【IF系】もしゼロの使い魔の○○が××だったら16
乙
荒らしが来ませんように。
スレ立て、誠に乙です。
にしても、あのアラシは厄介ですね。
ビフォー編の7話を投下します。
学園ルイズ、文化祭準備編その2です。
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『るいとも *Bの7』
「ルイズちゃん、ちょっといいかな?」
購買部に関して期待にそぐわなかったせいか、昼休み以降、微妙にテンションの下がったルイズに、放課後、高凪春奈が声をかける。
「ん〜〜なにぃ、はるなん?」
「"はるなん"って……もしかして、わたしのこと? そういう綽名で呼ばれたのは初めてだわ」
冗談で「いいんちょ」って呼ばれたコトはあるけど、と春奈は苦笑いする。彼女の視線の先で、さりげなく目を逸らす才人……お前が犯人か。
「じゃあ、ハルっちとかハルりんのほうがいい? あるいは苗字から取ってナギーとか」
3つ目のは、むしろルイズにこそ似合うのではなかろうか?
「昔、遠野美凪の格好(コス)はしたことあるけど……その中では、まだ"はるなん"の方がマシね。まあ、綽名の話は置いといて、ルイズちゃん、この後ヒマ?」
「えーと、今日は帰りに才人と駅前に新装開店したラーメン屋さんに寄ろうかと思ってたくらいかしら」
「あ、それならちょうどいいわ。ちょっと帰りに商店街につきあってくれないかしら。ホラ、文化祭の模擬店の用意のために買い物したいんだけど」
「おお、それはナイスアイデア! ほら、荷物持ちもココにいることだし。何だったら、そのままウチに来て衣装のこと話し合いましょ」
先程までのローテンションから一転上機嫌になったルイズが、雲行きが怪しくなったことを察してコッソリ抜け出そうとした少年の襟首を素早く捕まえる。
「まぁまぁ、平賀くんも調理班として、メニューとかに意見を聞かせてよ」
「つっても、俺にできる料理なんてタカがしれてるぞ? 普段作ってるのは、コイツの夜食(エサ)ぐらいなんだし」
才人の言うことももっともで、彼がルイズに作ってる夜食のうち、喫茶店で出せそうなものと言えば……
・ホットケーキ(市販のホットケーキミックス使用)
・チョコチップクッキー(同上)
・三色ドーナツ(同上)
・パウンドケーキ(同上)
・プリン(市販のプリンの素使用)
・ババロア(市販の以下略)
・杏仁豆腐(同上)
・レアチーズケーキ(同上)
・ティラミス(1度挑戦したが、めんどうくさいので懲りた)
……くらいだろうか。
つまり、別段料理の技量(スキル)を上げたいわけではないので、たいていはスーパーで売っている「○○の素」を利用して、安く大量に作っているだけなのだ。
あとは、餃子(大概は市販品)、回鍋肉、焼きそば、チャーハンといった、酒の肴に良さそうな代物ばかりだ。
まぁ、サンドイッチなら軽食として出せるし、ハンバーグもバンズで挟めばハンバーガーとして売り物にできるかもしれない。
もっとも、その程度の調理さえ満足にできない女の子も、少なからずいそうではある。身近で言うなら、ルイズもその部類だし。
電子レンジで玉子類を爆発させたり、フライパンを炭化物で真っ黒焦げにしない程度の常識はあったのだから、異世界の人間としてはマシな方かもしれないが。
「それで十分よ。どの道、出すお菓子の種類は3種類程度に絞るつもりだったし」
ニコニコ笑顔で押してくる春奈の迫力に負け、おとなしく才人もふたりに同行することにした。
「とりあえず、先にそのラーメン屋さんに入らない? 買い物したあとだと荷物がかさばりそーだし」
というルイズの意見に従い、駅前に新装開店したばかりのラーメン屋へ向かう3人。
「あ、このお店の名前、聞いたことあるわね」
春奈は、その店名に見覚えがあるようだ。
「一応全国チェーンだからな。本拠は関西らしいけど」
「ふーん……私、ラーメンの本場って九州か北海道だとばかり思ってたわ」
ほら、サッポロラーメンとか博多ラーメンって、テレビでよく見るじゃない、と続けるルイズ。
「外国人で、それを知ってるだけでも、十分日本通だと思うけど……」
と苦笑する春奈。
「うーん、日本で最初にラーメンを出した店とかは、どっかにあるんだろうけど、今となっちゃあカレーと同じく日本の国民食だからなぁ」
とりあえず、店員を呼び止め、才人は「こってりチャーシューの大」、春奈は「あっさりの並」を注文する。ルイズは悩んだ挙句、「こってりネギの並」に決めたようだ。
「ルイズちゃん、ネギ好きなんだ?」
「ああ、何せコイツの味覚は、洋菓子・和菓子から親父のオツマミに至るまで網羅してるからなぁ。事、舌に関しては節操無いこと極まりないし」
「ふっふっふっ、いいのかい? 私は、納豆だろうが平気で食っちまう女なんだぜ……って、何言わせんのよ!
ところで、今更だけど、ココって美味しいの?」
ひとりノリツッコミを入れたあと、こっそり囁くルイズ
「わたしは、実際来るのは初めてだから……」
「俺は別のチェーン店に来たことあるけど、かなり好みの味だったぞ。まぁ、クセがあるから、多少人を選ぶのは確かだけど」
などと話しているうちに、注文の品が届く。
「「こ、これは……」」
春奈の「あっさり」は問題ない。ごく普通の鶏ガララーメンに見える。
しかし、才人たちの頼んだ「こってり」のどんぶりを見た女の子ふたりは絶句した。
一言で言って「濃い」。やや少なめのスープの粘性がハンパではなく、さりとてあんかけ麺のような透明感を帯びた粘りけとも異なる。
確かに「こってり」というネーミングがピッタリだった。
「才人ぉ、これって、私が昼に"どろり濃厚ピーチ"が飲みたいって駄々こねた仕返しじゃないわよね?」
「んなワケあるか! いいから、黙って食ってみろって」
信頼する幼馴染に促され、おそるおそるレンゲですくったスープを口に運ぶルイズ。
「あれ、意外としつこくない」
何度か食べたことがある、豚骨ラーメンのギトギトした脂っぽさを予想していた彼女は、まるで異なる食感に驚いた。
これは……悪くないかも。ううん、結構、美味しいじゃない!
夢中で箸を進めるルイズ。
「どーやら、気に入ってもらえたみたいだな」
才人が苦笑し、春奈はルイズに声をかけた。
「どう、ルイズちゃん?」
「(ズルズル……)ん、ひがいだけど、かなりおいひぃわ、ほれ(ゴクン)。ホラ、はるなんも食べてみる?」
ルイズが差し出したレンゲに、先ほどの彼女同様、おそるおそる口をつける春奈。
「あ、予想外な味かも!」
「でしょ、でしょ?」
そのあと、春奈の頼んだ「あっさり」のスープも寸評したりしながら、3人は楽しく食事を終えるのだった。
「うーーん、ここの"お持ち帰りセット"を大食堂のマルトー親方に渡したら、何とか再現してくれないかしら?」
後日、トリステインに一大ラーメンブームが巻き起こった……かどうかは、定かではない。
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以上。次回は引き続きお買いもの編です。
ちなみに、今回のラーメン屋は京都発祥の某お店を想定。月姫のメイドさん御用達のあそこです。
実は、ようやくAとBの向かうべき地点が見えてきた気がします。問題は、そこまで私の筆力と意欲が足りるかどうか。なんとか(事実上の)2部も完結させたいのですが……。
つづいて、B8を投下します。
ビフォーの8話、前話から続いて文化祭準備編の2です。
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『るいとも *Bの8』
機嫌よくラーメン屋を出たのち、3人は文化祭の準備を整えるべく、まずは貸衣装屋、それも舞台演劇用などではなく、むしろコスプレショップとでも言うべき品揃えの店へと向かう。
ヲタク度がそれなりに高い才人のような少年にとっても、なかなか敷居の高い店ではあるのだが、女性陣ふたりは平気な顔をしている。
むしろ、「あの衣装がかわいい」「これなら似合いそう」などと談笑しているあたり、さすがは筋金入りのヲタク女子と言うべきか。
春奈はこれまでの即売会で何度か利用しているようだし、ルイズも前回の夏コミでコスプレで注目される楽しさに目覚めたのかもしれない。もともと、ゲームその他のおかげで、特異な服装に抵抗感は薄いようだし。
とは言え、今回は文化祭でクラスメイトたちにウェイトレスさせるためのものだ。あまりに露出が高いものや動きにくいものは却下だろう。
とりあえずは、無難なロングスカートの英国風メイド服を2着、対になるような執事服を2着、今は無き不二家系某有名ファミレス風のウェイトレス衣装と、同じく著名な井村屋系ファミレスの制服を各1着、予約する。
「あれ、接客係は12人じゃなかったか?」
才人の疑問に、ルイズが答えた。
「女子の分4着は、私とはるなんが自作するのよ。男子の残りは、格ゲー風の空手道着姿と、適当な女装ね。最後のは最悪学校の女子用ブレザー着せればいいし、余裕があったら私たちで作るわ」
……ということで、次は手芸用品店へと連れて来られる。
ランジェリーショップほどではないが、こちらも男子としては入りづらい場所だ。とは言え、荷物持ちとして徴発されている以上、同行しないわけにもいくまい。
才人は、もはやあきらめの境地で、ふたりのあとをカルガモのヒナよろしくついて回ることにした。
「はるなんは、ミニスカ和服って言ってたけど、どんなのイメージしてるの? 「シャイニング・ウィンド」のクレハとか?」
「それも悪くないけど、作るのが難しそうね。わたしとしては「それ散る」の星崎希望をイメージしてるんだけど。ほら、元々甘味処の制服だし」
「お? もしかして、あの甘味処の票って、高凪さん?」
「う……まぁ、ね。わたし、どちらかって言うと和菓子系が好きなの。ところでルイズちゃんは?」
「うーん、Piaキャロ系メイド服って言っても、「2」と「GO」の2種類あるのよねー。作るのは「GO」の方が簡単そうなんだけど、私が着るとなると、ちょっち胸が寂しいし……」
憎い、希少価値なこの貧乳がニクい! とルイズは血涙を流す。まぁ、こんな風に茶化せるくらいだから、それほど深刻に気にしているわけではないのだろうが。
「一応彼氏の身としては、どっちもスカートの短さが危険極まりないと忠告させてもらおう。いっそ、同じF&Cつながりで、喫茶ロムレットの制服にでもしたらどーだ?」
才人の思いつきに、パチンと指を鳴らすルイズ。
「それ、いただき! メイド風かつシックでキュート。男性だけでなく女性受けもしそうだし、まるで私のために用意されたような制服よね!!」
アレだったら既成の黒のワンピースにちょっと手を入れるだけでできそうだし、と制作面での効率も気に入ったようだ。
「わたしも、一昨年まで着てた浴衣を改造するつもりだしね。ところで、あとのふたり分はどうする?」
「才人ン家のツテをたどれば、ナースの白衣は大丈夫よね。あとは……婦警かスッチー?」
「お前……それはあまりに発想がオヤジくさくねーか?」
「でも、高校の文化祭なんだから、学校の制服系ってのもイマイチ新鮮味ないでしょ」
「かと言って、SFとかファンタジー風は作るのが大変よねぇ……あ! 「ARIA」のウンディーネの制服ならどうかしら?」
白いロングのワンピースをベースにしたそれは、特徴的だが同時に着る人もさほど抵抗感のなさそうな落ち着いたデザインだ。
既成服からの改造も楽そうだということで、春奈のその案が採用された。
「そうは言っても、それなりに生地とか買うんだな」
手芸用品店を出たとき、3人の左手には中くらいの紙袋が提げられていた。
そのまま、今度は手近なスーパーへと足を向ける。
「一応、失敗したときのことも考えて、布とかは多めに買っておくのよ」
「ま、そうそう失敗するようなコトはないと思うけどね」
謙虚な春奈と自信満々なルイズが対称的だ。
「でも、確かにお前、裁縫とか意外に上手いんだよな。ルイズのクセに……ってイテェーー!」
「ど・お・ゆ・う・い・み・か・し・ら?」
グリグリと足を踏まれて飛び上がる才人。
「いや、だって、お前、イイトコのボンボンもといお嬢じゃん」
「私は手先が器用なのよ! 華麗なる指さばきの妙は、才人自身、対戦ゲームでコテンパンにされて知ってるでしょーに」
「いや、まぁ、確かにそうだけど……それが、なんで袋入りのインスタントラーメンひとつ、満足に作れねーんだ?」
何気なくサ○ポロ一番の袋を手に取りながら、本気で不思議がる才人を見て、春奈がクスクス笑う。
「ルイズちゃんはね、平賀くんの作った物が食べたいのよ」
「──俺より母さんとかカトレア義姉さんのほうが料理は上手いと思うけど」
「フフ……そういう意味じゃないわよ。わかっててトボケてるでしょ?」
級友の「わかってるから」風な生温い微笑みに、このふたりにしては珍しく、照れて言葉をなくしてしまうルイズと才人だった。
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以上です。原作では、手芸が趣味なわりにヒトデマフラーを編んでしまうルイズさんですが、このSSでは一転、器用に裁縫をこなします。
原作でのアレは「趣味」というよりむしろ半強制された「ご令嬢のたしなみ」として身につけていたのだと推測。対して本作では、まさしく好きなシュミのために邁進してますから、相応に上達するだろうと。好きこそ物のなんとやらです。
ま、ゲームで指の動きを鍛えてるってのも、あながち間違いではないんですが。
本日は、あとA−8を、24時過ぎに投下させていただきまする。
筆が速いなぁ、とっても乙です。
メニューにアンコ・ド・カンテーヌを1つ
ルイともさん乙
もし件の荒らしが来ましたら、避難所スレにおいで下さいませ。
一時避難所になっていた重複スレにリンクがあります。
(念のため私はこちらに避難所のリンクは貼りません)
あの荒し平日に連続でくるもんなぁ……
クロスの方もやられてたぜ
奴は多分厨二病なゼロ魔SS書きだな
自分のSSが評価されると思って投下したらアホ扱いされたとかそんな理由じゃね
そこらへんあまり関係なくやっているみたいなんで、
トーナメントか板そのものへの嫌がらせっぽい。
まぁいい迷惑には変わりないけど。
るいともさん乙です。
・・・・・・天下一品?
それでは、アフター編第8話です。
いつもにましてすんごいクダラナイ話にも関わらず、これまでで最長という矛盾。お読みいただく方は、そのあたりご注意を。
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『るいとも *Aの8』
「……というワケで、私たちは今、"白い大陸"とも呼ばれるアルビオンの、城門が見える場所まで来ています」
「いきなりそれかよ!? 唐突過ぎるだろ? 読者おいてけぼりだぞ!」
サイトのメタなツッコミに対し、「読者って何?」と疑問を抱きつつも、空気が読める本作のルイズは、素直にここ数日の出来事を回想するのだった。
(ほわわわーーん……) ←回想シーンのお約束
ことの起こりは3日前。アンリエッタ王女の学院視察に端を発する。
視察自体は以前から予定されていた"行事"ではあるし、その際に2年生全員が使い魔のお披露目──端的に言えば"芸"をさせることも、事前に通達されてはいた。
ちなみに、サイト&ルイズは、「マジシャンとそのアシスタント」に扮して、サイトがいくつかの手品を壇上で披露した。
簡単なロープマジックやカード当てののち、助手のルイズ(残念ながら体型の都合でバニーガール姿は断念)が差し出したシルクハットを手に取り、逆さにして振って何も入ってないことを示すサイト。
「ほーら、ハトが出ますよ〜」
ぬゅるんと、ありえない深さでサイトの手が帽子の中へと潜り込み、中から取り出したのはウサギ……のぬいぐるみ?
「<あたしウサちゃん、パパはリビアで大佐をしてるのよ。意味は無いけど>」
腹話術?でウサギにしゃべらせるサイト。
無論、言うまでもないことだが、手品のタネはルイズの"世界扉"である。
「はっはっは、ちょっと失敗しましたね〜。では、今度こそ……」
ぬょろ〜〜ん。
緑の髪のデフォルメされた女子高生の人形?が出てくる。
「<やあやあ、スモークチーズはあるかい?>」 ←ルイズの裏声
すかさず、観客席のアンリエッタが応える。
「さっきもう食べたでしょ?」
落胆する人形?をシルクハットに押し込むと、難しい顔をしたサイトが今まで以上に深くふかーく帽子に手を突っ込み、グイと何かを引き出す。
「すみません、今はこれが精一杯」
かすみ草、すみれ、チューリップ、ヒヤシンスといった、ややおとなしめの花を集めた花束を、膝まづいて最前列の王女に差し出す。
元ネタがわかるアンリエッタは大喜びでそれを受け取る。ネタがわからない観衆も最後の演出に感心してくれたようで、それなりの拍手を得ることができた。
結局のところ、お披露目会の最優秀賞は、「発煙筒をくわえたシルフィードによる空中スモークアート」によってタバサが獲得することとなったわけだが。
そこまではいい。
また、夜中にアンリエッタが人目を忍んでルイズの部屋に来ることも、彼女の性格を知るルイズやサイトからすれば、"規定事項"にすぎない。
しかしながら、そこで深刻な相談を王女から受けることになろうとは、ふたりとも完全に想定外だった。
「以前、ふたりにはわたくしがアルビオンのウェールズ王子殿下と懇意にしていることは、お話しましたわよね?」
「ええ。確かトリステイン王宮の"伝説の樹"の下に王子を呼び出したんでしたっけ?」
「ええっ!? 私は、ラグドリアン湖の湖畔で「夜空に星が瞬くように、溶けた心は離れない」ってふたりで誓ったって聞きましたけど?」
ふたりの反応に若干ひきつつも、うなずくアンリエッタ。
「ま、まぁ、似たようなことを行いました。もっとも、それも3年ほど前の話です。それからウェールズ様とは一度も会ってませんし、ぜいぜい文通しているくらいだったのですが……」
ふむふむ、と王女の話に聞き入るルイズとサイト。
「ああ、何ということでしょう。わたくしが浅慮でしたわ。あんなものをウェールズ様に送ってしまうだなんて」
(何なのかしら? まさか、始祖ブリミルの名前にかけた恋文でも送ったとか……)
(ヲイヲイ、一国の王女が迂闊にそういうコトしていーのか? 下手したらスキャンダルになるだろ、それ)
コソコソ話し合うルイズ達を尻目に、両手を胸の前で組んで、目を潤ませて宙を見つめるアンリエッタ。
「初めて同人小説を書き上げたのがうれしくなって、ついウェールズ様のもとに送ってしまうとは……」
「「いろいろ待てや、コラ!!」」
相手が王女であることも忘れ、シンクロしてツッコミを入れるサイトとルイズ。
「だって、トリステインの王女たるわたくしがBL大好きっ子だなんて、周囲の者に知られるわけにはいかないでしょう?」
「しかも、BL物!? 成人男子送りつけるのは、明らかに嫌がらせだぞ!」
「ウェールズ様をモデルにした小説だったので、ぜひご本人から感想をお聞きしたくって……」
「無断で本人出演!? 内容によってはトラウマ物ですよ!」
「もちろん、ウェールズ様総受けです。メインは我が国のワルド魔法衛士隊長に拘束されて攻められるシチュですね。筆が乗ったので4巻まで書き進めちゃいましたわ」
「ぜってー、読みたくねーーー!!」
「そうですね。わたくし個人としては会心の出来だったのですけれど、偉大なる先達とは比べるまでもありませんし、やはりあと2、3回推敲してからにするべきでした」
「「そう言う問題ぢゃないっ!」」
スパーン! ついに我慢しかねたふたりのダブルハリセンが、アンリエッタの後頭部をはり倒した。
さて、ひととおり騒いでクールダウンした3人だが、「アレ」をウェールズ王子の手元に置いておくのは(色々な意味で)マズいという結論に達した。
ひとつには、王女の「恥部」ともいうべき著作を、いかに友好国は言え、他国の王族の手に委ねるのは危険だということ。
また、仮に王子が良心的に保管していたとしても、最近国内で反乱があいつぎ、近々王子自らによる出陣が噂されている状況で、彼が出陣中、他の者に発見される可能性もあるということ。
(オマヌケなことに、わざわざ著作全部に「アンリエッタ・ド・トリステイン」の署名まで入れたらしいのだ、この腐れ姫は)
冷静かつ客観的に己れの所業を振り返ったアンリエッタは、真っ青になって、口から魂が抜けかけている。
仕方なく、ルイズたちが秘密裏にアルビオンに赴いて、くだんの「小説」を王子に返却してもらう密使に立つことになったのだ。
幸い、幼いころにルイズはアルビオンの王都ロンデニウムに行ったことがあるため、"どこでもドア"を使えば所要時間は0に等しい。
まぁ、帰りには精神力の都合で丸1日必要だが、それでもいかなる空船(フネ)や飛竜に乗るよりも早いだろう。
問題は、王宮で王子に面会する方法だが、こればかりはアンリエッタに頼るしかない。彼女直筆の委任状(ルイズを特使に任命するもの)と、王家の証たる"水の指輪"を預かることとなった。
そんな経緯があって、翌朝早く、ダメダメな友人の尻ぬぐいをするため、ふたりは平賀家からアルビオンに出かけ……ココでようやく冒頭の場面に至るワケだ。
とりあえず、そこそこのランクの宿に部屋をとり、王宮に面会願いの手紙を出す。さすがに、いきなり押しかけて会ってもらえるとは思えないからだ。
もっとも、翌日、巨大な猫を被ったルイズが、公爵家の娘らしい威厳を見せつつ城門で許可を求めると、意外なほどスムーズに王子との面会は認められた。
「こんなにすんなり対応してくれるとは、その王子さんも、よっぽど"アレ"を手元に置いておきたくないんじゃねーの?」
王家の私的な応接室に通され、ウェールズが来るのを待っているあいだ、サイトがルイズの耳に囁いた。
「気持ちは痛いほどわかるけどねー」
ルイズとしても顔をしかめるしかない。
ところが、しばらく経つとウェールズの侍従らしき老人が、すまなさそうな顔で応接室にやってきた。
「特使どの、申し訳ありませぬ。ただいま姫様が御仕度に手間取っておりまして……」
「ええ、もちろん、構いません。特命とは言え、急きょ押しかけました私どもに、お会いいただけるだけでも光栄の極みですわ……って、姫?」
はて、アルビオンに姫君などいただろうか? と首を傾げるルイズ。
確か、ウェールズ王子はひとり息子のはずだし……。
かつて国王には王弟がいたらしいが、事情があって王位継承権その他を剥奪されたと聞く。もしかして、その王弟の娘を王家で引き取ったのだろうか?
(そーなると、ウェールズ王子とは、いとこかつ義兄妹ってワケよね。エロゲ的に見て萌えるシチュエーションかも!)
いろいろ想像をたくましくするルイズ。自重しろ!
「──お待たせいたしました……」
ほどなく、数名の女官にかしづかれ、白いドレスを着た姫君が応接室に入って来る。
陽光の如き金色の髪を結い上げずに腰まで伸ばし、やさしい光をたたえた翠緑色の瞳と健康的な白い肌が印象的な美人だ。
(ふぇ〜、こりゃ、ウチの王女殿下とタイマンはれるお姫様っぷりねー)
女性にしては長身だが、スラリとした優美な体つきのおかげで、まったく女らしさは損なわれていない。
スレンダーな体型のわりにバストのあたりだけが大きく膨らんでおり、(自分以外に関しては)巨乳派のルイズとしては、不敬を承知でソコに手を伸ばしたくて仕方がなかった。
「ハッ……いえ、お初にお目にかかります。トリステインよりアンリエッタ王女の密命で参りました特使、ヴァリエール公爵家が三女のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します」
後ろに控えるサイトに肘でつつかれ、自分が穴が開くほど目の前の貴婦人の胸を凝視していることに気付いたルイズは、慌てて腰を落として礼をとる。
「それで……あのぅ、できればウェールズ王子殿下と直接お話しさせていただければと思うのですが……」
おそるおそる切り出すルイズに、姫君の傍らに控えた老僕バリーはため息をついた。
「申し訳ありません。当アルビオン王家に、現在、ウェールズという名の王子は存在いたしません」
「はァ?」
思わずマヌケな顔つきで聞き返したルイズに対し、バリーは頭痛をこらえるような表情で、言葉を続ける。
「僭越ながら、ご紹介させていただきましょう。
こちらが、ウェールズ・テューダー王子改め、ウェンディ・テューダー"王女"殿下でございます」
"王女"は羽扇で口元を隠すとニッコリ微笑みながら、軽く会釈をしたのだった。
1ヵ月ほど前、アンリエッタ王女の送った鬼畜系BL小説を読んで、その内容のあまりのエゲツなさに、ウェールズ王子はすっかり男性恐怖症となってしまったらしい。
夜毎にうなされ、しまいには、自分が男であることにも耐えられなくなって、女装して"ウェンディ"と名乗るようになったのだ。
不思議なことに、今の格好なら、男性とも(接触などは到底無理だが)比較的普通に接することができるのだとか。
「うわぁ〜、ウチの姫様も罪作りなことしてくれやがりましたわね、ホント」
自国の王族に対するものとは思えぬ失礼なルイズの言葉も、アルビオン王家を襲った"悲劇"を知ってしまった以上、無理もあるまい。
「"王女"の姿を見た国王陛下は腰をぬかし、以来、ずっと病の床にふせられています。現在のこのお姿は、王子の異母妹という噂を流して誤魔化してはおりますが、そろそろ真実に気づく者も出始めたようでして……」
さめざめと泣くバリー。
「──父上やバリーには大変な苦労をかけて、申し訳ないとは思っていますわ」
多少ハスキーではあるが、とても男性の喉から出ているとは思えない綺麗なアルトボイスでウェンディ"王女"が、老侍従に謝罪の言葉を述べる。
哀しげに伏せた目元が、この上なく艶っぽい。
(ちょっと! 元が男だってーのに、なんであんなに色っぽいのよ!)
(落ち着け、ルイズ! ほら歌舞伎の女形とかニューハーフとかって、男ゆえに男をソソる仕草が本能的にわかるってゆーし……)
(私は女よ?)
(まぁ、それだけお前がオヤジくさいって……イテッ、冗談だって)
小声でルイズとサイトが言い争いしている間も、バリーとウェンディの寸劇は続く。
「しかし、姫様。叛徒どもを討つ軍を率いるにあたっては、さすがにドレス姿と言うわけにはいかぬかと……」
「わかっております、こんな事をいつまでも続けられないであろうことは。ああ、でも未だ男装する踏ん切りがつかぬのです」
あ〜るとちゅるやとカリ城支援
……いや、アンタ、元々男なんだから「男装」とは言わんだろう、と呆れるルイズだったが、傍らのサイトは何か思いついたようだった。
「あ〜〜、お話の途中ですが、ちょっと失礼。俺は、こちらのルイズの友人であり、恋人であり、最近では使い魔なんてものもやってる、東方出身の、サイト・ヒラガーというものです」
簡単な自己紹介ののち、右肩に背負ったカバンから出したある物を見せる。それは、当面のバリーとウェンディの悩みを(一時的にだが)解決するに足る代物だった。
「こうなったのも、アンリエッタ王女が原因ですからね。出征に際してのこのくらいのフォローは任せてください。それと……」
同じカバンから取り出したポラロイドカメラを"王女"に見せる。
「これは、人の細密な肖像画を瞬時にして作り出す東方のマジックアイテムです。ご許可をいただければ、今のウェンディ殿下のお姿を撮らせていただき、姫様にご報告したいのですが……」
本当は、凛々しく成長した(はずの)ウェールズ王子の写真を撮ってトリステインに持ち帰り、腐に染まったアンリエッタを少しでも真っ当な道に戻す一助になれば、と思っていたのだが。
(まさか、こんなことのために、使うハメになるとはなぁ)
"王女"からOKをもらって、写真を撮るサイト。
ミョズニトニルンの能力が無意識に発動しているのか、ポラにも関わらず、そこに浮き出たウェンディ王女の姿は、女優のグラビア写真集なみのクォリティーに仕上がっている。
「ハッ! しまった。興がノッてつい、持ってきたフィルム、全部使っちまった!」
しかも、そのカメラマン魂に感化されたのか、撮影なんて概念をカケラも知らぬはずのウェンディ王女まで、熱に浮かされたかのように様々なポーズをとり続け、ドレスを着替え、セミヌードまがいの格好までさらしていた。
我に返るとさすがに恥ずかしそうではあったが、サイトが撮ったポラロイド写真に映る自分の姿を見て、ウットリと頬を染めている。
(ヤベェ、"王女"のナルシス心に火ぃつけちまったかも……)
あわてて謝辞を述べ、何か言いたそうなルイズを連れてアルビオン王宮から帰路につくサイト。
ロンデニウムに出てすぐ、手近な小路に飛び込むと、"どこでもドア"で平賀家へと帰りついた。
「ふぅ、予想外過ぎて寿命が3年は縮んだぜ」
「まったくね。ところで……ねぇ、サイト、あの時、ふたりに見せたのって何なの?」
「ん? ああ、コレだよコレ」
サイトが取り出しのは、一冊のアルバム。そこには、先日の舞踏会に赴く直前の4人の記念写真が何枚もおさめられていた。
「ホラ、タバサの来てる"帝国華撃団"の戦闘服ってさ、一応男女共通じゃんか。
だから、コレが東方での戦装束です。"王女"もコレを召されてはどうですか、って提案したんだ」
確かにタバサの中性的な雰囲気なら、男女どちらにもとれる。
男物を着たくないという"王女"も抵抗感は少なかろう。
「もっとも、"王女"のサイズにすぐに仕立てて届けるって約束しちまったけど。必要費用はアンリエッタ姫にもってもらおーぜ」
元はと言えば、あの人の責任なんだし、と締めくくるサイト。
「そーね。それくらいは、負担してもらわないと、やってらんないわよね」
ルイズもウンザリした顔でうなずくのだった。
―─余談であるが、ルイズからの報告書を読み、サイトが撮影した「ウェンディ王女殿下御影集」を見たアンリエッタ王は、
「ご、ごっどじょぶ……ですわ………さいとさん」
と謎の言葉を残し、鼻血を噴出して倒れたらしい。もちろん、仕立て屋の件は即承認された。
ちなみに、王女が書いた同人小説「艶絶の廃王子」シリーズは、そのまま王宮禁書庫の最奥部に封印されたのだが……後年、いずこからともなく市井に流出し、ハルケギニアの腐女子の聖書と呼ばれたとか何とか。
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以上。原作の重大な話が、これほどしょーもない話になるとは、自分でも書いててビックリです。
なお、本作中では、レコンキスタは、現時点で国内最大の反王家勢力ではありますが、まだ王家を揺るがすほどではないという設定。
アンドバリの指輪が手に入らず、貴族を金と暗殺の恐怖(無論、シェフィールドが活躍)で揺さぶり、少しずつ引き入れてる段階ですので。タバサママンに使ったのと同類の薬なども利用してる様子。
ワルドさんの母君は存命。某貴族の嫌がらせで病没(治療に秀でた水メイジが買収された)するはずだったのですが、平賀家からヴァリエール家経由でもたらされた抗生物質で持ち直しました。
(もっとも、カリンさんが独自の判断でワルドに渡したのでルイズたちは知りませんが)
当然、ヒゲ子爵は裏切ったりしてません。まぁトリステインの現状に危機感は抱いてるかもしれませんが。
<おまけ>
「ぬ……!」
衛士隊隊長として王都の夜警に出ていた彼は、突然立ち止まった。
「どうかないましたか、隊長?」
「いや、今、得体のしれない悪寒が背中を駆け抜けたので、な」
「風邪ですか? このところ無理されているようですけど」
「いや、母にも忠告されているし、気をつけているはずなのだがな」
もちろん、アンリエッタがルイズ達と密談している、ちょうどその時の出来事であった。
なお、本作に於いてジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドが登場する機会は、これが最初で最後であることも記しておこう。
え〜っと、色々自重w
乙
さすがるいともの世界。アンリエッタが腐りにくさっておられるw
ウェールズも壊れちゃってまあ………w
乙!
もうどこから突っ込んでいいやらwww
GJっす
……ああ、珍しくワルドがほぼ味方確定なのに、出番がないなんて……!
なんと阿呆な世界……っ!!
アンリエッタのみならず、ウェールズまで壊すか……っ!
真面目に暗躍してるっぽいシェフィさんとジョゼフさんがなんか哀れに見えてくる。
これ、ガリアサイドから見ると温度差が凄いことになってそうだなぁ
ルイズやヒラガーやアンアンが恐るべき智謀で以って動いている脅威の相手、に見えてるんでしょうか。タバサママ誘拐とかも絡めて。
なんか、勘違いモノの王道を行ってそうな気が。
これは酷い原作レイプですね(注:称賛しています)
本当にごっとじょぶ……ですわぁ
もしかしてアルビオン編終了?
ワルドが逃がしてないと思うのでマチルダはまだ牢屋の中かな。
テファが出るかと思ったら女装ウェールズ。
あ〜るネタが出るとはもしかして…
ぐっど通り越してごっどかいwww
そして、ワルドさんは事件がおきずに平和に暮らしてるのか
てことはおマチさん脱獄できなくね?www
脱獄できないおマチさんは死刑?
テファの運命やいかに
このアンリエッタ原作以上に不安要素たっぷりだ
あの変なお姫様はだけは女王の座につけちゃなんねえと貴族、平民ともに意思統一されてなければいいんだが
>>27 そっち方面で主要貴族全部汚染済み、とかいう落ちが待ってそうなんですが。>トリステイン
るいともの人、乙です
「いろいろ待てや、コラ!!」
に禿同www
アルビオン編早!
このままテンプレ展開していくと次はVSレコン・キスタなんだけど…、ゼロ戦にwktkするルイズが幻視できるなw
それにしても、こっちに書くと夜までには埋め立てられる気が…。
やべーアフターおもすれぇよwwwいいぞもっとやれ!
人格が成熟しすぎて腐ったんですね、分かりました。
>>100ならこのスレのコピペ連投荒らしに重罰が下る!