【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚88人目】

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1ゼロいぬっ!代理
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     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ジョジョの奇妙な冒険」のクロスSSスレよ。
    〃  `ヽ     他にも避難所にしか掲載されてないSSとかもあるから一度見てみなさい
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは900か950を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′

【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚87人目】
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2ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:05:25 ID:qCzeh0IO
残量確認しないまま漫然と代理投下を始めてしまった
大変申し訳ない
時間を置いて最初から代理投下をし直します
3ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:06:16 ID:qCzeh0IO
残量確認しないまま漫然と代理投下を始めてしまった
大変申し訳ない
時間を置いて最初から代理投下をし直します
4ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:07:07 ID:qCzeh0IO
息せき切らしてアルビオン軍の伝令が陣中を駆け抜ける。
歓喜とも困惑とも取れぬ表情を浮かべながら天幕の中へと入り込む。
左右には衛兵が立ち、その中央では二人の男がテーブルに地図を広げて軍議を行っていた。
アルビオン軍と連合軍の配置を示す白と黒の駒。
数に勝る連合軍はアルビオン軍を半包囲し、戦の趨勢も決したかに見えた。
しかし、それを覆す報が伝令より齎される。

「報告します!連合軍内にて叛乱が発生した模様です!
詳細は不明ですが敵軍は混乱し、中には同士討ちを始める者達も!」

その報告にホーキンスは思わず耳を疑った。
優勢な状況にある連合軍で内部分裂など有り得ない。
何が起きたのかを把握しようとする彼の隣で、
表情一つ変えないまま総司令は報告された地点の駒の配置を動かす。
ホーキンスが見下ろした先には、アルビオン軍によって包囲される連合軍の縮図が広がっていた。
もし、このまま完全に包囲し殲滅する事が出来たならアルビオンの勝利は確定する。
息を呑むホーキンスの横でアルビオン軍総司令は呟いた。

「さもありなん。所詮は目先の利益で繋がっていた連中に過ぎない。
勝利を前にして主導権を握らんと、どちらかが仕掛けたのだろう。
いくら御題目を立てようと正義は我等にある。アルビオンの民もそう気付いたはずだ」

果たしてそうだろうか、とホーキンスは疑念を払拭できずにいた。
レキシントンでの戦いの時も『ロイヤル・ソヴリン』号が反旗を翻すなど、
貴族派が苦境に立たされると何故か戦局を覆すような反乱が起きた。
もし、それが誰かの意志によって引き起こされたのだとしたら我々は何の為に戦っているのか。
信念も誇りも何の意味も持たない、ただの駒ではないのか。
かつて憧れた理想との落差にホーキンスは悔しくて唇を噛んだ。

「これより我が軍は追撃戦に移る。陣頭指揮は任せたぞホーキンス。
この天候では軍船も容易に出港できまい、アルビオンから一人として生かして帰すな」
「はっ! ……ですが、本当によろしいのですか?
トリステインのアンリエッタ女王は陛下の従兄妹君……いえ、それ以上の」
「ホーキンス」
「出来すぎた真似をしました、お許しを」

低く響いた声にホーキンスは身を固くして頭を下げた。
しかし、それを窘めもせず頭を上げるように促すと彼は続けた。

「私とて彼女を信じたかった。だが、現に彼女はアルビオンに侵攻した簒奪者なのだ。
正統たるアルビオンの継承者である私が戻ったにも関わらず彼女は軍を退こうとはしなかった。
私は私情は捨てたのだ。貴族派も王党派もなく、ただアルビオンを守る為に。
それが私を匿ってくれたクロムウェル司教へのせめてもの手向けだ」
5ゼロいぬっ!代理 orz 大事なことなので(ry:2009/05/20(水) 12:11:28 ID:qCzeh0IO
私情を捨てた……か。
時折、人とは思えぬ冷たさを感じたのはその所為か。
アンリエッタ女王が軍を退けなかったのも仕方あるまい。
巨費を投じて侵攻しておきながら何の成果も上げずに帰還したならば、
トリステイン王国は諸侯貴族や平民の反発を受け、その権威を失墜させただろう。
同盟国のゲルマニア帝国との兼ね合いもある。
恐らくは彼女は身を引き裂かれる想いで戦っていたに違いない。

だが、同情できるほど我々は優位に立っていない。
ここで連合軍を逃せば一時的には勝利しても、
最終的には圧倒的な国力の差に平伏す事になる。

「それでは行って参ります。ウェールズ陛下」
「ああ、吉報を期待している」

恭しく礼をして天幕を立ち去る。
用意してあった軍馬に跨ったホーキンスが全軍に指示を飛ばす。
反乱を起こした兵を加えれば総勢七万という途方もない軍勢。
大地を踏み鳴らしながら迫り来るその姿は、さながら山が動いたようにさえ見える。
それを天幕の傍らで眺めながらウェールズは呟いた。

「どうせ人形ならば自由意志など無い方が楽というもの」

否。それはウェールズの口を借りた繰り手の言葉。
死を迎えても尚、ウェールズの身体は悪夢に囚われたままだった。

ウェールズ・テューダー
……死後、トリステイン王国の宮廷内にある霊廟に安置されるも、
シェフィールドの手により奪われ、生ける屍として彼女の手駒にされる。
王党派と貴族派を束ね、神聖アルビオン共和国の議長として君臨する。


夜が到来したかのように立ち込める暗雲。
暴風が吹き荒び、張り詰めた帆が悲鳴じみた声を上げる。
軍勢から逃げ惑い、船へと殺到する人々で港は埋め尽くされた。
その狂乱と悲鳴を背に受けながら一隻の船が港から離れようとする。
遠ざかっていくアルビオンの大地を船室からアンリエッタは見た。
見捨てられたと思い、乳児を抱いて飛び降り自殺を図った母親を兵士が止める。
なんとしても船に乗り込もうと軍艦に押し寄せる民衆とそれを防ぐ兵士達。
誰もが口々に助けを求め、絶望の中を這いずり回っていた。

「船を止めなさい! 私は最後まで残ります!」
「女王陛下、それはなりませぬ!」
「何を言うのです! タルブの時と同じく、
王家の者が威光を示さねば誰が従うというのですか!?」
「なればこそ! 誰よりも先にこの場を離れるべきなのです!
陛下より先に逃げ出したとなれば彼等の名誉は失われましょう!」

アンリエッタの言葉をマザリーニは力強く遮った。
多くの軍備と兵、物資に本国から伴ってきた民衆。
失われる物は確かに大きい。再起までには長い時間と労力を要するだろう。
だが、決して取り返しのつかない物ではない。
真に恐れるべきはアンリエッタ女王を、
トリステイン王家の正統な血筋を絶やしてしまう事に他ならない。
要を失えばトリステインは瞬く間に瓦解する。
6ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:16:16 ID:qCzeh0IO
「非難や中傷に耐えられぬというのならば、この私をお斬りください!
全ては矮小な枢機卿のしでかした事と、広場に首を晒せば皆納得するでしょう!」
「………………」

死を厭わぬマザリーニの決意にアンリエッタは返す言葉が見つからなかった。
命よりも重いとされる名誉さえも捨てて汚名を被ろうとする忠臣に、
どうやって引き下がれと命ずる事が出来るだろうか。
己の重責を新たに感じ取りアンリエッタは確認するように呟いた。

「……生きる者の責任ですか」
「御意」
「ならば私は罪を負いましょう。民を、兵を、罪無き人々を見捨てた罪を」
「お供します。たとえ、その先が地獄であろうとも」

視界の端に消えていくアルビオンを眺めてアンリエッタは告げた。
ここで失われたものを決して忘れる事はないと。
神と始祖に縋るように伸ばした手を振り払った事を、
哀願する彼等の視線を振り切って背を向けた事を、
思い出す度に彼女は後悔し続けるだろう。
地獄に等しい責め苦を受けようとも、それでもアンリエッタは生きる道を選んだ。

アンリエッタ・ド・トリステイン
……タルブの勝利を国威啓発に利用した軍部により、やむを得ずアルビオンとの開戦を決断。
前の使い魔の頃には出来なかった分、平民である才人にもルイズと変わらぬ扱いで接する。
生涯独身を貫きハルケギニア有数の名君として後世に名を残す。

マザリーニ
……アンリエッタの腹心として誠心誠意仕える。
時に無鉄砲になりがちな彼女を抑え、よき相談役となる。
ただ、才人を重用する事には些か疑問を抱いており、
貴族の特権を軽んじるアンリエッタと度々衝突する。
彼もまた、アンリエッタと共にハルケギニア史に足跡を刻む。


「ダメだ! 許可無き者は船に乗せられない!」

停泊している軍艦に押し寄せる者を兵士達が妨げる。
船の数は十分に足りているものの、荒天で作業が一向に捗らない。
その合間にもアルビオン軍はすぐそこまで迫って来ているのだ。
出港の準備を整えた艦に乗せてもらおうと詰めかける。
しかし、最優先で逃がされるのは高級貴族の士官で、
身分の低い者はとても乗せてくれそうにない。
多くの者が諦めて別の船を捜す中、ギーシュは一人の少女を抱えて兵士に歩み寄った。

「志願兵か。残念だがこの艦は満員だ。他のを当たれ」
「僕じゃない! 彼女を乗せてくれ、今すぐだ!」

叫ぶギーシュに兵士は彼の腕の中へと視線を下ろした。
桃みがかったブロンドの髪の可愛らしい少女が静かに寝息を立てている。
それを見て、兵士はギーシュの気迫に納得した。
恐らくこの少女は彼の恋人なのだろう。
ここに残ればアルビオンの連中にさんざ嬲り者にされた挙句、
殺されるか奴隷として売り飛ばされるに違いない。
なら、我が身を犠牲にしてでも助け出したいという気持ちは良く分かる。
だが規則は規則。そのような感情論で語れば、ここにいる全員を助けねばならない。
7ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:23:28 ID:qCzeh0IO
「すまないがそれは出来ない。軍規には従ってもらおう」
「彼女はラ・ヴァリエールの三女だ!」

ギーシュの言葉に兵士は声を詰まらせた。
こちらを見据えるギーシュの眼差しに曇りはない。
もし、彼の言う事が本当だとしたら……?
顔を強張らせる兵士に畳み掛けるようにギーシュは続ける。

「もし、彼女の身に何かあってみろ!
彼女を見捨てたアンタは間違いなく処刑される!
いや、アンタだけじゃ済まされない! その累は家族や友人にまで及ぶ!
他に誰も乗せられないなら、まずアンタが降りるべきだろう!?」

権威を傘に着た悪辣な笑みを浮かべてギーシュは兵士に迫る。
たじろぐ兵士の姿にギーシュは勝利は確信した。
慌てた兵士が艦長へ伝令を遣すと返事は呆気ないほど早く返ってきた。

「ラ・ヴァリエール嬢の乗艦を認めます。
この艦は間もなく出航します。さあ、こちらへどうぞ」
「ああ、ありがとう」

横に退いて乗艦を促す兵士にギーシュは礼を告げた。
そしてルイズを兵士に預けると安心したように彼は艀を降りていく。
当然ギーシュも乗るものだと思っていた兵士は目を丸くさせて呼び止めようとした。

「“任せとけ”彼女が起きたら才人がそう言ってたって伝えてくれ!」

ギーシュはそう叫んで大きく手を振った。
彼は才人にルイズを託された。
ギーシュが認めた親友の願いだったから、
あの時と同じ様に、また彼を助ける事は出来なかったから、
せめてルイズだけは、彼の一番大切なものだけは守りたかった。
満足げな笑みを浮かべて艦を見送るギーシュに、兵士は心よりの敬礼で示した。

「あ、ちょっと待った! もし僕が逃げられなかったら
“実に勇敢な最期だった”って学院に居るモンモランシーに……」

嵐に紛れて遠ざかっていく軍艦にかけた声はもう届かない。
彼女に格好つけ損なったとギーシュはがっかりしたように肩を落とす。
そんな彼の周囲をトリステイン魔法学院の生徒達が取り囲む。
全員が志願兵としてアルビオンとの戦争に参加した連中だ。
恨みがましい目でギーシュを睨みつけると彼の襟を荒々しく掴む。
8ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:28:44 ID:qCzeh0IO
「どうして“ゼロ”だけ行かせたんだ!
上手く言えば俺達も乗せてもらえたかもしれないだろ!?」
「そうだ。いくらラ・ヴァリエールだからって特権を振りかざしていいものか!」

貴族として特権を振りかざす人間の言う事か、そう言おうとしてギーシュは口を噤んだ。
どうも悪友と付き合いだしてから口が悪くなったような気がする。
だが気分は悪くない。ああいう風に生きられるならどれほど楽だろうか。

「僕達にあの船に乗る権利はない」

神経を逆撫でると知っていてギーシュは平然と口にした。
激昂する彼等を見上げながら、それだけはどうしても譲れなかった。
ルイズを船に乗せたのは、彼女を守る為に残った才人の『権利』。
命も名誉も何も残らない戦いに望む、彼の当然の権利だ。
それを知っているからこそギーシュは船には乗らなかった。

鈍い音が響きギーシュの身体が投げ出された。
頬に走る痛みと熱。それを実感して初めて殴り飛ばされたのだと理解した。
拳を鳴らしながら志願兵達が倒れたギーシュへと詰め寄る。
その眼には憎悪の炎を灯し、まるで親の仇にでもあったかのような殺意を滾らせる。
否。正確には自分達の仇だろう。ギーシュが助かるかもしれない望みを断ち切ったのだから。

「てめえ、もしも逃げ遅れたら俺達は……」
「間に合うさ」

再び殴りかかろうと拳を振り上げる男を前に、ギーシュはさも当たり前のように呟いた。
彼だって命は惜しい。本当に危険なら我先に逃げ出していただろう。
だけど彼は知っていた。アルビオン軍は追いつかない。
七万だろうが百万だろうが、そんなのは関係ない。
走り出したアイツを止められる奴なんていやしない。

「アイツが“任せとけ”って言ったんだ、間に合うに決まってるさ」

なあ、そうだろう……才人。


ギーシュ・ド・グラモン
……タルブ戦後、すっかりやさぐれるものの、
モンモランシーの香水を巡り才人と決闘、前任と同様に彼を認めるようになる。
今ではすっかり気の合う悪友として無理やり遊びに付き合わせている。
サウスゴーダでは一番槍を果たし精霊勲章を授与される。
後に水精霊騎士隊の隊長に就任し数々の武功を立てる。
9ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:35:09 ID:qCzeh0IO
「これは何の真似だね?」

後甲板で作業監督をしていたボーウッドは訊ねた。
彼の周りには杖を向ける船員、その多くは魔法学院からの志願兵だ。
トリステイン軍が窮地に陥った事でアルビオンの兵達は裏切るのではないか、
もしかしたらこの船と船員を手土産にするつもりかもしれない、
そんな妄想に取り憑かれた彼等は暴発するように反乱という行動に移したのだ。
それはアルビオンの士官だったボーウッドが自分達の上官という耐え難い屈辱もあったのかもしれない。
いつアルビオン軍が襲ってくるかもしれない状況で新兵が冷静を保つのは困難だった。

杖を突きつけられているのに平然と振る舞うボーウッドに対し、
彼等の手は震え、杖の先端も定まらずに揺れ続ける。
呆れ顔でそれを見つめながらボーウッドは溜息混じりに聞き返す。

「それで? 私を殺した後は誰が指示を出す?」
「え?」

思わぬ問いかけに全員がお互いの顔を見合わせる。
そんな事、言われるまで考えもしなかったという表情を見せる。
ここにいるのは皆、操船経験のない素人の集まりにすぎない。
的確な指示を貰わなければ満足に船も動かせない。

「この中に近辺の岩礁の位置を把握している者は?
視界の利かない嵐の中で正確な航路を辿れる者はいるか?」

ボーウッドの言葉にざわめきが小波のように広がっていく。
元々、計画的な反乱ではない彼等に今後の見通しなどある筈もない。
うろたえる彼等を一通り見回した後、ボーウッドは大きく息を吸い込んだ。

「全員、直ちに所定の位置に戻らんかァ!
マリコルヌ、スティックス、貴様等は大砲と砲弾を外に運び出せ!
余分な荷物は全て破棄する! 可能な限り外の連中を艦に収容する!」

天を揺るがさんばかりの怒号に蜘蛛の子を散らすように船員は走り出した。
特に名指しで呼ばれた二人は青い顔をしながら慌てて作業に取り掛かる。
まさか、これだけの船員がいるのに一人一人の名前を憶えていたとは。
それに杖を向けられていながら揺るぎもしない豪胆さ。
ボーウッドとの格の違いを思い知らされ彼等は身震いした。

(……どうにも私には戦運がないようだな)
混迷の様相を呈する港を見下ろしながらボーウッドは一人ごちる。
圧倒的な軍勢を率いながらトリステイン王国に敗北し、
優勢なトリステイン側に付けば今度はアルビオン大陸から追い出される始末。
早々に隠居してしまった戦友を恨めしく思う。
元々アルビオンの軍人である彼にはこれ以上トリステイン王国の為に戦う義理はない。
タルブ戦での借りはアルビオン上陸戦で存分に果たしたと言っていい。
この混乱に紛れて姿を消したとしても誰も疑いはしないだろう。
どうするべきかと悩むボーウッドの耳に竜の羽ばたきが響く。
見上げた先にはアルビオン王国の紋章を掲げる竜騎士が数騎、
荒れ狂う暴風の中を隊列を乱すことなく飛び立っていった。

サー・ヘンリ・ボーウッド
……タルブ戦後、捕虜となりトリステイン軍に士官として従軍。
経験不足の新生トリステイン艦隊に協力し、アルビオン上陸戦において多大な貢献を果たす。
アルビオン撤退戦において脱出船団を先導して無事に帰還を成功させる。
その功績に免じ、アンリエッタ女王から軍役の終了を告げられ自由の身となる。
以降、軍を引退して幸せな余生を過ごす。
10ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:41:03 ID:qCzeh0IO
「隊長、これからどうされるおつもりですか」

飛礫の如く降り注ぐ雨音にも掻き消されぬように隊員が声を張り上げた。
多分、そのような質問をしたのは後にも先にもこれっきりだろう。
常ならば撤退するトリステイン艦隊を護衛するべきだ。
だがウェールズが存命しており、さらにはアルビオンの実権を取り戻したという報が彼等の心を乱した。
もし事実だとするならトリステイン王国に加担する理由などない。
彼等は誇り高きアルビオン王直属竜騎士隊、王に刃を向ける事は有り得ない。
夢にまで見た王国の復権、それを前にして平静でいられるはずもなかった。

「……それを決めるのは俺じゃない、お前達だ」

一際大きく羽ばたいて隊長の火竜はその場で滞空する。
静かに告げた言葉が激流にも似た嵐の中で透き通って響く。
振り返り、隊の全員を眺めながら彼は話を続けた。

「ウェールズ陛下の下に戻りたい者がいるなら止めはしない。
このままトリステイン王国に残るのもいいだろう、自分で決めろ」

彼の突然の言葉に隊員達は己が耳を疑った。
隊員達にとって正しいのは王と隊長の命令、それだけだった。
常に先陣を切って戦場を駆け抜ける彼の姿が灯台の光のように道を示してくれた。
しかし彼は自分で決めろと言った。隊長としてではなく戦友として。
戸惑いながらも一人の隊員が彼に聞き返した。

「隊長は……ウェールズ陛下が生き延びたとの話を信じていないのですか」
戦場で虚報が飛び交うのは当然の事であり生存説はその最たる物だ。
その多くは敵を混乱させる物であったり誤解から生じる物など様々だ。
その問いかけに隊長は歯を食いしばりながら答えた。

「出来るなら信じたい。何度もそうあって欲しいと願った。
トリステイン王国の霊廟で陛下の遺体を目にした後もな」

手綱を掴む隊長の手が震える。
アルビオンから生還し、絶望的ともいえるタルブ戦を潜り抜け、
そうして再会した物言わぬ主の姿を前に彼はどれだけ嘆いただろうか。
死んだと分かっていたとしても目の前に突きつけられた真実は重すぎた。
叶うならば持てる全てを犠牲にしてでも蘇って欲しいと願った。
かつてワルドが母親の遺骸の前でそう願ったように。
そしてアンリエッタがウェールズの亡骸の前で思ったように。

しばらくして二騎の火竜が大きく羽ばたいた。
火竜の見据える先は連合軍のいる港ではなくアルビオン軍のいる内陸。
他の隊員が困惑する中、隊長と二人は互いに敬礼を交わす。
それはここまで共に戦ってきた戦友との訣別を示していた。

「今まで御世話になりました隊長。御武運をとは言えませんがお達者で」
「ああ。さらばだ戦友」

次第に小さくなっていく二騎の火竜を彼は見つめる。
たとえ敵味方に別れようとも彼等は間違いなく戦友だ。
しかし、これから戦うべき相手に言う事ではないとあえて黙した。
そして残った連中へと振り返り再度訊ねた。
11ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:46:47 ID:qCzeh0IO
「それでお前達はどうする? 今ならまだ追いつけるぞ」
「ウェールズ陛下が生きているかどうかは分かりません。
ですが、陛下の下された最後の命令はまだ生きていると確信します」

笑みを浮かべて隊員の一人はそう答えた。
『アルビオンから脱出する船を護衛せよ』
あの時とは状況も意味も違うがトリステイン王国は紛れもなく同胞だ。
それを討たんとするウェールズの行動は命令を下した時とは真逆。
ならば己の内に存在する陛下の御心に従うべきだと彼等は判断した。
そうか、と満足げな笑みを浮かべた隊長が彼等と敬礼を交わす。
隊員達が港へ引き返そうと火竜を反転させる。
しかし続くと思われた隊長はまだその場に留まっていた。

「どうされたのですか? 何か騎竜に不調でも?」
「お前達は先に行け。俺はやる事が残っている」

そう言いながら彼は火竜を全力で駆けさせた。
誰が信じるだろうか、七万の大軍を相手に一人で殿を務める大馬鹿野郎の存在を。
もうとっくに殺されているかもしれないが、それでも彼は竜を飛ばす。
タルブの時の無念が心に染み付いていたからかもしれない。
遠ざかっていく隊員達の声を背に受けて彼は力強く答えた。

「英雄殿を迎えに行くんだよ!」

アルビオン王直属竜騎士隊
……王党派残党の脱出およびタルブ戦で大半が戦死。
生き残った内の2名は神聖アルビオン共和国へと下った事が判明、
隊長以下3名は追撃する先遣竜騎士隊と遭遇、
これと交戦した以降の消息は不明。


軍艦に群がる兵士達とは別に、港のやや離れた場所からそれを窺う一団があった。
誰もが厳つい風貌をし、野盗と見紛わんばかりの彼等はトリステインに雇われた傭兵達だった。
中でも彼等は一人一人がそれぞれの傭兵団を抱える頭目。
その彼等は船に乗り込もうとはせずに黙って成り行きを見届けている。
脱出が優先されるのは高級貴族、次いで中流貴族、下級貴族、正規兵、志願兵……、最後に傭兵だ。
どんなに慌てても順序が入れ替わる事はないだろう。
それを知っているからこそ傭兵達は動かないのだ。

「どうするよニコラ。このままじゃ俺ら皆殺しだぜ?」
「いっその事、あの船やっちまうか?」

だが危機が差し迫っている状況に変わりはない。
リーダー格の男に今後の相談を持ちかける中、
一人が出航の準備を続ける戦列艦を指差して銃の引き金を引く仕草をする。
それは空賊や海賊が好む、襲撃を意味するサイン。
乗せてもらえないのなら奪ってしまえばいい。
短絡的な行動かもしれないが傭兵達の中にはそれを副業とする者も多い。
手馴れた奴がいればたとえ正規兵だろうと混乱している相手に遅れは取らないだろう。
僅かに現実味を帯びた提案にニコラは静かに首を振った。

「やめとけ。港を出た所で沈められるのがオチだ。
仮に逃げられたとしても脱走兵を受け入れる所なんてありゃあしねえよ」

既に何隻かは出航しており船団を組む為に沿岸に待機しているはずだ。
上手く奪えたとしても素人が操船する軍艦なんざ鴨を撃つよりも容易く沈められる。
ニコラの返答に一同は大きく溜息を零した。
彼が無理と言った以上、それはどう足掻こうとも無理だと悟ったのだ。
しかし、すぐに別の者達が新たな提案を持ち出す。
12ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:50:46 ID:qCzeh0IO
「じゃあ、あっちの民間船はどうだ?
あれなら連中もそれほど目くじら立てたりしねえだろ」
「それよりも、いっそアルビオンの方に付かねえか?
適当な貴族を手土産にすりゃあ邪険にされねえと思うが」

彼等の提案を耳にしつつ、ニコラは思案に暮れた。
もし貴族や正規兵がいれば人道に悖ると反発しただろう。
だが彼等は傭兵であり、優先されるのは金銭と自分達の命だけだ。
名誉などという形のない物に執着する事はない。
いざとなれば雇い主さえ裏切って生き延びるに違いない。

悴む手に息を吐きかけながら視線を配らせる。
視界さえも遮る豪雨のせいか、自分達に注意を払う者はいない。
算段を巡らせるニコラの視界にふと何かが目に留まった。
それは一人の少年を取り囲む集団の姿。
罵るような大声が雨音に消される事なくここまで響く。
見覚えのある少年の姿、そして会話の内容を聞いてニコラは立ち上がった。
ざわめく仲間を無視して、つかつかと少年達に近付いていく。
歩み寄るニコラに、少年をリンチしていた集団の一人がなにやら叫ぶ。
恐らくは警告か何かのつもりだったのだろう、
その少年が迎える最期を察した傭兵達が合わせたように十字を切る。

直後、少年の顎に叩き込まれるニコラの拳。
血飛沫に混じって歯が何本か飛び散る。
泡を食って逃げ出す集団には目もくれず、
ニコラは暴行を受けていた少年に自分のコートを被せた。
やがて傭兵達の所に戻ると笑みを浮かべて告げた。

「いや、もっと良いアイデアがある。
アルビオンの連中をここで撃退しちまうのさ」

突然のニコラの発言に、傭兵達は戸惑いを隠しきれなかった。
敵は七万、傭兵達の数は多く見積もってもせいぜい数百。
どう足掻いたって勝てるとは到底思えない。
困惑する彼等を前に、雨風に負けぬよう声を張り上げてニコラは説明する。

「勝つ必要はねえ。追撃しても無駄だって連中に思わせればいい。
防塁を築く資材だって十分にあるし建物だって使える。
それに武器だってここには幾らでも揃ってるぜ」

くい、とニコラが顎で示した先には、
覚束ない足取りをした太っちょに運び出される大砲。
雨に濡れぬよう防塁越しに横一列に並べて砲撃すれば、
かつてニコラがギーシュに語った通り、それがたとえ大軍であろうと足は止められる。
しかし圧倒的な戦力差を前に動こうとする者は誰もいなかった。
どうしてそんな無謀な賭けに歴戦の戦士であるニコラが挑むのか、
彼等には何一つとして理解できなかった。
そして、ついに堪りかねた傭兵が声を上げた。
13ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:53:53 ID:qCzeh0IO
「無理に決まってるんだろ! 敵は七万だぞ!
そんな大軍相手に足止めなんて奇跡でも起きない限り……」
「奇跡なら起きただろ、あの時もよ」
「……タルブの戦いか!」

ニコラの言葉にハッと思い出したかのように傭兵達は顔を上げた。
このアルビオン戦に参加している傭兵の中にはタルブの戦いを経験した者も多かった。
正に奇跡というべき逆転劇を目の当たりしていた彼等に一筋の光明が差す。
それを眺めながらニコラは楽しげに話を続ける。

「そうだ。憶えているだろ、公の記録から消されちまった『ラ・ヴァリエール嬢の使い魔』。
そのたった一匹で大軍を蹴散らした怪物がよ、今度は七万相手に一騎駆けしてるんだとよ」

吹き荒ぶ嵐にも似たざわめきが傭兵達の間に広がっていく。
実際にその光景を目にした者も、また風聞でしか知らない者も、
また奇跡が起きるかもしれないと信じ始めていた。
全てを倒せなくとも統制を乱した相手ならば足止めも不可能ではない。

「上手くすりゃあ楽して大手柄だ。一生使い切れないぐらいの恩賞に与れるぜ」

親指と人差し指で輪を作りながらニコラはにやりと笑みを浮かべる。
その一言で傭兵達の腹は決まった。次々と自分の傭兵団へと指示を下していく。
せっせと作業に取り掛かる彼等を眺めながら、
ニコラは雨に濡れた自分の頭をがしがしと掻いた。
(まあ、嘘は言ってねえよな、嘘は)
たとえばラ・ヴァリエール嬢の使い魔が犬から人に代わってたとか、
そういうのは聞かれたら答えればいい事であって説明の必要はないだろう。
ガキの頃、神父に口酸っぱく『嘘だけはつくな』と叱られたので言いつけは守っている。
地獄に落ちると脅されても、これっぽっちも信じちゃいないが神父との約束だから仕方ねえ。
もちろん、神様も始祖も英雄も奇跡だって信じちゃいねえが。

「……大将、アンタの幸運に賭けてみよう」

平民の少女に助け起こされるギーシュを見つめながらニコラはそう呟いた。

ニコラ
……タルブ戦後、ギーシュの副官としてアルビオン戦役に参加。
戦闘経験のないギーシュを補佐し、彼にサウスゴータ一番槍を取らせる。
撤退戦では傭兵部隊を指揮し、アルビオン軍の追撃を押し留めるも包囲されて逃げ場を失う。
もはやこれまでと覚悟を決めて一人でも多く敵兵を道連れに……とは露ほども考えず直ちに降参。
鉱山で仲間に愚痴を聞かされながら強制労働に勤しむ。
14ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 12:59:12 ID:qCzeh0IO
民間船の中は足の踏み場もないほどすし詰め状態だった。
元々、軍港の大半を軍艦が占めていて数が少ない上に、
近くを通りがかった船も危険を察知して引き返している状況だ。
アンリエッタが民間船を買い取らねばこの船もすでに港から離れていただろう。
絶望的な状況に恨みがましい声や悲嘆に暮れる声があちこちで響く。
そんな彼等を勇気付けようと船員達が励まして回る。
「……なんでアルビオンに来るといつもこうなんだよ」
「ご安心ください。船長はかつてアルビオン軍の追撃からも逃れた事があるベテランで……」
それらの声を無視してシエスタはギーシュを船内へと運び込む。
狭い船内でありながら負傷者や病人を手当てする空間は辛うじて残されていた。
そこにいた医者にギーシュを診察してもらいながら彼女は尋ねた。

「才人さんは!? ミス・ヴァリエールはどうされたんですか!?」

ゆさゆさと彼の両肩を揺すりながら医師の制止も振り切って尋問する。
言わなければ殺されるかもしれない位の迫力に呻きながらギーシュは答えた。

「才人は殿を……。ルイズを避難させて欲しい、と僕に預けて…」
「そんな!?」

パッとシエスタが手を離した瞬間、ギーシュは床に後頭部を打ち付けた。
文句を言おうとしたギーシュを踏みつけてシエスタは駆ける。
しかし甲板へと出て行った彼女が目にしたのは遠ざかるアルビオンの港だった。
彼女がギーシュを運んだ後すぐに船は出航していたのだ。
もはや彼の下に向かいたくとも港に戻るすべはない。
泣き崩れるように彼女はその場に膝をついた。

「また、会えますよね……?」

シエスタの瞳から零れた大粒の涙が雨に混じって流れ落ちる。
ぎゅっと彼女はポケットにしまっていたお守りを握り締めた。
それはいつもシエスタが“彼”にかけていたブラシ。
ルイズが首輪を隠していたように彼女もまた思い出を守り通した。
あの日の別れを思い出しながら彼女は呟く。

「まだ、お別れを言っていないんですから……また会えますよね」

願いにも似た言葉は吹き荒ぶ嵐と雷鳴に消える。
一人戦場で剣を振るう少年に、その声が届く事はなかった……。

シエスタ
……“彼”に受けた恩を才人に返そうと優しく接するうちに愛が芽生える。
今ではルイズに張り合って才人を奪い合うような関係に発展している。

武器屋の親父
……逃亡中に路銀が底をつき、戦時中の稼ぎを見込んでアルビオンへ。
そこそこの売り上げが出たものの敗戦で売り物を捨てて逃げざるを得なくなった。

『マリー・ガラント』号船長
……トリステイン王国より得た恩賞を元手に新たな船を購入、
アルビオンとの連絡船として難民や行商人を運ぶ仕事に就く。
船名は今も『マリー・ガラント』号のまま。
15ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 13:01:03 ID:qCzeh0IO
714 :ゼロいぬっ!:2009/05/19(火) 21:23:45 ID:04CJGkrk
以上、投下したッ!
今回は99話中編です。
次回は学院に残った人達と才人の奮闘で綴る後編です。

――――――――――
代理の者

前スレを中途半端な状態で使い切ってしまいました
誘導もできませんでした

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:27:34 ID:NB2eTTgx
スレ建て&代理投下乙!ってか犬の人GJ!!!

とにかく登場人物みんなが素敵すぐる!
特にアルビオン王直属竜騎士隊のカッコ良さは異常
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:48:10 ID:lTuvC6Px
>>1と犬乙---------------------------------っ!!!!!

       ,,-'`ー、,   ,,;;ヽ、   
    /´,,;ゝニ,、 `'/彡ソソ\
       ;'ミ r、ノス_ト、〈 \// ,,、 ヽ)ノ、-、ヽ,¬
  ─、_,,_f 。'゙7' `゚ゝ )\ | 丶,l、)、ヽ//,. ‐-
  [}-'、_7ヘ 小、‐┤ |ノ \y´_\^/ミ//  '''
   | l'ヾ,ニ゙=、、 `二、    L/ ) l |ミl | :`、 _ ,
  ノ// ̄ ヽ,`、レl[| / l゚   ゙ヽノi |ミl ! :
  ( l ,    }ヘヾ`'  シ / 人人`┴〉',、 `
  〈 ヽ    ノ 〉l:|  く _゚_,rー、-、> [l_| :  _,
   、/   , ヽ}ムl」,,-‐/ ニ`ヽ \\_ ヽ 、
   l   ̄´ 〈 `'´     )´`三\ ` _) ̄ゝ `ー
               ̄´    ̄


      / ||      / | |               /_ ○
      /-┐       /─┐     ┼┐||    /_
       /          /     ││       
      /           /      _       \
        ||/       | | /    ─ /     \ /
          /         /     /       /
                            _____
       ___lヽ,、     , ー、 __,、ヾ   |>-―一 '|
     ぐ゙´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.⌒)   | //`|| |入ト,     | /:::::://|
      {//:.:.:._,-、,-、ヘ   >   人_ ノ    |-一'.|// |
      {/::,、,-'_) l  く及 /  ̄\|`ニ'|、    l _ |_,イ/|
     /:/l_.|. `イ _〉 く 〈 / :::::::::/| :::::::|ヾ   く `イ  ,イヾ\
      |:.:|、_.ト、  イ   |// ::::::::/.|:::::::! | l   ト   //|/Nノ、
    /´ ̄`ヽ _>'  〃 /  ::::::/  ト--.ヘ.    し イ / / _\
..  / へ___\`ヽ_/´ヽ :::::::/  / /  }   /  /_/ /   ̄\
 / / ̄`ヽ \ ミ イ \ ::::::l / | ヽ_ ノ ⌒/ |  // /  , -―-、ヽ
 | /:::::::::::::::::::!/ミ  ヾ::::::::::::::ノ   入_`ヽ、_/ / ̄/ / イ ヽ 〉 ノl |
 | {::::::::::::::::::/ ::::::,-< ̄ ̄ ̄  ニ   `ヽ__> ! /´   / >- `´ヽノ !
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 19:34:38 ID:ycsmu5VD
遅くなったけど犬の人GJでした!
代理投下の人も乙!

ここからどう収斂するかが楽しみ。
19S.H.I.Tな作者:2009/05/21(木) 20:07:32 ID:0pxcfZLB
犬の人、乙です!
そして、ようやく自宅へ帰ることができたので24話を投稿したいと思いますがよろしいでしょうか。
実は21〜23話は聖典(ジョジョ)と原典(ゼロ)が手元にない状態で書いたので、いろいろおかしいところがいっぱいです。
でも私は自分の失敗を見なかったことにするのは得意なので、気にせず続けたいと思いますです。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:22:20 ID:ycsmu5VD
うむ。支援。
21S.H.I.Tな作者:2009/05/21(木) 20:22:31 ID:0pxcfZLB
     |∧∧
     |・ω・)    ダレモイナイ...
     |⊂     S.H.I.T スルナラ イマノウチ...
     |

        (V)∧_∧(V)
         ヽ(・ω・)ノ  フォッフォッフォッ
          /  /
         ノ ̄ゝ

             (V)∧_∧(V)
              ヽ(   )ノ  フォッフォッフォッフォッフォッ
              /  /
          .......... ノ ̄ゝ
22S.H.I.Tな作者:2009/05/21(木) 20:23:20 ID:0pxcfZLB
あ、支援ありがとうございます。時間差11秒で、びっくらこきました
ではいきます
23S.H.I.Tな使い魔24:2009/05/21(木) 20:24:55 ID:0pxcfZLB
 服や小物、化粧品に下着etcetc。とかく女性の買い物は長いものである。
 あの後、キュルケがタバサのために服や化粧品を選んでやったり、下着を試着したキュルケが「ねぇ、これってぐっとくるかしら?」と康一に見せようとしてひと悶着あったりなどするうちに、康一が抱える荷物は山のようになっていった。
 気軽に「ぼくが持ちますよー」なんて言うんじゃなかった・・・
「ところで、あんたには他に欲しいものはないの?」
 自分たちの買い物を女性陣が一通り済ませた後、ルイズがふと思いついたように聞いた。
 山盛りの荷物を抱えたまま、康一はうーん・・・と悩んだ。そして「気軽に買えるようなものじゃないのは分かってるんだけど・・・」と断りを入れた。
「ぼくは・・・寝具が欲しいかなぁ〜。床で寝るのはちょっとつらかったりするんだよね。」
 こちらに来てから、基本的に床である。ギーシュにぼこぼこにされて唸っている間はベッドを使わせて貰っていたのだが、そういう例外を除いて基本的に犬は床らしい。
「ダーリン、床で寝させられていたの!?」
 キュルケが悲鳴をあげた。溜息まじりのあきれた視線をルイズに向ける。
「ルイズ。あなたねぇ・・・」
「う、うるさいわね。あれは罰よ!罰!だいたいわたしの部屋にベッドなんてひとつしかないんだから仕方ないじゃない!」
 ルイズがわたわたと手を振った。本当は今日から自分のベッドで寝させるつもりだった、などと口が裂けても言えない。
 キュルケが感極まったように康一を抱きしめた。
「かわいそうなダーリン!こんな血も涙もない女のところに居る必要なんかないわ。今夜からあたしのベッドで一緒に寝ましょう?」
 身長の高いキュルケに抱きしめられると、必然的に胸が顔の位置にくるのだった。うれしいし気持ちいいが、後ろめたいし恥ずかしい。
 康一は顔を真っ赤にしてもがもがと唸った。
「あんたがそういうことするから罰を与えないといけなくなるんでしょぉ―――!」
 顔を赤くしてもがく康一をルイズが引っぺがした。



 かくしてルイズの部屋である。
「うわぁ!ベッドだ!まともな寝床だよぉー!」
 康一はつい先ほど運び込まれた自分のベッドに飛び込んではしゃいだ。
 結局あの後、康一のためにベッドなどの寝具も買っていくことになったのだ。
 平民が使うベッドとしては標準的なものである。現代のベッドのようにスプリングなどがついているわけでもない。
 隣にあるルイズのベッドとは大きさもやわらかさも段違いなものではあったが、暖かな寝床というだけで康一は大満足だった。
 康一にはさすがに持ちきれなくなったので(康一「まさかベッドを担いで馬にのれっていうんじゃないだろうね!」)、馬車を手配して部屋まで運ばせることにしたのだ。
 帰ってからベッドを設置し、食事や入浴などをすませると、もうすっかり夜も更けていた。
 キュルケからの熱心なお誘いもあったのだが、康一は遠慮しておくことにした。
 自分には由花子さんという恋人がいる。ばれることは間違いなくないだろうが、そこはきちんとしておきたい。
 さらに言えば、キュルケに誘われて考えるそぶりを見せると、ルイズが途端に不機嫌になるからだ。
「おおげさねぇ。」
 ベッドにはしゃぐ康一にルイズはあきれて見せるが、実際には複雑な気持ちだった。
 『自分のベッドで寝させてあげる』という『ごほうび』をあげられなくなったからだ。
 思いのほかがっかりしている自分に、ルイズは気がつかないことにした。
 康一はベッドに寝転がったままで答えた。
「君も一度床で寝てみるといいよ。硬いし冷たいしで、寝られるもんじゃないんだから。」
「いやよ。そんなの。」
 ルイズはベッドの上にネグリジェ姿でぺたんと座ったまま康一の左手を見た。
「それより、あんたのルーンが光ったのって、いったいなんだったのかしら。」
 康一は左手の甲にあるルーンをみた。手元にあったデルフリンガーを引き寄せて構えると、淡く光りだすのが分かる。
 自分の皮膚がホタルよろしく光りだすのだから、康一としては不気味である。しかしいやな感じはしない。暖かいエネルギーがあふれてくるようだ。
「やっぱり、剣をもつと光るみたいだね。それになんだか・・・体に力が沸いてくる感じがする。」
 康一はデルフリンガーを鞘から抜くと、軽く振ってみた。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:25:33 ID:ycsmu5VD
意外ッ! それは支援ッ
25S.H.I.Tな使い魔24:2009/05/21(木) 20:25:38 ID:0pxcfZLB
 野球のバットを想像してもらいたい。一般人でも全力で振ると振り回されるあのバットですら、長さはだいたい80〜90cm。重さは900g強である。
 一方のデルフリンガーは全長150cm余りと、長剣というよりはグレートソードのカテゴリーである。重さだって少なくとも倍以上はあるのだ。
 本来、筋骨隆々の大男が力任せにぶん回すのがお似合いの大剣を、剣と大して身長の変わらない小柄な康一が軽々と振るうのは、かなり異様に見える。
「普段だったらこんな重い物振ったり出来ないよ。」
「それもそうよね。あんた、鍛えてる様にも見えないし。」
 そのルーンの特性かしら。とルイズは首をひねった。
「使い魔のルーンで、犬や猫が人間の言葉を理解できるようになったりする、というのは聞いたことがあるわ。でも、『武器をもったら強くなる』なんて聞いたことがないもの。」 
 自分の使い魔は常識はずれなことが多すぎるのだ。もうほかの使い魔を参考にすることすら馬鹿らしい。
 康一は枕元にデルフリンガーを置くと仰向けになった。
「明日君が授業に出てる間、いろいろ試してみるよ。『スタンド』に影響があるかどうか調べたいしね。」
「そうね。わかったらわたしに全部報告しなさいよ?」
 うん、わかったよ。と康一が目を閉じたまま言うので、ルイズも灯りを消して寝ることにする。
 瞳を閉じたまま、ルイズは小さな声で呼びかけた。
「ねぇ・・・」
 眠そうに康一は返事をした。
「なぁに?」
「あんたってすごく変わってるわね。」
「そうかなぁ。」
「変わってるわ。あんたみたいな使い魔みたことも聞いたこともないもの。」
「『スタンド』はともかく、ルーンのことはぼくもよくわからないよ?」
「そうね・・・」
 わたしもコーイチも普通じゃない。特にコーイチは。
「もしかして、あんたってすごいやつなのかしら。」
 返事はなかった。もう、すやすやと寝息が聞こえる。きっと疲れていたのだろう。
 あんたがすごい使い魔だとしたら、わたしはなんで『ゼロ』なんだろう。とは口に出さなかった。
 代わりに小さくつぶやいた。
「わたしもあんたに負けないようにがんばらなくちゃね。」




 翌日。ルイズが授業に出かけた後、康一は二本の剣を持って学院から少しはなれた人気のない広場にやってきた。
 ルイズはなんだかやる気満々で出かけていった。空回りしないといいんだけど。
「なあ相棒。こんなところで何をするつもりだい?」
 デルフリンガーが尋ねた。
 相棒、相棒と親しげに話しかけてくるので、康一とデルフリンガーは結構気安い仲になっていた。
「昨日光ったルーンを調べるんだよ。昨日言ってた『使い手』ってルーンのことなの?」
「そうさね。その左手のルーンが『使い手』の証だよ。」
 デルフリンガーを握る。ルーンが光を放つ。体が軽くなる。
 剣を軽く振ってみる。
 ヒュン!と風切り音がする。
 今度は思い切り振ってみた。
 「おわっ!」
 振りぬかれた剣に振り回され、体が泳ぐ。
 転びそうになって思わずたたらを踏んだ。
「重い感じはしないんだけどなぁ。」
 手の感触を確かめる。筋力は確かに強くなっている気がする。 
 デルフリンガーがからかう様に言う。
「相棒が軽すぎるのさね。ルーンは使い手の体重まで変えちゃくれないからな。」
「剣を振るのに体重が関係あるの?」
「そりゃああるさね。重心が体幹から遠くなると、とたんに扱いが難しくなるからね。」
 康一は感心した。
 人間だってこんなに詳しい人は居ない。たぶん。
「剣なのによくそんなこと知ってるなぁ。」
「まぁ6000年は生きてきたし、いろんなやつに使われてきたからね。」
「6000年!?」
 現代ではイエスキリストが生まれたのが2000年前。6000年といえばそれの3倍じゃないか!
 6000年という年月を自分の身に即して考えようとしたが、桁が違いすぎて実感がわかない。
26S.H.I.Tな使い魔24:2009/05/21(木) 20:26:25 ID:0pxcfZLB
「君って実は結構すごいわけ?」
「まぁね。」
 デルフリンガーも心なしか得意げである。
「まぁそれは置いておいて、つまりぼくじゃ君を使いこなせないわけだよね。」
「大丈夫さね。相棒はまだ成長期だろ?これから大きくなるって。」
「ぼく、これでももう17歳。もうすぐ18になるんだよね。」
 ちなみに高校の3年間で、身長はほとんど伸びていない。
「まだ若いじゃねぇか。これからまだまだ伸びるって。ところで、人間って何歳まで大きくなるんだっけか。50歳くらい?」
「50歳になるころにはぼくはもうおじさんだよね。」
「へぇ、そうだったっけか。」
 この自称6000歳、いまいち常識に欠けるらしい。
 しかしこのデルフリンガー。話を聞く限りすごそうな剣なのだが、もったいないことに自分には合わないのかもしれない。
「これなら、まだキュルケさんにもらったこの剣のほうがいいのかなぁ。」
 もう一本の剣を手に取った。
 比べてみると『シュペー卿の剣』のほうが、デルフリンガーよりは軽いようだ。長さも少し短い。ただ、格好よすぎて自分に不釣合いなのが問題だ。
「やめとけって相棒。そりゃあなまくらだよ。格好ばっかり気を使ってるが、造りがいいかげんだ。」
「ふぅん・・・」
 次に『スタンド』を出してみる。
 この『ルーン』はスタンドにも影響を与えるのだろうか。
「ACT3!」
 康一が呼ぶと、空中に白い人型の『スタンド』が姿を現した。 
「うわ!なんだいそいつは!」
 デルフリンガーが驚いたように言った。
「ぼくが出した『スタンド』だよ。ぼくは『スタンド使い』だからね。」
「そいつを相棒が作ったっていうのかい?」
「まぁ、そういうことになるのかな。」
「へぇー。今度の相棒は変わってらぁ。」
 表情がないのでわかりにくいが、感心しているらしい。
「6000年生きてきたのに、『スタンド』を見るのは初めてなんだね。」
「『ゴーレム』みたいだが、雰囲気は違うよな。先住でもないし。」
 やはりこちらの世界に『スタンド使い』はいないのだろう。
 何かヒントになることを知っていないかと思ったが、無駄骨だったらしい。
 でも、めげない。まずはこのルーンが『スタンド』に影響するのか調べないとッ!
「ところでデルフ。君って頑丈なんだよね?」
 シュペー卿の剣に持ちかえ、デルフリンガーを地面に置いた。
「まぁな。よっぽどのことがないと折れたりしないね。6000年も折れずにいるんだぜ?」
「それもそうだよね。それじゃ、ちょっと実験したいから感想を聞かせてくれるかな。」
「おう、まかせとけ!・・・・・・・え、実験?」
 自分の頑丈さに自信はある。しかしなぜか相棒の言葉に、嫌な予感がよぎった。
「ACT3の『3FREEZE』は物体を『重く』するんだよね。だからこのルーンがあったらどれくらい『重く』なるのか知りたいんだよ。」
「んー・・・よくわかんないけど、かまわねぇよ。」
 まぁたいしたことはないだろ。今までの6000年。殴ったり蹴ったりされたくらいじゃびくともしなかった。
「よーしそれじゃ・・・ACT3!この剣を重くしろ!」
「S.H.I.T!3FREEZE!」
 ACT3が妙な構えの後、拳を振り上げた。

「あ、やっぱちょっとm


    ズン!!!!

 

 一瞬でデルフリンガーが見えなくなった。




『デルフリンガー』−ACT3の超重力で地中深くまで沈み込んでしまい【再起不能】 
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:27:00 ID:ycsmu5VD
『支援』するッ
28S.H.I.Tな使い魔24:2009/05/21(木) 20:27:06 ID:0pxcfZLB
 
 
 
 
 なんてことに危うくなりそうだったので、康一は慌てて土を掘り下げ、デルフリンガーを回収した。
「壊れない自信はあったけど、まさか埋められるとは夢にも思わなかった!俺剣だから夢みないけど!!」
「ごめんごめん。まさかこんなに『スタンドパワー』が全開になってるとは思わなくてさぁ。」
 大騒ぎするデルフリンガーに康一は頭を下げた。
「それにしても、やっぱり『スタンド』もルーンの影響を受けるみたいだなぁ。」
 ACT3に調子を聞いたところ、
「最高ニ「ハイ!」ッテヤツデスネ。HELL YA!今ナラTRIPPING『キラークイーン』モ地球ノ裏側マデブッ飛バセソウデス!」
 とパンチやキックをして見せていた。スラングも増えている。相当テンションがあがっているようだ。
「最高にハイってやつ、かぁ。でもなぁ・・・」
 思わずため息が出る。
「なんだい相棒。うれしくないのかい?」
「うれしいけど、君みたいな馬鹿でかくて重いものを持たないといけないのはめんどうだなぁー、って。」
 この馬鹿でかい剣を売り払って小さなナイフでも買おうかなぁ、というとデルフリンガーは「そりゃないぜ相棒〜」と情けない声をあげた。
29S.H.I.Tな作者:2009/05/21(木) 20:28:28 ID:0pxcfZLB
以上になります。
まだ外堀を埋めていく段階が続きます。
ストックはあるので手直ししてまた投稿する予定です。
それでは失礼しました。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:28:41 ID:ycsmu5VD
支援。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:38:07 ID:JAnVPi5e
投下乙
スタンドパワーが上がってるがこれAct.1やAct.2だとどうなるんだろ?
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 20:40:29 ID:ycsmu5VD
投下乙。
そういえばスタンドに武器を持たせるというのは…誰かやってたっけ。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 21:00:23 ID:6OZUzjEj
銀戦車アヌビス二刀流、ねずみ狩りで銃弾や石を飛ばす、ピストルズは銃弾を利用するスタンド、キラークイーンの腹に搭載された猫草
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 21:51:50 ID:ycsmu5VD
うむ。そこらは一応知ってる。
スタンドが武器を持った場合でも、ガンダールヴのルーンは発動するのかという話だが。
まとめを読んでみるか…考えてみたら、まだ三分の一くらいしか見てないや。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 22:39:48 ID:fKJIeq20
>>ばれることは間違いなくないだろうが、そこはきちんとしておきたい。
アウトォーーーーー!!
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 22:57:47 ID:jUT3B6qW
ヒャア、とっくにばれてるんだぜコーイチ君!
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 12:56:55 ID:JyeWfvCu
康一君…
アァウトォォォーーッ!(命的な意味で。)
38S.H.I.Tな作者:2009/05/23(土) 20:47:55 ID:zvy9KtPK
毎度こんばんはです。
25話をこっそり投下したいのですが、よろしいでしょうか。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 20:54:16 ID:OGhsfadp
カモォーーン!
40S.H.I.Tな作者:2009/05/23(土) 20:54:43 ID:zvy9KtPK
ありがとうございます。それでは投下させていただきます。
41S.H.I.Tな使い魔25:2009/05/23(土) 20:56:43 ID:zvy9KtPK
 ゼロのルイズの使い魔。広瀬康一のハルケギニアでの一日は、桶に水を汲んでくることから始まる。
 水場で自分の顔を洗い、水を汲む。この水でルイズに顔を洗わせる。

 次はルイズを制服に着替えさせるわけだが、最近ルイズは康一に手伝うように要求してこなくなった。
 相変わらず背を向けて待つ康一から隠れるように、もぞもぞと着替える。何かの拍子に目が合うと、顔を赤くして怒る。
 以前は裸になっても恥ずかしがらなかったのに、謎である。

 朝食の頃合になると、康一はルイズからバスケットを受け取って外に出る。
 最近は内容がかなり豪勢になっている気がする。
 というか、ハルケギニアの朝食は総じて重いことが多いうえに、厨房のマルトー親父が「たくさん食べて大きくなれよ!」との愛をこめて、どんどん料理を豪勢にし、さらに肉をてんこ盛りにするので、康一はちょっとげんなりしてしまう。
 質素でもいい、母さんが作ってくれた味噌汁が恋しい。
 だから、食べきれない分は、最近仲良くなった他の使い魔たちに分けてあげることにしている。
 先日タバサやキュルケを乗せていた青い竜(風竜というらしい)と偶然会った際に食べきれない肉をあげたら、他の使い魔たちもわらわらと寄ってくるようになったのだ。
 最近の食事は、厨房の裏手にある使い魔たちのたまり場でとることも多い。

 授業の時間は、康一もルイズに付き添って出席することにしている。
 使い魔である康一は本来出てもしょうがないのだが、何気なく聞いているうちに面白くなってきたのだ。
 本来は勉強が好きではなかったのだが、こちらの世界のことを少しでも知りたいという『必要性』が康一の意欲を支えていた。
「もう床はいいから、椅子に座りなさいよ!」
 とルイズが言うので隣に座らせて貰っているが、他の生徒たちも何も言わない。
 ただ、キュルケがタバサを連れてやってきて、康一をルイズと挟む形で座ってしまうので、キュルケに恋する男たちの視線が背中に突き刺さるのが最近の悩みの種である。
 どうしても納まりきらない男が、康一に嫌味を言ってきたり、もっと直接的に侮辱してきたりすることもある。そういうときは、だいたいキュルケの合図で、フレイムがこんがりと焼いてくれる。
 ただ、キュルケが居ないときに、一度数人の貴族に囲まれたことがあった。
 「平民の癖に・・・」「ゼロの使い魔の分際で・・・」と詰る男たちの前に、かわりに立ちはだかってくれるものがいた。
 あの決闘で因縁のあったギーシュである。
 ギーシュは言った。
「ミスタ・コーイチは僕を相手に、立派に自らの実力を証明してみせた。その彼を平民と侮るなら、それは僕への侮辱と見なす!」
 文句があるなら「青銅」のギーシュが相手になるぞ!そういってギーシュが見栄を切ると、男たちは鼻白んで退散していった。
 所詮貴族相手に本気で対立するほどの覚悟はないのである。
 康一が礼を言うと、ギーシュは照れくさそうに鼻を掻いた。
「君はこの『青銅』のギーシュに打ち勝った男だからね。その君が馬鹿にされるのが我慢できないだけさ。」
 そして改めて、ルイズを皆の前で侮辱したことに謝罪した。
 潔い謝りっぷりに「なんだ。以外といいやつじゃあないか。」とその謝罪を受け入れた康一は、ギーシュとそれから機会のあるごとに話す仲になった。
 実は、あの鼻っ柱をへし折られた決闘の後、一気にカリスマ性を失ったギーシュを哀れに思ったモンモランシーが戻ってきてくれ、よりを戻したらしい。得なやつである。
 そんな風にしてギーシュといろんな話をしていると、ギーシュの友人達とも自然と仲良くなっていった。
 こうして、召喚されてから二週間もすると、康一の周りには常に人が集まるようになっていった。そして、康一の隣にはいつもルイズがいた。
 それまでいつも一人だったルイズである。急にクラスメイトたちで賑やかになった学校生活に、最初ルイズは戸惑い気味だった。
 しかし、みんなから好かれる康一と一緒にいると、わだかまりのあったクラスメイトたちとも自然と打ち解けることができた。
42S.H.I.Tな使い魔25:2009/05/23(土) 20:57:27 ID:zvy9KtPK

 こうして一日を終え、二人揃ってルイズの部屋で寝る前には、ベッドのうえでいろいろな話をするようになった。
 ルイズはハルケギニアのことを康一に教え、康一は杜王町のことをルイズに話した。
 話が由花子さんの段になると、ルイズはしかめ面をして、疑わしそうな目で見た。
「あんた、前から時々恋人がいる、恋人がいるって言ってたけど、まさか本当なわけ?」
 見栄張ってるんじゃないでしょうねー、と言わんばかりである。
「まさかって、まだぼくがうそついてるとか思ってたの〜!?」
 大仰に目をひん剥いてみせると、ルイズはなぜか目をそらした。
「・・・あんたの恋人ってどんな人?」
 康一は目を閉じて、由花子さんの顔を脳裏に描いた。
 すらっとした体型。整った鼻筋。きめの細かい肌。長く艶やかで、きらきらと光を放つ黒髪。そしてなによりも、あの強くまっすぐな瞳。
 由花子の容姿を話して聞かせると、ルイズはどんどん不機嫌になっていった。
「男より頭ひとつ分大きい彼女なんて、似合わないわ。」
 ルイズはそっぽを向いたまま、ネグリジェの裾をぎゅっと握り締めた。
「それをいうと、ぼくと付き合ってくれる女の人なんてほとんどいなくなっちゃうなぁ〜。」
 康一が笑うと、ルイズは口を尖らせた。
「別に・・・あんたより小さい女の子なんてそこら中にいるわよ。」
 それだけ言って毛布に包まった。
「そうかなぁ〜。」
 康一は知り合いの女性たちの身長を思い出してみたが、自分より低い人は思いつかなかった。
 こっちではタバサが自分より低いだろうが、あれは明らかに子どもだからノーカウントである。
 でもルイズがこうやって毛布を被るのは、これで話を打ち切りにするという合図だと分かってきた康一も、そろそろ寝ることにした。
 部屋の明かりを消す。
 明日あたりオールド・オスマンに会いに行ってみようかな。
 杜王町に帰る方法をそろそろ本格的に探してみよう。
 そう心に決めて、目を閉じる。

 静かになった部屋で、毛布から頭だけ出したルイズが、何か言いたげに見つめているような、そんな夢を見た。
43S.H.I.Tな作者:2009/05/23(土) 20:59:32 ID:zvy9KtPK
以上になります。
今回は日常編ということで少し短めになったりしました。
話は基本的に場面場面で切ってるのですが、話数ごとに長さが全然違ったりするので申し訳ない。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 21:06:02 ID:+8FuDc/u
投下乙
康一かなり美化して伝えてるなw
そりゃルックスはグンバツだが、性格の方は第五部や六部に出ても違和感ないのに
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 21:18:14 ID:8rzv/arG
投下0・2〜(お・つ〜)
由花子さんと出会った当初に比べればルイズとの出会いもインパクトが薄れてくるなw
46S.H.I.Tな作者:2009/05/23(土) 21:23:59 ID:zvy9KtPK
みなさん32巻で康一を拉致&調教しようとした由花子のイメージが強いみたいですね。
ただ37〜38巻のエピソード(シンデレラ編)を見る限り、由花子の『愛』も、
『私のための愛』から『康一くんのための愛』へと、かなりの進化を遂げていると感じました。
『愛は無敵』な傍若無人なところは変わってませんが、康一くんだけは自分よりも優先すべき存在として尊重していると。
なので康一くんから見るともう性格もほとんど欠点として写っていないという解釈ですね。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 22:52:55 ID:OGhsfadp
図らずも使い魔たちを餌付けしてるとか、これはキュルキュルフラグ立ったな
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/25(月) 22:46:20 ID:4QEOtHiu
すさまじく遅くて、あれなんだが
S.H.I.Tな使い魔GJ!!
この話につられてJOJO読み返してみたが、4部のキーパーソンは康一君で間違いないな
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/25(月) 23:24:55 ID:uLR3dYqP
4部の「影の主人公」って確かどこかで言われてたな
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 02:18:50 ID:cz7OBSOh
>>49
吉良との最終決戦でも最後に決めたからなぁ
「いいや限界だッ!押すねッ!」を止めたのは大きい
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 13:14:08 ID:aDKUSS29
>>50
あそこで間田がサーフィスの操りで止めていたら笑えたんだがw
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 13:17:40 ID:Y5HrNF+f
野暮な事言うようだが、露伴のヘブンズドアーの方が早かったんじゃなかろうか?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 19:08:06 ID:Q7kT8As1
承太郎がライフル弾を持ってたら一発だったな
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 19:49:06 ID:4g2IBjRt
そもそも重ちーが死んでなきゃ一方的にやられてたけどな、吉良
ハーヴェストつえーなぁ
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 22:16:02 ID:CXwUMlQS
チョコラータ先生って何気に超強いよね
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 23:23:28 ID:0RhKlc1Z
>>55
何気に感じたお前さんは一体どれほど鈍感なんだ。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/26(火) 23:49:06 ID:K+2G4Bd5
あの能力で破壊力Aなのはヤバ過ぎる
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 03:55:26 ID:gwrppZip
むしろ、あの能力だからこその破壊力A表記だな
接近戦はそんなに強くなさそうだったし
59S.H.I.Tな作者:2009/05/27(水) 10:28:14 ID:5zFFrKl6
おはようございます。
26話と27話を投稿したいのですが、よろしいでしょうか
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 10:39:55 ID:YTovF1qL
支援

>>58
破壊力って能力の事なのか直接殴ったときの攻撃力なのか曖昧な気がする
61S.H.I.Tな作者:2009/05/27(水) 10:47:22 ID:5zFFrKl6
ありがとうございます。それでは投下させていただきます
62S.H.I.Tな作者:2009/05/27(水) 10:48:03 ID:5zFFrKl6
「ごめんなさい。学院長は不在なんです。」
 3度目になる学院長室の前でミス・ロングビルは申し訳なさそうに教えてくれた。
 ルイズを授業に送り出した後、学院長を訪ねて来た康一だった。
 それもそうだよなぁー。学院長っていうからには相当急がしいんだろうし。
「それじゃあ、しょうがないですね。また今度来ます。」
「待ってくださいな。」
 退出しようとする康一を、ミス・ロングビルが引きとどめる。
「なにか相談したいことがあったのでは?たとえば・・・『スタンド』・・・のことですとか。」
 なんでこの人が『スタンド』のことを知ってるんだァー!?
「ななな、なんでそのことを!?」
 正直動揺した。やはり『スタンド』のことが広まってしまうのはまずい気がする。
「隠さなくても結構ですわ。実はこっそり聞き耳を立ててましたの。」
 口を手で隠して、ごめんなさいね、と笑う。
 まいったなぁ・・・。康一は頭を掻いた。こうしれっと言われると追求しようがない。
 まぁオールド・オスマンの秘書なんだから悪い人ではないだろう。
「しょうがないなぁー。いや、実はぼくの故郷のことについて何か分かったことがないか聞きにきたんですよ。」
 ミス・ロングビルはしばらく考えていたようだが、やがて首を横に振った。
「そのような話は伺っていませんわ。でもオールド・オスマンだけでなく、ミスタ・コルベールも文献などを漁っておられるようですから、そのうちきっと見つかりますわよ。」
「そうですか・・・」
 やはり杜王町に帰るのはまだまだ先のことになりそうだ。というよりも、帰ることができるのだろうか。
 康一は肩を落とした。
 がっかりした様子の康一を不憫に思ったのかもしれない。
 ミス・ロングビルはちょうど休憩するところだったから、と康一をお茶に誘った。


 ミス・ロングビルに薦められて、康一は応接用の椅子に座った。
 ここに座るのは3度目だが、そのとき向かいに座っているのはオールド・オスマンやミスタ・コルベールだった。
 今はミス・ロングビルが座り、淹れたての紅茶を出してくれる。
 綺麗な人である。おしとやかな物腰だが、どことなく影があって、キュルケとはまた違う意味で大人の女性という感じがする。
 最近美人に縁があるなぁ。と思う。
 由花子さんと知り合う前なら、多分もっと舞い上がっていただろう。
 ティーカップに手を伸ばす。立ち上る湯気からは紅茶の華やかな香りがした。お茶に詳しくはないが、きっといい茶葉を使っているのだろう。
「そういえば、故郷のことを聞きにいらしたんですよね?」
「ええ・・・まぁ。」
 ミス・ロングビルと目が合った。
「故郷に、帰りたいですか?」
「・・・ぼくを待ってる人がいるんです。いきなりいなくなったからきっと心配してます。」
「恋人かしら?」
 冗談めかして笑うロングビルに康一は頷いた。
「まぁ、恋人もそうですね。でも、家族や友人も。」
「そう・・・。大切な場所なんですね・・・。」
 ロングビルは康一を見つめた。
 いや・・・。康一は思った。
 彼女はぼくを通してどこか遠くを見ているような気がする。
「でもロングビルさんにも故郷があるでしょう?」
 ミス・ロングビルは一瞬だけ胸を突かれたような顔をした。
「・・・・いえ。私の故郷はもうないんです。ですからあなたが少しだけうらやましいですわ。」
 少しだけ寂しげに笑った。ティーカップを静かに傾ける。
 故郷がない?彼女の故郷には何かがあったのだろうか。
 しかし聞いていいものかも分からない。康一は黙り込んだ。
 康一の困惑を察したのだろう。ミス・ロングビルは明るい声で言った。
「でも、大切な場所は今でもありますわ。いつどこで何をしていても、心はそこに置いている。そんな場所です。」
 康一は心から嬉しそうに笑った。 
「よかったぁ〜。帰る場所がないなんて寂しすぎますもんね!」
 ロングビルはふっと息を吐いて、微笑んだ。
 そして、ソーサーをもつ康一の左手を見た。
「そのルーンのこと、ご存知ですか?」
 康一はティーカップをテーブルに置いた。
「いえ、よくは知らないんですが。なんだか変なルーンなんです。武器を持つと光ったりして・・・」
 康一は自分が経験したことを話した。武器を握ったらルーンが光りだして体が軽くなったこと。『スタンド』のパワーも上昇したこと。
63S.H.I.Tな作者:2009/05/27(水) 10:49:47 ID:5zFFrKl6
おっと、>>62の名前欄は
S.H.I.Tな使い魔26
です
64S.H.I.Tな使い魔26:2009/05/27(水) 10:50:45 ID:5zFFrKl6
「『スタンド』というのも不思議な能力ですね。魔法とは違うのですか?」
「ええ、多分。・・・まぁ、実は自分でも『スタンド』が何なのか良く分かってないんですけどね。」 
 超能力、としか言いようがない。こっちの『魔法』は多分系統だった研究がされているのだろうが。
「『スタンド』のことは分かりませんけど、その『ルーン』のことは少し分かりますわ。『ガンダールヴ』と読むそうです。」
 ミス・ロングビルは説明した。
 ガンダールヴとは、ハルケギニアに系統魔法を伝えた虚無魔法の使い手『始祖』ブリミルの使い魔の一人である。
 <<神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。>>という歌が残されているという。
 そして康一の左手に刻まれているのはそのガンダールヴのルーンと非常に似ているらしい。
「『始祖』ブリミルってここでは神様みたいに言われてる人ですよね。ぼくがその使い魔?」
 実感がわかない。というか、自分に関係ある話とは到底思えない。
「ええ。ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。私たちメイジの始祖。そして彼の使い魔『ガンダールヴ』は歌にあるように武器を扱うのに長けているといいますわ。その『ルーン』の効果と合致するんじゃありません?」
「じゃあ、ぼくを召喚したルイズが『虚無』の使い手ってことですか?」
「さぁ・・・さすがにそれは信じがたいのですが・・・」
 ルイズは俗に言うと『落ちこぼれ』である。神聖視されている『始祖』と同列に扱うのは抵抗があるのだろう。
 康一は考えたが、正直話が大きすぎてよく分からなかった。
「このことはルイズには黙ってたほうがいいですね。」
「ええ。オールド・オスマンもミス・ヴァリエールがこれを知ったら変に気負うのではないかと心配していましたわ。」
 そして、「本当はコーイチさんにも言わないつもりだったみたいです。だから私が話してしまったのは内緒ですよ?」と片目を閉じた。


 学院長室を退室したあと、康一は学院の廊下を歩きながら考えた。
 あの話は本当のことだろうか。もしかしてからかわれたのではないだろうか。
 ここ数年非日常的な生活を送ってきた康一にしても、短期間にあまりにいろいろなことが起こりすぎていた。
 明日になれば、杜王町の自分の部屋で目がさめるのでは、とまで考える。
 
 でも、このルーンが『ガンダールヴ』だったとして、なぜぼくがそんな大層なものに選ばれたんだろう。
「呼び出されたのが承太郎さんみたいな人だったら誰だって納得するんだろうけどなぁ。」
65S.H.I.Tな使い魔26:2009/05/27(水) 10:51:27 ID:5zFFrKl6
 


 夜。
 ハルケギニアの双月が照らす薄闇の世界。
 学院の本塔の壁に垂直に立つ人影があった。
 足の裏で外壁に張り付き、垂直のまましゃがみこむと、コツコツと壁を叩く。
「さすがは噂に名高い魔法学院。壁の厚さも並じゃないわねぇ。」
 夜風になびく、長い長い髪。
 彼女は、二つ名を『土くれのフーケ』。ハルケギニアにおいて、大胆不敵な犯行で名の知れた盗賊である。
 しかし、警備の厚い貴族の屋敷は狙っても、盗みやすいであろう平民の家を襲うことはないので、一部平民からは『義賊』と呼ばれて密かに人気が高い。
 そんな彼女が今狙っているのは、魔法学院の宝物庫に眠るという『弓と矢』である。
 弓矢は魔法という強力な戦力があるハルケギニアでは大した価値はない。だが以前オスマンがぽろりと漏らした、『弓と矢』の『言い伝え』に興味を引かれたのだ。
 酒場に行けば掃いて捨てるほどある、くだらない与太話の一つのように思えるその『言い伝え』。
 だが、魔法王国トリステインで、『賢者』と目されるオールド・オスマンと彼の学院がそれを宝物庫にしまいこんでいることが、信憑性を裏打ちしていた。
「あのハゲ。この壁は物理衝撃には弱いだなんてよく言えたもんだ。」
 フーケは計画もなしに盗みに入るような盗みはしない。事前に情報を集め、弱点を見極め、そこを一気につく。
 だから今まで捕まらずにこれたのだ。
 この魔法学院への盗みも、鉄壁といわれている魔法学院の宝物庫の弱点を探すため、内部に潜入してもうどれくらいになるだろうか。
 ジジイに尻を触られながらもお宝のために耐えてきた。
 そしてようやく、教師の一人からこの宝物庫唯一の弱点を聞き出したのだ。
 だというのに、唯一の弱点のはずの物理的衝撃に対する耐久性すら、王宮の城壁並みなのだ。
 自分の力を全力でぶつけても破れるかどうか・・・。
 だが、錬金などといった他の手段で破るのは不可能だ。
「できるかどうか分からないとしても、やるしかないね。」
 セクハラに耐えるのも我慢の限界だ。 
 フーケは詠唱と共に杖を振るった。
 眼下の地面が集まり、盛り上がる。みるみるフーケのいる宝物庫外壁の高さまで大きくなったときには、巨人のような人型の土人形ができあがっていた。
 土人形――ゴーレムの肩に飛び乗る。牛も軽く握りつぶせそうな大きさの拳を鋼鉄に錬金した。
「さぁ、伝説の『弓と矢』。この『土くれ』のフーケがいただくとしようかね!!」
66S.H.I.Tな使い魔27:2009/05/27(水) 10:52:13 ID:5zFFrKl6
 ルイズは元々勤勉な学生だった。
 やんごとなき大貴族ヴァリエール家の三女。期待もされた。期待に答えたいとも思った。
 だからルイズは基本的に努力家である。
 そんなルイズの努力は、決して実ることがなかった。
 一度は絶望し、諦めかけたこともあった。
 しかし今、ルイズは再び燃えている。焦りではない。まるで小さな頃、初めて自分の杖を手にしたときのような、希望と情熱が彼女の胸に灯っている。
 すっかり夜も更けてしまった学院外の草原で、一向に成功する気配をも見せないコモンルーンに挑戦している。
 だから、彼女がこの夜、あの場所で起こったことを見つけたのは決して偶然ではなく、小さなご主人様の隣に、同じくらい小さな使い魔の少年がランタンを持って立っていたのも、また偶然ではない。

「ふわあああぁぁぁ・・・」
 暗闇の中、地面に座り込んだ少年が大きなあくびをした。
「ねぇ・・・もうそろそろ寝ようよぉ」
 康一は試しにご主人様にお願いしてみた。
「だめよ。まだ今日のぶんが済んでないもの。」
 ルイズは使い魔の懇願を振り向きもせずに却下した。
 小石が真鍮になるイメージを浮かべる。ゆっくりと呪文を唱える。母親が子どもに絵本を読み聞かせるように。正確に。確実に。そして、数歩先の小石に向けて杖を振った。

 ボンッ!

 一瞬白い光を放ち、小石が爆発した。
 爆風に巻き上げられた砂がぱらぱらと落ちる。
 魔力を抑えているので、大した被害にはならないのだが。
「し、失敗ね。それじゃあ今度は抑揚を変えてやってみるわ。」
 まだまだやる気のルイズに、哀れな使い魔は溜息をついた。
 連日この調子である。
『100回失敗したら10000回練習するわ。10000回失敗したら100万回練習すればいいわ!』
 ルイズはもう一度自分を信じることにしたのだ。この努力は無駄ではない。
 きっといつか私にもコーイチに起こったような「運命」がやってくる。わたしがみんなに認められるようになる。そのときのために。
 しかし、その結果残されたのはおびただしい数の爆発と爆音とクレーターである。
 真夜中だろうとボンボン爆発させているので、ついに教師から学院の外で練習するようにと言われて追い出された。
 それでもルイズはあきらめない。このくらいで諦めたらいつか「運命」がやってきたときに申し訳が立たないわ。なんて、よく分からないことを言っている。
 そして康一は泣き言をいいながらも、なんだかんだで毎夜ルイズの練習に付き合っているのだった。
 特にやることもないので、ぼーっとルイズを見ている。
 よく意外に思われるが、康一はコツコツ努力を積み重ねていくタイプでもない。剣の練習もあれからそんなにしていなかった。
 デルフリンガーは、自分の大きさに比べて相棒が小さすぎることに危機感を覚えたのか、最近は「食べろ!食べてでっかくなれ!」と事あるごとに言っている。
 それがうるさいので、今は剣を持ってきていない。
「食べて横に大きくなってもしょうがないだろーに。」と思う。
67S.H.I.Tな使い魔27:2009/05/27(水) 10:52:54 ID:5zFFrKl6

 ふと何か違和感を感じた。
 妙な音がするわけでもない。ルイズは疲れてへろへろだが特に変わった様子もない。 
 そして気づいた。ここから遠目に見える学院の、中央塔のあたりで何かがうごめいている。
 しかし縮尺がおかしい。中央本塔は相当な高さのはずだ。それと比べるなら、『それ』は10m以上の高さがある。
「ね、ねぇ。あれ、何?」
 康一が指を指すと、ルイズが肩で息をしながら不審げに振り向いた。
「なによ・・・。今いっぱいいっぱいなんだから話しかけないで・・・って、なにあれ。」
 ようやくルイズも気づいたらしい。
「ゴーレム・・・かしら。でもなんでこんな時間に、あんなところで?」
 そこでハッと気がついた。
「まさか、賊!?」
「賊って、泥棒ってこと?」
「きっとそうよ!最近このあたりを、『土くれ』のフーケっていう土のメイジがが荒らして回ってるって聞いたわ!」
 きた!と思った。
 あれがわたしの「運命」だわ!
 あれに気づいているのはまだきっと自分達だけ。フーケをわたしが見つけたんだわ!
 フーケを捕らえれば、大手柄だ。千載一遇のチャンスが転がり込んできた!
 思わす走り出したが、ちょうどルイズは消耗しきってふらふらのところだった。
 足が絡まり、躓いて危うく倒れそうなところを康一が支える。
「急に走ったら危ないよ!肩を貸してあげるから捕まって!」
 思いがけず胸に飛び込んでしまったルイズは慌てて康一を突き放そうとした。
「あ、汗かいてるから・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
 康一はルイズの腋に肩を入れ、腰に手を回してルイズを支えた。
 もうルイズは康一に体を預けるしかない。
 康一はあわあわと動揺するルイズを連れて、学院に向かった。



 見上げるほどの巨大なゴーレムがゆっくりと拳を振り上げ、全体重をかけて壁に打ち付ける。
 ゴン!
 と小さな音がする。普通なら爆音といっていいほどの衝撃音がするはずだが、それがほとんどしない。
 フーケがゴーレムの操作と平行して、『サイレント』をかけているのだ。
 盗賊として経験を積んでいるフーケにしてみれば、そう難しいことではない。
「それにしても、硬いッたらないね!」
 フーケは先ほど殴りつけた壁に顔を寄せると舌打ちした。
 もう自慢のゴーレムで10回は殴りつけているというのに、傷がつく様子すらほとんどない。
 巡回はないはずだ。ここのメイジ共は平和ボケしていて当番をサボるのが当然になっているのは事前に調べがついている。
 だからそうそう気づかれない自信はあるが、あまり時間をかけたくはない。
「せめて、ヒビでも入ってくれればそこから崩せるんだけどねぇ。」
 後5分は挑戦してみよう。フーケは殴りつけるのを再開するため、ゴーレムの肩口に飛んだ。
 ちょうどそのタイミング。
 フーケが先ほどまでいた場所が突然爆発した。
「何っ!?」
 もう見つかったというのだろうか。慌ててあたりを見回すと、ゴーレムの足元に誰かがいる。
 あれは・・・ルイズ・フランソワーズと、彼女に捕まった平民の使い魔、コーイチだ。
「何でこんなところにあいつらがいるんだい!」
 壁はやぶれそうにない。しかも人に見つかってしまった。
 目撃者を消せば多少の時間は稼げる。しかし、落ちこぼれのルイズはともかく、コーイチの実力は未知数だ。できるだけ相手をしたくはない。
 それに、コーイチは貴族に使役されているだけの気のいい少年だった。彼を殺したくはない。
「コーイチ・・・。なんでよりによってあんたなんだい!」
 逃げたいところだが、一度失敗すれば警備は強化されるだろう。多分こんなチャンスはもうめぐってこない。
 今まで掃ってきた労力と自分の身の安全を天秤にかける。
 天秤は、自分の身の安全に傾いた。
 口惜しいが逃げるしかない。
 だがしかし、そこでフーケは気づいた。
 先ほど爆発(恐らくルイズの失敗魔法だろう)が起こった場所から放射状にヒビが入っている。
 どういう理屈だかはわからない。しかしこれぞまさしく天の助け!
 フーケは覚悟を決めた。
68S.H.I.Tな作者:2009/05/27(水) 10:53:41 ID:5zFFrKl6
以上になります。
お目汚し失礼しました〜
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 11:08:23 ID:YTovF1qL
いいや限界だ投下乙するね!

本当に康一君は愛されボーイだな
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 13:20:09 ID:vXsKSGsJ
乙!
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 14:31:46 ID:gwrppZip
GJ!!
康一君に悪感情を抱ける奴なんてめったにいないよなあ、吉良位だろうか
まあ、悪感情でなくても愛とか興味とかで酷い目に遭うんだがw
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 14:58:50 ID:+FUcc52Q
G.O.O.D!

矢と弓ということはスタンド使い増殖の予感なんだろうか
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 15:32:44 ID:fZJSvzWH
オリジナルのスタンドは出さないとか言ってなかった?
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 01:04:30 ID:1MSpvr26
重ちーはすでに来てたっけ?
あいつなら最初に言われる使い魔の役割を完璧にこなせると思う(薬草とか取ってくるやつ)

下手すると自力で生活していけそうだな。ハーベストはとてつもなく便利でゼロ魔にきたらイージーモードになりかねない
爆死直後なら黄金の精神がばりばりだし
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 08:57:19 ID:neBPUQ0b
しげちーは一発ネタかなにかで召喚されてたな
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 13:28:59 ID:E4V+RVXl
シゲチーならアンドバリの指輪も一発で奪還できるな
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 15:20:33 ID:1L5VrmFm
いや流石に無理だろ
どこにあるか判らないんだし、探すべき広さが街レベルじゃなくて複数の国に跨るレベルだから
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 16:05:30 ID:4HiQhNxU
重ちーの弱点は防御力の低さだな
身体能力も肥満体でチビだし康一以下だろう
まあそれも圧倒的数による先制攻撃で食らう前に倒せるから
弱点にすらならないが
不意打ちされるときついな
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 16:52:14 ID:zY5mbhgB
先に攻撃されると防ぎようがないのは群体スタンド共通の欠点だな
(殺傷力はあるけど個々のパワーはかなり低いし)
接近戦タイプのスタンドでも10mくらい離れて石とか投げれば楽に勝てるんじゃね?
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 20:30:20 ID:4HiQhNxU
>>79
あの能力と射程距離と数じゃ
先に発見されるから
近距離距離タイプが先制とれるのはまず無い
よっぽど気の緩んだ日常での暗殺ならそれでOK
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 21:04:45 ID:zY5mbhgB
他には防御力が高い一体型(節制・ホワルバ)が天敵か
下手に近づくとまとめて喰われるもしくは凍らされる
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 22:01:00 ID:QRwLb3Pq
トト神の本ってスタンドなのか?
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 23:55:35 ID:vudvxsHB
本自体がスタンドなのか白紙の本にスタンド能力で漫画が出てくるのかわからんな
ただスタンドだったとしても個人的には勝手に漫画がでてくるあたり自動操縦系っぽいから本破っても本体に影響なさそうな気がする
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/29(金) 11:53:31 ID:6pDRMBt9
本だけ召喚でボインゴ涙目

にはならないのか
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/29(金) 12:30:01 ID:O+vKr+fl
というかエンペラーの弾丸にブチ抜かれてなかったっけ?
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/29(金) 18:51:43 ID:glvQTeyM
明記されてるルールじゃないが、物質一体型のスタンドはフィードバックが無い。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/30(土) 01:27:34 ID:WoXNvRLR
>>85
そーいやそうだったな、忘れてたわw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/30(土) 17:11:47 ID:9zwse4OS
ジョセフを呼んだ人帰ってこないかなぁ
G,Eレクイエムが出てきたところで終わってるからすげーもやもやするぜ
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 14:09:43 ID:Gyf3hlst
今ゼロ魔の原作を読んでるが、清々しい程にワルド出番ないね…
このスレの職人さんからはイジられたり、格好良く書かれたりと、色々愛されていると言うのに
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 14:12:57 ID:ZMRIe2/h
ワルドはマチルダさんと平穏な家庭を築いて田舎でほそぼそと暮らしてるよ。それでいいじゃないか
91S.H.I.Tな作者:2009/05/31(日) 15:25:28 ID:KJo4Im7A
どーもー。
旅先で書いた28話と29話を投下したいのですが、お許しいただけますでしょうか。
92S.H.I.Tな作者:2009/05/31(日) 15:43:17 ID:KJo4Im7A
よーし、誰もいないみたいなんで。こっそりいきまーす
93S.H.I.Tな使い魔28:2009/05/31(日) 15:44:24 ID:KJo4Im7A
「失敗したわ!!」
 ルイズは歯噛みした。
 フーケはこちらに気づいていなかった。めずらしく魔法も狙ったところで爆発した。
 それなのにまるで攻撃が分かっていたかのようにゴーレムの上に逃げられてしまった!
「ね、ねぇ。いきなり攻撃してよかったの?」
 康一が間の抜けたことを言う、
「何言ってるのよ!あんな怪しすぎる奴敵に決まってるじゃない!貴族の基本は見敵必殺よ!敵を見つけたんだから後は必ず殺す番ね!」
「そこはかとなく危険思想な気がするけど・・・」
 しかし、放っておくわけにもいかなそうだ。
 ゴーレムは自分達を無視するかのように、再び壁に拳を叩きつけた。
 ついに壁に大穴が開いて、中の様子が垣間見える。
 その穴にフーケが飛び込んだ。フードを被っているので顔はよく見えない。
「あそこって・・・宝物庫!?やっぱり宝物を盗むつもりだわ!コーイチ!フーケを捕まえて!!」
 ルイズがその間もファイアーボールの呪文を唱えて杖を振る。
 見当はずれの場所がボンボコボンボコ爆発した。
「わかったから、『スタンド』には当てないでよね!」
 ACT2を出して、フーケが飛び込んだ穴に飛ばす。
 フーケのいる部屋までは大体20m!十分射程圏内だ!
 いた!フーケは部屋の中で何かを物色しているようだ。
「そこまでだあッ!!」
 『バグォオオオン!!』の尻尾文字を作り投げつける。 
 しかし尻尾文字が穴に飛び込もうとした瞬間、土の壁が穴をあっという間に覆い隠してしまう。
 尻尾文字は土の壁に阻まれて爆音をあげる。
「そんなぁ!!」
 ACT2は土の壁に張り付いたが、これを破るだけのパワーはACT2にはない。
「コーイチ!!」
 ルイズの悲鳴でハッと我に返った。
 土のゴーレムが足を飛ばしてルイズと康一を踏み潰そうとしている。
「うわぁぁー!!」 
 二人が這うようにしてそこから逃げだした。すぐ後に、小屋くらいの大きさの足の裏がズゥウウウンと地響きを立てて踏み降ろされた。
「こ、こんなのに潰されたらひとたまりもないぞッ!」
 本体を叩いている場合じゃない。まずはこのゴーレムをなんとかしないと!
「こいつを止めろ!ACT3!!」
 今度はACT3を出す。3FREEZEをゴーレムの足に叩きつけた。しかし・・・
「な、なんだってぇー!?」
 エコーズが重く出来るのは一度に一つである。ゴーレムへの3FREEZEの効果は、ゴーレムの足の一塊の土を重くするだけにとどまっていた。
 重くなった土が剥がれ落ちるが、ゴーレムは周りの土を集めてすぐに再生してしまう。
「ぜ、全然効かないよぉーーーー!」 
 康一は悲鳴をあげた。
「ちょっと!なにやってんのよ!!」
 ルイズが怒鳴る。
「だって、こんな土でできたゴーレムなんて、相性が悪すぎるよ!!」
 ゴーレムには聴覚もないし感覚もない。だからACT1や2の攻撃も意味がない。ACT3で重くするのも意味がない。
 ACT3で殴り合えというのか!このちょっとしたビルほどもある、馬鹿でかいゴーレムと!!
 ゴーレムの地を這うようなこぶしが襲い掛かってくる。
 いや、試しに殴り合ってみようか。ひょっとして『3FREEZE』ならあの拳を止められるのではないだろうか、
 ゴウッ!という風圧が迫る。ダムの放流現場に近づいたときのような、莫大な質量がもたらす圧倒的存在感!
「やっぱ無理ッ!!」
 転がるようにして避ける。スタンドとの戦いの経験はあるが、こんな化け物とやったことはない。
「もうっ!!がんばりなさいよっ!!」
 一方のルイズは康一よりもさらに遠くから杖を振りまくっている。ゴーレムのあちこちが爆発するが、表面の土を巻き上げるだけだ。
「どうしろっていうんだッ!!」
 康一が怒鳴り返した。
94S.H.I.Tな使い魔28:2009/05/31(日) 15:45:05 ID:KJo4Im7A
 
 
 フーケは宝物庫の中に入ると、まっすぐに右奥を目指した。
 「弓と矢」のありかは分かっている。以前オールド・オスマンの付き添いで、宝物庫の整理をしたことがあるからだ。
 大きな木箱に、鉄製の鍵がかかっている。『固定化』の呪文がかけられていたが、フーケが『錬金』であっという間に土くれにしてしまう。
「ふふっ、ようやく手に入れたわ。」
 フーケは箱を開けると、中にある『弓と矢』を取り出した。
 そんなに変わったものにはみえない。ただ鏃だけは凝った作りになっており、石とも金属ともいえない、不思議な輝きを放っていた。
 

「フーケが逃げるわ!!」
 宝物庫から飛び出してきたフーケが、ゴーレムの肩口に飛び乗る。
 ゴーレムはゆっくりと向きを変え、塔から離れていく。
 動作そのものはスローに見えるが、縮尺が大きいので移動速度はかなりのものである。
「逃がさないぞッ!」
 外に出てきたなら、ACT2で攻撃できる!
 しかし、追跡しようとしたところで、ゴーレムが離れ際に何かを投げてきたのが見える。
 石、だろうか。
 いや近づくにつれ、どんどんとでかくなる。岩・・・?
 違う!これは、ゴーレムの拳についていた、巨大な鉄の塊ッ!!!
 ルイズに向かって落ちてくるが、ルイズは追いかけるのに夢中で気がついていない!
「ルイズ!!」
 走っても間に合わない!

ドゴォオオン!!!

 鉄塊が地響きを立てて激突した。
 あたりに土ぼこりが立ち込める。
「ごほっごほっ!・・・ルイズ!大丈夫!?」
 康一はフーケを追うのを諦め、ルイズの元へと駆け寄った。
 鉄塊の落下地点の更に向こう。ルイズは土まみれになって地面に転がっていた。
 あの瞬間、康一はACT2の音文字『ドヒュウゥゥゥ』でルイズを吹き飛ばしていたのだ。
 ルイズはしばらく地面に突っ伏したまま動かなかったが、康一の呼び声にぴくりと反応して体を起こした。
 擦り傷打撲であちこちがぼろぼろである。その上頭からつま先まで土ぼこりにまみれている。ケホッっと小さく可愛い咳をした。
「危なかったね。無事でよかったよォ〜!」
 康一が駆け寄るとルイズはむくりと立ち上がった。
 心配顔の康一の顔面に手を飛ばした。ぐーである。
「ぷげっ!!」
 いきなり殴りかかってくるとは思わない康一はまともに喰らってしまった。思わず手で鼻を押さえた。鼻がツーンとして涙が出る。
「な、なにを・・・!?」
「なにをじゃないわよ!あんたのせいで逃げられたじゃない!!」 
 積もった埃を払おうともせず、ルイズは激昂した。
「逃げられた、って。君今危うく死ぬところだったんだよ!?」
「そうね。あんたにぶっ飛ばされて走馬灯が見えたわ。危うく天国のおじい様に連れられて川向こうのお花畑に遊びに行っちゃうところだったわ!!」
 どうやら、危うく自分を押しつぶすところだった鉄塊のことは眼中にないらしい。
「ぼくは君を助けたんだぞッ!?」
「言ってる意味がわかんないわ。だいたい助けるならもっと優しく助けるべきでしょ!臨死体験させてどーすんのよ!」
 そんな暇なかったよ!!と言おうと思ったが諦めた。おかんむりのご主人様は使い魔の言うことを聞く耳を持ち合わせていないらしい。
 今らながら、騒ぎを聞きつけた警備員やメイジたちが集まってくるが、フーケとそのゴーレムはもういずこかに消えていた。
「せっかく、チャンスだったのに・・・」
 あんたのおかげで逃げられたわ。といわんばかりに頬を膨らます。
 ただでさえ幼い容貌なのに、そうするとまるで、小学生みたいだ。
 思わず拭きだしてしまうと、ルイズは康一の二の腕を握りこぶしでゴンと叩いた。
「何笑ってるのよー!」 
「ごめんごめん!」
 土まみれで周りの目も気にせずやり合う二人に、駆けつけた大人たちは顔を見合わせた。
95S.H.I.Tな使い魔29:2009/05/31(日) 15:45:50 ID:KJo4Im7A
 学院の宝物がフーケに盗まれた!
 そのニュースは学院中を駆け巡り、ルイズと康一が目を覚ましたときにはすでに大騒ぎになっていた。
 廊下を歩いていると、キュルケとタバサが駆け寄ってきた。
「おはようダーリン!聞いた?昨晩学院に賊が入ったらしいわよ。」
 キュルケはやや興奮気味である。
「それならもう知ってるわよ。この学院で一番最初にそれを知ったのはわたしたちだもの。・・・ていうか、使い魔にはあいさつしてご主人様であるわたしになにもなしってどいういわけ?」
 ルイズが口をとがらす。
「あーら、ルイズ。いたのね。あたしの頭はダーリンのことでいっぱいだから、あなたみたいなちんちくりんの入る余地なんてないのよ。・・・で、一番最初にってどういうこと?」
 昨夜のことを思い出したルイズがため息をついた。せっかくのチャンスを逃したことでずいぶんと気落ちしている。
「昨日の夜、ぼくらが最初にフーケを見つけたんだ。」
 康一が代わりに説明した。
「あら。すごいじゃないの。で、どうだったの?」
「すっごいでかいゴーレムが出てきてさ。捕まえるどころか、逃げ回るので精一杯だったよ。」
「ダーリンが手も足も出ないなんて、さすがハルケギニア中の貴族を翻弄する大盗賊だけあるわね。」
 康一は頷いた。ギーシュもゴーレムを使っていたが、はっきり言って桁が違う。
「まぁ、それで朝一で学院長室に出頭するように言われてて、今から行くとこなんだよ。」
「ふーん、おもしろそうね。あたしも行くわ。タバサも行くでしょ?」
 後ろに尋ねると、タバサはこくりと頷いた。
「あんたたち、フーケをみた訳じゃないんだから、来たってしょうがないじゃない。」
 ルイズは見るからに嫌そうだ。
「このまま授業に出るよりもおもしろそうだもの。ねぇいいでしょダーリン!」
 ルイズは渋ったが、結局キュルケとタバサもついていくことになった。

 4人が学院長室の扉をあけると、中にはもう十数人の教師たちがいて、殺気だった議論を戦わせていた。
 突然入ってきた生徒たちに入り口付近にいた教師たちが不審そうな顔をするが、何も言ってはこなかった。
「この魔法学院に忍び込むとは、なんといまいましい盗人め!」
「しかも盗まれたのはよりにもよってあの『弓と矢』というではないか!王宮になんと申し開きをすれば・・・」
「だいたい昨夜の当直はなにをしておったのだ!」
 全員の視線が一人の中年女性に向けられた。
 以前ルイズの練金でKOされた、ミセス・シュヴルーズだ。
 シュヴルーズは青くなった。唇がわななき、目は泳いでいる。
 やせぎすの男性教師がシュヴルーズに詰め寄る。
「確か、昨夜の当直はあなたでしたな。ミセス・シュヴルーズ。さぁ、昨夜にあったことを説明してもらいましょうか!」
 シュヴルーズは黙り込んだ。言えない。言えるわけがない。まさか学院に賊が入るとは夢にも思わず、当直をさぼって部屋で寝こけていたとは。
 男――ミスタ・ギトーは目を細めた。
「失態ですな。ミセス。この責任をどう取られるおつもりで?」 
「わ・・・わたしは・・・」
 おろおろと周りを見回すが、同情の視線こそ帰ってくるものの、助けに入ろうとするものはいない。
「まぁまぁ、そのへんにしておきなさい。」
 しかし奥の扉から、オールド・オスマンが入ってきて助け船を出した。隣にはミス・ロングビルが控えている。
「しかし、ミセス・シュヴルーズが当直をさぼったおかげで、みすみすフーケの進入を許したのですぞ!この責任をどう取らせるおつもりですか!」
 よっこらしょ、とオスマンは椅子にすわった。
「この中に当直をまじめにやったことのあるものはおるかの?おらんじゃろう。それがたまたまミセスの担当日だっただけで、別の日であったとしても、同じことじゃったろう。」
 教師たちは黙り込んだ。皆思い当たる節があるのだ。
「わしらは油断しておったのじゃ。まさかメイジの巣たる魔法学院に入るような盗賊がいるわけがない、とな。だから生け贄を探すようなまねはやめなさい。あえて責任を問われるとすれば、学院の長たるこのわしこそがそれにふさわしいじゃろうの。」
 ミセス・シュヴルーズはオスマンの手を握り、ひざまづいた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
 うむうむ、とシュヴルーズを労う。
96S.H.I.Tな使い魔29:2009/05/31(日) 15:46:37 ID:KJo4Im7A
「それにまだすべてが終わったわけではない。わしらで『弓と矢』を取り戻せばよいのじゃからの。」
 部屋がシンと静まり返った。
 一人の教師がおそるおそる手を挙げる。
「あの・・・王宮に報告して、衛兵を派遣してもらえばいいのでは?」
「だめじゃ。これから王宮に使いを出しておったら、間に合うものも間に合わなくなる。それに、仮にも貴族なら、自らの失敗の責任を自らで取る義務があるはずじゃ。」
 もう言い返すものはいない。
「よいかな?それではまず、昨夜の報告から聞こうかの。ミス・ヴァリエール。ミスタ・コーイチ。二人は昨夜フーケと交戦したと聞いたが・・・」
 室内がどよめいた。
 ルイズは口をきゅっと引き結び、オールド・オスマンの前に進み出た。
「はい。昨夜フーケが巨大なゴーレムを使って宝物庫に進入するのを見ました。捕まえようとしたのですが、力及ばず、逃げられてしまいました。」
 本当なら、ここでフーケを捕まえたと報告したかった。そうすれば、みんなに認めて貰えたのに・・・。
 オスマンは髭を撫でた。
「では次に、ミス・ロングビルから報告をしてもらおうかの。」
 もう、すでに自分は報告を受けているのだろう。手を組み、不安げな教師たちの様子を眺めている。
 オスマンの後を受けて、ミス・ロングビルが手元の紙をめくった。
「あれから聞き込み調査を行ったところ、近在の農民からの、フーケらしき男をみたという目撃証言がありました。そしてその居場所らしきところも、もうつかんであります。」
 な、なんですと!?教師たちがどよめく。 
「その証言者によると、フーケはここから半日ほど先にある森の中の小屋に入っていったそうですわ。」
「要するにじゃ・・・。今回は幸運にも、フーケの居所がつかめているというわけじゃ。」
 オスマンはすっくと立ち上がった。
「よって、学院から盗まれた『弓と矢』を我々の手で奪還する!我こそはと思うものは名乗り出よ!」
 賢者オールド・オスマンの一喝であった。
 しかし名乗り出るものはいない。お互いがお互いの顔を見まわす。
 誰かが解決してほしい。しかし自分が危険な目に遭うのは嫌だ。と顔に書いてある。
「どうした!おぬしらには貴族としての誇りがないのか?」
 しかし答えるものはいない。
 そんな中、一人、決然と手を挙げるものがいた。
「ルイズ!」
「ミス・ヴァリエール!?」
 そう、先ほど目撃談を証言し、それで役目を終えたと思われていたルイズである。
「わたしが行きます。」
 ルイズには覚悟があった。「貴族としての誇り」。自分が手をあげることで、それが得られるのならば。フーケをむざむざ逃がしてしまったという汚名を返上する機会が与えられるのならば!
「本気かね?」
 オスマンは静かに訪ねた。
「はい。」
 決意は固い。
 それまで黙りこくっていたコルベールが叫んだ。
「取り消しなさい。ミス・ヴァリエール!生徒に解決できるような問題ではありません!」
「だって、先生方は手をお挙げにならないではないですか!」
 ぐっ、とコルベールは言葉がつまらせた。
 生徒を止めたい。しかし、志願せず、どこかの誰かに責任をゆだねようとした自分に彼女を止められるだけの言葉はない。
 今まで黙って聞いていただけだったキュルケがルイズと同じだけ、前に進み出た。
「では、あたしも志願いたしますわ。」
「キュルケ!なんであんたまで・・・!」
 ルイズは驚きの声をあげた。
 キュルケは優雅に髪をかきあげた。
「ヴァリエールだけに手柄を取らせたとあっては、ツェルプストーの名が泣くわ。」
 するともう一人、杖を上げて進み出るものがあった。タバサである。
「タバサ!あなたまで付き合う必要はないのよ!?」
「心配。」
 タバサは一言だけ、ぼそりとつぶやいた。
 感極まったキュルケはタバサを抱きしめた。
 しかし、それでは収まらないものたちがいる。学院の教師たちである。
 自分たちは行きたくない。しかし、生徒に生かせては教師として立つ瀬がない。
「学院長!危険すぎます!ここはやはり王宮に応援を頼むべきです!」
 ミスタ・ギトーが教師たちの心中を代弁した。
 しかしオスマンは、憤る教師たちを制した。
「彼女たちは貴族としての義務を果たすべく、自ら志願したのじゃ。それを止める道理はあるまい?」
「しかし・・・」
97S.H.I.Tな使い魔29:2009/05/31(日) 15:47:32 ID:KJo4Im7A
「それに、彼女たちがただの学生だと思ったら大きな勘違いじゃ。たとえば・・・」
 タバサに目を向ける。
「ミス・タバサはこの年でシュバリエの称号を持っておる。この意味は分かるじゃろう?」
 シュバリエとは貴族階級の最下級である騎士位のことである。
 子孫に継承することすらできない、一代限りの位である。だからこそ自らの手で手柄を立てなければ持つことのできないということでもあり、実力と経験を証明する特別な称号なのだ。
「それに、そこなミス・ツェルプストーは、代々火の優秀なメイジを輩出しつづけ、ハルケギニアにその名を轟かすツェルプストー家の者であり、本人も相当に卓越した火の使い手と聞いておる。」
 キュルケがただでさえ大きい胸を張った。
「そしてミス・ヴァリエールは・・・」
 今度はルイズが小さい胸を精一杯張った。
 えーっと・・・。オスマンはしばらく中空に言葉を探し、ゴホンと咳払いを一つ。
「ミス・ヴァリエールは非常に努力家であり、今回のフーケ発見も、夜遅くまで魔法の練習をしていたからだと聞いておる。それに、爆発の呪文に長けており、トライアングルクラスのミス・シュヴルーズすら一撃で昏倒する威力と聞く!」
 物は言いようである。
「そして、彼女の使い魔は、平民ながら、ドットメイジとしては頭一つ抜けておるギーシュ・ド・グラモンとの一騎打ちに見事勝利した使い手である!」
「おお、なるほど!!」
 コルベールがぽんと手を打った。
「ガンダールヴの力があれば、いかにフーケといえども・・・」
「おーっと、頭に蚊が止まっておるぞコルベール君ッ!!」
 コルベールが何かをいおうとした瞬間、オスマンの杖が最近殊に薄くなってきたハゲ頭を目にも留まらぬ早さでぶったたいた。
 昏倒するコルベール。
 コルベール先生も知ってたのかぁー!?
 事情を知る康一は、危ういところだったと青くなった。
 事情を知らない教師たちはぽかんとしている。
「・・・何でいきなり?」
「うむ。蚊は危険じゃぞ。病気を蔓延させたりするし、夜枕元でプンプンいわれると、気になって眠れなくなったりするからの。」
 誰がどう見ても不自然だった。しかしオスマンは持ち前の威厳で無理矢理乗り切ることに決めたようだ。
「さぁ、こんなことは大事の前の小事である!蚊などに気を取られることなく、見事『弓と矢』を取り返してくるがよい!勇者たちよ!」
 教師たちは不可解ながらも、まぁそんなものか。と思うことにした。
「ところで、その『弓と矢』というのはいったいなんなんです?聞く限りはそんなに大騒ぎするものとも思えないんですけれど。」
 コルベールとかその辺は心底どうでもいいキュルケが手をあげた。
「うむ。いい質問じゃな。」
 話題を逸らせてほっと一息のオスマン。
「宝物というからにはもちろんただの弓矢ではない。いや、正確に言うとない『はず』じゃ。」
「はず・・・といいますと?」
「わしも含めて誰もその『弓と矢』が特別なところを見たわけではないからじゃ。見た目もそこまで変わっておらんんし、魔力も感知できん。」
「じゃあただの弓矢なんじゃないですか?」
 ルイズが思ったまま疑問を述べた。
「うむ。しかし、あの「『弓と矢』にはトリステイン王家に代々伝わる伝承があるのじゃよ。伝承にはこうある。『此の矢世に出すべからず。平民これを手にするとき、悪魔現る。世界を滅ぼす災厄なり。』とな。」
 教師たちはもうその伝承を知っているのであろう。驚く様子はない。しかし、初耳の生徒たちにとっては衝撃的である。
「世界を滅ぼす・・・とは大きくでましたわね。」
 キュルケもそういうのが精一杯である。
 しかし正直なところをいうと、嘘臭い。
98S.H.I.Tな使い魔29:2009/05/31(日) 15:48:57 ID:KJo4Im7A
 それが顔に出ていたのだろう。オスマンはふぅーっと長く息を吐いた。。
「気持ちはわかる。じゃが実際王家にはこういった伝承が数多くのこされておる。やれ、風よりも早く飛ぶ船やら、始祖の残せし魔導書やら、数え上げるとキリがない。」
「わしもそれが本当かどうかは知らん。じゃが、それでも王家が先祖から守るように言い遣ったものじゃ。盗まれました、なぞと言おうものなら王家の面目は丸つぶれじゃよ。だからなんとしても取り返さねばならん。」
 それにしても・・・。ロングビルが眉根をよせた。
「わざわざ平民に渡すな、としているあたり。どう使うのかが疑問ですわね。」
「そうじゃのぉ。魔力もない、形も普通となると、鏃に毒でも塗られておるのかもしれん。もしくは撃って初めて効果が現れる類なのかものぉ。だからといって、実際試してみようというものも今までおらんかったが・・・。」
「そうですわね・・・。」
 ロングビルはなにやら考え込んでいるようだ。
「まぁなんにせよ、道案内は必要ですわ。私がその証言にあった小屋までお連れしますね。」
「おお、そうしてくれると助かるのぉ!」
 いくら実力があるとはいえ子ども達だけに行かせるのは心配だ。信頼できる大人がついていってくれればこちらとしても安心である。 
 では、用意が出来次第、出発するように!とオスマンが最後に言って、この場は解散となった。
99S.H.I.Tな作者:2009/05/31(日) 15:49:39 ID:KJo4Im7A
以上になります。
お目汚し失礼しましたぁ〜
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 16:06:44 ID:SU9qHxcC
投下乙です
康一の扱いが酷すぎる件についてw

しかし康一は『弓と矢』と聞いても反応ないのは何故?
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 16:29:09 ID:rFsLgydB
>>100
そりゃハルケ世界に「あの」弓と矢があるとは思うまい
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 16:49:53 ID:T6t51BRb
ACT2は射程10mだよ
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 16:54:32 ID:ZMRIe2/h
おつ

弓と矢があるはずないとは思っても
弓と矢・・・まさかねぇ〜ぐらいの反応はあっても良いんじゃないか
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/31(日) 16:58:45 ID:SU9qHxcC
オスマンがかなりヤバい代物扱いしてたんで、少しは反応がある方が自然かなと思った
105S.H.I.Tな作者:2009/05/31(日) 17:52:29 ID:KJo4Im7A
投稿以外にあんまり出てくるのはアレだとは思うのですが、一応補足として。
>>100
『弓と矢』については18話時点でもう「まさかねぇ〜」をやってるんです。
29話時点での内心はまた後の話ということで

>>102
ACT1、ACT2の射程は50m ACT3が5mとなっておりますです。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 00:18:06 ID:SLDzLZUP
弓と矢はオリジナルスタンドはルール違反だから
ハルケギニアの住人が刺さると
康一が知らない5〜6部あたりの本編に出てきたスタンドが発現する程度に抑えるのかな?
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 00:38:57 ID:kgHYX5ln
グズグズのミートソースになってくたばるんじゃね?
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 06:44:31 ID:Gdg0fnAa
ルイズちゃんをベロベロのミートソースにしてペロペロしたいよ〜
とでも言うべきなのだろうか
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 09:04:24 ID:MJCBlv8r
>>106
ルール違反・・・?
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 10:37:02 ID:Hn845QHF
>>109
さすがにオリジナルスタンドは見てて痛々しいだろ
『ぼくのかんがえたさいきょうのすたんど』とかは別の場所でやるべきだとおも
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 12:28:35 ID:TOYchXcL
作者がオリスタを出すとも出さないともいっていないのに、外野がごちゃごちゃ言うときではないだろう。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 12:33:38 ID:YanTKUr/
>>111
しかし「見ていて痛々しい」からって「ルール違反」だと明言するのはマズイだろ。
それともこのスレはオリスタ出しちゃあいけない世界だったのか?
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 13:23:27 ID:MI+RTeof
「ぼくのかんが(ry」じゃなくて
しっかり作り込まれていれば問題ないわけだな
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 16:14:07 ID:Phne2xRS
オリジナルスタンドは避難所でってどっかで言ってなかったっけ
115S.H.I.Tな作者:2009/06/01(月) 17:37:45 ID:gBU8L0zO
えーっと、あいまいな言い方をして混乱させてしまっているようですみません。
前スレでも軽く触れましたが、オリジナルスタンドは出しません。別の部のスタンドなども出現しません。
「弓と矢」をどう使うかについては、ご想像におまかせします。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 17:48:00 ID:TOYchXcL
>>115
色々妄想しながら続き待ってます。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/01(月) 18:41:23 ID:gKUmO8qX
じゃあ俺はマウントとって弓と矢で相手を撲殺するシーンを想像しておくぜ!
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/02(火) 10:19:45 ID:5LcKTf9R
矢に指されてみんな虚無覚醒
虚無=レクイエム?
さすがに無理があるか
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/02(火) 10:40:19 ID:cGApBY5f
選ばれたものではなかった!
でいいよ
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/02(火) 21:46:34 ID:KHkb5vmo
ある意味最強の毒矢とも言える。
ほんの少し掠っただけで死ぬんだから。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 00:18:13 ID:hFI93xwS
銃杖
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 00:23:12 ID:2pJZWhQb
パターン杖。ホルホースです!
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 19:37:19 ID:2Egx5JT5
ギーシュの奇妙な決闘とか、オリジナルスタンドが出てた。
つか、あれもそうだけど、アヌビス神とか、続き…続きを…続きをッ。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 20:55:07 ID:xwOUKUN6
アヌビス神はギャグのどさくさで鏃は出てたけどオリスタは無かったな
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 08:24:47 ID:DWzgtOUb
1発限りじゃ暗殺には使えても戦争には使えないか
せめてブラックサバスが来ていれば・・・
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 08:39:28 ID:LoXJDPuD
康一の立場からすればスタンド発現する可能性のある弓と矢は無闇に使えないな
事情の知らないクロムウェルやフーケはわからんが
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 15:43:21 ID:kkg8tCgV
つか弓と矢なんてポルナレフも言ってたが
スタンド使いにとっては敵を増やす邪魔者だから
普通のスタンド使いなら速攻破壊してる
康一も例外無いだろう
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 18:48:07 ID:1WYqR6Pr
まあ、康一君の場合は、敵を増やす厄介な物というよりは、単純に危険な物だから破壊するんだろうな
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 20:17:20 ID:e+d3GQUM
ていうか矢に貫かれてスタンドが発言するのが一握りなわけなんだから、そうそう都合よくでないだろ

平和に暮らしてても、歪みまくってるやつとかは発現しやすいだろうな(狭間田みたいなやつ)
ルイズは歪んでそうで歪んでないからな、発現しないかも。渇望はしてるが
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 20:38:24 ID:uVBQXG8W
そんな康一が歪んでるみたいな言い方…
猫やネズミだって発現するんだから
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 21:57:51 ID:kkg8tCgV
ハルケギニアの平民がスタンド発現して王政打倒とかは
それはそれで面白そうだけどな
スタンド使いの少数精鋭のテログループとかこえー
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:07:25 ID:1WYqR6Pr
一時期スタンドとペルソナがごっちゃになって、発現条件が精神力が強い奴と思ってるときがあったけど
別に、矢に選ばれるのに精神力が強いとか弱いとかは、関係ないんだよな、どいつもこいつも一癖ある連中ばっかりだが
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:13:25 ID:qOdIRlzE
発現条件は矢に選ばれる
だが精神力、というより闘争本能が弱いとスタンド使いになっても危険
ホリィさんが良い例
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:17:28 ID:OBe+UEYn
もしホリィさんが矢に撃たれたらどうなったんだろ?
本編同様になってたか、それとも康一みたいになってたか
(なんだかんだで康一はクレイジーDに治されるまでの数分間生きていたから
 全く素養がなかったわけじゃないと思うんだ)
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:22:40 ID:1WYqR6Pr
鋼田や乙みたいなのはどういう例なんだろうな。スタンドの才能はあったけど
スタンド使いとしての才能は無くて、スタンドが暴走して取り殺されると言う一例なんだろうか
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 23:12:29 ID:qbuxCRzp
ホリイさん同様、スタンド使いとしての才能が足りない状態で無理矢理スタンドを引きずり出されて暴走状態ってとこだろう。
(矢で死んでない以上才能ゼロってこともないだろうが)
個人的にはスタンドを使うための素質は、方向はどうあれ精神のベクトルが突き抜けてることだと考えてる。
まあ、要するに一癖も二癖もある奴であるって事で、普通人じゃあトマトソースがいいところかな。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 23:36:43 ID:kkg8tCgV
いや遺伝的素養がないと精神的素養があってもスタンド使えないでしょ
精神的素養があるやつがスタンド使うにはDISKがないと
138136:2009/06/06(土) 00:49:22 ID:+uITRLvn
でも遺伝的素養って言っても、人間に限らず猿だの犬だの隼だの亀だのと
人間の遺伝子とはかけ離れた遺伝子を持つ動物までスタンド発現してるからなあ
猫草とかFF辺りは遺伝もへったくれもあったもんじゃないし。
多くの生物種に共通する遺伝子によるものと考えられなくもないが…
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 00:53:33 ID:OvIGbcs4
なんで遺伝の話になってんだよ、あほか
選ばれるのと、勝ち取る。この二つじゃあないのか?スタンドってのは
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 01:13:31 ID:iL2geI7A
兄弟親子で発現してるし、似てるのもあるから遺伝要素は大いに関係あるだろう。
でも、単純な生物の方がハングリー精神を持ち合わせているのかも
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 01:17:44 ID:6V4RH1Jn
>>140
遺伝要素はジョースターの血統ぐらいじゃね?
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 01:19:16 ID:68lLHhwN
>>141
プッチもじゃね?
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 01:38:54 ID:A0qvvf0e
遺伝の要素は関係あるだろうけど遺伝的素養が無いと駄目なんて描写はないだろ
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 02:24:00 ID:oIp+SPO2
血筋に強力なスタンド使いがいると影響されて目覚めやすくなるだけだろ
ジョースター一族がスタンドに目覚めたのもジョナサンの体乗っ取ったDIOがスタンド発現させたからだし
親がスタンド使いだと子供もスタンド使いになりやすいのも遺伝よりはそっちのが影響強いだろうし
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 07:38:15 ID:qdazH8Cv
いや遺伝的素養が関係無いなら
承太郎もジョリーンに矢の破片なんか危なくて渡せないだろう
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 07:48:05 ID:gb6rKFYW
矢に貫かれても素質がないと死ぬのはスタンドの暴走だと思ってた
ホリィさんと同じで
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 08:50:35 ID:vcxYV2px
ジョースター家(ディオの息子含む)
エンヤ親子
オインゴ兄弟
ダービー兄弟
虹村兄弟
吉良親子
ディアボロ親子
プッチ兄弟

遺伝要素で発現してる奴結構居るな
スタンド使い同士は惹かれ合うから
スタンド使いの身内もスタンドの素質も持ちやすいのではないかと勝手に解釈してた
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 08:58:04 ID:zkT2VgYv
その中で遺伝だと明言されてた奴てどのくらいいた?
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 10:15:15 ID:vcxYV2px
俺の言ってる遺伝は近親者って意味ね
そもそもジョジョで遺伝って言葉自体出て来たっけ?
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 11:56:57 ID:8IyaJbvV
ジョナサン・ジョセフ・ホリィとダービー兄弟は似たようなスタンド発現させてるから
遺伝要素も否定できないが、それ以外の親子兄弟ってスタンドに共通点は特にないような
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 12:17:24 ID:QCsgjiNw
SBR10巻の後書き?にスタンドは遺伝するって書いてあるよ
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 15:21:31 ID:qdazH8Cv
遺伝で弾かれるとトマトソースになって
精神的な素養がないとホリィさんや乙雅三にスタンドが暴走して本体殺しちゃうんだろ
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 17:40:37 ID:HS44EMR3
才能が遺伝するというか
スタンド使いの肉親ならそれ相応の精神力を持ってるんじゃないの?
例外があるだけで
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 19:05:55 ID:qdazH8Cv
そもそも精神的素養だけでいいなら
スタンドが暴走するってことは無いんじゃないの?
スタンドを扱うだけの精神を矢に認められて発現するわけなんだろ
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 19:51:12 ID:1H166uXk
精神的な要素が無いと暴走するというより
最初から本体に制御できない性質のスタンドが発現するって感じじゃないかな
結局そういうスタンドは誰が使っても制御はできないっぽいし
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 20:15:39 ID:VMfviRD6
ブラックサバスに刺された掃除のおじいちゃん。
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 22:46:00 ID:OqhrafIA
確かにあれに関しては発現した様子は全くなかったな
チープ・トリックとかは制御不能なタイプだったけど
光線出して死んだ人も制御不能だったんだろうな
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 01:12:32 ID:NPhZE7Uq
そういやブラックサバスの矢でGEが手を切った時には何も起こらなかったな
・・・とか思っちゃいけないんだろうなw
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 01:46:57 ID:1O1mWley
JOJOで細かいこと言い出したら話進みませんよ
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 01:58:28 ID:f5Lu4VM+
>>158
矢には2種類あるという説が濃厚
ゲーム版だとブラックサバスの矢とレクイエムの矢は色も違ってる
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 07:05:04 ID:vsvydlru
>>154
スタンドを発現させられる才能と制御する才能は別なんじゃないの?
スタンドが暴走してる奴は自分の強烈な性質をコントロールできない人間ってことなんじゃないのかと思う
鉄塔の男も塔から出たいってあんなに言っておきながら元々は人に会いたくなくて住み始めたとか矛盾というか中途半端な事を言ってるし
最初から俺は誰にも会いたくないって言い切れるような人間じゃないと発現したスタンドを制御できないんじゃないだろうか
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 10:49:39 ID:PYgTIxqq
>>158
あの時点だとレクイエムが発現するほどの精神力じゃなかったんじゃないか?
ボスの時までに成長してるんじゃないかな、成長性Aだし
明らかに成長してる場面としてはメローネ戦
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 11:00:36 ID:NQm3PZYI
ブラックサバスに取り込まれててスタンド能力を引き出す以外の力がなくなってたんじゃね
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 11:15:29 ID:DvbbND8Z
赤石ありの石仮面となしの石仮面みたいなもんじゃね
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 21:25:33 ID:NXuYBNmx
ホリィさんの場合は「DIOの影響によって目覚めた」から
闘争心が無いためにスタンドが悪影響になったんじゃないだろうか
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 21:45:50 ID:8uatbzTQ
つまりホリィさんは「元々スタンド使いになれる素質がなかった」か、もしくは「素質はあったが早く発現してしまった」のか

闘争心がない=悪影響は違うんじゃあないか?トニオさんとか辻さんとかさ
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 22:03:36 ID:9Rgxxp7P
トニオさんも辻さんも闘争心ありそうだけど
競争激しい日本で店構えてるしエステだかの大会で優勝したりしてるし
外に向かっていって他人と競いあう気持ちは強いんじゃないの
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 22:34:54 ID:coTamVpJ
トニオさんの闘争心はトップクラスだろ
料理の腕前を上げる為なら世界中を旅して、いい店を作るためにはるばる日本に来て
頑張って日本語を覚えてるんだから
パールジャムが発現したのも矢のせいじゃなくてケンゾーと同じように料理にかける執念が
スタンド能力として結実したと信じてる
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 22:49:10 ID:8uatbzTQ
そうか・・・そうなると闘争心のないスタンド使い(悪影響のない)っていないんだな・・・

スコリッピとかどうなんだか微妙なトコだけど、あれも芸術にたいする執念かね
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 22:53:06 ID:u93BwF5H
>>168
トニオさんは料理修行で世界を旅してる時に発現。
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 22:54:21 ID:S+uZ/kkm
だけどあれも制御不可能なスタンドだしな
チープトリックほどではないがあれも性質悪い
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 23:02:04 ID:1O1mWley
N・BIGとかもうね
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 00:28:49 ID:e7MuGAtk
>>171
まてその理屈で行くと自動操縦型のスタンド使いは
みんな精神が弱い闘争心が無いってことになるぞ
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 01:44:16 ID:WRoK4LuF
>>173
自動操縦型はシアーハートアッタク、イエローテンパランスの切り離した肉片、グーグー・ドールズ、ザ・ロック、チューブラー・ベルズ、ハイウェイ・スター、ブラック・サバスetcetc・・・
であってチープ・トリックみたいな暴走・一人歩きしてるのとはまた違うんじゃあないか?
>>171が言いたいのは暴走・一人歩き型のことだと思うのよ
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 03:09:27 ID:e7MuGAtk
>>174
違う違う制御不可能なスタンドは本体に闘争心が無いことなら
制御不能の自動操縦型の本体も闘争心が無いってことになるって事がいいたいの
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 06:12:10 ID:rJwPAteU
>>175
自動操縦型→本体の明確な意思で出し入れ可能
一人歩き型→本体の意思に関係なく能力行使or暴走
制御できないのとする必要がないのとじゃ違うだろ。勝手に弾が出る銃なんざあるか?
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 06:14:25 ID:rJwPAteU
すまん
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 19:04:27 ID:PfsTUtbj
そろそろゼロ魔分が不足してきたと思うんだ
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/09(火) 01:10:29 ID:yLmnfhnA
そろそろ新刊か…どんな風になるんだろうなあ。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/09(火) 02:14:34 ID:bAgfASTj
え?どっちの?
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/09(火) 05:50:02 ID:uMQpHqS+
>180

ゼロの使い魔 17 黎明の修道女<スール>
2009年6月25日発売

ttp://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/books.php?id=22353
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/10(水) 06:59:45 ID:pQhVTBu5
そろそろ大統領辺りが召喚されないかしらん
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/10(水) 07:02:56 ID:tWil9EE1
丁度ゼロ魔16巻を読み終わった所だったので丁度いいな
やっぱりあの子が重要なキャラになるのか…それにしても、デルフよぉ…
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/12(金) 19:29:08 ID:2yKkqbc1
保守
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/13(土) 00:46:34 ID:5ILi40R7
デル…フ……?
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/13(土) 02:25:45 ID:FsS+Bzf8
>>182 大統領ならルイズも余裕でストライクゾーンだな
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/14(日) 02:39:57 ID:xue9OiAq
…巡回先で唯一このスレだけが上げ荒しにあってなくてほっとしたけど、それはつまり、ageられてないということもあるけど、過疎が過ぎて目立ってなかったということなんだろうな…。
ちょっと悲しい。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/14(日) 11:35:14 ID:8BrX9Coj
いともたやすく行われるえげつない荒らしか
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/14(日) 22:31:44 ID:dBqEnh01
SBR系のキャラ召還まだー?
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/15(月) 15:11:15 ID:k48FBcyA
スレだけ見てて避難所とか見ずにまとめの更新履歴とかあんま見ない日々を一年ほど続けていたけど
昨日なんとなく見たら結構更新しているし、つか、避難所での連載が活発だ…。
なんかこの一年損した気分で幽霊屋敷でティータイムをまとめ読みした。

本スレが寂れるとまとめのプレビューとか二年前に見たときの四分の一くらいに減ってるのに、
避難所は普通に動いてたっけ、なんか不思議な気分だ。

仮面の人、アヌビス神の人、ねことだめなまほうつかいの人、他にも数々の綺羅星のごとき
連載をしていた方々よ。戻ってきてください。まじで。本当に。お願いしますよ。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 00:40:53 ID:AlmeWE6f
しかし何で人が来なくなったんだろう
ハードル高いのかな?少し敷居を下げたほうがいいのかなぁ…
キャラも重複していいからどんどん投下されたほうが楽しいな
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 01:07:48 ID:Q4v+NGgT
仕事のスケジュールが短期間でぐるぐる変わって生活サイクルがグタグタで手が回らないんじゃよー
スレはずっと見てる
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 01:40:41 ID:yGCaJjNP
>>190
アヌビスの人は年初めに生存報告があったから大丈夫
また笑わせてくれるよ

仮面さんとジョルポルさん最近来ないなあ。子供の頃に白蛇召喚した黒ルイズも続きが気になるぜ
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 03:09:08 ID:QKQmZbzW
続きも気になるけど今までに召喚されたキャラで新作読みたいよ
承太郎とかDIOとか暗殺チームとか
過去に召喚されてると書きにくいんだろうか
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 11:21:41 ID:m5dY9D1T
まあどうしたって比べられるしねぇ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 17:18:01 ID:MMhmKW0g
むしろスターダストの続編が読みたいんだぜ
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/16(火) 19:00:08 ID:3d8toMxQ
DIOが使い魔!?のおかげでゼロ魔クロスにはまった俺としてDIOの人の音沙汰が無いのが寂しい
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/17(水) 18:55:29 ID:NKiDTIrj
俺は鉄の使い魔だなぁ、せめて後編を見せてくれ
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/17(水) 22:27:12 ID:KQbAclOC
サブゼロや兄貴の人、帰ってこないかなぁ
王道路線、だがそれがいい
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/17(水) 22:59:17 ID:rcpqnsf5
新作でも続きでもいいから投下マダー?
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/18(木) 18:41:14 ID:FfF0JJ+y
俺は使空高さんをずっと待ってるよ
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/18(木) 21:35:59 ID:Tw+xvuTR
ホワイトスネイクの話はどれも個性があって面白いんだよな
三人とも、いつまでも待ってるぞ!
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 01:22:39 ID:ACbMEVSl
スネイクは人格もあるし
ゼロ魔の住人圧倒するほどのパワーも無いから使いやすいんだろうね
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 01:33:22 ID:kdG/kEIh
はたらくあくまを待ってる
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 02:02:22 ID:zkVIB2S8
なんだよこの流れ
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 02:04:48 ID:6jVsEyd3
読む側も何かと忙しかったりしていなかったのが戻ってきてるとかじゃない?
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 07:36:05 ID:nWbM1Dvr
人間をやめていないディオで書いてみたのですが投下してみてもいいでしょうか?
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 07:55:23 ID:zkVIB2S8
GO!>>207GO!
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 08:12:25 ID:yOf8WnpP
構わん、行け
210俺は使い魔になるぞジョジョー!0話1/2:2009/06/19(金) 08:39:06 ID:nWbM1Dvr
ありがとうございます。とりあえず0話と1話を投下させていただきます。
**************************************

ディオは追い詰められていた。――いや、機を伺っていたという方が正しいだろう。
酒を飲んでは暴れ回る父、ダリオを毒殺して七年間、生前ダリオが恩を売っていたジョースター卿の
養子となったディオはジョースター家の財産を乗っ取って世界一の男となるため、卿に気に入られるように
努める一方で卿の一人息子ジョナサンを徹底的に追い詰めて堕落させようとした。
しかしジョナサンは持ち前の前向きでどんな事にも諦めない性格により太く逞しく成長した。
だがディオは計画を変更し、ジョースター卿にダリオと同じく遅効性の毒を飲ませて殺害を謀る一方
『石仮面』と呼ばれる謎の仮面によってジョナサンを闇に葬ろうと考えたのだ。
しかし偶然見つけたダリオの手紙によりダリオの病状と父のそれとが同じ事に気づいたジョナサンは
ディオの陰謀を未然に防ぎ、毒薬の入手元である中国人を捕らえて動かぬ証拠を握ると、何も知らないディオが
ジョースター邸に帰ってきたところを警官隊で包囲したのである!

ジョジョの奇妙な冒険 第11話 人間を超越する!

「ディオ、話はすべて聞いたよ 残念で…ならない…君のおとうさんは命の恩人…そして君には
 息子と同じくらいの愛情と期待をこめたつもりだったが…寝室に行って休むよ…
 息子がつかまるのを見たくはない…」
ジョースター卿は深い悲しみに包まれていた。いくら自分を毒殺しようとしたとはいえ実の息子のように
可愛がっていたディオが捕まるのを卿は見るに忍びなかったのだ。
「ジョジョ…逮捕されるよ…だがせめて君の手で手錠をかけてほしい7年間のつきあいで…
 わがままを言わしてもらえれば肩をケガしているんだ…きつくしめないでくれ」
ディオが哀れな声でジョナサンに語りかける。ゆれる蝋燭の明かりでその顔ははっきりとはわからない。
だがその声はジョナサンに哀れみの心を呼び起こすには十分だった。
「わかった…僕が手錠をかけよう!」
正直ディオはいけすかない奴だった。彼がジョースター家にやって来て以来ジョナサンは常にディオの嫌がらせに遭い
最後まで友情を感じる事ができなかった。でもディオは同時に七年間共に過ごした兄弟だった。
その最後の頼みを無下にする事はとてもできない…。

ジョナサンは甘い男だった。もう少し冷たい思考を持った人物なら気がついただろう。
あのディオにしては往生際が良すぎるという事に…。七年間共に暮らした男の真意に気づけなかったジョナサンは甘かった。
211俺は使い魔になるぞジョジョー!0話2/2:2009/06/19(金) 08:40:03 ID:nWbM1Dvr
「ジョジョ…人間ってのは能力に限界があるなあ」
手錠を持って近づいたジョジョの目にディオの顔が写る。それは明らかに観念した顔ではなかった。
そう、例えるならば目の前に馬鹿な蛙が跳びだしてきたのを見つけた蛇のような顔――

「おれが短い人生で学んだことは…人間は策を弄すれば弄するほど予期せぬ事態で
 策がくずれさるってことだ!…人間を超えるものにならねばな…」
「なんのことだ?なにを言っているッ!」

「おれは人間をやめるぞ!ジョジョーッ!!」
ディオはマントに隠していた石仮面を高々と掲げると、同じく隠していたナイフを振り上げてジョナサンに襲いかかった。
ディオはこの一瞬を待っていたのだ。憎き敵、ジョナサンの血で人間を超越し、幾千年、何世紀もの間を
永遠に生きる吸血鬼へと変貌する瞬間を!!!


だが、ディオの野望が果たされる事はなかった。
突如ディオの背後から光り輝く鏡のようなものが現れたと思うと、ディオの身体をその中へと吸い込みはじめたのだ。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
普段のディオならば背後からとはいえ避ける事もできたであろう。だがディオはジョナサンを殺す瞬間に意識を集中しており
背後から迫るものに気づくことはできなかったのだ!

「ディオーーーーッ!!!」
ジョナサンが手を差し伸べてディオを掴もうとする。己を殺そうとした相手をも助ける、それがジョナサンという男であった!
だがディオはその手を振り払うと、目で人が殺せるのであればまず間違いなく殺せたであろう目付きでジョジョを睨み

―――そして光り輝く鏡と共にこの世から消滅した。
1899年、イギリスはとある田舎での出来事であった。

ジョナサン・ジョースター…かねてからの夢を叶えて考古学者となり、イギリス史を書き換える数々の発見をした。
             後に幼なじみエリナ・ペンドルトンと結婚するとアメリカに渡り、インカやマヤ、
             アステカの遺跡の研究に一生を捧げた。
ジョージ・ジョースター卿…息子の夢を叶える為に様々な手助けを行った。また周囲が反対する中ディオの為に
             ささやかな墓を作った。時折ディオの墓の前で寂しそうに佇む卿の姿があったという。
             1912年、アメリカに渡ったジョナサンを訪ねる途中に乗った大型客船が沈没して死亡。
ロバート・スピードワゴン…ジョナサンがアメリカに渡ると後を追うようにしてアメリカに行く。株で財をなして
             20世紀初期のアメリカンドリームを体現する人物となった。その独特の勘で世界大恐慌をも
             切り抜け、アメリカの復興に貢献した。また生涯にわたりジョナサンの研究を支援し続けたという。
             彼の残した組織はSPW財団となり、現在でもアメリカ経済界の中心となっている。

                                           ジョジョの奇妙な冒険 完



「…」
「……」
「…あんた誰?」
                                    to be continued…
212おれは使い魔になるぞジョジョー!1話2/2:2009/06/19(金) 08:43:31 ID:nWbM1Dvr
すいません、0話の名前は「俺」ではなく「おれ」です
*************************
おれは…死ぬのか…吸血鬼にもなれず…無様な姿をジョジョに晒して…死ぬのか…
……いやだ、そんなのは嫌だーーーッ!!!!

おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第一話

ふと我に返るとおれは地面に仰向けに寝ころんでいた。抜けるような青空が眼前に広がっている。
周りからは太陽の光を浴びた青草の匂いがかすかに漂ってくる。
おれは死後の世界など信じていない。だが、もし本当に死後の世界があったのだとしたら…

まさかおれは天国に来たのか?

反省も後悔もする気はないが自分の行っていた事が良い行いだとは到底思えない。
だとしたら神という奴はとんでもない―馬鹿野郎だと言うことだッ!
と、いきなり視界に少女の顔が写る。おれを覗き込んでいるらしい。
「あんた…誰?」

変な髪の色だ―それがディオの第一印象であった。幼さを残しながらも顔立ちは整っている。
だが髪の色が桃色がかっているのはどういう事だッ!天使というのはまさかピンク色の髪をしているのか?
それにあのスカート!ボヘミアン(*19世紀の自由人)の踊り子でもあんな短い丈ではないぞッ!
顔を上げてあたりを見回すと、似たような格好をした人間が沢山いることに気がついた。
遠くには中世を思わせる城もある。どうやらここは天国でもあの世でもないようだ。

「あんた誰って聞いてんのよ!」
先ほどおれを覗き込んでいた少女(ガキ)がまた尋ねてきた。まずは状況を把握する必要がある。
「ここは…どこだい?」
「質問を質問で返すなーっ!!疑問文には疑問文で答えろと、教えられてるのか!?」
どうやら怒らせたらしい。フン、自分から聞いてきて勝手に怒り出す。これだからガキは。

手で草を払いながらできるだけ丁寧に対応する。
「失礼した、ぼくはディオ・ジョースター…」
ここで考える。おれはジョースター卿を殺そうとした。また、あのジョナサンと同じ姓でいる事にももはや耐えられなかった。
そろそろジョースターの名を棄ててもいい頃合いだろう。
「すまない、言い間違えた。ディオ・ブランドーだ。」
「どこの平民?」
胡散臭い目で見つめてくる。それよりも平民だとッ!?このディオの格好はどう見ても貴族の格好だ。
少なくともよほど裕福な庶民でない限り間違える事はないだろう。
213おれは使い魔になるぞジョジョー!1話2/3:2009/06/19(金) 08:44:23 ID:nWbM1Dvr
だが、こいつは今おれの事を平民だと断定した。よく聞くと周りからも
「ゼロのルイズが平民を召還した…」
「やっぱりルイズはルイズだ…」
という声が聞こえてくる。ところどころから笑い声も聞こえる。どうやらあのガキはルイズというらしい。
だが奴らの目――まさかこのディオを笑っているのか!?年端もいかないガキどもが――ッ!

「フン、どこに目がついているのかは知らないがこれでもぼくは貴族でね」
「はぁ?マントも杖もないのにどこが貴族なのよ?」
杖?マント?何を言っているんだ、こいつは。
よく見ると周りの奴らも全員マントに杖を持っている。
するとおれは死んだのではなく黒魔術かなにかでここに召喚されたというのか…?
よく見ると奴らの足下には様々な動物がいる。まさかおれがあいつらと同じだというのかッ!
このディオがッ!

ルイズはショックを受けていた。今まで魔法は失敗だらけ、この春の召喚に失敗したら

ひと思いに退学…させて…NO!NO!NO!
りゅ…留年?NO!NO!NO!
りょ…両方ですかぁーっ?YES!YES!YES!
もしかして家門の恥として絶縁ですかぁーっ!YES!YES!YES!OH!MY!GOD!

な結果になるのは目に見えている。だからこそ爆発の後、なにかが倒れているのを見た時は喜びで泣きそうになった。
だが現れたのはドラゴンはおろかネズミでも蛙でもない、一介の平民だった。
そ、そりゃちょっとハンサムだけど今私が欲しいのは使い魔であってイケメンの平民じゃない!
だからこそルイズは詰め寄る。
「ミスタ・コルベール!もう一度召喚をやり直させてください!」
だが現実の壁は非情だった。
「ミス・ヴァリエール、それはできない。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今やっているとおりだ。
 それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、専門課程へ進むんだ。一度呼び出した『使い魔』は
 変更する事はできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ」
「でも…」
「ミス・ヴァリエール。今君の選べる選択肢は二つだ。あの青年と契約するか、それとも留年するかだ。」
「くっ…」
214おれは使い魔になるぞジョジョー!1話3/3:2009/06/19(金) 08:46:36 ID:nWbM1Dvr
「あら、よく見るといい男じゃない。ねえ、タバサ」
「…。」
この一連の流れを外野は楽しんでいた。
「あの」ゼロのルイズが使い魔召喚に成功したと思ったらよりによって平民を召喚したのだ。
『全く期待していなかったサーカスを見に行ったら意外と面白かった』その場の空気の殆どがそんな感じであった。
特にキュルケは楽しんでいた。ルイズはツェルプストー家にとって今、最低限張り合うに値する人物となったのだから。
タバサは…見ていなかった。本を読む方に既に意識を移していたのである。

視界の片隅で先ほどのガキが禿の男と揉めている。話の内容から察するにどうやら本当におれは奴らに『召喚』されたらしい。
吸血鬼だってこの世に存在するんだ、今では召喚だってあり得る話だ。ディオがそう考えていると
男との口論を終えた少女はディオに歩み寄ってきた。

「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから!」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
またも意味のわからない事を畳みかけてくる少女に反論しようとした瞬間、ルイズの唇がディオのそれと重なる。

ズキュウウゥンッ!!

どこからともなくそんな音が聞こえてきた。
「やった!さすがゼロのルイズ!俺たちにできないことを平然とやってのける!そこに痺れるあこがれるぅ!」
とは後に当時の事を語るマリコルヌの弁である。

(ど…どうなのかしら…?)
ルイズがディオの顔を見ると、ディオは醜悪な顔――はっきりと人間の表情でいえば怒っていた。
「貴様!このディオに対していきなりなんの真似だーッ!」
ディオの拳がルイズに迫る。避けられない!ルイズは思わず目を瞑った。だがいつまでたっても殴られる気配はない。
恐る恐る目を開けるとディオは左手を庇うようにして屈み込んでいた。
「ぐっ……貴様…何をした……ッ!」
そこにははっきりと使い魔のルーンが刻まれていた。
(も…もしかして成功した?)

「ミス・ヴァリエール、進級おめでとう」
ふと気がつくと後ろでコルベールが微笑んでいた。
『ゼロ』のルイズ、魔法が生涯で一度も成功した事がないと揶揄されたルイズであったが使い魔の儀式は成功したのだ。
今まで張り詰めていた気が抜けたルイズはへたへたと座り込んだのであった。

                     to be continued…
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 08:48:59 ID:nWbM1Dvr
投下終了です。他の方々と比べるとかなり文章も稚拙な上に短いとは思いますがお許しを。
感想などお聞かせいただければ幸いです。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 09:21:31 ID:yOf8WnpP
もはやジョジョの奇妙な冒険じゃなくて吹いたw
そりゃディオがいなくなればそうなるわな
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 09:40:50 ID:6jVsEyd3
同じく0話の終わりで茶を噴いた
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 09:46:45 ID:RzTUDqK9
ジョジョ本編の方、柱の男という脅威が残ってる訳だが……w
DIOではなくディオがこの後どう暗躍していくのか期待が高まるぜ
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 10:31:27 ID:2v/8kr/8
GJ!
生身のディオが今後どうなるのか気になるところ。
ヴァリエール家に取り入る事が出来るなら、また七年ぐらい大人しくしているかなw


ところで些細な事だけどスピードワゴンは石油で財を成したはず。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 12:23:14 ID:qprUavl8
まあその辺は歴史が変わったという事でいいんじゃね?
それよりも石仮面も一緒にゼロ魔世界に来たのかと、その場合のツェペリさんのその後の方が気になるよw

>>218
あと『矢』の存在だな
ディアボロとか吉良とか
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 12:57:06 ID:6bv5rTiK
>>目で人が殺せるのであればまず間違いなく殺せたであろう目付き
スペースリパースティンギーアイズですねわかります
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 13:22:38 ID:lr2VqkJI
二部はジョセフ(あとシーザーもか?)はいないけれど、修行僧とSPW財団とドイツ軍人はいるから何とか……。
あー、よく考えたらシュトロハイムは完全な死亡フラグが経ってるのか。
解き放たれるサンタナの恐怖、立ち向かうはストレイツォ率いる修行僧たち。スト様の時代!
そして物語の佳境で裏切って石仮面を被るストレイツォ。あーん、スト様が(ry

妄想したら面白そうだが、書くにしろ読むにしろこのスレ向きじゃないな、ゼロ魔分がねえwww
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 13:47:48 ID:qprUavl8
まあジョースター一家は波紋の才能持ちらしいし、ジョセフがダイアーさんに偶然出あって
才能見出されるとか
そしていきなり第四部!
形兆の持つ『弓と矢』に刺されてスタンドに目覚めるジョセフの隠し子!!

……問題は第五部だな
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 14:05:17 ID:4s///Dqu
ジョースター卿の死因に泣いた

ところで「1889年」ではないかね?
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 19:04:42 ID:MGd8BoFd
>>223
夢のポルジョル無双だ
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 19:56:34 ID:AEzgeDNW
>>225

ヒント:ジョルノの父親
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 20:11:30 ID:jhdSOu97
>>222
スト様はディオの吸血鬼姿を見たから仮面を被ったわけだ
で、「矢」は発掘された物を婆から流出したのが四部の矢で、とある「バイト君」が持ち去ったのが五部の矢でしょ
ジョルノはDIOの息子だからこれも存在しなくなる

以上の点を踏まえ、二部以外のストーリーはなかなか起こり得ないことだろうね
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 20:24:15 ID:nWbM1Dvr
沢山のご感想ありがとうございます。明日までには2話、3話を投下できそうです。

>>219
朧気な記憶だとスピードワゴンは波紋使いの誰かにアメリカの砂漠を掘ったらいい事があると
言われていた気がしたので、彼らと会わなかったらどうなるか…と考えて株にしました。

>>224
YES!YES!YES!OH!MY!GOD!
まとめに乗る際に修正されていると嬉しいのですが…

ところで展開に少し迷っているのですが女物の下着を洗うディオって想像できますか?
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 20:46:02 ID:qprUavl8
まあ第一部の奴なら凄い形相で愚痴りながらもやってそうw
『……これも全てヴァリエール家を乗っ取るため、そしてトリステイン王家を我が物にするため!!』
とかつぶやきながらwww

しかしルイズとの相性悪そうだけど、カトレア相手なら本心さらけだしそうな
(ディエゴの母親基準で考えると性格が似ているようだし、しかも病弱なら放ってはおけまい)
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 21:46:27 ID:S3kSKYog
普通にシエスタたらし込んでやらせるんじゃねw
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 21:56:45 ID:zkVIB2S8
女性からは嫌がられる描写しかない一部ディオにそんなこと可能なのか
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 22:23:05 ID:XgoNGllq
あのルックスと何年間も続けられる演技能力があるから
シエスタならなんとかなるんじゃない?
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 23:39:08 ID:jhdSOu97
天性の魔性で生身でもハルケギニアを恐怖のずんどこへ
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 23:40:59 ID:Os8a963o
>>229
逆にカトレアの病弱さに付け入って何かしそうな気がする。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 23:43:57 ID:yOf8WnpP
なんか考えれば考えるほど、ディオとヴァリエール家の間に因縁が生まれそうな気がする
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/19(金) 23:48:28 ID:Zw7LkUxZ
まあしょせん人間verだからそんなに大事にはならんと思うよ
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 00:12:59 ID:BxBK33Zi
ルイズと契約した時点で人間超えちゃうけどな。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 00:20:56 ID:cxnVcP+I
ご意見ありがとうございます。この話によって以後の展開がかなり変わってきたりこなかったり…
あと私事により投下が遅れますが、今日中には投下できると思います。
度々の延長申し訳ありません。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 02:02:47 ID:WiHq8pJ6
恐るべき先達が存在しているから新作投下が少ないのかな?
ジョジョは勇気の賛歌なんだから頑張って欲しいところ

新ディオの方、次回も期待してます。幸運と勇気があることを願っている
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 02:57:58 ID:1GtGpk73
承太郎やらDIO様やらのような人気作と同じキャラ出すっていうのは結果が目に見えるからな
どうせ感想とかに
『新しく○○が使い魔の話が始まるなら××も投下再開しないかな』とか
『××みたいになる(ならない)の期待』みたいな有名な作品と比較レスがバンバンつくだろ
新作投下後に有名作品の良かった所が話し合われるのが今のこのスレの現状
新人は作品についての感想が一つ二つついてくれればましな感じ
投下するのも気が引けるわな

未使用キャラも使いやすい奴は掘りつくした感がある
残ってるのは召喚した後が問題なプッツン由花子さんタイプとスタンドが使いにくい裕ちゃんタイプ

投下する気がある新人さんが居るなら今は使いにくいキャラをどう動かせばいいかの構想練ってるんじゃね?
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 07:02:11 ID:o3HVN3rS
うぉ〜!人間のディオ・ブランドー召喚だとぉ!!
こいつは燃えるぜ、ゼロ魔世界で成り上がれるかディオ!!!

作者さん続き頑張ってくださいね〜
242おれは使い魔になるぞジョジョー!2話1/2:2009/06/20(土) 16:01:14 ID:/zsdeSzo
お待たせいたしました。第二話、幕間、第三話、第四話を投下します。
***********************************

左手に焼き鏝を当てられたような痛みが走った。気がつくと左手になにかの文字が浮かび上がっている。
まさか…おれは使い魔になってしまったのか?このディオがッ!

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第二話

「それでは儀式は終了だ。各自寮に戻るように。解散!」
コルベールが告げると生徒達は思い思いに帰って行く。ある者は召喚獣に跨り、ある者は『フライ』を使い…そして後には
「ゼロのルイズ、てめーは歩いて帰れ」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』さえもまともにできないんだぜ」
「悪いね、ルイズ。ボクの使い魔は一人用なんだ」
「なんならその使い魔に背負ってもらったらどうだー?」

次々と空に浮かび上がる生徒を呆然と眺めるディオとルイズだけが残されていた。

『ジョナサンを殺して人間を超越しようとしたらいつの間にかピンク色の髪をしたガキの使い魔になっていた』
な…何を言っているのか(以下略

次々と空を飛んで帰っていく生徒達を黙って見つめていたルイズは自らの使い魔に向き直ると大きく息を吸い込んで
怒鳴ろうとして…
「それでは説明してもらおうかッ!これがどういうことなのかをッ!」
使い魔に機先を制されて言葉を飲み込んだ。

「…ハァ。あんた全然状況を理解していないのね。」
使い魔を使役する為には主人が絶対の上にいる事を使い魔に理解させなくてはいけない。
「いいわ、歩きながら話しましょ」
これからが苦労しそうだとルイズは密かにため息をついた。
「まずはじめになぜ彼らは空を飛んでいるんだい?」
このハルケギニアに魔法を知らない平民がいるとは知らなかった。たぶんよほどのド田舎か山奥にでも住んでいたのだろう。
いわゆる『どこいな』である。
「そりゃ飛ぶわよ。メイジなんだから。レビテーションくらい知ってるでしょ?」

ディオの住んでいた世界で人間が空を飛んだのは1852年の飛行船が初である。飛行機に至っては1903年まで待たなければならない。
だがディオはその少ない情報からここが異世界である事、ルイズ達がメイジ…魔法使いと呼ばれる特権階級であり
魔法で空を飛ぶ事は彼らにとって当たり前の事だと言うことを理解した。

その後ディオは歩きながらルイズからこの世界について聞き出した。ハルケギニアについて、メイジについて、
トリステイン魔法学院について、そしてルイズについて…。そして部屋に着くころにはディオはこの世界について概ね把握していた。
一方ルイズも何時間もかけてディオが違う世界から来たであろう事をなんとか理解した。
243おれは使い魔になるぞジョジョー!2話2/2:2009/06/20(土) 16:02:35 ID:/zsdeSzo
「なるほど、ぼくが今君の使い魔であるという事は理解したよ、ルイズ」
優雅な格好で窓に腰掛けながらディオは夜食を取っているルイズに語りかけた。ディオに渡された夜食は潰れたパンだけであったが。
「そう、よかった…。」
ちなみにルイズはディオを完全な平民として扱うことに決めた。
ディオの一つ一つの物腰は貴族の気品を感じられるものであったが、ルイズには魔法が使えない貴族というものがどうしても理解できなかった。
それに礼儀程度はどこかの裕福な商人の過程であれば身につくものだ。
ちなみにディオはダリオのことを欠片も話していない。話す価値もない『無駄』な事だからだが、話したところで
ディオが貴族ではなく平民であるという事を隠すための言い訳ぐらいにしか捕らえられなかっただろう。

「あんた、元の世界に帰りたいと思わないの?」
夜食をすませ、口元をナプキンで拭きながらルイズは尋ね、ディオはなんの躊躇いもなく答える。
「ああ、元の世界は色々と住み心地が悪くてね。今更帰る気はないよ」
ジョナサンに虐待されていたと嘘をついてもいいがこの甘ちゃんのルイズ(暫く話している内にあの鬱陶しいジョジョと似たものを感じた)
はまず間違いなくディオに同情するだろう。そしてディオは自分が憐れまれることを何よりも嫌う人間であった。

ルイズはこの一日で非常に疲れていた。
召喚に成功したと思ったら出てきたのは平民だし、その上扱いにくい事この上ない。
まるで一見大人いように見えながらも絶対に人を乗せようとしない馬のようだ。
同じ使えないならこんな高慢ちきな奴よりどこかの少しスケベでも従順な馬鹿犬のような使い魔の方がよかった。
使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるはずだけどそんな兆候は全く見えないし
主人の望むものを手に入れてくる事も無理。かといって私を守れるとも思えない。
「それじゃあせめて掃除や洗濯ぐらいはしなさい。手足が付いてるんだし何もできないんじゃないでしょ」
その程度であれば特に問題もない。こんな小学校を卒業したばかりのような小娘にこき使われるのは我慢ならなかったが
この世界のことを全く知らない以上、しばらくは忍耐する必要があるだろう。

無言を肯定と見なしたのかそれに満足したルイズにディオが尋ねる。
「ところで…ぼくの寝床はどこだい?」
ディオの目の前で服を脱ぎながらルイズは黙って床を指さした。古い毛布が一塊おいてある。



「貴様!このディオを奴隷だと見なすのか!この小娘がァッーーーーーッ!!!!」
次の瞬間、ルイズはディオに殴られて床に倒れていた。
19世紀イギリス社会では奴隷は人間以下と見なされていた。貴族の女性が裸でいるところに奴隷が入っても
女性は眉一つ動かさない。最初から人間とは認めていないからだ。人間ではない相手に裸を見られても恥ずかしくない
それがイギリス上流階級の考えであり、ルイズの考えも同じであった。

つまりディオはルイズから
「おまえはこのルイズにとっての モンキーなんだよディオォォォォーーーーーーッ!!」
と言われたに等しいである。

「な、なによ…」
いきなりのプッツンに動揺するルイズの腕を掴んで引き寄せると腹の底から絞り出すような声でディオは恫喝した。
「いいか、これから君の使い魔になったからといってぼくにイバったりするなよな。お前がぼくを奴隷扱いする限り
 ぼくはお前の事は主人だとは認めないッ!」
そう言うとディオはルイズを突き放し、部屋の外へと出て行った。後には唖然とする半裸のルイズと床に散らばるルイズの服だけが残された。
そしてルイズは明日からディオを徹底的にしつけてやろうと決心するのであった。
                                            to be continued…
244おれは使い魔になるぞジョジョー!幕間:2009/06/20(土) 16:03:51 ID:/zsdeSzo
ところで、ぼくは仮面を持っていなかったかい?
あれはぼくのお守りでね、ないと少し困るんだ。
だが返ってきたのはそんな仮面は知らないし、最初からなかったという答えだった

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 幕間 侵略者ディオ

二つの月が輝く夜…学院の庭の椅子に一人の青年が腰掛けていた。だが気配を感じる事ができるものなら気がついただろう。
満天の星明かりに加え二つの月が辺りを照らしているのに、その青年の周りだけは闇夜よりも濃い漆黒の雰囲気に包まれている事を…
ディオはこれからの計画について考えていた。
何はともあれ考えなくてはならないのが石仮面の存在だ。あの後ルイズに聞いたところ石仮面はあの場所に来ていない事がわかった。
だが、おれはあの鏡に吸い込まれる瞬間まで石仮面を持っていた。ならば答えは一つッ!
石仮面もこの世界に来ているのだッ!

恐らく向こうとこちらの間を通る瞬間におれは手を放してしまい、石仮面はあの場所ではない所に落ちたのであろう。
街道の真ん中かもしれないし、森の奥深くかもしれない。だがおれには奇妙な確信があった。
            
           間違いなくいつかおれは石仮面に出会う。

運命とでもいうのだろうか、普段は一笑に付して否定するような解釈だが、人間の感情以外のところでディオと石仮面の繋がりが感じられた。
故にルイズッ!このディオはいま暫く貴様の下に居てやろうッ!
とある種のハチが食いついた芋虫を食い尽くして孵化するように、いつか石仮面を見つけこの身が人間を超越したら
貴様は真っ先に血祭りにあげてやる。

ゆらり、とディオは立ち上がる。辺りの重苦しい空気が動く。
だが万が一という事がある。完璧と思える策を弄しても、しばしば自滅してしまうのが人間だからな…。
その場合、いかにルイズを上手く利用して地位や財産を手に入れるかが重要となる。
その為にもまずはこの学院内に『友達』を作らねばッ!まだこの世界には文字や地理、風習などわからないことが多い。
だから貴族、平民の垣根なくこのディオを支えてくれるような『友達』を作る必要があるのだ。
気がつくと周りは明るくなり、鳥の囀る声が聞こえていた。
「朝か……奴の様子でも見に行くか…ハクション!」
そう一人ごこちつくとくしゃみをしながらディオはルイズの部屋へと行った。
生身の身体に夜の寒さはきつかった。

                                       to be continued…
245おれは使い魔になるぞジョジョー!3話:2009/06/20(土) 16:06:09 ID:/zsdeSzo
ルイズは自分のベッドへ行き二時間眠った。そして…目をさましてからしばらくして
使い魔が逃げ出したことを思い出し……
………泣いた……
おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第三話

ディオがルイズの部屋に入ると昨日散乱した下着がそのまま散らかっていた。どうやらあの後ルイズはそのまま寝てしまったらしい。
まだ朝は早い。使い魔として信頼を得る為ならば心底嫌だが掃除、洗濯くらいはやってやらなければいけないだろう。
日の光を浴びて小川はきらきらと輝いてまるでダイヤモンドが流れているようである。
ディオは洗濯場らしき場所を見つけると腰を下ろし、洗濯を始めた。
ディオ・ブランドーといえば常に上に立ちながら都合よく部下を使っていた印象が高い。
だがディオはジョースター家に養子として入る以前、具体的には母が死んでから父を殺害するまでの間、
家事の一切を切り盛りしていたのである。
故に洗濯も一通りこなせるのだが、それは同時にダリオとの辛い生活を思い出す事でもあった。
よってディオは早々に「この洗濯、昔の生活を思い出すッ!」と不機嫌になると、下着の端をつまんで小川の流れに暫く浸すだけにした。
「それじゃあ汚れは取れませんよ」
気がつくと後ろにメイドが立っていた。その笑顔はディオに一瞬だけ遠い昔、元気であった頃の母の笑顔を思い起こさせた。
「君は誰だい?見たところこの学院のメイドのようだが」
「私はシエスタと申します。あなたはミス・ヴァリエールが召喚した平民の方ですね?」
「ああ。ぼくはディオ・ブランドーだ。よろしく」
どうやらゼロのルイズが平民を使い魔にしたという噂はあっという間に校内に広がったらしい。
「それよりディオさん。そんな方法じゃちゃんと綺麗になりませんよ。」
と言うとシエスタはディオの籠を手に取り、慣れた手つきで洗いはじめ、あっという間に洗濯を終えた。
「ふぅ、できました。」
笑顔で洗濯済みの籠を渡すシエスタ。
「すまないね。ぼくは女物の下着を洗った事がなくてね、どうしたらいいのかわからなかったんだ」
そう言うとシエスタは今更ながら女物の下着を洗っているディオを思い出して赤面する。
「でっでもっ酷いですよね!他の方は使い魔がいても自分で掃除も洗濯もするのに…」
やはりルイズはおれを奴隷かなにかと勘違いしていたようだ。怒りの感情が込み上げてくる。
「…。」
気が付いたらシエスタが少し引いていた。気付かないうちによほど凄い顔をしていたらしい。この感情がすぐ顔にでるのもなんとかしないとな。
「あの…」
やがてシエスタは怖ず怖ずと提案をした。
「よかったらこれからは私が洗濯しましょうか?」
「本当かい?しかし君も忙しいだろう。大丈夫かい?」
「はい。あの程度の洗濯ならすぐに終わりますから♪」
フフ…この言葉を待っていたぞッ!人が困っていれば手助けしてしまうようなお節介野郎めッ!

「ありがとう、ミス・シエスタ」
「そ…そんな…ミスだなんて…///ただのシエスタでいいですよ」
「でもそれじゃあぼくの気がすまないな」
「いいんですよ、困った時はお互い様です」
「ありがとう、いつかお礼をするよ」
そういうとシエスタに背中を向けて部屋に戻るディオ。その顔つきはまさに『計画通り!』とでも形容できるような表情だった。
ディオにとってシエスタは都合よく動く駒の一つを見つけたぐらいでしかなかったのだろうか…。

                                 to be conthinued…
246おれは使い魔になるぞジョジョー!4話1/2:2009/06/20(土) 16:07:36 ID:/zsdeSzo
「使い魔」とは主人に絶対の忠誠を誓い、己の身を盾にしてでも主人の為に尽くす存在らしい。
恐らく契約の際なにかの洗脳でもされるのだろう。このディオにも知らず知らずの内にそのような洗脳を施されているのだろうか。
考えると胸くそが悪くなった。

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第五話

日が昇ってから時間も経ち、生徒達の声もいつの間にか聞こえてくるようになった。
そんな中、ディオはルイズの部屋にスルリと入る。
フン、まだ寝ていやがる。使い魔である以上放っておく訳にはいかないので無理矢理起こす。
「ん…んんぅ…」
「おっとルイズ、朝だ、起きるんじゃあないのか?」
と言いながら毛布を剥ぎ取る。

「な、なによ!何事!?」
「朝だ、ルイズ」
目をこすりながらディオを見上げたルイズは

「…あんた誰よ!?」
と怒鳴った。このド低脳めッ!

「昨日ぼくを使い魔にしたのはどこの誰だったかな?」
「あ…帰ってきてくれたの…じゃなくって昨日はよくも!ちゃんと掃除洗濯したんでしょうね!?」
「ああ、してあげたよ。御主人様」
昨日の行動から想像できなかったルイズは面食らいながらもやっと使い魔の自覚が持てたのかと一人納得し、服を着はじめた。
昨日の事を思い出し、恐る恐る服を取ってくれるように『頼む』と、丁重に取ってくれた。

服を着替えてドアを開けて廊下に出ると、同時に赤い髪の女が向かい側のドアを開けた。ヴァリエール家の宿敵、ツェルプストーだ。
「おはよう、ルイズ。昨晩はお楽しみでしたか?」
「うるさい、下半身で動いてるあんたと一緒にしないでよ」
「『微熱のキュルケ』ですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。
 でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
ただでさえ朝に弱いルイズの機嫌が悪くなる。だが女はそんな事を気にする様子はない。
「あなたの使い魔ってそれ?」
とディオを指差す。この学院の女生徒は皆スカートの丈が短いが、それにも増して露出が高い女だ。
ロンドンを騒がしていたジャック・ザ・リパーがいれば真っ先に襲っただろう。
だがキュルケはそんな二人の様子など我関せずといった様子で水路の関を外した水のように話し続ける。
「『サモン・サーヴァント』で平民(笑)呼んじゃうなんて実に『ゼロのルイズ』らしいじゃない」
「…うるさい」
ルイズの機嫌が更に悪くなるが、女は構わずディオに向き直る。
「私の名はキュルケ・フォン・ツェルプストー。キュルケでいいわよ。あなたのお名前は?」
「ディオだ。」
値踏みをするように暫くディオを見つめると、ただの平民だと判断する。
てっきり異世界の光るマジックアイテムとかそういうものでも持っているかと思ったがそうでもなさそうだ。
「でもあなたも大変ね。『ゼロのルイズ』になんて召喚されて。そうだ、ついでだから私の使い魔も紹介してあげる。おいで、フレイム!」
すると女の後ろから巨大な赤い色をしたトカゲがのっそりと姿を現した。
「ふふ、やっぱり召喚するなら何もできない平民よりフレイムみたいなサラマンダーを召喚するべきよねぇ〜ヴァリエール」
ルイズには反論できない。何回も失敗したあげく出てきたのは主人の言うことを聞かない使い魔。しかも平民だ。
ルイズはサラマンダーを見せ付けるように可愛がるキュルケを憎々しげに見つめる事しかできなかった。
「ほーら、貴方の勇姿をヴァリエールの貧相な使い魔に見せてあげなさい」
そんなルイズを見てキュルケはトドメとばかりに嫌がらせをする。
247おれは使い魔になるぞジョジョー!4話2/2:2009/06/20(土) 16:09:25 ID:/zsdeSzo
キュルケの命令通りルイズとディオに近付くフレイム。




ボギャァァ!!




次の瞬間、フレイムは顎を蹴り飛ばされていた。
なんの事はない。ディオがフレイムに膝蹴りをしたのだ。
いくら火吹き竜とはいえ思ってもみなかった攻撃には耐えられなかったらしく、フレイムは部屋の端に吹き飛ばされてしまう。
「な、何をするだァーーッ!ゆるさん!」
思わずゲルマニア訛りで怒るキュルケ。
だがディオはゆっくりと姿勢を戻すと、
「すまない、火吹き竜なんて元の世界では見た事がなくてね、思わず攻撃してしまった。許してくれ」
と丁重に謝罪した。
キュルケは言い返そうと思ったが、平民がサラマンダーを恐がるのは当たり前の反応だし、なにより少し挑発しすぎたかな、と
後悔していた所だったので、今の無礼はなかった事にした。
とはいえヴァリエールの者にまで「はいそうですか」と許す気はない。
「わかったわ。でも使い魔の責任は主人の責任。ルイズ、今日の真夜中に決闘を申し込むわ。お受けになって?」
売り言葉に買い言葉、ルイズも負けじと言い返す。
「当たり前じゃない。今日の真夜中ね?覚悟しなさい!」
そう叫ぶルイズに何度も一輪車に乗ろうとしては倒れる子供を見るような目つきで微笑むと、
「立ち会い人はタバサに頼むわ。それじゃ、逃げ出さないでね」
と会釈をくれ、食堂へと歩いていった。

その姿を見送ったルイズはディオに向き直る。その顔は先程とは違い、喜んでいる。
「あんたやるじゃない!あのツェルプストーの使い魔に一発喰らわせるなんて!」
キュルケには謝っていたがあの瞬間のディオの顔はとてもサラマンダーを恐れている人間のものではなかった。
あのキュルケに一泡吹かせたんだから鳥の皮くらいはサービスしてあげてもいいかもしれない。
だがディオはそんなルイズに背を向けると、
「今まで見てきたが、今確信が持てた!
 ぼくは使い魔が嫌いだ!怖いんじゃあない。人間にへーこらする態度に虫酸が走るのだ!
 ぼくはあのフレイムとかいう阿呆竜のようにはならないからな!」
と言い残し、食堂へと去っていった。
やはり今日の食事は抜きにしてやろう、ルイズはそう思い直した
                                            to be continued…
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 16:11:06 ID:/zsdeSzo
以上です。もしまとめていただけるのでしたら第三話の題名の上は1行開けてください。

第四話とか読みにくいと思います…。ご感想等あればお聞かせください。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 16:17:38 ID:egz4H3q8
第4話が5話になってますぜ
あとサラマンダーを蹴っ飛ばすとは流石ディオ! 俺達に(ry
というか結構でかい生き物なのに人間に蹴られた程度で吹っ飛ぶかなと思ったが
ディオもジョナサンほどではないがマッチョだったな

さて『誰が』石仮面を被るのやら
(ここでゼロ魔キャラが被ったら面白いと思う俺
 ディオは波紋使えなくても太陽に弱いという事は知ってるしガンダのルーンあるから全く太刀打ちできなくはないだろう)
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 16:42:54 ID:WiHq8pJ6
ディオがちゃんと自分を持っていることに好感
アイデンティティをちゃんともってディオというキャラクターを動かしていってください

殴るなんてディオにしか出来ないしな
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 17:06:18 ID:/zsdeSzo
うわ…今見直してみると結構誤字が多い…。訂正表貼っておきます。
2話2/2
×捕らえられなかっただろう。
○捉えられなかっただろう。
幕間
×食いついた
○卵を産んだ
3話
×印象が高い
○印象が強い

>>249
やってしまった…。ディオがフレイムを吹っ飛ばしたのはノリだと解釈していただけると嬉しいです。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 17:16:23 ID:EOxseGXP
人から好意を受けても、都合のいい駒が手に入ったとしか思わない、流石ディオ
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 19:09:04 ID:LkhNgXvP
ああ、ディオ!ディオ!ディオ!高慢にして不遜な君がまた見れるなんてステキだ!!!
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 22:51:27 ID:2HMeUuP7
>>245
///って何語?スラッシュスラッシュスラッシュ?
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 22:54:44 ID:ERcWpWOd
誤字が多いだって?それは違うぞジョジョ・・・
逆に考えるんだ。『原作に近い』と考えるんだ。
五時が多いのもジョジョの魅力の一つなんだ。
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 23:43:19 ID:lAngkroG
>>254
漫画で照れたて赤面したキャラの頬に///と斜め線が書かれる事があってそれを記号で表現しているのだろう
基本的に頭の弱いスイーツ(笑)御用達の「私はまともな日本語を書けません」というメッセージだ

そうと知らずネットで見かけてつい使っちゃう程度の事は初心者のうちはあるもんさ
SSとしてまともな体を保ちたいならもう使わない方がいいがね

行動がディオらしくて面白かったけど、一度に投下できるなら話数を分ける必要はなかったんじゃないかな?
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 00:53:22 ID:YX5eSlqR
おれ魔の人GJ!
ルイズを殴り飛ばすとはそこにシb(wry

>>256
お前は今までSSに出てきた「w」を注意した事はあるのか?
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 00:55:28 ID:Ab8IqDpc
記号にしろ区切りにしろ別に本に纏めて世に出すんじゃないんだから本人の好きにさせればいいんじゃないかと思うがね
まあわざと使うんなら話は別だが、そうじゃないんなら
使わない方がいいものもあるって事は覚えておいても損はないだろうさ
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 01:03:58 ID:U5zq4fYT
それらの記号を使うのは書き手の自由。
そしてそんな作品を無視するのも読み手の自由。

少なくとも俺はwだの///だのをなんの臆面も無く
使ってる作品は、よほど暇じゃない限り読まんなぁ。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 01:06:29 ID:Tibf1zxw
お偉い先生ようこそ
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 01:21:41 ID:3q7iy6Q1
こんな雰囲気だから新規が来ないんだよ。それを分かれ
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 01:40:28 ID:AoY4Nwb+
意見を言うのは大事なんだけどさ、言い方を少し考えようぜ
姉妹スレのほうみたいに荒れやすいスレにしたいワケじゃないんだろ
書き手さんにもっと面白い作品を書き上げてほしいから意見や感想を書くんだろ
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 02:21:55 ID:mVj67Qbx
国語の教師か うう・・うう・・・うおお おっ おっ オメーらはよォォォォ
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 07:59:36 ID:+OcAFreL
>>1読めって事だ
それよりこのコンビ案外気に入ったんで思わず描いてみたんだがどうだろう?
ttp://www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0455.jpg
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 09:03:17 ID:Ab8IqDpc
>>264
ブラボー!おお、ブラボー!
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 09:15:10 ID:fWmMcIRI
すげぇ!
少しラインを崩せば初期の荒木絵になりそうだw

俺使の人はモラルのない蚤は無視して頑張って下さい
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 12:37:31 ID:elWm6ZNz
>>266
無駄に煽るのもやめようぜ…

>>264
もうこの絵でしか脳内で再生されない!
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 13:12:45 ID:TpldFOr5
>>263
しぇっこさん乙
……そういえば最近はしぇっこさんAAが貼られてないな
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:35:09 ID:+OcAFreL
どうも私のSSの方でスレが色々と揉めてしまい申し訳ありません。
言葉の感じを表してみたかったのですが、短慮でした。以後気をつけますので
これからも生暖かく見守っていただけると嬉しいです。
五話、六話は明日投下したいと思います。

>>264
御支援感謝感激です!
こうやってディオとルイズを並べてみると歳の離れた兄弟みたいですね(笑
それにしても絵まで描いていただけるとは…最高に「ハイ」って奴ですよ!
本当にありがとうございます!
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:36:04 ID:+OcAFreL
IDが同じ…だと?
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:47:27 ID:+OcAFreL
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|   あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|    『誰か支援してくれた方がいたと思ったら
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     弟だった』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人      な… 何を言っているのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ     おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ     頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    偶然だとか自演だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ   そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ     もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

家族でパソコンを共有してるって怖いわ…
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:50:05 ID:3q7iy6Q1
まさに引力
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:50:56 ID:fjOFz8FK
なにか奇妙な運命のようなものを感じるっ!
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:52:20 ID:rpu3VLi2
支援絵を何故描いたか?
おれがおまえの作品を尊敬してるから?

 rv-゙゙゙'''"⌒ ̄ ̄ ̄ ゙̄ ̄ ゙゙゙̄''''''''''''''''- .、
 r!-'':、               ∧ :::::::::}
 {::::::::!ヽ             / ! .::::::::{
 {:::::: | ヽ             /  .| .:::.:::{
 {::::: ゙゙゙゙゙゙゙            ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙..:.::.:::{
 }:::'      ,,/゙~\、       .:.::.::.:::::::}
 {::    ,,彡゙゙      ヾ ミ    .:.:.:.::.::::::::{        違う
 {::::  彡ヽ   i    / ヾミ     .::.::::::}       おれは    、,
 .}  ト.  \ l  _ノ _   \   .:::::::::}       おまえの『 ,ニlコ
 {:: ノ '弋ラゥ⊥レィ'ヽヒソノ   \   :::::}.                フ|.7 』だからだ
 } / i:l ` ̄ | 、    ̄   ヽ \  :::{
 { .{::::`ハ    ,'  ヽ     ! l::::ヽ !  :::}
 } .i::::::::`';  ヽ-ァ       !l:::::::::::i  ::}
 { !::::::::::ハ  -、_ ニニ    // リ i::::| ::{
  } !::::::::::::ヽ ー -  イ  /  i / .i::::| :}
  {._!::::::::::::::.ト、    イ   //  ';::|._.}
   ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙/::/ ̄ ̄: : : : ;.イ /   〉::::
 .     /:::::ヽ`¨ニ ¨ ̄  /   /:::::::
        ,'::::::::::ハ       i   /::::::::::
        {::::::::::::ヽ、    ,,.. <:::::::::::::::::
 .     〈::::::::::::::::::`::::¨´::::::::::::::::::::::::::::::
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 14:54:59 ID:CijsuGUm
兄弟で同じスレを見るって、どのくらいの確立なんだろうな…ッ
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 15:02:25 ID:8n/gZP+W
兄弟でルイズ萌えかい…やれやれだぜ…
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 15:13:35 ID:LYpPxz0E
引力すげえな
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 17:11:03 ID:AiDdzgkX
ゼロ魔好きは引かれ合うというのか
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 17:46:16 ID:h32uQEAM
兄弟…ゆくゆくは血で血を洗うことになるのか・・・
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/21(日) 18:44:54 ID:LWG+Z2gm
>>275
うちの場合、兄弟で一部の趣味が重なってるから、議論系スレで鉢合わせする事が何回かあったな。
この書き方は兄かな?と思って後で聞くと大体そうだった。
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 03:05:23 ID:Y7GUWI9Y
よく訓練された自演に思えるのは俺の心が汚れているせいか
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 10:25:16 ID:UVykFxNl
自演だとしたら自分で挿絵もSSも書いてるって事になるのかw
なんにせよ俺は作者が書き続ける間は文句言わないよ。書いてるうちはね
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 11:49:23 ID:ecp4zvGX
ばれなくても自演のスタイルでやるメリットが無いのが味噌だな
もう自演自体が目的になってるか

俺は自演じゃなくて、更に弟でもないと見たね
多分スタンドだ
スレにSSを投下した時だけ発動するノトーリアスB・I・Gの亜種だろう
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 12:18:44 ID:e7w/KfNm
俺もスタンドほしい。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 16:57:37 ID:t01qMCqB
俺の下はスタンドだ
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 22:47:16 ID:Ak8PtZBu
>>285
……奇遇だな。俺のスタンドも下についているんだ。
しかも遠隔操縦型である特定の対象に接触した場合、新たな生命を生み出すという能力なんだ。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 22:52:31 ID:JKIpKJpw
>>286
同じタイプのスタンド!
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/22(月) 22:57:41 ID:/LsGjI1R
スタンディング!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/23(火) 12:57:31 ID:tO7w8+tj
結局来なかったな
290おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:15:40 ID:ZMijmUcZ
誰もいない…代理投降するなら今のうち(AA略


すいません、本スレの方で「おれは使い魔になるぞジョジョーッ」を書いているものです。
先日はまたお騒がせしてすみません。あの時はまさにポルナレフのAAそのまんまの心境でした。
「…信じられねぇな」って方はスタンドって事にしておいてください。
本題に入りますが、規制されてしまったのでこちらにて投下させていただきます。
どなたか代理投下をお願いします。
今回は第五話、幕間、第六話です。幕間には若干ネタが入っているので気をつけてください。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/23(火) 15:16:40 ID:ZMijmUcZ
ディオはルイズによって召喚された。だが、彼は四系統のいずれにも当て嵌まる覚えはなかった。
ディオは自らが召喚された理由を考えるが、その間にも運命の歯車は回り続ける。

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第五話

朝食の席で特筆するような事はなかった。食堂に入ろうとするディオをルイズは物陰に引っ張り込み、
使い魔が食堂に入れる事自体が特別なんだから床で十分だと説明した。
そして床に皿を用意してやるからさっきの自分に対する態度を謝れば食べさせてあげない事もないと言ったが、
ディオは憎々しげな視線をルイズに向けると黙って立ち去った。

朝食が終わり(何故か今日の)、授業の為に教室へ行くと、いつの間にかディオが後ろを歩いていた。
大学の講義室のような教室に入るとすでに教室に入っていた生徒達から囁きが漏れる。
ルイズの召喚した前代未聞の平民の使い魔にみな興味津々なのだ。

そんな教室の様子にも我間せずといったかんじで入るとディオはルイズの隣に座ろうとした。

それを制止し
「あんたの席はここじゃないわ。ここはメイジの席。使い魔は…」
と言いかけたところでルイズは先程の出来事を思い出した。床に座れなどと言おうものならまたディオに殴られるか
黙って教室から出ていってしまうだろう。しかも今回は衆人監視の元で。
そうなったら恥ずかしい処の話ではない。使い魔も満足に御せないダメルイズ、やっぱりゼロはゼロだったと
嘲笑雑じりに馬鹿にされるのは目に見えている。
そこでルイズは―――使い魔と同じく剛巌不遜な態度に徹する事にした。
だがルイズは知らない。自分が無意識のうちにディオに恐怖していたという事を。

教室の先客にはキュルケもいた。キュルケの周りには何時も通り男生徒達が群がっている。
だが本当になかった事にしたのか、あるいはプライドが傷つくと考えたのかフレイムを蹴られた事を言い触らすつもりはないらしい。
それどころかディオと目線が合うとウィンクをする始末であった。

そんなキュルケを無視し、慣れた様子で『椅子に』座り、周りを見渡すディオ。
成る程、使い魔にも色々とあるらしいな。蛇や蛙、昆虫といった中にキュルケのサラマンダーをはじめとしてお伽話にしか
出てこないような動物がちらほらと見える。
だが、あいつらは全てジョジョのペットであったダニーと同じように主人の顔色を窺うようなゴミ以下の奴らでしかないッ!
メイジ共は自分に都合良く動くように洗脳しただけのそれを友情とごまかしているだけなのだ!

そうして暫くすると中年の優しそうな風貌をした女性が入ってきた。どうやら彼女が教師らしい。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、
 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
と、ここで野次が飛ぶ。

「先生!一人その辺を歩いている平民を召喚しちゃって失敗した人がいます!」
小太りの生徒、マリコルヌだ。それにつられて爆笑する生徒達。
シュヴルーズはそれを睨むとルイズの方を向き、ディオをしげしげと観察する。
292おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:18:22 ID:ZMijmUcZ
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
その間の抜けた発言と皆の笑いに気をよくしたのかマリコルヌは更にルイズを馬鹿にし、ルイズの応戦に挑発する。
そのやり取りはシュヴルーズがマリコルヌ他の口に赤粘土を貼り付けて口を封じるまで続いた。
その間ディオは表情一つ変えず、まるで自分は全く関係ないかのように一連の騒ぎを冷ややかに見つめていた。

「私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。
 魔法の四大系統はご存知ですね?ミスタ・マリコルヌ」
「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです。」
生徒達には今更の話題であるらしく、あまり真面目に聞いていないが、ディオは熱心に聞いていた。
この世界では当たり前の事であるが、ディオにとっては初めて耳にする事ばかりである。
この先この世界で暮らしていく以上、どんな些細な事でも知っておく必要がある。

だが系統の話を聞いているうちにディオには一つの疑問が湧いてきた。『何故おれは召喚されたのか』という事である。
シュヴルーズの話では、使い魔は主人であるメイジの系統に沿ったものが召喚されるらしい。
だがディオには今の四つの系統に当て嵌まるような覚えはない。
主人の系統を知っておく事は大切かもな。そう考えるとディオは熱心に授業を聞いているルイズに尋ねる事にした。

横目でみるとシュヴルーズはどうやら石ころを錬金術で変質させたらしい。キュルケが身を乗り出して質問をしているが、
あまり興味は引かない。魔法や空想の生き物が存在しているのだ。錬金術くらい存在して当たり前である。

「ルイズ、少し聞いてもいいかい?」
「なによ」
ディオは小声で隣のルイズに尋ねる。
「さっき聞いたところ四つの系統が存在しているらしいが、君はどの系統なんだい?」
「…うっさい」
と、ルイズは表情を暗くすると呟く。
「主人の系統を知りたいのは普通だろ?まさか『虚無』の使い手なのかい?」


「うるさいって言ってるでしょ!?」
突然ルイズが怒鳴る。シーンと静まり返る教室。憮然とした顔付きをしているディオが
ふとキュルケを見るとやっちゃったなというジェスチャーをされた。
「ミス・ヴァリエール!私にむかって煩いとは何事ですか!」
「あ…いえ…その…違…」そして盛大に勘違いをする教師。自分の話に熱中していて前後を聞いていなかったらしい。が、
293おれは使い魔になるぞジョジョーッ!:2009/06/23(火) 15:19:31 ID:ZMijmUcZ
「そこまで自信があるのであれば、あなたがやってみなさい!」
途端にざわめきだす教室。中には早々と机の下に潜り込む者もいる。
「先生、ルイズは止めておいた方がいいです!」
誰かが言う。
「どうしてですか?」
「あまりにも『危険』だからです!」
ルイズ以外の顔を出している生徒全員が頷く。
「な、なんなら私がやります!」
とキュルケ。しかし


「だが断る。」
容赦なく死刑宣告は下された。
「このシュヴルーズの好きな事はできないと思われている生徒に成功させることよ。
しかもミス・ヴァリエールには今回自信があるみたいです。あらゆる機会を捉えて生徒を成長させるのが教師の務めなのですよ。
さあ、やってみなさい」

今度こそ我先にと机の下に潜り込む生徒達。後ろで待機している使い魔を呼び寄せる生徒もいる。
ディオも周囲の危険を察知してゆっくりと机の下に潜る。
ルイズはそれらを横目に暫く逡巡していたが、やがて意を決すると教壇へと足を進めた。
「さあ、錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
必死に連想するルイズ。その顔は美しいが悲しいかな、それを見ているのはシュヴルーズだけである。


次の瞬間、石と教卓が物凄い音を立てて爆発した。使い魔や生徒達の悲鳴や祈りの言葉が教室内に充満する。

グラウンド・ゼロにいたルイズはひっくり返って気絶しているシュヴルーズを見、頭に手を当てた。

「てへ、ちょっと失敗しちゃった」
その場にいた全員から突っ込みを入れられたのは言うまでもない。
先生が気絶してしまったので残りの時間は休講となり、ルイズは罰として教室の掃除を行う事になった。
そしてディオはルイズの文句を聞き流しながらルイズが『ゼロ』と呼ばれている事を理解し、今の出来事について考えるのであった。
                                         to be continued…
294おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:21:15 ID:ZMijmUcZ
注)前半はネタが混じっています。
コルベールがオスマンにガンダールヴの事を報告する下りですので、あまり好きではないという方は飛ばして下さい。

ミス・ヴァリエールが召喚した人間。彼は一見異世界から来たただの平民にすぎない。だが、彼の左手に刻まれていたルーン、
あれはまさか……伝説の使い魔のルーンではないだろうか…

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 幕間其の二 伝説の使い魔ガンダールヴ

図書館で一人の教師が調べ物をしている。時折本を取り出してはパラパラとめくり、ため息をついて本を戻す。
何冊目になるだろうか、教師のみ閲覧を許される部屋で本をめくっていた彼はとある本を食い入るかのように読みはじめ、
やがて本を持って走り去った。

トリステイン魔法学院の院長オールド・オスマン。白い口髭と長い白髪に覆われた外見の彼は一見するとただの老人に見えるが、
その正体は年老いてなお膨大な魔力を持つメイジである。

そんな彼は今本を読んでいる。近くの椅子ではオスマンが雇った秘書、ミス・ロングビルが同じく本を片手に何かを書いている。
ゆったりと無限とも思われる時間が流れていく空間は突然入ってきた太陽、もとい光が頭に反射して眩しい
コルベールが入ってきた事によって壊された。

「たた、大変です!オールド・オスマン!」
ちょうどシーザーという青年が吸血鬼になった祖父の弟子を倒すという山場を中断されたオスマンはあからさまに不機嫌な様子で本、
いや吸血鬼が連載しているという噂のある「戦闘潮流」と題した『マンガ』を置く。
「大変な事などあるものか。『味方だったはずの男が吸血鬼になった』事に比べればすべては小事じゃ。
 …ええとなんだっけ………そう…コルベールよ。」

しかしコルベールは先程まで図書館で読んでいた『始祖ブリミルの使い魔たち』を押し付け、とあるページを指差す。
それに何事かを察したオスマンは
「ミス・ロングビル、席を外しなさい」
とロングビルに退席を命じる。
ロングビルはぼうっとした顔をしていたが、怒ったような泣いたような不思議な顔をしながら先程まで書いていた手紙を持ち、
ふらふらと部屋を出ていった。
ロングビルをちらちらと見るコルベールの目に「あーん!スト様が死んだ!」という手紙の文面が目に入ったが、
訃報を覗くのはよくないと思い直し、それ以上見るのをやめた。

「それでは話を聞こうではないか」
説明を始めるコルベール。
「先日ミス・ヴァリエールが不思議なルーンを持つ使い魔を召喚した事はすでにご報告した通りです。
その後、そのルーンが気になり調べていたのですが、ついに同一の物を発見致しました。
あのミス・ヴァリエールが召喚した使い魔のルーン!彼は間違いなく始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴです!」
オスマンの眉がピクリ、と上がる。
「ほう、始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴとな?」
「はい。何故彼がガンダールヴなのか、何故ミス・ヴァリエールに召喚されたのかはまだわかりませんがこれは大事に違いありません!」

伝説の使い魔が召喚されてきたという事はただ事ではない。それが何かはまだわからないが、いずれにせよ重大な事が起こるのであろう。
だが、万万が一コルベールの口からその事が伝わろうものなら騒ぎになるのは目に見えている。オスマンはとりあえず誤魔化す事にした。
「ふむ、しかしルーンが同じだからといってガンダールヴと決めつけるのは早計かもしれん。」
「…はあ…そうですか」
不承不承ながらも納得するコルベール。
と、突然扉が開かれる。先程出ていったロングビルだ。

「オールド・オスマン!大変です!ヴェストリ広場で決闘騒ぎです!教師達が眠りの鐘の使用許可を求めています!」
「決闘などたいした事もなかろう。どうせ若気の至りじゃろ」
「しかし、決闘しているのはギーシュ・ド・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔の青年です!」

「「なんだと(ですって)!!」」
オスマンが慌てて遠見の鏡を起動させると、二人は広場の様子を食い入るように見つめるのであった。
                                            to be continued…
295おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:22:50 ID:ZMijmUcZ
ディオは一人考える。主人が『ゼロ』なら使い魔の評価もそれに準ずる。ルイズはともかく
自分の事を周囲に認めて貰うには贄が必要であると…

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第六話@

時は遡る。ルイズは昼までかかって部屋を片付けた。ディオに命令してやらせようかとも思ったが、殴られた恐怖は簡単に消えず、
結局自分で片付ける事にした。だが掃除が昼前に終わったのは、いつの間にかディオが手伝ってくれた為である。
最もディオが掃除を手伝ったのはディオは主人を見捨てる使い魔であるといったようなマイナスイメージを避けるためのものであったが。

昼食を取る為に食堂に行くルイズ。ディオは相変わらず姿を消したようだ。いつまでその態度が持つか、ルイズはディオと根競べをする事に決めた。
ディオもまた人間である以上兵糧攻めをすれば勝のはこちらなのだ。ルイズは勝利を確信してほくそ笑んだ。

「…フンッ!」
ディオもまたルイズに屈する気はなかった。使い魔に身を窶しても床で食事を取るくらいなら餓死を選ぶ、それがディオである。
誰もいない廊下を歩きながらディオは考える。
(そう、今朝纏めたようにおれに今必要なのは必要な時に利用できる『友達』だ。だが、あのガキは『ゼロ』のあだ名の通り
 生徒どもから馬鹿にされているッ!その『ゼロ』の使い魔であるこのディオがきっかけを掴む為には誰か適当なメイジを倒し
 おれの株を上げる事が一番いい。だが、いきなり喧嘩を売るわけにもいくまい。どうすればこちらに後を引く非がなく
 適度な強さのメイジを皆の目の前で倒す状況に持っていくか…)
考えていると腹の虫が鳴る。悲しいかな、いくら鍛えていても人間である以上腹は減る。
「くそッ!忌ま忌ましいッ!本来だったら今頃、おれは人間を超越した存在になっていたはずだッ!それが今、
ガキの我が儘ごときに我慢しなくてはならないこの状態が気に入らないッ!」思わず壁を叩く。
「あの…」
どこかで聞いたような声がしたので振り返ると、今朝会ったメイドがいた。


「ふむ、なかなか…いや、とても美味しいよ」
数分後、ディオは厨房で食事を取っていた。朝出会ったメイド、シエスタは厨房で働いていたのだ。
(今朝の縁がこんなところで生きてくるとはな…。)
ディオの顔に黄金色のお菓子を目の前にした悪代官のような笑みが浮かぶ。
(だが!それよりもルイズの鼻を明かしてやった事がなによりも愉しいッ!ンッン〜〜♪ 実に! スガスガしい気分だッ!
  歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ〜〜フフフフハハハハ…)

そんなディオをシエスタは料理を喜んでくれていると思い、ニコニコと見つめる。
やがて、そんな二人を見つけて太った中年のオヤジが近づいてくる。料理長のマルトーだ。
「あ…私、デザートを配ってきます!」
マルトーを見つけたシエスタは思い出したように立ち上がると、デザートを乗せたお盆を持って厨房を出ていき、
代わってマルトーがディオの隣に座る。
「あんたが貴族に召喚されたって平民か?シエスタに聞いたよ。しかも主人は高慢ちきだって話じゃないか。
 ついてないもんだな。確かディオだったかな?自己紹介が遅れたが俺はマルトー、ここで料理長をしている」
握手を求めるマルトーを上手く避けながらも慇懃に答えるディオ。

「マルトー…さんがこの料理を作ったのですか?」
「ああ、そうとも!この料理は賄い物だがあの食堂でくっちゃべってる貴族サマとおんなじモノだ。
奴ら、自分で言うのもなんだがこんな美味い料理を三食食って当たり前ってツラしてやがる。理不尽だとは思わねえか?」
どうやらこのマルトーとかいうコックは貴族を嫌っているらしい。
「あいつらは、なに、確かに魔法はできる。土から鍋や城を作ったり、とんでもない炎の玉を吐き出したり、果てはドラゴンを操ったり、
 たいしたもんだ!でも、こうやって絶妙の味に料理を仕立て上げるのだって、言うなら一つの魔法さ。そう思うだろ、ディオ」

完全に自分の世界に入っているマルトーにおざなりに同意すると続いて大笑いする。忙しい男だ。

「気に入った!お前さんわかってるじゃないか!いつでも食べに来てくれ!大歓迎するぞ!」
これで食の問題は解決した。次はメイジの件だが…
その時、少年の怒号とシエスタの詫びる声が聞こえた。
「どうしたんでしょう。ちょっと見てきます」
とディオは立ち上がる。丁度良く向こうから機会がやってきたらしい。ディオは罠にはまった獲物を見つけた猟師のような笑みを浮かべると、
騒ぎの現場へと足を向けた。
296おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:24:13 ID:ZMijmUcZ
「どうしてくれるんだ!君のせいでボクの制服が汚れてしまったじゃないか!」
先ほどから怒っているのはトリステイン王国屈指の名門であるグラモン伯爵の四男、ギーシュ・ド・グラモンである。
どうやらデザートを配っていたシエスタが向こうから取り巻きとやってきたギーシュにぶつかってしまったらしい。
ぶつかったとは言っても軽く触れただけだが、その少し前に付き合っている相手、ケティから他に交際相手がいるのではないかと
問い詰められていた為、機嫌が悪かったのが災いした。平民とメイジの階級の違いの故かギーシュの取り巻きはもちろん、
他の生徒も遠巻きに囲んで眺めているだけであり、誰もギーシェを制止しようとしない。

「お願いします!どうかお許し下さい!」
シエスタは必死に懇願する。経過はどうであれ平民がメイジを怒らせた以上、最悪殺されるかもしれないのだ。

その様子を見てギーシェは内心たじろぐ。相手は若い女の子でしかもなかなか可愛い。女の子を泣かせるのはギーシュとしては苦手な事であったし
今は何も言わない周りもこの状況が続けばギーシュの味方でいつづける確証はない。ちょっと怒ったら向こうがオーバーリアクションを取った。
うん、これで大丈夫。そう考えるとギーシェはその場を納めようとし、


パリン

何かが割れる音が響き渡る。
「おっと、すまないね。きみのポケットから香水の瓶が落ちたんでね、拾おうとしたんだが謝って踏んでしまったよ」
振り返ると最近『ゼロ』のルイズが召喚したという使い魔がニヤニヤしながら片足を上げており、
その下には見るも無惨に割れた紫色の瓶「だったもの」が散らばっていた。

「おい、あれはモンモランシーの香水じゃないか!」
「ギーシェはモンモランシーと付き合ってたのか!」
周りから声が上がる。

「なっ、し、知らない!」
とたじろぐギーシェだが、その時周りの生徒から一年生の女の子、ケティが飛び出してくると
「ギーシュさま…やはりミス・モンモランシーと付き合っていていたんですね!この…大嘘つき!」
と叫び、ギーシェの頬を引っぱたく。
そして女の子と入れ替わりにモンモランシーがギーシェに近づくと、無言でワインの瓶を掴んで逆さにしてギーシェにかけ、
おまけとばかりに向こう脛を思いっきり蹴りつけて去っていく。この三文喜劇の三枚目のようなギーシェに周りの生徒達は大笑いする。

ギーシェは暫く屈んで呻いていたが、やがて起き上がるとまだにやついているディオを睨み付け
「いいだろう、僕を侮辱した事を後悔させてやる。ヴェストリの広場にて待つ!死ぬ覚悟ができたらこい!」
と叫び、見張りの一人を残すと取り巻きを引き連れて立ち去った。

「ちょっと!あんた何してるのよ!」
ルイズが叫びながらやって来る。
最初ギーシェが叫んでいた時は無視していたが、あまりにも騒がしいので振り向くと自分の使い魔がギーシェに喧嘩を売っていたのだ。
だがルイズの身体では人混みの中なかなか二人に近づけなかったのだ。
「なにってこれから高慢ちきなメイジを『少し』懲らしめるのさ」
「あ…あんた…」
呆れたような声をあげるルイズ。
「わかってるの!?メイジに喧嘩を売ったのよ!」
「…それで?」
「なんであんなことしたの!?遅いかもしれないけど私も謝ってあげるからギーシェに謝りなさい!」
とディオの袖を掴み、引っ張っていこうとする。シエスタも我に返ると必死でディオを押しとどめようとする。
だがディオはルイズの手をゆっくりとふりほどく。
「勘違いしてもらっちゃ困るな、ルイズ。ぼくはああいう中身がない癖に威張り散らす手合いが大嫌いでね。それに借りは返す必要がある。」
なぜかシエスタはぽっと赤くなる。

「ばっ馬鹿!いい?平民はメイジに絶対に勝てないの!ってちょっと聞いてるの?」
とルイズはなんとか決闘をやめさせようとするが、ディオはそれを無視して見張りに
「武器を持ってくる時間くらいはくれるだろう?」
と聞き、許可を得るとシエスタに2,3訊ね、厨房へと消えていった。
                                       to be continued…
297おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/23(火) 15:26:56 ID:ZMijmUcZ
以上です。>>716で書き忘れてしまいましたが、今回は@のみです。Aは後日投下します。


流石ディオ! わざわざ火に油を注ぐような真似をして喧嘩を売る!!
そこに(ry
あとタイトルが度々抜けてた 
作者氏スマン orz
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/23(火) 16:13:56 ID:C9emgZ+1
ディオ、なんという厚顔不遜な男よ・・・
だが、それがイイ

あとギーシェじゃなくてギーシュじゃなかったかしら
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/23(火) 17:31:50 ID:/87NYWTO
まさかシエスタのおじいさん→吸血鬼→まだ生きて絶賛連載中!なーんて
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/23(火) 18:55:49 ID:MhjhdduQ
GJでした!
ワザと香水瓶を割るなんてそこに(wry

あと、何気にシュヴルズ先生がいい人www

次回も待ってます
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 03:21:54 ID:xVsOumK7
乙でした
このままうまくいくとルイズは初期の仲間はずれにされたジョナサンのような扱いをうけるのだろうか
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 07:33:00 ID:vOhVqxMu
ディオが動くまでもなく仲間がいない気もする
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 08:50:28 ID:wSpPKJje
GJ!
マチルダさんそんな手紙出すと後々までネタにされるぞwww
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 10:56:30 ID:4RVVmLaf
>シーザーという青年が吸血鬼になった祖父の弟子を倒す
何時の間にやら歴史が変わって、『ツェペリの奇妙な冒険』になってるよwww
というか弟弟子じゃね?
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 12:15:52 ID:hbIqXB/A
リサリサいないのにシーザーが波紋使えるっておかしくね?
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 12:19:26 ID:4RVVmLaf
馬鹿だなぁ、ダイアーさんが教えたに決まってるじゃないか
勿論あの技も使えるんだぜw
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 12:23:54 ID:pip/cKDW
>>305
祖父ちゃん生きてるんだから教えて貰えるだろ
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 14:53:40 ID:4RVVmLaf
さて避難所に新たな投下が来たようだが代理投下をしても構いませんねっ!
309おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/24(水) 14:54:48 ID:4RVVmLaf
代理投下していただいた方、ありがとうございました!
さて、今回は第六話Aです。

>あとギーシェじゃなくてギーシュじゃなかったかしら
ドジこいたーーッ!基本的な登場人物の名前間違えちゃまずいだろ…、以後気をつけます。
他にも
×拾おうとしたんだが謝って踏んでしまったよ
○拾おうとしたんだが誤って踏んでしまったよ
等誤変換が目立ちますね…。精進します。
310おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/24(水) 14:56:47 ID:4RVVmLaf
ディオはギーシュを甘くみていた。平民が近寄る事すらできないからこそメイジは特権を持ち続けていられるのだ。
だがガンダールヴというルーンはその理を覆し、運命の女神はディオに味方する…

ぼくは使い魔になるぞジョジョーッ! 第六話A

「よく来たな!逃げ出さなかったその度胸だけは誉めてやるぞ!」
ヴェストリ広場で決闘が行われるという噂は瞬く間に学院中に広まり、ディオが広場に来た頃には多くの野次馬が詰めかけていた。
ディオはその中を広場の中央まで歩いてゆくとギーシュと相対する。
早速薔薇の花に紛した杖を上げ、戦闘体制に入ろうとするギーシュだが、ディオはそれに待ったをかける。
「なんだ!まさか戦う前に命乞いじゃないだろうな!?」
「どうだ?ただ決闘するだけじゃ面白くない。ここは一つ賭けをしないか?」
「賭けだと!?」
ディオは頷くと宣言する。「ぼくが負けたら我が主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの
三月分の生活費を君に渡し、ぼくも君に土下座をして謝ろう。」

もちろんルイズは驚愕し、怒り出す。
「ちょ、ふ、ふざけないでよ!何勝手に決めてるのよ!」
「お待ちなさいな」
飛び出そうとするルイズの肩を押さえる浅黒い腕。
「面白そうじゃない。それにあのディオって使い魔、かなり自信があるみたいよ。」
「…勝つ気。」
「キュルケ!なんであんたがここにいるの!?」
「この騒ぎだもの、来ない方がおかしいですわ。ね、タバサ」
「…。」
いつの間にかキュルケとタバサがルイズの隣にいた。
「信じてあげなさいな、あなたの使い魔なんだから」
「う…。」
沈黙するルイズ。

ディオは続ける。
「だが!君が負けたらぼくにベッドと今月分の小遣い全てを渡し、八つ当たりでミス・シエスタに無礼を働いた事を詫びて貰おう!」
そして周りに聞こえないよう小声で続ける。
「もちろん受けてくれるよなあ、グラモンくん。もっとも君がぼくに負けるのが怖いというのなら話は別だけどな。」
ギーシュは最初は賭けなど受けない気でいたが、このディオの一言に乗せられる。
「よし、その賭けに乗った!このギーシュ・ド・グラモン、この勝負に負けたら確かにベッドと小遣いを提供し、
そのシエスタとかいうメイドに謝罪しよう!」
この言葉にわっと沸く野次馬達。自分達もと賭けを始めている生徒達もいる。

「それでは改めて始めよう!ああ、言い忘れるところだった。。僕はメイジだ、魔法で戦う。よもや文句はあるまいね!?」
ギーシュが叫びながら杖を振ると、薔薇の花びらが一枚飛び、見る間に女戦士の形をした青銅のゴーレムになる。
「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
「さっきから言い忘れが激しいな!ボケ防止の薬でも飲んだらどうだい?」
「ほざけっ!」
女戦士の形をしたゴーレムがディオに向かって突進する。思わず目をつぶるルイズ。
そしてワルキューレの右の拳が、ディオの腹にめり込……まなかった。

ディオは不思議なポーズを取ると無駄のない動きで後ろに下がり、ワルキューレの拳をかわしたのだ。
「な…に?」
「ふん、なかなか素早いパンチだ。だが!ジョジョの拳に比べると止まって見えるぞッ!」
生徒たちから歓声が上がる。ルイズも呆気に取られて見ている。
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 14:59:03 ID:4RVVmLaf
その後もワルキューレの攻撃はことごとく空を切った。
「なに!あの足捌きは!」
「…見たことがない」
キュルケとタバサもその動きに目を丸くしている。
それもそのはず、ディオの取っている行動は20世紀に入ってから発達するボクシングのスウェーイングなどの防御テクニックだった!
余裕の表情で右に左にまた背を反らしてワルキューレのパンチを受け流す。気がつくとワルキューレがもう一体増えていたが、
これも難無くかわすッ!

「…くっ!」
ギーシュは焦っていた。当初の予定では腹に一発当てて動きを止めたあとゆっくりとなぶり殺しにするつもりだった。
だが、あの奇妙な動きの前に未だ一発も当てられない。
だが、ギーシュはまた分かっていた。あんな行動がいつまでも続くはずがない。
一方は生身の人間、もう一方は疲れなどとは無縁の人形なのだ。この勝負、長引けば長引くほど有利ッ!
実際ディオの顔からは段々と余裕が失われはじめている。このままではいずれあの重いパンチを食らってしまうだろう。
と、そこにシエスタが走ってくる。手には何かを持っている。
「ディオさん!頼まれたものを持ってきました!」
シエスタが持っている、メイジには見慣れない手袋のようなものはボクシングなどに使うグローブである。
そう、あの後厨房に入ったディオはマルトーに、拳で殴る為の武器を持っていないか聞いたのだ。

話は少し横に逸れる。
『殴る』というのは人間の基本動作の一つである。最も安易で、かつ相手にダメージを与えられる『殴る』行為は人間社会なら必ず発達する。
よってこのハルケギニアでもボクシングのようなものが平民社会でできていた。
もちろん様々な技術が生まれる前、19世紀イギリスのそれ程度だが。

残念な事にマルトーはグローブを持っていなかった。しかし知り合いに拳闘を好む衛兵がいる事を思い出すと、
シエスタに借りに行かせたのだった。

一瞬の隙をついてディオはワルキューレから離れ、シエスタのところへと後退する。
またディオが離れたのを見てルイズも駆け寄ってくる。
それを見たギーシュはどんな武器なのか興味をそそられて一旦ゴーレムを引く。
「分かってるの!このままじゃ勝ち目はないわ!」
ルイズが叫ぶ。
「あんたはよくやった。だけどそれだけよ!いずれあのパンチを食らって負ける!決まってるじゃない!いい加減に降伏しちゃいなさい!」
「ディオさん、ディオさんがここまでしてくれただけでも私は嬉しいです。だからもう…」
シエスタも『武器』を持ってきたもののディオを心配し、ルイズに合わせる。
ディオもその事はよく分かっていた。だが!ここで引く訳にはいかない!
あんなひょろひょろの少年に敗れる事はディオのプライドが許さなかった。
そしてそれ以上に!この勝負に負けたらディオは一生笑い者になり、計画は破錠するのだッ!

故にディオはシエスタからグローブを受け取ると、腕に嵌めながら二人に言う。
「忘れたのかい?この勝負に負けたらルイズは明日から生活できなくなるんだよ。」
「…あ゛」
「それに…魂が負けたと思った瞬間にもう負けは決まってしまう。だからおれは最後まで諦めないッ!!」
「…ディオ…」

と、その時、ディオは不思議な感覚に包まれた。疲れが吹き飛び、身体中に力が漲ってくるのだ。

ゆらりと立ち上がる。顔が影になっていてよく見えない。
「…ディオ?」
「……フフ…馴染む、馴染むぞォ!この気分!最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ」
反り返って高笑いするディオ。いきなりの変貌に周りはドン引きである。
それを気にする事もなく、ディオはギーシュのもとへと駆け出していく。
312おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/24(水) 14:59:56 ID:4RVVmLaf
「何を受け取ったのかは知らないが、君では絶対にワルキューレには勝てない!さあ、覚悟したまえ!」
ギーシュは勝利宣言を告げると、ワルキューレを突進させる。

ワルキューレとディオが拳を打ち合う。と、次の瞬間、ワルキューレは粉々になって崩れ落ちた。
「いいぞォ!新たな力がわいてくる。いい感触だッ!」
突然の身体の変化に戸惑うが、それ以上に戦局を変化させる力を得た事を喜び、にやり、と笑うディオ。
グローブで隠れているが、その隙間からガンダールヴのルーンの光が漏れている。

「なにっ!」
ギーシュはワルキューレを錬成すると武器を持たせ、残っていた一体と共にディオを攻撃する。今のはまぐれだっ!
今度こそとどめを刺してやる!……だが、
「エエィ、貧弱!貧弱ゥ!」
それは新たな瓦礫の山を生み出しただけであった。

「う、うわあああああ!!」
この展開に冷静さを失ったギーシュは残り全てのゴーレムを錬成すると、ディオの周りを取り囲ませ、一斉に攻撃させた。
「ワルキューレ!そいつを倒せ!」

ギーシュは不運であった。もし、最初から全力で攻撃していれば。もし、休憩など認めず、ディオにグローブを付けさせなければ、
ギーシュは勝っていた。だが、全ては手遅れだ。
「無駄!」
「無駄ァ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」
目に見えないほどのパンチの連打に次々とスクラップになっていくワルキューレ達。
そして最後のゴーレムが崩れ落ちた瞬間、ディオは人間ばなれした速度でギーシュに近づくと、
慌てて新たなワルキューレを錬成しようとしているギーシュの顔面を思いっきり殴りつけるッ!!

「ブガゴッ!」
豚のような声をあげるギーシュ。もはや戦意は消失している。だが、ディオがそれだけで許すはずがなかった。
(これでこの決闘はおれの勝利!!しかしまだまだ安心するなよギーシュ!)

(このまま!!)
ディオの親指が曲がる。
(親指を!)
そのままでギーシュの目に迫る。
(こいつの!)
ギーシュの目にディオの指が突き刺さる。
(目の中に……突っ込んで!)
「殴りぬけるッ!」

ブッギャア!という嫌な音とともにギーシュの身体は空を舞い、地面に叩きつけられた。

飛びそうになる意識の中、ギーシュは片目でディオがゆっくりと近づいてくるのを見た。
気のせいかどす黒いオーラがディオを包んでいるように感じる。
(こ、殺される!)
そう感じると、ギーシュは死力を振り絞って叫ぶ。
「ま、参った!降参だ!」
そして―――気絶した。
313おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/24(水) 15:00:59 ID:4RVVmLaf
「やった!ルイズの使い魔が勝った!」
「あのギーシュが平民に負けた!」
「ディオはわしが育てた」
次々にあがる歓声。片手を上げてそれに答えるディオの顔は先程までの邪悪な顔が嘘のように澄みきっている。
ルイズとシエスタが駆け寄ってくる。
「すごいじゃない!あのギーシュに勝つなんて!」
「だから言っただろう?ぼくは最後まで諦めないって。」
「ディオさん…私…私…」感極まったシエスタの頭ににディオは優しく手を置く。
「これで、君の受けた屈辱はあいつに返してやったよ」

シエスタの顔が真っ赤になる。泣いたらいいのか恥ずかしがったらいいのかわからないような表情をしている。

(これでメイジ共の間でおれの株は上がり、こいつも完全におれの事を信用するだろう!それだけではないッ!
 こいつの口から今の決闘の噂が平民共に広まれば!それだけで会ったことのない奴らもおれの味方となるのだッ!
 まさに一石二鳥、いや三鳥よッ!)

ディオは倒れているギーシュを抱えると、近くにいたやはり顔を朱く染めているキュルケに尋ねた。
「彼を運んでやりたいのだがね、医務室はどこかな?」

オスマン老とコルベールは『遠見の鏡』で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。
「あの青年、勝ってしまいましたが……」
「ううむ…」
「ギーシュは『ドット』メイジですが、あそこまで一方的に平民に負けるとは考えられません!あの動き、やはり
 彼は『ガンダールヴ』なのです!さっそく王室に報告を…」
と、ここでオスマンはコルベールを押しとどめる。
「ミスタ・コルベール、ガンダールヴがどういうものなのか知っているかね?」
興奮して答えるコルベール。
「勿論です!並のメイジでは歯が立たず、一度戦場に立てば千人の軍隊もあっという間に打ち倒すという力を持っている!
 それがガンダールヴです!」
「だからじゃよ。この事を王宮なんぞに知られてみよ。ミス・ヴァリエールと共に戦場行きじゃ。」
「な…なるほど」
「よって、この件は私が預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「は、はい!かしこまりました。」

(しかしそれよりも……わしは気になるのじゃ。あのグラモンの息子を殴っていた時の青年の顔、あれはまるで相手を嬲る事を
 楽しみにしているような顔じゃった…。もしガンダールヴが純粋な『悪』だったとしたら…そうではないと信じたいのじゃが…)
オスマン老は深く嘆息しながら空を見つめるのであった。
                                    to be continued…
314おれは使い魔になるぞジョジョーッ!代理:2009/06/24(水) 15:04:37 ID:4RVVmLaf
以上です。第七話以降の投下はしばらく空いてしまうかもしれません。


>ディオはわしが育てた
1001w
というかお父さん何してんですかwww
随分と上手く事が運んだようだが、しかし最終的には失敗するのがディオw
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 17:17:27 ID:lN8A5wI/
決闘への理由付けがディオらしくてスムーズに感じた。細かいところまでよく作ってると思うよ
SHITの人に続く期待の新人ってとこだな。凄い嬉しい!

題名からしてギャグ臭がぷんぷんしてたのに、なかなかどうしてダークな雰囲気が出てきた
ディオならではの邪悪さがすっごくでててベネッ!次回にも期待!乙
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 17:23:50 ID:JDCfqFfl
誰だよディオを育てたとか言ってるのはww
にしても悪知恵が回る回る、流石はディオ!そこに痺れる憧れるぅぅぅぅぅURYYYYYYYY
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 18:00:07 ID:MQRR2Aki
話事の俺は使い魔になるぞジョジョーッ!タイトル表記で凄くいい顔して叫んでるディオのアイキャッチが見えるようなってきた
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 22:21:31 ID:L0Y0wwkG
無駄無駄ラッシュきたぁーーーーーーー
細かい演出がうまい!
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 23:30:14 ID:xVsOumK7
新作乙でした
初期ディオらしさがよくでてて面白かった
しかしこれからギーシュがディオのパシリにされそうだw
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 01:56:57 ID:rYvlwNEb
まとめの右メニューから各作品へのリンクがなくなってしまった。
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 09:53:16 ID:5EQI1lWN
あるけど?
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 12:16:50 ID:kL+/LcP/
GJ!!
今まで召喚されたキャラの中で一番ハルケに馴染もうとしているのがディオだねwwww
馴染む同期が不順だがwwww
とにかく面白かった!!
次回も期待してます
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 23:02:38 ID:jaIp4XWN
無駄無駄で不覚にも吹いたw
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/25(木) 23:09:53 ID:eQZy4uP7
なにげに更新が楽しみなゼロ魔SS上位にランクインしてるぜDIO
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/26(金) 01:33:43 ID:R68xw+8g
この場合DIOではなくディオではないか?
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 00:30:25 ID:nbASE8g0
久しぶりに来たけど仮面ルイズはどうなったんだろ?
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 09:54:52 ID:afkgIanb
代理投下の方、毎度ありがとうございます!
今回はとりあえず7話を投下したいと思います。

>題名からしてギャグ臭がぷんぷんしてたのに
小ネタはこれからも沢山出していく予定ですよ

>タイトル表記で凄くいい顔して叫んでるディオのアイキャッチが見えるようなってきた
スタンドが描いてくれました
ttp://www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0456.jpg
328おれは使い魔になるぞジョジョー!7話1/3:2009/06/27(土) 09:56:14 ID:afkgIanb
やった!規制解けてる!
******************
決闘が終わり、ディオの思惑は次々と当たってゆく。
その中でキュルケはディオを我がものにせんと恋心を燃え上がらせるのであった。

第七話

決闘が終わって暫くすると予鈴がなり、生徒達は授業を受けに学院内に戻っていった。
だがディオはルイズに断りを入れ、後で授業内容を教えてもらう事を頼むとギーシュを保健室に連れていった。


「う……ここは…?」
ギーシュが目を覚ますと、自分がベッドに寝ているのがわかった。
あの決闘は夢だったのだろうか…
だが、ディオに殴られた右目の痛さがあれは夢ではないと告げていた。
日の光の具合からして午後の4時くらいだろう。ああ…今日の授業にはもう間に合わないな…ギーシュは寝返りをうつ。

「起きたのかい?」
部屋の暗がりから声がする。ギーシュが顔を向けると誰かが立っているのを見つけた。
僕の取り巻きだろうか、授業が始まっているだろうにいい奴だな。
「…随分と回復が早いな、水の魔法とやらは!実に興味深いッ!」
人影は何やら独り言を呟くと、暗がりからギーシュの元へと歩いてくる。
そしてその顔を見た瞬間――――ギーシュは恐怖のあまり嘔吐した。

「く、来るな!来るな!だ、誰か助けてくれ!」
自分の服が吐瀉物で汚れるのも厭わず、なんとかディオから逃れようとする。だが腰が抜けてしまったのか思うように動けない。
そうこうするうちにディオは目の前に来てしまう。

「……ヒッ!」
殺されると思い、目をつぶるギーシュ。だが、いつまでたっても衝撃はこない。それどころか何か柔らかいものが顔に触れている。

「ゲロを吐くほど怖がらなくってもいいじゃあないか…」
それはタオルで優しく顔についた吐瀉物を拭いてくれているディオだった。
信じられないという表情をしているギーシュにディオは更に以外な事を提案する。
「恐れることはない…。ギーシュ君、友達になろう…」
こいつは今なんと言った?友達だと…?ディオは続ける。
「あの決闘、確かにぼくの勝利だが、君もとても強かった。敬意を表するよ…今ぼくは拳で語った仲というのかな?
君に友情を感じているんだ。だから…ぼくの友達になってくれないかい?」

前半のみがディオの率直な感想であった。
確かにおれはメイジという存在を舐めすぎていたかもしれない。だがこのディオが苦戦したこいつですら
1番下のランクのトップだという。この先、おれの道筋を邪魔する更に強力なメイジが出てくる事は十分予想される。
こいつは中身がないが、それでもプライドだけはある。
そこを上手くくすぐってやればいざという時に盾くらいにはなるだろう。それに…
ディオの口元が歪む。

トリステインの名門にコネを持っておいて損はない。
329おれは使い魔になるぞジョジョー!7話2/3:2009/06/27(土) 09:58:13 ID:afkgIanb
ディオはギーシュの反応を待つ。
「ぼくは…」
やがてギーシュが口を開く。
「ぼくはあのメイドに八つ当たりをして君の怒りを買った…そんな僕を責めないばかりか…友達になろうと…いうのかい?」
「ああ。それに…もうぼくの怒りは収まったよ。次は君が行動する番だ」
そういってディオは握手を求める。
その手を暫く眺めると、ギーシュは力強く答えた。
「わかった…ありがとう!こちらこそよろしくお願いするよ、ディオ!」
固い握手。ここに一方通行の厚い友情が結ばれた。
「それじゃあぼくは帰らせてもらうよ。今日は安静にしているといい」
ディオは出口に足を向けかけて立ち止まる。

「ああ…ところであの掛け金とベッドのだけど、よろしく頼むよ」
明日から寝る場所と今後一ヶ月の生活に目眩を覚えてまたベッドに倒れるギーシュを残して
ディオは酸っぱい臭いが立ち込める医務室を立ち去った。


「ねぇ、ヴァリエール」
「なによ、ツェルプストー」
午後の授業が終わり、帰ろうとするルイズをキュルケは呼び止めた。
「実はね、今夜の決闘なんだけど、ちょっと延期してほしいの」
「はぁ?なんでよ」
キュルケは困ったような表情をしながらルイズの耳元で囁く。
「実はね…『あれの日』って事を忘れていたの」
「ば、馬鹿!!」
ルイズが赤面して慌てるのが、人差し指を唇に当てて静かにさせると続ける。
「と、いうわけで五日間、いいえ。三日間の猶予をいただきたいですわ。よろしくって?」
「わ…わかったわよ。仕方がないわね」
そう言うとルイズは慌てて教室を出て行った。心なし顔が赤くなっているのは気のせいだろうか。

「ふ…やっぱり甘ちゃんね、ルイズは…」
一方キュルケは先ほどとは違った妖艶な顔つきをしている。キュルケが決闘を延期したのは『あれの日』のせいではない。
この三日間でディオを落とす事を決心したのだ。
今までの男達から考えると落とすのにかかる時間は三日間もあればまず大丈夫。
キュルケはルイズから使い魔を奪い取った上で決闘に望む事を思いついたのだ。
330おれは使い魔になるぞジョジョー!7話3/3:2009/06/27(土) 09:59:17 ID:afkgIanb
夕食の時間になる。ルイズが
「あんな勝負に勝ったからって椅子に座って食べられるなんて思わないでよ!」
と言ったので、ディオは厨房に足を向ける。

厨房に入った瞬間、大歓声が上がった。
「いよっ、『我らが拳』のお帰りだぞ!」
マルトーが七面鳥の丸焼きを手にやってくる。
「『我らが拳』?」
「ああ、シエスタから試合の詳細は全部聞いたぜ!あのクソったれ貴族を一発も喰らわずに倒したんだってな!
お前は俺たちの希望だよ!」
あの試合は予想通りの効果をあげたらしい。
優雅な物越しで椅子に座るディオの目の前に七面鳥を置くと手早く皿を用意しながら聞く。
「どうしてこんなに遅くなったんだい?俺はてっきりすぐにここに来てくれると思ってたぞ。」
ディオはさもあまり言いたくないような顔をしながら答える。
「すいません、あの決闘相手を医務室に連れて行って介抱していたらこんな時間になってしまいました」


「聞いたか、みんな!」
マルトーが叫ぶ。
「ディオは相手を倒しただけじゃなく、介抱してやったんだと!相手のことまで考えたぁますます気に入った!!
 なあ、踏ん反り返ってるだけの奴らよりもディオの方がよっぽど貴族に相応しいと思わねぇか!?」
また上がる歓声。
「さあ、ディオ。食った食った!今日はお祝いだ!俺が給仕してやるぞ!」

「あの…」
ワインを注ごうとするマルトーが振り返ると、シエスタが立っていた。
「おお、そうだった。忘れてたぜ!ディオはシエスタの為に戦ったんだもんな!シエスタ、お前が注いでやれ!」
「はい!」
嬉しそうな顔でワインを受け取ると、ディオのグラスに注いでゆく。
その日の厨房はいつにも増して賑やかだった。

(…なんだかうるさいわね)
と思うルイズと、今夜の計画に思いを馳せるキュルケ。タバサは黙々とはしばみ草を食べている。
そしてフレイムは厨房の全員に無視されながらディオを見つめているのであった…。
                                         to be continued…
331おれは使い魔になるぞジョジョー!7話3/3:2009/06/27(土) 10:05:02 ID:afkgIanb
以上、投下完了ゥ!今回は尺が短かったですね。キュルケの誘惑も入れた方がよかったかも。
さて、実はこの俺使、現在運命の分かれ道というか二つの選択肢を考えています。
自分で決めてもいいのですが、それでは普通で面白くないので後日お聞きしてそれをもって決めたいと思います。
ちなみにディオと 戦うか、ディオ と戦うかになります。(一方のルートは最後まで案ができてたり…)
今はまだですがいつかその時が来たらお聞きしますのでよろしくお願いします。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 10:52:18 ID:vD7SWi/K
腹黒い…腹黒いぞディーオーッー!!!
どこまでディオの思惑通りに進むのかアヴドゥルさんに占ってほしくなっちまったぜ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 11:53:17 ID:5wXIfq46
>>331
もしかして両方ですかぁあああああああ?と言ってみるテスト
まあどっちでもいいけど連載中断の恐れが薄れる分
プロットの無いほうより有るほうを書いてくれたほうがいいかなぁ
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 12:46:39 ID:/9wECi13
>>331
一瞬悩んだが、つまり共闘するか敵になるかってことね
自分としては前者がいいな
以前にも言ったけどゼロ魔キャラが石仮面を手に入れて…って感じを希望
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 13:10:52 ID:TS4hDi6H
共闘ルートになったとたん味方の死亡フラグがどんどん立っていくんですねわかります
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 14:02:36 ID:giSuiiYA
乙と言っておこう!

> スタンドが描いてくれました
まさか描いてもらえると思わなかったぜ!
さすが新手のスタンド!俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 14:49:18 ID:rhdqLT2i
乙!
俺もプロットできてる方を優先してほしい
そして完結した後に別ルートも書いてくれればベネ!
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 16:35:33 ID:RE5TdkZJ
もう書かれ始めてから結構たってるのにディオはいまだにwikiにまとめられてねーなw
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 16:47:12 ID:iEHtF+Tw
ディオと共闘…?
そうかディオの敵に刺客として向かっ(ry
まあ完結できるほうを書いて、余裕があるなら両方読んでもみたいな
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 20:35:27 ID:1r/CYyvH
全盛期に人気作品がまとめに載るのに一週間掛かったりするスレなんですが
いやーお客さん他のお店とお間違いだったでしょうか
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 21:22:42 ID:1YI+bLot
さっきまで過去ログ漁って昔の作品を読んでたんだが昔の勢いはやっぱ異常だよな
全盛期は1日1スレ切った時もあったからな
ああ〜静かとかサブとか鉄とか再開してくれねえかな
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 21:38:12 ID:Y26409mt
ディオだけじゃなくて銃使や仮面、SHITの人も投下してほしい
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 21:52:36 ID:Cgq9B213
>>338
気付いたなら編集してくれよ
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 22:34:36 ID:vywgWtou
あの事件さえなければねぇ
本当に嫌な事件だっtね・・・・・
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 22:44:23 ID:6kJD6Cqh
SBRが完結したらきっと伸びるよ
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 00:58:38 ID:5z+YX6zt
あの事件と言うと執筆者が次々とブラックサバスに襲われたあの!?
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:40:01 ID:Uz3qC+7k
無名作者はリアルの生活に戻り数日間働いた…………
そして、スレを覗いて
誰にも期待されていない事を知り…………
とりあえず続きを書くことにした

まぁそんなもんですよね

前スレでお世話になりましたヌケサクの作者です
投下の方をさせていただきます

読みたくない、ヌケサクが嫌いだ、ヌケサクは好きだが作者が気に入らないなんて人は今すぐにjaneを起動して禁止IDに突っ込んで下さい
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:41:36 ID:Uz3qC+7k
昨日の前代未聞の犯罪はどうやら土くれのフーケとかいう怪盗の仕業らしい。
フーケだかブーケだかほっけだか知らないが、なんでも有名な怪盗だとか。
とりあえず調べたことを書いておこう。
さて……
フーケは盗賊であり……
盗賊であり……えー……
(ページのほとんどに何も書かれていない)
………

「いや、知るわけねえだろ!!『装備システム』なんて」
「何よ装備システムって」
現在、私たち三人はフーケを逃した理由について話し合いをしている。
なぜかは私には分からない。
彼らによれば『現場に居たんだから同罪』。
まったく、困ったものだ。
「装備しなければ戦いでは使えない。常識」
「どこの常識だよ!!」
ヌケサクは頭をぽりぽりと掻きながら三人の真ん中に置かれている図面を眺める。
図面に見えるのは『フーケ逃走ルート(推定)』の文字。
どうしてこんな物を見ているのか?
こちらが聞きたい。
なんでも教師は皆腹痛やら親戚の不幸ごとやらでフーケの捜索ができないから当事者のお前たちでなんとかしろ、と。
ちなみにメンバーは私たち3人に一人だけ何の用事も無かった秘書のミス・ロングビルの四人。
このうち戦力として扱えるのは私とヌケサクだけ。
きっと敗戦確実の国の前線の兵士っていうのはこういう気持ちなんだろう。


現在私たちはミス・ロングビル(独身)が持ってきた情報にあった山小屋を目指している。
いつもなら面倒くさい馬車の旅もやはり人が多いと楽しいものだ。
特にヌケサク。あれは見てて面白い。
「無理!無理だから!!挽肉になるから!!!!」
「物は試しよ。どの辺まで削れば死ぬのか……」
「死ぬって!!十秒足らずで頭が無くなって死ぬって!!」
そんなやりとりを繰り返す二人を見ているだけでもう。
「……くしゃみ、ですか?」
隣のミス・ロングビル(未婚)が何か言っているが気にしない。
そろそろ目的地に着く頃だから唯一の魔法要員の私は集中していなければならないのだ。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:42:20 ID:Uz3qC+7k
「情報によれば、あの小屋ですね」
聞くまでもない。
このあたりで山小屋と呼べそうなものはあれ一つだ。
もっとも、あれも小屋と呼べるかどうかは疑問が残るが。
「でも、それにしては妙じゃないかしら?」
廃屋を見ながらボソリとルイズが言葉を漏らす。
確かに怪しい。
情報によればへちゃむくれのよっけとかいうのはあの小屋に潜んでいるはずだ。
なのに、物音一つしない。
盛大な罠か、それともただの誤情報か。
ここでどう動くかが今後大切になってくるだろう。
とりあえず戦争などならば斥候を放つの定石だ。
……
自然と、ヌケサクに視線が集中する。
「な、なんだよ……」
「勘が悪いわね。見て来いって言ってるのよ」
「何で俺が!そういうのは力のある主様の仕事だろうが!!ええ、ゼロのルイズ!!!!」

流石の私も空気を凍らせることは不可能だ。
それをやってのけるとはさすがヌケサク。
まあそこに痺れもしないし憧れもしないが。


ルイズが黙って杖を振り上げる。
「……な、何する気だよ」
答えは無い。
変わりと言わんばかりに振り上げられた杖が弧を描きヌケサクの方を指し示す。
と同時に響き渡る爆音。
彼女の唯一無二の必殺技、『失敗魔法』が炸裂した。
形式上『失敗魔法』と前述したが私はあれを失敗だとは思わない。
何故か?簡単だ。火力が高すぎるのだ、失敗にしては。
彼女の爆発はゴーレムだろうとなんだろうと文字通り『粉砕』する。
この威力はドットじゃまず出せないだろう。いうなれば彼女専用の魔法と言った所か。
短所があるとすればそれは命中率が低い点。どれくらいの精度かと言えば10発撃てば9発は自滅につながる程だ。
しかし、ここ一番での彼女の失敗の命中率は。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
九割八分くらいに跳ね上がる。
失敗魔法は見事ヌケサクの鼻先で炸裂した。
サーカスのピエロ(見たことは無いが聞いた事はある)のようなチリチリアフロヘアーのヌケサクが完成した所で、話合いは終了。
これ以上書いてるとぽっけ戦に集中できなくなるので続きはぽっけ討伐後に。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:43:40 ID:Uz3qC+7k
ようやくフーケ(三十路前行き遅れババァ)を捕らえる事が出来た。
現在自室の中で(はしたないが)ベッドに横になってこの日記を開いている。
今からその経緯について少し書いていこうと思う。

斥候にヌケサクを放ったが、彼からは信じられない情報が帰ってきた。
「フーケなんて奴どころか、人っ子一人いなかったじゃねーか」
どういう事だ?
ミスロングビル(クズ)の方を見ると彼女も信じられないという顔をしている。
所詮非戦闘員にできるのはこんなものか。
仕方ない。土くれのフーケは二の次だ。
「ヌケサク、もう一度あの小屋の中を探って。破壊の杖があるかもしれない」
そう、フーケ討伐の他にも私たちには任務があるのだ。
フーケに盗まれた破壊の杖の奪還。どちらかというとこっちの方が主なんだろうが。
「破壊の杖ェ?なんだそりゃあ」

ヌケサクの話によると破壊の杖なんてものはなかったそうな。
「あったモンと言えばコレだけど……流石にこれは杖じゃないしなぁ」
そう言ってヌケサクが後ろに引きずっていた物を出す。
何だかよく分からない、柱に取っ手が付いているみたいなものだった。
確かにこれを杖と呼ぶのはおこがましいだろう。良くて持ち運べる煙突だ。
「じゃあ、まったくの嘘情報ってわけ?」
ヌケサクの方を睨みつけていたルイズがボソリと呟く。
つまりあれか、私たちの今までの数時間は無駄足だったと。
「……そういう事に、なんじゃねぇの?」
やっぱり、情報は自分で集めるべきだった。他人の信頼できる筋と言うのは信頼できないから。
やりどころのない怒りを静かに情報提供者であるミスロングビル(笑)にぶつけるべく馬車内で待機させている彼女のほうへ近寄った。
馬車を覗き込んだ次の瞬間……
「よし、そろそろあンのヌケサクも帰ってきただろうし、行くとしますかねぇ!」
なんかフード付きの長マントを羽織ったミスロングビルが杖を振り回しながら何かしていた。

とりあえず声をかけてみる。
「…………あの」
するとミスロングビルは「うにゃい!?」と面白い叫び声をあげて被っていたフードを外し、私の方に向きなおした。
よく分からない。
うにゃい?うん、にゃい……運がない?
そういうわけでは無いか。流石に。
「ど、どどどどどうしたんですかミスミススタババ!!」
失敬な。私の今の名前はタバサだ。タババでも田端でもない。
破壊の杖の事と言い、この事と言い、私の彼女へのフラストレーションはたまる一方だ。
「破壊の杖が無かった」
とりあえず、事実をありのままに伝えてみる。
すると彼女は再び「ふぇえ!?」と三十路間近らしくない可愛い悲鳴を上げた。
「そ、そんなはずは!だって確かに!!」
「有ったのは持ち運べる煙突一本だけ」
私がそう答えようとするのを気にもかけず、ミスロングビルは羽織ったマントもそのままに外へ駆け出して行った。
もしかして、わざとやっているのだろうか。彼女は。
これが私だったから良かったようなものをキュルケに同じ態度を取っていれば今ので間違いなく消し炭状態だろう。
私は彼女の落としていった杖(彼女が手に持っていた物とは別の物)を拾って、仕方なく彼女を追いかけた。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:45:37 ID:Uz3qC+7k
表に出ると、もっと良く分からない状況になっていた。
ゴーレムが居るのだ。あの日、フーケが侵入を果たした時と同じくらいの大きさのゴーレムが。
そのゴーレムが、ヌケサクやルイズの乗ったシルフィードを踏みつぶそうと躍起になっている。
なにが起こったっていうんだ。
もしかしてあの煙突もどきにはゴーレムを作り出す潜行式の罠でも仕掛けてあったのか。
「へぶ!!」
ヌケサクが蹴りあげられた。
これは結構由々しき事態だろう。蹴られたヌケサクの顔を見ると笑いそうになるが。
「シルフィード」「きゅいきゅい!!」
私の声にこたえるように、ゴーレムの腕を避け、知るフィードがこちらへ近づいて来る。
「タバサ!!」
のばされたルイズの手を掴み、シルフィードの腕に持ち上げられ、無事私も戦場の中に入る事が出来た。
「何が起こったの?」
「それが、いきなりゴーレムが現れて、それで、それで!!」
駄目だ、錯乱してしまっている。今のルイズには何を聞いても無駄。
ならばやる事は一つ。『自分で状況を判断する』
まずは戦力差。こちらの戦闘員は先に記したとおり私とヌケサクの二人。
ヌケサクは足元を走り回りながらデル何とかで足を切りつけている。
しかしゴーレムの足は軽く半径1メイルを超えている。刀身の短いデル……デルフランドールでは両断する事は出来ない。
じりじり削って切り崩せればいいが、傷口がどんどん治っている点を見るとそれもできない。
私もゴーレムに応戦してみるが、いかんせん私の魔法はこういう戦いの場合相性が悪い。
なんせ穴をあけるたびに修復されるかのゴーレムが相手では、逃げ場をなくし圧倒的な量で敵を撃ち抜く私の十八番『アイスストーム』は火力不足だ。
ならばジャベリンで一気に行動不能に陥らせるか。
これも得策とは言えない。あんなでかいゴーレムにダメージを与えるジャベリンは時間、魔力、ともに消費が激しい。
もし一撃を外したり、一撃をいなされたりしたらその時点で私たちの負け。
「ルイズ」「なに?」
不確定要素が増えるので出来るだけ彼女の力は借りたくなかったが、こんな状況では仕方がない。
「私が合図を出す。あなたはその合図に合わせてゴーレムの肩を攻撃して」

今この状況で信用できるのは『単に力の強いメイジ』ではなく、『絶望的な状況でも自分を貫き通せるメイジ』だ。
だから、直接聞いてたしかめるしかない。
『腹をくくる事が出来るか』と。
「今からあのゴーレムの遥か上空に舞い上がって私の全魔力を注ぎ込んだジャベリンであのゴーレムを行動不能にする。あなたはゴーレムがそのジャベリンをかわせないようゴーレムの肩を撃ってほしい。
チャンスは一度きり、失敗は許されない。場合によってはここで全滅もあり得る。でも、私はあなたを『信頼』する。あなたならできると」
ここで「出来るわけが無いッ!」と叫ぶのが今の腐りきった貴族、彼女もそうするならそれはそれで仕方がない、別の方法を考えるさ。
「力を貸して」
ルイズは答えない。戸惑っているようだ。
学院からも戦力外通告が出されていたんだ、当然の反応だろう。
「で、でも……」
駄目か。
所詮、ゼロのルイズ。腐った貴族の作った温室の中でぬるま湯に浸って生きてきたメイジ。
いやメイジにも貴族にもなり切れない、存在しない『0』、できそこない。
仕方がない、一か八かジャベリンを頭上から撃ちこんで、失敗したならヌケサクと破壊の杖を拾って敵前逃亡。
合流する前、拾う瞬間、背中を向けた後。死ぬ状況はいくらでも考えられる。
しかし、やるしかない。私はまだ死ねないんだ。
「シルフィード」「きゅーーい!!」
数日しかコンビを組んでいないがシルフィードには指示が通っていた。
周囲を旋回、その後上空にあがり、魚を焼く時のように頭から股までを貫く。
その後術者を倒す。今取れる最善策だ。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:46:25 ID:Uz3qC+7k
高度を上げながら、気がついた。あのフードに見覚えがある事に。
「こンの、ちょろちょろ動き回ってないでとっとと潰れちまいな!!」
大きなゴーレムでヌケサクを踏みつぶそうとしているのは、他でもない、ミス・ロングビル、その人だ。
つまりこういう事か、『私たちは嵌められた』。
そう考えると今までの事すべてに頷ける。
情報が手に入った事も、小屋に誰もいなかった事も。
「誰が、テメェ、なんかに!!」
ヌケサクは、驚いた事にボロボロになりながらもゴーレムへの攻撃を続けていた。
幾度となく攻撃を喰らったのだろう。服も髪もゴミクズを人形に取ってつけたようにズタボロだ。
しかし彼は引かない。
「ゼロの使い魔はゼロの使い魔らしくのたれ死んでりゃいいモノをォォ!!」
ゴーレムが腕を振り下ろす。が、やはり運動神経が常人よりも発達しているヌケサクを捕らえる事は出来ない。
それどころか。
「今だ、ヌケサク!!」
「おうよ、デル公!!!!」
彼は振り下ろされた腕を伝い、一気にフーケまでの距離を詰めたのだ。
確かに、ゴーレムが破壊できないのならば術者を倒せばいい。
だが、それを実行しようとするなんて当人たち以外は予想外以外の何物でもない。
「KUAAAAAAAAAAAAAAA!!!」「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
一気にフーケに肉薄し、デルフランチェスカを振りかざすヌケサク。
しかし剣は無情にも空を切るだけだった。
「な、動けねぇ!」
良く見ると、彼の足はゴーレムの肩から生えた小さな腕に掴まれていた。
あれが彼の足を掴み、致命傷を空振りへと変えたのだ。
「焦らせやがって……そのまま落ちな!!」
腕はそのままヌケサクを十メイルほど下へと叩き落とす。彼でなければ死んでいただろう。
ヌケサクは落下後すぐに立ち上がると、先ほどのようにゴーレムの足を避け始めた。
「なんで死なないんだい、クソッ!!」
ゴーレムは同じ轍を踏まぬように今度は腕を横に振るう。
今度はヌケサクは動かない。一瞬、怪我が響いたかとも思ったがそうではないようだ。
「「一点集中ッ!!」」
剣を構えなおし、距離がほぼ0まで来た瞬間にものすごいスピードで剣をふるう。
ゴーレムの腕を切るには力が足りなかった。ならば速度を付ければいいとでも考えたのだろう。
実際、ゴーレムの左腕は速度を落とす事が出来ずにヌケサクの剣撃をもろに食らい、半ばでぷっつりと折れてしまった。
でもそんな事はゴーレムには関係ない。
すぐに切り落とされた腕は生えて来て、元通りに戻った。
後に残ったのは切り落とされただの土くれに戻った左腕だったものとフーケの怒りだけ。
「いい加減に……」
フーケのゴーレムが頭上で手を組み。
「しろってんだ!!」
そのまま地面にがむしゃらに叩きつける。
重量と速度を兼ね備えたそれが地面を、小屋を、木を、近隣にあった自然を打ち崩す。
「なんで元に戻んだよォおおおお!!!」
「言っただろうが!斬るだけじゃ意味がないって!!人の話を聞けねぇのかこのマヌケッ!」
「テメーは人じゃねぇだろうが!」
だが、ヌケサクは無事だった。
そう手元のデルコーと憎まれ口を叩きつつも、ゴーレムの腕を避け、衝撃により倒壊を始める木々の間を抜ける。
フーケはさぞ悔しかったのだろう、ゴーレムの肩の上で地団太を踏んでいた。
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:47:08 ID:Uz3qC+7k
今だ。
フーケは今、確実にヌケサクしか目に入っていない。
私がシルフィードに上昇の命令を出そうとした、まさにその時だった。
「シルフィード、上昇して!」
「きゅい?」
私よりも先に、ルイズが指示を出した。
彼女もタイミングを見計らっていたのか。そういうわけじゃないだろう。
「どうして?」
「あの馬鹿、見殺しにはできないでしょ!だってあいつは私の使い魔で、私はあいつのご主人さまなんだから!!」
土壇場で腹をくくったのか、それとも絶望的な戦力差にもあきらめることなく挑み続けるヌケサクに感化されたのか。
どちらだろうと構わない、私は確信した。彼女は一発を放つまで、この信念は曲げないだろう。
ルイズの目は黄金のようにきらきらと輝いていた。
「チャンスは一回。詠唱を開始して。シルフィード、上昇」
「了解!!」「きゅいきゅい!!」
ほぼ垂直飛行となり、風の抵抗をもろに受ける。目指すは空中35メイル、ゴーレムの上空。

私たちが上空に着くとほぼ同じ瞬間に、ヌケサクがスッ転んだ。
「いいザマだね、これで終わりだ!!」
ゴーレムが大きく右腕を振りかぶる。
ここだ。今しかない。
「右肩にお願い」
「いっけええええええええええええええええええ!!!!」
ルイズの杖が振り下ろされる。と同時に辺りに響く爆音。
失敗魔法はゴーレムの右肩に炸裂し、右腕を丸ごともいでしまった。
振りかぶっていた腕に行くはずだった力は行き場を失い、大きくゴーレムの体を傾かせる。
そのまま右に反回転し、仰向けに倒れるゴーレム。
「な!?い、一体なに……が…………」
攻撃の出所を探ろうとしてこちらを見上げたフーケの顔が凍りつく。
私たちよりももっと上、私の魔力が詰め込まれたジャベリンを見つめたまま。
大きさにして3メイル。ゴーレムを貫通し地に縫い付けるくらいはたやすくできるサイズだ。
しかしそれほどの大きさともなればやはり負担が大きい。
上手く調整できなかった端の方の氷が崩れて私たちの方にキラキラと落ちてくる。
この一撃でもう限界なのだ。今の私では。
「た、タバサ……」
隣で捨てられた子犬のようにルイズが呟くがそんなのどうだっていい。ゼロに心配されるほど私はやわじゃない。
決めるといったら決める。狙うは一点、ゴーレムの胸。

私の持てる力のほぼすべてで作り上げた氷の柱が急速落下を始める。
ゴーレムは身を捩り逃れようとするがもともと愚鈍な土くれ人形なんかに私の乾坤一擲の一撃が避けられるはずがない。
鈍く轟くような衝突音に耳が壊れそうになる、実際、少し聞きにくくなった。
衝撃波がシルフィードの体を大きく揺らす。少しくらいは来るだろうと思っていたがここまでとは。
と、ここで予想外な出来事がもう一つ発生した。
力が入らないのだ、体に。どうやら力を使い果たしたようだ。
ふらりと、視界に串刺しどころか真っ二つになったゴーレムが飛び込んでくる。
大きくしすぎたか、力の調節がうまくいかずに途中で大きくなったか。
ふらりと、フーケに薙ぎ払われた木々が目に入る。
遠くから声が聞こえる、気のせいか?
風がマントをはためかせる音だけがやけに大きく耳に木霊する。
ああ、そうか。落ちているんだ。約40メイルの高さから。
なんとかフライを唱えようとするが杖をどこかにやってしまったようだ。
地面は大分遠いが、加速を考えればすぐそこにあるのと一緒だ。
シルフィードは間に合うのか。今までの経験から彼女の速さと距離を照らし合わせて考えてみる。
全速力でもぎりぎり。
ぎりぎり、間に合わない。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:48:10 ID:Uz3qC+7k
おかしな話だ。タバサは人形だったはずなのに、誰にも抱きしめられた事がない。
いつも怒鳴られ、貶され、嘲笑われ。
皆に嫌われたお人形。抱きしめられないのも頷けるか。
「浮け!浮け!浮け!浮け!」
タバサは可哀相なお人形。
誰にも必要とされず、日陰で死を待つお人形。
「浮け!浮け!!浮け!!!浮け!!!!」
流れる月日は少女を人形へと変えた。
心を失った少女は、少女も、『0』だった。
0は無限の引力を持つ数字。全てを無に返し、全てを受け入れる数字。
もしかしたら私がヌケサクやルイズに引かれたのも同じ0だったからかもしれない。
何も無い者たちの中で、ひっそりと0でありたかったのかもしれない。
しかし、彼女は……ルイズは違った。
境遇をただ受け入れた私とは違い、彼女はいつも前へ進もうとしていた。
私は、彼女に。
憧れていたのかもしれない。
「浮けっつってんでしょうが!!!!」
炸裂音が近付いて来る、地面がもう近いのだろう。
「タバサ!!」
風の音が小さくなる、とうとう地面がすぐそこまで来たようだ。
ろくに動かない私の体を、一回り大きいだけの彼女が抱きしめる。


ああ。
しっかりと抱きしめられるなんていつ以来だろう。


いつまでたっても地面にぶつからない。
せっかく覚悟を決めたのにそれは酷いんじゃないか。
恐る恐る目を開けてみるとそこには。
「馬鹿、オタンコナス、スカポンタン!!どうして一人でゴーレムに立ち向かおうとしたのよ!!
それに助けるに来るのが遅すぎるでしょ!!!ご主人様のピンチなんだからもっと余裕を持って助けなさいよ、ヌケサク!!!」
「ニャ、ニャニ〜〜〜〜!?元はと言えばお前を逃がすためにゴーレムの気を引いてやってたんだろうが!!
それにタバサ一人なら余裕を持って助けられてたのに、お前があの竜蹴って落ちて、イラネー加速付けるからだよ、ゼロのルイズ!!!!」
「なんですってぇ!?」「何だ、やるってのか!?チクショオーーー!!!」
こんな状況下でいつものように喧嘩をしている二人が居た。

前言撤回。私はこんな二人にあこがれてなんかいない。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:49:00 ID:Uz3qC+7k
二人がギャーコラ騒ぐ間に事態は確実に変化していた。
「やってくれたねェ、タバサ!!」
しまった、と思った時にはもう遅い。
トドメを刺さなくてはいけなかったのだ、フーケに、彼女のゴーレムに。
彼女のゴーレムは傷口が凍り、どうも完全に復活しきれなかったらしく上半身だけで立ちあがっていた。
「しかし、だ。今のであんたの魔力はそこを付いちまったんだろう?
まともな魔法使いのいないアンタ達をやるのなんか上半身だけで十分だ」
そういって、ゴーレムは器用に腕を脚のように使いながらこちらへ一歩一歩しっかりと迫ってくる。
そう、まるであれのように。
「てけてけ」
「嘘!?あれってもしかしててけてけなの!!?」
「マジかよ!!俺一度でいいから本物のてけてけ見たかったんだよ!!!!」
「そうさ、これがアタシのゴーレムの最終形態!『てけてけゴーレム』さ!!」
……なんだこの流れ。
見た感じでてけてけと名付けたのに、どうやら他の三人には思い当たる節があったようだ。偶然とは恐ろしいものだ。
「……ところで、てけてけってなんなんだい?」
「……お、俺は知らねーよ!ルイズが知ってんだろ!!」
「い、いや。私も、話を合わせなきゃいけないかなぁ〜って!!」
いやはや、本当に偶然とは恐ろしいものだ。一通りの漫才のような流れを終えると、フーケは一度大きく咳ばらいをし、話を戻した。
「とにかく!アンタ達はこれで終わりだ!!」
そうだった。状況は先ほどから何一つ変わってない。
このままじゃ逃げ切れずに死んでしまう。私がそう思い、策を頭の中に逡巡させようとした時だった。
「いや、テメーの負けだよ」「ん?」
ヌケサクは笑っていた。いつぞやのようなザマミロ&スカッとサワヤカの笑いだ。
追い詰められて気でも狂ったか、とも思ったが、どうやら違うらしい。
その証拠に、彼の手には。
「俺がコイツの所まで辿りついちまったんだからな」
破壊の杖が握られていたのだから。

そういえば古い記述にこうあった。
『神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる』

いや、だからといってどうという事はないが。
「破壊の杖ェ?今更それが何の役に立つって言うんだい!アンタ達の主砲はもう魔力が空っぽの玉無し状態だ、杖なんかがあったって意味無いんだよ!!」
そう、杖と言うからには魔力が必要。魔法の使えないルイズと私では杖を使えない。
完全にチェック・メイトだ。
「ルイズ、タバサ、俺の後ろに立つな」
そんな中ヌケサクは気味の悪い笑顔を絶やさずに私たちに指示を出す、そして。

てけてけゴーレムが消し飛んだ。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 12:51:33 ID:Uz3qC+7k
目を疑った。流石にこれは夢じゃないのか。
まるでそれは破壊の二文字を表すために存在しているのではないかと思うほどの火力。
破壊の杖から放たれた銃の弾のような物は真っ直ぐにてけてけゴーレムの上半身にぶつかり、それを粉々に打ち砕いた。
ちらりと横を見てみる。ルイズも唖然としていた。
「……えーと」
「お、おいヌケサク!こいつはどういう事だよ!!」
「言ったろォ、杖じゃあないんだよコレ。コイツは俺の世界の武器だ」
ゴーレムが復活しない所を見ると、フーケもろとも吹っ飛ばしたのだろう。
肉片だけ持っていってフーケですって言っても信じて貰えないはずだ。
それに原型があった方が溜まったイライラをぶつける事が出来る。
惜しい事をした。
「アンタもしかして、クズ魔法使いのなれの果て?」
「ちげーよ、科学だよ、科学の力!」
破壊の杖の回収は終了したわけだし、とりあえず骨だけは拾っておこう。

驚いた事に、フーケはまだ生きていた。
どうやら爆風に吹っ飛ばされて気を失っているようだ。
これは好都合。とりあえず杖らしきものを全部奪ってふん縛って学院長の前に放り投げておこう。
そういえばロープを持ってきていただろうか。
捕縛魔法が存在していれば楽なのだが、あいにくそんな都合のいいものは存在しないはずだ。
それに力も残ってない。今私にできるのは後ろの二人を呼ぶくらいだ。
後ろを振り向くと同時に体が傾く。そういえば今の私はカラッポなんだったか。
私が最後に見たのは、こっちへ駆けてくるルイズの姿だった。


すごい頭痛を感じる。今までにない何か酷い頭痛を。
吐き気、なんだろう襲ってきている確実に。着実に、私の体内に。
執拗に体を揺すられ続けたあとみたいな感じだ。
身体を起こそうと腕を伸ばしてみるがあんまりうまく伸ばせない。
腕にまでがたが来てるのか、まったく困りものだ。
こんな事になるならもう少し手を抜いておくんだった。
「あ、起きた?」
ルイズが顔を覗き込んで来る。続いてヌケサクとデルデルデルデが。
ルイズはまだ許せるとして、寝起きで見るヌケサクの顔は流石に吐き気の増幅ぐらいの役にしかたたない。
それにしても、ここは?
森の中にしてはえらく揺れているし、空が狭い気がする。ということは馬車の中か。
だんだん記憶が鮮明になってきた。フーケを捕まえたんだったか、確か。
今はその帰路ってところだろう。成程気持ち悪いわけだ。
起きるのも面倒だしもう少し横になっておくか。寝ていればそのうち学院にもつくだろうし。
「おやすみ」「寝るのかよ!」
「良いじゃないの、一番疲れてるのはタバサなんだし。それよりアンタはフーケを見張ってなさい」
何だか気恥ずかしい。たぶん今、私は酷い顔をしているだろう。
二人に怪しまれないように寝がえりを打ち、顔を隠すが、どうもむず痒いような気恥ずかしさは無くならない。
結果、私は学院に着くまでの数時間の間眠る事も出来ずにただ延々と馬車の壁の染みが何に見えるのかを考え続ける事になった。
357代理:2009/06/28(日) 13:05:59 ID:uj+YuRkn
ここまでが当日の一連の流れである。
ここからは後日あった事を書き足しておこう。

ヌケサクは異世界から来ていたらしい。どうりで色々な情報が食い違ったわけだ。
それに武器、M72ロケットランチャーと言ったか。あれも気になる。
あそこまでの破壊力のある武器を作り出せる世界と作らざるを得なかった戦争があったわけだ。
興味がない訳ではない。
ただ、争いなんてなければいいのにと思うのが私の本心だ。

あの日、どうして逃げずに戦ったのかをヌケサクにそれとなく聞いてみたところ。
『例え魔法使いだろうと吸血鬼にとって人間は餌。シャケから逃げるクマが居るか?』
と言われた。
シャケとかクマとかはよく分からないがヌケサクにもプライドがあったって事だろう・

あれ以来ルイズとも一緒に居る事が多くなった。
やはり彼女は0のままだ。でも、一緒に居ると落ち着く。
結構話も合う。キュルケと一緒の時は二人でいがみ合ってばかりだが。

フーケが逃げた。
今度会ったらただじゃおかない。


後日加筆
まさかこの事件が全てのきっかけになるなんて思っても見なかった。
物語性を持たせるために繋ぎのような文章を残しておこう。
仲良くなった私とルイズ、それにキュルケとヌケサクと鼻たれギーシュで女王様のおつかいをするのは別の話。


to be continued…




以上、投下終了
急展開ですね、分かります
シリアスなんてなかった

話は変わりますが、上の方で話題になっている保管庫掲載の件
私の拙作は載せなくていいとして、他の方たちのは誰か掲載してあげて下さい
掲載されずに放置を喰らったら投下しても誰も見てくれないんじゃないかなんていうトラウマ持ちます
私もご多聞にもれず持ちました
なのでどうかよろしくお願いします

それでは、拙い文章ですが何かあれば
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 15:58:41 ID:z+hNvuyh
うぉ、ヌケサクの人来てた〜
何気にデルフの名前が一回ごとに変わってるのが笑いを誘う

359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/28(日) 18:40:53 ID:gYjcLeS1
ジョジョ三部まで読んだけど想像以上におもしろいな

感想:ホルホースはギャグキャラ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 03:04:13 ID:YVa3/nsW
>>359
このスレの作品読むためによんだの?
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 06:58:51 ID:cRUgJPDl
ヌケサクの人帰って来たー!毎回楽しみにしてました、これからも是非!書き続けてください!
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 08:06:28 ID:XG0MLtSm
タバサが素敵に辛辣w
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 11:39:42 ID:4ZtM5W5v
>360
実は私も、このスレからジョジョとゼロの使い魔の両方にポロロッカしましたw
364おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/06/29(月) 11:42:33 ID:xJbhX1l+
こんにちは。今回も尺は少ないですが8話を投下したいと思います。(ギーシュ戦が長かっただけ?)
本当は纏めてもいいのですが、期末が…いえ、なんでもないです。

>>347
初めまして。実は最近の投下は私だけなので心細かったんですよ。早速過去ログで見させていただきます。
それにしても手紙形式とはなかなか乙ですね。ひょっとしてブラム・ストーカーのドラキュラ形式ですか?

ちょうどルイズの時期的には同じ頃?ですね。正直貴方よりフーケ戦をうまく書ける自信がないです…。
お互いまとめに載る日を夢見てお互い頑張りましょう。
365おれは使い魔になるぞジョジョー!8話1/3:2009/06/29(月) 11:43:17 ID:xJbhX1l+
キュルケはディオを籠絡し、ルイズの鼻をあかそうとする。
しかしキュルケは知らなかった。ディオがどんな男であるのかを…

おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第八話


夜も更けて日も代わった頃、燭台を持ちながら寮の廊下を歩いてくる人影がある。
ディオはあの後上手く隙を見つけて厨房を離れようとしたのだが、既に出来上がってしまったマルトーに捕まってしまい、
結局何回も決闘の顛末を話させられる事となったのだ。昨晩ろくに寝ていなかった事もあり、今のディオはかなり不機嫌である。
部屋に送ろうというシエスタを(何故かパーティーの間中マルトーより絡んできた)適当に振り切り、
やっとあと一つ角を曲がれば部屋に着くところまで来た時、ディオは部屋の前に何か明かりが点くのを見た。

「まさか…ルイズか?いや、あいつはおれを待って起きているほど甲斐性のある奴じゃない。」
不審に思いながらも進んでゆくと、すぐにその明かりは竜の尻尾で燃えている炎のそれだとわかった。キュルケの使い魔、フレイムである。
フレイムの少し怯えたような視線を無視して部屋に入ろうとするディオは何かに後ろから引っ張られるのに気付いた。
振り返ると、フレイムが一心不乱にディオのシャツの袖をくわえ、引っ張っている姿が見えた。

「貴様ッ!そのベトベトなそのツバでおれのシャツを汚すなッ!」
と叫ぶとディオはフレイムを殴ろうとするが、軽率な行動でせっかくある程度の信用を得たのに、
また振り出しに戻すような愚はすまいと我慢する。
だがその間にもフレイムはディオを恐る恐る部屋に引っ張り込もうとするので、今度こそ軽く殴る。
先程の威嚇で怯えきってしまったフレイムは短く悲鳴を上げると、袖口を離す。と、

「人の使い魔をぽんぽん殴るのは感心しないわね…」
とキュルケがため息をつきながら姿を現した。下着一枚で。

「まあいいわ、フレイムを使おうとしたのは失敗ね…。じゃあ改めてディオ、私と少しお話ししてくれないかしら?」
「…明日にしてくれないかな、ミス・ツェルプストー。今ぼくは疲れていてね、早く寝たいんだ」
普通の少年ならあっという間に悩殺されてしまうような下着姿にも全く同じないディオだが、
キュルケは強引にシナリオを進める事にしたらしい。
366おれは使い魔になるぞジョジョー!8話2/3:2009/06/29(月) 11:44:05 ID:xJbhX1l+
「もう、キュルケでいいって言ったじゃない。そ・れ・に」
悩ましげな口調でしだれかかったキュルケはディオの腕を掴むと部屋の中に連れ込む。いつの間にかフレイムも後ろに回って押し続ける。
「夜更けに女の子が話があるって言ったら内容は一つだけよ…」
そうしてディオは無理矢理キュルケの部屋に連れ込まれてしまった。

「あなたはあたしをはしたない女と思うでしょうね」
扉を後ろ手に閉めながらキュルケは囁く。
明かりといえば窓から見える二つの月のそれと、幻想的に揺らめくフレイムの尻尾だけである。キュルケは続ける。
「思われてもしかたがないの。あたしの二つ名は『微熱』」
「……それで?」
「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。だから、いきなりこんな風にお呼びだしてしたりしてしまうの。
 わかってる。いけないことよ」
「……」
「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」
キュルケは潤んだ瞳から、圧縮した体液ならぬ男の原始の本能を呼び起こさずにはいられないような色気を発しながら、ディオを見つめる。
「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく突然ね。」
「…。」

一方、ディオはあからさまな嫌悪感を持ってキュルケを見ていた。
なんだこいつは。会って二日しか経っていないおれをを部屋に連れ込んでベッドに誘うなど色狂い以外のなにものでもないッ!
そう、まるであのクズ野郎(ダリオ)の開いていた酒場で夜な夜な男を誘っていた売春婦どものようにッ!

キュルケが口説き続けているのを聞いているふりをしながら上手く脱出する方法を考えていたディオがふと窓に目を向けると、
探していたものを見つけたという笑みを浮かべて話し掛ける。

「ディオ。あなたがあまりにも気になるものだから、フレイムを使って様子を探らせたり……。
 ほんとに、あたしってば、みっともない女だわ。そう思うでしょう?でも、全部あなたのせいなのよ。」
「なるほど、言いたい事はよくわかったよ。」
「本当?」
「ああ。キュルケ、君が嘘を付くのがだと言う事がな。」
突然のディオの言葉にあっけに取られるキュルケ。とっさに言い返そうとするが、
その前に窓を激しく叩く音に注意を逸らされてしまう。それは

「キュルケ…待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば…話が違うじゃないか!」
「キュルケ!その男は誰だ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」
「キュルケ!そいつは誰なんだ!恋人はいないって言ってたじゃないか!」
「キュルケ!お前って奴は…このビチクソがァーーッ!」
「キュルケーッ!何をしているだァーッ!ゆるさんッ!」
「キュルケ!」
「キュルケ!」
「ペリッソン!スティックス!マニカン!エイジャの赤石…じゃなかったエイジャックス!ギムリ!…ええと、あと沢山!」
そこにはキュルケの恋人達が窓という窓を叩き、口々に絶叫しているおぞましい光景があった。
それらを次々と炎で叩き落として一息つき、ふと振り返ると、ディオはいつの間にか消えていた。
367おれは使い魔になるぞジョジョー!8話3/3:2009/06/29(月) 11:45:20 ID:xJbhX1l+
「…フン」
ディオはキュルケが恋人を撃ち落としている隙に廊下に出た。実に胸糞の悪くなるような出来事だった。
売女風情がこのディオを口説こうなど無駄なことよッ!

と、ここで思考が切り替わる。ルイズの部屋に行ったところであいつはまた床に寝かせようとするだろう。今夜はどうするべきか…。

悩んでいるとドアからルイズが飛び出して思いっきりディオと衝突した。
「…どうしたんだい、ルイズ」
「どうしたもこうしたもないでしょ!何よあれ!」
ディオが部屋を除くと、部屋は薔薇の強烈な香りが匂ってくるベッドに占領されていた。
「夕食から帰ったらいきなりギーシュ達がこれ運び込んでったのよ!臭くって寝れたもんじゃないわ!
それにさっきからキュルケの部屋であんたの声が聞こえてたけど、あんたもしかして
ツェルプストーと変な事でもしてたんじゃないでしょうね!納得がいくまで説明してもらうわよ!」
その後、ルイズに延々とヴァリエールとツェルプストーの因縁について語られたディオがなんとか眠りについたのは
結局何十分も経ってからであった。


「はぁ…」
キュルケは窓にしがみついていた全員を下に落とすとベッドに突っ伏した。隣からは延々とルイズの声が聞こえてくる。
大方ツェルプストーとヴァリエールの因縁についてでも語っているのだろう。
「まさかあたしが失敗するなんてね…」
今まで狙ってきた男を全員落としてきたキュルケには今回の失敗はかなりショックであった。
だがキュルケは気を取り直す。今回はハプニングがあったせいで失敗したのだ。幸い明日は虚無の曜日、この一日を使ってディオを篭絡し、
今度こそルイズをぎゃふんと言わせるのだ。
それに
「ディオ、あなたにも興味がわいてきたわ…」
ここまで自分を邪険に扱うディオにキュルケは逆に今までの男にない魅力を感じ、情熱を燃やすのであった。
                                       to be continued…
***********************
以上です。最近上手く表現が書けない気がします。何か気になるところを見つけたら
是非指摘してくださると嬉しいです。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 11:52:32 ID:U5y6moR8
ディオらしい。この一言に尽きるな
乙でした
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 14:00:58 ID:05wp+9b7
投下乙
そういえばディオは酒飲みというか酒に溺れるような奴が嫌いだったな
好みの女性もやはり死んだ母親のようなのかね?
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 15:54:13 ID:jPZd8DUJ
ワルドと気が合いそう…か?
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 18:19:49 ID:q0PoLyE5
>>363
ジョジョもゼロ魔も読まずに、どういう経緯でこのスレに辿り着いたのか知りたい所だ
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 21:02:58 ID:2n2i7PW2
理想郷→2CH→アニメ→原作→コミックス(笑)
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/29(月) 22:18:07 ID:1kmBS1vW
おれ魔GJ!!
マジにディオらしい、それにつきる!!
確かに普通に見ればキュルケの行動はかなり吐き気を催す様なことだよなwww
374363:2009/06/30(火) 06:29:10 ID:NZFy/GVq
>371
ジョジョのことは知ってたんですよ、第4部までは読んでたんで。
コミックスは持ってなかったけど。

某所の二次創作掲示板でゼロ魔と何かのクロスを読む(何かは自分が知っている作品・・・GSだったか巣ドラだったか)

結構面白かったのでゼロ魔の設定をもうちょっと知るためにゼロ魔の他の二次創作を検索
(この時点ではゼロ魔を買う気は全くなし)

ここのまとめウィキにたどり着く

ジョジョの単行本とゼロ魔の原作を買い集める

ってかんじです。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 14:37:09 ID:ACkYgF9U
俺いまだにゼロ魔読んだことないぜw
シャア板のスレから何となく飛ばされて
ゼロ魔関係に居ついてしまった・・
ああいう絵は嫌いだが文章読むだけなら好きなんだよねぇ。
何もないさっぱりした挿絵無しバージョンなんて出るわけ無いし
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 20:12:44 ID:Nhr2lFQw
ゼロ魔の原作は7万人までしか読んでないや…
SS読むには困らないんだけどなぁw
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 22:28:11 ID:vFk1HxPV
ここのSSのキャラ達が逞しすぎるせいで
原作が少しイライラするぜw
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 22:31:33 ID:OG7W4EJw
流石に禁書すら読めなかった俺にはゼロ魔原作は拒否反応でまくり
ていうか知ったのがここからだから、そのギャップにまずやられた
まあでも、ここの人たちは描写が上手い人が多いから原作要らずになってる
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 22:40:07 ID:W5/HX0og
俺は魔の一巻でやられる。ここから読む気が失せてしまうから……。
後ろの方の巻はちょろっと一部のシーンを読んだけど、そこらへんは普通に読める。
けれど全体把握するには最初の方のやつを読まなければならないので……。

とりあえず二次創作で満足してる。
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 23:00:23 ID:ptHmvsKT
このゼロ魔系統の二次作品群は
アマチュア作家や現役の作家らしき人がチョロっと書いてる雰囲気もあるから
たまにやたら面白いのとかあるんだよな
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 23:26:20 ID:OG7W4EJw
作家としての表現方法は原作よりは上手ではないのかと思ってる
ただ、明らかに違う点は一次創作物だということ。荒木先生も言ってたけど、無から有を生み出すのは難しい
その点は、ちょっと凄いと思ってる

なんにしても、『敬意を払え』ってことですねー
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 23:32:28 ID:4s1z6eZf
マロンに立ってるときにここを見つけたな。
しばらく覗かなかったけど、ニコニコでアニメ一気見してこっちを見るようになった。
無論原作は読んでない。
アニメは二期の最終回一話前から見ていない・・・。
というか、三期も見たほうがいいのかな?
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 23:40:58 ID:I89YGqcx
俺はジョジョの奇妙なライトノベルというスレに投下されたクロスSSが最初だったな
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/30(火) 23:56:22 ID:RAYQtUKn
もとはジョジョハルヒクロススレに居てスレの一番下の他の人はこんなものを見てます欄から
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 01:51:51 ID:qLY/USWj
全てはベイダーから始まった……
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 03:04:52 ID:B307XoX/
この流れ自体の大半があの夏のベイダースレからだなぁ
このスレは二番目ぐらいに盛り上がって一気に多様化のブースト着火したんだよな
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 12:14:42 ID:rToHyR0F
きっかけは行き着けのスレに貼られてたあの作品〜スレのまとめだったなあ
そっからゼロ魔クロスにハマりジョジョにハマりゼロ魔にハマり………
アヌビス神とデルフと地下水に萌えてるorz
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 19:23:01 ID:RnsBECIq
とりあえずここのギアッチョ始めとする暗殺チームSSは詐欺だと思う。
原作だと横のつながり全くねぇw
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 20:18:10 ID:FrxwplV7
才人とはスゴ味が違いすぎるからなぁw
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 20:56:54 ID:HeGcnaKY
なんだこの流れ
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:03:50 ID:3c4f61uM
こまけぇこたぁ いいんだよ、ですね
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:18:40 ID:B307XoX/
学生の変わりに異世界のマフィアの超能力殺し屋召喚って書くとすごいひどい
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:32:51 ID:5aWQh/VW
異世界召喚ファンタジーの草分け的な「扉をあけて」でも、きているのは超能力少女とか
狼男みたいなのとか、そういう反則な連中だったように思う。
まあそれはともかくとして。

自分はSS紹介している人の日記から仮面のルイズを知って。
ゼロいぬとかアヌビス神とかギーシュの奇妙な決闘とか。
そこらからクロススレにいったりした。
ゼロ魔自体は前から知っていたんだけど、理想郷に投下されていた型月クロスSSが
EMIYAtueeeeeeだったのでずーっと手を出してなかったが。
不明であったと今なら思う。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:33:41 ID:jpdBEV70
じゃあただの学生のかわりに大量殺人犯を相手にできる度胸のあるだけのただの小学生を召喚しよう
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 21:40:04 ID:3c4f61uM
最後に勝利するのは勇気あるものだぁっ!!!!ってことですね
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/01(水) 23:33:24 ID:ZCB6ZFvS
そこで14歳人妻ですよ
397ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:06:32 ID:txznDOJ6

トリステイン魔法学院の広場に一人の少女が立っていた。
夜の帳が下り、赤と青の月明かりが彼女を照らし出す。
月光を浴びて彼女のトレードマークである金色の巻き髪が一層鮮やかに映える。
舞台の主役のように一人立つモンモランシーは複雑な表情を浮かべていた。
時には憂鬱に、または不満げに、ともすれば心配そうに、その表情を百面相の如く変えていく。
冷えた夜風に当たっても気分は一向に晴れない。
理由は分からないけれど何故だが不安が治まらないのだ。
心がざわついて部屋に篭ってなどいられなかった。

原因は分かっている。あのバカの所為だ。
別に正式に付き合ってるわけでもないのに、
どうして私がアイツの事で悩まなくちゃいけないんだろう。
安否を気遣うこっちの気持ちを少しは分かりなさいよ。
どんなに格好つけても死んだらただのバカなんだからね。
頭の中が思いつく限りの愚痴に埋め尽くされる。
よし、戻ってきたら殴り飛ばそう。
勲章なんて付けていても全然関係ない。
それだけの権利はあると思うから思い切ってやってしまおう。
……だけど、もし戻って来なかったら。

直後、草を踏み締める音に彼女は現実に引き戻された。
寮の明かりも消えた宵闇の中でも、2つの月が訪れた人影を映し出す。
踏み出した足に、赤く艶やか髪が炎のように舞い踊る。

「……キュルケ」
「夜更かしは美容の天敵よ。あまり感心はしないわね」

ちっちと指を左右に振りながらキュルケは冗談めいた口調で話しかける。
キュルケの暢気な態度に声を荒げようとするも、それこそ恥を晒すだけだと彼女は抑えた。
ここでそんな姿を見せれば一生ギーシュとの仲をからかわれるだろう。
ぐっと言葉を飲み込むモンモランシーを見つめながらキュルケは明るく接する。

「大丈夫、大丈夫。実家の伝手でアルビオンの戦況を知らせてもらっているの。
上陸してからも連合軍は連戦連勝。もうしばらくすればギーシュも帰ってくるわよ」

“ま、勝ってるのは連合軍じゃなくてゲルマニア軍なんだけどね”
とついでにお国自慢をしつつ、その豊満な胸を見せびらかすように大きく反らした。
平時と変わらない彼女の図太い神経に、全くと呆れつつも感謝する。
これじゃあ取り乱している自分の方が馬鹿らしい。
398ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:07:12 ID:txznDOJ6

「ありがとう」

一言お礼を言ってモンモランシーは夜空を見上げる。
キュルケとて不安を感じていない訳ではない。
そうでなければ、こんな夜更けに部屋を抜け出したりなどしない。
自分を気遣って気丈に振る舞う彼女の配慮に心より感謝を示す。
きっと真正面から言ったら鼻で笑われるから簡素な言葉に想いを託した。

どういたしまして、と軽く返すキュルケ。
想い合う者同士を示すかのような双月を二人で見上げる。
草木の鳴る音を耳にして、ただ静かに時間だけが流れていく。

「早く帰って来るといいわね」
「ええ、本当に」


モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ
……ギーシュとの関係が誤解により一時期最悪になるも、
才人とギーシュの決闘後、紆余曲折ありギーシュとの事実上の恋人となる。
しかし、その関係も一進一退。才人とルイズ同様に周囲をヤキモキさせる。

キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
……タルブに参戦した事で絶縁も覚悟していたものの、
予想外の大勝利と女王陛下直々にお褒めの言葉を頂戴した事、
またタルブ戦においてゲルマニアが援軍を出さなかった後ろめたさもあり、
彼女を咎めるどころか同盟国を守る為に戦った勇敢なメイジとして表彰される。

ちなみに、縁談の相手はワルドを倒した彼女の武勇伝に恐れをなして撤回したらしい。


「きゅいきゅい! 今回のお仕事は簡単だったのね、いつもこうなら楽なのに」

タバサを背に乗せて楽しげにシルフィードは喚いた。
この高度では彼女たちの会話を聞き取れる者はいない。
日頃の鬱憤を晴らすかのように機関銃のようにシルフィは喋り続ける。
その一方で、タバサは命令書を再度確認する。
そこに書かれているのは、彼女の言うように単純で簡単な任務ばかり。
それを目にしてタバサは大いに首を傾げた。

北花壇の任務は基本的には汚れ仕事か、あるいは危険な任務だ。
時には処置に困るような面倒な仕事が舞い込む事があるが、
そういった例外を除いては命の危険を伴うようなものばかりだ。
なのに、ここに書かれている任務はメイジですらない兵士でも可能なもの。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:07:44 ID:P7MvTuUz
避難所に来てたの?支援
400ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:08:03 ID:txznDOJ6

そもそも任務を受諾しにプチ・トロワに向かった時、
従兄妹であり北花壇の団長でもあるイザベラの反応は明らかにおかしかった。
いつもなら厄介事を押し付けて、こちらが困るのを楽しんでいるようだったのに、
今回は苦虫を噛み潰した顔で命令書を突きつけるだけだった。

つまり、これは彼女が選んだ任務じゃない。
……じゃあ一体誰がそんな命令を出させたのか。
それが可能なのは唯一人。だけど、その意図がまるで掴めない。
意味がない任務に従事させて、それが何になるというのか。

「きゅい! お姉さま、無視しないで欲しいのね!」

思考の迷路に迷い込む主を見て、無視されたと勘違いしたシルフィが声を上げる。
ぎゃあぎゃあと大声で鳴きながら翼をばたばたとしきりに動かす。
それでようやく気付いたタバサが顔を上げて使い魔に答える。

「なに?」
「なにじゃないのね! いくらなんでも上の空はひどいのね!
ああ、わかった! きっと才人ね、才人の事を考えてたんでしょう!
きゅいきゅい! 遠く離れた二人は互いを想って……きゅい!」

ぱこーん、と小気味のいい音が響いてシルフィの妄想はあえなく断たれた。
ヒリヒリする頭を撫でながら恨みがましそうな目で振り返る。

「……いたいよう」
「自業自得」

大体、才人に対してそのような感情を抱いた事は……ない、と思う。
それに彼にはルイズがいる、主従の絆以上に強く結ばれた彼女が。
だから、その間に割って入るなんて私には出来ない。
……いつの間にか論点がずれている。そもそも割り込む必要などない。
なのに、私はどうしてそんな考えに至ったのか。
感情と計算。困惑する彼女の脳裏にふと閃くものがあった。

「戻って」
「え? 学院に帰るんじゃないのね?」
「違う。行くのはアルビオン」
「ど、ど、ど、どうして急に何でそんな所に!!?
ま、まさか本当に募る想いが乙女のリピドーを暴走させて……きゅい!」
「急いで」

さっきよりも力強く杖を頭に叩きつける。
渋々、方向転換するシルフィードの背中でタバサは唇を噛んだ。
彼女は深読みをしすぎていた。この任務は本当に何の意味も裏も無かった。
ただ、彼女をガリア国内に釘付けにするだけの時間稼ぎ。
そうまでして行かせたくない場所など彼女には一つしか思い当たらない。

逸る気持ちを抑えながらタバサはアルビオンへと向かう。
たとえ、それが間に合わないと分かっていながら。


タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
……キュルケ以外とは距離を置いていたが、次第にルイズや才人達とも打ち解け始める。
その所為か、よくシルフィードに才人との関係をからかわれるようになる。
401ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:08:51 ID:txznDOJ6

見渡す限りの地平を埋め尽くすアルビオンの軍勢。
大気を震わせる雷鳴の音も、石飛礫のように降り注ぐ雨音も、
大地に根付いた木々さえも傾かせる暴風の音も、
七万の兵士が生み出す行軍の足音を掻き消す事は出来ない。
否。それを音と呼ぶのは些か語弊があった。
大地が弾む。まるで山が動くかの如く鳴動しているのだ。

松明さえも役に立たない嵐の中を魔法の明かりを目印に兵士達は歩く。
雨を凌ぐコートのような布を頭から被り、外の寒さに肩を震わせる。
役に立たない銃の代わりに槍を手に腰には剣を差す。
痛みさえ覚える雨粒に苛立ちを覚えながら、ぬかるんだ地面を固く踏み締める。

「なんでこんな天気で行軍しなきゃならねえんだ?」
「馬鹿が。“こんな天気”だからこそだろう。
今頃、連合軍の奴等は船も出せずに港で右往左往してるだろうぜ。
下手に時間を与えりゃあ、態勢を整えて反撃してくるかもしれねえしな」

不満を口にする若い兵士にベテランじみた風格の男が答える。
真正面から敵と殴り合うよりも進軍に支障が出ても楽に勝てる方がいい。
敵に最も損害を与えるのは追撃戦だ。ここで徹底的に叩けば勝敗は決する。
逆に逃がしてしまえば敵に反攻の機会を与えてしまう事になる。

さりとて現場の兵士にとっては、そんな上の事情など知った事ではない。
ただ命じられるがままに敵と戦う彼等にとって楽であればそれに越した事はない。
大軍であるが故の安心感からか、彼等の緊張は途切れかけていた。
それを繋ぎ止めようとベテランの兵士は餌をちらつかせる。

「手柄だって取りたい放題だ。港にゃあ爵位持った連中が唸るほど居るんだからな」
「そうは言ってもなあ、さっき、別の隊の連中に一番手柄持ってかれたばかりだしな」

ちらりと視線を向けた先には血塗れの元帥杖を奪い合う一団。
連合軍を指揮していたド・ポワチエ総司令官の遺体の傍に落ちていた物だ。
ハイエナのように群がった彼等は金目の物を剥ぎ取った後で、それをまるでトロフィーのように掲げる。
いくら手柄を立てようと総大将を仕留めた連中には遠く及ばない。そんな意気消沈が見て取れる。

「なあに、まだ一番手柄と決まったわけじゃない。
トリステイン王国のアンリエッタ女王もいるとの噂だ。
もし捕まえたら褒美は望むがままだ。爵位だって夢じゃない」
「本当に最前線に来てるのかよ? ただの噂だろ」
「いや、アンリエッタ女王はタルブ戦でも前線で指揮を取っていたと聞く。
ならば遠征中で士気も落ちる連合軍を見舞いに来てもおかしくないだろう」

とはいえベテランの兵士も絶対の確信などない。
タルブ戦といえば数ある戦いの中でも指折りの胡散臭さを誇る物だからだ。
結果こそ確かなものの、その記録内容は奇妙としか言い様が無かった。
従軍経験さえないアンリエッタ女王自ら采配を振るい、
最強と謳われたアルビオン艦隊は神と始祖の加護により壊滅したというのだから、
もう神代の時代の再現か、あるいは軍目付けの精神を疑うべきだろう。
他にも、この記録には不自然な点も多い。
“精強で知られたアルビオン兵が犬の遠吠えを援軍と勘違いして四散した”
“届く筈のない地上からの砲撃が何故か上空の艦隊を撃沈した”
“撃沈された筈の艦隊からは、ほとんど死傷者が出なかった”
その最たる物としてトリステインから離反したワルド子爵に至っては、
文官であるモット伯に討ち取られた上に自らの騎竜から転落死と、二度も死んだ事になっている。
恐らくは偶然の勝利を神懸り的な何かに演出しようとしたのだろう。
もし、これを書いたのが劇作家ならとっくに職を失っているに違いない。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:09:14 ID:P7MvTuUz
これで最終回か?支援
403ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:09:38 ID:txznDOJ6

疑いの眼差しを向ける兵士達に、やれやれと男は頭を掻いた。
やはり、こういった連中を動かすのはもっと目先の物でなければ。
その上で最も効果的な物を彼は長年の経験から熟知していた。

「じゃあ、こいつは知っているか。
今アルビオンにゃ兵士達の慰労の為に高級酒場が幾つも出張してるってな」

先輩の言葉に耳を貸さなかった兵士達の耳が動く。
彼等の視線は先行する彼へと向けられている。
それを感じ取ってニヤリと男は笑みを浮かべた。
結局の所、兵士を良く動かすのは出世欲や名誉欲ではない。
もっと純粋な三大欲求こそが彼等を突き動かすのだ。

「さすがに貴族の御偉方に手は出せねえが商売女なら話は別だ。
だがな、路地裏で客取ってるような安物じゃねえぞ。
伯爵様方も夢中になって金貨を落としていく最高級品だ。
いいか、早い者勝ちだ! 真っ先に港に辿り着いた奴から好きなのを選ばせてやる!」

男の言葉に兵士達は槍を手に雄叫びを上げた。
足取りは力強く、纏わりつく泥を跳ね飛ばしながら突き進む。
そこには先程までの重い足取りをした弱卒はいない。
今の連中は文字通り、飢えたケダモノどもだ。
“分かりやすく、そして扱いやすい連中だ”と呆れ半分で笑みを浮かべる。

その一方で士気の上がらぬ兵士達もいた。
新兵ならばそれも仕方ないと思ったかもしれない。
だが、その一団は貴族派だった頃からの正規兵達だった。
見れば顔は青白く、その身体は小刻みに震えていた。
それは雨風の冷たさばかりではなく内から込み上げる何かに起因しているように見えた。

「まるで分かっちゃいねえ! トリステインにはあの“ニューカッスルの怪物”がいるんだぞ!」

怯える兵士達の一人が耐え切れず、遂にその名前を口にした。
途端、血気に逸る若手達もそれを鼓舞する古参兵も全員が凍りついた。
“ニューカッスルの怪物”それはアルビオン軍では不吉の象徴とも言われる存在だった。
最初に現れたニューカッスル城では城内に進入した傭兵団を悉く殺し尽くし、
さらには包囲していた大軍にも襲いかかり多数の死傷者を出したと伝えられている。
またタルブ戦にも現れて何隻もの艦艇を沈めたとの逸話もある。
一時期、その怪物がトリステイン王国の生み出した生物兵器であるとの話も出てきた。
だが、それらはあくまで噂に過ぎない。

しかし、この兵団は“彼”の実在を知っていた。
彼等はニューカスル城に後詰として参加し、
城内と城外、無数に転がった人とも物とも区別の付かぬ肉塊を目にした。
かろうじて生き残った者達からは怪物が齎した身の毛もよだつ恐怖を聞かされ、
どこからともなく響く獣の遠吠えに身を竦ませた。
ニューカッスルも、タルブも、今も同じだと彼等は考える。
あと一息で敵を倒せるという時に、あの怪物は姿を現してきた。
だから、今この瞬間にも自分達の目の前に現れてもおかしくはない。
彼等はそう強く信じ込んでいた。
404ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:10:19 ID:txznDOJ6

「何言ってやがる。ただの迷信じゃねえか」

彼等の言を一笑に付して若い兵士が先を急ぐ。
そんな兵器があるならとっとと前線に投入しているだろうし、
ただの理性もない怪物だとしたら操れるはずもない。
いるかどうかも分からない怪物に怯えるのは、
あるかどうかも分からない手柄に期待するよりも虚しい。
仮に、こんな事で手間取った挙句に失敗したら取り返しはつかないだろう。
半ば踝まで泥に埋まりかける足場を踏み分けて進んでいた、その最中。
彼の爪先が硬い何かにぶつかって止められた。
不意に足を止めて腰を屈め、その何かを確かめる。

それは倒れて意識を失ったアルビオン兵だった。
耳を近づけると雨音の中でも辛うじて呼吸が聞き取れた。
何があったのかを聞こうとして兵士は気付いた。
周りにはまだ何人もの兵士達が同様に地面に倒れている。

銃声はおろか魔法さえも目にしなかった。
こちらに軍勢が迫る気配も何もない。
なのに何故、彼等は倒れているのか。
困惑する彼の目の前で何かが蠢く。
降りしきる雨と宵闇に視界を遮られた中、
何者かの気配を感じて兵士は咄嗟に動いた。

「何者だ!?」

何が起こったのかを考えるよりも早く、
彼は威嚇の声を発して鋭く尖った槍を前へと突き出す。
直後、彼の槍先は瞬時にして失われた。
断たれた先端が宙を舞って弧を描く。
それに目を奪われた瞬間、彼の鳩尾に剣の柄尻が突き刺さる。
声を上げる間もなく沈んでいく兵士の陰から現れる、もう一つの影。

それが何かを理解するのは彼等には不可能だった。
連合軍の反攻はあるかもしれないと思っただろう。
だが唯一人。それも杖ではなく剣を手に乗り込んでくるなどとは考えもしない。
その理解できない『何か』は大地を飲み込まんとする大軍を前に正対する。
自身の常識を超えた存在の思わぬ出現に彼等は戦慄を覚えた。
そして、まるで弾けるように兵士達は外敵を排除しようと動き出す。

戦いというにはあまりにも一方的だった。
四方八方を取り囲み、さらには魔法が豪雨となって降り注ぐ。
人一人を殺すには過剰ともいえる暴力。
しかし、それだけの攻撃、それだけの殺意を向けられながら、
まるで小枝でも払うようにそれは陣中を切り進んでいく。
必死に繰り出される槍も剣も、魔法さえも切り払われて霧散する。
まるで現実感の伴わない光景を前に、立ち尽くした兵士が声を上げた。

「で……出た! ニューカッスルの怪物だ! 怪物が本当に出たぞ!」

恐慌状態に陥った兵士達が武器を捨てて後方へと逃げ出していく。
その彼等から齎された報が瞬く間にアルビオン軍全体へと伝わっていく。
それはまるで伝染病のような広がりを見せ、アルビオン軍は混乱に陥った。
そんな混迷を極める戦場の只中を平賀才人はひたすらに駆け抜けた。

主であり、そして恋焦がれた少女の為に走り続けた。
405ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:11:00 ID:txznDOJ6

夢を見た。才人とアイツの夢だった。
才人がアイツを連れてどこかに行ってしまう。
その背中に追いつこうと必死になって走っても届かない。
大声を上げて呼び止めようとしても足を止めようとしない。
やがてアイツらは立ち止まってこっちに振り返る。
そして私に向かって手を振ると消えてしまう。
そんな怖いような、悲しいような夢だった。

胡乱な頭でベッドから起き上がる。
上半身だけを起こして辺りを見渡すも目に映るのは見覚えのない物ばかり。
学院の寮とも実家とも違う光景に頭がついていかずに戸惑う。

「……えーと」

寝ぼけ眼をこすりながら記憶を呼び起こす。
(そうだ。私達はアルビオンに……)
そこまで思い出して彼女は慌てて周囲を見渡す。
いない。どこにもいない。
部屋の中に才人の姿はどこにもなかった。

イヤな予感が胸の中を塗り潰す。
掛けてあったローブを引ったくって上から羽織ると、
そのまま船室を飛び出してルイズは駆け出した。

「……あのバカ!」

走りながら思い出すのは教会での一幕。
あの時に交わした杯の中に何かを入れたに違いない。
眠りに落ちる前の、優しげな才人の顔が目に焼きついている。
それがもし別れを決意したものだったとしたら……。
長い髪を乱しながら頭を振るう。
そんな事はない。まだ呼び止めれば間に合う。
二度も、二度も繰り返してたまるものか。
あんな悲しい別れは一度だって十分なのに。

息を切らせてルイズはようやく甲板へと辿り着く。
雨に濡れるのも構わず彼女は船縁へと走り寄る。
しかし、そこに見えたのは遠ざかっていく港だった。
もはやフライを使おうとも届くような距離ではない。
次第に小さくなっていく港の明かりを見ながら、
ぺたんと彼女はその場に力なく膝をついた。

もう間に合わない。
いえ、きっと追いついたとしても止められなかった。
雨ではない雫が頬を伝って零れ落ちる。
もう二度と失くしたくなくて、今度こそ私が守ろうと、
怖くても才人が生きていてくれるならとなけなしの勇気を奮った。
―――なのに、また私だけが生き残った。
406ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:11:40 ID:txznDOJ6

悔しくて悔しくて何度も縁を叩きつける。
どうしていつも置いていかれるのか。
共に生き残る方法がないなら、
どうして“一緒に戦おう”と言ってくれなかったのか。
きっと残された私の気持ちを考えもしなかったのだ。
才人のいない世界で生きるのがどれほど辛く悲しいのかも。

「サイトの馬鹿!馬鹿!馬鹿ァァーー!!」

罵る相手を失った慟哭が虚しく響き渡る。
失って彼女はようやく気付いた。
自分にとって彼がどれほど大切な存在だったのかを。


「どうした相棒? 急にあさっての方を向いて」
「いや、ルイズの声が聞こえたような気がしてさ」

カタカタと鍔元を鳴らして話しかけてきたデルフに才人は答えた。
無論、空耳だというのは分かっている。
ここから港まで声が届くはずはない。
なのに、どこか心に妙な安堵感がある。
まるで傍らにルイズがいるかのような感覚。
それがある限りはまだ戦える、
否、戦わなければならないのだ。

「後悔はねえのか?」
「あるに決まってるだろ。まだルイズと一緒にいたかったさ」

そんでもって、あんな事やこんな事を…と妄想に耽りそうな頭を振るう。
だけど、それを運命は許してくれなかった。
生き残れるのは俺かルイズのどちらか一人だけ。
なら選ぶ余地なんて初めからありはしない。

平賀才人には何も無かった。
ハルケギニアに呼び出され、家族や友人、その他多くの物を失った。
いや、召喚される前の漫然とした日々でさえ確かなものは何も無かった。
そんな中で唯一つ確かなものはルイズだけ。
才人にとって彼女への想いだけが真実だった。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:11:55 ID:P7MvTuUz
支援
408ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:12:21 ID:txznDOJ6

「やっぱり死ぬのかな、俺」
「さすがに七万の軍勢が相手じゃな。
前の相棒だったらどうにかなったかもしれねえけど」

そっか、と才人は溜息を漏らした。
ここまで運良く切り抜けてきたので、まるで実感は湧かなかった。
“ニューカッスルの怪物”の噂が兵士達の動揺を呼び、
そして視界を遮る豪雨により相互の連携が絶たれている事が幸いした。
敵の数も正体も他の部隊の現状も把握できずに狼狽する相手なら、
いくら数がいようともガンダールヴの相手ではない。

もしかしたら、このまま敵陣を突破して生き残れるかもしれない、
そんな淡い期待が才人の胸に込み上げていた。
しかし、きっぱりとデルフはそれを否定する。
幸運はここまでだ、と浮かれる相棒に鋭い釘を刺す。
指揮系統が機能していないのは末端までだ。
直接指揮を執っている連中の周りには万全の警戒が敷かれている。
その最中に切り込むのは火中に飛びいるに等しい。
この期に及んでまだ未練を残す自身に才人は苦笑いを浮かべた。

「まあいいさ。次があるって分かったからな。
後はそいつに任せる。ルイズと上手くやってくれるといいな」

ははは、と笑いながら自分が受けた仕打ちを思い返し、
きっと苦労するんだろうな、とまるで他人事のように呟く。
そんな相棒の姿を見ながらデルフは黙した。
確かに才人の言うように、彼が死ねば新しい使い魔は呼ばれるだろう。
だけど、そいつはそいつだ。才人ではない。
使い魔の代わりはいても、才人の代わりはいない。

(相棒……、きっと気付いちゃいねえだろうが、
嬢ちゃんにとってお前さんの代わりは居やしねえんだよ)

「なあ相棒。一つだけ約束してくれねえか」
「なんだよ、急に改まって」
「何があっても俺を手放さないと誓ってくれ」

万に一つ、いや、十万に一つもないだろう。
だが、少しでも可能性と呼べる物があるのなら賭けてみようと思った。
たとえ才人の意識が途切れてもデルフは彼の身体を操作できる。
剣を手放しさえしなければ、あるいは敵から逃げ遂せるかもしれない。
それに前の相棒の時のように離れ離れのまま別れるのは御免だった。
命を預けた相棒と最期まで共に戦って死ぬのならそれも悪くない。
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:18:13 ID:RNjtDMyD
shien
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:18:41 ID:P7MvTuUz
さるさんかな?
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:26:39 ID:IXZiZO2s
支援
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:28:30 ID:IXZiZO2s
しえん
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 00:29:34 ID:P7MvTuUz
対サル用書き込みリレー依頼板にギブアップ宣言出てないけど、さらに代理が必要か?
414ゼロいぬっ! 代理 の代理行きます:2009/07/02(木) 00:34:51 ID:P7MvTuUz
「何か縛る物持ってないか? ハンカチでもいいけど」
「俺がそんな几帳面な奴に見えるか?」
「いや、聞いてみただけだ」

デルフに言われて、ごそごそとポケットの中を探る。
たとえ何かが入っていたとしても乱戦の最中に落としただろう。
ふと指先に何かを感じて、それを引っ張り出す。

「……………………」

偶然だったのか、それとも奇跡か。
才人のポケットから出てきたのは擦り切れ褪せた首輪だった。
それはお守りとしてルイズの部屋から持ち出した“彼”の持ち物。
呆然と首輪を眺めていた二人が、やがてどちらからともなく笑い合う。
ぐるりと手と柄を首輪で縛り、才人は握りを確かめて言う。

「それじゃあ一緒に行くか」

見据える先は魔法の明かりに照らし出された無数の軍勢。
大軍でありながら隊列の乱れや澱みのない行軍は、
陣中にそれを率いる指揮官が存在する事を示していた。
一個の生物として機能する軍隊はさながら巨大な竜のよう。
それに平賀才人は臆することなく立ち向かう。
まるで『イーヴァルディの勇者』がそうしたかの如く。

「出たぞ! “ニューカッスルの怪物”だ!」

視界の利かぬ中、動く人影を認めた兵士の一人が叫ぶ。
それに才人は雄叫びじみた名乗りを返す。
その称号を誇りと共に高らかに告げる。

「怪物じゃねえ! 俺は!俺達は……“ゼロの使い魔”だ!」
415ゼロいぬっ! 代理 の代理:2009/07/02(木) 00:37:05 ID:P7MvTuUz
本陣に駆ける少年の姿をケンゴウは見送った。
四肢には立ち上がる力は無く、鳩尾にはくっきりと痣が残されている。
(……なんと脆き刃よ)
手には半ばで断たれた量産向けの剣。
しかし、彼が指したのはこの剣ではない。

少年の剣は決して褒められるような物ではなかった。
ただ速くただ重いだけの身体能力に任せた太刀筋。
先祖伝来の剣技を修めた自分ならば負ける相手ではなかったはずだ。
しかし、今の自分は数合も打ち合えず地に這わされている。

少年の話を盗み聞いてつくづく思う。
身に付けた剣も所詮、自分だけのもの。
多くの者達の想いを背負う少年に及ぶべくもない。
ましてや幾万の大軍に刃を向けられる気概など今の自分にはない。
その程度の志で天下に勇名を轟かせるなど遥かな夢。

「……修行のやり直しだな」

口の端に浮かぶのは笑み。
世界は広い、故に興味は尽きない。
杖を振るうメイジには野蛮、銃を撃つ兵士には時代遅れと揶揄された。
しかし、そんな剣に七万の大軍が翻弄されている。
その様に敵方だというのに爽快な気分が込み上げる。

ああ、恐らくは叶う事はないだろう。
だが始祖と神、そして先祖の住まう世界に居たという神仏に願う。
いつの日か、もう一度あの少年と心ゆくまで切り結ばせ給えと。


ケンゴウ(通り名)
……アルビオン戦役後、傭兵を辞めて流浪の旅に出る。
後に、クリスティナ・ヴァーサ・リクセル・オクセンシェルナと運命の出会いを果たす。
仕官した後は彼女を終生の主と仰ぎ、小さいながらも自分の道場を開く。



「前線より援護要請! 敵の反攻激しく、進軍を阻まれております!」
「観測所より通達! 連合艦隊はアルビオンを発ったとの事です!」

突然の奇襲に慌てふためく本陣に伝令が飛び込む。
アルビオン軍の敗北を知らせる2つの報告を耳に、
襲撃者である少年が去っていた方向をホーキンスは黙って見ていた。
追撃しようなどとは思わない。もはや少年が助かる見込みはない。
矢で射抜かれ、炎で焼かれ、槍に貫かれ、肉を裂かれた。
ここまで来た道程を少年の流した血が染めている。
たとえ水メイジの治癒であろうと間に合わないだろう。

勝っていた戦だった。
妨害があろうとも突破できるだけの戦力はあった。
それを覆したのはたった一人の少年だった。
剣を手に単騎で敵中を駆け抜けて本陣まで迫る。
炎も氷も風も土も、少年を阻む事は出来なかった。
今もホーキンスの眼には、目前で閃く少年の太刀筋が焼き付いている。
416ゼロいぬっ! 代理 の代理:2009/07/02(木) 00:39:07 ID:P7MvTuUz
斬り飛ばされた帽子を拾い上げてパンパンと埃を落とす。
そして、それを被り直すと最初に報告に来た兵士を呼びつけた。

「あれが“ニューカッスルの怪物”か?」
「あ……いえ、その……」

ホーキンスの問いかけに、その兵士は萎縮して何の返答も出来なかった。
如何に腕が立とうとも相手はただの剣士、人間に過ぎない。
それを怪物が現れたなどと報告をすれば徒に混乱を招いたとして処罰は免れない。
実際に怪物騒ぎの所為で混乱を来たした部隊も少なくはない。
敗北に導いたと言いがかりをつけられても男には反論のしようがなかった。
加えて、アルビオン共和国の厳罰とは死罪を意味する。
蒼褪めていく兵士の顔を見据えながらホーキンスは続ける。

「槍で突けば傷付き、矢が刺されば血を流し、炎に焼かれれば火傷を負う。
あんな貧弱な物を人は怪物などと呼びはしない、違うか?」
「は……はい」
「では君はあれが何なのか分かっているかね?」

鋭いホーキンスの眼差しに男は竦み上がった。
もはや弁解の余地もなく、ただ言われた質問に答えようとした直後。
それを遮ってホーキンスは解答を口にする。

「あれはな、英雄と呼ばれるものだ」

ホーキンス
……神聖アルビオン共和国の将軍としてアルビオン戦役を戦い抜く。
終戦後、揉み消された平賀才人の功績をトリステイン政府に強く訴える。
後に、彼の回顧録はアルビオン戦役を知る上で最も史料価値が高いと評された。


「ねーちゃん! ねーちゃん!」
「どうしたんだい? 騒々しいね」

戦場から程近いサウスゴータの森の中。
がさがさと木陰から飛び出してきた子供達に、
やれやれといった態度でマチルダが答える。
雨の中でもはしゃぐ子供達に付き合う体力はない。
きっと、またイタズラして怪我でもしたのだろうと、
取り合わない彼女に子供達は切羽詰った様子で言い放つ。

「おばちゃんじゃなくて! ティファニアねーちゃんを呼んできてよ!」
「おば!!?」

困惑も一瞬、禁句に触れた子供へとマチルダの手が伸びる。
そして、あっと言う間に羽交い絞めにすると、
こめかみに拳を押し付けながらマチルダは問い質す。

「誰がおばちゃんだ! 誰が!」

その鬼気迫る表情に他の子供達も言葉を失う。
こんな事をしてる場合じゃないと分かっているが、
今のマチルダを止められるのは、この孤児院に一人だけ。
やがて騒ぎを聞きつけたティファニアが駆け寄ってきた。
417ゼロいぬっ! 代理 の代理:2009/07/02(木) 00:42:08 ID:P7MvTuUz
「どうしたんですか、姉さん」
「年上に対する言葉遣いがなってないんでね、ちょっと教育してやったのさ」

心配そうに見つめるティファニア。
その視線に耐え切れずマチルダは捕らえた少年を解放する。
恨みがましそうに見上げる子供を睨みつけながら、
風邪を引かないように自分の着ていたローブを彼女に被せた。
ついでに言うと彼女の着ている服は薄手の布地で、
水に濡れると肌に張り付いて大変な事になる。
少年の情操教育に良くない物を隠していると、
子供達の一人が思い出したかのように声を上げた。

「大変だよ! 森の中に人が倒れてるんだ!
前の、竜のおじさんみたいに凄く血を流してる!」

その言葉に二人はすぐさま行動に移した。
少年の指差す方向へと走り出すと草木を掻き分けて進む。
やがて二人の前に目を覆いたくなるような凄惨な光景が広がる。
大木に寄り掛かる少年は正しく満身創痍だった。
傷口から流れ出た血は服を赤黒く染め上げ、
身体には何本もの矢が突き刺さったまま、
片腕は完全に黒く焦げて今にも崩れ落ちそうだった。

「………………」
「待ってて! 今助けるから!」

すぐに駆け寄るティファニアと裏腹に、マチルダは言葉を失った。
こんな偶然があるものなのかと思わず運命を信じてしまいそうになる。
マチルダにとっては敵同然だが何故か憎しみは湧かなかった。
それどころか、むしろ助かる可能性に安堵さえしている。

ティファニアが詠唱を行うと指に嵌めた指輪が光り、
致命傷と思われた才人の傷が次第に塞がっていく。
ふん、と鼻を鳴らすとマチルダは才人から目を背けた。
甘くなったのではない、ただ堪えられないだけ。
あの時のようにルイズが泣くのを見たくも聞きたくもない。
そんな自分勝手でつまらない理由。ただそれだけだ。


マチルダ・オブ・サウスゴータ(別名:土くれのフーケ)
……タルブ戦後、何食わぬ顔でオスマンの秘書として復帰。
その後、『破壊の杖』を強奪するも才人達に敗れて逮捕される。
しかしシェフィールドの手引きにより脱獄。
その代価としてクロムウェルより奪った『アンドバリの指輪』を引き渡す。
現在、アルビオンの孤児院にて慣れぬ子供の世話を勤める。

ティファニア・ウエストウッド
……孤児院で子供達の世話をしながら過ごしてきた。
今はまだ自分の運命を知らない。
418ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:45:58 ID:txznDOJ6

顔が血色を取り戻すのを確認してティファニアは安堵の吐息を漏らした。
指輪に付いていた石はもう無い。それは力を全て使い切った証。
だが、彼女の顔に後悔はなく、むしろやり遂げたと思わせる表情を浮かべる。
ふと気付くと少年はうわ言のように何かを呟いていた。
失礼かもしれないと分かっていながら思わずティファニアは耳を傾ける。

「………ルイズ。待ってろよ、今帰るからな」


平賀才人
……ルイズの新しい使い魔としてハルケギニアに召喚される。
その後、ギーシュとの決闘、フーケとの戦いを通して戦いの経験を重ね、
前任者が託した想いを受け継いで精神的に大きな成長を遂げる。
―――彼の物語は、まだ始まったばかりだ。
419ゼロいぬっ! 代理:2009/07/02(木) 00:46:58 ID:txznDOJ6
以上、投下したッ!
絶賛規制中! 今後も代理投下をお楽しみくださいッ!

次回、第100話で堂々の完結(予定)!
ついでに次回作の構想も(未定)!

------------------
これで終わり
途中代理の代理ありがとうございました
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 01:12:23 ID:gQJ8Gvnc
乙!
長い間ありがとう
あと一話よろしくお願いします
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 02:00:04 ID:TDpuVF19
乙! 重ねて乙!
代理の代理の人の分までさらに三段重ねの乙だ!
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 12:09:08 ID:0xpw8Vjx
お疲れ様です!あと1話か…寂しくなるな…
すっごい作品期待してます!
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 13:18:51 ID:BJk60pDb
フーケの正体がばれてなかったのが意外な俺
(そういえばギーシュがミスったんでばれずにすんだんだっけ?)
あとロケランも宝物庫にあったのか
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 23:49:30 ID:IXZiZO2s
また一つ作品が完結してゆく……
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 23:21:37 ID:hrSzkBW/
GJ
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 01:55:17 ID:nmBoRmOq
次回でついに完結ですか。
今でも十分良作だと思いますが完結してこそ傑作、名作になると思います。
寂しいですか期待して待ってます。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 12:42:14 ID:rH36vn3c
終わったらまとめて読むぜふひひ
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 14:03:54 ID:DJgd3kNl
新作にも期待だぜよ
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 16:24:20 ID:YntvGH07
新刊が出ましたね
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 17:07:18 ID:nzLqTXTX
ああ18巻ね
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 17:33:19 ID:rH36vn3c
ノボルの生産性がロハン先生並だったら今頃100巻ぐらいになってたのかな
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 12:30:53 ID:qAcWp8YR
17巻と18巻だな。殆ど間を置かずして二つの新刊、まさにこれは引力!
そしてヴァレンタイン大統領が召喚されても何とかなる雰囲気になって来ましたね
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 21:54:29 ID:9KVCwX/z
17巻読むために1巻から読み直してたら18巻がでるという・・・
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 22:14:43 ID:Du6hswGh
ウェカピポさんかわいそうです
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 22:55:26 ID:Mnqvd62I
まとめにディオのやつを登録したいけどやりかたがさっぱりわからないんだぜorz
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 02:25:14 ID:aYaui1Gj
SBRはティムといいサウンドマンといいウェカポヒといい
準レギュの非業の死が多すぎる
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 02:27:19 ID:SAz6Z5LU
>>436
ウェカピポだ!

ウェカポヒでも上かポピーでもない
二度と間違えないでいただこう!!
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:26:40 ID:1hK+CU5s
ウェカピポは最初っから死にそうなキャラだったから意外ではないな
好き嫌いで言えば好きなんだが
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:29:52 ID:znPQZkIL
SBRはアヴさんがあっけなく死亡した時点でこれはこの先死人が出まくるなとは思ってた
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:36:29 ID:Z8XG0RV2
アヴさんはポルナレフを救うために犠牲となって散ったのに
SBRのアブさんは…哀れすぎて何も言えねぇ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨…!!
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:39:59 ID:D2dYTV2p
勝手に殺すなよ
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 23:04:39 ID:JIKy6dUn
言葉を発する暇もなかったなウェカさん
大統領に勝つ方法なんてさっぱり予想ができんわ
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 23:35:31 ID:x6k4jll6
マジェントさんを見下した天罰に違いない
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 05:41:45 ID:Ldr3/sM6
ウェカピポの妹はどうなるんだ
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 08:03:23 ID:1ewWHKPU
ツェペリがなんとかするよ
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:52:41 ID:7Rtj+B38
>>385
コーホーからもう2年か
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 16:52:03 ID:QMnqMa53
今日ようやく新刊を読んだ
目欄のシーンで盛大に噴いてしまったw
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:54:06 ID:d8g/Y2/G
ノボルスレでも話題になってたしAAも張られていた
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 22:14:38 ID:valvoTKM
そういえばあれはノボルなりのジョークだったのだろうか
450おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:41:33 ID:AygMP5L5
アッサラーム!お久しぶりです。今回は9話を投下させていただきます。
試験中?関係ないねッ!それと忘れちゃいけない、
拙作をまとめに載せていただき、本当にありがとうございます!以後も頑張りますので
アンニュイな笑顔で見守っていてください。
451おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:42:22 ID:AygMP5L5
スタンド使い同士が引かれ合うように、ガンダールヴのルーンはディオをその進むべき道へと推し進める。
だが、それは本当に正しいことなのだろうか?その結果は誰も知らない…。

おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第9話

カーテンの光がやわらかい明かりを部屋に満たす中、ディオは目が覚めた。日の具合からすると
ルイズを起こすべき時間から30分は遅れてしまったらしい。ルイズを見るとこれまた陶器でできた人形のような顔で寝ている。
起きている時もこれぐらい静かならいい駒として使えるのだが、と思いながらディオはルイズを起こす。
だがルイズは特に慌てる様子もなく服を着替える(勿論ディオに渡して貰っている)。
別にルイズが遅刻しようがどうでもいいが一応聞いてみる。
「今日は…いつもより遅いようだけどいいのかい?」
「忘れてたわね。今日は虚無の曜日だから授業はないのよ。それよりも」

とルイズは珍しく手早く着替えると人差し指をディオに突き出す。
「さあ、今日は城下町に行くわよ!」
「城下町?」
また気まぐれが始まったのかと呆れるディオに気付かずルイズは説明を続ける。
「そう!あの時はたまたまだったけど、いつもあんな殴り合いが通用するはずないでしょ。
魔法が使えない以上剣の一つ二つ持たないと駄目よ。それに見栄えにも関わるしね。
あとついでにベッドも買わなきゃね。あんな臭いベッドをずっと使うつもりなら話は別だけど」
ディオにはどちらかというと剣よりも城下町の方に興味を引かれた。今まではトリステイン魔法学院という陸の孤島に
閉じ込められたようなものだった。だがこの世界の風俗を知る為には城下町は格好の場所であるし、うさ晴らしにもなる。
後者については言うまでもない。ディオは腕を組みながら答えた。
「いいだろう…ついていかせてもらうよ、ご主人さま」

ディオとルイズが部屋を出て角を曲がった直後、ルイズの向かいの扉からキュルケが出てきた。
ディオを口説き落とす為の化粧もばっちりだ。
「そうね、ルイズは物ぐさだろうからダーリンを開けに行かせるはず。そしてドアを開けたダーリンの胸に私が飛び込めば
さしものダーリンも…勝った!ゼロの使い魔、完ッ!!」

キュルケは自信満々にドアを叩く。
沈黙。
もう一度叩く。
沈黙。
「ノックしてもしもぉ〜し!ルイズ、まだ寝てるの!?」
と声をかけながら叩いても何も返ってこない。
嫌な予感がしたキュルケがアンロックを使って部屋を開け、馬で出て行く二人を見つけてタバサの部屋へ猛ダッシュしたのは
その直後であった。

タバサは虚無の曜日が好きである。一日中自分の部屋に篭って好きな本を読めるからだった。
だが最近のお気に入りは小説ではなく『ツェペリの奇妙な冒険』と題した冒険漫画である。
場面はちょうど主人公のシーザーという青年が囚われの友人の知り合いの老富豪を助ける為、友ジョセフと共に
悪逆非道の軍隊の基地に女装して潜入しようとしたところである。
どう見てもバレバレな変装でどう見張りをごまかすのかワクワクしながらページをめくろうとするタバサであったが、
横から伸びてきた手がそれを掴む。
何を考えてるのかと見上げると、友人のキュルケが何か叫んでいた。仕方がなくアンロックを解除して抗議しようとする
タバサであったが、キュルケの怒涛の勢いに飲まれる。
「あたしね!恋したの!でね、その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!そう、馬で!
でね、あたしは行く先を突き止めたいけどあなたの使い魔じゃないと追いかけられないの!力を貸して!」
はっきり言えば断りたい。しかしたった一人の友人のたっての頼みである。断るわけにもゆくまい。
窓を開くと口笛を吹いて風韻竜シルフィードを呼ぶ。
「馬二頭。食べちゃだめ。」
せっかくの休日が台無しである。無意識のうちに爪を噛む。タバサは静かに暮らしたい。
452おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:43:41 ID:AygMP5L5
それから暫くして、ディオとルイズは城下町に到着した。だがルイズの顔は心持ち暗い。
魔法が使えない代わりに馬の扱いには自信があったルイズだが、ディオはそれを上回る競馬の騎手顔負けな腕前であったからだ。
駅舎に馬を繋ぐとディオは周りを見渡す。人口は確かに多いが、町並みや道路の舗装はどう見ても産業革命以前である。
なるほど魔法が存在する以外は中世と同じと考えて差し支えないか、と一人ごこちてると、ルイズが声をかけてきた。
「どう?たくさん人がいるでしょ?驚いた?」
「ああ…驚いたよ(文明の低さに)」
その答えに満足したのかルイズは颯爽と町を歩きだす。

ルイズの後ろをついてゆくディオは昔貧民街に住んでいた事もあり大体の想像はつくが、この世界の文字が読めないので
一々ルイズに説明してもらう。
「あれは?」
「カジノダービーBr.」
「ほう、それでは向かいのあれは?」
「ブックスポルナレフ」
「ではこっちの」
「鳥犬専門ペットショップ・イギー!んなところよりさっさと行くわよ!」
そうしてルイズは恐れる様子もなく路地裏に入っていく。
狭い道を貴族くずれのスリが多発するというような話を聞きながら歩いてゆくと、明らかに武器屋と思しき店が目の前に現れた。
「ほら、着いたわよ」
とルイズが店に入ると太った親父が出迎えた。

「旦那、貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これぽっちもありませんや」
「客よ。」
「こりゃおったまげた、貴族が剣を!これはどういった心境で?」
と親父が目を丸くすると何かの冗談のように手を振る。
「だから違うわ。話を最後まで聞きなさい。今日はこいつに剣を買ってやりにきたのよ」
「ほほう、成る程。最近は下僕に装飾をさせるのが流行りなのですからな」
「貴族の間で?」
「そうでさ。なんでも『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。」
と店主は世間話をしながら宝石が各所に埋め込まれている一振りの剣を持ってきた。
「これなんかいかがでしょう?ゲルマニアの錬金術師シュペー卿が鍛えた剣、お値段に見合う威力は保証しますよ?」
ルイズも気に入ったようで満足そうな笑みを浮かべる。
「んー、なかなかいいわね…いくら?」
「そうですね、こいつは店1番の業物ですからね、新金貨で3000エキューで如何でしょうか?」
「た、高いわよ!もっと安くならないの!?」
いくらルイズでもたかが剣一つに広大な庭付きの豪邸が建てられるような金を払うのは躊躇われた。

その時、帽子を被った長髪の男が店に入って来たが、ディオを見るなりくるっとドアの方を向き、また外に出ていった。
店主から剣を見せてもらい、大剣を手に取りしげしげと眺めるディオ。と
「かーっ、わかってねぇなあんちゃんよ。糞みてえな安物売り付けようってこいつもこいつだが、
そんなもんに引っ掛かるような奴はそれにすら及ばねぇ。帰れ帰れ!」
店の奥から渋い中年男性の声が聞こえた。
「な、なによ今の!」
「デ、デルフリンガー、くそっ…いや、あいつは嘘つきのボロインテリジェンスソードでさぁ。気にしないで」
「へっ!嘘つきのおめーに嘘呼ばわりされるならおれっちが正しいってことじゃねーか!」
「なんだと!」
453おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:45:03 ID:AygMP5L5
喧嘩を始める剣と主人。ルイズはあっけに取られて今のやり取りを見ている。さして気にする様子もなく辺りを見回すディオだが、
やがてその声を見つけるとなおも喋ろうとするのを無視して手に取る。
すると、デルフリンガーは今まで叫んでいたのが嘘のようにぴたりと声をあげるのを止めると、暫く考えてから口を開いた。
「…おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
「『使い手』?『使い手』とはなんだい?」
「言葉通り、おめーはかなり黒いがおれの使い手って事よ。どうだ、おれを買わねーか?」
そこでディオはルイズに向き直り、剣を渡す。
「ルイズ、これにしよう」
「はぁ?こんな喋るだけのボロ剣どこがいいのよ!」
「君には珍しくなくてもぼくには珍しくてね、それにぼくの事を何か知ってるみたいだ。気に入った。親父、これはいくらだい?」
「いや、若奥様の言う通りそんなボロ剣よりこっちのシュペー卿の剣の方が…」
「その偽物が、かい?」
「…畜生!」
店主は机を叩くと、大剣をしまう。

「わかったよ。そいつだな?捨て値で100エキューでかまわねえよ!」
店主が負け、あまり出費せずに済んだ事を喜ぶべきか錆だらけの剣を選んだ使い魔を叱るべきか微妙な表情を浮かべるルイズと
デルフリンガーを背負ったディオは家具屋に向かうべく店を後にした。

それを上空から眺める人影が二人。キュルケとタバサだ。ルイズ達がいなくなると早速店に入る。
「アッサラーム!今のメイジ、いえ、今の使い魔が欲しがってた剣とかってないかしら?」
店主はニヤリと笑うと手を振りながらさっきの剣を出す。
「ああ、こいつですね。さっきメイジの若奥様が買おうとしたんですがね、高いとかいって買い渋って結局ボロ剣買っていきましたよ」
公爵家の娘ともあろうものが貧乏ね、とほくそ笑みながらキュルケは値段を尋ねる。
「おいくら?」
店主は少し悩むそぶりを見せたあと、おもむろに値段を言う。
「本当は5000はしますが、事情がおありのようですな。いいでしょう、4500で勉強させていただきます」
いくらなんでも高い。だがキュルケは胸元を開くと色気たっぷりの声で誘惑する。
「ねぇ、もっと安く買えないかしら?」
「そ、それじゃあ4000…」
「ね…もっと色をつけて♪」
と、そこに先程店を出て行った男が入って来た。
「よぅ、ダンナ!…ヒヒ、実は最近いい仕事で金稼いだからよー、これを機会に傭兵始めようと思うんだが、なんかいーい剣はないかい?」
「ああ、こいつがあるよ。見てみるかい?」
と、急に商売人の顔に戻ると店主は大剣を見せる。帽子の男はそれを受け取ると多少大袈裟にも見えるそぶりで剣を振るう。
一方のキュルケは気が気ではない。
「おっ!なかなかいい剣じゃねぇか。いくらだ?」
「ちょっと!今私が交渉してるのよ!」
と、キュルケが慌てるが、店主は
「悪いね、これはまだあんたのじゃないんだ」
と言うと男に向き直る。
454おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:45:56 ID:AygMP5L5
「そうだな、5000ってとこだ。」
「そこをもーちょっと安くならないか?」
「しかたねえな、4200でどうだ?」
「お!それなら払えるぜぇ!」
と、男は大金の入った袋を取り出す。
何故平民があんな大金を!とキュルケは驚くが、ここであの剣を売り払われる訳にはいかない。
今まさに剣を渡そうとする店主の腕を掴むと、キュルケは慌てて叫んだ。
「ちょっと待って!4500でいいわ!」
「本当かい?」
胡散臭そうな目つきで男とキュルケを見比べていた店主だが、にっこりと微笑むとキュルケに剣を渡した。
「…仕方ないな。お客さん、運が悪かったと思ってあきらめな」
「マジかよ…なんてこったい」

そうしてがっくりとしている男を残してキュルケはほくほく顔で剣を持つと、タバサの元へと向かう。
「…どう?」
「用事は済んだわ!さ、学院に戻りましょ。今夜はビッグサプライズよ!」
「…シルフィード。」
「キュイ♪」
とシルフィードは浮き上がるとルイズ達に気付かれぬように学院に戻るのであった。



数時間後、酒場の席で先程の二人が乾杯をあげていた。
「いやー、今回はいいカモが釣れたな。これもお前さんのお陰だよ」
「なぁーに、中々のいい女だったが、別に殴るわけじゃねえ、問題はないッ!」
男はいつの間にか短銃を取り出し、ニヤニヤする。
「それにしてもあの嬢ちゃんも驚くだろうよ、おれは確かに傭兵だが得物はこいつだって事をよ。」
「だな。」
「ま、おれがいたからこそだが、ダンナがいるからこそおれも楽して金儲けができるって事よ。
 ダンナも知ってるだろ?おれの人生哲学をよ」
「ああ。1番よりNO.2!だろ?」
「その通り、わかってんじゃねーか…ヒヒ」
つまりはこういう事である。カモを見つけると店主は手を挙げて合図をするとともに吹っ掛けて、渋る客の目の前で
男が買うふりをする。そしてぐずぐずすると先に買われてしまうと慌てた客は店主の言い値で買ってしまうという訳だ。
「だがどうしたんだい?最初の客が来た時いきなり逃げ出しやがってよ」
長髪の男は手に持った短銃を回しながら答える。
「いや、どーもあのメイジの使い魔?あいつを見た時にな、いやーな感じがしてよ。3回くらい前世であんな奴に
雇われていたような、例えるなら暗殺しようとしても一瞬で後ろに廻られそう?そんな感じがしてな」
「なんじゃそりゃ」
呆れる店主に男は酒をつぐ。
「ま、気にしててもしかたがねぇ、ほら、もう一度乾杯だダンナ!」
「おう、乾杯!」
ディオは計らずも名剣を手に入れた。キュルケは予想外の出費で役立たずの剣をつかんだ。そして店主は計算通り金を儲けた。
世の中には知らない方がいい事も、悪い事もある。
                                             to be continued…
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 18:48:12 ID:Lr+EGggC
投下乙
変な店屋もそうだが、なんでお前がここにいるんだwww
456おれは使い魔になるぞジョジョー!9話:2009/07/09(木) 18:48:43 ID:AygMP5L5
以上、投下終了です。今回は大幅なネタ回になりましたが、本当はこういうノリが大好きです。
ちなみにこの世界にスタンド使いは『一人も』召喚されていません。
誰かに似ていても名前が同じでも他人のそら似です。
それではご感想をお待ちしています。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 19:16:33 ID:oFfl52gS
アンロックじゃなくてサイレントじゃない?タバサのところ
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 19:23:28 ID:AygMP5L5
>>457
あ!…久々にやっちゃいました…orz
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 20:02:45 ID:qHC4aeKF
た・・・タバサがwキラッになってるwww
ディオの人お疲れ様っした、今回も楽しませていただきました〜ん
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 20:08:55 ID:ooVxv9qp
ホルホル君何してやがるwww
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 20:57:09 ID:Bg7MVxcr
ホル・ホース大好き
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 22:01:29 ID:EZEFUa5f
>タバサは静かに暮らしたい。
嘘付けw復讐者のせりふじゃねえぞwww
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 22:54:12 ID:lh5UVWJL
なんでポルナレフが本屋なの?
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 22:57:34 ID:Qa2A3koA
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 23:00:32 ID:Lr+EGggC
元ネタはSFCのゲーム
色々突っ込みどころが満載すぎるステキなゲームらしいwww
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 23:39:46 ID:5FZVI6eT
乙でした
なんというネタ回・・・
ディオは武器屋であまり絡まなかったが訊かれるまでかってに見て回ってたんだろうな
さて問題のデルフだがディオがどこまで(本心はともかく)心を許すかだな
一つの人格としてあるからあんま黒いことするときに持つのかわからんし
次回も期待してる
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 03:46:57 ID:/9ep3eX2
一巡した世界みたいな感じだなw
こういうの嫌いじゃないぜ
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 05:26:57 ID:XcnZYrpl
なんだかこのデルさんには悲しい未来が待ってるような気がしてならない
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 03:01:30 ID:cqFdtSia
死んだ子の年を数えるようで悪いけどアヌビス神召喚の人・・・何処行ったんだろ
これから面白くなるってとこだったのに タルブも行って無いよ・・・
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 08:02:43 ID:How2dmrF
年始にここで忙しいとかスケジュール調整が大変とかそんな感じの事言ってたよ
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 09:17:39 ID:TmnUeNl9
乙でした。
キュルケが交渉ごとでしてやられるのが新鮮でした。彼女は世慣れた交渉担当を振られることが多いのに。
「平民のしたたかさに出し抜かれる貴族学生」っつーのが、いかにもありそうで面白かったです。
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 23:15:37 ID:ksjycAXf
GJでした。
ディオの台詞が毎度面白いw
括弧内の台詞で吹いてしまいましたwww
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 08:19:33 ID:mWjvV1aD
時が止まったか
474ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 22:54:50 ID:2NTBGxbH
墜落した戦列艦が上げる黒煙に燻ぶ中、コルベールは歩き続けた。
背中越しに聞こえる兵士の歓声や悲鳴にも振り返る事はない。
腕の中には息遣いの絶えた犬。それを我が子の様に抱き締める。

出来るだけ、ここから遠く離れたいと強く願った。
戦乱に放浪されて傷付いた彼の終焉の地はここであってはならない。
血や硝煙の臭いではなく風が薫る花畑、あるいは世界を見渡せる小高い丘か、
どこか誰も知らぬ場所に、そして誰にも知られずに葬られる。
それがトリステインであれ他の国であれ、決して墓を暴かれ利用されるなどあってはならない。
彼は大切な者を守る為、命を尽くして戦った。
その魂の平穏を乱すような事はたとえ始祖と神であろうと許されない。

「やあやあ待っていたよミスタ・コルベール!」

聞き覚えのある耳障りな声が高らかに響く。
コルベールの視線の先には身形の良い貴族が一人。
それはアカデミーから派遣された例の男だった。

「さあ、その薄汚い犬を我々に引き渡したまえ。
これほど貴重な研究資料、土の中で腐らせるには惜しい」

男は“我々”という言葉を殊更強調した。
恐らくはアカデミーの総意を示しているのだろう。
逆らえばアカデミー、引いてはトリステイン王国への反逆となる。
止まっていたコルベールの足が再び前へと歩み始める。
それを見て男は笑みを浮かべる。

「いや、君は実によくやってくれた。
さすがはアカデミーに所属していただけの事はある。
怪物について調べ上げ、こうして我々の元に連れて来てくれた。
君の貢献に、アカデミーも君の復職を認めるだろう」

コルベールを招き入れるように大きく両手を広げてみせる。
だが彼はコルベールの処遇などに興味はなかった。
圧倒的な力を誇示した“バオー”を手に入れる為の口約束。
この遺体を調べ尽くし、再現する事が出来ればトリステイン王国は最強となる。
さらには彼が推奨した“光の杖”の軍事利用も夢想ではなくなったのだ。
形骸化したアカデミーもかつてのような発言力を手にし、自分はその頂点に立つ。
男の目に映るのはコルベールではなく遥かな高みへと続く階段。

コルベールが男へと歩ずつ歩み寄る。
やがて互いの手が届く距離にまで近付き、男は手を差し伸べた。
しかし“彼”へと伸ばされた手は空を切った。
戸惑う男の横をコルベールは平然と通り抜けていく。

完全に無視された形となった男の拳が震える。
怒りと恥ずかしさが込み上げて顔を著しく高潮させる。
そしてコルベールへと振り返ると声を荒げて叫んだ。
475ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 22:55:43 ID:2NTBGxbH
「貴様! 分かってやっているのか、これは反逆だぞ!
今までは公に出来なかったが故に処罰を免れていたが、
実験部隊を脱走した罪は未だに有効! 本来ならば極刑だ!
それを見逃してやったにも拘らず再び背くとは度し難い!」

薄皮の様にへばり付いていた余裕の表情が男の顔から剥がれ落ちる。
杖を突きつけて恫喝する相手に目もくれずコルベールは歩いていく。
取るに足りない存在に無視されるなど屈辱に他ならない。
湧き上がる憎悪は人道に悖る方法さえも可能とさせる。
コルベールが自身を省みないというのならば別に人質を取ればいい。

「無論、今まで匿っていたオールド・オスマンも罰せられるだろうな。
そればかりか貴様の生徒達も事実を知りながら隠蔽していた可能性がある。
未来を担う貴族の子弟に、あらぬ嫌疑はかけたくないのだがなあ」

コルベールの足が止まる。
その背中にニヤついた笑みを浮かべながら男は近付いた。
そして彼の肩に手を触れようとした瞬間、コルベールは振り返った。
そこにいたのは魔法学院の教師などではない。
『白炎』をして怪物と云わしめた『炎の蛇』が睨む。
心臓を鷲掴みにされたのではないかという程の恐怖が男を襲う。
短い悲鳴を上げて尻餅をついた相手にコルベールは言い放った。

「もう学院に戻る事はありません。
それでも彼等に危害を及ぼすというのなら」

“今一度、この杖を振る事に躊躇いはない”
口には出さずとも、彼の鋭い視線が雄弁に語っていた。

遠ざかっていくコルベールの背中を男は見送る。
傍から見ても分かるぐらいにコルベールは満身創痍。
今なら如何に優れたメイジであろうとも仕留められる。

「誰か! 誰かいないのか! 反逆者だ!」

自分で動くという考えを完全に放棄して男は叫んだ。
離れているとはいえ、ここはまだ戦場の中だ。
騒ぎを聞きつければ誰かが駆けつけてくれるだろう。
そう期待して懸命に声を上げ続ける。
叫び続けた所為で黒煙を吸い込んで思わずむせ返る。
口元にハンカチを当てながら視線を戻すと、
そこにはこちらに歩み寄る人影があった。

「おお……!」

歓喜の混じった声が男の口から漏れる。
やはり始祖は自分を見捨てなかった。
次第に顕になっていく姿に男は始祖に感謝した。
手に持った杖は平民の兵士などではなく、
自身を倍して余りある体躯は鍛えられた軍人である事を示していた。
―――だが、煙の向こう側から現れた全容を見て男は凍りついた。
476ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 22:56:31 ID:2NTBGxbH
無惨に刻まれた火傷の痕。何も映さない盲目の瞳。
戦鎚じみた巨大な杖。オーク鬼の如き頑強な巨体。
何よりも男はその人物の顔に覚えがあった。
コルベールの所属していたアカデミー実験部隊の記録。
そこに副隊長として記載されていた男の名を呟く。

「『白炎』の……メンヌヴィル」

それが男の最期の言葉となった。
その直後、彼の肩から上は完全に失われていた。
つまらなそうに『白炎』は横薙ぎに払った杖を再び肩へと担ぎ直す。

「邪魔だ」

死体に目もくれずに吐き捨てるように言う。
しかし不満げだった表情も一瞬。
一歩一歩とコルベールに近付く度に、
その表情からは抑えようとも笑みが零れ落ちる。
迫り来る殺気にコルベールも振り向き、そして隠し切れぬ動揺を見せた。
その態度の変化を体温で察知してメンヌヴィルは狂喜する。

メンヌヴィルにとって十年の歳月は長かった。
傷が癒えるまで拷問に等しい苦痛と同居し、
光を失ってから屈辱に塗れて世界中を彷徨った。
眠りにつけば、あの夜を思い出して悲鳴と共に目覚める。
暖かな日差しさえも我が身を焼く記憶を蘇らせる。
楽しい時間が光の如く過ぎ去る物ならば、
その悪夢のような日々はどれだけ長い時間だったのだろうか。
怪物と成り果てるまでの道程を生き残れたのは執念のみ。
ただ、コルベールへの復讐心だけが彼を生かしていた。

そうだ、俺を見ろ。
俺はここにいるぞ、コルベール。
貴様の前に、貴様を狩る為だけにここにいる。
永劫とも思える時間も、苦痛も、屈辱も、憎悪も、
全てはこの戦いの為だけに存在していた。

「戦いは終わりました。これ以上の戦闘は無意味です」
「終わった…? 馬鹿を言うな、俺も貴様も生きている。
アルビオンとトリステインの戦など、どうなろうと知った事か」

コルベールの言葉を一笑に付してメンヌヴィルは杖を構えた。
『白炎』の言葉は額面だけのものではない。
彼は知らないがメンヌヴィルはここに来るまで自分の部下を手にかけた。
避難させようとする彼等を障害物であるかのように打ち殺したのだ。
発狂したと思い止めようとするアルビオン兵さえも焼き払い、
今まで築き上げてきた物全てを投げ打って『白炎』はここにいる。
ここにいるのは人間ではなく、妄執が動かす狂気の塊。

「貴様は追いつかれたと思っているようだが、それは少し違うぞ。
これは運命だ。俺と貴様はここで巡り会う事が決まっていた」

覚悟を決めて杖を向けるコルベールに、
メンヌヴィルは感極まったように語りかける。
何を言っているのか理解に苦しむ言動に思わず顔を顰める。
直後、彼等の真上に巨大な影が落ちた。
軍艦が来たのかと見上げるコルベールの視線の先、
そこには、まるで弦のように形を変えていく太陽があった。
日食の事を失念していた彼の表情が凍りつく。
477ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 22:58:03 ID:2NTBGxbH

「しまった!」
「気付いたようだな。だがもう遅い。
俺にとっては住み慣れた世界だが貴様はそうではあるまい。
これこそ天の恵み。始祖が貴様を討てと言っている、その証左よ。
日食が終わるまで果たして生きていられるかなコルベール!」

メンヌヴィルの巨体が闇の中に消えていく。
常でさえ不利な状況に加え、コルベールはワルドとの連戦。
残された精神力だけで凌ぎきれるとは到底思えなかった。
杖を握る手に力はない。彼の蓄積された経験が敗北を告げていた。

(……ここで終わり、ですか)
諦観に達したコルベールは僅かに安堵している自分に気付いた。
長き贖罪の日々は実を結ばず、見たいと願った異世界は遥か遠くに。
背負った罪の重さに苦しみ続けた生涯がようやく幕を下ろす。
嘘と裏切りを繰り返して人を傷付け続けた報いを受ける時が来たのだ。
メンヌヴィルとの因縁もここで断ち切られ、誰かを巻き込まずに済む。

そして“彼”の遺体を抱き留めてコルベールは願った。
もし、この日食の向こう側が“彼”の世界に繋がっているのならば、
せめて、その魂だけでも共に連れて行って欲しいと。

メンヌヴィルの魔法が完成する、その刹那。
一面の闇で覆われた世界を激しい稲光が白く塗り替えた。
まるで意志が介在するかの如く雷光がメンヌヴィルを襲う。
空を見上げるコルベールの目に映ったのは雷を纏う一頭の風竜。
電撃を放つ竜などハルケギニアには存在しない。
故にコルベールは気付いた。それが“彼”の内に潜んでいた力の源だと。

「おのれ…! 化け物如きが邪魔をする気か!」

忌々しげに見上げるメンヌヴィルに再び雷撃が迫る。
『白炎』同様に“バオー”も視覚ではなく触角で敵を察知する。
日食の闇はメンヌヴィルを覆い隠すカーテンにさえならない。
奥歯を噛み砕かんばかりにメンヌヴィルは憤怒の形相を浮かべた。
憤るべきは“バオー”とそれを仕留めそこなった自分の甘さ。
かつて“炎蛇”が自分を殺せなかったように、そのツケが今になって巡ってきたのだ。
己の失策を胸に刻みつけ、彼はフライでその場から早急に離脱した。
“バオー”と“炎蛇”そのどちらか一方なら確実に戦闘を続けただろう。
しかし、その両方と対峙すれば確実に敗れる。それでは意味がない。
生きてさえいれば必ずや次の機会が巡ってくるという確信が彼にはあった。
―――これは間違いなく運命なのだと。

「君は……」

コルベールの呼びかけを風竜の羽ばたきが掻き消していく。
大地に降り立ったバオーがコルベールとその腕に抱かれた“彼”を一瞥する。
生命の臭いは既に失われている。この状態から蘇生させるなど“バオー”にも不可能だ。
しかし彼は“バオー”の宿主だった。それならば僅かながら可能性が残されている。
幾度となく戦闘形態へと変身してきた彼の細胞は、
破壊と再生の繰り返しにより元の細胞よりも強靭な物に変貌している。
それを“バオー”の分泌液を分け与えて活性化させる事が出来れば、あるいは……。

しかし、それをした所でここに“彼”の居場所はない。
自分を焼き払おうとした男達は再び“彼”を研究材料にしようとした。
戦いは避けられない。だが人間を犠牲にしてまで生き延びるのを望むだろうか。
478ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 22:59:25 ID:2NTBGxbH

それでも“彼”に生きていて欲しい。
“バオー”は“彼”から学んだ。
“生きるとは何かに命を懸ける事だ”と。
“彼”が主である少女を守る事に命を懸けたのならば!
今度は自分が“彼”の命を守る事に命を懸けよう!
望みは捨てない! 自分は最強の生命力を持った生物なのだ!

“バオー”が自分の指に食らいつく。
傷口から分泌液の混じった血が零れ落ちる。
その指先を“彼”の口元に押し込んで体内に流し込む。
次いで口の端に引っかかっていた、千切れた前足を元の場所へと戻す。
後は、彼の生きたいと願う意志に賭けるのみ。
自分にまだやるべき事が残されている。

黒く染まった空を見上げる。
太陽は完全に影の中に隠れている。
時間がない。“バオー”は翼を大きく羽ばたかせた。

「無茶だ! 止めなさい!」

その行動の意味を察したコルベールが声を上げた。
風竜の翼膜は散弾によってあちこちに孔を穿たれ、
その翼を動かす背中の筋肉は炎によって焼け爛れていた。
如何な生命力を誇る生物でも再生には時間がかかる。
無理に動かせば根元から翼を失う事だって十分に有り得る。
今の“バオー”が高高度の落下に耐えられるとは到底思えない。
ここまで飛んできた事さえ奇跡なのだ。
これ以上を望むのはただの自殺行為にしか思えなかった。

しかし“バオー”は“彼”を抱きかかえて飛んだ。
黒一色の空を貫くように空へと昇っていく。
空気の壁を突き破り太陽に迫る青い弾丸。
それはやがてコルベールの視界から消え、
そして、ハルケギニアからも永遠に姿を消した―――。


少女は開いていた本を閉じた。
表紙には凛々しくも愛らしい犬の絵。
本を返しに来たはずなのに、いつの間にか読み返していた。
もう休み時間はとっくに過ぎている。
慌てて本棚の中に戻して図書室を飛び出した。
どんな言い訳をしようかと思案しながら廊下を駆ける。
終了間際にテストの空欄を埋めるぐらい必死になっていた彼女に、
部屋から出てくる人間に注意を払えるほどの余裕はなかった。
加速のついた勢いは急には止められない。
激突だけは避けようとして転倒する彼女にレビテーションがかけられる。

「遅刻しそうだからといって廊下を走るのはあまり感心しませんね」

溜息を零しながらコルベールは杖を振るって彼女を立たせた。
伝統ある魔法学院が嘆かわしいばかりです、と小言を漏らす彼に、
少女は何度も繰り返して頭を下げながら礼を言う。
もう走らないように、と注意してコルベールは彼女を解放した。
再度お礼を言って教室に向かおうとした彼女が不意に振り返った。
479ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 23:00:24 ID:2NTBGxbH

「ミスタ・コルベール。あの本、本当に面白かったです」
「そうですか。それは良かった」

本を紹介してくれたお礼を告げると、
まるで自分の事のようにコルベールは喜んだ。
戦争が始まると聞いてから久しく見なかった彼の笑顔に、少女も彼と同様の笑みを零した。
ふと彼女は本を読んでいて気付いた疑問を思い出した。
無論、コルベールが博識だからといってそんな事を知っていると思えない。
だけど彼なら何らかの答えを返してくれると期待して質問を投げかけた。

「コルベール先生。どうして、あの本には締めの言葉が無いのですか?」

少女の問いにコルベールは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、
やがて優しげに微笑んでから彼女に答えた。

「ああ、それはね―――」


三陸の海岸沿いの道路に、その黒い乗用車は停まっていた。
辺りには行き交う他の車はなく、立ち入り禁止の看板が立てられていた。
『製薬会社の爆発物管理ミスにより崩落の危険があります、
調査が終了するまで立ち入り禁止です。皆様にはご迷惑をおかけします』
元々が私有地だったのでそれを不満に思う住民も無く、
せいぜい後で事故を知った釣り人が腹を立てて看板を蹴飛ばしていくぐらい。

クーラーが利いた車内で、白人の男はネクタイを緩めた。
暑苦しい外に比べてそこは天国のような快適さだった。
乱れた髪をバックミラーを見ながら整えて車載電話に手を掛ける。
そして番号をダイヤルすると二、三度咳払いをして緊張を和らげる。

「長官、私です」
『前置きはいい。実験体の少年は見つかったのか?』
「いえ、それはまだですが……」
『ならば連絡は不要だ、切るぞ』

その言い様に部下は思わず顔を顰めた。
だが、ここで電話を切られる訳にはいかない。
この報告を聞けば長官も喜ぶはずだと必死に縋りつく。

「少年とは別の“バオー”が見つかったんです!」
『どういう事だ。研究所の自爆で他の実験体は全滅したはずだ』
「それが幸運にも生き残っていたようです。
とはいえ損傷が激しく海岸に流れ着いてきた時には既に上半身だけでして」

ちらりと男が海岸へと目をやる。
そこにあるのは上からブルーシートが掛けられた『何か』。
大きさは象に匹敵し、その形状は地上に存在するあらゆる生物と異なる。
実に形容しがたい物を前に彼の部下も困惑を隠しきれない様子だった。
出来れば係わり合いになりたくない、そんな感情さえ窺える。
しかし、それにも構わず男は喜色満面で報告を続けた。
480ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 23:01:35 ID:2NTBGxbH

「ですが研究材料として非常に興味深い代物です。
形態変化により、まるで絵本に出てくるドラゴンのような―――」
『今すぐ焼却しろ』

長官の言葉に彼の饒舌な舌が動きを止める。
“ドレス”が失われた今、残された“バオー”はこれと少年の物だけ。
独占できる好機を前にして、そんな判断を下す上司が彼には信じられなかった。
だが、そんな彼の考えを見透かすかのように冷たい声色で言い放つ。

『聞こえなかったのか。全てを焼却しろ。
“バオー”も、その宿主も、データも、実験動物を、
何よりも我が国が“ドレス”に関与した一切の証拠をだ』
「りょ……了解しました、国防長官」


紅蓮の炎と黒煙が海岸に立ち昇る。
それを遠巻きに見ていた少女が気付かれぬように立ち去っていく。
ふと気付くと彼女の後を何かが付いて来ていた。
片足が動かないのか、ひょこひょこと覚束ない足取りで。
ハッハッと息を切らせながらその犬は近付いてくる。
餌を与えた訳ではないので、その内に居なくなるだろうと思っていた。
しかし、どこまで行ってもその犬は付いて来た。

「何で付いて来るのよ」

やがて根負けした彼女がバス停のベンチに腰掛けて訊ねる。
犬が言葉を話せないのは分かっている、だが彼女にはそれを知る術があった。
広げたスケッチブックの上で鉛筆を握り、いつも通り心を滑らせる。
彼女の意志とは関係なく動き出した手が“寂しそうだったから”と書き記す。

「寂しい? それはアンタも同じでしょ!」

心の奥を覗き込まれたような気がして少女は苛立ちをぶつけた。
あの爆発で彼女は居場所を失い、深い悲しみと恐怖の後遺症だけが残された。
もう自分を守ってくれた彼はいない、そう考えると生きる気力さえ湧いてこなかった。

彼女の怒声に、思わず犬がびくりと身を震わせ、
そして悲しそうにクゥンクゥン鳴きながらその場に伏せてしまった。
叱られたのもショックだったのかもしれないが、
それ以上に自分の置かれた境遇に悲しみを覚えたのだろう。
鉛筆が走る。次々と描かれていく人の姿に少女は彼がどれだけ愛されていたのかを知った。

―――だけど、もうここには居ない。
彼も私と同じ様に大切な人を失ったのだ。
その悲しみを理解できるのは、きっと他の誰でもない。
スケッチブックを閉じた少女は彼に手を差し伸べた。
481ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 23:02:18 ID:2NTBGxbH

「一緒に行く?」

その問いかけに彼は力強い一鳴きで応じた。
彼の返事を聞いた少女は静かに“そう”とだけ呟く。
そして数歩進んでから思い出したかのように振り返った。

「私はスミレ。貴方の名前は?」

振り向いて少女は彼に訊ねた。
その顔には、とても愛らしい笑みが浮かんでいた。


『―――それはね、彼の物語はまだ終わっていないからだよ』
482ゼロいぬっ!代理:2009/07/13(月) 23:03:43 ID:2NTBGxbH
761 名前:ゼロいぬっ![sage] 投稿日:2009/07/13(月) 22:01:00 ID:ULXnYHKg
以上、投下&連載終了です。
長かった物語もこれで一応の終わりです。
約2年間の応援ありがとうございました。
一言でも感想がもらえたりするだけで励みになりました。

この後の話も(何故かモット伯が主役で)避難所で書こうかと思ったのですが、
それは奇妙な使い魔じゃないだろうという事で全面カットで。
後、これとは別なエンディングがあるのですが、
余韻を台無しにしたくないので、そちらはいずれ避難所で書きたいと思います。

次回作は何をやるのか悩んでいます。
出来れば他の人と被らないのが良いかなと思ったり。
表紙つながりで悪魔のような少年か、
犬並みの嗅覚つながりで彼か、あるいはSBRから出そうか。
全く新しい観点からDIO様のウェストウッド農業開拓史とか。

……早く規制解除されないかなあ。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 23:07:50 ID:2NTBGxbH
犬の人GJ!超GJ!!
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 23:14:18 ID:xVOeZ5/e
犬と作者氏に幸運と勇気と奇妙な賛美を送ろうッ!!長い冒険お疲れ様です!


次回作は被ってもいいのでお好きなのをどうぞ。できれば、裕也の活躍が見てみたいです
でも今は御ゆるりと完結の余韻と休息を満喫くだされ。
名も顔も分からぬ私達読者を楽しませてくれてありがとうございます
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 23:16:55 ID:t4mnuz+0
GJ!
さて1話から読み返してくるか
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 23:35:43 ID:8VZVdSUD
犬の人お疲れ様!
次の作品を楽しみにしつつゼロいぬをもう一度読み返していくぜ……!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 23:36:16 ID:k2llntL8
おっと。ようやく完結か。
完結してから一気に読もうと思って、
タルブ戦後から呼んでなかったが、
これでようやく読めるな。
一体何ヶ月待ったことやら。
100話到達させるのに躍起になって、
水増しでふやけてない事を祈るぜ。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 00:26:19 ID:s5El2g55
乙!鳥肌立ったぜ
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 01:02:49 ID:C6fsiFx9
ゼロいぬ完結おめでとうございます。
長らくの連載お疲れ様でした。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 01:26:42 ID:PoIoYwVe
完結乙!
ゼロいぬには何度泣かされたかなんて今までに食べてきたパンの枚数のように数え切れないなぁ・・・
やっぱり完結させるってのは凄いぜ!!敬意を表する(・`ω´・)ゞ
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 12:33:08 ID:GkMecoTK
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 18:28:54 ID:KpRbfod8
やっぱ完結してこその小説だよな
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 19:55:39 ID:9kpIX9b2
エシディシが召喚されるとやっぱり
「貴様ら魔法使いの弱点は呪文を唱えるその肺よ!」
と脚で魔法使い持ち上げちゃうのかな
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 21:15:42 ID:tlz3O4mX
ゼロいぬさん完結乙です! 百話お疲れさまでした!
うわあああ、いぬうううう、よかったよ、いぬううううう!
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/17(金) 19:48:00 ID:UurLSygs
・・・そして時は動き出・・・す?
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/17(金) 19:49:24 ID:YuCj5TCd
随分長い間時が止まってたんだなぁ
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/17(金) 20:51:18 ID:VjcIFC5P
うーん。スレに人が来ない以上、下げを強要するわけにはいかないか…?
しかし三日も止まっているとちょっと不安だ
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 00:58:33 ID:5HnBRLgH
どうかスレに活気が戻りますように
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 21:39:05 ID:0cUXs+LF
仮面さんまだかなあ
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 21:39:44 ID:M3ewLIBv
500
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 03:53:01 ID:wfDYPa9V
遅れ馳せながら犬さん、ありがとう、そしてお疲れ様でした。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 09:32:09 ID:BFdztlt5
月1で上がってた銃杖があがらない・・・
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 10:10:55 ID:KVm3RrjO
今年の夏は時間が加速するのかそれとも・・・
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 10:23:25 ID:uV+4L95L
SHITの人も減速しちゃったなぁ
アンリエッタの方の人は帰ってきてくれないかな…
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 18:14:54 ID:zJTDtwjM
夏がやってくる
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 19:26:21 ID:T6cQgU+v
サマーシーズン到来!
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 19:36:29 ID:zTYBMU/g
ボクの地元、M県S市なんですけど、最近行方不明の事件が多発しているんです。
ただの一度として行方不明者の発見も、犯人逮捕もありません。先日ニュースでは全国平均を上回る数字を出していました。
なにか良くないことが起こっているんでしょうか…?
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 19:46:26 ID:bqMu79l1
新手のスタンド使いか
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 19:58:17 ID:5NQeTJxB
『ワールド・ドア』ッ・・・亜空間に引きずりこめぇーーーーッ!!
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 23:27:04 ID:+BpnlvIQ
ガオンッ!
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 01:06:26 ID:b9+7qvaf
熱いからサブゼロの人にまた来てほしいな去年の夏も待ってた
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 20:02:19 ID:9zmnGqVG
人が居ないようだから話題を投下してみるか

おれはそろそろジョルノ単独の物語が読みたい。三色コロねの人とか居たけど更新は望み薄だし
そもそも、影が薄いからネタにしにくいのか。生命を生み出すとか神秘すぎて万能なのがいけないのか…
というか主人公が呼ばれるのもそんなにないな(ダークヒーローのDIO、ディオは最近まで続いているが)。
承太郎とか初めて読んだ仗助とかもっと過激に呼ばれてもおかしくないはず。存在感もあるし。

だからそろそろジョースター一族がもう一度みたいです。若ジョセフの続きも見たいです
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 20:12:27 ID:oLTDqBeJ
歴代JOJO達って初期ルイズと相性が悪いのが大半なんだよな

ジョナサン→境遇を知ればよき兄になりそう
ジョセフ→ちゃかしつつも上手くやりそう
承り→ある意味一番相性悪い(特に第三部の時期は……第四部以後なら少しは大人になってるが)
仗助→NGワードさえ言わなきゃ……言ったら問答無用w
ジョルノ→直接反抗はしないだろうけど言葉で追い詰めそう
ジョリーン→結構上手くやれるかな? 刑務所の生活に比べればマシだろうし
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 20:12:54 ID:o8L+Fesv
キャラは何でも良いけどきりのいいところまで進めてくれる作者が良いです
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 20:14:01 ID:9zmnGqVG
キリのいいところから始まるのも大歓迎だよ。本当
516おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 21:54:39 ID:2vuM2S6z
お久しぶりです。あの後足腰を痛めてしまい、現在も寝ても起きても激痛が
続いている状態です。だが!こんな事で投下は諦めない!
そしてゼロいぬ!の人、完結おめでとうございます。私もしっかりと
話を終わらせられるよう頑張っていきます。
それでは間が空いてしまいましたが俺は使い魔になるぞジョジョーッ!第十話
投下します。
517おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 21:55:59 ID:2vuM2S6z
『土くれ』のフーケは『破壊の杖』を手に入れ、目的を果たす。
だが、それがディオに更なる力を与えることになる事は本人にさえも予測できなかった。

おれは使い魔になるぞジョジョーーッ! 第十話

「物理的攻撃なら可能性があるのですか?」
ロングビルは昼食の鶏肉とトマトのスープを飲みながらコルベールに尋ねた。
ルイズ達が城下町にいたちょうどその頃、ロングビルに恋心を抱いていたコルベールは
ついに彼女を昼食に誘う事に成功したのである。
そして今、二人は宝物庫の事について話していた。もっともほとんどコルベールが一人で喋っている状態だが。
「そうです。あの扉は高度な魔術結界を幾重にも施されていて、スクエアクラスのメイジでも解く事は不可能です。
しかしその代わりに物理的な力に対してはさして警戒をしていないので、そこを突かれれば破られる可能性があります。
大体我々メイジは魔法にばかり目が行って人間の発想力など目が……」
機関銃のように喋り続けるコルベールだが、ロングビルはもはや愚痴と化したその話を聞いてはいない。
その口には笑みが浮かんでいた。

「どういう意味よ、ツェルプストー!」
「おっと会話が成り立たないアホがひとり登場〜〜。質問文に質問文で答えるとテスト0点なの知ってた?ルイズ。
まあいいわ、だからあたしはディオが欲しがってる剣を手に入れたから、そっち使いなさいって言ってるのよ」
「おあいにくさま。使い魔の使う道具なら間に合ってるの。ねえ、ディオ」
「まあまあ二人とも落ち着いて…」
「「あんたには関係ないでしょ、ギーシュ!」」
「…しょぼん」
その夜、ルイズの部屋では騒動が持ち上がっていた。
あの後学院に帰ってきたディオとルイズはベッドが届くとギーシュを呼び、薔薇の臭いがプンプンするベッドを
引き取って貰う事にしたのだ。そこでデルフリンガーに興味を示したギーシュがディオに色々と聞こうとした時、
剣とタバサを抱えたキュルケが突如部屋に入ってきたのである。
そしてディオにあの時武器屋で買わなかった高価な剣をプレゼントしようとしたことにルイズが怒り、現在に至っている。

二人は延々と言い合いを続けているが、ディオは無言で腕組みをして壁に寄り掛かって他人事のようにそれを眺めている。
(フンッ!たかが剣ごときで見苦しいッ!)
はっきり言ってディオにとってはどちらの剣を選ぼうとどうでもよかった。喋る剣に興味を持って買ったものの
ディオが剣に求めているのは相手を『斬る』事だけで、後は喋ろうが飾りが付いていようがどうでもよかったのだ。
(だが、このままどちらかに決めないというのは下の下策。
 かといって下手に選べば、もう片方がおれに悪感情を抱くは必定ッ!)
そう、この矛先がいずれ自分に向くのは分かり切った事であり、ディオはそれを座して待つ気もどちらも選ぶという愚を犯す気もなかった。
(現在の状況で最善の選択肢、それはこの場はどちらの顔も立てながら事を収める事だろう。その為には…)

ディオは言い争いをしている二人をよそにしょぼくれているギーシュに近づくと声をかける。
「ギーシュ、頼みがあるんだが、聞いてくれないかい?」
518おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 21:57:31 ID:2vuM2S6z
「なんだい?仲介ならお断りだよ?」
「いや、そうじゃない。これからある事をするんだが、それはどうしても君にしかできない事なんだ。」
「僕にしかできない、のかい?」
「そうなんだ…だから、友人として僕を助けてほしい」
ギーシュは驚いていた。あのディオが自分に助けてくれと言っている。しかもそれは自分にしかできないという。
友人であるディオに頼まれた以上はグラモン家の名誉に賭けてこの友達の危難を救うのが筋だろう。
ギーシュは爽やかな笑みを浮かべるとディオに答えた。
「ああ、僕にできる事ならなんでもさせてもらうよ」

「そうだな…」
言い合いをしていた二人がピタリ、と止めてディオを見る。
「成る程、このデルフリンガーは世にも珍しい剣、これを選ばないという選択肢はないな。」
「ほら、見なさいよツェルプス…」
「だが、ぼくの為にわざわざ高価な剣を買ってきてくれたキュルケの心はとても僕の胸を打った」
「ディオ…」
「そこで、だ」
二人を見回す。
「ぼくにいい考えがあるんだが、聞いてくれないか?」
ディオが二人を呼んでその方法を話す。納得したように頷いていたルイズだが、振り返ってギーシュに尋ねる。
「本当にいいのね、ギーシュ」
ギーシュは胸を叩きながら答えた。
「ああ、勿論さ。グラモン家の名誉にかけてこの喧嘩を納めてみせるよ」


「なんで!なんで僕がこんな事しなくちゃいけないんだー!」
「自分で言ったんでしょ!我慢しなさい!」
「でもこの役ってディオがやるべきだろ!」
「だってディオには魔法が使えないじゃない!その点あんたなら落とされてもレビテーションで浮かび上がれば大丈夫でしょ!」
数分後、中庭には本塔の上から吊り下げられたギーシュ、そしてそれを狙うルイズとキュルケがいた。
ディオは、
「君達二人は決闘をする予定だったな。ならばいっそそれで決めたらどうだい?だが剣の所有を巡って怪我を負うなんて馬鹿らしいだろう?
だから、誰かを塔から吊して、縛っているロープを先に切った方が勝ちというのはどうだい?」
と提案した上でギーシュがその役割を買って出たことを伝え、ルイズもキュルケもそれを了承したのである。

「…ちっ」
その集団から少し離れた所で一人の人影が舌打ちをしていた。そう、彼女こそが今世間を騒がし、貴族達を嘲笑うかのように
どんな厳重な警備もかい潜って財宝を盗んでいる『土くれ』のフーケである。しかしフードと夜陰で顔がよく見えないが
今の彼女が不満でいる事がわかる。
このトリステイン魔法学院にある『破壊の杖』を盗もうとして学校内部に潜り込み、宝物庫の弱点を聞き出したまではよかったが
その壁は彼女が得意とする実に20メイルもあるゴーレムの一撃ですらびくともしない強度を誇っていたのだ。
そして対策を考えていると、今度は学生どもがワイワイとやってきて邪魔をする。
「『破壊の杖』を諦めるわけにゃいかないが…また出直すべきかね…」
519おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 21:58:48 ID:2vuM2S6z
思わず一人ごとが出る。あいつらはまだ騒いでいる。しかもよく見ると宝物庫の壁に生徒を一人吊している。
どうやら彼を撃ち落とした方が勝ちらしい。くだらない。あんな馬鹿馬鹿しい事であいつらは私の邪魔をしたというのか。

明日、見かけたという事にして罰則を与えてやろうかとフーケが思っている間にどうやら勝負は始まったらしい。
「避けないでよ!ギーシュ!ファイアーボール!」
あれは確かゼロのルイズの声、でも魔法が使えない事で有名なあの生徒にファイアーボールが扱えたかしら?
と、次の瞬間ギーシュの背後の壁が爆発した。今だギーシュが命乞いをしている所を見ると外れたらしい。
だが、この威力は一体なんなのか、思わず爆心地を見るフーケだが、次の瞬間ある事に気付いた。
壁にヒビが入っている。
例えどのように堅牢な城壁であろうとヒビが入っている状態では土壁よりも脆い。天は私に味方したか。
フーケはほくそ笑むと呪文を唱えはじめた。

「残念ね、ヴァリエール!あたしの勝ちのようね!」
「〜〜〜ッ!」
予想通りと言うべきかルイズには魔法が使えず、結果としてキュルケが勝負を制することとなった。
少し考えればわかる事をプライドで無視してしまったことを悔しがるルイズだが、あとの祭りである。
「さ、ダーリン。あたしの剣を受け取って♪」
とキュルケが剣を差し出す。
フン!こんな売女から剣を貰うのはしゃくに触るが、自分から言い出した以上仕方がない。
結果的にはこの剣を使う事になってしまったが、よもやルイズもこれに文句をつける事はできないだろう。
だが、ディオが剣を受け取ろうとした瞬間、辺りに轟音が鳴り響き、瓦礫が落ちてきた。
「ちょ…ちょっとルイズ!いくら何でも悪あがきが過ぎるんじゃない!?」
瓦礫を避けながら慌てて抗議するキュルケだが、ルイズも逃げながら反論する。
「ち、違うわよ!私なにもしてない!」
「…あれ」
突然の事に慌てる彼女達だが、タバサに指さされるまでもなく月明かりが遮られた事で全員がその影を作ったものを見上げる。
「ゴ、ゴーレムだ!」
ギーシュの叫び声で我に返り逃げ出すルイズ達だが、ギーシュは縄が絡まりうまく逃げる事ができない。
そんなギーシュにゴーレムは足を上げると勢いをつけて踏み潰し…


ふふ、たわいもない。あんなに悩んでたのが馬鹿みたいに宝物庫に侵入する事ができた。
素早く辺りを見回す。ゴーレムには注意を引き付けるよう暴れさせているが、あまり時間はない。
と、部屋の片隅に『破壊の杖。持ち出し不可』と書かれた札が目に入る。
いつも通り『破壊の杖、確かに領収いたしました 土くれのフーケ』というサインを残したフーケは
ゴーレムを壁に寄せると乗り移ろうとし、
壁に立てかけてあるものにふと視界がいった。ただの時代遅れの平民の武器。
それを無視しようとして、だが何かの役に立つかもしれないと思い直すとフーケはそれを手に取った。

地響きと共に辺りは砂煙に包まれる。そして砂煙が収まった時、ギーシュの居た場所にはゴーレムの足があった。
「いやあああああああああああ!!!!」
キュルケの叫び声が静寂を破り、ルイズは呆然と膝をつく。
確かにギーシュは嫌な奴だったかもしれない。だが、学友の一人であった。それをフーケはまるでたまたま見かけた虫を潰すかのように
殺したのだ。もしあの時逃げなければ、ギーシュの縄を引っ張れば…ルイズの瞳に涙が浮かぶ。
だが
「キュイ♪」
ルイズ達の上空を何かが高速で横切った。タバサのシルフィードだ。口にはギーシュを咥えている。
ギーシュは無事だった。踏みつぶされる瞬間、シルフィードが飛来してギーシュをすくい上げたのである。
520おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 21:59:42 ID:2vuM2S6z
地面に降り、ギーシュを離すと皆が駆け寄る。
「ギーシュ!大丈夫?ギーシュ!?」
「大丈夫。気絶してるだけ」
一息つくルイズだが、その隙にゴーレムは学院の外に逃れ、やがて元の土に戻った。

「逃げられたみたいね…」
キュルケが呟く。宝物庫の壁は壊され、中庭には壁の破片や砂山が所々にできており、あたりは惨憺たる状態である。
ルイズはディオに話しかけようとして、思わず息をのんだ。ディオの顔は怒りに歪んでいた。
(へぇ、こいつにも義憤っていうのはあるのね)
言うことを聞かない上に主人を殴りつけるようなディオに不信の念を覚え始めていたルイズであったが、
ディオにも正義の心があるという事に驚き、その評価を見直すのであった。

だが、ディオの怒りはルイズの考えている事とは全く違う動機であった。

(くそっ…このディオが…『恐怖した』…だと…ッ!あのような土くれ風情にこのディオがッ!
そう、あの瞬間、ディオには恐怖の感情、吸血鬼に襲われたあの瞬間のような感情が湧き上がってしまったのだ。
(いずれこの世界を支配するおれがたかがゴーレムごときに脅えるなどあってはならない!
 だから!おれはとっさの瞬間に足がすくみ何もできなかった自分が許せないッ!)
ディオの口元から血が流れる。怒りのあまり唇を強く噛んでしまっているのだ。だがディオは怒りのあまりその事にも気づいていない。
(『土くれ』のフーケ!貴様のようなコソ泥風情が!このディオを『恐怖』させた事を後悔させてやるぞォーーーッ!!!)
ディオは嵐の如き怒りを心の中に荒れ狂わせながらフーケに自分を恐怖させた事への代償を誓うのであった。
                                           to be continued…
521おれは使い魔になるぞジョジョー!:2009/07/20(月) 22:01:24 ID:2vuM2S6z
以上、投下完了です。これからもペースは遅くなりますが折を見て投下し続けます。
8月中旬までにはフーケ戦を終わらせる予定です。それでは…
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 22:01:28 ID:oLTDqBeJ
投下乙
相変わらず無駄にプライドが高いなこの男www
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/20(月) 22:06:47 ID:aqPx+M6s
投下乙!!
ギーシュの扱いの悪さに笑ったww
ディオのドス黒い性根が知れ渡った時の周囲の反応が楽しみだww
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 20:57:21 ID:b1Q98kVC
投下乙かれ
やっぱギーシュはいいように使われてるなw
フーケが無事に監獄に行けるか心配になってきた…いまのディオにティファのこと知られたと思うと恐ろしい
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 23:06:13 ID:SUR0ki06
禁断のマジックアイテムでやや時代遅れの平民の武器ってまさか…
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 09:28:47 ID:etkF5Cgo
ティータイムは幽霊屋敷で
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 21:25:19 ID:1FmuRhxH
1エキューって何円ぐらいだ?
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 21:40:19 ID:+sZE9g8m
500エキューで平民一家が1年まかなえるだっけ?
物価が違うからわからんけど1エキュー1万円前後ぐらい?
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 21:45:22 ID:5BkT2YJk
俺の見たSSではたいてい1エキュー1万円で換算されてるね。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 22:11:51 ID:+RkQKHy0
そう考えるとデルフは100万円か
平民の傭兵は剣買うだけでも一苦労だな
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 00:06:03 ID:bThwnBX0
ちょうど車を買う感覚だな。
デルフは、新車なら軽の下位グレード、中古なら10年落ち。
シュペーなんちゃらのは、ポルシェ、フェラーリ、ベンツSクラス。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 07:47:42 ID:WucvyK0W
武器なんて基本消耗品なのに糞高い・・・武器屋がボッタクリなのかゼロ魔世界が異常なのか・・・
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 08:07:56 ID:NWXaNhtO
消耗品なのにクソ高いのが少し質のいい武器の常
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 11:08:06 ID:Jr81mcVa
消耗を少なく、値段を跳ね上げるのが固定化なんだろう
剣一本で何百万って、土メイジ様々だな
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 11:58:28 ID:IQ+IHXDy
トリビアの泉で銃器と戦った日本刀が90万だったから、ぼろぼろの権にしてはちょい高い、位じゃないか?
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 13:57:28 ID:da5TC+Lw
そもそもデルフってエキュー金貨で買われてたっけか?
新金貨とかじゃねーの?
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 14:43:57 ID:BDxQKQ+l
>>532
シュペー卿の剣には魔法がかかってるから、基本非消耗品扱いなんじゃない?
30Mゴーレムに殴られるなんて、本来の用途から明らかに想定してないことされて折れてるがw
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 14:55:08 ID:O/9443DY
ベルセルクで、ゴドーのつくった業物の剣で使徒に斬りかかったらあっさり折れたようなもんだな
ゴドー曰く、「人間ならいくら切っても刃こぼれ一つしねぇが、
        人間じゃねえもん(人外)を切るようには出来てねえんだ」
とか
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:03:40 ID:wmF3vFLo
ゼロ魔世界ってどうやって作られてるの?
数打ちなら土メイジが片手までぽんぽん作れそうなイメージ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:05:00 ID:wmF3vFLo
ゼロ魔世界で剣ってどうやって作られてるの?
の間違いだw
ゼロ魔世界はヤマグチノボルが作ってんだw
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:17:49 ID:NWXaNhtO
大きなおっぱいの間に金属塊を挟むと剣がおっきくなってできあがる
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:31:08 ID:BDxQKQ+l
>>539
作中で作者が明らかになったのがシュペー卿くらいだから一般的なのは不明
ただ、少なくとも護衛のためにメイジが武器屋に剣を買いにきてるので、メイジ以外が作ってるか
土メイジが卸してそれを他の属性のメイジが買いにきてるんじゃないかね?
値段的に(ぼってなければ)平民が買える額でもな……チップレースの売り上げ考えると裕福な平民なら普通に買えるか?
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:37:15 ID:wmF3vFLo
>>542
やっぱそんな感じか
ほかに思いつかないからなぁ
中古武器屋とかあるのかもしれないけど
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 20:46:28 ID:wg0Ova8l
やっぱ戦争とかあれば殺した相手の装備を剥ぎ取ってんのかな
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 21:40:27 ID:Jr81mcVa
トリステインには製鉄技術がないから、土メイジしか選択肢はない
対してゲルマニアは平民の職人が作ってる可能性がある
錬金の魔法と剣職人の腕だとどちらが上なんだろう
シュペー郷がメイジか否か・・・

まぁ中世ヨーロッパの剣なんて大したもんじゃないけどな
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 21:50:53 ID:jYArj0v9
銃弾もメイジが魔法で作ってんだったよな。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 21:54:15 ID:K0Lj7dxE
俺のイメージだけどやっぱり魔法で作るのと、人の手で打ったものの方が良いものが出来そう
特に武器は職人の魂が宿るとまで言われてるし、なによりうしおととらの獣の槍の印象が強くて…
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 22:03:49 ID:Eo07ht4n
>>547
高品質の武器なら攻撃に+1、魔法の武器なら攻撃とダメージに+1だな。
D&D的に考えて。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 22:31:53 ID:K0Lj7dxE
ファンタジー的に考えて武器に魔法が携わるなら、やっぱり強化とか属性付加とかなにかしら特殊なものだよな(固定化みたいに劣化しないとか)
スタンドにおける能力みたいなもん

>>548
そんな感じだね
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 22:35:49 ID:BDxQKQ+l
>>545
トリステンに製鉄技術が無いって記述は何巻にのってたっけ?
アルビオンには少なくともコークスまで存在する段階の製鉄技術は有るんだが
特に記述されてないから不明だと思ってたので出来れば教えて欲しい
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 23:02:26 ID:Eo07ht4n
>>550
多分、オストラント号が出てきた時のだと思う。
プロペラの説明をした時に鉄を薄く延ばす技術について、
キュルケがトリステインではなくゲルマニアだから出来たと言ってたような気がする。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 23:26:26 ID:BDxQKQ+l
>>551
10巻を読んでみたが、ツエプストー家とコルベールの合作って記述上
キュルケの実家が平民で鍛冶屋でした! とかでないかぎり
平民の製鉄技術に関しては関係ないんじゃないですかねー?

いや、あんだけ偉そうに自分とコルベールの愛の結晶的にいってて
実は平民とコルベールに任せてました! なら話は別なのですがそうは読み取れなかった……

あと、この記述だとゲルマニアの冶金技術スゲーとはかかれてても、トリステンに製鉄技術が無いって根拠はならないんじゃ?
ゲルマニアの匠の技とか、10mの鉄材を支柱にするほどの鉄材の加工はトリステンでは無理とかが、メイジの手によるのかよらないのか…
……また読み落としてるかもしれないので突っ込みお願いします
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 00:59:07 ID:Dz8bWMs2
避難所に設定をほじくり返すためのスレがあるんだよ。
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 01:17:24 ID:HR2keJkc
ごめん、雑談の域を出てたようですね
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:22:38 ID:af1NAOKQ
けっこうやばい量かも知らんが、この時間帯なら誰もおるまい(A`;)
……懸念すべきはサルの旦那か。
いちおう告知。10分後に投下します。
556使空高:2009/07/25(土) 03:33:29 ID:af1NAOKQ
一章十四節〜使い魔は上を向いて立ち上がる〜

 宝物庫を出たルイズたちは、いったんそれぞれの部屋に戻って簡単に身支度を済ませ、運ばれてき
た食事をとった。そしてすぐに学院を発った。無論、徒歩ではなく馬車である。手綱は、フーケの小
屋を知るロングビルが握った。
 馬車と聞いて、リキエルは童話の挿絵などにあるような立派なものを想像していたが、実際に馬車
回しに出ていたのは、見た目に粗末な一頭立ての四輪だった。屋根も幌も、ろくに座れる席すらもな
いような代物で、いっそ馬に荷車を引かせたようだった。
 しかも『固定化』をかけられずに長く放置してあったとかで、あちこちが傷んでいる。縁の部分な
どは背をもたせかけるとびっくりするくらい軋むし、乗る前にちらと目をやった心木は、わずかに歪
んでいるように見えた。屋根がないのは、突然の襲撃を考えて見渡しがきくようにとのことだが、ど
うも別の不安を煽られる。
 そんな馬車の上で、めいめいは好き勝手にしている。憮然としたリキエルの隣では、張り詰めたも
のを吐き出すようにルイズが深呼吸しているし、その向かいでは、キュルケが部屋でし切らなかった
らしい化粧を直している。タバサはここでも本の虫だった。それぞれの、この任務への意気込みがう
かがえる絵である。
「そういえば」
 浅い森を三つ抜けたあたりで、ようやく化粧に満足のいったキュルケが、手鏡をしまいながら言っ
た。
「どうして、ミス・ロングビルが手綱を握ってるんですの? 道案内はわかるけど、手綱は付き人に
でもやらせればいいんじゃ?」
「いえ、いいのです」
 くるりと首を回して、ロングビルは答えた。
「わたくし、貴族の名はむかしになくしましたから」
「え、でも貴女、オールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「あの方は、身分や生国にはあまりこだわりませんから。性差は別ですが」
 この会話を聞きながら、リキエルはなるほどと思っていた。メイジ嫌いで通っているマルトー親父
が、厨房にロングビルを出入りさせている理由が、いまの話でだいたいわかった。権威をかさに着て
横柄な態度をとる貴族は断然気にくわないが、魔法が使えるだけの有能秘書ならば一考の余地はある
というわけだ。もちろん、彼女が美人であることも理由のひとつに決まっている。
 もうひとつ合点のいったことがあった。ロングビルの態度のことである。リキエルは何度か彼女と
話をした中で、その言葉遣いやちょっとした所作にどこか違和を感じることがあったが、これも貴族
でなくなったという話と絡めれば、そう難しく考えることもなさそうだった。大部分は平民の生活に
馴染んでいても、わずかに貴族時代の習慣が残っていたりもし、見え隠れする。それが違和感に繋が
っているといったところだろう。
「そのむかしのこと、もう少しお聞かせ願えません?」
 興味を誘われたキュルケが、心持ちロングビルのほうに体を傾けた。
「いえ、聞かせるほどのことは……そう面白くもない話です」
「それは聞いてみないことにはわかりませんわ」
「はあ」
 曖昧に笑って、ロングビルはすっと顔を前に戻した。それきり黙ったのは、これ以上話すつもりが
ないということだった。一種のかたくなさを持った、明らかな拒絶である。
 キュルケは腕組みして薄く笑い、身を乗り出して、ロングビルの肩に手を伸ばした。素知らぬふり
して、だんまりを黙許と取ることにしたのである。みすみす流させやしないわと思っていた。
 それに、案に反して踏み込んでこられれば、普段は物静かなロングビルも驚いて、面白い顔を見せ
てくれるかも知れなかった。それはもう趣旨が違ってしまっているが、要するにキュルケは、暇潰し
が出来ればなんでもいいのである。
 ロングビルの大人しくも乾いた感じのもの言いが、キュルケのどこかに火をつけていた。その火の
燃えるまま手は伸びる。
「よしなさいよ」
 キュルケの腕を、ルイズが横合いから掴んで止めた。
「言いたくないことを無理に言わせるなんて、トリステインでは恥ずべきおこないとされるのよ」
「別にそんなつもりはないわ。ちょっとしたおしゃべりよ」
「根掘り葉掘り聞き出そうとしてるじゃない、この手は誰のよ。それとも、あんたのお国じゃ軽いお
しゃべりなんかで、重大な秘事とかも明かさなくちゃならないの? そんなら失礼な態度にも納得が
いくんだけど」
557使空高:2009/07/25(土) 03:35:30 ID:af1NAOKQ
「その疑問にはお答えできかねますわね。あたし、あんたとおしゃべりする気はないんだもの。これ
っぽっちもないのよ。ゼロなの、ゼロ。ゼロゼロゼロ」
「黙りなさいよ!」
 叫んでルイズは立ち上がった。とそのとき、ちょうど石にでも乗り上げたか、ボロ馬車がごてっと
揺れた。ルイズは簡単に平衡を失い、あるまじき悲鳴をあげて背中から道に落ちそうになる。泡を食
ったリキエルが、咄嗟にマントの裾を掴んで支えた。
 震えの混じった息を整えてから、ルイズは邪険と言えるほど乱暴な仕草で、リキエルの手からマン
トを引き外した。それからあらためてキュルケを睨み、唸る。キュルケはそんなルイズを眺めて、嫌
みたらしく鼻を鳴らした。
「なによ、キュルケ。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
「ゼロゼロゼロ――」
「黙りなさいってば!」
「あんたがゼロのくせしてカッコつけたおかげで、こっちはとんだとばっちりってことよ。泥棒退治
なんて、面倒くさいったらないわ」
 今度はルイズのほうが、ふんと鼻を鳴らした。こちらは単に、憤って荒くなった鼻息が、意図せず
漏れただけのようにも見えた。
「言いがかりはよしてよね。あんたが自分で志願したんじゃないの」
「あんただけじゃ、リキエルが危険だもの」
「なんでよ」
「その板切れに手を当ててみなさいな」
 キュルケが揶揄して言った。
「泥棒相手に、いったいあんたは何ができるの? 魔法なんて言わないでね。あたしは、死ぬときも
五体満足で美しくありたいの」
 どういう意味よと、ルイズはまた叫ぼうとしたが、喉まで出かかっている声は、しかしそこまでで
止まってしまった。一度は開いた口も、勝手に唇を噛む形に歪んでいく。言い返してやると力めば力
むほど、いっそう強く歯は食い込んだ。眉をしかめて目を精一杯にすがめて、睨みを深くすることし
かできなかった。
 キュルケのほうも、張り合うようにより険しい顔になって、ルイズを見た。
「……なぁ、もういいんじゃあないか? もう喧嘩はよォ。もうそこらへんでよォ」
 リキエルが遠慮がちに口を挟んだ。はじめは、飽きずによくやるくらいに思って黙って見ていたが、
本格的に溝が深まりそうな気配に、ついに見かねたのだ。
 二人の仲がよろしくないのはもう仕方のないところまで行ってしまっているらしいが、いまは状況
が状況である。一応は、一致力を合わせようという場面だ。荒事に馴染みのない一般人にも、それく
らいはわかる。ただでさえ昨日の決闘のこともあるのだ。これから危ない目にあうかもしれないとき
に、さらに余計な軋轢など欲しくない。
 とりなしが功を奏したか、ルイズもキュルケも、しぶしぶといった感じではあるものの、互いに相
手から視線をそらした。
「ま、ダーリンが言うのならね」
「…………」
 しなを作ってくるキュルケとは対照的に、ルイズはリキエルと顔を合わせようともしなかった。馬
車の進む方向に首を向けて、かたくななほど動かない。ほとんど無視する形である。
 ルイズのこの態度は、実は昨夜から続くものだった。もっと言えば、土ゴーレムに踏み潰される寸
前で、タバサのドラゴンに拾われてからずっとである。今朝起きたときの挨拶をほかにすれば、食事
をするときも、宝物庫から部屋に戻ってまた外に出るときも、ルイズはリキエルと一切口をきこうと
しなかった。
 だが見ていれば、ほかの人間とは普通に話をしている。そうなると原因はオレにあるんだなと、リ
キエルにもあたりはついてくる。そしてたぶん、その原因と言うのは、あのときゴーレムの足元で交
わしたやり取りなのだ。むしろそれ以外となると、ちょっと思いつかない。
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:35:47 ID:nWAzplAE
ぉぉぉぉぉぉぉ!お帰り〜支援だっ!!!
559使空高:2009/07/25(土) 03:37:32 ID:af1NAOKQ
 しかも昨夜寝る前には、ひどく屈託ありげな顔をしたルイズを見ている。怒っているふうではなか
った。焦れているような悲しんでいるような、そんな顔である。ルイズ自身置きどころに困る、複雑
なものがある感じだった。これまでにそんなルイズを見たことはない。やはりタイミング的には、あ
のやり取り以外に無い。
 リキエルは、いつまでも没交渉というのはいただけないし、そのあたりから問いただしてみようか
と思った。悩みがあるのなら、まさか自分に解決はできないだろうが、話くらいは聞くべきだろうと
思ったりもした。が、いまのところ不通のままである。
 これはリキエルのほうにも問題があった。たとえば、リキエルが間を見計らって話を切り出そうと
すると、ルイズは慌てたようにそっぽを向いたり、下手なくしゃみや咳の真似をしたりして、あから
さまに牽制してくる。するとリキエルは、そこで無理くりにというふうにも出来ず、口をつぐんでし
まうといった具合だ。まずきっかけを作れないのである。
 なんでオレと口をきかないんだ、とさっと言うだけでも十分なはずなのに、それも出来ないのは、
ルイズの気持ちを慮っているわけではなく、単に意気地に欠けているのだった。口をきかないことで
文句を言えるほど、オレとルイズは親密な関係じゃあない、という考えが先に立つのである。
 切り出せない理由は、もう一つあった。自分の思っていることはまったくの的外れで、ルイズが口
をきかないのには、もっと別の原因があるのかもしれないという疑いが胸をかすめるのである。
 こいつはあまり悩まないたちだろうというのが、リキエルのルイズに対する見方である。単純と言
いたいのではない。つらい境遇で生きてきて、といって自分のように悲観することもなく、諦観めい
た考えに足を引きずるでもなく、希望を持っていられる。悩んで足を止めるより、ひたむきに歩いて
いこうとする。そういった意味で、むしろ尊敬するところなのだ。そういうルイズが、鬱屈したもの
を抱えて懊悩しきっている姿は、リキエルにはどうも想像がつかなかった。
 あるいは、昨夜の様子こそその姿であるのかも知れなかったが、それじゃあ昨夜のやり取りの中で
深く悩ませるようなことがあったかとなると、正味な話思い当たる節はない。逃げろ、逃げないの押
し問答が思い起こされるばかりだった。
 それもこれも、核心はやはりルイズに聞いてみるより無いらしかった。手詰まりである。
 リキエルは馬車の縁に背をもたせた。やはり相当に軋んだが、思い切って体重をかけてみると、存
外に頑丈に出来ているのがわかった。それから、何気なく通ってきた道を見た。昨日、城下町に行く
のに通った道もそうだったが、よくならされた道である。草がなく、砂利が端のほうに散っているの
を見ると、よくひとが使うらしかった。そういえば二つ目の森を抜けたあたりで、遠目に農村らしき
ものを見た気もする。
 空を見上げた。雲はなく、今日もいい陽気だった。少し風が出ていたから、喉を通る空気は幾分乾
いて感じられたが、それでも暖かなものである。州鳥か何か、猛禽らしい大きな鳥が空を切り取るよ
うに大きく円を描いている、と思う間に、兎でも見つけたのか、遠くの丘の向こうに落ちていった。
そのまた向こう、もっと遠くの山の上には、遠近が狂いそうになるほど巨大な入道雲が出ていて、見
ていると圧倒される気分になった。
 ――あ、そうだ。
 はたと思いついた感があった。オレの思い過ごしってこともあるのか。そう深刻なものじゃあなく。
 そう考えるとルイズの挙動は、単にそういう気分なのかも知れないと、あまり気にならなくなるよ
うだった。そう見えないだけで、実際は機嫌が悪いということはよくある。そちらのほうが自然とさ
え思える。何か忘れている感じがしたが、それこそ思い過ごしというやつだろう。
560使空高:2009/07/25(土) 03:39:36 ID:af1NAOKQ
 リキエルは思考をぱたりと折り畳んで、顔を正面に戻した。


 その考えは、不意に頭の中に入りこんできたようである。
 途中わずかな休憩をとったあとは、馬車は止まることなく進み、これから深い森に入ろうというと
ころだった。奥に進むと開けた場所があり、そこにフーケの小屋はあるのだという。
 いよいよという場面に来た緊迫がそうさせるのか、はたまた実感が湧いていない証拠なのか、リキ
エルはいま、少し場違いなことを思っている。道中で考えていたことに通じる部分はあったが、こち
らは割合、どうでもいいようなことだった。
 ――どうしてオレは、ルイズだけは逃がそうとか思ったんだっけ? ゴーレムの足の下で。……わ
からねえぜ、どうしてだろうな。
 あのときは意識を取り戻したあとも、半ば朦朧としていて、まともにものを考えられなかった。し
ばらくは夢見心地でいた。そんな気分に浸っているときに、必死な顔ですがりついてくるルイズが視
界に入ったのである。そして同時に、ゴーレムが近づくのが見えた。そのとき、はっきりしない頭が
急に冴えわたって、すぐに浮かんできた考えが、ルイズを逃がすというものだったのだ。自分でも驚
くほど冷静で、割り切れていた。
 それが腑に落ちなかった。人間、ああいう場面ではもっと自分のことを考えるものだろう。ルイズ
が縄を外そうと躍起になっているのを見ても、もろとも踏み潰されるということには考え及ばずに、
あるいは気づいたとしても、自分の命惜しさにさせるままにするところだ。
 基本的にルイズのことは憎からず思っているし、肩入れしているのは自覚するところだ。だがそう
かといって、命を捨てるほどの義理を感じているかとなると、また話が違ってくる。
 そう思うとともに、リキエルはふと、自分が考えこむことはだいたいいつも同じようなことだなと
思った。自分でやったことを、後になっていちいちぐちぐち考えて、オレはけっこう暇な頭してんじ
ゃないのか? と思ったのである。
「どうかしましたか?」
 そのとき、ロングビルが声をかけてきた。
「は、あ? ……ん?」
 俯いていたので気づかなかったが、座り込んでいるのは自分ひとりで、ほかの四人はとっくに馬車
を降りてしまっていた。慌てて馬車から飛び降りた。その踏み切りで馬車が大きく揺れ、馬が色めき
たった。
「すいません、ぼうっとして」
「どこか具合でも?」
「いや、考えごとしてただけなんスよ」
 似たようなやりとりを、前にロングビルと交わした記憶がある。間抜けである。胃袋を楊枝でつつ
かれるようなばつの悪さを覚えて、リキエルはごまかすようにきょろきょろと周囲に目をやった。
 あたりは木々が根を絡ませんばかりに密集していて、それに押される形で、これから先の道もかな
り狭くなっている。とても馬車では進めそうになかった。わざわざここで降りるわけである。
「では行きましょう」
 適当な木に馬を繋いでロングビルが言い、先頭に立って歩き出した。
 時折あらわれる、獣道ともつかない小道には入ることなく、一行はまっすぐに進んだ。風の音一つ
しない空間に、それぞれに違う土を踏む音が、規則的とも不規則的ともとれる間隔で満ちる。この中
にもし盗賊の足音が混じっていたとしても、気付けはしないだろう。もっと別の何かがいても同じで
ある。それは、ひどく不気味なことかも知れなかった。
 もうそろそろ、正午をまわった頃かと思われた。蓋をするように茂った葉の間から、わずかな日射
しが縦に入りこんで、地面に無数の小さな点を作っている。外界と裏腹に、森の空気はやたらと湿っ
ぽく、しかも冷えていた。ノースリーブにこれは少し寒いぜと、リキエルは腕をさすった。
 進めば進むほど道は狭くなり、やがて登りになった。さした勾配があるではなく、意識しなければ
登りということもわからないほどである。だがその半端な負担が、かえって不快なようでもあった。
周りには高木だけでなく、いったい何を栄養にするのか大量の灌木も見られるようになって、その枝
葉が手足を引っ掻くのもうざったらしい。もうちょっとすれば、ここは虫たちの天国になるだろうな
と、埒もない考えが泳いだ。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:40:00 ID:DUIDP5Rp
支援させていただこう!
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:40:56 ID:nWAzplAE
アポロ13号支援!
563使空高:2009/07/25(土) 03:41:44 ID:af1NAOKQ
 なお歩いて行くと、道はまただんだんに広くなり、風を感じられるようになってきた。そして急に
視界が開けた。森を抜けたのかと思えるほど広く、明るい空間に出ていた。
 空間はちょうど円の形になっており、中心に炭焼き小屋と、それに付随して小さな物置が建ってい
る。小屋は屋根に一箇所、朽ちて落ちたらしい大きな穴が開いていて、壁にも無数の隙間が出来てい
る。物置は腐ってしまっているのが一目でわかった。ひとの生活する場が持つ、独特のにおいといっ
たものが、微塵も感じられなかった。
「あの小屋ですわ」
 ロングビルが振り向いて、皆に言った。
「すぐに踏み込みますか」
「でも、ここからじゃ中の様子もわからないわよ。罠とか無いかしら」
 とキュルケが言った。それに応じたものか、タバサが五歩ばかり来た道を戻って、右手にある灌木
の茂みに身を潜めた。つられるように全員が同じ繁みの中に入る。それを確認すると、タバサは落ち
ていた枝で地面に図を引き、おおよそ次のようなことを言った。
 まずひとり、囮の人間が探りを入れる。これは、足のあるリキエルに任せる。状況によって合図を
送り、フーケをみつけた場合は誘いをかけ、外におびき出す。そこに、隠れた自分たちが四方から奇
襲をかける。ゴーレムを出される前にそうするのが望ましい。不測の事態があり、散々な撤退を余儀
なくされた時は、各自馬車のところまで戻ること。
 さすがは騎士とでも言うところなのか、指示するときのタバサは饒舌ながらその内容は端的で、言
い終えたあとの動きも渋滞しなかった。茂みから飛び出したかと思うと、雑多な木立に猟犬のような
敏捷な動きで分け入って、瞬く間にその姿を消す。小屋を挟んで、ちょうど正反対にある雑木林が、
タバサの決めた彼女の持ち場だった。
 続いてルイズとロングビルが茂みを出、キュルケとリキエルが残った。
「じゃあダーリン、これを使ってね?」
 ぼけっと立ち尽くすリキエルに、そう言ってキュルケがすり寄った。差し出したのは例の剣である。
 リキエルは曖昧に答えて受け取った。ルイズのこともあり、微かに遠慮する気持ちが動いたが、丸
腰でゴーレムの前に出ることを考えれば、言ってもいられなかった。
 茂みから出ると、リキエルはかがみ込むような姿勢で走り出した。同時に剣を抜く。左手のルーン
が淡く輝き、なんとも言えない快さが全身に行き渡る。まずは軽く走るつもりが、全速とそう変わら
ない勢いが出て、気づけば、もう小屋の壁に張り付いていた。
 緊張で舌がからからに乾き、膝と指先が笑う。やることは中を覗くというただそれだけだが、所詮
平々凡々にも満たない人間からすれば、これは一大事である。言ってみれば、銃を持った強盗の立て
こもる家屋に警官隊が迫るのと、状況としてはあまり変わらない。ニュースやドラマ、映画の中でし
か知らない世界だ。二十余年と生きて来たが、こんな場面に行き会ったことはもちろん無いし、そう
なる妄想さえしたことはない。
 リキエルは腹に手を置いた。半ば無意識でそうした。気味が悪いほどの速さと不規則さでもって心
臓が鳴っていて、下っ腹にまで響いている。鼻から息を吸い、食いしばった歯の間から一気に吐き出
す。二度三度と続ける。十秒ほどかかって、ようやくいつも程度の息苦しさが戻ってくる。膝小僧は
ぴたりと黙って、拳を握りこむと肉が張って心地よい。動悸はまだ戻らないが、心の準備に何分もか
けてはいられない。
 意を決して、リキエルは窓から中を覗き見た。
「…………」
 足の欠けた机。煩雑に置いてある椅子。扉の割れている食器棚。死んでいる暖炉。何より一年やそ
こらで溜まったとは思えない、見ているだけで喉を刺すような異常な埃っぽさ。やはり、ひとのいる
感じは無かった。
 中はそこそこに広いが、そうやって覗けるだけで全部だった。見る限り誰もいないことになる。そ
れでもリキエルは、拍子抜けするようなことは無かった。むしろ余計に緊張した。
 完全に打ち捨てられている空間に、ひとつだけ馴染みきっていない物がある。見た目に新しい、細
長い木箱である。十中八九、『破壊の杖』だと思われた。少なくとも自分たち以外に、それも簡単に足
の届く場所に誰かがいたのはそれで知れた。もしかすれば、まだ近くにいるのかもわからない。
 リキエルは少し小屋から離れると、腕全体で大きなバツを作った。その合図を見て四人が走り寄っ
てくる。
564使空高:2009/07/25(土) 03:43:54 ID:af1NAOKQ
「フーケは?」
 真っ先にタバサが聞いた。
「いないようだぜ、少なくともこの中にはな。それよりも見てくれ」
 急き込んでリキエルは言い、窓のほうに目を向けた。
 つられて四人ともがそちらを向いて、窓に近寄った。そしてほんの少しの間のあと、奇怪なチェス
トに気づいて色めきたった。
「どうだ、あの箱か? あれがそうか? 『破壊の杖』なのか?」
「わからないわ。でもあたし、前に宝物庫を見学した時、杖を見せてもらったことがあるの。大きさ
はあんなもんだったわね」
 そうキュルケが言い切る前に、タバサは動いている。小屋の扉に向かって杖を振るい、罠の有無を
確かめると、躊躇なく押し入って行った。その後をすぐにキュルケが追う。
「リキエルさんも中へ。わたくしは、辺りを偵察してきます」
 そう言って、ロングビルはまた森のほうへ走って行った。
 残った二人は顔を見合わせた。相も変わらず濃厚な拒絶の気配を漂わせながら、先にルイズが顔を
背けた。そのまま扉の前で仁王立ちになったのは、どうやら見張りでもするつもりである。リキエル
は鼻白みながら小屋に入った。自分が渋い顔をしているのが、鏡を見なくてもわかった。
 案の定、小屋の中は恐ろしく埃っぽかった。無駄と知りつつも、ついつい空気をかき回す仕草をし
てしまう。手を左右にしながら、リキエルはタバサとキュルケに近づき、どうだったと聞いた。
「破壊の杖」
 タバサが言った。
「本物」
「…………」
「あっけないわよねー。面倒なんて思ってたけど、これじゃ逆につまらないわ」
 キュルケがタバサの腕からチェストをひったくって、ひょいひょいと危なっかしくもてあそぶ。そ
れを目で追いながら、しかしリキエルの意識は別のことに向いていた。胸のうちで、釈然としないも
のが首をもたげている。
 ――本当にそうか? マジにこんなにあっけないってのか?
 追っ手がかかることくらいは向こうも承知だろうから、早めにこの場所を引き払ったというのは十
分に考えられる。もしかすれば、どうしてかこちら側の動きを察して、慌てて逃げたものかも知れな
い。だがそうであっても、女子供に抱えられるような木箱一つ、持って行けずに諦めるようなことは
無いだろうし、まして忘れて行くような間抜けはしないだろう。
 泥棒という人種のことはよくわからない。何を考え日々をどう生きているのかなど、知ったことで
もない。まるで一般人には想像もできないことを、朝から晩まで思っているのかも知れない。だが、
盗んだ獲物を放っておくような奴があるともさすがに思えない。
 ――なんだかわからないが、どうもおかしいよなぁ。
 思った矢先である。外から、背筋の跳ねるようなルイズの悲鳴が聞こえ、次いでその悲鳴も霞む大
音がし、小屋が大きく揺れた。リキエルは一瞬、近くに雷が落ちたかとさえ思った。
 ひとときの驚きが去ると、薄暗かった小屋がやけに明るくなっているのにリキエルは気付いた。や
おら仰ぎ見てみると、小屋はボロ馬車よろしく屋根が消えていた。呆れのようなものが、胸のうちで
泡のように浮かんだ。
 小屋を覗き込むような体勢で、ゴーレムがたたずんでいる。一目で昨夜のゴーレムとわかる威容で
ある。土色の巨躯は日の光の下で、ことさらに大きく見えるようだった。無くなった小屋の屋根が、
その右手の中で潰れていた。
 やはりここでも、タバサがいち早く動いた。杖を振り、竜巻を起こしてゴーレムにぶつける。便乗
して、キュルケが炎を操り同様にぶつけた。二人とも至って平気な顔でいるのは、初めからこういっ
た罠を念頭に置いていたのかも知れない。こういう局面に、いくらかの慣れがある様子でもあった。
 しかしゴーレムも頑強で、二つの魔法の直撃に煽られもしなかった。どころか、リキエルら三人を
観察するように突っ立ったまま、動く気配すら見せない。余裕を持て余しているのだ。
「無理よこんなの!」
「退却」
565使空高:2009/07/25(土) 03:46:03 ID:af1NAOKQ
 交互に言って、キュルケとタバサは走り出した。一拍遅れて、リキエルもその後ろにつく。
 三人が小屋を出たと見るや、ゴーレムはゆるゆると腕を振り上げて、小屋の中心に思い切り打ち下
ろした。地面がごろごろと揺れ、粉塵と木屑が舞い上がってリキエルたちに降り注ぐ。直接叩き潰そ
うとせずに、わざわざこんな嫌がらせに出るところに、リキエルはゴーレムを操るメイジの、愉快犯
的な陰湿さを感じた。強力なメイジを相手取って戦う、とそれだけで十二分に気が滅入っているのに、
いよいよ嫌気がさしてくる。
 宝物庫でルイズが杖を掲げたとき、考え直すよう説得するんだったとリキエルは悔やんだが、もう
だいぶ遅い。春先に土から出たばかりの蛙の足よりも遅い。のろのろしてたら踏み潰された、という
のが冗談にも比喩にもならないのが、本当にたちが悪い。
 十分に距離をとってから、リキエルはゴーレムに向き直って、その周囲に目を凝らした。ルイズは
ちゃんと逃げたろうかと思ったのである。まさか今ので潰されはしなかったろうが、先だっての悲鳴
を思うと心配しないのが無理だった。
 桃色の頭はすぐに見つかった。だがリキエルは、一安心するどころか胃を引っぱり上げられるよう
な感覚を味わった。
 ルイズはすり傷一つ無い様子だったが、何を血迷ったのかゴーレムの後ろ側に回り込んでいて、あ
まつさえルーンを唱えていた。やがて勢いよく杖を振る。やはりと言っては悪いが、爆発が起きた。
音と見た目はそれなりだったが、実効はゴーレムの肌をわずかに欠けさせるだけにとどまった。
 ルイズは構った素振りも無く、二度、三度と爆発を起こした。
「ルイズ!」
 腹からリキエルは叫んだ。今は彫刻のように立っているだけのゴーレムだが、いつ積極的に動き始
めるか知れないと思った。いまのルイズは言ってみれば鈍重なノミである。簡単にはたき潰されてし
まう。
「何してるッ! こっちに来い!」
「…………」
「来いと言ってるだろーが! 聞いてるのかァッ!? 呪文……ルーンだったか? 唱えてる場合じゃ
あないだろう!」
 一瞬、構えを解いてルイズが視線を寄越して来た。だがそれだけだった。すぐにまた杖を振り上げ
て、ルーンを唱え始める。
 おもむろに、泰然としいていたゴーレムが動きを見せた。軽い地鳴りを起こしながら、真後ろを向
く。ルイズの起こす爆発が、いい加減に疎ましく思えてきたようであった。ゴーレムは無造作に腕を
振り上げた。
「この」
 とリキエルは呟いた。そして、握りっぱなしだった剣を脇にして走り出した。
 ゴーレムの拳は、もうルイズの上に落とされ始めている。その様子がゆっくりとした速さで目に入
ってくるのは、どうにも心臓に悪いものがあった。青い顔をしたルイズが、必死な形相でルーンを唱
えようとして、合わない歯の根を震わせているのも、遅々としているから余計に痛々しい。
 ルイズのもとにたどり着くと、リキエルはその腰に腕を回して抱え込んだ。それからはがむしゃら
に走った。さっき頭の上に降ってきたのは小屋の破片だったが、今度飛んでくるものは、もっと大き
く、凶暴なものになるだろう。
 そう思った途端、地面が沈むような感覚に足をとられ、次いで盛り上がるような感触に足をすくわ
れた。ゴーレムが地面を抉ったのだ。疾走の勢いそのままにリキエルの体は宙に浮き、次の瞬間、右
肩から地面に叩きつけられた。そこに、ばらばらと拳大の土くれが降ってくる。案に反してそれほど
の危険は無かったが、それでも土くれの当たったところには、あざになりそうな感覚が残った。
 土の雨をやり過ごすと、リキエルはすぐに立ち上がって、ルイズが立つのを手伝った。
 と、肩に違和を感じた。異様に張った感じがする。剣を握った状態でこの様子だと、手放したらち
ょっとひどいだろう。見てみれば、けっこう血も出ていた。ルイズのちんまい体をかばって、吹っ飛
ぶ最中に上体をひねったのが、少々高くついたようであった。
「大丈夫か? どこか打ったりしなかったろうな」
 自分のことは棚の上に置いてリキエルは言い、ルイズの体を、頭から足の先までまじまじと見た。
「見た感じはなんともないな、髪がちょっと汚れてるだけか。……どうなんだ?」
「…………」
「顔くらい合わせてくれてもいいだろうになァ」
566使空高:2009/07/25(土) 03:48:13 ID:af1NAOKQ
 口を歪めて、リキエルが独り言のように呟いたとき、また地鳴りがした。咄嗟に振り向けば、ゴー
レムがこちらに歩いて来るところである。どうやら、こちらを本格的に叩き潰すことに決めたようで
ある。
 ――ルイズを抱えてたんじゃあ……。
 逃げられないぞ。リキエルは目をすがめた。普通に逃げようとすれば、ルイズはまたゴーレムと闘
おうとするだろう。すると、さっきのように無理やりにでもルイズを抱え上げるしかないが、能力に
も限度はあるはずで、逃げ切れる自信も保証もない。
 ただ、自分一人ならば話は別だともリキエルは思った。自分とルイズのどちらもが逃げるためには、
まず自分が囮になればいい。そうまでされれば、さすがにルイズも引き下がるだろうという算段もあ
った。懸念すべきはパニックの発作だが、使い魔の能力があるということで、今はまだ心に幾ばくか
の余裕がある。ルイズが逃げるための時間稼ぎくらいは、十分に果たせる。
「ルイズ、キュルケたちのところまで行けよ」
 言ってしまってから、じりじりと後悔の思いがせり上がってくるようだったが、リキエルは深く息
を吸って、無視しきった。なんでもない、こんなことはなんでもないことだ、簡単だ。
「オレがあれの気を引いているからよォ〜〜。……いいな? わかったなッ?」
 そう言い終えるが早いか、リキエルはゴーレムに向かって走り出した。背中に、ルイズが息を飲む
気配を感じた。


 ルイズは、呆然と立ち尽くしてリキエルを見送った。止める間もなく、一足飛びにゴーレム目指し
て走り出したその後姿は、肩から流れる血とあいまって、ギーシュとの決闘騒ぎを思い起こさせた。
 程なくして、タバサを乗せたシルフィードが飛んで来たが、ルイズは動けなかった。リキエルの声
が耳の奥で鳴り続けて、思考が半ば麻痺していた。タバサに半ば引っぱられるようにして、ルイズは
風竜の背に乗った。
 飛び上がった風竜は、次はリキエルを乗せようと、まずゴーレムの頭上に着けたが、そこからが難
題だった。
 不用意に突貫しようとした風竜に、ゴーレムは鋭い手刀を切って来た。風竜は難なく身をかわした
が、それは竜をあわてさせるような、危うい一撃ということでもある。この土ゴーレムは足が遅いが、
こと攻撃となると話が変わるらしく、強く速く、しかも正確な動きをした。出し抜くのはいささか骨
が折れるようである。
 ルイズは乗り出し気味に、風竜の背から下の様子をうかがった。リキエルが危なっかしく跳ね回っ
て、ゴーレムの攻撃をどうにかやり過ごしている。そして時折こちらを見上げては、大口を開けて何
ごとか喚く。よくよく見れば、逃げろと言い続けているのだった。タバサは風竜に指示を出すのに必
死で、そのことには気づかない様子である。
「……タバサ! いったんゴーレムから離れて!」
 タバサににじり寄り、膝立ちになってルイズは言った。
「それから、わたしに『レビテーション』をお願い!」
「だめ。轍を踏む」
「『破壊の杖』を使うわ!」
 タバサは腕に抱えたチェストに目をやった。魔法はからきしのルイズだが、マジックアイテムは問
題なく扱えるという話をおぼろげに思い出した。以前キュルケから聞いたことだ。
『破壊の杖』というからには、強力な力を秘めていると見ていい。これを使えば、あるいはルイズで
も、ゴーレムと張り合えないではあるまい。ともすれば打ち破ることも期待出来た。少なくとも、リ
キエルとルイズの両方を拾えるくらいの隙は作れるだろう。そう考えて、タバサはルイズにチェスト
を差し出した。そしてシルフィードに、ゴーレムから距離をとるよう言った。


 岩盤のような巨大な平手が、影を広げながら落ちてくる。見た目とは裏腹な、ゴーレムの軽快な動
きに顔を引き攣らせながら、リキエルは左に跳んだ。一歩で影の外に出て、次の二歩でゴーレムの横
手に回った。ゴーレムが体勢を直す頃には、付かず離れずというくらいの、すぐに逃げられる距離を
とっている。
 そうしようと思えば、リキエルはすぐにでも逃げることが出来た。能力の恩恵はやはり強かったの
である。剣を握ってさえいれば、どれだけゴーレムが素早い動きをしても、割合簡単によけることが
出来、しかも今度は荷物が無いものだから、さっきのように派手に転げたりもしない。リキエルの思
惑は、まず図に当たったと言えた。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:49:01 ID:nWAzplAE
支援を追加させていただこう!
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:49:26 ID:DUIDP5Rp
支援するときって今さ!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:51:26 ID:DYPuiTt5
荒野を照らす覚悟の支援
570使空高:2009/07/25(土) 03:52:20 ID:af1NAOKQ
 ゴーレムは、今度は過剰なほど肘を引いて、握り固めた拳を横殴りにしてきた。リキエルはそれを
すさってよけたが、引き戻される腕を見てぎょっとした。ゴーレムの拳は、もともと細かくなかった
造作が、いまやいびつな鉄の塊に変わりきっていた。フーケはなかなかリキエルを捉えられないこと
に、業を煮やしているらしかった。
 ――それだけでかけりゃあよぉ、十分だろうがッ、土のままでもよォオオ!
 リキエルは、にわかに焦りを感じ始めた。フーケの執念があまり浅くないらしいとわかったことで、
また少し恐怖が増している。
 咄嗟にルイズの姿を探した。囮役もそろそろ潮時である。ゴーレムの攻撃をかわしながら、あちら
こちらと視線をやったが、ルイズは見つからなかった。ちゃんと安全な場所まで行ったらしい。
 そう思ったとき、ゴーレムの猛攻がぴたりとやんだ。何かと思って仰いでみれば、昨夜も見たタバ
サの竜が飛び回っていて、ゴーレムはそちらに気をとられているのである。竜は、時どきゴーレムに
肉迫する動きをし、その都度追い払われていた。リキエルには、自分を助けようとしているのだと察
しがついた。
 リキエルは逃げろ、あっちへ行けと叫んだ。万一にも、ミイラとりをミイラには出来ない。自分だ
けならば、別に助けは要らないのだ。しかし、有らん限りの叫び声も、上空のタバサには届かないら
しかった。
 なおもリキエルは叫び続けたが、あちらは一向に気づく様子が無い。しかもそうしているうちに、
思い出したようにゴーレムの攻撃が再開された。これではいよいよ伝え難くなってくる。
 ――どうすりゃあいいんだッ。……いや、ここはいっそ、タバサはオレが危ないと思って助け舟を
出してるわけだしな、先に逃げてしまうかな?
 そんなふうに思ったときである。リキエルは、ぶわりぶわりとゴーレムの鉄拳をさける竜の背中に、
ルイズの姿を認めた。しかも都合のよいことに、こちらを注視している。リキエルは再度、今度はわ
かりやすく大口を開けて、逃げろ失せろと連呼した。
 それが伝わったものか、ルイズは引っ込み、次いでわずかな間を置いて竜は離れて行った。
 やっと行ったぜとリキエルは思ったが、安堵の息をつく暇は無かった。ゴーレムが諸手を挙げて、
万歳のような格好で静止しているのに気づいたのである。これからあの巨人が何をしようとしている
のかは手に取るようにわかったが、それを想像すると総毛立つ思いがした。
 やがてゴーレムは、器用に爪先立ちをして、こちらに傾いできた。
「オオォォオオオオ、この泥野郎――ッ! マジにやりやがったッ」
 絶叫しながら、リキエルはゴーレム目掛けて走った。股を抜くつもりである。
 初めのジャブとさっきのストレートとで、ゴーレムが地面を揺らすとどうなるかはわかったが、今
度はそれが全身で倒れこんで来ている。威力から何から、前二つとは桁違いのものになるだろうこと
は推すまでもないことだった。ゴーレムに背を向けて逃げれば、勢いよく飛んで来る土やら岩やらに
頭をかち割られるか、手足や内臓を潰されることになる。
 ひた走って、ゴーレムの足の間を駆け抜けても、そのままリキエルは止まらなかった。轟音と振動
を背中に感じても、振り向こうとはしなかった。そのまま逃げるつもりでいた。初めに隠れた茂みの
前まで来て、ようやく足をとめた。一度、ゴーレムの様子を確かめておこうと思ったのである。
 そして振り向いたリキエルは、目を見張って歯を剥いた。既にゴーレムは立ち上がっており、その
目の前でルイズが、何か筒状のものを振り回していた。
 ――何をやってるんだ……オイ、そんなとこで。なあ、逃げたんじゃあなかったのか? どういう
ことだ。どういう理由でルイズッ、お前がそんなとこにいるんだァアアァア!?
 驚きと困惑が去ると、次に目の前がカッと赤くなるようなものを感じた。それはいきなり湧き上が
って来たようだったが、木のうろに溜まる雨水のように、ゆっくりとかさを増したものが、一気に噴
出したようでもあった。
 苛立ちに身を震わせるリキエルの目に、腕を引き絞るゴーレムの姿が映った。さっきと同じように、
ルイズを潰してしまう腹らしい。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:56:01 ID:nWAzplAE
支援とは勇気の賛歌!!
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:56:47 ID:DYPuiTt5
これも、これも支援の分だぁ!
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:00:40 ID:nWAzplAE
まさか、サルさん?
574使空高:2009/07/25(土) 04:00:55 ID:af1NAOKQ
 リキエルもまた、すぐに同じように駆け出したが、今度のそれはルイズを助けるためというより、
怒鳴りつけるためという色合いが強かった。それほどリキエルは苛立っている。しかし、さっきと違
ってルイズとは大きく距離があった。抱え上げて、ゴーレムの腕をかいくぐって逃げるのはどうも無
理そうだと、走りながら思った。
 ――おい、まずくないか本当に。これは……。
 やばいんじゃあないのか。ルイズへの苛立ちが、たちまち不安に取って代わった。リキエルは度を
失いつつ走った。いまちょっとでも足を止めたら、きっとルイズは死ぬと思った。
 ルイズの前まで走り込んだとき、ゴーレムの腕はもう目の前にあった。やはり、ルイズを抱える暇
は無いようである。あの土と鉄の塊を、受け止めるほか無かった。
 リキエルはとても無理だという内側からの声を聞いたが、一蹴した。迫ってくるゴーレムの拳を睨
むような目で見据えると、剣を大きく肩上に構え、渾身の力でもって振り下ろした。いわゆる野球の
大根切りである。
 両の腕に、手応えと負荷が伝わってきた。思っていたほどの衝撃はなかった。だが、拮抗出来てい
るわけでもなく、力は明らかにあちらが上だった。リキエルは、体が少しずつ後ろに滑っているのを
感じた。踏ん張りが足りていないのだ。
「W……UUUWWW……!」
 それでもここが踏ん張りどころだった。自分とルイズとが、生きるか死ぬかの瀬戸際であった。死
んで、死なせてたまるかと思った。リキエルはいっそう腕に力をこめて、ゴーレムの腕を押した。
「W……RYYYYYYYYYY――――ッ」
 数瞬の間を置いて、ゴーレムの腕が左にそれた。
 と同時に、ぱぁんと耳を突き刺すような音を残して、シュペー何某鍛えの剣が鍔元からへし折れた。
鉄をも切り裂くという触れ込みだったが、さすがにゴーレムの鉄の拳には、耐えがもたなかったよう
である。ただ、それでも剣ということになるようで、リキエルの左手のルーンは光りっぱなしだった。
 リキエルは腕を伸ばして、すぐ後ろのルイズを抱き寄せようとした。その感触で、右腕がいかれて
いるのがわかった。痛みが薄いからよくはわからないが、肉離れくらいはやったかも知れない。仕方
なしに両腕でルイズを抱き上げた。
 そしてすぐに走り出したが、思うように速くは走れなかった。疲労も当然あるのだろうが、どうや
ら足のほうにも、少しばかりはばかりが生じているらしい。
 しゃにむに走って汗だくになりつつ、炭焼き小屋のあったところまで来て、リキエルは半ば倒れる
ようにして膝をついた。そのままルイズも投げ出してしまいたいような気持ちが動いたが、そこはき
ちと理性がはたらいた。周囲には大小の瓦礫が散乱していて、手をつくのにも躊躇が生まれるほどで
ある。
「……こんなことを、よぉ〜! よくも――」
 リキエルはふらつきながらも立ち上がり、荒い息で言った。
「やってくれてるんだ、この小娘がッ! お前には学習能力ってものがないのか? 犬猫畜生にもあ
るものが? 欠けているのかァ〜〜!? 一度死ぬ寸前まで行ったのにまた同じことを繰り返そうとす
るのは、賢い人間のすることじゃあないよな? だよな? 馬鹿みたいに動物の血を吸おうとして潰
される、ノミや蚊と変わらないよなァ――ッ」
「…………」
「オレが囮をやったのは、お前にとってははた迷惑なだけの無駄な行為だったのか? まとわりつい
てくるハエなんかを優しく窓から逃がしてやるような、なんの益にもならない無駄なことだったって
言うのか? どうなんだ。黙ってんじゃあない?」
 ほとんど息継ぎしないでまくしたてた。昨夜からのルイズの態度や、その頑固さといったものに対
する憤りは、リキエル自身思っていたよりも、よほど積み重なっていたようである。
 リキエルはルイズの手元に目をやった。なんの役にも立たなかったのに、逃げている間も後生大事
に抱えていたそれに、八つ当たり気味に糾弾の矛先を向けようとしていた。噴出した憤りと、この期
に及んでも口をきかずに、こちらを強く見返してくるだけのルイズに対する苛立ち、そしてひどい疲
れが、リキエルを異常なほど大人気なくさせている。
575使空高:2009/07/25(土) 04:04:41 ID:af1NAOKQ
「そんなものを持って――」
 言ってやろうとした言葉は、しばし喉であぐらをかいた。ルイズの抱えていたものが、この場に、
というよりもこの世界にそぐわない、奇妙なものだったからだ。
 なんとロケットランチャーである。どうやらそれが『破壊の杖』の正体であるらしかった。
 少しの間動きをとめたリキエルだったが、次の瞬間には、怒りも新たに目をすがめた。ルイズはそ
んなに物騒なものを、あろうことか、ぶんぶんと振り回していたのである。
「どうする気だったんだ? 使い方がわかってないなら、どうしようもないだろうが! のこのこと
出て行ったら潰されるしかないってことも、わからなかったと言うのか!」
「…………」
「さっきのこともそうだッ。そんなにフーケとかいうのを捕まえたいか!」
「…………」
「命と引き換えになるようなもんじゃあないだろう、そんなことはッ」
「なるわよ。わたしにも、ささやかだけどプライドってもんがあるのよ。ここで逃げたら、ゼロのル
イズだから逃げたって言われるわ!」
「なんだと……!?」
 リキエルは閉口した。今まで沈黙を通してきたルイズが、急に怒鳴り声を浴びせてきたのもそうだ
が、その内容にも驚かされ、動揺している。ルイズは命よりもプライドだと、きっぱり言ってのけた
のである。
 意地っ張りもここまで来ると手に負えないが、ここで引くわけにはもちろんいかない。リキエル自
身、引っ込みはつかなくなっている。
「この……だが、死んだら元も子もないだろうが! それに、見てなかったのか? キュルケやタバ
サが軽くあしらわれていたんだぞッ。真正面から向かってったんじゃあ、勝てやしないんだ! あん
なのにはなッ」
「そんなこと、あんたに言われる筋合いじゃないわ!」
 リキエルの剣幕にもひるむ様子も無く、ルイズは甲高く言い返した。
「あんたは逃げなかったじゃないの!」
「何がだ! 何の話をしてるッ」
「ギーシュのことよ!」
「ギーシュだとォオオ〜〜? あいつが――」
 なんの関係があると言いかけて、リキエルはまた口をつぐんだ。そしていまいましげに、視線を四
方にさまよわせた。ルイズが、あの決闘を引き合いに出していることがわかったのである。
 ギーシュとの決闘の際、リキエルはやめるよう言ってすがりついてくるルイズに、ここで逃げるわ
けにはいかない、というようなことを吐きつけてその制止を無視した挙句、何日も寝込まねばならな
い状態になるまで、むちゃくちゃにギーシュへと突っ込んで行っている。あるいは死んでもおかしく
なかったらしいことも、再三にわたって言い聞かされている。
 それは一つの事実として、動かしようもなくあった。たしかに、ルイズの無謀を咎められる義理で
はないかも知れない。だが、ギーシュのちっぽけなゴーレムとフーケの巨大なそれとでは、危険の度
合いがまるで違うのも事実である。決闘のときのように、無理を通して道理を押し込めるようにはい
かないのだ。
 そう言おうとしてリキエルは口を開いたが、ルイズの顔を見直して三度絶句した。
 ルイズは、鳶色の目に涙を浮かべていた。それは間もなく大きな瞳をいっぱいにし、長いまつ毛を
濡らすとついには溢れ出て、薄桃の頬をつたい落ちていった。
「おい」
 やっとのことでリキエルは声を出したが、二の句は継げなかった。さっきとは比べものにならない
動揺で、脳天からしびれている。
 そんなリキエルに代わるように、ルイズが口を開いた。
「わたしは、ずっと馬鹿にされてきた。魔法が出来ないって、ゼロだって」
 また、いきなり何の話だとリキエルは思ったが、口には出さなかった。そんな気が失せるほど、ル
イズの声音は悲愴なものを孕んでいた。声に限らず、その気配は表情や所作、果ては息遣いにも表れ
ている。痛ましかった。
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:05:41 ID:DYPuiTt5
支援せざるを得ない
577使空高:2009/07/25(土) 04:07:12 ID:af1NAOKQ
「学院に入る前も入ってからも、必死に勉強したわ。けどやっぱり、どんなに勉強しても、簡単なコ
モンマジックもうまくいかなかった。肉刺が破れて、その上からまた肉刺が出来上がるまで杖を振っ
ても、爆発しか起きなかった。そのたびに、ゼロだからって馬鹿にされたわ」
「…………」
「家族からだって――」
 と言ったところで、ルイズは聞く者の耳に痛いほど声を裏返らせた。一緒に後の句も切れる。それ
からたっぷり十秒ほど、ふううと小さく猫のように唸ってから、
「期待を、かけられたことさえない」
 そよ風にもかき消されそうなか細さで、ようやく言った。
「姉さま方や父さま母さまが、本当にごくたまにだけど、手紙を寄越してくれるの。中身は長かった
り短かったり、励ましだったり叱責だったりいろいろよ。それでわかるの。家族の誰も、わたしに期
待なんかしてないし、力を認めてくれてもいない」
 言いながら泣いた。激しさはなかったが、絞り出すような泣き方だった。背を丸め、肩を過ぎるほ
ど突き出し、小刻みに震わせる。スカートを、指の関節が紫になるほど強く握り締める。
「そしてそれは、ぜんぜん、間違ってないわ。わたしはいまだ……に、なんの魔法も、使えないもの。
……リキエル、あんたを召還して契約した、あの、二つの魔法が……う、くぅ……初めて成功、した、
魔法なのよッ」
 つっかえつっかえそこまで言うと、ルイズはひくひっくと続けざまにしゃくりあげて、一際大きな
涙の粒をこぼした。
 ぽつぽつと、泥を吐くように自分の心情を吐露してくるルイズに、あのめっぽう意地っ張りなのが
と驚く裏で、リキエルは思考をめぐらせた。頭は急速に冷え始めていた。目の前で泣いているルイズ
をどうすればいいかわからず、手を出しあぐねてはいるが、それで逆に、胸のざわつきがおさまる時
間が出来たようだった。
 思い当たることがあった。思い出すことがあった。ひと月と経たない間のもろもろに、見えてくる
ものがあった。
 たとえば、手紙を見たからと飯を抜かれた一昨日の出来事だ。いまにして思えば、あのときルイズ
は家族からの手紙を読み返していたのだろう。目の赤さは寝不足などではなく、おそらく泣き腫らし
た跡だったのだ。リキエルにはこちらの文字がわからないから、門違いと言えばその通りである。し
かしナイーヴなところに触れられたと思っただろうルイズの剣幕は、さもありなんと言えた。
 そこでもうひとつ思い出した。ルイズが、最近遅くまで部屋に帰って来なかったことだ。テストで
もあるのかと思っていたが、もちろんいまでは、その推量が的外れだろうことがわかっている。勉強
をしていたというのもたしかにあるだろうが、たぶんルイズは、ずっと魔法の練習をしていたのだ。
 そう思う理由は、これは少し曖昧だが、制服である。掃除のときに見つけた、ぼろぼろのルイズの
制服のことだ。そのときは魔法で失敗したのだろうと漠然と思っただけだが、リキエルは最初の授業
以後、ルイズが魔法を使うところを昨日の夜まで目にしていない。すると人目につかないところで、
ひとり魔法の練習をしていたのだということは想像に難くなかった。それも、最近放課後にルイズを
見ないというキュルケの言をすり合わせて考えるに、放課後から夜がふけるまでの間ずっとである。
 あらためて、まじまじとルイズを見てみた。顔も手も足も土で汚れて、今度はかばいきれなかった
らしく、ところどころ軽いすり傷などもあり、見た目にひどいありさまだった。それでみっともなく
粘性の薄い鼻水を垂らして、時折しゃくりあげながら嗚咽を漏らすと、ルイズの姿は常にも増して稚
く映るようでもある。
 ――そうだったんだよなァ。
 どこにでもいるただのガキなのだ、ルイズは。
 迂闊だった、とリキエルは我と我が身を呪いたくなった。ルイズが教卓を吹き飛ばした、その片付
けでのことをようやく思い出していた。あのときルイズのかもし出した異様なほどの陰鬱さは、昨夜
やいまの姿に通じる部分が多々あった。馬車の上で、何か忘れていると感じたのは、思い過ごしなど
ではなかったのだ。
578使空高:2009/07/25(土) 04:09:43 ID:af1NAOKQ
 そのちっぽけな身に、ただの小娘が背負うには荷が勝ち過ぎるような、重苦しいものを抱えている
ことは知っていた。いつでも気丈に振舞っていられるような、強いだけの娘でないことはわかる筈だ
ったのだ。
 そんなやつを、ずいぶんと持ち上げてしまっていたなと、リキエルは己の浅はかさを省みた。あま
り悩まないたちなどとは、よくも抜け抜けと考えたものである。悩みのひとつやふたつ、持ってない
わけがねーんだ、年頃の小娘がよォ。
 それだけではない。討伐だ捕縛だなどという荒事にも、ルイズは本来、まるで不向きな人間なので
ある。怒りっぽく、ひねたようなところはあっても、その胸のうちに優しさも根を張っていることを
リキエルは知っている。筋合いもないのに寝ずの看病をしてくれ、身の危険も考えずに救おうとして
くれ、パニックに陥ったときに手を差し伸べてくれ。常の高慢さが嘘のような振る舞いを、何度とな
く見ている。
 そういうルイズが、しかしこんなことを言うのである。
「けど、諦めたくない。ゼロのまま諦めたくなんかない。だってそれは、自分からゼロになるという
ことだものッ。……そんなのはいや。そんなことをしたら、皆に笑われるだけじゃない、ヴァリエー
ルの家に、本当に顔向け出来なくなる! わたしのプライドが、絶対にわたしを許せなくなるッ!」
 そう叫んで、ルイズはシャツの袖で顔全体をぐいとぬぐった。シャツは泥で汚れていたから、いっ
そうひどい顔になったが、不思議と清麗でもあった。
「それに、わたしは貴族よ」
 ぐしゃりと濡れた目を細めて、ルイズはリキエルを睨みつけた。
「魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ。敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
「…………」
 リキエルはルイズの瞳に、いつもの意固地な色を見て取った。ただ、それだけではなかった。焦燥
や苛立ち、悔しさといったものが、一緒くたに渦を巻いているようだった。
 ルイズもそう馬鹿ではない。身ひとつでフーケのゴーレムと渡り合えるとは、まして魔法のひとつ
も扱えない身と知っていれば、本気でそう思っているわけではあるまい。ただ、いまは向上心と同居
する焦りや、負けん気に意地、プライドといったものが暴走してしまっている。ルイズ自身が歯止め
を利かせられなくなっている。
 そして、ルイズをそうさせた原因が、リキエルにはわかる気がした。
 ――たぶんルイズは、オレを羨んでいたのだ。
 命がけでギーシュとやりあったり、発作を起こしながら、ひとりだけゴーレムから逃がすよう促し
たり、またいま身体を張って、ゴーレムとやりあったり。そういう態度が、ルイズの目には力強く映
ったのだろう。それも、たぶん自分の不甲斐無さと引き比べてだ。誰がそう言わずとも、ルイズ自身
がそう考え、自分を追い詰めてしまっている。
 口をきかなくもなるだろう。そんな不甲斐無い自分を意識しては、しかもそう意識させられる相手
が使い魔となれば、ひっかかりを覚えずにはいられまい。昨夜のことは、そのことを表面化させる、
ほんのきっかけになったに過ぎないのだ。
 そんなふうに考えてしまうのは、あながち的外れとも自惚れとも言えないだろう。なぜと言えば、
リキエルも似たような状態にあったからだ。
 ――いや、いまもそうだ。
 オレはまだどこへも進んでない、とリキエルは思った。
 依然として片目は上がらないし、息苦しさも消えてはいない。いつもなら、という場面で例の発作
が起きなかったのも、単に尾を引いていた高揚感で、風邪の微熱に頭浮かされるようにして、つかの
間忘れていたに過ぎない。突然のパニックへの恐れは、薄まりこそすれ解消される気配はない。
 あのときに変わったものは、とリキエルはあらためて考えてみた。すると、すぐに一つのことが思
い当った。血統と父親に関する悩みが消えたことである。しかしそのことで手に入ったものは、ごく
小さな心の平安だけだった。
 それ以外には何も得ていない。何も変わっていない。決闘からこちら、熱に浮かされたように、根
拠もなく都合のいい方向へとばかり物を考えていたのは、そのちっぽけな安堵にいつまでも浸って動
こうとしない、自分の怠惰でしかなかったことがいまはわかる。
 ギーシュとの決闘を経て、多くのものを乗り越えた気になっていた。成長した気になっていた。し
かしそれが、都合のいい錯覚でしかなかったことにリキエルは思い至った。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:10:09 ID:nWAzplAE
コォォォォォォォォッ支援疾走
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:12:34 ID:af1NAOKQ
 無意識のうちに、顔が上を向いていた。霞の一つもない空色が視界いっぱいを埋め、さらにどこま
でも、際限なく広がっている。殴りたくなるほど遠い、とリキエルは思った。どうにも思い知らされ
た。
 ――オレは、前を見たというだけに過ぎなかったのだ。伏せって、うなだれて、下ばかり向いてい
たのが顔を上げた、ただのそれだけだったのだ。そうして目の当たりにした景色に満足して、しかも
根拠もなしに、その中に自分が立っているような、そんな気になっていたのだ。
 そうなりたい、そうありたいと思い願うだけでは意味がないのだ。そんなものは理想や願望でしか
ない。あたかも現実であるかのように思えても、夢は夢でしかない。明確な意志を持たなくては、ど
れだけ夢想を重ねようと無駄でしかない。
 ルイズはそういう意志を、ハングリーさとでも言うべきものを、それも生半でなく強いものを胸の
うちに抱いている。だから、それがいまのように暴走してしまうと、身命を投げてでもゴーレムに向
かって行く無茶をするし、それを失うことを命と秤にかけるほどの恐怖を感じる。それほどの意識は、
やはり自分にはないものだとリキエルは思った。
 それでわかった。どうして昨夜、ゴーレムからルイズだけでも逃がそうなどと思ったのか。
 自分にないものを持ち、ために苦しみもがいているやつを、助けてやりたかった。守ってやりたか
ったのだ。生きる希望に向かって進もうとしているやつに、それを害そうとするものを少しでも減ら
すことで、力添えがしたかった。
 ――だがそれも……
 逃避に過ぎなかったのではないかと、リキエルはまた自らを省みた。結局のところ、それもルイズ
の成長に自己を投影しようとしただけではないのか。
 何も変わらなくて当然だった。心の欠けた部分を満たす、目的や希望といったものを自分から手に
入れようとしないのでは、そんな軟弱な精神でいたのでは、成長も変化も望めたものではなかった。
 ――成長。……いまだ、いつかじゃあなく。
 立ち上がらなくちゃあならない。うねるような思いが胸のうちに広がった。
 それは血に乗って全身にめぐり、焼け付くような感触とともにまた胸に入り込むと、急に腹の底辺
りにすとんと腰を下ろした。快い感覚だった。自分の身体が初めて自分のものになったような、ある
いは、懐かしいものがやっと戻って来たような、満たされた心地がした。
「ルイズ」
 リキエルは上を向いたまま声をかけた。
「何よ」
「お前は言ったな。おぼえてるか? 教室の片付けのときだ。あの、ミセス・シュヴルーズの授業の
あとのだぜ。お前は諦める気はないと、言ったんだったよなァ〜〜」
「……ええ、言ったわね」
「オレはなァ〜ルイズ、あのとき羨ましかったんだ、お前が。前向きなこいつに比べて、オレなんか
はなんにも出来ないで、ってなァ」
 陶然としたように話すリキエルに訝しげな視線を送りながら、ルイズが聞いた。
「何が言いたいのよ」
「ルイズ、お前はあいつを、あのゴーレムをどうしたい?」
 問いには答えず、リキエルはゴーレムのほうへ目を移しながら言った。そういえば追いかけて来な
いなと思えば、タバサがまた、竜と一緒になって足を止めてくれていた。
「倒したいんだよな? そうだよな?」
「…………」
 ためらうように一瞬口を閉じたルイズだったが、すぐにはっきりと頷いてみせた。
「土くれのフーケとかいうやつを、ひっ捕まえてやりたいんだろ?」
「そうよ。あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしをゼロのルイズとは呼ばないもの」
「わかった。それじゃあな、もうひとつ聞くぜ、ルイズ。オレがあいつを倒しても、お前の手柄にな
るんだよな? オレがお前の使い魔ならよぉ〜〜」
「……あんた」
 ルイズは呆気にとられたような顔をした。リキエルの言わんとしているところに察しがついて、そ
の上で理解が出来ないという感じだった。
「まさかあのゴーレムと闘うつもりなの?」
「そうだ」
581使空高:2009/07/25(土) 04:15:05 ID:af1NAOKQ
 頷くリキエルに、ひるんだように眉をひそめながら、ルイズは声を荒げた。
「さっきと言ってることが違うじゃない! あんなのどうやっても倒せるはずがないって、あんたが
言ったんでしょ! 死ぬ気なの!?」
「お前こそさっきと言ってることが違うな。いま逃げるくらいだったら、死ぬほうがマシなんじゃあ
なかったのか?」
「茶化さないでよッ」
 不気味なほど落ち着いた口調と態度をとるリキエルにむかが立つのか、ルイズは涙の残る目を怒ら
せながら、食ってかかるように言った。
「あれは、半分は勢いで言ってしまったことだし……だいたいわたしの都合なんだから、あんたを付
き合わせる気はないの! あんたには関係ないことなのよッ!」
「いいやあるぜ。オレの手柄はお前の手柄なんだろ? やっぱり、それなら十分に関係してる」
「それはそうだけど、そういうことじゃなくてッ――」
「言っておくとだ、ルイズ。これはオレの能力についての話なんだ。オレに何が出来るのかという話
だ。方法ならばよォー、考えてみりゃあ、ちゃんとあったんだ。あの土くれをバラす手段はな」
 言いながらリキエルは、ようやく真正面からルイズを見下ろした。するとまだ何か言いたげにして
いたルイズが、また呆気にとられたような顔になった。さっきは清麗だと思ったが、こうしてまた見
ていると、やはり世辞も言い難くなる程度には小汚くなってしまっている。
 瞳だけは相変わらず宝石のように強く光を返すが、そのほかは常からの見目が麗しいばかりに、い
まはひどくみすぼらしい。リキエルにはそれが、ルイズの傷つきやすさや脆い部分の表れに見えた。
驚くほどの意気地を見せながら、一皮剥けば薄氷のような危うさがある。その不安定さは本来、支え
られねばならないものだった。
 そういう考えをもめぐらせながら、リキエルは滔滔と思うままを言い続ける。
「そしていいか? これはオレの意志なんだ。『オレが』ここで退くわけにはいかないんだ。さっきお
前は、いま逃げたらゼロになると言ったな。そんなのは死んでも嫌だとも。オレもかなりそう思う。
なぜってオレにとっても、ここは分かれ道だからだ」
「リキエル、あんた」
「オレは前の、もしかすればその後さらに何度もだが、道選びをしくじった。いや、しくじったとい
うのはおかしいかな。いちおう正しい道を選んだわけだからな。だがそのことに満足して、肝心なこ
とが出来ていなかったということだ」
「あんた、それ――」
「今度の分かれ道は、その道をきっかりと進むのか、それともまたボサっとマネキンみたいに立って
るだけになるのか、その分かれ道だ。オレは今度こそ、進むつもりでいる」
「目……両目ともよ」
 まだ涙のあとの残る目を、ルイズは信じられないというふうに瞬かせた。
 心の中に、また幸福なものがあふれて来るのをリキエルは感じた。わかりきったことでも、喜ばし
いことを自分以外の人間にあらためて指摘されると、気分がいい。勘違いでもない、紛れもないこと
なのだと実感出来る。
 両のまぶたをそれ以上はないほど引き上げながら、リキエルは口端を歪めて笑った。
「そうだ……おれのまぶたが上に上がったぞ? 何もかもがッ! この目で今見えるッ!」
 言ってから、リキエルはルイズに向かって手を差し出した。
「ルイズ、そいつを貸してくれ。『破壊の杖』だ」
「でも、これ使い方がわからないわ」
「だろうなァ。だがオレにはわかる」
 リキエルはそう言ったが、根拠はなかった。兵役をこなしていたわけでもないから、ロケットラン
チャーの扱い方など、どこで教えられたこともなければ、聞いたこともない。そもそも実物を目にし
たことが、今日この日が初めてのことだ。
 しかし、それでもなぜか確信が持てた。いまの自分なら、何も問題はないと思った。何より、いま
はゴーレムを倒そうという気持ちが、身体を半ば以上勝手に突き動かしていた。ぶち砕いてやるぜ、
あの、土人形をよォおおお。
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:15:31 ID:nWAzplAE
DIOの息子達は運命に従い支援される
583使空高:2009/07/25(土) 04:18:25 ID:af1NAOKQ
 自信に満ちたリキエルの顔を見るうちに、あるいはこちらもなんとはなしにかも知れないが、ルイ
ズはリキエルに任せる気になったようである。あっさりと『破壊の杖』を差し出して来た。
 それを受け取ると、リキエルはゴーレムのほうへと足を踏み出した。それとわかっていたわけでは
ないが、やっぱりなという気がした。『破壊の杖』を手にした瞬間、その名称、扱い方、性質からくせ
から何から何まで、あらゆる情報が勝手に頭の中に入って来た。これもたぶん、武器に反応する使い
魔の能力の一端なのだろう。至極都合がいい、勝手のいい能力である。
「近寄るなよォ〜〜ルイズ。大火傷したくないんならなぁ」
 まったくの自然な動作でもって、リキエルは『破壊の杖』を構えた。


 ゴーレムが土の山になったと思うや、いままでどこに隠れていたのか、まったく姿を見せなかった
キュルケが駆け寄って来て、リキエルの肩に飛びついた。
「リキエル! すごいわ! やっぱりダーリンね!」
 リキエルは苦々しく目を細め、やんわりとそれを引き剥がした。あのゴーレム相手では仕方のない
ことかも知れないが、それでもタバサのように援護をくれるわけでもなく、いまのいままでドロンを
決め込んでいた薄情小娘が、よくも言いやがると思った。
 ちなみにそのタバサはといえば、シルフィードから降りてからは、リキエルの顔をずっと無言で見
つめている。どうにも感情の色がうかがえない、動きの薄い顔だったが、リキエルはなんとなくそこ
に、恨みがましさが混じっているように思えた。
「なんだ、さっきから」
「目がチカチカする」
「…………」
「耳鳴りもする」
 風竜とそれに騎乗したタバサは、ゴーレムをひきつけるために、ぎりぎりのところでちょこまかと
動き回っていた。だからゴーレムにロケット弾が命中爆発したときには、その閃光と轟音を間近で味
わうことになった。
 リキエルが『破壊の杖』を使うのを見て取って、タバサはとっさの判断でゴーレムから離れたよう
だったが、それでなければ耳か目がいかれていたかも知れない。ゴーレムを倒すことに躍起になって、
タバサのことをすこんと失念したリキエルには責がある。
「あ〜、いや、悪かった。このとおりだ」
「頭痛がする。吐き気も」
「すまなかった。ってなんだそのしょうもない嘘は。さてはお前、もうなんともないな?」
 リキエルは呆れた声を上げた。この無表情も、だいたいに妙な少女である。
「と、油を売ってる場合じゃあなかったんだな。フーケ探さなきゃあ」
 そうどこにともなく水を向けながら、リキエルはルイズに近寄った。
「大丈夫か?」
 ルイズはさっき立っていた場所でへたり込んでいた。ゴーレムが玉砕するのを目の当たりにしたあ
と、緊張の糸が切れたのかどうなのか、急に力を失ったのである。それからは呆れと驚きの混じった
ような顔で、ずっとゴーレムの残骸を見つめるばかりだった。
 それが声をかけられて、ようやく正気に戻ったようだった。ルイズは、リキエルを見返して言った。
「ええ、大丈夫よ。なんともないわ」
「立てるか? それとも、やっぱりどこかけがしたか」
「大丈夫だってば。ちょっと疲れただけよ」
「疲れたですって。本当は腰を抜かしてたんじゃないの?」
 立ち上がって埃を払い落とすルイズに、キュルケがさっそく茶々を入れた。
「あのゴーレムが、怖くてたまらなかったんではなくて?」
「どっちがよ。尻尾巻いて逃げ隠れしてたくせにッ」
「は〜、元気なこったな」
 また諤諤とやり始めたふたりから目を外して、リキエルは上を向いた。
584使空高:2009/07/25(土) 04:21:06 ID:af1NAOKQ
 高揚感は、まだ燻る気配も見せずに腹の中でたぎっていた。確かめるように一度、二度、何度も両
目を瞬かせた。その都度なんの違和感もなく、ぱちりとまぶたが上がり下がりするのが、叫び出した
くなるほど嬉しかった。まったくなんの不足もなく、網膜にものが映るのが、泣けるほど喜ばしかっ
た。空が青く、雲が白い。そんなことが、この上もなく素晴らしく感じられた。
 ――見える、『見える』ぞ。ギーシュとの決闘の、最後のあのときもいい気分だったが……これほど
までにッ! 絶好調のハレバレとした気分ではなかったなァ……。
 ルイズのおかげだ。本当によく『見える』ッ! しかしこんなんじゃあ、こいつらを元気だなんだ
と笑えない、とリキエルは思った。
 そのときだった。リキエルは、こちらへ走って来るロングビルの姿を認めた。
 キュルケたちもそれと気づいたらしく、口々に言った。
「あ、ミス・ロングビルだわ」
「あら本当。ねえ、ミス・ロングビル! フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」
 ほんのり頬を上気させ、かすかに喘ぎながら、ロングビルは全員に目を配ると、今度はその目を伏
せて、心苦しげに首を横にした。
「申し訳ありません、あのゴーレムが姿を現した途端、度を失ってしまいまして。……わたくし、仕
事をおろそかに」
「無理もありませんわ。そんなに気を落とさずに」
「なんも見なかったんスか? それらしい人影とかもよォー」
 リキエルがこう聞くのにも、ロングビルは残念ながらと首を振り、そうしながら手を差し出して来
た。その手の上に、反射的に『破壊の杖』を乗せながら、リキエルはふぅんと唸った。
 あのゴーレムの動きから鑑みて、盗賊がごく近くに、恐らく森の中にいたのはまず間違いない。そ
れをむざむざ逃したのだから、悔しくないと言えば弱冠の嘘である。それにゴーレムを倒すことが出
来たのはよかったが、その操り主に逃げられたのでは、その意味も半減してしまうというものだった。
「顔も何も、結局は拝めなかったな。手がかりはなしか」
 未練がましい口調でリキエルは言った。
「もうトンズラこいちまったろうなぁ」
「かも知れませんね、また襲ってくる様子もありませんし」
「それじゃあ、お手柄は半分だけってこと?」
 キュルケがつまらなそうな声を上げる。
「なんだか興ざめね」
「まあ、残念と言えばそうだな」
 ルイズのほうをちらりと見ながら、リキエルが呟くように答えた。
「でも皆さん、よく頑張られましたよ」
 ロングビルがそう言ってかすかに笑い、早足気味に歩き出した。
「本当にご苦労様でした」
 もう馬車に戻るということだろうか、とリキエルらが考えたのはつかの間だった。ロングビルはあ
との四人が動き出す前に振り向き、どうしてか眼鏡を外し、懐にしまった。それから、あろうことか
『破壊の杖』を肩にかけたのである。当然だが、照尺はリキエルらをとらえている。
 直後に反応したのは、またもタバサだった。飛ぶように一足前に踏み出て、面前に杖を引き上げ、
ルーンを唱えようとする。だがそれも、ロングビルのひと睨みで押し止められた。いまさっきまでと
はまるで別人のような空気が、ロングビルの全身を包んでいる。
「…………」
「そう、動かないほうが身のためよ。これの力は、さっき目にしてよく知ってるわね?」
 状況に考えが追いついていないらしいルイズとキュルケが、滑稽なほど似通った動きで、タバサと
ロングビルを交互に見た。
「え、何? どういうこと?」
「……そういうことよ。彼女がそうだったんだわ」
 気の抜けたような声で呟くルイズに、キュルケが言った。驚きは去っていないし、信じ難い気持ち
もまだかすかにあった。だが事実こんな状況に陥っているし、ロングビルも態度を豹変させている。
何より親友がこういう目をするのなら、そういうことなのだ。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:23:19 ID:nWAzplAE
サンライトイエローの支援ドライブ
586使空高:2009/07/25(土) 04:24:37 ID:af1NAOKQ
「ええ、そう。さっきのゴーレムを操っていたのは、わたし。わたしが『土くれ』のフーケよ」
 そっけない告白に、ルイズは息を飲んだ。キュルケは冷ややかにフーケを睨みつけ、タバサは微動
もせずに目を細める。
 完全にだまされていたわけだった。そのことへの動揺や怒りといったものが内部を駆け、また目の
前の盗賊に対する敵愾が、ルイズたちの心をめぐった。その一方で、いま『破壊の杖』を向けられて
いることが、底冷えのする感覚をとめどもなく呼び起こす。三者は三様に顔を青くした。
 そんな状況の中で、リキエルだけが静かに空を見ていた。その瞳は、時折何かを追いかけるように
してせわしなく動いた。
 フーケが、四人から距離をとり始めた。リキエルはそれも意に返さず、ただ青い空に眼を向けて立
ち続けた。





投下終了。マカフィに旦那……ちくしょう。
そして存外にひとがいた、ageちまったしorz 生存報告もなしに無沙汰していきなり
このスレ占有じみた体たらくとか、本当にいろいろと申し訳ない。それと同時に感謝します。

ゼロいぬさん、完結したようで、重畳です。おめでとうございます。
あと、ありがとうございました。
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 04:31:14 ID:nWAzplAE
空高さんお帰りなさい
見事なまでのボリュームでぐいぐい読ませていただきました
リキエルも自信がついてきて、前向きに生きられそうで良い感じっす

588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 13:25:11 ID:sYBG5pPt
投下乙
>リキエルはそれも意に返さず、ただ青い空に眼を向けて立ち続けた。
……ひょっとしてアレが見えてるのか?
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 14:51:03 ID:42rWtU+J
うぉー!
乙色の波紋疾走ッ!
牛柄リキエル覚醒フラグ?
590ゼロいぬっ!:2009/07/25(土) 18:33:07 ID:f80pnk/u
応援ありがとうございます。おかげで完結できました。
規制が解けてようやくお礼が言えます。
これからも使空高さんの作品を楽しみにしています。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 22:14:36 ID:FdYWDIaf
リキエル来てたー!!
なんつーか成長が楽しみでしょうがないっすよ、乙です。
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 15:21:45 ID:1ujSXtIB
待ってました!使空高さん!!
GJ&乙です!
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 02:05:52 ID:55AgwOcw
そして時は動き出す!!
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 15:28:37 ID:VaaTy73R
みんなどこへいってしまったの
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 15:30:01 ID:7rvlEY4E
遠い所さ
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 18:02:05 ID:lWSwMyD5
プッチの話が読みたい年頃
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 18:26:20 ID:7rvlEY4E
「あのお方」の話は?
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 18:41:16 ID:0QTrNucM

作者にだけ期待するのは間違っていると思う。
見て感想をくれる人が多いのが作者にとっては何よりも嬉しい。
全盛期には投下中でも反応を含めた支援があったし感想も多かった。
読者もしくはその反応が減れば作者のモチベーションも下がって書かなくなるし、
それで好きな作者がいなくなれば読者も来なくなる、正に負のスパイラル。
最初は勢いだけでも書けるけど、そこから更に続くかどうかは応援次第だと思う。

話は変わるけどモンハンって本当に廃人製造ゲームだよね。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 18:45:30 ID:Wek5H+YP
気になる作品の続きが来ないのは全部モンハンのせいってことか
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 23:31:28 ID:PKDQcpPp
モンハンすごいですね
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 23:52:59 ID:fw5keY1u
それほどでもない
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 01:31:50 ID:ilWsVeq6
>>601
それはFFだ
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 10:04:39 ID:RX6H9qrU
恥知らずなスタンド使いがいた!

このスレ、なんだかんだでけっこう人いるよな
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 14:41:45 ID:ycB/kCO1
ただしみんな続編待ちってな
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 14:53:02 ID:TBIeFMUA
それぐらいハートをキャッチされてるんだろうな
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 20:42:01 ID:sC+7IJQg
>>602
ファイナルファンタジーではなく
フーファイターズと読んでしまう俺
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 08:58:02 ID:Cnd6l5WT
ファイナルファイトかとおもた
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 09:20:36 ID:W+RkK4NC
フィストf
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 10:26:31 ID:ay4WjgSV
変態!ド変態!!
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 15:49:44 ID:+oQ7nc6G
フゥゥ〜〜…誰かに呼ばれた気がしたよ
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 18:06:33 ID:EAykFQOn
受信したネタが作品以前の妄想で止まるので書き手にもなれないこのジレンマ
湖に身を投げた後のペルラがジョゼフに召喚されましたとか
ジョセフがジョゼフに召喚されましたとか
元素のきょうだいの妹さんの特技が今は亡きパパ譲りですとか
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 01:54:11 ID:bUsPfNu0
何かこう、気楽で気持ちで挑める短編SSも書いてみたいんだけどな
2年生に進級したケティの使い魔とか、ベアトリス配下の竜騎士にジョジョキャラが混ざっているとか
ジェシカが主人公の話とかも挑戦してみたい。

でも皆に「納得」を与えられる、面白い話に出来る自信が無いぜ…
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 02:03:17 ID:Ci/MTsUL
自信がないなら避難所でやれば良いさ。
オレも短編書きたいけど、今書いてる奴の続きも書けてない状況だからなぁ……
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 14:46:14 ID:bEhhjSc0
>>612>>613
そこまで気負う必要はないよ。
適当にジョジョネタ盛り込む程度でも読み手は満足する。
むしろ気合入れて書いて空振るとダメージが大きい。
短編だって気晴らしに書くのなら何の問題もない。
書いているとその内にアイディアも生まれるし。

615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 07:04:11 ID:VSbBlYsL
大切なのは『投下に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、いつかはたどり着くだろう?
向かっているわけだからな…違うかい?
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 08:00:16 ID:w3k95f8j
まずはこの過疎状態を何とかせにゃいかんな。
というわけでage
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 15:20:55 ID:YJXyy6j3
Arcadiaとかならコメントも付くし閲覧者数もカウントされるからやる気になるんじゃないか?
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 17:10:18 ID:GxS6J53t
急に何を言い出すんだ
見当違いと勘違いにも程がある
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 19:47:06 ID:6iLHCjYu
この状況で何言ってるのか分からない
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 21:16:27 ID:bjVXQjO+
この状況で6部の承太郎がアナスイに言った台詞を言わないことに
>>618-619の優しさをみたwww
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 22:46:37 ID:qmBpXomc
冬のナマズみたいにおとなしくさせるんだッ!
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 23:12:27 ID:wpPp4BB9
夏休みで過疎るって、
いいことか悪い事かわからんな・・・。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 23:14:37 ID:vgzSx+GH
ウェカピポとかマジェントがそろそろ召喚されねえかなっと
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 23:15:44 ID:3UZTdVJB
ファーストレディ召喚して圧迫祭りしてほしい
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 02:27:08 ID:zL2VjQsJ
>>623
マジェントはいろいろ健気すぎて泣ける
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 04:00:02 ID:cDImQPAc
夏休みだから加速するスレと別に大差ないってスレが有る訳で
主な住人層に長期夏休みが無い場合はあんま代わらん
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 18:32:19 ID:tO71eYso
そろそろイエス様でも召喚されないかねえ・・・
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 18:37:02 ID:nsH4WjpM
宗教戦争勃発の予感……ッ!
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 23:40:08 ID:YM1Mup/M
冬のナマズみたいに大人しいSSスレだぜッ!!
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 11:54:47 ID:Ew7X7Ab5
>>627
イエス「まことに、あなたに告げます。
    今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言います。」
ルイズ「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、
    私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」


こんな感じかwww
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 15:16:29 ID:WTYpiL/k
直ぐに東へ向いたがるイエス様だよ
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 17:53:17 ID:P5PTW7Ju
>>630
ル「知らない!知らない!もう知らない!
知らないったら知らないの!知らないって言ってるでしょ!」

主「今のは一回にしか数えないぜ」


そこに両方のテイストを加えるとこのようになる。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 18:22:02 ID:VH1YxRhK
なんて『スゴ味』のある聖人だ
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 14:59:22 ID:351Revs/
>>632
こんな聖人嫌すぎるわ!
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 22:55:13 ID:aST9uBo4
>>632
俺キリスト教に改宗するw
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 23:08:26 ID:V3qMI29B
.━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・
.━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 23:08:39 ID:xlMOkoBI
.━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・
.━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 23:10:15 ID:RaxsVLts
KUGYUUUUUU
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 08:03:30 ID:NNlgrdKN
ハルケギニアはヨーロッパに酷似しているというから・・・
アメリカ大陸もあるのか?
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 09:48:15 ID:3EsZOnTm
アフリカさえ話しにはでてこないけど、あるんじゃない?
どの国も進出してないから先住民が精霊魔法使いながら草原走り回ってるんじゃね
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 10:25:35 ID:BNodZLTW
ゼロ魔世界のインディアンなら化粧して踊るだけで精霊の力を使えるよな
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 12:04:11 ID:Mz7C4s9U
>>641
プラスして契約も必要そうな気もするが、先住魔法を使えそうなインディアンはいそうだよな
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 14:48:09 ID:NNlgrdKN
サウンドマン・・・
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 18:31:50 ID:rpgCFhDe
ゼロ魔の宗教観は相当カオスだからな。
キリスト教がモデルなのにヴァルハラの存在が信じられているし、その一方で精霊も信仰してる。
シルフィードやエルフの言う大いなる意志もネイティブアメリカンの信仰に近い。
そして徘徊するのはギリシア神話などの怪物。
このごった煮感がいかにも日本らしい。
メ○テンも日本でなければ作れなかっただろう。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 19:12:03 ID:2zG3ZVrT
キリスト教がモデルと言い切れるレベルじゃないだろ
単純にヨーロッパのあたりにある複数のものを等量混ぜて割ってるだけだろ
しかもそれって別に日本独自なパターンでもなんでもないぞ
典型的な日本のその手のものしか知らないから日本じゃないとって思い込んでるだけ
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 19:23:03 ID:Tzv9sYAT
だってノボルだもの
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/07(金) 23:16:25 ID:118PDPvC
八百万な感じがするぜ
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/08(土) 12:39:25 ID:AMRrBnu8
それだ!!
649ポルナレフ+ジョルノ:2009/08/08(土) 23:01:29 ID:XSAK2TOy
久方ぶりになります。予約がなければ23:15頃から投下を行いたいんですが、構いませんねッ
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/08(土) 23:09:32 ID:RZMNLAAt
お久しぶりです
そろそろ電源切らなきゃいけないが出来るだけの支援はしますよ
651ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:16:35 ID:XSAK2TOy
時間になったので投下しますー

一人ガリア入りを果たしたジョルノは、車がこちらでは馬車に当たるならば、飛行機に当たる乗り物竜籠に乗りこんでいた。
以前ガリアを訪れたのは『ポルナレフを探す、商売も行う』という目的の旅の途中で、テファニアと二人馬車に揺られていた。

初めて目にするものに目を輝かせて話しかけてくるテファの声も無く、魔法によって保護された車内には揺れも無い。
あの時に感じた穏やかな空気や平坦とは程遠い道を走るため避けられない車内の揺れを味わうことはないのだった。
日が傾き始め、魔法の照明を灯した車内は静けさに包まれていた。

ジョルノは書類に目を通し考えを巡らせていた。車内に置かれたテーブルの上では地球から持ってきたパソコンが置かれ、幾つかのウィンドウが開かれている。
錬金の魔法でバッテリーに充電できることもわかり、ある程度気兼ねなく使えるようになったそれをジョルノはとても重宝していた。

こんな時には特に。キーボードをジョルノが叩く。
ヴァリエール公爵夫人を脅すプッチ枢機卿の声がパソコンのスピーカーから流れだし、ジョルノは作業の効率を下げてこの場にいない知人達のことを頭に思い描いた。

プッチと別れたジョルノは、二人が会う予定の部屋に盗聴器を仕掛けデータとして保存しておいた。
場所が予め判明していたからこそ出来た事だが…
聞き終えたジョルノは、これからガリアでの所用を済ませようとしている自分の心がトリスティンの方へと強く引っ張られているのを感じていた。

これがただのジョルノ・ジョバァーナであれば引き返したのかも知れないが、ハルケギニアで複数の名前を持つに至った今のジョルノは幾つもの外せない予定があった。
今竜籠に乗り向かう先でも、魔法学院で別れたイザベラやプッチによって母を治療されたタバサが待っているのだ。

データの再生が終わると、ジョルノは手早くカトレアへの手紙を書いて、封をする。そしてそれに生命を与えた。
窓を開け、目も開けていられないほどの突風が吹きすさぶ中へ強引に投げこむ…一瞬で後方へと飛んでいった手紙がカトレアの方へと飛んでいくのを感じ取りながら、ジョルノは別れる前にプッチと交わした会話を思い出していた。

『なるほど。確かに貴方の言う事は、本当に大事な事だ』

プッチの前でも口にしたことを全て思い返しジョルノは、プッチが神を愛するようにとまで言った会ったことの無い父親と似た表情を浮かべた。

「フン………(僕の望む結果にたどり着けないって点を除けばな)」

そうこうする内にジョルノを乗せた竜籠は、ガリアの王都リュティスにたどり着いた。
人口30万というハルケギニア最大の都市リュティスの古いながらも壮麗な町並みを目にする暇も無く、ジョルノはヴェルサルテイル宮殿へと向かう。
家から漏れる明かりと立ち並ぶ街灯に照らされた道を、亀の中に入ったジョルノは竜籠から馬車に乗り換えて通り抜けていった。
亀が入った箱を乗せた無人の馬車は途中停車して、ガリアを任せている30代の男と…子供が乗り込んでくる。
亀から出ずに、声もかけずジョルノは少女と幹部である男との事務的な会話をスタンドの目を通して観察した。

子供はブルネットを短く刈り、整髪料で整えて服も少年の物を纏っているが中身はまだ10代そこらの少女で、テファの孤児院にいた一人だった。

今はパッショーネの一員となっている少女は、アルビオンの孤児院にいた頃は自分からジョルノに声をかけることも無く遠くから見ていたような気がする、という程度にしかジョルノの印象には残っていない。
だが、いつの間にか貴族との混血である子供に混じり、メイジとしての教育を受けトライアングルクラスのメイジとしてパッショーネ入りを果たしていた。

手紙のやり取りではそのようなことは一言も書かれていなかったし、部下からの報告にもその前兆は無かった。
どのような手段で、何故そんなことをしたのか?
ジョルノへの手紙には、『難しいことだった。だけど皆より『覚悟』が上だってことを見せる必要があったから』とだけ書かれていた。

その為ジョルノ独自で調べたところ、没落した貴族の家の出だったらしく、同じ孤児院の仲間にジョルノが与えた金を使って少女は家の者を呼び戻した。
その中に組織に声がかけられていた者がいたらしい…隠すような事ではないと思うのだが、ジョルノはそ知らぬふりで少女らを使うことを決めた。
以来組織に入ってからは着実に功績を上げており、秘密主義や慎重すぎるきらいがあるがガリア内で認められつつある。
652ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:17:54 ID:XSAK2TOy
一方男は元はシャルル派と呼ばれる暗殺されたタバサの父を支持する一派の者だったが、今はパッショーネの幹部だった。
プッチ枢機卿と出会い、その性分を変えてしまった現王ジョゼフにも才を認められ、ある程度の役職を与えられていたが忠誠を誓う気はさらさら無い。
かといって遺児であり地位を回復したタバサへの忠誠も彼の中にはなかった。
彼がシャルル派を気取っていたのは、シャルルが撒く裏金を手にしたからだ。

裏金を受け取ってしまった事は、彼にとって拭いがたい汚点。
彼の父はなんということは無い貴族の家に生まれて、誠実な仕事振りや人柄こそ評価されていた男だった。

彼自身もその評判を継ごうとしていたが、ある時友が領地経営に失敗した。
放っておけなかった彼は手を貸したのだが、その末に彼自身も困窮に陥り、シャルルの援助を受けた。
それから困窮するまでの筋書きを書いたのがシャルルだと知るまでは彼は忠実な臣下だった。

今は、異界の書物『聖書』によって新たな宗教に目覚め、『レ・ミゼラブル』にいたく感動した彼は新たな異界の書物の閲覧許可を得る為に全力を尽くしていた。
亀から出ずに、声もかけずジョルノはそんな二人の事務的な会話をスタンドの目を通して観察した。

「後は今後の話しだが、ボスから新たな命令が来ることになった。最初は組織の大半の者にも秘密裏に行うとのことだ」
「私は残りの少数というわけですか?」
「そういうことだ。内容は、(僕もまだ信じられないところがあるから)追って伝えるが…」

最後に困惑を示しながらも幹部の言葉に少女は少し相好を崩した。

それを眺めながら、今日この馬車に乗るまでの間に男が手を回して試したからな、とジョルノは心の中で付け加えた。

自分で検査を行わせておいてしれっと少女に言う幹部の顔は自分には一片のやましい部分もないと言わんばかりの落ち着き払った態度だった。
新しく命じた任務の準備が思ったより早く済みそうなのも今少女の相手をしている男のお陰と言える。
その十分に新たな任務について理解しているはずの男が、意外な事に任務について懸念を持っているようだが。

「まさかボスにもう一度確かめるとおっしゃるの? 勘違いされるよりは何度か聞かれる方がマシ、と言う方らしいけれど」
「1ヶ月で200万エキューまでなら使ってよいとおっしゃった」

少女の言葉が癪に障ったらしく、男が乱暴な調子で返す。

「ど、どこからそんなお金が沸いて出るんです?」
「つい先ほどこれから二ヶ月分として資産と現金の半々で400万エキュー頂いた」
「先ほど?」
「(額が額なんで)ギトーってメイジが可哀そうになったさ」

それを聞き、ジョルノは少し困ったように苦笑する。
無制限に使用してよい、という意味合いも込めての金額だったのだが、それがかえって彼等にジョルノの正気を疑わせてしまったらしい。
トリステインの相場になってしまうが、市民1人当たりが1年間に使う生活費は平民で約120エキュー。
下級貴族は約500エキューほどで、豊かな14キロ四方の領地を持つ貴族の年収で1万2千エキューほどになる。

ゲルマニアではコルベールらに研究を行わせ、アルビオンの復興に資金、物資の援助を行っているにも関わらず何処から資金を捻出しているのか不審に思うのも仕方がないことだった。

子供が降りてから、ジョルノは亀の中からスタンドを通して男に声をかけた。
彼の仕事振りには全く不満もなく、その為会話は10分にも満たない短いものだった。

「クリストファー、お前の仕事振りに私は満足している。グンデンタールのアニエスからの嘆願は君の迅速な行動がなければ大きな遅れが生じていただろう」
「以前私の下にいた者が彼女と接触し、今私の下に虐殺に関ってしまった者がいた。二重の幸運に助けられただけのことでございます」

そうする方がジョルノの意向に沿うと承知している男は、声のする方へは目を向けずに答えた。

「それが案外重要なんだ。虐殺を命じたリッシュモン君には不幸だがな…ディ・モールト(非常に)ベネ」
「?」
「君個人が今まで誤魔化した金額は…400エキューくらいだったか」
「ボ、ボス…!? それは…」
「そのまま話を聞いてくれないか? 君が今の仕事に納得してくれているなら、ガリアの仕事は今後も君に任せようと思っている」

慌てて申し開きを行おうと声のする方へ頭を垂れ、跪こうとする男を制止してジョルノは言葉を続けた。
653ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:18:54 ID:XSAK2TOy
「私は君の仕事振りに敬意を払おうと思う。その上でお願いしたいのは、誤魔化す金額についてはそれくらいでやめてもらいたいと言うことと、新たに下した命令についてはコレまで以上に注意を払って欲しいということだ。資金については心配しなくいい」

クンデンホルン大公家やガリア貴族の好事家達にサラマンダーなどの珍しい生物やモグラに掘り起こさせた宝飾を主に売って資金を都合しているのだが、
それが国庫から横領された資金なのか領民に重税を課して溜め込んだものなのか借金をしているのかまではジョルノの知る所ではなかった。
また害を知りながら麻薬をやって破産する大人が増えようと、彼等個人の自由…
男、クリストファーは声のする方にお辞儀をする。

「お前が望んでいた異世界の書物は既に君の鞄に入れておいた。それは全五巻の内の一巻になる……今後もやってくれるな?」

クリストファーは慌てて邪魔にならぬよう荷物棚に置いていた鞄を手元に引きよせ、知らぬ間に入っていた本を興奮で震える手に取った。

「おお、ボス! ご随意に叶うよう務めさせていただきます」
「何度も言葉を重ねてすまないが、例の件については注意点さえ遵守してくれれば金に糸目はつけない。君の判断で使え……そうだな。ロマリアの教会を全て買い取る気でいろ」

目をみはったクリストファーは、だが直ぐに『手配いたします』と答えて予定の場所へと馬車を走らせていった。

ジョルノの入った亀を入れた箱は男の手で馬車から下ろされた。
馬に乗った貴族がそれを拾い上げ、都市の郊外ある王族の居城、ヴェルサルテイル宮殿へ向けて走りだした。

世界中から招かれた建築家や造園師の手による様々な増築物によって現在も拡大を続けている宮殿の一角にあるプチ・トロワの主に、箱は渡された。
北花壇騎士団の一人から亀の入った箱を受け取ったイザベラは、自室の中で箱を開けて鍵を甲羅に嵌めた奇妙な亀をおっかなびっくり絨毯の上に置いた。

期待の込められた眼差しの先で、亀の中から細長い指が這い出す。腕、肩…一人の人間が亀の中から出てきてイザベラを見下ろす。
置くなり、亀に嵌められた鍵から出てきたジョルノを見た彼女は不満そうな表情だった。

「遅かったじゃないか」
「今まで以上に人目を避けなければならなくなったんです」

不満を口にしたものの、久しぶりに会うイザベラは、別れる前に見たものよりも僅かに柔らかい笑みでジョルノに椅子を勧め、自分は自分のベッドに腰掛けた。

「…エレーヌとはうまくやってるよ」

ペットショップを通じての定期的な連絡でも釘をさしていたせいかイザベラは口を開くなりそう言った。

「? タバサですか…そんな風に呼んでたんですね」
「ま、まあね。仲良くしろって言ったのはお前じゃないか」

若干照れくさそうにするイザベラの様子を見て、ジョルノは根掘り葉掘り別れたからの暮らしぶりを尋ねた。
ある程度はペットショップを通じて聞いていたので、本当はまず仕事の話からと考えていた。
だが今は勧められた椅子に腰掛けて話しに耳を傾けた。

ジョゼフの豹変以来、元々味方が少なかった彼女に味方はいなくなった。
得体の知れぬ父ジョゼフですら豹変させた犯人への恐れが、他者を信用できなくしてしまった。
その反面、無意識に味方を求めてタバサとの距離を縮めているのかもしれない。

多少自覚があるのか、イザベラは父親が心変わりしたからとか、叔母が元通りになったからとか、色々な理由をつけていた。
(実際にそれらの出来事も影響しているのだろうが)それはともかくタバサとの関係は修復されつつあった。

話を聞く限り、タバサの母であるオルレアン公爵夫人の働きかけも強い影響を与えたようだ。
夫を殺し、娘を冷遇し、当人には毒を飲ませた男とその娘を許し、今はイザベラを娘同然に可愛がっているという話は、ジョルノにとっても驚きだった。
ジョゼフの手腕によって暗闘は起きないだろうと考えてはいたが、許すという可能性は無いと思っていたのだ。
若干和らいだ表情を見せるイザベラに、ジョルノの口元は爽やかな笑みを形作っていた。

「ジョナサンがもっと早く着いてれば叔母様の手料理も味わえたろうに、残念だったね」
「貴女の変りようを見れただけで十分です。公爵夫人にはまた後日お会いする事にしましょう」
「別人みたいだっていいたそうね」
「そんなことはありません」

ジョルノ返事を世辞と受け取ったイザベラは苦笑した。
彼女自身、自分の変化に驚いているらしかった。
654ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:19:44 ID:XSAK2TOy
「父があの男に変えられてしまったせいでこんな事になるなんてね…」
「その事ですが、イザベラ…貴女の力を貸してください」

そう言って語りだすジョルノに、今度はイザベラが耳を傾けた。
イザベラの父ジョゼフを変えてしまったプッチとの間にあった出来事の諸々をジョルノはイザベラに明かした。

「僕はティファニアに、プッチは教皇に召喚された人間です」

プッチ枢機卿とヴァリエール公爵夫人の会話内容や、ジョルノとプッチが異世界から来たという事までも。

秘密を明かされたイザベラは、明かされた内容に驚くよりも荒唐無稽な話の無いように半信半疑に陥っていった。

内容自体はそう長いものではなかった為、すぐに全て話し終えてしまったジョルノは椅子にもたれかかってイザベラの気持ちが落ち着くのを待った。

「それで、ジョナサンは私の力が必要だって言うんだね?」
「秘密裏に制約(ギアス)がかけられた者達を調べ上げ、解除したい。貴女の北花壇騎士団にならそれが可能な者達がいるはずです」

粗野な仕草で頭をかきむしりながら、イザベラは『実は僕は地球人なんです』とか言い出した男を見た。
エレーヌ母娘と和解したせいだろうか?
多少憎からず思っているせいで、こんな馬鹿馬鹿しい話まで信じる気になっている自分に彼女は自嘲気味な笑みを浮かべた。

「資金などはこちらが全て負担します。他に何か必要なものがあれば言ってください」
「いいえ、ある程度はこちらで持つわ。ガリアにも関係のあることですもの」

父親のことや、恐らくそれ以外にもガリアにも彼等の手が伸びていることを思うイザベラの顔には怒りとも悲しみとも取れぬ複雑な表情をしていた。

「でも、ジョナサンの命を聞くように言っておくからその分彼等への追加報酬を払って。それと事が終わったら私とエレーヌのお供をしてちょうだい」
「…お供ですか?」
「そう、テファには内緒にしてあげる。悪い条件ではないわよね」
「わかりました(別に内緒にしなくても構いませんが)」
「一番腕の立つ連中を手配して置くわ」

二つ返事で答えたジョルノに気を良くしたらしいイザベラは腰掛けていたベッドに倒れこんでいった。
非公式な騎士団とはいえ、普通王族に杖を捧げる貴族が外国人であるところのジョルノの命令に簡単に従うはずは無いのだが…イザベラの配下であれば、ジョルノにも心当たりがあった。

「結構です。その者達ですが『元素の兄弟』ですね?」
「流石は『ボス』ね。そう、残虐で狡猾な連中だけど、汚れ仕事に関しては一番だわ」

ジョルノが北花壇騎士団の人員について知っているらしいのを、イザベラは驚くと同時に何処か誇らしげに言う。
イザベラは杖を振って、用意させておいたビスケットとワインをテーブルの上に運ぶ。
身振りでそれを勧め、ジョルノは亀の中からグラスを二つ取り出して注ぐと、ワールドを出してイザベラの元へ運ばせる。

二人はワインで喉を潤しながら、北花壇騎士団を使い行う仕事について暫し語り合った。

「そう言えば、手紙で言ってたスカウトした連中に賞を与えたいって書いていたけれど、本気かい?」
「はい、ネアポリス伯爵家から与えられた勲章を有難がる者は平民くらいなものでしょうからね」

ジョルノの下にはゲルマニアのネアポリス伯の領内を中心に、多数の研究員がいる。

彼等は今後多大な利益をジョルノに与えてくれるだろう。
現状彼等の地位は低い(コルベールの学園内の扱いを思い出してくださればわかっていただけるだろうが)
それはこれまで目立った何かを生み出さなかったせいだ。

だが、今後は違う。
既にゲルマニアではコルベールらの技術を組み込んだ新しい船が作られているのだから。
それを見越してジョルノは彼等の中で特に目立った成果を挙げた者に勲章と賞与を与える事を決めていた。

が、平民ならそれで十分でも貴族に対しては名誉として受け取れられないのだった。
同じ貴族、それもゲルマニアの伯爵家が作った賞など何百年という伝統と格式を持つ貴族達には何の価値もないのだ。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/08(土) 23:20:13 ID:zMnlrzPX
shien
656ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:20:56 ID:XSAK2TOy
物分りの悪いジョルノにイザベラは目つきを険しくする。

「後になれば、価値を持つはずよ…!! 大体、そんなことをしたらジョナサンの所にいる人間にばかり賞を与えることになるじゃない」
「わかりました…」

ベッドに寝そべって頬杖をつくイザベラへ目を向けたまま、ジョルノはそう言って押し黙ってしまった。
強い口調でイザベラが返したとおり、コルベールのような人間はジョルノが抱え込んでしまっていて他の場所には賞を作ったとしても与えられるような者は一人としていなかった。
こればかりはジョルノ自身が抱え込んだせいで、それを思い出したジョルノはこれ以上その件で食い下がる事は出来なかった。

今まで仕事の話しばかりしていたせいで考えもしていなかったが、間が出来たことで辺りの静けさが部屋の中に漂っていた。
残念がっているジョルノと、そこでイザベラは初めて、今の自分の姿は男性を前にして少しばかり無防備過ぎることに気付いた。
一度意識すると、その気性と立場のせいで決して男性馴れしているとは言えない上に、父親から余り省みられなかった彼女が気持ちを静めるのは不可能な事だった。
ジョルノはその様子に気付かないふりをして椅子から立ち上がり、グラスを片付けにかかった。

「…後の話は明日にしましょう、そろそろお暇しなければ」
「はぁ?」

スタンドで強引に奪うこともできたが、ジョルノはイザベラのグラスを取りに行った。

「せ、せっかく久しぶりに会ったんだし、もう少し……貴方の事が知りたいわ。もっと話を聞かせて」

ベッドの上でグラスを抱え、身を硬くしながらではあったが、引き止めようとするイザベラにジョルノは困ったような顔で動きを止めた。

「…先ほど説明した通りです。詳しくは知らない方がいい」

上目遣いに自分を見るイザベラにジョルノは爽やかな笑顔を向けるだけだった。

「返してください。僕は責任を取る事ができない男ですから、貴女に触れる気はこれっぽっちもありません」

ジョルノの言い草にイザベラの頭には血が昇り、グラスを持つ手には余計に力が篭っていった。
どうやってかジョルノに意趣返しをしたい…恥らいと好意を怒りで誤魔化してイザベラはそう考えた。

「そんなことわからないだろッ? 今だけ心からなんて言って…それでテファやヴァリエールは納得してるんじゃあないのかい?」

悪びれた様子もなくジョルノは首を振った。

「僕が大事にしている気持ちは二つあります。最も強い気持ちは夢を叶えたいという気持ち。で、次が仲間に対する気持ち。異性に対する愛情はその下にあります」
「相手が誰でも?」
「寝ても覚めても」

そう答えたジョルノの表情は爽やかな色が強く現れていてイザベラの怒りを誘った。
その爽やかさや目を輝かせていることは全て夢のせいでありガリアという大国の王女も、年頃の娘も、イザベラのことは見ていないように感じられた。
正直に夢の事を告げたのは今のイザベラを好意的に思っているからだったが、恥をかかされる側にとっては何の慰めにもならなかった。
だからか…グラスを受け取り、身を引こうとするジョルノの腕をイザベラが掴む。

「イザベラ? 離してくれ」

次はいつ会えるとも知れないジョルノをイザベラは彼を掴む指まで赤くして上目に見つめていた。
天蓋が作る影の中に見える顔は、普段よりずっと幼いようにジョルノの目には映った。
そのせいで一手、ジョルノは遅れた。魔法によって灯りが消される瞬間、やんわりと手を退けようとするジョルノが見たのは、一転して不敵に笑うイザベラの顔だった。
素早く身を起こしたイザベラは更に手を伸ばしてジョルノに組み付き、耳元で囁く。
イザベラは上擦った声でこう言った。

「つ、つまり―逆に考えるんだね。他の女も大差ないから逆にチャンスだって考えるわけさ」
「え…?」
「今夜は帰さないわ」
657ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:22:37 ID:XSAK2TOy
組み付いた状態から、イザベラは杖を振るった。珍しく戸惑いを見せたジョルノの体が魔法でベッドの上に転ばされ態勢が入れ替わる。
ジョルノの手からグラスが抜けて、僅かに残っていたワインが宙を舞った。

「ジョナサン、勿論覚悟して来てるわよね? 夜更けに淑女の部屋を訪ねるって事は押し倒される覚悟は出来てるってことね」
「いえそういうわけじゃないんですが…」

まだ残っていたワインが純白のシーツの上に広がっていき、アルコールの匂いが周囲に漂う。
もう夜更けに差し掛かっていたが、逆に考えると朝まではまだたっぷりと時間があるのだった。
微かに入る月明かりでぼんやり浮かぶイザベラは少し広いおでこから指先まで赤く染めあがっている。
恥かしさや上手く引き止められないもどかしさからか、彼女は開き直り、どこかで仕入れた知識の元に暴走しているらしい。

近づいてくるイザベラの唇をかわし、ジョルノは彼女の頭を星型の字の傍へと引き寄せた。
逃げてしまうとまだ考えているらしく腕の中で暴れようとする彼女を包むようにして、ジョルノはぽつぽつと話を始めた。
素晴らしい仲間の事や、ポルナレフに以前聞いたエジプトへの旅をかいつまんで、多少のアドリブを交えて話してやるのだった。
眠るイザベラの部屋からジョルノが服装を整えて出てくるのは、それから実に4時間も後の事だった。

「休む時間がなくなってしまったな…(もしもの時の為に)これは組織としては改善しなければならないな」

満足したイザベラを寝かせるまで休む事が出来なかったがジョルノに疲労感はなかった。
夢は彼の心を潤し、彼の血統は彼の体に力強い生命の力を齎している。

「イザベラの事は後でポルナレフさんに相談するか…」

亀の中に移り、ジョルノは再びリュティスへと消えていった。






その頃、ジョルノに盗聴されていたことをまだ知らないプッチ枢機卿はゲルマニアへと向かって移動していた。
トリスティンの王女アンリエッタとゲルマニア皇帝の結婚に立ち会う為で、このまま進めばかなりの余裕を持って現地入りできることになっている。
プッチ枢機卿はそこで、一月近くにも渡りゲルマニアの重鎮達と会談を行う運びとなっていた。
勿論そこでも隙在らば彼らは禁呪を用いて保険をかけることだろう…

竜籠に載り、周囲に厳重な警備を敷いて移動する彼の手には始祖の祈祷書と呼ばれるトリスティンの秘宝があった。

トリスティン王室の伝統で、王族の結婚の際には貴族から巫女を選び、始祖の祈祷書を手に式の詔を読み上げる慣わしになっている。
常人にの目にはただの白紙の紙束にしか見えない。
プッチにとってもそれは同じだが、始祖に対して良い感情を持っていない彼にとっては便器の中のトイレットペーパーにも劣るゴミだ。

だが虚無の使い手…プッチを召喚し、プッチにディスクを抜かれいいようにされている教皇には、教皇が必要とする呪文が浮かび上がっているらしい。

「では教皇、お願いしたよ」
「わかりました。プッチ神父、『エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド
 ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル』」

自らの使い魔のお願いを快く引き受けた教皇は杖を振り下ろした。

『エクスプロージョン』

トイレットペーパーが無事消滅するのを見届けてプッチは満足そうに言う。

「これで後は何が残っていたかな?」
「土のルビーは先日我がロマリアの秘宝と共に消しましたし、香炉は『世界扉』で貴方の世界に送りましたから。火、風、水のルビー、始祖のオルゴールですね」
「うむ、ゴミは夢の島にだったな。こちらの道具も『世界扉』を抜けられる事がわかった。オルゴールについてはジョルノ・ジョバァーナに頼む事にするとして、火のルビーの行方が気になるな」

これで帰るまでに幾つか便利な道具を向こうへ持ち帰ることもできるということがわかった。
これはジョースターの血統と対決する役に立つ可能性を秘めている。実に結構な事だった。
658ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:24:48 ID:XSAK2TOy
4の4もこれで揃わない…一先ずは安心できるということでもある。
だが完全に安心、というわけではない。
異世界から自分達を誘拐した魔法の中に時間を越える類のものがないとも限らないからだ。

可能性があるというだけのことだが、安心の為に念には念を入れて置かなければならない。

「グンデンタールからは見つかりませんでした。実行した者達が持っているのかもしれません」
「ではその者達を捕らえてくれたまえ」
「わかりました」
「後はええっと、なんだ、さっき消してもらったのの偽物の用意も頼む…修道院の小娘は?」
「確実に消しておきました」
「それは結構なことだ。ヴァリエール公爵夫人はどうしたかね?」

神父が尋ねると、今度は隅に控えていた神官が前に出て報告を始める。

「遍在の一つが聖女ルイズの下を訪れたようです。様子を見にきただけのようですが…」
「亀はどうした? サイトは?」
「少々お待ちを…ティファニア王女の下に向かう姿が確認された位で、特に新しい動きはありません」

禁呪を用いて忠実な駒となった彼等の報告を受けて、プッチは思案顔を作る。

カリンが亀の中にいるポルナレフにプッチの思惑を告げ、協力を仰いだのかもしれない。
ティファニアのところに行って何をしているのかも調べさせたい所だが、ネアポリス伯爵家…パッショーネの内部まではロマリアの密偵は浸透していないためそれ以上の詳しい情報は入らないのだろう。
ゲルマニアも信仰心が薄いが、パッショーネの内部は更に信仰心が薄いせいだった。
懺悔にも来なければ忙殺されていて日曜礼拝にさえ来ない…聞いた所に拠ればキリスト教の聖書を読む者までいるとかいう話しさえある。

「ガリアに向かったジョジョはどうしている?」
「ネアポリス伯爵が大量の資金を動かし何か行動を開始していると…」
「…ヴァリエール公爵家と接触した形跡はあるかね?」
「いえ、次女がガリアに向かっていると言う報告がありますが」

あの後にジョルノとカリンが接触を持った形跡がないのを確認し、プッチは今後どう動くかを黙考する。
ついでにポルナレフを始末するにはどうすればよいだろうか?

「……甘やかせ」
「は?」

不意に言ったためか、間抜けな声を出したメイジが恐縮するのを無視しプッチは言葉を続ける。

「聖女ルイズを褒め称え、何から何まで世話して差し上げろ。我々の助けがあって当然。なければ何も出来ないようになるまでだ」
「御意に」
「成長の機会を絶対に与えるな…! 亀達が見限るように仕向けるのだ」

それだけ命じると、プッチは汚れを気にしているのか、芝居がかった身振りで指をこすり合わせた。

「あぁそれと、ワインが飲みたいのだが、その前に手を洗う水を用意してくれないかね?」

先ほど間抜けな声を上げたメイジが急いで杖を振るい、清潔な布と水がプッチの手元へ運ばれてくる。
プッチは上機嫌でゲルマニアまでの空の旅を楽みながら、今後のことを考えていた。

「やはり虚無の血を引く可能性がある人間を消しておくのが無難か? ゲルマニア皇帝には子孫を残すための女を別に宛がうとして…ジョルノと私が帰った後、王族達には皆自殺してもらう必要があるな」


to be continued...
659ポルナレフ+ジョルノ 二章_11:2009/08/08(土) 23:32:46 ID:XSAK2TOy
以上、投下したッ

ポルナレフパートも入れようかと思ったのですがきりがいいのでここで
ルイズを成長させる気がポルナレフくらいにしかないと言う状況でスパイ狩り開始。でも神父には即バレ

後…

犬が…犬が知らない間に完結したなんてOTL
遅ればせながら、GJを送らせていただきたいです
いぬを見てバオーを手に取ったのは私だけじゃないはずッ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/08(土) 23:48:16 ID:a0xQGeqf
乙!!
始祖グッズ焼却ワロタ

>>654>>656の間に1レス忘れてたりしない?
なんか急に飛んでるような感じがするんだけど
661ポルナレフ+ジョルノ:2009/08/09(日) 00:00:38 ID:CSVWZTgV
>>660
すいません二行ほど抜けてました。

修正した656は↓になります。

「やめた方がいいわね。10年もしないうちにジョナサンの与える賞が権威を持つようになる…エレーヌの意見だけどね。私達はそうしてみせるわ」
「…ネアポリス伯爵の名前では軽すぎる」

物分りの悪いジョルノにイザベラは目つきを険しくする。

「後になれば、価値を持つはずよ…!! 大体、そんなことをしたらジョナサンの所にいる人間にばかり賞を与えることになるじゃない」
「わかりました…」

ベッドに寝そべって頬杖をつくイザベラへ目を向けたまま、ジョルノはそう言って押し黙ってしまった。
強い口調でイザベラが返したとおり、コルベールのような人間はジョルノが抱え込んでしまっていて他の場所には賞を作ったとしても与えられるような者は一人としていなかった。
こればかりはジョルノ自身が抱え込んだせいで、それを思い出したジョルノはこれ以上その件で食い下がる事は出来なかった。

今まで仕事の話しばかりしていたせいで考えもしていなかったが、間が出来たことで辺りの静けさが部屋の中に漂っていた。残念がっているジョルノと、そこでイザベラは初めて、今の自分の姿は男性を前にして少しばかり無防備過ぎることに気付いた。
一度意識すると、その気性と立場のせいで決して男性馴れしているとは言えない上に、父親から余り省みられなかった彼女が気持ちを静めるのは不可能な事だった。
ジョルノはその様子に気付かないふりをして椅子から立ち上がり、グラスを片付けにかかった。

「…後の話は明日にしましょう、そろそろお暇しなければ」
「はぁ?」

スタンドで強引に奪うこともできたが、ジョルノはイザベラのグラスを取りに行った。

「せ、せっかく久しぶりに会ったんだし、もう少し……貴方の事が知りたいわ。もっと話を聞かせて」

ベッドの上でグラスを抱え、身を硬くしながらではあったが、引き止めようとするイザベラにジョルノは困ったような顔で動きを止めた。

「…先ほど説明した通りです。詳しくは知らない方がいい」

上目遣いに自分を見るイザベラにジョルノは爽やかな笑顔を向けるだけだった。

「返してください。僕は責任を取る事ができない男ですから、貴女に触れる気はこれっぽっちもありません」

ジョルノの言い草にイザベラの頭には血が昇り、グラスを持つ手には余計に力が篭っていった。どうやってかジョルノに意趣返しをしたい…恥らいと好意を怒りで誤魔化してイザベラはそう考えた。

「そんなことわからないだろッ? 今だけ心からなんて言って…それでテファやヴァリエールは納得してるんじゃあないのかい?」

悪びれた様子もなくジョルノは首を振った。

「僕が大事にしている気持ちは二つあります。最も強い気持ちは夢を叶えたいという気持ち。で、次が仲間に対する気持ち。異性に対する愛情はその下にあります」
「相手が誰でも?」
「寝ても覚めても」

そう答えたジョルノの表情は爽やかな色が強く現れていてイザベラの怒りを誘った。
その爽やかさや目を輝かせていることは全て夢のせいでありガリアという大国の王女も、年頃の娘も、イザベラのことは見ていないように感じられた。
正直に夢の事を告げたのは今のイザベラを好意的に思っているからだったが、恥をかかされる側にとっては何の慰めにもならなかった。だからか…グラスを受け取り、身を引こうとするジョルノの腕をイザベラが掴む。

「イザベラ? 離してくれ」

次はいつ会えるとも知れないジョルノをイザベラは彼を掴む指まで赤くして上目に見つめていた。
天蓋が作る影の中に見える顔は、普段よりずっと幼いようにジョルノの目には映った。
そのせいで一手、ジョルノは遅れた。魔法によって灯りが消される瞬間、やんわりと手を退けようとするジョルノが見たのは、一転して不敵に笑うイザベラの顔だった。
素早く身を起こしたイザベラは更に手を伸ばしてジョルノに組み付き、耳元で囁く。イザベラは上擦った声でこう言った。

「つ、つまり―逆に考えるんだね。他の女も大差ないから逆にチャンスだって考えるわけさ」
「え…?」
「今夜は帰さないわ」
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 00:44:21 ID:45CmgGdm
GJ!!
ジョルノが相変わらず爽やかで格好いい!!
言動のうちにチラリと見えるDIOの片鱗も良く出来てる!

プッチも、今まで召喚されたキャラにない行動を起こしてるのが面白い!!
というか、プッチほハルケに対する憎しみはすさまじいなwww

そしてこんな可愛いイザベラ見たこと無いぜ!
4時間もジョルノに抱かれて物語を聞いてるなんて・・・可愛すぎるwwww

とにかくGJ!!!
続きも焦らずじっくり頑張ってください!!
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 02:21:40 ID:Xte1B0fG
乙&GJ!!!
ジョルノとイザベラシーンは未成熟な大人のかほりがして素晴らしいw
あと、小さな疑問なんですが「グンデンタール」→「ダングルテール」ですか?
間違ってたら誠に4・2・0
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 08:42:36 ID:8gAvDdBo
>「聖女ルイズを褒め称え、何から何まで世話して差し上げろ。我々の助けがあって当然。なければ何も出来ないようになるまでだ」
>「成長の機会を絶対に与えるな…! 亀達が見限るように仕向けるのだ」

こういうやり方で攻めるという事は、逆に言えばルイズが成長する事を恐れているということか
堕落するルイズを見て、才人やミキタカがどう動くか……次回に期待
というか今回の話って二人のボスキャラが色々暗躍してる話に見えんwww
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 08:43:31 ID:8gAvDdBo
×暗躍してる話に見えん
○暗躍してる話にしか見えん
orz
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 11:42:32 ID:JUhMlpWp
> 「聖女ルイズを褒め称え、何から何まで世話して差し上げろ。我々の助けがあって当然。なければ何も出来ないようになるまでだ」
> 「成長の機会を絶対に与えるな…! 亀達が見限るように仕向けるのだ」
暗躍しているのは解るんだよ雰囲気で、でもこの部分を呼んでおいおい…とか、ヒヤッとした。
雰囲気に飲まれちゃったよ。
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 13:07:53 ID:8gAvDdBo
しかしプッチも世界扉でさっさと帰ってしまえばいいような気もするんだが
王家の血を引く連中を皆殺しにするまでやるとしたら相当頭にきてるのねw
(万が一でもまた召喚されるのを防ぐためでもあるんだろうか)
ゲルマニア皇帝に別の嫁さんを紹介してやろうというのもその一環なんだろうけど、何故かいい人に見えるwww
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 19:33:30 ID:s8nsKGWH
ルイズが心配で眠れない。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/10(月) 16:02:38 ID:IDumQihI
ジョルポルさん乙です
どいつもこいつも真っ黒にしか見えねえ!
イザベラ様可愛いよイザベラ様
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/11(火) 18:55:53 ID:xvUUcWi9
ゼロの使い魔をあんまり知らない俺だが
ゼロいぬを読んで号泣したので書き込ませてくれ
いい話をありがとう!(;ω;)いやぁ久しぶりに泣いたわ…
671S.H.I.Tな作者:2009/08/12(水) 10:36:59 ID:EVbULLJd
お久しぶりです。
前回投稿から3ヶ月くらいたってるので覚えておられる方も少ないとは思いますが、S.H.I.Tな使い魔を三話分ほど投稿させていただいてもよろしいでしょうか。
672sage:2009/08/12(水) 10:44:36 ID:uIrdLFnr
しえn
673S.H.I.Tな作者:2009/08/12(水) 10:47:54 ID:EVbULLJd
支援ありがとうございます。では30話から参ります。
674S.H.I.Tな使い魔30:2009/08/12(水) 10:48:55 ID:EVbULLJd
 一行はすぐさま学院の二頭立て馬車に乗り出立した。

 道案内のロングビルが御者を買ってでており、後ろの座席にルイズと康一、キュルケとタバサが座っている。

「ねぇダーリン。盗まれた弓と矢ってどんなものなのかしらね。」

 ルイズとキュルケの康一の隣争いは、キュルケの「ルイズってばそんなに康一にひっつきたいわけ?」の一言に、
「ご主人様は使い魔がへんなことしないように見張ってないといけないんだもん。」と言い張るルイズが勝利を収めていた。

「え、えーっと・・・どうだろうね。」

 康一は答えた。
 どんなのかはわかんないけど、ぼくあんまり弓矢にはいい思い出がないんだよね。」 

 康一は胸のあたりをさすった。
「一度死にかけたことがあってさ。」

 キュルケが目を丸くする。
「まさか弓で射られたことがあるの?」

「うん・・・まぁね。」

 虹村形兆に矢で貫かれたあのとき、仗助くんの助けがなければぼくはきっと死んでいた。

「あんたって意外と危ない人生送ってんのねー。」
 ルイズが半分呆れて言った。

「いや、それまでは平和に学生生活送ってたんだけどね・・・」

「小さい頃からそういう経験してたからこんなに頼りになるのね。トリステインの男共も見習ってほしいわね〜。」
 キュルケは御者台に目を向けた。
「そういえば、ミス・ロングビルの魔法のクラスはどのくらいなのかしら?」

 ロングビルは軽く振り向きながら答えた。
「私は土のラインです。でもみなさんと違って戦いの経験があまりないので、道案内以上のことはあまり期待しないでくださいね。」

「十分よ。それでもトライアングルの私とタバサ。それにコーイチはいるし、ルイズの爆発・・・あら、ちょっとした戦力じゃない。」

「私は爆発なわけ・・・」
 ルイズは不満げだ。

「あら。あなたの爆発だって馬鹿にしたものじゃないわ。やれることがゼロじゃないんだから、少しは役に立ってもらわないとね。」

「やっぱり馬鹿にされてる気がするわ・・・。」
 キュルケの軽口にルイズはため息をついて顔を背けた。
 
でもその背中にうれしい気持ちが隠し切れずに見えて、康一は思わず笑ってしまった。

「みなさん。そろそろ目撃証言のあった小屋につくころです。ここからは歩いていきましょう。」
 ロングビルは道ばたに馬車を寄せた。

 一行が馬車を降り、茂みの奥をのぞき込むと20メイルほど先に小さな小屋がある。

「昨夜、あそこにフーケらしき、ローブをまとった男が入っていったということです。」
 ロングビルが声をひそめて説明した。
675S.H.I.Tな使い魔30:2009/08/12(水) 10:49:57 ID:EVbULLJd

「まだ中にいるのかな。」

 康一がつぶやきに、今まで空気のように静かだったタバサが答えた。

「気配はない。でも確証がない。偵察が必要。」

 自然と皆の視線が康一に集まる。

「ぼ、ぼくですかぁ!?」

「あたりまえでしょ。使い魔なんだから。」
「適任。」
「ダーリン。がんばって!」

 三人がそろって頷く。

「全く・・・こういうときだけ一致団結するんだからなぁ。」

 康一は剣を抜いた。シュペー卿の剣である。
 デルフリンガーは大きすぎて、扱いづらかったので、馬車に置いてきたのだ。

 茂みを出て、小屋まで小走りで近づく。

 壁際にしゃがみこむと、窓から中を覗いた。
(誰もいないな・・・)
 しかし中に隠れているかもしれない。

 康一はACT2を呼び出した。


 康一はあれから密かにスタンドと魔法について実験をしていた。
 スタンドは本来、スタンド使いが触らせようとしないかぎり、スタンドでないものが触れることはできない。
 つまり逆にいえば、スタンドはどこでもすり抜けて移動ができる。
 しかし魔法学院の壁のように、固定化などの魔法がかけられている場所や魔法自体、そしてメイジの体はなぜか透過することができなかったのだ。
 一方、魔法がかけられていない壁はやはりすり抜けることができた。それどころか平民にはやはりスタンドが見えていないことが分かったのだ。
(シエスタの目の前で手を振らせてみたのだが、見えている素振りも見せず、小首を傾げるだけだった。)

 ACT2は壁をぺたぺたと触る。透過できそうだ。魔法はかけられていない。
 康一はスタンドを小屋の中に潜り込ませた。


 こじんまりとした小屋である。
 壁際にはいくつかの棚。箱。
 ベッドなどはない。

(隠れ家じゃないみたいだな・・・)

 人影もない。念のためにACT2に小屋の周りも調べさせたが、やはりどこにも人影はなかった。

 剣を納め、陰からこちらを見守っている女性陣に首を振ってみせた。

 皆ほっとした様子で康一の元に駆け寄る。

「もう逃げちゃったのかしら・・・。」
 その中でルイズが残念そうにいう。

「いないにこしたことはないよ。」
 相手はメイジが総掛かりで捕まえられない大盗賊である。
 康一はそんなのを相手にして無事でいられるかどうか全く自信がなかった。
676S.H.I.Tな使い魔30:2009/08/12(水) 10:50:59 ID:EVbULLJd

「では中の調査をお願いしますわ。わたしはこの辺りを調べて参ります。」
 ロングビルは小屋の裏手へと行ってしまった。

 もう調べましたよ。と言いかけたが、やめた。
 言ったらキュルケやタバサにも「スタンド」について説明しなければならなくなる。

 もう言ってしまってもいいとも思うのだが、今はその時ではない。これが終わったら説明しよう。

 ロングビルを見送って、康一は小屋の扉を開けた。
 中にいないのは分かっている。警戒することなく、小屋の中を調べにかかる。

 女性陣三人も恐る恐るついてきた。

「ちょっとダーリン。いきなり入っちゃうなんて不用心じゃない?まぁ大丈夫だったみたいだけれど。」

 うん、そうかもね。言葉を濁す。

 棚の中にはそれらしきものはなかった。
 棚の横にある木箱を開いた。

          ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「こ、これは・・・・!!」
 そこに入っていたのは『弓と矢』。そこいらで狩猟で使われているようなものとは明らかに違う。装飾がちりばめられた鏃。
 そして康一には分かる。これは自分を含め、杜王町にたくさんのスタンド使いを生んだ、あの矢。あれと同じものだ!

(まさかとは思った。でもまさか本当にあの『弓と矢』だなんて・・・)
 『弓と矢』を手に取った。自分の中の「エコーズ」が、引き寄せられるようななにかを感じた。

「どうしたの?なにか・・・あっ・・・こ、これって。盗み出された『弓と矢』じゃないの!?」
 ルイズが歓声をあげる。

「そうみたいね・・・でも、フーケはいないのに、なぜ『弓と矢』だけがここに残されていたのかしら。」
 キュルケの疑問は誰もが思うところだった。

 しかし、自分たちの任務は『弓と矢』の奪還であって、フーケの捕縛ではない。

「一度学院に帰るべき。」
 タバサの提案に異を唱えるものはいなかった。

「それにしてもあっさり終わっちゃったわ。心配して損しちゃった。」
 ルイズは小屋の扉を開いて外に出ようとした。


 目と鼻の先で巨大な土のゴーレムが小屋を見下ろしていた。
677S.H.I.Tな使い魔30:2009/08/12(水) 10:52:14 ID:EVbULLJd

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「・・・間違えました。」

バタン

「ちょっとヴァリエール!なんで扉を閉めちゃうのよ。」
 外が見えないキュルケが文句を言う。

「・・・いるんだもん。」

「はい?」

「いるんだもん!フーケのゴーレムがすぐ外に!目が合っちゃったんだもん!」

「そんな馬鹿なこと・・・。逃げだしたフーケがわざわざ戻ってくるわけないじゃないの。ほらどいて。」
 キュルケがルイズを押し退けて扉を開けた。

 遙か高みから見下ろすつぶらな石の瞳と目があった。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「お邪魔しました。」

バタン

「いたわ。目が合っちゃったわ。どうしましょうか。」

「どうしましょうかって・・・」

 ルイズとキュルケは言葉につまった。
 天井からぱらぱらという音が聞こえてくる。
 まるで土や小石が屋根の上に落ちてきているような・・・。

 どんな顔をすればいいかわからないまま、ルイズとキュルケは天井を見上げた。
「キュルケ。私すごくイヤな予感がするんだけど。」
「奇遇ね。あたしもよ。」

 タバサがぼそっと言った。
「踏みつぶそうとしている。」

 四人は目を合わせた。


「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁあ!」
「いやぁぁぁぁぁあ!」
「・・・・・」

 そこからは早かった。窓をぶち破って四人が外に転がり出るのとほとんど同時に、ゴーレムの巨大な足が小屋を踏み潰した。
  
  
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 10:59:49 ID:XnrdnkkD
sienn
679S.H.I.Tな使い魔31:2009/08/12(水) 11:01:02 ID:EVbULLJd
「なんで外で待ち伏せしてんだよぉー!さっきはいなかったのにぃー!!」
「し、知らないわよッ!!」
 康一とルイズはそろって腰を抜かしている。

 キュルケも胸を押さえて荒い息をついている。
「あ、危ないところだったわ・・・」

 タバサはいち早く立ち上がり、ゴーレムに杖を向けている。

 ゴーレムは小屋から脱出した四人を見つけ、こちらに顔を向けた。

「・・・来る。」
 タバサは杖を降りあげた。

 ウインドブレイク!
 圧縮された風の槌が打ちつけられる。

 しかし表面の土を飛び散らせるだけで、ゴーレムは意にも介さない。

 キュルケもタバサに続いて、ファイアーボールを放った。
 ゴーレムの表面で爆発した火の玉は、炎と火花を飛び散らせたが、やはり効果は薄そうだ。

「大きすぎるし鈍すぎるわよ!」

 ゴーレムの歩みは止まらない。

 康一は剣を抜いた。シュペー卿の剣が怪しく光を放つ。
「ルイズ!逃げるんだ!」

 しかしルイズは座り込んだままだ。
「だ、だめ。腰が抜けちゃった・・・。」

「くっ!!」
 やるしかないのか!?
「キュルケさん!タバサ!ぼくが足止めするから、ルイズを連れて下がって!」

「い、嫌よ!私も戦うわ!」
 ルイズは立ち上がろうとするが、足に力が入らない。

「お願いだよ!ルイズは『弓と矢』を守って!」
 康一はルイズに『弓と矢』を預け、返事を待たずにゴーレムに向かって駆けだした。

「ちょ、ちょっと!コーイチ!!」

迫り来る康一にゴーレムは長い腕を思い切り叩きつける。
 しかしガンダールブのルーンによって、人外の反応速度と機動力を得た康一はやすやすと、叩きつける大質量をかい潜る。
 速度に着いていけないゴーレムは足下を飛び回る康一をただ追うばかりだ。

「今のうちに下がるわよルイズ!」
 その間にキュルケとタバサがレビテーションで連れて逃げる。

「ちょっと!離しなさい!コーイチを置いていけないわ!」
 ルイズは抵抗するがレビテーションで浮かされているので空中でじたばたとするばかりである。


 一方の康一は、ゴーレムの動きに慣れてきていた。今の自分なら、逆にこいつを倒すこともできるかもしれない。

 汗ばむ手で剣を握り直す。
 ゴーレムが拳を落としてくる。それをすれすれで回避し、手首に向かって野球のスイングのように剣を降り抜いた。
680S.H.I.Tな使い魔31:2009/08/12(水) 11:01:54 ID:EVbULLJd

ザシュッッッ!!

 剣はゴーレムの大木のような腕を半ばまで斬り裂いた。
「よし、いける!」
 これなら何度も切りつければ切断することだって可能だ。

 しかし

「ぬ、抜けない!?」

 根元まで埋まってしまった剣は、引き抜こうにもびくともしない。

 ゴーレムは剣の刺さったままの腕を大きく振り回した。

「し、しまったぁぁー!」
 剣がないと、ガンダールブの恩恵が受けられなくなる。離すわけにはいかない!
 康一は剣にしがみついたまま振り回された。

 そして・・・

「うわぁぁぁぁぁぁl!!」
 まるで遠投されたボールのように木々の向こうに飛ばされていった。

「コーイチーー!!!!」
 ルイズが叫ぶ。

「ダーリン・・・」
 キュルケとタバサもしばし呆然としていた。

 しかし、康一を片づけたゴーレムがこちらに視線を向けた。

「・・・ダーリンの心配をしている暇はなさそうね。」
 キュルケが言うと、タバサは黙って杖を構えた。

「コーイチ・・・コーイチが・・・」
 未だ放心して座り込んでいるルイズをキュルケが叱咤した。

「ルイズ!ダーリンは大丈夫よ!きっと戻ってくるわ!」
「それよりこっちの心配をなさい!『弓と矢』を守れって言われたんでしょ!」

 ルイズは思った。
 そうだ・・・。私はこんなところでお荷物になるために来たんじゃない。
 私は自分が貴族にふさわしいことを証明するためにここに来たのだ!
 杖を抜き、立ち上がる。
「私の仕事は『弓と矢』を守ること。コーイチが戻ってくるまで!」

 キュルケは心の底から満足そうに笑った。
「それでこそ私のライバルだわ!」
681S.H.I.Tな使い魔31:2009/08/12(水) 11:02:36 ID:EVbULLJd



 一方、飛ばされてしまった康一はというと。

「ぐ・・・ううっ。死ぬかと思った・・・。」

 なんとか生きていた。

 投げられた先で木の幹に叩きつけられようとした直前、「ポヨヨォ〜〜ン」の擬音を張り付けて衝撃を和らげたのだ。
 しかし跳ね返った後、枝で全身に切り傷を作り、地面に叩きつけられたので、すでにぼろぼろである。

「早くみんなのところへ戻らないと・・・」
 康一は剣を杖に立ち上がろうとして。

「な、なんだこれぇぇーー!」
 剣が根本からポッキリ折れていることに気がついた。

「シュペー卿が鍛えた魔法の剣がこんなにあっさり折れるもんなのかぁ〜!?」

 折れたのはたぶん振り回された時だろう。
 とにかく、もうこれは使いものにならない。ルーンも武器として認めないのか、反応しない。

「・・・そうだ。馬車にはまだデルフリンガーがある!」

 康一は折れてしまった剣の柄を捨て置き馬車へと急いだ。


 ルイズたちの戦いも熾烈を極めた。

 ゴーレムの表面で爆音とともに土が盛大に弾ける。ルイズの爆発だ。
 しかし、すぐに土が集まり、傷跡を修復していく。

「こ、これはそろそろ逃げた方がいいかもしれないわね。」
 キュルケは汗で額に張り付いた髪をかきあげた。

 土くれのフーケは土のトライアングルだと聞いている。それなのにトライアングルの火と風、それにルイズの三人がかりでもゴーレムを倒すことができない。

「・・・」
 タバサは答えずに呪文を詠唱する。

 実は先ほどから上空で待機させていたシルフィードに飛び乗るタイミングを窺わせていたのだが、それをさせまいと立ち回るゴーレムが邪魔をし、果たせずにいた。

「逃亡するにもきっかけが必要。」
 走っても追いつかれる。逃げるならシルフィードに乗るタイミングを作り出さないといけない。

「じゃあ、きっかけを作るしかないわね・・・!タバサ!あれ、行くわよ!!」
 キュルケが振り向くと、タバサがコクリと頷く。


 詠唱とともに、タバサが風を纏い、氷の結晶が集まってくる。
 そしてキュルケは今まで以上に念入りに魔力を集め、特大のファイアーボールを形成した。
 タバサが杖を降る!ウインディ・アイシクル!
 ゴーレムの左足の根本に氷の刃が深々と突き立つ!
 そして間髪入れずのファイアーボール!


 親友同士だからこその暗黙の連携!
 タバサが作り出した冷気によって集積、圧縮された空気や水が、キュルケの炎で急激に熱せられ、爆発的速度で膨張する!
 
682S.H.I.Tな使い魔31:2009/08/12(水) 11:03:29 ID:EVbULLJd

 ドォォォォン!!!

 爆風が吹き荒れ、ゴーレムの左足が爆散した!
 片足を失い、バランスがとれなくなったゴーレムが転倒する。

 期を逃さず、タバサが指笛を吹く。今ならシルフィードが拾い上げることができる。

「ルイズ!逃げるなら今よ!こっちへ!!」
 キュルケがルイズを呼ぶ。

 しかしルイズは振り向かない。
「ルイズ!!」

 キュルケが叫ぶ。

「嫌よ!もう逃げたくないの!私はもう、逃げないわ!!」
 ルイズのファイアーボール。未だ、爆発しか起こせないものの、訓練のたまものか、以前よりも格段に命中率が向上している。
 手を突いて立ち上がろうとするゴーレムの手首に命中し、ゴーレムは再び突っ伏した。

 しかし、ゴーレムは猛烈な速度で再生する。

「もう限界。」
 これ以上待てば、離脱する最後のチャンスを失う。
 タバサはキュルケを強引に引きずり、飛来したシルフィードに飛び乗った。

「ルイズーー!!」
 キュルケは叫ぶ。飛び降りようとするが、タバサがつかんで離さない。

「もう私たちにできることはない。行っても死ぬだけ。」

 キュルケは歯噛みした。
「もう!どうしてトリステインの貴族はこう変なところで意地っ張りなのよ!!」


 ゴーレムの再生が完了した。

 再び立ち上がったゴーレムを、ルイズは睨みつけた。
 怖い。膝が震えるのを隠すこともできない。
 座り込んでしまいたい。泣いて助けを呼びたい。
 でもできない。ルイズの貴族としての矜持がそれを許さない。
 魔法の使えないルイズにとって、矜持のみが自らを貴族たらしめるものだからだ。
 立派な貴族として認められたい!

 詠唱、照準、引鉄。
 できそこないのファイアーボールが表面で弾けて土をまき散らす。

 しかし歩みは止まらない。
 私の魔法じゃ、こいつを止められない・・・!それはわかっていた。

 でも・・・・
「これならどうかしら。」
 ルイズは弓に矢をつがえた。

 当然弓矢など使ったことはない。むしろ魔法を絶対視する、貴族にとって軽蔑すべき平民の武器。
 しかし学院の最秘宝。禁断とされたこの『弓と矢』なら、あんなゴーレムなど一撃で倒してしまえるはずだ。
683S.H.I.Tな使い魔31:2009/08/12(水) 11:04:10 ID:EVbULLJd
 

 昔見た平民の狩人を思いだし、見よう見まねで狙いを定める。弦の重さと同時に恐怖で腕が震える。

 本当に当たるだろうか。でも、当てるしかない!

 ルイズは矢を放った。

 素人のルイズが放った矢は、バヨ〜ンと間抜けな音を立ててあさっての方向に飛んだ。
 しかしルイズにとって幸運だったのは。それでも当たるほどゴーレムが近くに近づいていたこと。
 そして・・・

「そ・・・そんな・・・」

 不幸だったのは矢がゴーレムに突き刺さっても、何の意味もなかったということ。
 そして、矢が刺さった時点で、ルイズはゴーレムの必殺の射程圏内まで近づかれていたということだ。
 ゴーレムがゆっくりと拳を振りあげる。

「ルイズーー!!」
 康一が飛び出してきたのはその時だった。デルフリンガーの鞘を捨て、風のような速度で走る。

「こ・・・」
 声が出なかった。

 ルイズは弓を、杖すらも打ち捨ててただ、走り来る康一に向かって手を伸ばした。

 地面を擦るように飛来する、ゴーレムの岩石の拳が。

 康一の目にも留まらぬ疾走が。

 共にルイズに迫った。


 しかしガンダールブの必死の手は後わずか、彼の主人まで届かなかった。

 ほんの一瞬、ゴーレムの拳が早かった。



 ルイズは死んだ。
684S.H.I.Tな作者:2009/08/12(水) 11:04:52 ID:EVbULLJd
そろそろ規制が入りそうなので、32話は少しおいてから投稿しますね。
では後ほど。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 11:06:17 ID:kJ+ZLDpp
読むのに必死で支援をすっかり忘れていた
何を言ってるのかry
投下乙!
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 11:17:32 ID:i4+tIrJ0
ゴーレム相手にゃ効果無しか。よかった。
メイジにはスタンド見えるみたいだからひょっとして魔法がスタンド扱いでレクイエム発動とかなったらどうしようかと思った。
フーケ・ゴーレム・レクイエムとか見てみたかった気もするがw
687S.H.I.Tな作者:2009/08/12(水) 11:39:59 ID:EVbULLJd
そういやどれくらい自重してればいいのかわからないですね
32話投稿いきますです。
688S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 11:41:00 ID:EVbULLJd
 そもそも康一が戦いの場に戻ってきたときには、もう手遅れだったのだ。
 距離は遠く、敵はすでに必殺の体勢を整えていた。
 ガンダールブの俊足を持ってしても手が届かないほどに。

 そう、ガンダールブなら間に合わなかった。


 しかし康一はガンダールブである前に、スタンド使いだった!


 ズドォーン!!!
 巨大な岩が打ちつけられる音がした。

 死んだと思った。
 でも、いつまで立っても衝撃が訪れないので、ルイズは恐る恐る目を開けた。
 目の前にゴーレムの拳があった。
 しかし、その半ばまでが地面にめり込み、動きを止めていた。

「射程距離5mニ到達シマシタ!S.H.I.T!!」 
 そのそばに浮かぶ、白い人影。

「あ、危ないところだった・・・!!ギリッギリ間に合ったよ!!」
 そして拳とルイズの間に阻むように立つ康一の背中。

 康一は振り向いて笑った。
「大丈夫だった?」

 我慢していたものが溢れた。

 怖くて、安心して、訳の分からないうちに気がつくと涙がこぼれていた。。
「こ・・・怖かったわよ・・・!早く戻ってきなさいよ!バカっ!!」
「ご、ごめん。」
 康一は女の子の涙に狼狽えながらも謝った。

 ゴーレムは急に重くなり、動かなくなった右腕を持ち上げようとして、逆にバランスを崩して膝をついた。
 至近距離なので砂埃が舞い、二人は目を細めた。

「でも、そのへんはこいつを倒してからだよね。」
「・・・大丈夫なわけ?」 
 ルイズはずずっと鼻をすすった。

「うん。あいつを倒す方法を思いついたんだ。だから・・・」

 ゴーレムは右腕を持ち上げるのをあきらめ、無事な左腕を振りあげる。

「ちょっとごめんよ!」
「え?きゃぁ!!」

 康一はデルフリンガーを逆手に構え直し、ルイズを横抱えにした。
 いわゆる「お姫様だっこ」というやつである。
689S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 11:41:42 ID:EVbULLJd

 降りおろされる左腕を横っ飛びに回避する。そして動かないままの右腕を駆け上がった!

 ルイズは慌てて康一の首にしがみつく。

 康一はゴーレムの肩口から飛び上がり、ゴーレムの頭のてっぺんに着地した。ルイズを降ろす。

「な、なんでこんなところに来ちゃうのよ!」
 ルイズが悲鳴をあげる。

「5m以上離レマシタ。3FREEZE、解除シマス。」
 ACT3が忠告する。

 自由になった土の巨人が立ち上がる。

 康一はデルフリンガーをゴーレムの頭に突き立て、もう片方の手をルイズの腰に回し、振り落とされないように踏ん張る。

 ゴーレムが立ち上がった。もっとも高い、頭のてっぺんは20m近い。

「こ、これ危ないんじゃないの?こんな高いところにいたら逃げられないじゃない!」
 下を見るのも恐ろしいほどの高度。逃げ場はない。

「大丈夫だよ。この、『背筋が伸びた状態』がいいんじゃあないか。」
 康一に動じる様子はない。
「君の使い魔を信じてよ。」

 もうルイズは康一に全部任せることにした。
「もう・・・知らないからね!!」
 ルイズは顔を押しつけるようにして、康一にいっそう強くしがみついた。

 ゴーレムが頭の上の康一たちをとらえようと両手を伸ばす。

 康一は高らかに叫んだ。
「たしかに逃げ場はない!でもチェックメイトだ!!ACT3!!」
「3FREEZE!!!」

 ACT3は、康一が乗っている、ゴーレムの頭部の重量を激増させた。
 ガンダールブの力を加えられたACT3による、0距離、最大出力の3FREEZE!!



      ズウゥゥゥン!!!!



 抗すべくもない。
 瞬きする間もなく、数百トンの重量を持たされた頭部は、それを支えるすべての部位を圧壊し、押しつぶした。

 その衝撃で地面が陥没し、クレーターを形成する。
 砂埃が、辺縁で巻き上がる。しかし康一とルイズのいる中心部では埃一つたっていない。

「すごい・・・・」
 あっけにとられるルイズ。
 康一が少し恥ずかしげに鼻の下をこする。
「へへ、だからいったでしょ。君の使い魔を信じてって。」
690S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 11:42:23 ID:EVbULLJd

 

 ゴーレムを倒した二人が、クレーターから出てくると、ミス・ロングビルが駆け寄ってきた。
「ミス・ヴァリエール。コーイチさん。大丈夫でしたか!?」

「ええ、ぼくたちは何とも。ミス・ロングビルこそ無事だったんですね!」

「はい。フーケらしき男に当て身を受け、気を失っていましたが・・・。」
 ミス・ロングビルは首元を撫でた。

 上空からシルフィードも降りてきた。

 飛び降りてきたキュルケが康一に飛びついた。
「すごいじゃないのダーリン!あのゴーレムを倒しちゃうなんて!!」
 顔を離していたずらっぽく笑う。
「でも、あの『能力』のことは今度しっかりと教えてもらうわよ。」

 タバサも後を追って降りて来た。
「油断は禁物。術者が近くにいるはず。」

 一行は周りを見回した。ゴーレムが動きを止め、森からは木々のざわめきや鳥の声以外の何も聞こえない。

「そういえば、『弓と矢』は?」
 ミス・ロングビルが尋ねる。

「あ、それならここに。」
 康一はゴーレムの土の中から掘り出した矢を取り出してみせた。足下にある弓も拾って、ロングビルに渡す。

「ああ、よかった・・・。」

 ほっとするロングビルに、杖を拾ったルイズが言う。
「でも、その『弓と矢』は何の魔力もないと思うわ。ゴーレムに撃っても全然効果がなかったもの。」

「いや・・・」
 康一は矢の不思議な文様を見ながら言う。

「それはそうやって使うものじゃないんだ。」
「え!?」
「コーイチさん。この『弓と矢』の使い方を知っているのですか!?」
 康一は頷いた。

「ええ。まさかとは思っていました。この世界にあの『弓と矢』があるわけがないと・・・。」
「でも、間違いありません。それはぼくの知るあの『弓と矢』です。それと同じものがぼくにスタンド能力を与えたんです。」

 ロングビルはごくりと生唾を飲み込んだ。
「そ、それでその使い方は・・・。」

「それは・・・帰ってからオールド・オスマンと一緒に説明します。みんなにももう知っておいてほしいことだから・・・。」
 ミス・ロングビルは小さくため息をついた。
691S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 12:01:08 ID:EVbULLJd

「・・・・そうですか。それじゃあしょうがないですね。」
 気がつくと、杖を抜いている。数語の詠唱。

 最初に異常に気がついたタバサが杖を構える前に、ミス・ロングビルの詠唱は完了していた。

 あたりの土が盛り上がり、ミス・ロングビル以外の4人の体を拘束する。

「こ、これは!?」
 康一も剣を抜く暇がなかった。

 タバサが珍しく悔しさを滲ませて答える。
「『アース・バインド』土のトライアングル・スペル・・・。」

「そんな!ミス・ロングビルは土のラインのはずでしょ・・・!」
 キュルケが叫ぶ。

 タバサはミス・ロングビルから視線を離さない。
「うかつ・・・。彼女が土くれのフーケだった。」

 ミス・ロングビルがにやりと笑った。大きく手を叩く。

「ブラボー。ブラボー。・・・・と言ったところかね。さすがはシュバリエ、頭の回転が速いねぇ。」
 メガネを取り、斜に構えると、大人しそうな風貌がはぎ取られ、皮肉げなアウトローのそれへと変貌した。
 口調もはすっぱなものへと変わっている。

「ミス・ロングビル!あなたがフーケだったんですか!?」
 康一は裏切られたように思った。彼女は康一がこの世界に来てから最も信頼できる女性の一人だったからだ。

「そうさね。秘宝『弓と矢』を盗み出したはいいが、使い方がわからなくてねぇ。」
「捜索隊を出すなら使い方を知ってるやつが来るだろうと踏んだのに、まさかオールド・オスマンすら使い方を知らないと知ったときはどうしようかと思ったけれど・・・」
 康一を見る。
「まさかあんたが知ってるとは、ついてるねぇ。」

 康一はエコーズで攻撃しようと思った。
 魔法と違って、体が動かなくてもスタンドは動かせる!

 しかし、その前にフーケが釘を刺した。
「おっと、コーイチ。それにそこの風竜も!ちょっとでも妙な動きをしたら、その場で全員殺すからね。さぁ、『弓と矢』について話してもらうよ!」
 きゅいー!シルフィードが鳴くが、タバサを首を横に振った。

 康一は思った。話すわけにはいかない!
 話せば、彼女か、彼女が渡した人間が、虹村形兆や写真の親父と同じことをする!!

 ためらう康一にフーケは目を細めた。
「そんなに悩むなら、話しやすくなるようにしてやろうかねぇ。」


  グググッ!!


 康一以外の三人を締め付ける土の圧力が強くなる。

「いっ・・・・」
 肺から空気を押し出され、そろってヒューヒューとした息を吐くばかりだ。

「わ、わかった。話す!話すから!」

「そうそう。大人しく話せば丸く収まるのさ。安心しな。私はあんたを気に入ってるんだ。話すなら誰も殺しはしない。」
692S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 12:01:51 ID:EVbULLJd

 康一は観念した。
 知っていることを話す。
 自分は日本という国・・・ハルケギニアからすると多分異世界からきたこと。
 矢で胸を貫かれ、スタンド能力に目覚めたこと。
 スタンドはスタンド使いによって一つ一つ同じものはないこと。

「つまり・・・」
 フーケは『弓と矢』に視線を落とした。

「これで私を刺せば、私も「スタンド」が手に入るかもしれないってわけだ。」
 フーケは矢尻を自分の腕に近づけた。

 しかし思いとどまる。
「いや、あのエロジジイはこの矢が平民の手に渡れば、といった。メイジの私が使うのは危険かもしれないね。」

「それよりも、これを使って平民にスタンド使いを増やせば・・・。ふふふ、なるほど。それが世界の滅び、だね。高慢な貴族共が支配する世の中が終わるって訳だ。」 

 やはりそうだ。康一は思った。
 この人は、この矢を自分の欲望のために使おうとしている!!

「しかし・・・」
 フーケは康一の眉間に杖を突きつけた。
「スタンドは実際に見ているからともかく、異世界とはまた突拍子もないねぇ。適当言ってごまかそうっていうんなら・・・」

「証拠はあるよ!ぼくが日本から来たって証拠が!ルイズにはもう見せてる!」
 フーケはうろんな眼差しをルイズに向けた。

 ろくに息もできないルイズは、ただコクコクと頷く。
 康一を拘束していた土の戒めが解けた。

「じゃあ、見せてもらおうか。ゆっくりとだ。ほかの三人はいつでも殺せるってことを忘れるんじゃあないよ。」

 康一は黙って頷いた。
 フーケを刺激しないように、ゆっくりと財布から100円玉を出して、目の高さに掲げてみせる。
「あなたが盗賊なら、これの意味が分かるはずだ。」

 フーケは目を細めた。
 白い輝き。銀貨?いや、感じが違う。鉄でもない・・・。

「こっちに放りな。」

 康一は親指でコインを弾いた。
 コインは弧を描いてフーケに飛んでいく。

 しかし、飛ばした一瞬、緑色の何かが見えた気がした。
 
 直前。とっさにフーケはコインを避けた。

 盗賊の勘。康一は今、何かを企んでいた!
 避けざまに杖を振る。再び土が康一を拘束し、しめつけた。

「妙な動きをするな。と、いったはずだよ。」
 康一を睨みつける。
 康一は何も言わず、黙って圧力に耐えている。
693S.H.I.Tな使い魔32:2009/08/12(水) 12:02:32 ID:EVbULLJd

 フーケはコインを杖でつついてみた。

 コツコツ。

 ・・・何も起こらない。このコインに何か細工をしたのかと思ったんだが・・・私の気のせいか。
 フーケはしゃがんでコインを拾う。

 康一は忌々しげに言う。
「あの吉良吉影のまねごとはしたくなかったんだけど。」
「え?」

 フーケの指が、コインに触れた。

 コインに張り付けられていた「文字」のエネルギーが爆発する!


   ドッゴォォォォォォーーーン!!!!


 反応する間もない。
 至近距離で発生した爆風に、フーケは上空高く吹き飛んだ。
 フーケが吹き飛んだ爆風は、周りにそよ風一つ起こしていなかった。4人の戒めが解かれる。

 自由になった康一はふーっと大きく息をつき、服に付いた土を払った。


「まぁエコーズの場合は文字の『実感』を与えるものだから、吉良吉影のキラークイーンとは少し違うんだけどね。」

694S.H.I.Tな作者:2009/08/12(水) 12:03:25 ID:EVbULLJd
以上になります。
就職活動などで間が空くかもしれませんが、完結させる気ですので気長に待っていただけるとうれしいです。
ではでは
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 13:47:19 ID:lMzrKWIk
くわぁぁぁぁぁ・・・

格好いいじゃねぇか!康一!!

乙!!!

作者様、無理をなさらない範囲で頑張ってくださいね!
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 15:27:51 ID:V2bry3Nw
こ、康一くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!
まさか100円玉でどっごーz_____ん!をやるとは思いもよらなかった
かっこ良かったぜ康一君
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 16:42:18 ID:c9c9Ddgo
康一のひと乙!
しかしたった一つだけ言えば
その戦法を知ってるのは吹っ飛んだ重ちーだけなんだぜ

続き・・・待ってます・・・。
698名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 17:20:02 ID:ZAYqNgk/
更新止まったかとおもったらキター
就活がんばって!応援してるよ!
俺も就活だけど!
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 04:01:40 ID:/SXO8veM
乙うううううう!!
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 13:22:58 ID:tRAwGCu5
その投下、僕は乙を表する!

>>697
「触れたものを爆弾にする」という広い意味で取れば矛盾はしないぜ
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/14(金) 13:48:09 ID:WVZUFo+G
うお、S.H.I.Tきてたww
乙です。次回も頑張ってくださいー
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/14(金) 17:49:18 ID:ZYzt9xxl
【芸能】AV男優の加藤鷹(47)がNHKのバラエティ番組撮影中に3階から転落、意識不明の重体★2
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news7/1240277978/l50
703聖帝様:2009/08/16(日) 22:35:23 ID:d+ZhSLBE
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1250429623/
次スレだッ!
480まで1kb足りないが、もう少しで投下できそうだからおせっかい焼きの聖帝様が立てさせてもらうぜッ!
704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/16(日) 22:48:02 ID:CFUOGFCu
聖帝様乙です。
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/16(日) 22:49:13 ID:+I+fVcGH
さすが
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/16(日) 22:55:11 ID:TRCmQvlq
おや、お久しぶりです
707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/18(火) 01:02:49 ID:BzOZOete
聖帝様、兄貴の続きはまだですかい!?
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/19(水) 21:29:48 ID:kubziXMY
こっちは埋めか?
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/19(水) 23:41:12 ID:Bw90Cvob
じゃあ埋め
710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 20:04:54 ID:8Y4d85FE
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 18:48:58 ID:Yw1oNCl/
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
||__|        | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/        = 完 =

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                   ,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
           从  iヽ_)//  ∠    再  開 !!!!
          .(:():)ノ:://      \____
          、_):::::://(   (ひ
          )::::/∠Λ てノし)'     ,.-―-、   _
______人/ :/´Д`)::   (     _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::(  .n,.-っ⌒    (  ノlll゚∀゚) .(゚Д゚llソ |
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r'        ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
||__|  (::()ノ∴:・/|::| ./:/         /   ̄/__ヽ__/
|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/      ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/      .( ヽ     ::|
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_     /⌒二L_    |
────────       ー'     >ー--'

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        巛ノi
        ノ ノ                  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ノ')/ノ_ら      ∧_∧       | いきなり出てくんな!!
      、)/:./、      ( ´Д`)      | ビックリしたぞゴラァ!!!
     )/:./.:.(,. ノ)    `';~"`'~,.       \   ________
     \\:..Y:.(  ・ ''    :,   ,. -―- 、|/
_____ 从\、,. ,; .,、∴';. ・  ( _ノ~ヾ、ヽ
|__|_ _(_:..)ヽ:∴:@)       ノ(゚Д゚ #) )
|_|__|_人):|:・:::∵ヽノ)    (_(⌒ヽ''" `ー'
||__|  (::()ノ∴:・/|::|( \    \ \) )        _
|_|_| 从.从从:/ |__|::|ノ   \  ミ`;^ヾ,)∃        < へヽ\
|__|| 从人人从 ..| /:/ _,,,... -‐'''"~   /ー`⌒ヽ、  (( (゚Д゚llソ |
|_|_|///ヽヾ\ ./:/ _ \        /     /T;)   /~  ̄__ イ
─────── ノ (,    \/__/__,ノ|__`つ  ヽ__/
             ´⌒ソノ`

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______/   \____
|__|__|__/ /  ヽヽ,|__|
|_|__|___い 、  , ,ソ_|_|
|__|___/ ̄`^⌒´ ̄\_.|     .l´~ ̄ ̄ ̄`.lヽ
|_|_|  |         |_|    / ⌒ ⌒ ⌒ .| !
||__| 从ヽ-i´ ,_ ,_ 'i-'"_|   / ___ _ _ ___/,イ
|_|_|从イ/´:::::::::::::::::::::::`i、_|  / ̄       /i.|
|__||从/:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,._| ~||~~~~~~~~~~~~ ´||
|_|_| ,,!;;;;;;;;;i⌒i;;;;;;;i⌒i;;;;;;;;;;;!,|
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 11:57:28 ID:ptSPmQaG
             ___,,,,,..... -一ァ
         / ̄;;;´;;、;;;ヾ;;;, -──--、,!
.        /'´|;;;;,、;;;;;;;;;;/      ,!
.         /:.:.:.レ´:.ヾ;;;;;;i   断  だ ,!
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ;i  る  が ,!
.      /:.;.イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..ヽ       ,!
.       /レ' ;|:.:.:.:.:.:.:,:ィ:.:.:.:〉 __,.,!
     /-、ヽ,:|:.:.:,/ /:.:.://.:,:ィ:.:.:.,!
      /'ヽ、ヾi ゙´.:   /__;:;:-'"´ ,;|:.:.:.,!
.    /ゝ-`';:/ .:〈ニ=-=ニ二 ̄ヽレ',!
   /::::;;;;;/  ' ,, ニ`ー-,、__\〉ィ,!
.   /;:::::/ ::.    ::.,,\_ゞ;'> 〈;,!
  /i!:::::iヾ-'、::..       '';~ ,;:'/,!
. /;;;i!fi´l_、,.`        .: ,;:'  ,!
/;;;;;i' ('ー、ヽ      ..: ,;:''   ,!
ヽ、jゝ、`ヾ:、゙、   ,..:'.:'"    .: ,!
   ``ヽ.、_ ¨`  ,:'      (_r:,!
       ``ヽ.、..    ノr;ソ~,!
             ``ヾ、 / 7,!
                 ``ヽ,!
713名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 12:54:37 ID:rNvBf9Zy
    , -──- 、
 /::::::::::::::    ::\
/:::::::::::        ::∨ト、        こいつはくせえッー!
::::::::::          :: レ'ノ
::::::::::::::        ::: レ'⌒ヽ     ゲロ以下のにおいが
ヽ-───i===i─-}ァ'  ノ    プンプンするぜッ─────ッ!!
、` ー-===-゚---゚==‐' /
、`¨フ>;''ニニゞ,;アニニY´; )
_、;;)¨´,ニ=゚='" ,.ヘ=゚:く {ッリ'
i1(リ        r;:ドヽ K
ヾ=、     に二ニヽ `|; )
_,ノ| i.     {⌒゙'^ヽ.{  i;; ヽ
_,ノ!i ヽ、  ヾ二ニソ ,';;;  ;;冫=:、
_;(|.!.  \   ‐っ /!;;; ;;/ 、''"\__  
'ト、\.   ,ゝ、.二..イリ\ / ー1\'ニゝヽ_
:ヽ  `ニア   ,. -┴‐‐'  ー-:l :=ゞ=ソ」=ヽ
714名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 13:27:38 ID:dfyTxgO/
そろそろ大統領が召喚されるに違いない
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 18:39:00 ID:z8yy78e2
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                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 22:36:01 ID:decAMrZB
>>713
スピードワゴンさん、酒井法子にそれ何回言いました?
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 00:44:15 ID:+vRT3t2F
>>716
お前は今まで食べたパンの数を覚えているのかとディオ様が
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 01:00:47 ID:XhLoV6T/
>>717
聞きたいかね?昨日までの時点では、九万九千八百二十二個だ
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 05:48:53 ID:ySyNn/4I
       ,,,..........、--、_ ___,〃    ヽ、_=_ ー-、       ヽ,
       ~ ̄``''ー-;、  、、、  冫  - 、    `"''‐、`'ヽ     '"''''''''i  ,
      , -‐'ヽ_,.--'~ ,,.=M`''、''ー─''"~``''ー、  、 、_ ゙i, ~    , .r‐‐-`‐"
     ´ ̄j、_,_,ヾ,-‐'",. ,r-、 `'‐''''''''二、 ,_  二_ヽッ ヾ  '‐:;  | 'r/ /l
  ____ ,.--ヽ--、_i:::::::)  r''     ヽヽ,.......ゝ   ヾ  、ヾ  i ,..`' ノ
‐''~,   i'!,  ヽ、 i、 i,  ``'''i i  'r''::、  /___ ``'''ヽ i!ヽ二 ヽ ,//`;
‐、、\、_ヽ,``i ヽ、,-'=ニ,''、ー',',~,,i,  i゙:::::::::l ;  r:':::::i  l  、  ., l li r// /,.....、、
ヾ:::`i:::::::'''``''ヽ (  ,  `''+'r_‐-、 ヾ-‐,'゙ i  l;:::::::;!  ト、_ `ー'゙  ノ /"´:::::::::/
::::::::::l:::::::::::::::ヽ:::i i,'-ヽ、_ iノ ``''ー; -‐'' ,.入 _゙'_'ノ/ 丿`i , ‐'" /:::::::::::::/
--、::lヽ;_;:::::::l.::l l  i `''゙','ーr=ニ~,-─''~r'''´,.. --_ュ-:、';_/  /r'~:::::::::::/
-、,ヽ!   ''ー、ヾ、 iー-ゝ、, i__/   ヽ, / i r '_,.;ェニ゙-‐''゙'^  ,.> __,i/ ̄/::i
  ゙i   ,._. \`´  l i~ `i``''ー=、--'  .l.|´,.:-i;'''。';ァ、_  i ;:/ ,.、`;./:::::|::l,,,.. -‐、
   l,_  ,...ヽi"``''ー亠-ゝ--' 、_丿./....... `'; `‐゙=;ニ;-‐"/'/ .i  i/::::_i::::l:::::::::::::i
`'''''-、 , '゙   ヽ,       l  ,/  :::: /  ´   ` l!゙  ;:< /,r'''ニ、:::::ノ::::::::r'~
ヽ\ 、`'-、_    i  ,..    i゙l, ,ヽ.  __ '  ,、     /'o'''''_,ゝ; l iL,、、、_``´
 \\ヽ i `ヽ、,.ノ /:::ヽ,. ,ノ 'v、'ー-´、´  l゙:::`''‐-、. /``,'j~__l,,,i,,,▽ , ‐'"')
`'‐、ヽヽ i l|. | r-、i゙:::::::::i ヽ ,..  i, `''''' 、;   i::::::::::::::i‐'゙/  r      i /, -‐‐
ヽ、__`'‐、 i l/ .|;::::::``i l;:::::'゙:::i  i'ー-‐'    )::::.::::::l,'~ / l      /、/::::::::::::
'"´::::::\`'‐l /:::::ヽ;::::l; l, ::::i、  `'‐、_,,. -‐/,. ---;'`ゝ,   `r- 、,,.. /'/:::::::::../
:::::::::::::::::\/ 〉、_:::::::::y'xxxi :/| ヽ   | <  / i /´;ヘ;;/r,.'~ ̄``ヽ, ,,..!=ニ,二ニ彡/
`'‐、_,... -;‐ヽヽ::::`''ー:lxxxxl/::|  !,  | ヽ/,,,,,.. l_ヽ,::ヽ l l.      i  /:::::::::::::::ヽ、
,/ r‐‐’、  〉、:::::::;lxxr'"::::/ヾ `'ー'ヽ i l r- 、`/::::\iヽ,     ノ ./_::::::::::::::::/
  /、__ノ. i l::::``,'‐'`|:::::;: '゙    L__,. ┴'、i   `l:::::::::/、、`''ー─;'   _ヽ``'''''
../r'"i    | Li,~::::::l '::ノ _   .彡 l /``ヽ、、_ノヽ,/  ヽ`ヽ. l, ;;; =' ‐'''''`─、
.l/ ,ヽ.○  |  i:::::r''''' r,'- .,_``'、‐、__i i   ヽ`ヽ,   ノ ::, \l        \
l  ̄ ○  l   ー' ヽ ''-、_ i    ``ヾ 、_ノ  iヾ 、 ゙_ , ノ   i    ____ゝ
ヽ o   / ___i_,,,, -;,';' 、_ ノ    .,'`'‐、 / ト-‐‐,-  /|  /       i
. lヽ   / /:::::::::::::::::::::::::i l  ``'''ー-、ノ   '-、    /   /i  |/         /
.| /|''~ i~:::::::, ---、:::::::::ノ/       `ヽ  -‐ ヽ--'   "  ヽノ         /
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 07:20:00 ID:ySyNn/4I
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
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                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
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    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
721名無しさん@お腹いっぱい。
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                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
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