルイズの形に練った。
特徴を捉えているところに素直に感嘆した学生達から言葉が漏れる。

「フレイム。」
「あらあら。」

次はフレイムの形に。

「あの人。」
「お、コルベール先生だ。」
「頭のテカりも再現してやがる。」

次は…流石にネタが無い、少し長い時間こねて
秋山は最終手段に出る。
こねたものを手のひらに乗せて、その卑猥な物を晒そうとした瞬間

「ちん―――げふぅっ。」

秋山の顔にパンチが一発。
そのパンチの速さは周りの生徒にも見えなかったという。

「な、なんつーもの作ろうとしてるのよ、この馬鹿!」
「た、退屈じゃったから。」
「……もう、いいわ。とっとと教室にいきましょう。」

顔面に痣一つできた秋山はとぼとぼルイズの後ろについていった。
216日露の人 ◆nS4CkbLFTA :2009/08/29(土) 22:11:28 ID:7+kUlPTE
終了です。

日露戦争物語は16巻より前は良作なんですがそれこえると

パンパンパンパンパンパンパンパンです
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:11:51 ID:RXlA6TbK
The sien
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:13:52 ID:RXlA6TbK
ありゃ、微妙に支援が遅れた
ともあれ、投下乙
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:17:47 ID:VopZOvTi
乙です。
原作知らないけどこの男ww
チ〇〇はヤバいだろw
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:24:55 ID:t0H8eAti
パンパンパンパンパンパンてなんじゃw
まず取りあえずはテンプレ展開ですかな。今後に期待乙

>>205
ちゃうねん。「強さ比べなんて不毛だぜー」って言いたかってん。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:24:56 ID:Z1aa855f
>>200
ウサギは下手すりゃスーパーサイヤ人にも勝てる可能性があるキャラだぞ。
正直サイトには荷が重い。

>>154
>英雄級
実は「神話」級なんだよな>柊蓮司
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:27:30 ID:idWz3sdx
アックマンと、うさぎはDBの鬼札
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:36:57 ID:ApQ37+nA
>>222
「天さん! ボクの超能力が効かない!!」

一定以上の戦闘力持ちの奴には魔法・超能力の類が効かないっぽい……
ブウはベジットを飴玉に変えたが、ある程度戦闘力が近いと効くのか?

クリリンの気円斬は初見殺しの技で、うまくすれば超サイヤ人も殺せる鬼札だな。
メイジも水系統なら絡めてでZ戦士とやり合えるんじゃ。
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:36:58 ID:4Wgcleif
せっかくクロスするんだからハルケギニアの魔法は集中させれば気と同一の力があるとか、
シエスタは生き残ったサイヤ人の孫とかパワーインフレさせればいいじゃないか
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:46:11 ID:NL+7mexA
>>224
それ、下手したらシエスタにしっぽ生えんか?
いや、悟飯はともかくパンにしっぽは見あたらなかったけれども。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:51:22 ID:NL+7mexA
っと、連投になるけどそろそろ……
ほぼ一ヶ月ぶりにお久しぶりです。ある程度書けてきたので、再開したいと思います。

では他にいらっしゃらなければ22:55から、行きます。
227SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:52:34 ID:NL+7mexA
うわ、名前書き損ねるとか慌てすぎだ俺……
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:52:40 ID:3++1RASe
>>225
パンはサイヤ人の血が薄いからだったような
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:53:04 ID:52HdQ2s5
どんまいどんまい!とりあえず期待しつつ支援
230SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:54:24 ID:NL+7mexA
mission 07 Under Her Control


 しげしげとアニエスはその手に握る剣を見つめる。
「ふぅ……ん……」
「どうだい?なかなかの出来だろう」
「どうも軽いな……もう少し重量のある剣はあるか?」
「なら、そうだな。そこの一番上にかかってるヤツなんかはどうだ」
 武器屋の主人に促され、示された一降りを取ってみる。
 スコールは手持ち無沙汰で店内を見ている。
(剣に弓に斧、槍……銃もあるが、とにかく旧式の武器ばかりだな)
『鞭は無いのかしら?まぁ、そこまで使える物が有るとも思えないけど』
 だがスコールの視界を借りるキスティスの得物は、見あたらない。
 今はもう、タルブでの激戦から十日が経過していた。


 会戦の三日後に、スコールとアニエスは王宮へ呼ばれていた。それもアンリエッタ『女王陛下』の面前に。
 スコールにはよく判らないが、アニエスの驚きぶりからすると余程凄いことであるらしい。
(ヴァリエールを救出したのが余程効いたということか)
 本陣へ彼女を連れて行ったところ、陣営奥からアンリエッタ王女自身が飛び出してきたのだ。どうも彼女は直接の友人だったらしく、それはそれは王女は喜んでいて、スコール達の前で延々と話し続けていた。
 結局『後日追って恩賞を与える』と言ったのは、見かねたように言った枢機卿の方だった。もちろん、王女とヴァリエールは気づいた風もなく話し続けていたが。
(周りが見えていない、とも取れるが)
「女王陛下のおなぁ〜りぃ〜……」
 謁見の間に、間延びした声が響き渡る。
 まるで時代劇のようだな、と片膝を突いてうつむいた態勢のままスコールは思う。
 ちなみに、宮廷内の作法が出来ていないスコールはアニエスから「不用意に口を開かぬように」と釘を刺されている。
「顔を上げなさい」
 ゆっくりとおもてを上げるアニエスにならってスコールも玉座へと顔を向けた。
「この度の戦においての功労、大変素晴らしいものでした。まずは、この労に対しての報奨金を」
 近侍の者二人が進み出て、二人それぞれに一枚の紙が渡されるのを両手で受け取る。
(紙幣があるなど聞いたことがないが……いや、これは)
 小切手、であった。少ない額だが、まぁ平民と呼ばれる者達にはこの程度なのかも知れない。
「ありがたき幸せ」
 アニエスが頭を下げ、スコールもそれに倣う。
「……あなた方に提案があります。聞いて頂けますか?」
「は?何でしょう?」
231SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:55:21 ID:NL+7mexA
 予想外の展開に戸惑いの声を上げる。
「今後は私に……王宮に仕えてみるつもりはありませんか?」
「それは……」
 こちらに向けられたアニエスの顔に、首を横に振ってみせる。
「お恐れながら、我らは下卑たる傭兵の身。とても王宮には……」
「もし私の元に付いてくれるのでしたら、シュヴァリエの称号を下賜しましょう」
「はぁっ!?」
 これにはアニエスばかりではなくスコールと女王を除いたその場の全ての者が目を剥いた。
(シュヴァリエ……?何のことだ)
「でっ……!いえ、陛下!何を!」
「静まりなさい。私の決めたことです。何か異議が?」
 キッとアンリエッタの視線が謁見の間を見渡す。
「平民をシュヴァリエに……貴族にするおつもりですか!?」
「前例がありません!」
「前例がなければ作るのみです!」
 アンリエッタの一喝が放たれたが、それでも尚謁見の間でざわめきは収まることを知らなかった。


 混乱深まる場で、『事は重大である。彼ら自身にも考える時間が必要であろう』と述べたマザリーニ枢機卿の言葉を鶴の一声として、謁見は一時中断。スコール達は別室に案内された。
「アニエス、シュヴァリエとは何だ」
 先程の会話で出てきた聞き慣れぬ単語を今の内に尋ねておく。
「シュヴァリエというのは、何かしらの武勲を立てた者に送られる騎士の称号のことだ。基本的に貴族にしか送られることのないものなのだが……」
「騎士……か」
(俺は『魔女の騎士』で十分だ。だが……)
「それで、さっきあれだけの騒ぎになった訳か」
 納得したと頷くスコールにアニエスも頷き返す。
「先程のアレは我々平民を貴族と同等に扱うということだからな」
 だがあの反応を見る限り、それが貴族達に受け入れられるとは思わなかった。
「俺は……さっきの話は受けない。俺はそもそもこの国の人間でもないからな。それにさっきの貴族の反応を見る限り、デメリットのほうが多いようだ」
「それはそうだな……」
「だがあんたは違う」
「?」
 何のことかといぶかしげな顔をする。
「あんたの仇……見つからない奴、正体すら掴めない奴が居るんだろう。国の中枢に触れることの出来る位置に着けば、探すのも容易いはずだ」
「!……そうか」
 スッとアニエスの目が鋭くなる。
「……私が居なくなって、お前はどうするんだ」
「この二ヶ月、色々教えてもらったおかげでもう大丈夫だ。俺のことは気にしなくていい」
「…………」


「答えは決まりましたか?」
 返答のため再び謁見の間で二人は傅く。
「はっ!」
 短く肯定の意を示す。
「では……?」
「……こちらのスコール・レオンハートという男は、ハルケギニアの出ではありません」
 語り始めたアニエスの言葉に、ほぅ、と周りが興味深そうな目をスコールに向ける。
「故郷ではそれなりの身分にある故、帰国の算段が付き次第故郷へ帰ろうとしており、お仕えすることは叶わぬそうです」
「そうですか……」
 いささか気落ちした様子のアンリエッタに、ほくそ笑む他の貴族達。
「では、あなたは……?」
232SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:56:21 ID:NL+7mexA
 女王から尋ねられ、アニエスは短く息を吸う。
(これが……良いはずだ。これで、良いんだ)
「私ごとき卑賤な身分の者にお声をかけて頂き、この上ない喜びでございます。
 ……ですが、やはり所詮は一平民に過ぎません。宮仕えをするのは分不相応かと……」
 ようやく貴族達から緊張感が抜けて、隣にいるスコールがアニエスへ驚きの目を向ける。
「私は平民故にあなたを、と思ったのですが?」
「いえ、私には荷が勝ちすぎております故……」
「しかし……」
「陛下、もうよろしいでしょう」
 マザリーニ枢機卿が横から口を挟む。
「無理強いをしても遺恨を残すのみです」
「……判りました」
 しぶしぶ、まだ納得がいっていない様子ながら女王は引いた。
「しかし公爵家の三女を助け出し、更に敵の総大将の首級を上げたにしては、その恩賞はまだ少ない。何か望みはあるか?」
 それを引き継ぐようにして枢機卿が一歩前に出ながら尋ねる。
(その望みを聞く代わりに、シュヴァリエの事を二度と持ち出させないつもりか)
 丁重なことだ。こちらにはそんな気はないというのに。
「それではお願いがあります」
(レオンハート?)
 それまで黙り続けていたスコールが急に口を開いた。
「こちらのアニエスは、幼少期にとあるメイジに助けられているそうで、せめて一言でもお礼をしたいと思っていたのですが、生憎そのメイジが何某かの部隊に所属していたメイジであるということ以外何も知らないそうなのです。
 是非とも彼女の恩返しのために、その部隊の名簿を見せて頂きたく思います」
「…………」
 よくもまぁこんな嘘八百をすらすらと並べ立てられるモノだとアニエスは口をあんぐりと開いた。


 城門をくぐって、慣れない緊張感から解放されてスコールは呆れたように言った。
「どういうつもりだ。せっかくのチャンスを……」
「どういうつもりだとは……非道い奴だな。お前もあの貴族達を見ただろう。あんな針の筵の中に身を投じろと言うのか?」
 軽く冗談めかしてそう言って見せると、あからさまにむっとした表情になった。
「咄嗟にあんたにとって重要な情報を引き出せるように頼んだから良いものの……仇討ちの機会をフイにするつもりだったのか」
「いや、済まない。冗談だ。その事については感謝している」
「なら、何で……」
「その……上手く言えないが……」
 少し照れくさいな、と頬を掻きながら軽く息を吸う。
「今回の戦いもそうだった。お前が残って戦ってくれたのは、私のため、だろう?擬似魔法デスを教えてくれたのも、そうだ。色々と便宜を図ってくれて……。
 それは、お前にとって私という存在を仲間として、受け入れてくれたからだと思える。私にとっても、お前は、大切な仲間だ。だから、復讐を果たすためとはいえお前と一緒にいられなくなるのでは意味がないと思った」
「仲間だから……?」
 こくりと、頷く。
「私とお前はコンビで凄腕の傭兵……それじゃダメか?」
「いや……きっと、それが正しい。俺も、意識したことはなかった。でも確かに、省みてみるとあんたはもう俺にとって仲間だ」
 和らいだ笑顔を浮かべるスコールに、アニエスは満足げに頷く。
「良かった……ハハハ、まるで愛の告白でもしたようだな」
 恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
「そんなものだろう。大切な奴に、素直な気持ちを言うというのは少し照れくさいもんだ。愛の告白だろうと、友情の確認だろうと」
「それもそうか」
 しかし、とその苦笑をスコールへと向ける。
「咄嗟によくあれだけの嘘を並べ立てられたな?恩人を捜すなどと、真反対も良いところだ」
233SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:57:22 ID:NL+7mexA
「SeeDの任務は潜入もあり得る。機転も重要な要素だ。恩人か仇か、どちらにしろ人捜しには重要な理由付けだが、メイジを前に仇だなどと真正直に言うものではないと思っただけだ。拙かったか?」
「いや、それで良い。それで」
 静かな笑みの底、瞳の奥に暗い復讐の炎にアニエスは再び火を点した。
(閲覧出来るのは三日後……他の者達の居所は既に情報屋に調べさせてある。後は期を見るだけ……。
 実験小隊隊長……名も顔も知らぬ貴様を、今度こそ追いつめてくれる)


 タルブ平原会戦において、その剣をかなり酷使したアニエスは、行きつけの鍛冶職人に愛剣を預けると、剣が戻ってくるまでの代用品を探して城下街を回っていた。
「……ダメだな、どうもしっくりこない。重さも長さも良いが、幅が広すぎて重心がぶれる」
 ため息混じりに、手に取った剣を店主へと返す。まだまだ難航しそうな剣選びを横目に、スコールは店内を見回し続ける。
(……いくら何でもこんなものまで置いて良いのか?)
 その目線が止まったのは、表面がさびで覆われた片刃の剣だった。
『何だかもう骨董品って感じね』
(店の管理も、接客も、まるでなってないな……)
 呆れながらもその剣を取ってみる。そういえば最後に普通のブレードを使ったのは何時だったかな、と思い返そうとすると
「う、うおあぁぁぁあぁぁぁぁあああ!?な、何だ何だぁ!?」
「なっ……」
 突然悲鳴が響き渡る。その声の出所はどう考えても
『え!?嘘!』
(剣が……喋った!?)
「誰なんだお前!?……いや、何なんだお前ぇぇええええ!」
「あの剣……インテリジェンス・ソードか?」
 大声に驚いたアニエスが、スコールの方へ視線をやりながら店主に尋ねる。
「ああ、どこのメイジが始めたかしらねぇが、うるさくってかなわねえ奴だよ。あんなのは」
「インテリジェンス・ソード?」
「触るな!俺っちに触れるんじゃねぇ!持つなぁぁぁぁぁ!」
「意志を持った剣の事だ。見ての通り、喋る剣だな」
 アニエスの説明を受けて、未だにぎゃあぎゃあ騒ぐ剣をしげしげと見る。
「てめえ中に何飼ってやがる!?俺をどうする気なんだぁっ!」
「何?」
(中……?)
「うるっせぇぞデル公!訳わからねぇこと叫んでねぇで少しは静かにしろいっ!」
「デル公?」
「ああ、何でもデルフリンガーって銘らしくてな」
「お、おおおお親父ぃっ!とっととこいつら店から出してくれ!というか頼むっ!頼みます!マジで!俺から離してくれ!こいつ何か中にいる!得体が知れねぇのが何か居るぅぅぅぅぅ!」
(まさかこの剣……)
 その口ぶりは、スコールの中に何かが居ると言いたげで、そしてスコールの中にいるのは当然G.F.達な訳で。
『ジャンクションが判るのかしら?』
(気づいたのか?いや、どころかこいつ……)
「ああもう判った判った!おいあんた、すまねぇがその剣……」
「売って欲しい」
 店主の方を見て、強引に語尾を引き継ぎつつスコールはそう言った。
「なにぃぃぃぃいいいいいい!?」
「お前……そんな錆びた剣をどうするつもりだ」
「もちろん使うんだ。店主、いくらになる」
「やめてぇぇぇえええええ!買わないでぇぇぇえええぇぇぇ!」
 デルフリンガーの悲痛な叫びは一切無視され話は進む。
「そうだな……100エキューってところか」
「冗談だろう。あんな錆びた剣だぞ」
234SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:58:21 ID:NL+7mexA
「錆びたっつっても、一応インテリジェンス・ソードだからなぁ……ま、それなりに値は張るさ」
 口を尖らせるアニエスに、店主は首を振る。
「剣としての実用性を考えろ。40が良いところだ」
「どこぞの物好きな貴族様が買うかも知れないだろう?90」
「こんな店に貴族が来るものか。41」
「一枚刻みかよ!そんな値段交渉聞いたことねぇよ!85!」
「そもそも貴族が、あんな錆びた剣に目を付けると思っているのか?42」
「譲歩する気まったくねぇなこのアマ!?80!」
「良い口の利き方だな。40」
「下がるのかよ!」
『アニエスさん、ホント頼りになるわね。私も見習おうかしら』
 値切りはアニエスに任せてスコールはデルフリンガーを眺める。
(錆びているだけじゃない……ずいぶん年季が入っているようだが……それも一因か)
「何なんだよお前はよう……得体の知れないモン沢山体に飼ってやがって!」
 すっかり萎縮してしまったのか、弱々しく罵る。目が有れば涙目になっていただろう。
「わかった、わかったよ!50にすりゃ良いんだろ!?」
「話せば判るじゃないか」
 にんまりとアニエスが笑みを浮かべる。が
「ただし」
 店主の方も意地の悪い笑みを浮かべる。
「そいつ用の鞘は、別売りだぜ……?」
「鞘?」
「聞いての通り、やかましい奴だ。こいつで黙らせなけりゃいくらでもしゃべりやがるぜ」
「くっ……」
 よもや隠し球が有ったとは、と臍を噛むが、その横でひょいひょいとスコールがエキュー金貨を差し出していく。
「鞘は要らない。どうせ使わないからな。それなら、金貨50で良いんだろう」
「な、なにぃ?おい、判ってるのか?これがないと……」
「必要ないと言っている。これで50枚だ」
「ああ……悲しきは所詮剣のこの身……持ち手は選べねぇ……」
 50枚の金貨を差し出すと、アニエスに向く。
「そっちは気に入ったものが見つかったか?」
「いや、ダメだ。次に行こう」
 首を振るアニエスに従って、店の外へと出た。


 それからもう三軒ほどの武器屋を巡り、ようやくそれまで使っていた剣と変わりない剣を見つけ、二人はねぐらへ戻るため町を出た。
「……で、どうするんだその剣は」
 改めて相棒に向き直ると、スコールは逆手で持ったデルフリンガーを軽く掲げる。
「良い機会だからあんたにも見せておく。G.F.の抽出だ」
 夕焼けの中を歩きながら、小さく呟く。
「ドロー」
 錆びた剣からぱぁっと数条の光が昇り、スコールに吸い込まれる。
「うわああぁぁぁぁああああああ……」
 G.F.デルフリンガーをドローした!
 錆びた剣はスコールの手の中で音もなく崩れ去った。
「これは……」
「G.F.召喚、デルフリンガー」
 掌を上に向けると、剣の幻影が現れる。それは先程まであった錆びた剣によく似た形状をしていたが、錆びや汚れは一切見あたらない。
『……おでれーた。俺っちは一体どうなったんだ?』
 ガーディアン・フォースと化し、幻影の中とはいえ本来の姿を取り戻したデルフリンガーが自ら問う。
「あのインテリジェンス・ソードから、意識をG.F.として取り出したのか……」
「今後、あんたがG.F.を使うようになることがあれば、参考にしてくれ」
『そうか!おめーの中にいる連中も今の俺っちと同じ状た……』
 話している途中のデルフリンガーを戻す。
「面白いG.F.だ。一定量の魔法攻撃は全て吸収してくれるらしい」
235SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 22:59:22 ID:NL+7mexA
 軽く目を閉じてスペックを推し量る。
「しかしお前、よくこれがG.F.だと判ったな」
「感覚的な部分が大きいので上手く説明は出来ないが、何がドロー出来るのかというのはなんとなくわかるものだ」
 そういうものか、とうなずき返しながら歩き続けるアニエス。
 もうじき日も沈むこの時間、二人は今のねぐら代わりとしているラグナロクに辿り着いた。
 先の謁見の際、実験小隊の情報はアニエス側が求めた物であり、スコールの側が提示した代替の恩賞は別に存在していて「今後所持するフネに掛かる一切の税金を免除する」というものであった。
 おかげでこうして、誰憚ることなく近場の森にラグナロクを伏せておくことが出来ている。
 王宮の連中が密かに調べに来ているようだったが、パスコードを設定している入り口に彼らが入れるとは思えないし、しばらく様子を見ていたが装甲をぶち破ろうという程の強行さは見受けられなかったので、そちらは放置してあった。
「お帰り、委員長」
「!?何者だ!」
 ラグナロクのメインブリッジへ行く途中に現れたその顔を見て、アニエスは剣を抜き、スコールは動きを止めた。
「ジョーカー?CC団の」
「そ。久しぶりだね」
 ハルケギニアではついぞお目に掛からないような服装をした少年が手を挙げる。
『ジョーカー、最近見かけないと思ったらこんな所に!』
 スコールの中でキングも驚きを隠せない。
「何故こんな所に……」
 予期せぬ存在に目を見開く。
「何故って、そりゃ俺がジョーカーだからさ」
 飄々とした受け答えにスコールは頭を押さえた。
「知り合いなのか、レオン」
「ああ……俺の部隊の一人だ」
「よろしく、ジョーカーって呼んでください。専門は、兵站です」
「ああ。私はアニエスだ」
 アニエスに軽く一礼すると、スコールの方にジョーカーが向き直る。
「で、どうするの委員長。カード?それとも買い物?武器の改造も引き続き受け付けるけど。ああ、もちろん俺はギル払いも受け付けるよ?」
 カードの束の一番上の一枚だけをくるくると回しながら尋ねる。
「ギル?」
「俺たちの使っている通貨単位だ。良いのか?」
「ああ。あんたなら、俺たちが帰る道を作れるって思うからね。それならギル払いでも問題ないだろ」
 帰る道を作る、という言葉。やはり、ジョーカーも自分と同じようにこの世界に連れてこられたクチらしい。
「その期待に応えられるよう、務める」
 こくりと頷きかけながら、相棒の方を向く。
「……アニエス、銃を持っていたな」
「あ?ああ……」
 最近遠距離攻撃は擬似魔法ばかりで銃はほとんど使っていないが、まだ持っている。
「こいつに預けてみてくれ。使い勝手がかなり良くなる筈だ」
 カードを懐に仕舞いながら、ジョーカーはこくりとアニエスに頷きかけた。


デルフリンガー Lv22 HP1785

修得済みアビリティ 未修得アビリティ 派生アビリティ

属性防御J 属性防御J×2―→属性防御×4
体力J 運J
精神J ST防御J――――→ST防御J×2→ST防御J×4
まほう 回避J
アイテム GFHP+10%――→GFHP+20%→GFHP+30%
G.F. ぼうぎょ――――→かばう
ドロー オートシェル
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:00:16 ID:e3MiwyYU
デルフ……哀れな
237SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2009/08/29(土) 23:02:16 ID:NL+7mexA
今回初めてオリジナルのG.F.を出しましたが、今後他に出ることがあってもデルフのようにゼロ魔原作に準じるか他FFシリーズで出た召喚獣とアビリティに準じます。

それでは今回はここまでで
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:06:15 ID:+CiZsiHi
乙でした。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:10:11 ID:S9ED8h1l
乙w
デルフにも新境地が・・・これは予想しねぇ〜〜!!
しかし・・・今後他に・・・?

うーん、予想できん
これはいよいよ楽しみですよ
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:11:39 ID:52HdQ2s5
オォオォウ…支援を忘れていた。

とりあえずレオンの人乙です。
そのペースでも良いので物語を完結まで引っ張ってください。期待してます。

オォオォウ…デルフ。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:15:52 ID:kVjecWgX
乙。
てっきりFF6の「まふうけん」でもつくかと思ったら、順当に防御系アビで固められてるのか。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:18:11 ID:VlfK6m9B
SeeDの人、乙でしたー。
デルフ、強く生きるんだ……きっといつか、多分、もしかしたら、可能性に過ぎないかもしれないが、良い事があるかもしれないから。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:39:50 ID:VopZOvTi
スコールの人乙です。
デルフw
この展開は予想外ww
次回を楽しみに正座待機。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:00:44 ID:t9vyXAQR
小ネタの投下OKでしょうか?
仮面ライダーキバから、サガーク召喚ネタです
245ROOTS OF THE FUNG 1/9:2009/08/30(日) 00:04:59 ID:t9vyXAQR
 アルマは森で一番高い木の枝に座り、じっと遠くを見ていた。
 上部が白くなった大きな山々は、どこまでも続き、いつ果てるともわからない。
 山を見ながら、アルマは時々背中の翼を少しだけ開いたり、閉じたりしていた。
 遠く見えるその山々は、空を自在に飛び回る翼人たちでさえ入りこむことのない異境の地だった。
 アルマはいつもと変わることのない景色を、何を考えているかわからない、あまり瞬きをしない瞳で見つめている。
 翼人の中でも、アルマは変わり者として知られていた。
 仲間とあまり交わることなく、暇さえあれば遠くの景色を見つめてぼんやりとしているのだ。
 下手をすれば、寝食さえ忘れてそうしている。
 ただし、そのことを咎めたり笑ったりする者はいない。
 何故かといえば、アルマには他の者が見ることのないものを見つめ、聞くことのできないものを聞くからだ。
 その年の天候や森の様子、さらに人間たちの行動まで遠く離れた場所にいながら、全て見通すことができた。
 わりと最近、人間たちが彼らを追い出そうとすることもぴたりと言い当てた。
 そのおかげで翼人たちは相手の動きを事前に知り、対策を練ることができたのだ。
 今はその人間たちとも一応の友好関係になりつつある。
 その一役を買った人間の策も、アルマは難なく読み取っていた。
 翼人があえてそれに乗った理由は、
「凶兆なし」
 そのように言い切ったアルマの言葉を信じてのものだった。
 翼人は争いの好まぬ種族である。
 もしも人間たちが悪しきことを目論んだとしても、その時は前もってアルマの知るところになるだろうと考えたのだ。
 それほど、アルマの予言は信頼されていた。
 枝の上でじっとしていたアルマは、急に違うほうへと顔を向けると、ふわりと飛び立った。
 これはとても珍しいことだった。
 アルマが飛ぶ方向に、すぐにひとつの影が見えた。
 アイーシャと、その夫となった人間の男である。
 さらにそのずっと先には、青い風竜の姿があった。
 風竜の背には、青い髪をした人間の娘が乗っている。
 人間よりもはるかに優れた視力を持つ翼人の眼は、その姿をハッキリととらえていた。
「アルマ」
 アルマの姿を見たアイーシャは嬉しそうに近づいてきた。
 その表情は、今が幸せの絶頂というせいもあるのだろうか。
 しかし、アルマはアイーシャに何の興味も示さず、遠くの竜と人間の娘を見つめていた。
「あの人が、どうかしたの?」
 アルマの予知する力を知っているアイーシャは、少しばかり表情を曇らせて尋ねた。
 何も知らぬ人間の男は、ぽかんと締りのない間抜け面をさらしているだけだ。
「あの人間」
 アルマは、少女とは思えない重々しい声で言った。
「あの人が……?」
 アイーシャはアルマの言葉に、不安に顔を引きつらせ出した。
 アルマがこのような言葉を出す時は、悪い予知だと決まっているからだ。
 そして、それは決して外れたことがない。
「あの人は、いずれとても惨たらしい死にかたをするよ」
 アルマは、感情のこもらない瞳で断言した。
「智恵もある。力もある。人の心を惹きつけることもできる。でも、『本当のこと』は何も見えていない」
 淡々と、アルマは言う。
「な、いきなり何を言うんだ!!」
 アルマの予言に、人間の男は怒り出した。
 男にしてみれば、身も知らない小娘に、自分たちの恩人が悪し様に言われたとしか思えなかったわけだ。
 しかしアルマは男のことなど、まるで眼中にはなかった。
 言葉が届いているかだろうかすら、怪しい。
 アルマはゆっくりと、遠いほうへと顔を向けて、眼を閉じた。
「違う国で、光が大きくなる。最初は小さいけど、やがてとても大きくなる。でも、光が強くなればなるだけ闇もどんどん濃くなっていくよ」
「そんな」
 アイーシャは身を震わせて、アルマと同じ方向を見た。
 その先に、トリステインという国があること。
 ルイズという名前の少女が住むことを、アイーシャは知らない。
「闇はどんどん大きくなる。光は闇を消せない。輝けば輝くほど闇は強く濃くなる。でも、闇はたやすく光を呑みこむよ……」
 アルマの言葉は、どうにもならない重みを持って微風の中に響いた。
246ROOTS OF THE FUNG 2/9:2009/08/30(日) 00:09:10 ID:t9vyXAQR
 それから時は過ぎる。
 無能王、いや狂王ジョゼフが倒され、シャルル・オルレアンの遺児、シャルロットが女王に即位することが国中に伝えられた。
 万雷の拍手のもとで。

 薄闇が、地上へとその幕を下ろし始めた頃である。
 一人の年若い娘が、森の木陰に腰をおろしていた。
 夜の森は危険であり、慣れた地元の者でさえめったに入り込むことはない。
 もしも飢えた狼の群れや、熊にでも出くわせば命はないからである。
 運悪くオーク鬼などに出くわせば、さらに惨い目にあうだろう。ゆえに日暮れ前に急いで帰るのが定石であった。
 それにもかかわらず、少女は座り込んだまま動こうとはしなかった。
 別にどこかを怪我しているわけでもない。
 その服装は、明らかに森に入るようなものでなかった。
 娘は長い髪を苛立たしげにかき上げて、思案に暮れていた。
 すぐ前に「帰るのが定石」と書いたが、そのようなことを、この娘は知らない。
 仮に知っていたところで、娘の行動に大きな変化があるわけでもなかっただろう。
 それというのも、娘には帰るべき場所が存在しないからである。
 本来であれば、自分が住まう薄桃色の宮殿に帰るところなのだが、その宮殿も今や自分のものではない。
 昨日までは、この国の王女という身分であったのだが、今は一人の小娘に過ぎない。
 これだけなら、まだ希望というものは持ちようがあるかもしれないが、それではすまなかった。
 このイザベラという娘は、ガリアを支配するジョゼフ王の一人娘である。
 ジョゼフはすでに故人であるから、支配していたと書くほうが正しい。
 あれこれつらつらと書くのは面倒なので、ごくかいつまんで説明すると、
「ジョゼフは、シャルロットという王族の娘に倒された」
「シャルロットはジョゼフと王位を争ったオルレアン公の娘である」
「そのシャルロットがジョゼフに代わり、王位につくことになった」
 大よそこういったことになる。
 こうなれば、先王の娘であることや、王女であるということはプラスどころかマイナスになってしまう。
 イザベラには人望というものがまるでなかったし、シャルロットへの陰湿な仕打ちでオルレアン派から恨みも買っていた。
 悪ければ戦犯の一人として処刑される。
 良くても国外追放くらいにはなるだろう。
 ヘタをすると奴隷として一生はいつくばって暮らせねばなるかもしれない。
 そのことを想像して、イザベラはぶんぶんと首を振るった。
 考えるだけで死にたくなった。
 そこで、自害という選択肢があることを、今さらのように気づいた。
 国を追われるような立場の自分を、一体誰が助けてくれるだろう。
 つらつらと考えてみたが、まるで思い当たるものがない。
 今後の人生を考えてみるのなら、苦しまないうちに死ぬのがもっともいいかもしれなかった。
 方法はどうしたらいいのだろうかと考えると、これがなかなか難しかった。
 どこか身投げをすれば手っ取り早いかもしれないのだが、仕損じて長く苦しむのは嫌だ。
 首吊りというのが簡単で確実そうだが、使えるようなロープや代わりになるようなものが手元にはない。
 かといって、東方に伝わるという聖者でもあるまいし、生きたまま獣に食われるなど絶対にごめんだった。
 生きるということは大変だが、死ぬこともなかなかに大変らしい。
 イザベラは他人事のように考えながら、小さなくしゃみをついた。
 日は沈むに連れて、気温も下がっているらしい。
 凍死というのもあるが、時候柄難しいし、ヘタに風でも引きこめば余計な苦しみを味わうこだけだ。
 ああ、どうしようどうしようと思うだけで、結局はどうにもならないことを思い知るだけだった。
 自殺という選択と同時に、ただ何となく死にたくないという動物的なものがこみ上げてくる。
 泣きたくなったが、涙は出なかった。
 イザベラ本人に自覚はないのだが、鏡を見れば人形のように無表情な顔が映ることだろう。
 風が吹いてきて、イザベラの体を無常になぶる。
 イザベラは膝を抱えてうめいた。
 これからどうすればいいのだろう。
 いくら考えても、結局どうしようもないという結論になるのだが、少したつとまた同じようなことを考える。
 無意味な堂々巡りを頭の中で繰り返すだけのことだった。これほど無為な時間が他にあるだろうか。
 不安のために心はどんどん弱まっていき、しまいにはシャルロットに許しを乞おうという気持ちがわいてくる。
 だが、それは生まれてすぐに蛆虫のようにひねり潰されてしまう。万が一にも助かる可能性があるかもしれないが、それでも、それだけはどうしても嫌だった。
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:09:16 ID:sw/C61Xc
支援
248ROOTS OF THE FUNG 3/9:2009/08/30(日) 00:10:24 ID:t9vyXAQR
 シャルロットに頭を下げるということを考えるだけで、怒りで全身の血が逆流しそうだった。
 もしもイザベラが姿を見せれば、きっと、虫けらのように蔑んで見るに違いない。
 城の連中や貴族どもと同じように。
 あの、自分を見下した眼で。
「殺してやる……!」 
 脳裏に映ったシャルロットの顔。
 イザベラは奥歯を砕けるかと思うほどに噛み締めた。
 何故、こうなる前にあいつを処刑しておかなったのか。
 理由なんていくらでも用意できたはずではないのか。
 そう思うと自分で自分が憎たらしくってしょうがなかった。
 死ね。
 死ね。死ね。
 みんな死ね。
 薄ら寒い思考から我に返った時には、森はすでに夜の闇に包まれていた。
 ぞっとするような夜の風がイザベラの首筋をなめ上げる。
 イザベラは忌々しげに立ち上がった。
 別に何をどうこうしようという当てができたわけでもない。
 ただ、じっと座り込んではいられなくなっただけのことだ。
 杖を握り締めて、夜空を見上げてみる。
 自分にシャルロットに与する奴らを倒せる軍団があれば、と思う。
 そこまでいかずとも、せめて一人でも手足となるような部下がいれば、と。
 いるわけがない。
 自嘲をもらしながら杖を弄んでいたイザベラは、ぴたっと動きを停止させた。
 あるアイデアを得た、というより、忘れていたことを思い出したのだ。
 部下がいない。
 いないのら、呼び出せばいいだけではないか。
 才能がなくっても、自分もメイジの端くれだ。
 あの魔法は確実に使えるはず。
 イザベラは杖で虚空に円を描きながら、呪文を唱える。
 使い魔を召喚する呪文を。
「五つの力を司るペンタゴン……」
 そして、使い魔は現れた。
「…………お前、なに?」
 出現した使い魔に向かい、イザベラは思わずそう問いかけた。
 それはとても小さかった。
 平べったい、円盤状のようなものだが、どういうわけかふよふよと宙に浮かんでいる。
 マジックアイテムか、それとも小型のゴーレムなのか。
 正体はわからないが、それでも自分が呼び出したものには違いない。
「……我が名は、イザベラ・ド・ガリア。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 型どおりの言葉を口にしながら、皿のような使い魔に口付けを与えた。
 唇が触れた一瞬後、イザベラの体に電流のようなものが走った。
「ぎゃん!!!」
 蹴飛ばされた犬のような悲鳴を上げて、イザベラは吹っ飛んだ。
 電流のショックか、それとも思い切り体を叩きつけられたためか、イザベラは意識は闇に沈んだ。
 眼を覚ました時、まだ夜は明けていなかった。
 みしみしと軋む体を起こすと、小さな光がふわふわとイザベラの目の前を舞う。
 声が出そうになったが、その前にどうにか呑みこむ。
 光は、怪しく輝く使い魔の眼だった。
 皿のようなものかと思ったが、側面に顔や口らしきものがあることに気づく。
 どうやら契約はうまくいったようだ。
 もっとも、このちっぽけな使い魔に何ができるか、あまり考えたくはなかったけれども。
「ったく、あんたは何なんだい……」
 イザベラは毒づく。
 すると、
「サ・ガー・ク」
 おかしな声が使い魔から出された。
「は?」
 イザベラは思わず使い魔を見る。
 こいつは、しゃべれるのか?
249ROOTS OF THE FUNG 4/9:2009/08/30(日) 00:11:58 ID:t9vyXAQR
「それが、あんたの名前かい?」
 尋ねると、わけのわからない、言葉とも鳴き声ともわからないものが使い魔の口から出てくる。
 何となく、肯定しているらしいことがわかった。
「まあ、名前考える手間が省けていいか」
 イザベラは出来るだけ良いように考えながら、重い体を立たせる。
 ショックのせいか、手にした杖を握り締めたままだった。
 その杖にちょっと違和感がある。
 変だなと思って見やると、長年慣れ親しんできた杖が、半分だけになっていた。
 先ほどの電流にも似た衝撃で吹っ飛んだのだらしい。
 イザベラは息を呑んだ。
 これでは、魔法が使えない。
 砕けた先はもうどこにあるのかわからない、わかったところで直せるわけもないのだが。
「……っちくしょう」
 イザベラはふらふらと両手を土につけた。
 王女という地位をなくし、父を亡くし、そして杖まで無くした。
 使い魔を得たと考えれば、そのへんはプラスマイナスゼロなのだろうか。
 悲嘆にくれる中、イザベラはどこかで状況を極めて冷徹に考えている自分に驚いてもいた。
 すると、使い魔サガークがしきりに周辺を飛び回る。
 まるで何かを教えようかとするように。
「なんなのよ!?」
 いらつきながらイザベラが顔を上げると、サガークは何かをイザベラの手に落とした。
 白い、何かグリップのような、あるいはリコーダーのようでもある。
「ひょっとして、これ杖かい? 悪いけどね、杖なら何でもいいわけじゃないだよ……」
 そう言いつつイザベラはそれを手にした。
 初めて触るものなのに、不思議に手に馴染んだ。
 まるで、長年つかってきた愛用の品であるかのように。
「ジャ・コー・ダー」
 そう、サガークは言った。
「ジャコーダー……」
 初めて聞くのに、どこか懐かしく感じた。
 ジャコーダーを手にしたイザベラはいつしか立ち上がっていた。
 言い難い、おかしな感じだった、
 気のせいか、どんどん自分の魔力が強くなっていくような気がする。
 それは波動のように、ジャコーダーを手にした右腕から全身に広がっていき、イザベラの細胞全てに行き渡る。
 そしてまるで陵辱するかのように魔力を活性化させ、さらに強大化していくようだった。
 うっとりするような陶酔感だった。
 全身が溶けてなくなり、まるで新しい何かに生まれ変わるかのように思えた。
「サガーク」
 気がつけば、使い魔の名前を呼んでいた。
 それに応え、サガークはイザベラの周りを飛び、ぴたりと腹部に取り付いた。
 左右の端から帯状のものが飛び出し、サガークはベルトとなった。
 ぞくりとする快感が、イザベラの中で爆発する。
 イザベラは本能の命じるまま、バックルとなったサガークの、スロット上の部分にジャコーダーを差し込んだ。
「ヘ・ン・シ・ン」
 サガークが何かを言った。
 すると、『何か』がイザベラの全身を覆いつくした。
 それは瞬きほどのわずかな時間だったが、髪の毛からつま先まで、イザベラの肉体、イザベラの細胞を欠片も残さず飲み込んだのだ。
 同時に、イザベラは天を裂くような絶叫をあげ、そのまま仰向けに倒れた。
 ぶくぶくと口から血の混じった泡が吹き上がり、白目をむいている。
 時折、腰に巻きついた使い魔からバチバチと紫電が走り、その度にイザベラの体はビクリと震えた。
 そのまま、イザベラは起き上がることはなかった。
 やがて、ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。
 冷たい雨に顔を打たれても、イザベラは起きることはなかった。
 そして、真夜中となる。 
 ざあざあと、雨は降り続けていた。
 夕暮れすぎから振り出した雨は冷たく、まるで罪人を打ち付けるかのようだった。
 遠くで、ぴかりと稲妻が闇の纏を切り裂き、飢えた獣の唸り声にも似た雷鳴がそれに続いた。
 森の中に身を横たえたまま、イザベラは凍えるような雨を浴び続けている。
 その体は、微動することはなく、まるで死体のようだった。
250ROOTS OF THE FUNG 5/9:2009/08/30(日) 00:14:51 ID:t9vyXAQR
 他の人間、あるいは知性のある生き物が見れば、まず死んでいると思うだろう。
 けれど、それは大いに誤りである。二度目の稲妻が天空を走り抜けた時、カッとその青い瞳が開かれたのだ。
 全身を雨水に弄りつくされながら、イザベラは起き上がる。
 その動きはまるで雲のようにふわりとして、まるで体重がないかのようだった。
 雲でなければ、肉体というものを持たない亡霊のようである。
「ふふふふふ。あははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!」
 けたたましい、狂人さながらの笑い声は雷鳴と共に轟々とガリアの空へとこだましていく。
 森の奥、木の洞で身を休めていたリスがぶるぶると恐怖で震えた。
 ねぐらで雨がやむの待つ狼は、丸一日獲物にありついていないことを忘れておののいた。
 三度目の稲妻、その輝きが闇を照らす一瞬、イザベラの姿が露わになる。
 胸元から首、そして口元にかけて、異様な模様がひび割れのように広がっていた。
 まるでステンドグラスのような輝きを帯びたそれは、果たして何なのだろう。
 一瞬の輝きが消え、闇が戻った時、恐ろしい咆哮が森を震わせた。
 それは、飢えと渇きに身を焦がす捕食者の叫びだった。

 朝になると、雨はまるで嘘のようにやんでいた。
 新しいガリアにふさわしい、晴れやかな空がどこまで広がっている。
 朝日が地上を照らす頃、せわしなく動く集団が森へと入っていくの、近くの農夫たちは見ていた。
 革鎧や鎖かたびらを着込み、手に手に物騒なものを手にした、いかにも危なげな連中であった。
「ありゃあ、一体なんだろ?」
 若い農夫が言うと、
「どっかからきた傭兵だろう。大方山狩りにできたんだ。森だから森狩りか」
 父親の農夫はつまらなそうに言った。
「狩りって、あんな格好で、まさか熊でも狩るのか?」
 若い農夫はそう疑問を口にする。
「バカ。狩るのは人間だよ。昨日あの森に逃げ込んだの見たヤツがいるってこったから」
「人間だって? 物騒じゃねえか」
「そうだがよ。俺たちには関係ねえ。追われてンのは、無能王のバカ姫だよ」
 ふふん、と父親は笑った。
「こないだシャルロット様に討たれた、ジョゼフ王の?」
「ああ。まあ、父親に似て魔法の才能はしょぼいもんだそうだから、楽で美味しい仕事だって、傭兵連中が狩りにきたんだな」
「殺されちまうかい?」
 若い農夫は露骨に顔をしかめた。ヤクザ者としってもいい粗暴な傭兵に捕らえられた姫の身の上を考えると、気持ちのいいものではなかったのだ。
「そこまではしねえだろうな。第一殺してもしょうがねえだろうし、まあ、あれだな。とっ捕まえられて、王宮に引き渡されるんだろう」
「引き渡されたらどうなるんだ?」
「さあな。それこそ俺たちの知ったことじゃねえ。どうせ打ち首か追放だろうが」
「何だか気の毒な気もするなあ」
 若い農夫は森を見ながら、そこに隠れ潜んでいるであろうイザベラ姫の姿を想像しながらつぶやいた。
「めったなこと言うな!」
 父親はそれを聞きつけて、叱りつけた。
「……シャルル様を殺した上に恐ろしいエルフどもと手を組んでた無能王の娘なんだぞ!?」
「そうだけどよ……」
 父親のシャルルに対する敬意の念に、若い農夫はあまり同調できずにいた。
 基本的に王族というの者を、ただ偉い人という漠然とものとしか認識できていないせかもしれぬ。
 亡きシャルルは国民に大いに人気があったわけだが、当然のことだが全てが全て彼のシンパであったわけではない。
 第一無能王と呼ばれるジョゼフの治世は、彼の評判ほど悪かったわけではない。
 少なくともこの農夫の実感する限りにおいては、別に理想郷というわけではないが、そこそこのものであったのだ。
 市井の暮らしそのものは、比較的安定していたのである。まあ、最後は国ごと焼き払うことまで考えていたらしいのだが。
 農夫にとって、王宮のことなどどうでも良かった。
 シャルルだろうがジョゼフだろうが、自分たちの暮らしを安定させてくれるのなら、王など誰がなってもかまわないわけである。
 だから、正直な話、シャルロットが女王になったことも、亡き父の無念を晴らしたという話も、興味はなかった。
 多くの人は、シャルロットに喝采を送っていたし、農夫も空気を読んで何も言いはしなかったが。
 元から、そのことについて述べるような意見もなかったのだ。
 国が滅ぶようなことがなかったのにはほっとしている。しかし、だからといって、必要以上にシャルロットを崇め奉る気持ちにはなれずにいた。
 いや――こんなことをぐだぐだと連ねる必要はないだろう。
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:15:49 ID:3l7BTp51
支援ー
252ROOTS OF THE FUNG 6/9:2009/08/30(日) 00:16:39 ID:t9vyXAQR
 要するにこの若い農夫は、ひどい目にあう、あるいはすでにあっているであろう娘に同情をした。ただ、これだけのことなのだ。
 若い農夫は、釈然としない気持ちで、森に入っていく傭兵たちを見送っていた。
 しかし、森へ入っていった金目当ての傭兵たちは、二度と戻ることはなかった。
 農夫が再び彼らを見たのは、その翌日。
 キノコを採りに森へ入った農夫は、地面に妙なものが落ちているの発見する。
 それが何なのか、最初は見当すら付かなかった。
 何か、半透明なクラゲというより、寒天のように思えた。
 が、その周辺にあるもの、そして『それ』が身につけていた鎧や靴などで、ようやくにわかった。
 それが人間の死体であるということに。
 森へ入っていった傭兵たちの末路だったのだ。
 よくよく近づいてみなければ、本当にわからなかった。
 人間の形は残しているものの、本当に色というものをなくした、半透明の物体と化していたからだ。
 それは殺されたというより、人間として、生物としての存在そのものを奪われた、とでも言いたくなるような有様だった。
 辺りには血の臭いも、腐臭もなかった。
 先住魔法の仕業だろうか。
 農夫はそう思った。
 こんなことを、人間が出来るとは思えなかった。
 そうでなければ、イザベラ姫が傭兵たちを返り討ちにしたのだろうか。
 時がたつに従い、農夫はどうしようもない恐怖に襲われ、せっかく採ったキノコを籠ごと放り出して、逃げ帰った。

 それからしばらくして、奇妙な事件が起きた。
 例えば、リュティスから500リーグほど離れた田舎の村。
 先に吸血鬼事件が起こったこの村が、一夜にして全滅した。
 村人は全員、まるでクラゲか何かのように半透明の状態になって転がっていた。
 これと同じような事件が、あちこちで発生したのである。
 犯人は不明。
 腕利きのメイジであるとか、先住魔法を操る亜人であるとか、色んな憶測が流れたが犯人は不明だった。
 何しろ襲われて生き残った者は一人としていないからだ。
 国の建て直しで猫の手も借りたいほどのガリアであったが、それはもはや無視できないほどのものであった。
 被害者の中にはトライアングルのメイジも幾人もいたからだ。
 状況的に杖を振るい、魔法を使ったのが明らかな場合も少なくなった。
 それでも、犯人はやすやすとこれを打ち破り、メイジたちを餌食にしたのだ。
 やがて……。
 いつからか、こんな噂が世間で囁かれるようになった。
 これは死んだ無能王ジョゼフの祟りだと。
 焦ったのは、今や国の支配者となったオルレアン派であった。
 ようやく簒奪者を倒して国を取り返したというのに、こんな忌々しい噂が流されるなどと。
 だが、事態は彼らを嘲るように悪化の一途をたどった。
 必死になって犯人を捜索するも、一向に進展はない。
 それどころか、捜索に参加した騎士たちが、同じように体の色を奪われた死体となり、路上に転がされる始末。
 行方不明であったイザベラの行方がわかった――この情報が入ったのは、そんな状況下の中だった。
 ある修道院に潜伏しているのが、近隣に住む者の密告によって明らかになったのだ。
 報告を受けたバッソ・カステルモールは至急部下を率いてその捕縛へと向かった。
 不穏な噂で不安定になりかけている今、簒奪者の娘を捕らえることで、それを少しでも打ち消そうというわけだ。
 件の事件と、イザベラを結びつけて考える者はほとんどいなかった。
 何故かと言えば、プチ・トロワの暴君として知られた無能の我侭姫は、父親に似て魔法の才能に恵まれていなかったからだ。
 そんな娘に、あんな真似が出来るわけがない。
 こういった思い込みが、関係者の中にあったせいである。

「いたぞ!!」
「こっちだ、急げ!!」
 荒々しく静寂の似合う修道院内を走り回っていた騎士たちが、歓声に似た声をあげた。
 どかどかと院内を踏み荒らす無粋の輩を、質素な尼僧服姿のイザベラはつまらなそうに見ていた。
 それは、食卓の上を飛び回る蝿でも見るような目つきだった。
 だが、興奮状態にある騎士たちはイザベラの表情などわからない。
 もとから眼中にもないのかもしれない。
「イザベラ……元姫殿下、おとなしく我々に従っていただこう」
 一隊を率いたカステルモールは、慇懃な口調で、しかし軽侮の眼差しでイザベラに言った。
253ROOTS OF THE FUNG 7/9:2009/08/30(日) 00:18:36 ID:t9vyXAQR
 イザベラは椅子にもたれかかるように座したまま、何も応えない。
 やはり、つまらなそうな顔で騎士たちを見ているだけだった。
 それを騎士たちは、無力な罪人の最後の見栄と認識した。
 カステルモールがさっと手を上げると、一人の騎士が杖を振るう。
 ウィンド・ブレイク。
 威力をセーブしているが、風の槌はイザベラの体を吹き飛ばすのに何ら問題はなかった。
 人形のように転がるイザベラの体に、メイジの操る縄がまとわりつき、縛り上げた。
「よしっ! 連行する!!」
 イザベラを無理やりに立たせ、騎士たちは意気揚々として引き上げ……ようとした。
 ぶつり。
 間抜けな音をたてて、何かが床に落下した。
 イザベラを縛っていたロープだ。
 魔法をかけられたそれは、生半の力では決してほどくことなどできないはずだった。
 ロープを見ればわかることだが、それはほどけたのではなく、強引に、単純な力で引きちぎられたものだった。
 イザベラの脇にいた騎士の一人が宙を舞ったのは、その後だった。
 恐ろしい音をたてながら、騎士の体は宙に跳ね上がり、天井に激突した。
 それが壊れた玩具のように落下する間、イザベラはもう一人の騎士の肩をつかんでいた。
 枯れ木でも踏みつけるような嫌な音がして、騎士が悲鳴を上げた。
 イザベラは膝をついた騎士の髪の毛をつかむと、その首を180度回転させる。
 みき、ぴきき、と音が上がった。
 動かなくなった騎士が放り出されるのと、天井に激突した騎士が床に落下したのは、ほとんど同時だった。
 状況が飲み込めず、騎士たちはぽかんとしていた。
 一体、自分たちの目の前で何が起こっている?
 彼らがようやく動き出したのは、イザベラに蹴飛ばされた騎士が口から血の塊を吐き出して絶命した後のことだった。
「おのれ!?」
 杖を突き出し、呪文を唱えようとした騎士の腕が、イザベラにつかまれた。
 骨と肉の砕ける音がした。
 イザベラはそれを放すことなく、まるで竹ざおでも振るように騎士の体を振り回した。
 まるでハエタタキでつぶされる蝿みたいに、騎士たちは弾き飛ばされていく。
 得物の代わりにされた騎士は、口から泡を吹いている。
 カステルモールは咄嗟にエア・ニードルを放つが、それは味方の騎士たちにとどめをさす役目をしただけだった。
 イザベラは無表情に近くに転がっている騎士の頭を踏みつけた。
 頭蓋骨がくだけ、床を朱に染めていく。
「弱いね?」
 イザベラはどうでもよそうに言って、カステルモールを見た。
 それは、ミミズを見下ろすライオンの目だった。
 カステルモールは硬直し、動けなくなった。
 恐怖が、汗となって滝のように流れた。
 コイツハダレダ?
 いざべら?
 違う。こいつは――
「小生意気に牙をむいた蛆虫には、<お仕置き>してあげないとねえ?」
 イザベラが初めて笑みを見せた。
 その首筋から口元にかけて、ステンドグラスのような紋様が走った。
 青い瞳が、虹色に染まる。
 そして。
「化け物……」
 目の前に出現した『者』に、カステルモールはそう言うのが精一杯だった。
 この日、イザベラは身を隠していた修道院から消えた。
 だが――
 彼女を捕縛に向かった一隊は、生きて主……シャルロットのもとに帰ることはできなかった。

 風と、血の匂いを感じて、タバサ――シャルロット・エレーヌ・オルレアン、いや、今はシャルロット・ド・ガリアは振り返った。
 薄闇の中に、誰かがいる。
 風を受け、窓辺のカーテンが揺れていた。
 未だに帰らないカステルモールに、不安を覚えていた彼女は咄嗟に杖を握る。
「だ、誰なのね!?」
 そばにいた人間に姿を変えた風韻竜シルフィードは恐怖を隠しきれぬ声で叫んだ。
「ずいぶんな態度だねえ? せっかく飼い犬を送り届けにきてやったのに」
254ROOTS OF THE FUNG 8/9:2009/08/30(日) 00:20:25 ID:t9vyXAQR
 嘲笑が影から響いた。
「イザベラ……」
 影を見て、タバサはこわばった声で言った。
「王冠が良くお似合いじゃないか、ガーゴイル?」
 野獣のように歯を剥き出しながら、イザベラは肩を揺すった。
「意地悪従妹!!」
 シルフィードが目をむいた。
 この中に、一体どうやって潜りこんできたのか。
「ここの住み心地はどうだい? 快適か?」
 イザベラは窓辺に立ったまま、ケタケタと笑った。
「……」
「無表情は相変わらずか? せっかく仇を討って、晴れて女王になったんだろう? もっと嬉しそうな顔をしてごらんよ」
「何の用なのね!!」
 主人に代わるように、シルフィードが吼えた。
「言っただろう? 飼い犬を送ってきてやったのさ。しつけのなっていない犬ころをね」
 そう言って、イザベラは何かをタバサたちのほうへ放った。
「きゅいいー!!」
 それを見て、シルフィードは飛び上がった。
 床に転がったのは、人間の生首だったのだ。
 それも、これ以上にない恐怖に歪んだ。
「……!」
 キッとタバサの目に怒りの炎が宿った。
 その首に、タバサははっきりと覚えがあった。
 カステルモールだ。
「おいおい――お前の大事な飼い犬だろう? お帰りなさいのキスくらいしてやったらどうだい?」
 イザベラは愉快そうに高笑いをする。
 その哄笑に、シルフィードはひい、とうめいて立ちすくんだ。
 タバサは、言葉で言い表しがたいものを感じ、身を震わせた。
「あなた、誰」
「はあ? 私が誰かって? お前の従妹のイザベラじゃないか、女王様になって頭がボケたか?」
 心底バカにしきった顔で、イザベラは大仰に肩をすくめてみせる。
「そんなわけない」
「……ほおお? じゃ、あくまで私はイザベラ・ド・ガリアじゃないっていうのか? 何を根拠に? 大体……」
 イザベラはくるりと体をターンさせながら、
「お前が私の何を知る?」
 そう問われ、タバサは黙った。
「お前に嫉妬するだけの無能者か? それとも、狂った簒奪者の娘か? ああ、そうだねえ。或る意味で正解さ。事実そうだったんだから」
 そうだった。
 過去形であった。
「今は違うと?」
 タバサはあえてそう言った。
 シルフィードは恐怖で震え上がり、動くこともままならないようだった。
「んー…。例えばだ、あんたはパンや牛肉にいちいち嫉妬したりするのかい?」
 何が言いたい。
 タバサは危険を感じ、杖を振るおうとした。
 その時、不気味に輝く蛇のようなものが、宙をうねった。
 蛇の一撃を受け、タバサの杖は無残に砕け散った。
 タバサは手を押さえ、床に膝をついた。
「お姉さま……!」
 シルフィードがくぐもった叫びをあげる。
「だからさー、餌にいちいち感情移入する物好きがいるかってことだよ」
 杖を破壊したのは、イザベラの手に握られる、やはり杖だった。
 短杖の先端から、光の鞭が伸びている。
 杖を失ったメイジ。
 それは翼をもがれた鳥と同じだ。
 イザベラはタバサを見ながら、冷たく笑った。
 タバサの瞳に、恐怖が浮かんだ。
 目の前にいる、イザベラの姿をした何者かに、ただ恐怖した。
 喰われる。
255ROOTS OF THE FUNG 9/9:2009/08/30(日) 00:21:57 ID:t9vyXAQR
 絶対的な立場の違い。
 北花壇騎士として戦った日々、その積み重ねが、いとも容易く否定されていく。
「お前、私の父上を殺して、自分の母親を助けて……これから、希望が始まる、とでも思ってたのかい?」
 違うねえ、とイザベラは謳うように言った。
「これから始まるのは希望じゃなくって、絶望なんだよ!!」
 貴様を神輿に担ぐ阿呆どもも、私ら親子を蔑み続けた愚民どもにもな――
「サガーク」
 イザベラの声を受けて、その使い魔が現れる。
 腹部にとりつき、ベルトと化した。
「ヘ・ン・シ・ン」
 奇妙な、笛に似たメロディが響き、イザベラを何かが包み込む。
 それは、魔力だ。
 可視出来るほどに高濃度の魔力は、異形の鎧へと姿を変え、イザベラの全身を覆っていった。
 見たこともない、どこか毒蛇を思わせる銀色の鎧。
 おそらく、過去にハルケギニアには存在したことのないであろうもの。
「さてと。それじゃあ謀反を企て、生意気にも王位を奪おうとしたおバカちゃんに、女王の判決を言い渡そうか?」
 その魔杖が、タバサに向けられる。
「死――だ」

 遠く離れたどこかで。
「なあ、渡。ファンガイアの祖先が、人間と変わらない姿をしてたって知ってるか?」
「……なに、それ。初耳だけど。そうなの、にいさん?」
「俺も伝承の一部を少し聞いただけだがな…。元々、魔力を持っているということをのぞけば、ファンガイアは人間と同じだったんだ」
「そうだったんだ。だから……」
「ああ、人間と、ファンガイアが結ばれて子供が出来る。別におかしくもない。元々が同じものだったんだからな」
「だけど、どうして――」
「祖先は人間と違い、魔力を使っていろんなことができた。だが、いつの頃からか、魔力で肉体を強靭なものへと作り変え、今みたいな姿になっていったらしい」
「何だか、悲しいね……」
「そうだな。ああ、最初にファンガイアの原初とも言える存在になったのは、一人の女性だそうだ。いわば……ファンガイアのイブだな」

 時が過ぎて。
 かつて、グラン・トロワと言われる壮麗な宮殿は、新たに再建されていた。前よりも巨大に、前よりも鋭く攻撃に。
 その最大の変化は、その色彩であった。
 以前は王族の髪を象徴するかのように清冽な青に染められていた宮殿は、今は夜闇のごとく黒に染められている。
 宮殿の中央、玉座に座るのは黒いマントと王冠を身につけた若い女。
 イザベラ・ド・ガリアだった。
 ほんの少し前に城を追われた王女は、絶対的な支配者として玉座に君臨している。
 イザベラが見下ろす中、その眼下には無数の家臣たちが控えていた。
 しばらくは楽しそうにそれらを見ていたイザベラだが、頃合も良しと立ち上がった。
 それに合わせて、家臣たちも顔を上げる。
 皆一様に、その瞳に、その首筋から鼻にかけて、ステンドグラスを思わせるものが浮かび上がっている。
 それは、イザベラも同様だった。
「変革の時は来た――」
 良く通る声で、イザベラは語る。
「私たちは、メイジという種から一歩前進し、新たな段階へと到達した。もはや杖に頼る必要もない! エルフの先住魔法に脅えることもない!」
 イザベラの言葉に、おおお、とどよめきが返る。
「我らはハルケギニアを超え、東の果てまでも進んでいくだろう! 邪魔をするエルフは全て、喰らい尽くす!!」
 その絶叫に応えるように、家臣たちはその身を変えていく。
 人の姿から、魔物へと姿を変えていくのだ。
 虫を思わせるもの。魚のようなもの。直立する獣のようなもの。
 ただ、鳥のようなものは一人としていなかったが。
 姿は千差万別だが、共通するのはステンドグラスのような体組織。

 イザベラの言葉通り、それは大きな変革の兆しであった。
 ただ……それは平民や、変革を拒むメイジたちには地獄の訪れであると言えた。
 何故なら、『彼ら』にとって、人間は、餌でしかないのだから。
256代理:2009/08/30(日) 00:27:49 ID:CxBiLRty
737 名前:ROOTS OF THE FUNG[sage] 投稿日:2009/08/30(日) 00:26:11 ID:nsSDMjeY
さるさん受けてしまいました
一応終了宣言を



投下終了、支援してくださったかた、感謝いたします。

※ファンガイアの祖先うんぬんの話はこのSSだけでの設定です、念のために
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:32:38 ID:a6qPprZH
乙です。
つかこのイザベラに勝てる奴はいないなw
ルイズかテファが渡か753呼べばバランス取れるかも?
…教皇がキング呼んだりしてw
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:40:07 ID:gHlS5DOu
乙です

誰かー!ホリケンアーク呼んでー!
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:47:00 ID:wsRK8dbQ

メイジって魔法で武装しただけの ただの人間なんだよね
>>257
サガはザンバット無しエンペラーと互角に渡り合ってたから753で対抗できるかどうか
というか実際 負けてたからなぁ
逆にアークとダークキバは強過ぎてバランスとれないなw
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:47:18 ID:wxP8Dk7T
乙。

サガは設定上は本編未登場のファンガイア初代キングが使ってたらしく、時代を追っていくと


初代キング?「サガカッコいいよねーそこのファンガイア兄弟良い仕事したわ。お前らにナイトとポーンの称号やろう」
ナイポーン「「ありがたき幸せ」」

過去キング(大牙のパパのあの人)「あーレジェンドルガ共ウゼェェェェェ!」
ナイト「キング様ー鎧完成しましたよ」
過去キング「よしぶちかますぜ!ウェイクアップ3!!」

過去キング レジェンドルガ ファンガイア 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

過去キング「自爆技なのかよ先に言ってよ!」
兄弟「すいませんこの技封印します……あと制御した三つ目の鎧、黄金のキバ作っておきますね」

真夜「その鎧すっごく……ほしい……渡の為に」
兄弟「何をするだー!返せよー!」


って流れらしいな。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:48:24 ID:1XLv10no
エンペラー……アーク……
そうか!ゲッターロb(ry
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:55:01 ID:V/G2Odjn
>>260
「・・・・お前はなにをいってるんだ?妄想乙!」と思いきやだいたいあってるwww
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:55:45 ID:x7LDWyUb
GJ!

太牙兄さんが父ちゃんのダークキバに乗り換えるから出番なくなったサガークがやらかしよったw
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:55:59 ID:6G2rmGvp
サガじゃなくて闇のキバだったらイザベラさん死んでたな
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 00:58:26 ID:tSFFisc1
>>261
隼人を呼んだら学院が隼人の校舎と呼ばれるように…
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:00:16 ID:C0O0mng0
>>264
???「喜べ人間、絶望タイムだ」


そう言えばキバーラも何故か変身能力有るんだよな……
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:03:59 ID:IIQUSyXV
たしか次のディケイドの映画で仮面ライダーキバーラに変身するというスクリーンショットをどこかで見たな
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:10:42 ID:wsRK8dbQ
このスレって けっこう仮面ライダーの話題 出やすいけど
ゼロ魔とライダーの相性って どうなんだろう?
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:12:23 ID:wTU1XZ85
>>268
カッガーミでラ・メ〜〜ンなぼっちゃまとか辺りなら順応しそう
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:13:21 ID:FfxvYNAF
隼人がきたらアホな貴族の子弟の相手なんて馬鹿らしいと即効出ていって
傭兵にでもなるかテロリストの親玉になるかだろ
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:24:35 ID:B2v8He9L
>>259
まあ名護さんがサガと戦った時は二対一だったからしょうがない。少なくともライジングイクサは、チェックメイト4級の性能を持っているだろうから、結構いけると思うが。

エンペラーキバはサガよりは基本スペックは上だと思いますね、互角に戦えたのは大河の高い技量のおかげかと、そんで渡も経験つんで強くなってきたから負けたと。

並べるとこんな感じ?
バットファンガイア>ダークキバ>エンペラーキバ>サガ≧パールシェルファンガイア(真夜)≒ライジングイクサ≧ライオンファンガイア>キバ(ドカバキ)>スワローテイルファンガイア≧イクサ(バースト)
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:36:32 ID:gHlS5DOu
>>268
改造人間の場合はメンテナンス必須だから何かあった場合修復が辛い

非改造人間だったらギルスとかファンタジー世界にいても無理ないんじゃない?
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:42:41 ID:9nG0H+AB
サガサガ聞いていると全く関係ないがロマンシング・ハルケギニア的なものを想像してしまう
ルイズ 貴族の娘 フーケ 都会の盗賊 アニエス 平民の剣士 ティファニア 森の番人

こんな感じの主役選択式のRPG
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:43:39 ID:a4OJqCwq
サガットがどうしたって?
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:48:03 ID:D1WDiOqv
>>273
サイト「ねんがんのデルフリンガーをてにいれたぞ!」

こんな感じの世界か。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:56:24 ID:a6qPprZH
>>273

あとは…
ジョゼフ 無能王
ジュリオ 教皇の使い魔
タバサ 復讐のメイジ
サイト ルイズの使い魔
…タバサシナリオの難易度高そうw序盤シルフィしか仲間いないしw
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 01:57:41 ID:zMY3sm7F
常時自分にバリアを張るエルフが連携攻撃の起点にされて、カモられる世界かも知れんぞ
敵が協力しないと成立しない六連携はやりこみ要素の基本です。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:01:33 ID:DrXCAIV+
魔界塔士のほうで

しそ は バラバラになった!!
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:06:08 ID:K9aJJA3d
紫蘇ご飯おいしい
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:15:05 ID:v1N9sF1H
チェーンソーか……

チェーンソー*神つながりでサイレントヒルがなー
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:28:08 ID:v1N9sF1H
ふと思う

「ヴェクトルドライバ・ラン! 殺衣解放!」
「ハヤトロギア・リバレート!」

なんてね
メンテどーすんだ
工房ごと連れてくるか
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:35:09 ID:C0O0mng0
ちぇーんそー…
臓物飛び散る正統派(?)スプラッターヒーローネクロマンの出番か
デルフまで来たら喋る物体二つに挟まれる主人公が悲惨だ
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:52:48 ID:rByg7w6g
チェーンソーっつったらレザーフェイスだろ。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:54:11 ID:YrnoPMBQ
>>268
かつて仮面ライダーが存在したとする形で出すのに都合がいいのは
平成だとクウガやアギトに響鬼とキバかな。
これらはファンタジーとの親和性が高めで、伝説のなにがしだ云々とやりやすい。
他に龍騎も場合によっては上の形でやれないこともない。
理屈をこねくりまわすのが少し面倒だけど。

>>272
改造人間でもブラック、RX、真、ZO、Jのようなタイプなら機械的なメンテは不要。
生物型の改造人間だから極端に言えば飯食って寝てで済むよ。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:56:04 ID:08t7gcRb
ばっかお前、チェーンソーっていったらアッシュ・ウィリアムにきまってんだろ。
一回中世ヨーロッパで大暴れしてるし。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 02:59:55 ID:9nG0H+AB
>>278 ブリミルw
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 03:07:58 ID:BzTEZbrm
チェーンソーっていったらエドガーだろう…
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 03:09:16 ID:azEVhPRP
>>282
第二のネクロマンスーツ骸を呼び出すのかルイズw
トリステインを騒がす謎の怪人ネクロマン零!
時と次元を超えてやってきた大散寺語と神楽舞の子孫であるシエスタは
実家に封印されていたレーザーチェーンソーをルイズに託してデルフ&チェーンソー2刀流?
289名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 03:30:29 ID:i1AS1ECI
平成ライダーは非改造人間だからメンテの気を使うことは少ないね
変身アイテムによっては必要だけど
290名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 03:55:07 ID:6vYB4d0P
特に響鬼の音叉や音撃アイテムは定期的なメンテが必須っぽい
291名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 04:12:53 ID:IOqkNRoO
>>289
G3系はトレラーと小沢さん必須だからどうしたって無理だ……orz

>>272
昭和ライダーで厳密にメンテ必須らしいのはスーパー1位じゃない?
後はXとライダーマンかな
292名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 05:22:44 ID:NK+0pdEc
>>272
Blackにいたっては太陽光さえあれば無限再生はおろか
本人の与り知らぬところで自己進化とか不思議なこととか起こす困ったちゃんだ
293名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 05:30:31 ID:oXhLf2S/
特撮語りウゼ
294名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 06:38:40 ID:ec+/z2qt
>>281

そこはほら、機械人形たちの夢でなんとか
295名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 06:47:58 ID:LTznN2l3
チェーンソーといえば聖杯探索の騎士、嵯峨童子

食堂のシーンで
「レディに対するその無礼な物言い、騎士として許すわけにはいかぬ。
 レディ、某を代理戦士に任じていただけませぬか」
ってとこは思いつくんだけどな

ところで、アーサー王とチェーンソーって何で関係あるの?
296名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 06:54:04 ID:o8l/++0n
チェーンソーでスプラッターハウスを思い起こした。
いくらなんでもあいつはヤバすぎる。

>>284
キバも問題なくできるかと。
ファンガイアは古くからハルゲにいる事にすれば問題無し。
297名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:08:56 ID:IOqkNRoO
>>295
キャプテンスーパーマーケット繋がりじゃないかな?>アーサー王とチェーンソウ
298名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:35:38 ID:0q6K7oKi
>>293

喜べ。
仮面ライダーG4が交番のガラスかち割って逮捕されたそうだ。
299名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:35:46 ID:y3l18cPa
>>295
キャプテンスーパーマーケット(死霊のはらわた3)を見るんだ
アーサー王の時代にタイムスリップした、主人公がゾンビ軍団と戦うというB級ホラーでな
で、主人公がチェーンソーとショットガンのエキスパートと言うわけさ。
300名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:36:43 ID:uuV2IkzX
>>299
あれはホラーじゃないだろw
301名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:29:37 ID:4w7kiERr
仮面ライダーは数は多いのに完結作が無いからうんざりする
新作投下されても、途中放置するんだろうって思ってしまう
ドラクエとデモンベインも大概だけどな
302名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:38:05 ID:5V0A7MH1
じゃあ完結作が殆ど無いここはお前の居場所じゃないって事だな
303名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:40:56 ID:McfqTxSH
そりゃここに投下される全ての作品に当てはまることじゃない
304名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:47:42 ID:gPROY6WK
何カリカリしてんの?
305名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:56:52 ID:GRAo5ldz
もうすぐ学校が始まるから欝になってるんでしょう
306名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 09:17:52 ID:9ICoiCqo
鬱になってるなら、才人みたいに門をくぐれるかもしれないと思えばいいじゃない?
307151:2009/08/30(日) 09:24:57 ID:QUx73Na6
SS、投下します。
308名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 09:26:47 ID:9hbO0K7m
>>299
ラストシーンがグッドとバッドの2バージョン別で販売されてるんだっけ
309名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 09:29:00 ID:3l7BTp51
ハーシェルさんか?
310二つの神の力:2009/08/30(日) 09:45:39 ID:QUx73Na6
>>151
青年は、目を覚ました。
「ここ、どこだ? いつもの森・・・・・・じゃないな」
青年の周囲には、同じ服を着た少年たちが大勢いて、青年をぐるりと取り囲んでいる。
「・・・・・・何か、笑われているみたいだな。」
青年は顔をしかめる。
青年の真ん前では、禿頭の男性と、桃色の髪の少女が言い争っていた。
やがて、桃色の髪の少女があきらめたかのようにため息をつくと、青年に歩み寄った。
そして、少女は言葉をつむぎ始める。
「何言っているんだ? こいつ。」
そして、青年は、いきなりキスされた。
「なっ・・・・・・バカ! 何するんだよ! いきな・・・・・・っ!」
次の瞬間、青年の左手に、奇妙な、感覚が走った。
痛い、というより、熱い。
熱い、というより、冷たい。
そんな感覚だった。
青年の隣では、禿頭の男が興味深そうに青年の左手を見ている。
そして、禿頭の男は立ち上がった。
「よし、それでは皆、教室に戻るぞ」
禿頭の男がそう言うと、周囲の少年たちは浮かび上がり、飛んでいった。
「『フライ』はおろか『レビテーション』すらできないルイズには歩いて帰るのがお似合いだな」
「その平民、あんたにお似合いね」
などど、冷やかしの言葉を残して。
青年は、それを唖然とした顔で見送っていた。
やがて、森の中はルイズと呼ばれた少女と赤い髪の青年だけになった。
「そういえば、名前まだ聞いていなかったわね。平民。」
青年は、一瞬顔をしかめた。
(こいつの態度・・・・・・貴族か?)
青年は似たような制度の中で育ってきたので、文句ひとつ言わずに答えた。
「リッド・ハーシェルだ。」
リッドと名乗る青年が名乗ると、ルイズと呼ばれた少女は答えた。
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラヴァリエール。友達からは、ルイズって呼ばれているわ。

ここに、【虚無】と【極光】という神の力を秘めし二人の物語が始まった。
311151:2009/08/30(日) 09:47:08 ID:QUx73Na6
以上です。
遅筆なのは勘弁してください。
312名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:00:37 ID:ak5Aff6O
一体どう感想付ければ波風立たないのか見当つかない・・・
313名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:19:03 ID:i1AS1ECI
スルーするーんだよ
なんちて
314名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:19:22 ID:3l7BTp51
とりあえず…文章力を上げようと言おう。
描写の移り変わりが早すぎ&説明が足りなくて、風景の想像が難しい。
テイルズ好きな俺としては是非とも続けて欲しい作品だから頑張ってこい。

あと、前で切った部分は今回も投下したほうが良いと思うぞ?
315名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:36:08 ID:wf0Ko2DZ
少しは書き溜めた方がいいと思うが。
1レスで終わりとか短すぎるし、描写を端折りすぎ。
316名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:39:44 ID:oN1cd/VM
既に言われていることだが、もうちょっと長くしたほうがいいな。
状況描写とかを詳しくすればもっと長く出来るはず。

・・・そういや、エターニアは三戦目のヒアデスが倒せずに詰まってたなあ。
またやってみるか。
317名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:57:36 ID:oOePD99s
キャプテンスーパーマーケットといえば、ルイズがピーター・パーカー召喚

「なんであたしが変な服着た平民なんか・・・・」
「あー・・・・・・・ハラガ、ハラガヘッタァ!」

トリステインっつーかハルケギニア滅亡のお知らせ
318名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:17:28 ID:KtPzVT6L
乗り遅れたがチェーンソーと言ったら
マーカス・フェニックスと愉快な仲間達だろ
319名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:26:11 ID:3l7BTp51
>>316
スレチだとは分かっているが一発で倒してしまった俺からアドバイス

レーザーをジャンプで避けて挟み撃ち

>>311
とりあえず、時系列はクリア後でおk?
あと装備は?
320名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:27:16 ID:wsRK8dbQ
地の文の扱いって難しいよなー
とりあえず書かないことには読み手に伝わりようが無いモノ(外見・動作etc)は できるだけ書くようにしたいけど
どこまでの情報を読者に与えるかは 状況によって変わってくるよね

巧拙いろんな文章に慣れてる読者なら
少々 視点がブレようが説明が足りてなかろうが それでも読めてしまう人もいるだろうし
321名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:41:14 ID:xG5OMd4E
おおかみかくしをプレイしながら、神人(*ネタバレ注意)の誰かを召喚したら
5分でハルケゲニアの破滅……まではいかなくても大混乱が確定するなーと想った

簡単に説明すると、キスすると感染する体質の、キス魔な種族
322名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:49:31 ID:l9PYN8wb
キス魔で世界破滅ならスペースバンパイアだろ
323名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:53:37 ID:i1AS1ECI
某ジャーナリストやダイナマイトな刑事がガンダになると何か持つ度にルーンが光るのけ?
324名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:02:37 ID:oOePD99s
>>323
その討論はこれまで幾度となく行われてきたのだが、結論は出ないまま今ここに至っているのだよ・・・・・・
325名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:02:44 ID:pggbUaoW
>295
何かエクスプロージョンの輝きを見た瞬間に感動で昇天しそうで困るw
326名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:40:38 ID:i1AS1ECI
>>324
つまり書くならてめえの裁量でってことか
327名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:41:15 ID:ABODql2p
うーん、とりあえず前スレで頑張ってみると言ったプリニーもの。
一発ネタとして完成したので投下してもよろしいだろうか?
328名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:47:11 ID:e68xfXRN
やめろと言ったら止めるのか?
投下予告自体バッティングを避ける為のものだからルール・テンプレを遵守すれば
「予約等無ければ何時から投下します」といってリロード確認後投下しろ。
面白ければ賞賛、不味い問題外なら叩かれ、空気なら無視される。
329名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:48:44 ID:ABODql2p
おk。
んじゃ12:50から投下

タイトルは『ルイズとペンギン(みたい)な使い魔』です。
330ルイズとペンギン(みたい)な使い魔:2009/08/30(日) 12:50:15 ID:ABODql2p
その日、トリステイン魔法学院新2年生のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはペンギンみたいな、でもどこかぬいぐるみのように作り物じみた生き物を召喚した。

それもけっこうたくさん。

彼らはどうやら『プリニー』と呼ばれる種族らしい。
曰く、元は人間である。
曰く、罪を犯して死んだ魂が中に入っている
曰く、罪を償うために働いてお金を貯めないといけない
曰く、投げると爆発する
曰く、曰く、曰く……

色々と話を聞いたものの、どうにもルイズにはピンとこない。
というかそもそも、そんな与太話としか思えないような話を信じられるわけが無かった。

 「とりあえずそんなことはどうでもいいから使い魔として働きなさい!」
 「お給料くれるんならイイっスよー」

なんとものんきな返事であった。



かくして、ルイズとプリニーたちの新しい生活が始まった。

 「服。着替えさせて。そこの一番下の引き出し」
 「あ、これッスね。どうぞッス」カシャ
 「下着の色は白とピンクとベージュ。どれがイイっスか」カシャ
 「そうね、今日はちょっと気分を変えて水色にしましょう」
 「ルイズさまー。このブラウスほつれてるッスー。替えはどこッスかー?」カシャ
 「あら?そっちのクローゼットに入ってない?」
 「あ、コレっスねー」カシャ
 「……ねぇ、さっきからなんか変な音しない?」
 「「「なんのことッスかー?」」」

後日、男子生徒の間で着替え途中のルイズを鮮明に描いた絵姿が出回り、主犯である水棲鳥類っぽいものたちと、絵姿を購入した男連中がまとめて爆砕されるという事件がおきるもそれはともかく。
この頃からルイズの日常はだんだんと波乱万丈なものへと変わっていった。
331名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:54:19 ID:AVmZSADA
とりあえず支援。
332名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:56:47 ID:rrgx4Stb
カメラあればそりゃ撮影するよな
俺だってそーする支援
333名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:59:23 ID:pggbUaoW
特にカメラが知られてなくて警戒心ゼロだから当然だれだってそーする。
334名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:02:45 ID:rrgx4Stb
ビデオカメラとバッテリーとポラロイドカメラとその他諸々用意して秋葉原逝こうかな支援
335名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:08:42 ID:6G2rmGvp
プリニーを爆破したら誘爆とかしないんだろうか支援
336名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:12:53 ID:5eaI3nwi
ノート拾う前の夜神月を召喚したら
やはりキャラとして普通過ぎるだろうか
337名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:20:04 ID:e68xfXRN
338名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:20:44 ID:pt8mKDTG
>336
始祖の祈祷書が全くの白紙ではなく、なぜか英語で注釈が書かれており、それをライトが解読してしまうのですかね?
339名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:24:01 ID:e68xfXRN
代理しようとしたら行が長すぎると怒られた
人様の文に改行とはいえ手を入れるのを
自分は避けたいので誰か任せた。
340名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:24:13 ID:eTzIv4z3
卓ゲ板から来ました
341名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:24:31 ID:ev3WiMey
>>336
ノートを拾う前の月は、優秀過ぎる人物に特有の周囲の人間を無意識に見下している
ような傲慢さがあるが、基本的には正義感の強い真面目な少年だからな。
いきなり呼び出されて奴隷扱いされればそりゃ怒るだろうが、あまり無茶なことはしないじゃないか?
342名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:30:31 ID:pt8mKDTG
なるほど、代理用と本スレで制限とか違うのか。
流石に勝手に手を入れるのは拙いから私もパスの方向で。
343名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:36:30 ID:xG5OMd4E
>>330の人が誤爆した瞬間を見てしまった
344名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:40:49 ID:yzYpWldQ
前スレで支援を表明したので支援する
出だしもいい感じなのでなお良し
345代理:2009/08/30(日) 13:51:04 ID:HE04U/DQ
二股を掛けた男子生徒をプリニーどもが総掛かりで袋叩きにしてみたり。
学院を襲撃した怪盗『土くれのフーケ』が作り出した30メイルにも及ぶゴーレムにプリニーをぶん投げて爆砕してみたり。
反乱軍レコン・キスタに壊滅させられそうな王党軍へと大使として派遣されたアルビオンにて、こっそりトリステイン王国を裏切っていたワルド子爵とウェールズ皇太子が壮絶な相討ちを繰り広げたり。
タルブ村周辺に進軍してきたレコン・キスタ軍(このころになると神聖アルビオン帝国と名乗っていた)と戦うため、タルブ村にあった竜の羽衣(プリニーの1匹、グラフィアカーネは
「何でこんな所にネーベルヴィントがあるッスか!?」と騒いでいた)に乗り込み、上空で始祖の祈祷書から会得した虚無の系統魔法『エクスプロージョン』を放って戦艦の群れを薙ぎ払ってみたり……

たまには辛いことが起こったり、戦争に巻き込まれたりしつつもルイズとプリニーたちはのんびりかつちょっぴりスリリングな毎日を送っていた。
しかし……。



それは、ルイズの幼馴染にしてトリステインの女王、アンリエッタが何者かによって王宮より誘拐された事件において。
邪悪な水の先住魔法によって操られるアンリエッタのかつての恋人、ウェールズの遺体を新たな虚無魔法『ディスペル』によって取り戻し、赤い月が昇るラグドリアン湖畔に水葬しようとしたときのこと。

 「……ああ、もうそんな時期ッスかー……」
 「……サウレ?どうしたの?」
 「ルイズさま、今までお世話になりましたッス。どうやらお迎えが来たようッス」
 「……え?」

ふと気づけば湖面に立つ怪しい人影。
『彼』をプリニーたちは『死神』と呼んだ。贖罪を終えたプリニーたちを新しい『始まり』へと連れてゆく、水先案内人だと。

 「や、ちょ、待って!待ってよ!?どうして!?どうして行っちゃうの!?いいじゃない、いいじゃないのよ!ここにいれば!いなさいよ!
アンタ、私の使い魔でしょう、勝手にどっかに行って良いわけ無いでしょう!?こら、光るな!浮かぶな!降りてきなさい!いいいいいい加減にしないとふふっふふ、ふ、ふっ飛ばすわよ!」

杖を振り上げ、呪文を詠唱するルイズをそっと抑える残りのプリニー。

 「や、コラ!離せ!離しなさいよ!」
 「やー、そんな熱心に引きとめてくれるのは嬉しいんッスけどねー」
 「でもね、ルイズさまー。コレばっかりはどうしようもないんスよー」

やんわりと、しかし、はっきりとした態度で。プリニーたちは言う。
もう、サウレはここに留まってはいられないのだと。
普段はいい加減で、てきとーで、怠け者な彼ら。その彼らが初めて真面目な表情で。でもどこかうつろな瞳で。
だから、ルイズも理解した。理解せざるをえなかった。

 「……ねえ、どうしても?どうしても、行かなくちゃいけないの?」
 「ごめんなさいッス、ルイズさまー。みんなー、あと任せてイイっスかー?」
 「しょーがないッスねー」
 「メンドくさいッスけどー」
 「こら、ご主人様のことをしょーがないとかメンドくさいとか言うんじゃないわよ……バカぁ……」
 「や、すんませんッス。……ね、ルイズさま。オレにはこんなモンしか残してあげられないッスけど……。
  がんばって、くださいッス」

そうして、サウレの体を包んでいたうすぼんやりとした光が天に輝く赤い月へと昇っていったあとには

まるで中身を抜かれたぬいぐるみのようぺしゃんこになった、プリニーの皮だけが残されていた。
346代理:2009/08/30(日) 13:54:15 ID:HE04U/DQ
それから。
事件が起こるたびに1匹、また1匹と櫛の歯が抜け落ちるようにプリニーたちは天に召されていった。

最後まで残っていた1匹、エポナも戦争で七万もの大軍を足止めするために殿としてアルビオン大陸に残り……。
トリステイン軍の撤退が完了した直後に赤い月が昇ったから、召されていったのだろう。
そうして、ルイズの傍にあれだけたくさんいたプリニーたちは1匹もいなくなってしまった。

サウレが残した皮を加工し、仕立て上げたフード付きマントを羽織ったルイズは「これでうるさいのがいなくなってせいせいしたわ!」と普段と変わりないように振舞っていたが、やはりどこか寂しげだった。

そんなルイズの感傷などお構いなしに世の中は動いていく。
ルイズと同じ虚無の担い手であり、ハルケギニア随一の大国を支配する王、ジョゼフ。
かの王の命により、北花壇騎士タバサがルイズを攫いに襲いかかってきたのだ。



 「まてぃっ!」

トライアングルメイジたる雪風のタバサとジョゼフ王の使い魔、ミョズニトニルンのシェフィールド。
そしてシェフィールドが操るスキルニル部隊。
彼女たちによって追い詰められたルイズは苦し紛れに再びサモン・サーヴァントを唱えていた。
進級試験の時と同じように現れた、光り輝くゲート。
そこから飛び出してきたのは……。

 「……プリニー?でも、色が違う……」

姿かたちは間違いなくプリニー。
しかし、ルイズが知っているプリニーは皆青かった。だが新たに現れた2匹は片方は薄い緑色、片方は黄土色をしていた。
その片割れが声を張り上げる

 「かつての恩を返すため!」
 「いやー、僕はそうでもないんだが」
 「この身を異形の姿に変えて!」
 「全力で不本意だけどね?」
 「ミス・ヴァリエールの危機にはせ参じる!」
 「なあ、何でそんなに熱血してるんだ?」
 「プリニーウェールズ!」
 「あ、プリニーワルドだ」
 「ふたりはプリニー!!」
 「なあ、やっぱこれ恥ずかしいって。ほら、みんな唖然としてるじゃないか」

どうやら、ルイズの知っている二人のようだった。
347名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:56:44 ID:zCiiFMc6
バッカーノのロニー・スキアートで思案しているのだが、あまりにチート過ぎるか?
348代理:2009/08/30(日) 13:56:57 ID:HE04U/DQ


 「ええぃっ、かかれスキルニル!」
 「おっと、流石に数が多いな。ひい、ふう、みい…ざっと7・8体といったところか?」
 「一応、失敗魔法で3体は仕留めたんですけどね」
 「ほほぅ、それはそれは。やるようになったじゃないか、ルイズ。
  ……うん、そうなると僕も成長した所を見せないとね」

土を蹴り上げて襲ってくるスキルニル部隊。
数を減らしたとはいえ、またタバサをプリニーウェールズが抑えているとはいえいまだ数の差は圧倒的と言える。
だがしかし、プリニーワルドはうろたえた様子も無く、まるでこの程度の数は何の障害もならないと言いたげであった。

 「さてルイズ。このプリニーという種族の体は特殊な入れ物に人間の魂を詰めた……いわば動くガラス瓶のようなものでね?」
 「あの、ワルド様?ちょっとのんびりしすぎじゃ……」
 「まあまあ慌てない。最後まで聞きたまえ。ええと、どこまで話したっけ……そうそう、プリニーの体というものは人間に比べてはるかに構造が単純なんだ」

だから、こういうこともできる。
そう締めくくると、プリニーワルドは目にも止まらぬ速さで呪文を詠唱する。まさしく『閃光』のごとく。
そして完成するのは……

 「ユビキタス・デル・ウインデ!」

かつて、ルイズたちをさんざんに翻弄した風のスクウェア・スペル。
それはこの場においても非常に強力な魔法だった。

主に、数的な意味で

 「……あのー……」
 「ん、なんだいルイズ」
 「この数は、流石にやりすぎじゃないでしょうか……?」
 「はっはっは、そうかい?」
 「やりすぎですよ!なんですか40体って!?」
 「いやー、この体偏在が作り易くて」

かくして、40体の偏在プリニーワルドによってスキルニル部隊は袋叩きにされ。
残ったタバサとシェフィールドもプリニーウェールズとプリニーワルドが放ったプリニー族の固有能力『プリニー踊り』によって眠らされるか麻痺させられて捕縛(シェフィールドは毒も喰らっていた)され、ルイズはかろうじて窮地を脱したのであった。



そうしてラ・ヴァリエール嬢誘拐未遂事件もひと段落つき、ルイズは疑問を2人(というか2匹)に投げかけた。
どうしてそのような姿をしているのか。どうして自分のところにやってきてくれたのか。

前者の答えは簡潔で『罪を犯したから、その贖罪のため』であり、後者の答えは……

 「ま、彼の粋な計らい、というやつさ」
 「彼……?」

そう言ってウェールズが指し示す方を見るルイズ。そこには

 「……あ、あんた……」

いつかの、ラグドリアン湖畔で初めて出会い、その後も度々顔を会わせた『彼』。
すなわち、『死神』が音も無く佇んでいた。



かくして、ルイズとプリニーたちの新しい生活が始まった
349代理:2009/08/30(日) 13:58:27 ID:HE04U/DQ
はい、以上で終了です。

何か色々失敗してしまってすみません……orz

あ、途中で出てきたプリニーたちの名前はゲームで実際にキャラを作って
ランダムで名前を付けた結果出てきたものをそのままつけてます。

桃色吐息とか鬼軍曹とかハガキ職人とか出なかったのがちょっと残念でした
ではこれで、ホントにおしまいです。
350名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:58:42 ID:zCiiFMc6
失礼、投下中だったか
351ウルトラ5番目の使い魔:2009/08/30(日) 14:00:15 ID:HE04U/DQ
代理終了しました。
それから、どうもこんにちは、毎週恒例のウル魔の時間です。
なんて、ちょっと調子に乗ってすいません。64話投下の準備ができましたが、今日は用事があってこれからもう
パソコンを扱えないので、10分くらいおいてからすぐに、問題がなければ投下を開始してよろしいでしょうか?
今回レス数は13、開始時刻はよりと希望しています。
間違いなくさるさんを受けると思うので、すみませんがよろしくお願いします。
352ウルトラ5番目の使い魔:2009/08/30(日) 14:01:13 ID:HE04U/DQ
書き逃しました。投下開始は14:10からお願いします。
353名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:09:36 ID:3l7BTp51
さるに負けるな!支援!
デュワッ!
354ウルトラ5番目の使い魔 64話 (1/13):2009/08/30(日) 14:11:08 ID:HE04U/DQ
 64話
 短い夏の日の終わり (前編)
 
 冷凍怪人 ブラック星人
 雪女怪獣 スノーゴン 登場!
 
 
 アルビオン大陸、ウェストウッド村はまだまだ夏日が続いていた。セミの鳴き声が間断なく
鳴り響き、外に干した洗濯物は一時間ほどで乾いてしまう。ときたまやってくる夕立さえなければ、
遊ぶにはこれ以上ないというくらいに、太陽は下を通るものを真っ黒にしてやろうという日だった。
 
 ……なのだが、残念なことに今日この日に生気溢れる若者たちがやっていたのは、好意的に
見ても、『青春の無駄遣い』という行為であった。
 
「ぐー、ぐー」
 木漏れ日の差し込む森の中に、才人の気持ちよさそうないびきが流れていた。彼の体は、
木と木の間に張られたハンモックに抱かれて、そよ風を受けながらゆらゆらと揺れている。
 また、周囲を見渡せばこれはまた。
「すー、すー」
「むにゃむにゃ……」
 ルイズやキュルケがこれだけ見れば可愛らしい寝顔ですやすやと昼寝をしていた。そのまた
隣では、タバサがハンモックに横になりながら読書にいそしんでいた姿勢のまま眠っていて、
他の木々の間にもたくさんのハンモックが吊るされていて、アイやエマら子供たちがぐっすりと
眠っており、そのまた奥にはシルフィードが何人かの子供たちの枕になりながら鼻堤燈を作っている。
 
「まったく、いい若いのがのんきなものね」
「しょうがないわよマチルダ姉さん。みんな疲れてるんだもの」
 そうして惰眠をむさぼる一団の姿を、マチルダことロングビルとティファニアが、森の中に
設置した簡易テーブルで紅茶を飲みながら見守っていた。
 このウェストウッド村にやってきて、早今日で五日目になる。それまで彼らはティファニアや
この村の子供たちといっしょに、初日のバーベキューをはじめとして、キャンプ、釣り、子供たちを
山へ連れて行っての昆虫採集、少々危険だったが近隣の村の夏祭りに参加して盆踊りに
似た踊りを踊ってきたりなどなど、夏休みにすることを駆け足でしてきた。ただしその反動で、
思いっきり遊び疲れてしまい、今日は何も予定を立てずに一日中村でのんびり過ごすことにしていた。
「なーんにもすることがないってのが、一番幸せだよなあ」
 才人いわく、クーラーの利いた涼しい部屋で一日中ゴロゴロしているのが夏休みの最高の
ぜいたくだという。思いっきり怠け者の意見だが、彼はこの持論を後悔したことは一度もない。
たとえ、夏休みの宿題が三十一日になっても終わってなくてもである。見上げた信念というべきか。
355ウルトラ5番目の使い魔 64話 (1/13):2009/08/30(日) 14:11:59 ID:HE04U/DQ
 とはいえ、寝る子は育つともいうように、若いうちは大人よりも多くの睡眠が必要なのでもある。
実に幸せそうに森のそよ風を受けて、よだれを垂らしながら寝ている一同の寝顔を眺めながら、
ティファニアはこの騒々しくも楽しい日々を運んできてくれた者たちと出会えてよかったと思っていた。
「けど、この楽しい日も、あと半分なのね」
 だが、心の中に吹き始めた隙間風を彼女は感じ始めてもいた。ルイズたちは当然ながらずっと
ここにいられるわけではない。滞在期間の十日中、もう半分が過ぎてしまっている。けれど、
それを見越していたかのようにロングビルが語りかけた。
「どうテファ、外に出てみようとは思わない?」
「え?」
「この森で過ごすようになって、もう四年経つわね。あの事件のことも風化し、もう人々の口に
あがることも少なくなったし、国は今真っ二つに分かれて内戦の真っ最中、どちらが勝っても
四年も前の小さな事件のことなんて思い出しもしなくなるでしょう。つまり、エルフであることさえ
ばれなければ、ここに留まり続ける必要もなくなるということよ」
 実は、ロングビルがルイズたちをまとめてここにつれてきた理由の一つが、ティファニアに
旅立ちの意思を芽生えさせることであった。どのみち、一生ここにい続けるわけにはいかないし、
子供たちが子供たちとして育てられるのも精々あと数年である。ただ、四年間ずっと隠遁生活を
続けてきたティファニアにはやはり外の世界は興味と同時に、不安と恐怖の対象でもあった。
「でも、やっぱり……」
「もちろん今すぐにとは言わないわ。けれど、あなたももう一六歳だし、そろそろ外に出てもいいころよ。
エルフであることは何か対策を考えなくちゃいけないけど、世の中ってのもそんなに捨てたものじゃ
ないからね」
 そう言ってルイズや才人たちを見つめるロングビルの目は穏やかだった。彼女も、ほんの半年
にもならない前には世間というものに絶望し、盗賊として手を汚して金銭を得ていたのだが、
本物の悪というものに飲み込まれかけたときに助けてくれたのは、その憎しみの対象になって
いたものに属する者たちだった。
「もちろん、中には救いようのない人間のクズもいっぱいいるわ。けどまあ、そういうのの
あしらい方を覚えるのも経験だし……第一あなた自身はどうなの? このままここにいたい?」
「わたしは……ただぼんやりと、災いのない場所でひっそりと暮らしたいと思ってた。けれど、
きっとそれだけじゃだめなのもなんとなく思ってた。お母さんが何のためにこの国まで来たのか、
その答えはきっと東の果てのお母さんの故郷にあって、いつかはそこへ行きたい。そのためにも、
世界を見てみたい」
 少し迷いを見せたが、きっぱりとそう言ったティファニアを見て、ロングビルは頬の筋肉を緩めた。
「ちょっと見ない間に、大きくなったわねテファ、あなたがそんなことを言うようになるとは、
正直思ってなかったわ」
「なんとなくだけどね。この村にいれるのも、あと少しなんだって漠然と感じるようになってきたの……
伝え聞いた話では、世界のあちこちで怪物が現れて暴れてるって、だからわたしたちだけ辺境に
隠れていても、それは安全じゃなくなってきてる」
「この村を襲ったっていう、怪獣のこと?」
356ウルトラ5番目の使い魔 64話 (3/13):2009/08/30(日) 14:14:04 ID:HE04U/DQ
 うなづいたティファニアを見て、ロングビルは考え込むしぐさを見せた。以前、超獣サボテンダーが
現れて暴れたときのことは、村の裏手の森が壊滅しているのを見れば隠しようがなかったので
ティファニアはそのことを、自分たちは逃げ延びて、怪獣はその後どこかへ去ったということに
していたが、口下手な彼女はすぐに見破られてしまい、仕方なしにジュリと、それから
ウルトラマンジャスティスのことを話して、大変な衝撃を彼らに与えていた。なにせ、才人から
見れば二人目の異世界のウルトラマン、しかも今回は同じ時間に共通して存在できているのだ。
「ジュリ姉さん、もう一日いてくれたら皆さんにご紹介できたんだけど」
「そうねえ、せっかくあなたたちを助けてもらったんだから、私もあいさつくらいはしておきたかったけど」
 ただし、彼女は才人たちがやってくる前日にこの村に立ち寄ったが、その後また旅立って
しまっており、また戻ってくるのはいつになるかわからないというのが彼らを落胆させた。
探そうにも、アルビオンと一口に言っても九州、四国以上の広さがある。そうなると本当に
一日違いで入れ違いになってしまったのが悔やまれた。だがそれでも、話を聞くに自分たちと
敵対する存在ではないと確信することはでき、もしかしたらどこかで会えるかもと希望を持つことにした。
「まあ、正直私以外に姉さんと呼ばれるやつがいるのには少々妬けるけど、それほどの人が
見回ってくれてるならアルビオンも安心かもねえ……それにしても、ウルトラマンは人間に
なることもできるのか、いったい何者なんだろうねえ……」
 ウルトラマンの正体、それについてはハルケギニア全体の人間の疑問だろう。しかし、
ジュリはティファニアに対して、ウルトラマンは宇宙の正義と秩序を守る者、とは言ったが、
それ以上のことは宇宙の概念が根本から欠けているティファニアにはまったく理解できない
ものであった。しかし、ジュリの言葉をそのまま信じるとすれば、それはある一つの単語を連想させた。
「まるで、神様みたいよね」
「神様、ね」
 ロングビルは、ティファニアの率直な感想を受けて考え込んだ。人智を超えた力で正義と
秩序を守る存在、それはまさしく神と呼んでもいいだろう。実際、地球でもウルトラマンは
平和を守る神なのかもしれないと評されたこともある。
「けど、神がいるなら悪魔もいる。そして、神の力が必ずしも悪魔を上回るとは限らない。
そのとき、人間はどうするべきなんだろうね」
「……」
 ティファニアは、はっきりと答えを出すことはできなかった。神と悪魔の戦いが、神話ではなく
現実におこなわれているのが今の世界だ。そのとき、人間は傍観者としての立場でいられるのだろうか? 
その答えは、いずれ人間全体が出さねばならないだろう。
 また、アルビオンに来てから表面上は平和だが、ティファニアが行商人から得た情報では、
地方では怪事件が頻発しており、どうもきなくさい匂いはしている。けれど、そんなことは
トリステインでも同じであり、今のところはヤプールが何かをたくらんでいる確証はなかった。
357名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:15:02 ID:o4sVBtoO
支援。
358ウルトラ5番目の使い魔 64話 (4/13):2009/08/30(日) 14:15:15 ID:HE04U/DQ
「とにかく、このまま何事もないのが一番だけど、楽しめるときには楽しんでおかないとね」
「そうよね。皆さん、今日はゆっくり休んで、明日からまた遊びましょう」
 いくらヤプールがいつ襲ってくるかもしれないとはいえ、月月火水木金金などといった
時代錯誤な愚劣なことは彼らは考えない。いくらやってもだめなものはだめ、野球部で
レギュラーを目指しているとかいうならともかく、目標もなく焦っても徒労にしかならないし、
勤勉などそもそも柄ではない。そうなれば焦ってもしょうがない、事件が起きたらそのときは
そのときだと開き直って、夏休みをこれまで楽しんでいた。
 けれど、彼女たち二人も食事の時間まで昼寝の仲間に加わろうかと思ったとき、街道の
ほうから耳慣れない大きな声が響いてきた。
 
「失礼! この村の住人の方はおられないかね」
 
 ややしわがれた男の声に、二人は一瞬はっとしたが、すぐに気を取り直して顔を見合わせた。
「こりゃ、旅の商人あたりが営業に来たってところかな。どうするテファ? 無視しちゃおうか」
「そういうわけにもいかないでしょ、一応あいさつくらいはしておかなくちゃ」
「律儀なんだから、じゃあ私もでるわ、タチ悪いのだったら丁重にお帰り願わなくちゃならないからね」
 二人は仕方無げに席を立つと、声のした村の表のほうへと歩いていった。
 
 …………
 
 それからおよそ一〇分後、しんと静まり返った村の裏手で、いいかげん寝疲れた才人が目を覚ましていた。
「ふわぁーあ、よく寝た」
 普通なら、充分眠ったら疲れがとれるはずなのに、逆に体がだるいくらいだ。今はルイズを
起こす必要もないし、今日のところは洗濯もする必要はなし、なまけることで疲れてしまうとは、
これではなまけがいがない、しょうがないから起きることにしようと才人はハンモックから降りて、
背伸びをするとデルフを掴みあげた。
「おはようデルフ、寝てる間になんかあったか?」
「はよさん相棒、よく寝てたぜ、もう目が覚めないんじゃないかと思うくらいな。だから、村はずっと
何事もなしさ」
「ならいいや……ロングビルさんとテファの姿が見えねえが?」
「ああ、秘書の姉ちゃんとエルフの娘っこなら、村の入り口のほうにさっき行ってたな。商人か
なんかが来たみたいだったが」
「そっか、じゃ、ま、顔洗うついでにあいさつしてくるかな」
 目をこすりながらそう言うと、才人はデルフを背中に背負い、まだよく眠っているルイズや
子供たちを起こさないようにしながら歩いていった。
 
 だが、村の表口までやってきたときに才人の耳に入ってきたのは、予想もしていなかった
ティファニアの切羽詰った声だった。
359ウルトラ5番目の使い魔 64話 (5/13):2009/08/30(日) 14:16:02 ID:HE04U/DQ
「そんな! 横暴です!」
 とっさに彼は、これまで何度も修羅場を潜り抜けてきた経験から、背中のデルフを確認すると
一目散に駆け出した。
「どうしたんだテファ?」
「あっ、サイトさん」
 村の入り口に着いてみると、そこではティファニアとロングビルが、鎧を着て槍を持った
いかつい一〇人ほどの一団と言い合いをしているところであった。才人は一瞬盗賊かと
思ったが、身なりが整然としているところから見ると兵士らしい。また、指揮官と思われる男は
派手でこそないが上質の生地を使った服を隙なく着こなし、悠然と立っているところから
役人であると思われた。
「どうしたもこうしたもないよ。こいつら王党派の役人だそうだけど、近々おこなわれる
レコン・キスタとの決戦のために税を納めろって言い出してきやがって」
 ロングビルが吐き捨てるように言うと、役人はにこやかな作り笑顔を浮かべた。
「別におかしなことではないでしょう。この国を我が物としようとたくらむ不逞な反乱軍を
撃破し、秩序を回復するために協力するのはアルビオン国民として当然の責務です」
「だからって、五〇〇エキューなんて大金がこの村にあるわけがないだろう!」
「ごっ、五〇〇エキュー!?」
 ロングビルの言った金額を聞いて、さしもの才人も愕然とした。この世界の世事にまだ
うとい彼も、それがいかほどの大金かはちょっと考えるだけですぐにわかった。日本円に
換算しても、五、六〇〇万円くらいにはなるだろう。平民どころか、貴族にだっておいそれと
出せる金額ではない。そんな大金が、ましてやこの女子供だけの小村のどこにもあるはずがない。
「おいあんた、そのアホみたいな数字はどっから出てきたんだよ」
 才人が問いかけると、役人は後ろに控えていた長い黒髪の、秘書と思われる女性に身振りで指示した。
「村人一人当たり、頭税一エキュー、保護税一〇エキュー、土地税、住居税、農地税などを
総合しました結果、およそ五〇〇エキューとなりました」
 その秘書は無表情で、まるで氷のようになんの感情も含まれない、事務的な、いやむしろ
機械的な声で淡々と問われたことを述べたが、それがなおのこと才人たちの怒りをかきたてた。
「ふざけるな! なんだその訳のわからない税金の数々は」
「この国に住んでいる以上、納税の義務が生じるのは必然です。それに今は戦時、
税率が増すのは当然ですし、なにより反乱軍どもの魔手から守ってやっているのですから、
これくらい当然です」
 確かに言っていることは、戦時下の国としては当然のことだが、それにしたって高すぎる。
才人も怒ったが、何よりロングビルの腹の虫はおさまらなかった。
「では、その当然の義務とやらを国民に押し付けるために、あなた方はこんなへき地まで
わざわざやってきたのですか、たいそう忙しくてご立派でいらっしゃいますね……いったい
どうやって払えっていうんだ!」
 元盗賊の、普段子供たちには決して見せない凄絶な怒りの表情を向けられても、
役人はなおも涼しい顔のままだった。
「この村の家財一式と、土地や作物を売り払えばよいでしょう。王家のために国民はそれくらい
して当たり前、それでも足りなければ、あなた方くらいならいくらでも稼ぎ手があるでしょう」
360ウルトラ5番目の使い魔 64話 (6/13):2009/08/30(日) 14:17:16 ID:HE04U/DQ
「……」
 ふざけるなと怒鳴りたいのを奥歯を噛み締めてこらえながら、ロングビルは心に以前と同じ
黒い感情が戻ってくるのを感じていたが、今回はそれを抑制する必要を認めなかった。また、
才人も同時に同じ結論に達したらしく、さりげなくティファニアを後ろに下がらせながら、
デルフリンガーの鞘の先を軽くこずいて相棒に出番が近いことを知らせた。
「もし、払えないと言ったら?」
「ご心配なく、金銭だけが国に貢献する手段ではありませんよ。幸いこの村には人手は豊富な
ようですし、現在前線に構築中の陣地の工事に従事していただければ充分ですよ。ついこの前も、
この先の町の方々が総出で喜んで協力してくださいましたよ」
 それはつまり、戦争のために奴隷同然となって労働しろと言っているのだろう。その総出で
狩り出された町というのも、住人が全ていなくなっては、いずれ戻ってきたときも町の機能が
回復するまでにはとほうもない時間がかかるし、前線の陣地設営ともなれば常に生命の危険が
ともなうし、場合によっては弾除けにされる。おまけに百歩譲って労働に従事するにしても、
大人だけでなく子供まで働けと明言してくれた。そんな場所にどうして子供たちをやれるものか。
誇らしげな役人の表情に反比例して、ロングビルと才人は顔の筋肉が引きつっていくのを
抑えられなくなっていた。
「それもお断りしますと言いましたら、どういたしますか?」
「そんな人は忠誠心豊かなアルビオン国民にはありえないはずですが、もしいたとしたら
それは反乱軍の協力者でしょう。間諜はただちに連行し、あるべき正しい姿に戻して
差し上げるために、教育を受けてもらいます」
 自分の頭の血管が切れる音が聞こえた瞬間があるとすれば、それはまさにこのときで
あっただろう。自分の権力を盾にして弱者から収奪する、この紳士ぶった盗賊たちの
言いなりになってやる義理はどこにもなかった。
 
「お前らにやるようなものは、ここには何にもないよ!」
「今すぐ出て行け! この腐れ外道ども!」
 
 ついに堪忍袋の緒が切れた二人は、盛大にたんかを切ってそれぞれの武器を抜いた。
対して、役人はいやらしい笑いを浮かべて、兵士たちに合図を送った。
「これは反乱の証と判断するに充分ですね。捕らえなさい! 生死は問いません」
 すぐさま一〇名からなる兵士が、槍や、ある者は杖を抜いて襲い掛かってきた。普通ならば
女子供などのかなう相手ではないが、彼らは見た目どおりの人間ではない。
「おもしれえ、悪いがてめえらみたな奴らには手加減しねえぞ!」
 デルフリンガーを引き抜き、こちらをなめていた槍兵の槍を切り飛ばし、わき腹に峰打ちを
食らわせて戦闘力を奪うと、残った槍兵は槍を持ち直し、油断なく構えて才人に向かってきた。
361名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:21:59 ID:wsRK8dbQ
支援 まさかのスノーゴン
362名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:24:51 ID:oOePD99s
♪ とーびだーせ きゃーぷてーん うるーとらー

ウルトラ違い  毎週日曜日はウルトラの日

と、いふわけで支援
363名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:25:02 ID:ikrZ92nl
支援シュワッチ!
364名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:33:58 ID:z77qEs23
ウルトラ支援
365名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:39:36 ID:pggbUaoW
>346
ちょっと間を空けてきてみたらテラ吹いたわwwww


>ウルトラの人
…さるさん、かな…?
さるさんに引っかかった様ですので、初めてですが代理として投下してみます。

また、恐らくは下級貴族出身であろうと思われる二人のメイジの兵は、杖を構えたロングビルに
対して、刃物を取り付けた凶器のような形の杖を向けてくる。
「最近の王党派は、多少はましになってきたのかなと思ってたけど、どうやら買いかぶりだった
みたいだねえ……ムシャクシャしてるから、骨の五、六本は覚悟しなさいよ」
 凶悪な笑みを浮かべながら、ロングビルは敵のメイジを挑発した。その雰囲気にただならぬ
ものを感じ取ったのか、敵は二人で数で勝っているというのに、用心して一気に攻めてこない。
その隙に、ロングビルは後ろにいるティファニアに目配せした。
「テファ、後でいつものやつよろしくね」
「うん」
 ティファニアは、敵がロングビルと才人に意識をとられているのを確認すると、懐からこっそり
ペンシルサイズの小さな杖を取り出した。
 
 一方、才人は残る七人の槍兵を相手に、獅子奮迅の立ち回りを演じていた。
「ちぇっ、意外とやるなこいつら」
 最初の一人は油断していたので簡単に倒せたが、相手も本職の兵士である。本気を出せば
剣術ではまだ素人同然の才人より技量は上であるし、一人に攻撃しようとしても、別の方向から
槍を突き出されたりと、連携のとれた動きをされては鎧のついていない急所を、殺さないように
狙うのはガンダールヴの力を使っても容易ではなかった。
「けど、ならそれはそれでやりようもあるぜ!」
 攻めるのが難しいと判断した才人は戦法を変えた。こちらから無理に攻め立てるのではなくて、
相手が槍を突き出してきたところで、かわすと同時に槍の穂先を切り落として、ただの棒に
変えていった。
「銃士隊とした特訓、意外とよく役に立つなあ」
 三人目の槍を役立たずに変えながら、才人は以前アニエスやミシェルとともにツルク星人を
倒すための三段戦法の特訓をしたときのことを思い出していた。あのときの、高速で振り
下ろされてくる星人の刀を受け止めるために徹底的に鍛えた受けの技を、少々応用した
カウンター戦法、防御は最大の攻撃なりとでも言うか、なかなか使えるようである。
 その活躍をちらりと横目で見たロングビルも、彼女なりの戦法をメイジの兵に向けて披露していた。
「いでよゴーレム! ……なーんてな」
 高々と杖を掲げたと思った瞬間、敵メイジの顔面に石がめり込んでいた。食らった相手は
目から花火をひらめかせてゆっくりと倒れる。
「あっはっはっはっ、ばーかばーか」
 いかにもな仕草で魔法を使うのかと思いきや、足元にあったただの石を蹴り飛ばして一人の
メイジを倒したロングビルは、相手のその無様さに大いに笑った。
367名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:07:01 ID:QJW3jMyh
そういやクロムウェルの裏には奴がいたな支援
「おのれっ! メイジを騙るとは不届き千万な、女とて容赦はせぬぞ」
「ふんっ、ちょっと違うね。『元』メイジさ、けど容赦してもらう必要はないよ」
 怒って氷の矢を撃ちだして来るもう一人の攻撃を余裕で避けながら、ロングビルは手ごろな
石を拾い上げて、今度は投げつけた。
「ちょこざいな! 貴族をなめるな」
 相手は風で石を吹き飛ばして、もう一度ロングビルに狙いを定めたが、その必要もなかった。
彼が自ら作り出した風が彼の周辺の樹木を揺さぶり、彼の手の上や鼻先に、黒々としたまだら
模様の毛虫を何匹も落としたのである。
「ぎゃっ!? ぎ、虫!? 毛虫っ!? ぎゃっ……」
「はい、お休みなさい」
 顔面に今度こそ大きな石をめり込ませて倒れるメイジに向けて、ロングビルは祈る仕草を
しながら笑った。実は、投げた石は囮で、このうっそうとした森の場所で風の魔法を使わせる
ことによって、樹上の虫を落っことさせて隙を作ったというわけである。もちろん、メイジの頭上の
木にこの時期虫がつくというのも、地元の人間であるロングビルにとってはよく知ったことである。
「ま、悪く思わないでね。こちとらまだ魔法が使えないから、多少ズルさせてもらってもいいよね」
 ロングビルはホタルンガの事件の際に魔法の力を奪われ、それから人知れず訓練をしているが、
いまだに魔法は回復していない。だが、そこのところは元盗賊のつぶしで、護身術や魔法が
使えないときの戦闘手段などはいつでも使えるように、磨きをかけ続けていた。
 
 だが、カウンター戦法で一時有利に立った才人であったが、すぐにまた形勢を逆転させられていた。
「相棒、右に跳べ!」
「くそっ、銃を持ってるとは考えが甘かったぜ!」
 鉛玉の連射をかわしながら才人は毒づいた。槍兵たちは、手持ちの槍が破壊されて使い物に
ならなくなると、降参するどころか鉄砲を取り出して撃ってきたのだ。
「くそっ、こりゃちょっとまずいか」
 いくら才人がガンダールヴの力を発動できるとはいえ、相手が銃では分が悪い、剣と銃が
兵器として圧倒的なアドバンテージ差があるというのもそうだが、連射をしてくるというのが
彼が隙をついて切り込むチャンスをつぶしていた。普通、ハルケギニアの銃は前込め式で
連射が利かないが、彼らは一人につき四丁も持っていたために、射撃間隔の隙が埋められていた。
しかも悪いことにまだ五人も残っていたために、三人が撃っている間に二人が弾込めをするという
信長の三段撃ちのような攻撃をしてきてまったく近づけなかった。
 だがそのとき、戦況は三度逆転した。苦戦する才人の視界の外から風にまかれた炎が
飛んできたかと思うと、兵士たちをあっという間に吹き飛ばしてしまったのである。
「ルイズ、タバサ、キュルケ!」
「はぁーい、助っ人ただいま参上ってね」
 一瞬でけりをつけてしまった三人の助っ人は、まだ銃を向けようとしてくる兵士を適当に
ぶっとばすと、呆然としている才人に歩み寄った。
「お、お前らどうして?」
「あんな派手に鉄砲撃ってれば普通気づくわよ。バカじゃない」
「あ、そうか……そういえばルイズ、子供たちは?」
「シルフィードが守ってるから心配ないわ、普通ドラゴンに好んで近づくやつはいないしね。
んったく、あんたはまた勝手に暴れて、これでまたキュルケやタバサに借りができちゃったじゃない」
「ご、ごめん」
 糾弾してくるルイズに、才人はとりあえず頭を下げて許しをこうしかなかった。ルイズの爆発より
キュルケやタバサの魔法のほうが援護には向くとはいえ、やはりキュルケに借りができるのは
ルイズにとってかなり不愉快なもののようだ。
 
 とはいえ、これで兵士たちは全員戦闘不能になり、意識は取り戻したが武器を取り上げられて、
役人の後ろで縮みこまっている有様だった。
「さて、これで頼みの兵士たちはみんな役立たず、どうするねお役人さん」
「ずいぶんとやってくれますねえ。こんなことをやってくれたら、もう反乱確実ですね。次は軍隊が
やってきますよ」
 ここまで来ながら、まだ虎の威を狩る役人の態度に彼らは腹を立てたが、まさか本当に国の
役人を殺してしまうわけにもいかなかった。もちろん、この国ではルイズたちの家名も役には
立たない。しかし、表情を歪める才人たちとは別に、ロングビルは余裕たっぷりというふうに、
後ろで待っていたティファニアに合図を出した。
「テファ、もういいよ。やっちまってくれ」
「うん……ナウシド・イサ・エイワーズ・ハガラズ・ユル・ベオグ……」
 まるで歌うようにティファニアは呪文を詠唱し始めた。そのスペルは流れるようで、才人は
思わず聞きほれてしまったが、魔法に精通しているはずのルイズたちは、その聞いたことの
ない内容の呪文に驚いた。
「これは……水でも火でもない……なら、エルフの先住魔法? いえ、あれは杖を必要と
しないと聞いたことがある」
 メイジにとって、これからおこなわれようとしている魔法がなんなのかわからないというのは
本能的に恐怖を呼び起こす。だが、この中で一人、デルフリンガーだけはその呪文を聞いて、
遠く懐かしい記憶を呼び起こしていた。
「こいつは……恐れ入った。こんなところに、これの使い手がいたとはな」
 対する役人や兵士たちも、呪文の正体がわからずにとまどうが、彼女の魔法はそこで
完成した。
「ベルカナ・マン・ラグー!」
 呪文の終了と同時にティファニアが杖を振り下ろした瞬間、役人と兵士たちの周りの
空気が陽炎のように揺らめいたかと思うと、それは目の錯覚だったのかすぐに掻き消えた。
「え……」
 何かが起こると思っていた才人たちは、一見何の変化も現れないことにとまどった。
だが、この一見したら何も起こっていないように見えることこそが重要だった。
「なんだ、何も起こらぬではないか、またこけおどしか」
 役人は、自分に何のダメージもないことを確認してせせら笑ったが、逆にティファニアや
ロングビルは驚愕に目を見開いた。
「え! な、なんで?」
「テファの魔法が、効かない!?」
 その声を聞いて驚いたのはルイズたちもだが、言われた役人たちもだった。
「な、なに!?」
 驚いた役人は、とっさに連れている秘書や兵士たちを見渡した。
「私は、何も異常はありません」
 秘書は無表情で機械的に答えたが、兵士たちは目を虚ろに開いてぼんやりとして。
「あれ、俺たち、なんでこんなところにいるんだ?」
「なんだ、いったい何してたんだ?」
 と、きょろきょろと居眠りから覚めたときのように混乱していた。
「記憶を無くしているの?」
 兵士たちの様子から、ルイズはそう読み取った。少なくとも、この村に来てから
今までの記憶が削り取られているようで、その推論をロングビルも肯定した。
「そうよ。この子の魔法は、対象の人間からある程度の記憶を失わせるもの、
系統も何もわからない代物なんだけど、今までこれで盗賊とかの記憶を奪って
村を守ってたの。けど……」
 何故、この役人とその秘書には通じない? 皆の視線がその二人に集中した。
「ねえテファ、その忘れさせる魔法、これまで効かなかったことはあるの?」
「い、いいえ、動物とか何を考えてるのかわからないものには成功したことは
ないけど、人間相手に失敗したことはありません」
「人間相手に……」
 その説明で、才人とルイズはピンとくるものを感じていた。まさか……最悪の展開を
想像しながら、才人は以前トリステイン王宮であのバム星人と戦ったときのように、
懐からガッツブラスターを取り出して、かざして見せた。
「役人さん、これ何だかわかるか!?」
「ぬっ! な、なんだと!?」
 役人は、ガッツブラスターを見るや、過剰なまでに驚いて後ろに飛びのいた。
それで才人は確信した。銃を向けられれば驚くのは人間として当たり前の反応だが、
ハルケギニアの感覚では一見銃には見えないビームガンのガッツブラスターを見て
ここまで驚くのは、先に人間には必ず効くティファニアの忘却の魔法が効かなかった
ことも合わせて、充分な確信を彼に持たせるのに必要な条件を満たしていた。
「てめぇ、宇宙人だな!」
 その瞬間、これまで人を食ったようだった役人の顔が、ひきつったようにゆがんだ。
 
「……よくぞ突き止めたな! このブラック星人の正体を! ふはははは!」
 
 笑いながら役人が両手を顔の前で合わせると、全身がスパークしたかのように
発光し、一瞬のうちに巨大な目を持つ全身黒色の星人の姿に変貌していた。
「やっぱり、な」
「あ、亜人? いえ、こいつもウチュウジンなの!?」
「そのとおり、貴様らのような下等な文明の者たちもようやくそれくらいはわかるようになったか、
はははは」
 バム星人、ツルク星人、スチール星人などの襲来によって、ハルケギニアの人々にも、
わずかであるがウチュウジンという、ヤプールの配下の正体不明の亜人たちがいることは
知られ始めている。ブラック星人は、単なる正体不明の怪物として見られるより、高度な
知的生命体と見られたことをうれしがったと見え、むしろ正体を暴かれたことを喜ぶかのように、
言い逃れようとすることもせずに、赤い発光体となっている口部を点滅させながら正体を喜んで
明かしたが、本当なら当たらないほうがよかった予感が的中した才人はあらためて
ガッツブラスターを構えなおし、ほかの面々も戦闘態勢を整えた。
 しかし、心の準備ができていなかった兵士たちは、星人の姿を見てパニックに陥ってしまった。
「ひっ、なんだあ!?」
「ち、徴税官さまが、徴税官さまが怪物になったあ!? に、逃げろぉ」
 宇宙人を見慣れているはずがない彼らは、尻に帆かけて逃げ出したが、その前に
あの役人の女秘書がいつの間にか無表情で立ちふさがっていた。
「て、てめえ」
 その後に、どけと言おうとした一人の兵士は、それを言い切ることができなかった。
なぜなら、立ちふさがった女秘書の口から真っ白な霧が噴き出して、避ける間もなく彼らを
包み込んでしまったのだ。
「目撃者を、生かして帰すわけがないだろう」
 星人があざ笑いながら言い、霧が晴れたとき、そこには真っ白な氷の彫像となった
兵士たちが身動き一つせずにたたずんでいた。恐るべき極低温の冷凍ガスによって、
一瞬のうちに凍結されられてしまったのである。
「あの女も、人間じゃないみたいね」
「雪女……」
 キュルケが吐き捨てるように言ったように、冷凍ガスを吐ける人間などいるはずがない。
あらゆるものを氷付けにする氷の女、まさしくそれは雪女、真夏だというのに女の周りから
吹いてくる風は、刺すように冷たい。下手に近づけば、こちらもあの冷凍ガスにやられる。
キュルケとタバサは遠距離攻撃で戦おうと決めたが、才人は戦うに先立って星人に問いかける
のを忘れなかった。何故宇宙人が人間に化けて役人の真似事などをやっていたのかと。
「ふははは、どうせ死ぬのだから教えてやろう。理由は知らぬが、ヤプールは人間を多く
集めたがっている。だから奴は我らに目をつけたのだ、愚かな人間を騙すなど、我らには
造作もないことだからな」
 星人は、正体を明かして開き直ったのか、こちらがただの人間だと甘く見ているのか雄弁に
話し始めた。この傾向は、侵略宇宙人全体に見られることで、計画が看破されると自分から
侵略作戦を丁寧に説明してくれるものが多い。隠していたことを自慢したいのは宇宙人にも
共通する心理なのかはわからないが、そのおかげでGUYSのアーカイブドキュメントは
データに恵まれている。だがともかく才人は話しながら、ブラック星人のプロフィールを
思い出していた。MATの時代の後期に地球にやってきた侵略宇宙人の一人で、土星に
前進基地を築いて、そこで働かせる労働力となる奴隷を得るために、地球人の若い男女を
千組盗み出して、子供をたくさん生ませて奴隷にしようという、なんとも気の長いことを考えた
星人だ。さすがに今回は前回の作戦の迂遠さを反省したようではあるが、ということは
あの雪女の正体も……だが今はそんなことより、王軍の内部に当たり前のように宇宙人が
潜入しているほうが問題である。
「なるほど、お前もバム星人とかみたいにヤプールの手下に成り下がった奴らの一つってわけか」
「それは違う。奴は我らを利用しているつもりだろうが、我らこそここで奴隷を大量に手に入れ、
前進基地を築いたら大軍団を送り込み、先んじてこの世界も地球も侵略してくれるぞ」
 どうやら、表面上協力してはいるが、内実はお互いを利用しあって、機会が来たら裏切る
腹づもりのようだ。才人はあわよくば、この機会にヤプールの情報を聞き出そうと思ったが、
この様子では奴の言ったとおりヤプールが何故人間を集めるのかなど、作戦の重要なことは
知らされていないに違いない。だが、どんな小さなことでもこの際は聞き出しておくべきだろう。
こっそりと、今にも攻撃を仕掛けようとしているキュルケたちに視線で待ってくれるように頼むと、
もう一つ質問をぶつけた。
373名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:18:15 ID:QJW3jMyh
>ブラック星人は、単なる正体不明の怪物として見られるより、高度な知的生命体と見られたことをうれしがったと見え、
>むしろ正体を暴かれたことを喜ぶかのように、言い逃れようとすることもせずに、
>赤い発光体となっている口部を点滅させながら正体を喜んで明かした

なぜか変態っぽく感じた俺www
「まったく、トリステインで会った狼野郎といい、いったいどれだけ宇宙人が来てるんだよ?」
「はっはっ、ウルフ星人のことか? あんな低脳はせいぜい使い捨てにされればよいのだ。
お前たちにはわからぬだろうが、今宇宙中からこの星は注目されているのだ。なにせ、
これほど侵略しやすくて、なおかつ価値のある星はそうないからな。ただ、あまり派手に
動きすぎると他の星人に目をつけられてしまうから、準備が済むまでは精々平和でいるがよいさ」
 なるほどと、才人は思った。メフィラス星人が、バルタン、ケムール、ザラブの三大星人を
配下にしていたように、侵略宇宙人には独自のネットワークがあるのだろう。確かに、地球と
環境がそっくりな上に、人間の文明レベルも低く、なにより防御についているウルトラマンの
数が格段に少ないハルケギニアのことが知れ渡れば、侵略したがる宇宙人はいくらでも
いるだろう。この話のとおりだとすると、もう何十、何百といった宇宙人がヤプールの手を借りて
侵略を狙っているのに違いない。ただし皮肉なことに、抜け駆けしようとすればヤプールや他の
宇宙人も敵に回してしまうために、お互いに牽制しあって動けないのだ。
「だが、いくらでも超獣を生み出せるヤプールを相手にして、どうやって対抗するつもりだ」
「ふはは、奴は欲深いからな。いずれ大規模に動いてこの星の軍勢やウルトラマン、他の星人とも
激突するだろう。その疲弊したところに我らが大軍団を送り込めば、最後に全ては我らのものよ」
 要するに、漁夫の利を狙っているということか、確かに有効な手段だろうが、このくらいで
狡猾なヤプールを出し抜けると思っているあたりが抜けている。才人は、所詮こいつもヤプールに
とっては捨て駒だと悟り、これ以上聞きだせることはないと結論づけた。
「姑息なやり口は昔と変わってないみたいだな。そんなのじゃヤプールには遠く及ばないぜ」
「なに? 人間ごときが生意気な! どうやら少ししゃべりすぎてしまったようだな。そろそろ
まとめて死んでもらうぞ」
 怒ったブラック星人は、大きな目をさらに血走らせて、秘書だった雪女を前に出した。
対して、待ちに待ったとばかりにキュルケ、タバサたちこちらの主力も杖を構えなおし、
ロングビルもティファニアを後ろに下がらせる。才人も接近戦はまずいと、愚痴をもらすデルフを
鞘に戻して、ガッツブラスターを構えながらルイズをかばう。
「お前たち全員を氷の像にして、この場で叩き割ってくれるわ!」
「言ってくれますわね。ですが、わたしたちを相手に、手下一人で勝とうなどとは少々なめすぎでは
ありませんこと?」
 雪女と正対しながら、キュルケは強気で星人を挑発した。手下の後ろに隠れて偉そうにしている
態度が気に入らなかったからだが、ブラック星人は元々変身能力以外にはこれといった能力を
持たずに巨大化もできない。だから直接戦うことはしないのだが、この雪女は違う。
「ふふふ……確かに貴様ら、この星の人間の戦闘力は高い。ならばじわじわ恐怖を味わうより、
一気に絶望を味わって死ぬがいい。雪女、スノーゴンになれいーっ!!」
 その瞬間、棒立ちしていた雪女が一瞬にして山のように見上げるほど巨大化し、女性の姿が
揺らいだかと思うと、全身を白毛に覆われた、直立した白熊のような怪獣に姿が変わった!
「ちょっ、おいいきなりかよ!」
 多分この後、雪女を相手に息もつかせぬ立ち回りを演じることになると思っていた才人は、
生身の人間相手に空気を読まずにいきなり巨大怪獣を出現させたブラック星人に抗議したが、
星人はスノーゴンの後ろで高笑いをあげながら命令を下した。
「ゆけ! 氷付けにして踏み潰してしまえ!」
 やむを得ずに逃げ出す才人たちに向けて、スノーゴンは口を開いてさらに強力になった
冷凍ガスを吐き出してきた。真夏の森が、まるで真冬のように白く凍りついていく。
「たく、せっかくの休みをぶちこわしやがって……ただじゃすまさねえぞ!」
 
 
 続く
来週、後編に続きます。
はい、というわけで、今回はあの「土星から来たブラック星人」のお出ましでした。
帰ってきたウルトラマンでは、日本の雪女の伝説を利用してアベックをさらっていた姑息な奴でしたが、
今回もまた口八丁とスノーゴンだのみで奴隷狩りに精を出しています。
ちなみに、今回はウェストウッド村の人間を連れ去ろうという話でしたので、ブラック星人以外に、
レイビーク星人を使おうかなとも考えましたが、やはり怪獣との戦いやエースの活躍があったほうが
よいと思ったので、ブラック星人においでいただきました。ティガファンの皆様すいません。
さてそのスノーゴンですが、私は小さいころに見た帰マンのビデオで初めて見た冷凍怪獣がこれだった
ので、冷凍怪獣といえばまずこいつが思い浮かびます。去年の超8兄弟で帰マンの回想シーンで
こいつが出たときは、思わず映画館の席でおっ! と思いました。
 
なおティファニアの『忘却』ですが、相手が宇宙人であれば効かないということにしました。脳の構造が
まったく違うであろうということで、ガッツブラスターと同様に宇宙人探知機にしちゃえるからです。
 
では、来週の後半ではエースの久々の地上戦です。それまでしばらくさようなら。
376名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:23:43 ID:z77qEs23
ウルトラ乙 支援も乙 代理も乙
377名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:24:03 ID:QJW3jMyh
作者氏も代理投下してくれた人も乙
しかし宇宙人って妙に気が長いというか遠回りなことする奴が多いなw
378名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:28:05 ID:v0ym6WWh
>>377
人間を狂わせるレコード。ジュラル星人の仕業に違いない!
379名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:28:21 ID:tSFFisc1
乙です
1日が24時間で1年が365日ってのは地球だけだし宇宙人からみれば地球人が気が早すぎるように見えるだけなんじゃないかな
逆に気が早い宇宙人とか見ないな
380名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:29:24 ID:ikrZ92nl
はぁー初めての代理投下は緊張しました。
それはそうとウル魔の方乙でしたー。
スノーゴンは子供の頃にビデオで見たウルトラマンジャックをバラバラにするシーンを見て
かつてない衝撃を受けた記憶があります。
その頃はウルトラマンは負けないと言う気持ちが強かったので初めて見た時は
本当にショックでした。
次回がそのスノーゴンにエースがどう立ち向かうかが楽しみです、次回も楽しみにしています。
381名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:34:06 ID:wsRK8dbQ

連中はIQ4〜5桁の超頭脳の持ち主だから
せいぜいIQ100前後の地球人の頭では理解できないのかも
肉体だって密度が金の2倍近くある宇宙人とかいるし 地球人って貧弱だよなぁ……
382ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:43:27 ID:mFZvcKlC
ウル魔の方、乙っした!

真夏だからか、若干スノーゴンに冷やされるのもいいなーと思ったのは内緒だぜっ!

さて、ウル魔さんと前後して投稿することがお約束になりつつあります。
名高い作品の周囲でウロチョロして申し訳ございません。
てなわけで、何事も無ければ15:55頃より失礼しますですー。
383ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:55:05 ID:mFZvcKlC
投下開始ですー。
-----
ビリビリと伝わる、魔力。
目に見えない『立ち入り禁止』の看板のようなものだった。
入り込めない。
空気そのものが、ボク達を拒絶していると感じる。
クジャと会って感じたイライラやザワザワが、一瞬に冷や汗になってしまった気がする。
魔力に覆われた、恐怖そのもの。
それが、ボク自身の臆病さを、睨みつけて動けなくしていた。

恐怖を覆すのは、勇気ばっかりじゃない。
「ファイヤボールっ!!」
それは、キュルケおねえちゃんの、感情の塊、だったんだと思う。
「ちょ、いきなりっ!?」
「勝負は先手必勝よ、モンモランシーっ!」
大きさも、火力も、『ファイガ』を越えるかもしれない巨大な火の玉。
大砲の弾よりも速く、エルフを飲み込む……って見えたはずなんだ。

「え!?」
「危ないっ!?」
炎の向きが、180度反対になって跳ね返る。
勢いを、そのままに。
確認するよりも早く、デルフを持つ手が先に動いて良かったと思う。
「ゴハッ!?……くぅ〜、久々にいい炎吸い取ったぁ〜」
デルフに吸い取らせなかったら、みんな黒こげになっちゃったかもしれない。
それほどにすごい炎の魔法だったんだ。
跳ね返されたキュルケおねえちゃんが、唖然とした顔になっている。
「魔法を……跳ね返した?」
「これが……エルフ……」
ルイズおねえちゃんも驚いているみたいだ。

魔法を、跳ね返す魔法。
確かに、ハルケギニアではあまり聞かないけど、ボクが旅した場所にはあった。その魔法。
「……『リフレク』?」
それは、魔法を跳ね返す白魔法の一種。
感じた魔力の壁の正体は、これだったのか。

「私はエルフのビダーシャル。お前達に告ぐ」
透き通るような声で、エルフが言う。
ガラスみたいに綺麗な声だけど、その分、冷たい感じがした。
「私は戦いを好まぬ」
「あ、あらそそそ、そうなんですか?で、でしたら私はこのへへへ辺ででで」
モンモランシーおねえちゃんが後ろを向いて逃げようとしたけど、
その目の前で部屋の扉が閉じられた。
素早い風の動き。きっと、ビダーシャルって名乗ったエルフの仕業だ。
「が、約束がある」
緩やかに、両手を腰の位置まで降ろして構えを取るエルフ。
そこには、隙というものが一欠片も見当たらなかった。
「故に、お前達を攻撃する。悪く思うな」
「ななななな!?」
「モンモンッ!!」
ギーシュは、モンモランシーおねえちゃんの護衛に回った。
やれること、できること、やらなくちゃいけないこと。
考える必要すら、無いみたいだ。
「……デルフっ!」
「あいよっ!」
このエルフを倒さなくちゃ、タバサおねえちゃんを助けに行くことも逃げることもできない。
なら、倒す、それだけしかないんだ。
384ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:55:51 ID:mFZvcKlC
ゼロの黒魔道士
〜第五十四幕〜 Destati


間合いを詰めるため、一気に走る。
ガンダールヴの力が与える速度を、最大限に生かして。
「せいっ!!」
ジャンプからの、振り下ろし。
「ふむ」
これは、左に避けられる。だけど、ここからが本番だ。
「つぇいっ!」
振り下ろした勢いで、斜めに身体をグルンと空中で回転させる。
デルフを逆手に持ちかえて、背後のエルフに向かって思いっきり突く。
二撃目。それは、エルフの身体を確かにとらえた……はずだったんだ。
「ほう」
「えっ」
グネリ。音がしそうなほど、空気が歪んで、それ以上デルフが進まない。
物理攻撃も……跳ね返した!?
そう思った時には、ボクの身体ごと地面に弾き飛ばされていた。

魔法攻撃も、物理攻撃も跳ね返す?
そんな魔法なんて、存在するのっ!?

「石に潜む精霊の力よ。我は古き盟約に基づき命令する。礫となりて我に仇なす敵を討て」
エルフの呪文が静かに響く。
それに呼応して、石床がめくれあがって、バラバラと雨あられのように降り注いだ。
「きゃぁっ!?」
「ファイヤーボールっ!」
「うわわっ!?わぁっ!?」
全部を避けたり、受け切ったりすることは無理だ。
せめて、ルイズおねえちゃん達に降る分あ防がなくては……

ビシビシと身体のあちこちに容赦なく石のつぶてがぶち当たる。
1粒1粒が、はじけ飛びそうな力で、ボクの身体を貫こうとする。
「……く……ッハァ……ケホッケホッ」
身体がバラバラになりそうなぐらい痛い。
「あ、相棒、大丈夫かっ!?ちきしょう、流石先住魔法、チートもいいとこだぜっ」
「……スーッ……ハァァァァアア……」
息を、整える。
痛みがよりはっきりしてくる。
でも、その分、倒れずには済みそうだ。

「飽食なる星よ、魔空より来りて
         光も闇も平らげよ! グラビデ!」
「む?」
『リフレク』か知らないけど、跳ね返されることも考えて、エルフよりも少し離れた場所に重力球を生み出す。
やや引きずられるように、体勢を崩すエルフ。さっきの小石もその重力球に引きずられてエルフのそばをかすめる。
その隙を縫うように、間合いを再びつめる。
エルフのやや右斜め、死角からの攻撃。
「はぁぁっ!!」
「無駄だ」
グネリ。まただ。また空気の渦のようなものに、剣が捕えられる。
物理攻撃も、魔法攻撃も、この魔力と空気を混ぜたような力で防がれてしまっているのだろうか?
「く……はぁぁぁあああああああああ!!!!!」
それでも、もしかしたら。
押す。出来る限りのスピードで、その魔力の壁を削るように、連続で斬りつける。
それでも、全く届かない。届かせてくれない。
385ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:57:27 ID:mFZvcKlC
「ライバルのピンチに颯爽と登場っ!! ギーシュスペシャルダイナミックブレードアターック!!」
「ギーシュっ!?」
ギーシュが、斬りかかった。エルフの真正面から、隙だらけに振りかぶって。
「む」
髪の毛の先だけ触れさせて、エルフはそれをすぐに避けた。
「ふん」
空気を押すように、エルフが手を外に向ける。
「わぁっ!?」
「ぐわっ!?」
胸が押された、と思ったら、ボクは本棚の奥までめり込んでいた。
風の壁でそのまま突き飛ばされたんだ。
そう気付くときには、目の前が、だんだんと、暗くなってきてしまった……


「相棒っ!?相棒っ!?打ちどころ悪かったか!?おい、あいぼ――」
声が、だんだん遠く小さくなる。
暗い。暗闇の中にいるようだ。
エルフは、強い。
どうすれば、勝てる?どうしたら、勝てるというんだ?
答えが出ないまま、暗闇の淵に落ちていきそうだった。

「1つだけ言わせてくれ。『目に見える物だけが敵ではない』」
目に見える物だけが敵じゃない?
なんで、クジャの言葉がここで気になるんだろう?
でも、何故だかその言葉が、闇の中の光のように感じたんだ。
光を、辿るように、状況を思い出す。
物理攻撃も魔法攻撃も跳ね返す、壁。
でも、そこに何か違和感があった。
『跳ね返し方』が、明らかに変だったんだ。
……見えない、敵?
まさか!?


目を見開いて、立ち上がる。
部屋の中は、酷いことになっていた。
本という本が、床石という床石が舞い散り、
みんな痣だらけの酷い状態だ。
部屋の中央に立つエルフ1人が悠然としている。

「まだ、立つか?そのしぶとさは賞賛に値するな」
「……まばゆき光彩を刃となして……」
わずかに見つけた光を目指し、紡ぐ、呪文。
狙うのは、「見えざる敵」。
そう、気付いたんだ。
『最初からあのエルフだけが敵では無かった』ということに。

    「地を引き裂かん! サンダー!」
唱えた呪文の矛先は、ルイズおねえちゃんのすぐ真後ろ。
丁度部屋の扉の真正面の位置。
「きゃあああ!?」
悲鳴と共に、崩れ落ちる、『部屋の中央のエルフ』。
そして……
「くっ!?」
入れ替わるように、姿を現した『ルイズおねえちゃんの背後のエルフ』がルイズおねえちゃんを羽交い絞めにした。
「ルイズおねえちゃんっ!?」
「見破ったのは見事。 だが、こちらも果たすべき約束がある」
まだ、勝負はついていない。
「ルイズおねえちゃんを、離せ!!」
ボクは、デルフを構えなおした。
386ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:58:16 ID:mFZvcKlC
このエルフを倒さなくちゃ、タバサおねえちゃんを助けに行くことも逃げることもできない。
なら、倒す、それだけしかないんだ。

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ピコン
ATE 〜Night of Fate〜

「ふー……む?」
手札を並べるように、書類をザッと開いた。
王の持つ手札は、さっぱりと役手になっていない。いわゆるブタ、というヤツだ。

イザベラの出した気まぐれな北花壇騎士団への命令文、
アーハンブラ城への余剰と思われる増兵要請、
レコン・キスタの思わぬほど速い内紛の鎮静化、
トーマスが盗み出したロマリアの輸入品のリスト、
ラ・ロシェール付近で目撃されたらしい幽霊騒ぎ……

いくつかは些細で、真っ当な理由がつけられる。
例えば、イザベラの気まぐれなど日常そのものだ。
そんな彼女が、季節外れの極楽鳥の卵を食べたいなどと言い出しても、不思議でもなんでもない。
アーハンブラ城にしたって、以前からやる気の無い上官を嫌がり、転属届けを出す兵士がよく出る場所。
増兵も、その穴埋めを希望していると考えれば、ごくごく自然の成り行きだ。
レコン・キスタの内紛にしたって、所詮は小物同士の背比べ。
いつ飽きて鎮静化してもそう不思議なことではない。
幽霊騒ぎ至ってはお笑い話にしかならない。
「亡国の皇太子の霊」?オカルト話にしても陳腐でありふれている!

だが、どこか気になる。
そう、どこか気になるのだ。

ジョゼフは、チェスプレイヤーだ。
盤の上を見降ろし判断を下す、チェスプレイヤーだ。
その視点は常に高みに有り、些細な駒の動きを見つけることに長けたチェスプレイヤーだ。
その彼が見つけた異変だ。何か意味があるに違いない。
ジョゼフは、己のカンというものをこれ以上ないほど信じていた。
信じなければ、勝負師とは言えまい。そうだろう?

だが、その意味するところとなると、これは難しい。
チェスには相手がいる。
その相手の顔が見えないのだ。
違和感のある手札、その意味するところを理解するのは骨が折れそうだった。

今はまだ、熟考すべきときなのかもしれない。
このゲームは長丁場になりそうだ。
そう考えジョゼフは大きく伸びをした。
脳が糖分を求めている。
真夜中ではあるが、菓子の1つぐらい食べても問題あるまい?
アーモンドたっぷりのタルトでも食べようかと、手元のベルを鳴らそうと手を伸ばした。

静かに、王の間のドアが開く。
ベルに伸ばした手を引っ込める王。こんな時間にノックもしない訪問者、誰かの見当はついていた。
案の定、流れる銀髪にふざけた衣装が部屋に入るとの言葉も無くスッと入ってきた。
「クジャ!どうした?早いお帰りだな!聖地のエルフ共に飽いたか?」
糖分よりもよっぽど良い気晴らしが現れたことに、笑みを浮かべながらそう言って歩み寄る。
王自らが立ち上がり迎えるこの男こそ、彼のゲームパートナー。
素晴らしきゲームを紹介してくれた、偉大なる劇作家。
やや自己愛がすぎるのは玉に傷ではあるが、その美貌があれば自己愛もしようと納得できてしまう。
そう言えば、疲れているのかその美貌がやや霞んで見えるような気が……
387ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 15:59:14 ID:mFZvcKlC
チェスと現実が違う点、それは、待ち時間の存在だ。
現実において、『気付いた瞬間』に反応できなければそれは意味が無い。
ジョゼフについて言えば、虚無魔法である“加速”を使えばもっと素早く反応ができたことだろう。
回避することも可能であったかもしれない。
しかし、たら、ればを語っても意味が無い点ではチェスも現実も同じことだ。

それは一瞬のことであった。
クジャの右手が、『伸びた』。
いや、より正確に言うならば、『飛んだ』であろうか?
少なくとも、クジャの胴体と右手が離別することを『飛ぶ』と表現して良いならば、間違いなく『飛んだ』のだ。
そして気付いた時には、クジャの右手がジョゼフの左手に『食らいついて』いた。
そう、『食らいついた』のだ。文字通り。

「――ッ!?」

襲うのは、混乱と激しい痛み。
薬指の根元が食いちぎられ、血が噴き出す。
熱く絡みついて締め付ける、青白い手。
離すまいと、マニキュアを付けた爪がギリギリと皮膚の中に食らい込む。
手が、手を喰らう。それは異様という表現が陳腐に見えるほど異様な光景であった。

「クジャ、何の真似……いや、質問が不粋だであったようだな、暗殺者よっ!!」
だが、彼は王である。
暗殺者の1人や2人に惑うようでは、王とは呼べまい。
彼はこのゲームを一瞬の混乱の内に理解した。

「(この『右手』、振り払うのは骨だな)」
食らいついている『右手』、平然と立つ『クジャの姿をした者』、そして食われようとしている『自分』。
劣勢。こちらが不利であることは盤上を舐めまわさなくても明らかな事実だ。
なかなかに難解な詰将棋。
そのような中、王が導きだした解答は、実にシンプルかつ大胆な物だった。

「――ふんっ!!」
斬り落とす。自らの、左手と共に。
使用した獲物は果物ナイフ。
右手が届く範囲に、果物鉢が存在したことに感謝する。
噴き出す血と痛み?関係無い。
呪文を唱えるにしても、彼は『無能』なのだ。
得体の知れないものを、即座に斬り落とす。
この即断力こそ、ジョゼフが王である理由なのだ。

「せいっ!」
ベトリと自らの左手と右手が床に落ちるよりも前に、
そのままの勢いで、果物ナイフを投げつける。
狙いは、暗殺者。避けられても構わない。
杖を探って“エクスプロージョン”を唱える隙さえできればそれで良い。

「――っな!?」
それは、杖を取りだした瞬間と、絡み合う手が地面に落ちた刹那と、全く同じタイミングであった。
ナイフは、避けられた。それは問題ない。予想通りだ。
だが、その避け方が問題であった。
長い銀髪がついた頭が、グラリと落ちるように、地面に崩れる。
それはまるで、糸が切れたマリオネットのように。
388ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/08/30(日) 16:00:26 ID:mFZvcKlC
偽クジャの頭が地に落ちるより前、それらと繋がっていた右手が姿を変えて動き出す。
イタチ。
大きな青い目を持ったイタチが、ジョゼフの左手薬指を、ついている指輪ごと食いちぎって駆けだした。
「エコーか!!?」
先住の魔法により姿かたちを変えることができる幻獣。
ジョゼフも本での知識では知っていた。
だが、そこで示されていたエコーの特性は臆病で大人しいというものであったはず。
何故、ジョゼフの左手を食うという荒技を?

続けざまのゲーム展開に、ジョゼフの呪文詠唱は追いつかない。

逃げるエコー、
落ちた偽クジャの首、
ニヤリと笑う顔、
光る暗殺者の口。

ジョゼフが“エクスプロージョン”の呪文を唱え終わる頃には、
エコーは光る偽クジャの口に吸い込まれ消え去った後であった。
「ふん」
ジョゼフは、鼻を鳴らして溜めた魔力を適当に分散させた。
見たところ、目の前の偽クジャの身体はもう動かないようだ。

「(……土の人形。他人に似せたゴーレムの類か)」
ナイトガウンの帯で適当に止血しつつ、つま先で検分を開始する。
どうやら、どこかの馬鹿が土人形とエコーを組み合わせて暗殺者に仕立て、このガリア王の下に遣わせたらしい。
暗殺者にとって残念なことに、この首は奪われなかった。
その意味であればこのゲームはこちらの勝利であるはずだ。
だが、何やら引っかかる。
ゲームが終わったはずなのに、後味が非常に悪い。

王の類稀なる勝負勘は、彼の頭を背後へのテーブルへと向かわせた。
「むぅ、右手だけではなかなか不便だな……」
水メイジを呼ぶよりも先に、先ほどテーブルに広げた書類を探る。

目指す一文は、すんなりと見つかった。
『エコー他幻獣12箱分 ウルの月、エオローの週、エオーの曜日』
ロマリアの輸入品目のリストの1行。
そこで全てが繋がった。
「フフ……フハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
ジョゼフは、笑った。
それは、彼に久方ぶりに訪れた充実感であった。
相手の顔が、見えたのだ。
チェスの相手の顔が。その性格も、その手の内も、その戦法も。
同時に、自らが手元に広げた意味の無い書類群の意味を知る。
何もかもが1本の線につながって、綺麗なロワイヤル・ラファエル・アヴェニューを作り上げる。

「どうやら、この1局は俺の負けのようだなぁ、クソ坊主共!!だが、まだゲームは始まったばかりだぞっ!!」
ジョゼフは、足元の土人形を蹴飛ばして、ベルを鳴らした。
左手の治療と、アーモンドたっぷりのタルトでも食べるためだ。
脳には栄養が必要だ。これから偉大なるチェスゲームが始まるのだ。
運命の夜に、ゲーム開始のベルが、静かに鳴り響いた。
------
以上ですー。
うん、あっちもこっちもバトルの兆し。戦闘描写が苦手な私涙目ww
来週はちょいと忙しいので、日曜投下は微妙でございます。
気長に待っていただけたらなぁとそう願う次第でございます。
それでは、お目汚し失礼いたしました。   学生の皆様、宿題やれよっ!成人の皆様、選挙行けよっ!
389名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:05:26 ID:ymX4sg05
黒魔さん乙

>>379

長谷川裕一の考察であったなw
戦隊やライダーでなぜ怪人が一体ずつ出てくるのか。
それはたいていの場合、彼らの時間感覚では次々作って
逐次投入しているいるのだが、
地球人には週一ぐらいのペースでのんびりやっているように
見えてしまっているだけだって。
390名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:12:56 ID:9nG0H+AB
プリニーの人もお疲れ

そういえばゼロの使い魔って主要キャラはあまり死なないからプリニー化の演出が難しいね
391名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:16:43 ID:wsRK8dbQ
せっかくのクロスSSなんだし
必要なら死なせてもいいとは思うよ(ちょっと語弊があるけど)
ルイズが呼んだのがサイトだったからこそ生き残れたってキャラもいるハズ
392名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:22:16 ID:sjkuExIv
ウルトラ5番目の使い魔の人、乙 こんなこと訊いて良いのか判らないのだが。。。63話はどこに??
393名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:25:17 ID:9nG0H+AB
ふと思ったんだけどギーシュは青銅より堅いもの作れるよな?
サイトに渡した剣が青銅のゴーレムを7体も壊せた訳だし
394名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:31:37 ID:3iq7HlJh
>>379
燃える!お兄さんに出てくるスーパーオイラ人は立ち食い蕎麦ですら待てない位せっかち

脈拍も凄まじく速いから寿命が短そう
395名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:36:58 ID:nR2xkkBv
>>393
ドラゴニックオーラならぬガンダールヴオーラを無意識のうちに
剣に纏わせてたんでない?
396名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:48:37 ID:9nG0H+AB
>>395 そうか。ギーシュヒロイン仮説の証明になるものだと思ったんだがな
397名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:33:38 ID:HeqNuFhT
刃筋が通ってれば同じ材質でも切れる・・・と言いたいが、
金属を塊を7回も斬って平気ってのは相当な強度だな。
398名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:36:06 ID:W64zXjus
>>397
それはもうガンダールヴの絶技じゃないのか?
いや、確かに地味に凄いんだけどな。
399名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:37:20 ID:6G2rmGvp
その剣で切断できる箇所が理解できるって感じか。
ブギーポップシリーズのイナズマみたいな能力だな。
400名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:37:36 ID:ueZJfL5g
別に間接部とか無意識に切ってたとかでいいんじゃね?
401名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:38:03 ID:1XLv10no
そこまで(ry
402名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:41:16 ID:ulOrkLOn
ワルキューレ分の質量を武器にまわしてサイトの装備生成専属係になるギーシュなんて・・・
403名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:42:18 ID:9nG0H+AB
ワルドが動きの速い素人とか言ってたから技術面は本当にアップしてるのだろうか
404名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:42:52 ID:XhIMJW0E
一口に青銅いうても銅と錫の比率で性質が変わるけえ、硬くて脆いの作ったとかー
深く考えちゃいけないんだろうけど
405ウルトラ5番目の使い魔 携帯:2009/08/30(日) 17:49:34 ID:O4pfX6x1
>>392
ご指摘ありがとうございました。
どうも申し訳ありません、今回が63話の間違いでした。
焦っていたのでうっかり見落としてしまい、混乱を招いてしまったことを深くお詫びいたします。
来週の日曜日は特に予定もありませんので、落ち着いて投下します。ご迷惑おかけしました。
406名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:02:12 ID:E0MvSdu4
>>403
武器を使う技術は向上しても戦闘技術は鍛えなきゃ上がらないんじゃないか?
407名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:05:53 ID:wxP8Dk7T
何かのSSで「使い方は分かっても戦い方が分からん」とか表現してたな。
408名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:08:18 ID:9ICoiCqo
>>406
ちょっと違うかもしれんが、オディオが呼ばれた話のルイズの能力(格闘センス?)はオディー達と同等だった
409名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:11:30 ID:yzYpWldQ
まあプチ界王拳つかってフンガーいいながら
剣振り回すんだが刃筋はしっかり立ててたとか小器用な事してるだけだしな
410名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:14:37 ID:5V0A7MH1
同じ素材でも中身まで詰まってる物と中身空洞のハリボテ状態じゃ違うだろ
411名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:24:04 ID:yzYpWldQ
青銅の剣で青銅の鎧(全身鎧)中の人なし

複数回あなたは両断できますか?
あなたはボブ・サップ程度のパワーが有るものと仮定します
412名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:32:05 ID:HeqNuFhT
>>411
剣より棍棒使ったほうが良いなw
413名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:41:16 ID:C2gInV81
剣「材質は同じ青銅かもしれんが
  優雅な見てくれだけの戦乙女と違い… わたしたち実戦用武具は…

  鍛え方が違う! 性根が違う! 理想が違う! 決意が違う!」
414名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:42:11 ID:rrgx4Stb
>複数回あなたは両断できますか?
>あなたはボブ・サップ程度のパワーが有るものと仮定します
折れた刀身が自分に刺さるに100ルピー
415名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:49:12 ID:692Ja+P6
>>413

おめぇ、どこの魔界の青銅の剣だ
416名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:49:34 ID:yzYpWldQ
>>413
尚、剣も鎧も鋳物の量産品です
しかし鎧は制作者の趣味により華美な飾り付けでやたら凸凹しています
417名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 18:50:00 ID:rtNgu0lo
>>402
異常な密度の大質量の剣なんて言うからうたわれのカルラ思い出した

あの太刀は通常の種族の大人六人で何とか持ち上げられるような代物なのに酒呑みながら片手でぶん回すんだよな……
親父から引き継いだウィツアルネミテアの契約も有るとは言えギリヤギナマジすげぇ
418無重力巫女の人:2009/08/30(日) 18:55:56 ID:23sAXsfx
どうも皆さん、今晩は。ルイズと霊夢の人です。
23の執筆が終わりましたので、投稿をしたいと思います。
もし何もなければ19時00分から開始しますので、
出来れば支援の方、よろしく御願いします。
419ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:01:33 ID:23sAXsfx
「一時停止しろ。」
「一時停止!アイ・サー!」
甲板に出たウェールズの命令を挙帆手が復唱し、マリー・ガラント号がアルビオン大陸の丁度『真下』で動きを止めた。
この美しいアルビオン王国の皇太子の傍にいたルイズは頭上にある大きな穴を見て目を丸くした。
以前姉たちと旅行でこの大陸へ赴いたことはあるがこんな穴は観光名所のカタログには載っていなかった。
隣で唖然としているルイズを見て、ウェールズがさりげなく説明を入れた。

「驚いたかい?今頭上にある穴は自然に出来た物なんだ。恐らくこの大陸が浮遊したときからあったに違いない。
 僕たち王軍はこれを秘密の出入り口として用いている。中はもの凄く暗いが…なに、我々には造作もないことさ。」

「こんな大きな穴が自然に出来たなんて…とても信じられません。」
ウェールズの説明を聞き、信じられないという顔になったルイズを見て更にウェールズは説明する。 
「更にもしもの際の避難用として大陸のあちこちに井戸に偽装した抜け穴を―――おっと説明はここまでだ。」
得意げに話していたウェールズがふと口を閉ざし、後ろからやってきたワルド子爵の方へ顔を向けた。
「部屋の中で休んでいたら窓の外が暗くなったものだから…成る程、こんな場所があったとは。」
ワルドは感心した風に呟くと暗闇の中でテキパキと帆をたたんでいる空賊――もといアルビオン軍の水兵達を見つめ目ながら言った。
「秘密の出入り口を使って城に戻るとは…まさに空賊そのものですなですな。殿下?」
ウェールズがその言葉に少し顔を顰めたのに気が付いたルイズは少し焦ったが、すぐに元の表情に戻るとワルドにこう言った。
「あぁ、何せ貴族派の連中は僕達用の手形を作ってくれなくてね。仕方なくこんな所を使ってるんだ――仮装パーティをはながらね?」
その言葉にワルドはキョトンとした顔になり、しばらくして彼の口から小さな笑い声が聞こえてきた。
ついでウェールズも笑顔になると、マリー・ガラント号がどんどんと穴の入り口に向かって上昇していく。
「さてと、立ち話もなんだから一等客室でも借りてお茶でも飲みながら話そうじゃないか。」
爽やかな笑顔でそう言われると二人はなんだか首を横に振ることが出来なかった。
川の流れに乗るようにルイズ達は頷くと、ウェールズの後を追った。

イーグル号を先頭に二席の大型船が穴の中に入り、どんどんと上を目指して上昇していく。
船の甲板に立っている水兵達は松明や杖の先に明かりを灯し、見張りをしている。
ごつごつとした外壁に紛れ人が入れそうな横穴がポツポツとある。
船はどんどんと上昇していく時、既に通り過ぎた場所から人影が飛んできた。
死角の所為で船からは見えなかったその人影は、船の後ろに付いていく形で遙か上にある光を目指して飛び始めた。



天蓋付きではないがそれなりの装飾が施されたベッドに大きなクローゼット。
部屋の中央に配置されているテーブルの上には篭に入った色とりどりの果物達。
少し小さめのシャンデリアは眩しいくらいに輝いており、一等客室を照らしていた。
そしてテーブルを囲むように置かれているソファーに腰掛けているウェールズが向かい合って座っている二人に話しかけた。
「さてと、何か聞きたいことがあったらプライベートな事を除いて、質問してくれよ。」
ウェールズの言葉にルイズがゆっくりと口を開いた。
「あ、あの…こんな事を聞くのは何ですけど、本当にウェールズ皇子なのですか?」
ルイズの質問にウェールズは少しだけキョトンとするとクスクスと笑った。
「フフフ…まぁ無理もないかな?何せ最初に顔を合わせたのは仮装パーティー真っ最中の時だったからね。」
冗談っぽくそう言うとウェールズは立ち上がり、ポケットの中に入っていた指輪をスッと薬指に嵌めた。
「どうだい?これは代々アルビオン王国の家宝の代表として君臨している『風のルビー』さ。」
ウェールズの言葉を聞き、ルイズは急いで頭を下げた。
「失礼を致しました。何分私は疑り深い性格なもので…」
「なに、気にすることではないさ。人間には様々な性格の持ち主がいるからな。」
ウェールズは笑顔でそう言うと指輪を外し、再びポケットの中に入れた。
420名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:03:38 ID:yvTH8uM/
しぇーん
421ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:05:14 ID:23sAXsfx
それからしばらくして、マリー・ガラント号と黒塗りの船『イーグル号』が穴に入ってから既に数分が経過していた。
ワルド子爵はマリー・ガラント号の船長と話す事があると言って部屋を出て行った。
窓の外から見える苔が生えた岩肌を背にルイズはウェールズにアンリエッタからの任務の事について説明をしていた。
アンリエッタが以前彼に送った手紙を返して欲しいと言われたウェールズは少しだけ目を丸くしていた。
「そうか、あのアンリエッタもとうとうそんな年になったのか。」
嬉しそうに――だけど若干哀しさを含んだ口調でそう呟き、ウェールズはルイズの方へ向き直った。
その時ルイズは見た、ウェールズの皇子の顔には言いようのない哀しさが滲んでいた。
しかしその哀しさはすぐに顔から消え失せ、先程のような眩しい笑顔に戻っていた。
「貴君らの任務についてはわかったよ。しかし、アンリエッタから貰った手紙はこの船には――――――っ!?」

ルイズの方に向かって喋っていたウェールズは突然目を見開くと杖を取り出した。
一方のルイズは血相を変えて杖を取り出した皇子に驚き、思わず窓の傍から離れた。
そしてそれを見計らってウェールズが瞬時に詠唱したエア・ハンマーが窓を叩き破る。

耳に残る嫌な音と共にガラスが外に飛び散り、冷たくも何処かジメジメとした風が部屋に入ってきた。
立ち上がったルイズはオロオロとしながらもウェールズに話しかけた。
「ど、どうしたんですか!?」
彼女の言葉にウェールズは杖を下げると口を開いた。
「今窓の外に人影が――」

「ちょっとちょっと、何もいきなり攻撃するのはないんじゃないかしら?」

ふと窓の外から聞こえてきた少女の声に、二人は驚愕した。
ウェールズは急いで杖を構え直しルイズを連れていつでも部屋から出れるようドアの方へと下がる。
一方のルイズはと言うと、生まれてこのかた感じたことのない程の驚愕を今まさに感じていた。
それは謎の声に対する恐怖ではない、むしろその声は彼女にとって聞き慣れたものである。二年生になってから。
では一体何なんだというと、それは「どうしてここにいるんだ?」という感じの驚愕であった。
「誰だ!素直に出てくるのなら攻撃はしない!」
ウェールズは声だけの相手に勇気を振る舞ってそう叫んだ。
その言葉を聞いて、声の主である少女はスッと窓の外から部屋の中へ飛んで入ってきた。
ルイズは相手の姿を見て限界点まで両目を見開き、心臓が喉の方までせり上がりそうになった。
紅白の特徴的な服を着た黒髪の少女の方も赤みがかかった黒い瞳でルイズの姿を捉え、キョトンとした顔になった。
「……なんか知らないけど、これもサモンなんとかの影響かしらね。全くどうなってるのよ?」
霊夢がうんざりしたかのように呟いた言葉に、ルイズは思いっきり叫んだ。
「それはこっちの台詞よ!」
何でこんなところにいるのかが一番の疑問であったが、その時ルイズが一番気にしていたのはそれではなかった。
(とりあえずは皇太子様にこいつがどれほど無礼な奴なのか先に言っておかないと。下手したら打ち首だわ!)
自分が召喚したこの少女がどんな相手に対しても頭を下げないという事を知っているルイズは後ろにいる皇太子にすかさず説明を入れた。

「…この少女と君は知り合いなのかい?」
「うぇ…ウェールズ皇太子!この者はですね…えっと、その、なんて言ったらいいか…そう、ちょっとしたワケありで一緒にいるんです!」
急いで喋ったせいか彼女自身何を言ったのか把握していなかったが、ウェールズはそれである程度理解したようだ。
とりあえず大丈夫だと確認したウェールズはホットしたかのように一息ついて杖を下ろした後、霊夢の方へ顔を向ける。
少し黄色が入っているがほぼ純白に近い肌、艶やかに光っている長い黒髪、少々赤みがかかっている黒い瞳。
そしてなによりも彼の目に入ったのはあまりにも特徴的な霊夢の服装と手に持っていた杖であった。
頭につけた赤いリボン、服とは別になっている袖。そして見たことのない装飾を施されている杖を手に持っている。
貴族かと思ったがマントを着けていないようだ。
一通り彼女に嫌な感じを持たされる前にウェールズはそこまで確認すると霊夢に先程の攻撃に対する謝罪の言葉を掛けた。
「先程の無礼は許して欲しい。何分戦時下のため、下手に緊張していt――」
「別に謝らなくてもいいわよ。どうせ当たらなかったんだから。」
「ちょっとアンタ!相手を見なさいよ相手を!?」
ウェールズの謝罪の言葉を遮り言い放った霊夢の何気ない一言にルイズは怒鳴った。
一国の皇太子直々の謝罪を遮って喋るなどルイズにとってあってはならない事である。
422名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:09:05 ID:ZraXkzzI
SIENN
423ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:10:37 ID:23sAXsfx
「うっさいわね、というよりなんでアンタがここにいるのよ。」
霊夢が鬱陶しそうに言い返すと、途端にルイズも大きな声で言い返した。
「それはこっちが聞きたいわ、大体どうやったらこんな所にたどり着くのよ!」
「森の中を飛び回って枯れた井戸の底にあった穴に入れば誰でもたどり着けるわ。」
「い、井戸?というより良く入れたわね、アンタの他に誰が好きこのんで井戸の中にはいるのよ。」
「う〜ん…井戸神様かしらね。」
「なによそのイドガミさまってのは?どうせ架空の存在でしょう。」
「嘘だと思うのなら井戸の上に戸板をのせて歩いたらどうかしら?本当にいるってその身で実感できるわよ。」
霊夢がそう言った直後、ふと窓の外から眩しいくらいの明かりが入ってきた。
光に気づいたウェールズはポケットに入れていた懐中時計を取り出し、時刻を確認した後、呟いた。
「おや、ようやく港に着いたようだね。」
何だと思い二人が窓の外を除いてみると、マリー・ガラント号は何処か広い空間に出てきていた。
そこは巨大な港であった、大きな詰め所があり奥の出入り口から多数の水兵達が出てくる。
ルイズはその港を見て息を呑み、霊夢の方もジーッと港を見つめている。
そんな二人を見てか、ウェールズは得意げそうに口を開いた。

「どうだい?ニューカッスル城が誇る、地下の巨大港は。」



冥界 白玉楼――――――

生きとし生けるものは必ず何かを食べなければ行けない。
それが神から与えられた使命なのか、それとも生物として本能なのか誰も知らない。
ただ、食べるという行動自体は別に生きてはいないモノ達でも行うことがある。
例えば、今テーブルの上に置かれている大福餅を食べている西行寺幽々子などがその一例である。

「はむっ♪」
幽々子は満足そうな表情で大福餅にかぶりついていた。
既に死んでいる存在の彼女がこうして何かを食べているのを見れば、別に亡霊が何かを食べていても不思議ではない。
最も、幽々子は冥界に存在する幽霊、亡霊、生霊、悪霊達よりも更に格上の存在ではあるが例という種のカテゴリーに入っているのは間違いない。
そして早くも一個目を平らげた幽々子は二個目へと手を伸ばそうとしたとき、ふと後ろから声を掛けられた。
「幽々子様、そろそろ夕飯も近いですしそこまでにしておいては…。」
まるで鍛え抜かれた刀のように鋭く、しかし何処か子供っぽさが残っている声の持ち主は幽々子の従者兼庭師の魂魄妖夢であった。
小柄な体ではあるが接近戦においては随一であり、楼観剣と白楼剣という二本の刀を所持している。
妖夢の傍には他の幽霊と比べればあまりにも大きすぎる幽霊が漂っており、彼女が普通の人間ではないということを示している。

「大丈夫よ妖夢、2個だけならあと六分目くらいお腹にはいるから。」
妖夢の言葉に幽々子はからかうようにそう言うと二個目の大福をすぐに口の中に入れた。
モグモグと口を動かし幸せそうに食べている主の顔を見ていると妖夢も次第に怒る気がなくなり、ため息だけをついた。
そろそろ夕食の仕上げに掛かろうと思い台所の方へ足を進めつつ妖夢は口を開く。
「もう、まぁほどほどにしておいてくださいね。」

「は〜い♪」

「本当、あなたってのんびりとしてるわねぇ。むぐむぐ…」

「ふぅ…ん?」
主の返事を聞き、妖夢は一人頷くと台所の方へ行こうとしたが、咄嗟に後ろを振り向いた。
そして幽々子の隣に座って大福を頂いている八雲紫がいつの間にかいたのである。
いつの間にかちゃっかり座っているスキマ妖怪を見て、思わず妖夢は驚いてしまった。
「あっ!紫様ではござりませんか、一体いつの間に?」
「本当だわ、気づいたら人の大福に手を出してる妖怪がいるわね。」
「まぁいいじゃないの、それより今晩は二人とも。今宵は良い月だわね。」
紫はすぐに大福を食べ終わると、あらためて幽々子に挨拶をした。

「こちらこそ今晩は、こんなにも良い月だから夕食前に大福を二個も食べちゃったわ。」
幽々子の方はまんざらでもないという顔になっており、妖夢の方は紫に頭を下げ、挨拶をした。
424ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:16:35 ID:23sAXsfx
紫はそれを見て妖夢に微笑むと幽々子に話しかけた。
「ふふっ、貴方の庭師さんは顔を合わせる度に良い子になっていくじゃない。」
「でしょ?私が手塩にかけて色々と教えてるんだから。」
幽々子がそう言ったとき、妖夢が少し慌てたように幽々子にこう言った。
「あのー…幽々子様が塩を握ったら成仏してしまうのでは?」
妖夢の言葉に二人は黙ってしまったが、すぐにクスクスと笑い始めた。
それにつられて妖夢も笑いそうになるがふと思い出したかのように紫に話しかけた。
「そろそろ夕飯の時間ですが…紫様、もし良ければ今晩はここで食べていきますか?」
「えぇ、もともとそのつもりだったから頂くわ。…あぁ後話しておきたいことも一つあるわ。」
「?…話したい事って何かしら。」
幽々子にそう問われ、紫は一息つくと口を開いた。

「実は少しだけ頼み事があるのよ。」



マリー・ガラント号とイーグル号が無事港に停泊した後、
ルイズ、ワルド、そして霊夢の三人はとりあえずウェールズに連れられて城の中へと入った。
ニューカッスル城には大勢の貴族やその妻子達が住んでいた。
常に敵軍とその旗艦『レキシントン号』の砲火に脅かされているにもかかわらず、何処か明るい雰囲気があった。
普通なら隣り合わせの死に怯えているはずだというのにそんな感じは微塵もない。
ルイズがそんな風に思いつつ、一同はウェールズの居室へとたどり着いた。
しかし、天守の一角にあるその部屋はとても粗末なモノであった。
木製のベッドにイスとテーブルがセットで一組、壁には戦の模様を描いたタペストリーが飾られている。
一国の皇太子がここで寝ているとはとても思えないような部屋を見てルイズは目を丸くした。
「随分と粗末ですまない、何分売りに出せるモノは全て売ってしまったのでね。」
イスに座ったウェールズはそう言うと机の引き出しを開けた。
そこにあったのは、綺麗な装飾が施されている小箱が入っており、それを手に取りテーブルの上に置く。
次に首からネックレスを外す。その先には小さな鍵が開いていた。
その鍵を小箱の鍵穴に差し込み、鍵を開けて蓋を開ける。
蓋の内側に小さなアンリエッタの肖像が描かれていた。
それに気づいたルイズがその箱を覗こうとしたことに気が付いたウェールズははにかんでこう言った。
「宝箱でね、この箱の中身は多分僕の生涯の中でも最高の財宝さ。」
ウェールズは中に入っていた一通の手紙を取り出し、色褪せた封筒を開いてゆっくりと読み始めた。
何度も読まれボロボロ一歩手前のソレは何処か哀しさを漂わせていた。
やがて手紙を読み終えたウェールズは手紙を丁寧にたたみ封筒に戻すとルイズに手渡した。
「では、アンリエッタ姫殿下からの手紙、確かに返却したぞ。」
「ありがとうございます。これで祖国の危機も去る事でしょう。」
ルイズは深々と頭を下げ、その手紙を受け取った。
受け取った手紙をちゃんと懐にしまったのを確認すると、ウェールズは再度口を開いた。
「明日の朝に非戦闘員を乗せたイーグル号とマリーガラント号がここを出発する。それに乗って帰りなさい。」
425ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:21:37 ID:23sAXsfx
その言葉を聞いたワルドはコクリと頷いたが、ルイズだけは歯痒そうにこう言った。
「あの、殿下…殿下は明日の朝にはレコン・キスタと戦うのでしょうか?」
「その通りだ。私は先陣に立って真っ先に死ぬつもりでいる。」
ウェールズの言葉にルイズは少し驚いたが、他の二人はそれ程驚きもしなかった。
ワルドは軍人であるため皇太子の言葉にはある程度同感はしているが、霊夢の場合は単純に興味が無いだけである。
その後ルイズはアンリエッタから預かっていた手紙をウェールズに渡した。
手紙を受け取ったウェールズはゆっくりと読み、懐にそっとしまった。
それを見計らってルイズがおそるおそるウェールズ皇太子に話しかけた。
「殿下…私は使者である故その手紙を見ることは適いませんが、なんと書かれていましたか?」
ルイズの言葉にウェールズは微笑むとからかうようにこう言った。
「そんな事では使者は勤まらないがまぁ特別に教えよう、…ただ手紙を返して欲しい事と武運をお祈りします。とだけ書かれていたよ。」
ウェールズの言葉にルイズは有り得ないと言いたげな顔になった。
「そんな…、私は幼少期にあなた様と姫殿下がどれ程仲が良かったのかハッキリと覚えています。だから…」
「そこまでにしよう。私は王族だ、王族が嘘をつくときは世界の終わりが来た時だけだ。」
ルイズの言葉を途中で遮ったウェールズは一息つくとイスに座り直し、ため息をついた。
気まずい空気が流れそうになったとき、ウェールズはルイズにこう言った。

「ミス・ヴァリエール、君は本当に正直で真っ直ぐな子だ。ここにいる誰よりもね…。」



場所は変わって、白玉楼―――
そこの主である西行寺幽々子は八雲紫と共に夕食をとっていた。

「成る程…あの紅魔館のお嬢さまがねぇ〜…はむっ。」
幽々子はのんびりとそうに呟き、カマボコを口の中に入れる。
「そうよ、どうやらかなり殺る気まんまんらしいわ。」
「まぁ霊夢がいなくなって聞いてからあの吸血鬼、かなりピリピリしてたからねぇ〜。」
ゆっくりと口の中のカマボコを咀嚼している幽々子を相手に紫はどんどんと話していく。
どうやら夕食だというのに何やら話し合いをしているようだ。一体その話し合いとは何なのか?

夕食の前に、紫は幽々子に頼み事があると言った。
それは先程彼女が言っていたレミリア・スカーレットへの警戒である。
「私は霊夢がいる異世界へ乗り込んだら、すぐに霊夢を連れて帰るって計画だったけど…あの吸血鬼は余計な事を考えてるのよ。」
まだ夕食に手を付けていない紫は苦虫を踏んでしまったような顔でそう言い、話し始めた。
何でも式の報告によると最近紅魔館内部の図書館で司書している小悪魔とメイド長の十六夜咲夜が何やら目立った動きをしているという。
咲夜は紅魔館にいる妖精メイド達を何十匹か集め、誰が一番強いのか弾幕ごっこを行わせている。
小悪魔の方は魔法の森や妖怪の山の近くにある樹海へと足を伸ばし、何かを集めているというのだ。
それが気になった紫の式である藍は小悪魔の後を追おうとしたが、何故だか小悪魔の身体にもの凄い『厄』がまとわりついていて、近づくのは無理であった。
最も、小悪魔自身も紅魔館にたどり着いた時には厄に耐えきれなくなり中庭に墜落したのだが。当然誰も知らない。

「もしも異変も何もなかったらただの児戯だろうと思って無視するけど、今の状況を考えるに放っておけないのよ。」
紫の言葉に、幽々子はまるで珍しい物を見るかのような目つきで紫の顔を見ていた。
「貴方、何処か頭でも打ったの?幻想郷を常に愛している貴方なら喜び勇んでその世界を焦土に変えそうだけど…。」
幽々子の言葉に妖夢はハッとした顔になり幽々子の方へ顔を向けた。
紫はしばらく無言で幽々子の顔をジッと見つめていたが、ふと口を開いた。
「幻想郷を愛しているからこそ過激な干渉はせず、なるべく穏便に済ませたいの。」
彼女はそれを皮切りに、幽々子とその隣にいる妖夢にある話を始めた。

「今回霊夢が飛ばされた世界は、幻想郷の次に私たちが住むのに適した場所なの。
 外の世界にある機会や科学が数千年前から殆ど進んでおらず、尚かつ魔法が高度に発達した夢のようなところ。
 霊夢を喚んだ少女の記憶を辿ってそれを知った私はまさかとは思ったわ。
 だからこそ大規模な破壊や大虐殺といった干渉は避け、霊夢を連れ戻した後にその行く末を観察したいの。
 もしかしたら幻想郷に住む妖怪達の生活基準を向上できるかも知れないのよ。」

滅多に見れない八雲紫の熱弁に、幽々子は思わず面食らってしまったが無理もない。
426ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:26:50 ID:23sAXsfx
幻想郷の要である博麗の巫女を何も言わずに攫った挙げ句に結界に細工をするようなのを相手にそんな事を言うとは思ってもいなかった。
まぁ多分それを言う理由は彼女の言う「外の世界」のような場所ではないからだろう。要は興味深いからその世界を壊したくないという事だ。
もしも紫の興味が沸いてこなければ、霊夢を攫った仕返しにと目を瞑るような酷い事をしていたに違いない。

幽々子は一息置いてから、返答を出した。
「わかったわ。貴方がそこまで言うのなら協力してあげる。」
「…ありがとう幽々子♪貴方のおかげ頭の中に残る悩みの種がなくなったわ。」
幽々子の答えを聞き満足そうに紫はそう言うと、手元に置かれた箸に手を伸ばした。
既に夕食を食べていた幽々子はそんな友を見て可愛いと思った。
幻想郷の創造主であり大妖怪として怖れられている紫は他の者達が思っている性格はしていない。
胡散臭いがその分長く生きている者特有の嫌みはなく、割と多くの者を引き寄せる。

だが、紫とは旧知の仲である幽々子は冥界に住む者である。
今更言うのも何ではあるが本来は顕界やそこで起こる事情は無闇に首を突っ込んではならない。
幽々子自身、幻想郷で何かあった場合妖夢や代理の幽霊達に任せており、彼女自身が幻想郷へ行くことは滅多にない。

しかし――冥界でもまた今現在幻想郷で継続している異変とほぼ同等の異変が起きていた。
一度は何が起こったのかもわからず大混乱を起こしたほどであった。
それが収まった後に幻想郷の結界が変異し始めたのを以前の会合で知った幽々子のもとに閻魔の使いがやってきた。

その内容はこうであった…。
「もし八雲紫が協力の申し出をしてくるのならばそれを受け入れなさい。今回の異変は幻想郷の異変と関連しています。」

霊夢が失踪した後に起こった冥界での異変、恐らく紫も知っていたうえでこの協力を申し込んできたのだろうか。
多分、というより確実にそうであろう。妖怪も人間も年を取れば自然と耳に色々な事が入ってくる。
今、冥界にも幻想郷にも、未曾有かつ大規模な異変が起こっているのである。



一方、こちらはニューカッスル城のホール。
今やここは王族派貴族達のパーティー会場と化していた。
辺りは楽しそうな声と華やかな演奏によって彩られ、この世に二つとない盛大な宴である。
ウェールズに手紙を渡した後、ルイズ達三人はパーティーにゲスト出演することとなった。
しかし、明日には外で陣取っている敵に殺される者達が楽しそうに振る舞っているのを見て、ルイズは途方もない悲しみを覚えた。
死を前に楽しく振る舞う者達は、勇ましいというより何処か悲しいというのだろうか…遂にルイズはそれに耐えきれずすぐに会場を出て行った。

霊夢はそんなルイズを見てまぁ無理もないかと思った。最も、一体何に耐えきれなくて出て行ったのかわからないが。
最も、ルイズがもし今の霊夢が見ているモノと同じモノを見ていたらパニックに陥っていただろう。
(全員が喜び勇んで死ぬ気だから、ついでに連れて行こうっていう奴等がうようよいるわね…。)
決して常人には見えないタチの悪い亡霊の類やらが大量にホールを漂っている事に気が付いているのは霊夢だけであった。
大方、ここで起こっている戦かなにかで死んだ者達のなれの果てであろうが、霊夢にとってはあまりいいものではない。

一方のワルドは何やらウェールズと話し合いをしていたようだ。
「では皇太子殿、明日の朝に式を頼みます…。」
「あぁ、私も朝早くに起きて準備をしておこう。それよりもまずはこのパーティを楽しみたまえ!」
ウェールズは最後にそう言うと後ろにいた貴婦人達の方へと戻っていった。
話を終えたワルドは後ろを振り向くといつの間にかルイズがいなくなっている事に気が付いた。
どこに行ったのかと辺りを見回しているとふと前から声が聞こえてきた。
「あの子なら耐えきれなくなって出て行ったわよ。」
そちらの方へ顔を向けると扉の傍にある椅子に座ってサンドイッチを食べている霊夢がいた。
一体何処からサンドイッチを持ってきたのかわからないがワルドはすぐに霊夢の傍へよると話しかける。
「やぁ使いm――失礼、えっと名前はハクレイレイム…とか言ったね。すまない、ルイズは一体何処に…?」
「たぶんウェールズから借りた部屋じゃない?」
霊夢はワルドの顔を若干嫌悪感を混ぜたような表情で見つめ、言った。
「そうか、感謝する。」
ワルドは礼を言うとすぐに大きなドアを開けてパーティー会場を出て行った。
427ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:30:57 ID:23sAXsfx
先程ウェールズの部屋で話が終わった後、霊夢だけ話があると言って残ったのだ。
その後、霊夢は何故アルビオンへ来たのかをウェールズに話したのである。
アンリエッタというお姫様から聞いたというその話に、ウェールズはあっさりと霊夢を信用してしまった。
しかしもうすぐパーティーが始まるのでその後でも、と言われ霊夢は一人待っていたのだ。
「いやぁーすまない、家臣達がもっと酒を飲めと言うモノだからついつい遅れてしまって。」
「別に良いわよ、どうせ急ぎの用でもないしね。」
霊夢はそう言うと腰を上げ、ウェールズと共に騒々しいパーティーホールから出た。



霊夢を部屋に入れ、ドアを閉めたウェールズはすぐに壁に飾られたタペストリーを勢いよく捲った。
捲った先には壁に取り付けられた小さなドアがあり、それを開いて中にある数十冊の本を一気に取り出した。

「この数々の本は、アルビオン王国が出来た頃には既に存在していた物さ。
 発見された当時は多くの学者達が競って解読したらしい。だけど結局誰にも解読できなかった。
       僕が生まれた時には誰も興味を示さなくなっていた。だから僕がこっそり盗んでやったのさ。」

ウェールズはそう言いながら一冊を手に持ちパラパラとページを捲った。
霊夢も興味本位に覗いてみたところ、どうやら妖精について調べた書物のようだ。
書いた本人の趣味だろうか、背中に生えてる羽の事まで丁寧に書かれている。
覗かれている事に気が付いたウェールズは霊夢の方へ顔を向け話し掛けた。
「どうだい、中々可愛い妖精の絵だろ?僕はこれが一番気に入ってるんだ。」
ウェールズはそう言うととある妖精の絵を指さした。
(多分というより絶対これはチルノね。絵の中でも自信満々な顔だわ…)
そん事を考えている霊夢をわきに、ウェールズは楽しそうにページを捲っていく、文字は読めないが妖精の絵を見ているのだろう。
しかし実際には妖精は確かに可愛いが残虐な心を持っているため、霊夢にとっては害虫以上の存在であった。
空を飛んでいるときには集団で寄ってきて下手な弾幕を放ってくるので鬱陶しいことこの上ない。
妖精の実態を知っている者なら霊夢と同じイメージを持つが、どうやらウェールズは違うようだ。まぁ教えなくてもいいだろう。

霊夢はため息をつくとテーブルに置かれた本の一冊一冊を調べていく。
大抵は山草や魚の専門書や最近幻想郷でも見るようになった「雑誌」という本ばかりであった。
しかし霊夢の気をそれほど引くものはなく、いよいよ最後に残った一冊を手に取った。
それは本というよりまるで日記のような感じで、表紙に書かれている日本語のタイトルを見て、霊夢は怪訝な顔になった。

「……ハルケギニアについて?」
ポツリと呟き、ページを捲ると一ページ目にはこの世界、つまり『ハルケギニア大陸』の全体図が載っていた。

本の内容は、この大陸に住む人間の格差社会や幻獣、亜人。魔法と先住魔法について詳しく書かれている。
といっても辞典のような感じではなく、これには気をつけろとか…どう対抗したらいいか、というような事が書かれていた。
一体誰が書いたのかは分からないが、少なくとも霊夢と同じ世界から来た者が書いたのには違いない。
霊夢は一通りページを捲り、まぁ何かの役に立つだろうと思いその本を懐にしまうとウェールズに話し掛けた。
「わざわざ出してくれて有り難う。手がかりになりそうな物も見つかったし。」
その言葉を聞いてウェールズは振り向き、霊夢の懐に一冊入っているのに気が付いてニヤニヤとした。
「おやおや?どうやらお気に入りの一冊を手に入れたようだね?」
霊夢はその笑顔を見て、必要もない新聞を玄関に置いていく鴉天狗を思い出した。
428ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:35:10 ID:23sAXsfx


本を懐にしまいウェールズの部屋を出た霊夢は貸し与えてくれた部屋へ行こうとした。
霊夢自身何か手がかりになる物を見つけたらすぐ出て行くつもりだったがどうせなら泊まっていけとウェールズは言ったのだ。
最初はどうしようかと思ったが、すぐに身体が重いことに気が付いた霊夢は部屋を借りることになった。
(まぁいっか、明日は飛んで帰らずにすむし。)
ここに来て最初、ルイズ達とウェールズの部屋に来たとき明日の朝早くに船が出ると言っていた。
勿論霊夢はそれに乗るつもりである、わざわざ数時間もかかる飛行はしたくない。
ただでさえ飛んだり戦ったりしたのだから今の霊夢はかなりの疲労を体内に蓄積していた。

部屋へと向かう途中、ふと月明かりが彼女の身体を照らした。
今霊夢が居る場所は丁度中央部分が中庭となっており、そこから夜風も吹いてくる。
「…折角だから夜風に当たっていこうかしら。」
その風があまりも冷たくて気持ちよかったのか、霊夢は誘われるように中庭へと出た。
芝生特有の柔らかい感覚が靴を通して足に伝わり、それがまた心地よかった。
空を見上げると無数に輝く星と双つの月が煌々と輝いており、暗い夜空を色鮮やかにしている。
すぐに近くには水路もあり、水の流れる音もまた耳を癒してくれる役割を果たしていた。
そんな風にして霊夢が心を落ち着かせていると、ふと後ろから足音が聞こえてきた。

誰かと思い後ろを振り返ると、そこには羽帽子を被ったワルドが立っていた。
霊夢はワルドの姿を見て、誰かと思ったが帽子の下にあったその顔を見てすぐに思い出した。
「アンタ、そう言えば…以前街で出会ったワドルって名前の男だったかしら。」
名前を呆気なく間違われ、ワルドは少しだけガッカリした表情になった。
「ワドルじゃなくてワルドなのだが…まぁ一回だけしか顔を合わせてないから無理もない。」
「…で、何の用?疲れてるから他人とはもう話し合いはしたくないんだけど。」
霊夢にそう言われ、ワルドはその場でこう言った。

「何、君には永遠の眠りをあげようと思ってね。」

その言葉が聞いた瞬間、霊夢は咄嗟に結界を自身の周りに張った。
しかし、簡単な結界であった為かワルドの魔法を防ぐ事は出来なかった。


バ   チ   ン   !   !


何かが弾けるような音が辺りに響き、ワルドの体から無数の稲妻が現れ霊夢に襲いかかった。
その場しのぎの結界では稲妻を完全に防ぐことは出来ず、残りの稲妻は服の中にある結界符が防いでくれた。
しかし、この世界に来てから取り替えていなかったボロボロの結界符では稲妻の威力をほぼ微力にすることしかできない。
微力といっても、その稲妻は疲れ切っていた霊夢を吹き飛ばすほどの威力を残していたのだが。
「――――――――ッ!!?」
吹き飛ばされた霊夢は悲鳴を上げる暇もなく吹き飛び、空中で体勢を戻すことなくそのまま芝生に叩きつけられた。
先程の稲妻を放ったワルドは予想よりも相手に攻撃が通じなかったことに驚いていた。
霊夢の体からは少し薄い煙が上がっているがただそれだけで、特に目立った外傷が無いのである。
あの稲妻―――ライトニング・クラウド――はほぼ一撃必殺の呪文なのである。致命傷でなければおかしいのだ。
そんな風に唖然としていたワルドを尻目に、霊夢はなんとか立ち上がろうと動いていた。
しかし体内に軽い電気が走ったことにより全身が震えており、生まれたての子鹿のようにうまく立つことが出来ないでいた。
唖然としていたワルドはその様子を見てハッとした顔になると素早く呪文を唱え、杖を震動させる。『エア・ニードル』だ。
「何故僕の『ライトニング・クラウド』を喰らってそれだけですむのか知らないが、とりあえずは死んで貰おう。」
見下した風にそう言い放つワルドを尻目に、震えながらも霊夢はなんとか立ち上がった。
呼吸は荒く、軽く小突けば倒れてしまうような状態だったがそれでも彼女は口を開いた。

「どうしてこう…この世界で出会う男は…私の背中を…狙うのかしら…ねぇ。」
霊夢の罵言にワルドは少し見下した風に応えた。
429名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:36:33 ID:yvTH8uM/
脇が甘いんじゃないかな……
430ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:39:53 ID:23sAXsfx
「好きに言えよ。どっちにしろ僕は君を殺し、ルイズを利用してレコン・キスタの一員として世界を手に入れるんだ。
     ルイズと形だけの愛を結び、あの娘の体内に秘めた力を使いレコン・キスタは世界をその手中に収めるのさ!!」

ワルドは自信満々にそう叫ぶと懐から真っ白な仮面を取り出して顔に付けた。
先日ラ・ロシェールの町で霊夢を不意打ちしたあの仮面の男こそ、ワルド子爵であった。


―――そう、ワルド子爵は王宮に不満を持つ貴族達の集まりである『レコン・キスタ』の一員だったのだ。
詳しい経緯は知らないが、一員となった後に彼はトリステインでの工作活動をしていた。
賄賂や脅迫によるレコン・キスタへの勧誘。アンリエッタに対しての媚売り。その他様々――
今回のルイズとの同行も、アンリエッタのお気に入りになったからこその結果である。

言いたいことを言えて満足したワルドはそのまま震動する杖を霊夢の胸に突き刺――

ド ゴ ォ ォ ン ! ! 

――そうとしたが、突如右の地面がもの凄い爆発音と共に吹き飛び咄嗟にワルドは後ろへ下がった。
まさかこいつが!と思った瞬間、霊夢は瞬時に懐から出したお札をワルドに投げつけた。
一直線に飛んでくるお札をワルドは地面に伏せる事でよけ、素早く辺りを見回し――とんでもないモノを見つけてしまった。
本来ならそこに居るはずのない青年と少女が二人、こちらを信じられないというよな目つきで見ていた。
風のメイジならばすぐにその気配に気づけていた。無論ワルドはそれなりの風の使い手である。
しかし、霊夢を仕留めようとしたり、自信満々に説明していた所為で気づかなかったのだ。
少女の隣でワルドを睨み付けていた青年――ウェールズは恐る恐る口を開いた。
「わ…ワルド子爵、まさか貴殿が敵だったとは…!」
そして次に、ウェールズの隣にいたルイズは杖をワルドに向けながらも涙目になって叫んだ。


「子爵様の…子爵様の…子爵様の ウ ソ ツ キ ィ ! 」 


純粋な乙女心を真っ向からへし折られたルイズの叫びは…
哀しくも未だにホールで飲んだくれている王族派達の耳には届きはしなかった。
431名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:40:40 ID:yvTH8uM/
支援
432名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:45:11 ID:yvTH8uM/
支援
433ルイズと無重力巫女さん:2009/08/30(日) 19:45:45 ID:23sAXsfx
23話はここまでです。ついでに妖夢初登場。
次回の話もこのペースで投稿したいと思います。その時は是非支援を御願いします。
支援してくれた人、有り難うございました。

…と、思ったのですが何と文章が抜け落ちている箇所がありました。orz
>>427の最初です。これが抜け落ちている事に気が付きませんでした。

それからしばらくした後、霊夢もティファニアから貰ったサンドイッチ(昼に食べるつもりだったもの)を食べ終え食後のお茶を飲んでいた。
すると、パーティーでハイテンションになりつつ人々の間からウェールズ皇太子が霊夢のもとへやってきた。

大変なミスをしてしまうとは…。ではまたお会いしましょう。ノシ
434名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:49:46 ID:yvTH8uM/
おつ!
435名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:58:50 ID:YCDWVp8E
無重力の人乙です。

ウェールズ、チルノがお気に入りって。実態を知ったら確実に彼の幻想は壊れますね。

おや、結婚式前にばれた。しかし、この悪怒(誤字に有らず)不意打ちしかしてねえ。まあ、ガチでやったら霊夢の圧勝だし、仕方ないか?
偏在?フランドールのフォーオブアカインドの方が遥かに危険ですが何か?
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:15:38 ID:NK+0pdEc
無重力の人おつっす

いろいろと迂闊が過ぎるワドル氏
もはや力技で押し切るしかなさそうだ

幻想郷縁起のハルケ版みたいなのがあるってことは
稗田の一族の誰かがかつてここに来た事があるって事じゃろか
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:37:35 ID:IdS4Sw/L
うーん、しかしワルドはまず周りを見ることから考えるべきだな
タイミングとしてはドンピシャだが状況が悪い


ところでそんなワルドが仲間入りするようなSSってなかったっけ
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 21:02:55 ID:1GG3LEGZ
魔砲使いのワルドはお前誰だ?みたいなレベルの善役だったな。
早い話が白ワルド。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 21:11:26 ID:mxirT3rN
ゴーストステップのワルドは改心したきれいなワルドだね
エンディング楽しみに待っています
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 21:56:52 ID:pggbUaoW
上でも何人か言われてるし、理想郷でも「やたらきれいなワルド」は何人かいた気がする。
わりと探したら一杯いるんじゃなかろうかw

441萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:08:46 ID:WH8koChO
無重力さん乙でした。

進路クリアなら22:15頃より第9話を投下したいと思います。
442萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:15:10 ID:WH8koChO
それではいきます。


 『雪風』のタバサの使い魔、風竜シルフィードは、その実、既に絶滅して
しまったと言われている伝説の韻竜の末裔である。
 風の精霊をその友として、大空を自由に駆け巡る、人語を解する高等生命体
――その彼女は、今大変不機嫌であった。

 ……バババババ……グゥィィーーーーン……

 シルフィードの左側を後ろから濃緑色の鉄の翼を持つものが今まで聞いたことも
ないような羽音を立てて追い抜いていく。そしてある程度前に出ると今度は反転して
シルフィードの右側を通り過ぎていく。そのままある程度後ろに回ると、
また左側を通って前へ――自分の周囲をくるくると回りながら飛行経路に合わせて
移動していくそれは、彼女の主人の友人の使い魔だった。

「……きゅいぃ……きゅいぃ!」
 シルフィードが悲壮な声を漏らすのを、その背に乗ったルイズ、キュルケ、
タバサの3人はもううんざりするほど聞いていた。そうこうしているうちに、
またロングビルを抱えたふがくがその左横を通り過ぎる。
「……ふがくが馬車での移動を断った理由が解ったわ……」
「まさかシルフィードが全く追いつけないなんてねぇ。あたしも予想してなかったわ」
「……ふがくの速度が速すぎるだけ。あれは卑怯……」
「……きゅい……きゅいいぃぃ!!(シルフィは……シルフィは、のろまじゃないのねー!!)
 そう。ふがくがロングビルから場所を聞いて『破壊の杖』を取り返そうとしたのを、
ルイズたちが参加することで移動手段を考え直す必要が出てしまったのだ。
最初ルイズたちは馬車で移動することを提案したが、それをふがくは却下し――
今に至っていた。
「まったく。このハルケギニアに風竜より速い移動手段なんてないわよ。
ミス・ロングビルもふがくに抱えられたままだと大変じゃないかしら?」
「シルフィードでも片道30分はかかる距離だものねぇ。道案内に必要だから
でしょうけど、ミス・ロングビルも大変ね」
「二人で何か話しているようだけど、全然聞こえてこない……気になる……」
 タバサはそう言って前を飛ぶふがくに視線を向ける。確かに二人が何かを話して
いるようではあるが……それはふがくの背中の6発エンジンの音にかき消されて
シルフィードまでは届かなかった。

「……それにしても、どうしてこんなぐるぐると回るような飛び方をするんです?
 それに、どうしてわたくしをこんな風に?」
 腰に手を回して抱きかかえられた格好のロングビルが顔を上げてふがくに話しかける。
「足の遅い爆撃機や輸送機を、足の速い戦闘機で護衛するときの飛び方よ。
超重爆撃機型の私がこんなことをするとは思ってなかったけどね。
 それから……ここで猫をかぶる必要はないから。ミス・ロングビル――
いいえ、『土くれのフーケ』って呼んだ方がいいわよね?」
 ふがくの言葉に、ロングビルの雰囲気が剣呑なものに変わる。
「……いつから気づいていたのかしら?」
「アンタが昨夜巨大ゴーレムの上で高笑いしていたときからよ。
 あいにくだけど、私、目は良いから。高度15000メイルから目標を精密爆撃
できるくらいはね」
「は、言ってくれるわ。そんなところ、人間の住む世界じゃないわ。始祖のいる場所よ」
 ロングビル――フーケはそう吐き捨てた。
「……それで?いったい私をどうしたいの?ここから突き落とす?」
443萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:16:40 ID:WH8koChO
「冗談言わないで。何でそんなことする必要があるのよ?
 ただ、聞きたいことがあっただけよ」
 ふがくの言葉にフーケが愉快そうに顔をゆがませる。
「聞きたいこと?……ま、断ったら私はここから落とされても文句も言えないしねぇ」
「落とさないってば!
 ――それで、何でこんな手の込んだことをしたわけ?アンタが襲撃した時間と
距離から逆算したら『朝から調べた』ってのは嘘だってすぐ分かるのに」
「それに気づいたのは貴女だけ。学院のボンクラどもはあっさりだまされたってのに。
 ま、いいさ。気づかれたならこの芝居もおしまいだわ」
 そう言ってフーケ――ロングビルは視線で白旗を揚げた。ただし、それを知って
いるのはふがくだけ。ルイズたちは距離とふがくの翼の爆音でその様子には気づいて
いない。
「『破壊の杖』――盗んでみたのは良かったけれど、奇妙すぎて使い方も分からなくてね。
 使い方も分からないものなんて裏世界で売り払うにしても足下見られるだけだから、
誰か知ってる人間に使わせてみようと思ったのよ。
 ……結果はごらんの有様。笑い話にもなりゃしないわ。
 盗みに手を染めた理由は聞かないで欲しいわね。誰だって話したくないことの
一つや二つはあるからね」
 そう言うとロングビルはふっと自嘲(わら)った。その顔に、ふがくは何かを見る――
「そういうことなら、そのままロングビルでいてほしいわね。
 そうすれば『破壊の杖』は取り返したけれど土くれのフーケとは出遭いませんでした、
で終わらせられるから。お互いのためにもね」
「……そうねぇ。考えとくわ。
 と、そろそろね。向こうに見える森の中。あそこの廃屋に『破壊の杖』を隠したわ」
 ロングビルはそう言ってその場所を指さす。ふがくは軽く翼を振ると、そのまま
ゆっくりと目標地点の手前、森が開けた空き地に降り立った。

「遅いわよ。だから私一人でいいって言ったのに」
「きゅいっ!?きゅいきゅいきゅ……」
 少し遅れて空き地に降り立ったルイズたちに、ふがくは溜息をつく。その言葉に
反論するかのようにタバサの使い魔、風竜シルフィードが大きく鳴き始めるが……
その頭をタバサが手に持った大きな杖でひっぱたいて止める。
「うるさい」
「でも、何にもないわね。なんでこんなところに降りたのよ?」
「ここから先は木が生い茂ってますから。皆さんのこともありますし、
私がここに降ろしてくださいと言ったんですよ」
 辺りを見回すルイズにロングビルがそう説明する。ふがくと違いそれなりに
大きいシルフィードでは、確かにあまり狭いところには降りられないのでルイズたちは
その説明に納得した。そして一行は森に入っていけないシルフィードを
ここに残し、ふがくを先頭にして一列に歩いて行く――

「あれ?ミス・ロングビルがいない……?」
 歩き始めてまもなく。ふと振り向いたルイズは最後尾を歩いていたはずの
ロングビルの姿がないことに気づいた。
「さっきまであたしの後ろにいたのに……お花摘みかしら?」
「気配がしない……けれど……」
「でも、この先なんでしょ?先に行ってましょう」
 首をかしげるキュルケに訝しむタバサ。そして先を急ぐルイズ。それぞれの
言い分を聞きながら、ふがくは眉を顰めた。

(さっき約束したのに!なにやってんのよアイツ……)

「どうしたの、ふがく?」
「何でもないわよ!……っ。ほら、あれでしょ?ミス・ロングビルが言っていた廃屋は!」
444萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:18:00 ID:WH8koChO
 向ける先のない憤りを不覚にもルイズに向けてしまったふがくは、ばつの悪さを
隠すように目の前に開けた小さな空間にある、古ぼけた廃屋――というか屋敷跡を
指さす。元はどこかの貴族の別荘だったのだろう、かつては小洒落ていたはずの
崩れた門や壁が語りかける往年の姿に思いをはせるいとまもなく、ルイズたちは
森が途切れる手前でしばし作戦を練った。

「……ところで作戦ってどうするの?」
「タバサに考えがあるのよねー♪」
 ルイズとキュルケに水を向けられたタバサが杖で地面に簡単な家の絵と人の絵を描く。
「まず偵察兼囮役が中の様子を確認。
 もしフーケがいれば挑発して外におびき出して魔法で一斉攻撃。いなければ
『破壊の杖』を探し出して確保、撤収」
「……で、誰がその『偵察兼囮』をやるわけ?」
 タバサの案を聞いたふがくが言うと、視線が一斉に彼女に集まった……

「……まったく。『音を立てないように飛んじゃ駄目』ってどういうことよ」
 文句を言いながらもふがくは足のタイヤで文字どおり滑るように扉に近づいた。
ルイズたちが固唾を呑んで見守る中、扉に手をかける――最初に思ったとおり、
中から人の気配はしない。ふがくの合図でルイズたちが集まってくる。
 扉を開けると、そこはかなり長い間人の手が入った形跡がない埃っぽい広間。
ここが別荘として使われていた頃には主人が客を迎えたであろうそこは昔日の
面影もなく。しかしよく見ると、埃の積もった床には最近つけられたらしい
女の足跡が残っていた。
「扉に罠もないし、鍵もかかってない……どういうこと?」
「さあ?本人にでも聞いてみる?」
 ルイズが口にした疑問にキュルケが軽口で返す。その二人を横に、足跡を
追いかけたタバサが古びた暖炉の脇に置かれたテーブルの上に真新しい布で
包まれた細長い箱を見つけた。
「――これ……」
「え?」
 タバサの言葉に全員がそこに集まる。布を取り去ると、そこには確かに昨夜
奪われた重厚な装飾が施された箱――『破壊の杖』が納められた箱があった。
「なーんか、あっけないわねぇ」
「本当に……本物?」
「重い。中に何か入っているのは確実」
「まぁ、いいわ。土くれのフーケが戻ってくる前にここを離れるわよ。嫌な予感がする……」
 拍子抜けするキュルケやルイズをいさめるふがく。しかし、その言葉は最後まで
発せられることはなく、屋敷全体が振動に包まれた。

「見て!天井が!」
 ルイズがめきめきと音を立てて剥がされていく天井を指さす。そこには昨夜
見た、全高30メイルの土巨人――ゴーレムの姿があった。
「思ったとおりの、見え見えのパターンね……」
 ふがくが翼の6発エンジンを轟かせて剥がされた天井から外に出る。その横を
通り過ぎるように、氷の矢がゴーレムに突き刺さる。
「氷の……矢……」
 タバサが唱えた『氷の矢』(ウィンディ・アイシクル)の呪文にルイズが驚愕する。
それは風と水の系統のトライアングルスペル。『雪風』の二つ名を持つ
トライアングル・メイジ、タバサの力量を示すとも言える呪文だった。
445萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:19:17 ID:WH8koChO
「やるわね、タバサ。よーし、あたしも!」
 そう言ってキュルケがタクト型の杖をその豊かな胸元から引き抜き呪文を唱える。
「いくわよ!一撃でキメてやるわ!
 フレイム・ボール!」
 キュルケの生み出した複数の火の玉が立て続けにゴーレムに命中する。タバサが
『雪風』ならばこちらは『微熱』。通常の魔物であればトライアングル・メイジ
二人からこれだけの魔法を立て続けに受けて無事でいられるはずもない……が――

「う……うそ?まともに当たったのにびくともしてない?」
 キュルケが戦慄する。ゴーレムは無傷だった。いや、正確には受けるダメージを
地面を自分の一部に変えることで再生してしまうゴーレムの回復力が上回っているのだ。
それが前回のふがくの爆撃への対策だとはルイズたちは知らない。その様子に
キュルケとタバサは一時退却を決定する――が、二人が逃げ出した後でもそこに
残っている者がいた。
「当たれ!ファイヤーボール!」

 パン!

「〜〜〜〜〜〜〜ッ」
 ゴーレムの肩が小さく弾ける。しかし、それもあっという間に修復されてしまう。
しかし、ルイズは魔法を唱え続けた。
「ルイズ?何やってるのよアンタ!早く逃げなさい!」
 上空からふがくが叫ぶ。その場所にルイズがいると攻撃できないのだ。
「……嫌よ!」
「バカ!アンタの失敗魔法じゃどうすることもできないでしょうが!」
「嫌!!」
 ふがくの言葉をルイズは強く拒否した。
「……わたしだって……ささやかだけどプライドってものがあるの!
 ここで逃げたら……また『ゼロのルイズ』って言われるじゃない!」
 ルイズはそう言ってふがくを見上げる。その顔には――決意と、そして涙が
浮かんでいた。
「――それに!わたしは貴族よ!
 魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろを見せない者を、貴族と
呼ぶのよ!」
 そう言ってルイズは見得を切る。だが、力の差は歴然。ルイズの上に影が差したかと
思うと、ゴーレムの巨大な足がゆっくりと彼女を押しつぶそうとしていた。
「きゃあああ!」
「ルイズ!」
 ふがくが超重爆撃機では限界に近いほどの急角度で速度を上げて機関短銃を
撃ち放つ。その銃弾はゴーレムの足を粉みじんに打ち砕き、土煙を撒く。その中を
ルイズを抱えたふがくがくぐり抜け、再び空に舞い上がった。
「この……バカァ!」
 手がふさがっていなければ平手打ちの一つでもしていたであろう。ふがくが
その目を怒りに燃え上がらせる。
「アンタ死ぬ気!?
 命はね、かけがえのないたった一つの奇跡なのよ!それを……貴族のプライドが
どうだっていうのよ!死んだら……それでおしまいなんだからね!」
 ふがくはルイズに怒りを向けつつ、その瞳の奥に、あの日、ふがくが開発されていた
秘密格納庫で見送った、太ももに届く長く艶やかな黒髪とそれが映える紺色の水着の
上から純白の千早と緋色の短袴を身につけた後ろ姿を重ねていた。
ふがくに大切なことをたくさん教えてくれた人。大日本帝国最初の鋼の乙女、あかぎ。
そして、戦争の帰趨を決定づけたあの運命の『中つ道』に向かうため、にっこり
笑った姿を最後に帰ってこなかった彼女を――
446萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:20:39 ID:WH8koChO
「だ……だって。悔しくて……。わたし……いっつもバカにされて……」
 ふがくに抱きかかえられたまま、ルイズが顔を伏せる。
「――わたし……わたしだって……」
 伏せた顔から涙がこぼれ落ちる。
 ルイズはふがくの力を知るたびに、己の力のなさを思い知らされたような
気がしてうちひしがれていた。風竜よりも速く飛び、手にした武器は最高クラスの
メイジが造った塔をも易々と撃ち抜き、巨大なゴーレムも一発で破壊する――
それに比べて自分はどうか。相変わらずの失敗続き、『ゼロ』の汚名は未だ雪げず。
そんな自分に、反発はするけれど離れていかないふがくの主を名乗る資格があるのかと
自問自答し――結果、大の大人をも尻込みさせる任務に自ら志願していたのだ。
「……バカ。ルイズは、ルイズにできること、ルイズにしかできないことをやれば
いいじゃない。見つからないなら、見つければいいのよ。
 でも、その前に……アイツを何とかしないとね」
 ふがくは目標を探して腕を動かし続けるゴーレムを見る。すでに破壊した足も
復元され、上空にいる自分たちに気づけばすぐに何かしらの攻撃を加えてくるだろう。
「ルイズ、ふがく!」
 そんな二人の元に、上空から青い翼が舞い降りる。シルフィードに乗った
タバサとキュルケが、二人の元にやってきたのだ。
「どうするの!?あの回復力、ふがくが爆撃しても再生されるかも知れないわよ!」
 キュルケが叫ぶ。タバサの魔法でふがくの背中の6発エンジンの爆音にも遮られずに
声が届く。ふがくはその効果に素直に驚いたが、次の瞬間には真顔で聞き返していた。
「ゴーレムを確実に倒すにはどうすればいい?」
「……昨日のようにゴーレムの再生能力を超える威力で破壊するか、
術者を倒せばゴーレムは元の土くれに戻る。けれど……」
「それなら話は早いわ。ルイズをお願い。それから、ゴーレムをしばらく相手して」
 タバサの答えると、ふがくがシルフィードに近づき、ぎりぎりまで速度を
落としてルイズをキュルケに預け、森の方へと飛んでいく。
「行っちゃった……まさか、森を焼き払う気?」
「タバサ、『破壊の杖』貸して!それ使ってゴーレムをやっつける!」
「ちょ、ちょっとルイズ!」
 キュルケが大慌てでルイズを止めようとする。が、そんなことで止まるような
ルイズではない。
「『レビテーション』をわたしにかけてちょうだい!」
 そう言うが早いか。ルイズは『破壊の杖』の箱を抱いてシルフィードから
飛び降りていた。
「い、いきなり呪文をかけろなんて言われても……っ!」
「フル・ソル・ウィンデ!」
 突然の事態に慌てるキュルケの横で、タバサが『レビテーション』を唱える。
落下の速度が消え、羽が舞い降りるようにゆっくりと地面に降り立ったルイズは、
ゴーレムが自分に気づく前に『破壊の杖』の箱を開ける――


447萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:21:51 ID:WH8koChO
 一方、上空から森の中にいるロングビルを見つけたふがくは、背中の6発エンジンの
爆音を轟かせながら一航過で連続して爆弾を投下する。たちまち立ち上る爆炎。
しかし、緻密に計算され尽くした破壊効果はきれいにロングビルのいる一角のみを
残して周囲を吹き飛ばしていた。
「ひっ!
 ば、化け物!わ、私をなぶり殺しにする気?」
 そこから一歩踏み出せば地獄――爆撃が過ぎ去った後、ロングビルは目の前に
降り立ったふがくを、それこそ化け物を見る目でにらみつけた。この状況で失禁も
しなければ意識も手放さなかったのは、うら若い女の身空でありながら裏家業で
身を立てていた経験か。
「私は言ったはずよ?ルイズたちの前ではミス・ロングビルでいてほしい、って」
「おあいにくさま。私はね、そうしないといけない理由があるのよ!」
 ロングビルの目はある感情で満たされていた。それはふがくにも判る。
自分やレイ、ナナたちに危害を加えようとする者を前にしたときの、あかぎの目と
同じもので満たされていたからだ。それはすなわち――誰かを守ろうとする力。
「理由は深く聞かないわ。けど、ここでアンタが命を落としたら……
アンタが守りたいものは、どうなるの?」
「は!そんなこと、貴女が知ったことじゃないはず。
 それとも何?ここであのお嬢ちゃんたちを見逃す代わりに、私に手を貸して
くれるとでも?」
「それこそ理由によるわね。でも、今のままだと私はアンタを捕まえないと
いけないの。それこそ生死を問わず」
「くっ……」
 ふがくが機関短銃の鈍く黒光りする銃口をロングビルに向ける。あの強固な
『固定化』と『硬化』のかかった学院本塔に風穴を開けた銃――どうみても大の
男ですら片手で扱えるとは思えない金属の塊を片手で扱っているのだ。たとえ銃を
『錬金』で無力化したところで、今度はその巨人並みの膂力を持った細腕で撲殺
されるだろう。それとも……もう一度上空から爆撃されて消し炭にされるか。
どう考えても自分の死以外の結末が見えないロングビル。全身を嫌な汗が濡らす
その様子を前に、ふがくが銃を降ろして言葉を紡ぐ。

「……そこで、一つ提案するわ。アンタにとっても悪い話じゃないはずだし――」

 そう言って、ふがくはロングビルにある提案を持ちかけた――
448萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/08/30(日) 22:24:12 ID:WH8koChO
以上です。

ビジュアルはコミック版を参考にしていますが、ところどころ突っ込みたい
描写が見られるのはある意味すばらしいことですね。
おマチさんの口調、コミック版が結構丁寧なのではすっぱな口調にするか
かなり迷いました。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:10:53 ID:G63JKedc
ウルトラの人、無重力の人、ゼロ大戦の人、みんなに一言だけ言いたい。

読みにくいから、改行と空行を多用してほしい。目が疲れる。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:13:09 ID:XLjenYlr
>>449
気持ちはわからんでもないが、作品の中で改行と空行を使ってくれてる作品のほうが珍しいけどな。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:15:23 ID:Em+LKhFK
>>449
それやると、投稿数が増えちゃって大変なのかも。
Wikiにまとめるときに、読みやすく整形すればいいのだろーか。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:15:27 ID:bPbfW07S
空行と改行ばっかりの作品は傍目にゃ手抜きにしか見えんのだよなぁ
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:20:05 ID:a6qPprZH
ふがくの人乙です。
まぁガチでやったらおマチさんごと瞬殺だしねw
次回をwktkしつつ正座待機。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:22:13 ID:b7mxGdhT
俺は空行があると見難い
ある程度詰まってないとスクロールがうざい
要するにみんな乙って話だ
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:25:04 ID:ueZJfL5g
人によるわなぁ。俺は適度に改行してある方が見やすい。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:29:38 ID:3l7BTp51
無重力の人、遅ればせながらGJ!
このワドルは典型的な慢心タイプかwww
霊夢さんのコンディション最悪時に仕掛けてくるとは良い手だが
寝首をかくという選択糸は無かったようで
怒りのガンダモードはやはり鬼巫女だろうか…
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:42:32 ID:b7mxGdhT
鬼巫女は賽銭問題が無いと発動しないよw
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:48:23 ID:wsRK8dbQ
別に文字が詰まっててもスカスカでも、普通に読めると思うけど
わりと最近に投下された作品で、改行と空行のおかげで読みやすいやつって、どれ?
参考までに訊いておきたい
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:53:40 ID:ueZJfL5g
単純に詰まってんのが読みづらいってだけさね。
普通の縦書き小説なら問題ないけど、ネットの横文字はなんか疲れる。

変なところで切られて改行されてると尚めんどい。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:57:49 ID:wsRK8dbQ
日本語の文字の形って、書き順的には左上から右下に流れるようになってるから
左→右の横書きでもいけそうな気はするんだけど……
単に画面が眩しくて目がチカチカしてるだけじゃない?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:04:51 ID:c9lhnqWD
>438
魔砲ワルドは個人的には白ってより
レコンキスタ<ルイズ&なのはさんと判断して味方についた蝙蝠臭がする
マザコン発言の複線もあるしまだ何かやらかしそう
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:07:52 ID:wZj8HkTU
html標準の行の高さが英文向けになってるから
日本語だと高さ方向はつまり気味。

あと明朝体なんかは縦書き向けのデザインだから
縦書き小説よみやすいのかもね。

気になる・気にならないは慣れか?
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:07:56 ID:CQKGMty5
ネットの縦書き文章は、ネットの横書き文章に輪をかけて読みにくいからなぁ。
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:13:02 ID:l9qbRozC
まあ縦でも横でも文章が長すぎると
次の行を読もうとしたときに目が迷うことはあるよね
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:36:51 ID:nIfIh3/R
>>464
じゃ、1レス10行で
466虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:45:34 ID:3ktljB71
こんな時間に今晩は、投下しても良いでしょうか?
良ければ00:50位に落とします。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:48:47 ID:B3j2hj0/
うおおリアルタイム遭遇した!支援支援!
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 00:50:58 ID:+B7COdo3
>>461
宿の時襲撃無かったし、鳥の骨から二重間者やれって
言われた発言がある
469虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:51:04 ID:3ktljB71
level-15 「敵意」


 がさりがさりと生い茂る草木を掻き分け、森の中を進む一つの影。
 軽く10メイルはある樹木の、空を隠すほど生い茂った葉が太陽光を遮り、森の中は薄暗くなっている。
 視界は差して良くは無い、集中すれば何とか見えると言う程度。
 そんな深い森の中で緑色の全身鎧を着た大男が、青く長い髪を持つ全裸の少女を肩車して居るなど考え付きもしないだろう。

 そんなチーフとシルフィード、もといイルククゥは悪路もなんのその、構わず進んでいく。
 整えられた街道、そちらの方が速いのだが、やはり人目に付きたくはないために森の中を突っ切る。
 それでもだ、チーフの進行速度は目を見張るものがある。
 草木を掻き分けて進む、それは文字通り手で跳ね除けて進むわけだが。
 鎧を着ているチーフにとっては意味の無い動作、幾ら草木がアーマーに擦ろうが極小の掠り傷一つ付きはすまい。

 もう一人、シルフィードことイルククゥは常にチーフの上、肩に乗っている。
 最初は歩いて付いてきていたが、チーフとの移動速度に差が在りすぎ一分も経たず数十メイルもの差が出来ていたため。
 チーフの上に乗ると言う選択を選ぶことになった。

 ただのお荷物、と言うわけではなく、優れた視覚と嗅覚、聴覚によってチーフの知覚外の事象を感じ取ることで役立っていた。
 その具体例が一つ、それは……。

「お兄様、前に豚が居るのね」
「………」

 イルククゥが前方を指差し、それを聞いたチーフは光学ズームにて指差された方向を確認。
 薄暗いため、暗視に切り替えてみる。
 イルククゥが言った通り、豚、オーク鬼が一匹のっそり歩いていた。

「他には」
「んー、居ないと思うのね」

 25メートル以上の距離はモーショントラッカーの範囲外、それより先で何者かが動いていても分かりにくい。
 オーク鬼の周囲を確認、一匹しか居ないらしい。
 ここは素通りさせるか、そう思いその場にしゃがみこんでオーク鬼の動向を観察する。

「……ふご」

 のっそり、非常にゆったりしている。
 寛いでいるのだろうか、散漫な動きしかせず、とうとうその場に座り込んでしまう。

「邪魔なのね」

 イルククゥは嫌そうに呟き、チーフの頭の上に両腕を乗せダレた。

「………」

 そんな行動に構わず、物音立てず観察し続ける。
 出来るだけ先を急ぎたいチーフに浮かんだ選択肢は三つ。
 一つ目、このまま待ち、オーク鬼が移動するまで待つ。
 二つ目、すぐさま排除し、行軍する。
 三つ目、迂回して、目的地へ向かう。

「お腹空いたのねー」
「……排除する」

 イルククゥの五感を信用し、素早くオーク鬼を排除する事を決める。
 それを聞いて飛び降りるイクルルゥ、そうして腰のハンドガンを手に持つ。
 すると体が軽くなり、力が漲り始めた。
 武器を握れば体が軽くなるこの現象、使用するに当たりメリットはいくつも見ることは出来るが。
 デメリット、使用による不具合に何があるのかが見当も付かない。
470虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:52:29 ID:3ktljB71
 ミスタ・コルベールによれば使い魔の契約に因って与えられる力らしいが。
 何せ人間の使い魔など例が無いと言う事で、言った通り効果が持続するかどうかも分からないとの事。
 効果の程を確かめるのは長期間の情報収集が必要となるだろう。
 チーフとしてはそれに当てる時間など無いに等しい、出来るだけ早く戻らなければならないから。

「………」

 立ち上がり、オーク鬼を見据える。
 もう一度オーク鬼の周囲を確認、その他の存在が見受けられないことを確認して駆けた。
 森の悪路もなんのその、時速50kmを超えて走るチーフがオーク鬼へと接敵。

「ブゴ?」

 オーク鬼が近づいてくる音に気が付き、ゆっくりと振り返った。
 その時には10メイルの距離もなく、1秒もすればクロスレンジ。
 地面に擦りそうな低い位置から跳ね上がってくる、固く握ったチーフの左拳がオーク鬼の顎を打ち抜いた。

「ッポギ」

 とオーク鬼の口から漏れた声。
 余りの威力に座っていたオーク鬼が軽く浮き上がり、垂直に一回転してうつ伏せに倒れ落ちた。

「さすがお兄様ね!」

 ピクリとも動かないオーク鬼を確認した後、イルククゥがまたもチーフに飛び乗った。
 手だれの戦士5人に匹敵すると言われるオーク鬼でも、正面から戦っても勝てるチーフの奇襲を受けたものだから勝てないのは自明の理か。
 素手に因る近接格闘のみであっても、オーク鬼10匹居ても勝てなかっただろう。
 それほどまでに練達した戦士であるチーフだった。

「相棒はな、おれを使わなくても十分強いんだよな。 おれが居る意味あるのかね?」
「消耗しない武器は重要だ」
471虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:53:33 ID:3ktljB71
 そうして行軍を再開する、道中お腹すいたと連発するイルククゥに腰のサックから食料を出して手渡す。

「ウマウマ」

 モグモグと食べ続けるイルククゥを他所に、黙々と歩み続ける。
 時折ポロポロと小さな食べカスが転がり落ちてくるが、それすらも無視して歩き続ける。

「お兄様は食べないの?」

 と四分の一しか残っていないパンを、顔の前に差し出すイルククゥ。

「……別のがあるからそれは全部食べて良い」

 この星の日照時間などから、強引にだが地球の定時法に割り当てた。
 時間は11:24と表示され、既に3時間以上歩いていたようだ。

「降りてくれるか」
「きゅい」

 パンを頬張りながらも飛び降りる。

「周りに何か居るか」
「ムグ……、いないのね」

 モゴモゴと口を動かしながら、目や鼻、耳を使ってあたりを探るイルククゥ。
 モーションセンサーにも動く物、草むらに潜む小動物しか捉えていない。

「少し休もう」

 現在位置の周囲、草むらから樹木の位置を確認。
 迫るとしたらどこから来るかなど考え、防衛に最適な位置を割り出す。

「(……あそこか)」

 攻めるも守るも、優位になるだろう位置にしゃがみ込む。
 その動作を見て呼ぶより早く、イルククゥが隣に座り込む。
 そうしてサックをあさり、パンと水を取り出した。

「いっぱい食べるのね」

 手に持ったパンと水の入ったビンを差し出してくる。
472虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:54:31 ID:3ktljB71
「………」

 じーっと、チーフの顔、ヘルメットを見つめ続けるイルククゥ。
 顔が見たいのか、そう聞くと「見たいのね!」と元気よく声が返ってくる。

「機密だ、見せられない」

 そう言って左手のひらをイルククゥの顔に当てる、勿論力は入れてない。

「は、離すのね!」

 イルククゥの視界を塞ぐように左手で顔を覆う。
 ヘッドディスプレイを不透明100%に指定し、空いている右手でヘルメットを外す。

「んあー!」

 チーフの手を外そうともがくイルククゥ、竜とは言え変身している時では本来の力を出せないらしい。
 そんなイルククゥから手を外すと同時にヘルメットを被せ、また視界を塞ぐ。

「なにするのね!?」
「少しだけそのままでいてくれ」

 叫びながらもヘルメットを取ろうと動くが、上からヘルメットを押さえつけているので両腕を使っても外せない。
 上に持ち上げられないなら、自分の体を下げれば良い。
 そう言う考えに至ったのであろう、ずりずりと体を下げ始め、一行に外せないヘルメットと共に地面へと寝そべっていた。
 最後の方には体をひねり始めてもいた、そこまでして見たいのかと思ったが、見せてやるわけにも行かないので素早く食事を済ます。

「と、とれたのね!」

 と、体を土塗れにしたイルククゥが起き上がって見るも、既にチーフはヘルメットを被っており、その顔を拝む事は出来なかった。

「んきぃー!」

 見れなかった事に腹を立てたのか、ついには地団駄まで踏み出す。

「何故見たい」
「見たいから見たいの!」
「見せられない」

 単純な答え、見たいと言う感情のみでの発言。
 しかしながら軍機のため、顔、名前、年齢と言った個人を特定できる物は一切教える事は出来ないし、見せる事も出来ない。
 違う惑星に居ても、UNSC<国連宇宙軍>の法はチーフに適用される。
 たとえイルククゥのようなファンタジーな生物でも、決して語る事、見せる事は出来ない。

「進もう」
「むー」

 とりあえずイルククゥの顔に付いている土汚れをふき取り、持ち上げてから肩に乗せる。
 顔が見れなかったのは不満だったが、先に進む事には反対しない。
 そういった感情がだだもれなイルククゥであった。
473虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:55:34 ID:3ktljB71
 その後、運良くアルビオンの兵や亜人に遭遇せず順調に進み続けた。
 暗くなり始めても歩き、完全に日が落ちても歩き続ける。
 街道を見つければ誰も居ないか確かめ横断、ひたすら歩く。
 そんな代わり映えのしない状況にイルククゥは文句を垂れるが取り合わず。

「遅れてタバサが危険な目に遭ってても良いのか」

 といえば黙り込む。
 既にこの状況、タバサはともかく魔法を使えないルイズは歳相応の身体能力しかない。
 もしもと言う時の自衛手段が少ない、スクウェアの子爵が居るとは言え過信するのも良くは無い。
 タバサにしても最速の移動手段であるイルククゥが居た方が良いだろう。

「お腹空いたのねー」

 そう言えばサックからパンを取り出して上に手渡す。

「ウマウマ」

 それを数時間毎に繰り返しながらも歩き続ける。
 そうしてさらに数時間、00:56と時間的に言えば翌日になっていた。
 このままニューカッスル城に向けて歩き続けるのはチーフ的に問題は無いのだが。
 肩に座る少女、イルククゥが完全にチーフの頭へとうな垂れかかり眠っていた。

「………」

 バランスの問題もあるし、何より敵に遭遇した時に対処が遅れる可能性も十分ありえる。
 ならば何処か適切な場所でキャンプを張った方が良い。
 決断するや否や落ちそうになるイルククゥを横抱きにして抱え、周囲を探る。
 特に草むらが多い箇所、そこを避けてしゃがみこめば隠れられる程度の草垣に陣取った。
 本来ならば暖を取るために焚き火の一つを起こしてやりたいのだが。

「……いっぱいねぇ、おなかぁ……」

 と平然と寝るイルククゥを見て、そのままで良いだろうと思い至った。

「軍人ってのは随分慎重なんだな」
「基本だ」

 樹木を背にして周囲を警戒し、気持ち良さそうに眠るイルククゥの安眠を邪魔しないようにする。

「娘っ子の傍にいけすかねぇ兄ちゃんが居るんだし、そこまで急ぐ必要ねぇんじゃねぇの?」
「守るならば一枚だけでは駄目だ」

 出来るなら二重三重と、敵の手が届かないようにするべきだ。
 強い仲間が一人居る、だからなんだと言う考え。
 魔法だろうが火器だろうが、使用による限界は何れ来る。
 物量で攻められればより限界が近くなる、それを補うために複数の仲間を必要とするのだ。

 チーフと言えど、ただ一人きりで戦ってきたのではない。
 心強い仲間が居てこそ、支援があってこそやって来れただけだ。
 本当にただの一人きりであったなら、ここには居ない。
 命はなく、ただ終わっていた。

「………」

 チーフは森の天井、木々に生える葉の天井の隙間から見える双月を見て夜を過ごした。
474虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:56:41 ID:3ktljB71
 日が昇る。
 森の向こう側から顔を出す太陽、天文学的に言えば太陽ではないのだが、殆ど真っ暗だった森の中に明るみが増えてきたので朝と認識。
 時間も05:13と表示されている。
 視線を下げればうつ伏せで寝ているイルククゥ、起こしてすぐにでも進むべきか。
 そう考えていれば。

「……お腹、空いたのね」

 むくりと起き上がった。
 睡眠欲より食欲を取ったらしい、言った通り食料、最後のパンを水と一緒に差し出した。

「ウマ、ウマ」

 眠気眼で頭を揺らしながらもパンを頬張る。
 地面に直接寝転がっているため、土埃が凄い事になっている。
 食べ終わったのを見計らい、口周りと顔を拭いておく。

「……お兄様はもう食べたのね?」
「済ませた」
「……むー」

 まだ狙っていたのか。

「進もう」

 抱え上げて肩に乗せる。

「いつか絶対見せるのね!」

 と完全に目が覚めたのか、元気良く宣言するイルククゥ。
 自分から見せることは無いので、見るとしたら力尽くか、或いはヘルメットを外すその時に覗き見るか。
 どちらにしろ簡単な事ではない事は確かだった。
475虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:57:40 ID:3ktljB71
 そんなこんな、さらに5時間ほど歩き続ければ大きく長い森の切れ目、端が見え始めた。
 進み、森の端、幹の太い樹木に手を置きながらも視線は森の外。
 先に遠くまで続く広い草原と、その先に有る小さく見える、大陸から突き出た地形の上にある城があった。

「あれ?」
「あれだ」

 イルククゥが指差すのは城、地形にも因るが後数時間で城にたどり着けるだろう。
 だが、今現在の問題は目の前に広がる草原。
 人目に付かぬよう迂回するか、或いは時間優先で突っ切るか。

「さっさと行くのね!」

 迂回はイルククゥの好みではないらしい、一直線に城へ向かおうと言う。
 地下を行くギーシュたちもどの辺に居るのか分からない、もう付いているかもしれないし遅れているのかもしれない。
 ならば出来るだけ早く付いた方が良いだろう。

「ああ、そうだな」

 右手にハンドガンを握る。

「掴まっていろ」
「うん!」

 イルククゥは手でヘルメットをしっかり掴み。
 チーフの左手がイルククゥの足を押さえ、落ちぬ様にする。

「行くぞ」

 駆け出す、人の全力疾走の倍以上。
 時速70kmはあろうかと言う速度で駆ける。

「きゅいきゅい!」

 嬉しそうに鳴くイルククゥ、空を飛ぶのと地を走るとではスピードの差が在るが、映る景色や体感にも違いがある。
 それを感じて喜んでいるのか、普通ならば感じる事が出来ないのだから仕方ないと言える。
 そうしてグングンと走り進み続ける。
 運が良い、ここまできて行った戦闘はオーク鬼の一度だけ。
 願うならばこのまま敵と出会わず、と言いたい所だが現実はそれほど甘くは無い。

「敵だ」

 空に見える赤い点、恐らくは赤い姿の火竜。
 イルククゥが素早く降りて草原に伏せる、同じ様にチーフもしゃがみ込んで草丈に紛れた。
476虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 00:59:16 ID:3ktljB71
「………」

 気付いているのか、ゆっくりと草原を見渡すように飛んでいる。
 警邏、その類だろう。
 ここは穏便に、無駄な戦闘を行い敵を呼び寄せても良い事が無い。
 だからじっとして警邏が通り過ぎるのを待つ、が。

「………」

 左の視界、歪み明らかにおかしい。

「きゅい!」

 自身の異変と連動するかのように、イルククゥが叫んだ。

「きゅいぃぃ!!」

 それは叫びのような、力の篭った鳴き声。
 光を放つと同時に変化、イルククゥが風竜シルフィードへと移り変わる。

「これは……」

 左目の映る景色、今見える草原とは別物。
 その左の景色には背を向けている子爵と、杖を支えにして立つタバサが見えた。
 苦しそうな表情、衣服は切り刻まれ、その下の肌も傷がいくつも入っている。

『使い魔は主人の目となり耳となる』

 これも能力、メイジの使い魔になる事で得られる力の一つ。
 普段見えないのは発動する条件ではないから。
 つまりルイズとタバサの身に危険が迫っていると言う事。
 イルククゥは自身と同じ様に主に危険が迫っている事が分かるのだろう、翼を大きく広げた。

「乗るのね!」

 言われると同時に飛び乗る。
 500kgも何のその、大きく一度羽ばたいただけで浮き上がり。
 二度目の羽ばたきでさらに高く、三度目には加速し始め、四度目を最後に高速で飛翔し始めた。
 そんな草原から突如光を放ち飛び上がる物体に気が付いた警邏、怪しい存在に対して攻撃を加えようとした時にはもう遅かった。
 チーフがハンドガンにて狙い撃ち、火竜の下顎から進入したマグナム弾が喉に突き刺さり、火竜は一撃で絶命。

 そうして落下する火竜から飛び降り、フライにて起き上がった頃には遠く小さくなっていた。
 この警邏が不審な存在が草原に居たと報告できた時には、ニューカッスル城は陥落していたのであった。
477虚無と最後の希望:2009/08/31(月) 01:01:36 ID:3ktljB71
以上です、推敲したのに幾つか誤字。
あとODSTまで一ヶ月きってワクテカ。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 02:41:22 ID:hPgAZTeM
GJです
にしてもシルフィード、ウマウマとお腹空いたばかり言うなw
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 06:53:20 ID:QaDPZoXC
投下乙!
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 11:11:17 ID:7OBuhNJV
チーフの人乙
さすがあらゆる敵を撲殺してきたチーフパンチ、オークぐらい一撃だぜ
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 14:02:24 ID:g/c9eIcc
銃撃つより殴ったほうが強いFPSの主人公、それがマスターチーフ。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 16:29:29 ID:ese7x7eM
FPSの主人公は大抵銃より強い
(例)F,E,A,Rのキック
halfーlifeのバール
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 16:32:51 ID:ambJ7fOD
FPSとはちょっと違うがバイオ4やエクスターミネーションのナイフとかな。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 17:01:09 ID:V7Bg0nkv
ピストルは最後の武器だ!
なんて言葉が通用したのは遠い昔の話
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 17:05:24 ID:J1ESOfUP
FPSとはナイフ・パンチ・キック>ハンドガンという世界だ
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 17:05:39 ID:AWXWyvPd
>>483
バイオ4のナイフは敵の投擲物弾いたりするからな。
レオンがすごいのかナイフがすごいのか…。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:03:04 ID:l9qbRozC
まあジェダイのライトセーバーだって相手の弾をはじいてたし
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:15:06 ID:J1ESOfUP
たしかジェダイの騎士って未来予知で弾いてるんじゃなかったけ
ジェダイどうしが戦うとフォースの足りない方が負ける理由は予知が追い付かないからとか
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:27:52 ID:tjB/delP
フォースにガンダが重なるとどんな能力になるんだろう?
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:33:27 ID:l9qbRozC
そもそもルーンの能力がカバーしてくれる範囲がよくわからん
異世界の使い魔なら幻獣はともかく武器や道具についての認識も違ってくるだろうし
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:37:14 ID:fWWbCmyI
おっぱいは武器ですか?
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:38:28 ID:/EnIm9Ht
フォースの意志が使い魔の強制力を認めるとは思い難い

ジェダイの騎士としてはむしろ弱体化しそうだけど
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:41:29 ID:iRjeExg1
>>490
それだと近代兵器を知らないエルフがガンダのルーン意味ねェにならね?
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:42:20 ID:fWWbCmyI
>>493
セルシア「戦車やライフルなら知ってるわよ?」
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:44:33 ID:aaRYe0J9
>>491
舞乙Himeのエルスのおっぱいは武器になるな(要オトメ化だけど)
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:45:56 ID:fWWbCmyI
>>495
そういえばサイボーグ009-1もマジメに武器ですねw
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:45:57 ID:A+4PsKmz
どんな武器だってリリー・マルレーン歌いながら弾けばいいじゃない
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:48:08 ID:0ToJ5uqc
≫493
そんな連中に武器の使用法とか付加するのがガンダじゃないの?
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 18:57:25 ID:yRgBKF/Z
現代の厨房にいるだけで常時ルーンが光るのか
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:01:45 ID:c2ZBp/ZZ
>厨房
セガールが恐ろしい事に
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:06:10 ID:ese7x7eM
>>491
核兵器です
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:38:31 ID:/EnIm9Ht
ちっぱいは?
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:49:00 ID:3wuvEBmM
>>501
生物へいきです。
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:50:15 ID:3wuvEBmM
>>503
アンカと変換ミスったorz
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:54:34 ID:loSz9x7z
>>497
邪神の頭の上でタップダンス踏みながら
空中分解する核ミサイル眺めて笑みを浮かべるグリリバと申したか
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:15:08 ID:TAIJpK1l
女の子にキスしたら気持ちよかったって歌詞で全米を感動させた人だっけ?
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:20:21 ID:ALAWk6K1
ドラゴンナイト・ゼロの第二話、予約がなければ20:30に投下します
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:28:35 ID:F3LzJYV0
待ってました!支援
509ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:31:22 ID:ALAWk6K1
「うおー久しぶりのベッドだー!」

「勝手にダイブするな!」

昼に行われた春の使い魔の儀からなんやかんやあって、夜。
龍騎とドラグレッダーを伴い、ルイズは自室に戻って来ていた。
狭い部屋ではなかったが、住人が二人と一匹に増えると流石に窮屈に感じる。
特に、部屋に入るなり嬉々としてベッドに飛び込んだ龍騎が寝転んでいるベッドの上は。

(ま、一人のままよりはいいか)

思えば、どんな魔法を使っても必ず爆発に帰結する自分が、正体不明だが使い魔を二体も召喚できたのは奇跡に近いだろう。
始祖ブリミルに感謝――するかどうかはまだ早い。

常識人(竜?)そうなドラグレッダーはまだしも、初対面の人物を当たり前のように殴る龍騎は危険だ。
毛筋一つの油断が、死を招くかも知れない。
だがこの状況は……ロデオのようなものだ。
荒馬を乗りこなせるかどうかは、騎手の腕にかかっている。
そして自分は、龍騎という荒馬を見事乗りこなす名騎手となるのだ。

「そういえば聞きそびれてたんだけど……」

「あん?」

「あんた達って何なの?」
510ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:32:07 ID:ALAWk6K1
どこから来たのか、何者なのか。
鎧を着た人間にも見えるし、鎧を着た人間のような亜人にも見える。
馬を馴らすにも、種類ごとのコツがあるのだ。
使い魔がどんな存在か、主人は知っておく義務がある。
しかし、問いの答えは返って来なかった。

「ぐーぐーむにゃ」

「話の途中で寝るな!」

「ぶほぉ!」

仰向けになって寝息を立てる龍騎に、ルイズは全体重をかけた二―ドロップをぶちかました。
下手に手心を加えて舐められるのは御免だ。
殴り合いに発展しそうな雰囲気を、ドラグレッダーの声が割る。

「ワシと龍騎のことについて知りたいなら、少し長くなるが教えよう。龍騎、また寝ようとするな」

――――パラレルミラーワールド。

それは龍騎のような、仮面ライダーと呼ばれる戦士だけが住む世界。
彼らは皆ライドモンスターと呼ばれる使い魔を入れたカードを持ち、自在に呼び出して戦う事が出来た。

「仮面ライダーとは、かつて人類のために戦った正義の戦士達だ。一応、龍騎もライダーなんだが……」

「路地裏にたむろってるチンピラの方がぴったりね」

「返す言葉もない……」
511ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:33:09 ID:ALAWk6K1
龍騎は元々仮面ライダーではなく、別の世界で平和に暮らしていた少年だった。
そんな彼が何故龍騎となり、パラレルミラーワールドに連れて来られたのか。

それは、シャドームーンという悪の仮面ライダーと戦うためだった。
パラレルミラーワールドだけでなく、全ての世界を支配するという野望を抱く彼は、自分と同じ悪の心を持つライダーを部下に、また正義のライダーを洗脳して戦力を集めた。

かつての仲間と戦う事ができない正義のライダーには、過去のない新たなライダーが必要だったのだ。
彼らの期待通り、龍騎は見事シャドームーンを倒し、パラレルミラーワールドの救世主となった。

「救世主ねえ」

「何だテメ―その目は」

ベッドの端に腰掛け、ルイズは龍騎にじっとりとした視線を送った。
妙に鋭い目で睨み返してくる彼が、救世主と呼ばれる男だとは到底思えない。
良くて殺人鬼だ。
別の世界の話と合わせて、さてどこまでが真実か。

「まあ使い魔として役に立つなら何でもいいんだけどね。で、龍騎は強いの?」

「それは……強いは強いんだが……」
512ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:34:06 ID:ALAWk6K1
言いかけて、ドラグレッダーは目を逸らした。
薬草や鉱石集めは最初から期待していないし、今のところ視覚が共有になる気配はない。
ならば残る一点、主人を守るための戦闘能力に望みをかけたいところだが、ドラグレッダーは何故か言葉を濁す。

(……今さら考えても仕方ないか。もう召喚して、契約したんだし)

とにかく、使い魔を得られたことは大きな前進だ。
もちろん、踏み出した先に落とし穴が無いとも限らない。
しかし、ゼロだ無能だと呼ばれて鬱々していた頃よりも、ずっと心が晴れやかだった。
新しい何かが始まる。
そんな気がした。

………気がしたが。

「ぐごーぐごー」

「いい加減ベッドから降りなさいよこのアホ!」

梃子でも動かなかったので、結局一緒に寝ることになった。
全く何もして来なかったのが逆に気に障った。



ルイズは夢を見ていた。
何処までも広がる草原と、遠くに臨む山以外何もない世界で、龍騎とドラグレッダーが言い争う夢だ。

「ぬがー! もー我慢できねー!」

両手を鉤爪のように広げ、龍騎は叫んだ。
いつもの事なのか、ドラグレッダーがうんざりとした溜息をつく。
513ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:35:24 ID:ALAWk6K1
「だから、何度も言ってるだろ。この世界で勝ち続ければ元の世界に帰れるって」

「勝ちまくっただろーが! 仮面ライダーズもシャドームーンもライダーズその他大勢も新しく来た電王とかキバとかディケイドも! なのに全然帰れねーぞ!?」

どうやら、自分は龍騎の記憶を見ているらしい。
いつか、使い魔と契約して両者の間に繋がりが生まれると、そういう現象が起きると本で読んだことがあった。

ということは、龍騎も自分の記憶を見ているのだろうか。
人に知られたら恥ずかしくて首を括るような記憶も。
………朝起きても、怖くて聞けない。

「だいたい、お前は自ら望んでこの世界に来たんだ。諦めろ」

「お前が脅したんだろーが! ヤクザみてーなことしやがって!」

どうやら、二人の関係も色々と複雑なようだ。
ヤクザが何かは知らないが、龍騎は無理やりパラレルミラーワールドに連れて来られたらしい。
その辺りは使い魔となり得る生物をほぼ強制的に召喚するサモン・サーヴァントと似ていて、ルイズは少し心苦しかった。

彼女は貴族であり、多少なりとも傲慢な部分はあるが、他人が嫌がることをしたら罪悪感が生まれるくらいの心は持ち合わせていた。
もっとも、龍騎は毛筋ほども気にしていなかったが。

「もういいよ。こーなったら自分で出口見つけて帰ってやる」
514ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:37:35 ID:ALAWk6K1
「もういいよ。こーなったら自分で出口見つけて帰ってやる」

そう言うと、龍騎はあちこちを掘り返し始めた。
傍目には、イモか何かを掘ってるようにしか見えない。
ドラグレッダーは二度目の溜息と共に言った。

「そんなことをしても帰れないぞ。第一出口なんてあるわけ……」

「あったー!」

「あったの!?」

龍騎の目の前には、光り輝く姿見のような物体が浮かんでいた。
これについても、ルイズは授業で習っていた。
サモン・サーヴァントの魔法により作られた、使い魔を呼び寄せるためのものだ。
それを出口とは、一体何の根拠があって……

「なんか知らねーけど、たぶんコレだ! 何か入れるし!」

……何の根拠もなかった。
それほど帰りたいということなのかも知れないが、いくらなんでも思慮に欠けているのではないか。
これから使い魔として働いてもらう以上、それでは困るのだ。
せめてオウムよりは物事を考えてもらわなければならない。
普段なら注意してやるところだが、いかんせん夢の中である。
ルイズに出来ることなど一つとしてありはしなかった。

「おっしゃーさらばパラレルミラーワールド!」

「ああっちょっと待て龍騎ー!」

迷わず飛び込んだ龍騎と、それを追うドラグレッダー。
後の展開は知っての通り。ああ顔が痛い。



「………あーアホらしい」

それが、起床したルイズの第一声だった。
穏やかな朝である。
窓からは新品の日の光が差し込み、床に降り積もっている。
それによって部屋中の陰影は濃さを増し、まるで絵画の世界のようだった。
小鳥のさえずりが、覚醒したばかりの耳に優しく響く。
515ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 20:39:20 ID:ALAWk6K1
しかし。

しかしルイズは、昨夜の夢の内容を覚えていた。
使い魔は主人の映し鏡。
風の魔法を得意とするメイジには鳥など羽がある者、水の魔法を得意とするメイジには蛙のような水棲動物と、主人のイメージを喚起させる存在が選ばれる。

じゃあ、自分に龍騎とはどういうイメージなのだ。
アホということか。
今夜はアホとアホでダブルアホか。

(私って、自分で思ってるほど優雅で美しくないのかしら)

たしかに、他の同年代の女子と比べて、体の発育がいいとは言えない。母や姉譲りの桃色の髪は自慢だが。
そして性格は―――ああ、この際だから認めよう。
正直、ヒステリックな部分がある。
だがこれは、周りにゼロと呼ばれ過ぎて、少しひねくれてしまったからだ。
元から自分に備わっていた資質ではない。断じて違う。

(でも、もしかしたらお似合いの主従なのかもね……)

ルイズは、ベッドの端でぐーすか寝息を立てる龍騎に目を向けた。
視線を床に移すと、ドラグレッダーが長い体でとぐろを巻いて眠っている。
初対面から全く友好的ではない龍騎に、まともそうに見えて実は……なドラグレッダーこそ、こんな自分には相応しいのかも知れない。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:50:56 ID:F3LzJYV0
さるさん?
517ドラゴンナイト・ゼロ携帯:2009/08/31(月) 20:53:35 ID:jUNAlnbO
すみません、さるさん受けてしまいました。
どなたか代理投下をお願いします
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:57:05 ID:hxFh60Yl
トリコ召喚を考えてみたが、ゼロ魔世界と相性が悪そうだと思った
519ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:06:15 ID:ALAWk6K1
ぱしん。
ルイズは両手で頬を叩くと、鬱々した感情を追い払った。

「こんなだからゼロ呼ばわりされるのよ。卑屈になってる場合じゃないわ」

とりあえず、使い魔を召喚し契約できたという事実だけ喜べばいい。
全ては、そこから始まるのだ。

「……まずは、呑気に寝こけてるアホどもの教育かしらね」

そう言って、ルイズはどこからともなく乗馬鞭を取りだした。



「いってーなテメ―! 人が寝てんのに鞭なんかで叩きやがって!」

「ご主人様より寝坊してる使い魔なんて初めて見たわ! 普通早起きして起こす方でしょ!」

「何で俺がそんなことしなきゃなんねーんだよ」

朝っぱらからがっぷり四つのルイズと龍騎。
ドラグレッダーはふわあと欠伸代わりの火を吹いた。
放って置けば殴り合いに発展するだろうが、仲裁に入っても無駄だろう。二人とも、根本的に子供である。
龍騎がやり過ぎれば後頭部を刺すなりして止めればいいと考えながら、ドラグレッダーは今朝になって二発目の火を吹いた。

「何でもなにも、あんたは使い魔でしょうが。主人の身の回りのことをするのは当然でしょ」

「チッ、そうだったな……本当に金くれるんだろうな?」

「働き次第ね」

龍騎はそれでも不服そうだったが、珍しく自分から引き下がった。
金の力は偉大だ。
520ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:06:54 ID:ALAWk6K1
「分かったら、さっさと仕事なさい。そこの制服と、クローゼットから下着取って……ぶっ」

指示を聞くが早いか、龍騎は迅速に椅子にかかっていた制服を引っ掴み、クローゼットから下着を一枚取り出し、ルイズに投げ渡した。
渡したというか、顔面に叩きつけた。
わざとではない。単純に粗暴なだけだ。
重力に従った制服が、ばさりと音を立ててルイズの足元に落ちる。

「………まあいいわ。じゃあ、次は私に着せなさい」

ルイズはネグリジェを脱ぎ捨て、新たな下着を身につけながら言った。
他にも何か言いたそうな顔をしていた、龍騎にとってはどうでもよかった。

「げっ、そこまでするのかよ、気色わりーな!」

「ぶち殺すわよこの野郎。普通は平民……平民?……が貴族の肌に触れる機会なんてないのよ」

「知るかんなこと。ていうか着替えくらい自分でやれ」

「給料アップ」

「少々お待ち下さいお嬢様」

金の力は本当に偉大である。
打って変わって従順になった龍騎の手により、ルイズは昨日と同じ制服姿となった。
その足元では、龍騎が女王に使える騎士のように片膝を突き頭を垂れている。
プライドの欠片もないとはこの事を言うのだなあと、ドラグレッダーは今更ながらに思った。

「さ、行くわよ。これから食堂に向かうから、道程くらいは覚えておきなさい」

ルイズの声は、若干弾んでいた。
金の話をチラつかせれば、捻くれ者の龍騎を簡単に操縦できる。
純粋な忠誠心が欠片もないのは複雑だが、使い魔らしく振舞ってくれるのはありがたい。
しかし、龍騎とドラグレッダーを伴って部屋の扉を出ると、ルイズの機嫌は一瞬で悪くなった。

天敵が現れたのだ。
521ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:07:36 ID:ALAWk6K1
「あら、おはようルイズ」

燃えるように赤い長髪。
いかにも健康そうな小麦色の肌。
ルイズよりもすらりとした長身。
ルイズよりも年上のような、大人びた雰囲気。
ルイズよりも豊満な、ブラウスの中に収まり切らない胸。
ルイズよりも………

(クソぁ!)

ルイズはぎりりと奥歯を噛み締めた。額に青筋が浮いているかもしれない。
彼女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ヴァリエール家とも浅からぬ因縁がある、隣国ゲルマニアからの留学生である。
ルイズの心境を知ってか知らずか、キュルケは涼しげな顔で龍騎とドラグレッダーに目を向けた。

「あなた達がルイズの使い魔? すごいじゃない、竜に…………えっと、あなたは?」

「あん? 俺は龍騎だよ、仮面ライダーの。じろじろ見んなコラ」

龍騎が赤く裂けた目でキュルケを睨みつける。
普通の男なら、キュルケに見詰められたら頬を染めるなりするものだが、彼は数少ない例外のようだ。
少なくとも巨乳派ではないらしい。

「………よく分からないけど、一度の『サモンサーヴァント』で二体も使い魔を召喚するなんて、もうゼロのルイズって呼べないかしら?」

「馬鹿にしてるの?」

「どうかしら」

キュルケは、突いても突き返してくるということがない。
自分一人がガキのようにみっともなく喚いているかのようで、そこがまたルイズには気が喰わなかった。

「でも、私の使い魔もなかなかよ。おいでフレイム」

キュルケの呼び声に応じ、彼女の部屋の中から巨大なトカゲが姿を現した。
全長は、尻尾も入れればキュルケよりも大きいだろう。赤い体からは、夏の大気のような熱気が振り撒かれている。
主に火山などに生息する、サラマンダーという種族だ。
522ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:09:31 ID:ALAWk6K1
「うおーあったけぇ! こいつがいればコタツいらねえな!」

「ふふ、ありがとう。コタツってなに?」

龍騎ははしゃぎながらサラマンダーに手を当てた。ころころと態度を変えるのは、まるで子供のようだった。
思えば、龍騎の声音は男性というには高い気がする。
適当に「少年」というカテゴリーに当て嵌めていたが、実際は何歳なのだろうか。
しかし、ルイズとしては龍騎の年齢よりも、キュルケの前で虚勢を張る方がずっと重要だった。

「ふ、ふん。それならこっちの勝ちね。ドラグレッダーは羽はあるし! 強そうだし!」

「私のフレイムも、見てよこの尻尾。ここまで鮮やかで大きな炎の尻尾は火竜山脈のサラマンダーしかあり得ないわ。好事家に見せたら値段なんてつけられないわよ」

「マジで!?」

おおと叫んだ龍騎の目が、一瞬にして欲望の色に染まった。
フレイムへの評価が、便利な暖房器具から一獲千金の宝に変わったのである。
それを見て、やばい、とルイズは思った。
龍騎なら、このサラマンダーを攫って何処ぞへ売り飛ばすくらいはしかねない。
キュルケは嫌いだが、フレイムとやらに罪はないのだ。

「キュルケ……こいつの前でそういう話はしない方がいいわよ」

「何で?」

予防線を張られ、龍騎がチッと舌打ちをする。
やはり売るつもりだったようだ。恐ろしい。

「そっちの竜も、あたしの方が相性良さそうだけどね」

キュルケに顔を寄せられ、ドラグレッダーは照れるように長い首を引いた。
こちらはしっかりと男のようだ。去勢も考えておくべきか。

「ふん、微熱が二つ名のあんたに使いこなせるかしら?」

「少なくとも、男の子はイチコロよ? きっとこの竜もね」
523ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:10:20 ID:ALAWk6K1
口元に艶やかな笑みを寄せながら、キュルケは胸を張った。
ルイズも胸を張り返した。
龍騎の脳裏に、スイカと小皿の対比が過る。
ルイズは目尻に浮かんできた滴を拭うと、それでも負けじとキュルケを睨みつけた。
なんか哀れだなあと、龍騎は漠然と思った。

「ふふっ、じゃあお先に失礼」

このやりとりに飽きたか、キュルケは優雅に赤い髪を掻き上げ、くるりと踵を返した。
去ってゆく彼女の後を、フレイムが長い尾をくねらせて追う。
一人と一匹の背中を見送りながら、ルイズはぷるぷると肩を震わせていた。

「あああああああの女ー!!」

「あっはっはっは、見事に完敗だったな」

「お黙り!」

瞳に赫怒の炎を灯し、ルイズは乗馬鞭を打ち振るった。
だが、寝込みを襲われなければその程度の攻撃を喰らう龍騎ではない。
ひょい、ひょいと容易くかわし、ルイズを翻弄する。

「叩きたいならドラグレッダーにしろよ。ほれ」

「こらワシを盾にするな! 痛っ! お前も本当に叩くな! 痛い!」

「………少しすっとしたわ」

ルイズは乗馬鞭を懐にしまうと、改めて食堂に向かった。
彼女の怒りを一身に受け、蚯蚓腫れだらけになったドラグレッダーだったが、普段龍騎から受けている仕打ちに比べればまだマシだった。
黙々と足を振り動かすルイズの隣に、龍騎が並ぶ。

「そういえば、さっきキュルケってのが言ってたゼロのルイズのゼロって何だ?」

「……あんたは知らなくていいのよ」

「あ、そうか。その薄いむ……」

爆音は、廊下の向こうまで響いた。
524ドラゴンナイト・ゼロ-02:2009/08/31(月) 21:11:06 ID:ALAWk6K1
以上、投下終了です。
次回はギーシュとの決闘までいけたらいいな
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:15:43 ID:F3LzJYV0
GJ。
ダブルアホとドラグレッダーの扱いに吹いたww
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:36:23 ID:GjuCz/a2
ユーゼスのひとまだー?
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:49:30 ID:loSz9x7z
俺もそろそろラスボスさんと双剣さんと聖樹さんとウボァーさんが恋しい

そして発想の逆転で別のゴッツオ一族召喚とか・・・
1.精神崩壊したハザルを召喚、養う羽目になり介護する
  全てを失った男に許された最期の救いであった・・・(完)

2.ヴァイクラン撃墜直後に召喚されたエイス
  帰還する術も無く、作戦行動の継続不能
  契約するだろうか?

シヴァーとかは敗北した以上、自分の非も認めて使い魔受け入れたりするのかもしんないが
ユーゼスほどキャラも立ってないんだよなぁ、むしろ二番煎じになりそうで・・・
ジュデッカ=ゴッツオだったらラオデキヤ以外は状況の待遇次第で受け入れるかもしんないが
基本的にバルマー以外見下してるからなぁ
新のジュデッカ=ゴッツオのほうがマシかもしれん
生身で戦って万一にもギーシュにフルボッコされたりしたら即効で現実逃避してしまうようなメンタルの脆さがネックだが
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:52:45 ID:c+UAPH1Y
日替わり使い魔のレックスが年上で勝気な子に弱いのは親父の血か
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:53:38 ID:A+4PsKmz
>>527
ティベっぽくなったフーケさんがどうなるか楽しみ
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:54:55 ID:x1xtR9rC
虚無のパズルとゼロの騎士団の続きを心待ちにしております
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:55:22 ID:tuCvAoUL
龍騎の人乙です
キュルケの「コタツってなに?」に思わず吹いてしまったw
あとドラグレッダー盾にすんな そしてそれでスッキリすんなww
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:11:44 ID:szdp7Luh
ラスボスさんは今頃、スパロボ学園でもやってんじゃないのかなぁ。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:15:59 ID:44w9h3gb
>>494 あのエルフは日本に来てカレー食ってたよなw
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:28:25 ID:9O48qGSe
フロウゥエンおじいちゃんに逢いたい…
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:28:54 ID:jSP642Ug
>533
あのエルフを償還した場合、高確率で「メイジは脱がーーす!」となるのではないかと。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:31:48 ID:yhmfN8fL
ビダーシャルがセルシアポジションになったら笑えるw
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:41:48 ID:44w9h3gb
ビダーシャルがタバサの屋敷のトイレで
「やわらか巻紙(トイレットペーパー)…我々の文化にこのようなものはない。こんな高級なものではなく別の物を使えばいいではないか。草とか海綿とか…眼鏡とか」

と、言うのかw
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:42:43 ID:dXL2+3l6
>>528
いや、日替わりさんとこのリュカは奥さんフローラだからね!?
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:44:17 ID:M2ARK6Ir
竜騎の人乙だ。
だけど使い魔召喚はほぼ強制ではないんだぜ?
そしてダブルアホはワロタw
次回もこのノリで頼むわ。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:46:17 ID:c+UAPH1Y
>>538
いや言い方が悪かった。
初恋がそうなのは親父の血かと言いたかった。
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:51:37 ID:CFJ4DGa+
>>535
「ゼロを狩るモノたち」で実際になっていたな。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:51:53 ID:KKSNibGs
>>540
ゲームをやる限りだと、ビアンカが初恋の相手だという描写はないぞ。
主人公の記憶にある、数少ない同年代の女性の知り合いというだけの話だ。
PS2版で、アルカパでヘンリーと話をしても、それっぽい会話はないしな。


ぶっちゃけたことを言えば、ビアンカとの思い出はレヌール城の一件だけだし、主人公と恋に落ちる必然性は限りなく薄い。
フローラとのイベントのほうが、お見合い結婚ということで、まだ納得できるぐらいだ。
幼馴染という言葉に踊らされているだけでしょ。
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 22:54:40 ID:jNjRtXaa
ディケイド倒されてる・・・?
一体どこの龍騎なんだろう
バックボーンが気になったぜ
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:03:53 ID:n6KXnUR8
>>542
なにをそんなに必死になっているんだい?
もう少し肩の力を抜いてリラックスしたまえ。ここは紳士の社交場だよ


ただし変態のな
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:04:01 ID:CjpYm38t
駈斗戦士 仮面ライダーズっていう食玩と、それを元にしたSD仮面ライダー漫画
龍騎系以外の契約モンスターはゴウラムやゼクター等のそれっぽいものか
モデルになった生物+マシンをモチーフにしたモンスター
いわゆる鎧モノで、聖闘士星矢のように契約モンスターを分解・装着しないで戦うギャグマンガ
本編で登場するのはカブトまでだから、ディケイド倒したってのはオリ設定
ちなみに今ならニコニコで全話見れるはず
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:09:28 ID:dXL2+3l6
>>544
変態という名の紳士か……ますこうは偉大だな。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:15:05 ID:KKSNibGs
>>544
単純に、独り歩きしつつある設定が気になっただけだよ。
SFCのころから、ファンの間では定番だった妄想を、
あえてPS2の時に逆輸入しなかったんだから、製作者的には認められない設定なんでしょ?

含みを持たせて、ファンの想像に任せたいのか、
あるいは、その設定だけはあり得ないと考えているのかは分かんないけど。

とりあえず、>>540はただの妄想、それだけは確実なわけで。


まぁ、個人的にビアンカが上記の理由で厚かましくて嫌いなのは事実だが。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:21:01 ID:OVFu3XPx
まあ公式でもないことを公式のように言われるとえっ?となるよね
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:24:01 ID:44w9h3gb
ビアンカ派対フローラ派、きのこの山派対たけのこの里派、エルフはウンコする派対しない派の争いは決着がつかないから怖い
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:25:59 ID:A+4PsKmz
>>549
最近はルドマン派もいるからな・・・
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:27:25 ID:n6KXnUR8
エボラなる女性も新たに出てきたしな
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:28:16 ID:lS+NLrtD
>>547
まぁ…そのなんだ…ゲロ吐くのはトイレにしとこうな
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:29:41 ID:CjpYm38t
リメDQ6はあんなよくわからん女出すくらいならベラ辺りと結婚したかったし
ザイルとか微妙すぎるポジションのキャラよりヘンリー仲間にしたかった
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:30:25 ID:RKHvuMqI
東方乙です〜
うーむ、やられる霊夢が想像出来ない;
満身創痍の時も、頭にバッテン付けてる位だしw

大福頬張る幽々子様に一寸萌えた//
555日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/08/31(月) 23:34:00 ID:yhmfN8fL
なんか妙な方向で言い合いが発生してるみたいなので、うちのリュカについて少し補足しときます。

読者の人には知っての通り、あの作品の中ではリュカはフローラルートですので、
別に年上好きとか幼馴染好きとかの特別な嗜好はありません。
また、幼少時にビアンカに惹かれていたかどうかは、作中で明言するつもりはありませんので、
その辺は皆さんのご想像にお任せします。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:38:09 ID:KKSNibGs
>>555
俺のせいで変な気を遣わせてしまってすみません。

まぁ、明言しないのが一番だというのは賛同します。
真実はやぶの中ですし、そのあたりをわざわざ掘り返しそうなキャラはギーシュですが、
さすものギーシュも、一回り以上年上の人とそういう話をするような中にはならないでしょうし、
既婚者に聞くべき話題でもないですからねぇ。
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:40:03 ID:44w9h3gb
そんなことよりうちのエルフがトイレから出てこなくてさ〜
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:51:36 ID:h23YI2Rz
ナニしてんだろうね
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 23:59:04 ID:44w9h3gb
本当にナニしてるんだろうな。
トールキンのときから謎が多いし。

サム「このレンバスってのはどうやって作るんですか?」
エルフ「ないしょ」
フロド「このミルボールは効きますね。何が入ってるんですか」
エルフ「ひみつ」

お、いつの間にか夜食のレンバスができたみたいだからそれじゃあな
560虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:12:06 ID:n2zQJX+e
雛形を整えるだけなのは良い。
予約が無いのでしたら、00:15位から投下したいのですがよろしいでしょうか?
561虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:16:50 ID:n2zQJX+e
「杖を失ってまだ抵抗するか、予備の杖でも手に取るか?」

 場所はニューカッスル城の城壁内にある礼拝堂。
 その中に四つの影、その内二つが激しい魔法の打ち合いをしていた。
 それは長くは続かず、傷一つ無く笑みを作り浮かべるワルドと、全身に浅い傷を作り膝を着くタバサであった。

 お互い放った魔法の風がぶつかりあい出来上がったカマイタチで、いくつも皮膚を切り裂かれて血を滲ませていた。
 それを見据えるワルドはタバサの将来を感じさせる才覚に、多少なりとも驚いていた。
 それと同時に遺憾の意、己の道を塞ぐ邪魔者である事に残念な思いを抱いた。
 邪魔をするなら排除せねばならん、そう思い睨むような視線をタバサへと向ける。



「それとも、その腰の玩具で立ち向かうか?」

 ワルドが言うとおり、タバサにはこの手しか残っていない。
 杖は弾き飛ばされ、魔法は使えない。
 いや、既に魔法の力量の差が顕になっている以上、魔法で対抗するのは自殺行為に等しい。
 今のタバサには剣の一撃に掛けるしか勝つ手段は残されていない。

「………」

 深く、ゆっくりと深呼吸。
 落ち着かせて、右手に剣の柄を握る。

「……良かろう、お遊びに付き合ってやろう」

 子爵は落胆したようにため息を吐き、一言。
 立ち上がりながら鞘を固定するために巻きつけていたベルトを、弾いて外す。
 自重に引かれ、落下する鞘を利用して剣を抜き取る。
 カチン、と軽い金属音が鳴り鞘が転がった。

「……始める前に一つだけ聞かせてもらおう、何故そこまでする? 逃げるなら見逃してやっても良いというのに」
「……頼まれた、だからここに居る」
「それだけか? それだけの為に一つしかない命を無駄に散らすのか?」
「………」

 もう話すことは無いと、タバサは黙りこくる。
 応えないタバサを見て、ワルドは愚かなと呟いた。



 戦いはすでに始まっている、子爵は魔法を使う気が無いのかただレイピアを構えるだけ。
 お遊びに付き合う、剣のみでの戦いをやると言うことか。
 ……ならば付き合ってもらう、この剣で、教わった戦い方で子爵を倒す。
 身を低く、素早く、一撃で、斬る。
 大の男に対して長期戦は不利になる一方、故に、短期決戦。

 そう決めてタバサが動いた。
 流れる水でありながら、空を切る風。
 ワルドの守りが一番薄い箇所、そこに狙いを付けかく乱。

「ぬっ」

 キンッと金属音、膝を着いた時に握っておいた小石を、ワルドの顔に向け放った。
 ワルドはそれをレイピアで弾く、そして生まれる隙。
 持てる最速で駆け、斜め下からの右腕を狙い切り込んだ。
 その速度、ワルドは自身を上回る速さに驚きながらも、辛うじて攻撃を防ぐ。
562虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:17:33 ID:n2zQJX+e
「チッ!」

 防いだ時には高速の斬り返し、刃が翻ってワルドの右脇腹に向かっていく。

「このッ!」

 それも辛うじて防ぐ、ほんのコンマ数秒遅れていたならば脇腹を切り裂かれていた。
 圧倒的なスピードと手数、ワルドは一瞬で守勢へと回された。
 攻撃を繰り出す暇がない、刃を防ぎ、押し崩そうとすればすでに別の箇所へと攻撃を繰り出される。
 ここでワルドは後悔する、茶番に付き合うべきではなかったと。

 二合の打ち合い、それだけでタバサは自身の近接格闘能力を上回っていると判断した。
 単純に速い、一極特化型のタイプであるが故に追随を許さない。
 追いつけないワルドはただ守りに入るしかなく、攻撃に転じれば一撃で命を持って行かれかねない。
 だからワルドは守りのみに集中する、この速度で長時間の攻撃は無理だとタバサを見て判断した。

 逆にタバサは攻め倦む、どの攻撃も辛うじて防がれ、ワルドの身に入ることはない。
 これが最速、これ以上は無い。
 今だ数合しか打ち合っていない攻防だが、決着は付いたと言えた。
 全力を持って攻撃を加えるタバサ、それを辛うじて防ぎ続けるワルド。
 そうして動かなかった推移は徐々に傾き始める、タバサの体力消耗によって。

「ッ」

 ゆっくりと速度が鈍り始める、万全の状態ならまだ持っていたはずだった。
 今のタバサの身は怪我が多い、切り傷擦り傷で血が滲み流れ出る。
 痛みもあるし、打ち身だってある。
 気にするほどでもない小さな傷であったが、確実にタバサを死へと追いやる物であった。

 だからこそ、タバサは賭けた。
 こちらが攻撃を緩めれば、確実に向こうは攻勢に出る。
 狙いはそれを用いたカウンター。
 いわゆる『肉を切らせて骨を絶つ』、捨て身に近い攻撃であった。

 タバサの狙い通り、攻撃速度、手数が減っていけばワルドは攻勢に出始める。
 攻撃一辺倒から回避を取り入れ、ワルドの攻撃を避ける。
 余裕が出来たのか、ワルドは笑みを浮かべ始めていた。
 一瞬の緩み、攻勢に移れると判断したときに生まれた隙。
 まさに目論み通り、最後の力、搾り出した最速の一撃をワルドの身に打ち込んだ。
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 00:18:45 ID:WXN5+Yec
支援
564虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:19:38 ID:n2zQJX+e
「やはり、か」

 捨て身の突きは確かにワルドへと届いた、だが狙っていた場所には届いていない。
 痛みにお互い顔を歪め、タバサは狙いが外れたことを悔やむ。
 ワルドのレイピアはタバサの肩を貫き、タバサの剣は胸への攻撃を防いだ腕に突き刺さっている。

「その身で見事」

 跳ね上がったワルドの足、つま先がタバサの腹に突き刺さり、大きく身を圧し曲げる。

「だが未熟」

 衝撃でレイピアが抜け、一歩下がったタバサに再度突き出された。
 腹部の鈍痛に苦しみながらもその身をそらし、倒れながらも飛び退き回避した。
 しかし鈍った体では避けきれず、左鎖骨を抉る一撃となった。

「ッァ」

 派手に飛び仰向けに倒れ、苦悶を漏らす。
 それを見下ろすのはワルド。

「驚くべき、と言った所か。 ままごとかと思えば並みの者を切り伏せる速さ、見かけに騙されたか」

 立ち上がろうとして左腕に力が入らない。
 視線を自分の胸に落とす、そこには肉とそれを赤く彩る血で濡れていた。

「その武器格闘術、高い水準と言わざるを得ない」

 そう言って左腕に刺さっている剣を抜き捨てる。
 剣が落ちて甲高い音、そしてワルドがレイピアを構える。

「魔法の才もかなりのものか、何れは優れたメイジとなるかもしれんが……」

 杖先、レイピアの切っ先に光が灯る。
 魔法行使の予兆、狙いは勿論タバサ。

「未来は無い」

 振り下ろされる一瞬の間に悔やんだ。
 結局は何も出来ない、こんな所で屍を晒す。
 お父様の復讐や、お母様を治してあげることも出来ない。
 彼に教えてもらった事が、ただ一度実践で使ったっきり。
 それもただ敵の腕を貫いただけ、それは上手く扱えていない証拠。
 私は弱く、そして弱いまま生を終える。

「っ!」

 悔しい、溢れ出た涙が頬を伝う。
 悔しい、肩の怪我と腹部の痛みがそれを助長する。
 悔しい、私は、何も出来なかった。
565虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:20:39 ID:n2zQJX+e
 タバサ、ルイズ、ウェールズの命はここで終わる。
 ワルドがその身と魔法を使い、引き裂くだろう。
 そしてそれは一分も掛からず終わる、そうなるはずであった。

「ッ、何だ!?」

 ワルドが杖を振り下ろす直前、礼拝堂の天井が吹き飛び、大量の埃を舞い上げながら何かが落ちてきた。
 飛び退き、崩れた天井の瓦礫を見る。
 ここでワルドは人生で最も致命的なミスを犯した。
 障害物に隠れるなり、ウェールズやルイズを人質にでもするべきであった。
 『自分は強い』と言う過信、何が来ても正面から打ち据える事が出来ると言う思い込み。

「ナ」

 その代償、耳を塞ぎたくなるような激しい炸裂音。
 衝撃がワルドの右手を揺らし、一歩後退させた。

「グッ、アァ……!!」

 右手の甲を抉り沿い抜けた何か、余りの衝撃でレイピアを取り落とす。
 超高速、風を持ってしても認識出来ない何か。
 皮膚が抉れ、肉が抉れ、骨が見える。

「なに゛」

 焼けるような痛み、まるで炎に炙られるかのような初めて感じる痛み。
 それは攻撃、天井を突き破って落ちてきた何者かが放った攻撃。
 どのような攻撃か、瞬時に恐れを抱いた。

「ガッ!?」

 さらに土埃の向こう側から炸裂音。
 左太腿に衝撃、激しい痛みと共に蹴られた様に左足が下がった。
566虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:21:42 ID:n2zQJX+e
「グゥウオォ……」

 辛うじて倒れるのを押さえ、右足だけで立つ。
 見れば左足の太腿、ズボンに穴が空きその下から多量の血が流れ出ている。
 その傷を見てまさかと、しかしありえないとも思う。
 こんな威力のある銃など……。
 そんな疑問を吹き飛ばす、この攻撃を放った存在が土埃の向こう側から飛び出してきた。

「チーフ!」

 皇太子の傍に居るルイズが叫ぶ、邪魔をするのは使い魔か!
 魔法は使えぬ、右手は痺れ、左足は傷を負う。
 まともに戦えぬ中、相手をしなければならないのは全身をくまなく包むおかしな鎧を着た大男。

「クゥオオオォォォ!!」

 力を込める、無様な姿勢の威力の無い拳。
 成し遂げなければならない願い、邪魔はさせぬと全力を込める。

「──ッガ!」

 だがその思いは、ガンダールヴとの接触によって儚くも終わる。
 突き出した左拳を絡め取られ、床に叩き付けられるようにうつ伏せに倒された。
 立ち上がろうとすれば、左腕を背中に回され締め上げられる。
 そうして腰に掛かる凄まじい重み。

「グオッ! こ、このようなことがぁぁ!!」

 骨が軋むような、強烈な締め上げ。
 負けぬと言う思いとは裏腹に、現実には体を押さえつけられてこれ以上の抵抗は出来ない。
 私の願いは終わったのだと、それを悟れば全身から力が抜けた。
567虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:22:45 ID:n2zQJX+e
 その出来事を半場呆然に見つめていたウェールズ。

 タバサ嬢が子爵と猛攻を繰り広げ、惜しくも打ち負けた。
 いよいよ持って、このような終わりを迎えるのかと悲観したところに。
 天井を突き破ってきた竜とその背に乗る子爵を倒した者、緑を基調とした2メイルを超える……恐らくゴーレムが落ちてきた。

 視線をやれば膝で踏みつけられ倒れ伏し、少しも動かない子爵。
 右手と左足から血が流れ出ていた。
 何がどうなった、天井を突き破って落ちてきた全身緑と黒の鎧を着た存在が、子爵をいとも簡単に打ち伏せた。
 落ちてきたもう一方の竜はタバサ嬢に擦り寄っている、恐らくは使い魔だろう。

「……ルイズ、怪我は」
「無い、無いわ。 どこも、怪我してないわ」

 そんな考えを他所に、緑色のゴーレムが話しかけてきた。
 ヴァリエール嬢は平然と、声からして男の問いに答える。
 ヴァリエール嬢が擁する兵士か何かか、しかしながら助かった。
 あと少し遅れていたら、僕とタバサ嬢は子爵に殺され、ヴァリエール嬢は連れ去られていたかもしれない。

「チーフ、……死んで無いわよね?」
「生きている」

 ヴァリエール嬢がチーフと呼ばれた全身鎧の男の足元を見る。
 ぐったりと、力の抜けたような子爵が居る。

「チーフ、と言ったね。 助かった、感謝する」
「いえ」

 膝で子爵を押さえ込んだまま、変わらずの姿勢で応える。
 ヴァリエール嬢を伴い立ち上がり、杖を取り出してタバサ嬢の元へと歩む。
 ゆっくりと起き上がっていたタバサ嬢に向け杖を振り、治癒魔法を掛ける。

「感謝」
「こうできるのも彼のお陰だ、謝意は彼に述べると良い」

 それを聞いて頷き、チーフ殿の下へ歩むタバサ嬢。
 それに続き、同じくチーフ殿の下へ歩む。

「………」

 一通りの会話、タバサ嬢が謝意を述べ、それを聞いて頷くチーフ殿。
 ヴァリエール嬢がどうやってここまできたのかと問えば、歩いてきた、最後は飛んできたと応えるチーフ殿。
 そういった問答が終わり、四人がチーフ殿に押さえつけられる子爵を見る。

「子爵、一つ聞きたい」

 襲撃が失敗した今、子爵に反撃の余地など残っては居まい。

「……何でしょうか」
「何故裏切った」

 その問いに、子爵は一間以上の間隔を空け、ゆっくりと喋りだした。

「力を、手に入れたかったのです」

 そう語りだした子爵の声は、なんとも悲観が篭った声だった。
568虚無と最後の希望:2009/09/01(火) 00:23:36 ID:n2zQJX+e
以上で投下終了です。
おさるさん怖い。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 00:26:44 ID:vJOuDruh
>531
まあ、サバイブしたらガードベントで盾になってくれるんだがな。
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 00:31:07 ID:vJOuDruh
うっかり支援とか入れ忘れてた、乙。

チーフには乙と言われるほどでも無かったようなので、タバサに乙。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 01:18:12 ID:yILLneGE
連日投下だと・・・なんという乙!
ワルドお前は悪くない、相手が悪すぎたんだ
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 04:57:31 ID:bOZ2DH25
良く分からんが相手とともに遭遇した状況も悪かった
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 08:26:25 ID:3eY1vNCA
全米No1かもしれないヒーローだし。仕方ない。
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 11:02:00 ID:SP42QkOI
個人的にウルトラの人が一二話星人召喚してくれるのではないかとワクワク&ハラハラ勝手にしている
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 11:46:34 ID:E01/QEE3
>>574
ああ、あのいらんことしでかした人によって永久封印されてしまった星人か
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 12:38:43 ID:rAE/ZdiO
乙です。
ワルドを制圧するやり方が軍人らしくてカッコヨス。
FEAR買ったけど先にもう一周HALO3してくるわ。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 12:46:14 ID:slSt+Kwy
映画版の公開はまだか?
今年のはずだろ?
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 12:54:14 ID:kf1fYZ5i
>>574
ハルケギニアの子供達から血液の中の白血球を奪うんですね、わかります
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 15:03:17 ID:SP42QkOI
ちょいと思いついたので短編一本投下。
何が呼ばれるかは、読んでからのお楽しみ(というほど大したモンじゃないけど)

15:05より行くです
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 15:05:22 ID:SP42QkOI
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」


・・・・・・・進級試験をかねた、春の使い魔召喚。
長いくせっ毛をたなびかせ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは
召喚の呪文を唱えた。
これで幾度目になるのだろう。
いつもどおり爆音、爆風、そしていつも、何も起こらない。
しかし今回は違っていた。
巨大な煙の中に、『何か』がいる。いや、『ある』のか?
やがてゆっくりと煙が晴れていくと『それ』は姿を周囲の学生たちにあらわした。
「こ!これは!」教師のコルベールが驚愕&驚喜する。
「まさか、ゼロのルイズが・・・・・成功した?」ギーシュ・ド・グラモンが恐れおののく。

それは20メイルほどの巨大なゴーレム(らしきもの)
赤いボディに白い頭と足。青い腕。
何故か、それからは「父親の愛」を感じる。
これを渡した時の愛する息子の笑顔を思い浮かべる、そんな愛を。
「・・・・・・・興味深い」とタバサ。
「やるじゃない。もう今日からはゼロなんて呼べないわね」とキュルケ。

戸惑いと、畏怖。
あれほどまでに欲したモノを向けられながら、ルイズはそれを素直に受け取る事が出来なかった。
父親の愛とともに、手渡された子供らの想いもまた強く、深く感じてしまったから。

「こ・・・・・・これは・・・・・・・・欲しかったのはコレジャナーイ!」

コレジャナイロボ召喚
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 15:34:42 ID:4z6UTT3Y
クスっとしたw
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 15:35:57 ID:BM0WaxuT
これ20メイルもあるのか……
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 15:57:32 ID:SP42QkOI
イヤ、サイズは分からんのですがガンダムのパチモンってことで
まあ20メイル前後くらいだろう、と
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 17:05:34 ID:tmFYgqc9
いや、ニセモノでも手に入れれば子供はなんとかして遊ぶものだぞ。
俺もプレゼントでもらった遊戯王のカードが、絵がちょっと違うパチモノだったが、デッキに入れて使ってたら愛着がわいてきた。
ちなみに公認大会では店員がいい人で、特例で使わせてもらえた。今はくれた人にも感謝している。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 18:45:44 ID:fNRUgKO0
昔おばあちゃんにクリスマスプレゼントに
「くまのプーさんの絵本」を希望したら
「くまのプー太郎」を貰ったのを思い出したぜ…
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 18:53:37 ID:4z6UTT3Y
逆ならまだ良かったのにw
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 19:14:08 ID:zrR56IDs
この流れで思いついた! サンタクロース(ビリー・ボブ・ソーントン)を召喚。
宝物庫を破ろうと企んでたらマリコルヌに懐かれた使い魔と、何故か野球を始めたルイズ。

資金をギャンブルで全額すった後はお泊まり強盗をやり、
合間にチョコレートを食ったり、髪を切ったりもして、
最終的にはハルケギニアを救う為に隕石を爆破して全米を泣かせるハートフル・ブラック・コメディー。
面白黒人はギーシュ(クリスロック)
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 19:25:44 ID:4z6UTT3Y
全米はすぐ震撼するからなぁ
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 19:52:50 ID:zrR56IDs
その方が楽しいからな!
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 20:04:37 ID:dIQb43tn
浦安のサンタならサンタ拳つかえるからアクションもいけるな
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 20:33:06 ID:wDfZr19V
今夏なのにおまいら気分早いなwwwww
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 20:39:37 ID:lbHlkkTM
サンタクロース男を召喚。
きっとハルケギニアの正義と平和のために戦ってくれるに違いない。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 20:39:46 ID:fp71BPh4
イタリアンスパイダーマン召喚とかやれんもんだろうか
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:04:49 ID:9pCTtgXQ
>>591
夏はもう終わったんだ……終わったんだよ……。
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:05:26 ID:6M9V853J
Prototypeのアレックスはどうだろう
性格からして召喚直後に広場の生徒全員吸収されそうだが
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:19:57 ID:0bjmPFkS
キュマイラ/エグザイルっぽい人ですか
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:22:40 ID:NzBDXST/
マスターチーフとタバサ乙。
やっぱりチーフは最強にカッコイイぜ!
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:32:10 ID:jlA5rRFG
>>592
嫉妬戦隊サンタマンとゾンビサンタがアップを始めました
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:44:06 ID:II4prsxJ
コレジャナイロボw
実際のところ、こいつって戦闘力とかどんなもんなんだろなあ?
ただの張りぼてだったら笑う

>>592
サムソンティーチャーの寄生虫が何だって?
600ベルセルク・ゼロ:2009/09/01(火) 21:46:40 ID:qy6Dr03v
おひさしぶりーふ。
予約なければ投下してもよろしいか?
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:48:39 ID:Ayzmm/6/
どうぞどうぞ
長い間待ってました
602ベルセルク・ゼロ:2009/09/01(火) 21:51:04 ID:qy6Dr03v
ぎゃーす。久しぶりすぎてsage忘れてた。まじめんご。
そんじゃ、はじめまうす。
603ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 21:52:54 ID:qy6Dr03v
 きっともう大分忘れられてると思うのであらすじ!

 ちょこちょことオリジナル展開を挟みながらも結局原作の流れに乗っ取り空賊にとっつかまったルイズ、ワルド、ガッツ!!(+パック)
 ガッツは見張りの兵を打ち倒し、空賊のリーダーを人質にとることを提案!
 だが、空賊のリーダーの正体は実はアルビオンの王子ウェールズだった!!
 と、原作既読者なら誰もが知ってることをさも重大な事実のように明かして今回!
 九ヶ月の時を超え、ようやくガッツ達はウェールズの元へ動き出す!!

 果たしてルイズ達はどうなってしまうのか!!

 九ヶ月の間にどっちの原作もとんでもないことになってしまってあわわな状態のこの物語の運命は!!
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:54:18 ID:DbEBpegp
ベルセルクはシールケがレイプされたんだっけ?
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 21:55:32 ID:oY7E8+ar
最近原作読んだので期待
606ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 21:56:04 ID:qy6Dr03v
「リーダーの部屋は甲板にあるよ!」
 パックの先導の下に装備を取り戻したガッツ、ワルド、そしてルイズはウェールズのいる船長室を目指す。
 通路の向こうから5人もの空賊が迫ってきた。
「止まれ!」
「これ以上は進ません!!」
 空賊達は剣を構え、突進してくる。ガッツが空賊たちの前に躍り出た。
「シッ!!」
 一刀の下に突出してきた2人を斬り飛ばす。
「ヒュウ! さすが相棒だぜ! よっしゃよっしゃコレよコレ!! 燃えてきたぁ!!」
 ガッツの手の中で歓喜の声を上げているのはデルフリンガーだ。
 狭い通路ではドラゴンころしをまともに振り回すことは出来ない。
 かつてのトリステイン学院での一件のように壁を破壊することを厭わなければ振れなくも無いが、何しろここは空の上。
 ガッツはこの船がどういった機構で空を浮かんでいるのかまったく分かっていない。ほいほい船体を傷つけるような迂闊な真似をする気にはならなかった。
 だが、通路が狭いことでデメリットばかりがあるわけではない。
 今回のように敵が5人で襲ってきても同時に襲いかかれるのは精々2人まで。
 ならばガッツにとって撃退することは容易い。
 もちろん、それはガッツにとってだけのことではなく―――

「がっ……!」
 ガッツが剣を振り切った隙を突いて襲い掛かってきた盗賊が崩れ落ちる。
 それだけではない。後ろにいた残りの2人も既に床に倒れ付していた。
 刺突剣(レイピア)の形状を模した魔法の杖を振り、血を払う。

 撃退が容易なのは―――この『閃光』のワルドにとっても同様のことであった。

「すごい……」
 ルイズはあっという間に空賊を撃退した2人の手際にただ感嘆の声を上げていた。
 やはりこの2人の剣の腕は今までルイズが見てきたどんな男と比べても図抜けている。
 特に、ルイズはまたもガッツに驚かされていた。
 ルイズは今までガッツが強いのはあの大剣『ドラゴンころし』を振り回せるからだと思っていた。
 あの馬鹿げた鉄塊を振り回せる常識外の膂力。それこそがガッツの強みだと。
 もちろんそれもある。だが、それ以上にガッツの強さの基礎には揺ぎ無い技術があった。
 それが、デルフリンガーを振るガッツを見て初めてわかったのだ。
「ホント、つくづく一体何者なのよあんたわ……」
 ルイズは呆れ笑いのような表情を浮かべてガッツを見る。
 ガッツの剣の技量は若くしてグリフォン隊の隊長に上り詰めたワルドと比較しても劣るものではないとルイズは感じていた。
(でも……2人の剣はとても対照的だわ)
 ガッツの剣は鋭い剣筋と強大な威力でもって鎧ごと敵を叩き割る言わば『剛』の剣。
 対するワルドは変幻自在の剣筋で相手を惑わし急所を突く『柔』の剣。
 もっとざっくり言ってしまえば直線と曲線、そんなイメージだった。
 そんな正反対の2人であるのだが、その即席のコンビネーションは実に見事なものであった。
「これなら敵のリーダーの所まで無事にたどり着きそうね!!」
 ルイズが自信満々にそう言った時。
 がちゃり、と音をたて船室のドアが開き、
「よっしゃああああ!!」
 ルイズは飛び出してきた空賊にがしっとあっさり捕まってしまった。
「…あれえ?」
607ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 21:59:26 ID:qy6Dr03v
「しまった! 待ち伏せしている敵がいたか!!」
 先を行っていたワルドとガッツは立ち止まり、ルイズのほうを振り返る。
 ルイズはその喉にナイフを突きつけられていた。
「あの馬鹿……なにぼっとしてやがったんだ……」
 「放しなさいよ!」などと喚きながら空賊の手を逃れようともがくルイズの姿に、ガッツは頭を抱えた。
「へ、へへ……」
 これで絶対的優位に立った空賊はにやりと笑ってみせる。
「この娘の命が惜しけりゃ剣を捨て…ってこらおい暴れるな!」
「うぎぐがぎぎぎ…! は、な、せぇええええええ!!」
 空賊の制止の声もお構い無しにルイズはジタバタともがき続ける。
「こ、この…! 下手に暴れると喉が切れるぞ!! 大人しくしてろ!!」
 だが断る。
 ルイズはなおもお構い無しに暴れ続けた。
 そもそもルイズがこんな形で敵にとっつかまるのは初めてではない。フーケの時に続き2回目だ。
 既にルイズにはこんな状況に多少の慣れがある。決して自慢できることではないが。
「こ、んのぉぉおおおおおお!!!!」
 ルイズの杖が光った。同時に空賊の頭上で天井が爆発する。
 爆散した破片が空賊の頭を直撃した。たまらず空賊は頭を抱え悶絶する。
 その間にルイズは空賊の腕から逃れると、
「ちょえいやぁああああ!!!!」
 空賊の股間を容赦なく蹴り上げた。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
 声にならない声を上げて空賊は昏倒する。
「いつまでも足手まといでいられるかってのよ!!」
 はあはあと息を整えながら、ルイズは胸の前で力強く魔法の杖を握ってみせた。
「凄いじゃんかルイズ!!」
「ああ、僕も驚いたよ!! 大したものだ!!」
「ふ、ふん! 私が本気を出せばこんなものなのよ!!」
 こちらに駆け寄ってきたワルドとパックに胸を張ってみせる。
 本当はナイフを錬金しようとしていたことは黙っておいた。
 ガッツはというと、折角自分が自重していたのにほいほいと船体を壊してみせたルイズをじとりと睨みつけていた。
608ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:02:43 ID:qy6Dr03v
「駄目です! 敵止まりません!! 真っ直ぐそちらに向かっています!!」
 通信筒から悲鳴のような報告が上がってくる。
「どういうことだ…連中の動き、まるでこの船の構造を把握しているようではないか!!」
「連中をこれ以上殿下の元に近づかせるな! 全戦力を持って圧殺しろ!!」
 後甲板に設けられた船長室の中で3人の男達が焦りの声を上げている。
 その男達はそれぞれがこれまでアルビオンを支えてきた重鎮であり、また同時に王国屈指のメイジでもある。
 空賊の頭領に扮したウェールズの態度は驚き慌てる3人とは対照的だった。
 通信筒に怒鳴り続ける男の肩を掴んで下がらせると、落ち着いた様子で口を開いた。
「船内に残る全兵士に通達。脱走した者達を食い止める必要は無い」
「殿下!?」
「船内では数の利を十分に生かすことができないからね」
 目を見開いた重鎮達にウェールズは微笑みかける。
「現在戦闘可能な者は直ちに甲板に集結。そこで狼藉者を迎え撃つ。時間は幾許も無い。 急げ!」
 そこまで言って通信筒から手を離すと、ウェールズはふうと息をついた。
「殿下」
「何かな?」
「恐れながら申し上げます。あまりにも危険です。殿下の目と鼻の先まで賊が近づくのを許すなど」
「しかしこれ以上最後に残ったアルビオンの勇者達の命を無駄にするわけにはいかない。私が敵にその身を晒すことで皆の命を買えるなら喜んでそうしようじゃないか」
「殿下……」
「おっと、そうだ」
 ウェールズは思い出したように再び通信筒に歩み寄る。
「操舵室、船をしばし静止させろ。甲板で祭りが始まるからな」
 重鎮達は苦笑を浮かべ、やれやれとそれぞれに頭を振ってみせた。
「どうした? 私は何か間違っているか?」
「ええ。先ほどの言葉遣い、とても王族に相応しいものではありません」
「くく、長く空賊の頭なんてやっちまったからな。たまに混ざっちまう」
「お戯れを」
 ウェールズと3人は互いににやりと笑ってみせた。
609ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:05:30 ID:qy6Dr03v
 程なくして、甲板には20人を超えるメイジたちが集結していた。
 集結したメイジはその全てが甲板に上がる階段を注視している。
「来たぞ!! あっ…!」
 階段の下を覗き込んでいた見張り役の男の額にナイフが突き立った。
 次いで聞こえてくる、階段を駆け上る足音。
 甲板にいた全員が一斉に杖を構え、魔法を放つ準備を整える。
 だが、飛び出してきた影に、その場にいた全員が虚を突かれた。
 小さな虫のようにも見えるその姿。全く想定外の乱入者。
 賊は黒尽くめの剣士と長髪のメイジ、それと桃色の髪をした少女だったはず。
 見覚えの無い妖精(ピスキー)の姿に魔法の発動が遅れた。そしてその隙をついて、
「んパックスパーク!!!!」
 小さな妖精の体が強烈な光を放つ。パックの姿を注視していた全員の目が眩んだ。
 パックの『パックスパーク』の光を合図に今度こそガッツとワルドが飛び出してくる。
「あ、相棒お願い! もう少し俺を使って!? あ、ちょ」
 デルフリンガーを鞘に戻し、ガッツはその背に負ったドラゴンころしに手をかける。
 そして―――!

 ド ゴ ン ! ! ! !

 強烈な轟音と共に、一振りで5人のメイジたちを吹き飛ばした。
610ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:08:41 ID:qy6Dr03v
「なんという……」
 船長室に備え付けられた小窓から甲板の様子を伺っていたウェールズ達は言葉を失っていた。
 あれは剣なのか? あんな馬鹿げた鉄の塊が?
 馬鹿な、あんなものを人間が振れるはずがない。ああ、つまりアレは化け物なのだ。道理で船内で進撃を止められないはずだ。
 最初の一撃で5人を死に至らしめた化け物は、既に剣を斬り返し、さらに犠牲者の数を増やしている。
 甲板に戦場を移したのは間違いだったか? 船内で十分に己の利を生かせなかったのはこちら側だけではなかったのだ。
 いや。ウェールズは思い直す。
 最初の光で目を眩ませていた者達が立ち直り始めた。彼らの魔法が発動すれば間違いなく賊を討つことが出来るだろう。
 何故ならば、今甲板に出ているアルビオンの勇者達は全員がトライアングル以上のメイジなのだから。
 だが、またもウェールズの誤算。ワルド。彼もまた、スクウェアのメイジなのだ。
 ガッツより一足遅れて甲板に躍り出たワルドは、しかしその場にいた誰よりも早く術式を完成させた。
「『エア・ハンマー』!!」
 ワルドによって生み出された風の槌がガッツの体を叩く。
 ガッツの体が吹き飛び、その場にいた20余名の頭上を飛び越え―――船長室の前に降り立った。
「しまったあ!!!!」
 甲板に集結したメイジの誰かが叫ぶ。
「殿下!! お下がりください!!」
 ドアを開け、中に飛び込んできた瞬間即死級の魔法をぶつけてやる。
 ウェールズの護衛として船長室の中に残っていた初老のメイジがドアを注視する。
 またも、愚策。全てが裏目。

 バ ガ ァ ン ! ! ! !

 鉄の塊が壁を突き破り、黒い剣士が飛び込んでくる。
「馬鹿な…」
 その姿を認めた初老のメイジは言葉を失った。

 ここの壁は、砲弾の直撃にすら耐えうる強度なんだぞ――――?

 それでも初老のメイジは即座に自分を取り戻し、杖を黒い剣士に向ける。だが、その一瞬の間が致命的だった。
 壁を突き破り猛烈な勢いで侵入してきた黒尽くめの男は、既にウェールズの身柄を拘束していた。
 ガッツは床に引き倒したウェールズの背中に圧し掛かり、その喉に投擲用のナイフを突きつけて、
「さて、取引といこうじゃねえか」
 そう言って、不敵に笑ってみせた。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:10:19 ID:DbEBpegp
・・・えん
612ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:12:15 ID:qy6Dr03v
 アルビオン本国艦隊旗艦イーグル号。
 その船長であるアルビオン王子、ウェールズ・テューダーはその身を縄で拘束され、船長室に備え付けられた豪華な椅子に座らされていた。
 その喉元には変わらずガッツのナイフが突きつけられている。
 ガッツの隣にはワルドとルイズ(甲板突撃時居残りさせられた)の姿もあった。
 豪華なディナーテーブルを挟んだ向かい側にはウェールズの護衛を務めていた初老のメイジを始め、数人の男達が集まっていた。
「…何が望みだ」
 口火を切ったのはウェールズだった。それは喉から搾り出すような声だった。
「アルビオンへ向かってもらいたい」
 答えたのはワルドだ。
「アルビオンへ? 何しに? 貴族派にでも加担しに行くのか?」
「馬鹿言わないで!」
 ルイズが憮然とした顔で声を上げた。
「誰が薄汚い反乱軍に加勢なんてするもんですか! 私達はアルビオンの正当なる政府、つまりは王室への使いなの!!」
「王室に? お前、どこからの使いなんだ?」
 ウェールズの顔が呆然としたものに変わっている。意外なウェールズの反応にルイズの方がたじたじになるほどだった。
「な、なによその反応。トリステインよ」
 今度こそ、ウェールズの目は点になった。トリステイン。愛しいアンリエッタの国。
 ということは、つまり?
「ふ、ふふふ……」
 思わず笑いがこみ上げて来た。なんということだ。では彼らは何のために死んだのだ。
 いや、これは事故。そう、これはもはや事故としか言いようがない。
「はっはっはっは!!!!」
「な、何よ! 何がおかしいのよ!!」
 突然笑い始めたウェールズにルイズは肩をいからせる。
「いや、失礼。なあ、そこの君。名は何と言う?」
「…ワルドだ」
 ワルドもまた、ルイズほどではないが困惑していた。何かこの盗賊のリーダー、先ほどまでと雰囲気が全く違う。
「先に名乗らせた無礼を許してくれ。何しろ、このナリで私の名を名乗ってもとても信用されないだろうからね。では、ワルド君、ひとつお願いがあるのだが」
「何だ?」
「私の髪の毛を取ってくれないか?」
「はあ?」
 ルイズが思い切り困惑の声を上げた。
 ワルドは何も答えず、ある種の予感を持って空賊のリーダーのぼさぼさに荒れた黒髪を引っ張った。
 するり、とあっさり黒髪のカツラが外れた。
「え!?」
 と目を丸くしているのはルイズだけで、ワルドは心中やはりかと呟いていた。
「ではその髭も?」
「うむ、そういうことだ」
 ワルドがウェールズの顔の髭を掴み引っ張るとそれも偽物だったらしく、びりびりと音を立てて剥がれた。
「はっ!? えっ!? はっ!!?」
 ルイズの困惑は止まらない。そこにいたのはもう粗野な空賊の頭領などではなく、金髪の凛々しい若者だった。
 しかも、しかもしかもルイズの記憶が正しければその顔は。
「では名乗ろうか。アルビオン皇太子、ウェールズ・テューダーだ。こんなナリでは格好がつかんがね」
 ウェールズは縄で拘束され、喉にナイフを突きつけられた自分の姿を一瞥して苦笑した。
「では用件を伺おうか、トリステインからの大使殿。その前にこの縄を解いてくれるとありがたいが」
「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??!!?!?」
 ルイズの渾身の叫びが船長室を抜け、大空へと溶け込んでいった。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:13:53 ID:kf1fYZ5i
しかし襲ってきたのは向こうとはいえかなりぶっ殺してるが大丈夫か?支援
614ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:15:51 ID:qy6Dr03v
 ルイズ達を乗せたイーグル号はウェールズの居城ニューカッスルへと向かっている。
 ルイズ達がウェールズの元を訪ねた目的、『アンリエッタの手紙』がそこにあるという話だったからだ。
 今度は倉庫などではなく、立派な客室に案内されたルイズであったが、今は甲板に出て風を感じている。
 頬を撫でていく風は心地よい感触であったが、ルイズの顔は浮かなかった。
 視線を下に落とす。
 甲板に付いた赤い染みが目に入る。
 つい先ほどまで、ここにはたくさんの死体が転がっていた。
 トリステインからの大使として来た筈の自分達が、そうとは知らなかったとはいえアルビオンの兵を何人も殺したのだ。
 その事実はルイズの心に深い影を落としていた。
 そのことについて謝ったとき、ウェールズは気にしなくていいと言ってくれた。
『君たちは精一杯自分達の任務を遂行しようとしたにすぎない。むしろ、悪いのはこちらだよ。知らぬこととはいえ、他国の大使を捕らえて監禁したんだ。これはその罰といってもいい』
 そんな風に言ってくれた。だが、ルイズの心は晴れない。
『いいかいルイズ。客観的に考えるんだ。客観的に見て、あの時相手を空賊として認識していた僕達の行動に責められる謂れはないよ』
 先ほどワルドはそう言って俯く自分を励ましてくれた。だけど、ルイズの顔は上がらない。
 理屈で考えれば確かにそうだろう。だが、そうやって心を整理できるほどルイズは大人になってはいなかった。
 ガッツは―――主人の気持ちを一番汲み取るべき立場にいるはずの使い魔は、まったく気にしちゃいない様子だった。
 アルビオンの兵を殺してしまったことについても、それでご主人様が落ち込んでしまっていることについても。
 パックはりんごに夢中でかぶりついてた。
 あ、なんか腹立ってきた。
 怒りの力でルイズは何とか顔を上げる。
 誰かの視線を感じた。
 振り返る。
 少年がいた。恐らく、ルイズとそう変わらぬ年頃の。
 亜麻色の髪をぼさぼさに伸ばした少年がこちらを睨みつけている。
「な、なによ?」
「……ふん」
 ルイズが声をかけると少年は憮然としたまま視線を逸らし、船内へと降りていった。
「……なんだってのよ」
 やはり、歓迎されているわけがない。
 それをあからさまに示した少年の態度に、ルイズは再び肩を落とすのだった。


「それにしても……」
 ルイズは少年の顔を脳裏に浮かべ、首を捻る。
「どこかで見たことあるような…?」
 しかしふわふわした記憶は形にならず、ルイズは首を傾げたままあてがわれた自分の部屋に戻っていった。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:16:02 ID:uiibC5IY
だがちょっと待って欲しい。
名乗りを上げたとはいえ、それが本当に
本人か確認できないのは何時もの事じゃないか。

支援
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:18:57 ID:wDfZr19V
船の中で殺しまくったの初めて見た 支援
617ベルセルク・ゼロ25:2009/09/01(火) 22:19:07 ID:qy6Dr03v
以上、投下終了。
しかし久しぶりに投下してみるとなんかすげー読みにくそうだなコレ。
地の文とセリフの間は一行空けた方がいいんじゃろか?
教えてくれラム先生口調のギレン先生。ワシにはもう何がなんだかさっぱりじゃよー。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:21:44 ID:+tHPzDFk
ドロピー?
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:23:35 ID:DRK4pDA6
>>616
ワンピースのサー・クロコダイルの場合ウェールズも殺しちゃってるぜ。
その直後に更新止まって残念だ。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:23:48 ID:kf1fYZ5i
投下乙です
そんなに読みにくくはないからこのままでいいんじゃないでしょうか?
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:24:32 ID:O+GKa05S
ベルセルク乙
特に読みにくいとは思わなかったからいいんじゃないかな
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:30:28 ID:wDfZr19V
GJ!そしてお帰り!
いやー、やっちまったな、誤解故の過ち。
あらすじでは原作どうりだのなんだの言ってきたが
そんな予想を裏切るのがベルゼロクオリティwww
原作のような流れを保持しつつ、斬新な展開を繰り出してwktk

そして、無念に命を散らしてしまった(ウェールズ曰く)アルビオンの勇者達にご冥福を
623616:2009/09/01(火) 22:34:47 ID:wDfZr19V
>>619
なん…だと…?
そりゃー物語も止まるわな
ノボルも妙な展開出したもんだ
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:36:46 ID:IiI8wCoe
乙です
しかし
>九ヶ月の間にどっちの原作もとんでもないことになってしまってあわわな状態のこの物語の運命は!!
ゼロ魔とベルセルク、「とんでもない」の方向性がそれぞれ違いますよねw
っていうかベルセルクの方は、話の展開としてはこの9ヶ月でもあんまり動いてないような
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 22:47:28 ID:DbEBpegp
乙セルク!
アイドルマスターにハマったりしないでね!
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 23:26:29 ID:eTxXAY8P
>>625
今はドリクラだろjk・・・・
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 23:29:15 ID:zpf8t78U
ガッツの人乙です。
お待ちしておりました。
m(__)m
まぁガッツならそうするわなw
続きを楽しみに正座待機。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 23:37:12 ID:DbEBpegp
>>626
アイマスに続いてドリクラにハマってるの?
629ジル:2009/09/02(水) 00:07:16 ID:p7mKbgKv
やれやれ、アイマスもドリクラも好きだが……
しかし私はAVRという彼女がいるのだよ。

なんて冗談を混ぜつつ、0015時に投下しようと思いますので
よ ろ し く
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 00:12:32 ID:gHIX7Xmn
おお〜、期待してます
つ応援
631ジル:2009/09/02(水) 00:13:13 ID:p7mKbgKv
カキコできなかった上に勘違いして別人への質問に反応してしまった……
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 00:13:34 ID:tCTh3tUa
おおう!俺にゼロ魔を教えてくれた作品がやっと帰ってきた!
ガッツの人、本ッ当に乙!

……しかしただでさえ少ない王党派がガッツの大暴れでがっつり減ったなw
そしてガッツとワルドのコンビネーションにどきどき。
使途にすら化け物扱いされるガッツ。そりゃ向かってこられりゃ化け物以外の何者にも見えんわ。
633ジル:2009/09/02(水) 00:15:21 ID:p7mKbgKv
 ルイズは一人、アンリエッタ親衛隊の訓練の様子を見ていた。狙撃兵は練兵場に突貫工事で造られた『しゅーてぃんぐれんじ』なる場所で遠くの鉄像を狙っていて、突撃兵は『きりんぐはうす』なる建物で銃声の他に閃光とやかましい爆音をたてる。支援兵
はところどころに掘られた穴――――塹壕で、塗料の詰まった弾で撃ち合いをしている。銃声の騒がしい場所から大分離れて、殴ったり投げたりしあっている集団がいる。体力に問題のある数人は、銃と何か色々重い物を背負って朝からずっと練兵場外周
を走らされている。
 ジルも、こんな訓練をしていたのだろうか。そんな事をルイズは思う。ジルは強い。だがその戦闘を見たのはただ一度、雑魚のギーシュとの決闘だけなのだ。フーケだったロングビルは文字通り一瞬で倒されたし、ニューカッスルでの戦いだってデルフが放置
されているときに勝手に話したのを聞いていただけ。エルザは話さない、そもそも話を聞く機会がない。
 夢の中で戦っていたジルは、コンテナの向うで戦っていた。怪物にトドメを刺すときしか、ジルをまともに見ていないのだ。
「ジル……ヴァレンタイン」
 ルイズの知らない世界から来て、ルイズの知らない事を知り、ルイズの知らない武器を操り、ルイズの知らない乗り物を駆る。
 考えれば、ルイズは自分がジルのことを何にも知らない事に気付いた。
「本当に、使い魔じゃないのね」
 ジルはアンリエッタに自分の事を『衛士(ボディーガード)』だと言った。確かにその言葉は正しい。
――――私はフーケに襲われても、戦場に行っても傷一つ負わなかった。そもそも危険な目になどほとんど遭わなかった。
 アルビオンでは真っ先に隠し部屋に閉じ込められ、いの一番にマリー・ガラント号に押し込められた。敵に背を向けないとわめくルイズを、ジルは『任務』を言い渡すことで説得した。
634ジル:2009/09/02(水) 00:17:39 ID:p7mKbgKv
 人を護る最良の方法は、何か起こってから行動するのではなく、何も起こらぬよう行動すること。厄介事に巻き込まれないよう、主を誘導すること。それは判っている。しかし『お前は役立たずだ』と言われているようで、悔しかった。
 ――――対人戦闘で右に出るものはそうはいないはずよ――――
 ならば何故、私を戦わせてくれないのか。
 護るため? 死なれたくないから? まだ未熟だから? 足手まといだから? あえて戦う必要がないから?
 恐らくその全てが答えなのだろう。
「だったら……私、ゼロのままだ……」
 使い魔に護られてばかりで、何の役のも立てない『ゼロ』。本来、使い魔が主の役に立つのは当然で、その思考は立場が逆転しており普通ならば本末転倒なのだが、ルイズとジルは対等、時と場合によっては立場が逆転しうる。イレギュラーだからこその悩
みだった。
「はたして、そうなのでしょうか?」
 低く渋い声がその小さな背にかけられる。
「『己を無価値と思い込んでいる者こそが、真に価値なき人間なのだ』と、昔の偉人もおっしゃられています。ヴァリエール様が自分を『ゼロ』と蔑めば、それは真になるでしょう」
「だったら……どうすればいいのよ……」
 小さく、ルイズはその声に聞き返す。
「自分にできることを考え、それを成すこと。一人の人間のできることには限界があります。たとえどんなに強くても、どんなに完璧に見えても、大なり小なり、必ずどこかに穴があるのが人間なのです。できないことを考えるよりは、遥かに建設的かと」
635ジル:2009/09/02(水) 00:19:53 ID:p7mKbgKv
「言ってくれるわね……平民の癖に」
「タルブでは無条件に貴族を敬う習慣がありませんので。それよりも、アンリエッタ閣下がお呼びです。私室に来るように、と」
「判ったわ。――――閣下?」
 その敬称に違和感を抱くルイズ。普通、アンリエッタを呼ぶ場合は『殿下』が一般的だ。
「我々は閣下を頂点とする直属の軍事組織ですので」
 言いたいだけ言って、使用人の皮を被った『何か』、ケイシーは去っていった。
「平民に諭されるなんて……そこまで酷かったのかしら」
 立ち上がり、もう一度、訓練風景を見やる。
「無価値と思い込んでいる者こそが、真に価値なき人間……か」
 未だ階級意識が根強く残るルイズだったが、ジルの影響か、ケイシーの言葉を素直に受け入れることができた。



 ハヴィランド宮殿。
 かつてアルビオン王国の王宮であったそこは、今や貴族派、レコン・キスタの本拠地となっていた。そして今、この浮遊大陸は彼らのものであった。
 神聖アルビオン共和国と名乗る彼らは、宮殿の中に置かれた議会の円卓で責任のなすりあいと権利の主張を声高々に言い合っていた。
636ジル:2009/09/02(水) 00:21:53 ID:p7mKbgKv
(これが……政を任せていた貴族の姿だったのか)
 上座も下座もない円卓で、レコン・キスタと神聖アルビオン共和国の旗を背に座る男は思う。酒場で泥酔して政治に愚痴を言っていたらいつの間にか組織の頂点に奉り上げられていた。この組織は男の理想を達成するべくして結成された、ということになっ
てはいたが、これでは理想には程遠い。貴族の権益に汚れたこの議会で、彼にできることは余りにも少ない。
「――――ハルケギニアの貴族が城を潰してまで逃げるものか! 現に死体はバラバラで誰が誰かも判らなかったではないか! 下手に追い詰めるから玉砕という手段に出たのだ。その責任をどう取るつもりだね?」
「それこそ奴らの思う壺ではないか! 偽装に過ぎん! 今ごろトリステインにでも亡命しておるわ! 早急に軍を編成してトリステインに攻め込むべきだ!」
「そんな予算はありませんぞ! 今は内政に注力すべきです! 無謀な作戦を組み、徒に兵力を消耗した皆様のせいで!」
「何を言っておるか! トリステインの軍備が整っていない今こそ好機。今を逃せば完全装備のトリステイン軍と戦わざるを得ない事になる!」
「国があってこその勝利です。たとえ今、トリステインに征ったとして、帰ってくる頃には共和国は消滅していましょう。激戦区の北部では野盗と化した傭兵が国民を襲い、そう遠くない未来にこの地はかの小説の世紀末のようになるでしょう」
「なんと弱気な! 盗賊などどうにでもなろう!」
「数が問題なのだ!」
「物資も食糧も足りぬ。特に塩は恐ろしく高騰しておる。このままでは――――」
「だから下界の愚民を支配しようというのだ! 正当な行為を行っている我々に平民はおろか王族すらも従うべきであって――――」
「もうよい。よさぬか」
637ジル:2009/09/02(水) 00:23:43 ID:p7mKbgKv
 放っておけば不毛な論争をいつまでも続けかねない。男――――オリヴァー・クロムウェルはその場の全てを一言で制した。途端、静まり返る議会。
「トリステインに攻め込みたい気持ちは余にもよく判る。しかし、今は堪えて内政に集中しようではないか。帰る場所も補給もなく戦うのは無謀というもの。それに、国民の税で我々は生きているのだ、その対貨を、安全という保証を払うべきではないかね。兵士も
戦続きで疲弊しておろう」
「ですが議長、物資や食糧は如何ともしがたく……」
「それに関しては、ジノビエフ君がどうにかガリアと話をつけてきてくれた」
 いつの間にか、クロムウェルの傍らに控えていた銀髪のバンダナ男が口を開く。
「物資・食糧・金銭の支援を取り付けて参りました。ただし支援はこの一度だけです」
「なっ――――」
「この支援が尽きた場合、ガリアとは通常の貿易での輸入が可能です。しかし、尽きることはないでしょう。段階的とはいえ、この支援でレキシントン級が数隻は建造できる量ですから。食糧、金銭も同様です」
 議会がどよめきに包まれる。
「ただし、トリステインやゲルマニアに察知されないよう、少数を何度かに分けて輸送するようです」
「なるほど、だから段階的、なのか。諸君、聞いての通り今トリステインに攻め込む利は非常に少なくなってしまった。各自、内政に注力するよう」
『御意』
638ジル:2009/09/02(水) 00:25:38 ID:p7mKbgKv
 貴族たちが席を立ち、ぞろぞろと退室していく。最後に残ったクロムウェルは――――
「ミスタ・ジノビエフ。本当に大丈夫なのですか?」
 傍らの秘書官に問う。今までの威厳はどこへやら、一転して遜っている。
「問題ない。貴様は与えられた役割を演じてくれればそれでいい。後はこちらで勝手にやらせてもらう」
 それだけ言って、ジノビエフはどこかへと消えてしまう。
「私は傀儡に過ぎん、ということですか。くそ……ワルド子爵とも連絡は取れないし、アンリエッタの手紙も無い、ウェールズの生死も不明……上手く行かないものだな。それに貴族があのままでは……」
 好戦派と内政派に分かれて言い争ってはいたがどちらも己の領土と権益を増やしたいがため、それぞれの主張を行っていた。
「王族が問題だったのではない。貴族の腐敗が問題だったのだ……なのに」
 その貴族に頼らねば何もできない己の不甲斐なさに震えた。



 議会の一部始終を聞いていた少女がいた。円卓の真上、隠し部屋で息をひそめ、先程のクロムウェルの独り言までを聞いていた。
「ふふ……大手柄だわ」
 少女は舌なめずりすると、闇に包まれたその部屋から出ていった。
639ジル:2009/09/02(水) 00:27:46 ID:p7mKbgKv
 アンリエッタの私室から、不思議な仕掛けで開いた隠し部屋に引き込まれた。地下迷宮とも思える、古く暗く曲がりくねった細い回廊を歩き、幾つかの扉を抜けてその部屋にたどりつく。
「まるで……魔王の城、みたいですわね。姫さま」
「いい得て妙ですわ。私は今から魔王を起こしてしまうかも知れないのですから」
 アンリエッタは微笑みを浮かべてはいるものの、それには翳りが見てとれる。
「力は正しいことに使うべき。少なくとも、自分がそう信じられる事にね」
 ジルは珍しく、デルフをその手に握っている。この剣にしては、珍しく静かだった。
「ジル、何の話よ?」
「ルイズ……何も聞かずに、これを」
 アンリエッタが、自分の右手から指輪を抜いてルイズに差し出す。
「これは……水のルビー? 何故、私に?」
「何も聞かないで」
 一度でも親友を駒――――いや兵器扱いしてしまった罪悪感が、アンリエッタの言葉を遮る。
「指にはめて。はい、アンリエッタ」
「ええ、判っています。私の、役目ですから」
 ジルから大きな本を渡され。更にその手からルイズに渡される。
「……え?」
640ジル:2009/09/02(水) 00:30:02 ID:p7mKbgKv
 未だ、何が起きているのか判らない。そんな顔をしているルイズに、ジルはいつもと変わらない口調で語りかける。
「開けてみなさい」
 不思議そうな顔をしながら、ルイズは本を開く。大きくて支えづらい本を最初から読もうとしてバランスを崩す事もなく、流石に読書家らしく器用に表紙を開けた。
「……え?」
 本が――――始祖の祈祷書が光りだす。水のルビーと共に。
「『序文
これより我が知りし真理をこの書に記す。この世の全ての物質は、小さき粒より成る。四の系統はその小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は『火』『水』『風』『土』と為す。』」
 ルイズがすらすらと読み上げる文章。それはジルにもアンリエッタにも見えない。それどころか、祈祷書とルビーの輝きすらも見えていない。
「やはり、ルイズは」
「そうだったみたいね」
 複雑な心境のアンリエッタと、満足そうな顔のジル。
「『神は我に更なる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さき粒は更に小さき粒より成る。神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統は更なる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四に非ざれば零。零即ち之
虚無。我は神が我に与えし零を虚無の系統と名付けん。』」
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 00:41:42 ID:gHIX7Xmn
さるさん?支援
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 00:48:00 ID:sg3nWKOK
同じく支援
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 00:54:36 ID:+fIrA/2C
ちょうどwikiで読んでる作品ktkr
644ジル:2009/09/02(水) 01:03:09 ID:p7mKbgKv
カウントリセットされたんで再投下
避難所で代理お願いしたんですが間に合わなかったようで……
自分で投下します。
645ジル:2009/09/02(水) 01:04:18 ID:p7mKbgKv
 二人に見守られながら、ルイズは淡々と祈祷書を読み上げていく。
「『これを読みし者は、我が行いと理想と目標を受け継ぐ者なり。また、その為の力担いし者なり。虚無を扱う者は心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞の為、異教に奪われし聖地を奪還すべく努力せよ。虚無は強力なり。また、その詠唱は永きに渡り、多大
な精神力を対貨とする。時として虚無はその力故に命すら削る。従って我はこの書の読み手を選ぶ。資格無き者が指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は四の系統の指輪を嵌めよ。さすれば、この書は開かれん。』」
 最後にやたらと長いブリミルのフルネームを呟き、それから何ページかめくり、ルイズは止まる。
「『エクスプロージョン』の呪文……あとは白紙だわ」
 ジルは少しだけ残念そうな顔をする。術者のレヴェルに合わせてリミッタがかけられているのか、それとも――――。少なくとも、『爆発(エクスプロージョン)』はジルの望む魔法ではなかった。
「ブリミルって、馬鹿ね」
「ああ、昔っからどこか抜けてるところがあったぜ」
 デルフがジルの呆れた声に新事実を上乗せする。
 と、ルイズの肩が震えだす。うつむいたその顔は、髪に隠れて伺い知ることはできない。
「ねえ、ジル。こんな時どうしたらいいのかしら」
 笑っているような、泣いているような、怒っているような、それらをごちゃ混ぜにしたような声がジルにかけられた。
「私の系統が判ったの。嬉しい筈なのに、六千年も前の、こんな馬鹿に振り回された、それが悔しいの。悔しいのよ」
 許されるのならば、すぐにでも失敗魔法で祈祷書を爆砕したかった。チェーンソーの存在を知っていたならば、そこにブリミル像があったならば、迷わずバラバラにしていただろう。
646ジル:2009/09/02(水) 01:07:01 ID:p7mKbgKv
「ねえ、どうしたらいいの?」
「アンリエッタ」
 ジルに促され、無言のままうなづいて、アンリエッタは部屋を出た。
「ルイズ、おめでとう。今は喜びなさい。そのブリミルが遺した力で、馬鹿を叩き潰せる力を手に入れたんだから」
「でも……」
「ねえ、ブリミルの理想って、こんな歪んだ貴族社会だったのかしら? 聖地奪還はどうでも良かったんじゃないのかしら? 本当は、虚無を後世に伝える気は無かったんじゃないのかしら?」
「え……? どういうこと?」
「鍵を中に閉じ込めたまま、開く方法を伝えなかったのよ。個人が命を削るほどの強大な力を持つことが恐ろしかったんじゃないかしら。それに、いくら強い虚無でもたった一人が軍に参加してもエルフの軍勢に立ち向かえる訳じゃないと思うのよ。戦術的には勝
てても戦略的にはどうやっても不可能でしょうね。ただでさえキルレシオが一対十なんて数字が出ているのに、よ」
「今の……ブリミル教の教えが間違っている……?」
 ジルの言葉を要約して再確認して、しかし自分の言ったことが理解できなかった。もうブリミルに対しての信仰心はないが、生まれたときからブリミル教は正しいと教えられて育てられてきたのだ。混乱もするだろう。
「六千年も続けば、権力者のいいように改竄されたり抹消されたりするでしょうね。内政の不満を解消するために外国のせいにするのは国家戦略としては常套手段よ。この場合は、矛先がエルフというだけで」
「悪いのはブリミルじゃなくて……世界?」
647ジル:2009/09/02(水) 01:08:44 ID:p7mKbgKv
「権力って、人を腐らせる最強の毒なのよ。人間の欲望を間違った方向に向かわせる。モット伯や昔のギーシュ……ルイズにも心当たりあるんじゃない? 『平民のくせに』って、口癖のように言ってた時期があったわね」
「う……それはもういいじゃない」
 ジルを召喚したばかりの頃は、そんな扱いをしては軽くあしらわれていたことを思い出す。
「じゃあ、この貴族制度が……」
「もしかしなくても、ルイズの怒りの矛先となるべきよね。魔法の才能なんて政治には何らの関係もないし、貴族として生まれたからって貴族である必要もない。ルイズが魔法を使えなかったとしても、その知識と頭脳は素晴らしいものだわ。それに、ガリアの
『無能王』はそれを証明しているわね。私の世界では、貴族は過去のものだし、王族は国の象徴みたいなもの。その王族だって、平民との愛に生きて王位継承権を捨てるくらいだから。ちなみに、国の政治を担う者は、国民に認められないとなれないわ」
 色々端折ってはいるものの、英国王室や米大統領のことを簡単に説明する。正確に言えばこの社会構造にも幾多の問題はあるが、腐敗した貴族の政治よりはマシだろう。横暴や不当な搾取はないのだから。
「無能な者は為政者になれないのね」
「どんなに教育しても、人には適性ってものがあるからね。ここからが本題」
 部屋の隅の、小さなテーブルと椅子を引っ張ってきて、ルイズを座らせた。ジルはその対面に座る。
「世界を急激に変えると、必ずどこかで歪みができるわ。だから、まずこれだけは頭の片隅に入れておいて。焦らない事と、耐える事」
「判ってるわ。簡単じゃないって事も」
 ジルが必要とするものと、ルイズのしたい事。それは結論が違えど、過程は同じ。
 アルビオンの空で、ジルが言った事が現実に向けて動き出した。



「あー、そう言えばその祈祷書、一部があぶり出しだったな。今思い出したぜ」
「な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
 二人の長い長い会話が終わったころに、デルフが衝撃の新事実を伝えた。
「ああっ! 痛い痛い折らないでぇぇぇぇぇぇぇ!」
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 01:13:48 ID:azF7r8jk
デル公はいつも一言多いか少ないかだな

さるさんかな?
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 01:14:51 ID:3rz4wAj+
六千年間機能するあぶり出し

ローテクなんだかハイテクなんだかw
650ジル:2009/09/02(水) 01:17:23 ID:p7mKbgKv
以上です。

ルーデル教徒、また一人……
ちなみに私もルーデル教徒です。
ケイシーはアンリエッタ直属の内部調査機関の一人です。どうでもいいオリ設定ですが、内調の機関員は対魔法『格闘』戦に長けています。
世界は変えますが、完全に変わる前にジルは元の世界に帰る予定です。
今までのジルがなんか変だったのはサモンサーヴァントとコントラクトサーヴァントの洗脳効果のせい、ということにしておいてください。
これからも違和感バリバリでしょうが……

>>643
ありがとうございます!
読み直してみたら矛盾がいくつもあったので、近いうちに細々とした矛盾を修正しようと思っています。
ですので変だな、と思ってもそこはスルーの方向で。
矛盾以前の問題もありますが、それをどうにかしようとするとはじめから書き直すことになりますので、気にしないでください(超弱気)。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 01:20:06 ID:NkCJtXp8
>>632
ガッツなだけにがっつり?

……ガッツなだけにがっつり!?
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 01:23:07 ID:kttKJw8a
おつおつ
ルイズが順調に"ゼロ"化してますな。いろんな意味で。
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 02:46:11 ID:+fIrA/2C
乙でした
魔法で隠す上にさらにあぶり出しとはほんとに読ませたくないとしか思えないですなw
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 08:26:44 ID:eaeqDdGz
ジルの人、乙でしたー。
確かに指輪と秘宝の安全装置でブルミルを「うっかり」扱いするSSは多いですけど、残した本人が後の時代の人間に知られたくなかったとするならありえる話ですよね。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 08:47:50 ID:lkKGVm/0
…ニエ…ニエ
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 09:19:11 ID:azF7r8jk
残したくないならグリモワールも書かずに
黙って墓まで持ってけばいいのにって思っちゃうけどねぇ
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 09:41:21 ID:eaeqDdGz
ブリミルの生きた時代に大きな戦いがあったようですし、何かの備えとして対抗できる力を残した、しかし容易に読み解ける形には出来なかった、そのジレンマの結果という可能性が高いのではないかと。
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:00:48 ID:xVtqkWNC
それにしても、セイフティかけ過ぎだよね
各国の王位継承者以外に「虚無」が宿ることを全く考慮してない

そして、それぞれのアイテムが重要であることも後世に伝えてない
アンリエッタなんかキーアイテムである「水のルビー」を「お使いありがとね、コレあげる」
とお駄賃にしてしまってるからな
もしルイズが虚無じゃなかったらトリステイン系列の虚無は滅んでるところだったぞ
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:09:23 ID:VfdvAjel
ラノベでそんな事まで考える訳がない
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:10:37 ID:lkKGVm/0
王位を持った者+虚無はともかく無力な者+虚無なんかが生まれたら力のバランスが大きく変わって恨み辛みの復讐による大災害が起きるんじゃないかな

そう考えるとティファニアはイレギュラーな存在なんだろうなあ。ハーフエルフだし
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:20:17 ID:kehVqrqu
他に宿る事を考慮してるからキーアイテムを王家継承の形で二重に用意してるんだろ
アンアンがルビーを出しちゃったのはそれが伝説レベルになるぐらい時代が経過しちまってただけだ

むしろ各王家に重複不可能なルビー分けてるから一つの国に力が集中しない考慮までしてるって事だぞ
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:35:35 ID:eJQJfuW0
ブリミル「王家の正統以外の虚無なんて自覚しないまま消えろ!」
とかそういう事ですか

> もしルイズが虚無じゃなかったらトリステイン系列の虚無は滅んでるところだったぞ
いや今代の虚無はルイズってだけで、アンアンの子孫からも虚無は生まれるだろ
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:44:09 ID:V2y8SNt9
>>658
ベヘリットよろしく、あるべき時あるべき場所にあるべき者の手の中にあるものだったりして。
どんな経緯を辿ろうとも必ずや担い手の手の中に転がり込んでくるという、ある意味呪いのアイテム。

┏どうぐ━━━┓
┃ ルイズ...  ┃
┃┏━すてる━━━━━━━┓
┃┃  E まほうのタクト...    ┃
┗┃  E ノーブルなマント...  ┃
  ┃  E きぞくのふく    ┏━━━━━━━━━━━━┓
  ┃  E 始祖のきとうしょ. ┃水のルビーをすてますか? ┃
  ┃→水のルビー.       ┃→  はい               ┃
  ┗━━━━━━━━━ ┃   いいえ           ┃
                 ┗━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃それを捨てるなんてとんでもない!           ┃
┃                        ▼.         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:49:43 ID:QmZiRa87
>>663
ドラクエ乙w
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:50:18 ID:xVtqkWNC
・・・・・・・そしてルイズは、捧げちまったんだな・・・・・・
「プロポーションの将来性」というある意味家族よりも大切なものを・・・・・・
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:51:28 ID:cdRF6Sk3
その理論だと一番上の姉に虚無がないと
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:52:30 ID:YMkOXG8h
ルイズは、ふくらみ自体はあるから……
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 10:56:17 ID:xVtqkWNC
一番上の姉は「男運」を捧げちまったんだ、きっと
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:03:00 ID:WP4tjxfE
神の盾 胸に盾でも入れてるんじゃないかってぐらいぺったんこ。
憚られる 重に胸が。
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:32:18 ID:7niAoMAq
>>663
ホントにそんな感じの呪われたアイテムなら、アンアンが安易にルビー渡したのにも説明がつくんだが
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:33:37 ID:PK1y9FDQ
>>658
6000年、ってのが事実なら、
現物がそのまま受け継がれてるだけでも
十分大したもんだと思うんだが
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:45:38 ID:lkKGVm/0
アンリエッタの感覚がズレてるだけでしょ
風のルビーも「お金にしてください」だもんな
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:49:57 ID:rpapYZ7X
宝石に金銭価値があるとはいえ、伝説のアイテムを渡しちゃイカンでしょう。
デルトラクエストみたいに風のルビーとかはどこか危険な場所に隠されているとかだったら面白いかも
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 11:51:36 ID:Dmba1gmQ
ガネーシャさん(夢をかなえるゾウ)を誰が召喚するかで
物語はやたら変質する
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 12:08:46 ID:g0ewVpHh
ジルの作品のアンリエッタは指輪を与えてはいないみたいだね
船代もジルが出してるみたいだし、コルベールにアルミ精製させたり.50BMGの薬夾売ったりして稼いでるフシもあるし
割と優秀だね、この作品のアンアンは
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 12:48:25 ID:MKkZLMSe
あのルビーが売れるかとうかは別問題だしな
まともな店だと出所がばれたら官警に連絡>逮捕だろ
盗品売買所で金に換金しろとでもいうのか
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 12:53:21 ID:cdRF6Sk3
黄門さまの印籠みたいな効果があるんだよ
要はあれを店の人間に見せて金銭を要求してだな
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 13:43:16 ID:G0wkYsnG
ルビーの価値を市場がどう判断するかは別の話じゃね?
門外不出なら王族の家宝の姿形を知ってる宝石商なんて片手の指より少なさ層だ
貴族の位の高い奴の所まで流れないと気づかれないんじゃないか?
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:38:08 ID:lkKGVm/0
盗んだわけじゃないから王族の縁の品として正当に良い値で売れるかと
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:42:51 ID:G0wkYsnG
それアン様が一筆書かないと証明できないんじゃね?
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:43:03 ID:tPOX7Xus
>それぞれのアイテムが重要であることも後世に伝えてない

普通こういった重要な事項は王権を確固とするための切り札情報とする。
つまり、王様と正当な後継者=王太子にしか教えない。
例えば裏切り者に王宮を占領されたとき用の隠し通路とか。
同じく裏切り者に城を奪われたときに傭兵を雇うための隠し財宝の場所とか。
強力な呪文書とか。

もし、始祖の遺物と担い手覚醒条件の情報が一般知識であった場合、
始祖のルビーと始祖の祈祷書等は盗難の最重要目標となり、

手に入れた者は王家の傍系男子を一人ひっさらって幽閉もしくは篭絡し、
※修道院に入れられた傍系王子を酒池肉林にするからと誘うのは簡単です
大量の子供を作らせ虚無候補を確保するのが玉座奪取の確実な方法です。

…孫を王様にして権力を握るために娘を王太子に嫁がせるのよりはよほど確実で手っ取り早い。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:45:22 ID:USpSaWJs
掃除してたら転がってきたベヘリットと見つめあってたらなんか変な電波を拾ってしまった。
虚無覚醒に必要なアイテムがベヘリットなIF。
虚無の素質がある人間に自然と転がり込んでくる。
まともに魔法が使えない事で心が荒み、何かのきっかけで強く魔法の力を渇望するとベヘリットが発動し、虚無だけに聞こえる声で語りかけてくる。
半身とも呼べる存在と引き替えに虚無の魔法を授けると。
で、捧げると虚無の魔法が使えるようになる。

この場合ジョゼフが捧げるのはやっぱりシャルルか?
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:46:04 ID:lOlB3KDl
「経験豊富な」宝石商が「過去一度も見た事もないほど見事な」ルビーを見て何も疑わないわけがない
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:56:51 ID:tPOX7Xus
こういった、正当な後継者のみに教えられる情報というのはものすごく多い。
それくらい用心深く無ければ、国のトップとして長期間政権を維持できないため
自然に淘汰されるというほうが実際のところだったりするけど。


でもって、こういった情報は王権が傍系に渡ったりするとあっさり断絶してしまう。
もちろん王権に着いたものだけに見れるような覚書があったりすることもあるけど。

それと、ガリア王の台詞によると、前カーペー朝なる政権があったらしい。
これが他国の泡沫国の事なのか、それともガリア王国内での政権交代だったのか、
それはフィフティフィフティで判然としませんが、カペー朝が
フランスの王朝の一つであったことは考慮材料に入れてもいいと思います。

以下ウィキより
王朝(おうちょう)とは、君主制において支配に連続性のある継承を行った歴代君主の集合を指す。

例えば、日本の徳川将軍家で八代将軍吉宗が紀州分家から入ったり、
応神天皇5世の子孫として継体天皇が即位したりするのは、
ヨーロッパ風の見方では別王朝とみなされる。
一方、フランスのカペー朝、ヴァロア朝、ブルボン朝、オルレアン朝は
中華文明風の見方では全て同一王朝とみなされ、ボナパルト朝のみが別の王朝とされる。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 14:58:25 ID:G0wkYsnG
うん、そのうえで“あからさまに世間知らずな”ルイズに対して二束三文で買いたたかないという保証は?
後、大臣たちにばれたときのアン姫とヴァリエール家への突き上げに対しての対策とか
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:00:20 ID:E8Vuag4/
余程の事がない限り始祖の血脈たる王家に逆らうのは事実上タブーっぽいので
その辺の安全策考慮もいいかげんだったのかもしれませんね

事実六千年にわたり下克上が全く無かったみたいだし。
ゲルマニアやグルテンホルフは例外として多分外戚による事実上の
王家乗っ取りなんかはあったのでしょうが
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:02:01 ID:E8Vuag4/
>>686
sage忘れました、申し訳ありません
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:07:05 ID:tPOX7Xus
>>686
ちゃうでしょ。
王家の魔法センスによりぶっつけ本番でも可能なヘクサゴンスペルの恐怖により、でしょう。
王権の維持すらできないアルビオンのチューダー朝に対する態度はひどく冷淡でした。
689名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:20:10 ID:mfYa+mMl
いいかげん設定考察スレで話せよ。
まあ、宝石ていえばちょっと違うが、コブラからクリスタル・ボーイを召喚したら面白いかな。
なんせぱっと見宝石でできた人間だし、知力、戦闘力も海賊ギルド有数だった。
まあ問題は、よくあることだがルイズが即殺されかねない極悪人なとこだが。
690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:32:56 ID:lkKGVm/0
宝石ならばハオラーンを喚ぼうじゃないか
水のアクアマリン、火のルビー、風のオパール、土のトパーズ、光のダイヤモンド、闇のブラックダイア、気のムーンストーン、邪のオブシダン、魔のエメラルド、幻のアメジスト

ディスティニーストーンを身につけたルイズは人々の代表として戦いましたが遂には帰ってくることがありませんでした
691名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:40:25 ID:UDthkvEW
宝石ならヨハンの宝石獣デッキ呼べばいいと思う
あれモンスターカード全部精霊カードだし
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:40:29 ID:5AoVUNoc
ハオラーンかと思ったら「いやです。」の人だったというオチ
693名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:49:12 ID:V2y8SNt9
ID:tPOX7Xusが凄まじく痛いな……。
694名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 15:57:08 ID:eJQJfuW0
「るいずととら」はワルドに獣の槍が渡って黒い字伏にならんかな
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:02:23 ID:t+Xx8sFU
神々の父でふと横にそれた連想した

GBサガ3から、主人公たちの一人をルイズが召喚
タルブに隠されてるのは「ステスロス」
シエスタの祖父が、未来の自爆したあとのディオールだとか……
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:18:49 ID:WX0UsO3A
>>692
里村茜を召喚かと思ったじゃないか!
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:20:50 ID:3MCgE6Kn
>>691
いやいや、ダイヤモンドドラゴンを36枚持っている海馬社長でしょう。
698名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:32:26 ID:ryrxtKXX
亀だが、ジルの人乙

あれ?
ジノビエフってもしかして……
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:40:42 ID:E8Vuag4/
>>695
「神の父」といえば「人類史上二番目に名高い寝取られ男」ヨセフでしょう

・・・・・え?知らない?
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:48:03 ID:+XtpLRTN
イエスは神じゃなかったと思うが
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:51:55 ID:cgWhM3Ec
「神と聞いて歩いてきました」
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 16:57:25 ID:NYreUF0g
ルイズの世界にテニプリの奴らを召喚したい…(特にクラウザさん
703名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 17:36:35 ID:EeBIBVZs
そういえばワルドがレコン・キスタに参加した理由はトリステイン、ひいてはハルケギニアの貴族の腐敗が一因になっていたはず。
ワルドがもし『アクメツ』のことを知ったなら……凄い事になりそうだ。
704エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 17:40:15 ID:jPlankgl
こんばんは。
予約がなければ17時50から投下します。
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 17:45:46 ID:Khv6EAUA
ワルドがアクメツに
アクメツの仮面と研究施設丸々持ってこないとアレは無理だな…
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 17:50:25 ID:BR5R3rzQ
河井☆矢きたーーーー!
707エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 17:50:52 ID:jPlankgl
三郎と河井が呼び出されたその日の夜。
二人は呼び出した張本人であるルイズから、この世界についてのことを聞いた。
この世界について、簡単に説明するなら「ファンタジーの世界」である。
その中でもここは、トリスティン魔法学院という、貴族があつまる場所らしい。
「へぇ〜……すごいところなんですね」
「当たり前でしょ」
突然、学校から中世ヨーロッパにあるような建物に飛ばされたこと、
月が二つ存在すること、そして何より、人が宙に浮いたところを目撃した三郎は、この話を素直に信じ、感心した。
「でも、あんた達、別の世界から来たって言ってるけど、それって本当なの?」
「ほ、本当ですよ! 人が宙に浮くなんてありえないし……」
「メイジなら飛んで当然よ」
「そ、それに魔法なんてものは存在しないし、月だって一つしかないし……」
「信じられないわ」
「本当ですって!」
一方、河井はというと、二人の話を聞きながら考え事をしていた。
(確かに別次元の世界なんてバカバカしい話だとしか思えん……)
窓から覗き込む二つの月を見る。

(しかし、月が二つ存在しているのは紛れもない事実……。
 ワシらの世界では、どこを探したって、月が2つに見える所は無いからのう)

そう、どう考えてもありえない。
月が二つに分裂するわけがないし、そもそも大きさが2倍ある時点でおかしい。
つまりここは、自分達が住んでいた千葉……いや、地球ではない。
(ふむ、そう考えると別世界に来たと考えた方が辻褄が合いそうじゃの)
河井は、三郎とルイズがいる方向に視線を戻す。
708エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 17:53:09 ID:jPlankgl
「あの、ところでオレ達はどうやったら家に帰れるのでしょうか?」
「家に帰る? ……そんなの無理に決まってるでしょ」
「え?」
ルイズは、心底困ったという顔をしながら告げた。
「だって、あんたの世界に帰す魔法なんてないもの」
「そ、そんな! だ、だって鏡が現れて……」
「そんなの知らないわよ!」
「こっちの世界に呼び出す魔法があるなら、元の世界に戻せる魔法だって……」
ルイズは首を横に振った。
「『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけなの。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないのよ」
「そ、そんな勝手な……」
「うるさいわね! 私だってあんた達みたいな使い魔なんて嫌なのよ!」
三郎は、頭を抱えながらうな垂れる。
「ああ…なんでこんなことに……」
「それはこっちの台詞よ!」
ドラゴンやサラマンダーを希望していたのに、
出てきたのはどうみてもボンクラの若者二人。しかも1人はアル中。
ルイズは心底がっかりしていた。
「とにかく、あんた達は私の使い魔なの! わかったら返事をしなさい!」
「は…はぁ……」
三郎は、心底迷惑そうな顔をしながら返事をする。
いくら可愛い子がそばにいるとはいえ、家に帰れないのは最悪である。
もう部屋の大型テレビでゲームをプレイしたり、
お気に入りのフィギュアの鑑賞ができないと思うと涙が出てきそうだった。
709エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 17:57:11 ID:jPlankgl
「ところで、使い魔って何をすればいいんですか……?」
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「はぁ……?」
いまいちピンとこない三郎。
ルイズは、理解してない三郎の様子を察し、補足するように言葉を続けた。
「使い魔が見たものは、主人も見ることができるってことよ」
「はぁ…それはすごいですね」
「ま、当たり前だけどあんた達じゃ無理みたいね。何も見えないもん」
「はぁ…すいません……」
「それから、主人の望むものを見つけたり、主人を守るのが大事なんだけど……」
ルイズは三郎と河井を見てため息をつきながら続けた。
「あんた達じゃ無理ね……」
「そうですね……」
「だから、あんた達に出来そうなことをやってもらうわ。洗濯。掃除。その他雑用」
「はぁ……」
もはや何も言い返せない三郎は、素直に従うことにする。
もっとも、全ての雑用は家にいる使用人に任せていたため、それすらもきちんとこなせる自信はなかったが……。
「さてと、それじゃ、私は寝るから早速明日からよろしくね」
ルイズは大きなあくびをしてベッドに座った。
「あの、ところでオレ達はどこで寝れば……」
ルイズは床を指差した後、毛布を一枚投げてよこした。
「ああ、やっぱり……」
野宿するよりはマシと言い聞かせ、三郎は毛布を受け取った。
ふと視線をルイズの方に戻すと、ブラウスのボタンに手をかけてる姿が見える。
「ななななな、何をー!?」
「へ? 寝るから着替えるのよ」
「い、いや…せめてオレ達のいないところで……色々とまずいし」
「まずくないわよ。別に使い魔に見られたって、なんとも思わないわ」
「そうですか……」
犬や猫当然と見られている三郎は少し悲しくなった。
710エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 18:00:09 ID:jPlankgl
「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」
ルイズがそう言うと、キャミソールとパンティが三郎の目の前に飛んできた。
本当に男として、いや、人間として見られてないことを自覚し、肩を落とす三郎。
そんな三郎を無視するように、河井は三郎の前に落ちた白い下着を取り上げた。
「では明日の朝に洗濯しておきます。安心してつかぁさい姉さん。こう見えても家事は得意なんですよ」
(え…? この男にしてはやけに素直だな……)
河井は、面倒なことを進んでやる人間ではない。やるとしたら、金が絡んだ時だけである。
「中々聞き分けがいいようね。それじゃ頼んだわよ」
ルイズはランプの光を消し、布団に包まった。
どうせ何か裏があるんだろうと思いながら、三郎も毛布に包まって横になる。
一方河井は、静まった暗闇の中で、一人目を光らせていた。
「あれ、河井君…寝ないの?」
不審に思った三郎が声をかけるが、反応がない。しかし、それも当然である。
河井は、この時既に自分だけが幸福になるプランを考えていたのであった。
(うむ。この部屋だけでも、高価そうな置物や道具が置いてあるワイ……)
河井にとって、ルイズの部屋に置いてあるものは、宝の山にしか見えていない。
(それにさっき、廊下を観察した時も値打ちがありそうな飾りや置物がゴロゴロ……)
もちろん、廊下に置いてある物の下調べも怠っていなかった。
(そう考えると、このバカ女が貴族というのは本当のようじゃの……)
そう、銭ゲバの河井がルイズに逆らわず、素直に従った理由はただ一つ。
(やはり、ここは機嫌をとっておくことが重要じゃ…いずれは大金をせしめてこの世界の大統領に……)
金であった。
(ゲヒョーヒョヒョヒョ!たまらんばい!不幸中の幸い…いや、幸運中の幸運とはまさにこのことじゃ!
 ここには目障りな借金取りも、面倒な法事国家も、あのバカ兄弟も何もない!まさにワシの天下じゃ!)
無論、三郎のことなど眼中にない。
「あの、河井君……?」
「おや、総長…まだ起きてらしたんですか? 明日は早いでしょうから、今日はもう寝ましょう」
「う、うん…。おやすみ……」
(一体何を考えていたんだ…? ま、どうせロクなことじゃないだろう……)
河井は大統領になった気分になりながら、三郎は嫌な物を見た気分になりながら、それぞれ眠りについた。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 18:04:23 ID:MKkZLMSe
ワルドアクメツは遍在使うからありがたみっつーか凄みが無い
712エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 18:05:04 ID:jPlankgl
翌日。
三郎が目覚めて、初めて目にしたものは、河井の寝顔だった。
「ギャアアアアア!」
思わず声を上げて、飛び起きる。
(な、なんだ…河井君か…びっくりした……)
河井は満面の笑みでイビキをかいて眠っていた。
一方、ルイズはベッドの中ですやすやと寝息を立てている。
(こうして見ると、やっぱり可愛いなぁ……)
三郎は、ルイズの寝顔を見て、思わず見惚れる。
こんな可愛い女の子と一緒にいられるのであれば、寧ろこの世界に飛ばされてよかったのかもしれない。
しかしそんな幻想は、河井の大きなイビキと共に儚くもかき消された。
(いや、この男も一緒だし、もう人並みの生活はできないんだよな…やっぱ全然よくない……)
目一杯落ち込みながらも、寝ている河井を起こすことにした。
「河井君…朝だよ」
「んあ? なぜ総長がワシの寝室に……? はあっ!?」
河井は自分の置かれている状況を思い出し、飛び起きる。
急いで周りを確認し、寝ているルイズの姿を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「よかった…夢じゃなかった……。ああ、総長!おはようございます!」
「あ、うん。おはよう……」
すがすがしい朝。そして、希望に満ちた朝であった。
そう、河井にとっては。
「さて、ワシは早速洗濯してきますので、総長はバカ女…いえ、ルイズさんを起こして下さい」
「え、いいの? 洗濯任せちゃって……」
「ええ、全てワシに任せてつかぁさい!」
それが逆に不安であったが、この申し出はありがたかった。
三郎に家事の経験は全くと言っていいほどないため、なれない洗濯をするよりは、
目の前にいる気難しい少女を起こす役目の方がいくらか気が楽であった。
「じゃ、じゃあ悪いけど頼むよ」
「はいはい、それじゃあ行ってきます」
そう言って、河井は洗濯物を持って、部屋を出た。
713エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 18:07:51 ID:jPlankgl
部屋を出た瞬間、河井は辺りをキョロキョロと見回し始めた。
値打ちがありそうな置物などを探すと同時に、学院内部の地理を把握するためである。
(いやいや、しかし本当に宝島じゃのうここは……)
そうこうしているうちに、食堂の入り口にたどり着く。

(ここは食堂か…広いだけあって少し迷ってしまったようじゃの……。
 チッ、こんなことならあのカス女を起こして、場所を聞いておくんじゃったワイ)

部屋に戻って場所を聞こうかとも思ったが、それで文句を言われたらたまったものじゃない。
河井は、その辺を歩いている人間を捕まえて場所を聞こうと思い、今来た道を引き返す。
「あの、何かお探し物ですか?」
「ん?」
振り向くと、銀のトレイを持ち、メイドの格好をした少女が河井を見つめていた。
(ほう、ちょうどいい所に虫がきおったワイ……)
河井は、満面の笑みで目の前の少女に話しかける。
「いえ、実は洗濯を頼まれましてのう…。しかし、洗濯する場所がわからず迷っていたところなんですワイ」
「あら、それは大変ですね……」
「え、案内してくださる? こりゃどうも」
「は…はい。こちらです……」
半ば強引に少女を案内役にする河井。
少女の方も、場所の案内などをするのは慣れていたため、すんなりと河井の要求を受け入れた。
「そういえば、あなた…。ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
「おや、もうご存知で? いやー、さすがは貴族のお方! お耳が高い!」
「あ、いえ…私は違います。あなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するためにここで……」
「お世話……? 平民……?」
河井は歩みを止めると、表情を一変させた。

「なんじゃー! お前使用人だったんかー!? それをはじめに言わんかボケが! 殺すぞ!」
「ひっ!?」
河井が突然、態度を変えたことに驚く少女。
「まったく、必死で愛想を振りまいて損したわ! ワシは損するのだけは嫌なんじゃ! わかるか!?」
「え、え、え? え、えーと……ご、ごごごご、ごめんなさい…」
「まあいい、こっちは時間がないんじゃ! さっさと案内せんかい! とろいんじゃカスが!」
「は、はははは、はい!」
態度を豹変させた河井を目の前にして、少女は蛇に飲まれた蛙のような気分になっていた。
こうして、この少女の一日の始まりは、最悪な形で始まったのだった……。

一方、三郎とルイズは……。
「ウフフ…この骨をとってくるのよキュルケ……」
「あの〜、いい加減起きてほしいんですけど……。ていうかキュルケって誰……?」
まだ何も進展していなかった。
714エリート使い魔三郎:2009/09/02(水) 18:11:33 ID:jPlankgl
以上です。
やはりというか、なんというか、
三郎より河井の方がメインキャラとなりそうです。
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 18:17:42 ID:BR5R3rzQ
被害者の涙目ルイズと三郎が目に浮かぶようなゲスの再現ッぷり
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 18:24:22 ID:WFlzo/TZ
エリートヤンキー乙でしたー

やっぱり河井は河井だなあww
でもバイタリティに溢れてるから、確かに三郎よりメインとして動かしやすそうですな
シエスタへの対応からして、平民からの印象は最悪になりそうですが
実は厨房の皆さんと仲良くするのが、学園で楽しく生きるコツだというのに

>>690
一瞬『いただきっ春平!!』の話かと思ったが違うのね
まあ、こっちはそもそも知名度が壊滅的(略)
こっちはこっちで宝石に精霊だかなんだかが宿ってて、炎を出したり(火星のルビー)、水を操ったり(水星のアクアマリン)出来るから、宝石が召喚されたらマジックアイテム扱いされそう?
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 18:30:19 ID:vr4MtH37
>>699
じゃあ「人類史上最も有名な寝取られ男」って誰?
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 18:52:04 ID:n5R58SZm
ルイズが召喚したのがグルメクラゲだったら・・・
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:09:08 ID:gW/sT9r9
エリートヤンキーの人、乙w
やはり河井はハルケギニアに行っても河井な訳かww
しっかし、

>出てきたのはどうみてもボンクラの若者二人。しかも1人はアル中。

河井の場合、ただのアル中の方がよっぽどマシだから困るwww
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:21:09 ID:CPQiOXzo
>>717
真っ先に思い浮かんだのはアーサー王
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:26:33 ID:gBmza1zs
アダムが一番有名な寝取られでは?
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:31:45 ID:kehVqrqu
アダムのは話しの本筋じゃなくて派生的な本筋から抹消されてる部分でのとこだから
723名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:31:59 ID:lfSqaDEw
まとめ読破してしまった感
エターナル率の高さに辟易としながらも読ませてもらった
各作品を知る良いきっかけになるわな
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:46:56 ID:ExXTjQsq
宝石と聞いて
ジュエルビースト召喚・・・

創造主であるサルーインすら制御出来なかったのを
1.もちろんルイズに制御出来るわけもなく、魔法学院は永久封印されるのであった
2.召喚直後に大人しくなっているのを涙目で契約したルイズ、遠いマルディアスで邪神がなんか悔しい思いをした
どーなるかなぁ

ちなみに俺はミンストレルソングは未プレイです
ジュエルビーストって見た目カエルでしたよね?
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 19:57:49 ID:PjQ76YIj
ジュエルビーストって聞いたら
俺は聖剣伝説LOMの某宝石泥棒の僕の方を連想するな。
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:01:27 ID:4nebpGNH
ミンサガは熱情の旋律を聞いたら笑いが止まらなくなる
いい曲なのに2ちゃんのせいだ
727名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:05:21 ID:6H3uf2eH
>>724
ミンストレルソングの方の場合

ジュエルビーストが休眠状態で召喚されても契約の口付けによって覚醒

ジュエルブラスターでOVER KILLそしてトリスティン壊滅の危機なんてこともあり得る

奴には術法に対する絶対的な耐性があるからメイジにとっては天敵
728名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:24:11 ID:V2y8SNt9
>>726
俺はあの曲を初めて聴いた時爆笑したぞw
バイオハザードのEDで「夢で終わらせない♪」が流れてきた時以来の衝撃だった。
どちらも単品ではいい曲なのに微妙に空気嫁てないというか、ゲーム内容とテンションに差があるというか。
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:27:28 ID:aVCllxvb
>>727
>奴には術法に対する絶対的な耐性があるからメイジにとっては天敵

この時点で契約どころか、下手したら召喚すらままならねぇ気がするんだが。
730名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:30:45 ID:Jmgetw/5
最初のギーシュ戦のゴーレムを超腕力のキャラが殴ったら
学院の壁くらいまで吹っ飛ぶのか砕け散るのか、どっちの方が正しいのか悩む
731名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:33:28 ID:N1ea4ur6
>>730
どちらも正しい
つまり書き手次第

732名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:34:35 ID:7niAoMAq
>>728
バイオ1の実写OP・EDに一番合うのはあの歌だろうと思ってる俺への挑戦かな
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:37:24 ID:ExXTjQsq
>>727
そこまでですか
SFCだと何かいつの間にか戦える金持ちの強いカエルくらいの印象しかなかったすよ

>>730
間を取って、砕け散りながら吹っ飛ぶ
こう書いて背徳の掟編で魔神紳士に殴られてバラバラになったD・S思い出した
あいつ召喚しても絶対制御出来ないだろうけど
まだエデ・イー呼んだ方がマシだろうな
734名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:43:22 ID:ATrpZl0g
バスタードだったらガラが一番よさそうだな。
面倒見いいし、デルフも上手く使うだろうし。
735名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:47:17 ID:lfSqaDEw
いっそサルーイン召喚でおk
二度目のはいぼく直後で。
736名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:52:32 ID:BR5R3rzQ
アビちゃんがいいと思います!
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:53:25 ID:5AoVUNoc
なにゆえ原作消化後の召喚が多いのか
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:02:00 ID:TT0Q67G1
性格が尖り過ぎてて手に負えないからだろ
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:04:04 ID:hX0st3BI
>>734
でもガラはネイの事を気にして絶対帰ろうとするからなぁ…
サムライ軍団も忠義とかでウザそうだし…ベルゼブブ以外の魔王の誰か(アイツらならノリで使い魔やってくれそう)とか
忠誠心のそこそこ低そうな魔戦将軍のオトボケ空手小僧やお姉言葉のケツアゴの人とかどうだろう?
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:07:00 ID:Ey6zuBld
>なにゆえ原作消化後の召喚が多いのか
情報が出切ってからのほうが書き易いじゃないか
ダークシュナイダーだったら第一話とかの時点で現在ああなるとは誰が思うかね
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:08:59 ID:5AoVUNoc
>>740
ああ、いやそういうことではなく。
「つよくてニューゲーム」的な作品が多いなー、と思って。
742名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:11:26 ID:MKkZLMSe
バスタードのクロスなら1年に1作投下する更新速度になりそう
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:12:45 ID:+XtpLRTN
>>741
既に元の世界での目的を達成してるからじゃね?
744名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:16:35 ID:iHVlRjM8
>>741
SS書きは基本的にオナニー大好きなんだよ
745名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:16:45 ID:f2JQH4Vt
くくくく、さすが河井、三郎もそうだが、金だけの
ぼんぼんなんぞ、河井にかかればイチコロだな。
貴族でもブルジョアでも共産党幹部でも、河井にかかれば
唯の金づる!
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:17:44 ID:7NDR2N/J
>>741
どんな作品であれ、ストーリー終わらないうちから召喚してしまったら、
そのタイミング次第では向こう側の世界が大変なことになってしまうからじゃね?
だったら全部終わって、後腐れなくなった頃合を見計らって召喚した方が、
色々と楽なんだろ。
747名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:18:20 ID:6H3uf2eH
ケツアゴ持ちで使い魔か

ざっと思いつく所で

新右衛門さん
ネプチューンマン
ミスターサタン
大魔神
銭形警部

748名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:20:17 ID:BR5R3rzQ
>>745
銭ゲバヤンキー乙
749名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:25:49 ID:LUDvNS0A
>>741
「強くてニューゲーム」系の作者の俺から言わせてもらうと、やっぱし楽だからだなぁ。
技や、ネタも作品の中全部から取ってこれるし(整合性とか時期的な問題を考える手間が省ける)、
ある程度「そいつなりの主張」ができあがってから召喚しないと、ルイズと不毛な喧嘩しそうだしな。
強さの調整とか考えると「強くてニューゲーム」もめんどいけどな。
「技や記憶は全部あるけどLv1」ぐらいが理想なのかねぇ?
750名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:28:21 ID:hb4ejE1O
アゴ・・・

ボス
クッキングパパ
後二人!
751名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:30:43 ID:6H3uf2eH
>>750

ポパイ
752名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:31:18 ID:JEXmrqaJ
>>741
俺も>>746的理由からエンディング後の方が考えやすいな。
なんか居なくなった後の世界に申し訳なくて……

スレルール的にあり得ないけどドラクエ3の勇者途中で呼んだりしたら、あの後のアレフガルドとかはどうなるんだって気になってしまう。
いや、全くもって要らん世話なんだろうけども。
753名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:31:19 ID:TT0Q67G1
>>750
セッティングパパ
754名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:33:57 ID:xwtQmqRh
終盤に向かうにつれ(身体的に)弱体化していくタイプが理想かな
ダブルブリッドの片倉優樹とか

……寿命で死んでるのがネックだが、ネズミとか蛙とかが普通に使い魔できるあたり、契約したら寿命が延びたりするのか
755名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:37:16 ID:ExXTjQsq
>>750
バラシン
実写版は要潤じゃなくてアントニオだったら完璧だったと思う
OVAのはまぁ、なんだ、少しの間忘れる
756名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:40:05 ID:VfdvAjel
>>752
子供から何から全部セッティングし終わってから行方不明になった
と、思い込めば大丈夫。
757名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:42:13 ID:JEXmrqaJ
>>756
だから、さ。
そいつは結局全部終わってるってこったろ
758名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:48:27 ID:iHVlRjM8
崩壊したトランクスの世界のように
主人公がいなくなっちゃったパラレルワールドが
存在してもべつに良いじゃない
759名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:56:23 ID:Ey6zuBld
1話以降来なかったが、よつばが消えた「よつばと」世界はどうなったか気になってたまらん
760名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 21:58:33 ID:0C/WyHVO
>>749
だったらアドルかな
新しいのが出るたびに以前の魔法とか経験をすっぱり忘れてLv1が常だからやりやすそう
761名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:00:16 ID:N1ea4ur6
マクロな視点で言えば
召喚されてるのがサイトじゃ無い時点でパラレルワールドな訳だから
召喚される側の世界も原作と展開が異なるパラレルワールドであっておかしくない
そのパラレルワールドが原作世界と大幅に逸脱するかしないかは作者次第

ゴーストステップみたいに原作後…原作に全く影響しない世界があれば
原作途中の召喚でも原作に余り矛盾の出無さそうな設定が見える世界もあるし
ディケイドみたいに召喚時点で完全オリジナル展開に移行するのもある

まあ、要は書き手が自分で納得出来るものであれば問題無いんだよ
同人なんだから書き手が楽しんで書けなきゃ始まらないんだから
投下作品は毎回楽しんで読ませて貰っていますよ
762名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:01:21 ID:lX6CZ8o9
勇者30みたく一晩寝るごとにレベルが1に戻る
ただし恐ろしい速度でレベルが上がる

ついでに一話30行制限

これでいこう
763名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:01:37 ID:Vb90+VQx
>>760
前妻のことも忘れて新しいの作ってるしな
764名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:03:10 ID:hb4ejE1O
たまに原作開始前から呼ばれてるのもあるな
765名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:04:20 ID:ATrpZl0g
>>739
ハーフエルフつながりでテファが召喚すればあるいは。

そういやラーズもいたな。あれほど勇者らしい勇者もめずらしいくらいな勇者。
766名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:18:44 ID:oBuFn/ys
>>762
勇者30にルイズのゼロを足して、300なんてタイトルはどうかな?
767名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:34:41 ID:j4EdlyrS
>>766
0ひとつ足しただけで
屈強なスパルタ兵が召喚されそうだなwww
768名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:34:50 ID:9IDSHl6s
いつも変わらぬ弱さ……ファーザー1世。
一日に約一度は死んで、翌日復活するという太陽神のごとき毎日を送る。
769名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:41:44 ID:joFBLFGy
>>767
「スパルター!」とか叫ぶ半裸マッチョが召喚されるのか。
しかし三百人は多すぎるから、クレイトスさん一人で妥協すべきか?

フーケのゴーレムにしがみつき、どんどん破壊していく姿が思い浮かぶ・・・
770名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:49:31 ID:hX0st3BI
>>767
ニューカッスル城正門で粘ってレコン・キスタが壊滅するんですね、解ります。
771名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 22:58:56 ID:oBuFn/ys
>>767>>769
300人を召喚することはできたのだが、30秒しか「スパルター!」モードにはなれない……とかw
772名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:11:53 ID:43mVH/Kr
スパルタ兵全員にガンダールブのルーン刻まれたら
戦闘力がどえらい事になりそうだな
773名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:12:57 ID:lkKGVm/0
サルーインみたいなラスボスキャラには強くてニューゲームとか関係ないような…

つかロマサガ世界のマルディアスは西より先がフロンティアなんだよな
ハオラーンは十分に「東から歩いてきました」で通る気がしないでもない
774名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:21:57 ID:R3QGixmb
沙耶は召喚されたというのに可憐な人は召喚される気配がない…。
どのタイミングで召喚しても何の問題もないよ!
775名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:26:57 ID:g8RrLDus
>>747
長嶋茂雄

>>750
「ド根性ガエル」の梅さん
776名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:30:33 ID:dDej/2UO
>>775
精神鍛錬の一環として、自衛隊に体験入隊をした巨人軍を召喚するのですね?
777名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:30:46 ID:CoKluYdE
魔導物語みたいにゲームの都合上レベルが設定されてるだけで
強さはそれ程変わってないってケースが適用できる作品はどれか
778名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:31:40 ID:vjN9t9xM
ちょうど今勇者300をやってるオレが参上。
ときのめがみ様のせいで異端扱いされそうだ。
779名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:36:20 ID:oBuFn/ys
>>778
やっぱり「スパルター!」とか言ってるの?
780名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:38:24 ID:OGexXkkv
召喚されるクロス先の作品キャラによってゼロ魔キャラが救済されるパターンはよくあるけど、
逆にゼロ魔キャラによってクロス先の作品キャラが救われるパターンはあるんだろうか?

瀕死の重傷や、あるいは救われない死に方をしたり、結界とか異次元とかに封じ込められていた
キャラがルイズの召喚によって救い出される、等々はあるんだが、このスレで召喚されるキャラは
大抵原作のサイトよりも強かったり、何かの特殊能力持ってたりするから想像つかん。
781ベルセルク・ゼロ:2009/09/02(水) 23:41:44 ID:xkQKR/cu
ども。久しぶりに書いたら楽しくなっちゃって止まらんね。26話、五分後くらいから投下します。
782名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:43:25 ID:ZdLtJ3UR
支援
783名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:43:27 ID:32QjMsUr
>780
そんな感じの企画はある。冒頭部分しか書きあがってないだけで。
784名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:44:22 ID:/eyWyDCL
>>765
ハーフエルフに勇者といわれると、どーしても魚屋が思い浮かぶんだが・・・
785ベルセルク・ゼロ26:2009/09/02(水) 23:45:10 ID:xkQKR/cu
 テーブルに並べられた豪華な料理。響く笑い声。溢れる人々の笑顔。
 ニューカッスルの城に到着したルイズ達は、その夜に開かれたこの最後の晩餐会に招待されていた。
 その華やかな席にあって、ルイズの顔は浮かないままだった。
 既にその手の中にはウェールズに託された手紙を持っている。任務は無事完了したのだ。
 いや、この手紙を無事にアンリエッタに届けて初めて完了したといえるのだが、とにかく最大の山場は越えた。
 にもかかわらず、ルイズの気持ちは晴れない。
 原因は目の前で楽しそうに談笑するアルビオンの兵士達だった。
 彼らは明日、圧倒的戦力差があるにも関わらず勇敢にも――或いは、無謀にも――貴族派の大軍に立ち向かって死ぬ。
 死ぬのだ。ルイズの目の前で心の底から笑っている彼らは。
 それは変えようのない事実。わずか三百に満たぬ王党派の兵たちが五万の反乱軍と戦闘を行えばもちろん死ぬ。
「どうして…笑っていられるの…? どうして…」
 彼らの明るい笑顔を見れば見るほど、逆にルイズの気持ちは沈んでいく。
 会場内に目線を走らせる。ウェールズがいた。ウェールズも笑っている。
 敵との圧倒的な戦力差をルイズ達に語って聞かせたのは、他でもないウェールズだった。
 アンリエッタの手紙をルイズに渡すときに死の覚悟を語ってみせた時も、ウェールズは笑っていた。
 ウェールズとアンリエッタが恋仲にあることは、手紙を扱うウェールズの様子から簡単にうかがい知れた。
 ルイズは止めたのだ。死に往く王子を。他ならぬアンリエッタのために、と。
 大使としての領分を超えて、恥も外聞もなく。
 それでも、ウェールズは困ったように笑うだけだった。
 これ以上ウェールズや目の前の人々の笑顔を見ているのが辛くなって、ルイズはパーティーの会場をこっそりと後にした。
786名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 23:48:37 ID:hX0st3BI
支援
787ベルセルク・ゼロ26:2009/09/02(水) 23:48:46 ID:xkQKR/cu
 ガッツは会場の隅っこで、壁に背を預けて何となく会場内の様子を眺めていた。
 決定的な負け戦を前にして、逃げることなくここに残った兵たち。
 それも、強制的にではない。先ほど、アルビオンの王ジェームズ一世はここに残った面々に避難することを勧めていた。
 彼らは自分の意志でここに残っている。自分の意志で死のうとしている。
 正直、ガッツには理解しがたい感覚だった。
「やあ、楽しんでもらえているかな?」
 ウェールズが話しかけてきた。
 差し出してきた杯を受け取り、軽く舐めるとウェールズは満足したように頷いた。
「しかし君の戦いぶりは凄まじかった。君のような兵士が我が隊に一人でもいたら……今の状況も少しは違っていたのかもな」
 ウェールズはガッツのすぐ傍に立てかけられた大剣『ドラゴンころし』をまじまじと見つめながら感嘆したように息を吐いた。
 そのままガッツの隣で壁に背を預ける。
「いいのかよ。王子様がこんな端っこにいて」
「構わないさ。もうあらかた酒は酌み交わしてきた」
 そう言うウェールズの頬はほんのり赤い。
 決して酒には弱くないウェールズではあったが、最後の決戦を前にした乱痴気騒ぎにいささか酒が回ってしまったらしかった。
「君も、僕達を愚かだと思うかい?」
 だから、ついこんなことを聞いてしまったのかもしれない。
 自分を引き止めようとしたルイズの必死な顔、愛しい愛しいアンリエッタの華やかな笑顔が交互にウェールズの頭の中を巡っている。
「ああ」
 あっさりと頷いて見せたガッツにウェールズはくつくつと笑ってみせた。
「はっきりと言うね」
 無礼な物言いにも腹は立たない。死を前にしたウェールズにとって、そんなことは瑣末なことだった。
「君は見たところ傭兵を生業としていたようだからね。貴族の誇りの考え方は馴染まないかもしれないな」
「別に傭兵だけやっていたわけじゃねえが…確かに貴族様の考えることはイマイチよくわかんねえな」
「ほう? 傭兵だけでないとすると、もしや騎士団に所属していたこともあったのかい?」
 ウェールズが目を丸くして聞いてくる。
 しまった。喋りすぎた。まさかこんなに食いついてくるとは。
 ガッツは露骨に顔をしかめ、目を輝かせてこちらを覗き込んでくるウェールズから顔を背けた。
「まあ…な」
「ほう! それは興味深い! 一体どこの騎士団に所属していたんだ!?」
「……」
「あ……」
 何も答えようとしないガッツの様子に、ウェールズはしまったという顔をした。
 これほど腕の立つ剣士だ。そこらの凡百な騎士団に収まっていたわけがない。
 それほどの男が、ここでこうしてルイズ嬢の使い魔をしているということは……おそらくは。
「すまない。思慮を欠いた発言だった」
 ウェールズは素直に頭を下げる。
 今度はガッツが目を丸くした。
 面倒だからウェールズの言葉を無視していただけなのに、この王子様は何か色々気を回してしまったらしい。
「君の騎士団は……もう無くなってしまったのだな」
 ウェールズはそう言って胸に手を当て、黙祷のような姿勢をとった。
「不肖の身ながら、冥福を祈らせて――」
「無くなっちゃいねえよ」
「え?」
 思わず、ガッツは口を開いていた。
「キャスカがいる。大将が生きてる限り、鷹の団は無くなったりしねえ」
 そうだ。俺たちの鷹の団は終わっていない。
 だから、鷹の団を名乗るあのクソッタレの化け物どもを俺は許さない。
 必ず、一匹残らず狩り殺して―――
「……ちっ」
 舌を鳴らす。余計なことを喋りすぎた。
「悪ぃな、もう俺は行くぜ」
 ぽかんと口を開けるウェールズを横目に、ガッツは会場を後にする。
「大将が生きている限り……無くならない?」
 残されたウェールズはぼんやりとガッツの言葉を繰り返していた。
788ベルセルク・ゼロ26:2009/09/02(水) 23:52:13 ID:xkQKR/cu
 会場を抜け出したルイズは薄暗い廊下をとぼとぼと歩いていた。
 窓から差し込む月の灯りに足を止める。見上げれば一つに重なった双月が夜空に浮かんでいた。
 なんとなく、寄り添う二つの月がアンリエッタとウェールズの姿に重なる。
 明日になれば月は離れ、そしてそれから交わることは二度とない。
 置いてけぼりにされた月は一体どんな気持ちになるのだろう。
 それを思うとルイズはたまらない気持ちになった。
「男の人って本当に馬鹿だわ。自分勝手。残された人のことなんて全然考えてない」
「うるせえ。大馬鹿野郎はてめえだろうが」
 突然背後から飛んできた声に振り返る。
 そこにいたのは船の上でルイズを睨んでいた、亜麻色の髪をぼさぼさに伸ばした少年だった。
 近くであらためて見ると本当に若い。幼さをその顔に残した少年は、もしかするとルイズよりも年下かもしれなかった。
「折角のパーティーで辛気臭え顔しやがって。その上途中でふけやがって、様子を見に来てみりゃ誇り高きアルビオンの勇者に向かって罵詈雑言」
 険しい顔で口を開いた少年は、一気にそこまでまくし立てると最後に息を大きく吸って、
「ホントに脳みそ入ってんのか!? あぁ!?」
 呆然とするルイズに向かってそう言い放った。
「なぁんですってぇ!?」
 一瞬でルイズの顔が怒りに染まる。
「馬鹿に馬鹿っていって何が悪いのよ馬鹿!!」
「なんだとぉ!!?」
 一度口を開けばもう止まらなかった。
「勝ち目のある戦ならまだいいわよ! でもないんでしょ!? それって自殺とどう違うのよ!!」
 腹の底に溜まり続け、ようやく出口を発見した鬱屈した気持ちが勢いよくルイズの口から飛び出していく。
「何が誇りよ! 誇りより命でしょ!!」
 仮にこの場にキュルケなどがいたら、顔を真っ赤にしてまくし立てるルイズを呆れ混じりに見ていただろう。
 自らの誇りのために、誰よりも先に危険へと立ち向かっていくのは他でもない、このルイズだ。
 そんなルイズが自分のことを棚にあげ、怒鳴り声を上げ続けている。
「てめ…いい加減に……!!」
 怒りに任せてルイズに掴みかかろうとした少年の足が止まった。
 ルイズの目から涙がぽろぽろと零れ落ちている。
「残される人の気持ちも……考えなさいよお………」
 ルイズの思い出の中で、アンリエッタは常に笑っている。
 いやだ。姫様の泣く顔は見たくない。
 それに、もっと単純に、死んで欲しくない。
 ウェールズにも、目の前の少年にも、会場で笑っていた全ての人たちにも。
「ちっ…」
 ひっく、ひっくと喉を鳴らすルイズに怒りを削がれた少年は不愉快そうに舌を鳴らす。
「ならお前は、戦いに行くやつの気持ちは考えたことあんのかよ」
 ルイズは零れる涙を拭うだけで、何も答えない。わかっているからだ。
 ルイズとて立派な貴族だ。いや、その精神の在り様は貴族の中の貴族といってもいい。
 だからわかる。きっと逆の立場だったなら、ルイズだって逃げ出したりはしない。
 少年はぼりぼりと頭を掻いた。
「死ぬことでしか示せない誇りもある。特に俺にとっちゃ、明日の戦は絶対に逃げ出すわけにはいかないんだ」
「どうして…?」
 ルイズは思わず聞き返していた。自分とそう年も変わらぬこの少年を死地に向かわせるものがなんなのか知りたかった。
「俺の父と姉は王党派の敗北が濃厚になった瞬間あっさりと国を捨てて亡命した。最低さ。地に落ちた俺の家の名誉は、残った俺が戦うことでしか取り戻せない」
 吐き捨てるように少年は言った。
 ルイズは何も言えなかった。
789ベルセルク・ゼロ26:2009/09/02(水) 23:55:12 ID:xkQKR/cu
 ごちん、といい音が響いた。
 ルイズが驚いて顔を上げると、がっしりした体躯の壮年のメイジが少年の頭を殴りつけていた。
「いってえ!! 何するんですか!!」
 立派な顎鬚をたくわえたその男は、涙目で抗議する少年の頭を掴み、無理やりルイズに向かって頭を下げさせる。
「全く、どこにいったのかと探してみれば友好国の大使を泣かせているなどと…何を考えているんだお前は!!」
「ち、違います!! それはコイツが……!!」
「何たる口の利き方だあ!!!!」
 問答無用で殴られる。ルイズは慌てて止めに入った。
「だ、大丈夫です! 特に何かされたわけではありませんし、非はどちらかというとこちらにあったので……謝罪するべきはむしろ私のほうなのです」
「おお、頭をお上げください大使殿。全く、大使殿の温情に感謝しろ! 行くぞ! 殿下がお呼びだ!!」
「痛い痛い! 耳を引っ張らないで!!」
 壮年のメイジに連れられ、少年はその場を去っていく。
「待って!」
 ルイズは少年を呼び止めた。
「あなた、名前は?」
「アレン。アレン・ヴァルカモニカ」
 何だか――聞き覚えがあるような。ルイズが首を傾げている間に、少年達の姿は廊下の向こうに消えていく。
「あッ!!!!」
 少年達が完全に立ち去ってからルイズは声を上げた。

『俺の父と姉は――――』

 道理で少年の顔に見覚えがあるはずだ。
 トリステインからラ・ロシェールへ向かう道中、盗賊の手から助けた少女の名が確か。
 メリッサ・ヴァルカモニカ。
790ベルセルク・ゼロ26:2009/09/02(水) 23:58:28 ID:xkQKR/cu
「まったく、大切なお客人に…一体何を考えているんだお前は」
 ウェールズ達が待つ部屋へ向かう途中、壮年のメイジはアレンと名乗った少年の頭をあらためて小突いた。
 壮年のメイジの名はバリー・イベルドン。『爆熱』の二つ名を持つスクウェア・メイジだ。
「すいません…でも、あいつらは船でたくさんの仲間を殺した。……友好的になんて、俺には無理です」
 アレンは悔しそうに唇を歪める。
「皆…せめて、反乱軍と戦って散りたかっただろうに……!」
 ばこん、とバリーは三度アレンの頭を殴りつける。
「痛い!」
「いいかアレン。どこで死んだのかなんてのはどうでもいいんだ。あいつらは殿下をお守りするために立派に戦って死んでいった。
 明日、アルビオンのために死んでいく連中と何が違う? お前がそんな風に言うってことはな、アレン。逆にあいつらの誇り高い死に泥を塗ることになるんだぞ」
 バリーは真剣な顔でアレンを見据え、叱り付ける。
「そ、そんな……」
 バリーの叱責でようやくそのことに思い至ったアレンはがっくりと肩を落とし、己の浅慮を恥じた。
「まあお前はまだガキだ。怒りが先行しちまうのもしょうがねえ」
「でも……俺は自分が恥ずかしいです」
「ほれ、そんなことよりシャキシャキ歩け! 殿下がお待ちになってるんだぞ!!」
 そう言って今度はアレンの尻をひっぱたく。
 このバリーという男、何とも豪快な気質をしているらしかった。
「殿下が俺なんかに一体何の用なんです?」
「それは殿下に直接聞け! さあ、この部屋だ」
 失礼いたします、と騎士の礼をもってアレンは部屋に入室する。
「やあ、待っていたよ」
「お待たせして申し訳ありません―――で、殿下!?」
 一礼をしてウェールズの姿を認めたアレンは、思わず狼狽の声を上げていた。
「で、殿下、その格好は……?」
 ウェールズは先ほどまでパーティーで身につけていた王族の衣装を脱ぎ去り、黒を基調とした麻の服で身を包んでいた。
 その上にフードのついた黒いマントを羽織り、あろうことかその頭には空賊に扮していた時に使っていたカツラまで被っている。
「そ、それはどういった余興で?」
 混乱するアレンを落ち着かせるようにウェールズは柔らかく微笑み、言った。
「今晩、私はこのアルビオンを脱出する。君も来るんだアレン・ヴァルカモニカ」
「なッ!!?」
 アレンの顔が驚愕に歪む。
 ウェールズはその顔にいささかの乱れも見せず、アレンを見据えていた。
791ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:01:35 ID:Uo6zE09Q
 遡ること十分前。
 ウェールズはその瞳に硬い決意を宿し、父であり、王であるジェームズ一世の前に跪いていた。
 その部屋には二人の他に誰もいない。まだ誰にも聞かせるわけにはいかぬとウェールズが人払いを命じたのだ。
 ウェールズの話を聞いてからじっと目を瞑っていたジェームズ一世は、ゆっくりとその目を開き、ウェールズを見据えた。
「……本気か?」
「はい」
 ウェールズの声には一切の乱れなく、その決意の固さを思わせる。
「私は今晩のうちにアルビオンを発ち、そのまま身を隠します。王家の血筋が生き残ればアルビオンは絶えない。滅びない。
 今は一時反乱軍の手に落ちようとも、いつか必ず私の手で取り戻す。そのためにも、私はここで死ぬわけにはいかないのです」
 ジェームズ一世は、自分を真っ直ぐに見据えてくる我が子の瞳をじっと見つめた。
 その目に恐怖はない。明日の死に臆したわけではない。
 つまり本気なのだ。息子は心からアルビオンを滅ぼさせぬためにこんな提案をしている。
 簡単に決めたわけではないだろう。その結論に至るために、どれほど煩悶したのか想像に難くない。
 ジェームズ一世はしばらくウェールズの目を見つめたあと、再び目を閉じてゆっくりと息を吐いた。
「……その道は茨の道ぞ」
「承知しております」
「逃げれば臆病な王子と罵りを受けよう。国を捨てたと蔑まれよう」
「覚悟の上」
「ならば老いたわしより言える事はもうない」
 ジェームズ一世は椅子から立ち上がり、
「これよりアルビオンの王はお前だ、ウェールズ」
 我が子にその王位を継承した。
792ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:03:54 ID:Uo6zE09Q
「すまんな」
 簡易的な王位継承の儀を終えて、ジェームズ一世の口から最初に出たのは詫びの言葉だった。
「これでお前一人にアルビオンの全てを背負わせることになる。お前がこれから歩む道は明日死ぬことより遥かに困難なものとなろう」
「何を仰いますやら」
 ウェールズは笑った。
「謝るのはこちらですよ。何しろ私は明日のアルビオンの意地と底力を見せる重要な戦を全て父上に丸投げしようとしているのですから」
「ぬかしおる」
「その上、三百にも満たぬ我らの手勢から貴重な戦力を抜いていこうと考えているのですからね」
「誰を連れて行く?」
「『爆熱』のバリーを頂きたい。そのメイジとしての技量は元より、彼は各国にたくさんの繋がりを持っている」
「ならばアレン・ヴァルカモニカも連れて行け。ヤツは齢15にして既にそのレベルはトライアングルに達しておる。足手纏いにはならんはずだ。
 なにより、ヤツは明日の負け戦に付きあわせるには若すぎる」
 ウェールズは頷いた。
「元よりそのつもりです」
 部屋を出ようとするウェールズを呼び止め、ジェームズ一世はその場に跪く。
 そして――この国に代々伝わる祈りの言葉を口にした。
「新たな王に、光の鷹の御加護があらんことを」
793ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:06:09 ID:Uo6zE09Q
 アレンは震えていた。信じたくなかった。
 あの誇り高いウェールズが、あの臆病な父と姉と同類だなんて。
「……逃げろっていうんですか」
 ウェールズの顔を見れない。視線を足元に落としたまま、アレンは喉から声を絞り出した。
「そうではない。生きろと言っているのだ」
 一緒だそんなもの。ただの言葉遊びではないか。
「嫌です。明日の、アルビオン最後の戦を前にして逃げるなんて俺には出来ない」
「最後にはならぬ」
 アレンは思わず顔を上げた。ウェールズを見た。ウェールズの顔はどこまでも真剣だった。
「アレン・ヴァルカモニカ。アルビオンとは何だ?」
 余りにも抽象的な問いにアレンは首を傾げる。
 ウェールズはアレンの言葉を待っている。
「俺たちが育った国の名前です」
 アレンはやっとの思いでそれだけの答えを捻り出した。
「そうだ。では国とは何だ?」
 今度こそわからない。アレンは言葉に詰まる。ウェールズは今度は待たなかった。
「国の名はその土地に冠するものか? 或いは城か? そうではない。我々だ。アルビオンとは我々なのだ」
 アレンはごくりと唾を飲む。わかってきた。ウェールズが何を言いたいのか。
「アルビオンは滅びぬ。アレン・ヴァルカモニカ」
 このお方は――この絶望的な状況にあって――勝つつもりなのだ。
 どれ程時間がかかろうと、どれ程辛酸を舐めようと、どれ程泥をすすろうと。

「アルビオンを背負う覚悟があるか?」
794名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:07:43 ID:uvlVz8RK
支援

次スレ準備します
795ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:08:46 ID:Uo6zE09Q
 既に皆が寝入った深夜。
 出発を前に、ウェールズ達は始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂を訪れていた。
 始祖ブリミルの像を前に、ウェールズ、アレン、バリーの三人は手を合わせ、跪き、これからの旅の無事を祈願する。
 半ば以上、皆を残して生き残ることへの贖罪の気持ちもあった。
 そんな想いが三人の祈りを長くした。一分、二分とたっても誰も立ち上がろうとはしない。
 祈りを止める切欠となったのはドアが開く音だった。
「失礼、邪魔をしてしまったかな」
 頭を下げながら礼拝堂に入ってきたのはトリステインからやってきた長髪のメイジ、ワルドだった。
「…って、殿下ではないですか。その出で立ちはどうしたことです?」
 ワルドは祈りを捧げていたのがウェールズだったことに気がつくと、目を丸くした。
 というのも、ウェールズは再び空賊の頭領に扮していたからだ。
「これはまずいところを見られてしまったな」
 ウェールズは苦笑しながら立ち上がる。
 ワルドはウェールズの目の前まで歩み寄るとにやりと笑った。
「まさかまた憎き空賊の頭領と相見えることになるとは思いませんでしたよ。して、これはなんの余興です?」
 どうやらワルドはウェールズの扮装をパーティーでの余興と考えているらしい。
 好都合だった。今夜出立することはなるべくなら誰にも知られたくない。
「情けないことに明日の戦を控えて震えが止まらなくてね。この扮装をしていたときは不思議と気が大きくなっていたから、ちょっと着てみたのさ。悲しいことに、効果はなかったがね」
「ははは、殿下ほどの方なら明日になれば自然と震えも収まりましょう。おや、よく見れば後ろの少年は随分とお若い様子」
 アレンの肩がびくりと震えた。不審な動きをしてはならぬ、してはならぬと言い聞かせるほどアレンの額からは汗がダラダラと零れ落ちる。
「彼もまた、明日の戦に?」
「ああ。彼こそアルビオンが誇る真の勇者だ」
「…願わくば、彼に始祖ブリミルの御加護があらんことを」
 ワルドは神妙な面持ちになり、ウェールズ達が先ほどまで拝んでいたブリミルの像に向かって手を合わせた。
 アレンはほっと息を吐く。どうやら感づかれてはいないようだ。
「では、ワルド子爵。我々はこれで」
「ああ、殿下。少々お待ちを。実は私殿下をお探ししていたのです」
 立ち去ろうとしたウェールズをワルドが呼び止める。
 ぎくりとアレンの肩が震えた。バリーがアレンの後頭部を叩く。
「何かな?」
「恐れながら殿下にお願いしたい儀がございまして」
「ふむ、その儀とは?」
「トリステイン大使ルイズ・フランソワーズとこの私ワルドとの婚姻の儀」
「実にめでたい。喜んでその役目引き受けたいところではあるが、申し訳ないワルド子爵。私はこれからやらねばならぬことがあるのだ」
「いえいえ、もちろんこんな夜も更けた今からとは申しませぬ。明日の朝、ほんの三十分ほど時間をいただければ」
「すまぬな、私は忙しい。折角そのような大役を任せてくれようとしてくれたのに、申し訳ない。心よりお詫び申し上げる」
「いえいえ殿下! このお忙しいときにこんなことを申し上げた私の方が悪いのです! お顔をお上げください!!」
 深々と頭を下げたウェールズにワルドは慌てた。
「では、そういうことなので、これで」
 ウェールズは今度こそ部屋を後にしようと歩みだす。
 露骨にほっと息を吐いたアレンの頭にバリーの拳が飛んだ。
796名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:09:34 ID:o3wa9vmD
光の鷹って…えぇ?
支援
797ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:11:53 ID:Uo6zE09Q
「道中、お気をつけて」
 背中にかけられたワルドの声。
 ぎくり、とウェールズ達の足が止まった。
「ど、どういう意味だ!」
 思わず声を荒げてしまったアレンの尻をバリーが蹴り上げる。
「気をつけるも何も……」
 ウェールズは落ち着いた声で言った。
「これから自室に戻るだけだ。ものの数分もかからない。何も問題は起こるまいよ」
「おや、自室に戻られるのですか。お忙しいと申しましたから、てっきりこれから軍議かと」
 ウェールズはぐっ、と一瞬声を詰まらせるも、
「この扮装を解きに一度立ち寄るだけだよ」
 そう咄嗟に切り替えした。
「部屋で着替えて、礼拝堂まで来ねば扮装による精神安定効果ははかれませんでしたかな?」
「ああ、存外小心者でね。この格好で歩き回ればあるいは、と思ったのだよ」
 いかにも苦しい言い訳だ。語れば語るほど今の自分達の状況、その異質さを曝け出してしまっている。
 だがこの男はどういうつもりでこんなことを言っているのか。
 ウェールズが慎重にワルドの思惑を図っていると、ワルドはくつくつと笑い出した。
「いや、失礼。殿下達に意地悪するつもりではなかったのですが、つい興が乗ってしまいました。ご安心下さい、私は誰にも喋りません」
「しゃ、喋らないって何をだよ!!」
 ウェールズはワルドに食って掛かったアレンの肩に手を乗せる。
「もうよい、子爵は恐らく全て気付いておられる。そうであろう?」
「殿下たちは今夜のうちにアルビオンを離れるおつもりでしょう?」
 ウェールズの言うとおりだった。ワルドは既にウェールズ達の思惑に気付いている。
「子爵、貴殿の頼みは断っておいて大変に恐縮なのだが、折り入ってお願いがある」
「先ほども申し上げました。私は誰にも喋りません。ご安心を」
「感謝する。この恩は忘れない」
 ウェールズはワルドに深々と頭を下げた。
「では、我々はこれで」
「ああ、殿下。最後にひとつ、恐れ多くも殿下にご忠告を」
 三度ウェールズはその足を止め、ワルドの方を振り返る。
「聞こう」
「殿下が歩もうとしているのは長く苦しい修羅の道。頼る者なき孤独の道。裏切り者と謗りを受け、殿下の周りは敵ばかりとなりましょう。
 くれぐれもその背中にはお気をつけ下さい。殿下を狙う刺客は、いつどこに現れるかわかりません」
「覚えておく」
 ウェールズはワルドにそう言い残して振り返った。

 目の前に白い仮面を被った男が立っていた。

「な、何者!!」
 ウェールズ、バリー、アレンは咄嗟にその腰帯に差していた魔法の杖を抜く。
 どす、と肉を突き刺す音がウェールズの耳に届いた。
 視線を落とす。自分の胸から鋭い刃が生えている。
「え?」
 振り返る。ワルドが笑っていた。
「おやおや、忠告したばかりではありませんか」
 ウェールズに突き刺した魔法の杖を少し動かし、ウェールズの心臓を裂く。
 つぷ、と音を立てて杖が引き抜かれたその穴から、噴水のように血が噴き出した。
「背中には気をつけろ、と」
 どう、と音を立ててウェールズの体が崩れ落ちる。
 驚愕に見開かれたその目はもはやどこも見ておらず、
「殿下ぁーーーーー!!!!!!」
 アレンとバリーの絶叫が礼拝堂に響き渡った。

>>794 ゴメン、ありがとう。残りKB数全然見てなかった。あと2回で今回分終了。ギリギリいけるか…?
798名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:13:47 ID:uvlVz8RK
容量ヤバイんで新スレ立ててきます。
799ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:14:30 ID:Uo6zE09Q
 ぴちゃん、ぴちゃんと水の音。
 ワルドの持つ杖から赤い液体が滴っている。
 その足元に転がる3つの肉の塊。生きていた頃の名はそれぞれウェールズ、バリー、アレンといった。
 カタン、と物音。
 ワルドが音のした方に目を向ければ、桃色の髪の少女が立ちすくんでいた。
「ワルド…? これは一体どういうことなの……?」
 ワルドはふっ、と柔らかい笑みをその顔に浮かべると、やれやれと首をふった。
 ああ、ルイズ。君はなんとまあ、間の悪い。こんなところを見られては、誤魔化し様がないじゃないか。
「ルイズ、君はどうしてここに?」
「ね、眠れなくて散歩してたらたまたま……じゃなくって! そこに倒れているのは殿下なの!?」
「賊が侵入してきたんだ。何とか僕が追い払ったんだけど、殿下たちは助けることが出来なかった」
「嘘っ!! じゃああなたのその姿は何!?」
 言われてワルドは自分の姿に目を落とす。ウェールズ達の返り血で真っ赤だ。
「賊を撃退したときについたんだな」
「嘘っ!! 嘘嘘!!!! じゃあ賊はどこにいるの!! 逃げたの!? 血の跡は貴方の周りにしかついていないじゃない!!!!」
 ああ、確かにそうだ。これほどの返り血を浴びるほど賊にダメージを与えたなら、逃げたときの血痕がどこかについていないとおかしいね。
 賢しいな、ルイズ。君のそんなところも素敵だよ。
「ルイズ、結婚しよう」
「ふざけないで!!!!」
 駄目元で言ってみた一言はあっさりと断られてしまった。なら、しかたない。
 ワルドの目が冷たく光る。
 ―――多少手荒に行かざるを得ないな。
「誰か!!」
 叫びながらルイズは礼拝堂の出口へ振り返る。
「ひっ!」
 すぐ目の前に、白い仮面を被った男が立っていた。
 首筋に衝撃。目の前が黒く塗りつぶされていく。
 消えゆく意識の中で、

 ガッツ――――――!!!!

 ルイズは彼の名を呼んでいた。
800798:2009/09/03(木) 00:15:57 ID:uvlVz8RK
ホスト規制で失敗したので誰かお願いします。
801名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:16:47 ID:zvJ+3jtG
おし。
802ベルセルク・ゼロ26:2009/09/03(木) 00:16:54 ID:Uo6zE09Q
 ワルドは裏切り者だった。
 現在アルビオンと交戦している『レコンキスタ』、その一員。それがワルドの正体。
 この旅におけるワルドの目的は3つあった。
 ウェールズの命。アンリエッタの手紙。
 そして―――ワルドはその腕の中で眠るルイズを熱の篭った目で見つめる。
「ルイズ、君はいずれ素晴らしいメイジになれる。この世界を手に入れ得る、大いなるメイジに」
 ワルドにはいかなる故かその確信があった。だからワルドはルイズとの結婚にあれ程固執していた。
 出来れば自らの虜とすることで傀儡にしたかったが、こうなってしまった以上は仕方がない。
 精神への影響は気になるが、心を操る類の魔法薬にも心当たりはある。
 ワルドの3つ目の目的は、ルイズを手に入れること。そしてそれもこうやって達成した。
「さて、では早いところお暇せねばな。ウェールズの死体が王国の者に見つかっては厄介なことになる」
 そう呟きながら礼拝堂の入り口に目を向けたワルドの足が止まる。
「くっ……くっくっく」
 思わず笑いがこみ上げて来た。
「いつもいつも、まるでヒーローのようなタイミングでご主人様の前に現れる。使い魔の鏡だな、君は」
 ワルドの視線の先では、鉄塊を背負った黒い剣士が佇んでいた。
「別にてめえが本当はどこの誰で何をしようが知ったこっちゃねえが……」
 ゆっくりと、一歩一歩礼拝堂の中に歩み出て、
「その女は置いていってもらうぜ」
 ガッツはドラゴンころしをその手に握った。
「よかろう、君にはもう2度も煮え湯を飲まされている」
 ラ・ロシェールでの決闘。『桟橋』へ向かう途中、仮面の男として現れたときの一戦。
 ワルドはルイズの体を床に横たえると、収めていた魔法の杖を抜き、構えた。
「第3ラウンドだ!! 三度目の正直といこうじゃないか!!」
 その叫びと共に、4人のワルドがワルドの周囲に現れた。
803名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:18:49 ID:zvJ+3jtG
おし。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part250
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1251904687/
804ベルセルク・ゼロ:2009/09/03(木) 00:19:19 ID:Uo6zE09Q
ギリギリいけた。今回はマジ失態だった。次スレ本来は俺が立てるべきだよね。
マジで迷惑かけた。すまねー。
805名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:20:15 ID:M+dZduGI
乙です
持ち上げて持ち上げて
どーん!
やはりこれこそベルセルク・ゼロ
806名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:21:23 ID:o3wa9vmD
ガッツの人乙&GJ!
何故だろうワルドの勝つ姿が想像出来んw
807名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:30:42 ID:uvlVz8RK
>>803


遅れましたが有り難うございます
808名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:52:14 ID:7pLk2Asa
希望が出てくるのは絶望の予告さすがベルセルク
809名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:57:03 ID:0ItHUdAd
>>726
ゼロ魔に当てはめるとどうしてもキュルケのテーマになってしまう。
810名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:57:38 ID:SWkncvfg
ベルセルクの人乙っす!
まさか1日に2回も投稿してくれるとはww
811残り滓の使い魔-07:2009/09/03(木) 01:03:36 ID:ZzBjDcrT
「諸君、決闘だ!!」
ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある、中庭である。西側にある広場なので、そこは日中でも陽射しが弱く、私闘にはうってつけの場所である。
しかし今は、噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっていた。
よく見れば周囲の建物の窓からメイドたちも顔を出している。
「さて、君にはたっぷりと教育が必要だね・・・」
ギーシュがバラの造花を掲げると、周囲からは歓声が巻き起こる。彼の目の前に立つ少年、坂井悠二は、自分が置かれている現状を理解しきれず、困惑している様子。そして、当のギーシュは言うと、獲物を痛めつけることに快楽を覚えた獣のごとき視線を向けていた。
「あの〜」
悠二は取りあえず、目の前に立ちはだかるギーシュに話しかける。
「なんだね?何か良い残すことでもあるのかね?」
「いや、僕は決闘しようなんて考えてもないし・・・」
「フン、流石はゼロのルイズの使い魔だ!!この期に及んで怯えて命乞いかい?」
ゼロのルイズ・・・明らかな侮蔑を含んだ言葉に、悠二の顔に僅かに怒りが浮かぶ。
「そもそも、君があの時、機転を利かせていればあんな事にはならなかったんだよ?貴族への接し方も知らないなんて・・・公爵家の御令嬢とはいえ、ついに使い魔のしつけまでゼロときたか!!」
尚もやめる事のないルイズへの侮辱。気付けば、周囲の人間の声も、使い魔である悠二への罵声からルイズの侮辱へと変わっている。悠二は静かにそれを聞きながらも、拳に入れていた力を増す。
「さて、決闘とは言ったが・・・この青銅のギーシュも、流石に丸腰の平民相手に本気を出す気は無い。ここは、この場へ望んだ君への勇気を称えて、ささやかなプレゼントを贈ろうじゃないか。」
そう言ってギーシュは手に持った造花を一振り。花弁が一枚、悠二の前へと舞い落ちる。そして、錬金の魔法の発動と共に、一本の剣が地面に立つ。
「さて、それじゃ僕も準備といくか・・・」
再び造花を振るい、一枚の花弁を落とす。そこから現れたのは、青銅の甲冑を纏った女戦士の人形――ゴーレムである。
「見たか!これぞ青銅のギーシュの美しきゴーレム、ワルキューレだ!!」
現れたワルキューレを前に気を引き締める悠二。意を決して、地面に突き刺さった剣を抜いた・・・・・



812残り滓の使い魔-07
「ちょっと!!どいてってば!!」
その頃、自分の使い魔を決闘の場に無理矢理連行されたルイズは、人ごみの外から決闘を止めるべく中央の広場に入ろうとしていたのだが、ルイズの小柄な体型では人ごみに入ることすらままならない。
「全く!!あの馬鹿使い魔!!!」
「あらあら・・・ルイズの使い魔も大変ねぇ。」
その様を嫌みたらしく見下ろすのは、ルイズの一族が宿敵、ツェルプルトー家のキュルケである。彼女はレビテーションで自らの身体を浮かせてルイズと同じく人ごみの外から決闘の様子を見ていた。
「余計なお世話よ!!ツェルプルトー!!!」
「まあまあ、そう怒らないの。ギーシュだって、平民相手に殺しにかかることはないでしょ。いざとなったら、私が止めてあげるから安心なさい。」
「誰があなたなんかに頼むもんですか!!!」
一方的に怒りをぶつけるルイズの叫びを華麗にスルーするキュルケ。そしてその場にもう一人、キュルケよりも高い位置にレビテーションで浮かび上がり、決闘を見下ろす少女が居た。
「あらタバサ、あなたがこんな事に興味をもつなんて、珍しいじゃない。」
キュルケの隣に浮かびあがっているのは、親友のタバサ。自分の身長よりも長い杖を持ち、決闘の様子を見下ろす・・・
「あの使い魔、普通の平民じゃない・・・」
彼女達二人の視線の先では、決闘が始まっていた・・・