あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part244
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part243
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1248098203/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
皆さんこんにちは、それでは今週分も問題なく出来上がりましたので投下開始しようと思います。
問題なければ5分後の15:50より、レス数は11です。今回はちょっと地球側のエピソードが入ります。
乙
第58話
CREW GUYS再集結!! アニマル星SOS
大海亀怪獣 キングトータス、クイントータス、ミニトータス
さすらい怪獣 ロン
カプセル怪獣 アギラ
高次元捕食獣 レッサーボガール
高次元捕食体 ボガール
ウルトラマンタロウ
ウルトラマンレオ 登場!
「テッペイ、コノミ、よく来てくれたな!」
フェニックスネストに、CREW GUYSの懐かしい声が響き渡る。
「お久しぶりです。リュウさん、ミライくん」
「二人とも元気そうね。最近のみんなの活躍、幼稚園のみんなも頼もしく見てたのよ」
かつてリュウやミライとともに、エンペラ星人の脅威と戦った前GUYSの仲間、クゼ・テッペイとアマガイ・コノミが
帰ってきた。二人は、テレビの報道などで最近のCREW GUYSの活躍は耳にしていたが、つい先日トリヤマ
補佐官から声をかけられてやってきたのだった。
「それにしても、さすがお二人ともすごいですね。僕たちが、まだまだだってことがよくわかりました」
カナタも二人の助っ人参戦に喜びと、未熟さへの苦笑を混ぜた笑みを浮かべた。ペスターの攻略法を的確に
教えてくれたテッペイと、テッペイにガボラが出現する前兆があると言われてあらかじめ発電所近辺で待機
していたコノミによって、ペスターは撃破され、ガボラはミクラスの怪力に負けて地底に逃げ帰っている。
いずれも、現在のGUYSのメンバーだけではなし得なかった戦果だ。
「けど、お前たちどうして?」
リュウはそこだけは不審気に聞いた、二人がやってきてくれたことは確かにうれしいが、二人ともGUYSの
ほかにも、テッペイは医者になるために医大に通う道、コノミにも幼稚園の先生としての道がある。まさかとは
思うが、それを放り出してきたのではと思ったが、二人はそんな様子は微塵も感じさせなかった。
「大丈夫です。僕がスケジュール管理がうまいのは知っているでしょう。GUYSと医学生の両立、昔ほど
こちらにい続けるとはいきませんが、可能な限りお手伝いさせていただきます」
「私は、ちょうどこれから幼稚園が夏休みだから。リュウさんたちのお手伝いが少しでもできればと思って」
「お前ら……だが」
「おっと、勘違いしないでください。もちろんそれもありますが、僕たちも、安心してそれぞれの道に行くために
わざわざ時間を割いてこっちに来てるんです」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべているリュウに、テッペイは微笑しながら続けた。
「つまりです。また、全宇宙規模の危機がおとずれようとしているかもしれないときに、今のGUYSの戦力では
心もとないですが、彼らが早く一人前になってくれれば僕らも安心して引退できるということです」
つまり、テッペイたちは新人たちの先輩として、その指導をしてくれるということだ。考えてみれば、教官として
これ以上の人材はない。それに、今はともかく一人でも優秀な人材が欲しいのも事実だ。
「そうか、そういうことなら、悪いが頼む。このひよっこたちをビシビシ鍛えてやってくれ」
リュウは、カナタをはじめとする新人たちを見渡して、よく通る声で言い放った。特に、さきほどの戦いで
ペスターの分析に手間取った新人のオペレーターはテッペイに直接敬礼を返している。
「本当にありがとうございます。テッペイさん、コノミさん」
「なんの、水臭いですよミライくん。地球のこともそうですが、ミライくんのお兄さんがピンチだってときに、
僕たちが黙ってられるはずがないじゃないですか」
「そうよミライくん、みんなで頑張ってウルトラマンAを助け出しましょう」
ミライは、テッペイとコノミの思いやりに涙が出る思いだった。このメンバーでまたいっしょに戦えるということは、
それだけで笑みが漏れてくる。だが、GUYSにはまだ二人メンバーが残っている。ミライは、喜び合う若者たちを
眺めながら、話しかける機会をうかがっていたトリヤマ補佐官に話しかけた。
「そういえばトリヤマ補佐官、ジョージさんやマリナさんには声をかけたんですか?」
「ん? ああ、連絡はついたんだが、二人とも今はスペインリーグとレースで日本を離れていてな、もう少し
したら日本に戻るというから、暇を見て来てくれるそうだ」
「そうですか、お二人とも忙しいのに……トリヤマ補佐官、お気遣いありがとうございます」
「いやあ、あははは」
照れくさそうに笑うトリヤマ補佐官に、今回ばかりは頭が上がらない。そんな和気藹々とした雰囲気を、
サコミズ総監や、ミサキ女史は微笑みながら見守っていたが、次の瞬間そんなサコミズ総監の笑顔を
引きつらせる声が響いた。
「おっと、助っ人はここにもいるわよぉ」
いつの間にか、ドアのところに白衣をまとって、髪を後ろで留めた博士風の女性が、活発そうな笑みを
浮かべて立っていた。
「フジサワ博士!」
「はぁーい、元気してたあ? お久しぶりね、フシギちゃん」
いたずらっぽくミライに微笑んだのは、異次元物理学の権威、フジサワ・アサミ博士であった。まだ若いが、
かつてヤプールの異次元ゲートを封印するために使われたメテオール、『ディメンショナル・ディゾルバー』や、
エンペラ星人の暗黒四天王の一人、不死身のグローザムにとどめを刺した『マクスウェル・トルネード』などを
発明した天才科学者だ。また、サコミズ総監やミサキ女史とは旧知の仲で、特にミサキ女史とは名前で
呼び合う親友だけども、サコミズ総監とは。
「サコちゃんも元気そうねー……けーど」
「う、うん久しぶりですねフジサワ博士」
フジサワ博士に横目で睨まれて、サコミズ総監は手に持っていたコーヒーカップを机に置いた。
「私の前では絶対飲まないでって、言ったよね? コーヒー」
「う、うん、大丈夫、すぐに歯を磨くから」
ただ、大変にコーヒー嫌いのために、大のコーヒー党のサコミズ総監は昔からこの人がやや苦手なのであった。
総監が隊長であったころから平然と高圧的に接してくるし、今でも総監に向かって上から目線で言えるのは
この人くらいだろう。
「まあいいわ、今回は私のほうが突然押しかけたことだから許したげる」
「ほっ、けどフジサワ博士、どうして突然?」
「ヤプール相手に、この私を呼ばないなんてほうが失礼じゃない? それに、私は奴に借りがあるのよ。
あいつは私の『ディメンショナル・ディゾルバー』で異次元のゲートを塞いだはずなのに、あっさりと復活して
くれたからね。このままにしておけるわけないじゃない」
科学者として、発明品の失敗をそのままにしてはおけないと、彼女の瞳は熱く燃えていた。ともあれ、
フジサワ博士の助力は正直とてもありがたい。サコミズ総監は多少微妙な感じだが、一同は揃って博士を歓迎した。
「よしよし、ジョージがまだいないのが残念だけど、じゃあ再会を祝して乾杯といきますか!」
「博士、まだ勤務中ですよ」
「だーれが宴会までするって言ったの? 景気づけにジュースかなにかで一杯飲むだけよ。あ、もちろん
コーヒーは抜きでね」
こうなれば、もう総監にも拒否権はない。それに、乾杯程度ならすぐ終わるし、景気づけも悪くない。
「じゃ、そうと決まれば善は急げ、みんなコップを持って明るいところに集合!」
「おーっ!」
鶴の一声で、新旧GUYSの面々は、暇なときにはよく空を見たりしているフェニックスネストのデッキに
集まった。
「かんぱーい!」
「乾杯!」
隊員たちの唱和とともに、歓声が空に吸い込まれていく。昔は怪獣退治に成功したお祝いにビールで
乾杯したこともあったそうだが、さすがに今のご時世ではそうはいかず、オレンジジュースでの乾杯となった。
短い時間だが、和気藹々とした空気が流れる。これからまた怪獣が現れ、死闘の連続となるのだろうから
こんな時間も必要だろう。
しかし、コップの中身を喉に流し込んで空を見上げたとき、ミライとセリザワの目に空に輝く光の文字が
映ってきた。
「メビウス……」
「はい、ヒカリ」
「どうしたんですか?」
突然空を見上げて深刻そうな顔つきをしている二人にテッペイが尋ねてきた。
「光の国からの、ゾフィー兄さんからの、ウルトラサインです」
怪訝な顔をしているテッペイたちに、ミライはそう説明した。ウルトラマンが他の惑星にいる仲間に連絡を
するときに使うウルトラサインは、地球人の目には見えないのだ。
「ウルトラの星からの! そ、それでなんて言ってきているんですか!?」
「はい、それが……」
興奮するテッペイや仲間たちに、ミライはウルトラサインで送られてきた驚くべき内容の事件を話していった。
それは、すぐ前に、ウルトラの星のあるM78星雲の一角にある、とある惑星で起こったことだった。
そこは、通称アニマル星と呼ばれる地球に環境のよく似た星で、かつてウルトラセブンのパートナーとして
地球で活躍したカプセル怪獣アギラの故郷であり、今は任を解かれたアギラや、ほかにもかつて地球を
離れて親子で宇宙に旅立った大海亀怪獣キングトータス、クイントータス、ミニトータスの親子が海辺で遊び、
地底では同じく地球から運び出された冬眠怪獣ゲランが卵といっしょに眠り、キングゼミラの生んだ卵が
いつの日かの孵化のときを待っている。そう、ここは悪意はないが、その存在そのものが脅威となって
住む星を追われた多くの平和的な怪獣たちが、仲良く暮らしている星である。
そこへ、ある日突然次元を破って多数の高次元捕食獣レッサーボガールが出現し、平和に暮らしていた
怪獣たちや動物たちに襲い掛かってきたのである。むろん、怪獣たちも自分たちを守るために必死になって
応戦した。その先頭に立ったのは、言うまでもなく、任を解かれたとはいえ勇敢さにはひとかけらの曇りも
陰らせていなかった、あのアギラであった。
アギラは、持ち前の素早い動きで一匹のレッサーボガールの懐に飛び込むと、トリケラトプスのような
角を奴の腹に引っ掛けてひっくり返し、腹の上にのしかかって何度もジャンプして苦しめた。そうなると、
本来戦いを好まない怪獣たちもアギラの勇気に奮起して、この無礼な侵入者たちを撃退しようと反撃を
試みていく。キングトータス、クイントータスが手足を引っ込めて空中へ飛び上がり、レッサーボガールどもの
頭の上から火炎球を投下し、地球に居たときより成長したミニトータスも、手足を引っ込めた円盤状の形態で
高速回転して体当たりをかける。他にも、地球では名も知られていない怪獣たちが殴りかかったり、
火を噴いたりして応戦し、本当に戦う力のない者たちを逃がそうとする。たとえ非力な集団でも、リーダーが
勇猛であればその勇気が伝染し、より以上の実力を発揮するという好例であった。
それでも、今度のレッサーボガールたちは最初から巨大なものばかりであり、次元の裂け目から最終的には
一〇体もの大群で現れたために怪獣たちも押され始め、奴らが目と手から放つエネルギー弾や、凶悪な
パワーによってアギラやトータス親子も傷つき、そしてついに奴らが巨大なハエトリグサのような口を大きく
開き、怪獣たちを捕食しようとした、そのときだった!
『ストリウム光線!!』
突如天空から降り注いできた虹色の光が先頭をきっていたレッサーボガールの一体を吹き飛ばし、
次の瞬間、真紅に輝く光の玉が舞い降りてきた。そしてその中から現れる猛々しい巨躯と、天を睨む大きな
二本の角を持つ巨人。見よ、ウルトラ兄弟六番目の弟、ウルトラマンタロウの雄姿を!!
「トァァッ!!」
タロウは一〇匹ものレッサーボガールの群れに敢然と正面から立ち向かっていった。大地を強く蹴り、
天高く跳び上がったタロウの体が空中で目にも止まらぬ速さで回転しながら不規則に宙を舞う。そしてその速度を
最大限にまで高めたとき、獲物を求めて急降下する燕のように蹴りつけた!!
『スワローキック!!』
顔面に直撃を食らった一匹がたまらずに吹っ飛ばされ、地面を勢いよく二〇〇メートルは吹っ飛ばされた。
だが、レッサーボガールどもは狂犬の群れのようにいっせいにタロウに襲い掛かってくる。
「トォッ!!」
それに対してタロウは再び宙に跳び、スワローキックの連続で対抗していく。超高速での飛行と急降下キックの
連続に、レッサーボガールどもはまったく対応できない。あっという間に群れは散り散りになり、個別にタロウを
追い回したあげくに味方同士でぶつかって転んでしまう始末だ。
タロウは思うさまに敵を翻弄すると、着地してアギラを助け起こした。
「アギラ、よくやったな。後はまかせろ」
傷ついたアギラの背を軽くなでて、タロウは仲間たちを連れて下がっているように指示した。アギラは、言葉を
しゃべることはできないが、タロウの意思を理解してよろめきつつトータス親子やほかの怪獣たちを引き連れて
下がっていく。かつてリッガーと戦ったとき、ダンが時限爆弾島の中枢を破壊するまで食い止めたように、
敵を倒せないまでもここの怪獣たちを守り抜くという使命は立派に果たしたのだ、恥じるべき何者もなかった。
そして、アギラから使命を受け継いだタロウは敢然と、怒るレッサーボガールたちに再び向かっていった。
「いくぞ!!」
一匹のレッサーボガールと真っ向から組み合ったタロウは顔面を殴りつけ、ひるませたところに膝蹴りを
叩き込み、そのまま流れるように投げ飛ばした!
地面を転がる一匹を踏み越え、さらに二匹が迫ってくる。タロウは奴らよりはるかに素早い身のこなしで
これをかわし、さらにエネルギー弾を撃ってきた奴にチョップを打ち込み、肩を掴んで巴投げで別の奴へと
ぶっつける。
そうかと思えば、突撃してきた奴に足払いをかけて転ばせ、腕力に自信を持って向かってきた一匹を、
さらに強力なパンチでグロッキーにしていく。その圧倒的な身のこなしとパワーには、さしものレッサーボガール
どももきりきり舞いさせられるばかり、ウルトラ兄弟最強のパワーの持ち主は、東光太郎時代に培った
ボクサーの軽やかなフットワークも加わって、いわばライト級とヘヴィ級、両方の長所を併せ持つウルトラ級
パンチャーであったのだ。
こんな相手を敵にしては、以前メビウスを苦しめた怪獣であろうと勝負にならない。否、あのときのメビウスと
タロウではそもそもの実力差が大きく開いている。
「それにしても、いったいなぜこの星にこいつらが……?」
戦いながらタロウは浮かんできた疑問の答えを考えていた。このレッサーボガールという怪獣が、メビウスが
地球滞在していたときに戦ったものと同種であることは、光の国からメビウスの戦いを見守り続けていたタロウは
知っている。しかし、生き残りがいたとしても光の国のすぐそばのこの星を狙ってくるとは、単に食欲に駆られて
のことか? それにしてもこれほどの群れが一度にとは、こいつらはそれほど仲間意識のある怪獣ではなかった
はずだが、誰か先導した者でもいたのか。
ともかく、場所がM78星雲の中だったために、光の国に滞在していた自分はすぐさま駆けつけることができたが、
光の国の庭先とも言うべきこの星が襲われるとは、由々しき事態に間違いはない。それに、せっかく安住の地を
得て平和に暮らしている怪獣たちの生活を脅かすとは許せない。タロウは怒りを込めて、一体のレッサーボガールの
どてっぱらに、渾身の正拳突きをお見舞いした。
『アトミックパンチ!!』
タロウの超パワーのパンチはレッサーボガールの腹を突きぬけ、背中まで貫通した。タロウは致命傷を負って
もだえるその一体から腕を引き抜くと、今度は別の一体の頭上へと高く飛び、急降下してその首に手刀を叩き込む!
『ハンドナイフ!!』
一撃でレッサーボガールの首が寸断されて宙を舞う。一瞬のうちに二体を格闘技のみで葬り去り、さらなる余裕を
持って残った八体へと向かっていく。圧倒的な実力差、タロウに太刀打ちするのならレッサーボガールでは
余りに荷が重すぎた。
しかし、このまま戦えばタロウの圧勝かと思われたとき、突如レッサーボガールどもは攻撃目標をタロウから
逃げようとしていたこの星の怪獣たちに向けて襲い掛かっていった。
「なに!?」
タロウは慄然とし、そして焦った。残り八匹のレッサーボガールと戦って撃破するなら、実力差から申し分ない。
しかし、八匹を食い止めなければならないとしたら話が違う。自分に背を向けてアギラに先導されて逃げていく
怪獣たちへと向かうレッサーボガールに、タロウは組み付いて投げ飛ばし、背中からキックを入れて転ばせるが、
群れ全体の進行は止まらない。
「くそっ、どういうことだ!?」
知能が低く、統率された行動などとれないはずのレッサーボガールの突然の方針変換に、タロウはやはり
こいつらには操っている黒幕がいるのではと当たりをつけたが、今はともかくこいつらを止めるしかない。
だが、怪獣たちに向かうのを止めようとするタロウの前に、三匹のレッサーボガールが振り返って立ちふさがってくる。
足止めをするつもりか、やはりこの知的な行動はレッサーボガールのものではない、しかしその黒幕を探している
時間はない。
一方、タロウが残った三匹を相手に一方的だが時間を浪費する戦いを強いられている頃、この星の豊かな
森林の影から戦いを見守る人影、別世界でジュリと戦ったあの女だ。こいつは、レッサーボガールが現れる
前にこの星に現れて、絶好の餌場となるここへ手下の群れを呼び寄せ、怪獣たちが充分弱ったところでまとめて
捕食しようと狙っていたのだが、予想以上に早くウルトラマンタロウが駆けつけてきたために出て行くことを
中止して、テレパシーで手下を操っていたのだ。
そして、今タロウを足止めできているうちに、残った手下で怪獣たちを捕まえてと意図していたのだが、
その企みは同じ森に住んでいる八メートルほどの小型怪獣の鳴き声で打ち砕かれた。飛んで逃げようと
していたミニトータスを長く伸びる舌で捕まえ、助けようとするキングトータスとクイントータスをも組み伏せた
レッサーボガールの頭上に新たな赤い球が出現し、それは奴らが気づいた瞬間には、真紅に燃える彗星と
なって舞い降りてきていたのだ!
『レオ・キック!!』
彗星が、一匹のレッサーボガールのシルエットと重なり、すれ違った瞬間にはその一体の上半身は消滅していた。
文字通り、下半身だけを残して恐るべき破壊力によってもぎ取られていったのだ。そして、その一撃をもたらした
者こそ、大地に降り立った赤き獅子の勇者!!
「エイャァ!!」
戦え!! ウルトラ兄弟No.7、ウルトラマンレオよ!!
レオはキングトータスとクイントータスを襲っていた二匹を蹴り倒し、ミニトータスを襲っていた一匹の舌に
向かって、赤いエネルギーをまとった手刀を振り下ろした。
『レオ・チョップ!!』
張り詰めたゴムがちぎれるように、レッサーボガールの舌が千切れ飛んでミニトータスが解放される。
「レオ!!」
「タロウ兄さん、ご無事ですか?」
思いもよらぬ弟の救援に驚くタロウの目の前で、レオは残った四匹のレッサーボガールを同時に迎え撃つ。
宇宙拳法の達人であるレオにとって、力任せに襲ってくるだけの怪獣など恐れるにも値しない。タロウにも
劣らぬ俊敏さで一匹の懐に入り込んでパンチの連射を叩き込み、怒った他の三匹が同時にエネルギー弾を
放ってくるのを、流れるようなサイドステップとバック転でかわす。いくら連射しようと、ケンドロスのブーメラン攻撃や、
ノースサタンの含み針をすべて見切れるレオに当たるわけがない。
お返しにと、間合いをとったレオは右手にエネルギーをため、赤く輝く光の球に変えて投げつけた!
『エネルギー光球!!』
直撃を受けた一匹は頭部を粉砕されて、倒れた体も一歩遅れて砕け散る。残りは六体!
「タロウ兄さん」
「レオ、いくぞ!」
タロウとレオは視線をかわし、同時に残ったレッサーボガールに構えをとる。いまだ数では二対六と不利、
しかし、兄弟が力を合わせればこの程度の数の差など問題にならない。
タッグを組んだタロウとレオは、前転して勢いをつけると、同時にキックを打ち込んだ!
「イヤァァッ!」
マネキンのようにあっけなく倒れるレッサーボガールを乗り越えて、さらに四体が二人の前に立ちふさがる。
しかし、そのときにはすでにレオは空高く跳び、タロウは両手を前にかざして光の壁を作り出していた。
『タロウバリヤー!!』
四体分のエネルギー弾の乱射はすべてバリヤーにはじき返され、落下してきたレオの手刀が一閃する!
『ハンドスライサー!!』
縦一文字の斬撃炸裂! 食らった一体が左右真っ二つに寸断される。
最初の半分に数を落としたレッサーボガールは、それでも無価値となった数の有利を頼んで戦意と殺意を
失っていないが、タロウとレオの攻撃は緩みはしていない。タロウのスワローキックの連続と、レオの格闘攻撃が
真上と真下の三次元攻撃となって襲い掛かり、対して連携などとりようもないレッサーボガールは個別に
反撃を試みるだけで、二人にはかすりもしない。そしてタロウの空中攻撃に対抗しようと三匹が背中合わせに
固まったときに、レオも跳んだ! タロウに目を取られて動けないでいる三体の上空から、回転しながら勢いよく
直角に降下したレオのキックが同時に炸裂する。
『きりもみキック!!』
かつて双子怪獣レッドギラスとブラックギラスを葬り去った必殺技が炸裂し、三匹の首が一辺にはじけ飛ぶ!!
さらに今度は両手を高くかかげたタロウの体が急速回転を始め、大気を渦巻かせる巨大竜巻を発生させた!
『タロウスパウト!!』
一瞬で最後の二匹を飲み込んだ巨大竜巻は、抵抗などまったく許さぬ勢いを持って上空高く吹き飛ばした。
「ようし、とどめだ、レオ!」
「はい、タロウ兄さん」
上空から回転しながら落ちてくるレッサーボガールへ向けて、二人は最後の一撃の体勢をとった。
両手を頭上で合わせ、腰に落としたタロウの体が虹色のエネルギーで輝き、レオが両手を体の前で高速で
クロスさせると同時にエネルギーがスパークし、タロウは腕を逆L字に組み、レオは両腕を突き出し、必殺の
光線を放った!!
『ストリウム光線!!』
『シューティングビーム!!』
虹色と赤色の破壊光線が、一寸の狙い違わず撃ち抜いた時、二つの火炎の花がこの戦いの終焉を告げた。
この星を襲った一〇体のレッサーボガールは、天を焦がす大爆発を最後に、二人のウルトラ兄弟の前に
全滅したのだった。
アギラやトータス親子をはじめとする怪獣たちも無事だ。タロウとレオは満足そうにうなづいた。
「ところでレオ、どうしてお前がここに?」
「ロンが、私を呼んでくれたのです」
見ると、レオの足元に小さな怪獣が駆け寄ってきた。それは、かつてレオの故郷、L77星でレオのペット
だった怪獣、ロンだった。昔、ロンはレオと同じくマグマ星人によってL77星が滅ぼされたときに故郷を
失い、宇宙をさまよっているうちに巨大化し、性格も荒くなって地球で暴れていたが、レオによって正しい
心を取り戻されて元の大きさに戻され、今はこの星で暮らしているのだった。
「そうか、そうだったのか」
これで、今は任務で光の国を離れているはずのレオが駆けつけてこられた理由がわかった。タロウは
レオといっしょにロンの頭をなでてやって礼を言った。おかげで、この星の危機を犠牲を出さずに切り抜ける
ことができたと。
だが、平和が戻ったと思われたそのときだった。
突如、森の一角から禍々しいオーラが立ち上り、人間の姿が宙に浮かんだかと思うと、それが一瞬で
変異して、レッサーボガールとよく似た、しかし比べようもなく邪悪な雰囲気を持つ怪獣が現れたのだ。
「お前は!?」
「ボガール……」
タロウには、そいつの姿に確かな見覚えがあった。かつて宇宙の星星を荒らしまわり、あらゆる生命を
食いつくし、絶滅させていった凶悪な食欲の権化、高次元捕食体ボガール。これでレッサーボガールどもが
この星に大挙して現れた理由もわかった。けれど、ボガールは確か数年前、地球でメビウスとヒカリによって
倒されたはずなのに。
「ボガール、きさま、生きていたのか」
「キサマラ……ヨクモ、テシタドモヲ……マタ、ショクジノジャマシタナ」
片言でしゃべるボガールは怒りをあらわにして、タロウとレオに攻撃態勢をとってくる。どう見ても、話の
通じる相手ではないと理解した二人も再び身構える。
しかし、両者が激突する前に、ボガールの後ろの空間が割れて、赤黒い次元の裂け目が生じた!
「ボガール貴様、勝手に何をしている!?」
「グ……キサマカ」
次元の裂け目から響いてきた禍々しいエコーのかかった声に、タロウとレオも思わず立ち尽くした。
それが、異次元でボガールの人間体と話していたクロムウェルの声だと彼らが知るはずもないが、
空間を割って移動するやり方には、はっきりと心当たりがあった。
「ヤプール、やはり貴様が黒幕についていたのか!!」
タロウはかつて地球で二度ヤプールと戦ったことがある。特に、Uキラーザウルスと戦ったときの印象は
強烈で、そのときの邪悪なオーラと今次元の裂け目から漂ってくるものの質は同じだった。ただし、
ヤプールとは多数のヤプール人の意識集合体なので、今話しているヤプールは、あのときのヤプールとは
同一人物とも別人ともいえる。
「ぬぅ……ウルトラマンタロウか。ボガールの馬鹿め、貴様が先走ったおかげでウルトラ兄弟に我らの
ことが知られてしまったではないか!」
「シルカ……アレシキデ、ワタシノウエハミタサレン」
「ともかく戻れ、エースを倒すまで、貴様の能力を失うわけにはいかんのだ!」
次元の裂け目は急膨張すると、ボガールを強制的に引き込み始めた。これはかつてギロン人が
アリブンタのえさとなる人間を捕らえるために使った異次元蟻地獄の変形だろう。ボガールは抵抗
するが、なすすべなく引き込まれていく。
「待て、逃がさんぞ!」
タロウとレオは、ここで逃がしてはなるまいと光線で追撃をかけた。
『ストリウム光線!』
『エネルギー光球!』
二人の攻撃は、消え行くボガールまであと一歩と迫ったが、わずかに次元の裂け目が閉まるほうが
早く、空しく空を切って飛び去っていった。
「逃がしたか……」
異次元に逃げ込まれてしまっては、こちらとしては追撃のしようがない。だが、残念そうに拳を握り締める
タロウに、レオは今の会話でわかっただけの情報と、希望を示した。
「タロウ兄さん、奴を逃がしたのは残念でした。けれど、これでヤプールが復活しているということと、
ヤプールとボガールがつながっているということがわかりました。そして何より、奴はこう言いました。
「エースを倒すまで、貴様の能力を失うわけにはいかない」、と、つまりエース兄さんは今もどこかで
無事でいるということです」
「そうか! 思い出してみれば、ヤプールならボガールを復活させられても不思議ではない。それにしても、
今回は餓えたボガールが独断で行動したらしいが、我らにとっては貴重な情報を得れたことになるな」
「そうですね。それに今のボガールはメビウスが戦ったときに比べて、かなりパワーダウンしていた
ように見受けられました。だからヤプールも慌てて回収したんでしょう」
もしヤプールがボガールを無理矢理にでも回収しなければ、奴は間違いなくタロウとレオに葬り去られて
いただろう。それでも、存在を知られるのを覚悟で出てきたのはボガールにそれだけのことをする価値があるからだ。
「これは、大きな転機になるかもしれん。とにかく、ゾフィー兄さんに急いで報告しなければならんが、
レオ、私はこの星の怪獣たちのために、もう少しここに残りたい。すまないが、宇宙警備隊本部へ
直接報告へ行ってくれないか?」
「わかりました。では、こちらはお任せします……ロン、よく私を呼んでくれた。元気でいろよ」
レオは、かつての家族の頭をひとなですると、後は振り返らずに飛び去っていった。
そして、残ったタロウはアギラやトータス親子など、傷ついた怪獣へ向けて両手を掲げて治療光線を
放っていった。
『リライブ光線』
きらめく光のシャワーが怪獣たちの傷を癒していく。ウルトラの母の血を引くタロウは治癒の力でも
兄弟の中で群を抜いているのだ。けれど、タロウはこのままヤプールの跳梁を許せば、この何倍もの
犠牲が出ることになると、背筋を寒くした。今回のヤプールとボガールの言動を見ると、奴らはもうしばらく
力を蓄えるまで潜んでいるつもりだったのだろうが、尻尾を掴んだ以上必ず引きずり出してやる。
その後タロウは、また先走ったボガールが攻撃を仕掛けてこないかパトロールの強化を要請するために
自身も光の国に帰還していった。だが、そのころにはすでにレオからゾフィー、そしてウルトラの父に事態が
報告され、ゾフィーから地球のメビウスとヒカリへ向けてウルトラサインが放たれていたのだ。
こうして、はるかM78星雲で起きた事件の全容をGUYSの皆に説明し終わったミライは、深刻に考え込んでいる
皆を見渡した。やはり、かつて必死の思いで倒したボガールが復活し、さらにヤプールと手を組んでいると
なると平然とはしていられない。特に、ミライは目を閉じて瞑想しているように考え込んでいるセリザワ、
ヒカリに声をかけた。
「ヒカリ……」
「わかっているメビウス、私は、大丈夫だ」
その声には、こもった感情を理性で押さえつけているものがあった。ヒカリとボガールには、浅からぬ因縁がある。
かつてボガールは、科学者であったヒカリが愛した奇跡の星アーブを滅ぼし、死の星に変えてしまった。
そのときヒカリはアーブを守れなかった悲嘆から、アーブの怨念に取り付かれて復讐の戦士、ハンターナイト・ツルギと
化して宇宙のあちこちで暴力をふるった。地球に来てから、メビウスやGUYSとの触れ合いでウルトラマンとしての
心を取り戻し、ボガールとの復讐劇にも決着をつけたが、やはり心穏やかならぬものがあるのは仕方がない。
「ここ最近の怪獣の頻繁な出現は、ボガールのせいだったんでしょうか?」
話を進めようと、ミライはその話を振ってみた。ボガールは、自身の食料となる怪獣を地の底の眠りから蘇らせたり、
宇宙から呼び寄せたりする能力を持っている。かつてのディノゾールをはじめ、本来現れずにすんだはずの
怪獣が大挙ボガールのせいで現れて、結成当時のリュウたちは苦労したものだ。
「いえ、可能性は高いですが断定はできないですね。ボガールの仕業なら、食料にするために奴も現れるはずですが、
今回のとおりヤプールはボガールを隠したがっています。となると、地球の混乱を狙ったヤプールの仕業ではないでしょうか」
テッペイの仮説には証拠はなかったが、十分な説得力を持っていた。だがそれにしても、片方だけでもやっかいな
相手が形だけとはいえ手を組んでいるとは先行きが思いやられる。ボガールの能力と、ヤプールの智謀が化合したら
どんな恐ろしい手で攻めてくるか。考えただけで気が重くなる。
その陰鬱な空気を変えたのはサコミズ総監だった。
「みんな、ヤプール、そしてボガールまで復活を遂げているのは確かに容易ならざる事態だ。しかも、ヤプールは
行動を秘匿しようとしていたことからも、これまでにない規模での侵略、我々への復讐をもくろんでいるんだろう。
しかし、同時にこれまで不明だったウルトラマンAの安否の一端も掴めた。ヤプールにすれば、慌てたはずみで
口をすべらせたのだろうが、我々にとっては大きな前進だ。この宇宙のどこかで、ウルトラマンAは今でも
ヤプールの計画を阻んでくれている。我々も、早く彼を見つけ出そうじゃないか」
「……G・I・G!!」
いっせいにCREW GUYSの隊員たちはサコミズ総監に向かって返礼した。隊長を降りても、この人がGUYSの
大黒柱なのには変わりない。あっというまに隊員たちに満ちていたマイナスの気をプラスに変えてしまった。
これまでは漠然としていた、対ヤプール、ウルトラマンA救出作戦が現実味を帯びてくると、リュウたちはさっそく
訓練だと元気よく駆け出していって、テッペイは新人といっしょに情報分析、コノミはサポートと適材適所に
ついていき、フジサワ博士も「さすがサコちゃん、やるじゃない!」と褒めていった後、対ヤプール用新型
メテオールの開発に取り掛かっていった。
こうして、GUYSは小さいながらも確実な一歩を踏み出した。
「エース兄さん、待っててください。すぐに助けに行きますからね」
「ボガール……次に会ったときには、今度こそ二度と蘇れないよう、完全に倒してやる」
ミライは空を見上げ、見果てぬ先で戦っているであろう兄に誓い。ヒカリは復讐心を押さえ、今度は宇宙警備隊員として
ボガールの殲滅を誓った。
だが、堤防のこちら側で大荒れだからといって、向こう側も同じだとは限らない。時空の壁を越えた場所では、
まだ台風もその雲を陰らせてはおらず、平穏な陽光のもとで暖かな夏の日差しが少年少女たちを照らしていた。
「ふぃーっ……気持ちいい」
ルイズは足を小川のせせらぎの中につけて、夏の猛暑の中で味わえる最高の快楽を満喫していた。
すでに港町スカボローを出て一日、馬車でののんびりした旅とはいえ、ほろの中でも夏の暑さはこたえる。
そんなときに見つけたのが、街道に平行して流れる幅五メイル程度の小川であった。見回せば、向こうでは
アイちゃんとキュルケが水遊びをしていて、ロングビルは監督役、タバサは水に足をつけながら本を読んでいて、
シエスタは夕食に使うんだと魚を獲る罠をこしらえている。そんでもって才人はといえば。
「しゃあ、三回成功! 次は四回だっと。うーん、なかなかよさそうな石がないなあ」
と、石投げの水切り遊びに熱中している姿はどちらが子供かわかりはしない。怒鳴りつけてやろうかと
ルイズは思ったが、足元から伝わってくる涼しさのおかげでどうでもよくなった。
「こんなことなら、水着でも持ってくればよかったわね」
と、ルイズがつぶやいたのを才人は聞き逃したが、仮に準備があったとしてもこの世界の女性用水着は
ゆったりとした無地のワンピースのような色気のかけらもないものなので、期待したあげくに、間違いなく
激しくがっかりしたことだろう。
しかし、この暑さだと着衣のままでも水に飛び込みたくなる。どうせすぐ乾くだろうし、水遊びが楽しそうな
キュルケたちを見ると、飛び込んじゃおうかなと思ったとき、彼女の足に川の流れに流されてきた何かが
軽く当たって、それを水中から拾い上げた。
「……貝がら?」
それは、ピンク色の光沢を持つ手のひらほどの貝がらだった。見ると、向こうでは才人も同じ貝がらを
拾って水切り石の代わりにして遊んでいる。どうやら水切りにはちょうどいいらしく、記録が伸びたと
喜んでいる。
「おーいルイズ、これけっこう面白いぞ。桜貝に似てるけど、なんて貝かな」
そう言われても、いちいち貝の名前なんて知るはずがない。というか、けっこうきれいな貝なのだから
「この貝がら、君の髪の色といっしょで首飾りにしたら似合うよ」くらいは言えないのだろうか、まぁかといって
ギーシュのように饒舌に口説き文句を言う才人など気持ち悪いだけなのだが。
よく見ると、川原のあちこちには同じ貝がらが散乱している。ルイズたちと同じように休憩している
旅人の中には拾って持ち帰ろうとしている者もいるようだが、宝貝などは見慣れているルイズは特に
執着は持たずに投げ捨てた。キュルケたちも同じなようで、シエスタなどは魚のほうに興味があるようだ。
ちなみに、試みにロングビルやタバサに貝の名前を聞いてみたが、知らないと言われた。まあどうでも
いいことなのだが。
「この調子だと、明日には着くわね……ふわぁぁ」
疲れが水の中に溶けていくような感触は、やがて眠気へと変化していった。
「キュルケおねえちゃん、この貝がらアイのたからものにするー」
「いいわね。大事にしなさい、じゃそろそろ上がろうか」
川から上がってアイの足をタオルで拭いているキュルケの姿には、ルイズも自然と笑みが漏れてくる。
にっくき宿敵だが、面倒見がよく子供受けするタイプだということくらいはわかる。いろいろと対象的な
相手だが、こういうところはうらやましいと思った。
この風景だけ見ると、とてもこの国で未曾有の内戦が続いているとは思えない。街道を行き交う人々も
あからさまに武器をたずさえている人はほとんどなく、商人から自分たちのような旅人、作物を運ぶ農夫と
様々な身なりの人々が額に汗して歩いており、中にはこの暑さにも関わらずに全身黒一色で固めて
平然と歩いている人も見かけたが、すぐに雑踏の中に紛れていってしまったためにそこで忘れた。
実際ルイズが見るところ、トリステインとあまり差がないように思われ、アルビオンは平和な大陸だった
という噂は、これを見る限りは本当だった。
白の大陸は暖かな自然に囲まれて、今のところは平和が続いていた。
続く
以上です。今週は25話ぶりに地球、M78星雲側のエピソードを書きました。
今回はなんといってもタロウ、そしてレオの活躍が書いてて楽しかったです。特にメビウスで聞いて以来、
ずっと「タロウ兄さん」という台詞はどこかで言わせてみたいと思っていたので、念願がひとつ叶いました。
それ以外にも、この作品には私がウルトラシリーズを見てきたなかで思い描いてきた希望や想像をいろいろと
盛り込んでいます。そして時系列はハルケギニア単独ではなく、地球とも平行して流れていますので、たまにそういう
話も混ぜさせていただいています。もっとも、二つの世界を有機的につなげているのがヤプールだということは
大いなる皮肉ですが、そのため、今回はゼロ魔キャラは後半にちょっとしか出せませんでしたが、あくまでたまに
ということでご容赦ください。
それから、これまで登場した怪獣の数もいつの間にか60匹を超えてました。けれどシリーズひとつずつで
みれば、平均5匹ずつくらいしか出していないので、ウルトラシリーズの懐の深さがよくわかります。
さて、次回はやっとこさティファニアも再登場です。
乙
乙
今日ケーブルテレビ見てたら、超闘士列伝OVAやってたよ
タロ坊強いね
ウルトラの人乙です。
タロウだ、タロウ。バードンが出てきた後だけど、元気で何より。
それにレオ。初めて光線じゃなくて格闘が必殺技なウルトラ戦士。
最後の方に出た貝殻って…やっぱ”あいつ”の鱗なのかな?
”あいつ”は海でもない場所に居るのか? …アルビオンは海の上ではあるが。
また次回楽しみにしてます♪
あいかわらずジェラしいまでに面白いです
>>19さんのいう「あいつ」って誰なのでしょうか
個人的にはキングジョーとか出て欲しいですね
そういえばベロクロンを除けばあんまメジャーちっくな怪獣は出てないですね
この先も期待しちゃいます
わくわくでぃす
ウルトラ乙
タロウといえばまずウルトラダイナマイトを思い出してしまう俺
>「キュルケおねえちゃん、この貝がらアイのたからものにするー」
_, ,_ _, ,_
:(;゚∀゚)゚∀゚;): ヒィィィィ──!
:( `⊃⊂´ .):
:と_ _))(_ _つ:
ウルトラの人乙でした
久しぶりの地球側サイドで、しかもタロウとレオが登場するとは
感無量です。
次回がティファニア登場ですか、どんな話しになるか楽しみです。
ベルサイユのばらからオスカル召喚
ゼロ魔キャラに真の貴族の何たるかを叩き込んで欲しい
真の貴族云々って言葉をよく見るが、
真の貴族ってのはどの世界、どの国、どんな情勢でも変わらない不変的なものなのか?
トレーズ様ならきっと答えてくれる
別に誰も「真の貴族」が縦的横的に普遍的な概念だなんて言うちょらんがなどっこい
こんばんは。
西日本では雨がひどいですが、皆様大事ありませんでしょうか?
進路クリアなら18:20頃から投下したいと思います。
>>27 でも普遍的でもなく可変的な概念だとすると、
オスカルに真の貴族の何たるかを叩き込まれても困るよねって話さ
それではいきます。
「さっきの爆発……何だったのかなぁ?」
「スゴかったなー!」
生徒たちがまだ煙の立ち上る塔を見上げて言う。やがて煙は収まったが、それでも
生徒たちはこの事態の元凶の名をいつものように口にしていた。
「どうせ今回の爆発も……」
「ああ、アイツの仕業だ!」
爆発のあった教室からは、すでに気絶した教師、ミセス・シュヴルーズも医務室へと
運ばれ、ほとんどの生徒たちも移動を終えていた。そこに残っていたのはこの事態を
引き起こした張本人、ルイズと、その使い魔であるふがくだけだった。
「あーん。お風呂入りたーい」
「アンタねぇ!自分でやっといて何サボってるのよ!まじめに片付けなさいよ!」
ルイズがとりあえず引き起こした教卓に腰掛けたまま言う。その姿にふがくが怒りを
あらわにするが、当のルイズは最初からふがくがその小さな体に見合わないほどの瓦礫の
山を軽々抱えて運ぶのを横目で見ているに近い状態だったので何を今更、である。
「……ねぇ、フガク」
「何?」
不意にルイズがふがくに声をかける。その表情は真剣だ。
「さっき聞いたでしょ?わたしのこと……」
「それが何?」
「わたし、魔法が成功したことないの。成功率ゼロ。だから『ゼロ』のルイズって呼ばれてるの」
「…………」
「……おかしいわよね。魔法が使えるメイジであることが貴族なのに、魔法が使えないなんて」
「アンタ、バカ?」
「え?」
ふがくがルイズの言葉を遮る。その顔は怒りに彩られていた。
「だったら、どうして私がここにいるのよ?ふざけるんじゃないわよ?
……私にはやることがあったのよ。あかぎを助けて、大日本帝国を勝利に導くはずの
私をこんな場所に呼んでおいて『成功率ゼロ』?今度そんな寝ぼけたこと言ったら
ぶっ飛ばすわよ?」
「……」
ルイズは顔をうつむかせたまま上げることができない。よく考えるまでもない。ルイズは
ガーゴイルの一種だと理解した「ハガネノオトメ」――人間に似せてあるけれど人間じゃないと
聞かされたふがくでも、自分の生活、目的、使命があったはずなのだから。
「そ・れ・か・ら、私は『ふがく』!何度言ったら解るのよ!今度『フガク』って呼んだら
許さないからね!……だから、早くそんなつまんないことなんか忘れなさいよ」
「え?」
ルイズが顔を上げる。ふがくは瓦礫の山で顔を隠してその表情を見せないようにしていた。
「……べ、別にアンタの気分がどうなろうと知ったことじゃないんだから!一応私を呼び出した
のはアンタだから、いつまでも沈んでいられたら困るだけ、それだけなんだから!」
そう言ったふがくの言葉を遮るように、おなかの虫がかわいらしく鳴いた。その様子に
ルイズが思わず吹き出す。
「な、何笑ってるのよ!ルイズ!」
「あ、あはは……ご主人様と呼びなさいよ、ふがく!……そ、そうね……これが終わったら
お昼ご飯に行きましょう……あはは……」
「笑わないでよね!……まぁ、いいけど」
そう言ってふがくは手にした瓦礫の山を片付ける。大日本帝国の秘密決戦兵器20トン
魚雷を扱えるふがくにとって、この程度はなんてことはない。ぼろぼろだった教室も、昼食
までには十分片付きそうな気配だった。
その頃、中央本塔最上階の学院長室では、学院長秘書のミス・ロングビルが学院長
オールド・オスマンに今回の騒動の報告を行っていた。
「――先ほどの大爆発はミセス・シュヴルーズが行っていた『土』の授業で『錬金』を教えて
いた際、生徒が実践魔法で失敗したために起こったものだそうです。
生徒の名は……」
そこまで言ったロングビルの報告を、オスマンは遮る。言われなくとも解っていると、その声は
告げていた。
「……ヴァリエール家の末娘ルイズじゃろ?これで何度目かのぅ?」
「まだ修行中の生徒ですもの。失敗の一度や二度、仕方ありませんね」
翠の髪をアップにまとめ、眼鏡をかけた知的な視線が柔らかくルイズを弁護する。
その様子にオスマンはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「一度や二度なら許してやるが……生徒のしたこととはいえ、魔法学院長であるワシが
全責任を負わねばならんのじゃ」
言いつつ、オスマンはロングビルの後ろに回り込む。
「こんな年寄りに酷よのぅー」
続けて「ヴァリエール家からはもっと寄付金を出してもらわんとな!」などと言いつつ、
オスマンはロングビルのおしりに頬をすりつける。
「……あの……オールド・オスマン?いじけたふりしてセクハラするのは止めてください。
これ以上続くと、王室に報告しますよ……?」
「何を言うとる!上司を慰めるのも部下の仕事じゃろ?」
「ちょ!まっ?やっ!」
立場上無下にも振る舞えないロングビルの抗議にも、オスマンはおしりから顔を話さずに
反論する。はっきり言ってその姿には威厳のかけらも感じられはしない……そればかりか
頬ずりだけでなく両手でおしりを鷲掴み、なで始める始末。立場上の問題でロングビルは
耐えているが、それも時間の問題だった。
「カッカしなさんな!そんな風だから――婚期を逃すのじゃ!」
おしりをなでて鼻の下を伸ばしまくったそれはまさに禁句。その一言でロングビルの中の
何かがキレた。ぶちっという音を聞いたのは誰であろうオスマンだけなのだが……幽鬼の
ような表情のロングビルがゆらり、とオスマンに向き直る。
「……こ……のエ……ロジ・ジ・イ……」
吹っ切れたロングビルのブーツが小気味よいくらいにオスマンを踏み、踏む、踏んだ。
そこにはもはや伝説ともいえる老メイジの威厳も、麗しい女性の慎みもない。しかも
こんな時に限って往々にしてタイミングの悪い人間が現れるものである。
「失礼します。オールド・オスマ……ン……!?」
「あら!イヤですわ。オールド・オスマンが腰が痛いとおっしゃるのでマッサージしてましたの。
健康を管理するのも私の仕事ですから(はぁと)」
それは古びた書物を抱えた眼鏡で頭の寂しい中年教師――コルベール。コルベールは
学院長室で繰り広げられるスペクタクルを目の当たりにして硬直し……オスマンの尻を
ぐりぐりと踏みながら乙女じみた仕草を見せるロングビルの、この現状には全く似つかわしくない
言動で再起動した。
「――んで、何の用かの?ミスタ……えっと、コペルニクス君?
ミス、お茶を淹れてくれんか?」
「はい」
「コルベールですっ!……誰が貨幣鋳造について論文を書いたのですか、まったく」
先ほどまでの狂騒が幻だったかのような――オスマンの頭のこぶさえなければ――
雰囲気の中、ロングビルがお茶を淹れに席を外したタイミングを見計らって、コルベールが
オスマンに手にした古い書物を差し出す。それは「始祖ブリミルの使い魔たち」という、
始祖とその使い魔のことを記した古文書だった。
「まーた君はこのような古い文献など漁りおって」
「あの……こちらもご覧になってください」
あくびをかみ殺すオスマンに、コルベールは一通のメモを手渡す。それは先ほどふがくの
左手のルーンをスケッチしたものだったが、それを目にしたとたんオスマンの顔色が
変わった。
「ミス・ロングビル、すまんが席を外してくれんか。ミスタから詳しく話を聞きたいんでの」
「――はい」
ロングビルはオスマンの言葉に従い、一礼をして部屋を辞するべく学院長室の重厚な
扉に手をかける。その眼鏡の奥の視線が妖しい輝きを帯びたことに、二人の男は気づく
こともなかった――
破壊された教室の片付けを終えたルイズとふがくは、学院の中央本塔にある立派な構えの
扉の前にいた。中ではもう早い昼食を迎えている生徒たちの声が聞こえる。その扉の前で、
ルイズがその薄い胸を目一杯張って言う。
「ここが『アルヴィーズの食堂』よ。貴族しか入れないけれど、今日からあんたもここで
食べるのよ」
その言葉にふがくはあっさりと答える。
「貴族だけ、ね。それじゃ私は別のところで食べるわ」
「え?」
「だって、貴族だけ、でしょ?私は貴族に列せられたことなんてないし。軍だと将校扱い
だけど」
「将校なら貴族でしょ?」
「ここじゃそうかもしれないけど、大日本帝国は違うわ。優秀な者が将校になるのよ。
それが平民出身でもね。
第一、ここじゃどこにしても普通の食事以外できそうにないし。堅苦しいのは嫌いなの」
ゲルマニアみたいね……とルイズは思った。それが資産か才能かの違いはあるけど、とも。
確かふがくの国って――貴族と平民それぞれの代表者を集めた二つの議会で政策を決め、
それを建国以来2600年途絶えたことのない皇族から即位した、なんとかいう代々の皇帝が
承認して動く国、だったっけ――トリステイン王国より歴史は浅いしやっぱり変わった国よね、
と昨夜のケンカと書いて話し合いと読む情報交換で得た知識を反芻するが、それで
引き下がるルイズでもない。
「いいのよ!わたしが決めたんだから。それで、どんなのが食べたいのよ?」
「……言ったところで用意できるとはとうてい思えないけど?」
「言いなさいよ!東方の料理でもヴァリエール家お抱えの料理人を呼んででも作らせるわよ!」
「ぜっったい無理」
「言いなさい!」
「うるさいわね!いくら私でも自動車も走ってないのにガソリンがあるなんて最初から
期待もしてないわよ!」
肩で息をするルイズとふがく。一息ついて落ち着いてからルイズが聞く。
「……が、『がそりん』?それに『じどうしゃ』?」
頭に「?」が浮かんでいそうな表情で聞くルイズに、ふがくは「ほら見なさい」という顔をする。
「説明は面倒だからしないわ。とにかく、聞いたこともないんじゃ見たこともないでしょ?
だからいいって言ったの」
「ぐっ。……と、とにかく、今日からわたしと一緒に食事をするの。授業にもわたしと一緒に
出るのよ。これは命令よ!」
そう言って、ルイズは入り口付近で給仕をしていた黒髪のメイドを呼ぶ。そう言えば
今朝も見かけたっけ、と思ったのは、メイドが目の前に来てからだった。
「どのようなご用でしょうか。ミス・ヴァリエール」
肩で切りそろえた艶のある黒い髪に黒い瞳。そして出るところは出て引っ込むところは
引っ込んだスタイル。ルイズが思わず嫉妬しそうなメイドだったが、平民に嫉妬することは
貴族として恥ずかしいことだと努めて平静を装った。
「今日からわたしと一緒にこのふがくもここで食事をするから。準備してくれない?」
ルイズがそう言うと、黒髪のメイドは一瞬驚いたような表情を見せ――たような気がした。
「かしこまりました。それでは中でしばらくお待ちください。ミス・ヴァリエール、ミス・フガク」
黒髪のメイドはきちんとしつけられた礼を二人にした後厨房へと下がっていく。言われた
ように中に入り席に着いた二人にやがて運ばれてきた食事を前にして、ルイズはふがくが
トリステイン風とは違ってもきちんとしたテーブルマナーを披露したことに驚いていた。
「あんた、黙ってたわね。アルビオン風というか、ガリア風というか……きちんとしたテーブル
マナー学んでいたなんて」
「帝国海軍の幹部用の食事はちょうどこんな感じだし。こっちに来てフランス、というか
オランダ料理っぽい、かな……こういう料理を食べることになるとは思っていなかったけど」
フランス?オランダ?多分ふがくのいた国の近くにある別の国だろうと、ルイズは理解した。
「何よ。さっき将校は貴族以外でもなれるって言ったけど、やっぱり貴族じゃない。平民が
こんな料理を口にできるはずもないもの」
そう言ってルイズはデザートのケーキを待つ。そのとき、少し離れた場所から甲高い
少女たちの声と、甘ったるい雰囲気をたたえた少年の声が聞こえてきた。
「ギーシュ様!はっきりしてください!」
「どうして嘘つくのよ!」
「待ちたまえ!君たちの名誉のために……」
「そんなものはどうでもいいわ!」
「……何、アレ?」
ふがくが声のした方を見る。そこには金髪ドリル髪に赤いリボンをつけた少女と栗色の
セミロングの少女に囲まれている金髪癖毛の見るからに気障ったらしい少年がいた。
少年と金髪ドリル髪の少女はルイズと同じ黒色のマント、栗色セミロングの少女は茶色い
マントを身につけている。
「……ギーシュとモンモランシー、それに名前は知らないけど1年生の子ね。またギーシュが
つまんないことでもしたんでしょ?」
「ふぅん」
ふがくはしばらくその様子を眺める。どうやらギーシュという少年が二股かけていたようだ、
ということは解った。気障ったらしい仕草が鼻につく。その大仰な動きのせいでギーシュの
ポケットから何か紙の束――どうやら手紙のようだ――が落ちる。それを見たふがくは、
その紙の束に近づく不運な人間を確認すると静かに席を立った。この世界にはないラジアル
ゴムタイヤで磨き抜かれた床の上を足音も立てずに滑るように移動するふがく。横にいた
ルイズも、ふがくが席を立ったことに気づかなかった。
「まったく。ギーシュも懲りないわね。二股なんて……って、あれ?ふがく?」
ギーシュが落とした手紙の束を拾ったのは、先ほどの黒髪のメイドだった。そのメイドが
ギーシュに声をかけようとしたとき、静かに近づいたふがくがその手から手紙の束を奪う。
「え?」
驚く黒髪のメイド。ふがくは唇に指を当てて言った。
「……黙って私に任せて。
そこの色男。ポケットから手紙の束が落ちたわよ」
ギーシュは返事をしない。なるほどね、とふがくは一人納得すると、やや挑発するような
口調で言葉を継ぐ。
「もしかして、これ恋文かしら?バラ模様の封筒なんて……見た目通りに気障ね」
その言葉がギーシュの後ろにいた金髪ドリル髪の少女と栗色セミロングの少女に昏い
炎を点す。
「ギーシュ様ひどい!」
「何よこのラブレターの数!こんなにモーションかけてたなんて!」
立て続けに響く小気味よい音と鈍く重い音。二人が怒りも収まらぬまま去った後には、
ぼろぞうきんのように這いつくばるギーシュが残る。遠巻きに見ていた他の生徒たちも、
この状況にはさすがにやや引き気味の様相を見せていた。
「自業自得ね。これに懲りたら女の子にはもっと誠実になることね」
手紙の束をギーシュに投げ渡し、黒髪のメイドに今日のデザートのことを聞くふがく。
その後ろで、ギーシュがゆらり……と立ち上がった。
「君ィ……覚悟はできているんだろうね?」
「覚悟、ねぇ。どうしたいのかしら?色男さん?」
肩をすくめてみせるふがく。それがいっそうギーシュを挑発する。
「その態度……万死に値するよ。さすがに『ゼロのルイズ』が呼び出した使い魔だ。誰が
造ったか知らないが、礼儀も知らないガーゴイルには、僕が貴族に対する礼儀というものを
教えてあげよう」
「はぁ?そっちこそ相手を見て物を言いなさいよ。相手の力量も量れないようじゃ、戦場に
出たらアンタ真っ先に死ぬわよ」
ばかばかしい――そんな雰囲気を隠そうともしないふがくに、ギーシュは肩を震わせる。
「ふ……ふふ。それはこの僕、ギーシュ・ド・グラモンが武門の出だと知っての侮辱かい?
……いいだろう。ヴェストリの広場で決闘だ!」
ギーシュ逃げてー!支援
以上です。
キャラつかみ直すのにゲームもう一度やったらサバイバルモードのラスボスに
屈しましたorz
ギーシュ戦...結局3回くらい書き直してます。フーケ関連イベントもorz
ジルさんみたいに吹っ切って吹っ飛ばした方が先に進むかなーとも
思い始めてます...作風が違うのでやらないと(多分)思いますけど。
それでは。
37 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 18:53:36 ID:d9ax75zU
萌え萌え乙です
ギーシュ…死ぬなよ
予約が無いようなら55分から投下したいと思います
38 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 18:55:30 ID:d9ax75zU
名門トリステイン魔法学院。
その学院長室に、美女に蹴りまわされる、ひとりの老人の姿があった。
彼の名はオスマン。
学院の者からはオールド・オスマンと呼ばれる、この学院の最高責任者である。
「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに」
齢百とも三百とも言われる老人は、頭を抱えて自分を足蹴にする美女に情けなく懇願する。
だが彼の秘書、ミス・ロングビルは鬼の形相で、目の前のスケベじじいを蹴りまわすことをやめなかった。
毎日のように尻を撫でられ、彼の使い魔のネズミに下着を覗かれる。
ある目的のために、彼の秘書になった彼女だったが、流石に我慢の限界であった。
先ほども「今度やったら、王室に報告します」と言ってやったが、返ってきた言葉は、
「王室が怖くて魔法学院学院長が務まるかーッ!」
故に、この老人の懇願を無視して、蹴り続けているのである。
ミス・ロングビルの息がそろそろ乱れ始めた時、彼女の報復は突然の闖入者によって終わりを迎えた。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?」
コルベールが学院長室のドアを開けたときには、ミス・ロングビルは何事もなかったように、椅子に座って書き物を再開していた。
オスマンも腕を後ろに組んで、重々しく闖入者を迎え入れる。
魔法と見紛うほどの早業であった。
「たた、大変です!ここ、これを見てください!」
そう言ってコルベールが見せたのは分厚い『始祖ブリミルの使い魔たち』とタイトルの書かれた本、そしてアノンの左手に刻まれていたルーンの模写だった。
オスマンの表情が変わった。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
ミス・ロングビルが立ち去ったのを確認して、オスマンは口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」
39 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 18:57:39 ID:d9ax75zU
シュヴルーズは二時間後に息を吹き返し、授業に復帰したが、ルイズの爆発魔法は彼女に相当なトラウマを植え付けたようで、その日以来、シュブルーズの講義で『錬金』の魔法が扱われることはなかった。
当然、ルイズには罰として、めちゃくちゃになった教室の片づけを言い渡された。
とは言っても、ルイズは「主の不始末は、使い魔の不始末」と言ってほとんど動かなかったため、実際に教室を片付けたのはアノンだった。
アノンが新しい窓ガラスや机を運び、煤だらけになった教室を雑巾で磨き終える頃には、もう昼休みが始まろうかとしていた。
午前の授業はもうないということで、二人は昼食を摂るため、そのまま食堂へ向かっているのだが、ルイズは先ほどからしかめっ面でずっとずっと黙ったままだ。
「すごかったね。さっきの」
沈黙を破って、アノンが口を開いた。
ルイズがじろり、とアノンを睨む。
「キミがあんなに強いとは思わなかったよ」
「強い?」
ルイズは意味がわからず、首をかしげた。
「さすがにボクもちょっと驚いたよ。キミのさっきの……“小石”を“爆弾”に変える魔法!」
ビキ、とルイズのこめかみに、血管が浮き出た。
「トライアングルクラスの先生を一撃で倒したんだから、ひょっとしてキミはスクウェアクラス?」
目を輝かせながら尋ねるアノン。ルイズの眉が、ひくひくと動く。
「それと、キミのあだ名の『ゼロ』の意味も分かったよ」
「言ってごらんなさい?」
「あの爆発の後には、何も残らない。まさに『ゼロ』! キミのあの爆発魔法への、畏怖が込めらた二つ名というわけだね」
アノンは完全に、ルイズの失敗魔法を、強力な攻撃系の魔法と勘違いしていた。
初めてみた『攻撃魔法』に興奮したアノンは、食堂へ向かう間、無邪気に感想を語り続けた。
ルイズの最も嫌う『ゼロ』という言葉を織り交ぜながら。
食堂に着いて、アノンが引いた椅子に腰掛ける頃には、ルイズの怒りは臨界に達していた。
今朝と同じ様に、床にからルイズの料理をくすねようと、タイミングをうかがっていたアノンの皿を取り上げる。
「なに?」
「こここ……」
「こここ?」
ルイズの肩が怒りで震えていた。声も震えている。
「こここ、この使い魔ったら、ごごご、ご主人様に、ななな、なんてこと言うのかしら」
「ひょっとして怒ってる? なんで?」
「自分の胸に聞いてみなさい!」
「わからないよ。それ返して」
「ダメ! ぜぇーったい! ダメ!」
ルイズは叫んだ。
「ゼロって言った数だけ、ご飯ヌキ! これ絶対! 例外なし!」
40 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 18:59:34 ID:d9ax75zU
結局、アノンは昼食にありつけないまま、食堂を追い出された。
よくわからないまま食事を抜かれ、アノンは使い魔の立場の辛さと、ルイズのヒステリーの厄介さを実感していた。
ぐぅ、と腹が鳴る。
「お腹すいたな……」
今朝から思っていたことだが、ルイズから与えられる食事は、どうにも量が少ない。
毎食ルイズの皿からくすねるわけにもいかないので、食事を抜かれないなかったとしても、そのうち自分で調達しなければと考えていた。
だが、アノンはまだこの辺りの地理は愚か、学院内すら把握しきれていない。
仕方なく、当てもなしに、食堂の周りをフラフラとうろつくのだった。
「どうなさいました?」
腹をさすって、空腹に耐えていたアノンは、後ろからかけられた声に振り返った。
そこには大きな銀のトレイを持った、メイド姿の少女が心配そうに、こちらを見つめていた。
アノンは一瞬、彼女に目を奪われる。
この学院では珍しい、黒い髪に黒い瞳。そして、低めの鼻に黄色に近い肌の色。
アノンは何か、懐かしいものを感じた。
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
彼女はアノンの左手にかかれたルーンを見て言った。
そう言われて、我に返るアノン。
「あぁ…知ってるんだ?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ」
メイドの少女はにっこりと笑った。
「キミも魔法使い……いや、メイジなのかい?」
「いえ、私は違います。あなたと同じ平民で、貴族の方々をお世話するために、ここでご奉公させていただいてるんです」
「そうか。ボクはアノン。よろしく」
異世界で、初対面の相手だというのに、アノンは彼女に親近感のようなものを感じていた。
「変わったお名前ですね……。私はシエスタっていいます」
そのとき、アノンの腹が再び、ぐぅ、と鳴った。
「お腹が空いてるんですね」
シエスタはクスリと笑って、
「こちらにいらしてください」
と言って歩き出した。
41 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 19:02:26 ID:d9ax75zU
アノンが連れていかれたのは、食堂の裏にある厨房だった。
厨房の片隅にある椅子に座って待っていると、シエスタが温かいシチューが入った皿を運んできた。
「貴族の方々にお出しする料理の余りモノで作ったシチューです。よかったら食べてください」
「……」
アノンは目の前に置かれたシチューの皿を、じっと見つめている。
不思議に思ったシエスタが、アノンの顔を覗き込んだ。
「アノンさん?」
「えと……これはもらっちゃってもいいの?」
「ええ。困ったときはお互い様ですから。私達平民は、魔法が使えない分、みんなで助け合わないと」
にっこりと笑って、シエスタはそう答えた。
「助け合う……」
アノンは経験したことの無い、むず痒いような、奇妙な感覚を覚えた。
「はい。だからアノンさんも遠慮せずに食べてください」
シエスタは微笑んで、そう言った。
よくわからないが、食事にありつけるのは願ってもないことだ。
むず痒いような感覚も、不快ではないし、むしろ心地いい。
アノンはスプーンを手に取った。
そして一口。
「おいしいよ。コレ」
「よかった。お代わりもありますから。ごゆっくり」
アノンは夢中になってシチューを食べた。シエスタは、そんなアノンを、ニコニコしながら見つめている。
「ご飯、貰えなかったんですか?」
「ゼロのルイズって言ったら、なんか怒っちゃってね。取り上げられた」
「まあ! 貴族にそんなこと言ったら大変ですわ!」
「怒らせるつもりはなかったんだけど……」
「アノンさん、ご存じないんですか?」
「?」
「…ミス・ヴァリエールはどんな魔法を使っても、必ず爆発してしまうんです。そして付いたあだ名が、魔法成功率『ゼロ』のルイズ。平民の間でも有名ですよ」
「あの爆発、失敗だったんだ」
自分の感想は全て、遠まわしなからかいと取られていたわけだ。
(なるほど、怒るわけだ)
そう思いながら、アノンはスプーンを動かす。
すぐに皿は空になった。
「ふぅ、おいしかった」
アノンは満足気に腹をさすった。
「よかった。お腹が空いたら、いつでも来てください。私たちが食べているものでよかったら、お出ししますから」
アノンはまた黙り込んで、シエスタを見つめた。
「ア、アノンさん? どうかされましたか?」
「いや……、ええと……」
「アノンさん?」
「シエスタ」
「はい」
アノンは少し間をおいて、言葉を探した。
「……ありがとう」
42 :
アノンの法則:2009/07/26(日) 19:03:22 ID:d9ax75zU
以上になります
ではまた
遅ればせながらウルトラの人乙です。
>>20 >>19さんが言っているのは、虹超獣カイテイガガンだと思われますが、
本文中の描写からすると、テリナQ(円盤生物ブラックテリナ)である
可能性が濃厚です(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
桜貝……まさか円盤生物のアイツか?
円盤生物には総じていい思い出がない……。
46 :
19:2009/07/26(日) 21:06:52 ID:QxFpbOWo
ブラックテリナか…、円盤生物を忘れてた…。
そういえば再登場した円盤生物はノーバだけだったな…。
47 :
プリキュアの人:2009/07/26(日) 21:07:24 ID:Szrereop
「ダークドリームの冒険」の番外編ラストが完成しました。
21:15から投下したいと思います。
オルレアン邸のタバサ……いやシャルロット・エレーヌ・オルレアンの部屋。
大きな寝室のベッドには、オルレアン公夫人がすやすやと寝息を立てている。
この部屋にいるのは、タバサと夫人のふたりきり。
盗聴されていそうな場所は、全てコルベール先生が『ディテクト・マジック』で調べてくれている。
タバサは、『奇跡の青い薔薇』の鉢植えをそっと手に取り、母親に近づく。
……母さま、目を覚まして。
……あの頃の、優しかった母さまの記憶を取り戻して。
タバサの願いに応えるかのように、『奇跡の青い薔薇』がゆっくりと開いてゆく。
薔薇の花弁ひとつひとつが光り輝き、部屋中が青い光に包まれる。
その光が収まったとき、タバサは見た。ずっと眠っていた母親のまぶたがピクリと動くのを。
鉢植えを枕元の人形の隣において、タバサは母親に駆け寄る。
夫人は、ゆっくりと目を開くと、前にいる青い髪の少女をじっとみつめた。
「母さま、わたしが……わかりますか?」
ゆっくりと話しかけるタバサを、夫人の青い目がじっと見つめる。
目の前にいる少女は、自分の娘によく似ている。
シャルロットは11歳だ。目の前の少女よりも、ずっと小さい。
シャルロットはもっと髪が長い。眼鏡もかけていない。
……でも、間違いない、この子は……。
「シャルロット……なのね」
「はい、母さま!」
目の前の少女が、夫人にぎゅっと抱きついてきた。
顔、声、匂い、間違いない……この子はシャルロットだ。わたしの娘なのだ。
そうだ、わたしは、あのとき王ジョセフの前で杯を口にした。
あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
まだ、小さかったシャルロットがこんなに大きくなるまで……。
「シャルロット、顔を……顔を、よく見せておくれ」
タバサは、婦人の胸にうずめた顔を上げた。
その顔は涙でくしゃくしゃになっていた。
だが、それは、母親も同じだ。じっと顔を見つめていたいのに、涙でぼやけてよく見えない。
母と娘は何度も涙をぬぐいながら、お互いの顔を見つめ、もう一度かたく抱き合った。
『奇跡の青い薔薇』の青く淡い光が、そんな親子を照らし出している。
その隣で、かつて夫人に『シャルロット』と呼ばれた人形は、抱き合う親子を優しく見つめているようだった。
タバサに手を引かれて、オルレアン公夫人が館の広間に姿をあらわす。
大きな広間には、キュルケやコルベール、才人やプリキュアたちが全員揃っている。
「シャルロットから、話は聞かせてもらいました。皆様、どうもありがとうございます」
夫人は、ゆっくりと頭を下げ、テーブルに着く。
その隣に、私服に着替えたタバサが座る。
彼女の顔は、その場にいた誰もが、今までに見たことがないほど幸せにみちていた。
「これから、どうなさるおつもりですか?」
まず口を開いたのは、亜麻色の髪と青い目をしたココ。
夫人は、彼に顔を向けると、部屋全体を見回し、少し息を整えてから返事をした。
「もう、この家にはいられないでしょう……。
ガリアの王ジョセフは、わたしとシャルロットの命を狙っています」
この部屋にいる全員が、夫人の話に口を閉じた。
ピンと張り詰めた空気の中、夫人は話を続ける。
「わたしたちは、ガリアの玉座など望んではいません。
シャルロットと平和につつましく暮らしていければ……それだけで、もう何もいりません」
タバサも、ゆっくりと首を縦に振る。
すっかり沈黙してしまった広間で、一番最初に口を開いたのはルイズだった。
「それでしたら、姫さま……アンリエッタ女王陛下に助けを求めてはいかがでしょう。
わたしは、姫さまと連絡を取る手段と権限を持っております」
たしかに、トリステインで保護してもらえるならば、個人レベルで隠れ住むよりはずっと安全だろう。
だが、夫人とタバサを国家で匿うこと自体が、ガリアとトリステインの戦争の引金になるかもしれない。
次に口を開いたのは、ココだった。
「夫人が、娘さんと安らかな生活を望まれているのでしたら、もっといい場所があります。
おふたりには『日本』に来てもらったらどうでしょう」
全員がココの方を向く。そのまま、ココは会話を続けた。
「僕とシロップ、のぞみたちは、この『ハルケギニア』とは別の世界から来ました。
『日本』では、誰も、ガリアやトリステインのことは知りません。追っ手がかかる事もないでしょう」
オルレアン公夫人は、驚いて横に座っているタバサの顔を見つめた。
タバサが、これは本当のことと話しかけると、夫人は驚いた顔のまま、ココのほうに顔を向ける。
ココも、じっと夫人の顔を見つめて、話を続ける。
「今、あなたがたにとって、なによりも必要なのは『時間』です。
傷ついた心と体を癒し、失われた絆を取り戻す、そんな『時間』が必要でしょう。
その後の話は、ゆっくりと考えればいいでしょう。そして、こっちに帰りたくなったら戻ればいいのです」
ココの話を聞いて、みんながじっと黙り込んだ。
次の瞬間、テーブルに手をついてダークドリームが立ち上がる。
「そうだよ!それがいいよ。わたしも行くから、一緒に『日本』で暮らそうよ、ね。タバサ!」
そこまで一気に喋った後、ダークドリームはしまったと口に手を当てる。
「ごめん、えと……もう『タバサ』じゃないんだっけ。『シャルロット』だよね」
「『タバサ』でいい。あなたたちには……そう呼んで欲しい」
タバサは軽く首を横に振ると、ダークドリームに笑いかけた。
次いで、母親を見つめて「わたしも行きたい」と告げる。
夫人は、もう一度部屋を見回してゆっくりと口を開いた。
「ココさん、ご好意に甘えさせていただいてよろしいですか。
そして、ペルスラン、長年良く尽くしてくれましたね。あなたのことは一生忘れません」
「何をおっしゃいますか奥さま……。このペルスラン、今日という日をどれほど待ち続けたことか。
奥さまとシャルロット様の笑う顔を、もう一度見ることができたのです。これほどの喜びがありますか。
この老骨でよろしければ、どこまでも御供させていただきたく存じます」
さっきまで張り詰めていた部屋の空気が、だんだんと緩んできた。
広間にいるみんなに、笑顔が戻る。
手を取り合う、夫人と執事を見ながら、夢原のぞみが口を開く。
「でも、4人も来たら、『ナッツハウス』がいっぱいになっちゃうよ」
「それなんだけど、前の『ナッツハウス』の契約が先月で切れて、今は空き家になっているの。
少し掃除すれば、充分使えると思うけど……あそこで狭くなければいいんだけど?」
のぞみに答えたのは水無月かれんだ。
いや、4人で暮らすんなら、前のナッツハウスが狭いとかないでしょ。
けど、来るのは公爵さまの身内だし、この屋敷を見れば、確かにあのナッツハウスは狭い。
赤い髪をした夏木りんは、ツッコミを入れたい衝動を一生懸命に押さえていた……。
「大丈夫!あっちのお店なら4人で暮らすには充分だよ!
だって、寮のタバサの部屋より広いのが3つもあるんだよ!」
あっけらかんと口を開いたダークドリームに、りんは椅子から転げ落ちそうになった。
この子は、変なところでのぞみに似てるのよね、と呆れながらダークドリームの方を見る。
ダークドリームは、全く気にしていないようだ。
この子にとっちゃ、公爵家とかそういうのは関係ないのかもしれない。
ずっと一緒にいた『タバサ』と、そのお母さんとしか見ていないのだろうね。
オルレアン公夫人は、ダークドリームに笑いかけると、水無月かれんの方を向いて頭を下げた。
「お心遣い、ありがとうございます。押しかけさせていただくのは我々の方です。
シャルロットたちと平和に暮らせるのであれば、それ以上なにを望みましょう」
「それについてですが、ひとつお願いがあります。
『日本』でも、暮らしていくためには、お金を稼ぐ必要があります。
我々も『ナッツハウス』というアクセサリーの店をやっていますが、忙しくて手が足りていないのが実情です。
娘さんたちに、『仕事』を手伝っていただくことになると思います」
ココの言葉に、ダークドリームがまた手を上げる!
「はーい!わたし、店番やるよ。アクセサリーも作る!!ね、タバサも一緒にやろうよ」
そのままタバサに駆け寄って、笑顔で手を掴む。タバサも「わかった」と小さく答える。
娘の顔を見ていた夫人は、ココに深く頭を下げる。
「ありがとうございます。なにからなにまで手配していただいて……。
こちらでも、屋敷に残っている宝石や金貨を持参いたしましょう。ペルスラン、お願いできますか」
ペルスランが、かしこまりましたと頭を下げる。
これで、問題はほとんど解決した。みんなが安心して、和気藹々と話し始めたところで、隅のほうで座っている少年がむすっとした顔で口を開いた。
「なあ、これって、俺が全員を運ぶのが前提だよな。のぞみたちに加えて4人とか運べないって」
「じゃあ、2回に分けて迎えに来たら?」
笑顔の夢原のぞみにさらりと言われて、シロップは慌てて首を振った。
「じょ、冗談じゃないぞ!!こんな遠い世界まで2回も往復しろって言うのかよ」
「えーっ!そんな事いわずに、頼むよシロップぅ!」
ダークドリームがシロップの手を握って頼み込む。
すると、ずっと座っていたタバサが立ち上がり、「お願いします」と頭を下げた。
むー…っと、口をへの字に曲げるシロップに、今度はキュルケがしなを作って「お願い」と寄りかかる。
シロップは真っ赤になりながらも口を閉じる。……と、シロップはふと見られている視線を感じた。
視線の先は『春日野うらら』、彼女も口をへの字に曲げて、じっとシロップを見つめている。
「わ、わかった!行くよ。行くから離してっ!!」
シロップは大慌てでキュルケとダークドリームを振り払う。彼女たちは、やったと手を打ち合わせる。
「んじゃ、ついでに俺も連れてってくれないかな」
「わたしも行くわよっ!」
「わたしも行きたいです」
「シロップ君、この際だから、わたしも連れて行ってくれないかね」
周囲の人たちが、口々に連れて行ってくれとせがみ始める。
壁際まで追い詰められたシロップは、顔を赤くして喉を唸らせた。
「わかったっ!こうなりゃヤケだ。何回でも往復してやらぁっ!!
でも、『仕事』だぞ。あくまで『仕事』だかんなっ」
いくらくらい取るつもりなのだろう。
全員が黙り込んだ中で、シロップはチラリとうららの方に視線をやる。
……まだ、口をへの字にしたまま、じっと見ている。
「こ、今回だけは特別料金だ……。『ホットケーキ食べ放題』で手を打ってやるよ。
でも、ちゃんと三段重ねの全部にハチミツを塗って、バターをたっぷり使った奴だぞ!
じゃないと、絶対に行かないからな」
「わかりました。それなら、いくらでも焼いちゃいます!」
シロップの言葉に口を開いたのはシエスタだ。
この日のためにホットケーキの焼き方を覚えたのだ。
「ほ、ホットケーキくらいなら、わたしだって焼けるわよっ!」
大きな声を出したのはルイズだった。
対抗心で、思わず声を上げたルイズに全員の視線が突き刺さる。
「ダメっ!ルイズは焼いちゃダメだって!
ケティの部屋で見たよ。あんな墨みたいなホットケーキ食べさせたら、シロップがお腹を壊しちゃうよ」
「う、うっさいわねっ!!ちゃんと最後は成功したわよ」
顔を真っ赤にして声を上げるルイズを見て、部屋の全員が一気に笑い出す。
今夜は全員でオルレアン邸に泊まり、明日の朝から日本へ出発することになった。
あらかじめ、来客があるということでタバサが連絡していた事もあり、寝具は何とか足りるようだ。
問題は食事の方だが、これも、明日出発という事で、食料庫を空にする勢いで使えたので解決した。
ペルスランがひとりで切り盛りしている厨房にシエスタが姿を見せる。
わたしも手伝いますとフライパンを取って料理を始める。
夕食の準備も一段落して、ホットケーキに使う材料を選び出していると、ルイズが姿をあらわす。
「ほ、ホットケーキはわたしが焼くかんねっ!」
「ミス・ヴァリエール。本当に作れるんですか?」
「できるわよ!ちゃんと作ったんだから」
これは、梃子でも動きそうにないのを見て取ったシエスタは、ひとり分の材料を厨房の奥に置いた。
「それじゃ、これでお願いします。火はあっちで使ってくださいね」
「わかった。わたしの腕を見せてやるわっ!」
みんなが寝静まった後、ダークドリームは、ひとりオルレアン邸の屋根の上に立っていた。
ふと、館の入口から誰かが出てきたのが目に入る。どうやらコルベール先生のようだ。
ダークドリームは屋根から飛び降りて、コルベールの前へ立った。
「見張りかね、お疲れ様だね」
「うん、わたしが見てれば、タバサも外の様子がわかるし、昼間みたいな敵が寝てる間に襲ってきたら大変だもん。
それで、コルベール先生は、どこにいくの?」
「オストランド号を、トリステイン魔法学院まで動かそうと思ってね。
『日本』にいくのなら、このまま、このままガリアに置いておくわけにも行くまい。
今からでれば、魔法学院に係留して、馬で帰っても朝食までには帰れるだろう」
ダークドリームはふうんと頷くと、コルベールに尋ねた。
「コルベール先生も、ずっと『日本』にいるつもりなの?」
「まさか。わたしは、『火』の力をハルケギニアの人々に役に立つようにしたいと思っている。
『日本』を見たいのは本心だし、技術を勉強したいとも思っているが、
やはり、こちらの世界で、役立つようにできなければ意味がない。
……できれば、気軽に何回も行き来ができればいいと思っているのだがね」
「じゃあ、コルベール先生もホットケーキを焼けるようにならなくちゃ」
笑顔で返すダークドリームの言葉に、コルベールは頭をかいて答えた。
「あのパンケーキは、わたしには甘すぎるな」
夕食の後、シエスタは全員にホットケーキを焼いた。
シロップは要望どおり三段重ねのハチミツ&バターたっぷりのホットケーキを美味そうに平らげていた。
「大丈夫だよ、シロップはルイズの焼いたホットケーキも食べたんだもん」
彼は、後に出てきたルイズの焼いたホットケーキもペロリと平らげていた。
彼の顔が少しだけ引きつっていたような気もしたけれど……。
「いい子だな。あの『運び屋』のシロップ君も、『プリキュア』のみんなも」
ダークドリームは、うんと首を上下に動かす。
「だが、やはりわたしには料理は無理だな。ずっと味など気にせず食べていたから、
どうやれば美味いものができるかなんて、さっぱりわからんよ」
「じゃあ、魔法でホットケーキを焼いちゃう道具を作るのはどう?」
真顔で聞かれて、コルベールは思わず吹き出した。
「なるほど、面白い、そういうのも『あり』かも知れないね。
温かいケーキを食べられるのも、確かに『火』の力だ。そうだな、考えておくよ」
コルベールは、そろそろ行こうかと口にして館を後にする。
ダークドリームは、再び屋根の上に飛び上がって、辺りをみわたす。
二つの月が明かりを落とす中、ラグドリアン湖にはオストランド号の大きな影が黒く映っていた。
タバサは、もう寝ただろうか。お母さんにどんな寝顔を見せているんだろうか。
そんなことを考えていると、湖の方からエンジンの音が聞こえてくる。
湖に映った影が、波と共にゆらゆらと動き始め、小さくなっていく。
ラグドリアン湖からの風にも、なんとなく油のにおいが混じっているような気がする。
だんだんと小さくなっていく音を聞きながら、ダークドリームはじっと辺りを見守り続けていた。
結局サイトは帰らないの?支援。
次の日の朝、全員で朝食をとった後、ダークドリームたちはオルレアン邸の庭に出る。
「それじゃ、みんな乗るロプ」
大きな『鳥』の姿になった、シロップの羽が階段のような形になった。
まず、最初に乗るのはタバサとダークドリームだ。
続いて、オルレアン公夫人とペルスランが恐る恐る階段を上がる。
そして、秋元こまちと水無月かれん、元の姿に戻ったココがシロップの背に乗り込む。
これは、昨日、考えたメンバーだった。
ガリアの追っ手がかかるといけないから、一番最初にタバサたちが『日本』に行く。
付き添いをする必要があるから、ココも一緒に帰らなければならない。
『日本』でタバサたちが暮らすなら、水無月家の『じいや』にも色々と頼まなければならないだろう。
だから、最初に『日本』に行くのは、この7人。
次からは、シロップも疲れるだろうから、こんなには乗せて飛べない。
結局、シロップは3回も往復することになってしまった。
「さあ!出発するロプ」
シロップが大きく羽ばたくと、その体がふわりと舞い上がる。
タバサの目の前を、オルレアン邸の屋根が通り過ぎていった。
シロップの背中から身を乗り出して、下を見つめると、庭ではみんなが手を振っている。
小さく手を振るタバサの目に映るオルレアン邸がどんどん小さくなっていく。
生まれたときから住んでいた、わたしの家……。
タバサが横を見ると、母親が優しい目で、顔を上下に動かす。
青い髪の少女は、母親にそっと抱きついたまま、ずっと下を見つめていた。
……いろいろな事があった……。
……優しかった父さま、穏やかだった屋敷での生活……、
……突然の暗転、変ってしまった母さま……、
……哀しくて勇敢だったジルと、キメラドラゴン……。
さっき、私たちに手を振ってくれた『仲間』たち……。
そして、わたしの横で笑っているダークドリームと母さま……。
彼女たちと、母さまの笑顔をずっとみていたい。
抜けるような青い空の上で、タバサはずっと、そう願っていた。
シロップがナッツハウスの前に着陸した。。
タバサたちは、シロップから降りて、目の前にある白い『ナッツハウス』を見上げる。
湖からの風が、すうっと駆け抜けてゆく。空気の匂いまでなんだか違うようだ。
タバサが辺りを見回していると、ダークドリームたちはナッツハウスの方へ歩いてゆく。
ついていくと、カランと音を立てて、ナッツハウスのドアが開く。
「おかえりなさい、ココ様。」
声を出したのは、紫色の髪の『美々野くるみ』だ。
タバサには見覚えがあった、たしかダークドリームが帰ってきたときに一緒にいた女の子だ。
「くるみー、ナッツー、久しぶり!」
「ダークドリームも帰ってきたんだ。それで、そちらのお客さんは?」
「タバサは知ってるよね。タバサのお母さんと、執事のペルスランさんだよ」
とりあえず、客間に全員集まって、ココが一通りの事情を説明する。
シロップはお茶を飲むと、今日は大仕事だ!と店の外に出て飛び立った。
「シロップも大変ね。3回も往復しなきゃならないなんて……。
それにしても、そんなにお客さんが来るんじゃ、全然、食事の材料が足りないじゃない」
「なら、みんなで買い物に行こうよ!タバサ、すっごく大きいスーパーがあるんだよ。
トリスタニアの商店街が全部入っちゃうくらい、いっぱいの店があるんだ」
ダークドリームがオーバーな手振りでタバサに説明する。
すると、青い髪の『水無月かれん』が少し考えて、口を開いた。
「さっき、電話でじいやを呼んだから、もうすぐ来ると思うわ。
じいやには、タバサのお母さんの住むところの電気やガスの手配をしてもらったり、
宝石や金貨を、お金に替えてもらう店を探してもらわなきゃいけないから、少し話し合いをする必要があるわね。
その間に、くるみたちで買い物に行ってらっしゃい」
「それじゃ、わたしとくるみさんと、ダークドリームさんとタバサさんの4人で行ってくるわ」
緑色の髪の『秋元こまち』がタバサの方に笑いかける。
「買い物に行くなら、ダークドリームたちは着替えた方がいいわね。
前に着てた服は、押入れに入れてるわよ。タバサさんは……わたしの服で合うかしら?」
タバサとダークドリームは、ナッツハウスの2階にある部屋で着替えている。
こっちの世界にいたときは、ダークドリームが使っていた部屋だ。
6畳ほどだが、今は、物置代わりにいろいろ置かれていて、狭く感じる。
ダークドリームは、椅子を台替わりにして、クローゼットの上にある押入れから、服の入った箱を取り出し、降ろした。
これこれ、っとお気に入りの服を選び出して、さっと着替える。
タバサは、魔法学院の制服を脱いで、くるみが持ってきた服に袖を通した。
サイズはうまく合ったようだ。すごく薄くて軽いのに、ほんのりと温かい。
そして、タバサは自分の制服を、ハンガーに吊るしてクローゼットにかけた。
「タバサ、『杖』は置いていった方がいいよ。こっちじゃ、誰も『杖』は持ってないから」
ダークドリームの言葉に、タバサは一瞬だけ表情を変えた。
そして、クローゼットの横に、そっと『杖』を立てかける。
「いこっ!タバサ」
ダークドリームが差し出した手を、タバサは『右手』で握る。
そういえば、自分の意思で『杖』を手放したのはいつ以来だろうか……。
『タバサ』と名乗ってから、ずっと『杖』を持っていた右手。
その右手は、今はとてもあたたかい手を、ぎゅっと握り締めている。
これにて「ダークドリームの冒険」は終了します。
今まで読んでいただいた方、支援や感想を下さった方、Wikiに登録してくださった方、ありがとうございました。
わたしは基本的に短期集中タイプで、乗ったときにしかかけないタイプです。
「ダークドリームの冒険」もさっさと2週間程度で終わらせるつもりだったので、
この「番外編」まで話が続いたのは、書いているわたしにも予想外でした。
ダークドリームも半分以上オリジナルキャラと化してしまった感がありますが、うまく物語を引っ張ってくれた気がします。
ジョゼットとかイザベラとか、話がややこしくなりそうなキャラクターは全部カットしちゃいましたが
タバサにとっては、これもひとつのHAPPY END……であって欲しいと思います。
それでは、皆さん。
またネタを思いついたらお会いしましょう。
・・・・で番外編をいつまでやるんだ?
58 :
プリキュアの人:2009/07/26(日) 21:27:48 ID:Szrereop
>>57 タイトル……やっぱり『番外編最終話』の方が良かったですか?
『その○』で統一してたので、最後だけ最終話は変かなと思ったんですが。
プリキュアの人乙です。
こうして読んでみるとシロップの能力は便利すぎるな。
その内また外伝とかサイドストーリーとか後日談とかやるんじゃないの
むしろやってくれ
プリキュアの枠って、前は何やってたんだっけ?
どれみとかクレヨン王国あたりと絡ませても面白いかも。
ラチェットとクランク召喚したらコッパゲの格好の餌になるに違いない
ナージャか…
ホロの人帰って来ないかな…
あみっけ繋がりか
ナージャといえばいいとm(ry
声優つながりでアネモネとタイプジエンド召喚…うん普通に死ぬつか無理w
ラーメンの精霊もタイプジエンドも一発ネタで来てたぞ
プリキュアの人、乙
これまでたくさんの感動をありがとうございました。
まあ不安があるとすれば、教皇あたりが世界扉で地球に介入してくるかもしれないことと、イザベラが処刑されかねないことですが……
まあピンチになったら強い味方もいることですし、何はともあれハッピーエンドでよかったです。
>>29 ベルばらでは
オスカルが今まで知らなかった民や国の現実を知り、行動を起こすわけだから
貴族云々を諭すのに向いてるキャラとは思えない。
ルイズにノーブレスオブリージュなどを教えるのに向いてるキャラは
例えばパンプキンシザーズの主人公のアリス・L・マルヴィンとかどうだろう
72 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 04:10:05 ID:PHI6S84S
プリキュアの人、感動を乙です^^
教皇と無能王が“大ハルケギニア”を結成! 世界扉で地球にヨルムンガント軍団を侵攻させる。
迎え撃つプリキュア!「すべてのプリキュアは集結せよ!」“オール・プリキュアvs大ハルケギニア”公開迫る・・・ですね。わかりますww
>>71 オスカルって30代半ばだったっけ?オッサンは召喚されてるけどオバサンは珍しいなあ
そういえばパンプキンシザーズの帝国って名前出たの?9巻ぐらいまでしか読んでないけど
>56
完結乙です
大団円でも一抹の寂しさが…
毎回キリ良く終わる構成は非常に読み易くて良かったです
サイトはついでとか空気よんでるのに、コッパゲが必死すぎでツボったwwww
アノンの人乙
毎日投下が…なんだって?
薔薇は薔薇は、気高く咲いて〜♪
ふと思ったんですが
スパロボの虎王機・龍王機みたいな半生体ロボとか
スカルプルムやウィオラーケウムとか宇宙ヒラメやタッドポールの生体兵器って
ヴィンダールヴ能力で御しきれるんでしょうかねぇ
前者は無理臭いけど後者は・・・もっと無理?・・か?
原作できっちり定義されてないものは好きにすればいいんじゃね?
自分で説得力が足りないと思ったのなら
説得力が足るような描写を追加すればいいわけだし
バラバ、バラバ、武器取られて散る〜♪
>>71 ルイズがそういう尊い義務を知ってないとは思えないというか、アリスのねーちゃんはわりと最近まで凄い突撃志向だw
うなじあたりをぴりっとくる危機感知力と戦闘力がなかったら、ルイズと大差がないんだぜ。
あと聞いた話だと、ノブレス・オブリージュもあまり日本人の思っているような意味とは微妙に違うとも聞いた。
具体的にはしらんが、ロクでもなさそうだった。
>>80 そうですね、俺の描き方次第っすかぁ・・・
まぁ書くか分からないけれど、取り扱う時が来る前にご意見伺ってみようかと思ったわけで
個人的には超機人は無理でもルイーナのナマモノはコンタとかが傍に居なければ
ヴィンダールヴでも制御出来る気がしました
あと、まだまだ構想段階ですが
小ネタレベルの一話完結形式で進めていく連載ってアリですかね?
導入と最終回は大雑把に考えてあるのですが
まだネタ数も少ないし、もし問題あるようなら小ネタ小出しにしていくのが無難かもしれないと思いますし
>>71 ラインハルト麾下の提督達はどうだ?
ファーレンハイト、オーベルシュタイン、ビッテンフェルトあたりはルイズとウマが合いそうな…わけないか
キルヒアイスなんかうまくルイズを守りながらちゃんとした方向へ誘導して
成長させるんでない?
白兵戦能力も「石器時代の勇者」を除けばあの世界でほぼ最強クラスだしヤンと違って「智勇兼備」だ。
・・・・・・・むしろルイズよりジョゼフにお似合いかな?
金髪姉弟がいない世界に行ったらそれだけでやる気大幅減だろ
まあ、基本元の世界へ戻るのが最優先になるだろうな
銀英伝の連中で描くには、ルイズに見所ありと、早めに思わせなきゃならん
一見なさそうに見えるが、幼少から馬鹿にされても努力を怠らない根気は認められそう
特に、門閥貴族を忌み嫌った帝国側には
やり方によっては金髪や金銀妖瞳でも不可能ではない
勘違いしては困るが、こいつらは全ての貴族を憎んでるわけではない
カイザーの嫁は貴族だし、秀でた力を活用できる人間は無条件で敬意を払うからね
対立も作りやすく、信頼を築くストーリは骨太にしやすい
ハードルは高いが、可能性はかなり秘めてるんじゃないか
無駄話するなら、前スレでやれよ
自分が興味ない話=無駄話
まあ一面の真理ではあるが
まぁ支援と感想以外は無駄話だろうさ
前も一時期挙がったが、○○を召喚したらとか、雑談は避難所でやりゃいいことなわけで
いや、シスコン金髪は赤髪以上に姉貴がいない世界じゃやる気無くすだろ
と新参(
>>92)が申しております。
だから、ここはSSを投下するためだけのスレじゃないと何度言えば分かるのか……。
雑談が嫌ならまとめだけ見てりゃいいのに、したり顔で的外れな説教とかホントいい加減にしてほしいぜ。
>>71 魔砲の人のなのはさんの導きっぷりはなかなかのものだと思うが
もう夏なんだねぇスティンガーくん
そ、そ、そ、そうだネ、コーウェン君?
まとめにいたね
インベーダー二人組召還ネタ
ゲッターロボ関連のネタが少ないのはやっぱ三人居らんとダメなロボ設定なのとルイズの世界じゃただのロボットでも強力だからかな
新ゲッターの龍馬は生身で鬼数匹ぶっ殺せるけど
原作ハヤトとか呼んだら目だ耳だ鼻だとギーシュが殺される絵しか浮かばない
というかあの世界の人間は容赦無さすぎて社会不適合者みたいな性格だ
虚無った竜馬が呼ばれて、タルブにゲッター落ちてて、座ってるだけで良い!って言われたルイズがジャガー号、ギーシュがベアー号ってのは軽く考えた。
二人とも鼻血を出して気絶してた。
というか、ろくに鍛えてない人間がゲッターに乗ったら冗談抜きで死ぬぞ
ワルド1:イーグル号
ワルド2:ジャガー号
ワルド3:ベアー号
ワルド4:脳波ピッタリ!コンバインオッケー!コンバインオッケー!
ルイズ=真・イーグル号を召喚
ジョゼフ=真・ジャガー号を召喚
ヴィットーリオ=真・ベアー号を召喚
テファ=早乙女博士(CV:麦人)を召喚
という電波を、今しがた受信したw
気絶だけですむならそれはそれですごいけどな
コッパゲ先生ならゲッター線に取り憑かれそうだ
ゲッター線に好かれると何故かゲッターロボの整備が出来る様になるみたいだし
偏在にそんな使い道があったとはw
死んだ筈の武蔵とか。
やべぇ、フーケのゴーレムまで大雪山おろししやがった。
ロボか。
「ぼくらの」バトルにハルケギニア参戦
>>99 號やアークの頃の隼人なら……
ルイズが地獄を見せられそうだが。
使い魔やんなさいよといった次の瞬間に血まみれの肉塊一丁上がりだろうな
それでかろうじてルイズが生き残ったら、次はギーシュが地獄見る
隼人は冷酷冷徹だが血に飢えた野獣じゃない。
およそルイズの手に負える人間じゃないが、後先考えずにその場で肉塊にする何て事は無いだろう。
……新ゲッターロボ初期の隼人ならやりかねんが。
漫画版の連中は凶暴な様でギャグ要素も多分に持ち合わせてるからな
結構何とかなるだろ
ケンイシカワが本当にノリでギャグを沢山残してるから困る
かといって小娘に礼儀知らずの平民扱いされて黙ってるような連中でもないし
新ゲ隼人なら本業のテロリストに戻って貴族相手にテロに勤しむとかやりかねんが
魔獣戦線からは召喚済みだし、そろそろ極道兵器から召喚で順調に虚無れるな
>>113 ガンダールブの力を知る
↓
「ひっひひひひ!力だぁ!これは俺の力だぁ!」
ですね、わかります。
ロム兄さん呼んだらさらにケンリュウとかバイカンフーを呼び出すぞ!
>>114 今が旬の真マジンガーもあるじゃないか
ってそういやいくつかロボ召喚ものは書かれたけど
元祖スーパーロボットであるマジンガーZ召喚はなかったな
>>112 漫画版は結構人情味ある連中なんだよな
恐竜帝国が襲ってきたら一般人の避難させたりしてるし
マリオRPGからマリオ召喚
意志伝達が全てボディーランゲージ
本人証明がジャンプ
ハルケギニアでも身分証明はジャンプ
それでも何故か通じる
さすがは世界のマリオ
世界一有名な和製イタリアンだからな
マリオか…個人的にはペーパーマリオが面白そうだな。
マリオストーリーしかやってないが、あれはあれで便利な体だよな。
ぺっちゃんこに潰れてもすぐに戻るし、別のペーパーマリオシリーズだと紙飛行機にもなるし。
どうせなら世界観も一緒にしてハルケギニアの住民も全員ペーパーに(ry
ファイアーボール使ったら火のメイジと誤解されるかも知れんな>マリオ
それでルイズからは嫉妬されキュルケにはやたら擦り寄られる
マリオ系は今のところ小ネタのカメックとハンマースーツだけだっけ?
まんまみーや
>>117 ロボ召喚モノなら覇王大系リューナイトをデスね
リュー持ちなら誰を喚んでも大当たり
商人デホレスのおっちゃんなら伝説のリューで当りってレベルじゃねーぞ
いっそスーパーマリオくんのマリオを
緊急ジャンプで谷底へ落下中のヨッシーを召喚してですね
>>128 あのおっちゃん呼んだら使い魔の仕事ほったらかして魔法雑貨屋開きそうだな
眼だ!耳だ!鼻だ!
>>128 実は味皇Xの正体がマルトー
モット伯の城にウマイザーで突撃まで幻視した
134 :
アノンの法則:2009/07/27(月) 23:52:31 ID:NrJkh8Pp
アノンの法則です
他の作品の予定がなければ投下したいと思います
135 :
アノンの法則:2009/07/27(月) 23:54:36 ID:NrJkh8Pp
ケーキが乗った大きな銀のトレイをアノンが持ち、シエスタがはさみでケーキをつまんで、貴族たちに配っていく。
アノンの方から、シチューのお礼に何か手伝いたい、と言い出したのだった。
貴族が支配する異世界で、純朴な少女の優しさに触れ、アノンの心境にも何か変化があったのかもしれない。
あるいは、植木耕介の影響だろうか。
二人でテーブルを回っていると、フリルのついたシャツを着た、金髪のメイジが目についた。
彼の名はギーシュ・ド・グラモン。
元帥を父に持つ、名門グラモン伯爵家の四男で、学院では女好きで知られる、少々気障な少年だった。
ギーシュは困った表情で、辺りを見回したり、テーブルの下を覗き込んだりしている。
アノンは、トレイをシエスタに預けて、彼に近づいた。
「どうしたの?」
「ん? 君は…」
ギーシュはアノンを見た。
学院では見ない顔だ。制服を着ているが、マントはしていない。
そこでギーシュは、彼が昨日ルイズの召喚した平民だということに気づいた。
「ああ、ルイズの平民か。いや、大切な香水の小壜を落してしまってね」
「香水……。へえ……。こっちの人は、そんな物が大切なのかぁ……。じゃあ僕も探してあげる」
そう言って、アノンはギーシュと一緒に、香水の小壜を探し始めた。
「いい人だなあ」
シエスタは、他人の落し物を四つん這いになって、真剣に探すアノンを見て微笑んだ。
136 :
アノンの法則:2009/07/27(月) 23:56:01 ID:NrJkh8Pp
「小壜小壜……」
そう呟きながら探すこと、数分。
アノンは椅子の影に、何かを見つけた。
「あったーーーー!」
立ち上がったアノンの手には、ガラスでできた小壜が握られていた。
中には、紫の液体が揺れている。
「本当かい!?」
アノンの声を聞いて、ギーシュが駆けてきた。
「……? 本当になんでもない小壜だよ? なんでコレが大切なの?」
アノンは、見つけた小壜を不思議そうに眺めて、ギーシュに尋ねた。
「それは、あるレディが先日、僕にプレゼントしてくれたモノでね。まあ、言ってみれば、彼女から僕への愛の証なのだよ」
ギーシュは、芝居がかった仕草で髪をかき上げる。
「愛? こっちの人間ってそんなもので生きてるのか…」
へぇーと、アノンは感心したように呟いて、ギーシュを見た。
「じゃあもしコレが……。もしコレが壊れたら……」
アノンはどこまでも純粋で、好奇心に満ちた、悪魔の笑みを浮かべた。
「…キミ、死んじゃう?」
「え?」
アノンの手から、香水の小壜がすべり落ちる。
思わずギーシュは声を上げそうになったが、すぐにあの壜には『固定化』の魔法を施してあることを思い出した。
落としたくらいで、割れることはない。
だが、地面に落ちた壜はアノンに踏みつけられ、派手に砕け散った。
「ああ!?」
綺麗な紫色の液体がぶちまけられ、辺りにきつい香水の匂いが立ち込める。
「あ、アノンさん……!?」
探し物が見つかったのを見届け、給仕に戻ろうとしていたシエスタが、青い顔で震える。
「決闘だ!!!」
ギーシュの声が、辺りに響いた。
137 :
アノンの法則:2009/07/27(月) 23:58:06 ID:NrJkh8Pp
一時間後のヴェストリの広場。
そこにはすでに、黒山の人だかりができていた。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」
「何でも、ギーシュがモンモランシーからもらった香水の壜を、あの平民が踏み砕いたらしいぞ!」
「なに? ギーシュはモンモランシーとつきあっているのか?」
好き勝手に騒ぐ野次馬たちに囲まれて、アノンとギーシュが向かい合っていた。
ギーシュは黙って、薔薇の杖を手に、殺気の篭った目でアノンを睨みつけた。
いつものギーシュなら、野次馬たちに手でも振って、悦に入るところだが、今回ばかりは違う。
確かに、彼には軽薄なところがあり、浮気癖もあった。今も恋人のモンモランシーの他に、一年生の女の子に手を出している。
だが、女性をぞんざいに扱うことは決してなかったし、女性からの贈り物には必ず『固定化』を施し、大切にしていた。
それを目の前で、しかも平民に踏み潰されたのだから、その怒り推して知るべしである。
一方、アノンは怒る貴族を前に、わくわくする気持ちを抑えられなかった。
この世界ではメイジが、魔法という力で持って、平民を支配しているらしい。
魔法というものを知ってから、アノンはそれに強く興味を持っていた。
目の前のギーシュというメイジは、激しい怒りを持って自分に対峙している。
これなら、全力の魔法を見せてくれるだろう。
138 :
アノンの法則:2009/07/28(火) 00:00:51 ID:NrJkh8Pp
「フフ、魔法使いと闘うのは初めてだよ」
「……平民ごときが、たいした自信だな」
まるで、この状況を楽しんでいるかのようなアノンに、ギーシュは苛立ちを覚えた。
それを声に滲ませるギーシュに、アノンは驚いたように言葉を返した。
「自信なんてあるわけないじゃないか」
「なに?」
「勝負なんて、どんな弱そうな相手とでも、やってみなきゃわかんないよ」
「弱そう…だと?」
「それに自信なんて持ってても、無意味でしょ? 必要なのは勝つために、ただ努力を惜しまないコトだよ」
メイジを相手に、対等に争うつもりでいるアノンに、ギーシュの苛立ちは頂点を迎えた。
「なら、お前のその努力とやらを見せてもらおうか!」
ギーシュが、薔薇を構える。
お互いの距離は、大股で十歩ほど。
アノンなら、一瞬でギーシュに接近できる距離だが、あえて動かず、ギーシュが魔法を使うのを待った。
ギーシュが、薔薇を振ると、花びらが一枚、宙に舞い、甲冑を着た女戦士の形をした人形が現れた。
「へぇ、花びらから人形を造ったのか」
「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』が貴様の相手をするぞ」
低い声で、ギーシュが宣言した。
「行け!」
ギーシュの命令で、ワルキューレがアノンに向かって突進し、青銅の拳を繰り出す。
しかし、その拳が命中する瞬間、アノンの姿が消えた。
「なに!?」
「上だ!」
野次馬の誰かが叫んだ。
アノンは高く跳躍して、ワルキューレの攻撃をかわしていた。
落下の勢いそのままに、ワルキューレの頭を両脚で踏みつける。
金属の割れる音。
前のめりに、顔面から地面に叩きつけられ、ワルキューレ頭がひしゃげ、首がへし折れた。
「ば、馬鹿な……」
胴体から離れ、地面を転がるワルキューレの頭。
人間離れした動きを見せたアノンに、ギーシュを含め、周囲の者達は驚きを隠せない。
そんな周りをよそに、アノンは転がるワルキューレの頭を拾い上げ、断面を覗き込んだ。
「中は空洞なんだね」
アノンはワルキューレの頭部を、ぽいと投げ捨て、動かなくなった胴体を思い切り踏みつけた。
青銅のゴーレムが、嫌な金属音を立てて、割れ砕ける。
「あ、ああ……」
あっという間に破壊されたワルキューレを見て、ギーシュが後ずさる。
「使い手の意志どおりに動くって以外は、ただの人形だね」
そう言って、アノンは一歩踏み出した。
「コレで終わりじゃないだろう? まだなにかあるなら、早く見せてよ」
ゆっくりと距離を詰めていくアノン。
「ひっ!」
ギーシュの喉から、引きつった声が漏れる。
先ほどまでの怒りなど、どこかに消し飛んでしまっていた。
無残に破壊されたワルキューレ。
同じように、ぐしゃぐしゃになって地面に転がる自分の姿が頭に浮かび、ギーシュは悲鳴のような声を上げた。
「う、うわああああああ!!!」
薔薇の杖を振り、限界まで精神力を行使する。花びらが舞い、新たに六体のゴーレムが現れた。
今度は素手ではなく、それぞれが槍や長剣で武装している。
ワルキューレたちは一斉に武器を振りかざし、アノンに襲い掛かかった。
アノンは残酷な笑みを浮かべて、ワルキューレの群れに飛び込んだ。
139 :
アノンの法則:2009/07/28(火) 00:01:50 ID:NrJkh8Pp
以上です
ではまた
乙です。
これでフーケまであるのだから驚き
確かに驚きだ
アノンの人乙です。
うえきの法則はアニメをちょろっと見ただけですのでよく知らんです。
でもこのアノンってのはちょいと興味惹かれますね。なんか、悪い奴なのかどうなのか判断がつかない。
まぁ、とりあえずギーシュには無事でいてほしい。
毒の爪の使い魔の第48話が書き終わりました。
予定その他が無ければ2:20辺りに投下開始します。
では、そろそろ投下開始します。
「おい、起きろ!」
身体を強く揺すられ、アンリエッタはまどろみから覚めた。
辺りはすっかり暗くなっており、頭上には満天の星空が広がっている。
目の前にはジャンガ。その左手の上にはあの伝言ロボとやらが乗っている。
「返事が来たのですか?」
ジャンガはンガポコを見る。
「オイ、もう一度伝言再生しろ」
『ンガ。『三十分後に最終便が出る。陛下を連れてロサイスまで来てくれ。…陛下を頼むぞ』以上です、ンガ』
ジャンガはため息を吐く。
「三十分…、これまた中途半端な時間だゼ」
対してアンリエッタは微笑んでいた。今の声がアニエスの物だという事が解ったからだ。
「アニエス…、ありがとう」
「おら、泣いてる暇があったらよ、とっとと背に乗れってんだ」
「はい」
ジャンガの背におぶさり、首に手を回してしっかり掴まる。
「じゃ、行くゼ」
「お願いします、ジャンガさん」
立ち上がり、ジャンガは勢い良く駆け出した。
夜空を見上げるガーレンの元へ、ンガポコが飛んでくる。
『ジャンガとアンリエッタ女王が移動を開始しました。ンガ』
ガーレンは含み笑いをする。
「前回は同士討ちなど行ったが、今度はない。調整は済んでいるからな」
手にした杖をクルクルと回す。
「アルビオンの歴史上、最高にして最悪の宴を開こう。主賓はアンリエッタ女王、貴様だ」
クルクルと弄んでいた杖を構え、先端を地面に突き立てた。
虫の音一つ聞こえないほど静まり返ったシティオブサウスゴータの街。
ブゥゥゥーーーン!
静寂を破って響き渡る機械音。
あちらこちらの暗闇に黄色い輝きが次々に点る。
崩れ落ちていた人形が、繰り手を見つけたかのように、幾つもの巨大な影が立ち上がる。
街のあちこちに居るマジックマギが同時に杖を振った。
規則正しく聞こえていた唸り声とも取れそうな鼾が次々に途切れる。
地獄から響いてくるかのような、おぞましい呻き声が聞こえ出した。
森を駆け抜け、草原を走り、五分も経たないうちにシティオブサウスゴータの街が見えてきた。
その街を見て、ジャンガは全身の怪我ざわつく感覚に襲われる。
嫌な感じだ…、昼間とはまるで別の場所の様だ。
それはなにも夜だからと言う、視覚的な感覚なものではない。
虫の知らせとも言うべき”第六感”が知らせてくるのだ。
速度を落とし、話が出来るギリギリのスピードにする。
「おい…」
「…何ですか?」
「少しばかり揺れるからよ、シッカリ掴まってな」
「は、はい」
言われてアンリエッタはジャンガにシッカリと抱きつく。
ジャンガは再度速度を上げ、シティオブサウスゴータの街に入った。
街に入った瞬間、四方八方から黄色の閃光と超高温のブレスが飛ぶ。
それらは互いにぶつかり合い、大爆発を巻き起こす。
炎に照らされながら、ボックスメアンが、キメラドラゴンが闇から次々と這い出してくる。
ズババン!
ボックスメアンの頭部が、キメラドラゴンの首が、立て続けに切り裂かれる。
その背後にジャンガは着地した。
レーザーとブレスの着弾より一瞬早く、ジャンガは大きく跳躍。
そのまま二発の特大のカッターを放ち、ボックスメアンとキメラドラゴンを切り裂いたのだ。
ジャンガは崩れ落ちるボックスメアンや、悲鳴を上げるキメラドラゴンには一瞥もせず、そのまま走り出す。
瓦礫を乗り越え、切り裂き、更に駆ける。
キメラドラゴンが二匹、上空から飛び掛ってきた。
無数の首が伸び、牙を剥き出しにして食いついてくる。
ジャンガは大きく跳躍する。目標を見失った首は地面を噛み砕く。
そのまま伸びた首を飛び石を渡るように上り、瞬く間に上空の身体の所へと辿り着く。
飛び上がり、大きく一回転。そのまま強烈な踵落としの二連発を食らわせる。
踵落としの勢いそのままに、二匹の身体が大地に叩きつけられた。
ジャンガは、やはり一瞥もしない。
今度は建物の影からボックスメアンが両腕を伸ばしてきた。
しかし、ジャンガは止まらない。宙を舞い落ちる木の葉のようにかわす。
鉤爪が空を切り、クロスボウが何も居ない空中に空しく矢を飛ばす。
それらの腕のコードは、丁寧に毒の爪で微塵切りにされた。
それでも逃がさないとばかりに、ボックスメアンはレーザーを発射しようとした。
が、ジャンガが撃ったハンドライフルの弾丸に頭部を吹き飛ばされた。
そんな刹那の攻防を繰り返しながら、ジャンガは駆けた。
そして十分後…、遂にシティオブサウスゴータを抜けたのだった。
シティオブサウスゴータからキメラドラゴンの咆哮がし、周囲に木霊する。
それはまるで獲物に逃げられた事に対する無念の叫びのように聞こえた。
ジャンガはそれを鼻で笑う。
(これで後は真っ直ぐ進むだけだな…、案外簡単だったゼ)
更に速度を上げつつジャンガは駆け続けた。
これでゲームセット。この下らない戦争ともお別れだ。ジャンガは勝利を確信する。
(そう旨くは行かないのが世の常だ…)
「何ッッ!?」
ジャンガは目の前の地面が突然隆起したのを見て、ジャンガは慌てて立ち止まり、後ろへ大きく飛び退く。
「きゃあ!?」
突然の衝撃にアンリエッタが悲鳴を上げる。
距離を取り、ジャンガは眼前を見据えた。
隆起した地面が吹き飛び、まず巨大な二つのドリルが現れる。
続いて巨大な生物の眼球のようなパーツ、黒光りするドーム状のボディが姿を見せた。
それは、全長二十メイルに達しそうな巨体を誇る物体だった。
アンリエッタは見た事も無いその謎の物体に目を見開く。
「何ですか…これは?」
「チィッ! バグポッドDかよ!?」
ジャンガは歯噛みした。
『バグポッドD・クロウラーモード』――ガーレン製造の巨大虫型メカ。
頑丈そうな見た目どおりの分厚い装甲を持ち、並大抵の攻撃は軽く弾いてしまう。
ボディ前面に取り付けられている二つのドリルは破壊力抜群。
一つ目の様なパーツは強力なレーザー光線『ガーレンビーム』の発射口となっている。
また、内部には多数のガレンヴェスパ、ガレンビートルが格納されており、いつでも射出が可能。
ガレンビートルに目標を捕獲させ、ガーレンビームの発射口の前に連れてくるなどその使い方は極悪。
変形機能を持ち、スパイダーモードと言う別形態に変形可能。
「ガーレン! テメェが自分から出てくるとはよ…驚きだゼ!」
ジャンガはバグポッドDのボディの上部に存在するコックピットに向かって叫ぶ。
ドーム状の青い強化ガラスの向こう、ガーレンが笑いながら操縦桿を握っている。
「グハハハ、ご苦労だったなジャンガ。キメラドラゴンとボックスメアン、
二つの脅威に晒されながら実に見事な生還だ、素直に賞賛しよう」
「テメェに褒められても嬉しかネェ。…ってか、テメェはウゼェ」
「ほぅ? ”向こう”ではお互い協力し合い”ナハトの闇”を目覚めさせようとしたと言うのに…連れないものだ」
ジャンガは唾を吐き捨てる。
「ケッ、向こうの事はもう終わりだってんだよ。だいたいよォ…あんな連中に邪魔されておいて、
よくもまぁノコノコ出てこれるよな、あ? 俺の苦労無駄にしまくりやがってよ!!? 悔しくネェのか!?」
「フン、我輩は一つの敗北に拘ったりなどしない。一つの敗北と失敗は更なる勝利と成功で塗り潰せばよいのだ。
そして…ここでそれらは得られる。ナハトの闇は蘇るのだ!」
(ナハトの…闇?)
ガーレンの口から出た名前。それにどのような意味があるかはアンリエッタには解らない。
だが、何故だかその言葉に不吉な感じを彼女は覚えたのだ。
「おいおい、ここは俺達が居たとことは待ったくの別世界だゼ? ナハトの闇なんか蘇らせるわけが無いだろうが…」
ジャンガの言葉にガーレンは笑う。
「ククク、それが出来るとすれば…どうかね?」
「ンだと?」
「残念ながら出来るのだよ…、ナハトの闇…その復活。その為に果てしなき時間をかけてきたのだ。
そして、ナハトの闇の復活の為には他者の怒りや苦しみ、恨みや悲しみ、妬みなどの負の感情――悪夢が必要なのだ。
多量の悪夢が集まれば…ナハトの闇はより一層の力を持ってこの世に復活する。
このアルビオンとトリステインの戦争もまた、その目標の為のプロセスの一つに過ぎん」
「あ、あなたは…そんな理由で戦争を起こしたのですか!?」
アンリエッタの言葉にガーレンは頷いた。
「その通りだ、アンリエッタ女王。我輩は己の目的の為ならば、全てを犠牲にする事が出来る。
それ故に我輩はナハトの闇の所有者に、世界の支配者にふさわしいのだ」
昂然と言い放つガーレンの姿を見て、アンリエッタは戦慄する。
――この男は本気だ。自分の目的の為には手段を選ばず、必要とあれば赤子でさえ犠牲に出来る。
このような考えが出来る者が居るなど…アンリエッタは知らなかった。
感じた事の無い狂気を覚え、アンリエッタはごく自然に身体を震わせた。
震えるアンリエッタを見据えながらガーレンは言い放つ。
「そして、支配者は一人で良い! 他の者はいらぬ!」
ガーレンは操縦桿を倒す。バグポッドDのドリルが伸びる。
ジャンガは反射的に飛び退く。一瞬後、ドリルが地面を抉った。
地面を滑走しながらジャンガはバグポッドD――ガーレンを睨み付ける。
「やる気かよ?」
「我輩は貴様を殺すわけではない。貴様の背中の小娘を殺すのだ。無能の分際で有能の真似事をするなど滑稽の一言。
そんな支配者たる器でない者は死するべきだ。そして有能な人間にその役目を譲り渡すべきなのだ」
「ウェールズとかもそうだってのか?」
「旧アルビオン王家の皇太子か…。貴様が回収などしなければ、アンドバリの指輪で生ける屍にして使っていたのだがな。
死を選んだ分際で、無能を励ますなど…無駄な行為をしてくれる。まぁ、本人が救いようの無い無能だからだろうがな」
「――ッッッ!!?」
アンリエッタは頭に血が上るのを感じた。
だが、アンリエッタが怒鳴る前にジャンガが口を開く。
「アンドバリの指輪…? テメェなのか、水の精霊の指輪を奪ってったクロムウェルってのは?」
「クロムウェルはレコン・キスタの総司令官の名だ。…前回のタルブの戦で戦死したがな」
本当は彼が止めを刺したのだが、そこは言ったりはしない。
「指輪はこちらで管理していたが…いつの間にか偽者と摩り替っていてな。現在、その所在は不明だ」
「ずさんな管理だな…」
「まったくだ。そこは同意してくれて構わぬ」
ガーレンはわざとらしい動きで肩を落とす仕草をした。
「まぁ、指輪の事は今はいい」
「俺はあんまり……いや、やっぱりいいか」
頭を掻きながら、アッサリと指輪の事の追求を止めた。
面倒だと言う事もあるが、そんな事をわざわざ話す相手ではない、と解っているからだ。
ガーレンはジャンガを見据える。
「ジャンガ、そろそろ偽善も終わりにしないか?」
「あン?」
ジャンガは怪訝な表情をする。
「貴様らしくないではないか…、今行っているような偽善に身を投じて貴様に何の利益がある?
力ずくで奪い、恐怖を与えるのが貴様ではなかったのか? 今の貴様は我輩からすれば非常に滑稽だ」
「滑稽ね…。ジョーカーも似たような事を言ってたゼ。…悪いが、俺は正義の味方になったつもりはネェ。
偽善を振りまいてるつもりもネェ。俺は俺の好きな事をやってるだけだ。
それがただ、こいつらにとっての正義の味方みたいに見えるだけさ。キキキ、正義なんざ下らねェしよ」
「ほぅ…、その割には貴様は随分と熱心になっている感じはするが?」
「そりゃ、お気に入りの玩具取られりゃムカつくゼ。…正直、俺はテメェに心底腹が立ってるんだ」
「ふむ…」
ガーレンは顎に手を沿え、暫し考え込む。
そして、再度顔を上げると操縦桿を握り、押し倒した。
ドリルが唸りを上げ、ジャンガの居る場所へと叩き込まれる。
それを飛び退いて避けるジャンガ。
アンリエッタは振り落とされないように、シッカリとジャンガに掴まる。
ジャンガは鋭い視線をガーレンに向けた。
「これがテメェの答えか?」
「邪魔をするなら貴様と言えど排除する。言ったはずだ…、我輩は己の目的の為に全てを犠牲に出来るのだ」
ガーレンは狂気の混じった笑みを浮かべる。
その顔を見てジャンガは心底嬉しそうに笑い出した。
「いいゼェ〜? 掛かってきな…。俺もテメェには玩具奪われた借りと扱き使ってくれた借りがある。
正直、テメェの姿を見た時から…その首刎ねたくって、ウズウズしてたんだよッッッ!!!」
両目をあらん限り見開き、怒りと笑みが混じった複雑な表情でジャンガは叫ぶ。
ガーレンもまた、笑いながら叫ぶ。
「グハハハハハハ! いいだろう、昔の仲間の好だ! 楽に死なせてやろう、ジャンガ!」
コンソールにある、ボタンの一つを押す。
バグポッドDの一つ目を模った砲身が輝き、強力なレーザー光線『ガーレンビーム』が放たれた。
ジャンガはそれを反射的に飛び退いて避ける。
美しいエメラルドグリーンに輝く破壊の閃光は、射線軸上に在った全ての物を消滅させる。
そして遥か彼方にあった一つの山の形を変えてしまった。
その凄まじい威力にアンリエッタは呆然となる。
「な、何てこと…」
「チィ…、やっぱり強化済みか。まともに受けたら毛の一本も残らねェな…こいつはよ。オラッ!!!」
ジャンガはバグポッドDに飛び掛る。
カッターを放つが、それは回転するドリルに掻き消される。
分身し、四方からカッターを放ち毒の爪で切りつける。
だが、頑強な装甲はビクともしない。
ならば…と、コックピットを狙うが、強化ガラス製ゆえ引っ掻き傷がつくのがやっとだ。
ガーレンは別のボタンを押す。
後部ハッチが開き、無数の虫型メカが飛び出した。
ガレンヴェスパとガレンビートルだ。
ハチ型のガレンヴェスパはジャンガ目掛け、高速で体当たりを仕掛けてくる。
それらをジャンガは毒の爪で切り裂き、蹴り飛ばしながら応戦する。
だが、数が数だ。分身してもまるで効率が上がらない。
次第に焦りが見え始めたジャンガにガレンビートルが取り付く。
「チィッ!」
「きゃあっ!?」
ガレンヴェスパの体当たりで敵を翻弄し、相手の動きが鈍った隙にガレンビートルで捕獲するコンビネーションだ。
ジャンガは振り払おうともがくが、ガッチリと掴んだアームは外れそうにない。
アンリエッタも杖を握った腕を押さえられている。
ガレンビートルはバグポッドDの砲身の前に突き出された。
ガーレンビームはその威力ゆえにエネルギーの消耗が激しく、連射が効かないのが欠点である。
それ故にガーレンは捕獲機体のガレンビートルを開発し、その欠点を補ったのだった。
動く的は動かなくすればいい…、単純な発想であるが故に実用性は高い。
本格的にやばくなった事を悟り、ジャンガは焦る。
しかし、どんなに暴れてもアームは外れる気配を見せない。
砲身に輝きが集まり始めた。
見る者をウットリとさせる美しい輝き…。だが、それは全ての者を無に帰す破壊の光だ。
ジャンガは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「クソが!!!?」
「さらばだ、ジャンガ! そして、アンリエッタ!!」
ガーレンが叫ぶ。
輝きは頂点に達しようとしていた。
「嫌ぁぁぁーーーー!!!」
アンリエッタは悲鳴を上げながら目を閉じる。
その瞬間、地響きのような音が聞こえたが、アンリエッタは気にする暇も無かった。
目を閉じた事で視界には何も映らなくなり、ただ暗闇だけが広がる。
自分はまだ生きてるのだろうか? それとも既に死んでしまっているのだろうか?
解らない…、痛みも衝撃も何も来ないのだ。
先程の光が放たれた時に鳴り響いた轟音は聞こえたから、あの光は放たれたのだろう。
衝撃も痛みも無いからと生きているとは限らない。…それらを感じる暇も無いうちに死んだのかもしれないのだから。
生きているのか…、死んでいるのか…、考えても解らない。
目を開けるのが一番簡単ではある。だが…アンリエッタは目を開けるのが怖かった。
自分が死んでいたら…と、胸の内が不安でいっぱいなのだ。
それでもアンリエッタは意を決し、大きく深呼吸をして目を見開いた。
そして、アンリエッタは目の前の光景に驚く。
身の丈三十メイルはあろうかという巨大な土ゴーレムが、自分達の目の前に姿を現していたのだ。
――少し時間を遡る…、最初のガーレンビームが発射された直後のロサイス。
「な、何よ、今の音!?」
未だに姿を現さないアンリエッタ(とジャンガ)の事を心配していたルイズは、突然響き渡った轟音に驚く。
砲撃の音とも違う。しかし、爆発音のようにも聞こえた。
ふと、モンモランシーが呆けた様な表情になっているのに気が付いた。
「どうしたのよ、モンモランシー?」
「モンモランシー、しっかりするんだ!?」
ルイズやギーシュが声をかける。
モンモランシーは自分の目線の先を指し示す。
釣られて示された方向へ顔を向けるや、ルイズもキュルケもギーシュも唖然となった。
――遥か彼方に在る山の頂上が不自然な形に抉れていた。
まるで砂の山をスコップで抉ったような感じだ。
「な、何の冗談だ…あれは?」
ギーシュも呆然と呟く。
先程の轟音があの抉られた山と関係があるならば、どういった物があんな事を可能にするのだろうか?
魔法でも大砲でも、山の形を変えられるほどの威力が得られるなど、常識では考えられない。
その時、二度目の轟音が轟いた。突然の事に全員が身をすくめる。
「もう、何が起こってるのよ!?」
「わたしに任せて」
タバサはそう言うと、口笛でシルフィードを呼ぶ。そして、その背に乗るとロサイスの上空へと飛び上がる。
目を凝らすと遥か遠方に何か巨大な物がいる。
ズバ抜けた視力を持つシルフィードはそれが何か気が付いたらしく、きゅいきゅい、と喚く。
タバサは『遠見』の呪文を使おうとし、止めた。シルフィードと感覚の共有を行う方が、精神力を無駄にしないですむからだ。
目を閉じ、意識を集中させるとシルフィードの視界が見えた。
そしてタバサは驚愕した。驚きのあまり、視界の共有を思わず解いてしまう。
何故此処に? と思わず考えてしまう。
だが、驚いている暇は無い。事態は一刻を争う。
タバサは逡巡し、シルフィードに指示する。
シルフィードは全速力でその場を飛び去った。
「こんな所で逢うたァな…、借りを返しにでも来たのかよ?」
ジャンガは自分の目の前に立つ、巨大なゴーレムの肩に乗った人影に向かって言う。
人影は振り替えるや、薄く笑った。
「まぁ…ここらで暴れられると困るってのが本音さ。助けたのはついでだよ。
あんな『破壊の箱』なんかよりも物騒な物を、あっちこっち撃たれたらたまらないからね」
その人物の顔を見て、アンリエッタは驚いた。
ゴーレムの肩に乗った人物…、それは以前トリステイン中を騒がせた怪盗『土くれ』のフーケその人だった。
「あなたは…フーケ。どうしてここに?」
「あんたとも久しぶりだね、アンリエッタ姫殿下。いや、今は女王陛下だったね?」
言いながらフーケは手にしたタクトの様な杖を振る。
その途端、ジャンガとアンリエッタに纏わり付いていた、ガレンビートルが残らず土くれに変わる。
自由の身になったジャンガは地面に着地する。
それを見据えながら、フーケは口を開く。
「これで貸し借り無しさ」
「キ、いいだろ。ま、いい所にやって来たのは褒めてやるゼ」
そう言って、ジャンガはバグポッドDに向き直った。
コックピットの中でガーレンは顎に手を沿え、フーケを見つめている。
「フム、このような所に…いや、このような所――サウスゴータだからこそ、現れても不思議ではないか」
言いながらガーレンは笑う。
「故郷に帰って来た気分は如何かな? マチルダ・オブ・サウスゴータ」
嘗ての名を呼ばれ、フーケの表情が僅かに険しくなる。
ジャンガはそのガーレンの言葉を聞き、疑問を感じた。
「オイ、ちょっと待て? 今のはそのコソドロの名前か?
サウスゴータってのは確か…あの街を中心とした一帯を指すんだろう。…って事は、フーケは貴族だってのか?」
「ククク…、”元”貴族だ。彼女はアルビオン王家に使えていたのだがな…とある事情で貴族の位を取り上げられたのだ」
フーケは驚き、大きく目を見開く。
「なんで、お前がそんな事を知っているのさ!?」
「我輩に知らぬ事など無い。…貴様が貴族から没落したのが、王家の命令に背いたという事もな」
「命令に背いただ?」
怪訝な表情のジャンガにガーレンは頷く。
「そうだ、とあるものを『差し出せ』と言われた。だが、彼女の父は反対し、結果アルビオン王家に全てを奪われたのだ」
ガーレンの話にフーケは苦虫を噛み潰したような表情になる。
「それが『土くれ』のフーケを名乗る原因の一つとなったのだ」
「…復讐か?」
「そのとおりだ。まぁ…実際はもっと細かい理由は在るだろうが、大まかなところはな。
宝を奪われ、名誉や誇りを傷つけられ、右往左往する貴族の者達を見て嘲笑う…、実にバカらしい事だ。
我輩からすれば、そんなものは子供の悪戯と何ら変わり無い。到底、人の苦しみや悲しみを生み出す事は出来ない」
フーケはガーレンを睨みつけながら叫ぶ。
「黙りな! 私のやっている事にケチをつけたいんなら、私と同じ苦しみを経験してから言うんだね!」
フーケは怒鳴るが、ガーレンはまるで動じていない。
「そうだな、そうだとも。他人の事を理解するにはその者と同じ立場に立たねばならない…。
故に貴様の苦しみを理解する者はこの世には居ない。全て死した後だからな」
「あんた…」
「そんな貴様にも良心という物は有るのだな。唯一残った家族とも言うべき者に、金を送っているのだからな。
盗んだ金品から得た物で」
「仕送りね…、盗賊やってた理由のもう一つはそれか」
「そうだ。もっとも、最早彼女は盗賊はできぬだろうがな」
フン、と鼻を鳴らし、ジャンガはフーケを見る。
ラ・ロシェールで見た彼女の寂しげな表情から感じた物…、それは間違いではなかったようだ。
『破壊の箱』を盗んだ時は、ガキ連中を一人残さず殺そうとした奴にも”大切な物”と言うのは在るらしい。
と、バグポッドDが動き出した。
「マチルダ――否、フーケよ…邪魔をするならば貴様にも死んでもらう」
「お生憎だね。まだ死ぬには私は若すぎるさ」
「ふざけた事を…」
ドリルが唸りを上げて回転し、ゴーレムへと叩き込まれる。
「ゴーレム!」
フーケの指示に従い、ゴーレムは両腕で二本のドリルを掴む。
「グハハハハハ! 土のゴーレム如きで、我輩のバグポッドDが止められるものか!?」
ドリルの回転速度が上昇する。
掴んでいる両手が削られ、土くれとなってボロボロと零れ落ちていく。
フーケは苦々しい表情でバグポッドDを睨み付ける。
ジャンガはバグポッドDの側面目掛けて蹴りを叩き込もうと、跳躍するべく両足に力を込めた。
次の瞬間、猛スピードで突っ込んできたシルフィードが、バグポッドDに猛烈な体当たりを食らわした。
「なっ!?」
「何だと!?」
呆気に取られるジャンガ。珍しく驚いたガーレンの声が響く。
バグポッドDはバランスを崩す。
その決定的な隙を見逃すフーケではない。
ゴーレムはドリルを握った両腕を力の限り振り回し、力一杯放り投げた。
数十メイルの距離を投げられ、バグポッドDは地響きと共に地面に落下した。
それを一瞥し、ジャンガはシルフィードの方に顔を向ける。
その背の上には案の定、タバサが乗っていた。
シルフィードは体当たりで多少ふらついているみたいだが、何とか大丈夫のようだ。
ゆっくりとした羽ばたきで地面に降り立った。
「よォ、こんな所までご苦労さん」
ジャンガはシルフィードから下りてきたタバサに向かってそう言った。
「他の奴等はどうした?」
「慌ててたから、連れて来れなかった」
「ほゥ? ま、それでいいさ。今の姫嬢ちゃんを見たら、また色々とぐちぐち言いそうだしよ」
そう言って、背中のアンリエッタを見る。
マジックアローが刺さった肩口からは血が流れ、ガレンヴェスパの体当たりを受け、
ガレンビートルのアームに強く掴まれたドレスはボロボロだ。
ルイズが見れば憤慨したのは間違いないだろう。
その時、土埃の向こうからバグポッドDが姿を見せた。
「グハハハハ! どうやら、また邪魔者が現れたようだな…。誰だ? シャルロット”元”王女か?」
ガーレンの言葉にタバサは表情を険しくする。
ガーレンの笑い声は止まらない。
「グハハハハ! いいだろう、貴様の悪夢もナハトの闇に取り込んでやろう。そして、悪夢の中で家族と再会するがいい!」
二つのドリルを唸らせながら、バグポッドDが突進する。
ジャンガは背中のアンリエッタを下ろし、シルフィードの上に乗せる。
シルフィードは慌てて空へとを飛びたつ。
それを見届け、ガーレンを迎え撃つべく、構えようとするジャンガの袖をタバサが引いた。
「なんだ?」
「フーケは?」
ジャンガはチラリとフーケを見上げる。フーケと一瞬目が合うが、フーケは直ぐにバグポッドDへと視線を戻した。
それを見届け、ジャンガは笑う。
「ま、とりあえず敵じゃねェ。敵なら、俺はとっとと切り裂いてるゼ」
「…解った」
納得したタバサは杖を構え、バグポッドDを迎え撃つ準備を整えた。
「あんまり時間は掛けられネェ…、例の化物や主力に来られると面倒だ。即効で片付けるゼ!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上で投下終了です。
では、今回はこれで。アディオス。
面白そうだからまとめ見たら大半が永遠の未完作で笑った
半端にされると後続は同ネタでやり辛かろうに。
まあ、要は好きな組み合わせがことごとく未完だったのでうんこ漏れそうでしたと
完結してたって同じネタやりづらいのは一緒だろうな
アルミ缶の上にアルミ缶
マミーモン完結はよかったなぁー。
ラストのくだりを読んで、本編で故人になっているガリア王妃は
ジョゼフにビンタできるくらい強気な人だったんだろうかとふと思ったりも。
わざわざ丁寧におマチさんの身の上を語って聞かせるガーレンさんマジパネェ
毒の爪の人、乙
>>151 デモンベインなんかゴロゴロあるんだが
>>155 ほとんど未完なので
>>150にレスしてあげてください
ってかデモベで完結してるのってある?
157 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 13:16:46 ID:BP8Vfr7h
原作自体がまだ未完なんだから当然
つかゼロ魔原作自体が未完で終わったり…?
アニメの方は明らかに未完で終わるくさいよな
あんな酷い出来じゃ続編作るなんて無理だろ
それのあおりをくらって原作も尻切れトンボとか、ありえないとは言い切れない
あげてしまった、すまん
わざとじゃないんだ。信じてくれ
>>157 出来がどうかじゃなく、売れたか売れなかったかだろ
>>157 つ鋼錬等のやり直し展開
零魔原作が本当に好きな監督が居て会社側も数字取れると判断してくれればやれるんじゃね?
アニメやり直し……つまりエンドレスエイト
ルイズの物の見方を変えた新訳ゼロの使い魔
主題歌はGackt
>>160 グルグルみたいに途中からやり直して結局中途で終わるか
パプワみたいに肝心な部分すっ飛ばして(しかも中の人まで変えて)結局中途で(ry
なんでガンガンの漫画のアニメって碌な終わり方しないんだよorz
そらおめぇ、未完の作品をアニメにするからだろ?
まぁ、それでも個人的にハーメルン綺麗に終ってた気がするな
後味はあんま良くなかったけど
では、この流れはなしだ!(キリキリ
ハーメルンは只管に鬱展開の連続なのをギャグで中和してたところがあるからな。
ギャグ抜いちまったアニメ版がああなるのは仕方ない。
にしてもオチは読めるな。アニメも原作も
サイトが現代日本に帰還して終わり
違いが出そうなのは、そのときルイズと一緒か否かくらいなもんだ
そして第二部『魔法世界vs科学世界』
サイトとルイズは両世界の全面戦争を止められるか!?
こっちの方が俺はwktkなんだけどね
>>167 おいおいまだ続くのかよ……終わりどころを失って失速していくジャンプ連載作品じゃ無いんだぜ?
まあアニメの方は第一期で終わらせときゃ良かったんじゃねと思うけど
まあ、このスレに書かれてるSSもラストが決まってない作品が結構あるんだろうな
新刊が出てラストが吹っ飛んだってのもありそうだな
アノンの人乙
ルイズが出てこないのにびびった
完結した作品も後日出た新刊で設定を否定されて涙目、というのは多い
やりなおしたっていいじゃない。さらばヤマトとヤマト2じゃ全然エンディング違うんだし、続編にしたって
ヤマト復活編(立ち消え)
YAMATO2520(会社倒産)
新宇宙戦艦ヤマト(掲載紙廃刊)
大ヤマト零号(知る人ぞ知る)
と、やってきて今年の復活編にかけている。執念さえあればなんとかなる。
それにアニメ第二期以降もエクレールダムールの花とか使える設定は充分あると思うが。
原作で今のところ解消しなければならない伏線
・はばかられる使い魔の詳細
・6000年前に何が起こったのか
・ヴィットーリオとヴィットーリアなど、ロマリア関連について
・聖戦は行うのか行わないのか、行うとしてこれからどうなるのか
・タバサの恋はどうなるのか
・ジョゼットはどうするのか
・東方には何があるのか
・ビダーシャルなどのエルフ関連について
・元素の兄弟はどうなるのか
・灰色卿のこれから
・才人は結局、帰るのか帰らないのか
・才人に対するアンリエッタの気持ちはどうなるのか
……えーと、他に何かあったっけ?
アニエスの復讐の続き
ここ何巻かタバサがチームロマリアに出し抜かれまくりなのがなんとも。
タバサは戦闘のプロなのであって政治はそうでもない、てのを加味しても今ひとつ精彩を欠いてるように見えるんだよなぁ
色ボケしてるだけって言えばその通りなんだけど!
トリステインが出し抜かれるのはいつものことなので
ライブラリーアウトしたワルドとフーケのその後
デルフリンガーの出どころ
突然だけど投下するよ
キャラは遊戯王GXの「ユベル」 wikiにあった社長の話にも出てきてたよね
ちなみにアニキャラ個別のユベルスレはOCG研究所と化している
どこか別の次元・別の宇宙の「彼女」と同じく
もはや手足の指では数えられないほどの失敗の後
彼女……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの行った
使い魔召喚の魔法『サモン・サーヴァント』は成功した。
「……亜人?」
ルイズの召喚に応じて現れたのは亜人だった。
この世界の人間の知識では「亜人」としか呼びようが無い。
200サントを超える背丈の、紫色の肌をした女性の亜人。
背中にはドラゴンのような翼が2枚 生えている。
……女性? いや、違った。
確かに、亜人の右半身は女性のように見える。
胸には乳房があり、骨盤は大きく丸みを帯びている。
だが それに対して、左半身は男性のように見えた。
胸には脂肪が無く 大胸筋が盛り上がっており、
右足の太腿にも逞しい筋肉がついている。
この亜人は、身体の右半分と左半分で まったく違う体型……というか性別をしている。
また、左右非対称なのは 体型だけではなかった。
まず目につくのは、髪。
肩のあたりまで伸びたボサボサの髪は、
右半分が薄い灰色、左半分が くすんだ青色をしている。
その次は、目。
亜人の目は、右が橙色・左が緑色のオッドアイだった。
さらに 額の中心にも、大きなダイヤ型の黄色い目が付いている。虹彩は赤い。
あと腕も 右と左で明らかに違う見た目をしているが、
表面のテクスチャーを張り替えたような違いでしかないので、省略する。
もちろん どちらも人間のそれとは、だいたいの形しか一致しない。
唯一 背中の翼だけは、綺麗に左右対称となっていた。
ちなみに翼のカラーリングは、外側が黒で内側が紫となっている。
あと特筆すべき外見は、亜人の体で 衣服のように変色している部分があることくらいか。
人間なら下着をつけているであろう部位は、翼の外側と同じような黒い色をしている。
それが皮膚なのか衣服なのかは わからないが、
とにかく人間が下着で隠そうとするような部分が、黒に覆われているのだ。
一般的な男性が 女性と違って ブラをつけないように、
亜人の左の胸は顔と同じ紫色をしているのに対し 右の胸は黒色をしている。
もっとも なぜか腿については逆に、右が黒で 左が紫となっていた。
また、衣服のように見えるわけではないが、
亜人の両肩・両肘・左右の腰骨からは、
翼と同じ色と質感をした ヒレのようなツノのような突起物が生えている。
何の機能があるのかはわからない。
妙にダラダラと亜人の外見を描写することになってしまったが、
その亜人の外見は、それくらい まさに「異形」と呼ぶにふさわしいものだったのだ。
そんな異形の姿を ようやく脳内で処理し終えたのか、
その場に居合わせた者たちは 口々に銘々の感想を述べ始めた……
「何あれ……」
「と…とりあえず『亜人』としか……」
「禍々しくも ふつくしい……」
人でないのに人の形をしている存在への、生理的な恐怖。
必死で勉強したハズの座学の知識の中にも存在しない
正体不明の亜人に対する恐怖。
そして……そんな世にも珍しい存在を使い魔として召喚したことへの感動。
加えて魔法成功率がゼロでなくなった感動。
ルイズの中で、感動が恐怖に打ち勝った。
使い魔の契約『コントラクト・サーヴァント』を行うため、
深呼吸をして、自分が呼びだした亜人に歩み寄る。
それまで静かに周囲を観察していた亜人の3つの目が、すべてルイズに向けられる。
「…………」
目の前の少女が 自分に用があると気づいたのか、
亜人は姿勢を低くして目線をルイズに合わせると、口を開いた。
「……キミは?」
トーンの押さえられた、女性の声だった。
「……!」
やはり、人語を解するらしい。
人間と同等か それより上の知能を持った亜人である可能性も十分にある。
だが、自分が使い魔とするため呼びだした以上、
主人が威厳を失うわけにもいかない。
ちょうど相手の顔の高さも自分にとって都合の良い位置にきていることだし……と、
ルイズは そのまま『コントラクト・サーヴァント』を実行に移すことにした。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ……!」
杖を亜人の額に……当てようにも、そこには亜人の第3の目がある。
さすがに、正体不明かつ初対面の相手を目潰しで怒らせるわけにもいかないので、
ルイズは亜人の眉間に杖を当て、緑色の唇に口づけをした。
「ッ!? おまえ、何を……!」
いきなり唇を奪われて驚いたのか、
それとも使い魔契約のルーンが刻まれる痛みに驚いたのかは わからないが、
先程までの冷静さとは うって変わって、亜人は明らかに感情を表に出した。
亜人の額にある第3の目が発光している。
いや、目が光っていたのではなく、使い魔の証が刻まれている最中なのだ。
「あ、それは使い魔のルーンが刻まれてるだ…けッ!?」
突如、額に走った鋭い痛みにルイズは悶絶する。
突然の謎の痛みに ふらつき倒れそうになるルイズを、亜人が支えた。
服の首ねっこを掴んで。
「ふふふっ……大丈夫かい? それが……今、僕が感じた痛みなんだ」
「……っ!」
召喚者の威厳を保つため、できるだけ迅速に立ち直る。
それに、痛み自体は とっくに消えていた。
「…………」
ルイズの召喚した亜人が、3つの目で彼女を見下ろしている。
「……!」
ルイズと、教師のコルベールが、あることに気づく。
亜人の額にルーンが刻まれている。
……額…というか……額にある第3の目の中に。
(う…わ……)
眼球にルーンが刻まれる……
想像するだけで嫌な汗がにじむ。
いったい どれほどの激痛なのだろう……
(……え? 激痛?)
激痛といえば、先程 突然ルイズを襲った痛みも、
分類としては かなりの激痛だった。
沁みるような刺すような鋭い痛み。
目に塩水が入ったときの痛みの強化版のような痛み……
しかも、その痛みが ちょうど額に……
(まさか……)
契約を結んだ その瞬間から、使い魔と感覚を共有した、ということだろうか。
……視覚でも聴覚でもなく、よりによって 痛覚を。
亜人が、そんな懸念を抱くルイズのほうを向いた。
「……ねぇ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「っ! な、何……!?」
1回しか言っていないのに、いきなりフルネームで呼ばれた。
記憶力に優れているのか、それとも長い名前に慣れているのか。
「ボクを この次元へ呼んだのはキミなんだろう?
キミは さっき『使い魔』って言ってたけど……説明してもらおうか」
「……! そ、その前に……! あんたも自己紹介しなさい……!
ご主人様が使い魔のことを知るのは当然でしょ……!」
「ほう……本気でボクを使い魔にできると思っているのかい」
いきなりの ご主人様を馬鹿にしているような発言。
「う……そ、そうよ! もうコントラクト・サーヴァントは完了してるんだから!」
「……ふふっ、まあいい。僕は……ユベル。闇属性・悪魔族の精霊だ。
もしキミが 長い名前が好きなら
『ユベル−Das Abscheulich Ritter』とか
『ユベル−Das Extremer Traurig Drachen』でもいいけどね」
「ゆべるだす……って、え!? アクマぁ!?」
闇属性、悪魔族、精霊。
精霊はともかく、闇…属性? 悪魔?
「……もしかして…エルフと何か関係が……?」
「闇」「悪魔」といった単語から
ごく自然に連想されて 思わず口に出してしまう。
だが……
「あぁ……キミたちと同じ 魔法使い族のエルフのことかい?
残念だが、ボクには あまり関係が無いねぇ」
「魔法使い…族?」
確かに、人間のメイジもエルフも魔法を使いはする。
だが、その魔法力には大きな差があり、
魔法の使い手として人間をエルフと同列に扱うのは、無理がある。
にもかかわらず、このユベルと名乗った亜人は、
ハルケギニア最高の先住魔法の使い手であるエルフと
そんなエルフの強大な魔法力を恐れる人間を、
あたかも同種族であるかのように言う。
この亜人が属する「悪魔族」という種族にとって、
人間もエルフも大差無いということだろうか……?
それとも、単に人間とエルフの区別ができないだけなのか。
「まさか…本当に悪魔……!?」
人間どころかエルフすら軽視できるほどの存在。
そして、闇・悪魔……闇を担う悪魔…の精霊……?
「悪魔…族って……?」
「そんな種族の亜人もいるのか……」
「闇属性って? 系統?」
「ゼロのルイズが、化け物を……?」
「ってか あれ、男? 女?」
「なにげに胸が大きい」
得体の知れない亜人が出現した ほとぼりはとっくにさめているが、
亜人の口にした「闇」「悪魔」という単語が
新たな話題のタネとなっているようだ……
もちろん、そんな存在を「ゼロ」のルイズがいきなり召喚したことも。
「そういえば……さっきから気になっていたんだけど、
『ゼロ』というのはキミのあだ名かい?」
「……! そ、それは…っ!」
軽い調子でユベルが問いかける。
もちろん、彼…彼女…彼……とにかく、ユベルはその由来を知らない。
だが ルイズは、不名誉なあだ名のことを話題に出されて言葉に詰まる。
「ふふふっ、そうか……
これがキミの『心の闇』なんだね」
心の奥底まで見透かすようなユベルの視線が、ルイズの体を貫く。
「え……?」
「いいよ。今日からボクたちは友達だ。
ボクも ある意味、キミと同じ『ゼロ』だからねぇ」
「あんたも…ゼロ……?」
「あぁ。ボクは元々、攻撃力も守備力も0なんだ。
もっとも……ボクには そんなもの、必要無いけどね」
「こ、攻撃力と守備力ゼロって……え!?
じゃあ戦う力が無いってこと!?」
見るからに化け物チックな この使い魔は、
その外見に反して、自分に戦う力が無いと告白した。
せっかく世にも珍しい使い魔の召喚に成功して
ゼロの汚名を晴らせるかと思ったのに……
この使い魔自身も戦う力が「ゼロ」であると言う。
ゼロの魔法使いが戦闘力ゼロの使い魔を召喚してしまった。
(べ…別に戦闘能力だけが すべてじゃないわよ……
きっと何か それ以上にすごいことができるハズ……!)
そう思い直すルイズに、ユベルが声をかける。
「勘違いしてないかい……?」
「え?」
「確かにボクは攻撃力も守備力も持っていない。
けど、戦う力が無いなんて言ってないだろう?
実際 ボクは今まで、ほとんど負けたことが無いからねぇ」
虚勢を張っている様子は無い。
むしろ、ゼロだからこそ負けない、とでも言わんばかりに毅然としている。
「……ふふふっ、いずれわかる」
それまで、ただ じっと使い魔を観察していたコルベールは、
攻撃力0のくだりを聞いて、ひとり 納得していた。
この亜人の姿を確認したとき、彼が さりげなく使った『ディティクト・マジック』によると、
この亜人は、確かに「闇」としか言いようの無い性質を持っている。
しかも「神」というものと同等のレベルの存在である存在であることは間違い無い。
だが、この亜人には いっさいの攻撃性を感じられなかった。
そこに「攻撃力0」という自己申告。
とりあえず、この正体不明の亜人に 誰かに危害を加える力は無いらしいことがわかると、
コルベールは生徒たちを教室へ向かうように促す。
そして……
『フライ』の魔法で校舎に飛んで行った生徒たちはともかく
ミス・ヴァリエールと その使い魔まで
いつのまにか姿を消していることに気づいたコルベールは、
ルイズの使い魔の額に刻まれたルーンが珍しいものだったことを思い出す。
「……あ、スケッチ……」
その頃、トリステイン魔法学院内のどこかの廊下を、
やや筋肉質になった桃色の髪の小柄な少女が、双眸を金色に輝かせながら歩いていた。
(十代……どこにいるんだ……十代……)
投下終了
眼球ルーン刻み……これがキミの愛なんだね
とりあえず乙、遊戯王好きなんで嬉しい
アニキャラ板のユベルスレは本当にユベルを使ってやろうとしてる人の集まりだからね
デッキ作る参考にさせてもらってる
>>175 > ……えーと、他に何かあったっけ?
・サイトとルイズがいつヤるか
とりあえず投下乙
どうやら十代との和解前らしいからどうなる事やら楽しみ
乙です
ユ・ユペルっすか!?
乙
覇王ルイズ誕生なるか
あれ? 「遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX」じゃないの?
「遊☆戯☆王GX」ならVジャンプに連載している漫画版になるんだけど
>>189 正直 超融合前後のどっちか決めてなかったりする
ヤンデレでもツンデレでも 十代と生き別れになったら次元単位で探しまわると思うし
>>192 ごめん
194 :
ゼロ大師:2009/07/28(火) 21:13:11 ID:F6aG32KO
お疲れ様です
休日に書きためた ゼロ大師第四話を投下します。
ゼロ大師 ――― 藤崎竜版「封神演義」より、大師聞仲を召喚
「やはり……この本も駄目だったか」
夜。
聞仲とルイズが図書室でがりがりがりと言語習得に励んでいるのと時を前後し、同じく学院内。
もはや書庫と等しい程本が山積みになった自室の、僅かなスペースで書籍を調べる一人の男がいた。
ジャン・コルベール、『炎蛇』の二つ名を持つ学院の教師である。
もっとも学生からは日頃おかしな研究を続けている変人という認識しか持たれていないが。
主従の学習と異なり、こちらの研究はどうにもこうにも進まなかった。
どの文献を探しても該当するルーンが出てこないからだ。
「さて、困ったな……捨て置くには何やらありそうだし」
使い魔召喚の儀は、学院でもなかなかに注目度の高い儀式ごとである。
楽しみにしている教師も少なくないのだ。
学院長であるオールド・オスマンもその一人であり、どうやらいつもの如く鏡で盗み見ていたようなのだが―――
『あのヴァリエール嬢の使い魔について調べてくれたまえ』
そう依頼してくる彼の目はいつもの好々爺のものでも、ミス・ロングビルにセクハラする狒々爺のものでもなく、
いつになく真剣味を帯びたものだった。
自分もあの場にいたものの、彼の雰囲気に圧倒されていたことは確かだろう。
戦士としての勘というか、彼はもっと上の、何かを極めた超越者のような。
しかし確証はなく、そして確かめようにも物証も何もなかったのだ。
最後に残った本は「始祖の使い魔達」という、古めかしい本だった。
始祖と言っても六千年も前の話で、こうやって記録に残されているのが真実かどうかは解らない。
魔法とそれに関する知識、言語などがそのまま伝わってはいるものの、こうした種の書籍には
無数の贋作が混じるのが普通である。
とはいえ全ての資料に当たり、ここで見つからなければもう他に頼るものはない。
むしろこの本すらも、最後まで読んだから惰性で調べてみようという程度だ。
「……ガンダールヴ……ミョズニトニルン……ヴィンダールヴ……そして」
ぱらりぱらりとページを捲り……コルベールは動きを止める。
そして時を巻き戻すがごとく、猛烈な勢いで先程開いたページを捲り返していく。
「まさか……」
スケッチした彼のルーンと同じ模様が、そのページには記されていた。
「まさか……彼が……神の―――」
◆
次の日、学院長オールド・オスマンは昼間から使い魔の視覚共有をしていた。
そこに授業をそうそうに終わらせて飛び込んでくる男が一人。
「学院長!! オールド・オスマン!! 狒々爺!!!」
「なんじゃ、ジャノ・ジャック・コールタール。いいところだったのに……」
「名前をいい加減覚えて下さい! 大体、いいところってどういう事ですか? オールド・オスマン」
飛び込んだコルベールの目に入ったのは書類を投げつけるミス・ロングビルの姿だった。
書類を顔にめり込ませているのは部屋の主、学院長オールド・オスマンである。
300歳生きるというその老獪な学院長は、ここ一番という覗きのチャンスをコルベールに潰されて機嫌が悪い。
「そんなことより、これを見てくださ」
「そんなこととは何じゃ!!! 御主は研究にかまける余り、男の遺伝子を失って……」
「男の遺伝子って何ですか? 学院長」
「ぎゃ、ぎゃああああああああああああああ!!!!!!」
「……」
悲鳴を上げて折檻を受ける学院長の声は、部屋の壁に邪魔されて外に出ることはなかった。
もっとも、聞きたい人などいないわけだが。
「あーあ、怒って行ってしまったではありませんか……」
「御主のせいじゃぞミスタ。まったく、あと少しであの布に隠された秘密を解き明かせ―――」
「高尚な事のように言うのは止めて下さい。……と、違いますよ。こっちが本題です」
「なんじゃ、古い本なぞ出して……"始祖の使い魔"?」
「そうなのです、先日ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔が……」
コルベールはあの使い魔の刻印が、本に記されたそれであると学院長に語った。
「……なるほど、なるほど。伝説の使い魔か……」
「人を召喚など前代未聞です。これはもしかしたら……」
「まだ早い。もう少し様子を見なければならんのう」
「伝説の力を、ですか?」
「そうじゃ。彼の者がどのような性質であるかも解っていないわけじゃし」
「こういった事は王宮に報告するべきでしょうか」
学院長は深く息を吐きながら、頭を振ってそれを否定する。
「御主も解っておるじゃろう、研究所が聞きつけたら即座に連れて行かれて実験材料じゃ」
「彼がそんなやすやすと捕まるようには見えませんでしたが」
「まあ、たしかにの。一度能力でも見れれば対応しようがあるのじゃが……」
「そんな事を言っても、喧嘩を引き起こして能力を見るわけにもいきませんよ」
窓の外を見ながら、学院長は遠い目で言葉を紡ぎ出す。
「しかし、まさか彼が神の……」
「学院長!!!」
本日2度目の妨害に、渋く決めようとしていた学院長は挫かれてしまった。
ミス・ロングビルは足下で上を見ていたネズミを捕らえ、遠くに投げながら詰め寄ってきた。
「見せ場を奪って楽しいかね、ミス・ロングビル」
「大変です!! 広場で喧嘩が!! ギーシュ・ド・グラモンとヴァリエール嬢の使い魔が……」
◆
「……」
ルイズは聞仲と連れ添って歩いていた。
若干ビクビクしながら。
正直な所、どうやって聞仲に接すればいいのかがよくわからなかったからである。
彼は基本的に敬語を使わない。使う時は説教の時だけだ。
説教の際は大抵恐ろしい顔をしているので、敬語は逆効果である。
朝に食らった破壊的説教が頭に残っているせいもあった。
確かに、朝早く起きたお陰で確かに頭は良く回るし、授業に適度な緊張感もあって良いことは良いのだ。
召喚したのが人間だと知った時はどうしようかと思ったが、これはこれでいいものである。
ちゃんと敬意を払って接してくれるし、人であるから他の使い魔のように外で待たせるような事も無い。
そういった事を踏まえれば、敬語でないなんてのは些事なのであるが―――。
逆に、聞仲という使い魔が敬語バリバリで謙ってくるような奴だったらそれはそれで嫌だ。
メイジとしてのプライドを持てと言われ育ってきたルイズは、おそらく調子に乗っていただろう。
上手く折り合いを付ければ、もっと自然につきあえるのに……。
「……はあ」
「どうしたルイズ」
「なんでもないわよ」
「そうか。太乙真人、今度はどこへ行けばいい」
『だいたいの場所は回ったかな。中については入れない場所もあるようだし、今度でいいだろう』
ルイズが微妙に悩んでいる横で、聞仲は太乙真人と通信をしていた。
朝の散歩も半分はそれが目的であり、学院内のデータを取っていたのである。
聞仲の立場上、主人であるルイズの周りから離れるわけにもいかない。
本当は通信珠を飛ばしてあちこちのデータを取りたかった太乙だったが、仕方なく周辺データから始めたのだ。
「……で、この珠っていったい何よ」
「宝貝の一つだ。私が使用しているが、まああまり触れない方が良い」
『エネルギー供給は聞仲がしてるけどもやっぱり危ないからね』
珠の向こうの人間は「タイイツシンジン」というのだと、ルイズは聞仲に教わった。
字も……まだ簡単な方であるから、いずれは書けるようになるはずだ。
聞仲の使っている字は文字自体が非常に多い為、まだ全然習得がすすまない。
覚えたのは「聞仲」の二文字だけである。
もっとも、魔法以外にも興味を持つことが出来るようになったというのは大きな転換である。
「すっかり遅れちゃった……ん、何か揉めてるのかしら」
食堂に着いた2人を待っていたのは、なにやら揉める2人とそれを取り囲む群衆だった。
どうやら金髪の方が黒髪の方につっかかっているようだが……。
「あ、朝のあの子ね……シエスタ」
「金髪の方は?」
「ギーシュ・ド・グラモン。なにかにつけて気障な奴よ」
『殴られたね』
「あっちの金髪は」
「モンモランシー。ギーシュと付き合ってたのね……」
『さっきのメイドが絡まれてる……なんて典型的な』
「あ、ルイズに聞仲じゃないの。遅かったわね」
「なによあれ。痴話喧嘩?」
「まあそうなんだけど。今日はなかなか面白いわよ」
「面白い?」
「実はね……」
すっきりまとめるのなら、ここまでの顛末はこうまとめられる。
自業自得で擦り付け。
ギーシュの性格を知るものならばこれだけでどうなったのかは解るというものである。
キュルケの説明を聞く聞仲と、同じく説明を聞いているルイズ。
二人が説明を聞き終わったのと、ギーシュが杖を振り上げるのと、足を踏み出したのは全く同じタイミングだった。
「君のせいで二人の女性の名誉に傷が付いたんだ! どう責任をとってくれるのかね!?」
「そ、それは……」
しえーーん
「平民の身分で、僕らメイジに対してその態度……まったく、これだから平民というやつは」
「……」
「さあここで謝罪したまえ、床に頭でも擦りつけて、必死に許しを請うが良い!!」
「……ん」
「なんだって?すみませんと言ったのかな?」
「できません」
「何だと? 君は……自分が何を言っているのかわかっているのか!?」
「私は……ただ瓶を拾っただけです!」
「それが問題だと言っているだろう!!」
周りはなかなかに良い盛り上がりを見せている。
ギーシュの味方をするわけではないが、メイジの身分として平民が反抗するのを見るのは面白いのだ。
彼女の言っていることも至極まっとうな事であり、ギーシュが激昂するのもこれもまた解らないことでもない。
つまり、どちらを見ていても面白いというのが観衆の心情だった。
故に、ギーシュが杖を振り上げたのを見て止めようと思う者は少なく、居たとしてもそういう者が輪に加わっている訳がない。
例外は輪を断ち切って中に入った二人。
彼等に怒りを覚えた二人。
ルイズと聞仲である。
「そこまでよ」
「そこまでだ」
ルイズはギーシュとシエスタの間に割って入った。
聞仲はギーシュの杖を取り上げ、腕を押さえつけた。
「その辺にしておきなさい。これ以上は」
「離せっ…何をするんだ!! 僕はただこの平民を教育してやろうと……」
「……教育だと?」
「何が教育よ。逆らえないメイドを槍玉にして、自分の過失は棚上げってわけ?」
「ぐっ…………ああ、そうか。この平民に親近感でも湧いたか?ヴァリエール」
「―――」
「ははっ、魔法を使えない者同士、仲の良いことだな」
「―――」
それにしてもこのギーシュ、ノリノリである。
それゆえに『言ってはならない台詞』というものの存在を忘れていた。
主人の気配の変化を感じ取り
「なるほど」
聞仲は呟いた。
「貴族と言うからあの馬鹿のようなものだと考えていたが……」
そして、杖をそのままギーシュに向ける。
「貴様等は貴族などではない」
その目はギーシュと、取り囲む生徒達を見据えていた。
視線でドラゴンすら殺しそうな威圧感に、動ける人間など居はしなかった。
ただギーシュだけは条件反射的に言葉を発する。
「なっ……何を言うんだ、僕は由緒正しき……」
「貴族というのが何の為にあるか解っていないようだな」
「王には王の、貴人には貴人の、民には民の責務がある。貴様等はそれすらも理解せず、下を貪るか?」
「つつつつつ、杖を向けるということがどういう事か解っているのか!!? それはすなわち」
「決闘なのだろう?」
「わわわわわ解ってて向けるとは良い度胸だ、決闘だ!!! 決闘しようじゃないか!!!!」
「承知した」
◆
シエスタは、あまりの事に頭が付いていかなかった。
配膳の時に見つけた瓶、それがまさかこんな事になるなんて誰が予想しただろうか。
普通のメイドだったらここで平謝りし、学生達に笑われ、惨めになりながらもどうすることもできなかったかもしれない。
しかし、シエスタはそこまでするほど自我が弱くはなかった。
自分がしたことが正しいと信じるのに、何故頭を下げなくてはいけないのか―――。
もちろん貴族に逆らうなんて初めてのことである。
しかし彼女にはわかっていた。
ここで曲げたら、おそらくこの先真っ直ぐ生きる事はできないのだと。
とはいえ、魔法の力を知らないわけではない。
ギーシュが杖を掲げた時、シエスタも思わず目を閉じてしまった。
「……?」
上から振り下ろされるはずの衝撃はやってこなかった。
瞼を上げれば、目の前に居たのは自分よりも小さい、鮮やかな桃色の髪をした少女。
「そこまでよ」
見れば、ギーシュの方もその使い魔――聞仲が腕を押さえつけている。
何故? この人達とは何の……ほんの少しの接点しかない。
何故?と聞こうにもルイズはギーシュを真っ向から睨み、こちらを振り向こうとしない。
シエスタはただ、自分の中で答を探す他なかった。
◆
ルイズは、正直ここに立っているのが何故か解っていなかった。
衝動的に体が動いたのは間違いない。
その衝動がどこからくるものか、それが自分でも解っていない。
―――女の子が、目の前で攻撃されようとしていたからだろうか。
もっと単純な話だ。
―――ギーシュの言うように、自分を彼女に重ねていたからだろうか。
違う、そうじゃない。
―――気にくわないからだ。
おそらくはそういう単純なものだ。
ギーシュも、周りも、貴族という貴族全てが気にくわなかった。
女の子が責められているというのに、誰も止めようとしなかった。
振り上げられた杖を、止めようとする者はいなかった。
これだけ大勢がいる中で、誰も。
そして、その中で唯一芯を通そうとしているシエスタに、杖が向けられようとしている。
誰も止められないなら、誰も止めないなら、自分がやるしかない。
そう考えて足を踏み出し―――結局、こうなっているのだ。
怒った時には癇癪のように爆発を起こす、失敗魔法のゼロのルイズ。
ギーシュの言葉を受けた時、瞬間的に頭に血が上った。
が、魔法を放たなかったのは、使い魔の気が一気に膨れあがったからである。
結局使い魔とのリンクによるものか、皆がそれを感じ取っていたかはわからない。
しかし、聞仲との接し方に一つの道が見えてきた。
その聞仲は今、広場でギーシュと対峙している。
◆
ギーシュはもはや錯乱状態だったと言っていい。
彼をここまで支えていたのは貴族としてのプライドだった。
それを聞仲に否定されたものだから、そこはいかに絶望の口に足を突っ込もうが対抗しなければいけない―――
というよりもむしろその場のノリとテンションで話を推し進めてしまったことに、今更絶望しているのである。
彼を見て勇ましい、と思う人間はいなかった。彼の足は震え、その場から逃げ出したそうにしていたからだ。
彼を見て無謀だ、と思う人間しかいなかった。彼の目は明らかにいってしまっていたからだ。
「ま、まあ、僕は貴族で君は得体の知れない平民だ。せめてこの剣くらいは使わせてあげようじゃないか」
ギーシュは自分が作った剣を聞仲の前に刺さるように放り投げた。
特に何の装飾も無い、刃がきっちりついている以外はただの青銅の塊である。
「僕は『青銅』のギーシュ。僕はこれを使って攻撃させてもらうよ」
薔薇から生まれる4体のゴーレム。
彼はこのゴーレムに『ワルキューレ』という名を付けていた。
「……」
「こちらからいかせてもらおう!」
4体のワルキューレが一斉に聞仲に向かって動き出し、各々の武器を振り上げた。
そして、武器を取り落とした。それぞれが持つ武器を、腕ごと。
「……へ?」
ギーシュはきっと幻覚でも見ているのだろうと思った。
あの平民の持っている武器はどう考えても自分の作った青銅の剣だけである。
自分自身の操るワルキューレももちろん、青銅で出来ている。
そのワルキューレが、ただの一撃で破られてしまったのだ。
目の前で起きていることは、まさに幻覚か、夢としか思えなかった。
もはや笑い出しそうな勢いである。
◆
「……」
『聞仲。過度な干渉は―――』
「主の前に臣下が動かなくては」
『……まあ、しかたないか。今は魔法とやらのデータ取りをしよう』
「宝貝は使わん。残念だったな」
『あまり本気を出さないように ……だってさ。 by通天』
「決闘なのだから本気は出す。力を抑えるだけだ」
事前に通信した時に通天教主から止められたのは、聞仲が全力を出すような事態だ。
もっともこの学院の生徒でそれほどまでに力を出さなければならない相手は当然居らず、そのような事にも当然ならない。
が、決闘だと言われたからには本気を持って叩きのめさなければ相手は何も学ばないだろう。
この学院の生徒は、魔法を学んでいる。
その代わり、剣術のような武術を学ぶ教科は存在しない。
ルイズと資料から得た知識によれば、生徒と同じような歳で兵士となっている者も居るらしいが、やはりここは『魔法学院』である。
魔法の習得に重きを置いているのだが―――どちらにしろ、ここはひどく甘い。
このまま数年やっていったとしても、伸びが遅れてしまうだろう。
プライドが既に存在しているのなら、あとはそれを刺激してやればよい。
支援
しえんしてやんよ
支援せざるを得ない
藤崎マンファのもんちゅうは素敵だなぁ。
見た目若いし、強いし
私怨の屍骸がある
「来ないのか?」
「っ……」
「まだ四体倒れただけだ。やめるのか」
ギーシュは杖を振り、さらに三体のワルキューレを錬金した。
ここでまた聞仲に情報を与えてしまっているのだが。
『一度錬金したものを錬金し直す事はできないみたいだねー』
「なによ、わかるの?」
ルイズは珠――太乙の言葉を聞いて少し驚いたように言った。
『いや、折角聞仲の近くに青銅があるなら、それを錬金すれば不意打ちできるやも』
「ある程度近くないと駄目なんでしょうけどね。ギーシュも一度やられたのは使えないって思ってるのかも」
『作成と操作にどう力が配分されてるかは解らないけど……どうも概念的な話になるなあ』
「概念的?」
『使う人がそう思わないと、駄目ってことさルイズちゃん。例えるなら、ギーシュ君はあれを操り人形のように思っている』
「操り人形……」
『糸が切られたら終わっちゃうって事だよ。そう思っているから、そうなるんだ』
今度はワルキューレを三方向に分けて一撃でやられないように陣形を組んでいる。
三方向から同時に突っ込んでやってしまおう―――という考えだが。
「あ、また一体やられた」
『聞仲はもともと武術に長けた将軍だったからね。今も力を抑えてる筈だよ』
「ギーシュもそろそろ限界かしら。息が上がってる」
『魔法のデータは色々採取してみないとね。今度は他の系統の魔法も見せてくれないかな』
傍観者はあくまで暢気だった。
少し離れたところで見ているキュルケとタバサも、同じく暢気に観戦していた。
「……」
「あーあ、結局聞仲の勝ち? 賭けにならなかったわね」
「強い」
「凄いわよね、杖も魔法も無しであれだけ強いんだもの」
タバサはただその姿を見つめていた。
彼がまだ本領を、実力の欠片すら発揮していない事を、肌で感じ取りながら。
◆
「終わりだな」
「……」
がっくりと膝をついたギーシュは、消えそうな声で「僕の負けだ」と呟いた。
プライドという大きな柱はバキバキに折られ、業者に回収されてしまっている。
廃人化しかけたギーシュに喝を入れるように気迫のこもった声で、聞仲は用件のみを述べた。
「では、我が主人ルイズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、及び学院付きメイド シエスタ、
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ、ケティ・ド・ラ・ロッタ
この四名に謝罪を行う事。また、毎週イングの曜日、午後にはここに来る事。以上!」
聞仲はそれだけ言うと通信珠を呼び、ルイズの方へ向かって歩いていってしまった。
鮮やかな勝ち方に歓声を上げようとしていた生徒達を放置し、そのまま主人と棟へと戻っていった。
それから、取り巻きはなんとも言えない空気で戻り始めた。
誰も何も言えなかった。なにしろ食堂で「貴族ではない」とまで言われてしまったため、ここで浮かれるのもなんだか気まずい。
最後に残ったのは、立ち上がったまま動かないギーシュと、陰から見ていた女生徒が一人。
金髪巻き毛の小柄な美人、モンモランシーである。
彼は動かないギーシュを心配して、人が去るまで待っていたのである。
なんだかんだ言っても、彼女も決闘を見ていたうちの一人であった。
彼女を視界に捉え、そちらに向かってギーシュは歩き出す。
「モンモランシー……僕、決めたよ。都合の良い話だけど、聞いてくれるかい?」
「な、何?」
「もう君しか見ない。今までの事は悪かった。これからケティにもちゃんと話してくる」
「……」
「始祖に誓うよ。 君を……」
「ギーシュ……」
「一番に愛する」
渾身の力を込めて頭を殴られたギーシュは丸二日、医務室で唸り続けることとなる。
意識が途絶える前に思ったのは顔を真っ赤に染めたモンモランシーも可愛いな……と。
「私だけって言えないの!? この馬鹿ギーシュ!!」
馬鹿につける薬はない。
同様に、馬鹿ップルに処方する薬もない。
以後この二人は学院内一の馬鹿ップルとして知れ渡り、なおかつ本人達にその自覚が無かったりするのであるが。
それはまた番外の話となるので、ここでは主人公の結末を記す。
◆
「……結局、ギーシュの馬鹿ッぷりは変わってなかったわね」
「かもな」
先程、眠りから覚めたギーシュが両方の頬に手形を付けやってきたのだ。
右の頬は、起きた時にモンモランシーに「心配したんだから!」と殴られたらしい。
左の頬は、「ギーシュ様の事は忘れます。でも、最後に思い出を下さい」と言ったケティが思い切り張り倒したらしい。
シエスタに関しては暴力的な事は無く、こちらこそすみませんでしたと謝られたようだ。
さらにその後、もう少し女性の気持ちを察するように、と念を押されたとか。
そんなこんなでギーシュはルイズにもきっちりと謝罪をいれ、その後聞仲にみっちり説教された。
もちろん敬語で。内容は押しつけるようなものでなく諭すような形なのだが、やはり恐いものは恐い。
精神的に今までの非行を突くような説教で、ギーシュの残り精神力がみるみる削られていってしまったのだ。
ルイズが止めなかったらおそらく夜まで続いていただろう。
その後にシエスタもやってきて、ひとしきり礼を言った後に仕事があると思い出して急いで駆けていった。
ルイズも聞仲の食事を頼む、と頼んで自分も食堂に向かった。
特に変わりのない食事の後、ルイズは聞仲と共に図書室へと向かう。
本当の貴族がそもそもどういうものか、ルイズはまだ形にできない。
もともと明確な形に出来るようなものではなく、自ら体現するしかないのだと、聞仲は言っていた。
こだわり過ぎてもどうしようもない、と付け加えながら。
ルイズはとりあえず自分に出来る事をしようと思い、聞仲の書いた文章を写し直す作業にかかった。
◆
そして数刻前。
「結局勝ってしまいましたねえ」
「ふむ……能力は使わず終いか」
「あの……」
「せっかくのチャンスだったのですけどね」
「やはり、本人を呼ぶしかない……か。仕方ないの」
「あのー……」
「ミスタ・コルベール。彼が伝説である事は、誰にも秘密じゃぞ」
「わかりました。彼がヴィンダールヴだなんて言わないですよ絶対」
「オールド・オスマン! 聞いてるんですか!? 仕事をしろって言ってるんですよコッチは!」
「な、なんじゃ居たのかミス・ロングビル」
「ずっと居ましたよ! いい加減にしないと蹴るよ狒々爺!」
暢気な大人達は、まだまだ平和に過ごしていた。
464 名前:ゼロ大師[sage] 投稿日:2009/07/28(火) 21:42:02 ID:jclX1A3Y
やってしまった……またタブ間違えてしまった
すいませんでしたー
696 名前:ゼロ大師[sage] 投稿日:2009/07/28(火) 21:44:55 ID:jclX1A3Y
規制くらいまして、代理をお願いしたいです。
先程間違えて「あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part235 in避難所」の方に投下してしまいました。
こちらに投下した方が良いのなら投下し直しますし、向こうのを代理で上げていただけるなら手間も無く済みます。
よろしくお願いします。
以上で終了
聞仲の人乙です。
ギーシュww
まぁ聞仲が全力で宝貝使ったら学園消し飛ぶからねw
あれ?まとめにゼロ大師さんまで登録されてるのに萌え萌えさん登録されてない?
やり方わかんないからオレにはできないけど。
その作品をまとめようと思ってる人が投下後に来なければそのまま放置だよ。
作者本人がまとめてるか、人気あって多数の人でまとめてるなら更新が早くなりやすいけど
まあ一週間ぐらいの間に大抵はまとめられる。
逆に人気があってもその中にまとめてる人がいなければそのままログに埋もれるよ。
現に何作か放置されてる。
自分は機を見てちょくちょく未読のもまとめてるけど、短いのを連投のとか、肌に合わない奴とか
、タイトル未定のとかは他人任せにしてる。
>>216 ならばこれを機にやり方を覚えるんだ!!
自力で登録している俺みたいな作者って少数派なのかw
^^;
>>219 どうなのかな?幸い俺は今まで書いた二本ともやってくれる人が居たけど。
>>219 どのみち誰かが登録することになるんだし
その手間を省くと考えれば アリだと思う
まとめてくれる人がいなくてやり方覚えた俺がきましたよ
登録する時に行間の空きかたがスレ投下時とガラリと変わってしまって、
「作者さんが自分で登録すればこういう箇所を訂正できるんだろなぁ」
と思うことはまれにある。
誰かが登録してくれると、まだ待ってくれてる人がいるんだ。と心の支えになります。
>>226 そうだよね。心の支えになるよね。
でも俺、別のところで誰もまとめてくれなくて泣きそうになったけどね。
レスが変わる時に合わせて場面も変わる時があるんだけど、wiki登録時にそこで行間が空いてなくて混乱することはあるかな。
ちょっと小ネタだけど投下していいだろうか?
>>228 そういう時は、作者自身がwiki編集して修正するのがいいと思う。実際、俺はそうしてるし。
しかし、リアルではペットが死んだり親父が危篤になったり、ぶっちゃけ執筆してる状況じゃない……
二ヶ月近く止まってるんで、早いところ再開したいとは思うけど。
そんな重いことここでぶっちゃけられてもなんだ、その……困る
そうか書き手の支えになるのか
ちょっと纏め方学んでくるわノシ
>>233 了解
それでは
0時15分に投下します
元ネタ隠しじゃない場合は事前に宣言する、のだったかな?
なんか最近曖昧な気もするけど
春の使い魔召喚の儀式の日、ルイズは一人の「楽士」のような男を召喚した。
その男の容姿は、貴族の使い魔としてはあまりにも相応しくないものだった。
ボサボサの髪に無精髭、土と埃にまみれた見たことのない服と帽子と色眼鏡の奇妙な身なり。
背中には楽器と思しきものを背負っており(その楽器が「ギター」という名前である事は後に知る事になる)、それが無ければ道端で生活する物乞い、あるいはそれ以下にしか見えないような男だった。
そんな男を召喚してしまい、陰鬱な気分になっていたルイズであったが、なんとか思考回路をプラス方向に作動させ「見た目に反して…」という僅かな望みをかけたみたものの、
その見た目どおり、楽士の性格はかなり変わっていた。
一緒に召喚された「すくーたー」と言う鉄で出来た馬に乗ってふらりと何処かへ行き、何日も帰って来ないと思いきや、いつの間にかふらりと戻ってくる。
名前を聞いても、のらりくらりとはぐらかし、話をうやむやにする。仕方が無いのでルイズは楽士を「アンタ」と呼ぶ事にした。
身なりが汚くとも楽士は楽士なので一曲演奏するように命じてみたが、その歌はハッキリ言って「最悪」だった。
「かれー」だの「ころっけ」だの、聞いたことの無い単語ばかりが飛び交うちぐはぐな歌詞、
楽器の音色とはてんで調子の合わない歌声、その歌は「歌」とも呼べないような代物であった。
それだけならまだ我慢できるが、その楽士は所構わず歌を弾き語るのだ。
食事中の食堂、自室、爆発で煤だらけになった教室。楽士は歌うことを止めなかった。
しかし、その歌は人々の心に何かを与えていた。最悪だと思っていた歌詞も、楽士が何処かへ行き、その歌を何日も聴かずに生活しているとふと頭の中で歌が流れ始める。
楽士の歌は場所を選ばなかった。
ルイズは知らない。
その歌がかつて、楽士のいた世界で絶望に打ちひしがれた何万人もの人間に希望を与えた「名曲」であることを。
そんな楽士がある事件に巻き込まれた。
メイドが香水を拾ったことにより二股がバレたギーシュがメイドに八つ当たりをしていた所に、
楽士が割って入った事により決闘に発展してしまったのだ。
ギーシュに言われるがままにヴェストリの広場について行く楽士。
決闘開始と同時にギーシュはワルキューレを作り出し、力の差を見せつけようとする。しかしその目論みは脆くも崩れ去った。
何を思ったか楽士は背負った楽器を取り出し、歌を歌い始める。例によってあの歌だ。
決闘という場面で歌を歌うという楽士の行動に、さっきまで狂ったように盛り上がっていたギャラリーは一気に静まり返る。
楽士の行動ではなく、楽士から発せられる得体の知れない強い気迫がギャラリーを静めたのだ。
ギャラリーは知らない。
その楽士がかつて、自分を取り囲み、銃を突きつけた警備隊を歌と楽器のみで捻じ伏せた「伝説の男」であることを。
そんな事はお構いなしに楽士は歌い続ける。
自分が決闘を行っているという事を忘れたかのように。
次第に歌が終わりに近づくにつれ、ギーシュの顔色が悪くなる。
楽士の気迫に飲まれてしまったギーシュは何かを振り払うかのように奇声じみた声を張り上げながら一体のワルキューレに指示を出す。
正直、ギーシュは楽士に攻撃しようなどとは微塵にも思っていなかった。
気迫に押されて固まった状態をなんとか打開するために何かしらのアクションを起こしただけに過ぎなかった。
そして、ワルキューレはそのまま楽士の方へ突っ込み、楽士を一発殴ったのだった。
ヴェストリの広場は静寂に包まれていた。
貴族と召喚で呼び出された一人の楽士の決闘。
ギーシュは、ギャラリーは、そして楽士を召喚したルイズは、その事態を未だに飲み込めずにいた。
ギーシュが作り出したワルキューレが放った一発のパンチ、それを受け地面に突っ伏する楽士。
そこは大した問題ではない。問題は殴られる寸前まで楽士が行っていた行動である。
ようやく事態を理解したルイズは使い魔である楽士に駆け寄る。
「ちょっと!アンタ大丈夫!?」
「…………………」
打ち所が悪かったのだろうか、楽士は呼びかけに答えない、と思った途端に楽士の口から小さな声が聞こえる。
「…って…言え…」
「は?」
「…立つんだジョー。…って言え…」
ジョー。それが楽士の名前なのだろうか。意味は分からないが言われるがままにルイズは
「立つんだ…ジョー…?」
呟くように楽士の言葉を反芻する。
その言葉を聞いた直後に楽士は立ち上がり
「どいてな、段平おっつぁん」
一言だけ言い放ち、ルイズを押しやりギーシュの方へ向かう。
支援
「ちょ…ちょっと!何するつもりよ!アンタ!」
女なのにおっつぁん呼ばわりされ、あまり気分の良くないルイズではあったが、楽士を心配して声をかける。
その呼びかけを無視して楽士は動けないギーシュのもとまでゆっくりと歩いて行き、目の前で止まり口を開く。
「俺は…」
「ひぃっ……!」
思わずギーシュは声を上げる。
「俺は…歌を歌ってるんだ」
ゆっくりと、力強い声で楽士は言葉を続ける。
「歌を歌ってる人間を…殴るな」
たった一言。楽士が放ったその一言にギーシュは戦意を喪失し、バラの造花を落とす。
「あ、ああ………」
そのままへたり込むギーシュの脇をすり抜け、楽士はヴェストリの広場を後にする。
決闘の最中に歌を歌う楽士、貴族の敗北などあり得ない事態で動けないギャラリーを放っておき、ルイズは楽士の後を追う。
「ま、待ちなさい!アンタ、さっき何を…ってかアンタの名前って何よ!?いい加減教えなさいよ!!」
「俺かい?俺の名前は…」
楽士はニッと唇を上げて笑う。
誰も知らない。
その楽士が、かつていた世界で、悪魔のテロリストと蔑まれ、仲間と散り散りになり、記憶を失くしてなお、世界を救った「正義の味方」であることを。
「矢吹丈だ」
20世紀少年から遠藤ケンヂ(矢吹丈)を召喚
以上、20世紀少年よりケンヂでした。
元ネタ隠しのつもりではなかったんですが
オチ的に最後まで名前を出さないでおきませんでした。
乙ー
原作を全く読んだことないのに何故か途中で「あ20世紀少年か」と思った不思議
まあタイトルがそのまんまだからねw
century=世紀
でバレバレですね
ふと思ったんだけど、テンポよく話を進めようとした場合
やっぱり、ある程度テンションが平均以上のキャラとのクロスでないと間が持たないかしら
そんなもの作者しだいなのだわ
公式ならOKってことだけど、
涼宮ハルヒちゃんの憂鬱とか起動戦士ガンダムさんみたいな作品からの召喚ってどうなんだろう?
どっちにしろカオスな展開しか望めなさそうなチョイスだな
公式というか商業展開してるかどうかが線引きじゃなかった?
>>246はスピンオフみたいなものだしたぶん大丈夫
そもそもなのはとかスピンオフだしな
プリズマイリヤ――は型月行きか
プリティーサミーは今まで出たっけ?
ハリポタからの召喚ってやっぱ難しいかな?
呪文も短いしバリエーションも一杯あるし。
紙袋の使い魔の続きまだー?
>>250 呪文が短くてバリエーションが一杯あると難しいの?
>>249 サミー召喚は俺の知る限りではない。
だがな、貴様は間違えた。
プリティーサミーじゃない。
そんなものがあるはずがない。
プリティサミーだ!
>>253 ちょうどやっていたゲームで名前だけそのパロディ使ってるの見たばっかでちょっと吹いたww
>>252 ハリポタ魔法ってめっちゃ便利だよ。一言唱えるだけで相手を殺せるし。
ただ、呪文が短いファンタジーのオーフェンとのクロスもあるし、
致命的じゃないと思う。
TRPG系の魔法に比べればゼロ魔魔法も便利でヴァリエーション多いし。
ハリー・ポッターって贔屓されてるよね
ハゲ・ボッチのコルベールは冷遇されてるけどね
一言唱えて相手が死ぬってのは強いかも知れないが、別に便利じゃないだろ
前スレにあったシンプソンズのやつは登録されて無いのかな
初見 → この劣化ハーマイオニーがあっ!
現在 → ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁあああああ(ry
>>259 登録されてる
>>253 そのこだわりに感動した1
ミスティーハニーじゃなくてミスティハニーって事だよなw
ハリーポッターねぇ・・・・・・
デモンズソウルクロスってあったらもう笑うしかねぇ
オストラヴァ召喚ですね分かります
むしろオッツダルヴァを召喚。
ベルセルクからパックとイバレラの能天気エルフコンビ召喚。
か弱いし小さいからガンダは無理だしヴィンダあたりになればなかなかに面白い事になりそう。
ガンダにしてざっくり丸無双でも面白いけどw
そして回復手段奪われたガッツたちは……。
デモンズソウルってネトゲだっけ?
空談師みたいにネトゲの仮想世界にドップリ浸ってる登場人物がゼロ魔の世界に召喚されて
「あれ?別のネトゲに繋がったのか?ロ、ログアウト出来ない!!」なんて戸惑うのもアリかも。
それなんて.hack
ネトゲの有名プレイヤーとのクロスはあり?
the worldってネトゲにハセヲって有名なPKKがいてさあ
でかすぎて飲み込めねぇぜ
鯨でも釣る気か?
なつやすみ、なつやすみー
源義経召喚
アルフのいう「悪魔」とは平清盛と封印されし「霊都」
「七つ道具」持ってるからやっぱガンダールヴなんだろうな
しかしルーンは「霊帯剣」を武器として認識してくれるのだろうか
>>268 死の恐怖ですねわかります
既に召喚されてるけど止まってるんだよな・・・
>>268 モルガナ因子無双かよ……
第四の使い魔はカイトだな(4コマ的な意味で)
>>273 源平伝NEO?
所さんがどうしたって?
277 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 14:45:49 ID:9f/x+lWJ
>>ハーマイオニーと言えば。
綾崎ハヤテ女装バージョン(ヒナ人形の呪い付)で召喚。
女装しているとバレないために咄嗟に「綾崎ハーマイオニー」と名乗ってしまい、のろいが解けても女装したままで過すw とか。
よって学院には、メイドの“ハーマイオニー”となぞの人物“綾崎ハヤテ”の二人が出没する事に^^
神通棍とか魔剣Xの魔剣とかただの鉄球とかダイナマイトな刑事の御用達のコショウとか冷凍オオマグロとか
武器と認識してルーンは力を貸してくれるのか
メタルウルフカオスの大統領召喚。
ただでさえ無双だったのがハルケに来てから更に無双になるwwww
というか1対150万を(戦闘毎の整備ありでも)勝ったこの人に勝てる奴がいるのかと。
え? 七万? エルフ?
そんなの余裕で大統領魂で吹き飛ばせるね。
オウケェイ レッツパリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!
私は使い魔のルーンに縛られない! なぜなら第47代アメリカ合衆国大統領だからだ!
あの人一人でハルゲニア民主化しちゃいそうだぞ……
>268
MMO『ダブルクロス』のシェフィールドさんですか?カガリさんですか?ああ、モルガンさんですね。
【ブラストハンドだった】
自由の国ハルケギニア合衆国
15:10頃からGP−15投下しますが、よろしいですか?
「炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! GP−15」
次回予告
「ガンパードだ。レコン・キスタに包囲されたニューカッスル城。奇跡は起きるか」
「皇太子といっても、1人ではないのでしょう?」
「GP−15 最高ノキセキ
――GO ON!!」
「一時停止」
「一時停止、アイ・サー」
ウェールズの命令を掌帆手が復唱した。
ルイズ達一行は、ニューカッスルの王党派以外知らない秘密港へ向かう事になった。
軍艦・イーグル号は、敵に気付かれぬよう大陸の下に潜り込む航路を進む。
雲の中を進んで大陸の下に出ると周囲は真っ暗になった。大陸の影に入ったのだ。
しかしそこはアルビオン海軍、地形図を頼りに測量と魔法の照明のみでの航行は造作も無い事だ。座礁する事無く目的地に到着した。
そこはおそらくニューカッスル城港直下と思しき、黒々と開いた穴の下だった。
ウェールズの命令でイーグル号は裏帆を打つと闇の中て帆がたたまれ、性格に穴の真下で停船した。
「微速上昇」
「微速上昇、アイ・サー」
再度の命令で今度は穴に向かって上昇し、ルイズ達が最初に乗っていたマリー=セレスト号が後方に続く。
「殿下、まるで空賊ですな」
「子爵、空賊なのだよ我々は」
その手際に感心したかのように頷くワルドに、ウェールズは笑って答えた。
――GP−15 最高ノキセキ――
タラップを降りて約1日ぶりに地面の感触を得る。
「これはまたたいした戦果ですな、殿下」
そこに接近してきた青年を過ぎただろうかという年のメイジが、ウェールズの労をねぎらう。彼の言う戦果とは、イーグル号後方にあるマリー=セレスト号の事だ。
「喜べパリー、硫黄だ!」
「硫黄ですと。火の秘薬ではありませんか。これで我々の名誉も守られるというものです」
メイジ・パリーとウェールズが話し合っている。彼らは負け戦を承知で戦うつもりのようだ。
その様子を横目にルイズはケガレシアに話しかける。
「負ける事がわかっているのに戦うの?」
「……そのようでおじゃるな」
「死ぬ……のよね?」
「おそらくは」
「どうして……?」
ケガレシアが口を開こうとした時、タイミングよくパリーが2人に話しかけてきた。
「これは大使殿。殿下の侍従を仰せつかっているパリーです。ようこそアルビオン王国へ。たいしたもてなしはできませんが、今夜はささやかな宴が催されますので是非ご出席ください」
ルイズ・ケガレシアは、ウェールズに付き従い城内の彼の居室に向かった。
城の最上階にあるウェールズの居室は、王子の部屋とは思えない質素な部屋だった。
ウェールズは椅子に腰掛けて、机の引き出しから宝石が散りばめられた小箱を取り出した。首からネックレスを外すとその先に付いていた鍵で小箱を開ける。
蓋の裏側にはアンリエッタの肖像画が描かれていた。
「宝箱でね」
小箱の中身は1通のボロボロになった手紙。数百回読まれてきただろう手紙を取り出してもう1度だけ読むと、手紙を丁寧にたたみ封筒に入れてルイズに手渡した。
「これが姫からいただいた手紙だ。この通り確かに返却した」
「ありがとうございます」
「明朝、非戦闘員を乗せたイーグル号がここを出発する。それに乗ってトリステインに帰りなさい」
その手紙を見つめていたルイズが、やがて決意の表情で口を開く。
「殿下、王党派軍に勝ち目は無いのでしょうか」
「我が軍は300、敵軍は5万。勝つ可能性など奇跡が起きてもありはしないさ。我々に可能な事は勇敢な死に様を連中に見せつけるだけの事だ」
「殿下の討ち死にされる様もその中には含まれるのですか」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
顔をしかめるケガレシアを視線で制しつつ、ルイズはウェールズに深々と頭を下げて続ける。
「殿下……、失礼をお許し下さい。 恐れながら申し上げたい事がございます」
「何なりと申してみよ」
「……この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫様のご様子……、そして先程の小箱の内蓋の姫様の肖像手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔……。もしや姫様とウェールズ皇太子殿下は……」
「恋仲であった、そう言いたいのかね?」
「そう想像致しました。ご無礼をお許しください。してみるとこの手紙の内容とやらは……」
「恋文だよ、君が想像している通りにね。彼女が始祖ブリミルの名において永久の愛を私に誓っている物だ。この手紙が白日の下に晒されれば、ゲルマニアの皇帝は重婚の罪を犯した姫との結婚を破棄し同盟は成立しなくなり、1国で貴族派に立ち向かわなくてはならなくなる」
「殿下……」
「亡命を進めるのならそれはできない。……そろそろパーティーの時間だ。君達は我らの王国が迎える最後の客、是非とも出席してほしい」
「……殿下、先程『奇跡でも起きなければ勝てない』と仰いましたね?」
「ラ・ヴァリエール嬢、私は君のその想いだけで――」
「皇太子と言っても、1人ではないのでしょう?」
「ラ・ヴァリエール嬢、確かに奇跡でも起きれば何とかなるだろう。だが……、起きないから奇跡と言うのだよ……。だから……」
「違います、殿下。奇跡は起きます。既に最高の奇跡が起きています」
「既に? 最高の奇跡?」
ルイズ・ケガレシアとその後方にいたヨゴシュタイン・キタネイダスが、ウェールズに対し一斉に一礼する。
「私達蛮機族ガイアーク、アルビオン王国の援軍として参戦致します!」
そんな5人の様子を物陰から見つめる人影4つ。
「なるほど、それがルイズ達の狙いだったのね」
「……アルビオン王党派と協力しての貴族派撃破……ルイズの使い魔達なら不可能じゃない……」
「確かにフーケの時に見せたあれを多数使えば出鼻をくじけるな。場合によってはそのまま総崩れになる」
「なるほど、そうすると君達の言っていた事は間違っていないかもしれないな。『あの件』に関しても少し急がないと……」
そう言って人影の1つ・ワルドは、残る3つの正体であるキュルケ・タバサ・ギーシュと出会った時の事を思い返していた。
時間は2日程遡って、キュルケ達が砲撃を受けた直後。
キュルケ達が廃屋の並ぶ区域を抜けようとしたその時、タバサは異常な気配に気付いた。
またも周辺に怪しい連中が陣を展開しているのだ。
「……2人とも……一気に走って……」
だが一瞬早く3人の足元に着弾する銃弾。つんのめって体勢を崩すタバサだが、瞬時にフライを詠唱しててふわりと着地する。
「何者!?」
慌てて全員足を止めて円陣を組む。
ずらりと並ぶ黒い人影。ウガッツの第2陣かチンピラか?
「き、奇襲だ!!」
あっという間に弾幕が3人めがけて殺到した。
だが次の瞬間、突如起こった竜巻が飛来する銃弾を飲み込みあさっての方向に弾き飛ばした。
そして矢が飛んできた屋根の上から、何人もの金属音に似た悲鳴が聞こえてきた。
続いて3人ががいる所とは違う方向に向けて、再度無数の銃弾が放たれる。
しかし銃弾は虚しく空を切り、代わりに多くの悲鳴が突如現れた小型の竜巻と共に上がった。
「おや? あれは風の魔法じゃないか」
とギーシュが呟いた。
自分達を攻撃してきたウガッツ達が、何とも無様に転落してくる。
そして上空に1体のグリフォンが姿を現す。
わけがわからず呆然とグリフォンを見上げていると、その理由とも言える青年がその背中から颯爽と飛び降りた。
ワルドだ。
「あなたは……、ワルド子爵!」
「君は確かグラモン家伯爵家四男の……」
「ギーシュです」
「いったいなぜこんな場所に?」
「実は……」
キュルケはワルドにルイズが以前から警戒していた彼女の使い魔達と共に学園から姿を消した事、彼女達の動向を探り必要とあれば阻止する密命を受けた事を説明した。
「何と……、ルイズの身にそんな事が起こっていたとはね……。よしわかった、君達に協力しよう」
「本当ですか!?」
「ああ、実は私も妃殿下から密命を受けた身でね。表向きは君達にその協力を頼んだ事にしよう。……とりあえず私が手配した宿に向かおう」
そう言って4人が歩き始めた時、
「ワフーッ!」
叫び声と共に、左腕に鋭い刃物を装備した蛮機獣が屋根の上から4人に飛びかかってきた。
「……また来た……」
慌てて戦闘体勢を整える4人だが、キュルケの回避より一瞬早く蛮機獣の左腕の刃物がキュルケを一刀両断にしようとする。
「ブレイド!」
しかしそれより一瞬早く、ワルドが光を帯びた杖で刃物を受け止めた。
「えーい、くどどん波ですう!」
「ライトニング・クラウド!」
次にワルドを標的として蛮機獣が左腕から破壊光線を発射するも、ほぼ同時にワルドが発射した電撃に相殺される。
この機を逃さず、キュルケ・タバサが蛮機獣めがけ得意の魔法を放つ。
「ファイヤーボール!」
「……アイスストーム……」
「わふーっ!?」
2人からの攻撃を受けた蛮機獣は、たまらず上半身を高速回転させて空の彼方に飛び去っていった。
「どうやら事態は急を要するようだ。早くここから離れないといつまた次の追っ手が来るかわからない」
4人は急ぎ大通りに向かって走っていくのだった。
それからしばらく後、どことも知れぬ闇の中。
「2度も仕掛けて成果を上げられないとは……」
背に注射器が描かれた椅子を半回転させて、スーツ姿の男がダッフルコート姿の少女……キュルケ達が追いかけていた食い逃げ少女と、ベレー帽にマント姿の少女……クドラーフカ・ド・チセルに向き直る。
「査定に響くよ? うぐう君にわふう君」
「ご、ごめんなさい……」
「まさか助っ人が現れるなんて思ってなかったです……」
「助っ人が現れたの〜?」
「はい……」
「なぜ対策を怠ったのかね?」
「それは……」
「今回の我々の任務は偉大なる三大臣様とルイズ様の願いを叶えるため。そしてその邪魔になるメイジ達の介入を防ぐ事だよね? これがいかに重要な事か、君達ならわかってると思ったんだけどなあ〜?」
『そ、それはもちろ――』
「君達! 少し休みたまえ」
『え』
――パチン!
スーツ姿の男が指を鳴らすと、少女達の足元の床が開いて2人はまっさかさまに落下していった。
『落ちるの嫌〜!!』
「落ちてしまえ」
290 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 15:31:00 ID:J/8Y4usj
クドww支援
翌朝。
「……ケガレシア」
「ルイズ、よく眠れたでおじゃるか?」
「……あのね、ケガレシア、驚かないでね」
「ルイズ?」
「あ、あたし……、求婚されちゃった……、ワルドに」
「なんと!? そうか、婚約者でおじゃったな」
「それはめでたい話なり」
しかしケガレシアは、めでたい話にもかかわらずルイズの表情が浮かないものである事を見逃さなかった。
「ルイズ?」
「そ、それでね……、結婚式する事になったのだけど……」
「うむ、実にめでたいぞよ、ルイズ! もちろん我々も参加するぞよ」
「ますますもってめでてえな! 日取りはいつだ? 俺も一芸ぐれえ披露しねえとな!」
「そ、それが……」
「今日さ。皇太子が媒酌人を務めてくださるのでね」
ルイズがゆっくり深呼吸して落ち着こうとしたところに、ワルドがやってきた。
「ほう、今日でおじゃるか。おめで……なぬ?」
「何?」
『何いいいいいいい!?』
以上投下終了です。
GJ!
乙です
「落ちるのいやー」
……こ、ここの下りって、確かyes!プリきゅ○…うわなにをするやめろ
ゴーオンジャーに関係する単語を見るたびに
憎めないガイアーク幹部の最期を思い出してしまう
仮面ライダーキバから紅渡を召喚
ルイズに引きずられて外に出たり使い魔として役には立ちそうも無いな
役に立たないかもしれないどルイズとの相性はいいかも。>渡
それなら753を…いつの753かで話が変わるなw
遊び心習得後なら結構いけるかもな>753
最終回だと結婚するからなあ
301 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 17:19:08 ID:PXswsKjR
音也は・・難しいかな?
ディケイド版は敵になりそう。
キバ版はあちこちアプローチをかけそうだが・・
302 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 17:34:00 ID:YcDETpnC
ハクオロが召喚されたらみるみるうちに
農業生産効率を上げて軍備を増強させ国力アップ、天下統一
20数年前に渡と全く同じケースで召喚されたとオスマンから語られそうだな>音也
奴に泣かされた貴族や実業家は数知れずとちょっとした有名人だったり
>>303 しかもケンカもハンパなく強いからな。並のメイジではすぐに伸されたりして
キバ世界の人間はあれでも「魔族」に分類されるから 使い魔でも違和感無いや
車を足で止める753とかファンガイアにボコられてもケロっとしてる麻生親子とか
>>302 召喚済みだ
個々の好みもあろうがここにある作品中一,二を争う素晴らしい作品だと思うので
読んでみるが宜しかろ
亀だが、ゴーオンジャー乙
結婚式で恋のフーガを熱唱するヨゴキタを見た気がした
デルフの芸は見てみたいけど、無理だろうなあ
次回も楽しみにしてます
>>303 そのくせ音楽で美人のハートゲットだしなw
∞4代理投下しますが、よろしいですか?
「雪風とボクとの∞(インフィニティ) ∞4」
『何をやってもパッとしない私……』
『思い切ってコンタクトにしてみれば?』
眼鏡をかけた女性に友人らしい別の女性がそうもちかけた。
『わあ! 世界が明るい!』
その言葉に従い眼鏡を外した女性の周囲には、きらめきの特殊効果がかけられていた。
『本当の自分発見(はぁと) ZEROコンタクトレンズ!』
「おんどりゃー!!」
雄叫びと共に、三成は巨大な遠見の鏡を学院長室の窓から投げ捨てた。
「……ミツナリー……」
「ミスタ・ナグモー!」
突然の暴挙にタバサはおろかロングビルも動揺を隠せない。
「めがねっ娘に命を捧げたこの私の前でよくもこんなCMを……」
「ミスタ・ナグモ〜!」
「……やめてミツナリ……42型デジタルハイビジョンプラズマ遠見の鏡に罪は無い……」
遠見の鏡にさらなる打撃を加えるため窓から飛び降りんとする三成の腰にロングビルがしがみつき、タバサも前方に立ちはだかる。
「コンタクトレンズは、めがねの宿敵なり!! コンタクトも許せないが、そのCMはさらに許せない!! めがねを悪者のように扱うCMは許せん!!」
不細工さんがねがねをとったら美人に変身!
そんな旧世紀の悪しき迷信をいまだ続けるのがコンタクトのCMである。
それはあきらかに時代への逆行である。
めがね会社は逆バージョンのCMを今こそつくるべきである!
眼牙書房「めがねの未来はキミの手に」(平賀才人著)より抜粋
「皆さん! CMに騙されてはいけません! コンタクトを捨てめがねをかけましょーう!!」
「ミスタ・ナグモ〜」
「……ミツナリ〜……」
学院長室の窓から大声で眼下に向かって絶叫する三成に、タバサ・ロングビルは耳を押さえつつ困惑の表情になる。
「タバサ! キミもそう思うだろ!!」
「……う……うん……そう……」
窓からの絶叫と同じ声量での問いかけに、タバサは苦笑しつつも同意する。
「……ミツナリの言う通り……私もコンタクト大嫌い……洗浄とか消毒とか面倒……装用期間とか使用期間とかも面倒……定期的に検診を受けないといけないし……」
かすかに嬉々とした様子を浮かべてコンタクトレンズの短所を次々述べたタバサだったが、そこに含まれる(矛盾)を三成は見逃さなかった。
「やけに詳しくないか、タバサ?」
(矛盾)を指摘した三成の発言にぴくりと反応するタバサ。
「タバサ! まさかキミは……コンタクトを持っているんじゃないだろうな!?」
「……もももも……持ってない……やややや……やだ……ミツナリ……」
必死で否定するタバサだったが、顔といわず掌といわず大量の冷や汗を垂れ流していた。
「汗が尋常じゃないぞ、タバサー!!」
三成はタバサの肩をつかみ真正面からその瞳を見据える。
「タバサ!」
「……ひっ……」
「タバサ、怒らないから正直に言ってごらん」
優しげな表情の三成にタバサはしばらく空中に視線を泳がせていたが、やがて決意の表情で話し始める。
「……実は……昔……1度だけ作った事がある……ごめん……」
それを聞いた三成はタバサの手を引いて廊下を歩き……、
「……?……」
マルトーの私室にある卓袱台の前に2人して座り……、
「……?……」
そうだ!コンタクトレンズこそはこの世の害悪の全ての元凶だ!と眼鏡ッ娘教団員として
主張しておこう
今更ではあるが支援
「おんどりゃー!!」
盛大に卓袱台をひっくり返したのだった。
「我らのめがね〜」
「……はう……怒らないって言ったのに……」
「これが怒らずにいられるかー!!」
怒れる三成の背後に、タバサは激しく噴火する火山の幻影を見たのだった。
「俺の知らぬ間にコンタクトを目に入れていたなんて……。それではキミはまるで……、夫のいない間に男を入れるふしだらな女のようではないかー!!」
「……えええええええ……」
「キミがそんな女だったとは知らなかった!」
涙を拭いつつその場から駆け出そうとする三成の足に、必死にしがみつくタバサ。
「……許して……ミツナリ……ちょっとした好奇心だった……」
「ええい、コンタクトの輝きに目が眩んだかっ! ああ、来年の今月今夜のこの月も僕の涙で曇らせてみせようぞ!!」
「……堪忍しておくんなまし……」
まっ昼間にもかかわらず夜空に浮かんだ2つの月を見上げて三成は涙を流し高々と吼え、タバサは彼にすがりつく。
「さらばだ! コンタクトと幸せに暮らすがいい!」
「……ミツナリ〜……」
その言葉を残して立ち去る三成の背中に、タバサはへたり込んだまま懸命に手を伸ばす。
「……コンタクトと幸せになんかなれない……だって私……コンタクト入れるとすぐ目が痛くなって……コンタクトが合わない体質だから……でもこんな事言ってももう許してくれない……」
「許すに決まってるじゃないかあ!! そおかあ! コンタクトが駄目な体質かあ〜(はあと) 君がそんな素敵な体質だったなんて……。惚れ直したよ、タバサ」
「……やだ……ミツナリったら……」
いつの間に戻ってきたのか三成は屈み込んでタバサに爽やかな笑顔を向け、タバサは頬を染めて顔を背ける。
「それじゃ帰ろうか」
「……うん……」
『………』
手を繋いで鼻歌混じりに帰路につく2人を、その場にいたマルトー達は呆然と見送っていた。
(……いろいろあったけど……より深くミツナリとわかり合えた気がする……)
「……そんなデートだった……」
その夜、昼間の顛末を嬉々とした様子でルイズに話したタバサだったが、当然ルイズの反応は……、
「それデートじゃないわよ!!」
以上投下終了です。
wikiには作者さんが登録しておくとの事です。
どこの金色夜叉だw
脳内でタバサがコンタクト大将軍に自動変換された
メガネっ子萌えの人乙です。
駄目だこのバカップル早く何とかしないと。(訳:超GJ!)
『眼鏡を外せば美人になるなんて、論理的に考えてありえない。
そんな事を言う輩が増えているのは
人類の知性の退化の証明である』
アイザック・アシモフ(1920〜1992) 『無学礼賛』より。
GJです。
すぐ上で 雪風さんが投下されてますが、雪風つながりで投下させていただきます。
今回は フーケ戦です。
5分後より開始します。
Misson 04「不可知決闘域」(後編)
ルイズとギーシュの『決闘』は、関係者によって秘密にされた…ハズだった。
駄菓子菓子、秘密は必ず漏れるもの。と言うより ダダ漏れだった。
「フーム やるもんじゃのう、ウチの女生徒達は。
それに比べて、グラモンの馬鹿息子は…」
トリステイン魔法学院 院長室。
マジックアイテム『遠見の鏡』で、決闘の一部始終を見ていたのは、学院長オールド・オスマンと教師のコルベール、学院長秘書 ミス・ロングヒルの三人。
雪風の管理をしているコルベールが ルイズ達の不穏な動きに気づいて学院長に報告、監視をしていたところ、たまたま残業していたロングヒルも面白がって加わってきた。
「よろしいのですか 学院長。
貴族同士の決闘、それも女生徒の側からの申し込みなぞ、前代未聞と思われますが?」
「かまわんじゃろ。誰が怪我した訳でも無し。
同級生の恋仲を修復してやろうなどと、実に微笑ましいと思わんかね、ミス・ロングヒル?」
「そう言ってしまうには、ちょっと と言うか、かなり打算的だったみたいですけど…
まぁ イマドキの娘は あんなものかもしれませんね。」(うちのティファは ああなって欲しくは無いけどねぇ)
「それでも、何もしないというのも…」学院長に目配せするコルベール。
「そうじゃな。
あー ミス・ロングヒル、これから先は、ちょっと込み入った話になるんで、すまんがそろそろ外してもらえるかの。」
「ええ、こんな夜更かしは 美容の大敵ですから。それでは、失礼します。」
秘書が退出すると、残った二人は話を続ける。
「あれが、ミス・ヴァリエールの使い魔『雪風』か。トンデモない代物じゃのう…
あの『銃』は、君の報告書にも無かった様じゃが?」
「はぁ、彼女から 雪風が『異世界の兵器』である事は聞いていましたが、その詳細については語ってくれませんでした。
私自身が調査した際に、火薬の匂いがしましたので、銃器の存在は予想していたのですが…
まさか あれ程とは。」
「コルベール君、もし、アレと敵対したとして 勝てるかね。」
「難しいですね。
向こうとこちらが 同時に相手に気付いたとしたら、私が呪文を詠唱し終わるまでに 確実に撃ち殺されますね。
その上 雪風は信じられない様な高速で飛翔します。私が先に発見したとしても、攻撃を当てられるかどうか。
倒すなら、策を講じて 地上にいるうちに何とかするしかないでしょう。」
「ウーム。君でも勝てんか。まさしく『メイジ殺し』じゃのう。」
「しかし ミス・ヴァリエールは、ああ見えても倫理観や貴族としての誇りが高い生徒ですから」
「いや、主の問題では無いんじゃよ。あの使い魔が『機械』だと言う事が問題なんじゃ。
幻獣ならば、その牙を奪うには殺さねばならんが、機械ならば、銃だけを取り外す事も容易じゃろう。
高度な技術の産物たる あの銃をそのまま複製する事は出来ずとも、連発速射のしくみを理解するだけで この世界の銃は恐るべき進化を遂げるじゃろうよ。」
「銃を手に入れるだけで、平民が『メイジ殺し』になると!」
「それだけではないわ。
王宮に棲まう魑魅魍魎共が、それだけの武器を手にして 大人しくしておる訳がなかろう。
とにかく この件は外部に漏らしてはならんぞ。」
「はい。」
「ミス・ロングヒルにも 口止めをせんとイカンな。」
「そう御思いなら、彼女に『すけべぇ』な事をなさるのは、おやめになったほうがヨイかと?」
「そう言うキミこそ!」
「・・・・・・」「・・・・・・」
「あ〜 オホン。
で、もう一つの件じゃが。間違い無いのか?」
「私自身が一番信じられませんでしたので、何度も確認しております。
あの使い魔 雪風のルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』のルーンです。」
イイ歳こいた大の男が、二人揃ってタメ息を吐く。
「どう解釈したもんかのう。
先ほどの力を見れば、伝説に言う『神の盾』に相応しいとも言える。
あれだけの弾丸を撃たれたら、誰も近寄れんわなぁ。
それに 主人を乗せて飛んでしまえば、誰も追いつけん。
始祖が呪文を唱える間 その身を護る役目、完璧に勤め上げるじゃろう。」
「ですが、『あらゆる武器を自在に扱う』という伝承からは、まるっきり外れています。」
「うむ。そもそも手が無いのでは、剣も槍も持てんわ。
ひょっとして 先住魔法『とらんすふぉ〜む』とかで、手足が生えてきたり ヒトガタになったり
せんかの?」
「しません。雪風の世界には 元々魔法は存在しないんですから。
それに なんですか、そのインチキ臭い魔法名は!」
「ノリじゃよ、ノリ。
それより 君の報告書を読んで、ワシャ 雪風のルーンは ひょっとして『ミョズニトニルン』じゃないかと思っとったんじゃが?」
「私も そうでした。
雪風の真価、最大の価値は あれの持つ知識にあります。
『コンピューター』という物は、我が校の図書館の書物全ての内容を この机の引き出し一つ程の
空間に 全て納めることも可能だそうです。
そんなコンピューター同士が『ネットワーク』で結ばれる。互いの持つ情報を 相互に活用できる。
正に 知識の大洋とでも言うべきモノ。
そこに漕ぎ出せるのは、あの雪風と ミス・ヴァリエールだけなのです。
ああ、なんと羨ましい事か!」
「こらこら、教師が生徒に嫉妬してどうする。」
「・・・失礼しました。
ですが、このコンピューター・ネットワークの話を聞けば、『知恵の塊、神の本』と伝えられる
ミョズニトニルンを連想するのは むしろ当然だと思います。」
「しかし いかに巨大な図書館でも、蔵書がすべて白紙の本では意味が無い。
雪風が持っておるのは 全て『異世界』の知識。
ハルケギニアについては、幼子でも知っている様な事すら知らなかったらしいのぅ。」
「たしかに、軍師たる者が 戦場となる地を知らないなどというのは 有り得ませんね。」
「まぁ その辺りは すぐに何とかするじゃろ。
どうやら ミス・ヴァリエールのちっこい方の使い魔は、図書館に入り浸っておるようじゃからの。
先日 司書長が
『使い魔に 蔵書の閲覧を許可しても宜しいのでしょうか?』
と 問い合わせて来おったわ。」
「本当ですか!
う〜ん、教師の立場としては それはちょっと問題ですね。」
「ほう どうして?」
「彼女と雪風は、『絆』以上のつながりを持っています。
つまり、試験の際に『カンニング し放題』という事です!」
「ブワッハッハ、考え過ぎじゃよコルベール君。
試験の最中に図書館に行けばカンニングじゃが、雪風に記憶させておけば いつでも聞き出せるじゃろ。
だいたい、ミス・ヴァリエールの筆記試験の成績からして、そんな不正が必要かね?」
「それもそうですね。」
「話を戻すが、『ガンダールヴ』、『ミョズニトニルン』とくれば、もう一つはどうじゃ?」
「『ヴィンダールヴ』ですか。
いくら雪風でも 流石に幻獣を操れるとは思えませんが?」
「幻獣を使役するのは、手段に過ぎん。
伝承に従うなら、ヴィンダールヴの使命は、『始祖を運ぶ』事じゃ。」
「なるほど、そうすると 雪風が乗り物である意味が生きてくるんですね!」
「じゃが さっき君が言ったとおり、ケダモノ使いには なれそうにない、と。」
「まったく、『伝説の使い魔を召喚した』 それだけでも前代未聞だと言うのに・・・」
「それが、『ミョズニトニルン』のようでもあり 『ヴィンダールヴ』のようでもあるのに、全然ガンダールヴらしくない『ガンダールヴ』とは・・・
無責任なようじゃが、しばらくは様子見じゃな。」
「・・・これが、サモン・サーバントで呼び出されたモノでなければ、学院長のお好きな『場違いな工芸品』の一つ という事になるんでしょうが。」
「おぉ そーいう見方も出来るな。それなら・・・」
「と 言うことで、君に所蔵品の鑑定を依頼したいのじゃが。」
「ファ、はい!」
決闘から数日して 学院長に呼び出されたルイズは、宝物庫の扉の前で 思いっきり緊張していた。
(よかった。『アレ』がバレたんじゃ無いみたい!)いや バレてますけど…
「この中にあるのは、ほとんどが ワシが若い頃に集めた『場違いな工芸品』じゃ。
非常に貴重なモノじゃが、その名の通り『何に使うのかワカラン』物も多い。
それは 君の使い魔同様『異世界からもたらされた物』だからではないかと思っておるのじゃが…
そこのトコロ 君と雪風の知識で 解き明かしてくれんか?」
ルイズは 入学して初めて 宝物庫の中に入った。
名前に反して そこはガラクタの山だった。
学院長とコルベール どこからか話を聞き付けて集まった教職員と生徒達を観客にして『お宝鑑定大会』は始まった。
これは『鬼女の鉄帯』じゃ。」
ルイズの目の前に提示された物を 雪風が検索する。
《該当アリ:WWU ドイツ軍戦車のキャタピラの一部。》
「判りました。
これは『キャタピラ』、砂地や泥濘地で 車輪がハマってしまう様な事が無いようにする為の物です。」
収納品は どれもこんな調子で、壊れている物や部品の一部がほとんどだった。
確かにコレでは 使い方も判らないだろうし、何の役にも立ちはしない。
しかし、そうとばかり言えない物もあった。
「では この『巨人の風車』は?」
《回答:アメリカ軍 B-29のプロペラ》
「コルベール先生、これが、以前に話した『レシプロ機』のプロペラですよ。
先生の『愉快なヘビ君』で これを廻せば、推進力が生じます。
まあ これは、かなりの大型機用のサイズですが。」
「おお、そうですか!
学院長、しばらく これをお貸し頂く事は出来ませんか?」
このように、雪風という『解説者』がいれば、ガラクタの中から 技術革新の足掛かりとなる『宝』が発掘できるのだ。
ルイズが注目したのは、『ツノの伸びる箱』こと 旧式のトランジスタラジオだった。
光回路や陽電子回路、LSIやICは無理でも これに使われている程度のトランジスタやコンデンサ 乾電池なら、錬金でも複製可能だろう。
もし、無線機でも作れるようになれば・・・
「おぅ これはまた 懐かしいものが出てきおったわ。」
奥の方で 学院長が何か見つけたらしい。木箱を抱えて現れた。取り出したのは、緑色をした筒状の物。
「わしゃ 若い頃 この『破壊の杖』を使って、ワイバーンを倒したことがあるんじゃ。」
ギャラリーがどよめく。ワイバーンと言えば、飛竜の亜種で 非常に獰猛な幻獣である。
それを(若い頃とはいえ)このジーサマが倒したなどとは 信じがたいのだろう。
んっ、そうすると『破壊の杖』は、使用方法の判明している 普通のマジックアイテム?
「いや、実はな・・・」
昔 若きオスマン氏は とある洞窟の奥に『場違いな工芸品』があると聞き 地の底へと向かった。
その最深部で『破壊の杖』四本が入った木箱を発見、だが そこはワイバーンの棲家だった。
見つかってしまった。一匹の巨大な雄ワイバーンが迫ってくる。
逃げる!逃げる!逃げる!必死に逃げる。 余りに必死だったので、この後しばらくの記憶が無い。
気が付くと、洞窟の外 崖ッ縁のところに立っていた。目の前にはワイバーンの屍骸。頭部が消滅し、胸の辺りには爆発したような痕があった。
驚いて 持っていた『破壊の杖』を落としてしまった。それは深い谷底へ消えていった。
「そー言う訳で、残った三本がここにあるんじゃが、わし自身 これの使い方については一切覚えとらんのじゃよ。」
ギャラリーのどよめきが タメイキに変わる。一瞬でも「学院長スゴイ!」と思った私がバカでした と。
(で、雪風 あれは何なの? 使い方 解る?)
《形式番号 M72-A2、兵器カテゴリー 歩兵用ロケットランチャー。
使用方法については 以下の通り(略)》
(へぇ 意外と簡単だけど…)
「学院長、本当に ソレ撃てたんですか? 偶然に発射できるようなモノじゃないんですけど。」
「おお ミス・ヴァリエール、やはり君には判るのかね!」
「はい。
まずは、後部のピンをぬいて、」
「これか。」
「カバーを外して 砲身を伸ばし、」
「ふむふむ。」
「サイトを立てて 肩に担いで、」
「こうかね。」
「黒いボタンを押すと 発射します。」
「ポチッっとな!」(ボシュッ!)
『わぁぁぁぁ〜、ホントに撃つなぁぁぁ〜!』
幸い 学院長の後ろに立っていた者はおらず、宝物庫の扉も空きっぱなしだったので、バックファイヤの被害者はいないようだ。
だが さして広くも無い室内で 弾体が爆発すれば 室内にいる者は只ではすまない。
(間に合って!)ルイズは杖を握った。
雪風の召喚以来、ルイズは 自分の失敗魔法の有効利用法とその改良に努めてきた。
決闘について調べているときに見た『西部劇』を参考に、腰に付けた杖をクイックドロウ出来る様 ホルダーを改造。
また 剣術の『居合』を参考に 引き抜きの速度も向上させた。
更に 深井中尉達が使う『FAF語』を参考に 呪文の無駄を省き高速言語化。
結果として 今のルイズの失敗魔法は 無詠唱と見紛う速さで発動(爆発)出来る様になっていた。
先日の錬金授業のアレを応用して、宝物庫の壁をロケット弾の直径の倍ほどのサイズでプラズマ化し 屋外に排除、進路を確保する。
かろうじて間に合った。壁に穴が開いた瞬間 ロケット弾はそこを通過し、学院上空で爆発した。
あとは 破片が通行人に当たらないことを祈るだけだ。
(あっ 危なかった〜)息を切らすルイズ。
学院長は「う〜む。これならワイバーンもイチコロじゃわい!」と 非常に嬉しそう。
ギャラリーも「おおっ〜」「凄いですねぇ」等と言いながら 拍手なんぞしてたり、まったく危機感が無い。
今の出来事の危険性を認識しているのは、コルベールぐらいだろう。
ルイズは 一言文句を言ってやろうかと思ったが、学院長が
「しかし、さすがは『破壊の杖』じゃ。
この壁にかかっとった『固定化』は、国内でも最高の強度を誇っておったんじゃが、それを易々と貫通するとはのぅ。」
と言うのを聞いて 黙っていることにした。
(私が穴を開けたなんて言ったら、修理費は私持ちだって事になりかねないわね。)
この件で鑑定会はお開きとなったが、ルイズが黙っていた為 皆 壁を壊したのは『破壊の杖』だと誤解したままだった。
そう、あの人物も。
ミス・ロングヒルは上機嫌だった。
いままで立ち入ることの出来なかった学院の宝物庫、そこに収納されたお宝を解説付きで拝むことが出来た上に、破壊不能だった壁に穴まで開けてくれたのだから。
オールド・オスマン付きの美人秘書は 表の顔。裏の通り名は 噂の盗賊『土くれのフーケ』!
学院のお宝に狙いをつけて潜入したものの 得意の『巨大ゴーレム』でも壊せそうにない強固な宝物庫にホトホト手を焼いていた。
しかし あの晩に見た『雪風の銃』。あれなら壊せる!さて どうやって誤射させようかと考えていたところに 今回のドタバタ劇だ。
まさか こんなタナボタな展開になるとは…
「泥棒にも 運命が味方するってことがあるのかねぇ。」
おっとフーケさん、ご用心。運命は賭博の胴元のようなもの。始めはそこそこ勝たせて最後にカッパぐのが手口。さて どうなりますか?
深夜のトリステイン魔法学院に重低音の振動が広がった。全高30メイルはあろうかというゴーレムが現れ 宝物庫の壁を殴っている。
狙いは一点 壁の穴。二発三発と繰り返す。通常なら耐えられた攻撃でも 欠損部分があれば そうはいかない。
ついに 人が通れる程に崩れ落ちる。それを見て、ゴーレムの肩から人影が飛び降りる。
目当ての品に向かって一直線。木箱の中から二本を取り出す。
ヴァリエールの話によると「一回しか使えない」らしいので 使用済みの一本は置いていく。
【 破壊の杖 確かに領収いたしました。「土くれのフーケ」】
お約束の書き置きを残し 脱出。
タルみきった警備員や教師達は まだ姿を見せない。それほどの早業だった。
「ちょろいもんね!」フーケは 仕事の成功を確信していた。
だが 裏社会の格言に曰く「アジトに帰り着いて 初めて成功」と。
そう まだ最悪の相手が残っていた。
燃料確保のメドが立って以来 ルイズは放課後 毎日雪風で飛んでいた。オリジナルの地図を作るために。
学院図書館所蔵の地図は、雪風にとってあまりに精度が低すぎた。ハルケギニア全土を探しても 必要とするレベルの物があるかどうか。
ならば、自分で測量して電子地図を作成するしかない。
今夜はゲルマニア方面を飛行したので ガイドとしてキュルケも搭乗している。
ちょうど学院上空へと帰還したところで、事件に遭遇した。
「宝物庫に、ゴーレムゥ? なによアレ!」
「見れば判るでしょ ルイズ。泥棒よ 泥棒!
んっ、ゴーレムを使う泥棒と言えば…」
「「『土くれのフーケ』!!」」
(雪風 カメラを対人精密モードに切り替えて。)《RDY》
「でも フーケもすごいわねぇ。いくら巨大ゴーレムとは言え 宝物庫の壁を壊しちゃうなんて。」
(ゲッ ヤバい! ひょっとして私のせい?) 思い当たる節のあるルイズ あせる。
「キュルケ、あれ 捕まえるわよ!」雪風は進路をゴーレムに向け反転した。
フーケも雪風に気付いた。
「ちぃ、なんて間の悪い。」
現在の この学院における最強戦力とハチ合わせするとは…
「今までツキ過ぎだった分、これで帳消しって事かい!」
だが 彼女は力を手に入れた。あの怪物に匹敵するであろう 強力な武器『破壊の杖』を!
「残り一本になっちまうが、仕方ないね。」
あの日 ルイズが学院長に教えた手順を思い出しながら ゴーレムの足元でM72を構える。
ほぼ真っ直ぐに近付いて来る 雪風。フーケはそれを照準に捕らえた。
「サヨナラ、ヴァリエールのお嬢ちゃん!」(ボシュッ!)
ロケット弾が雪風へ向けて飛翔する。それは、旧式とはいえ 当たれば雪風を大破させる程の威力がある。
・・・・・・そう 当たれば。
M72は、戦車等の装甲車両を攻撃目標として想定した 無誘導のロケット砲であり、地対空ミサイルでは無い。
射程ギリギリまでヒョロヒョロと上がったソレを 雪風は難なく回避した。
「ウソっ?!」呆然とするフーケ。
一方 雪風のコクピットでは、
「ねぇキュルケ アレは人間じゃないわよね?」余裕のルイズ。
「ゴーレムの事? あたりまえじゃない。それが?」
「人間じゃないなら、撃っちゃっても いいわよね。」
「そう、そうよね。だったら!」
「「撃てぇ 雪風!!」」《RDY》 少女二人のユニゾンに応え、20mmバルカン砲が唸る!
ゴーレムに降り注ぐ 弾丸の雨。頭部が消滅し 肩が粉砕される。支えを失った腕が地面に落ちる。濛々と立ち上る土煙。
その衝撃で我に返るフーケ。まずい。逃げなきゃ。
残った破壊の杖を持って 森に隠れようとしたが、殺気を感じて進行方向を変えた。
ほんの一瞬遅れて フーケの立っていた場所を 風の塊が吹き抜けた。 エア・ハンマー。
いよいよマズい!目くらましの等身大ゴーレムを数体作成し、バラバラの方向に逃がすと共に フーケ本人も闇に消えた。
そして 崩れ去った巨大ゴーレムの残骸の元に タバサが現れた。
ルイズとキュルケを迎えに 召喚場にいたため 誰よりも早く現場に駆けつけることが出来た。先ほどの魔法攻撃も タバサだった。
雪風を近くの広場に強行着陸させると、キュルケがフライで先に行く。ルイズもそれを追う。
「あっ タバサ、フーケは?」
「逃がした。」
「貴女が逃げられるだなんて、そんなに手強かったの?」
「『逃げられた』じゃなく、『逃がした』。」
「へっ?」
「おそらくは 内部犯行。このまま逃亡すれば 犯人だと自白するようなもの。
逃がす時 あえて顔を見なかった。フーケも それは判っている。
だから 何食わぬ顔で また現れる。
でも ルイズは、…雪風には見えたはず。」追いついたルイズに話を振る。
「ええ、見たわ。正体も判ってる。
それにしても、どうしてわざわざ逃がしたりしたの?」
「フーケは 土のトライアングル。」
「な〜るほど。使えるわね!」
また 悪巧みモードに入る三人組だった。
おっとり刀で駆けつけた警備員と教師達に ルイズ達は目撃した状況を説明した。
しかし、どうやってゴーレムを倒したかと聞かれても 銃の事は言葉を濁して 明確には語らなかった。
フーケの人相風体についても、「よく見えなかった」の一点張りだった。
始めは信用しなかった教師達も、破壊された宝物庫の壁や巨大ゴーレムの残骸を見て黙り込んだ。
手口と書き置きから、『土くれのフーケ』の犯行であることは間違いない。
盗まれたのは、先日 その威力を目の当たりにした強力な兵器『破壊の杖』。
一本は此処で使われたようだが、もう一本残っているハズ。
犯罪者の手に兵器、この組み合わせは危険だ。放置する訳には行かなかった。
翌日 教職員総出の対策会議が開かれた。
衛士隊に連絡して協力を求めるのは、学院の恥を晒す事であり 王宮から学院への介入を招く恐れもある為、出来ない。
そこで 学内から『フーケ捜索隊』を結成してこれに当たるものとしたが、ゴーレムと破壊の杖に恐れをなして 立候補する者は誰もいなかった。
手詰まりの学院長は、ルイズと雪風に この話を持ちかけた。
「生徒である君に こんな事を依頼するのは心苦しいんじゃが、他に頼める者がおらんのじゃよ。」
「分かりました。お受けします。
とはいえ、『絶対に捕まえる』と御約束は出来ません。
なにせ 本職の衛士隊でも捕らえられない盗賊ですから。」
「うむ。」
「それと いくつかお願いが。」
「何じゃね?」
「本格的にフーケの探索に掛かると、授業を休まなければならない事も出てくると思われます。
私と 友人のキュルケ タバサの両名も含め、出席日数等のご配慮を・・・」
「承知した。」
「もう一つ。
雪風の燃料は、現在 ミスタ・コルベールと級友の尽力により製造されていますが、探索により消費量が増えるものと思われます。
今後 無理をしてもらう事になるやも知れませんので、学院から報奨金を出していただければと…」
「何とかしよう。」
ちなみに 一つ目はルイズ本人の考えだが、二つ目はキュルケの入れ知恵である。
ちゃんと製作者の手に渡るんだろうか?
「それと、ミス・ロングヒルに協力を頼みたい事があるので、後で私の部屋まで来ていただけるよう伝えてください。」
「彼女に 何か?」
「いえ 大した事ではないんですが、女同士の秘密ということで。」
「まぁ 良かろう。
ともかく もうすぐ『フリックの舞踏会』じゃ。
そんな日に フーケが再び現れるなどという事態にだけは なってほしくないもんじゃ。」
「まぁ その辺りは大丈夫かと。」
「ほぅ どうして?」
「ただの勘です。根拠はありません。」
「ふぉふぉふぉ。
君の『勘』は、何故か 良く当りそうな気がするのぅ。では 宜しく頼むぞ。」
329 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2009/07/29(水) 20:49:41 ID:ohzHdnPM
イフリート〜断罪の炎人〜のユウとニナの召喚されるssが
投稿されるかも…
放課後 ミス・ロングヒルは書類を抱えて 学生寮のルイズの部屋へ向かっていた。
『フーケ捜索隊』に関する特例処置の書類だった。
盗賊を探そうとするメンバーの所に その盗賊自身が出向くと言うのも妙な話だが、正体を明かせない以上 学院長の指示には逆らえなかった。
「早いとこ 適当な理由をでっち上げて ここをオサラバしないとねぇ。」
ルイズの部屋には、本人の他にキュルケとタバサが待っていた。
「ミス・ヴァリエール、学院長から この書類について説明するよう申しつかってまいりました。
それと 何か私に手伝ってほしいとの事ですが?」
「はい。フーケ捜索の為、雪風の燃料を増産しますので、それをお願いしようかと。
他には 燃料備蓄用の地下タンク作成も。」
「申し訳ありませんが、私 あまり魔法の方は得意ではないのですが…」
「あれ? 噂じゃ、土のトライアングルだって聞いてるんですけど。
ねっ、『フーケ』さん?」
(バレてたのかいっ!)
ロングヒル いやフーケは、隠し持った杖を握ろうとしたが、掌の中で起こった小爆発で床に落としてしまった。
前を見ると、ルイズが一瞬速く杖を向けていた。
(ヴァリエールの失敗魔法?! にしても 速過ぎる!)
後ろの二人も既に杖を構えている。逃げられそうも無かった。
「いつ気が付いたんだい? 顔を見られるようなヘマは しなかったつもりなんだけどね。」
「雪風は 本来『偵察機』つまり物見の兵だから、凄く『目』がイイの。
雲の上の高さから 地上の人間が判るくらいに。
夜目も利くし、見たものを記録しておく事も出来るの。」
「ハン。泥棒にとっちゃ 天敵みたいなシロモノだね、まったく!
で、衛士隊は何処にいるんだい?」
「いないわよ。そんなの。」
「はぁ?アタシを捕まえて突き出そうってんじゃ なかったのかい?」
「言ったでしょ、お願いしたい事があるって。」
「一体 何をさせようっていうんだい!」
「だから まずは燃料と地下タンク。
その位余裕だって言うなら、地下格納庫に傾斜エレベーターもお願いしようかな〜」
「それで あとは、『破壊の杖を学校に返せ!』ってところかい?」
「い〜わよ、返さなくて。てゆーか、アレ 私が使う事にしたから。」
「何だって?」
「ちょっと、ルイズ!」
「・・・・・・」
「そうすれば、私達 共犯でしょ。
人の弱みを握って、一方的にコキ使うのって、何かイヤなの。
どうせなら、貴方にも、私達の『一味』に入ってもらおうかと思うの。 どう?」
「フフフ・・・ファハァハ・・・ハアハハハハハハハハハハハハァ〜ハヒ〜ヒィヒヒヒヒヒィ〜」
笑った。 腹の底から笑った。 こんなに笑ったのは、いつ以来だろう。 そう思える位 笑った。
フーケは 王族を恨んでいた。貴族が嫌いだった。どちらにも、碌でもないヤツしか居なかった。
でも 目の前の三人は違うようだ。こいつらは、トンデモない馬鹿だ!(いい意味で)
ヴァリエール家といえば、この国有数の名家の筈。
ツェルプストー家も ゲルマニアの豪商として名を馳せている。
タバサとやらも 遠方のガリアから留学してくる位だから それ相応の家柄だろう。
それが 身元も分からない盗人を 自分達の仲間にしようってんだから、どうかしてる。
だが それが気に入った!
「いいよ。その『一味』とやらに 入ってやろうじゃないか。」
「それじゃ これからよろしくね。 ミス・フーケ じゃなかった、ミス・ロングヒル。」
ルイズが手を差し出す。握手する二人。キュルケも手を重ねる。タバサも おずおずと手を伸ばす。
「名前なんざ どっちだって構わないよ。両方とも 偽名さ。」
「でも フーケの名前は 今日限りにしてもらわないと・・・」
「ああ 脚を洗うにゃ、潮時だったのかねぇ。もう 盗みはヤメるよ。
で、どうせなら 仲間内だけの時は、こう呼んでくれないかぃ。
『マチルダ』 これがアタシの本名さ。」
「ええ (せ〜の)『マチルダ』!」
「いいわよ (せ〜の)『マチルダ』!」
「・・・判った(・・・・・ )『マチルダ』・・」
それにしても 成り行きとはいえ 変な具合になっちまったもんさ。
まったく 大したガキどもだよ、コイツら。
(ウチのティファも、この位逞しくなってくれないかねぇ。)
こうして 『土くれのフーケ 魔法学院宝物庫襲撃事件』は、ひっそりと幕を閉じた。
だが その顛末が学院長オールド・オスマンに報告される事は 無かった。
余談
フリックの舞踏会当日の晩、召喚場の『雪風 秘密基地』前には カップルの長蛇の列が出来ていた。
モンモランシーが あの夜の『浪漫飛行』について、友人達に吹聴したため、パーティ終了後 デートの〆として、雪風への登場希望者が殺到したのだった。
(ゴメン!ルイズ。でも『決闘』の事は話してないから 大丈夫よね?:モンモランシー談)
(え〜い、バカップル共! こうなったら、全員から『フライト料』ボッタクってやるぅ〜〜!!:ルイズ談)
〈続く〉
第四話 終わりです。
『ゴーレム』対『雪風』というか『破壊の杖』対『雪風』なわけですが、原作通り『破壊の杖』がM-72だとしたら、まあ こんなモンでしょう。
マチルダ姐さん、ご愁傷様でした。
次は デルフ購入とワルド登場の予定。
話のボリュームを読めない作者ですので また前後編になるかも。
(ちなみに このSSのワルドは 白ワルドです。)
投下ペースが遅いので、『萌えゼロ』さんに話の進行で追い抜かれそう…
あぁ 執筆用のラムエアモードが欲しい!
乙
まーロケットじゃ当たらんわなw
乙ダルヴァ
しかし白ワルドとな!?今から期待大だ。
突然だがカルラ舞うが分かる人間はおるか?
おるよ
皆さん乙です。
>>335 解りますよ。なつかしいですね。
# 島田ひろかずはじめかつてそっち方面にはまった元古書店勤務
進路クリアなら21:50頃より投下したいと思います。
>>335 ルイズの使い魔がコッパゲの背後の霊団を除霊したり、ワルドの背後にいる人の言葉を伝える話になるのか。
舞子呼んだら、霊みえないけど。
おっさんいっぱい俺嬉しいw
カルラ舞うで話を思いついたんだけど、何せ古い作品だし資料入手困難だしで書くにしてもハードル高い状況でちょっと迷ってる。
でも知ってる人も多そうだから、地道に資料集めから頑張ってみることにするわ……
サンクス。
>339
資料入手が困難どころか事実上不可能なのよりマシだろう。
…PC98時代の同人SLGなんてどうやって今更入手できるんだorz
それではいきます。
「……いいだろう。ヴェストリの広場で決闘だ!」
黄金色に輝く青銅のバラの造花の杖を掲げて高らかに宣言するギーシュ。その様子に
ふがくの横にいる黒髪のメイドはおろおろとふがくとギーシュの間に視線を行き来させる。
本来ならばこの責めを受けているのは自分のはずなのだ。そんなメイドの視線を受けても、
その小さな体に不釣り合いなほど大きな胸を張り、ふがくはいささかも自信を失わない。
「いいわ。教育してあげる。この私、ふがくの辞書に『敗北』という言葉は載ってないのよ!」
「……うーむ。大変なことになってしまったのう……」
「よろしいのですか?『眠りの鐘』で止めた方が……」
ふがくとギーシュが決闘を決めたまさにそのとき。舞台であるアルヴィーズの食堂の様子を
『遠見の鏡』に映して思案している二人の男がいた。オールド・オスマンとコルベールである。
「子供のケンカに大切な『秘宝』を使う必要もないじゃろう?アホらしいわい」
「あの……ですが……ふがく君の能力は未知数です。空を飛べるだけでなく、どれほどの
攻撃能力を持っているのか……ミスタ・グラモンの怪我、では済まないかもしれませんぞ?」
「なーにを言うかね。ミスタ・コルベール……わからんのかね?」
そう言ってオスマンは目を細める。
「『だから』止めるな――と言っておるのじゃぞ」
「!」
コルベールはその言葉の裏に隠された真意に気づいた。さすがに伝説と呼ばれるメイジ、
老獪である、と。
「この学院には厳重な『固定化』と『硬化』がかけられておる。そう簡単にどうにかなるもの
ではないわい。
それに――もしミス・ヴァリエールが召喚したガーゴイルが伝説の『ガンダールヴ』だと
いうのなら、それが確認できるよい機会ではないか。このケンカ、見物じゃのう」
はぁ、としかコルベールには言葉が継げなかった。
「な、何やってるのよあんたは!いきなりいなくなったと思ったら……主人に断りなく勝手な
ことをしないでよね!」
ギーシュとふがくの間にルイズが割り込む。状況を飲み込むまで時間がかかったのだろう。
そのルイズをふがくは涼しい顔で迎える。
「あらルイズ」
「『あらルイズ』じゃないわよ!早くギーシュに謝りなさい」
「い・や・よ。私は悪くないもの」
「おーやおや……主人が恥を忍んで止めに入ってくれたんだ。今なら君の謝罪を受け入れるよ」
ギーシュが前髪をかき上げふっと笑う。
「冗談きついわね。アンタこそ、遺書はもう書いてあるのかしら?」
ギーシュの眉がぴくぴくと動く。こみ上げる怒りを抑えきれないのは明白だ。
「……先に行ってるぞ!あまり僕を待たせないでくれよ!」
ギーシュが友人を連れてアルヴィーズの食堂を後にする。その後ろ姿を見て、ルイズが
ふがくを問い詰める。
「……どうしてよ。何でそんなにむきになるのよ!」
「私だけだったらここで一発はたいて終わらせたわよ。でも、アイツはルイズもバカにした。
アイツに勝って汚名返上するわよ。絶対に。ここで私がアイツに完全勝利すれば、
もう誰もバカにはしなくなるわ。させてやるものですか」
「ふがく……」
ルイズは気づく。ふがくは自分のために決闘を受けたのだと。だからこそ、これだけは
言いたかった。
「わかったわ。だけど、一つだけ約束しなさい。ギーシュは絶対に殺さないって」
「……私が超重爆撃機型鋼の乙女だって解ってるのかしら?一撃で広場ごと吹っ飛ばして
やろうと思ったのに」
「それは絶対に止めて。わたしが学院にいられなくなるから」
「冗談よ。解ってるから。そんなこと。それより『ヴェストリの広場』へ案内して」
そう言ってふがくはルイズに案内されてヴェストリの広場へと向かった――
「あらルイズ。止めないの?」
「……禁止されているのは貴族同士の決闘。ガーゴイル相手では問題なし」
トリステイン魔法学院の西側にあるヴェストリの広場はふがくの登場を待つ生徒たちで
あふれていた。娯楽の乏しい寮生活なので解らなくはないが、それよりも『ゼロのルイズ』が
呼び出した使い魔との決闘ということで集まった人間も多い。そこに現れたルイズたちを
待っていたのは、キュルケとタバサだった。
「キュルケ、それに……」
「……タバサ」
「あ、ごめん。タバサ。確かにふがくは貴族じゃないって言うけれど……」
そこに金髪ドリル髪の少女――モンモランシーが駆け寄る。
「ちょっとルイズ!使い魔に止めるよう命令して!」
「モンモランシー……残念だけど無理。とりあえず殺さないようには命じておいたから」
「殺さないように……って……どういうこと?」
「最初は広場ごと一撃で吹っ飛ばす、って言ったのよ。ふがく。『チョウジュウバクゲキキガタ
ハガネノオトメ』だからって。とりあえずそれだけは止めたから」
「はぁ?何それ?どんな魔法を使うのよ?」
「さあ?始まるわよ」
ルイズがそう言って視線をふがくに向ける。そこでは相変わらず気障な仕草で立つ
ギーシュと、すでに翼も広げ右手に最初に召喚されたときに見た金属と木を組み合わせた
杖を持ったふがくが対峙していた。
「逃げずに来たことはほめてやろう」
「能書きはいいわ。けれど、最初に一つだけ忠告させてもらうわ」
そう言ってふがくはギーシュではなく周りに目を向ける。
「アンタたち全員、そこから1リーグ離れて伏せてなさい。巻き込まれて死にたくなかったらね」
広場にいたほぼ全員、一瞬、それが誰に向けて言われたことなのか理解できないでいた。
そして理解できてからはその荒唐無稽さに嘲笑した。明らかな嘲りもある。
「そんなに僕にやられる姿を見せたくないのかい?」
ギーシュも嘲る一人だ。ふがくを哀れなものでも見るような視線で見下ろしている。
「違うわよ。ここまでバカばっかりだとは思ってなかったけどね。しょうがないわ。
そのままつきあうっていうならそうするといいわ。私は忠告したし」
「気は済んだかい?それならば……僕はメイジだからね。魔法で戦わせてもらうよ!
出でよ!青銅のゴーレム『ワルキューレ』!」
ギーシュが手にした黄金色の青銅のバラの杖を振るう。杖から1枚の花弁が地に落ち、
それがギーシュの呼びかけに応じてたちまち鎧をまとった女戦士の像に姿を変えた。
「僕の二つ名は『青銅』。『青銅のギーシュ』。君の相手はこの『ワルキューレ』がするよ」
「へぇ。結構やるわね。それなら、私は超重爆撃機型鋼の乙女らしく戦わせてもらうわ」
そう言って空に舞い上がるふがく。背中の6発のエンジン音を響かせ、たちまち学院本塔より
高い位置まで駆け上がる。
「……うわ。やっぱり速いわね。フガク」
「ギーシュの『ワルキューレ』は対空戦闘を考慮されていない。フガクを甘く見て武器も
持たせていない」
「顔見せだけで降参するような相手とは思えないのにねぇ」
キュルケ、タバサ、モンモランシー、そしてルイズの4人は近くの塔の屋根まで『フライ』で
昇っていた。ふがくの忠告を聞いたためであり、また『フライ』が使えないルイズはキュルケが
抱えて上がった。それについてルイズは文句を言おうとして、言える立場じゃないことに
気づき内心歯噛みした。
「ちょっとキュルケ、タバサ。どうしてそんなに落ち着いてるのよ。ルイズも、あの使い魔が
何する気なのか分かっているの?」
「モンモランシーも落ち着いたら?
まぁ、さっき移動中にハルケギニアの単位を聞いてきたから何をするのかと思ったけど。
ふがくの国の単位とこっちの単位は違うようね」
「……ちょっとルイズ。あぁ、ギーシュったら。あっさり負けたら許さないんだから」
地上でそのようなやりとりが行われているとき、ふがくは自分自身の動きに驚いていた。
(何よこれ?確かに私は戦闘開始からしばらくはぶっ飛ばせるけど……この体のキレ、
いったいどうなってんのよ?)
そう。ふがくは今自分が勢いよく駆け上った動きに驚いていた。確かにふがくの最高速度は
389knot、つまり時速換算で720km/h。だが、今はそこまでは出していないにもかかわらず
その動きは機敏で優速。それでいて制御は失わず、むしろ思い描いたとおりに飛べている。
ふがくは左手のルーンが飛び立った瞬間から光っていることに、まだ気づいていなかった。
「さぁて、どうしようかな……ルイズと約束したし、こんなのお遊びみたいなものだし、
脅かすだけで終わらせられたらいいけど……」
そう言ってふがくは自分の懐を探る。そこはふがくの場合爆弾倉になっている。……明らかに
そこには入らないような巨大な爆弾や魚雷も納められているのだが、ふがくはその原理までは
知らない。以前疑問に思ったことはあった。それで母親のようにお世話になっていた空母型
鋼の乙女、あかぎに尋ねたこともあったのだが……「女の子には不思議なところがいっぱい
あるのよ〜♪」で終わっていたような記憶がある。
ふと、ふがくの指にあるものが触れる。触れたとたん、その情報がふがくの頭の中に
流れ込んでくる。
「な、なんで私こんなの持ってるのよ?それに何これ?……けど、これならいけそうね」
ふがくはそう言って地面にいる青銅の『ワルキューレ』を見下ろす。その、猛禽が獲物を
捕らえるような視線すら、今までより鮮明、かつ精密だ。
ふがくが『それ』を投げたとき、誰もそれがなんなのか理解できていなかった。それは
砲弾のようでもあったのだが、球ではなく、大きな豆のような長細い形に尻尾に羽のような
板のついたものと、ルイズやギーシュ、そしてこの様子を『遠見の鏡』で見ているオスマンや
コルベールにとっても見たことのない形をしていた。
金属の塊が柔らかい金属の箱を押しつぶすような音がした。そして何か液体がぶちまけられる音も。
『それ』は『ワルキューレ』の頭を押しつぶしてそのまま押し倒し、地面に真っ赤な塗料を
ぶちまけていた。見方によってはまるで『ワルキューレ』が頭を割られて血を流しているようにも見える。
「たいしたことないわね」
ふがくが言う。ヴェストリの広場は静まりかえっていた。最初にその硬直から逃れたのは、
対戦者のギーシュ本人。
「……な、なんだ?今のは」
ギーシュは今の一撃が自分を狙っていなかったことを始祖に感謝した。そして蒼白に
なった顔を何とかごまかして上を見上げる。
「爆撃演習弾よ」
「ば、ばくげき?」
「訓練で使う模擬爆弾――アンタにも分かりやすく言うと鉄の樽に爆薬の代わりに塗料を
詰めたもの。味方の艦や施設で訓練するのにいちいち本物使ってたらどうしようもないから、
とりあえず当たったことを確認するためのものよ。
本当はもっと高々度から落とすけど、誤爆したくないし」
再度沈黙する一同。次に我に返ったのはモンモランシー。モンモランシーは全力でルイズの
首根っこをつかんでかくんかくんと前後に振り始める。
「ルイズ!今すぐ使い魔を止めて!ギーシュの頭が割れちゃう!」
「ちょっと!モンモランシー?」
キュルケがそれを止めようとするが、モンモランシーは聞く耳を持たない。
「ルイズ!聞いてるの!?」
「モンモランシー!」
キュルケがモンモランシーの腕をつかむ。ルイズは……といえば、思い切り頭をシェイク
されて目を回していた。
「……これでは無理」
「そ、そんなぁ……ギーシュ?」
タバサが冷静にルイズの様子を見る。その言葉にモンモランシーは屋根の上でがっくりと
膝を落とした。広場でも生徒たちが当事者のギーシュを残して我先に逃げ出している。
その混乱の中、ギーシュは青銅のバラの杖から6体の『ワルキューレ』を作り出す。
今度の『ワルキューレ』たちはそれぞれ投げ槍や盾を持っている。ギーシュの目は、
まだ諦めてはいなかった。それが震える膝を隠しきれないでいたとしても。
「ぼ、僕はまだ負けてはいない!
我がグラモン家の家訓には『命を惜しむな名を惜しめ』とある。君が言ったようにたとえ
敵わずとも、僕の、そして何より傷ついた二人の淑女(レディ)の名誉のため、最後まで
戦い抜く!」
「……ギーシュ……」
モンモランシーのその様子を見て、キュルケは「なるほどね」とつぶやく。そして上を
見ると……ふがくがその小さな肩を震わせていた――ように見えた。
「……こ……この……バカァ!」
ふがくがその手にした金属と木の杖――機関短銃――を構える。エンジン音も高らかに
高度を落とし、ルイズたちがいる塔の屋根より低い位置から、ハルケギニアでは聞いたことも
ないような金属音の連続発射音を響かせて『ワルキューレ』を1体ずつ、誤射も流れ弾も
ないように斜め上から撃ち抜いていく。青銅の盾では連射される銃弾は防げず、
またふがくの速度と機動に『ワルキューレ』の投げる投げ槍も難なく躱され――背中の
6発のエンジン音が響く中キュキュッ!とふがくの足の車輪が地面をこする音がしたときには、
ふがくはギーシュの目の前で銃を構えていた。
「……命はね、かけがえのない、たった一つの奇跡なのよ!それを……アンタ何考えてんのよ!」
「…………僕にだって譲れないものはある!それでも――今回は、僕の負けだ」
ふがくの怒りの視線から目をそらさず、わき上がる恐怖を必死に隠し――そう言って
ギーシュは花弁のなくなった青銅のバラの杖を地面に落とす。それが決闘の終わりの合図。
そしてふがくが銃をおろした瞬間に左手のルーンの輝きも消えたが、それに気づいたものは
いなかった。
「ギーシュ!」
屋根から降りたルイズたちから、モンモランシーが真っ先にギーシュに駆け寄る。
ルイズは何とか回復したが、まだ地に足がおぼつかない様子。それでももつれる足で
ルイズはふがくに駆け寄った――
「オ……オールド・オスマン?」
「う、うぅーむ。なんちゅう強さじゃ。あんなガーゴイルを造り出せる国が近くになかったことに
感謝せねばならんのぉ。
あんなものが大挙して襲ってきたら今頃ハルケギニアは焼け野原じゃ」
決闘の様子の一部始終を見ていたオスマンとコルベール。ギーシュ・ド・グラモンが
最下級のドットメイジだといえ、それが全くといっていいほど歯が立たなかった現実に、
苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
「召喚されたときに『ディテクト・マジック』で確かめましたが……」
「反応はなかった、ということか」
対策済みで感知できなかっただけかも――という考えを、二人ともあえて口にしなかった。
「それより――このことを王宮に報告……」
「ならん!その必要はまだない!」
コルベールの言葉をオスマンが握りつぶす。
「あの様子では『ガンダールヴ』なのか、それともガーゴイル本体の性能なのか判別がつかん。
仮に『ガンダールヴ』だとしても、何故ミス・ヴァリエールの使い魔が『ガンダールヴ』に
なったのか、その理由が全くの謎じゃ」
オスマンは本塔最上階の窓から空を見る。空は青々と澄み渡っている。戦禍の炎に
焼かれることのない澄み切った空だ。
「始祖ブリミルが用いたといわれる、伝説の使い魔『ガンダールヴ』――その強さはあらゆる
武器を使いこなし千の大軍をも一人で退ける、というが……だからこそ、この件は内密に
したいのじゃ。
のぅ、ミスタ・コルベール。冷静になって考えてみなさい。
王宮のボンクラどもに伝説の『ガンダールヴ』かそれに匹敵するような使い魔と
その主人を渡したりしたらどうなると思う?
宮廷で暇をもてあます戦好きの連中が何をするか、分からん訳ではなかろう?」
「……」
「この件はワシが預かる。他言は無用じゃ」
「は……はい!」
オスマンの言葉にコルベールが応じる。
二人は知らなかった。学院長室の扉が少しだけ開かれ、それで中の様子に聞き耳を
立てていた女がいたことを。女は話の内容に満足すると薄く笑みを浮かべ――扉を閉めて
足音も立てずその場から去った。
以上です。
ギーシュはコミック版の扱いがひどすぎたので...と書いていたらこんなになりました。
次からはフーケイベント...数パターン書いたのをどれにするかまだ迷ってます(^^;
乙
「最後まで戦い抜く」、「譲れないものはある」と言いつつ、速攻で負けを認める辺りが、さすがギーシュ
萌えゼロさん 乙です。
撃たれる前から腰を抜かしてた ウチのギーシュに比べると、遥かに男気がありますね。
話の進み具合で追い抜かれそうだ と書き込んだ直後に投下があるとは…
私の方もガンバらなきゃ!
投下乙様!
何も無さそうなので23:45に投下したいのですがどうでしょう?
前にあるものは何もない!
存分に突き進め!
「は? 神様?」
「うむ」
場所はルイズの部屋、決闘騒ぎの後ギャラリーなど全て置いて部屋に戻ってきた3人。
紅朔はさっさと一人部屋に戻ってきて、ルイズのベッドでぐっすり。
勿論激昂したルイズではあったが、九朔が懸命になだめて落ち着かせた。
「あんた、さっきので頭打ったりしたんじゃ……」
「正気だ、そして先ほど言った事は全て事実」
「……本当に、……頭」
「打ってはおらぬ!」
「……いきなり神様何たら言われても、信じられないんだけど」
「神は信じず、始祖だけは信じると?」
「実際居たんだから信じるしかないじゃない」
「それを言えば始祖も同じであろう、その目で実物は見た事はあるか?」
「う……、そ、そう言うあんたは」
「ある、我等は旧神、親父殿と母上に我等が魂と、身と、道を、未来を救われた」
迷い無く、ただ真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐルイズの瞳を見据える。
そんな真剣すぎる九朔の瞳に、ルイズは一瞬で引き込まれた。
「……あ、あんたがそう言うなら、そうなんでしょうね」
「ああ、あの時の親父殿と母上の背中はとても……。 いつかはあの背中に追いつきたい、肩を並べたいのだ」
九朔は右手の拳を堅く握り、それを見つめる。
「……そう、お父様とお母様が居る高みに上るの。 そしてあのアバズレを……、ひき肉にぃ……」
とのっそり起き上がった紅朔。
アバズレと言うのは十中八九悪神の事だろう、必ずは滅ぼし尽くさねばならん仇敵。
「あばず……、誰なのよそいつ」
紅朔の怒気が篭った声におびえつつも、ルイズは誰の事を言ってるのか聞いた。
それを聞いた九朔と紅朔から表情が消える。
「『這い寄る混沌』」
「『無貌の神』」
「『闇に棲むもの』」
「『燃える三眼』」
「その存在は『ナイアルラトホテップ』」
「それが打倒すべき邪神の名よ」
最も凶悪な愉快犯、ありとあらゆる存在を嘲笑し続ける存在。
アザトースさえも冷笑する神柱、凶器と混乱を齎す有限にして無限の存在。
親父殿と母上が無限に続く無窮の果てに滅ぼし続ける存在、未来永劫負け続ける荒ぶる古き神。
「じゃしん? 邪悪な神様?」
「うむ、おぞましいほど性質が悪い存在だ」
「……本当にそんなのが居るの?」
「居なければ我等は今ここに居なかったであろうな」
「関係あるのね」
「ああ」
「我等の成り立ちもあの悪神が関わっておる……」
「あんたたち人間じゃない人間って言ってたわね、あれってどう言う意味よ」
「其のままだ、我等は人間の親父殿と、魔導書の精霊の母上の間に生まれた子だ」
「……せいれい?」
「うむ、先ほど言った旧神の子である。 神の子とは言っても神性があるわけではない、あくまで我等は『半人半書』なのだ」
「……なんか、よく分からないけど凄いわけ?」
「凄いかどうかは分からぬ、特異である事は間違いないが」
萌えの人も雪風の人も乙乙
>フーケイベント...数パターン書いたのをどれにするかまだ迷ってます(^^;
土くれのフーケが風穴のフーケになるパターンを所望いたします
存在としては圧倒的に少ない、希少と言っても良い、もしかしたら世界に一人しか居ない存在かもしれない。
人間の男と、最高位の魔導書に生まれた精霊との間にもうけられた命。
「ふーん……」
「我等は元は一人だった、そして旧神の仇敵である邪神が目をつけ利用された。 其のとき我等は邪神の手によって二つに分けられ、闘争に導かれてしまった」
「は? 分ける? あんたたちを?」
「我の因果を、魂を引き裂き取り分けたのだ、そうして紅朔が生まれた。 そうして別った我等、己を取り戻したくば管理者<ゲームキーパー>を追え、そして紅朔を追えとな」
「そいつが邪神なのね?」
「そう、わたしたちはお互いを憎み殺しあった。 でも世界を何度も渡り戦ってきたけど決着は付かなかった、いえ、付いてはいけなかった、でしょうね」
「うむ、付いていればやはり我等はここに居ない所か、存在すらしていなかっただろう」
「そうして一つの世界に、わたしたちのお父様とお母様が居る世界へと辿り着いた」
あの出来事は胸に残る強烈な思い出、お父様とお母様の愛を知った掛け替えの無い思い出。
「そこでも起こった闘争の果て、そうして悪夢と戦い、全てを仕掛けた邪神を親父殿と母上と一緒に打ち滅ぼしたのだ」
「大円満じゃない」
「そう、大円満<デウス・エクス・マキナ>。 この物語はな」
この話はここで終わりなのだ、そうして直ぐにも新たなる物語が始まる。
終わらぬ、未来永劫繋がり続ける物語が。
「終わる事が無いのかもしれん、それを理解して親父殿と母上は物語を始めたのだ」
「永遠なる苦痛、終わりが無い終わり、永劫の時の流れが刹那、奇跡の上に奇跡が成り立ち、重ね上げる奇跡が最低条件の世界に足を踏み入れた覚悟を」
「我等はそこに足を、この身を沈めたい。 それこそが我等の幸せ、親父殿と母上の愛に報いるための意思」
「……本当にそれで良いの? 聞いてる話じゃ向こう側に来て欲しくないみたいだったけど」
「それで良いのだ、それが我等の目指す大円満<デウス・エクス・マキナ>なのだ」
「……大体わかったわよ、信じるかどうかは別にして」
「歪であるからな、信じられぬのも判る」
「あんたたちが人間じゃない人間だと言うのも理解した、でもそれが魔法を使えることと関係が有るように見えないんだけど」
「言ったでしょう? わたしたちは『半人半書』だと。 そして書に書かれている言語は『血液』。 『血』を媒介として魔術を操るのよ」
「……じゃあ」
そう、ハルケギニアの魔法は血に宿る。
貴族に流れる血を取り込み、理解して使いこなす。
それが魔法を使用できた筋書き。
「あんたがフライやゴーレムを作り出せたのも……」
「あの愚図から血を得たからよ、だから『土』の魔法を使えたの」
「……他の人と血を吸えば他の系統も使えるって事?」
「出来るだろう、素直に血を分け与えるような殊勝な者は居ないだろうが」
「じゃ、じゃあ私の……!」
血を吸えば何の系統か判るんじゃないか、と言おうとしたところに九朔が遮る。
「恐らくそれは無理だろう」
「な、なんでよ!」
「主殿から得た知識からすれば、主殿が系統魔法を使う事は恐らく出来ないだろう」
「……え? な、なんでよ? 何で使えないって判るのよ!?」
「貴女の血には魔法が宿っていないからよ」
その一言を聞いて、主殿から表情が抜け落ちた。
「つかえない? きぞくであるわたしが、まほうをつかえない?」
「系統魔法は恐らく、永遠に使えぬだろう」
「……まほうが」
完全な脱力、全てを失った抜け殻のように。
だがそれも直ぐに元通りになる。
「主殿は特殊であろう、血ではなく魂に宿る物。 我等はそう判断した」
「……え?」
「主殿の属性は恐らく『虚無』、魔法が何時も失敗するのは使用に適していない呪文を唱えているからか。 故に使えぬ、主殿から得た情報ではそれが一番濃厚な線だと思われる」
「貴女の血を手に入れても意味は無いのよ。 わたしたちは『血』を媒介とするのだから、『魂』を媒介とする魔法を使えないの」
紅朔が大きく欠伸をしながら背伸び。
「きょむ? わたしが、きょむ? あの、伝説の、始祖ブリミルが使ってた、あの『虚無』!?」
「その可能性が最も高い、しかし属性が判っても使うのはかなり難しいであろうな」
「何でよ!」
「『呪文』、どのような魔法があるか分からぬし、それを使用するための呪文をどうやって詠唱するのだ? 知らぬ物を唱えよと言われても出来はすまい、頂点に経つ始祖も抽象的な描写しか残されてはおらぬし、手に入れるのは絶望的だと思うのだが」
「……そんな、わたし、魔法が使えないの?」
「六千年、それだけの年月を経て残っている物など極小数、もしかしたら存在しないかもしれん」
「そ、んなぁ……」
ボロボロと、大粒の涙がルイズの頬を伝い始める。
すかさず九朔がハンカチを取り出して拭う。
「主殿、絶望するのはすべき事をしてからで十分間に合う。 まずは縁の品を探してみてはどうだろうか」
「……つ、う、すん、そうよ、ね……。 それからでも、遅くは無いわよね」
「わたしたちの出自を信じず、わたしたちが出した可能性は素直に信じるのね。 全く、愚かしいったらありはしない」
「うるさい! ちゃんとした魔法が使えるって言うなら何でもするわよ!」
「なんでも? なんでもしちゃうの?」
「な、なんでもよ!」
それを聞いて紅朔はにやぁっと笑みを作る。
「確か王家には『始祖の祈祷書』があった筈よねぇ」
始祖の祈祷書、数百数千の紛い物があると言われる書物。
ある豪商が、ある大貴族が、ある小国の王が、皆が本物だといって書を所持している。
本物だと主張しているだけで、それが本当に本物だと言う証拠を提示できていない時点で偽物だろうが。
トリステイン王国にある始祖の祈祷書も同類の物かもしれん、余り期待しない方が良いかもしれないな。
「国宝じゃないの、そんな物どうやっても手に入れられないわよ!」
「さぁ、どうかしら? 貴女は近い内にそれを手に入れるかもしれないわねぇ」
ククっと笑い、またベッドに寝そべる。
「なんですって!? どう言う事よ!」
「どう言う事かしらねぇ」
「恐らくは、何かあるかも知れぬと言う事」
「だから! 何があるってのよ!!」
怒鳴るルイズの声を聞き流しながら、九朔は物思いに耽る。
運命が回り始めた、いや、何者かが回し始めたか?
そう考えて、此度の事も奴が関与しているのかとも考える。
「主殿、過去にも似たような人物が居たかも知れぬ。 無論、今の主殿のように魔法が使えなく、この世界の生物以外を召喚した事例が恐らくはあったであろう」
「………」
「その者たちはそこで終わった可能性が、いや、終わっていたのだろう。 虚無の呪文を知る術が無かったであろうし、生涯魔法が使えず主殿のように中傷され続け無念の内に没したはず」
「う……」
ゴクリと、ルイズが九朔の言葉に息を呑む。
ありありと想像できるのだ、ずっとこのままで、両親の期待に応えられず魔法が使えぬ『ゼロ』と馬鹿にされ続けて終わる人生が。
「その者たちと比べ、主殿の環境は『整っている』。 虚無であると言う可能性を告げる我等、そして姫と幼馴染であり、始祖の祈祷書を手にする事が出来る可能性が僅かばかりではあるが可能性がある。 さじ加減では主殿は虚無に目覚める可能性があるということ」
「じゃあ、じゃあ私は!」
「……それが問題なのだ、何故ここまで『整っている』のか。 六千年という膨大な時間の中で、何故他の『虚無のメイジ』が現れなかったのか。 始祖ブリミル以外の虚無のメイジが六千年の間に現れたという話は聞いた事無いであろう?」
世界が違う以上、邪神が介入出来ぬ因果が有る訳でも無し。
世界を覆う結界は何なのか、詳しく知られざる虚無とは何なのか。
持たぬ方がおかしい疑問が幾つか浮かんでいる、これが邪神の介入ではなくただ世界の謎としてあったならば良いのだが……。
「それはその人たちの運が無かっただけじゃない? 私がついているだけよ!」
「だと良いが、『何者』かの手によって『覚醒』するように仕向けられているようにしか思えないのだ」
「そんなの、どうやって運命なんて操るのよ!」
「……先ほど言った『邪神』、奴ならばこの程度幾らでも手を加えられる。 何か目的があって……いや、何も無いかもしれんか」
「考えすぎじゃない、何でもかんでもそいつのせいにするってのは良くないわよ!」
「杞憂であれば良いのだがな」
対象の面白い反応を見れるなら、嬉々として回りくどい手を打ってくる邪神。
奴の性根の悪さなど身に染みている、邪神が関わる可能性が露ほどにもあれば警戒せずには居れん。
「……あんたたちが魔法を使えるってのは分かったわよ、それじゃあ魔術って何なのよ。 魔法とは違うんでしょ? まさか呼び方だけが違うってんじゃないでしょうね?」
「魔術とは外道、異界の神々から知識を得るための物」
「げどう? 神々の知識?」
「本来人が扱えないモノを、扱えるようにした物だと思ってもらえればよい」
「例えば?」
「大衆的なものだと異形召喚などがあるな」
ズルリ、そう言った表現が似合う存在が九朔の影から這い上がってきた。
半透明のゼリー状、その表面に半分埋まる目玉が一つ。
「てけり・り」
その不定形な、軟体生物を見てルイズは一瞬で引き込まれた。
ぐにゃりぐにゃりと、軟体の理解不能で触手っぽい物を伸ばす奇形の小刻みに揺れて柔らかそうな這いずるオレンジ色で理解不能のプルプルギョロリと目玉が踊ってよく分からない向こう側が透けて見える理解できない何かがこっちを見て
「あれ?」
「主殿、気が付かれたか」
「……あれ? なに? 何か……」
気が付くとベッドに寝ていた、何とか起き上がり部屋を見回す。
『あれ』が居ない、その事にほっと安堵する。
……『あれ』? 『あれ』って何?
「ショゴスで逸るとは思いもしなかった、申し訳ない」
「しょごす?」
「主殿が見た不定形生物だ、小さな狂気を孕んでいたが……予想以上に耐性が低かったようだ」
ばつが悪そうな表情の九朔。
狂気? 耐性?
「『あれ』、一体何なのよ。 なにか、よく分からない……」
気分が悪くて大きな声が出せない。
何かよく分からない、分かっちゃいけない。
上手く考えられない、なにこれ。
「人間ではない『古のもの』が作り出し使役していた奉仕種族、無論自然発生した生き物ではない」
「……あれなに? しょごす? ショご……、ショゴスね。 なにか、言葉にしにくいわ……」
「これが魔術の本質、理解できない物を理解し、人が通るべきではない道を通る、故に外道と呼ぶ」
「あんなのが一杯あるわけ?」
「あれは最も優しいものだ、深くなればなるほど狂気が満ちる。 もし間違って神柱にでも触れれば、一瞬で魂が犯されるだろう」
あれで優しい? これ以上ってのが全然想像できない……。
「プライドは鎧じゃないわ、ただの虚勢に過ぎない。 むき出しの魂を叩かれて平気な人間なんて居ないわ」
ベッドに寝たまま、背を向けて紅い方が言う。
「この世界は怪異が少ないのであろう、防禦を怠っても仕方が無い」
「良いことよねぇ、誰であろうと幾らでも覗き見ることが出来るしぃ、幾らでも仕込む事が出来るわねぇ……」
「紅朔、よもや……」
血を媒介にした『枝』。
紅朔が望む時に人を操る『枝』。
魔術的防禦所か、簡単な精神防壁すら薄いこの世界の住人。
『枝』が付けられた人間に、ほんの少し魔力を流すだけで簡単に人が堕ちる。
最強と名高い魔導書ネクロノミコン、その原書である『キタヴ・アル・アジフ』直下の写本であるダイジュウジクザクならば容易い。
「まだ付けてないわよぉ」
「知られぬからと言って無闇に覗くべきではない」
「情報はとても大切よ?」
「知られたくないものもあるだろうに、情報の取捨選択を徹底すればよかろう」
応えずひらひらと手を振る紅朔。
「はぁ……、全く。 主殿、少なくとも魔法は魔術より安全である事には違いない、好奇心で手を出すと必ずや痛い目に合う」
「……身に染みたわよ」
九朔が言う通り好奇心でどのような物か聞いた結果が前後不覚。
そんな危ない物に懲りず手を出すほど馬鹿ではなかったルイズ。
「……問題はどうやったら私が魔法を使えるかって事よ、あんたが虚無かもしれないって言ったんだから責任持ちなさいよね」
「確かにそうではあるが、実際問題呪文が記されている可能性がある祈祷書。 それを手に入れる可能性は我が動くより、主殿が行動したほうが手に入れやすいと思うのだが」
「姫様に『始祖の祈祷書ください』って言っても貰える訳ないじゃない!」
「ならば如何様に? 我に盗んで来いと?」
「……うーん」
「可能性を提示したからって、律儀に付き合う必要ないんじゃなあい?」
「しかし……」
「可能性は『可能性』、確率であって『確立』じゃなぁい。 実はこのピンクブロンドが虚無と言うのは嘘で、ただ弄んでいるだけだったらーって、ねぇ?」
ベッドから浮き上がりつつ、紅朔が哂う。
「は? なにそれ!?」
「いきなり怒鳴ってどうしたの? あるじどのは私たちの話を信じたんじゃなかったの?」
「っ! あんたが言うとイラつくのよ!」
「あらあら、騎士殿だけは信じるのね」
「うるさい! あんたはいい加減口を閉じてなさいよ!」
「こわいこわぁーい、魔法が使えない子はすぐ怒っていやぁねぇ」
「くっぬぅ!」
紅朔の軽い挑発にすぐ乗り、怒りに任せて杖をとるルイズ。
そんな様子を見て紅朔はキャハハと哂いながら飛び、窓から出て行く。
「主殿、制御が上手く出来ぬのであるから……」
「ファイアー・ボール! エア・カッター! 当たれ! 当たれ!」
追いかけるように窓枠に手を掛け、ルイズは数撃ちゃ当たると言わんばかりに杖を振る。
狙ってはいるものの全く狙う場所ばかり、つまり紅朔にかすりもしない。
あまつさえ学院の壁やら地面で爆発が起こっていた。
「……煽るなと申したのに」
窓の外から聞こえてくる爆発音と笑い声、それを耳に入れながらため息を付いた。
強大な怪異よりも、ルイズや紅朔を相手にするほうが精神的に疲れる九朔であった。
以上で投下終了です
九朔の九郎に対する呼び方、父上じゃなくて親父殿でした
乙〜
ショゴスで気絶は弱すぎるwナイトゴードンあたり呼んだら余波だけで
狂い死にしかねんな
>>359 >乙〜
>ショゴスで気絶は弱すぎるwナイトゴードンあたり呼んだら余波だけで
>狂い死にしかねんな
>ナイトゴードン
>ナイトゴードン
>ナイトゴードン
発狂した場合は教会でお布施をして治してもらうしか。
少し歳を取りますけど。
ゼロ魔世界じゃ目立ってはいないけど
1巻で描写された召喚された使い魔にはかなり異常なのがいるので、
ショゴス程度なら平気なんじゃ無いかなあ
>>359 ナイトゴーントだ。
実際のクトゥルーガイドとか見た絵ではショゴスも不気味なんだがねw
ナイトゴーントはクトゥルー神話の中じゃショゴス以下の小物だろうに・・・
名称間違いをあげつらうのは止そうぜ
今のところ、双剣氏のとこでは全員平気っぽいな。
SAN値チェック大丈夫なのか、あの世界・・・?
366 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:28:25 ID:tnDcHu3a
アノンの法則です
予定が無いようなら30分辺りから投下します
367 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:30:50 ID:tnDcHu3a
ここは学院長室。
コルベールは、泡を飛ばしながら、この学院の長であるオスマンに、説明していた。
その手には、ある使い魔のルーンのスケッチと、一冊の古ぼけた書物。
「では、君はミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の少年が、始祖ブリミルの用いたという、使い魔『ガンダールヴ』だというのじゃな?」
オスマンはスケッチと書物を、交互に見つめた。
「そうです! あの少年の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じなのです!」
「ふむ……。確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、ただの平民だったその少年は、『ガンダールヴ』になった、ということになるんじゃろうな」
「いえ、ただの平民というと……」
「なんじゃね、コルベール君。何か気になることでも?」
「確かに彼は魔法が使えないようでしたが、全身に刺青のような模様があり、どうもこの辺りの人間ではないようなのです」
「ほう?」
「ひょっとすると、我々の知らない土地の民族ではないかと……」
「我々の知らぬ土地……ロバ・アル・カリイエか。しかし、それだけで、そう決めつけるのは早計かもしれん」
そんな風に話していると、学院長室のドアがノックされた。
「私です。オールド・オスマン」
声の主は、ミス・ロングビル。
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
オスマンとコルベールは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
オスマンの目が、鋭く光った。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
コルベールは、つばを飲み込んで、オスマンを促した。
「オールド・オスマン」
「うむ」
オスマンが杖を振ると、壁にかかった秘宝『遠見の鏡』に、決闘の最中のヴェストリ広場の様子が映し出された。
368 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:31:32 ID:tnDcHu3a
静まり返ったヴェストリの広場。
ギーシュ自慢のゴーレム、六体のワルキューレは、十秒足らずで壊滅した。
魔法も使えない、武器すら持たない平民によって。
いや、あれは平民などではない。
あれは、悪魔だ。
少なくとも、相対するギーシュには、自分のワルキューレを軽々と屠ったアノンが、悪魔の化身に見えていた。
悪魔は、ワルキューレの残骸を踏み越え、腰を抜かしているギーシュの首を掴んだ。
ギーシュの体が、腕一本で持ち上げられる。
「ぐぅ……!」
「ボクの勝ちだね。ええと……ギーシュくん?」
七体のゴーレムの錬金で、すでにギーシュの精神力は尽きている。いつの間にか杖も手放していた。
ギーシュは悪魔の手を引っかき、足をバタつかせて何とか逃れようとしたが、万力のような力はまったく緩まない。
「決闘の敗者は勝者に何をされても、文句は言えないよね?」
ギーシュの恐怖心を掻き立てる様に、悪魔が告げた。
「…じゃ、悪いケド……」
(殺される…!)
ギーシュは恐怖と絶望に、目を瞑る。
「いただきます!」
「え?」
あまりに場違いな台詞に、ギーシュは思わず、目を開けた。
目の前には、大きく開かれた悪魔の口が迫り―――
「待ちなさい!」
静まり返っていたヴェストリの広場に、少女の声が響き渡った。
369 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:32:54 ID:tnDcHu3a
声のした方を見ると、ルイズが人ごみを掻き分け、広場の真ん中にたどり着いたところだった。
「やあ、ルイズ」
アノンは大きく開いていた口を閉じて、ギーシュを宙吊りにしたまま、いつもと同じ調子で答えた。
ルイズは、よく通る声でアノンを怒鳴りつける。
「その手を離しなさい!」
「なんで? 決闘には勝ったんだから、彼をどうしようとボクの勝手だろ?」
「貴族同士の決闘は、禁止されてるのよ!?」
「ボクは貴族じゃないよ。ここじゃボクは平民なんだよね? 平民と貴族の決闘は、禁止されてるのかい?」
ルイズは言葉に詰まる。
「そ、それは、そんなこと今までなかったから……。と、とにかく! ギーシュを離しなさい!」
「断る」
ルイズの命令を真っ向から拒否して、アノンはギーシュに向き直った。
「さて改めて、いただきま……」
「アノン!!!」
怒鳴り声が響き、アノンのすぐ横の地面が爆発した。
パラパラと砂が舞う。
ルイズはゆっくりと、杖をアノンに向けた。
「もう一度言うわ。ギーシュを離しなさい、アノン」
今度は静かに、怒気をはらませたルイズの声。
辺りの空気が張り詰める。
睨み合う二人。広場に集まった者達は、物音ひとつ立てることができずに、それを見つめた。
「……わかったよ。ボクは、キミの使い魔だったね」
永遠に続くかと思われた睨み合いで、先に折れたのはアノンだった。
肩をすくめて、手を離す。
地面に落とされ、尻もちをついて咳き込むギーシュと、未だ険しい顔のルイズ。
アノンは二人に背を向けて歩き出した。
だが、すぐに振り返り、
「そういえば、キミはさっき初めて、ボクを名前で呼んだね。ルイズ」
そう言い残して、アノンは去っていった。
「大丈夫? ギーシュ」
「ああ。けど、死ぬかと思ったよ」
ルイズに助け起こされて、青い顔で答えるギーシュ。
ルイズが来るのが、もう少し遅かったらと考えると、ぞっとする。
「決闘の理由は、聞いてるわ」
心底申し訳なさそうに、ルイズが言った。
「主の不始末が使い魔の不始末なら、使い魔の不始末は主の不始末だわ。使い魔に代わって、私が謝罪する。ごめんなさい、ギーシュ」
ルイズは深く、頭を下げた。
だが、ギーシュは首を横にを振った。
「よしてくれ。自ら挑んだ決闘に負けて、その上謝罪までされたら、僕は……」
そう言ってギーシュは、俯いたまま背を向け、去っていった。
その背中を見て、ルイズは目をごしごしとこすった。
大切な物を無残に踏み砕かれ、挑んだ決闘にも負けた。その上、相手の主に命を救われたのだ。
それがどれだけ、彼の誇りとプライドを傷つけたかと思うと、申し訳なくて、泣けてしまった。
そして自分の使い魔の実力も、その性質も把握できずに、こんな事態を引き起こした自分が、ひたすらに情けなかった。
370 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:33:43 ID:tnDcHu3a
『遠見の鏡』で一部始終を見ていたオスマンとコルベールは、顔を見合わせた。
「オールド・オスマン」
コルベールの声は震えていた。
「あの少年、勝ってしまいましたが……」
「うむ」
「ドットメイジのミスタ・グラモンでもただの平民に遅れを取るとは思えません。そしてあの動き、あんな平民見たことがない! やはり彼は『ガンダールヴ』……」
オスマンは険しい表情で唸った。
「うむむ……しかし『ガンダールヴ』は、あらゆる武器を使いこなし、主を守ったという。あの少年、武器など使っておらなんだな」
「ドットメイジ相手なら、武器を使うまでもなかった…と言うことでしょうか?」
「だとするなら、武器を持てばさらに凶悪な力を発揮するということになるの」
ゴクリと、コルベールは唾を飲み込んだ。
「ドットとは言え、メイジのゴーレムを圧倒するあの力。いや、それよりも問題なのは……」
コルベールが後を引き継ぐ。
「彼自身、ですね」
「うむ。あの少年は明らかに、戦いを好んでおる。そして、敵の命を奪うことに、躊躇いがない」
「オールド・オスマン。このことは、すぐに王室に報告して、指示を仰ぐべきです」
「それは、ならん」
「どうしてですか? 彼は危険です! 今の決闘もミス・ヴァリエールが止めなければ、どうなっていたか」
「ミスタ・コルベール、『ガンダールヴ』はただの使い魔ではない。あらゆる武器を使いこなし、千人もの軍隊を一人で壊滅させるほどの力を持っておったと伝えられる」
コルベールが頷く。
「はい、並のメイジではまったく歯が立たなかったとか」
「そんなオモチャを、王室のボンクラどもに与えるわけにはいくまい。あやつら、また戦でも引き起こすぞ。宮廷で暇をもてあましている連中はまったく、戦が好きじゃからな」
はっとして、コルベールが言った。
「確かに……学院長の深謀には恐れ入ります」
「それにの、凶暴な使い魔の召喚など、過去にいくらでも例がある。要は主が…ミス・ヴァリエールが、あの使い魔を制御できればよいのじゃ」
「もし、できなければ……?」
「……」
オスマンは、その問いには答えなかった。
「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」
「…はい。かしこまりました」
コルベールは軽く頭を下げて、退室した。
「そのときは……」
学院長室に残ったオスマンは、ひとり杖を握り締めた。
371 :
アノンの法則:2009/07/30(木) 00:35:14 ID:tnDcHu3a
以上です
書き込んでから気づいたけど、ルイズまさかの無詠唱呪文
今度からは気をつけます…
ではまた
どこもかしこも、ナイア様。
というか物語を書いてる連中は広義的な意味でみんなナイアルラトホテップだと思える。
舞台を整え、役者を配し、さじ加減で変わる歴史を紡ぐ。
俺も書くときはナイかユの字のような心持ちで書いてるし。
なにそれこわい
>>372 となると、読者はヨグ=トソースなのか?
修正しないで次から直しても矛盾するだけじゃ……
っと失礼、アノンの人乙です。
まぁ詠唱ルーンを唱えた後、名前を呼んだって事で……。実際ルーンは省かれてることが多いですし。
アノンの人、乙。
本来ギーシュの言っていた台詞をアノンが言ってるのが新鮮だったです。
オスマンはあんま悩むなよ。
で、毒の爪の使い魔の第49話が書き終わりました。
予定などが無ければ5分後辺りから投下開始します。
>>371 投下乙です。
よく考えたらギーシュに非が無いパターンて結構珍しいのね
では、そろそろ投下開始します。
唸りを上げるドリルを構え、バグポッドDが突進する。
ジャンガとタバサは同時に散開。動きの鈍重な土ゴーレムがその場に残る。
そのゴーレムに向かってドリルが突き出された。
胸へと叩き込まれたドリルは、しかしゴーレムの手に止められる。
「無駄さ。このまま、また投げ飛ばしてやるよ!」
そう言うフーケに対し、ガーレンは余裕の表情だ。
「フン! それはどうかな!?」
ガーレンがボタンを押すと砲身に光が集まる。
フーケは目を見開く。――この距離で”あれ”は不味い!
だが、鈍重なゴーレムに咄嗟に素早い行動をさせるのはどうにも不可能だった。
砲身から極太のレーザーが放たれ、ゴーレムを飲み込む。
一瞬で上半身を丸々消滅させられ、呆気なく崩れ落ちる。
フーケ自身はレーザーが放たれる直前、ゴーレムの肩から飛び降りている。
そのフーケ目掛けてガーレンはドリルを叩き込む。
しかし、ゴーレムと違ってフーケ自身は身軽だ。その一撃は容易くかわされ、ドリルは空しく地面を抉る。
そこへタバサのジャベリン、ジャンガのカッターが飛んで来た。
だが、頑強な装甲に阻まれ、決定的なダメージは与えられない。
ガーレンはコンソールのボタンを押す。背部ハッチが開き、再び多量のガレンビートルとガレンヴェスパが飛び出す。
自立回路による自己判断で、虫型メカはジャンガ、タバサ、フーケ、そして上空のシルフィードに襲い掛かる。
しかし、先程ならばまだしも、今の状況でこんな物に遅れを取る道理は無い。
ジャンガは爪で薙ぎ払い、タバサは『ブレイド』を掛けた杖で斬り、フーケは先程同様『錬金』で土くれに変える。
ザバーーーンッ!!
突如、空から滝のように大量の水が降って来た
その水に巻き込まれたのか、地面にはずぶ濡れで紫電を撒き散らしながら横たわる、虫型メカの姿が在った。
アンリエッタが唱えた水魔法による擬似的な滝だ。
シルフィードも(火竜には及ばないが)ブレスを吐いて応戦した。
虫型メカによる攻撃が効果を見せない為、ガーレンは再度ボタンを押す。
砲身に輝きが集まり始める。
それを見たジャンガは叫ぶ。
「タバサ!」
「解った!」
タバサは二つ返事で呪文を唱える。杖の先端に巨大な氷の槍が現れる。『ジャベリン』だ。
月光を受けて輝くそれを、タバサは発射体制を整えつつある砲身目掛けて飛ばす。
虫型メカが止めようと氷の槍に群がるが無駄だ。
輝きが臨海に達し、レーザーが発射されようとした瞬間、氷の槍が砲身に突き刺さった。
そして巻き起こる大爆発。
溜まったエネルギーが砲身を破壊された為に行き場を失い、暴走した結果だ。
爆風から顔を背けていたジャンガ達は爆風が収まるや、顔をバグポッドDに向ける。
バグポッドDはボロボロだった。あれほどの威力のレーザーのエネルギーの暴走は、
頑丈なボディにも深刻なダメージを与えていた。砲身は粉々に砕け散り、ドリルもボロボロ。
コックピットは辛うじて無事のようだが、どう見ても戦闘続行は不可能だろう。
「フン、下らん真似をしてくれる。だが、我輩のバグポッドDを甘く見てもらっては困る!」
ガーレンは余裕の態度を崩さない。
言い放ち、ボタンを押した。
すると、バグポッドDに変化が起きる。
ガシャン、ガシャンと音を立てながらボディが組み替えられていく。
壊れたドリルが引っ込み、青い鎌状の腕が出る。
黒いボディが赤くなり、新たな一つ目が飛び出す。
音が聞こえなくなった時、バグポッドDはその姿を変えていた。
『バグポッドD・スパイダーモード』――クロウラーモードから変形したバグポッドDの別形体。
この形体からクロウラーモードへの最変形も可能。
ただの色違いのようだが、腕がドリルから刃に変わっているなど細かい変更点はある。
重武装で動きの鈍重なクロウラーモードと違い、若干装甲が薄めだが動きが敏捷になっている。
主武装は、両腕の鎌状の刃をブーメランのように飛ばす『ガレンブレード』。
また、名前のとおり機体後部から電磁ネットを張り巡らし、敵の動きを制限する。
ガレンヴェスパ、ガレンビートルの射出機能は無いが、
両腕の刃を機体側面に移動させ、コマのように回転して体当たりする『バグポッドスピン』も強力だ。
変形したバグポッドDのコックピットでガーレンは叫ぶ
「これも見せる事になるとはな…、侮れぬ奴らだ」
「中途半端なやり方で俺を殺せるわけねェだろうが、ボケ!」
ジャンガはせせら笑う。
「そんな口が叩けるのも今のうちだ」
バグポッドDが走り出す。愚直なまでに突進を繰り返していた先程までと比べ、
打って変わったトリッキーな動きである。
ドリルの代わりの二本のブレードが次々に振り下ろされる。
それらによる斬激をジャンガとタバサは毒の爪やブレイドの刃で弾き、受け流す。
その時、二度目の地響きが起き、フーケのゴーレムが姿を現した。
がら空きな背後にゴーレムの巨大な拳が突き刺さる。
インパクトの瞬間、拳は鉄に変わりその威力を増す。
ボゴン!
大きな音がし、バグポッドDの装甲がへこむ。
スパイダーモードの薄い装甲では、ゴーレムの一撃は完全に相殺し切れないようだ。
「あはは! 随分と脆くなってるね?」
「粋がるな、コソドロ風情が」
ガーレンはボタンを押す。
二つの鎌状の両腕が胴体を離れ、ブーメランのように空中を飛ぶ。
回転しながら飛ぶ刃はゴーレムとフーケを襲う。
フーケはゴーレムの腕の陰に隠れ、飛んできた刃をやり過ごす。
ガキン! ガキキン!
二つの刃がゴーレムの腕に弾かれる。
鋭利な刃により傷が出来たが、それらは直ぐに再生する。
「フム、切断はあまり効果が無いな? ならば…」
ガーレンはバグポッドDを走らせる。
無軌道なルートでゴーレムの周囲を走り回った。
「何のつもりだい?」
意味不明な行動にフーケは怪訝な表情で言う。
その質問にガーレンは答えない。
無視された事にフーケは軽く憤りを覚えた。
走り回るバグポッドD目掛けて、ゴーレムの腕が伸びる。
しかし、その腕は何か見えない壁の様な物に遮られてしまう。
「何だい、こいつは?」
フーケは驚愕する。いつのまにか、ゴーレムの周囲が青白い光の様な物によって囲まれている。
それは鋼鉄の壁のようにビクともしない。
バグポッドDの動きが止まる。コックピットではガーレンが笑っていた。
「グハハハハ! スパイダーモードの電磁ネットのお味は如何かな? 暫しそこで大人しくしていろ」
「ちっ」
フーケは舌打し、ゴーレムに電磁ネットの障壁を殴らせる。
しかし、やはり障壁は破れなかった。
障壁と格闘するフーケを無視し、ガーレンはジャンガとタバサの方に意識を向ける。
と、巨大な『アイス・ストーム』がバグポッドDに向かって飛んできた。
アイス・ストームはバグポッドDを飲み込んだ。
凄まじい冷気の突風がバグポッドDの装甲を凍てつかせ、傷つけていく。
だが、それで破壊されるバグポッドDでもない。
高い運動性でアイス・ストームを突き破った。
タバサは既に三体の遍在を作り出している。
ジャンガも同様に分身を出している。
バグポッドDの二つのブレードが飛ぶ。
敵を切り裂かんとするそれを、タバサとジャンガはあっさり避ける。
そのまま本体へと突き進む。
ジャンガのカッター、タバサの『エア・カッター』が飛ぶ。
バグポッドDはトリッキーな動きで巨体でありながら器用にかわす。
戻って来たブレードが再びバグポッドDとドッキングする。
すると、ブレードが機体の側面に移動し、一つ目のパーツが機体内部に収納される。
そして、バグポッドDはそのまま高速回転を始めた。
その動きにタバサの表情が強張る。
「何?」
「食らうがいい! 『バグポッドスピン』!」
ガーレンの叫びが響き、高速回転したバグポッドDが二人目掛けて突撃する。
慌てて二人は分身と共に散開するが、タバサの遍在が二体切り刻まれる。
ジャンガがカッターを放ち、タバサが『ウィンディ・アイシクル』を放つ。
だが、高速回転するバグポッドDはその攻撃を尽く弾き返す。
「グハハハハ! 無駄だ無駄だ無駄だ! そのような貧弱な攻撃でこのバグポッドスピンが止められるものか!」
ガーレンの笑い声を聞きながら、ジャンガは舌打する。
「チッ、メンドくせェ」
敵の攻撃を避けながら考える。
高速回転するバグポッドDに対して、何か有効な打撃を加えられないものか?
…やはり、コックピットが一番脆そうではあるが、そうそう狙わせてはくれないだろう。
さて、ではどうするか…。と、そこでジャンガは閃いた。
ジャンガは無意味な攻撃を繰り返しながら、タバサの傍に寄る。
「タバサ嬢ちゃんよ…、精神力どれだけ残ってる?」
「残り少ない。新たに遍在を作り出す余裕は無い」
「『ジャベリン』は?」
「一発位なら…」
その答えにジャンガは笑う。
「上等。いいか、良く聞け」
「?」
ジャンガとタバサが何かを話すのを見て、ガーレンはせせら笑う。
「ククク、何を考えているか知らんが、何をしようと無駄な事だ」
操縦桿を倒す。バグポッドDが加速し、二人へと突っ込んでいく。
ジャンガは無数の分身を生み出し、バグポッドDへ突っ込む。
タバサは残った遍在と共にその場を離れた。
ガーレンはタバサを一瞥し、直ぐにジャンガの方へ視線を戻す。
ジャンガは数え切れないほどのカッターを放ち、バグポッドDへと叩き込む。
だが、やはりそれらの攻撃は回転する刃に掻き消される。
ジグザグに動き、不規則な軌道を描きながらバグポッドDは突進する。
一体、二体と分身は切り裂かれ、消滅していく。かく乱の意味で生み出した分身はまるで役に立たなかった。
ついに残すはジャンガ本人のみとなり、バグポッドDの動きも早くなる。
「グハハ、どうした? それで終わりか!?」
「……」
何も答えないジャンガにガーレンは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「どうやら本気で何も手が無いようだな? シャルロットも逃げ出し、フーケやアンリエッタは手を出せずにいる。
貴様の命運も尽きたな、ジャンガ!!!」
「…一つ、言いたい事がある…」
「ほぉ…、何だ?」
「真上ががら空きだ」
「何ッ!?」
慌てて上を見上げるが…遅い。
上空にはタバサが『フライ』を唱えている遍在に抱えられて浮いている。
その杖の先端には、残った精神力の全てを注ぎ込んで作った、巨大な氷の槍が在った。
タバサが杖を振り下ろすと同時に、氷の槍は落下する氷柱の様にバグポッドDへと向かう。
氷の槍の重量と落下速度が合わさった結果、強化ガラスも物ともしない威力が生まれた。
氷の槍はガーレンごとコックピット、そしてバグポッドDの本体を貫く。
一瞬の間があり、バグポッドDは大爆発を巻き起こした。
破片が降り注ぐ中、ジャンガは袖で顔を覆い、爆風から身を守る。
暫くして、顔を上げるとバグポッドDが存在した場所には巨大なクレーターのみが存在していた。
自分の機械兵器ごと吹き飛んだガーレンに対し、しかしジャンガは特に何かを感じたりはしなかった。
「これで終わりだな」
一言そう呟く。
そこへ、ゴーレムに乗ったフーケがやって来る。
「どうやら、片付いたみたいだね?」
「ああ、お陰さまでな」
ジャンガはニヤリとした笑みを向けた。
と、傍にタバサが舞い降りてきた。タバサを下ろすと遍在は消え去る。
「お前もご苦労だったゼ、タバサ嬢ちゃんよ?」
タバサは小さく頷いた。
空の上から戦いを見守っていたアンリエッタも安堵の表情を浮かべていた。
シルフィードも主人が勝った事に喜びを感じ、きゅいきゅい、と嬉しそうな声を上げている。
「これで終わったのですね…、全て」
「ああ、そうだ」
耳元で囁かれる声。アンリエッタの両目が見開かれる。
――振り向く暇も無い。胸に強い衝撃が走り、アンリエッタは喉元に何か熱い物が込み上げるのを感じた。
――同時刻:ガリア王国・グラン・トロワ――
一番奥に位置する部屋で、ガリア王ジョゼフは部屋中に作られた十メイルには達しようかという、
巨大な箱庭を見ていた。箱庭はハルケギニアの地図を模した物で、建物などの模型が立っているだけでなく、
地形には起伏がつけられ、山や川、丘や森、湖などの細部に至るまで非常に丁寧に作られている。
と、その箱庭の中をジョゼフでない誰かが覗き込む。
その人物は暗闇に浮かび上がって見えるほど暗い、漆黒のマントを身に纏っている。
随分と小柄なその人物は、フワリ、と浮かび上がる。
飛び跳ねたわけではない…、文字通り”浮かんでいた”。
フワフワ、と浮かびながら箱庭を見回す。
「これって、ホント良く出来てるよね…」
その口から発せられた声は年端も行かない少女の物だった。
ジョゼフは少女の言葉に嬉しそうに答える。
「当然だ! 国中の細工師を呼んで作らせ、完成までに一ヶ月も掛かったのだ!」
「ふぅ〜ん…。ねぇ、それよりもさ…」
少女が尋ねる。
「何だ?」
「このまま、あのガーレンのおじちゃんに全部やらせるの?」
ジョゼフは考え込むように顎に手を添える。
「そうだな…、逆転劇は既に拝見し、欲しい物も既に余の手の内。
このまま”詰め”の全てをガーレンに任せても良いが…面白みに掛けるな。フム…」
暫し考え込み、ジョゼフは空中に浮かぶ少女にサイコロを二つ放る。
少女はそれを受け取る。
「何、これ?」
「それを振るのだ。それの出た目で結果を決める」
「へぇ〜、面白そう♪」
少女は楽しげな声で笑いながら、サイコロを振った。
箱庭の中を転がったサイコロが止まる。
出た目を見て、ジョゼフの顔が喜びの色に染まる。
「十二か!? ここでその目が出るとはな!! 何とも言えぬ気分だ!」
ジョゼフは笑いながら新たな駒を箱庭に置く。
その駒は怪物の形をしていた。
少女は不思議そうにジョゼフを見つめる。
「”あれ”を使うんだ…。でも、ジョゼフのおじちゃん大丈夫〜?」
「無論だ! 余は担い手だぞ? ”伝説”の担い手だぞ? 出来ぬはずがない」
「ふ〜ん……ま、いいけど。それじゃ、行くんだね?」
少女の言葉にジョゼフは頷く。
「ああ。…と、その前に」
ジョゼフは大臣を呼ぶ。
子男が緞子の影から現れ、頭を下げた。
「艦隊は既に召集してあるのだな?」
「はい」
「ならば、今直ぐにアルビオンに向かわせろ。”敵”を残らず吹き飛ばせ。
余は暫しここを留守にする。後の事は任せるぞ」
「御意」
大臣は淡々と返事を返し、退室していく。
少女は空中で寝そべるような格好をし、小さくため息を吐いた。
「ジョゼフのおじちゃん、嫌われてるみたいだね〜?」
「構わぬ。余の言う事を聞いてくれるのであれば好かれなくとも良い」
「そう。じゃ、行くよ?」
「ああ、頼もう」
少女は姿勢を正し、身に纏うマントを大きく広げる。
そのままマントを翻すように振った。
次の瞬間、部屋の中には誰も残っていなかった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上で投下終了です。
話の区切りの関係で今回は短めです。
ではまた次回。アディオス。
乙です
せっかくなので 気の向くままに こっちも投下
遊☆戯☆王デュエルモンスターズGXのユベル
未知の土地を訪れた者が最優先で行わなければならないこと。
それは情報収集だ。
それは、異国ならぬ異世界を訪れた場合でも変わらない。
何よりも まず、自分の訪れた世界のルールを知らなければならない。
ルールと言っても、その土地の住人たちの価値観・常識のことだけではない。
むしろ異世界を訪れた場合に重要なのは、
その世界の成り立ち・在り方の根底にかかわる法則や仕組みについてだ。
十二次元宇宙には、カードゲームの勝敗が
そのまま対戦者の生死に直結するような世界も存在していた。
恐らく 自分の知る十二次元宇宙の さらに外の次元に存在するであろう、
このハルケギニアとかいう、魔法使いたちの世界……
できるだけ早く この世界のことを把握しておかないと、
思わぬところで足元をすくわれる危険がある。
幸いなことに、自分の目的は 自分がいちばんよくわかっている。
どんな世界に在ろうと、自分が為すべきことは ただ一つだ。
なぜ、自分がこの世界に特殊召喚されたのか……いや。
なぜ、自分が開いた次元の扉が この世界に通じたのか……
その答えは明白だ。焦ることはない。
「彼」は この世界に いる……!
…………
桃色の髪の少女が、トリステイン魔法学院の廊下を闊歩している。
(……そう。まずは、この世界のことを よく知っておかないとね……)
この世界のルールについて、まず 確認しておかなければならないのは、
自分の持つ「力」が この世界において どの程度 通用するか ということだった。
この世界でもデュエルモンスターズのカードの力が使えるのなら、
これまで見てきた世界と同じように事を運べばいい。
だが、もし そうでないとしたら……?
そんなことを考えながら、
1階から順に1フロアずつ校内を散策して、4階に辿り着いた頃……
(……!?)
突然、何かの気配を感じた。何か…自分の知ったモノの気配を。
(これは……まさか……!)
桃色の前髪の下に出来た深い影の中で 目を妖しく輝かせながら、
少女は自分の感じた気配のほうを目指す。
気配を追って辿り着いた場所は、魔法学院本塔5階。
宝物庫の扉の前だった。
(……間違い無い。
この中には、デュエルモンスターズのカードがある。
40枚。プラス15枚……さらに15枚。デッキか……)
なぜ、こんな所にデュエルモンスターズのデッキがあるのはわからない。
だが、そんなことはどうでもよかった。
(この世界にもデュエルモンスターズは存在する……!)
そのとき、少女の頭の中に声が響いた。
(私は…もう『ゼロ』じゃない……!)
「……ッ! もう目が覚めたのか……!」
宝物庫の扉を眺めていた桃色の髪の少女の雰囲気が変わった。
先程まで妖しく金色に輝いていた目は 普段どおりの色に戻り、
前髪の下に差していた深い影も いつのまにか消えている。
そして、本塔5階 宝物庫の正面……
桃色の髪の少女:ルイズが、扉の方を向いて ぼうっとしたまま直立している。
その背後では、彼女の使い魔として召喚された亜人:ユベルが、腕組みをして少女を見下ろしていた。
***
ルイズは たった独り、闇の中に沈んでいた。
貴族でありながら魔法が使えないという劣等感……
どれだけ一生懸命に勉強しても、
いざ実際に魔法を試してみると、いつも発生するのは失敗の爆発ばかり。
そして いつものように彼女の失敗を囃し立てる罵声と嘲笑。
唇を噛み 拳を握り締めて、屈辱に耐える。
いつものことだ。今さら取り立てて気にすることは無い。
いつか見返してやればいい。
……ふと気づくと、嘲笑が それまでとは違う喚声に変わっている。
ルイズの召喚した使い魔の姿に、生徒たちが騒ぎだしたのだ。
そうだ、思い出した。自分は『サモン・サーヴァント』に成功したじゃないか。
自分は魔法に成功した。
少なくとも「ゼロ」ではない。
(私は…もう『ゼロ』じゃない……!)
気がつくと、ルイズは薄暗い場所…校舎の中…金属製の扉の前にいた。
***
「……やあ」
ルイズの召喚した使い魔…ユベルが、腕組みをして こちらを見下ろしている。
あぁ、私の召喚した珍しい使い魔だ。その事実に やや満足感を覚える。
……が、すぐに何か違和感があることに気づく。
「……!? ちょっ……ここ、どこなの!?
なんで こんなとこに!? 午後の授業は!?」
ルイズが感覚では、いつのまにか屋外から屋内へワープしていたのだ。無理はない。
軽度の疲労感と空腹感まで覚える。
「……ふふふっ、驚いたよ。
キミの意識は しばらく心の闇の中に閉じ込めておくつもりだったんだけど……
まさか自力で這い出てくるとはねぇ」
使い魔は、質問に応えず腕組みをしたまま主人を見下ろし、
ワケのわからないことを言っている。
「心の闇……? って、それより質問に答えなさい!
あっ! 質問と言えば、あんたのことも まだ教えてもらってないわ!
あんた、どういう種族なの? 悪魔族って言ってたけど……」
「あぁ……ボクもキミに訊きたいことは山ほどあるんだ。
どこか落ち着ける場所で、ゆっくり話すとしようか」
優しく語りかけるような低いトーンの女性の声で、ユベルが言った。
そして、宝物庫の金属製の扉のほうを一瞥する。
(……まあいい。
少なくとも、この世界にデュエルモンスターズのカードが存在することはわかった。
あとは、この世界においてデュエルがどう作用するか…だな)
***
使い魔の召喚に成功した その日の夜……
ルイズは自室で、使い魔の亜人:ユベルと質問のやり取りをしていた。
お互いに 一通り質問し終わったあと、ルイズが口を開く。
「つまり……あんたは、そのジュウダイっていう生き別れた友達を探すために
私の召喚に応じてハルケギニアに来たってこと?」
闇属性だの悪魔族だの精霊だのといった部分については
「そのうち わかるよ」と、適当に はぐらかされてしまったが、
とりあえず聞き出すことができた使い魔の素性について確認する。
「あぁ。ボクはいつだって十代のために生きていた。
そして、これからも……」
そう言って ユベルは額以外の目を閉じ、押し黙った。
生き別れた友のことを考えているのだろう。
しかし、せっかく呼びだした使い魔が
主人である自分をそっちのけで、
自分の知らない誰かに対して強い好意を寄せているというのは、
ルイズにとって面白くなかった。
「……ちょっと待ちなさいよ。
『コントラクト・サーヴァント』が成功した以上、
あんたは私の使い魔。で、私がご主人様。
さっきも言ったでしょ。メイジにとっての使い魔は……」
「『一生の僕であり、友であり、目で耳である』だっけ?
それがどうかしたかい?」
「いや! 『どうかしたかい?』じゃなくて!
なんで使い魔が ご主人様を差し置いて
自分の友達のために生きようとしてるのよ!」
自分の攻撃力は0だというユベルの自己申告を聞いたことで
ルイズは少し強気になっていた。
この使い魔は、いかにも強そうで禍々しい外見をしてはいるが、
本人の談によると、攻撃力も防御力も無い……らしい。
なら、仮に この使い魔を怒らせたとしても、
見た目が怖いだけで少なくとも危害を加えられる危険は無いということだ。
それに、この使い魔が本当に危険な存在なら、
召喚した時点で、ミスタ・コルベールが何らかのリアクションを示したハズだ。
「……いい? あんたは私の使い魔になったの!
その友達のことは ひとまず忘れて、使い魔の役目を……」
「なに……?」
「っ!?」
いきなり男性の野太い声が聞こえた。
ユベルの額の目がルイズを真正面から見つめている。
眼球の中に浮かび上がるルーンが痛々しい。
「……ねぇ、ルイズ」
ユベルが声を発する。トーンの低い女性の声だ。
「な…なによ……」
呼び捨てにされたが、この空気で「ご主人様と呼べ」とは つっこめない。
「ボクは別にキミの使い魔になることが嫌なわけじゃないんだ。
キミがそう望むなら、キミがその一生を終えるまで
使い魔の仕事をしてあげてもかまわない。
ボクをここに呼んでくれたのは、ほかでもないキミだからね」
「……そ、そう……? なら…いいんだけど……」
意外なことに、この使い魔は自分に恩義を感じているらしい。
それとも『コントラクト・サーヴァント』の効果だろうか。
「でも……これだけは覚えておくんだ」
野太い男性の声でユベルが付け足す。
驚く…というか むしろビビる ルイズを無視して、ユベルが続ける。
『キミが、ボクと十代の仲を否定しようとするのなら……』
トーンの低い女性の声と野太い男性の声が重なって同時にセリフを紡ぐ。
『ボクはキミを……許さない』
世界を12個ほど滅ぼさんばかりの迫力に気圧される。
こいつのどこが攻撃力0なのか。
「……わ……わかったわ……」
ルイズはなんとなく理解した。
一見 優しげで静かな口調と穏やかな物腰の奥から滲み出す
粘つくような どす黒い感情……
これが「悪魔」の「闇」なのだろうか。
細かい事情は聞いていないが、
おそらくジュウダイというのも ただの友達ではないのだろう。
もっとも、この問題に これ以上 踏み込む度胸はルイズには無かったが。
「それで……」
穏やかな女性の声でユベルが喋りだす。
「さっき聞いた使い魔の仕事について、
もう1度確認させてもらってもいいかな?」
「え? あ、うん……いいわよ」
一応、真面目に働くつもりはあるらしい。
「えっと、まずは『主人の目になり耳になる能力』だけど……」
試しに目をつむってみる。
……真っ暗。何も見えない。
ルイズは、内心 ホッとした。
『コントラクト・サーヴァント』のルーン刻みの際に感じた痛みも、きっと何かの偶然だったのだろう。
昔…というか昨日までの自分なら、自分の使い魔と感覚を共有することについて、大いに喜んだだろう。
だが、今は違った。
さっきの気持ち悪い感情が自分の中に流れ込んでくるとしたら……
想像もしたくなかった。
「ま、まあ…これは別にできなくてもいいわ。
それより……」
「できるよ」
「……え?」
何か不穏な発言が聞こえた気がする。
「い…今、なんて……」
「ボクと感覚を共有したいんだろう?」
「……できるの? いや別にしたいわけじゃないからね!」
「そうだね。キミには教えておいてもいいかもしれない」
そう言うと、ユベルが近づいてくる。
「え? ちょ……」
「ふふふっ……今にわかる」
ユベルがどんどん近づいてきて、
その紫色の肌が視界を覆い尽くしたかと思うと……消えた。
(え……?)
さっきまでユベルがいた場所には、誰もいない。
床・壁・天井が見える。
(どこ……?)
とりあえずベッドから立ち上がって、周囲を見回……せない!?
金縛りにでもあったかのように、体が言うことを聞かない……!
前の投下から最低でも30分は待てよ
常識だろ
(やだ、なにこれ……!? っていうか、どこ行ったのよ……!
ちょっと! 使い魔! ユベルーっ!)
(……ふふっ、ボクならここにいるよ)
頭の中にユベルの声が響いた。
(え? どこ!?)
(どこって……ここだよ)
ユベルの声がそう言うと、ルイズの視界に右手が映りこんだ。
右手は、ルイズ自身のほうを指し示している。
(……! まさか……!)
(そう……今のボクは、ユベルであり…ルイズでもある。
キミは今、ボクと体…いや、すべての感覚を共有しているんだ)
(そんなことが……!)
確かに、使い魔が……主人の目となり耳となるばかりか、手にも足にもなっている。
……だが、これは明らかに間違っている。
(って! 私の体が乗っ取られてるだけじゃない!)
(……まあ、そうなるね)
(違うって! ある意味 合ってるけど違う!
私が言っていたのはこういうことじゃないの!)
(なんだ、違うのかい)
(そう! 違う! とにかく まず、出て!)
(やれやれ、面倒だねぇ……)
体から、何かが抜けるような感覚がしたかと思うと、
ルイズの全身に感覚…体の主導権が戻る。
ユベルはというと、さっきの位置でルイズを見つめている。
「……あっ!」
そしてルイズは、あることに気づく。
「まさか、今日の午後の記憶が無いのは……!」
「あぁ。ボクがキミの体を使って、この学校の中を調べていたんだ」
「やっぱり……! って、あれ?
でも、なんで そのときの分の記憶が無いの?
今のはちゃんと私の意識も残ってたのに」
「簡単なことだよ。ボクは探索のあいだ、キミの意識を封印していた。
だから、ボクを召喚してから しばらくの記憶が無いんだ」
どんな先住魔法か見当もつかないが、トンデモなく危険な能力だ。
ヘタをすれば、自分という存在を乗っ取られてしまう。
「えっと……それは、やっぱり私がユベルの主人だからできることなの?」
「いや。断言はしないけど、たぶん誰に対しても使えると思うよ」
さらに危険度アップ。それとも、ある程度のメイジなら抵抗できるのだろうか?
「……まあ…だいたいわかったわ。
確かに すごい力だけど、できるだけ使わないようにして! いい!?」
「……いいだろう。
少なくとも、キミに対しては使わないと約束してあげる」
「って、ほかの人には使う気!?」
「情報収集にも使えるからね。
いつ どこで、十代の情報を持った者に出会うかわからないだろう?」
「あー…まあ…じゃあ、いいわ……」
とりあえず「ジュウダイ」なる人物の話題については、ユベルに逆らわないことにした。
というか、かかわってはいけない気がする。
「それと、残念ながら『秘薬探し』もできないよ。
ボクには、薬の材料なんかよりも よっぽど大事な探しものがあるからねぇ」
「あー…それも…じゃあ、それで……」
この話題では、とにかくユベルを最大限に尊重する。
そして、さりげなく話題をかえる。
さるさん?
避難所の代理投下スレへどうぞ
正時を過ぎたから投下できるよ。
>>394の言ってることはスルーして良いと思うけど、
最大で10分近く間隔が空いているのはどういうこと?
まさかとは思うけど、書きながらの投下なんかしてないよね?
「……で、最後に いちばん大事な『主人の護衛』なんだけど……
あんたには無理よね。だって、攻撃力も守備力もゼロなんでしょ?」
すると、ユベルは不敵に笑った。
「ふふふっ……まだ勘違いしているみたいだね」
「な、何がよ……!?
戦う力が無いやつに護衛なんて無理に決まってるでしょ……!」
「いいや。誰かを守る盾として、ボク以上の適役はいないよ」
「え? でも、守備力もゼロだって……」
主人を喜ばせようと、ユベルなりに虚勢を張っているのだろうか。
いや、本当に虚勢を張るつもりなら 最初から「攻撃力も守備力も0」などとは言わないハズだ。
しかし、守備力が無いくせに誰かの盾になるとは、どういうことなのだろう?
「……! まさか、自分を犠牲するつもり!?」
「犠牲? 何を言っているんだ。
十代に会う前に、ボクが倒れるわけにはいかないだろう?」
「いや、それはそうかもしれないけど、じゃあ どういうこと?」
「……確かに、ボクの守備力の数値は0だ。
でも、ボクを傷つけることは 誰にもできない。
だって、攻撃はボクへの愛だからね……」
「は? え? いや、ちょっ…攻撃が愛って……えぇ!?」
ただの変態か……?
いや、ユベルはいたって真面目な顔をしている。ますますワケがわからない。
「それに……」
ここで急にユベルの声の色が変わった。
ルイズは思わずユベルのほうを見る。
ユベルは少し寂しそうに遠い目をしている……
「ボクは、十代を守らなければならないんだ……」
ルイズは、また少し なんとなく理解した。
ユベルがジュウダイという人物へ向ける妄執のような感情。
その正体が何なのか、今の彼女には わからなかった。
だが 少なくとも、ただの色恋沙汰などではないことは間違い無い。
「……見つかるといいわね、その…ジュウダイが」
思わず、声をかけてしまった。
「……あっ! で、でも!
今のあんたは私の使い魔なんだから、
守るなら まず、私のことを守りなさいよね!
……そ、それより ホラ!
今日は あんたのせいでいろいろあって疲れたし、もう寝るから!」
ルイズは、そう一気に まくしたてると、
なんやかんやを脱ぎ捨てて ベッドに潜り込む。
その光景を見ていたユベルが、ルイズに声をかける。
「この、みっともなく脱ぎ散らかした下着はどうするつもりだい?」
「うるさいわね……主人の服の洗濯も使い魔の立派な仕事よ。
明日の朝、洗っておいて……」
「……やれやれ、面倒だねぇ」
……ルイズは、いつのまにか寝息を立てている。
どうやら本当に疲れていたらしい。
異世界の存在に憑かれて学校中を動き回っていたのだから、無理はない。
ほとんどイビキに近い寝息を立てるルイズをよそに、
ユベルは今後のことについて考える。
次元移動の際に消耗したエネルギーの回復……
これは手元の ご主人様の心の闇だけで十分ではある。
だが、この子をここで使い捨てるわけにはいかない。
自分が この世界に辿り着けたのは、この娘のおかげなのだ。
それに、この娘には何か特別な力がある。
……やはり、今 必要なのは、情報と手駒だ。
投下終了 お騒がせしました
まず、何故これほど時間がかかったか説明するべきでは?
乙
一体何があったのだ。
時間がかかった理由は
>>397の言うとおり「バイバイさるさん」
正直 迂闊だった 投下したい方がいたのならホントに申し訳無い
>>403 お騒がせしたと思ったら、何があったのかを説明するもんだよw
>>406 お疲れさん、夜中だからきっと大丈夫だろう。
次からは避難所の代理スレを使うか、猿さんがリセットされる00分を利用して投下すると良いよ。
避難所の代理スレの存在意義を無視した〜。
410 :
The night master of ZERO:2009/07/30(木) 05:04:44 ID:7Mleypsv
星の綺麗な夜だった。
「“seek your next”――次の主を探せ」
そう呟き、背の高い青年は長年連れ添ってきた己の半身とも言うべき‘愛しき相棒’である少女に別れを告げた。彼の言魂は少女のプログラムに働きかけ、少女のプログラムは目の前の男がもう自分の主人……マスターではない事をつげていた。
「お別れだヨ。…………達者でな。お前といられてすんげぇ幸せだったぜ、アウクソー……」
「うそ……うそです……私は、マスターのためにだけ生まれて……マスターのためにだけ作られたのに……」
突然の事態に、少女――アウクソーは混乱し呆けた顔でくず折れた。その頬を一筋、また一筋と伝い落ちた涙が線を引き、床に落ちた。
「おじさん!なんて事を!」
隣にいた青年の義理の娘、ミース・シルバーが非難の声を上げるが、カイエンはその言葉を静かに目を閉じ受け止めた。
「ずっと……いっしょですって……」
ぺたん、と床に座り込み言葉をこぼすアウクソー。小さく震えるその体を、抱きしめたい衝動に駆られるが、その考えを振り払うようにカイエンは声を上げた。
「……ムグミカ王女!!戦闘態勢!全騎士MH(モーターヘッド)に騎乗、エンジン始動!!」
愛しむような視線を一瞬だけ最愛の少女に投げると……剣聖ダグラス・カイエンは生涯最後となる戦場にむけ歩み始めた。
411 :
The night master of ZERO:2009/07/30(木) 05:08:31 ID:7Mleypsv
「……あり?……俺、死んだんじゃなかったっけか―」
カイエンは漆黒の暗闇の中で目を覚ました。
辺りを見回せどそこには闇しかなく、ただ闇の中に自分のからだが浮いているのだ。
その事実を確認し特に害はなさそうだと判断すると、彼は頭の後ろで腕を組み目を閉じた。
――そうだ。ハスハ攻防戦で……たしかボスヤスフォートの攻撃を受けて即死だったはずだ。
マグダルは、デプレは、ムグミカ王女は、ミースは……アウクソーは無事ににげられただろうか。
星団最強と謳われたカイエンも、その因果まつわる呪われた「血」には勝てず、後ろにいた王女の盾となりその命を散らしたのだ。
遺してきた者の事を考えると、気が気でならない。でも、自分はもう死んでしまったんだ。
たとえあいつらに何かがあっても助けてやることすらできない。今すぐ飛んで行って助けてやりたい。あいつを、築いてきた信頼関係を一方的に断ち切ってしまったアウクソーを抱きしめたい。しかし、それすらもかなわぬ願いなのだ。
ふふ、と小さく自嘲気味に笑うと、カイエンは体を起こし周りの空間に目を凝らした。
――しっかし、何だここは。真っ暗で……天国じゃないのか?こう、ボンキュッボンの天使とかが迎えに来てもいいんじゃないのかねぇ。
ただ闇しかない空間。自分の体ははっきり見える。
白い七分そでのシャツに翡翠色のパンツ、軽くつっかけた下駄という生前の決戦で身につけていたものと変わらない。
「死んでもこれかヨ……せめて剣聖の正装とかで天国にきたかったなー」
シャツの袖をいじりながら、カイエンはごちた。決戦に寝巻に近い服に下駄という格好で参加しておきながら何とも勝手な言い分である。ちなみにポケットなどをあさってみたが、武器の類はおろか埃すら入ってなかった。
「ま、いいか。さて迎えが来るまでひと眠」
『宇宙の果てにいる……私の……神聖な……魔……心……導き……』
「ん?」
のんきにあくびをかまし、ひと眠りしようと目を閉じた矢先、かすかに声が聞こえた気がして、カイエンはその声がした方を見やる。しかしそこにはやみが変わらず広がるだけで、先ほどと何も変わりはない。
投下するなら最低限のルールは守ってにしてくれない?
まずsageて
>>1をよく読んでもらいたい
413 :
The night master of zero:2009/07/30(木) 05:10:34 ID:7Mleypsv
「……?なんだ?誰かいるのか!?」
まさか敵か?ボスヤスフォートの奴、死後の世界にまで侵攻できる力を持ってたか!
思わず身構えるが、やはりそこは闇で、先ほどと変わらずただ、嫌気がさす程の暗闇しか…………いや、先ほどまでそこに無かった「モノ」が自分の目の前に現れていてカイエンは目を見開いた。
「は?」
思わず素っ頓狂な声が漏れた。自分が異常なのかと疑ってみるが、つねって見た頬は恐ろしく痛かった。おそらく正常なんだろう。
首をかしげるカイエンの前には、ただしずかに「鏡」がういていた。ただの鏡だ。枠もなく、ただ暗闇に間抜け面をした自分が映った楕円の鏡が浮いているのだ。
「何だ、これ。なんでこんな所に鏡が………」
手を伸ばして触れると、その表面は水のように波打ちカイエンの腕を飲み込んだ。
「なんだこれ。なんかの装置か?」
カイエンが腕を引き抜き、鏡を覗きこんだ時だった。
『宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より訴える!わが導きに応えよ!」
そうはっきりと声が聞こえた。
そして。
「うおわっ!」
次の瞬間鏡は巨大な魔法陣に姿を変え、全身を引きこんでくる圧倒的力になす術もないまま、その光の中にカイエンは飲み込まれた。
カイエンの人よ、あんた上手いしキャラも良く掴んでいる。今後に思いっきり期待できもする。
だからこそルールは守ってくれ、まずはsageからはじめよう。
書きながら投下もルール違反だってことも伝えとく
ついでにナイトのスペルが間違ってるのは意図的なの?
すみません、以後きをつけます。
俺が偉そうにいうすじじゃないが
ルール読んでからまた来てくださいな
作品が増えるのは歓迎だしカイエンは好きだから
パーマンよりパーマンセットを召還
桃色長髪で1分でバレるだろうけど
FF6のカイエンかと思ってwktkしたら知らない人だったでござる
まあ、替え玉がアリバイを作ってくれるからね
「天体戦士サンレッド」よりヴァンプ将軍を召喚
ガンダールブの力を主に家事に使い新たな世界での世界征服の為
今日もルイズのお世話をし近所付き合いを大切にする悪の組織幹部であった
それまで自分の知らなかった作品について
新たに知る機会が得られるのも クロスオーバー企画の魅力
……と思ったけど 元ネタ知らないと やっぱりスルーしちゃうか
>>422 既に召喚済み
めたくそ面白かったのだが二話+外伝で停止中
再開を猛烈に希望しておる作品のひとつだ
>>296 渡が召喚されるやつなら理想郷(Arcadia)で連載されてるよん。
>>306さんが紹介してくれてるやつやね。
ちなみに他にもゼオライマーのマサキが召喚されたやつとか、いくつかあのゼロ系の派生作品があったりするんだ。
(何かと制約の多いここじゃ連載し辛い、という理由で理想郷を選ぶ人も結構いるんだよね)
>>425 「例の騒ぎ」の時に出て行った人も沢山要るしね
「目つきの悪い使い魔」とか
剣聖カイエンの人乙です。
遂にFSSのキャラが召喚ですか……これがログナーやデコースだったら、
惨劇以外ありえないのですが、ほとんど本気を出さない男ですから何とかなるのかな?
しかし純然たる戦闘でハルケギニアのメイジってFSSの騎士をどうにか出来るのか?
それから少々野暮ではありますが今後はルールだけは守って投下して下さい。
これからも楽しみにしています。
>>424 あの作品は作者が短編だって言ってなかったっけ?
>>429 言ってはならぬ
言ってはならぬ
それはこのスレの禁句じゃ
言ってはならぬ
ソウルイーターとかの武器生命体召喚して無双するルイズ様を見たい
>>431 ラグナロクはちょっと書いてたなあ
壊れてくルイズが楽しかったけど、今書いてる奴のが面白そうで移行した
魔法使う=魔女=お前の魂いただくよ
>>433 やっべ、平民99人とメイジ一人の命がヤバイ
ルイズがウィッチブレイド召喚と申しましたか
GONZOアニメのアレな
GONZOアニメといえば・・・・・・・
「わたくしはモンテ・クリスト伯爵。魔法は使えませんが東方の貴族です」
「と、東方の貴族がなんで・・・・・」
「あなたと友達になりたいのですよ、ラ・ヴァリエール嬢」
この場合モンテ・クリスト伯爵と決闘するのは・・・・・・・・・キュルケ?
>>436 キュルケはバイで、実はルイズに惚れているんですね。わかります。
一応伯爵はある程度の不死身だし、完全に巌窟王化すると無敵になるから、
ハルケでもやっていけるだろう。あと女にも男にも発動するタラシ能力。
GONZOといえば最高のズボンアニメ ストライクウィッチーズだろ
外伝のノベル版はノボルが書いてるという微妙なゼロ魔との繋がりもある
そういやストライカーユニットが召喚されてなかったっけ
最近の流行でエヴァから誰か召還
碇シンジ召還、と思わせて斜め上に
碇ゲンドウ召還
ルイズ涙目どころじゃ済まないな
むしろ異世界に召喚されてしまったゲンドウさんが心配ですw
どうもこんにちわ。
鋼の使い魔外伝の2話目を投下したいと思います。
投下予告1435から。
二階や裏手が宿屋として機能している典型的な店だった『白猫と黒猫亭』の、二階の廊下突き当たりの部屋の前に立ったタバサは、中に聞こえるようはっきりとノックした。
中からはノックに答えるような返事はない。
「お留守なのかしら?」
タバサから鞄を預かったシルフィードが首を傾げる。
ノブに手を触れて、タバサは部屋にそもそも鍵が掛かっていないことに気付いた。
「そこで待ってて」
「きゅい」
神経を尖らせながら、タバサはそっとノブを回し、ドアを開いた。蝶番が軋みながら動き、部屋の中に入る。
外はそろそろ暁時とあって、窓からはそれらしい陽の光が入ってきている。部屋にはベッドが一つ、椅子とテーブルが一組置かれているくらいの殺風景なものだ。
ベッドの上の毛布は丁寧に畳まれており、何日も人が泊まっているようには見えなかった。
振り返ってテーブルの上に目を移すと、そこには小脇に抱えられる程度の、小さな鞄が置かれていた。
そっと部屋の中を移動する。床板の軋みがやけに大きく聞こえ、鞄に手をかけようとした。
「止まれ」
「きゅい!?」
聞きなれない女性の刺すような声、そして危険を感じさせるシルフィードの声が上がる。
「ゆっくりと振り向け。両手を開き、頭の上に掲げるんだ」
女性の声に応えてタバサは両手を上げて、静かに振り返った。
そこには、後から腕と首を押さえられたシルフィードと、シルフィードを抑えるローブ姿の女性が立っていた。
被っているフードから深い緑の髪がこぼれているのが見える。命令書にある『緑髪の女性』に間違いないだろう。
「キュ……お姉さまぁ……」
シルフィードは困っていた。まさかここで変身を解くわけにもいかないし、シルフィードは変化以外大した精霊の力を使えるわけではないのだから。
タバサは両手を挙げたまま、ローブの女性に言った。
「私は、牛頭鬼を討伐する為にここに派遣された」
ローブの女性は俄に反応を示した。シルフィードを取り押さえたまま、彼女は部屋の中に入ってドアを後ろ手に閉める。
「手を貸すとは聞いていた。だがお前のような子供だとは聞いていない」
「馬鹿にしないでほしいのね!お姉さまはれっきとしたガリアの騎士なのね」
つかまったままのシルフィードが叫ぶ。
「北花壇騎士七号というから、もう少しいかつい人間を想像していたんだけど……」
ローブの女性はそう言って、つかまえていたシルフィードを解放する。シルフィードは急いでタバサの元へ駆け寄ると、その小さな背中に回って隠れようとした。
「命令書には、あなたが現地情報をくれると書いてあった」
警戒を解いてくれたようだと判断したタバサが手を降ろす。ローブの女性は椅子に向かい、置かれていた鞄から何枚かの紙を取り出した。
「これが、被害地域について調べたものだ」
タバサが受け取った紙束には、被害が報告された集落ごとに分けられた被害の詳細や、犯人と目される牛頭鬼の目撃情報などが記されていた。
(初めに被害が報告されたのが一月半ほど前、外に出ていた子供が行方不明になる。それから五日から一週間置きに家畜や子供が狙われ、目撃情報が出てくる。……二
十日前の日付に、若い娘を要求?)
「不思議なことにな、途中から被害の内容が少し変わっていくんだ。最初は子供や家畜を襲っていたものが、最近はそれに加えて年若い娘を、村々に要求するようになって
いる」
紙束の内容に疑問を感じたと見られたタバサに、ローブの女性はそう応えた。
「きゅい。牛頭鬼は子供や女の人を食べるんだもの。別に変じゃないと思うのね」
「不思議なことはそれだけじゃないよ。初めは黄昏時や早朝など、人にあまり見られない時間に現れるのを目撃されていた。家畜を狙っての行動だと思うんだけど、そこに書
いてあるように村に要求を突きつけるようになってからは、獲物を特定の場所に持ってこさせるようになっているんだ」
「きゅい……? つまり、どういうことなのね?」
あたまをぐるぐるさせはじめたシルフィードを置いて、タバサは応えた。
「獲物とそれの獲得方法が変化している」
「そう。牛頭鬼は単独で行動すると聞いているし、多少知恵が聞くとは言ってもここまであからさまに変化はしないだろうし」
「きゅい……」
勝手に納得する二人に、取り残された気分を味わうシルフィードだった。
「牛頭鬼に何か異変があるのかはわからない。少なくとも潜んでいる場所は概ね特定してある」
ここだ、とローブの女性はもう一枚の紙片を取り出し、その一箇所を指差した。その紙片は牛頭鬼が出没するようになった村々が載った、簡素な地図だ。指差したのは『エ
ズレ』と書かれた村に程近い山の中腹だった。
「今日はもう暗くなる。出発は明日だな」
「わかった」
タバサが素直に頷くのを見て、ローブの女性は鞄を掴んで部屋を出て行こうとする。
「どこへ?」
「あなた達はここを使ってくれ。私は……外で休むよ」
「待って」
振り返ってドアに手をかける女性に、タバサは続けた。
「まだ、名前を聞いていない」
「名前か……」
フードの陰になり、判然としない口元がどこか自嘲めいて歪むのが見える。
「……『シェフィールド』。そう、呼んで」
翌朝、シェフィールドが借りていた部屋で一泊したタバサとシルフィードは(シルフィードは不本意ながら人に変身したまま一夜を過したため、かなり疲れが溜っているようだ
った)、階下でテーブルに着いて待っていたシェフィールドと顔を合わせた。
「おはよう」
「おはようなのね……」
目をしょぼしょぼとさせ明らかに睡眠不足のシルフィードと違って、旅先だというのにタバサはまったく普段どおりに立ち歩いている。
「あんたら、これからエズレに行くんだってねぇ。気をつけなよ。あそこは最近牛頭鬼が出るって言うからさ。あんた達みたいな綺麗な人は特に狙われるだろうさ」
店の主人はそう言って、絞りたてのオックスの乳と根菜を煮込んだスープとサラダ、そして焼きたてのパンを出してくれた。
食事と見ればシルフィードも少し元気が戻ってくるようで、席に座るやスープとサラダをもしゃもしゃと食べ始める。タバサも同じように、食事を始めた。
「あんたも食べるかい?」
「いや、いい。あまり食が進まないんだ」
シェフィールドがそう答えると、店の主人は諦めを混じらせたため息をつく。
「とうとう、あんたにうちの料理を食わせることが出来なかったな。一体どこで腹を満たしてるのか聞いてもいいかい?」
「秘密だよ。もともとそれほど食にこだわりもないしね」
フードの下でシェフィールドが小鼻を掻いて答えた。
エズレという村までは一応馬車が出ているらしく、三人はそれに乗り込んだ。とうとう、シルフィードは変化を解いて移動するチャンスを得られなかったのだ。
だから、半分荷馬車を兼ねている馬車の乗り合い椅子に背中を預けるや、ぐーすかとだらしない寝顔を見せて寝こけてしまっていた。
「んゆぅ……もう食べられないの……おにぎりとイチゴババロア……」
意味不明瞭な寝言をつぶやく隣で、タバサはシェフィールドと名乗った女性を見ていた。
昨日は夕方頃だったからよく見えなかったが、顔つきから、若い……おそらくキュルケと同じくらいの年齢の女性だと分かった。
命令書にも書いてあった、深い緑色の髪の毛がフードから覗いている。ローブの裾からは細くしなやかな脹脛が伸び、それはあまり見たことが無い質感の布で出来たズボ
ンでぴっちりと覆われている。ローブで分かりにくいが、見た目より線の細い体つきのようだった。
タバサはイザベラが、今回の任務に助っ人を用意したと言ったのを思い出した。しかし、目の前の女性はあまり助っ人と呼ぶには力があるようにも見えなかった。もっとも、
それはタバサ自身にも言えることなのだが……
「どうした?」
見られていることに気付いたシェフィールドが問いかけると、タバサは視線を外して沈黙した。
「……馬を借りれれば良かったんだがな。私は馬が苦手なんだ。乗り慣れなくて」
独り言のようにシェフィールドは言った。
それを聞いていて、タバサはぼんやりと、魔法学院で自称使い魔をやっている、剣を教えてくれた男を思い出していた。
エズレ村は、ハルケギニア中部域にはよく見られるような村の一つだった。石と木で出来た簡素な家々が、林の木を切り出して作った柵に囲まれている。柵の外には、不
均衡な畦道で区切られた畑がぽつぽつと広がっていた。
三人が乗っていた馬車が村の門と思しき場所を過ぎて停車する。降りた三人の目に、村の中は疲れているように見えた。
五十戸もない家々が村の真ん中を通る小川を囲むように並び、地面は踏み固められてはいたが石が葺かれているわけでもなく、歩くと埃っぽい風が立った。
「なんだか、しょぼい村なのね」
見渡して一番、シルフィードはそう言った。
シェフィールドはそのまま村の中へ歩いていき、小川から水を汲もうとしていた老婦に声をかけた。
「この村の村長に会いたいんだが、案内してくれないか?」
腰の曲がった老婦はままならぬ動きで振り返り、シェフィールドを認めてうなずいた。
「はぁ。……あんた、前にも村に来とりゃあせんかったかい?」
「えぇ。そのことで、村長に話があるので」
曖昧にシェフィールドは答え、老婦もどこか釈然としない風情で村長の家に案内してくれた。
村長の家は、村にある他の家屋と比べて、やはり大きく立派なこしらえでできており、老婦が呼び鈴を鳴らすと白髪の老人が顔を出す。
「やぁ、ドミニク。何の用事かね」
「こちらの方々が村長に会いたいって言ってねぇ」
牛頭鬼に狙われている村の割にやけにのんびりとした会話をしていて、シルフィードは脇で不安になった。
「もぅ、世話話はいいから、さっさと牛頭鬼について話すのね!」
そう口にした途端、ドミニクなる老婦と村長の顔から色が消えた。村長は慌ててシルフィードを部屋に引っ張り込む。
「え?え?」
「いいから、早く入ってください」
困惑するシルフィードが振り返ってタバサに助けを求める視線を送る。タバサは何も言わずに村長の家に入った。
シルフィードを離した村長は、自分の部屋へと案内する。家の中は板で仕切ってあるようで、壁の隙間から別の部屋が覗けている。その中で、わざわざきちんとした壁で仕
切った部屋へと三人を招き入れた。
「ふぅ。ここならやっと、お話できます」
安堵の息を漏らし、村長は三人を見上げた。
「改めて、私が村長です」
「どうもなのね」
口少ない二人に変わってシルフィードが答えた。
「えぇと……お三方は牛頭鬼の話を聞きにきたと見てよろしいのですかな?」
「そうなのね。この辺に出るって聞いたのね。子供とか家畜とか、あと女の子とかを浚っていくんでしょ?」
そう聞いて、村長は苦しい顔をしてうなずいた。
「まったくでございますよ。この村だけじゃございません、周辺の集落でも似たようなことが起きておりますよ」
「私達はその牛頭鬼を退治しに来た」
タバサがそう言うと、村長ははっと瞳を輝かせて三人を見たが、すぐにその目には疑惑を浮かべて視線をそらした。
「お三方は騎士様でございますか。恐らくどこぞの村で聞いたのでしょうが、失礼ですがお引取りください……」
「それは出来ない」
苦しげに言う村長に、タバサは切り捨てるように言った。
「村長。ここには牛頭鬼から来た要求状があると聞いているのだが」
それまで黙っていたシェフィールドの言葉に、村長は驚いた。
「どうしてそれを……」
「見せてもらえるだろうか」
フードの陰から光る、シェフィールドの視線に負けた村長は、不承不承に戸棚を開き、一枚の皮切れを取り出してみせた。
粗雑になめされた獣の皮で、裏側に血のようなもので文字が書かれている。
『ウル、22の日の夕刻までに、村で最も若い娘を山中腹の祭壇に用意するべし』
「きゅい。牛頭鬼のくせに、けっこう綺麗な字なのね」
自身はみみずの這ったような字くらいしか書けないシルフィードが、ふんと鼻を鳴らす。
「実はですな、若い衆が騒がないように、私が村の老人たちに口止めしてあるんです。それでも、牛頭鬼がうろついているのは知っておるから、ここ一月は神経が張り詰めて
おるのです。これで、娘を要求されたとあればなにが起こるか……」
領主に討伐の願い出をしようとか、その代わり税金が上乗せされるから嫌だとか、だったら自分達で退治できないかとか、できるわけないからどこかに手を貸してもらえな
いかとか。
村は牛頭鬼の出現で、かなり強い心労が降りかかっているのだということタバサは知った。
村長の話が途切れたので、シェフィールドは事務的な言い回しで話し始めた。
「我々は牛頭鬼の討伐を目的にここにやってきている。村に対しては出来るだけ負担をかけないようにするので、協力をお願いしたい」
「はぁ……それは、構いませんが」
まだ消えぬ疑惑の目で三人を村長は見ているが、シェフィールドはそれを無視して続ける。
「山にある祭壇に娘を用意すれば、牛頭鬼は現れるんだろう?なら、娘を用意すればいい」
「そんな!」
村長が顔を青くする。
「……私がやるよ」
ふ、とシェフィールドは口元を崩し、かぶっていたフードを下ろした。
タバサもはじめて見るシェフィールドの顔は、一点のくすみもにごりもない、白絹で出来ているのかと思うほど、きめ細やかな肌をしていた。
その瞳は短く切りそろえられた髪の毛と同じ緑色で、日の光を受けて宝石のようだ。紅も差していないのにその唇は艶かしく潤んでいる。
恐らく男女問わず、人目見れば振り向かざるを得ない美貌というものが溢れている、そんな容貌だった。
その場にいる者が皆呆然としている中で、シェフィールドは言った。
「私が囮になって、牛頭鬼をおびき寄せる。その後はタバサ、お前の出番だ」
タバサはそう言われて、静かにうなずいた。
「不自然に見えないように、村の人には祭壇まで私を連れて行く役をお願いしたい」
「……は、はい。わかりました」
まだどこかぼんやりとしていた村長は、夢うつつの表情でこくこくと首を振っていた。
そのまま夕暮れまで村長の家の一室に、村長が村の老人たちに話をつけるまでの間、三人は篭ることとなった。
部屋は狭く、粗末な椅子が一脚だけあったので、シルフィードはそれに座り込んであくびを吐いた。
「あふぅ〜。暇なのね」
大事にタバサの鞄を抱いているシルフィードは、そうしているうちに器用にうとうととまどろみ始める。
タバサはというと、部屋の間取りを確認したり、窓から入り込む光から時間を見たりしていたが、ふと気になる事を思い出して、シェフィールドを見た。
「……なんだ?」
壁にもたれた姿勢のままシェフィールドもタバサを見た。部屋に残されて以来、シェフィールドはローブの下で何かを抱いたままぴくりともしていない。
「貴方は何ができる?」
「ん? ……そうか。腕の方を聞いているんだね」
タバサは頷いた。
「そう、だな……。とりあえず、剣は使える。お前と同じくな」
そう言って、シェフィールドはタバサが肩に吊っている剣を見た。
「そう」
「今はそれだけにしてくれ」
「魔法は?」
「秘密だ」
それ以上聞こうとして視線をあわせた時、タバサは呼吸が止まるほど身体を硬直させてしまった。
シェフィールドからそれ以上聞くな、と気配で伝わってくる。そしてそれ以上に、肌が泡立つような“何か”がシェフィールドからタバサへとやってくるのだ。それがタバサの首
を絞めつける。
視線を外してタバサは、二人に気付かれないように深呼吸し、腰の杖に手をやった。
少なくともこれで、シェフィールドが只者ではないことだけは分かった。だが、同時に何か得体の知れないものであることも、おぼろげながらタバサは感じ取っていた……
そのようにして、部屋で過していると半刻ほどで村長が部屋に戻り、タバサたち三人に話した。
「話がつきました。翌日の夕刻に貴方達を祭壇に連れてゆきます。そちらの方が村娘に扮する、ということでよろしいですな」
「あぁ」
「窮屈とは思いますが、今日は私の家でお休みください。たいしたもてなしは、出来ませんが……」
村長は申し訳なさそうに言ったが、タバサもシェフィールドも気に留める事はなかった。
「きゅい。お腹すいたのね……」
一人、シルフィードだけは小さく愚痴を零していた。
暖炉の前に、編み草で出来たマットに毛布を重ねただけの質素な寝床が並べられ、タバサたちは眠りについていた。
家主は仕切りの向こう側で夫婦ともに眠りについているはずだ。
だが、静まり返った中で、細い話し声が、仕切りの奥から途切れつつも聞こえてくる。
「本当にあの人たちを牛頭鬼に差し出していいものかね」
「かまいやしないよ。騎士様だって言ってるけど、どこの仕えとも名乗らないし、放浪のメイジが名声目当てでやってきたんだろう。村を守る為のいけにえくらいにはなってくれ
ようさ」
「そうやってお前さんは、昔のようにそ知らぬ旅人を犠牲にするのかい」
「村を守る為だ。仕方があるまい」
話し声はそれきり途絶え、暫くして、静かな寝息だけが家の中に広がる。
暖炉の前の影の一つが、やがて寝返りを打つ。
(……そんな、ものか……)
深緑の瞳をうっすらと開き、冴える夜光の元でシェフィールドはつぶやいた。
翌日の夕刻、三人はまず濃い色の古びたローブを借り、シェフィールドが先に出て村長と村の老人達と共に祭壇へ向かい、タバサとシルフィードはその後を追う形で、村を
出発した。
既に丸三日の間、人に変身したままのシルフィードは、夢を見る間もないほどの熟睡をしたはずなのに、足元がおぼつかないほどフラフラとしている。
「きゅいぃぃぃ……、すごく、疲れるのね……。お空に上がりたいわ。風を浴びたいのね」
そう言いつつも懸命にタバサの後を付いてくるのだから、タバサとしてもどうかしてやりたいのだが、今は任務が優先だ。我慢してもらうしかない。
この任務が終わったら、何かいいものを食べさせてあげよう。そう思いながらタバサは林に入り、茂みに消えそうな村人の影を追って、山を登った。
それほど高くない丘のような山の木々を分け入り、シェフィールドを囲んだ村人たちは、山の頂が見える開けた場所にたどり着いた。そこには大きな岩が転がっており、そ
の辺りだけ木々が開け、傾斜の関係で山頂を見ることが出来るのだ。
転がる岩を縫うように歩く村人の先に、丸太を並べただけの粗末な台のようなものがしつらえられていた。
(あれが祭壇?)
なるほど、頭の良くない亜人の類が作ったと思えば祭壇にも見える。しかし、タバサの知るかぎり、牛頭鬼にそのような習性はないはずだ。犬頭鬼(コボルト)ならいざ知ら
ず。
祭壇の上にシェフィールドを縛りつけ、村人たちがエズレへと引き返そうとしたので、タバサはシルフィードを引っ張って茂みの中へと隠れ、続けて杖を抜いて制音【サイレン
ト】を唱えた。自分を中心とした数メイル四方の音を『風』の力で打ち消し、その外側に漏らさないようにする魔法。逆に音を集めて拡大させれば、壁越しの会話でも筒抜けに
出来る。
茂みのすぐ近くを村人達が抜けていき、祭壇の周りから人の気配が消えると、シルフィードをつれてタバサはもう少しシェフィールドに近い位置へ移動する。
既に陽が傾き始めている空の下、シルフィードがぐったりとしているので、適当な岩の陰に休ませる。
「静かにしていて」
「きゅい……」
返事をするかしないで、ついにシルフィードは地面の上で音も立てないような熟睡に入ってしまった。タバサはとりあえず、ローブを脱いでかぶせてあげた。
次に、制音を調節して、祭壇に縛り付けられたシェフィールドに向けて声をかける。音を一定の方向にだけ伝わらせるのだ。ラインクラス位だとこの辺りの加減が難しいが、
タバサになら、そう難しいことではない。
「<大丈夫?>」
一瞬シェフィールドは身じろぐ。もう少し近づき、今度は向こうからの音を拾う。
「あの老人たちめ。ローブの上からかなりきつく縛ってくれたよ。どうやら本当に、私をいけにえにしたいらしい」
「<私が切る?>」
「いや、何があっても動けるように準備だけしていてくれ。縄抜け位はできるから」
「<そう>」
やがてシェフィールドの耳にも、わずかに石を踏む音が聞こえ、タバサが下がったことが分かった。
(ふん……)
自分を化け物のいけにえにするとは……と、シェフィールドは肌が逆立つような怒りを感じていたが、次に、ふっ、と自嘲めいた笑みを浮かべて、もそもそと縄を緩めようと見
繕い始めた。
(……やっぱり、長く生きてるとあいつの血が濃くなっていくのかな……)
その問いかけに答えられるものは、その場にはいない。
やがて太陽が山際に沈みゆく頃。山の日没は早い。既に岩場の周囲は足元がおぼつかない位に暗い。
岩の陰に隠れて祭壇を見守っていたタバサは、自らに暗視【インフラビジョン】の魔法を掛け、状況の変化にまさしく目を配っていた。その傍では、午睡から起きてはいるも
のの、まだ少しうとうとしていたシルフィードが、静かに山の音に耳を傾けていた。
暗視の掛かったタバサの目には、闇の中にある祭壇も昼間と変わらぬ光景に見えた。もっとも、多少色彩に欠けるため、細かな部分は分からない。
しかし、そんな闇に落ちた空間の先を、シェフィールドは見開いた眼差しで眺めていた。彼女にはこの暗闇の中が見えるのだろうか?
遠い山際に、太陽がその身を全て隠す。風も冷え、一足早い夜闇が山の中を走り始めた頃。傍らでぼんやりとしていたシルフィードの様子が変わった。
「きゅい。お姉さま、どっかから気配がするのね」
それを聞いて、タバサも祭壇に目を凝らす。
祭壇に変化はなかった。だが、祭壇の向こう側からうっすらとだが巨大な何かの影がこちらに向かってくるのが見えた。
(あれが牛頭鬼……?)
つばを飲み込み、身体に緊張が走る。杖と剣にはいつでも抜けるように手をかける。やがて、影の形がはっきりと見えてくる。
それは2メイルほどはある、大きな人の形をしていた。その頭部に当たる部分には、頭の両側面からねじくれた角が突き出ているようだった。
やはり牛頭鬼で間違いない。とすれば、このままシェフィールドをつれて巣に帰るところで仕掛けるか、それとも、シェフィールドに手をかけた時点で仕掛けるか。タバサは
脳裏でどちらが有利か考え始めていた。
その時、静かに主人を見守っていたシルフィードが、眉をひそめながらタバサを呼んだ。
「お姉さま。変よ。人の匂いがするのね。それに、気配も」
「人の気配?」
「きゅい。牛頭鬼の後ろからなのね」
シルフィードはそう言いながら、頭に指を立ててうんうんと首を捻っていた。
再びタバサは祭壇に近づいてくる牛頭鬼を観察する。牛頭鬼は重たげに頭を垂らし、のしり、のしりと動いている。両手には何も持っておらず、手を地面に付きながら、まる
で手探りで歩いている進んでいるかのようだった。
奇妙だ。タバサが本で得た知識では、牛頭鬼は手製の大きな斧を持っているはずだ。それに牛頭鬼は夜の動物のように暗闇でも獲物を認められるだけの十分な目を持っ
ているという。目の前の牛頭鬼らしきものは、そういう意味では不自然に見えた。
怪しい牛頭鬼が、ようやくのように祭壇に腕を置く。シェフィールドはその時、くぐもったようなため息をはっきりと聞いた。
(人食いの化け物がため息だと?)
続けて牛頭鬼は首を左右に振り、周囲に何か不審が無いかと注意を払っているようだった。ようだったが……どうもおかしい。人を食うほど凶暴な化け物がするには、その
動きがどうにもうそ臭い気がする。
タバサとシェフィールドが、それぞれに確かな疑惑を抱き始めた時。ついに牛頭鬼は祭壇に上がり、シェフィールドに手をかけた。
「おおい。問題ないみたいだぜ」
くぐもった人の声を上げて牛頭鬼が祭壇の奥の闇に向かって手を振った。いや、この牛頭鬼、よく見るとその牛の頭と胴のつなぎ目の毛皮に、明らかな隙間が認められる
のだ。
(牛の頭の被り物をしている?ということは……)
シェフィールドが脳裏に思いついた事柄は事実と相違なかった。牛頭鬼に扮していた何者かが奥の闇に手を振ると、明らかな人の手による灯りが上げられて、ぞろぞろと
無遠慮なしぐさで人が祭壇に集まってくるのだ。
「だいぶ渋ってたみてぇだが、エズレからもようやく一人巻き上げることが出来てよかったぜ」
「これで五人か。まぁ、暫くの金には困らねぇわな」
「まったく。牛頭鬼様々だぜ」
灯りに照らされただけでも5、6人の男がその場に集まっていた。長く身体を洗っていないのだろう、汗と脂の饐えた匂いがして不愉快を誘う。
「わりぃな姉ちゃん。俺達は所謂人身売買業ってのをやっていてね、おまえさんの村はすっかり俺達の出した要求状にだまされたのさ」
縛られたままのシェフィールドの顔をよく確認もせず、人攫いたちは雑談しながらシェフィールドを担ぎ上げる。
シェフィールドは、いかにも驚いて気が動転しているような娘を装い、自分を担いだ牛頭鬼に扮していた男に聞いた。
「牛頭鬼はいなかったの?」
「あん?いや、いるにはいるぜ。俺達はあいつの動き出す時間をきっちり把握してるのさ。馬鹿な村の連中はびびっててわかんねぇみてぇだけどな」
ケケケ、と卑しい笑い声を上げて、人攫いは担いだシェフィールドをゆすって黙らせようとした。
粗末な松明らしき灯りに誘導されるように人攫いたちは祭壇から離れていった。
その背後から音無き追跡をする者たちがいることに気付かずに。
----------
今回の投下、これまで。
では、次回の投下まで。
ゼットン召喚
大惨事
ザンボラーの方が大変なことにならないか?
なんせゼットンが一兆度の火の玉吐いたら周辺の宇宙が滅ぶそうだから
ちなみにスパロボの寺田さん曰く「そんな事言う人と友達になりたくない」
>>452 ゼットンは教師を目指しているくらいだから、意外と……
ゼットン並みにヤバい怪獣はそうそういない(1兆度的な意味で)
まあ劇中の描写的には ザンボラーのほうがデカい被害を出しそうではある
まあ一兆度の火の玉直撃食らってボヤ出すだけの科特隊本部もアレっちゃあアレだが
>>455 クローズ乙
いや、ワースト乙と言うべきか?
科特隊自体がオーバースペック…
あとやばいと言えばバキューモンだな
スパヒロじゃ火球を連発して科特隊基地を壊滅させてたな
>>454 SF考証として考えても、あの人のやり方は無茶苦茶だしな。
まぁ、1兆度の火の玉に関しては弁護の余地はないんだが。
「悪のカリスマ」的なものではゼットン級はそうはいまい
他には・・・・・・バルタン、メフィラス、キングジョー、ヤプール・・・・・
近所のガキにフクロにされて死んだ(実は違うけど)ブラック指令からはちと
「悪のカリスマ」は感じられない
街〜運命の交差点〜から馬部甚太郎を召喚
事務所の尽力で魔法少女もののドラマの主役を勝ち取った馬部
撮影に挑んだその時に召喚されて使い魔役を演じる事に
大伴氏の発想がすごいことには違い無いんだけど
さすがに1兆度とか設定がもう子供騙しの域を通り越して想像力が追いつかない
ゼットンの怖さは いかにも兵器って感じの無機質さだと思うんだ
テレポートとか光線カウンターみたいな怪獣らしからぬ技を持ってるし
>>463 そもそも馬部が魔法少女モノのドラマの主役ってどんななんだよw
>>460 東方先生に押されたあと、一撃必殺砲の立派なかませ犬になってくれてたな
>>465 えーと、きっとアレだ。某美少女セレブみたいな感じで
>>463 >魔法少女ものの主役
その書き方だと馬部が魔法少女の格好をしていると言うトンデモ解釈も成り立つぞw
そんなのが召喚されたらシュールなんてもんじゃねぇw
>>464 465
思わず「ノイシュヴァンシュタイン桜子ちゃん召喚」などという幻想を垣間見てしまった
てか馬部が召喚されるなら牛尾も召喚されてどっかで入れ替わらないとw
なんか面白そうだが作者の力量が試されすぎて俺には無理だw
>>470 いや、牛尾はウマちゃんが召喚された後のドラマの撮影を・・・
>>453 ドンホラーに見えて夏の疲れを感じたぜ。
ギャバン召喚か
まぬけ時空に引きずり込め!
ちょっと聞きたい。
今一人称で書いてるんだけどセリフ以外も口語にしたほうがいいの。
>>477 一人称ということは台詞以外はモノローグというか独り言なのだから
口語にしたほうが統一感が出ると思う。
>>477 口語にした方が、1人称の特徴である臨場感は強くなるだろう。
思いきって、日記調にしてしまうというのも、一つの手だがな。
確かエヴァの外伝「新世紀エヴァンゲリオン 学園堕天録」では、碇ゲンドウはパラレルワールドの彼方から来た別人とすり替わっているという設定だった
なら、ゼロ魔世界にきても不思議はあるまい
ユイのいない世界であのオッサンがやる気をだすとは思えんが
「わたし、あなたがたの お役に立てますわ」
剣も魔法も使えない毒電波平民 ローズマリー・アップルフィールドが
口八丁と演技力だけで ゼロ魔世界を阿鼻叫喚の昼ドラ地獄に陥れる
>>477 国語の授業じゃないんだから肩肘張らなくていいさ
>>481 ユイのいる世界に変えるためなら、手段を選ばないと思う。
ルイズに呼ばれるよりは、ジョセフに呼ばれた方が面白そうだな。
お互い、絶対に信用してはいないけど、信頼はしている関係。
484 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 16:45:01 ID:z+O01027
ゴクドーくんだって口が悪くて口語一人称だ
ここで雰囲気変えて、アメコミから誰か呼ぶとなると・・・・・・
クラーク・ケントは弱すぎるしなぁ
Drストレンジは逆に強すぎる(というか基本何でも出来てしまう)
コミックじゃないけどサマンサとかジニー呼んで見るか?
その場合やっぱ周囲に誰もいないのにどこからとも無く笑い声が響いてくるんだろうなぁ
って言うか今挙げた名前全部わかる人間っているのか?
>>486 キャプテン・アメリカは? バットマンでもいいが
ウルヴァリンは・・・・ってアイツはXメンか
一兆度の火球はどっかの雑誌が適当に書いた事で、公式設定でも何でも無いって聞いた事が。
とはいえ今は公式で1兆度とか言ったんじゃなかった?
創作ネタがいつの間にか公式になってるのはよくあること
>>489 始めはそうだったけど、後に円谷プロに逆輸入されたから、今では公式設定になってる。
>>488 ジェームズ・ハウレットかぁ
アダマンチウム失ったとはいえある意味理想的な使い魔ではあるんだよな
戦闘力は問題無いしロリコン疑惑が沸き起こるほど目下の者には優しいし一旦仲間と認めたものは
絶対裏切らないし
ただ放浪癖があるので必要なときには必ずそばにいない、という欠点が。
>>489 あの伝説の十二話「遊星より愛を込めて」は「どっかの雑誌が適当に書いた事」が原因で
「記す事すらはばかられる」欠番エピソードとなってしまったんだぜ
>>492 12話は実際には、血が欲しい宇宙人が結婚サギするって話だからな
パニッシャー召喚したらトリステインが綺麗になるぞー
路地裏のチンピラから王宮の裏切り者まで容赦ないぜー
人口が半分になりそうだが
ガンダム00Fからフォン・スパーク召喚
食事も道端に落ちたトウモロコシで済むから経済的
>>451 鋼の人乙でした。
>「私が村長です」
杉田の言いまつがいもあってアニゲラ!ディドゥーン!を思い出した。
アメコミ勢はいきなり召喚されても驚きもしないだろうな
日常茶飯事だし
>>497 異次元異世界別の星、過去に未来にパラレルワールド死後の世界に魔界神界地獄界
その他諸々が「いつもの事」だしね、あの連中
おまけに性転換や幼児化もオフィシャルに普通なんだから
半身不随とかになってもいつの間にか復活するしな
いい意味でも悪い意味でも自由すぎる
え?なにキン肉マンの話してるの?
死んでも「死後の世界から戻ってきました」
「異星のエネルギー生命体に姿スキャニングされてました」
「宇宙人の侵略に対抗する準備のため、変身能力持ってる部下と入れ替わってました」
で済ますから
それにしてもゾンビに貪り食われるパニッシャーはスゴかった
アッシュ(死霊のはらわたの主人公)に武器盗まれた挙句ゾンビの群れの真っ只中に放置される、という最後だった
まあパニッシャーも悪かったんだけどさ
さすがは自由の国のヒーロー
日本にだって奇跡のヒーローがいるぞ
てつを とか
その時不思議なことが起こ・・・
この世に不思議なことなど何もないのだよ。
あんまゴリ押ししてるとウザがられるだけだぞw
ルイズが『ガン×ソード』のカギ爪の男を召喚する話
7:15から投下OKですか?
『いまから、このかたをヤッつけにいってくだちい』
『わるどせいじん
とくちょう
つよい かぜ
すきなもの
ろり ままん
くちぐせ
るいずるいずるいず』
GANTZの球体召喚
スーツと武器があればルイズでもワルドぐらい倒せそうだ
新しいお友達がこんなにたくさん
ああ…また殺ってしまった…
怒りの感情を表せないアイツか
しかし、ヴァンさんも報われないな。別の星で生きているのかと思うとさ
しえん
カギ爪知名度あったんだね…
どなたか私の代わりに書いていただけませんか?
なぁ7:15て、AMじゃなくてPMでいいんだよな?
夏過ぎる
ちっくしょー、こっちはまだ夏休みになってないってのに……
カギ爪あんなに良いキャラしてるのに、なんで誰も召喚してくれないの
キチガイ警報
たぶん、もう誰も召喚してくれないよ
友達だったら書くのが当たり前じゃない
とりあえずNG
どうしてこうなった
本日のNG→ID:oSXLUTyE
な、夏だねスティンガー君
そうだねコーウェン君
夏だ夏だいうけどさ、学生だからってこんなアホなわけないじゃん
いや、ゆとりの実情を知らないからこれがデフォなのかもしれんが
伊藤勢版モンコレからシンさん召喚…
対七万戦で部下召喚して無双だなw
ルイズはカギ爪の男を召喚した
コルベールは瞬間的に感じ取った、この男は只者ではない
コルベールはすぐさまファイアボールを放った
しかしファイアボールはカギ爪の男にキスをしようとしたルイズに当たった
ルイズは死んだ
カギ爪「あれ? 生きてる…… 夢が私を死なせない」
カギ爪はまず挨拶にとコルベールと握手を交わした
一瞬喜んだ自分を殴る
カギ爪ねぇ・・・
まぁ一発ネタレベルだろうな
召喚された奇妙な老人がギーシュをぶっ殺すまで
あの人が生身で戦闘らしい戦闘したシーンは本編に無いけど
百年くらい前はゴロツキをあっという間に皆殺しにしたりしたし
宇宙船での殺し合いにも最後の一人に生き残ったくらいだし
多分ヴァンと同等の身のこなしは出来ると思う
うーん、カリスマ出来上がったらトライしてみるか
カギ爪「あれ? 生きてる…… 夢が私を死なせない」
↓
カギ爪「あれ? 確か私はヴァン君に斬られたはず……」
カギ爪「それにここは一体……? まぁ、いっか。 夢が私を死なせなかったんですかね」
ジョゼフがドラよけお涼召喚…
ジョゼフ下僕化
タバサとイザベラがメイドポジションに
世界の裏で暗躍しつつ教皇の野望を潰す…
完全にルイズとテファとデルフがいらない子だなw
リアルタイムで書きながら投稿か・・・
だめだこりゃ
夏だねぇ…
ルイズの部屋にアンリエッタがやって来た
アンリエッタはカギ爪に握手を求めた
アンリエッタは死んだ
日本の夏、厨房の夏
どういうことなの……
まああれだ
あれが受けると思ってたんだろう
何やったら馬鹿にされるか教えてくれる友達のいない奴なんだろう
NGにしてほっとけよ
夏厨装った愉快犯っぽいし相手するのは時間の無駄
反応するのは相手を調子付かせるだけだ
あまりのことに俺たち困惑wwwww
まあ一レスが少ないのが救いか
見上げる星〜それぞれの歴史が〜輝いて〜♪
だからNG
そういや、ゲームはやってないのだが
あっちのキャラ絡めるのはアリなのかしら?
なんかサイトのクラスメイトとか出てくるらしいが
ヴァンがルイズに、カギ爪がジョゼフに付いたらなかなか大変そうだ
小ネタ・短編のとこには ルイズがルイズを呼んでる話もあったし
普通にアリなんじゃないの?
しかしテンプレ読まない馬鹿が多すぎるな。
なんでこういう馬鹿が投下しようとするのか理解できん
>>545 ゲームオリジナルキャラか。
俺も出そうかなーって思ったことはあるんだが、出したとしてどう収拾つけたものやら分からんのだよなぁ
街からなら青ムシを召喚してみたら
きっとギーシュをチクリ魔属性を駆使して戦わずして撃退したり
シエスタやモンモランシーを隠し撮りしてそのコレクションがルイズにバレて大目玉を食らうに違いない
アメコミならジャッジ・ドレッドで一発ネタ考えたが
酷過ぎたんで封印した
ヘルボーイでなんとかしてみたいなあ
ヘルボーイならやっぱ召喚してみたいクロエネン
左手にルーン刻まれる→取り外す→ギャー
>>550 おまっ・・・青ムシとか俺の大好きなキャラだw
きっとゼロ魔の世界を見てライトノベルのウンチクをグダグダ語り出すんだろうなぁw
「こ、これはひょっとして異世界召喚モノってやつなのデ!?」
ルイズがガンダールヴのルーン付きのシュレディンガーの手を召喚か
そういえば左手が何らかの事情で無い場合ってガンダールヴのルーンはどうなるんだ
ふむ・・・やっぱゲームオリジナルに関して
特に制約とか暗黙のとかは無いんですね
サンクス
さて、ふと電波がアルタイルより届けられました
幻想世界オレルスから色々なものが漂着して
シルフィードが拾い食いして大変なことに、とか
具体的に言うとうにうにシルフィードとか寂しいシルフィード・・・
すまん、本当に悪かったorz
> ルイズがルイズを呼んで
そういやNWにルイズってNPC(♂)がいたなあ
同名のキャラがいると色々面倒くさそうだ
>>545 アニメオリジナルキャラが問題ないから全然オッケーだと思う。
獣人や夢魔とかいう種族設定もけっこうオイシイんじゃないか。
>>556 使い魔選考基準外ということで不採用・・・かな
カギ爪の男はシエスタと一緒にいた
シエスタがカギ爪の男を洗濯場へと案内している途中だからだ
カギ爪「いやぁ本当に助かりました。ありがとうございます」
シエスタ「いえいえ、とんでもありません。 きゃっ!」
シエスタはつまづいて転びそうになった
カギ爪はシエスタが転ばないように肩を掴んであげた
シエスタは死んだ
>>558 TOAのアッシュ召喚でアリエッタとアンリエッタを聞き間違い混同してたな
まぁ主要キャラにはあまり被りそうな奴は居ないが・・・
キャシャーンSinsからリューズでも召喚して・・・苦しいな
>>559 そういえばすっかり忘れてたけどモット伯ってアニメオリジナルだったっけね
うpロダに上がったのって古いのから消えて行くのか……
グロンギ語訳だかなんだか知らないけどしねばいいのに
アダムスファミリーからハンド君召喚したら…
どうもならんな
キスが出来なくてもう一度か?
>>556 ガンダールヴ以外のルーンになるんじゃね?
>あの作品のキャラがルイズに召喚されました
>ここは上記スレの専用アップローダーです。
>絵をアップロードしますか?
> はい
> いいえ
って注意書きがあるから、厳密には絵だけなんだな。
>>563 そりゃーうpろだなんだから古いのから消えてくだろ・・・
語訳をわざわざテキストでうpるのもアレだが
2008年にうpされた物を未だに保存してないお前も悪いよ
>>559 そういえばゼロ魔世界の獣人ってどうなっているんだっけ?
タバサの冒険とか読んでいるとみんな人を食べようとしているように見えるから
もしかして召還されたら警戒対象になるのかな
確かに全訳しようと思ったら変換表が要るけど
グロンギ語の母音は日本語とほとんど同じだから ある程度は読めると思うよ
>>570 グロンギの台詞が長いからな 文章にすると分かりにくいんだよ
普通に「バセゴセバレザレタ!(何故俺は目覚めた!)」
みたいな感じで()に訳を書けばいいのにな
訳が付いているのは嫌な人とかいるの?
>>566 >>568 おっしゃる通りだ。ぐふっ、無念なり
…それでもああいうのをうpろだにあげるのはどうかと思うな
よくわからないけど、台詞訳なら台詞の後に括弧つけて書けばいいのに
グロンギの異質っぷりを演出するためにワザと訳を書いてないんだとしたら
まとめのほうに勝手に日本語訳つけるわけにもいかないしなぁ
>570
全っ然ン読めねぇよw
そもそも超神ネイガーですら方言に注釈付けてたのに
意味不明な言語をそのまま掲載するとか理不尽にも程がある
そんなことは投下時に言わないと
正直どうでも良い。
てつをの話しようぜ。
また今日は荒れてるな
翻訳版をまとめに登録すれば良いだけじゃないの?
直接じゃなくて別ページにすれば問題はないし
>>578 あんたたちだってスゲー強いんだから、そんなこと言うなよ!
いや、ここは敢えてルイズの可愛さについて見直そうか
そういえば、絵だけじゃなくてグロンギ語とやらもそのうち流れるよな。
どうするつもりなんだろうか、まさかまたうpするのか?
>>582 俺は大きなおっぱいが好きだが、一人だけゼロ魔のおっぱい吸っておkと言われたらためらいなくルイズを選ぶ覚悟がある
>>584 おっぱいだけでいいなんて謙虚だな。
俺はルイズと…ルイズうわあああああああああああああ
>576
似たような事を複数が言ったけど本人は演出のつもりだとさ
まぁ、しばらく来ないようだし二度と来ないかもだからどうでもいいや
嫌な事をせっかく忘れてたのに思い出させやがって チクショー
>>585 柿崎ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
柿崎はゼロ戦にも乗れるんだろうか。対七万騎イベントの前にステーキ食べようとしてそうだw
>>584 俺だったら一番好きなのはタバサなんだが、おっぱい吸ったときの反応が知りたいからアニエスの吸いたいな
言っておくがリボルケインは杖だからな
590 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 22:05:22 ID:lYt5o5wz
>>588 俺的に揉むならティファニア、挟むならキュルケ、摘む・吸うならルイズ
>>588 アニエスのおっぱいを吸えるのはアンリエッタだけだ
もしかしたらアンリエッタも無理かもしれん
あばばばばばばばばば!しょうもないレスでageちまった……
スカロン店長に突撃しておぶえあ!
グロンギは原作でも字幕とか無かったからあれでいいんだよ
おっぱい星人大量に召喚してどうすんだよ
尻や太ももはおらんのか!!
というわけでぶりぶりざえもんでも呼ぼうか
南斗水鳥拳も使えるし
ここではリントの言葉で話せ。
オンドゥル語もアンデッド語もみさくら語も不可だ。
>>593 召喚されたのはクウガではなくディケイドだろ
ディケイドでは語訳の字幕付いてたんだからその論法なら字幕は付けるべき、という話になるだろ
>>597 漫画版の主人公がキスティス先生萌えのゲームか?
>>587 むしろ柿崎はシエスタの血縁者で。
マクロスってゼントラ系は普通に突飛な髪色してるから違和感ないな。
というか、地球には黒・茶・金が、ああいう突飛な髪色のプロトカルチャーは大半がハルケギニアに移住したって設定も行ける気がする。
>>598 そういや意外に聖剣キャラって呼ばれてないんだな
いっそルイズにティアマット召喚させてまさかのドラゴンキラー編開始w
ティファのとこにヴァディス様がいても違和感なさそうだな
ならばゼントラーディ語だ!
聖剣・・・タバサがシャルロット召喚
あのシャルロットってハーフエルフだったっけ?
色々複雑なことに
おっぱい!おぱおぱ!
>>599 ・召喚された男キャラのことでルイズをからかってる途中にいきなり攻撃され「シエスタぁぁぁあああああ!!!」
・火石の勢力圏内から全速力で離脱しようとするが逃げ切れずに「シエスタぁぁぁあああああ!!!」
>>602 誰でも出来る簡単ゼントラン語
「ヤック・デ・カルチャー!」
||
「なぁぁぁんてこったぁぁぁぁ!」
ルイズがルイーズ・ド・ラ・ヴァリエールを召喚
原点回帰(意味が分からん)というのはどうだろうか
ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール
端的に言いますと、ルイズのモデルとなった実在の人物です
もうひとつのモデルは同時代のキチガイマゾ修道女のルイーズ・ド・ネアン(空ろのルイズ)だけどな
ルイズ「キレテ・コシ・キレキレテ」
サイト「キミノ、ウチュウゴハ、ワカリズライ」
実在の人物はNGだろ。なによりも「作品」じゃあないし。
昔TVで放送した劇場版では柿崎撃墜直後に
『ディアンツ…マーカメディアテレルケマドラスデアルケス(ケス(ケス… ←エコー
(情けない…私にかなうものは居ないのか)』
とか言ってた気がするけど、最近スカパでやってたのを確認したら
『何がプロトカルチャーだ』になってたんだぜ。
ドンキーコングを召喚したら
ドラゴンスフィアって何気に一撃必殺の魔法なんだよな
名前繋がりならルイージとか
使い魔のネガティブオーラにアテられて
コンプレックスから立ち直れなくなるかもしれないけど
まともに入れば相手を強制的に『丸める』からな
魔力が高けりゃ抜け出せるんだろうけど
ルイーズ召喚と聞いて
ルイーズ大統領召喚が真っ先に思い浮かんだ俺
>612
人間が来てる事知らずにゼントランを屠ってたシーンだと記憶しているが
プロトカルチャーもへったくれも無いもんだ
ゼントラン語はスパロボαをやると解りやすいんだぜ
ジョゼフがルイージを召喚したらか弟つながりでトラウマを
>>612,618
確認してきた。「情けない(略)」の台詞はメルトランのブリタイ艦襲撃時だな。
>>613 タバサがシャムロック召還に見えた
仁忠に厚いし騎士としては大当たりの部類だよな
ゲーム中では色々悲惨な人だけど……
>>613 じゃぁ、シャイロックを呼ぶことにしてみよう。
ユダ公からした借金は踏み倒してよい ←結論
カメラブレ防止装置?
アームロック
<<ほら キャノピーの向こうに 天使の羽根が・・・・・・>>
>623
借金は返したよ。
金の代わりに肉を切り取るのをやめさせただけで。
ならばシャーロック・ホームズを呼んでみようか
犬の方の?
トム・ソーヤ召喚…
リーグオブレジェンド版なら普通に使い魔してくれそう。
…ジキル博士も薬ごと召喚ならいけるかも。
>>611 実在の人物NGで思い出したが
エガちゃんの場合生身でありながら
作品と認められたことになるのか
江頭は伝説だからおk。
シモ・ヘイヘは?
陸のヘイヘ、空のルーデル。
そして海の北島三郎
>>635 日本の誇るアンガウルのバーサーカーと、たった一人で戦車30台を相手取ったレミ・シュライネンもいるでよ>陸
BLEACHから雛森召喚を書こうと思ったが、初登場時なのかヤンデレ化後なのかでガラリと変わるよなこの娘………
ヤンデレ後を召喚して、ルイズの虚無を狙ってたワルドさんに「私が天に立つ!」とか言わせないでください><
>>637 大日本帝国の決戦兵器、船坂弘を忘れちゃいけないノデ
33kbって文字数でいうとどれくらい?
アンガウルがそれじゃないの?
おまいらそーゆうネタは軍事板の専門スレでやれ
>>639 ガンダールヴのルーンで一刀両断されかねねえwww
>>646 一文字は2バイトで、1kbは1024バイト。
そういうことだ。
半角1バイト全角2バイト
>>626 《マーカス!マーカースッ!!誰か救助に向かえ!奴は生きている!必ず生きている!》
なのはAsの闇の書召喚して、ルイズがあの四人と絡むのみたい
ヴィータはルイズよりシエスタに懐きそうだ
下がる男まだかな
攻撃力0の使い魔を見て、遊戯王GX174話に出たカードで《虚無の召喚術》、モンスターを攻撃力ゼロで特殊召喚、カードイラストは鏡ってのがあったのを思い出した。
なんと虚無の力は遊戯王の世界にもあったのだ、すごい偶然だわ。
うわっ、タイミング的にちょっとアレだけど50分ぐらいから投下します
逆に考えるんだ、
「あのSSの作者が
>>652に召喚されました」
そう考えるんだ
「……えーと」
ここは『ヴェストリの広場』と呼ばれる学院の中庭である。
二つの塔に挟まれ西側に位置し日中でもあまり日の差さないその広場は、たとえ昼休みであっても、人の気配がほとんどない。
本来ならばそういった場所であるはずのそこは、今現在喧騒のさなかだった。
寮暮らしで娯楽に乏しい学院生活に刺激を求めて集まった生徒達が輪になってあれこれとはやしたてている。
その輪の中心にいる二人の内の一人、巻き毛の金髪の少年が手にした薔薇を高々と掲げ、謳った。
「諸君、決闘だ!」
宣言に生徒達がわっと歓声を上げる。
そして二人の内のもう一人――柊 蓮司はぽかんとした表情のまま立ち尽くしていた。
午前中の授業での大爆発の後、ルイズと柊、エリスは教室の後片付けを命じられた。
昼休みが始まろうかと言う頃合になってようやく大方の片付けを終わらせると、ルイズはエリスを伴ってさっさと食堂へ向かってしまったのである。
柊は後片付けで誕生したゴミ満載の麻袋と共に置き去りにされた。
要するに捨てて来い、という事らしい。
文句を言おうと思ったが、それを言ったところでルイズが堪えるはずもなく、むしろエリスが気にするだけなので憤懣を腹に収めて柊はゴミ捨てに向かったのだ。
そしてふてくされてその辺の草原で寝転がっていると、生徒達がたむろして柊の許に現れた。
始めは授業で一悶着あったマリコルヌとかいう奴がお礼参りに来たかと思ったが、どうも違うらしい。
訳の分からないまま柊はヴェストリの広場に連れてこられ――それでもやっぱり訳がわからなかった。
柊の目の前では金髪の少年――ギーシュとか言うらしい――が声援に応えるように薔薇を振りまくっている。
そこから少し離れたところで、燃えるような赤い髪を揺らした少女が興味深げにこちらを見やっている。
その隣では青髪で眼鏡をかけた少女が立ったまま本を読んでいた。
そのいずれにも柊は面識がない。
額に手を当ててしばし考え込み、やはり答えを出す事ができずに柊は振り返って二人の少女を見る。
こちらは柊と面識のある相手である。
すなわち、眉を怒らせてこちらを睨んでいるルイズと、何故か申し訳なさそうに俯いているエリス。
二人の顔を順繰りに見た後、柊は尋ねた。
「……どうなってんだ?」
※ ※ ※
どうなってんだ支援
罰として与えられた教室の掃除をあらかた終えた後、エリスはルイズと共にアルヴィーズの食堂へと向かった。
言葉もなくどんどん先に進んでいくルイズの脇では幾人もの貴族達が談笑している。
胸にバラの造花(だろう)を差した金髪の少年を中心にして、やれ誰それと付き合ってるとか冷やかし混じりに騒いでいた。
エリスはルイズについて行こうと足を踏み出しかけ、床に何かが落ちているのを見つけた。
それは薄い紫の液体で満たされた、ガラス製の小瓶だった。
瓶の意匠からすると香水なのだろうか。男物には見えない。
だがこの近辺にいるのは先程の貴族達だけで、全員が男子だった。
強いて可能性があるとするなら、話題の中心になっているギーシュと呼ばれていた金髪の少年だろう。彼ならこういった類のものを着けていそうだ。
エリスは小瓶を拾い上げるとそのギーシュに向かって、
「エリス」
声をかける前に、ルイズから声が飛んだ。
みればルイズはエリスのいる場所から少し離れた席で立ち尽くしている。おそらく、エリスが椅子を引くのを待っているのだろう。
小瓶を手にどうしようかと目をギーシュに向けると、彼はエリスの持つ小瓶に気付くと僅かに目を見開き――何事もなかったかのように再び回りの少年達と話し始めた。
(やっぱりあの人のなのかな)
そう思ってエリスは彼に声をかけようとしたが、そこで少々苛立ったルイズの声が再び響いた。
「早く来なさい」
「は、はい……」
有無を言わせぬその声にエリスは仕方なく小瓶を持ったままルイズの許に小走りに駆け寄る。
そして彼女の許までたどり着くと、エリスは小瓶をルイズに差し出した。
ルイズはその小瓶を手に取るとしばし観察し、一度だけギーシュに目を向ける。
向こうも動向が気になっていたのか、視線がばっちりと合い、途端に彼は慌てて視線を逸らした。
「……いいわ、これは私の方で処理するから」
「はあ……」
嘆息しながら小瓶をテーブルに置くルイズにとりあえず頷くと、エリスは椅子を引いてルイズを席に座らせた。
そしてエリスがその隣にすわると、ルイズはちらりと彼女を見た後大きく溜息をついた。
――これで相手が柊であったならば、ルイズは躾と称して床にでも座らせていただろう。
だがエリスは至って従順だった。
朝の着替えも言えばちゃんと手伝ったし、衣服の洗濯の件もさほど反抗もせずに了承した(もっともエリスもルイズも洗濯する場所を知らなかったので後回しだが)。
椅子を引く事や自分の横には並ばず後ろに付くようにする……という事は知らなかったようだが、教えればちゃんと実践していた。
そんな彼女であったので、ルイズとしても他の動物の使い魔と同列に扱いどうこうさせるのは気が引けたのである。
使い魔ではない、という点を除けばエリスに不満はなかった。
何かと気に入らない柊よりはこちらを使い魔にしたほうがいくらかマシではないか……とも思う。
だがそうしようとは今の所考えてはいない。
何故なら契約をするためには相手に口付けをしなければならないからだ。
誤解とはいえ昨日"あんな事"になったばかりでは、流石に色々と躊躇われた。
ちょいと1つ1つが短い気も?
支援
メイド達が恭しく昼食をテーブルに並べる間、二人は一言も喋らなかった。
というより、厳密には教室の後片付けからこっちほとんど会話をしていない。
うわべだけの慰めを受けるよりはずっとましだったが、かといってこのきまずい沈黙はいかんともしがたいものだった。
「……どうして何も言わないの?」
「えっ……」
エリスに視線は向けず、並べられた食事に目を落としたままルイズは呟くように言う。
「貴女も内心では呆れてるんでしょ? だったらはっきりと言いなさいよ。そんな風に黙ってられる方が気に入らないわ」
「そ、そんなこと……」
そんなことはない、というのはルイズにもわかっていた。
彼女の『ゼロ』の所以を初めて知った者は、貴族も平民も関わりなく確実に『ありえない』という表情を浮かべる。
それは当然だろう。何故なら『魔法の使えないメイジ』などこのハルケギニアの『常識』では存在しないのだから。
だがエリスと柊はそんな"常識的"な反応はしなかった。
柊は後の教室の片付けに対して不満を露にするもルイズに対してはなんら以前と変わらない反応だったし、今目の前にいるエリスもルイズに対してどうこうというよりは単純に場の空気に萎縮してしまっているだけだ。
ルイズにもそれはわかっていた。
わかっていたが、一度口にすると止めることができない。
「魔法の成功率ゼロ。系統魔法はおろかコモンスペルでさえまともに使えない。あんた達を喚び出した時だって、その前には何度も失敗したわ! その挙句に出てきたのが……あんた達みたいな平民なんて!」
次第に口調を荒らげ、最後にはルイズは机を叩いてエリスを睨みつけた。
食堂が一瞬だけ静まり返り、そしてひそひそと生徒達の囁き声や笑い声が零れ始める。
そんな周囲の反応の無視してルイズは怯えている……というよりは困惑しているエリスを責めるように見つめた。
エリス達が召喚された経緯に関しては先日柊から説明は受けていた。
基本的に使い魔の意思によってゲートをくぐるという事例から行けば、彼女が召喚されたのは事故のようなものだろう。
だが、それを気に置く余裕も、今のルイズにはなかった。
「で、でも。サモン・サーヴァントには成功してるんですよね? だったら――」
「コントラクト・サーヴァント――使い魔として契約できなきゃ何を召喚したって意味ないじゃない! それとも何? 貴女が契約するっていうの!?」
「それは……っ」
口ごもったエリスにかっとなってルイズは彼女の腕を掴んだ。
昨夜の誤解の産物とは違う行動にエリスは身体を強張らせ、そこで初めて翠の瞳に僅かな怯えが混じる。
まさかここでコントラクト・サーヴァントをするのか、と回りの生徒達が興味深げに二人を見やったその時、横合いから声が響いた。
「こんな所で契約するなんていくらなんでも風情がないんじゃなくって?」
その声の主はキュルケだった。
驚きに呆然とするエリスとあからさまに不快そうに顔を歪めたルイズを満足そうに見やると、彼女は焔のような赤髪を優雅にかきあげて周囲の生徒達を一瞥する。
「失礼。気になさらずご歓談をお続けになって」
慇懃に言ってのけると生徒達は慌ててルイズ達から顔を逸らす。
キュルケはそれを見届けると再びルイズ達に向き直り、向かいの席に腰を下ろした。
「昨日の今日でまた揉めてるの?」
「……うるさいわね、アンタには関係ないわ」
幸か不幸か気勢をそがれたルイズはエリスから手を離し、椅子に身を預けた。
それを見てキュルケはにやにやとして笑みを浮かべて、頬杖を付く。
「随分ないいようね。昨日貴女達を取り持ってあげたのは誰だったかしら?」
キュルケの言葉にルイズはくっと言葉を詰まらせ、エリスは僅かに頬を染めて彼女から視線を逸らした。
と、そこで初めてエリスはキュルケの隣にいつの間にか一人の少女が座っているのに気づいた。
青髪で眼鏡をかけたその少女はルイズとキュルケの会話に加わるでもなく、手にした本に目を落としたまま微動だにしない。
エリスの視線に気づいたのか、キュルケは少女の頭を軽く撫でた。
「この子は私の友達、タバサよ。まあこんなだけど悪い子ではないから」
キュルケに撫でられながら青髪の少女――タバサはまったく反応がない。本から目を上げる事さえしなかった。
寡黙で表情を見せないその少女に、エリスは真っ先に自分の友達である緋室 灯を思い浮かべた。
が、どうも違うような気がする。上手く言葉にする事はできないが、何か違和感を感じるのだ。
そんな風に小さく首を捻ったエリスの脇で、ルイズはタバサを一瞥だけして鼻を鳴らしそっぽを向いた。
「で、図々しく座り込んで何の用、ツェルプストー? 不快だから視界から消えてくれると嬉しいんだけど」
刺々しく言うルイズにしかしキュルケは余裕たっぷりの表情を浮かべ、
「あいにく、ゼロのルイズに用はないの。用があるのはエリスの方だから」
「え……私、ですか?」
頭に疑問符を浮かべながら呟いたエリスにキュルケは大いに頷き、身を乗り出す。
「貴女と一緒に教室から出て行った彼、ルイズが召喚したもう一人なんでしょ? 彼に興味があるの」
「柊先輩に?」
「そう、その……ヒイラギ? 相手がマリコルヌとはいえ、メイジ相手にあれだけ啖呵切れる平民なんてこの国じゃ珍しくって」
興味津々といった風に語るキュルケに不快を示したのはルイズの方である。
彼女は端正な眉を思い切り顰めて、半ば侮蔑にも似た声色でキュルケに口を開く。
「学院の生徒に手を出すだけじゃ飽き足らず、平民にまで手を出すつもりなの?」
「優秀な人間に平民も貴族もないわ。『メイジにあらねば貴族にあらず』とか『貴族は魔法をもってその精神となす』なんてかび臭い伝統にしがみついて国力を弱めてるお国の人にはわからないでしょうけどね」
しかしキュルケはルイズの言葉を歯牙にもかけず、逆に口角を吊り上げてルイズに言葉を投げつけた。
ルイズは「これだからゲルマニアの人間は野蛮なのよ!」と机を叩き、余裕綽綽のキュルケに詰め寄る。
「だいたい、マリコルヌごときにいい気になったぐらいで何が優秀だっていうの? 単なる怖いもの知らずの馬鹿なだけじゃない!」
「柊先輩はああ見えて凄い人なんですよ。私だって何度も助けてもらいましたし……」
おずおずと口を出したのはエリスだった。
それを言う彼女の表情を見て取ったキュルケがにやにやとした笑みを浮かべて、エリスを覗き込むように見やる。
「へえぇ……つまりヒイラギはエリスの騎士様ってトコロ?」
「きっ、騎士!? 騎士なんて、そんな……!」
途端にエリスは顔を真っ赤にして両の手を頬に添える。
火照った顔を隠したい、というのもあったが、それよりもキュルケにそう言われて思わず顔がにやけそうになってしまったのだ。
一方でルイズは嘲りも露にエリスを鼻で笑う。
「何が騎士よ。あんな幸薄そうな奴のどこが凄いの?」
「……」
エリスは思わずかちんときてしまった。
自分自身がどうこう言われるのは一向に構わないが、自分の信頼する相手をとことんまで軽んじているルイズの態度は、少し頂けない。
「先輩は本当に凄い人なんです。何度もせっ……」
何度も世界の危機を救ってきた……と言おうとしてエリスは慌てて口を噤む。
柊とエリスが異世界の人間である事を(話の上だけとはいえ)知っているのはルイズだけなのだ。
キュルケとタバサがいるこの場では軽々しくいう事は避けた方がいい。
唐突に言葉を切ってしまった彼女を訝しげに見やる二人を前に、エリスは半瞬考えた後改めて言葉を継いだ。
「……その、何度も私の故郷の危機を救ってくれたんですから」
かろうじて誤魔化すように言ったその台詞はいかにも苦しく、キュルケは僅かに興を殺がれたように「へえ」とだけ返した。
そしてエリス達の事を知ってはいるがまともに信じていないルイズはその言葉を額面通りに受け取って、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
「村を襲ったコボルトやオークを退治した英雄様なのね。確かにそれは凄いわ。だから調子に乗ってメイジに楯突いちゃった、と」
「……っ!」
そこまで言われては、エリスも引き下がれなかった。
珍しく彼女は表情を険しくし、椅子を蹴倒すようにして立ち上がりルイズにまくし立てた。
「昨日ちゃんと先輩が説明したじゃないですか! 月衣も見て、今日だって0-Phoneも見たのになんで信じてくれないんですか!?」
初めて見るエリスの怒った表情にルイズは数瞬だけ呆気に取られたが、すぐに持ち前の負けん気を発揮して立ち上がった。
「信じられる訳ないわよ! 異世界とかウィザードとか侵魔とか!
侵魔といえばあの魔王とか言うの! どっから見ても普通の女の子ばっかりじゃない!
あんなのが世界の敵とか、あいつらと闘ってるとか、馬鹿じゃないの!?
信じろっていうならもっと信憑性のあるモノをだしなさいよ!」
「〜〜っ!!」
支援
二人は頭がぶつかりそうな距離でお互いににらみ合っている。
向かいの席に座っていたキュルケは、当然ながら話についていけずぽかんと見守る事しかできなかった。
なお、その隣で本を読んでいたタバサは目を上げさえもしなかった。
売り言葉に買い言葉というべきか、ルイズの言葉にエリスは更に頭に血が上った。
ファー・ジ・アースの事を何も知らないくせに好き放題に言うルイズが許せない。
普段控えめなだけに、一旦高ぶるとどうにも収まりがつかなかった。
「見た目だけで判断しないでくださいっ! あの魔王達は本当に世界を滅ぼす力を持ってるんだから!
メイジっていうのがどんな人達かよく知らないけど、そんなのよりずっとずっと強くて怖いんです!」
「な……っ!」
少なくともハルケギニアの人間からすればあまりにもな暴言にルイズは思わず絶句してしまった。
その隙をついた、という訳ではないだろうが、ヒートアップしたエリスは畳み掛けるように叫んだ。
「柊先輩はそんな魔王を相手に戦って、何度も世界を守ってきたんです!
柊先輩は、柊先輩は――世界で一番強いんだからっ!!」
……恐らく、この場に緋室 灯がいればエリスの間違いを冷静に指摘しただろう。
赤羽くれはがこの場にいれば、ひとしきり笑った後で優しく訂正したはずだ。
だが二人はこの世界には存在せず、少なくとも志宝エリスにとって、世界と世界最悪の存在であった自分を救ってくれたのは他のどんな高レベルウィザードでもなく、柊 蓮司だった。
アルヴィーズの食堂がしんと静まり返った。
拳を握り締め、肩を上下させながらエリスはルイズを睨みつける。
しばしの沈黙の後、ルイズの鳶色の瞳が細まった。
「へぇえ……メイジの通う魔法学院で、随分と大層な事言ってくれるじゃない……」
確かにルイズは好き放題に言っていたが、『何も知らないくせに』というのは彼女だけに当てはまるものではなかった。
出会い頭からコントラクト・サーヴァントを拒絶した柊もそうだが、いかに従順とはいえメイジを侮辱されてはルイズも捨て置く訳にはいかない。
溜まりに溜まった不満を吐き出そうとルイズが手を振り上げたその時、
「そうね、メイジとしてその台詞はちょっと聞き逃せないわねえ」
今まで黙っていた(というか話についていけなかった)キュルケが声を上げた。
邪魔をされた形になるルイズが睨みつけると、キュルケは小さくほくそ笑んでからエリスに目を向けて更に言う。
「そこまで言うんだったら、実際に強い事を証明してくれないと。それならヴァリエールも納得するでしょう?」
「しょ、証明……ですか?」
やや落ち着きを取り戻したエリスが、事態のまずさにようやく気付いて少し気後れしたようにキュルケを見やった。
だが、焔髪の少女はエリスの後退を許さない。
椅子に背を預け、演技とは思えないほどに堂の入った尊大さで殊更に嘲るような調子で語りかける。
「そう。誰かメイジと手合わせして強さを見せてちょうだい。ヒイラギならそれくらい余裕よね? なんせ何度も世界を救ったらしい英雄だし……」
「……っ、い、いいですよ。望む所です! 柊先輩は誰にも負けませんっ!」
あっさりと挑発に乗ったエリスにキュルケは満面の笑みを浮かべた。
そして彼女は改めてルイズへと目を向ける。
「と、いう事だけど?」
「……好きにしなさいよ。調子に乗ってるこいつ等の鼻をへし折る丁度いい機会だわ」
主導権を握られた事が気に食わないのか、彼女は腕組みしてそう吐き捨て、そっぽを向いてしまった。
キュルケは勝ち誇ったように鼻で笑うと、焔色の髪を優雅にかきあげてエリスに向き直った。
「主の許可も得た事だし、それじゃあ――」
「やらない」
支援
今まで黙って本を読んでいたタバサが唐突にボソリと漏らした。
どうやら話を総て聞いていたようだ……と言っても、エリスが叫んだ時点で食堂の生徒達の関心はキュルケ達に向いているようで、彼女を含め食堂の全員が話を聞いてはいる。
「まだ何も言ってないわよ!?」
泡を食って向き直るキュルケに、タバサは本に目を落としたままもう一度言い含めるように呟く。
「私は、やらない」
「そんなこと言わないでさあ……」
にべもないタバサにキュルケが縋り付く。
するとタバサはようやく本から目を上げて、やや呆れたような目線をキュルケに向ける。
「自分でやればいい」
「……ぇー」
ルイズのようにメイジ……貴族としての意識が殊更に高いトリステインの人間ならばともかく、キュルケもタバサも『平民は絶対にメイジに敵わない』などという俗説を信じ込んでいる訳ではなかった。
なので彼女自身が侮辱されたというのならまだしも(タバサに至っては自身が侮辱されても相手にしなさそうだが)、エリスの叫んだ暴言などはキュルケにとってヒイラギに対する興味が深まるだけのものでしかない。
かといって自分でそれを確かめるほど積極性があるかというと、はっきり言ってなかった。
負けるなどとは思っていない。単に面倒くさいだけだ。
冷静に考えればタバサがそれをやることはないのだが、そこは話のノリである。
そのノリを(当然の反応だが)一刀両断にされてキュルケは少々鼻白んでしまった。
段々面倒臭さが表に出始めてキュルケはなんとなく視線をテーブルに向けた。
ルイズとエリスの席の前に置かれた食器。その間に、小瓶があった。
「その瓶、香水? 確か……モンモランシーのだっけ?」
「………」
やや独り言じみたキュルケの言葉にルイズはふんと鼻を鳴らし、顎をしゃくる。
促されたその先には、小瓶を凝視しながら汗をかいているギーシュがいた。
キュルケは己の幸運を始祖ブリミルに感謝し、会心の笑みを浮かべて小瓶に手を伸ばした。
※ ※ ※
「――という訳よ」
「なぁにが『という訳』だ!? 俺のいない所で勝手に話を進めてんじゃねえ!!」
ルイズから一応の事情を聞かされた柊は思わず叫んだが、しかし当のルイズは聞く耳持たず、ふんと鼻を鳴らして顔を背けてしまう。
ぎりぎりと歯を鳴らして睨みつけた後、彼は僅かにジト目でその隣のエリスに目を向けた。
途端にエリスがびくりと肩を震わせ、今にも泣きそうな顔で柊を見返す。
「しかもエリス……お前……」
「あ、あの、そのぅ……ご、ごめんなさい……」
捨てられた子犬のように震えながら見上げてくるエリスをしばし見つめた後、柊は盛大に肩を落として溜息をついた。
ウィザード達の闘いを馬鹿にされて黙っていられなかった、というのは柊にも共感はできた。
拉致られたり巻き込まれたりで何かと厄介事を背負い込む事が多い柊だが、彼はそれ自体を不幸とも不運とも思っていないし、やってきた事にはそれなりに誇りも感じている。
とはいえ、ここは異世界。ルイズ達はウィザードの事など何も知らない人々なのだ。
理解されないからといってむきになるのはいささか大人気ないし、少なくともハルケギニアでは理解されても意味はない。
そういった意味ではエリスの行為はファー・ジ・アースにおける『何も知らない人々』――イノセントに対して世界の真実を語ったにも等しかった。
彼女がウィザードになって……そしてウィザードであった頃から間もないので仕方ない事ではあった。
元の世界でそうしなかっただけマシと思えばいいだろう。
「……しょうがねえなあ、もう……でも、今回だけだからな」
「はい……ごめんなさい」
しゅんと項垂れたエリスの頭に軽く手を置いて、柊はギーシュに向かって一歩踏み出した。
囁くようにエリスががんばってください、と言い、柊は軽く手を振って返した。
「……これだけ盛り上げといて言うのもなんだがね」
ひとしきりギャラリーに応えて満足いったのか、ギーシュは一息ついて後方に控えていたキュルケを振り返った。
そして根本的な質問を彼女になげかける。
「なんで僕が決闘とかしないといけないんだ?」
「何言ってんの、メイジを馬鹿にされたのよ? あの平民に思い知らせてやんないといけないでしょ?」
「まあ、それは確かにそうだが……」
完全無欠に関係ないのに巻き込まれたギーシュとしては釈然としないのか、口の中でぶつぶつと何事かを呟く。
それをみたキュルケは小さく嘆息すると、にやりとした笑みを浮かべて懐から小瓶をちらつかせた。
「そういえばさっきアンタの落し物を拾ったんだけど――」
「あーーーーーっとぉ!! ミス・ツェルプストーの頼みなら聞かないワケにはいかないなぁ!!!」
わざとらしく大声で言ったキュルケの台詞をかき消すようにギーシュは叫ぶと、金の髪をばさあっと大仰にかきあげて柊に向き直った。
そして手にした薔薇をつきつけ、芝居がかった口調で更に叫ぶ。
「そんな訳でそこな平民! 君には縁もゆかりもないが貴族の誇りのため、そして何より僕の心の平穏のために医務室送りになってもらうよ!
怨むのならルイズに召喚された己の不幸を呪うんだね!!」
「あー……もうどうだっていいからさっさとしようぜ」
明らかにやる気のなさそうな声で柊が答えると、ギーシュは不敵に笑って一歩進み出て、両者は対峙した。
「……で、実際どんな感じだと思う、彼?」
思惑通りに進んだ光景に満足気な笑みを浮かべたキュルケは、隣で本を読んでいるタバサに向かって声をかけた。
タバサは二人の決闘が始まらんとするこの時に至っても本から目を上げようとはせず、声だけでキュルケに答える。
「昨日の動きを見る限り、かなりできる」
「あら、それじゃギーシュはご愁傷様ってところかしらね」
サラマンダーを召喚して早々に学院に戻ったキュルケは見ていないが、先日の召喚の儀式の際、頭に血の上ったルイズが放った爆発の失敗魔法は方向も距離も位置も規模もまるででたらめで、それゆえに著しく予測と回避が困難な代物だった。
実際生徒は何人も巻き込まれたし、コルベールも何度も巻き添えを食らった(ちなみにタバサは使い魔の風竜で早々に上空に避難した)。
だが、ルイズの標的である当の柊は爆発のあおりを受けこそすれ一度たりとも直撃をもらう事はなかったのだ。
少なくとも身のこなしに関しては一般人の枠をぬきんでている。加えて動き方をみれば――
「……貴女がやってたらどうだったかしら、『雪風』のタバサ?」
むしろこちらが本題だ、といわんばかりのキュルケの声が届いた。
タバサはそこでようやく目を上げて、柊を見やる。
そして彼女はさほど興味もなさそうに、言った。
「……"今の"彼になら、多分勝てる」
「こういう経緯上当然知っているとは思うが、僕はメイジだ。ゆえに魔法で闘う……よもや文句はあるまいね?」
「好きにしろ」
嘆息交じりに応える柊にギーシュはふんと鼻を鳴らすと、手にした薔薇を軽く振った。
花弁が一枚地面に落ち、やがて周囲の土ごと巻き込んでそれは甲冑を纏った女性の人型を形成する。
完成したその造形にギーシュは満足そうに一つ頷くと、次いで柊に目をやり大仰に腕を広げてみせた。
「僕の二つ名は『青銅』、青銅のギーシュだ。したがってこの青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
「そうかよ。だったら……」
言いながら柊は腕を中空に差し伸ばした。
果てしなく面倒くさいがやる以上負けるのは御免だ。
幸いにして見たところワルキューレとやらもその使い手も大した腕ではない。
さっさと終わらせてしまおうと柊は月衣から己の得物を――
「…………あっ」
そこで柊はようやくそれを思い出した。
ここ一ヶ月近く闘いのない平穏な日常を過ごしていたため、あまり意識する事もなくなっていたのだ。
加えて今回の召喚はこれまでのものと違って、一悶着はあったもののごくごく『平和的』だったので、ほぼ完全に失念していた。
要するに、今の柊 蓮司は――
(…………………………魔 剣 が ね え)
『魔剣使い』ではなく、『使い』だった。
決闘は今まさに始まろうとしていた。
スケアクロウなみの死にっぷりを見せるか支援
以上
決闘を『真面目に』やろうとすると個人的にどうもアレだったので思い切って馬鹿っぽくしてみました
1レスの分量については個人的に丁度いいとおもってたんですが短かったですか。もうちょっと考えて見ます
乙ですー
や、他の人と比べて短いなってだけで。
別に読みにくいわけじゃなし、問題はないですね。変なこと言ってスイマセン
エリスかわいいなぁ
柊が世界最強とは、素晴らしい乙女フィルターw
乙でしたー
そうだねぇ、『魔剣』が無い『魔剣使い』はただの『使い』だからねぇw
といっても飛んで来れるかどうかは無理っぽいしなぁ……、デルフいらない子になっちゃうし。
これからの展開を楽しみにしていますんで頑張って下さい。
乙です
世界最強の『下がる』と『フラグブレイカー』の二つを持つ男か…
ナイトウィザード知らないんだけど、柊さんは魔剣がないと戦えないのか?
展開が新しいww
乙
ただの使い状態で柊はどうするのかw
柊は魔器召喚もってないからなぁ
素手にエンチャントフレイム使って殴るしかないなw
魔剣無い状態だと攻撃力上がるどころか下がるから
相手の抗魔力しだいだけどw
>>673 『魔剣使い』はその名の通り、『魔剣』を使った戦闘がメインのクラスだから、『魔剣』
が無いと戦闘力は格段に落ちる。
一応、この柊が何Lvの柊か分からないけど、武器さえあればそこそこ戦えると思う。
そういえば最近のNWを知らないので何とも言えないが、『魔剣使い』のスキルはデルフ
にも効くのかな?
>>677 一応、2ndで魔器はプリプレイごとに所持アイテムから選択って形だったと思うから、できるんじゃないかなあ
>>586 あれだ
頭の中の映像を文章へベタに変換しているって奴じゃないか?
だから読み物としての完成度は二の次と
タバサがシャムロック号を召喚
ナイトウィザードは殆ど知らないんですが、魔剣の無い柊の戦闘力ってどんなものなんでしょうね?
フルアヘッド・ココのバーツのように素手・剣一本と、二刀流状態の戦闘力くらいの違いがあるとか。
下がる男&正統派ヒロイン属性大魔王おつー。
2nd仕様の柊 連司は無印の頃の「攻撃力特化、防御力ほぼ皆無」を
さらに昇華させてるから洒落にならないくらい打たれて弱いのですよねぇw
魔器で相手の攻撃と魔法攻撃を防ぐ≪護法剣≫と≪金剛剣≫があるくらいで(使用制限アリ
ギーシュの青銅ゴーレムにタコ殴りされて、生死判定をする姿が容易く想像できますw
NWの魔王はそれぞれヒロイン属性を持ち合わせた美少女か美女の形態をとるから、
ルイズのいう『どっから見ても普通の女の子』というのは正鵠ですよねぇ(苦笑
平行世界にいけば、それこそ化け物怪物な外見の魔王ばかりですが。
>>677 2nd開始時点と仮定すればLV11、ただしリプレイ空砦では何故かLV10に下がっていたので、
下がる男らしくLV10と推察されます。
一応、晶の魔剣は持っていたような気もするけど、こんなお遊びで出すほど
安い代物でもないしなぁ。
677です
>>682さんありがとう!
そうかーLv10かー。一応素の能力値はそれなりだから、流石に生死判定は無いんじゃなかろうか?
というか、あったら流石に柊がかわいそ過ぎるw
>>681 フルアヘッド・ココのバーツ>読んだ事ないのでどんなキャラか知りませんが、柊が魔剣を装備した
場合、『魔剣使い』のスキルが使用できるようになる為、強さは段違いに上がるはず。
NW2nd知らないので具体的にどれ位の差か分からないが、大体RX78とGP03位?
(魔剣=オーキス)
紙防御の柊死亡か?GJでした!
バーツって普通の剣は重くて握れないだろ
質量が0に近いなら話は別だが
9:30あたりに投下
おじゃる丸か これは楽しみ
なんだ釣りか
>>578 一人目、ゴルゴムとクライシスをぶっ潰したてつを(公式)
二人目、ゴルゴムをぶっ潰した後、クライシスが攻めて来なかったてつを(BLACKファンRX否定派の妄想)
三人目、ゴルゴムが存在しない世界でクライシスをぶっ潰したてつを(熱烈BLACKファンにパラレルにされたRX)
四人目、クライシスと闘い続けるてつを(ディケイドRX)
五人目、ゴルゴムと闘い続けるてつを(ディケイドBLACK)
一人多いのは奇跡が起こったからだ!
てつを雑談はいい加減スレチだと(ry
無理矢理決闘させられるギーシュと使い魔ってのも珍しい
というか完全にとばっちりだwww
BLACKにしても何にしても、元ネタ知っててネタ言う人と
ネットの受け売りの知識でネタ言う人とは
随分とギャップがあるもんだなぁ・・・
てつをばかりでみんな信彦には触れないよね
グランザイラス・ジャークミドラの回は子供心に「ねーよw」って思った
昔の特撮って 結構容赦無く過去作キャラを噛ませにしてたよね
最近のクロスオーバー作品だと配慮されてるけど
ZXまでのライダーがほぼ完全に戦闘員扱いだったりしたからなぁ。
そして何より酷いのが、偽ライダーの回……。アレは本当にねーよ……。
>>686 ガンダールヴパワーで身体能力とか上がっちゃって、普通の剣でも持てるようにならんの?
魔剣が無いので『使い』キターーー
使い魔契約しないまま決闘と言うのも珍しいッ
さてどうなることやらやらやら
そして宝物庫の破壊の杖(?)な何になるのかしらしらしら
>>556 「ルイズがマドハンドを召喚したら」ですね、わかります。
>>697 怪我の後遺症で握力がないからルーンの力でもどうなるか
魔剣がないから只の使い
使い魔になってなくて使いがないから只の魔
つまりこれはいったい
ひとりひとりでは単なる使いと魔だが、二人合わせれば使い魔となる。
使い魔となったウィザードは無敵だ。
何そのスーパーイナズマキック繰り出しそうなの
ガンダールヴのルーンが有るとか無いとか関係ないのです!
ガンダールヴのルーンがあればなんて思うものが本当の使い魔になれるはずがありません!
下がる男乙
柊は戦闘に関してはクレバーだから切り札は使わないだろうな
普通にワルキューレの攻撃を躱しながらギーシュにエンゲージしてデコピンだろうな
でも、後のこと考えて【マリーシ】で接近して【トール】乗せたデコピンなんて外道もありそう
……力の無い人間に対しては結構酷いからな、初期の生徒達
二人で一人っつーか、今度の仮面ライダーはもろウルトラマンAなんだけど
どうせ故郷に帰るか死ぬかして一人になるよ
あまりに唐突に始まった新ライダーの話題
>>700 握力が無かったら、ハウエル爺さんに頼んだ剣も振れないだろうから、
多少はあるんだろうし、大丈夫じゃないか?
我らがキャプテン・グラフが、ロマリアかガリアに召喚されてれば何でも良いけどさ。
ヒビキさんを召喚
力仕事は全く苦にならず人格的にもグー
サイトと決闘に負けた後に志願してきたギーシュの2人が弟子
着替えの問題さえクリア出来れば
下がる男乙
スクールメイズに潜っていたときの代剣は……ないよなあ
そこでてつを召喚
霞のギーシュw
魂隊隊長の滝をテファが召還してですね
アルビオンに広がる仮面ライダーの噂
>>712 もう、あいつ一人(単独スレ)で良いんじゃないかな
仮面ライダーの能力・変身システムはカガクとオカルトの融合みたいなやつが多いし
コルベール先生歓喜だな
お前らてつをじゃなくてちゃんとK9999って呼んでやれよ!
2002UMじゃ上位互換のイケメンに変わられて唯一のリストラなんだぞ!?
誰もデコドリルの話なんかしてねーwww
>>719 凸ドリルって言うとスレードゲルミルを思い出す
ドリルと聞くと真ライガーを思い出す
仮にもヒロインの乗る機体じゃねえだろw
ルイズが渚のドリル少女化か
ヒロインらしい機体ってーと……ヴァルシオーネ?
社会主義が召喚されました
そんな事よりウルトラマンの話しようぜ。
カネゴンが召喚されたらで。
じゃあヤメタランスを
>>727 やっぱお札や銅貨より金貨の方が腹が満たされるんだろうか?
ギーシュに錬金で10円玉量産してもらうのは無理かなw
カネゴンの満腹度って金額じゃなかったっけ?
なんでちょっとでも間が持たなくなると
すぐ特撮の話題になるんだよw
ファンタジーの初心に帰ってドラクエ2のロラン(モンスターズ仕様)召喚とか。
ヨルムンガンドだろうが何だろうがデルフ一振りありゃで破壊しちまうな
レゴラス召還
人智を超えた災いをもたらすようなキャラとかギャグマンガ日和のキャラなんかは
小ネタ・短編のほうが向いてる気がする
試しに いっさい戦闘能力無しのキャラで書いてみようかな
HANAGE
若い世代はファイファン、ドラクエ、ファイエム辺りが初心ちゃうか?
俺はモンスターメーカーだったが……ノーラ可愛いよノーラ
ああ、懐かしき魔導物語・・・・
リトルマスターを何人の人間が覚えているだろうか
>>740 途中で「NOW LOADING......」画面のまま動かなくなっちまったよ
ボスが仲間になると弱体化ってのを地で行ってたな
ギーシュがHA☆GAと決闘するようです
デア・ラングリッサー…あれは味方が敵になると鬼強くなって大変だったorz
744 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:33:01 ID:JUGCti8+
どうもみなさんこんばんわ
シンケンジャーは木土派なんですが先週の殿執事はやきもきしました
特に予約もなければ20:40頃から投下を行いたいと思いますが
よろしいでしょうか
どうぞ
746 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:40:34 ID:JUGCti8+
ほいだらぼちぼち投下をしていきたいと思います
――――――――――――――――――――――――――――――
ルイズとカズキは図書館での調べ物をやめ、ルイズの自室にて二人、顔をつき合わせていた。
ルイズの魔法を失敗させない為にはどうすれば良いか、二人して頭を悩ませるのである。
ルイズの室内の本棚には、図書館に行く必要がないほど、魔法に類する書物が収められていた。
どれも幾度なく開かれ、頁の端が欠けるほど読み込まれている。
カズキは文字はわからなくとも、それらに目を通すだけでルイズのこれまでの努力が伺えた。
さらに聞けば、ルイズは思いつく限りの方法は既に試み、様々な助言を得てもなお、結局は爆発を起こしてしまうのだと言う。
「どうしたもんかなぁ」
先刻の一件で少しばかり気が楽になったのであろうカズキ。今は、ルイズのことに集中できていた。
「そんな真剣に考えなくても良いわよ。どうせあんたに、どうにかできることじゃないし」
結局魔法を使うのはルイズだ。カズキが頭を捻ったところで、解決するものでもない。
ルイズにしても、結局ないものねだりをするつもりもないのだろう。
じゃあカズキにどうして欲しいのかと言うと、そこはルイズ自身にもいまいち判断はつかない。
そうは言っても、なんとかしたい、なにかをしたいと思うのがカズキである。回らぬ脳をフル回転させる。
「系統?は結局わかんないんだよね」
「そ。『発火』でも、『錬金』でも、『フライ』でも、『治癒』だろうと、失敗して…ね。
メイジはどれか一つの系統が得意だなんて、わたし、どれも不得意だとしか思えないわ」
「うーん。魔法って、失敗すると爆発起こすものなの?」
魔法は見るのも初めてで、知識のないカズキならではの疑問である。まさか、と自嘲気味に笑うルイズ。
「スペルを唱えきって失敗するなんてまずないでしょうけど、たいてい何も起こんないわ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんなの」
ふむふむ、と頷く。ますますわからなくなった。
「…なんか、もう一つなかったっけ?失われた、とかなんとか」
「『虚無』の系統のこと?あれは始祖ブリミルが使われていた伝説の系統ね」
カズキは指をぱちん、と鳴らした。
「そう、それ。実はルイズがその、『虚無』の系統、とか」
うん、我ながら名推理、と満足そうに頷くカズキに、ルイズは鼻で笑った。
「あんたね、そんな畏れ多い話、あるわけないじゃない。それに、あんたが今言った通り、遥かいにしえに‘失われた’系統なの。
つまり、スペルや文献の類も残っていない、どんな魔法なのかもわからない。唱えて確かめる術もないわ」
つらつらと語るルイズ。愚考さえも畏れ多い、と言わんばかりだ。
「そっか…」
改めて本棚を見る。あれだけの蔵書を誇る図書館の常連であろうルイズ。さらにこれだけの本を個人的に所有しているのだ。
本当に、自分に口出しできることは、何一つないのだろう。それを思い知らされる。
それから、さらに数日が過ぎた。
使い魔の達人 第七話 王都トリスタニア
「で、ミス・ヴァリエールと、使い魔の少年の方はどうじゃ?」
トリステイン魔法学院、学院長室。例によってオスマンとコルベールが顔をつき合わせていた。
「数日前まで、時間があれば図書館の本を片っ端から調べていました。遠目に見て、主に亜人関係の書物でしたが。
おそらくミス・ヴァリエール自身、あの使い魔に思うところがあったのではないでしょうか。
『フェニアのライブラリー』への閲覧を申請してきましたが、時期尚早と思い却下させておきました」
「ふむ。事はわし等も扱いかねるからの。変に騒がれても適わん。よくやってくれた。して、今は?」
「捜索を断念したのか、平常どおりの生活を送っている様ですね。
ミスタ・グラモンとの決闘以来、なにかしら騒動を起こすこともありません」
その報告に、オスマンは自慢の白髭を撫で付けながら意外そうに言った。
「ほぅ。例の件を快く思わぬ貴族連中に、私刑でも吹っ掛けられるとも思うたが」
「一応此処は、貴族の学び舎ですから…あまりそう言ったことを学院長自ら仰るのはどうかと思いますぞ」
747 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:41:52 ID:JUGCti8+
苦笑するコルベール。
「ふん、君とてあの大立ち回りには興奮仕切りだったではないか。ま、連中にはいい薬にでもなったのかの。
では、引き続き、なにかしらあれば報告するように」
「わかりました。ところでその…」
言葉を切ると、辺りを見回した。
「なんじゃね」
「その、ミス・ロングビルは…」
「ああ、彼女なら明後日、ユルの曜日に控えた『フリッグの舞踏会』の打ち合わせに出ておるよ。
何から何まで初めてのことじゃろうに、平然と卒なくこなすから任せて安心じゃわい。
もうぼちぼち戻るかも知れんが、そんなわしの頼もしい秘書殿に、四十を数えて久しい男やもめな君がなんの用かね?ミスタ」
オスマンの瞳が光る。ありゃわしの尻だ。そう告げる眼差しだった。
このエロ爺め。コルベールは心中で吐き出せば、
「いえ、なんでもありません。失礼します」
一つ礼をして、学院長室を出るのだった。
「なあ、ルイズ。彼は一体、どうしたんだね?」
授業の休憩時間に、ギーシュがそんなことを尋ねてきた。相変わらず、手の上で薔薇を弄っている。
先日の一件以来、顔はともかく目を合わせることもなかったが、今になって何故だろうか。ルイズは首をかしげた。
「彼って?」
「決まってるじゃないか。君の大事な使い魔君のことさ。この数日と言うところ、あまり元気がない…
と言うか、どこか切羽詰ったような顔をしている気もするのだが、どうしたのかね?」
「だ、大事って!…まぁいいわ。なによ、ギーシュ。
あんた、わたしの使い魔の顔を、そんなにまじまじ見てたわけ?気持ち悪いわね」
ひょっとして、あの一件で新たな趣味が芽吹いたのではないか。ルイズの脳裏に、いけない妄想が広がりかけた。
「ち、違うさ!この僕をあれだけ追い詰めた男が、あんな風に覇気がないのは、何事かと思っただけさ」
「追い詰めたってあんた、完璧にこてんぱんに負けてたじゃない」
「ぐっ…」
嘆息交じりのルイズの指摘に、ギーシュは呻いた。そして、ルイズは尚も嘆息を続けた。
「…どうやら、だいぶ深刻なようだね。君が、そんな顔をするなんて」
「あら、モンモランシーやあの一年の子に続いて、次はわたしなのかしら?」
果たして自分はどんな顔をしていたのだろうか。すぐに澄ました表情を作るルイズ。ギーシュは肩を竦めた。
「まさか、今は誰とも付き合えないよ。まずは二人に詫びようと思ったのだが…
ケティはなんとか許してくれたが、モンモランシーがどうしても、ね」
次いでううむ、としかめっ面で悩むギーシュ。どうでもいい、とルイズは思った。
ちなみにカズキは今、雑事をこなしている最中である。そこを見計らって、ギーシュも話しかけてきたのだろうが。
「って、僕のことはともかくとして、君の使い魔のことだ。まぁ、君の『あのこと』であれだけ激昂した彼のことだ。
聞けば君たち、この数日図書館に通い詰めて調べ物をしていたそうだが、おそらくそれが関係しているのだろう?」
こっちに意識が戻ってきたギーシュが再度問う。なんでこいつが知ってるの、と思ったルイズだが、
あれだけの書物を魔法無しで片っ端から漁っていたのだ。人目につかぬわけもなかった。
「ま、関係してるといえばしてるけど、あんたにはぜんぜん全く無関係な話よ。
余計な詮索する前に、モンモランシーへの詫びの一言でも考えた方が良いんじゃない?」
「…まぁ、君がそう言うのなら、深入りはすまいよ」
「そうしてくれると助かるわ」
しかしルイズは、何か思うところがあったのか、こう続けた。
「…あと、あんな使い魔だけど、気遣ってくれてありがとう。
それに、今更言うのもなんだけど、この間の件では、うちの使い魔が済まなかったわね」
ギーシュは目を丸くした。
「…なに、その顔は」
「い、いや。今僕は、奇跡の瞬間に立ち会ってるような気がしてね。
ま、まぁ。あの件は僕にも非がないわけでもないさ。うん、君さえよければ、水に流すよ、ははは」
声がどこか上ずっているギーシュ。そう、と返すと、ルイズは前を向いた。
「ま、まぁなんだ。彼も、君の使い魔として頑張っているのだろうし、どうかね。
今度の休日は、使い魔を労ってやるのもまた、主人としての勤めと僕は考えるよ」
それだけ伝えれば、ギーシュは踵を返した。向かった先でモンモランシーに早速話しかけ、言葉を発する前に平手を食らっていた。
ルイズはギーシュの言葉を受け、何事か考え始めた。
しえん
749 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:43:02 ID:JUGCti8+
カズキは、精神的に崖っぷちに立たされていた。
何時終わるとも知れぬ、人としての自分。しかしその瞬間は、あれ以来、三日、四日と日を重ねても一向に来ることはない。
眠れる時間は日に日に少なくなり、口数も少なく、食事もあまり喉を通らなくなってきた。
時折思い出したように、ルイズに体調を確認する。返事は決まって次の通り。
「別になんともないわ」
これを聞くたびに、カズキは安堵する。しかし、懐疑的なものも全くないわけではない。
実は我慢をしているのではないか?そう考え始めると、止まらなかった。
かつて斗貴子も、‘ホムンクルス本体’に寄生され、身体の自由が利かないのをおして平然を装い、任務を続行していた。
出会って数日だが、カズキの知るルイズという少女は斗貴子同様、我が強い。ならばルイズも…と考えると、気が気ではなかった。
が、事情を知るルイズならばともかく、朝に顔を合わせるキュルケや、他の同級生、貴族連中、学院で働く人間たちにも、
特に著しい脱力感を訴える者も居らず、カズキは次第に、わけがわからなくなっていった。
「なあルイズ、オレ、どうなってる?」
「なによ、またそれ?どこからどう見ても、人間よ、人間。良かったわね」
カズキがそんなことを訊き出したのは、召喚された翌日から、さらに一週間も経過した頃から。
そして現在。気付けばギーシュとの決闘から、九日が経っていた。既に窓の外は暗い。
タイムリミットは、とうに過ぎている。カズキの見た目は依然、人間の、いつもの姿のままであった。
カズキは、何時までもヴィクター化が固定しないことに内心混乱しつつも、その日数が推定であったことを思い出す。
推定で語られていたのならば、それが早まることも、遅れることもある。
来るなら、とっとと来い。来ないのならば…。
幾度も、自分で命を絶とうと考えたカズキだが、その度に、あの日のルイズの言葉が脳裏に浮かぶ。
そして、思いとどまるのだ。次第に、カズキの心は軋みを挙げ始めていた。
ルイズは今頃になり、ひょっとしたらこいつ、騙されてるんじゃないか、などと思っていた。
この少年が嘘をつく類の人間ではないと、少女は判断する。ならば、誰かに謀れている可能性を、今の今まで考えなかった。
そうすると、カズキが実際に姿を一瞬変えた件についてどう説明するのか、ルイズはまた頭を捻るわけだが。
「そうね、明日出かけましょう」
「…?」
何を言っているのかわからない。そんな表情を、ルイズに向けた。
「明日は虚無の曜日だもの。休日を静かに過ごすのは、わたしとしてもやぶさかじゃないわ。
けれど、先週だってずっと図書館で調べ物だったもの。今週も鬱屈と部屋で過ごすなんて、さすがに不健康だわ。
街にでも出てみましょう。あんたもついて来ること。いいわね?」
「な、なに考えてんだ。オレは――」
「死を振り撒く化物になる、でしょう?けどあんた、そんなのさっぱりならないんだもの。
いい加減疲れちゃったわ。あんたも、ずっと気を張ったんだし、ちょっとは気晴らしになるでしょ。
優しいご主人様の気遣いに感謝したら、もう寝なさい。とにかく明日は、街へ出るわよ」
「そんな…!」
「なったらなったよ。命を吸われる前に、なんとかするわ。どんな魔法だって爆発するのよ?あんたのそれより早いわよ」
もちろん貴族として、メイジとして威張れることではない。
わかっているはずだが、この使い魔を言い含めるにはきっとそれしかないのだろう。ルイズは少し悲しくなった。
強引に決めると、ルイズは自分で着替え始める。この数日、カズキはルイズの着替えを手伝おうとしなかった。
叱り付けても、動こうとしない。それどころか、部屋から出ても、常に一定の距離を取ろうとするのだ。
人に、ルイズに触れるのが、その命を吸ってしまうかも知れないことが、怖いのだろうか。
召喚した頃からは、予想もつかぬ酷い有様。そんな風に怯える自分の使い魔を、見ていられなかったからなのだろうか。
明日出かけることで、少しでも彼の不安を取り除けたら…。
ルイズは、自分がそんな提案ができたことを内心驚いていた。
きっと、ギーシュがあんなこと言うからだわ。ルイズはそう思うことにした。
カズキはルイズが着替えを始めると同時に、毛布に包まっていた。包まりながら、震えていた。
脳裏に最悪の結末を描きながら、震えていた。
750 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:45:24 ID:JUGCti8+
キュルケはある懸念を抱いたこともある。それはやはり、この数日、見る見るうちにやつれていくカズキにあった。
目の下の隈もいっそう酷くなり、時折余裕のない表情を伺わせるカズキ。食事が終われば、ほとんど二人で部屋に篭りきり。
これはまさか…と危惧したが、それにしてはルイズの放つ雰囲気があまりに変化に乏しいので、ないな、とあっさり判断した。
まぁそんなわけで、カズキへのコンタクトを虎視眈々と伺っていたキュルケは、
定例である男子学生との密会もついキャンセルしてしまい、何故か健康的に虚無の曜日を迎えてしまったわけである。
いつもの自分らしくない空回りに、ますます闘志を燃え上がらせるのがキュルケという少女だ。
身支度、化粧を普段より余念なく整え、部屋を出る。目指すはすぐ隣、ルイズの部屋への扉。流れるようにノックする。
まずは朝食にでも誘おう。ルイズも当然着いてくるだろうが、今日は虚無の曜日だ。
先週とは違い、朝から動きを抑えれば、チャンスはいくらでも…
「あら?」
いくら待っても反応がない。もう一度扉を叩くが、廊下に音が響くばかりである。
ノブを引くが、鍵もかかっている。キュルケは躊躇せず杖を扉に向け、『アンロック』の呪文を唱えた。鍵の開く音がする。
本来は学院内での『アンロック』は校則違反であるが、キュルケはどこ吹く風、と言った調子だ。
恋の情熱は全てのルールに優越する、というのがツェルプストー家の家訓なのであった。
「相変わらず、色気のかけらもない部屋ね…ルイズー?」
しかし、部屋はもぬけの殻だった。二人ともいない。部屋を見回すと、ルイズの鞄がなかった。
虚無の曜日なのに鞄がない、ということは、どこかに出かけたのであろうか。窓から外を見回した。
門から馬に乗って出て行く、二人の姿が見えた。目を凝らせば、ルイズとカズキであることがわかった。
「なによー、出かけるの?」
キュルケはつまらなそうに呟くが、何事か思いついたのか、ルイズの部屋を飛び出した。
タバサは、大絶賛自分の世界に閉じこもっていた。眼鏡の奥の瞳を輝かせ、黙々と読書に興じている。
虚無の曜日は一週間で唯一の休日だ。彼女は、その休日を読書で過ごすことを、何よりの楽しみとしているのだ。
すると、部屋の扉がどんどんと叩かれたので、とりあえず彼女は無視した。至福の時間を邪魔されることを、彼女は何より嫌う。
そのうちに、激しく叩かれ始めた。タバサは表情を変えず、節くれだった杖を手に取れば、『サイレント』の呪文を紡いだ。
『風』の魔法、『サイレント』によって、彼女の耳に入る雑音が一切合切遮断される。満足そうに本へと目を向けた。
しばらく没頭していると、本を取り上げられ、肩を掴まれ振り向かされる。彼女の友人、キュルケがいた。
無感情に見つめるが、歓迎していないことだけは確かだ。
しかし、入ってきたのはキュルケである。これが他の相手なら、例外なく『ウインド・ブレイク』で部屋の外へ吹き飛ばすのだが、
キュルケはタバサにとって、自分の世界への闖入を許される数少ない例外なのだ。
しかたなく、しぶしぶと言った調子で、タバサはサイレントを解いた。
「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度をしてちょうだい!」
「虚無の曜日」
そう返せば、本を取り返そうと腕を伸ばす。が、キュルケはそれを阻もうと高く本を掲げた。
背の高いキュルケがそうするだけで、タバサは手が届かない。彼女はルイズよりもさらに身長が低いのだ。
「わかってる。あなたにとって虚無の曜日がどんな日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ。
でも、今はね、そんなこと言ってられないの。恋なのよ!恋!」
熱く語るキュルケ。それでわかるだろうと言わんばかりの態度だが、それにタバサは首を横に振って応えた。
キュルケは感情で動くが、タバサは理屈で動く。対照的な二人であるが、何故か仲がよい。
「そうね。あなたは説明しないと動かないのよね。ああもう!前にも言ったけど、あたしね、恋したの!でね?
その人が今日、あのヴァリエールと出かけたの!あたしはそれを追って、二人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの!わかった?」
タバサは首を振った。それでもまだ、なぜ自分に頼むのか、理由が見えなかった。
「出かけたのよ!馬に乗って!あなたの使い魔じゃないと追いつかないのよ!助けて!」
そこでキュルケは、タバサに泣き付いた。
支援
支援するのに理由がいるかい?
753 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:49:06 ID:JUGCti8+
――――――――――――――――――――――――――――
あ、いけね。
すいません、順番間違えました。上のレスの前に以下の文がきます。
――――――――――――――――――――――――――――
その日、キュルケは休日にしては珍しく早く目覚めた。まだ太陽が東側にあるのだ。
この数日と言うもの、幾度なくカズキにアプローチを試みたキュルケである。が、そのカズキには常にルイズにべったりくっついていた。
図書館でなにやら調べ物をしてようだが、おそらくルイズの魔法を成功させる為に、文献、資料を漁っていたのだろう。
それはいい。あの一件の後、自分が発破をかけたあとのルイズの行動としては、間違いではない。
だがそれも、自分が図書館へ赴いたほんの幾日かで終わりを迎えたらしい。先日まで二人、食事が終われば部屋に篭って何をしているやら。
諦めた、ということはまずないだろう。あれだけのことを言ってのけてまだ一週間。早々に見切りをつけるには早すぎる。
なにより、彼女の実家と浅からぬ因縁を持つキュルケとしても、それでは面白くない。
754 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:51:17 ID:JUGCti8+
タバサは頷いた。自分の使い魔でなければ追いつかない。なるほど、と思った。
「ありがとう!じゃ、追いかけてくれるのね!」
タバサは再び頷いた。キュルケは友人である。友人が自分にしか解決できない頼みを持ち込んだ。
ならば仕方ない。面倒だが受けるまでである。
タバサは窓を開け、口笛を吹いた。
ピューっと、甲高い口笛の音が青空に吸い込まれる。次いでタバサは窓枠によじ登れば、外に向かって飛び降りた。
キュルケも全く動じずに、それに続いた。ちなみに、タバサの部屋は五階である。
ここ最近のタバサは、外出時にドアを使わない。この方が早いからである。
落下する二人を、その理由が受け止めた。力強く両の翼を陽光にはためかせ、二人をその背に乗せて、ウインドドラゴンが飛び上がった。
「いつ見ても、あなたのシルフィードは惚れ惚れするわね」
その背びれに腰掛け、キュルケが感嘆の声を上げた。そう、タバサの使い魔は、幼生のウインドドラゴンなのだ。
タバサから風の妖精の名を与えられた風竜は、器用に上昇気流を捕らえれば、一瞬で二百メイルも空を駆け上った。
タバサは短くキュルケに尋ねる。
「どっち?」
キュルケがあ、と声にならない声をあげた。
「わかんない……。慌ててたから」
タバサは別に文句をつけるでなく、ウインドドラゴンに命じた。
「馬二頭。食べちゃだめ」
ウインドドラゴン、シルフィードは短く鳴いて了解の意を主人に伝えれば、上空へと羽ばたいた。
竜の視力を持ってすれば、高空から馬の姿を捉えるなど、たやすいことなのだ。
自分の忠実な使い魔が仕事を開始しするのを確認したタバサは、キュルケの手から本を奪い取り、使い魔の背びれに凭れて頁をめくり始めた。
カズキは朝食後、外出を躊躇った。当然である。
いつヴィクター化が固定するかわからないのに、人の多い街になんて出るわけにはいかない。
しかしルイズは、そんなカズキの腕を掴んで無理やりに学院の馬屋まで引っ張っていった。
途中、早起きな学院の生徒や、虚無の曜日でも働く者の目に留まることも厭わない、とにもかくにも、強引なルイズである。
言ってもきかないのなら仕方ない。慣れぬ馬に跨り、揺られ揺られて三時間。カズキはルイズとトリステインの城下町を歩いていた。
乗ってきた馬は、街の門の傍の駅に預けてある。
「こ、腰が…」
生まれて初めての乗馬。カズキは腰が痛めていた。軽く捻れば、ぐきぐき鳴り響く。さらに痛くなった。思わず悲鳴。
「情けないわね。馬に乗ったことすらないなんて。それにあんた、ほんとに化物になるんなら、そのくらい軽いもんでしょうに」
皮肉交じりにぼやくルイズ。そうは言っても、痛いものは痛いのだ。腰をさするカズキ。
「まさか三時間ぶっ通しなんて、思わないしなぁ」
キャプテン・ブラボーとの特訓とはまた違う、別方向からの肉体疲労。いくら鍛えていても、どうしようもないものもある。
「歩いてくるわけにもいかないでしょ。着くまでに日が変わっちゃうわよ」
その間も足は進む。腰の痛みが緊張を和らげているのだろうか。初めて見る街に、カズキの好奇心が久方ぶりに顔を覗かせていた。
学院とはまた違う造りの、白い壁がずらりと並ぶ町並み。学院よりは質素ななりの人間が、通りを往来している。
道端では果物や肉、雑貨を売る露天商がそこかしこで声を張り上げている。
それらに目を向けているうちに、カズキはちょっとした旅行気分になってきていた。
わかりやすいほど表情を明るくするカズキを横目に見て、ルイズは少し表情を柔らかくした。やはり、連れてきて正解だったと思った。
「って、あんまりキョロキョロしないでよ、田舎者丸出しでみっともないわよ」
そんな軽口もつい出てしまう。そうかな、と照れ笑いを返してくるカズキ。
「それにしても、道が狭いね。今にも人にぶつかりそうだ」
と言うか、時折肩がぶつかっている。道幅は五メイル程しかないだろうか。大勢が行き来するものだから、歩くだけで一苦労だ。
「狭いってあんた、大通りなのよ?ブリドンネ街。トリステインで一番大きな通りなんだから。
それにこの先をまっすぐ行けば、トリステインの宮殿があるわ」
「ふーん。王様もそこにいるの?」
「女王陛下よ。そりゃいるでしょうけれど、拝謁なんてできないし、そんなことしに来たわけじゃないでしょ」
「そりゃそうだ…って、結局何しに来たんだよ」
カズキの問いに、ルイズはあ、と声にならない声をあげた。
とにかくこの使い魔と出かけようと思い、特に考えなしにここまできてしまったが、さてどうしようか。
755 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:53:31 ID:JUGCti8+
「ま、いいわ。服でも見に行きましょう。財布はちゃんと持ってるわよね?嘆かわしいことだけれど、スリが多いんだから」
ルイズは、財布は下僕の持つものと言って、財布をそのままカズキに持たせていたのである。
中には金貨が詰まっており、手に持つとずっしりと重かった。
「ちゃんとあるよ。さすがにこんな重いの盗まれないでしょ」
「そんなの、魔法を使えば一発よ」
カズキは辺りを見回すが、メイジらしい人間はいない。カズキの中では、メイジは基本マントをつけているものと定義されていた。
「普通の人しかいないじゃん」
「そりゃ、貴族は人口全体の一割しかいないもの。それに、普通貴族はこんな下賎なところ、滅多に歩かないものよ」
「ルイズは?」
「今日はあんたに合わせてあげてんの。ありがたく思いなさい」
「ふーん。なんで普通は歩かないわけ?買い物とかどうするのさ」
「使いの者を出したり、店が直接納めに来るところもあるわね。人の上に立つのが貴族ですもの。自ら出向くなんてそうはないのよ」
「なるほど。で、貴族ってスリなんてするの?貴族なのに」
「あんたね…貴族は全員メイジだけれど、メイジが全員貴族というわけじゃないの。
いろんな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、
身をやつして傭兵になったり、時には犯罪者にもなってしまうの」
「どこも大変なんだなぁ」
カズキにはいまいちピンとこない世界の話である。適当な相槌の後、その目は様々な看板へ向けられた。
「あの壜の形をした看板の店は?酒屋?」
「っていうか酒場ね」
「あのバッテンの印は?」
「衛士の詰め所。ほら、いい加減いくわよ」
その後もそんな調子で通りを歩いていく。別段急ぐ用事でもないので、質問の度に答えて行くルイズである。
「ここでいいわね」
そのうちにルイズが足を止めたのは、大通りから少し外れた立派な店だった。
煌びやかな装飾っを施した店内に、上等そうな布地がそこかしこに陳列している。
他にはアクセサリーの類がカウンター近くに並べられているばかり。カズキは疑問符を浮かべた。
「服を見に来たんだろ?なんか、一着も置いてないけど」
「なんで在りものの服を着なきゃいけないのよ。選んで仕立てさせなきゃ、着心地が悪いじゃないの」
当然でしょ?という表情でルイズ。なるほど、オーダーメイドの店なのか。カズキは納得した。
「これは貴族様。このような店にわざわざ御出でいただけるとは恐縮の極み。本日はどのようなご用件で?」
奥から店主らしき男が出てきた。髭の先がクルッと巻いててオシャレだと思った。
「えぇと、そうね。春物を一着欲しいんだけど、今年はどういうのがあるのかしら」
ルイズ自身、今は別に新しい服が欲しいわけでも無し。平時は学院の制服。明日に控えた舞踏会用のドレスは既に拵えてある。
特に予定もなく、もののはずみで来たわけだが、とりあえず見るだけ見るつもりのようだ。
店主が奥から重そうな冊子を取り出す。どうやらカタログのようで、貴族用の服がイラスト付きで紹介されていた。
ルイズがそれを見ながら店主とあぁでもない、こうでもないとやってるのを横目に、カズキは適当に店内をぶらついた。
漫画か何かで、こういうのは時間がかかるものだということぐらいは知っているカズキである。
「あ、そうだ。ついでにあんたのも少し見繕っておきましょ」
と、ルイズが不意にカズキに告げる。店主の目がちら、とカズキを値踏みするように動いた。
「え、オレの服?なんでまた」
「あんた、召喚されてからずっとその服じゃない。使い魔と言っても服を着てるんじゃ、着替えだって必要でしょ」
今頃過ぎる話であるが、なるほど、もっともである。ここ最近はカズキ自身、気にする余裕もなかった。
「それでは、いかがなさいます?下男や召使用の服も一応は扱っておりますが…。
通常、他の貴族様はわざわざ仕立てられず、既製品をお求めになられますね」
そういうと店主が出してきたカタログは、先ほどのものに比べて随分と薄っぺらかった。よほど需要がないのだろう。
ルイズはそれを聞いて、一つ悩んだ。確かにわざわざ下僕用の服を仕立てる貴族など、よほどの物好きだろう。
彼女自身、進んでそのカテゴリに入るつもりはない。が、仮にもヴァリエール家の使い魔に着せる服である。
そんじょそこらの下僕と同じものでいいはずもない。そして、彼女の使い魔は、こちらでは珍しい拵えの服を着ているのだ。
「そうね…あんた、ずっとその服だったし。今は同じようなのがもう一着あればいいでしょ」
カズキの詰襟の黒服――学生服を指して、決め付けるようにいうルイズ。
支援の達人だ
757 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:54:44 ID:JUGCti8+
「まぁ、別にいいけど」
すると店主が服を見たいと言うので、上着を脱いで渡す。
「ふむ…?珍しい生地ですな。インナーはどうされますか?」
カズキのシャツを指して店主。ルイズは改めてそれを見ると、赤い布地に、胸の部分に妙な模様が入っており、少々奇抜に思える。
「…ま、いいわ。一緒に仕立てちゃって」
わりとテキトーだな、とカズキは思った。
結局、カズキの服を新たに仕立てるだけで、その店での買い物は終わった。
ところどころに見たこともない素材が使われている為、そこは在り合わせのものを代用することになるそうだ。
完成したら後日学院に送ってくれるよう取り付けて、二人は店を後にした。
「さすがに、ポリエステルはこっちにはないか」
「なにそれ」
「この生地の名前。それにしても、お金出してくれてありがとう」
「当然でしょ。そりゃ贅沢はだめだけど、必要なものはきちんと買うわよ」
そっか、とカズキは相槌を送る。服を買うと言うことは、それを着て生活すると言うことだ。
果たして自分に、あれを着る日が来るのだだろうか。たぶん来ないのだろうな、そう思った。
「それにしても、あんたの服ってよくよく変よね。腕に帯なんか巻いてるし、シャツの模様なんかも、ワンポイントとしてはいい感じだけど、変よね」
「これは腕章っていって、オレの学校じゃ、これの色で学年がわかるんだ」
ちなみに一年は青、二年は赤、三年は緑といった具合だ。
「そういえば元の世界じゃ学生って言ってたわね。ふうん、学院のマントみたいなものなのね」
そんなルイズの感想に、カズキは思わず苦笑をもらした。
「そういうこと。シャツのロゴは、まぁ、そういうブランドなんだ。963(クロサキ)っていってね」
様々な衣類を手がけるブランドで、デザインも良いのでカズキは平時から愛用していた。
「へぇ。あんたひょっとして、わりと裕福だった?」
「別に。誰でも買える値段で、これもそれほど高くはないよ」
ロゴを指して、963でクロサキって読むんだ、などとどうでも言い知識を教えるカズキ。
そのうちに、ブリドンネ街に戻る。そろそろ昼時だからだろうか、美味しそうな香りがあたりに漂い始めた。
その途端、カズキの腹の虫が自己主張をした。きゅるると鳴いて、その声はルイズにまで届いたようだ。
「あー…、お腹すいたね」
「あんたね…まぁいいわ。なにか食べましょうか」
照れ笑いを浮かべつつ、カズキは頷いた。召喚されてからは学院の食事だから、ちょっと楽しみでもある。
ここまで上手い具合に気晴らしはできている。カズキは本当に、ルイズに感謝していた。
「見つけた」
四つ角に出たところでようやく二人を発見キュルケは、その角に身を潜めた。背中にタバサがぶつかる感触。無言の抗議を背中に受けた。
シルフィードは街中に連れて行くわけにもいかないので、少し離れた場所から徒歩だったわけだが、
まさかそれで見失うことになるとは思わなかった。探しに探して、ようやく今に至るわけである。
二人は通りのカフェで軽食を取っているようだ。そういえば、もうそんな時間か。
「さて、どうしてくれましょうか、ヴァリエール…」
含みのある笑みを浮かべ、何事か思案するキュルケ。タバサはもはや興味なさそうに本を読んでいた。
そんな奇妙な貴族の二人組みに、辺りから視線が突き刺さるが、どちらもどこ吹く風であった。
758 :
使い魔の達人:2009/07/31(金) 20:57:04 ID:JUGCti8+
軽い昼食をとった後、二人はさてどうするか、と言うことになった。
街の様子を見てるだけでカズキは十分楽しめたし、ルイズとしても、しばらくぶりの街をそれなりに満喫できていた。
「な、なに…?」
ルイズの視線がカズキを上から下まで往復する。今さっきの服飾店で、気付いたことが一つあるのだ。
「そういやあんた、手ぶらなのよね。武器はどうしたの?」
視線がじろり、と睨み付ける様なものに変わった。
「へ?」
「へ、じゃないわよ。あんた、わたしの従者でもあるんだから、
出かけるときは最低限、護衛に必要な武器は持ってて然るべきなんじゃないの?」
「然るべき、って言われてもなぁ…」
ないこともないけれど…さすがになぁ。
カズキは困ったように頬を掻いた。既にヴィクター化への推定期間は過ぎている。
自分の武器である、‘錬金術’の‘力’。それを見せるのは、もはや最後の一押しをするようなものだろう。
「…ま、召喚した時からそれらしいのは持ってなかったものね。どうせ向こうに忘れてきたんでしょうけど」
やれやれ、と肩を竦めた。カズキは苦笑を返しておいた。
「じゃ、行きましょうか」
「何処へ?」
「決まってるじゃない。武器屋よ。本当はあまり行きたくないけれど、この際仕方ないわ。必要なものは揃えちゃいましょ」
するとルイズは足を進めた。向かう先は、通りから離れた路地裏から更に先。
必要かなぁ、と頭上に疑問符を浮かべながら、カズキはそれに続いた。
―――――――――――――――――――――――――――
以上です。すいません、ちょっとゴタゴタしてしまいました。たぶん問題ないだろうけれど…
魔女の宅急便見ます。
お粗末
乙!
……録画するの忘れてたぜ。
乙でした
小説版新刊にて胸パッド使用発覚もパイスーがあの惨状なヒリングをガデッサ付きで召喚
………まずは大騒ぎだろうな。脳量子波使えないだろうし。
どうも、皆さん夜分遅くに今晩はです。
第22話が完成いたしましたので投稿をしたいと思います。
もし何もなければ21時32分から開始したいです。
出来れば支援の方、よろしく御願いします。
太陽が沈み、代わりに赤と青の双月がゆっくりと顔を出した。
しかし今日の双月は重なってしまっているため、大地に住む者達から見れば一つの月に見えてしまう。
今夜は二つの月が重なる晩。とても神秘的で、遙か空の上にある天の河の不思議の一つに触れることが出来る日。
そんな夜を迎えたウエストウッドの村は、昼にやってきた怪物の所為で滅茶苦茶になっていた。
柵はなぎ倒されていたり藁葺きの家が何軒か叩き壊されていたり、なかには吹き飛んでしまっているものもある。
そんな村の中でも一番無傷であった家の中で、霊夢が自身の左手の甲に浮かんでいた『文字のようなモノ』を見つめていた。
「これって、なんなのかしら…?」
霊夢はなかなか高そうなテーブルに肘を突き、左手の甲をマジマジと見つめながらぼそりと呟く。
左手の甲には文字だか紋章だかよくわからない記号がボンヤリと、幽霊のように浮かんでいる。
本当にボンヤリと浮かんでいるため、何が書いてあるのかいまいちハッキリしない。
だがしっかりと浮かんでいても霊夢はハルケギニアの文字は読めないため、関係ないのだが。
霊夢は一度手の甲から目を離すとテーブルの中央に置かれていたランタンへと目を移す。
新品同様のランタンの中では赤色が少しかかったオレンジ色の炎が小さく、それでも爛々と輝いている。
その日を見つめていると、今日の昼頃に起こったことを思い出した。
◆
森の中で知り合ったティファニアという少女の家で昼食を食べた後、牛頭の化け物がやってきたのだ。
とりあえず人を襲うような素振りを見せたので退治しようと戦ったのだが、如何せんソイツは思ったよりも随分と硬かった。
なら一気に片を付けるかと思い、スペルカードを取り出そうとしたとき―――こちらに戻ってきたティファニアが『詠唱』を始めたのだ。
このハルケギニアという世界に来てからだが、色々な魔法の詠唱を聴いてきたがあんなのは初めて聞いた。
しかし――何故か心の奥底ではその詠唱に何処か『懐かしさ』を感じていて、自然と気持ちが良くなっていく気がした。
まるで、母親の子守歌を聴いて安らかに眠る赤ん坊のような。そんな例えが丁度合うような感じだった。
その後のことは、正に奇妙であった。
詠唱を終えたティファニアがあの牛頭に向けて杖を振り下ろすと、牛頭の周りの空気が直視できるくらいに歪んだ。
すぐに空気のゆがみが戻ったとき、牛頭の妖怪はまるで呆けたように立ちつくしていた。
目に浮かんでいた妖しげな水色の光も消え失せていて、太陽のように赤い瞳が見えていた。
牛頭の化け物がジーッと立ちつくしているのを見たティファニアは大声で牛頭に言った。
「貴方は人のいる所へ来ちゃ駄目なの、だから何処か人が全く来ないところへ行きなさい。」
ティファニアの言葉に、牛頭は「わかった。」とでも言うようにうめき声を上げ、踵を返して森の方へと戻っていった。
牛頭の姿が木に隠れて見えなくなった頃になった時、ティファニアは安心したかのようにため息をつくと、その場にぺたんと座り込んでしまった。
しばらくして、ティファニアの家に隠れていた子供達が外へ出て泣きじゃくりながらティファニアの所へやってきた。
私は何が何だかわからなかったが、まぁあの牛頭が自分で去ってくれたから結果オーライと考えてたとき、ふた左手の甲の異変に気が付いた。
そこへ目を向けると、ボンヤリとだが光り輝いている記号があったがすぐに光は消え――代わりにこの文字のようなモノが浮かんできた。
「一体全体、良くわからないわねぇ〜。」
霊夢はそう言うとぐて〜っと腕を伸ばしてテーブルに突っ伏した。
ふとそんな時、ある言葉が彼女の頭の中を縦横無尽に駆け回った。
―――――――――アンタの左手にルーンが刻まれてるでしょ?それが使い魔の証拠…
「確かアイツ、使い魔のなんとかかんとかって…言ってたような。」
そこまで考えたとき、後ろから男の子の声が掛かった。
「?…ツカイマがなんとかかんとかって、何言ってんの?」
振り向いてみると、そこには寝巻きに着替えたジムが怪訝な表情で佇んでいた。
「なんだアンタか…で?どうしたの。」
霊夢の素っ気ない言葉にジムはムッとしながらも、ティファニアからの伝言を霊夢に言った。
「テファおねえちゃんが、お風呂に入っても良いってよ。あと寝巻きも後でテーブルに置いておくって…。」
支援しえーん
あの後、ティファニアは流石に子供達だけで一夜を過ごさせるのは危険と判断し、今夜だけは子供達全員がティファニアと一緒に寝ることになった。
一方の霊夢はというと、ここで一晩明かす気はなかったのだが何故だか疲労が無駄に溜まっていたのだ。
きっと四時間くらい飛び続けたうえに戦闘までこなした反動でも来てしまったのだろう。
事実、ティファニアの誘いを二つ返事で断りそのまま飛び上がろうとして、クルリと一回転して地面に寝転がってしまった。
後ティファニアの家のお風呂についてだが、実はティファニアの言っていた『知り合い』が作ってくれたお風呂らしい。
なんでもその『知り合い』は「土」系統の魔法が得意らしくて、お湯をひいたり土台を作ってくれたという。
「…あぁ、ありがとう。」
霊夢はジムにお礼の一言を言う席を立とうとした時、モジモジしつつもジムは口を開いた。
「テファおねえちゃんと俺たちをあの時化け物から助けてくれて、その…アリガトウ。」
本心かどうかわからないそのお礼の言葉に霊夢はふと足を止め、ジムの方へと顔を向けた。
霊夢と目があったジムは、彼女の赤みがかかった黒い瞳をモジモジと見つめつつ、更にお礼の言葉を言う。
「なんというかな…その、最初はただの腋さらけ出してるアレが弱いオカシイ女かと思ってたけど…結構良い奴――――イタッ!?」
しかし、ジムのお礼の言葉は、霊夢の唐突なデコピンによって中断されてしまった。
「アンタ、私を馬鹿にしたいのか礼を言いたいのかどっちかにしなさいよ。」
霊夢は額を抑えているジムにそう言い捨てるとさっさと風呂場の方へと行ってしまった。
◆
そんな会話が行われているウエストウッド村の外の森。
今夜は月が出ているのだが、枝や葉が月光を遮っている所為で森の中はとても暗い。
普通ならこんな時間帯にくる人間は居ないのだが、今夜に限って例外が一人だけいた。
その人物は自分の体のラインがくっきり見える黒色のローブを纏っており、それで女性だと一目で分かる。
女性は地上より上にある木の枝に腰掛け、ジーッと何もない空間を見つめていた。
ふと女性は地面へ顔を向けると、それが合図かのように小さな人形がヒョコヒョコと木を登ってやってくる。
人形は女性の足下まで来るとピタリと動きを止め、女性はその人形を掴んで懐に入れた。
「全く、『ハクレイ』の【ガンダールヴ】を探したと思ったら、新たな『担い手』も見つけてしまうとはねぇ…。」
開口一番、女性はまるで予想もしていなかったという風に呟いた。
(この森に放ったミノタウロスはいつの間にか指輪の洗脳から解除されていた。
先住の力がこめられているあの指輪の力を解除するには『解除』の呪文か…もしくは『忘却』の呪文。
ミノタウロスの様子を見たところ、後者だと思うけど断定は出来ないわね。少なくともジョゼフ様の意見を聞かなくては――――)
――――――ミューズよ、聞こえるか。余の女神よ。
そこまで考えていたとき、ふと誰かが自分の頭の中に直接語りかけてきた。
女性はハッとした顔になると、急いで懐を漁って少し大きめの人形を取り出した。
そして人形の顔部分を自分の耳元にあてて、二、三回頷くと申し訳なさそうな顔になり、こう言った。
「ジョゼフ様!、なにもわざわざそちらから連絡してこなくても、私から……」
女性の言葉を遮るか様に、手に持っている人形が頭の中に語りかけてきた。
―――――なぁに、余は君が疲れていると思ってね。余の方から連絡をしたのさ。
その言葉を聞いた女性は、パァッと表情が嬉しそうなモノに変化した。
「い…その労り感謝します!あ…ジョゼフ様、頼まれていたガンダールヴの調査ですが…。」
女性は人形を通して話してくる誰かに、今まで調べていた事を一気に報告していた。
その報告の言葉の中には『虚無の系統』や【ガンダールヴ】、といったもはやハルケギニアの伝説に関連する言葉が幾つも出てきていた。
なかには『ハクレイ』といった、何を意味するのかわからない言葉も出てきた。
更に報告する相手が一見何の変哲もない人形だという事もあり、まるで人形に話しかける幼い子供そのものである。
―――――……流石だ余のミューズ!!まさか期待以上の成果を持ってくるとはな!
「あなたに喜ばれることをする私にとって、その言葉は有り難き幸せでございます。して、二人とも捕まえますか?」
――――――う〜む、今すぐ手札に加えたいところだが…すぐにその事が坊主共の耳に入るだろう。
「ならしばらくは放置、ということですね?」
―――そうだ余のミューズ。『宗教庁』すら知らない二枚のカードは、最後まで残しておく必要がある。
「わかりました。それでは筋書き通りの事を続けます。」
―――――では、引き続き頼んだぞ。余のミューズ、【ミョズニトニルン】のシェフィールドよ。
その言葉を聞き終えた女性――シェフィールドは人形を懐にしまうと木の枝から飛び降り、あっという間に闇夜の中に紛れてしまった。
◆
―――やがて夜が明けて朝になり、一番最初に起きたのは霊夢であった。
「うぅん…、ふあぁ…。」
目を開けて天井を見た時、自分のいる場所が博麗神社ではないと思い出す。
「ふぅ、やっぱり現実と夢は違うわね。」
もう霊夢がハルケギニアに来てから大分経つが、それでも時折これが夢なのではないかと思ってしまう時がある。
望郷というものだろうか、時々幻想郷に帰る夢を見てしまう事があるのだ。
ベッド代わりに使っていたソファから出てティファニアが貸してくれた寝巻きを脱ぐと、自分の服に着替えて外の空気を吸いに外へ出た。
ドアを開けた先にあった外の風景は、最初に見たのどかな雰囲気な村とは無縁の場所がそこにあった。
昨日、いきなり襲撃してきた牛頭の妖怪に壊された家や柵が何処か廃墟的な雰囲気を醸し出している。
そんな光景を見た霊夢は朝っぱらから憂鬱な気分になってしまい、もう一度家の中へと戻った。
居間へ行くとイスに腰掛け、テーブルに肘を突いて窓から外を眺めているとふと誰かが居間へ入ってきた。
「おはよう…もう起きてたんだぁ。随分と早起きなのねぇ…。」
そこにいたのは、この家の主人であるティファニアであった。
目の下には隈が出来ており、眠たそうに目を擦っている。
「おはよう。随分とお疲れのようね、どうしたの?」
「あぁ、子供達が昨日何かお話ししてーってせがんでそのまま流れに乗って色々話してたら…」
最後に言おうとした言葉を、霊夢が引き継いでこう言った。
「寝不足になったってワケね?」
「うん、そういう事。…ふぁぁぁぁああぁぁ…そろそろ朝ご飯作らないと…。」
ティファニアは大きな欠伸をするとテクテクとキッチンの方へ歩いていった。
――――やがて子供達を全員起こしてみんなで朝食を食べた後、霊夢はティファニア達と一緒に村の出入り口にいた。
朝食を食べた後、霊夢はもうそろそろ村を出ると言ったところ、こうして村の住人達が見送りしてくれると言ったのだ。
霊夢はそんな気遣いは別に良いと言ったが、それでもティファニアは昨日ジム達を助けてくれた事への感謝もついでにしたいらしい。
結局ティファニアと子供達は村の出入り口まで付いていくことになり――――今に至る。
一通りお礼の言葉を子供達に言われた霊夢はティファニアの方へ顔を向け、口を開く。
「それにしても…見送りだけじゃなくてこんなものまでくれるなんてね。」
霊夢はそう言って先程ティファニアに渡された小包を見つめる。
先程ティファニアがくれたこの小包の中にはサンドイッチが入っており、ティファニアが「お昼ご飯にでも」と渡してくれたのだ。
「いいっていいって、どうせ今日のお昼ご飯もそれだしね。」
ティファニアはそう軽く言うと後ろの方へと顔を向け、自分たちが住む村の光景を見た。
昨日の騒動であちこち滅茶苦茶になっており、元に戻していくにもそれなりに時間は掛かるはずだろう。
それも女子供達の小さな手だけで、きっと数ヶ月…へたすれば半年の時間を費すに違いない。
「本当、凄惨たる光景っていうのはああいうものね。」
霊夢がポツリ、とそう呟くとティファニアが再び霊夢の方へと顔を向け、こう言った。
「今はもういない母さんが事ある度にいつも言っていたわ。
豊かな感情を持つ者全ては凄惨たる現実の光景を見てしまえば心が折れてしまい、次第に理想の光景へ走ってしまう。
…だけど、心が折れると同時に理想へ走らず現実を受け入れ、その現実の光景をより良い物に直していこうという意思さえあれば…直していけるって。
その意思を持たず、理想へ走る者はいずれ現実と理想に殺される―――って。」
★
「また来て赤い服のおねえちゃーん!」
「助けてくれてありがとー!」
「ミノタウロスとの戦いはとてもかっこよかったよー!」
子供達の声援を背中に浴びつつ、霊夢はウエストウッド村を飛び去っていった。
ティファニアとジムは霊夢に手を振りつつ見送ると後ろを振り向き、ジムが口を開く。
「さて、これからみんなで村を修復するぞ!なーに、俺たちがちゃんとやればすぐに元通りになるって。」
他の子供達は、彼の言葉にウンウンと頷くとみんな村の方へと戻っていくが、ティファニアだけがずっと入り口に佇んでいた
その瞳は、既に遠くへ行ってしまった霊夢を映していた。村の皆を助けてくれたあの巫女を―――
「ハクレイ…レイムかぁ。」
ポツリと、ティファニアは霊夢の名前を呟くとジム達の後ろを付いていくように村の方へと戻っていった。
◆
――――何処までも続いている白い雲が漂う空中を、一隻の船が飛んでいた。
側面に付いた大きな二枚の翼と巨大な帆で風を切り、安定したバランスを保っている。
外装も内装も立派な装飾を施されているこの船の名前は「マリー・ガラント号」。トリステインではかなり大きさ部類に入る輸送船である。
そのマリー・ガラント号の甲板に置かれている木箱の上に、一人の少女が座っていた。
黒色のマント、グレーのプリーツスカートに白いブラウスといった学生の標準的な服装。
マントを見ればその少女がそれ相応の名家の娘であることは一目瞭然である。
そして、何より一番特徴的なのは彼女の髪の色が明るいピンクのブロンドであるということだ。
そのブロンドヘアーの持ち主、ルイズは木箱に腰掛け段々と近づきつつあるアルビオン大陸を見つめていた。
この船に乗る前に護衛であるワルド子爵と共にレコン・キスタの刺客から逃げ切り、なんとかアルビオン行きの船に乗る事が出来た。
ワルド子爵はというとこの船の動力源である「風石」を風の魔法で補助している最中であった。
船長から貸し与えられた船室にいたルイズはとりあえず暇つぶしにと甲板に出て外の空気を吸っている最中であった。
「んぅー…輸送船にしては大分いい船室だったわ。」
ルイズはそう呟くと大きく体を伸ばすと、昨晩の襲撃の事を思い出していた。
あの時、ラ・ロシェールの桟橋に入った後突然やってきた謎の刺客に攫われそうになった時のことを――
瞬時に状況判断をしたワルド子爵はとても格好良く、正におとぎ話に出てくる騎士そのものであった。
助けられた後に、お姫様だっこされている事に気づいた時は流石に恥ずかしかったが同時にとても嬉しかった。
「やぁルイズ、そんな所にいたのかい。」
「え…?うひゃあ!」
頬を紅く染めていたルイズの耳にふとワルドの声が飛び込んできた。
驚いた彼女は飛び上がってしまい、その拍子に腰掛けていた木箱から落ちてしまった。
だが、床とキスするまであと1サントという所でワルドが出した風でフワッとルイズの体が浮かび上がる。
ワルドはそのまま器用に風を使ってルイズの体を操り、自分と向かい合うようにして彼女を立たせた。
床とキスすることを免れたルイズはもう一度頬を赤く染めるとモジモジしながらもワルドに話しかけた。
「し、子爵様…突然声を掛けないでください。」
その言葉を聞いたワルドは軽く笑いながらも口を開いた。
「すまない、何やら夢中で何かを考えている君が可愛かったからついつい悪戯でもしようかと…。」
ワルドの言葉を聞いたルイズは頬を膨らませるとそっぽを向いた。
その顔を見たワルドは途端に苦虫を踏んでしまったような顔になってしまい、途端に言い訳を始めた。
支援
「いや、あの、その、ほら?人間というのは時に誰かを相手に悪戯をしたくなる生物なんだ。
それは貴族も平民も関係なく平等に持つ生物的本能で、だからこそ道化師という職業があるもので…」
必死にそんな事を言ってくる自分より年上の男を見て、ルイズは内心クスクスと笑っていた。
そんな暖かいラブストーリーが輸送船の甲板で行われていたそんな時、鐘楼に上った船員が大声をあげた。
「右舷方向の雲中より、船が接近してきます!」
突然の声に二人は右舷の方へ顔を向けると、雲の中から一隻の巨大な船が現れた。
黒塗りの船体はまさに戦艦を思わせる雰囲気を持っており、舷側に開いた穴からは大砲が出ている。
「まさかレコン・キスタの戦艦なんじゃ…。」
その船を見たルイズは眉をひそめ、ポツリと呟いた。
「レコン・キスタの戦艦か?お前さん達のためにわざわざ荷物を運んできたと伝えろ。」
後甲板で副長と一緒に操船の指揮をしていた船長は船員にそう言った。
船員はすぐさま指示通りに手旗を振り回すが、黒い船からは何の返信もない。
その事に船員と船長は怪訝な顔をすると、青ざめた顔の副長が船長に告げた。
「船長、あの船…よく見れば旗を掲げておりません!」
「な、何!?」
副長の言葉に、船長は目を見開くとこう言った。
「す、するとあれは…空賊か!」
突如現れた黒塗りの船が空賊船だと判明した船長は即座に逃げるよう指示をした。
しかしそれよりも早く空賊の船が脅しと言わんばかりに舷側の穴から顔を出していた大砲を撃った。
空気を切り裂かんばかりのもの凄い音が辺りに響き、マリー・ガラント号に乗っていた者達はたちまち腰を抜かしてしまった。
その後、空賊船のマストに四色の旗流信号がするすると登ったのを船長は見逃さなかった。
四色の旗流信号―――つまりは停戦命令である。その旗を見て船長は苦渋の決断を強いられた。
ふと頭の中にトリステインの使いだからと今すぐこの船を動かせと命令した貴族の顔を浮かべた。
あの男ならきっと何とかしてくれると思ったが、正直言って船長はあまり乗り気ではなかった。
無理矢理起こされたとき、夢の中でイオニア会の神官並のブルジョワ生活をしていたというのに…あの男の所為で現実に引き戻されてしまった。
今更その事を思い出してもこの男は今は傍におらず、愛玩動物のような愛くるしい瞳をしても助けてはくれないだろう。
それに、相手が短気だとしたら貴族を呼び出す時間より、あの空賊達とうまく交渉する時間の方が大切である。
「…裏帆を打て。停船だ。」
そう判断した船長は副長に即座にそう伝えると「これで破産だ。」と小さな声で呟いた。
◆
「それにしても、この穴の上は何処に繋がっているのかしら。」
少し大きめの穴の入り口に転がっている岩に腰掛けている霊夢はそんな事を呟いた。
発光性の苔のお陰で穴の中は結構明るいが、ジメジメとしており長居はしたくはない場所である。
上は闇で下も闇。今霊夢がいる場所は、彼女がアルビオンに来て最初に入ったあの大穴であった。
―――事はティファニア達に見送られて村を去ったところまで戻る。
ウエストウッド村を飛び立った霊夢はしばらく森林地帯の上を飛んでいた。
生い茂っている木はどれも大きく、下手すれば樹齢が数千年のものもあるかも知れない
そんな事を考えている時、ふと辺りの視界がどんどん曇ってきた。
どうやら霧のようだ。突如出てきた霧はあっという間に濃くなっていき数分経ったときには既に1メートル先の光景すら見えなかった。
更に衣服が霧の中にくまれている水分を吸ってしまうせいか、妙にジメジメとしてくる。
流石の霊夢も飛ぶのを止め、浮遊状態になると辺りを見回した。
ふと下を見てみるとボゥッとした明かりが見えるのに気が付き、そちらの方へ近づいてみることにした。
何があるかわからないが明かりがあるという事は何かの目印か…それとも得体の知れない『何か』が自分を誘っているのか。
結局、明かりの正体は一本の太い棒にくくりつけられたカンテラに灯っていたものであった。
それよりも霊夢の気を引いたのはカンテラの近くにあった大きな古井戸だった。
井戸の近くには人工的に造られた道があるところ、どうやらこの何処かに住んでいた人々の井戸だったのだろう。
霊夢は地面に降り立つとその井戸を覗き、水が枯れている事に気が付いた。
「ここの井戸…水が枯れてるわね。」
しかし…井戸が枯れていた同時に、あるものを発見した。それは井戸の底へと繋がる穴だった。
支援
井戸は比較的に深くないためすぐに底へ降りることも出来る。よく見てみると何処かへと繋がる横穴があるようだ。
その時、ふと霊夢は昨日のことを思い出していた。
(そういえば、あの森へ来たときも大陸の下に出来た大穴から井戸を通じて出てきたんだっけ。
と、いうことはもしかしたらこの井戸もあの大穴の中へ繋がってるかもね。)
そう思った霊夢の行動は早く、と彼女は井戸の中へ飛び降りた。
別にそこを通らなくても良かったのだが、外は濃霧の所為で何も見えないし、それに服も湿ってしまう。
穴の方もジメジメとしているが濃霧と比べればまだ耐えられるレベルで、何より少しひんやりとしている。
体を瞬間的に浮かせて難なく着地した霊夢はすぐに何処かへと繋がっている穴を潜った。
歩いたり飛んだりと穴の中を移動しつつ、道なりに進んで数十分後には最初にやってきたあの大穴の所へ戻ってきていた。
ようやくたどり着いた霊夢は穴の入り口に転がっていた岩に腰掛け――今に至る。
★
一方、ルイズ達が乗っている「マリー・ガラント号」はというと――
アルビオンへ向かって飛んでいるこの船の右舷には空賊達の船が見張るようにして隣を飛んでいる。
甲板には空賊達が剣やマスケット銃を手にうろついており、中には杖を持っている空賊も居た。
船員達は一部抵抗の意を示した者達だけを船倉に押し込め、それ以外の者達には操船を任していた。
そして、この船に乗り込んでいたルイズとワルドはというと、船長室へと続いている廊下を歩かされていた。
後ろにはマスケット銃を構えた空賊が数人ついてきておりもし抵抗をすれば即射殺されるだろう。
最も、この二人は杖を没収されてしまっているため抵抗する気はない。
ワルドは落ち着いた表情で黙々と船長室を目指して歩いていたが、ルイズはというとその顔から空賊達への嫌悪感が出ていた。
本当なら二人は船倉に閉じこめられる筈なのだが、どうしたことか急遽船長室に行くことになったのだ。
やがて船長室へと通じるドアの前まで来ると、後ろにいた空賊の一人がドアを軽くノックした。
ノックしてからすぐに船長と思われる音の声がドア越しに聞こえてきた。
「誰だ?」
「ウェズパーです、甲板でトリステインからの使者だと喚いていた貴族の小娘とその護衛を連れてきました。」
「よし、入れ。」
船長の了承を得たウェズパーと呼ばれた空賊はドアを開けると、ルイズ達を部屋に入れた。
豪華なディナーテーブルがあり、その上座には空賊達の頭と思われる男がイスに腰掛けていた。
汗とグリース油で汚れたシャツを着ており、そこから逞しい胸を見せている。
大きな水晶のついた杖をいじっている。どうやら空賊の頭もメイジのようだ。
頭は杖を手元に置くとドアの前に突っ立っているルイズ達を睨み付けた。
その瞳を見たルイズは思わず身震いをしてしまった。まるでドラゴンに睨み付けられたようであった。
「さてと、アンタたちをここに呼んだのはそこのおチビさんが言ってた事についてだ。」
頭はそう言って席を立つとルイズ達の傍へ寄り、ルイズの顔を見つめこう言った。。
「仲間から聞いたよ。そこのおチビちゃん――いや、あんたらがトリステインから来た王族派への使者だってな。」
その言葉を聞き、ワルドとルイズは顔を真っ青にした。火車がその顔を見たら死体と見間違えるほどに。
数十分前――――
マリー・ガラント号が停船した後、それを待っていたかのように空賊の船からかぎ爪のついたロープが放たれた。
それらを全てルイズ達が待っている船の舷縁に引っかかり、斧や剣を持った屈強な男達が器用にロープを伝ってやってくる。
やがて数分もしないうちに何十人もの空賊達がマリー・ガラント号に乗り込み船員達を甲板の真ん中に集め始めた。
当然その中には船長や副長もおり、ルイズやワルドも例に漏れない。
最も、ルイズだけは始終空賊達に文句を言っていた。それこそその文句を記録しただけで五ページくらいの冊子が出来るだろう。
それを読むのはきっと罵られたい何処かのマゾヒストか、もっと色んな罵り言葉を知りたいサディスティックぐらいに違いない。
まぁとりあえず彼女は貴族相手に無礼を働く空賊達を罵っていたのだが、その時に言った言葉は隣にいたワルドの顔を青くさせた。
支援
「この空賊め!私たちはトリステイン王国から王族派への使いよ!それを何だと思ってるの!?」
流石にこの時ばかりはルイズも相手を罵るのに夢中になりすぎていた。だからこその失態である。
隣で大人しくしていたワルドは咄嗟にルイズの小さな口を大きな手で塞いだ。
ルイズに罵られていた空賊は怪訝な顔をしたが、それ以上追求する気はなくただ肩をすくめただけだった。
まぁその空賊はちゃんとその事を頭に報告したわけで、ルイズ達はその頭に尋問されているのだ。
◆
「アンタらトリステインの貴族が何の目的でわざわざ王族派の所へ行くかわからん。」
頭はそう言いつつ室内を歩き回るとテーブルに置いてあったクッキーを1個手に取って口に入れた。
何回か咀嚼した後、ゴクリと飲み込むとイスに腰掛け口を開いた。
「そんな仕事なんかやめて、どうせならレコン・キスタの一員になって聖地奪還を目指してみないか?」
その言葉を聞いてこの部屋に入ってきたときから不快感を露わにしていたルイズは憤慨した。
「良い?私たちトリステインの貴族は、アンタのような金と娼婦の尻を追っかけてるような奴の言葉には絶対従わないのよ!!」
彼女の横にいたワルドはその様子を心配そうに見ていたが、空族に向かって怒鳴ってたルイズの瞳には絶対的な『何か』が宿っていた。
由緒正しき血統と親や年上の者達から大事な事を教えられてきた者が持つ光を彼女の鳶色の瞳は持っていた。
頭はルイズの言葉に一瞬だけ口をポカンと開けていたが、またすぐに口を開く。
最初のようにルイズを睨み掛けたが、今度は逆に年下の少女ににらみ返されている。
「いいか、次で最後の質問だ。これだけは素直に答えてくれないか?…お前達はどうして王族派の所へ行く?」
ルイズはその質問にハッとした顔になると、すぐにその質問に答えた。
「…私とワルド子爵は王族派のウェールズ皇太子に用があるの…これで充分?」
少し挑発するような感じでルイズがそう言った後、頭は目を丸くした。
「…………………フフフ、アッハハハハハハハハハハ!」
一体どうしたのかと怪訝な顔をした直後、頭が突然笑い始めた。
「アハハハハハ!あーおかしい…。――――――――そんな事なら素直にそう言ってくれよな。」
頭は笑いながらも突然意味不明な事を言うと縮れている黒髪を掴み、思いっきりそれを引っ張った。
さしものワルドとルイズも突然の事に驚いてしまったが、頭が引きちぎった黒髪の下にあったのが金髪であったことに更に驚いた。
ついで眼帯と髭も素早くもぎ取ると先程むしり取った黒髪の『カツラ』ごと床に投げ捨てた。
今まで付けていた小道具を取った頭の顔を見て……ルイズは驚きの余り口から心臓どころか内蔵の出そうになった。
凛々しい顔立ちに輝かんばかりの金髪、それはまさしくアルビオン王国の皇太子――――ウェールズ・テューダーであった。
00過ぎてるから、さるさんじゃないよね?
はい、これで22話の投稿は終了です。支援してくれた人ありがとうございます。
ウェールズ様が初登場した今回の話ですが、ウェールズ皇子は原作では大変な扱いだと思います。
死んだと思ったら生き返されてまた死んで…二回も三途川を訪れたのか。
では、次の投稿は来月の末になると思いますが…ではここら辺で。また会いましょう。ノシ
乙! ノシ
霊夢の人乙です。
なんか嵐の前って感じでした。
来月まで正座待機。
>>739 幼児体形、強大な魔力、古代の魔法と
何気にルイズはサタン様の好みに直撃だな
>>777 別に幼児体型はサタンの趣味って訳じゃ無いと思うけどな。
サタンが呼ばれたとしてもアルルにちゃんと会う魔導物語エピソード2の前か後かで、対応が分かれそうだ。
前ならかなり面白いことになるぞ。本気でルイズに求婚し出すだろうから、ワルドとの仲も端っから険悪ムード一直線だ。
>>777 イラスト見る限りじゃアルルはそれ程幼児体系ってわけじゃないけどな
シェゾが召喚された場合
ルイズ(貧乳)→古代魔法、潜在能力の高さ、是非(魔力を)手に入れたい
タバサ(貧乳)→かなり高い魔力 こいつもなかなか
キュルケ(巨乳)→それなりに腕は立つが狙う程でも無い
シエスタ(巨乳)→論外。魔力無い奴に用は無い
で否応無しにロリコン扱いされそうだな
それすげー見てえ
シェゾ「ルイズ(の魔力)が欲しい!!」
とか言ったりするわけか
異世界でも変態扱い
コレはもう宿命だ
ただ、シェゾの場合完全にデルフ涙目になるんだよな……
闇の剣があるからと使われないならまだマシ。最悪、魔力吸われて終わりだぞ。
ルイズ、タバサ「このロリコン共め!」
サタン、シェゾ「orz」
ぷよぷよって何かものすごい世界設定だった覚えがあるんだが
実はみんな死んでて誰だかが寂しさを紛らわす為に思い出を再現してつくられたフェイク世界だったような
学院に来たテファがシェゾ召喚…
確実に巨乳スキー扱いだなw
誰かルイズニスラムキングを召喚させてくり
>>785 真魔導設定を流用してもいいし
DS連載時のように毎作品がパラレルだと言わんばかりに開き直ってもいい
自由とはそういうことだ
>>785 サタンが在りし日の魔導世界を懐かしんで作ったのがぷよぷよ世界ってやつな。
でもあれも結局堕王健司厨二病乙ってだけの脳内設定だった気が。
>>785 そいつはファミ通文庫版のみの設定だ。
シェゾにも多数設定があるんだよなぁ。大まかに分けると三つか。
甲型 最初期。闇の魔導師の名に恥じない極悪非道。首だけになっても襲ってくる脅威的な生命力。
乙型 件の迷台詞により変態魔導師の烙印が押されてからのシェゾ。必死に撤回しようとしているが泥沼で、かなり可哀相に思えるが、魔導師の塔のウィッチ、わくぷよのセリリ等のフラグビルダー。
丙型 ぷよぷよDA!等の完全に変態化してしまっているシェゾ。
桜木花道を召喚したら
はたしてハルケで念願の彼女をゲットできるか
小説版のシェゾとアルル(とラグナス)の最終的な設定って裏設定も含めると
ゼノギアスのフェイと勝負できるほどの凄まじい設定だったりするんだよな。
ファンの猛抗議で、あくまで小説版だけの設定ですって事になったらしいけど
>>783 闇の剣は普段亜空間にしまってるから、世界移動の影響で亜空間を開けなくなったとか
ガンダールブの影響で強制的にカイマートが発動してしまうから普段使うのに別の剣が要るとか
その辺は割とどうにでもなる。
んで、ダグアガイザンをかけたら逆にデルフの魔法吸収能力が発動
魔導師の塔、時空の水晶に続いてまたもシェゾ弱体化
代わりにデルフが闇の剣並の魔剣にパワーアップとか。
今回めちゃくちゃ消費早かったなw
埋めついでに行数の実験 1
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専ブラ使ってないのかよ
ホームラン級の馬鹿だな……。
ホームラン級の馬鹿ってフレーズ久しぶりに聞いたわ
ホームラン級の馬鹿って元ネタなんだっけか
ぎゃくてんまんるいサヨナラホーラムンだー
このまえあずまんが読んだばっかだから大阪しか出てこない
本当に夏なんだな
, -─‐ 、 __ .. .._
,.ィフ´ _,... 、 \ ,.ィ´ `ヽ、
. /r‐' ,.ィ´ : : : : :`ヽ ヽ / , ヽ. ヽ
/ { /´: : :__: : : : :./ :\}/ /{ │ l ',
/:/ Y : : l´: :/`:,.イ _: : :ヽ '´/ ! | 、 ! l l
/イ /:/ | : : fチテ` ´ l´: `: :/l}ィオ ヽ _l_ `メ / !
レl :|: :| : : :i`¨ .fチ}〉:./ ,'l `′ ´ト'ミy′/-─ァ ',
V|l、:', : : l. r‐ 、 ¨./:イ / .ト、 、_ `7′/==イ l ',
/^Y^ヾヘ : :|ヽ__ ',. ィ: :/,==、 ヽ.. ィ′ / .| l '
> ,-イ ハ: :lエユ レ|:./,匁,斗} | ,/ //_ 、 | i ',
{_/:.:弋¨{ V,/(0)ヽ.|イ | l/ .::/ | / /´ `i \l | ,
/.:.:.:.:.:.:.:〉'{ < >┴| :{:‐-'´| ./ ィ′ \| ,
. /.:.:.:.:.:.:.:.:ゞ、}'´.:`ヽ /o | :/l: : : ,'レ' ,' ヽ ',
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AAだけじゃなくて
>>804にあるような
次スレ、スレタイ、URLを入れてくれ
次スレ
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part244(実質Part245)
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>>809は爆発魔法を頂いた後昼食抜きになりました
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これで500k行くだろ
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だからっっ、AAでうめるなっっっつーてんだろおッッッッ!!!!
テファは俺の嫁!!