あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part248
1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part247
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1250168721/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 `ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>>1乙
4ならセルベリアちゃん、
5ならアニューを召喚する
5ならジェッターズのゼロ召還
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 23:02:32 ID:TaL4IPhO
残念ながらageながらリクエストされた作品は投下されないんだ……嘘だけど
>>1 乙
>>4 アニューならラクスとヘンケン艦長もオプションで欲しいな
セブルス・スネイプを召喚するものを誰か書いてくれないものか
バラダット・ナイブスを召喚して欲しい
魔法使いを召喚してしまうSSがありますけど、ゼロ魔と相性の良い、もしくは悪い魔法ってどんなのがありますかね?
精霊の力を借りるタイプの魔法だと、それがばれた瞬間に排斥されそうなイメージがありますけど……逆にルーンを使ったものやソードワールドの古代語魔法あたりは似た効果があるから相性が良さそうにも思えますし。
>>16 どこをどう間違えたのかミリオンズ・ナイブズが来てしまいました
最高にうってつけなのはハリポタ
今までハンターハンターのキャラが召喚されたssってあった?
なかったら誰か書いてくれ
実は精霊魔法なディスガイア
オメガ以上のランクじゃないと精霊関わってこないけどね!
>>17 魔法はブリミル教にも関わってくるから、基本的にゼロ魔の五つの系統魔法以外はすべてだめだと思う。
困ったときの「東方出身」設定……だけじゃダメかな
東方人は殺してもいい異教徒なのか
東方人なら仕方が無いで済まされるのかは不明だが
学院内に限定すれば、美人だからエルフでもおkなくらい緩い信仰心みたいだし
教会に知られても、ガンダールブだから教皇がそれなりに便宜を図ってくれるだろうし
平民にまで魔法を広げる、とかしなければ大抵は問題ないと思う
>>20 テファがクロロ召喚
ジョゼフがパクノダ召喚ならあった気がする。
ルイズはなかったような…
ルイズはシャウアプフ召喚の小ネタがあった
>>18 人間に使われるために呼ばれたと理解したら即皆殺しじゃねーか
せめてテファなら半分人間じゃないしなんとか……なったらいいなあ
>>17 つ 尻から出る魔法
絶対にシリアス系イベントは台無し。
尻ASS系イベントになってしまうからな。
>>27 ヴァッシュと和解後ならまあ皆殺しはしないと思う。
和解しても貴族と平民の関係を見てまた粛清しようと考えないかは微妙かと思う
魔法っていったら天使禁猟区の天使や魔族の力も一括で属性魔法扱いだったような。
火水風土の範疇外の属性のアレクシエルorロシエル召喚は
原作終了後だとアレクシエルは妊婦でロシエルはまだお腹の中だからむりぽ。
境遇的にも性格的にも一番相性よさげなのは九雷辺りかね。
>>29 魔法を使うたびにみさくら語で悶えるR18指定状態なルイズを想像してしまった
>>18 『惑星をつぐ者』(ほしをつぐもの)って知らない?
その主人公バラダットが使う「自在剣(スパイラル・ナイフ)」ならルイズも満足できるんじゃねぇかって思った
ジャンプで打ち切られた漫画しか知らないわ
>>どこをどう間違えたのかミリオンズ・ナイブズが来てしまいました
ティファが呼んだらレコンキスタが即乗っ取られて少数精鋭の異能殺戮集団に生まれ変わる訳ですね
戦闘を何か別のものに変えてもいいだろうか
例えば麻雀とか対7万も麻雀で
鷲津麻雀で金の代わりに兵士で支払うのか。
最近の麻雀はブッシュ元大統領を殺す威力を持ってるしな
麻雀小説ってムズそうだなw
漫画とかならスパっと頭に入ってくるからいいけど。
文章だとめんどくさすぎるw
点−F15?
先生! 左足で虹を描くのは魔法に入りますよね?
>>34 面白い漫画を挙げる系のスレで結構出る打ち切り漫画だっけ?
『ヤンデレの使い魔に死ぬほど愛されて眠れないギーシュ』
一発ネタにしかならねえなあ
>>34 どっちかっつーと、メロウスの方が良さそーな?
……ワルドが『遅めのランチ』にされてしまうか
アンリエッタ「点-虚無一人ですか、いいでしょう」
ジョゼフ「ニヤリ」
>>37 先生! それはツモるだけで一話を使ったりするんですか?
そして休載期間中に悪の親玉が人生相談の受け答えをして、好感度を上げたりするんでしょうか?
ASSがSSAに見えててっきりレッドアイズかと
アレは…技師がいないと色々と大変なのでは。
「私は常に強い者の味方だ!!」
塩沢さん…… orz
塩沢キャラって結構召喚されてるな
小ネタでぶりぶりざえもん・オーベルシュタイン、更新止まってるけど長編の吸血鬼ハンターDなど
あとは壷の人が来れば
塩沢キャラか、黒の断章から杜松とか
ラングリッサーVから、アルテミュラー閣下とかは呼ばれてないな……
>>45 「私の部屋は物で溢れています。とにかく物を捨てることができません(中略)
これまでにジョゼフ様が捨てて良かった!と思ったものは何ですか?」
(トリステイン・4X歳・炎蛇)
ジョゼフ「童貞……何を言わすんじゃ〜」
とな?
>>51 いまだにぶりざえとオーベルシュタイン元帥が同じ人とは信じられない。
声優さんてすごいよなあ。
もしご存命なら、ゼロ魔だったらヴィットーリオあたりのの役をやってくれていたかも。
56 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:05:14 ID:hfBPgrKs
お久しぶりです
予約等なければ五分後くらいから投下したいです
57 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:10:12 ID:hfBPgrKs
第二十話
ルイズたちが船倉で途方に暮れている頃、空賊船の船長室では、空賊の頭を名乗った男と、杖を持ったタバサとが、船長の机を挟んで対峙していた。
扉の外から突然現れた謎の人物に、男は一瞬驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻し、机に置いてあった杖を構えた。
一方のタバサは、開いていた扉をゆっくりと閉めると、手に持った杖すら構えずに立ち尽くしたまま、微動だにしない。
部屋に侵入しておきながら依然として動きをみせない少女をいぶかしみながら、男は口を開いた。
「お前、一体何者だ?」
「私はトリステイン王国の王女、アンリエッタ様の遣いの者。ウェールズ皇太子、あなたに用がある」
侵入者にいきなり皇太子と呼ばれた男は、一瞬その顔をしかめる。
しかしすぐに余裕の笑みを見せると、タバサに言葉を投げ返した。
「俺がウェールズ皇太子? 馬鹿を言っちゃいけねえ」
「隠しても無駄。その程度の変装では、私の目は誤魔化せない」
声色一つ、表情すら変えないタバサに、男は笑うのをやめ、黙りこくる。
なんだか何もかも見透かされているような気がしてならないと、男は目の前にある二つの青い瞳を見て、そう思わざるをえなかったのだ。
しばらくにらみ合いを続けた後、男は真剣な顔つきでタバサに問いかけた。
「仮に俺がウェールズ皇太子だったら、どうすると言うんだね?」
「トリステイン女王があなたに宛てた密書を預かっている。それを届けに来た」
空賊の頭が再びいぶかしむような表情を見せる。
「……ほう。で、その密書とやらは?」
「手元にはない。閉じ込められた仲間が持っている。案内してほしい」
「おいおい、そんな言葉だけで使者だと信じろってのか? そりゃあ無理があるってもんだぜ」
はっ、と笑い、タバサに向けて小馬鹿にしたような表情を浮かべる男。しかし、その眼は笑っていなかった。
「あなたに拒否権はない。私の言う通りにしてもらう」
男が自分を信じようが信じまいがお構い無し、といった口調で、タバサが言い切った。
支援
59 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:11:24 ID:hfBPgrKs
流石に空賊の長としてのプライドが許さなかったのか、男は顔に怒りの色を浮かばせながら、杖を少女に向かって振り上げた。
ここまで挑発しておきながら、いまだに杖すら動かさない少女に疑問を抱きつつも、男は呪文を詠唱していく。
間もなく呪文が完成しようとしたところで、突然男の背中に強い衝撃が加えられた。そのあまりの勢いに、男は床に打ち倒され、持っていた杖を取り落としてしまった。
何事か、と後ろを振り返ってみたものの、そこにはガラス張りの窓があるだけであった。
足元に転がってきた杖を拾い上げると、つかつかと男の元へ歩み寄るタバサ。起き上がろうとしている男と視線が合ったところで、彼女の口が開かれた。
「もう一度言う。私を仲間のところへ案内してほしい」
――――――――――――
「いつまでここにいればいいのかしら……」
古びた木の床の上に座り込み、つまらなそうに頬杖を突きながら、キュルケがため息混じりに呟いた。
空賊に捕らえられ、この薄暗い船倉に閉じ込められてから小一時間。あれから議論は進展することなく、未だ脱出の算段がつかずにいた。何しろ杖を取り上げられているのだから、メイジであるキュルケたちにはどうしようもできないのである。
唯一の戦力であるはずのルイズの使い魔、浅倉は、床に寝転がってすっかり熟睡しきっていた。ワルドはひとり思慮にふけっているし、ルイズとギーシュは今もなお無駄な議論を続けている。タバサに至っては行方不明だ。
(ま、あの子なら大丈夫でしょうけど)
青髪の少女の姿を脳裏に浮かべながら、キュルケは心の中で呟いた。機転のきく彼女のことだ。ならず者たちに捕まることなく、無事に逃げおおせただろう。魔法の実力も申し分ないし、何よりあの不思議な力があるのだ。
もしかしたら、私たちを救う手立てを探るくらいの余裕があるのかもしれない。手も足も出ないこの現状を打ち破ることができるのは、もはやタバサ以外にいないだろう。
(……ごちゃごちゃ考えてても仕方ないし、私も少し眠らせてもらおうかしら)
眠っている浅倉に目をやりながら、キュルケは大きく背伸びをした。そして、置かれていた木箱に寄りかかろうとした、ちょうどその時。
不意に、目の前の扉が開かれた。
60 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:13:19 ID:hfBPgrKs
「タバサ!」
半開きの扉からひょっこりと現れた人影に、キュルケは思わず叫んだ。
「お、おどかさないでくれよタバサ……」
「よかった! 無事だったのね!」
ギーシュとルイズがそれぞれ安堵の言葉を口にする。ワルドは黙ったままだが、こわばっていた表情が幾分か和らいで見えた。
「ここまで無事に来れたってことは、空賊たちをどうにかして追い払えた……ってことでいいのかしら?」
「そのことだけど」
タバサが半開きだった扉を押し開くと、そこには一人の男が立っていた。
紛れもない、空賊の頭を名乗った男である。
「な、なんであんたがタバサと……」
ルイズたちが唖然とした表情で男の顔を捉えた。和みかけていた部屋の雰囲気が、再びはりつめたものに変わっていく。
「ここまで案内してもらった。今の彼に、私たちをどうにかできる力はない」
そう言って、タバサは一本の杖を取り出した。空賊の頭を名乗る男が、苦々しい表情を浮かべる。
「なるほど。どうやら我々と立場が逆転したようだな。それなら……」
「それと、彼に王女様の手紙を見せてあげてほしい」
ワルドの話を遮り、タバサが続けて提案する。予想外の一言に、その場に居合わせた者たち全員が我が耳を疑った。
「敵に手紙を見せるなんて……君は一体何を考えているんだい?」
「私たちの身分を、彼に証明するだけ」
ギーシュの問いかけに、タバサが憮然とした態度で答えた。
「……そうね。タバサがそう言うなら、私は信じるわ」
キュルケが、どこか納得したように言った。タバサと目が合うと、微笑みながら頷いた。
「確かに、手紙の存在を示して、我々が大使であることを証明するくらいなら、大丈夫かもしれないな。ルイズはどう思う?」
「えっ? えっと、ワルド様がそう仰るのであれば、私も……」
ワルドにいきなり話を振られて、答えを決めあぐねていたルイズはたじろぎながら答えた。それなら僕も、とギーシュも賛同する。
「意見の一致をみたな。さあ、ルイズ」
ワルドが手紙を見せるようにとルイズに促す。ルイズはアンリエッタの手紙を取り出すと、それを男の目の前に差し出した。
61 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:14:37 ID:hfBPgrKs
目の前に出された手紙を、男はまじまじと見つめた。手にとろうとしたところで、ルイズがこれを引っ込める。
「どう?」
タバサが男の方を向き、尋ねた。
「……間違いない。これはトリステイン王家の花押だ」
下品じみていた男の声が、一転して爽やかなものへと変わる。ルイズたちは目を丸くした。
「いつまでもこの格好では失礼かな。……それにしても、まさか見破られるとは思ってもみなかったよ」
そう言って、男はかぶっていたカツラと眼帯、そしてつけ髭を慣れた手つきではずしていく。気がつけば、先ほどまでいた品のない男の姿が、いつの間にか凛々しく立派な青年の姿に変身していた。
「私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。これまでの無礼の数々、深くお詫び申し上げる」
ウェールズはそう言うと、気品溢れる仕草で深々とお辞儀をした。一方のルイズたちは、突然目の前に現れた国の最重要人物に唖然としている。
「ウェ、ウェールズ皇太子だって……!?」
「いかにも。まあ、この肩書きがいつまでもつのかはわからないけどね」
滅びゆく祖国を憂い、ウェールズは虚空を見上げた。残された時間があとわずかであることを悟ったルイズが、あわてて手紙を差し出そうとするが、ワルドがそれを制した。
「失礼だが、皇太子である証拠は……?」
「証拠か……そうだな。君がはめている水のルビーを見せてくれるかい?」
ウェールズの言葉を受けて、ルイズが水のルビーをはめた手を差し出した。ウェールズも、指輪を嵌めている右手をルイズの手の甲に向き合わせるようにして差し出す。
ルイズのはめた指輪と、ウェールズのはめた指輪が向かい合った瞬間、二つの指輪の間に、七色の小さな虹が現れた。
「トリステインに伝わる水のルビーと、アルビオンに伝わる風のルビー……二つは共鳴し合い、美しい虹を作り出すんだ」
ウェールズはルイズたちにそう説明すると、ゆっくりと手を降ろした。光っていた虹が、たちまち霧散する。
「……我が無礼をお許しください、殿下」
「いや、いいんだ。こんな所で皇太子を名乗れば、疑われない方がおかしいからね。それじゃあ、改めて用件を聞こうか」
ウェールズはワルドに向かってにっこりと微笑むと、差し出された手紙を受け取った。
62 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:17:14 ID:hfBPgrKs
ウェールズ皇太子との意外な対面から、およそ三時間。ルイズたちを乗せた船は、アルビオン王国最後の砦であるニューカッスル城へと帆を降ろした。
ルイズたちは今の今まで眠っていた浅倉を、なるべく機嫌を損ねないようにして起こすと、ウェールズの案内の下、目的の手紙があるという彼の居室へと向かった。
途中、ウェールズが今夜行われるというパーティについて話し始めると、浅倉が思い出したかのように、彼に食べ物の在りかを尋ねた。
ウェールズが食堂の場所を教えると、浅倉は持っていたデルフリンガーをルイズに押しつけて、「飯を食ってくる」とだけ言い残し、ウェールズの部屋とは真逆の方向に向かって歩いて行ったのだった。
またか、とルイズたちが呆れる中、ウェールズは一人、去っていく浅倉の背中を不思議そうに見つめていた。
「面白い人だね。君たちの護衛かい?」
「……私の使い魔です」
ルイズが申し訳なさそうに頭を下げた。
「ここが僕の部屋だ。入ってくれ」
ウェールズに先導され、ルイズたちがたどり着いたその部屋は、一国の王子にしては控えめ過ぎるほどに見栄えのしない場所であった。
ルイズたちが部屋の質素さに驚いている間に、ウェールズは部屋にある机の引き出しを開け、中から小さな箱を取り出した。
「私の大事な宝箱でね。ほら、これが件の手紙だ」
ウェールズが箱から手紙を取り出すと、折り畳んであったそれを開き、読み始めた。既に何度も読んでいたのか、読み終わるまでにあまり時間はかからなかった。
「……見ての通り、この手紙はボロボロだ。できる限り大切に扱ってほしい」
「承知致しました」
ルイズが、元通りに折り畳まれた手紙を受け取った。目的が達成されたのを受けて、一番後ろにいたキュルケを皮切りに、一行がぞろぞろと退室していく。
最後の一人になったところで、ルイズが口を開いた。
「ウェールズ殿下、あの……」
「ん? まだ何か用かい?」
「失礼だとは思いますが、殿下とアンリエッタ姫の関係とは、一体……?」
「なんだ、聞いていなかったのかい? てっきり知ってるものかと思ったんだが」
ウェールズが意外そうな口振りで答えた。
「僕とアンリエッタは恋仲だったのさ」
63 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:19:22 ID:hfBPgrKs
ウェールズの言葉に、ルイズは軽い衝撃を受けた。二人に何らかの関係があることはわかっていたものの、愛し合う仲だったとは予想していなかったのである。
「さっき渡した手紙は、彼女が僕に永久の愛を誓ったものさ。これが見つかれば、アンリエッタの婚約もご破算になってしまうからね」
ウェールズは窓の方を向き直ると、夕闇に染まり始めた空を見上げた。
「……殿下。この戦いに、勝ち目はあるのですか?」
「ないよ。五万の敵に対して、こちらは三百。例え奇跡が起こっても、勝つなんてことはあり得ない」
「なら、私たちと一緒にトリステインへ参りましょう! 殿下さえいれば……」
「それは無理だ」
ウェールズが窓の外を向いたまま、首を横に振った。
「今トリステインへ逃げ出せば、レコン・キスタはこれぞ好機とトリステインに軍を差し向けてくるだろう。そうなれば、君たちの働きが全て水の泡になる」
「でも……」
「それに」
ルイズを遮るように、ウェールズが話を続けた。
「アンリエッタも自分の立場をわきまえなければならない。いつまでも過去の思い出を引きずっていては、いずれトリステインという国は廃れてしまう」
「……じゃあ、姫さまのお気持ちはどうなさるんですか? 殿下がいなくなってしまっては、それこそ悲しみに暮れて、自分の立場どころではなくなってしまうのではないのですか!?」
親友のためにと必死に懇願するルイズ。しかし、ウェールズに動じる様子は見られない。
「そんなことはないさ。今も昔も、アンリエッタはしっかり者だからね。どんなに辛い出来事でも、きっと乗り越えていけるだろう」
ウェールズが笑顔で振り返る。こんな悲しい運命を前にして、なんで彼は笑顔でいられるのか、ルイズにはわからなかった。
「切なさも、悲しみも、時間が連れていく。時が経てば、辛い記憶も忘れることができよう。……さて、そろそろパーティの支度をしなくては。君もそろそろ行きたまえ」
ウェールズに促されるまま、ルイズは部屋の扉を開けると、彼に向かって一礼した後、重い足取りで部屋を出たのであった。
すっかり日も落ち、ランプに火が灯り始めた城の廊下を、ルイズはとぼとぼと自分の部屋に向かって歩き出した。
64 :
狂蛇の使い魔:2009/08/21(金) 17:20:59 ID:hfBPgrKs
以上です
ワルドの見せ場をどうしようか思案中です
王蛇とぶつけてただ散らせるだけだと面白くなさそうなんですよね
では、支援ありがとうございました
乙です
ワルドvs王蛇だとワルドが正義に見えるから不思議w
乙でしたー。
もしこの時期に対レコン・キスタ戦をするなら……城に押しかけてくる兵たちをモンスターに食べさせ放題? やるかやらないかは作者さんの匙加減ですけど、ある意味見て見たいかもしれない。
こう、仲間が櫛から歯が抜けるように消えていく光景をホラーチックにとか。
投下乙です
>王蛇とぶつけてただ散らせるだけだと面白くなさそうなんですよね
同意です
というか浅倉はルイズが殺されそうになったら助けるんだろうか?
ルーン効果だけは魅力的に思ってるようだがw
>塩沢キャラ
ときたら、俺の中でトップクラスでかっこいいと思っている大人
メガゾーン23のBD
Uのクライマックスで部下たちとMZ23を飛び出した途端に鏡に突っ込み召喚
辿り着いた先は魔法の世界
困惑するBDだが、新たな生きがいを求めて使い魔になることを承諾・・・するだろうか
使い魔になってもいずれクーデター起こすだろうけど
>塩沢
銀河帝国の冷徹なる義眼とか?
…………うん、無理。
未熟な主にアイツが仕えてる光景なんぞ想像できん
>塩沢キャラ
究極超人あ〜るとか?
ルイズがさんご化しそうな気がw
>>70 戦闘狂で自家発電でご飯を炊きつつ
常に強者の味方をし
拭いてないオシリ攻撃で相手に近付き
自慢の拳法で敵を輪斬りにしちゃう愛に義するキャラか
ランボー召喚なんてどうかな。
>>69 ルイズ→相手にするにもバカらしいと見捨ててとっとと平民でも力量あればおkなゲルマニア辺りにいって適当な君主探す
乳→嫌いはしないだろうが自分の目的のためなら切捨てそう
ブラコンヒゲ→迷惑な狂人だが有能ではあるので下にはつきそう
教皇→狂信者はさすがに御免
というかオーベルシュタインはゴールデンバウム王朝嫌いでラインハルトについたんだし、ハルケで政治にあえて関わる理由が特にない。
やるとしたら出自に関わらず登用されるゲルマニアを選びそう。
>>73 何かルイズの気に障るようなことをして鞭で叩かれた途端にランボーが始まるんですね。
王蛇の人乙です
ワルドの散り方楽しみにしてますw
牡羊座のムウ、ブンドル、木戸丈太郎、南斗水鳥拳のレイ…とっさに浮かぶ塩沢キャラはそんな感じだが
LV高い美女を見慣れた奴らにルイズがどう見えるやら
アテナ沙織13歳とかお町16歳とかと並べるのは気の毒すぎる
王蛇の人乙です。
お待ちしておりました
m(._.)m
何故だろうワルドの方を応援したくなったw
凄くいい笑顔で暴れる朝倉が見えたw
>>73 初代から呼ぶのだけは避けなきゃならん気が
ベトナム戦争の帰還兵ってだけで迫害されてたのが今度は平民ってだけで迫害、
積もり積もった怒りが爆発した日にゃ大佐がいなきゃ物理的にしか止められん
塩沢キャラというと、田村由美の「BASARA」に出てくる揚羽。
自分の命をかけられる女に会えるが、決して結ばれることはないというところが
いかにも塩沢キャラ。
後、OVA版「エリア88」の風間真。
自由を手に入れた時には、何かが壊れていたというところが
いかにも塩沢キャラ。
81 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:35:53 ID:e0kYlQOk
王蛇の人、お疲れ様です
そしてみなさんこんばんわ
特に投下予約もなければ19:45頃から投下を行いたいと思いますが
よろしいでしょうか
82 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:45:23 ID:e0kYlQOk
ほいだらぼちぼち始めたく思います
――――――――――――――――――――――――
森の中の開けた場所に、ポツンと建った炭焼き小屋。その近くにルイズとカズキ。
そして、少し離れた場所に、巨大な土ゴーレムが二人を見下ろすように立っていた。
「で、出た……!」
昨夜見たときよりも、よりくっきりとその姿が視界に飛び込んできた。身の丈は三十メイルほど。巨大な土人形だ。
どうやら周辺の土を使って作ったらしい。後方数メイルから、地面がごっそりと削られたようになっている。
すると、ゴーレムがのっそりと動き出した。腰を低く構えては、腕を振り上げる。
「きゃぁああああああ!!」
ルイズの悲鳴が響いた。次いで、ゴーレムはその腕を斜めに振り下ろす。拳の先は…!
「みんな、伏せろ!」
カズキが怒鳴った。ゴーレムの腕は、小屋の屋根を大きな音を発てて吹き飛ばしてしまった。
「……ゴーレム!」
キュルケの声が聞こえた。小屋の中から、見上げているのだろう。
すると、巨大な竜巻が小屋から舞い上がった。タバサが即座に魔法を唱えたのだ。
ごう、と音を立て、小屋の破片を舞い上げながら、ゴーレムにぶつかっていく。が、土ゴーレムはびくともしなかった。
「頑丈だな…!」
カズキが唸っていると、そのゴーレムに火球が見舞われた。キュルケだろう。昨夜見たものとは違う、大きな火の玉だ。
火炎がゴーレムを包んだが、やはりゴーレムは意に介した様子はない。やがて、ゆっくりとこちらに向けて歩き出す。
「無理よこんなの!」
おそらく、めいっぱい力を込めた一撃だったのだろうか。キュルケが早々に音をあげた。
「退却」
タバサが呟く。二人は小屋から飛び出し、一目散に逃げ出した。
「ルイズ、ここはいったん退こ…あれ?」
ルイズが居ない。さっきまで、小屋の近くに居たのに。
大急ぎで辺りを見回す。その間にゴーレムはこちらに…いた!
「ルイズ!」
カズキの視線の先、ゴーレムの背後に回って、杖をゴーレムに向けるルイズの姿があった。
使い魔の達人 第十話 掌握、決意、そして咆哮
ルイズがルーンを呟くと、ゴーレムに杖を振りかざす。巨大なゴーレムの表面で、どかんと辺りに良い音が響くが、ゴーレムはやはりびくともしなかった。
するとゴーレムは、ルイズに気づいたようだ。のっそりと後ろを振り向いた。
「逃げろ、ルイズ!」
カズキは怒鳴った。しかし、ルイズは唇を噛み締めた。
「いやよ!このゴーレムを倒して、フーケを捕まえれば……今度こそ、『ゼロ』の汚名は返上できるわ!
あんたの力を借りずに、わたしの魔法で、それをするの!」
その目は、真剣だった。真剣すぎて、危うく思えるほどだ。
カズキは歯噛みした。やはりルイズは、そのつもりでこの捜索隊に志願したのだろう。
ゴーレムは、近くに立ったルイズをやっつけようか、逃げ出したキュルケたちを追おうか、迷っている様子だった。
「なに言ってんだ!こんな大きなゴーレム、ルイズの魔法はぜんぜん効いちゃいないじゃないか!」
「そんなの、一発じゃだめでも、何発も当てればきっと倒せるわ!やってみなくちゃ、わかんないじゃない!」
「その前に、ルイズがやられちまう!いいから逃げろ!!」
ルイズはぐっとカズキを睨み付けた。
「なによ、あんたもやっぱり、わたしを『ゼロ』だって思ってるんじゃない!」
「はぁ!?」
「わたしが何も出来ない『ゼロ』だから、あんたは逃げろって言うんでしょ!?」
「なんだそりゃ!?そんなことないから!逃げろって!」
「ほら、また言ったじゃない!『ゼロ』だって思ってなきゃ…そうじゃなきゃ……」
SSをぶち撒けろ!!(支援)
達人支援
塩沢さんと言うとダンクーガと遺作となってしまったゲートキーパーズを思い出す
ゲートキーパーズなんてハッピーエンドで終わってたのに続編で明かされたその後の話で主要キャラ酷く全滅とか……orz
塩沢キャラは新ビックリマンのベリーオズみたいな若干ナルシスト気味の奴が多いイメージがあった
ベリーオズはアニメ終了後も話が進んでいた場合恋人が男に性転換?しその上悪魔ヘッドになり
本人は物語からフェードアウトしてしまう
86 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:49:28 ID:e0kYlQOk
ルイズの表情が、切迫したものに変わる。
わたしが『ゼロ』だから。魔法のひとつも満足に使えない、役立たずの『ゼロ』だから。この使い魔はきっと、わたしに逃げろと言うのだ。
そうでなければ、何故あの時、タバサには何も言わなかった?
タバサには『風』の魔法がある。速く飛べる、立派な使い魔も居る。
こんな『ゼロ』と比べたら、頼りになるのは一目瞭然。考えるまでもないわ。
だからあいつも……だから、わたしは…!
ルイズは頭を振った。そして、ゴーレムを睨み付ける。
「それに今…今、ここで逃げたら、それこそ『ゼロ』だから逃げた。結局カッコつけたところで、『ゼロ』は『ゼロ』なんだって、みんな言うに決まってるわ!」
「言わせときゃいいじゃんか!」
「わたしは…わたしは貴族よ!魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ!」
ルイズは杖を握り締めた。
「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
ゴーレムはやはりルイズを先に叩きのめすことに決めたらしい。ゴーレムの巨大な足が持ち上がり、ルイズを踏み潰そうとした。
ルイズは口早に魔法を詠唱し、杖を振った。しかし、やはりゴーレムにはまったく通用しない。
ゴーレムの胸が小さく爆発するのが見えたが、それだけだ。ゴーレムはびくともしない。わずかに土がこぼれただけだ。
カズキは剣を構えると飛び出した。
ルイズの視界に、迫りくるゴーレムの足が目いっぱい広がる。沸いて出た恐怖が、目を閉じさせようとする。が、歯を食いしばって堪えた。
そのとき……疾風のごとく走りこんだカズキが、ルイズの体を抱きかかえ、地面に転がる。間一髪、そのすぐ横を、ゴーレムの足がめり込んだ。
「セーフ……って、死ぬ気か!馬鹿!」
カズキは思わず、ルイズの頬を叩いた。乾いた音があたりに響く。ルイズは呆気に取られて、カズキを見つめた。
「昨日もそうだ。なんでそんな…死んだら終わりじゃないか!」
ルイズは瞳いっぱいに涙を溜めて…やがてそれは、堰を切ったようにぼろぼろと零れだした。
「なによ…なによなによなによぉっ!あんただって…あんただって、なんでわたしを助けんのよ!」
カズキをぽかぽかと駄々っ子のように殴り始めるルイズ。そんなルイズに、カズキは困惑しつつ答えた。
「な、なんだよ。そんなの、ルイズが危なかったから……!」
「なんで!なんで、わたしは駄目であんたはいいのよ!わたしは駄目で、あの子はいいのよ!なにがいけないの?わたしが『ゼロ』だから!?」
ルイズは悔しかった。自分の『ゼロ』が悔しかった。悲しかった。情けなかった。
この使い魔も。自分のために、ギーシュと決闘してくれた少年も…この『ゼロ』のせいで、結局自分を認めてはくれない。
それどころか、タバサに対してのあの態度…ルイズはカズキに、大事な何かを裏切られたような気になっていた。
だから、なんとしてでもこのゴーレムを倒し、フーケを捕まえて…『ゼロ』の汚名を返上したかったのだ。
カズキはやるせない面持ちでルイズを見つめた。
「ルイズ、オレは……」
しかしカズキはルイズに、危険なことをして欲しくなかった。
カズキにとって、ルイズもまた、守るべき人の一人なのだから。だから昨日も、あんなことを言ったのだ。
だけど、とカズキは思う。
カズキは、ルイズを助けたかった。
そしてルイズも、カズキを助けたかった。
そう、どちらも変わらない。人が人を助けようとする気持ち。
自分にとっても、何より大切な気持ちを否定するようなことを言ってしまった自分を、カズキは責めた。
そんなカズキに、上からぱらぱらと何か降り注ぐ。手にとって見ると、土くれだった。
「ん……?」
振り向くと、巨大なゴーレムが大きな拳を振り上げている。カズキはあ、と声を上げた。
そういえば、今はフーケのゴーレムに襲われていたのだ!
カズキはルイズを抱え上げ、その場をぴょんと飛び跳ねた。そこにちょうど、ゴーレムの拳がめり込んだ。
「あぁくそ!とにかく、ここは逃げよう!」
このままでは二人一緒にぺしゃんこだ。ルイズを抱えたまま、カズキは走り出した。
「……!いやよ、降ろして!」
ルイズがじたばたと暴れ出す。
ゴーレムはずしんずしんと地響きを立て、追いかけてくる。大きいだけで、動きはあまり素早くない。
ルイズが暴れるので、うまく走れないカズキはゴーレムとそれほどスピードが変わらなかった。
87 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:50:07 ID:e0kYlQOk
そしてカズキは、そんなルイズを落とさぬよう、腕に力を込めて言った。
「イヤだ!」
しかしルイズも退かない。
「降ろしなさい!」
「イヤです!」
「…っ!降ろせって言ってるでしょ!この使い魔は!」
「イヤん」
「この……っ!」
ルイズはカズキに魔法の一つも見舞おうかと思った。しかし、カズキの言葉がそれを阻んだ。
「オレ、ルイズに死んで欲しくない!死なせたくないんだ!」
「だからなによ!このまま逃げて、ずっと『ゼロ』のままでいろとでも言うの!?」
「ここで死んだら、その『ゼロ』から抜け出すこともできないじゃないか!
オレはルイズに、危険を冒してでも『ゼロ』から抜け出して欲しいとは思わない!」
ルイズは力なく俯いて、唇を噛んだ。じゃあ、どうしろというのか。
もはやこのチャンスを逃して、『ゼロ』を払拭することなど、適うのだろうか。
「それにオレ、ルイズに言いたいことが…言わなきゃなんないことがあるから!」
ルイズは、はたと涙が止まった。
すると、風竜が二人の前に飛んできた。すぐ前で着陸し、タバサが顔を出した。
「乗って」
風竜に跨ったタバサが叫んだ。カズキはルイズを風竜の上に押し上げた。
「あなたも早く」
タバサが珍しく、焦った調子でカズキに言った。カズキは風竜の背を一瞥して、タバサに尋ねた。
「キュルケさんとロングビルさんは?」
「一人はあっち。もう一人はそのあたりに居るはず」
「お宝は?」
「ここに」
タバサは制服のポケットに手を添えた。魔法学院のお宝は、ポケットに収まるサイズらしい。
「よし。じゃあ、二人を先に回収してくれ。オレはあいつを引き付ける」
「カズキ!?」
風竜に跨ったルイズが怒鳴った。カズキはルイズを見つめた。
「ルイズ…それに、タバサも。昨日はあんなこと言ってゴメンな。そんで、ありがとう」
そして、ゴーレムに向き直った。
「さ、早く二人を!」
タバサは無表情にカズキを見つめていたが、追いついてきたゴーレムが拳を振り上げるのを見て、やむなく風竜を飛び上がらせた。
ゴーレムの拳がうなる。それをカズキは後ろに跳んでかわした。
できればフーケも捕まえたかったが、このゴーレム相手に、普通の戦い方では勝てない。そして、普通ではない戦い方をするつもりは、ない。
ルイズには申し訳ないけれど、これ以上危険を冒すこともない。もう取り返すものも取り返したのだ。あとは、無事に帰ることに専念するのみ。
「さぁ、お前の相手はオレだ!ゴーレム!」
剣をぐっと握り締める。すると、力が沸いてきた。
ルイズは呆けたような顔をしながら、カズキを見つめていた。
「なによ、ごめんって。今頃そんな…なんで……」
すると、風竜がゴーレムから離れる。ルイズは怒鳴った。
「カズキ!カズキを助けなきゃ!」
しかしタバサは首を振った。
「近寄れない」
タバサはゴーレムを指した。近くに居ると、やたらと拳を振り回してくるのだ。
風竜はまずキュルケを回収しようと、その場から離れだす。
ルイズは、やきもきしながら遠くなっていくカズキを見つめた。そして、先ほどの言葉を思い出す。
「そういえば、昨日って…」
ルイズはタバサに尋ねた。カズキは確か、タバサにも謝っていた。何故だろう?
88 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:52:08 ID:e0kYlQOk
タバサはルイズを一瞥した後、静かに口を開いた。
「…昨夜、あの後あなたの使い魔が言ってきた。危険なことはするな、と」
そう。昨夜、ルイズが去った後。カズキはタバサにも、ルイズと同様、苦言を呈していたのだ。
ちなみにその場にはキュルケも居たが、恋は盲目なのか。親友への叱咤も、カズキへの好感度を上げる要因となった。
ついでにタバサもタバサで、あまり気にしていなかった。他者にどう思われようと、彼女は変わらない。
「…そう」
なによあいつ。普通そういうこと、すぐに言わないといけないじゃないの。
ルイズの胸の中で、何かが溶けていく感覚が広がった。
ゴーレムの拳がうなりを上げて飛んでくる。よく見ると、拳は途中で鋼鉄の塊に変わっている。
こんなもの、まともに食らえばひとたまりもない。
カズキは拳をよけると、少しでもダメージを与えようと剣で切りかかった。
がぎんと鈍い音がして、剣が根元から折れた。
「うそん」
カズキは目を丸くして破断面を見た。確かどこかの錬金術師が鍛えた業物だという話のはずだが…。
デルフやルイズの台詞じゃないが、なまくらだったようだ。
ゴーレムの拳が更にうなる。現状、他にまともに対処できる手段を持ち合わせていないカズキは、後ろに跳んでそれをかわした。
「くそっ!まぁいいや、あとはルイズたちが二人を回収したら、お前とはおさらばだ!」
カズキは、ゴーレムの拳から逃げ回った。
「どうするの?」
風竜にキュルケが乗り込んだ。タバサはキュルケに、あとはロングビルを回収する旨を伝える。
ルイズはハラハラした様子で、逃げ回るカズキを見ていた。キュルケはカズキを指して言った。
「大丈夫よ。ダーリンなら、あんなに速く動いてるじゃない。あんな木偶の坊に、やられるわけないわ。
あんたも、一人であんなの相手に立ち向かっちゃって。良くやるわよ。見直すの通り越して、呆れそうだったけれど」
ルイズは呆気にとられたようにキュルケを見た。キュルケは口元に笑みを浮かべた。
「ま、それで死に掛けてちゃ世話ないけどね。あんたが今度の件、どれだけ真剣かってのは、よくわかったわ。
でも、ここで死んでもしょうがないし、良いじゃない。『ゼロ』なんてこれからいくらでも、返上する機会はあるわよ」
ルイズは唇を噛み締めた。仇敵ツェルプストーに言われるのは癪だが、ルイズ自身、あのゴーレムに勝つ方法は思いつかない。
冷静になった頭は、あとはロングビルを回収し、カズキを乗せて、この場を離れることを考え始めていた。
風竜を見やる。キュルケを回収したようだ。あとは…ロングビルのみ。
「ロングビルさーん!竜に乗って逃げよう!」
とにかく出てきさえすれば、あとは風竜が駆けつけてくれるはずだ。
ひょっとしたらゴーレムを恐れて出てこないのかも知れない。ゴーレムの攻撃を避けながら、カズキは叫んだ。
やがて、ゴーレムの向こう。だいぶ離れた木陰から、ロングビルが姿を現した。
「ルイズ!」
カズキは竜に向けて声をあげた。竜は自分より更にロングビルに遠い。もう少し、時間を稼ぐ必要がある。
すると、ゴーレムもまた体の向きを変え始めた。重い足取りの先は、なんとロングビルの居る方向ではないか!
「おい、まさか……」
自分より先に、ロングビルを叩きのめすことにしたらしい。
「そんなことさせるか!おい、お前の相手はオレだ!」
カズキは歩くゴーレムの足に折れた剣を打ち付け始めた。しかし土がわずかにこぼれるばかりで、ゴーレムは少しも意に介した様子はない。
「止まれ!止まれよ!!そっちじゃないって言ってんだろ!!」
すると、近づくゴーレムに怖気づいたか。ロングビルはまたも森の中に入ってしまった。あれでは、風竜がロングビルを回収することができない。
「くそっ!」
先回りした竜は飛びながらロングビルを探しているが、森は深く、上からでは見づらいのだろう。
ロングビルの逃げ込んだ周辺を旋回している。このままでは、ロングビルだけでなく竜も襲われてしまう。
どうすれば……どうすれば、みんなを助けられる?
決まっている。わかっている。このゴーレムを、止めれば良いのだ。
支援
90 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:53:35 ID:e0kYlQOk
だから――。
ふと、竜の上のルイズに目を向けた。遠目にも、よく見える。涙の跡を拭おうともせず、今は必死になって、ロングビルを探していた。
が、時折こちらにも、目を向けてきた。焦りと不安が混ざった顔のルイズと、目が合った。
その不安を拭うため、微笑んだ。見えるかどうかは、わからないけれど。
きっと、ルイズはまた怒るんだろうな。でも、それを謝ることはできないだろうから。
「ゴメン、ルイズ。それから…」
カズキは折れた剣を捨て、そのまま手のひらを左胸にあてた。
「さよなら」
そして、ゴーレムを追い始めた。
ルイズは目を見開いた。カズキが剣を捨てて、ゴーレムに突っ込んでいくのだ。いったい何をするつもりなのだろう?
「カズキッ!?」
悲痛な叫びに、キュルケが、タバサが振り向いた。三つの視線が、カズキに注がれる。
カズキには、‘錬金術’の‘力’が‘埋め込まれている’。
『核鉄』―――‘錬金術’の粋を集めて精製された、超常の合金である。これは、人間の精神の一番深い所…‘本能’に依って作動する。
一度命を落としたカズキは、これによって‘生存本能’を揺り起こし、『核鉄』を心臓の代用品にしているのだ。
そして、もう一つ。
それは、人の‘闘争本能’に依って作動する――戦う‘力’!
その‘力’こそが、『核鉄』本来の用途。持つものが秘めたる戦う‘力’を形に変えた、唯一無二の武器の創造!
掌握!
決意!
そして咆哮!
その名称――
「誰一人、やらせやしない!『武装錬金』!!」
光とともに、カズキの手中に、幾多のパーツから形作られた、一本の突撃槍(ランス)が現れる。
‘龍の頭を思わせる意匠の、飾り布が付いた大振りの突撃槍’――それを見て、カズキは表情を驚愕に染めた。
『サンライトハート』!?あれ、だってオレは…!?
ほんの一月前まで自分の武器だった、ヴィクター化の影響により形態(フォルム)を変えてしまったその突撃槍。
初めて『武装錬金』を発動してから、幾多もの激戦を共に潜り抜けてきた、かつての自分の相棒である。
それが、何故今……?
が、考えている時間も余裕も、今はない。まずは、目の前のゴーレムを止めなくては…!
なのに…なんだろう。この感じ。すごく安心する。この形態だからなのか?
カズキの脳裏に、斗貴子の顔が浮かんだ。カズキの武装錬金に、名前をつけてくれた、カズキの大切な人。
まるで、斗貴子さんが後押ししてくれているようだ。迷うな、突き進めって!
カズキは突撃槍を構えた。添えられた左手のルーンが、眩いほど輝く。狙うはゴーレムの胸、飾り布が、光を帯び始める…!
「いくぞ!サンライトスラッ――」
一条の光の矢が、ゴーレムの胸を貫いた。そしてその矢はそこで止まることなく、その勢いのまま空を駆ける。
矢の穂先には、突撃槍を構えたカズキ。必死に槍の柄を掴んでいる。
突撃槍の飾り布からは、迸る生体エネルギーの本流が、凄まじい推進力を生み出していた。
「うぉおおおお!?」
なんだ!?エネルギーが思っていたよりずっと強い!
このままでは遥か彼方にすっ飛んでいってしまう。空中ですぐに姿勢を整えようとする。すると何故だろう。
力の込め具合が、自然にわかった。高出力のエネルギーの、今の扱い方も、すぐに理解できた。
カズキは飾り布を掴むと適切なエネルギー量で逆噴射を行い、その場に静止する。
そして自由落下していき、エネルギーの噴射で樹木の上に軟着陸した。森が深すぎるので、木の下に入っては、ゴーレムが見えないのだ。
よし、使い方は忘れてない。
91 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:55:19 ID:e0kYlQOk
一つ頷くと、ゴーレムを見やった。かなりの速度で突っ込んだはずだが、胸にぽつんと小さな穴が穿たれただけだ。
「なっ…!?」
それもすぐに、塞がってしまう。土でできたゴーレムは、そこいらに材料があるのだ。ちょっとやそっとのダメージは、ああして修復してしまうのだろう。
「だったら…だったら直る前に、ぶっ壊すまでだ!」
カズキは突撃槍を再度構える。そして、また光の帯を引きながら、ゴーレムへと突っ込んでいくのだった。
「な、なによあれ…!」
ルイズは我が目を疑った。カズキがどこからともなく槍を出現させたかと思えば、物凄い勢いで火を噴きながら突進し、ゴーレムを貫いたのだ。
生憎ゴーレムに大したダメージは与えられず、それ自体もすぐに回復してしまったが…あんな武器、見たことも聞いたこともない!
「すごいわダーリン!…けれど、あんな槍、どこに隠し持ってたのかしら?」
キュルケの疑問にも、ルイズは頷く。
そうだ、どこから出した?カズキがこの場に持ってきた武器は、キュルケの名剣のみ。
それが折れてしまった今、カズキには武器は――そこまで考えて、ルイズはハッとした。
カズキは言っていた。‘剣より槍の方が使い慣れている’と。
そして、カズキの中に潜む、‘錬金術’の‘力’の存在……まさか、あれが?
あんな凄い力を持ってて…何故今まで出さなかった?ギーシュの時だって…あれを使えばもっと楽に……。
ルイズは考える。ルイズは思い出す。これまでの自分の使い魔の言動を。その一つ一つを。
そしてルイズの頭の、冷静な部分が答えを弾き出した。まさか、あいつ…!
「止めなきゃ!一刻も早く、あいつを止めさせなきゃ!」
ルイズが突然そんなことを言い出すので、二人は驚いた顔でルイズを見つめた。
「何を言ってるのよ。あの調子なら、あんなゴーレム。もうじき倒せちゃうわ。
…まさかあんた、また前みたいなこと言い出すんじゃないでしょうね?使い魔になんとかしてもらうのはダメとか、どうのこうの。
さすがに今度は、そんなの言ってられないわよ?」
「んなワケないでしょ、馬鹿!倒すの倒さないの、そういう問題じゃ…!」
「もうじきかは疑問」
タバサが呟いた。彼女にしては珍しい分析に、キュルケの興味はそちらにうつった。
「どういうこと?」
「見ればわかる」
そして、ゴーレムを指した。
「くそっ、なんだこいつ!復活するのが、いきなり早くなった!」
カズキが貫くと、人間が通れるくらいの穴が開く…が、それも束の間。すぐに閉じてしまう。
足などを狙って崩してみるが、ゴーレムを形作る別の土を回したのだろうか。倒れる前に姿勢を立て直してしまうのだ。
「章印みたいに、判りやすい弱点でもあればいいのに…!」
そんなことをぼやく。かつて戦った人喰いの敵、‘ホムンクルス’を相手にしていたときは、体に刻まれたその印を貫くだけで倒すことができた。
しかし、この巨大ゴーレムには、そんなものはない。どれだけ崩そうと、次の一撃を打ち込む前に直ってしまう。
直る前に連続して攻撃を放とうとするが、この突撃槍の特性上、細かい制御は不向き。エネルギーを使った攻撃は、一発一発がどうしても大味なのだ。
どうする…!?
決まっている。より強力な一撃を叩き込めば良いのだ。今よりも、強力な一撃を…!
カズキは突撃槍から垂れ下がる飾り布を、強く握った。
「じゃあなに?あのままじゃ倒せないってこと?」
キュルケがすぐに復活するゴーレムを見ながら言った。
「いずれは倒せるはず。けれど、その前にミス・ロングビルが犠牲になったりするかも知れないし」
タバサは次いで、カズキを指した。
「彼が疲弊しきってしまう可能性もある。彼の持つ槍は見たことも聞いたこともない。
そういう力を持つマジックアイテムかも知れない。けれど、あれだけの力を無尽蔵に出せるとは考えがたい」
いつにも増して饒舌なタバサ。更に彼女の言は続く。
「それに、彼の一撃は強過ぎる」
「どういうことよ?」
お人よしの使い魔を支援
93 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 19:57:15 ID:e0kYlQOk
問いを重ねるキュルケに、タバサは呆れ混じりに答えた。
「突進する力が強過ぎて、威力が十分に伝わらない。あれはあのゴーレムには、過ぎた攻撃」
そんな言葉に、キュルケは疑問符を浮かべた。ルイズはしばし考えた後、言葉を紡いだ。
「つまり、カズキの突撃する力に対し、土でできたゴーレムじゃ柔らかすぎて、満足に破壊できないってこと?」
タバサは小さく頷いた。
「な、なんか間抜けねそれ…って、それどころじゃないわ!なんにせよ、早く止めなきゃ!」
ルイズがカズキを見やれば、なんとカズキは、地面に片膝をついていた。
「カズキ!?」
まさか、本当に疲弊してきたのだろうか?別段怪我を負っている様子もないのに、槍に凭れかかるように立ち上がる。
「何か、何かないの!?」
とにもかくにも、あの槍をこれ以上使わせているわけにはいかない。ゴーレムをこれ以上進ませるわけにもいかない。
なんとか自分が手伝える方法はないのだろうか?そのとき、タバサの懐にある『破壊の聖石』に気づいた。
「タバサ、聖石を!」
タバサは小さく頷くと、ルイズに『破壊の聖石』を手渡す。
手のひらに収まる、六角形の金属塊。真ん中の凹んだ部分に、妙な模様が刻んである。こんなマジックアイテム、見たことない。
しかし、悔しいが…自分の魔法は、あてにならない。今はこれしか頼れない。
槍に凭れたカズキを見た。次いで、ゴーレムを睨み付ける。
ルイズは深呼吸をした。それから目を見開く。
「タバサ!わたしに『レビテーション』をお願い!」
そう怒鳴って、ルイズは竜から地面に身を躍らせた。タバサは慌ててルイズに呪文をかけた。キュルケが叫んだ。
「ルイズ!」
『レビテーション』の呪文で、地面にゆっくりと降り立ったルイズは、ゴーレムに向けて『破壊の聖石』を掲げた。
「石よ!あのゴーレムをなんとかして!」
しかし、何も起こらない。『破壊の聖石』は沈黙したままだ。
「…っ!ほんとにマジックアイテムなの!これ!」
ルイズは怒鳴った。込められた魔法を発動させるためには、何か条件が必要なのだろうか?
「!?」
飾り布を突撃槍に巻きつけようとしたところで、カズキの胸に不意に痛みが走る。次いで、強烈な脱力感。
「〜〜〜っ!」
だめだ、立っていられない!
カズキはその場に片膝をついた。槍を地面に突き立て、それを支えになんとか倒れることを防ぐ。
なんだこれ、急に変な痛みが…でも、それどころじゃない。ゴーレムを止めなきゃ…!
呼気を荒げ、額に脂汗を浮かべながら、両足に気合を込めて立ち上がる。カズキはゴーレムを睨み付けた。
すると、さすがにあれだけ攻撃すれば危険視の一つもするか。森へ進むのをやめ、カズキに向けて拳を振り上げてきた。
カズキは口の端を歪めて笑った。やった、これであとは…!
「石よ!あのゴーレムをなんとかして!」
後方からルイズの声。カズキは目を見開いた。思わず振り向いてしまう。
「なっ……!?」
ルイズが居た。なにか手に持って、ぶつくさ言っている。
「うおっ!」
ゴーレムの拳が向かってくるので、何とか跳ねて避けた。拳が鉄になってないようだが、それどころではない。
「…っ!ルイズ!何してんだ!逃げるんだろ!?」
カズキが怒鳴った。ゴーレムの近くにいるのも危険だが、何より自分はもう、人間では…人間では……
「あれっ?」
手の色を確認する。おかしい。既にヴィクター化への期間は過ぎたはずだ。おそらく最後の一押しになるであろう、『武装錬金』も発動してしまった。
なのに、カズキの肌は黄色いまま……カズキはワケがわからなくなった。
「なによ!あんたが化物になるの、黙って見てろっての!?そんなの、いくらなんでも冗談じゃないわ!
だから、これでゴーレムをなんとかしようと思ったのに…!もう、どうするのよ、これ!!」
そしてルイズは、手に持ったものを掲げたり、振ったりしてみせた。カズキはそれを…『破壊の聖石』を見て、息を呑んだ。
何を隠そう、俺は支援の達人だぁっ!
95 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:00:53 ID:e0kYlQOk
馬鹿な!なんでアレがここに…!?
カズキは思わず、ルイズに駆け寄った。
「ルイズ!そっ、それ!!」
「これ?『破壊の聖石』。フーケが盗んでいって、さっき取り返したものよ。けど、どう使うのかわかんない!」
ルイズはカズキにそれを見せた。間違いない。これは――
「『核鉄』!でも、何でこんなトコに!?」
そう、ルイズの手に持った金属塊こそ、何を隠そう『核鉄』であった。何故これが、こんなところに…この世界に?
「知ってるの?」
カズキは頷いた。知ってるも何も、自分の心臓の位置には、これの出力強化版である『黒い核鉄』が収まっているのだ。
そしてそれこそが、カズキを存在するだけで死を撒き散らす、化物へと変えていく原因でもある。
その段になってカズキは、自分がルイズに近づいてしまったことに気づく。が、やはりルイズが脱力感に襲われている様子はない。
それどころか、自分のほうが痛みで苦しいくらいなのだ。
「それにわたしはあのゴーレムを……フーケを許せない。あんたに…わたしの使い魔に‘それ’を使わせたフーケのゴーレムを、なんとしてでも倒したいの。
…けど、わたしの魔法じゃ、あのゴーレムは倒せないわ……どうやらこれも、使えないみたいだし」
ルイズは悔しくて、手中の『核鉄』をより強く握った。
カズキの心に、こみ上げてくるものがあった。気を抜くと、視界が滲みそうだったので、なんとか堪えた。
今のルイズは、『ゼロ』の払拭のためじゃない。自分のために、戦おうとしてくれていたのだ。
嬉しかった。ひたすらに嬉しかった。ルイズをここで死なせたくない。ルイズのために、なにかしてやりたいと、改めてカズキは思った。
だからカズキは、その手を差し出した。
「ルイズ。ルイズの気持ち、よくわかった。だけどその気持ちを、今はオレに預けてくれないか。
ルイズはイヤかも知れないけれど……ここはオレに任せてくれ」
ルイズはカズキを見た。その黒い瞳を、鳶色の瞳が見据える。やがて小さく頷くと、おずおずと手に持った『核鉄』を手渡した。
受け取ったカズキも一つ頷くと、ゴーレムを見据えた。そして、ゆっくりとゴーレムへ向かっていく。
どうやらゴーレムは、ここにきて森へ向かうか、こちらを相手するか迷っている様子だった。
カズキはもう一つの『核鉄』をちらと見る。その中央には、『核鉄』共通のシンボルおよび、そのシリアルナンバーが刻まれている。
LII――52番の『核鉄』を示す。それはカズキの師、キャプテン・ブラボーの使っていた『核鉄』である。
これが何故今ここにあるのか、わからない。けれど、それもまた、迷いを払う要因になったことは確か。
力を借りるよ、ブラボー…そしてルイズ!
「いくぞ、フーケ…いくぞ、ゴーレム!」
ルイズの思いを宿した『核鉄』を構え、カズキは叫んだ。
「W(ダブル)―――『武装錬金』!!」
手に先から、光が溢れる。金属塊が分解し、カズキの左手に現れたのは、一本目とは意匠を異にする突撃槍である。
二本の突撃槍を構える。先刻の痛みはまだ引きずっているが、何故だろうか、そんなこと、気にならなかった。
ゴーレムは、こうなってはカズキを先に叩きのめすしかないと判断したのか、拳を振り上げてきた。打ち下ろされる拳を避け、間を詰める。
「うぉぉおおお!」
ゴーレムが屈んでいる今を見計らい、渾身の力を込めて跳躍する。右手、左手と順に突撃槍をゴーレムの腰に突き刺した。
二枚の飾り布が揺れる。その先が、うっすらと光を帯び始めた。
「いくぞ――エネルギー 全・開!!」
キュルケが、タバサが目を覆った。森の中から、眩い光が溢れ出したのだ。風竜が突然の光に驚き、暴れようとするのを、タバサがなんとか留める。
光の発生源は、ゴーレムの間近。カズキが突き刺した二本の槍の、飾り布から発生していた。
「綺麗…」
ルイズは目を見開いて、思わずぽつりと呟いた。山吹色(サンライトイエロー)の眩い光。まるで太陽光に似ている。
迸る光に、地上にもう一つの太陽が出現したと錯覚させるほどのエネルギー量。それは大気を震わせ、大地をも揺らす。
「貫けぇぇえ!!」
やがてそれを伴い、カズキはゴーレムを一気に貫いた!
96 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:02:20 ID:e0kYlQOk
Wランサー支援
98 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:07:01 ID:e0kYlQOk
轟音をあげ、ゴーレムの腰から上が一瞬で吹っ飛んだ。光が引くと、しばし目を閉じる。あまりの光に、目が焼きついてしまったようだ。
目が慣れるとそこには、ゴーレムの下半身だけが立っていた。やがてそれも、滝のように腰の部分から崩れ落ち、ただの土の塊へと還っていく。
ルイズはその様子を呆然として見つめていたが、腰が抜けたのかへなへなと地面に崩れ落ちた。
風竜が地面に着地し、キュルケとタバサが顔を覗かせた。
そしてカズキが、長い滞空を終えて、一瞬だけエネルギーを逆噴射して、地面に降り立った。
長いため息が一つ出た。とにかく、これでゴーレムはいなくなったのだ。
「……武装、解除」
カズキが呟くと、二本の突撃槍が一瞬バラバラに分解したように見えたかと思うと、虚空に消えた。
一つはカズキの手の中で『核鉄』に。もう一つは、カズキの肉体、心臓部にて、『黒い核鉄』に戻った。
すると、左手のルーンも仄かに輝く程度になり、体の軽さもなくなった…どころか、ここに来る前より、ずっと重い。
「カズキ!すごいわ!やっぱりダーリンね!」
キュルケが抱きついてこようとするのを、カズキはぎょっと後ずさった。あらん?とキュルケの腕が虚空をかき抱く。
「……」
更に距離を置くカズキの様子を見て、意を決したようにルイズは立ち上がった。
カズキにずんずん近寄っていくと、カズキはやはり距離を置こうとしたが…
「カズキ。動かないで」
名指しだった。思わずその場で立ち止まってしまう。その間に、ルイズが距離を詰めてきた。
やがて、カズキの前で腕を組んで仁王立ちする。その鳶色の瞳が、カズキを上から下まで往復する。
「カズキ、体の調子は?」
「え、いや…普通、です。っていうか、かなり疲れた」
「力は沸いてくる?わたしは、あんたの近くに居ても、ぜんぜん疲れないけれど」
ルイズに言われ、自分の疲弊具合を再確認する。以前ギーシュと決闘した時同様、武器を握っている間に体が軽くなった反動か知らないけれど、今はその分重い。
それに、戦闘中に感じた胸の痛みは消えたものの、その脱力感も、上乗せされている。そしてそれが、急激に回復するような様子も、特にない。
「……沸かない、けれど」
うろたえ、首を振りながら答えるカズキに、ルイズは一つ頷いた。安堵の息を吐き、告げる。
「大丈夫。あんた、まだ人間よ」
「どういうこと?」
キュルケが横から尋ねてきた。特に他人に言うことでもないので、
「使い魔の問題だから、あんたには関係ないことよ」
「なにそれ」
そういうルイズに、キュルケはなおも問い詰めようと思ったが、タバサがそれを阻んだ。
「フーケはどこへ?」
全員がハッとした。彼女は風竜から降り立った後、周辺を伺っていたが、特に人影は見当たらなかったらしい。
すると、先刻フーケのゴーレムに追われて森へ入ってしまっていたロングビルが、茂みの中から姿を現した。
「ミス・ロングビル、無事だったのね!フーケは…」
キュルケが声を上げるが、ロングビルはわからないというように首を振った。よほど怖かったのだろうか。顔に疲労が滲んでいた。
「みなさん、先ほどは思わず逃げてしまって申し訳ありません。ゴーレムが迫ってくるもので……」
「しかたないわ。あんなのに襲われるってわかって、普通その場に立ち止まってなんかいられるわけないもの。
気にせずとも良いことですわ。それにしても、フーケは結局どこからゴーレムを操ってたのかしら」
さて、と皆が首をかしげた。実はゴーレムに乗って操作していた、とでも言うのなら、カズキが先ほど上半身を吹き飛ばした際に発見できたはずだ。
ではどこに…?
「もう、逃げてしまったのではないでしょうか?」
ロングビルがそんなことを言ってきた。キュルケも、頷いて同意した。
「確かにね。『土くれ』ご自慢のゴーレムも、ダーリンが破壊しちゃった以上、お宝を取り返すのも無理でしょうし」
そんなキュルケの言葉に、タバサは無感情に。ルイズは、どこか悔しそうに納得した。
「とにかく、一度学院に戻りましょうよ。こんなところ、いつまでも居たくないわ」
キュルケが提案する。ルイズとタバサが頷いた。とにかく疲れた、といった様子だ。
カズキは、放心したように手の中の『核鉄』を見つめた。何故、これがこの世界に…、とぼんやりと思う。
すっとロングビルの手が伸びて、放心したカズキの手から『核鉄』を取り上げた。
「ロングビルさん?」
カズキは怪訝に思って、ロングビルの顔を見つめた。ロングビルはにこやかに言った。
「ご苦労様です。『破壊の聖石』……本当に、凄い代物でしたのね」
支援
100 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:09:33 ID:e0kYlQOk
そう言い、カズキからすっと遠のくと、次いでルイズに近寄った。
「へ?」
そして、ルイズをもう一本の腕で羽交い絞めにした。そして、ルイズを引きずって距離をとる。
「今度こそ、確かに領収したわ」
「ミス・ロングビル!どういうこと!?」
キュルケが叫んだ。ルイズは唖然として、ロングビルを横目に見つめた。ロングビルは、にっこりと笑った。
「さっきのゴーレムを操っていたのは、私」
「そんな、じゃあ……、あなたが……?」
目の前の女性は眼鏡を外した。優しそうだった目が吊り上がり、猛禽類のような目つきに変わる。
「そう。『土くれ』のフーケ。さすがは『破壊の聖石』ね。
まさかあんな、火を噴く槍が封印されたマジックアイテムだったなんて思ってなかったわ。
突進でゴーレムに何度も穴を開けてくれた挙句、最後にはばらばらじゃないの」
フーケは『核鉄』を、ルイズに押し付ける。カズキとタバサが、同時に動こうとした。
「おっと。動かないで!ちょっとでも動けば、この子の命がないわ。まずは全員、杖を遠くに投げ捨てなさい」
仕方なく、ルイズたちは杖を放り投げた。これでもう、メイジは魔法を唱えることができないのだ。
フーケは次いで、カズキに目を向けた。
「使い魔君。あんたがまさか、『破壊の聖石』をもう一個持ってるなんて思ってなかったわ。
隠し持ってるそれを、こっちに渡してもらいましょうか」
口の端を歪めながら、フーケが言った。カズキは息を呑んだ。
「そうすれば、この子を離してあげる。あなたの『聖石』とこの子で交換、というコトでどう?
主人思いと評判の、ミス・ヴァリエールの使い魔君ですもの。主人を助けるためなら『聖石』の一つや二つ、惜しくないでしょう?」
そう言われて、カズキは思わず左胸の辺りに手を置いた。そこに隠しているのか、とフーケはあたりをつけた。
「どうして!?」
ルイズがそう怒鳴るとフーケは、
「うるさいわね…けど、そうね。ちゃんと説明しなくちゃ、納得して渡してくれないでしょうし、説明してあげるわ」
と言って、妖艶な笑みを浮かべた。
「私ね、この『破壊の聖石』を奪ったのはいいけれど、使い方がわからなかったのよ」
「使い方?」
「ええ。さすが『聖石』なんて言うだけあって、この場所に持ってくるまでは、体調がすこぶる良くなったわ。
所持するだけで体調の良くなる石。それだけでも十分売れるマジックアイテムだけど……私が知りたいのは、『破壊』のほう。
なんとか使ってみようと、いろいろやってみたけど、この石はうんともすんとも言わないんだもの。困ってたわ。
持っていても、きちんとした使い方がわからないんじゃ、宝の持ち腐れ。そうでしょ?」
同意を得ようと、ルイズに目を向けた。ルイズはフーケを睨み返した。嘲るようにフーケは笑った。そして、続ける。
「残りの使い方がわからなかった私は、あなたたちにこれを使わせて、使い方を知ろうと考えたのよ」
「それで、あたしたちをここまで連れてきたってワケね」
キュルケも睨みながら、フーケに言う。
「そうよ。魔法学院の者だったら、知っててもおかしくないでしょう?」
「あたしたちの誰も、知らなかったらどうするつもりだったの?」
「そのときは、全員ゴーレムで踏み潰して、次の連中を連れてくるのよ。
でも、その手間は省けたみたいね。こうやって、きちんと使い方を教えてくれたじゃない」
『核鉄』をひらりと振りながら、フーケは笑った。
「さ。説明はこれまで。それじゃあ、あんたの『聖石』も、いい加減渡してもらいましょうかね。
その服の、内ポケットにでも入ってるのかしら?よほど上手く隠してたのか、膨らみもないようだけど」
カズキは動かなかった。動けなかった。
以前にも、こんなことがあった。
‘ホムンクルス本体’に寄生された、斗貴子を救う為……ついにその‘ホムンクルス’の創造主――あの男を見つけた時のこと。
その寄生した‘ホムンクルス’の解毒剤と、『核鉄』を交換条件に出された時のこと。
あの時自分は、『核鉄』を渡してしまえば、自分は死んでしまうから、斗貴子に解毒剤を渡せないからと、その申し出を蹴った。
そして今は――この『核鉄』は、『黒い核鉄』に、更に危険なものになってしまっている。
もし取り出せたとして…自分が死ぬのはともかく、万が一にも、更なる悲劇を生み出しかねない以上、これを世に放り出すわけには、絶対にいかない。
101 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:10:35 ID:e0kYlQOk
だが。だからと言って、ルイズを見殺しにするわけにもいかない。
ルイズを。自分を救おうと、自分のために戦おうとしてくれた少女を、このまま死なせるわけにもまた、絶対にいかない。
一瞬で飛び掛って……だめだ。その前に、フーケに『武装錬金』を発動されたら?もしそれが、ルイズの命を危うくするものだったら?
どうすれば…どうすればいい…?
カズキが悩んでいると、フーケが急かした。
「どうしたの?さっさとなさいな。……まさか、ご主人さまを助けたくない、とか?」
フーケもまた、焦っていた。
相次ぐゴーレムへのダメージを補修するため、実はかなりの精神力を消費してしまっている。
あの槍を使ってカズキから『聖石』を無理やり奪い取るのは、おそらく無理。
『破壊の聖石』、その扱いに関しては、カズキの方に一日の長がある、とフーケは踏んだからだ。
だから、ルイズを人質にしたわけだが…まさかこうも渋るとは。予想と異なる展開に、フーケは背中に汗をかき始める。
キュルケとタバサは、そんな二人を交互に見やった。なんとかしたいが、杖は投げ捨ててしまった。
拾おうにも、その前に『破壊の聖石』を使われてしまう可能性が高い。
そして、この中で一人。
ルイズだけが、心の底からマグマのように、ふつふつと怒りが湧き上がっていた。
フーケは、『破壊の聖石』の使い方を知るために。
皆を窮地に立たせ、『聖石』を使わせるためだけに、こんな一芝居を打ったのだ。
そしてそのために、カズキに、『破壊の聖石』のみならず、彼自身が使おうとしなかった‘力’すら、使わせたのだ。
許せない。
この少年は、自分が化物になることを知りながら…運が良いのか、今回は、それがなかったようだけれど。
それでも、皆を救うために。‘この女も救うため’に、ゴーレムに向かってあの‘力’を使ったと言うのに。
それなのに。それなのに、この女は……!
許せない!
ルイズはもうなんとしても、フーケに一発見舞ってやりたかった。
だが、どうやって?自慢じゃないが腕っ節はそんなに強くない。だったら、魔法だ。どんな魔法でも、失敗して爆発する、自分の魔法。
ゴーレムには効かないが、フーケになら、きっと効果は十分だ。
杖には少し遠いが…飛びつけばきっとなんとかなる。そんな風に考えていた。
あとは、唱える魔法。長い詠唱はできない。
どんな魔法でも、爆発するのなら……!
ルイズは意を決して、その場で思い切り跳ねた。桃色の頭部が、フーケの顔面を襲う!
カズキに気をとられていたフーケはそれをもろに食らってしまった!
「んぎっ!」
間抜けな呻き声をあげ、仰け反るフーケ。その間に腕からすり抜け、杖へと飛びつく!
鼻の頭を擦りながら、フーケがルイズを睨んだ。
「っこの…!そんなに死にたいのなら、一番先に殺してあげるわ!『武装――』」
「イル・アース――」
フーケは、『核鉄』を構えた。ルイズもまた、杖をフーケに向ける!
カズキはその詠唱に、聞き覚えがあった。数日前、自分も間近で聞いたその詠唱は――
「『錬金』!!」
「デル!!」
『錬金』の呪文!
ルイズとフーケ。二人の真ん中で、小規模の爆発。衝撃が、辺りを駆け巡る。
そして何かが、地面に転がる。見れば、所々欠けた状態の『核鉄』だ。
つまり、フーケの『武装錬金』とルイズの『錬金』。勝ったのは、ルイズの『錬金』!
「〜〜〜!くそっ!」
いよいよ往生際の悪いフーケは、懐からナイフを取り出した。それで、ルイズに切りかかろうとでもいうのか。
だが、それは適わない。
「ぐっ…!?」
カズキの手は、飾り布を掴んでいた。突如出現した突撃槍の先は、カズキを向いていた。
そしてフーケの腹には、突撃槍の石突が突き刺さっている。
バカな……『聖石』は、呪文を唱えないと発動できないはずじゃ……。
そんなことを考えながら、フーケの意識は沈んでいった。
『武装錬金』は、その扱いに慣れれば無音無動作で発動できる――『武装錬金』の初歩である。
102 :
使い魔の達人:2009/08/21(金) 20:13:08 ID:e0kYlQOk
「あ、あんたたち…?」
キュルケとタバサは、目を丸くして二人を見ていた。
カズキが再度、武装解除を唱えれば、突撃槍は虚空へ消えた。そして、ルイズに駆け寄った。
「ルイズ、大丈夫?」
「え、ええ。あんたこそ、体のほうは?」
ルイズは地面に座り込んだまま尋ね返した。大丈夫みたい、と言うカズキが手を差し出したので、その手を掴み、立ち上がらせてもらう。
そしてカズキは、地面に転がった『核鉄』を拾うと、二人に向き直った。
「ロングビルさん…フーケを捕まえて、『破壊の聖石』を取り戻したよ」
すっかりボロボロの『核鉄』を示しながら、苦笑交じりにカズキがそう告げた。
キュルケとタバサは顔を見合わせると、カズキに駆け寄ってきた。
抱きついてくるキュルケに、今度は逃げなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
以上です
ケンヂケンヂ言われると違うケンヂくんが浮かんできますよね
お粗末
乙
そういや、フーケに盗まれたアイテムを普通に使われそうになったのって初めて見たパターンですな
ああ・・・ブラボーの核金が・・・
乙! ルーンの影響かな。ヴィクター化が押さえ込まれている。
核鉄は自己再生してくれるから欠けても心配要らないしね!
乙っした!
オスマンの思い出話が楽しみじゃのう
>核鉄は自己再生してくれるから欠けても心配要らないしね!
あれ、そんな設定だったっけ
すっかり忘れてた
いかんいかん
・・・結局防がれたおマチさんの武装錬金はどんなものだったのか
見る機会はあるのかな?
>塩沢キャラ
奇面組の物星大
後、ブライの幻左京
武装練金は後期になるほどなんでもありになっていったからなあ…
イメージフイタ
達人の人乙でした。
男爵様が出てきたら打ち切りのサインですよねー
ストロベリるは痛々しかったです和月先生
塩沢キャラでダオスが一度も出ないとはね・・・まあ動かせるかどうかと言われたら無理かもしれんが。
美しいぞ我がブンドル軍団!
>110
それこそ、フーケの武装錬金が男爵様もどきのような気がしてきたw
…『武装錬金』って叫んでたけど武装化失敗してそうな気もするな…。
塩沢キャラならマさんを忘れるな。
名前などない。貴様と同じだ。
体制に含まれる毒は浄化されなくちゃならないんだよ!
>>111 ダオスは目的がはっきりしている分、動かす難易度は低いかもしれんぞ
マナと虚無に共通性を持たせたりするとかでね
俺の知っている塩沢キャラは銀英伝のオーベルシュタインとコナンの白鳥警部だな
白鳥は無理だろな
オーベルシュタインは、自身の才幹を最大限に発揮する君主に仕える願望がある(はず)
となると、アンリエッタの政治や軍事の手腕に懸かっているな
ルイズとの契約は履行されるだろう
それ以外の選択肢がないことは、すぐに悟るだろうし
契約後のストーリは思いつかんな
オーベルシュタインの詭計・計略を再現できる頭脳は持ち合わせてないし
痛みだ!
戦うことでしか自分を表現できなかったが、いつも自分の意思で戦ってきた…
そうだそれで良い、戦いの基本は格闘だ
ハーフライフより、ゴードン・フリーマン博士を召還
ダッシュしてバニーホップでギーシュのワルキューレに向かって行って
バールで殴って砕けさせて、重力銃で砕け散ったワルキューレの破片を操って叩き潰されるギーシュの姿が
簡単に思い浮かんでしまう
塩沢キャラだと? ぶりぶりざえもんに決まってるだろうが!
…もう召喚済みだっけ?
小ネタの方に有ったな
なぜ塩沢キャラときてカルミス・ウィッシュバーンの名前が出ないのか
>>118 怒りだ! もう怒りしかない!!
を連想した
召喚されるとしたらテファなんかなあの憤怒しもとい褌父さんは
娘さんの声的にはルイズだけど
ヴィクターのエナジードレインで
乳が吸われて貧乳になってしまうんですね
サイボーグ忍者 召 喚
そいつがありならアンドロイド、ランダム・ハジルでもいいよな
……知ってる人はオサーンだが
ここまでデビモンなしとは・・・
塩沢さんというと、スパロボの影響からかゴーショーグンのブンドルのイメージが。
>>131 だけどある意味あの人が一番動かしづらい気がするw
>>132 貴族だからな
もちろん戦艦も一緒に召喚して、classicを大音量で流すんだよな
そして、いつの間にか大企業が立ち上がっている
>>133 タケオゼネラルカンパニーですね分かります
学院の広場に巨大ゴーレムが埋まってて顔が出ているんですね
「よげんの書」がゼロ魔世界に転移されたようです。
ともだち?ヴァリエール家レベルの貴族に成り上がれればあるいは・・・。
巨大ロボに細菌。ともだちが牛耳るトリステインにどう立ち向かうのか、
ゲルマニアは、アルビオンは。そして、サイト達は!?
>>136 知るかバカ! そんなことよりオナニーだ!!
ハルケを救え、バルディオス
>>138 アルビオンが海に墜落して津波が世界を襲うわけですね
水の精霊大激怒で沈没ですか
人間爆弾ザンボット3、イデで消滅イデオン、地球破壊爆弾マーズ、動いただけで地球がやばいMIROKU
ハルケギニアの明日はどっちだ!?
>>139 確かにあの質量が海に落ちたら結構な災害になるかもわからんね
そもそも何故浮いてるのかも良くわからないけど
ルイズが死ぬ時!ハルケギニアは沈没する!
夏だし怪談やホラーやスリラー、サスペンスもののSSはないか。
自分は姉妹スレの「この宇宙のどこかから」がオススメ。
>>143 ならば化け物が召喚される話がいいよな。
オバケのQ太郎とか。
オバキューム召喚
宝物庫から大量のテレサが出てきて学校がオバケ屋敷に
お化けか……
じゃあ某学校が幽霊を推す。
四季シスターズは初見の人にはホラーだぜw
じゃあホーンテッドじゃんくしょんから会長を・・・。
破壊と再生の魔力のせいで、バッジと手帳なしでも十分チート性能だけどね。
稲川さん、大妖怪水木しげる、究極生命体荒木、呼ぶならどいつだ!?
冗談はさておき、かまいたちの夜の再現で、何らかの原因により隔離された魔法学校で起きる殺人、
お外道さんなんかも結構ホラーだとは思うんだが
ホラーと言えばGARO
ここは恐怖新聞配達人を・・・
伝説の漫画「ゆび」からゆびを召喚…ホラーすぐる
おまえらそんなにタバサをビビらせたいのか
相坂さよ召喚。
そして誰にも気づかれませんでした。
完!!
タバサのお化け恐怖症は、サイトに弱さを見せてか弱い乙女を演出するための手段であった。
クロックタワーからシザーマン。
シザーマン+ガンダールヴ→無理ゲー。
軽快な動きのシザーマンとかどうよ。
お化け的なものがよかったら
スリーピー・ホロウから首なし騎士を召喚というのはどうだろうか?
でも、実際に遭遇したらどうなるかわからねんじゃね?
>>157 お化けか
スタスクの幽霊を召喚したらどうなるだろう
>>158 要するにあれだよ。
「タバサ、恐ろしい子……!」
って事。元ネタ的な意味で。
お化け…仮面ライダー幽鬼、式神の城、ネクロマン、まぶらほの幽霊の巻の主人公
あと鬼神飛翔時のアズラッドやテリオンとか位しか思い出せんな
いや、ここはやはりぬ〜べ〜を召喚してだな、毎週起きる心霊現象ががが
>>147 同作者から夏木とか。あぁでもようやく触れ合えるようになった嫁さんと分かれさせるのは酷か
本物の幽霊とか妖怪とか悪魔が出てきたらタバサでなくてもビビると思うが
というか本物の吸血鬼を相手にしても平気でいたしな。
というか、エルザって登場率がやたら高いな……やはり幼女か、実年齢は30過ぎだが。
つーか今のタバサは幽霊如きじゃビビらんだろう
出会ってもどうやって倒すかしか考えないだろ
>>163 ぬ〜べ〜で思い出したけどシャーマンキングとかも居たな
うしおととらなんかも幽霊分多いし
怪異いかさま博覧亭なんて猿の木乃伊と魚組み合わせて作った人魚の木乃伊に悪霊入れてナマモノにするとか鵺の箱とか幽霊ネタ一杯か
>>147 カトレアの体は鏡子ちゃんなら治せそうな気がするのは俺だけか
「人間の男には」絶対に倒されないアングマールの魔王も幽霊の類だな。
考えたところで答えが出ないのが恐怖なんだよ
倒せるのか、何所にいるのか、いつまでいるのか、何をしてくるのか…
無知と対抗手段がないのは怖いね
幽霊といえば
「幽霊の2/3」がもうすぐ創元推理文庫に召喚されるな。
もののけ姫からサン召喚
いきなりルイズを刺しかねんな
>>168 死の恐怖なんて超越してんじゃん
そも具体的に幽霊が何してくるっての?
>>171 しないかもしれないし、するかもしれない
いるかもしれないし、いないかもしれない。そんな感じじゃん幽霊とかって
ここはゾンビ屋れい子から百合川サキを召喚だな
未知への恐怖って奴じゃね、何が起こるのかわからないから怖いみたいな
怨霊・悪霊なら疫病をもたらすなどの祟りをなす
普通の亡霊でも「陰の気」の塊だから近寄るだけで生物には有害
霊体なので物理攻撃はほぼ無効、火はともかく風や氷柱が効くかどうか
>>165 スレイヤーズでリナが、ゴーストは平気なのに
怪談とか幽霊は怖いみたいなこと言ってたし、
案外、マジモンの幽霊が出たらびびることはあるかも
じゃあプラーガかTウィルスを召喚すれば・・・
無能王とミョズさんコンビなら喜んで研究しそうだ
化物か…
仮面ライダー響鬼の黒幕二人召喚…ハルキゲニアが妖怪まみれに…うん普通に終了だなw
とりあえずルイズが響鬼さん呼んでジョゼフが黒幕呼べばバランス取れるかも?
化け物なら地球連邦軍のMSだろ
ジョセフが宇宙猿人ゴリ召喚
…………なぁ、ガンダールヴって槍とデルフで戦ってたんだろ?
前田慶次を呼べたら、ガンダールヴとして、すごいことになるんじゃないか?
ああ、「花の慶次」のほうな、槍捌きもすごけりゃ、剣捌きもすごいし……
デルフが少々小さく感じる可能性はあるが……
「槍使い」といえば、うしとらの蒼月潮や精霊の守り人のバルサ、あとは歴史系作品に出てくる宝蔵院キャラか。
>>147 手帳の召喚ありなら、ギーシュ戦は赤マント呼んで魅了対決になりそうなw
アニメ版なら、理事長とオールド・オスマンが『声が似ている(声優が同じ)』ネタも出来るしのう
でも、金次郎やベートーベン辺りはガーゴイルとでも思われるんだろうか?
・・・( ◇ )
>>183 >金次郎
召喚元が豊葦原学園じゃない限りは迷うことなくガーゴイルに区分されることだろう
>槍使い
テッカマンブレードとオーガン
カッパ(FFY)、シド=ハイウインド(FFZ)、フライヤ=クレセント(FF\)、キマリ=ロンゾ(FF])
ジークフリード(WA・AF・3)、ヴォルスング(WA5)
小金井薫(烈火の炎)、ジョーカー(烈火の炎)
あとはオーディンとかそんなか
無口すぎるキマリを軸にすえて動かすのはかなり難しいね
喋る時は喋るけど、認めてない相手には反応しても無視ぶっちぎりだし
ED後のヴォルスングだったら快諾しないまでも使い魔にはなりそうだ
条件確認すれば保留するだろうが
そのラインナップならせめてガリも入れてやれw
以後のFFシリーズでは武器の名前になってる竜騎士なんだからwww
ff6のモグも槍じゃなかったっけ?
モグなら可愛いから生徒たちの人気者になりそうだ
ワンピースのゾロとかどうだ?
くまに飛ばされて気が付くとそこは魔法学院だった・・・
バハムートラグーンのムニムニの最強形体の一つ前のオーディンや黒竜騎士もグラフィックを見る限り槍を使えそう
デルフも普通に食べて得物が槍から剣に変わり暗黒剣がパワーアップ
しかし更に育てて最強形体にしたら外見はシュールな初期状態に逆戻り。その時のルイズの反応はどうなることか
ダイの大冒険のヒュンケルとラーハルトも槍使いだぞ。
ヒュンケルは「槍は素人」って言われていたが。
ここは真なる霊帝ケイサル・エフェスを…
…何故か無能王とカラオケしてる姿しか浮かばんのだが
バサラが負けるレベルの歌エネルギーが発生してるじゃねーかwww
>>191 すまんリロ忘れ
槍ならクリュサオルのクリシュナにハイパーマシュラ
映画もおkなら昨日観たばっかのトランスポーターも挙げておく(棒だけど)
槍使いか…
つシド(FF7)
つブラッド(ゲマインシャフト)
つアークセイバー
つレミリア(東方)
つ仙石(センゴク)
つ李典、関羽、呂布(蒼天航路)
それ位か?
お前の人生経験がものすごく浅いことだけがわかった
呂布を召喚
り、龍は何者にもし、縛られない!
というかギーシュと決闘になったら人間を握りつぶせる呂布は…
>>191-192 それは巨大な存在だった…数多の軍勢の前に降臨する謎の老人、そして迸る魂の歌!
いつしか人々は一つになっていた、そこには敵も味方も、平民も貴族も無かった
( ゚∀゚)o彡゚ア!ニ!キ!ア!ニ!キ!
まで浮かんじゃっただろ、どうしてくれる
198 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 09:38:18 ID:FS0+oY3n
>アニキ
表彰台に立つサムソンとアドンとイダテンの姿しか思いうかばねえ
アニキと言われると、ストレイト・クーガー(スクライド)、カミナ(天元突破グレンラガン)、矢車想(仮面ライダーカブト)が最初に浮かぶな。
……やさぐれたギーシュが地獄兄弟になる気がしてしまうのは何故?
イダテンもいるぞ。最近はアドンとサムソンが主役になっているが。
>>199 周りはラインやトライアングルがごまんといるのに自分だけドットのヒヨッコだからではないかな?
オレもアニキと聞くとアドンとサムソンしか浮かばない。
槍と聞いてパワポケ10の和那を思い浮かべる俺は真性のパワポケ厨
203 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 09:57:25 ID:P1cm1b89
槍といえは朱槍を持った前田慶次
ゼロ魔作中で言及されたヤリは当時の最強武装ってだけじゃなかったか
槍キャラと言えば空気こと天田くんはどうだろうか
物理攻撃もそこそこだし、破魔電撃回復も使える
槍と言ったらリュー侍疾風丸とランペイジの張飛
吉永さんブレブレアニメ化も有って忙しいのは解りますが二部の三話は何時になりますか……orz
完結作品にある「ヘルミーナとルイズ」を読んで、まほろまてぃっくの最終回を思い出したのは俺だけじゃないはずだと、呟いてみる……
そう思ったから調べてみたらまほろさん召喚ってまだ無いんだな。
まほろさんならメンテ不要……
それ以前に1年で死ぬやん
>>201 アドンとサムソンと聞くとベルセルクの青鯨超重装猛進撃滅騎士団の団長と副団長しか浮かばない。
アドンさんは、あの位では絶対死んで無いので口が正に鯨の様になって再登場すると思っていた時期がありました…
もうすぐ死ぬ・・・
アポロガイストでも呼ぶか、ディケイドにも出てきたし。
ディケイド版アポロガイストは単独で世界間移動できるからなw
伊丹憲一と名乗って人間社会に溶け込んでいても別に驚かない
???「ヒーロー戦記もよろしく」
>190
ラーハルトは耳的にエルフと間違われそう。問題はバラン様命な彼をどうやって従えるかか…。
…しかし後期のハーケンディストールって素でカウンターぶち抜きそうなんだよな。オリハルコン兵士を纏めて両断するし。
>>212 あれって世界を繋ぐ通路みたいなものを利用してるから移動できるわけだし
全く未知の世界にいきなりとばされた場合はダメな気がする
>槍使い
詠唱中に攫われて「タダカツー! タダカツー!」と叫ぶルイズの姿が脳裏に
またはアレか。境ホラの本多二代
「照れ隠しにアルビオン弁でいうならば、――セックスした仲で御座るな」(←意味を誤解している)
の爆弾発言は誰に対して投下されるか?w
槍使いと聞いて鬼武蔵がアップを始めました
>>217 忠勝で思い出したけど、まとめのBASARAのSSの更新1月で終わってるけど、
何で数ヶ月前に投下されたやつ更新されてないんだろ?
>>216 つかアポロガイストは…帰れない場合
アポロチェンジ→パーフェクターでハルキゲニアにとって大迷惑な存在に…
ルイズ?真っ先に生命力吸われて死ぬんじゃね?仮にパーフェクター無しでもあっさり殺されそうだw
コミック版Xのアポロだと大暴走するぞ。
槍使いと聞いてプレイヤーにいらない子扱いされるロンゾ族の角なしチビを思い出した
彼ならルイズも喜びそうだ
>>217 アンアンに対してウェールズとの事だなw
そういえば両作品とも英国に相当する国が浮遊してるんだよな
そういやアークUの主人公、炎のエルクも最初は槍使いか……
いろいろチートな魔法有るし大当たりだけど炎の聖霊と共に有るってのでキュルケかテファだろうな……
リーザとの絡み考えるとテファ一択かもしれん(歳不相応の胸的な意味で)
ナーロー!ナロ!!ナーロー!!!
桃太郎召喚
お供の三匹も一緒に
そしてハルケギニアで発動する桃変化
金太郎、浦島太郎、龍神太郎で虚無使いの数にもぴったりだぜ
槍使いでうしおと獣の槍がすぐに出ていないことに驚愕した
既に召喚されてるやん
るいずととらが名作過ぎて
ルーンの力で武器を持つ度に髪が伸びるうしおと涙を流して羨ましがるコッパゲ
234 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 15:01:08 ID:QS5+FeXS
>>233 ※ 戦闘終わるたびに髪が抜け落ちて消えます
sage忘れ失礼
>>234 やりすぎると一生分の髪が尽きて、つるつるになるんですね。
らんまであったな、そういう話。
>>200 最近のベルセルクはあの兄弟が主役になってるのか。
>>239 若い頃は髪が一番の自慢だったんですね・・・・・・
>>214 残骸スト自重w
そう言えばサモナイ2のバルレルも槍使いだったっけ
無能王がレイム召喚すればアンドバリの指輪いらないんじゃね?
作中では部下にやらせてたけど、本人も霊属性召喚使えるんだから悪霊憑き出来てもいいよな
槍使いといえば仮面ライダーアギト
トリニティーなら剣と一緒に使うからリアルガンダールヴだぜ
槍使いならディスガイアからエトナ様を・・・
ハルケにはいないであろう生物を召喚したら当たりの部類に入るかな
例えば河馬やサイみたいな野生動物
槍使いなら牙狼にいた気がする
なんかの間違いでゴキブリとか召喚しちゃったらどうするんだろう
コモドオオトカゲとかオオサンショウウオはどう扱われるんだろう
>>238 そのアドンとサムソンやない。超兄貴の方や
>>243 ストームハルバードは双頭の薙刀かと思ってた
予約なければ2分後に投下しますね。
>>247 両津が変身したゴキブリだったら最強だぞ
55.ルイズの悩み
貴族とは、メイジとは。来客用のベッドで横になって、ルイズはそんなことを考える。
ルイズの理想は立派な貴族になること。けれど、どのような貴族が立派だと言えるのか?
もちろんルイズには理想がある。父や母のような貴族……けれど、
あの二人は自分がいない所ではどの様に振る舞っていたのだろう?
ルイズはエレオノールの話を通じて、自分の考え方が世の中とずれていることに気がついた。
ああでもない。こうでもない。色々考えているといつの間にか空が白みはじめ、
気がつけば朝になっていた。
考えが深みに入り、思考が鈍化する。徹夜で考えた事柄はルイズに悩みだけを植え付ける。
朝食を終えても全くそれから抜け出せず、底の方へ引き込まれていく。
「……私、一体どういう貴族になりたいのかしら?」
額に右手を当てて、何やら思い詰めた表情のルイズは廊下で会ったマーティンにそうたずねた。
「どうしたんだい、急にそんなことを言って」
「なんだか、分からなくなってきたの」
マーティンはいぶかしげにルイズを見る。一晩考え込んだ顔をしていた。
それでも解決できなくて悩んでいる顔つきだ。若人にとってそれだけ悩むのは好ましい。
誰かが話を聞く限りは。マーティンは近くのベンチに座って、ルイズに座るようにうながした。
「立派な貴族になりたいとずっと言っていたじゃないか」
「うん。でもなんだかよくわかんなくなってきたの」
「どんな風に?」
ルイズはマーティンに昨日エレオノールから聞いたことを全て話した。
平民がもしかしたら魔法が使えるかもしれないこと、
それの実験をすることが国を危険にするかもしれないこと、
それを聞いて自分が考えていた立派な貴族像が何だかぼやけてしまったこと。
ルイズの話を真摯に聞いたマーティンは、再びルイズの様子を見る。
答えを求める瞳でマーティンを見ていた。マーティンはそれを言うつもりはない。
考えた末自分で見つけた方が良い答えになるし、自分の考えを全て押しつけるのは良くないことだ。
「理想を求めることが悪いわけじゃない。けれど難しいことでもある」
マーティンはこの国にそれほど長くいるわけではないが、
それでも魔法の使える者、使えない者の差がとても大きいことは理解している。
国や宗教がそれに乗っ取って動いている以上、もし使えない者が「いなかった」と分かったら、
とんでもないことが起こるのは想像に難くない。少なくてもこの地域一帯の常識が全て崩れてしまうだろう。
「でも、マーティンの国じゃ魔法は広まったんでしょ?使えた方が便利だもの」
悩ましく頭をひねるルイズに、マーティンは頷いた。
「確かに広まったよ。けれどそれは魔法に対する考え方が違うからだろうね。杖が無くても魔法は使えるから、
簡単な治癒魔法ならなんとなく使えるようになるんだ。すり傷を治すくらいの効果の薄い物だけど」
>>243 しかしトリニティの出番は一回で終了
ライダーに限らず変身できる連中ってどういう扱いになるんだ?
アイテム使うやつはマジックアイテムで誤魔化せるけど
ギルスは怪物扱いされるのは確定だが
専門的で難しい魔法でなければ誰だって扱えるようになる。タムリエルとハルケギニアで使われる魔法の、
最も大きな違いの一つだ。
「それでも最初はメイジの反発があったんだ。魔法が使えなければ貴族になれないこの国で、
それが問題になるのは仕方のないことだろう」
「うん……」
不服そうにルイズは返事をする。言われていることについて、分かってはいるのだ。
昨日エレオノールに言われたこともある。しかし、どこか納得ができない。
そんな風なルイズを見たマーティンはやはり柔らかく言った。
「納得しなくても構わない。君が答えを見つければ良い。色々な本や人の考え方を通して、
何かを得ていけばいいんだ。しかし貴族は先を見通して動く必要がある、と私は思うよ」
ほんの少し先なら、誰でも予見することができる。しかし、
もっと後のことを考えるとしない方が良いことはたくさんある。
マーティンはルイズに優しげに語る。
「ただ条件の良い選択は誰でも選ぶことができる。その良い部分だけを見ているからね。
しかしそれらは大きな危険をはらんでいることが多い。
そうした所を見て、どれが一番より良い選択かを考えることも立派な貴族には必要なことではないだろうか」
「……」
その言葉には何か重みがあった。きっとマーティンもそうした選択を迫られたことがあったのだろう。
そう思ったルイズは小さく頷いた。
「後は……私が答えるべきではないだろうね。私が知っている貴族とか、
そうした為政者が行う政治についての考えはシロディール市民のものだから」
皇帝として行った職務は演説が二回。前線で指揮をしながら戦闘に参加したデイドラとの戦いが二回。
そして未遂に終わった戴冠の儀が一回。
若い頃はメイジとして魔法の力やデイドラの力に誘惑されて、
痛ましい事件によって心を改めた後は、聖堂で働く人生を過ごした。
そんなマーティンは学問として、また為政者としての政治を知らない人だ。
そもそも自分が皇帝の隠し子だと思いもしないマーティンが、それらについて詳しく学ぶはずもない。
「市民?」
「ああ、ここで言うところの平民のようなものだよ。中身は全く違うけれど」
「ふうん」
シロディールは帝国の中央だけあって、生まれた時から市民として生きることが許される。
市民とはつまり帝国の政治に参加できる市民権を持つ者のことだ。
市民である限りは条件を満たせば種族を問わず貴族になれる。
たとえ一部の地域で奴隷として扱われていた獣人たちや、
その恐ろしげな外見と緑色の肌で敬遠されがちなオークだろうと。
とはいえ貴族になるには大金が必要だ。コネもないといけない。
コネがなければ辺境の荒れ地の領主がせいぜいだろう。
オーク貴族の会に入会しているラグダンフ卿の私有地もへんぴな場所にある。
それを知っているマーティンは、ゲルマニアも似たような物なのだろうと思っている。
マーティンと話をして少し気が楽になったらしい。ルイズはベンチから立ち上がった。
「すっきり、とはいかないだろうね」
マーティンの問いに満面の笑顔とはいえない、どこか困った風にルイズは笑う。
「うん、まるでダメ。全然答えが浮かんでこない」
「簡単に片づく問題ではないからね。しっかり悩むべきだ。良いことだよ。大人になってしまったら全て割り切って考えてしまう」
考えるのをやめてしまうんだ。マーティンはそう言ってベンチから立ち上がると、ルイズに優しく微笑んだ。
そういうものだろうか。ルイズはそんな風にはなりたくないなと思った。
「様々なことに触れていけば、自分の中の理想と現実に折り合いをつけて考えられるようになるものさ」
とりあえずルイズは頷いたが、そんな風に妥協するのは嫌だという気持ちはある。
とはいえ、現実を知らなければ立派な貴族になれそうにないというのも理解はした。
「……何だかとっても面倒な気がしてきたわ」
魔法が使えない時は考えもしなかった様々な事柄はどれも魔法ほど理路整然としていない。
むしろ魔法が使えなかった頃の方が頭を使わずに済んでいるような気がする。
ルイズのそんな呟きに、マーティンは笑った。
「何かになろうとしたり何かを成し遂げようとしたりすることは、例外なく面倒なことだよ」
それもそうか。とりあえず少しは気分が良くなったルイズは、向こうの方からエレオノールが近づいて来ているのに気が付いた。
「なに油を売っているの。さ、行くわよ」
「はい、姉さま」
素直な返事だった。しかしエレオノールはそんなルイズの様子を変に思う。
昔なら自分の考えと違うことを言いきかせたら、二日三日はしかめっつらで元気が無くなったのに。
そんなエレオノールはマーティンに気が付いて、合点がいったように頷いた。
「良い使い魔ですこと」
「従者です。姉さま」
エレオノールは適当に頷いてルイズとマーティンを連れて行く。
こうして今日もルイズとマーティンを対象にした実験や研究が始まる。わけでは無かった。
「私はね、研究したいの。あなたを使って。でも『巫女』様は色々とお忙しいようで」
自分の研究室で巫女という言葉を強調するエレオノールは机から何かメモを取り出した。
今後のルイズの予定であった。ゲルマニアに旅立つまでにしておかなければならないことは、
ルイズが思っているよりとても多いのだ。
「ええと、今日の予定は婚儀に着る巫女服の寸法合わせと学院からの試験と詩の草案と……まずは試験からね」
「……し、試験?」
学院はそろそろ終わり。学生にとって面倒な試験のシーズンである。ルイズは汗をたらりと流す。
そういえば学院長、試験はそっちですればとか言ってたわね。しかし昨日は何もしていない。
顔を青くしたルイズはエレオノールに小さな声で呟いた。
「姉さま……私、勉強」
「しなくても平気よね?カトレアが見るそうだから、私はあんたの使い魔と祈祷書を調べさせてもらうからね」
羽ペンと机を用意して、その上に問題用紙を置く。もちろん裏向きで。
のんびりと研究室にやってきたカトレアは、ルイズの隣に座った。
「ルイズ。がんばるのよ」
「はい、ちいねえさま」
ルイズは少しほっとした。もしエレオノールが試験官だったら緊張して試験どころではないだろう。
エレオノールは早々とマーティンと一緒に出て行った。また色々と伝説についての研究に使われるのだろう。
「それじゃ始めるわね」
懐中時計を見てカトレアは宣告する。ルイズはとりあえず用紙に目を走らせた。
「時間は30分」
カトレアの声で空気が変わった。試験の入っていた封筒には60分と明記されている。
母と一緒に勉強した日々の冷たい感覚。それを思い出したルイズはえ、と用紙から目をそらしカトレアを見る。
カトレアにもちゃんと母の血が混ざっていたことがよく分かる顔をしていた。
「これくらいにしないと、時間が足りないの。できるでしょう?わたしの妹なら」
カトレアは笑っている。情け容赦なくコロコロと笑っている。
目が猫のように細くなって楽しそうにルイズを見ていた。
ああ、誰かに無茶な行いをさせるのはどうしてこんなに面白いのかしら。
例えばフォークで遊ぶのとか。想像するだけで楽しそうよね。
「ち、ちいねえさま」
「終わったら休憩無しで次の用紙を渡すから、死にものぐるいでしてね」
「ねえさま、ねえさまどうか」
カトレアは可愛らしくウインクをする。ルイズにとってそれは何も聞いてあげないと宣言されたようなものだ。
「もう、一分経ったわ」
その言葉が全てを物語る。ルイズはやけくそになりながら問題を解いていく。むしろ姉さまの方がよかったんじゃないかしら。
そんなことを考える余裕すらすぐに吹き飛んだ。問題が多く、時間が無い。
入学以来筆記は常に首位だったルイズが、初めてその座を悪友に明け渡すことになった試験はこうして始まった。
王宮は麗しき姫殿下の居室にて、アンリエッタはイスに座って足をばたつかせていた。
すぐ側に、額に青筋を浮かばせるのを必死にこらえているマザリ−ニがいる。
「なりません。お輿入れ前のこの大事な時期に王宮から出たいなど」
またいつものわがままであった。アンリエッタの近くには最近のお気に入りであるアニエスが付き従っている。
魔法が使えるし、かの『烈風』殿が認めたのだから構わないだろう。というより姫様の側近に平民とかダメだから。
との判断で賜ったマントをしっかり身につけている。結構いい加減なものだ。もらったアニエスが一番驚いている。
「でも、これからはゲルマニアで生活するのですよ?最後に一度くらい……」
「最後ではございません。殿下はこの後も何度となくこの国に足をお運びになられます」
頬をふくらませ、明らかに分かるように無言で抗議する。マザリ−ニは咳払いした。
まだまだ公務は山のように残っているのだ。そんなことをやっている時間はない。
「とにかく式までは大人しくしてくだされ。それがこの国の為なのです。
この後のご予定は分かっておりますな?」
有無を言わさぬ物言いだった。そのにらみをきかせた表情に、アンリエッタは気のない返事をして、
そっぽを向く。マザリ−ニはため息をついて出て行った。
「どうしてこう育ったのか……」
マザリ−ニが扉から出る間際、そんな声が聞こえたがアンリエッタは気にしない。
王家の乙女はこの程度の陰口なぞにへこたれはしない。
邪魔者がいなくなった後、王女は可愛らしくアニエスの方に向いてにこやかにほほえみかける。
「アニエス、アニエス」
「は、はい」
どういうわけかアニエスは嫌な予感がした。自分を見るアンリエッタは笑顔でとても美しかったが、
どこかしら腹黒くも見える。感情の掴めないなんとも奇妙な笑みを浮かべているからだ。
様々な思いを一つの笑顔に収束させているような、そんな表情だった。
「ひどいと思わない?マザリ−ニったら」
「い、いえ……」
「ひどいわよね?」
「え、ええ。ひどいと、思います」
ずいっとにらむは王女の双眼。気圧されたアニエスは首を縦に振る。
そうでしょう、そうでしょうとアンリエッタはうなずいた。
「だからわたくしは外に出ますわ」
「……あの、殿下」
「なにかしら」
「それで、一体どちらに参られるのですか?」
アンリエッタはそれまでのどこかしら黒さを含む笑みをやめて、
年相応の少女のようにいたずらっぽく笑う。いつもこれなら良いのだが。
アニエスはそんな感想を心の底にたたき落とした。
「ルイズが、ああ、わたくしのおともだちなのだけれど、彼女が今アカデミ−にいるそうなの。
お話がしたくなって。どうせゲルマニアで話せるだろうけれど、今話したいの」
そんな理由で、と思ったが王家のお方というのはそういうものなのだろう。己を納得させる。
しかし止めなくていいのだろうか。アニエスは鏡台の奥に隠されている変装用の小道具を漁るアンリエッタを見る。
多分、私もついて行かなくてはならないのだろうな。でも拾ってもらった恩があるしなぁ。
ちょっと騙されてしまったのだろうか。等と考えている内に、自分の前に服が投げられていた。
質の良い服とその上からはおるアカデミー職員の白衣。どうやって手に入れたのかは考えないことにした。
「着てちょうだいね」
アニエスはうなずく他なく、今着ているものを丁寧に折りたたんで渡された服に袖を通す。
さすがに着心地は悪くない。
「よく似合っていますわ」
うんうんとうなずいて、アニエスにそう言った。
そんなアンリエッタは念入りに髪の色まで変えていた。その上伊達メガネを身につけていて普段より知的に見える。
もちろん魅力的なのはいうまでもない。姫殿下は何を着ても似合うのである。
「ありがとうございます。それで殿下……」
「なにか」
「どちらから外に?」
ああ言って出て行ったマザリーニ様のこと。おそらく外に出ようとしたらたちどころに見つかってしまいます。
そんなアニエスの話に心配するそぶりすら見せず、アンリエッタは余裕を持った笑みを浮かべてメガネをずり上げる。
アニエスはメガネがキラリと光った気がして、何だか悪い人がやる仕草だなぁと思った。
「アニエス。偉い人が住む所には秘密の抜け道があるものなのです」
「抜け道……?」
部屋の隅に飾られてある絵画の前で、アンリエッタは呪文を唱える。
すると絵画が飾られている壁が地面に降りてゆき、下へ続く階段が現れた。
アニエスは驚いてそれを見る。その先は暗くて何も見えない。
内側から壁を降ろし、すぐ側にある燭台に明かりを灯してアンリエッタは言った。
「お父さまから教えていただいたものよ。明かりをつけておかないと帰れなくなってしまいますわ。さ、出かけましょう」
魔法で杖に明かりを灯し、アンリエッタは城の地下通路を歌を口ずさんで抜け出ていく。
その後マザリーニが部屋を見て、激怒した後倒れたのはいうまでもない。
お昼にはまだ遠い朝方。ルイズはヘトヘトになりながら巫女服の寸法を合わせている。
頭脳を使い果たした妹に代わってカトレアがああでもない、こうでもないと言ってお針子たちを動かしている。
そうこうしている内に何事もなく寸法合わせは終わったが、ルイズはイスに座ったまま動かない。
「ああルイズ。やっぱりあなたはかわいいわね。まるでお人形さんみたい」
疲れ果てているルイズは、うんともすんとも言わない。
カトレアはルイズと目を合わせる。ルイズは上の空でカトレアを見てはいない。
楽しそうにカトレアが言った。
なんか挟んじゃってスマン支援
「食べちゃいたいくらい好き」
「……はい?」
視線がしっかりカトレアを捉えて数秒経った後、意識を今に戻したルイズは顔を真っ赤にする。
カトレアはやっぱり楽しそうだ。
「な、ななななにいってるのねえさま」
「ほっぺたとかおいしそうよね」
あれおいしそうよね。食卓のパンを取ろうとするようにルイズのほおをつまもうとする。
ルイズはその手を払いのけて、若干想像していたこととは違うものの危なっかしいことをいう姉に叫んだ。
「そ、そういう物騒なこと言うの禁止!」
「あらあら、それは残念ね。じゃあお昼になったから食事にしましょうか」
ぽふぽふと頭をなでられてから、からかわれていることにようやく気がついた。
イスから立ったルイズはカトレアが差し出した手を取らず、ぷいっとした顔で外に出る。
「怒った?」
後から追いついたカトレアはそうたずねた。ルイズはもちろん怒った風に低い声で返事をする。
本当に怒っているわけではない。ただちょっとばかりからかわれたから謝って欲しいだけだ。
「うん。ちいねえさまのこと、きらい」
「あら嬉しい。嫌われちゃった」
満面の笑みでそう言われて、またルイズの調子が崩れた。
そこはごめんなさいとか言ってもらわないと困るのに。
渋い顔のルイズをよそに、カトレアはやっぱり楽しそうだ。
「全部好きっておかしいもの。嫌いな所も見て、それで好きって言ってもらわないと」
案外深そうなことを言っている気もするがルイズにとってはどうでもいい。
肝心なことは、大好きな姉はこれっぽっちも謝る気がないということだ。
「ちいねえさまのこと、全部きらいだもん」
ふてくされたルイズは子供の頃のように困らせようとしてみた。
だが、カトレアは何か困る様子を見せるわけでもなく、できるだけルイズをマネてつぶやいた。
「ふうん。わたしもルイズのことだいっきらいだもん」
「マネしないで」
「マネなんてしてないもん」
「ちいねえさま!」
ルイズは怒って口をとがらせるが、カトレアは腹を抱えて笑うだけだった。
「ああ、やっぱり、面白いのね。あなたをからかうのって。ふふ、ははは」
「いい加減にしてよちいねえさま。私、本当に怒っているんだから」
「昔できなかったことをしているだけよ。あなたが小さい頃にしたら面倒なことになったから」
「ちいねえさま。性格ひんまがっているのね」
カトレアは驚いた風にルイズを見て、少しあきれたように言った。
「今頃気がついたの?あの時分かってくれたと思っていたのだけれど。
でも好きな人にはいたずらしたくなるものじゃない。あなたもたくさんしてくださったじゃないの」
「そんなに?」
「ええそうよ。忘れたの?……忘れたくなる気持ちも分かるけれど」
そんなことしたっけ?小さい頃の思いではほとんど忘れてしまっている。
もやの中、手探りで落とし物を探すように記憶を思い起こすが、覚えているはずもない。
思い出そうとしているルイズに、カトレアは優しく声をかける。
「別にいいのよ。あなたが体を治してくれてから、昔できなかったことを楽しめるようになったのよ」
火竜山脈に行ったり、おいしいものを食べたり。カトレアは楽しく人生を過ごしているようだ。
「私に意地悪したりとかも?」
「ええもちろん。エレオノール姉さまがあなたをつねる理由がよく分かるわ。
つねりがいがあるのよ。あなたって」
嫌だなぁそれ。ルイズはそう思った。何でつねりがいがあるのだろうか。痛がるから?でもあれ痛いじゃない。
むぅとルイズが考えながら歩く内に、二人は食堂の前に着いたが人の気配がしない。
「あら、まだ開いてないのね」
食堂には着いたものの扉は閉まっている。カトレアは懐中時計を取り出して時間を見た。
まだ11時にもなっていない。ルイズははてと先ほどの試験時間について思い出した。
時間足りないって言ってたじゃないの。なんで余るのよ。
少しばかりとげのある調子でカトレアに聞いた。
「ちいねえさま。これならもっと試験をゆっくりできた気がするのだけど……」
「え?ええそうね」
ルイズに視線を合わさずにそう返す。ルイズの怒りが大きくなりだした。
ルイズもカリーヌの娘である。はっきりとしたことは大好きだが、
白か黒か分からない灰色は嫌いだ。本来のカトレアとは相性がとても悪いともいえる。
灰色が好きそうな神様から慈悲をもらったカトレアは、同じように濃い灰色が好きだからだ。
「ねえさま。なんで30分にしたの」
「ん……どんな理由なら許してくれるの?」
「ちいねえさま!!」
ルイズはカトレアに向かって怒鳴った。元々気分は良くないのだ。
朝からずっと頭の奥に悩みがあって、その上冗談では済まない悪ふざけをされたら誰だって怒る。
しかしカトレアはそんなルイズに言い返すわけでもなくただ黙っている。
「いくらなんでもひどいわ。おかしいわよ。試験は大事なものなのに」
「人生おかしなことだらけよ。たとえばあなたの後にいる人たちとか」
そう言われてルイズは後を振り向いた。そこには金髪でメガネをかけた年若い少女が自分に向かって手を振っている。
「あれ……?」
こんな人いたかしら。その手を振る職員らしき人をよく見る。アカデミー以外のどこかで見かけたような。
金髪の女性が駆け寄ってくる。その走り方にも見覚えがあった。それが誰だか分かった時、姉への怒りはどこかへ飛んでいった。
驚きで頭が包まれたのだ。
「ああ、ルイズ!お久しぶりね」
「……アンリエッタ?」
きゃいきゃいとはしゃぐ幼馴染みを見て、そう言えば変装得意だったっけ。ルイズは思い出す。
それにしても手が込んでいる。髪の毛は魔法の染料を使っているようだし、
その変装も一目でアンリエッタと気づける者はいないだろう。
しかし、どうやってここに来たのかしら?きっと忙しいだろうに。
アンリエッタのそばにいる、アカデミー職員らしからぬ体格の女性とたまたま目が合った。
考えてはいけません。目で言われた。たしかに考えてはいけないことだ。
難しいことはとりあえずおいといて、ルイズはアンリエッタに顔を合わせる。
「アンリエッタ、元気そうでなによりだわ」
「ふふ。ちゃんとわたくしを名前で呼んでくれるのね」
「タルブでもそうだったじゃない」
「ええ。そしてこれからも」
二人の少女は互いを抱きしめ、再会を喜んだ。ルイズは何となくダメな気がしたが、
それでも再会を喜んだ。
「あなたのお悩み、色々と聞いてもらえそうね」
カトレアはルイズの耳元でそう呟いて、どこかに歩いて行こうとする。
ルイズはそういうことだったのかと思い、カトレアを申し訳なさそうに呼び止めた。
「ち、ちいねえさま」
「うん?」
「さっきは怒って……」
「ああ。気にしないでいいのよ」
カトレアはコロコロと笑って続ける。
「たまたまだから」
「……え」
「わたしが30分にした理由は適当に考えてね」
笑顔で去っていくカトレアを見て、面白半分でやられたと気がつく。
きょとんとした顔のアンリエッタをよそに、苦い顔で姉の後姿を見るルイズであった。
投下終了。次は魔法の話とタルブを入れて……ではまた次の投下まで。
>>259 気にしないでください。支援ありがとうございます。
これはまた長いロングパスだ
ダン強い筈だけどどうにもかませ犬臭が
265 :
262:2009/08/22(土) 17:27:44 ID:MlqzX+ep
ガーディアンヒーローズからゴーダッツ盗賊団召還とか
ティファに召還された方がしっくりきそうだけどw
汗臭い使い魔とかそんなタイトルで
ガーヒーからなら、個人的には不死英雄戦士を召喚したら面白くなりそうな気がする。
動く骸骨に恐れをなした生徒達を庇おうと立ち向かうコルベールと、反射的に剣を取る不死英雄戦士。そして当然のように炸裂する失敗魔法。そんなカオスな光景しか思い浮かばない……
モンスターハンターポータブルセカンドGのハンターにお越し願おう
槍とか沢山あるし
ただし操作はルイズ
頑張れルイズまずはPSPの電源を入れる所からだ
>>268 らき☆すた世界にルイズが飛び込む話を思い出した
もう槍談義はいいよ。お前ら自分が持ってる槍使いの知識ひけらかしたいだけだろ。きめぇ
ふふふ俺の股間のゲイボルガ使いを見たいって?
>>267 そいつが召喚されたらルイズ涙目だな
嬉しさで
不死英雄戦士とかレコンキスタ涙目過ぎる
黒ルイズ、黒アンアン、黒タバサ、黒テファはあっても、いつも優しいちぃ姉さま
じゃあジ・エルダースクロール外伝のちぃ姉さまはどう分類すればいいんだろう
こどものうた
ちいねぇさまがおこったら
二年 るいず
ちいねえさまがおこったら
ちいねえさまがおこると
ガラスがこわれ
じめんがこわれ
ちきゅうがばくはつし
うちゅうもばくはつし
このよはおわる
みんなが
しぬ
不死…
つコハク
つゼロ
つ無謀戦士一家
つコーラサワー
コーラ召喚は是非嫁も一緒で。
何度「どう考えても死んでるだろう」という描写で生き延びても、
それがコーラサワーなら「まあコーラだし」で納得してしまうw
つ舩坂軍曹
っモーデン総帥
つデーモン小暮閣下
少し気になったのですが、クロス作品オリジナルのキャラは許されるのでしょうか?
もし許されるのなら、召喚されたキャラやゼロ魔のキャラをちゃんと書いて、蹂躙のような事をしなければ長く出してもいいのでしょうか?
どうかお答えお願いします。
神龍召喚ってねーな。
神龍召喚したらルイズの願い事はこれだな
・バストを増大
・ちい姉様を回復
・魔法が使えるようになる
よくわからないんだが、もともとの作品にはいないオリジナルキャラを召喚させたいってことか?
それともモブの1人として登場させたいのか?
前者ならばこのスレの管轄外だと思われる。
不死……不死人たる藤井八雲とベナレス
オンヴィタカヤン(大いなる父)のなれの果て
中継点辺りかな、喚ばれていないのは…
オンヴィタカヤンのなれの果てな赤いスライムは即捕食に来るし
中継点は振れたところから融合されちまうから質悪い...
まともに契約出来る奴居ないな
>不死
一輝兄さん召喚したらルイズやタバサの境遇に保護欲を刺激されて、急に優しくなるんだろうな。
>>284 例えば、ネギまの魔法を使うオリキャラとか?
もしそうなら、理想郷にどうぞ。
>>284 お伺い立ててる時点でアウト。
その程度の判断ぐらい自分でしろよ。
ルイズの性格を悪しざまに罵る前に、彼女がひどいイジメを受けてぼっちだったにもかかわらず、
性根が曲がったり、卑屈な性格にはならなかった強い精神を持ってることを忘れないでください。
>不死
エヴァ召喚ですね。
吸血鬼の時点でやばそうだが。
不死ならサドでマゾでデブな吸血鬼を
都合よく原作ラストで穴に吸い込まれてるし
よくも私を召喚したものだ。
貴様らは私の全てを奪ってしまった。
これは許されざる反逆行為といえよう。
この最終鬼畜兵器を以て
貴様らの罪に私自らが処罰を与える。
死 ぬ が よ い
槍使い? いいえ、蜂使いです。
不死…という訳ではないけどどんなひどい攻撃を喰らっても戦闘不能になるだけで済むプリニー隊を
エトナの元よりはマシな生活が送れるはず!
あれだ、
我が千年の闘争とかいってるから、
それなりに不死身なのでは?
ひばちさまふたりが撃破されても、
大往生に出てたし
298 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2009/08/22(土) 20:55:11 ID:UY0Eg6bn
不死身では決してないが、屍姫の屍を召喚したらどうだろうか?
もしくは屍姫。
真アキの128WAY打ち返し弾に比べたらビダーシャルの反射なんてそよ風
加速状態の無能王でもいつまでよけ続けられるか
>>299 得意げに語ってるとこ悪いけど知名度低すぎて誰もわからないと思うよ
なんか元ネタあんの?
虫姫さまだな
>>284 オリキャラと一言にいっても話の流れに関わってくる重要なのから、ウルトラマンや仮面ライダーのゲストの少年Aみたいに差は大きいよ。
前者だと少々気を使う必要はあるだろうけど、後者くらいなら問題ないと思う。
むしひめかよ
男なら怒狩猟蜂だろjk
え?デススマイルズじゃないの?
>>295 でも赤い月の日に次々と転生しちゃってルイズ涙目w
あと薄給とはいえ給料あげないといけないのはルイズ的にめんどくさいだろうなw
天国式なら徳をつむわけだがハルケじゃ無理だし使い魔の仕事的に
エスプレイドなら
>>300 ここでたまに話題になるマイナー作品よりはまだ知名度あるぞ
>>302 >>294はケイブのSTG怒首領蜂 大復活に登場するシュバルリッツ・ロンゲーナ大佐で
後光が差す奴はロンゲーナ大佐が送り込んだこのゲームのラスボス
すまん、
漢なら怒首領蜂だった
男はデススマイルかケツイ
>>307 あれ、赤い月の日に転生してもまたすぐに補充要員が送り込まれてくるんじゃなかったっけあいつら。
あとプリニー隊の一般的な待遇は
「一日二十時間労働で年中無休制の無償奉仕
魔界保険、福利厚生その他もろもろ、特に無し
年二回の特別ボーナスはイワシが一匹」
でよかったはず。
オリキャラだすぐらいなら出番なくて泣いてるサイトでも出してやれよ
クロス先の一般人代表的なポジションで
ロミオの青い空からロミオ召喚
トリステインのスラムに住んでる少年達と不良グループを作りかねん
ハルケギニアの裏社会を牛耳っちゃいそうな使い魔って誰かいるかな?
別スレだとジョルノが呼ばれてパッショーネ作っていたけど。
>>312 無償奉仕は天国式の方、魔界式は残り全部でいいけどな
地獄の沙汰も金しだい方式だし
あくまでルイズと契約するプリニーは初期メンバーだけだろ?
補充の連中が人間界に派遣されなきゃならない理由はないぞ本気で死後の世界にいかなきゃならないのに
>>315 サー・クロコダイル。
更新止まって寂しいぜ。
>>309 ・ ・ ・ ・
お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな(AAry
フライフェイス
林水閣下
春閣下
あざいごんぞー
法月のとっつぁん
G線上の魔王
ルルーシュ
なんか一部勘違いしたような
>>274 小ネタにある、「最『恐』の使い魔」のカトレアさんは結構アレな性格してる
>>307 カーチス(プリニーver)はどうよ?
地球勇者だけあって実力は申し分ないし、放浪してるから転生のための労働も全然やってなさそうだし
……いや、というかむしろ、放浪癖のせいでまともに使い魔やってくれなくなるのか?
ゴードン達が着てくれたら、その辺サーズデイに押し付けられるけどw
典型的なアメリカンおっぱいを目にしたルイズがどうなるか
>>315 つワンピースのロギア系の海賊
つクリスタルボーイ
つスマートブレインの社長
どいつもこいつも言うこと聞かない連中でしたの巻orz
>トリステインのスラムに住んでる少年達と不良グループを作りかねん
なんで元の環境を無理矢理当て嵌めようとするかね
原作と同じ話をやってなんか面白いかね
人間、動物、怪獣、巨人、超人、旧神・・・etc
今まで、様々な使い魔が召喚されたが虫だけは未だ召喚されてないな
ふと、初期契約プリニーたちが居なくなったあと、DIEピンチに陥ったルイズを颯爽と助けてくれる
プリニーウェールズ
を思いついた。
…頑張ってみるか?
がんばれ
GOGO!
応援するぞw
専用テーマソングが流れそうな奴たのむw
アルビオンって逆襲のシャアのアクシズと似てなくね?
それだけだけど。
>>327 プリニーになるような罪犯してなくね?w
戦争でヒトコロスイッチやってんじゃん
>>331 アンアンとの許されざる恋が罪だな
巻き込まれた多数の人達がどれだけ被害にあったことか……
プリニーになる罪の大きさがどれほどかは明言されてませんけど……ゼロ魔世界の貴族って、殆どがプリニーになる気がするのは何故だろう。
精々カトレアさんが例外になる程度か?
なんでこう権力者=悪という奴ばかりなんだろうなぁ・・・・
善人ばかりでないのは確かだろうが。
敵は海賊ならアプロの方がルイズ好みだろうな。
善人じゃ政治家でやっていけないからじゃね?
サイトがプリニーになるのは間違いないな。
ルイズが召喚したプリニーは生前サイトという名前でした。
とか。
なぜだろう、若本お兄さんのCD聞きながらこのスレ見てたら
ナイフアタックである!
いや、偏在ですから……
ナイフアタックである!
偏在で本体に攻撃は……
ナーイフアタックであーるぅぅぅ!
と司令が……
>>335 善良な者ほどわざわざ死地に行く、悪は執念深いから生き残る。
>>336 見た目的には人間よりは黒猫の方がましだろうけど
しかしアプロの減らず口&食い意地に頭を抱えるルイズの姿が思い浮かぶなw
>>337 政治家は無能な善人より有能な悪人である方が、みなの幸せに繋がるというしなぁ。
権力者が善人→不満が無いので物語がすすまない
権力者が悪人→権力者打倒の目的が発生
まぁ他国の侵略とかなパターンな場合は権力者が善人(支援者・協力者)だったりするけど
この場合は他国の権力者が悪人&市民は自由が無いだけって事が多い
なぜなら権力者悪人→権力者打倒=ゴール、市民悪人→ゴールは市民全滅!?エンドレス!?ってなっちまうからな
出てくる権力者がことごとく善人なパターンは敵=犯罪組織ってくらいしかできないんじゃね?
どんな犯罪組織にでも単身挑むハガー市長最高って話か
空気の読めないカキコしてすいませんでした……ごめんなさい。
毒吐きでも空気読んでなくて申し訳ありませんでした。
みんな善意で行動してるのに対立が生まれる話も多いがまあゼロ魔とはあんま関係ない
「どんなに悪い事例でも、それが始められたそもそもの動機は善意による」
「地獄への道は善意で舗装されている」
「最大の悪をなすのは、悪人ではなく、無知な善人である」
無知は罪、と
無知は罪ではない、知ろうとしないことが罪なのだ みつを
政治は綺麗事だけじゃ動かねーんだよ
流れ無視して亀レスだぜ
>>247 ワッハマンからCIA諜報員をだな
怪しい注射で怪しいものに変身する怪しい使い魔として大活躍さ
353 :
ジル:2009/08/23(日) 00:16:46 ID:QY5mYXIH
投下予定が無い様に見えるが実際にない気がしないでもないような気がしますので
0020時に投下します
ごひ「正義は俺が決める!」
ごひ「ルイズ様が正義だ」
355 :
ジル:2009/08/23(日) 00:20:39 ID:QY5mYXIH
「I love working for Henrietta(アンリエッタが大好きな)」
『アイラヴウァーキンフォアンリエッタ!』
「Let me know just who we are?(俺が誰だか教えてよ)」
『レッミーノゥジャストフーウィーア゙ー!?』
「1,2,3,4 Tristain magic corps(トリステイン魔法部隊)」
『ワンツースリーフォートリィステインマジッコー!』
「1,2,3,4 We love magic corps(愛してる魔法部隊)」
『ワンツースリーフォーウィーラヴマジッコー!』
「My corps(俺の部隊)」
『マイコー!』
「Your corps(お前の部隊)」
『ユアコー!』
「Our corps(俺達の部隊)」
『アッワコー!』
「The magic corps(魔法部隊)」
『ザマジッコー!』
少年達は走る。トリステイン風に改編されたラニングカデンスを歌いながら。
先頭には『王宮から派遣された教導隊』の隊長。そして生徒の列を囲むように教導隊員が走っている。
生徒達の中には目が虚ろだったりする者もいるが、更なるペナルティを恐れて気力で走っている。幾つかの班に分けられ、チームから脱落者が出たら一人につき十周のペナルティ。団体責任の恐ろしさをその身に刻んでいる。
そんな様を遠くから──寮の一室から──見つめている影があった。キュルケとタバサだ。
「体力が無いのは判るけど、一日中走るのはどうなのかしら。それに、あの歌は何なの?」
PT! PT! と叫ぶ男子生徒達。貴族なら絶対に言えるはずはないが、意味を知らなければ関係無い。要は雰囲気なのだ。それはどこか宗教的なものをキュルケに感じさせた。
356 :
ジル:2009/08/23(日) 00:22:39 ID:QY5mYXIH
「…………」
タバサは返事を返さず、黙々と本を読みふける。
「それに、あっちはあっちで何かしてるし」
学院外周を這い回るミミズのような人の列から眼を離し、塀の中の広場を見る。数人が二人を囲んで座り、囲まれた二人は激しく動き回って、隙あらば素手で襲い掛かる。ギーシュとマリコルヌ、それに何人かの名も覚えていない男子生徒だ。
ルイズ達が学院を離れている間、思うところがあったらしく見よう見まねで訓練していた連中だ。あの短期間の割にはそれなりに体力がついたらしく、こうして次のステップに移行しているのだ。こころなしか、マリコルヌが少し痩せたように見える。学院外周マラ
ソンも、自主訓練組の中で最下位ながらも完走している。
そこから少し離れたところでは、スコップを持った生徒が深く長い穴を掘っている。ペナルティを受けずに完走した奇跡のチームが、戦場の命綱である塹壕を掘っているのだ。
「学院はいつ軍隊になったのかしら」
確かに、それは紛れもない軍事訓練だった。訓練メニューはジルが提案し、それをウェールズ経由でアルビオン貴族達に教え、彼等は生徒に訓練を施す。
「ジルもいないし……どうしようかしら」
ジルはこの訓練に参加していない。彼女の教え子であるギーシュは、日々淡々とジルに与えられた訓練メニューをこなしていた。訓練中は砂鉄の入った50kgの背嚢を背負い、早朝の50リーグマラソン、各種筋トレ、格闘訓練。時々、手合わせをするくらいか、
ジルが干渉するのは。
古め樽ジャケットw
359 :
ジル:2009/08/23(日) 00:24:47 ID:QY5mYXIH
「こんな時にも関わらず、コルベール先生は……」
研究小屋から煙が昇っている。彼がそこで何かをしている証拠だ。
キュルケは彼を軽蔑していた。彼女が誇る、何よりも攻撃に特化している火の系統を、土の補助であると言わんばかりに使い、その術を研究しているのだ。この前も妙な機械を教室に持ってきて総スカンを喰らっていた。そして気弱でヘタレで、同じ火の使い
手として恥ずかしい、そう思っていた。ぼーっと見ていると、煙突から上る煙が濃くなり、やがて火山の様に火を吹くが、いつものことだ、誰も気にしない。
「まあいいわ。ジルとルイズが帰ってくるまでの我慢よ、我慢」
退屈は、いつもからかう相手であるルイズがいないのと、愛しいジルがいないのが原因だ。男が全員訓練に駆り出されていなければ暇のつぶしようもあるが────いま時間があるのは女子だけだ。授業は全て中止、暇を持て余した女子は大多数が寮塔
にひきこもっている。百合に覚醒はしているが、ジルが男より(ある意味)たくましくりりしいからであって、誰でもいい訳ではない。
「何があったのかしら?」
城で随分待たされ、ジル達が戻ってきたと思ったら『先に帰れ』。
下手に逆らって王族に睨まれるのも嫌なので大人しく従ったが、あれから何等の連絡もない。来たのはどこかの軍人貴族達がわらわらと。男子生徒が集められ、すぐに訓練が始まった。
「また厄介事を頼まれてるんじゃないでしょうね」
窓の外に向けて呟く。蒼髪の少女からは返事はなく、ページをめくる音すら聞こえない。振り向くと、
「あ、サイレント」
クロムウェルイズサーノバビーッチ支援
361 :
ジル:2009/08/23(日) 00:26:51 ID:QY5mYXIH
ジルは宝物庫を漁る。明らかに価値のありそうなものは無視して、見覚えのあるものだけを探す。それらは既に山になっており、その扱いの酷さに案内した衛士は蒼くなっていた。メイジの彼には雑然と積み上げられたガラクタにしか見えないとはいえ、ここに
ある、即ち、これらはまがりなりにも国宝なのだ。
「こんなものね」
一ヶ所に集められた金属と木の塊。それらは確かに禍々しい。なんてことのない、平民が使うただの銃だ、何も恐れることはない。そのはずなのに。
「さ、運んで」
数百年前から伝わる『朽ちぬ台車』に載せて、それを衛士に示す。平民とはいえ、王女の勅命により動いている者の命令に反すると言うことは、即ち王女の命に反すると言うこと。
せめてもの抵抗と言わんばかりに、返事もせずに衛士はそれに従い、ジルは一人残される。
「こんなとこにもあるとはね」
誰もいないのを確認すると、ジルは宝物庫を振り返る。視線の先には錆びた鉄の箱。どこかでは四次元BOXとか呼ばれていたらしい。不思議だが、便利極まりないもの。
ジルはその蓋を開け、中から小さな箱を取り出す。アルビオンの宝物庫にあった金銀財宝、その中にやたらとキラッキラ光るものがあった。まるでキーアイテムの様に。
しかし、それはニューカッスルでは使える場所はなかった。そしてジルの勘では、これは仕掛けのキーアイテムではない。鳴らないオルゴール、恐らくこれは、何か他のものと組み合わせて使う、魔法的なもの。或いは、魔法による何かが隠されている。気には
なっていたが、今まで取り出せる暇がなかった。
362 :
ジル:2009/08/23(日) 00:28:28 ID:QY5mYXIH
取り敢えずこれは保留にする。今は、アンリエッタ親衛隊に渡す銃器の確保が最優先だ。ニューカッスルから勝手に回収した宝物は後でウェールズに返しておくことにして、その時ついでにこのオルゴールの事も訊いておこう。そう結論を下す。
「さて、次は倉庫ね」
仕掛けの前で安息室に忘れ物をしたのに気付く、なんて間抜けは多分しないと高をくくり、オルゴールをアイテムBOXにしまってから、次の目的地に向かう。
「AKがあるといいんだけど」
1949年から60年以上に渡り使われ続けている、カラシニコフ式突撃小銃47年型、それとそのヴァリエーションを探す。扱い易く整備が簡単、火力・威力共に申し分なく、頑丈で信頼性が高い。旧ソヴィエト、現ロシアのみならず、あらゆる国で様々なヴァリエー
ションやコピー品が造られ、そしてこれからも使われ続けるであろう、人類史上最高傑作の銃。
この世界に於いては、これでもかなりのオーバーテクノロジーの塊だが、相手は魔法という反則技を連発するのだ。これくらいのチートは許されなければ、銃士隊は常に苦戦を強いられるだろう。
それに────ジルは思い出す。ニューカッスルの一室に封印されていたコートの巨漢。もしかすると、最悪ああいった化物とも戦わねばならない可能性もある。7.62mmや5.56mm程度では、散々叩き込んでやっと気絶させるくらいしかできないが、足止め程
度はできる。剣であれば────殴られてジ・エンド。
……まさか、ね。
そう思いつつも、悪い予感は消えない。
「お待ちしておりました」
363 :
ジル:2009/08/23(日) 00:30:14 ID:QY5mYXIH
扉の前の男がジルに声をかける。朝、城の前で別れたケイシーだった。つまり、ここが最後の倉庫。
「ご苦労様。早速開けてもらえるかしら?」
「は」
巨大な扉には不釣り合いな程に小さな、しかし、それでも普通の鍵に比べればかなり大きな鍵。それを扉に突き刺し、回す。相応の重苦しい音を立てて鍵は解放され、扉は開かれる。まるでどこかの洋館か地下施設か、その扉にジルは既視感を覚える。
「ねえ」
と、ジルはケイシーに問う。
「何でしょうか?」
「なんでハルケギニアの貴族って────」
その奥に鎮座していたのは、明らかにおかしいもの。ガラクタの山の中に、これでもかと言うほど、自己主張する大きな箱。
「物騒な物を集めたがるのかしら?」
バイオハザードマークとアンブレラのロゴつきの、コンテナ。
364 :
ジル:2009/08/23(日) 00:35:25 ID:QY5mYXIH
16話の1/3、終了です。
さるさんが怖いので、20kB弱で分割しています。
>>358 君は今すぐツタヤに行ってフルメタルジャケットを借りてきなさい。
17話か18話でタルブ旅行の予定です。
まだまだぐだぐだしています。
367 :
ジル:2009/08/23(日) 00:52:25 ID:QY5mYXIH
むう、ツッコミ待ちかと思ったのだが
>>326 ああやっぱり表示されないんだな、と久しぶりにみて和んだ
369 :
ジル:2009/08/23(日) 01:01:06 ID:QY5mYXIH
やっぱりさるさんくらった……
てなわけで0105時に2/2投下します。
370 :
ジル:2009/08/23(日) 01:05:39 ID:QY5mYXIH
結局AK-47・AKM・AK-74シリーズだけでは数は揃わず、RPKやガリルなどのコピーやヴァリエーションで代用することになった。
「石造りの建造物の内部では、銃声で耳を痛める確率が高いわ。跳弾で自分や味方が負傷することもあるの」
「は!」
それでも幾つか足りなかったので、Kar98KやM1903などのボルトアクションライフルでその穴を埋めた。今ジルの管理下にある銃で、扱いが容易なのはそれくらいしかなかった。西側の銃もあったが、どうしても予備パーツの量──AKシリーズのジャンクは他に
比べかなり存在した──や整備性などで劣る。近代の銃に慣れない彼女達に、やたらと複雑なM4やG3を使わせるとなると、教育にかなりの時を要するだろう。それこそ、月単位で。アンブレラのコンテナの中身など論外だ、あんな超兵器、ハルケギニアの技
術レベルでどうやって運用しろというのだ。
「いい? レシーバーのカバーを取り付けて……そう、それを元に戻すの」
「これですね?」
だが、AKシリーズやボルトアクションライフルは、そこまで扱いが難しい物ではない。むしろ簡単と言えよう。訓練開始から三時間、既に分解整備の講習が終わっていた。
「じゃあ、実際に撃つわよ」
『は!』
ガシャガシャと、初弾を装填する音がジルの周りで起きる。
「合図したら、セミオートで一発ずつ撃つのよ。まずは慣れることから」
『了解!』
371 :
ジル:2009/08/23(日) 01:07:40 ID:QY5mYXIH
アンリエッタ親衛隊は、素直にジルの言葉に従う。ソヴィエトの上層部が兵士を信用しなかった故に右側に付けられたセレクタがセミになっているのを確認して、
「Fire」
────案の定、7.62mmの反動を制し切れなかった何人かが姿勢を崩したり倒れたりする。一人一人の間隔はかなり空けてはいるが、もしフルオートなどで撃ったら悲劇が起きただろう。低性能な黒色火薬を使うマスケット銃に慣れた彼女達に、トリプル
ベース火薬を使う近代銃はかなり反動が大きく感じられるだろう。おまけにAK-47は曲銃床だ。
「倒れた者は伏射姿勢に」
『コピー!』
慣れさせるのが目的なのだから、射撃姿勢はより安定していた方がいい。いずれは土のメイジが作った鉄の像を相手に射撃訓練をさせるが、今はこれくらいしかできない。
「全弾撃ち尽くしたら待機」
サイドアームとしてハンドガンを渡してはいるが、いかんせん数が少ない。いや、あるにはあるが、フェイファー・ファイアアームズやS&W謹製の化物リボルバーが木箱に詰め込まれているのを見たときは、流石のジルも呆れた。こんなものを戦場で撃てるのは、
レオンかゲームやドラマの中のフィクションでしかない。自分のことは棚に上げて。
「リロード」
『アイ、リローディン!』
372 :
ジル:2009/08/23(日) 01:09:36 ID:QY5mYXIH
マガジン、ベルトリンク、クリップ。比較的簡単な構造で、予備部品の多いものを選んだのだが、どうしても統一はできない。部品の互換はないし、いずれは修復できないものがちらほらと出てくるだろう。少なくとも、バレルやチェンバー関係は供給する必要が
ある。弾薬もジルに依存し続ける訳にはいかない。
精度を度外視して土のメイジに作らせるか────いや、ギーシュやシュヴルーズの錬金は全く精度が無い。まるで鉄を粘土の様に手で成形している、そんな印象がある。全部全く同じに見えるワルキューレも、近くで見れば粗悪なつくり──とはいっても、
ハルケギニアではそれなりの精度だ──だと判る。こんなものでは精度どころの話ではない、爆速の高い装薬を使う近代銃では暴発しかねない。黒色火薬と球状弾丸を使うマスケット銃だから許されるのだ。AKがいくらパーツの精度が悪くても確実に動くとし
ても、流石に限度がある。
コルベールに依頼してあるものの、優秀ではあるが人員が少なすぎる。エンジンの原型のできそこないや、基本的な数学・物理学、材料工学、鍛造技術、etc...
数えればきりがないほどの研究をたった一人で抱えている。シュヴルーズやロングビルにも協力するよう頼んではいるが、ロングビルは秘書と諜報で三足の草鞋を履くことになり、シュヴルーズは練金分野でしか使えない。オスマンに協力を頼んだが、教員に
は積極的に研究に参加してくれそうもない。アンリエッタにトリステインの最高研究機関であるアカデミーと協力できないかと相談してみたが、アカデミーはロクな研究をしていないという。宗教が技術の発展を阻害しているいい例だった。
「腕のいい技術者……あ、もしかしたら」
もし今、ジルを見ている者がいたとすれば、その頭上に『!』マークを視認できただろう。妙な効果音に反応した何人かがジルを見るが、既にエクスクラメーションマークは消えていた。
全員がある程度撃ちまくって、そこでジルの意識は思考の海から浮上した。
373 :
ジル:2009/08/23(日) 01:11:38 ID:QY5mYXIH
射撃訓練で、狙撃に向いていそうな者、支援に向いている者、突撃・突入に向いている者に分け、それぞれに最適な銃を与え、撃ち方を教えた。それが今日の結果だ。
今のジルは色々と忙しい。帰る術を探す、そのために動いているはずが、とんでもなく遠回りになっている。洋館や街の仕掛けを解くのとは、レベルが違う。アークレイもラクーンも、脱出する方法はあった。だが、ここは異世界。
「ヴァレンタイン教官、少し、お話が」
アンリエッタに渡す書類を書きながらボーッと思考していた頭が、誰かの声で引き戻される。この声は親衛隊な隊長、アニエスだ。
「何かしら?」
ジルは平民の食堂で書類を書いていた。他に机と椅子のある場所を知らなかった──或いは、貴族の部屋で使えなかった──ので、こうしてきわめてオープンな場所で作業をしていた。どうせ、内容はそんなに秘密にするような事ではない。
「私と手合わせ願いたい」
教官に反抗したり、模擬戦したがるのはどこの世界も同じ。大抵は返り討ちに遇い、或いは派手に砲撃を喰らって撃墜がパターンである。有名だが稀な例として、トイレで部下に射殺されることもあるが。
「いいわよ。いつ、どこでする?」
「今から、練兵場はどうです?」
「Ok」
次の日、アニエスは必要以上にジルに従順だった。時折、憧れる様な眼でジルを見ていた事に、何人かは気付いたという。
374 :
ジル:2009/08/23(日) 01:14:30 ID:QY5mYXIH
2/2終了です。
アニエスは完膚なきまでにボコボコのフルボッコにされて
格の違いを知りましたとさ。
ちなみにハーブで回復。
375 :
ジル:2009/08/23(日) 02:05:20 ID:QY5mYXIH
0210より9/9投下ですよ
376 :
ジル:2009/08/23(日) 02:10:01 ID:QY5mYXIH
アニエスに訓練メニューを伝え、しばらくは基礎を続けさせる。銃の扱いに慣れ、次のステップに移行できるまでは。しかし、この世界で連発銃は珍しいし、命中精度もケタ外れに高いので、今のまま出撃してもそうそう負けるようなことはない。そもそもAKは比
較的低い命中精度を補うための高火力なのだ。『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』理論だ。
とりあえず科学技術を発展させるために、学校と研究所の設立をアンリエッタに提言したが、財政難で却下された。次のアルビオン反乱軍に対する戦争への準備で国力の少ないトリステインは火の車だという。
「ですので……わたくしはゲルマニアに嫁ぐことは未だ覆りません。かの国と軍事同盟を結ばなければ、トリステインは終わりです」
どうあがいても、そんな金は無い。だが。
「ウェールズはいるのかしら?」
「ええ、ウェールズさまだけ、報告に戻られていますが……」
「いくわよ」
「え?」
手を引かれ、強引に部屋から出され、ウェールズの部屋まで引きずられていく。
「ウェールズ、ちょっと来て」
ウェールズの部屋で、更に一人増える。
「ここは……」
ウェールズはともかく、長年城に住んでいたアンリエッタすら知らない場所。やたらと見つけづらく難解な仕掛けの先に、その部屋はあった。
377 :
ジル:2009/08/23(日) 02:12:48 ID:QY5mYXIH
「この城もたぶん、ジョージ・トレヴァー建築よ。仕掛けがなかったらおかしいわ」
王城をうろついていたジルが感じたもの、それはアークレイの洋館との共通点だった。石像の眼がキラキラ光っていたり、いかにもなくぼみがあったり、壁に不自然な切れ込みがあったり。
「いろいろな場所に隠し通路や隠し部屋があるわ。後で教えてあげるから、もし賊に襲われるようなことがあれば、使うといいわ……と、それよりも。これを見てくれるかしら?」
ジルが、次の部屋の扉を開く。安息室特有の『絶対的な安心感』がそこにはあった。
「ん? な、こ、これは!」
ウェールズが驚愕の声を上げた。
「知っておられるのですかウェールズ様?」
「ニューカッスルに置いてきた財貨か!」
整理されず、ただ雑然と積み上げられている金銀財宝・美術品・貨幣。その中に幾つか、ウェールズの見覚えのあるものがあった。
「敗走するなら、敵には何も与えちゃいけないわ。食糧は燃やしたし、城は潰した。一応、全部あるわ。慌ただしくなる前に、本来の持ち主に返しておこうと思って」
ニューカッスル城跡には、瓦礫と反乱軍の死体しかない。王党派兵士が仲間の遺体を船に運び、ジルが様々なものを回収し、そして全てを破壊したからだ。
「敗走……」
378 :
ジル:2009/08/23(日) 02:15:11 ID:QY5mYXIH
誰もがその場の空気を読んで言わなかった一言。それはウェールズの心をちくちくとなぶる。
「それで、どうするの? アルビオン王国の再建に必要でしょう?」
「いや、アンとジルで使ってくれ。アルビオン王国はもう亡国だ。それに再興しようにも、反乱軍にトリステインが負けたら元も子もないからな」
少しばかり悲しそうな顔で、ウェールズは決断した。
「Ok.じゃあ、ついでに」
サイドパックをごそごそと漁るが、それは見つからない。
「あ」
思い出したようにジルが錆びついた大きな鉄の箱から、何かを取り出す。
「バルブハンドルじゃないんだから……」
珍しくばつの悪そうに呟きながら、手のそれを差し出す。
「始祖のオルゴール! 全部というからまさかと思ったが……」
「知っているのね。だったら、使い方を教えてくれないかしら。どうも気になるのよ」
キラキラと必要以上に自己主張するアイテムは、たいていが重要なものだった。そしてジルの勘が告げていた。
「いや、判らないんだ。そもそも本物かどうかも怪しいのでね」
「一緒に似たようなものが伝わってない? 始祖ゆかりの物とか場所とか」
これは組み合わせて使うもの。時計塔の鍵やクロノスギアを手にした時の感覚が、このオルゴールにもあった。
379 :
ジル:2009/08/23(日) 02:16:37 ID:QY5mYXIH
「むぅ……」
ウェールズは考え込むが、一向にその閉じたまぶたが開かれる気配がない。
「……ああ、ありますわ! 風のルビーが!」
「それがあった! いや、完全に失念していた」
ウェールズが右手を差し出す。その中指に、宝石のついた指輪がはめられていた。
「アンリエッタがしている指輪と似ているわね。それも風のルビーかしら」
「いいえ、これは水のルビー。始祖の祈祷書と共にトリステインに伝わるものですわ」
ジルの口の端がわずかに上がる。
「近いうちに、それも見せてもらえないかしら?」
「何があるのですか? 国宝ですから、そう簡単にはお見せすることができませんので、相応の理由が無ければ……」
「無理なら、その内容を教えてもらえないかしら」
「いえ、それが、お教えすることができないのです」
「祈祷書に書かれていることじゃないの。そうね……異様に重かったり、メダルが入っていたり、白紙だったりとか、そういった特徴よ」
その言葉は、何故かアンリエッタを驚かせた。
「な、何故それを!?」
「え?」
380 :
ジル:2009/08/23(日) 02:18:45 ID:QY5mYXIH
「なんだって?」
ジルが提示した『例え』は『重い』『メダルが入っている』『白紙』。
「もしかして、異常に重くて、メダルが入っていて、白紙なのか?」
ウェールズの勘違いは、しかしジルが手に入れたことのあるアイテムの中にあった。最後の書(上・下)。大鷲のメダルと狼のメダルがそれぞれに入っており、それぞれが対のキーアイテムだった。
「いいえ。白紙なのです」
『白紙の本』。ただ本棚の空いたところに差すだけのキーアイテム。しかし、国宝をそんな風に扱うのはあり得ない。たとえ高価な美術品を仕掛けに使うトレヴァーも、まさかそんな事に使ったりはしないだろう。
「鳴らないオルゴールに白紙の本……」
共通点は、役立たず――――
「ルイズだわ。足りない鍵は多分、ルイズ、いえ、虚無の使い手だったのよ」
『な、なんだってぇぇぇぇぇ!?』
あまりのトンデモ理論に、王族二人は今まで発したことのない叫びをあげる。
「まだ確証はないのだけど、そうだとすると説明がつくのよ。私が、人間が召喚されたのも、『ガンダールヴ』のルーンが刻まれているのも、ルイズの系統魔法が爆発するのも」
ルイズの爆発は、あらゆる面で他の攻撃魔法より遥かに恐ろしい。キュルケのファイアボールと比較した場合、同じ呪文でも有効殺傷範囲・威力共に非常に高い。魔法の発動と同時に目標が何の前触れもなく爆発するのだから、事前に知っていても避け
ることさえ難しい。余談だが、ジルはこれを『レーザー兵器みたい』と評する。
381 :
ジル:2009/08/23(日) 02:20:44 ID:QY5mYXIH
と、対人殺傷能力及び対物破壊能力に関して右に並ぶもののないルイズの爆発だが、これほどの威力と効果範囲を持つ戦術破壊魔法が、普通のメイジと同じ精神力の消費で放てるものか。精神力なんて曖昧なものにエネルギー保存則を無理矢理適
用して考えてみると、同じファイアボールでも、キュルケとルイズでは消費する精神力が数倍ほども違うのではないのだろうか。変換効率が違うと考えて、たとえ消費が同じであったとしても、ルイズとキュルケではキャパシティにかなりの差があるだろう。何せ
放っておけば一日中バカスカ魔法の練習をするのだ、尋常な量の貯蔵量ではない。
ならば何故、この膨大な精神力を持っているのか。タンクが大きい理由は、放出が多いから。放出が大きい理由は、それだけの大出力が必要とされる魔法があるから。イコール、伝説の虚無系統。伝説と謳われるくらいだから、その威力たるや、系統魔法と
は比べ物にならないだろう。比例して、消耗も莫大なものになる。
ここで、爆発の原因が判る。その馬鹿でかい蛇口から垂れ流される精神力は、系統魔法ごときの呪文で制御できる代物ではない。ルイズが意図してその量を極端に小さくすればあるいは可能かもしれないが、精神力を正しく使う術を知らない彼女には無
理な話。結局、.50BMG弾をリベレーターで放つような状況になり、暴発。
といきたいところだが、仮定と予想が多すぎて穴だらけの理論。アンリエッタとウェールズは信じたようだが、デタラメではないにしろ不確定。ルイズのキャパが馬鹿でかいのと、もしかしたら虚無かもしれないという仮定と、虚無とルイズの魔力に関する想像で
立てられた戯言に過ぎない。カヴァーストーリーならぬ、カヴァーセオリーだ。
本当は、『伝説の虚無』という単語でオルゴールと祈祷書、ルビー、そしてルイズという要素がぴったりはまった、そんな感覚が理由だった。ジルが喚ばれたのはルイズが虚無だったから、ならばルイズが虚無に目覚めれば、その虚無の魔法で元の世界に戻
れるかもしれない。そう考え至り、先程のトンデモ理論で二人を納得させ、手っ取り早くオルゴール、祈祷書、ルビーを借り受けルイズに渡してしまおうと考えたのだ。
382 :
ジル:2009/08/23(日) 02:22:55 ID:QY5mYXIH
「もし、ラ・ヴァリエール嬢が虚無だとしたら……」
「ゲルマニアと同盟をせずとも、レコン・キスタに対抗できますわ! いえ、それどころか、アルビオン奪還も夢では……」
「ストップ」
浮かれる二人を、冷たい眼で見据えながら、ジルはそれを制した。
「ルイズを生物兵器として使って、レコン・キスタを駆逐してアルビオンを奪還する。その先はどうなるのかしらね?」
アンリエッタが一瞬で青くなる。どうやら、その先が想像できたらしい。対してウェールズはきょとんとしている。質問の意味が理解できないようだ。彼はどちらかというと軍人で、政治はそこまで得意ではない。内政はそれなりに上手くできるが、外交は恐らくダメ
なタイプだろう。
「取らぬ狸の皮算用だけど、もしルイズが虚無だったとして、アルビオンを奪回するなら、二種類のパターンに分けられるわ。大々的に『こっちには虚無があるぞ』と喧伝した場合と、『何か非常に強力な兵器』で殲滅する場合。前者はハルケギニアの崩壊、後
者はルイズが壊れる危険があるわ」
「こちらに虚無があると大々的に宣伝した場合、レコン・キスタは正当性を失います。虚無の使い手は即ち始祖の直系ですから、その発言力は非常に大きいのです。しかし、もしロマリアに知れたら、聖女に祭り上げられて聖戦の引金になるでしょう。暗殺の可
能性もあります」
「ルイズを兵器扱いしたら、戦争神経症になりかねないし」
ルイズを兵器扱いする。それは即ち、ルイズにジェノサイドを実行させるということに他ならない。今まで戦場や殺戮とあまり関係なく育ってきたルイズにいきなりそんな任務を与えるということは、彼女に狂うか壊れるかの二択を与えるということだ。
「それに、まだ虚無と決まったわけじゃないの。どっちにしろアルビオン内乱にルイズを投入できないけど」
「しかし、ルイズが虚無だった場合、トリステインに大きなカードができることになりますわ」
「使い方を誤れば世界ごと心中しかねない切り札ね。さて、じゃあどうする? ルイズにルビーとオルゴールを渡してみる?」
二人の答えは同じだった。
383 :
ジル:2009/08/23(日) 02:25:31 ID:QY5mYXIH
以上で16話終了です。
訂正が一カ所。
x「ストップ」
o「ウェイト」
乙
役立たず→ルイズとかww
連想ヒドスwww
乙
ヒデェw
386 :
ジル:2009/08/23(日) 02:49:40 ID:QY5mYXIH
>>384 追加し忘れてますが、『無能王も虚無かも』ってテキストがどっかに入ってました。
03がフリーズさえしなければ……
戦闘や破壊に関しては使えるが、汎用性が無いっていう意味で、です。
>>331 親より早く死ぬ親不孝はプリニー化に必要十分な罪らしいぜ
小説版でプリ二ーが主人公の奴の罪がそれだった
……王子様が死んだ時まだ王様生きてたよね?
388 :
ジル:2009/08/23(日) 03:17:31 ID:QY5mYXIH
ゾウディアックに最大の罪は愛を裏切ることとあったなぁ
コテ外すの忘れた……
人を殺すのは罪である 殺した理由など問題にはならない
人を傷つけるのは罪である 傷つけた程度など問題にはならない
人を騙すのは罪である どんなささいなことでも問題にはならない
人のものを盗むのは罪である 盗んだものの価値など問題にはならない
人の愛情を踏みにじるのは最大の罪である それが故意であるか否かなど問題にはならない
この罪深き者を許すことなど 我らが神に対する背信と同義である
がゾウディアックのテキスト
はてしなくどうでもいいです
ゾウディアック……地獄堂霊界通信にゾディアックっていう犬の使い魔を使役する魔女がいたな
黄金の太陽からどれでもいいからジン呼べばルイズも満足してくれるだろうか
うた∽かたからお守りのついた携帯を召喚
>>392 黄金の太陽の世界から来た奴らは世界の端が滝になって流れているとハルケで広めそうだな
遊戯王GXから覇王十代召喚。ハルケギニアを力で支配しそうだ。はおー…はおー…
まとめにある、ゼロの使い魔は大魔道ってなんなんだ?
昨日から中身無いように見えるんだが。
>>397 まとめに直接投稿しちゃいかんことになってる。
>>397 まとめに直接投稿したので、見つけた人に消されたんだと思う。
項目自体の削除は管理人氏にしか出来ない。
なるほど、項目削除はできないのか。
少し気になりますね。作者さん、避難所にでも投稿してくれない物だろうか。
最低限のルールも読まずにやるようなカスはお断りだ
>>401 以前直接投稿された凡骨と同じ人らしいので、確信犯だろう
荒らすためにだけ小説を書いて載せたんだとすればたいした根性だな
きっと「なんて面白いんだ!作者さん、頼みますからスレに投下して下さい!!」
みたいな流れになると思ったんだろう
本当に単純に書いてることに全然気づかなくて、どうして削除されているのかわかんない人…という可能性はないのか。
まあ仮にそうだとしても、やはり削除され続けるのは当たり前だと思うけど。
>>405 消される前の見たけど、大して面白くなかったな
こんにちは。
進路クリアなら13:30頃から第8話を投下します。
それではいきます。
「『アンロック』!」
ピンクブロンドの落ちこぼれ令嬢が唱えた失敗魔法の爆発、そしてそれに続く使い魔の
ガーゴイルが撃った本塔を貫くほどの銃撃――厳重な『固定化』と『強化』をかけられ、
連日の『錬金』でも太刀打ちできなかった宝物庫の壁があっけなく崩れ、穴が開く。
「なっ……?
何なのあの魔法、それにあの銃。私でも手に負えない頑丈な宝物庫の壁を破壊するなんて」
ふがくとロレーヌの決闘が行われている場所から少し離れた物陰で、翠の髪の女が
目の前の現実に驚愕の表情を浮かべていた。
「――何はともあれ、これはチャンスね。あの大きさの穴なら十分通れるわ……」
ずいぶんと運が向いてきたじゃないか――薄く笑みを浮かべた翠の髪の女、フーケは
全員が状況を理解する前に行動を起こす。『錬金』で30メイルのゴーレムを生成、それに
飛び乗って宝物庫への侵入を果たした。
「――これ、だね?……って、なんだいこりゃ?これが『破壊の杖』なのかい?」
壁の穴から一直線に続く床の穴に足を取られないように気をつけながら、フーケは宝物庫の
奥に恭しく納められていた重厚な装飾が施された細長い箱を手にする。重さは……何とか
持てるくらい。しかし、確認のために中を改めたフーケは思わず素っ頓狂な声を上げそうに
なった。
「ま、まぁ、いいわ。使い方は解る人間に聞こうかねぇ……」
フーケはそうつぶやいて壁にいつもの領収書を残す。事を終えてゴーレムに乗り移ったが……
眼下に見下ろす貴族のお嬢ちゃんたちに勝利宣言をしている途中――尾てい骨から
駆け上ってくる悪寒に体を震わせた。
――やばい――
裏家業で命の危険にさらされたことも幾たびか。そのフーケの経験が最大級の警鐘を
鳴らし、それに従ってゴーレムから飛び降りて『フライ』を唱える。それからすぐ……
フーケはゴーレムを襲った大爆発の爆風に体ごと吹き飛ばされた。
「……こんなところで……死ねるかい!」
木の葉のようにもみくちゃにされながらも何とか体制を立て直すフーケ。それでも
『破壊の杖』の箱を離さなかったのは執念か。
そうして這々の体で森に逃げ込んだが、その間ずっと誰かに見られているような感覚が
離れなかった。
『土くれのフーケ』の襲撃の翌朝。トリステイン魔法学院の朝はまるで昨夜の騒動が
なかったかのように、これまでと同様すがすがしいものだった。
「う……うぅん。
……昨夜はすっごいことがあったけど、今朝という素晴らしい一日を迎えられたのも、
偉大なる始祖ブリミルと、女王陛下のご加護だわ」
遠くに小鳥のさえずりが聞こえる朝。開け放たれた窓から柔らかな朝の光が差し込む
部屋でルイズが目覚める。
部屋の中には彼女しかいない。ふがくは……また多分厨房だろう。この3日間で、
ずいぶん厨房の料理人や使用人たちと仲良くなっているような気がする。
あのパイン缶を食べた翌日だったか、芋で作った『コロッケ』とかいうクロケットみたいな、
どちらかと言えばロマリア南部の米で作る名物料理アランチーニに似たような揚げ物料理を、
ふがくが『♪今日もコロッケ 明日もコロッケ♪』などと妙な歌を歌いながら作っていたので
半ば無理矢理試食させてもらったが、材料が芋に肉の切れ端を挽いたものと平民に
お似合いなほど貧乏くさい以外は味も悪くなかった。コロッケを食べながら、あのシエスタとか
いった黒髪のメイドが涙をにじませていたのが気にかかるが――夕食に出たクロケットを
揚げた油で作ったものだからまがい物とはいえ貴族の料理に近いものが食べられたことが
うれしかったのだろう。多分。
さて、とベッドから抜け出してネグリジェを脱ぎ始めたあたりで、鍵をかけているはずの
扉が勢いよく開かれた。
「ルイズ!学院長がお呼びよ!
先生方もすでに集まってらっしゃるわ」
真っ先に入ってきたのは褐色肌の女――キュルケ。その後ろにはタバサがまだあくびを
している。鍵のかかっている部屋に許可なく『アンロック』をかけて解錠するのは規律違反
なんだけど……そう思ったのも一瞬。ルイズは予想外の面々のことを聞いて混乱しかけた。
「え……?どうしてわたしたちが?」
「ばれたのよ。昨日のことが」
キュルケの後ろから現れた、背中の翼と車輪の足が特徴的な自分の使い魔ふがくが言う。
「昨日の夜のことに私たちが絡んでいるのが、よ。まだあのロレーヌとかいう貴族は
目を覚ましてないけど、ルイズに渡した手紙を見せれば原因も知れるわ」
「……貴族同士の決闘は禁じられている。ふがくはこの学院の中だけ准貴族として扱われる
から、そこに接触する可能性もある。
何より、昨日二人が破壊したのは宝物庫の壁」
タバサがルイズとふがくに視線を向けた。
「――というわけだから、先に行ってるわよ。あんたも早く着替えてきて」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
わたしだけ遅れていくなんて嫌よ!すぐに準備できるから!」
そう言ってルイズは大慌てで身支度する――が、その姿はボタンを掛け違えたブラウスに
寝癖のついた髪と、ひどいものだった。
「髪くらい梳かしなさいよー。待っててあげるから」
そう言ってキュルケは溜息をついた――
「――で、具体的な被害はどの程度だったのかの?ミスタ・コルベール」
ルイズたちが学院長室に呼び出された後、オスマンはコルベールに昨夜の被害状況を聞いた。
「まず、宝物庫の側壁が崩落。それに宝物庫の床、階下の螺旋階段、階段の側壁と
一直線に複数の貫通跡があります。それ以外には本塔の基礎の石が特定範囲破壊され、
構造が少々不安定になっています。
宝物庫に格納されていた宝物は奇跡的にも奪われた『破壊の杖』以外に被害はなく、
また無人の時間帯でしたので死傷者もありません」
「ふむ。
――つまり、昨夜ミスタ・ロレーヌの挑戦状を受けたミス・ふがくが、ミス・ヴァリエールたちの
立ち会いの下決闘を演じ、その際に撃ち抜いた壁の穴からあの盗人が入り込んだ、と
いうわけじゃな」
机からルイズたちを見るオスマンの視線は厳しい。
「やはりフーケですわ。壁には犯行声明が刻まれていましたし」
「学院にまで手を出すとは、けしからん」
シュヴルーズや他の教師たちも次々にフーケへの恨み言を口にする。
「まったく……。
まさか『固定化』も『強化』も無視して宝物庫の壁が破壊されるとは思わなんだわい。
本塔の基礎まで被害が出るとは。
それにしても、この千載一遇のチャンスをまんまとものにするとは、フーケとやらは
ずいぶんと悪運が強く、そして大胆な奴じゃのう。
魔法学院にいるのはほとんどメイジ。その油断もあったじゃろうが、まさか魔法を使う賊に
襲われるとは誰も考えとらんかったからのぅ」
オスマンはそう言ってふがくを見る。
「……ま、ミス・ふがくの爆撃でゴーレムは破壊されたからの。
本塔の修繕費は今回の騒動を引き起こしたロレーヌ家とヴァリエール家に請求すると
して……ところで、ミスタ。ミス・ロングビルはどこに行ったのかの?」
「はぁ、それが朝から姿がなく……」
「この非常時に何をしとるんじゃ……」
オスマンの言葉にルイズが冷や汗をたらし、ロングビルの所在を聞かれたコルベールが
言葉に詰まる。そのとき、学院長室の扉が勢いよく開かれた。
「すみません!遅くなりました」
扉を開けて息を切らせながら入ってきた、知性的な眼鏡をかけた翠の髪の女、ロングビルは
コルベールに詰問され、遅刻の非礼をわびる。そして、手にしていた書類を改めて持ち直した。
「実は、今朝方からの騒ぎを聞きつけて急いで調査をしておりました。
その結果……フーケの居場所が判りました」
その言葉に周辺の教師たちから、おお、と声が漏れる。
「近在の農民に聞き込みをしたところ、近くの森の廃屋に黒ずくめのローブをまとった
不審人物が入っていったそうです」
「……黒ずくめのローブ。フーケだわ……」
ルイズがつぶやく。ロングビルは言葉を続けた。
「……おそらく、その不審人物がフーケではないかと……」
「ふむ。なるほどの。それは確かに重要な情報じゃ。よくこの短時間にそこまで調べたのぅ」
「では……早速王宮に報告しましょう。
王宮衛士隊に頼んで兵隊を差し向けてもらわなくては」
「その必要はないわ」
ロングビルの報告にオスマンがうなずき、シュヴルーズが王宮からの派兵要請を提案した
まさにそのとき――ふがくがそれを却下した。
「どうせ徒歩か馬での移動なら距離は知れてるわ。ミス・タバサのような風竜でも使えば
多少距離は伸びるけど、そういうのは確認できなかったのよね?ミス・ロングビル?」
そう言ってふがくはロングビルに話を向ける。
「……え、ええ。学院からですと徒歩で半日、馬で4時間というところですわ」
「その程度、私なら10分で行けるわ。ミス・ロングビル、詳しい場所を教えてもらえるかしら?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
ロングビルに場所を聞こうとするふがくをルイズが止めた。
「……何?」
「わ、わたしも行くわよ。わたしの目の前であんなことをされた以上、黙っていたら貴族の
名折れよ!」
そう言うルイズの横で、キュルケとタバサがそれぞれの杖を掲げる。
「そういうことなら、わたくしにも責任の一端がありますわ。それに、ヴァリエールに負ける
わけにはいきませんもの」
「わたしも行く……心配だもの」
「……バカな!君たちは生徒だ。危険すぎる」
「それならばミスタ、君が行くかね?
……他には誰もおらんのか?フーケを捕らえ、名を上げようとする貴族はおらんのか!」
コルベールの制止をオスマンが押しとどめ、居並ぶ教師にハッパをかける……が、
オスマンに呼応する者は一人もいなかった。それを確認してから、オスマンは改めて
ルイズたち5人に向き直った。
「トリステイン魔法学院は、諸君らの働きに期待する!」
「杖にかけて!」
オスマンの言葉にルイズたちの唱和が続いた。
以上です。
転勤して時間が取りにくくなっているので投下ペースは落ちますが、
何とかコンスタントに続けていきたいと思ってます。
乙です。
おマチさん…イ`w
乙
そして、おマチさん人生終了のお知らせがががww
ヒャッハー!ミンチよりひでぇ事になるんですね、わかります
こんにちは、62話が完成しましたので投下開始しようと思います。
今週レス数は12、よろしければさるさん回避で00狙って、18:50より開始いたします。
今回で、ギーシュとモンモの大冒険も終わりです。では、よろしくお願いします。
支援でございます!
来ました 支援
一体どうやったらそんな規則正しいペースで話が書けるんだ支援
第62話
間幕、夏の怪奇特集 ギーシュとモンモの大冒険 (後編) 二人の勇気とリュリュの夢
復活怪獣 タブラ 登場!
怪獣タブラに洞窟の出口をふさがれ、ギーシュ、モンモランシー、リュリュの三人は逃げ出すことも
できずに、この暗い穴倉の中に閉じ込められ続けていた。
「腹減った……」
もう何度目になるかわからないことをつぶやきながら、洞窟の壁に寄りかかりつつギーシュは
うなだれていた。少し離れたところには、モンモランシーとリュリュが同じように伸びている。
この洞窟に閉じ込められて早一日、その間水だけはなんとかなったが、食料はあっという間に
尽きてしまって、みるみるうちに体力を失っていったのだ。
「あのオヤジ……適当なこと言いやがって」
それでもギーシュは残っていた思考力で、錦田景竜が言い残したことを思い出していた。
”お前たちが責任をとって、もう一度タブラを封印するのじゃ”
景竜はさも当然と言ってのけてくれたが、それがどれだけ困難なのかは考えるまでもなかった。
”この刀を、もう一度奴の眉間に刺しなおせ、それだけでよい”
と、簡単そうに言ってくれるが、タブラは初代の身長でも五七メートル、このタブラもほぼ同等の
大きさがあり、『フライ』で飛んでもおいそれと近づける高さではない。しかも、この洞窟から出た
とたんにタブラは襲い掛かってくるそうであり、人間が大好物だというとんでもないやつである。
事実目の前で人が二人食われており、できるなら近づきたくもない。ギーシュはとても無理だと
言ったが、生きて帰るためにはどうしてもタブラの前を通らなければならず、逃げたところで逃げ
切れる相手ではないことはすでに証明済みだ。
”できんというならそれもよかろう。封印が解けるまで、あと三日ある。それまでに別の手を考えるがよい”
断られると、景竜はあっさりとリュリュの体を解放して消えてしまった。
「あ、あのー……今、わたしの中にカゲタツ様が……」
どうやら、憑依されている間にもリュリュの意識はあったらしい。恐らくは、また霊剣の中に
戻ってしまったのだろうが、どうにも危機感のない人である。
それから、三人はなんとかほかに方法がないものかと話し合った。ともかく、正面きって戦っても
勝ち目はなし、普通のドラゴンでさえトライアングル以上のメイジが数人がかりでやっとなのに、
その十倍はある巨大怪獣、しかも前に二人が戦ったスコーピスと同じくらい凶暴な奴である。
かといって飛んで逃げても長い舌を伸ばされて捕まるだけである。ここは何か作戦を練るべきで
あったが、メイジとしては最低レベルの彼らでは、できることは限られていたし、これがタバサ
なら奇策の一つも浮かんだかもしれないが、あいにく彼らにはそこまでの経験が不足していた。
「ワルキューレを出して、奴が気をとられてる隙に逃げるってのは?」
という策くらいしか、実戦経験に乏しいギーシュに思いつく妙案はなかったし、むろんこれは先程
逃げたときのことを覚えていたモンモランシーにあっさりボツを受けた。
「さっき逃げるときにワルキューレを囮にしようとしたけど、奴は見向きもしなかったじゃない。忘れたの」
「ああそうか、それじゃあ土魔法でぼくたちの姿を隠して逃げても見つかっちゃうか。けれど、奴は
どうやって見分けてるんだろう。視覚じゃないよな」
遠目で見たら、人間もワルキューレもさして変わらないはずだ。それなのにタブラはワルキューレを
完全に無視していた。
「音じゃない? ワルキューレは人間と違ってガシャガシャいうし」
「匂いじゃないでしょうか? 野生の動物は匂いで獲物を見つけるものが多くいますし」
「ふーん、どっちもありえるな」
怪獣といえども生き物である以上、何らかの感覚で獲物を捉えているはずである。もっとも、怪獣の
中にはヒドラやフェミゴンのような霊体や、ジャンボキングやタイラントのように怨念が集合して実体化
したもの、クレッセントやホーなどのマイナスエネルギー怪獣のように、生き物なのかそうでないのか
曖昧な妖怪じみたものもおり、ひとくくりに「これだ」とまとめられないのが難しいところである。
しかし、匂いにせよ音にせよ、人間が生きている以上それを消すのは不可能である。水系統の
上級のものには『仮死』の魔法というのがあり、タバサあたりなら使えるそうだが、モンモランシーには
無理である。
けれど、そこでモンモランシーがふと思いついたように提案した。
「そうだ、こっちの気配を消せないなら、もっと強い気配でおびきよせればいいんじゃない? その隙に、
あいつに近寄って、この剣を刺して封印しちゃうの。ね、名案じゃない? ギーシュ」
「それで、なんでぼくに聞くんだい?」
「そりゃあ、こんな仕事はあんたしか適任はいないじゃない。骨は拾ってあげるから頑張んなさい」
死者に祈るような仕草で言われて、ギーシュは慌てて断った。
「じょ、冗談! あんな化け物にぼく一人で向かっていけって言うのかい」
「なによ、だらしないわね。それでもあんたWEKCの隊長?」
「そ、そう言われても……」
仲間がいるときならまだしも、たった一人であんな人食いの巨大怪獣に挑めと言われたらさすがに
ギーシュも腰が引けた。と、そのとき自分にとっては聞きなれない単語にリュリュが首をかしげた。
「あの、うぇーくってなんですか?」
「ああ、水精霊騎士隊の略称でWEKC、こいつらがやってる騎士ごっこよ」
「失礼だなモンランシー! そりゃ今は確かに、名前だけの中途半端な隊だけど、これにはいつか
公式にこの栄光ある名前を冠することができるようにとの、我らの強い決意が込められているんだ!」
「だったら、根性見せてみなさいよ」
「う……」
そう言われても、飛び出ていった瞬間にカメレオンの前のハエのような運命が待っているのは
考えるまでもない。前にパンドラたちやスコーピスと戦ったときにも、結局歯が立たずにエースに
助けられているのだし。彼としても女の子二人の前でかっこつけたいのはやまやまだが、戦場で
華々しく散るならまだしも、怪獣の口で噛み砕かれての末路など考えたくもなかった。
「やれやれ。ま、ギーシュのヘタレはいいとして、あの怪獣をなんとかしないと、どのみち外に
出られないしね」
「そういうこと、本人の目の前で言うかね……」
ギーシュは抗議したが、モンモランシーのほうもこんなのと付き合っていたら、嫌でも毒舌も進化
しようというものだ。さて、彼をいびるのはともかくこの状況はなんとかしなければいけない。
「ともかく、正面から挑んでも無駄だしね。何か囮が必要よね、たとえば、すっごくおいしそうな肉の
匂いとかで引き付けるとか」
「おいおいモンモランシー、そんなものどこにあるんだい? この洞窟にはぼくら以外にはコウモリ
一匹いやしないんだぜ。外に狩りに行こうものならあっというまにあいつに見つかってペロリさ」
手持ちの食材で怪獣を引き付けられそうなものはとうにない、あったらこちらが食べたいくらい
だが、彼女はリュックの底をあさると、昼食のときに食べて吐き出した肉の代用食の塊を取り出した。
「なんだ、その肉のできそこないじゃハエの餌にだってならないぜ。いや、逆にこんなものに
引っかかってもらったら、ぼくが傷つくぞ」
「うっさいわよ、話は最後まで聞きなさい。確かにこのままじゃ無理だけど、リュリュさん、
あなたならこれにさらに味付けできるんじゃない?」
「え!?」
「そうか! 『錬金』は応用すればものの味も変えられるというからな。料理人志望の彼女なら、
こんなものでもうまくできるかもしれない」
それができるなら、問題は一気に解決すると、二人の視線がリュリュに集まった。そもそも
リュリュがここへ来た目的も虹燕の肉の味を再現するためだ。この代用肉に虹燕の肉の味を
再現できれば囮として申し分ない。しかし、リュリュは申し訳なさそうな顔をすると、自分の
リュックからまったく同じ代用肉を取り出して見せた。
「それは……」
「ご覧のとおりの、肉の出来損ない……失敗作です」
「もしかして、あなたが作ったの?」
リュリュの言葉の調子で気づいたモンモランシーが尋ねると、リュリュは恥ずかしそうにうなづいた。
「……はい、わたしが考えたんです。庶民の方々に、おいしいものが行き渡るにはどうすれば
いいのかって一生懸命考えて、この代用肉を作りました。美食が一部の人間の特権なのは、
その量が足りないからです。パンやニシンのように、誰でも手に入るものになれば、ぐっとおいしい
ものも身近になるでしょう?」
二人が黙ってうなづくと、リュリュは話を続けた。
「お察しのとおり、これは『錬金』で豆から作った代用肉です。街の商人たちと取引して、お店に
置かせてもらっています。それほど売り行きは悪くないんです。けれど……」
「正直に言うと、まずいわね」
モンモランシーに厳しく評価されて、リュリュは苦しく言葉を詰まらせた。
「わたしも、別に美食家というほどではないけど。これなら安物の豚肉のほうがまだましね。まあ、
肉のような味はしなくもないけど……なんていうか、塩やコショウで無理矢理味をごまかしていると
いうか、偽物くささが抜けてないのよね」
貧乏貴族の出で、貴族としてはスレスレの生活を送ったこともあるモンモランシーは、筋張った
安物肉の味にみじめさを感じたことはあるが、それでもこの代用肉よりはましだった。
「まだ、修行が足りないからです。最初は、本当に泥のような味しかしませんでしたが、なんとか
口にだけはできるようになりました。でも、まだ何か……何かが足りないんです」
「でも、もしかしてってこともあるじゃないか、せっかくそのために、幻の虹燕を捕らえたんだろう。
味の再現、やってみてくれないか?」
「はい……」
リュリュは自信なさげだったが、保存しておいた虹燕を取り出し、携帯している調理器具で
すばやく解体していった。皮をはぐところではモンモランシーはさすがに目をそむけたが、
リュリュの手並みのよさはさすがに魔法の料理人を目指しているだけのことはあった。やがて、
食用になる肉の部分だけを取り出すと、『発火』の呪文で焼き鳥にしていった。たちまち、なんとも
いえないよい香りが洞窟の中に漂い、こんな状況だというのにほおがほころび、口内に唾液が満ちてくる。
「じゃあ、いただきます」
まずは当然、リュリュが一口かじった。するとこわばっていた彼女の顔がほぐれて、涙まで浮かべた。
「お、おいしい」
「ほ、本当かい?」
「ええ、どうぞお二人も召し上がってください」
「え? いいのかい」
「はい、これで味は覚えましたので、もしうまくできましたら、お二人にも食べ比べていただかなければ
なりませんから」
そう言われれば嫌も応もない。二人は、もともと少ない燕の肉を、それぞれ一口ぶんだけに分けて食べた。
「う、うまい!」
「ほんと、最高」
単純な調理だからこそ、素材の味が引き立つ。口の中に広がる肉汁の芳醇さ、歯ごたえ、
のどいっぱいに伝わる香りはそんじょそこらの肉とは比べ物にならない。さすがに世界七大美味に
数えられることはある。
「これなら、うまくいくんじゃないか!」
「そ、そうですね。じゃあ、やってみます!」
自信を得たリュリュは、杖を代用肉にかざして、たった今食べた虹燕の肉の味をイメージして
『錬金』を唱えた。だがしかし、魔法が終わったあとも代用肉に特に変化は見られず、匂いにも
変わりはなかった。
「やっぱりだめですね。いったい、何が足りないんだろう」
がっくりと肩を落とすリュリュを見ていると、二人も責めるよりも先に可哀そうに見えてくる。
「ほらギーシュ、同じ土系統のメイジとして、何かアドバイスはないの?」
「う、そうだなあ……」
ギーシュは腕を組むと、あまりまじめに聞いていなかった学院の講義をなんとか思い出そうとした。
まず、『錬金』について復習してみる。土の基本スペルである『錬金』は、基礎であるが同時に土の
魔法の根幹ともいえる重要な魔法である。巨大ゴーレムを作るのも、『錬金』の延長上であり、極論
すれば土の魔法とは『錬金』の魔法といってもいい。
その特徴としては、作りたいものに近ければ近い物質であるほど難易度は下がる。たとえば鋼鉄を
『錬金』するには鉄が一番やりやすく、リュリュが代用肉の材料として肉と同じたんぱく質である豆を
使ったのは懸命な選択であるといえる。なお、身近な例としてはギーシュのワルキューレは等身大で
あるから土からでも青銅を作り出せ、その反対に巨大ゴーレムを生み出すとなれば、トライアングルで
あったフーケでさえ終始土くれのゴーレムを使い続けていたことから、別の物質に変えるのがどれだけ
難しいかがわかる。
だが、重要なことはもうひとつ、『錬金』したいものをよく知るということである。術者のランクや
センスも当然左右するが、仮に絵を描くことに例えるならば、東京タワーや戦艦大和などは
日本人なら誰でも知っているが、素人とマニアに書き分けさせれば、大まかな部分はともかく
鉄骨の数や対空銃座の数で本物と大きく差が出るというわけだ。ちなみに、ギーシュが脳内で
たとえ話に使ったのは、女性の体をどれだけよく観察しているかで裸婦像を作ったときの出来が
違うかというものであったが、たとえ話としては不適切すぎたのでさしもの彼も口にはしなかったのだが。
「要は、強いイメージ力が大切ということだろうなあ。ぼくも、美しい女性ほどブロンズ像を作るときに
精密にできるし、いだっ!」
やはりいらないことを言ってしまったためにモンモランシーにどつかれたが、ギーシュはとりあえず話を続けた。
「ま、まあ……魔法全般に言えることだけど、なにより肝心なのは真剣さだろうねえ。感情の多寡と
いってもいいけど、本気で怒ったり悲しんだりしたときは、ドットがトライアングルクラスを使ったことも
あるそうだし、なによりキレたときのルイズの爆発の威力は並外れてるしなあ……」
最後の例えはリュリュにはわからなかったが、モンモランシーはうんうんとうなづいた。ルイズと
才人の痴話げんかで女子寮は何回倒壊するかと思ったことか。けれども、リュリュはそれでなお
悲しそうな顔になった。
「わたしは、真剣さが足りないんでしょうか……」
二人は、そうだとは言えなかった。たった一人で食材を求めてこんな奥地に乗り込んでくるなど、
並の情熱でなしえることではない。けれど、『錬金』とは基礎であるだけに、とても奥が深い魔法なのである。
「いや、『錬金』しようとするものが料理だから、難易度が桁違いなんだろう。スクウェアクラスの
『錬金』で作った鋼鉄でも、どこかに不純物が混じる。金属はそれでも十分実用に耐えるから
問題にはならないが、料理ってやつは、塩コショウひと匙違いで大きく味が変わってくるからねえ」
実際、地球で工業製品で作られる鉄も、精錬の過程で内部に硫黄やリン、水素などの不純物が
どうしても残り、一〇〇パーセント純鉄の製品というものはない。また、これに硬度や耐食性を
増させるために炭素やクロムを添加し、熱処理などを加えて使用できる鉄製品にするまでには
大変な手間と、時間が必要とされる。むろん、そのためには巨大な設備と莫大な費用がかかる。
鉄でこれなのだから、完全に人間のさじ加減だけで、多数の味が混在し、なおかつ舌触りや
歯ごたえ、匂いまでも満足させえるレベルで食品を作り出そうというのが、魔法でもどれほど
困難なのかは容易に想像しえることであった。
「やっぱり……魔法では、腕のいいコックの作った料理には及ばないんでしょうか」
「まあ、『錬金』でなんでも作り出せるなら、高い金を出して薬を買う人なんていないでしょうからねえ」
モンモランシーも同意する。スクウェアクラスのメイジでも、黄金を『錬金』するには一月ぶんの
精神力を使ってほんのわずかというふうに、希少物質ほど難易度は上がっていく。言っては悪いが、
リュリュの挑戦は、夜空の星を掴み取ろうとするのにも似た、無茶で無謀な試みに見えた。
それでも、女性に優しくということを小さいころから教え込まれてきたギーシュは、なんとかいい
アドバイスはないかと無い頭をひねって、あることを思いついた。
「君の情熱は本物だろう。けれど、魔法は精神力の強さ、言い換えればそれを成功させたいという
欲望の強さといってもいい。古代には、少数の兵で大軍と戦うに際して、自軍を逃げ場のない
川岸に布陣して、兵士を死ぬ気にさせて勝利を得たり、的を射るにあたって一本を残して残りの矢を
全部折ったという故事もある。多分、君の心のどこかに、失敗してももう一度やればいいという逃げの
気持ちがあったんじゃないかな」
そう言われてリュリュははっとした。
「そうですね。そういえばわたしは、これまで本当に食べ物がないってことを経験したことがないんです。
食べ物がなくって不自由したことも、実家から仕送りが届くまでの一晩くらいで……そんなわたしが、
”肉が食べられない人のためにお肉を作る”なんて、おこがましいのかもしれません」
「……」
かける言葉を、今度こそ二人は失った。ここで「頑張れ」と言うのはたやすいが、彼女のこれまでの
努力を考えれば、自分たちごときの言葉に重みを持たせられるとは思えない。
「どうしたものかしらね……」
モンモランシーは息を吐き出すと、うなだれているリュリュを見下ろしてつぶやいた。考えられる
だけのことは考えたが、結局名案は浮かばなかった。洞窟の外では、今もタブラが封印の解ける
瞬間と、獲物が来るときを待って、荒い息を吐いていた。
しかし、たとえ地上の人間たちが何をしていようと、時間は遠慮などせずに刻一刻と流れていき、
それと反比例して三人の体力と精神力は削られていった。
「暑い、おなか減った……」
ギーシュに比べても、モンモランシーとリュリュの消耗は激しかった。脱水症状の心配がないのが
唯一の救いといえたが、やはり何も食べられないというのは若い彼女たちにはきつかった。
「はは、こりゃ、休み明けにはかなりダイエットできてるわね」
冗談を言ってみても、特に事態が改善するわけでもないが、なにかしゃべってないと本当に
気がおかしくなりそうだった。
「ギーシュ、怪獣の様子は?」
「まだ頑張ってるよ。これじゃとても動けそうにないなあ」
一度我慢できなくなって外に出ようとしたが、一歩洞窟から足を踏み出したとたんにタブラが
うっすらと目を開けかけたから、慌てて中に引き返してきた。これでは出口にクモの巣を張られた
ようなもので、別の出口がない限り、どうしたってクモの巣にかかるしかなくなる。夜の闇に
まぎれて出てみようとしたのもだめだった。残念だが、景竜の言ったとおりに、洞窟から出たら奴は
空腹のままに三人を捕食してしまうだろう。
いったいどうすればいいのか、少しでも体力の消耗を避けるために寝て動かないのを続けて
いるにも限度がある。だが、やはりいい考えは浮かばない。
二日目、水っ腹でごまかすのも限界に近づいてきていた。
「食い物が、こんなにありがたいものとは思わなかったな」
目を閉じると、学院の食堂での光景が浮かんでくる。いつもは、毎日豪華なディナーが当たり前の
ように出てきて、食べられて当然だと思っていたが、こうして絶食するとそのありがたみがしみじみと
わかる。思えば、いつもは食べきれないからとけっこうな量を残していたが、あれだけでもいいから
今は食べたい。
モンモランシーとリュリュは、もう冗談を言う元気もなくなったのか、洞窟の奥でうなだれている。
この状況で、錯乱して二人を襲わなかったのは、まがりなりにもギーシュのフェミニズムが本物で
あったということであろうが、それ以上に、肉体が食欲以外の感覚を麻痺させていたというのも
あるだろう。
飢えの苦しさは、実際に味わってみないとわからないものだ。ちょっとくらい食事を抜いた程度で
どうにかなりはするまいと、たかをくくっていた彼らは、その判断を大いに後悔していた。あるいは、
この日が怪獣の前を強行突破する最後のチャンスだったのかもしれないが、彼らは空腹といらだち
によって決断できなかった。
そしてとうとう、運命の三日目の朝がやってきた。
「モンモランシー……水を、頼む」
げっそりと衰えたギーシュたち三人が、幽霊のような姿になってそこにいた。この気候の中、
かろうじてまだ正気は保っているが、体力は衰えきっていた。だが、むしろ正気を失っていた
ほうが幸せだったかもしれない。なぜなら、タブラの封印が解ける時間がやってきたのだから。
それまで、座り込んで眠ったようにおとなしくしていたタブラがうっすらと目を開け、まるで
睡眠薬での眠りに抵抗するように身震いをはじめたのである。
「もうすぐってことか……」
三人は、洞窟の入り口でそれぞれ杖を握り締めたままで、運命のときが来たのをかみ締めていた。
もうすぐ、タブラは飢えの欲求に頼らずとも復活を果たして襲ってくる。そうなったときはもはや
洞窟ごとつぶされて餌食にされてしまうのがオチだ。決断するべきときが、やってきた。
「しょうがないな……もしかして奇跡でも起きるかもと期待したが、モンモランシー、ぼくが先に出て
あいつの気を引き付けるから、そのあいだに彼女を連れて逃げてくれ」
「ギーシュ、あなた急に何言い出すの!? 死ぬ気?」
「いやあ、ぼくだってこんなところで死ぬなんてまっぴらごめんさ。けれど、この三日間ずっと
考えてたけど、女性を守れずに死んだとあっては家名を汚すどころか、仲間たちの名誉もないし、
あの世で死んだ祖父に叩きのめされてしまう。こういうときには男は女を守るものだろう」
「あなた、あなたを犠牲にして助かって、わたしがうれしいと思ってるの?」
モンモランシーが叫ぶと、すぐにリュリュも同意した。
「そうです。軽々しく死んだりしちゃだめです。死んだら、もう何もできません。それに、大好きな人とも
会えなくなっちゃうんですよ!」
「ありがとう、心配してくれてぼくは幸せだなあ。けど、ぼくもむざむざ死ぬ気はないさ。封印の剣を
持っていくから、食われそうになったら斬りつけてやる。うまくいけば再封印することもできるだろう。
それに、ぼくの性分でね、こんなときにはどうしてもかっこつけずにはいられないのさ」
「あんた……バカよ」
「けっこうけっこう、君の口から言ってもらえれば、悪い気持ちはしないな。けどもう何も言わないでくれ、
散々迷って情けないけど、一応小なりとはいえ騎士隊の隊長だからね。決めれるところでは決めて
おかないと、サイトあたりに隊長の座をとられそうだからね」
「そりゃそうね。って! 冗談言ってる場合!?」
「ふふ、下手に決めようとしても失敗するのは経験済みだからね。おっと、ほんとに時間がないようだ。
じゃ、この剣は預かっていくよ……うーん、剣なんて平民の使う武器だと思ってたけど、こうして見ると
けっこう恐ろしいものだな」
ギーシュは景竜の刀をしげしげと眺めて思った。ハルケギニアで一般的な洋剣と違って、日本刀の
研ぎ澄まされた鋭さは、触れれば切れるという本能的な恐怖心を呼び起こすものがあった。
「じゃあ、ぼくが飛び出て、奴がぼくを追いかけ始めたら逆方向に逃げてくれ。決して、振り向いては
いけないよ。ぼくがどうなろうと、安全なところまで逃げるまでは振り向いてはいけない。いいね」
「ギーシュ、そういうかっこいい台詞は足の震えを止めてから言いなさい」
足元を指差されてギーシュは思わず苦笑いした。最終的に命よりかっこつけるほうを選んだとはいえ、
やはりギーシュはギーシュで変わらないようだ。けれど、たとえ虚勢であろうと男が一度決断したら
あとには引けない。ついにタブラがゆっくりと起き上がってきたとき、ギーシュは飛び出した!
「うおぉぉぉっ!」
タブラの眼前を、このときばかりは空腹も恐怖も忘れて彼は走り抜けた。すると、タブラはその
にごったルビーのような赤い目を見開き、恐ろしげな咆哮をあげて襲い掛かってきた。かつて
地球で同族が三千年の昔に、大勢の人間を追い詰めて食ったときの光景が再現されつつあった。
「さぁ、こい!」
このときギーシュは三日間食事を抜いたとは思えない体力と頭の冴えを発揮していた。肉体的な
疲労は精神の高揚によってある程度払拭されうる。端的に言えば火事場の馬鹿力というやつだろう。
しかしそれでも、タブラの舌は蛇のように伸びてくる。そのとき彼は景竜の刀を刃を外にして直立
させて構えた。すると、タブラの舌はギーシュに巻きつこうとしたが、刀を巻き込んで締め付ける
ことになってしまったために、内側を切られてはじけるように引き戻した。
「やった! どんなもんだい」
思ったとおりうまくいった。いかな大蛇でも鉄のとげを生やしたサボテンを締め付けることはできない。
かなり危険な賭けではあったが、あの舌さえなんとかできれば魔法を駆使すれば逃げまくるのは
なんとかできる。あとはどれだけ時間を稼げるか。
だが、そうギーシュが思ったとき、舌を傷つけられて怒ったタブラはその両眼からいなづまのような
破壊光線を放ってきたのだ!
「だああっ! そんなのありか!!」
破壊光線の爆発で吹き飛ばされかけながらも、彼はなんとか右へ左へと回避を続けた。
この光線はタブラの最強の武器で、直撃すればウルトラマン80でさえダウンに追い込まれたほど
強力な威力を誇る。当然人間なんかが食らえば骨も残らないが、それでいいと思うくらいに
タブラは怒っていた。
それを見て、ギーシュを見捨てられずに洞窟の影から見守っていたリュリュは思わず叫んだ。
「ギーシュさま! ああ、いったいどうしましょうモンモランシーさん!」
「あいつ、柄にもない無茶をするから! わたしが行くから、あなたはすぐに逃げて」
「なっ、なにを言うんです。そんなことできるわけないじゃないですか!」
「いいから聞いて、こうなったのも結局はわたしたちの責任だし、あなたには本来関係なかったことよ。
少なくともあなただけは逃がす責任がわたしたちにはあるわ。それに、誰かがあの怪獣のことを
外の人に知らせないといけないわ」
そう有無を言わせない口調で告げると、モンモランシーは一目散に駆け出した。普段高慢でも、
彼女もまたトリステインの貴族である、いざというときには男同様に肝が据わっている。
けれども、これといった攻撃魔法をほとんど使えない彼女の力では、せいぜい水玉をぶつけて
気を引く程度しかできない。
「モンモランシー! 来るなって言っただろ」
「早々に死にそうになってるくせに偉そうなこと言ってるんじゃないわよ! って、わーっ!」
言ったとたんにお返しとばかりに、タブラの長くて太い尻尾が巨人の鞭のように襲い掛かってきて、
慌てて飛び上がった先で森の木が一度に十本以上へし折られていく。
「い、いまよギーシュ! 奴を封印して!」
「で、できるかぁ!」
助けに入ったはいいものの、タブラは尻尾を振り回してモンモランシーを襲い、破壊光線の乱射で
ギーシュを追い詰めていく。この巨大怪獣に対抗するには、二人の力ではいくらなんでも不足だった。
「畜生! ぼくはこんなところで終わるのかよ」
せめてキュルケくらいの力があれば、勝てなくても時間だけは稼げるのにと、ギーシュは己の
非力さに怒りを覚えた。このまま、体力も精神力も尽きて、人知れぬまま怪獣の餌食となって
死ぬのか。せめてもう一回モンモランシーとデートしてから、いいやせめて結婚してから、いいや
子供が生まれてから、いやいや孫ができてから死にたかった。
だが、ギーシュがそんな贅沢な妄想を走馬灯のように脳裏に駆け巡らせたとき、突然タブラの
目の前の地面が青白い光を発しだしたのだ。
「な?」
「え?」
二人と、タブラもその不自然な輝きに一瞬目を取られたが、すぐに青白い光は掻き消え、代わって
あたり一面に、えもいわれぬうまそうな香りが漂いだした。
「この匂いは……虹燕の肉?」
この香りを嗅いだとたん、二人の口内にあの虹燕の味がフラッシュバックしてきた。その
大層な美味の記憶が呼び起こされ、危機的状態だというのに、口の中に唾液が満ちてくる。
タブラも、その強い肉の香りに気づいたのだろう、二人を追いかけるのをやめて、より食欲を
そそる香りを放つ地面に目を向け、前屈姿勢をとると舌を地面に突き刺して、それを掘り起こした。
「肉?」
なんとそれは、ほどよく焼けた匂いを放つ大きな肉の塊であった。タブラはそれを口の中に
運び込むと、すっかり味を占めたのか、さらに舌を伸ばして肉を掘り返し始めた。むろん、
ギーシュとモンモランシーは完全に忘れ去られている。
「これは……リュリュくん!」
見ると、洞窟の影から飛び出てきていたリュリュが荒い息をつきながら杖をかざしている。
それで二人は理解した。この肉は、リュリュが魔法で地面を変化させて作り出したものだということに。
「今ですギーシュさま、封印を!」
「あっ、そ、そうか!」
今タブラは前かがみで、ちょうどギーシュに頭を向けている。直線距離でおよそ二〇メイル、
チャンスは今しかない。ギーシュは覚悟を決めると、右手に刀を、左手に杖を構えて、残った
精神力を全て『フライ』に変えて飛んだ!
「いっけぇぇーっ!」
これでしくじったらもはや後はない。全力をかけて可能な限りの速度で彼は飛んだ。
しかし、タブラまであと五メイル程度というところでタブラの目がギーシュのほうを睨んだ。
「だめかっ!」
あと一歩だというのに気づかれてしまった。これでは、一瞬の後に破壊光線を浴びて彼の体は
粉々に打ち砕かれてしまうだろう。そうなれば、残った二人の運命も……せめてあと一秒あればと
彼が思ったとき、タブラの目が見開かれて光線が放たれようとした。その瞬間だった!
”ようやった小僧ども、上出来じゃ”
突如、彼らの頭の中に景竜の声が響き、タブラの動きが止まった。
”奴の気が逸れたおかげで、今の拙者でも動きをわずかじゃが止められる。さあ、ゆけ!”
「おおおっ!!」
言われるまでもなく、雄たけびをあげてギーシュは突進し、景竜の小太刀が突き刺さっている
場所のすぐそばをめがけて渾身の力で刀を突き立てた。
「やったか!?」
手ごたえを感じて刀を放し、刀が突き刺さっていることを確認するとギーシュはすぐさまタブラから
飛びのいて離れた。これでだめなら、もう他に打つ手は一つもない。
タブラは、再び封印の刀を打ち込まれて、しばらくは呆然としたように棒立ちになっていたが、
刀から霊力のほとばしりを思わせる白光がひらめくと、身震いしてもだえだし、前のめりに倒れると
苦しみから逃れたがっているかのように前足で地面を掻き分けて地底に潜り始めた。
「まずい! 二人とも逃げろ!」
この山岳地帯の地質は硬い金属質岩石でできている。そこを無理矢理掻き分けて潜り、岩盤を
破壊し始めたものだから、周りの地面もあおりを食って地割れを生じ始めたのだ。モンモランシーと
リュリュは地割れに飲み込まれかけたが、かろうじて『フライ』で飛んで逃れることに成功した。
しかし、周辺はどんどん陥没を始めて、ついには周囲一帯がクレーターのようになってしまった。
「や……やったのか……」
壊滅した一帯を離れた場所に降り立って見つめながら、三人は呆然と立ち尽くしていた。
すでにタブラの姿はどこにもない。地下深くに逃げ去り、死んだのか生きているのか、確かめる術はない。
「ともかく、助かったのよ。やったわねギーシュ、かっこよかったわよ」
「いやあ、君たちが助けてくれたからだよ。ありがとう……それにリュリュくん、なによりも君の魔法、
見事に成功したじゃないか!」
ギーシュは自分のことよりも、とにかくリュリュの魔法の成功を喜んでみせ、彼女ははっとしたように
自分の手の中の杖を見つめた。
「そういえば……わたし、できた、できたんですね! でも、これまでずっと失敗してたのに、なんで?」
「多分、三日間食事をしないで、餓えきって食べ物がほしいと心から思ったからでしょうね。魔法の
力は心の力、あなたに”食べ物に対する切実な思い”が芽生えたから、杖はあなたにこたえてくれたのよ」
「そうか……確かに、あんなにお肉が食べたいと思ったことは生まれて初めてでした。ありがとう
ございます! あなた方のおかげです」
リュリュはやせこけた顔でにっこりと笑うと、二人に向かって深々と頭を下げた。
「そんな、むしろぼくたちはこんなことに巻き込んで、おわびをしなけりゃならないくらいさ」
「いいえ、これでわたしの夢は一歩前進できました。それにしても、ギーシュさまはすごく勇敢でいらっしゃるのですね」
羨望のまなざしを向けられて、ギーシュは思わずいつものようにかっこうをつけようとしたが、
それより早くモンモランシーのツッコミが入った。
「あー、リュリュちゃん、間違ってもこんなのにあこがれちゃだめよ。なにせこいつったら、いつもは
女の子と見れば見境なく口説きにかかる最低な奴なんだから」
「それでも、わたしたちを救ってくれたのは間違いなくギーシュさまです! このご恩は一生忘れません」
「ほんとに……いつものこいつを知らないから」
そう言いつつも、そんなのと付き合い続けているのだからモンモランシーも人のことはいえない。
それに、リュリュ自身も気づいていないかもしれないが、彼女の魔法が成功した理由の一つは、
ギーシュを助けたいと切に思う気持ちがあったから、人間の本能で自己保存についで強いものとは
何か、それが働いたからでもあろう。
そのギーシュはといえば、モンモランシーに最低よばわりされて少々へこんでいた。一応は
かっこいいところを見せたのだから、もう少し胸を張っていればいいものであるが、仮にも惚れて
いる女性に侮蔑されて愉快でいるほど彼は異常性癖ではない。
「あー……もうそのへんにしておいてくれ。やれやれ、ともかくよかったねリュリュくん、これからどうするね?」
「はい、成功したとはいえ、これをいつでもできるようにしなければ意味がありませんので、
もうしばらく修行に専念することにします。美食は虹燕だけではありませんし、魔法の腕も
もっと磨かなければなりません。どこかに魔法の訓練ができて、腕の立つコックさんがいる
ところがあればいいんですが」
「そうだね。ん、まてよ? 魔法の練習ができて腕のいいコックのいるところ、ぴったりの場所があるじゃないか!」
指を鳴らして喜びの声をあげるギーシュを見て、モンモランシーは彼と同じ結論にいたって息を呑んだ。
「あんた、もしかして」
「そう、トリステイン魔法学院、魔法の訓練には最適の場所だし、なにより料理長のマルトー氏は
トリステイン有数の腕利きコックだ。国中探しても、彼以上の腕利きはそういるまいよ」
モンモランシーは驚いたが、確かにギーシュの言うとおりだった。マルトーは並の貴族などは
及ばないほどの高給で学院に雇われた身であり、それでなくては数百の貴族の子弟の舌を
毎日満足させることはできない。けれど、他国の学校に行こうということは彼女にとってはどうかと
思われたし、何よりそんなギーシュの下心丸出しの意見などと思ったが、意外にもリュリュは
二つ返事でこれを受け入れた。
「喜んで! 実はそろそろ一人で修行するのにも行き詰まりを感じていたので、いっそ基礎から
やり直すのもいいかもしれません」
「ちょ、ちょっと! こいつの言うこと真に受けちゃだめよ! それならギーシュ、彼女はわたしたち
より年長なのに、どうやって今から転入させるのよ」
「大丈夫大丈夫、学院長に話を通せばすぐにわかってもらえるさ」
一瞬でモンモランシーは反論の余地を失ってしまった。あのセクハラ魔でその名を知らぬ者の
いないオスマン学院長が、リュリュほどの美少女の転入を断るとは、九九.九九九九パーセント
考えられない。ちなみに、残りの〇.〇〇〇一パーセントはというと、ヤメタランス病にでもかかって
スケベを「やーめた」としたぐらいだが、あの人からスケベを抜いたら幾人が彼をオスマンと認める
だろうか? 奇妙な話だが、ギーシュにとっての女好き、ルイズのかんしゃくもちなど、一見欠点と
しか見えないところもまた、その人間を形作るうえで重要なアドバンテージを持っている。逆説的な
話だが、長所より欠点のほうがその人間の魅力を引き立たせることが多々あるのだ。たとえば、
知勇兼備で関羽や孔明を必要としない劉備玄徳や、穏やかな性格の織田信長、美男子な
豊臣秀吉などが、いくら優れていようと歴史上以上に英雄として人の心を掴み得ただろうか?
天は二物を与えずというが、欠点こそが天が人間に与えた二つ目の長所なのである。
ともあれ、新学期になったら新しい仲間が学院に加わることになるだろう。
「あらためて、よろしくね。リュリュくん」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「やれやれ……ま、学院に来てこいつに幻滅しないようにね。ま、これからもよろしくね」
お宝を探しに来て、新しく友達を得てしまった。けれど、使えば消えてしまう金銀財宝よりも、
一生もので残る人間の絆のほうが、将来得るものは大きいだろう。だが、そうやって三人が
うれしそうに笑っていると、突然三人の頭の中にまた景竜の言葉が響いた。
”そちら、大儀であった。よくぞ封印を成功させてくれたな”
「カゲタツのおっさん! あんたいままでどこで」
”おっさんよばわりは心外じゃのう……しかしともかく、タブラは再び地の底で長い眠りについた。
もはや何者も手出しのできない地の底にな。これで、当分は奴が蘇る心配はないじゃろう。
ごくろうじゃった、これでわしもまた安心して眠れるわい”
「そりゃどうも、よかったですこと」
ギーシュとモンモランシーは苦笑いを殺しきれなかった。この無責任な幽霊のおかげで、
どれだけ苦労するはめになったことか。
”うむ、では拙者はそろそろ去ることにしよう。さらばだ、若者たちよ”
「あー、さよーなら」
名残惜しさの分子すら感じさせない口調で、投げやりにギーシュは景竜に別れを告げた。
すると、さすがにちょっとカチンときたのか、景竜は去り際にとんでもない捨て台詞を残していった。
”おお、そうじゃ、言い忘れておったが、この世界にはタブラのほかにも拙者が封印した魔物が
いくつも眠っておる。命が惜しくば足元にはゆめゆめ注意することじゃな。はっはっはははは……”
「なっ、なにぃー!」
笑い声を残して、景竜の霊は消えていった。もはや、呼べど叫べど虚空は答えない。まったく、
最後の最後まで面倒な置き土産を残していってくれる人だった。
けれど、これで大変であった冒険もようやく幕が下りようというものだ。
「はぁー、なんかどっと疲れたな。それに、腹減った……」
「ふふ、じゃあ村に戻ったらわたしが腕によりをかけてごちそうしてあげますよ」
「ほんとか! じゃあ帰ろう、すぐ帰ろう! リュリュくんの料理、いやあ楽しみだなあ」
「まったく、ちょっとは遠慮ってものを覚えなさいよね。でも……ま、いっか」
平和と平穏を取り戻した魔の山を、三人は仲良く語らいながら下りていった。
彼らにとっての夏休みは、まだまだ半分も終わっていなかった。
続く
以上です、楽しんでいただけたでしょうか。
タバサの冒険、アニメ四期があるとしたらアニメ化してほしいものです。しかし、書いていて思いましたが、
リュリュは貴族としてはかなり変人になるんでしょうね。平民のために努力しようという貴族というかメイジは
コルベールや外伝3のロンバルド男爵夫人くらいでしょう。というわけで、最初はこの話限りのゲストキャラとして
終わらせるつもりでしたが、もったいないので後への伏線を作っておきました。新学期編にはまだかなり
かかりそうですが、彼女もキャラ設定がきちんとしているキャラなので、その気になったらいくらでも話に
からめられるので、新学期はかなりにぎやかになりそうです。
あと、先週題名のことでツッコまれましたが、「ギーシュとモンモの大冒険」としたのは、単に語呂がよいからです。
だって「ギーシュとモンモランシーの大冒険」や、「ギーシュとモンモンの大冒険」じゃ、いまひとつ舌滑りが
よくないでしょう。あくまで作者の主観ですが、とりあえず意味は通じると思うし、先週までツッコミがこなかったので
これでいこうと思います。
では、来週からウル魔版アルビオン編の再開です。ウェールズも近日中には出す予定なので、待っていて
ください。ただ、一部ではすでにウル魔で通じるようになっているのがけっこううれしかったりします。
ウルトラの人、乙でした。
ギーシュ頑張った! 良く頑張った! 今回ほど君を男らしく思えた事は無いぞ!
で、オスマン氏に対する分析は笑った。確かにあの人のスケベ癖はそうそう治らないよな〜。
封印された怪獣は他にもいるようだけど…、ネロンガ辺りが怪しいかな? あれも一応武士が倒したらしいし。
次回のアルビオン編も楽しみにしていますね。
ウルトラの人乙です。
ギーシュが…活躍だと?…
アルビオン編が楽しみです。
ウルトラの方、めっさ乙です!
そーだよねー、ギーシュって活躍できる漢だよね?
活躍してて嬉しく思うです!あと、今後もリュリュが活躍するのを楽しみにしております!
さてさて、ウル魔様の裏番組的ノリで、ひっそりと投下しようと考えております。
何事も無ければ、19:45頃よりお邪魔いたします。
それではよろしくお願いいたします。
ウル魔の人乙でした。
ギーシュが今回活躍しましたね、良くやりました!
そしてリュリュが学院でどのように活躍するのか凄く楽しみです。
次回も期待しています。
それでも、勇者は倒れません。
「な、なぜ死なん!?」
見えざる魔道士の顔も、おどろきにあふれていることでしょう。
勇者の力はすでに尽きて、もう立ち上がることすらできないはずなのです。
「まだまだ! まだまだ死ねんのじゃ! この命 燃え尽きても! わしは きさまを たおす!!」
それでも、彼は立ち上がります。
ボロボロのからだに 炎のような目のかがやきを持って。
「いかりやにくしみで わたしを たおすことはできぬ!」
魔導士がにらみ返します。
「いかりでも・・・にくしみでもない・・・!!」
息もたえだえに、勇者は大きな声でさけびました。
「では、なんだと・・・」
魔導士は、問いかけます……』
続きが気になり、ページを繰る手が速くなる。
だが、その手がピタリと止まる。
彼女の目に、信じられない文が飛び込んできたからだ。
『その問いに答えることなく、イーヴァルディの勇者は死にました』
それは、あまりにも唐突な死であった。
シャルロットは、その文を朗読することをためらった。
何故か、声に出してしまった途端、それが真実になってしまいそうだったから。
物語に呼応するように、窓の外は、嵐の気配。
風が強く吹いてきていた。
----
ピコン
ATE 〜疑問手〜
「くそっ!」
クジャは、チェスの駒を握りつぶした。
何が何だか分からない。
その事実が、クジャをさらに苛立たせていた。
研究所の1つとして活用していたアーハンブラ城から、定時連絡が一切無く、
試しにこちらから通信を行ってみれば、ビビの声がする。
話を聞いてみれば、エルフがガリア王の姪をさらったという話。
そして途絶えた通信。
全く、訳が分からない。
「どういうことだ?何故ビダーシャルが操り人形君を?」
まず、クジャはエルフの正体を決め付けた。
何しろ、今クジャが立つ場所は、エルフ達の住処である“悪魔の門”、ハルケギニアの名で言えば、“聖地”なのだ。
この地を離れて暮らすエルフは、極めて稀であり、例外と言えばガリア王ジョゼフの下で働いているビダーシャルぐらいのものだ。
「裏切り?いやそれは無いさ。あり得ない。今更裏切ってどうするというんだ?」
眼下に、“聖地”の全貌を収めつつ、クジャは考える。
整然と並ぶ石造りの尖塔達が月明かりの中でうすぼんやりと浮かび上がって、
街並みというよりも墓標のように彼の目に映った。
クジャは今、その中でも一際高い尖塔の上に立っている。
考え事をするには、何にも邪魔されない高い場所が一番だからだ。
しもた、投下順番間違えたorz 改めて投下しなおします。19:50ごろより失礼しなおします。
何やっとんねやろ……
投下(やり直し)開始いたします。ご迷惑おかけしております
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暗闇から、声がする。
「砂漠のお城に、騎士達か」
人をバカにするような、冷たい声。
「これはおもしろい。 囚われのお姫様は誰なのかな?」
お芝居のように、全てを語る声。
「だ、だだ誰だっ!」
ギーシュは慌てて剣を構える。
「ちょ、ちょっとやだ、エルフ!?心の準備が……」
モンモランシーおねえちゃんは、取り乱してギーシュの影に隠れている。
ボク?ボクは……
「……待って」
ボクは、少なくとも、慌てたり、取り乱したりはしなかった。
「ビビ?」
でも、驚いてたんだ。それも、すっごく。
「……この声……」
だって、この声は……この声は……
「フフ、お久しぶり、ビビ君……あと、デルフ君、だったね」
一番、聞きたくない、声だったから……
「おー、あん時の兄ちゃんか!」
「……クジャ!」
ボクは、思いっきり、暗闇に叫んだ。
ゼロの黒魔道士
〜第五十三幕〜 宿命
「どこなんだ、クジャっ!!!」
デルフを、がっしり構える。
会いたくない。
クジャなんかに、アイツになんか、会いたくない。
絶対に、会いたくない。
会いたくないのに、いる。
会いたくないのに、どこにいるのか、聞いてしまう。
声が、裏返りそうなぐらい、大きくなる。
呼んで、どうしたいの?
ボクは、どうしてクジャの名を大声で叫ばなくちゃいけないんだ?
分からない。
分からないままに、声が大きくなる。
左手のルーンが、激しく光る。
「ビビ?ど、どうしたのよ?この声、誰?」
「ビビちゃんらしく無いわねぇ」
ルイズおねえちゃんや、キュルケおねえちゃんが、クジャのことを知るはずがない。
アイツが、何をしたかなんて、知っているわけがない。
だから、戸惑うのは当然だ。
じゃぁ、ボクは?
ボクは、今、どう考えているんだろう?
怒っている?なんか、違う。
逃げたい?タバサおねえちゃんがいるのに?そんなわけ、無い。
頭の中が、ぐるんぐるんしてくる。
「ふふ、こっちだよ。こっち! そっと前へ進んでごらん……」
足が、自然と声のする方へ向かう。
導かれるように?違う。絶対に、違う。
これは、ボクの意思だ。
逃げられないなら、前に、進むしか無い。
でも、前に進んで、どうするつもりなんだ?
分からないまま、足がそっちに向く。
分からないまま、歩く速さが速くなる。
「おいおい、相棒、落ち着けよ。 あいつ、そう悪ぃヤツじゃ……」
そういえば、デルフはクジャと会っているらしい。
ボクが、ウェストウッド村で倒れている間、クジャとしゃべっていたって言ってたっけ。
クジャが……悪いヤツじゃない?
それは、信じられないことだった。
アイツは、アイツは……
「フフフ。良い子だねぇ……」
声がした部屋は、扉が開きっぱなしになっていた。
どの壁も本に囲まれていて、カビと埃の匂いがツンと鼻につく。
「……チェス?」
部屋の真ん中には、小さな木の丸いテーブルの上に、チェス盤が置いてあった。
つるつる光る石でできているみたいで、ちょっと高そうに見えた。
「マス目ごとにバラとユリの意匠か。なかなか凝っているね」
部屋の中にあるものは、それだけ。
本の間にでも挟まっていない限り、隠れれそうな場所も無かった。
「クジャ、どこだっ!!」
大きく息を吸っても、妙な落ち着かなさは治らなくって、
もう一回、そのまま、大きな声で叫んだんだ。
できれば、いてほしくない。
いや、それとも、いてほしい?
自分の考えていることが、よく分からなくなってくる。
「……心地よい声だねぇ。 心の高ぶりを感じるよ」
動いたのは、チェスの駒。
白いナイトの馬の口。
声に合わせるように、ニヤリ、といやらしく、歪むのが見えた。
「駒がしゃべった!?」
「マジックアイテムかしら……?」
マジックアイテム?
そうか、これって、どこからか声を伝えるための道具なのかな?
「それより、クジャって誰なのよ?」
クジャがいないことに、ホッとする。
でも、だからこそ嫌な予感が、頭にこびりついて離れなかったんだ。
「クジャ……タバサおねえちゃんをさらったのも、お前の仕業なのっ!?」
クジャは、いつもそうだった。
自分の手は、なるべく汚さないように、悪いことを次から次にたくらんで、
ガイアを、混乱の渦に巻き込んだんだ。
だから、余計嫌な予感がしたのかもしれない。
クジャが、エルフにタバサおねえちゃんを誘拐させることで、
ボク達を苦しめようとしているんじゃないかって、そういう予感。
「――せっかちだねぇ。再会を祝いたく無いのかい?顔は見せられないとはいえ、僕達は親子のようなものじゃないか?」
ぐるん、とお腹の中の物が逆転しそうだった。
確かに、クジャはボク達を、黒魔道士達を作ったその人だ。
でもそれは、世界をかき乱すための、悲しい、戦争の道具として。
だから、ボクは、クジャが、許せなかったんだ。
例え、ボクを作ったのがクジャだとしても、クジャがいなければ、ボクは存在しなかったとしても、
黒魔道士達をひどいことに使ったクジャだけを、許すことはできなかった。
ましてや、親子だなんて、認めることなんて!
「質問に答えて、クジャっ!」
チェスの駒を、思いっきりにらみつける。
クジャの顔じゃないのは分かっているけど、クジャの顔が簡単に想像できるぐらい、
いやらしい笑顔を、ナイトは浮かべていた。
「タバサ、ねぇ……あぁ、あの操り人形君かい?」
歯を見せて、笑う石の馬。
その冷ややかな笑い声に、キュルケおねえちゃんとルイズおねえちゃんが杖を構えたらしい。
「……誰かは分からないけど、嫌な奴っていうことは分かったわ」
「珍しいわね、キュルケ。意見が一致するなんて」
後ろで、カチャリと音がする。
前列にボクが立つって、今まであまり無かったけど、
こうして考えると、後ろに誰かがいるって、すごく頼もしくてありがたいって思うんだ。
「ほんっと。これ以上意見が合ったら結婚しちゃうかもね」
「何バカ言ってんのよ」
「クジャ、何をたくらんでいるの……?」
デルフを、ナイトに突きつけるような形で、前に出す。
もちろん、こいつはクジャ本人じゃない。
それが分からなくほど、混乱してるわけじゃない。
でも、ずっとこのニヤニヤをほうっておいたら、耐えられそうにない。
そう、思ったんだ。
「あ、相棒、落ち着けって! あー、ミョズの兄ちゃんももうちっとさー」
デルフの慌てる声は、ほとんど耳に入らなかった。
クジャが何をたくらんでいるか、今度は何が目的なのか、それを見定めなくちゃいけない。
それだけで、頭がいっぱいだったんだ。
「操り人形君をさらう?この僕が? 何のために?」
“人形”、という言葉が、いちいち胸に突き刺さる。
タバサおねえちゃんを、人形だなんて、言わせたくない。
タバサおねえちゃんは、ボクと違って、人間なのに。
「こっちが聞いているんだっ!!」
これ以上、何か言われたら、ボクはチェス盤ごとニヤニヤ笑いのナイトを斬ってしまいそうだった。
そんなボクの横から、状況をつかみきれてないのか、ギーシュが口をはさんだんだ。
「あ、あの、クジャさん、ですか? タバサ君をさらったのは、貴方ではないのですか?」
「そんな筋書きを用意した覚えは無いねぇ……」
しれっと、ナイトが答える。
きっと、どこか遠いところで、クジャもこんなとぼけた顔で、
嘘をついているんだろうと思うと、ボクの感情は爆発しそうだった。
「嘘をつかないでっ!! エルフまで使って!この世界で何をたくらんでいるのっ!」
「エルフだって?」
まだ、とぼけている。
エルフと、何の関係も無いと、言い張るつもりらしい。
「ビビ君、もしかしてこいつ、何も知らないんじゃ……」
ギーシュはそう言うけど、ボクには、そうは思えなかった。
じゃなければ、こんなところに声を送ったり受け取ったりするアイテムがあるわけがない。
「エルフと、操り人形?どういうことだ……?」
ナイトの向こうで、クジャがブツブツとつぶやいている。
自分はまったく知らない、って風な声でつぶやいている。
これが演技だとしたら、確かにすごい役者だと思うけど、
クジャだったらやりかねない。そう思う。
「――ビビちゃん。腹は立つけど、このままここにいても進展は無さそうよ。先を急ぎましょう」
「そうね、他を探しましょうか」
キュルケおねえちゃんとルイズおねえちゃんの言うとおり、これ以上どうなるものでも無さそうだと思った。
ここに、クジャがいないなら、タバサおねえちゃんを助けるのがどう考えても先だ。
「……うん」
なんか、ちょっぴり納得できないけども、デルフを降ろした。
「あぁ、待ちたまえ! ビビ君」
立ち去ろうとすると、まだナイトから声がする。
「……何?」
今更、何だっていうんだろう。
「先を急ぐというのなら、1つだけ言わせてくれ。『目に見える物だけが敵ではない』」
何を言うにも、言葉を無駄に重ねて、何が言いたいんだろう。
目に見える物だけが敵じゃない?
それは、その通りだろう。
だって、今クジャは、ボクの目に見えないところにいるのだから。
「……何が言いたいのっ!? お前が、お前が全部仕組んだんだろ!?」
「あ、相棒……」
ボクの怒った声に、ナイトが変わらぬ調子で答えようとする。
「いや。こんな稚拙な演目、僕は描かないよ!これを仕組んだのは、おそら」
その続きを、ボクが聞くことはできなかった。
ボクだけじゃなくて、誰も。
それは、あまりにも突然の風だったんだ。
「え!?」
慌てて帽子をおさえる。
部屋の中なのに、竜巻のような暴風だった。
チェス盤と駒はテーブルごと砕かれて、入れ替わるように人影が部屋の中心に現れた。
「――声がすると思えば」
スラリとした、よく響く綺麗な声。
でも、その声には、何の感情もこもって無かったんだ。
「え、え、え……」
この人影と、部屋に吹き荒れる風が1つに重なって見える。
この風の中にいるだけで、この人に飲み込まれていると錯覚するほどに。
「侵入者か……」
魔力と風の中心、スラリと背の高い人影は、尖った耳の綺麗な顔の人だった。
「エルフっっ!?」
エルフ。ハルケギニアで恐れられている種族。
見た目は、そんな噂とはかけ離れているように、とっても優しそうだった。
「去れ。我は争いは好まぬ……と言いたいところだが」
だけど、分かる。
この人が、ものすごく強いということが。
ビリビリッていうほど、魔力を感じるんだ。
「貴方が、タバサを……!!」
ここにいるということは、このエルフが、タバサおねえちゃんをさらった、張本人。
「これも、約束だ」
エルフが、両手を腰の高さで広げて、構える。
戦闘が避けられる状況ではないし、避けたら、タバサおねえちゃんを助けに行けそうに無い。
そして、何より……
「……行くよ、デルフ!」
避けるつもりなんて、これっぽっちも無い!
「おぅ、相棒っ!」
クジャとエルフの関係は分からない。
でも、今は、この戦いに集中するしかない、そう考えながら、デルフを両手でがっしりと構えた。
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ピコン
ATE 〜タバサと物語の勇者〜
何かが、割れる音が遠くでした。
ベッドの上の女性は、その音にピクリ、と反応する。
怖がっているのか、かすかに、震えて。
「お母様……」
タバサは、いや、シャルロットは、自分と良く似たその女性を、優しく、優しく抱きしめた。
ずっと、こんな感じだ。
この白に幽閉されて1週間ほど。
シャルロットの母は、寝具くるまり、目を覚まそうとしない。
ときどき、大きな音に怯えては、体が震える程度。
それでも、落ち着いた寝相ではあるし、病状は安定していると言えそうだった。
シャルロットは、母を落ちつけるために、傍らに置いてあった本を拾い上げ、再び朗読し始めた。
月明かりが、鉄格子のはまった窓から程良い具合に射して、
ページをめくるのに何の支障もいらなかった。
本の題目は、タバサがシャルロットであったときに大好きだった、『イーヴァルディの勇者』。
母が、丁度今のシャルロットのような格好で、ベッドの傍で寝しなに母が読んでくれたものだった。
「『イーヴァルディの勇者は剣を構えました』」
『イーヴァルディの勇者』は、ハルケギニアでは有名な英雄譚で、
メイジではなく、平民とおぼしき剣の達人が悪をやっつけるという王道的な内容で、主に庶民に親しまれている。
その単純なストーリー構成から、いくつもの版が存在し、
中にはイーヴァルディの勇者が複数であったり、女性であったりするものまで存在する始末だった。
それだけ、この名もなき戦士である『イーヴァルディの勇者』が親しまれている証拠であろう。
今シャルロットが読んでいる版では、イーヴァルディの勇者は老人として描かれており、孫娘まで存在する。
朗読を再開したページは、中巻のクライマックスとも言える部分で、
イーヴァルディの勇者が仲間とともに邪悪なる魔導士の本拠地である大森林に潜入するも、
魔導士の罠にかかり、追いつめられるところからはじまった。
イーヴァルディの勇者の孫娘が罠を解除しようと駆けつけるが、彼女もまた魔導士に傷つけられてしまう。
彼は、罠を辛くも脱出し、孫娘を救わんがために、邪悪なる魔導士にたった1人で剣を向けるのだ。
『イーヴァルディの勇者は剣を構えました。
「くらえっ!」
風の刃が、勇者におそいかかります。
だけれども、勇者はこれをたえて、なおも魔導士に斬りかかります。
「わたしを本気にさせたな!死の世界へ 行くがいい!!」
邪悪なる魔道士は、恐るべき力を解放しました。
吹き荒れる炎の渦が、
聖なる白光が、
狂えし星々のダンスが、勇者のからだを痛めつけます。
この世界で最も恐るべき魔法達です。
それでも、勇者は倒れません。
「な、なぜ死なん!?」
見えざる魔道士の顔も、おどろきにあふれていることでしょう。
勇者の力はすでに尽きて、もう立ち上がることすらできないはずなのです。
「まだまだ! まだまだ死ねんのじゃ! この命 燃え尽きても! わしは きさまを たおす!!」
それでも、彼は立ち上がります。
ボロボロのからだに 炎のような目のかがやきを持って。
「いかりやにくしみで わたしを たおすことはできぬ!」
魔導士がにらみ返します。
「いかりでも・・・にくしみでもない・・・!!」
息もたえだえに、勇者は大きな声でさけびました。
「では、なんだと・・・」
魔導士は、問いかけます……』
続きが気になり、ページを繰る手が速くなる。
だが、その手がピタリと止まる。
彼女の目に、信じられない文が飛び込んできたからだ。
『その問いに答えることなく、イーヴァルディの勇者は死にました』
それは、あまりにも唐突な死であった。
シャルロットは、その文を朗読することをためらった。
何故か、声に出してしまった途端、それが真実になってしまいそうだったから。
物語に呼応するように、窓の外は、嵐の気配。
風が強く吹いてきていた。
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ピコン
ATE 〜疑問手〜
「くそっ!」
クジャは、チェスの駒を握りつぶした。
何が何だか分からない。
その事実が、クジャをさらに苛立たせていた。
研究所の1つとして活用していたアーハンブラ城から、定時連絡が一切無く、
試しにこちらから通信を行ってみれば、ビビの声がする。
話を聞いてみれば、エルフがガリア王の姪をさらったという話。
そして途絶えた通信。
全く、訳が分からない。
「どういうことだ?何故ビダーシャルが操り人形君を?」
まず、クジャはエルフの正体を決め付けた。
何しろ、今クジャが立つ場所は、エルフ達の住処である“悪魔の門”、ハルケギニアの名で言えば、“聖地”なのだ。
この地を離れて暮らすエルフは、極めて稀であり、例外と言えばガリア王ジョゼフの下で働いているビダーシャルぐらいのものだ。
「裏切り?いやそれは無いさ。あり得ない。今更裏切ってどうするというんだ?」
眼下に、“聖地”の全貌を収めつつ、クジャは考える。
整然と並ぶ石造りの尖塔達が月明かりの中でうすぼんやりと浮かび上がって、
街並みというよりも墓標のように彼の目に映った。
クジャは今、その中でも一際高い尖塔の上に立っている。
考え事をするには、何にも邪魔されない高い場所が一番だからだ。
「ジョゼフか?アイツがこの僕に黙って脚本を書き変えた?」
ビダーシャルが予期せぬ動きをしたことで、予定が何もかも狂ったことを、クジャは感じていた。
それは、クジャにとって許されざることである。
「まさか、そんなことがあるわけが無い。これは僕の舞台だ。……じゃぁ何故僕の描いたとおりに踊らない?」
ジョゼフとクジャは、共にチェスの腕前は素晴らしいが、大きな違いが1つある。
「考えろ、考えるんだ。何か見落としは?」
ジョゼフは、チェスプレイヤーそのものだ。
ゲームの流れを感じて、その場その場での最良手を編み出し、危なげなく手を進める。
ジョゼフにとって、サプライズは喜びであり、ハプニングは起こって当然のことなのだ。
一方クジャは、チェスプレイヤーではなく、本質的に劇作家なのだ。
即興にも弱くはないが、どちらかと言えば、相手の力量を鑑みて、まず台本を作り上げる。
そして、彼の組み立てたロジック通りにゲームが進むことに喜びを感じるのだ。
よって、クジャはハプニングを楽しむことがない。
そこが彼の弱みであると言える。
「操り人形君はガリアのお姫様。飛べない小鳥を別の籠に?一体何の意味が……」
だが、それは同時に彼の強みでもある。
自身の描く完成像に向かって、一つ一つロジックを積み重ねていくからこそ、
相手の疑問手に気づき、理解し、相手そのものの分析に役立つのだ。
今、クジャの頭の中では、その『相手』の姿がおぼろげながら組み上がっていた。
「クジャ」
そのクジャを、呼びかける低い声。
が、クジャはそれに気づく素振りすら見せない。
「いや、狙いは小鳥そのものでは無いのか?では一体何を……」
「クジャ?」
月明かりに、低い声の主の姿が浮かび上がる。
牛の頭に、筋骨たくましい堂々たる体躯。
ミノタウロスになった水メイジ、ラルカスだ。
「大体誰なんだ。誰の差し金で音が狂った?不協和音だ!耳触りだ!」
「クジャ、良いか?」
やれやれ、とため息をついて、ラルカスが話しかける。
命の恩人ということでついてきたはいいものの、
自分語りが多すぎる男に、ラルカスは少々うんざりしていた。
「ん?あぁ、何だい、君か」
やっと気付いたように、クジャが振り返る。
その顔には、不満と苛立ちがありありと浮かんでいた。
「族長達との契約は取り付けた。事が起これば協力はするそうだ」
今回の聖地訪問は、言わばクジャの描く“芝居”の、総仕上げだ。
その目的は、やっと果たされたことになる。
「ふん、長々ともめた割にはアッサリとした結論だねぇ。拍子抜けするよ」
鼻を鳴らして、クジャが吐き捨てる。
実際、聖地を訪れるというだけで、エルフの会議とやらは荒れに荒れたらしい。
閉鎖的にもほどがあるエルフ達との交渉は、並大抵の苦労ではなかったのだ。
「あとは、技術交換についてだが、医療関連についてのみ好意的だな。
他は色が悪い。特に軍事利用ができそうなものについては」
「医療、ねぇ……薬だって毒になるというのに、勝手なものだよ」
ラルカスの報告に、クジャが嘲笑うような声をあげる。
実際、タバサの母親はその薬で狂ったのでは無いか。
あの薬とて、エルフの世界では元々気つけ薬の類だと聞いている。
「だが、大きな一歩だと言えるだろう?政治とは地道なものと聞くが?」
ラルカスの言うことも実に正しいと言えば正しい。
が、なかなか終わらなかったエルフ達との協議や、
突然発覚したビダーシャルの謎の行動に苛立ちを感じているクジャは、不平をもらさずにはいられなかった。
「まったく、不便だねぇ。壊すだけなら、多少駆け足でも良いと言うのに……」
そこまで言って、クジャははっとする。
「待てよ、駆け足?不協和音はテンポの狂い?筋書きは前と同じ……?」
「クジャ、どうした?」
またも自分の世界に入ったクジャを見て、ラルカスは半分呆れていた。
だが、その後、もっと呆れることになる。
「――フフ……フハハハハハハハハハハハ!!」
「おい、クジャ?」
突然、高らかに笑いだす。
聖地の尖塔達に反射して、輪唱のように笑い声がこだまする。
「なんてことだ!あいつら、もう幕を引くつもりだ!!この僕の芝居を無視してね!!」
「誰のことだ?あいつらとは……」
先ほどまでのクジャと同様、ラルカスには何が何だか分からない状況だった。
「急ぐよ。君にも存分に暴れてもらわなくては!」
踵を返し、帰路を急ごうとするクジャ。
それを慌てて追うラルカス。
「おい、クジャ。何がどうなって……」
「……目に物見せてあげるよ」
クジャは、格別妖艶な笑みを浮かべた。
「クジャ?」
「僕の舞台を今更降りようだなんて、許さないよ……フフ、フハハハハハハハハ!!」
笑い声が、和音となって聖地にこだまする。
それは、悪魔の声のようでもあった。
月明かりが、聖地に影を作る。
尖塔達に白い壁と、月影の黒が、まるでチェス盤のように見える夜だった。
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本日は以上にございます。
やっとエルフ戦に入れます。少しでも緊迫したバトルが書けるよう努力いたしますので、どうか1つよろしくお願いいたします。
それでは、お目汚し並びに多大なご迷惑をおかけし、失礼いたしました。
……疲れてるのかなぁ、俺……
黒魔導士の方乙です。
いい作品を投下していることには変わりがないんですし、そんなに気にしなくても
いいと思いますよ? これからも頑張ってください!
黒魔の人乙です!
>『その問いに答えることなく、イーヴァルディの勇者は死にました』
この一文が誰の何を指すのかハラハラドキドキしています。
続きが待ち遠しいっす。
>>433 ウル魔の人、乙です!
ギーシュ達の活躍も良かったけど、どんどん自重しなくなる「せめて」の妄想にふいたw。普通逆だろうよw
>>447 黒魔の人も乙でした!
スタンスの違いがついにクジャの暴走を招いたか? 一体何をしでかすやら…
黒魔さん乙でした。
あのイーヴァルディ……ガラフ?
5分後くらいに小ネタ投下します。
破妖の剣から千禍を召喚。
3レスくらい。
>>452 うあ、なついのから来たね。
破妖の剣って完結したの?
彼は退屈を嫌う。退屈が嫌いだから、色々な遊びをした。他人の迷惑など考えない。むしろ、積極的に迷惑をかけてきた。
その事を悪いと思ったことなどない。嫌なら嫌と意思表示すればいいのだ。そうして自分に立ち向かえばいいのだ。
もちろん、それで遊びをやめたりはしない。力なきものの抵抗すら、彼にとっては娯楽の一つなのだから。
そうして色々な遊びを続けてきたが、どんな面白い遊びも何度も続けていれば飽きてくる。別の遊びをしようと思っても、永遠に等しい生を享受する彼である。
もはや、やったことのない遊びなど思いつかない。
退屈だとため息を吐き、次の遊びが思いつくまでお気に入りの玩具を嬲ってすごそうかと考えていた時に、彼の前に鏡のようなものが現れた。
彼は、一目でそれが何かを理解した。
それは、別の世界へ通じる扉、自分を呼ぶ何者かが開いた時空の門。
そこから、伝わってくる意思を感じて彼は嗤う。
この扉を作り出したものは、事もあろうに自分を呼んでいた。それどころか従えようと考えていたのだ。
嗤いながら彼は考える。この門の向こうにいる者は自分を従えられると信じているようだが、そんなことが出来るはずがない。
では、どうしてやろうか?
この門を潜り、自分を呼んだ者の命を奪ってやってもいいのだが、せっかく退屈しのぎができそうなのだ。少し遊んでやってもいいかもしれない。そうして彼は門を潜る。
「あんた……何?」
潜った門の先にいた娘が最初に言った言葉はこれであった。
これで、どうやら娘は自分を狙って呼んだのではなく、呼んだ相手がたまたま自分だったのだと知り、ますます彼は愉快になった。
ルイズが、サモン・サーヴァントで召喚したのは、人外の美しさを持つ真紅の髪と瞳の青年であった。
それは、あまりの美しさを除けば人間と違う部分などない姿をしていたが、そこにいた者たちは、一目でそれが人外の者だと悟った。
美しすぎるとか、杖も無しに空中に漂い座っているからとかそんな理由ではなく、身に纏う空気が人のそれを大きく逸脱しているのだ。
これが、自分にふさわしい使い魔なのかと、少女はその正体を知りたいと思う。
そうして少女は問いかける。自分が召喚した使い魔の名を、正体を。
彼は、ルイズに名乗らなかった。彼ら魔性にとって名は特別な意味を持つ。
どれほどの強大な存在であれ、名に束縛され、例えば世界のどこにいても、自身の名を呼ばれればそれを無視出来ないのだ。
だから、魔性は自身が認めた者以外に名を呼ばれることを嫌う。
大抵の魔性は、相応しくないものに名を呼ばれれば、その相手を殺害せずにはいられないのだ。
彼は、魔性の中では変り種だったが、自身の名を誰にでも呼ばせてよしとはしなかったし、一々自分の名を呼ぶものを殺害して回るのを面倒だと思っていた。
だから、好きに呼べと伝えた。
これに対して、ルイズは怒らなかった。そもそも、メイジが使い魔に最初に与えるものは名である。好きに呼べといわれれば、名をつけろと言われているものだと判断する。
もちろん、少女のつけた名は、彼を束縛することはなく、使い魔の契約も彼ほど強大なの魔性に対して、さしたる影響を与えなかった。
そうして契約の後、彼は自身を呼んだ者の話を聞いて、また嗤った。
この娘は自分を使い魔にしようというのだ、この自分を。
ちょっと前なら、この娘を八つ裂きにして帰っていたところだが、なにぶん彼は暇をもてあましていた。
だから、新しい遊びを思いつくまでの間、もしくは飽きるまでなら使い魔をやってやろうと彼は思った。
そうして使い魔を勤めることになった彼は、おかしなことに気づく。少女が落ちこぼれ扱いされていることにである。
彼にとって、少女や周りの人間の内包する力を知ることなど造作もない。
彼は、少女の属している学院が異能の能力を持つものを集め、育成する場所だと理解していた。そして、そこに属する者の異能が彼の知るものとは大きく違っていることも。
彼の知る異能とは、彼のような魔性の者と戦うことに特化したものである。なのに、ここでは違う。魔法という異能はむしろ同じ人間と戦うためにあるように感じる。
そして、それは魔性の者には効果がない能力なのだとも言えるのだが、ルイズだけが違う。彼を召喚した少女だけが、魔性に効果のある能力を使うことが出来る。
むろん、それは彼ほどに強大な魔性と戦えるほどのものではなかったが。
自分という魔性を召喚した者だけが、魔性と戦える能力を持っている。それが、彼には愉快でならない。
だが、その事を彼は少女に告げたりはしない。
明らかに自分よりも劣った能力しか持たない者たちに嘲られ、心を傷つけられる少女を見ることは彼を楽しませたから。
だから口に出しては根拠のないように聞こえる気休めだけを告げた。
「おまえなら、いつかきっと、立派なメイジになれる」
そんな言葉は、どれだけの努力も実らずゼロと呼ばれ続ける少女には慰めにならない。
それどころか、自身の無能さを知る少女を追い詰める結果にしかならない。
それを彼は理解していた。理解したうえで口にした。
少女の抱える慟哭、運命の皮肉を傍から見て娯楽として楽しんでいたのだから。
そうして、彼は少女とその周りの人間を使って遊びはじめる。
二股をかけていた少年をからかい主人である少女と決闘をさせ、巨大なゴーレムを操る盗賊に主人を立ち向かわせて自分は手を貸すと言っては傷つきながら立ち向かう少女の姿を嗤う。
その度に、少女は傷つき血を流した。
彼は飽きない限りは玩具を大事にするほうなので、何度も傷つき倒れた少女は、それでもギリギリのところで守られ傷を癒され、死を免れて数々の試練を乗り越えていく。
結果として、彼の上っ面だけの優しさに少女は傾倒していくが、そのこと事態は、彼にはどうでもよかった。
彼はただ、少女が血を流し折れそうな心を抱えて突き進む姿を見ることを娯楽としていただけなのだから。
そして、少女はさらなる危険に身を投じる。
王女に請われアルビオンに行き、そこでは婚約者であり裏切り者であったワルドを撃退し、タルブでは祖国に戦を仕掛けてきたアルビオン艦隊を焼き払い、冒険の中で友人になった青髪の少女のためにエルフと戦いもしたし、その母の心の病も使い魔に頼み癒しもした。
そんな彼女を彼は常に守護し、その願いを叶え続けた。
優しく、頼りになり、誰よりも彼女の意思を尊重する忠実な使い魔。そのふりをすることの。なんとたやすくおかしかったことか。
そうして、さまざまな冒険を経て立派に成長し、聖女とまで呼ばれるようになった頃。少女の使い魔が呟いた。
「飽きてきたな」
この瞬間、ハルケギニア六千年の歴史が終わることが決定したことに気づいた人間はいなかった。
彼にとって、ルイズという少女は退屈を紛らわせる玩具であり、ハルケギニアという地は、そのための舞台にしか過ぎない。
だから、少女が彼を楽しませることが出来なくなった時、その地は地獄と化すことを余儀なくされた。
その日から、ハルケギニアに起こることになった異変。
街の大小を問わず現れるようになった、それまで誰も見たことのなかった異形の怪物たち。
人を襲い、喰らうそれらに、平民はもちろんメイジたる貴族すら無力だった。
力が及ばなかったわけではない。
力の大きさではなく質の問題なのだ。
それらハルケギニアにはいなかった怪物たちには剣も銃も魔法も効果をもたらさない。
それだけではない。街一つが、一夜にして滅ぶという事件も多発した。
それらが、ルイズの使い魔である彼が呼び集めた異世界の魔性の仕業であるなどと、人々は知らない。
人々を襲う、メイジですら歯が立たない怪物が、魔性の中では下級の存在である小鬼や妖鬼と呼ばれる存在であることも、彼が呼び集めた者の中には、妖貴と呼ばれる高位の魔性がいることも知らない。
彼の名は千禍。元いた世界において、最も数多くの人の命を弄び、奪ってきた魔性の王の一人である。
投下終了。
>>453 まだまだ終わらんよ。
おや? 新刊出てる? 何年ぶりだ?
イラストちげぇ。いつからだ、覚えがないぞ。前の確認するか。
うむ、鬱金の暁闇でイラスト変わったのかな?
このシリーズ1〜4まで買うか。
家で、表紙絵が変わる前の1〜3を発見。
チクショウ。
ウルトラの人に続き黒魔の人、乙です。
何かクジャが壊れかけてる感じがするが…、どうなるのやら。
とりあえず、ビダーシャル相手に頑張れビビ!
小ネタの人も乙です。
元ネタはサッパリ解りませんが、救いの無い絶望系の物語としては楽しめました。
この召喚された奴、これ以上無い位の酷い奴ですね…。
で、毒の爪の使い魔の第52話が書き終わりました。
予定その他が無ければ、23:35辺りから投下開始します。
では、そろそろ投下開始します。
――アルビオン・軍港ロサイス――
戦争が終わってから約一ヶ月。活気が戻りつつあるアルビオンには、連日多くの人が訪れていた。
それはロサイスの周囲を見ても解る。
物売りに来た商人、一山当てようと目論む山師、政府の役人、果ては戦争で会えなかった親戚に会いに来た人、etc、etc…。
訪れる理由は様々なれど、ハルケギニア中の人間がやって来ている事に変わりは無く、溢れ返った人で港は大変な混雑を呈していた。
そんな中、一際目立つ桃色髪の少女が鉄塔のような船着場から下りてきた。ルイズである。
「こりゃ、大変だわ」
ロサイスとその周辺をざっと見回し、ため息混じりに呟く。
嘗ての軍港とは思えない露店の並びようは、まるで降臨祭の続きをやっているかのように感じる。
「何でしょうか、あの名前?」
隣にいつものメイド服姿に大きな鞄を手に持ち、リュックを背負ったシエスタが並ぶ。
シエスタの指差す先に視線を移し、ルイズは悲しげな表情を浮かべる。
それは大きく名前が書かれた木の看板を持っている人達だった。
「戦争で行方不明になった人の名前。その人を家族や友人が探している」
ルイズの代わりに答えたのはタバサだった。
いつもならこういう場合は読書をしている彼女だが、今は本を読んではいない。
その手には本の代わりに、青色のエクレールダムールの花の入った瓶が握られている。
枯れたはずのその花は、今や枯れていたなどと微塵も感じさせないほどに綺麗な花を咲かせ、眩い輝きを放っていた。
その首にはジャンガから預かったマフラーが巻いてあるが、その巻き方が尋常ではない。
二重、三重に巻きつけており、首など全く見えないばかりか、顔の下半分が完全に覆われている。
何故、彼女がこのようなマフラーの巻き方をしているのかと言るのか…、その理由はマフラーの長さにあった。
身長が二メイルほどもあるジャンガが、普通に首に巻いても地面に着こうかという長さのそれを、
小柄なタバサが普通に首に巻けば大部分を地面に引き摺ってしまうのは火を見るより明らか。
『固定化』が掛けられていえ、それではジャンガが大切にしているマフラーに傷が付いてしまうかもしれない。
普通に考えれば鞄に入れるなりすればいいだけだが、タバサはどうしても首に巻いておきたかったのだ。
ではマフラーが地面に付かない様に首に巻くにはどうすればいいか?
タバサは考え…その結果、首に幾重にも巻きつけて余る部分を無くす、と言う実に単純な方法を取ったわけである。
そんな彼女にいきなり抱きつく人影。
「きゅいきゅい。お姉さま、あいつのマフラーをこんな無理矢理にでも首に巻くなんて、一途なのね。
イルククゥ、凄く嬉しいのね! 感動物なのね! きゅいきゅい♪」
それは人間に化けたシルフィードであった。先の戦争中に負った怪我が治りきっていないのか、
服の隙間から覗く手や足などには包帯が巻かれているのが見える。
しかし、そんな怪我など微塵も気にしていないのか、シルフィードは元気いっぱいにはしゃぐ。
無論、その正体は皆には秘密だった。表向きには”タバサの妹”で通している。
「ルイズ」
後ろから優しい声が掛けられる。
それが誰なのか、ルイズには直ぐ解った。
急いで後ろを振り返る。
「ちいねえさま」
果たして、それは下の姉であるカトレアだった。
ルイズと同じ桃色の髪をした彼女は、被った羽の付いたつばの広い帽子の下で微笑む。
姉の笑顔に釣られてルイズも笑いかけたが、直ぐ横に並んだ顔を見て表情を曇らせた。
彼女の曇った表情にその人物もまた不愉快な表情を浮かべる。
「その顔は何? おちび」
ルイズは何とか表情を戻しながら、口を開く。
「…何でもありません、エレオノール姉さま」
ルイズの謝罪が終わり、姉エレオノールは大きなため息を吐く。
そして、隣の上の妹を見る。
「いきなり妹と一緒にアルビオンまで行きたい、だなんて…無茶もいい所だわ」
「だって、折角の機会ですもの。ルイズとのお出かけなんて、初めてですし」
カトレアはコロコロと笑う。
しかし、ふと何かに気が付いたのか、気まずそうにルイズを見る。
「ごめんなさいね、ルイズ。あなたにとってはただの旅行じゃないのだし…」
申し訳無さそうに謝る姉の言葉にルイズは首を振る。
「ううん…いいの、ちいねえさま。わたしもちいねえさまと一緒にお出かけが出来て、嬉しいのは同じだし」
それに、と言いながらタバサの持つエクレールダムールの花を見る。
「あいつ…悪運だけは強いから」
――何故、彼女達はアルビオンへとやって来たか? 事の始まりは一週間ほど前に遡る…。
戦争が終わり、魔法学院へと帰還したルイズとタバサはそれ以来、部屋に籠もりっきりになっていた。
原因はエクレールダムールの花が枯れ、ジャンガの死がほぼ確実となったからに他ならない。
学生や教師の誰が声を掛けようとも、二人は返事すら返さない。
それはまるで、心が抜け落ちて本物の人形になったかのように他者に感じさせた。
そんな風に二人が部屋に籠もってから二週間近くが経ったある日、転機が訪れる。
ロマリアの神官ジュリオがルイズを尋ねて来たのだ。
ジャンガとの甘い夢から目覚めれば、自分の部屋にジュリオがいた。
その”無断でレディの部屋に立ち入った”事実にルイズは当然怒ったが、当の本人はまるで意に介さない。
寧ろ、笑う余裕さえあった。
そんな彼はルイズを宥めながら言った。
”偉大なる虚無の担い手”である彼女を迎えに来た、と…。
何故、彼が秘密であるはずの事実を知っているのか…、ルイズは訝しげに見つめた。
ロマリアは神学の研究がハルケギニアでも最も進んだ国、そこの神官である自分が解らないはずが無い、とジュリオは言った。
そしてジュリオはロマリアがルイズを欲しがっている事を告げ、ロマリアへと誘う。
しかし、ルイズはその誘いを一蹴した。
ジュリオはそんなルイズの態度に今は身を引くべきと判断したのか、すんなりとそれを受け入れた。
そして、部屋を出る間際に使い魔召喚の呪文、サモン・サーヴァントに付いての講義をお願いした。
ルイズは”それがどうした?”と思っていたが、次のジュリオの言葉に、ハッとなった。
――その条件は?――
条件…サモン・サーヴァントを行う条件…。使い魔がいない者が唱えれば、使い魔召喚のゲートが現れる。
そして、一度使い魔が召喚されれば二度と成功はしない。――使い魔が”生きている内”は。
そうだ…使い魔が生きているかどうか、簡単に確かめる方法はあったのだ。
こんなにも身近に…。それに気付かず、ただ泣きはらしていただけの自分は何と浅はかだったのだろうか?
ジュリオはいつの間にか部屋を立ち去り、今部屋に居るのは自分だけであった。
ルイズは杖を握り、呪文を唱えようとした時、扉が叩かれたので彼女は驚きのあまり跳び上がる。
ジュリオがまた戻ってきたのか、と思いながらルイズは扉を開ける。
すると、そこには意外すぎる人物が立っていた。
上の姉のエレオノールと下の姉のカトレアだったのだ。
どうして、二人がここに居るのか…。
訳が分からず呆然としているルイズの頬をエレオノールが抓った。
貴族として今の態度は情けない、と言いながら。
聞けば、二人はルイズを心配して学院へと来たらしい。
もっとも、積極的に来たがったのはカトレアであって、エレオノールはその付き添いだったらしいが…。
カトレアはルイズが激しく落ち込んでると思い、その小さな体を優しく抱きしめた。
そんな姉の優しさに元気を取り戻したルイズは姉達の見守る中、サモン・サーヴァントを唱えた。
結果、サモン・サーヴァントは失敗に終わった。
その事実はルイズに大きな希望を与えた。
召喚の失敗は即ち使い魔の存命に他ならず、あの猫が生きているならばアンリエッタも生きているに違いない、と。
ルイズはいても立ってもいられなくなり、大急ぎで荷物を纏め始めた。
それをカトレアが、渋々と言った感じでエレオノールが手伝う。
と、三度扉が叩かれた。
扉が開き、入ってきたのはタバサだった。
一体何をしに来たのだろう? と言う疑問は彼女が手に持っている青く輝く花の入った瓶を見た瞬間に解消した。
タバサの下にも来訪者がおり、来たのはガンツだった。
もっとも、彼はジュリオと違ってタバサに大した励ましのような物はしなかったのだが。
ただ、ジャンガはそうそうくたばる奴ではない、とだけタバサに言った。
そして去り際にエクレールダムールの花に付いて軽いレクチャーをした。
エクレールダムールの花はパートナーが死ぬと枯れてしまうが、その判断基準は可也曖昧らしい。
パートナーが死んでいなくとも、その危険が有ると判断されると枯れてしまうようなのだ。
事実、死んだと思った相手の花が、ある日再びその輝きを取り戻して咲いたという話があるそうだ。
ガンツの話を聞き、タバサは二度と見たくないと、エクレールダムールの花を仕舞いこんだ引き出しを開ける決心をした。
ガンツが居なくなり、いざ引き出しを開けようとした時、窓が叩かれた。
見ればシルフィードが浮かんでいる。未だ傷は癒えてはいないはずなのに…。
タバサは窓を開けた。瞬間、シルフィードは早口で呪文を唱え、全裸の女性の姿へと変身する。
人間の姿に化けたシルフィードをタバサは咎めたが、シルフィードは全く気にしていない様子。
曰く、いつまでも元気が無いタバサを案じ、傷を押してやって来たらしい。
その使い魔の気遣いにタバサは優しく微笑み……お仕置きの一撃を加えた。
頭を押さえながら床を転げまわる使い魔を尻目に、タバサは引き出しを開けた。
直後、青い輝きが目に入り、彼女はこれ以上無い喜びを感じたのだった。
そうして、タバサはルイズの下を訪れたのだった。ジャンガが生きていると教える為に。
かくして、ルイズとタバサ、カトレアにエレオノール、人間に化けたシルフィード、
それに地獄耳で話を聞きつけたシエスタの五人と一匹はジャンガとアンリエッタを探すため、アルビオンへと向かう事になった。
しかし今の時期、アルビオン大陸とハルケギニアを結ぶ船便は行きかう人々で溢れかえっている。
ラ・ロシェールの船着場など、いつかの任務でアルビオンに渡った時とは比べ物にならないほどの長蛇の列が出来ていた。
女王陛下のお墨付きだったり、ラ・ヴァリエール公爵家の娘だったりなどのアドバンテージも混雑を極めた船便には通用しない。
結局、ルイズ達が軍船の定期便に割り込み、ロサイスに到着する時には、普段の倍以上の時間が掛かってしまった。
ロサイス到着の時点で、魔法学院出発から一週間が経過していた。
――そして、話は冒頭に戻る。
「見つかりますよね…、ジャンガさんとアンリエッタ女王陛下」
心配そうに呟くシエスタの言葉には答えず、ルイズはタバサに尋ねる。
「ねぇ、あなたがあの不届き者と突然現れた怪物と戦ったのって、ここから真っ直ぐ行った所よね?」
タバサはこくりと頷く。
「五十リーグほど」
「随分あるわね…」
徒歩では一日ほど掛かるかもしれない距離だ。
タバサのシルフィードが使えれば楽だったのだが…。
今は大怪我を負っている為、療養中なのだから仕方が無い。
そして辺りを見渡す。
「こんなんじゃ馬も借りれないわよね」
人込みを見て、ルイズはぼやく。もっとも馬を借りられたとしても、元気になったばかりのカトレアを馬に乗せるのは酷だろう。
「結局、頼れるのは自分の足って事ね」
そう言って一歩を踏み出す。瞬間、ルイズは地面に倒れこんだ。
二週間近い運動不足による体力の低下に加え、混雑を極めた船の人込みは彼女に決定的な疲労を与えていた。
カトレアが心配そうにルイズを抱き起こす。
大丈夫と姉に言うルイズだったが、その顔を見れば大丈夫でないのは一目瞭然だった。
そんな彼女を見ながらシエスタが口を開く。
「無理は良くないですわ、ミス・ヴァリエール。どのみちもう夜ですから、今日はここで一泊して明日向いましょう」
そんなシエスタの意見はすんなりと受け入れられた。
無論、一泊すると言っても宿など借りれる訳も無い。
溢れかえる人達に宿は何処もが満室だったのだ。
仕方なく、近くの空き地を適当に見繕い、そこに布を広げて眠る事になった。
エレオノールは「公爵家の者が平民と同じように野宿をするなんて」と露骨に嫌がっていた。
だが「あら、楽しいじゃない」のカトレアの一言に押し切られ、文句を言いながらも折れたのだった。
そこはルイズやタバサには見覚えがある場所であった。
何処かと思えば、赤レンガで出来ていた司令部の前庭である。
恐らくあの時にやって来たキメラドラゴンの群れに破壊されたのだろう。
無残に砕かれた赤レンガがあちこちに散らばり、実に痛々しい光景だ。
だが、そんな恐ろしい事があった場所でも人間というのは適応する力が凄まじいようで、
あっちこっちに天幕を設けて眠っている者も居れば、砕けた赤レンガを『終戦記念レンガ』と銘打って売っている者までいた。
そんな人達に混じり、シエスタはテキパキと準備をする。
布や棒を取り出してテントを張り、転がるレンガを積み上げて即席のかまどを作る。
その手際の良さにルイズもタバサも目を見張った。カトレアは「お上手ね」と笑っている。
かまどが組みあがると鍋や食材を取り出し、シチューを作り出した。
出来上がると、シエスタはおわんによそい、皆に手渡していく。
見ているだけで空腹の身に応える、実に美味しそうなシチューだった。
一口啜ってみると、尚の事その美味しさが伝わった。
「美味しい!」
「えへ、お口にあってよかったです」
続けてタバサやエレオノール、カトレアもシチューを口にする。
感想は揃って「美味しい」の一言に尽きた。
てへ、と笑いながらシエスタは言葉を続ける。
「これ、わたしのオリジナルなんです。ひいおじいちゃんも気に入ってくれていたんですよ?」
「ふぅん、そうなんだ」
「きっとジャンガさんも気に入ってくれると思うんです。同じ国の出身ですし」
「…あっそう」
ルイズはそれだけ返す。
シエスタはそこで妙な抑揚をつけて歌い始めた。
「ひいおじいちゃんと恋人、同じ国♪ 同じ国♪ 同じ国♪」
ルイズは、ギギギ、と音が鳴りそうな動きで首を動かし、シエスタを睨む。
「今…何て言ったのアンタ?」
「え? ひいおじいちゃんと恋人、同じ国♪ 同じ国♪ 同じ国♪ …って歌ったんですけど?」
そこでルイズは我慢なら無いといった感じで、シエスタに噛み付くような勢いで詰め寄る。
「誰が恋人なのよッ! ねぇッ!」
「ジャンガさん」
さして躊躇いも無く、ましてや怖気づいた様子など見せず、シエスタは言い切った。
かは、とルイズは息を洩らす。
ブチ切れそうになったが、ここで冷静さを欠いては相手の思う壺。
必死に堪え、何とか余裕の態度を取り戻す。
「わ、わたしだってあいつにされました! ええ、されましたとも!!」
半ば自棄になって叫ぶルイズにエレオノールは目を細める。
「ちょっと、ルイズ! 今のはどういう意味かしら!? あなた、ヴァリエールの者が亜人なんかと――」
「姉さまは黙ってて!!!」
そう怒鳴りながらルイズはエレオノールを睨み付けた。
その表情は鬼気迫る物があり、それまでルイズが姉に見せた事が無い物だった。
さしものエレオノールも息を呑んだ。…気のせいか、殺気のような物も感じたのだ。
ルイズは姉が黙るや、シエスタに向き直る。
「まず! わたしはあいつとキスをしてるの! 三回もよ!?」
人差し指と中指、薬指を立て、目の前に突きつける。
しかし、シエスタはなんら臆する事無く、寧ろ冷たい目でルイズを見つめている。
「へぇ、どう言った状況で?」
「サモン・サーヴァントで召喚した時に一回! 契約解除された後、大怪我をしたあいつに再契約した時に二回!
てなわけで、合計三回もわたしはキスしてるのよ、あいつに! どう、参った!? 参ったって言いなさいよ、メイド!」
一気に捲し立て、怒鳴るルイズ。
だが、やはりシエスタは動じていない。いや、不敵な笑みすら浮かべている。
「それ、どれも契約じゃないですか? カウントに入りません」
「右に同じ」
「契約を数に入れるなんて卑怯極まりないのね、きゅいきゅい」
シエスタの言葉にタバサとシルフィードが同意する。
ルイズのこめかみに青筋が浮かび上がった。と、そこでルイズはある事を思い出した。
「そうよ!? あれがあったわ!」
「あれって?」
シエスタが怪訝な表情で尋ねるのに対し、ルイズは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「わたし、この前実家に帰ったんだけど…そこであいつってばね、小船に居たわたしを押し倒したのよ?」
シエスタとタバサ、エレオノールが一斉に反応する。カトレアは楽しそうな微笑を浮かべながらルイズを見ている。
ルイズは得意げに語りだす。
「あ、あいつってば、あ、あたしの事をい、いきなり押し倒して、べ、べろべろ舐めてきたんだから!
そりゃもう遠慮の無い舐めっぷりだったわ! お、おお、おまけにむ、胸やす、スカートの中にまで手を伸ばして…。
ほんっっっっとうに失礼な奴だったわ!」
叫びながらルイズはシエスタに指を突きつけた。
「ど、どう!? あ、あんたはそ、そそそ、そんな事された!? されるわけないわよね!
ただのメイド風情にそんな事する訳ないし! わたしの勝ち! やったーーーー!!!」
一人勝利宣言をするルイズ。
その眼前に突きつけられた物に表情が一瞬で曇る。
青く輝くエクレールダムールの花。勿論、持っているのはタバサだった。
ルイズは鋭い視線で睨みつける。
「何よ…?」
「ぶい」
ピースサインをして見せるタバサ。
あの時と寸分変わらないポーズである。
ピクピク、とルイズのこめかみが振るえ、体中が震える。
エクレールダムールの花、永遠の絆の証。これ以上無いアドバンテージとも言える、それの存在はルイズには目の上のたんこぶだ。
「な、生意気ね! そんなマジックフラワーで気を引こうなんて!」
「嫉妬」
ルイズを指差し、タバサは静かに呟く。
ルイズは全身を怒りで真っ赤に染めあげ、タバサを睨みつける。
タバサも静かにルイズを見つめる。
そんな二人を横合いからシエスタが睨む。
暫く時間が流れ、三人は同時にため息を吐いた。
「無事…ですよね?」
「当然よ。あんた、あれだけ言って信じないつもりなの?」
シエスタは首を振った。
そんな風に暫く三人はしんみりとしていた。
そんな彼女達を一つの人影が遠くから見つめていた。
翌日、五人と一匹は目的の場所に立っていた。
ほぼ一日を掛けて五十リーグの距離を歩いてきていた為、既に日は山の向こうに沈みかけている。
その沈みかけた日に照らし出された目の前の光景は想像を絶していた。
本来ならば綺麗な草原が広がっていただろうその場所は、戦場の跡地だった。
辺り一面の草は一本残らず焼け、凄まじい力で抉られたようなクレーターが幾つも出来ている。
横に広がる森には奇跡的に被害は見られなかったが、他は酷い有様だった。
「ここで…あったのね」
ルイズの言葉にタバサは重苦しい表情で頷いた。
――あの日の事は忘れていない。
嘲笑うガーレンに、暴れ狂う謎の怪物。
そして、炎に消えていったジャンガの背。
首に巻いたマフラーをタバサは強く握り締めた。
ルイズは魔法学院の図書館から拝借してきたトリステイン地理院発行のアルビオンの地図を広げている。
近くに村はないか? とシエスタは辺りを見回す。
しかし、既に日は落ち始めている為、周囲は薄暗くなってきている。
と、夜目の利くシルフィードが森の一角にある小道に気が付いた。
「あ、あそこに小道があるのね!」
シルフィードの言葉に他の皆がそちらを向く。
「本当だわ」
小道へと走る。
馬車が通れるほどの広さがあるわけではなかったが、人がそれなりに行き来しているらしく、地面はしっかりと踏み固められていた。
それらを見ていたシエスタが口を開く。
「人の生活の香りがしますわ。もしかすれば、この先に村があるかもしれません」
ルイズは地図を広げる。
この森の辺りには村などは記されてはいない。
だが、このような道がある以上、村もしくは家の一軒でも建っているはずだ。
他に手がかりも無い以上、この道に賭ける他は無かった。
(今度は当たりなさいよ)
嘗て、賭け事をして大損をした経験があるルイズは心の中でそう呟いた。
小道は意外と長く続いており、歩いているうちに日はすっかり暮れてしまった。
しかし、月明かりが道を照らしており、タバサの唱えた魔法の明かりもある為、それほど迷わずに進めた。
「大分、暗くなってきましたね…」
シエスタの言葉にルイズは黙って頷く。
エレオノールが後ろで呆れたようにため息を吐いた。
「だからわたしは言ったのよ、明日にした方が良いとね。それを急ぐからこうなるのよ」
そんな姉を宥めるカトレア。
しかし、確かに道は解るとはいえ、この暗がりをこのまま歩き続けるのは危険かもしれない。
と、その時である。
「ねぇ、ねぇ、お姉ちゃん達、何処行くの?」
幼い子供の声が聞こえてきた。
声の方へとタバサは杖の明かりを向ける。
暗い森の中、あどけない笑顔をした少年が立っていた。
こんな時間にこんな所に何故こんな子供が居るのだろう?
一行の誰もがそんな疑問を浮かべた。
カトレアが少年に近づき、優しく尋ねた。
「坊やは何処の子? こんな時間に外を出歩いていたら親が心配してしまうわ」
「ねぇ、おねえちゃんたち、こんな所でなにしてるの?」
カトレアの質問には答えず、少年はルイズ達に声を掛ける。
ルイズは五歳ぐらいのその少年にジャンガの事を尋ねてみた。
すると、少年は意外な答えを返した。
「うん。知ってるよ」
ルイズとシエスタは思わず詰め寄っていた。先に感じた疑惑などとうに吹き飛んでいる。
「何処? 何処に居るの?」
すると、少年は森の奥へと歩き出す。
途中で振り返り、手招きをする。
「こっちこっち、こっちだよ」
楽しそうに言いながら、少年は再び歩き出した。
ルイズとシエスタは顔を見合わせ、彼の後を追った。
ちょっと、あなた達? とエレオノールが止めるが、二人はどんどん奥へと進んで行く。
そして、カトレアに促されるままエレオノールも後に続いた。
そんな彼女達の後姿を見ながらタバサは、少年が手招く姿を見てから感じていた妙な感覚を考えていた。
「きゅい? お姉さま、どうしたのね…そんな難しい顔をして?」
「…何でもない」
タバサは頭に浮かんだもやもやを振り払うように首を振り、シルフィードと共に後に続いた。
少年は暗い森の中を進んで行く。余程夜目が利くのか、一度も足をとられない。
シエスタも田舎娘ゆえに盛り歩きは慣れた物なのか、比較的軽快に足を運んでいく。
ルイズは木漏れ日のように木々の間から差す月明かりしか頼れる物が無い為、散々に転んだ。
後からやって来たタバサが明かりを持って来た為、漸くまともに歩けるようになった。
少年の姿は既に闇に溶けて全く見えない。
ただ「こっちこっち」と楽しげに誘う声だけが闇の中から聞こえていた。
「まったく、子供の相手なんかするからこうなるのよ。ただわたくし達を、からかっているだけじゃないかしら?」
「まぁまぁ、子供のしている事ですし。鬼ごっこみたいで楽しいじゃない」
ぶつくさと文句を言うエレオノール。
カトレアはコロコロと実に楽しそうに笑う。
やがて、月明かりが差す開けた場所に出た。
発光性のキノコが所々に生え、地面に生えた草も僅かに光を放っている。
その広場の中央に少年は立っていた。
年相応の無邪気な笑みを浮かべながら、少年は彼女達を待っていた。
「こっちこっち、こっちだよ」
手招きをする。
先に来ていたシエスタが辺りを見回していたが、怪訝な表情を浮かべている。
何しろ辺りには家一軒見当たらないのだ。
シエスタは少年に問い詰める。
「ねぇ、君の家は何処? ジャンガさんは何処に居るの?」
しかし、少年は答えない。ただ笑うだけだ。
「ねぇ、あなた…子供だからって、あんまり嘘が過ぎると許さないわよ?」
ルイズが多少怒りを露にした口調で少年を問い詰めた。
「木々よ。森の木々よ。その枝で彼女達の腕を掴みたまえ。その根で彼女達の足を掴みたまえ」
突如響き渡るその声にタバサは目を見開く。
「逃げて!」
慌てた様子で叫ぶタバサに、他の皆は何事かと思った。
しかし、逃げるには遅すぎた。
響き渡る声に呼応するかのように、広場の周囲の森がざわめきだす。
枝が伸び、地面から木の根が迫り出す。
杖を振る間もない。枝が、根が、ルイズ達を捕まえていく。
タバサは逸早く反応したため、それから逃れていた。
『ブレイド』を唱え、生み出された風の刃で枝を、木の根を切り落としていく。
周囲のそれを切り落としながら、タバサは森の中に向って『エア・ハンマー』を唱えた。
空気の塊が森の一角に向かい、木々を吹き飛ばした。
「あ〜あ…酷いな。木々が”痛い痛い”って言ってるよ、おねえちゃん?」
そんな事を言いながら暗がりから小柄な人影が姿を現す。
少年とそう変わらないその人影をタバサは睨み付けた。
「あなたは…まさか」
くすり、と笑いながら人影はフードを取り払った。
美しい金髪が月明かりに晒され、夜風に揺れた。
まるで血が通っていないと思えるほどに真っ白な肌をしたそれは少女だった。
そして、その少女にタバサは見覚えがありすぎた。
少女はタバサを見つめると、嬉しそうに笑った。
笑った拍子に開いた口の隙間から、白く光る二本の牙が二個綺麗に並んでいるのが見えた。
「エルザ…」
「久しぶりだね、おねえちゃん♪」
緊張した声で呟くタバサに対し、エルザは無邪気な笑顔で楽しそうに答えた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上で投下終了です。
少年の「こっちこっち」はPS2の『零〜赤い蝶』に出てくる怨霊『鬼ごっこをする少年』の台詞を
想像していただければよいかと。
無邪気な子供は残酷な大人以上に怖かったりしますよね〜。
では、アディオ〜ス♪
乙です。支援です。
この展開は正史ガーゴイルの代わりにエルザということか?
毒の爪の人、乙。相変わらず更新早いなぁ。
毒の爪の人、乙です。
カトレアさん、元気になってよかったよかった^^
エロオノールを怒鳴りつけるルイズって珍しいかも^^;
タバサが本作では相変わらず可愛いですね。
マフラーをぐるぐる巻きにしたり、『ぶい』のところとかw
次回はエルザとの再戦かな?楽しみにしております!
小ネタの人、毒の爪の人、乙でした
前スレの投下の少なさが嘘のようだ、これだから此処をチェックするのはやめられないぜ…
小ネタの人乙、ここで奴に会うとはw
ルイズも何も魔性一性格悪い鬼畜を召喚しなくとも、邪羅にでもしておけば良かったのに…
指輪物語からガンダルフを召喚
ガンダールヴのルーンでダブルガンダ誕生
グラムドリングあるから武器屋に行かない→デルフ涙目
勝手に出歩いて見つけてきそうだけど、気のせいだよな。
ボバ・フェットが召喚されるってのはどうかな?
ワルキューレをブラスター銃で破壊したり
背中についているジェット・パックからミサイルを飛ばし
ワルドを攻撃するボバ エピソードYでサルラックに飲み込まれた瞬間に
召喚された
>>473 アルビオン撤退戦で
「敵は七万・・だが問題はないの。今夜は儂とお前でダブルガンダーだからな・・・」ですね、わかります。
サイトも居るのか、そっちの方が面白いかもな
大海に小舟で漕ぎだした喧嘩屋斬佐こと相楽佐ノ助召喚とか面白そうだと思った
ルイズとは反りが合わずオマチさんと絡んでそうだけどさ
あとデルフも涙目か
剣心からなら包帯男なんか面白そうだ
なんか、ジョゼフの底知れない知性と闇を認め、配下に収まりはしないものの
同格の存在とみなして協力する、とか
>グラムドリングあるから武器屋に行かない→デルフ涙目
→その後、ミョズとかヴィンとかの手に渡るデルフ
→グラムドリングと打ち合うことになるデルフ
→打ち負けてへし折られるデルフ
という可哀相な情景が連想できてしまった
…いや、グラムドリングの方が剣としての格が上に思えてさ
>471
けど、リーヴィと親しくなった邪羅だとわりかしルイズに対しては親身になりそうにはないぜ。
言ってみれば初期ルイズの態度って浮城の上層部みたいな感じだし。
…かといってザハト状態で呼ぶとサイトと大して変わらんしなぁ。(七万相手に死んで邪羅降臨か?)
っと、親しくなった「時期の」が抜けてたか。
性格はある程度にてなくもないんだが…
日曜日はこの三作がこのスレの名物になってる気がするな
ウル5魔さん以外も毎週日曜更新だったっけ?
>>484 SeeD戦記が1ヶ月近く止まってるのは悲しいんだぜ
>>484 >>485 もう半年近く停滞してる身には耳が痛い・・・・・・・
タイトルは言えないけどちゃんと書く気満々なんですZE!
富樫か火浦くらいやる気あるです
だから見捨てないでぇ
>>487 誰も見捨ててなんかいないよ。ただ忘れられるだけなんだ……
>富樫か火浦くらいやる気あるです
まるで駄目じゃねーかよwww
そういや破壊者さんも最近見ないね
破壊者の人はしばらく書く時間が取れないって言ってなかったっけ
まあディケイド原作ももう片が付くし気長に待つさー
>>485 必ずというわけじゃないけど、この三者は投下が前後することが多い
>>480 神の頭脳として召喚された方治が
左手として召喚された志士雄を見てあっさりジョゼフを裏切るんですね
わかります
そして4人の使い魔(志士雄、方治、宇水、由美)で四人の担い手を倒して国取りモードに
下がる男の投下速度が著しく下がっちまった。
ド外道様はまだとうかないのかな
496 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 16:40:21 ID:P+RcOSWq
こんにちわ
アノンの法則です
予定が無いようなら投下させていただきます
497 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 16:42:38 ID:P+RcOSWq
日が暮れかけた門限ギリギリの時間になって、ルイズは学院に帰ってきた。
当然、ルイズの部屋では騒動が勃発していた。
「アノン、このバカ! あれだけ勝手なことするなって言ったのに、あっさりはぐれた上にご主人様を置いて先に帰るってどういうこと!? おまけにツェルプストーに剣まで買ってもらって!」
「別にいいじゃない。ダーリンへの私からのプレゼントよ」
烈火のごとく怒るルイズに、からかう様に言うキュルケ。
「ダーリンって何よ? ひとの使い魔にこんな危ないもの与えないでくれる!?」
「あら、人間の使い魔なら剣の一本もないと格好がつかないでしょ?」
「冗談じゃないわ。あんたはこいつがどんなに危険なヤツかわかってないのよ!」
「危険? 彼が? 確かにギーシュには勝ったらしいけど、危険は言い過ぎじゃない?」
キュルケの認識の甘さに、ルイズは苛立つ。
「とにかく! 私の使い魔に勝手なことしないで!」
妙に怒るルイズに、キュルケはにやりと笑った。
「ふぅん」
「何よ」
「嫉妬はみっともないわよ? ヴァリエール」
何か勘違いしたキュルケは、勝ち誇ったように言った。
「誰が嫉妬してるってのよ!」
ルイズは顔を赤くして怒鳴る。
「あ、でもいくらインテリジェンスソードとは言え、あんなボロ剣をプレゼントしたのは失敗だったかしら? 今度はもっと立派な剣を用意しなくちゃね」
「聞きなさいよ!」
ルイズとしては必死なのだが、どうにもいつものケンカの域を出ない。
とにかく、キュルケの勘違いはあとで正すとして、まずはアノンから剣を取り上げなければ。
「アノン、その剣をツェルプストーに返しなさい。でないとご飯抜きよ」
「あら、そんな必要ないわ。ダーリンだってその剣、気に入ってくれたわよね? …ってあら?」
さっきまで部屋の隅にある藁の寝床に座って、剣となにやら話していたアノンの姿が無い。
「少し前に、剣を持って出て行った」
ベッドの上で本を開いていたタバサが言った。
「へ?」
「あら」
ぽかんとするルイズ。
キュルケはつまらなそうに言った。
「あんたがケチなこと言うから、ダーリンは愛想尽かしちゃったのね」
「あのバカ!」
ルイズは部屋を飛び出した。
498 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 16:44:11 ID:P+RcOSWq
もう夕食の時間だ。
アノンはいつ終わるとも知れない、ルイズとキュルケの言い争いから逃れるべく、そしてまともな食事を得るべく、いつものように厨房へと向かっていた。
背中のインテリジェンスソードが、かちゃかちゃとつばを鳴らしてしゃべる。
「つまり、ルーンが光ったり、体が軽くなるのも相棒が『使い手』って証拠なんだよ」
「相棒?」
「おうよ。お前は『使い手』だからな。俺の相棒さ」
「それで、『使い手』って何なんだい? デルフ」
「あー、えーと。忘れた」
「キミ、いまいち役に立たないね」
「しょうがねえだろ。六千年も生きてんだ。物忘れくらいするって」
この剣が言うには、自分には召喚された際、契約によって何らかの能力が身についたらしい。
だが、どうにもはっきりしない。
肝心なところで、この剣は忘れた、と言うのだ。
この剣の話でわかったのは、この剣を持つと自分の身体能力が強化される、ということぐらい。
この分では、わざわざ手に入れることも無かったか。
ルイズの機嫌も悪くなるし、近いうちに処分しようかと考えながら、アノンは厨房の扉をくぐった。
いつもなら、すぐにマルトーをはじめとする、コックやメイドたちの歓迎があるのだが…。
なんだか、いつもと厨房の様子が違う。
皆仕事をしてはいるのだが、なんというか活気がない。
それどころか、怪我をしているのか、腕や頭に包帯を巻いている者もいた。
「なにかあったの?」
尋ねてみたが、皆俯いてばかりで、なにも答えない。
「一体どうしたって……」
さらに問い詰めようとすると、奥から顔にあざを作ったマルトーが現れた。
「おお、アノンか……いや、なんでもねえよ」
「なんでもないってコトはないだろう? それとも、ボクには話せないようなコトなのかい?」
俯き、しばらく黙った後、マルトーは口を開いた。
499 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 16:46:01 ID:P+RcOSWq
「シエスタが、モット伯って貴族に連れてかれちまったんだ」
「連れてかれたって…誘拐?」
「いや、シエスタを自分の屋敷に雇い入れるって…」
「なら、働く場所が変わっただけじゃないか」
マルトーは首を振った。
「モット伯ってのは王宮の勅使なんだが、その権力に任せて、平民の娘を強引に召し上げては手篭めにするって外道なんだ。そいつがシエスタを気に入って、無理矢理連れて行っちまった」
「え…?」
「もうシエスタは帰ってこねえ……」
「帰って来ない……?」
初めて会ったときの、腹を空かせた自分にシチューを振る舞ってくれてたときの、シエスタの笑顔が頭に浮かんだ。
ざわざわと、嫌な感覚が足元から這い上がる。
額に、汗が滲んだ。
「俺達も抵抗はしたんだが、魔法であしらわれてこのザマだ。いくら貴族だからってこんな理不尽が許されるのか、畜生!」
マルトーは叫ぶように言った。
「あんないい娘は他にいねえってのに、何でシエスタがこんな目に…」
肩を震わせて、顔を覆うマルトー。
「…そのモット伯って人の屋敷、ドコ?」
「え? ああ…確か学院の南に一時間くらい歩いたところに……」
この嫌な感覚。アノンにその理由はわからない。
だが、こみ上げてくる原因不明の焦燥感は、アノンの体を突き動かした。
「! アノン、お前まさか…!」
はっとしたマルトーが顔を上げたときには、もうそこにアノンの姿は無かった。
ただ、開け放された厨房のドアが、風に吹かれて小さな音を立てた。
500 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 16:46:59 ID:P+RcOSWq
以上です
ではまた
短っ!
思いついたので少しだけ投下してみます。反応が悪かったらやめます。
トリステイン魔法学院第一演習場。そこでは例年通りサモン・サーヴァントの儀式が行われ、つつがなく
終えていった。ただ一人を除いて。
その名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。トリステイン王国でも屈指の名門の生まれである。
しかし彼女は貴族たる条件のうち一番大切なものを欠いていた。―魔法が使えないということである。
ルイズは焦っていた。担当であるコルベールを拝み倒して時間の延長を叶えたのだ。ここで失敗すれば己だけでなく
生家である公爵家、ひいては祖であるトリステイン王家の名に泥を塗ることになる。失敗するわけにはいかない。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴える! 我が導きに、応えなさい!!」
突如、爆音が響いた。
マセ・PPKA4・ユキオは自分の目が信じられなかった。自分は…ラクザーンを間もなく起つはずではなかったか?あの鏡のようなものは何だったのだ?
つい先ほどまでいたラクザーンの風景とはまるで違っていた。そもそも司政庁には司政官である自分を除いて人間はいないはずだ。
面会者でもいれば別だが間もなく新星化するラクザーンにそんな悠長な真似をする人間は(ラン・PLC・タルヌスやイルーヌ・YC・ハイツを別とすれば)皆無といってよかった。
「人間だ!」「ゼロのルイズが人間を召喚したぞ!」「いや違う!他にも変な連中がいるぞ!」
その言葉にマセはあわてて辺りを見廻す。司政官としての心構えからすればあわてるという内心を直截吐露するような行為は厳に慎むべきなのだが
…あまりにも通常の思考を超えた出来事にその心構えも一瞬の間心の中から消えていたようだ。
確かに他にもいた。SQ2A、SQ2Bといった上級ロボット官僚やLQQ系ロボットもいる。とりあえず自分の安全は保障されていると考えてよさそうだ。
「あんた、名前は?」不意に目の前の桃色の髪をした娘が口を開いた。言葉が通じるということは恐らく連邦の圏内だろう。
「私の名前はマセ・PPKA4・ユキオ。第一三二五星系第三惑星ラクザーンの司政官だ」
眉村卓「消滅の光輪」より司政官マセ・PPKA4・ユキオとロボット官僚を召喚
アノンの人乙です。
モット伯…成仏しろよw
アノンの人様乙!
モット……墓に花くらいは備えてあげるからな…
>>482 いや、邪羅だけは死亡フラグ立たないと思ってw(彩糸は中身人間だから置いとく)
ルイズと怒鳴り合いの大喧嘩はしそうだけど、それだけで済ますだろうからさ
他の魔性だと蝶の羽をもぐように弄ばれて惨殺される末路しか想像できん
それでも千禍の玩具に比べたらマシだろうが
>>505 千禍でまだ良かったとも言える
二人の逃避行から『闇主』だけ召喚とかよりも
>>486 一応あれは日曜じゃなくて土曜の夜だったんだぜ。まぁ、このスレを夜見るか常駐でもしてない限り読むのは日曜だけど。
ガンダ コブラ
ミョズ 宝条
ヴィン C-3PO
憚れる 三蔵法師
ナチが使い魔
一週間に一本投下できるのはすごいと思うわ
しかも質を落とさずに
黄金期はその倍のペースで質を落とさない凄い人が溢れておったのじゃ
まぁ、ゼロ魔自体の旬が過ぎちまったからな
しかし投下間隔をもっと上げれば、さらにクオリティの高いものが出来上がるのではないか。
話をいきなり変えて申し訳ないが、本スレでの死にネタやバッドエンドはどこまでが許容範囲なんじゃろか?
>>513 すでに書いてあるのならとりあえず投下してみるといいかも知れない
本スレには重すぎるかな、と思うのなら避難所を活用するのも手かも知れない
ここの住人は鍛えられてるから、よっぽど酷くない限り耐えられるんじゃないかな
>>513 あんまり陰惨なものは個人的に遠慮したいけど、いいんじゃない
>>513 原作で死ぬ人ならそれほど変えない限りおk。おマチさんやワルド等の悪役は悪役として死なすパターンはある。
それ以外は状況によるとしか言えない。説得力が無かったりすれば当然叩かれるが、シエスタが死んだ作品もある。
バッドエンドは過去にバルバロイがあるが、あれは避難所だったなぁ。
>>513 死んだとかバッドエンド云々より中身が大切だと思ふ
ヒューさんは天に召されてしまったが俺は好きだぞゴーストステップ
JOJOの方だと短編だが主要キャラ全員死んでるのもあるな
プラネットウェイブスとチープトリック
どういう毛色の話か、どうやって死ぬか、とか納得できるもんなら別に死んでも問題無いよね
度を越えた殺し展開のやりすぎは流石にアレだが
522 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:19:58 ID:P+RcOSWq
今投下しても大丈夫ですか?
このキャラ嫌いだから殺すってのは原作者だけの特権
話の都合で殺すのは別に構わないな。あっさり死ぬのもよし、ねっとり殺すもよし
二次創作だからある程度の暴虐はいいだろ
昔、マテパのコルクマリーが胸のルーンと性癖に突き動かされながら
ルイズの周囲や虚無の使い手を殺して最後にルイズを殺すやつを考えた事があるが、
こいつが最後におばちゃんを斬り刻んだせいでなんかワケわかんなくなってさじ投げたな
526 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:28:35 ID:P+RcOSWq
では行きます
空には星が瞬き、双月が地上を照らす。
そんな美しい景色とは裏腹に、シエスタはモット伯の部屋のベッドに腰掛け、悲しみにくれていた。
田舎の家族のためにと、今まで真面目に働いてきた。
だが、平民の人生など、貴族の気分一つでどうとでもなってしまう。
(学院に、みんなのいる厨房に帰りたい…)
そう願っても、今夜から自分はあの男のおもちゃだ。
体を覆うのは、少ない布でできた扇情的な衣装。
湯浴みに着替えと、ぐずぐず時間を稼いでいたが、それももう終わり。
これから自分の身に訪れる災厄を思うと、体が震える。
ノックもなしに、部屋のドアが開いた。
「待たせてしまったかな、シエスタ」
この屋敷の主である中年の貴族、ジュール・ド・モット伯爵が姿を現した。
好色な笑みを浮かべるモット伯に、シエスタは恐怖すら覚える。
モット伯は興奮した様子で上着を脱ぐと、ベッドに上がり、シエスタの肩に手をかけた。
「ひっ」
ぞわりと悪寒が走り、鳥肌が立った。
涙がこぼれ、震えが止まらない。
「なに、そう怖がることはない」
そう言いながら、息を荒げたモット伯の手に力が入る。
――誰か、助けて。
叶わぬと知りながら、シエスタは激しい嫌悪と恐怖に、そう願わずにはいられなかった。
その時、部屋に風が吹き込み、ふわりとカーテンを持ち上げた。
窓は閉めていたはず、とモット伯が窓へ目をやると――。
そこには月光を背に、剣を担いだ男が一人、開け放された窓のサッシに乗っかって、こちらを見ていた。
「こんばんわ。伯爵様」
男、いや、少年は静かにそう言った。
「貴様! 何者だ!?」
モット伯の問いに答えずに、少年は部屋の中に降りると、シエスタに手を差し伸べた。
「さ、迎えに来たよ、シエスタ」
「あ、アノンさん……?」
突如現れた少年は、ミス・ヴァリエールの使い魔、アノンだった。
電王からイマジンズと良太郎を召喚、でシミュレーションしたことがあったが、
ギーシュ戦でリュウタロスが出て来て(素直に給仕の手伝いしそうな奴がコイツしかいなかった)ガンフォームに変身、
銃を乱射しまくり、ギーシュどころか周辺生徒の生きる芽が極端に少なくなってしまってこりゃダメだーとなったコトならある。
528 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:30:26 ID:P+RcOSWq
(私を助けに来てくれた? でも、なんで?)
決闘騒ぎがあってから、シエスタはアノンが恐ろしく、彼を避け続けていた。
最初に賄いを振る舞って以来、口も利いていない。
彼は他人を踏みにじる、悪魔なのだと信じ切っていた。
だがその悪魔は今、自分を連れ帰ろうと、助けようとしてくれている。
「貴様、この娘の知り合いか?」
苛立ちを声に滲ませ、モット伯が再度尋ねた。
はっとするシエスタ。
一瞬見えた希望だったが、相手は王宮の勅使。しかもメイジとしてはトライアングルクラスの腕を持つという。
平民が刃向えば、確実に殺されてしまう。
「アノンさん! に、逃げてください!」
「大丈夫だよ。さ、早く帰ろう」
アノンはモット伯など、まるで眼中にないように、シエスタに歩み寄る。
二人の間に割り込むように、モット伯が立ちはだかった。
「貴様、貴族の屋敷に無断で立ち入って、ただで済むと思っているのか?」
モット伯は、杖を取り出してアノンに向ける。
それに合わせて、アノンも背中のデルフリンガーを抜いた。
にやりと、モット伯が笑う。
平民が貴族の屋敷で、剣を抜いた。これはこの場で平民を処刑するのに、十分な理由だ。
どうやって屋敷の警備を抜けてきたか知らないが、ここで私が直々になぶり殺してやろう。
残忍な笑みを浮かべて、モット伯はルーンを唱えた。
近くにあった花瓶から水が飛び出し、空中で帯状になると、鞭の様にしなって、アノンに襲いかかる。
シエスタが悲鳴を上げた。
だが、水の鞭はアノンに触れる前に、飛沫となって消滅した。
アノンがデルフリンガーの一振りで、水の鞭を斬り払ったのだ。
「なん……だと……」
「なんだ。『波濤』のモット、なんて言うから期待してたのになぁ」
「いやー、おでれーた!」
アノンが手にしたデルフリンガーが、つばをカチャカチャと鳴らした。
「すげえな相棒。人間離れした身体能力を別にしても、こりゃ天才の域だぜ」
「嫌だなぁ、デルフ。ボクはそんなにスゴクもないし、天才でもないよ」
どこか照れたように、アノンが言った。
「それより、キミを握ってると本当に体が軽いよ。これがキミの言う『使い魔のルーン』の効果か」
そんな風に自分の剣と話しながら、アノンはゆったりとした足取りで、モット伯との距離を詰めていく。
「き、貴様いったい何者だ!」
モット伯は震える声で叫んだ。
貴族を、それもトライアングル・メイジの自分を目の前にして、全く恐れるそぶりが無い。
それどころか、剣一本であっさりと魔法を叩き落した。
この平民は、まるで得体が知れない。
モット伯は、貴族として生きてきて、初めて平民に恐怖していた。
別に給仕の手伝いじゃなくてもいいじゃん。
極端な話、ギーシュと戦わんでも話は書けるだろう。
530 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:31:17 ID:P+RcOSWq
「く、来るな!」
後ずさりながら、モット伯は杖を振る。
空気中の水分が集まり、宙に浮かぶ数本の鋭い氷柱出現した。
氷柱が、アノンに向けて打ち出される。
だが、それもアノンに命中する前に、全てデルフリンガーで打ち落され、粉々に砕け散った。
砕けた氷の欠片が、部屋に差し込んだ月明かりを反射して、星屑のように煌く。
その幻想的な光景の向こうに、モット伯は、悪魔の笑みを見た。
「ひィ! だ、誰か…!」
誇りもプライドも放り出し、モット伯は背を向けて目の前の平民から逃げ出した。
モット伯の体に、ドン、と衝撃が走る。
デルフリンガーが、モット伯の右肩を断ち割り、胴体の真ん中近くまで、その刃をめり込ませていた。
アノンは一瞬でモット伯に追いつき、その背中に向けて、躊躇なくデルフリンガーを振り下ろしたのだ。
切り裂かれたモット伯の体が、ビクビクと痙攣する。
剣が引き抜かれ、モット伯は床に倒れ込んだ。
アノンの足元に、みるみる内に赤い水溜りが広がっていく。
「ああ……」
シエスタは、その光景を見て気を失った。
「シエスタ!」
アノンは倒れたシエスタに駆け寄る。
「安心しな、相棒。気絶してるだけだ」
デルフリンガーの言う通り、シエスタは顔色は悪いが、気を失っているだけのようだ。
アノンは彼女を抱き上げてベッドに寝かせると、倒れたモット伯に向き直った。
血溜まりの中を歩き、しゃがみこんで顔を覗き込む。
「伯爵様ぁー」
アノンは無遠慮に、モット伯の顔を叩く。
「はーくーしゃーくーさーまー」
「ガッ、ゲボッ」
血を吐き、苦痛に喘ぐモット伯。
「あ、よかった。まだちゃんと生きてる」
「おい、相棒。どうすんだ? 死んでなくても、貴族をこんなにしちまったらタダじゃ済まねえぞ?」
血を滴らせたデルフリンガーが、つばを鳴らす。
「! アハハ。やだなぁ、デルフ。ボクは“守人の一族”だよ?」
「は? もり……?」
アノンはデルフリンガーの杞憂を笑うと、口を大きく開き――、
「いただきまーす」
モット伯を、自らの口の中に押し込んだ。
そのまま上を向き、ずるずるとモット伯の体がアノンの中に飲み込まれていく。
まるで大蛇のように、人間を頭から丸呑みにするアノンのシルエットが、双月に照らし出された。
モット伯を腹に収めると、アノンはぺロリン、とかわいらしく口元を舐め、満足気な笑みを浮かべた。
腹に手を当てて、新たに得た力を確認する。
「さてと…ふむふむ。さすが『波濤』。便利な魔法を持ってるじゃないか」
そう言って、アノンは床に転がっていたモット伯の杖を拾うと、魔法で水を操って血に濡れた床の洗浄を始めた。
「……こいつはおでれーた」
アノンの人間の踊り食いを見ていたデルフリンガーが、そう漏らした。
「相棒は他人を取り込んで、その力を使うことができるのか? 人間じゃねえとは思ってたが…本物の化けモンじゃねえか」
「ああ、キミにはそのうち話すよ。なんたって『相棒』だからね」
含みを持たせたアノンの言葉。
不意に、部屋の扉が強く叩かれた。
「モット伯様! 今の物音は一体……!」
戦闘の音を聞きつけて、屋敷の者がやってきたらしい。
扉が何度も叩かれる。
「……どーすんだ相棒。このままじゃ大騒ぎになるぜ」
「平気だよ」
アノンはそう言って、自分の顔に手を当てた。
531 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:33:32 ID:P+RcOSWq
屋敷の警備を任せられているメイジの男は何度も扉を叩く。
だが、返事は無い。
仲間を呼んで、力ずくで入るべきか、男が決めかねていると、扉が少し開き、眉をしかめたモット伯が顔を覗かせた。
「なんだ、騒々しい」
「い、いえ、物音がしたもので…」
とりあえず、自分の雇い主は無事なようだ。
だが、モット伯のえらく不機嫌そうな様子に、男の声は思わず小さくなる。
「問題ない。平民の娘が騒いだだけだ」
「そ、そうですか。では、失礼します」
慌てて一礼して、背を向けた。
「待て」
モット伯は低い声で男を呼び止める。
「なにか?」
「あの娘、明日の朝一番で学院へ送り返せ」
「は?」
「今日雇い入れたシエスタというあの娘を、学院に送り返せと言ったのだ」
わけがわからず、男は主に言葉を返した。
「し、しかし手続きは正式に終わっておりますし…」
「あの様子なら、学院側も問題なく受け入れるだろう。もし文句が出るようなら、適当に金を握らせて黙らせろ」
「は、はあ…」
「いいな、明日の朝一番だぞ」
それだけ言うと、モット伯は勢いよく扉を閉めてしまった。
男はぽかんと、閉じられた部屋の扉を見つめた。
「これでよしっと」
扉の内側で、そう呟いたモット伯の顔が、粘土細工の様にぐにゃりと歪み、少年の顔に変わった。
「……おでれーた。相棒は、ホントに人間じゃねーんだな」
壁に立てかけられたデルフリンガーが漏らす。
「さて、続き続き」
六千年生きてきた中で、恐らく一番驚いているだろうインテリジェンスソードをよそに、アノンは杖を手に床の洗浄を再開した。
532 :
アノンの法則:2009/08/24(月) 23:34:47 ID:P+RcOSWq
以上です
ではまた
乙です。
ギーシュのときにやれなかったアノンの身体乗っ取りがあってよかったです。
アノンの方乙です。
皆様ご意見ありがとうございました。投下の参考にさせていただきました。
書いたのは、クロス元にある描写とはいえゼロ魔のキャラがちょっとグロイ死に方
(四肢切断とか、ハンタの脳味噌くちゅくちゅ程ではありません)をするSSです。
もともとクロス元が召喚対象によって人が死にまくるのが特徴の話ですので、
ある意味
>>523さんの言うとおり、話の(クロス元の)都合かもしれません。
とりあえず前後編(いま書いている後編が長くなったら前中後編)に分ける予定の
小ネタSSですので、とりあえず書きあがっている前編を投下したいと思います。
あとタバサの性格が原作よりもややウェットで、キュルケへの友情がより強くなっていますので、
そんなタバサが見たくない方や、
>>515さんのようにゼロ魔のキャラたちが悲惨な目にあうSSが
NGな方は『虚無の紳士録』をNGワード設定にして、どうかスルーしてください。
元ネタは衣谷遊の『リヴァイアサン』です。 投下するのは00:10ごろにします。
避難所に投下した方が無難じゃね?
では、投下します。
※※※※※※※※※
『 誰 だ っ て 殺 し た い 奴 は い る 』
私の眼の前で憎い仇であるあの男が斃れている。全身を氷の矢で貫かれ、流れ出た血が石造りの床に溜まり血の海となっていた。
あの男だけではない。その娘、即ち私の従姉である少女も斃れている。あの男の愛人も、あの男に与した家臣や貴族も斃れている。
みんな私が殺したのだ。
殺したのはあの男の血を引く者、与した者だけではない。 私の味方だと称する者たちも、この復讐を妨げんとした者は殺した。
みんなみんな殺して殺して、殺しつくした。ただこの復讐を成し遂げるために。後のことなど考えず、邪魔する者は皆殺しにした。
ああ、そうだ。あの人も殺したのだった。 母も、私の愛しい母も殺してしまった。
『 誰 だ っ て 殺 し た い 奴 は い る 』
そう、そうだった。私はこの手で母も殺したのだ。あの心が壊れてしまった母を。
この復讐を成し遂げる過程あるいはその後で、人質である母が敵方に利用されるか始末されるかは明白だった。
あの母を一人取り残してはいけない。そしてなにより、この絶対的な復讐の足枷にしてはいけない。だから殺した。
敵の手に掛けられるぐらいなら自分で殺す。人形を私と思いこんでいた母を殺したとき、私は魔法を用いなかった。
文字通り自分の手でその首を絞めあげ、殺した。 母の頸骨が砕け折れた生々しい感触がまだ手に残っている。
生命(いのち)がこの手の中で消えていった、おぞましい感触が残っている。
復讐が完遂された今になって疑問が生じてきた。あの狂母は人形を娘の私だと思いこみ、ひたすら大事にしていた。
たとえ狂っていたとしても、そこには私という存在、自分の子供に対する母の深い愛情を感じ取ることができる。
だが、母が愛していた私は何だったのだろうか。
王家の血を引き、優秀なメイジである父の血を継ぐ者としての私だったのか。
それとも己の血と肉と、魂と愛を分け与えて生まれた娘である私だったのか。
●
あー大塚のか。そりゃグロにはなるわな
今となっては永久に解らないし、解りたいとも思わない。それにそんなことなど、もはやどうでもいいことだ。
それよりケジメをつけなくてはならない。この復讐劇に相応しい、最後の締め括りを執り行わなくてはならない。
『 誰 だ っ て 殺 し た い 奴 は い る 』
私は自身の長大な杖の先端を、己の華奢な胸へと突き立てる。
薄皮一枚隔てたその向こうには肉と骨、そして憎悪に染まったドス黒い血と、それを汲み上げる心臓が詰まっている。
本来は人体を貫くほど鋭くない杖先を、私は力強く突き入れる。皮が破れ、血が流れた。肉が引き裂け、骨が砕けた。
そしてついに心臓へと達する。ほんの少し弾力ある抵抗を感じた後、私は躊躇することなく杖先をそれに突き込んだ。
血が、噴きあがる。
私はその場に多くある屍たちと同様、床へとその身を投げ出し倒れ込む。そのせいでより深く杖が突き刺さった。
いまだしぶとく鼓動し続ける心臓に合わせて、胸の傷穴と杖の隙間から赤黒い血が間欠泉のように噴き出す。
胸からだけではない。どうやら杖は気管や食道も傷つけたらしく、喉奥からあふれ出てくる血流に私は溺れた。
私の使い魔が何か叫んでいる。ああ、うるさい。 ここまで復讐に付き合ってくれたことは有り難いが、少々姦しい。
死ぬときは静かな方がいい。安らかに黄泉の世界へと逝きたいものだ。身体を襲う痛みで“安らか”とは程遠いが。
だがその痛みと苦しみも己の血が大量に、急速に失われてからは消えた。それとともに私の生命もまた消えてゆく。
消えてゆく、何もかも。 音も光も、何もかもが消えていく。 冷たい、暗黒の中に消えていってしまう。
「誰だって、殺したい奴はいるわ」
暗闇の底へと意識が沈んでいく中、最後に思い浮かべたのは父でも母でも、死んでしまった友人でもなく、
氷に覆われ凍てついた私の心を暴いたその言葉と、それを言い放ったあの『ゼロのルイズ』の顔だった。
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トリステイン魔法学院で春に行われる使い魔の召喚。 それに成功することが生徒たちの進級条件である。
始祖の代より続くその神聖な儀式でこの私、タバサことシャルロット・エレーヌ・オルレアンは風韻竜の幼生を召喚した。
絶滅したされる高い魔力と知性を持つそれを召喚できたのは、私のメイジとしてのレベルの高さを表しているのだろう。
自惚れているようだが、己の力量が確かなものであると認識できる目安にはなる………そして、復讐のための力にも。
私は無用な騒ぎが起こるのを防ぐため、周りにはその使い魔を韻竜ではなく、ただの風竜であるとした。
儀式は粛々と執り行われていき、同級生も次々と自らの属性とレベルに見合った使い魔を召喚していく。
私が唯一、わずかであるものの心を許せる友人であり、名目上自分と同じ外国からの留学生であるゲルマニア貴族、
ツェルプストー家のキュルケは火竜山脈のサラマンダーを召喚した。 火のトライアングルである彼女らしい使い魔だ。
そして最後にトリステインの名門貴族、ヴァリエール家のルイズが召喚の儀式に当たった。 その二つ名は『ゼロ』。
優れたメイジを多く輩出している、王家にも連なる家の出身であるにも関わらず、彼女は魔法を一切使えなかった。
いや、使えないわけではない。ただ、ルーンだろうがコモンだろうが呪文を唱えると爆発が生じ、失敗してしまうのだ。
故に『ゼロのルイズ』。メイジとしては不名誉極まりない呼称だ。家柄の良さに対する嫉妬もあり、彼女そう呼んで揶揄し、
侮り馬鹿にする生徒は少なくない。 ヴァリエールのルイズは入学してから一年間、ずっとその嘲りを一身に浴びてきた。
私は彼女を哀れに思うが、救いの手を差し伸べるほど親しくもないし、むしろ私がそんな事をするのは傲慢といえる。
ヴァリエール家とは代々不仲のツェルプストー家であるキュルケも、ルイズをよく『ゼロ』と呼んでからかうことが多い。
だが、それは心底彼女を自分の下位に置いているのではなく、一種の親しみを込めているのだと私には感じ取れた。
もっとも、それがヴァリエールに伝わっているとは、とても考えられないが。
人は誰しも自身が思っている以上に他人を傷つけている。何気ない言葉でも、心を深く切りつけ抉ることは多い。
そして同時に人は自身が認識しているよりもずっと他人に恨まれ、憎悪の念を向けられていることに気付かない。
私はヴァリエールではないので彼女の哀しみも憎しみも解らない。だが蓄積されたそれは、いつか爆発するものだ。
ほんのちょっと、“何か”に後押しされるだけで。
…………ともかく、ヴァリエールも他の生徒に倣い召喚の儀式を行った。 が、予想通りに失敗続きであった。
「五つの力を司るペンタゴンッ、我の運命に従いし“使い魔”を召還せよ!」
何度目になるか分らない、サモン・サーヴァントの呪文を叫ぶように唱えるヴァリエール。しかし引き起こされるのは爆発。
衝撃で立ち上る土煙。それに咳きこみ、悪態を吐く同級生たち。今日幾度も繰り返された光景が、再び目の前に広がる。
「やっぱり無理なんだよ、ルイズには!」
「とっととヤメちまえっ!」
「もう一回、1年生からやり直すのがお似合いよ!」
浴びせかけられる侮蔑の言葉の数々。それに対し、ヴァリエールは発言者を睨みつけて叫んだ。
「うるさい うるさい! 召喚が終わったアンタたちは黙ってなさいよ!!」
そう言って彼女は再び杖を構え呪文を唱えようとするが、それをコルベール教諭が制す。
「ミス・ヴァリエール。今日はもうそれくらいにして、明日また取り組んだらいかがです?」
ミスタ・コルベールは優しく諭すが、ヴァリエールは「まだやめません!」と首を横に振るう。
その頑固な態度に対して、また悪辣な罵詈雑言が上がる。
「おい『ゼロのルイズ』ッ! いっそのこと、そこらにいる野良犬でも捕まえたらどうだ!」
「『ゼロ』には使い魔があろうがなかろうが同じでしょ!」
「いい加減にしろよ『ゼロ』っ! お前に付き合わされるコッチの身にもなってみろ!」
「そうだそうだ、『ゼロのルイズ』め!」
その瞬間、ヴァリエールの表情が変わった。 さあっと青ざめた面相になる。しかし、あの顔は恐怖によるものではない。
あれは激しい憤怒の貌だ。人は真に怒り狂ったとき、炎のように赤く熱くはならない。氷のように透明で冷たくなるものだ。
だが、彼女は噴き出そうになる“それ”を抑え込み、極めて平静な顔でコルベール教諭に答えた。
「コルベール先生、もう一度だけやらせてください…………」
ヴァリエールが自制したのは悲しみによる涙でもなければ、怒りによる罵倒でもない。
彼女は人前では決して泣き顔を見せない。そして自身に投げかけられるような、酷い嘲りの言葉も他人に発したりしない。
それは唯一彼女に残された、『貴族』の誇りと矜持かもしれない。しかし発散されることのない負の念は澱のように溜まる。
『ゼロのルイズ』が抱え込んできて、たった今吐き出さんとして抑えたのはきっと単なる怒りに留まらない、もっとドス黒い…………
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ。神聖で美しく、そして強力な使い魔よ………」
ヴァリエールがサモン・サーヴァントの呪文を唱え始めるが、それは本来のものとは違っていた。
召喚はコモン・マジックとはいえ、あれで効くのか疑問だ。周りの同級生も首をかしげている。
「なんだ? あの呪文」
「ヘンなの!」
「でも、まるでお祈りみたい……」
祈り? そうだ。確かにすがりつくような、切なる祈願の言葉。たとえデタラメであっても、彼女の必死さが伝わってくる言霊だ。
しぼり出すような声での、思いと願いを込めた呪文はなおも続く。それを詠唱する真摯な姿を嗤うことなど、誰にもできない。
――――――――ああ、このときヴァリエールの想いに応えたのが、その通りに“神聖で美しい”使い魔であったならば。
「私は心より求め、訴えるわ………我が導きに応えなさい!」
詠唱が終わったのか杖を振るうヴァリエール。またも起きる爆発と土煙。だがそれが晴れると、そこに彼女の使い魔はいた。
「本……?」
思案
そう、それは本だった。 古めかしいダークブラウンの革張り表紙で、施された装飾は遠目にも美しく映える、重厚な書物。
だが、ただの本である。幻獣や亜人ではない。生き物ですらない。
使い魔の定義は様々だろうが、少なくとも『自らの意思を持ち、主人の意のままに従い動くもの』というのが一般だと思う。
なるほど確かに主人に服従し、逆らいはしないだろう。ただの器物なのだから。自分から動きはしないし、自己意識も無い。
疑似意思を持つガーゴイルならば該当するかもしれないが、あれは人形ではない。『動物』の形を模してすらいないのだ。
あるいは、あの本はインテリジェンス系アイテムなのかもしれない。インテリジェンス・ブックなど聞いたことがないけれど。
いずれにせよ、何らかの魔法がかけられたマジックアイテムの可能性はある。
ヴァリエールは本を拾い上げ、開いてみている。 だがページを捲るにつれ、その顔は怪訝そうな表情となっていった。
ミスタ・コルベールもそばに行き、彼女と一緒になって本を覗き込む。すると彼は「これは……!」と、驚愕の声をあげた。
「ミス・ヴァリエール、これは凄いですよ! 記されている言語は判読できませんが、見てくださいその絵を!」
「はあ……」
「こんな緻密に人物を写実した絵は見たことがありません。素晴らしい技術だ! いったいどうやって……」
「あの、コルベール先生。これは何の本なのでしょうか。使い魔として役に立つものなのですか……?」
「ム……そうですね。何が記されている書物なのかは私にも解りませんが、とりあえずディテクト・マジックをしてみましょう」
ミスタ・コルベールは本に対し『探知』を行い、それに魔法がかかっているか調べてみる。
「ううん、ミス・ヴァリエール。少なくともこれに“系統魔法は”かけられていませんね」
「え……?」
「ですが、もしかしたら先住魔法が――――」
別の可能性もあげるミスタ・コルベール。しかし、もはやヴァリエールにその言葉は伝わっていなかった。
彼女は自分が召喚したそれが何の魔力もこもっていない、単なる古ぼけた書物だと知って目に見える程に落胆している。
ヴァリエールが召喚に成功したこと、そして現れたのが『本』であったことに驚き、飲まれていた同級生たちは我に返った。
そして何の役にも立たない使い魔を召喚したヴァリエールをいつも通りに煽り始める。それが『当然であること』のように。
「ただの汚らしい古本を召喚するなんて、『ゼロのルイズ』らしいな!」
「みすぼらしいソレ、『ゼロ』のあんたにはぴったりよ」
「おい! ひょっとしたら『ゼロ』の奴、あそこに初めからあの本を埋めといたんじゃないか?」
「そりゃ、ありえるな! なんたってアイツは『ゼロのルイズ』なんだから――――」
『ゼロ』、『ゼロ』、『ゼロ』、『ゼロ』! 『ゼロのルイズ』! ヴァリエールを貶める、言葉の刃が容赦なく彼女を切りつける。
彼らは自身の口舌をもって振るうそれが、如何にヴァリエールの精神を傷つけるか解っているのだろうか。
きっと解ってはいても、感じることができないのだろう。彼女の苦しみを。 だから平気であんなことを言える。
そして同じように彼女の怒りも感じ取れないのだ。自分たちがどれだけ恨まれているかを解っていないのだ。
「お黙りなさい、みなさん! さあ、ミス・ヴァリエール。この使い魔とはやく契約を結ぶのです」
ミスタ・コルベールも流石にまずいと思ったのだろう。少々声を荒げて注意すると、ヴァリエールに使い魔の契約を促す。
心を酷く打ちすえられた彼女は蔑みに反論することも召喚のやり直しを要求することもなく、ただ弱々しく頷いて従った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ヴァリエールの接吻を受けて、その本は正式に彼女の使い魔となった。
題名の記されていない背表紙にルーンが刻まれる。主人の想いに応えぬ本は、何も答えないかと思われたが…………
ギッ、ギギィ……
巨大な門のように軋みをあげ、本が独りでに開く。使い魔はすでに主人の手を放れ、何らかの力で空中に浮かんでいた。
ごうごう、と暗い洞窟の奥より吹く風のような、断末魔の叫びか哀惜の慟哭のような………あるいは亡者の呻き声のような、
聞けば誰もが恐れを抱き、不安に駆られる奇妙な怪音と共に、ページの隙間から 『白い靄』が濁流のごとく溢れ出てくる。
白い靄はヴァリエールの頭を包み込んだかと思うと、急速に消失していったかのようにみえたが、それは間違いであった。
消えたのではない。入っていったのだ、ヴァリエールに。彼女の目、鼻、口、耳からその内部へと。彼女の深いところへと。
私はその光景に総毛立つ。 ただ言葉だけでこれを説明すれば、ある種滑稽にも感じられるかもしれない。
だがそう思うにはあまりにもおぞましい光景で、私はそのとき感じた怖気をいつまでも忘れられなかった。
「…………!! ヴァリエール! ミス・ヴァリエール! 大丈夫ですか!?」
たったいま起きたことに再び茫然自失となっていた周囲の中、いち早く我を取り戻したのはミスタ・コルベールだった。
ヴァリエールに呼びかけるが、白い靄のカタチをした“何か”に入り込まれた彼女は虚ろな顔のまま、何の反応もしない。
子音
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!! 眼を覚ましなさい!!!」
肩を掴まれ揺さぶられ、絶叫に近いミスタ・コルベールの大音声で名前を呼ばれることにより、ヴァリエールはやっと
正気に戻ったようだったが、その顔は何の感情も見いだすことができない。まるでガーゴイルのような無表情である。
「……大丈夫です、ミスタ・コルベール」
静かに、だがはっきりとした声で答えるヴァリエール。言葉は礼儀正しいが、信じられないほどに冷たく感じる声だ。
食い入るように己の使い魔を見ており、視線はただひたすらそれのみに注がれ、傍らの教師には一切向けられない。
「本当に大丈夫ですか? 身体は何ともありませんか」
「ええ、何も問題ありません」
「そうですか? ………ルーンも無事刻まれたようですね。これでこの本は確かにあなたの使い魔となりました」
「はい」
「………それと、何か身体に少しでも異常を感じたら、私か保健室に相談しなさい」
“アレ”で、何ともない? “アレ”を目の当たりにしながら、この問答だけで済ませる?
私はミスタ・コルベールの事勿れ主義に呆れそうになったが、考えてみれば今この場で出来る対応はそれぐらいだろう。
すべての召喚の儀式が終わったことで、彼は生徒たちに授業の終わりを告げる。同級生たちはみんな寮へと向かった。
使い魔が私室に入りそうな者はそれらを伴い、無理な者は学院のどこを住処にするべきか使い魔へと話しかけていた。
私の場合、部屋はもちろん備付けの小屋にも入りそうにない。今夜はとりあえずヴェストリの広場あたりで寝てもらおう。
キュルケのサラマンダーは虎ほどもあるが、部屋には入れるので一緒に寝泊まりするのだろうか。
賑やかな友人がどうするのか気になって、その姿を探す。すると彼女はヴァリエールの方へと向かっていくところだった。
思わず私は声をあげそうになる。あんなことがあった後に平然と近づこうとするなど、キュルケの神経を疑った。
散々ヴァリエールを侮罵していた連中もあの異様な光景を見て不気味に思い、何も言わずに去って行ったというのに。
キュルケはヴァリエールの目の前に立ち、彼女とその使い魔をしげしげと眺めた。そしておもむろに口を開き話しかける。
「ちゃんと召喚できて良かったじゃない、ルイズ」
「そうね」
「その使い魔、何なのかしら? ひょっとして古代のルーンで書かれた呪文集とか、魔道書だったりして」
「そうかもね」
どうやらキュルケなりに祝辞を述べ、かつヴァリエールの様子を窺おうと思ったようだ。
しかし彼女はすぐそばに仇敵のツェルプストーが立っているのにも関わらず、いまだに己の使い魔をじっと見つめていた。
自分がまるで眼中にないその態度と、あまりにそっけない返事にキュルケは流石にムッとしたようで、軽口を叩きはじめる。
「ま、『ゼロ』のあんたにしちゃあ頑張ったじゃない? でも私の使い魔に比べたらねえ………」
今日初めてキュルケがヴァリエールを『ゼロ』と呼んだ。それに対してやっと使い魔の表紙から眼を放す『ゼロのルイズ』。
だが、自分を卑しめた家がらみの仇敵とその使い魔を一瞥するだけで、相変わらず無表情のまますぐに視線を戻した。
「…………まあ、ただの古本でも使い魔を召喚できたんだから、あんたはもう『ゼロ』じゃないわね」
ひとしきり自分の使い魔を自慢した後、しっかりフォローをいれるキュルケ。彼女は配慮というものを忘れない。
思えば彼女はヴァリエールが先ほど同級生に誹謗中傷されていたとき、それらに混じって侮辱しはしなかった。
その行いから考えるに、やはり心の底では周りが思っているほどヴァリエールを悪しくは思っていないのだろう。
キュルケの言動はいつだって相手の心を深く抉り、酷く傷つけるものではない。
もっともそれは、いつも彼女の近くにいる親友の私だからこそ理解できるものだということを考慮すべきだが。
「それじゃあねルイズ」と、別れを告げその場から離れるキュルケ。すると今度は私の方に来て讃辞を述べる。
私が他の同級生と比較して、あきらかに一歩抜きんでた使い魔を召喚したと褒めてくれた。正直いって、嬉しい。
どんなに心が凍てついていようが親友は持つべきだ。その何気ない言葉は私の心に沁みわたり、暖めてくれる。
彼女がいなければ私はこの学園でいつまでも独りだったろう。縁者も知人もいない、故郷から遠く離れたここで。
ひょっとしたら、ヴァリエールの立場になっていたのは私かもしれないのだ。魔法の才能が有る無しは関係ない。
自分から他人へと進んで関わろうとしない私に、好き好んで親しくなろうという人間はいないだろう。
心はもう氷に覆われたつもりだが、それでも同年代の者がみな希望を持って集うこの学園は、あまりにも眩しい。
その雰囲気に押し潰されていたかもしれない私を助けてくれたのはキュルケだ。それだけは確かだと言える。
「じゃ、そろそろいきましょう、タバサ」
キュルケは自分の使い魔を連れて寮へと向かっていく。私も後を追おうとしたところ、やっと“それ”に気付いた。
何年もの『あの生活』で培われた感覚により察知したのは視線と気配。それも強烈な敵意を孕んだ毒々しいもの。
私はすぐさまその方向へと顔を向け、臨戦態勢になる。何者か。今までに恨みを買ったものか、ガリアの刺客か。
振り向いたそこにいたのは敵などではなく、一人でぽつんと広場に残っていたヴァリエールだった。
「ひっ」
それをみた瞬間、私は零れる悲鳴を抑えることができなかった。
ヴァリエールの顔が“歪んで”いる。
それが錯覚であると、あまりにも激しく強い感情を表しているためそうなったのだと気付いても、その衝撃は消えなかった。
ヴァリエールは目が縦に付いているかのように吊りあがり、砕けんばかりに食い縛った歯の隙間から血泡を吹いている。
額は血管が怒張して浮かび、頬は引きつっている。 そしてその眼差し。そこには凄まじい憎悪と怨恨が込められていた。
まるで骨相そのものが歪んでしまったかのような変“貌”。 人はこれほどまでに人を憎み、恨むことができるのか。
だが、その激しい憎しみを込めた視線は私に向いているのではなかった。怨念のすべてはキュルケへと放射されていた。
それがあまりにドス黒く強烈なため、私の感覚に引っかかったのだ。キュルケ自身はそれを感じることなく前を歩いている。
悲鳴で私の存在にヴァリエールが気付いた。
瞬時にその顔から負の念が払拭されるが、そこに浮かんだのは先ほどまでの無表情ではなく、笑顔。
見る者すべての心臓を鷲掴みにする『毒笑』というのがぴったりの、凶悪で邪悪な笑みがそこにあった。
そんな笑顔を向けられ凍り付いている私を尻目に、ヴァリエールは悠然と寮へと向かう。
今までの彼女からは考えられない堂々とした足取りと自信に満ちた態度で。初めて己の魔法が成功した証を手に持って。
成功の証。 あの使い魔。 あの本 ―――――――― あれは何なのだ? 契約のときに起きた、あの怪異は何なのだ?
まるで巨大な門のように軋みをあげ、独りでに開いたあの本。
そこから遠く響いてきた、亡者の呻き声のようなあの音。
そして溢れ出てきた、あの幽かな“もの”………
まさしくそれは 『地獄の門』 が開いたのだということに、私は気付けなかった。悔やんでも悔やみきれない……
もしそのとき気付いていれば。あの異常をもっと気にかけていれば。ヴァリエールの変化に気を付けていれば。
あんなにたくさんの死がまき散らされることも無かったのに。 かけがえのない親友を失うことも無かったのに。
『 誰 だ っ て 殺 し た い 奴 は い る 』
キュルケが殺されたのは、その晩だった。
支援
今投下しても大丈夫でしょうか?
ダメダヨ♪
ダメカヨw
予約ないならいちいちお伺い立てんで、投下しますで投下しちまえ
ありがとうございます。では投下します。
「あんた誰?」
「……エ?」
目の前で顔を覗き込んでいる女の子が言った。
黒いマント、白いブラウス、桃色のブロンドの髪。
どちらかというと、好みのタイプである。
「え…えーと……。え…? あれ……?」
周りを囲んだ少年少女達の姿を見て、
三郎はやっと、自分が置かれている状況を理解し始めていた。
(なんだこれ…? 夢……?)
自分の頬っぺたを抓ってみる。痛かったので夢ではないようだ。
「どこの平民?」
「え? えーと……」
突然質問をされ、思わずたじろぐ。
寧ろ、ここはどこで、何が起こっているのか聞きたいのは三郎の方である。
「あと、そっちのブラシみたいな頭した奴は何? そいつも平民なの?」
(一体どういうことなんだこれは…? いやいや、それ以前にここは一体…?)
考えれば考えるほど、自分の身に何が起こったのか理解できなくなっていく。
(あれ……? そういえば今、目の前にいる女の子が不吉な事を言ったような……いや、ハハ…まさかね……)
嫌な予感がし、チラリと隣を見る。
隣には、一升瓶を抱えて眠っている河井の姿があった。
鼻血を出して頭を抱える三郎。
(な、なぜこの最悪な男が俺の隣で眠って……?)
事態はますます悪化。切実に夢であってほしいと思う三郎。
(俺は確かに学校にいたはず……。 第一、俺の周りを囲んでいるこの人たちは何者なんだ?)
様々な疑問が三郎の脳みそを駆け巡り、混乱していく。
しかし、それも無理もない。三郎は突如、現代から異世界へと飛ばされてしまったのだ。
―ここで話は、現代に戻る―
ここは千葉にある有名な不良校、徳丸学園である。
不良校だけあって、女は一人もいない、男臭い学園だ。
その学園の総長である大河内三郎は、学校に忘れ物を取りに来ていた。
「はぁ…家についてから思い出すなんて、本当にうっかりしていたなぁ……」
大河内三郎――ごく普通のちょっと内気な高校生。
そんな彼が、なぜこの学園の総長になっているかは追々説明しよう。
三郎が自分のクラスに入ると、副総長である"知"の河井こと、河井星矢が酒に溺れていた。
「しゃ…借金がまた増えた……。 い、一体いくらになっとるんじゃ……?
知るかい、しんなもん。シカトじゃシカト。ウフ…ウフフフフ……」
「……」
三郎は、河井をゴミでも見るような目で見る。
(この男、学校に何しに来てるんだ……?)
しかし絡まれるのも嫌なので、とりあえず気にしないでおいた。
「あ、総長〜〜! 金貸してくださいよぉー。一千万でいいんです」
三郎の存在に気づいた河井が、酒臭い息を吐きながら絡んできた。
「あのね河井君… どこの世界に一千万も持っている高校生が……」
「じゃあ五百万で……ねぇ〜総長ったらぁ〜〜」
「河井君…人の話を聞いてくれないかな……」
半ば強引に絡んでくる河井を無視し、
三郎は忘れ物をカバンに入れて廊下に出た。
「じゃあ千円……もう酒を買う金が……」
「河井君…いい加減に離れてくれないかな……」
しがみついて離れようとしない河井をずるずると
引き摺りながら、三郎は下駄箱へと向かう。
1階へ繋がる階段へさしかかった所で事態は起こった。
河井と三郎の目の前に、鏡のようなものが現れたのである。
「え…? か、鏡……? どうしてこんな所に……」
「え、ひがみ? やだなぁ、誰も総長のことなんて僻んでませんよぉ〜」
ふらふらと千鳥足で鏡を覗き込む河井。
その鏡は、奇妙な色をしており、明らかにそこら辺にあるような鏡とは違っていた。
よく見るとキラキラと宝石のように輝いている。
(ほ…ほほう、これは珍しい鏡じゃのう…。売ればいくらかの金になりそうじゃ)
急に酔いが冷める河井。金のことになると、脳みそがフル回転する。
この亡者にはもはや、不思議な鏡は金のなる木にしか見えていない。
もっと近くでよく見ようと、河井は何の警戒もせず鏡に近づく。
……突然だがここで一つ説明しておこう。三郎は超高校級の運の悪さである。
必然の如く河井が足を滑らせ、鏡にぶつかりそうになる。
「……え?」
鏡にぶつかりそうになった河井は、三郎の腕を掴む。
「ちょ、ちょっと河井君! 手を、手を離して!」
「アホー!このままじゃ鏡に激突するじゃろうが!ワシを助けんかいサブー!!」
思わず本音が出る河井。
ここで"金のなる木"に激突したら、自分が大怪我をする。
いや、それはいい。
しかし、目の前にある"金のなる木"を破壊したら、せっかくの金がパーになってしまう。
それだけは許せなかった。
しかし、河井は鏡に激突することはなかった。
なぜなら、目の前に現れたものは鏡ではなく、別の世界へと繋がる扉であったからだ。
「エー!?」
そのまま勢いよく、河井と三郎は、仲良く鏡の中に吸い込まれてしまった。
「ギャアアアアア!」
こうして河井と三郎は、徳丸学園から姿を消したのだった。
―そして現在―
「さすがはゼロのルイズ! 平民を一気に二人も呼び出すなんてスゲーぜ!」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
「間違って平民を二人も呼び出すことができるのはルイズだけ!」
周りのギャラリーがどっと爆笑する。
呼び出された本人である三郎は未だに何が何やらわかってない。
河井にいたっては、寝言で裏金がどうとか言っている始末である。
「ミスタ・コルベール!」
ルイズと呼ばれた女の子が怒鳴る。
すると、人垣の中から、変な中年男性が現れた。真っ黒なローブに大きな杖を持っている。
現代にいたら絶対に近づきたくない格好をしていた。
(もしかして何かのコスプレ会場……?)
そっち方面に趣味を持つ三郎は、何かのコスプレ会場かと思ったが、
それにしては雰囲気がおかしい。第一、自分は学校にいたのだ。
目の前にいた女の子は、未だに中年男性と言い争いをしている。
「いい加減、あきらめて儀式を続けなさい」
「えー、あの二人と……?」
ルイズは、あからさまに嫌な顔をしながら三郎と河井がいる方を指差す。
よくわからないが、三郎は少し傷ついたような気がした。
「そうだ。二人ともだ」
「ええー!? あのクリクリ頭の方はともかく、ブラシ男の方は絶対嫌です!」
「だめだ、早く契約したまえ。時間が押してるんだ」
「あの平民、歯が4つしか無いんですよ!? しかも息臭いし!」
ルイズが叫ぶと、再び周りのギャラリーがどっと笑う。
腕をブンブンふって懇願するルイズだが、説得に失敗したらしく、
肩を落として三郎たちの方へ戻ってきた。
「ねえ」
「え…は、はい。何でしょうか……?」
内心ビクビクしながらルイズを見る三郎。
「あんた、感謝しなさいよね。 貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」
(貴族? 何を言ってるんだこの子は…わけがわからん……)
そんな風に思っていると、目の前のルイズが杖を振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ゆっくりと唇を近づけてくる。
「あ、あのー……」
「いいからじっとしてなさい」
(え…? え……!? こ、これってもしかしてキキキキ、キ、キスとかいう奴じゃ?)
「ん……」
三郎は、初めて異性からのキスを体験した。
しばし放心状態になる。無論、顔には笑みが浮かんでいた。
「ウウ…ワシの裏金〜…… 返せ〜、それはワシの裏金じゃ〜〜……」
「……次はこっちね。うう、最悪……」
河井は口からよだれを垂らして、イビキをかいていた。
この際、眠っていても何でもいいからとっとと済ませてしまおう。
そう思いながらルイズは、人生、最初で最後の最悪のキスをする羽目になった。
(うわぁ…泣きながらキスしているよ。可哀想に……。しかしあの男、なんという寝言だ……)
我に返った三郎が見たものは、ルイズが泣きながら河井にキスをしている光景であった。
キスが終了した後ルイズは、口を押さえながら気持ち悪そうにしていた。
「……?」
体の異変に最初に気づいたのは三郎だった。
体が妙に熱くなったのだ。いや、熱いどころではない。
「熱ッ! 熱い! 熱いぃぃぃぃー―――! ぎゃあああ!死ぬー――!!」
あまりの熱さに立ち上がり、どたどたと辺りを走り回る三郎。
「ぎゃあああー! な、なんじゃ!? 何が起こったんじゃー! ヒィー―熱いぃー―――!!」
河井も体の熱で目が覚めたらしく、三郎と一緒にどたどたと走り回っている。
「うるさいわね! すぐ終わるわよ! 二人で騒がないで!」
数秒後、熱いのはほんの一瞬だったらしく、息を切らしてバテている河井と三郎の姿あった。
「「し、死ぬかと思った……」」
そう言いながら、ぐったりと横たわる。
そんな河井と三郎を尻目に、中年魔法使いが二人の左手の甲を確かめる。
そこには、見慣れない文字が躍っている。よくみると二人とも同じのようだ。
「ふむ…二人とも同じルーンか、しかも珍しい……」
中年魔法使いは、観察を終えたらしく、そのまま人垣に向かった。
「さて、じゃあ皆教室に戻るぞ」
中年魔法使いはきびすを返すと、宙に浮いた。
他の人間も、宙に浮き、城のような石造りの建物へ飛んでいった。
「は……?」
三郎は口をポカンと開ける。
(と…とと…飛んだ…? え…? ちゅ、宙に浮いて…… え…?)
明後日の方向を向いて、うな垂れている河井の肩を揺する。
「かかかか、河井君…あ、ああ、あの人たち宙に浮いている……!」
「ハァ? 何を言ってるんですか総長……人が飛ぶわけが……」
「いいからあれを見て!」
「あれって一体何の……ギャー!!」
河井は物凄いものを見たような形相で叫んだ。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「その平民たち、あんたの使い魔にお似合いよ!」
「酒がー! ワシの一升瓶が粉々にー! ワシの宝がー!!」
口々にそういって飛び去っていく。
ちなみに河井はというと、飛び去っていく人間のことなど眼中になく、
粉々になった酒瓶を見て涙を流していた。
広場には、ため息をついているルイズ、未だに口を大きく開けて驚いている三郎、
そして、粉々になった一升瓶を見ながら、涙を流す河井だけが残された。
「あんたたち、なんなのよ!」
ルイズの一言で、三郎は我にかえる。
「え……? いや、それは俺が聞きたいんだけど……。ていうかここはどこですか?」
「ったく、どこの田舎から来たかしらないけど……。ここはトリスティンよ!」
まったくもって、聞いたことがない地名である。
そもそも、自分が住んでいる所に、こんな場所は存在しないはずだ。
なんか物凄く嫌な予感がした三郎。
「あの〜…もうひとつ聞いてよろしいですか?」
「何よ?」
「さっき召喚がどうとか言ってたけど、それって一体……」
「私が呼び出したのよ。さっき儀式したでしょ」
(よ、よくわからないけど…儀式とか召喚とか……それって 黒 魔 術 なんじゃ……)
もしかして自分は、とんでもないことに巻き込まれてしまったんじゃないかと思った。
「あんたは私の使い魔になったっていうこと。あとそこで泣いてる奴もね……」
あからさまに嫌な顔をしながら河井を指すルイズ。
「ハハ、使い魔……か……」
「聞いてるの? 私はルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。覚えておきなさい」
「は、はぁ……。俺は大河内三郎っていいます……」
「ふーん。変な名前。 ……で、あっちは?」
ガタガタと体を震わせている河井を指す。
「ああ、彼は河井星矢……」
「あっそう…。はぁ、何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ……」
それはこっちの台詞だと思いながら、河井の方を見る。
「うう……まだ半分以上残っていたのに何でこんな目に……」
河井はまだ泣いていた。
(まだ言ってるよ…。それにしても何て醜い……)
嫌なものを見たと言わんばかりに頭を抱える三郎。
(ああ…… 頼むから夢であってくれ……)
しかし現実は非情で、これは断じて夢ではなかった。
それぞれ悩みを抱える3人は、これから更なる受難を受けることになるのだった……。
大河内 降 臨 !
あれ?終わりか?
三郎だけならまだいいけど、正真正銘ド外道のクズの河井☆矢まで召喚するとは…
ルイズも三郎並に不幸な奴だな
二人続けて終了宣言だけ書き込めなかったみたいだから、まとめて代理しとくよ。
735 名前:虚無の紳士録[sage] 投稿日:2009/08/25(火) 01:01:28 ID:XeKmcilg
さるさんくらいました。
投下終了宣言と、あとがき?です。どなたか代理をお願いします。
※※※※※※※※※※
以上で投下終了です。支援してくださった方々ありがとうございました。
クロス元は作画:衣谷遊、原作:大塚英志の『リヴァイアサン』です。
ルイズが召喚したのはルシィ殿下(の影)が所有していた「闇の紳士録」です。
やたら行間とスペースを使用して『』内に書いているフレーズは、クロス元の該当話での
ルシィ殿下のセリフと、該当話が収録されている単行本の帯に記されていたものです。
次回、キュルケの惨い殺され方に関する描写があります。
具体的に書くと××が掻っ捌かれて、××を引っこ抜かれたキュルケの死体をタバサが発見します。
直接それを行う描写や、キュルケの最期をリアルタイム描写するつもりはないのですが、
>>536さんのおっしゃる通り、避難所でやった方が無難かもしれません。
避難所に投下するべきか、本スレに投下してもよいか、皆様のご意見をお聞かせください。
※※※※※※※※※※
※によって区切った部分です。お願いいたします。
736 名前:エリート使い魔三郎[sage] 投稿日:2009/08/25(火) 02:32:22 ID:WhM//dgg
さるさんくらいました。
私も投下終了宣言、どなたか代理できたらお願いいたします・・・。
↓
以上です。元ネタはエリートヤンキー三郎です。
ちなみに河井と三郎は原作1章の6〜10巻あたりの設定にしています。
乙
読んでたら湘南爆走族思い出した
リヴァイアサン懐かしいなw1999年で止まった東京だっけ
そういえばあの作品やマダラ、SIRENは年号が昭和で続いてるんだよなあ
>>568 虚無の紳士録の作者氏はやはり避難所に投下したほうがいいだろうな
逆に考えるんだ、避難所なら少々やばくても問題な(ry
リヴァイアサンはイメージアルバムから知ったんだよなぁ
死刑執行とか名曲ぞろいだと思うが知名度がなくて残念だ
漫画読んだのだいぶ昔で細かいとこまで覚えてないから
これからどんな展開になっていくか楽しみ
投下場所は死ネタとかグロ描写とかの受け取り方は個人差があるからなんともいえないな…
心配だったら避難所の方が無難かも
三溝耕平…は無理だからダルアでも喚ぶのかな、と思ったらまたヤバいものを…
元ネタのエピソード自体はその辺ぼかしてたはずだから
作者さんがどう描写するかだけど避難所の方が無難かなとは思う
死にネタ、グロは間接的な描写ならある程度はどこもあるが、やはり避難所が適当だろうね。
まあワルドはあっちこっちで抹殺されまくってるから別にいいが byブラックホールクラスター
あっさり殺されてる方が悲惨に思えるな
狂蛇で喰われたおマチさんとか
ワルドの場合、原作でもタルブで死んだと思ってる人多いからな
今頃だけどアノンの人乙。
毎日投下は無理でもある程度なら待てる!
のんびりと自分のペースで投下してくれ、続き楽しみにしてる
風系統の魔法が準チート過ぎで原作じゃ死んでないのに出番無いんだっけか?>ワルド
タバサも誘拐されるし強すぎるのも考え物だな。
たしか6巻から行方不明だから10巻以上でていない
ワルド?あああの片腕の男ね。
トランプで戦うカーネフェルなおじ様なら知ってる
片腕といえばゼウス神
召喚されても現地人同士の戦争には介入しないか
オリジナルのギリシャ神話のゼウス神なら
人間を使った戦争を起こして眺めるのが大好きだけどな
やれるギリシャ神話のゼウスならみさかい無しです
女キャラは全員孕まされた挙句ヘラの嫉妬で悲惨な目にあうな
ブリミル教的には不味くないのか?
言ってみれば異界の神だし……
ギリシャ神話的解釈だとブリミルの神もゼウスと同一神だったってことになりそう
ブリムル教って始祖を神格化してて神そのものはあいまいだからなあ。
キリスト教で言えばキリストはいるけどヤハウェに当たる部分はいい加減。
始祖に虚無を授けたのが神だそうだからいることはいるはずなんだが……
ノボル?
作者が全ての元凶www
594 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/25(火) 19:40:14 ID:PZwk3OCq
神の子ブリミルとかになるだけだよ。
あるいは父(神)=子(=精霊)
それなんて珍遊記?
始祖の虚無=対亜人類芸術的爆死地獄【ウロタトモカーオ】と申したか
そのへんの記述があいまいだから
フーケ→ワルド→クロムウェル→ジョゼフ
と、パワーアップしてきた敵キャラがヴィットーリオになったとたん小者臭が強くなった
実はヴィットーリオはナイアルラトホッテプ的存在
ゼウス・・・つまり切り落とされた自分の手をぶん投げてロケットパンチですね
ビックリマンを連想しようとはしないのね…
というか真マジンガーはどんどん微妙に・・・・おや誰だ
こんばんは。皆さんの反響に燃料を貰い、いつもより早めに11話が出来上がりました。
他に予約がなければ、20:50ぐらいより投下させていただいてもよろしいでしょうか?
レス数は8を予定しています。
――レックスは気が気ではなかった。
時刻は夜――今彼は、仲間と一緒に港町ラ・ロシェールに向かって馬を走らせている。
走っている馬は二頭。一頭はレックスが乗っている馬で、彼の後ろでは妹のタバサが同乗している。そしてもう一頭はギーシュが乗っているが、こちらは思いっきりバテており、走る馬の背にぐったりと体を預けていた。
早朝からほぼ休みなく走り通しだったので、ギーシュがこれでも無理はない。むしろ、平然としているレックスとタバサの方が異常とすら言えた。
そして、レックスの仲間はこの二人だけではない。彼らの頭上をグリフォンが飛んでいるのだが、そちらにもう二人いるのだ。
その二人とは、ルイズとワルド。婚約者……ということらしく、グリフォンの背の上でぴったりとくっついている様は、遠目にはまさしくそれっぽく見える。
実のところ、レックスはそのルイズに、淡い想いを抱いていた。
まるで人形のように可憐なルイズに、レックスは一目で――とはいかないまでも、一日足らずの間に惹かれてしまった。
とはいえ、レックスはいまだ11歳である。その想いは幼く稚拙ではあるし、そもそも恋愛と呼べるほどの強い想いとは言えないかもしれない。だが生まれて初めての感覚にレックスは戸惑い、気付けばルイズのことばかり考えるようになってしまった。
今何をしているんだろうか。今日は何をしているんだろうか。怪我とか病気とかになってないだろうか――そんなことばかりである。ここ数日、ルイズに会いたいと思っても妹に邪魔されてばかりというのもあり、その想いは日増しに強くなっていた。
そんなところに、降って湧いたこの任務。ルイズにいいところを見せるチャンスだと思い、なかば反射的に、自ら協力を申し出た。
ルイズと一緒にいられる。それだけで舞い上がりそうになる自分の心を押さえつけ、極力真剣に任務に取り掛かろうと、準備に全力を尽くした。任務に失敗してしまっては、いいところを見せるどころではない。
が――
「くっ……あのおじさん、あんなにルイズにくっついて……!」
「…………」
頭上を見上げるレックスは、うめくように怨嗟の声を上げる。背後にいるタバサは、そんな兄を半眼で見ていた。
いざ蓋を開けてみたら、ルイズの婚約者を名乗るおじさん(11歳のレックスから見れば26歳の髭男など、立派なおじさんである)が現れ、彼が淡い想いを抱く相手に馴れ馴れしくする始末。
しかもそれを、ルイズ自身があまり嫌がっていないというのだから、レックスとしては面白くない。
そのことで道中散々ギーシュにからかわれもしたが、そんな彼も現在ダウン中。タバサも最初はブツブツ文句を言っていたが、言っても無駄と悟って諦めたか、今は白い目を向けるのみに留まっている。
と――
「……おぉ……ラ・ロシェールが見えてきた……」
背後から、疲れ切ったギーシュの幽鬼のような声が聞こえてきた。レックスは視線を頭上から前方に移す。
見れば、既に山道へと変わりつつある街道の先に、その街道を挟み込むような形で両側に崖がそそり立っていた。その岩壁には建物が並び、ところどころ灯りが点いている――おそらくあれが『港町』なのだろう。
「あれ? 海は?」
「何を言っているのかね? ラ・ロシェールはアルビオンの玄関口だよ。海沿いに作る意味なんかないじゃないか」
「え? それって――」
どういうこと、と尋ねようとした、まさにその時――
――ボウッ。
「「「…………?」」」
すぐ傍で何かが燃えるような音が聞こえ、レックスたちはその音源へと視線を向ける。
そこにあったのは、地面に落ちた赤々と燃える松明(たいまつ)――しかも一つだけではない。複数ある。
のみならず――
「な、なんだ!?」
ギーシュが焦った声を上げる。松明は高い場所から次々と投下され、あっという間にレックスたちの周囲を明るく照らし出していた。
突然の状況変化に、判断が追い付くより早く――照らされた彼らを目掛け、頭上から矢が降ってきた。
レックスは怯える馬を手綱でいなしながら、剣を抜いて矢を払う。一方ギーシュは、暴れる馬も宥められず、無様に振り落とされていた。
「奇襲か。久しぶりだね、こーゆーのも」
上空にいるワルドが『風』の魔法を使って矢の軌道を逸らしているのを横目に、レックスはどこか懐かしげにつぶやいた。その視線は、矢を射る襲撃者の位置を、性格に掴んでいる。
「どうするの?」
「そりゃもちろん――やることは決まってる!」
問いかけてくる妹に、レックスは馬を降りて剣を構え―― 一気に飛び出す。
彼の脚力なら、一息に崖を駆け上って襲撃者たちを叩きのめすことなど造作もない。
(いい機会だ。ルイズにボクの実力を見せ付けてやる)
別に大した下心ではない。気になるあの子の前で、ただいい格好がしたいだけだ。そんな想いを胸に抱きながら、彼は剣を握る手にぐっと力を込めた。
――レックスが駆けて行く。
その背を見送りながら、タバサは「はぁ」とため息をついた。彼の考えていることなど、双子の妹としてずっと一緒にいた彼女であれば、手に取るようにわかる。
タバサはふと、上空を見上げた。その視線の先では、グリフォンにまたがって『風』の魔法を使い、飛び来る矢をいなすワルドの姿――
「なんか……嫌な感じです」
そのワルドを軽く睨みながら、タバサはぽつりとこぼす。
と――
「い、いいのかい?」
そんな彼女に、ギーシュが矢に怯えながら尋ねた。
「何がですか?」
「彼を一人で行かせて、だよ」
「お兄ちゃんなら心配いりませんよ。それに――」
大した感慨も見せず、タバサは質問に答えた。言いながら、彼女は視線を上空――ワルドとルイズの乗るグリフォンよりも、更に上へと向ける。
その視線の先にあるのは、悠々と大空を舞う青い鱗の風竜――
「――きっと、お兄ちゃんが活躍する前に終わっちゃいますから」
――結論から言えば、タバサの予言通り、レックスが敵に迫るより早く戦闘が終わってしまった。
天空の剣を構えて崖を駆け上ろうとしたまさにその時、強力な『風』の呪文による小規模な竜巻で、目標となる敵の一団がまとめて吹き飛ばされたのだ。
バッサバッサという音に顔を上げてみると、そこには見覚えのある風竜の姿。レックスの活躍の機会を奪ったのは、誰あろう妹と同じ名を持つ少女――もう一人のタバサであった。
「はぁい、お待たせ♪」
風竜の背からひょっこりと顔を出して挨拶してきたのは、タバサではなく同乗者のキュルケであった。肝心のタバサの方は、なぜかパジャマ姿で本を読みふけっている。
そんな二人の来訪者に、ルイズは慌ててワルドのグリフォンから降りた。
「お待たせじゃないわよ、ツェルプストー! なんであんたがここに……」
「助けてあげたんじゃないの。朝方、あんたたちが外で楽しげなコントやりながら出かけて行ったもんだから、面白そうだと思ってタバサを起こして駆けつけたの」
「コ、コントって……」
「パンツ一枚にシルクハット。なかなか紳士的な格好でしたわよ、ギーシュ?」
「やめてー! 笑わないでー!」
片手で口元を押さえ、プププとニヤけるキュルケ。その嘲笑の視線に、ギーシュは羞恥のあまり思わずその場でゴロゴロと転げ回った。
そしてひとしきり転げ回った後、いたたまれなくなったのか、ずーんと重い影を背負って「……尋問してくる……」とつぶやいて、襲撃者たちの方へと向かう。
しかしその頃には、ルイズとキュルケの舌戦はギーシュと関係ないところにシフトしていた。
「お忍びだから来ないで」だの「それならそうと言いなさい」だのと言い合ったり、キュルケがワルドにモーションかけたりルイズが噛み付いたり、そんな彼女らは去って行くギーシュに気付いた様子もない。
が、やがて――
「ところでさあ」
キュルケが急に、ルイズから視線を外して二人のタバサに視線を向けた。彼女が真っ直ぐに伸ばした手はルイズの額を押さえており、ルイズはリーチの足りない腕を必死にぶんぶんと振っている。
視線を向けられた二人のタバサは、片や「?」と小首を傾げ、片や本から視線を上げて無表情にキュルケを見る。
「同じ名前が二人って、呼び方に区別付けないと不便じゃないかしら? この際、何か呼び方決めましょうよ」
「知らないわよ! あんたたちが帰ればその必要もないでしょ!」
「あら、つれないこと言わないでよ」
ガーッ、と噛み付くルイズを軽くあしらい、キュルケは「どうする?」と先を促す。
その問いに、二人のタバサはお互いに顔を見合わせた。
だが、彼女たちが何か結論を出すより早く、その隣にいたレックスが元気良く手を上げた。
「はーい! ボクにいい案があるよ! 先にいた方をタバサA、後から来た方をタバサBって呼べばいいじゃん。更に増えるようだったら、順番にタバサC、タバサDって――」
「人をマドハンドみたいに言わないでよ、お兄ちゃん!」
あまりと言えばあんまりな安直な提案に、妹のタバサが台詞が終わるのを待たず、即座に却下した。そんな妹の不満の声に、しかしレックスも不満げな顔になる。
「えー。タバサ、マドハンド嫌い? あいつらほっとけばどんどん増えるから面白いのに。画面に余裕があればゴーレムも呼ぶしさ」
「そーゆー問題じゃないでしょ! あと、画面とか言わないでよ!」
「じゃ、どーすんの?」
支援
微妙に脱線しかけた話題を即座に戻し、しかしレックスに切り返されてタバサは口をつぐんだ。
さすがに咄嗟には代替案も見つからず、助けを求めるようにもう一人のタバサへと視線を送る。彼女は感情の読めない無表情で、じっとこちらを見ており――
「本名?」
「え?」
唐突に投げかけられた言葉に、タバサはそれが質問であることを理解するのに、少しの時を要した。
「あ、うん。本名。お父さんが考えてくれた、私の名前」
「そう。あなたのお父さんが」
その返答に、彼女は何か考え込むかのように、ほんの少しだけうつむいた。
やがて――
「……シャルロット」
「え?」
「私を呼ぶ時は、シャルロットでいい」
「えっと……その名前は?」
「……………………」
唐突に出てきたその名前に、タバサはその脈絡を尋ねた。しかし彼女は口を閉ざし、答える様子もない。
踏み込んではいけない部分だったのか。必要最低限の言葉しか発しない彼女の様子に、タバサは気後れしてそれ以上の言葉を続けられなかった。
場の空気が気まずいものになるかと思った、その時――
「じゃあ、そっちの子がタバサのままで、あなたはシャルロット。それでいいのね?」
その場をまとめるかのように、キュルケが口を挟んできた。
その言葉に、タバサ――もとい、シャルロットが無言で頷く。行き詰っていたタバサは、ちょうど良いタイミングでやってきたキュルケに内心で感謝した。
「…………でも」
「ん?」
「私をシャルロットって呼ぶのは、区別が必要な時だけにして」
「わかったわ」
その要望に、キュルケは短く答えて頷いた。
――それ以上は何も聞かない。タバサはそこに、この対照的な二人の信頼関係の一端を見たような気がした。
キュルケは話は終わりとばかりに、くるりと踵(きびす)を返してルイズたちの方へと向き直る。なおも何か文句を言おうとするルイズに、彼女はニンマリと笑って応戦する構えだ。
そんな彼女の背中を見ながら、シャルロットは――
「本当の、名前。親からもらった、大切な、名前」
――誰にも聞こえないぐらいの小声で、一語一句を噛み締めるかのように、ぽつりとこぼした。
その後、尋問を終えたギーシュが戻って来た。
ただの物盗りだと主張しているとの報告に、ワルドはそれ以上の尋問は無駄と判断し、捨て置いて街に向かうことを提案。特に異論もなくラ・ロシェールに入り、一行は街で一番上等な『女神の杵』亭にて宿を取ることとなった。
>画面
メタな発言すんな支援w
――『女神の杵』亭では、部屋を三つ取った。
まず、レックス、タバサ、ギーシュの部屋。次に後から合流してきたキュルケとシャルロットの部屋。最後に、婚約者同士であるルイズとワルドの部屋。アルビオン行きの船は明後日にならないと出ないそうなので、少なくとも明日一日はこの街で足止めである。
この振り分けに文句を言ったのは、レックスとギーシュ、そして意外にもタバサの三人。
レックスはルイズとワルドの同室を認めたくないがため、ギーシュは子守りを任されるのを嫌がったため。タバサだけは理由を明確にはしなかったが、ルイズとワルドが――と言うよりも、ワルドを誰かと同室にはしたくないといった様子であった。
だがその二人の反対意見も、ワルドによってやんわりと却下された。
「う〜…………」
そんなレックスは現在、あてがわれた部屋で、枕を抱き締めて――と言うよりは、むしろ『締め上げて』と表現した方が適切な様子で、不満げに唸り声を上げていた。
明らかに、ルイズのことを気にしている様子である。戦闘の経験は豊富でも、こと男女間の恋愛ともなれば、彼の経験はその入り口に片足を突っ込んだ程度。男と女が同室で一夜を共にする意味など、知る由もない。
もっとも――その意味を知らずとも、気になる異性が自分以外の男の傍にいるというだけでも、レックスからしてみれば気に入らないものがあるのだろう。
そしてその傍にいるタバサといえば、レックスが他の女のことを考えているにも関わらず、珍しく睨みもしないで眉根を寄せていた。
「二人とも、ご機嫌斜めだね」
そんな二人に声をかけるのは、同室にされたギーシュである。
それぞれ眉根を寄せるその表情は、並べて見ればなるほどそっくりで、二人が双子であることが如実によくわかる。
しかし彼にはわからなかった。レックスがルイズのことを気にしているのも、タバサが双子の兄に兄妹愛以上の好意を寄せているのも、傍から見れば丸わかりだ。だからこそ、レックスの方はわかるにしても、タバサの態度がわからない。
彼女からしてみれば、ルイズはある意味では恋敵――それがワルドとくっつけば、それは歓迎するべきことであるはずだ。なのに彼女は、ルイズとワルドが同室になることを、あまり好ましく思っていないようだ。
「一つ聞いていいかい、ミス・タバサ」
「はい?」
「君はルイズとワルド子爵が同室になることの、何が不満なんだい?」
「……邪気を、感じるんです」
「邪気?」
唐突に出てきたその単語に、ギーシュは小首を傾げた。
タバサは構わず、続ける。
「私、生まれつきそういうのに敏感なんです。あのワルドさんからは、邪気を感じるんです。モンスターはともかく人間――とりわけ高い地位にいる人の場合、大抵はそういうのは権力欲とセットになってるから、たぶんワルドさんも同じだと思うんですけど……」
グランバニアの王族である彼女の周囲には、グランバニア最高権力者とのパイプを欲する者が絶えない。そういった者たちの多くは、目的の為に手段を選ばない狡猾さを持ち合わせ、その歪んだ心根が邪気となってタバサの感覚に引っ掛かるのだ。
「ふむ。確かにルイズは名門ラ・ヴァリエール家の三女だから、彼女との婚姻は権力の獲得に直結するね。それに26の若さで魔法衛士隊の隊長に上り詰めるぐらいだから、権力欲はともかく、相応の出世欲ならば持ち合わせていてもおかしくないか。
――並の出世欲では、そこまでのスピード出世は難しいだろうからね」
「だとしても私、邪気を持つような人と一緒にいたくありません。欲を言えば、他の誰にも一緒にいてほしくないです」
「ワルド子爵も嫌われたものだね」
片やレックスは、ルイズと会って一日で惹かれてしまった。片やタバサは、ワルドと会って一日で嫌ってしまった。そんな対比を思い浮かべながら、ギーシュはやれやれと肩をすくめた。
日替わりさん支援
考えてみると、ルーラがあるから王党派全員脱出も可能なんだな
っつーか魔界の神倒す一家相手にどうするワル公
思わず手に汗握ってしまうぜ
一方その頃、ルイズは部屋のバルコニーで、ワイングラスを片手に双月を見上げていた。
「……結婚……」
彼女はつい先ほど、ワルドからプロポーズを受けたばかりであった。
幼い頃からの憧れの子爵様。親が決めた婚約者だとしても、そんなこと関係なしに、彼女はずっとワルドに憧れていた。
そんな彼が、十年ぶりに現れ、しかも自分にプロポーズしてくれたのだ。嬉しかった――嬉しくないわけがなかった。
だけど――と、心の中で何かが引っ掛かった。嬉しいはずなのに、そのプロポーズに即座にYESと答えられない自分がいた。唇を寄せてきた彼を拒絶し、今、一人になって悩んでいる。そのワルドは、部屋の中で一人ワインを傾けていた。
「リュカとフローラは……どうだったんだろう……」
思い浮かべるのは自分の本来の使い魔と、その妻。
あの二人だったならば、さぞ素敵な新郎新婦だっただろう。
脳裏に思い浮かべるのは、白い礼拝堂に豪奢なステンドグラス、立派な祭壇の前に厳かな神父様。それを前にして誓いを立てる、タキシードのリュカにウェディングドレスのフローラ……
想像しただけでも絵になる光景だった。当たり前だ、容姿に関しては文句のつけようのない二人なのだから。
リュカは普段はみすぼらしい格好をしていてわかりづらいが、それなりの格好をすればかなりの美男になることは、フリッグの舞踏会で立証済みだ。フローラに関しては、言うに及ばずである。
――ならば、自分とワルドの場合はどうなるのだろう。
ルイズはその想像の中の二人を、そのまま入れ替えてみる。
フローラを自分に、そしてリュカを――
(リュカを――)
――そう想像してみようとしたが、なぜか上手くいかない。
ウェディングドレス姿の自分はなんとなく想像できたが――リュカをワルドに置き換えるのが、なかなか想像できないのだ。
結果、彼女の想像の中では、自分と向かい合っている新郎がリュカのままになっていた。
すなわち、リュカと自分の結婚式――
「って――何よそれ!?」
そのあり得ない絵面に、ルイズは思わず口に出してセルフツッコミをしてしまった。その突然の怒声に、部屋の中のワルドが訝しげにこちらを見る。
部屋に背を向けていたのが、不幸中の幸いだっただろう。もしワルドがルイズの顔を見ていれば、その顔が耳まで真っ赤に染まっていたのに気付いたはずだ。
「……いえ、落ち着け、落ち着くのよ、私。こういう時はまず深呼吸。すぅーはぁーすぅーはぁー。そして手の平に『人』という文字を書いて飲み込む。これ三回。うん、よし。落ち着いた」
リュカと自分は恋人同士などではなく、主人と使い魔である。自分の使い魔に懸想するメイジなど、聞いたことがない。そもそも、リュカ個人の事情もあり、彼とはそれほど多く接していないのだ。そんな短い時間で、一体どこに惹かれるというのか。
(……考えてみれば、それって使い魔失格じゃないの?)
そこに思い至ると、ルイズの心の中にふつふつとした怒りが湧き上がってきた。
本来、メイジと使い魔は一心同体。にも関わらず、リュカといえば何かにつけて代理をよこしてくる。挙句の果てには、こんな大事な場面ですら、自身の都合を優先して子供を寄越してくる始末。
言われてみればこんなにルイズと一緒にいないパターンがそも前代未聞だわねぇ
(そーよ。あんな無責任な奴、なんとも思ってないんだから!)
怒りに任せ、胸中でリュカの評価を大幅に下方修正し、罵る。『本当は子供達が彼に何も伝えていない』などという事実を知らない彼女は、リュカが来てくれないことに少なからぬ寂しさを抱えていたが、それを怒りで覆い隠した。
そう――自分はリュカのことなど、なんとも思っていない。過去二回ほど唇を重ねたことがあるといっても、どちらもコントラクト・サーヴァントであって、恋人同士がするような甘いキスなどではなかったのだ。
第一、リュカは既婚者なのだ。彼が一番に想っているのはあくまでもフローラであり、それ以外の誰かと改めて結婚など、するはずもない。ましてやその相手が自分などとは、何をいわんや、だ。
「……そうよね。私の入る余地なんて、最初からないのよね……」
つぶやき、「ふぅ」とため息がこぼれる。
と―― 一瞬の間を置き、ルイズはハッと自身のその台詞とため息が意味するところに気付いた。
「――って、これじゃまるで、私がリュカの恋人になりたいって思ってるみたいじゃないのよっ!」
またもやセルフツッコミをかまし、「今夜の私はどうかしてるわっ!」となかば八つ当たり気味に、手の中のグラスを一気に呷る。
急に摂取したアルコールによって視界が回り、ルイズの目に映る双月がぐにゃりと歪んだ――
――所変わって、その頃のグランバニア王宮、国王の執務室――
「……遅いな」
インク壷に羽ペンを浸け、椅子の背もたれに背を預け、国王――リュケイロム・エル・ケル・グランバニアはぽつりとつぶやいた。
彼が見上げるのは窓の外、銀色に輝く一つの月。その日は朝早くから彼の二人の子供――グランバニア王国第一王子レックスと第一王女のタバサが、モンスターを連れずにハルケギニアへと飛び立って行った。その二人が、今になっても帰って来ない。
モンスターを連れて行っていないということは、あの二人が自ら使い魔の代役を買って出ていると思われるが――
「何か、あったのかな?」
「陛下、入りますぞ!」
小首を傾げたその時、執務室のドアを空け、老齢の男が入ってきた。
彼こそがこの国の大臣であるオジロン――リュカの叔父である。
「叔父上?」
「おお陛下! まだ書類が残っているではありませんか! ほらほら、手を休めている暇があれば、書類にサインを続けなされ! ほれ、これが追加の分ですぞ!」
そう言いながら、オジロンは持って来た書類の束をドスンと執務机の上に置いた。その量を見たリュカが、「うげ」と顔色を変える。
「叔父上……もう少し負かりませんか?」
「何をおっしゃいますか。これでも、私が半分以上引き受けた残りなのですぞ。大魔王や『光の教団』が我が国に残した爪痕、一年程度ではまだまだ癒えてはおらぬのです。現実は物語のように、悪の親玉を倒して終わり、というわけではございませんからな」
「はぁ……旅していた時の方が、気が楽だったな……」
「ともかく! お任せしましたぞ、陛下!」
そう言って、オジロンは「ああ忙しい忙しい」とぼやきながら、足早に執務室を後にする。リュカは「はぁ〜っ」と殊更盛大にため息をつき、再び羽ペンを手に取った。
ちなみにその執務室の外では、メッキーとクックルが落ち着かない様子で、せわしなくあっちに行ったりこっちに来たりを繰り返していた。
事あるごとに執務室の窓へと視線を向けるその様子は、見るべき者が見れば「何かを悩んでいる」と判断するに十分なほどであった。
だが、部屋の中で仕事に追われているリュカは、そんな彼らには気付く気配もなかった――
>先にいた方をタバサA、後から来た方をタバサBって呼べばいいじゃん
久々にwikipedia見たら本当にマドハンド並にタバサが増えてた
しえん
―――おまけ―――
※注:このおまけは単なるネタであり、決して本編に影響の出る話ではありません。
一行が『女神の杵』亭に取った部屋の一つ、キュルケとシャルロットの部屋――
「「…………」」
その部屋の中では、二人の少女が無言で見詰め合っていた。
彼女たちの足元には、天使のレオタード、水の羽衣、賢者のローブなど、タバサが用意した服の数々。パジャマ姿という、着の身着のまま以外の何物でもない格好でやってきたシャルロットに対する、善意の気遣いで用意されたものであった。
そして、用意されたものの中から、シャルロットは自分が着るべきものを選んだのだが――
「ねえ、タバサ――」
「違う」
「え?」
「今の私はダース・タバサ。系統魔法の暗黒面に堕ちたメイジ」
「……その台詞に、あんたは一体どんなリアクションを求めてるっての……?」
「こーほー」
100%困ってますといった気配を全身から放射するキュルケに、しかしシャルロットは、妙な呼吸音を口頭で表現するのみで応えた。
そんな彼女の今の格好は――
Eかたみのつえ
Eダークローブ
Eダークシールド
Eサタンヘルム
――と、つい今朝方ギーシュが全身全霊で拒否った格好であった。
「欲を言えばライトセーバーが欲しかった」
「私、あんたが何を考えてるのか、時々わからなくなるわ」
「こーほー」
ちなみにその後、じっくりと時間をかけ、キュルケがシャルロットをなんとか説得したことだけは追記しておく。
以上で投下終了です。
とりあえず、アルビオン編終了までのプロットは既に頭にありますので、筆が乗れば次も早くなるかもしれません。
ワの人は、たぶんいいとこないですw
タバサ(シャルロット)が可愛くて仕方ない!!
私が悶死したらちゃんと教会に連れて行っておくれ
そして本編ではぜひレオタード着せておくれ
日替わりの人乙です。
タバサA、Bとダースタバサに吹いたw
日替わりさんおつですー。
ドラクエ9でサイト・ルイズ・テファとキャラを作って遊んでるので着せ替えには超吹いた
現在のルイズは魔法戦士だけどな!ドラゴンスレイヤーとかミスリルヘルムなんていうごっついの装備してます
そういえばグランバニア的なタバサの本名はどんなのになるんだろう
ストレートに
タバサ・エル・シ・グランバニア?
あ、日替わりの人乙
今回も面白かった
日替わりさん乙でした。
画面が余ると勝手にゴーレム呼ぶからほったらかしレベルアップ的には困った物です。
良いなぁ、このギャグで収まる程度のメタ会話。
今度俺も入れてみようか。
日替わりさん乙です
ダースタバサてwww次回その装備で登場してくれるのでしょうかw
戦士のパジャマをえらんで、キュルケに寝がえり攻撃をするのが筋ではないのか?
そして、キュルケの中ではタバサ=寝相が悪いというイメージに。
乙でした
もしかしてこやつらゲームの中の話だって気づいてる?
ダース・タバサ……ついでに
E.はんにゃのめん
もつけてしまえい
>>612 5、6話に一度くらいしか登場しない召喚キャラもいる
日替わり使い魔の人、乙です。
しかしもうまとめに追加されているとは・・・・・どんだけ人気あるんだw
>>626 そういやスコールは契約せずに出て行ったものなぁw
あとすっかり音沙汰無くなったポップも自力でシャナクしたっけ
跳ね返ってコッパゲ先生に刻まれちゃったんだよなぁ
続き読みてぇぇぇぇぇ
召喚≒ハルケギニア終了のお知らせ、というキャラも居ますけど……ブラスレイターのデモニアックのような病原体モドキって他に居ましたかね?
T-ウイルス入り小瓶とかエイリアンあたり呼ばれてたな
菌じゃないけど沙耶も壊滅してたな
とりあえず誰も天使のレオを着てくれない件について
633 :
虚無の紳士録:2009/08/25(火) 23:36:25 ID:u6PF2X05
皆様ご意見ありがとうございました。
グロ描写に関しては、内臓まで見えちゃうくらいおっぴろげられたキュルケの死体描写くらいで、
あとは薔薇の似合う美少年がKGB御用達の脱毛クリームを盛られたり、胸革命の義姉さんが
老害仮面にチェックメイトがされたことと同じ目にあわされたりするくらいなのですが、やっぱり
避難所に書く方が無難で良いようですので、後編(あるいは中編)は避難所スレに投下します。
どうもありがとうございました。 失礼します。
避難所でやるって報告に、グロ描写の説明は必要なんだろうか……
まあ宣伝みたいなもんなんじゃねーの。
637 :
虚無の紳士録:2009/08/25(火) 23:51:06 ID:u6PF2X05
冗談半分でカキコしましたが、ドン引きさせてすいません吊ってきます。
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
∪∪
>>627 先生ジョセフ君寝過ぎです!な二次ネタは置いといて、、、
ジョセフは扱い的には変身神ヒーローじゃないぞー悪魔騎士とかそんな感じ
まあ血を浴びたらスノウみたいにデモニアック化しちゃうから仕方ないんだけどね
取り敢えず俺は寝太郎を待ち続けるぜ.....
権力者が主役の話って何があったかな…ロマサガ2しか思いつかん
>>639 聖帝様・・・は権力者とは微妙に違う気もするw
ノノノノノ
( ○○)
(||||) ・・・。
>>644 いやドラクエXは知ってるけどさ
なんかこう国と親密に接しているキャラクターみたいなのはいないものかとね
>>639 恋姫無印の一刀とか?
まあ無印だと完全に一般人だからクロスにはむかんだろうが
あいつの真価は閨で発揮されるし
安価まちがえた
とりあえず繰り返すが
>>637絶対に許さない、絶対にだ。
グロやめろっつてんのにやるヤツは糞。もう来るな消えろ。
そーいえばロリカードも元はワラキア公だっけ
ゼロの女帝の瀬戸はかなり大物な権力者だな。
原作の方で主役が(権力者らしい)権力者な作品っていうとまた話は変わってくるけど。
うたわれのハクオロさんとか?
実は御曹子だったってキャラは結構いるんだけどね−
ルル山にガリアンのジョジョに紅渡にゴクドー君とか
>>650 別におもしろきゃグロ描写ありだろうと構わんがな
大物といえば裏界第二位の大公ベール・ゼファーは更新止まっちゃてるな
個人的にはアンサガのジュディも復活して欲しいが
注意書き付きで避難所でやる分には問題ないだろ。
適当にスルーしなされ。
大物、メタルウルフカオスの大統領召喚とか考えたことはあるが…
どう考えても使い魔なんぞに納まるタマじゃないので無理だった。
660 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/26(水) 04:47:24 ID:bSQ6Kbx7
>>658 小ネタに有るから見てくるよろし
ぶっとんでね
ageてしまいました……すみません
sageときます。
>>660 うん、読んだ。そして思い出した。
> 『つまり、無抵抗な一般人
アンタの何処が無抵抗で一般人なんだぁっ!!
と突っ込んだことをw
権力者か、そういえば現実も選挙も近いな。もしハルケギニア大王総選挙とかあったら誰が勝つだろうか。
悪い意味で選挙戦に強そうなキャラといったら、やっぱり同盟総議長のあの方かなあ。
王制アルビオン→共和制アルビオン→帝政アルビオン
こうですね。分かります
ポナパルトさんの出番?
さんざん腐敗したところでアクメツ召喚ですね
アクメツって全員世界最高レベルの科学者の頭脳も持ってるんだよな…
遅ればせながら、日替わりの人、乙です。
オマケで吹いたw
>「……その台詞に、あんたは一体どんなリアクションを求めてるっての……?」
「選ばれし者だったのに!」とでも言ってやれw
>>655 >>657 おもしろきゃいいとか、スルーしろとか言うけどさ、最低限のマナーも守れずルールも破って、
しかも冗談とか言って、たいして面白くもねえグロい文章投下してるバカは失せるべきだと思うけど?
>>669 最低限のマナーとしてスルーの魔法を使えばいいじゃない(AA略
何故そこまで過剰に反応するのかわからない
ガロード&ティファ召喚
「さあ決闘だ!逃げるなよ平民」
「やめなさいよガロード!」
「いーやヤメらんないね。あいつはテファを馬鹿にした」
「平民は絶対貴族には勝てない、これはもう始祖が定めた運命みたいなもんなのよ」
「大丈夫です」
「「テファ」」
「それが運命だとしても、ガロードには運命を打ち破る力がある。
わたしはそう信じています」
「テファ」「ガロード」
「よし、さあ勝負だ!・・・・・・ってなんで誰も居ないの?」
「もう夕方ですよ」と通りすがりのメイド
こんなカンジかな
>>671 避難所でやるとか言っておきながら、グロ文もいっしょにカキコしてるのが気に食わないんだよ。
嫌なら見るなとか言いながら汚いもん見せつけんのと同じというか、謝っときながら、
僕のSSを読んで〜っていう態度が見えてて腹が立つ。
はっきり言われないとわからないのかもしれないが
どう見ても今のお前の方が邪魔者、空気嫁
>>674 スルーしないと
「俺は間違った事は言ってない。つまり俺を叩く奴が荒らしなのは確定的に明らか」
とか言い出すよ?
>>674 俺もはっきり言うが、毒吐きでやれとか言われるのは覚悟していた。
だけどここでしっかりオマエは歓迎されていないってことを教えとかないと、
やめろっつてんのにグロSS投下するような空気読めないヤツはまた来るだろ。
ちゃんと追放宣言しとかないと、他の粘着作者と同じように勘違いするからな。
>>676 上に書いてるとうりそう言われるのは覚悟していたが、避難所に書いても目につかないだろ?
自分のSSが歓迎されてるとか思ってる、他のウザい勘違い野郎にもしっかり見せてやらないと。
>>672 おーい
ガロードの相方が金髪巨乳にすり替わってるぞ。
そっちのティファはそこまで大きk…
おや、誰か来たようだ。
レス乞食が一体現れた!
間違っているのは俺じゃない世界の方だ!
権力趣向者だったら、パラダイス・キングを召喚。
ハルケギニアの森林地帯でコボルドやオーク鬼を従えて野生の王国を建国。
そんで、最高にファンキーでクールな髪型、アフロが伝説のハルケギニア・キングの象徴に。
ここで御坊茶魔と茶魔軍団を投入してみる
古過ぎて誰も知らんか
>>682 ギーシュとともだちんこしたらホモと勘違いされ…ないか
頭の角、アレは頭皮が高質化した物ではなく、れっきとした骨……鬼、と間違えられたりしないだろうか。
使い魔として一日一分働く、三日で三分つらかとぶぁい。
伝達君が居ればワルドの偏在も見破れるな
茶魔のあの頭のトゲは成長すると日本を物理的に動かすことができるんだぞ
そういえば『歩く身代金』と言う設定があった。
確か三億円分だったかな、それだけあればゲルマニアで爵位とか買えそうな気がする。そして意味不明なカリスマを発揮して……?
御坊家の家訓で一時期無一文で放り出された時も
トイレの尻拭きで会社を興したぐらいだから多分大丈夫だな
690 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/26(水) 19:07:38 ID:fRkiP+Jj
元上流階級タバサ「落ちぶれてスマン」
服装は勿論…………
>>690 おいおい、たいぞーちゃんの家の女の子は一応両方の生地があったろーが……
>>678 こっちのピンクや青と違って将来大きなるからだいj
成り上がりといわれながらも実は結構名門のゲルマニア皇帝が袋小路の立ち位置かな?
じゃあお坊ちゃまが女装したら
そこでおぼっちゃまん君が登場!
おまえら年いくつだw
10万と少々
>>698 サタン様、ルイズに喚ばれてみませんか?
小暮閣下じゃなくてサタン様か
ロリコンで勝手に相手を婚約者と決めつけるあたり誰かと被る気がするな…
ハラが痛いから無理だな、このハラの調子さえ良ければ……
>>700 閣下の場合も無理だろうな。
ハルケギニアには相撲が無いからな。
小暮閣下と聞いてアンゼロットかと思ったのは俺だけでいい
閣下のご親友であられるベルゼブブ様辺りいかがでしょうか。
人型だとメタボ親父、元の姿は蝿とあれですが、結構良いお方ですし。
小暮閣下とサイファー閣下は別人だ
>>678 公式で数年後にはなかなかのナイスバディになってんだぜw
FF8のサイファーの場合魔女の騎士になら喜んでなるだろうが使い魔になれと命令されたら
後先考えずにハイペリオンが火を噴きかねない
ガロードのやつはガンダムキャラ召喚の方であったぜ
だけどあそこもスレ落ちしちゃったからなぁ
サタンといえば、セルに一撃で倒されたアイツもいるな。
>>707 教室にいる全員に始末剣かましかねないな
>>710 なんだかんだでハルケギニアでも英雄になりそうだな。周りは散々苦労するだろうが。
サタンはアレでもクリリンと同い年で一般人の中では最強なんだぜ?
岩を頭で砕くし銃を持ってる一般人でも歯が立たないレベル
神霊サタン
なによりまずクリリンと同い年なのに驚いた
確かに
けいおん!からさわちゃんを召喚したら最初の餌食は誰だろう?
るろうに剣心からって誰か呼ばれたことあったっけ
あと木多康明作品
何故か塩田とうぐいすがハルケギニアで大暴れするビジョンが浮かんだもんで
木多作品キャラは普通に避難所逝きな気が
18禁的理由で・・・・・・
>>713 ハルケギニアにYHVHはいるんだろうか
>>719 アマラ経絡とかアラカナ回廊辺りで繋がってる可能性もあるね
>18禁的理由で・・・・・・
台詞くらいなら伏字でどーにか・・・
奈良はさすがに駄目か、ある意味ルイズの使い魔としちゃ適任なんだが
>>720 ゼロ魔関係ないけど
ゴトウ一等陸佐やオザワとか東京大破壊の無いペルソナ・サマナー世界だとどうしてるんだろうなぁ
ロウなんかは普通に音楽家やってんのかなぁ
でもよく考えてみたら、八幡先生はパスカル連れたヒーロー見てるんだよな
そしてここに挙げたキャラは本当に呼んでもどうしようもないなぁ
ゴトウはどうなるか気になるが
オザワ違いでチップス・・・と思ったが、もう小ネタで一度呼ばれてたっけな
YHVHは周囲の宗教全て破壊する神だから多分いない
>ゴトウ一等陸佐やオザワとか東京大破壊の無いペルソナ・サマナー世界だとどうしてるんだろうなぁ
ゴトウはクーデター失敗して逮捕されたってゲーム中で僅かに情報がある
>>721 ゴトウはとッ捕まってトールマンはなんか死んでた。
ロウは普通に彼女と暮らして、カオスはいつまでもイジメられッ子。
ヒーローはパスカルとキャッキャウフフしてるよ!
>>722 いるとしたらレコンキスタ辺りで天使達が色々やりそうなくらいだな
ちょいと小ネタを投下いいでしょうか
元ネタは最後のほうで書いております
726 :
純情伝説:2009/08/26(水) 22:25:19 ID:w5+zwhT2
昔のお話をいたしましょう。
先代のガリア王国の女王陛下であらせられる、イザベラ様がまだ少女の頃、そんな時代のお話でございます。
この時、イザベラ様は大変に困っておいででした。
と、申しますのもガリアはいきなりロマリアと戦争になり、それに乗じて国中で反乱軍が暴れだしていたのでございます。
まったくガリア中がひっくり返るような大騒ぎで、国の半分近くが敵側につくという始末です。
イザベラ様はあわてて父のジョゼフ一世のもとへ行ったのですが、
「気のいらぬのなら国を出て行け」
と、こんな調子でまるでお話になりません。
このままでは国が滅びてしまうかもしれない。
本当に、困って、困って、どうしようもなくなってしまったイザベラ様は、使い魔を召喚されたのです。
始祖の血を引く自分が召喚するのだから、きっとドラゴンかグリフォンのようなすごいものが出てくるに違いない。
そうイザベラ様は思ったのですが、ゲートから出てきたのは、おかしな平民の子供でした。
変な服を着て、帽子をかぶり、両手に何か本を抱えていました。
これにはイザベラ様もショックをお受けになり、すっかり弱りはてて、その場に座り込んでしまわれました。
そんなことをしているうちに、戦火はどんどん広がり、敵の包囲はイザベラ様のおいでになるプチ・トロワまでせまりつつありました。
もはや、これまでか。そう思われていた時、召喚された子供がおかしなことを言い出しました。
「あのね、ぼくとイザベラが仲良くしたら、悪いやつらをやっつけられるんだ」
一体何を言い出すのでしょうか?
イザベラ様は笑って相手にされませんでしたが、
「顔を上げるんだ、イザベラ。やられっぱなしで悔しくないん?」
あまりにしつこく、それに不思議な自身を持った子供の態度に、イザベラ様もついにほだされました。
さて、その子供は一体何をしたのでしょう?
持っていた本をイザベラ様に渡し、それをイザベラ様がお返しになる。
こんな動作を二回繰り返したのです。
すると、どうでしょう!
パイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
そんな叫びと共に、プチ・トロワが吹き飛びました。
爆発でも起こったのでしょうか?
いいえ、違います。
優に50メイルを超えようという巨人がそこに聳え立っていたのです。
見たこともないデザインの鎧兜をつけた、大きな乙女でした。
そうです。
何とイザベラ様と不思議な子供は合体して、巨大な乙女となったのでした。
大きな乙女は大きいだけあってすごい力持ちです。
反乱軍やロマリア軍をちぎって投げ、ちぎっては投げ!
すっかりと勝ち戦気分になりつつあった敵軍を瞬く間にやっつけていきます。
敵の繰り出してきたゴーレムだって何のその。
純情ナックル。
パンチ一撃で粉々です。
その大暴れっぷりをごらんになられたジョゼフ一世はさすがに驚かれました。
大きな乙女の正体が、イザベラ様と平民の子供を知って、さらに驚きます。
無碍にあしらわれたことを怒っておられたイザベラ様は大きな乙女のままジョゼフ一世を捕まえてしまいます。
「父上! 私のことがどうでもよろしいのなら結構ですわ、そんな父上などいりません!!」
そう怒鳴りつけられました。
こうしてジョゼフ一世は力づくで王位を奪われ、国外追放になりました。
小癪なロマリア軍も反乱軍もその勢いでフルボッコです。
敵軍のガンダールヴという者が戦車という兵器を出してきましたが、そんなもの、大きな乙女の敵ではありません。
真上から踏みつけられてペシャンコです。全治六ヶ月の重症でした。
こうして大変なご苦労はありましたが、イザベラ様は使い魔と共に国難をお救いになり、その後女王に即位されたのです。
全てが終わった後、本を持ったあの平民の子供はどこかへ消えてしまいました。
しかし、子供の持っていたあの本はまだグラン・トロワの宝物庫に保管されています。
もしもまたガリアを脅かす悪が現れた時には、あの子供は再びやってくるでしょう。
そして、選ばれた者と共に大きな乙女となるのでしょう。
※『純情パイン』からみつおと古の交換日記を召喚
取り敢えず支援
>>721 奈良はルイズとタバサが危ない(ロリコン的な意味で)
あとモーホーでもあるからワルドが奈良尽くし食らうぞ
鉄人はテファに喚ばれたらパラダイスだろうな
確かにここ数ヶ月なみえ作品は矢継ぎ早だったので
マコリプとかねじめとかもお願いいたす。
奈良重雄テラナツカシスwwwww
ルイズの部屋でうんこ漏らすんじゃないか?w
元ネタ隠匿してるのは地雷や駄作ばかりだから読まない
ただの経験則だけどな
>>717 とりあえずメイジ剣客浪漫譚というくだらない洒落が浮かんだが
剣心はあの家事手伝い(笑)ぶりからすると、薫に会う前に召喚されたら
割とあっさり学院に居つくんじゃないかと思う
>>730 メロスとか凄い面白かったぞ。
読んでないかもしれんが。
>727
奈良はロリだがしつけには厳しいから、タバサはともかくルイズには鉄拳かましそう
>>731 抜刀斎時代だと、やりすぎてスプラッタモノになりそうw
逆に剣心状態だと極力戦闘は避ける傾向にあるから話が進みにくいかも。でもまぁ決めるときには決めてくれるし、やっぱ面白そうだ
ここに来てまさかのジョー@VIEWTIFUL JOE(アニメ版)を召喚。
ワニが大好物のあいつか
>>717 志々雄が召喚された場合、宗次郎とのやりとりの様に
ルイズかシエスタ辺りが修羅化しそうな気がするなぁ
シエスタがモット伯の屋敷に行く前日に
「自分は平民だから仕方が無い。平民は貴族には逆らえない」と言うと
「平民だから悪いんじゃねぇ。お前が弱いから悪いんだ」といわれて
世話になった餞別と受け取った脇差で
モット伯ぶっ殺すシエスタ…まで妄想出来た
その後、シエスタは確実に殺されるだろうけどな
正直モット伯って別に悪人でもないのに酷い目あいすぎな気が
>>739 悪人じゃないけど俗物だからね。人には好かれづらい。
姉妹サイトのSSのモットはキレイすぎて男前なんだよなw
何気に使いやすいキャラかもしれないww
最後の日本兵召喚
魔王らしくない魔王召喚
例えばエクソダ・セロ・クロウ(シャイナダルク)とか
魔王アロウン(TtT)とか
魔王ハリー(突撃パッパラ隊)とか
駄目だ一番最初のは知名度低過ぎるとかだけじゃなく基本畑耕したり電気椅子トラップ喰らったり
生贄にされた女性達に私刑にされたりばっかであまり先頭描写が……
魔王らしくないのはうえきの法則の植木の魔王もな。
アノン(ロベルト?)の魔王は悪魔のような感じで怖いから魔王らしいけど。
田中魔王を覚えている奴はおらんのか
>>745 数百年後にハルケギニアが征服されるんですねわかります。
いや、やっぱここは魔王美樹ちゃんでせう。
最大の問題はハルケに召喚されるとヒラミレモン無いからあっという間に
リトルプリンセス《覚醒》であっさり魔王らしくなってしまう罠
そこはそれ、設定次第でどうとでも。
夢の中で精神の一部だけが召喚されたとでもすれば良い。
すべては胡蝶の夢として一瞬の出来事とすれば問題もない。
>>748 真・恋姫†無双の魏の一刀思い出した
まあ一般人に毛が生えた程度だから召喚しても
ゼロ魔本編と大して変わらないが
付属として大陸一の踊り子とか謎の巫女さんとか医者王
も召喚されるなら別だが
原作終了後だったらだけど一応肩書きは軍人だぜ
色々な面でサイトよりは遥かに役立つだろ
しかし武人として特別腕が立つわけじゃないしなぁ
政策案出すにしても使い魔ポジションじゃまともに取り合ってくれないだろうし
恋姫は別スレがあったと思うが
>>743 >魔王ハリー(突撃パッパラ隊)
よりも、とびかげが魔王まんじゅう買いに行った温泉魔王のほうが面白そうだが……
契約でルイズにキスされて
「い……いきなり、ナニをするんだっ! このハレンチ娘! エッチ! スケッチ! ワンタッチ! 」
とかいいそうだよな?
ナイアガラ・リバース!
という業を思い出した
魔王らしくない魔王、ねぇ……。
召喚済だが“蝿の女王”の異名をもつぽんこつ大魔王ベール=ゼファー。
それ以外だと、どちらかといえば冥王な“冥刻王”メイオルティスとか、
ちゃん様なパール=クールとか、麻雀が強そうなアゼル=イヴリスとか、
鉄オタのリオン=グンタとか、正統派ヒロインなシャイマールとか……。
うん、やっぱりナイトウィザード系の魔王って魔王らしくないな(苦笑
>>726 そういやマコちゃんのリップクリームの
少女時代のザイアーがちょっとルイズっぽかった
ルイズはあんな大人になっちゃダメだよ!
そういえば最近、下がる男を見かけないね
成人ホビットのエロ画像販売で逮捕封印された魔王とか
>>758 何という懐かしさ
部下S他3名を虚無の使い魔にすると数が合うな
魔王らしくない魔王・・・・・・・・・北野君?
>>760 それはもうでてるよ。
更新されてないが。
>>753 とびかげと聞いて、虚無の使い手がピンチになると突如テーマ曲に乗って登場し、
勝手に他の使い魔と合体・変形して大暴れして去っていく第4の使い魔を想像した
>>755 エンダース様ならどうだろうか?
魔王らしい魔王だが、ある意味最も魔王らしくない。
>>758 ……思い出せない。なんだったっけ?
>>762 黄金忍者?
>>763 758は
神坂一の「あしたの大魔王」
アンソロ収録の奴ね
>>762 忍者戦士飛影か、第4の使い魔関係なしにも出てきそうだな
スパロボだと何の説明もなしにバイストンウェルまで来たりするからな、あの忍者
インパクトじゃ最悪だったなあの忍者
必死こいてダメージ調整してるところに空気読まずに出現し、二回攻撃で薙ぎ払って去っていくw
オモイカネのプログラムの中にまで出てくるのは誰が予想できたんだよって感じだしね〜
空気読まず出現といえばイビルジョー、とりあえず周りの使い魔全部捕食するな
下手するとシルフィですら喰われそうだな…
あいつの巣の中見る限り古龍ですら捕食してるっぽいし
空気読まずに出現というジャンルならスキル:寝取り 主役乗っ取り を持つ
キラ・ヤマトに勝るヤツがいる訳ないじゃないか
食うといえばトリコから召喚とか
四天王クラスならヨルムンの装甲も素手でぶち抜けそうだし
忍者戦士飛影から召喚すると……
1、定番のシエスタの曾祖父は飛影の関係者(イルボラとか)
2、零影というゼロの使い魔にぴったりの名前(タルブにありそう)
こんな感じになりそうだ。
忍者と聞くとどうにもカルフォルニア巻きの忍者を思い出すなぁ。
はっはっは、みんな何を言っているんだ
忍者といえば中谷一郎氏以外ありえないよ
再び見参カクレンジャー
もういっそ乱太郎を召喚してしまえ
忍者談義も医者と並んでよく起こるがやっぱ決めは通りすがりのサラリーマン忍者だな。
しかし最近投下が少ないのが気になる…
…そういえばパワポケ5の裏サクセスってメインキャラ全員忍者じゃなかったっけ?
ルイズって水の心を覚えたら虚無れなくなる?
名探偵コナンを召還
第一の殺人事件:シエスタ
最終的にワルドも殺人事件の被害者に
忍者といえば彼岸島だな
という訳で彼岸島の吸血鬼でも召喚したらルイズ喜ぶんじゃね?
しばらく血を吸わなかったら従順かつ強力な邪鬼が生まれるわけだし。見た目はともかく。
銀狼怪奇ファイルから銀狼召喚
首無しメイジから始まりモット伯邸の絵画の死神出現にフーケ謎の人体発火死と殺人事件頻発
全ての黒幕はタバサ
忍者ならシュシュッと参上なスペース忍者シュリケンジャーをお忘れ無く
何時でも変装して非常時しか出て来ないから展開させ辛いことこの上ないな
後は世界忍者(自称)ロジヤー・サスケとか
最近だと獅子神バングとか
とびかげが出てこないのに泣いたw
まず間違いなくとびかげの本がハルケでも出回ってたりするんだろうなw
忍者と言えば、ブラックラグーン小説版からシャドーファルコンを
色々勘違いしまくったNINJAというコメディリリーフの癖に、レヴィやシェンホアすら圧倒する実力者という美味しいやつでなあ
凄い騙されやすい性格してるから、うまくすれば忠義の塊になってくれるだろうよ
でもって、タルブの佐々木氏に、実は忍者の末裔属性が付いたりしてなw
忍者?というか忍犬パピィをサムスピから召喚。
ルイズ「いってっ、パピィ!」
パピィ「わおーん」
ギーシュにラッシュドッグ、フーケにマシンガンドッグ、ワルドにメガストライクドッグ。
ルイズは何もしなかった。
コナン「部屋の唯一のカギは室内にあり、部屋にはカギがかかっていた。つまりこれは密室殺人。不可能犯罪ですよ」
タバサ「ロック」
コナン「傷口を見てください。相当な切れ味をもった刃物とそれを扱う腕がないとこうはいきません。犯人は傭兵の可能性が高いはずでしょう」
タバサ「エア・カッター」
コナン「待ってください。ミスタ・ギトーにはアリバイがある。犯行時刻に我々と一緒にいたというアリバイがね。彼は犯人ではありませんよ」
タバサ「遍在」
コナン「バーロー・・・」
シルフィ(お姉様は恐ろしい人なのねー)
ファンタジーと推理物は水と油だなw
なぜ白土三平忍者が話題にあがらない……!
ファンタジーと推理もの…
つまり鎌倉ものがたりから誰か召還される
>>790 カムイ伝なら一部厨設定好きが大好きな革命ものだけど、
その厨設定好きが嫌う泥臭いすぎるストーリーと絵柄だからじゃないかな。
「金田はじめの事件簿」から、探偵ポルノを召喚
>>792 更にいうと連合赤軍とかあのあたりが「革命のバイブル」みたく扱ったのも
影を落とす要因なのでは
忍者・・・つまり音速丸召喚か
16:00からVol.3を投下しますが、よろしいですか?
ちなみに今回才人が登場します。
>>795 召喚済み
もう若本ヴォイスが聞こえてきそうな良作だったが残念ながら・・・・・・
>>794 連合赤軍の内ゲバを表わすがごとく、革命指導者の主人公が民衆(百姓)にぶっ殺されるあたりもなw
「ゼロニスター Vol.3」
「牛乳……、牛乳は要らんかね……」
朝靄に煙る町を、1人の男が牛乳瓶を積んだ荷車を引いて歩いている。
「美味しいよ……、とっても濃いんだよ……」
早朝の路上には誰もいないにもかかわらず売り歩くように呟く男。その顔には不気味な笑みを浮かべているような奇怪な仮面。
「加工乳なんか目じゃないぜ……」
――ガシャアッ!
男は牛乳瓶を2本手に取ると、道端の民家に設置されていた牛乳瓶受けの箱に乱暴に放り込んだ。
「へっへっへ……、夕方の騒ぎが楽しみだあ。デュマさん、あんたもついてないなあ……」
トリスタニア郊外の林で牛乳配達員の遺体が見つかるのは後日の事である。「彼」が殺して配達員になりすましたのだ。
彼の名はデリバリー・ヘル。町は間も無く彼のもたらす恐怖に覆われる。
「ミス・ヴァリエール!! ミス・ナックルスター!! 事件です!!」
それから数時間後、町で発生した事件を知ったシエスタは教会へと急いでいた。
「トリスタニアで牛乳を飲んだ人達が大変な事に……うっ!?」
勢いよく教会の扉を開けたシエスタは言葉を失った。
何があったのか教会内の壁といわず床といわず至る所に穴が開いたり亀裂が入ったりしていて、ルイズ・サタニスターは立つ事さえままならない様子で家具の残骸で体を支えつつ息を荒げていた。さらにサタニスターのナックルがシエスタの足元に転がっていたのだ。
「ミ……、ミス・ヴァリエール!? ミス・ナックルスター!?」
「ぬかったわ……。あたしとした事が……」
シエスタは慌てて2人の元に駆け寄る。
「何があったんですか!?」
「不運その1、変な牛乳飲んだみたい……」
「ええーっ!! 飲んだんですか!? 今先生方が大騒ぎされてるんですよ!? あれは異物がでたらめに混入されていて……、死人も出てるんです!! お二人とも敵が多いのに……。何で宅配の牛乳を飲むなどという迂闊な真似をしたんですか!!」
「あたしだって新鮮な牛乳が飲みたいのよ!!」
「それよりシエスタ……、あなたは逃げなさい」
逆ギレしてシエスタを殴るサタニスターを制するようにルイズが話を続けた。
「え?」
「不運その2!! 敵襲よ!! あほみたいな格好の敵が襲ってきたから吹き飛ばしたけど……、まだくたばってない!」
その時、シエスタの背後の扉に音を立てて亀裂が入る。そして次の瞬間、
――ドゴオッ!
「サタニスターっ!! まだ勝負はついてないぞーっ!!」
扉を周囲の壁ごとぶち破って、全身金属鎧で固めたような人物が3人の前に現れた。
「きゃあああ〜っ!!」
「あんたまだ私達とやる気!? そっちだって結構こたえてんでしょ!?」
「うるさい!! お前らは必ずぶっ倒す!! お前らを倒せば周囲が俺に一目置くのは間違い無い!! 仲間は『まだ戦うな』って言ってたけど知った事か!! 俺の手柄――!!」
全身から火花を散らしている金属鎧がそこまでまくし立てたところで、突然その動作が鈍くなった。
「くそ……、動力系統が故障したか。体の動きがひっかかる感じがするぜ……、ぬうう……」
「イ……、インテリジェンスアーマー!? 何でこんなのがいるんですか……!?」
金属鎧の隙を見逃さず、ルイズは教会入口近くに転がっているナックルを指差す。
「シエスタ!! 床に落ちてるナックルスターのナックルを拾って!!」
「装着前にあのメカ野郎にぶっ飛ばされて転がったのよ!! どっちが格上かこいつに思い知らせてやる!!」
慌ててナックルに駆け寄って拾い上げるシエスタ。そんな彼女にナックルスターは奇妙な忠告をする。
「こ……、これですね!! ミス・ナックルスターの武器……」
「あっ、それと……、何か見えても無視して!!」
「えっ!?」
♪緑にかがやく 母の星 ちからのかぎり まもりぬけ
あらしのくんれん のりこえて めざすはしょうりのほしふぶき
と、いふワケでゼロニスター支援
・・・・・・・・・元ネタ古すぎたか?判る奴ぁ居ねェな、きっと
次の瞬間、シエスタの目の前に死んだはずのモット・貫通のワルドが出現した。
(殺されろ……呪われろ……)
(お前も来い……)
いや、2人だけではない。いつの間にかシエスタの周囲には数十人もの生気の無い人影が出現し、彼女に呪いの言葉を吐いていたのだ。
「え……!? え……!?」
(地獄に落ちろ……)
(死ね……死ね……)
(くたばれ……)
(手首切れ……)
「あ……、あわわ……」
「シエスタ!! そいつらにかまっちゃ駄目!! 早くナックルをこっちに投げるのよ!!」
サタニスターの叫びも人影達の恐るべき姿と呪いの言葉に半ば恐慌状態のシエスタには届かず、
「ああああああああ!!」
あまりの恐怖と衝撃にシエスタの両耳からは鮮血が噴出し、股間からは黄金色の液体がほとばしる。
「あひいいい〜っ!!」
「シエスタ!!」
(何やってんだ……!?)
悲鳴を上げるシエスタと彼女を何とか落ち着かせようとするルイズ・サタニスターだったが、金属鎧にはシエスタの身に何が起こっているのかさっぱり理解できないようだった。
「ナックルから手を離せば『そいつら』は消えるわ!! 投げなさいっ!!」
「ひいいっ!」
やけくそになったかのようにシエスタはナックルを放り投げ、
――ガッシイイ!
宙を舞うナックルにサタニスターは1発で両腕を突き入れて装着した。
「はあっ、はあっ……。い……、今のはいったい……!?」
人影の消失を確認して、荒く息を吐きつつ落ち着きを取り戻そうとするシエスタ。一方サタニスターは自分の周囲に出現した人影達を睨みつける。
「あたしの鉄拳によって敗北を喫した殺人鬼の怨霊どもよ、あたしの邪魔をする気かい? あたしを誰だと思ってる? このサタニスターに殺された時の恐怖を思い出させてあげようか!?」
(……ひっ!?)
(……ひいいいい!)
(……サタニスターだああああ!!)
サタニスターの気迫の前に、人影達は恐怖の叫びを上げて消滅していった。
「ふん!」
「ミ……、ミス・ナックルスター……、今のは……?」
「何でもなくてよ!!」
「それより奴をぶっ倒さないと……」
シエスタに背を向けたまま答えてよろよろ立ち上がるルイズ・サタニスター。
「まだ戦う気なんですか!? 顔色悪いのに……」
「当然!! 私達の教会を荒らした報いを与えてやるわ」
「上等だぜ、サタニスター……」
2人が立ち上がるのとほぼ同時に、金属鎧も体中から火花を飛ばしつつ強引に体を動かし始めた。
(駄目です……!! いつものお二人なら1人でも勝てるかもしれませんけど……、今は毒を盛られた状態なのに……!! どうしましょう……、どうしましょう……。私に何ができるのでしょう……!?)
「来なっ、機械野郎!!」
「うおおおお〜っ!!」
「今のお二人を倒してもあなたの手柄にはならないです!!」
互いに一撃を浴びせるべく駆け寄っていくルイズ・ナックルスター。2人を迎え撃つ金属鎧にシエスタは毅然とした態度で叫んだ。
「なぜならミス・ヴァリエールもミス・ナックルスターも、毒を盛られて手負いの状態だからですっ!!」
「何い!? 『毒を盛られた』だと!? どういう事だ!? 説明しろ」
「シエスタ!! でしゃばるんじゃないわよ!!」
サタニスターの静止にも耳を貸さず、シエスタは金属鎧の説得に入る。
「この町で牛乳に異物が混入されるという騒動が起きています。お二人も被害に遭っています。異物の成分はまだわかっていません。
今のお二人を倒せても……、それは『毒入り牛乳』のおかげですよ? そんなので勝って嬉しいですか? 『毒入り牛乳のおかげで勝てた自分』に誇りとか感じますか?
不用意に変な牛乳を飲んだお二人にも落ち度はありますが、今ここで倒したらもう取り消しはきかないですよ?(ど……、どうか逆上されませんように……!!)」
シエスタの言葉に、金属鎧は彼女を威圧するように1歩前に出る。
「……なあお前、俺がそんな事にいちいちこだわるやつだと思うか?」
「ええ、思いますとも。さっき言ってましたよね……。『俺1人の手柄だ』とか何とか」
「………!! じゃあ質問を変えるぜ。なぜサタニスター達をそこまで庇いだてするんだ?」
「そ……、それは……、ミス・ナックルスターもミス・ヴァリエールも友達だからです。友達を庇うのにいちいち理由が要るんですかね!?」
「おい、サタニスター」
金属鎧はシエスタに視線を向けたままサタニスターに声をかけた。
「何よ」
「あとでこいつを褒めてやれ。何の力も持たない女の子が体を張ってお前を守ろうとしたんだ。……それから覚えとけ。俺の名は平賀才人。『例の大会』でお前を倒すのは……この俺だ!!」
――ゲシッ!!
叫びと共に才人はサタニスターが装着しているナックルを殴りつけると、出入り口に向かっていく。
「じゃーな。今日のところはその子の顔を立てといてやるぜ」
才人が去っていったのを見送って、シエスタはようやくひと心地ついた様子になる。
「……ミス・ナックルスター、あとでお風呂借りてもいいですか?」
「あいつが壊したよ」
『トリスタニアの宅配牛乳に大量の水の秘薬が混入された事件ですが、なんとたった今犯人から声明文が届きました!! 文中には意味不明な表現がありますが、それも含め全て読み上げてみたいと思います』
その日の昼、遠見の鏡ではデリバリー・ヘルが起こした事件の騒動を報じていた。
『えー……、「今回の事件は私デリバリー・ヘルの怒りを示すものである。
私はアカデミー研究員のエレオノール・アルベルティール・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに対し、ウサギ耳・オーバーニーソックス・スクール水着・羽着用で研究活動を行うよう文書にて伝えたが、愚かなアカデミーは56回にわたって私の指示を無視した。
今回の事件はその報復と考えよ。私の要求が聞き入れられない限り……」』
とある厨房。1人の男が遠見の鏡から流れる音声を聞きつつ煮立った大鍋の中身をかき混ぜている。
その大鍋の中では、ぶつ切りにされた野菜類に混じって人間の生首も煮られていた。
『「同様の事件はくり返されると考えよ」』
「信じられねえ変態野郎だな。世も末だぜ、ったく……」
――「トリステインからの食人鬼」 マルトー・シュバルツマン
『「なお、『例の大会』に参加する者に告ぐ」』
とある街角。マントを纏った少女が、キャンディー片手に店で売られている遠見の鏡の画面を眺めている。
『「大会中の食事には十分気をつけたまえ。私はお前達に負けるつもりは無い」』
「たわけた事抜かすんじゃないよ、ケツメド野郎が……。あー、早く大会始まんないかな……」
――「サビエラの吸血嬢」 ブラッドロリータ
『……以上が声明文の文面であるわけですが、はたして「大会」とはいったい何を意味するのでしょうか?』
とある工房。顔を仮面で覆った女エルフが、真っ赤に熱せられた刃物を金槌で叩いている。
刃物を水につけて冷やした後仮面を外した女エルフ……ビダーシャルは、水差しからグラスに注いだ水を1口飲んで呟く。
「『大会』まであと1週間……。どいつもこいつもテンパッてきだしたね。私の事見守ってね、パパ……、ママ……」
その視線の先には、開けられた小さな鞄に入っている男女1組の人形があった。
805 :
ゼロニスターE ◆AS3lWBPbwBc6 :2009/08/27(木) 16:21:04 ID:6R24D/ZO
『こういった無差別殺人を引き起こす犯人の傾向としては、現代社会のルールを逸脱して見せる事で自分に万能感を感じるというタイプが最も多く考えられ……』
「うおらあああ〜っ!!」
――ゴッシャアッ!
回転しながら着地した勢いのまま、毛皮の服を纏った青年が遠見の鏡を叩き割った。
「なあサイトよ。俺はなあ……、悪党には2種類存在すると考えている。仲間内での秩序を守れるタイプと、勝手な行動を起こしてはチームに迷惑を……」
「『迷惑』? 別にお前らに迷惑かけたつもりは無いぜ」
「『足並みを揃えろ』って言ってるんだよ……。『サタニスターはまだ殺さん』という意見で俺達はまとまってたよな? 『大会で殺す』という話だったよな?」
そう声を荒げる青年の顔には毛が生え始め、牙も爪も鋭く伸びていった。
「それをふまえた上でお前に問う!! 自分の力を周囲に誇示したいというだけの動機で、お前はその取り決めを破った……。これは俺を!! 仲間を!! なめていたからこそ為せる業だろう、違うかサイト!?」
――メンヌヴィル
小太りの少年も乱杭歯を剥き出しにして才人を睨みつける。
「しかもサタニスターへの攻撃を途中で『取りやめた』のは……、デリバリー・ヘルの牛乳を飲んで弱ってるのが面白くなかったからだそうじゃないか」
――風上のマリコルヌ
「それだったら初めっから襲わずとも結果は同じだったって事だな〜っ!! 自分1人で納得してるんじゃあねえーっ!!」
――ガシャアッ!
メンヌヴィルは才人めがけて力任せに遠見の鏡の残骸を投げつけた。
「やめときな、メンヌヴィル!!」
「女がしゃしゃり出るな!!」
――バギャン!!
飴姫が左腕を大きく振った瞬間、壁に幅20サント・長さ4メイルはある巨大な亀裂が深々と刻まれた。
正体不明の斬撃の威力はそれだけにとどまらず、その延長線上の空を飛んでいた鳥の翼までも切り落とす。
「……うむ!!」
切り裂かれた壁の亀裂から一刀両断にされた鳥が墜落する様子を見て、メンヌヴィルも頭が冷えたらしく顔が元の青年のものに戻る。
「『大会』は!! 1対1の決闘式で行われるわ。対戦相手はくじ引きで決められる。あんた達2人が対戦相手としてぶつかるようであれば、その時存分にやり合えばいいさね」
――飴姫
「でもその前に人数を振るい落とすため『予選』が行われ、その予選で一定のポイント数を稼げたやつだけが本戦に参加できる。
そのためにはあたし達は『一応その場では』協力し合う必要があるんだよ。だから喧嘩はするな。あたしだってあんた達に対しては何かと我慢している……」
「……ちっ」
飴姫の言葉に舌打ちしつつも才人は矛を収めた。
(しかしそれにしてもサタニスター……、薬を盛られた状態でこの俺と渡りあってたとは……。屈辱だぜ……)
そして1週間後!!
雨のラ・ロシェール。停泊している空船の前にルイズ・サタニスター・シエスタの姿があった。
(『大会』の招待状によれば、この港に迎えの者がいるとの事)
(待っていなさい、殺人鬼ども……!! ビダーシャル……、才人……、デリバリー・ヘル……、その他大勢……!! お前達に引導を渡すのは、このサタニスター!!)
「ミス・ヴァリエール、ミス・ナックルスター!! 頑張ってくださいね!! それじゃ!!」
そそくさ帰ろうとするシエスタの肩をサタニスターはがっしりつかむ。
「一緒に来いって言ったでしょ。付き人がいてくれた方が何かと助かるもの」
「嫌です〜っ!! 付き人ならミス・タバサにやってもらえばいいじゃないですか!!」
「タバサは牛乳事件の処理に終われてて、少し遅れるのよ!! 大丈夫だってば!! 何があっても私達が守ってあげるから!!」
言い合っている3人の前に、停泊している空船から1人の男が降りてきた。
「ようこそお越しくださいました。私、『虚無壺の会』のクロムウェルと申します。招待状を拝見……」
クロムウェルに促されてサタニスターは招待状を彼に手渡す。
「では改めまして、ハルケギニア最強殺人鬼決定戦へようこそ……。
こちらは『虚無壺の会』が出場者の方々のためにご用意致しました、専用空船でございます。ビュッフェ・シャワー・ベッド完備でございますよ。会場への到着は明朝を予定しております。
他の出場者との同乗になりますので、無駄な争い事はなるべく避けた方が賢明かと……。くくく……」
3人が甲板から船内に入ると、多数の先客達が一斉に彼女達の方に視線を向けた。
長剣を手にした者、ナイフが収まった鞘を首から提げている者……。一見すると平凡な服装で武器も持っていない者も多いが例外無く剣呑な雰囲気を漂わせている。
(船内に血が付いてます……。もう誰かが殺し合ったんです……!!)
(シエスタ……、絶対に連中と目を合わせるんじゃないわよ……)
以上投下終了です。
途中sage忘れてしまい申し訳ありませんでした。
……新キャラ続々登場ですが、果たして何人生き残れるやら……。
|} ,_tュ,〈 ヒ''tュ_ i;;;;| 赤軍と聞いて来ました。貴族は全員シベリア送り。
まとめのメガテン系の召喚を読んでて鳩の戦記思い出した。
「日替わり使い魔」でルイズが妻子もちの男に惚れてるが
これをルイズ父が知ったら大体こんな感じだろうか
双方同意で交際があると誤解した場合
→ルイズが不倫に手を染めたと真っ白になる。どうにか立て直すと烈火の如く怒り、相手の男をマジ抹殺に動く。
ルイズの片思いだと正確な認識をした場合
→それはそれで許せん!ヴァリエール公の力で男を家庭から引き離してでもルイズの想いを遂げさせてやる。
恐らくは前者に近いだろう。
が、公爵はなんかより格段に恐ろしいお方がおるだろ、作中の描写を見る限り
カッター・トルネード(フルパワー)>バギクロス(ダイ大、アベル参考)
みたいだからなあ。
さすが、どのSSでも大抵最強キャラとされるだけはある。
ファンタジー推理モノ
上遠野浩平の「事件」シリーズ(講談社ノベルス)
ファンタジー推理ものときいて矢神ライトがアップし始めたようです
>>811 アホ親だなぁ、だからこそルイズの人となりがアレなんだろうけどw
リバースブラッドとか異能系推理モノだな
魔探偵ロキはどうだろう
凄いんだか凄くないんだか良くわからん神様だったな
飛影登場で
突然メカニカルな外見に変身させられて変形合体する
ヴェルダンデ、フレイム、シルフィード、ロビンを想像した
名前は・・・どうなるんだろう
しかしサイトは親の前でレイプ紛いのことをしてたわけだから仕方ない
>>816 おっと、フレイムとヴェルダンディが獣魔になるべく飛影の争奪戦を始めたぞ
あっ、隙をついて海魔になろうとしたロビンが踏み潰さたぁっ!
>>811 ダイのほうはさすがにバギクロス>カッタートルネードだろ
>ファンタジーと推理物は水と油だなw
ダーシー卿シリーズを読む事をオススメする
821 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 20:55:51 ID:xuU5Dd/+
823 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 20:57:03 ID:xuU5Dd/+
誰?あんた」
私は召喚した「モノ」を見て唖然とした。
なんで人間・・・いや・・・これは人間なの?。
上半身裸だわ首の後ろになにか黒い角が生えてるわ、しかもその素肌全体になにか異様な文様がびっしりと
刻まれているさらにその文様の縁は淡い緑色に妖しく光っていた。
「なんとかいいなさいよ!」
金色の瞳が突き刺さる・・・・なんていう冷たい目つきなんだろう・・・。
顔つきは文様のせいで目立たないが彫像のように整っている、かなり色男の部類だろう・・しかしその表情は氷のように冷たい。
わたしは思わずゾッとした・・・その時。
「ミス・ヴァリエール!」
後ろで控えてたトリステイン魔法学院の教師で炎の魔法の使い手ミスタ・コルベールが私の前を庇うように遮る。
「なんですか!ミスタ私は・・「いいから下がりなさい!」」
とミスタは私を左腕でかばいその文様の男に杖を向けた。
いつもの人のいいミスタコルベールの表情が非常に厳しくなっている・・初めてだ・・この先生がこういう顔をするのは・・。
いつものミスタの様子に私をからかいをしようとした連中もいつもと違う様子のミスタを見て何事かとざわめいた。
男は氷のような表情のままでキョロキョロと見回していた、そしてフッと笑った。
「どうやら俺は召喚されちまったようだな」
と皮肉めいた口調で言い、そして腰に右手を当てて見下すように私たちを見る。
「で?俺になにをさせたい訳?」
そして更に言葉を続ける。
「どっかのクソッタレどもを皆殺しにしたいのか?あん?」
と人を見下したような声色と共に物騒な台詞を放つ。
私はカチンと来てそいつに杖を向けようとしたがミスタコルベールに止められた、そして恐る恐るアレにたずねる。
「あなたは・・・いったい何者ですか?」
「てめーらが呼び出したんだろうがよ・・・なにが目的よ」
「あ・・失礼・・こちらが先に名乗るのが礼儀ですな・・・実は・・・」
コルベールは軽い自己紹介と事の次第を説明した。
文様の男は魔法学園トリステインの行事召喚の義により召喚され、
そしてそれを呼び出したのは私ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという事、
さらにこの儀式が成功しなければ私は落第すること。
824 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 20:58:41 ID:xuU5Dd/+
「くくく・・・はは・・はーっはははは!!!」
いきなり男はゲラゲラと笑い出した。
「なにがおかしいのよ!」
「くく!この俺がガキのお遊戯に呼び出されたのかよ!!!しかも使い魔になれって?面白れぇ話だねえ…笑えるわ」
男は散々笑って一息いれ、
「うぜえ」
と冷たく言い放った。
「な!?」
私の顔がみるみると怒りで顔が赤くなった。
「なにがうぜえよ!ふざけないでよ!なに!?その態度!せっかく私が呼び出してやったのに!何様のつもり!?
私だってね!本当はドラゴンとかグリフォンとかそういの呼び出したかったのよ!
散々失敗してやっと呼び出したと思ったらこんな変な格好した態度が悪い奴だし!もう最悪!!!」
今まで溜まってた鬱憤を吐き出すように怒鳴り再度杖をこのくそ生意気な変人に向け魔法を詠唱した。
「な!?」
ミスタコルベールの顔面が蒼白になった。
「ファイアボール!」
と私は怒りにまかせて魔法を放った。
ドッゴオン!と爆発音がなる・・やはり魔法は失敗し炎は出なかったが、あの男を吹き飛ばすには十分だ!
「ああ・・・なんという事を・・・・」
ミスタコルベールはふらつきながら膝をつき残り少ない髪が数本ハラハラと落ちた・・ごめんミスタ。
煙がどんどん晴れていく・・・。
「・・え?」
私は驚愕した、私の失敗魔法を喰らった男は吹き飛ばされる所か傷一つも負っていなかった。
悔しい話だが私の魔法はいつも失敗して爆発を起こす、しかし成功云々はおいといてその威力は教室を吹き飛ばすほどだ、
更に今はなった爆発は今までの中で一番強烈なものだった・・はずなのに・・。
「ふうん、メギドじゃぁねえみたいだが、万能魔法使えんのか・・ガキのくせにやるじゃん」
周りには半径3メイルのクレーターが作られていたというのに男は無傷だった…どんな化け物なのよ…。
男は首を横に振りゴキゴキ鳴らしながら私に近づいて来る。
殺される!っと思った・・しかし
ポン
と軽く頭を叩かれた。
「気が済んだか?じゃあな」
男はポケットに手を入れだるそうに歩く。
完全に見下されてる・・・私はそう感じさらに怒気を上げた。
「待ちなさいよ!」
「なーんだよ?」
男は不愉快そうに私を見る。
「あ!あのう!」
とミスタコルベールが横から口を挟んだ。
「だからあんだよ」
「いきなり貴方を召喚したあげくこんな事になって申し訳ございませんでした」
「で?」
「そちらもいきなり見知らぬ所に召喚されて困りますでしょう・・お詫びとしてこちらもなんとか協力しますので・・・」
「使い魔になれってか?」
「う!?」
企みを見透かされて冷や汗をかくミスタコルベールだった。
>>819 序盤しか活躍してなかったような、しかもそんなに強いってイメージも…
待て
落ち着け
sageろ
とりあえずsageてくれ。話はそれからだ。
828 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:06:58 ID:xuU5Dd/+
ああ〜〜申し訳ないです; なんというお馬鹿なんだ自分は〜
もっとニちゃんの事勉強すればよかった;;
お世話がせしました;
>>811 おっ母さんならルイズを諌めるだけな気がするけどな
830 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:10:08 ID:xuU5Dd/+
ミス・ヴァリエールが呼び出したこの得体の知れない男を見る。
その変わった容姿もさることながら、全身を凍りつかせるような威圧感、こっそりディテクトマジックをかけて見たら・・・・、恐ろしいものを感じた
底の見えないほどの闇の深淵のような魔力を感じた・・・ミスが放った失敗魔法を喰らってもぴんぴんしてるほどの強靭な肉体といい何者なのだ・・・この男は・・恐らく人間でもない、
亜人?といってもこのような亜人なぞ初めて見る。
本当なら逃げ出したい・・・しかしこの異常な力をもつ男を野に放ったらどうなるか・・・そしてなによりも私の生徒がせっかく呼び出しのだ・・なんとか使い魔にさせてやりたい・・。
ミスヴァリエールどういう生徒?と聞くと、魔法の使えない出来損ないの生徒と言えるだろうそのために、魔法の使えない「ゼロのルイズ」と呼ばれ学校中の人間から蔑まれていた。
だが私は知っている彼女が毎夜毎夜血の滲むような努力をしてきたことを・・・。やっと彼女の努力が実るときが来たのだ、教師としてこの儀式を完遂させてあげたい。
しかしどうする・・・説得もあまり通じなさそうだ・・下手な言葉を言ったらどうなるか…下手したらこの場の全員が皆殺しにされるかもしれない、彼にはそれを簡単に実行できる力があるのは確実だ。
奴との最終決戦を終えたオレは大魔王ルシファー以下その部下達とダンテ兄ぃと別れたあと、アマラの宇宙をさまよっていた。
今更元の世界に帰ろうとは思わないし…無理だろこんな格好じゃ、かといって行くあても無い。
途方にくれた時突如と鏡が現れた。
触れてみると手が素通りし、中を覗くと暗い空間に長く光る道が連なっていた。
恐らくなにかのゲートだろ。
危ねぇなと感じたが、このままこんな退屈な所にいるよりはマシだろうと思いくぐってみたら、今の現状である。
二人の教師と生徒であろう二人組を見る。
ハゲな教師は必死に生徒をかばって俺に交渉をもちかけている。
いい先生だねぇと素直に思った。
今時こういう先公はいないだろう。
たとえ世界がどんなに変わっても・・・私が力になってあげる・・・・。
ふとあの女の言葉を思い出した・・・・。
東京受胎に加担して俺にその言葉を放ちながら・・・結局利用したあの女教師の言葉が・・・。
東京受胎・・・それは世界を破壊し新たに新世界を生む為の儀式・・・。
その日東京は死んで・・・俺は悪魔へと転生した・・・。
ボルテクス界となった東京は地獄・・・まさに地獄だった・・人は1部を覗いて死に絶え思念体と化し・・・
あらたな住民として悪魔と言われる異形なるものが現れ、弱いものから片っ端から支配され殺され喰われる弱肉強食の世界と化した・・・。
おれはあの女の言葉を信じて荒廃と化した東京を歩いた・・数々の悪魔を屠り・・死を司る魔人も潰し下僕にし・・そして悪魔狩りとの死闘を潜り抜け、もがき足掻き生き続けた・・・。
それなのにあの女は会っても結局なにもしてくれなかった・・しかも俺を利用するだけしといて・・・・その存在を消してしまった・・・。
それに比べりゃあ、いい先公に恵まれてるじゃねえか・・・なあそこで俺にガンくれてるピンクヘッド。
俺はピンクの髪をしたガキを見る。
身長は150程度かかい顔はまあ悪くない、いわゆる美少女系って奴だ・・かなりlvは高いほうだ・・だが、
胸が無い、たしかに一応膨らみはあるがでかくも無く普通でもない。まあ俺には確実にストライクゾーンには入らないが、俺がいた世界でのロリペド野朗どもなら鼻汁撒き散らしながら喜ぶだろうよ。
・・・・しかし切羽詰ったツラァしてんだ・・・そんなに落第はいやかい、どこの世界も似たようなもんだねぇ。
それにしても使い魔になれってか・・・これが俺にかけられた「呪い」かねぇ・・・・、
と俺に呪いの言葉を吐いて消滅した全ての世界を司る大いなる存在の言葉を思い出した・・・。
「おい・・・オッサン」
「な・・なんだね!」
男の言葉にコルベールはビクっとした。
「使い魔の件・・受けてもいいぜ」
本当は人に利用されるなんざ簡便なんだがなぜか使い魔になってやってもいいと思うようになった、ここで楽隠居するのも悪く無い。
>>828 テンパりすぎw
お騒がせしました だろ
832 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:12:51 ID:xuU5Dd/+
「な・・・なんと!」
「ただし・・・条件がある」
「なんだね?」
「服くれや」
「・・それはもちろん」
コルベールはこの格好が変だと自覚してたかと思った。
「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しをさせてください!こんな変な格好をした奴が召喚されるなんて、間違いです!」
渋い顔をして不服そうにルイズは猛抗議をする。
「ミス・ヴァリエール、せっかく彼がそう申しておるのだ・・・そんな事言っちゃいかんぞ!。それに召喚の義はやり直しは規則に反する」
「そんな・・・・」
まるで死刑宣告を受けたの如くルイズの顔がみるみると絶望の色に染まる。
「さて儀式を始めなさい」
「はあ・・仕方ないわね・・こんな事・・・あんたみたいな奴にやりたくはないんだけど…とりあえずしゃがんで。」
大きくため息を吐きながら杖でチョイチョイと文様の男に指し上下にブラブラした。
男はそんなルイズの態度に腹を立てるでなく、素直に従った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
やけくそに淡々と呪文をとなえ杖を男の額に置きゆっくりと唇を近づける。
「・・・使い魔の儀式ってえのは随分と情熱的だねえ」
男は呆れた様に言った。
「うっさいわね!いちいちムカツク男ね!じっとしてなさい!」
ルイズの唇と男の唇が重なる。
(うう・・・・私のファーストキスがよりによってこんな奴に・・・・。)
ルイズは忌々しげに唇を離した。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コンクラクト・サーヴァント』はきちんと一発でできたね」
とコルベールは顔を引きつりながら笑顔を作り言った。
「相手は野蛮な原住民だから契約できたんだからよ!」
「そいつが高位の幻獣だったら契約できないって!」
何人かの生徒が笑いながら野次を飛ばした。
「な!!な!」
コルベールは一気に血の気が引いた、やっとこの場は一応穏便に済ませそうなのにここでこの男を怒らせたら酷いことになる・・・、
へたしたらこの場の連中は皆殺しに!!!。
とコルベールは心配してたが・・・当人の男は・・・、
ポーカーフェイスをしているために表情がわからない。
(野蛮な原住民ねぇ・・マハムドオンしたろうかい・・・。)
そんな物騒な事を考えていた・・・と同時にハッとなった。
(むかついてる?俺が?さきほどの事といい・・・この世界にきてから・・感情が戻ってるのか?)
と疑問に思ったと同時に男の体が左手中心に熱くなり痛覚を刺激した。
左手を見るとなにやら文字が浮かんできた。
「・・・なんだぁ?このギルガメス文字みてえのは。おいおっさん俺の左手にこんな文字が浮かんできたぞ」
「おお!拝見してもよろしいでしょうか?」
「いいぜ」
「でわ失礼して・・・」
コルベールは恐る恐る男の手を取り、眼鏡を直して左手に刻まれたルーンを見る。
「ふむ・・・珍しいルーンですなあ」
「なんだ?これは」
「これは使い魔のルーンです。使い魔には必ずこういう文字が浮かび上がるのですが・・・このルーンは・・珍しいですなぁ」
と目を輝かせながらコルベールは言った。
「フーン使い魔のルーンねえ」
まじまじと自分の左手の甲を見る・・・・しっかりと刻まれてる文様に浮かぶルーンはミスマッチに見えた。
「では・・改めて・・・」
男はルイズを見てフッと笑う。
「俺は神倉翔・・・コンゴトモヨロシク」
833 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:15:21 ID:xuU5Dd/+
はあ・・・最悪・・・・。
今日は散々だ…サモンサーヴァントに成功して喜んだら…この結果だ。しかも大事にとっておいたファーストキスも奪われて…。
ルイズは涙が出そうになったが堪え後ろについてくる自分の使い魔を睨むように観察する。
何度も言うようだが、たしかにこの男の顔つきは整っている、あの文様があるにも関わらずコルベールにもらった白いシャツを着ても意外とサマになる、
この変な髪形治して文様取って貴族の服を着せればそれなりにいい感じになるだろう…真顔で入ればだ。
男はルイズの視線に気づいてシニカルな笑みを浮かべルイズの癇に障った、少なからずとも馬鹿にされるのを馴れているとは言え、こんな平民だか亜人だかわからないような輩にこんな笑みをされて黙ってるほど
人間できていない。
ルイズは無言で男に蹴りを入れるがあっさりかわされてしまった。
二人は不毛な喧嘩(一方的にルイズがからんでいるだけなのだが)をしながらルイズの部屋についた。
「ふーんいいセンスじゃん」
翔はルイズの部屋を見回す。
どれもこれもいかにも高級な家具にアンティークなどが飾れており、女の子らしくこ綺麗に整理されたあった…しかし床に干草が見えたが見なかったことにした。
「褒めたって何もないわよ」
「で・・使い魔ってどうするわけ?」
どかりと椅子に座った。
ルイズはその態度にムッとしたが構わず話を続けた。
「まず使い魔は主人の目となり、耳になる能力を与えられるわ・・・と言っても無理ね・・私には見えないもん」
「そんな事になったら速攻で契約解除させてもらうわ」
「それから主人が望むものを見つけてくるのよ」
「強盗でもしろってか」
翔はニヤニヤと笑う。
「なにふざけた事言ってるの!秘薬とかそれの材料になるのを見つけてくるの!」
「秘薬?」
「特定な魔法を使うときに必要な触媒よ。硫黄とか苔とか」
「面倒だからやらね」
「…そんなのはなッから期待してないわよ…秘薬の存在しか知らないだろうし」
(まあソーマとか魔石やらあるんだろうけど、これ話したらくれくれうぜえだろうから黙っとくか)
「そして・・・これが一番なんだけど使い魔は主人を守る存在でもあるのよ!その能力で主人を守るのが一番の役目!
まあ・・あんたはタフだろうから盾くらいにはなるんだろうけど・・・まあそこは期待できるわね。あともう一つ」
「もう一つ?」
「掃除洗濯その他の雑用」
「ふざけんなボケそんなもんテメエでやれ」
「使い魔がご主人の周りの世話するのは当然でしょ!!!!」
「知るか阿呆」
「ぐぬぬぬぬ・・・いちいちむかつく使い魔ね!」
と憤ったが・・・これ以上相手にするのはストレスたまる、タダでさえ今日は心身的にほとほとつかれてるというのに。
「はあ・・・もういいわ寝る」
ルイズは屈伸しながらアクビした。
「おいピンク、俺はどこに寝ればいい」
「人を変な呼び方しないで!決まってるじゃない、ここよ!こ・こ!」
ルイズが指差した所は床に干草が敷き詰められていた。恐らく獣系が召喚されるのかと思って用意したのだろう。
「・・・・・」
「何その目は!仕方ないでしょ!ベットは一つしかないんだから!これで我慢しなさい!」
ルイズは翔に毛布を投げてよこし、それから・・いきなりブラウスを外した。
翔はそれを物凄く冷たい目で見る。
「お前は露出狂か?この野朗」
翔の絶対零度の皮肉を言った。
「ろろろろろろろろ露出狂!?」
「普通男に裸見せるか?お?」
「別に使い魔に裸見られてもなんとも思わないよ!」
ネグリジェに着替えたルイズは「これ洗濯しといて」と言いレースのついたキャミソールと下着やらを翔に投げてよこし寝てしまった。
「・・・・とんでもねーお嬢ちゃんに捕まったねー俺。これじゃあ千晶のほうがマシだな」
と翔はルイズと同じく高慢だった昔の幼馴染を思い出した。
そして翔は平和そうに寝ているルイズを持ち上げ部屋に放り出し鍵をかけさっさとルイズのベットに潜り込み寝てしまった。
「いぬううううううう!!!あけなさいよおおおおお!!!」
自分の部屋を追い出され、寒さに目覚めたルイズはドンドンと扉を叩く・・魔法で解除すればいいんだろうがいかんせんルイズは魔法が使えない。
「うっさいわね!何時だと思ってるの!」
と隣の扉から赤い髪の褐色肌の女が怒鳴り込んできた。
ルイズより背が高く、なにより目を向くのはそのボリュームのある胸だ。
834 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:16:17 ID:xuU5Dd/+
「なによキュルケ・・・」
キッとキュルケと言う女を睨む。
この二人は先祖の絡みで家ぐるみで犬猿の仲である。そのため顔を合わせるごとによく喧嘩をしていた・・というか完全にキュルケに玩具にされてる形ではあるが。
「まったくなにこんな夜中から騒いでるのよ安眠妨害じゃない」
やれやれとキュルケは手を挙げ飽きれたように言う。
「・・・あんたには関係ないじゃない・・」
まさか自分の使い魔に追い出されたなどとプライドの高いルイズが言える訳なかった。
「・・・まさか使い魔に追い出されたとか?」
とルイズの心の中を見透かしたように言う。
「!?そんなわけないでしょう!」
図星なルイズは顔を真赤にして怒鳴る・・・逆効果になるというのに・・・。
あまりのわかりやすいルイズの反応を楽しみながらキュルケはルイズの使い魔を思い出す。
(・・・あの全身刺青の使い魔か・・・)
あの男を見た時はなんとなくやばい男だとは直感的に感じた。
自分の使い魔フレイム・・いたフレイムだけじゃない他の連中の使い魔・・・そして親友の竜でさえもあの畏怖の目で男を見ていた。
正直あれほどの魔力をもつ男が黙ってルイズの言う事を聞くはずは無いだろうと思ってはいたが。
でもまあ、ああいうのを呼び出すという事はルイズも只者ではないだろうとは思う・・元よりキュルケはルイズに他の連中とは違う何かをもっていると感じていた。
「うるせえぞ黙れボケ」
といきなりあの男が現れた・・・ワインを飲みながら・・・。
「そ!それは私のワインじゃない!なんで飲んでるのよ!」
「たまたまあったから飲んでるんだよ、だいたいガキのくせに酒なんざ飲んでんじゃねえよ」
と言ってるが、実は翔もまだ18歳のガキだったりする。タバコとお酒は20から。
「ガキってなによ!私はもう16歳よ!」
翔の世界の常識ではそれですら十分早い。
「はあ?」
翔は呆気に取られた、今までこの娘のことを14だと本気で思っていたからだ。
信じられないようでジロジロとルイズを見る、そして最後に視線を胸に移す。
「……」
「……」
翔の顔が哀れみの表情と化する。。
ルイズの張り手が襲う、それをキャッチする。
さらに蹴りが飛ぶがひらりと回避される。
「はいはい・・近所迷惑だからやめなさいねお二人とも」
二人のやりとりに飽きれたキュルケは不毛な喧嘩を止める。
「だれだ?あんた?」
「私はキュルケ、へぇあなたがルイズは呼び出した・・・亜人ね」
と興味津々で翔を見る。
「ふ〜〜ん遠目ではその刺青でわからなかったけど・・随分いい男ね・・綺麗な顔してる・・まるで城に飾られてる彫像みたい」
「そりゃどうも。アンタも美人だぜ?赤い髪に褐色肌、情熱的でいい感じだ」
「クスクスあらありがとう。ならよかったら私の所にいかない?」
「そりゃあ遠慮しとく」
翔はニヤっと笑った。
「え?」
キュルケは信じられないような目で見た。
「今日はそんな気分じゃない。悪いねえ」
と翔は扉を閉めた。
「・・・・!?」
「あらあら得意な誘惑通用しなくて残念だったわね」
ルイズは今までの恨みを晴らすが如く高笑いして自分の部屋に戻る。
バターンと扉のしまる音がひびきポツンとキュルケは一人残された。
「ふふ・・ふふふ・・・私の誘いを断るなんて・・・・」
今まで自分の誘いを断れたことが無いキュルケにとってはそれはとても屈辱的なことだった・・。
キュルケの瞳に炎が燃え上がる。
「これは私に対しての挑戦ね!いいわ・・受けてたつわこの勝負・・。見てなさい絶対にモノにしてみるから!」
平和に輝く二つの月の夜にキュルケの高らかな笑い声が響いた。
その頃ルイズと翔はベットの取り合いで揉め、小一時間後やっと翔が根負けしルイズは見事ベットの所有権を死守したのであった。
100年ROMってろ
836 :
魔人が使い魔:2009/08/27(木) 21:20:45 ID:xuU5Dd/+
人修羅これで四人目か
半角カタカナは使わないで、全角カタカナに統一したほうが読みやすいと思うよ
イタイ
自分で自分のssの絵書く人って珍しいのかな
俺は書きたくてもかけないだけだけど
とりあえず「・・・」じゃなくて「……」を使おう
応募する小説でもないんだから三点リーダくらい別にいいじゃん
>>840 絶対数は少ないかもなぁ
サイヤの人とかくらいしかわかんね
サイヤの人が描いたのってやたら上手いよな
ワルドのやらないか?で死にかけた思い出が
自分で書ける人はうらやましいよホント
こんばんわ
ふとした思い付きから小ネタ一本仕上げました
何分初投稿ですんで粗相するやもしれませんが
よろしければ投下させてもらいたいと思います
あと召喚元タイトルと対象の正体は
バレバレになるかもしれませんが最後に明かすということで
ルイズは困惑していた
春の進級試験、使い魔召喚の儀式にて
周囲や彼女自身の予想を裏切って、彼女は意外なほどあっさりと召喚を成功させた
そしてルイズは困惑していた
目の前の召喚された使い魔となる生物を見て
ソレに不満があったわけではない、目の前に居るそれは召喚の成功の証
自分の魔法の初めての成功の証であり、ルイズの心は未だ踊りだしたいくらいの歓喜に震えている
しかし・・・ルイズは不満こそ無いものの、不安に支配されかけていた
それは小さかった
自分の膝の高さくらいの小さな人型、そしてとても華奢に思える細さだった
そしてその顔は一言で言うならば・・・そう、『虚無』だ
その眼は空洞だった、覗くと吸い込まれてしまいそうな暗闇を秘めた空洞
一切の光も意思も見られない空洞・・・まさしく『虚無』と言い表すに相応しい眼だった
だが何より不安を感じていたのは『コントラクトサーヴァント』の成否だった
契約を成功させる自信はある
自分は召喚を成功させたのだ、今の自分に契約を失敗することなどありえない
そう・・・口付けを交わせればの話だが
使い魔候補の生物は小さくて華奢な人型で、虚無と呼ぶ他無い暗闇そのものの眼をして
全身から縦横無尽に針が生えていたのである
それから暫くして、教え子の初めての成功に喜び、彼女を賞賛しようか
これから待ち受ける試練に向けて激励しようか、悩んで複雑な表情を浮かべた引率教師コルベールに促され
ルイズは目を閉じ、ひょっとこのように口を限界まで前に押し出し、意を決して契約に挑んだ
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
青空の下、少女の悲鳴が木霊した
見た目貧弱な使い魔といえ、”ゼロのルイズ”とバカにされ続けた少女が初めて成功させた魔法
陰ながら誰より彼女を認めていたキュルケやコルベールは言うに及ばず
日頃から彼女をバカにしていた級友たちですら、この勇気ある行為に踏み切ったルイズを心の底から賞賛したという
ハリサウザンドにキスってw
支援
その使い魔は小柄な身体から察せられる通り、機敏に動いた
主であるルイズの目を放した隙に、あちこちに出歩いて学院のあちこちで目撃情報が寄せられる
慣れれば可愛らしくもあり、妙に愛嬌のあるそれは密かに学院中で人気を集めていた
「・・・あんた何やってんの」
食堂で足元に現れた食後のデザートを乗せたトレイに向かって話しかける
その姿はトレイに隠れてまるで見えないが、ルイズにはすぐ分かった
これが自分の使い魔だと
指も無い手だったが、意外と器用だった
針が指代わりになっているのだろうか、などと考えたりするが、観察してもよく分からないので深く考えないことにした
「申し訳ありません、ミス・ヴァリエール、私も止めたのですが・・・」
メイドのシエスタだ、この使い魔に時々水を与えてくれる姿を目にする
使い魔も随分と懐いてるようだし、この使い魔の身体じゃ迂闊に触れて止めようともできなかったろうことを考えると
使い魔がデザートの配膳してるくらい別に構わないと思った、自発的に行っているのも本当だろうし
「いいわよ、別に。 好きにやらせてあげて、でも呼んだらすぐに来なさいよ?」
使い魔はクルリとその場で一回転して返事をして、そのままデザート配膳に戻った
それから程なくして、モンモランシーともう一人の少女の怒号と酒瓶の割れるような音が二発響き
何事かと思って見に行けば
逆ギレしたギーシュが使い魔にイチャモン付けていた
要約すると
ギーシュがモンモランシーから貰った香水の瓶を落とした→使い魔がそれを拾ってギーシュに返そうとしたがシカトされた
→それを見たケティ(下級生)がギーシュの浮気を知りギーシュをワイン瓶で殴打→モンモランシーもまた同じく
→「君が香水の瓶なんて拾うからこうなったんだよ」と使い魔に責任転嫁するギーシュ
→すっとぼけた様な表情を浮かべ沈黙したままの使い魔になんかムカムカしてきてついに決闘騒ぎに
どうやら先に受けたケティとモンモランシーの酒瓶攻撃で酔ったらしい、大人気なくも使い魔相手に決闘を申し込んだギーシュは既に半分正気では無かった
そんな奴の相手をすることは無いと思い主として当然使い魔を連れ帰ろうとした
「ほら行くわよ、あんな奴の戯言に付き合うことなんてないわ・・・ってちょっとアンタ」
使い魔はヴェストリの広場に向かうギーシュ(と彼に肩を貸す友人たち)の後を追おうとしていた
「アンタご主人様の言うこと聞いてないの!? あんな酔いどれに一々付き合うことなんて無いんだからとっとと帰るわよ!!」
しかし使い魔は首を縦に振らなかった(見た目からして首が回ったりするようには見えなかったが)
『売られた喧嘩は買うもんだ』と言わんばかりに何やら好戦的なオーラを漂わせていた
本来なら腕ずくでも止めるべきだったが、それは出来なかった、何せ針だらけだったから・・・・・・
後でシエスタから聞かされたことだが、ギーシュは使い魔に対する八つ当たりの中で”ゼロのルイズ”と何度と無く私を中傷していたらしい
(ひょっとして使い魔のあのオーラは、私の為に怒ってくれてたのかな・・・?)と思うと少し嬉しくもあった
ヴェストリの広場はギーシュに対するブーイングで割れんばかりだった
二股がバレて逆ギレしたギーシュがルイズの愛くるしい使い魔を虐待して鬱憤晴らしをしようとしていると聞いた女子生徒が押し寄せたのだった
そんな中でギーシュはすっかり酔いも覚めて正気に戻り見え張ってポーズ決めているものの
内心では数分前の自分をワルキューレでボコボコにしたい気分だった
しかし一度宣言した手前、もう後には退けない、泣き出したいのを堪えてワルキューレを一体呼び出す
(少し軽く小突いて適当に切り上げよう、ごめんね使い魔君・・・)
明らかに非力な目の前のルイズの使い魔にギーシュは心の中で懺悔する
しかしもう遅い、彼はこの後更に激しく懺悔を繰り返すことになる
ギーシュはドットクラスといえゴーレムを作り操る手腕はそれなりにあった
対する相手は”ゼロのルイズ”の使い魔、勝敗は誰の目にも見えて明らかかと思われていたが・・・
ギーシュのワルキューレはルイズの使い魔に全く有効な一撃を与えるに至らなかった
ルイズの使い魔は機敏に動き回り、ワルキューレの攻撃をかわしていた
そのスピードはあまりに速く、逆に緩慢に動くような残像を見せてギーシュを翻弄した
ワルキューレを体当たりさせようとすれば避けられて、徐々にだが精神力を消耗するギーシュは次第にまた苛立ちを募らせていった
しかも集まったギャラリー(女子生徒)はルイズの使い魔の思わぬ活躍(避けてるだけだが)に歓声を上げている
それが更にギーシュの苛立ちを増してゆき、冷静さを失わせていた
(くそっ・・・こうなったら複数のワルキューレで取り囲んでボコボコにしてやる!!)
さっきまで懺悔してたものがいつの間にかこうである
しかしギーシュを責められたものでもない、確かに散々翻弄されまくって目の前の使い魔のとぼけたような顔はなんかムカつく
ギーシュの手にした薔薇の造花・・・彼の杖の花びらが舞い散り、地面に落ちて更に6体のワルキューレが錬製されてルイズの使い魔を取り囲んだ
しかしルイズの使い魔は7体のワルキューレの包囲網を小さな身体で掻い潜り、回避し続けていた
一見すると防戦一方のこの戦いだったが、駆けつけた彼の主であるルイズ、屋根の上から観戦していたキュルケとタバサを初めギャラリーの中の何人かも気付いていた
回避行動ばかり続けるルイズの使い魔が、その合間合間に【何かを束ねている】ことに・・・
角野卓造じゃない支援
「ハァ・・・ハァ・・・くそッ!!」
息切れし、悪態をつくギーシュが攻撃の手を休めた時、ルイズの使い魔の虚無の闇を秘めた様な眼が光ったように錯覚した
次の瞬間、ワルキューレの一体がヒビ割れて崩れ落ちる
誰もが呆然とした、ほとんど何の前触れも無く、否、無数の風を切る音が聞こえた次の瞬間ワルキューレがバラバラに砕け散ったのだ
「え、何?何が起きたの・・・?」
「ギーシュのワルキューレがいきなり砕けたぞ!?」
「ルイズの使い魔がなんかしたのか?」
「まさか・・・」
突然のことにギャラリーも驚きを隠せない
対峙するギーシュは自分の精神力が尽きたのかとさえ思ったが、他の6体は正常
ルイズの使い魔に何が出来るとも思えない、周囲の女子生徒の放った風魔法かと思ったが
風を切る音は確かに目の前で発生したもの、となると信じられないがルイズの使い魔が何かしたものと思っていい
ここにきてギーシュは”ゼロのルイズ”の使い魔と侮ることをやめ慎重に距離を取り、周囲に4体のワルキューレで壁を作り
残る2体で攻撃を再開した
しかし相変わらずワルキューレによる体当たりは回避されるばかり
それでもギーシュは目を凝らしてルイズの使い魔が回避の合間に何をしているのかを見極めようとした
そして気付いたのだ
(あいつ・・・【何かを束ねている】・・・? 抜いてる・・・? 自分の針を・・・・・・???束ねて・・・・・・!?)
ルイズの使い魔は束ねた千本の針を飛ばし、ワルキューレの全身に突き立て粉砕した
その恐るべき破壊力の正体を知りながら、妙にギーシュは冷静に疑問を浮かべていた
(あんなに抜いて束ねてるのに見た目は変わらないなんて・・・凄いスピードで生えてるのか?)
そんなことを考えてるうちに攻撃にまわしたもう1体も破壊された
またも自分の身体から針を抜き束ね始めたルイズの使い魔の姿に正気に戻されたギーシュは慌てて命令する
「ワ、ワルキューレッ!奴を止めろッ!!」
2体を再び攻撃に転じさせ、残る一体を自分の護衛に残す
しかし相変わらずの回避、回避、回避、回避、回避・・・・・・・・・・・・?
(・・・長過ぎるんじゃね?)
いくらなんでも長過ぎる、さっきまでのことを考えればもう10回分は撃たれていそうなもの・・・
そう考えた瞬間、攻撃に回したワルキューレが砕け散った、間を置かずにもう一体も砕け散る
残像を残しながらルイズの使い魔が近づいてきて最後のワルキューレの目前に迫った
風を切る音と共に最後のワルキューレが砕け散る
今までと違う攻撃発動のタイミングと回数にギーシュは気付いた
(こ、こいつ・・・)
ルイズの使い魔が束ねたモノをギーシュに向ける
(【仕事量を10倍に】・・・・・・ッ!?)
風を切る音が聞こえる
(つまり僕には7回分の・・・・・・ッ?!)
小さくて細い合計七千本の針がギーシュの年若い柔肌に突き立てられる
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
ヴェストリの広場にギーシュの悲鳴が響いた
仰向けに倒れたギーシュの断末魔の表情の判別は困難を極めた
何せルイズの使い魔以上の密度で縦横無尽に針が突き立っていたからだ(それでも眼球など急所は外されていた)
ざわざわとどよめきが巻き起こる
「うわ・・・悲惨だ・・・」
「おーい!道を空けろーー!!水の秘薬の準備だーーー!!」
「この決闘はルイズの使い魔の勝ちーーー!!」
誰かのこの叫びにルイズの使い魔のファンになった女子生徒の歓声が巻き起こり
ルイズもまた心配をかけた自分の使い魔を叱りつけようと思いながらも
使い魔の無事に安堵し、我を忘れて駆け寄った
ルイズの使い魔もまた、本来ひ弱な自分が振り絞った勇気で得た勝利に喜び
愛しいご主人様の姿を見つけて【抱きついた】
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!!!!!!!」
ヴェストリの広場にルイズの悲鳴も轟いた
『使い魔のハリセンボン』
ファイナルファンタジーYよりサボテンダー召喚
[のシャボテンダーだったら針万本がギーシュに刺さっていたかもしれなかったのか…
ってなわけでおしまいっす
サボテンダーが3回の『針千本』の後に【仕事量を10倍に】した挙句
10連発なんて最近になって初めて知りましたヨ
てなわけで呼んでみました
本当なら【仕事量を10倍に】はVSフーケ戦でもってオチとしようと思ってたのですが
広げ過ぎると訳分からなくなりそうだったんで短縮しました
でもあの手でデルフを操るとこはやりたかったなぁ・・・w
初投稿ですんで句読点やら改行やら見辛いとこあったと思います
お目汚し失礼しましたー
>>854 最初はそれも考えたんすけどねぇ
召喚直後に【すってんころりん】されて居合わせたほぼ全員が餌食に・・・みたいな
ああ、NGシーンみたいな感じでオマケすれば良かったw
サボテンダーおもしろかったw
あののっぺりした顔と動き、可愛よなぁ。
メガテンにおいて最強の男 救世主アレフ召喚はまだなのか…
>>819>>822 ダイ大は「それは余のメラじゃけぇ」ってセリフからして、詠唱者によって最大ダメージは変わってくるんじゃない?
サボテンダー乙w
おマチさんやワルドも「ひぎゃああああ!!」と悲鳴をあげるだろうなww
サボテンダー乙っす!
VIからかー。てっきり、迷子になったりするXからかと思ったw
そういえばチョコボレーシングにも出てたなサボテンダー
動力は脚
果てしなく亀ですが、アノンの方乙です
感情的になるアノンって、初めて見たかも
負けた時ですら、笑ってた様な
何にしても、植木は好きなので応援してます
乙でモルゲン
タイトル見た瞬間、寄生ジョーカーのハリサウザンドかと思ったけど、そんな事はなかったぜ
このサボテンダー、Yのだったら、やっぱり 魔法習得値おいしいです になるのかしらねえ?
鉄の処女で拷問にかけられるのと同じだよなサボテンダーに抱きつかれるのって
Yでは稼がせてもらいました
>>863 アニメを見てください
最後の魔王くらう時とか結構感情でてますよ
声優さんの力も大きいけど
まあ基本動じないキャラだったなあ
気付いたけどワルキューレの数修正忘れてました
初期1に追加5の総数6で
破壊後に総数5で以降は描写どおりに減り、です
原作だと7体が限度だったような気も駿河6体だったような気も・・・ああ、なんかごっちゃごちゃに・・・
>>857 >>860 >>861 楽しんでいただけて嬉しいっす
【仕事量を10倍に】を知ったもんでYからの召喚にしましたが
]でジェクトにブリッツならった奴とか家出少年たちとかも好きなんで気が向いたら呼んでみたいっすねぇw
ED後のジェクト召喚とかも面白いかも
>>862 レーシングはやったことないんですよ・・・レースゲーム苦手で
電撃の投稿4コマでママ先生のヘルメット貰って参加したスコールが
こめかみ皮下に何か侵入してくるネタがやけに印象深かったなぁ
なんのことかと思えばサボテンダーかよ。
確かにあいつなら攻撃はまず当たらない。
>>864 >>865 そうか!そのネタもあったか!!
やけに虚無の習得が原作に比べて早くなったりするのでしょうか・・・
そしてVS七万後は散って大地に還ってまた咲きます
12のアイツのように
あと省略しちゃいましたがルーンはガンダールヴのつもりでした
小ネタの人乙です。
このルイズまさしく勇者ww
>>858 アバチュで強いサタンをあっさり倒しちゃうとか強すぎだろ
873 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 23:25:38 ID:u7TmJYo7
このごろバージル兄さん見ないな・・・
帰ってきてくれると信じる
天罰てき☆めーん
FF5からガルキマセラを召喚。
系統魔法は全て吸収され月の笛でバーサク状態に。
FFで属性を吸収、無効、半減するのってゼロ魔ではかなりスゴイと思うんだ。
バージル兄さんは大分前にこのスレから撤退するって宣言があったじゃないか
絵板を絵と関係無い感想で埋め尽くされたりして期待が重過ぎてやめたんだったな
>>871 アレフ>>>ヒデト>ナカジマ>キタロー>ライドウ=ノクタン>ヒーロー>サーフ>キョウジ>タツヤ>ピアス…な印象
しかしここで召喚されるのはノクタンが多くて他がいないな
サーフとか面白そうだけど。
ヒート呼んで7万VSヴリトラとかも面白そうだな
ベック大佐がハルケギニアからなんとか抜け出そうとするとかも面白いかも
メーガナーダとかだったら知能薄そうだし使い魔にちょうど良いかも
だが俺としてはハーリーQとかを推す
>>880 だってお前ら喰ったじゃねえか!
は聞けるのだろうか
いつまで人を食わずにいられるか
いっそハルケギニアはマグネタイトに満ちてるから喰わなくていいとかにしようか
変身後の格好よさなら真Vの氷川だな
でかいしロボみたいでよかった
>>879 そして一言言わせてもらうがそれは無い
メガテンか……
ifから軽子坂高校を校舎ごと召喚とかやったら、どんな展開になるだろ?
一度魔界に落ちた連中だから、ハルケギニアでも意外と順応力高いかもしれんw
>>883 逆に魔法学校自体を魔界に逆召喚すればいいんじゃないか?
サポート兼護衛として主人公達をつければ良い
>>883 ガーディアンにできそうな生物が少ないのが問題か?
やっぱり、最終的にルイズにはブミエルがつくんだろうが。
>>884 ルイズにアモン召喚させて魔界に放り込んでみよう
>>884 そう言うのはもうこっちじゃなくて「あの作品の世界にルイズがとばされました」スレの受け持ちだな。
>>878 他の人が書いたSSを引き合いに出して「兄さんの方が上」って言う馬鹿が何人も居たからじゃなかったっけ?
>>879 漫画版魔神転生のトト召喚を考えたことあるんだ
アイテム使いで、それほどチートすぎず、かつ他のキャラとのやりとりも
単調にならないキャラじゃないかな、と思って
結局、アイテムの所持数とかがどうなってんのか、
四次元なのか無限なのか有限なのかよくわからなくて頓挫したけど
モンスターズ+の原作終了時クリオを呼ぶのはどうだろうか
「モンスターマスター?」「勇者よりかっこいい職業さ!」
サトミタダシ薬局店を召喚してタバサママにディスポイズン
カトレアにディスシック
ゾンビウェールズに反魂香
サトミタダシによる静かなる侵略
水面下で行なわれる商業抗争、次々と潰れる老舗
高笑いのサトミ一族
>>892 事故死でなくなったんだっけ?
あの曲は好きだったのにな
>>891 クリオよりマルモとか呼んだ方がよさそうな・・・ヴィンでも他の人の使い魔を
仲間モンスとして扱わなさそう。
クリオネマンよりマンモスマンを呼んだほうが…
に見えた。
>>895 一応自作勇者の剣持ってるしガンダでいいじゃない
初めの授業あたりでほかの使い魔と会話ができるあたりのポイントが高そう
この流れなら次峰レオパルドン行きますグオゴゴゴゴ
SIEN
違います違います投下じゃないんですまぎらわしくてすみません
神クラスのキャラクターでチート過ぎないキャラクターってだれかいないのかな?
神みたいな能力を持ってるのに
やりすぎってイメージがわかないキャラか
今度wiiで移植版が出る大神のアマ公とか?
現行連載作品だとMTLのウルザが該当するな<神
「神は神でも大神さまでい」
アマテラスは物事が上手くいかない人間のダメなところを補強してくれる上に可愛い
デンデだな
神そのものだけど
>>901 聖☆お兄さんのパンチとロン毛の二人とか
ひもろぎ守護神のビンとか?
あのパンチとロン毛ならタバサ母とかカトレアが簡単に治るな
ちょっとミスるとそれはもうもっちもちのパンになるけど
聖☆お兄さんの二人は小ネタであったなあ。
クレイトスさんは神じゃねえか
崖から落ちるところにゲートが現れてそのままハルケに
>>907 何気にブッダも作中で溶岩呼び出すことが出来るって名言してるけどなwww
>>901 神………九十九神?
怪異いかさま博覧亭にはかの靴とか色々ファンシーなのが居るな
他にも萌ろくろ首に算盤小僧、駄目忍者とか
後はぬ〜べ〜からあぎょうさんとか?
攻略法解れば何でもやり放題だな
『まじしゃんず・あかでみぃ』なら、暇してそうな神魔を何柱か引っ張れるかもナー
テレビもネットもアニメショップも無いという劣悪な環境に、数日持たずにプッツンするかも知れないけどw
>>913 でも、あぎょうさんって五十音知らないと、本当に答えを知ってでもいない限り最初のナゾナゾで殺されるぜ?
シエスタが五十音を知っているか、やっぱり才人が召喚されてないと詰むんでないかなあ
神在月の出雲からなら神様呼び放題じゃねーか
と、染屋カイコの『かみあり』を読みながら言ってみる
でろでろの日野耳雄とかどうよ?
ギャグ的意味ではスカッとしそうだけど
んじゃサルーイン様とか
ベルセルクのフェムト
グリフィス姿で呼ばれるべきか、フェムトとして姿を現したほうが面白いか
グリフィス……オーレリアの南十字星!
って難しいよな……しゃべらないし。
空の友人も動かしづらい
エスコンは二次やSSにしづらいなー
>>919 小ネタ向きなんだよな〜エスコンは
機体的にも人物的にも。
しかしながら、独特な台詞回しを再現出来れば中々面白いかもしれない
>>916 > でろでろの日野耳雄とかどうよ?
めだかちゃんverでもおもしろそう
そして最後に始祖ブリミルが妖怪図鑑に
グリフィス召喚を原作になぞらえるなら、ウェールズを喪った直後にアンリエッタが召喚するのが「らしい」かも?
無論ルイズが召喚するのはガッツという前提ですが……ゾットでも良いかもしれない。
>>920 ああいったのは掛け合いで表現するモンだからね、一人ずつの単品はむっかしい。
いっそ艦隊レベルで喚びたいんだが、バミューダトライアングルと聖地でも繋ぐか。
>>922 何らかの理由で絶望したテファが最後の希望として縋るために召喚する、
という方がらしいんじゃないかという気がするけど、
色々と難易度が高そうなネタになるな。
>>922 幼なじみ設定を生かしてベヘリットを使う王女なんてのも…
神様とくれば神様コントの志村けん
>905
月を粉々に砕く人よりも強いんだけどな
周りが尋常じゃない次元なだけで
いいよもう宇宙怪獣リオブレードンで。
社長「じゃあ、《飛行怪獣》とるか」
GM「つまり、浮遊大陸ですか……」
そう言えばかんなぎのナギとざんげちゃんも神様か……
産土神の分御霊だから一神教のハルケじゃ信仰集められなくてすぐ消滅してしまいそうだけど
あと我が家のお稲荷様のクーちゃんも護り神だったな
クーちゃん単独で喚ばれたら人外ホイホイな透がピンチだけど…
神様といえば鼻田香作
>>928 いや、リオブレードン呼んじゃったらリオフレード島ごと来ちゃうだろう。
そうなるとますますエライ事になるぞ。
何しろかなりの確立でカオスフレアやダスクフレアがいるから……
>>931 カオスフレアってもうなんか無かったっけ?
>>924 人間だった頃のグリフィスの方が無理がなさそうな気がする
(姫さんとヤッちゃって捕まった直前辺りで)
特に先約も無さそうなので投下します
遊戯王デュエルモンスターズGXのユベルで攻撃力0の使い魔
>>930 マルトーに料理対決を挑んだあとにテーブルの上で踊り狂うんだな
宝物庫の中に取り残された 2人の男…オスマンとコルベールのあいだには、気まずい沈黙が流れていた。
「……いやはや……してやられたわい」
先に沈黙をやぶったのは、白髭の老人:オスマンのほうだった。
長い髭を撫でながら、気まずい空気を誤魔化そうとするかのように、軽い調子で話を切り出す。
「あの者が『カード』を持っておった以上『英雄の宝札』を譲ってくれと言いだす可能性は考えておったが……
まさか、わしらの目の前で あれほどまで堂々と…かつ 一方的に持ち去ってくれるとは、さすがに予想できなかったのう」
と、わざとらしく肩を竦めてみせる。
一方、禿頭の中年男性:コルベールのほうは いかにも気落ちした様子だった。
「申し訳ありません、オールド・オスマン……私が あの使い魔を連れてきたばかりに『英雄の宝札』を……」
「それは わしとて同じじゃよ、コルベールくん。それに 君も、あの者から戦意や敵意は感じなかったんじゃろう?」
「はい……しかし、それが迂闊でした……戦意や敵意が無いことに油断して あの使い魔の思惑を見抜けなかったのは、私の落ち度です……」
「そう自分を責めるでない。今回は むしろ『英雄の宝札』を差し出すことで あの者と戦わずに済んだことを、幸運に思うべきじゃろう。
わしらが真に守るべきは、宝物庫の中身などではなく、ほかでもない生徒たちじゃからの」
そう言いながら、オスマンは 宝物庫の扉を閉めて 鍵をかけた。
さらに『サイレント』の魔法をかけて 音が外に漏れないようにする。
「まあ、済んだことは もうよい。それより 重要なのは今後のことじゃよ、ミスタ・コルベール」
「……はい」
本日2度目の真面目モードになったオスマンを前に、コルベールも無意識に背筋を伸ばし 精悍な表情を浮かべる。
「たしかに、今日のところは あの使い魔との交戦を避けることができた。
それは大いに結構なのじゃが、やはり あのような『力』を このまま野放しにしておくわけにもいかん。
下手をすれば、この学院のみならず トリステイン……いや、ハルケギニア全土に混乱を もたらすことになりかねん。
そうなる前に、あやつの目的を見極め、然るべき処置を考えんとな」
オスマンが深刻な顔で そこまで言ったとき、コルベールの顔つきが若干 変わった。
戦士の精悍な表情の中に、研究者としての好奇心が顔を覗かせている。
「あの、オールド・オスマン」
「……何かね?」
「先程から ずっと気になっていたのですが、本当に あの『カード』には それほどの『力』があるのですか?
たしかに『カード』の印刷技術は、このハルケギニアより数段優れている 素晴らしいものでした……!
しかし、特に何らかの魔法が込められているようには見えませんでしたが……」
「……君が そう言うのも、無理は無い。我々の『ディテクト・マジック』は、あの『カード』にも『デュエルディスク』にも反応せんからのう。
じゃが、あの2つのアイテムは、間違い無く 我々の…このハルケギニアの常識を超えた『力』を持っておるよ」
「ハルケギニアの常識を超えた力……やはり先住魔法でしょうか?」
「……いや。少なくとも、わしが かつて見た『カード』の『力』は、四大系統魔法とも先住魔法とも 大きく異なっておった……」
と、オスマンは低い声で静かに昔話を語り始めた。
「わしが初めて あの『カード』に出会ったのは、そう……数十年前のことじゃ。
ある日、わしは森の中で 見たことも無い巨大なドラゴンに襲われての。
そいつは、それぞれ異なる5つの首を持ち、さらに その首すべてから ヘクサゴンスペルにも匹敵するブレスを吐く、とんでもない怪物じゃったよ」
「へ…へクサゴンスペル!? そんなドラゴンが このハルケギニアに……いや、この世に存在するのですか!?」
「ふむ……これは わしの勘じゃが、もしかすると あのドラゴンも『カード』によって発生したものだったのかもしれん」
「な、なんですって!?」
「いや、あくまで わしの勝手な推測じゃよ。今は気にせんでくれ」
「……そう…ですか。わかりました……続けてください」
「うむ。では、話の続きじゃ。
そんな人智を超えたバケモノを相手に、わしも全力で……むしろ150%の力で応戦したのじゃが、まるで歯が立たなくてのう。
精神力も使い果たして、逃げることすら ままならず、さすがに死を覚悟した……そのときじゃった。
突然、どこからともなく、左腕に 変わった形の器具を付けた若者が、わしの前に現れたのじゃ」
「……! では、そのときの若者が……!」
「『英雄の宝札』と『召喚の盾』の元の持ち主じゃよ。
彼が 左腕の『デュエルディスク』に『カード』を置くと、雪のように白い氷の鎧とマントに身を包んだ戦士が現れ ドラゴンの前に立ちはだかった。
そして、その亜人の捨て身の攻撃によって ドラゴンは打ち倒され、わしは九死に一生を得たのじゃ。
そのときの彼と 彼の呼び出した亜人の姿が まさに勇者や英雄のように見えたことは、今でも よく覚えとる」
「なるほど、だから『英雄の宝札』ですか……それで、その若者は その後 どうなったのです?」
「彼は……わしが礼の1つも言う前に、いつのまにか姿を消しておったよ……
じゃが どういうわけか、彼の『カード』と『デュエルディスク』は その場に残されていてのう。
ひとまず わしは それらのアイテムを持ち返り、そのあと 捜索隊を編成して 彼を探したが……彼は見つからなかった。
そして 結局、いつまで経っても 彼に『カード』と『デュエルディスク』を返せないまま 時は流れ……今に至る、というわけじゃ」
そこまで話すと、オスマンは 長く深く息を吐いた。
コルベールは、オスマンから得た情報を 静かに頭の中で処理している……
「……あの『カード』に、そこまでの『力』が……たしかに、我々の常識を遥かに超えていますね……」
「うむ……信じ難い話かもしれんが、事実じゃよ。あの『カード』には、それだけの『力』がある。
杖どころか詠唱すら無しに、スクウェアメイジ以上の戦力を発揮する『力』がのう。
そして、そんな『カード』を所持していた あのユベルという亜人も、やはり 我々を遥かに超える『力』を持っておるハズじゃ。
ミスタ・コルベール。君は、そのような相手と 何の情報も無しに戦って、勝ち目があると思うかね?」
「……いいえ。しかし、オールド・オスマン。
なぜ あの亜人は、それだけの『力』を持っていながら、わざわざ 我々に接触してきたのでしょう……?
それに、すでに自分の『カード』を所持していたにもかかわらず、新たに『英雄の宝札』を手に入れようとした理由とは……」
「ふむ……たしかに、どうにも解せんのう。やはり、そこには 何らかの思惑があったと見るべきじゃろうな。
その点も含めて、今後 君には、あのユベルという亜人の監視を…………む?」
オスマンは 何かを察知したのか、目を閉じて 押し黙った。
「……そうじゃな。なぜか今 宝物庫の前にいるミス・ロングビルにも、協力してもらうとするかの」
一般的に メイジと使い魔は感覚を共有できる。らしい。
宝物庫の外で待機していた オスマンの使い魔であるネズミのモートソグニルの「眼」が、宝物庫付近の廊下に ロングビルの姿を捉えたのだった。
「……ふむ。さて、今日の色は…………あぁッ!? モートソグニルっ!」
おおかた、使い魔に ミス・ロングビルのスカートの中を覗かせようとして、逆に そのネズミを捕縛されたのだろう。
「オールド・オスマン……あなたという人は……」
性欲に負けて真面目モードを維持できなくなったオスマンを前に、コルベールは無意識に溜め息をつき 呆れた表情を浮かべた。
■■■■■■
(……ったく、あのエロジジイ……!)
学院長秘書のロングビルは、心中で悪態を垂れ流しながら、見るからにイライラした様子で 足早に廊下を歩いていた。
今 現在 彼女がイライラしている原因は、大きく分けて3つ。
1つめは、例によって 学院長のオスマンによるセクハラ。
だが、こんなものは今に始まったことではないし、ロングビル自身も その対策とストレス発散法くらいは心得ている。
2つめは、学院の宝物庫に保管されていた「英雄の宝札」が盗まれたこと。
セクハラジジイが深刻そうに悩んでいる様子自体は非常に愉快ではあったのだが、問題は その宝を奪った「人物」だった。
そして、3つめ。宝物庫から「英雄の宝札」を持ち去った「人物」……ミス・ヴァリエールの使い魔の監視を、オスマンから命じられたこと。
(チッ……なんで あたしが……冗談じゃないよ……!)
おそらく あの亜人は、自分の…学院長秘書:ロングビルの「正体」に気づいている。
確証は無いが、そのことを ほのめかすような発言は多々あった。
(さて……どうしたもんかねぇ……)
あいつが 学院内の人間にロングビルの「正体」をバラしたところで、信憑性の無い「噂」の域は出ないだろう。
だが、何の根拠も無い噂でも、一度 周囲から疑いを持たれてしまえば、今後の活動に支障をきたす可能性は十分にある。
もっとも、そうなったところで この学院から出ていけばいいだけの話ではあるのだが。
(まあ、それも悪くないかもしれないね)
給料と宝物庫のことは少し惜しいが、この学院に対して そこまで未練も愛着も無かった。
それに、そろそろ故郷の「家族」の顔が見たくなってきた頃でもあったし、アルビオン国内の情勢のことも気がかりだった。
「妹」たちへの仕送りの問題だけなら「副業」の割合を増やせば解決するが、内戦については……
「ふふっ、何か心配事かい?」
「っ!?」
突然 頭上から聞こえた トーンの低い穏やかな女性の声。
ロングビルが ハッとして頭上を見上げると、ユベルと名乗った亜人が 翼を広げて天井付近を浮遊していた。
(この あたしが、まったく気配を感じ取れなかったなんて……こいつ、やっぱり……)
ロングビルが軽く戦慄しているあいだに、ユベルは ゆっくりと床まで降りてくる。
そして、2メイルを超える高度にある3つの目で ロングビルを見据えると、その緑色の唇を開いた。
「そんなに怖がらなくてもいいだろう? ボクは ただ、キミに頼みたいことがあるだけさ」
「……わたくしに…頼みたいこと…ですか?」
それは、学院長秘書:ロングビルへの依頼なのだろうか。それとも……
「そう……『土くれのフーケ』であるキミの腕を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「……!」
やはり知っていた。トリステイン全土を騒がせている、貴族ばかりを狙って盗みを働く怪盗……「土くれ」の異名を持つ盗賊:フーケ。
それが、トリステイン魔法学院・学院長秘書:ミス・ロングビルの裏の顔だった。
「おまえ……なぜ、あたしの『正体』を知っているんだ……?」
ロングビルは、フーケとしての口調で、第三者に聞かれないよう 小声で尋ねた。
「ふふふっ……キミの『正体』なら、キミ自身の『心の闇』が ボクに教えてくれたよ」
「心の…闇だって?」
「そう……キミは この世界を憎んでいるハズだ。キミから すべてを奪った、貴族たちが支配する、この世界をねぇ……」
「……! おまえ、まさか……!?」
「あぁ……ボクはキミの本当の『正体』も知っている。この世界の魔法使いたちは ずいぶん偽名が好きみたいだね」
そこまで見抜いているとは……この亜人が ここまで厄介な相手だとは思わなかった。
ロングビルは、警戒の度合いを さらに濃くし、いつでも動けるように身構える。彼女の腕は、杖を しっかりと掴んでいた。
そんなロングビルを見て、ユベルは口の端を歪めて笑った。
「っふふふふふッ……! ボクを攻撃するつもりかい? そんなことをしても キミ自身が傷つくだけだよ」
「ふん、たいした自信だね……」
「ボクは事実を言ったまでだ。もちろん、キミごときに負けるつもりも無いけどねぇ」
「っ、そうかい……ま、あたしも別に あんたと戦おうなんて思っちゃいないさ」
この亜人は、オスマンとコルベールの目の前で宝を奪い去るほどの手慣れだ。
ロングビルも オスマンから詳しい経緯は聞いていないが、おそらく 何かしら先住魔法の類でも使うのだろう。
そんな奴と正面から戦うなど、リスクが大きすぎる。彼女が今 杖を握っているのも、いざというときに逃走するためであって、戦うためではない。
「……それで? あたしに何をさせようってんだい……?」
「ほう、思ったより素直だね……まあいい。キミには ボクのために働いてもらうよ、ロングビル」
「……ッ!?」
突然、ロングビルの視界が闇に覆われた。ユベルの大きな手が、ロングビルの顔を正面から鷲掴みにしたのだ。
ロングビルからは見えないところで、ユベルの額のルーンが光を放つ。
「お…おまえ、何を……!?」
「ふふ、心配しなくても ボクはキミの味方だ。ボクがキミに力を貸してあげるよ。
ボクも だいぶ力が戻ってきたからね。キミには 少し多めに分けてあげる。
この世界のルールをボクの支配下に置くためには まだ足りないけど、キミが愛する者と共に堂々と生きていける世界を手に入れるためには、十分だろう」
「や、やめ……うああああぁっ!」
ロングビルは、自分の中に「力」が流れ込んでくるのを感じた。得体は知れないが、とにかく大きな「力」だ。
そこらの間抜けな貴族たちなど 軽く蹴散らせるだろう。いや……これだけの「力」なら、王家すら滅ぼせるかもしれない。
このハルケギニアを常識ごとブチ壊してしまえば、平民だろうがエルフだろうが分け隔て無く堂々と生きられる世界が誕生するかもしれない。
彼女の心の中の闇に、一筋の力強い「光」が射した。
だが、ロングビルは気づけなかった。「力」と共に ユベルから分け与えられた、その「光」の「正体」に。
「……っぐ……! っはぁ……はぁ……」
ユベルが手を離すと、ロングビルの視界にも光が満ちる。気持ち悪い感触の汗が、顔を伝って 床に滴り落ちた。
「よかったね、ロングビル。これで、ボクたちは友達だ」
「……!? な、何…これ……!?」
光を取り戻したロングビルの視界が、さっきまで 自分の左腕があったハズの場所に、奇妙なモノを捉えた。
ドラゴンのように硬質そうな紫と茶色の皮膚、指先から飛び出した鋭いツメ……これは、まるで……
「おまえ……! あ…あたしに…何をした……!?」」
ロングビルは様々な感情で声を震わせながら、不気味に変貌した自身の左腕を突き出して ユベルに見せつける。
彼女の左腕の肘から先の部分は、ユベルのものと まったく同じ姿に変質していた。
「それが、ボクがキミに与えた『力』の証だよ」
「な…っ! あ、あたしに、バケモノになれってのか!?」
第三者に聞かれることも おかまい無しに、ロングビルは声を張り上げる。
「ふふ、バケモノ…か……っふふふふふッ……! たしかに、そうかもしれないね。でも、キミは このことを喜んでくれていいんだ。
だって、キミは……これで ようやく、キミの愛する者と 同じ場所に立てたんだもの。半分、バケモノになることによってね。
それとも キミは、人々に恐れられる存在の血を半分引いているからって、キミの『妹』をバケモノ扱いしたりするのかい?」
「っ! そ、それは……」
そんなことはない。あって たまるか。どんなことがあっても、あの子だけは守ると誓った。
ハルケギニアの貴族どもが どんなに あの子を恐れようと、自分は あの子の味方だ。バケモノ扱いなど、死んでもするものか。
「っふふふ、そうだろう? どんな力を持っていようと、キミはキミだ。キミの大切な人が何者にも代えられないのと同じようにねぇ……」
優しく囁くように紡がれた その言葉が、ロングビルの心の弱点に突き刺さる。
すでに冷静な判断力を失っている彼女の恐怖と困惑を黙らせるには、それで十分だった。
「……ところで、ロングビル。これが何か わかるかい?」
と、ユベルは左腕を不気味に変形させて そこから何か四角い物体を取り出した。
それは、様々な絵の描かれた 色とりどりの四角い紙切れの束だった。
「これは……!? あぁ、今の あたしには わかる……これが、あんたの『力』の象徴なんだろ……?」
「ふふふふふっ……そうだよ。これは、この学校の宝物庫にあった デュエルモンスターズのカードだ。
オスマンは『英雄の宝札』と呼んでいたみたいだけどね」
この亜人は、宝物庫から持ち出したオスマン秘蔵の宝を わざわざ自分に見せつけた。その行為の意味するところは……
「さて、ロングビル。ボクがキミに頼みたいのは、情報収集だよ。
このハルケギニアに これと同じような『カード』が ほかにも存在しているかどうか、調べてほしいんだ」
「……つまり、あたしに それと同じ物を探して 盗んで来い…と?」
「いいや。もし『カード』についての情報が見つかっても、キミが盗み出す必要は無いよ。キミは、ボクに そのことを教えるだけでいい」
「なるほどね……でも、なぜ 自分で探そうとしない? あんたは、この学院の宝物庫に その『カード』があることを、自分で突き止めたんじゃないのか?」
「……ボクは まだ、このハルケギニアのことを よく知らないからね。キミのような者に手助けしてもらったほうが効率が良いのさ」
「で、その料金が この『力』ってわけか……」
と、ロングビルは すでに人間のソレではなくなった自分の左腕を眺める。
このユベルという亜人は、故郷の「妹」のことを知っている。そして、それが 自分の弱点だということも。
ここで自分が こいつの頼みを拒めば、こいつの邪悪な「力」の矛先が あの子に向けられるかもしれない。
それだけは、なんとしても避けたかった。
「……ハァ。わかったよ。あまり気は進まないが、あんたに協力してやる。
この『力』があれば、フーケの仕事も 今よりはラクになりそうだし……何か、今まで以上のことができるかもしれないからね」
もちろん、故郷の「妹」たちの身を案じての決定だ。それは間違い無い。
だが、この新たな「力」を 早く貴族どもで試してやりたいという、自分でも信じられない感情があるのも事実だった。
「ふふっ、キミが何をしようと キミの自由だけど……大きな力には 大きな責任が伴うよ、ロングビル」
「ふん、そんなことは 言われなくても わかってるさ……ところで、これ…この手、元に戻せるのかい?」
「さあ? ボクがキミから『力』を抜き取るか……キミが何か それ以上の『力』を手に入れれば、たぶん 元に戻るんじゃないかな。
もっとも、ボクは 今のところ、キミに その『力』を返してもらうつもりは無いけどね。
だって、それがあるかぎり キミはボクから逃れられないんだもの」
「……! 初めから それが狙いだったのか……!」
完全に やられた。だが、相手が最初から自分に目を付けていた以上、どう転んでも 結果は同じだったかもしれない。
力づくで従わされるよりは、たとえ形だけでも「協力者」という立場にあるほうが、いくらかマシだ。
「チッ……まあいいさ。こうなったら、覚悟 決めるよ。
哀れなロングビルは……わたくしは、密偵としての任務を遂行するため、あえて あなたの協力者になった。それで よろしいですね?」
「あぁ、そうだね。それじゃあ『カード』のこと……頼んだよ」
「えぇ、わたくしなら大丈夫ですわ。では 早速、事態の進展をオールド・オスマンに報告してきます」
と、ロングビルは踵を返して去って行こうとする。
「……あぁ、待って、ロングビル。もう1ついいかい?」
足早に学院長室へ向かおうとするロングビルの背中に、ユベルの声が投げかけられる。
「……なんでしょうか?」
「キミは地属性……土系統の魔法使いで、土や岩からゴーレムを作りだす能力を持っているんだろう?」
「えぇ、そうですが……それが?」
「せっかくだから、キミに ボクの持っている2種類の『ゴーレム』を貸してあげるよ。キミはボクの協力者だからね」
「え?」
ロングビルが その言葉の意味を理解できず ポカンとしているあいだに、ユベルは 左腕から2枚のカードを取り出す。
どちらも、オレンジ色の縁取りのカードだ。
一方には 炎のような溶岩のようなゴーレムの絵が、もう一方には 灰色の石か金属で出来ていそうなゴーレムの絵が、それぞれ描かれている。
それを見て、ロングビルも ユベルの言ったことの意味を理解した。
「それを…わたくしに?」
「あぁ……今のキミなら、使い方がわかるハズだ」
ロングビルは、2枚のカードをユベルから受け取る。
「っ!? これは……!?」
その瞬間、ロングビルの頭の中に それらの情報が流れ込んできた。
カードに書いてある文字は読めないが、そのカードの持つ能力や効果が手に取るようにわかる。
ロングビルの額には、ユベルの額…の目の中にあるのと同じ「ミョズニトニルン」のルーンが うっすらと淡く輝いていた。
(面白いじゃないか……! 怪盗フーケの新しい『力』……今夜にでも、早速 試させてもらうとするかねぇ……!)
その日の夜を境に「土くれのフーケは、土のトライアングルではなく、火と土のスクウェアだった!?」という噂が囁かれ始めるようになるのだが、
それはまた別のお話。
投下終了
なんか前回のフォローに追われて あんまり話が進んでない気がする
おい、デュエルしろよ
乙
946 :
931:2009/08/28(金) 12:37:00 ID:oHLN0Jcx
>>932 今は他の所に転載されているけど粉雪と乗組員一同&協力者・才人が召喚されてた
いなみにルイズは一度トランスギア着けた上でダスク化した、何とか帰ってきたけど
投下乙
……この調子だとワルドも配下に加わりそうな気がしてきたw
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,.ィフ´ _,... 、 \ ,.ィ´ `ヽ、
. /r‐' ,.ィ´ : : : : :`ヽ ヽ / , ヽ. ヽ
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/:/ Y : : l´: :/`:,.イ _: : :ヽ '´/ ! | 、 ! l l
/イ /:/ | : : fチテ` ´ l´: `: :/l}ィオ ヽ _l_ `メ / !
レl :|: :| : : :i`¨ .fチ}〉:./ ,'l `′ ´ト'ミy′/-─ァ ',
V|l、:', : : l. r‐ 、 ¨./:イ / .ト、 、_ `7′/==イ l ',
/^Y^ヾヘ : :|ヽ__ ',. ィ: :/,==、 ヽ.. ィ′ / .| l '
> ,-イ ハ: :lエユ レ|:./,匁,斗} | ,/ //_ 、 | i ',
{_/:.:弋¨{ V,/(0)ヽ.|イ | l/ .::/ | / /´ `i \l | ,
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l:/ ハ:.:.';.:.:.:.:.:.:.', ≡三三 ヾ、`ヽ、:.:.:.:.!三三ミ |:.:.:.::.:.:.:.:/、:.:.:.:.:.
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リ ヽヽヘ ヽ、 // ノ ,イ:ハ!
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