あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part230

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part229
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1241769235/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 00:08:39 ID:wbuyf5lm
一乙
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 00:32:38 ID:J/1S8bhx
乙一
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 00:45:06 ID:oXbajwzV
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 02:02:14 ID:tttf7WS3
このぐらいまで単純化できそうな気がする。

爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会

最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち>>16

爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり

途中飛ばすけど、

 対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 02:26:16 ID:ge2AbtWm
>>1乙
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 03:03:10 ID:R69RAOb3
政木天地
早乙女乱馬
伊藤誠
東方院行人
結城リト
青野月音
ネギ
浦島景太郎
高須竜児
御厨仁
前原圭一
上條当麻
花菱薫
七梨太助
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 17:49:26 ID:RBFHRl/f
サイレントメビウスなついな
デルフ涙目って話題があったけど
剣皇グロスポリナー
魔剣メディウム
剣帝シェッソ

なんだから、デルフの頭にもなんか乗っければいいんでない?
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:08:20 ID:tyf9WDWG
知剣、賢剣、直訳だとどうも締まらねぇな
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:23:02 ID:foLbNjP2
空剣デルフリンガー
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:25:25 ID:+N28gFmK
Xカリバーを召喚して、岩に刺さって接着して抜けなくなったデルフ登場とか
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:38:36 ID:gpHkUHJX
本編のデル公は復活するんだろうか
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:54:04 ID:foLbNjP2
パワーアップも欲しいな、四ヶ国語を操るとか
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:56:08 ID:WEl5yBaH
鍋に入れるといい出汁が取れるとか
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:58:30 ID:4kFXKijx
デルフリンゲストって名前で復活すると思うよ
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 18:58:43 ID:wbuyf5lm
うしのふんと牛乳とデルフを煮て猛牛の剣に
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:09:07 ID:A0eQERBO
デルフ、空気になってたし喋らなくなって剣は元通りじゃね?
昔のこと知ってて物語の都合上邪魔になったんだろ
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:18:40 ID:ZFs7Y3FV
いっそ包丁に打ち直してマルトーに使ってもらえばいい。
というわけでトンベリ召喚。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:20:26 ID:5b1IzaaA
そういえば左手の人は最近どうしてるの?
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:33:37 ID:WnAiEHWv
>>18
ドンペリに見えてしまったw
あの飼い主が来たら厨房が記す事もはばかられる事になるのだろうな…
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:33:50 ID:2gzoiUfS
盾になって復活したら大笑いする。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:39:18 ID:+N28gFmK
ロン・ベルクを召喚すればデルフを打ち直してくれるな。
問題は、そこまで話が進むかだが。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:42:18 ID:RBFHRl/f
脳死状態に至っていなかったため、劇場版で復活するデルフ
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:42:22 ID:tyf9WDWG
「ルイズの剣」にするわけか
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:44:39 ID:QIdTXOBV
日本刀をベースに謎の儀式でデルフ復活だろ。特殊効果は装備者のサイトが忍者にジョブチェンジできる
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:46:45 ID:RBFHRl/f
まあ俺はデルフの正体は実は初代ガンダールヴで、美少女になって戻ってくることを一点賭だがな。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:50:52 ID:bA2kVb+Y
まて、それじゃ性格のきついエルフになってしまうぞ。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:54:14 ID:WEl5yBaH
美少女があのだみ声でしゃべるのかよ
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:55:29 ID:JEUkd9Ae
おっぱいエルフ枠は埋まっているから貧乳エルフで記憶が戻った事でツンツンなデルフか
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:56:11 ID:ZFs7Y3FV
>>23
サイト 「全国の皆さんに、坊主になってお詫びせんといかんな」


ちょっと待て、それじゃ結局デルフ死ぬだろ。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 19:57:32 ID:jYyKKGwi
ソウルキャリバーシリーズだと、ソウルエッジの破片を組み込めば武器だろうが人だろうがすぐに復活するぞ
ただし武器はもれなく魔剣になって、人は記憶を失ったりするけど
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:04:33 ID:jeaDmu5S
>>22
打ち直しに失敗して逆にぼろぼろにしてしまい
包丁で継ぎ足しまくって出来上がったのは長い出刃包丁みたいな剣という流れか
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:12:40 ID:RBFHRl/f
>>30
わからんぞ?
完結編の続編として用意されてる復活編でクローンとして復活しても驚かん。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:14:18 ID:/0pH3VTA
桃太郎伝説から桃太郎を召喚してみたい
でも桃太郎って喋るのは術以外ははいといいえだけなんだよな
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:17:59 ID:foLbNjP2
>>28
美少女が封印されているとバレてはいけないので、声も変えられています。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:20:39 ID:hmCmxO+g
>>34
そこでアニメ版ですよ
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:21:23 ID:foLbNjP2
何故か桃太子さんですよ
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:22:56 ID:Gtr9g4BO
かってに桃天使とな?
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:32:29 ID:BPFYEQ/G
>>28
夜一さんという、姿が変われば声も変わる人(猫?)がいてだな
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:42:06 ID:7edXTbji
生物の場合、姿が変われば声帯の大きさや形も変わるだろうから、むしろ声が変わらない方が不自然。
デルフは―――そういや、あれはどこから、どういう原理で声を出してんだ?

いずれにせよ、音を発生させるためには空気を振動させる必要があり、
空気を振動させるには、「何か」を振動させてそれを空気に伝えないといけないわけだけど、
振動する「何か」は、その大きさや形、材質で振動の成分は変化する。
さらに、全体の形が変われば、「音」が外に出る際にも影響が生まれる。
となれば、形が変われば声も変化すると考えた方が自然。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:49:28 ID:mI9s9Css
>>40
ここはお前の日記帳じゃねえんだ
チラシの裏にでも書いてろ
な!
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:50:31 ID:mAcXR0mP
>>34
THEモモタロウのモンガーとかも無法ぶりがいいやもしれん
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:51:33 ID:I4s95UHP
よく分からんから、ちょっとガンダムで例えてくれ
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:55:23 ID:QIdTXOBV
デル子「べ、べつにあんたが心配で戻ってきたんじゃないからね!・・・・・・ああああ、相棒////」


>>40
サイトがハルケ語で意思疎通できるように、魔法パワーで直接意思伝達をしていると思われる
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:57:06 ID:ZQxUJOZk
>>38
何故か主人公とお狗を召喚して二人の雰囲気に毒されるガリア親子
猿吉召喚してほのぼの生活してるテファ
雉女に調教される教皇の姿が想像されたんだが
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:58:16 ID:D8cyPep2
>>42
あの何でもアリのギャグ属性無敵生物は卑怯だろw
モモちん召還は割といいかも。
ベビーフェイスのレスラーが凶器持つのかってのはあるが。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 20:59:15 ID:gpHkUHJX
>>43
デルフ「やっぱ俺って不可能を可能に……!」(爆散)

デルフ「記憶は無くなったが生きてたぜ」
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:06:16 ID:I4s95UHP
>>47
ありがとう。
でもガンダム見たこと無いから、やっぱり分からんなぁ
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:06:16 ID:cMwWHSfz
>>36

変化の際に全裸になるルイズやテファですか

そして旅に出てもなぜかちょくちょく合流するアンアン
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:08:25 ID:A9G3hRuo
突然だけど、テイルズオブヴェスペリアのおっさんことレイヴンことシュヴァーンが召喚されたらどうなるだろう?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:10:12 ID:a+wjdltg
人類は滅亡する
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:20:13 ID:ZFs7Y3FV
>>33
つまり、
デルフリンガー2520
新デルフリンガー
大デルフリンガー零号

はよ復活編を作れっつーの!
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:20:43 ID:CsW7m4yV
GUN OF ZEROが最終話まで一気に更新されたけど
一部編集がミスってる
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:25:17 ID:P9OKWHpj
GIFT書いてる作者いないの?あの黒ルイズめちゃハマったんだが・・・
もう書かないのかな?
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:34:56 ID:pCc0fHaG
黒ルイズ系は総じて出来がいい気がするのは気のせいだろうか


・・・ってこの前も同じような流れを見た気が(ry
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:35:06 ID:SrdO9+Ow
主人公(の一人が)未だに出て来てない某SSの作者さん元気かな…
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:36:12 ID:TMODzE8y
進研ゼミの申込書を召喚
似たようなこと考えた奴はいるはず

58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:39:19 ID:RBFHRl/f
>>52
そしてデルフリンガーパチンコ化
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:39:50 ID:QIdTXOBV
>>57
進研ゼミでルイズの成績もうなぎのぼりですねw
60saga:2009/05/16(土) 21:41:46 ID:+tDTTeTn
>>32
どこのカタストロフですか
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:42:31 ID:P9OKWHpj
>>55
前スレでそんな流れがあったなww
62sage:2009/05/16(土) 21:42:53 ID:+tDTTeTn
>>60
間違えました
すいません
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:43:42 ID:GiuenCKf
>>46
>武器
つB・モモタロウマスク
つジェットモンガロン
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:45:24 ID:KhKdJGUe
オーフェンのディープドラゴン(幼体)かミストドラゴンをルイズが召喚したら
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:48:48 ID:yX25GsUx
桃太郎伝説、ただしアニメ版から桃太郎召喚。
一期と二期、それぞれに鎧の特性が違うから……使い分けとか面白いかも?
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:49:28 ID:hmCmxO+g
ディープドラゴンはまだしもミストドラゴンなんてルイズに制御できるんだろうか
ぶっちゃけあの強大な魔術すらオマケにすぎないよな、あの無敵生物
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:49:53 ID:DMZP/Gp4
>>63
おい!
つ たこは哺乳類だもんキック
68世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:51:13 ID:4kFXKijx
構わなければ55分から投下を開始させていただきますー。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 21:53:58 ID:CsW7m4yV
当時設定が無かっただけかもしれんが
オーフェンの言ってる事が真実なら
チャーリーには黒魔術の三大奥義(物質崩壊、意味消滅、波動停滞)すら通じないかしなぁ
同じ無敵生物なら、地人兄弟呼んだ方が面白いんじゃないか?
70世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:55:05 ID:4kFXKijx
 
「君が軽率に香水の壜なんかを拾い上げたおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「知るか馬鹿者、二股なんぞかけた貴様が全面的に悪い。さっさと謝って来い」

ギーシュの八つ当たりがばっさりと斬り捨てられたことで、ギャラリーから笑いが起こる。
彼を揶揄する言葉も投げかけられ始め、ギーシュの顔は徐々に赤くなっていった。

「……何やってんだお前」
「おお、暁にルイズ。お前たちもこの小僧に何か言ってやれ」

暁もルイズも、どうせボーが変なことをやったのだろうと考えていた。
そしてどうにかこの場をおさめようと考えていたのだが、

「そりゃお前が悪いぜ、お坊ちゃん」
「それはあんたが悪いわ、ギーシュ」

二人はがっくりと肩を落とした。
話を聞くとボーは被害者だった上、原因が予想以上に馬鹿馬鹿しかった。

まず先ほどの修羅場の原因はギーシュの二股である。
なんでもポケットから恋人その一であるモンモランシー謹製の香水が落ち、それをボーが拾って渡したところ恋人その二に見咎められたらしい。
恋人その二――ケティという名の下級生である――からは頬を思いっきり引っ叩かれ、
さらにその光景を見たモンモランシーからは散々罵られた挙句ワインを一本分頭からかけられた。
馬鹿である。だがこのギーシュと言う少年、さらに輪をかけて馬鹿な行動に出る。
何を思ったかその原因は全てボーが香水を拾ったことにあるとか言い出したのだ。
君のせいで二人のレディの名誉が傷ついた、と。
……ワインを掛けられたせいで酔ったのだろうか、そう思えるくらいには酷い八つ当たりである。

「僕は彼から香水の壜を渡されたとき、知らないフリをしたのだよ?話をあわせるくらいの機転があったっていいじゃないか」
「何故貴様の不実に手を貸さねばならん?」

ボーの表情は不機嫌そのものである。
まぁこの場合当然だろう。落し物を拾ったらそれが原因で持ち主の二股がばれるなど、誰が予想できるというのか。
ギーシュは忌々しげにボーを眺めていたが、何かに気付いたのかその表情が嘲るものに変化した。

「ああ、そういえば彼はゼロのルイズが呼び出した平民だったね。なるほど、頭の悪そうな顔をしている」
「……どういう意味かしら?ギーシュ」

そのままの意味さ、とギーシュが続ける。

「知性のカケラも感じない野蛮人を二人も召喚するなんて君らしいと思ってね。
 野蛮人に貴族並みの機転を期待した僕が間違っていたよ。もう良いから行きたまえ」

反論しようとしたルイズを暁が制する。
何故?といった表情で見つめられたので、静かにしているよう促す。
どうやらこのギーシュとか言う少年はどうしても地雷原を歩きたいらしい。
そういう性格なのか、馬鹿なのか、あるいはその両方か。
いずれにせよどうやって煽ろうか、そればかりを考えていた暁にとっては理想的な流れであった。
71世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:56:35 ID:4kFXKijx
「貴様には品性というものがないな、小僧」

低く、静かな声だった。

「貴様程度でも貴族を名乗れるのであれば、この世界の貴族の質が知れるというものだ」

既に食堂からはあらゆる音が消えている。
食堂にいる人間が皆、様々な感情を抱えながらボーとギーシュの方を見ていた。

「どういう意味かな……?」

先程のルイズと同じ質問をギーシュが投げかける。

「そのままの意味だ」

ボーの返答もまた、同じものである。

「二股などと言う不貞を働き、あまつさえ自らの過失を他人のせいにするような無様な男でも人の上に立てるのだな」

ボーの表情に変化はない、相変わらずの難しい顔である。
対するギーシュの顔色はみるみる赤く染まっていく。
羞恥、憎悪、そんなネガティブな感情が彼の顔には見て取ることができた。

「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「貴族が社会の範となる様に振る舞うべきは義務であろう、特権ばかり振りかざすなど猿にも劣る」

その言葉に嘲りの色はなく、むしろどこか哀れみや失望を含んだような声であった。
おそらくはそれがギーシュにとっては我慢ならなかったのだろう。
ゆっくりと椅子から立ち上がると、彼はボーを睨みつけた。

「よかろう、君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」

誰かが息を呑んだ音が聞こえた。

「女子供と喧嘩をする趣味はない」
「怖気づいたのかい?まぁ別に構わないけどね、それが平民として当然の――」
「だが、間違った方向に歩みを進めようとする子供を躾けてやるのは大人の務めだ」

余裕の笑みを浮かべようとしていたギーシュの顔が見事に凍る。
ボーはただ静かに彼を眺めていた。

「ヴェストリの広場で待っている、せいぜい逃げないことだ」

ギーシュは身を翻し、食堂を出て行った。

誰かが安堵のため息を吐いた音が聞こえ、食堂にようやく音が帰ってきた

72世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:57:19 ID:4kFXKijx
 
「ア、アカツキさん!ボーさんを止めてください!」

真っ青な顔でシエスタが駆け寄ってくる。
その顔に浮かんでいるのは明らかな恐怖であった。
苦笑しつつルイズを見ると、彼女もまた不安そうな表情を浮かべていた。
暁としてはボーが負けるとは思っていない。
ボーを知っている人間で、人間相手に一対一で彼が負ける姿を想像することができる者がいたなら、暁はその人物を全力で尊敬しただろう。
無論ボーに勝ちうる人間も存在するが、そんなものは例外中の例外である。
負けてくれた方がこの先楽しみが増える、そんな邪な希望もあるにはあるが期待薄だろう。
それくらいボーという男は規格外なのである。

「お前たち、まさか私が負けるとでも思っているのか」

若干ふてくされた表情でボーがこちらを見ている。
やはりというかなんというか、この男も負けるということは考えていない顔であった。
大人気ないといえば大人気ない。

「いいかルイズ、シエスタ。私はボー・ブランシェ、世界最強の男だ」
「……さっきは世界最強コンビって言ってなかった?」
「細かいことは気にするな」

細かいのか?その場にいた全員がそう思った。

「私があんな小僧に負けると思われるのは心外だぞ」
「メイジに平民は絶対に勝てないのよ、それがこっちの世界の常識なの」

シエスタがコクコクと頷き、同意する。
この世界の常識とやらはボーのように明らかに普通ではない人間にも適応されるらしい。
例え平民でも戦い慣れていれば学生程度には勝てそうなものだが、
そういう発想が無いのは戦いを知らない貴族のご息女やメイドだからか。
73世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:58:04 ID:4kFXKijx
「お前じゃ勝てないってよ。なんだったら代わってやろうか?」
「暁!貴様までそういうことを言うか!」

ボーという男がこれで怖気づいて謝りに行ったらそれはそれで面白い。
ただ彼はそんなことはしないだろう。
戦う前から戦うことを放棄するなど彼の美学、いや生き様に反することだ。
そもそもこのボー・ブランシェという男が怖気づくところなど想像できないのだが。

「んじゃー、せいぜいあのお坊ちゃんに世の中の厳しさを教えてやれよ」

ルイズとシエスタの視線が暁に刺さる。
何を煽っているんだ、そんなことを言いたそうな目だった。

「ふん、言われるまでもない!」

いかにも憤慨した様子でボーがずかずかと食堂を出て行く。
あとには暁とカタカタ震えるシエスタ、そして額に青筋の浮いたルイズが残される。

「あんた何煽ってるのよ!ボーが大怪我してもいいの!?」

ルイズが顔を真っ赤にして吼える。

「お嬢さん、ボーが心配なのか?」

問い掛けた暁の表情は、あからさまにルイズを気遣っていた。何か悪いものでも食ったのかと。
正直言ってこの少女がボーを心配して怒っているという現状が意外だった。
そういう性格ではないと思い込んでいたのだが、どういう心境の変化だろうか。

「んなッ!?ちちち違うわよ!そんなわけないじゃない!」
「そんなに心配しなくてもあいつなら大丈夫だ」

図星を突かれたのが恥ずかしいのか、ルイズが慌てふためく。
見ていて飽きない子供だ、と暁は思った。

「面白いものが見れると思うぜ」

不敵な笑みをルイズとシエスタに向ける。
ボーが相対するのはギーシュという少年ではなくこの世界の常識。なんと楽しそうな対戦相手か。
そしてボー・ブランシェという男なら難なくそれを超えてしまうだろう。
そんな予感が暁にはある、それは確信に近いものだ。
ルイズとシエスタは彼の真意を掴みかねているのか、怪訝な表情を浮かべていた。

「んじゃ、俺たちも行こうか」

ぽんと少女たちの肩を叩き、暁も食堂の出口へと向かう。
ルイズたちはしばらくその背中を微妙な表情で眺めていたが、意を決したように暁を追った。


「暁、なんちゃら広場と言うのはどこにある」

食堂を出るとそこには息巻いて出て行ったはずのボーが立っていた。

「聞いてから行け。そもそも名前を覚えろ」

台無しである。
尚、当然ながら面白いこととはこれではない。

74世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:59:07 ID:4kFXKijx
 
「諸君!決闘だ!」

魔法学院敷地内の『風』と『火』の塔に挟まれた中庭、ヴェストリ広場と呼ばれる場所にギーシュの声が響く。
その声に応じるように周囲のギャラリーからもまた歓声が上がる。

普段あまり日の差さない薄暗い場所なのだが、広場は生徒たちで溢れ返っていた。
目的はもちろんギーシュとボーの決闘である。

「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」

ギーシュが歌うように言い放つ。
その表情からは既に先程までの強い感情は消え、余裕が覗いていた。

「何故逃げねばならん」

対するボーは相変わらず憮然とした表情を浮かべている。
ちなみに若干不貞腐れているように見えるのは気のせいではない。

そんなボーを鼻で笑い、ギーシュが手に持った薔薇を振るった。

「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」

花びらが一枚、宙を舞う。
そしてそれは大地に落ちる前に、一体の人形に変化した。

甲冑を身にまとった女戦士の形をした人形――ゴーレムである。
その体は、何かしらの金属でできているようだった。

「私は一向に構わん」

ボーの態度は変わらない。
腕を組み、仁王立ちしたままゴーレムとその隣にいるギーシュを静かに見つめていた。
その態度を虚勢と取ったか、ギーシュの顔に浮かんだ余裕が濃さを増す。

「僕の二つ名は『青銅』、青銅のギーシュだ。従って青銅のゴーレム、『ワルキューレ』が君の相手をしよう!」

その言葉と同時、ワルキューレと呼ばれたゴーレムがボーに向かって突進を開始する。
それを確認すると、ボーはゆっくりと構えを取った。

「世界最強の男、ボー・ブランシェだ!」

そう叫び、ボーもまたワルキューレに向かい、地を蹴った。
75世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 21:59:49 ID:4kFXKijx
ゴーレムに向かって何の得物も持たない人間が突貫する。
それはハルケギニアに生きる人間ならば誰しもが失笑する光景である。
実際、この場にいたほとんどの人間が落胆し、失笑した。
『馬鹿が一人大怪我するだけか、つまらない』と。

暁巌もまた、その顔に笑みを浮かべていた。
だがそれは楽しげな笑みであった、失笑の類では断じてない。
そして彼は横で目を逸らそうとするルイズの頭の上にポンと手を置き、言った。

「目を逸らすな、お嬢さんには見届ける義務がある」

何か言いたそうな表情でルイズが暁を見たが、彼は無視して視線をボーの方へと戻した。


ワルキューレが拳を振り上げる。
それでもなお、ボーは突進を止めない。
愚直に、ただ一直線にワルキューレへと向かっていく。
そしてワルキューレの拳がボーを捉えようとした刹那――彼の姿がワルキューレの眼前から『消えた』。

プンッ、という虫の羽音によく似た音がした。
それはごくごく小さな音であり、大多数の野次馬はワルキューレが拳を振り抜いた音に邪魔され、その音を聞き逃す。
その音を耳にした人間はわずかに二人のみ。
暁が喉の奥で笑い、それまで本に目を落としていた青髪の少女が顔をあげた時、
ボー・ブランシェはワルキューレの『背後』で右足を振り上げていた。

何かがひしゃげる音が広場に響く。
金属でできた壁に大砲の弾が直撃したらこんな音が出るかもしれない、そんな歪な音だった。
ボーの足裏がワルキューレの腰にめり込み、ワルキューレが派手にのけぞる。
そして、蹴り足が半ばまで伸ばされた瞬間、

「爆裂粉砕拳ッッッッ!!」

怒号とともにボーが両腕を振るった。
繰り出された拳は一撃一撃があまりにも重く、疾い。
そんな鉄拳が、右足が伸びきるまでのほんの数瞬の間に何発も繰り出され、その全てが的確にワルキューレを捉えていた。
刹那の後、ようやく連打という名の暴風が止み、砲弾の如き右足が振り抜かれる。

重力の鎖を無理矢理引き千切られたワルキューレが、景気よく吹き飛んだ。

76世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:00:33 ID:4kFXKijx
 
「ミス・ヴァリエールが召喚したのは『ガンダールヴ』です!
 これが大事じゃなくてなんなんですか!オールド・オスマン!」

同時刻、トリスティン魔法学院学院長室。
そこではオールド・オスマンと呼ばれた仙人のような見た目の老人が、顔を真っ赤にしたコルベールから何事か力説されていた。

春の召喚の儀式でルイズが平民を二人も――それも片方は瀕死だった――召喚してしまったらしい。
そのうち片方と契約する運びになったわけだが、
その際に浮かび上がったルーンが始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』のものと酷似している、ということだった。

オスマンはそのルーン文字のスケッチをじっと眺めていた。

「ふむ、確かによく似ておる」

その形状は確かに『ガンダールヴ』のルーンとよく似ているように思えた。
しかし――とオスマンは続ける。

「それだけでそう決め付けるのは早計じゃろう」

『ガンダールヴ』は六千年前に始祖ブリミルに使役されていた使い魔であり、いかんせん情報が少なすぎる。
伝えられているルーンの形状とて正確かどうかわからないのだ。
判断するのはもう少し材料が揃ってからでも遅くはないだろう。オスマンはそう心中で結論付けた。

そのとき、学院長室のドアがノックされた。

「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン」

扉の向こうからオスマンの秘書であるミス・ロングビルの声がした。
77世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:01:19 ID:4kFXKijx
「なんじゃ?」
「実は・・…」

ロングビル曰く、ヴェストリ広場で決闘をしている生徒がいるということだった。
しかもそれを止めようにも生徒たちに阻まれ、教師は近付くこともできないらしい。
仕方が無いので決闘を止めるために秘宝である『眠りの鐘』を使用させてほしい、というわけである。
オスマンはがっくりと肩を落としため息を吐いた。
禁止されている決闘を行おうとしている生徒たちにも困ったものだが、
それ以上に「現場に近づけないから秘宝を使わせてほしい」と言ってのける教師陣が情けないことこの上ない。
たかが子供の喧嘩を止めるために秘宝を使ってられるか、それくらい自分たちで止めろと言いたかった。

「はぁ……で、誰が暴れておるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン」
「あのグラモンとこの馬鹿息子か」

ギーシュの父は色の道ではかなりの剛の者である。
そしてその才能は見事に息子にも受け継がれており、ギーシュも父同様、下手するとそれ以上の女好きであった。
おおかた決闘の原因は女の取り合いだろう、アホらしいことこの上ない。

「で、相手は誰じゃ?」
「それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です」

オスマンとコルベールは顔を見合わせた。
噂をすれば何とやら、である。

「ふむ、『眠りの鐘』はいざとなったら私が使用するのでもう少し様子を見るよう伝えなさい」
「わかりました」

ミス・ロングビルが去っていく音が聞こえた。
オスマンはコルベールと頷き合うと、壁にかかった大きな鏡に向かい杖を振るう。
鏡が映し出したのは生徒で埋め尽くされるヴェストリ広場、そして大男が金属製のゴーレムを吹き飛ばした瞬間であった。

78世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:02:02 ID:4kFXKijx
 
広場に集まった生徒たちはその光景を呆然と眺めていた。

如何なる力が加えられたというのか、金属から造り出された重量のあるはずのゴーレムの身体が大地から切り離され、
そのまま地面スレスレを滑るように飛んでいた。
ゴシャ、という鈍い音とともにワルキューレが地面に叩きつけられる。だがそれでも止まらない。
おそらくは衝撃で壊れたのだろう、いくつかのパーツがワルキューレの身体から外れ、周囲に撒き散らされた。
地面との衝突で勢いが幾分削り取られ、その軌跡は緩やかな放物線へと変化する。
そこでようやく予想進路にいた生徒たちはこのままでは自分たちの方に突っ込んでくることを理解した。
理解しても彼らは動くことができない、金属製の人型ゴーレムが飛んでくるなどという光景はあまりに彼らにとって現実味がなさすぎた。
そんな生徒たちの眼前、距離にして約1メイルにワルキューレは着弾し、ようやくその動きを止めた。
尚、その瞬間に飛び出した部品を顔面に食らい、最前列にいた小太りの少年が気絶したことを付け加えておく。

「おいボー。てめぇ吹っ飛ばすならもう少し加減するか方向考えろ」
「すまん、気をつける」

誰かがそんなことを言った。
おそらくこの広場で今現在まともに脳が働いているのは、今言葉を発した二人だけだろう。
その他の者たちは皆、ワルキューレを吹き飛ばした人物か『数秒前までワルキューレだった金属のカタマリ』を呆然と見つめていた。
金属塊は所々パーツが欠落し、残っているパーツも盛大に歪み、背中であったと思しき場所は何箇所も陥没している。
これだけの破壊に晒されて形が残っているかどうかはまた別の話だが、これが生身の人間だったら見事な惨殺死体である。
皆、頭が混乱していた。
一体何をどうしたら素手でこんな破壊の力を行使できるのか、まったく理解出来なかった。

「言い忘れたが小僧、魔法を使っても何しても構わんが私が勝ったら一発殴らせろ」

何か、死刑宣告に近い言葉が発されたような気がした。

79世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:02:44 ID:4kFXKijx
 
ギーシュ・ド・グラモンもまた、その思考が微妙に凍り付いている者の一人である。
何か言わなくてはならないし、何か行動を起こさないとならない状況のような気はするものの、なにもできない。
ただ、一つだけ確かなことがあった。
貴族が平民に劣る、そんなことは断じて認められないということ。
それは小さな貴族である彼なりの矜持だった。

「す、少しはやるようじゃないか」

精神力を総動員して言葉を紡ぎ出す。
若干負け惜しみのように聞こえるがそんな細かいことを気にしている余裕はない。
杖を振るい、六体のゴーレムを作り出す。
これが自分の出し得る最大兵力であると考えると、ギーシュはとてつもなく不安になった。
素手でゴーレムを吹き飛ばしておいて涼しい顔をしている人間らしき何か相手に、果たしてこれで足りるのだろうか。
だが彼に選択肢はないに等しかった。
自分から挑んだ決闘で相手を畏れて許しを請うなどという無様な真似は、彼にはとてもできないことだったから。

「行けぇ!ワルキューレ!」

畏れを振りはらわんと、力の限り叫ぶ。
六体のワルキューレがボーを取り囲み、踊りかかった。

「ふんッ!」

それに応えるかのようにボーが跳躍する。その先には一体のワルキューレ。
空中で二発、『ジャブです』といわんばかりの速度で右足の蹴りが放たれる。
再び金属のひしゃげる音が響き、顔面と胸を陥没させたワルキューレがそのまま後ろへと倒れこんだ。

着地と同時、ボーの姿が掻き消える。
そして、何か硬いものと硬いものがぶつかり合う音。
見れば、二体目のワルキューレが地面に叩きつけられていた。
ギーシュは目の前で何が起こっているのかまるで理解が出来なかった。
三体目が吹き飛ぶ。
攻撃も防御もまったく間に合わない、そもそもボーの姿を目で捉えることすら出来ないのだ。
80世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:03:28 ID:4kFXKijx
ボーは感触を確かめるように動き回り、ワルキューレに打撃を加えていく。
三発ほど拳を突き入れた辺りで四体目のワルキューレが宙を舞った。
動きの切れは本調子とは言い難く、せいぜい6・7割程度でしかない。
それでも昨日瀕死の重傷を負っていたことを考えると及第点は与えられるだろう。
この世界の医療技術、すなわち魔法には頭が下がる思いであった。
あのままだとおそらく自分は死んでいただろうとボーは考えている。
持ち前の精神力でなんとか意識を繋ぎ止めてはいたものの、何かが自分の身体から抜け出していこうとしていた実感はあった。
アレがおそらく魂とか命とか、そういったものなのだろう。
そんなことを考えながらも動きは止めず、五体目の背後に回りこみ全力の蹴りを後頭部に見舞う。
ワルキューレはその場で縦に一回転し、大地に突っ伏した。

「うぬおおおおおおおおお!!」

一度その場に立ち止まり、吼える。
そして最後のワルキューレに向かい、大地を全力で蹴った。
距離は一瞬で詰まり、ボーは腕を振りかぶった。

「分身烈風拳ッ!!」

叫びとともに放たれた技はあまりにも異質だった。
ワルキューレを取り囲み動き回る『四人の』ボー・ブランシェ。
一瞬だけ存在した彼らがほとんど同時に放った拳がワルキューレにめり込む。
グシャ、という鈍い音。
合計で四発の拳をそれぞれ別の方向から食らったワルキューレは、その場にゆっくりと崩れ落ちた。

「これで終わりか?小僧」

挑発するでもなく、勝ち誇るでもなく、ただ確認するような声音。
逆にそれによって敗北という事実を突きつけられ、ギーシュはその場にへなへなと座り込んだ。

「ま、参った」

彼にはもう戦意などという物は無い。
ボーはその様子に満足したのか、ゆっくりとギーシュの方へ歩みを進める。
ギーシュはただそれを呆然と見ていた。
最初は平民と侮った。
メイジである自分が負けるはずは無いと信じていた。
結果、いとも容易く敗北した。
どうしようもない力の差、そしてどうやっても勝てないという現実。

「ひ、一つだけ聞いてもいいかな」
「何だ?」

眼前には大男。
ギーシュが見たこともない鍛え抜かれた、大きな体躯。
冷静になれば何故こんな強そうな男に喧嘩を売ったのだろう、という後悔がこみ上げてくる。

「君は……スクウェアクラスの風メイジかい?」

それはここにいる者たちほぼ全ての抱いた疑問だった。
ボーの動きは『偏在』を多用したものであると仮定すれば辻褄は合う。
だが、そうであると断言するには彼の動きはあまりにも異質だった。
あれだけ『偏在』を出したり消したりするのは精神力の無駄であるし、なにより彼の杖も詠唱した姿も誰も見ていない。
それにメイジであるなら、拳など使わずとも魔法でワルキューレを破壊すればいいだけの話だ。
拳でゴーレムを破壊できるほどに肉体を鍛え上げたスクウェアクラスのメイジなど、誰も見たことも聞いたことも無い。
そもそもゴーレムを素手で破壊する人間というのがありえないのだが。

「スクウェアだかNINTENDOだか知らんが、私はメイジなどではない。お前たちの言うところの平民だ」
「では最後のアレは?あれが『偏在』でないなら何だと言うんだい?」
「分身の術だ」
81世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:04:30 ID:4kFXKijx
 
誰もその言葉の意味を理解することが出来なかった。

「日本の忍者に憧れ、特訓の末編み出した必殺技だ。どうだ、かっこいいだろう」

ボーが誇らしげに胸を張り、さわやかな――いや暑苦しい笑みを浮かべる。
聞いたことが無い単語が先ほどから乱舞しているものの、その『ブンシンノジュツ』というものがすごい技だということは誰もが理解できた。
かっこいいとも思いはするのだが、何故かこのボーという男の前でそれを認めるのは憚られた。

「さて、では約束どおり一発殴るぞ。目を瞑って歯を食いしばれ」

その一言にギャラリーが息を呑む。ギーシュもまた死を覚悟した。
ワルキューレを破壊するような拳で殴られたら死ぬに決まっている。
これまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。
出来るならもう少し生きたい、泣かせてしまったレディたちに謝りたい。
だがそれはもう無理だろう、そんな諦めを心に抱きながらギーシュは目を閉じた。

「ああ、すまないが僕が死んだらブゴッ!」

遺言を口にしている最中に拳骨が脳天に直撃し、ギーシュは思いっきり舌を噛んだ。

「いいい今しゃべってる途中だったじゃないか!」
「む、悪い。目を閉じたから準備が出来たものだと」
「僕だって最期に言い残すことくらいあるよ!……ってあれ?生きてる?」

頭を押さえながらキーシュはきょろきょろと辺りを見回す。
目の前には身を屈めたボー。
そこはやはりヴェストリ広場であり、ギャラリーがこちらを唖然とsして見ている。
次に自分の身体を確認するが、やはり何も変わらなかった。

「……小僧、まさか私が殺すつもりで殴るとでも思っていたのか?」
「ち、違ったのかい?」
「当たり前だ!!」

ボーが吼える。
どうやら本当に殺すつもりは無かったらしい。

「私は女子供を手にかける趣味は無い。それに最初に躾だと言っただろうが」
「も、申し訳ない」

憮然とした表情でボーがギーシュを見ている。
ギャラリーから苦笑が漏れた。どうやらボーへの恐怖が今のやり取りで若干和らいだようである。
ギーシュもまた、目の前の男への恐怖心が少しだけ和らいだのを感じていた。

「いいか小僧、これに懲りたら二度と不貞は働かんことだ。それと自分の失敗を他人のせいにするな」

気を取り直し、ボーが言葉を紡ぐ。
しっかりとギーシュの目を見つめ、まるで教師や父親のような口調で。

「わかったか?」
「は、はい」
「よし」

ギーシュの返答に満足したのか、ボーは大仰に頷く。
そしてギーシュの頭をポンと一度叩くと、ゆっくりと立ち上がった。

「わかったのなら先程貴様が泣かせた二人には謝っておけよ」

そう言い残し去っていく大きな背中を、ギーシュはしばらくの間ぼんやりと眺めていた。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:05:11 ID:X+XCW8pK
支援

ニンテンドーてオイw
83世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/05/16(土) 22:06:10 ID:4kFXKijx
今回は以上となります。
バトル無理、マジで無理。
こんなに書けないと先が思いやられるって感じです。

では、失礼しました。
聖剣は包丁でいいと思います。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:10:29 ID:jeaDmu5S
>>56
あぁ、プリセラ姐さんまだかな・・・
がんがれ、作者の人超がんがれ
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:10:34 ID:XuIqWk6J
最強コンビ、乙です
支援しようと思ったら、終わってたのが残念……

ボー、カッコ良すぎるww
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:11:51 ID:KqQMaXlR
人間の認識速度を上回る速度で動き回るボー。
これでも朧には勝てないんだぜ……

乙でした!
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:13:39 ID:hmCmxO+g
最強コンビの人乙です

メイジじゃないのはもちろん、ガンダどころか普通の使い魔ですらないんだよなこの筋肉ダルマ
完全武装の兵士に徒手空拳で渡り合うような脳筋馬鹿はメイジの常識が及ぶ代物じゃないなw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:16:03 ID:p2Cjp0at
このコンビ倒したかったらガイアのエネルギーで動くオリハルコンゴーレムがいるわ
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:16:51 ID:DP9rtYuV
スクウェアだかニンテンドーだかwww
流石ストファイで技を考える男www
90”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:39:12 ID:aL8BkMpQ
すみません、22:50から投下をしてもよろしいでしょうか?
タイトルは、第6話 『ギーシュ・ド・グラモンに花束を』で、9レス消化いたします。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:49:42 ID:VBZPR7pr
このボーに加えてガンダ補正のかかった暁…正に最強コンビと言わざるをえないwww
92”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:51:14 ID:aL8BkMpQ
第6話 『ギーシュ・ド・グラモンに花束を』

先日、『春の使い魔召喚』の監督役をしていたコルベールは、トリステイン魔法学院に奉職して20年になる中堅の教師である。
彼はルイズが呼び出した、少女の左手の珍しいルーンと溶けて死んでしまった韻竜の事が気に掛かっていた。
儀式の日の夜から本塔の図書館に篭って書物を調べ、一般の本棚では回答が得られず、教師のみが許される『フェニアのライブラリー』の中に居た。
一心不乱に本を探り、彼は少女が気を失っている間に写したルーンのスケッチと、ある古書の一節とを見比べ、慌てて学院長室へと走り出した。
本塔最上階の学院長室には、白く長い髭と髪を生やした学院長のオスマンと、その秘書で理知的な凛々しい顔立ちのロングビルが居た。
暇そうにしているオスマンがロングビルにセクハラをして、反撃を受けて折檻されていると、大慌てでコルベールが学院長室に入って来た。
何事もなかった様にオスマンは迎い入れて用件を聞き、コルベールは『始祖ブリミルの使い魔たち』とスケッチを差し出した。
それを見て、オスマンの表情が厳しく迫力のある目付きに変わると、ロングビルに退室させて重々しく口を開き、詳しい説明を促した。
93”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:52:39 ID:aL8BkMpQ
ここで、時間を遡り、ルイズとミュズに目をやると、―――――
ミュズは、箒・チリ取り・雑巾・水の入ったバケツ・窓硝子・教卓を持って、目にも留まらぬ速さで学院の廊下を通り抜けて行く。
ルイズが目茶苦茶にした教室の片付けを、罰として魔法を使わずに行う様、倒れたシュヴルーズの代わりの教師によって命ぜられたのだ。
主人が受けた指示はその使い魔も同様に従うものであり、ミュズが掃除道具一式と壊れた備品の替えを運んでいるのはこのためであった。
教室に入ると、ミュズは黒板の前に立っているルイズに指示を仰ぎ、ルイズはやる気の無い声で答えた。
ルイズがしぶしぶと机を拭いている横を、ミュズはルイズに一々何をしたらいいのかを尋ねつつ、素早い動きで教室を綺麗にしていった。
結局、片付けが終わったのはお昼休みの前で、昼食を摂る為にルイズとミュズは食堂へと向かった。
道すがら、ルイズの錬金を「物質を素粒子レベルに分解した」とか、「真の真空で放射線を減退させた」とかと、ミュズは褒めちぎった。
訳の分からない話しにルイズは口をへの字に曲げて眉をひくひくと動かし、黙々と進んで行く。
94”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:53:29 ID:aL8BkMpQ
食堂に着くと、朝言われた通りミュズは椅子を引いて、ルイズに満面の笑みで言った。
「マスターの錬金は面白いです。今度は外でやって下さい――」
その言葉は過去に幾度となく、嘲笑と共に投げ付けられた暴言と似ていて、ルイズの琴線が不快な音を立てた。
ルイズは忠良だと思っていた使い魔にからかわれていた事にショックを受け、顔を赫然とさせ涙を堪えて、ミュズを怒鳴り付ける。
「もう、五月蝿いわね。あんたなんか、シエスタとか言うメイドの所に行っちゃいなさい!平民同士仲良くしてればいいのよ!」
ミュズは今にも泣きそうに顔を歪ませ、困惑した様子で怖ず怖ずと後退り、食堂を出て厨房へと走って行った。
「マスターにシエスタと仲良くしなさいって怒られてしまいました〜」
ばたばたと諸手を挙げてミュズは厨房に入って来ると、そこに居たコックやメイドの間をすり抜け、シエスタに飛び付かん勢いで近寄った。
シエスタはミュズの叫び声に疑問を感じ、厨房の隅に場所を移してお昼ご飯を食べさせながら、ミュズにその意味を尋ねる。
ルイズに怒られるまでの言動や教室での出来事を事細かに説明していたが、ミュズはルイズが何故、怒ったのかが分からない様子だった。
ルイズが魔法を使えないのは、使用人の間でも有名な話で、ミュズがそのコンプレックスに触れてしまったのも理解出来た。
しかし、ルイズへの賛辞の意味はシエスタにとっても難解な物だったが、ミュズの言葉は純粋な尊敬から成り立っているのは分かる。
「ミュズさん。ミス・ヴァリエールは、食堂で大きな声を立てておしゃべりするのを止めさせる為に、怒鳴ったのですよ」
シエスタは敢えてルイズの事情を言わず、食堂でのマナーを教えた。
「なるほど」ミュズは大きく頷く。
「それに、疲れているとおしゃべりの返事をするのが煩わしいのですよ」
「そうなんですか」
「お掃除の後でお疲れになっていたミス・ヴァリエールには、ミュズさんの話が億劫だったのでしょう。こう言う場合は、一方的におしゃべりをしては駄目ですよ」
ルイズの魔法を見ても蔑視する事無く、キラキラと輝かせる瞳を曇らせない様に、シエスタは話をわざと逸らす。
「あと、『仲良くしてればいい』と言ったのは『手伝いをしなさい』と言う意味だと思いますよ。なので、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」
「はい、手伝います!」ミュズは明るく笑みを返した。
95”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:54:30 ID:aL8BkMpQ
ルイズは美味しい昼食を摂って落ち着いていると、怒鳴り付けてしまった使い魔の事が頭を過ぎった。
あの時のミュズの瞳は、魔法の失敗の度に向けられる、珍妙だが取るに足らない物を見る冷淡なものではなく、希少で重宝すべき物を見る爛々としたものであった。
そもそも、単純な性格の子供らしいミュズが失敗を回りくどい言い方でからかうだろうか?
そんな事を頭に巡らせていると、こちらにちょこちょこと赤いものがメイドと一緒に来る。
デザートのケーキが乗った大きな銀のトレイをミュズが持って、シエスタがトングでケーキを摘んで一つずつ生徒達に配っていた。
ミュズとシエスタがルイズに近付く。シエスタはミュズを先に進むように促し、ルイズに話し掛ける。
「ミス・ヴァリエール。ミュズさんをお借りしております。」
「そう」
ルイズはこちらの様子を気にするミュズを横目に、素っ気なさそうに返事をする。
「ミュズさんは素直ないい子で、ミス・ヴァリエールの事を本当に尊敬していますよ。『マスターは凄い』と言っていました――」
ルイズは眉をピクリとさせて、顔をしかめる。
シエスタは真剣な目でルイズの目を見ながら言った。
「ミュズさんを信じてあげて下さい。ミュズさんのマスターはあなたなのですから」
「なによ」
ルイズがジト目で答えると、シエスタは顔を青白くさせた。
「すっ、すみません。出過ぎた事を言ってしまいました。失礼します」
そう言うと、シエスタはがばりと頭を下げて、そそくさと立ち去って行った。
96”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:55:27 ID:aL8BkMpQ
ミュズとシエスタがトレイに乗ったケーキを配り終えようと、談笑している男子生徒達の横を通り掛かっていた。
その集団の中心で、金色の巻き髪で薔薇を挿したフリル付きのシャツを着た少年が、周りの友人から口々に冷やかされていた。
ギーシュと呼ばれるその少年が大袈裟に脚を組み替えると、ズボンのポケットから紫色の液体が入ったガラスの小壜が落ちた。
小壜がコロコロと転がってミュズの足元へ来たので、その様を見ていたミュズはギーシュに呼び掛けた。
「あのー。何かガラスで出来た物が落ちましたよ」
ギーシュは気が付かないのか、ミュズの方を振り向かない。
ミュズはトレイを片手でバランスを崩す事も無く易々と持ち、しゃがみこんで小壜を拾い上げた。
「はい、落とし物です」それをミュズはギーシュの目の前に差し出す。
ギーシュは苦々しげに、ミュズを見つめると、その小壜を押しやった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
その小壜の出所に気づいたギーシュの友人たちが、大声で「モンモランシー」と言う名前を出して騒ぎ始めた。
ギーシュが友人達に何かを言いかけた時、後ろのテーブルから一人の少女がギーシュに向かって歩いてきた。
栗色の髪をした、茶色いマントを羽織った少女はギーシュの名を呼ぶと、ボロボロと泣き始める。
更に遠くの席から見事な縦ロールの少女が立ち上がって、厳めしい顔付きでギーシュの前にやって来た。
ギーシュを冷やかしていた友人の一人がその少女の殺気に気付き、その顔付きを見て「ひっ、モンモランシー」と呟く。
97”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:56:44 ID:aL8BkMpQ
モンモランシーはギーシュに近寄ると目を三角にして、開口一番に口を尖らせてまくし立てる。
「いいかげんにギーシュッ!いったい誰が好きなのかはっきりしてちょうだい!」
「あー、そうそう。はっきりさせた方がいいと思うぞ!」
周りの友人からも合いの手の様に賛成の言葉が飛び、ギーシュは目を泳がせ激しく動揺する。
「あんたが女の子の間をフラフラしてんのがそもそもの原因なのよ!」
モンモランシーは顔を真っ赤にして、追い討ちをかけた。
ギーシュは冷静な態度で椅子から立ち上がって二人の少女に向かい、拳を握り締め目を閉じ頬に汗を伝わせつつ語り始めた。
「ふ……みくびられたものだな!おのれの心は初めから決まっているんだ!」
「え?」
泣いている少女とモンモランシーはギーシュの言葉に驚き、胸をときめかせて目をしばたかせた。
そして、ギーシュは真剣な目付きで言い放った。
「両方だ!!」
騒ぎを聞きつけた生徒達から、すり抜ける様に突然、一人の少女が現れた。
その少女は、大人びた雰囲気でギーシュよりも背が高く紫のマントを付けて、のんびりした口調でギーシュに問い質す。
「えー。じゃ、わたしは。わたしはー?」
「んーじゃ、三人だっ!」
ギーシュはその少女に真面目な顔を向けて答えた。
「へーせいを――」
モンモランシーはギーシュの態度に呆れてうなだれた。
「装うんじゃない!!」そう叫ぶとギーシュに飛び掛かる。
紫のマントの少女から後頭部にオルテガ・ハンマーを、茶のマントの少女から水月に正拳突きを、モンモランシーから顔面に真空飛び膝蹴りを、ギーシュはくらった。
98”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:57:42 ID:aL8BkMpQ
既に分厚くなった人垣を掻き分けてルイズは、目の前で行われている騒ぎを見ているミュズに近寄った。
ミュズの様子を遠目に見ていたが、あれよあれよと人集りが大きくなるので心配なった次第なのだ。
(ミュズと死んでしまったが)韻竜を召喚に成功し契約も上手くいったので、魔法がやっと使える様になったと思っていた。
その矢先の失敗を、訳の分からない話しをするミュズへの苛立ちに転化するのは、貴族のする事では無い。
臍を曲げて穿った見方をするのでは無く、シエスタの言う通り、主として下僕であるミュズの事を信じてあげるべきだった。
ルイズはそう考えながらミュズに向かっていた。
渦中にいたミュズの元に来た時にはモンモランシー達の姿は無く、屍の様に倒れたギーシュと立ち止まる大勢の野次馬だけだった。
「全く、構ってられないわ。浮気がいけないのよ」
ルイズはそう言いながらミュズの肩を掴み、回れ右をしてこの場を離れようとした。
「マスター、浮気って何ですか?」
「え?いやっ、それは――」
「わるいこと?」
「そうね。悪い事ね」
ミュズが急にしてきた質問に答えていると、ボロボロになりながら起き上がったギーシュが『薔薇』が何たらと演説を始めていた。
そこに、ミュズの一言が通る。「あのー。ギーシュ、浮気はだめですよ」
周囲に沈黙が流れた。
99”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:58:52 ID:aL8BkMpQ
ギーシュの友人達が、どっと笑った。「その通りだギーシュ!お前が悪い!」
ギーシュの顔にさっと赤みが差すと、目を尖らせて吊り上げた。
「平民の分際で貴族である僕を呼び捨てするなんて。なんて礼儀知らずなんだね、君は!?」
ギーシュはミュズに向かって怒鳴り付けると、ルイズはミュズを庇う様に間に割って入った。
「やめて。この娘には私から言い聞かせておくから――」
「ふん……。ああ、そいつが……、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」
ギーシュは、馬鹿にした様に鼻を鳴らして言った。
「魔法に失敗なんかしてるから、平民に侮られるんじゃないのかい?」
ルイズはここでギーシュの嘲りを我慢すれば、これ以上の大事にならないと思い、口を真一文字に閉じてグッと堪えた。
「違います。マスターの魔法は素晴らしいです」
ミュズはギーシュが言った事を正す様に口を出した。
「あれが素晴らしいだって?よかろう。ならば、真の魔法を見せてやろう」
そう言うと、ギーシュは胸の薔薇を取り出してミュズにレビテーションをかけ、ルイズには手の届かない空中に浮かび上がらせた。
「ルイズ!悪いな。君の使い魔をちょっとお借りするよ!」
ギーシュはミュズの手を掴み、空中を引きずる様に持ち去って行った。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 22:58:54 ID:mbI5wqgS
支援、支援だ、長谷川節をさくれつさせろ〜〜〜!!
101”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 22:59:56 ID:aL8BkMpQ
ギーシュの友人達が、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。周りの野次馬も面白い見世物が見れると、それに倣って着いて行った。
ギーシュは、貴族に無礼な態度を取った平民に魔法を以って、その優位性を教えてやるのだと、息巻いていた。
道すがら、ギーシュはミュズが銀のトレイを持ったままの事に気が付き、近くに居た黒髪のメイドに言った。
「おい、そこのメイド!トレイのケーキはお前が配っておけ」
ミュズが心配だったシエスタは恐る恐る追いかけていたのだ。
ぶるぶる震えながら近寄って、トレイを受け取りミュズに小声で話しかけた。
「あ、あなた、殺されちゃう……」
「え?」
「貴族を本気で怒らせたら……」
「大丈夫です。魔法を見せて貰うだけですから」
ミュズがそう言い返していると、シエスタはギーシュの友人の睨む様な視線に気付き、だーっと走って逃げてしまった。
今さっきまで人集りが出来ていた所にぽつりと、ルイズは取り残された。
「ああ、もう。ほんとに、なんでこんな事になっちゃうのよ!」
ルイズはミュズの後を追い駆けた。

―――――そして、舞台はヴェストリの広場へと移る。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 23:00:33 ID:mbI5wqgS
長谷川的ハーレムは今回炸裂するのだろうか? 支援
103”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 23:04:44 ID:aL8BkMpQ
以上で、第6話 『ギーシュ・ド・グラモンに花束を』終了
えー、ハッキリ言って拙い。シエスタが無理矢理過ぎ

>>100さん、支援感謝です。
長谷川節を表現するのは難しいorz
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 23:08:29 ID:mbI5wqgS
いえいえ、とっても懐かしいシーンを再現していただけてにやりとさせられました、
次も楽しみです。
というかどうせだったらギーシュをゲンの位置に持っていったら面白いかもとか。
今回ルイズの恋愛対象がいませんからサイトの代役ということで(オイ
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 23:10:41 ID:wL0PSOxZ
>>25
ジュリオ「汚いなさすが忍者汚い」
106”舵輪(ヘルム)”の使い魔 ◆K432ala2Gw :2009/05/16(土) 23:36:44 ID:aL8BkMpQ
>>104
遅レスですが、第1話についてるおまけだとゲンがギーシュ扱いなんですけどね
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:07:47 ID:somz9aZ2
はだしのゲン召喚したら、あまりにも豊かな貴族の生活にギギギ
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:09:00 ID:Z3VQA6RR
オーフェンのミストドラゴンをルイズが召喚したら
ルイズは愛情表現で弾を乱射されたり、神の鎚を落とされる。
召喚を境にルイズの二つ名がゼロから災厄に変更される。

チャーリー(ミストドラゴン)
ルイズに物凄く懐いています
ガンダールヴのルーンによって
外皮&内臓の強度アップ
タービン出力、撃ち出される弾の初速、重量がアップ
しました。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:14:34 ID:7qcGb+5F
フェアリー・ドラゴンを召喚して、知覚を共有したらどうなるんだろう?
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:16:21 ID:7vd+zn07
>はだしのゲン召喚
保管所にあるけど続かなかったな


ルイズ「こいつめ こいつめ わしゃどんなにさがしたかしれんぞ」
サイト「ガハハハ まいったまいった ルイズがこの村にまで来るとはのう」
ルイズ「おどりゃ 七万人と戦ってから帰ってこんけえ 心配しとったんじゃ」
サイト「まあ わしもいろいろあったわい」
ルイズ「わしもよ」
サイト「ルイズ 再開をいわって いっぱいやろうや こいや」
ルイズ「おお いこう おっぱいおばけさいなら」
テファ「サ サイトさん ミョズニトニルンと戦うイベントがまだですよ」
サイト「ええからええから わしゃ虚無の使い魔じゃけえ サボってもええのよ」
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:18:59 ID:nvRW35cA
ディープ、ミスト→TUEEEEEEEEE
ウォー、フェアリー→力失ってて役立たず
ウィールド、レッド→強いが知性もあって動かし易い
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:21:58 ID:A9r/HKc0
特に予約もないようなんで代理逝くぜ
113ネガティブな作者・代理:2009/05/17(日) 00:22:45 ID:A9r/HKc0
久方ぶりの長編。
現在規制中なので、どなたか代理投下していただけると嬉しいです。

ホーンテッド!とのクロス。
114僕らは、恋をして生きていく 1/6:2009/05/17(日) 00:23:37 ID:A9r/HKc0
第0話 「君は、美少女使い魔」

この僕。ギーシュ・ド・グラモンが、彼女――ルイズの使い魔に最初に出会ったのは、春の使い魔召喚儀式でのことだった。
すぐ傍にいたモンモランシー(皆には内緒にしているけど、実は僕の彼女だ。おまけに幼馴染属性つき)には言えないけど、第一印象は、中々、可愛い娘じゃないかだった。

「えっ、なんですか? ここ何所ですか? あ、あなた達は?」
多分年は僕達と同じか少し下くらい。やや長い黒髪で、おしとやかな感じ、胸は今後の成長に期待と言った所かな。
ルイズやタバサ嬢と違って、無いのではなく控えめな感じだ。どこがとは言わないけど。

「な、なななんなんなんですか!? も、もしかして私今ちょっとピンチですか!? 街を散歩していたら、眠らされて外国に売り飛ばさちゃったんですか!? 
あ、あの私なんか売り物にしたって意味ないですよぉ。私なんて、私なんてほんと、存在価値『ゼロ』のクズなんです。
勉強できないし運動音痴だし手先不器用だし性格暗いし友達いないしお父さんは変な宗教に嵌っちゃうしお母さんは出て行っちゃたし,
ほんと生きてる価値『ゼロ』って感じですよねそうですよね生まれてきてすみませんほんとすみません!」
いきなり召喚されて混乱しているのだろう、よくわからないことを口走っている。

「あんた、ちょっと黙っていなさいよ」
ルイズが、ドスの聞いた声で美少女にすごむ。

「あ、は、はいっ、す、すみませんすみません! 私のようなゴミ虫が人間様の言葉喋ること自体、不相応にもほどがありますよね、まったく、身のほどをわきまえろって感じですか?
すみませんほんとにすみません、もう金輪際人間様の言葉なんて喋りません、ゴミ虫はゴミ虫らしく、ゴミ虫の言葉を喋ることにします。ごみーごみーごみごみごみー」
なんというか、変わった娘だね? あまり近くには居て欲しくないタイプのようだ。可愛いけど。

「ミスタ・コルベール!」
ルイズが、もう一回やらせてください、とか、お願いです、とか、聞きようによって危険なことを言いながら腕をぶんぶん振りまわして、コルベール先生にせまっている。ああ、うらやましいなあ。

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼女は……ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。
古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼女には君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
「さあ、早く儀式を続けなさい。次の授業が始ってしまうじゃないかね。なに、女の子同士だ。気にすることもないだろう。さあ、早くブチュっと一発やっちゃいなさい」
そうだそうだ! 美少女同士の口付けを早く僕に見せたまえ!
115僕らは、恋をして生きていく 2/6:2009/05/17(日) 00:25:00 ID:A9r/HKc0
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
おおっ! なんというかこう、絵にして額縁に飾っておきたい光景だね。思わず身を乗り出してしまうよ。

「終わりました」
ルイズが顔を真っ赤に染めている。いやあ、いいものを見させてもらったよ。

「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」
「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」
むっ、美というものを理解できない輩が、野次を飛ばしている。ここは格好良く薔薇として一言注意しなければ――い、いたっ、痛い。

「本当にたまたまよね。ゼロのルイズ」
何故か機嫌が悪そうなモンモランシーが、ルイズに絡む。自分が召喚したカエルとキスをしなければならなかったのがそんなに嫌だったのだろうか、でもさっきまでは機嫌良かったのに。
後、踏まれた足が痛いのだけど。えぐりこむように足を動かすのは、やめて、おねがい。

「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよ」
「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! ゼロのくせになによ!」
モンモランシーとルイズが言い争っていると、突然、美少女(もちろんモンモランシーとルイズも美少女だけど、この場合は使い魔の少女のことだ)が、ささやかに膨らんだ胸を押さえて苦しみ出した。
……モンモランシーが見ていなければ、すぐに駆け寄って胸をさすって介抱してあげるのにっ!
いや、ここは人命第一。いまならモンモランシーも怒らないのでは、いや、でも、しかし、断じて絶対に下心がまったく無いとはいえ、モンモンは理屈が通じない所があるし。
オシオキ水コワイヨ、オシオキ水。
僕がモンモランシーのちょっとした誤解にもとずく理不尽な仕打ちを思い出して震えているうちに、ルイズが美少女に声をかける。

「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
ルイズが吐き捨てるように言うけど、それを聞いた美少女が痛みに顔をしかめながらたずねる。

「つ、使い魔って、なんなんですか」
ああ、その不安げな表情も可愛いよ。素晴らしきかな美少女。

「使い魔を知らないって、どこの田舎者よ。いい、使い魔ってのはね、メイジが『サモン・サーヴァント』の呪文で呼び出す僕(しもべ)のことよ。本当は動物や幻獣が出てくるのに、なんで人間が召喚されるのよ!」
いや、いいじゃないか。美少女使い魔なんてうらやましい、まあ僕のヴェルダンテには及ばないけどね。
116僕らは、恋をして生きていく 3/6:2009/05/17(日) 00:25:48 ID:A9r/HKc0
「すみませんすみませんすみません、呼ばれもしないの来ちゃってすみません。
ほんとごめんなさいすみません、どうかもう一度そのじゅもんを使って、私みたいなドジでグズなノロマで薄汚いゴミ虫じゃない、ちゃんとした使い魔を呼んで下さい」
額を地面に擦りつけて謝る美少女。家のメイドが高価な壷を割っちゃた時もあんなふうに謝っていたっけ。

「それはできない。『サモン・サーヴァント』を再び使うには、一回呼び出した使い魔が死ななければならないのだ。君も運命だと思って……」
コルベール先生がしゃしゃりでて、なれなれしく美少女の肩を触ろうとしたら、使い魔の――使い魔になった――少女が跳ねあがるように飛び起きた。目がランランと輝いてて怖い。

「わかりました。死にます。私が死ねば全てうまくいくんですよね! 大丈夫です! ちょうどリストカット用のカッターを携帯してましたからっ!」
そういうと懐から小さな棒のような物を取り出して刃を露出させる。スライド式のナイフのようなものだったらしい。

「あああ、あんた、なにする気よ! ややや、やめなさい!」
「そうだ、君。い、命を粗末にするんじゃない!」
慣れた手つきで流れるように、刃を手首に押し当てようとするのを近くに居たルイズとコルベール先生が、必死に押し止める。ちなみにギャラリーは僕も含めてドン引きだ。

「なんで邪魔するんですか! 私なんかどうせ生きていたって無駄に酸素を消費するだけのゴミ虫なんです! さっさと死んじゃったほうが地球の為なんです!」
地球って何だ? あっ、ルイズが美少女にビンタした。

「あっ、あんたは、もう私の使い魔なんだから。勝手に死んじゃったりしたらダメなんだからね!」
興奮のためか、顔を先刻より真っ赤にして、目の端からちょっと涙が出ている。

「で、でも、私が死なないと、じゅもんをやり直すことが出来ないんですよね?」
「いいの! あんたが呼び出されたんだから、あんたが使い魔なの!」
「そうです。『サモン・サーヴァント』の呪文は、主と使い魔双方にとって、もっとも相性の良い、お互いに必要としあうものを呼び出す呪文。ミス・ヴァリエールも君も、いつかきっと良かったと思える日が来るはずです。ですから」
「本当に、私なんかでいいんですか? きっと後悔しますよ」
台詞を途中で遮られたコルベール先生、42歳独身がしょんぼりしてるけど、まあ、かなりどうでもいい事だけど。

「大丈夫よ。あんたは、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの呪文によって、この広い世界から選ばれた使い魔なんだから。
もうあんたは、存在価値『ゼロ』でも生きてる価値『ゼロ』でも無い。かけがえの無い、私の使い魔よ。誇りに思いなさい!」
「そそそそそ、そんな私なんかが……、かかかかか、かけがえの無いなんて……」
美少女が、あぶない陶酔した表情で虚空を見上げている。
いや、ルイズは目の前で死のうとする人間を見て、気が動転して、反射的に言ったんだと思うけど。

「ふ、ふつつかものですか、精一杯頑張らせて頂きます! よろしくお願いします!」
それは色々と、違う挨拶のような気がするけど、可愛いからいいや。
117僕らは、恋をして生きていく 4/6:2009/05/17(日) 00:26:37 ID:A9r/HKc0
「あ〜、ではルーンの確認を――」
そういえば使い魔のルーンは胸に刻まれたらしい。
コルベール先生が美少女の服をはだけてルーンを確認するのは、犯罪では無いだろうか?
ここは、女の子を守る薔薇として、コルベール先生が暴走しないように、じっくりたっぷりねっとりと見守らないと!
さあ、ミスタ・コルベール。ルーンの確認を! ハリーハリーハリー!

「するのは問題がありますね。後でミセス・シュヴルーズ辺りに頼むとしよう。さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
……。
…………。
……………………。
……いや、別に僕はそんなに期待はしていなかったよ?
当てが外れた男子生徒が、口々にルイズにヤジを飛ばしながら去っていく。
まったく、なんてみっともない連中だよ。少しは、この紳士的な僕を見習いたまえ。

ちなみに、すぐに飛ばずにいたのは、女子のスカートの奥に秘められた色とりどりの花園を覗くためでは無いことは言うまでもない。
118僕らは、恋をして生きていく 5/6:2009/05/17(日) 00:27:18 ID:A9r/HKc0
次回予告

春。
大勢の桜の花びらたちが風と共に舞う中――

「僕は薔薇。女の子を守る薔薇なのさぁ!」
何事もポジティブにしか考えられない少年と

「私が悪いんですね! そうなんですね! 死にます! 死んでお詫びをします!」
何事もネガティブにしか考えられない少女。

出会ってはいけない二人が出会ってしまった。

「死んじゃったらどーするんです!」

僕らは生きて、恋をする 第1話「絶望使い魔」

近日公開!

以上。
なお、次回のタイトル及び内容は、予告無く変更になることもあるので予めご了承ください。
119僕らは、恋をして生きていく 6/6:2009/05/17(日) 00:28:09 ID:A9r/HKc0
うっかり、レス数に後書分まで含めてしまいました。
すみません。

遅筆ですが2週間に一度くらいのペースで、ゼロ魔2巻ラストまで書く予定です。



代理終了
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:28:50 ID:/aRX/lKN
支援
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:35:13 ID:Qr272FAV
どっかで見たような・・・
元ネタとキャラをお願いします
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:36:57 ID:XRl7ltJE
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 00:59:28 ID:A9r/HKc0
元ネタは>>113
キャラは……原作読んでないけど紀史元ひかり?
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 01:01:00 ID:/aRX/lKN
作者さんも代理さんも乙
代理終了宣言後に支援とか、我ながら笑えるw

>>121
元ネタは、>>113にある『ホーンテッド!』ってやつじゃねぇの?
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 01:02:52 ID:Qr272FAV
ごめん
ベン・トーだったっけ?
アノ話、主人公がアレすぎて尚かつ三巻目が燃え燃えで忘れてた・・・
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 01:11:44 ID:tlaFApEI
さよなら絶望先生の加害妄想少女だろうか
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 02:36:21 ID:f1dhmE4x
>>『サモン・サーヴァント』の呪文は、主と使い魔双方にとって、もっとも相性の良い、お互いに必要としあうものを呼び出す呪文。
ルイズがサイトを召喚できたって言うか、サイトみたいなやつがこの世に居てくれた事が凄い奇跡だよなぁ
最初にちょっとキスをして「うわー俺この子に好かれてるわー」って思わせるだけで
床で残飯みたいな飯を食わせたり犬呼ばわりしてまともな評価をしなかったり散々な事をしまくるルイズのような女のために頑張る人間が居たなんて

少なくともハルケギニアにはそんな異常な人間が居なかったから異世界の地球から召喚しなきゃならないハメになったんだろうなぁ
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 02:50:02 ID:y2MCKYnU
>>127
マルッコイノの前にゲートが開かなかったわけだから
その理論は間違っている。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 02:58:07 ID:GTuY8h1/
多分、重量制限に引っ掛かったんだよ
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 03:15:21 ID:XvfFH53r
あのおでぶちゃんは腐っても貴族なんだぜ
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 03:21:24 ID:HJs31Ctn
あの頃はまだ性癖に目覚める前だったからな
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 03:23:39 ID:Pd8ch+iH
なんぞこの流れwww
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 03:46:07 ID:ZXqjD+iP
RESET;
SEI
CLC
XCE
CLD

X16
M8

LDX #1FFFH
TXS
STZ NMITIME
LDA #BLANKING
STA INIDSP

BJSR ATLUS
'EL ELOHIM ELOHO ELOHIM SEBADYH'
'ELION EIECH ADIER EIECH ADONAI'
'JAH SADAI TETRAGRAMMATON SADAI'
'AGIOS O THEOS ISCHIROS ATHANATOS'
'AGLA AMEN'
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 03:49:29 ID:tlaFApEI
他の虚無メイジはハルケ内から召喚してるしな
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 05:09:13 ID:da4tv08Q
なんだ?今どきウイルスコードか?
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 06:12:35 ID:0cs1sKQY
“永遠なる主、サバオトの神”
“栄光に満ちたるアドナイの神の名において”
“さらに口にできぬ名、4文字の神の名において”
“オ・テオス、イクトオス、アタナトスにおいて”
“秘密の名アグラの名において、アーメン”
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 06:57:26 ID:Qd9cGaGf
どっかで知って、ひけらかしたかったんだろう
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 07:02:16 ID:SDTeJ42H
つか真女神転生のオープニングで出るメッセージだよ
なんでここにはったのかはまったくわからんが
誤爆か?
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 07:19:54 ID:2C0Fypii
メガテンといえばキョウジ召還とかないのかな。
最初はGUMP空っぽだけどギーシュのワルキューレを手始めに
熟練のtalkで片っ端から契約して手ごまにしていくw
そしてシエスタの故郷近くに停泊する「業魔殿へヨーソロー」
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:22:31 ID:3mcNW7GI
人修羅はやたら呼ばれるんだけどな
そういやたまきちゃんやただしくんも呼ばれないねぇ
終了後のアキラとか呼ばれたら小説準拠で無い限り間違ってもただの平民や亜人扱いはされまいな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:26:09 ID:Xa7ClLWw
>139
キョウジ兄さん召喚ですか。

「甘い、甘いぞルイズ!」
「明鏡止水の心を忘れるな!」
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:27:53 ID:A9r/HKc0
>>141
虚無的にダメダメじゃないのかw>明鏡止水
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:43:50 ID:yAGwJSHn
デビルサバイバーから従兄の人を召喚。
ネットの海を使わずとも魔法が使えるメイジを見て、トリスタニアでの元貴族の話を聞いて、コンプに相当するアイテムの生産に着手するとか。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:47:01 ID:qEUA70AD
>>最初にちょっとキスをして「うわー俺この子に好かれてるわー」って思わせるだけで
>>床で残飯みたいな飯を食わせたり犬呼ばわりしてまともな評価をしなかったり散々な事をしまくるルイズのような女のために頑張る人間が居たなんて
とりあえず原作を読み直す事をお勧めする。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 08:51:31 ID:2G3V9MEu
>>106
なんと、あのキャスティング、マジ舵輪でやるのですか!?
一発ギャグだと思っていましたが、これは超期待ですね!
次が早く投下されることをわくわくしながら待ちます!
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 09:11:16 ID:djfsoaT+
>>141
毎回とんでもないところから登場する使い魔と申したか
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 09:36:05 ID:fF1k4Xyn
つまり、デビルガンダムに蹂躙されるネオジャパンコロニーの代わりがアルビオンなのですね?
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 09:48:23 ID:s3GH/CYg
>>134
他の虚無組は系統を自覚してるのに対して
ルイズはそうでなかったから、世界扉が暴走したとか
そんな感じじゃないか、多分
それか、ガンダールブの虚無だから、槍の召喚と混ざったとか
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 09:52:47 ID:C/Z5gsc7
召喚の前提にガンダールブの槍を扱える者というのがあったのかもしれんな。
戦車とかゼロ戦とか、知らなきゃ武器だとは思わんだろうし。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:05:09 ID:fs5RyAYR
考察スレ向きの話かもしれんが、ガンダールヴの槍として召喚されたものなら
知らなくても武器としてルーンのほうで勝手に認識するかも
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:07:09 ID:vbUaYEmT
ジャッキーだったら椅子でも認識するんだろうけどな
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:10:37 ID:16rmIXgf
モップ! 胡椒! 気絶した敵!

っていうか大統領の娘で殴らせろ
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:35:20 ID:Xa7ClLWw
>151
金八先生ならハンガーだ!
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:43:07 ID:TG5FbnOl
ひとすくいの水であってもわたしの手に入れば武器になりうる
それが砂であればなお一層強力な
ましてやその砂に爪や歯などの固形物が入り混じっているとなるともはや……
それは兵器
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 10:49:17 ID:AZqVY/Kd
環境利用闘法自重
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:36:31 ID:lUNceeQW
>毎回とんでもないところから登場する使い魔
黄金バットだな
美術館の石像の中から出現した事がある
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:40:32 ID:th+tkKFS
武器って何を持って武器とするかが難しいよね
使い手次第ではモップ!胡椒!柱時計!も武器だし
仮面ライダーのような改造人間はその体自体が武器。
GODの神話怪人「鉄腕アトラス」にいたっては大地そのものが武器

相手によってはテファの「革命」なんか紛う事なき武器なのだが
ガンダールブはアレをどのように使うんだ?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:41:55 ID:Z3VQA6RR
サモン2のレシィを召喚
キュルケがSに目覚め、レシィを守るためルイズの失敗魔法の精度、威力が上昇
レシィ、ヒロインと化す
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:42:36 ID:djfsoaT+
シュバルツ兄さんも石像から出てきたっていうか石像と同化してたな
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:50:50 ID:th+tkKFS
>毎回とんでもないところから登場する使い魔

セラヴィー先生召喚と申したか
「笑顔が好きだから」再開キボンヌ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:53:08 ID:U+sgZ0H3
> 石像と同化
「よくご存知だ(キリッ)」

ビッグゴールドとフーケのゴーレムが同じくらいの大きさかな
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:01:27 ID:PxUCvfH/
でかいゴーレムと生身の人間の対比を探してたんだが、ビッグゴールドがあったな
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:11:20 ID:th+tkKFS
ビッグゴールドのサイズは不明ですがGR1が30M
30メイルなフーケのゴーレムとほぼ同サイズですね
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:13:42 ID:LRT5wyEH
BIG‐Oしかでてこないな、ビッグとか言われたら

それかジャイアントロボ
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:14:50 ID:AoNBbi5i
>毎回とんでもないところから登場する使い魔
ついビッグ・オーを思い出した俺
ショータイム!の掛け声と共に学院ぶち壊して出てくるビッグ・オーは見たいけど、ルイズが泣くな
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:34:44 ID:JpVzA4uS
貴方って最低ね…
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:35:49 ID:7GQXFM/8
ビッグな使い魔と言われて真っ先に思い浮かんだのが、大豪院邪鬼(初登場時)だったりするw
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:40:00 ID:gslAGQo2
“ビッグゴールド”で最初に出てくるのがイクサー1な俺…………
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:41:22 ID:FH5+5Rzu
>>144
あってんじゃん
お前こそ原作読み返せ
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:42:37 ID:AoNBbi5i
>>168
レモン○ープル読者乙
長女だと導いてくれそうだが、次女だとかなりスパルタで、三女では揉め事ばかり起こしそうだw
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:47:39 ID:dlwOUaLZ
>>169はついさっきルイズに召喚されて愚痴ってる才人
可哀想だからみんな多目にみてあげてくれ
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 12:49:38 ID:6i97IUao
>>169
サイトも結構ひどいことしてるからおあいこ。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:11:22 ID:tlaFApEI
サイトは夜這いかけてるね

まぁ、お似合いだ
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:15:47 ID:m0maP6Bq
フーケのゴーレムとガンダムってどっちが強いの?
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:16:58 ID:ZcDUP2NX
ノボルのあとがき風に言うと
二人とも沸いてんだよ!そこがいいんだよ!二人とも沸いてんだよ!そこがいいんだよ!
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:18:27 ID:tlaFApEI
単純な殴りあいならゴーレム
距離とったりしても良いなら空飛べるガンダム
武器ありならガンダム
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:20:40 ID:JpVzA4uS
ゲッターサイト?
デスパーサイト?
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:21:39 ID:C/Z5gsc7
>>174
全ての面でガンダムが上。
179聖帝軍正規兵:2009/05/17(日) 14:31:43 ID:CIIHV19c
>>174
対人用のランチャー一発で壊れるぐらいだから、ザクでも勝てる。

まぁ、それはさておき

下がれ下がれぇーーーーー!スレを開けろーーー!聖帝様のご投下だぁーーーーー!
支援しろ!消毒されてぇかーーーー!!
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:35:26 ID:4sMc4RE+
せ、聖帝様だぁぁぁ!支援支援。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:35:26 ID:hnfdGq+B
ヒャッハァー! 支援だァ!
182帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:39:20 ID:CIIHV19c
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

「なんだ、あれ……」
魔法学院と首都トリスタニアを結ぶ街道。
首都へと至る道だけあって、それなりに人も通っているが、今現在はそこを通る人々は全て等しく一つの物を見ていた。

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

別に新手のスタンド使いが現れたわけではない。
一台の馬車が爆走(はし)っているだけであった。
それだけなら物資の往来の激しいこの街道。非常によくある光景で人の注視など集める事はない。

そこから遥か離れ、魔法学院。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが部屋の中にいたのだが、その顔は火が出そうなぐらい真っ赤だった。

――恥ずかしい……!一体どういう趣味してんのよ!

一度枕に顔を埋めてからもう一度アレを思い出す。
ルイズの脳裏に写っているのはただの馬車なのではなく、決して趣味がいいとはいえない玉座が付いた奇怪なモノ。
そしてそこに悠然と座を構えるのは勿論、聖帝サウザーである。
ある程度舗装されているとはいえ、タイヤではなく車輪というだけあって振動はかなりのものだ。
それにも関わらずに相変わらず何時もの姿勢でゆったりしていらしゃるのだから人に与える衝撃は半端ないものがある。
貴様も来るか?と聞かれた時には全力で遠慮した。
あんなのに乗って街まで練り歩いた日にはあっという間に噂になるに決まってる。

なんだかんだで結局城下を視察する事になったのだが、通常の馬車をベースに玉座部分をギーシュに作らせた。
やれば、先日の事は流してやる。だが、断れば、と言ったところで快諾したようで一晩でやってくれた。
車輪部分も車軸と車輪数を強化したおかげで十分重さに耐えられるようになっていたが、青銅だけあって色は原色そのままだ。
それは追々塗装するか、金にでも錬金させようかと思ったが、金を練成するのはスクウェアでも難しいらしく諦めた。
精神力を使い果たしたギーシュが地面に突っ伏していたが、そんなこんなで聖帝馬車の完成というわけだった。
そんなわけで、塗装も兼ねて城下へと繰り出しているわけである。
ついでに御者もギーシュにやらせているのだが、やはりというか少しぐったりしている。
普通の馬車とは違い重量が重量だけに、馬二頭では足りず三頭立てというのもあるが、後ろにサウザーが居るという事が体力・精神的にも一番疲労を加速させていた。

「おい、小僧」
その言葉で、今にもへばりそうだったギーシュの背筋が伸びる。
「その城下まではあとどのぐらいで着く」
「そ、そうだね、二時間といったところかな」
言葉使いこそ何時もとあまり変わらないが、明らかに口調に惧れが感じられる。
貴族の子弟が御者をやるなど、普通では考えられない事だったし、ギーシュ自身もやるわけないと思っていた。
だが、ギーシュの頭の中には未だに『俺に逆らった者に降伏が許されると思っているのか?』というサウザーの言葉がこびり付いている。
気が付けばいつの間にか馬を操ってトリスタニアへと向かっているところである。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:40:23 ID:hnfdGq+B
ワロタ支援
184帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:40:59 ID:CIIHV19c
人を従わせる方法は大きく分けて二つに分かれる。
一つは圧倒的なカリスマなどで相手を心服させる事。そしてもう一つが歯向かうなどという気も起こさせぬような圧倒的な恐怖による支配。
分かりやすく言えば、前者が救世主と称えられ奇跡の村を創りあげたトキ。後者が拳王と畏れられ帝国を築き上げたラオウである。
恐怖による支配は長くは続かぬと言ったのは他ならぬサウザーだが、聖帝軍正規兵からはともかく、サウザーも帝王として人々に恐れられていた男だ。
サウザーに屈せぬだけの力はギーシュにはなく、また恐怖を跳ね除けるには若すぎた。
だからこそ何かと突っかかってくるルイズやキュルケはサウザーから見ても興味の対象だったのだが。

そんなギーシュの心情など知ったことではなく、吐き捨てるかのように言うとサウザーが脚を組みなおす。
「ふん。やはり遅いな」
スピードがバイクには敵わないのは当然だとしても、片道でこれでは飽きがくる。
まぁ、針で囲まれた棒の上に二、三日は余裕で立ち続けられる人達なのだから、たかが三時間の行軍がどうだと言われればそれまでだが
修行してるのとただ座ってるのとではやはり違うものである。
それでも、久方振りに目にした自然の光景というものは少しではあるがサウザーに昔の事を思い出させてはいたが。

南斗鳳凰拳先代伝承者オウガイ。
鳳凰が司る星は将星。またの名を独裁の星。
だが、少なくとも幼き日のサウザーから見たオウガイは独裁などというものからはかけ離れていた。

初めて極星十字拳で石灯篭を斬った事は今でも鮮明に覚えている。
あの時の感覚は二度と忘れはしない。
一度は弾かれたものの、呼吸法によって気を練り十字に切り裂いた。
その時のオウガイの表情は二度と忘れる事はあるまい。

少しでも早く鳳凰拳を身に付けオウガイを喜ばせたかった。
……十五歳のあの時もそうだった。あの試練を乗り越える事で伝承者となり、その先もあの顔を見れると思っていた。

初めて極星十字拳で人を斬った事は忘れようとしても忘れられるはずがない。
目隠しをしていたとはいえ、最も尊敬し愛した師を手にかけた。
身を引けば当時のサウザーの拳など容易くかわせたにも関わらず、オウガイはあえてそれを受けた。
一子相伝の鳳凰拳。先代伝承者は次の伝承者に倒されなければならぬという、北斗神拳よりも過酷な宿命。

――こんなに悲しいのなら……

失うのが悲しいなら最初から愛など持たねばいい。

――こんなに苦しいのなら……!

失うのが苦しいなら最初から情など捨ててしまえばいい。

――愛など……愛などいらぬ!!

誰よりも愛深き故に、少年がその道を選ぶにはそう時間はかからなかった。

185帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:42:39 ID:CIIHV19c
「……っ!またか……」
苛立ちを隠せぬ声でそう呟く。
どうにも退屈すぎて自分でも気付かぬうちに眠っていたようだが、こちらに着てから、この忌まわしき記憶がついて回ってきている。
「あの時以来、そうではなかったのだがな……」
愛と情けを捨てていた時はそういう事はなかったのだが、代償というやつだろうかと思わないでもない。
身体の中に流れる帝王の血が、多少は戻りつつある情けを拒絶しているという事か。

――埒もない。

聖帝十字陵。
世紀末の世に建てられた、聖帝の権威を誇示せんがための巨大な墓と言われているが
その実は、師オウガイの墓にして、サウザーの僅かに残った愛と情けの墓。
その完成を以って完全に捨て去る事ができるはずだった。
だが、ケンシロウの前に敗れ、聖帝十字陵も崩壊した。

それでも、今のサウザーには退くなどという選択は無い。
愛と情けを捨てる事ができなくても、彼は南斗聖拳最強にして将星の星の男。
故に何があろうと退かぬ。故に何人であろうと媚びぬ。故に何が起ころうとも省みぬ。

とは言うものの、現時点では特に動くべき目的も理由も無いので少々手持ち無沙汰な状態ではあるが。
なにせ、世紀末とは違いサウザーの周りの環境は平和そのものだ。
少なくとも、目にしている限りでは僅かな水と食料を得るために人が争う事なく日々を過ごしている。
貴族専用の学院という事があるし、サウザー自身はその恩恵を120%程活用している。
退屈かと聞かれれば、その答えは今のところはNoだ。
拳法とは全く毛色の違う魔法は興味深いものだったし、知らぬ物を知るというのは中々面白い。
ただ、やはりというか、身体の奥底の方では物足りぬと感じている。
乱を望むは将星の性。
というよりは、乱が無ければ将など無用の長物。
乱が無ければどうするか。自ら乱を起こすか、乱が起こるのを待つかの二つに一つ。
自ら起こすには手駒が足りない。
むしろ、足りないというよりはゼロ。
その兼ね合いもあってか見に務めているが、トリステインでは目下のところ、乱が起こりそうな気配は無い。

まぁ、そう急ぐ事もなかろう。
南斗六星の崩壊を引き起こしたような世界規模の大戦がそうそう起こるはずもなく
まして、東の方なぞ地図すら無いような状況では、精々国家間の戦争がいいところだ。
現状維持というところで妥協しておいたが、馬車の動きが止まった。

「……どうした」
「前から王宮の勅使を乗せた馬車が来ているんだ」
ふむ。と呟くとサウザーが視線を前へと向ける。
確かに、トリステインの紋章の付いた旗を立てた馬車が向かってきている。
「トリスタニアには王宮もあるからね。きっと、学院長になにかあるんじゃないかな」
「そうか。では行け」
「……!?」
説明を聞いて、サウザーがそう返すと完全にギーシュの思考がパニックに陥った。
186帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:44:13 ID:CIIHV19c
普通だったら王宮からの勅使が乗っている馬車が通るとあれば、道を譲るというのが相場というところだ。
それにも関わらず、後ろの男は行けと言う。
無駄にカスタムしたおかげで聖帝馬車はかなり横に大きい。
この街道であの馬車とすれ違おうとした場合、まず間違いなくぶつかる。
主に、横に大きく飛び出た角のような部分が。

「一応聞くけど……街道から反れてという事かな……?」
「何を寝ぼけている。そのまま進め」
一縷の望みを託してはみたが、答えには希望なんてありゃしなかった。
どこかの吸血鬼に『関係ない、行け』と言われた上院議員の心境である。
進めば王宮からの勅使を相手に揉め事になるし、退いたりすれば後ろの男が圧倒的な力量を以ってなにをするか分からない。
完全に板挟みの状態に陥っていると、前の方から衛士かなにかが警告を発してきた。

「王宮勅使ジュール・ド・モット伯の馬車の前に立ち塞がるとはどういう了見か。早々に道を開けられい!」

「ほう。たかだか使い走り如きが、この俺の行く手を阻むか。いい度胸だ」
サウザーから見れば、勅使など単なる伝言役と同等という認識である。
そもそも、例え相手が王族だろうと明け渡す道など一切持ち合わせていない。
それが世界の道理に反するとでも言うのであれば、己が力を以って制圧し平伏させるのみ。
天上天下唯我独尊。
敵は自ずから跪き、相対する者は全て下郎。
今の今まで帝王と対等になった者は唯一北斗神拳伝承者ただ一人。
したがって、悠然とそう言い放ったもの至極当然の事だ。

そうこうしていると、向こうの馬車から一人趣味の悪い服を着たメイジが出てきた。
なんとなくだが、南斗相演会で見た南斗紅雀拳のザンとかいうやつに似ている気がする。髭とか。
修羅の国の名のある修羅のうちの一人の方が似ていると思うけど、サウザーは知らないので割愛しておこう。

「これはこれは、確かグラモン元帥のご子息ではないですか。そのようなところでどうなされましたかな?」
勅使だけあってモット伯は顔が広い。
有力な軍人であるグラモン家にも度々訪れていたためギーシュとも面識があったぐらいだ。

「この俺に逆らった者の末路というところだ。退かぬようであれば貴様もこうなる」
「そこの者。今なんと言ったのか聞こえなかったのだがね」
「その飾りでも聞こえるように言ってやろう。下がれ下郎」
「トライアングルメイジである『波涛』のモットに下郎とは、いや可笑しい。はっはっはっはっは」
わざとらしい台詞と芝居がかった動きでモット伯が笑うと、急に真顔になった。
「私はそういう冗談は許せない性質でね。身の程知らずの平民に一度貴族の力というものを思い知らせてあげよう」
モット伯が腰の杖を抜くと魔法の詠唱を始めると衛士の一人が馬車の中から壷を持ち出し割った。
割れた壷からは水が流れ出している。その事から水使いかと一瞬で判断した。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 14:44:57 ID:C/Z5gsc7
ひとーつ、ふたーつ、しえーん
188帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:45:40 ID:CIIHV19c
「イル・ウォー」
「ふん、遅いわ」
さっきまで玉座に座っていたはずのサウザーが、いつの間にかモット伯の懐近くへと飛び込んでいる。
「な……!」
並の拳法の使い手では捉える事すら出来ぬ神速の踏み込み。
まして身体能力はモヒカン以下のモット伯にとってはサウザーの動きは瞬間移動にも等しい。

――やはりこの程度か。

トライアングルというからには少しは楽しめるかと思っていたが
どうやら、魔法のクラスと実戦での強さというのは比例しないらしい。
大口を開けて魔法を詠唱をするなど、隙だらけにも程がある。
魔法がどれだけ強力であろうと、杖さえ持たさねば、詠唱さえさせなければ何の意味も持たない。

「貴様の動きなどスローすぎて欠伸が出る。貴様に比べたら、あの小娘の方が遥かに速い」
詠唱の速さもそうだが、詠唱を悟らせないようにする技術。
その全てにおいてモット伯は劣っている。
この程度であれば興味もなく、これ以上の戯言に付き合う必要も無い。
微動だにしない、いや微動だに出来ないモット伯に向け、サウザーがその拳を向けた。

     南斗鳳凰拳
『極 星 十 字 衛 破 風』

ここでようやく我を取り戻したのか、踵を返してモット伯が逃げようとしたが、盛大に転んだ。
いくら慌てていたとはいえ、何も無いような場所で転ぶはずは無い。
軽い違和感がモット伯を襲うと、それがだんだんと大きくなる。
その違和感の方へと目を向けた瞬間、街道に絶叫が響いた。

「うぎゃあああ!脚が!脚が……!」
モット伯の脚からは勢いよく鮮血が噴き出し地面を赤く染め上げている。
「貴様の脚の腱を斬った。二度と自力では立ち上がれまい」
斬られた事すら感じさせぬ鋭さと、腱を断ち切る正確さを併せ持った一撃。
そして、なによりサウザーが素手だった事に、その場の全員が、特に一度殺されかけたギーシュの思考が完全にフリーズしかけた。

「ほう、まだ杖を離さぬか。しぶとさだけはドブネズミ並みというところだな」
腕の腱も断ち切るべきだったかと思ったが、これはこれでいい。
窮鼠猫を噛む。こんな奴でも追い詰められれば何か面白い物を見せてくれるかもしれない。
モット伯にしてみれば、杖がなければモヒカン以下なのだからそれを手放す事などできはしない。
だが、モット伯が口にしたのは魔法の詠唱などではなく、サウザーの期待を大いに裏切るものだった。

「なな、何をしている!こ、殺せ!こいつを殺せ!」
力も技も持たず、己のみでは抗う事すらせぬ。
あんなガキですら、シュウへの愛ゆえに牙を突き立てたというのに。

「見るべきところもなく、与えられた権力に酔い痴れるだけのゴミか。ならば、汚物は消毒せねばならんな」
サウザーにとって権力とは己の力で奪い取るもの。
他人や親から与えられた権力など何の意味も持たない。

あえて言おう、カスであると!
189帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:47:37 ID:CIIHV19c
相応の実力があるならまだしも、無能が不相応の権力を持つようではこの国も底が知れる。
だから、這いずるようにして逃げるモット伯の頭を踏みしめた。
「ほう宮はらのひょく旨ではる、わらひに……!」
歯の二、三本は折れ、地面に押し付けられているため巧く発音できていないものの、まだ口だけは動くらしい。

ようやく衛士達がサウザーに武器を向けてきたが、そんな事でこの男が止まるはずはない。
「どうした!この男の命が惜しいのか?ならば武器を捨てよ!」
それは単純な脅迫。
モット伯を救いたければ武器を捨てろと言う。

「ほはえ達、いいはらふ器をふへろ!いいは、命へいら!」
だが、衛士達にしても武器を捨てるという事は、身を守る物を失うという事になる。
もっとも、武器があったとしても、サウザー相手にどうなるというわけでもないが。

それに、捨てたところでモット伯が解放されるとは到底思えなかった。
まして武器を捨てても捨てなくとも皆殺しにされる可能性の方が高いのだ。
従って、衛士達の取った行動は一つだった。

「な、何をひへいる!逃へるな!わらひを置いへいくは!」
モット伯を助けようと戦いを挑めば死ぬ。
武器を捨ててもモット伯は助かるかもしれないが、自分達は死ぬ。
ならば、残る選択肢は見捨てて逃げるしかない。

彼ら自身、モット伯に忠誠を誓っているというわけでもない。
むしろ、平民はおろか貴族の間でも『平民の少女を無理矢理手篭めにしている』と評判は悪い。
命を懸ける程立派な人物でもなく、情けをかけられるような相手でもない。
もちろん、見捨てて逃げたという事になるから、彼らがそのまま王宮に戻るという事もできないだろうが、王宮の衛士と言えど平民。
最悪、傭兵にでもなればいい。
丁度、アルビオンでは内乱が起こっており対立している両派が傭兵を集めている。
王宮の元衛士という肩書きがあれば、普通にやるより高く売り込めるかもしれない。
最初から失う物が少なければ、それを捨てる時の決断は早かった。

「くく……思ったより呆気なかったな」
以前も同じような事があった。
聖帝十字陵の視察に向かった時、レジスタンスに襲われた時だ。
銃を持った一人の男を同じように切り伏せ、残る二人に武器を捨てろと言った。
その時は人質への情けゆえか、武器を捨てる事も逃げる事もなかったので、情けの元を断ってやった。
二人だけでも逃げられたものを、情けがあるから命を捨てる事になる。
逆に言えば、モット伯に掛けられる愛や情けが無かったから見捨てられたという事だ。

愛も情けもかけられず、力も持たず権力に酔うだけの無能。
地面の男をこう評すると、サウザーが頭を潰すべく力を強めようとする。
それでも、何かが潰れるような音がする前にサウザーが足を退けた。
190帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:49:13 ID:CIIHV19c
「小僧。気でも触れたか?何の真似だ」
サウザーの後ろでは、さっきまで棒立ちにしていたはずのギーシュが杖を向けている。
「き、君が相手にしているのは、王宮からの勅使だ。それを手にかけるという事はトリステインを相手にするという事が分かっているのかい?」
別に杖を向けられたからと言っても、何の問題もない。
「知らぬな。仮に、この国が俺を倒そうとするのであれば迎え撃つまでだ」
サウザーが気に入っているのは、あくまでルイズという個人であって、トリステインという国ではない。
この国がどうなろうと知った事ではなく、興味も無い。

「ぼ、僕は代々名のある軍人を生み出してきたグラモン家の四男。ギーシュ・ド・グラモンだ。小僧じゃない!」
ギーシュがそう叫ぶと地面の土からワルキューレが練成された。
「君の強さは知っているし、僕が敵わないのも分かる!でも……!」
命を惜しむな、名を惜しめ。
これが代々伝わるグラモン家の家訓だ。

サウザーがトリステインを相手にするという事は、ギーシュが敬愛してやまないこの国の王女や
何より今のところ修復できてはいないが、一番愛しているモンモランシーの身が危ないという事になる。
「僕が愛する女性達を守らずに逃げたなんて言われるのだけは我慢できないんだ!」
わざわざ、達とか言うあたりモンモランシーに聞かれたら投げられる香水の量を増やされそうなものだが、居ないので置いておこう。

相変わらず両腕を下げたまま、サウザーがギーシュへと近づく。
当のギーシュはというと、震える両手で辛うじて杖を持っているような有様で、ワルキューレの制御もままならない。
半ば棒立ち状態のワルキューレを素通りすると、サウザーがギーシュの前へやってきた。

格好つけてみたけど、足が竦んで口の中は唾の一粒も出やしない。
死ぬ前に、ちゃんとモンモランシーに誤りたかったなぁ。

そう覚悟し、ギーシュが目を閉じる。
少しするとガシャリと、金属の音がして恐る恐る目を開けると見事に十字に寸断されたワルキューレがあった。
肝心のサウザーはと言うと、もう既に玉座の上へと座を移しており何時もの姿勢でギーシュを見下ろしている。
「ギーシュと言ったか。その木人形が貴様の姿だ。次は無いと思え」

愛のために戦うとは、面白い事を言ってくれる。
腑抜けだと思っていたが、一度へし折ったはずの心を蘇らせ、聖帝の前に立った。
モット伯など相手にするより余程面白い。

「出せ」
まだ先は長いが、いい退屈凌ぎにはなった。
再びトリスタニアへと奇怪な馬車が進んで行く。

治癒の魔法を使い、やっとの思いでモット伯が脚の怪我を治した時には、学院へ伝えるべき事や
この前見て気に入ったメイドを連れて帰ろうとした事は頭にはなく、素手で青銅を紙くずのように切り裂いた男への恐怖心だけが脳裏に刻まれていた。
191帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/05/17(日) 14:52:17 ID:CIIHV19c
ヒャッハー!投下した!
モット伯出した理由?モット伯イベントとか力こそ正義の人だから、絶対行かないよ聖帝様は。
御免。ザ・ニュー仕事がマジキツイ。
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:01:43 ID:ffejtkbe
乙ー

世紀末のモヒカンは身体能力が意外と高いからなぁ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:02:04 ID:nUqd1akG
ひゃっはー!!!!おつかれさまでしたァ!!!!
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:22:22 ID:Q2HL1P0j
聖帝様乙
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:29:57 ID:8t245Nof
ヒャッハー!聖帝様だぁー!ってか聖帝様に意見するとか、このギーシュマジ勇気あるな。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:34:42 ID:AoNBbi5i
しかし後始末が大変じゃね?って気もするが
ルイズが心労で倒れるな
197ウルトラ5番目の使い魔 第48話:2009/05/17(日) 15:43:42 ID:XQrm9BPJ
聖帝の方、GJ
これでこそ独裁の星、モット伯、運がいいのか悪いのか。

さて、こんにちは皆さん、それでは目標タルブで投下開始したいと思います。
今回も、使用レス数は11で、投下開始予定時刻は10分後の15:50です。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:44:48 ID:lurJfnH1
待ってました!支援!
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 15:48:35 ID:th+tkKFS
支援するのでありまするー
200ウルトラ5番目の使い魔 第48話:2009/05/17(日) 15:51:29 ID:XQrm9BPJ
 第48話
 一発必中!正義の一閃悪を撃て
 
 狼男 ウルフ星人 登場!
 
 
 怪獣ザラガスの撃破を得て、トリスタニアは歓喜の渦に包まれていた。
 
『トリスタニアを襲った怪獣、王立防衛軍の手によって撃破せり!』
 
 戦いを見守っていた人の口から口へ、噂はあっという間に街の隅々にまで伝染し、怪獣の脅威に怯えていた
人々は、興奮のままに勝利の美酒に酔いしれていた。
「なあ、あのすげえ炎見たかよ。なんでも魔法アカデミーが開発した新兵器らしいぜ」
「ああ、なんと魔法衛士隊のグリフォン隊が、危険を承知で怪獣の体に直接取り付けたらしい」
「それでよ。そのグリフォン隊に同乗していた、アカデミーのエレオノール・ド・ラ・ヴァリエール女史がさ、
見たけどこれがまたすげえべっぴんでな」
「だったら、隊長のワルド子爵ってのもたいした美男子なんだろ、んったくうちのかかあが見惚れちまって
困ったもんだ」
 平民の間にも、エレオノールとワルドの名はすでに知れ渡っていた。これは、この機に乗じて貴族の威信を
回復しようと考えたマザリーニ枢機卿が独自に行動して噂を流させたのである。
「貴族なんて口ばかりの愚図ばかりと思ってたけど、ちったあやるものだな。うちの子なんか、大きくなったら
グリフォンに乗って戦うなんて言い出して、平民じゃ魔法衛士にゃなれないっての」
「いいや、なんでも軍では平民を集めた幻獣の部隊も企画しているらしい。他にも、軍で手柄を立てたものは
貴族に取り立てたり、学のあるものに官職を与えてくれたりもするらしい」
「おいおい、そりゃいくらなんでも冗談だろ。トリステインじゃ法律で、平民は官職についたり領地を持つのを
禁じてるじゃないか」
「その法律が変るそうだ。なにより平民出身の銃士隊って例があるじゃないか、姫殿下はあれをもっと拡大
なさるらしい。文句を言う貴族どもも、今じゃすっかり数を減らしたし、なにより姫様に圧倒的な支持がある」
 マザリーニの流言操作はさらなる方面でも効果を生んだ。彼が流させた噂はひとつではなく、アンリエッタが
考えている改革のいくつかの草案も混じっていたのだ。案の定、それは明るいニュースに明るいニュースが
重なることで、人心をよい方向へと促していく。マザリーニは普段あまり表には出てこないが、こういう
アンリエッタの考えの及ばない影の仕事で改革を支えていた。
「そりゃすごい、俺も軍に志願してみるかな……」
「お前じゃ無理だろ。それよりも、あの怪獣の死骸、見に行ってみないか?」
「よし、じゃあ行くか」
 黒こげとなったザラガスの死骸は、今やトリステインの名物になりかけ、大勢の人目を集めている。
とはいえ、生物の死骸はいずれ腐るので近々排除されるだろう。しかし今は、これを利用して初めて防衛軍が
怪獣を倒したことがここぞとばかりに喧伝され、これまでに失った威信を一気に取り戻そうとしていた。
 
 
 一方、王宮では一躍英雄となったワルドとエレオノールが、アンリエッタ姫から直々にお褒めの言葉をいただいていた。
201ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (2/11):2009/05/17(日) 15:53:46 ID:XQrm9BPJ
「ワルド子爵、お見事な活躍でした。あなたの活躍は、この国の歴史に深く刻まれ、語り継がれていくことでしょう」
「もったいないお言葉です。姫殿下」
 アンリエッタの祝福の言葉に、ワルドは後ろに控えたグリフォン隊の隊員たちと共に恭しく跪いて頭を垂れた。
「ミス・エレオノール、今回は貴女方アカデミーの協力があってこその勝利でした。しかも学者の身をおしての
前線参加、その勇気と功績はすばらしいものでした。あれほどの兵器をもう一度作れないのは惜しいですが、
その知力をこれからもトリステインのためにお役に立てていただけますか」
「姫殿下のお心のままに、微力を尽くさせていただきます」
 ワルドと並んでエレオノールも、救国の英雄の一員として栄誉を受けていた。なにせ、やっと掴んだ勝利である、
王国としては国家の求心力を回復するためにも、この機会を最大限に活かさなければならないために、多少
大げさにでもこのことを宣伝しなければならない、その点この二人は絶好の広告塔で、これから姫とともに
パレードやパーティに出席することになる。才人などだったら嫌がるだろうが、貴族にとっては名誉なことなので、
今日一日注目の的となるだろう。
 ようは国威発言と戦意高揚のために利用されるということで、傍目にはあまりきれいに見えないが、戦争に
強いのは大体こんな国である。ろくでもない話でしかないが、悪に対抗するためには善だけではだめである。
そうなると、こちらも悪に染まることになると背反することになるのだが、この人間世界というもの自体が神の
世界には程遠い欠陥機械であるのだから、例え歯のかけた歯車や、濁った潤滑油でも止まらせないためには
使わなくてはならないのだ。
「ワルド子爵、数日後にはアルビオンに使者として旅立つあなたが、このような戦果をあげえたとなれば、
よい土産話になるでしょう。あなたのような貴族の鏡のような方を得られることは、わたくしにとってこの上ない
誇りですわ」
「私は殿下のいやしい僕にしかすぎません」
 あらためて恭しく跪いてワルドは礼を返した。しかし、人に見られないように下げたその口元が、なぜか
うれしさとは別の形で歪んでいたのを、隣にいたエレオノールはちらりと横目で見て、姫様から祝福されている
というのに、何を不謹慎な顔をしているのだと不審に思っていた。
 ただ、今回多少ワルドを見直したのも確かである。やってみてわかったことだが、あの火石を正確に風石の
防壁と釣り合いが取れるタイミングで起爆させるには、母の言ったとおり自分くらいに魔力の微調整が
利くメイジでなければならなかった。もし、ワルドやその他の騎士に任せたらトリスタニアごと消し飛んで
いたかもしれない。まぁ、自分も火石の火力を読み損なって、エースに怪獣を上空に投げ飛ばしてもらわなかったら
半径200メイル四方が吹き飛んでいただけに大きなことは言えないが、一応、怪獣の元まできちんと運んで
もらったことには感謝している。
 とはいえ、実はワルドにはほかに選択肢がなかったとも言える。風の系統の上級スペルには、空気の
塊で自分の分身を作って遠隔操作するものもあるのだが、最初の作戦の打ち合わせのときにワルドは
それを使って陽動しながら安全に爆弾を運ぼうと言って、起爆はエレオノールがやるのに、自分は女性に
危険な仕事をさせて安全なところにいる気かと、即座に却下。ならばエレオノールは自分が運ぶから
陽動に分身を当てようと言って、部下に身を張らせて隊長が分身にやらす気かとこちらも却下、くだらない
ことに精神力を浪費するよりエレオノールの護衛に全力を尽くせ、死に急ぐのも愚かだが、わが身の安全を
第一に考えるような指揮官の下で、自殺志願者と自己陶酔家以外の誰が命がけで戦うものか、そんな
部下しかいないから弱いんだと、『烈風』直々にこってり絞られていたのだった。
202ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (3/11):2009/05/17(日) 15:56:40 ID:XQrm9BPJ
 けれど、ワルドの態度を不愉快に思っても、今は姫様のお話の最中である。余計な方向に行きかけていた
思考をすぐさま元に戻して、エレオノールはアンリエッタの話に耳を傾けた。
「さて、お二人とも顔を上げてください。あなた方は大変な栄誉をあげましたが、形あるものでの報酬も必要
ですわね。まずはミス・エレオノール、アカデミーの研究費用を、年間500エキューの増額が認められました。
わずかですが、助けになれば幸いです」
「感謝の極み……1ドニエたりとも無駄にはいたしませぬ」
 研究機関であるアカデミーには、研究費用の増額は素人が余計な援助をする以上に助けになるだろう。
施設、研究材料、資料、その時々に応じて増やすことができる。
「また、ワルド子爵、あなたにも特別に便宜を図らせていただきました」
「わたくしごときのために、もったいないことです。それで、いかように?」
 あくまで紳士的に礼を尽くすワルドにアンリエッタもにこやかに笑い、軽く手を二回叩くと、玉座の後ろの
カーテンの陰から、肩に小さな文鳥を乗せた麗人が姿を現した。
「賞品は、わたくしです」
「……は?」
 公爵夫人の唐突な言葉に、ワルドだけでなくエレオノールやグリフォン隊の隊員たちも、その意味を量りかねて
数秒間自失の海を泳いだ。しかし、特に頭の回転の速い二人、当然ワルドとエレオノールが理解という岸辺に
たどり着いたときの反応はそれぞれ異なっていた。前者は驚愕と底知れない恐怖、後者は歓喜と愉悦に。
「喜んでください。貴方方の素質を見込んで、この『烈風』カリン殿が、専属の教官となってくださることを
承知してくださいました。かつてトリステイン最強とうたわれたお方の指導を受けて、より素晴らしい部隊に
生まれ変わったグリフォン隊の姿を、わたくしは期待しています」
「姫殿下のたっての頼みで、お前たちを鍛えてやることになった。今回は勝ったが、魔法衛士隊の練度が
いちじるしく低いのが確認できた。とりあえず一ヶ月間、そのたるんだ根性を叩きなおしてやるからそう思え!」
 もうそのときに、ワルドを含めてグリフォン隊で勝利の高揚感を残している者は誰一人存在しなかった。
かつて最強とうたわれた30年前のマンティコア隊、しかしその訓練は苛烈で"実戦では誰も死なないが、
訓練で皆殺しにされる"とさえ言われた恐ろしさで、新入隊員の100人のうち99人が三日で脱落すると
恐れられていた。なにせ、隊員たる最低の条件が"隊長の使い魔ノワールについていける"であるから
その厳しさがわかるだろう。現在のマンティコア隊の隊長、ド・ゼッサール卿がその当時の隊員の一人だが、
「当時は一日に半分が脱走した。翌日には片手で数えられるほどになっていた。三日後にあの方の目の前に
いるのは私一人になっていた。今、私はあの方のいた地位を預かっているが、同じことはとてもできない、
なぜかって? 私は人を生きたまま殺すなどという器用なことはできないからな」と、苦笑混じりに語っている。
ただし、彼はベロクロン戦でほぼ壊滅した3つの魔法衛士隊のうちの数少ない生き残りとなり、今はその
再建に努力しているから、彼が『100人のうちの一人』になれた成果は老いてなお活かされているのだろう。
「こ、光栄でございます……」
 全身からこれ以上ないくらいに汗を噴き出しながら、乾ききった喉からやっとのことでワルドは言葉を
搾り出した。あの『烈風』のしごきの恐ろしさは、幼い頃から間近で見てきた彼が一番よく知っている。
しかも、今は代員はいないから脱落は許されないだろう。
 エレオノールは、そんな血の気を失いきって死人のように見えるワルドを横目で見て、「あの弱虫ジャンが
どこまで耐えられるかな?」と、意地の悪い愉悦に笑いをこらえるのを苦労していた。
203ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (4/11):2009/05/17(日) 15:58:52 ID:XQrm9BPJ
 だがそれにしても、お母様が本気で戦うのは初めて見たが、子供の頃お父様から聞かされたお母様の話は
本当だった。それまでエレオノールは『烈風』の伝説を、かなり誇張されたものだと思っていたのだが、それは
誇張でもなんでもなく、単なる事実であった。それはよいのだが、お母様は現役を退いてから30年も過ぎた
というのにこの強さ、もしそのまま現役に居続けたとしたらどれほどの伝説を増やしたのか、結婚を期にと
とは言っているが、自分なら結婚しても引退などしない、いったい30年前に何があったのかと、彼女は
自らの母の知られざる過去に思いをはせた。
 
 
 そんな騒ぎも日が暮れて沈静化し、才人とルイズも妖精亭の2階で借りた部屋で休みをとっていた。
「やれやれ……今日も大変な一日だったな」
 ベッドの上に並んで腰を下ろして、才人がやっと休めると息をついた。怪獣が倒され、近隣の町々から
集められてきた医者や、姫殿下の命で民衆の治療に駆り出された水系のメイジたちによる診療も一気に進み、
二人も治療を受けることができた。もっとも、エースのおかげで回復は常人を超えているのだが、一応人に
見せるときのために目にはまだ包帯をしている。
 ともあれ、明日からはまた気楽な旅行の続きだ。明日に備えて早めに寝るかと、才人がベッドに横になろうかと
思ったとき、ぽつりとルイズが話しかけてきた。
「ねえサイト、最近あたし、少し思うことがあるの」
「ん?」
 藪から棒にと思ったが、ルイズの真剣な口調は才人の眠気を一時的にも払う作用があった。
「それで、なんだよ」
「ウルトラマンAのことよ」
「えっ?」
「正確には、エースも含めてこの国と世界、そして、あたしたちのことよ。思えば、この数ヶ月でハルケギニアは
大きく変わった、いえ変りつつあるわ。ヤプールの侵攻と、その影響で目覚めた怪獣達によってね」
 変った、か。そういえばルイズに召喚されたときと今では、この世界の印象が違って見える気がしなくもない。
端的に表現すれば、あのときに比べてこの世界は大きく動いている。一般レベルで言えばあまり変化は
見られないだろうが、世界は新たに、そして強引に流入してきた新たな概念、危機、存在によって、まるで
人体が侵入してきたウィルスに抗体を作ろうとしているかのように変動している。平民部隊である銃士隊の
設立、アンリエッタの数々の改革がそれに当たるだろう。
「そんな中で、あたしの存在はなんなのかって……これまであたしは魔法が使えない、"ゼロ"としてさげすまれ、
魔法が使えるようになることが最大の望みだったけど、超獣の前にはあたしが欲し続けた魔法もまるで無力だった」
 ルイズの独白を、才人は黙って聞いていた。返事はしない、まだそれを求められてはいない。
「笑っちゃうでしょ、死ぬほど欲しがっていた宝石が、実はガラス玉だと知ったときの気分は……けれど、代わりに
比較にならないほど強大な力を手に入れた。いえ、貸してもらった」
 自嘲を言葉のうちに混ぜ、ルイズの独白は続く。
「それからは、しばらくは自分がゼロだっていうことを忘れることができた。いいえ、魔法なんて無力なものだって、
自分をごまかしていたのかも……けれど、ウルトラマンの力で負けて、魔法の力が敵を倒した。わたしは本当は
何もできないゼロのままじゃないかって、何にも変れてない、借り物の力で自惚れて、たまたまあのとき
選ばれただけで、力のないわたしは無価値なゼロなんじゃないかって……急にそう思ったのよ」
204ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (5/11):2009/05/17(日) 16:00:00 ID:XQrm9BPJ
 そういうことか、才人はルイズの悩みを理解した。最初この世界に来たとき、魔法を使えることが絶対の価値観と
されるこの世界で魔法の使えないルイズは、大勢から蔑まれていた。そのときの劣等感と孤独感が、敗北で
一気に噴き出してきたのだろう。
 力の無い苦悩か……才人の脳裏に、テレビや映画、漫画や小説で見た、かつて地球を守るために戦った大勢の
人々と、彼らを助けてくれたウルトラマンたちの長い戦いの記憶が蘇ってくる。国語の教科書やドラマのように
気の利いた台詞は言えないかもしれないが、ここで黙っていては男の名折れだ。十数秒の沈黙の後、自分なりの
答えを出した才人は、黙って自分の反応を待っているルイズに話しかけた。
「なあルイズ、お前ロングビルさん好きか?」
「は? あんた何言ってるの、ここのオカマ気にあてられておかしくなっちゃった?」
「誰がそんな方面の話してるよ、人間として好きかと聞いてるんだ?」
「え……そりゃあ、最初は信用できなかったけど、今じゃ改心して真面目に働いてるみたいだし、それなりには」
「じゃあ、土くれのフーケは好きか、嫌いか?」
「嫌いに決まってるじゃない。貴族の名誉を散々貶めてくれた盗賊よ、途中からヤプールに操られてたとしても、
許せないわ」
「けど、フーケは土くれと恐れられたすごいメイジだったけど、今のロングビルさんは魔法が使えない。同じ人なのに
どうして片方好きで、片方嫌いなんだ?」
「そ、そりゃあ……」
 ルイズが口ごもると、才人は口調に笑いを込めて続けた。
「そんなもんだよ"力"なんてさ、すげえ奴はすげえと思うけど、スクウェアメイジの盗賊なんてお前もなりたいとは
思わないだろ。もしもだけど、お前がトライアングルやスクウェアを鼻にかけて、平民をいじめて楽しむような連中と
同類だったら、メシが喰えなくてもとっくにおれはお前のところから出て行ったね」
「なによ、使い魔かご主人様を見捨てたって言うの?」
「おれは人間だからな。それに、おれは小さい頃からウルトラマンが好きだった。マン、セブン、ジャック、エース、
タロウ、レオ、80、メビウス……ほんとにかっこよかったし憧れた。けど、それはかっこよさや強さだけじゃない。
ウルトラマンより強い怪獣や宇宙人なんていっぱいいた。けど、そいつらよりおれはウルトラマンが大好きだった。
ウルトラマンは力を誇示しない、けど誰もがウルトラマンを知っている。それは常に誰かのために、傷ついても
あきらめずに全力で立ち向かっていくから、みんなの心に響いたんだ」
 ウルトラ兄弟は、地球のためにその身を投げ出して戦ってくれた。いつの時代も、その心に報いようとする人々が
人類を成長させてきた。
「力は、扱う人の心しだいだって、そう言いたいの?」
「そうとってもらってもいいよ。ただ、ロングビルさんも言ってたろ、魔法の使える盗賊と使えない賢人のどっちが
いいかってさ、悪事に使うようなら力なんか無いほうがいい」
「けど、わたしは力を持って姫様やトリステインのために尽くしたいの」
「それは、お前しだいだからおれのどうこう言うことじゃない。ただ、こないだお姫様がお前のことを覚えていたのは、
魔法の有無とは関係ないと思うけどね」
 まあ、俺もウルトラ兄弟の記録や、少し前まで連日放送されていたメビウスの活躍を見続けていなければ
こんな考えは持てなかったかもと思いながら、才人は考え込むルイズにそれ以上の自論を吐くのはやめておいた。
自分では正しく思えても、それを他人に押し付けるのは傲慢というものだ。ヒントや手助けはあってもいいが、
最終的な答えは自分自身で出さなければ、それを信じることはできないだろう。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:01:01 ID:th+tkKFS
いやぁ!
逃げて!ワルド逃げてェ! 支援
206ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (6/11):2009/05/17(日) 16:01:05 ID:XQrm9BPJ
「ま、別に期限がある問題じゃない、のんびり考えればいいさ」
 ルイズに聞こえないように、口の中だけで才人はつぶやいた。えらそうなことを言いはしたが、元々テストで
100点を狙うより赤点を回避するほうに脳みそを使うタイプである。ルイズが変な方向に行こうとするなら
止めはしようと思うが、どう考えてどう行動するかにいちいち文句をつける気はない。
 
 けれど、二人がそうしてそれぞれの考えをぶつけていると、耳に学院でも聞きなれた軽快な足音が近づいてくる
のが聞こえた。
「サイトさん、ミス・ヴァリエール、お夜食いかがですか?」
 どうやらシエスタがスープか何かを持ってきてくれたようだった。
「ありがとう……けど、見えないんじゃちょっと食べづらいかな」
 話すのを中断してスプーンを手探りでとったが、才人はちょっと困ってしまった。
 完全に目隠しされた状態でスープは難しい。せめてパンとか手づかみできるものだったらありがたかったのだが、
慣れない状態では火傷しかねない。ルイズなどは「使えないメイドね」と怒っているが、シエスタは思いもかけない
ことを言った。
「はい、わかってますけどあえてスープにしてもらったんです」
「へ? んじゃあ……」
 なんでわざわざ食べにくいものを持ってくる? と二人が疑問に思ったとき、彼女のかぐわしい香りが才人の
隣に来て。
 
「はい、あーんしてください」
「えっ!?」
 
 と、永遠のパターン。なお、その0コンマ1秒後。
 
「ふざけるなーっ!!」
「うぉーっ!! あっちーっ!!」
 
 ルイズのアッパーカットが才人のあごにクリーンヒット、熱々のスープを巻き込んで才人は天井まで
吹っ飛ばされると、そのまま頭から床に突っ込んだ。
 
「まあ! ミス・ヴァリエール、いきなり何をするんですか!」
 シエスタが火傷しそうな才人に駆け寄って、冷たいお絞りで拭こうとするのを、ルイズはすっくと立ち上がって
見下ろし、いや、見えないのだが、見えているように真正面に立って怒鳴った。
「これはこっちの台詞よ! ちょっと気を緩めると人の使い魔を誘惑しようとして……あんたも、こんなのにデレッと
してんじゃないわよ!」
「お……おれはまだ何もしてないだろ。つうか、見えないのによく殴れるなお前」
「勘よ、勘!!」
 心眼でもあるのかお前は、今のルイズならネロンガだろうがバイブ星人だろうが見つけられそうだ。
 
 そんな様子を、スカロンとジェシカの親子はドアの影からじっと見ていたが、あの元気なら大丈夫そうねと
安心していた。それにしても、シエスタはせっかく男を魅了するいい方法を教えてやったのに、タイミングが悪い。
多分見せ付けたかったのだろうが、ああいうことは相手が一人のときにやって、邪魔されずに心を奪うべきなのだ。
 
 そして、そんな騒々しくも平和な時間はあっというまに過ぎ、翌朝旅立ちの時は来た。
 
「んじゃあ、また来るよ」
 スカロンとジェシカたちに店の外まで見送られて、一行は名残惜しいが世話になった妖精亭を後にした。
207ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (7/11):2009/05/17(日) 16:02:07 ID:XQrm9BPJ
「気をつけてね。また来たらサービスしてあげるよ。サイトくん、今度はシエスタとデートかな?」
「いっ!?」
 突然デートなどと言われて慌てる才人にシエスタが後ろから抱きつき、頭をルイズが押さえつける。
「サイトさーん、帰ってきたら今度は二人で来ましょうね。わたしが腕によりをかけてお料理しちゃいますから!」
「ちょっとメイド! サイトはあたしの使い魔なの、あたしに許可なく連れ歩かせないわよ」
 また例によってである。ジェシカはそんな三角関係を見てカラカラと笑った。
「じゃあさ、今度来たら二人ともうちの仕事着でサイトくんに接待対決でもやる? きっと二人ともよく似合うと
思うよ」
「ええっ!?」
「望むところです!」
 ジェシカのなかば本気のからかいを真に受けた二人がわかりやすい反応をするのを見て、一行はさらに
おかしそうに笑った。なお、才人はこの店のきわどい衣装を着たルイズとシエスタがおれのために……と、
不埒のことを考えて顔をにやけさせたためにルイズに蹴り飛ばされていた。
「さて、二人ともサイトくんをいじめるのはその辺にしておきなさい。ここにはまた帰りにみんなで寄らせてもらいましょう」
 やっとロングビルに仲裁されて、ルイズとシエスタはようやく悶絶している才人から離れた。ジェシカはそんな
才人を見て、もてる男はつらいねえと人事のように言っているが、才人には聞こえていない。
 しかし、二人は忘れていたが、才人の女難の相はこんなものではない。
「もーダーリンったら乱暴な人にからまれてかわいそう。この微熱が慰めて、あ・げ・る」
「あーキュルケおねえちゃんずるーい、サイトおにいちゃんは将来アイがお嫁さんになってあげるんだもんね!」
 と、学院一のナイスバディの持ち主と、10歳にも満たない幼女に抱きつかれて、才人は意識を回復できない
ままに、またルイズに頭を踏みつけられて自分の状況を知ることもできずに死線をさまよう。
 ただ、ルイズが怒っているのにこっちは平然としているシエスタを見て、ジェシカが不思議そうに言った。
「あらシエスタ、あなたは怒らないの?」
「あの二人はいいんです。ミス・ツェルプストーはミス・ヴァリエールをからかって楽しんでるだけですし、アイちゃんは
お兄さんのことが好きってことですから」
 なるほど、こういう点ではシエスタのほうが多少経験値があるようだ。
 けれど、油断していたら思いもよらない相手に足元をすくわれることにもなりかねない。さて、誰が勝つことやら。
のんびりと我関せずと見ているタバサだけが、蚊帳の外から嵐を見ていた。
 と、そのとき屋根裏部屋のほうからルイズの爆発にも劣らない爆発音がして、窓から煙といっしょにドル、ウド、
カマの三人組が顔を出した。
「ごほっ! ごほっ! あーっ、コが、ごほっ! おンがぁ!」
「げほっ! だから無理だって言ったのに、ここはもうダイ、げほっ! もいないんだし平和に過ごしましょうよ」
「がほがほ……あー、サイトくーん、もう行っちゃうのぉ、お姉さんざんねーん、また来てねーっ!!」
 その野太いオカマの声で、才人の意識は一気に目覚めた。
「はっ、お、おいお前ら、さっさと行こうぜ!!」
「あっ、ちょっと、サイト待ちなさいよ!! まだ話は済んでないんだから!!」
 慌てて駆け出した才人を追ってルイズも走り出し、一行も苦笑しながら後を追う。
「やれやれ、じゃあ失礼します。お世話になりました」
「どういたしまして、これからも『魅惑の妖精亭』をごひいきに」
 スカロンとジェシカ、そして店員の女の子たちの笑顔に見送られ、一行は元気よくトリスタニアを後にした。
 
 
 タルブ村はトリスタニアから早馬で2日、馬車でなら3日ほどかかる距離にあり、一行は途中の宿場町で
3泊しながらのんびりと旅を続け、3日目の昼ごろにこれを越えたらタルブ村が見えてくる森の中までやってきた。
208ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (8/11):2009/05/17(日) 16:04:18 ID:XQrm9BPJ
「もうすぐです。久しぶりだなあ、みんな元気にしてるかなあ」
「楽しそうだね、まあ故郷に帰るんだから当然か」
 見るからにはずんだ表情のシエスタを見て、才人もうれしそうに言った。彼女はこれから向かう村の出身で、
出稼ぎのために魔法学院にメイドとして奉公している。今回は久しぶりの里帰りなのだった。
「いいところですよ。小さな村ですけど、みんないい人ですし、いろいろ名物がありますから」
「名物か、楽しみだな。そこで一泊して、明日の昼ごろにすぐ近くのラ・ロシュールって港町から船に乗る
んだったな、けど、せっかくの里帰り、そのままついてきてもらってよかったのか?」
「大丈夫です。お休みは長いですから、帰ってきてからゆっくりお休みをもらいます。それに、せっかくの
旅行に仲間はずれはいやですから」
「そうか、ま、シエスタがいないと寂しいしな。名物か、楽しみにさせてもらうよ」
 馬車に揺られながら、才人は名物料理かなにかがあるのかなと、気楽に考えて森の風景に目をやった。
 
 だが、いざ森を抜けてタルブ村の入り口に差し掛かったとき、村から炊事のものとは明らかに違う白煙が
あがっているのを見て、一行はどうもただ事ではないことを悟った。
「なんだ? 火事か!?」
「ともかく急ぐわよ、はっ!!」
 ロングビルが馬に鞭をいれ、馬車は速度を増して村の中へと急ぐ。
 そして、村の中央広場が見えたとき、一行はそこで人間ではない犬のような頭をした怪物の群れが
村人を襲っているのを発見した。
「コボルド!?」
 それは、ハルケギニアに生息するいくつかの亜人の一種で、身長は1.5メイルほどとトロール鬼ほどの
大きさはないが、猿程度の知能を持ち、俊敏さと棍棒を武器にしての集団戦法を得意とする。オーク鬼や
ミノタウロスなどに比べれば、亜人の中では危険度は低いほうに入るが、翼人のように人間との共生が
望めるような平和思考はまったくなく、こいつの大群に襲われたせいで全滅させられた村もある。
 要するに、この世界特有の害獣で、たまに人里に下りてきて人をさらったり略奪をおこなったりする。
ざっと見るところ、数はおよそ三十数匹。
「野郎!!」
 嬉々として無抵抗な村人に襲い掛かるコボルドの群れを見て、才人は迷わず飛び出した。背中の
デルフリンガーを引き抜き、左手のガンダールヴのルーンを輝かせて疾風のように駆けていく。
「やるぞデルフ!!」
「おお!! やっと俺の出番か、待ってた、待ってたぜ!!」
 歓喜に震えるデルフリンガーを振りかざし、渾身の力で一人の村人に棍棒を振り上げていたコボルドの
一匹に斬りかかり、犬の鳴き声とともに血飛沫が舞い上がる。
 しかし、仲間を倒されたことを知った近くにいたコボルドたちは、犬特有の素早い動きで集まってきて
才人を取り囲んでくる。敵の武器は棍棒だけなのだが、意外と戦いなれているようで正面からでは
ガンダールヴで強化された才人でも簡単にはいかない。
「ちっ、しぶといな」
 2、3匹を切り倒したものの、才人はさらに襲い掛かったくるコボルドの攻撃をかわし、仲間の危機を見て
取ってどんどん集まってくる他のコボルドにも意識を向けざるを得なくなった。30対1ではいくらなんでも分が悪い。
しかし、仲間の危機を見て取ったのはコボルドだけではなかった。
『フレイム・ボール!!』
『ウェンディ・アイシクル』
 ようやく追いついてきたキュルケとタバサの援護攻撃が、才人に向かっていた5匹のコボルドを
焼き尽くし、串刺しにして撃破した。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:04:54 ID:th+tkKFS
あ、新マンじゃなくてジャックなんだ
210ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (9/11):2009/05/17(日) 16:05:12 ID:XQrm9BPJ
 けれども、コボルドたちのほうも長年の経験から、メイジがあまり強力な魔法を連射できないのは
知っており、今がチャンスと20匹ほどがいっせいに二人に襲い掛かっていく、才人は所詮人間の
剣士だからと5匹ほどが足止めに残されて、二人の援護には向かえない。だが、キュルケとタバサも勝算なく
正面から出てきたわけではない。そのとき、二人よりやや遅れて追いついてきたルイズがいつもの魔法を唱えた!!
『連金!!』
 突然コボルドどもとキュルケたちの間の地面が爆発を起こして、巻き上げられた土煙と爆風が煙幕のように
周囲を闇に閉ざす。こうなっては、人間以上の俊敏さを持つコボルドも動きを止めざるを得ず、犬並みの
視覚と嗅覚も役に立たない。
 そして、爆風が晴れたとき、コボルドたちは標的としていた3人のメイジがいなくなっているのに
気づいて、首を回して周囲を探し回ったが、その相手を自分たちの頭上に見つけた時にはすでに彼らの
黄泉路への門は開いていた。
「さようなら」
「タバサ、思いっきりやっちゃって!!」
「『ウェンディ・アイシクル』」
 コボルドどもの頭の上からシルフィードに乗ったタバサの氷の魔法が、無数の氷の矢を雨と降らせ、
20匹のコボルドの群れは一瞬にして昆虫標本同然の姿となった。
「よっしゃあ、さすがタバサ! それにルイズ、ナイスアシスト!!」
「はっ、感謝しなさいよ。このあたしがあんたなんかに力を貸してやったんだからね!」
「……素直じゃない。でも、グ」
 生き残っているものがいないのを確認して地上に下り、3人は作戦大成功と笑った。
 やったことは単純だ。ルイズの爆発で煙幕を張った間にキュルケが二人を抱えて『フライ』でコボルドどもの
真上に飛んで上空で待機していたシルフィードと合流し、奴らがこっちを見失っているうちにタバサの詠唱を
完成させただけである。だが、それぞれの役割分担をする者が仲間のことを信頼していなければ、この連携は
成り立たない。その点、腐れ縁とはいえ付き合いの長い彼女たちは自然と自分が何をすべきなのかを心得ていた。
 ただ、ルイズはこの戦いの中で、自分が武器として自然と『失敗魔法』を使っていたことに、あとから気づいて
少々複雑な思いを抱いていた。それは、自分が忌み嫌っているものが、すでに自分の一部となっていることを
知らされることとなったが、同時にならばあのとき飛び出さずにサイトたちを後ろから見ていたら、と思うとそれを
憎みきれないこともあった。
 悪事に使うなら、力なんか無いほうがいい。だったら、いいことに使うのならこんな力でも意味があるのか? 
 サイトと話したことを、自分の中で自問自答しながら、ルイズは考えていた。
 
 一方、才人の足止めに残った5匹のほうも、数が半減してはツルク星人、テロリスト星人などの戦いを
潜り抜けてきた才人の敵ではなかった。
「まったく、俺をなめるな!!」
 圧倒的な瞬発力でコボルドたちの包囲陣を抜け出した才人は、囲まれないようにしながら一頭ずつ確実に
仕留めていった。そして数の優位を失えば、人間以上の力の持ち主のコボルドとてこの面子には歯が立たない。
残ったわずかなコボルドはやけくそで棍棒を振り回すが、キュルケとタバサによってあっという間に全滅させられた。
211ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (10/11):2009/05/17(日) 16:06:42 ID:XQrm9BPJ
「サンキュー、ナイスみんな」
「んっとに、いつも人の無茶を止めるくせに、自分は真っ先に飛び出て行くんだから」
「まったく、急に飛び出していくから追いかけるのに苦労したじゃない。けど、かっこよかったわよ」
「……いい作戦だった」
「うーむ、俺っちも久しぶりに使ってもらえてうれしかったぜ。あーすっきりした」
 叩き潰したコボルドどもの死骸を見下ろしながら、4人と一本は勝利を喜び合った。
 だが、そのとき後を追ってきていた馬車からロングビルの声が響いた。
「皆さん!! まだ一匹残ってる、逃げるわよ!!」
「なに!?」
 見ると、村の反対側から隠れていたのか一匹のやや大柄などす黒いローブをつけた獣人が森のほうへと
逃げていく。身なりから見て恐らくあれがボス格、コボルドの中でも高い知能を有するというコボルド・シャーマンだろう。
 だがそんなことより、逃げていく奴の両手には子供が二人抱えられているではないか!!
「誰かーっ!! 助けてーっ!!」
「お姉ちゃーん!!」
 その二人の顔を見て、シエスタの表情が凍りついた。
「スイ、ヒナ!!」
 なんと、その子供達はシエスタの妹たちだった。このまま森に逃げ込まれてしまっては、もはやメイジでも
追いつくことはできない。そうしたら、あの二人は人間の肝を神への供物に好むというコボルドの餌食にされてしまう。
「誰か! あの二人を助けて!!」
 シエスタの絶叫が響く。キュルケとタバサは飛び出し、威力を抑えてコントロールを重視した『ファイヤーボール』と
『エア・ハンマー』を撃つが、あのコボルド・シャーマンは恐ろしく足が早いうえに俊敏で、攻撃をことごとく
かわして森へと走る。二人は焦ったが、追いつこうにももうフライでも間に合わないし、広域破壊の魔法では
子供達まで確実に殺してしまう。
 しかし、そのとき才人はデルフリンガーを背中の鞘にしまい。懐からにぶい輝きを持つ一丁の銃を取り出した。
距離はおよそ200メイル、フリントロック式のハルケギニアの銃では到底とどく距離ではない。だが、それは
この世界の貧弱な骨董品とは訳が違う。才人は両手でしっかりと狙いを定めて、迷わずその引き金を引いた。
 刹那、青い一筋の閃光が走り、コボルドの頭部が一撃で撃ちぬかれ、その体が森を間近にして前のめりに
崩れ落ちた。才人の持つ切り札、異世界の光線銃、ガッツブラスターの一撃が決まったのだ。
「よっしゃ!」
 見事に射撃がヒットしたのを確認した才人は、ガッツブラスターを指でクルクルと回して懐のホルスターに
戻した。この光景をエースが見ていたら、以前TACで二丁拳銃の名手と呼ばれていた仲間のことを思い出していた
だろう。ガンダールヴで強化されるのは射撃もで、その恩恵を才人は存分に活用していた。
「おーい、大丈夫か!」
「うん、ありがとー!」
 叫ぶと、コボルド・シャーマンに捕まっていたシエスタの妹たちが元気そうに駆けてくる、どうやら無事なようだ。
 やがて、村から追い立てられかけていた村人たちも、コボルドどもが突然やってきた見慣れない戦士たちに
全滅させられたと知るや、続々と広場のほうへと戻ってきた。
「お父さん、お母さん、無事でよかった!!」
「シエスタ、シエスタじゃないか!」
 最初は警戒していた村人たちだったが、シエスタが真っ先に出てきて彼女の両親と抱き合うと、それで警戒心を
解いて一行を歓迎してくれた。
212ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (11/11):2009/05/17(日) 16:10:56 ID:XQrm9BPJ
 なんでも、いつもどおりに生活していたら突然コボルドの群れが現れて襲ってきたのだという。幸い気づくのが
早く、ほとんどの村人は退避できたが、家の中で遊んでいた幼いシエスタの姉妹は逃げ遅れてしまっていたが、
本当に偶然に最高のタイミングでやってきた一行のおかげで、誰一人犠牲者を出さずに解決することができた。
だがそれにしても、このタルブ村は交通の要衝であるラ・ロシュールにも近く、凶暴な亜人も警戒して滅多に
近づかないというのに、やはりヤプールのマイナスエネルギーが自然に影響を与え、ハルケギニアの生態系が
狂わされ始めているのだろうか。
 そう思いかけたとき、村人が才人が倒したコボルド・シャーマンの死骸を広場のほうへ引きずってきた。
あのまま放っておけば血の臭いをかぎつけて別の猛獣が来るかもしれない。見れば、さっきは後姿しか
見れなかったが、そいつは鳥の羽や獣の骨でできた仮面をつけ、まるでインディアンの酋長のような姿を
していた。コボルド・シャーマンはその名の通りにコボルドの神官で、彼らの神と交信して群れを統率する
役割を持つ。
 だが、よくよく観察してみれば、そのコボルド・シャーマンは他のコボルドと細部が違っていた。まず、
体格が通常のコボルドなら普通の人間より少し小さい程度だが、そいつは身長2メイル近くある巨体だった。
また、頭部を貫通したガッツブラスターで仮面も割れていたが、そこから見える顔つきも犬の丸みはなく、
その鋭さはまるで狼だ。なお、通常のコボルドとコボルド・シャーマンに知能以外の差異は特にない。
 この不自然さを、タバサなどは突然変異種か歳を経た個体かと判断したようだったが、才人はそいつの牙の
一本が金属製の差し歯で、エースの透視能力を借りてそれが宇宙金属であると知り、このコボルドが
ハルケギニアの種族ではないと悟った。
「ウルフ星人、か」
 これはその名のとおりに狼男そのものな星人で、人間の血、特に若い女性の血が大好物というまたやっかいな
趣向を持つ星人だ。ただし頭はそれなりにいいが戦闘力はそれほどでもなく、MACガンでダメージを負うくらいで、
狼男に銀の銃弾というわけではないが、ガッツブラスターを急所に食らっては耐えられなかったのだろう。
「おおかた、コボルドを利用して餌を集めようと考えたんだろうな。ヤプールとしては、それで人間社会が
混乱すればもうけもの、やれることは見境なくやってるようだが、宇宙人ひとりを連れてくるだけで効果が
あるんだから楽なもんか」
213ウルトラ5番目の使い魔 第48話 (12/11):2009/05/17(日) 16:13:09 ID:XQrm9BPJ
 ウルフ星人は憑依能力があるから、コボルド・シャーマンに乗り移って群れを掌握したんだろう。元々の
姿もよく似ていることだし、知能の低い普通のコボルドは自分たちのボスがすりかわっていても気づかずに
利用されたあげくに、全滅させられたというわけか、まったくいやらしいことを考えてくれる。巨大化されては
面倒だったが、これでもうタルブ村が襲われることはなくなるはずだ。それにしても、この調子ではどれだけの
宇宙人がすでにハルケギニアに入り込んでいるのか……かつてはザラブ、ガッツ、ナックル、テンペラー星人を
も操ったヤプールのことだ、何を配下に治めていても不思議はない。それでなくても、地球はGUYSやひいては
ウルトラ兄弟がガッチリ守っているのだから、ヤプールの甘言に釣られてより侵略しやすいハルケギニアに
来ようとする宇宙人はそれこそいくらでもいるだろう。しかも、ヤプールにとっては使い捨ての駒だが、
こちらからしてみれば一体一体が油断ならない敵となる。つくづく、この戦いは不利だと言わざるを得ない。
 
 とはいえ、一躍村を救った英雄となった一行を、タルブの人々は温かく迎え入れてくれた。特に、娘二人を
救ってくれたシエスタの両親の喜びようは尋常ではなく、才人を抱き寄せてキスまでしようとしてきたので
さすがに才人も遠慮した。また、シエスタが大勢の貴族といっしょに来たことで、最初は恐怖の色を見せた
村人たちも、キュルケの気さくさやロングビルの礼儀正しさに次第に安心してくれた。もっとも、助けてくれた
お礼でシエスタの妹二人に懐かれてじゃれつかれた才人は「へー、あんたってそんな小さい子が好きだったんだ」
と、ルイズに白い目で見られて困惑していたが、決して才人に幼女趣味があったわけではない。
 
 その後は、村人たちに歓迎されて村のワイン倉で、昨年の極上品をいただけたり、アイやシエスタの姉妹たち
と山の傾斜を利用して作った自然の遊園地で遊び、日が傾きかける頃にようやく今夜やっかいになるシエスタの
実家にやってきた。
 
 シエスタの家は、2階建ての平民のものにしてはそれなりに大きな家といってよかった。材木は古めかしいが
美しい輝きを持ち、土塀もきれいに塗られていてひび割れや欠損は見られない。
 そんな家の、20人ほどが一度に食事のできる広間に通されたとき、一行の鼻孔をかぐわしいシチューの
匂いが迎え入れた。ルイズたちは腹を空かせて次々に椅子に座っていく、しかし、ただ一人、才人だけは
広間に足を踏み入れたときから、凍り付いてしまったかのように動かない。
「あの、サイトさん、何かお気に召しませんでしたか? この料理、ヨシェナヴェっていってタルブの名物なんですけど」
 心配したシエスタが声をかけたとき、彼女は才人の視線が彼の正面の壁にかけられている一枚の絵に釘付けに
なっているのに気がついた。それは彼女の曽祖父が書いた、誰にもその意味が知られることなく、ただ形見として
だけ残されていた不可思議なシンボルが描かれた気にとめたこともほとんどない一枚だったのだが。
「シエスタ、その絵は……」
「え、うちのひいおじいちゃんが書いた絵なんですけど、誰も意味がわからなくって……もしかして、サイトさん
この絵の意味を知ってるんですか!?」
「ああ……」
 知っているどころの話ではない。大きく描かれた白い羽根のシンボルに、大きく赤い四文字のアルファベットで
刻まれたそのチームの紋章を、彼は毎日のように見て育ってきたのだ。
「シエスタ! 君のそのひいおじいちゃんが残したものは他に何かないのか? 日記でも、持っていたものでもいい!!」
 突然人が変ったようにシエスタに詰め寄る才人の態度に、彼女だけでなくルイズたちや彼女の父親も何事かと
彼を引き剥がそうとかかるが、才人は興奮したままで聞く耳を持たない。誰にもわからないだろうが、今才人は
ハルケギニアに来て最大の衝撃を受けていた。
 けれど、暴れる才人の姿を見て、シエスタの母親は何かを悟ったかのように彼女にこう言った。
「シエスタ、竜の羽衣のところまで、彼を案内してあげなさい」
 
 
 続く
214ウルトラ5番目の使い魔 あとがき:2009/05/17(日) 16:15:31 ID:XQrm9BPJ
以上です。支援をどうもありがとうございました。
最後のところがちょっと長すぎたようで、急遽1レス分追加しました。
最近は超8兄弟と三美姫の輪舞を交互に見ながら書いてます。
 
うーむ、ワルドの不幸度が増していく。アルビオン編の前にこんなことしてていいのだろうか。
でもまあ、ようやくとトリスタニアを離れました。魅惑の妖精亭には後ろ髪を惹かれますが、帰ってきたらそのころには
屋根裏部屋でアレもできるでしょうので、もう一度飲みに行こうと思います。

では、次回はウル5魔版の竜の羽衣の登場です。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:21:03 ID:TEAo5CVI
乙でした!読んでたら支援するの忘れちゃったぜ
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:22:24 ID:AoNBbi5i
>白い羽根のシンボルに、大きく赤い四文字のアルファベット
どのチームだろ?
レオ以降は分かんないおっさんな俺
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:25:08 ID:rGx5Qriy
>>216
ウルトラマンメビウスの「GAYS」かも
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:27:21 ID:AoNBbi5i
>>217
なるほどdクス
ところでシエスタの妹達って名前あったっけ?
スイ、ヒナって聞くと薔薇乙女達しか思い浮かばんw
219ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:42:31 ID:LqbIvhsa
聖帝さま、ウルトラさま、GJでございました。

自分では書けないバトルシーンの構成でもう毎度毎度勉強させてもろてます。

さて、もしご都合よろしければ、第四十六幕を開演しようかと存じ上げます。
16:50頃から失礼いたします。
よろしくお願いいたします。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:47:24 ID:4sMc4RE+
投下ラッシュだ!支援しなければ。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:49:22 ID:th+tkKFS
四文字の防衛軍・・・・・・SSSP(科学特捜隊)?GUTS?
DASH?WINR?

ちくしょう、ワクワクが止まらないぜ!
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:50:47 ID:lurJfnH1
ウルトラの人乙です
う〜む、恐らくひいお爺ちゃんの正体はMATチーム以降の誰かかと思ってたのですが、
これは良い意味で予想外でした。
アルファベットで4文字のチームは彼らしか居ないでしょう。
そして竜の羽衣の正体が凄く気になります、妥当でMAT以降の奴か
それとも「俺達の翼」でしょうか、次回も超WKTKです!!
223ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:52:14 ID:LqbIvhsa
投下開始でございます
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「このおちび!ちびルイズ!」
その人は、スラリと背が高くて、かっこいい感じの女の人だったんだ。

「やん! あう! ふにゃ! じゃ!」
……でも、ルイズおねえちゃんのほっぺたをぐにぐにと引っ張りあげるのはどうなんだろ?

「従者と一緒の馬で帰ってくるとは何事ですか!
 ラ・ヴァリエール家の娘ともあろうものが!恥を知りなさい、恥をっ!!」
とっても怖そうな人だなぁって思った。これが正直なボクの感想だ。
「で、でも――」
「でも?返事は“はい”でしょうがこのおちび!!」
ルイズおねえちゃんが、手も足も出ない。これって、よっぽどなんだなぁって思うだ。

「――うっへ。娘っ子のじゃじゃ馬っぷりの上を行くきっちぃのがいるもんだな」
「……なんていうか、すさまじいね……」
「流石、ご姉妹って気もいたしますわね――」
ルイズおねえちゃんが痛い目にあってるから、助けてあげたかったけど、
ボクも、デルフも、シエスタも、見てるしかできなかったんだ。

「ちびルイズ!何か弁明があるならおっしゃいなさい!」
「ふえ、うぇ、あだ、あねさま、ほっぺあいだだだ……。あぅ……」
なぜなら、その女の人はエレオノールおねえさんって言って……
ルイズおねえちゃんと、血の繋がったおねえさんだからだ。



ゼロの黒魔道士
〜第四十六幕〜 血の繋がり


ボク達がトリスタニアから帰ってきた夕方ごろ、魔法学院に豪華な馬車が止まってたんだ。
馬車をひいてる馬もピッカピカの毛並みで、とっても元気そうだった。
ルイズおねえちゃんも、最初は誰のだろう?って首をかしげてたんだけど、
馬車の横の紋章を見たとたん、ボク達が乗っていた馬の向きを慌てて逆に向けようとしたんだ。
……あんまり急だったから、ボク、馬から落っこちちゃった……

で、その馬車に乗っていた人がエレオノールおねえさんで、丁度エレオノールおねえさんも、
ルイズおねえちゃんのお家がある、ラ・ヴァリエールに用事があって帰るところだったんだって。
その途中で、魔法学院によってルイズおねえちゃんに会うつもりが、ボクと一緒に馬に乗っているところを見られて……らしい。
ボクが1人で馬に乗れないから、なんだけど……なんでルイズおねえちゃんが怒られなきゃいけないんだろ……?
 ・
 ・
 ・
「アンリエッタ女王陛下からお父さまへ手紙?
 先日は秘密裏に反乱軍渦巻くアルビオンに出かけたと聞けば、
 その次はタルブ近くで保護されて?挙句の果てに女王陛下の直属の女官?」
「うべ、あ、あでざばぞべば〜!」
「学生の本分を忘れて何をやっているのですか、貴女は!そもそも、ヴァリエール家は――」
前の方の馬車から、すっごい声が聞こえる。
結局皆で(侍女が必要ってエレオノールおねえさんが主張するから、シエスタにもついてきてもらった)、
ラ・ヴァリエールに向かうことになったんだけど……
ルイズおねえちゃんとエレオノールおねえさんが乗った馬車からは悲鳴と、怒る声がとめどなく流れてくる。
ちょっと、心配になってきてしまうんだ。
224ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:53:21 ID:LqbIvhsa
「……ルイズおねえちゃん、大変そうだね」
別の馬車に乗っているから、助けにもいけないし、
なんていうか……エレオノールおねえさんを相手にするのは、てつきょじんを相手にするよりも怖いんだ。
こう、目の前に行くと空気がビリビリッてするって言えばいいのかなぁ……
ルイズおねえちゃんが張りつめたときの空気を何万倍にも濃くしたような……
「――ケケケ!まぁ娘っ子を叱ってやれるヤツもそういねぇんだしよ、たまにゃいい薬なんじゃね?」
「でも、あそこまで叱ることはあるんでしょうか――?」
デルフの言葉に、シエスタが疑問を抱いた。
「まぁ、ちょいと薬が過ぎちまってるようじゃあるか?」
あとで、慰めてあげられるといいなぁ……
 ・
 ・
 ・
ルイズおねえちゃんのお家、その治めている領地って言うのかな?
それが、ラ・ヴァリエールって言うらしいんだけど、ものすごい広さみたいだ。
ラ・ヴァリエールに入ったのが、学院から出て2日目のお昼ぐらいだったんだけど、
お家そのものに入るのは夜になってしまうらしいんだ。
……なんか、ものすごい。
ボクが住んでたマグダレンの森なら10個以上すっぽりおさまっちゃうんじゃないかなぁ……

ラ・ヴァリエールに入った後がさらにものすごかったんだ。
休憩ってことで入った村でなんだけど、シエスタがルイズおねえちゃん達の乗ってる馬車のドアを開けた瞬間に……
「うわぁっ!?」
「エレオノールさま!ルイズさま!」
思いっきりボクを突き飛ばすように、村の人達がやってきて、ルイズおねえちゃん達に頭を下げたりしたんだ。
……改めて、ルイズおねえちゃん達って貴族なんだなぁって思う。
というより、こっちの貴族の人達って、ガイアの貴族の人達よりかなり大事に扱われてるって気がする。

ちょっと経って、ボクが突き飛ばされたことに気がついたのか、
何人もの村の人達が寄ってきて、「と、とんだ粗相を!」とか「お怪我はありませんか?」とか「お荷物を」とか
やたらめったらに丁寧な言い方で聞いてきたんだ。
「え、そ、そんな。ボク、貴族とかじゃないよ……?」
そんなに勘違いされるような格好もしてないんだけど……
「とはいっても、エレオノールさまかルイズさまの御家来にかわるめえ。どっちにしろ粗相があってはならね」
「背中の剣をお持ちいたしますだ」「長旅でお疲れでしょう」
「え、だ、大丈夫だって。そんな、うん、大丈夫だから……」
なんか、かえって居心地が悪い感じがするんだ。慣れてない、からなのかなぁ?
「ここで少し休むわ。父さまに私達が到着したと知らせてちょうだい」
流石にエレオノールおねえさんは手慣れているみたいで、村の人にテキパキと指示を出す。
それを聞いて、ボクよりもちょっと背の高いぐらいの男の子が、馬にまたがってものすごい速さで素っ飛んでったんだ。
いいなぁ……ボクもああいう風に馬に乗れたら、
ルイズおねえちゃんがエレオノールおねえさんに怒られずに済んだのかなぁ?

休憩することになった宿屋さんに入りながら、キョロキョロしていると(ここの宿屋さんの自慢は美味しい水らしい)、
村の人達がルイズおねえちゃん達を噂している声が聞こえた。
すっごく人気があるみたい。なんか、ちょっぴり嬉しいなぁ。
「ルイズさまも大きくなられたもんだ」
「お二人ともお綺麗になられて」
「そういやエレオノールさまはご婚約なされ――」

誰かが、“婚約”って発言した途端、部屋全体が『フリーズ』状態になってしまったみたいに、
冷たく凍ってしまったような沈黙がその場を支配したんだ……
「……え」
「――お、いいねぇ、修羅場の空気だ」
デルフが笑うってことは、ちょっとまずい状態なのかもしれない。
225ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:54:39 ID:LqbIvhsa
「ね、姉さま。エレオノール姉さま」
「なに?」
「ご婚約、おめでとうございます!」
……だから、ルイズおねえちゃんがにこやかに“婚約”って言葉を言ってしまったとき、
ボクも村の人達もデルフも、「あちゃぁ」って同時につぶやいてしまったんだ。
ルイズおねえちゃん、空気の流れとか感じとって欲しいなぁって、ときどき思うんだ。

その空気を切り裂くような、鋭い指の動き。
人差し指に全神経を集中させた、ごくごく短い時間の『ためる』から、
指の筋肉や骨を全てバネのように使って弾く……
それが、ルイズおねえちゃんのおでこにビシッて当たって、「あうっ」って言う痛そうな声がもれた。
「あなた、知らないの?っていうか知ってて言ってるわね?」
エレオノールおねえさんは、ものすっごく良い笑顔をしていたんだ。
なんて言うんだろう。笑ってるけど、笑ってない、そんな良い笑顔。
「わ、私、何にも知りません!?」
「婚約は解消よ、か・い・し・ょ・う」
「な、何故にっ!?」
「さぁ?バーガンディ伯爵さまに聞いて頂戴?なんでも『もう限界』だそうよ。どうしてなのかしら!」
また人差し指をググッとまるめるエレオノールおねえさん。
綺麗に整えた爪先に、力がこもって……
「ひ、ひう――」
「――ふんっ!ほら、何してるの?お茶でも出しなさいよ!」
でも、それは放たれることなく、そのまま終わったんだ。
「へ、へいただいま!!」

「……ルイズおねえちゃん、大丈夫?」
小走り気味にルイズおねえちゃんに歩み寄って、おでこをさすってあげようとしたけど、全然届かなかった。
「――おかしいわ」
ルイズおねえちゃんはエレオノールおねえさんをじっと見ている。
やっぱり、血の繋がったおねえさんにあそこまでつらくされるって、おかしいよね?
「そりゃ〜婚約解消とかなっちまっちゃぁ不名誉なんじゃねぇの?」
「――エレオノール姉さまが……」
「――事情は存じ上げませんが、『もう限界』って生々しいですわよね。納得できそう――」
「エレオノール姉さまがデコピンだけで終わるなんて!?」
「……え?」
「お?」
「あら?」
その感想は、ボク達が予想してたものとは全然違うものだったんだ。

「い、いつもだったら――いえ、今このような話題だからこそ、
 もっとギューとギリギリっといえいえもしくはビロンビロンになるまでつねりあげられてもおかしくないのにっ!?」
「……そんなに、ひどいんだ」
やっぱり、てつきょじんより怖いかもしれない。
そんな怖いことを考えてしまった。
スラリとした格好のどこにそんな迫力がこもっているんだろう……
「なんでエレオノール姉さまがこんなに失言に対して優しいのっ!?」
「ルイズっ!まだ言い足りないことがあります!こっちに来なさい!」
「は、はいっ!エレオノール姉さま、ただ今!」
……別に、優しくなったってわけじゃなくて、疲れてるとか、そういうのじゃないのかなぁ?
その証拠に、ずーっとずっとガミガミと怒ってる気がするんだけど……
226ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:55:43 ID:LqbIvhsa
「まぁ、見慣れない馬車を見つけて立ち寄ってみれば嬉しいお客だわ!エレオノール姉さま!帰ってらしたの?」
鋼のような硬くて冷たい空気の中、やんわりとしたお花畑の風のような声が飛び込んだのは、それからちょっとしてだった。
ルイズおねえちゃんと同じように、花のような綺麗な桃色の髪に、
ルイズおねえちゃんが一番優しくなったときよりもずっとふんわりとした空気をまとった人。
なんとなく、ルイズおねえちゃんのお母さんか、もう1人のおねえさんって感じがした。
「カトレア」
「ちいねえさま!」
ルイズおねえちゃん達の反応を見る限り、やっぱりルイズおねえちゃんの親戚、かなぁ?
「ルイズ!いやだわ!わたしの小さいルイズじゃないの!あなたも帰ってきたのね!」
「お久しぶりですわ!ちいねえさま!」
抱き合う2人を見ると、なんとなくホッとする感じがする。
あぁ、ルイズおねえちゃんの“いつか帰るところ”ってここなんだな、って感じがして。
「まあ、まあ、まあまあ」
そのふんわりした空気のまま、ルイズおねえちゃんの『ちいねえさま』が視線をボクに向けたんだ。
ほんわりと優しいけど、水の底みたいに何でもお見通しっていう不思議な眼。
なんか、不思議な感じだった。
「え、あ、あのそのえっとな、なんですか……?」
前に、オスマン先生にかけられた『ディテクトマジック』や『ライブラ』や『みやぶる』とはまた違うような……
身体の奥底まで、心の隅っこの方まで見られているような……
「そっか、あなたがルイズの小さな騎士さんというわけね?」
「え?あ、えっとその……」
なんか、不思議な人だなぁって、そう思ったんだ。
 ・
 ・
 ・
ルイズおねえちゃんのお家ってすごいと思う。
お城と同じぐらい大きくて、使用人の人っていうのが何十人もいて、
カトレアおねえさん――ルイズおねえちゃんのちいねえさま――の“ペット”が全部快適に住めるようになっている。
……“ペット”っていうよりも、モンスターの見本市って気もする。
カトレアおねえさんの馬車に乗せてもらったら(「皆で乗った方が楽しいでしょ?」って言ってくれたから)、
クァールみたいなおっきな猫に、おっきな蛇、おっきいのから小さいのまで色々な種類の犬がいて……
あの色んな種類の動物が喧嘩せずに住めるってことは、このお城みたいな家は相当環境がいいんだろうなって思うんだ。
ちゃんと清潔な寝る場所があって、ちゃんと食事が食べれてるんだと思う。

「――ふむ。陛下がこのわしの知恵を所望、か」
だから、ルイズおねえちゃんの家族のひとが食べている食事もかなり豪華そうだった。
一番見晴らしの良い席に座っているのが、ルイズおねえちゃんのお父さんらしい。
立派な口ひげに、ちょっと銀色っぽくなっている金髪。
アンリエッタ姫の手紙を読む左目のモノクルの奥の眼が、鋭く光っていて、
脇に立っているだけのボクもものすっごく緊張した。
……ちょっとだけ、居心地が悪いかもしれない。
227ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:56:32 ID:LqbIvhsa
「は、はい。父さま、あのそれでその――」
「ルイズ、言いたいことがあるならばハッキリおっしゃいなさい!」
「は、はいっ!」
ルイズおねえちゃん、エレオノールおねえさんがやっぱり怖いみたい。
ボクも、ちょっと怖いなって思う。
「あ、あの父さま!その、姫さまのお力になってさしあげてくださいませんか?」
ふん、と鼻を鳴らしてから、ルイズおねえちゃんのお父さんがニッと顔を緩めた。
「陛下自身の頼みとあらば、王宮に参じねばなるまいな」
「先日、枢機卿からの招聘はお断りになたのでは?」
ルイズおねえちゃんのお母さん、カリーヌさんって言うらしいんだけど、
カリーヌさんも厳しい顔をしている。
エレオノールおねえさんは、カリーヌさんに似た、のかなぁ?
血を分けた家族って、やっぱり似てくるものみたいだ。
「ふん! あの鳥の骨を“枢機卿”などと呼んではいかん。骨は骨で十分だ。
 お若い陛下をたらしこみ、今にも『先日のタルブの礼』とでも言うてアルビオンを攻めよと言いだすに決まっておるわ!」
「おお恐い。宮廷のすずめ達に聞かれたら、ただじゃすみませんわよ」
「ぜひとも聞かせてやりたいものだ――おおそうそう、ルイズや」
「はい、父さま?」
「まずは久しぶりに会った父親に接吻してはくれんかね?」
ルイズおねえちゃんは、席を立って小走りにお父さんの元へ行き、そのほっぺたに、優しくキスをした。
なんか、いいなって感じがする。
親がいるって、いいなぁって……
「いや、大きくなったな――しばらく手紙をくれぬから心配しておったのだぞ?」
「ご、ごめんなさい父さま……」
「そうですよ、ルイズ。あなた先日はあの戦闘のタルブに、まさにその時いたというではありませんか」
「ルイズ!散々親に心配をかけて何をしていたというの!?」

あぁ、そうか。
カリーヌさんや、エレオノールおねえさんがずっと厳しそうな表情をしている理由が、なんとなく分かった気がする。
きっと、ルイズおねえちゃんが心配、だったんだよね?
心配してくれる、家族、か。
……ボクの子供たちも、元気にしてると、いいなぁ……

「まぁ、よいよい、カリーヌ。それにエレオノールも。
 ――それより、召喚の儀はもうとっくに終わっておるのだろ?どうなったんだね、ルイズや?」
「あ――ビビ、こっちへいらっしゃい!」
「は、はいっ!?」
黒魔道士の村のことを思い出していて、ちょっとだけ反応が遅れてしまった。
広い食堂の端っこの方から、大急ぎでルイズおねえちゃんのお父さんの席まで走った。

「――なんと。この平民の少年が使い魔だと、そう言うのかね?」
「従者では無かったというの?」
「ルイズの小さな騎士さん、よね?」
「え、えっと……び、ビビって言います……その、ルイズおねえちゃんの使い魔をやってます……」
うぅ、なんかものすっごく緊張する。みんながボクを見ているのが分かる。
その視線がなんか怖くて、ちょっとだけ帽子を目深にかぶりなおした。
「ビビの左手に、確かに契約のルーンがあります。間違いなく、ビビは私の使い魔です」
「ふむ。流石に平民とはいえ、かような幼子をさらってきたとあっては貴族の良識を疑われかねんぞ?
 両親には話をつけたのだろうね?この子の両親はさぞ悲しんで――」
「……あ、い、いえ、だ、大丈夫ですっ!?」
なんか、またおおごとになっちゃいそうで、慌てて否定する。
「そ、その……ボクには、両親とか、そういうの、いないから……」
少なくとも、ボクを産んだ両親っていうのはいないと思う。
ボクを作った人って意味なら……クジャ、とか?
う〜ん……なんかアイツを親って考えるのはちょっと無理があるなぁ……
お父さんと、お母さん、か……
「――そうか。立ち入ったことを聞いたようだ」
……なんか、勘違いされちゃったみたい。
どうしよう……
228ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:57:19 ID:LqbIvhsa
「――ところで、エレオノール。貴女も話があったのでは?」
カリーヌさんが、しんみりしてしまった空気を変えようと、話題を出してきた。
「あ!――そうなんです、母さま!実は今度アカデミーでの現地調査隊が――」
エレオノールおねえさんが、火龍山脈への調査旅行について語り始めると、
さっきまでの厳しい表情が変わった。
うん、きっと好きなことを話すときって、表情が柔らかくなるんだなぁって思う。
頬もちょっと熱っぽく赤くなってるし……

「――姉さま、もしかして新しい恋をしています?」
ボクを最初に見たときのように、不思議な視線でエレオノールおねえさんを見て、
カトレアおねえさんが首をかしげながらそう言った。
「カトレア!?あ、あなた何を急に!?」
「エレオノール、それは真ですか?」
「何? それはどこの貴族だね、エレオノールや」
「いないわ。いない。いないもの」
家族みんなの反応に、慌てふためくエレオノールおねえさん。
この慌て方……ルイズおねえちゃんを見ていた経験からすると、嘘を言ってる、のかなぁ?
家族だからか、慌て方まで似ている気がする。
「エレオノール姉さま――その――おめでとうございます?」
「う、うるさいっ!ちびルイズ!まだそんな状況では――」
「では、どのような状況と言うのですか?」
「そ、それは――」
そこからは、家族仲良さそうに色んな言葉が飛び交っていた。
ちょっとだけうらやましいなって思うんだ。

楽しそうな、ルイズおねえちゃんと家族の会話を聞きながら、ふっと視線を窓の外に移す。
ちょっぴり曇っていて、お月さまも見えにくくなっている。
ふっと雲の切れ間から、ほんわり輝く星が見えた。
……あの星は1人で輝いていて、寂しく無いのかなぁ?
……ジタン達と旅をして、色んなことを学んだけど……
孤独を感じた時はどうすればいいかなんてそれだけは教えてもらえなかった……
本当の答えを見つけることができるのはきっと自分だけなのかもしれない……でも……
ちょっぴり、本当に、ほんのちょっぴり、寂しくなっちゃったんだ。
なんだか、おかしいよね?ルイズおねえちゃんもいるのに……
雲に消え入りそうな星の光を見ながら、そんなことを考えたんだ……

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ピコン

ATE 〜混沌に狂う者達〜

星の光届かぬ、鬱蒼と生い茂る森の奥。
森のすぐ目と鼻の先で南北に走るガリアとロマリアを結ぶ虎街道。
その名前の由来となった人食い虎共の子育ての地でもあったのだが、
何度となく組織された討伐隊により、子を育む親虎もいなくなってしまった。
今日ではトロール鬼だかオーク鬼だかといった無粋な連中が、
かつての気高い獣達の安らぎの地を荒らしている。
いや、『今日では』という表現は順当では無いのかもしれない。
より正確に言うならば、『ついさっきまで』である。
その場所は、もはや『森』ですら無くなっていた。

「ク、クハハハハハハハハハハ!!満たされていくっ!!」
「そりゃ良かったな」
いつものトロール鬼の唸り声も聞こえない。
いつものオーク鬼の腐った卵のような口臭もしない。
そこにあるのは、鉄の匂いと焦げる匂い。
とはいえ、血飛沫が飛び散る前に亜人共の胴体が切り離されたのか、
転がる頭の数にしては鉄分のこもった血の匂いはしない。
それとも、燃え盛る炎に全て焼き尽くされたということだろうか?
亜人共ごと切り倒された生木の水分が、もうもうと立ち込める煙を作り上げる。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 16:57:34 ID:7OcAEQbu
そういやビビは霧から作られた魔道兵のプロトタイプだったっけ支援
230ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:58:36 ID:LqbIvhsa
「あぁ、これだよ、この力だよっ!素晴らしい、もっとだ!もっともっともっともーっと欲しいっ!!」
「良い狂いっぷりだな。え?ワルドさんよ」
惨状のド真ん中、倒れた木々の中心点、燃え盛る炎のほど近く、
狂気に顔を歪ませた二人の男が立っていた。
半径3000メイル程の、かつては森であった何も無い空間の中心にほど近い場所である。

1人の男はトリステインの魔法衛士隊の隊長の地位にまで登りつめた男だ。
だが、かつて子爵の地位を得ていた美丈夫の面影はそこになく、
頭蓋の形が分かるほど痩せこけた顔に、羽ペンで描いたような青白い血管が浮き出、髭も好き勝手に伸びている。
服装はと言えば、古衣や新しい布を使える分だけかき集めてかろうじて服に仕立て上げたといった風貌で、
それが左腕の義手の禍々しいまでに鋼色をした光で、かろうじて色彩がまとまっているという具合だ。
麻薬や酒をやりすぎて引退した道化、姿だけで言えばそう見えなくもない。
だがその眼だけは、鷲が獲物を狙うときのような、あるいは鷹が獲物を切り裂くときのような眼だけが、
落ちくぼんだ顔面に不自然に浮き上がっていて、不気味な印象を与え、エンターテイナーであることを否定している。
人を笑わせる者ではなく、人を狩るものの眼であった。

「狂う?あぁ、これが狂っているというのなら、そう、俺は狂っているんだろう!
 だが分かるか?本能が、心が、記憶が、身体が、この強大な風の力を欲しているんだよ!
 これに比べれば今までの己なんぞはそよ風もいいところだ!」

狂ったように笑いながら、狂っていることを自覚しながら、
ワルドは彼の“風”をまたも解き放った。
鞭のようにしなり、剣のように鋭い空気の塊が、
さざ波のように静かに、だが津波のように強大に広がり、
わずかに残った森の木々を、根こそぎ刈らんとばかりに砕き倒していく。

「おいおい、あんまり楽しすぎて全部壊すんじゃあないぞ?俺も燃やし足りないしな」

そう言ってニヤリと笑う男の風貌はそう変化は無い。
20年ほど前からこのままだ。
顔にできた火傷の痕は、彼に内在していた狂気を焼き尽くすことはなく、
むしろ焼印のように、彼の頭蓋の奥底の脳味噌にまで焦げ付かせたのかもしれない。
刻まれた火傷を凌駕する炎を巻き上げようと、彼の左手から火柱がまた1本上がる。
軽く100メイル四方の生物が一瞬で蒸発しそうな炎の渦。
上々の火力。彼自身もまた己のコンディションを最高の状態に保っていた。
その事実に、メンヌヴィルはまたも豪胆な笑みを浮かべた。

「これこそが力っ!世界が壊れそうな力っ!この世で一番の力を私は取り込んだ。
 それ以外の者なのカスだ! カス以下だ! カス以下の以下だ! 全部破壊してやるっ!!」
「うははは!気に入ってくれたようで感謝するよ! まぁ全部破壊は待とうか。
 俺もうずうずしてるが、“スポンサー様”の御意向もあるしな」

腐ったミルク色の眼でワルドの“仕上がり”を見て、メンヌヴィルは口端をニヤリと釣り上げた。
燃やし甲斐のある輩が出てくるのは彼にとって純粋に嬉しいことなのだ。
もちろん、それが敵だろうと味方だろうと構わない。
彼にとって、いずれはどちらでも燃やす対象なのだ。
その事実に、メンヌヴィルは舌舐めずりをした。
丁度、ネズミを眼の前にした凶暴なドラ猫のように。喉さえ鳴らしながら。
だが今は待つべきとき。腐っても傭兵ではある。
雇い主の意思はある程度尊重するものだ。
特に、今回のように燃やし場所を与えてくれる雇い主には、敬意をもって接するのが彼の常だ。
今日のトロール退治と銘打たれた仕事も、結局は力を持て余した2人のガス抜きの意味合いが強い。
力があるヤツは暴れさせるに限る。
“スポンサー様”とやらは確かに心得ていた。
そしてメンヌヴィルは、そうした雇い主を大変好んでいた。
231ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/05/17(日) 16:59:41 ID:LqbIvhsa
「つまらん! まだまだ壊し足りぬというのに!」

既に粉々に砕かれ、灰になるまで燻された亜人共の残骸を見てつまらなそうにワルドがつぶやく。
それは純粋に破壊を楽しんでいる者のセリフである。

「うはは! 心配するなよ、兄弟! 最高の舞台はもうすぐさ!」
「なるほど!確かに聞こえてきたよ、破滅の足音が。カオスを超えて、終末が近づく……」

そのカオスとやらに沈んだ輩にしか、破滅の足音とやらも聞こえないのかもしれないが、
なるほど、確かに近付いてきているものはあったらしい。

炎は食らう対象を失い勢いを止め、切り裂かれた大地に天の涙が浸みる。
季節外れの暗雲と大雨が、さえずる小鳥すらいなくなった荒野を飲み込んでいった。
二つの巨大な狂気が去って、一刻ほどしてからのことである。
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本日は以上にございます。
最近、悪役の方を書く方が楽しくてしょうがないや。狂気万歳!
そんな狂った作者でどうもすいません。
こんなどうしようもない駄文ですが、もうしばらくお付き合いくださると光栄です。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 17:50:11 ID:ko2PO1Nz
黒魔さん乙です。
良いですよねぇ、悪役。
悪逆非道の限りを尽くしてこそ、後に正義により討たれるのが栄えるという物ですから、どんどんやっちゃいましょう。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 17:50:24 ID:uHeV68Mp
乙よー
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 17:55:27 ID:VYtwSlA6
なんかケフカを思い出した
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 17:58:18 ID:7OcAEQbu
乙〜

言い回しがもろケフカだしねぇw

カスだ!カス以下だ!カス以下の以下だ! とか
カオスを越えて週末が近づく とか。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:02:41 ID:pAY6i68o
黒魔導師さん乙でしたー。
確かにワルドがケフカっぽくなってますね……
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:08:06 ID:ko2PO1Nz
ケフカか……ディシディアのおかげであの声だって判ってからは尚のこと好きだぜ。

ここだと誰に召喚されても、召喚主が皇帝と同じ道筋を辿りそうだけどな!
238毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:15:13 ID:3dyMR4D1
ウルトラの人、乙です。
やっぱりあの三人は例の物を作っていたか。当然の如く失敗だったようだけど。
烈風の扱きを受けるワルドには同情の意を示します。
次回も楽しみです。
とりあえず、アルビオンが”散歩する惑星”でないことを祈ります(苦笑)

黒魔道士の人、乙です。
黄昏るビビが可愛い&可哀想。大丈夫さ、その寂しさはルイズやカトレアが癒してくれるよ。
ワルドとメンヌヴィルの悪党コンビ。カオスですね、カオス。この悪党ぶりが更に磨かれる事を期待します(爆)

で、毒の爪の使い魔の第37話前編が書きあがりました。
予定その他が無ければ18:20から投下開始します。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:19:30 ID:BhdVutdr
今日は投下ラッシュだな 事前支援
240毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:21:40 ID:3dyMR4D1
では、投下開始します。

タルブの草原での戦から数日。
突如侵攻を開始したアルビオン軍に対し、数で劣るアンリエッタ率いるトリステイン軍は奇跡的勝利を収めた。
数で勝る敵軍を破った事により、王女アンリエッタは『聖女』と崇められその人気は絶頂となった。
対し…アルビオン軍の戦力の大半を倒し、実質的な勝因となったジャンガやルイズには特に何も無かった。
それは何故か?
ルイズに関して言えばアンリエッタの口止めにある。
伝説の『虚無』に関わるかもしれない為、迂闊に恩賞などを与えようものなら事が公になってしまう。
そうなれば、強大なる力である『虚無』を狙い、様々な”敵”がルイズを狙いかねないからだ。
故に礼を述べるだけに止めるしかなかったのだ。

だが、ジャンガの場合は違う。…”メンドくせェ”と断ったからだ。
元々、正義だの悪だの善行だの悪事だのには拘らず、奇麗事には嫌悪感を示してきた彼である。
”敵を破り国を守った英雄”などと言う扱いは蕁麻疹が出来る思いのする物だった。
故に恩賞などは”こっちからお断りだ”と拒んだのだ。
そして、ルイズ達やアンリエッタ率いるトリステイン軍は勿論の事、一部始終を見ていたタルブの村人達にも他言無用と釘を刺した。
…まぁ、その後シエスタに強引に誘われ、御礼の歓迎を受ける羽目となったが。

兎にも角にも、トリステインに平和は戻り、今日も国民達は『聖女』アンリエッタを称えるのだった。

当然、魔法学院にも何時も通りの平穏な時間が戻り――

「モンモランシー…、本気なのか?」
「当然よ…他に道は無いんだし」
「だ、だが……もしも万が一、失敗したら…」
「……へ、平気よ…。し、失敗なんて…するわけ、わけ、ないわよ…」
「…声が震えているよ? やっぱり止めた方が…」
「仕方ないじゃない! 作った以上は使わないと気が済まないのよ!」
「はぁ……それなら作らない方が良かったんじゃないか?」
「しょうがないわよ。…興味があったんだし」

――何だか、別のベクトルで大変な事が起きそうである…。



「くわぁぁぁぁ〜〜」
アウストリの広場のベンチに座り、ジャンガは大きな欠伸をした。
三日三晩続いたタルブの村での祝宴に疲労困憊なのである。
「ったく…、英雄扱いなんざケツが痒くなるだけだってのによ…。シエスタ嬢ちゃんは強引過ぎるゼ…」
正直、ああ言う祝いの席は嫌で嫌でしょうがなかった。
だが、シエスタ嬢ちゃんが余りにもしつこ過ぎる為、流石のジャンガも根負けしてしまった。
「まァ……美味い物が食えて良かったがよ…」
そう言って強引に納得する事にした。
懐から赤茶色のヒーローメダルを取り出す。
”ブランクメダル”のワンランク上、”ブロンズメダル”だ。
それを暫し眺め、ジャンガはほくそ笑む。
「テメェのメダル…曾孫が”持っててくれ”って言うからよ、遠慮無く持たせてもらってるゼ、ガーレン」

タルブの村での祝宴の最中、ジャンガはシエスタに彼女の曽祖父について色々と尋ねた。
例の夢やこのメダル、棚の上にあった見覚えのある帽子からある程度の予想は付いていたが…。
予想通り、メダルはガーレンの物であり、シエスタの曽祖父はガーレンである事が判明。
シエスタは自分の曽祖父とジャンガが知り合いだった事に心底感激した。
そんな彼女を見て、ジャンガは滑稽に感じ、その曽祖父が実は悪党である、と言おうと思ったりもした。
だが、過去がどうあれ今は家族。家族に対して色々と思う所があるジャンガはその事を結局伝えなかった。
悪党が良き曽祖父…、知らぬが仏、とはよく言った物だ。
241毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:25:09 ID:3dyMR4D1
そんな事を思い返していると、不意に声が掛けられた。
「こんにちは、今日もいい天気ね」
「日当たりはまだ少々キツイがね」
声の方に顔を向ける。そこにはモンモランシーとギーシュが立っていた。
…なんだか妙に不自然な笑顔だ。
ジャンガは怪訝な表情を浮かべ、二人を睨み付ける。
「何の用だ?」
「えと……その…」
モンモランシーは言い難そうに口をもごもごとさせる。
そして、意を決したのか、後ろ手に持っていたグラスを差し出す。
グラスには冷たそうなドリンクと思しき液体が注がれている。
グラスとモンモランシーを交互に見比べるジャンガ。
「ほ、ほら…今日は暑いでしょ? 喉も渇いてると思って、飲み物を差し入れに…」
「…どう言う風の吹き回しだ?」
ジロリと睨まれ、モンモランシーは頬を引きつらせる。
ギーシュがそこへ口を挟んだ。
「別に何も企んでなどいないさ! モンモランシーは君に純粋に冷たい飲み物を差し入れようと思ってだね――」
「”企んでいる”なんざ、一言も言ってねェぞ?」
…空気が冷えた。
表情を凍らせる二人にジャンガは空気以上に冷たい視線を投げかける。
「テメェら……俺に何飲ませるつもりだ?」
「いや…、その…、別に何も…」
「そ、そうさ…。君に何かを企むなんて命知らずな行動を…誰が…」
ジャンガは二人を睨み続け……徐にモンモランシーのグラスを奪い取る。
「あっ…?」
突然の事にモンモランシーは声を漏らす。
気にせず、ジャンガはグラスを揺らし、注がれているドリンクを日に透かして眺めている。
…見た限り特に変わりは無い。だが、見た目で解り易くするほど相手もアホではないはずだ。
暫くそうやって考えていると、向こうを歩く人影に気が付いた。
ジャンガはニヤリと笑い、人影に向かって歩いていく。
モンモランシーとギーシュはジャンガの後を視線で追い、凍り付いた。

――ジャンガは本塔の入り口から出てきたキュルケに向かっていたのだ。


「よう、雌牛。相変わらず今日も暑いな?」
突然話しかけてきたジャンガにキュルケは僅かに顔を顰める。
「あら? あなたから話し掛けて来るなんて…明日は雨かしら?」
「随分な言われようだゼ…キキキ」
ジャンガは笑う。
「どうしたのあなた? この暑さでその厚着……頭がやられちゃった?」
「言うじゃねェか雌牛。…そんなテメェにプレゼントだ!」
叫ぶと同時にジャンガはグラスの中身をキュルケの口の中に強引に流し込んだ。
突然の事にキュルケは為す術も無い。吐き出す間も無く、流し込まれたそれを飲んでしまった。
ゴホゴホとむせ返り、顔を上げてジャンガを睨む。
「何をするのよあなた!?」
ジャンガはやれやれと言った感じで首を振る。
「別に心配すんじゃねェよ。ドリル頭と気障ガキが差し入れてきたドリンクだから危険は無ェ。
――毒でも入ってなきゃよ…、キキキキキ」
笑うジャンガ。対してキュルケは飲んだ物の影響か…徐々に顔を赤らめていく。
その様子にジャンガは”やっぱりか”と自分の予測が正しかった事を確信する。
「気分でも悪いか? 言っておくがよ…恨むんならそんな物を俺に飲ませようとしたドリル頭を恨むんだな」
キュルケはジャンガの話が終わらぬうちに、踵を返すと走り去っていった。
その後姿を見送り、ジャンガは忌々しげに鼻を鳴らす。
「さてと…、おいテメェら!?」
叫びながら振り返る。…そこには誰も居なかった。
レアムゥの様に忽然とその姿は消えていた。
チッ、と舌打をし、ジャンガもその場を後にした。
242毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:28:06 ID:3dyMR4D1
――その夜。
飯を食った後、ジャンガは何か面白い事でも無いかと学院内を闊歩していた。
ガチャリ
「ン?」
直ぐ真横の扉が開くのを確認し、ジャンガは立ち止まる。
その扉から出てきたのは一匹の巨大な赤いトカゲ、キュルケのサラマンダーのフレイムだ。
きゅるきゅる、と鳴きながらフレイムはジャンガのコートの裾を噛み、頻りに引っ張る。
どうやら部屋の中に連れて行きたいらしい。だが、トカゲ如きに付き合ってやる通りは無い。
ジャンガはフレイムの噛み付きを軽く振り解くと、歩みを再開する。
が、首のマフラーが突然引かれ、ぐぇ、と苦しそうに呻き声を上げて仰向けに転ぶ。
振り向けばフレイムがマフラーの端に噛み付いていた。
「テメェ……よくも…、ぐぇ!?」
怒りの視線を向けるジャンガだが、フレイムがマフラーを引っ張った為、再び呻き声を上げる羽目と為った。
そして、そのまま部屋の中に引っ張り込まれた。

部屋の中は真っ暗だった。
フレイムはジャンガを引きずり込むと、漸くマフラーから口を放す。
ゲホゲホ、と咳き込むジャンガ。
「この火トカゲ…、何のつもりだ…あン!?」
怒りで目を見開き、フレイムを睨み付ける。
「フレイム、扉を閉めて」
突然割り込む声。
声に従い、フレイムは扉を閉めた。
ジャンガは声の聞こえた方に顔を向ける。
そこにはベビードールのみを纏った悩ましい姿のキュルケが立っていた。
キュルケは顔を赤らめ、潤んだ瞳をジャンガへと向けている。
月明かりに照らされた褐色の肌は非常に魅力的であり、並大抵の男なら即座に悩殺される事は間違い無い。
だが、ジャンガには大した効果は無かったらしく無反応。…寧ろ冷めた視線を向けている。
「何の真似だ…テメェ?」
ジャンガの言葉にキュルケは切なげに、ため息を吐く。
「突然の事だから混乱しているでしょ? ごめんなさいね。でも…普通に誘ってもあなたは来ないと思ったから…」
キュルケは悩ましげに首を振りながら言う。
そして、ゆっくりとジャンガに歩み寄る。
床に手を付き、顔を覗き込む。
「あたしの二つ名は『微熱』」
「ンな事ァ知ってる」
「そう、松明の様に燃え上がり易いの。だから、いけない事だとは思うけど、こんな風に呼んだの」
「迷惑極まりねェ…」
「そうね、そう思っても仕方ないわ。でも、あなたはきっと許してくれると思うわ」
「なんでだよ?」
「あたし……あなたに恋しているの」

――耳に飛び込んだ単語を頭が理解しきれない。一瞬、思考がストップする。

「……………ハァ?」
間抜けな呟きがジャンガの口から漏れた。
キュルケは構わずに続ける。
「あたしね、前々からあなたが気になっていたの。ただ、タバサを傷付けたのもあなただし、素直になれなかったの。
でも、この思いを偽り続ける事は出来なかったわ。あなたには二度も命を助けられたし」
「何の事だ?」
「誤魔化さないで。ラ・ロシェールでゴーレムに襲われた時…、そしてあのピエロの時よ。
何れの時もあなた…凄く魅力的だったわ。そう、まるで伝説のイーヴァルディの勇者の様に。
当然、痺れたわ…、そして昼間…あの時に実感したわ。これこそ”情熱”…、間違い無く”情熱”って」
「オイ…」
「あたしの二つ名の『微熱』はつまり”情熱”なのよ! そして、あたしは部屋に戻ってからマドリガルを綴ったわ。
マドリガル…恋歌よ。…あんなに嫌っていたのに、こうして言い寄るあたしをはしたない女だと思うでしょ?
節操が無いと思うでしょ? でもね…全部あなたの所為なのよ、ジャンガ?」
「ざけんな…」
243毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:31:04 ID:3dyMR4D1
ジャンガは頭痛がする思いだった。
何だってまたこの女は自分に言い寄って来るんだ?
幾らなんでも変だ。

――あの後、ドリル頭を捕まえて白状させたが、ドリンクに混ぜられていたのは調合した精力剤の様なポーションだとの事。
とりあえず、毒ではなかったが……実験台にした報いとして三分の一殺しにはしておいた。

だが、精力剤でここまで変わる物か?
ジャンガのモンモランシーに対する疑惑は更に深まっていく。
そんな彼の考えなど知る由も無いキュルケは更にジャンガに言い寄る。
そして、目を瞑るや、黙って唇を突き出した。
ジャンガはその行動にあからさまに顔を顰める。
と、窓が開かれ、男の声が聞こえた。
「キュルケ…、待ち合わせの時間に君が来ないと思えば…」
「あら、スティックス」
メンドくさそうな表情でキュルケは窓の外の男を見る。
「悪いけれど、今日の約束はキャンセルね」
「話が違う!! 大体、君はその亜人を嫌っていたはずじゃないか!?」
「恋はいつも突然なのよ」
言いながら胸の谷間に挟んでいた杖を取り出して振る。
それなりの大きさの炎球が飛び、男を吹き飛ばした。
そして、何事も無かったかのようにジャンガに向き直る。
「無粋なフクロウよね」
「いいのか? 悪けりゃくたばったかも知れねェぞ…あの野郎」
「今は関係ないわ。とにかく、あたしが一番愛しているのはジャンガ…あなたなの」
再び唇を近づける。
と、また別の男の声が聞こえた。
「キュルケ! なんでそんな奴と!? 今夜はぼくと激しく――」
言い終わる前にキュルケの炎球が男を吹き飛ばした。
悲鳴も上げずに落ちて行く男を露程も気にしない様子でキュルケは再度ジャンガに向き直る。
「時間は無駄にしたくないわ。太陽は直ぐに昇って来てしまうんだもの」
と、三度男の声が聞こえた。
今度は三人分、同じ台詞を口にしている。
「「「キュルケ! そいつは一体なんだ!? 何でそんな奴と一緒にいるんだ!?」」」
「フレイム」
扱う炎や『微熱』の二つ名とは正反対な、冷たい言葉で使い魔の名を呼ぶ。
フレイムは立ち上がり、猛烈な火炎を窓目掛けて吐いた。
火炎は窓ごと三人を吹き飛ばす。三人は炎に包まれながら仲良く落下していった。
「…随分とまァ、男を漁り捲くってるみたいだな?」
「言ったはずよ? 松明の様に燃え上がり易いって…。でも、今はあなただけを愛してる!」
キュルケはジャンガの頭を両手で挟むや、有無を言わさず唇を奪う。
反応する暇も無く、ジャンガは押し倒された。
(この雌牛……いい加減にしとけよ…)
もう我慢出来ない…、後々どうなろうと知った事か…。大体、主人の言う事を聞かないペットは始末に限る。
自分に圧し掛かる女を退かすべく、ジャンガは爪を構え――

バンッ!

その時、凄まじい勢いで扉が開かれた。
何だ? と思って目を向けるとそこにはネグリジェ姿のルイズが立っていた。
キュルケもそちらに目を向けるが、直ぐにジャンガに戻す。その間、唇を離そうとはしなかった。
ルイズは爆発一歩手前と言った表情でズカズカと部屋に入ってくる。
「キュルケ!」
ルイズの怒鳴り声にキュルケは漸く唇を離す。
起き上がり、ルイズを軽く睨む。
「何よ、ルイズ? 今は見ての通り取り込み中なの。帰ってくれるかしら?」
「人の使い魔に勝手に手を出しておいて偉そうに言わないでよ!」
「仕方ないじゃない、燃え上がってるんだから」
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:32:53 ID:APsJ7e2j
まさか前スレ>>1000が本当になるとはな支援
245毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:34:02 ID:3dyMR4D1
「あなた、こいつの事…心底嫌ってたんじゃないの!?」
ジャンガを指差し、ルイズは言った。
「そうね…確かに。でも、恋ってのは突然なのよ。自分も自覚しないうちに胸の内に芽生えて、熱を持っていく。
そして…ある日突然燃え上がるのよ。今がその時…、一度燃え上がった恋の炎は誰にも消し止められないの。
恋と炎に身を焦がすのはフォン・ツェルプストーの宿命。あなたが一番ご存知でしょう?」
ルイズはわなわなと震え、ジャンガをギロリと睨む。
その眼光はジャンガの物と寸分違わない凶悪な物だ。
「来なさい、ジャンガ」
「テメェに言われるまでもねェ」
立ち上がろうとするジャンガの左腕をキュルケが掴む。
「あら、お帰りになるの? まだ夜はこれからじゃない」
「放しやが――」
「放しなさいよ、ツェルプストー!!」
ジャンガの言葉を遮り、ルイズが叫ぶ。
そんなルイズをキュルケはニンマリと笑いながら見つめる。
「あら…、ひょっとして嫉妬?」
「なっ!!?」
唐突なその言葉にルイズは口をあんぐりと開ける。
キュルケは、ぷぷ、と口を押さえながら笑う。
「そうなのね? 嫉妬したのね? ふふふ、可愛いわね」
「ち、ちちち、違うわよ!? だだだ、誰がこんな、こんな、ば、化け猫なんかの事で…」
「隠さなくてもいいじゃない? 一緒に添い寝をしたくせに」
「添い寝?」
ジャンガは、何の事だ? と怪訝な表情を浮かべる。
彼はルイズとタバサが自分の腕を枕代わりにして寝た事を知らなかった。
「わーっ! わーっ! わーーーーーーーーっ!!!?」
ルイズはこれ以上無い位に取り乱し、喚き立てる。
そして、ジャンガの右腕を掴むや、力任せに引っ張る。
「と、とにかく!! こいつはわたしの使い魔なんだから、ツェルプストーに渡してたまるものですか!!!」
対するキュルケもジャンガの左腕を引っ張った。
「彼はあなたの使い魔を本気でやってる訳じゃないのよ? あなただって好きじゃないんだし、問題は無いじゃないの」
ルイズが引っ張り返す。
「大有りよ! 絶対に渡したりしないわ!」
キュルケも引っ張る。
「彼に告白したのはあたしが先よ! 勝負も恋も早い者勝ち…よっ!」
引っ張っては引っ張り返し、引っ張っては引っ張り返し、その繰り返し。
やがてジャンガもイライラが頂点に達し――

「ウゼェんだよ!!!」

両腕を思いっきり引き、腕にしがみ付く二人を真正面から衝突させた。
ゴンッ! と痛そうな音がして二人は完全に伸びてしまった。
仲良く倒れる二人を見下しながら、ジャンガは苛立たしげに鼻を鳴らすと部屋から出て行った。
途中、フレイムをジロリと睨み付けて。



――翌朝。
食堂は生徒達で賑わっている。――これは普通。
生徒達は食事をしながらもヒソヒソと話している。――余り珍しくない。
生徒達はある一点をチラチラと覗き見ている。――ちょっと珍しい。
視線の先ではキュルケが隣に座った相手に頻りに言い寄っている。――全然珍しくない。
キュルケの隣にはジャンガが、あからさまに不機嫌な顔で座っていた。――異常。

ジャンガはいつも通り厨房で朝食を取ろうとしたのだが、キュルケが現れて彼を連行。
自分の隣の席に強引に座らせ、あの手この手でアプローチを掛けてきたのだ。
悩ましい仕草でしな垂れかかったり、愛を囁いたり、スプーンで掬ったシチューを飲ませようともした。
ジャンガはそれらを極力無視しつつ、目の前のパンやら焼き魚を貪り、ワインを豪快に飲み干していく。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:36:41 ID:ko2PO1Nz
>>244
そういえばそうだなwww

支援
247毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:38:20 ID:3dyMR4D1
ジャンガの更に隣にはタバサが座っている。だが、今の彼女は目の前の料理に手をつけていない。
「信じない…、嘘…、これは夢…、わたしはまだ寝てる…、これは悪夢…、これは悪夢…、ぶつぶつぶつ…」
――何だか良く解らないが、意味不明な事を先ほどから繰り返し呟き続けている。
向こうのテーブルでは、ルイズが杖を圧し折らん勢いで捻じ曲げながら怒り狂った表情を向けている。
食堂の出入り口では茫然自失のシエスタが立ち尽くしている。
ジャンガは再び頭痛に悩まされた。

ちなみに、夕べのキュルケの”知り合い”達+太っちょが嫉妬に駆られて飛び掛ってきたりもしたが、
全員纏めて蹴り飛ばした。今、彼等は天井まで吹き飛ばされ、ムゥンズ遺跡の絵文字の如くめり込んでいる。

そんなこんなで食事を終わらせると、ジャンガはコソコソと食堂を出て行こうとする二人の生徒を見つけた。
ジャンガの目が自然と吊り上がり、次の瞬間には駆け出していた。
「待ちやがれ、ドリル頭!!!」
突然の怒号にモンモランシーとギーシュは、ビクッ、と身体を振るわせる。
恐る恐る振り向けば、そこには予想通りの相手。そして予想を大きく上回る恐ろしい表情。
有無を言わせず、ジャンガは彼女の胸倉を掴み上げた。
「オイ、ドリル頭…。俺が何を言いたいか…解るよな?」
モンモランシーは黙って頷いた。
ジャンガはあまりの怒りに引き攣った笑みを浮かべた。
「精力剤とか言ったよな? 精力剤程度であんな風になるのかよ?」
モンモランシーは首を振る。
「じゃあ…あれは精力剤じゃないって事だよな?」
「えと…、その…」
「答えやがれ…、あれは何だ? そして……」
「ダーリン♪ あたしを放って行っちゃ嫌よ〜♪」
ジャンガの背に追いかけて来たキュルケが覆い被さった。
ジャンガは盛大にため息を吐くや、モンモランシーを睨み付ける。

「早く、こいつを何とかしやがれェェェェェーーーーーー!!!」

ジャンガの叫び声は学院中に響き渡るほど大きかった。



――数分後――

――モンモランシーの部屋――

「惚れ薬ぃぃぃーーー!?」
話を聞いたルイズが叫び声を上げる。
モンモランシーはルイズの口に手を当て、もう片手の指を立てて静かにの意を示す。
「禁制の品なんだから、大声を出さないでよ!?」
「そんな事は解ってるわよ! と言うか、どうしてそんな物を作ったのよ!? 何でキュルケが飲んだのよ!?」
モンモランシーとギーシュは事の経緯を説明する。
興味本位で禁断のポーションをギーシュと一緒に調合した事、
危険と知りつつギーシュの制止も振り切ってジャンガを実験台にしようとした事、
ジャンガがポーションを飲まずにキュルケに無理やり飲ました事、
そして現在に至る事包み隠さず話した。
ちなみに、今部屋にはモンモランシー、ギーシュ、ジャンガ、ルイズ、キュルケ、タバサの六人が居る。
「あ、あんた……バカにも程があるわよ?」
ルイズの言葉にモンモランシーは反論出来ずに項垂れる。
ジャンガはそんな彼女にキレる一歩手前の鋭い視線を叩きつける。
「なるほどなァ…、実験台か…、この俺様を…『毒の爪のジャンガ』を実験台とはな…。キキキ…」
薄ら笑いを浮かべながらモンモランシーの胸倉を再び掴み上げる。
そして、苦しむ彼女の顔を真正面から睨み付けた。
「俺はどうやら最近妙に優しすぎたみたいだな。まァ色々あったからよ、そうなっても仕方なかったのかもな。
でもよ、羽目を外し過ぎだゼ。…正直ウゼェ、ウザ過ぎる。
ここらで一つ…バカなペットを躾け直しておくか。テメェの立場って物を解らせてやる」
言いながら爪を振り上げる。
248毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:41:54 ID:3dyMR4D1
その腕にギーシュは慌ててしがみ付いた。
「ままま、待ってくれ!? モンモランシーを傷つけないでくれ! 止められなかったぼくにも責任は在る!
だから、やめてくれ! お願いだ!」
ギロリと睨み付ける。
ギーシュは一瞬怯んだが、それでも必死に懇願する。
ジャンガは視線をモンモランシーに戻し、暫く見つめていたが、やがて爪を放した。
床に座り込み、咳き込むモンモランシー。
それを見下ろしながらジャンガは口を開く。
「この雌牛を元に戻せ…、そうすりゃ勘弁してやらなくもないゼ」
彼の背中には未だにキュルケが幸せな表情でしがみ付いていた。
漸く呼吸が整ったモンモランシーは、しかし首を振る。
「無理よ」
「ああン!?」
「どう言われても無理なのよ! 必要な秘薬も無いし」
「ンな事知るか!!! 金でも何でも貢いでその秘薬とやらを揃えろ! そしてとっとと戻せ!!」
「お金が幾らっても無理、非売品なのよ…その秘薬『精霊の涙』は」
「持ってたって事はテメェは手に入れられたんだろうが!? もう一度手に入れて来い!」
「無理よ…、今と昔じゃ状況がまるで違うんだから」
「いいから何とかしやがれ、ドリル頭!!! じゃなけりゃ、テメェの見ててウザってェそのドリル髪!
一本残らず刈り取って、ただでさえデコなその頭…あのコッパゲが”マシ”に見える位のツルッパゲにしてやるぞ!!?」
鬼気迫る表情で怒鳴るジャンガにモンモランシーは後退る。
と、唐突にジャンガは落ち着いた表情に戻る。
「まァ…別に無理に言わなくてもいいか」
「え?」
ジャンガはニヤニヤした笑みを浮かべながら横目でモンモランシーを見つめる。
「別にテメェだけが当てになるわけじゃねェ。あの姫嬢ちゃんにでも相談するさ。…と、今は女王だっけか?」
モンモランシーは、ハッ、となる。ジャンガの考えが読めたのだ。
「お前が何とか出来ないんだからな…他を当たるさ。あいつなら女王だし、借りも在るんだから良い案出してくれるだろうゼ。
ああ、そう言や惚れ薬は禁制の品なんだよなァ? さ〜て…姫嬢ちゃんに教えたらどうなるかなァ〜…キキキ」
モンモランシーの顔が青くなる。
ジャンガはそんなモンモランシーの肩を爪でポンポンと叩いた。
「なァに、安心しやがれ。路地裏で生活するようになっても俺が先輩として生き方を教えてやる。
さんざん傷直してくれた礼も含めてな…。だからよ、安心しな」
そして、ジャンガは背を向ける。
「解ったわよ! 取りに行くわ!」
ジャンガは相変わらずのニヤニヤ顔で振り返る。
「そうかい? すまないなァ…キキキ。じゃ、直ぐに出るか」
モンモランシーが反応する。
「ちょっ、ちょっと…今から出るの!? 授業は!?」
モンモランシーがそう言った瞬間、ジャンガは窓へ移動していた。
「姫嬢ちゃんとこまで行ってくるゼ」
「解った! 解ったから止めて!!!」
「最初からそう言やいいんだよ…。タバサ?」
ジャンガに名前を呼ばれ、タバサはコクリと頷く。
窓へと近づき、口笛を吹く。シルフィードが窓の外まで飛んで来た。
最早ツーカーだった。
「それじゃとっとと行くゼ。…それで、場所は?」
ジャンガの言葉にモンモランシーはため息交じりに答えた。
「ラグドリアン湖よ。水の使い手はそこで水の精霊と契約を交わすの」
その言葉にジャンガはあの夜の事を思い返した。

「…あいつか」
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 18:42:18 ID:1Ram6w57
支援せざるを得ない!
250毒の爪の使い魔:2009/05/17(日) 18:44:31 ID:3dyMR4D1
以上で投下終了です。
まさかここで惚れ薬イベントとキュルケの誘惑イベントをセットで使う事になるとは思わなかったな…(苦笑)
まぁ、尺のような物という事で…。

では、また次回!
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 19:17:14 ID:cNx2VeyX
皆さん投下乙っす。いよいよハルケギニアにあのアホな聖帝号がw
モット似の修羅って誰だろう。サモト様?
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 19:30:04 ID:TG5FbnOl
舗装もクソもない世紀末を玉座バイクで練り歩いていた聖帝様。
聖帝整備隊(仮)の苦労がしのばれるが何よりすごいのは
シュウが飛び掛かっても全く動じない聖帝運転手だった気がする
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 19:32:05 ID:lUNceeQW
サウザーの料理人がモヒカンだったような記憶があるんだが、手元に単行本が無い
254ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:35:53 ID:OIBdwUop
 聖帝の方、乙でした。
 回想シーンの「愛などいらぬ!!」が、後々の「昔のように……もう一度ぬくもりを……」に繋がるかと思うと、何だかこう、胸に来るものがありますね。
 ……北斗のキャラは、ほとんどの場合において散り際が一番輝いていると思う私は病気なのでしょうか。

 ウルトラの方、乙でした。
 羽根のシンボルで四文字のアルファベットとなると、やはりあのチームでしょうか。
 その辺りの時間軸の交錯における解釈も、どうなるのか楽しみです。

 黒魔道士の方、乙でした。
 そう言えば、意外とワルドとメンヌヴィルのコンビって見かけないかも知れませんね。
 こうして見ると、けっこう相性は良い……のか?ww
 エレオノールの今後も含めて、期待しています。

 毒の爪の方、乙でした。
 おお、惚れ薬イベントでキュルケとは新しい。
 いや、まあ、この後のことを考えるとワクワク……いえ恐ろしくも感じますが、コルベール先生がいない状態でキュルケが今後どうなるのか、楽しみです。

 さて、それでは私もこの投下ラッシュに乗っからせてもらおうかと。
 他にご予約の方がおられなければ、第36話を19:45から投下いたします。
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 19:36:33 ID:4sMc4RE+
ほくほくだねぇ今日は。支援させていただきますよ。
256ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:45:00 ID:OIBdwUop
「……どういうつもりだ? 何故、このワシに刺客を放った?」
「……………」
「返答せぬつもりかっ!」

 いつもの……と言うほど頻繁に見ているわけでもないが、それなりの頻度で見ている夢を、ルイズは見ている。
 今回は『仮面の男』が登場しているが、それと対峙しているのは……。

「お前こそ、決別したはずの弟子に奥義を伝授して何を企んでいる」
「知れたこと! 強靭な肉体を持ったあやつを新たなコアとし、デビルガンダムを完全復活させるのだ!!」
「!!」
「そのために奥義を伝授し、ドモンを最強のファイターに仕立て上げたまでよ!」

(……確か、この……トーホーフハイって死んだんじゃなかったっけ?)
 ということは、また時系列が遡っているのだろうか。
 どうせなら、キチンとした順番で見せて欲しいものである。

「……お前は勘違いをしている。キョウジ・カッシュ、そしてドモン・カッシュが生体ユニットとなっても、デビルガンダムは100%の力を発揮しない」
「何だと!?」
「ウルベとミカムラ博士はそれに気付き、何らかの対策を練っているようだが……。しかし、彼らでもデビルガンダムの本来の力を引き出すことは出来ない」
「フン、戯れ言を! DG細胞は当初の予定以上の力を発揮しておるではないか!?」

 しかし、何とも不思議な二人だ。
 常に冷静に見える『仮面の男』と、常に感情を高ぶらせているように見えるトーホーフハイ。
 どう考えても反りが合わないようにしか見えないのだが、それでも一触即発と言うか、すぐに殺し合いを始めるほど仲が悪いようでもない。

「……生体ユニットになるべき人物は、既に決められていた。そう……『奴』でなければデビルガンダムは真の力を発揮しない」
「笑止! だが貴様はキョウジにデビルガンダムを奪われたではないか!」
「確かに、私の力を以ってしても因果律を完全に制御することは不可能だった……」
「フン、とどのつまり貴様もデビルガンダムを制御出来なんだだけか!」
「自らの肉体を生体ユニットとするわけにはいかない。それはお前も同じはず。……だからこそ、私は『奴』を用意したのだ」

(って言うか、実は仲良くない? この二人……)
 二人は、その名の通り悪魔を思わせる金属の巨人の前で言い争いを続ける。
 仮面を付けているので表情はまったく読めないが、ルイズには『仮面の男』がどことなくこの会話を楽しんでいるように感じられた。
 ……同じ声の自分の使い魔は、ここまでスラスラと言葉の応酬を行ったりはしないと言うのに。

「■■■■。貴様の目的は一体何だ!?」
「……お前と同じだ」
「たわけが。ワシがそのような世迷い言を信じると思うか!」

 と、ここで『仮面の男』を中心にして、四角くて半透明な……虹色の箱のような物が出現する。
(アレって確か……色んなヤツを勧誘してた時にも使ってたヤツよね)

「さて、無駄話はここまでだ。私はデビルガンダムと共に未来へ帰る。お前は他のガンダムパイロットと共にこの時代へ残ってもらおう」

 どうやらトーホーフハイを置いて、一人でどこかに行くつもりらしい。
 そして四角い光の壁と、金属の巨人から強い光が放たれ……。
(……あれ?)
 今回の夢はこれで終わりかな、などと思っていたのだが、金属の巨人も『仮面の男』も、変わらずにそこにいた。

「クロスゲート・パラダイム・システムが作動しないだと? ……貴様、デビルガンダムに何か細工をしたのか?」
「さあて。ワシの力か、それともキョウジの意思か……」

 どうやら今のこの状態は、このトーホーフハイが意図している所によるものらしい。
257ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:46:50 ID:OIBdwUop
「地球人であるお前にクロスゲート・パラダイム・システムを使えるわけがない」
「ほざけ!! ……だが、貴様の思い通りに事は進まんぞ!!」

 ジャンプして『仮面の男』の頭上を越え、金属の巨人に飛び乗るトーホーフハイ。
 そして金属の巨人は物凄い音を上げながら地中に潜っていき、トーホーフハイと共に姿を消していく。

「ふはははは! さらばだ!!」

 高笑いを残しつつ、トーホーフハイはもはや完全に見えなくなる。
 一方、置き去りにされた形の『仮面の男』はというと……。

「さすがは東方不敗。侮れんな……」

 ……大して慌てた様子も悔しそうな様子なく、自分の裏をかいた相手に対して控え目な賛辞すら送っていた。
(やっぱり仲良いんじゃないの、コイツら)
 男の人同士のやり取りってよく分かんないわね……などという感想をルイズに抱かせつつ、『仮面の男』は次の手を考え始める。

「……まあ、いい。奴が次に行く場所の検討はついている。
 カラータイマーは既に手に入れた……。後は……容器を、デビルガンダムを取り戻すだけだ」

 そう呟くと『仮面の男』は再びあの虹色の箱を出現させ、そのままどこかへと飛んで行った。



「―――起きろ、御主人様」
「ん…………んぅ、ぁ?」
 いつもの使い魔の声と、軽く身体を揺さぶられる感覚とで目を覚ます。
「目は覚めているか?」
「…………………………おふぁよぅ」
 正直、まだ意識は薄ぼんやりとしている。
 しかし眠りの中から抜け出したのは確かなので、ルイズは取りあえず返答を兼ねた朝の挨拶を返した。
「……ぅ゛〜〜……」
 のったりと気だるげに身体を動かし、銀髪の使い魔から差し出された洗面器から手を水ですくって、バシャバシャと顔を洗う。
「ふぅ……」
 これで幾分かだが、気分がシャッキリする。
 さて、それでは着替えを始めよう。
 と、その前に使い魔を部屋の外に出さなくてはならない。
 あの男は自分が命ずるまで、何も言わずにジーッとその場に立っているのがいつものパターンなのだから。
「ユーゼス……って、あれ?」
 『着替えるから外に出てなさい』と言おうとしたら、何と自分が言うよりも先にドアに手をかけていた。
 珍しい。
 いや、とうとうこの鈍い男にも、『相手の言動や行動を察する』という能力が身に付いたのだろうか。
 などと思っていたら、感心するよりも早く言葉が飛んで来る。
「今日からしばらくは三人分なのでな。悪いが手早く済ませてもらうぞ」
「?」
 よく分からないことを言われて困惑するルイズをよそに、ユーゼスはとっとと部屋を出て行った。
「……何なのかしら」
 まあ、取りあえず今は着替えよう。
 ルイズはクローゼットから替えの下着や服を取り出し、今着ているネグリジェと下着を脱いでそれに着替えを始める。
「それにしても……」
 今回の夢は、何だかいつもに比べて『軽い』気がする。
 これまでは『仮面の男』の生涯を辿ったり、あるいは何かのメッセージを自分に投げかけてくるようなものだったのに。
 アレは何と言うか……まるで『一コマを切り取ってみました』、という感じのものだった。
 当然、それを見たルイズとしても『あの男にはこんな一面もあるのね』程度の感想しか抱けない。
「夢にアレコレと意味を求めるのもどうかと思うけど……」
 いよいよネタ切れになってきた、ということだろうか。
 まあ、別にルイズとしてもあの夢を特別に見たいわけでもないのだから、ネタ切れならネタ切れで構わないのだが。
258ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:48:43 ID:OIBdwUop
 とか何とか考えていると。
《えっ……ええ!? な、なん、何であなたが私の寝室にいるのよ!!?》
 長姉の素っ頓狂な叫び声が壁越しに聞こえてきた。
「……?」
 何だろう。
 まさか賊でも現れたのか……と一瞬だけ考えるが、夜中に来るのならともかく、こんな朝っぱらから襲撃など普通はしないだろう。
 しかも叫び声を出されている時点で、かなりの失態だ。
「……………」
 よく分からないが、とにかく一応確認した方がいいだろうか。
 ちょうど着替えも終わったところだし、どうせエレオノールの部屋はすぐ近くだし、別に構うまい。
 ということで、自分の部屋から出てエレオノールの部屋に行くと……。
「私に対して『朝に起こせ』と言ったのはお前の筈だが?」
「う……、そ、そうだけど、もう少し、こう、優しく起こしなさいよ!」
「お前に対して生半可な起こし方では効果が薄いのは、以前の宝探しの道中で経験済みだ。……それに、ただ身体を揺らして声をかけただけでそこまで言われる筋合いはない」
 何故か、自分の使い魔が。
 寝起きの姉と。
 仲が良さそうに(ルイズにはそう見えた)話をしていた。
「……!?」
 思わず絶句するルイズ。
 ちょっと待って。
 コレは一体、どういうコト?
 どうしてユーゼスが、エレオノール姉さまの部屋に上がりこんでるの?
 しかも姉さまも、まんざらでもなさそうな……そう言えばメガネを外してるエレオノール姉さまの顔を見るのはずいぶん久し振り……いや、これはどうでも良いとして。
「ちょ…………ちょっと、ユーゼス!!」
 叫び声を上げて、銀髪の使い魔を呼ぶ。
 その呼ばれた当人は、特に何でもなさそうに自分を呼んだ主人を見て、これまた何でもなさそうに声をかけてくる。
「どうした御主人様。髪を梳かすのならば、少し待て」
「そんなこと言ってるんじゃないわよっ!!」
 ルイズはズンズンとユーゼスに詰め寄り、詰問を開始した。
「何でアンタがエレオノール姉さまの部屋に上がりこんでるのよ!?」
「そのように言われたからな」
「はあ!!?」
 ユーゼスは軽く息を吐くと、仕方なげに一から説明を行う。
「……昨日の話になるが、何故かエレオノールから『朝に自分を起こすように』と命令された。断る理由もないので、私はそれを承知した。こんな所だ」
「……………」
 話を聞いて、ジトッとした目でエレオノールを見るルイズ。
 エレオノールはそんな妹の視線から気まずそうに顔を逸らすと、取り繕うようにしてセリフを並べ始めた。
「べ、別に誰かに迷惑をかけてるってワケでもないんだし、いいじゃないの」
「……迷惑とかそういう問題じゃないと思いますけど」
 うぅ、と言葉に詰まるラ・ヴァリエールの長姉。
 いつもとは微妙に立場が逆転していたが、だがそんなことには頓着しない男が一人いた。
「……御主人様、髪が少し乱れている状態で外に出るのは好ましくないぞ」
「え?」
 不意を突かれた形になるルイズの様子は気にせず、ユーゼスは主人の桃色がかったブロンドの髪を一房つまむと、スーッとその感触を確かめるようにして指を髪に這わせる。
「やはり乱れているな。梳かした方が良い」
「あ……う、うん……」
 髪を梳かすこと自体は『いつもの仕事』として召喚された翌日からルイズに命じられていることだし、ユーゼス自身も長髪なので手入れは慣れている。
 しかしルイズは妙に顔を赤くさせてそれに頷き、更に傍にいるエレオノールは不思議と羨ましそうな視線を向けていた。
 ……あくまでも『仕事の一環』として言ったつもりの言葉だったのだが、この反応は何なのだろう。
 まあ、ともかく。
 ルイズの髪を梳くにせよ、それをエレオノールの部屋でやるわけにも行かないだろうし、何よりエレオノールも着替えるだろうから外に出なくてはなるまい。
 それに、自分は『もう一人』を起こさなければならないのだ。
「ではカトレアを起こしたら取り掛からせてもらう」
「……は?」
 ルイズの間抜けな声が、エレオノールの部屋に響いた。
259ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:50:49 ID:OIBdwUop
「……えーと。…………どうして、そこでちい姉さまの名前が出て来るの?」
 ゆっくりとした口調で問いかけてくるルイズに、ユーゼスはやはり淡々と答える。
「『どうして』と言われても、本人から直接頼まれたことだからな」
「……………………そこに至るまでの経緯を説明しなさい」
「む?」
 ユーゼスは多少怪訝に思いながらも、主人の要望の通りに説明を行った。
「昨日カトレアを話をしていたら、私が朝にお前を起こしている……という話になってな。それを聞いたカトレアが、何故か『自分も起こしてくれ』と言い出したのだ。
 加えて捕捉すると、その場に居合わせたエレオノールが、更に『自分も起こせ』と私に命じたので現在のこの状況になっているのだが――――何か問題があるのか?」
 何だかんだ言ってもルイズとの付き合いはそこそこ長いユーゼスは、彼女の機嫌が悪い方向に傾いているらしいことを看破して『自分の行動の問題点』を逆に質問する。
「……………」
 ルイズはそんなユーゼス・ゴッツォに対してにっこりと微笑みを返すと、無言のままで唐突に床に手をついた。
「む……?」
 そんな主人の行動をユーゼスが疑問に思う間もなく、続いてルイズは勢いよく床を蹴ってその脚を高く宙に上げる。
 腕は床をついたままピンと伸ばされ、脚もまたそれと同調して身体が一本の線となっている。
 要するに倒立前転の要領だ。
 ……だが慣性に逆らって、倒立の体勢で静止が出来るほどルイズの身体能力は高くない。
 よって自然とそのまま仰向けに倒れこむことになるのだが、その過程、ちょうど綺麗に垂直の姿勢となるその一瞬にルイズは手首と肘、肩、そして腰をひねり、勢いはそのままで足先をユーゼスの方へと向けた。
「!?」
 それから一瞬の後。
 少女の渾身の脚技は『ちい姉さまにまで手ぇ出してんじゃないわよぉおおおおおおおお!!!』という叫びと共に、銀髪の男の顔面に叩き込まれることとなる。


「ユーゼスさん。本当に大丈夫ですか、その顔の怪我?」
「…………まあ、顔の識別が出来なくなるほどの損傷を受けたわけではないからな。それほど問題ではない」
 心配そうに聞いてくるカトレアにそう答えながら、ヴァリエール三姉妹と共に朝食の場へ向かうユーゼス。
 その額の左側には、少しばかり痛々しい青アザが出来ていた。
「顔の識別って……。それはもう命に関わる怪我になっちゃいますよ。そういう極端な例を比較対象に持ち出すのは間違ってます」
「……そうかね」
 かつて顔や身体の大部分を失って死にかけたことのある男は、カトレアの言葉を聞くだけにとどめつつ歩を進める。
 ―――ルイズから蹴りを受けた後、ユーゼスは痛む額を押さえつつカトレアの部屋に向かい、ルイズやエレオノールにしたのと同じく起床を促した。
 起こした後で、真っ先に額の青アザについて質問されたが『問題ない』の一点張りで切り抜けている。
「そうですよ。もうちょっと分かりやすいって言うか、身近な例を出してください」
「身近な例と言われてもな」
 先に挙げた『死にかけた大怪我』の他の主な怪我、と言うと……。
 超神形態でSRXの天上天下一撃必殺砲を最大出力で受けたこと(これは『本当に死んだ』のだが)とか。
 ワルドのライトニング・クラウドを食らって腕が軽く炭化したこととか。
 激昂したルイズの爆発魔法を受けたこととか。
 エレオノールに鞭でやたらめったら叩かれたこととか。
 一昨日、エレオノールとルイズに走行中の馬車から蹴り出されたこととか。
 昨日、エレオノールの魔法によって土砂で埋められたこととか。
「……………」
 思い返すほどに何だかやるせない感情が胸に芽生えていくので、これ以上は思い出さないことにした。
260ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:52:50 ID:OIBdwUop
 そのようにしてユーゼスが『痛い記憶』を脳裏から消し去ろうとしていると、隣にいるカトレアが自分の記憶を引き合いに出して語り始める。
「まあ、私も咳き込みや発作を起こした時は、『あ、コレは危険だな』とか『コレは大丈夫かな』って感じで比較したりしますけど」
「それもどうかと思うが」
 そのようにしてユーゼスとカトレアが妙な視点の会話を行っていると、不意に白衣の裾がクイクイ、と引かれる。
「……む?」
 一体何だと思って後ろを振り向けば、そこにはムスッと不満そうな顔をしたルイズがいた。
「何だ、御主人様」
「…………ちょっとこっちに来なさい」
 白衣を引かれるがままにカトレアから離れるユーゼス。
 カトレアは『あらあら』などと呟きながら、ニコニコとそんな妹とその使い魔を見ている。
 ちなみにエレオノールは『我関せず』とばかりに先頭を歩き続けているが、ことあるごとにチラチラと妹たちの様子を窺っていた。
 そんな二人の姉の動向に気付いているのかいないのか、それなりにカトレアたちと距離を取ったルイズは小声で、しかし強い口調でユーゼスに問いかける。
「何でアンタ、あんなにちい姉さまと仲がいいのよ!?」
「……『仲が良い』と言うほどでもないと思うが。カトレアとは普通に話しているだけだぞ」
「それよ、それ! アンタ、昨日まではちい姉さまに対しては敬語を使ってたのに、何でいきなり普通の口調になってるの!?」
 ユーゼスは少し考える素振りを見せると、仕方なげに口を開く。
「…………先程話した『起こすまでの経緯』と大差ない」
「はぁ!? どういう意味よ!!?」
 どういう意味よ、と言われても。
 実際にカトレアにそうするように言われたのだから、仕方がないのだが。
「……自分だけ敬語で、かつ『ミス』付きで呼ばれるのが気に入らなかったらしい。『他人行儀で不公平だ』と怒られたよ」
「む……。……まあ、ちい姉さまならそういう風に言いそうだけど……」
 相変わらずこちらをにこやかに見つめている次姉の人となりを思い返しつつ、ルイズは口ごもる。
 そして『うー』と小さな唸り声を上げた後で納得しかけたように見えたが、突然ハッと何かに気付いたかのように顔を上げると、また強く問いかけてくる。
「じゃあ、名前で呼んでるのもそう言われたから!?」
「その通りだ」
 サラリと答えるユーゼス・ゴッツォ。
 だが答えを受け取ったルイズの方は、とてもサラリとは行かないようだった。
「名前……名前で、呼ぶって……」
「?」
 ゴニョゴニョと何かを言いながら、エレオノールとカトレアの方を見るルイズ。
 主人がそちらを向いたので自然とユーゼスも彼女たちの方を見るが、特に変わった様子は見られない。
「御主人様、エレオノールとカトレアがどうかしたのか」
「………………やっぱり、『御主人様』…………」
 ルイズは歩きながら、小声で独り言を呟く。
 ポツリポツリとユーゼスにも『呼び方は』だとか『何で姉さまたちだけ』などの断片的な単語は聞こえてくるが、それがどのような意味を持つのかは分からない。
(……まあ、ヴァリエールの女について分からないのは、いつものことか)
 この家の女性は、時たま自分には理解の出来ない行動をするものである……と学習し、カトレアとの会話を経てそれが確信に変わりつつあるユーゼス。
 しかしその『彼女たちの理解が出来ない』という時点で思考を停止し、そこから『彼女たちを理解しようとする』という行動に移ろうとしないのが、彼の欠点であった。
261ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:54:50 ID:OIBdwUop
 なお、朝っぱらから不機嫌度が加速度的に増しているルイズはと言うと。
(……どうして、わたしだけ呼び方が『御主人様』なのよ……)
 エレオノールは、『エレオノール』。
 カトレアは、『カトレア』。
 そして自分は、『御主人様』。
 姉妹の中での自分のこの格差は、一体なんだと言うのだろう。
 しかもカトレアとは一昨日に会ったばかりなのに、もう名前で呼んでいるなんて。
 コイツ、こんなに手が早かったのか。
(まあ、そのあたりは後で時間のある時にでもキッチリ問い詰めるとして……)
 今の問題は、自分の呼び方である。
 ……いっそのこと、思い切って自分も『名前で呼べ』と命令するべきだろうか。
(で、でも……)
 それは今更、こう、何と言うか………………恥ずかしい。
 第一、召喚したその日に、
 ―――「呼ぶ時は『御主人様』って呼ぶこと。いいわね?」―――
 そう言いつけたのは、他でもない自分ではないか。
 何ヶ月も前の自分の言動を今になってくつがえすと言うのは、正直かなり抵抗を感じる。
 なかなか盛大な葛藤だったが、ルイズはそれを打破するためにも脳内で自問自答を開始する。
(……いや、ちょっと待ちなさい、ルイズ)
 エレオノール姉さまだって、ある日を境に『ミス・ヴァリエール』から『エレオノール』と呼び名が変わっていたじゃないの。
 ユーゼスに聞いても姉さまに聞いてもそのことを詳しくは話そうとしないけど、だったら自分も『ルイズ』と名前で呼ばれたって問題は何もない、はず。
「よ、よぉし……」
 ルイズは意を決し、銀髪の使い魔にその命令を下そうとした。
「ユ……ユ、ユーゼス!」
「何だ?」
「せっかくだから、わ、わたしのことも、ルル……る、『ルイズ』って、名前で……」
 実際にそれを口に出そうとすると緊張で上手く口が回らなくなるが、そこは気合で乗り切る。
「名前で、呼んで―――」
 だが。
「あら、父さま」
「え?」
 不意に聞こえてきたエレオノールの言葉に顔を上げると、いつの間にか朝食の場であるバルコニーに到着していることに気づいた。
 ……どうやら、色々と話したり考えごとをしている間に到着してしまったらしい。
 更に少し遠くに視線を向ければ、父であるラ・ヴァリエール公爵、そして母の姿が見える。
「…………あぅ」
 ある程度くだけた関係の姉たちならともかく、さすがに厳格な両親の目の届く範囲で(自分の使い魔とは言え)平民に対して『自分のことを名前で呼びなさい』と言うわけにもいかず、セリフが尻すぼみで終わってしまうルイズ。
「何だったのだ……?」
 そしてユーゼスは主人の言葉が途中で途切れてしまったことを不思議に思いつつ、バルコニーの片隅に控える。
 ―――『名前』がどうのこうのと言っていたような気がするが、断続的かつ小声になったり大声になったりしたのでよく聞き取れなかった。一体何を言おうとしていたのだろう。
(まあ、特に重要な案件でもなさそうだが)
 本当に必要なことなら朝に起こした時点で言うはずであるし、それほど大したことでもあるまい。
「……………」
 ところで、どうでもいいのだが。
 何だかゲンナリしながら席に着くルイズとは対照的に、エレオノールとカトレアがどことなく得意そうな顔をしているように見えるのは、何故なのだろう。
262ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:56:50 ID:OIBdwUop
 そんなユーゼス・ゴッツォと三姉妹の微妙なやり取りはさて置き、日当たりの良いバルコニーにてラ・ヴァリエール家の面々が勢ぞろいした朝食が始まった。
「……………」
 使用人たちと並んでバルコニーの隅に立つユーゼスは、そんな朝食風景を感情のこもらない目で見る。
 今日もまた無言の食卓が展開されるのか、などと思っていると……。
「まったく、あの鳥の骨め!」
 ラ・ヴァリエール公爵は、かなり不機嫌な様子でそんなことを口走った。
(確かこの国の首相……いや、宰相がそのような呼ばれ方をしていたか)
 本を買いにトリスタニアを歩いていた時に、道を行く人々からそのような単語を耳にした覚えがある。
 トリステインの王家には、美貌はあっても杖はない。杖を握るは枢機卿。灰色帽子の鳥の骨―――という小唄があったような、無かったような。
 まあ、アレが女王ではそのような小唄の一つも流行るのも必然かも知れないが。
「どうかなさいましたか?」
「このワシをわざわざトリスタニアに呼びつけて、何を言うかと思えば『一個軍団編成されたし』だと!? ふざけおって!!」
「承諾なさったのですか?」
「するわけなかろう!!」
 さらりと話を促す公爵夫人に呼応する形で、不機嫌の理由を語るラ・ヴァリエール公爵。
 語気が荒いことからして、相当腹に据えかねているようだ。
「既にワシは軍務を退いたのだ! ワシに代わって兵を率いる世継ぎも家にはおらぬ。何よりワシはこの戦に反対だ!!」
「そうでしたね。……でも、よいのですか? 祖国は今、『一丸となって仇敵を滅すべし』との枢機卿のおふれが出たばかりじゃございませんか。『ラ・ヴァリエールに逆心あり』などと噂されては、社交もしにくくなりますわ」
 熱くなる公爵とは逆に、夫人は涼しい顔をしている。
「あのような鳥の骨を『枢機卿』などと呼んではいかん。骨は『骨』で十分だ。……まったく、お若い陛下をたらし込みおって」
 ゴフッ! と口の中に入れていたパンを噴き出しかけるルイズ。
 そんな末妹をエレオノールが睨み付けようとするが、
「それに『娘がアカデミーで妙な研究をしているようだが』などと、言いがかりもはなはだしい!!」
 続いての父の言葉を聞いて、彼女もまたゲホッ! と飲んでいたスープを噴き出しかけた。
 ゲホゲホガホガホと咳き込む長女と三女に気付いているのかいないのか、公爵と夫人は話を続ける。
「おお恐い。宮廷のスズメたちに聞かれたら、ただじゃ済みませんわよ」
「ふん、是非とも聞かせてやりたいものだ」
 そして咳き込みからいち早く回復したエレオノールが、先程の父の発言の意図を問い質した。
「と、父さま。『アカデミーで妙な研究』とは、どういうことなのでしょうか?」
「何でも陛下からそのようなお話があったらしくてな。『独自に怪しげな魔法の使い方を開発し始めた』などと言っていたが……エレオノール、そんなことはないだろう?」
「…………もちろんですわ。……まあ、趣味の範囲で小さな研究は行っていますが……」
 冷や汗を一筋流しながら、父にそう答えるエレオノール。
 『独自に怪しげな魔法の使い方を開発し始めた』のは実際にはユーゼスなのだが、しかしその使い方について添削したり意見を言ったりしているのは間違いなく自分なので、どうにも歯切れが悪い。
(あくまで『個人的な研究』と言い張るのも手だが、『公爵家の長女』と『アカデミーの主席研究員』という立場上、そういうわけにもいかないか……)
 こういう時に社会的地位は足枷になるな、などと思うユーゼス。
 特に『魔法』はハルケギニアの貴族社会において根幹とも言える位置付けにあるため、その扱いも微妙になるのだろう。
(……もっとも、今の段階ではそれほど危険視もされていないようだが)
 本当に問題となっているのならば、ラ・ヴァリエール家なりアカデミーなりに強制査察が入ると思われるので、あくまで『このような噂があるが、本当か』というレベルの話のようである。
(…………今後の研究は、より秘密裏に行った方が無難か)
 なお、『研究をやめる』という選択肢はユーゼスには存在していない。
263ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 19:58:50 ID:OIBdwUop
 話が一段落したところで、今度はルイズがかしこまった様子で公爵に話しかけた。
「……父さま。伺いたいことがございます」
 まっすぐに向けられる娘の目に何か感じ入る所があったのか、公爵もまたルイズに正面から向き合おうとする。
「いいとも。……だがその前に、久し振りに会った父親に接吻してはくれんかね。ルイズ」
 ルイズは静かに立ち上がると小走りに父のそばに寄り、その頬に軽く口付けをする。そして席に戻ると改めて質問を投げかけた。
「どうして父さまは戦に反対なさるのですか?」
「この戦は間違った戦だからだ」
 端的に答える父に対して、ルイズは更に問いを重ねる。
「先に戦争を仕掛けてきたのはアルビオンのはずです。それを迎え撃つのが『間違っている』と?」
「……こちらから攻めることは『迎え撃つ』とは言わんのだよ」
 ヴァリエール公爵は、先程とはうって変わって落ち着いた口調でルイズに持論を語った。
「いいか? 『攻める』ということは、圧倒的な兵力があって初めて成功するものだ。敵軍は五万。対する我が軍はゲルマニアと合わせて六万ほど」
「我が軍の方が一万も多いじゃありませんか」
「たかが二割程度の兵力差など、簡単にひっくり返る。それに、攻める側は守る側に比べて三倍の数があってこそ確実に勝利が出来るのだ。拠点を得て、空を制してなお、この数では苦しい戦いになるだろう」
「……………」
 公爵の話を、ルイズは黙って聞いている。
「我々は包囲をすべきなのだ。空からあの忌々しい大陸を封鎖して、奴らが日干しになるのを待てば良い。そうすれば、向こうから和平を言い出してくるわ。
 それに、もし攻め込んで行って失敗したら何とする? その可能性は決して低くない」
(……この男、どちらかと言うと保守的な人間のようだな)
 ラ・ヴァリエール公爵の言を聞いたユーゼスは、彼のことをそう評した。
 もっとも、ユーゼスは『保守的だから』という理由で低い評価を付けるようなことはしない。
 規模の大小に関わらず組織というものにはある程度、保守的な考えを持つ人間が必要なのである。
 特にこのヴァリエール公爵の場合は、先祖代々から現在に至るまで長年に渡って広大な領地を維持し続けてきたためか、その傾向が顕著なのかも知れない。
 とは言え、守りの思考ばかりでは発展は望めない。
 現にこのトリステインは古い伝統や慣例にこだわりすぎて国力を弱め、戦争をするにしても隣の新興国のゲルマニアと同盟を結ばなければならなかった。
 要するに重要なのはバランスなのだが、重要だけにその調整が一番難しい。
 攻めの姿勢が強すぎれば、それに比例して外部からのリスクも強まる。
 守りの姿勢が強すぎれば、内部の調整だけにしか頭が回らずにそれ以外のことが出来ない。
 組織にとって、内憂外患は常に悩みの種なのだ。
(……地球のTDFが良い例だな)
 あの組織も、自分が地球に赴任した頃はまだ『地球防衛軍』としての色合いが強く、科学特捜隊やウルトラ警備隊に代表される特殊部隊を擁していた。
 だが怪獣や異星人、犯罪組織などが地球から姿を消すと、今度は地球圏の自治に力を注ぐことになる。
 スペースコロニーの住民による独立運動の鎮圧は『地球圏の秩序維持』という名目で40年間に渡ってTDFに弾圧され、その結果としてTDFに対抗するネオバディムなどのレジスタンス組織が誕生した。
 更に、その状況を憂えたTDFのトレーズ・クシュリナーダが色々と画策し、裏からネオバディムを操るユーゼスの思惑と合致したり相反したり……と少々ややこしい事態へと発展していく。
 ちなみに事の顛末として、TDFはネオバディムにアッサリと敗北し、トレーズが率いるTDFの特殊部隊OZも巡り巡って反TDF組織であるピースミリオンに吸収合併されるような形になっていた。
 もっとも、それもまたトレーズの計画の内だったのだが……。
(……まあ、ハルケギニアでそこまで劇的な革命は起こらないだろうが)
 目まぐるしく時代が移り変わっていた地球ならばともかく、六千年もの間ずっと歴史を凝り固まらせてきたハルケギニアにおいて『自発的な』急激な変化は極めて発生しにくい、とユーゼスは読んでいる。
 それは社会制度においては無論のこと、技術、文化、風俗、未開の土地の開拓、そして人々の意識や価値、精神など全ての面において共通していることだろう。
 ……しかし、だからこそユーゼス・ゴッツォはこの地に価値を見出してもいる。
264ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 20:00:52 ID:OIBdwUop
 と、ユーゼスが思考を展開させている間にもヴァリエール公爵の話は続いていく。
「おまけに魔法学院の生徒を仕官として連れて行くなどという馬鹿な準備まで始めているらしいではないか。……まったく、戦場で子供に何が出来る?
 戦はな、足りぬからと言って数だけ揃えれば良いという物ではない。『攻める』という行為は、絶対に勝利が出来る自信と確信があって初めて行えるのだ」
 ルイズは父の言葉を噛み締めるようにして頷くと、重ねて質問を投げかける。
「では、父さま。仮に……もし仮に『わたしがこの戦に加わる』と言ったら、どうなさいますか?」
「……まさか行くつもりなのかね、ルイズ?」
 ピクリとヴァリエール公爵の表情が動き、周辺の空気までもが緊張する。
 ユーゼスがふと視線を動かせば、公爵夫人やカトレア、エレオノールまで似たような……いや、エレオノールは他の面々に比べて表情の強張りが若干強いだろうか。
 やはり妹が得た力である『虚無』を知っている分、胸の内の動揺も大きいのかも知れない。
「それこそお前が行ってどうする? 魔法の才能もないお前が……」
「そのことをこれから考えるためにも、父さまのお話を伺いたいのです」
 ジッと父を見るルイズ。
 公爵はそんな娘の様子に少々面食らったようだったが、すぐに気を取り直すと毅然とした態度で話を始める。
「……先程も話したように、あのような勝てる見込みが薄い―――いや、たとえ勝てる可能性がどれだけ高かろうと、戦に娘を行かせるわけにはいかん」
「それは『公爵』としてのお言葉ですか? それとも『わたしの父』としてのお言葉ですか?」
「…………両方だ」
 ヴァリエール公爵は娘の質問に答えつつも、両目を見開いて娘の顔を見た。
 どうも娘の態度と言うか、自分に対する姿勢に驚いているらしい。
 そして少しの間考える素振りを見せた後、神妙な顔でルイズに語りかける。
「ルイズ。私からも質問をして良いかな?」
「何なりと、父さま」
「お前は、得意な系統に目覚めたのかね?」
「!」
「……!」
 今度はルイズの両目が見開かれ、そしてエレオノールもまた驚いた様子を見せた。
 ルイズは努めて平静な口調で、父に尋ね返す。
「……どうしてそう思われるのです?」
「いや、何。最後にお前と話した時と今とでは、印象が随分と違っていたのでね。心の内に何かの変化が起こったのかと思ったのだが……メイジの心に変化をもたらす物と言えば、まずは系統に目覚めるかクラスが上がるかを考えるものだろう」
「…………そうですか」
 それだけ言うと、ルイズは沈黙する。
(さあ、どうする? 御主人様……)
 ユーゼスは心の中で、ルイズを試すように問いを投げかけた。
 主人は一体どう答えるつもりなのか。
 まさか馬鹿正直に『自分は伝説の系統だ』などとは言えまい。
 かと言って『まだ系統に目覚めていない』というのもあの少女のプライドの高さからして考えにくい。
「四系統のどれだね?」
 そうなると、通常の四系統の中から適当な物を選んで父に偽りの報告を行うか……。
「―――今、この場では言う必要性を感じません」
 このようにある種の誤魔化しを行うかの、どちらかになるだろう。
「な……」
「……ルイズ……!?」
 この娘の言葉に、ラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人は非常に驚いた様子を見せた。
 どうやら『最後にルイズと話した時』と『今のルイズのセリフ』は、余程かけ離れたものであったらしい。
 一方、カトレアは表情を消してそんな妹と両親の会話を眺めているが、それにしても……。
(……精神状態が顔に出やすい女だな)
 そんなルイズとカトレアの姉であるエレオノールは、三姉妹での最年長者だと言うのに最も落ち着かない素振りを見せている。
 困っていると言うか、不安と言うか、オロオロしていると言うか。
 大方『ルイズが迂闊な発言でもするのではないかヒヤヒヤしている』という所なのだろうが、もう少し大きく構えていても良さそうなものである。
(まあ、しかし……ああいうことを『可愛げがある』とでも言うのだろうか)
 イングラム・プリスケンが聞いたらひっくり返りそうなことを内心で呟きつつ、ユーゼスはエレオノールを視界の端に収めながらルイズとラ・ヴァリエール公爵の会話を見続ける。
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:01:23 ID:+ffQzMUe
私怨!
266ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 20:02:50 ID:OIBdwUop
「……ルイズ。どうして言えないのだね?」
「『言えない』のではなく『言わない』のです、父さま。別に系統を父さまたちに報告しなければいけない義務もないでしょう?」
「ぬ……、しかし、父親として娘が目覚めた系統は……」
「話したところで、わたしの系統が父さまの今後にそれほど影響するとは思えませんが」
「……………」
 物は言いようである。
 娘の系統が『虚無』で、父の今後に影響しない訳がない。
 しかしラ・ヴァリエール公爵は娘の系統が『虚無』であるなどとは全く考えていないだろうし、ルイズもそれは承知している。
 その上で『自分の系統を知ることに何の意味があるのか』と言っているのだから、これはもう『意地の悪いやり取り』としか言いようがなかった。
 ……なお、エレオノールはそんな妹の言葉を聞いて顔を赤くしたり青くしたりしている。
「それに……系統を言ったから何だと言うのです? わたしが目覚めた系統によって、父さまが参戦の許可を出したり出さなかったりするのですか? 『水』ならば良くて、『火』ならばダメだとか」
「いや、そのようなことはないが……」
「なら、別に言わなくてもよろしいじゃありませんか」
 そう言うと、ルイズは席から立ち上がって改めて父に向き直った。
「父さま。今のお話、大変参考になりました。これよりじっくりと参戦するかしないかを考えようかと思います」
「待ちなさい、ルイズ。まだ話は……」
「もし参戦すると決めた場合には父さまに許可をいただきに参りますので、その時はよしなに。……それでは」
「ルイズ!」
 父の強い制止を無視し、ルイズは会話を切り上げる。
「ユーゼス、来なさい」
「……了解した」
 そして平然とした態度のまま、ルイズは使い魔である銀髪の男を引き連れて、朝食の席から退場して行く。
 一方、残された家族たちは、唖然とした表情でルイズが立ち去った後のバルコニーの出口を見つめていた。
「ど……どういうことだ? あんな『必要性を感じない』や『話したところで』などということを言う子じゃなかったはずなのに……まるで別人ではないか!?」
 疑問をそのまま口に出すラ・ヴァリエール公爵だったが、その疑問に答える者は誰もいない。
 ……正確に言うと、疑問に対する答えを持つ者は一人だけいたのだが、それを公爵に伝えようとする者はいなかった。
 そして、その答えを持つ金髪眼鏡の長姉であるが。
(間違いなくユーゼスの影響ね……)
 よりによってこんな場面で遺憾なく発揮されてしまったルイズの変わりっぷりに頭を抱えていた。
 いや、別に妹の人格と言うか、精神面での変化を頭ごなしに否定するつもりはないのだが、いくら何でも時と場合と相手を選んで欲しい。
(……やっぱり、まだまだ子供ってことかしら)
 そのあたりも含めて一度じっくり話をする必要があるかも知れないわね、などと考えるエレオノール。
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:02:50 ID:NWFFQpGZ
し・え・ん!
268ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 20:04:50 ID:OIBdwUop
 しかし、そんな裏事情など知るよしもないラ・ヴァリエール公爵は大いにうろたえていた。
「いくら何でも、系統に目覚めただけであそこまで変わるわけはないし……。そ、育て方を間違ってしまったのだろうか……。いや、まさかワルドの一件のせいで心を閉ざしてしまったのか? それとも魔法学院で何か……」
「……あなた」
 夫人の諌める声も、今の公爵には届かない。
「な、なあ、カトレア。ルイズから何か聞いてはいないかね? 『向こうでこんなことがあった』とか、『グレてやる』とか、『父さまのこんな所が嫌い』とか」
「いえ、そのようなことは聞いておりませんが……」
「あなた」
 途方に暮れた公爵はルイズと仲の良かったカトレアを頼るが、そのカトレアもルイズと再開したのはつい先日のことなので、そこまで詳しい事情は知らなかった。
「ならば一体、何が原因で……!? ええい、こうなれば魔法学院に間者を送り込んで……いや、今は夏期休暇中だから意味がないか! ではカトレア、お前の方からそれとな〜くルイズに聞いて……」
「……………」
 と、そんな風に取り乱すラ・ヴァリエール公爵の姿に、とうとう夫人の堪忍袋の緒が切れる。
「あなたっ!!」
「うひゃあぁっ!?」
 妻に怒鳴られ、ビクッと震えてのけぞる公爵。
 実に情けない光景だった。
「仮にも公爵ともあろう者が何ですか、その有様は!? 娘の言葉に右往左往して……ルイズの言葉ではありませんが、『公爵』としても『父』としても情けないことこの上ありませんよ!!」
「し、しかしなぁ、カリーヌ。あの可愛かったルイズが、あんなことを……」
「ええい、口を開けばブツブツと文句や理屈ばかり……! そのようなことだから、あのようにルイズが付け上がるのではありませんか!!」
「うぅ……」
 公爵夫人は自分の剣幕に尻込みする夫を一瞥し、目を閉じて軽く深呼吸を行うと、気を取り直して落ち着いた口調で今後の方針について語り始めた。
「とにかく今の所はルイズも『考え中だ』と言っているのですから、戦に行くか行かないかの議論はひとまず置いておきましょう。その上でルイズが『戦に向かう』と言うのでしたら、それはその時に説得するなり強引に引き止めるなりすれば良いのです」
「う、うむ」
「後はルイズのあの態度ですが……。子供と言うのは本来、良くも悪くも目まぐるしい勢いで変わって行くものでしょう。特にあの年頃は。ならばここは、ひとまず見守るべきかと思いますが」
「いや、だが……」
「『だが』? だが何です?」
「い、いや、何でもありません」
 もはや公爵の威厳もへったくれもなかった。
「念のため言っておきますが、『見守る』というのは『ただ見ているだけ』とは違うのですよ。もしルイズが道を踏み外しそうになったのならば、その時は力尽くででも真っ当な道に戻さなければなりません」
「力尽く、かぁ……」
 その言葉を妻の口から言われると、何だかシャレにならないような気がする。何せ彼女は、若い頃に……。
「分かりましたね!?」
「は、はい!」
 思わず記憶の海に逃げ込みそうになった所で、強い確認の言葉を浴びせられて我に返るラ・ヴァリエール公爵。
 ……何はともあれ、ラ・ヴァリエール家としてはルイズに対して『経過を観察しつつ、問題がありそうだったら即座に矯正する』というスタンスとなる。
「…………はぁ。ついこの間までは、『父さま、父さま』って言って駆け寄ってくる可愛い子だったのに…………」
 ちなみにヴァリエール公爵は、娘の変化を喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、判断に迷っているようだった。
269ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 20:06:50 ID:OIBdwUop
 そんな家族の話題の中心のルイズはと言うと。
「うわぁぁああああああ〜〜ん!! どっ、どうしよう〜〜〜!!?」
 自室に戻ってドアを閉めるなり、物凄い勢いで先程の自分の発言を後悔しまくっていた。
「場の勢いとは言え、よ、よりによって父さまに向かってあんなことを……あああ、もしかして謹慎を命じられたりするんじゃ……」
「……そこまで心配する必要もないのではないか?」
 アワアワと混乱しかける主人とは反対に、使い魔のユーゼスは平然としたものだった。
「何よ!? 何の根拠があってそんなことを言うの!?」
「仮に謹慎や軟禁状態になったとしても、逃げ出せばいいだけの話だろう。幸いにして今はそのようなことを言われてはいないし、あらかじめ近くにジェットビートルを持って来ていればイザという時の備えにはなる」
「よりによって実家から脱走してどうすんのよ!! って言うか、そんなことしたらもうこの家に帰って来れないじゃない!! 下手すると勘当よ、勘当!! 最悪だとお尋ね者!!」
 サラッと凄いことを言うユーゼスに、ルイズはガーッとまくし立てる。
 一通り叫び終えた後で数回ばかり深呼吸を行うが、やはり思考の切り替えは上手く行かないようだった。
「……まあ、確かにアンタの言う方法も一つの手ではあるんだけど……うーん、やっぱり父さまや母さまには変な印象を持たれちゃったかも……」
「……………」
 ウジウジと悩むルイズだったが、ユーゼスはそんな主人に対して何も言おうとはしない。
「……むぅ〜……」
 そんな使い魔の態度が気に入らないのか、ルイズはユーゼスのことを恨めしそうにジトーッと睨みつける。
「何だ、御主人様」
「……アンタね、御主人様がこんなにも悩み苦しんでるんだから、優しい言葉の一つでもかけてあげるべきでしょう」
「それで何か情況が好転するのか?」
「…………しないけど」
「ならば必要あるまい」
 こういう所が優しくないんだから、などとルイズは思うが、『優しいユーゼス』もそれはそれで違和感を感じると言うか、むしろ気持ちが悪い。
 はあ、と溜息を一つだけ吐くと、ルイズは今度こそ思考の切り替えを行う。
「まあ、やってしまったことは仕方がないとしても……」
「ふむ」
 取りあえず目先の問題としては『父や母への対応』だが、もっと長い視点で見た場合の問題はそれではない。
 アルビオンとの戦に参戦するのか、しないのか。
 結構な大問題であるが、近日中にその結論を出さなければいけない。
「それで、これからどうするのだ?」
「それは……これから考えるわよ」
 幸いにして、父から判断材料は貰うことが出来た。
 後は自分の信念と、立場と、今までの人生における経験(と言っても、それほど多くもないが)を総動員して考え抜くだけだ。
「じゃあ、取りあえず」
「む?」
 何かを考えるにしても、いつまでもこんな城の中にいては納得の出来る結論は出るまい。
 ということで、ルイズは昨日出来なかったことを今やることにした。
「ユーゼス。ラ・ヴァリエールの領地の案内をしてあげるわ」
「ほう、それはありがたい」
 これにはユーゼスも乗り気なようである。
「ついでにビートルの回収もね。……アンタのさっきの話じゃないけど、やっぱりイザって時の備えは必要かも知れないし」
「脱走を前提にするのもどうかと思うが」
「だから、あくまで『イザという時のため』よ!! まったく、アンタが言い出したことだっていうのに……」
 言いつつ、外出の準備をするルイズとユーゼス。
 そしてルイズはストレスを払拭するかのように張り切って、ユーゼスはそれに追随してラ・ヴァリエールの城から馬で出発した。
 ……出発したのだが。
「ぐぉおおっ!!?」
「また落馬!? ……ああもう、実家にいる間には何とかしないと……!!」
 久し振りの乗馬に当たってユーゼスはその乗馬テクニックを主人に対し、改めて披露することになるのだった。
270ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/05/17(日) 20:08:50 ID:OIBdwUop
 以上です。
 ……むう、何かウチのルイズって、ユーゼスが絡まなければかなり精神年齢が上がりますなぁ。……いや、ユーゼスが絡んだ時にだけ精神年齢が下がると言うべきなのでしょうか。
 しかし書いてる私が、そのギャップを使いこなせてないし……。……難しいですね、色々と。

 さぁて、非常に厄介なことに魔法学院の夏期休暇は2ヶ月もあるんですよね、これが。
 原作だとその間に魅惑の妖精亭でバイトをしたり、アニエスやアンリエッタとイベントを起こしたりしてるんですが……この長い時間に、何をやらせたものやら。

 しかし……学園、かぁ……。……バンプレストも何だか迷走してるなぁ。
 いや、まあ、買いますけどね。Kは買いませんでしたが。

 それでは、支援ありがとうございました。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:13:48 ID:AoNBbi5i
投下乙
しかしこの両親、ユーゼスには無関心だな
「貴様が娘達をたぶらかしたのだな!」という展開を期待してたんだが
んでユーゼスの持っている鞭を見て動揺する烈風とか
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:14:32 ID:7VlSHCcR
乙乙
まさかキュルケに飲ませるとは思わなかったぜ

>>109
フェアリーって五感を無くした猫だっけ?

ていうかオーフェン物ならイザベラ様がイザベラを召喚するとかそういう一発系が読みたいぜ
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:15:40 ID:ko2PO1Nz
今日は凄いぞぉぉぉぉぉぉおおおお!
次々とおおおおおぉぉぉぉ!

ラスボスさん乙です。
ユの字がエレオノールにデレとるwww

学園ですけど……あれ中身はリンクバトラーみたいな感じみたいですし、タイトルはサラッと流して良いんじゃないっスか
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:18:26 ID:Qd9cGaGf
>>271
現時点でそれを判断する材料があの二人にはないのだなこれが
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:18:45 ID:somz9aZ2
さあ今日は後何回投稿があるのかな
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:27:42 ID:7VlSHCcR
更新しないでのんびり読んでいる→書き込む→確認したら新しい投下来てた
最近の俺こんなんばっか・・・・


ナニはともあれラスボスさん乙です
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:29:55 ID:/+Hmg2un
作者「私は後三回投下を残しています」
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:32:45 ID:ko2PO1Nz
リアルな数字だなぁw
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 20:36:30 ID:zVotSc2D
ラスボスの人乙&GJ!
しかしこのユーゼス着々とフラグ立ててるなぁw
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 21:01:26 ID:kaVzWJew
今日はなんて充実した日なんだ

ラスボスの人乙です!
ユーゼス…ギャバンに乗馬くらい教わっておけば良かったのに…でもSHOだと乗馬クラブ勤務じゃないのか
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 21:13:02 ID:YNUjvwMX
これで、魔砲の人やアクマがこんにちわが投下されたら言う事無いんだけどなあ。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 21:24:22 ID:JAv5DLc6
ラスボスの人、GJです
公爵夫人やっぱ怖えー、ほんとどうやったらこんな人を嫁にできるんだろう?
ルイズの大回転キックは笑た。

まだ投稿があるかどうかですけど、代理希望スレのほうでネガティブな人が投下していました。
私は携帯のみなので、とりあえず報告だけやっておきます。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 21:30:22 ID:g9xgeiY3
作家の皆さん、乙でしたー。
リアルタイムに支援できなかった事が悔やまれる……
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:01:49 ID:crz1nBWK
アクマについては同意だ。早く復活してください作者様・・・
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:28:27 ID:96keAnOs
夏季休暇が終わったあと開戦までさらに二ヶ月なかったっけ?
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:30:23 ID:KjEMTRG3
プリズマイリヤは・・・型月作品・・・か?
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:32:34 ID:RUbpSnrC
>>286
型月の公式スピンオフ作品だから型月スレ行きだね。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:37:54 ID:KjEMTRG3
>>287
だよなぁー・・・あそこ過疎ってるんだよな

プリズマのインクルード変身はかなりゼロ魔に合うと思うんだが没か orz
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:49:55 ID:IJcB70D7
>>179
亀すぎるが、対戦車用じゃなかったっけ?

ザクでも勝てるのは同意するが。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:50:32 ID:dchmCCRD
>>284
アクア

に見えた
速く来てくれTAP!
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:55:40 ID:GVPNAIJB
>288
過疎ってようがなんだろうがここでやるわけにはいかない。
型月自体主要なものは全て手を出してるくらい好きだが、
過去の信者の暴れっぷりを見てるとここで出来るようにしようとは口が裂けてもいえないし。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:59:06 ID:5JyrGpR+
>>288
おとなしく、向こうでやってきてくれや
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:01:48 ID:GTuY8h1/
>>288
過疎ってるスレに投下しちゃいけないという決まりはないはずだが?
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:05:44 ID:Qg09B3BF
>>288
過疎ってるからこそ、「オレが盛り上げてやるぜ」くらいの気概で投下せよ。

型月って何のことか知らないけど。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:06:22 ID:96keAnOs
おまえら……やさしいな……w
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:06:22 ID:KjEMTRG3
>>291-292
まぁハナっからここでやれるとは思ってなかったから大丈夫だ
今一瞬向こうでやろうかとも思ったけどまぁいいや
俺は過疎スレで淡々とSS投下できるほど太い人間じゃないからムリダナ

廃案一択でなんか別のもん考えます
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:08:22 ID:KjEMTRG3
安価ミス
×>>291-292
>>291-294
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:23:44 ID:GAYSoqFY
SSを投下できる時点で神経が太いと思うのは俺だけだろうか
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:25:25 ID:ko2PO1Nz
まぁ、な。
俺も投下する口だけど、いってみれば自分の妄想を他人に晒すワケなんだからとんでもない事だよなぁ
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:27:49 ID:E1lSpNij
人のいるほうでって考えるほうが図太い気がするがな
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:32:49 ID:somz9aZ2
そんな、人のいるほうで・・・図太いだなんて・・・い、いやらしいですわ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:33:18 ID:KjEMTRG3
いや、SS投下はそれはそれで太い神経必要だけど
過疎の中で何の反応帰ってこないままそれに耐えて投下続けるってのはもっと太い神経がいると思うんだ

やっぱちゃんと読んでくれた人の反応あると嬉しいし
反応がまったくないのはちょっと精神的にくる物がある
あくまで俺の場合の話だけど
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:33:18 ID:Qg09B3BF
SS投下後に反応がまったく無かった時のさみしさったらないぜ?
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:34:15 ID:dUZpukCP
まあ反応が欲しいってのは分かるけど。
過疎ってるといってもROMはいるはずだから投下があればそれなりににぎわうだろ。
リアルタイムは難しいかもしれないけど。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:34:51 ID:NYOzy2EP
>>300
反応が多く見込める方がいいだろ
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:38:24 ID:96keAnOs
余程じゃない限り苦言はされないし投下するべきだな
まぁ他で不評だったけど“ここなら!”みたいな考え方は痛い目に会うけど
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:45:40 ID:A9r/HKc0
特になければ代理投下
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:46:21 ID:7GQXFM/8
SS投下したら元ネタの談義ばかりが賑わって、肝心のSSの感想があまりないって状況もあるぜ。
自分の作品が話の種になるのはいいんだが、反面それはそれで地味に凹むw
309ネガティブな作者 代理:2009/05/17(日) 23:47:38 ID:A9r/HKc0
337 名前:ネガティブな作者[sage] 投稿日:2009/05/17(日) 09:19:23 ID:kPoPm2Fc
もうしわけございません。
作品内で名前を出しているので大丈夫かと……

「ホーンテッド!」から、「紀史元 ひかり」を召喚。 

1巻に登場する、ちょっとアレな女の子。
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89!


338 名前:ネガティブな作者[sage] 投稿日:2009/05/17(日) 09:43:43 ID:kPoPm2Fc
次回予告は、嘘予告のネタのつもりだったのですが混乱させてすみませんでした。
予定を変更して早々に第1話を投下。

ああ、ストックが……
310僕らは、恋をして生きていく 1/6:2009/05/17(日) 23:48:18 ID:A9r/HKc0
第1話「こいわな」

春の使い魔召喚儀式から、一夜明けた朝。
今日は、土系統の魔法の基礎である『錬金』の授業の日だけど、僕は一年の時に単位を取っているので出なくて良い。
なので、本当はずっと寝ていられるんだけど、休みだと思うとウキウキして、かえって早起きしてしまったよ。
この機会に昨日召喚した、僕の愛らしいヴェルダンテ(使い魔になったグランドモールさ。土のメイジである僕にこのうえなく相応しいと思わないかい?)と親交を深めるため庭に朝の散歩+軽食としゃれ込んでいる。
おっ、どばどばミミズを見つけたのかい?
ああ、大食らいな所も可愛いよ〜中略〜やっぱり君は、最高の使い魔だね!?
日差しもいいし、う〜ん、今日は素晴らしい一日になる予感がするよ!

おや? こんな朝からバルコニーに誰かいるね。女の子だ。僕は辺りを見まわして、近くに人がいないことを確かめると何気なく近寄っていった。
シルエットからさっするに、かなり可愛い娘だと僕の紳士の直感が告げている!
やっぱり、今日はいい日だね。僕はウキウキしながら、ヴェルダンテに待つように言うとバルコニーに近づいていった。
勘違いしないで欲しいが、貴族にして紳士たる僕が婦女子のスカートの中を覗くなんて、下劣かつ低俗な真似をするはずがない。
ただ、たまたま散歩中にバルコニーの下にいったら、見えてしまったというのは、不可抗力。そう不可抗力であって、何の悪意も介さない不幸な偶発的事故と言えるのではないだろうか!?
あれっ? 手すりを乗り越えようとしているような……しかも、手に杖を持っていない!!
慌てて、フライの呪文を使って、少女の目の前に飛び出す。
驚いた少女が、後ろに転んで尻餅をつく。目にまぶしい青と白の縞々の布地が見える。もちろん僕は紳士の嗜みとして「見て」見ない振りをしたけど、さっさと隠されてしまった。

「やあ、美しいお嬢さん。驚かせてしまってすまないね。お詫びにこれから僕と一緒にモーニングティでもいかが?」
警戒を解くため、軽いお誘いをしてみる。

「け、けっこうです駄目です行きませんっ、ほんとすみませんごめんなさい、でも私なんか本当に誘う価値なんてないですよ一緒に居るだけで周りの空気が汚染されてしまいます、それにお茶なんて私にはもったいないです!
わ、私なんかお風呂の残り湯で十分なんです、お願いですから私にはかまわないでくださいごめんなさいすみません生まれてきてすみません!」
……この反応は、どこかで見た気が……。おとなしそうな感じのする、長い黒髪の可愛い女の子。両手首には黒い布を巻いている。その布地に何か赤黒いシミが付いているような気もするけど、全力で見なかった事にしよう。
この娘は確か、昨日、ヴァリエールの使い魔になった――、

「ええっと、君はルイズの召喚した平民の娘!」
「ごめんなさいすみませんごめんなさい! 私のような何のとりえも無い卑しい出来そこないのゴミ虫がこんな立派な場所にいるなんて身分不相応ですよね。
貴族様からみたら私なんて道端に落ちている犬の○ンみたいなものですもんね。見るだけでも不快になりますよね。存在自体が不快ですよね! 
生きていてすみません、生まれてきてすみません……ごめんなさい、うう……ごめんなさい、ごめんなさい……」
いきなり顔をうずめて泣き崩れる少女。ど、どうしよう、どうしたらいいんだ。
だけど、このまま泣いている女の子を見過ごしては薔薇の沽券にかかわる。とりあえずは自己紹介をして、知り合ってから慰めよう。
311僕らは、恋をして生きていく 2/6:2009/05/17(日) 23:48:59 ID:A9r/HKc0
「あ、いや、ごめん、そういう意味じゃなくて、ほら、僕のこと憶えてない?」
「え……?」
少女が顔を上げて僕の顔を見た。僕は薔薇を掲げてポーズをとってあげる。我ながら美しすぎるね。

「あ、あの……全然まったくさっぱりこれっぽちも記憶に有りません……」
うぅ、まあ、昨日は遠くから見ていただけだし、無理もないけど。

「な、なら、これから知り合おう。僕の名はギーシュ・ド・グラモン。二年生で、名門であるグラモン家の四男で、土のドットメイジだ。『青銅』の二つ名を持っている。この学院きっての色男さ」
「は、はい私は、昨日ルイズ様の使い魔になった紀史元ひかりです。姓が紀史元で名がひかり」
そういってペコペコ頭を下げる。
ああ、ほんと、こうしていると素材はすごく可愛い娘なんだなぁ――中身がかなり台無しにしているけど。
それにしても、

「ふーんヒカリか。凄く変わった名前だね」
僕が何気なく言った言葉に、ヒカリの顔が凍りついた。

「……変わってますか、変人ですか、奇人ですか、おかしいですか、社会不適合者ですか。そうですよね……。
私なんて、春になった事を嫌な実感のさせかたさせるぐらいしかとりえの無い、生きている価値ゼロの駄目人間ですよね……触ると駄目人間がうつるくらい駄目人間です。
ギーシュ様の言うとおり、半径5メートルに駄目人間特有の不快オーラを撒き散らしちゃってますよね」
「い、言ってない! そんなこと言ってないよ!」
そりゃあ、変人だとは……思わなくも無いけど。

「でも安心してください! 私、今から死にますから! ここから飛び降りて、綺麗なお星様になりますから! 生きている価値ゼロの虫けらは、最期に大地に真っ赤な花を咲かせて散るのです! 
ギーシュ様! ルイズ様に、身のほど知らずの役立たずの虫ケラが使い魔になってごめんなさい。感覚の共有も秘薬の材料とりもご主人様を守ることも出来ないダメダメな使い魔でごめんなさい。
洗濯とか雑用ぐらいしか出来ないのに迷子なってしまうような無能な使い魔は死にますので、私の事なんか忘れて、もっと立派な使い魔を召喚してくださいって、伝えてください! 
私はルイズさまに、生まれて初めて大勢の中から選ばれて、かけがえがないって言われて幸せでしたっ! この思い出は、天国でも忘れません!」
再びバルコニーの手すりに駆け寄るヒカリを僕は、慌てて押さえつける。

「早まるなヒカリ、落ち着いて話し合おう。自分に生きる価値がないなんて、悲しいこと言わないでくれたまえ! 大丈夫、君にはいいところがたくさんあるじゃないか!」
するとヒカリは、すがるような目で僕を見た。
312僕らは、恋をして生きていく 3/6:2009/05/17(日) 23:49:40 ID:A9r/HKc0
「え……た、たとえばどんなところですか?」
「え〜と……」
問われて言葉に詰まる。いや、昨日あったばかりだし、今日初めて会話したんだしね? でも、何か答えないと駄目か、駄目だよね。

「た、たとえば……」
「たとえば?」
「……思いやりがある?」
「なんで首を傾げつつ疑問形なんですか!?」
「だ、大丈夫だよ! 人生は長いんだ。これから探していけばいいじゃないか」
「…それってつまり、今はいいところが無いってことですよね……?」
「…………」
僕は思わず目を逸らしてしまった。

「や、やっぱり私にはいいところなんて一つも無いんですね! ギーシュ様も遠まわしに私のことを人間的魅力ゼロのゴミ人間だって言っているんですね! 早く死ねっ、この世からいなくなれって言いたいんですねそうなんですね!?
ギ、ギーシュ様ひどいです! 死にます、もう死にます! 私、死んでもギーシュ様のことを恨み続けますから! 絶対に化けて出ます!」
だ、誰か助けてくれ。死のうとするのを止めていたら、いつのまにか、僕の所為で死ぬみたいになっているし。

「お、思いついた! 君のいいところ!」
ヒカリは疑わしそうな目で僕を見る。僕はそんな彼女に言った。

「君のいいところ、あれだ! そう、顔だ! 君は顔がいい!」
咄嗟に口をついて出た自分の言葉に自分で納得する。うん、確かにこの娘は(見た目だけは)フツーに可愛い。おおっ、やっぱり僕は多くの人(女性限定)を楽しませる薔薇だけのことは有る。

「顔……ですか?」
「そう、ヒカリ、君はすごく可愛い。美がつく少女、つまり美少女だ!」
「や、やめて、からかわないでください」
顔を赤くして俯くヒカリ。……意外と単純な性格なのかもしれないね。しかし確かに、口元をむにゅむにゅ動かしながら上目遣いでこちらを見るその仕草は、美少女と呼んでも過言ではないくらい心が浮き立つ姿なのは事実だ。
……今までの過程を綺麗さっぱり忘れさえすればね。

「いいややめないね、からかっているつもりも無い。これは僕の本心だよ。美しいものを前にして賛辞を述べないのは僕のポリシーに反するからね。
君は美しい、その髪その目その口その鼻その眉その頬その首筋その足その手その腕その胸……もまあ控えめな感じでいいんじゃないかな、君を形作る全てが美の結晶であると言っても過言ではないよ、
花も恥らうとはまさにこのこと。史上に残る傾城・傾国の美女でさえ君の美しさの前には嫉妬することだろう君の瞳はライトニング・クラウド地上に降り立った美の化身、君を創り出した君の両親を僕は尊敬するね、
まさに君はブリミルの最高芸術品にして自然界の生み出した奇跡。
そんな君に出会えた素晴らしい幸運を僕は心から始祖ブリミルに感謝するああブリミルよこの出会いを我に与えたたもうてありがとうございます今なら愛でハルケギニアが救えそうな気がするよ!」
後半は息継ぎ無しに言い切って、「どうだ!」とばかりにヒカリを見る。あー息が苦しい。ぜえぜえ。すると、
313僕らは、恋をして生きていく 4/6:2009/05/17(日) 23:50:29 ID:A9r/HKc0
「あ、あの、愛しのギーシュ様」
「ぜーはーぜーはー、……ん?」
「そ、それってつまり」
「うん」
「ギーシュ様が、私のことを」
「うん」
「そ、その、す、好きだということでよろしいんでしょうか?」
「うん」
………………。
…………。
……。

「……あれ?」
なんか、
今、
僕、
とんでもないところで頷いてしまったようが気がするんだけど……。

「い、愛しのギーシュ様」
ヒカリは目を潤ませ、顔を真っ赤にして僕を見ている。

「あ、、いや、その、今のはね……」
僕が慌てて取り消すより早く、

「う、嬉しいです……私、男の人にこんなこと言われたの初めてです。少女漫画とか、コバルトとかティーンズハートとかビーンズとかを読んであこがれてて……でも私なんかにそんな事、起こるはずが無いと思っていて……!
こんな素敵なことがあっていいんでしょうか……まるで夢の中にいるようです……ほんと、私、すごく、嬉しい……愛しのギーシュ様、私、生きる勇気が湧いてきました。ありがとうございます、ありがとうございますギーシュ様!」
目から大粒の涙をこぼしながらヒカリは言った。……後戻り不能?
…………これで「ごめん、今のは成り行きで頷いちゃっただけなんだ」とか言ったら……やばいよなあ。……絶対飛び降りちゃうよなあこの娘……。

「と、とりあえず部屋の中に入ろうよ。いつまでもこんなところに居ても仕方ないし」
「は、はいっ! 私、もう死ぬなんて言いません! リストカットも三日に一回ぐらいで我慢します!」
なにげに怖いことをいいながら、ヒカリは僕の先導で室内に入ってくる。・・・・・・ふー、これで一人の少女の自殺を止めることに成功したぞ。僕はなんて偉いんだ。その代わり取り返しのつかないことをやらかした気もするけど。
とてとてと僕に近寄ってくるヒカリ。1メイル位のところで止まり、熱っぽい目で僕を見つめる。
314僕らは、恋をして生きていく 5/6:2009/05/17(日) 23:51:09 ID:A9r/HKc0
「愛しのギーシュ様……」
「……あのー、あー、いやヒカリ?」
僕は女の子が好きだ。僕は女の子が大好きだ。僕は女の子がダイダイ大好きだ。
でも多くの人を楽しませるべき薔薇が一人のものになってはイケナイとか、モンモランシーにばれたらこまるとか、……ぶっちゃけ、この娘は遠くから眺めるだけならともかく、付き合うにはエキセントリックすぎるし。

「は、はいっ、何でしょうか!」
僕はあさっての方に目をやりながら、

「い、愛しのって言うの……止めてくれない……かな?」
ちらりとヒカリの顔を見ると、表情が消えていた。完全に無表情でまるでそういう仮面でもつけているみたいだ。怖っ!

「嘘、だったんですか?」
感情の無い声でぽつりと言うヒカリ。

「ギーシュ様、私を騙したんですか? ……そう、そうですよね……私なんかを好きになってくれる人がこの宇宙に存在するわけがありませんよね。騙された私が悪いんですよ、えへへ、すみません、ちょっと調子に乗ってました。
私なんかに好かれたら気持悪いですもんね。私なんか、せいぜい、つぶれて死にかけたチャバネゴキブリとかがお似合いですもんね。はは、あははは……ギーシュ様さよなら! 私やっぱりここで死にます!」
「わー! ま、待ちたまえ、早まるな!」
またしてもバルコニーの方へ駆け寄ろうとするヒカリの腕をどうにか捕まえる。

「放してくださいギーシュ様! 私なんてどうせ生きてる価値ないんですもう死なせてくださいお願いします! で、でないとギーシュ様も道連れにしちゃいますよ!?」
えーい、もうどうにでもなれ!
僕は力ずくでヒカリを振り返らせ、がばーっとその身体を抱きしめた。

「ギ、ギーシュ様?」
腕に少し力を込める。やわらかいなぁ、それにいい匂いがする……はっ、とろけている場合じゃない。

「ギ、ギーシュ様、わ、私……」
「誤解しないでくれ。君みたいな可愛い娘に、面と向かって言われるのが、ちょっと恥ずかしかっただけなんだよ!」
きっと、アリジゴクの巣穴に落ちていくアリってこんな気分なんだろうな。

「……だから、死ぬなんて悲しいことを言わないでくれ」
これは本心だ。可愛い女の子が減るのはイヤだしね。うん、わかっているさ、自分がでっかい墓穴を掘っていることは。
315僕らは、恋をして生きていく 6/6:2009/05/17(日) 23:51:58 ID:A9r/HKc0
「ギーシュ様……」
ヒカリはもう逃げようとはせず、潤んだ目で僕を見上げてきた。それから、なぜか目を閉じ、唇を少し前に突き出した。
……あの……これは……もしかして、あれかい?
ほんのり桜色に上気した頬と、それよりもさらに赤い薄い唇。
あれだよなあ……。ええい、腹くくれ、僕。女の子の二人や三人、同時に幸せに出来なくて何の薔薇だ。
……いただきます。
自分の顔を彼女の顔にゆっくりと接近させ。その唇に、ちゅーをした。脳裏にモンモランシーとキスをしたときのことがよぎる。あのときは大変だったんよなあ、思いっきり歯をぶつけ合って一週間は口を聞いてくれなくなって。

「ん……ん、ん……ん…………」
……息が苦しくなるほど堪能したあと、唇を離す。
人生で二度目のキスは、とてもうまくいったと思う。

「ギーシュ様……」
耳まで真っ赤なヒカリが口を開いた。

「わ、私……今……ギーシュ様と……! し、失礼しますっ!」
そう言って、彼女は走り去って行った。
やれやれ、困った。これも全て僕が魅力的すぎるのが悪いのだね。
あっ、戻ってきた。

「あ、あのう、すみません。お、お洗濯をする場所は何所なのでしょうか?」
僕は案内してあげようとしたけど、男の僕には見られたくないものもあるとかで、そこらを歩いていた学院付きのメイドに連れていってもらう様頼んだ。
きっちりした地味な服装をしているけど、その下には豊満な膨らみを隠し持っているであろう事を感じ取れるメイドも僕のことを、なんて親切で頼りになる素敵な紳士なんだろうと言う目で見ていた。
僕がニコっと微笑めば、女の子はポッと赤くなって僕に惚れてしまうのさ。これを略して「ニコポ」!
まあ、実際には慎み深いトリステインの女性達は赤くなる様子を滅多に表には出さないけど、心の中では赤くなっているのは、まず間違いない。
実際に口説くと、貴族の女の子は、僕の話術があんまりにも巧み過ぎて「ギーシュ様って、ほんとに面白い方」っていって本気にしてくれないし、メイドの娘は間が悪く、いつも用事を言いつけられているのを思い出しちゃうんで、
実際にはモテモテの取り合いにはなってないけど、何かきっかけがあれば、そうなってしまうだろう。
いやあ、まいったね。もてすぎて困るなんて人には言えない悩みだよ、これは!




投下終了。
1話と2話は、かなり原作そのままですが以降はオリジナルな展開になるので勘弁してください(イベントはテンプレ通りですが)。
最初は、「ネガティブな使い魔」というタイトルで書き始めたのですが、
テンプレ展開でも視点が違えばいいんじゃない? とギーシュ視点にしたら使い魔の影が随分と薄くなってしまいました。
ギーシュいいですよね。とってもおいしくて良いキャラです。もう大好きですよ、おバカな所とか!


代理終了
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:53:30 ID:CIIHV19c
>>251
Yes。サモト様。
ヌメリ様に一発で殺されたけど、輝いてたと思うよ彼は。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 23:56:38 ID:cRabQ84v
>>254……北斗のキャラは、ほとんどの場合において散り際が一番輝いている

あの作者はその辺厨二病なんじゃないかってくらい徹底してるよ。
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:07:45 ID:8Q5GcWiS
>>317
まぁ明日のジョーの結末をケンカと称した梶原に怒るぐらいだしな
これはもっと神聖なものだって
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:12:56 ID:560hUCHS
ネガティブの人乙です。
ギーシュ…明らかに地雷原だそれはw
しかもNiceboat一択だし。原作知らないけどw
イ`ギーシュw
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:13:50 ID:4Dr03my7
こんなにネガティブなのになんかパワフルな少女だなw
召喚されたやつがギーシュにフラグを立てるのも珍しい
元ネタ知らんけど結構楽しめそう
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:53:55 ID:HnFOWvyj
>>308
GJや乙だけでなく内容にもっと踏み込んでコメントして欲しいと思うのは欲張りすぎだろうか。
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:59:07 ID:DTKHCSYg
>>321
欲張りすぎだろう。文章に表すのが苦手な人って結構多いんだぜ。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 00:59:54 ID:5U5zP1+6
生ヤンデレとか、電波系ヒロインに振り回される青銅クン
続きが楽しみです
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:02:56 ID:KY2zQJUF
アプトムの人来ないかなぁ・・・・
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:09:14 ID:EXEeEnZH
>>218
遅レスだが、シエスタの家族に名前設定はなかったはず。
ゼロな提督ではモブキャラにまで細かく名前付けがされてたから、一時期シエスタの名字がサヴァリッシュだと思ってた。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:32:33 ID:vQuZd+Ju
>>289
なにせゼロ魔世界だとタイガー戦車の88mmですらあの無双具合
そして現代の90式が装備してるのが120mm
そして更にザクの主兵装は120mm”マシンガン”

…ザクですら無双出切る世界だね
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:38:36 ID:6QjLnOMe
>>321
どこの作者さんかわからないけど、
やっぱり、内容に踏み込んでもらったほうがいい?
もしそうだったら、これから読んだ作品に関しては、避難所にでも
書いていくけど?
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:48:40 ID:r3KLmeTc
>>321ではないけれど、
乙と一言感想でテンションがあがります。
無論乙やGJだけでも喜びます。
長文感想だと転げまわって喜びます。
毒吐きで名指しされると空気でないことに安心します。
罵詈雑言書かれると、アンチがついたら人気作の証拠ってばあちゃんが言ってたのではしゃぎます。
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:50:02 ID:bTqpOpEH
なんかコメントし過ぎると作者さんの重しになるんじゃとか心配してる
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 01:53:04 ID:xRdqYFXe
たまに避難所で感想とかついてるのを見ると嬉しくなって頑張ろうって気持ちになるね
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 02:06:50 ID:wbRCYmNI
感想や応援はやっぱり作者さんの励みになるんだね。
一読者としてもそういうのが多くある作品は元ネタ知らなくても読んでみる気になったりするし、それで元ネタに触れて好きになった事もあるw

ただ感想と称して何を勘違いしているのか、つまらん展開予想を長文で繰り広げるアホが湧くから困る。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 02:09:58 ID:eyQ3OjXx
>>326
ザクマシンガンは低圧砲だから、初速を高めることに特化した戦車砲とは口径だけじゃ比較できないな
もっとも低圧砲は榴弾がメインだから土のゴーレムにはむしろ有効(徹甲弾だと突き抜けてしまう)だし、
榴弾の威力は炸薬量に依存するから口径が大きい=炸薬が多いほうが有利
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 02:23:04 ID:6QjLnOMe
いやあ、なんとなく、感想が発端の意味もない論戦(読者間で)が
始まることが多かったから・・・
じゃあ、次から頑張るよ
でも、読んでる作品だけだから、全部じゃないんだ。
ごめんねごめんね(´・ω・`)
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 02:26:40 ID:p0WSuVVr
ふむ・・・ザクがご不満ならACのネクストはどうか?
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 02:28:02 ID:m892r2lp
一作者として応援や一言感想はとても嬉しいし、励みになります。
特にクロス系SSともなると知らない内に踏み台にしている事が多々あると思うので、
ある意味助かったりします。

さて、執筆に戻らなくては…
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 04:42:23 ID:kV7M1WuF
ネガティブさん乙っす。嗚呼、ギーシュの頭上に死兆星が…w

ちなみにタイトルを見て某最終兵器が召喚されたのかと思ったのは秘密だ。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 05:03:24 ID:vB0De43D
マザリーニとグラモンパパとヴァリエール公爵が旧知の仲間見たいな関係になってたSSってどれだったっけ…
ラスボスよんでて読みたくなったんだけどまったく思い出せない…
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 05:09:30 ID:vB0De43D
書いておいてすまんが解決した。ダイ大スレのほうだったわ。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 07:11:51 ID:vIbGIU6R
>>327
他の人はどうか知らんが、避難所の応援スレや語らんかスレなんかは基本ガン見してるんだぜ?
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 07:29:44 ID:MUJTzOLA
俺も見てる。けど最近、応援スレも語らんかスレも書き込みなくて寂しいよな
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 07:47:51 ID:2yXqJEiX
自分ごときの拙作に感想もらえるだけでありがたいことこの上ない
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 11:41:50 ID:5OdiYF4S
馬から落馬してるようなそうでもないような変な感じだ
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 12:07:15 ID:80PTvnzS
まあ、新刊が出たあたりから、まとめのプレビュー数もがくんと落ちてるからな。
そろそろ飽きがきだしたとしても不思議でもあるまいて。

けどゼロ魔クロスまとめの八割以上が続きが気になるという脅威のクオリティ。俺的に。
ぜひともみんな続きを書いてほしいもんだ。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 12:29:15 ID:bWwSrTro
ダークドレアムでも召喚しないかなぁ
345鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/05/18(月) 12:35:21 ID:Vuw1a6E8
生存報告(まだ書いてますよ
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 12:49:10 ID:G7eFn2wQ
>>344
勝たないと使い魔になってくれんぞwww
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 13:59:26 ID:kIJUnmxt
エスタークなら寝てる間に召喚されて、起きる前に契約できそうだ。
契約しても全然起きなくて、ルイズが切れて爆発起こしたら、
エスタークの目が覚めて・・・・トリスティンオワタ\(^o^)/
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 14:47:29 ID:EXEeEnZH
>>343
まあ飽きが来ると言っても、サイトとルイズも16巻分も好きだ嫌いだ勘違いだと同じこと繰り返してるからな。

新刊はイザベラ様との和解と……あとはまあいいか。

とりあえずはヴァリエール三姉妹全てにフラグ立てておきながら気づきもしていない究極朴念仁の続きが気になる。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 15:12:54 ID:FJMRGxAM
たとえるなら、ゼロ魔というものは終わらないワルツのようなものです。
好きだ、嫌いだ、勘違いの三拍子がいつまでも続く・・・
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 15:15:50 ID:fEWIj2Om
>サイトとルイズも16巻分も好きだ嫌いだ勘違いだと同じこと繰り返してるからな。
これで結局この二人がくっつかなかったら読者が暴動起こすんじゃねw
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 15:57:16 ID:BmX6X01+
ちゃんと納得できる心理描写と丁寧な展開があるならいいんじゃね?

シエスタとくっつこうが、タバサとくっつこうが、テファとくっつこうが、
アンとくっつこうが、キュルケとくっつこうが、モンモンとくっつこうが、
シルフィードとくっつこうが、世界中の女全員オレ様の嫁!ハーレム!!!になろうが、

俺はいいぜ?
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 15:57:34 ID:80PTvnzS
まあ、アンサイクロペディアのゼロ魔の項目のルイズの態度の変遷とか見てたら、なんか笑えるというか…。
←今ここ
に次はどんな台詞が当てられるのかが楽しみだったりするw

使い魔くん千年王国の続き…読みたいなあ
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:04:34 ID:z9LY5i8w
サイト「俺シエスタのこと嫌いになった訳じゃないから、
うまく言えないかもしれないけど・・・
最高だ、シエスタ、ルイズよりずっと良い
シエスタのこの大きくて柔らかい胸に比べたら
ルイズのなんて物足りないよ、シエスタの胸は最高だ
ここも、コスプレもすごくて、ルイズじゃ全然いけないけど
シエスタには挿絵だけでもうすぐにもいっちゃいそうだ
ルイズのあんなツンデレに溺れていたなんて自分で情けないよ
この吸い付くような肌に触れたら
もうルイズのつるぺったんとした体なんて触る気もしない
ルイズなんてくぎゅううううさせてくれるくらいしか価値のない屑女だよ
シエスタさえ居れば俺は・・・シエスタぁ、シエスタぁぁ」


という台詞を受信したんだが……疲れてるのかな
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:08:43 ID:fEWIj2Om
つまりシエスタと才人は『あの男』の血縁なんですね、イヤすぎます!!
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:10:48 ID:BmX6X01+
>>353
疲れてるどころか絶好調じゃん
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:24:34 ID:p0WSuVVr
>>354
誠以上に親父の方がクズだとは思わんかった
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:28:45 ID:fEWIj2Om
近親相姦に寝取り、更にその両方に該当することもやってるキングオブ屑だからなぁ…
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:30:02 ID:S7zd2kB3
伊藤誠は生首だけ来てるな
声だけならジュリオと一緒だが
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:30:16 ID:fEWIj2Om
>>351
自分としては『結局才人はルイズと別れて地球に帰還』でもいいんじゃないかと思うんだけどね
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:39:43 ID:HnFOWvyj
つーかいい加減セクロスした方がいいと思うんだけどね、あの二人。
さっさと既成事実を作っちまう方がいい。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:53:31 ID:4dfn46oa
「安心しろ俺も初めてだ」には軽く引きました
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:57:11 ID:NFKHgAzS
悪いがメインヒロインである(ハズの)ルイズより才人のママンのほうにより
感情移入しちゃってますワタシ

だからサイトは地球に帰るほうがよりハッピーエンドではないかと思うんだ
メールを読むシーンは思わず涙ぐんでしまったよ
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 16:59:45 ID:BmX6X01+
子は巣立ってくもんだし、サイトの自由意思でいいと思うけどねそこは。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:06:53 ID:L6zUaAeR
ニートになって二十歳過ぎても実家に居座られるぐらいなら死んだくれた方がましな息子もざらにいるしな
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:08:02 ID:EXEeEnZH
>>259
そして別世界では二人は夫婦になっていて娘までいたりするか。
>>360
アニメ第三期じゃ何回かやりかけたが、その度にシエスタやギーシュが部屋に入ってきて失敗してる。
少なくとも機会があればその気はあるようだ(アニメ版限定)
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:14:13 ID:niZCxbAN
原作やアニメを見てるとシエスタが死ぬほどウザく感じてしまう罠
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:26:33 ID:Yv7ISgMy
>>346
私と契約したければ
私を倒していくがいい。

だなわかるぞ
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:31:01 ID:bWwSrTro
ダークドレアムとエスタークは敷居が高いようなのでシドーで
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:36:08 ID:XzLfDxT2
それでも2の竜王ならきっとなんとかしてくれる
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:49:54 ID:1oiUJRAL
>>368
破壊神をそんなぞんざいに扱わないで
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:55:31 ID:NtQCrM8Z
2のりゅうおうのしそんかぁ
四コマが一番記憶に残ってる所為で超ヘタレにしか思えん
まぁ大体合ってたと思うが
FFだと今のところカオスな連中だと
ガーランド、くらやみのくも、ゴルベーザorゼムス、セフィロス、アルティミシア、ジェクトorシーモア
けっこうまだ呼ばれてないなぁ
マザコンチルドレンの泣き虫とか呼んだら意外と面白いかもしれん

あとエスカフローネからガイアに行くはずだったドルンカークを召喚して
コルベールとハルケギニアに技術革命を・・・みたいなの浮かんだ
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 17:58:17 ID:NFKHgAzS
ぶっちゃけテファとタバサが幸せになるならルイズも、いっそサイトもどうでもいい
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:16:55 ID:iIcCiCUv
>>372
屋上へ行こうぜ、久しぶりにキレちまったぜ
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:19:07 ID:bWwSrTro
ダークドレアム(悪夢)…地の底深くの悪魔の魂。破壊と殺戮の化身
エスターク…地の底で破壊と殺戮を夢見る怪物

シドー…破壊の神。パルプンテに驚いたりする辺りルイズの爆発にも驚く
可愛い
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:23:53 ID:MUJTzOLA
シドーはマヌーサかければ、あとはザラキ連発で勝てるぜよw
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:26:16 ID:SgdBE3sQ
ルイズはメガテンの悪魔も使い魔にしにくそうだな
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:35:36 ID:EQ6gmp1z
トークしても選択肢1,2個でもう交渉不能か不意打ちだなw
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:38:55 ID:/9++diOH
破壊神で思い出したが、ガオガイガーなら使い魔に出来るか
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:44:18 ID:NFKHgAzS
オイラ的に最強最悪の破壊神はスタート地点すぐそばの井戸にいるタコ

ってわかる人居ないだろーな    イロイッカイヅツ
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:50:58 ID:Zm+O5iPz
>>379
ふるーwwww
確かにあれは最悪の破壊神だった
いまでもたまにムーンストーンまだーって言いたくなる時ががが
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:52:39 ID:S7zd2kB3
まかり間違ってアンスラサクスを呼んだら大変なことに
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:52:45 ID:mnV8uUwL
>>372
タバサ自体はともかくタバサ好きにルイズアンチが多くてキャラ自体にもむかついてくるようになる今日この頃。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:55:06 ID:1oiUJRAL
りゅうおうって最初のボスだったから微妙に過小評価されてるけど、竜族(しかも王族)でシドーに育てられた超エリート
光の玉が健在であればゾーマを越えた大魔王だった
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:55:26 ID:fEWIj2Om
そういう言い方はやめた方がよくね?
単にタバサ好きにツンデレが苦手な人が多いんだろ
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 18:55:58 ID:1qL89TFj
>>382
なんか気持ちわかるな。理想郷なんか見てるとそういうの多いし。
まあ、あそこはとりわけひどい気もするが。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:11:40 ID:fEWIj2Om
革命記のこと?
あれはifとしては有りだと思う
ギーシュとかの性格改悪が気になるけど
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:24:32 ID:1qL89TFj
あれはIFの範囲だと思ってる。
それでもルイズ以外のヒロインがえらく優遇されてるようにも見えるけど。
まあ、理想郷でひどいのは作品の感想だけどな。ちょっと覗いたら鬱になったんだ。orz
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:29:56 ID:mnV8uUwL
>>386
あれはゼロ魔二次じゃなくて作者の書きたい革命記に無理やりゼロ魔をあてはめただけだと思ってる。
二次ならキャラで釣れるもんな。
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:30:35 ID:fEWIj2Om
……理解した

ヒロイン優遇の件に関しては、あの話のルイズはもう一人の主人公かつライバルキャラっぽいからしょうがない
ところでそろそろ向こうの話題は止めた方がいいな
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:33:18 ID:NFKHgAzS
>>388
いっちゃナンだがここにもそういうの幾つもあるだろに
なんでそうもあそこの悪口言いたがる?
あそこは異常者の集まりでここはまともだとでも言いたいのか
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:39:35 ID:fEWIj2Om
乗った俺も悪いけどこれ以上の向こうの話は避難所でやろうぜ
……雑談スレでいいんだっけ?
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:40:08 ID:1qL89TFj
始めに振っちゃったの俺だな、スマン。自重する。
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:42:41 ID:NFKHgAzS
うぃ、了解  失礼致しました
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:44:07 ID:80PTvnzS
荒れそうになると思ったら避難所にいこうな。

イリヤの空、UFOの夏から、空に還ったあとのイリヤ召喚。
何もわかんなくなったイリヤは契約したら浅羽とルイズの区別が…書いてて自分でねーよと思った。
だけど秋山作品からの召喚、したいなあ。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 19:49:40 ID:dysXGfI1
他の悪口なんて避難所でもやめてくれよ……
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:06:02 ID:1oiUJRAL
冴羽りょうはキュルケに反応するのだろうか
二十歳未満はだめだったよね?確か


うはwwwwwwww行き遅れ大歓喜wwwwwwwww
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:28:31 ID:560hUCHS
>>396

行き遅れ言うなw
20歳以上のモッコリちゃん…
おマチさん
エレオノール
カトレア
シェフィールド
アニエス
あと誰か居たっけ?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:35:46 ID:EQ6gmp1z
わた、シュヴルーズ先生も射程内だと思います!
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:36:24 ID:KY0w5TnG
ミ・マドモワゼルをお忘れなくw
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:40:16 ID:NFKHgAzS
「烈風カレン」とタバサママン(本名不明)の熟女コンビもお忘れなく
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:45:13 ID:yM1GwOWk
「烈風カリン」が粛清のためのアップを始めたようです
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:52:28 ID:NFKHgAzS
>>401
あわあわあわ、それは名前を間違えたことにご立腹なさってるのでしょか?
それとも熟女扱い?
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:52:54 ID:hiAEC76Q
あのころは二十歳以下なんて確かにガキだなと思ったが、
今では高校生のセクロスなんてフツーだろと思ってしまう。
時代は変わったのか…イや俺が年を取ったのか…
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:56:21 ID:gmIt93AI
>>396
成熟したエロい体なら15歳前後でも余裕で反応する
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 20:57:34 ID:EXEeEnZH
テファのお母さんもそれは美人だったんだろうな。
どうでもいいが、冴刃は女子高生にもっこりしたことあるぞ。なんでも最近は発育がいいとか。
モンモランシーが100tハンマーを召喚したら面白いかも。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:00:39 ID:iRTuDWso
>>404
ただモッコリした後に年齢知って自己嫌悪してるんだよな

何と言うか年齢面に関してのみ紳士と言う訳解らん人間だよな、リョウは
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:02:00 ID:NtQCrM8Z
一歳だけど成人(多分)してる身体のヒロインとか結構居るよね
寿命短かったりするけど
身体は十二歳、でも外界に出た時点を誕生とするなら零歳とか
身体は推定十七歳くらいで0歳とか70歳近いとか・・・あ、こいつはもう呼ばれてたか
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:16:56 ID:NMIyOz1R
あの100tハンマーとか無茶苦茶なブービートラップ
ギャグ描写じゃなくて作中の人間にはちゃんとした物理現象なんだよなあ……
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:32:19 ID:MUJTzOLA
>>407
>一歳だけど成人(多分)してる身体のヒロイン
即座に思い浮かぶのはルシオラしかいないw
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:33:21 ID:4GS54z53
・・・ルイズ完全アウトだな。
がきんちょ扱いで終了だw>もっこりハンター
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:34:15 ID:S7zd2kB3
テファの革命乳ならもっこりも反応してくれるはず
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:35:10 ID:4Dr03my7
アシュタロスを召喚したらコスモプロセッサでルイズがボンキュッボンになれるのか
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:37:03 ID:G7eFn2wQ
>>409
スパロボDよりグラキエース。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:38:53 ID:WsHJ7Il0
アシュ呼んでも即座に自力で帰りそうな気がする
後に残るのは無礼な召喚者とその仲間の死体だけ
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:43:11 ID:EgD7sLbV
召喚されたことによって魂の牢獄から開放されたらアシュ様も従ってくれるのでは?
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:46:25 ID:on51pKpS
>>413
ラキとか召還されたら俺が泣く
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:48:51 ID:G7eFn2wQ
>>416
ジョッシュは小ネタで呼ばれてるがね。
あれはワラタ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:51:27 ID:EXEeEnZH
一歳で成人とかいったらサーシャだろう。
いや、ゼロ魔のサーシャじゃなくヤマトよ永遠にのサーシャ、もっとも1年程度でヤマトのクルーとして恥ずかしくない教育をした真田さんのほうがすごいが。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 21:52:20 ID:WsHJ7Il0
>>415
地球と繋がってるハルケじゃダメじゃね?
宇宙の卵(だっけ?)と大差無い気がする
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:08:29 ID:G7eFn2wQ
>>418
そうだ、真田さん呼ぼう。
「こんなこともあろうかと」で全部解決してくれる。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:13:44 ID:j6zLlZ7q
>>413
スーパーヒーロー作戦のヴィレッタもな!
でもスパヒロ主人公達は推定年齢19歳なんだっけ、成人とは言えないか

まあ真っ先に浮かんだのは生後1年で17歳に成長するイスカンダル星人だったんだがw
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:28:50 ID:NMIyOz1R
シティハンターの話なのかゼロ魔の話なのかどっちなんだ
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:33:17 ID:5OdiYF4S
間を取って「城市獵人」の話でも
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:39:01 ID:1dCTnYvy
>>422
じゃあキャッツアイの話をしようか
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:42:36 ID:NtQCrM8Z
フーケと猫目三姉妹が手を組みました、しか想像できん
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:44:53 ID:FEAHQmLE
学院の宝物庫を狙うキャッツアイことヴァリエール三姉妹
ご主人様の正体も判らぬまま警備に駆り出される主人公




おマチさん「あるぇー?私の出番は?」
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 22:46:22 ID:1oiUJRAL
>>426
貧巨貧で特定しますた
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:04:02 ID:C9EXC2DZ
それだとカトレアがメインヒロインになるぞww
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:05:43 ID:A4AmUgxw
いいじゃないかそれで
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:11:54 ID:WsHJ7Il0
召喚された虚無の使い魔が全員どっかの大ドロボウだったというお話ですか?
国の宝を、始祖の宝物を盗み盗まれての大活劇
ワルドが「むわぁ〜てぇ〜! 今度こそとっつかまえてやる!!」とか追っかけていくんですね、わかります
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:15:09 ID:DpA6EZ5w
冴羽遼って、作中で「永遠の二十歳」宣言してるんだが……
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:18:03 ID:bTqpOpEH
井上喜久子だって17歳だ
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:18:07 ID:1MqJt5mA
17歳教みたいなもんだ
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:18:13 ID:8Q5GcWiS
エンジェルハート冴羽なら40,50代っぽい雰囲気
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:37:44 ID:hZzgwqS1
年齢:もっこり

冴羽はこうだよ。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/18(月) 23:42:22 ID:bWwSrTro
王ドロボウを召喚
マジックアイテムとたくさんいる女の子の心とマチさんの出番を奪っていきます
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 00:25:22 ID:+za4WBhx
>>420
真田技師長を喚んだらオスマンと声が混じって訳が分からなくなりそうだ。
てか知的=真田、エロ=オスマンでいいか

それより知的でエロの要素も持つ真田少将を喚ばないか? この変人少将ならトリステインを勝たせられるかも。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 01:05:58 ID:1lqVuD/P
>>437
自分でやれ
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 01:20:19 ID:zW6u4Zm8
>>437
どうだろな
頭の中身以外はただの中年オヤジだし
まあ軍人でそれなりに武道の心得もあるだろうから、サイトよりガンダールヴの力を使いこなせそうだけど
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 01:23:15 ID:DyVtwzPI
花のようなる秀頼様を、鬼のようなる真田が連れて、退きも退いたり異世界へ
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 01:47:20 ID:Pyn47oO/
あー、スティーブン・キングがひょっこり現れてローランド召喚してくれねぇかなぁ……
442雪風とボクとの∞ ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:52:02 ID:Pyn47oO/
349 :雪風とボクとの∞ ◆O4GlPQxHL.:2009/05/18(月) 15:15:06 ID:vzi5sHRs
とばっちり規制くらいました。
∞−02を投下します。

------------------------------------------------------------------------------
ということで、代理投下します。
443雪風とボクとの∞@ ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:53:08 ID:Pyn47oO/
「雪風とボクとの∞(インフィニティ) ∞2」

 南雲三成とタバサは嬉し恥ずかし使い魔とメイジ。
 ただ1つ困った事は……三成は極度のめがねっ娘フェチだったのです。
「裸眼の女はただの(ピー)だ!!」
「……ミツナリー……」
 これは変態南雲と健気なタバサちゃんのめがねチックラヴストーリーである。
「……でも……使い魔の全てを受け止めてこそ真のメイジ……頑張る……」
444雪風とボクとの∞A ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:54:07 ID:Pyn47oO/
 虚無の曜日、町に買い物に出かけた三成・タバサが眼鏡屋の前を通りかかった時、
「……あ……ミツナリ……ブクブク……」
「ブクブク?」
 と三成はタバサが指差した先にある台上に置かれた箱型マジックアイテムを見る。
「ああ、眼鏡洗浄用マジックアイテムの事か」
「!」
 そこでタバサは何事かを思いついた表情で三成の眼鏡を外すと、
「……ミツナリの眼鏡……私がブクブクしてあげる……」
「はぐうっ(はぁと)」

好きな女性に言われたい言葉ベスト3は、
○「ほっぺにご飯粒ついてるぞっ」
○「今日は友達の家に泊まるって言ってきたから……」
そして、
○「あなたのめがね私がブクブクしてあげる(はぁと)」
である。
言われた男は永遠の勝利者である。
眼牙書房「俺たちのビクトリー伝説」(平賀才人著)より抜粋
445雪風とボクとの∞B ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:55:08 ID:Pyn47oO/
(しかもそれをめがねっ娘の主人に言われるとは……。ボクは何て果報者なんだ。この光景、しっかと眼に焼きつけよう――)
 と目を開けた三成だったが……、
「――って、見えなーい!!」
 そう、近視でありながら裸眼でタバサの姿を見ようとする三成にとって、今のタバサとの距離は絶望的なまでに遠かったのだ。
「ぬおおおおっ! 神よ! ボクは己の近眼をこれほど呪った事は無い! 神よおおおおっ!!」
「……ミ……ミツナリ……」
 激しく震えながら自身の近視への呪詛を垂れ流す三成の様子に、思わず手を止めるタバサ。
「!」
 そこでタバサは再び何事か思いつい様子で、
「……じゃあミツナリは私の眼鏡かけて……」
 と言って三成に自分の眼鏡をかけた。
(あ……、かすかに温もりが。そして淡い香りを漂わせていた――)
 しかしタバサに視線を向けた瞬間、三成は戦慄の光景を目にしたのだった!
446雪風とボクとの∞C ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:56:08 ID:Pyn47oO/
「――ってタバサ、裸眼ー!!」
「……はうあ……」
「ギャアア! タバサの裸眼を見るくらいなら、ボクは己の眼を潰した方がマシだ〜!!」
「……嫌……潰さないで……ミツナリー……」
 頭を抱えて七転八倒する三成を何とか救おうとするタバサの出した答えは、
「……なら……ミツナリの眼鏡を……」
 と自分自身がかける事だった。
「……眼鏡……取り替えっこになった……」
「そ、そうだな」
 眼鏡をかけたタバサの姿にようやく平静を取り戻した三成。
「黒縁もよく似合うぞ」
「……ほんと……嬉しい……でもミツナリの……ちょっと度がきつい……」
 そんな微笑ましい会話を交わしつつその場から立ち去ろうとして……そもそもの発端を目にしてしまった。
「――って、ブクブクはー!?」
「……あ……」
 そう、肝心の眼鏡洗浄用マジックアイテムを使用していなかったのだ。
「……じゃあ……」
 タバサが三成のかけている自分の眼鏡をマジックアイテムで洗浄しようとすると、
「見えなーい!!」
 と必死でタバサの姿を探し求める三成。
「……それなら……」
 タバサが自分がかけていた三成の眼鏡を三成に返して自分の眼鏡を洗浄しようとすると、
「裸眼ー!!」
 と裸眼のタバサに悶絶する三成。
「エンドレス!! 永遠に続くメビウス地獄だあ〜!!」
「……ミツナリー……」
 タバサの眼鏡に対する苦悶のあまり、三成はマジックアイテムをつかむ。
「くそおっ、こんな物があるから……」
「……やめて……ブクブクには罪は無い……」
 マジックアイテムをぶち壊さんばかりの剣幕の三成の腕にしがみつき、タバサは必死に止める。
「……元はといえば……私がブクブクしようなんて言ったから……」
「タバサ……」
「ああっ、なぜボク達はブクブクに出会ってしまったんだー!!」
「……ミツナリー……」
447雪風とボクとの∞D ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:57:08 ID:Pyn47oO/
「ブクブクうるさいわー!!」
 ――ドガン!
 突如出現した(ように2人には感じられた)ルイズが、容赦無く爆発魔法で2人を吹き飛ばした。
「……あ……ルイズ……」
「何やってんの! みんな見てるでしょ!」
 確かに周囲には2人の様子に何事かと通行人が集まっていた。
「っていうかミツナリ! タバサに何て事させてんのよ!」
「悪いが裸眼の女に費やす時間は無い! 帰りたまえ!」
 ルイズの辛辣な口調にも動じる事無く、三成は眼鏡を上げつつ言い返した。
「何ですってー!?」
 憤怒のあまりルイズは三成の眼鏡を取り上げる。
「あんたの眼鏡なんか私がブクブクしてやるわっ!」
「や、やめろ!! やめろこの裸眼女!!」
 三成の眼鏡をマジックアイテムにかけようとするルイズと、彼女を押さえる三成。そこへ、
「……やめて……」
 とタバサがルイズを体当たりで突き飛ばし、三成の眼鏡を奪還した。
「タバサ……」
「……ごめん……ルイズ……でも……」
 三成の眼鏡をいとおしげに両手で持ち、
「……他の人にミツナリの眼鏡を……ブクブクされたくなかった……」
「はうあっ(はぁと)」
 かすかに頬を染めてのその言葉に、三成は見事に胸を打ち抜かれた。
 同様に頬を赤らめてそっとタバサに顔を接近させる。
「ああ、今の一言で全てのわだかまりが消えてしまったよ。まるで心をブクブクしてもらったようにね」
「……誰が上手い事言ってって……」
 口ではそう言っているが、タバサはかすかに赤くなった顔にわずかな笑みを浮かべて三成の顔に眼鏡を戻した。
「あ、もうこんな時間だ。帰ろう」
「……うん……」
 そして2人は家路についたのだった。
「帰るの!? ブクブクはどうなったのよ!!」
「タバサ、一番星だぞ」
「……わあ……綺麗……」
「おーい!!」
 ルイズの叫びは黄昏時の空に虚しく吸い込まれていったのだった……。
448雪風とボクとの∞ ◇O4GlPQxHL.:ダイリマン:2009/05/19(火) 01:58:11 ID:Pyn47oO/
355 :雪風とボクとの∞ ◆O4GlPQxHL.:2009/05/18(月) 15:33:16 ID:vzi5sHRs
以上投下終了です。
wikiにはこちらで登録しておきます。

------------------------------------------------------------------------------
ということで、代理終了します。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 02:17:13 ID:X519/1d+
>あー、スティーブン・キングがひょっこり現れてローランド召喚してくれねぇかなぁ……
「追憶のルイズ・ヴァリエール」
ルイズが召喚したビュイック8からは想像を絶する生物が次々と現れるのだった
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 03:44:15 ID:QktDnuHc
>>436
何を盗むかが問題だな
あと、台詞回し
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 12:17:11 ID:SrRVXHL7
王ドロボウフーケ
召喚されたのはキールで
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 12:50:11 ID:tP5pPH9Z
グランドジェイカーに乗ったジャンパーソン召喚
レイハでなくルイズに召喚される南雲慶一郎
最終回直前のどれみ召喚
賢者アルクゥ召喚
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 12:57:51 ID:eLzTp4UA
南雲はやめとけー
下手すると子供でも容赦なく殺すからー
貴族連中はやられかねんからー
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 13:37:53 ID:tP5pPH9Z
いやいや
1.フーケ討伐時に何にもしない教師陣の前で
2.拳一発で張り倒してしもべになったギーシュ従えて
3.学院内にバイオレンスの嵐を吹きかける慶一郎
を想像したもんで、つい
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 13:47:09 ID:0+eX5FdJ
ゼロ魔のキャラで、慶一郎が気に入りそうなのはタバサぐらいか?
ルイズも、シエスタも、アンリエッタも、嫌いなキャラだろうしなぁ。
ギーシュもだめだろうし、テファは積極的に嫌いはせんでも、突き放してしまうだろうし。
コルベールに関しては、何やってんだこいつは、というような、同族嫌悪に近い感情を持ちそうだし、
ガリア組も、嫌いなタイプ。


なんというか、ストライクゾーンが狭いよなぁ、慶一郎は。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 13:52:38 ID:FjtDE1AR
本質的にかなり狭量だからなぁケーチローは
というかそういう人間だからこそ世界を放浪して好き勝手に暴れまわるとかできたのかしらん
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 14:35:10 ID:IYHNt9Lu
一番の難点はお面ネタが通用しないことだなw
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 14:49:26 ID:tP5pPH9Z
慶一郎「空を自由に飛びたいか?」
ギトー「いや、飛べるから!飛べますから」
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 14:51:33 ID:0+eX5FdJ
つまり、ワルドとの仮面対決が見れるということだな。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:16:25 ID:YqIihA4/
南雲は法倫理が通じないが、あれは法に守られなくてもいいという、人外の価値観の持ち主だからであって、
狭量とかそういうんじゃんない。単純に法に守られなくても生きていける超人は、法を守る必要がないというだけの話だから。
哲学科卒の作者の考えそうなキャラではある…ゆえに、南雲を二次創作で扱うのはやめたほうがいいと思う。
ありゃいい意味でも悪い意味でも、作者にしか動かせない類だと思うなあ。
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:19:45 ID:YqIihA4/
そして460書いて、なんか色々と反省。ごめ。>>460は読まなかったことにして流して…。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:52:00 ID:VFWUlE0e
>>460見てそこまでの考察をさせる程の凄い漫画なのかと思ってググったr
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:52:36 ID:iC0lfEPm
>>451 ロケットランチャーとビームぶつけ合いそうだなw
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:53:54 ID:nPwQW4Ua
ジャック・ゴードン大佐召喚

「よく聞けレコン・キスタの若造ども
 トリステインにはキサマらの知らないものが二つある。
 ひとつは俺。もうひとつはルイズだ!」
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 17:02:57 ID:FqjUY+BY
慶一郎よりは静馬の方が動かしやすいかと。

トリステイン魔法学院にKファイトの嵐が吹き荒れる。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 17:23:24 ID:+za4WBhx
>>464
つまりルイズ=Gということですね。

クロムウェル「やっぱマグロを食ってるような奴はダメだな」
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 17:33:47 ID:oSSWfhIy
竹槍でB29を堕とした気概を引き継いで気功でスパイ衛星を堕とすほどの人物だったな
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 17:55:03 ID:Ocz8KeSA
月のクレーター作ったのいたような、誰だっけ
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 17:59:31 ID:RddyLEzX
【ベルフェゴール】
7つの大罪の怠惰を司る便器に座った悪魔
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:01:45 ID:gzYcw6C4
人間台風さんだな(違
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:08:08 ID:nPwQW4Ua
>>468
「虚無の力・・・・・・・あれは渡せぬ
 あの力は神のものなり
 愚者にくれてやるわけには行かぬ」
「あなた、ドグマ・・・・
 ジン・ドグマ?」
「否・・・・・我が組織の名は」


あれ?なんか間違えた? 
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:20:30 ID:+aTSZd1y
さっきから何の話してるのかわからない……
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:32:37 ID:nPwQW4Ua
>>472
南雲慶一郎 
「召喚教師リアルバウトハイスクール」の主人公
かなり独特な正義感をもった人物で、悪事は働かないが悪と認定した相手に対しては容赦せず
心身ともに深刻なダメージを与える。
例えば「真に麻薬組織を支えてるのは罪悪感も持たずに麻薬を売る下っ端」とか。
いわば「定職を持ったスト2のリュウ」で、気孔波で人工衛星を撃墜する
もともと事情があってだが異世界に頻繁に召喚される、という特性を持っているので呼びやすいかもしれないが
制御は事実上不可能

ジャック・ゴードン
映画「ゴジラ・ファイナルウォーズ」に登場
]星人が地球侵略のために全世界の怪獣を制御下に置いた際、轟天ただ一隻で戦いを挑む。
その際一か八か、と自分が地の底で眠らせたゴジラを目覚めさせるなどいろいろ豪快な人物であり
「我々に残されたのは、この轟天号だけです」「それで十分だ」
と胆力もあり、怪獣と生身で渡り合うミュータントと互角に戦う]星人を素手で倒すなど
戦闘力もハンパねぇ

人間台風
漫画「トライガン」参照
>>471
漫画 仮面ライダーSPIRITS第十六話「流星の神話」中編を参照
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:39:26 ID:gzYcw6C4
>>473
スゴイな色んな意味でw
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:44:19 ID:eLzTp4UA
南雲慶一郎は初恋の人の娘が誘拐された時、銃を持ってる怪しい人間片っ端から捕まえて拷問して口を割らせ全員殺害。
アジトに乗り込んで、見敵必殺。
そこにいたヤクザに尻尾振っていきがってるDQN小僧ども3人も構わず2人殺害、おがあちゃんと泣き叫ぶ最後の小僧も、俺はお前の母親じゃないとあっさり射殺。
怒らせると非常に怖い、超人的格闘家。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:49:41 ID:FMRyDbPr
>銃を持ってる怪しい人間片っ端から捕まえて拷問して口を割らせ全員殺害。
なんちゅう傍迷惑な……
あまり身近にいてほしくないタイプだな
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:51:41 ID:KIdSXh+W
中学校に乗り込むんだったかがかなり痛い内容だった覚えがある
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:53:58 ID:0+eX5FdJ
>>472
付け加えると、大軍を相手にするときは、構成員を一人ずつつぶしていけばいいという考え方の持ち主なんで、
対7万人船が非常に阿鼻叫喚なことになるな>慶一郎
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 18:56:10 ID:FMRyDbPr
確かに『これ』召喚したらルイズを含めて殆どのキャラが制裁されるな
悪党キャラの方がまだ御しやすいし、話も作りやすい
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:01:22 ID:nPwQW4Ua
さらに言うと人質、奇襲、騙し討ちも奨励する悪い意味で「勝つために手段を選ばない」性格

ちなみに彼の師匠は、先に手を出させておいてその攻撃が届くか届かないかのタイミングで
反撃し再起不能というか廃人に追い込むタイプ
殺さないだけマシ・・・・・・・かなぁ
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:02:26 ID:eLzTp4UA
さすがに殺されはしないだろうが(モット伯はちょっと危ない気がするが)

>>477
ロッカーに閉じ込めて、外からガンガン殴り付けてロッカーがボコボコになって、アイアンメイデン状態にしたあとプールに沈めるとかやってたな。
やられたのも複数の女生徒に手を出してた教師とかだから、どっちもどっちだが。
悪質ないじめっ子とっ捕まえて簀巻きにした後、いじめられてたやつに後遺症を残さないようリンチさせたりとかもあったな。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:02:50 ID:lgDE+2rW
慶一郎はまさしく厨ニ病の産物なキャラ付けだからなぁ。
ちなみに>>475で敵のアジトで見敵必殺してたのは、
救出対象を無事救出した後で両腕、ないし片腕が塞がった状態になるのを予想して、
かつ人一人守りながら戦うリスクを回避するための処置だったはず。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:03:57 ID:0+eX5FdJ
料理が得意で家事一般に対しても万能。
語学堪能で基礎工学とか化学とかそっち方向の知識もある様子。
爆薬などを含めて、武器全般を自在に使いこなす。

色々とチートなキャラだな。
つーか、ガンダールブ意味ないよね、こいつの場合。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:06:13 ID:KIdSXh+W
>>481
だが厨二病の極度に悪化したような内容過ぎて
読んでいて作者がちょっと心配になった。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:07:04 ID:FMRyDbPr
というかこの人主役なのか?
主人公のやり方を甘いと罵るライバルキャラにしか見えん
(もしくは道を違えた仲間とか)
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:09:03 ID:hgYJoazu
なんのことはない、水戸黄門の印籠を個人の腕っぷしに変えただけのキャラでしょ
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:09:21 ID:bpaO1Aiz
慶一郎は悪認定した相手は即座に処断する人だけど、
そうじゃなかったら初対面で因縁つけてきて木刀で殴りかかってくる理不尽な女子高生とかでも、温かく見守る懐の深い人だよ。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:12:50 ID:nPwQW4Ua
>>485
それなりに主役兼もう一人の主人公の前に立ちはだかる障害(殆ど手も足もでないけど)
をきちんとやってます
まあアレだ、「キシャーがメインヒロイン」よりナンボかマシ
そういやキシャー関係キャラ呼ばれてないな
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:15:12 ID:0+eX5FdJ
>>487
素人の木刀ぐらいなら、遊びの範疇に入るんじゃないか? 慶一郎的には。
ギーシュの「決闘」は実にやばい気がする。


「関節技は関節をくだくもの」とか、「絞め技は2秒以内に意識を飛ばして息の根をとめるもの」とか言う認識が。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:17:04 ID:gzYcw6C4
? キシャーがメインヒロインって……ググったらフイタw 確かにウザイヒロインだったけどw



てっきり「きしゃあ!」と堂に入った回し蹴りをかます婆様のことかと思ったのぜ
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:19:55 ID:dLnC5vWb
南雲先生は存在そのものが危険物
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:27:51 ID:Ocz8KeSA
南雲は用務員にクラスチェンジしました
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:30:26 ID:0+eX5FdJ
慶一郎も難しいだろうが、澁澤右京が一番難しいと思う。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:32:15 ID:oSSWfhIy
用務員対決で大貫さんに挑戦!
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:41:49 ID:XFuv7JFg
>>486
どこをどう間違えばそんな認識が・・・!?
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:44:37 ID:dLnC5vWb
南雲先生はダークヒーローに近い好漢なんだと思えば良いんだよ(多分…)
右京さんは全て事前に知ってる立場でモノを進めるから誰かが狂言回しでコキ使われないとね
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:52:04 ID:SBq11RNa
>キシャー
一瞬キャシャーンに見えて
Sinsのキャシャーンは敵意・害意を向けられると暴走してジェノサイドする性質があったのを思い出した
あれも呼ばれると結構ヤバいね、初期のは特に
暴れ終わるまでにワルキューレ5,6体じゃ絶対足りんし
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:55:17 ID:N96Wxy5b
今日パチンコ慶二でボロ負けした俺が通りますよと。
てっきり花の慶二の話をしてるのかと思ったぜw
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:58:06 ID:xZfrAmPn
>>494
勝てる気がしねえ
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 19:59:23 ID:+aTSZd1y
>>498
ギーシュ漢化フラグw
運がよければ武人の火がついてワルドも強敵(とも)フラグw
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:01:14 ID:EXiCUyxY
>>487
木刀「ふぅ、ヒロイン補正がなかったら危なかったわ……」
バンダナ「オマエ、ヒロインとちゃうやろ……」
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:04:45 ID:+aTSZd1y
>>501
やっと思い出した。CMかなんかで「木刀YO!」って言葉がやたら頭に残るアニメかw
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:09:44 ID:0+eX5FdJ
>>502
アニメと原作はかなり違うがな。
まあ、慶一郎を削ったのは、正しい判断だったとは思うが。
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:10:48 ID:j5vHTtQN
南雲さんの話聞いてたら何故か森継さん思い出した

過去の厨二病時代はセイギノミカタだったが現在は高二病……

元々痛覚無いから腕折れても殴り続けたり刺されても笑ってたりだし
普段冷徹だがぶちキレるとヤバい

つかマキナのお陰でマキナが破壊されなければほぼ不死身ってのが一番マズいか
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:14:16 ID:0/NP8hbS
そういえば今のところ集団召喚は女の子か漢臭い男塾一号生だけだけど
あれ一歩間違えればキュルケ他女子が泣いて羨ましがる状況が出来上がるよな。
例えばLC黄金12人とか。いや、魚獅子蠍水瓶だけでも
ルイズの靴が画鋲で山盛りになるには十分か。少しはサイトの気持ちも解ろう。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:16:04 ID:HEfFUI96
南雲さんは厄介だから、別の慶一郎を召喚しようぜ。さわやかないくさ人や死人を
語らせたら天下一品だけど主観と自分の愛憎がかなりむき出しな、あの慶一郎を。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:20:53 ID:DyVtwzPI
小山慶一郎?
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:21:00 ID:vfxlAgXG
>>498
ギーシュとの決闘で一発殴った後ズボンを引き摺り下ろして
「なんだこの一物はーーーー!!」は確定。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:21:54 ID:0/NP8hbS
日向景一郎?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:31:45 ID:oSSWfhIy
「お脱ぎなさい!」ってあったよな
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 20:58:56 ID:oQ3yhqVS
南雲じゃなくてヘルマスカーDを…と思ったが奴もかなりのチートキャラだったw(ある意味南雲以上に)
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:13:46 ID:K9cJwM9a
>>498
対7万で
「馬鹿だなぁ戦ってのは負け戦こそが面白い!」
とか言いながら松風に跨り無双して大将首を上げる姿が浮かんだw
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:17:37 ID:oQ3yhqVS
>>480

ちなみに南雲を下手に追い込むとアートマン化(例えるとクロックアップ+バーサク)して手が付けられなくなる…ガンダ補正要らないねw
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:20:38 ID:1tu26iHe
リアルバウトは作者が1巻の後書きで「俺の作品以外のライトノベルは全てクソ」と言い切った人だから
他のライトノベルとクロスオーバーする二次創作をやる事自体危険かもしれない
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:23:18 ID:rq8VvYCU
リアルバウト未読の俺が、ここまでの書き込みから判断すると
どう考えてもキ○ガイとしか思えないんだが…その主人公は。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:31:34 ID:lpQzLKSs
今の流れなら言える。

卵王子カイルロッド……
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:39:15 ID:nPwQW4Ua
>>516
カイルロッドはくしゃみをすると馬になる以外は基本一般人だからねぇ
難しいところだ
しかしアレは不朽の名作
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:40:15 ID:K6XANRm8
佳作ってとこじゃないかなあ

イルダーナフなら安定するはず
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:45:24 ID:lpQzLKSs
いや、明日「真・聖竜伝1」が出るからさ。
カイルロッドは不朽の名作。

でもカイルロッドよりもクロスさせるならリジィオの方がよさそう。
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:46:15 ID:HUxqPiQW
>>515

その認識はある意味間違い無いね。ぶっちゃけ、歩く人間爆弾。
自分の中の「悪」と認識した人物や集団には容赦しない(生死問わず、生きてても死んだ方がマシレベル多数)。
ただし、恩には厚く、自分を助けた人物にはかなり献身的にもなるの一面もあり。
正義の味方というよりは自分の正義を貫くタイプ(本人もエゴイストを自覚している)なので、ふとした一言で敵に回る事もある。
ぶっちゃけ、二次創作のクロス系で絡ませにくいキャラ上位だと思う。他のキャラの方が扱いやすい。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:46:55 ID:vfxlAgXG
>>515
初期は基本的には人格者っぽく書かれてた気がするんだが、
最近は暗黒面が強調されてる感じ。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:51:05 ID:K6XANRm8
南雲の解説はもうおなか一杯

>>519
そういやリジィオは不幸設定あったっけか?

メルヴィ&カシムも結構よさそうかも
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:51:33 ID:FbpgF1Xj
なんかよくわからん流れで盛り上がってるな。内輪で。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:52:15 ID:0/NP8hbS
>>520
…ケンシロウ?
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:53:42 ID:xiWKWbcV
>506
作家先生かよ!

つか死人だし。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:55:25 ID:oQ3yhqVS
>>515

キ〇ガイてか常在戦場って感じだな。
決して油断せず必要なら殺人も辞さないが、必要無いなら殺さない的な。
戦闘モードでなければわりといい人だし。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 21:58:38 ID:+za4WBhx
つまり、悪・即・斬!
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:00:13 ID:rq8VvYCU
なんかもう明らかに召喚されるキャラに向いてないし、このスレで話すキャラじゃないってことはわかった。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:00:39 ID:oQ3yhqVS
>>522

メルウ゛ィ召喚は面白いかも。
やはりギーシュは三色頭ポジションか?
基本女尊男卑の人だからルイズと上手く行くかも。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:04:48 ID:DIFHlrXA
もはや召喚したらの話じゃ無くなってるな
単に好きな作品の事を語らせろってだけだろ
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:08:52 ID:3llC8JLT
インフルエンザで休校になってる厨が騒いでるだけだろうし、
暫くすれば納まるんじゃない?
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:10:10 ID:kO3mzp+/
しばらくって・・・・・・一週間もこんな状態が続くんかい
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:11:03 ID:/j2cqgot
インフル休校ってまだ局地的じゃね?
それだけでここに影響するのか?
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:12:01 ID:xZfrAmPn
春休み延長戦じゃないんだぞ
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:24:55 ID:pTYFVCbO
>>527
つまり壬生狼を召喚すると…

絶対制御できねーww
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:25:05 ID:6ztv9uSN
GWの延長戦です。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:41:22 ID:tgfn1A99
>>536
ガンダムウイングと申すか
トレーズ閣下を召喚しろと申すのか
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 22:41:57 ID:+aTSZd1y
>>514
大口叩いた割に大して流行ってないな。ギャグで言ったの?
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:07:08 ID:lFONGRhp
リアルバウトは知らんが嫌いになった
グダグダと語り過ぎだろ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:09:58 ID:oQ3yhqVS
ケイン=バーネット召喚…ルイズそっちのけでジェシカかエルザを相方にしそうだ。
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:10:12 ID:xZpjBnXQ
影響されやすいんですね
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:12:26 ID:IYHNt9Lu
なんとなく風太郎の柳生十兵衛が召還されたのを
見てみたくなった。
女にも優しいし、それでいてこと剣の道の事となると
異様な不気味さを持ってたりするし。
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:16:35 ID:oQ3yhqVS
魔界転生…いやなんでもない。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:18:30 ID:yO4vtkmT
石川版石川五右衛門を
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:26:35 ID:fW9v7IBT
某ゼロ魔風エロゲーでたらパチモンのピンク髪を召喚とか書かれるんだろうか
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:32:50 ID:oQ3yhqVS
>>545

ルイズとテファとタバサがそっくりさんを召喚するんですねわかります。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:36:58 ID:KkdfL81E
>>545
「○○の○○を召喚」とだけ書いて本編は一切書かないクズなら絶対湧くと思うよ
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:50:14 ID:itT3s5w9
「某ゼロ魔風エロゲー」がわからない俺はクズ以下か?
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:59:17 ID:7IkvAkk2
それは卑下しすぎだろw
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 23:59:59 ID:0dCeTaGl
>>488
キシャー関係キャラは扱いにくいのかも。
ってココでもキシャーで誰だかわかるのか。

そういえばアレってまだ連載しているんだっけ?
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:03:19 ID:Pyn47oO/
>>549
卑下というか、むしろ知らない方が良いんじゃないのか?
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:05:17 ID:hniScPHL
雑談に励むお前らを尻目に代理投下いってもいいか
結構長めに見えるので、さるさん食らったら代理の代理よろしく頼む
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:06:17 ID:GXSisZkp
>>552
支援
554ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:07:14 ID:hniScPHL
ゼロの花嫁19話「アルビオンへ」



マザリーニ枢機卿は、鳥の骨と呼ばれる程の骨ばった指を額に当て、深く嘆息する。
ため息の理由は近衛兵の報告。
女王として即位してから随分自覚が出てきたと喜んでいたアンリエッタ女王が、夜更けに城を抜け出したとの報告を受けたせいだ。
君主が、夜中に、ロクな護衛も付けず、近侍の者すら騙して、城を抜け出すなどと余りの情けなさに腰が砕けそうになる。
当然のごとく護衛を付けるが、女王には気付かれぬよう気をつける。
何のつもりかはわからぬが、どうせ公表出来ぬようなロクでもない事だろう。
近衛の優秀なメイジならば、アンリエッタが何をどうしようと完璧なまでに任務を遂行出来よう。
ワルドが引き抜こうとした者も何人か居たが、断固として拒否した連中だ。こういう時にこそ役立ってもらわねば。

数刻後、後を付けた者から報告を受けたマザリーニは、
部下の前だというのに執務机に突っ伏してしまいそうになるほどの絶望を味わう事になる。



オールドオスマンは大公夫人誘拐以来、常に臨戦態勢を解いていなかった。
出来れば教師達にもそうさせたかったのだが、いらぬ疑いを招く事にも繋がるので、
周囲への警戒には宝物庫のマジックアイテム等を用いていた。
そんなオールドオスマンの警戒網に、一台の馬車が引っかかる。
夜半過ぎにわざわざ学院に来る馬車、それも偽装しようとしてはあるが、城で使っているような高価な馬車である。
非公式の使者とも思ったが、馬車から出て来たのは小柄な者が一人のみ。
向かう先は学院生徒達の眠る宿舎となれば逢引か何かとも思えたが、あの高価すぎる馬車でというのは少々不自然だ。
顔が見えぬようフードを目深に被っているが、こちらはマジックアイテムだ。
遠見の魔法が使えるマジックアイテムで侵入者の顔を確認する。
「…………は?」

いやいやいやいや、無い。あれは無い。
マジックアイテムが壊れた。そうに違いない。
試しにと密かに目を付けていた新入生女子の部屋を映し出す。
寝室であどけない寝顔を晒していると思われた、清楚な雰囲気が愛くるしいその少女は、机に向かって一心不乱に筆を走らせていた。
鬼気迫るその表情からは、とても授業時の可憐さは想像出来ない。
机の前の壁に貼り付けられた「締め切り厳守」の張り紙が、何かなんていうか、もういいやって気にさせてくれた。
どちらも見なかった事にしたい映像だったが、いつまでも現実逃避してる余裕も無いので、再度映像を侵入者に向ける。
侵入者は、事もあろうに問題児筆頭、またお前かなルイズ・フランソワーズの部屋に入って行った。
そんな彼女が部屋に入るなり唱え始めた呪文。
「いかんっ!」
大慌てでマジックアイテムの効果を切る。ギリギリ間に合ったと思われる。
侵入者はディテクトマジックで周囲を探る魔法を感知しようとしていたのだが、
そんな用心深さも、覗きの達人オールドオスマンを捉える事は出来なかった。
仕方無くモートソグニルを派遣し、状況を把握させる。
あの馬鹿娘を放っておいたら、何されるかわかったものではないのだから。



考えうる最悪の組み合わせ。
オールドオスマンならばそう評したであろう、アンリエッタ女王とルイズの邂逅。
突然の訪問に驚くルイズを、アンリエッタは嬉しそうに抱き締める。
「お久しぶりルイズ。元気だった」
「じょ、女王陛下。一体どうして……」
「ふふ、城を抜け出して来ちゃった」
555ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:08:01 ID:hniScPHL
「そ、そのような事をしては……」
流石のルイズも動転してしまう。
アンリエッタはすっとルイズから体を離すと、ルイズの手を握ったままにこやかに笑う。
「堅苦しい口調は出来れば無しにして欲しいですわ。昔一緒に遊びまわったように、もっと楽にしてくれると私も嬉しいです」
畏れ多さもあったが、女王が望んでいた形を瞬時に察したルイズは、堅苦しさを少しだけ抜いた、親しげな口調で答える。
そうなれば年頃の女の子が二人である。
バックに花びらが飛び交うような微笑ましい会話が始まる。
思い出話に一しきり花を咲かせた後、ルイズは思い出したようにサンを紹介する。
「こちらが私の使い魔サンです。サン、こちらはトリステインを統べし女王、アンリエッタ様よ。ご挨拶なさい」
旧友が訪ねて来た程度にしか思っていなかった燦は、一瞬だけ小首をかしげる。
「女王? ……それって王様って事ちゃうん? つまりトリステインで一番えらい人って事で……」
「こ、こらっ、女王陛下の御前よ。きちっと挨拶なさいっ!」
慌てるルイズの様が燦に事の重要性を教えてくれた。
突如、燦は腰を曲げ、掌を上に向け、片手を前へと突き出す。
「おひけえなすって!」
余りの大声に、ルイズもアンリエッタも思わず硬直してしまう。
その隙間を縫うように燦の言葉が響く。
「さっそくのおひかえありがとうございます。手前の庭先で恐縮ですが仁義切らせてもらいます。
 てめえ生国と発しますは瀬戸内です。海ばかりのつまらない土地ですが、
 そんな土地でチンケなヤクザの子として生まれやした。実の親もヤクザ者、
 筋金入りのバカヤロウですが渡世の皆様に助けられ、こうしてこの年まで生きながらえてこれました……」
延々語られる燦の流れるような口上に、二人は口をぽかーんと開いたままただただ聞き入っている。
「……どうぞ行末永く御別懇に願います!」
全部が終わった後、数秒の間をおいてアンリエッタは、こくんと頷いた。
「よ、よろしくお願いします」
思わずそんな返事をしてしまったアンリエッタと、もの凄い勢いで燦に掴みかかるルイズ。
「さささささささサン! い、いきなり女王様になんて真似すんのよ!?」
「え? だってルイズちゃんきちっと挨拶しろて……」
「今の挨拶!? 脅し文句じゃなくて!?」
妙に男前な顔になる燦。
「これがヤクザもんの仁義じゃき……見逃したってくれやルイズちゃん」
「いやもう見逃すも何も何処からつっこめばいいのよそれ!?」
喚くルイズだったが、アンリエッタはちょっと顔を引きつらせつつも、燦の挨拶を受け入れた。
「か、構いませんよ。その、ちょっとびっくりしましたけど……えっと色々と変わった使い魔なのですね」
こうしてしょっぱなからばっちり存在をアピールしきった燦は、以後ルイズの命令で黙っている事になるわけだが。

一しきり話した後、アンリエッタは口調をがらっと変え、この部屋に来た理由をルイズに語った。
アルビオン皇太子ウェールズの持つ手紙を回収して来て欲しいと、ルイズに頼みに来たのだ。
「王命として正式に命じる事も出来ぬ、そんな任務です。失敗は許されませんが、成功したとて何も報いる事は出来ません」
「わかりました。任務、必ずや果たして御覧に入れましょう」
即答である。
アンリエッタは、喉元まで出かかった言葉を堪える。
「ウェールズ様への身の証しとして、この水のルビーを持って行きなさい。その上でこの手紙を渡せば話は通じるはずです」
「はっ」
「ウェールズ様以外、トリステインはもちろん、アルビオン側でもこの件を知る者は居ません。それを忘れないように」
「了解しました」
「回収すべき手紙は決して明るみに出してはなりません。
 もしトリステインへの帰還が困難となったならば、貴女の責任において手紙を処分しなさい」
注意事項をすべて聞き届けると、一つ気になった点をルイズは問う。
「アンリエッタ様、こちらにいらっしゃるのに護衛をお付けになりましたか?」
「いえ、秘事を知る者は少ないに越した事はありません」
556ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:08:42 ID:hniScPHL
それを聞くと、すっとルイズは立ち上がる。
「では出立の前に、アンリエッタ様を王城へとお送りしたいのですが、お許しいただけるでしょうか」
「必要ありません。貴女は任務の事だけ考えればよろしいのです」
「はっ、出過ぎた真似を致しました」
そうやっている二人は、とてもついさっきまで歓談に興じていたとは思えぬ緊張感に包まれている。
伝えるべき事を伝えると、アンリエッタは部屋を後にする。
ルイズは燦に命じ、キュルケとタバサを呼び、城まで女王に気付かれぬよう護衛を頼みに行かせる。
一人部屋に残ったルイズは、ベッドに腰掛けて任務の背景を想像する。
「わざわざ学院に出向くような真似までして私に、という事は……城に頼れる人物が居ないという事かしら」
思考にふけるルイズであったが、部屋のドアを叩く音で我に返る。
燦が居ないので仕方なく自分で扉を開くと、そこにオールドオスマンが居た。
「スマン。全部聞いた」
ルイズはわざとらしく肩をすくめて見せる。
「……だろうと思いました。オールドオスマンがアンリエッタ様の来訪を見落とすとは思えませんでしたし」
「なんじゃ怒らんのか」
「愛人の件以来、オールドオスマンとは一蓮托生と考えておりますので」
苦虫を噛み潰したような顔になるオールドオスマン。
「じゃったら、ほいほいとそんな任務受けるでない。ワシが見た所、それ相当ヤバイ件じゃぞ」
ルイズは素直に自分ではこの件の裏まで読めないと、オールドオスマンの知恵を頼る。
アルビオンが既に危機的状況に陥っている事、アンリエッタのゲルマニア皇帝との婚約、
ウェールズ皇太子のみしか知らぬ秘事、近しい者にすら明かせぬ事。
ここ最近の女王を取り巻く状況を並べ、オールドオスマンは手紙の中身はアンリエッタがウェールズへと送った恋文ではないかと推察する。
アルビオンの近況とアンリエッタの婚約はルイズも知らぬ事であった。
最近は宝物庫のマジックアイテムをこれでもかと濫用してるらしいオールドオスマンの耳の早さは、
最早大陸一と言っても過言では無いかもしれない。
「トリステイン貴族に断れる訳がありませんわ」
「そりゃまそーじゃがの。条件ぐらい付けぬか」
「……怒りますよ」
「言ってみただけじゃ。さて、どうしたものか……」
「どうもこうも無いでしょう。アルビオンに行って、手紙を受け取って戻って来る。それだけです」
試すようにオールドオスマンは問う。
「反乱軍と出くわしたら?」
「邪魔をするというのであれば、どいつもこいつも叩っ斬るまでですわ」
返答は予期していたのか、諦めたように大きく息を吐く。
「せめてキュルケとタバサは連れて行け。お主とサンのみではキツかろう」
ルイズは心外そうな顔をする。
「私とサンだけでも出来ないとは思いませんが、キュルケとタバサを置いて行った日には、私が二人に恨まれてしまいます」
失敗できぬ任務に赴く、そんな表情ではなく、売られたケンカでも買いに行くかのように、ルイズは不敵に笑って見せた。

タバサとキュルケが戻ると、王女の護衛には別の者が付いて居た事がわかる。
王女に見つからぬよう動いていた護衛は三人程であったが、いずれも腕利きのメイジであったと語る二人に、ルイズはアホな事を問う。
「で、張り倒して来たの?」
タバサは頭を垂れてキュルケの背中をぽんと叩く。キュルケが言えという意味だ。
「そうやって何でもかんでも力づくって癖直した方がいいわよ。トリステイン王宮近衛の連中張り倒してどうすんのよ」
ルイズはとても意外そうな顔をする。
「あら、案外王宮もしっかりしてるのね」
「当たり前よ。アンタ軍馬鹿にしてるでしょ」
「ちょっとだけね。じゃ、私達はアルビオンに行ってウェールズ皇太子に会うわよ」
「どういう話よ」
「ごめん、それ言えないの」
何よそれ、とぼやくキュルケを他所に、タバサは二つ返事で了承し、旅支度を整えるべく部屋に戻る。
「ふん、そういう秘密なお話だったらルイズだけで行けばいいのに」
557ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:09:30 ID:hniScPHL
「それでも良かったんだけどね。そういう訳にもいかないでしょ」
くすくすと笑いながら部屋を後にするキュルケ。
「そうすれば私も貴女に文句言えたのに」
「そうそう隙なんて見せてあげないわよ。ルートは考えておくわ」
ルイズは残るオールドオスマンに後事を頼む。
前後の正確な情報さえあれば、オールドオスマンならば随時適切な判断を下してくれよう。
オールドオスマンの、くれぐれも無茶は避けるようにとの言葉に、ルイズは大きく頭を下げた。
「すみません、多分無理です」
「素直な所以外評価出来んわ! タバサの言う事良く聞くんじゃぞ!」
こう言って悪ガキ四人衆、唯一の良心に縋る他無いオールドオスマンであった。



ワルドがマザリーニに呼び出されたのは夜も遅くの事であった。
緊急事態との事で取る物もとりあえず駆けつけたワルドは、これは戦況が悪化したアルビオンの件だと考えていた。
しかし、確かにアルビオンの件ではあったのだが、マザリーニが明かした話は、幾らなんでも予想の斜め下過ぎた。
開いた口が塞がらなくなるといったリアクションは、ワルドもマザリーニと同様であった。
「……今のアルビオンの状況を、知ってるからこそ回収すべき、と判断したんでしょうが……いやはや……」
ワルドの耳に入っている限りでは、一両日中にもロンディニウムの包囲は完了するらしい。
そこに今から飛び込めなどと、戦を知る者ならば決して出来ぬ命令である。
幾分か立ち直ったマザリーニは、ワルドを呼び出した本題に入る。
「女王陛下とて状況は理解出来ているはず。ならば、やらねばならぬ事でもあるのだろうが……
 それをヴァリエール家の娘に頼む神経がわからん」
「他に頼れる者も居なかったのでしょう。王室の恥に類するような、そんな内容であると推測しますが」
嫌過ぎる予感に苛まれつつ、マザリーニはワルドに先を促す。
「おそらく、ゲルマニア皇帝との婚儀が絡んでおります。となれば、
 対象がアルビオン国王ではなくウェールズ皇太子である事を考えますに……二人の間に何か個人的な密約があった、そう考えますが」
「歯に衣着せんでいい。あんの尻軽娘、よりにもよってウェールズ皇太子にちょっかい出しておったか」
老獪な男の思わぬ毒舌に、ワルドは苦笑する他無い。
「手紙との事ですが、恋文の類でしょうか。確かにそんなものが明るみに出た日には、婚約の話は立ち消えとなりますな」
「ふん、それでも誤魔化す手はある。それに私の知るウェールズ皇太子ならば、責任を持って処分してくださると思うのだが、
 女王陛下に手を出していたという話を聞いた後では些か自信が持てぬ」
「まったくです。で、どうされますか」
「ワルドの所でこの任務に耐えうる者はおるか?」
「前線を突破してロンディニウム、ハヴィランド宮殿に潜入、手紙入手後包囲を抜けて帰還し、卿と女王陛下の前で処分。
 ……私ぐらいですな、それが確実に為せると言い張れるのは」
マザリーニは苦虫を噛み潰したような顔だ。
「お主を行かせる訳にも行くまい。そもそもお主は当分ここから動けぬだろう」
「いえ、動くつもりです」
「何?」
実は、とワルドが語り出したのはアルビオン内乱への武力介入であった。
血を分けた兄弟国、救援に向かうに何ら不自然は無く、また敵は寄せ集めであるが故、頭を失えば脆い集団。
「足の速い連中を集めて奇襲を仕掛け、反乱軍首魁クロムウェルを討ちます。間を計らねばなりませんが」
マザリーニはふむ、と頷く。
「戦勝に沸き、油断しきった時……か」
「左様で。アルビオンの王族が絶えるやもしれませぬが、いずれ始祖の血を引く方が治める形にしなければなりませぬから……」
「トリステイン・アルビオン王国か。何処が文句を言う間も無く反乱軍を討ち滅ぼしてしまえば、確かにありえぬ話ではないが」
ワルドの考える最終形をマザリーニは読むが、手放しで賛成はしてないようで、渋面を崩さない。
幾らなんでも都合が良すぎる話だ。
「どの道、アルビオン反乱軍とは事を構える事になりましょう。
 奇襲が失敗したのなら、そこで改めてゲルマニア、ガリアとの調整を行えばよろしいかと」
「二国に難癖付けられて国境の都市の一つや二つ持っていかれても、アルビオン丸々一国が手に入るのなら釣りがくるか……」
ガリア、ゲルマニアと比べ、トリステインはお家騒動が大人しい分身動きが軽いという利点を活かさねば、この局面は潜り抜けられぬ。
そう語るワルドの言葉に、マザリーニは異論を唱える。
「だとしても勝たねば意味が無い。アルビオンとトリステインではそれ程軍備に差があるとも思わんが」
558ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:10:56 ID:hniScPHL
「懐柔による内部からの混乱が、此度のアルビオン敗戦の主な原因と思われます。
 公爵クラスがぼろぼろ裏切るような状況は、流石に我がトリステインでは考えられぬ話です」
「戦況は私の方でも調べさせていた。確かに、あの戦力差で破れるなど想像も付かなんだが……
 にしてもアルビオンにそれ程隙があったとも思えぬ」
「理不尽を可能にする道具、ないし強力無比な魔法を用いている可能性もあります。
 その場合武力ではなく搦め手に類する能力を持つと思われますので、となればやはり奇襲こそが最善と私は考えます」
マザリーニは考える。
もし反乱軍が勝利し、こちらに牙を剥いたとしても、他国と連携してアルビオンを包囲するやり方ならば被害は少ないはず。
しかし、その場合アルビオンからの攻撃はおそらく近場のトリステインに集中する。
それに対応するようにガリア、ゲルマニアも主力はトリステインに置く事になろう。
そうなれば、後々が面倒な事になる。
そも手紙の回収が出来なければ、ゲルマニアとの連携も厳しいという最悪の状況もありうる。
王都占領の混乱に合わせて奇襲し、ハヴィランド宮殿を灰にしてしまえば、手紙も何も無いだろう。
アルビオン侵攻の一番の難所、上陸作戦も今の状況ならばさして難しくもあるまい。
王軍、空海軍、近衛ならばすぐに動かせる。
諸侯軍には後々から参戦する形を取らせても、アルビオンの港を一つでも押さえていればどうとでも出来る。
しかし、卑怯との謗りは免れ得まい。
王家が滅びる直前まで手を貸さず、滅びきった後に漁夫の利とばかりに襲い掛かるなぞ、見栄えが悪い事甚だしい。
アルビオン王と皇太子が死んでいてくれれば、決戦に破れ包囲に至るまでが極端に短かった事を考えるに、
救援要請を受けたが間に合わなかったでも通るだろうが。
マザリーニは、そこではたと気付いて手を叩く。
「なるほど、奇襲は王と皇太子をお救いする手段、そう言い張るのも手か」
救い出せたのなら後は簡単だ。両者、ないしどちらかを立てていれば侵攻の口実にはなる。
いずれにしてもタイミングが重要だ。
トリステインの最精鋭を揃え、微妙な間合いを図る繊細な軍事行動。
「今すぐ動かせる部隊はどれだけいる?」
「千ですな。数だけならば二千は揃いますが、それはアルビオンの港を抑えるのに回すべきでしょう」
「諸侯に一言も無しで軍を動かす事になる」
「文句があるのならば諸侯軍抜きでアルビオンを倒す。そう言ってやればよろしい。
 既に王軍、空海軍首脳には話を通してあります。トリステインの置かれた状況を説明しましたならば、
 快く納得して下さいました。出来ればもう少し根回しの時間が欲しかったのですが、
 こうなってしまった以上、致し方ありますまい」
人の悪そうな笑みでワルドを睨むマザリーニ。
「この悪党めが、トリステインの守りを奴等に押し付ける気か」
「戦場での遅参は冷や飯食いと相場が決まっております」
二人の話が早いのには訳がある。
二人共が共通の認識として、アルビオン反乱軍は遠からず敵となると見なしていた。
アルビオンの王家と繋がりの深いトリステインは、対外的にも反乱軍に対し良い顔をする事が難しい。
そもそも貴族の共和制などを掲げられては、王家を擁する国とどう仲良くやれというのか。
自国の諸侯が増長する前例となりかねぬこのような国を、トリステインもガリアもゲルマニアも結局は許す事が出来ぬであろう。
お互いそれが解っているのだから、後は武力を用いるか否かだけで、安定した交流など望むべくもないだろう。
位置的にも攻められにくく、強力な空軍を擁するアルビオンは、散発的な攻撃を得意とする。
嫌がらせのようなこんな攻撃を数多受ける事になるのは、おそらくトリステインであろう。
仮にロマリアを加えた四国で同盟を締結したとしても、これではトリステインのみ大きな被害を被る結果となろう。
そうさせぬ為に、トリステインはすぐにでも動く必要があったのだ。
幸い、と言っていいか、女王は年若く重要な判断が下せぬ為、言い方は悪いがコントロールする事も容易だ。
後でまた何やかやと言われるだろうが、今動かねばトリステインの利益を守る事が出来ぬ。
恐らく王軍、空海軍首脳がワルドの話に乗ったのも、そんな危機感あっての事だろう。
現状認識も出来ぬ愚か者は、蚊帳の外に居てもらうとしよう。
それを見定めるに、これは良い機会でもあるのだから。

559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:11:55 ID:GXSisZkp
支援・改!
560ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:12:10 ID:hniScPHL
ワルドの持ってきた話が大きすぎた為、ルイズの件は忘れさられそうになったが、そこはマザリーニとワルドだ。
護衛を選びルイズ達の後を追わせるという事で同意する。
手紙に関しては回収せねば後々厄介になる可能性は確かにある。
561ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:13:02 ID:hniScPHL
ルイズ達のルートでも試しておくに越した事は無かろう。ただ、秘密が漏れぬよう、最悪の場合に備えなければならない。
マザリーニがそんな作戦を遂行出来る人物は居るか、と問うと、ワルドは頷いた。
「一人、連中と繋がりのある人物に心当たりがあります。そちらは私にお任せ下さい」



シルフィードに跨り、ルイズ、キュルケ、タバサ、燦の四人は明け方の内に学院を出る。
ラ・ロシェールの街に着いたのは翌々日の昼過ぎの事である。
世界樹の枯れ木を用いた桟橋が特徴的な、空飛ぶ船の港町であるラ・ローシェルは、
アルビオンとトリステインを結ぶ重要な交通拠点である。
魔法を使い巨大な岩を切り出して作られた街並みといい、
見上げるでは済まぬ大きさを誇る世界樹に果実のごとく連なる多数の空飛ぶ船といい、燦には驚きの連続であった。
すぐにアルビオン行きの船を手配しようとするのだが、そこで一行は足止めを余儀なくされる。
何時もならすぐに見つかるはずのアルビオン行きの船であるが、わざわざ戦乱渦巻くアルビオンに向かおうという船がどれ程居るというのか。
定期便すら滞る始末では、ルイズ達に都合の良い船など見つかるはずもない。
この際輸送船でも何でもいいから、そう言っても出ないものは出ないのである。
まずキレたのはキュルケだ。
ガラの悪い船員達が積荷を船へと運んでいる所に赴き、いきなり魔法を唱えようとした所をタバサに止められた。
「キュルケ」
「何よ、積荷が燃えて無くなれば私達乗せる余裕ぐらい出来るでしょうに」
「積荷無しじゃそもそもアルビオンに行く理由が無くなる」
「むむ、確かに」
アホかと。
次に、といってもほぼ同時だが、キレたのはルイズである。
船長と思しき人物にすたすたと歩み寄る所を燦に止められる。
「ルイズちゃんイカンて!」
「何よ、船長なら船ぐらい飛ばせるでしょ。あいつ脅せば一発じゃない」
「あんな大きい船、人質の一人や二人じゃどうしようも無いて!」
「むう、それもそうだけど……」
バカかと。
チンピラ以外の何者でもない。
タバサは燦に言って、ルイズとキュルケの二人を宿に連れて行かせる。
強行軍で来ているのだ、ここで一休みするのも良い選択であるし、交渉はタバサに一任して三人は先に宿を取っておく事にした。

ここで一泊するつもりなど無かったのだが、シルフィードが疲れたときゅいきゅい騒ぐので、まあ一休み程度ならと宿の一角に陣取る三人。
今シルフィードに乗って出たとしても、アルビオンに辿り着く前に夜になってしまう。
夜間の飛行で空飛ぶアルビオンに辿り着くのは難しく、シルフィードの疲労もあり、
それ故船の手配を考えたのだが、その船が無いのは計算外であった。
不愉快そうなルイズとキュルケだったが、燦がアルビオンは戦争中なんだし、
少しみんなに話を聞いてから行くのはどうかと提案すると、あっさりと納得する。
確かにその通りであるが、機嫌まで一瞬で直ってしまったのは、二人共が燦にだだ甘なせいであろう。
宿を取るかどうかはタバサが来てから決めるとして、とりあえず宿の一階にある飲み屋兼食堂で遅めの昼食を取る。
ついでとばかりに、ウェイトレスをしている子にアルビオンの近況を聞いてみた。
王党派と称されるアルビオン王家の軍は、最後の決戦にも破れ、王都ロンディニウムに追い詰められているという話だ。
それを聞いた三人の反応は、
「それなら王都に行けばいいのね」
「良かった〜、戦場出てたら何処行けばいいか、わからんかったかもしらんし」
「……目的地ぐらいはっきりさせてから出なさいよアンタ等」
ルイズとキュルケがアルビオンの不甲斐なさを口にすると、ウェイトレスも同感だったのか話に乗って来た。
「そうなんですよ。ボロ負けもいい所ですし……ウェールズ様もっとかっこいいと思ってたんだけどなぁ。ちょっと幻滅かも」
平民の感覚などこの程度である。
ちなみにルイズ達の服装は、学院の制服の上にフードを羽織った形だ。
頭まですっぽり隠せるようなものにしてあるのは、身を隠す必要が出るかもしれぬからである。今は食事中でもあり、素直に頭は出しているが。
不意に奥のテーブルから下卑た笑い声が響いてくる。
562ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:13:51 ID:hniScPHL
むさ苦しいとしか形容しようのない男達が数人、テーブルを囲みながら昼間っから酒を飲んでいるのだ。
それだけならば問題無かったのだろうが、ルイズ達の所にかかりっきりのウェイトレスに文句を言う段になり、ルイズが動いた。
フードを目深に被り直したのは外見でぐだぐだ言われぬように、そして中身が女の子とバレる前にさっさと開戦するつもりであると思われる。
キュルケはどうでもよさ気にワインを傾けている。
「サン、貴女も参加してさっさとカタ付けてきたら?」
「うーん、見た感じそんなでも無さそうだし、私混ざるとルイズちゃん嫌がるきに」
「そうなの?」
「口では言わんけど、基本的には自分でやりたいんだと思う。でも人数増えるようじゃったら私も行く。というかあいつら私も気に食わん」
「はいはい」

どんがらがっしゃーん。

開戦の合図。
殴り合いが始ってしまえば男も女も無い。
それ以前に大の大男を肩に担ぎ上げてぶん投げるなんて真似をしてるのだ。
これで女扱いしろって方が無茶だ。
外に駆け出して行った男が増援を呼ぶ段になると、燦も「何しとんじゃあああああ!!」などと怒鳴りながら参戦する。
店内はあっと言う間に阿鼻叫喚の坩堝と化し、店主がウェイトレスに警備を呼ぶよう指示する。
キュルケは、二人にだけ見えるように懐から杖を見せる。
「たかがケンカでしょ、放っときなさいって。大丈夫、これ以上騒ぎが大きくなるようだったら、私が出るから」
店のぶっ壊れた物は負けた方にでも私が払わせてやると言うと、二人はとりあえず納得する。
「それでも文句言うようなら、一切合財燃やし尽くして何もかも灰にしてやるわ」
即座に回れ右したウェイトレスは、後ろも見ずに警備詰め所へと走り去った。

「いい加減にしろ貴様等!」

腹の底から響くような迫力のある怒声に、店内は音を失う。
六人の男が伸びて地面に寝転がり、残る十人近くの男達も皆ヒドイ顔をしている。
「公共の場で昼間っから何を馬鹿な真似をしているか!」
服装から軍関係者と思われる者の出現に、男達は腐った顔をしながら引き上げだす。
捨て台詞をルイズ達と軍人らしき者に吐いて店を出ていく男達。
ルイズと燦は硬直したまま軍人を指差している。
キュルケは思わぬ乱入者に、グラスを掲げて挨拶した。
「あら、アニエスじゃない。久しぶりね、元気だった」



アニエスは余り表情を表に出さぬ、周囲にはそう思われているが、実はそうでもない。
直接の上司になったワルドは、アニエスの中々にバリエーションに富んだ表情を幾つか知っている。
今日はそれが一つ増えた日だった。
困りながら嫌がりつつ、それを表に出さぬよう表情を硬くしようとして失敗したので、笑顔を見せて誤魔化そうとした顔。
「は、はぁ、ヴァリエールの護衛……ですか」
明らかに乗り気ではないとわかる反応だ。
ワルドはその辺の機微に長けているので良くわかるが、他の連中には微細な変化としか取れぬだろうなと、頭の中で考える。
しかし、任務の内容を説明するにつれ、アニエスの困惑も消し飛んで行く。
王室の恥、それをアニエスのような成り立てシュバリエごときに話すなど、考えられぬ。
「死ぬ必要は無い。その前に引き返して来て欲しい。任務の重要性は先に言った通りだが、
 それでも、帰ってきなさい。これが私からの命令だ」
「ここは死ねとお命じになる場面かと。これを見過ごしてはトリステインに大きな損失が出ます」
ワルドは真剣な表情のままだ。
「繰り返す。決して死んではならない。これ以上は危険と判断したのならルイズを斬れ。君の死に場所はこんな所ではない」
その判断を下せると見込んだからこその人選だ、そう言われてはアニエスにも返す言葉がない。
563ゼロの花嫁19話 代理:2009/05/20(水) 00:14:40 ID:hniScPHL
「爵位の大きさで人の能力が決まる訳ではない。より優秀な人間こそ生き残るべきだし、
 それを阻害するような命令を私は下す気はない。それに……」
眼光は鋭さを保ったまま、頬を上げて笑みを形作る。
「君はそのまま私が率いるアルビオン奇襲部隊に合流しなさい。
 死ぬのならそこでだ。華々しい戦場で死ぬのと、子供のおもりで死ぬのでは雲泥の差があろう」
婚約者より部下を優先するワルドの言葉に、アニエスはただただ頭を下げる事しか出来なかった。



タバサが漸く船長と話を付けて宿に辿り着いたのは、軍人がケンカを怒鳴りつけて止めた所であった。
見ただけでは状況が把握出来ない。
キュルケと軍人は仲良さそうに話をしているが、ルイズはそんな軍人にがなり、燦はぶすーっとした顔でルイズの後ろについている。
「どうしたのよ、しばらく音沙汰無かったけど。仕事忙しかったの?」
「すまぬな、目が回りそうな程に忙しかったせいで礼も遅れてしまった。キュルケとの訓練のおかげで、何とか生き残る事が出来たぞ」
「あら、それは重畳。メイジの一人でも叩っ斬ったの?」
「そんな所だ。おかげでシュバリエの叙勲を受ける程の武勲を立てる事が出来た。今はワルド様の捜査部所属だ」
「まあ、それはめでたいわ。今晩は私もここで一泊するみたいだし、貴女は? 良ければご一緒しない?」
「嬉しいお誘いだが、ちと先約があってな……ああ、さっきから隣でぎゃーぎゃー喚いてる騒々しいの絡みなのだが」
「ルイズ? ああっ、もう、うるさいわねえ少し静かに出来ないの? 今私コレの連れだから、ルイズも今晩はここで休む事になりそうよ」

「アンタ達何さっきから延々延々延々延々延々延々人の事無視してくれてんのよおおおおおおおおおおお!!」

「アンタがうるさいからよ」
「貴様がやかましいからだ」

ロングビルが以前アニエスに紹介した炎のメイジとは、キュルケの事であった。
アニエスが炎のメイジが嫌いだという話を聞き、それはいけないとロングビルに諭されたのだ。
嫌いならば尚の事、きちっと炎の魔法を理解していた方が良いとの説得に、渋々だがアニエスは折れる。
そして紹介されたキュルケだが、キュルケもまた剣を使う人間との訓練機会を欲していたので渡りに船であった。
最初こそ硬い表情を崩さぬアニエスであったが、キュルケはゲルマニア出身で身分云々に余り拘らぬ人間であり、
何よりアニエスの素晴らしい剣技と体術に敬意を払ってくれたので、徐々に態度を軟化させる。
その訓練の中、アニエスはメイジ殺しに最も重要な要素に気付いた。
メイジを殺すには、魔法への理解が不可欠である。
魔法を使えぬ人間が魔法を学ぶ機会は無い。だから魔法の効果や能力を過大や過少に評価し、結局実戦でしてやられてしまう。
ところが世間では、例え軍であろうと、対魔法の訓練など行われていない。
そもそも必要とされる体術のレベルが一定以上でなくば効果は望めぬし、自分が不利になるような事をわざわざするメイジも居ないだろう。
魔法を使えぬ者がメイジを殺すなど、絵空事でしかないと思われている風潮も影響している。
しかし、こうしてキュルケから様々な魔法を学んだアニエスは、決してそれが夢物語ではないと知っている。
キュルケ自身も、仮想敵をメイジだけではなく剣士にも置いている部分があり、それも良い方向に作用した。
向上心の強い二人であり、双方の実力を認め合える程の度量を持っている為、両者の仲は、もう一方に比べ大層円満なのであった。

「ふむ、キュルケとそこのタバサというのがルイズに付き合ってここまで来ているという事か」
アニエスはアテが外れて少々落胆していた。これでは最悪の場合でもルイズだけ斬って終わりとは出来ない。
「でも、私もタバサもどういう理由でルイズがアルビオンに行くのかまでは聞いて無いのよ。アニエスは知ってるんでしょ?」
「…………」
まさかそれを話す訳にもいかず、沈黙するアニエスであったが、キュルケは手をぶらぶらと振って自らの言葉を打ち消す。
「ああ、違う違う。別に話さなくてもいいわよ。今回の私達はおまけだから、事情を聞く気はないわ」
「いいのか?」
「今のアルビオンに向かうのが危ないって事ぐらいはわかるわ。でも、私達はルイズがそこに行くのなら付き合う。そういう仲なのよ」
冗談めかして言ってはいるが、その言葉に真実の響きを感じたアニエスはそれ以上は何も言わなかった。
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:17:41 ID:UXDdl3U3
ここでさるさん、365から続き頼む
565ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:22:44 ID:Z/JL7QGZ
他に人がいないなら代理しますねー

ルイズを斬るのならこの二人も斬らなければならない。そんな覚悟を胸にしつつ。



出陣準備を指示するワルドは、忙しなく書類の山をチェックする。
ひっきりなしに執務室を出入りする部下達。
彼らはいかな凶悪犯罪者をも恐れぬトリスタニア最恐部隊である捜査部の面々であったが、そんな彼等がたった一人の女性に道を空ける。
その気配に気付いたワルドは書類に落としていた視線を上げると、憤怒の表情のエレオノール女史の姿を認めた。
「……子爵、お人払いを」
体裁を取り繕う程度の自制心は働いている模様。
そんな暇など欠片も無いのだが、婚約者殿の実家の長女を無碍にも出来ない。
手を一振りすると、報告待ちであった部下達は部屋を後にする。
エレオノールは、一言一言はっきりと口にする。
「ルイズは、何処に、行ったのかしら」
「ルイズがどうかしました……」
ワルドとエレオノールを隔てる机を、エレオノールは全力でぶっ叩く。
「返答如何によってはルイズの婚約者とて容赦はしません。ヴァリエール全てを敵に回す覚悟で返事なさい。ルイズは、何処?」
職業柄、見せ札、ハッタリを見抜く術に長けたワルドは、この愛すべき婚約者殿の姉上が、正気を疑うが、本気であるらしいとわかる。
「申し訳ありませんが、それはお話出来ません」
「……そう」
子爵ごときにコケにされる言われなど無い。そんな感情が体中から噴出している。
「わかりました。貴方を……」
「ミス・ヴァリエール、どうか落ち着いて下さい。隣国アルビオンが未曾有の混乱にある中、国内での騒乱は国の寿命を縮めるだけです」
突如激昂したエレオノールはワルドを怒鳴りつける。
「無礼者! たかが子爵ごときがこの私に国家の行く末を語るなど百年早い!
 家の名を出した以上こちらにも逃げ道は無い事ぐらい察しなさい!」
当人にそのつもりがあっても、実際動かせるヴァリエールの軍がどれほどなのか、そこが判断の鍵だ。
しかし、いずれの場合においても現状でヴァリエール家を敵に回すのは得策ではない。
一度エレオノールの覚悟が見えぬフリをし、拒否して様子を見てみようとした所、この女速攻で攻め上る覚悟を決めてきた。
公爵位を持つ一族の長女がやる事ではない。
「我が一族の者を危機に陥れんとする者は、例え王家であろうと許しはしません!」
だったらあんな危険物を表に出すなと。
マザリーニの話では、ラ・ヴァリエール公爵も同じ事を言ってきたらしい。
一族揃って発狂してるとしか思えん。
ここまで言い切るからには、ワルドがその情報を握っていると確信あっての事だろう。
古くからある公爵家だ、何処かしらからか情報を入手する術を持っていても不思議ではない。
さしものワルドにも、狂人を説得する術は無い。
「……アルビオン王都ロンディニウムに向かいました」
ここで折れねば、出陣しすっからかんになった王都にヴァリエールの軍勢が押し寄せてくるなんて事になりかねない。
「わかりました。子爵の協力に感謝します」
「エレオノール様、この後どうされるおつもりかお聞きしてよろしいでしょうか」
「貴方が知る必要はありません。それと私の邪魔をせぬというのであれば、王軍出陣の件、父に良きよう取り計らっておきます」
狂った狸であった。妹も妹だが姉も姉でタチが悪い事この上無い。
ヴァリエール公爵が王家の味方についてくれれば、他の諸侯への事後承諾も遙かに楽な作業となろう。
ラ・ヴァリエール公はモット伯との対決中なので、下手な動きは見せぬだろうが、この親父も平然と軍を動かして来た辺りもうどうなっているんだと。
この程度の情報と一人が好きに動ける程度の事で、ヴァリエール家が味方してくれるなら安いものだが、どうにも不安が残る。
微妙な今の時期に、こんな狂人を二人も野放しにしていいものか。
ワルドは、今更ながらに神ならぬ我が身の不足を痛感した。

「エレオノールさん!」
捜査部の建物から出てきたエレオノールに、グラモン家三男、鉄壁スマイリーことミスタ・グラモンが駆け寄る。
「ルイズはアルビオン王都ロンディニウムに向かったとの事です。すぐに追いますよ」
「……やはりアルビオンですか。方角がそうでしたのでまさかとは思ったのですが……」
何故かつき合わされているミスタ・グラモンは、厩舎に向かおうとするエレオノールの手を取って止める。
「飛竜に乗ってという事でしたら、既にラ・ロシェールに着いている頃です。間に合いません」
「間に合わないで済みますか! 何としてでも連れ戻さねばならないのですよ!?」
566ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:23:31 ID:Z/JL7QGZ
僅かに考え込んだ後、ミスタ・グラモンは一つの案を提示する。
「父に相談しましょう。一緒に来ていただけますか」
「グラモン元帥に? そんな事をしている暇など……」
険のある表情のエレオノールに、ミスタ・グラモンはぴしゃっと言い放つ。
「ただアルビオンに行きさえすればいい訳ではないでしょう。ロンディニウムに乗り込むというのであれば、それなりの手段が必要です」

老齢のグラモン元帥は、無言のまま三番目の息子の言葉を聞いている。
かつてこれほどまでに息子が、熱意を持って何かをせんとした事があっただろうか。
今までやる気が無かった、そういう話ではない。
より大きな情熱に突き動かされ、息子は熱弁を奮った。
一緒についてきているエレオノールも呆気に取られている。
こんな彼の姿など見た事もないのだから。
そして遂に彼の熱意が通じたのか、グラモン元帥は首を縦に振った。
歓喜に飛びあがるかと思いきや、礼の言葉もそこそこにエレオノールを連れ部屋を飛び出して行くミスタ・グラモン。
それを見守った父は、執事を呼び外出する旨を伝える。
息子がうまく功を挙げたとて、その後の援護無しでは生きて戻る事も出来まい。
「それには王軍を動かすしか無いか……ワルドめの策がこんな所にまで効いてきよるわ」



ルイズは散々文句を並べ立てるも、ワルドからのお声がかりでこうしてルイズの護衛に付くという話を無視する事も出来ず。
「ふん、何処まで話が漏れてるんだか」
「馬鹿が。少なくともマザリーニ卿やワルド様はご存知だ。このお二方の目を欺けるはずが無かろう」
「はいはい、勝手にしなさい。途中でアンタがのたれ死んでも私は知らんぷりするからよろしくね」
「こちらは任務で来ている。貴様のような未熟者でも面倒見てやるからありがたく思え」
仲は最悪のままだが。
タバサが話を纏めて来たおかげで、アニエスを加えた一行は夜半過ぎに出航する貨物船に何とか乗り込む事が出来た。
船に乗り込む際、タバサはアニエスにだけ聞こえるように呟く。
「このメンバー、一度事が起こったら冷静に動けるのは私と貴女だけ。
 サンも普段は大人しいけど、火が付くとルイズより暴れる。注意して」
「キュルケもか? 彼女も充分冷静だと思うが……」
「モット伯を尖塔に吊るそうと言い出したのは彼女。
 魔法の火力が高すぎるから濫用出来ないだけで、沸点の低さと無茶な発想はルイズと同レベル」
「気をつけよう……しかし、下手に魔法やら腕っ節がある分、そこらのヤクザよりタチが悪いな」
「だから苦労している。軍人である貴女が加わってくれるのは正直ありがたい、期待している」
「了解した」
とても失礼な話し合いにより、新規参入メンバーアニエスとの最低限のコンビネーションは確保された模様。
船員達は女性ばかりの乗員とあって少々期待する部分もあったのだが、乗り込んで来た面々の眼光の鋭さに恐れをなし、声をかける者も居ない。
しばらくの間は平穏無事な船旅を楽しめたのだが、事件は皆が寝静まった頃に起きた。

「空賊だーーーーーー!!」
そんな怒鳴り声に叩き起こされた一行は、即座に甲板に飛び出す。
船員に状況を説明させる(腕を捻り上げ無理矢理話させたとも言う)と、どうやら賊の船が接近している模様。
ただの輸送船には大砲も積んでおらず、相手側からの一斉射であっさりと船長達は抵抗を諦める。
その腰抜けっぷりに、ルイズが激怒する。
「下賎な空賊風情に、何でこの私が降伏しなきゃならないのよ!?」
船長をどやしつけるルイズに、アニエスは嘆息しつつタバサに漏らす。
「……さっきの言葉に、無駄なプライドを付け加えておいてくれ」
「反撃のチャンスはある。捕まったら終わりだし、手は打つべき」
「確かにな」
ルイズが素晴らしいアイディアがあると言って、自分の荷物を引っ張り出して船長に指示を下す。
指示の内容を聞いていたタバサもアニエスもほっそい目でそれを聞いている。
567ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:24:19 ID:Z/JL7QGZ
「あの馬鹿あれで本当に突破出来るつもりか?」
「一応可能性はある。それと、一つ言い忘れてた」
「何だ?」
「アレと付き合う以上、事ある毎にため息が出てしまうのはもう諦めるしかない」
「……らしいわね」
ルイズ発案の迎撃作戦はこうして発動された。



輸送船に雄々しくはためくはヴァリエールの家紋。
ルイズは輸送船の旗を、何処から持って来たのかヴァリエール家の旗に変えさせていた。
通常こうした旗が使用出来るのは、当然それが許された者のみ。
ルイズはこの船にヴァリエールの人間が乗っていると誇示する事で、ケンカを売れるものなら売ってみろと言っているわけである。
当然のごとく文句を言ってきた船長達は腕づくで黙らせ、現在は下の船室で大人しくさせている。
しかし、空賊達はそもそも暗闇の中で旗が見えなかったか、はたまたヴァリエールの紋を知らなかったか、
隣接すると、ロープを引っ掛け次々輸送船に乗り込んでくる。
手に手に武器を持った彼等が最初に見つけた人間は、甲板から中に通じる正面扉の前に集まった五人の女達であった。
かがり火に照らされた彼女達は、殺到する空賊達に怯える風もなく、武器すら抜かず悠然と待ち構えている。
その中央に、でーんと置かれた豪勢な椅子があり、ふんぞり返って座るは、
我等がルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人であった。
ぼそぼそっとキュルケはタバサに問う。
「ねえ、あの椅子何処から持ってきたのよ」
「船長の私室にあったの運ばせてた」
アニエスは眩暈がしそうなのを懸命に堪える。
「……意味があるのかそれ」
タバサは、もう動じる事すらなく淡々と告げる。
「こういうのはハッタリが大事、だって」
「馬鹿丸出しなだけじゃないのか、どう考えても……」
一定の距離を置いて周囲を取り囲む空賊に、ルイズは足を組んで座ったまま言い放つ。
「で、何処の山猿かしら? 旗が見えた上で乗り込んだ以上、覚悟は出来てるのよね?」
中年の男が前に出てくる。
「生憎そんなハッタリで引っ込んでるようじゃ空賊は務まらんのでね、お前達こそ大丈夫か?
 何処で手に入れたか知らんが、それはトリステインの大貴族の旗だぞ」
爵位の詐称は大罪である。例え緊急時であろうと許される行為ではない。
「三女のルイズ・フランソワーズよ。貴方は……ふん、軍人崩れって所かしら。賊をやるには品が良すぎよ」
素性が一目でバレた事に、中年男は少し驚いたようだ。
「それが解っているのなら、逆らっても無駄だと理解してもらえるかな。杖を捨て道を空けろ、二度は言わんぞ」
椅子に深く腰掛けたまま、ルイズは俯き、含むように笑う。
「クックックックック……サン、身の程を教えてあげなさい」
兵達が緊張に身を固くするや、キュルケは床を踏み鳴らし一歩前に出る。

どんっと音がして、気が付いた時には終わっていた。

ルイズ達を包囲していた左側の十人、彼らが呻き声と共に倒れ臥していた。
その中心には、抜き身の剣を下げたサンが居る。
かっこつけて中年男を睨みつけるサンであったが、
『ルイズちゃん無茶振りしすぎじゃ! キュルケちゃんのフォロー無かったら危なかったて!』とか内心冷や冷やしてたのは秘密である。
まあ危ない橋を渡った効果はあったようで、残る男達は目に見えて動揺している。
底意地の悪いにやにや笑いを隠そうともせず、ルイズは中年男を見据えている。
「無駄? そうね、極めつけの無駄よ。だからせめて私を楽しませるぐらいはしてちょうだい」
尊大極まる態度、信じられぬ手練の存在が、船に掲げた旗の真実味を増す。
中年男は、彼我の状況を考え判断を下す。
「……わかった、我々はこのまま引き上げよう。それがお互いの為だろう」
568ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:25:06 ID:Z/JL7QGZ
軍人であるはずの十人の兵を一瞬で、しかも誰一人殺す事すらせず黙らせたサン。
これでは残る三人もどれ程の腕を持つかわかったものではない。
ただの賊ではない中年男達は、無意味に戦力を浪費している余裕なぞないのだ。
引き上げの合図を出そうとする中年男に、待ったをかけたのはサンであった。
「おうおうおうおう! 何調子の良い事ぬかしてんじゃ! ヴァリエールの旗に唾吐いといて落とし前も付けず済む思うてんのか!」
ぎょっとした顔になるタバサとアニエスであったが、ルイズは何故かうんうんと頷いている。
キュルケは楽しそうににやにや笑っているだけだ。
「アンタ等もカタギじゃない極道言うんじゃったら筋目はきっちり付けんかい!」
ハルケギニアで燦の極道論理が通用するはずもないのだが、それを平然と強要する辺り、無茶振りは主人似らしい。
表情が引きつっている中年男、小娘が調子に乗ってんじゃねえぞ的な気配がふんぷんと漂う甲板で、兵達を掻き分け一人の青年が前へと進み出て来た。
「では私が頭を下げれば、許してもらえるだろうか」
美々しい青年がそう言うと、兵達は口々に止めに入る。
そんな真似をさせるぐらいならこいつら皆殺しにしてやります、などと皆が言うのを青年は厳しい表情で怒鳴りつける。
「我等が目的を忘れるな! お前達の死に場所はこんな所ではないはずだ!」
無念の表情で青年を見やる中年男の隣を通り過ぎ、ルイズの前に立つ青年。
偉そうに座っていたルイズは、立ち上がって姿勢を正す。
「一つ答えなさい。貴方はどちらの軍から崩れたの?」
「…………」
「部下を正す態度、部下に任せず自らが前に出て恥を受け入れる度量、いずれ名のある貴族とお見受けしましたが?」
「答える事は出来ない」
「ならばそのままで構いません。私はこれよりロンディニウムに乗り込み、ウェールズ殿下にお会いします。言伝があれば聞きますが」
ルイズはこの青年を王党派の貴族と断じていた。立派な態度を取れる勝っている軍が空賊をやる理由は無いのだから。
兵達の間にどよめきが走り、青年の表情に深い険が刻まれる。
「……トリステインの貴族が何故?」
「それを貴方が知る必要は無い」
青年は改めてルイズを見直す。すると、急にその表情が驚愕に歪む。
「そ、その指輪は!?」
ルイズの視線が鋭くなる。
指輪をはめた手を、青年に見えやすい位置にまで持ち上げる。
「この指輪が何なのかわかるというのですか?」
「水のルビー……まさか……本当に……」
青年は自らも身につけていた指輪をかざす。
すると、二つの指輪の間で輝きが行き交い、青白く周囲を照らし出す。
「おおっ、これぞ正しく水のルビー……もしや貴女は、アンリエッタ女王の使いの者では?」
アニエスの殺気が突如膨れ上がる。青年はそれに気付きながら動じず語る。
「非礼を詫びます、私の名はウェールズ・テューダー。アルビオンの皇太子です」
馬鹿な、と一笑に付すような内容でありながら、ルイズは深く頷いた。
アンリエッタ女王から皇太子の持つ風のルビーとの効果を聞いていた事が幸いした。
即座に跪くルイズ。
「そうとは知らず大変なご無礼を。本来ならば到底許される事ではありませんが、
 どうぞ我が主よりの言葉をお伝えするまでの猶予をお与え下さい」
「お顔を上げられよ。お互い事情あっての事、双方に死者が出る前で本当に良かった。
 これより我が船にて王都までお送りさせていただきます」
状況に全くついていけてない燦は、とことことキュルケ達の側に歩み寄って小声で訊ねる。
「なあなあ、どういう話なん?」
それにはタバサが、やはり動じた様子もなく答えてくれた。
「……ルイズは悪運が強すぎるって話」
「はぁ、んじゃもうケンカせんでええん?」
「絶対やっちゃダメ。失礼な態度も取っちゃダメ」
「ん、よーわからんけどタバサちゃんがそう言うんならそーする」
キュルケとアニエスは、半ば呆然としながらこれを見ていた。
「ねえアニエス、ルイズって何かすんごい守護霊とか憑いてるんじゃない?」
569ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:25:53 ID:Z/JL7QGZ
「……こんなデタラメが通っていいのか。神よ、貴方が公平という言葉を知るのなら、どうぞそこのピンク頭に裁きの雷を降らせたまえ」

空賊達は五人の女のクソ度胸が気に入り、客人として迎える事にした。
そう空賊から聞かされた輸送船の船長は、はあ、と答えるより他無い。
結局積荷全部奪われてしまうのは一緒であるし、正直あの無法女五人が何処でのたれ死のうと知った事ではなかったからだ。
彼に出来る事は、奪われた物資の補填が貴族派から少しでも出てくれるよう祈るだけだ。

ルイズとウェールズの二人は船長室で二人っきりの密談中。
その間に残った四人は、アルビオンの状況を船員達から聞いていた。
王族はジェームズ1世とウェールズ皇太子を残し全て死に絶えた事。
王党派の兵はもう残す所三百人程しかおらず、王都ロンディニウムは五万の大軍に包囲されている事。
それでも秘密の抜け道を使い、船は外に出る事が出来る事。
キュルケが、ならば全員逃げられるのでは、と聞くと、残った面々は逃げる気など無く、女子供を逃がした後、王都を枕に討ち死にするつもりであると。
何と声をかけたものか言葉も無い一行に、しかし船員達は陽気に笑う。
良く来てくれた、おそらく最後の客人になるだろう貴女達を心から歓迎すると。



捜査部を出てから、全てが整うまでに半日もかからなかった。
軍を知らぬエレオノールには、口を挟む事すら出来ぬ。
ミスタ・グラモンは鬼気迫る勢いで指示を出し続け、遂に出航の時を迎える。
「後はお任せ下さい。私が必ずやルイズ様をお連れしますから」
多分ダメだろうなあとか思いながらそんな事を言ってみたが、やっぱりダメだった。
猛烈な勢いで言い返され、渋々エレオノールも乗せる事になる。
高速揚陸艦、グラモン家が個人所有する艦船で、数は少ないが大砲も備えたこの船をミスタ・グラモンは父より借り受けたのだ。
乗組員は40名、空海軍所属経験のある命知らずばかりを、ミスタ・グラモンは自らの持つツテのみを頼りに集めていた。
「何せ急に集まってもらったメンバーですから、少々品性に欠けるのはご容赦いただきたく」
むさ苦しいの極みのような面々が船に乗り込むのを、苦々しい顔で見やるエレオノールに、ミスタ・グラモンは苦笑しながらそう断る。
出港準備を整えながら、下品に笑う彼らの声が聞こえてくる。
「よーう、おめえカミさんを間男ごと叩き斬ってブタ箱行ってたんじゃねえのかよ」
「恩赦だ恩赦。てめえこそ上官ぶん殴って空軍クビになって以来じゃねえか」
「……ボクのミクちゃんがあんな男に……ミクちゃんはあの男に騙されてるんだ。ちょっと顔が良くて背が高いからって……モテ男なんてみんな死ねばいいのに……」
「今宵のコテツブレードは血に餓えておる……」
ドン引きするエレオノールに、艦長ミスタ・グラモンは訳知り顔で語った。
「だから言ったでしょう。軍の話など、エレオノールさんのようなお美しい方に話すような内容ではないんですよ」
「にしたって限度ってあるでしょう」
「はははっ、まあそうおっしゃらず。全員腕は確かですから」
艦橋にてそんな話をしつつ、艦長たる威厳を持って宣言する。
「これより我が艦はアルビオン王都ロンディニウムに向かう! 目的はヴァリエール家三女ルイズ・フランソワーズの保護! 出航せよ!」
三度の飯より戦好き、そんな連中に相応しい威勢の良い返事と共に、高速揚陸艦はトリスタニアを飛び立って行った。

「せ、狭いっ!」
高速揚陸艦の酒樽の中で、もごもごと蠢く人影がある。
既に出航しているのは揺れに揺れる樽の中に居てもわかったので、蓋を開いて顔を出す。
「見てろよルイズ、キュルケ、タバサ。僕だってやる時はやるんだ……ここで男を見せてやるっ!」
ギーシュ・ド・グラモンは決意に拳を握り締めつつ、とりあえず兄への勝手に乗り込んでしまった言い訳はどうしたものかと小首を傾げるのであった。



軍敷地内の広場に、トリステインが誇る精鋭達が集う。
千人の兵は皆トリステインの職業軍人であり、常日頃から訓練を重ねてきた彼等は、規律正しく整然と並んでいる。
570ゼロの花嫁19話 代理の代理:2009/05/20(水) 00:26:50 ID:Z/JL7QGZ
演台に上がったワルドが声を上げる。
「聞け! 忠勇無双トリステインの有志達よ! 我等は本隊に先駆けアルビオンへと向かう!
 同胞の危機を捨ておけぬ女王陛下のお心を無にするな! 王家を不要などとぬかす不貞の輩を我等忠義の徒は決して許さぬ!
 野盗同然に国を盗まんとする奴等に我等が鉄槌を! 今こそトリステインの力をハルケギニア全土に知らしめる時!」
トリステイン万歳の言葉に、千人分の歓声が応える。
割れんばかりの大絶叫は、出撃の号令と共にぴたりと止まり、各員が割り当てられた船へと駆け出す。
その移動の様を壇上から見たワルドは、彼等ならば例え万の兵が相手であろうと恐るるに足らずと結論付ける。
見よ、誰もが秩序を乱す事無く効率良く乗船していく様を、寄せ集めの兵など歯牙にもかけぬ整然とした行進を。
後は指揮官が彼等を正しく導く事が出来るかどうかだ。
演台を降り、旗艦に乗り込むワルドは、高鳴る鼓動と震えの来る足を悟られぬよう雄々しく胸を張る。

『恐れるな! 私はいつもそうして来たように、唯一重に自分の力を信じるのみだ!』



以上です。またも期間が大きく開いてしまい申し訳ありません
最終回まで後ちょっと、これより先は一気にいきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いします

以上で代理終了です。作者さんと先の代理人さんお疲れ様でした。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:31:45 ID:UXDdl3U3
作者氏、代理の代理氏乙でした
>>558-560はちょいと容量大きかったので半端な位置で切っちゃって申し訳ない
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 00:39:40 ID:EUgHm2xj
花嫁さんキタ!待ってました!
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 01:17:33 ID:k01YzCwk
雑談に勤しんでても1000いかないなんてしょっちゅうなんだぜい。
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 03:14:17 ID:NdoLF2Rl
でもスレ違いの雑談は勘弁な!
召喚とかに関係なく好きなキャラ語るだけとか、
1つのジャンルについて延々と連想するとかな!
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 04:58:23 ID:DLyUKI6W
>>409
> 即座に思い浮かぶのはルシオラしかいないw

ルシオラと言われるとラスエグ思い出す俺参上
インメルマンターン!
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 06:59:50 ID:k01YzCwk
>>516
卵王子はそっとしといてやれ・・・
いなくなると、あいつの世界滅んじまうし、ラストで生まれ変わってようやく幸せになったんだから。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:08:58 ID:a94XHFXs
東方の風見幽香を召喚した話はまだなかったよな?
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:30:49 ID:gpwSacOn
>>577
まとめにあった
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:31:39 ID:dbOtx1Ts
>>577
2年くらい前にあった気がする
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:33:23 ID:a94XHFXs
>>578-579
ありがとう
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:33:30 ID:xMIeyA16
>>576
そっとしといてやれ
どうせ書く気なんて微塵もないんだから
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:36:06 ID:0sYNd7tV
花嫁の人乙です〜。
完結までいきそうですね。無法少女達wの大あばれ楽しみにしてます。
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 09:55:50 ID:PfwYKnr0
このワルドとマザリーニには同情せざるをえない
というかヴァリエール一家は少し自重しろw
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 10:24:15 ID:dbOtx1Ts
そもそもワルドもエレ姉も間に合うとは思えん
最後まで振り回されておしまいだな
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 12:18:02 ID:l4Icb46J
>>577
更新停止しちゃってるから新しく書いてくれるなら大歓迎
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 12:29:05 ID:MuMET9Rf
一方通行って召喚できるんだろうか
激しく疑問
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 12:41:23 ID:N5qcwAG5
>>585
召喚扉にベクトルがあるかどうか
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 12:46:12 ID:WLtfOA6S
そもそもあからさまに怪しい銀色の平面に触るかどうか…は、まあ『打ち止め』いれば巻き込めるか
ゲートが引きずり込もうとしてきたら反射で抜け出せそうな気もするけど。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 12:50:03 ID:N5qcwAG5
実は銀色平面はスカラーです
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 13:35:25 ID:dbOtx1Ts
「あなた疲れてるのよ」
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 13:41:14 ID:zA9zUxjC
それスカラー違う
モルダーだ!
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 13:42:00 ID:WLtfOA6S
須狩さんと茂流田さんですねわかります
ゴーレム作ったりガルーダ作ったり
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 13:48:54 ID:SBFPgdNu
まめちしきー
モルダーは極度のセックス依存症で
スカリーは宮崎駿のアニメが好きだそうだ
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 13:49:03 ID:8py3SGd5
> ガルーダ
ジェットマンしか出てこんな。イカロス!ガルーダ!
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 14:04:24 ID:Efjdmj0q
わたしはもうその二人の名前からは忍んでない忍者と売れなかったアイドルしか思い出せない

よってクリスチーネ幸田召喚
いや別にホーエンツォエルン楓でもノイシュヴァンシュタイン桜子でもいいけど
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 14:39:21 ID:N8SnvBs+
ガルーダというと記憶回路に異常、失敗、廃棄された……
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 15:20:37 ID:X1zWE8Hi
≪いくぞ! ガルーダ1!≫
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 15:33:52 ID:ki3rPZRd
可愛い可愛い男の娘を召還ですね
青銅が口説いた後に、深刻なアイデンテティの危機に直面するとか
学院女生徒たちが、自分より可愛い少年に沈黙するとか
ルイズが可愛い少年人造魔女に、ますます劣等感をつのらせるとか
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 15:35:34 ID:/RKSWC5J
>>596
市川さん……

あれだ。市川さんで思い出した。
ジェッターと流星号呼ぼう。マッハ15のスピードで全部解決だぜ。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 15:45:43 ID:txPQ423D
この流れはラルのおっさんすら越える最強のグフ乗りを・・と思ったが、ノリスは既に召喚されてたな。
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 15:53:27 ID:cXU6f/N6
>>594
ジェントルマン?
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 16:32:46 ID:b45ZuhY+
>>601

お嬢様?
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 16:34:41 ID:b45ZuhY+
>>600

ハイネとイザーク…
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 17:36:22 ID:uLNJs2+w
タートルズってちょうど4人で使い魔にぴったりじゃないか
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:14:49 ID:7H1EMsVs
>>599
何故か盲目の代打ちが頭に浮かんだ
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:33:56 ID:G7Owblih
>>603
ハイネともかくイザークがラルのおっさんを超えるグフ乗りとな
あっはっは、面白いジョークだ

>>599
虚無の使い手が市川プリンスズを召喚
ルイズ:ガルーダ
ジョゼフ:クロッペン
教皇:シャーキン
テファ:ハイネル
いかん、死後の話としても半分は制御不能や
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:39:20 ID:eKT53JJf
>>605
ギーシュ相手に「華やかな事が好きな君に、儂は倒せんぞ」とか言っちゃう感じですね!
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:41:38 ID:PfwYKnr0
テファがハイネル召喚は面白そうだ
二人とも似たような境遇の持ち主だし
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:49:09 ID:/4Zm+sBq
アルビオン軍7万VSガイキング・ザ・グレートなる電波が飛んで来たんだが
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:55:10 ID:2eBwjQ/3
>アルビオン軍7万VSガイキング・ザ・グレートなる電波が飛んで来たんだが

アルビオン持ち上げかねないチートロボじゃ、ただの虐殺だろ常考。
良くて終盤のガリアのヨルムンガルド軍団に通常ガイキングが多勢に無勢でピンチ。
大空魔竜が助けに来て、ライ、バル援護で持ち直して。
そこでプロイストが制作した超魔竜登場で、グレート登場。

こうすれば読者も納得だよ!
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 18:55:56 ID:Lz8boO3x
アカギか……ゼロ魔キャラ全員
福本絵で想像できるのは、以前のカイジの影響だろうか
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:01:18 ID:PfwYKnr0
福本漫画って女性陣が博打に参加するシーン殆ど無いけど
アカギなら女にでも指一本賭けろとか言うんだろうか?
ルイズに賭けに勝ったら俺が使い魔になるが、負けたら指一本とか
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:03:44 ID:UY4X8ICt
ヤマト召喚
大気圏で波動砲撃ったらどうなるんだ・・・
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:12:59 ID:/4Zm+sBq
>>610
なるほど、それなら確かに読者も納得できそうだ。
ジョゼフがダリウス召喚してればそのままガイキングVSダリウスにもなるし。

>アルビオン持ち上げかねない
クロムウェルが最終手段としてアルビオン落としを決行し、それをガイキング・ザ・グレートが持ち上げるのを幻視した。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:18:42 ID:Mq/zCHud
ドラクエ6からハッサンを召喚
ギーシュ戦でワルキューレをせいけんづきで粉砕
ゴーレム戦ではちからため+もろはぎりで撃破
対アルビオン軍ではベホマとまわしげりやさみだれけんで滅多打ち
でも強すぎるとダメだな…
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:20:38 ID:N5qcwAG5
>>613
波動砲は場所によって使い分けが効くから普通に運用できる
どこで撃っても欠点はかわらんみたいだけど
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:25:35 ID:eY2AyVba
昨日のアニメを見てブリーチのわんこ隊長召還を考えてみたが、
チートすぎて駄目だな
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:27:07 ID:CglXV5+i
スピラからシンを召還したらハルケギニアではどうにもならんかな。
案外虚無の力で消滅できそうだが
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:35:25 ID:CMZFF19P
>>615
漫画版ドラクエYから呼んでみたらどうだろう

あの漫画は破壊表現が派手だがw
イオナズンは使えば地平線が消し飛ぶとか担当の想像力にくそわろた
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 19:50:13 ID:7l8l10YY
>>616
12月公開予定のヤマト復活編では6連波動砲になるそうだ。
ガミラスの海の中で撃っても大丈夫だったから大気圏内で撃っても大丈夫だろう。
もっとも、粉々とはいかんだろうから破片がトリステインに降り注ぐか、海に落ちた破片で大津波が起きるだろうが。

ちなみに、惑星に向けて撃ったこともあるが、第11番惑星やバーナード星は壊れてない。

ヤマトが召喚されたら相当な制限を加えないと、全イベント楽勝クリアになってしまうな。
ならいっそ白色彗星に飲まれて全滅したアンドロメダ以下の地球艦隊とか、ボラー連邦に沈められたヨーロッパの戦艦プリンス・オブ・ウェールズを召喚とか…
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:02:12 ID:GpzWKCNY
>>620
まあなんだ。波動カートリッジ弾というのがあってだな……(ry
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:08:37 ID:Du1LantT
>>606
リヒテル兄さんが居ないとはかんしゃく起こる。
クロッペンがおkならワルキメデスも捨て難い。
「覚えておれジャネラ〜!!」とかな。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:13:59 ID:WLtfOA6S
>>606
そこで超電磁大戦ビクトリーファイブからの召喚ですよ
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:21:21 ID:7l8l10YY
>>621
で、それを撃つ大砲をハルケギニアのどこから持ってくるんだ?
カートリッジ弾はヤマトしか持ってないから、口径46センチの大砲が必要になるぞ。
台車で運べるくらいだからフライで浮かせて投げつければいいかもしれんが、距離を考えないと宇宙要塞を数発で粉砕する威力を自分も喰らうことになる。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:24:01 ID:2kQaJXue
ガイキングと聞いて
大空寺真龍(まりゅう)が召喚される姿を幻視した。
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:32:29 ID:IJd1F2V5
真マジンガーからあしゅら男爵召喚

しかし使い魔のルーンがついたのは左側……!
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:43:08 ID:G7Owblih
>>622
リヒテルは提督だから・・・まぁクロッペンも明確にプリンス言われてなかった気もするけどさ

ワルキメデスはすっかり忘れてたわい!!
そう、言われてみれば彼も市川だった・・・こうして考えてみると他にもなんか居たような・・・
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:46:19 ID:8py3SGd5
>>626
あいつ身一つで魔人に殴りかかる豪傑だし、地獄に完璧な忠誠を誓ってるから場合によっては自殺するかもシレン
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:54:02 ID:iDX+FEy4
>>620
新たなる旅立ち以降はスーパーチャージャーのおかげで波動砲の連発or連続ワープが可能なんだぜ
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:56:30 ID:G7Owblih
じゃあ優勢と見るやヘルを裏切るピグマン子爵(初代)
ルイズもあっさり裏切られるんだろうな・・・
もしくはブロッケン伯爵の首だけ・・・うん、完璧に無意味ですね

あ、いや、ミノタウロスとかアリだし代わりの身体が都合できなくも無いか?
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 20:57:52 ID:N5qcwAG5
ハルケで使うには初期型ヤマトの方がドラマになるよな
あとのは欠点がつぶれていって無双度が酷すぎ
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:18:45 ID:WaHUCiAE
市川ボイスキャラといえば仮面の忍者・・・じゃなくてマスク・ザ・レッドを忘れてはいかん。

土のスクエア扱いされるんだろうなぁ。きっとw
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:20:25 ID:h7YQ8DGK
>>617
死神は幽霊が見える人にしか見えないぞw
わんこ隊長の場合本体そっくりの義骸なんて持ってるかも微妙だ
現世で人間のふりする必要がある場合は普通のおっさん顔した体に入るんじゃなかろうかと推測してるが
そんなのわんこ隊長じゃないやい
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:26:30 ID:b45ZuhY+
>>633

ハルケギニアでミノタウロスを調達…と思ったがわんこ隊長じゃなくなるしなw
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:29:06 ID:iDX+FEy4
つ 新型義骸「ドゥギー=ハウザー」
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:29:48 ID:eY2AyVba
>>633
ゲート通ったら普通に見えるようになりました。という手があるぞ

そういえばわんこ隊長はルイズ的にはコボルトシャーマンを召還したとなるのだろうか
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:31:05 ID:2lW/CKR6
>新たなる旅立ち以降はスーパーチャージャーのおかげで波動砲の連発or連続ワープが可能なんだぜ
スーパーチャージャーの搭載は「永遠に」からだ
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:32:39 ID:AmlZ8cT/
ブリーチだったらネルを呼んだら面白そう。
ノーマル=幼女、武器持ち=ガンダールブ+成人化、みたいな。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:39:15 ID:VDoL0i9n
ちと亀だが見た目と実年齢が合わないキャラ召喚でウィザーズブレイン勢

先天性組って確か一人除いてヒロインが全員年齢一桁だった気がする・・・
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:42:44 ID:/4Zm+sBq
ジーグ「レコン・キスタというだけで十分だ!死ねぇ!」
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:45:44 ID:c0LfpjhZ
お前はジーグを何だと思ってる? 鉄屑か?
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:50:08 ID:PfwYKnr0
その前に、「人を勝手に召喚して使い魔にするというだけで十分だ!死ねぇ!」になりそうなw
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:50:50 ID:/4Zm+sBq
いや、ただ単に「死ねぇ!」のイメージが強いだけなんだが…気に障ったんなら謝る
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:53:35 ID:0XFzdNir
よくわかってないでネタにすんなよ
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:56:52 ID:PfwYKnr0
永井漫画のキャラはどうも血の気が多そうなイメージがある
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:56:59 ID:DOXkzz3E
>>643
OPテーマの歌詞に「ハニワ幻人全滅だ!」って入ってるんだっけか?
ゼロ魔なら「レコン・キスタ全滅だ!」になるんだろうなぁ
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 21:59:35 ID:8py3SGd5
アルビオンを「ジーグブリーカーだ!死ねぇ!」で一刀?両断に
そして東には卑弥呼と何とかという親玉が
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:01:16 ID:hOwEnFwg
>>636
どの道、すぐに向こうから迎えが来て、その時点でどんな状況であっても話が
終了確定なのが避けられん。
流石に隊長格がいきなり消えたら大騒ぎになるのは間違いないし。
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:01:47 ID:VUsAWt+5
流石にヒミカの関係者以外にそこまで殺意を向けないだろ

>>632
ジャイアントロボの連中は誰呼んでも卑怯すぎるな
ヒィッツカラルドは子ネタで召還されてたが
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:03:04 ID:PfwYKnr0
台詞の元ネタは漫画版の「ヒミカの子という理由だけでじゅうぶんだ!!」と赤ん坊ぶっ殺したシーン
(直接的じゃないけど)
このときは精神状態がかなり追い詰められてたらしいけど
まあマジンガーZもかなり漫画版ではえげつないシーンあったし
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:05:59 ID:H/l4ZHZy
外見年齢≠実年齢といえばTAP
外見年齢+109歳だったか
ティトォは126歳で
アクアが122歳で
プリセラが128歳か

虚無のパズルはタルブ編終わったところだけど
コルベールやシエスタ、タルブの人々が存在変換見てどんなリアクションしたか気になるぜ
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:20:08 ID:gmw96V6I
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:22:40 ID:ApTMertU
新手のロングパスが現れた
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:24:16 ID:PfwYKnr0
一体どこの誤爆だwww
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:28:52 ID:ys0GeHUc
鍵作品から召喚?

筋肉さんってどこまで行ったっけ?
リトバス終わらせるまでネタバレ回避するため読んでなかったんで
ちまちまログ漁り直している所なんだが。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:41:14 ID:gyaQLeUQ
>>651
パイ神様に全て持っていかれて「…それで?」と流されたに一票

マテパにおける辺境の村人達は図太い
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:45:50 ID:3sjs0BRQ
代理スレに2つ来てると言い残して風呂に入ろう
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:46:46 ID:ZM2ETU1a
>>652
いっしょにに石恵スレに帰ろう……
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:53:52 ID:5uDpoADd
『5000光年の虎』から虎を召喚
……………しても使い魔なんぞにならんな。
「俺の精神を支配できる者などいない!」
っつってルーンの効力を精神力で無効化しそうだ。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:54:49 ID:b59a7Hzr
んじゃ、代理するよ
大量なので準備するからまってて
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:56:09 ID:amzPAXx4
支援はしてやる。
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 22:56:48 ID:Z/JL7QGZ
支援するね。さるさんなったら代理の代理をするよ。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:03:07 ID:h7YQ8DGK
ヒロシねえ…親父に教えられるまで自分がサイボーグにされてるの気付かないような奴だから
異世界に召喚されてもやっぱり気付かずに「外国には魔法学校なんてあるのか」程度にしか思わないんじゃないかw
月が2つあるのを見て初めて騒ぎ出すみたいなw

と言いつつ支援
664ゼロの花嫁20話1/26:2009/05/20(水) 23:03:36 ID:b59a7Hzr
ゼロの花嫁20話「ロンディニウム攻防戦」



明るい話題からは数万メイル程かけ離れた場所であったアルビオン王都ロンディニウムのハヴィランド宮殿は、
信じられぬタイミングでの客人に湧き上がる。
現在の実質的指導者であるウェールズ皇太子が誇らしげに紹介すると、今は宴会場となっている謁見の間で、
ルイズ達一行はもみくちゃにされんばかりの勢いで歓迎された。
城の外は敵だらけと聞いていたルイズ達はあまりの陽気さに拍子抜けするも、
ウェールズがこの期に及んで夜襲をかけられる程ロンディニウムに兵は居ない、と言うと納得したのか一緒になって飲み始めた。
まだ夕暮れ時だというのに、誰も彼もエライ勢いで飲んでいる。
完全に巻き込まれたキュルケ、タバサ、燦をさておき、ルイズはこそこそと宴会場から抜け出す。
同じく気配すら消して宴会場から逃げ出してきたウェールズと、入り口を出てすぐの所でばったり出くわし、二人で苦笑する。
「参ったね、ここまでの騒ぎは予想外だったよ」
「まさか反乱軍も、城でこんなバカ騒ぎしてるとは夢にも思わないでしょうね」
そんな二人の側を給仕が両手一杯の皿を抱えて走り抜ける。
戦場に出られない者達は、兵達に英気を養ってもらおうとありったけで彼等をもてなしているのだ。
額に汗してお盆を運ぶ女性を微笑で見送り、ルイズはウェールズに案内され彼の自室へと向かう。
ウェールズの部屋は王家のそれとはとても思えぬ程質素であったが、そんな印象を顔に出さぬ程度にはルイズも自制が効く。
そこで初めてルイズは、アンリエッタからの手紙をウェールズに渡した。
手紙に目を通すウェールズ。その表情を、ルイズは忘れられないと思った。
とても一言では言い表せぬ、それでいて、一点の曇りもなく美しいと断言出来る。
俗世から外れ天に召された気高き魂、現世の生き物では触れる事すら適わぬ超常の存在。
自らの身の穢れを思い出し、同じ空気を吸う事すら畏れ多いと思えてしまう。
そんな触れ得ぬ存在に見えたウェールズが、ふとこちらの生き物に戻る。
「……幸せにおなり」
誰にともなく呟いた後、隠してあった手紙の束を取り出しルイズに渡す。
「事情はわかった。君にはこれをお願いするから、どうかよろしく頼む」
ルイズは深々と頭を下げる。
「確かに、承りました」
ルイズが部屋を辞しても、ウェールズは部屋に残ったままであった。

ルイズにもウェールズとアンリエッタがどのような関係であったのか、推察する事は出来た。
対反乱軍との戦争が絶望的である事も理解している。
それでも、と思ってしまうのは、まだルイズが年若いせいであろうか。
敵陣を確認しようと、宴会場ではなく城壁そばまで向かう。
女子供はそのほとんどが宴会の準備に取り掛かり、男手もまた宴会を楽しんでいるため、
城壁そばには僅かに見張りが数人残るのみ。
今まで激戦の最中を生き残ってきたのだろう、ならば最後ぐらいは充分に楽しんでもらいたい。
そう思ったルイズは見張りを代わろうと内の一人に声をかけた。
「代わるわよ、中で楽しんでらっしゃい」
「いえ、お構いなく……」
二人共、ぴたりと全ての挙動が停止する。
ルイズは失礼だのなんだのを全て忘れ、見張りが目深に被っていたフードを跳ね上げる。
そこには、学院でさんざ見慣れたミス・ロングビルの姿があった。
大口開けたまま硬直するロングビル。
トリステインに居るはずのルイズが、何をどうしたらこんな場所で声をかけてくるのか、どうやったって理解出来るはずもない。
ルイズもルイズで予想外すぎたのか僅かに反応が遅れるも、ぎこちない引きつった顔で問いかける。
「……何してんのアンタ?」
気が動転してるのだろう。ロングビルは立場も忘れ、素直に答える。
665ゼロの花嫁20話2/26:2009/05/20(水) 23:03:56 ID:b59a7Hzr
「み、見張り」
「そう、頑張ってね」
「ええ」
言葉だけ聞くと普通の会話に聞こえるが、実際はルイズがロングビルの後ろ襟をひっつかんでずるずると引きずりながらである。
連れて行かれた先は地獄と良くわかっているが、素手で自身最強のゴーレムを粉砕するルイズを相手に、
ロングビルは恐怖に硬直する以外術が無かった。

城の一室、誰も入って来なさそうな倉庫の一つに入ると、ルイズはロングビルを部屋の奥へと放り投げる。
「で、今度は何企んでるのよ」
「たたたたた企むなんて人聞きの悪い。わ、私は母国の危機と聞いて馳せ参じただけで……」
「ふーん、私に寝言とは相変わらず良い度胸よね。
 両手足引き千切ってもまだ口はきけるでしょうから、その時改めてもう一度聞くわ」
ルイズがすらりと剣を抜くと、大慌てで反論するロングビル。
「むむむむ無理よそんなの! 死ぬってば絶対!」
「今は無理して話さなくてもいいわよ。聞くのは貴女から四肢が失われてからって言ったでしょ」
「ちょ、ちょっと待って! わかった! 言うからその剣引っ込めて!」
「だから別に話さなくても……」
「話させてちょうだい! お願いだから!」
剣をロングビルの肩口に当てた位置で静止させる。
「ふん、まあいいわ。言ってみなさい」
長年様々な人種を見てきたロングビルは、このバカは洒落でも脅しでもなく平気でこの手の拷問かましてくると、確信していた。
『例え王家の牢獄にぶちこまれても、今コイツとやりあうよりは生き残る可能性は高いわ……
 ああんっ! もうっ! 何がどうなってんのよ一体!』
ロングビルは正直に火事場泥棒で王家の宝を盗むつもりであったと白状する。
氷点下すぎるルイズの視線に、ロングビルは生きた心地がしない。
「……私も正直に言うわね。実は私、貴女に生きていられるととても面倒なのよ。
 だからこの場で斬り捨てたい所なんだけど、貴女のゴーレムはきっとアルビオンの戦力になるとも思うのよね」
タバサの母に身代わりの術を使っているので、
身代わり元であるロングビルが元気にそこらを飛びまわっていては迷惑この上ないのである。
「でね、とりあえず今貴女に頼みたい事は、ロングビルの名は二度と使って欲しくないって事かしら。
 後トリステインに足を踏み入れるような真似も絶対に許せないわねぇ」
「は、はいっ! しません! 名前は……えっと、とりあえずマチルダとでも……」
てんぱっているせいか、ついぽろっと本名を漏らしてしまうロングビル。
死をも恐れぬ彼女であるが、人外の化生相手では有り余る勇気も品切れを起こすらしい。
「ん。じゃあマチルダ、貴女に命じるわ。
 戦闘が始ったらウェールズ皇太子の側に張り付いて、何としてでもあの方を救い出しなさい」
ルイズは瞬速で剣を鞘に収め、代わりにゆっくりと手を伸ばし、ロングビルの頬に触れる。
「戦が終わって皇太子様がご無事であったなら、もう二度と私は貴女を敵とみなさないわ。出来るかしら?」

同じ人間とはとても思えない。圧倒的な自信と、それを裏付ける始祖すら凌駕するのではと思える実力。
子供じみた気配はなりを潜め、そばに居るだけで息苦しくなる程の威圧感が取って代わる。
この小娘の正体は実はエルフなのではなかろうか。そう言われても、まるで違和感を覚えない。
肌に触れられた時、電流が走ったかのように全身を怖気が貫く。
人の身では決して触れえぬ神秘、もしくは人の身のままでは決して触れえぬ魔性の類を思わせる。
ロングビルの人生はコレと関わった瞬間から、好むと好まざるとに関わらず、
決して逃れえぬ運命に飲み込まれてしまったのではとすら思えてしまう。

無言で何度も頷くロングビルに、ルイズは満足そうに部屋を後にする。
後に残されたロングビルはしばらく硬直したままであったが、不意に真後ろにころんと転がり、天井を見上げる。
「……本当にアレ学院に居たルイズなの? まるっきり別人じゃない……
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:04:04 ID:amzPAXx4
支援
667ゼロの花嫁20話3/26:2009/05/20(水) 23:04:17 ID:b59a7Hzr
 悪魔に魂でも売り渡したんじゃないでしょうね……」

まだ混乱したままの頭で、ふらふらと通路を歩くロングビル。
ふと我に返って、下腹部に濡れが無いのを確認してほっと息をつく。
まずは落ち着く事。そして次に奴がここに来た目的を探り……
そこまで考えた所で、曲がり角の先に居た人物と目が合ってしまった。
「…………」
「…………」
端麗な容姿と鋭い眼光、たゆまぬ訓練で引き締まった体をきびきびと操るは、
もう何年も会っていないようにも思える旧友、アニエス・ミランであった。
『なんじゃこりゃあああああああああああああ!』
思わず頭の中で絶叫してしまう。意味がわからないじゃなくて、何もかもがわからない。
『いや、待って。落ち着きなさい私。だってここアルビオンの城よ?
 危険が一杯というかもう死ぬしかないって連中しか居ないはずよね。
 そんな所にルイズやらアニエスやらが居るはずもないし、つまりこれは夢よ。
 もう最悪、こんな想像だにしないような悪夢勘弁してちょうだい。
 私はこれから山ほど修羅場を潜り抜けなきゃならないんだから、夢ならもっと優しげなのにして欲しいわ。
 ああもう、既に見ちゃった分は大目に見るから、さっさと覚めるなり次の夢に移るなりしてちょうだい。
 流石の私もリアクションなんて出来っこないじゃないコレ』
一瞬アニエスの瞳が揺れたが反応はそれだけで、アニエスはロングビルなど知らぬとばかりに、すたすたと隣をすり抜ける。
『おっし! やっぱりコレ夢! でもなきゃアニエスが私を無視するなんてありえないし!
 あっぶなぁ、もうこんなトンデモな夢見るなんて私もヤキが……』
「……武器倉庫で待つ」
通りすがりにぼそっと告げたアニエスの言葉が、全ては夢なんかではなかったと教えてくれた。

人気の全く無い武器倉庫。
逃げる事も出来ず、ロングビルは恐る恐る部屋の中に足を踏み入れる。
入るなり、アニエスは嬉しそうな顔でロングビルの両肩を掴んで来た。
「はははっ、久しぶりだなロングビル。まさかこんな所で会うとは思ってもみなかったぞ」
物凄い上機嫌である。ロングビルが学園で盗みを働いた事は既に知られているはずなのにこの反応は予想外だ。
「え、ええ……本当、思ってもみなかったわ、うん」
これだけは心底本音である。
アニエスは納得顔でうんうんと頷いている。
「そうだろう、そうだろう。よくよく考えてみればロングビルがオールドオスマンの愛人をやってるなどおかしいと思ったのだ。
 いや私も最初に聞いた時はまさかと思ったからな」
「へ?」
「オールドオスマン子飼いの密偵、なんだろう? いやいや皆まで言わなくていい。
 だが、私に出来る事があれば言ってくれ。私の任務を話す事は出来ないが、お前に協力するぐらいの余裕は作ってみせるぞ」
「へ? へ?」
つまり、アニエスはロングビルが盗みをやった事など知らず、オールドオスマンの愛人をやっているとしか聞いていないのだ。
それが何故かこんな危険な場所に居る。それもルイズがここに居る事と合わせて考えれば合点が行く。
ロングビルは愛人という名のオールドオスマン子飼いの密偵であるのだと。
愛人として家を与えてあれば、大抵の者は家に居ると思うであろうから。
アニエスは力強くロングビルの肩を叩く。
「お互い危険な任務だ。だが、私達二人が揃えば為し得ぬ事などありはしない。一緒に頑張ろう」
「あ、はい、うん。頑張ろう」
言いたいだけ言ってアニエスは部屋を出て行ってしまった。
668ゼロの花嫁20話4/26:2009/05/20(水) 23:05:11 ID:b59a7Hzr
後に残されたロングビルはぽかーんと口を開けたまま、何度も何度も頬をつねって、これは全て夢であれと神に祈るのであった。



宴会場で、突如燦の怒声が鳴り響く。
「なんなんそれ! そんなん卑怯じゃ!」
一緒になって話をしていた貴族が、やんわりと燦を嗜める。
「戦の常だ。最早それを追求する術も失われたし、かといってここに残った事に後悔も無い」
「何で! 何でそんな静かにしてられるん!? 裏切り者がおったんじゃろ! そんなん絶対許せんて!」
今まで如何に戦って来たかを聞いていた燦が、あまりに酷い裏切りの連続に激昂したのだ。
困った顔で燦を見つめる貴族に、燦は余りの悔しさに涙を溢す。
「ヒドイ……そんなヒドイ話無い……ずっと王様に仕えて来た仲間なのに……
 そんな筋の通らん外道が生き残って、何でみんなが死ななならんの……」
しんと静まり返った宴会場の中、老貴族が燦の肩をぽんと叩く。
「ありがとうなお嬢ちゃん。ワシらの為に、泣いてくれてるんじゃろ。
 でもな、ワシらはもう涙も枯れ果てたでな。後は胸を張って死ぬだけじゃて」
老貴族にすがりつく燦。
「でもっ! でもそんなんおかしい!」
「いいんじゃ。そんな薄汚い世界で、ここまで残った者達の誠意と勇気を称えてはくれんか」
ぐしぐしと顔をこする燦を、歩み寄って来たキュルケが抱きとめ、杯を上げる。
「誇り高き真の勇者達に」
一斉に歓声があがり、宴会場は元の喧騒を取り戻す。
キュルケに連れられ、宴会場の外れで水をもらっている燦を見ながら老貴族は呟く。
「ふむ、やはりあれは卑怯で許しがたい行為であったのだな。
 あまりに当然のごとく行われるもんで、てっきり普通にある事かと思っておったぞ」
燦と話をしていた貴族は苦笑する。
「いやはや、久しぶりに清々しい正論を聞けましたね。どうやら他所ではまだまだ正義が通用するようで、安堵いたしました」
にやっと笑う老貴族。
「であるな。ははっ、これならば我等の死に様も無駄にはならんじゃろうて」
「最後の晩にそう確信出来るとは、我等の運もまだまだ捨てたものではありませんな」
皆が皆、同じような想いを抱いていたのだろう。
場を乱した燦に対する戦士達の視線は、暗闇の中に一筋走る光明を見るように、優しき希望に満ちたものであった。



宴は夜更けまで続いたが、ルイズ達は一足早くあてがわれた部屋へと戻った。
贅沢な話であるが、ルイズ達には三部屋与えられ、ルイズと燦、キュルケとタバサ、そしてアニエスの三グループに分かれて休む。
総攻撃は恐らく翌日の昼前頃であろう。
降伏勧告の期限がそうであるから、そこは間違いあるまい。
女子供を逃がす為の船も既に準備済みで、ルイズ達はこれに乗って脱出する手はずになっていた。
ルイズと燦は、それぞれのベッドに横になりながら眠るまでの僅かの間に言葉を交わす。
「ねえルイズちゃん……私、戦争てどんなものなのか、ここに来るまであまりわかってなかった……」
「そうね……」
「ルイズちゃんは? 戦争がこんなヒドイ事だって知ってたん?」
それには答えず、ルイズは燦の側から顔が見えなくなるようにころんと寝転がる。
「……もう寝なさい。明日は忙しくなるわよ」
「うん」
素直に頷いた燦もまた、布団を頭から被って横になる。
ルイズは胸の中がざわめくせいで、とても眠れそうにない自身の体に言い聞かせるように呟いた。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:05:23 ID:Z/JL7QGZ
支援
670ゼロの花嫁20話5/26:2009/05/20(水) 23:05:35 ID:b59a7Hzr
「私だって素人同然なんだから、戦争がどんなものかなんて知る訳無いでしょ……」



地平線の彼方から、僅かに太陽が顔を出し始めた頃、城壁の上へと至る階段を昇る影があった。
見張りが見咎めると、彼女はにこやかに笑いながら答えた。
「私、下降りる」
「は?」
言うが早いか、城壁の上端に持ってきたロープをくくりつけ、外側にむかって垂らす。
「んじゃ、行ってくる」
「は、はあ」
ひらりと降りるかと思いきや、案外苦戦しながらえっちらおっちらと下まで降りていく。
実際城壁の高さは十メイルを優に越す。これをロープのみを頼りに降りるのは骨の折れる作業だろう。
何とか地面にまで辿り着くと、そこからは城下町が広がっている。
茶色の髪を靡かせた少女、瀬戸燦は多分こっちだろと適当に城前から続く大通りを外へと向かう。
城壁上が何やら騒々しくなっているが、燦は気にもかけずにすたすたと歩いていく。
不意に背負っていたデルフリンガーが声を上げる。
「ちょ、ちょっと待て。お前さんどうする気なんだよ」
「わからん」
「わからんて……いや、意味がわかんないのはこっちだって」
「戦争だとか、貴族がどうとか、私には全然わからん。だからわかる事だけやる」
デルフリンガーが次の言葉を発する前に、後ろから声が聞こえた。
「にしたって、限度ってあると思うけどね」
振り返った燦の目の前には、主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの姿があった。
そのまま二人は言葉も無く見つめ合う。
人気の無い大通り、彼方から降り注ぐ日の光はか細く二人を照らしている。
出会ったばかりの頃と比べると、一回りも二回りも大きく見える姿、
にも関わらずピンク色の透き通るような髪や白磁のような肌の美しさは損なわれていない。
陽光が控えめに染める容貌は、美の女神の寵愛を一身に受けている証。
こうして面と向かっているだけで可憐さのあまり吸い込まれてしまいそうになる。
しかし燦がルイズに惹かれるのはそんな外見の事ではない。
数多の苦難を前に、怯えず恐れず、決して折れる事の無い誇り高き精神。
その気高き生き方が燦を魅了してやまないのだ。
だから燦は、何一つ言葉にせずとも、ルイズに全てが伝わっていると信じた。
信頼の証は心の奥底から湧き上がる燦の微笑。
ルイズがその美々しい相貌を崩し、笑い返してきてくれたのがとても嬉しかった。

二人は並んで大通りを外へと歩く。
「この時間だからって事でも無いんでしょうけど、これだけの街に人っ子一人居ないっていうのは不思議な気分ね」
「そうじゃねぇ、でも私達で一人占めしてるって気がして、ちょっと嬉しいかも」
「ぷっ、それいいわね。じゃあそこの噴水は私がもらうわ」
「あははっ、じゃあ私はそこのおーっきな門もらうでー」
街全体を覆う、城壁の半分程の高さの壁をくぐると、丈の低い薄茶色の草がぽつんぽつんと点在するだけの荒野に出る。
そこから先の光景は圧巻であった。
足こそ止まらなかったものの、二人共が揃ってぽかんと口をあけてしまう。
「……これは……いやはや、想像以上ね」
「うっわぁ、よくもまあこんなに集めたもんじゃねぇ」
背の高い立ち木も少ない荒野が続くが、二人の目からは荒野の限りが良く見える。
地平線に至る随分と前ではあるが、限りの位置は距離にして5リーグ程。
稜線は銀色に輝き、ざわめくように小刻みに揺れて見える。
燦はぐるっと首を回して端を見極めようとする。とても一目で見きれるものではない。
5リーグ近く離れているというのに、一部の漏れも無くぎっしりと街を取り囲んでいる兵士達が手にする武器が、
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:05:52 ID:amzPAXx4
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672ゼロの花嫁20話6/26:2009/05/20(水) 23:06:20 ID:b59a7Hzr
朝日を浴びて銀色に輝いているのだった。
どちらを見ても人ばかり。高低差の関係で布陣する兵達の奥の方までは見えないが、
更に奥にもまた人が幾重にも連なっているのだろう。
さしもの燦も呆気に取られている。
「これ……どんくらいおるん?」
「五万だって聞いたわね」
正直、数を言われてもぴんと来ない。
「五万ってどれくらいなん?」
「そりゃ……うーん、とりあえず私が見た印象だと……ごまーんって感じかしら」
「ああっ、うんっ、確かにごまーんって感じじゃ」
二人は顔を見合わせて笑い出す。
もう何がおかしいのかも自分でわかっていないのだろうが、
体の底から湧き上がる笑いの衝動を堪えきれず、お腹を押さえ、てくてくと歩を進めながら。

一方、まるで状況を理解出来ないのが反乱軍である。
人影が街から現れ、一体何事かと見てみれば少女が二人、徒歩にて近寄ってくる。
その二人は戦時中だというのに、年頃の少女らしいかしましさで笑いあいながら、
先陣である部隊のど真ん中に向かってくるのだ。
いぶかしげにしつつも、指揮官の一人が馬に跨り少女達の下へと進み出る。
先陣は傭兵部隊が主だ。戦闘前でいきりたっている中にこんな少女達が近寄っては危ないどころの話ではなくなる。
部隊の人間達が見守る中、指揮官は二人の前で馬を止める。
「一体何の真似だ? 使者ならばその旨伝える旗を掲げるなりするのが作法だろう」
ルイズは部隊との距離を目測で測った後、不敵に笑いながら腕を組む。
「サン」
燦は心得たとばかりに大きく息を吸い込んだ。

「裏切りだなんだとド汚い手ばっか使いよって! おどれらどいつもこいつも気に食わんのじゃ!
 じゃきに! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとその使い魔瀬戸燦がケンカしに来てやったで!
 当たるを幸い叩っ斬っちゃるから腹括ってかかってこんかいっ!」

戦争だから裏切りは当然だとか、貴族による合議制の正しさだとか、
王に尽くす忠義のあり方だとか、殺し合いの中ではどのような事が常識であるのかだとか、そんな事は燦にはわからない。
わからないが、信頼に応えた人間が死に、裏切った者が生き残るなぞ、燦には心底納得出来なかったのだ。
それはルイズも全く同感であり、また、直接接したウェールズの誇り高き立派な態度は、ルイズを動かすに充分であったのだ。
燦の雄叫びと共に、ルイズは先行してきた馬上の指揮官に飛びかかり、抜きざまの一刀で切り倒すと馬を奪い取る。
「行くわよサン!」
「うんっ!」
燦も馬に飛び乗ると、二人は一個の弾丸となって、反乱軍五万の只中に斬りこんで行った。

呆気に取られている間も無い。
先頭の男達は、馬から飛び降りながらルイズが放つ蹴りに文字通り跳ね飛ばされ、数メイル後方まですっ飛んでいく。
同時に飛び降りた燦は、戦場に似つかわしい勇壮なメロディーを口ずさみながら周囲の敵をばったばったと打ち倒していく。
ようやくこれが敵の襲撃であると理解した反乱軍は、手に手に武器を持ち二人を取り囲む。
しかし、英雄の詩により人外の力を手にしたルイズは、まるで葦を凪ぐように蹴り、殴り、一度に五人もの敵を屠っていく。
燦もまたルイズの侵攻速度に遅れておらず、ルイズが切り開いた血路を歌いながら駆け抜ける。
槍襖がルイズの前に築かれるも、一足で容易く飛び越え、構えた男達を両手の裏拳で跳ね飛ばす。
数メイルの距離を人が飛ぶのだ。彼等がそんな強力に耐えうる肉体なぞ備えているはずもなく、
腕が飛び足が飛び、千切れた胴はそこらに臓物を撒き散らす。
燦に向かって突き出される槍の穂先を、体を捻ってかわしつつデルフリンガーを振るうと、ただの一撃で屈強な傭兵が地に堕ちる。
この期に及んでも燦は、峰打ちにより殺人を拒み続けていた。
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:06:44 ID:amzPAXx4
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674ゼロの花嫁20話7/26:2009/05/20(水) 23:06:43 ID:b59a7Hzr
訓練のおかげか、歌いながらにして殺到する敵兵を次々屠る燦の動きもまた、人の域を大きく超える俊敏さと力強さをもっていた。
だが、それもまた程度問題であり、戦慣れしている傭兵達を相手にいつまでも続けられるものではない。
まるで津波のように押し寄せてくる敵兵達に、燦が打ち倒す速度が追いつかなくなっていく。
常時多対一を続ける燦は、真後ろから迫る敵を察する事が出来る程感覚が鋭敏になっていたが、
ガンダールブと燦の力を持ってしても体の動きが追いつかなくなってくる。
必死の形相で、ほんの僅かでも剣速を上げようと振り上げた剣。
峰を使わなかったのは間に合わないから、それだけの理由だ。
燦の肩に敵兵が噴出す血しぶきが降りかかる。
ほんの一瞬、ふりかかった液体に動きを止めるも、今の燦にそんな余裕は与えられていない。
次は右前、次は左、更に上に跳んで頭部を斬りつつ敵兵を踏み台に大きく飛びあがって槍襖をかわし、着地前に三人を斬り捨てる。
既に物を考える余裕すら失われた燦は、ただこの殺意の雨に如何に立ち向かうかしか頭に無くなっていた。



早朝、皇太子ウェールズは慌てふためく兵に起こされる。
要を得ない兵の言葉に、ともかく現場へ向かうべしと城を出て、城壁上へと足を運ぶ。
そこで彼は信じられない物を目にする。
城下町の更に先、包囲が完成して以来、最早突破は不可能と思われた敵の前衛が大きく崩れているではないか。
すぐに視線は混乱の中心と思われる戦場に向けられる。
まるで巣に群がる蟻のようだ、そう最初に感じた。
包囲網の中心に位置し、先陣をきるべく備えていたであろう敵部隊のど真ん中で、
時折この距離からでもわかるぐらい人が跳ね跳んでいる。
人の波が混乱の只中に殺到する、その隙間隙間に見える大地は、薄茶色のそれではなく、
黒く濁った色をしており、その場の異質さをより強調してくれる。
少し考えて気付く。
あの黒は大地の色にあらず。人の成れの果てであると。
あれだけの大地を黒に染めつくす死体の数、十や二十では効くまい。
百か、二百か、それを、まさか、あの中心に居るたった二人がやったというのか。
前衛の布陣が乱れる程の時間、ああして戦い続けていたというのか。
遠眼鏡で確認したその姿は、トリステインからの客人、ルイズ・フランソワーズとその使い魔燦に間違いない。
使い魔が手練なのは知っていたが、あの主人ルイズ・フランソワーズの豪勇はどうだ。
彼女の周囲に居た敵兵達は、まるで空を飛ぶ竜の巨体に跳ね飛ばされているかのようではないか。
オーク鬼ですらあのような真似は出来まい。いや、あんな真似が出来る存在が、この世に居たという事がそもそも信じがたい。
あまりに非現実的すぎる光景に、ウェールズは騒ぎを聞いて駆けつけた部下達同様、ただ見入る事しか出来なかった。

キュルケとタバサは知らせを聞き、血相変えて城壁上へと向かう。
まさか、という気持ちと、やっぱり、という気持ちが入り混じったまま階段を駆け上ると、
キュルケはその先にあった光景に仰け反ってしまう。
十メイルを越す高さであるにも関わらず、視界いっぱいに広がる敵反乱軍の陣容。
五万という数を頭の中ではわかっていたが、こうして眼前におかれて初めてキュルケは理解する。
無数の人の塊が、城の周りに幾つも点在している。
誰もがきらきらと輝いて見えるのは、手にした武器や鎧のきらめきであろう。
そんな銀色に、大地の半ば以上が埋め尽くされている。
あれだけの数を集めながら戦えぬ女子供は一人として存在せず、全てが武器を手にした必殺の意思を持つ者達。
統一された意思の元、ただひたすらに敵を倒すべく、それだけの為に存在している集団。
あの群集の中にあっては、個人の意思など存在する事すら許されず一瞬で踏み潰されてしまうだろう、そんな圧倒的な質量。
ちらと目をやると、遠すぎて区別がつかないが、確かにその一角に乱れに乱れた陣容が見られる。
「……何……やってんのよ……。こんなの……どうこう出来るわけないじゃない……」
そこにルイズ達が居る。そう聞かされている。
しかし、ルイズ達の圧倒的なまでの戦力を知っているキュルケですらわかる。
675ゼロの花嫁20話8/26:2009/05/20(水) 23:07:05 ID:b59a7Hzr
個人の武が、この絶望的な景色を覆すなぞありえない。
そこにたかだかアルビオン軍三百人を加えたとて結果は一緒だ。
大海に砂粒を落とすような行為だ。
ルイズ達の奮戦を目にしながらも、キュルケはそう結論づけざるをえない。
城壁上から見える反乱軍五万の陣容は、笑えるぐらいに、どうしようもない存在であった。

不意に、アルビオンの兵が雄叫びを上げる。
声も枯れよとばかりに張り上げた叫びは、次第に感染していき、城壁上の兵達全てに伝播する。
そう、アルビオン三百の兵は全て城壁上に上がり、この夢まぼろしのような光景に見入っていたのだ。
勇むでなし、脅すでもなし。雄叫びに目的など無い。
ただ体の奥底から湧き上がる衝動を堪えきれず、喉を介してこの世に解き放つのみ。
この時彼等兵達の心は、襲いくる敵兵達の殺意に負けじと気勢を上げるルイズ、燦と完全な同一化を成し遂げる。
遠眼鏡でなくば姿すら定かではないルイズが周囲を薙ぎ払い、天空目掛けて絶叫を迸らせる。
それは聞こえるはずの無い声。
しかし、その響きは男達の魂をも揺さぶる。

「うおああああああああああああああっ!!」

それは返礼。城壁上からの勇士達の声に、ルイズは全身全霊を持って応えたのだ。
ほんの僅かばかり冷静さを残していたウェールズは、ロクに音も聞き取れなくなる大絶叫の最中、周囲を見渡し人を探す。
二人見つけた。
ルイズと共に来た青い髪の少女、
そして、これだけの興奮に包まれながらもウェールズ同様鋭い視線で周囲を探っている緑髪の女性。
より大人な緑髪の女性の手を取り、ウェールズは縋るように、いきり立つ競走馬のように猛り狂いながら言う。
「後を頼む!」
「え? ちょ、ちょっとまさかアンタ……」
ウェールズは剣を抜き、高々と天へと掲げる。

「我に続け! あの勇者を見捨てるなぞアルビオン人の名折れぞ!」

一際大きな歓声と共に、城壁を駆け下り馬に飛び乗るアルビオン兵達。
キュルケは震えながら彼等の迷い無い動きに慌てふためく。
「ね、ねえタバサ! 何なの! 一体何するつもりなのよ!」
タバサは苦々しく眉根に皺を寄せる。
「……彼等も後を追うつもり」
縋りつくようにタバサの両肩を掴むキュルケ。
「何でよ! こんなの勝てるわけないじゃない! みんな死ぬわよ! 一人残らず殺し尽くされるわよっ!」
「それが彼らの望み。剣で斬られ、槍で貫かれ、魔法でズタズタに切り裂かれる為に彼等は戦場に向かう」
「そんなのおかしいじゃない! 何で死ぬのが恐くないのよ! 何で……」
がたがた震えながら、彼方を見やるとルイズが暴れる戦場が目に入る。
「何でルイズがあそこに居るのよおおおおおおおおお!」
タバサはキュルケの腕を優しく掴む。
「……もう打つ手は無い。私達は逃げる女子供を誘導しよう……」
冷静に戦場の動きを見ていたタバサは、ルイズ達を包囲している兵の数と、こちらが保有する戦力とをしっかり見据えていた。
なし崩しに城への攻撃態勢を整え始めている軍も居る。事は一刻を争う。
しかし、キュルケはその場から動こうとしない。
気勢を上げるアルビオン兵達を城壁上から見下ろし、何度も首を横に振っている。
タバサはキュルケの腕を強く握り締める。
「ダメっ! 流されたらキュルケまで失う事になる! お願いだから踏み止まって!」
キュルケはぼろぼろと涙を溢していた。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:07:28 ID:amzPAXx4
支援
677ゼロの花嫁20話9/26:2009/05/20(水) 23:07:33 ID:b59a7Hzr
「だって……アイツ、友達だもの……でも、恐くて恐くて仕方が無くて……足が動いてくれないの……」
「それでいいっ! 私が助けるから城を脱出して!」
泣き笑いの顔で、キュルケはタバサを突き飛ばす。

「わああああああああああああっ!」

何もかもを吹き飛ばしてくれと言わんばかりの勢いで絶叫を上げると、
城壁下で城門が開くのを待っていた兵達が声に気付いて一斉に見上げる。
これでキュルケにも逃げ道は無くなった。
彼らの視線を一身に受け、キュルケは城壁から飛び降りつつレビテーションの魔法を唱える。

「私はツェルプストー家のキュルケ! 友の為! 薄汚い反乱軍を燃やし尽くす為! 助太刀させていただくわ!」



来るんじゃなかった。それが土くれのフーケ兼ロングビル兼マチルダ・オブ・サウスゴータの偽らざる本音である。
ルイズが使い魔と一緒に敵に突っ込んだと聞いて、
そんな馬鹿なと思いつつ城壁上に上がってみると、本当にやってやがったあの馬鹿。
如何にロングビルのゴーレムを粉砕した力があるとて、五万相手にたった二人で何が出来るというのか。
平民の兵ばかりではない、メイジもぞろそろ居る中に突っ込んでは、
損害は与えられるだろうが、一軍すら打ち崩せず力尽きるであろう。
何が何やらわからない中、どうやら他の兵達もつっこみそうな気配を感じ、混乱の最中にここを抜け出し、
お宝を頂いておさらばするかと段取りを組んでいた所、何とウェールズ王子に声をかけられてしまった。
ロングビルに声をかけてきたのは、
この場で冷静に物を見ているのがロングビルだけだったせいであろうと当たりをつける。
アルビオン王家には恨みがある。というより恨みしか無い。
だが、しかし、勇敢な人間の託すような最後の願いを鼻で笑う程、ロングビルはまだすれてはいなかった。
何より、彼が頼むと言ったのは、城に残された女子供達の事なのだ。これを見捨てるなんて真似出来ようはずがない。
平然と人を見捨てられる者が、自身の全てをかなぐり捨ててでも誰かを救う為に働くなんて真似、出来るはずがないのだ。
「あー! もうっ! よりにもよって私に頼むなんて正気!? 何だってこんな事になってんのよ!」
他に出来そうな人間も居ない。こちらには気付いていないようだが、
同じ城壁上に居るタバサやキュルケに頼むわけにもいくまい。
何やら揉めているタバサとキュルケを置いて城壁を駆け下りると、
不安げに城の入り口付近に集まっていた女子供の下に駆けつける。
「何時までもぼけーっとしてないの! 段取り通り脱出に取り掛かりなさい!
 この期に及んであの人達の足手まといになりたいの!?」
開口一番怒鳴りつけると、皆はっとして城内へと走り出す。
「そこの貴女! 貴女は城内回ってまだ残ってるボンクラ引っ張り出して来て!
 そっちの貴女も一緒に行きなさい! それと……」
次々指示を下し、脱出の手はずを進めさせる。
城壁上で敵の動きは見てきた。
攻城準備を整えている軍は、下手すると脱出より前に乗り込んで来るかもしれない。
そうなってしまったら終わりだ。脱出船の存在がバレれば、如何に秘密の抜け道を通るといえど、
回り込まれて捕捉されてしまうだろう。
避難の為山ほど人間を積む予定の船が、軍船に速度で敵うはずなどないのだから。
「あーもう! チンタラしてないの!」
片足を引きずっている老人に肩を貸しながら船へと走るロングビル。
『アニエスは? まさか一緒になって突っ込んでるとは思わないけど……
678ゼロの花嫁20話10/26:2009/05/20(水) 23:07:54 ID:b59a7Hzr
 まったくもう! 何もかも無茶苦茶じゃない! 少しはまともに戦争しなさいよアンタ等!』



城門が開かれると、そこから噴出してきたのは、殺意の塊であった。
一塊の疾風と化し、城下町を抜けるとその姿を反乱軍の前に晒し出す。
遠目に見えるその姿は、まるで一個の生命体のようである。
しかし間近まで寄った所でようやく正体を悟る。
魔法による砲撃を歯牙にもかけず、まっすぐ標的目掛けて突き進む姿はまるで死そのものだ。
飲み込まれれば命は無い。そう確信出来る程、彼等の目は狂気と殺気に満ちていた。
尋常ならざる事態とばかりに、亜人の兵すら差し向け押し囲んだ正体不明の二騎の為の包囲網。
この包囲網に真っ向から飛び込むと、無人の野を駆けるがごとく突き進み、あっと言う間も無く合流を果たす。
「ルイズ殿! サン殿!」
アルビオン兵が引き連れてきた馬を放つと、ルイズと燦の二人はこれに飛び乗り死の濁流の一部となる。
馬を寄せたウェールズが、喧騒の最中でも聞こえるよう大声を張り上げる。
「我等はこれより敵首魁、オリヴァー・クロムウェルの首を狙います!」
言葉自体にはまだ品の良さが残っていたが、それを発するウェールズの顔はとても一国の王子には見えぬ。
まるで地獄の底より這い上がってきた悪鬼羅刹のように目尻を吊り上げ、犬歯をむき出しに獰猛な笑みを見せる。
汗にまみれた顔で、それでもルイズは声を張り上げ笑い返す。
「はっ、はははっ! それはいいわ! サン! 一度歌は落としなさい! 私達もこのまま突っ切るわよ!」
「わかった! 大将首取れば私らの勝ちじゃ! そこまでの道を斬り開くんじゃな!」
「ええそうよ! 行く道塞ぐ間抜けはどいつもこいつも叩き潰してやりなさい!」
城壁上から確認してあったクロムウェルの居る本陣まで、たった三百騎で斬り進むとウェールズは豪語しているのだ。
本陣は一万騎の兵を擁する。それ以前に、辿り着くまでに三つの軍を突き抜けなければならないというのに。
ウェールズは狂気にその身を委ね、三百の勇者達と共に戦場を駆ける。
かつて、これ程の興奮があっただろうか。
率いる兵達との一体感、全てが一つの命となり、怨敵目掛けてただただ無心に突っ走るのみ。
心の奥底に溜めに溜めていたドス黒い情念を思う様ぶちまけ、一心不乱に全ての敵を蹂躙する。
そこに正義や国を守るといった心は無い。
あるのはただ、飽くなき闘争本能に支えられし一人の男が居るのみだ。
殺意に満ちた悪鬼となり、慈悲の心無き悪魔となって、敵を打ち砕く。
その為だけに、今、ウェールズは存在しているのだ。



タバサは呆然としたまま、開け放たれた城門を見下ろしている。
何も出来なかった。二人の無二の仲間が死地に向かう事にも気付かず、
学院入学以来の親友がそれとわかっていて死に向かうのを止める事も出来なかった。
抜け殻のようにぼうとした顔のまま、戦場へと目を遣る。
霞がかかっているようで、良く見えない。
母を救い出してくれた大切な仲間達は、決して生きては戻れぬ戦場へと飛び出して行った。
後を追えればどれほど楽な事か。
彼女達と共に戦場を駆け、死す時も共にと武勇を誇り合う。
そんな幸福に、ともすれば惹きつけられそうになる自分を全力で戒める。
母を守れるのはタバサだけなのだ。
その為だけに生きてきたはずなのに、何時の間にかタバサの心に、こんなにも深く彼女達は入り込んでいた。
母を失った後の人生など考えられない。そしてそれと同じぐらい、彼女達抜きでの人生など想像もつかなかった。
一人楽になるような真似は出来ない。そう頑なに言い聞かせてきた半生を恨めしく思う。
そんな意思の強さが無ければ、タバサもまたキュルケ同様城門から駆け出していたであろうから。
ふと、タバサの視界に入った景色に違和感を覚える。
その意味に気付き、愕然として城壁から身を乗り出すと、
どうやら違和感は事実である事と、それを解決する術が無い事がわかる。
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:08:00 ID:Z/JL7QGZ
支援
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:08:03 ID:4dioKABv
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681ゼロの花嫁20話11/26:2009/05/20(水) 23:08:36 ID:b59a7Hzr
きょろきょろと周囲を見渡し、城壁端にかかげられたアルビオンの旗を見て、気付いてしまった。
思いつかなければそれで済んだはずなのだが、タバサは思いついてしまったのだ。



三百騎は走る。走る。走る。
幾たびも陣を飛び越え、軍を切り裂き、悲鳴と断末魔を纏いながら。
魔法をまともにくらい、馬から転げ落ちたアルビオン兵は、地面に叩き付けられるなり飛びあがる。
血走った目のまま、トドメを刺さんと近寄って来た兵の首元に喰らいつき、首回りの筋肉ごと咬み千切る。
後ろから槍で突かれ、深々と胴体に刺さったそれを片腕を振り下ろしてヘシ折り、
同じく横から槍で突きかかってきた男に飛びかかる。
槍で脇腹を抉られながら、敵の口と目に指を突き入れ、全力で握り締める。
同時に四方から槍を突き刺されるが、手の力はいささかも衰えず、
くぐもった悲鳴をあげ敵が倒れるのと同時に、男は力尽き倒れた。
ほっと、皆が一息ついた直後、男はがばっと立ち上がる。
全身から垂れ下がる槍を引きずりながら数歩歩いた後、男は再び倒れ、二度と起き上がる事は無かった。
歩み寄られた兵は、蒼白になりながら尻餅をつく。
「何だよこれ! こんなの聞いてねえぞ! こんなバケモノ相手なんてやってられっかよ!」
又、別所で同様に落馬した兵は、自らをも巻き込んだ炎を放ち、
全身を炎で包みながら更に斬りかかり、都合六人を巻き込んで絶命した。
戦場に正気を持ち込むなどそれこそ正気の沙汰ではない。
が、そんな戦場にあっても更に異質であるこの狂乱は、
長きに渡って裏切りに耐え続けてきたアルビオン兵の魂の叫びなのだろう。
男達は、戦場故と無理矢理納得してきた理不尽、不条理に、全身全霊を持って抗う。
理不尽な敗北も、不条理な死も、我等のみに下る裁可ではないぞと言わんばかりに。

最前衛を走るウェールズは緊張に身を硬くする。
上空彼方より飛来する飛竜部隊を目にしたからだ。
これに対する術をウェールズ達は持ち合わせていない。
ただ耐えに耐えて敵陣に斬り込み、敵味方入り乱れた状況を作る他無いのだ。
「任せて!」
馬列の中ごろから一騎が前へと走り出てくる。
その姿を認めたルイズがこの場に合わぬすっとんきょうな声を上げる。
「キュルケ!? アンタまで来てたの!」
「来ちゃ悪いみたいな言い方ね! アンタへの文句は地獄でありったけ聞かせてあげるから今はすっこんでなさい!」
杖を翳して詠唱を始める。
重苦しい言の葉の数々と、額に汗するキュルケの様子から並々ならぬ術であるとわかる。

「爆炎!」

キュルケの澄んだ声が響くと、見上げる空一杯に炎が広がった。
竜騎士達は隊列を組み、暴徒としか形容しようのないアルビオン軍へ急降下攻撃を敢行する。
そんな彼らの眼前に、突如炎の壁が出現したのだ。
慌てて竜を操る手綱を引く者は最悪の結果を迎えた。
減速した状態で炎の中に飛び込み、全身を炎に包まれ落下する。
勇気を持って加速を行った者は、それでもキュルケの爆炎の魔手から逃れる事は出来なかった。
炎の壁はすぐに突き抜けたが、極端に酸素が失われた大気を吸い込んでしまった彼らは、
胸を襲う苦しみに耐え切れずやはり竜から転げ落ちた。
後方に位置していた為、辛うじて回避が間に合った数騎のみが空を飛びまわるが、見下ろす惨状に目を覆う。
アルビオンが誇る竜騎士が、ほんの一瞬で二十騎以上失われたのだ。
数十メイルにも及ぶだろう炎の壁、こんなものを作り出す魔法など聞いた事も無い。
竜騎士隊の隊長は、それでもと再度の突撃を命じる。
これほど規模の大きい魔法を連発など出来るものかと。
儀式や魔法の道具を用いて行ったと考えるのなら、確かに隊長の判断も正しかっただろう。
しかしこれはキュルケがただ一人で、詠唱のみを頼りに行った魔法である。
五度の突撃に失敗し、多大な損害を出した所で竜騎士隊副隊長は撤退を決意する。
隊長は怯える部下達を叱咤する為三度目の突入に参加し、とうに落竜していた。
「アンタいつの間にこんな大技使えるようになってたのよ!」
ルイズがぼろぼろ落ちてくる竜騎士達を見ながら怒鳴ると、
キュルケはぬぐってもぬぐっても垂れてくる汗に辟易しながら答える。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:08:43 ID:amzPAXx4
しえん
683ゼロの花嫁20話12/26:2009/05/20(水) 23:08:59 ID:b59a7Hzr
「何時までも貴女が一番何て思わない事ね!」
「言ってなさい! すぐに突き放してやるわ!」
「はっ! あの世までだって追い掛け回してやるわよっ!」
二人の会話に合わせるように、後方から急を知らせる馬が駆け寄って来る。
そんな馬と並ぶように上から声が響いて来た。
蹄鉄が大地を蹴る音は、それ以外の音を全て消し去る程の音量であったが、
確かに、その声はルイズとキュルケに届いたのだ。

「北西へ!」

二人が同時に見上げると、後方上空に見慣れすぎたあのバカヤロウが居た。
敵中をただ一騎のみで突き抜けてきたのだろう。
美しさすら漂わせていた竜の体はそこかしこに魔法傷やら矢傷を負っている。
それでも威容は失われず、雄々しき姿を、シルフィード、風の精の名に相応しい優美さを失わず、
何より目立つアルビオンの旗を掲げながらルイズ達の真上を飛び抜ける。

「北西へ! 敵本陣からずれてる! 私が先導するからついて来て!」

小さい体から、ありったけを振り絞って叫ぶのは、最後の仲間、タバサであった。
「は、はははははははっ! 何よタバサ! 貴女まで来ちゃったの!」
キュルケは笑いが止まらなくなった模様。聞こえるはずもない呼びかけをしながら笑い転げる。
狂騒の中にあっても、アルビオン兵達がこの旗を見失うはずがない。
兵達は更なる歓喜に包まれ、タバサとシルフィードに従い進路を変える。
ルイズはウェールズの側に馬を寄せる。
「殿下! 露払いは我等にお任せを!」
「わかった! ははっ! 全く君達は何処まで我等を奮い立たせてくれるというんだ!」
「無論! 敵大将を討ち取るまでですわ!」
軽やかに宣言し馬を進めると、真横に燦の馬が並ぶ。
「魔法は私が叩き落す! タバサちゃんの魔法と後ろからの風の魔法があれば、連中の飛び道具はほとんど通じん!」
すぐにキュルケも横に並ぶ。
「距離が詰まったら私が一気に大穴空けるからルイズはそこに突っ込みなさい!」
上空にタバサ、その真下を燦が駆け、すぐ後ろにルイズとキュルケが並ぶ。

何という興奮、何という感動か。
死すら恐れぬ勇猛果敢な戦士達が、タバサが掲げる旗に従い後に続いてくれる。
眼下にはそうありたいと心から願った、共に死ぬ事を無上の喜びと出来る友が居る。
四人が先導し、敵陣を切り裂く刃となる。
皆の顔が良く見える。
ルイズも、キュルケも、サンも、皆が歓喜に包まれている。
笑顔に自信などないが、それでも今自分が彼女達と同じように笑っていると確信出来る。
母には申し訳ないとも思う。
だが、全身を貫く興奮を、彼女達と共にあれる喜びを、誤魔化す事など出来ようか。
今自分は、人生において最高の時を過ごしている。
心の底から沸き起こる衝動に任せ、タバサもまた声を張り上げた。

「うぅあああああああああああっ!」



ロングビルは城内の全ての人間が船に乗ったのを確認する為、最後の点呼を行う。
青髪の少女、タバサの姿が見えないとの事だったが、
684ゼロの花嫁20話13/26:2009/05/20(水) 23:09:21 ID:b59a7Hzr
最後まで残っていた女性がタバサが竜に乗って飛び立つのを見ていた為、これは無視する事にした。
不意にロングビルの裾が引かれる。
「ん?」
ロングビルの腰までしかない身長の少女が、半泣きになりながら服にすがりついていた。
「……ぐすっ、お姉ちゃんが……お姉ちゃん何処?」
充分に確認はさせたはず。背筋に寒いものを感じながらロングビルは少女の両腋を掴んで勢い良く持ち上げる。
「誰か! この子の姉を知らない! 一緒に連れて来てる人は居ないの!」
ロングビルと共に、城中を駈けずり回っていた女性達もロングビルの側に集まって来る。
恰幅のよい女性はこの子に見覚えがあるらしく、ロングビルから少女を受け取ると宥めながら事情を聞いている。
神経質そうに見える痩せぎすの女性は、険しい表情のまま少女の姉の名を叫ぶも、何処からも返答は無い。
ロングビルの目算では外の軍もそろそろ攻城の準備が整うはずである。
中がすっからかんだと気付いた瞬間、連中は恐ろしい勢いで雪崩れ込んで来るだろう。
それまでに、痕跡すら残さずこの城を発たねばならない。
突然、ロングビルの脇を駆け抜ける影があった。
船から飛び降り、後ろも見ずに彼女は叫ぶ。
「ロングビル! その子は私が探す! 間に合わなければ出航しろ! お前ならばそのタイミングが計れるはずだ!」
そう言って走り去っていくのはアニエスであった。
血相変えてロングビルは怒鳴る。
「バカ! 戻りなさい! もうとっくに時間切れなんだってば!」
共に城を駆け回った女性達も、とうに時間切れである事は承知している。
連れ戻そうと勢いこむロングビルの腕を、恰幅のよい女性が掴んで止める。
「……我慢して、お願い」
ロングビルは振り向くと、女性に向かって両手を広げる。
自身の顔がひきつっているのにも気付かない。
「裏切って騙した後は見捨てろって!? あの子は親友なのよ! 私の大切な友達なの! もう嫌よ!
 大好きな人を裏切るなんてもう耐えられない! 私は! もう二度とあの子を裏切るような真似したくないの!」
絶叫して女性の手を振りほどくと、桟橋すら使わず船から飛び降り、魔法の力で空を飛ぶ。

アニエスは城内を駆ける。
心なしか青ざめた顔色は、任務の致命的なまでの失敗によるものだ。
ウェールズ殿下からの密書が、今何処にあるのか全くわからなくなってしまった。
ルイズが密書を受け取ったとは聞いていたが、それを以後どうしたのかがわからない。
突入前にルイズが燃やしたのか否か。あのバカはそれすら明らかにせず突っ込んでしまった。
最悪の場合、密書を手にしたまま戦いに赴き、捕えられて敵の手に渡ってしまう可能性もある。
何という失態。捜査部に配属になって以来、最悪のミスをよりにもよってこのような場面でしてしまうとは。
このままではとてもではないがワルド様に合わせる顔が無い。
そんな焦りが、アニエス程の戦士の判断をも狂わせていた。
悔恨の念に苛まれながら走るアニエスの後ろから、鋭く風を切る音が聞こえた。
何事かと振り返ると、すぐそこに、ロングビルの顔があった。
魔法で空を飛びながら、勢いを殺す事すらせずアニエスに飛びついたロングビル。
二人は重なりあったままごろごろと廊下を転がる。
ようやく止まったと顔を上げかけたアニエスの眼前に、ロングビルのくしゃくしゃに歪んだ顔があった。
「バカッ! バカバカバカバカバカッ! 何でこんな事するのよ! 貴女まで死んじゃうじゃない!」
普段の冷静なロングビルの姿からはとても想像出来ない、駄々っ子のようにアニエスの胸を叩き続けるロングビル。
「お、おい……」
「うっさいバカッ! 船はもう行っちゃったわよ! どうしてくれるのよ! 私も一緒に死んじゃうじゃないっ!」
色々聞きたい事もあるが、とりあえずは、とばかりにアニエスはロングビルの両の頬を優しく両手で包み込む。
「まずは落ち着け。それで……その、なんだ……私の上からどいてくれるとありがたいんだが……」
仰向けに倒れるアニエスの上に、のしかかるようにロングビルが倒れこんでいるのだ。
「し、知らないわよそんなのっ!」
とか言いつつぴょこんとアニエスの上から飛びのいて座り込むロングビル。
体勢の恥ずかしさに気付き、ちょっと照れてるらしい。
何と言ったものか困りながら身を起こすアニエス。
「えっと、だな。ロングビル。船は行ってしまったんだな」
「……そうよ」
「ならば、何とか城から脱出しないとまずいな」
685ゼロの花嫁20話14/26:2009/05/20(水) 23:09:44 ID:b59a7Hzr
「……うん」
「ではこうしていても仕方あるまい。戦況を確認してこよう」
「…………」
立ち上がりかけるアニエスの手をロングビルが引いて止める。
「ロングビル?」
「……聞いて、欲しい事が、あるの……」
今にも敵兵が城壁を乗り越えて来るかもしれない。
そんな最中でありながら、ロングビルはぽつりぽつりと語り出す。
その真剣な表情にアニエスも抗議の言葉を飲み込む。
ロングビルは、自らの生まれと、今までにやってきた悪事を、
そしてアニエスを隠れて盗賊を行って来た事、今ここに居る理由を一つずつアニエスに語って聞かせた。

しんと静まり返った城内。
全てを語り終えたロングビルは、恐ろしくて顔も見れないのか俯いたままである。
アニエスは真顔のまま口を開く。
「ふむ、私にはそもそも友人と呼べる存在はあまり居なかったが……
 それでも、盗賊の友人を持っているというのは珍しいと、思う」
先と同じように、両頬を手で包み込み、俯いたロングビルの顔を上げさせる。
「まずは生き残ろう。先の事はそれからでも遅くはあるまい。何心配はいらん、
 私とお前の二人ならば大抵の問題は解決出来るだろうからな」
ロングビルの手を引いて立ち上がると、二人は並んで城の外に向かう。
途中、ぽつりとアニエスが呟いた。
「……すまん。任務に失敗し、何とか失点を取り戻そうと冷静さを欠いていた。
 そのせいでまたお前を危険に巻き込む事になってしまった……」
ロングビルはおずおずと訊ねる。
「怒って……ないの?」
「正直に言うと何と答えたものか困っている。ただ、確かな事は一つある。私にはそれで充分だと思えた」
「確かな事?」
アニエスは振り返り、細い目を更に細くして答えた。
「お前は私の友だという事だ」
最早何も言わずにアニエスの首根っこに抱きつくロングビル。
「こ、こらっ。危ないだろう」
「うるさいっ、貴女はかっこつけすぎなのっ」
「人の事が言えるか。まったく、私の後を追って船から降りるなど正気を疑うぞロングビル」
ロングビルはアニエスの前にずいっと顔を寄せる。
「マ・チ・ル・ダ」
苦笑しながらアニエスは言い直す。
「マチルダ、だな。ほら、いつまでも遊んでないで、残った一人を探し出すぞ」



傭兵達を主とする前衛の軍は、真っ二つに引き裂かれ、アルビオン軍の突破を許してしまう。
たかが三百相手にあまりに脆すぎるが、それは決して彼等が弱卒であるからではない。
長きに渡って戦い続け、ようやく城にまで追い詰めたのだ。
たくさんの兵が倒れる中、何とかかんとかここまで生き残って来た。
後は攻城戦を残すのみ。それも消化試合のようなもので、勝利は目前であったのだ。
手柄を立てた報奨金も勝利した軍に居なければ得られない。
考えてみればヒドイ話だ。命を賭けて戦っても、勝利した陣営に属さねば褒美は受け取れないのだから。
もっとも負けた陣営に居たものはその大半が死んでしまうので、褒章だのなんだの言っても意味が無いのだろうが。
ともかく、首の皮を剣が掠めるような戦場を幾つも乗り越えここまで辿り着いた彼等に、
686ゼロの花嫁20話15/26:2009/05/20(水) 23:10:08 ID:b59a7Hzr
最後の最後でまた命を賭けろというのは難しい話である。
誰が勝利が決まっている戦いでわざわざ死ぬような真似をするというのか。
そんな彼等に、死兵と化したアルビオン兵が襲い掛かったのだ。
どうしてこれを止められよう。
空には竜騎士も戦艦も居る。
これらを頼めばそれだけで決着がつくだろうと少しでも考えてしまえば、もう生死の一線には踏み込めない。
しかし前衛が突破された後も、竜騎士は謎の魔法に倒され、戦艦もまた移動速度の速さに砲撃を加えられずにいる。
前衛の後ろに控えていた反乱軍主力の指揮官は、
かくなる上は数にて押しつぶすべしと槍衾を掲げ、メイジを並べて彼等を迎え撃つ。
土煙が見え、槍を構える兵達は生唾を飲み込む。
槍の後ろに並ぶメイジ達と共に居た指揮官は、その姿を見た時、自らの浅慮を悟った。

『おおおおおおおおおおっ!!』

まるで地の底からわきあがるような深い雄叫びと共に、
人と言わず馬といわず、全てを返り血に塗れさせた魔人の群れが襲い掛かって来た。
全ての兵が眦を限界までひり上げ、犬歯をむき出しにし、血と臓物に塗れた武器を振りかざす。
こんなものが、槍襖ごときで止まるはずがない。
慌てて魔法の一斉射撃を命じると、メイジ達も全く同じ感想を抱いていたのか、
これで止まってくれと祈るように魔法を放つ。
それと同時に先頭を走る集団を守るように、激しい暴風が吹き荒れる。
風の守りを突きぬけ魔法が効果を発揮したのか、
それすら確認出来ぬ凶悪な風と砂埃の中、メイジ達は闇雲に魔法を放ち続ける。
それ以外、この恐怖から逃れる術は無いのだから。
メイジ達が聞いたのは、一際大きな蹄の音、そして、自らを切り裂く剣の金切り音であった。
一足飛びに槍襖を飛び越え、槍兵達には目もくれず後ろのメイジ達を斬り殺す。
詠唱の間をも惜しみ、魔法すら使わず全て武器にて打ち砕く。
アルビオン軍がそのまま後ろの兵達に襲い掛かると、反乱軍の兵達は恐慌状態に陥ってしまい、
逃げる者や前に進む者が入り乱れて大混乱を引き起こす。
アルビオン兵達は、まるで雑草を刈り取るかのように無造作に、次々と反乱兵達を斬り倒していく。
倒れた兵士達の目は恐怖に怯え、驚愕に見開かれたままであった。
そんな中でも、やはり突破しきれず落馬するアルビオン兵も居た。
しかし落馬した彼らはやはり狂戦士のままであり、血に飢えた獣のように道連れを欲する。
彼等の常軌を逸した蛮勇が、反乱軍に更なる混乱を呼び起こす。
指揮官達が包囲の指示を下すも、そう動けるのは一部のみで、各隊の連携も取れぬままにただただ蹂躙されていく。
それでも兵には疲労があり、限界がある。そう盲信して部下に死ねと命じ続ける。
こんな馬鹿げた事があってたまるか、そう何度も口ずさみながら。



アニエスとマチルダの二人が城の窓から外を伺うと、かなり遠くからだが鬨の声が聞こえてきた。
「やばいっ! もう動き出してる!」
「き、来たっ!」
マチルダが声を上げるのと同時に、すぐ近くから声が聞こえた。
窓から体を乗り出して隣を見ると、どうやら逃げ遅れたらしい少女が同じく窓からこちらを覗きこんでいた。
「アンタああああああああ! 何やってんのよこんな所でえええええええ!」
思わず怒鳴りつけてしまうと、少女は首をすくめて言い訳を始める。
「ご、ごめんなさいっ! でも、私、その、何処に行っていいのかわかんなくて……」
恐らくあちらこちらとうろちょろしてたせいで、城内探索の目にも止まらなかったのだろう。不運にも程がある。
何より不運なのは、彼女の年が十四五才に見える事。
もっと小さければもしかしたら見逃してもらえるかもしれない。
しかしこの年で女性となると、そんな楽観的な見方はとても出来ない。
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:10:11 ID:4dioKABv
相当な支援が必要だ
688ゼロの花嫁20話16/26:2009/05/20(水) 23:10:28 ID:b59a7Hzr
最初に突っ込んでくるだろう兵達の慰み者以外の未来が見えない。
いや、まあ、実際の所アニエスとマチルダの未来もそれっぽいのだが。
「あー! もうっ! とりあえず一度連中追い返すっきゃないじゃない!」
鬨の声は徐々に近づいて来ている。
マチルダはその速度の遅さから、攻城兵器を伴っていると当たりをつける。
実はマチルダさん、反乱軍の鎧を一着用意してあったのだ。
これを着て敵に紛れて脱出という作戦を考えていたのだが、今のままだと二着程足りない。
アニエスを伴い、大急ぎで城壁上へと駆け上がる。
矢穴から外をのぞきこむと、思わず声を上げてしまった。
「うっひゃー、空城攻めるのにどんだけ気合入ってんのよこいつ等」
文句を垂れながら得意の魔法を唱えるマチルダ。
「撃ち漏らしは私が……やるしか無いか。第一陣だけでも何とかしない事にはどうしようもないな」
「は、はいっ。頑張りますっ」
アニエスは後ろから聞こえてきた声の主へと振り返る。
先程合流した逃げ遅れた少女であった。
「……何故お前がここに居る?」
「えっ!? だ、だって一人じゃ心細いじゃないですかぁ……」
「知るか! ここはいいから城の中で二三週間ぐらい隠れられる場所でも探して来い!」
「ひゃ、ひゃーいっ!」
緊張感があるんだか無いんだかわからない悲鳴と共に城壁を駆け下りていく少女。
そんな馬鹿をやってる間にマチルダの術が完成する。
身の丈三十メイルの巨大ゴーレムは、これ程の規模の戦争においても、存分に存在感を発揮する。
城壁の高さが十メイル程なのだから、さにあらんやである。
勢い余って城下町をぼこぼこにしながら、城壁へと擦り寄ってくる攻城兵器を次々踏み潰し、蹴り飛ばしていく。
しかし如何に巨大ゴーレムといえど、城壁全てを守れるほどの規模ではない。
鈍重なゴーレムの手の届かない場所に、巨大なはしごをかけて城壁を昇らんとする敵兵達。
アニエスは慌ててその場に駆けつけると、鉄のつっかい棒ではしごを思いっきり前へと突き出す。
城壁によりかかる事でバランスを保っていたはしごは、後方へと揺らされ、真後ろにばたーんと倒れてしまう。
十メイルの長さの梯子であり、そこに人が乗っても充分耐えうる強度を持っているのだ。
そんなとんでもない重さのものを、たった一人で押し倒すなど並の労苦ではない。
鍛えぬいたアニエスをして、ただの一回で腕の中に鉛でも仕込んだような疲労に襲われる。
「こ、これは……流石に厳しすぎやしないか」
とか言っている暇も無い。
すぐに次の梯子が別の場所にかけられている為、急いでそちらへと向かう。
そんなアニエスの視界に、思わぬ物が入ってきた。
「何? あれは……」

遠眼鏡でハヴィランド宮殿の様子を探っていたミスタ・グラモンは、その体勢のまま壁を力の限り殴りつける。
すぐ隣でエレオノールが切羽詰った様子で問いかけてきている。
「ど、どうなんですの! 城はまだ無事なのですか!」
「……攻城兵器が向かっているというのに、城側に反撃する気配がまるで無い。
 こちらからは正門が見えませんが、事によっては既に破られているのかもしれません……」
「ど、どういう事ですか! わ、私にもわかるように説明なさい!」
「第一陣の攻城攻撃は既に行われており、その結果城壁の一部が破られている可能性があるという事です。
 念を入れる為に後続の攻城部隊を前進させておくのは初歩の判断ですし」
「そ、それでは中に居るルイズは!」
「……最早、手遅れ、かと……」
城から出たアルビオン決死隊が突撃を敢行しているのはミスタ・グラモン達も把握している。
まさかそこにルイズが居るなどと夢にも思っていないだけだ。
「そんな寝言を聞くためにわざわざこんな所まで来たのではありません! すぐに発進なさい!
689名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:10:44 ID:Z/JL7QGZ
支援ぬ。
690ゼロの花嫁20話17/26:2009/05/20(水) 23:10:50 ID:b59a7Hzr
 ルイズを助ける為に私達は来たのでしょう!」
ヒステリーを起こしかけるエレオノールに、野太く、重みのある怒声がたたき返される。
「貴女まで失うわけにはまいりません!」
たおやかな外見に似合わぬミスタ・グラモンの大声に怯みかけるが、エレオノールもここは決して引けぬ場面である。
「私の命などどうでもよろしい! ルイズを! あの子を救わずしておめおめトリスタニアになど戻れますか!」
突然エレオノールの口の前にミスタ・グラモンが手を翳す。
失礼極まりない行為だが、遠眼鏡を覗く彼の反論を許さぬ強い表情が、エレオノールの怒りを押し留める。
「……ゴーレムだ! 良しっ! 城の防御はまだ生きているぞ!」
「え? え? え? それはどういう……」
エレオノールの言葉には答えず、艦内全てに伝わる伝声管に向かって叫ぶ。
「ロンディニウムの城、ハヴィランド宮殿はまだ生きている!
 これより我等は城中庭に強行着陸し、ルイズ・フランソワーズを救出する! 総員覚悟を決めろ!」
反乱軍の戦艦は丸々健在の中、強襲揚陸艦一隻で戦場へと乗り込もうというのに、部下達は威勢の良い歓声を上げる。
急速浮上をかけ、身を隠していた森の中から浮き上がると、反乱軍の戦艦もそれに気づいたのか、
かなりの遠間ではあるが風の魔法で所属を確認して来た。
こうなったらハッタリでも何でも突き通すしかない。
ミスタ・グラモンは毅然とした態度で言い放つ。
「我等はトリステイン軍だ! ハヴィランド宮殿にはトリステインの貴族が残っている! ただちに攻撃を止めろ!
 あの方に傷の一つでもついててみろ! トリステインの総力を挙げ貴様等を叩き潰してくれる!」
連中も寝耳に水であろう。向こうからの返信が来ない間にも艦はハヴィランド宮殿へと突き進んでいる。
『待て! トリステインだと!? そんな話は聞いていないぞ!』
「我が言葉を疑うか! 旗も見えぬとは何処の田舎兵だ! 官姓名を名乗れ!」
『しょ、少々お待ちを! 今司令に確認します故!』
ぼそぼそっとエレオノールが問う。
「……もしかしてこれで攻撃止まったりするものですの?」
「そんな訳ありません。嘘をついたつもりはありませんが、ただの時間稼ぎにしかなりませんよ」
傲慢不遜を地で行くエレオノールも、
眼下に広がる五万の大軍を相手にトリステインの爵位が通用すると思う程、世間知らずでも無かった模様。
それにこの艦に乗ってからというもの、どうにも調子が狂ってしまっている。
原因は間違いなく、隣に立つ食事の時からは想像もつかない程に凛々しく、
雄々しいミスタ・グラモンのせいであるとは思うのだが。
艦橋に立ち、城壁付近の戦況に目を凝らすミスタ・グラモンは、アルビオン側の対応のまずさに歯噛みする。
「何故ゴーレム単騎なのだっ! 他に兵は居ないというのか!? あれでは防ぎきれんぞ!」

戦艦の姿を認めゴーレムを動かそうとするマチルダを、アニエスが大声で止める。
「よせ! あれはトリステインの船だ!」
「トリステイン!? 何だって連中がここに居るのよ!」
「ワルド様のご配慮かもしれん! 間違っても落とすなよ!」
ロクに減速もせぬまま城の中庭目掛けて突っ込んでくる艦は、寸前で急減速をしかけ、
浮力とのバランスを取りながら芸術的といえるほどの見事な着陸を見せた。
すぐに中から一人の男が飛び出し、城壁上へと向かうのが見えた。
アニエスはともかく事情を聞かねばと艦の側に走り寄ると、艦上からおよそ戦には似つかわしく無い、
高貴な装束に身を纏った気の強そうな女性が現れた。
「誰か! 誰かある! ルイズ・フランソワーズの所在を知るものはおらぬか!
 我はエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールなるぞ!」
名乗りを上げた後、すぐに彼女もアニエスに気付く。
「そこの貴女! ルイズ・フランソワーズが何処に居るか……」
アニエスは駆け寄りながら大声を張り上げる。
「ルイズ・フランソワーズですと! 彼女なら突撃に参加し今は城の外です!」
ようやく側まで辿り着いたアニエスは、一息つく間もなくエレオノールに両肩を掴まれる。
691ゼロの花嫁20話18/26:2009/05/20(水) 23:11:23 ID:b59a7Hzr
「外ですって! 何故ヴァリエール家の息女にそのような真似を!」
「誰よりも先に飛び出したのは彼女ですよ!
 突撃部隊はまだ残っているようですが、彼女がどうなったかまでは……」
へなへなと力なく崩れ落ちるエレオノール。
ミスタ・グラモンから、外に飛び出した決死隊達はどう局面が転がろうと全滅は免れぬと聞かされていたのだ。
艦からは兵達が次々飛び降りて来て、アニエスの話を聞くと、皆が一斉に城壁上へと向かって行く。
ルイズ捜索の為に用意していた彼等だったが、
ルイズがこの場に居ないとなると次は城を守るのが自分達の役目だと誰もがわかっているのだろう。

艦が止まるのも待たず飛び出したミスタ・グラモンは、魔法で空を飛びあっと言う間に城壁上に辿り着く。
「やはり……守備隊は貴女一人でしたか……」
マチルダは思わぬ乱入者に、まともに対応している程余裕が無かった。
「アンタ誰よ! 何しに来たの!」
気を取り直したミスタ・グラモンは、一声だけ返すと詠唱を開始する。
「手伝います! 私はトリステインの者です!」
もっと詳しい話を聞かせろと文句を言いかけたマチルダの口が止まる。
マチルダの操るゴーレムから少し離れた所に、もう一体、全長二十五メイル程、
マチルダのそれより一回り小さいだけの巨大なゴーレムが現れたからだ。
「あ、あんたもしかしてゴーレム使い?」
ミスタ・グラモンは微笑を返した。
「アルビオンにこれほどの術者が居るとは知りませんでした。中央より西側は私が、東側をお願いします!」
すぐにミスタ・グラモンの部下達も城壁上に上がって来て、ロクに打ち合わせもせぬまま城の守備任務に就く。
二箇所程、既に敵兵が昇りかけていた場所があったが、あっと言う間に制圧して取り戻す。
あまりの手際の良さにマチルダは感嘆の声をあげた。
「へぇ、何だかわかんないけど、ちょっとはマシになって来たじゃない」
あくまでマシになって来た程度で、これから敵もこちらの体制に合わせた攻撃を仕掛けてくるとなると、
対処しきれるかどうか。
船が一隻手に入ったのだ。これで逃げる手もあるにはあるが、今下手に引いては、
出港準備を整える前に船に乗り込まれてしまう。
今はとにかく敵の攻撃を凌ぎきり、一呼吸が空く間まで堪えるしかないのだ。



遂に主力部隊の後ろが見えて来た。
狂気に満たされた部隊の中で、まともに展開が読めるのは現在、戦争経験も豊富なウェールズのみである。
ともすれば狂騒に巻き込まれてしまいがちな自身を叱咤し、
この類稀な攻撃力を誇る部隊を、何としてでもクロムウェルに叩き付けてやらなければならない。
先頭を突っ走る四人組みにそれを頼む事も出来ない。
宴会の時に聞いた話はとても信じがたい事であるが、彼女達はこれが初陣であるはずなのだから。
実際所々に戦争慣れした者なら決してやらないような所作も見られる。
竜騎士はもう接近して来なくなったが、それで覚悟が決まったのか、
敵も地上部隊のみで止めてやると大挙して押し寄せてくる。
これらを貫き、ようやく主力部隊を抜ける所まで来たのだが、この先が難関だ。
ここから敵本陣までの間に、戦艦の砲撃を幾度となく受けるだろう。
こちらがスピードを落としたら、あっと言う間に袋叩きになる。
しかし自身が乗る馬を見下ろして見ると、最早限界が近い事がわかる。
ウェールズの乗る名馬ですらこうなのだ。他の馬達はよりヒドイ有様であろう。
凄まじい轟音が轟く。
キュルケが爆炎の魔法で、敵陣のケツに大穴をぶち空けたのだ。
その先にクロムウェルの本陣を見つけた兵達は、我先にと大穴に飛び込む。
悩んでいても仕方が無いとウェールズも続き、敵兵の居ない大地を一直線に駆け抜ける。
案の定、遠慮呵責の無い砲撃に曝される。
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:11:35 ID:4dioKABv
●持ちっぽいから支援要らないかな、なんて
693名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:11:44 ID:Z/JL7QGZ
支援
694ゼロの花嫁20話19/26:2009/05/20(水) 23:11:47 ID:b59a7Hzr
しかし、兵達の頼もしさはどうだ。
死の砲弾があちらこちらに降り注ぐ中、誰も彼もが怯えの欠片も見せず渦中へと飛び込んでいくではないか。
見ろ、我等の先に待ち受ける反乱軍共の顔を。
本陣にある最強の近衛であるはずの彼らの、恐怖に怯えるあの様を。
先頭を走る兵士に馬を寄せ、ウェールズは突入直後の策を命ずる。
一万の兵を相手にしては、如何に悪鬼の兵達とて抜けきれるとは思えぬ。
ならば最後の最後で、狂気のみではないアルビオン軍の強靭さを知らしめてやるまでだ。



ハヴィランド宮殿城壁上での戦いは続く。
早速対策を打ってきたのか、反乱軍は同じく巨大なゴーレムを二体前面に押し出して来た。
大きさは二十メイル弱、軍の主力としては申し分ない大きさだが、
マチルダ、ミスタ・グラモンのそれと比べると一回り以上小さい。
しかし連中はそれで充分なのだ。
二体のゴーレムを使い、こちらのゴーレムを抑えてしまえばそれだけで城は堕ちたも同然。
マチルダはもう一人のゴーレム使いに対策を問う。
「貴方もゴーレム使いなら! 敵にゴーレムが来た時のやり方はわかるわね!」
ミスタ・グラモンは不敵に笑い返す。
「武門の誉、グラモン家の者にそれは愚問です! 二体抑えられますか!?」
「やってやるわよ!」
迫り来るゴーレムに、マチルダ操るゴーレムが駆け寄っていく。
これがどれ程至難な技か。敵側でゴーレムを操るメイジ達が驚きに目を見張る。
両手をバランス良く振りながら、両足を過不足無い量振り上げる。
ゴーレムの過重は人のそれと大きく異なる。骨格が無いのだから当然であろう。
下手な過重移動を繰り返した日には、あっと言う間にゴーレムは崩れ去ってしまうのだ。
しかるにマチルダは、ゴーレムをまるで人が動き回るように精密に操る。
その匠の技に、ミスタ・グラモンからも感嘆の声が漏れる程だ。
勢い良く駆け寄ったマチルダのゴーレムは、そのままの勢いを殺さず、敵ゴーレムの一体に体当たりを食らわせた。
土砂がそこらに撒き散らされ、地響きと共に一体が大地に倒れ臥す。
残った一体がマチルダゴーレムの方を向くと、両腕を振り上げ取り押さえにかかる。
これをマチルダは正面から受け止め、より大きな自身の体重で押しつぶさんとのしかかる。
ずしゅずしゅという奇妙な音と共に、のしかかられたゴーレムの胴体がひしゃげだす。
しかしそれを潰しきる前に、先程倒したゴーレムが起き上がり、マチルダのゴーレムに後ろから抱きついてくる。
これで二体による挟み撃ちとなり、完全にマチルダのゴーレムは動きを封じられ、
今度は逆にマチルダのゴーレムの方が全身から悲鳴を上げ出す。
「ばーかっ」
同時に、完全にフリーになっていたミスタ・グラモンのゴーレムが、のっしのっしと歩を進めていた。
目指す先は敵ゴーレム使い。
しかし、彼らも良くわかっているのか兵達に囲まれ、かなり後方からゴーレムを操っている。
辿り着くまでは随分かかりそうである。
「充分なんですよ、ここまで来ればねっ!」
ミスタ・グラモンのゴーレムの、右手が不自然に盛り上がる。
そして何と、手の上にもう一つ丸い土の塊が出来たではないか。
いやこれは土ではない。明らかにより高い硬度であろう、艶やかな光沢を放っていた。
ミスタ・グラモンはその手に持った巨大な金属の塊を、えいやっとばかりに放り投げる。
ゴーレムに物を投げさせるのは、かなり昔からある手法である。
何せ質量がデカイので、攻城や時に戦艦への攻撃にすら用いられる事もある。
だが、微細なコントロールは術者の力量に寄る所が大きいので、対人用として用いられる事はあまり無い。
しかるに、ミスタ・グラモンのゴーレムが放った塊は、
放物線を描き吸い込まれるようにメイジ達の頭上に落下した。
直後、マチルダのゴーレムを取り押さえる二体が二体共土くれに戻ったのは、見事命中した証であろう。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:11:53 ID:amzPAXx4
支援
696ゼロの花嫁20話20/26:2009/05/20(水) 23:12:21 ID:b59a7Hzr
「やるじゃない! もう少し時間かかると思ってたわよ!」
「そんな余裕ありませんからね。さあ、第一陣も大詰めですよ! 次は連中形振り構わず来ますから!」
何とかゴーレムを撃退したが、すぐに次の攻撃が押し寄せる。
山ほどの攻城兵器と、津波かと思われる程の兵の群れが、一度に城壁へと詰め掛けて来たのだ。
如何に二体のゴーレムとてこれら全てを防ぎきる事など出来はしない。
城壁上で石を落としたり、油を流したりしているミスタ・グラモンの部下達も、
あっちもこっちもとエライ騒ぎになっている。
ゴーレムを相手にしていた時の比ではない。
マチルダもミスタ・グラモンも、押し寄せる敵を前に対応のみに追われてしまう。
だからこそ、攻め手が意図的に仕掛けた視覚の盲点を突かれてしまった。
マチルダとミスタ・グラモンのゴーレムを出来る限り端に引き寄せ、
両翼から梯子隊を用いて間断なく攻め立てる。
誰もがそれぞれの役割を果たすのに必死な中、
他の兵士達に隠れるように正門へと達した攻城槌を引きずってきた男達は、
勝機はここにありと正門めがけて攻城槌を叩き込む。
魔法を併用した攻城槌の轟音は戦場中全てに響き渡る程で、
皆がそれとすぐに気付いたが、対応出来る者など一人として居なかった。
四度の打撃音の後、遂に正門がこじ開けられてしまう。
城壁を頼りとするからこそこの数でも何とかなっているのだ。
中からも押し寄せて来られては、退路すら失い個別に倒されるのみ。
どうせもう開かんとばかりに、ロングビルは魔法で正門前に山ほどの土砂を積んでおいたのだが、
僅かな時間稼ぎにしかならなかった。
薄く開かれた正門に、再度攻城槌を叩き込むと、人が三人程並んで入れる程の隙間が出来る。
反乱軍は今度は我等の番とばかりに正門へと殺到するが、正門を抜けてすぐの所に待ち構えていた影達に阻まれる。

「ここから先は通さないっ! 見よ! これぞ対ルイズ用の秘策!」

そこには、白銀の完全鎧を纏った美々しき騎士が整然と並んでいた。
攻城戦に当たる兵は皆、汗と汚れに塗れているのが常であるのに、
かの騎士達にはほんの僅かな隙すら見られず、無機質に侵入者達を見つめている。

「ゴーレム百体だあああああああ!」

薔薇の意匠を凝らした杖を持ち、ひ弱げな容貌を精一杯強面にせんと敵兵達を睨みつけているのは、
ギーシュ・ド・グラモンであった。
ギーシュの声に合わせ、槍を構えた青銅のゴーレムが一斉に突きかかる。
最初に乗り込んだ男達は、何と思う間もなく串刺しになる。
何せ百体がかりである。後から後から入ってくる兵達も次々と餌食になり、屍の山を築く。
中に何が待ち構えているかも知れない敵軍の城に一番乗りしようという猛者達だ、
そんな無数の槍すら飛び越えゴーレムに一撃をくれる勇者も居たが、
急所の無いゴーレムをただの一撃で破壊するのは至難の業。
また、後方に居て槍の届かないゴーレムは、正門前に向け味方の頭を越すように槍を投げつける。
失われた武器は、敵に刺さり抜けなくなった槍は、ギーシュがすぐに再生させて次の攻撃を行う。
こんな近接した状態で投擲武器など正気の沙汰ではないが、
よしんば味方に当たったとしても所詮はゴーレム。痛くも痒くも無い。
さしものギーシュも、百体分の動き全てを細部までコントロールするのは不可能である。
だが、十対を一塊とし、十個のグループとして動きを操るのならば、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、
動きの精度を上げてきた青銅のゴーレムならば、ギーシュにも百体を操る事が出来るのだ。
何とかせねばと城壁上から飛び降りようとしていたミスタ・グラモンは歓喜の声を張り上げる。
「ギーシュ! ギーシュ! お前も来ていたのか!
 そうか……優しいだけの子だと思っていたが……お前にもグラモン家の血は流れていたか!」
か細げな印象が強かった弟は、兄の動きを察し、我も戦場へと戦艦に潜んでいたのだろう。
そんな蛮勇が、正門奥で見事に仕事をこなすゴーレム使いの技術が、
百体を操り尚意気軒昂なその様が、兄の目に眩しく映る。
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:12:29 ID:TRda6mjH
支援私怨紫煙
698ゼロの花嫁20話21/26:2009/05/20(水) 23:12:45 ID:b59a7Hzr
「良くやった! そこは任せるぞギーシュ!」
次々襲い来る敵に声を出す余裕も無いのだろう。ギーシュは兄に向かい、口の端を上げるだけで応えた。



キュルケの魔法でぶちぬかれた敵前衛に、アルビオン兵達が殺到する。
しかし流石に本陣を守る兵達は一撃で崩れてくれるほど容易くはない。
すぐに戦列を建て直し騎馬に対するが、彼等は、アルビオンの鬼兵達は、
皆が皆馬から飛びあがって反乱兵達に襲い掛かったのだ。
飛び込み倒れる馬に潰された者達はまだ幸運であった。
その重量に耐える体力さえあれば生き残れるであろうから。
しかし中空を舞うアルビオン兵に降りかかられた者は、一人の例外も無く斬り殺された。
馬で一瞬すれ違う今までの者達とは違い、
狂乱にその身を委ねたアルビオン兵達と面と向かわなければならなくなったのだ。
少なからぬ実戦経験とたゆまぬ訓練に鍛え抜かれた兵達をして、彼等の前に立ち続ける事は至難である。
人の皮を被った獣。そうとしか形容しようのない野獣達は、
自らの身を省みる事すら忘れてしまったかのように、圧倒的な多数に踊りかかる。
五体全てが凶器と化した彼等は、その存在全てを用いて反乱軍の優れた兵達を駆逐していく。
何処にあるかわからない傷から噴出す血と、その数倍の返り血を全身に纏う彼等。
凝固しこびり付いた血塊の上に更に重ね塗られていく血痕により、
ぬめりとしめった滴りを全身から垂れ流す彼らを見て、恐れを抱かぬ者が何処に居ようか。
そんな血化粧に相応しい色濃く濁った殺意を放ち、
殺傷範囲に入った瞬間振りかざす剣を、槍を、冷静に受け止められる者が何処にいようか。
彼等による狂乱の宴の、最も前線に居る少女は、
既に擦れきってひゅーひゅーと息を吐くのみとなった声を限りに歌い続ける。

さあ行け主よ。たった今、貴女の道は開かれた。

燦がデルフリンガーを振るって開いた血路の先、
そこに目指す標的を捉えたルイズは、燦の背を踏み台に力の限り飛び上がる。
今のルイズの脚力を受け止められる存在など、この戦場において燦以外にはありえない。
ルイズも又、既に人間には見えなかった。
獲物に向かい、わき目も振らず襲い掛かる様は肉食獣そのものである。

「ああああああああああっ!」

千を越える兵達の頭上を飛び越え、ただの一飛びにてクロムウェルが待つ本陣へと飛びかかる。
そのあまりに長すぎる滞空時間は容易くメイジ達の標的たりうるが、
飛び込むルイズの前で守るように低空飛行するシルフィードがその魔法達を防ぎきる。
いや、本陣に控えるメイジ達は数が違う。
ほんの数秒の集中砲火で力尽き、失速するシルフィード。
その巨体で下に居た敵兵達を押しつぶしながらもんどりうって倒れ臥す。
完全に動きを止めたシルフィードにここぞとばかりに襲い掛かる兵達に向け、氷の槍が降り注ぐ。
落下の際の怪我もあろうに、タバサは地に臥すシルフィードの上に立ち殺到する兵達に有らん限りの魔法を放ち続けた。
ルイズはタバサとシルフィードの助力により、魔法が乱れ飛ぶ上空を突きぬけきる。
残るはクロムウェルの側近達のみ。
後僅かと迫った所で、彼等の魔法がルイズを襲う。
歴戦の勇士でもある彼等は、最も効果的にルイズを撃破できるタイミングを図っていたのだ。
ライン、トライアングルスペルが容赦なくルイズに降り注ぐ。
炎に焼かれ、風に裂かれ、氷が突き刺さる中、遂に、ルイズの飛ぶ勢いが殺される。
地に堕ちた所で、再度彼等による魔法の集中砲火を食らわせば、どんな怪物であろうと仕留めきれよう。
危機を脱した、そう確信した側近達が、クロムウェルが、驚愕に目を見開いたのは直後であった。
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:12:58 ID:amzPAXx4
シエン
700ゼロの花嫁20話22/26:2009/05/20(水) 23:13:09 ID:b59a7Hzr
ルイズが堕ちる事で、更に後方に居た白馬に乗った人影がようやく見えたのだ。

全身の力を全て込めんとばかりに盛り上がり、血管の浮き出た右腕。
その先に握られた長大な槍には魔法により疾風が渦巻き、今か今かと放たれる時を待っている。
宙を駆ける白馬は、主の意思が乗り移ったかのように青白き目をぎらぎらと輝かせる。

「貫けえええええええええ!」

ウェールズは散っていった同胞の、怒りに震える仲間達の、全てを込め、槍を投げつけた。

ルイズに魔法を放った直後である。
側近達が稲妻の速さで迫り来る槍に対応するなど不可能なはずであった。
それでもなお、彼等は剣を抜き、彼方より飛来する槍を叩き落さんと挑む。
最初の一人の剣は槍を捉える事が出来ず、虚しく宙を凪ぐ。
二人目の剣は槍が纏う風の魔法に大きく弾かれ、槍にすら届かない。
三人目、彼は勇敢にも体を張って槍に立ちはだかろうとするが、
横から飛び込んだ為、台風のごとく渦巻く風の乱流に体ごと跳ね飛ばされる。

そして、ウェールズの槍は、クロムウェルの胸部に深々と突き刺さった。

そこにどれだけの力が込められていたのか、槍を覆う暴風はクロムウェルの体を紙くずのように引き裂き、
胴体は最早細かな肉片としてしか認識出来なくなる。
辛うじて残った下半身は、その場に力なく崩れ落ち、
風に跳ね飛ばされた両手はあらぬ方向に飛んで行ってしまった。
本陣周辺の時が止まる。
さもありなん。これ程屈強な兵を従えていたクロムウェルが討たれるなど、誰が想像し得ようか。
その僅かな間隙をルイズに突かれた。
彼等が呆としている間に全身魔法傷に覆われているルイズが、側近達との距離を詰めていたのだ。
クロムウェルのすぐ隣に居たシェフィールドのみが、その瞬間を目で捉える事が出来た。
彼女が格別に優れていたという意味ではなく、彼女が一番最後に狙われたというだけであるが。
一騎当千の能力を持つメイジ達が、なす術もなく、
それに気づく事すら出来ず、あっと言う間に血煙を上げ倒れ臥す。
最後にシェフィールドが見たのは、眼下でかがむルイズの、射るような鋭い眼差しであった。
顎を真下から蹴り上げられ、首から上を吹き飛ばしたシェフィールドが倒れると、
ルイズは目にも止まらぬ早足を止め、ゆっくりと地に落ちた槍を拾う。
その穂先に、転がっているクロムウェルの首を突き刺し、
馬ごと人の群れの中に着地したウェールズに向かって放り投げる。
本陣周辺から、細波が広がるように静寂が伝播していく。
反乱軍の兵達は事の次第を理解できず、ただ沈黙するのみ。
まだ騒々しさが残っていた前線の一角に、紅蓮の炎が巻き起こる。
ようやく本陣奥地への道を切り開いたキュルケは、
後ろに燦とアルビオン兵達を従えながらゆっくりと歩み寄ってくる。
既に、反乱軍兵士に動く者は一人としていない。
シルフィードの上に立つタバサは、周囲から引き上げる敵兵士に一瞥をくれた後、
キュルケを、ルイズを、そしてウェールズを見やる。
馬上のウェールズは槍を受け取り、高らかに掲げて宣言する。

「敵将クロムウェル! 討ち取ったり!」

同時にアルビオン兵達から歓声が上がる。
いや、声というには余りにいかめしすぎる。
獣の雄叫びにも似た音の響きは、しかし、
魂無き獣には決して出しえぬ腹の底を振るわせるような感動に満ちていた。
キュルケがこれはサービスとばかりに、本陣に数多掲げられていた反乱軍の旗に魔法で火をつける。
それが合図となった。
701ゼロの花嫁20話23/26:2009/05/20(水) 23:13:33 ID:b59a7Hzr
恐慌に駆られ、我先にと逃げ出す反乱軍兵士達。
この時、アルビオン兵達から放たれた勝鬨の叫びは、
遠く十リーグ離れた先に居た部隊にまで届いたという。
それ程の音量、そして何より、
絶対と信じるに足る圧倒的な戦力を貫きクロムウェルを討ち取ったありえぬ戦果が、
反乱兵達の戦う気力を根こそぎ奪い取ってしまった。
無論全ての兵が逃亡を選んだわけではない。踏み止まり、
この悪鬼達に反撃をと考えた勇敢な者も多数居た事だろう。
しかし半数以上が逃亡を選び、後ろも見ずに逃げ出す中、
指揮すべき者達が根こそぎ倒されてしまった軍の中で、どうしてそのまま踏み止まれよう。
逃亡ではなく後退。そんな言い訳が用意されている中、
正しき選択を選びぬける者が群集の多数を占めるなど、夢想家の空論でしかないのだ。
アルビオン兵の声も枯れ果て、一人、また一人と倒れる頃には、本陣周辺に敵兵の姿は残っていなかった。

燦がヒドイ怪我で座り込むルイズに駆け寄り声をかける。
しかし、どれだけ力を入れても声が出ない。
英雄の詩が届いていたのだから、声も出ているものとばかり思っていたのだが、
どうやら随分前から燦は声を失っていたらしい。
すぐに燦だけでなくタバサやキュルケもルイズのそばに近寄って来る。
「……全員生き残るとか、不思議すぎて不自然さを感じない」
「あ、その感覚わかるわ。全員死ぬか全員生き残るかのどっちかって感じだったし」
憮然とした顔のルイズ。
「……私は最初っから五万全部倒して生き残るつもりだったけど……」
「そんな事考えるのルイズだけ」
「そんな事考えるのはアンタだけよ!」
ルイズはふんと鼻を鳴らす。
「でも、ここまで……かな」
ルイズが見やる先では、隊を二つに分けた艦隊の片方がルイズ達に迫りよって来ていた。
「気分は悪くない」
「ちょっとムカツクけどね。ま、これ以上やったら流石に敵さんに悪いわ」
燦はぎゅっとルイズの手を握り締めた。

機は熟せり。そうワルドは判断し、全艦に攻撃命令を下す。
「全艦突入! 敵本陣上空の反乱軍艦隊を撃破する!」
彼方に突如現れたトリステイン艦隊は、ワルド指揮の下、
紡錘陣形を取り一直線に反乱軍空中戦艦に襲いかかる。
アルビオン軍決死隊の動きは、ワルドの予想を遙かに超え素晴らしい働きを見せてくれた。
まさか本陣まで攻め込む事が出来ようとは、
息を潜め攻撃の機会を伺っていたトリステイン軍の誰もが想像すらしなかった事だ。
砲撃能力、操船技術、いずれも劣るトリステイン軍は、
下で戦う兵達よりも、空に鎮座する艦隊の動きこそが重要であった。
アルビオン決死隊の敵本陣突入に前後して、
激化したハヴィランド宮殿攻撃部隊への援護として、反乱軍艦隊は隊を二つに分けた。
しかも残した艦隊は、眼下のロクに当たりもしないだろうアルビオン決死隊に攻撃を始めたのだ。
艦隊の動きもバラバラになり、砲塔の向きも統一されていない。
今こそ待ちに待った好機と全艦隊を浮上させる。
まだこの距離ではこちらを捕捉出来まい。
それまでに最高速度にまで艦の速度を引っ張り上げ、一息の間に接近するのがワルドの狙いだ。
移動の最中、どうやら敵本陣に動きがあったようで、それに対応する形で敵艦隊が集結を始める。
敵本陣がバラバラに逃げ出す頃、ようやくトリステイン艦隊に気付いた彼らの混乱はヒドイものだった。
眼下の兵達が逃げ散る中、その場に留まり続けるアルビオン兵達に砲を向ける艦、
突如現れたトリステイン艦隊に向かうべく舳先を向ける艦、
陣を並べて迎え撃つべく横腹を見せて艦砲射撃の用意を始める艦、
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:13:41 ID:amzPAXx4
支援
703ゼロの花嫁20話24/26:2009/05/20(水) 23:13:55 ID:b59a7Hzr
まともに統率が取れていないのはそれらを見るだけで理解出来る。
様々に動く艦達の中で、数艦は正しき対応を正確に取っていた。
散発的に襲い来る敵艦砲の砲撃を無視し、ワルドは揮下の艦隊に戦闘方法を伝えると、
自らが戦場において最も頼みとするグリフォン隊を振り返る。
トリステイン艦隊旗艦の艦長は、呆れた顔でワルドを見る。
「……実際、この目にしても奇妙な気分ですな。
 ワルド様が三人も居るなどと……これ全てワルド様なんですよね?」
旗艦に残って指揮を続ける予定のワルドが、愉快そうに笑う。
「ああ、私が二人も居ればあちらは充分だろうしな。さあ、そろそろ始めようか」
二人のワルドに率いられたグリフォン隊は、
敵旗艦と近接するや否や、艦から飛び出し、敵の土俵外である白兵戦を挑む。
戦艦同士の戦いで敵艦に乗り込む手法は確かに存在したが、
当然それを回避する術も戦艦乗りならば皆心得ている。
それすら意味をなさぬグリフォンやメイジによる空中移動による白兵戦が、
今作戦におけるワルド必殺の策であった。
空中戦もさる事ながら、グリフォン隊は生え抜きのメイジ達で構成された部隊である。
何より風のスクェアメイジであり、
トリステイン有数の剣士であるワルドを白兵戦にて止められる者など、
空飛ぶ戦艦の中になど居るはずもなかったのだ。



ギーシュは押し寄せる敵兵達を迎え撃ちつつ、ようやく城門を閉める事が出来た。
もちろんだからといって気を抜けるわけではない。すぐに攻城槌が振るわれるだろうから、
門を支える準備をしなくてはならない。
休む暇すら無く次の仕事へと取り掛かっていたギーシュは、それ故か気付くのに少し遅れてしまった。
城壁上で防戦に努めていた兵士達が、一斉に階段を駆け下りてきたのだ。
はたと気付いた時には、一人残らず城壁下まで降りきっており、
皆一様に壁に寄り添うようにして頭をかがめてしゃがみこんでいる。
ギーシュの姿に気付いたミスタ・グラモンは怒声を上げる。
「馬鹿っ! こっちに来いギーシュ! そこは攻撃範囲内だぞ!」
ミスタ・グラモンの声に被さるように、天空から砲弾が飛来してきた。
耳を劈く爆音、あちらこちらに舞い落ちる土砂。
そう、撤退した敵兵士達に代わり、空飛ぶ戦艦から艦砲射撃が浴びせかけられたのだ。
大慌てで走るギーシュ。しかし、ここでギーシュは自分が如何に疲労しているかに気付く。
覚束ない足元では、振動に揺れる大地の上を駆ける事は出来ず、バランスを崩しその場に倒れてしまった。
悲痛な兄の声も届かず、土煙の中に消えるギーシュ。
駆け寄ろうとする彼をマチルダとアニエスが引きずり止めると、
周囲に降り注ぐ砲弾のせいで、右も左もわからなくなってしまう。

まるで数日間もの間そうしていたような、長い長い砲撃の時間が過ぎ、炸裂音が周囲から消えてなくなる。
ゆっくりと舞い上がった土煙が静まる中、祈るように先を見るミスタ・グラモンは、
のそのそと起き上がる弟の姿を見て歓喜に飛びあがる。
ギーシュは目を回しながらも、ふらふらと兄の方へと歩み寄って来る。
「は、ははは、僕生きてるよ……夢……じゃないよね、これ」
皆が一斉にギーシュに駆け寄る。
幸運にも倒れ伏せていたおかげで、飛び散る土砂や瓦礫の被害には遭わなかったようだ。
「ギーシュ……良かった、良く無事で……」
涙ながらにギーシュを抱きしめる兄。
「あー、すみません兄上。もう耳が遠くてなーんにも聞こえないんですよー」
暢気としか取りようの無いギーシュの声に、皆は声を上げて笑った。

全員で城壁上に登り、戦況を確認する。
704ゼロの花嫁20話25/26:2009/05/20(水) 23:14:17 ID:b59a7Hzr
まるで嵐のような砲撃にも、ハヴィランド宮殿が誇る強固な城壁はその姿を保ったままであった。
どうにか第一陣はたたき返したが、砲撃に続いて第二陣が来るだろう。
そう考えていたのだが、まだ次の部隊が迫ってくる様子は無い。
この場で最も責任ある立場のミスタ・グラモンは、次の動きをどうすべきか迷う。
城壁上から見下ろすと、自分達が乗ってきた揚陸艦はまだ健在な事がわかる。
砲撃のせいで損傷は受けているが、今回の砲撃はそもそも城壁を崩す為のもの。
流れ弾が幾つか当たったようだが、航行不能であるようには見えなかった。
ルイズ・フランソワーズの救出は最早絶望的である。
しかも女子供や老人も既に脱出済みとの事で、これ以上ここに踏ん張り理由は無い。
攻城が一段落している今ならば、艦に乗り込み出航準備を整え、逃げ出す事も可能だろう。
もちろん、攻城に乗り出して来ている敵艦隊からこれでもかという程の砲撃を加えられるだろうが。
足の速い艦だ。如何に敵が艦隊戦に定評のあるアルビオンであろうとも、
逃げ出すだけなら何とかなるかもしれない。
というか残っていても死ぬしかないのだから、選択の余地は無いが。
しかし、どうやら戦場に変化があった模様。
遠眼鏡を覗いていた兵の一人がすっとんきょうな声を上げる。
「なんだありゃ! 嘘だろ! トリステインの旗だぜありゃ!」
攻城に向かって来ていた艦隊が後退していくので何かと思ったが、
ずっと奥の方でアルビオン決死隊を攻撃していた反乱軍艦隊に、トリステイン艦隊が襲いかかっていたのだ。
更に、別の場所を見ていた兵が皆に警戒を促す。
「おい、敵軍が動き出したが……何だあれは? 何処に向かう気だあいつら?」
三千を擁する軍が、ハヴィランド宮殿では無い方向に移動を始める。
他にも移動を開始した軍がちらほら見られるが、いずれも城とは別方向に向かっている。
更に更に、敵本陣にも不可解な動きが見られる。
ミスタ・グラモンは、この場における唯一のアルビオン兵、マチルダに問う。
「……何が起こっているのかわかりますか?」
マチルダも又遠眼鏡で敵本陣を観察していたのだが、その体勢のまま、僅かに唇を震わせながら答えた。
「嘘……でしょ。つっこんでった奴等……本当にクロムウェル討ち取っちゃったみたい……」
城壁上の全員が驚きマチルダを見ると、マチルダは皆にも敵本陣を見てみるよう促す。
どうにも自分の目で見ただけでは信じられないようだ。
遠眼鏡の先に、燃える反乱軍の旗と槍を掲げるウェールズの姿を見たミスタ・グラモンも、
全く同感だと深く頷いた。



反乱軍右翼に位置する一軍を率いる侯爵は、不意に憑き物でも落ちたかのように視界が開けたと感じた。
今までにあった事は、当然全て覚えている。
しかし、何故そんな真似をしてしまったのかがまるで理解出来ない。
アルビオン王家に絶対の忠誠を尽くす事を至上の喜びとしていた生粋の武人である侯爵が、
何故にどうして反乱軍に与するなどという不忠極まりない行為を行ってしまったのか。
すぐに人を惑わす魔法の存在に思い至る。
ここまで長期間、かつ強力な支配力を持つ魔法に覚えは無いが、
そうとでも考えがえなければ辻褄が合わない。
痛恨の思いと憤怒が入り混じった表情で、侯爵は魔法を唱える。
放たれた炎の魔法は、反乱軍の旗をあっと言う間に燃やし尽くした。
幕僚達がぎょっとなって侯爵を見返すと、
まるで狂気の魔法にでも取り憑かれたかのように激昂する侯爵の姿がそこにあった。
「おのれっ! おのれっ! おのれええええええええっ!
 クロムウェルめが! 奴だけは生かしておけぬわああああああ!」
王家を裏切ると聞いた時も、あまりに信じられぬ所業に言葉を失った幕僚達であったが、
今度の豹変もまた彼等の理解を超えていた。
しかし主が嘗てそうであったように、幕僚達もまた主への忠義を疑わず、全てを主に委ねる事に迷いは無い。
後ろも振り返らず陣を飛び出した主君に、幕僚達は自軍の全てに追従するよう指示を下した。

攻城戦に加わっていた艦の一つ、二つに分けた艦隊の片方を任される程の男であった伯爵は、
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:14:26 ID:amzPAXx4
しえん
706ゼロの花嫁20話26/26:2009/05/20(水) 23:14:43 ID:b59a7Hzr
至極冷静に状況を見守っていた。
彼もまたクロムウェルの魔法により心を奪われていたのだが、彼の死によりその支配から解き放たれたのだ。
しかし、全ては今更である。
王家に弓引き、徹底的に追い詰めたのは、他ならぬ彼の指揮であったのだから。
今更魔法に操られていましたなどと言い訳した所で、聞き入れてもらえるはずもない。
それに部下達は単に彼に従って来ただけである。
もう片方の艦隊に居る艦隊司令、
いや、彼を補佐するサー・ヘンリ・ボーウッドもまた、同様の判断を下すであろう。
艦隊司令なぞ飾りも良い所だが、彼が居る限り、反乱軍艦隊がそう易々と敗れるはずもない。
トリステインの乱入は予想外だが、艦隊戦ならば何処の国が相手であろうとアルビオンが遅れを取る事はあるまい。
空に艦隊が健在でありさえすれば、地上の戦闘はあっと言う間に引っくり返る。
今伯爵が寝返る、というより元鞘に戻ろうとしても、ついてくる者などこの艦一艦のみであろう。
それだけで残る全ての艦隊を相手にするというのは無茶が過ぎる。
総司令にして反乱軍の大将クロムウェルは倒れたようだが、戦はまだまだこちらが圧倒的に有利なのだ。
「いや……そうとも言い切れぬ……か」
伯爵同様魔法によって心奪われていた者が他にも居よう。
それに何より、あのアルビオン軍の勇姿を見て、心動かされぬ者が何処に居ようか。
そこまで考えて、伯爵は自嘲気味に笑みを溢す。
「ふっ、ふふっ。何の事は無い。私もまた、ウェールズ殿下のあの剛勇に惹かれただけであるな……」
裏切り者の汚名は永久に注がれぬであろう。
それでもなお、せめて最後の瞬間ぐらいは、アルビオンの旗の下で死を迎えたい。
彼も又、生粋のアルビオン貴族なのであった。
「全員良く聞け! これより我が艦は反乱軍に反旗を翻す! 反乱軍の旗は今すぐ焼き捨てろ!
 アルビオンの旗を! 王家の旗を高らかに掲げるのだ!」
言い訳にもならぬだろうが魔法に操られていた事実を公表し、せめて一矢なりと反乱軍に報いてくれんと伯爵は気を吐く。

敵旗艦に乗り込んだワルドは、艦隊司令を斬り倒し、最後の最後まで抵抗を続ける男に最後通牒を送る。
「降伏するなら命は助けてやる。殿下次第であろうが、総責任者でもない君にはまだ情状酌量の余地もあろう」
しかし男は構えた剣を降ろそうとはしなかった。
「私は軍人だ。それ以上でもそれ以下でもない私は、最後までその任を全うするのみ」
清々しい男の返答にワルドの悪い虫が動きかける。
「……惜しい男だ。しかし、こちらも時間が無いのでな……」
一足で踏み込み剣を弾き飛ばすと、返す剣を腹部に深々と突き刺す。
血を吐き倒れる彼を部下に命じ医務室に運ばせ、ワルドは艦長室より反乱軍全艦に通達する。
「貴様等の旗艦はたった今我等トリステイン軍の手に落ちた!
 大将クロムウェルも倒れたお前達が一体何を頼りに戦い続けるつもりだ!
 我等にとは言わぬ! 命が惜しくばアルビオン軍に降伏の意を示せ!
 さもなくば我等は兄弟国の為、最後の一兵に至るまで貴様等を殺し尽くすぞ!」
今すぐ動きがあるとは思わないが、戦況が更に動いていけば、必ずや効果があろう。
もう一人のワルドも首尾よく任務を果たしたようだ。
主力の艦を二つ、奇襲で丸々その手にしたワルドは、更に次の段階へと戦闘を移行させる。
本来は更に三つ程ステップを踏み、初めてクロムウェルの本陣を襲うつもりだったのだが、
予定より遙かに楽な展開になってしまった。
「ウェールズか。く、くくくっ……思わぬ男が居たものだ……
 そうこなくては、野望の階を上る甲斐が無いというものだ」



後に語られるハヴィランド宮殿攻防戦において、転機と呼ばれる物は幾つかあったが、
その中で最も大きなものとされているのは、やはりクロムウェルの戦死である。
しかしそれと同じぐらい大きな転機とされたのはトリステイン軍の参入と、
反乱軍艦隊の半ばを見る間に撃破したトリステイン艦隊の精強さと、ワルドの巧みな作戦であった。
ウェールズによる大将クロムウェルの撃破と、ワルドのトリステイン空軍による反乱軍艦隊の半壊は、
いずれもがこの戦における最も重要な出来事であったのだ。



以上です。次回が最終回、その後エピローグが一話で完結の予定です
707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:19:24 ID:amzPAXx4
乙乙
708ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:19:29 ID:b59a7Hzr
前話から1月以上も経ってしまいましたが、24話が完成しました。
が、またも規制中なのでどなたか代理お願いします。
709ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:20:10 ID:b59a7Hzr
「うぅ……頭痛い…気持ち悪い…」
料理長との揉め事のあと、そのまま部屋に運ばれたシエスタは、暫くは眠っていたものの、
ふとした拍子に目が覚めてしまった。
だがなぜか、室内だというのに涼しげな風が、頭を心地よく撫でていった。
「…あれ?ここは…」
目を開けてみれば、見慣れない天井。
いや、よく思い出せば昨日見た気がする。
「あ、そっか、姫様の部屋だ。やっぱり慣れないなぁ…、この部屋。」
「なら、そんなところにいないですぐにでもタルブに帰ろう。この僕と一緒にね。」
いきなりかけられた声に寝ぼけと酔いの回った脳が覚醒する。
風が吹いてくる窓のほうに目をやると、そこには割れた窓ガラスと人影があった。
いや、『人』影というには少し違っている。
人間の背には、あんなに大きな翼は存在しない。
だが、シエスタにはその姿に見覚えがあった。
「……ユベル…さん?」
「久しぶりだね、シエスタ。さ、今すぐ帰ろう…ん?」
「生憎だが、今彼女を連れて行かれては困る。ここはお引取り願えるだろうか、亜人殿。」
ユベルが言い切る前に、いつのまにかユベルの首元に刃が向けられていた。
そう言ったのはアニエスだった。
今にもユベルの首を刎ねんと、強烈な殺意の篭った瞳で見つめていた。
「ア、アニエスさん。この人は決して怪しいものじゃ…」
「やれやれ…。せっかく僕と愛するシエスタの再会の場面だというのに無粋な奴だな。」
ユベルが首下に当てられている剣に指を触れたかと思うと、剣はパキンと音をたてて折れてしまった。
驚きつつもそれを表情に出さず、一旦距離をとるアニエス。
アニエスの拳に力が入る。
(…先住魔法?いや、呪文もなにもなしに剣を折った。アレが剣に限らず、人体そのものに行えるとしたら…。
アレはどうやら彼女の知り合いのようだ。が、敵に回すのは厄介だな…。)
「…一体何者だ。何をしにここに現れた。」
刀身が半分ほど折れた剣を構えながら、アニエスはユベルに問う。
「どうしてお前なんかに話さなきゃならないんだ。
僕はシエスタに用があるだけで…あいた、何をするんだいシエスタ。」
アニエスを無視してシエスタのほうに向き直ろうとしたユベルに、シエスタが枕をぶつけていた。
「ユベルさんは普段からそう言う態度だから、いっつも話がややこしくなるんです!
まずちゃんとワケを話してください!」
「…ワケを話したら、タルブに戻ると約束してくれるかい?」
ユベルは、さっきまでの余裕を含んだ笑みを顔から消し、真剣な表情でシエスタに向く。
その表情にただならぬものを感じたのか、シエスタも、アニエスも口を噤む。
「…何があったんですか?」
ユベルは、壁に体重を預けながら言った。
「三幻魔の話は知っているね。シエスタ。」
三幻魔。
神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエル
710ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:20:33 ID:b59a7Hzr
過去にタルブの村に降り立ち世界を破滅させかけたといわれる3種の悪魔。
それらは過去に英雄によって倒されたという昔話をシエスタは知っていた。
「正確には、ボクと十代によって三幻魔のカードはある場所に封じていたんだ。
あれは野に放しておいていい代物ではないし、かといって僕らには必要のないものだったからね。けど…」

「どうやら三幻魔の封印を解いた者がいるようでね。それも、アルビオンに…」



海馬とウェールズの一騎打ちのあと、イーグル号に合流したルイズ達一行は、目的の手紙が置いてあるというニューカッスル城へと向かった。
アンリエッタはウェールズと形式的なあいさつを交わし、今回の旅の目的、手紙の回収の件をウェールズに伝えるとそのあと船の一室に籠ってしまった。
そのため他の面々は各々でアルビオンまでの時間を過ごすことになった。
「姫様…」
アンリエッタの籠ってしまった部屋の前で、ルイズは迷っていた。
なぜ籠ってしまわれたかはわからないけれど、とりあえず食事だけでもと思い、シエスタから渡されたパンをトレイに乗せて、
扉の前までは来たものの、何となく入りづらい。
ルイズは意を決して扉を叩く。
「しっ、失礼します。姫様。あの、お、お食事を…」
トレイを片手に部屋に入ると、アンリエッタは顔を伏せていた。
「あの…姫様。」
「………」
答えようとしないアンリエッタに、トレイを机の上に置きルイズは戻ろうと扉に手をかけた。
「……私は、何をしに来たのでしょう。」
そのとき、ぽつりとアンリエッタがつぶやいた。
「え?」
「ウェールズ様自ら率いているという部隊が、この船一隻。それだけでもアルビオンの劣勢を痛く感じてしまう。」
国を継ぐはずの第一皇太子が戦場に出ているだけでも本来はあまり良い兆候とは言えない。
アンリエッタは報告にあったアルビオンの現状を再確認させられた。
「私はね…手紙もだけれど…ウェールズ様をトリステインに連れて戻る気でいたの。」
「……」
ルイズは…いや、旅に同行した全員がうすうす感じてはいた。
ただ手紙を回収するだけならば、危険な任務とは言え誰かに行かせればよい。
一国の姫がしなければならないことではない。
だが、アンリエッタには手紙のほかにもうひとつ、アルビオンには大切なものがあった。
そしてアンリエッタは、それを取り戻すことができるのではないかと思っていた。
デュエルモンスターズ…始祖から伝えられた力。
平民…いや、そこそこのメイジを相手にしたって負けない力を持っている。
「物語の勇者にでもなった気持ちだった。魔物に連れ去られた姫を救い出す勇者の物語。
勇者と姫が逆だけれどね。」
711ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:20:54 ID:b59a7Hzr
皮肉めいた苦笑が痛々しい。
そんな風にルイズは感じた。
「でも…そんなことウェールズ様は望んでいないのかもしれない。
ウェールズ様は、他の民を残して一人だけ逃げ出すようなことは、きっとしたくはないでしょう。
そんなことにも気付かずに、のこのことこんなところまで来て…私は…」
「それでも…姫様はそれを伝えていません。」
えっ?と、アンリエッタは顔をあげる。
「姫様は、ウェールズ殿下に気持ちを伝えておられないです。こんな部屋にこもったままじゃ、何も!」
「ルイズ…」
ぽろっと口にしてしまった言葉にハッとして、ルイズは頭を下げた。
「す、すみません姫様。私…偉そうなことを。申し訳ありません。」
バッと逃げるようにその部屋からルイズは飛び出してしまった。
「あっルイズ!……気持ちを、伝える……か」
パタパタと遠ざかっていくルイズの足音を聞きながら、アンリエッタはつぶやいた。


ニューカッスル城についた後、すぐに戻ると言ってウェールズは王城の一室に全員を案内し、席を立った。
自室にある件の手紙を取りに行ったのであろう。
しばしの沈黙が部屋を支配する。
次にウェールズが部屋の扉を開くまで、だれも一言も口を利かなかった。
「お待たせした。」
そう言ってウェールズが扉を開くのと同時に、アンリエッタは立ち上がった。
ウェールズは、宝石の散りばめられた小箱を抱えていた。
胸元から小さな鍵を取り出し小箱に差し込むと、カチリという音がした。
中から取り出したのは、何度も読み返されたのか、少しボロボロになった古びた手紙。
ウェールズは、それをそのままアンリエッタへと手渡した。
「この通り、確かに返却いたしました。アンリエッタ姫」
「……確かに、お預かりいたします。」
アンリエッタは受け取った手紙をしまう。
「今夜は既に遅い。日が昇るころ、非戦闘員を乗せた『イーグル号』が出発する。
それに乗って、トリステインに戻るといい。」
それまで黙っていたルイズが、意を決したように口を開いた。
「あの殿下…。船上で栄光ある敗北という言葉をおっしゃっていたのを耳にしました。
アルビオン…王軍に、勝利の目はないのですか?
「ルイズ、やめなさい。」
そう言ったアンリエッタの言葉を遮り、ウェールズは答えた。
「ないよ。わが軍は300。対する敵軍は5万。万に一つの可能性すらない。
我々にできるのは、勇敢な死に様を、敵に見せつけてやることだけだ。」
「ですが、ウェールズ殿下には先ほどのような…スターダストドラゴンのような力が…」
「モンスターがいかに強大であろうと、あのスターダストドラゴンの戦力は個の力。
49700の人数差を埋められる力ではない。それを埋めたければ、神の力でも持ってこなければ不可能だ。」
「セトっ!!」
712ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:21:17 ID:b59a7Hzr
海馬が言った言葉は事実であろう。
オベリスクの巨神兵やラーの翼神竜のような強大な力があれば、この戦況を覆すこともできるかもしれない。
だが、そんなものはない。
「彼の言う通りだ。スターダストや、私の相棒を駆使してもそれを乗り越えることは不可能だろう。」
「それでは…殿下は討ち死になされるおつもりですか。」
「ルイズ!「当然だ。私は、真っ先に死ぬつもりだよ」」
アンリエッタの声にかぶせて、ウェールズははっきりと言いきった。
その言葉に潜む決意に、全員は息をのんだ。
これから死を迎えようとするのに、ウェールズの言葉にはまるでブレがない。
「殿下…」
「私は、この国とともに生きこの国とともに死ぬ。それが皇子として生まれた私の運命だ。
そして今この国は死ぬ。
私は、それでも最後まで戦うと決めた兵とともに、戦い死んでいくのだ。」
『ならば今、死んでいただこう!!』
突然の声とともに、爆音が響く。
たくさんの爆発とともに、城外にあったイーグル号が爆散し、城のいたるところから火が出た。
「なっ!?奇襲だと!!」
「みんな!部屋から出るんだ。広い所へ逃げるんだ!」
コルベールは声をかけながら椅子を使って窓をたたき割った。
全員が火を逃れ正門の前に着いたとき、そこには数百人の反乱軍の兵士と一人、ルイズやアンリエッタには見憶えのあった男が立っていた。
「ワルド…様…?」



多くの手勢を従えるワルドの前へと、アンリエッタが一歩踏み出した。
「どうして…と、聞くまでもありませんね。やはりあなたは、レコン・キスタに寝返っていたのですね。」
「寝返る。私は仕えるべき相手を自分で選んだにすぎませんよ、アンリエッタ王女。
しかしまさか、ここにあなたまでもいらっしゃるとは…ウェールズ殿下のついでに、ここであなたも亡きものとすれば
トリステインへの侵攻も楽なものとなる。」
カチャ、とワルドの周りの剣士たちが剣を構える。
アンリエッタとの問答の裏で、タバサが上空に待機させていたシルフィードの視線からみたニューカッスル城の状況を小声で伝えていた。
「……城は既に兵士とメイジの混成部隊によって包囲されている。上空にも飛竜隊がマークしている。
イーグル号は大破。乗員の生存は…」
「…そうか。」
その報告を聞き、ウェールズはぐっと歯ぎしりをする。
「シルフィードのスピードなら、振り切って逃げられる。けれど…」
「シルフィード。ブルーアイズ、スターダスト、グングニールに乗って空からの脱出を図るのが最良案だろう。」
「そうだね。この人数差、戦いを挑んでも無駄な抵抗にしかならない。」
「ルイズ…貴族は逃げないものとか空気を読まないこと言わないわよね。」
713ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:21:46 ID:b59a7Hzr
「……そのくらいわかってる。ウェールズ様とアンリエッタ様にもしものことがあった時点で、私たちの負け。」
本心では逃げたくない、そう心の片隅でささやく自分をルイズは殺す。
そんな自分のエゴで姫様と殿下を殺させるわけにはいかない。
そう考えているうちにも、ニューカッスル城はどんどん崩れていく。
中に残っていたであろう人たちは…現アルビオン王は…。
多くの命が消えていくのに、助けることができないなんて。
ルイズの胸の中に悔しさがあふれ出てくる。
「ウェールズ殿下、お気持ちはわかりますがここは我々とともにトリステインにお引きください。
ここであなたまで倒れられては、本当にアルビオンは…」
「コルベール教諭…わかっている。だがっ…!」
「最期の別れ話は終わったかな。それじゃあ…」
ワルドは腕をあげ、大したことでもないように兵士たちに告げた。
「殺せ」とだけ。
「シルフィード!」
「ブルーアイズ!」
「スターダスト!」
「ブリューナク!」
号令とともに襲い来る兵士たちの目の前に閃光が走る。
と同時に現れた4匹のドラゴンは海馬たちを乗せ空へと舞い上がる。
「滅びのバーストストリーーーーム!!」
上空にいた飛竜隊をブルーアイズの白銀のブレスが薙ぎ払っていく。
「全速力でここから退避します!」
アンリエッタの号令とともに、4匹の竜は勢い良く飛び去った。
そのあとを眺めながら、ワルドは一人つぶやく。
「…ここまでは予定通りか。さて…それではこちらも追いかけるとするか。」


ニューカッスルを南下し海岸線沿いに4匹の竜は飛んでいく。
「ニューカッスルからそのままアルビオンを離れられれば良かったのに…」
シルフィードの上でキュルケが愚痴る。
「仕方がないよ。現在のアルビオンの位置はトリステインより若干北側に浮いている。
最短距離でトリステインに向かうにはこの海岸際にまっすぐ南下するルートが一番だ。」
コルベールがたまたまイーグル号内でアルビオンとトリステインの位置を把握していたため、海馬たちはこのルートを選択することができた。
しかし一行の先行きの不安がぬぐわれたわけではない。
アンリエッタがブリューナクをブルーアイズへと寄せる。
「…ニューカッスル城からはある程度距離が取れましたね。ここまでくれば…」
下に広がる森の先に、アルビオンの端にあたる部分が見えてきた。
ここから下に下ってしまえば、トリステインは目前だ。
シルフィードの上にいる3人も、ブルーアイズの上にいるルイズも安堵の表情を浮かべた。
「静かすぎる…。」
「え?」
海馬は違和感を覚えた。
敵はニューカッスルにウェールズたちが到着したことを見計らったかのように襲撃をしてきた。
そのうえであの数の兵を用意し、ウェールズの殺害を狙ってきた。
ウェールズの殺害。
殺す必要があるのだろうか?
もはや圧倒的な武力差で持って形勢はすでに反乱軍の勝利が確定している。
放っておけば勝手に戦場で死ぬ相手をわざわざ殺しにくる必要があるのだろうか。
あると仮定して、そこまで計画性を持って行ったこの襲撃にしてはあっさりと逃げられた上に追手もまだ追いついてこない。
(単にこちらの速度が速すぎて追い付けないのか…いや、国一つを追い落とす反乱軍が人数差だけで攻め込むような
安易な策だけでここまで成功するとは考えられん。
さっきの襲撃にしてもそうだ。
ならばこちらが逃げることも想定済みと考えるべきだろう。
そしてわかりやすい最短ルートを選ぶことも想定しているとすれば…)

その考えが
危険を告げる勘が
海馬の頭の中で警告を告げた時と

森の中から、巨大な赤い竜の姿をした悪魔が炎とともに現れたのはほぼ同時だった。
714ゼロの社長@代理:2009/05/20(水) 23:22:18 ID:b59a7Hzr
以上で24話完となります。
少しづつ書いていたのですが、なんとか次でアルビオン編をまとめられそうです。
なるべく早くかけるといいなぁと思ってたりします。
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:31:09 ID:4dioKABv
一人で全部投下するなんてID:b59a7Hzrカコイイ!
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:31:42 ID:b45ZuhY+
海馬の人乙です。
続きをwktkしつつ正座待機。
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:33:02 ID:RhnBSDon
花嫁さん乙!!


>>714
次からは前の人の投下からちゃんと時間あけたほうがいいよ
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:37:42 ID:O5dqrx84
>>717
どんだけあけりゃ気が済むんだ?
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:39:57 ID:ys0GeHUc
>>718
10〜15分の感想タイム空けるマナーだったような。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:42:45 ID:4dioKABv
前の人の投下から、って言っても代理投下してるのは同じ人間だからなぁ……
代理する側の手間を考えたら続けて投下でも仕方ないんじゃないか?
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:44:05 ID:cXU6f/N6
それ何でテンプレに明記せんの?
5分も10分もそう変わらないと思うけどなぁ……
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:44:24 ID:O5dqrx84
ああ、俺代理されたのが花嫁だけだと思ってた。同じ代理人だったから気が付かなかった。
煽るような書き方してすまん。
723名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:45:49 ID:cXU6f/N6
>>720
別に指名されたわけでもないし、同じ人だからってのは別の話でないの?
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:48:11 ID:4dioKABv
乗っかっといてなんだが続けるんならコッチでやろう
運営議論スレ6
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1233565334/
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:49:01 ID:cXU6f/N6
>>722
それは、代理か本人かで変わるってことかな?
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:55:19 ID:Bop46X8K
最近、仕事忙しくてなかなか書けなかったけど、ようやく投下分くらい書けた。
推敲したら投下しようっと。

筋だけなら随分と先まで書けてるんだけどなぁ…。
727名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:01:22 ID:WSCjF6vJ
もはや代理投下では間隔空けなくていいものだと
暗黙の了解があるものだと思ってたのだが
テムプレに明記しなきゃいけないのかよ
728名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:02:56 ID:34CIiz5j
てかあとは議論スレ行こうか。
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:05:51 ID:CgMIASqs
>>727
すいません、初耳ですw
運営で提案してテンプレに追加してもらってください、マジで

10〜15の人と0の人の議論はどうなるか……
スレ的に0の人が勝つのか?w
730名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:07:38 ID:ka8LwJQy
といって誘導すると誰も来ないのが運営議論スレ。

ところで480kbになったよ。
俺スレ立てれないから誰か次スレYOROSHIKU
731名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:08:42 ID:CgMIASqs
それでは、ちょっくら挑戦してきますので、しばしお待ちくだせえ
732名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:12:11 ID:CgMIASqs
スマン、ダメだってよ

ということで、>>733よろしく!
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:14:43 ID:6/VK4EQN
代理だからそのまま行ったけど、もうちょい間隔あけりゃ良かったな
この際だからテンプレにマナーとして投下時は10分以上空けた方が良いってのは入れてもいいかもね

まあ建ててくるわ
734名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:14:53 ID:7JtYyxuH
あ〜、その、すまん
久々にここに来たんだが「青い使い魔」ってどうなったんだ?
更新する予定はあるのだろうか?
735名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:15:53 ID:B2Vvocxa
推敲終わったから投下しようかなと思ったけど、
これって待ったほうがいいのかな?
736名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:15:55 ID:WSCjF6vJ
どうせ次スレ行くからまぁいいか

撤退した
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:16:23 ID:ka8LwJQy
ここではないよ

続き書いたら他のとこで載せるとはいってた。雑談スレ見るといいよ
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:17:08 ID:ka8LwJQy
>>735
10kbくらいなら投下しちゃってもいいんでは。
ギリギリっぽい容量となると困るけど。
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:18:33 ID:6/VK4EQN
>>735
どうぞ

次スレ
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part231
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1242832653/
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:20:14 ID:B2Vvocxa
今回は1話分だから投下しちゃいます。
読んでくれてる方もそうでない方も、ちょいお目汚しします。

ウボァーな使い魔 5話。
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:21:05 ID:7JtYyxuH
>>736,737そうなのか。
サンクス、ちょっくら探してくる
742ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:21:46 ID:B2Vvocxa
あーと、失礼、時間宣言忘れてました。
0時25分からで。
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:22:37 ID:nnmpLwIy
俺の怒りは有頂天だ
744名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:23:36 ID:nnmpLwIy
お、期待
745ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:25:39 ID:B2Vvocxa
ウボァーな使い魔 5話

ルイズとマティウスが寮の部屋を出たのは、他の生徒に比べて随分と遅かった。

目を覚まし「*ゆかのうえにいる*」ことに気がついたルイズは、即座にマティウスを叩き起こし、
使い魔のありかたというものについて改めて説教を行ったのだ。もちろん、皇帝陛下に全く反省した様子はない。
この調子では明日の朝も、床の上で目を覚ますことになるかもしれない。

そんな無駄な説教を終えて気づいてみれば、間もなく授業が始まる時間だ。
のんびりと食堂で朝食を食べている暇はない。

「マティ、授業に行くわよ!!」

ルイズは己の使い魔に声をかけ、急いで部屋から出る。今日の授業は必然的に使い魔のお披露目を兼ねている。
数日前のルイズの予定ではこの日の自分は凛々しいグリフォンや勇猛なドラゴンを従えており、皆を見返すはずだったのだが、
後ろからついてくるのは、自称元皇帝という問題児…ならぬ問題魔だ。

一方のマティウスとしても、この世界の情報が手に入る機会を逃すつもりはない。
新たな魔法の知識が増えることは喜ばしいことだ。
現在行使できる魔法とこの世界の術式とを組み合わせれば、新たな魔法も開発できるかもしれない。
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:26:10 ID:CgMIASqs
支援
747ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:27:27 ID:B2Vvocxa
そんな2人が教室に入ると、他の生徒たちが一斉にルイズとその使い魔に注目する。
もっとも、注目されることに慣れ切っているマティウスは、視線の集中砲火を然して気にする様子でもなく、
そのまま適当に空いている椅子に腰を下ろす。
豪華な衣装をまとったマティウスが、小さな椅子に座っている様子はいささか奇異な光景だ。

「おい、あれがルイズの…」
「貴族っぽいけど…ホントに平民なのか?」
「メイジじゃないらしい」
「しかし、平民を召喚するなんて流石はゼロだな」

他の生徒達はルイズとマティウスを中心として遠巻きに囁き合っている。
確かに、教室にいる数多くの使い魔と見比べると、改めてマティウスの異常さがわかる。
犬や鷹に始まり、火トカゲや竜に似た姿の幻獣までいるが、当然人間などいない。
そんな他の生徒の使い魔たちを見て、ルイズは無表情のまま わずかに目を細める。
その時、一人の女生徒が囁き合う生徒らを押しのけながら、マティウスに向かってきた。

「アナタがルイズが召喚した使い魔さん?」

マティウスに声をかけた彼女の名はキュルケ。隣国ゲルマニアからの留学生である。
燃えるような赤い髪に真紅の瞳、褐色の肌を持つ美女だ。
彼女の実家のツェルプストー家は、ルイズの実家であるヴァリエール家と国境を挟んで隣接しており、
トリステインとゲルマニアの戦争ではしばしば杖を交えた間柄でもある。
二つ名は「微熱」であり、その名の通り火の系統魔法を得意とする。

「マティウスだ」

キュルケの問いに名を名乗ることで返答するマティウス。
流石にそこは美女を100人単位で侍らせてきた皇帝陛下だ。
美女1人を前にしても、その冷たい表情には変化がない。
748ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:28:49 ID:B2Vvocxa
「ちょっとキュルケ、人の使い魔に何か用なの?」

ルイズが横から割って入る。何しろキュルケは家系レベルの敵である。
そんな相手から使い魔にちょっかいを出されて黙っていてはヴァリエールの名が泣くというものだ。

もっとも、ここで引き下がるキュルケではない。

「だって、素敵なお方じゃない?ルイズにはもったいないんじゃないかしら」
「こんなヤツ、ちっとも素敵なんかじゃないわよ!!」

主人を床に寝かせる使い魔を「素敵」と評するのは間違いだと言わんばかりに否定するルイズ。
その騒ぎ立てる様子はいつも通りの「ゼロのルイズ」だった。
周囲の生徒もキュルケとルイズの「日常」を半ば呆れつつ見守る。
話題の中心のはずの皇帝陛下に至っては見てすらいない。


「それじゃね ミスター・マティウス」

そう言い残し、ひとしきりルイズとの「日常」を繰り広げたキュルケが立ち去ったのと教師が教室に入ってきたのはほぼ同時だった。
他の生徒たちも慌てて席に向う。ガタガタと椅子を動かす音が教室に響いた。
入ってきた教師の名はシュヴルーズ。「赤土」の二つ名を持つ土のトライアングルメイジである。
彼女は教卓から教室を見渡し、満足そうな笑みを浮かべた。

「毎年、この時期になると皆さんの立派な使い魔を見るのが楽しみです。」

彼女はそのまま視線を滑らせ、マティウスの姿を捉える。

「なんだか珍しい使い魔を召喚された方もいるようですね」

シュヴルーズもすでにマティウスの噂を聞いていたのだろう。
何も知らなければ、使い魔どころかどこぞの貴族が授業に紛れ込んでいるようにしか見えないはずだ。
もっともマティウスがメイジではないと思っているクラスメイトは、
「平民にも衣装ってヤツだな…見た目は貴族だよ」などと囁き合っている。

「それでは、授業を始めますよ」

749ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:29:59 ID:B2Vvocxa
シュヴルーズの授業の間、マティウスは無表情のままで顎に手を添えて椅子に座っていた。
真面目に教師の話を聞いているところをみると、得られる情報は余さず得るつもりなのだろう。

シュヴルーズの説明によるとこの世界の魔法は彼の居た世界とは随分と異なる構成だという。
その系統は『火』『水』『土』『風』の4つに分かれているらしい。

授業の中で、シュヴルーズは『土』の系統魔法である『錬金』を行ってみせた。
彼女は杖をひと振りし、ただの石を金色の光沢を持つ真鍮に変化させたのだ。
彼女の言葉によると、トライアングル程度では金を錬金することはできないらしいが、スクウェアクラスになれば可能だという。

「では、実際にやってもらいましょう。 えー、では…ミス・ヴァリエール」

シュヴルーズがそう言った途端、ほんの一瞬 教室の時間が止まった。
そしてすぐに教室の空間が緊張で満ち溢れ、生徒がざわざわと騒ぎ始める。

「はい、静かに。 
 では、ミス・ヴァリエール。この小石をあなたの望む金属に変えてみてください。」
「はい」

ルイズの返答とともに、教室がどよめいた。
少し離れた席に座っていたキュルケが手を上げて発言する。

「先生、危険です。」
「危険?何故ですか?」
「彼女の魔法をご覧になるのは初めてですよね?」
「ええ。ですが、彼女が努力家と言うことは知っていますよ。
 失敗しても構いませんから、やってみてください。」

その言葉を受けて、前に進むルイズ。
他の生徒たちは机から立ち上がりつつある。

(呼んだのはあんなヤツだけど、召喚には成功したんだから…
 だから、きっと成功するわ…きっと…)

何度も自分に言い聞かせながら、教卓の前に立つ。
心臓がドキドキしている。乾いた唇を舐めて湿らせる。掌に汗をかいているのがわかる。
750ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:31:48 ID:B2Vvocxa
マティウスも何が始まるのかとルイズに視線を向けている。
すでに彼女が無能者だとは見当がついている。
だが、周囲の慌て方を考えると、どうやらただの無能者ではないようだ。

その答えはルイズが杖を振り下ろすとともにやってきた。

爆音と閃光。そして衝撃。

マティウスは「ほぅ」と思わず声を出していた。
純粋な魔力の爆発。エネルギーの変換効率もその変換速度も申し分ない。

通常、魔法で相手を殺傷する場合は魔力を何らかの形に変換しておこなうものだ。
炎であったり、稲妻であったり、場合によっては核反応であったりする。
それによって威力や扱い易さが変化するわけだが、ルイズの引き起こした爆発は、
純粋に魔力を爆発させたもので、無駄がなく、何よりも速度に優れていた。

(無能者と思っていたが、これは逸材かもしれぬ)

錬金が失敗したことはどうでもよかった。
あの現象を引き起こすには、かなり高純度な魔力を扱う必要があるのは明らかだ。

興味を失いかけていた召喚主に、思わぬ才能を発見したマティウスはニヤリと笑った。
その何らかの企みを秘めたような妖しい笑みは、爆発によって舞い上がった粉塵に隠れ、誰も見ることはなかったが。

5話 了
751ウボァーな使い魔:2009/05/21(木) 00:33:29 ID:B2Vvocxa
どうもでした。
ようやく次回あたりでギーシュ戦が書けそう。
仕事が忙しくなければ、忘れられないうちに書きたいな〜
752名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:50:07 ID:AJsiSWrV
乙ゥボァー
753名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:51:43 ID:h23LGl/j
これはZで乙じゃないんだからね!
754名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 01:22:37 ID:lx3BV84p
FF2をクリアした時を思い出すと大物ぶるマティウスに違和感がある。
755名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 01:35:31 ID:/P2K8msF
>>754
なにしろ あの断末魔だしね…w
しかし、大物ぶっておいて親衛隊の後ろに登場するのが、陛下クオリティ
756名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 02:37:39 ID:f7RR/jsx
                                          ○________
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
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         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
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      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
757名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 02:39:45 ID:f7RR/jsx
          ,  ' ´ ̄ ̄ ̄ ー- 、
        /             ` 、
      /     /     ヽ  、    \
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     /     |,斗 ミ    弋T ト、 |   |i i |
     | |  | |/| | |\ヽ   | _」_ハ |   |i | |
     | |  | リ  >― ミ\ヽ イレ-、\|  :|乂ノ
     | |  V / ん.ハ   }.ノ{ハ...i} トレ ∧∧
    /i|   ', ヘ {こリ    ヾ.シ  レ'  | \
   / |.   ', ...::.::'''      :`゛::::: |   ',   \
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               |ハ l| :l`トム  l仏匕l | r┴-、`、
               ∧ lV}ィ=ミヽ リ ィ=ミ / {こノ_j_ ヽ
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          , -=彳   j{ ゝ、 {´  ヽ /   ∧.   |   \
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          ゝ-、_ヽ _(ノ )_ノ ノヒ乂ツ/   `ヽ ::::::l      ノ
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758名無しさん@お腹いっぱい。
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
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      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
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