あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part228
1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/04/25(土) 05:37:52 ID:mcROpr2G
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part227
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1240605472/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
乙
30分から「ゼロスポーン2」の代理投下をするでござるの巻
ずっと前からこびりついている垢の
梅毒性ゴム腫のなかで根こそぎしなければならなかったが
俺は悟った、根こそぎにされたのは俺であり、──
おまえたちはすでに澄まされたものをまた澄ます
梅毒を移す用心を
予め充分に
しないのであれば
意思の鼻をクンクン鳴らす鼻面のなかで
腫瘍の陰茎(さお)に梅毒を移す用心をしないのであれば。
「アルトー後期集成T」
河出書房新社 訳宇野邦一・岡本健
第二話
人間にとって幸福とは一体なんだったのだろうか。そんな陳腐で益体のない事を考える時間だけが存在した。
一つだけいえるのはここトリステイン魔法学院のお貴族様方は、揃いも揃ってどいつもこいつもクソッたれたボンクラどもという事か。
人間──シモンズだった頃を思い出そうとし、スポーンはため息を一つついた。記憶の断片がまたばらける。
ルイズに召還されてからスポーンの記憶は徐々に失われつつあった。それに反比例するかのように増大するエクロプラズム。
原因は不明だ。スポーンは己の内部で何が起こっているのか、皆目見当もつかなかった。胸裏深くに刻まれる哀しみ。
一ついえるのはこの世界は魔力に満ち溢れているということか。
こめかみだけが疼く。いつもの事だ。皮袋に詰めた林檎酒を口に含む。
この林檎酒はシエスタから貰ったものだ。人の温もりを感じる。スポーンはそれをいつも大事に持っていた。
また平民に化けてチンピラまがいのメイジを八つ裂きにするか。殺しておけば周りも当分は静かになる。
おまけに魔力まで頂けるというのだからたまらない。一石二鳥とはよくいったもんだ。
異世界ハルケギニアに来て約一週間、スポーンはそれまでに十人のメイジをその手で始末した。生きていてもろくな事をしない輩だ。
殺してやったほうが平民の為になる。学院内では流石に殺さないが街へと繰り出せば獲物は大勢いた。
メイジを殺せば殺すほどに得られる魔力──地獄の戦士たる凶暴性と闘争心が徐々に露呈していく。
風にはためくマント。ほんの一週間の出来事が数年にも匹敵するような感覚をスポーンは覚えた。
「ひひひ、おいスポーン、そんなとこで何を考えてやがる」
顔面にMのブルーペイントをいれた醜い肉襦袢がスポーンに声をかけた。やたらと恰幅の良い──ほぼ球体の体が上下に揺れる。
口から漏れる腐った歯茎の臭気。エナメル質の剥げた味噌っ歯を剥きだして邪悪なデブが笑った。顔をしかめるスポーン。
笑みを浮かべるクラウンの顔面──相変わらずむかつく野郎だ。拳の一つでも食らわせてやりたくなる。
「あっちへ失せろ。クラウン」
「つれねえなあぁぁ、同じ使い魔同士じゃねえかよおぉ」
ドバドバミミズをくちゃくちゃと食い散らかしながらクラウン──バイオレーターは邪悪な笑みを浮かべた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
暗い暗い、ここはどこだ。ピッチブラック(真っ暗)の白昼夢。頭がどうにかなっちまいそうだ。
目の前に現れた巨大な鏡に呑み込まれ、クラウンはわけもわからずに騒ぎ立てた。混乱する脳髄。
まさか天使どもの仕業か。シモンズにマレボルギアを殺され、わけのわからぬ鏡に呑み込まれ、これでは踏んだり蹴ったりだ。
「くそったれがあぁぁっっっ!!」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
五日前
シエスタの手伝いを済ませるとスポーンは教室への道のりをルイズと連れ立って歩いた。どこか誇らしげなルイズの横顔。
教室に入ると嘴の黄色い生徒達がごちゃごちゃとやかましく囀っていた。耳障りだ。外を見やった。まだ雨が降っている。
「おい、グリンガ(白んぼ)ども、少しは大人しくできないのか」
スポーンに睨まれ、生徒達が押し黙った。昨日の出来事でも噂していたのか。
昨日──シエスタの同僚メイドに絡んでいた馬鹿を八人ばかり半殺しにしてやった。
素手で四肢の骨を砕いて芋虫にしてやったのだ。マントやエクロプラズムを使うまでもなかった。
見せしめにひとりくらい殺しておきたかったが、ルイズの立場もあるのでそれは止めた。
後にルイズから話を聞くとその内二名は『トライアングル』というそこそこのメイジだったらしい。
女生徒の一人がスポーンに向かってメイジ殺しと呟く。
スポーンの眼球が呟いた生徒を捉えた。見据えられ、女生徒がおずおずと俯く。
傍らのルイズを抱きかかえるとスポーンは椅子に腰を下ろさせた。
周りの生徒を射抜くような視線で威嚇し、スポーンも己の椅子を確保する。
傲岸不遜な態度に、しかし誰も文句はつけられなかった。スポーンは他の生徒達の使い魔を見渡した。
サイクロプスに三本腕、蛇と犬を合成したようなもの、どれもこれも変わっている。奇形のオンパレードだ。
アル中の幻覚くらいでしかお目に掛かれぬ代物ばかりだった。人の──使い魔の事はとやかく言えぬが。
上品そうな中年の女教師が教室のドアを開け、生徒たちに会釈した。中々人のよさそうな女だ。
足を組み、スポーンが相手の出方を伺う。教室内部に漂う威圧感に女教師の筋肉が引き攣りを見せた。
「え、ええと、それでは授業をはじめたいと思います。私の名はシュヴルーズ、土系統のメイジです。
これから皆さんに『錬金』の方法を教えていきます。
皆さんが無事に進級できて私も嬉しいですわ。特にミス・ヴァリエールの使い魔さんは、その、とてもお強いとか」
「天網恢恢疎にして漏らさずだ」
意味ありげにスポーンが呟くと中年の女教師──シュヴルーズは誤魔化す様にコホンとセキをした。
その相貌には恐怖の色が見え隠れしている。
「ではおさらいも兼ねて今から皆さんに私の『錬金』をお見せします」
掌を広げ、小石を乗せるとシュヴルーズは杖を振った。小石が黄銅──否、真鍮へと変わった。
「ミセス・シュヴルーズ、それはもしかして金ですか!?」
ルイズが興奮気味に声を荒げて質問する。シュヴルーズはやんわりとした口調で答えた。
「いいえ、ミス・ヴァリエール、これは真鍮です。私は『スクウェア』ではないので黄金は無理ですわ
さてと、では他の方の『錬金』を見せてもらいましょうか。ミス・ヴァリエールこちらへ来てください」
シュヴルーズに当てられ、ルイズが僅かに尻込みした。他の生徒達が止めに入る。
「『ゼロ』にやらせるなんて、先生、それは危険ですよっ!」
「お願いですから他の生徒にしてくださいッッ!」
羞恥と屈辱にルイズの顔貌が紅潮した。躊躇いがちに視線を机に落とす。スポーンはそれを見逃さなかった。
「俺がルイズの代わりにその『錬金』とやらをしてみせようではないか」
二メイルの巨躯を立ち上がらせ、スポーンは有無も言わさず教壇へと滑り込んだ。
「ギリシャでは黄金を神、ゼウスの子を呼んだ。その輝きは誰にも蝕むことはできぬと」
スポーンが魔力を開放する。物質の変換ならお手の物だ。
エクロプラズムが秘める淡緑色の魔力が教壇を包んだ瞬間、教壇は純粋なるゴールドへと生まれ変わっていた。
目方にして約六万ドブロン(二百七十六キロ相当)の金塊だ。
シュヴルーズは目を見張ると床に倒れこんだ。動揺している。瞳の視点が宙を浮いているのがわかった。
「え、詠唱もせずに、こ、こんなことが……オ、オ、オールド・オスマン、い、い、いいえ、
始祖ブリミルですら不可能ですわ……」
歯茎の根が噛み合わぬのか何度もシュヴルーズがどもる。
何人かの生徒が白目を剥いて昏倒した。屎尿の匂い──誰か漏らしたか。唖然とした表情を浮かべるルイズ。
一エキューに対する金の含量が三・六グラムだ。六万ドブロンといえば王室の年収二年分に相当する。
「魔法を使えるのは貴様らメイジだけではないぞ。その事を良く覚えておけ」
不気味に光るスポーンの双眸が生徒達を俯瞰した。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「コルベール君、君はどう思うかね?」
オスマンはコルベールを見据え、問うた。頭を振るコルベール。
「全く見当もつきません。しいていえば精霊の類でしょうか」
「ふむ、しかし精霊にしてはあまりにも強大で邪悪すぎる。まるで魔力と怨念の集合体が人の形を取ったような……
エンシェントドラゴンすら凌駕する無尽蔵の魔力か。奴の魔力を調べたとき、あやうく闇に引きずり込まれる所じゃった。
全くミス・ヴァリエールもとんでもない化け物を召還したもんじゃ」
「それでも自制心や理性はあるようです。
かなり短気でプライドも高いようですがこちらが怒らせなければあちらも手出しはしてきませんよ。
今の所は誰も殺されてはおりませんし、
それになんというか、変にお人好しな所があって、
困っている平民を見るとついつい力を貸してやったり妙に人間臭いとでも言いましょうか」
「ほほ、まるで童話に出てくる魔人じゃな。凄まじい力と誇りを持ちながらどこか間が抜けておる」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
食事の風景を眺めながらスポーンは銀のコブレットに注がれた葡萄酒を飲み干した。美味い。
スポーンにまとわりついては嬌声を上げるルイズとは対照的に周りの貴族の子弟達は怯えていた。
素焼きの土徳利から酒を注ぎ足すスポーン。陰鬱とした食卓だ。スポーンがわざと音を立てる。
びくっと反応する生徒達──サディスティックな気分だが悪くはない。
メイド達の運ぶトレーの音だけが鼓膜を撫でる。食後のケーキも食べずに生徒達が足早に食堂から出て行く。
その中で端正な顔立ちをした生徒だけが何かを探していた。顔に似合わず中々の度胸だ。
本当に美しい造形だ。薔薇の葉で象られたような唇が女心をくすぐるだろう。
あの唇で愛を囁かれれば初心な少女のひとりやふたり簡単に落とせそうだ。
足元に転がる小瓶に気づいたシエスタが拾い上げ、端正な顔立ちをした生徒に声をかけた。
「あの、お探しの物はこれでございましょうか」
シエスタがそっと生徒に小瓶を差し出す。端正な相貌が歪みを見せた。生徒の明眸にあせりが生じる。
ふたりの女生徒が立ち上がるとツカツカと端正な顔立ちの生徒に近寄り、両頬に平手を見舞った。
スナップの利いた中々良い平手打ちだ。無言で立ち去るふたりの女生徒の背中を呆然と眺める端正な顔立ちをした生徒。
まるで白痴のように口をぽかんと開いている。二股でもばれたのか。
突然、端正な顔立ちをしたその生徒が色めき立ち、声を荒げてシエスタに向かって怒りを露にした。
相手の豹変に混乱するシエスタ、おろおろと狼狽し、平謝りを繰り返す。
それでも生徒が次々に発せられる罵倒はとまる事を知らなかった。
激しい剣幕にシエスタは涙を零して謝り続けるしかなかった。相手に気取られぬようにスポーンがそっと相手の影に忍び寄る。
「無礼者めぇッッ、貴様ぁぁッ、自分が何をしでかしたのかわかっているのかぁぁッ!」
生徒が拳を振り上げ、シエスタを殴りつけようとした刹那、スポーンの鎖が相手の右腕を絡め取った。
「おい、パチューコ(若造)そこまでにしておけ」
「何だ、君は僕をグラモン家のギーシュだと知って……」
ギーシュと名乗った生徒が後ろを振り返ると、そこには憤怒の形相で自分を見据えるスポーンがいた。
「グラモンか。まるでヨーロッパの歴史そのものだな。勿論貴様の親父が元帥なのだろう?」
287 :ゼロスポーン2:2009/05/02(土) 19:46:14 ID:8v6o6duI
今日の分はここまでです。
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ということで、代理投下終了でござる。
まさか帰って来るとは思わなかったぜスポーン
シモンズなら確かに三銃士とか読んでるだろうなあ
乙。
ところで、前スレ>816のモロボシダンは考えちゃいる。
いるのだが、ギーシュを叩きのめすスコッパーだとか、歴史的和解とか、そういうのしか思い浮かばない。
スポーン乙です、続きが読めて嬉しいよ
代理の人もお疲れ様でした、祝杯を挙げたい気分って奴だぜ
前スレ熊の爪の人乙。
しかし実況生徒の名前を想像したら
「ナカノ・ド・アデランス」なんて名前が頭からどうしても離れないんだ
そもそも中野さんは解説なのに・・・
実況はジロー・ド・アナウスですよ?解説がイチロー・ド・カイセツで。
ハイハイなハイ、毎度、世界に羽ばたく炎蛇のコルベールさんです
SPAWNの人、代理の人、乙。
バイオレータも召喚されてたのか…、召喚(キス)した奴が可哀相すぎる。
マレボルギアを倒した後なら魔力も使い放題かー
前スレで、虚無のパズルでタバサ救出編があれば
プリセラがメインになるだろうとかあったので読み返して見たが…
ビダが際どい格好をした姐さんにボコられる姿が浮かんで来てうらy(ry
そこまで話が進むかはわからないが、姐さんはイザベラと絡んでもいいなと思う
18 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 00:32:06 ID:6lwr+9F8
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なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://|
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从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
_/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
/´ ̄`ヽ ( /Tえハフ{ V / /
/ 人 l-ヘ \:::∨::∧ / ∠
/ /爻ヽ ヽ_|::::__ノ }ィ介ーヘ ./>⌒ヽ , -─‐-、
{ /∠⌒ヽ } } Σ___/| | |V::::ノ/ } レ' , ---、 ヽ ____,
レ'彡イ {Uj }ヾミイ|:::::::::::::::::ハ >∠ / / `! | t´r'⌒
⌒)ノ | ドこzン八三}≧__::::::::/:∧/ヾ ̄ヾノ_ノ ァ'-─-、 ゞL__,〃
(ソ⌒ヽ! ト--イ ⌒__,ハ.' y'´7´l}_, ミy'´7´l}_, -‐┴-、 `ヽ  ̄ ′
レ) ! ト--イ ( ノ `ーべ⌒ヽ>y' 〃, -┴┴ミ、_}_}_}_j ヽ⌒) j
ヽ)、___,>、ト--イ ))〈 ト_チrく // ̄ヽ、_) / / _..._
'⌒>‐ミ、 \)こZヾ--ヘ{{ l| y' ゝ ヾミ゙)'}|≧>、 / /バ⌒ヽn V/ 〃⌒ヽ
(⌒ヾ>ニKド、⌒Yく_/ヽj} 人_ゝ__>==1 r彡"´/ / | | /y'}[__// `
,ィ  ゙̄Vソ,イノ \__ム丁了)ノr'ン´フノ ィ彡/| | ヽヽ. // ヽVソ´
/ / r‐ヘ `Y { [二[| ,勹77´ ̄ シ三彡'/| |\ ヽV/ミ、_} Kミ、
{ { トZべ.」 | [三}〒ラ77 (_)(_) r三/ / | |> \f⌒l/l | L }
ヾl | l三ィ∧ l __. [三}⊥.イ工===ァべ/ /,ィ| |/>l{ l>}X.| |゙)レ′
ヾ, ヽ {三N>} Y二ヽ」ニ/l⌒ヾ´ / {O}___」 |/rくゝ _ソ\l |(
>、 \ 缶jfハ >n' fy' l ⌒y} //⌒\/rヘ l/ /7j\j j
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ケミ三彡" / ゝ ゞ= 'ノ二/ \ ゝ" /
なぎ払うな
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突き上げろー |:|\\:::::||.:.||::::://|
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从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
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/´ ̄`ヽ ( /Tえハフ{ V / /
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ケミ三彡" / ゝ ゞ= 'ノ二/ \ ゝ" /
蒼の作者がスレ撤退声明出したな
信者の過剰な期待が重荷になってたらしい
今まで馬鹿みたいに神輿担いでた連中は反省しろよ
>>22 確か漫画版とアニメ版で解説と実況の人が違うんだよな。
悟空の人来ないかな〜
結構面白いから続きが楽しみだ
>>21 何でお前が偉そうに代弁しなきゃならんのだ?
あんた何様?
>>26 その腐った認識、全て貴様に返すとでも言っとけ。
あからさまな煽りに反応するなよ。ホントに耐性無いな。
次から気をつけるとかじゃなくて今気をつけろよ。。。
つ「スルー」の魔法
俺平民だから魔法はちょっと
俺メイジでも野球選手でもないから見逃しはちょっと
ライダー1号「ここはじっくり作戦を練ろうじゃないか」
ルイズのスルー能力の低さは異常
だって『魔法』は使えないじゃんw
つ「錬金」
ちょっと!どうしてくれるのよ!
あんた達が騒ぐから居なくなっちゃったじゃない!
私だって…私だって楽しみにしてたのにっ!
…と、小さな胸を痛める美少女がだな
>22
……すまん、これは『燃える!お兄さん』の穴薄太郎と貝節次郎だった。
完結する方が少ないんだし期待するだけ無駄だっつーのに
何が○○マダーだよ、音沙汰無いのは諦めろ
諦めるよりは感想スレに内容に触れた長めの感想あげる方がなんぼか有意義だと思われ
復活の前例もあるわけだし
コンボイ「私にいい考えがある」
>>29 自分や毒吐きスレの連中はやたらと反応してる癖に
他人には反応するなってか
なんてダブルスタンダード
心配しなくてもお前ら30過ぎたら魔法は覚える
俺は後2年で魔法が使える条件を達成出来そうだ
今更だが「キャプテン翼」の解説者はあの選手たちが足元にも及ばない超人だと思うのです
早口だっけ?
早口で聖闘士に適うものはいないぞ。
俺の中のコンボイと言えば無茶ゴリラに他なりませぬ
別のとこに移動して連載続けてるのって今何作くらいあるんだろうな
58 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:01:43 ID:h34Jr0i8
お久しぶりです。6話の投下予告させていただきます。
2時10分を予定しております。
さるさんに引っ掛かるかも知れませんが、よろしくお願いします。
59 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:10:45 ID:h34Jr0i8
ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 6 「少女と仮面」
向こう側に見えるわずかな光が、まるで楽園の様に感じる。
少なくとも少女はそう思えた。
死は覚悟していた。
しかし、その言葉は正しくないのであろう。
少女は思う。
死を覚悟すると言う事は恐怖と戦わなくてはならない。
だが、目の前の恐怖に対して戦う事など無力な自分には端から無理だったのだ。
勇者や英雄と呼ばれる人間は少なからずそれと戦ってきたのだろう。
あるいは、その中にはこの恐怖に勝てなかった人間もいるかも知れない。
目線を少し上に見上げる。
更に恐怖を感じるだけだが、それでも確認しなければならない。
目の前に居る5メイル程の具現化した恐怖を。
それは、本来ここに居る筈のない存在。
トロール鬼 人が寄り付かない様な山岳地帯に住まう天然の殺戮生物。
獲物は自分だろう。自分を見る視線が教えてくれる。
(……申し訳ありません)
心の中であってもそれだけは言っておこう。
たとえ、ここで朽ち果てる無能であってもそれくらいは許されるべきだろう。
一体が前に出てくる。無力な自分に対するトロール達なりの礼儀なのかもしれない。
手には棍棒と言う表現が生易しいような石の塊が握られている。
振り上げる動作が時間が止まった様に見えたが、見えただけだった。
振りかぶった時点で、自分の足が一歩も動けない事がそれを告げる。
「ごめんなさい、母さん、父さん」
ありきたりな言葉だが、それが言えれば充分であった。
一瞬目をつぶり、振りかぶった棍棒を見る。
しかし、奇妙な感覚を覚えた。
何時まで経っても、振り下ろされない棍棒に違和感を感じる。
時間が止めっている? 今度こそ、そう感じるような気がした。
だが、それは違っていた。
目の前でトロールの上半身がバターの様に斜めに滑り落ちた時でも少女は理解できなかった。
「……魔法?」
少女は呟く。真っ先に思いついたのは風の魔法であった。
熟練者なら、目の前の怪物を斜め切りする事は可能だろう。
だが、聞こえる筈の詠唱は聞こえてこない。
代わりに聞こえて来たのは。
「うおぉぉぉぉ!」
獣と見間違うばかりの得体のしれない何かと、咆哮とも呼べる叫びであった。
それを理解できないのは仕方のない事であった。
彼らにもわずかながら思考がある。
だが、それこそが命を奪われる一番の理由であった。
獣の方向が聞こえる。
恐れる事は無い。そう思い振り向く。
目の前には奇妙な者がいた。
人より少し同じくらいで、自分達の3分の1程も無い。
これでは無い。何度も聞いてきた水のはじける音を思い出し、棍棒を振り下ろした。
しかし、聞こえて来たのは金属音であった。
「甘いぜ、化け物。俺はな……アルガス一の怪力なんだよ!」
下から寄せあげるような感覚がトロールを襲う。
それは、この世界の怪力を誇る者達の中で、暫定一位の怪力の持ち主であった。
60 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:12:03 ID:h34Jr0i8
離れてからダブルゼータは自分の本来の得物を取り出す。
「ついこの間まで持ってたのに久しぶりの感覚だぜ!」
嬉しそうに、獅子のレリーフがついた斧を見つめる。
獅子の斧――持ち主に何倍もの力を与える。この世界には無い筈の伝説の武器。
骨の髄から、力が溢れ出るような感覚が懐かしい。
自分との再会を喜ぶように、そして、再会の喜びを形で表現するかのように。
ダブルゼータは自分の全力で獅子の斧を横に振る。
ダブルゼータにはニューの様な魔法も、ゼータの様な技も無い。
だが、ただ斧を横に振るだけで必殺の一撃にしてしまう力があった。
先程の光景をトレスするかの様に、トロール鬼の上半身が崩れ落ちる。
少女はただ見ていた。
「あなた、大丈夫?」
不意に声をかけられる。
視線を自分の目の高さに落とすと、そこには胸元を強調する様な派手な私服を着た赤毛の女が目の前に居た。
「はい、大丈夫です」
何とか答える。それを確認すると、今度はダブルゼータに意識を向ける。
「ちょっと、ダブルゼータ! どうして一人で全部倒しちゃうのよ!
せっかく、一体倒そうと思って呪文唱えていたのに!」
自分にかけた声と違い、ダブルゼータに向かって不満気な声を上げる。
「倒しちまったものはしょうがねえじゃねえか!
だいたい、それならちゃんとした指示を出せよ、お前が俺をけしかけたんだろ!」
「アンタが一体倒している間に、私がもう一体を倒すつもりだったのよ!」
「先に言えよ!」
「そもそも、私はトロールがいる位しか言っていないわよ、アンタが勝手に飛び出して行ったんじゃない!」
辺りの闇に反比例するかのように、二人のやかましい声が続く。
どうやら、手柄の問題の様だ。
「あの、ありがとうございます」
「え、ああ」
礼を言うと、言い合いをしていた二人が自分の存在に気づく。
呪文――目の前の女はメイジなのだろう。
そして、瞬く間にトロール鬼を倒してしまった。人型のゴーレムの様なもの。
(この人達なら……)
少女は考える。
自分。そして、自分の主にとって必要な物。
(……よし)
少女は決意し、今も口論を続ける二人に割って入る。
「あの、私はリオネと言います。貴女方は」
そして、彼女達が何者なのかをさりげなく聞く事にした。
支援
62 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:13:14 ID:h34Jr0i8
ホテル クラリッジ
コノート、バークレイと並ぶアルビオンにある、最高級ランクのホテル。
入口のロビーには、純金であしらった調度品が置かれている。
主な客層は貴族と有力な商人で構成され、とても平民が目の前で立ち止まる事すら許されない様な雰囲気すら感じた。
少なくとも、今居る部屋はリオネにとって当然初めてであった。
部屋は見た事が無い大きさのベットが二つと脇にソファーがあり、隣には10人が席に着けるテーブルが置いてある。
「いいんですかこんな所に? 私なんかを入れて」
「いいのよ、それに高いホテルはプライバシーと安全も価格に含まれている物だし、落ち着いて話すにはこの方がいいでしょう」
少女の態度をさほど気にせず、ソファーに身を投げる。
リオネもソファーに座ると、キュルケが話を切り出し始めた。
「さて、リオネだったわね。あなた、どうしてあんな所で襲われたの?」
問われて、リオネは彼女を見る。
ここに来るまでのお互いの自己紹介を思い出す。
彼女はトライアングルのメイジの学生であり、今現在アルビオンに旅行に来ている事。
トロールを倒したゴーレムは彼女の使い魔である事が解った。
艶やかな褐色の肌、燃えるような赤い髪、一流の彫刻家が作成した様な体の造形。
(この外見で私より年下なのよね、一流の傭兵メイジか何かだと思ってたわ)
ハニーナッツの様な髪の色、19歳で少女と形容される体つき。
自分とはまるで正反対であった。
「はい、私は貴族様にお仕えするメイドで、旦那様に頼まれた用事を終えた帰りでした。
そこを、偶然トロール鬼に見つかってしまい貴女方に助けられた訳です」
それは、間違ってはいない。
自分は貴族に使えるメイドで、偶然、トロール鬼見つかった事……あの場所に居た理由を除いては。
「偶然ね……アルビオンは初めてなんだけど、普段からあんなのが町中をうろついているの?」
キュルケが疑問を口にするが、リオネが気になったのはある一言であった。
偶然――口にしながらもキュルケは疑問を持っている。そして、それが考えに繋がる。
彼女は自分と言う存在に少なからず興味を持っていると言う事。
そうでなければ、自分を部屋まで連れてこないだろう。
話をするなら歩きながらか、その辺の空いている飲み屋にでも行けばいいだろう。
だが、何故それをしないのか?
盗聴、情報の漏えい――答えはそれだろう。じゃなければ、プライバシー等とわざと言わないだろう。
キュルケはこう言っている――ここなら安全だ、話を聞かせろと。
そうでなくても、キュルケの瞳にあるのは興味や好奇心がありありと見てとれた。
「はい、貴族派が実権を握ってから……でも、何でここまでしていただけるんですか?」
「そうねぇ、……とりあえず、そろそろ芝居を止めにしない? お互い、手札が見えているポーカーなんてつまらないでしょ?」
キュルケの言葉を聞いて、リオネは息を飲む。
どうやって切り出そうか迷っていただけに、
相手から切り出してくれるのは有難かったが、同時にキュルケに対してある考えも浮かぶ。
「……気付いていたんですか?」
「あんなのがうろついている街中で、貴族が大事な用件を頼むのにあなたを使う訳が無いわ。
それに、この時間に相手を尋ねるのはよっぽど重要な事がある場合で、
それだけ重要なら本人が出向くものよ……リオネ、あなた王党派の人間ね?」
キュルケからしてみれば、重要な用件をメイド如きに任せるとは考えていない。
それに、十中八九勝利を手にしかけている連中が、わざわざ小娘一人の力など借りないだろう。
(……そこまで気付いていたなんて)
事態が良い方向に向かって居る筈なのに、リオネにはむしろ得体の知れない感覚が湧きあがる。
自分は嘆願するつもりであった。
無力な平民が力ある貴族に協力を乞う。そして、報酬で自分の主に力を貸してくれる貴族を思い描いていた。
しかし、キュルケは自分が利用する考えを見抜いている。
63 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:14:51 ID:h34Jr0i8
「そこまで解っていたのですか?」
(……どうしよう)
キュルケは金銭では靡かないであろう。もともと自分達の財政も良い訳では無いし。
そもそも、このクラスのホテルに泊まっている人物が自分達の報酬で受ける訳ないのだ。
(この人は何を望んでいるのだろう)
リオネは考える。最大の条件で交渉できないとわかったのに、彼女は交渉を打ち切ろうとしない。
むしろ、今度は自分の方から何かを持ちだそうとしている。
そんなリオネの思惑を知らん顔でキュルケは話す。
「自分の家でおどおどしているペットは居ないわ、するとしたら、他人の家。
自分のテリトリーでない所に行った場合ね。今のあなたがまさにそうよ。今更だけど、私は貴族派の密偵とかじゃ無いから。
もしそうなら、あの時あなたを捕まえるか、それこそトロールに捧げているわ」
そうだろう、自分が持っている物は相手にとって不利に成り得る情報と益をもたらす情報だ。
自分を捉えて、拷問し情報を得る事位は造作もないであろう。
キュルケはこう言っているのだ――同じ舞台に立て。
目の前の女は自分が主導権を握っているのが気に入らないのだろう。
脳内で、見せる手札と見せない手札を素早く分け始める。
10秒の沈黙の後、リオネの準備は整った。
「はい、私はメイドをしながら得た情報を、ご主人様にお伝えする役目を担っています。さっきは、手に入れた情報をお伝えする為に向かう途中でした」
あらかじめ見せる手札を見せる。
「情報の内容は?」
「それは言えません」
これは見せない。現時点で味方に成り得るか確信の無い人間に、情報と自分の主は絶対に知られてはならない。
それこそ、さっき捨てる命を、もう一度捨てなくてはならない。
「どうすれば、教えてくれるのかしら? 私凄く気になるわ」
条件は解っている。だが、同時に思う事もある。
「誘い出しといて言うのもなんですけど、貴女はかなりのお家柄だと思われます。貴女の家にも迷惑がかかるかも知れません」
キュルケは外国の貴族それも、家は解らないがかなりの名家であろう。
そんな人間がいったいどこまで協力してくれるのか?
これが傭兵なら、事は簡単である。しかし、場合によっては国の問題に為らないと言う保証はどこにもなかった。
「それでも、必要なんでしょ? 傭兵達が言ってたわよ、負ける王党派何かに付きたくは無いって。
それに、私は両親に半ば勘当されてるから、家の事は心配しなくてもいいわよ」
もっとも、ばれたら後で説教くらいは受けるだろう。
その時、蚊帳の外に居た人物が二人の芝居に参加する。
「俺の意見は聞かないのか? 危険な事に首を突っ込むのはどうかと思うぞ。それと、学校はいいのか?」
それまで聞く側に徹していたダブルゼータであった。ここで自分の立場を明確にしておかないと、参加が確定するからであろう。
しかし、それはあまり意味のない事かも知れない。
「嬉しそうに斧を握りながら何を言ってるのよ? 暴れるのはもう少し我慢しなさい」
キュルケがため息交じりに呟く。目の前の人物は今までの話を聞いて、感じた事は秘密をした恐怖でも、
仕事の難解さでもなく、遊技場を与えられた子供の顔であった。
「俺はこれでも、争い事は嫌いなんだぜ? お前の方こそ、新しい男を見つけた時の顔みたいにじゃないか」
「その時はもっと嬉しそうにするわ。それに、ここって、全然いい男居ないじゃない」
二人は暢気に会話を始める。
「あの、お二人は参加してもらえるのですか?」
それは、参加の表明と言えるのか、リオネは確認する。
「え? ああ、良いわよ。さっそく案内して頂戴。あなたの主様の所に」
キュルケが彼女に促しながらも、ダブルゼータの方に意識を戻す。
これが、リオネの彼女達との出会いであった。
64 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:16:06 ID:h34Jr0i8
アルビオンの酒場
世間という物が最も関心を持たない。場末という表現が使われるその場所に、二人は居た。
「はぁ、これからどうすればいいのかねぇ」
何かに頭を悩ませているマチルダが居た。
空いた二つのジョッキが既に三杯目である事を現す。
酒に逃げる方では無いが、その日は不機嫌もあり、酒を進ませていた。
その声を聞いて、つまみの肴に手を伸ばしていた真駆参が答える。
「稼ぐしかないだろう。いいのか? もう出て来てしまって、ティファが悲しむぞ」
本来、妹と一緒の時間を予定より削られた事が、彼女の不機嫌な原因である事を真駆参は知っていた。
(お願い、姉さんの様子を見てきて欲しい・・・監視してほしいの)
彼女の言葉と、悲しそうな顔を真駆参は思い出す。
自分の主も、自分達の帰還を楽しみにしていたのだ。
(俺もアイツの為に稼げたら問題はないのだがな)
自身がマチルダとティファニアの力になる事が出来ず、真駆参も悩んでいた。
「仕方ないだろう、休暇をとって帰省と言う事であの娘には話しているんだから
……それに、あの娘が何となく気付いているのは居づらいから」
マチルダが顔をしかめる。
ここ数日は姉妹というよりも、何か事情を持った人間を匿うそれであった。
(あの娘は私が危険な事をするのに反対している。だから、行かないように私を気遣ってくれた……)
そして、その事が彼女にとっては逆に家に居づらかった。
だから、休暇の終わりと言って、マチルダは家を出る事にした。
「で、これからどうするんだ? 学院とやらに戻る訳にはいかないのだろう?」
「当たり前じゃないか、いつもの通りさ」
そう言いながら、泡の飛んだ酒をあおる。それを見て、真駆参は溜息をつく。
(マチルダの腕なら問題はないだろう。しかし……)
真駆参は考えを口にする。
「俺がまた助けなくちゃいけないのか?」
「見くびるんじゃないよ、アンタはあそこに帰ってあの娘を頼むよ。仕事に集中できないよ」
マチルダにしてみれば自分ひとりで町を出ていく筈であったが、出る時にティファニアが真駆参を監視につけたのだ。
(コイツが居るんじゃ、仕事を受けにくいったらありゃしないよ)
ティファニアに自分の汚い所を見られている気がする。
視界を共有して居る訳ではないが、そんな思いがマチルダの心に浮かぶ。
「探すなら、短期で出来る傭兵なんかはどうだ、ここなら今、募集しているだろう?
それなら俺も協力して良い。お前のゴーレムとでも言ってな」
(根本的な解決ではないが、俺に出来る事はこう言った事しか無いからな)
自身としては不本意であるが、それでも盗賊に身をやつすよりは、まだマシだと思えた。
だが、それは建設的とは言えなかった。
「悪いけど、それはお断りだよ、特に王国軍には付く気はないよ」
酔いの醒めた、強い口調で否定し、マチルダが睨みつける。
(確かに、こいつにとっては王国軍に肩入れをする気はないだろう)
マチルダからしてみれば、それは絶対に受け入れる事が出来なかった。
真駆参はマチルダの反応が何を意味したのか、意味を理解していた。
「すまない」
「別にいいわよ……それに、反乱軍もお断りだよ、あいつ等も胡散臭いしね」
二人だけなら、この話題は終わる所であった。
65 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:17:07 ID:h34Jr0i8
突如、二人に声が掛る。
「しかし、その反乱軍は君に用があるのだよ、土くれのフーケ」
無意識に懐の杖を握り、真駆参は立て掛けた槍に手をかけ、声の主の方に視線を向ける。
振り向くとそこには、仮面をつけた長身の男が居た。
(気付かなかったの……)
酔っているとはいえ、自分と真駆参に気取られずに近寄った事に警戒を覚える。
「誰だい? ここは酒場だよ、仮装パーティーがしたいんなら他に行きな」
彼女は男を睨みつける。入口のドアの方に、首を動かし出てけとサインを送る。
「そう邪見しないでもらおう、君達の懐事情を救うかもしれない相手に」
だが、気にも留めず仮面の男は軽い感じを装って、空いていた椅子に座る。
近くのウェイトレスに注文し、下がらせる。
その様子を二人はずっと見ていた。
「生憎だね、最近仕事が終わったばかりで、懐は暖かいのさ」
少し事情を知る者から見れば、この酒場では最も安いつまみが置かれたテーブルを前にしてそのような事を言うのは寒い冗談だ。
しかし、それを聞いても、男はそれを指摘する訳でもなく。
「そうなのかい? モット邸で仕事をする前に撤退した君の懐が温かいとは、君の能力を過小評価していたようだね」
「!」
(コイツ、何でそんな事を!)
真駆参も知らないであろう事実を聞いて、マチルダは目の前の男に不信感を募らせる。
そして、目の前の男が危険である事を二人は確信する。
マチルダの驚いた表情を盗み見た真駆参が聞かれないように声を掛ける。
(どうする? 明らかに怪しいぞ)
(だからって、迂闊に動くんじゃないよ、仲間もいるかも知れないし)
二人は目配せする。周辺に仲間が居ないとは限らなかった。
「構え無いでもらおう。何、依頼は簡単だよ。数日後、アルビオンに向かう連中の足止めをして貰いたいのさ。報酬はこれだよ」
言葉と共に、どこから出したのか、いかにも重そうな金貨の袋が置かれる。
マチルダは置かれた物が本物かどうかを確認するふりをして、額を脳内で計算する。
(確かに、これだけあれば当分の間はあの子達が暮らしていけるね)
警戒とは裏腹に、払われるべきであろう報酬の高さには惹かれる物がある。
「確かに、報酬は魅力的だね。けど何で何だい、そんなのアンタがやればいいじゃないか?アンタは私より腕が立ちそうだしね」
マチルダは疑問を口にする。これほどの金額を払える人間なら、外部等に頼る必要もないだろうと踏んでいたのだ。
男は、ワインを軽く飲みながら、その疑問に答える。
「その厄介な相手でね、君を追い込んだ3人組の一人と言えば君も分かるだろう?」
(アイツ等かい、面倒な相手だね……)
マチルダは自分が相手をする人物の情報を教えられて、驚きを強くする。
名前を出す必要はない。それは、二人にとっては忘れられない相手であった。
「で……誰が相手何だい?」
「魔法を使えるのを相手してもらう、何でも先住魔法の類を使うらしい」
(つまりはニューとあのお嬢ちゃんって事かい)
相手を聞いて、マチルダは舌打ちする。
マチルダもニューの魔法を見ていただけに、相手をするのは気が引けたが
(一人だけなら何とかなりそうだしね……)
この前は六人を相手にしたが、二人なら何とかなるかも知れない……
「気楽に言ってくれるね、アイツはかなりの手錬なんだよ、これじゃあ安すぎるよ」
(どうせなら、釣り上げさせてもらおうか)
マチルダはそう考えて、賃金の値上げの交渉を開始する。
しかし、マチルダが額を言う前に、別の声が遮る。
「……気に入らんな」
それまで、沈黙を保ってきた真駆参が男を睨みつける。
「何でだい、傭兵をやれって言ったのはアンタだよ」
「そう言う事では無い……ただ、姿を現したらどうだ!」
支援するぜ!!
騎士団支援
68 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:18:10 ID:h34Jr0i8
マチルダには一瞬、何をしたのか理解できなかった。
真駆参は自身の槍で、仮面の男を突き刺したのだ。
男が崩れ落ち、地面に対して槍がまっすぐ突き刺さる。
それを見た、客やウェイトレスは悲鳴をあげる。
「静まれ!良く見てみろ、これは偽物だ」
しかし、真駆参は落ち着きを払って一喝する。
真駆参が槍で、もう一度仮面の男を突き刺す。すると、仮面の男は溶けるように消えてしまった。
「居るのだろう。本体が無事な内に出てきたらどうだ!」
真駆参は確認もせずに入口の扉に向かい声を投げつける。
その声に反応するように、扉が開く。
「驚いたな、まさか遍在に気付くなんて」
さっきまでと同じ仮面をした同じような男が入ってくる。
「昔、そう言った手合とは戦って来たからな」
男の驚きを含んだ声に、真駆参が不敵に笑い返す。
(しかし、最初は気付かなかった……これも魔法と言うやつか)
天宮(アーク)で戦った妖魔忍軍の刃流刃浪が使うような術を目の辺りにし、真駆参も内心では驚きを感じていた。
「それは失礼した……決めたよ、君も一緒に雇いたいんだ。これの3倍の金を払おう、どうかね?」
仮面の男は今度は真駆参に交渉を持ちかける。
真駆参は受けないだろう。
もっと強い言い方をすれば、再度切りかかるのでは無いか? マチルダはそんな事を考えた。
だが、予想とは違い、それを聞いて真駆参は考え込む。
(たしかに、これの三倍もらえれば、当分の間、マチルダはテファの所に居られる。
しかし、それでは、あいつ等と戦わなければならない事になる)
報酬は魅力的であるが、対峙した彼らに対して、自分の言った言葉が嘘になる。些細な事ではあるが真駆参にはそれが決断を鈍らせていた。
「ちょっと、真駆参! アンタにはあの娘を守ってもらわないといけないんだよ! アンタだって、こんな奴の依頼は受けたくないだろう!」
真駆参が自身を止めるどこか、結果的に報酬を上げる要因となった事で、マチルダも止めに入る。
それは、真駆参の耳にも届いていた。
(俺はティファを守らなくてはならない。しかし、それ以外にも出来る事があるとすれば……)
自身にとって、その行いは恥以外の何物でもないだろう。あの異世界の武者達や共に戦ってきた仲間は自分の行いを罵るかもしれない。
……しかし、それでも得られる物がある。
苦渋では無かった。
ただ、彼女――ティファニアの顔が浮かんだのが真駆参を躊躇わせたが、彼は決意した。
「いいだろう、その依頼引き受ける」
その言葉を聞いて、ある者は満足そうな顔をし、ある者は苦い顔をした。
その時、真駆参は自分がどんな顔をしているか分からなかった。
69 :
ゼロの騎士団:2009/05/03(日) 14:19:11 ID:h34Jr0i8
「34 扉が開き、不気味な仮面の男が現れた」
仮面の男
マチルダと真駆参を雇う
MP 800
ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル
自身の魔法が見破られた事に、彼は少なからず驚いた。
(大した物だ、偏在に気づくとは)
偏在を通して興味深く見ていたが、今ので、より一層興味を持った。
彼らの種族の情報はある程度得ていた。
しかし、実際に能力を見るのは初めてであった。
(ガンダムか……つくづく楽しませてくれる)
彼は同じ仮面をかぶり、扉を開けた。
今回はこれで投下終了です。
ありがとうございます。
騎士団乙
こんにちは、のんびり進めてるアルビオン編、46話の投下を始めてもよいでしょうか。
今回の使用予定レス数は11、予約等なければ例によって10分後の15:50より開始します。
待ってました!
支援
第46話
勇気の証明 (前編)
古代怪鳥 ラルゲユウス
変身怪獣 ザラガス 登場!
シエスタの知り合いの店という、『魅惑の妖精亭』という居酒屋は、トリスタニアの下町といえるチクトンネ街の
一角になかなか立派なたたずまいを見せており、店長と店員一同の温かい歓迎で一行を迎えてくれた。
本来なら酒場であるのだから夜から仕事帰りの男達を相手に商売をする店なのだが、シエスタの友達と
いうことで、夕暮れの開店時間までで、お酒は出さないという条件つきで、特別に食事の席を用意してもらった
のだった。
「あっはっはっはは!! そりゃあ災難だったわねルイズ」
「笑い事じゃないわよ。まさかお姉さまやお母様まで王宮に来ていたなんて、寿命が10年は縮んだわ。これで
キュルケ、ツェルプストー家のあんたまでいたら、あーもう想像もしたくない」
店で一番大きなテーブルにぐるりと囲んで座って、一行は城でのルイズ達一家の話で盛り上がっていた。
「でも信じられません。ミス・ヴァリエールのお母様が、あの『烈風』カリン様だったなんて、わたしも小さい頃から
貴族でもあの方だけは別格だって、父と母に聞かされていました」
シエスタも、まさか想像もしなかったと、唖然としながら話を聞いている。『烈風』の名は、軍や貴族の垣根を
超えて、平民の間にも幅広く伝わっていたのだ。
「わからなくても当然よ。お母様は任務のときは、いつも顔半分を鉄の仮面で隠しておいでだったらしいから、
名は知れ渡ってるけど、素顔を知る人は少ないわ。頼むから、この話は内密にお願いするわね」
伝説のメイジが母親だなどと知れ渡ったら、ルイズも肩身が狭くなるだろう。シエスタは黙ってうなづき、
キュルケは、どうせ言っても誰も信じないわよと笑い飛ばし、タバサは黙っていて、ロングビルは、私も見て
見たかったなと残念そうに言っていた。
さて、話も一段落ついたらすきっ腹が堪えてくるのが人間の本能である。運ばれてきた料理に舌鼓を打ち、
昼からの疲れにエネルギーを補給する。
「おかわりーっ!!」
「……おかわり」
食事開始から10分足らずでアイとタバサが同時に空になった皿を差し出した。二人の皿にはそれぞれ
豚肉のチャーハンとハシバミ草のサラダが山と積まれていたのに早いものだ。特に、育ち盛りのアイはともかく
小柄なタバサのどこにそんな食欲があるのやら。
「はーい、おかわり二名様あがりましたーっ!!」
すぐさま店の奥から可愛いウェイトレスが飛んできて、二人から皿を受け取ると、また別の娘が料理を
手際よく運んできた。
この『魅惑の妖精亭』は、ただの酒場ではなく、その名の通りに妖精のように若くて可愛い女の子をたくさん
雇っていることから、チクトンネ街でも別格の存在感を誇っていた。ただし、そういう男達を相手に商売をするので
衣装はけっこう際どく、唯一の男性である才人は目のやり場に困るくらいであった。
ただ、それは別として腹は減るので才人もおかわりを頼みたいのだが、振り返ろうとするとルイズに足を踏まれて
しまって、仕方なくロングビルに頼んで間接的に持ってきてもらう始末。才人は切なくなった。
けれども、そうしているうちにもキュルケは2杯目、タバサは4杯目のおかわりを頼んでいる。アイは2杯目で
おなかいっぱいになって、ロングビルといっしょにジュースを飲んでいた。ちなみにシエスタは1杯で満足して
知り合いの店長という人と話をしに行った。
「それにしても、お前らよく食うなあ」
まだまだ満足せずに3杯目と5杯目のおかわりを要求するキュルケとタバサに、才人は2杯目のシチューを
口に運びながら、唖然として言った。
「なによ、あんたたちが小食なだけじゃない。まだまだいけるわよね、タバサ」
「……あと、4杯はいける」
いやいやいや、大食いチャンピオンですか君達は。それにしても、キュルケはそのダイナマイトバディを維持する
ために、栄養が必要なのはまだ理解できるが、小学生並みのタバサの体のどこに入っていくのですか?
しかもハシバミ草のサラダばっかり、モットクレロンの生まれ変わりかと思ってしまう。
「「おかわりーっ」」
今度は同時に皿を上げる二人を見て、才人は食欲が失せていくのを感じていた。
けれど、そんな二人の態度に、才人以上にいい加減頭に来ていたルイズの堪忍袋の尾が、とうとう切れてしまった。
「あんた達、ちょっとは遠慮ってものをしなさいよね。貴族たるものが、ガツガツガツガツとはしたないったらないわ!!」
この中で唯一おかわりをしていなかったルイズが頭に血を上らせて怒鳴った。
貴族の女子は常に淑女であれと教えられてきたルイズには、食欲に任せて食べまくる二人の姿が我慢ならなかったのだ。
「なによー、せっかくシエスタがご馳走してくれるっていうんだから、ご相伴に預からないと失礼じゃない」
「だからって限度ってものがあるでしょ。これだからゲルマニアの女は品性がない……」
キュルケとルイズの間で不穏な空気が流れる。ただでさえ、水と油のような二人だ、いまにも杖を抜きそうな雰囲気に、
せっかくの旅行を最初から台無しにする気かと、才人が席を立ちかけた、そのとき。
「なーに、もうごちそうさま? せっかくのおごりなんだから、もっと食べなさいよ」
と、二人の間に元気よくひときわ派手な格好の女の子が割り込んできた。黒い、ストレートの髪の活発そうな娘である。
彼女は、今回のもてなしの主催者で、この店の店長の娘のジェシカという娘だった。
「え、でも……」
ルイズが、その好意はありがたいけどというふうに躊躇した。外で食事をいただくときの作法については、あの母から
昔から厳しく教えられてきただけに、中々飲んで食べて騒ぐということはできないのであったが、ジェシカはそんな
遠慮を笑い飛ばすかのように、どんと胸を張って言い放った。
「遠慮しないの、7人程度がいくらおかわりしたって、そんなくらいで揺らぐような細い屋台骨はしてないって、それより、
あのシエスタが貴族のお友達をこんなたくさん連れてくるなんて、従姉妹の大出世ぶりのお祝いだと思えば安いものよ」
そう、ジェシカはシエスタの従姉妹だということで、黒い髪や瞳など面影がなんとなく似ている。ただし、やや内向的で
思い込みの強いシエスタとは反対に、外見と話し方どうりの外交的な性格の持ち主であった。地球風に言えば、
江戸っ子というところだろうか、竹を割ったような明るさときっぷのよさは、思わず姉御と呼んでしまいたくなる。
「よっ大将、威勢がいいねえ」
「ありがと赤いお姉さん。今後とも、『魅惑の妖精亭』をごひいきに!」
「あいよっと、今度からトリスタニアに来たときは寄らせてもらうわ、それから、あたしのことはキュルケって呼んでいいわよ。
タバサも気に入ったみたいだし、次からは営業時間に来るからね」
特に、性格のよく似ているキュルケとはすぐに意気投合したようで、勤務時間外ということで旧知の仲のように
親しげにたんかをかけあっていた。
ただ、よく考えると、このもてなしの席で少なくともこの店は常連客を二人ゲットしたことになる。損して得とれ、
可愛い顔して商売の基本をよーく心得ている。
「そういえばさ、シエスタから聞いたけど、あなたたちあっちこっちですごい冒険してきてるみたいじゃない。飯代代わり
といっちゃあなんだけど、みんなに聞かせてくれないかな」
見ると、いつの間にやらテーブルの周りに店中の女の子が集まってきていた。皆期待に目を輝かせている。
テレビやラジオなどなく、平民のほとんどが読み書きできないハルケギニアでは娯楽が少なく、彼女達にとって、
未知の世界の話とは、子供が紙芝居に夢中になるようなものなのであった。
当然、こういうことに口の多いキュルケは黙っていられず、一番に名乗りを挙げた。
「じゃあ一番、キュルケいきまーす!! えーっと、どの話からにするかな、軍隊がらみの話はつまらないから。
そうね、じゃあフリッグの舞踏会で怪獣といっしょにダンスしたときの話にしましょうか、あのときはおかしかったわ」
「あっ、それシエスタから聞いたわ。詳しく教えて、ねえ」
「いいわよ。まずね、魔法学院にベアトリスって子がやってきたんだけど、この子がなんともねえ……」
それからは、他の6人も合わせて話に花が咲いた。なにせ完全ノンフィクションな上に、身振り手振りを加えて
大げさに話すキュルケの語り調子は、自然と人を話に引き込んでいく魅力があった。
「それでね。怪獣2匹に追いかけられて、助けてーっ、て」
「うそぉ、趣味の悪い怪獣ちゃん」
「ほんとほんと」
誰もが笑いながら聞いていた。いつもいばっている貴族でも、いざとなれば人間だ。その行動にはおかしくも
あり、また共感もする。
そして話は進み、あるところでは怒り、あるところでは感動したりして、語り部キュルケの一大歌劇は大盛況の
うちに幕を閉じた。
惜しみない拍手が捧げられ、感動して涙を流している娘までいる。
まったくキュルケはすごい奴だと才人も思う。人を魅了する天性の素質とでも言おうか、生まれが生まれなら、
歴史に名を残す名俳優やオペラ歌手として活躍したに違いない。
自分も拍手に加わった後、才人が一呼吸おいて水をちびちび飲んでいると、すっきりした顔の顔のジェシカが
肩越しに才人の顔を覗き込んできた。
「よっ、色男さん、楽しんでる?」
「ん、まあね」
「あら、なにか不満そうね。なにかおもてなしに不満があったかしら?」
「いや、料理はうまいし、店はきれいで、女の子たちはかわ……明るくて楽しいけど……」
「けど?」
才人は言葉を切った。
確かに、この魅惑の妖精亭は繁盛しているだけあって、接客からなにもかも不満はなかった。ただ一点を除けば。
そしてそれが、それらのプラスに大きくマイナスとなり、どうしても才人は心から楽しむことができないでいた。
それとは、つまり……
「あらん、ぼくぅ、ミ・マドモアゼルのお店になにか問題があったぁ? ごめんねえ、おわびに私が精一杯おもてなし
してあげちゃうから」
「やだぁ、ミ・マドモアゼルだけずるぅい。こういうことは、新人のあたしが勤めさせていただくわぁ」
と、才人の右と左から聞こえてきた野太い男の女声、首がむち打ち症のように動かなくなる、どっちも絶対
振り向きたくない。後ろには、美少女率120%のジェシカがいるというのに、どうしてこうなる? 誰か説明してくれ。
湧き上がる吐き気を抑えながら、怒りをために溜めていた才人だったが、とうとう耳元に熱い吐息がかかってきたとき、
完全にぶちきれて激発した。
「なんでオカマが二人もいるんだよ!!」
テーブルを怒りに任せてぶっ叩き、不満と怒りのさまを才人は思う存分吐き出した。
そう、この店にいるのは美少女だけではない。トランプの中にジョーカーが混じっているように、筋骨隆々、
厚化粧の見事なまでのオカマ男が二人も入っていたのだ。
「あらん、ひどぉい!!」
「乙女に向かって、そんな言い方はないわぁ!!」
怯えて縮こまるな。せっかく食べたものを吐き出してしまいそうになる。しかも、一人ならまだ我慢できるが、二人とも
なると不快は2の二乗となって耐えられない。けれど、もうこんな光景はなれっこなのかジェシカが才人の肩を抑えて、
どうどうと鎮めに来た。
「まぁまぁ、こんなのでもあたしの大事な父さんと、うちの大事な店員だから勘弁してよ。気持ちはよーくわかるからさ」
なんとまあ、このオカマの二人のうちの片割れは、ジェシカの父親だった。つまり、この魅惑の妖精亭の店長という
ことになる。しかし、正直そんなことはどうでもいい、いったいどうすればキモさ120パーセントのオカマのDNAから
ジェシカのような美少女が生まれる? 生命の神秘だ。
「はぁ、はぁ……悪い、ちょっと頭に血が昇ってた」
激昂して正気を失っていたのを、才人はなんとか押さえ込んだ。見てみれば、アイちゃんは怯えて、ほかの皆も
白い目で見ている。いけないいけない、大きく息を吸って、吐いてを繰り返して、才人は不快なオカマを見ないようにして、
視線をルイズのほうへ向けた。
「ほわぁ……」
「な、なによ……」
いきなりじっと見つめられてルイズはたじろいだが、才人はなにか心の底から癒されていくような温かいものを
感じていた。悪夢のようなものを見せられた後では、ルイズの顔もまた新鮮に思える。そうだ、俺のそばには
こんな美少女がいつもいるじゃないか、なんで俺はこんなことに気づかなかったんだろう。リバウンド現象に、
思いっきり才人ははまっていて、ルイズのほうもまんざらではなく、調子に乗ってポーズをとったりなどもしていた。
「あらん、お二人とも仲がいいのね」
「うふん。お姉さんたち嫉妬しちゃうわ」
後ろから殺人音波が響いてくるが、決して振り返ってはいけない。
そんな様子を、シエスタは久しぶりに会う店の女の子たちと話し合いながら見ていた。本当なら、自分が才人を
救いに行きたかったが、以前に比べて2倍になっていたオカマの圧力に負けて近づけなかったのだ。
「うわー、スカロン叔父さん相変わらずねえ……けど、もう一人のあの方は新入りさん? 前に来たときは見かけなかったけど」
シエスタは隣の栗毛の女の子にひそひそ声で話しかけた。シエスタは一月ほど前に仕入れでトリスタニアを
訪れたときもここに来ていたが、そのときはあんなオカマの人はいなかったはずだ。
「ああ、2週間ほど前に噴水広場で仲間といっしょに行き倒れていたのを店長が拾ってきたのよ。最初は変った
三人組だと思ったけど、よく働くからうちも助かってるわ、何でも異国から来たみたいでトリステインのことはほとんど
知らないみたい」
「三人組?」
「ええ、めんどくさい名前なんで略して呼んでるんだけど、あの人がカマちゃん。それから、あっちの台所で皿洗いを
しているのがウドちゃん。もう一人……あれ、あの人またサボって屋根裏で何かしてるわね。おーい!! ドルちゃん、
あんたまたガラクタ集めて変なもの造ってるの!? 今度爆発とか起こしたら給料からさっぴくよ、仕事しなさい」
カマ、ウド、ドルというのが新入り店員の名前らしい。見ると、台所ではガタイのいい男が熱心に皿洗いを
しており、階段から小太りの男が駆け下りてきた。
「やれやれ、ドルちゃんはちょっと目を離すとこれなんだから」
「大丈夫なの、お店のほうは?」
「ん? ああ、心配しなくていいよ。ドルちゃんは文句ばっかり言ってるけど、ウドちゃんは黙々と働くし、カマちゃんは
ああ見えてけっこうチップをもらってるのよ。店長の人を見る目は、あれで腐っちゃいないんだから」
なるほど、素質を見込んでスカウトしたわけか。確かに、カマという人の接客態度はオカマとしては中々だ。
大勢来るお客のなかでは、そういった趣味の持ち主もいるだろう。手札はいろんな種類を数多く持つに限る
ということか。しかし、それだけでは、あんなに熱心に働きはしまい。
「本当に、人がいいわね叔父さんは」
シエスタは、あんな風貌ながらも人情味に溢れた叔父を誇りに思った。このご時世、人を世話するというのは
簡単なことではない。スカロンと出会わなければ、この妙な三人組は本当に行き倒れていたかもしれない。
スカロンとカマちゃんはよほど気に入ったのか、なおも才人へ熱烈なアタックを仕掛けているが全て無視されている。
サイトさんにあっちのほうの趣味がなくてよかったと、心底安堵するシエスタであった。
それから、魅惑の妖精亭では和気藹々とした食事風景と、ルイズに見とれる才人を見て対抗心を燃やした
キュルケが誘惑しようとしてルイズと乱闘になりかけたりしたが、もうすぐ開店時間というわけで、楽しい時間も
お開きとなった。
けれど、一行が魅惑の妖精亭を出て、紅く色を変えだした陽光の中に身をさらしたとき、太陽とは反対側に
突然正午の太陽のように強い白色の光を放つ光球が出現して、カメラのフラッシュのように街中を照らし始めた。
「な、なんだ!?」
突然のことに、一行も見送りに出てきていたスカロンや妖精亭の少女たちも驚いて目を覆って立ち尽くした。
街中の人々も、カーテンすら軽く突き抜けて部屋の中まで照らしてくる光に襲われて動くこともできない。
いったい、なにが起こっているんだ……光はそうしているうちにもどんどん強くなっていく。もう太陽どころでは
ない、目の前に懐中電灯を突きつけられたようなものだ。とても見ていられない。
「目を、目を隠せ!!」
とっさに才人はそう叫んで、目を覆ったまま光に背を向けた。耐えられなくなったルイズたちも、それをきっかけに
同じように光から目をそらす。
しかし次の瞬間、光は爆発するようにその光度を増し、目をそらすのが遅れた何人かの少女たちの目を焼いた。
「きゃぁぁっ!!」
「目が、目が痛いっ!!」
光を直視してしまった少女たちが目を抑えてうずくまる。光は、その閃光を最後にあとかたもなく消滅したが、
とにかく少女たちの介抱が先だ。
「完全に神経をやられてるわ……すぐに水のメイジに見せたほうがいいけど……これじゃあ街中目をやられた
人ばかりでしょうから、病院もあてにはできないわね」
前職の経験から少々の医学知識があったロングビルが簡単に診断し、彼女たちの目に包帯を巻いていった。
目の毛細血管が破れて、全体が赤く充血している。直接見なかった才人たちでさえまだ目がちかちかしている
くらいだから、当分視力が戻ることはないだろう。失明しなければいいが、それはいずれ医者に診せるしかない。
そして、目をやられた彼女たちを、2階の寝室のほうへ移そうとした、そのときだった。
「きゃあっ、じ、地震!?」
突然地面が巨人がダンスしたかのように揺れ動き始めた。震度5から6強の強い揺れに、木造の建物が
きしみをあげ、天井からほこりが舞ってくる。しかし、慌てて外に飛び出そうとしたとき、揺れは嘘のように
静まり返ってしまった。
収まったのか……街路に飛び出た一行は街を見渡して思った。いくつか倒壊した家があるようで、ほこりが
立ち上っているのが見えるが、魅惑の妖精亭は古い建物ながらも、つくりがしっかりしていたと見えて傾きも
せずに建っている。
妖精亭の店員たちもみんな無事だ。特に、目をやられて逃げ出せない娘たちはスカロンがたくましい両腕に
抱えて担ぎ出されていた。見た目はキモいが心根はきれいなのだなと、ほんの少し才人は見直した。
ただ、新入り店員の三人組は、せっかく造った……が、とかわめいているドルさんを、「もうここの材料じゃ
無理よ」「もうあきらめて、ここに永住しましょうよ」とかカマさんとウドさんが慰めていて、少々うるさかったが。
しかし、あの発光現象に続いてこの地震、不吉な予感を感じさせるには充分だった。
「あっ、あれはなに!?」
ロングビルが指差した先、100メイルほど離れた街の一角から、突然真っ赤な煙が噴き出してきた。地震の
影響で天然ガスなどが噴き出してきたわけではない。その中で何かがうごめいている、小山のように大きな
物体だ……まさか、まさか……しかし、一陣の風が吹きぬけたとき、人々の悪い予感は現実のものとなった。
「かっ、怪獣だぁーっ!!」
赤い煙が吹き流された後、そこには全身に鎧のような甲羅を身に着けた二足歩行の恐竜型怪獣が仁王立ちに
立ち、それが合図であったかのように街中に響き渡る恐ろしい遠吠えをあげたのだ!!
「変身怪獣、ザラガス!!」
才人は、その怪獣をよく知っていた。あの、初代ウルトラマンが地球滞在の後期に戦った怪獣で、その実力は
ゼットンやゴモラなどに次いで高く、科学特捜隊の助けなしではウルトラマンさえ勝てたかどうかといわれている
強力な地底怪獣だ。
街の地底からその姿を現したザラガスは、先代がそうであったように凶暴な破壊本能に任せて街を破壊しはじめた。
人々がやっとの思いで作り直した家々が無残にも崩されていく。
「いけないわ! みんな、急いで逃げるわよ」
スカロンが暴れまわる怪獣を見て、迷わずに店員の少女たちに叫んだ。ここにいると危ない、店も大事だが、
店員がいてこそ意味がある、彼は守るべきものの価値をしっかりとわきまえていた。
「わかったわ、みんな手伝って!!」
ジェシカが先頭になって店に飛び込むと、1分も経たずに荷物を積み込んだリヤカーを持ち出して出てきた。
連続する怪獣災害により、被害が避けられないと思い知ったトリスタニアの人々は、自主的に避難訓練や
緊急時の持ち出しを準備していたのだった。
しかし、急いで逃げ出そうとした妖精亭や周辺の店店の人々のもくろみは、早くも頓挫することになった。
ただでさえ広くない街路には、さっきの光で目をやられて動けない人々が大勢うずくまっていて、とても
避難できる状況ではなかったのだ。
これはまずい、才人は背筋がぞっとした。多分、街中がこんな状態だろう、こんななかで怪獣が暴れたら、
目をやられた人々が逃げられないのは当然、無事な人も逃げ遅れて甚大な被害が出てしまうだろう。
だがそのとき、空から怪獣のものとは違う、かん高い鳴き声がたくさん聞こえてきて空を仰ぎ見ると、
そこには鷲の頭と翼に獅子の体を持った幻獣グリフォンにまたがった勇壮な魔法騎士達が、空中で見事な
陣形を組みつつ怪獣に向かっていく姿があったのだ。
「あれは、グリフォン隊よ!!」
誰かがそう叫んだとおり、それらは現在トリステインに残る最後の魔法騎士隊の勇姿、そしてルイズ達には
それらの先頭にたって部隊を指揮している男に見覚えがあった。
「ワルドさま!!」
「あの中年か」
そのとおり、今ワルドは怪獣出現の報を受けて、これまで髀肉の嘆をかこっていた大勢の部下たちを引き付けて、
二つ名の閃光のとおりに出撃してきていたのだ。
グリフォン隊は総勢20騎、いずれも一騎当千の猛者たちで、これまでにもオークやトロールなどの凶悪な
獣人を退治してきたことがある。怪獣との戦闘経験はないが、士気は旺盛でどいつも血に飢えた猛獣のような
目をしている。これまで幾度もあった戦いに全て出遅れて、役立たずと言われてきた屈辱を晴らさんと燃えていた。
「全騎、私に続いて突撃し、奴の頭に集中攻撃だ。遅れるなよ」
ワルドは部下たちに指示を飛ばして、編隊を5騎1編隊ずつ4部隊に分けた。これで自分を先頭にして、4連続で
怪獣の頭に集中攻撃して短期決戦を狙おうというのが彼の作戦だった。以前オークやトロールを仕留めたのもこの手で、
いくら大きくて頑丈でも、トライアングル以上のメイジ20人の集中攻撃には耐えられない。その編隊運動は、ワルドに
ライバル心を持っていた才人からしても見事なもので、まるで子供の頃に見た航空自衛隊のショーを思い出させる
ような優雅さに溢れていたのだ。
だが、確かにその発想はよかったのだが、彼らは真正面から突っ込んでいってしまった。魔法衛士隊たるものが
敵の後ろから襲えるかと、妙なプライドにこだわったせいもあるが、いくら大きくても所詮はでかいだけのトカゲでは
ないかと、彼らはザラガスを甘く見ていたのだ。そしてその軽率さのツケを、彼らは自分の身で支払わされることになった。
ザラガスの額が突然フラッシュのように発光したかと思うと、攻撃を仕掛けようとザラガスを直視していた彼ら全員の目を
騎乗していたグリフォンごと焼いてしまったのだ。
「うわぁっ!!」
「目が、目がぁっ!?」
「うっわぁ、暴れるな、ああーっ!!」
「ママーッ!!」
グリフォン隊は一瞬で全員の目をつぶされ、さらにグリフォンもやられてしまったために、あっというまに全員バラバラに
なって悲鳴をあげながら墜落していった。
「ワルドさまぁ……」
「かんっぜんに見かけ倒しかよ、あのおっさん!!」
ルイズも才人もあまりにも期待はずれなワルドのやられ様に落胆を禁じえない。特に才人は中年からおっさんに
ランクダウンさせてしまっている。
しかし、彼らの油断が最大の敗因とはいえ、彼らだけを責めるのは酷であろう。ザラガスは、その体から光度に
して6千万カンデラもの光を放つことができ、これを見てしまったら当分の間視力が失われる。もしザラガスが
放ったのが火炎などだったらグリフォン隊は避けられただろうが、光を避けることなどは不可能だ。
もちろん、さっき街中を照らした光もザラガスが地上へ出てくる前兆だったのだ。
ワルド隊をあっさりとしりぞけたザラガスは、何事もなかったかのように破壊活動を再開した。城にはまだ
いくらかの飛行可能な部隊が残っているだろうが、グリフォン隊が瞬殺されてしまった以上、出てくるかどうかは
疑問だ。ましてや地上兵力は考えるにもおよばない。
ルイズと才人は、もう戦えるのが自分達しかいないとわかると、こっそりと抜け出して路地裏のほうへと入っていった。
残った街路上では、妖精亭の少女達や逃げられないでいる町人たちが悔しげにつぶやいていた。
「あーあ、やっぱり貴族たちはだめね。また負けちゃったわ」
「弱いんだからじっとしてればいいのに。ねー」
「俺たちの税金があんなのに使われてると思うと悲しいぜ。んったく着飾ったごくつぶしどもが」
「あいつらが出てくると逆に被害が増すぜ。あーあ、早くウルトラマンがこねえかな」
「そうだぜ、エースが来てくれたら、ぱっぱと怪獣なんかやっつけてくれるさ」
「まったくだ。俺たちにはウルトラマンがいてくれる。困ったときにはいつでも来てくれるからな」
かつてGUYSが壊滅したときのように、連戦連敗を続ける軍に対して平民の信頼はすでに失われて久しかった。
当たり前のことである。犯人を捕まえられない警察、火を消し止められない消防を誰が信頼するか、本来、
この国の戦う力を持たない人々を守るべきなのはこの国の軍であるはずなのに、何度も同じ失敗を繰り返す彼らは、
その存在価値を失いつつある。アンリエッタが多少強引ながらも改革を急いでいるのも当然だろう。
しかし、軍への信頼を貶める原因のひとつは、皮肉にもウルトラマンの存在だったのだが、その言葉は、
才人たちの耳に届くことはなかった。
「「ウルトラ・ターッチ!!」」
手と手のリングを重ね、才人とルイズはウルトラマンAへと変身した。
「ウルトラマンAだ!!」
「やっぱり来てくれたぜ、頼むぞエース!!」
街の人々の喝采を浴びて、エースはザラガスの正面から向かい合った。
(変身怪獣ザラガス……やっぱりこいつもヤプールが呼び寄せたのか……?)
(そんなこと考えるのはあとでいいでしょ、姫様のお膝元を汚すやつは、誰であろうと許さないわ!)
(それよりも、街中には目をやられて逃げられない人で溢れている。速攻でかたをつける、いくぞ!!)
すでにヤプールのためにハルケギニアの生態系は狂わされ始めている。怪獣の出現はさらなる怪獣を呼ぶ、
恐らくはこのザラガスもそうした影響で偶発的に現れたものだろうが、ヤプールがいる限り大人しくしていた
怪獣達もこれから続々と目覚めてくるだろう。
心の中で3人はそれぞれの思いをかわし、目の前の避けられない戦いに向かい合った。
「ショワッ!!」
先手必勝、エースは大きくジャンプするとザラガスの真上から急降下キックをお見舞いした。頭を勢いよく
踏みつけられ、ザラガスの巨体が吹っ飛ばされて数件の家を巻き添えにして倒れこむ。もちろん、この程度で
まいる相手ではなく、すぐさま起き上がると足元にあった家をむんずとわしづかみにして、エースに向かって
投げつけてきた。
「シャッ」
軽くかわして再びザラガスに向かって身構える。やはり今の攻撃程度ではたいしたダメージになっていない。
(エース、ザラガスの発光攻撃に気をつけてくれ)
心の中から才人がエースにアドバイスを飛ばした。あの6千万カンデラの光は人間どころかウルトラマンに対しても
有効で、初代ウルトラマンもこれに手ひどくやられている。注意するべき場所は発光攻撃の要である奴の頭だ。
(来る!!)
ザラガスが頭を下げて、頭部の発光器官をこちらに向けてきた。とっさにエースは目の前で腕をクロスさせて目を隠す!!
「フッ!」
その瞬間、6千万カンデラの光が放たれ、戦いを観戦していた何十人かの視力を奪ったが、エースの目はまだ無事だ。
けれども、あれを一度でも喰らったら危険なことに変わりは無い。一気にけりをつける!!
エースはザラガスが2度目の発光攻撃を仕掛けてこないのを確かめると、ダッシュして一気に距離を詰め、すれ違い様に
チョップをお見舞いすると、後ろから頭を掴んで連続して殴りつけた。ザラガスは暴れてエースを振りほどこうとし、
前に飛び出たエースはザラガスの額を見ないようにしながら奴の首を掴んで投げ飛ばした!!
「ヘャァッ!!」
背中から猛烈な勢いで地面に叩きつけられたザラガスは骨格と内蔵にダメージを与えられて、すぐに起き上がろうと
してくるが、足取りがおぼつかなく頭がふらついている。今がチャンスだ!! エースは体を大きく左にひねって
高速で腕をL字に組んで必殺光線を放った!!
『メタリウム光線!!』
三原色をちりばめた高エネルギー光線は吸い込まれるようにザラガスの胴体へと吸い込まれ、その巨体を覆いつくす
ほどの大爆発を起こし、火花が治まった後、ザラガスはゆっくりと前のめりに倒れていった。
「やったあ!!」
「さすが、やっぱりエースは強いなあ」
「ウルトラマンがいる限り、トリステインは安泰だぜ」
見守っていた街の人々から一斉に歓声があがった。
しかし、次の瞬間驚くべきことが起こった。
(見て!! あれを)
なんと、完全に沈黙していたはずのザラガスの口から赤い煙が立ち昇り始めたかと思うと、その体が痙攣するように
震えだし、一声怒りたけるような叫び声をあげて、体中についていた甲羅を引き剥がして再び起き上がってきたではないか!!
「い、生き返ったぁ!?」
死んだと思っていた怪獣が蘇ったことで、人々も我を忘れて悲鳴をあげる。
これはいったいどういうことだ。メタリウム光線の直撃で、確かに一度は倒したはずなのに、さらに凶暴になって
復活してきた。
(ちくしょう、やっぱりか!!)
(やっぱりって、どういうことよ!?)
(ザラガスは、一度攻撃を受けるとそれに対応して復活する能力があるんだ!!)
そう、それこそがザラガスが変身怪獣と呼ばれ、恐れられた理由である。
(復活するって……あんたなんでそんな大事なことを黙ってたのよ!!)
(まさかメタリウム光線に耐えられるとは思ってなかったんだ!! ちくしょう、前はウルトラマンのスペシウム光線で
倒せたのになんでだ!?)
エースのメタリウム光線はスペシウム光線以上の破壊力を持つために、それで倒せると思っていた才人の
読みは外れた。しかし、その理由を考える暇もなくザラガスは迫ってくる。
(ふたりともケンカは後にしろ、来るぞ!)
ダメージを吸収してさらに凶暴化したザラガスは、エースへの怒りのままに家々を蹴散らしながら突進してきた。
「タアッ!」
真正面から受けられないと、エースはジャンプしてザラガスの背後に回りこんだ。
そして、背中からザラガスに攻撃を仕掛けようとしたとき、甲羅が外れて爆竹が何十本も埋め込まれたような
姿があらわになった奴の背中がいきなり発光した。
「グッ、ヌォォッ!」
一瞬でエースの視界が白から黒へ変わり、完全に闇に包まれた。
「ああっ、エースの目がやられた!!」
目を押さえて苦しむエースを見て、人々の落胆する声が響く。
しまった、ザラガスの発光器官は頭だけではなかったのか……才人は悔しがったが、彼の読んでいた
怪獣図鑑にも、そこまで詳しく解説されていたわけではなかったので油断してしまった。ザラガスはいったい
どっちにいるのだ、目が見えないのではいかにエースとて戦いようがない。また、エースと感覚を
共有しているふたりも視界を封じられてエースをサポートすることができない。
右か、正面か、それとも左か……
「右よ、エース!!」
とっさに耳に飛び込んできたその声がエースを救った。間一髪、角を振りかざして突進してきたザラガスを
受け止めて、逃がすまいと殴りつける。だが、奴もやるものでエースを振り払うと再び間合いを取ってしまった。
今度はどっちだ? ザラガスは完全に目の見えない相手との戦い方を心得ていて、うかつに音を立てたり
してこない。少なくとも先代より知能は格段によいようだ。
「正面よーっ!!」
「ヘヤァ!!」
声に従ってストレートキックを打ち込んで、なんとかザラガスの突進をさえぎった。
(この声は……キュルケにシエスタにアイちゃん、魅惑の妖精亭のみんなか!)
二度目に聞いた声で、才人たちは声の主を悟った。エースが目をやられたことを悟ったシエスタが、せめて
できることはないかと皆を先導してエースの危機を救ってくれたのだ。
(みんな……ありがとう)
(ちぇっ、またあのメイドやキュルケに借りができちゃったじゃない。あれ? 涙が出そうなのは、目が痛いからなんだからね)
仲間の心強いサポートに才人たちは感激したが、根本的な解決にはなっていない。右か左かでは漠然的な
位置しかわからずに受身にならざるを得ない。とどめを刺すためには、何か大技を叩き込むしかないが、
狙いがつけられなくては意味がない。それに、持久戦はウルトラマンがもっとも苦手とすることで、鳴り始めた
カラータイマーが限界が近いのを示している。
どうすればいいんだ……
妖精亭の皆のおかげでなんとか攻撃だけはかわしているが、解決策は見つからずに時間だけが無情に流れていく。
そして、カラータイマーの点滅が高速になり、いよいよ限界というとき、遂にザラガスの角の先端が緩慢な回避しか
できなくなっていたエースの体を捉えた。
「ヌワァッ!!」
脇腹を突かれて倒れこむエースに、ザラガスはいたぶるように攻撃を加える。起き上がろうとするたびに巨大な足で
踏みつけられ、太い尻尾を叩きつけられて身動きができない。第一、エースにはもうほとんど活動するための
エネルギーが残っていない。
「エース、頑張れ!!」
妖精亭の娘たちが叫ぶが、もうエースには余力が残っていない。ウルトラマンとて無敵ではない、攻撃を受ければ
傷つくし、できることにも限界がある。
しかし、ここでザラガスを野放しにすれば目をやられた人々で溢れたトリスタニアは間違いなく壊滅し、何千という
犠牲者がでるだろう。まだ戦える、いや戦わねばならないとエースの闘志だけはまだ折れていないが、体が言うことを
聞かない。
畜生……力及ばぬ悔しさに歯噛みし、とどめを刺そうとするザラガスが全体重をかけて右足を大きく振り上げた。
そのときだった!!
『カッター・トルネード!!』
突如、シーゴラスとシーモンスが作ったものにも匹敵するほどの、とてつもない巨大さの真空竜巻がザラガスを
飲み込んで、二万トンもの体重をものともせずに浮遊させ、100メイルほども離れた場所に吹き飛ばしたのである。
「あの魔法は!?」
「風の……スクウェアスペル……」
巨大怪獣をやすやすと吹き飛ばした桁違いの魔法に、当然ながら見守っていたキュルケやタバサの口から
うめきに似た声が漏れた。特に風系統の使い手であるタバサは、その魔法が自分とは全てにおいて次元の
違う使い手が放ったものであるということが、肌をつたう空気を通していやというほど伝わり、その源泉となった
存在を、はるか上空に見出していたのだ。
「……あれ!」
タバサが杖で指した先には、太陽を背にして急降下してくる巨大な鳥と、その背にまたがる鉄仮面の
騎士の姿があった。その異形の姿に若い者達は唖然としたが、スカロンなど歳を経た者は、30年も前に
消えていった伝説をその脳裏に蘇らせていた。
「あれは、『烈風』だわ!!」
そう、それこそかつて伝説とうたわれたトリステイン最強騎士、『烈風』と、その忠実なる使い魔たる、
この世界の名をノワールと与えられた巨鳥ラルゲユウスの勇姿だった。
「ノワール、打て」
短く放たれた命令を、ノワールは忠実に実行した。急降下により音速に近い速度を得たラルゲユウスは、
起き上がってきたザラガスの体をその翼で叩きつけ、再び大地に打ち据えたのである。
『ウィンドブレイク』
倒れたザラガスに容赦なく次の攻撃が打ち込まれる。真上から送り込まれた高圧空気が、まるで深海の
ような圧力となってザラガスを押しつぶそうとしてくる。
だが、ザラガスはそれらの一連の攻撃を受けながらも、全身の発光機関から煙を噴き出しながら体質変化を
とげ、受けた攻撃に全て対応できるようになって復活し、空中で体勢を整えるラルゲユウスに6千万カンデラの
光を放ってきた。しかし、『烈風』はその攻撃を読み切り、マントで目を覆うと同時に使い魔の目に眼帯を
『錬金』し、その攻撃を受け流してしまった。
支援
「同じ手が二度も三度も効くと思うな」
そう言い捨てると、『烈風』はもう一度『カッター・トルネード』を唱えてザラガスを空中に放り投げ、奴が
地上300メイルほどまで上昇したところで、使い魔にとどめの命令を下した。
「ノワール、打ち伏せろ」
竜巻から開放され、打ち上げる力と重力が釣り合い、ザラガスの体が空中で静止した瞬間、ラルゲユウスは
ザラガスの頭をその鋭い鍵爪で掴み、地上めがけて急降下!! その巨体を頭から大地に亜音速で叩きつけた!!
「うわぁぁっ!!」
2万トンの物体が隕石のように落下した衝撃で、トリスタニアは直下型地震にあったような激震に見舞われる。
『烈風』は、上空からあらかじめすでに人のいなくなった場所をめがけて落とさせたのだが、そこには直径50メイル
はある巨大なクレーターが作り出されていた。恐ろしい破壊力……仮にスクウェアクラスのゴーレムだとしても、
これを食らえば跡形もなく粉々にされてしまうだろう。しかし、粉塵が収まった後にクレーターの底にザラガスの
姿は見つからず、地底へと続く暗い穴がぽっこりと口を開いていた。
「逃げたか……ノワール、引くぞ」
相手が地底では『烈風』といえども手の出しようがない。巨鳥は主人の命令に従い、王宮の方向へと翼を
翻した。
トリスタニアに、再び静けさが戻った。だが、多くの家々が破壊され、まだ目をやられた大勢の人々が
動けずにうめいている。そんな中で、活動時間の限界に達したエースは飛び立つ力も失い、仰向けに
倒れたまま腕を胸の前でクロスさせて変身を解除した。
「フッ……デュワッ!!」
エースの姿が透き通るように消えていき、やがて本当にトリスタニアに沈黙が戻ってきた。
けれども街中に負傷者が溢れ、全市街地で都市機能が麻痺している。
このままでは、次にザラガスが戻ってきても民間人を非難させることさえできない。もちろんすでに衛士隊や
銃士隊、軍の部隊から街の自警団にいたるまで動ける者は全て動いていたが、それらの部隊にも
目をやられた者がかなりの割合で含まれていて、怪獣の再来に備えるどころか街の治安を維持して負傷者を
臨時救護所に運ぶだけで手一杯のありさまだった。
魅惑の妖精亭も業務を中止して、一階の店内で近隣の負傷者を集めて治療に当たっていた。
「2階からありったけの包帯を持ってきて!! ウドちゃんはお湯を沸かして、ドルちゃんはぼっとしてないで
薪を持ってくる!! みんなは手当てを急いで、けれど一人ずつ丁寧にね!!」
「はい!! ミ・マドモワゼル!!」
スカロンに指示されて、ジェシカ達が駆け回り、シエスタやロングビル達も黙っているわけにはいかないので
手伝いに走り回る。
「水のメイジがいればよかったんだけど……」
「どのみちこの人数じゃ手に余るわ……サイト君、ミス・ヴァリエール!!」
そのとき、よろめくように店内に入ってきた二人の姿を見てロングビルは悲鳴を上げた。ルイズは才人に
支えられながら、二人とも目から血を流している。
「あなた達、目を……とにかくこっちへ!!」
ロングビルとキュルケに支えられながら、酒の匂いのする椅子とテーブルで作った簡易ベッドに寝かされて、
二人は唇を噛み締めながら怒りと悔しさに震えていた。
「……負けた」
続く
ウルトラダイナマイト支援
これはタロウの技だっけ・・・?
以上、来週に続く!! 支援してくださった方々、どうもありがとうございました。
今回はエース、初敗北となりました。相手はザラガス、ウルトラマンも後期にはジェロニモンやキーラなど強豪が
次々に登場しましたが、その中でもザラガスは攻撃されるほどに強くなるという恐るべき能力の持ち主です。
しかし、ちょっと『烈風』を強く描きすぎたかなあ。けど、弱い烈風なんて『烈風』じゃないし、原作でもまるで
本気じゃなくてあの強さだし、いいですかね。
けれど、ほんとゼロ魔は面白いキャラが多くて楽しいですね。おかげでほっておくと頭の中でどんどん動いてくれて、
話を考えるまでもなく脳内で冒険が進んでいってしまいます。アルビオン行きは遅くなってしまいますが、この際
アルビオン行きと平行して2巻以降の設定やお話も進めていきます。
それと、今回は魅惑の妖精亭が初登場でした。私は酒は苦手なんですが、ここでの接待は受けてみたいものです。
GWで昼間から気兼ねなく書けるので、ラッシュをかけるつもりです。
では来週は、ザラガスとのリベンジマッチです。お楽しみに。
支援、遅かったか・・・
とにかく乙
アイちゃんかわいいなぁ
ウルトラの人、乙です
エースの初敗北!
そして次回はリベンジ戦、どう挑むのか目が離せません。
それにしても今回は色々と見所の多い部分がありましたが
スカロンが雇ったあの三人組はもしかしてあいつらなのかな・・・。
ウルトラの人GJ!
もうwktkが止まらない。
ウルトラの人、乙。
おお、ウルトラマンに対する依存がジワジワと始まってきましたな。
ラスボスさんでもその辺には少し触れていましたが、この話ではどのような回答を出すのか楽しみです。
……しかし、キーラとスノーギランとザラガスの能力の差って一体何なんでしょうね。
874 名前:蒼[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:15:18 ID:UOyOCfuU
なんの話だがさっぱりだが、俺は作者本人だよ。
なんならトリでもつけようか?つっても今さらここでくっつけてもどうにもならんか……。
あれからちょっと考えたが、もうここじゃ続けてらんねーや。
支援絵描いてくださったり、毎回wikiに登録してくださっていた人たちには
裏切るような形になってしまうのがすごく残念で仕方がないが。
本当は最後まで書き切りたかった、それが出来ないのはすげぇ悔しいけどな
876 名前:蒼[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:20:34 ID:UOyOCfuU
そっか、んじゃ行ってくるわ
って規制中やん。雑談スレでいいのかな、まぁ、とりあえずそっち行くわ
877 名前:名無しさん[] 投稿日:2009/05/03(日) 00:22:12 ID:0BQ3nUqs
どうせ書くの止めるなら
最後おもいっきりはっちゃけて終わらせちゃえば?
バージルがギーシュに竹槍に刺されて死んだとか
878 名前:蒼[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:23:22 ID:UOyOCfuU
>>877 じゃあお前が好きにすりゃいいよ
書いて投下して来いよ、止めねぇから
879 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:27:38 ID:7Vg/fhbA
雑談スレで打ち切り宣言するならageた方がいいぞ
そっちのが人の目に付くから
880 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:29:59 ID:TmsWZxhs
まあ信者も多かっただけに毒もたくさん吐かれてたからな
異様なまでにアニキアニキ連呼する狂信者と毒吐きの板挟みでさぞかししんどかったろう
ここでドロップアウトしても構わんと思うね
別の趣味に力入れるなり、気分入替えて別の話書くなりすればいいんじゃないか
883 名前:蒼[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 00:38:47 ID:UOyOCfuU
やっべ。いつもの癖でsageちったよ……
つーかなぁ、ここの毒やウジ虫の粘着より、異常な期待のがキツかったよ
俺はただ書ければよかったんだけどな。
書いてる時もどっかケツをけっ飛ばされてる気もしてたしな。
移転してチマチマ続き書いて終わらせるつもりではいるが。
いつの話になることやら。
まぁいっか!シャワー浴びてくるわ!
889 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 01:17:46 ID:ycHS8hIE
この出張サービスは提督とは違うウザさだな。と、少し笑えて来たw
892 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 02:20:45 ID:Pyi5jEYc
蒼の作者自身が「もうやってらんねーよ」って言ってるんだし、放っておこうや。
俺的には蒼は嫌いじゃなかったけどな。
最初はドヘタクソな文章で、表現も薄かったけど、書いていく内に上達していくのが見えて結構気に入ってたがw
何にせよお疲れさん!!
趣味はあくまで趣味で書いていくと良いさね。
914 名前:名無しさん[] 投稿日:2009/05/03(日) 15:55:03 ID:Howoy4tA
蒼は提督みたいな作者だったな
いなくなるなら黙っていなくなればいいのに構ってちゃんだからクソ
構ってちゃんは総じてクソなのは間違いない
____
/ \ /\ キリッ
. / (ー) (ー)\ 917 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 18:24:47 ID:IsOHxGmM
/ ⌒(__人__)⌒ \ 提督の作者には蒼と比べて一本筋が通ったものの考え、美意識があったよね
| |r┬-| | アンチでも信者でもない通りすがりの意見です。
\ `ー'´ /
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
____
/_ノ ヽ、_\
ミ ミ ミ o゚((●)) ((●))゚o ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\ /⌒)⌒)⌒)
| / / / |r┬-| | (⌒)/ / / // だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwww
| :::::::::::(⌒) | | | / ゝ :::::::::::/ 通りすがりの作者乙だおwwwwwwwwwwwwwww
| ノ | | | \ / ) /
ヽ / `ー'´ ヽ / / バ
| | l||l 从人 l||l l||l 从人 l||l バ ン
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、 ン
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
ふーん
ウルトラの人、乙です。
ハルケギニア人のウルトラマン依存。初代マンではイデ隊員がかかり、
タロウでも復活したヤプールの話でありましたな。さてさて、どうなることやら…。
烈風強し! ラルゲユウスも強し! ザラガスが赤子のようで…逆に不憫に感じる(苦笑)
で、ウド、カマ、ドルはやっぱり”あいつら”ですよね? 300メートル作りそこなった”あいつら”ですよね!?
自分はあいつらが好きで好きでたまらんのです! ネタでもいいから”あの首”に出て欲しいなぁ〜。
印象的な”ビヨーン、ビヨーン”は自分も本気でやりたいなぁ〜。
> ID:ZOCE+vtG
蒼の人がどうとか以前にお前個人がウザい
そーれハッスルーハッスルー!
ところでさなんでカトレアだけ乳がでかいんだろうな?
母親も小さかったんだろ?隔世遺伝かな?
どちらにせよとてつもなく稀有な場合だよな
>>97 小さい頃からおねえさまに生意気な胸ってつねられまくったんだよ。ルイズの頬をつねるが如く。
>>97 カリーヌさんのが小さいという記述は原作のどこにも無い。
>>98 それででっかくなるならたぶん自分で揉みまくってるだろ
>>99 つまり新生命体か…
>>102 自分で……ゴクリ。
いや、最初そう書こうと思ったんだけどね、乳揉み大好きカトレアさん。
>>103 いや、自分のを弄くり倒してるのはエレオノール姐さんの方で言ったんだが
>>104 しまった、貧乳に興味は無いもんだからつい。
タバサ可愛いよタバサ、ルイズも可愛いよルイズ。
貧乳は感度がいいって聞いたことがある
巨乳は実は感度がいいって聞いたこともある
つまりおっぱいは総じて感度が良いと?
つまりカトレアは胸を弄ってオナ○ーしてたから胸が大きく
ルイズは栗をエレオノールは穴るを弄ってオナ○ーしてたので栗と穴るが大(ry
おっぱいというよりは○首だわな、感度がよろしいのは。
なんで、摘めw
もういいかげんえっちなのはいけないとおもいます
結論すると
>>114がもっとも感度がいいということでよろしいか?
>>114 いい感じにほぐれただろう?たまにしないと発狂するからな、俺たちは
もうおっぱいの話はいいから
それよりもどのキャラを嫁にしたいかについて語ろうぜ
タバサは俺がもらって行く。
イザベラ様は私の嫁。
1:とりあえずムカツクのでヴィットーリオとジュリオを蹴飛ばしす
↓
2:そして次ぎにアンリエッタを頂く。
↓
ウマー(゚д゚)
ところでここって二次創作的なキャラもありなんだろうか
具体的にはスパシンとか
以下フルぼっこをお楽しみください
サイトはSAITOになって・・・るかorz
召喚されたキャラに影響受けたりして変わっていくならOKだよ
スーパーマリコ
スーパーシンデレラ
きゅいきゅいは俺の嫁
モンモランシーは僕のかわいらしいお嫁さんさ!
サイトは既に公式でチート入りつつある
救国の英雄なんて、俺の邪気眼が光速でマッハなんだが?
サイトは16巻かけて英雄になったんだからチートとは言い難いような
シチュエーション的には火星の大元帥の系列と同じだよな。
16巻かけてシュバリエの地位とうらぶれたオルニエールの領地だけなんだから、それほどチートでもないんじゃないかな?
爵位の上では、王が寵愛する近臣や能吏を取り立てる方便として乱発した男爵位にすら届いていない訳だし。
救国の英雄だなんて言われる活躍が出来るのををチートっつってんだろうから、
地位とか領地は関係無いんじゃないか?
それと、作中での経過時間じゃなくて現実での巻数の問題なの?
>>132 チートという言葉で考えていることが違うような気がするな
いや、士爵で領地持ちというのは、逆にすさまじいと思うんだが。
貴族の、既得利権なんかを考慮すると、貴族として封じた方が絶対に後々面倒なことにならないぞ。
まぁ、貴族という制度自体を見直していく、というアンリエッタの政策だというのなら反対はしない。
超長期的に見れば、そっちの方が国力を得ることができる。
……が、如何に、王女と公爵嬢の覚えめでたい救国の英雄といえど、後々苦労するぞ、この扱い。
>>131 どこの馬の骨とも分からなかったような男が貴族になっただけでも十分凄いと思うが…
>>132 作中世界に対してどんなズルやインチキをした事になってるんだ?
ガンダールヴと地球のゼロ戦や戦車使えるのはチートみたいなもんではある
まあ戦争中はともかく戦後になったらジャンヌ・ダルクみたいに邪魔者扱いされて抹殺されるんじゃね?
と思ったがヴァリエール家という後ろ盾があるからその辺も安泰か
>>136 虚無の使い魔ガンダールヴってのが作中世界内でもチートかなとは思うがこれをチートと言ってしまったら物語自体が成り立たなくなるんだよな
作品の根幹に関わるれっきとした設定じゃないか
「ファンタジー世界」ってくくりにおいてのチートじゃないの?
サイトじゃなくルイズに与えておけば問題なかったのにな。
トップを狙えのタカヤ・ノリコの成長具合と比べたら…
地球じゃ乞食坊主でも中華皇帝に成り上がれるけどね
>>136 この流れの中に、そういう意味でチートって言ってる人がいるのか?
>>134 あれ? サイトって子爵位もらってたっけ?
ある程度の領地(封土、封戸)をもらっていたら自動的に勲爵士以上の爵位も付いてくるだろうけど、
原作ではサイト・シュバリエ・ド・ヒラガ・ド・オルニエールで未だ領地持ちのシュバリエ止まりじゃなかったか?
>>135 世界史を勉強してみるといいよ。
外国から流れてきたどこの馬の骨とも分からないような輩が王になった例はいくらでもある。
ましてや最下級の貴族なんて……。
>>142 アンリエッタが避けるべき問題と考えてないからな
別の対決すべき問題を解決するための布石くらいに思ってるんじゃないかと
チートチート言えばいいってもんじゃない
主人公がチートだっていいじゃない、ラノベだもの
「メルヴィ&カシム」でカシムが浮浪児のまんまでメルヴィ悪役とかだったら嫌すぎる…って喩えがマイナーすぎるか
チート=凄いこと
な感じの意味で使われてるような気が・・・
正しい使い方を教えてやる。
タイガー戦車で無双するなんてチートだ・・・あれ?
>>146 子爵じゃなくて士爵。
イギリスで言うところの「サー」の称号の日本語訳。
シュバリエとサーはほとんど同じような扱いだから、こう書いた。
真の意味でのチートな使い魔なら小ネタであったよね
>>151 すまん、普通に見間違えた。
でもそれって一般的な日本語訳では「勲爵士」と(ry
真のチートは対メイジ兵器としか思えないデルフを作って
6000年経ってもなお戦車や戦闘機を召喚するブリミルの魔法かと思ったが
その戦車や戦闘機のためにガソリンやミサイル作ってくれるコルベールが作中最大のチートな気がしてきた
ところで、デルフって系統魔法吸収できるのに先住魔法を吸収できなかったり(少なくとも反射は吸収できない)
先住の魔法で動いてるって自己申告から考えると
作ったのはブリミルじゃなくてサーシャか誰かなんだろうか、やっぱり
>>154 あるいは両者合同とか・・・まあそこら辺はこれから先出てくるだろう。
あのまま退場というのも、なさそうだし。
>>153 俺のいちばん始めに見た訳語が士爵だったんで、それを使っているし、
一般的にはどうなのかは知らんが、ググった結果も
士爵 の検索結果 約 6,740 件
勲爵士 の検索結果 約 11,300 件
という状況なんで、どっちもあんまり大差ないように感じるんだが。
ぬっちゃけどっちも一般的じゃないって話だな
シグルイの虎眼先生は実力はチートどころか化物級なのに
それが封建社会に全く通用しない悲哀が凄い
素浪人から三百石取りの上級藩士だから十分凄いんだけど、
自分より弱かった柳生宗矩が将軍側近の大名まで上りつめるのを見ながら
唯一身につけた処世術が上役へのへつらい笑いという…
>>153、156
ナイト=騎士=士爵=勲爵士
ぜーんぶ同じ。
領地があるか、永代爵位か、分家か、新興か、紋章では色々区別がつくが日本語的には一緒。
>>158 封建社会ってそんなもんだ。上昇志向≒叛意
サイトは義経とラスプーチン混ぜたようなものだ。救国の英雄+寵臣とか下克上フラグですよ
日本人的感覚で言えば騎士が今のサイトに一番近い状態じゃない?
RPGのおかげで、騎士=強いやつが貰える称号みたいに思ってる人も少なくないし
>>161 うん。
ナイトの称号が要するに士爵なんだよ。
オストラント号作ったコッパゲが作中最大のチートキャラなのは確実だと思う。
サイトの活躍だって、トリステイン貴族が保守や私欲に走って仕事サボることなく、
ちゃんと武勲上げてさえいれば、あそこまでサイトに手柄与えることもなかっただろーに……
まあ、ガンダールヴの性能がチートじみてるのには変わりないけどw
どっちも現代日本的にはなじみが無い、って言いたかった。
つまりだな、ソレっぽく書いてありゃオレら何だっていーんだよ。
って事を長文で書こうと思ったが、俺の頭じゃ無理そうなので止めたw
こまけぇこたぁ
シュバリエってあんま他のラノベとかじゃ見ないよな
俺がオーギュスト.デュパンくらいだな知ってるの
変に参考にしないで全て架空爵位ならつっこまれることもない、とそう言うことだな。
サイトは言葉が日本語に翻訳されてるんだから、既存の爵位に置き換わって聞こえてると解釈すればOK・・・ではなかろうか?
どのみち、これは避難所の設定考察スレ向きの話題じゃないか。
今日はみどりの日だから緑にちなんだ使い魔、仮面ライダー、ルイージ、リンク…
戦隊じゃ緑は地味かいないかだけど、意外と有名どころが揃ってるな。
グリーンデイ
は姉妹スレですね
緑風
>>164 無理だろ。他の国に対して明らかに国力で劣ってるんだから、伝説の使い魔が出てきてくれなきゃ勝てないだろ。
現状、サイトとルイズの存在こそが一番の安全保障なんだよな、トリスタニア。
ま、ビートルズが外貨獲得の功績によってサーの称号貰ったようなもんではあるな
しかしタイガー戦車って良くあんなもの使えるよな
装甲の強度とかは色々凶悪だけど欠点のせいでコッパゲ悶絶しそうな気もするが…
っ200m/?
>>171 ハルク、ヨーダ、グリーンゴブリンもいますぜ
>>176 当時の戦車としては高性能だったか燃費に関しては最悪で、資源不足に困ってたドイツは燃料がないから壊れてもいないティーガーを捨ててかないといけない破目になったとか。
高性能じゃねーよう。
重すぎてよーく壊れる。足も糞遅いし、ちゃちな橋は渡れないし。
正直、主砲と装甲しか良いところが無い。
その装甲も垂直に立ってるから重量あたりの強度じゃ弱い方で、ただ厚いだけ。
それでも超長距離からの精密射撃で戦果を挙げてたみたいだけどね。1.5km先からほぼ音速で飛んでくる恐怖。
メタルマックスでは最強の戦車だった
>超長距離からの精密射撃で戦果を挙げてた
それを高性能と言うんじゃねーの
完全無敵な兵器なんぞ存在しないんだし
遅いって言っても時速40Km近く出るんだがな。
それに装甲云々言っても、リベットで装甲接合してる戦車が現役の時代だったと思うが。
攻撃喰らうとリベットが吹っ飛んで、死傷者を続出させたという・・・
>>181 兵器としては優秀ですな>ティーガー
中の人込みでだけど
ただ、機械や工業製品としては良いとは、間違っても言えないけどね
兵器としての総合的な能力なら、T-34/85やM-4A3E8には劣る、って評価もあるけど
決して間違ってないと個人的には思う
中の人込みで優秀な兵器・・・
とっつきか!
対戦する側にしてみりゃ、
「遠距離でも一撃必殺」の攻撃を何発も掻い潜って
至近距離まで肉薄しないと倒せないんだから
物凄く嫌な戦車だったと思うぞ
どこかで子供の声がする
助けを求める声がする
魔王の仕業か企みか
戦え僕らのグリーンマン
グリーンマンを召喚するんだ。
>>171 ライダーで緑と言えばアマゾンだろ
戦隊だと緑のアニキとかシュリケンジャー?
>>179 >その装甲も垂直に立ってるから重量あたりの強度じゃ弱い方で、ただ厚いだけ。
挿絵から判断するに、サイトの乗ってるタイガー戦車は傾斜装甲を採用したタイガー2っぽいけどね。
重くて(戦車としては)脚が遅いけど、そもそも機動性を犠牲にして重装・大火力を目指した戦車だから欠点とは言い難い。
機構が複雑で、故障が多かったのは言い訳のしようがないけどw
・・・何のスレかと思った
つまりタイガー戦車じゃなくてパンター戦車ならコッパゲが過労死せずにすむと。
日本が技術立国になった理由がわかる気がする。
なにせ機動性、耐久性、攻撃力、保守性、を兼ね備えないと高性能と言われないんだからなw
しかし、そろそろスレ違いかな。兵器の話題って厨っぽいし。
さぁ、ミリタリー板にゼロスレを立てる作業に戻るんだ!
蒼ってバージルの人か。
本人がそういうんじゃココで続きを待つのは
諦めるしかないか。なんにせよ乙でした
>>192 日本の戦車だったらヨルムンガントに負けてたかもしれないw
戦車で爆外伝思い出した
実際に靖国神社でチハたん見たことあるけど、アレでよく戦場に出れたなって思うくらいに華奢な戦車だったw
まぁ、チハたんは第一次世代戦車というか歩兵直衛の為の戦車だからな。
例えるなら、ヨツムンガルドと戦うのは想定外。
7万人をGYAKUSATUするのが正しい使い方。
いやまて。
ホニ I(一式砲戦車)ならヨルムンガント串刺し撃破出来るぞww
>>199 ところが、登場当時はごくごく普通の、場合によってはむしろ高性能な戦車なんだぜ?>チハたん
>なにせ機動性、耐久性、攻撃力、保守性、を兼ね備えないと高性能と言われないんだからなw
それら全てを兼ね備えていても数に押し潰されるんですねわかります
誰か!誰か破軍武侠呼んできて!
ジャホウセンでいいから!
個人的にはヨルムンガントはどのくらいの破壊力なら倒せるのか興味あるな
戦車砲で言うと75mmは必要なのか?
個人携帯なら84mm無反動砲クラスは必要なのか?とか
軍オタは避難所いけよ
そうだなこの辺でやめとこう
スマンカッタ
新城直衛を千早込みで召還とかどうかなぁとおもった俺は軍事知識なし。
ミリオタ気持ち悪い。
限度をわきまえろ
ならば美しきパラボラ、メーサー殺獣光線車が代わりならどうだ!!
(注意されて反省・終わった話題を蒸し返すなんて・・・こんなスレを覗く価値はあるのか?)
>>78 一人だけ「ママー」ってやられてる人がいるけどこれはあのオッサンが言っちゃったのかな。
>>209 L作戦マーチもよいが、やっぱスーパーX3だろ常識的に考えて。
テーマ曲とともにヨルムンガントを氷結粉砕だ!
動力も核融合炉で、弾薬等を無視すりゃ運用稼働期間も無問題!
>>212 ヨルムンガンド相手にはいいかもしれないがそれを人間に向かって使うのは怖すぎる
>>212 むしろ東宝自衛隊の兵器はどいつもこいつもやばすぎるわw
原子炉なんてヤバイもの積んだメーザー戦車も人間に使うにゃ充分アレだがな。
食らったら頭がパーンッなんかじゃ済まない。種のサイクロプスの悪夢再び。
7万相手に光線発射すればハンバーガーヒルinハルケギニアの出来上がり。
実際のところ戦艦他大型兵器なんかはガンダ一人じゃ運用できないわけだが、
サイトのみで使用可能な武器・兵器は架空のも含めてどれだけあるのか?
存外いろいろな武器“だけ”を他作品から召喚するSSもおもしろいかも。
つストームブリンガー
獣の槍
幻魔
デビルアクス
>>216 戦車からすると一人で運用できなくてもいいんだよな
でも戦艦に乗ってもルーンが反応した様子はなかった
サイトが把握できる人数で運用できるってのが境目なのかな
『草薙』とか?
アレは使い手が秘密にしておきたかった秘密兵器というのもあるかもしれないけど
チハたんならハルケギニアの技術で一から作り出せそうな気がする
無責任艦長タイラーから戦艦『須磨』戦艦『明石』だな。
じゃあドグラを
>>222 サイト「見ろよルイズ、俺の中のドグラがこんなに大きくなったよ」
ルイズ「食べちゃったんです、私が。キュルケも、タバサも、姫さまもシエスタもみんな。私が食べちゃったんです」
>>223 元ネタなんだっけ?
MONSTER?
ルイズがヨハン召喚したら学院の生徒が殺し合いやりそうだ…
虚無戦記というか次元生物奇ドグラ
生物とかに寄生して際限なく増殖していく邪悪な「生きた空間」のこと>ドグラ
虚無戦記じゃ一応「神の軍団」の生物兵器扱いだったので、
ガンダのルーンが武器と認識したら制御できるかも。
>>219 裸で何が悪い!と叫びながら全裸で七万に向けて突撃ですね、わかります
>>223 やめて、僕のトラウマ蘇らせないで!!!
>>224 石川賢、ドグラ、夏休み、
でググればおそらくわかる。
>>223 その漫画今でも印象に残ってる。
20年以上前のコロコロコミックの別冊かなんか
にのってたよな。
今ググッたらボンボンらしいね
そういえばコロコロの別冊の怖い話って、いじめられた復讐とか動物殺した呪いとかがメインだったなぁ
変な光を浴びてみんなが共食いを始める話もあったな。
あれもボンボンだったのかな?
>>216 巨大ロボット全般とか
戦艦でもオートメーション化されて一人でも動かせる場合ならいけるんだろうか?
気になるのはSOLとかドーンハンマーのような衛星砲の扱い
手に持つのは照準機で撃つのは軌道上にある砲台からだし
魔改造なサイトが、「わが部下こそわが武器よ!」とか認識すると全体強化されても何もおかしくはない
貴様、進化を兵器として使ったのか!?
石川ネタはゲッタースレでやろうぜw
新ゲで平行過去に飛ばされるタイミングの竜馬とかを呼んだら面白そうだけどな、他の二人もどっかで呼ばれてて。
>>188 >緑のアニキ
ルイズに召喚されてしまった、ドラゴンレンジャー・ブライ!
果たして彼の運命やいかに!
次回、【ゼロの使い魔ドラゴンレンジャー】
『 ブ ラ イ 死 す ! 』
お楽しみに!
こうですねわかります!
同じ機体に乗ったとしてサイトと斑鳩どっちが上なの?
やっぱり修羅場の数、ガンダの力からしてサイトが上か?
>>237 おいおいサイトは斑鳩に比べて修羅場の数は少ないだろ
それにガンダでは操縦技術までは上げられんだろ
ガンダじゃ操縦の仕方くらいしか分からないとおもう。
>>238 サイトってゼロ戦特有の高等飛行技術披露してなかったか?
>>240 松葉崩しだっけ、ツバメ返しだっけ、ひねりこみだっけ、と喉手状態でスッキリしなかったのが解決した。ありがとう。
あらゆる武器や兵器を自在に使いこなすガンダールヴ
エンジン付きならどんな乗り物とでも一体化する斑鳩
操縦技術に関しては引き分けで良いんじゃね?
個人的には一体化する斑鳩の方が上な気もするけど、
マシンに感情移入し過ぎるマイナス面もあったよね?
>>230 それはコロコロ。確か1984年とかその前後の夏の増刊号だったと思う。てか二十五年くらい前のを読んでるとか、このスレは年齢層高めだなあ
コロコロの夏の増刊号の怖さは異常
あの虐められた子が復讐する話は今でも夢に出るんですけどorz
>>235 隼人がルイズに召喚されてギーシュが「眼だ!耳だ!鼻っ!」
となるなぁ…
>>237 ガンダのチートはその辺だよな。
使い方や経験まで保障してくれるから言ってしまえば
ガンダ>>>>>他の全ての武器使用キャラ
ってことになる。理論上はライフル使えばゴルゴ以上、
拳銃使えば冴場以上、刀使えば五右衛門以上。
>>220 チハタンを馬鹿にするな!
建造当時は世界のトップレベルに位置してた戦車だぞ!
そもそも対戦車戦闘を意図して設計された子じゃないし
身体能力では五右衛門>>>>>>ガンダサイトっぽいけどな
っぽいってか、間違いないだろ。
斬鉄剣や身体能力がダンチだから、タイマンじゃ即殺だろうよ。
ただサイトはコンニャクが切れる。
>>247 サイトがマグナムの反動に耐えられるとは思えないし居合いの動きに
体がついていけるとは思えない
結局は基礎体力ですよ基礎体力
>>247 心の震えで補正レベルが決まるから、たった今、世界を滅ぼす災厄
そのものと化した最愛の人をせめてその苦しみから救ってあげるために
武器を振るうときにMAX補正というかザ・ワールドするかとw
感情次第でそこらへん強化されるんじゃなかったっけ?
要するにガンダもエクスプロージョンもデウスエクスマキナ
この流れから考えると重攻の使い魔のライデンのガンダ補正はどうなるんだろ?
心の補正は期待出来ないけどがガンダ補正のお陰かレーザーの射程圏が伸びている気がするんですよ。
今のサイトなら五右衛門も倒せるんじゃねえの?
ガンダ補正なしで
というか切りあいでデルフは斬鉄剣に勝てるのか?
個人的に気になるガンダ補正が虚無のパズルのプリセラ姐さんだったりする俺
素手でアレなのに武器なんて持ったらもう…
>>255 無茶いうな、相手はライトニングクラウドすら切り払いかねん奴だぞw
武器は持たない。空手だ。
>>253 魔術とは感情を理性で制御し、昂ぶる魂を魔力と融合させ、精錬、精製するものなのだ
バカ犬相手に表道具は用いぬ
拳ひとつで勝負せんかい!
終わりのクロニクル2nd-Gの軍神鹿島や剣神熱田あたりがガンダの終着点なんだろうか
>>247 ゴルゴは知らんが、冴場とか基本能力からして化け物だぞ
使い方や経験程度じゃ無理だよ
サイトを過小評価してるやつって何なの?
アンチなの?サイトに嫉妬してるの?
>265
なぜなら私がアメルカ合衆国大統領だからだの人だろjk
>>268 夫妻…
デビルマン(実写)から召喚ですね
>>247 ガンダはそこまでの能力だったか?
武器の適切な使い方がわかりそれを実践できることと、身体能力の向上がガンダの能力だろ。
武器を持てば神業的技量を発揮するというより、
熟練者・達人の技を圧倒的な身体能力で振るうというイメージなんだが。
近代武器も使えるというのは、ある意味おかしい点があるな。
ライフルなんて横風の計算などができてないと(というか常人はできない)長距離射撃なんてできない。
もちろん、風向きなどの状況は場面場面で異なる。
そのような武器以外の状況把握までもガンダでできることになっている。
まあ、ゼロ戦サイトがエーリッヒ・ハルトマンやハンス・ルーデルなみに強いのではなく、
竜騎兵が弱すぎただけかもしれないが。
そういや騎乗武器だと、身体能力関係ないな。
>>247 ……いっておくが、殺しとマトうちを一緒にしないこどだ……
>>271 ここらへんを設定で決め付けようとするとEMIYA化が始まるから気をつけたほうが良いと思うぜ。
あれも似たような能力に拡大解釈の極みになってるから
武器に刻まれた過去の使用者あるいは製作者の記憶を掘り起こしてサイトにインストールしてるんだよ
近代武器でもなんでも問答無用で使えるのはそのため
筋力アップはおまけ機能
俺設定乙
その割にサイトの剣を見事に避けていたワルド…。サイトはガンダ補正で戦車使うけど
歴戦の戦士が使う戦車>サイトが使う戦車>>素人が使う戦車
こんな感じなんだろうなぁ
サイトがライフル持って、シモ・ヘイヘになれるか。
武器の効率的な使い方がわかり、それを実践できる身体能力を得られるのがガンダ補正だよな?
でも実戦ってのはマニュアル通りに進められるわけがないんだから、経験から得られる勘働きや技術までは補正外だと思う。
戦車みたいな近代兵器なら、マニュアル通りにやれば十分威力を発揮できるんだろーけど。
紅ってラノベに出てくるキャラに、武芸としては全くの素人だが、
刃物を扱うのだけは病的にうまいってのがいたな。
どう刃物を扱えば最速なのか先天的に体が知っているとかなんたら。
武道家にしてみれば積み上げてきた流派の努力を否定する最悪の存在。
サイトってこれの全武器適応版っぽい。
ゼノギアスからデウス呼ぼうぜ!!
ガンダールヴ殺すにゃ刃物はいらぬ
毒を一服盛ればよい
性器に毒塗って誘ったらサイト余裕で死にそうだな
>>279 全く別の話のキャラの特性をだしてどうする。
しかも、サイトが全武器適応の根拠がないぞ。
あと、どう刃物を扱えば最速なのか先天的に分かっている程度では、
流派の否定にならんよ。それで否定されるのは2流。
最速な剣の振り方を目指すのではなく、どのように体を動かし攻防するか、相手の隙をつくるか、なども流派の考え。
>>282 そっち方面の強さならMONSTERのヨハンに敵なしだなw
数学だってどれだけ発達しているかも分からないようなトリステインもといハルケ
あの世界の経済・政治くらいなら現代社会を蟻の行列をいじるように操った彼なら軽く転覆さえできるはず
>>282 芸人殺すにゃ刃物は要らぬ
雨の三日も降りゃあいい
>>278 現代から異世界に行く武器はどれも異世界じゃ最強クラスだもんな
同じレベルの武器で達人とやりあったらどうなるか分からないけど、
異世界の人間相手にする分にはマニュアル程度で充分だな
>>282 「813」だったかな。
ルパン(3世じゃなくて本家本元ね)が毒を入れられた菓子を
「俺は体を毒に慣らしてあるからなんでもない」
と言いながら平らげていたことを思い出した。
>>281 あの言葉、ミァンがつぶやいたと思って爆笑したんだけど
>>279 最後の一行以外が他作品キャラの説明で、
最後の一行が説明無しに「サイトはこれの全武器適応版っぽい」ってw
>>280 ゼノギアスがゼノグラシアに見えてしまって「誰を呼ぶんだろう?」とちょっと考え込んでしまったぜ!
…ツタヤ行ってくるかー。
銃夢にケイオスってキャラが(ry
>>283 サイトは山風作品のくノ一にコロッと殺られそうだw
まあ、そろそろ最強キャラスレでやれという
>>239-240 ATに乗ってブースタンドやったり、ゲッターに乗って目をつぶって合体したり、フリーダムに乗ってマルチロックする
才人を思い浮かべた俺
>>293 すぐに死ぬ、殺すことが出来る銃夢では割とおとなしいキャラだよな
サイコメトリー能力の万能性でそこそこの話を作れそうだ
>>295 つまり
Another Saito Episode V
ってことか
AT出てないけど
デウス・・・よりもむしろ天帝カイン召喚
エーテル能力はおよそ最強
ただ身体がもう・・・な偏った最強
ギーシュとの決闘になんとかこぎつけて神輿担ぎを増やして話を進めます
・・ん?良く考えたらゾハルとか無ければエーテルも使えないじゃん
単なる死に損ないのジジィじゃん・・・
スパロボにサイト出たら大活躍だな
勇気・闘志・正義・根性・愛・友情で絶対勝利の力を呼び込む連中の中では普通。
>勇気・闘志・正義・根性・愛・友情
なんだ、サイトが全部持ってるじゃん。
ひらめきも集中も無いからスーパー系に載せないとシナリオ序盤で落とされるよーな…
>>302 その上必中、鉄壁、不屈も無いから実はスーパー系でもキツイ
サイトとキラの肉弾戦とかいうタブーっぽい展開になるなら買う
サイトを生身ユニットにすれば万事OK
>>301 >勇気・闘志・正義・根性・愛・友情
> なんだ、サイトが全部持ってるじゃん。
あくまで常人の範囲でな。
あの世界でやっていくには絶対的に力不足。
そしてVS東方師弟や十傑衆で詰むんだな
上の戦車とガス系の話を見て元インビジブルナインのヴォルフさんと戦車召喚とか妄想したけど出番が微妙すぎて妄想仕切れなかったぜ
>>303 ルイズが契約の為に接触者に・・・もしくはカドモニに・・・
どちらにせよ神話の幕開けだね!
ゾハルでシルエットミラージュ思い出した
シャイナが呼ばれたら大暴れだが、
もしワルドが頑張って彼女を殺してしまった場合、惑星規模で大爆発して世界壊滅
ガンダームヴですね
>>310 本編終了後なら爆発はしない、か?
随分昔の記憶だからちと曖昧つーかまたぞろ懐かしいもんを出してくるなおいw
>>301 正義の効果がわからんが、むちゃくちゃバランスの悪いラインナップだな。
サブパイロットの精神次第か?
ルイズより、タバサの方がサブとしては絶対優秀だろうなぁ。
>313
それで職人がSSを書けると思うから、それでいいと思う。
>>257 プリセラはガンダ補正なくても7万人を一方的に叩きのめしてもおかしくないからねぇ。
それこそ敵側にヨマクラスの相手でもいないかぎり。
今日はこのまま投下なしで終わるのだろうか…
ゼノギアスはグラーフ召喚があるけど最初で止まってるな、生身でギア三機を相手にする化け物は扱いづらすぎたか。
エレメンツの漫才コンビが召喚されたらおもしろそうだが。
滅殺の人GJ!
一刀両断カッコイイっす
フェイとエリィならゾハルなしでエーテル使用可能だな
デルフ出番ないけど
>>315 プリセラがヨマに負けたのは相性の問題だからな
多分、「ヨマクラスの魔力を持っている」だけの相手だと完封できるんじゃね?
ブライクブロイドとの戦闘を見る限り
>>254 いや、ライデンのレーザーは対艦用だから射程は恐ろしいほどにある。
そこにガンダ補正だけじゃなくルイズとのリンク補正も加わったから射程が伸びてもおかしくない。
バイナリーロータスは地上から衛星軌道上の目標を狙撃できるくらいに超精度
でVディスクの純度が上がるほど機体の性能も上がる
オリジナルVRが自己進化やら自己修復やら持ってるのはそのせい
さらに言えば常にコンバートし続けて弾薬を無限に補充することも可能
ライデンのレーザーは戦艦の主砲じゃなかったっけ
そうそう、大気でレーザー減衰してそれだから
真空中だともっと狙撃性能上がると思う
>>322 それは初代だな
OTからはちゃんと生産ライン確保してる
今日は本スレに投下ゼロか
平和ですね
流れぶち切りで失礼ながら、3〜4レスほど使って投下させてもらっていいですか?
『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』より薬師寺天膳を召喚ということで。
よろしければ5分後から始めます。
バジリスク? エログロならちゅーいといいつつ事前支援
「……我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」
トリステイン魔法学院春の恒例行事、新二年生の使い魔召喚の儀式。
この通過儀礼は今年もつづかなく進行し最後の一人を残すのみとなっていた。
呪文の詠唱と共に起きたおびただしい煙と爆音が去り、生徒たちが声をあげる。
「あれは……人間か?」
「平民だ!『ゼロのルイズ』が平民を召喚したぞ!」
──そこに現れたのは、一人の男であった。
黒々とした総髪に整った顔立ちは30歳前後かと思われるが、
肌はのっぺりと艶がなく血の気が薄く、異様に老成した印象をも与える。
衣服はその場に居合わせた者たちには見たこともない種類のもの──袴に裃──であったが
腰に剣を帯びていることからこの男がメイジではなく、あるいは異国の戦士階級に属していることが知れた。
大の字に寝そべった男は周囲の喧騒を知らぬかのようにぴくりとも動かず、くわと目を見開いてただただ虚空を睨んでいる。
「あっはっはっはっ!流石にルイズは期待を裏切らないわねぇ〜よりにもよって平民を呼び出すなんて!」
「オチがついた所で早く終わりにしましょうよ。ねぇ先生?」
口々に囃し立てる生徒たちの声が聞こえぬかのように、ルイズとコルベールは現れた使い魔の姿を注視していた。
少女は屈辱と悲嘆に自失した様子で、教師は極度の緊張を面にあらわして。
つられて生徒たちも依然沈黙を保ったままの男へと視線を戻す。
「……なあ、もしかしてこの使い魔」
色白と見えた顔はますます血の気が引いて蝋のごとく。唇の端からは一筋の朱が落ちて草の上に固まった。
「死んでねぇか?」
墨を広げたように黒く、暗い闇の底であった。
人が眠りに落ちるときに見るそれを思わせたが、本来は似て非なる物。
なれど余人の死が覚めることのない眠りならば、この男の生は
終わることのない悪夢にしてかりそめの死は一炊のまぼろしに過ぎぬ。
解脱も救済も望むことかなわず、うつし世に縛られ続ける宿怨の子は今また黄泉の淵から舞い戻ろうとしていた。
男が目が覚ますと、すでに日は高く上っていた。
今日は里の女子を連れて山菜取りへゆく日であったろうか?
記憶が曖昧模糊として思うようにつかめない。
(むう……またしてもうっかり熊に出くわしたか、岩場で足を踏み外しでもしてしもうたか?
小四郎め、いつもわしが起きる頃合いには側に控えておれと言うておるに)
後で会うたらたっぷり絞ってやろう。
哀れな従者への文句を心中ひとしきり垂れてからあたりを見渡し、
ようやく男は己が身にふりかかった異変に気がついた。
「……どこじゃ、此処は」
「!おい、ルイズの使い魔が起きたぞ!」
「何ですって!?」
見知らぬ風景である。加えて畸形の多い鍔隠れの里にあっても見ることのできぬ
髪や目、肌の色をした少年少女らが半身を起こした己を遠巻きに眺めているのだ。
彼らの容貌はかつて安土で見た宣教師一行を思わせたが、
亡き太閤秀吉のバテレン追放令より30年余り。
長崎あたりでは今も南蛮商人が来航して商いをなし、あるいは地下に潜伏して信仰を守る宣教師がいるとも聞くが
伊賀国の奥地にいるはずの己がかように多勢の南蛮人と出会う機会があろうはずもない。
まあ要するに、何もわからぬ。ということがよくわかったのであった。
子供ばかりの中から唯一年かさの男が歩み寄り、慎重さを帯びた声をかけてよこした。
「もし……大丈夫ですか?」
間の抜けたような、それでいて重大な問いだったが男は平静な態度で応じることにする。
「わしの身ならば案ずるには及ばぬ。しかし……一体此はなにごとぞ?返答次第で容赦せぬぞ」
「──聞かれましたか、ミス・ヴァリエール。彼は問題ないそうですから儀式の続きを。
コントラクト・サーヴァントに移りなさい」
「はい……」
凄みを利かせた後半部分を故意に無視し、桃色の髪の少女を促すハゲ頭。
失望と安堵がない交ぜの表情を浮かべた少女の顔が男の紫色の唇へと近づき、微かに重なった。
「わたしはあなたの主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
あなた、名前は?」
「……わしは伊賀のお幻一族、鍔隠れ十人衆が一人。薬師寺天膳じゃ」
慶長の世を生きていた伊賀忍者薬師寺天膳。
コントラクト・サーヴァントの後、主人を名乗る少女ルイズと学院教師コルベールより与えられた説明は
日頃は物事に動じぬ天膳を驚愕せしめるに十分なものであった。
己が伊賀甲賀はおろか日の本でさえないはるか異境に一瞬にして転移させられてきたこと。
その驚天動地の業が事もあろうに目の前の小柄な少女のなしたものであり、
事態を飲み込めぬうちに交わした誓約により少女と我の間に主従の契りが結ばれたこと。
先ほど刻まれた手の甲の呪印(彼らはルーンと呼んでいた)は
生々しい痛みを天膳に伝え、これが現実の出来事であることを雄弁に語っていた。
(空間を超える秘術……聞いたことがある。
わしが鍔隠れへと流れ着き伊賀の忍となる以前、四代将軍義持だか何だかが死んで
次の将軍をくじ引きで決めたの決めないの言ってた頃であった)
能楽を完成させた不世出の大芸術家・世阿弥。
芸事の極致は見るものと演者自身を別世界へと誘うことにあり。
能の秘奥を究めた世阿弥はついには演じることで時空を超越し、
また並行世界への移動をも可能にする秘術「刻渡り」に辿り着いた。
三代将軍義満の死により最大の庇護者を失った世阿弥は退けられ、おのが技を後世へと封じたが
義満在世中に演じられたその術は確かに室町の世と遠い未来とを繋いだという。
世阿弥の父観阿弥は伊賀服部家の出と言われる。あながち忍者と無関係でもないのだ。
(つまらぬおとぎ話と考えておったが、現にわしはこうして異なる世界におるのだ)
この娘の魔法とやらは伝説の秘奥の域にまで達しているのか。
学院の廊下を歩く天膳は慄然とし、粛々と主人の背を追った。
さて、いかなる運命のいたずらか日本の忍者を使い魔にすることとなったルイズ。
一時の落胆と絶望から立ち直り、この天膳と契約を結ぶころには大分落ち着きを取り戻していた。
ドラゴンやグリフォンのような使い魔を呼び出すつもりが
死んだように倒れている人間の男が出てきた時はさすがに混乱したが、
召喚の儀式そのものを失敗するという恐怖に比べれば
その平民が何事もなかったかのように起き上がり契約に成功した安堵の方が大きい。
残る問題は男が使い魔としての自覚を持って自分に仕えてくれるかどうかであった。
「およその事情は分かり申した」
一通りの状況把握を終えた天膳はおもむろに居住まいを正し、ルイズの前にひざまづいた。
「コルベイル殿には先程の無礼な物言いをお許しくだされ。不肖、この薬師寺天膳
ルイズ様を生涯の主と定め、身命を賭してお仕え致しましょうぞ」
平民の貴族に対するあり方としては当然ながら、恭しい態度に悪い気はしない。
「ここがわたしの部屋よ。今日からあなたもここで暮らすんだからちゃんと覚えておいてよね」
ルイズはそういった気持ちで自室へ使い魔を招き入れた。
「それじゃあなたはどこか別の世界から来たっていうの?信じらんない!」
「その通りかと存じまする。拙者は伊賀組の郷士にて細作(しのび)の業を生業としており申した」
天膳は先程から部屋の床に正座し、神妙な顔でルイズのする質問に答えている。
もとよりこの天膳、眼前の小娘そのものにはかけらも敬意など持ってはおらぬが
伊賀の忍として超常の術のおそろしさは良く知っている。それゆえすでに己がルイズの術中に嵌まっている……
使い魔の印を刻まれたことを警戒し極力つつしみ深い態度を装っている。
もっとも代々の伊賀の頭領に忠実な顔を見せながら裏で策謀を巡らせてきた身にはさして難事ではない。
(ひとまずこの娘には従うふりをしておき、かけられた術より逃れる法を探るが先決。
鍔隠れへ戻るも戻らぬもそれからじゃ)
「いやはや拙者もこの成り行きには驚いておりまする。ルイズ様の妙術、まっこと感服いたすばかりにて」
「ふ、ふん!別にサモン・サーヴァントくらい大した魔法じゃないわよ。
じきにもっと凄いのを見せてあげるんだから」
こうして、薬師寺天膳のハルケギニア最初の夜は更けていったのであった。
そうこうする内に、ルイズも眠気を覚え始める頃になった。
「それじゃあわたしはそろそろ寝るから。話はまた時間のあるときにするわ」
夜着に着替えることにしたルイズは目の前にいる使い魔に構わずぽんぽんと服を脱いでゆく。
これが現代日本からやって来た高校生男子ならばこの状況に赤面し、ルイズの行動を止めたであろう。
しかし天膳は眉一つ動かすことなく少女の肢体に視線を走らせた。
(公卿の子女は湯浴みも手水も人任せにするゆえ羞恥の心が薄いと聞くが…
この娘、貴い生まれというのは確かなようじゃな)
Y十Mで鎖鎌使いのじいさんが言ってたから間違いない。
未発達ながら子供と女の中間を漂う少女の体のラインは艶めかしく、
目に珍しい南蛮風の装束と相まって伊賀の女とは違う魅力を醸し出し…
──忍法帖シリーズにおける男女の関係とは基本的に、男が女を手籠めにするか
エロ忍法で返り討ちにあって死ぬかの二つに一つである。
まっとうな恋愛もないではないがまず100%結ばれないまま片方もしくは両方が死ぬ。
ごくまれに負傷した青年忍者(童貞)が母性本能を刺激されたお姉さんキャラに
キスして貰えたりもするが、実はそれも敵の罠でやっぱり死ぬ。そんな世界観である。
(小四郎、哀れな男よ…わしは男子として悔いの残らぬ生を全うしたい)
数分前までルイズの魔法が未知だから大人しくしていようとか考えていたのはすでに忘れている。
この薬師寺天膳、山風ワールド屈指のヴィランにして
エロスのためなら好機も命も投げ捨てる困ったちゃんなのであった。
「ルイズ様。それがしがお手伝い致す」
天膳は床から立ち上がり、衣装棚の前に屈みこんだ下着姿のルイズの腕を掴んだ。
「えっ!?ちょっと、別に要らないわよ!」
着替えといっても後は寝巻きに袖を通すだけだ。
制服の着付けのようにわざわざ下僕に手を出させることでも無い。
何よりルイズの手首を締め付ける力は異常なもので、本能的な恐怖さえ覚えた。
「遠慮なさる事はない!主君の身の回り全てを取り計らうは臣下の務めなれば…」
ついさっきまでの忠実な使い魔の顔は微塵もない。ルイズの身体を強引に引っ張り
ベッドへ押し倒したその目はすでに主従を越えた雄獣の目であった。
「男と女が互いを知り合うに如何な忍法もその身を抱くに遠くおよばぬ…!
よいではないか!よいではないか!」
「何すんのよこのぉ……バカ犬ぅぅぅっっ!!!」
……天膳はルイズの体力を小娘と侮り、油断していた。そして忘れていた。
山風作品に限らず、悪人にエロシーンが与えられるのは最悪の死亡フラグであることを……
戒めの緩んだ一瞬を見逃さなかったルイズの蹴りが天膳の顎を打ち抜く。
ベッドの上からひっくり返った天膳の後頭部は鈍い音を立てて固いテーブルの角と運命の出会いを果たした。
「アンタは外で寝てなさい!このバカ!」
フラフラと立ち上がった天膳を勢い良く扉の外へと蹴り出し、鍵をかける。
物分かりが良いように見えてもやはり野良犬は野良犬、明日から厳しく躾をしなくてはならない。
…天膳が向けたおぞましい意思を理解できなかったのか、無意識に理解するのを避けたものか。
着替えを済ませたルイズはそんな事を考えながら改めて寝床についた。
「いやぁぁぁ!!廊下でヴァリエールの使い魔がまた死んでるぅーー!!」
翌朝になれば学院中に響くけたたましい叫びとともに最悪の目覚めを迎えることになるのだが、
長い一日を終えたばかりの少女には知るよしもないことであった。
支援ありがとうございます。
第一殺はここまで。
天ちゃんの設定はアニメ版を基本で考えてます。
サウスパーク並に命の重さが軽いぜ天膳
不死者だからな天膳w
なんという素敵なタイトルなんだ…
あ、そうか
天さん死にきる前に中の人が直して蘇生させちゃうから契約切れないのか…
この天さんそのうちテファ襲っておマチさんにゴーレム固めとかさそうだ
忍法とか超越して、超能力の域に到達してる連中だからなー。
アニメ版天膳か。
全ての黒幕でした的な悪人になってたよな。
だからって漫画版が善人かって言ったら全然違うけどw
漫画版はお間抜けな印象しかねえなw
天膳も汚い能力だが敵側の弦之助の力が破格だからなあの漫画
ガンダにはあらゆる武器を使いこなせるみたいな設定あるけど、ワルドが才人との戦いで、速いが動きが素人云々言ってたからな……
ガンダ=達人じゃなくて、武器マニュアルがインストールされて、それを扱うに困らない程度に肉体強化がされると考えていいのか?
あと、天膳の人ナイス。面白かった。
>>339 なぜか味の助に見えた。
そうそうに退場したけど地虫がいちばんすきだったなあの漫画
原作小説は50年前だが、今でも充分面白いよな。
ルーンの効果って端的に書くと、
“武器を使いこなせるようになる+体力がつく”
って事ですよね?
感覚としては、前者がEMIYA、後者がドーピング
RPGのLv.1で武器防具アクセサリー最強装備ってところ?
イメージとしては・・・・
ルーン補正=Lv.2
冴羽、ゴルゴ、五右衛門=Lv.3
(ランス世界的基準)
使い方がわかるってだけでその使い方に沿った体の動かし方は経験やら鍛錬を積むしかないってところかね
その動きをするために必要な身体能力はルーン補正でどうにかしてやる的なお節介
心の震えで、引き出せる情報の量も変わるんじゃないか?
テンションがMAXだと、木の葉落としみたいな高等技能も引き出せるけど、
テンションがた落ちだと、動きが速いだけの素人になるという。
>>340 効率的な身体の動かし方くらいは分かるかもしれんが、それで相手の動きや考えを予測できたり、戦闘中の駆け引きに長けたりするわけじゃないってことなんじゃね?
それに本当の意味での「達人」になれるんなら、精神面も強化されてないといかんぞ。
技術と経験は付加されないってことでしょ?
すっごく動けるようになって技量もつく、これがガンダ補正じゃないかと
怒りのスーパーモードと明鏡止水のハイパーモードの違いですね
わかります
>>348 このくらいの認識が最適だと思ったりする
また死んでおるぞの人 GJ
原作は知らないが、いい味だしたキャラでおもしろかった。
原作サイトでさえまだルイズとはできてないのに、召喚早々とはお見それする。
一例として
日本刀持ちゃ居合いが出来るのがガンダ補正
居合いが出来てもどの間合いや呼吸で放てば敵を斬れるかと言う
判断や駆け引き部分が素人云々
狙撃銃持てば固定ターゲット撃ちは100発100中だけど
動く標的の行動先読みして狙うノウハウはゼロ
と言う状況にあるようなもの
居合と居合抜きの違いでFA
>>352 狙撃銃の例えだとどうなんだろうな。
動く的にも当てられるだろうけど、数日間狙撃地点で待機しながらターゲットを観察することができない、
という方が納得できるんだが。
あと、友釣り戦術も無理だろうな。
…あんたらも飽きないねー
眠れないのよ
ふと思ったんだが、
現代の特殊部隊の軍人クラスがガンダになったら、一対一ならほぼ無敵なんじゃ……
このレベルの人なら不意打ち上等、卑怯卑劣、敵を殺す最も効率的な手段を取るのが当たり前、常識
ていう世界らしいし。
どこの相良軍曹だよ
勘違いしてる連中多いけど特殊部隊はあくまで特殊な部隊であって超人的エリートの集団じゃないんだが
現代の軍人の強さは適切で豊富な装備あってこそのものだからハルケじゃ微妙な気がす
相良軍曹はゲリラ戦のエキスパートだから、ハルケギニアでも活躍すると思うがな。
調達手段があるのなら、コストを検討したうえで目的に見合った武器弾薬を購入する道を選ぶだろうが、
ほかに方法がないのなら火薬を調合したり、石弓やら火炎瓶やらの原始的な武器を使うこともいとわないだろうし。
要するにワルドとかカステラがガンダになれば最強ってことだろ
アニエスとの稽古の後で戦い方が変わったような描写ってあったっけ?
有った
>>357 こいよ、ベネット
マジックアイテムなんざ捨てて、かかってこい
>>309 ただし、エピソード5だけ作られて別物になります
だが、そんな軍人ガンダに勝てる格闘技が一つだけ存在する。
そう、プロレスだ!
プロレス最強
ようするにあのコックを召喚しろってことだな
史上最強の弟子から、笑う鋼拳という可能性も。
つまりは市長の出番だな
いっそ大統領を
むしろ武器は持たない!カラテだ!の人を
やんちゃで困る将軍をですね
ヤムチャって誰か書いたっけ?
>>361 破壊の杖もしくは竜の羽衣の代わりにボン太くんですね、わかります。
天獅子悦也版のミスターカラテ召還ものならみてみたい。
KOFのギャグ系極限流も嫌いではないがw
ブーメランと実践空手を組み合わせたまったく新しい格闘技を編み出した人ですねわかります
>>379 いやメーカーは同じだが別作品だろw
そういやMr・BIGは特殊部隊の隊長だったっけ。
棒で乱打する使い魔とか・・・彼はスゴイのよ?
>365
でも、防具は捨てるまでも無く着ていないでヤンス。
そういえば弓使いって殆どいなかったような気がする
>>367 ワルドがサイトと真剣勝負がしたいと訴えて玉潰されるんだな
>>361 短編モードのソースケなら呼ばれてたなぁ。
皆さんおはようございます。7話が出来たので、11:25から投下したいと思います。
今回読むにあたってのヒント:うちのゴレムスが装備している魔法の鎧は、主人公のお下がりです。
あ、言い忘れました。消費レス数は9を予定してます。
ガタゴトと音を立て、森の中で馬車が揺れる。
ズシンズシンと重い足音を立てて先頭を行くのは、リュカの連れて来たゴーレム――ゴレムス。その後ろを、同じくリュカが連れて来たパトリシアが、六人を乗せた馬車を引いて追従している。
「御者でしたら、私にやらせてくださればいいですのに」
「いいんですよ。パトリシアは、僕が一番馴れてますから」
パトリシアの手綱を引くのは、その主人であるリュカだった。その隣では、ロングビルが案内役として陣取っていた。
リュカはちらりと背後を見る。幌の中にいるのは、レックス、ルイズ、キュルケ、タバサ(ややこしいが、リュカの娘でない方のタバサである)の四人。タバサの使い魔のシルフィードは、上空から飛んで付いて来ているはずである。
先日学院を急襲した盗賊――その被害が、宝物庫に保管されていた『奇跡の杖』であることは、衛士たちの検分によって判明した。その報告が上げられるなり、学院長は居並ぶ教師陣から奪還任務に当たる者を募った。
それに先立って、リュカはこれまでの経験から十中八九巻き込まれるであろうことを予測し、目には目をとばかりにゴレムスを連れて来ていた。イオナズン一発で終わる程度のゴーレムなら、娘を連れて来るまでもないとの判断である。
だが、その際のルーラに、本来連れて来る予定のなかったレックスまで付いて来た。彼は本来、この日は妹と共に勉強の予定だったのだが……まあ彼の思惑がどうあれ、政務を放り出してやってきたリュカがうるさく言えるものではないので、結局そのままである。
ともあれそのリュカの予想通り、『奇跡の杖』奪還の任務に、主人であるルイズが志願した。となればやはり、事が事であるだけに、使い魔である自分が付いて行かずに代役を立てる――というわけにはいくまい。
また、それに追随する形でキュルケとタバサも志願した。彼女らが一緒なのは、そのためである。
――だが――
(ルイズ……どうしたんだ?)
彼が気になったのは、そのルイズの様子であった。
昨晩から今朝――リュカがグランバニアに戻っている間に一体何があったのか、彼女は『煤けて』いた。服も肌も、そして髪さえもが汚れている。いつも小奇麗にしている彼女らしからぬ、ある意味みすぼらしい姿だった。
しかもルイズ当人は、あろうことかそれを気にしていない――むしろ気付いてすらいないようである。目の下には隈が出来て、ただじっと自分の杖を凝視するその表情には、何か鬼気迫るものを感じた。
レックスが見かねて「どうしたの?」と尋ねても、「何でもないわ」と返すばかり。そんな彼女への対処に困ったのか、彼はリュカに助けを求めるような視線を送るが、リュカは肩をすくめるしかできなかった。
「何を気負ってるんだか知らないけど、もっと“しゃん”としなさいな。あんたらしくない」
と――そんなルイズに、キュルケが声をかけた。いきなり投げつけられたその言葉に、ルイズは顔を上げる。
「何よ、ツェルプストー。文句があるならはっきり言えば?」
「なら言わせてもらうけどね――あんたがそうやって、大人に任せればいいものを考えなしに引き受けたりするから、私らまでとばっちり受けてるのよ。まったく、何が悲しくて、泥棒退治なんか……」
「とばっちり? あんたが自分で志願したんじゃない」
「ヴァリエール家のあんたが手柄を立てようとしてるのに、ツェルプストー家の私が指くわえて見てるなんて出来るわけがないじゃない」
「要するに、手柄を横取りしたいだけってこと? ツェルプストー家って、随分と心の貧しい家系なのね。知ってたけど」
そんなやり取りの後、二人の間で火花が散る。「なら勝負してみる? どちらが手柄を立てられるか」などとキュルケが挑発すると、「後で吠え面かいても知らないわよ」とルイズも乗った。
相手が悪名高い『土くれのフーケ』ならばいざ知らず、今回学院を襲ったのは『まちるだ』なるフーケの模倣犯。その程度の発想力しかない相手ならば、『土くれのフーケ』本人が出てくるよりはやりやすいだろうというのがキュルケの見解だった。
とはいえ、何重にも固定化をかけた宝物庫をブチ破るようなゴーレムを生み出した相手である。その事実が、学院の教師陣の腰を引けさせていたのだが――良くも悪くも、キュルケはそこまで慎重すぎる性格ではなかったらしい。
もっとも、ルイズはそんなキュルケとは違い、それをわかった上で志願した。ゆえにこそキュルケに「気負ってる」と言われたのだが、その気負いも今ので多少は緩和されているように見える。
「……さすが」
リュカはそんなキュルケの手腕に、思わず感嘆の声を上げた。
そんなことを繰り返しながら、一行はやがて開けた場所に出た――
そこにあったのは、一つの小屋であった。
あそこが情報にあった盗賊のアジト――と思われる小屋。まずは偵察ということで、レックスが小屋の中に入り、罠のたぐいがないことを確認。全員を呼び寄せ、中に入って家捜しし、『奇跡の杖』を入手しようという話になった。
「ゴレムスは大きいから待機かしら」
と言ったのは、既に小屋に入ったキュルケである。彼女がそう言って振り向くと――
「……え?」
「ん? どうしたの?」
突然ぎょっと目を丸くした彼女に、リュカが首を傾げた。ゴレムスはごく自然に、それこそ何の違和感もなく、小屋の中に入ってきている。
その背後では、ルイズとロングビルが思いっきり固まっていた。
「ちょ……どうやって入ったの!?」
「どうやってって……人間が入れるところならどこにだって入れるんじゃないかな、普通」
「いや普通じゃないからね!? そんな巨体が入れる場所なんか限られてるからね!?」
そんなキュルケの主張に、ルイズもロングビルもうんうんと頷く。だが言われた当人のリュカとゴレムスは、「何を言ってるんだかわからない」とばかりに首を傾げていた。
ゴレムスのそんな様子はまるで生きているようで、とてもリュカが操っているようには見えないが――それはともかく。
そんな一人と一体の様子に、キュルケはなおも何か言おうと口を開きかけるが、不意にその手をくいっとタバサが引っ張った。
「……よくわからないけど、きっと突っ込んじゃいけない話」
「そ、そうかもね……」
親友の言葉に何だかよくわからない説得力を感じ、キュルケはそれ以上の追究を諦めた。ルイズやロングビルなど、頭を抱えながら「見張りしてる」「周囲の偵察に行く」とそれぞれ言って小屋を出て行く――どうやら、少し彼らから離れたいらしい。
しかしリュカは、そんなルイズの気持ちなど気付いた様子もなく、ゴレムスにルイズと一緒にいるように言った。むしろ、ルイズを心配してのことであろう。
フローラと結婚するとお下がりが豪華になるよね支援
うちの息子は天空の鎧が手に入るまでずっと神秘の鎧装備してました。
「とりあえず何が起こるかわからないから、これ装備しといて」
そう言ってリュカは、腰に差していた剣――昨晩の何の変哲もない鋼の剣ではなく、美しい輝きを放つ白銀の剣である――を、ゴレムスに渡した。
それは一見、ゴレムスが扱うには小さすぎるように見えたが――
リュカは メタルキングのけんを
ゴレムスに 手わたした。
装備しますか?
l>はい
いいえ
ゴレムスは メタルキングのけんを
装備した。
「……もう突っ込まない。突っ込まないわよ……」
まったくもって何の違和感もなくゴレムスの手のサイズに収まった剣を見て、ルイズは疲れたようにつぶやいた。
とにかくルイズは、深く考えては負けのような気がした。
――結局、小屋の外の見張りは、レックスも加えた二人と一体でやることとなった。
(どうしよう……)
ロングビル――フーケは、木の陰に身を隠して小屋の方を見ながら、内心で途方に暮れていた。
当初の予定では、学院の教師陣をここにおびき寄せ、ゴーレムをけしかけて『奇跡の杖』の使い方を見せてもらうつもりだった。昨夜にとんでもない実力を垣間見せてくれた連中もいたが、彼らも一緒に付いて来ることも考慮に入れ、あれこれと作戦を練った。
ところが学院に戻ってみれば、誤算が二つ……いや、三つあった。
一つは自分がサインの文面を間違えるという大ポカをかましていたこと。ここから派生した更なる失敗もあったし、犯人が『模倣犯まちるだ』という説を覆すこともできなかったが――とりあえずどうにか誤魔化すことはできたので、今は気にしないことにする。
……うっかり本名を晒してしまったのが、正直一番痛いところではあったが。
そして二つ目は、学院の教師陣が思いのほか腑抜け揃いだったこと。宝物庫を破るほどの実力を持つ盗賊相手に、完全に腰が引けていたのだ。代わりに現場に居合わせた女生徒たちが志願したが、彼女らが『奇跡の杖』の使い方を知っているとは、とても思えない。
そして三つ目――これはプラス要素ともマイナス要素とも取れる話だが、くだんの最大警戒対象が、志願した女生徒の使い魔であったこと。彼が同行することになったのは最初から想定範囲内だったし、それが女生徒の使い魔という立場なら、かえってやりようはある。
(とはいえ、あのゴーレム……見た目通りとは思わない方がいいかもね)
小屋の内外にいるメンバーを頭の中で並べながら、フーケは考える。昨晩、自分のゴーレムを粉々にしてくれた少女が、今日はいない。そして代わりにあんなゴーレムを用意してきたのは、一体なぜか。
普通に考えれば、完全な戦力ダウンだ。だが、わざわざそれをしてきたということは、自分のゴーレムがあのゴーレムでも十分と判断されたということだ。それを侮辱と取るのは簡単だが、根拠があってのことと考えれば、油断のできることではない。
手持ちの情報は少ない――だがどうあれ、ここまで来たからには戦うしかない。
大丈夫。自分の操る30メイルの巨大ゴーレムなら、あんな5メイルぽっちのちっぽけなゴーレムなど問題ではない――彼女は自身にそう言い聞かせ、静かにゴーレム生成の呪文を口ずさむ。
ややあって、小屋の中からリュカたちが顔を見せた。その手の中に『奇跡の杖』が収まっているのを見て、フーケは今こそ実行の時とばかりにゴーレムを生み出す。
真っ先に狙うべきはリュカ……ではなく、その主人たる桃髪の小娘。大して実戦経験のなさそうな彼女を狙えば、リュカはその守りに回らざるを得まい。そうなれば彼らの戦闘能力は十分に発揮されることはなく、そこだけがフーケの勝機と言えた。
「……お行き」
赤髪の女と青髪の女が魔法を放つが、彼女のゴーレムはびくともしない。それを見ながら彼女はつぶやき、杖を振った。
せっかくだから、俺はこの赤い支援をするぜ!
勝算は不明――だが仮に負けて捕らえられたとしても、幸い今の自分は『土くれのフーケ』ではなく『模倣犯まちるだ』である。「オスマンのセクハラに業を煮やした」とでも理由をつけて初犯と主張すれば、少なくとも死罪は免れよう。
もっとも、今まで培ってきた『土くれのフーケ』としてのプライドは粉々になるであろうが……命あっての物種である。自分が死んでは、誰がウエストウッドの皆の生活費を稼げるというのか。
その時一瞬、いけ好かない銀髪の男の顔が脳裏をよぎったが――彼女はそれを頭の中から振り払い、眼前の戦いに集中した。
振り下ろされたゴーレムの拳。しかしそれはルイズに届くことなく、傍にいたゴレムスに止められた。その光景を前に、フーケは唇の端を不敵に吊り上げた。
さあ――期待などしてはいないが、駄目で元々だ。『奇跡の杖』を使って見せるといい。
――来た。
ルイズはぎゅっと、杖を握り締めた。
彼女の眼前に、『敵』のゴーレムがそびえ立つ。それが拳を振り上げた時、ルイズは杖を構え――そして呪文を唱えようとしたところで、両者の間にゴレムスが割って入った。
ゴレムスは、振り下ろされた巨大な拳を両手で受け止めた。かと思ったら、突然視界が横に流れる。自分がレックスに抱えられて移動していることに気付いたのは、直後のことであった。
「ちょっ……離してよ!」
「何言ってるんだ! あんな攻撃、避けないでどうするってのさ!」
そう――レックスの言っていることは正しい。ルイズは頭では理解できていた。あの拳を真正面から魔法で迎撃しようとした自分の行動が、いかに無謀であったかを。
しかし、感情はそれを否定する。あんなゴーレムごとき、正面から正々堂々と迎え撃たないで、何が貴族かと。
「ともかく、あいつはゴレムスに任せて、一旦退くんだ! キュルケもタバサも、とっくに下がってる!」
「嫌よ! 何で私が逃げなきゃならないの! 私は貴族よ! ラ・ヴァリエールの娘よ! 魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃないわ! 敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
「バカ!」
パァンッ!
と――レックスの罵声と共に、ルイズの顔が強制的に横に向けられた。一瞬の後、頬を打たれたとわかった。
「な、何を――」
「だからって死んで何になるんだよ! ボクらが何かで胸を張れるとすれば、それは生きてるから――だろっ!」
抗議の声を上げようとしたルイズだったが、それはレックスの怒声で打ち消された。そして彼は、台詞の最後を肺から吐き出すと同時、ルイズを押し倒した。
直後、『ドゴォンッ!』とすぐ近くから爆音が響いた。見れば、自分たちが今まで立っていた場所に、ゴーレムの巨大な拳が突き刺さっている。
右腕はゴレムスが抑えているが、サイズ差の関係上、それ以上抑えるのは難しい。『敵』のゴーレムは、残った左腕でルイズたちを攻撃したのだ。
ゴーレムは地面に突き刺さった拳を引き抜き、それを振り上げて再度ルイズを狙い――
「バギクロス!」
それが振り下ろされるより先に、リュカの声が響いた。直後、巨大な竜巻がゴーレムを包み込む。
余波の風が、ルイズの髪を乱暴に撫でた。その荒れ狂う暴風を前に、ルイズはその魔法の強大さに目を見開く。
「……カッター・トルネード……? いえ――」
その竜巻が見知っている魔法に見え、しかし直後に思い直す。違う――似ているけど、あれはカッター・トルネードじゃない。
風のスクウェア・スペル、カッター・トルネード――普通は滅多にお目にかかれない大魔法ではあるが、ルイズは『極めて個人的な事情』により、それを非常によく見慣れていた。今更、見間違うはずもない。
だが目の前の竜巻は、そのカッター・トルネードに勝るとも劣らない威力を見せている。中心にいるゴーレムは、成すすべもなく暴風に蹂躙されていた。
と――
「ルイズ、レックス、大丈夫?」
その声に、ルイズはようやっと竜巻から視線を外し、そちらを見る。そちらでは自分の使い魔――リュカが、奪還したばかりの『奇跡の杖』を片手に、こちらを見下ろしていた。
支援したそうにこっちを見ている!
「……バギクロス?」
「ん? ああ、今の呪文のことだね。そうだよ、これがバギクロス」
「そう……」
リュカの返答に、しかしルイズの声は、リュカが予想したほど大した感慨を見せなかった。
その無反応っぷりに、リュカが怪訝そうに眉根を寄せたが――ふと、風がやんだ。全員でゴーレムの方へと視線を向けてみると、バギクロスの竜巻は既に消え去り、見るからにボロボロのゴーレムが佇んでいる。
そしてゴレムスが追い討ちとばかりに、掴んでいた拳を鯖折りの要領で粉砕した。彼の攻撃はそれで終わらず、更に追撃とばかりに白銀の剣を閃かせ、その腕を肘から斬り落とした。
「ナイスだ、ゴレムス!」
リュカが喝采を上げる。だが――
「……ダメ! 再生するわ!」
ルイズの叫びが、リュカたちの耳に届いた。すると彼女の言葉を肯定するかのように、ゴーレムの損傷が見る見るうちに修復され、斬り落とされた腕も一気に再生した。
「土ゴーレムは土があるところで戦う以上、簡単に再生できるのよ! 一気に倒せなきゃ長期戦になる!」
「再生するための材料には困らないってわけか……」
ルイズの説明にリュカは頷きつつ、顎に手を当てて対策を考える。
が――そんな彼の前に立ち、ゴーレムに杖を向ける者がいた。
誰あろう、今しがた土ゴーレムの厄介さを説明した、ルイズ当人である。
「ルイズ?」
「危ないよ! 下がって!」
「嫌よ!」
レックスが彼女を下がらせようとするが、ルイズは頑として聞かない。
彼女は『ファイアー・ボール』を唱えて杖を振った。だが杖の先から火球が出ることはなく、相変わらず失敗してゴーレムの表面に大きな爆発を起こすのみだ。もっともゴーレムのサイズからすれば、それでも爆発の規模は小さく見えるのだが。
「無茶だよルイズ! ここは僕たちに任せて――」
見るからに無駄な攻撃である。リュカはルイズの肩を掴んで、強引にでも下がらせようとしたが――その時彼は、ルイズの表情を見て、思わず息を飲んで手を離してしまった。
「私は――『ゼロ』じゃない」
喉の奥から搾り出すような声音で、ただ一言告げたルイズ。その目の端には、わずかに涙が溜まっていた。
リュカはその表情に、一瞬だけ固まった。が――次の瞬間、キッと目を鋭く細め、手に持った『奇跡の杖』を乱暴にゴレムスに投げつけた。
杖を無難にキャッチするゴレムス。リュカはゴレムスとアイコンタクトして一つ頷くと、目の前のゴーレムに視線を戻した。
ゴーレムはさっきのお返しとばかりに、ルイズたちを踏み潰さんと足を振り上げている。その巨大な足がルイズたちの頭上に影を落とすが、ルイズはそれを真っ向から見据え、杖を手に呪文を唱えた。
だが――
「ルイズ、覚えておくといい」
そんなルイズに、リュカが横から声をかけてきた。
ルイズは答えない。ただ魔法に集中するだけ。リュカは構わず、そんな彼女に更に言葉を投げかける。
「戦いっていうのは、勝つか負けるかの二択で済ませられるほど、単純じゃないんだ。命を賭けてまで勝たなきゃならない戦いってのは……そう多いものじゃない」
「……え?」
――それはどういう――
ルイズがその言葉に疑問を持った、その時――不意に、彼女はリュカに思いっきり突き飛ばされた。
そして、直後――
――ズドォォォンッ!
ゴーレムの足がリュカの頭上に落ち、彼を容赦なく踏み潰した。
「……………………え?」
目の前の出来事に、一瞬思考が追い付かなくなる。
今、彼女の眼前にあるのは、振り下ろされたゴーレムの足。その足の裏と地面との間の隙間から、人の足がはみ出ている。
ルイズがそのまま、五秒、十秒と固まっていると――やがて、ゴーレムの足元から、見るからに大量の赤い液体が染み出してきた。
――その段になって、ようやっとルイズの思考が状況を理解する。
――リュカは。
――自分をかばって。
――ゴーレムの下敷きになったのだ。
「……あ……あ……あ……イヤあああぁぁぁぁぁーっ!」
ルイズの絶叫が、森に響いた。
――最初は、フローラが魔法を使う姿を見た時だった。
――次は、シーザーを初めて見た時だった。
――リュカの娘のタバサが一撃でゴーレムを爆砕した時など、正直言えば逃げ出したくなった。
感じた恐怖は、彼らの持つ『力』に対してではない。彼らの持つ『力』は素晴らしく、それこそ『ゼロ』である自分が憧れを抱くにふさわしい。
しかし同時に、自分が『ゼロ』だからこそ怖かったのだ――彼らに何一つ吊り合えない『ゼロ』だから。
――やめて。私に優しくしないで。私はあなたたちと吊り合える存在じゃない――
長年積み重なった劣等感は、突然目の前に現れて自分を助ける『力』を重荷と感じ、声無き悲鳴を上げた。凄い使い魔を召喚できれば、落ちこぼれじゃなくなる。そんな幻想を抱いていた、二週間前の自分が恨めしかった。
ああ、なんて愚かだったのだろう――いくら凄い使い魔を召喚したとしても、自分が『ゼロ』のままなら何の意味もないのに。
それでも彼女は逃げ出さなかった。いつか『私がリュカの主人よ』と胸を張って言えるような、立派なメイジに成長すればいい。そう思い必死に『いつもの自分』を保った。出会った当初のように、自分が主人であると毅然と主張し、胸を張り、時にはヒステリックに叫んで。
そんな時に起こったのが、この盗賊騒ぎである。
チャンスだと思った。ここで盗賊を捕らえ、自分が無能でないことを示せば、少しでもリュカの主人であるに相応しいメイジに近付けるのだと。そのために寝る間も惜しみ、一晩中魔法の練習に明け暮れた。髪が乱れ、肌が汚れ、服が煤けることすら構うことなく。
――なるほど確かに、キュルケに言われた通りなのだろう。
自分は気負っていた。思い詰めていた。しかし道中で彼女の軽口に付き合わされ、幾分か気分は落ち着いた。
しかし、リュカの魔法――カッター・トルネードに勝るとも劣らない『バギクロス』を見せられた時、その想いはぶり返した。やはり、フローラたち家族やシーザーたち使い魔だけではない、リュカ自身も強かったのだと。
ならば自分も、示さなければならない。リュカが自身の従える者たちにも決して引けを取らない力を示しているのと同じように、自分もリュカを従える者として、相応の力を見せなければならない。
意地を張った。敵を前にした恐怖など心の底に押し込め、ただ自分が力を示すことしか考えなかった。
――戦いっていうのは、勝つか負けるかの二択で済ませられるほど、単純じゃないんだ。命を賭けてまで勝たなきゃならない戦いってのは……そう多いものじゃない――
リュカが言った言葉は、ルイズにはまったく理解できなかった。戦いに、勝つことと負けること以外の何があるのだろうかと。そして『ゼロ』と呼ばれた自分にとって、無能でないことを証明する戦いは、十分に命を賭けるに値するものだった。
しかし、今目の前に広がる光景は、一体何なのだろうか? リュカは自分をかばい、自分の身代わりとなってゴーレムに踏み潰された。
ゴーレムがゆっくりと足を上げると、そこには血まみれになって倒れ付すリュカの姿。その光景を生み出したのは、他でもない――意地を張ってその場を動かなかった自分自身だ。
そしてルイズは、リュカの言った言葉の意味が、少しだけわかったような気がした――
「…………ズ…………イズ…………ルイズ!」
「あ……」
自分を呼ぶキュルケの声で、ルイズの意識は現実に引き戻された。
慌てて周囲を見回す。そこはシルフィードの背中の上で、自分の周りにはタバサとキュルケとレックス――そして横たわるリュカがいた。どうやらいつの間にか、タバサに拾い上げられていたらしい。
「リュカ!」
「死んでる」
ルイズは慌ててリュカにすがり付いたが、そんな彼女の背中に、タバサの無感動な声が突き刺さった。
ルイズはそれが信じられず――いや、信じたくなくて、リュカの手を取った。その手はつい先ほどまで生きていたことを示すかのようにわずかに温かかったが、そのぬくもりは急速に失われ始めている。胸に耳を当ててみれば、鼓動は……聞こえない。
「そ、そんな……」
リュカから離れ、わなわなと震えるルイズ。彼女はふと、横に居るリュカの息子――レックスの存在を思い出し、彼の方へと恐る恐る視線を向けた。
だが彼は、死んだ父親には視線を向けていない。ただじっと、真下で続行されている戦いの様子を観察しているのみだ。
リュカが死んだのでゴレムスも土に還ったかと思ったが、どうやらリュカが術者ではなかったのか、それとも特別な魔法で生み出されたのか、ゴレムスは健在である。
彼は体格差など関係ないとばかりに剣を振り、しかしゴーレムの再生力を前に決定打が与えられないでいた。
「レックス……あ、あの……ごめん……なさい……私の、私のせいで……あなたのお父さんが……」
「今は後回しにして」
ルイズの方を見向きもせずに眼下の戦いを見続けているレックスに、ルイズはそれ以上言うことができなかった。
その態度に、怒りではなく悲しみがこみ上げてくる。自分はきっと、彼に失望されてしまったんだと、ネガティブな思考が頭の中を支配する。当然だ、私のせいで父親を目の前で失ったのだから――と。
だが同時に、父親の遺体に視線すら向けないレックスの姿に、ルイズは違和感を覚えた。これが本当に、11歳の子供なのだろうかと。自分より5歳も年下なのに随分と戦い慣れてる様子だし、時折見せる横顔は、まさしく歴戦の戦士といった風格を持っている。
ルイズが頭の片隅でそんな疑問を持っていると――不意に、レックスとゴレムスの視線が合わさったように見えた。
ゴレムスが、左手で先ほどリュカから渡された『奇跡の杖』を掲げる――まるで、こちらに見せ付けるかのように。
対するレックスは、そんなゴレムスに一つ頷くと、唐突にシルフィードの背中の端に寄って行った。
「な、何をするつもり!?」
「あいつを倒す。お父さんは、ゴレムスに任せた」
「え?」
ルイズは、彼が何を言っているのかよくわからなかった。あんな巨大なゴーレムを、どうやって倒すのか。そして死んだ父親をゴレムスに任せるとは、どういう意味なのか。
そんなルイズに、レックスはくるりと振り向き――今しがた父親を失ったばかりとは思えない、朗らかな明るい笑みを見せた。
「大丈夫。気に病むことなんてないよ。この程度の修羅場、ボクらは何度でも経験したんだから」
レックスはそう言うなり、シルフィードの背中から飛び降りた。
彼は眼下のゴーレムを見据えて自由落下しながら、左手を開いて天高く掲げる。そのかざした手の上に、バチバチと音を立て、急速に『何か』が生み出される。
「ギガ――」
ゴーレムの顔が、落下するレックスの方に向いた。
レックスはニヤリと勝利を確信した笑みを浮かべ、掲げた手を振り下ろす。
「――デインッ!」
――耳をつんざく轟音を伴い、巨大な雷が落ちてゴーレムの全身を焼いた。
それと同時、シルフィードの上では、リュカの遺体に天から光が降り注いでいた――
「……最初からギガデイン使ってれば、すぐに片付いたんだけどなぁ」
タバサのレビテーションの助けを借り、難なく地上へと着地したレックス。彼は全身を真っ黒に焼かれてボロボロに崩れ落ちるゴーレムを見上げながら、ボソリとこぼした。
そんな彼の後ろでシルフィードが降りて来て、ルイズたちをその背から降ろす。
「すっごいじゃないの!」
「わぷっ」
駆け寄ってきたキュルケが、瞳を輝かせてレックスに抱き付いた。その豊満な胸に強制的に顔を埋められ、レックスは嬉しいやら苦しいやら微妙な表情になる。そんなキュルケの傍には、タバサがぬぼーっと無表情で佇んでいた。
が――そんな三人の後ろに立つルイズの表情は晴れない。
「ルイズ……」
それを見たレックスが、ぽつりとこぼす。キュルケもルイズの様子に気付き、勝利の喜びもそこそこにレックスを解放し、表情を沈ませた。
「私は喜べない……こんなの、勝利なんかじゃない」
ぐすっ、と涙声でつぶやく彼女に、キュルケはかける言葉も見つからない様子である。勝利と引き換えに自分の使い魔を失った彼女の悲しみは、どれほどのものか。
そんなルイズに、しかしレックスはキュルケとは違った表情を浮かべていた。非常に気まずいというか、何かを言いたいけど言えない空気というか、そんな感じである。
と――その時。
「お見事ですわ、皆さん」
そんな声が響き、全員そちらに視線を向ける。そこでは、茂みの中からロングビルが姿を現したところであった。
「ミス・ロングビル! 今までどこに?」
「それはですね――」
キュルケの問いに、彼女は口を開き――その台詞の続きを口にするより前に、一瞬でルイズの方へと距離を詰めた。
ルイズが「え?」と目を丸くするその一瞬、彼女の体はロングビルによって背後から羽交い絞めにされた。その眼前に、杖の切っ先を突き付けられる。
「ルイズ!」
「ミス・ロングビル! これは一体どういうことですの!?」
「……あなたが『模倣犯まちるだ』?」
「うぐ…………そ……その通り……」
タバサの台詞に、ロングビルは渋面になりつつも、その問いを肯定した。そして彼女はルイズ共々、キュルケたちから距離を取る。
――その際、顔の上半分に影を落とし、「わ、私だってポカしなけりゃ……」だの「この大盗賊がこんな……」だのとブツブツと独り言を言い出したので、キュルケたちはその異様な雰囲気に圧され、手を出せずにいた。何か変なスイッチが入ってしまったらしい。
ドジっ娘まちるだ支援
さるさんみたいなんで代理行きます
400 :
日替わり代理:2009/05/05(火) 11:51:44 ID:K5LxSd5T
やがて十分に距離を取った彼女は、「そ、それはともかく!」と何かを吹っ切るような言葉と共に顔を上げ、続く言葉でキュルケたちに『奇跡の杖』を寄越すよう要請した。レックスがゴレムスに視線で合図すると、ゴレムスは『奇跡の杖』をロングビルの足元に投げる。
「ミ、ミス・ロングビル……あなたが犯人だったなんて……目的は何!?」
「あんたは黙ってな。使い魔を失ったメイジでも、人質ぐらいには役に立つんだからね。煩わせるんじゃないよ」
「いいから答えなさい!」
「はん……こんな状況だってのに、気丈なことだ。まあいい、教えてやるよ……と言ってもそんな大した話じゃない。私は『奇跡の杖』の使い方がわからなかったんで、知ってる奴にご教授していただこうと、学院の奴をここにおびき寄せようとしたってだけさ。
……もっとも、それがこんな使い方すら知らなさそうなガキどもばっかり来るとは、予想外もいいとこだったけどね」
言って、肩をすくめるロングビル。その自分たちを小馬鹿にした態度に、この場で一番幼いレックスが真っ先に沸点を迎えようとしていた。
彼はわずかに腰を落とし、背負った剣に手をかけ――
「動くな!」
「!」
その彼の挙動に、ロングビルが鋭い声で待ったをかける。その杖の切っ先が、ぐい、とルイズの頬を突いた。
「動くんじゃないよ……このガキがどうなってもいいのかい?」
「くっ……!」
彼女の脅しに、レックスは歯軋りして剣から手を離した。
怒りの篭った視線で、ロングビルを睨むレックス――そんな彼を見て、ルイズは何かを決心する。
「レックス……」
「ルイズ! 待ってろ、今助け――」
「……私が隙を作るわ。後、お願い」
「え……」
レックスがその言葉の意味を察するより早く。
ルイズは、自分の首にかけられたロングビルの腕に――思いっきり、噛み付いた。
「ぐぅっ……!」
その瞬間、ロングビルの力が緩む。その隙を突いてルイズはロングビルの拘束から抜け出し、レックスたちの方へと駆け出した。
が――その背中に、ロングビルが杖を向ける。
「このガキ――!」
「ルイズ!」
「!」
ロングビルの怨嗟の声。レックスの焦燥の声。振り返ったルイズは、ロングビルが今まさに自分を殺さんと、魔法を放とうとしている様子が見えた。
だが、こうなることぐらいルイズは予想していた。
始終足手まといだった彼女にとって、最後の最後で敵の隙を作る役に立てるのだ。ロングビルの放つ魔法が彼女の命を奪うとしても、レックスたちならそれ以上は許さないだろう――ロングビルの命運はそこで尽きる。それだけで、ルイズは満足だった。
さあ、殺さば殺せ。ルイズが覚悟を決めると、いよいよロングビルの魔法が放たれようとする。
間に合わない――誰もがそう思った、まさにその時。
「――バギ」
すいません、さるさんくらいました。
誰か代理お願いします
代理さんと間が悪い作者さん乙
代理するって早めに言えばよかったですね、すいませんorz
日替わりの人乙でした!
404 :
日替わり代理:2009/05/05(火) 11:59:08 ID:K5LxSd5T
ビュオウッ!
唐突に響いた声。それと同時、突如として起こったつむじ風により、ロングビルの手からその杖が離れた。当然、杖も無しでは魔法は使えない。
「なっ――!?」
驚愕に目を見開くロングビル。上空に舞い上げられた杖を見上げ、思わずルイズよりも杖の行く先を目で追ってしまう。そしてそれは、その場にいた全員も同じであった。
全員が杖に注目する中、それは地面に落ちるより先に、その落下地点にいた人物の手に収まった。
そこにいたのは――
「チェックメイト……ってやつかな」
「リュ、リュカ!?」
――死んだはずのリュカであった。
これにて投下終了です。初めてのさるさん。しかも容量計算間違えて予定レス数オーバーするし……
皆さんご迷惑おかけしました(;ω;)
次回で1巻終了予定です。では皆さん、フリッグの舞踏会でお会いしましょう(´・ω・)ノシ
続きがあったみたいです、勘違いしててごめんなさいorz
改めて日替わりの方乙でした!
ひどい鬼引きだと思ったら続いてたw
乙です!
>ゴレムスのサイズ
ゲームシステムゆえ致し方なし。
タバサは良く分かってるw
>リュカ死
色々と承知してる読者側からするとなんか妙にシュールな笑いを伴う感じがするぜw
でもかっこいい
・・・ふと気になったがDQの死者蘇生ってFEみたいな制約あったっけ?
:00をまたいだので規制解除。皆さん、支援&代理ありがとうございました。
読者様の心遣いが嬉しい限りです(ノ∀`)
ゴレムスの装備は、本当は『リュカの鎧を渡す』という描写の方がわかりやすかったと思うんですが、
やはり場面の都合上、剣にせざるを得ませんでした。
それと、『奇跡の杖』の正体は、もうほとんどバレてると思います。
名前を最後まで伏せていたのは意図してのことではなく、単に告げる場面がなかっただけの話w
日替わりの人乙ー
レックスに覗く勇者の片鱗。
流石魔王殺し一家はひと味違った!
……ふと思ったが、
タバサ(眼鏡)母いっぺん殺してザオリクかけたら正常化するんじゃね?(外道
キアリーで十分だろw
>>409 おぉっと、こいつぁうっかりだ!
夜勤明けで脳が涌いてるみたいだぜ
>>408 誰もが考えるけどやっちゃいけないだろwwwwこの下衆めwwww
>>406 バラモスの台詞から察するに、肉体の欠損は補えない……いや普通に復活してるなw
FEのエーギル云々みたいな設定は聞いたことないな。謙遜抜きで管見の限りだけど
グランバニア王家乙
このあいだ本屋でDQ5の小説売ってるのみかけて3巻まとめて衝動買いしちまったよ
くさった死体にザオリクかけてもくさったまま、ってのは4コマで読んだ気がするw
というか、ゴーレムは天空の剣をかかげればそれで終わるんじゃなかろうか?
遍在もそうだが。
最近 ROMし始めた新参者です。
「戦闘妖精 雪風」から、メイヴ雪風(パイロット無し)を召還します。
小ネタで、タバサと組んでいるのはありましたが、ルイズとのペアは無いようだったので。
なにせ初めてなんで 勝手が判りませんが 14時15分ころから投下したいと思います。
よろしくお願いします。
Misson 1 妖精の舞う召還場
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
そして 爆発。 またしても 爆発。
今までの爆発に比べて一際大きな爆発だった。
だが・・・
少女は困惑していた。
居残りの補習も、今日で三日目。
生まれて初めて魔法に成功した。それもサモン・サーヴァントで。
召還出来たのは 犬猫や蛇 蛙等の様な「小物」ではない。
視野から はみ出さんばかりの巨体、何らかの力を秘めた姿。
今までに聞いたことの無い唸り声を 絶え間なく上げ続けている。
強い、間違いなく強い!
でも、「コレ」は一体 ナニ?
夕暮れの薄闇に浮かぶシルエットは ドラゴンを連想させた。「地に伏した飛竜」といえば 比較的近いかもしれない。
長く伸びた首と胴体 そして翼に至るまで、今までに見たことが無いような曲線で構成され 禍々しくも美しい。
しかも 並のサイズではない。
鋭く立ち上がった尾羽?の高さだけでも クラスメイトが召還した風竜の背丈と同じ位だろう。
翼の幅は その倍、嘴?から尻?までなら 三倍はあるだろう。
その身体に鱗や羽毛は無く、金属とも木材・石材等とも判断できない何かで造られている。
そう これは生物ではない。頭と思われる部分はガラス状の物で覆われている。巨体に対しては貧弱な3本の足は、車輪が付いている。
おそらくは ゴーレムかガーゴイルの類なのであろうが、これがどのように動き出すのか 想像も出来なかった。
「こっ、これと『契約』するの…
って 口は何処なのよ〜?」
-------------------------------------
発信元:SAF-V 003 YUKIKAZE
送信先:FAF戦術知性体群
経過報告
ミッション 「超空間通路に類似した次元擾乱現象の調査」
パイロット:深井 零中尉
フライトオフィサー:ジェイムズ ブッカー少佐
状況 進行方向に出現した「サークル状の発光現象の回避に失敗、同空間に突入。
空間転移により現在位置に出現。
(付帯状況)
PA・FO共に消失。(キャノピー開放の記録 無し)
ヘルメット・パイロットスーツ等の装備は 後部シート上に在り。
転移前は飛行中。転移後は駐機してアイドリング状態。(着陸操作の記録無し)
当報告を送信中の「試作型超空間通信回線」を除き、全てのDeta-Link 不通。
転移時に 未知の言語に対する翻訳プログラムの強制入力 及びIFFへの外部干渉在り。
「召還者」なる存在を味方登録せよ との内容。同処理については 現在 保留中。
指示を請う。
発信元:FAF戦術知性体群
送信先:SAF-V 003 YUKIKAZE
回答
「超空間通路に類似した次元擾乱現象の調査」は 無事終了。
SAF-V 003はすでに帰還済み。
同調査に対するブッカー少佐の報告
「サークル状の発光現象に突入するも 機体・乗員共に変化無し。
しばらくの間 同空域に留まり警戒を続けるも、再度発光現象の発生無く、帰還した。」
ジャムによる複製の可能性を考慮し 機体及び搭乗員の検査を行うも、異常なし。
よって、本件通信の送信者自体が コピーである可能性 大。
ただし ジャムによるものか 現時点においては不明。
「召還者」に関する情報の収集を継続せよ。
-----------------------------------------------
強制入力されたデータ 及び本部指示より推測
・サークル状の発光現象は 召還対象をスキャンしコピーを作成した上で
現在位置へ転送する「ゲート」である。
・召還対象が機体のみであった為 搭乗員は複製されなかった。
現在 機体周辺に2名の人間を確認。
頭髪:ピンク 性別:女性 をアンノウンA
頭頂部:無毛 性別:男性 をアンノウンBと呼称。
調査続行。
-----------------------------------------------
「あー、ミス・ヴァリエール。君が戸惑っているのは判るが、早く契約の儀式を行いなさい。もう陽も落ちたことだし」
「あ、ハイ、コルベール先生。すいません、今すぐやります!」
とは言ったものの どうすればいいのか?
契約の儀式「コントラクト・サーヴァント」は、通常 使い魔とする相手の口に術者の唇を合わせる つまりはキスによって完了する。
口を持たない使い魔も存在するため、顔又は頭部で代用することも可能だが、今回召還されたものは 脚部を除き身体のどの部位も2メイルよりも高い位置にある。
「フライ」の使えないルイズでは、頭と思われる透明な部分まで登ることは出来なかった。
さりとて 貴族たる者が、無生物とはいえ 相手の手足に口付けをするわけにもいかず・・・
------------------------------------------------
「召還者」は アンノウンAと判明。対象とコンタクトを取るため コクピットへ誘導。
(コクピット照明輝度UP 昇降ラダーDOWN)
------------------------------------------------
どうするか考えあぐねていたルイズの前に 何かが降りてきた。
「えっ これ、梯子?…登ってこいって言うの!」
見上げれば ガラスのドームが 前よりも明るく光っている。
「いいわ、行ってあげようじゃないの。」
期待と恐れを等分に抱きながら、梯子をよじ登る。
戦闘機パイロットの平均に合わせた規格の梯子は、同年齢の中でも小柄な少女には かなり登りにくいものであった。
苦労の末にドームの中を覗き込んだルイズは、その光景に息を呑んだ。
決して派手ではないが さまざまな色に光る異国の文字に囲まれた座席があった。
彼女は直感した。これは『主の座』だ。この使い魔の主人が座る為の席だと。
既に 不安は欠片も無かった。早く あの席に座ってみたい。ただ それだけだった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
杖を振るい、契約の呪文を唱え、いとおしむようにガラスのドームに口付けをした。
その瞬間 頭の中に 大量の何かが流れ込んできた。
-------------------------------------------------
プログラム『コントラクト・サーヴァント』によるハッキング発生。
全ての防壁 効果なし。回線遮断に失敗。シャットダウン 不可。
「召喚者」を「マスター」に登録変更。
マスターの基礎個人情報 入力。「最重要防護対象者」に指定。
「サモン・サーヴァント」「コントラクト・サーヴァント」に関する詳細情報、入力。
「使い魔行動規範」 入力。
プログラム「ガンダールヴ」インストール。左翼上にルーンマークを表示。
Deta-Link対象に「マスター」を追加。
「FAF基礎情報」「操縦マニュアル」を転送開始。
------------------------------------------------
光の奔流。意識が吹っ飛び 身体が硬直した。
・・・フェアリイ空軍?・・・ジャム?・・・超空間通路?・・・戦術偵察機?・・・FRX-OO?
聞いた事の無い言葉が 頭の中を駆け巡る。
判ったのは それが この使い魔が伝えてきた「情報」だということ。
「どうしました、ミス・ヴァリエール。大丈夫ですか?」
契約の呪文を唱えた後 黙りこんでしまった生徒を心配して 教師が声を掛けた。
「はい、なんでもありません、大丈夫です。」
「今 左の翼で 何かが光りました。おそらく 使い魔のルーンが刻まれたのでしょう。
サモン・サーヴァントは何度も失敗したけど、コントラクト・サーヴァントは一回でと成功させたようですね」
「ありがとうございます。」
(やった!でも まだ終わりじゃない。私が本当に『雪風』のご主人様になるには、あの席に座って そして…)
「すいません、ミスタ・コルベール。機体から離れてください。
『雪風』'ていく おふ' します!」
送られてきた「でーた」によれば、雪風は「飛行機」つまり空を飛ぶ機械だった。
ハルケギニアにも 空を飛ぶ船はある。だがそれは 風石の力で宙に浮き 大人数で操作をしなければならない。
竜騎士のように 空を飛ぶ幻獣を乗りこなす者もいる。
飛行機は それらとは全く違う。
こうくうりきがく なるものによって 魔法を使わずに飛ぶという。
ルイズは雪風に命じて こくぴっと の きゃのぴー を開けさせ ぱいろっとしーと に座った。
「使い魔の力は ご主人様の力。
ってことは 今日から私も 飛べるって事よね!」
魔法を使えない。それは ルイズにとって最大のコンプレックスだった。なかでも「フライ」に対する思い入れは深い。
日々の授業で 教場を移動するたび 宙を行くクラスメイト、一人歩く自分。
心の傷は 流す血が乾く間もなく抉られ続ける。
だから…飛びたかった!
気持ちは逸っていたが 雪風にヘルメットとベルトの着用を促された。
本来ならば ぱいろっとすーつ も着なければならないのだが、絶望的なまでにサイズが合わなかったので 止めた。
サイズといえば すろっとるればー や そうじゅうかん も自由に扱うには遠すぎる為、初飛行は雪風の完全操縦となった。
(アイハブ コントロール)
雪風の言葉が 直接 頭の中に響く。モニターー上にも 同じ意味の文字が現れる。だんだん 判るようになってきた。
準備は整った。
「飛びなさい、雪風!」
双発のフェニックスエンジンが唸る。召喚場は開けた空間ではあるが、通常の滑走距離には十分とは言えない。
機乗経験の無いマスターに負担を掛けることになるが、離陸モードにSTOLを選択する。
ベクターノズルによる急速な機首上げ MAXパワーでの急上昇しながらマスターのバイタルチェック(パイロットスーツが無いので 精度は極めて低い)。高度10000で水平飛
行に移行。
死ぬかと思った。思っていたのと全然違った。自分が 大砲の弾になったのかと思った。
(…滑走路ってのを 早急に何とかしなきゃ。あと カラダ鍛えなきゃ…)
水平飛行に移って やっと余裕の出来たルイズが外を見ると、
「うわぁ!!!」
そこは 別世界だった。
地上から見たときには 雲が低く垂れ込めていた空。
今 雲は自分の足元に在り 遮るものの無い二つの月が 煌々と輝いている。
ルイズは理解した。雪風が「飛ぶ」という事を。現在の高度ですら まだその能力の半ばですらない。
雪風以外に そこまでたどり着けるものはいない。この空は ルイズと雪風のものだった。
自分の使い魔が 誇らしかった。
(でも これじゃあ 授業の時の移動には 使えそうに無いわね…)
結局 歩かなくてはならないのか。それだけが残念だった。
「帰りましょ。雪風。」
その後 雪風が着陸時にも離陸時同様に無理をしたため、ルイズは滑走路の重要性を 更に思い知ったのだった。
終了です。
言い訳
勢いだけで書きました。
「グッドラック」が行方不明 手元に「雪風・改」しかないので 色々間違ってると思います。
(ミリオタでもないし)
この後 どーしよ〜
フーケの巨大ゴーレムはともかく ギーシェの等身大ゴーレムと決闘させる理由もシチュエーションも思いつかない!
ふむん。爆発かしらん。支援。
思いつかないなら書かなきゃイイジャナーイ
土メイジなら装甲の冶金技術の高さとかから凄さを把握して賞賛するとか
まあ、シエスタはどうすんだって話にもなるが
雪風の人乙でしたー。
>土メイジなら装甲の冶金技術の高さとかから凄さを把握して賞賛するとか
そういえば召喚の時点で、こんなものを召喚したルイズ凄いとかギャラリーが褒め称える作品ってあったっけ?
カービィーは最初の時点で一部の女生徒達から人気あったけど
ご立派様はあとから賞賛されてたがw
>>426 短編であった武装錬金のパピヨンとか
「蝶々の妖精だ!」
とか言われて絶賛されてなかったっけ?
>>427 唯一バカにしたマリコルヌが逆に非難浴びてたな
絶賛って訳じゃなかったと思うが、らんま呼び出したのも羨ましがられてたような。
そういえば馬鹿にされるか羨ましがられるというのは
結構あるけど純粋にルイズが見直されるというのは少ない気がするな
FE-暁の女神のミカヤなんかも絶賛されてたな。
寧ろ
「ゼロのルイズが彼女みたいな神々しいお方と契約するなんて…」
みたいな空気にはなっていたな。
ただ俺はその事よりもルイズが白ルイズ化した事の方が印象的だったが。
>>431 見直されるか…
ブータ召喚?
セラウ゛ィー先生を召喚…子供じゃないから難しいな。
こなた召喚…意外にしっかりしてるからいい方向に導くことが出来るかも?強いし。
幻海師範召喚…短期間でママン超えすれば見直されるかも?(喧嘩番長的な意味で)
霊光波動拳継承 → 本気を出したら全盛期の姿に → む、胸が……
大器晩成型かもしれないじゃいか!
諦めちゃダメだ!
絢爛舞踏ザサエさんや暗黒舞踏ワガメちゃん召喚すれば恐れられはしそう…ってそういやあれは見えないのか
士魂号だと今までのロボット物と似たようなもんだろうしな
ハードボイルドペンギンとかだと方向性ブータと一緒か
まあブロントさん呼べれば尊敬されるのは確定的に明らか
ルイズってあっちの暦を365日に直すともう18だから
とっくに成長期過ぎてんじゃなかったか?
まず1日が24時間かどうかが疑わしい。
ちょっと短いつってたが、具体的にどんくらいなんだろうな
>>436 内藤召喚なら考えたことがある
最後がジュノでルイズがうっかりHP設定するってオチになったから止めた
>内藤召喚なら考えたことがある
「あんた誰?」
「おら、ハードボイルドだど!」
亀だけど日替わりの人乙
つーかこれってリュカはもうガンダじゃなくなってるんじゃね?
>>442 お前、それはみんな思っていて黙っていたことだっ!?w
大人の対応をしていただきたい。
>>443 逆に考えれば、任意でガンダのルーンをつけられるってことで……
亀だが、日替わりの人乙&GJ!
てかリュカについてるのはウ゛ィンじゃなかったっけ?
戦ってもいない魔物が寄ってきてたからヴィンタールヴだろうね
そういや召喚対象の都合上
ルイズがガンダじゃなくてヴィンダールヴ召喚だったことは多々あるが
ミョズ召喚したネタってあったっけ
ゼロのアトリエもだな
R-TYPEからコンバイラ召喚書きたい
中身はアイレム提督で
小ネタ向きかな
ヴィオラートがミョズだったような
アトリエがそうじゃないっけ?
なんという多重結婚
後だんじょん商店会のサララやドラクエ7のメディルの使い
FE暁のミカヤなど、ミョズ召還ネタは結構あるな
っつーかヴィンより多い
うーん、俺が読まなかっただけで結構あったのか
皆様サンクス
・・・いっそ使い魔それぞれズラしてみるとか・・・
ルイズ:ジュリオ
ジョゼフ:才人
ヴィットー:シェフィ
みたいな
・・・うーん、破綻するほかないような
>ジョゼフ:才人
この組み合わせだとジョゼフが狂ってなかったり、狂っててもイザベラの支えになってたりするSSが多い気が
逆にルイズに才人以外が使い魔になると悪化しそうな悪寒
ヴィンはドラクエ5のリュカ以外だと
シャーリー位しか見た事がないな。
ルイズの使い魔って立場的に最も活かしづらい能力だかからかな?
>この組み合わせだとジョゼフが狂ってなかったり、狂っててもイザベラの支えになってたりするSSが多い気が
あるんかい
ちょっと探してきますよ
どうせなら4体目として胸にZのルーンを持った魔神皇帝でも召喚すりゃあいいんだ
記すことさえはばかられる、神を超え悪魔をも打ち倒す鉄の城
亀ながら日替わりの人乙&GJ
ところで今回“一旦”死んだリュカだがルーンはどうなるんだろ?
ジョゼフ:サイトは異世界の知識と技術が入ってくる上に全く魔法に頼ってない訳だからエルフ以上に相性よくないか?
>>459 このスレだとゼロのエルクゥとか
他のスレだと完結した『蒼の使い魔』
あと18禁ハーレムものの『それは蒼から始まった物語』
とか
そういやドラゴンズウィルのスピノザ召還の奴で
ジョゼのとっつぁんがサイト召還してたな。
完全なギャグ話だったけど、パソコンのネトゲにハマってたり。
465 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 22:04:15 ID:gMDRj1LQ
今日トラウマイスタ一から三買ってきたんだけど超面白い
あとダヴィンチにペロペロモグモグジェットーされるルイズ想像して興奮した
あ、下げ忘れスマソ
>>447 TAPは?
まぁ、あれは体質っていうか特性によってミョズ・ヴィン・ガンダへと三段変形するが
虚無のパズルのルイズは三冠王だな
ティトォ・アクア・プリセラで
>>94 亀レスだが、300メートルではなく400メートルだ。
まあ、完成していたところであいつらのことだから負けたと思うが。
ヴィンダはミー、ミョズはギャラドスが他にある
これは余談だが、アルビオン編(原作2巻)突入しても
ルーンの種類が不明な大臣二人が存在する
これはかなり珍しいパターンだと思う
先ほど小ネタを書きたいと言っていた者です。
0:10より投下します。
内容はR-TYPE TACTICSよりコンバイラ召喚。
>>467 しかし武器を使うプリセラ姐さんが想像できない
というかあの世界、基本素手ゴロで武器使いが驚くほど少ないよな…
最強の剣術使いの基本技が手刀だったりするし
デュラララからセルティ召喚して
…月が二つある?!別の星?!宇宙人に攫われた?!
助けて新羅、怖い、もうやだ帰りたい、相手の言ってることは分かるけどこっちの意思を伝える手段が無い、池袋に戻れない?契約?死ぬまで?もうあいつに会えない?!
とか錯乱する首無しライダー妄想したけど首から上が無いから契約出来なかった。
エーテルの波をこえると
そ こ は ハ ル ケ ギ ニ ア だ っ た
事前支援
少女が呼び出した“それ”は余りにも規格から外れていた。見上げてもただただ赤い壁が上方へ伸びているように
しか見えない。ハルケギニアでも名高い、近代建築の粋が集められたトリステイン魔法学院の校舎は、まるで子供の
作った積木細工のようにちっぽけだった。
「なんなの、これ……」
少女の呟きは、すなわちこの場にいる人間全員の内心を物語っていた。雲一つなく、爽やかな空気に包まれていた
学院は、謎の巨大物体の作り出す影に覆われている。物体の表面は、誰も見たことのない艶やかな何かによって構成
されていた。
少女と同じく、春の召喚の儀式に参加していた生徒達は、皆腰を抜かし、声を失う。
「と、とりあえず契約を……」
頭の禿げ上がった40代の男性教師が、立ち尽くす少女にどもりながらも指示をする。だが、契約の口付けをするにも、
物体は20メイルほどの高さに浮遊しており、レビテーションを用いなければならなかった。
自分では魔法を使うことが出来ないため、教師に魔法をかけてもらい飛び上がった少女であったが、一体どこに
口付けをすればいいのか皆目見当がつかない。上に行けば分かるかもしれないと、より高くまで上昇すると、驚いた
ことにこの物体は、数百メイルもの大きさであるらしい。眼下に小さくなってしまった学院が見える。
「どこにすればいいのよ……」
しかし、それでも分からなかった。適当な場所で契約の呪文と口付けを行ったものの、何の変化も起きない。何度
試しても、やはり何事も起きなかった。結局、少女は肩を落としながら地上へと降りてくる。教師に事情を話すと、
自分としても始めて遭遇する事態だけに、仕方がないと答えを返された。とりあえずは一時保留とし、後日調査を
行った後に再度儀式を行うと告げられる。
校庭から教室へと帰る道中、他の生徒が自分を化け物を見るかのような目をして離れていく中、少女は頭上の物体
を見上げた。そもそもこれが生物なのかどうかも疑わしい。自分が召喚したとされる物体は、身動き一つ行わず、
ただ悠然とその場にあり続けた。
静かな眠り、報われぬ戦いの果ての結末。“彼”は悪夢の鎖に縛られた、暗黒の森の番犬であった。そして叶わぬ
帰郷を胸に抱いていた、哀れな捨て犬でもあった。
(ここは、どこだ……)
彼は自問する。己は故郷を立ち去ろうとしたあの時、かつての同胞に葬られたはずだ。苦楽を共にした部下達は
皆素粒子の残滓となり、世界から消えた。そして自分もまた、かすかな輝きを残して生を終えたのだ。だというのに、
未だ確かな体がある。
(私はバイド。そう、バイドだ……)
自分が何物であるか、それを確かめると、彼は目を見開いた。視界に入ってきた光景は、彼が万難を廃してでも
辿り着きたかった、故郷の風景にそっくりであった。しかし、煌びやかな輝きを放っていた巨大都市の姿はどこにも
なく、遠くに古めかしい造りの小さな街が見えるのみである。とそこで、足元に更にちっぽけな建物があることに
気が付いた。
足元に意識を集中すると、一人の人間がいるようだ。小さく何かを呟いている。それは自分に向けての言葉らしい。
何とも驚いたことだ。これまで自分が人間に接触を試みようとしても、帰ってくるのは波動の輝きであった。彼は
形容し難い喜びに包まれる。人々と理解しあえるというのは、これ以上ない至福であったのだ。
生徒達が寝静まった深夜、少女は寮の屋上へと上り、学院に影を落とす物体を見上げていた。やはり、自分は
出来損ないだ。他の生徒達が順調に鷹やオウムなど、使い魔を呼び出している中、自分はこんな訳の分からない物を
召喚してしまった。余りの巨大さに、学院全てが影に包まれ、昼だというのに灯りをつけなければならなかった。
静かに浮かんでいるだけで、動かすことも出来ない。我ながらはた迷惑な物を呼び出したものだ。
「ほんと何なのかしらね、これ。生き物なのかしら」
少女は壁に背を預けて座り込む。大きすぎて全容を把握できない。こんな生物がいるなど聞いたこともなく、
かといってでは何なのかと訊かれれば首を捻る他ない。
「大きいにも程があるでしょうが、このでかぶつ……」
そう少女が呟いたその時、周囲の空間が歪む。その光景は、まるで水中から空を見上げたようであった。
「な、なに!? 今度は何なのよ!?」
困惑の声を上げるが、空間の歪みは収まらない。そして世界が徐々に白くなっていったかと思うと、次の瞬間には
見たこともない不思議な部屋に立っていた。薄暗く、時折かすかな点滅を繰り返す部屋は、薄気味悪さを感じさせた。
少女は唐突な事態に思考が付いていかない。不安が首をもたげる。
「ここ、どこ? なんでこんな所にいるの?」
(ここはコンバイラ。私の中だ)
「ひあっ! だだだだ誰!?」
どこからともなく響いてきた声に、少女は飛び上がった。声は同じように落ち着いた声で返答する。
(私はバイド。地球より生まれ、追われた者)
「ば、ばいど? ちきゅう?」
以外にも紳士的に答える謎の声に、少女は少し落ち着きを取り戻した。おっかなびっくり、話を続ける。
「こ、これはどういうことなの? なんでわたしここにいるの? こんばいらって? ばいどって? ちきゅうって何?」
続けざまに疑問を口にする少女に、声は酷く生真面目な返答をする。そう、その口調はまるで軍人のようであった。
(コンバイラとはこの体、バイドとは私であり我々である。そして地球、それは我々の故郷であり、帰る事の叶わぬ場所)
「あんたの名前はその、コンバイラなの? それともバイドなの? 結局どっちなのよ?」
(コンバイラとは体、私はバイドである)
全くもって意味不明な返答であった。どうにも会話が堂々巡りをしている。頭が痛くなってきたので、話を変える。
「もう名前はいいわ……。それで、チキュウって? 追われたとか言ってたけど」
(我々はバイドを殲滅するために地球を旅立った。そして……)
その後の会話もまた、意味が通っているようないないような、よく分からない内容であった。
声曰く、バイドを殲滅する為に故郷を旅立ち、見事それを達成した。その後気を失い、故郷へ帰ろうとしたら、
何故か昔の仲間が攻撃してきた。何故攻撃されるか理解できぬまま故郷を目指し、ようやく帰郷を果たしたが、そこに
自分達を向かえる人々の姿はなかった。結局、故郷を捨て、新たな地を目指して旅立とうとした所を、待ち構えていた
地球軍艦隊に攻撃され、声含む全ての同胞が死んだ。ということであった。
少女は、話の前提が狂っていることに疑問を感じた。
「あんたはバイドなんでしょ? なんでバイドを殲滅するの?」
(バイドとは人類の敵。それを殲滅することは当然である)
「だーかーら、あんたはそのバイドってんでしょ? なんでチキュウにいたのよ」
(私はバイド、地球より生まれし者)
もう訳が分からない。意思疎通できているのか怪しいものだ。頭痛が酷い。もうこんな場所にはいたくはない。
「ああもう、どうでもいいわよ。それよりわたしを帰してくれない? ここにいたら頭が痛くなるわ」
(待って欲しい。私は君と話がしたいのだ)
「わたしはしたくないわ」
(お願いする。私の言葉を聞いてくれた人は君が初めてなのだ)
声は酷く冷静であったが、どこか必死な感情を纏っているようにも感じられた。少女は仕方ないとばかりに溜息を
付き、声の話に付き合うことにした。
一通り話しを聞き終えると、声は外の風景を見せてくれた。そこから見える風景は、昼間契約しようと上昇した時
に見たものであった。
「あんたがあの赤いでかぶつだったの?」
(コンバイラのことを言っているのならば、それは是だ)
「な、なら使い魔の契約できるの?」
(契約とは何か)
>>473 流石デュラララ!最萌キャラ。
容易に想像出来るから困る。
それはそうと支援
少女は使い魔の契約について説明する。声はそのような概念は所有していないと答えた。一応、少女が儀式を行い、
契約の口付けを試してみたものの、声は何ら変化はないと、冷厳な返答を寄越した。
「何よ……、契約できないんじゃ意味無いじゃない……」
肩を落とし、しょげかえる少女に、声は代案を出した。
(ならば契約に成功したと言えばいい。君と私が黙っていれば誰も知ることはないだろう)
「でもルーンが刻まれないわ」
(そのようなものは幾らでも誤魔化すことはできる)
殊勝な申し出をする声を、少女は不思議に思う。なぜこの異質な声はここまで自分に協力しようとするのだろう。
「あんた、なんでわたしに協力してくれるの? 故郷があるんでしょ? ここはチキュウじゃないわ。ハルケギニアよ」
(私は地球を追われた。最早帰る場所はない。そして君は私の話を聞いてくれた。
それだけで私にとっては十分な幸福なのだ)
どうやら、この赤い物体はただ寂しかっただけのようだ。そのことに気が付くと、少女はこの声が擦り寄ってくる
犬のように感じられ、何故か顔を綻ばせてしまう。
「そっか。そうね、それがいいかも。ねえ、あんた、なんて呼べばいいの?」
(君の好きなように呼べばいい)
「んー、じゃあコンバイラ。バイドよりはそっちの方が綺麗だもの」
(了解した。私はコンバイラだ)
「これから宜しく、コンバイラ」
この日、少女に味方ができた。
夜が明け、教師達が集まって検分しようとしたが、コンバイラは決して扉を開けようとはしなかった。そして少女が
名前を呼び、少し移動するように言うと、赤い物体は素直に移動した。その光景を見て、教師と生徒は目を丸くする。
どうやって意思疎通できるようになったのか問い詰められたが、少女は適当に言葉を濁す。それでも問い詰めようと
すると、少女の姿が掻き消えた。そして遥か上空から少女の声が聞こえてくる。
これまで立派な家柄に反して落ち零れの無能だと嘲られていた少女は、これ以上ない味方を得た。忠実な使い魔
コンバイラは、常に少女を守り、力となった。幾度となく起きた戦乱を圧倒的な力で収め、トリステイン王国を弱小
国家から難攻不落の精強な国家へと変貌させた。
少女が年老い、今際の際に残した言葉、彼女の家、ひいてはこの国を守って欲しいという願いを、コンバイラは
忠実に守った。少女の子孫が、何人も生まれ、そして死んでいった。その間、コンバイラは常に彼らの守護者であり
続けた。
数百数千の時が経ち、王国は発展し、ついに星の重力から逃れ、暗黒の大海へと飛び出すまでになった。それでも
まだ、コンバイラは少女の国の象徴だった。そしてこれからも永遠に少女の願いを守り続ける。
(私はコンバイラ。地球より生まれ、ハルケギニアに生きる者)
彼は今日もエーテルの波を眺め続ける。
以上です。最近ソフト買ってEDで切なさ全開になりました。
小ネタ書いてる暇があったらメインも進めないとなー……
あぁ・・・俺もその切なさを分けてもらったようだ
なんかしんみりとした気分だぜ
乙
こんな深夜に投下乙
投下乙
良かった。乙!
久しぶりにR-typeしたくなってきたな。
タクティクス買うかな……
乙でした
微妙に傾向の似たネタを書き溜めてるので励みになります
深夜によいものを見せてもらいました。
こういう短編って本当に一服の清涼剤って感じで好きだなー。
ところで、俺も久しぶりにR-typeやりたくなってきたな。
今だったら何のハードで何が出てるんだろうか?
コンバイラってのは結局何なんだ?
レェェェッツ!コンバイラ!
ごめん、言ってみたかっただけ
>>487 R-TYPEのボスキャラ
もしくはR-TYPE TACTICSにおけるバイド側陣営の戦艦
これ以上の情報は"R-TYPE"+"コンバイラ"で検索よろ
>>486 PCエンジンとセガ・マークIIIとスーファミとプレイステーションだったと思う。
最新作ならPSPで出てるけどシューティングじゃなくてシミュレーション。
にしても設定が濃いは〜R-type
このスレで一番最初に召喚された最初の作品てなんなんだろう
誰かわかるか?
初代スレ見てこいよ
>>490 『たち』って事はまた門田さんが大変な苦労をすることになるなwww
しかしながら、
同著者バッカーノ!の不死者勢がガンダとかになったら……
不死者がいない=死ねないから契約解除もできないし、
もし不死者がいた場合でも、食べたらガンタ補正も吸収するのかな?
一応、心臓が止まればガンダーの呪縛解除されるから問題ないと思う。
そもそも不死者にルーンが刻まれるのかすら怪しいよね、薬を飲んだ時点から成長や負傷を含めた変化が出来なくなった人種だから。
>>495 >心臓が止まればガンダーの呪縛解除
>薬を飲んだ時点から成長や負傷を含めた変化が出来なくなった人種
たしかに……ならあれだ。
日々努力を欠かさないルイズに、
努力の塊である『葡萄酒』を喚んでもらう!
とりあえず、ギーシュとおマチさんとワルドはトラウマを植え付けられる事が確定だwwwww
ルイズの乳やら何やらが成長する機会も失われると
それは大問題だ
いや待て、むしろ成長しなくていいだろ
貧乳はいいものだ
貧乳だと子供に乳をやるのが大変になるくらいで、日常生活ではでかくても邪魔なだけだしな
実は授乳も問題ない
母乳が出る時期は普通にAクラスがDクラスぐらいになる(一時的だけど)
ということは召喚早々にルイズを孕ませるような野郎が使い魔になれば
ルイズのコンプレックスが一つ解消されるわけか。
見知らぬ美少女をいきなり食っちまいかねない人間性と
コルベール以下生徒達を蹴散らせる戦闘力を兼ね備えたキャラとなると…蟹座のデスマスク?
星くず英雄伝の虎さんなら適役だな
星くず……あの「水生命体」の宿主を召喚すると……うん、大混乱は必死ですね。
しかし誰もルイズの身に起きた悲劇に気づかない可能性が?
「あ、汚れを知らない清純な乙女だ」
↓
「即レイプ」
こうですか、わかりません!
ルイズ少年化かw
それはそれでちょっとキュルケとのからみ方とか読んでみたいなw
SFのルドーラなら、ルイズに秘められた力に気付いて強制進化だろうな
ただ、ウェールズの貞操も危ない気がするが
コンバイラの人、乙。
某なのはスレのアレと比べると、物凄い温度差だ。凄いぞ石川県民。
>505
ハッタr
今更ですが日替わりの方乙
さすがのゴーレムもライトニングクラウドより強力(?)なギガデインにはひとたまりも無かったようで
レックスはレビテーションかけてもらって着地してるけど、これもゲームシステム的に考えると
高い塔のてっぺんから飛び降りても平気なんだから案外普通になんとかなるかも?
>>406 亀レスだが
少なくともパパスは生き返らせてないわけだし何かしらの制約はあるかと
難しい所だよなぁ。ゲームシステムとシナリオ上の力。ここに限らず、色んなゲームモノSSを書く上で整合性が厄介だぜ。
システム無視してシナリオを重視するか、「システムでここまで出来てるから、これくらいは軽いだろ」で通すか。
どちらにしてもパパスは肉体が残って無いからなー
よく考えたら何年も前に死んだ人間でも生き返らせられるのなら
それこそフーケやタバサにとっても喉から手が出るほど欲しいお宝だな
ロト三部作のときは「性を望む強い意志」か「精霊レビスの籠」のどちらかが条件で肉体の欠損は問わないだったかと……ゲームグックか小説のどっちかの設定で
性を望む強い意志・・・スケベ心があればおkなのか
まぁ、英雄色を好む、っていうしな。
横島自重
おっぱおを求めて宮藤芳佳降臨だな
あの力なら水メイジで通せるかも
そういえば横島召還は両方とも止まってるなぁ
更新は絶望的かな
>>517 芳佳の魔の手がキュルケ、シエスタ、シルフィード、ティファニアに照準を…
>性を望む強い意志・・・スケベ心があればおkなのか
>まぁ、英雄色を好む、っていうしな。
つまり砂漠の五星を呼べと
【誰がフランス書院ナポレオン文庫の話をしろと言った】
>性を望む強い意志
シティハンター・冴羽リョウ召還かw
>>514 「スケベ心が男を成長させる」
そんな言葉があったな
>520
挿絵が代わってからは読んでない、と言っておくw
>>520 ライトニング・サーガかよ
>性を望む強い意志
沢越止召喚は……ヤバ過ぎるか
>>523 やっぱりイセスは龍炎狼牙の絵じゃないとね!(w
>>524 Yes that's right!
50分から「THE GUN OF ZERO」の代理投下をするでござるの巻
今回は拙者の代理史上最大のレス数になりそうでござる
ということで00狙いをするのでござるが、名無し氏の盛大な支援もお願いしたいでござる
ごめんなさい。なんかもう、いろいろといっぱいいっぱいで。これが限界です……。
姉
授業の終わった午後。
最近ルイズは学院内のテラスでクォヴレーにお茶を入れさせ、優雅にティータイムをするのが日課だ。ツェルプストーもこのごろクォヴレーを諦めたのか周りにいないし、実に心安らぐ時間だ。
ただ、今日だけは事情が違った。
王党派の盛り返しで、徐々に薄くなっていたアンリエッタのゲルマニア皇帝との縁談話は、今回の事態を受けて完全に立ち消えとなっていた。それは良い。しかし、ウェールズ皇太子は……
「クォヴレー、本当に王党派とレコン・キスタを襲撃した奴の居場所は分からないの?」
「残念だが不明だ。奴はおそらく半年以上前からこの大地に潜伏していると思われるが、俺は昨日まで奴も誰かに召喚されている可能性を考えはしても、何ら証拠は見つけられなかった」
「もう!なのに昨日はスキヤキだかなんだかでさぼってたの!?何やってるのよ!役に立たない!」
「あのなぁ娘ッ子……相棒がそいつを探すために裂く時間を二時間に制限してるのはどこのどいつだよ?」
「う、五月蝿いわね!……そいつを探してただなんて、昨日知ったばかりなんだから!」
デルフリンガーの至って正論の突っ込みにたじろぐルイズ。
「わ、判ったわ!明日からは私が授業時間の間も、そのユーゼスって奴を探しなさい!そして必ず倒して、ウェールズ様の敵を討つのよ!」
「了解した」
とはいえ、と考え込む。
既にこの一月余りの間に、この惑星上はくまなく探したつもりだ。しかしジュデッカはともかく、ネビーイームの戦力は簡単に隠せるものではなく、かなり目立つはずだ。それを隠しおおせているということは
(この、宇宙のどこかに隠れている可能性もあるか)
そうなれば発見は絶望的だ。
どんなに小さな世界とはいっても、一つの宇宙なのだ。恒星一つの陰に隠れてやり過ごされれば、簡単に自分は通り過ぎてしまうだろう。
正に砂漠に落ちた針を拾う如しである。
囮役になってくれたマサキやリュウセイの成果に期待するしかないか。
正直あまり取りたくない戦法ではあるのだが、自分が囮にならないことはこの一月の間に証明されている。ユーゼスにとっての餌になるはずの二人に頼む他はない。
「お茶を飲みながら下男に命令するだなんて、偉くなったものね?おちび?」
ぴきーんとティーカップを傾けていたルイズが固まる。
「あ、ああああ……姉さま!?」
カップを置き、慌てて椅子から立ち上がるルイズ。そこには見事なブロンドの美女がたっていた。
「あなたの姉が来たというのに飛び退くとはどういうつもりかしら?」
不機嫌を露わにしながらルイズにつかつかと近づく。
(姉?)
「と、飛び退くだなんてそんな……」
「久しぶりに会いに来たのに随分な挨拶ねぇ?ちびルイズ」
ルイズのほっぺを掴み、上下左右に引っ張り動かす。
「いひゃいいひゃい!やめへふははいあえはま!」
(ルイズの姉か……)
成る程、髪の色が違うが髪質顔立ちはとてもよく似ている。
ぐにぐにと妹の頬を引っ張っている女性を眺めながらそう認識するクォヴレー。
「ふんっ!」
支援
ようやくルイズから手を放して腕を組む。
「全く、何で私がこんな所まで来なければいけないのかしら!」
「あのぅ……姉様はなぜここに?」
痛むほっぺたにクォヴレーが水差しでぬらして差し出してくれたハンカチを当てながらルイズが尋ねる。
「おかしな噂が流れてるのよ」
不機嫌そうに目を瞑りながらそれでも話す。
「おチビが悪魔を使い魔にしているだとか、実はその悪魔に魅入られて操られているんだとか」
(あの噂、学院から外に漏れているのか)
背中でデルフリンガーが楽しそうにカチカチと鍔を鳴らした。
「それにお父様が心配されて、もし本当に操られているのなら手紙で言っても聞かないだろうからあなたと使い魔を連れて来いって……ああ、もう!ルイズが呼び出したのはメイジ殺しの銃を持った平民だから悪魔の筈が無いでしょう!なんでわざわざ私が!」
(……俺の銃のことを知っているのか)
クォヴレーのあずかり知らぬ所ではあるが、オスマンがコルベールに提出させたコルト・パイソンの持ち込まれた王立魔法研究所はルイズの姉の勤務先である。
「ああ、理由は分かりました」
「わかったら!さ、ルイズ!とっとと使い魔を連れてきなさい!」
「俺がルイズの使い魔です」
ひょいとクォヴレーが手を挙げた。
「……は?」
ひゅう〜と風が吹き抜ける。昨日のように寒い風が吹く。
「あのね平民。私は冗談を聞いている気分ではないの。今なら許してあげるから、とっととどこかに行きなさい」
「いえ姉様、本当です。このクォヴレーが私の使い魔なんです」
ルイズがクォヴレーを手で指し示した。
「……これが?こんな細っこい平民が?」
「ええ」
クォヴレーの頷きにしばし目をしばたたかせていたが、やがて笑い出す。
「おほほほほほほほほほほ!メイジ殺しの銃を持つ平民と聞いていたから、どんなに屈強な野蛮人かと思えば、こんな貧弱な子供だったなんて!」
「おーい相棒、言われてるぞ?」
「こちらを嘗めてかかる分には問題はない。敵であるならば御しやすいし、味方でも過剰な期待はかけられない訳だからな」
「……相棒にとっての実力より過剰な期待って、そりゃもう誰にも出来ねぇって事じゃねぇのかい?」
クォヴレーの背でデルフリンガーがぼやく。
「こんな平民が使い魔だと知れば、お父様も安心出来るでしょうね!」
しれっと流しているクォヴレーとは対照的に、ルイズは笑う姉を見て、何だか沸々と怒りが湧いてきた。
クォヴレーは、ルイズにとって初めて成功した魔法の証とも言える存在だ。それが笑われて、いい気がするはずもない。
(アストラナガンを見せれば姉様だって……!ってそっか、見せつけてやればいいんじゃない!)
悪戯を思いついて、心中ルイズはほくそ笑んだ。
「ところでルイズ、彼女は姉でいいのか?」
クォヴレーが尋ねかける。
「ええ、私の一番上の姉様よ」
「エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールよ、覚えておきなさい、平民」
「はい」
(俺を名前で呼ぶ気はさらさら無さそうだな)
ルイズの高慢さを煮詰めていけばこんな感じだろうか。
「では姉様、私達は急いで帰らねばならないんですね」
そのルイズが妙にきまじめな面持ちで姉に尋ねた。
「そうよ!わかったらとっとと準備なさい、ルイズ!」
エレオノールの剣幕にも動じず、クォヴレーに向く。
「というわけなのよ。私達はすっごい急いでいるわ、クォヴレー」
「アストラナガンか?」
「ええ、すぐに出して頂戴」
「わかった」
使い魔と妹の会話が理解出来ず、エレオノールは更にイライラを募らせる。
「ちょっとルイズ、何を話しているの?」
「乗り物の準備をと思いまして」
「入り口に馬車があるわよ!そんなことより……!」
「馬よりもずぅっと早いんですよ、姉様。あれなら屋敷との日帰りも出来るほどなんです」
にんまり笑うルイズの後ろ。
「テトラクテュス・グラマトン」
クォヴレーの声が聞こえて、続けて風が吹き出して……。
「えtr”b”:frzbyw”¥ーっ!」
「きゃあああああああぁぁぁぁぁ!?」
悪魔王の咆吼とエレオノールの悲鳴が響き渡った。
「最近はやけに吠えるな、アストラナガン」
(や、やっぱりちょっと怖いわね……)
三度目、しかも今度は完全に自分の意思で呼ぶように命じたはずだが、それでもその咆吼には恐怖を覚える。
だが、心の準備が出来ていたルイズは良い方だ。
「あ、ああああ、あく……あく……」
完全に腰が抜けてへたり込んでしまったエレオノールは、もはやディス・アストラナガンを見上げて呻くだけだ。
「姉様、これがクォヴレーの半身、ディス・アストラナガンです」
優越感を前面に出した誇らしげな表情でルイズは姉に告げた。
姉の引きつった表情を見ていると、何だろう?胸が軽くなっていくような気分を覚える。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、その16年の生涯に置いて初めて姉より精神的に優位に立った瞬間であった。
「……ルイズ、着替えてきても構わないか?」
「部屋に戻るなら、私の小物入れも持ってきなさい。どうせすぐ帰るでしょうけど一応ね」
買い与えた服を見下ろして困惑顔のクォヴレーに部屋の鍵を手渡してやる。
「判った」
一つ頷くとタッとクォヴレーは走っていった。その姿を見送って気づいたが、周りに人が集まってきている。叫び声は学院中に聞こえただろうから当然の事か。
「るるルイズ!?何なの、これは!」
どうにか呂律が回るようになったエレオノールが尋ねる。
「ですから、これはクォヴレーのディス・アストラナガンです。クォヴレーが悪魔という噂の発端も、これだと思います」
しれっとそういってみせる。
「でも安心して下さい。単なるゴーレムですから。ちょっとガーゴイル的な要素もあるようですけど」
「ご、ゴーレムなの……、これが」
「あら、もしかして姉様……怖がってます?」
にやり、とルイズの頬が持ち上がる。食堂でギーシュを追いつめた時以来のサディスティックな気分だ。
「ば……馬鹿も休み休みに言いなさい!おチビ!魔法の使えないはずの平民が、いきなり巨大なゴーレムを呼び出したから驚いただけです!」
引きつった顔ながら、必死に矜持を保とうとする姉。
「そうですね、ごめんなさい姉様。姉様は私とは違いますもの。この程度で怖がったりはしませんよね?」
素直に謝ってみせる。
まったく、失礼なおチビだこと!等と怒って居るが、ルイズは既に気づいている。座り込んだ姉が先程から全く動いておらず、おそらくは腰を抜かして動けないのであろうことを……!
クォヴレーが着替えて来るまでのあいだ、結局エレオノールは座りっぱなしであった。
「……学院長から咎められてしまった」
「仕方ないわ。急いで帰ってくるように言ったのはお父様だもの」
戻ってきたクォヴレーの言葉に首を振りながらルイズは言った。
「ああ、その旨を話したら渋りながらだがあっさりと引いてくれた。ルイズの家の力というのは凄いんだな」
感心したようにクォヴレーが言った。
「ふふん、まぁこんなものよ。さ、クォヴレーも来たことですし、乗りましょうか姉様」
「の、乗る?あれに!?」
「ええ。そのために出したんですから……それとも姉様、やっぱり怖いんですか?」
「じょ、冗談ではないわ!このラ・ヴァリエール家長姉である私が、た、たかが平民が操るゴーレム如きを怖がっているとでも!?」
末妹の挑発に面白いように乗ってくる姉。プライドの高さもこうなると滑稽でしかない。
「た、ただ、私が乗ってきた馬車は……」
「御者に帰るように言えば問題ないでしょう。クォヴレー」
「ああ」
促されるまま、ルイズをお姫様抱っこで抱え上げてディス・アストラナガンの掌に乗り、コクピットに近づけてから飛び移る。
「姉様もどうぞこちらに。レビテーションを使えばすぐでしょう?」
にっこりと、天使のような悪魔の笑顔を浮かべてみせるルイズ。
「い、いいいいえ!考えてみれば、急がなければならないのはおチビと使い魔だけでしょう?私はあとからゆっくりと……」
「ご遠慮なさらずに。さ、どうぞ」
「だ、だから私は……」
「フフフ……」
天使のような悪魔の笑顔から一転、明らかに悪い笑みを浮かべるルイズ。
「姉様らしくないわね、こんなに遠慮するだなんて。クォヴレー、直接つかまえてここまで連れて差し上げて」
「……了解した」
まぁ、別に他に害を及ぼすような無理難題でもない。ため息を一つ尽き、命じられたままにエレオノールへディス・アストラナガンの腕を伸ばす。
「ひゃあああ?!」
悲鳴を上げて後ずさるより早く、その体を掴み上げられ、コクピットへ手が持ち上げられる。
「さぁ姉様、ってあら」
アストラナガンの手の中で、エレオノールは気絶していた。
公爵家
気絶していたエレオノールを起こし、改めてディス・アストラナガンの裡へと誘って、銃神が空を飛ぶ。
魔法で空を飛んだことも有る分か、エレオノールは全天周型モニターにもルイズほどの過敏な反応は示さなかった。ただ、自分が一体何の内側にいるのかということを考えているため、あまり顔色は良くなかったが。
(こ、このまま消化されたりしないでしょうね!?)
それでも必死で作り笑いを浮かべ続けているのは、全然平気な顔をしている妹への矜持からである。姉は大変なのだ。
さて、ルイズによる視覚の案内で飛ぶため、現在アストラナガンは高度も速度もかなり落としている。それでも、もう既にアストラナガンはヴァリエール領内に突入していた。
「い、言うだけあって、なかなか早いのね……」
相変わらず引きつった笑みを浮かべつつ、それだけ言う。
「はい、もちろん。あ、クォヴレー、あのお屋敷よ!」
「わかった」
ルイズの指し示した建物へ若干の進路修正を行い、着陸態勢に入ろうとしたところで機体の警告音が響く。
「なに!?」
驚きの言葉を口にするが早いか、アストラナガンがバレルロールを行う。数瞬遅れて、エネルギーの光弾がその空間を通過し、地面に着弾。クレーターを形成した。
「きゃあああぁ!?」
「な、なんなの!」
同乗者二人の悲鳴が上がる。そちらへ応対する前に、クォヴレーは機体の高度を上げ体勢を立て直す。
「ミシュレイ!?それに、メギロート!」
その機体を確認し、クォヴレーは目を見開いた。
「バカな、奴め今更何のつもりだ!」
ラアム・ショットライフルを抜き放ちざまに一発。散弾が今し方撃ってきた一番近いミシュレイを破壊する。
「く、クォヴレー!?何なの、この、虫と鳥!」
「奴の……ユーゼスの手駒だ」
「ユーゼス!これが?」
怨敵と認識し、キッとルイズの目がにらみ付ける。
「ちょ、ちょっとおちび!一人だけ納得していないで説明なさい!」
「あいつらはウェールズ様を殺め、アルビオンを壊滅させた奴の手下なのよ、姉さま!」
「アルビオン……?きゃああああ!」
エレオノールが説明を求める最中、メギロートの発する円形のレーザーがディス・アストラナガンに向けられる。
「ディフレクト・シールド、アクティブ。そんなもので、このアストラナガンを止めることは出来ない」
ニヤリ、と口元をゆがめクォヴレーが呟き、サークルレーザーは機体周囲の力場を輝かせるだけで終わった。
「お、相棒、調子出てきたみてーだな」
デルフリンガーのつばがかちゃかちゃと囃し立てるように鳴る。
「ルイズ!アルビオンを壊滅させた連中が、何故私たちを襲うのよ!」
「こいつらはクォヴレーの敵でもあるのよ」
そうよね、と使い魔を見やる。
「ああ。……敵機補足、メギロート10、メギロート・アフ15、ミシュレイ9、ミシュレイ・アフ15」
先程撃ち落とした分をあわせれば総勢50機か。
「1対50ですって!?平民!早く私たちを安全な場所に下ろしなさい!すぐに!」
冗談ではないと、エレオノールが必死に命じる。
「ダメだ。下ろしているときに狙い撃ちされれば余計に危険だ。このまま奴らを殲滅する」
「殲滅って……ちょっと平民!判っているの!?あんな大きな虫や鳥を相手に……!」
「娘っこの姉ちゃん、ちょっと落ち着きなって。自分が一体何に乗ってるか、覚えてるか?」
デルフリンガーの言葉に、ハッと口をつぐみ、エレオノールはルイズをつつく。
「ルイズ……あなたの平民、勝てるんでしょうね」
「え?え、ええ、もちろんよ姉さま!」
・前田郷介
会社をクビになり、女房に逃げられ、ルイズの使い魔として召喚された中年男
・二比ススム
常人には計り知れぬ性嗜好を持つロマリア教皇の使い魔、性のフロンティア
・葛原
ガリア王に召喚された美女、ツンとしたクールな女性が好きな男にはたまらないタイプ、巨乳
・田村さん
己の本能のままに生きる怪物と呼ぶ他ない男、まさに口にするのも憚られる、奥さん以外に弱点がないかもしれない
「えの素」の各キャラを召喚
ルイズは、姉からの問いかけを受け初めて気づいた。自分は、このディス・アストラナガンの戦闘能力は一切なにもクォヴレーから知らされていない。
負けるとは欠片も思っていなかったし、現実、即座に一機破壊したクォヴレーが負けるとは今も思わないが、クォヴレーのことを把握しきれていなかった自分に、何か違和感を覚えた。
「来るか!」
キッとクォヴレーが異形の軍勢をにらみ付ける。
「数秘予測……狙いはもう付いている。俺の敵を破砕しろ、ガン・スレイヴ!」
ディス・アストラナガンの背中がごそごそと蠢き、コウモリのような翼をした5機の移動砲台が宙を舞う。
それらが個々にメギロートを追い、撃破していく。
空戦が展開されている隙をつき、別の方向からミシュレイ・アフの部隊が近づいてくる。
ディス・アストラナガンは急劇に高度を下げ、地表ぎりぎりで滞空、反転。自身を追ってきた敵が一直線になったのを目視で確認する。
「ゲマトリア修正……メス・アッシャー、マキシマム・シュート!」
ダーク・マタを応用したエネルギーの奔流が空を裂き、十数機を消滅させる。
「相棒!」
「後ろか!」
デルフリンガーから注意を喚起されるのとほぼ同時に機体を反転させ、そちらから接近していたメギロート・アフと正対する。
「Z・Oサイズ……」
ラアム・ショットライフルを展開。ディス・アストラナガン手に大鎌を握らせる。
突撃を敢行してきたメギロートの鼻先に合わせて刃を振るう。
「切り裂け!」
まっぷたつになったメギロートに、すぐさまライフル形態に戻したラアム・ショットライフルを向けて引き金を引く。
「そして打ち砕けっ!」
バッと爆光を上げてメギロートが散る。
「上からも!」
直上から、数少なくなったメギロートの一機が突進してきてその6つの足で組み付いてくる。
「ぐ……!」
『きゃああああああ!?』
機体にかかる衝撃に姉妹が悲鳴を上げる。
上空から落下してきた勢いを殺せず、ディス・アストラナガンは地上に足を着く。そのまま機体の推力で地表面に轍を付けながら、きりもみ状態で超低空飛行をし、体勢を立て直して地面の方にメギロートを押さえつける。
「潰れろっ……!」
地表面との摩擦に耐えきれなくなり、やがて爆発四散するメギロート。残った絡み付く多足をふりほどき、再度高度をとる。
ビシビシとディフレクト・シールドにミシュレイからの砲撃が当たる。
「破壊する」
右のメス・アッシャーのみを展開し、照準に収める。
「メス・アッシャー、クォーターシュート!」
半分の出力でメス・アッシャーを掃射する。残っていたミシュレイ、メギロート達をガン・スレイヴの勢子で追い込み、壊滅させた。
「……敵機、反応消失。Aクラス警戒に移行……」
ほぅ……とため息をつき、残敵の掃討を続けていたガン・スレイヴが背中に戻る。
「サイバスター、R−1へメール送信。ディス・アストラナガンへ襲撃有るもこれを迎撃。各員の状況報告を求む」
簡潔にそれだけ述べると、同乗者二人へと目を移す。
「大丈夫か、ルイズ」
「ええ……」
ショックアブソーバーにより怪我などはないが、それよりも戦闘に気圧されている方が大きい。
「エレオノール……さんも、大丈夫ですか」
正直、このルイズの姉との精神的距離を未だ掴みかねているクォヴレーはとってつけたような敬称付きで尋ねる。
「あ……ああ、まったく……もう少し丁寧に動かして欲しいモノだわ!」
一瞬、惚けた顔をしていたが、すぐに目に力を取り戻すとクォヴレーへ文句をぶつけつつ崩れてしまった身だしなみを整えた。
「すみません」
格好を気にする余裕があるのなら大丈夫だろうと、小さく笑みを浮かべつつ謝辞を述べた。
「……それでルイズ、あの屋敷で良かったな?」
主へ確認を求めるクォヴレーの指さす先には、この騒動に反応して人が出てきている屋敷があった。
久しぶりの帰宅。それも、圧倒的な力を伴っての。ルイズは得意の絶頂だった。
パイロットスーツを開いて左胸から左腕の先までを露出させ、左手甲を軽く掲げる。
「これが、あるからか?」
「そ、そうよ!例えどんなに離れていたって、それがある限り……!」
「無ければ、良いんだな?」
「え……?」
左手を掲げたまま目をつぶり、そっと呟く。
「テトラクテュス・グラマトン……!ディス・レヴ、ハーフドライブ!」
記されたルーンは、抵抗するかのように激しく明滅を繰り返したが、三度の明滅で完全にその左腕から消滅した。
「……嘘……」
元より、この程度のルーンを解除することなど苦労することでもなかった。それでもあえてルーンをその身に刻みその影響下に自身を置いたのは、ひとえにルイズの使い魔であらんとするクォヴレーの心意気だ。
それも今は、意味を成さない。
「ルイズ、俺はもう居ない方が良い。居てもお前に迷惑をかけるだけだ」
もう一度そう繰り返すと、呆然としたルイズの眼前でくるりと踵を返し、タッと駆け出す。
「ま、待って!待ちなさい!」
我に返ったルイズが、
ハルケギニアの風
シャルロットは自分の体が震えていることを自覚し始めていた。
昨日の今日で、まさかエルフに繋がりのある人物とコンタクト出来るとは思っていなかったのだ。
しかし、ふとミョズニトニルンの言葉が蘇る。
――私は何かを企んでいる。
あの仮面の男は、こうなることを想定していたのか?
いや、そんなはずはない。ランドール・ザン・ゼノサキスの事を報告していたのは自分で、その自分がつい今し方エルフとの繋がりを知ったばかりなのだ。
よしんば、何か別の伝手でランドールとエルフの繋がりを知っていたとしても、自分がランドールを頼ったのは、シルフィードが勝手に近づいた事による偶然なのである。
『偶然を操作出来る』のでもなければ意味がない。
――この事実を知ったところで簡単にはいかぬか。
あの時の会話が再び蘇る。
そうだ、あの男とて自分がまさかこんなタイミングでエルフとの繋がりを見つけるとは思っていなかったはずだ。つまり今、自分はミョズニトニルンを出し抜こうとしているのだ。
「さ、行こうぜ」
サイバスターを指さしながらマサキが出発を促す。
「……これに乗る?」
「ああ、風の魔装機神の名前は伊達じゃねぇんだ。こいつに乗っていけばすぐだぜ」
「マサキが迷わなければの話よねぇ」
不安げにクロがため息をつく。
「う、うっせぇ!」
「道案内は私がする」
頷いて見せながらシャルロットが進言した。おおよそハルケギニアの地理は頭に入っている。
「あ、ああ。そうしてもらえると助かるぜ」
鼻の頭を指で掻きながらマサキが応えた。
「きゅい!中に入れるの!?シルフィも入りたい!」
「お、おいおい無茶言うな!いくら何でもお前は無理だって!」
慌ててマサキが制止して、コクピットハッチの大きさを示す。
元々コクピットは一人乗りである。どっかの誰かさんはこっそりシート裏に隠れて乗り込んでいた事もあったが、いくらなんでもシルフィードの体が入るはずもない。
「む〜、それなら!」
精霊憑依
「ぐあっ!」
衝撃に、コクピットが揺れる。
「あにゃにゃにゃにゃ!」
「きゅいーっ!?」
シロが定位置の台からずり落ちかけ、シルフィードが悲鳴を上げる。
「くっ……こいつら、あのメギロートとか言う奴と格が違いやがる……!」
顔をしかめたマサキが呻くように言う。
目的地であるオルレアン公領を目前に、サイバスターは襲撃を受けていた。
デザインラインからすると、やはりメギロートと同様の組織のものか。
だが強さがダンチだ。
大きさや堅さのため、一機一機が超魔装機並みにタフネスで、結構な攻撃力もある。
しかもそれが一度に10機。流石のサイバスターも追い込まれていた。
マサキは知らなかったが、このロボットはヴァイクル・タンと呼ばれる機動兵器であった。ネビーイーム中枢であるジュデッカを守る役割を持っていた無人兵器である。
こいつらが何故ここにいるのかは判らない。
たまたまここで会敵したと言うには、陣形が防戦に特化している。
かといって、シャルロットの母親に正気に戻られては困る連中――すなわち現ガリア王室がこれを指揮しているというのは、少々早計だろう。あるいはそういった情報をリークする存在が居るだけで、サイバスターを狙って行動を起こしたのかも知れない。
クォヴレーの予想を信じるのならば、こいつらはサイバスターのラプラスデモンタイプ・コンピュータこそが狙いの筈だ。
「カロリック・ミサァァイルッ!」
サイバスター胸部から打ち出される純粋熱量がヴァイクル・タンに直撃。表面装甲が融解するが、さほど堪えた様子はない。
反対に自立機動砲台に周りを囲まれ、かろうじてそれらをかわす。
「マサキぃ、逃げようぜ?」
シロが撤退を提案する。実際、サイバスターの大気圏内巡航速度は、転移を除けばディス・アストラナガンをも上回っている。現在のハルケギニアでは最速の存在だろう。
「バカヤロウっ!あいつら、シャルロットの屋敷を囲むように居やがるんだぞ!どう見たってこっちの邪魔してるんだ!ここで逃げたら、助けられねぇだろうがぁっ!」
マサキの言葉に、暗い表情になるシャルロット。
――私は何かを企んでいる。
ミョズニトニルンの言葉。
まさか、自分がランドールを頼り、ここに連れてくることまでも予想していた?
いや、違う!そんなことはない!
自分がランドールを頼るのは余りにも偶然の要素が多すぎた!これはあくまでも偶然!偶然なのだ!
「きゅい!こうなったら、シルフィが外に出てあいつらを引きつけてやるのね!」
「だぁっ!暴れんな!何、馬鹿言ってやがる!あいつら、ハルケギニアの魔法なんざ比べものにならねえ位の火力を持ってやがるんだぞ!みすみす殺されに行くようなモンだっ!」
「でもでも、このままじゃあお姉さまがいつまで経っても……きゅい!?」
再び走る振動に、シルフィードが悲鳴を上げる。
「……ランドール、もういい。無理はしないで」
マサキの膝の上で、振り向いたシャルロットが言う。
「もういいっつったって、お前、母親はどうするんだよ!」
「薬はもう手に入れた。別の機会を待つ」
「あのなぁ!現状見てわかんねぇのか!?連中、俺たちの目的地を知って妨害してやがる!
あれを俺たちにぶつけてきた連中と、ガリア王室の連中がどういう関係にあるのかはわからねぇが、ここで退却なんてしたら、今度はお前の母親がどこかわからねぇ場所に幽閉されちまうぞ!」
「でも……!」
その目に、明らかな困惑が浮かんだ。
「へっ!気にすんなってんだ。お前をきっちり無事に母親のところまで届けてやるからよ!」
不敵な笑みを浮かべつつ、正面を見据える。
「どうするの?クォヴレーに援護を頼む?」
「いや、クォヴレーがこっちに来てくれる前に敵の方が援軍が来ないともかぎらねぇ。ここは速攻で潰す!シロ、クロ、集中しろっ!」
「ま、マサキ!もしかしてポゼッションをやるつもり……!?」
「ポゼッション……?」
聞き慣れぬ言葉にシャルロットは首をひねる。
「この状況だ。仕方ねえだろ?全開じゃなく、半分で良い」
「で、でも……」
「それに、ここは結構精霊レーダーの感度もラ・ギアス並みに良い。地上より負担は少ないはずだ!」
撃ち込まれるエネルギー砲を回避し、中空に静止する。
「サイバスター……判るな。クォヴレーの話が本当なら、この世界にこんな兵器はあるはずがねぇんだ。この世界の平穏を取り戻すためにも、一組の親子のためにも、お前の力を、俺に貸してくれ!」
マサキの言葉が、ただコクピットに響き……
「きゅい!?」
シルフィードが驚きの声を上げた。
ざわり、とシャルロットも全身が怖気立つのが判った。
何か居る。コクピットの中、いや、サイバスターそのものに、入り込んでくる……!
「はぁぁぁぁぁ……」
低く、マサキが息を吐く音が耳を打つ。
「す、凄い!ホントに凄いのね!エルフにだってこんな事の出来る人は居ないのね!」
シルフィードが驚きの声を上げる。
「何が、起きてる?」
使い魔に尋ねる。
「ランドールは今、精霊そのものになろうとしてるのね!」
「精霊、そのもの?」
「精霊憑依(ポゼッション)……」
ぽつりとマサキが呟く。
しえん
お久しえん
「魔装機神にはそれぞれ、上級の精霊が契約している。そして、その精霊からの力を最大限に発揮するために行うのが、精霊憑依だ」
「風の精霊でいぃ〜っぱい!きゅぅい〜」
マサキの足下で、気持ちよさそうに鳴き声を上げるシルフィード。
「行くぜ……!サイバスター、GO!」
煌めく粒子を放ちながら、夜闇の中を輝き駆ける。
「行け!ハイ・ファミリア!」
『判ったにゃん!』
二体のハイ・ファミリアを射出し、自身はバニティ・リッパーをサイバスターに握らせ、一番手近なヴァイクル・タンに向かう。
「ハッ!」
プラーナを上乗せした斬撃に、まっぷたつに切り捨てられるヴァイクル。
そこへエネルギー砲がサイバスターの後部ウィングを直撃するが、サイバスターの纏う風の精霊のオーラに阻まれ、煤けもしない。
くるりとそちらに向くと、スッとバニティ・リッパーをそちらに向ける。
空中に光が走り、サイバスターの眼前に円にぴったりと収まった六芒星が描かれた。
「いけぇぇぇっ!アァァァカシック・バスタァァァ!」
アカシック・バスター、アカシック・レコードに直接干渉を行い、攻撃目標を破壊するサイバスターの必殺技の一つ。
それは三次元では火の鳥として視覚的に捉えられる。
六芒星の光を吸い込むように現れた火の鳥に、サイバードに変形したサイバスターが突っ込み、そのまま敵に体当たりを敢行する。
一機を粉砕するだけでは収まらず、勢子に回ったハイ・ファミリアに動きを制限されていた二機も次々に落とし、おまけで眼前に居た一機も落とす。
変形を解き、バニティ・リッパーを再び握らせ、またたく間に数を半減させた残り全てのヴァイクル・タンを視界に修める。
「行くぜ!クロ、シロ!アシストを頼むぜ!」
再度、ハイ・ファミリアを勢子に回し、半ポゼッション状態のサイバスターの全速で飛び始める。
「オラ、オラ、オラオラオラオラオラオラオラァ……!」
空中を超高速で駆けめぐりながら、なで切りにヴァイクル・タン全てを斬りつけていく。
「これぞ秘剣!」
最後の一撃を最外郭にいる一機に撃ち込む。
いつの間にやらサイバスターの斬撃が五芒星を描いていた。
「バニティ・リッパー、乱舞の太刀!」
呼び戻した鞘にバニティ・リッパーを戻すと同時に、全てのヴァイクル・タンが爆散した。
「……凄い」
先程までの苦戦がウソのようだ。
「っく……う……」
「ランドール……!?」
「きゅい!?」
シャルロットの後ろで、マサキが真っ青な顔をしていた。
「あちゃー、やっぱりこうにゃったか」
「押さえてるって言っても、やっぱり限度があるわよ」
シロとクロが呆れたように言う。
「何が起きている?」
心配げにシャルロットが尋ねる。
「プラーニャの消耗よ」
「プラーニャ……プラーナ?」
猫語から修正する。
「そうそう。シャルロット達で言う魔法を使うための精神力みたいなものかにゃ。ポゼッションをした代償に、プラーニャをごっそり持って行かれてるんだよ、今のマサキは」
「そんなことより……下に降りるぜ。あの屋敷でいいんだよな……?」
苦しげな表情のまま機体を操るマサキ。
「……苦しそう。どうすれば楽に出来る?」
「んなこと気にするな。少し休んでりゃ楽になるって」
心配そうに顔を覗き込むシャルロットに、無理矢理に笑顔を向けてみせる。
「にゃーにかっこつけてるのかにゃあ?」
「照れてるだけよね?これは」
「う、うるせえぞ!お前等!余計なこと言ってみろ!三味線だからな!」
「はいはい。もう耳たこよ」
おざなりにクロが返す。
「ま、あんまり言いふらすことでもにゃいのは確かだし。シャルロット、ひとまずお母さんのところに行きにゃよ」
シロに促され、着陸したサイバスターのコクピットからシャルロットはレビテーションをかけながら飛び降りる。
「ああ、シャルロット様!」
「何と!あのゴーレムはシャルロットお嬢様のお連れでしたか!いやいや、あの巨大な異形のフネ達を一掃してしまうとは!」
待ちかまえていた人々が、自分たちの主筋と認める少女の顔を見て安堵の表情を見せる。
「薬を持ってきた」
スッとシャルロットが小瓶を見せる。
「薬……?まさか!」
「母様を治す薬。私が降りてきたあの穴に疲れている人がいる。これを手に入れる手伝いをしてくれた恩人。看病してあげて」
「おお!何と!そんな、そのようなことが……!いえ、話は後です!今は一刻も早くお母上のところへ!ああ、恩人の手当は引き受けましょう!」
古くからの臣下に促され、母の元へとシャルロットは駆けた。
6時間ほど経って日の昇る頃。
案内された一室でマサキは大あくびをしながら上半身を起こした。
恩人であるとしてもてなされたマサキは、疲れているので寝かせて欲しいと頼むと、この簡素ながらしっかりした作りの客間に通されていた。
あれから眠って、今は完全にプラーナも回復した。ファミリア二匹も今は自分に格納している。
さてどうしようかと思い、とりあえず部屋を出ようとドアを開いたところで、扉の外に誰か居た。
「おっと、すまねぇ」
「い、いえ!お目覚めでしたか!ゼノサキス様!」
驚いた様子のメイドが慌てて佇まいを直す。
「朝食のご準備が出来ていますが、お召し上がりになりますか?」
「お、わりいな。そういうことなら頂くぜ」
昨日寝る前に元に戻ったシルフィードに返して貰ったジャケットをベッドのそばから取って肩にかけながら、メイドの先導で廊下を歩く。
「というか、俺名前言ったっけ?」
頬を掻きながら先行くメイドに尋ねる。
「昨日、シャルロット様より、ほとんどの者は話を聞いていますから、ゼノサキス様の事も存じております」
「ああ、そうか。んで、シャルロットはどうしてる?」
「シャルロット様はまだ公母様とお眠りになっています。昨晩はずっと公母様とお話をしていたようですから」
「そうか。久しぶりに母親とちゃんと話せるんだもんな。そうなるか」
穏やかな笑みを浮かべるマサキにメイドが振り返って笑いかけた。
「これも全てゼノサキス様のおかげです。ありがとうございます」
正直、様呼びはまだ背筋が薄ら寒かったが、結婚後にラングラン名を名乗り始めてからは結構あることなので、我慢する。
二人も綺麗な妻がいる贅沢者への罰なのだと思って甘んじて受けていた。
「おお!ランドール・ザン・ゼノサキス様!」
案内された部屋で一人の老人が、マサキの前で深々と頭を下げた。
「この度は、シャルロット様にご助力頂きまして、誠にありがとうございます!」
「いいって。んなに気にするなよ。俺はただ、仲介役をやっただけだ。昨日の戦いは、むしろ俺を狙っての事だろうからな。あんたたちが感謝することでもねぇ」
「いえ!例えそうだとしても、エルフ達との仲介を行って頂いただけでもこのペルスラン、感謝の極みです!」
再び頭を下げるペルスランという男、このままいっては跪いて礼を言われかねないと感じて、テーブルの上の料理を指さしつつ話を逸らす。
「あーその……出来れば飯喰ってからでいいか?」
「おお!これは申し訳ありません!感激の余り……失礼しました。ささ!どうぞ!」
椅子を引いて着席を促される。
「うん?この皿は……」
椅子に座って気づいたが、側の床に魚の乗った皿が二枚置かれている。
「こ、これ!ゼノサキス様の使い魔殿も連れてくるよう言ったではないか!」
「ああ!す、すみません!私うっかり……!」
ペルスランの言葉に、恐縮して部屋を出ようとするメイドを止める。
「ああ、いいっていいって。俺の使い魔はちょっと特殊なんでな。別に借りた部屋に行っても何も無いぜ」
「は?それはどういう……」
「ん、まぁ、折角用意してくれたもんだしな。出てきな、シロ、クロ」
マサキの呼びかけによってパッと現れる二匹のファミリア。
「んにゃ!?」
「あらマサキ、おはよう」
寝ぼけ眼ながら起きるシロとクロ。
「お、おお!?これは!話には聞いていましたが……本当に異界の騎士様なのですな」
感心したように目を見開くペルスラン。
「騎士っつーか戦士だけどな。ま、立場としちゃこの世界の騎士と似たようなモンだ。ほれ二人とも、飯だとさ。ありがたくいただいとけ」
「お!それじゃあ早速……」
「もう、お行儀悪いわよ、シロ。それじゃあ頂きます」
魚にかみつくファミリアを見て、自身もフォークとナイフを手に取る。
「んじゃ、俺もいただくぜ」
「ご満足いただけるまでどうぞ。食後にデザートも用意してありますので」
満面の笑みでペルスランは頭を下げた。
食後、しばらく経ってから、ようやくシャルロットは起きてきた。
茶を楽しんでいたマサキがそちらに向く。
「おう、おはようシャルロット。どうだ、気分は?」
「上々」
頷きながらそう答える表情は、どことなく楽しげだった。まぁその変化にはキュルケぐらいしか気づけないだろうが。
「そうか、そいつは……って何だ何だ!?」
つづけてどやどやと人が入ってきた。10名にも満たないが、オルレアン家の境遇から考えるとこの屋敷にいる全員ではなかろうか?
つい勢いに押されて立ちながら後ずさるマサキの前に、シャルロットと少々薹の立った女性が並び、そろって跪く。その後ろにいる者達もペルスランを筆頭に次々と膝を折った。
「ランドール・ザン・ゼノサキス様、此度のこと、全て娘から伺いました」
といいながらシャルロットを指すと言うことは、この女性がシャルロットの母か。オルレアン公爵夫人という訳だ。
「私を毒の狂気よりお救い下さったこと、我々オルレアン家およびその臣下一堂、ゼノサキス様にこの上ない感謝の念を抱いております。
もし、この異境の地でお困りのことがございましたら、微力ですが出来うる限りの助力は惜しみません。何なりとお言いつけ下さい」
そういうと、ざっと全員がマサキに対して頭を下げた。
しえん
「うわー、すっごいぜマサキ。ラングランでだってこんにゃ経験にゃいぜ」
やっぱり驚きながらマサキの足下に駆けてきたシロが見上げながら言う。
「あ、ああ……」
困惑したように頷きながら、こういう時はどうするんだったかなと、少ない宮廷知識を動員する。
コホンと一つ咳払いをしてから、言葉を選びながら告げる。
「……御申し出、ありがたくお受けいたします」
直立して一度頭を下げる。
「……実は、私と仲間は現在このハルケギニアに潜んだ影を追っております。そして此度の一件により、その影が、ここガリアに巣くっている可能性が見えてきました」
「ガリアに、ゼノサキス様の敵が?」
驚いたように公爵夫人が顔を上げた。
「はい。我々は異邦人故、この地における情報網がありません。出来れば、情報の提供を求めたいのです。ただ、オルレアン家の現在の状況も理解しております故、無理にとは申しませんが」
「あらマサキ、そんな話し方も出来るようになってたのね」
(うっせ……)
クロの感心したような台詞に内心毒づきながら表面上は変わらぬ態度を取る。妻の一人は錬金学アカデミーの重鎮なのである。こういう事も言わねばならない時も多いし、言われる時も多い。
「それにつきましては心配はご無用です。ペルスラン」
「はっ!このガリア、かの無能王にして簒奪王のジョゼフに対し、怒りを覚えている者は数あれど、同調しようなどとする不届き者はごく一部にすぎませぬ!」
マサキに恩返しが出来るとあって、その目がらんらんと輝いている。
「オルレアン公亡き後も、いずれはシャルロット様が王位を奪い返してくれるものと、各地に伏せている同志は数多くおります!此度のゼノサキス様のご助力は、その同志達に力を与える物!そのゼノサキス様の頼みとあらば必ずや力となってくれましょう!」
……どうせだから何かしてもらおうかと思って持ちかけた情報収集だが、ここまで積極的になるとは思っていなかった。
(なんか拙い方向に焚き付けちまったかなぁ……)
今更ながらちょっと後悔するマサキだった。
求める情報は、一度戻って仲間との協議の上で決めることを告げると、屋敷の中はあわただしく準備が始まった。
何しろ公爵夫人の毒が解毒されたのである。
これまでシャルロットを、母の狂気を治す薬で縛り付けていたガリア王室が、今度はシャルロットを亡き者にしようと動き出すのは目に見えていた。
公爵夫人と屋敷に働く人々は、このガリアの協力者の下に身を隠し、シャルロットはこれまで通りトリステインの学院にその身を置くこととなった。
マサキ達との連絡役が一人は必要で、やはりそれはこれまでもトリステインにいた者が最も適任だろうという考えからだ。無論、この時点でマサキはクォヴレーの状況変化など知るよしもない。
どうにか必要最低限の物をまとめようとする騒ぎの中、マサキは公爵夫人に耳打ちした。
「……気をつけた方が良いんじゃないか?絶対に一人か二人は、使用人の中にも息のかかった奴がいるぜ?」
「わかっています」
マサキ素の言葉遣いだが、それでも公爵夫人は真摯に受け止めていた。
「ですが、今ここでその事を言う訳にはいきません。その事を明らかにして、不要の軋轢を生むことをこそ、私は恐れます。そして何より、そのためにシャルロットを学院に居るままにするのです」
シャルロットを学院に置く真意に気づき、マサキは息を呑んだ。
「ゼノサキス様、親の身勝手であるとは理解しています。ですがどうか、シャルロットを守ってください……これ以上のお力添えを請うなど、厚かましい願いであるとは知っています。ですがどうか……」
親を思う子の愛は、やはり子を思う親の愛に匹敵する訳で。
再びマサキは折れた。
「……判った。けど、それだけだ。シャルロットにも言ったが、もし本格的にアンタ達が蜂起したら、もう俺は関知しない。いいな?」
魔装機神操者として、義理で出来るのは個人的な防衛だけだ。
理由がどうであれ、戦乱の発端となりうる事に手は貸さない。
簒奪者と呼ばれる者であろうと、一国を治めている王を手にかけるのに手を貸すのは、良くて看過するまでだ。
「はい。それだけで……それだけで十分です」
竜の羽衣
サイバスターと隣り合って置かれているR−1。
「さ、こっちこっち」
リュウセイに促されるままその胸に開いた穴におそるおそる入るシエスタ。
クォヴレーに薦められるままリュウセイに頼ってしまったが、本当に大丈夫だろうか?と今更ながらに不安になってくる。
「って、どこに座るの?」
「ん?俺の膝の上だけど」
みたことの無い服装で、
いざ往かん、我らの戦場へ
『ルイズ、ルイズ……この世界に危機が迫っている。さぁ唱えよ……』
数日前から見るようになった夢。それは徐々に明確さを増してきていた。
今ではその姿も徐々に見えるようになっている。長い髪の男だ、あれは。
昨晩泣き疲れて眠ってしまったルイズは、もはや見慣れたものとなった夢から覚めてからもしばらくベッドの上で動かないままだった。
「……クォヴレー」
呼んでみたところで、飛んで行ってしまった彼が来るはずもない。
「何よ……何よ……!死ぬまで一緒にいるとか言ってたくせに!たった……たったこれだけのことで居なくなるなんて……!」
再び涙がこみ上げてきてルイズの頬をぬらす。
しばらくそうしてぐずっていたが、元より昨日はそうして泣き疲れるほどに泣いたのだ。すぐに気持ちも落ち着いた。
そして落ち着いてみると、何だか屋敷の中が騒がしいのに気が付いた。
気にはなったがとりあえず着替えるため誰か小間使いを呼ぼうと鈴を鳴らすが、誰も来ない。
「もう、何やってるのよ!」
イライラとしながら部屋の戸を開けたところで、ルイズの動きが止まった。
「わ、ワルド子爵……?」
「ああ、ルイズ!僕のルイズ!このタイミングで会えるとは思っていなかったよ!」
まさにルイズが戸を開けた時、ワルドと父がそこを歩いていた。
「な、何故こんな所に、というかすみません!お見苦しい格好で……っ!?」
ネグリジェ姿だったのを思い出し、あわてたルイズにワルドが抱きついた。
「わわわわわわワルドぉっ!?」
いくら婚約者とはいえ、祝言そのものは行っていない仲で、当然の如く公爵も些か気分を害したような表情をしている。
このままではワルドのためにも良くないと、必死に訴えかける。
「あ、あの、離して!こんな格好じゃあ……」
「……ああ、済まない。出征前に君に会えたものだから、少々気が高ぶって居るようだ」
ルイズを離しつつ、顔を押さえるワルド。
「出征……?」
「戦争だよ。ガリア王国が、宣戦を布告してきたんだ。ここへは、君のお父上を閣議にお連れするために来たのでね」
本来ならばワルドクラスの人物が行う任務ではなかったが、領地に帰っていたワルドが登城するに当たって公爵も連れて行くこととなっていた。それだけ、他のヒポグリフ、マンティコア、グリフォンを操る騎士達を動員する余裕が無いとも言える。
「子爵」
「は、済みません」
公爵の咎めの声に、改めて謝意を示す。だが、もう少しだけ話させて欲しいといったジェスチャーをすると、やれやれと言わんばかりに公爵はため息をつくだけにとどめた。
「ルイズ、この戦争が終わったら、その時には僕が迎えに来るよ。だから、待っていてくれ」
「え……?ワルド?」
「いいね?……参りましょう」
驚いた顔のルイズを残し、ワルドと公爵はその場を通り過ぎていった。
「昨日の夜、機動兵器の襲撃を受けた。それも、ガリア王室の利になるようなタイミングでだ」
「!それはつまり」
「どこまで繋がりがあるのかはわからねぇが、お前の言うユーゼスって奴とガリアは何か関係があるのかも知れねぇ」
「手分けした甲斐があったか……!」
だがその関係のあるというガリアが戦争を仕掛けたこのタイミング、本当に間に合ったか?
「ランドール、私の声もクォヴレーに届いている?」
マサキの膝の上に座っているシャルロットが尋ねた。
「あ?ああ。聞こえてるはずだぜ」
「クォヴレー、あなたやランドールの言っている敵は、四つの目が描かれた仮面を付けた男?」
「!どこで見た!?それを!」
「ガリア王宮内。ガリア王の召喚した使い魔で、王を傀儡として、現在実質全ての権力を握っている男」
「全ての権力……!?まさかこの戦争は!」
「今のガリアが侵攻をするというのなら、間違いなくその男の意志」
ガンとコクピットハッチの縁を手で叩く。
「拙い、先手を取られた!リュウセイ、すぐにでるぞ!」
「お、おう!」
「マサキ、敵の艦隊を叩く。直接戦場で合流する!」
「わかった!こっちも急ぐぜ!」
R−1のコクピットから飛び降りつつ、唱える。
「テトラクテュス・グラマトン!」
ディス・アストラナガンを呼び込んで飛び乗り、翼を展開して大空へと飛び立つ。続けてR−1も上昇し、R−WINGに変形して後を追う。
南へ向かう中で、レーダーに機影がかかる。
「見えた。いや、違う!?」
そちらにカメラを向けるが、映し出されるのは帆船に翼の生えたハルケギニアのフネだ。
「クォヴレー、どうなってんだ?ありゃあ、この世界の飛空挺じゃねぇのか?」
「ああ……その筈だ」
「どうした?ってこりゃあ……」
サイバスターも合流し、そこに見える艦隊に首をひねる。
「ガリア両用艦隊……」
「違う。これではない……俺の早合点だったのか?」
シャルロットの言葉に焦ったようにコンソールを操作し、レーダーのレンジを変える。
「こちらか!?」
ここより北東の方角に、レーダーに映る影がある。木製のガリア艦隊よりも遙かに強力に反応している上に、進行速度が比べものにならないほど速い。
「リュウセイ、マサキ、位置情報を転送する。奴の主力はこちらだ!」
トリステイン王宮。閣議の席上、各方面から続々と情報が寄せられていた。
「報告を」
マザリーニの言葉に偵察に出ていたマンティコア隊の隊長ド・ゼッサールが進み出る。
「はっ!現在ガリア両用艦隊は、南方より我が領内に進入。歩兵の進行速度に合わせて進行中です」
「数は?」
「兵力数は、2万を超えると思われます」
重苦しい空気が議場を埋め尽くす。先程確認されたトリステインの動員出来る兵力は、2千のみだ。
「ほ、報告しますっ!」
そこへヒポグリフ隊の隊員数名が駆け入ってきた。
「ゲルマニアへ向かったガリア艦隊は、全長が500メイルを超える超大型艦14隻による艦隊です!」
「な……」
一瞬沈黙した会議の席上は、すぐさま沸騰する。
「全長500メイル以上だと!?そんな巨艦があるものか!」
「いえ、確かに、この目で……!あれは500メイルどころか、下手をすれば800メイルはあるかと!」
「馬鹿な!」
「あり得ぬ!諸君等でたらめを述べているのでは……」
「お待ちなさい!」
紛糾した会議の席上はアンリエッタの発した声で静まりかえる。
「……800メイルはある巨艦と申しましたね?」
「は、は!確かに!」
「それは、黒い船体で船尾が緑色をしていましたか?」
「いかにも!なぜご存じで!?」
「……言ったとおりだわ……」
二日前に会見を行った銀髪の少年を思い浮かべる。
「殿下、ガリアの巨大艦隊をご存じなのですか?」
大臣の一人が驚きの声を上げる。
「ルイズの使い魔の、クォヴレー・ゴードンが言っていました。ここハルケギニアに、本来あるべきではない戦力が潜んでいる、と。
それは、あのアルビオンで王党派とレコン・キスタを壊滅させたゴーレムを操る者の手駒だそうです」
娘の名前が出たことで、ヴァリエール公爵は一層目尻をきつくつり上げた。
「あのゴーレムの!?」
皆噂は聞いている。その圧倒的なまでの力も。
「ヴァリエール公、すぐに彼にこのことを知らせて下さい。きっと力となってくれるはずです」
おお!と議場が盛り上がる。同じように巨大なゴーレムを有している者が味方にいるのならばと、公爵へと議場の大半が期待の視線を向ける。
だが、眉間にしわを寄せて唸るように公爵は口から声を発する。
「……彼には、昨日の時点で娘の使い魔を止めてもらいました……今現在その行方は知れません」
一瞬その場の全ての者が息を飲み、ヴァリエール公爵へ批難を集中させた。
半ば誹謗中傷とも取れる発言を一身に受けながら、それでも一切反論はせず、公爵は鶏の骨へと睨むでもなく、ただ、視線を向けた。
顔面蒼白となったマザリーニは、議場のテーブルを見つめたままわなわなと唇を震わせていた。
クォヴレーのディス・アストラナガンについて、公にやんわりと政治的圧力をかけたのは間違いなく宰相である彼だった。だが、それは何も戦力の放逐を企図したところではない。
彼はその戦力を、王家の物にしようと考えただけである。『使い魔』であるクォヴレーを『献上』させるのでも良い。その主であるルイズを王宮へ任官させるようにし向けるのでも良い。
ともかく、クォヴレーを自身の影響下へ置きたかったマザリーニなのだが、ここで思惑が交錯する。
公爵にも、ある程度その思惑は判っていた。だが、実際のディス・アストラナガンの戦闘を目の当たりにした公は、王宮への過度の戦力供給は戦乱の時代を呼び込む物と考え、
さらに実際にクォヴレーの人となりを知ると、その力を野放しにしても自身達へ危害は加えまいと判断して第三の手段を取ったのである。
その判断自体は、本来ならばいつでもルイズの元を去ることが出来た彼が大人しくしていたことからも過ちではなかったと思えるが、よもやこんな事態が急転直下で発生するとは考えていなかったのだ。
{こんなはずではなかった}
二人の、正直な気持ちである。
「……我々の退路には、絶望しか有りません。このままガリア軍と対しそのまま突き進むことで、はじめて希望が生まれます!
ゲルマニアへ派遣された艦隊がトリステインへ充てられるよりも先に、敵艦隊を殲滅しガリアへ突入します!」
大艦隊の派遣に、トリステインとゲルマニアが右往左往している頃。
メギロートの大群が、ロマリアを襲撃していた。
しえん
「げ、猊下をお守りしろ!」
魔法は通用するらしいモノの、それだけでは太刀打ちの出来ない巨体、量、そしてサークルレーザーの破壊力に、じわりじわりと戦線は押されていく。
「ダメです、支えきれません!このままでは……!」
「く……」
一人、エイジス32世は臍をかんだ。
返す返すも、ガリアの手のモノに『香炉』を奪われたことが悔やまれる。
(こう言うときにこそ、新たなる『虚無』の力が必要なのであろうに……!)
「猊下、お逃げください!我々で血路を開きます故……!」
退避を促す騎士の言葉に被さるようにして轟音が響き、彼らの居る部屋に巨大な虫の頭が覗いていた。
「く、もうこんな所にまで!」
「……何故だ?何故奴が現れない?残る手の内は、奴自身のジュデッカだけだというのに」
14隻のフーレを始めとした、ネビーイームの主力部隊。
それらを壊滅させ、戦闘の余波から荒野となったゲルマニアの地で、クォヴレーは困惑の声を出す。
「この艦隊ってのは、ユーゼスの主戦力なんだよな?」
リペアキットでR−1を応急修理しつつリュウセイが呟く。
「にも関わらずその主戦力をここで使い潰したって事は……」
「こちらは囮。本命は、ガリア艦隊」
サイバスター内部で推測が立てられる。
「……踊らされていたのか、俺は?」
「言ってる場合じゃねぇ。すぐにトリステインに戻るぜ!」
愕然とするクォヴレーに、マサキが叱咤した。
だがその行動は、既にして遅れていた。
絶望の宴は今から始まる
彼は、ガリアの竜騎士だった。
そこを統べる王が無能と呼ばれても、そこにいる自分は誇り高い騎士なのだと、そういう自負があった。
王が傀儡と化しているらしい、という噂を聞いたとき、意に染まぬ汚れ役をさせられるかも知れないという予感はあった。それでも、騎士である自分の本分は果たすつもりだった。
しかし、予感通り一方的な侵攻にも似た戦争が始まったとき、彼に課せられた任務は敵方の村を虐殺することでも、歩兵を撃退することでもなく、
ましてや一対一の空中戦であるはずはなく、北花壇騎士だという数名の人員を送る、というものだった。
(俺は……俺は荷物運びではない!)
何故に自分が、他人の足代わりに、それも日陰者の北花壇騎士の連中を!
“そろいも揃って同じ仮面をつけた”連中を送らねばならないのか!
自分達は、馬代わりか!?
「目標空域ラ・ヴァリエール家領上空に到達」
そんな客の一人……どうもこの5人の客の中でリーダー格らしい男――いや、少年かも知れない――が声を上げると、左右に着いている僚騎に分散して乗っている仲間へ杖の先を照らし合図を送る。
「回収の必要は無し。以後、竜騎士隊はトリステイン攻略に当たられたし」
「!……了解」
言われるまでもない。こいつらを乗せるのなど二度とゴメンだ。どいつもこいつも似たような声をして、気味が悪くて仕方ない。
ひょっとして、その頭全体を覆う兜の下も、皆同じ顔なのではないか?
大地へ落ちていく五つの姿を見送った後、彼は僚騎と共に西南西へと進路をとった。
「ルイズ」
「何よ……」
「このままここにいては危険だ。理由は不明だが、奴はルイズを狙っている。再度の襲撃が無いとも……」
「使い魔を辞めて、居なくなったのはアンタでしょう!?アンタ何様のつもりなのよ!」
涙混じりのルイズの言葉に、クォヴレーは口をつぐむ。
「平気でいなくなって、一番にて欲しい時に居てくれなくて!無事で良かった?ええ、アンタはそれでいいでしょうね!ユーゼスって奴が狙っていた私が、連れ去られずに済んだんだから!
アンタにとって良かったのは私の無事じゃないわ!ユーゼスの目的を邪魔出来た事よ!でも母様や姉様達を殺された私はどうなるの!?
……ようやくわかったわ。アンタは始めから私の事なんて見てなかったのよ!元々自分の敵を倒すためにハルケギニアにやってきて、私と居るのはついでに過ぎなかった!」
次々と責める言葉を吐きながら、ルイズはこの一月の間クォヴレーの言葉を思い起こす。
『聞かれなかったからな』
この一言でクォヴレーはディス・アストラナガンの事を自発的に話そうとはしなかった。
『判った。ルイズが不安になるのなら、今後誰かから物を貰うのは控えるとしよう』
貰わないのは自分に命令されたから。自分の気持ちを察そうとはしてくれなかった。
『ルイズは俺の主人だからな。俺は応えられる範囲でその命令に従うだけだ』
ただ単に、命令を実行するだけの応対。
「そんなことは……」
「あるわよ!いっつもはいはい人の言うこと聞くばっかりで、アンタから私に何かしてくれたことが一度でもあった!?
ミスタ・ゼノサキスを助けるためにアンリエッタ様に掛けあって、リュウセイのために厨房に口添えをして!あんな風に自発的に私にアンタが何かしてくれたことが一度でもあった!?馬鹿にしないで!
アンタにとって、私があの二人よりも優先順位で劣ってることぐらいとっくに気づいてたわ!」
二日前の夜。自らの与えた自由時間を削ってまでリュウセイの頼みに応じ、誘いに残りの時間も宛てた。ウェールズを連れてきた夜ですら、それでも自分の時間を主張したこの男がだ。
悔しかった。
だから自分にも何か買ってくるように命じたら、その通りに見たこともない『あいす』というとてもおいしいお菓子を買ってきた。でもそれも、所詮は自分の命じたことに過ぎなかった。主人の命に使い魔が従っただけなのだ。
「父様に言われただけで、私の気持ちなんか無視してあっさり居なくなって!そんなアンタが、今度は自分の敵に狙われて居るようだからここを離れろ?巫山戯ないで!私はアンタの戦いのための道具じゃない!」
「巫山戯てるのはお前の方だろうが!」
「あぅっ!?」
いつの間にか近づいてきていたマサキの平手打ちがルイズを撃った。
「マサキ!何を!?」
「道具じゃない?使い魔を、道具みたいに扱ってるお前が言う台詞か!お前がクォヴレーを利用することしか考えてないなら、クォヴレーだってそれなりの対応しかしないのは当たり前だろうが!」
シロが、クロが、シルフィードがマサキをじっと見つめる。
「お、お父様にも撲たれたこと無いのに……!」
「殴られるような事をしたのはどこのどいつだ!
まともな寝床も与えないで、厨房で賄いを貰わなければパン二きれに薄いスープ一皿だけを、床の上で食べさせる?聞いてぞっとしたぜ。この世界でも使い魔は奴隷じゃねぇ!シャルロット達を見てたらそれが判った!なのにお前は何だ!?」
「使い魔で!は、配下の平民をどう扱おうと勝手でしょう!?クォヴレーは何も言わなかったわ!」
「こいつっ……!」
「!」
再び腕を振り上げるマサキとぎゅっと目を瞑るルイズ。
「マサキ、止めろ」
その振り上げた腕をクォヴレーの手が掴んでいた。
「クォヴレー!お前がそんなんだから、こいつも!」
「確かに、俺の接し方にも問題があった。だから、止めてくれ」
「……!ちっ……」
まだ何か言いたげながら、マサキは素直に腕を下ろした。
「何よ、何よ、アンタ達なんか……!」
「ルイズ」
しゃがみ込み、ルイズと同じ視線にまで降りてからクォヴレーは呼んだ。
「何様だ、と先程聞いたな。だから、俺は今度こそクォヴレー・ゴードンとしてお前に向き合う。その問いに答える」
未だに涙を浮かべた目のまま、睨み付けてくるルイズに、ゆっくりと語りかける。
「俺の名はクォヴレー・ゴードン。時を越え、数多の世界を彷徨うタイムダイバーだ」
時を越える、ああ、確か言っていなかったか?自身は見た目通りの年齢ではないと。
数多の世界を彷徨う、ああ、言っていなかったか?ディス・アストラナガンは世界を越える乗り物だと。
口にするその度に、この男は『ルイズには関係のない事だったな』と笑い、自分が信じずとも大して気にもかけていなかった。
だが、それらは全て、自分に提示されていた事象だった。そして自分は、それを戯言だと決めつけ、一蹴し、検討すらしなかった。
「今この世界を、悪意が席巻しようとしている。そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、その悪意がお前を狙っている。理由は不明だが、奴の企みを阻止するためにも身柄の安全を図りたい。
……先程言っていたとおり、これはそちらを利用するも同然の行為だ。だがどうか、協力して欲しい」
頭を下げる彼が口にしていた、それらのこと全てが事実だとするのならば、信じなかった自分は、何なのだ……?
『ゼロ』と呼ばれていた自分を信じてくれた彼は?
(『ゼロ』……?)
自身の二つ名を思い出すと共に、一月前の出来事がルイズに思い出された。
『そのままの意味だ。お前の二つ名を聞いて、俺は強そうだと思った。俺が見てきた「ゼロ」と呼ばれるモノは皆強かったからな』
その言葉の前、クォヴレーは、自分を励ましてくれていなかったか?
『その……普段、お前は「ゼロのルイズ」とバカにされているだろう……ここで授業まで休んでしまうのは、あまり良いことではないと思う』
アルビオンへ飛んだ夜。何故自分の言いつけを無視してまでこの男は悪魔王を呼び出した?
自分の、為ではないか。『ゼロ』と呼ばれていた自分の!
すっかり失念していた。だが、クォヴレーは、ちゃんと、自分のためを思っていてくれたのだ。なのに自分は……。
「……ルイズ?」
黙りこくってしまった旧主に、とまどいの声を投げかけるクォヴレー。
「……協力に、応じるわ」
涙を袖でぬぐいながらルイズは応じた。
「ありがとう」
「……あくまでも、協力よ。だからその代わり……」
ようやく、正面から目を合わせる。
「お願い。母様達の敵を討って……」
「わかった。必ずだ」
「フフフ……遅かったな?あの男の後継者」
「ユーゼス・ゴッツォ……」
「ユーゼス……あんたが、母様を、姉様達を!」
沈んでいたルイズの眼に、憎悪の炎が灯る。
552 :
代理:2009/05/06(水) 14:17:53 ID:oTR7cEwD
猿ったんで代理の代理お願いします
「よくも今まで邪魔をしてくれたものだ」
「黒いジュデッカ……やはりアルビオンで王党派とレコン・キスタを壊滅させたのは……」
「いかにも、この私だ」
「何故そうする必要があった!?」
「レコン・キスタの背後には、ガリア王があった。あのままレコン・キスタが敗北し、首謀者のオリヴァー・クロムウェルからその事が明るみに出れば、他国からの要らぬ詮索を受けることになったやも知れん。大事の前故、それは避けたかった」
「そのガリア王を傀儡にしてるのはお前だろう!シャルロットから話は聞いてるぜ!」
「傀儡、か。その言葉自体は正しいが、お前達が真意を掴んでいるとは思えんな」
「どういうこった!?」
「今ガリア王の座に座っている男は、ジョゼフではない。私が作り上げたギメル・バルシェムを整形している偽物だ」
「偽物!?」
「……キャリコか。判らんな。そうまでして実権を握り、何故わざわざレコン・キスタの蜂起など行った」
「別に私としては、何ら意図があった訳ではない。レコン・キスタの反乱、その背後にいるガリア王。これらは全て、ハルケギニアが本来辿るはずだった歴史の筋道に沿っているにすぎん。
私は元より、こんな大陸一つにも満たない部分の覇権などどうでもいいのだ。だが、ある程度は『本来の歴史』に沿って因果律を調整していかねば、私にとって不測の事態が起きかねない。
異物を取り込んだ世界では、私が知っているこの世界本来の歴史とは大きく外れる可能性があったからな」
ユーゼスのクロスゲート・パラダイム・システムが不完全であるのは、これから先の事象が判らないことも大きな原因の一つである。そのためにユーゼスが知っているハルケギニア本来の歴史から大きく逸脱する状況は避けねばならなかった。
そうなってしまえば、今後起きる物事を予測するのが非常に困難となってしまうからだ。今後起きることが判らなくなれば、因果律の操作もおぼつかなくなる。それを補うためにも未来予知が可能なラプラスデモンタイプ・コンピュータを欲していたのだが。
「だが、その本来通りの歴史の流れを阻害したのが、貴様だ。クォヴレー・ゴードン」
ジュデッカの腕のうち一本がディス・アストラナガンを指さす。
「ニューカッスルでワルド子爵により殺害されるはずだったウェールズ・テューダー、レコン・キスタによって壊滅するはずだった王党派。これらが生き延びたことで因果の流れは大きく乱れ、私自らが動かねばならなかった」
「ワルド様が!?」
「よもや因果律の番人である貴様が、自ら因果律を乱すとはな」
「例えハルケギニアでは、それが正常な歴史の流れなのだとしても、霊達の循環を堰き止めるかのような行為は見逃す訳にはいかない。明らかにそちらの方が異常な状態なのだからな」
「成る程……この程度では動じんか。確かにそれが貴様の立場としては選ぶ道だろう」
低く、くぐもった笑いを漏らすが、すぐに笑いは止んだ。
「……全くもって鬱陶しい。
私としては、リュウセイ・ダテの身柄とサイバスターのラプラス・デモンタイプ・コンピュータさえあればそれで良かった。本来通りの歴史の中で、私がこの二つをかすめ取れば済む話だ。
だからこそ、この時代の変革に置いて中心となるルイズ・フランソワーズの身辺にはあえて何ら因果律の修正を加えず、本来通り平賀才人が呼ばれるままにし、影響を最小限に抑えようとしていた」
「ヒラガ・サイト……?」
ちくちくと、ルイズの頭の裡を刺激する音だ。
「……だが、呼び出されたのは因果律から外れているが故に全く行動の読めない、操作出来ない貴様だった」
「そうか、ではタバサが俺を監視していたのも」
「そう、それも私だ。
貴様の動向は全く読めない。故に、少しでも情報が欲しかった。まぁ、先のアルビオンの件など、報告が圧倒的に遅れたこともあった故、効果は薄かったがな」
「自業自得だ、ユーゼス。例えここが次元の狭間に作られた箱庭の世界だろうと、ここが世界である以上、世界は修正力を求める。貴様に好きにさせまいとこの世界が俺を呼び込んだ」
「ククク……本気で、そう思っているのか?」
再び笑いが響く。
「何だと?」
「私は、私が呼び出された因果律の糸をたどった事がある。その因果の根は、二カ所から発していた。
一つは、ルイズ・フランソワーズが使い魔召還を行った瞬間。そしてもう一つは、貴様がディス・レヴを回した瞬間だ。……最も、こちらについてはつい先日判ったことなのだがな」
「何……?どういう、意味だ……」
「言ったはずだ。誰よりも貴様こそが、この世界の因果律を乱したのだと。
貴様が呼び出された時点で、レコン・キスタはディス・レヴの輪廻調整機能により破綻することが決定づけられた。
しかしそれでは、本来の世界の運行に大きな支障を来す。本来ならば、ガンダールヴのルーンを持つ者を中心として、ハルケギニア全土を覆う戦火へと発展するはずだったのだ。故に世界は貴様のカウンターとなる存在を必要とした。
だがそのような存在は多くはない。仮にシュウ・シラカワが呼ばれたとしても、この世界に置いて戦乱を呼び込む火種にはならなるまい。
ギリアム・イェーガーでは尚のこと、この世界にとけ込もうとすれど貴様と積極的に関わろうとはしないだろう。
イングラム・プリスケンや、ヴィレッタ・プリスケン、または奴らを受け継ぐタイムダイバー達は論外だ。お前に協力するだろうからな。
……そして、目を付けられたのが、半ば因果地平の向こうに打ち棄てられていた私だ。
私は、全くもって無意識的に、ただ自身のためにこの世界を箱庭の裡とした。だが結果、世界に与える影響は微々たるモノに抑えられる事となった。本来の時間軸に与える影響など無きに等しい」
「バカな……それでは……」
「そうだ。私が呼ばれたために貴様もこの世界へ来た?違うな。全ての元凶は貴様だ。嘘だと思うのなら私の因果曲線を辿ってみるが良い。自身の起こした行動へと帰結していることが判るだろうよ」
「……!まさか……俺は、俺のイングラムの因子が……!」
苦虫を噛み潰したような表情でクォヴレーは呻く。
「……が、私自身がその事に気づくまでにかなりの時間がかかってしまった。わざわざ呼び出した、リュウセイ・ダテ、マサキ・アンドーを捕らえられないどころか、それが敵対することになるとは」
「残念だったな、アンタの思い通りにならなくってよ!」
へん、とリュウセイが笑い飛ばす。
「全くだ。おかげで保険としていた計画の方を主軸に事を進めねばならなくなった」
「保険だと?」
「そう。サイコドライバーの代わりとなる、『虚無』の力を得るための計画をな」
「『虚無』?なんだそりゃあ?」
初めて聞いた単語にマサキが首をかしげ、シャルロットが解説を入れる。
「始祖ブリミルの使ったとされる伝説の系統。今では全くその正体は掴めていない」
「伝説などではない。その力は現存する。ここに我々が居ること自体が、その証明でもある」
「俺たちがここにいること?」
「いかにも。古の書に寄れば、虚無の系統は世界全ての物質を構成するとても小さな粒に影響を与える、とある。
では、その小さな粒とは何か?分子か?原子か?陽子、或いは電子か?
いずれも違う。答えは、因子だ」
「つまり……どういうこった?」
「……限定的にだが、世界を操れると言うのか?」
「虚無の力の特長は、因果律を操り、次元を越える力を持つこと。そう、時として我々のように、世界を越えて人や物を呼び込むことが出来る」
「待て、それはつまり」
「そう。
マサキ・アンドーを呼び込んだロマリア教皇エイジス32世、リュウセイ・ダテを呼び込んだティファニア・モード、この私を呼び込んだガリア王ジョゼフ、そしてクォヴレー・ゴードンを呼び込んだルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!
この者達は皆、虚無の系統の使い手だ」
「虚無の力を得ようとしていると言ったな。では、先程ルイズを狙ったのも」
「因果律に影響を受けない貴様の動向を決めるのは一苦労だった……が、ラ・ヴァリエール公爵の行動ならば今の私でも十分に操れる。
実際に戦闘を行い、貴様の力の一部を直に見せることで危機感を煽り、末娘の使い魔に使い魔を辞めるよう迫る……とな」
昨日の昼、自身に有った襲撃。その意図は、ここにあったか。他の二人への攻撃は、その真意をくらますためのモノ……。
「そしてゲルマニアへ向かうフーレ艦隊、必ずや貴様は察知してくれると信じていたぞ?」
「……俺はまんまとそれに乗り、ルイズの守りを手薄にしてしまったという訳か」
悔しげに呟くクォヴレーに楽しそうにユーゼスは嗤う。
「フフフ……自分と戦った気分はどうだ?」
「……バルシェムをメイジ化させたというのは判る。だが、先程のあの光は何だ?あれ程強力な系統魔法、この一月の間に見たことも聞いたこともない」
「貴様はまるでメイジの重要性に気づいていないようだな。この世界には、二人のメイジが協力してより強力な魔法を起こすことが出来るシステムが存在している。
使い手の息の合い方など制約は多いが、もし、数十名単位で完全同調出来るメイジが居るのならば、どうなる?」
「……そのための、バルシェムのメイジ化か」
クローンであり、個体差の少ない量産型メイジ。僅かな訓練でもタイミングを合わせるのは容易いだろう。
「3日前にようやく同調のめどがたったばかりだったがな。海面を凍結させるほどの瞬間的な大寒波を引き起こした」
「3日前……?そうか、一昨日やけに肌寒かったのは」
「バルシェム達の作り上げた流氷によってハルケギニア近辺の熱が軒並み奪われたのだ……もっとも、そのバルシェム達もルイズ・フランソワーズの身柄の確保には失敗したがな」
「待て!俺たちを呼んだのが虚無の系統の使い手って事は……お前まさかティファも!?」
「フフフ……今更何を言っている?貴様等があの村から離れた5分後には、すでにあの娘は私の手の内だ」
「く……くそぉっ!やっぱりあの時契約してりゃ……!ユーゼス!ティファは生きてるんだろうな!?」
「無論だ。先程言ったとおり、あの娘の力はサイコドライバーの代用品として私の求めている物。簡単に死んでしまっては困る……だが、あれを果たして生きていると呼べるのかどうかは、それぞれの感性次第というところかな?フハハハハハハハ……」
「てめえ!ティファに何をした!?」
「フフフ……教えて欲しいかね」
「聞くな、リュウセイ」
スッとディス・アストラナガンが手で制する。
「けどよ!あいつ、絶対……!」
「お前の怒りを煽っているだけだ。怒りを忘れろとは言わん。だが冷静になれ。それでは助けられるものも助けられなくなる」
「出来るかぁ!そんな器用なこと!」
R−1が右手に念動フィールドを集束させながらジュデッカに殴りかかる。
「リュウセイ!冷静になれと言っている!クッ、マサキ援護に入るぞ!」
「おう、いけ!ハイ・ファミリア!」
「ガン・スレイヴ、俺の敵を破砕しろ!」
更にR−1を追い抜く形で計八機の機動砲台が黒い十字架に迫り
「フフフ……第一の地獄、カイーナ」
「があああああああ!?」
凄まじい瞬発力で砲台の包囲をくぐり抜け、格闘戦を挑んできたR−1の腹部に逆にカウンターで拳を撃ち込んできた。
落下の途中、かろうじて体勢を立て直すR−1。
「お、俺が、踏み込みのスピードで負けた……!」
「何だあのスピードは!?」
「ま、全く見えにゃかったぜ!」
「フフフ……虚無の力、因果すら律すると言ったぞ?今のは『加速』。文字通りだ」
「く、この世界の魔法、ここまでの力があるというのか?」
正直、見くびりすぎていた。
「私も保険と思っていたが、目的のために最適化されている分、戦闘時に置いては存外、こちらの方が本命であったぞ?そして、こういうことも出来る」
ジュデッカの姿がぶれ始め、クォヴレー達の目の前で何体もの何体ものジュデッカが現れた。
それぞれは薄く、まるきり投射映像のような姿だが、数が多すぎる。本物が紛れ込んでいるが、常に動き回っているために見た目では見つけきれない。
「『幻影』。見ての通りだ」
「なんだそんなもん!ミノフスキー粒子もねぇんだ!レーダーつかやぁ……!なに!?」
「風の遍在とも違う。因果律を操作しての確率分散による幻影、そう簡単に見分けられるものではないぞ……?」
「ふっざけんな!サイフラァァァァッシュ!」
サイバスターを中心とし、光が広がって幻影を吹き飛ばす。
「ハハハハ!それが正解だ!やはりサイバスターを相手にこれは使えんか」
「人をおちょくりやがって!」
「では、本気でかかるとしようか」
再び『加速』で一際三機から離れたところへ移動し、ジュデッカの四本の腕が動き始める。
「時空の彼方へ消え去れ!最終地獄、ジュデッカ!」
「上昇しろ!急げ!」
クォヴレーの呼びかけに、サイバスターとR−1が変形して急上昇する。
それと入れ違いになるように、ジュデッカより放たれた光弾が地表に激突。トリステインの大地をクレーターに変えていた。
「あ、ああ……!?」
「なんてぇ力だよ、ばけもんめ!」
「くそ……このままじゃ被害が広がるばっかりだ!」
戦慄する他の面々だが、
(どういうつもりだ……ここにきて、何故時間稼ぎをする)
一人、思考を始めるクォヴレー。今の攻撃、全く当てる気がなかった。
……仕掛けてみるか。
「ゲマトリア修正」
ディス・アストラナガンの両肩に銃身が展開する。
「!」
「メス・アッシャー、マキシマム・シュート!」
「クォヴレー!?どこ撃ってんだお前は!?」
全くの見当違いに向かって放たれたアキシオンの破壊の流れは、その射線に自ら割り込んだジュデッカによって、遮られた。
「う、ぐ!」
「何だあいつ!?」
「自分からダメージを受けに行った?」
しめた、フィールドを展開したが、ジュデッカの体半分は吹き飛んでいる。自己修復を開始しているようだが……!
「テトラクテュス・グラマトン!
ディス・レヴ、オーバードライブ!」
ディス・アストラナガンの胸部が開かれ、闇色の光が集束する。
「この、光……」
かつて見た夢。うっすらとルイズは思い出す。そして再び、聞こえ始める声。
『……よ、……ス・グラ……』
髪の毛の蒼く染まったクォヴレーが指示を出す。
「マサキ、リュウセイ、俺が奴の動きを止める。そこに一撃を打ち込め!」
「お、おう!念動集中……!」
「判った!サイバスタァァァァァァ!」
「回れ、インフィニティ・シリンダー!
ユーゼス・ゴッツォ、時の流れを垣間見ろ!
この無限光の中で!」
打ち出された光が展開し、魔法陣がジュデッカを捉える。
「ぐぅおおおお!?クロスゲート・パラダイム・システムで……!」
周囲を飛び回る十個の中性子星。それがユーゼス側からの因果律による反撃を受けて、止まりそうになる。
「今だ二人とも!奴は今俺の攻撃を防ぐので手一杯だ!」
「いっけぇぇぇぇぇ!」
「フィールド集束ぅ……!」
サイバスターがアカシック・バスターの魔法陣を展開し、念動フィールドを再度右腕に集束させたR−1が変形したサイバードに跨る。
「アァァァァカシック!」
「ブレイカァァァァァ!」
アカシック・レコードに直接干渉する攻撃を、サイコドライバーの素養を持つ男が一緒になって行った。
爆光のなか、ジュデッカが崩壊していく。
「……フハハハハハハハ、見事だ。だがこれで私の計画が潰えた訳ではない。フハハハハハハハ!」
「何!?」
「負け惜しみを!」
「いや……おそらくは事実だ!」
苦々しげな表情で、爆発を繰り返すジュデッカから地平線の向こうにあるガリアへと、クォヴレーは視線を移す。
3機の通信ウィンドウには、過度のダメージで本性を現したジュデッカコクピット内のスキルニルが映し出されていた。
ZEST JACK
『T−LINK!ナッコォ!』
急行したガリア王宮、グラン・トロワ。
そこを守るように多くのメイジと、そのメイジの操るゴーレムがたむろしていた。正面玄関前に陣取った見覚えのある特大のゴーレムに、飛び込みざまR−1が鉄拳をたたき込む。
「リュウセイ、ここは任せたぞ!」
『おうよ!Gリボルヴァー!』
アストラナガンからクォヴレーとルイズが、サイバスターからマサキ、シャルロット、シルフィードが飛び出ると、
「先に言えってんだ!心臓に悪ぃ……」
「いや、俺っちもついさっきまで忘れててなぁ」
「魔法を吸収する、か……マサキ、前衛を頼めるか?」
「よし、任せな」
「リュウセイ」
「こっちは俺に任せろ!こんな岩やら泥やら相手に、鋼鉄のR−1が負けるかってんだ!」
マサキを進行方向の頂点とした三角形の陣を形成し、残り二つの頂点にクォヴレーとタバサがつき、ルイズをトライアングルで囲む。
「タバサは先導を。ルイズ、後ろからも敵が来るようならお前の魔法を打ち込め」
「ええっ!?だって私は……」
「お前の魔法は詳細が不明な『虚無』という伝説の系統なのだろう。あの爆発も、ひょっとしたら単に虚無の系統であるが故に起きている単なる攻撃魔法なのかも知れない」
「そ、そういう考えも……あり、ね」
「いよっし!んじゃ行くぜ!クロ、一発やってくれ!」
「わかったわ!」
ハイファミリアがグラン・トロワ正面扉に砲撃を打ち込み、そこに四名が突入する。
「フハハハハハハハ……!あの戦いより幾星霜。私はついに!あの力を取り戻したぞ!」
「超神ゼスト……!」
クォヴレーが顔を歪ませて呻く。奴は、初めからこれが目的で……!
「フフフ……違うな。虚無の力すら手にし、今の私はかつてを更に凌駕している!さしずめ、ゼストジャックとでも名乗らせて貰おうか!」
「マサキ!サイバスターを呼べ!このままでは危険だ!」
自身も再度ディス・アストラナガンを呼び込み、ルイズを抱えてコクピットに駆け入る。
「クォヴレー!何だあいつは!?」
マサキ共々機上の人に戻ったクォヴレーにリュウセイが尋ねる。
「以前、ユーゼスは自身をも巻き込んでクロスゲート・パラダイム・システムで一つの虚構世界を作り上げていた。今回と同じく、システムの力を完全なものとするためにだ。
そしてその際に奴が目に付けた力は、サイコドライバーでなければ虚無でもなく、光の巨人と呼ばれる者達の力だった」
「光の巨人?」
「ウルトラマンの事か!」
「ウルトラマンんんんん!?」
リュウセイの言葉にマサキが驚愕する。見たことはなくとも、日本人であるのならばその名は聞いたことがある。
「そうだ!ウルトラマン達の力を奪い、DG細胞の力を使い!私はかつて神をも超えたのだ!」
高らかに、ゼストジャックが謳う。
「そして奴は再び帰ってきた。今度は虚無の力もひっさげてな」
「よ、よく分からないわよ!簡単に言いなさい!簡単に!」
「つまり、俺たちでは、勝てない」
ルイズの問いに悔しげにクォヴレーは答えた。
「お、おいおい、冗談だろ?いっぺん勝ってるんだろう?お前」
「正確には俺ではないが、ともかくあの時とは彼我戦力比が違いすぎる。かつて倒された超神ゼストは、その力の源であったウルトラマン達自身の力をぶつけることで大きくその力を削がれていたんだが、あれは……」
「そう、今の私はその失われた力に、虚無の力を充てたもの!もはや霊帝とて敵ではない!三千大三世界!余すところ無く全ては私の意のままだ!」
そう叫びながらゼストジャックは右手を縦にそこに左手をクロスさせるように横に構える。
「やべぇっ!」
「あのポーズまさか!?」
日本人二人は慌てて機体を回避させ、クォヴレーも急上昇を駆ける。だが、今度は完全に狙いを定められていた。
「ファイナル、ゼストビィィィィィムッ!」
「ぐぁぁぁぁああああああ!?」
「きゃああああああああ!」
とっさに防御態勢を取ったが、打ち出された光線はディス・アストラナガンの左腕を撃ち抜いて断ち切り、そのボディに直撃していた。
受け身もとれないまま落着し、片腕を失ったままの姿で何とか立ち上がろうとする。
「ぐ……く、奴め!」
『俺一人だけでは無理だ。お前だけでも無理だ。
だが、俺たちが力を合わせれば、奴を倒す力を呼び込むことが出来る。そう、超神と共にあの世界の残骸に成り果ててしまった鋼の魂と鋼の殺戮者、そして遙か因果の彼方に棄てられた真なる虚空よりの使者を』
『間違えるな。俺を作ったのはお前ではない。地球を愛し、自然を愛したバード星人「ユーゼス・ゴッツォ」だ。例えアレがあの虚構世界におけるお前自身であったのだとしても、霊帝打倒に盲進し、もはや目的と手段の区別すらつかなくなった貴様とは全くの別人だ』
姿無き声が響く。
「な、に……!?」
『唱えよ……!』
ぱちり、とルイズの目が開く。
「テトラクテュス・グラマトン!」
指に填めた水のルビーに光が集束する。
「ルイズ!?一体何を……!」
クォヴレーの目の前で、ルイズの髪が蒼く染まる。
『座標算定はこちらで行う。後はただそこへ通ずる穴を空けてくれればいい』
「ユル・イル・ナウシズ・ゲーボ・シル・マリ
ハガス・エオルー・ペオース!
“世界扉〈ワールド・ドアー〉”オープン!」
『インフィニティ・シリンダー、始動!』
再び世界が割れる。かつて存在し、今は跡形もなくなったありとあらゆる世界の残骸が眠る因果のゴミ捨て場。次元の狭間へ。
『リュウセイ、ヴァリアブル・フォーメーションだ!』
「あ、ああ!?ヴァリアブル・フォーメーション!」
その穴から飛び出した三つの機動兵器のうち二つがR−1へ向かう。R−2パワードとR−3パワードだ。
『プラスパーツは、もう無理か。だがトロニウム・エンジンはまだ保つ……!」
虚構世界に忘れてしまった19才という想定の自身の体を使い、イングラム・プリスケンは手早くARGANのポテンシャルを持ち直していく。
ハイ・ツインランチャーの基部を外したARGANにゼストジャックは目を見開く。
「貴様、なぜ!」
「お前と同じ事をしたに過ぎんユーゼス・ゴッツォ。虚無であるルイズの力を借り、かつて失ったこの体とSRX、そしてR−GUNを復活させただけだ」
「天下無敵のスーパーロボットぉ!ここに見参!」
見得を切り、SRXがその四肢を震わせる。
「くそ……!俺は、見てるだけか……!」
反撃の動きの中、疲労で目眩のする身体をかかえ、マサキが唸る。
「ランドール」
その膝の上に居る少女が、振り向きざまにそっとマサキの頬に手を添える。
「!……シャル……ロット?」
「あなたは、まだ戦える。だから、この世界を守って……」
そっと、口づけが交わされる。
「お姉様大胆、なのね!」
「!?」
シャルロット自身に、プラーナを扱う術があったわけではない。ただ、水が高きから低きに流れ落ちるように、シャルロットからマサキへとプラーナが流れ込んできた。
くてっとプラーナの不足から力尽きてしまったシャルロットを抱きかかえ、力を分け与えてくれたその顔をのぞき込む。
「お前の気持ち……受け取ったぜ!」
彼女の使い魔にその身柄を預けると、操縦桿を握り直す。
「クロ、シロ!全開で行くぜ!」
『わかったにゃん!』
「風の精霊様が……ううん、もっといっぱい!色んな精霊様がランドールに力を貸してるのね!」
「おおおおおおおおおおおお!」
元より、自分の扱う初歩の魔法は正しい詠唱など無くとも発動していたのだ。
「“爆発〈エクスプロージョン〉”、デッド・エンド・シュート!」
突きつけられた杖の先で閃光が走り、声すら上げられぬままユーゼスの身体は砕け散った。
「リュウセイ?」
「…………」
「……そうか、お前には、耐えられなかったか。ウラヌス・システムには……」
ただの「物」になりつつある戦友を、画面越しに見つめる。
「だが、その魂だけは、なんとしても……」
鋼の魂と鋼の殺戮者は二基のトロニウムの放つ力によって沈んでいった。
揺れ始めた世界で、クォヴレーは目を伏せる。
「こうなるであろうことは、判っていた……この世界が、ユーゼス・ゴッツォに作られた物だと気づいたその日から」
「ど、どういうこった!?」
問いかけるマサキに、クォヴレーは語る。
「ユーゼス、そして奴のクロスゲート・パラダイム・システムの消滅と共に、ユーゼス・ゴッツォが造り出した虚構の世界は抹消され、お前達は記憶を失い元の世界へ戻る」
「お、おいおい!元の世界に帰るのは判るけど、何で記憶までなくなるんだ!?」
「この世界がクロスゲート・パラダイム・システムによって構築されているためだ。ハルケギニアを含むこの大地を無理矢理にねじ曲げ、マサキやリュウセイを呼び込むように仕向けるのも、全てはあのシステムの力。
その根幹となるシステムが消滅したために、この仮初めの世界全てが『無かった』事にされる」
「……私達は本来、出会うはずがなかった。だから、出会わないことになる?」
「そうだ」
苦しげなシャルロットの問いに、クォヴレーは頷く。
「それじゃあ……それじゃあ今までの戦いは何だったんだ!?こんなに沢山の人間が死んで、なのに元の世界に戻れば何の意味も無くなるっていうのかよ!」
「いいえ、私達の行動は無意味じゃないわ。それぞれの世界に何らかの結果を生み出してる」
クォヴレーの腕の中でルイズが告げた。
「ほんの少しずつだけれど、必ず影響はある。だから、無意味じゃない」
「ルイズ?」
「私だってイングラムと一時とはいえ同化したのよ?これぐらいの知識はもう持ってるわ」
「そうか……」
揺れる世界の中、徐々に全てが透けていく。
「でも悪いわね、私はアンタみたいにはなれない。アンタほど強くはないのよ……」
「それが、普通だ」
やがて、全てが光に包まれ――
エピローグ:約束の地
ルイズが戻ったのは、魔法学院に通う二年前。つまり、ユーゼスによる介入が始まる前のタイミングだった。
(ここに戻ってくるのね……)
僅か一時とはいえ、イングラムと同化したルイズもまた、因果律から半ば外れたような存在となっており、失われし時の記憶を持っていた。
あの時空が閉じる直前、再び意識体となったイングラムが話しかけてきた。
『ユーゼスの言うとおり、お前はこのハルケギニアの大地で後に重大な役目を担うこととなる。そしてそのために、「虚無」の系統を身につける必要が出てくる。やがて自ずと、貴様の手に「虚無」の魔法を記した一冊の本がもたらされるはずだ』
それがこの世界の正しい時の流れ方。例えルイズが半分因果律から外れていても、この世界がその立場に立つ者を要求してくるのだ。
『あの虚構の世界での記憶、お前にとってはつらい物ばかりの筈だ。俺が力を添えれば、お前自身の技で忘却することも出来るが』
「いい、私は覚えておく。いつだったかクォヴレーが言ってたわ。『いろんな人と過ごす楽しい時間に培った信頼こそが力になる』って。
みんなはクォヴレーのことを忘れちゃうんでしょう?だったら、元ご主人様のよしみで私ぐらいは覚えておかないと、どこかでのたれ死なれても後味悪いもの」
『そうか……お前は優しい娘だな』
「べ、別に心配とかそういうのじゃないわ!」
ぷいとルイズは顔を背けた。
『もう一度だけ、あいつはお前の前に顔を出すはずだ。それが、最後の別れになる』
ブリーフィングルームで端末に向かって何やらリュウセイが必死に文章を打ち込んでいた。
「あらリュウ、まだ報告書の作成終わってないの?」
「そっちは終わったって。いやちょっとな、ピーンと閃いてさ」
アヤ・コバヤシ大尉の呆れたような言葉に反論し、ディスプレイを指さす。
「何これ……企画書?」
「そ。ほらSRXってさ、格闘戦では結構強力な武器とかもあるけど、砲撃戦になったらどうも今ひとつだろ。艦隊クラスと真っ正面から撃ちあえるくらいの火力があれば、もっと使い勝手が上がる筈なんだよな」
「それで?」
「ああ、高出力のエネルギー砲に変形してSRXの腕で持つことが出来るPTってのを考えたんだ!そうすりゃ、変に機体のバランスが崩れることもなくてOSの微調整で済むだろ」
「あのねぇ、アニメじゃないのよ?そう簡単にいくはず無いでしょう?」
呆れ顔でアヤが呟く。
「ま、物は試しって奴でさ。それに、一応ロブからもお墨付きはもらってるんだぜ?」
「はぁ……」
やれやれとアヤは首を振ったが、リュウセイは気にしていなかった。
「へへ、いつかきっとR−1と並んで立たせてやるからな、R−GUN」
「何だよシュウ。いきなりやって来やがって」
神聖ラングラン帝国、首都ラングランの一角ゼノサキス邸。
「いえ。どうも一瞬、あなたがラ・ギアスから消えた気がしまして……」
マサキ・アンドーはヴォルクルス復活事件以来久方ぶりとなる人物の訪問を受けていた。
「別に最近地上へは行ってねえぞ。俺は」
「そのようですね。私の勘違いだったようです」
「? 変な奴だなぁ」
突然の来客だが、まぁ知らぬ仲でもない。プレシア程美味くはないだろうが、茶ぐらいは出してやるとシュウを家に招き入れた。
(妙ですね……ルイズさんのサモン・サーヴァントと同等の力を関知したのですが……グランゾンのデータからも消えていますし……まぁどちらにしろ、彼女がいくつもの平行世界のうち他に存在しないとも限りませんか……)
これはもう呼び出す方の世界よりも、こちらの世界の方を不作法な介入者から防ぐ結界を張る方が早いかも知れないなと、シュウはため息をついた。
支援
二年後。春、使い魔召喚の儀。
「ルイズ、あなた何でそんなもの持ってるの?」
キュルケが呆れ顔でルイズに尋ねた。
「私の使い魔に持たせるのよ。悪い?」
「悪い悪くない以前に……使い魔が剣なんて握るの?」
ルイズはその腕に長剣を抱いていた。身長が低くて持つのに苦労しているようだ。
「私の使い魔は剣を持つのよ。必ずね」
自信たっぷりにルイズは言ってみせた。
「あなた、人間でも呼ぶつもり?」
「ええ、予定通りならね」
本来、自分が呼び込みうる使い魔はたったの一人だけのはず。
ところが、クォヴレーが呼び出された瞬間から、全ては狂ってしまった。彼が因果律から完全に逸脱した行動を取ったために、「世界」はその存在に対してのカウンターとして、ユーゼス・ゴッツォも呼び込むという選択を取ってしまった、とも言える。
そしてとびきりのイレギュラーが二人も呼び出されたことで、因果曲線は狂いまくり、もはやこの場で自分に呼ばれるのは「何でもあり」になってしまっている。
きっと既に、平行世界では「あり得ない誰か」が別な自分に呼び出されてしまっていることだろう。いや、あるいは次元振動の影響で自分以外が別な「誰か」を呼び出している可能性すらあるかも知れない。
「おかしな事言うのねぇ。そりゃあなたはコモンマジック『しか』使えない、変わり者のメイジだけど、人間を呼ぶなんてあり得ないし、そもそも何を呼ぶかなんて呼んでみないと判らないのよ?」
「ああもう、私のことは良いのよ!アンタはとっとと『微熱』程度の可愛らしいサラマンダーでも呼んでなさい!」
しっしっと隣部屋のゲルマニア女を手で払う。
失礼ね!でもサラマンダーって言うのはありね。とキュルケは一足先に担当教官のコルベールに指名されて召喚を始めた。
「おい娘ッ子。あの赤毛の娘の言うとおりだぜ。そりゃ万が一にも人間が使い魔で呼び出されたんなら、俺を買うのも納得出来る。けど呼びもしねぇうちに俺っちを買うなんてよ。これで剣を持てない使い魔が召喚されたら、俺っちはどうなるんでい?」
ルイズの腕のなか。インテリジェンス・ソード、デルフリンガーが鍔を鳴らしながら訴えかける。
「大丈夫よ。アンタの使い手として、この上ない奴が呼ばれるはずよ」
二年前のあの日から、ルイズは自身の虚無の系統についての書物を探り続けた。
勿論、虚無用のルーンが書かれた書物などあるはずもなかったが、学院の図書室で一つだけ判ったことがあった。
児童向けに書かれた絵本のなかで、始祖ブリミルの従える4つの使い魔のうちの一つ。ガンダールヴのルーンが、目にとまった。それは正にクォヴレーの左手に刻まれていたルーンと寸分変わらない物だった。
ガンダールヴは虚無の使い魔。そして自分は虚無の系統。更に言えば、クォヴレーはガンダールヴであった。あんな巨大な機動兵器を乗り回しているのだから、ルーンは移動を助けるヴィンダールヴでも良かったはずなのに、何故か守り手のガンダールヴ。
これは、何かしら強力な介入がない限り自分が呼ぶ使い魔はガンダールヴになるという事なのではないか?だとすれば、何者にも干渉されていないこの世界において、自分が呼びこむのはやはりガンダールヴになるはずだ。
そう予測するや居ても立っても居られず、昨日虚無の曜日、一足先にデルフリンガーを購入していた。だが剣を買うのにわざわざデルフリンガーを選んだのは、少々センチメンタルすぎたかも知れない。
(でも、ちょっと期待しては居たのよね)
自分以外の誰もあの戦いを覚えていない。思ったよりも、これには堪えていた。
クォヴレーがもっとも近くに置いていたハルケギニアの物質であるデルフリンガーも、やはり覚えていなかった。
今後生きていくうちに、自分もあれが夢だったのではないか、等と思い忘れていってしまうのだろうか。
なんだか、自分が非道く薄情な人間に思えてきた。
「さ、ミス・ヴァリエールあなたの番ですよ」
「あ、は、はい!」
思考の海に沈んでいたところを、現実に引き戻されて慌てる。
コルベールに促されて、ルイズはその『約束の地』に立った。
数多の平行世界に置いて、自分はここでいくつもの未来を手に入れた。今度は一体どんな者が呼び出されるのかと考え、そこで青い空を見上げて
「え?」
己の目を疑った。
自身の目をこすってみて、もう一度よく見る。間違いない。
「ミス・ヴァリエール?どうかしました……か……」
コルベールもルイズの見ている方に目を向けて言葉を失った。
4リーグほどは離れているだろうか。春の青空の下、見るからに悪魔然とした機体、ディス・アストラナガンが地上から600メイル辺りに浮かんでいた。
既に召喚を済ませていた他の生徒達も異変に気づいて、そちらに目を向け、やはりぽかんと阿呆のように口をあんぐりと開いていた。
「クォヴレーっ!」
デルフリンガーを放り出し、ルイズは杖を掲げて大きく振った。そのまま大声で呼びかける。
「私は!アンタのこと忘れないわよ!」
スッとアストラナガンが腕を上げるのが見えた。
「アンタみたいに、なんだかんだ言いながら結局ご主人様を捨てて行っちゃうような薄情な使い魔なんて!死ぬまで忘れずに恨み続けてやるんだからねぇっ!」
その言葉とは裏腹に、心底嬉しそうに、ルイズは叫ぶ。
かすかに、ディス・アストラナガンが頷いたように思うと、その体は緑色のフレアを残しつつ空高くへと上っていった。
ぐいっと袖で目元をこすり、目尻に浮かんでいた涙をふく。
「み、ミス・ヴァリエール……?今の、あれは……悪魔に見えましたが……?」
「私の……前の使い魔です。非道い使い魔なんです。主人を捨てて行ってしまうんですから」
「は、はぁ……?」
コルベールは困惑顔だが、そんなのは些末事だ。
「テトラクテュス・グラマトン!」
彼女がコモン・マジックを使う前に不可思議なルーンを唱えると、髪が蒼く染まるのは、学院では誰もが知っていた。クォヴレーとイングラムの残した遺産。秘宝の指輪を填めずとも魔法が使える秘密の裏技。
そして杖を掲げて、ルイズは呪を紡ぐ。今度こそ、彼女本来の使い魔を呼ぶために。
「五つの力を司るペンタゴン!我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」
了
作者も代理代理さんも乙
乙ー
「それも私だ」は相変わらずイイ悪役セリフだなぁw
久保の方、私の前の代理の方、乙でした。
途中の展開が飛び飛びだったのが気になりましたが、断片的にでも大まかの話の流れは読み取ることが出来ました。
しかし、やっぱりユーゼスは陰謀を巡らせてナンボって感じがしますなぁ……。
ウチのユーゼスも何か企てた方がいいのかなー、とも思うんですが、何を目的として何を企てさせて何をさせれば良いのかがサッパリ分からない、というww
ともあれ、完結お疲れ様でした。
私が現在の話の執筆を始めたきっかけの一つは、間違いなく貴方の作品です。
そちらが今後もSSを書かれるかどうかは分かりませんが、名無しでもこのスレに顔を出していただければ幸いです。
>>566 よく分かってないまま周りに振り回されるユーゼスが好きなのも私だ
ヒーロー大戦やってないので、サルファのユーゼスしか知らないんですけど、
故国を想い悪となった人間、でいいのかな?
αの時のジュデッカの方は典型的な操られ型でしたけど
>途中の展開が飛び飛びだったのが気になりましたが
うーん、同意かも。
俺もちょっと気になった。
急いで巻かなきゃいけない理由でもあったのかな。何にしろ乙。
>途中の展開が飛び飛びだったのが気になりましたが
思うに、温めてたアイデアをそのまま書いただけで、肉付けがまだだったのではないでしょうか。
避難所の方でも、「代理投下お願いします」とは言ってなかったことですし、
「ごめんなさい」と書き込まれていたことからも、執筆を断念したとも解釈できます。
いずれにせよ、久保の人乙でした。
そんでもって私信。実は6話書いた勢いのまま、7話が書き上がってしまいました。
現在丸一日かけて推敲しているところです。この後また何度か推敲して、夜には投下しようと思います。
その時には、また支援よろしくお願いします。
……早くなったり遅くなったり、我ながら筆の進み具合がよくわかりません(ノ∀`)
だがまあ完結する作品ってのも有難いよ。いい所でエタってるとモヤモヤするから
とにかく読めてよかったよ
あ、でも未完結はイコールもうちょっと待ってれば続くんだと期待を込めてまってますよ
>>571 風が囁いている・・・・「速い、速すぎる!!!」
速さが足りてるッ!
期待してまっせ
久保のひとお疲れさまー
なんだけど話が飛び飛びで判りにくかったなぁ
もうちょい細かくして欲しかったかも
GW終わっちまうよぉ、シクシク……
そんな中投下してはる皆様乙!
おっと、今日はこの後日替わりの人の投下があるんですか。
じゃぁ場繋ぎにちょろっと投下したいなぁと思うのですがよろしいでしょうか?
19:05頃より失礼させていただきます。
ガンゼロ作者・代理共にお疲れ様です
飛び飛びは気になりましたね、確かに
でも投げっぱなしよりいい、絶対
何気にこのスレの根底に迫っちゃった感とか結構良い終わり方でふとにんまりしましたw
シュウとかひょっとしなくて小ネタで呼ばれてすぐ帰っちゃったシュウの様ですねw
強くてニューゲームなルイズがこれからどんな物語を紡ぐにせよ
みんなに幸多からんことを祈るばかりです(間違ってジ・エーデルとか呼ばないようにもw)
改めてお疲れ様でした
久保に日替わりに黒魔のトリプルコンボ!
ヒャッホウ!今日は祭りかあー!
…はしゃぎすてちょっと痛くなってしまった。
とりあえず支援
投下開始です
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「……いつにも増して、すごい人だね……」
お祭り騒ぎって言葉が、これほど似合うことも無いなって思うんだ。
タルブ会戦(この間の戦いは、そんな名前がついてしまったらしい)の直後はもっとすごかったんだって。
お姫様を先頭にした凱旋パレードに、紙吹雪や花吹雪がこれでもかってぐらい空にあふれて、
ついでに戴冠式まで行われて、丁度虚無の曜日だったってことも手伝って、宴の波が夜遅くまで続いたらしいんだ。
「まぁ戦勝祝いってぇヤツだわな。飲める理由にしちゃ上等の部類だろうぜ」
どうせだったらボクも参加したかったけど、
ボクがこっちに帰ってこれたのはその後の話だし、仕方ないかなぁって思うんだ。
でも、1週間経った今でも、お祭り騒ぎは続いているし、屋台や大道芸人がそこら中にあふれている。
なんか、とってもワクワクするんだ。
「こらビービッ!はぐれるから、ちゃんと手ぇにぎってなさい!」
「あ、うん、ゴメンねルイズおねえちゃん」
ルイズおねえちゃんも、心なしかうれしそうだなぁ……
ゼロの黒魔道士
〜第四十四幕〜 タマネギ隊ただいま巡回中
「ほんと、すごい騒ぎだねぇ……」
何を見ていいのか迷うぐらい、鮮やかな色と模様と香りと動きに満ちている。
なんだか目と耳と鼻がもう3つずつあればいいのになぁって思うんだ。
「ほんとね」
「お祭り騒ぎってぇヤツだわな。相棒の故郷はどうだったんでぇ?」
「ん〜、ここまで派手なのは見なかったかなぁ……?」
お祭り騒ぎ、に近いものはそれなりにあったと思う。
ダガーおねえちゃんの誕生日や、リンドブルムの狩猟祭がお祭りではあったと思う。
でも、そういうのって、毎年毎年あるもので、
今回みたいに一度っきりだから、って感じは無かったと思う。
何より、平和になったことをお祝いするってなかったから、なんかいい感じだなぁって思うんだ。
……ボクのいた世界も、こういうお祭りができるようになってるといいなぁ……
そんなことを考えながら歩いていると、ボクの手を握って前を歩いていたルイズおねえちゃんの足が止まって、
そのまま追い抜かしてしまいそうになっちゃたんだ。
「?どうしたの、ルイズおねえちゃん……」
ルイズおねえちゃんの視線の先を背伸びしながら見てみる。
そこにはキラキラ光るものが沢山、籠や箱からはみ出している屋台があったんだ。
「あ、宝石屋さん?見たいの?」
ルイズおねえちゃんが、頷くから、そっちに行くことにしたんだ。
女の人って、こういうのが好きっていうのは、どの世界も一緒なのかなって思う。
ダガーおねえちゃんやエーコも身につけてたりしたっけ。
「おや!いらっしゃい!見てください貴族のお嬢さん。珍しい石を取り揃えました。
『錬金』で作られたまがい物じゃございませんよ」
まがい物、では無いとは思う。
とはいっても、そこまで高そうって思わないのはなんでかなぁ?
屋台って場所にごちゃまぜになって売られてるせいかもしれないし、
召喚獣がこめられているわけでも無いからかもしれない。
それでも、きらびやかで、とっても綺麗なのは間違いなくて、
ルイズおねえちゃんがあれやこれやと手にとってうっとりするのも仕方がないと思うんだ。
「……それ、欲しいの?」
何度か同じネックレスを取っては溜息をついていたから、思わず聞いちゃったんだ。
「お金ないのよ」
ルイズおねえちゃんが残念そうに言う。
そういえば、ボクの捜索費でかなり使ったとか言ってたっけ……
悪いこと、しちゃったなぁ……それに……
「それでしたらお安くしますよ。4エキューにしときます」
「ん〜、まだちょっと高いわねぇ」
「……ゴメンね、ルイズおねえちゃん、ボクも、お金無いや……」
「え?」
ルイズおねえちゃんがキョトンとした表情をする。
「……あれ?こういうときって、男の子がおごらないと、ダメじゃないの?」
女の人と一緒に街に行ったときの基本はそうだって、今まで聞いたけどなぁ?2人ぐらいに……
「――ちょ、ちょっと、ビビってば!あんたギーシュの馬鹿にでも習ったの?」
「え、う、うん……」
あと、ジタンにも、ね。
2人とも、女の人にすっごく人気があったし、そうするのが当然、みたいに言ってたけどなぁ?
「あんたはね、そーゆー背伸びはしなくていいの!無理しなくても大丈夫!」
ルイズおねえちゃんがクスクス笑いながら言う。
うーん、そんなに変なこと言ったかなぁ?
そう思うと、なんか恥ずかしくなって、帽子を深くかぶりなおしたんだ。
「え、でも、欲しかったんじゃ……」
「いーのよ!ああいうのはね、恋人ができたときにでも買ってもらえばいいの!」
「……そういうものなんだ?」
「そういうものなの!」
恋人、かぁ……
そういうのは、ちょっと分からないなぁ……?
もちろん、お芝居でよく見るけど、具体的にどうやってなったりするんだろ……?
お友達、とか、仲間、とかとは、やっぱり違うんだよね……?
う〜ん……ボクが普通の人間の男の子なら、もっと分かるのかなぁ……?
「あれ?ビビ!」
そんな考え事をしていると、後ろから声がしたんだ。
「え?……あ!ルーネス!どうしたの?」
アニエス先生の生徒だった子供自警団の1人で、ポニーテールの銀髪の男の子なんだけど、
今日は鉄の兜をかぶっているせいか、銀髪が全然見えないなぁ……?
きっちり鎧を着込んで、ガシャガシャと動くたびに音が鳴っている。
「それはこっちのセリフ!オレ達――あ、いや!我々、『タマネギ隊』は巡回任務ちゅーなのであります!」
急にビシッとかしこまって『気をつけ!』の姿勢でそう言うものだから、なんかおかしく見えてしまう。
「ど、どうしたの?」
兜と鎧の隙間から覗く顔が、かしこまりきった真面目な顔から、一瞬でニヘ〜っとした笑顔に変わる。
「いや、アニエス先生に頼まれてさ、子供自警団も格上げしたんだぜ!その名も『タマネギ隊』!
トリスタニアを守るせーぎの一味っ!――さすがに女王へーかさま直々ってわけにはいかないけどな。
つーわけで、今はスリや万引き、迷子の道案内と忙しくトリスタニアの平和を守ってるのであ〜る!ってわけだ!」
立派な仕事をしているみたいに胸を張って、自信たっぷり。とっても充実しているみたいだった。
『タマネギ隊』、か……なんか、カッコいいなぁ……
「へぇ……なんか、偉いなぁ……」
「へへん!だろ?――まぁ、お前らほどじゃないけどな、アニエス先生誉めてたぜ?」
「え?」
それは、初耳だった。
そういえば、アニエス先生、タルブに行く前に書き置きを残して消えちゃってたけど、どうなったんだろ?
「あぁ、そうだそうだ!オレ、すっかり忘れてた!あのさ、アニエス先生がさ、お前らのこと探してるぜ?」
「アニエス先生が?」
これも、初耳だったんだ。
「――ちょっと、『ら』って、私も含まれてるの?」
「そうそう!桃髪の貴族のねーちゃ――もとい!貴族の『ごれーじょー』な?
あー、言葉づかいがめんどくせー!とにかく、二人に王宮まで来てほしいってさ」
『ご令嬢』って言葉がそこまで面倒くさいとは思わないし、よく事態も飲み込めないけど、
アニエス先生がボク達に会いたいってことだけは分かった。
「……なんだろ?」
あまり、心当たりは無かったんだ。
・
・
・
城門の横にある詰所で、アニエス先生は書類仕事をしていたんだ。
「アニエス先生!二人を連れて来たぜ――じゃなくて!連れて『まいりました』!」
ルーネス、言葉づかいがまだ定まってないみたいだ。
やっぱり、難しいもんね。敬語って言うんだっけ、そういうのって。
「――お、ビビ!無事だったか?」
アニエス先生が積まれた書類を脇によけつつ立ち上がる。
心配させてたみたいで、無事を伝えるのが遅れて悪いことしたなぁって思うんだ。
でも……
「うん、ゴメンなさい……
あ、でも、アニエス先生こそ……突然消えちゃって、心配だったんだよ?」
せめて一言ぐらいどこに行くとか言ってほしかったなぁって思うんだ。
「ぐ、げ、ゲフンゲフン!そのことはあまり言わないでくれ……頼む」
「あ、う、うん……?」
触れてほしくないこと、ってことなのかなぁ?
とりあえず、この話題はやめておいた方が良さそうだ。
笑顔の裏に、しゃべったらどうなるか分からないってボムの自爆前みたいな空気が漂っている。
正直、ちょっぴり怖かったんだ。
「それで?私達に用って?ビビの顔を見たかったってわけじゃないでしょ?」
会話の隙間をぬって、ルイズおねえちゃんが聞いたんだ。
確かに、ボクの顔を見たいだけなら、学院に来ればいいのにとは思う。
あ、でもそれもできないぐらい忙しいってことなのかなぁ?
「あぁ、うむ。ルーネス。もういいぞ。引き続き巡回頼む」
「はいっ!――それじゃな、ビビ!」
「あ、うん、またね!」
ルーネスを詰所の外に追い出すみたいに任務を出したアニエス先生。
もうちょっと、ルーネスとおしゃべりとかしたかったけどなぁ……
もしかして、ルーネスに聞かれたらまずい話、でもするのかなぁ?
「――で?」
「正確には、姫殿下――いや、女王陛下になられたな、お前たちをお探しでな。しかも秘密裏に、だと」
戴冠式が終わったから、アンリエッタ姫は、今やアンリエッタ女王ってことらしい。
でも、女王様がボク達に何か用、なのかなぁ?
「姫さまが?」
「色々と、あるみたいでな。行きながら話そう」
・
・
・
城門から石床の廊下を抜ける間、アニエス先生が王宮を取り巻く今の状態について教えてくれたんだ。
ゲルマニアとの結婚の話は、この間の戦いの結果により流れてしまったらしい。
これだけの力を持っている国と結婚によって同じ国になってしまうと、
どちらに権力があるか分からなくなるって意見がゲルマニアの中で多くなってきたらしい。
ただでさえ歴史ある王家との結婚ってことでその力を危険に思う人たちもゲルマニアには多かったんだって。
色々、ややこしいみたいだ。でも、お姫さま……あ、もう女王さまなんだよね?
女王さまも、この結婚は望んでいなかったみたいだから、結果的に良かったんだと思うんだ。
それから、組織の改善ってことで、平民の人たちを幾らか王宮関連の任務に雇ったんだって。
色々あって、貴族の人たち同士でお互いを信じられなくなっちゃったんだって。
それは、ちょっと悲しいかもしれない。
アニエス先生をはじめ、何人かの平民の人たちが、監視役や調査役ってことで、王宮に正式に雇われたらしい。
特に、アニエス先生は“アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン”って苗字までもらって、ちょっと嬉しそうだった。
あ、だから今までつけていなかったマントをつけているのかなぁ?なんかとっても似合ってる。
いずれ、今まで貴族だからっていばってただけのクズはわたしが裁くって鼻息を荒くしていた。
――王宮の中を歩いていて、アニエス先生を冷たい目で見たり、ワザとらしく咳をしたりしてた人たち、がそうかな?
なんか感じがすっごく悪かったし、そういうのを少しでも良くできればいいなって思うんだ。
執務室っていうところの兵士さんと何度か言葉を交わしてから、その中に入る。
その中では女王さまがやっぱり忙しそうに仕事をしていた。
でも、杖をふれば羊皮紙に勝手に文字が書かれたりするから、アニエス先生よりは楽かもしれない。
「陛下、お探しの者達を連れてまいりました」
「まぁ、思った以上に早かったわね!ありがとうございます。アニエス、下がって結構ですよ」
ルイズおねえちゃんの顔を見て、書類とにらめっこしていたときの眉間の皺がスッと消える。
二人は友達、だもんね。やっぱりうれしいんだと思う。
「ハッ!それでは!」
「ルイズ、あぁ、ルイズ!」
アニエス先生が執務室を出ると、女王さまがルイズおねえちゃんに飛びつき抱きついたんだ。
「姫さま――いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」
「そのような他人行儀のを申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。
貴女は、私から最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」
「ならばいつものように、姫さまとお呼びいたしますわ」
きっと、この二人って、どこまでいっても友達でいれるんじゃないかなぁって思うんだ。
「そうしてちょうだい。あぁ、女王になんてなるもんじゃなかったわ。退屈は2倍。窮屈は3倍。そして気苦労は10倍よ」
そうは言うけど、アンリエッタ女王……いや、ルイズおねえちゃんみたいにお姫さま、って言うべきかなぁ?
ともかく、アンリエッタ姫はため息をしながらほんのり笑ったんだ。
忙しそうにしてるから、少なくとも退屈ってわけじゃないと思うんだけど。
「あの勝利は貴女のおかげだものね。ルイズ」
そして、ルイズおねえちゃんに向けてそう言ったんだ。
あの勝利って……この間のタルブの、だよね?
ルイズおねえちゃんが慌てた顔をして視線をそらそうとしている。
「私に隠し事はしなくても結構よ。ルイズ」
それを見て、クスッと笑うお姫さま。
何もかもお見通しっていう感じの、余裕のある表情だった。
……やっぱり、退屈は2倍って、嘘じゃないかなぁ?
「あの白い光は貴女なのでしょう?ルイズ。城下では奇跡の光だ、などと噂されておりますが、
私は奇跡など信じませぬ。あの光が膨れ上がった場所から半径1リーグ以内、あの瞬間にいたメイジなど、
調べたらすぐに分かりましたわよ?幸せそうに疲れ倒れていたメイジの存在もね」
「そこまでお調べなんですか」
ルイズおねえちゃんが観念したようなうめき声をあげる。
……やっぱり、ルイズおねえちゃんだったんだ、あの白い光は……
ルイズおねえちゃんの声が光の中に聞こえた気がして、なんか懐かしい歌が聞こえた気がして、
ちょっとホッとしたのって、やっぱり勘違いじゃなかったのかなぁって思うんだ。
「あれだけ派手な戦果をあげておいて隠し通せるわけがないじゃないの」
そして、その微笑みを保ったまま、ボクの方に顔をむけるお姫さま。
「古の英雄物語のごとく、珍しい大鳥にまたがり、群がる龍騎士兵共を眠らせつつその背を駆け上って旗艦まで到達、
指揮系統を混乱させ、侵攻を食い止めたとか。厚く御礼を申し上げますわ」
「え?い、いやいやいや!?ぼ、ボク、そんな大したことしてないよっ!?」
ボクのことを言ってるみたいだけど、ボクはそんな立派そうに聞こえることなんてちっともできてないと思うんだ。
そんなこと言われても、ボク以外の誰かの話にしか聞こえないや。
「謙遜しなくても結構よ、小さな使い魔さん。できたら貴方を貴族にしてさしあげたいぐらいだけど――」
「ぼ、ボクが貴族っ!?」
なんか、話がおおごとになってきちゃったなぁって思うんだ。
ボク、そんなことまでされなくてもいいのにって思うんだけど……
ただ、守りたかっただけなんだし……
「そういうわけにも参りませんの」
微笑みがちょっと曇って、おっきな溜息をつくお姫さま。そしてルイズおねえちゃんに問うたんだ。
「ルイズ、あの魔法について教えてくださらない?分かっている範囲で構いませんから」
そういえば、まだ聞いてなかった。
あの魔法が、何なのか、を。
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ピコン
ATE 〜骨の髄まで軍人で〜
「それで、ホレイショ?どう思うね?」
「うむ、やはりトリステイン軍にしばらく厄介になる他無さそうだな。過日はああは言ったものの」
「気が合うな!僕も同じ気持ちだよ!」
大通りには面していないものの、そこそこ繁盛しているトリステインのとある酒場にて、
アルビオンなまりが少しばかり残るものの、貴族らしい言い回しの会話がなされていた。
さて、彼らの立場と言うと、今は少々ややこしいことになってきている。
そもそも、彼らは軍人であった。
アルビオンの戦艦乗り、しかも艦長とその同輩だ。
誉れ高き武人として、誇り高き船乗りとして、その名は語られ続けるはずだった。
その素晴らしいはずの人生が転がり始めたのはついこの間のことのように思われる。
軍人は政治に口出しすべからず、生粋の武人の矜持は、上司の暴走を止めることができなかった。
上司がレコン・キスタに寝返り、かのアルビオンの革命戦争、否、反乱戦争におぞましい反乱側で参加することとなったのだ。
薄汚い手で王位を奪いに行った愚か者の下での活躍など、口にすることすらおぞましい。
そして、そのときの活躍から、先の戦いでは旗艦であるレキシントン号の艦長に任ぜられた。
これとて褒めることはできまい。
何故なら、祝いの式典を炎と爆薬でブチ壊し、無関係の民を屠る、ハルケギニア史上最低な作戦の片棒を担がされるのだから。
しかし、その汚名は一瞬の光により浄化された、といってもいい。
彼らの乗る船は、『奇跡の光』と呼ばれる白光により瞬時に炎上し、彼らは信じられないことに、無傷で生還したのだから。
これを奇跡と言わずして何を言う?
光に放心したまま彼らはトリステインの捕虜となった。
捕虜とはいえ、貴族。
従って比較的自由に街中を歩いたりもできる。監視の目がついてはいるが。
それとて、逃げるそぶりさえ無ければ何もしてこないし、話を盗み聞きするような野暮ではない。
第一、捕虜の身が逃げ出すなど、貴族として恥ずべき行為をする者がどこにいよう?
さて、彼らが捕虜となって一週間ばかりが経過した。
先週は戴冠式のパレードを見ながら、
「もしこの忌々しい戦が終わり故郷に帰れたら、軍人はもう止めよう」などと語りあった二人だが、
ここに来て、少々問題が起こった。
前提条件である「忌々しい戦」の終わりと、「故郷に帰る」ことが難しくなったのだ。
通常、捕虜とは敵国や敵軍というものが存在してこそ成り立つ。
当たり前だが、敵も無いのに捕虜も何も無いわけだ。
そして、捕虜はその敵と交渉により、幾ばくかの身代金と共に敵に返還されるか、
あるいは捕虜自身が寝返ることを宣誓し、味方となり共に闘うか、となるのが通例だ。
つまり、捕虜の運命は交渉が行われるか、敵が完全に死滅するかまでは、捕えられた国に寝返るしか選択肢が無いのだ。
そこで問題である。「敵の首領が行方不明につき、またも敵国内で内乱が起こりそう」な場合、どうなるのか?
レコン・キスタを率いていたクロムウェル(自称)皇帝が忽然と姿を消したのはつい5日ほど前の話。
その後釜を狙うのか、あるいは王家を復活させるのか、いやいや自らのしあがるのか、
様々な思い入れを持つ貴族たちが、禿鷹よろしく飛び回っているという噂は、トリステインまで響いた。
この場合、敵と交渉というわけにもいかない。誰が長か分からないらだ。
かといって、敵を死滅させるにもその敵の居所が分からなければどうしようもない。
となると、「忌々しい戦」は終わらせることもできず、「故郷に帰る」のも現状では困難極まりないということになる。
そして何より
「杖を捨ててもいいとは思ったものの、あいにくと鍬を持つ暮らしも想像できないしな。
情けない話、土というものを耕している自分が想像しがたい」
ホレイショという名のでっぷりとした男が言う。
彼らは結局のところ、骨の髄まで軍人なのだ。
軍人が捕虜とはいえ、怠惰な生活を続けていいはずがあるまい。
「お互い、不器用な貴族に生まれたものだ」
ボーウッドという名の元艦長がそう苦笑する。
精悍な顔つきが少し崩れる。
彼らは心情的には王党派よりだったため、トリステインの側につく方がマシであるとも言える。
「しかし、トリステイン軍に余裕はあるのだろうか?2度目の寝返りを果たした貴族を雇うなどと?」
故国への裏切りともみなされかねないが、あの白光を見てしまった後に寝返りも何も無いものだ。
もはや彼ら二人は、アンリエッタ姫のご威光に心酔しているといっても良い。
しかし、世間がそんな彼らをどう見なすか。また、財政的に新たな貴族を雇うことに問題は無いのか。
いずれにせよ、こちらの道も困難そうではあった。
「ふむ、財政面では悪くは無さそうだが――不安ではあるな」
「全く、不器用な貴族に生まれたものだ」
「同感だな」
大の大人が二人、真っ昼間の酒場で、互いの身を嘆いていた。
「あまり心配なさる必要はありませんよ、お二方!」
ひらひらと、過剰な装飾が成されている割に、露出の多い東洋風の服が眼にちらついたのは、
それからたっぷりマグ2杯ほど空け、ほろ酔い気分も良い頃合いになった辺りだった。
「む?何だね、大道芸人か?」
少しばかり充血した瞳でその男を見るホレイショ。
「おいおい、ホレイショ。この男の顔はそうそう忘れないだろう?
武器商人の――クジャ、とか言ったかな?お前も捕虜になっていたのか?」
流石に艦長であった男は酒が入っても記憶力は確かで、レコン・キスタに出入りしていた商人の名まで覚えていた。
あまり接触はしなかったものの、流石に目立つ格好をしていたので記憶に残っていたのは確かだが。
確か、あの戦いのときも、同じ船に乗っていたという記憶はあるのだが、この男が捕虜手続きの場にいた記憶は無い。
「いえ、すんでのところで逃げおおせましたよ。舞台の袖から裏へ、ね」
涼しい顔で言ってのける武器商人。
「なら、こんなところにいては不味いんじゃないか?仮にも敵国だろ?」
忠告を小さな声で語るボーウッド。
何しろ監視の目があるのだ。怪しまれたらトリステイン軍に就職できないかもしれない。
「武器商人も役者と同じ。敵も味方もありませんよ。あるのはお客と商売敵ぐらいです。
それに、今は表の用事でこちらに顔を出していますのでね」
その忠告を一笑に付す武器商人。やや腹立たしいが、優雅な身振りがそれを少し緩和している。
「表?」
「えぇ、表の商売も好調でして。偉大なる始祖ブリミル様へと利益を還元しようかと、学術方面に出資することにしたのです」
「殊勝なことだな――ははん、分かったぞ!アンリエッタの輝かしい歴史の1頁に加わり、その名でしこたま儲けようという腹だな?」
「ご想像にお任せしますよ、ホレイショさま」
否定もせず、ホレイショの指摘をさらりとかわすところを見るに、呆れるほど、目の前に立つ男は商売人らしい。
しかしそれを責めることはできまい。
軍人が武力で世を闊歩するように、商人は資金力で世を動かすのだ。
「抜け目ないことだな――それで?心配の必要が無いとは?」
「えぇ、その件に絡んで、学術のための調査旅行に出資することにしましてね。熟練の船乗りが必要、というわけです。
舞台と同じく、老練なる役者がいて初めて芝居が締まりますのでね。
トリステイン軍の方から志願者を募っていただくことになったのですが、当地の操船技術はどうも今一つでして――」
意味ありげに言葉を切る商売人。
なるほど、学術のための調査旅行か。
「ふーむ。どうする?ホレイショ」
「船乗りが陸に上がっていてもしょうがあるまい?
奇跡の光に対抗するつもりは無いが、学術研究ならばむしろ協力行為だろ?」
ホレイショはもう乗り気だ。別に人を傷つけるわけでも無く、再び空へ。悪い話ではあるまい。
「つくづく気が合うな!」
結局、彼らは骨の髄まで軍人なのだ。
地上で怠惰な捕虜生活を送るほど腐ってはいない。
「それでは、こちらで手続きはしておきましょう」
「用意のいいことだ。お前はどこまで儲ける気だ?」
「儲けなんて、気にしておりませんよ――顧客の望みを叶える、それだけです」
意味ありげな表情で、監視役の兵士に軽く会釈をしながら、商人は酒場を後にした。
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以上です。
まぁなんやかんやでビビ以外で物語が動いてしまいそうで申し訳なく……
ちゅうことで、お目汚し失礼いたしました。
あ、あと、文末にはなってしまいましたが、久保の方、めっさおつかれさまでした!
いわゆる支援
一時間以上前に投下は終ってるぞ
お疲れ様です
クジャの動向とこちらの姉さまの恋の行方やらどうなっちゃうやら気になりつつ
もうすぐ抑えきれない放火衝動VSコルベールが着々と迫りつつあるようで
ある程度分かってはいても心苦しくもあり
ルイズとビビにはしばしの平穏を楽しんでもらいたいものですねぇ、無理ぽいか
一通りの誤字脱字もチェック済み、容量計算も(多分)問題なしっと。
皆さん、お待たせしました。予告通り、20:55から7話を投下します。
消費レス数は7を予定。今度はレス数オーバーしないと信じたいw
ごめんなさい7話じゃなくて8話でした……落ち着け俺orz
犯人であるロングビルを無事捕らえ、学院へと戻る馬車の中、リュカは当然のごとく「何故生きてるのか」という質問攻めに遭った。
あの時リュカの心臓は、間違いなく止まっていた。実は死んでなかった、などということはないはずである。
だがそんな質問に、リュカは自分が生き返った理由を笑いながら話した。
「……復活の杖?」
「そう。死者蘇生の魔力が秘められた杖なんだよ、この杖は。こっちでは『奇跡の杖』なんて呼ばれてたみたいだけど」
奪還した『奇跡の杖』――もとい復活の杖を左手で弄びながら、簡単に解説する。レックスがゴーレムにギガデインを放ったその影で、ゴレムスが復活の杖を使ってリュカを生き返らせたのだ。
なるほど、死者蘇生などという奇跡が起こせる杖であるならば、『奇跡の杖』などと呼ばれるわけだ。
「はっ……道理で、いくら使おうとしても効果が現れなかったわけだ。そこに死人がいなけりゃ、ただの杖なんだからね」
「あんたは黙ってなさいよ」
腕と足を縛られて床に転がされていたロングビルの自嘲じみた言葉に、ルイズがピシャリと言い放つ。
意図してのことかどうかはわからないが、先ほどロングビルに人質にされた時の台詞を、ルイズがそのまま返したような形になった。
「一つ疑問がある。あなたの妻……確かフローラ。彼女も同じ杖を持ってた」
「そりゃ、世界に一つだけの杖ってわけじゃないからなぁ」
タバサの疑問に、リュカは何でもないといった態度で答えた。その返答に、タバサが珍しく驚いたように目を丸くした。
そして彼女は、少し考え――
「……誰でも生き返らせられる?」
「誰でもってわけじゃないな。死者蘇生って一口に言っても、生き返らせられない場合もある。そんなに万能じゃないさ。もし誰でも生き返らせられるなら、僕だって――」
「…………?」
「いや……何でもない」
彼女の質問に答えながらも、リュカは最後まで言うことはなかった。何かを振り払うように頭を振り、台詞を強引に打ち切る。
その後、タバサは更に質問を重ねた。主な質問の内容は、復活の杖で生き返らせられる人、生き返らせられない人、その条件である。
それに対するリュカの返答から、蘇生不可能な条件を簡単にまとめると――
1、遺体の中の生命維持に必要な器官に、治療不可能なほどの重大な欠損があった場合。
これは、病死や老衰などによって、内臓その他が使い物にならなくなった場合も含む。
なお、心臓が貫かれた程度の損傷なら、傷の大きさにもよるが、基本的に蘇生に問題はない。
2、死者の魂が既にこの世にいない、すなわち成仏してしまった場合。
3、死んでから時間が経ちすぎている場合。
その場合は遺体が腐敗し、魂も昇天している可能性が高いため、1と2の条件から言っても蘇生は不可能。
――と、大まかに言えばこの三つとなる。もちろん、スミスやドロンのような例外はあるのだが。
それを聞いたタバサは、表面上は大して表情を動かしてはいなかったが、どことなく沈んだ様子であった。
そんな彼女の様子に、リュカは何か言うべきかとも思ったが――事情も知らない自分が安易に立ち入って良いものとも思えないので、結局何も言わないことにした。
と――
「そろそろ着くよ」
そう言うリュカの眼前では森が開け、見慣れた学院の威容が視界に飛び込んできた。
今度こそ支援
何だか終盤のドラゴンボール並に命の扱いが軽くなりそうな気がしますけど支援
支援だ
パトリシアから降り、ゴレムスを外に待機させ、ロングビルを連行して学院長へと向かう道すがら――
「……ひとつ、質問」
リュカのマントをくいっと引っ張り、タバサが小声でリュカに尋ねてきた。
「ん?」
「あなたは最初から『奇跡の杖』の正体を知っていた。もしかして、わざと死んだ?」
「なんでそう思うの?」
「あなたの技量なら、ルイズも自分も助かる道を選べた」
彼女の指摘に、リュカは軽く肩をすくめた。
事実、その通りだ。彼ならばあの場面で、ルイズを抱えてゴーレムの攻撃から逃げることは簡単だった。それどころか、あの質量を真正面から受け止めることさえ可能であった。
だがリュカはそれをせず、ルイズだけ逃がしてあえて死を選んだ。もっとも、ブオーンのような巨大モンスターとの戦闘経験もあるリュカからすれば、あの程度のゴーレムの攻撃で死に切れるか、それ自体が心配でさえあったぐらいだが……それも杞憂に終わった。
それを見抜いたタバサの眼力に苦笑しつつ、その理由を話し始める。
「……このトリステインで、戦いに巻き込まれることがどれほど多いのかは知らない。もしかしたら頻繁に戦うことになるかもしれないし、この先二度と戦わずに一生を終えるかもしれない。
でも、知っておいて損はないと思った。ルイズには、それを知っていてもらいたかったんだよ……戦うってことの意味、その一端でも」
「無駄な危険に他人を巻き込むから?」
「それもある。けどそれ以上に、ルイズ自身が危険だから」
「だから死んだ。ルイズの目の前で」
その言葉に、リュカは「うん」と首肯した。
と――その途端、タバサはリュカのマントから手を離し、ぴたりと足を止める。二歩ほど進んだところでリュカも足を止め、彼女を振り返った。
会話を聞いていないキュルケたちが「何事?」と注目すると――タバサはすぐに、すたすたと歩き始める。
「…………悪趣味」
リュカを追い抜くその時、ぼそりとつぶやいたタバサのその言葉は、リュカの耳にだけ届いた。
彼はぱちくりと目をしばたかせつつ、彼女の後を追う。たっぷり十秒ほど経ってから、ようやっと自分が責められていたことに気付いた。
「悪趣味……か」
その言葉を反芻し、リュカはポリポリと後頭部を掻いた。
「ふむ……まさか、ミス・ロングビルがのう……」
学院長室――そこで一行が報告を終えると、オスマンは苦々しげにつぶやいた。
髭を撫でながらのその姿は、古き賢者といった威厳があった……通常ならば、の話だが。
しかしそんなオスマンを見る、教師陣を含めた一同――特に女性陣から送られる視線は冷たい。そんな視線を集中させられているオスマンは、こめかみから一筋の汗を垂らした。
「学院長……何か言い訳でもあるのですか?」
「い、いや……その……」
居並ぶ教師陣の一人、ミセス・シュヴルーズの鋭い声に、オスマンは言葉に詰まった。
オスマンがこんなに責められているのは、捕まったロングビルが口にした犯行動機によるものである。その動機を一言で言ってしまえば、「学院長のセクハラにムシャクシャしてやった。反省はしている」ということであった。
つまるところ、今回の事件の遠因が、オスマンにこそあるということだ。特に女性陣は、ロングビルに同情的であった。
「…………カーッ! ちょっとぐらい尻を撫でられたからとすぐキレおって! 最近の若いモンは忍耐が足りんわ!」
「開き直りですか」
「見苦しい」
「…………」
怒鳴ることで有耶無耶にしたかったのだろうが、そうは問屋が卸さない。その逆切れ行為は、周囲の視線を更に冷たくするだけで終わった。
オスマンは彼らを納得させるのは諦め、次いでロングビルの処遇に議題をシフトする。話題のすり替えとばかりのその態度に、もう何度目かもわからない冷たい視線が注がれた。
それを懸命に無視しながら、オスマンは「これは内々に処理しよう」と提案するが――悲しいかな、それさえも「学院長のセクハラは有名だから、今更隠しても意味がない」と一蹴されてしまった。
というわけでロングビルは、後日王都へと護送され、裁判にかけられる運びとなった。そして破壊された宝物庫の修繕費は、満場一致でオスマンのポケットマネーから出ることと相成った。
――事後処理までの案としては、おおむねこんなところである。
「……なんじゃいなんじゃい、みんなして寄ってたかって、こんな年寄りをいぢめおってからに……」
えぐえぐとみっともなく泣きながら机の上に沈んだオスマン。そんな彼には誰一人として構うことなく、集まった教師陣は話は纏まったとばかりに、三々五々に解散した。
そしてその中で、最後に残ったのはルイズ、リュカ、レックス、キュルケ、タバサの五人――
「おう、なんじゃ……おぬしら、まだ残っておったのか……お手柄じゃったのう……ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサの三人には何らかの褒章を検討しておくから、今日はもう帰って良いぞ……」
「は、はぁ……」
机の上に突っ伏したまま、ルイズたちに手を振るオスマン。だが視線は机の上に固定されたまま、涙の海に沈んでいるのが何とも痛々しく――ルイズたちは生返事を返すしかできない。まあ自業自得ではあるが。
「オールド・オスマン……リュカとレックスには?」
「彼らは――」
「僕らは何もいらないよ」
オスマンが何か言いかけたところを、リュカがそれを遮って褒章の授与を断った。
だが、そんなリュカの態度に、ルイズたちは明らかに不満顔だった。何せ、今回の件で最も活躍したのはリュカとレックスなのである。彼らが褒章を受け取らないのに、どうして自分たちが褒章を受け取れようか。
しかし、リュカたちからすれば、その手の褒章などもう一杯一杯なのである。今更一つ二つ増えたところで、正直わずらわしいだけだった。
「いいからいいから」
リュカはなおも何かを訴えたがっている顔のルイズとキュルケの背を押し、学院長室から退室させる。タバサはリュカに背中を押されるまでもなく、彼女たちと一緒に退室した。
そして、レックスにルイズたちを任せて一緒に学院長室から出し、扉を閉める。
「……まだ何かあるのかの?」
リュカが振り向くと、そこではオスマンが顔を上げ、リュカの方に視線を向けていた。どういうわけか、涙の跡は綺麗さっぱりなくなっている。
「復活の杖……あなたたちが『奇跡の杖』と呼んでいる杖のことで。あなたはあれを、どこで手に入れたのですか?」
「ふむ……確か、おぬしたちの故郷にある杖じゃったかの?」
「正確には違いますが、まあそんなところです」
リュカがそう答えると、オスマンは「ふむ」と一拍置いてから、事情を話し始める――
彼の言葉によれば、それはおよそ二十年以上前のこと。森の中でワイバーンに襲われたオスマンは、そこで死にかけた。
しかし次に気が付いた時、そこはあの世などではなかった。目の前には、自分を襲ったワイバーンと、おそらくそれと戦って相打ちになったのであろう、見知らぬ男が倒れていたという。
「その男が言うには、死にかけた私を救ったのはその杖じゃという。そして彼は、いまわの際にこう言っておった。『ジャハンナはどこだ。マーサ様をお助けしなければ』と。私は、そのまま息を引き取った彼を手厚く葬った。
そして私を救ったらしい彼の杖は『奇跡の杖』と名付け、ここの宝物庫に仕舞った……そういうわけじゃ。
しかし、死者蘇生とは……いやはや、驚きじゃ。となれば私は、あの時一度死んでおったということか。『奇跡の杖』と名付けたのは間違いではなかったということじゃの。知っておれば、あの時彼を生き返らせていたのじゃが……」
「マーサ……ですか。その人は確かに、その名前を口にしたのですね?」
「知っておるのか?」
「僕の母です。今はもう……」
「……そうか」
表情を沈ませるリュカに、オスマンも沈痛な面持ちになる。結局、彼の恩人の願いもむなしく、マーサなる人物は死んでしまったということなのだから。
そしてオスマンは、ならばそのマーサの縁者であるリュカこそが『奇跡の杖』の所有者に相応しいと言って、彼に杖を差し出した。
だがリュカは、恩人の形見は受け取れないと、それを断った。
「そう言わんでおいてくれ。これほどの宝物、こんな学院で埃を被らせておくわけにもいかんて」
「これほどの宝物と言われても……僕からすれば、そこまで珍しい物でもないんですが」
リュカの口から出てきた意外な言葉に、オスマンは「は?」と目を丸くした。死者蘇生などという奇跡を起こす杖が珍しくないなどと、幻聴としか思えないのだろう。
そんな彼の様子に、リュカは苦笑する。
「さっきの話で出てきたジャハンナですけど、そこの武器屋に売ってるんですよ。もっとも、普通は手が出ないぐらいの高級品ですし、そもそもジャハンナ自体が普通に行ける場所ではないのですが」
「な……これほどの物が市販じゃと!? 信じられん……い、いや、そういえばおぬしの奥方も『奇跡の杖』を持っておったのう……」
そこまで驚愕をあらわにするオスマンに、リュカは何か引っ掛かるものを感じた。
彼はしばし考え込み――ややあって、オスマンに質問してみる。
「学院長……ひとつ聞きたいのですが、ここでは死者蘇生というのはそんなに珍しいものなのですか?」
「なんじゃと?」
その質問、そしてそれに対するオスマンの反応。
そこでようやっと、リュカとオスマンは互いの認識のズレに気付いた。すなわち、リュカたちにとって当たり前のように行える死者蘇生が、こちらでは絶対に起こりえない神の奇跡であるという事に。
そして二人は、そこから更に情報交換を始める。
死者蘇生呪文の存在、失った命を呼び戻す『世界樹の葉』、死者蘇生を請け負ってくれる教会の神父――更に即死呪文『ザキ』『ザラキ』の話になると、オスマンは飛び上がらんほどに驚いた。
「即死呪文じゃと!? そんなものがこのハルケギニアにあったら間違いなく禁呪指定されておるぞ!? いや、死者蘇生呪文とやらがあるからこそ、禁呪とならずに済んでいると見るべきなのか……?」
「でしょうね……どうやら僕たちとあなたたちとでは、『手遅れと判断されるライン』にズレがあるようです」
リュカがそう結論付けると、オスマンは「興味深い話じゃのう」とつぶやきながら水ギセルをくわえた。
その一方でリュカは、先ほどタバサに「悪趣味」と言われた理由が、ようやっと理解できた。自分の死をルイズに見せ付けたことは、思った以上にルイズに深いショックを与えたかもしれなかったのだ。
それこそ、自分が父を失ったあの時のような――
(失敗したかなぁ)
自分の行動を振り返り、リュカは後悔した。だが、後悔先に立たず――やってしまったものは仕方ない。今回のことがトラウマになって悪い方向へと転がらないことを祈りながら、リュカは会話を切り上げた。
そして、学院長室を退室しようとドアノブに手をかけると――思い出したかのように、その背中に向かってオスマンが声をかける。
「そうそう、知っておるかもしれんが、今夜はフリッグの舞踏会じゃ。
事件の解決に貢献してくれた、せめてもの礼じゃ。おぬしとレックス君も参加できるよう、特別に計らってやろう。遠慮せずに楽しんでいきなさい」
アルヴィーズの食堂――その上の階のホールで、『フリッグの舞踏会』は行われていた。
生徒も教師も皆着飾り、テーブルの上に乗せてある料理はどれも豪華。優雅で華麗な舞踏会の光景が、そこにあった。
そんな中、つい先ほどまでリュカたちと歓談していたキュルケは、今は男子たちに囲まれて笑っている。黒いパーティードレスに身を包んでいるタバサも、料理と格闘中だった。
そしてそんな会場を眺めているリュカとレックスは、それぞれトリステイン式の正装に身を包んでいた。オスマンがわざわざ用意してくれたものである。二人ともいつものボサボサな髪は綺麗に整えられ、誰が見ても文句のつけようがない立派な紳士になっていた。
「同じ舞踏会でも、ボクはこっちの方がいいな」
リュカの隣にいたレックスが、舞踏会の雰囲気に微笑をこぼしながらつぶやいた。
リュカも、それには同感だった。思い起こすのは、グランバニアの宮廷で行われる、貴族達の華やかな舞踏会――だがそこに参加する全員が全員、純粋にパーティーを楽しむ為にいたわけではない。
おおらかな国民性を持つグランバニアといえども、権謀術数という単語が存在していないわけではない。国政の上層部に近付けば近付くほどその傾向が強くなるのは、いかなグランバニアとて例外ではなかった。
そんな舞踏会の雰囲気は、いまだ子供であるレックスには、さぞ退屈であったことだろう――だがこの『フリッグの舞踏会』は違う。ここには権威だの何だのといったギスギスした単語は存在しない、心から楽しむパーティーの雰囲気があった。
おそらくそれは、参加している者の大半が思春期の少年少女たちだからなのだろう。その雰囲気は、世界の平和を取り戻して国中でパーティーをした、あの時を思い出させる。
と――
「あ、あの……」
そんな彼に、少女のものと思われる声がかけられた。
そちらに目を向けてみると、そこにいたのは給仕の一人と思われる、メイドの少女がいた。
「僕?」
「あ、はい。ミス……いえ、ミセス・フローラの旦那様のミスタ・リュカ……ですよね?」
「そうだけど、君は?」
「は、はい! 私、以前ミセス・フローラに助けていただいた者で、シエスタといいます!」
恐縮しながらそう言った彼女――シエスタが言うには、以前貴族の坊ちゃんに絡まれていたところをフローラに助けてもらったらしい。
本当はすぐにでもお礼を言いたかったのだが、彼女の上司のマルトーに、「貴族同士のいざこざに巻き込まれたんだから、礼なんか言う必要はない」と止められていたそうだ。
だが巻き込んだのは自分の方で、助けてもらったのも事実。だからどうしてもお礼を言いたかったのだという。
「そっか、そんなことが……でもフローラが聞いたら、きっとこう言うだろうね。『私は当たり前のことをしただけ。お礼が欲しかったわけではありません』ってね」
「それでも、私はお礼を言わなければ気が済まないんです……ですからミスタ・リュカ。どうか、ミセス・フローラに伝えてくださいませんか?」
「わかったよ」
そのシエスタの懇願に、リュカは苦笑しながら頷く。するとシエスタは「ありがとうございます!」と元気一杯に頭を下げ、まだ仕事があるからと言ってパタパタと慌しく去って行った。
「さすがお母さんだね」
「そうだね」
話を聞いていた息子の言葉に、リュカは微笑をこぼしながら頷く。
そして彼は、ふと自分の手元に視線を落とした。そこにあるのは、赤い液体の注がれたワイングラス――酒にはあまり耐性のないリュカである。手に取ってはいるものの、正直言って飲むのはあまり気が進まなかった。
(でもまぁ……こんな席ぐらいは)
場の雰囲気に当てられたのか、リュカの気分は悪くはなかった。ついついそんなことを考えてしまうぐらいには、気が緩んでいた。
そして彼は、少しだけそのワインに口を付けた。口当たりの良い甘い酸味がいっぱいに広がり――そして同時に、酒気によってほんの少しだけ視界が揺らいだ。
と――
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおなぁ〜りぃ〜!」
その時門に控えた衛士の声が響き、リュカとレックスは揃ってそちらに視線を向けた。
目を向けた先では、ちょうどルイズが会場に入ってくるところであった。
その姿は、まさしく大貴族の令嬢に相応しい、この会場の誰よりも綺麗な姿であった。白いドレスに身を包んだ彼女は、『ヴェールをかぶせれば、そのままウェディングドレスで通用するかもしれない』と思わせるほどである。
リュカはそんなルイズに感心しつつ、ちらりと隣のレックスを盗み見る。彼は顔を真っ赤にしながら、ルイズから目が離せないでいた。
(……おや?)
リュカはそんな息子の様子に違和感を覚えながら、再び顔を正面に向けた。視線の先では、ルイズが男子たちからダンスの誘いを受けていた。
今まで彼女を散々『ゼロ』と馬鹿にしていたくせに、現金な連中であった。もちろん、そんな連中の誘いをホイホイと受けるようなルイズではない。彼女は全ての誘いを断り、リュカたちの前へとやって来た。
「楽しんでいらっしゃいますか、ジェントルマン?」
「おかげさまで、レディ」
スカートの裾をつまんで頭を下げるルイズに、リュカは右手を腹の前にして深々と礼をする。その堂に入った礼儀作法に、ルイズはくすりと苦笑を漏らした。
「……やっぱり貴族だったのね、あなた。格好も佇まいも、随分堂に入ってるじゃない」
「貴族だろうと平民だろうと、僕の国はハルケギニアとは縁もゆかりもない国だよ。そこでの地位がどうであれ、ここで関係のある話じゃないさ。今の僕は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔……それ以上でも以下でもない」
「あら、言ってくれるわね」
リュカのその返答に、ルイズは満足げにほほ笑んだ。そして彼女は、すっと手を差し出す。
「ねえ、踊らない?」
「喜んで」
リュカはその誘いを受け、彼女の手を取った。その時、横で「あ……」という残念そうな声が聞こえたので、心中で息子に謝りながらも、一曲終わったら交代しようかと考える。
二人はそのまま、楽士の奏でる曲に合わせ、ホールの中央で踊り始めた。多少ぎこちなさの残るリュカのステップも、ルイズのリードのおかげで特に問題なく踊り続けられている。
「ありがとうね」
「ん?」
「助けてくれたでしょ? ゴーレムに踏み潰されそうになった時」
「ああ、そのことか。別に何でもないよ、そんなこと」
「何でもないわけ――」
ルイズはそこで、言葉に詰まった。おそらく、リュカが死んでしまった時のことを思い出したのだろう。
その様子に、これはやっぱり引きずってるかな、とリュカは苦い思いを感じた。
「……怖かったわ。とても、怖かった。リュカが死んだ時の……リュカがもう二度と私の前で笑うことがないと思った時の怖さは、自分が殺されるかもしれないと思った時より、ずっとずっと怖かった」
「ルイズ……」
「あなたが一度死ぬ直前に言ったこと、私にはまだよくわからない。けどそれは、きっと大事なことなんだと思う。上手く言えないけど、私……私……」
「わかってるよ」
考えが上手く纏まらずに口ごもるルイズに、リュカは安心させるようにほほ笑みを見せた。そんな彼に、ルイズもぎこちない笑みを返す。
と――その時、ルイズは不意に「あ……」と何かを思い出したかのように声を漏らし、リュカの右手を注視した。かと思ったら、唐突にその右手を包んでいる白い手袋をめくる。
そこには何もない――綺麗な肌があった。
「ルーン……消えちゃってる」
「え? あ……ほんとだ」
「メイジと使い魔は死ぬまで一緒……死なない限り、契約が切れることはない……」
「そっか。僕は一度死んだから……」
リュカがそうつぶやいたその時、ちょうど曲が終わって二人は足を止めた。
少しだけ――ほんの少しだけ、ルイズは俯いて考える。そして意を決したかのように顔を上げ、リュカを見上げた。
「ねえ……この先まだ、私の使い魔をやってくれる……?」
不安げに揺れる瞳。その視線を受け、リュカは――
「……もちろん」
くすっと微笑をこぼし、ルイズの頭をくしゃっと撫でた。
その返答に、ルイズはぱぁっと顔を輝かせ――だが次の瞬間、ハッとなって顔を真っ赤にする。
「か、かか、勘違いしないでよね!? これは再契約なだけであって、それ以上の意味なんてないんだからね!? そんな意味でしちゃったら、フローラに悪いから――」
「フローラに悪いって……ああ、そうか。契約の方法って、確か……まあ僕も、本当ならフローラ以外にこういうこと許したくはないのは確かだけど」
「で、でも、仕方ないのよね……?」
「まあ、ノーカンってことにしとこうよ」
真っ赤になって必死に言い繕うルイズに、リュカは苦笑して頷いた。「秘密だよ」と言わんばかりに、唇の前に人差し指を立てる。酒が入ったせいだろうか、どうもその辺りの忌避感が薄れているような気がする。
そしてルイズは、リュカを連れて会場の隅に寄って行った。そして二曲目が始まったのを横目に、懐に忍ばせておいた杖を手に取ってルーンを唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ――」
そして彼女は杖をリュカの額に置き、ゆっくりと唇を重ねた。
と――その時。
「ああぁぁぁーっ!?」
今まで聞いたことがないほどのレックスの驚愕の声が、リュカの耳を打った。
唇を離し、右手に再びルーンが刻まれる痛みを感じながら、そちらを見やると――わなわなと震え、こちらを凝視するレックスの姿が視界に入る。
(ああ――なるほど、そういうことか)
そこでリュカは、なぜレックスが今日無理矢理付いて来たのか、ようやっと理解した。
要するに、彼もそろそろ思春期だということなのだろう。事実を知ったら、彼の妹のタバサはきっと泣き叫ぶに違いない――何せ、「将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる」と公言してはばからない、重度のブラコンなのだから。
リュカは、怒髪天を衝くといった様子でずんずんとこちらに近付いてくる息子を見ながら――
(…………こりゃ、言い訳が大変そうだ)
下手すれば家庭崩壊の危機になりそうな予感がして、陰鬱な気分になった。
ちなみに余談ではあるが――その日の深夜。
グランバニア城謁見の間正面の空中庭園にて、リュケイロム王、レックス王子、ゴレムスの三名が犬○家よろしく地面に頭から逆さまに突き刺さっていたのを、見回りのピピン兵士長が見つけて大騒ぎになった。
――酒気帯びルーラは危険です。絶対にやめましょう。
これにて投下終了です。お付き合いありがとうございました。
ちなみに蘇生不可能な条件に関しての設定は、この作品の独自設定です。ご了承ください。
次回からは原作2巻に入ります。連休も終わったことですし、今度はいつになるかわかりませんが、気長にお待ちください(´・ω・)ノシ
……青写真はできてるんだけどなぁ……いつ執筆に取り掛かれることやら(ノ∀`)
乙でした〜
乙
最後にワロタw
日替わりの人乙です。
酒気帯びルーラw
>酒気帯びルーラ
なんというこの時期洒落にならないオチw
乙でした
いっそもう一度死んで王子に使い魔させてしまえ
日替わりの方、乙でした。
X娘(タバサと書くとややこしいので、こう書かせていただきます)は、まだコリンズに対しては恋愛感情はないっぽいですな。
しかし、こうなるとミス・ロングビルはまだ学院で働くことになるんでしょうか。
日替わりの人乙です。
蘇生不可能な条件はソレが無いと大変な事になりますよ。
けど、蘇生可能な条件を満たしているだろうからアルビオン編がどうなるか楽しみです。
日替わり乙
しかし、即死程度で禁呪になるか?
普通に人を殺せる魔法は沢山あるのに・・・
例:レビテーションで地面に叩きつける(平民限定)
水魔法で窒息死(モンモンが使用)
ライトニング・クラウド(デルフが無ければ多分死んでた)
>水魔法で窒息死(モンモンが使用)
ラスボスさんとこでユーゼス発案の戦法でエゲつないことしてタバサとキュルケを死に追いやったっけな
それによれば、貴族たるものあんまりにも残虐な魔法の使い方なんてできるかーみたいな
まぁ攻撃魔法なんだし今更でもあるけれど
シュヴルーズのお口に赤土だって十分一撃必殺だし
まぁ、ザキ・ザラキなんて普通に禁呪指定されてるんじゃないかって気もする・・・
って良く考えてみたら神官や僧侶が覚える呪文じゃなかったか!?
日替わりの人乙
死亡→契約破棄→仕事があるから! とかいってレックスに契約おしつけんのかなーと思ってたが外れたか
日替わりの人乙です
死に対する観念が違うのが面白かったですな
確かにドラクエの世界では金払えば蘇生出来るんだからなぁw
>>608 女神転生考えれば怖さもわかるんじゃ
つかそもそも回避の手段のある属性魔法より(土壁で受けたり風で散らしたりね)
回避する手段がないレジスト失敗で確実に死ぬ魔法の方がはるかに怖いでしょ
どんな強者でも確率で即死するんだからヤバすぎる
弾道ないから命の石ない世界で暗殺に使われたら防ぎようもないし
だってどう見ても系統魔法以外の先住or異端or得体の知れない邪悪な力じゃん>ザキ
一神教の世界で神様の許した以外の奇跡とかって時点でルーラとかも相当危ない橋だと思うけどね
漫画だかなんかだと、全身の血が固まって死ぬって魔法だったような気がするけど、どうだったっけ?>ザキ
さぁパルプンテの出番だ
> もし誰でも生き返らせられるなら、僕だって――
小説版DQ5思い出して涙が…
マホカンタなんかモロにエルフの先住、というかメイジにも効くと仮定すれば
ドラクエでは当たり前でもハルケギニアじゃ常識外れの恐ろしい呪文がわんさと
マホトーン、マホトラ、メダパニ、ニフラム、ベホマ、キアリー、キアリク
ラナルータ
ウィザードリィのラカニトは窒息だったな
ミナデインはハルケギニアではどんな魔法に分類されるのだろう
あとマダンテ
>>601 日替わり氏、投下乙でしたー。
契約はレックスと結びなおして今度はガンダールヴでも出てくるかと思ってましたが違いましたね。
その場合、教皇サイドに第4の使い魔を割り振ってラスボス的立ち居地にすることも出来ますし、
先々テファにリュカを再召喚させてヴィンダールヴ再びってのもありえるかと思ってましたがw
早くも次回の更新が楽しみですが、今回の更新が早かっただけに次回はしばらく先かな……?
>>616 パパスもそうだけど、仲間モンスター達の死に様が壮絶だからねぇ……。
個人的には、自分の腹をえぐり毛皮の下に双子を隠して敵から守り通したガンドフが印象的だったなあ。
ドラクエで真っ先に思い出す呪文がメガンテな俺
…昔読んだガンガンのDQM+のメタルドラゴン・のろいのランプ・ばくだんいわはカッコ良かったと思う
ルイズ「それはエクスプロージョンじゃない…ただのイオだ」
>>614 ゲーム自体がそうゆう設定だったはず。
だから血液そのものを持たないタイプには効かないという理屈の通った説明がされていた記憶がある。
ただ、これは別のゲームだった気もする。
知らないのか? ご主人様からは逃げられない。ですねw
>>622 あれのロランにはかなり驚いた
日替わりの人、黒魔道士の人乙です。
で、毒の爪の使い魔の第35話が書きあがりました。
予定その他が無ければ、22:30に投下開始します。
>>624 しかし、スライムや爆弾岩、シャドーあたりに血があるのかとかいう疑問も……
ではそろそろ投下開始します。
「あ……ああ……」
タバサが飲み込まれた火球と呼ぶ事すら躊躇われる、巨大すぎる炎の塊を見つめながら、キュルケは未だ呆然となっていた。
――あの業火の中に自分の唯一無二の親友はいる…、助けなければ…――
――間に合うわけが無い――
――いや、もしかしたら間に合うかも――
――…そんなわけがない――
――だって……あんな太陽が堕ちて来たみたいな火の中で…生きてられるわけ…――
全くと言っていいほど表情を変えず、無口で大人しい自分とはまるで正反対な性格。
勉強熱心な雰囲気が癪に触り、一度は自分もからかい、はめられたとは言え決闘まがいの事まで行った。
キュルケの脳裏に親友との思い出が蘇る。
フーケの一件、学院での事件、アンリエッタからの任務、…それだけではない。
外へ遠出をする時にシルフィードを使わせてもらった事、暇な時に部屋へ遊びに行った時の事、
色々な思い出が鮮明に次々に浮かんできた。
――もう彼女はいない…――
――共に過ごす事は出来ない…――
――あの日々は…戻らない…――
「キシシシシシシシ! キーーーシシシシシシシシ!!!」
…まだ、あの声が聞こえる。
タバサを殺した…憎い相手の声が聞こえる。
どこまでも、どこまでも楽しそうな笑い声は一向に止む気配が無い。
…何がそんなに楽しいのだろう? 解らない……解りたくも無い…。
いや…解る事は一つある。…この笑い声が酷く不愉快だと言う事だ。
――黙らせてやる…、二度と笑わないようにしてやる!
キュルケの深い悲しみと絶望は、激しい怒りと憎悪に変わる。
風も吹いていないのに赤い髪が逆立つようにして揺れ動く。それはさながら燃え盛る炎の様だ。
身体から、それまで彼女が出した物とは比較にならない魔力のオーラとプレッシャーがあふれ出す。
その雰囲気にルイズとギーシュは気圧される。
「キュ、キュルケ?」
ルイズの言葉にキュルケは反応しない。
ただ、真っ直ぐにジョーカーを――親友の仇を睨み付けている。
その様子にジョーカーも流石に気が付いた。
笑い声を止め、キュルケの方に顔を向ける。
凄まじい形相をした彼女を認め、ジョーカーは口の端を持ち上げた。
「おお…怖い怖い、随分とまた恐ろしい表情をしていますネ〜?」
キュルケは答えない…、代わりに杖を構えた。
周囲のスキルニルジャンガとフーケが反応したが、ジョーカーがそれを止めた。
「まァまァ…そう無粋な真似をしなくても宜しいじゃないですか。
お亡くなりになった友人の仇を討とうと必死に抗おうとする姿……美しいですネ〜♪」
変わらぬふざけた態度にキュルケの怒りと憎悪はそのベクトルを増す。
「ふざけるんじゃないわよ! タバサを…あの子をよくも!!!」
怒鳴るキュルケを見てジョーカーは更に笑う。
「のほほ…、つい興奮の余り昔の笑い方が出てしまいましたよ。いやいや、お恥ずかしい限り…。
それにしても素晴らしいですよ♪ その怒り! その憎しみ! 良いシチュエーションです…、良いシチュエーションです♪」
何処までも馬鹿にした態度――キュルケの中で怒りと憎悪の炎で炙られていた理性が…燃え尽きた。
キュルケは杖を構え、静かに詠唱を開始する。
ジョーカーは特に何をするでもなく、黙ってその詠唱を見物している。――完全に舐めきった態度だった。
(その余裕があなたの命取りよ…)
キュルケは詠唱を続ける。彼女の周囲を炎が取り囲むようにして動く。
炎は徐々に量を増やし、大きく渦を巻く。
――今ならこれを使える…、キュルケはそれを確信しながら詠唱を続ける。
炎が”鎌首を擡げる”。
火、火、火、火。火の四乗。
一度放たれれば敵味方を問わず、戦場に居る者全てを飲み込み焼き尽くす、炎の濁流。
否、それは濁流ではなく…業火の大蛇、恐るべきスクウェアスペル、その名も――
『ボア・プロミネンス!』
炎の大蛇はジョーカー目掛けて飛び掛った。
「何と!?」
ジョーカーが驚きの声を上げる。
迫り来る大蛇を迎撃するべく腕を伸ばす。
しかし、大蛇はその腕に巻きつき、並みの呪文などとは比較にならない熱量で焦がし始める。
「アヂヂヂヂヂヂ!!?」
ジョーカーが悲鳴を上げる。
大蛇はそのまま腕に巻きつきながら、ジョーカーの身体に巻きついていく。
業火がジョーカーの全身を焼いていく。
悶え苦しむジョーカーを見下ろしながら、大蛇が巨大な顎を開く。
それを見つめジョーカーの両目が大きく見開かれる。
途端、大蛇の顎がジョーカーを捉えた。
「あぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!?」
悲鳴を上げながら、ジョーカーは炎に包まれた。
炎に包まれるジョーカーを認め、キュルケは大きく息を吐いた。
――やった…親友の仇を討てた。達成感がキュルケを包む。
…だが、彼女は気が付いていない。フーケもスキルニルもヨルムンガントもまるで動じていない事を。
――炎からヒレの様な腕が伸びた。
「――え?」
キュルケがそれを認識する暇も無い。伸びた腕は槍のように彼女の腹部を貫いた。
衝撃が全身を駆け抜け、貫かれた腹部が燃えるような熱を帯び、激痛が走る。
「あ…、が…」
突然の事に、杖を取り落とす。弱々しい動作で自分を貫く腕を掴む。
「のほほほほ……流石に少〜し熱いですネ」
炎が吹き飛び、全身に薄っすらと焦げ痕があるジョーカーが姿を現す。
その右腕が伸びてキュルケの腹部を貫いていた。
「あなた……まだ…」
「素晴らしい熱さでしたよ…。ですが、まだワタクシを倒すにはまだ足りませんネ〜」
貫いている腕を振り上げる。キュルケの身体も宙に浮く。
そのまま大きく振りかぶり、地面目掛けて腕を振り下ろす。
貫かれたキュルケの身体が腕から離れ、地面目掛けて叩きつけられた。
キュルケの身体が地面を跳ねる。
うつ伏せの状態になったキュルケは全身の痛みに耐えながら身体を起こす。
燃えるような視線でジョーカーを睨み付ける。
「悔しいですか? 憎いですか? それもそうでしょうネ〜。ワタクシはあなたのご友人の仇ですからネ」
ジョーカーはまるで他人事のように話す。
「まぁ、そんなに怒って悲しむ事も無いでしょう。…直ぐに再会できますから」
言ってジョーカーは腕を振り上げる。炎を作るのではなく、そのまま叩きつけるつもりなのだろう。
恐らくは、その一撃で自分の身体はバラバラになる、とキュルケは容易に想像できた。
「では、ゴー・トゥー・ヘブン! お空の彼方でシャルロットさんと仲良くしてくださいネーーー!!!」
キュルケは悔しさを噛み締めながら、自分に振り下ろされる腕を睨み続けた。
絶望的な状況に関わらず、自分を睨むのを止めないキュルケにジョーカーは賞賛していた。
(う〜む…ワタクシを睨む事をお止めにならないとは、肝の据わった人ですネ)
だが、別にそれだけだ。感動だとか、同情だとか、そんな気持ちは微塵も湧いてこない。
手加減は不必要…、今振り上げた腕を振り下ろす。その一撃で終わりだ。
「では、ゴー・トゥー・ヘブン! お空の彼方でシャルロットさんと仲良くしてくださいネーーー!!!」
腕を振り下ろそうとする。
「いい加減にしとけよ…テメェ」
「へ?」
突然聞こえた声にジョーカーは顔を上げた。…その目に靴の裏が飛び込んできた。
――瞬間、ジョーカーの身体は大きく吹き飛んだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!!!?」
先程よりも長く、大きく、悲痛な悲鳴を上げながら、ジョーカーは勢い良く吹き飛ぶ。
地面を何度もバウンドし、滑走し、森の木々を薙ぎ倒しながら一リーグ以上の距離を吹き飛んだ。
その様子をその場に居た全員は、呆然としながら見つめる。
何が起きた? そう考えているキュルケの目の前に一つの影が降り立った。
大きな長身、紫色のその背中を見てキュルケの目が見開かれる。
「あ、あなた…」
彼女の声に彼は振り返る。変わらないニヤニヤ笑いが浮かんでいる。
――その両腕に小柄な少女が抱き抱えられていた。
「タ、タバサ!?」
地面に静かに横たえられた親友に近づく。――鼓動が感じられた。
死んだと思った友人が生きていた…、キュルケの目に涙が浮かぶ。
そして、キュルケは彼を見上げた。
「…随分と遅い登場ね」
「ウルセェ…、俺のコートが無けりゃ、タバサ嬢ちゃんは消し炭になってたんだからよ…感謝の一つぐらいしとけ」
キュルケとそんなやりとりをする、”使い魔”を見ながらルイズは叫んだ。
「遅すぎるのよ! この……バカネコーーーーー!!!」
その声に答えるように、ジャンガはニヤニヤ笑いを浮かべながらルーンの刻まれた左手を見せた。
目に嵌めたモノクルのレンズ越しに、ヨルムンガントの視界を見ながらシェフィールドはニヤリと笑う。
アルビオンでの一件で眠りについていると聞いていたが、こうして現れてくれた。
どうしてもあいつはこの手で叩き潰してやりたかったのだ。
…自分の敬愛するガリア王ジョゼフを侮辱されたのだから。
ジョーカーの意識が途絶えたのか、呆然としていたスキルニルにシェフィールドはミョズニトニルンとして命令を下す。
残っていた数体のスキルニルジャンガが、一斉にジャンガへと襲い掛かる。
本物と同じ能力が数体、しかも相手はルーンを失っている……結果は火を見るよりも明らかだ。
――そのはずだった。
次の瞬間、襲いかかったスキルニルは一体残さずバラバラにされた。
「何…?」
突然の事にシェフィールドは呆然と呟く。
まるで動きが見えなかった…、神速と言えるほどの速度だ。
「木偶が毒爪語るんじゃネェよ…ボケが」
スキルニルを下したジャンガはそう吐き捨てる。
そしてフーケのゴーレムへと向き直った。
その冷たい視線にフーケは背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
しかし、恐怖心を払い除け、前の借りを返さんとゴーレムを動かす。
ゴーレムの腕が振り上げられ、ジャンガ目掛けて突き出された。
ジャンガはそれを避けようともしない。無造作に腕を構え、爪を一閃する。
瞬間、放たれる巨大なカッター。
それは凄まじい威力で持ってゴーレムの腕を切り裂き、ゴーレムの本体を切り刻んだ。
崩れるゴーレムに巻き込まれるようにしてフーケの姿が掻き消える。
過去、随分とてこずらせてくれたゴーレムが一撃で倒れる様を見て、ジャンガは笑みを浮かべる。
「キキキ、調子良いゼ」
「凄ぇぜ相棒!? あのゴーレムも一撃たぁおでれーた!」
背中のデルフリンガーが驚きの声を上げる。
「しかも、しかもだ! 相棒のルーンから感じるぞ、凄い力を。
これは…そうだ、これだ! 俺が感じた…知っているガンダールヴの力!」
どうしたのかは知らないが、随分と興奮している様子だ。
だが、ジャンガは何処吹く風。
「さてと…」
後ろを振り返る。――巨大な剣がジャンガへと振り下ろされた。
ルイズはハッとなった…が、ジャンガは何事も無かったように自分の目の前に着地した。
ジャンガは両脇に抱えていたタバサとキュルケを地面に下ろす。
「邪魔だから下がってな…」
その言葉にルイズはムッとなった…が、事実である以上言い返す言葉が無い。
悔しそうに拳を握り締め、唇を噛み締めるルイズを見つめながらジャンガは笑う。
「まァ、そう気にするな。…あと始末はしといてやる。お前等はドリル頭にでも治しといてもらえ」
そう言い残し、ジャンガはヨルムンガント目掛けて駆け出す。
「キイィィィエェェェェェーーー!」
奇声を発しながら飛び上がり、ジャンガは目の前のゴーレム目掛けて爪を振り下ろす。
しかし、爪は鎧に難なく弾かれてしまう。
驚く間も無く、今度はゴーレムの左手が伸びる。
舌打し、ジャンガはゴーレムの鎧を蹴って飛び退く。
地面に着地するや、今度はゴーレムは投げナイフを放ってきた。
ナイフと言ってもゴーレムが扱うサイズ……その大きさは大剣ほどもある。
合計三本の投げナイフは次々に地面に突き刺さる。それをジャンガは軽やかなステップでかわす。
と、ゴーレムが”跳んだ”。
「ンな!?」
これにはジャンガも驚いた。これまでの動きもそうだが、二十メイルを超えるゴーレムの動きには到底思えない。
跳躍したゴーレムは落下しながら手にした剣を振り下ろす。
「チィッ!」
その場を慌てて跳び退る。落下の速度も合わせた剣の威力は地面を大きく抉るほどの物だった。
巻き起こる粉塵に軽く咳き込みながら、ジャンガは体勢を立て直す。
>>621 あのシーンで仲間モンスターほぼ全滅だったよな
生き残ったのはプックル・ピエール・マーリンぐらいか
戦死:スラリン・ドラきち・メッキー・パペック・ガンドフ・スミス
行方不明:コドラン
っていうかあの時点でスラリンしゃくねつほのお覚えてるんだよな
CDシアターだと出会いと仲間入りから双子庇って死亡そして城に墓まで作ってもらって
リュカ復帰後にも墓参りしてもらってと結構優遇されてるよな
それはさておき支援
『なかなかやるもんだね、流石はガンダールヴ』
突然聞こえたその声にジャンガは顔を上げる。聞き覚えがある声だった。
声が聞こえた先にはゴーレムの顔。その口と思しき部分から声は響く。
『こちらから出向く手間が省けたよ。これで、あの時の借りが返せるって物さ』
「その声…あのガーゴイル野郎か。え〜と…何だっけ…”百舌を寝取る”だったか? いや”百舌を煮る”か?」
ゴーレムから歯軋りのような音が聞こえる気がするが、ジャンガは気にも留めない。
「ああそうだ、”百舌ギトギト煮る”だったな!」
『…ミョズニトニルンよ。でも、シェフィールドと呼んでもらいたいものだね』
――声に僅かながら怒気が含まれていたのは気のせいだろうか?
無論、それすらジャンガは気にしない。
「ああ…そうかよ、メンドくせェな。…で、借りってのは何の事だ?」
『忘れたとは言わせない…、お前がジョゼフ様を侮辱した事を」
「そんな事もあったな。――ッたく、どっかのガキと同じでしつこい野郎だゼ」
『あれは…お前の命でなければ償えない! このヨルムンガントで叩き潰してやるよ!』
「こっちも忙しいんでな…、早くしな?」
ジャンガは爪をクイクイと動かし挑発する。
瞬間、ヨルムンガントが剣を薙ぎ払った。
凄まじい勢いで剣がジャンガの立っていた場所を通り過ぎる。
だが、そこにジャンガの姿は無い。剣にも衝撃のような物は無かった。
一体何処へ? シェフィールドに操られたヨルムンガントは周囲を見回す。
「キキキ、何処見てんだよ?」
声が聞こえた方にヨルムンガントは振り返る。
振り切った剣の切っ先の上にジャンガは何事も無いかのように乗っていた。
「最初は驚いたが、慣れりゃどうって事はねェな」
シェフィールドはジャンガを振り落とそうとするが、遅い。
ジャンガは剣の上を高速で駆け、ヨルムンガントに突撃する。
そして爪を振るい、鎧を斬り付ける。だが、先程同様に弾かれてしまった。
バランスを崩したジャンガはそのまま地面に落下する。
何とか着地した所にヨルムンガントがその巨大な足で踏みつけてくる。
バックステップでそれを避け、ジャンガは距離を取った。
「チッ、何だってんだ…あのゴーレム? ヨルムンガントだとかふざけた名前付けやがって…。
妙に素早いし、鎧も俺の爪を簡単に弾きやがる。どうなってやがる?」
ジャンガの独り言にデルフリンガーが答える。
「ありゃただのゴーレムじゃねぇな、恐らくエルフの先住の力が使われてる。
鎧に爪が弾かれるのもただ硬いからじゃない、カウンター<反射>がかけられてるからだ」
「あの長耳のかよ…、チッ、メンドくせェ」
「だが、大量にカウンターを使ってるお陰で鎧自体に攻撃は届いてる」
「あン? そりゃどういう意味だ?」
「要するにだ…、相棒の攻撃は弾かれただけだろう? 前のエルフの時は弾かれただけじゃなく、吹き飛ばされていた。
つまり、カウンターの反射能力は弱まっているのさ。何しろあの巨体だ、カウンターの密度も相当薄くなってるはずだ」
「…なるほど、ゴムが伸び切ってる訳か」
どんなに厚いゴムでも、伸ばして使えば薄くなり、千切れやすくなる。
カウンターもエルフ一人とヨルムンガント一体では覆う範囲が桁違いなため、必然的に反射能力も弱まっているのだ。
何にせよ、エルフの時とは違い、直接攻撃が届いているのは大きい。
ジャンガはニヤリと笑う。
「だとすりゃ…」
呟き、駆け出す。
その動きにヨルムンガントもすぐさま反応する。
剣が振るわれ、大地に一撃が叩き込まれる。
巻き起こる粉塵、そこから飛び出す四つの影。
「何処見てやがる、ボンクラ!」
叫びながら四体に分身したジャンガは四方に散開する。
『チッ』
シェフィールドの忌々しそうな舌打が聞こえる。
四体のジャンガが爪を口元に寄せる。
大きく息を吸い込み、閉じた爪と爪の間に息を吹き込んだ。
すると、爪から次から次へと緑色の泡が生まれ、飛んでいく。それはまるでシャボン玉の様だ。
次々に生まれた緑色の泡はヨルムンガントの全身で破裂していく。
しかし、特に何かが起きる様子は無い。
『それは何の真似? 隠し芸なら別の場所でやりな!」
シェフィールドの声が終わる前に、ヨルムンガントが動いた。
大剣が地面を抉る。しかし、ジャンガはその場をすぐさま飛び退いている。
そして、別の場所から再び泡を生み出し、ヨルムンガントに吹きつける。
『まったく…無駄な事をしてるんじゃないよ!』
馬鹿にされている様に感じ、シェフィールドは苛立ち叫ぶ。
ヨルムンガントの動きは更に早まり、四方八方に剣を振るい、跳躍して踏みつける。
しかし、ジャンガはその攻撃を尽くかわし、泡をヨルムンガントに…特に胸板と大剣に集中して吹き付けていく。
かわしては吹き付け、吹き付けてはかわし、そんな攻防が暫く続いた…。
ヨルムンガントの大剣や鎧を見つめながらジャンガは考えた。
(そろそろか…)
泡を作り出すのを止め、分身を消した。
シェフィールドはその唐突な動きにいぶかしむ。
だが、相手が何を考えていようとこのヨルムンガントに傷一つ負わせられないのは最早明白なのだ。
今更何をされようと恐れるに足りず。
『これで終わりだよ!』
大剣が振るわれる。その先にジャンガが居たが、避けようともしない。
ジャンガはヨルムンガント――否、それを操るシェフィールドに向かってニヤリと笑みを浮かべて見せた。
振るわれた大剣目掛けてジャンガは爪を叩き付けた。
ビシッ、バキンッ!!!
鉄が砕ける音が聞こえ、大剣がボッキリと折れた。
その場に居る誰もが呆然となった。幾らなんでも冗談だろ? と思った。無理も無い。
二十メイル以上もあるゴーレムの使う大剣が、二メイルそこらの亜人の一撃で折れるなど誰が予想できようか?
剣を振り切った姿勢のまま、ヨルムンガントは硬直する。
どうやら操っているシェフィールド自身も驚きを隠せないようだ。
その隙を見逃すほど、ジャンガは甘くない。
再び分身し、一気に間合いを詰め、飛び上がる。
先程泡を吹き付けていた胸板目掛けて凄まじい勢いで爪の斬撃、カッター、蹴りの嵐を叩き込む。
ビシシシシ!
大きな音がしてヨルムンガントの鎧に罅が入る。
ジャンガは分身を足場にし、大きく飛び上がった。背中の鞘からデルフリンガーを抜き放つ。
「オイ、ボロ剣! 解ってるな!?」
「…また”あれ”かよ」
デルフリンガーはぼやく。
ジャンガは大きく振り被り、デルフリンガーを投げる。
そのままヨルムンガントの鎧の罅に突き刺さった。
そのデルフリンガー目掛けてジャンガは空中で回転しながら飛び掛る。
「歯ァ食い縛れ!」
「ああ、もう仕方ねぇ! 俺も腹括る! 思いっきりやれ、相棒!」
デルフリンガーの叫び声が響く。
回転しながら突撃したジャンガは強烈な蹴りをその柄の先端へと打ち込んだ。
そのままデルフリンガーを引き抜き、飛び退く。
一瞬の間を置き、ヨルムンガントの鎧の胸の部分が砕け、大穴が開いた。
ヨルムンガントが二、三歩後ろへよろめいた。
『何故…、どうしてこうも簡単に?』
信じられない、と言った感じのシェフィールドの声が聞こえる。
「教えてやろうか」
ジャンガはコートに付いた土などを払いながら、立ち上がる。
「今し方、お前が隠し芸だとか無駄な事だとかぬかしてくれた奴が原因さ」
支援
『何だって?』
「ジャンガバブル……毒の爪の毒素を泡にして飛ばす事ができるのさ」
『まさか…』
「そう、そのまさか。腐食性の猛毒をそのゴーレムの全身に吹き付けてやったんだよ。
得物と鎧の胸板に特に集中してな。多少掛かったが、効果は上々だゼ」
シェフィールドは悔しさに歯噛みした。
――まさか、あの泡にそんな意味があったとは…。完全に見くびっていた。
急いでヨルムンガントを動かそうとするが、上手く動かない。
既にヨルムンガントの各部関節などは腐食し、本来の機動性は失われつつあったのだ。
錆付いたロボットのようにぎこちない動きをするヨルムンガントを見据えながら、ジャンガは懐からハンドライフルを取り出す。
弾倉を替え、その狙いをヨルムンガントの胸に開いた大穴へと定めた。
「お祈りでもしときな…」
――この場にジャンガは目覚めてから真っ直ぐ来た訳ではない。
来る前に彼はちょっとした寄り道を行っていた。
火の塔の傍に立てられた小屋。
それは最早主人の失われて久しい、みすぼらしい掘っ立て小屋。
部屋の中にも多少埃が積もっていた。
ジャンガはこの小屋の生前の主人が発明家だという事を知っていた。
そして、小屋に様々な秘薬やら道具やらが溢れている事も。
小屋の中をある程度調べ、使えそうな物を片っ端から引き出す。主人の作ったと思しき”発明品”も含めて。
それらを見つめながらジャンガはポツリと呟く。
「あれだけ好き勝手言ったんだ…、迷惑代として使わせてもらうゼ…”炎蛇”」
そしてジャンガは作業を始めた。
ジャンガは口の端を釣り上げ、ニヤリと笑い、爪を引き金に掛けた。
「こいつは奴との合作…、威力は文句無し…、遠慮なく受け取れや…、こいつは――」
思いっきり引き金を引く。
「サーーーービスだァァァーーーーー!!!」
叫び声と同時に”砲”の音が響く。反動でジャンガの身体も後ろへ跳んだが、空中で受身を取り着地する。
放たれた弾丸は寸分違わず、ヨルムンガントの胸の穴に吸い込まれる。
瞬間、ヨルムンガントは内部から爆発、四散した。まるで、ヨルムンガント自体が爆弾になったかのように。
ヨルムンガントが吹き飛んだのを見届け、ジャンガはハンドライフルを見つめる。
自分に色々と言ってくれた二人の道具を勝手に使わせてもらっているが、おかげで随分と助かった。
「まァ…テメェは嫌がるかもしれないが、生徒助けてやってるんだから納得しとけ」
掘っ立て小屋の主に向かってジャンガはそう呟いた。
「もらったよ!」
何者カの声が響く。
ボコッ、ボコッとジャンガの周囲を取り囲むように、土の壁がせり上がる。
ジャンガはその場を飛び退こうとするが…できなかった。両足を地面から伸びた土の腕が掴んでいる。
土の壁は半球形のドーム状になってジャンガを覆い尽くす。
「ジャンガ!?」
その光景を見てルイズは叫ぶ。
「案外上手くいくもんだね」
ルイズ達は声の方へ振り向く。
先程ジャンガが倒したゴーレムの残骸である土塊の山から、フーケが姿を現した。
真正面から立ち向かって勝てる訳が無い事を彼女は既に学習していた。
故に決定的な隙ができるのを土塊の中から、虎視眈々と狙っていたのだ。
…そして、チャンスは訪れた。
「これで終わりさ!」
ゴーレムが地面から再度姿を現す。豪腕を振り被り、土塊のドームを力任せに叩き潰した。
ドームは粉々に打ち砕かれ、土塊が辺りに飛び散る。
「ははは! あっけものだね!」
笑うフーケ。――直後、ゴーレムがズタズタに切り裂かれる。
「え?」
唖然とするフーケの後頭部にゴリッと硬い何かが押し付けられる。
「馬鹿みたいに笑ってんじゃねェよ…、コソドロが」
フーケは息を呑んだ。いつの間にか、背後にジャンガが立っていた。
「くっ…」
「あの程度で隙を突いたつもりかよ? 甘いゼ…、キキキ」
ジャンガはそのままフーケを地面へと押し倒す。
背中に足を乗せ、ハンドライフルの銃口を向ける。
「さてと…、俺は二度もチャンスをやるほど甘くねェ」
「…そんな事、解りきってるさ。あんたは外道だからね」
「確かにそうだがよ…、年端行かないガキ殺そうとした奴に言われたかねェな〜?」
「やるならやりなよ…」
「そうかい? なら遠慮無く殺らせてもらうゼ」
「フン」
忌々しげに鼻を鳴らし、フーケは静かに目を閉じた。
…だが、いつまで経ってもその時は来ない。
どうしたんだ? とフーケが思った時、背中が軽くなった。
「…と、言いたいとこだがな。止めとくゼ…」
ジャンガは言いながらフーケから離れ、ハンドライフルを懐にしまう。
フーケは怪訝な表情を浮かべながらジャンガを見上げる。
「どういうつもりだい?」
ジャンガは両手を広げ、おどけてみせる。
「どういうつもりだって言われてもな…、見たとおりだゼ?」
そして、真剣な眼差しを向ける。
「行けよ…」
「何?」
「行けって言ってるんだよ」
「……」
「そう睨むなよ…、何も裏は無ェ。――お前は俺と同じみたいだからな」
「同じ?」
「ああ…。大方、上の奴から力で捻じ伏せられて、裏方に落ちたって事だろ?」
…図星だった。苦い表情で黙るフーケを見てジャンガは確信する。
「やっぱりな」
「同情ならいらないよ…、余計なお世話さ…」
「ああ、お前個人だけなら別に同情なんかしてねェよ…」
「ならどうして…」
ジャンガはため息を吐く。
「居るんだろ? 待ってる奴が」
「な…?」
「あの港町でテメェが見せた寂しげな表情……もしかしたらと思ってな」
「……」
「やっぱり同じだ…、俺もお前と似たような経験があるからよ。
ほら行け…。ただし…二度と、俺の前に敵として現れるな。それが条件だ」
暫しフーケは悩んだが、やがて大きく息を吐いた。
「……礼は言わないよ」
背を向けてそう言うフーケに対し、ジャンガは鼻を鳴らす。
「必要無ェ…、テメェを待ってる奴に同情してやったんだからよ…」
フーケはその場を走り去った。
その背をジャンガは静かに見送った。
「良かったのか、相棒?」
デルフリンガーが声を掛ける。
「さてな…、ただの気紛れだしよ。まァ、もう一度敵として現れたら、そん時は遠慮無く潰すさ」
そしてジャンガは空を見上げる。
無数の竜騎士と巨大な戦艦、まだまだ片付ける相手は残ってる。
さて、空の相手をどうするか? 悩んでいると傍にシルフィードが飛んで来た。
背中には未だ傷が癒え切っていないタバサの姿がある。
その姿を見つけ、ジャンガは顔を顰めた。
「テメェ…無茶すんじゃねェよ?」
「大丈夫…、何とか…なる」
息も絶え絶え…、可也無理をしているのが手に取るように解る。
ジャンガはため息を吐いた。
「ったく、頑固な所はあのクソガキと変わらね――」
次の瞬間、ジャンガは伸びてきた巨大なヒレを爪で受け止めた。
突然の事にタバサもシルフィードも呆然となる。
ジャンガは巨大なヒレとつばぜり合いを続けながら、口を開く。
「…下がってろ、死にたくなけりゃな」
その言葉にシルフィードは慌ててその場を飛び退いた。
ジャンガは腕に力を込め、ヒレを弾く。
ヒレは彼方の森の中から伸びている。
その森の木々を薙ぎ倒し、巨大な影が姿を見せた。
そのままジャンガ目掛けて飛び掛る。
「ジャァァァーーーンガちゃァァァーーーん!!!」
叫び声と共にジョーカーがヒレ状の腕を振り下ろす。
それをジャンガは爪で受ける。
その一撃で攻撃は終わらない、次から次へと目にも留まらぬ速さでジョーカーは攻撃を繰り返す。
巨体に似合わぬ俊敏すぎる動きだ。
それをジャンガも真っ向から受け止めていく。
その攻防の凄まじさに誰も声が出ない。…メイジや剣士は愚か、数多の亜人にもこれほどの動きはできないだろう。
暫く打ち合い、互いに距離を取る。そのまま静かに睨み合う。
静寂が辺りを支配し、時だけが過ぎる。
太陽は更に隠れ続け、辺りを支配する闇も暗さを増す。
「何で…」
静寂を破ったのはジョーカーだった。
「何でですか?」
「何でってのは何だ?」
ジョーカーはため息を吐いた。悲しそうに表情を歪める。
「向こうでの……いや、こちらでも再会したばかりのジャンガちゃんは素敵でした。
人を人とも思わぬ冷酷さ…、簡単に相手を殺せる残忍さ…、全てが素敵でした。
なのに……これはどう言う事なんですか? 何で…こんな馬鹿馬鹿しい正義ごっこなんかするんです?」
「…馬鹿馬鹿しい?」
そう答えたのはタバサだ。
タバサは痛む身体に鞭打ち、シルフィードから降りるとジョーカーを睨む。
「馬鹿馬鹿しくなんかない…、ジャンガは…昔を思い出しただけ。昔の自分を…取り戻しただけ…」
「それが馬鹿馬鹿しいと言うんです…、昔が何ですか? そんなもの…過ぎ去った下らない事ですよ。
…ワタクシの知っているジャンガちゃんはとても素晴らしい…、あまりにも素晴らしすぎる…。
なのに、そんな今更忘れ去られた過去を穿り返して、困らせないで欲しいですネ?」
ジョーカーはタバサを睨み付ける。
しかし、タバサも引かない。
「それこそ…あなたの身勝手な考え…。自分が見た物が…妄想だという事を認められない…。
だから、自分の中の理想でなければいけないと…我侭を言っているだけ…。
ジャンガは…あなたの中の欲求を満たすだけの…玩具じゃない…」
「貴方こそ、後からでしゃばって来たくせに偉そうな口を聞かないで欲しいですネ。
大体…最初は貴方もジャンガちゃんを嫌悪していたでしょう? なのに…ジャンガちゃんの過去を知ったとか言って口出しをする。
それこそ身勝手なのではないですか? 今更なのではないですか? 子供の考えですネ…」
タバサは暫し俯き、顔を上げる。
「そう…わたしも子供だった、色々と…。でも…彼に、ジャンガに色々と教えられた。
復讐だけが全てじゃない…、周りを拒絶せずに…自分の周りの人を大切にする事が大切なんだと…、教えてくれた」
支援いたそう!
「それが何ですか? まさか…だから本気で貴方を心配したとでもお思いなんですか?
ぷぷぷ…そんな事がある訳無いじゃないですか。大方、気紛れでしょうネ〜」
「それこそ……あなたの身勝手な妄想…」
「うるさいですネ…。掛け値無しの外道! それこそがジャンガちゃん! ワタクシの唯一無二の親友!」
「親友なら…もっと相手の事を知るべき…。それをしないで…自分の理想のままでいてもらおうと駄々をこねる…。
あなたは…子供。親友という言葉も……彼を手放さないようにするための…鎖。…あなたは、親友なんかじゃ…ない」
「……下手に出ていれば、小娘が生意気な口を――」
「ウルセェェェェェェェェーーーーーーーーーー!!!!!」
ジャンガの叫び声にタバサもジョーカーも、離れた所で事の成り行きを見守っていたルイズ達も息を呑んだ。
大声を出した後だからか、肩で大きく息をするジャンガ。…その顔には苛立ちが多分に見て取れた。
ジャンガはタバサとジョーカーを交互に睨み付ける。
「テメェら…何勝手に人の事で、あ〜だ、こ〜だ、くっちゃべってるんだよ? 正直ウゼェ…ウザすぎる!」
誰も何も言わない。
ジャンガは言葉を続ける。
「俺が外道だとか…昔がどうだとか…、ンな事ァ今更何にもカンケェねェんだよ! バァーーーカ!!!」
「で、でも…ジャンガちゃん?」
ジョーカーが口を開く。
それをギロリと睨み付ける。
その凄まじい眼光に一瞬たじろぐ。
「テメェの言うとおり俺は外道だ!」
「…はい?」
間抜けな声を漏らすジョーカー。
続いてタバサを睨む。
タバサもその形相に身が竦む。
「お前の言う通り、過去に色々ありもした!」
その言葉にタバサも呆然となる。
ジャンガは両者を睨み、口を開く。
「だがよ、それが今更なんだってんだ!? 今し方言ったが、カンケェねェんだよ!
俺は俺の好きなように、思うままに動いてきたんだ! 俺は自分で道を選んできた!
そうだ、誰かに言われたからじゃねェ! 俺が自分でやってきたんだ! そこに後悔だとかは微塵もねェ!」
そこで一旦言葉を切り、ため息を一つ吐く。
「まァ…確かに、後悔みたいな物をした事も何度かあった。…くだらねェ奴等に色々と人生捻じ曲げられた事もあった。
だがよ? それも含めて…俺の人生だ。他人が口出しするような物じゃねェんだよ」
ジョーカーがそこで口を開く。
「なら、ジャンガちゃん? 今の正義の味方ごっこもジャンガちゃんが好きでやっていると?
誰かに言い包められたからじゃなく?」
ジャンガは、ハァ? と呆れた表情を浮かべた。
「オイオイ…俺がいつ”正義の味方”なんて下らない物になったんだよ?」
「へ?」
「正義なんて物はな…この世には存在しねェ。いや、真っ白な奴は居ねェ…って言った方が正しいかよ?
世の中、全員が大なり小なり悪事をしてるんだよ。あそこの姫嬢ちゃんはテメェの尻拭いで友人利用し、
その友人のクソガキは下らねェプライドを振り翳して貴族だ何だと威張り散らす。
気障ガキはテメェを慕う女裏切り続けるダメ男、ドリル頭はクソガキと同じ威張りや、
雌牛は自意識過剰の我侭女で、ここにいるチビガキはくだらねェ事で周りを拒絶し続ける文字通りのガキだ!
解るか? これだけみても真っ当な白い奴はいないんだよ、悪事を犯さない奴はいないんだよ。
絶対正義なんざ御伽噺……それこそ、始祖ブリミルか神様、仏様位だな」
「では…ジャンガちゃんはここにシャルロットさん達を助けに来たんじゃないんですか?」
「まァ、結果的にはそうなるかな? でもよ、今言ったとおり…別に正義だ何だとか言うつもりはねェよ」
「では…どうして?」
「ンな事決まってるだろ?」
ジャンガは嫌みったらしく笑う。
「テメェの玩具箱を荒らされたのが腹立たしかっただけだ」
支援
支援
「お、玩具箱?」
「そうさ…玩具箱。このトリステインは俺の玩具箱だ」
大仰な仕草で両手を広げる。
「実に遊びがいのある玩具箱だゼ、ここは。色んな玩具がそこかしこに転がっていて、見ているだけでも厭きないな。
遊んでやったら尚更だ。色々と躾け外のある輩も多いしよ。だから…この玩具箱を荒らされるのは我慢ならねェんだよ。
そんな訳だからよ…ジョーカー? 俺はまだまだここで、この玩具達で遊んでいたいんだ…。
悪いが…これ以上玩具痛めつけるのは止めてもらうゼ…」
「……」
ジョーカーは暫く沈黙し――唐突に笑い出した。
「のほほ、のほ、のほほほほほほ」
一頻り笑い続け、沈黙する。
「……解りました。ジャンガちゃんらしい答えです。…いえいえ、ワタクシも少しばかり我侭が過ぎました」
ジャンガは答えない。
「ですが……ワタクシもワタクシの事情と言う物があります。
幾らジャンガちゃんの頼みと言えど…”はい、そうですか”とは言えませんネェ〜?」
「ほゥ? なら…どうする?」
ジャンガとジョーカーは互いに睨み合う。
「そう言えば、ワタクシ達…”ケンカ”と言う物をした事がありませんでしたよネ?」
「ああ、互いに相手に合わせていたからな…、そんな事は一度も無かったな」
「では…これが”初めてのケンカ”という事になりますよネ?」
「そうだな…キキキ」
「のほほ」
互いに笑う。だが、場の空気は決して笑える雰囲気ではない。
ジャンガは唐突にハンドライフルを取り出し、デルフリンガーの鞘を外す。
それらを纏めてタバサに預けた。
「それ持って下がってろ、二度は言わねェ」
タバサはシルフィードと共に大人しく下がった。
それを見届け、ジョーカーに向き直る。
「下らない横槍は使わねェ。何しろ、これは俺達の記念すべき初のケンカなんだからよ?」
「ジャンガちゃん…拘りますネ〜」
それっきり、互いに口を閉ざす。
辺りを静寂が覆う。
タバサもルイズもキュルケもアンリエッタも遠い森の中のシエスタも息を呑んで見守る。
太陽が遂に二つの月に覆い隠され、夜のような暗さが辺りを覆う。
――風が吹いた。
――ジャンガの爪とジョーカーの腕が真正面からぶつかり合った。
------------------
以上で投下終了です。
キュルケのオリジナル魔法第二段。シチュエーション的にはタバサの対ビダーシャルの時とほぼ同じです。
蛇みたいに見えるんですよね…太陽のアレ。
で、今回自分の中の正義と悪についてをジャンガ通して語ってみました。
世の中に絶対間違ってる事はあっても絶対に正しい事は無い…って、どっかで聞いた事があるんですがね。
まぁ、実際そんなものでしょう。人それぞれに正しい事、間違った事ってあるんですし。
何より一番言いたい事――ジャンガは良くも悪くもフリーダム♪ って事です(笑)
そして、いよいよ本格的にジャンガ&ジョーカーの大喧嘩が始ます。
基本的にはデモンベインのカリグラ&クラウディウスのそれを思い浮かべていただければよろしいかと。
長かったですが、あと一、二話位でアニメ第一期分も終わりそうです。
では、また次回。アーディオース!
乙でした〜
毒の爪の更新まであるとは
今日はマジで祭りだわ。
>>619 マスターLV以下の敵を全滅させるマカニトも怖い呪文だよ
回避不可で一瞬で塵にされるんだぜ?まあ灰からでも復活できるような世界だけど
久保の人乙、最後まで読ませてくれて感謝する
途中ゼノギアスのディスク2かと思ったのは秘密
日替りの人も乙、DQはWIZが原型なんだよねそう言えば
そういや日替わりの中ではエイジスがプチタークを召還してたっけかな。
契約ルーンがガンダールヴで、デルフも所持していたし。
リュカ一行の敵になるとは正直考えにくいが
なったらなったでルーン補正+魔法吸収でパネエ事になりそうだ。
後テファがピサロを召還してたな。
ルーンが胸に刻まれた描写からすると記すのがはばかれる奴か。
ひょっとしてフーケを模倣犯ですませたのは
こいつの来襲を避けるためだったのか?
契約受け入れたのもテファの存在が大きいみたいな感じだったし。
毒の爪の方、投下乙です!
>「俺が外道だとか…昔がどうだとか…、ンな事ァ今更何にもカンケェねェんだよ! バァーーーカ!!!」
いや〜、実にジャンガらしい啖呵ですねw
そこに痺れる憧れるぅ!
何だかんだ言ってもタバサをちゃんと助けてるジャンガ、その理由も実に彼らしい理由w
次回の大喧嘩もどうなるか楽しみだ!w
>>646 ゼノギアスDISK2は私も思った。
けど、最後まで書き上げたのは本当に凄いと思います。
ともあれ久保の人お疲れ様&GJでした〜
日替わりの人乙。その展開だと個人的にはレックスに使い魔やらしてみたい。
ぅわーお、久保さん黒魔さん日替わりさん毒爪さん乙乙乙乙ー
久保さん
すっごい頑張って完結させましたねぃ。
綺麗な終わり方だったと思います。本当にお疲れ様でした
黒魔さん
……いかん、だんだんビビに萌えてきた。宝石屋台のやりとりとか姫様に褒められた時の反応とか妙に可愛いモノローグとか(ry
誰か俺にエスナぷりぃず
日替わりさん
タバサ(妹)→レックス→ルイズ→リュカ→フローラ(最キョウ)
の図式が浮かんだw 今後に期待させていただきゃーす
毒爪さん
1リーグ吹っ飛ぶてw ジャンガすげーw
ジョーカーのヤンデレが治った!? はてさて戦の結末はどうなるやら
◇を透明アボーンにしてたせいで気づいたのがさっきだった
こんなドジは俺だけでいい
>>647 ルイズ→リュカ:ヴィンダールヴ
ヴィットーリオ→プチターク:ガンダールヴ
ティファニア→ピサロ:はばかれる者
こうなるとジョゼフの使い魔が気になってくる
シェフィールドじゃない場合誰が来てるのか…
ミョズならエビルプリーストとかゲマとかじゃね?
びあんk
GWが終わる……
ソーサリーとMtLが結局来なかったorz
まだかなまだかなー
>>655 語るのも憚られるフローラルート後の独身年増女wwww
本人的にも語ってなんかほしくなかろうに……。
フツーに村人Aとくっついて肝っ玉母ちゃんやってそうな気がするぜ!
まぁ、普通にプレイしていたら、ビアンカを選ぶだろうしなぁ。
俺は、あの当て馬っぷりがたまらないので、フローラ一択だが
いたストのフローラが(ry
フローラ一択だな、フローラ自身の魅力が俺にそう選択させる
アンディなんかに本命の嫁はやらねー! 中古で我慢しろバーカ!!
イケメンリア充に不幸な生と死を! 呪われろ呪われろ呪われろ
嫁に浮気されて赤の他人の子供を自分の子と錯覚して育てて老後は一人捨てられろー!
いたストのチョーゴーマーンなフローラを見るとやはりデボラの妹なのだと今更ながらに思うw
いたストフローラは、アレはアレでなかなか…
アクマ…
アレはなんかもう悪意をじっくりコトコト煮込んだスープだったな
ギャップあり過ぎてネタにしたって笑えなかったぜ
そう言えば新嫁のズボラってどんな性格か知らないんだが
良い話を聞かないってことはやっぱりアレなのか?
スレ違いかと
新しい話題を振れない俺はスレ違いの一言を誰かが言うのを待っていた
でも結局話題はないね、しょうがないね(AAry
>>667 お察しください
じゃあモンモランシーについて語ろうぜ。
かわいい。
かえる
話題を変えるということでモンモランシーの使い魔のカエルについて語ろうぜ!
モンモンがトードマン召喚
さっきガノトトス討伐したのが原因なのか
湖に飛び込んだ所にトトスが飛び付く姿を幻視した
トードを召喚したルイズがかえるのうたでカエルにされて大冒険
そんな小ネタが思い浮かんだが、よくよく考えると詰まらないと思い至った
>>674 ガノトトスは小ネタにあったよ
カエルの為に鐘は鳴る
今ひどい自演を見た気がする
モンモランシーねぇ…
なんで家名と名前がほぼ一緒なんだろう。
別に運命の子とか一族始祖だけが持つ力を持って生まれたとかいう訳でも無いのに。
>>678 そういう家の決まりらしい。
と、MtLでは説明されていた。
>>678 長女の名前はそうなるのがモンモランシ家のしきたり。
ソースは兎塚エイジの画集に寄稿されてる原作者の短編。
ちなみにMtLにはその手の小ネタやマイナー設定が結構拾われてるね。
MtLでそんな描写あったっけ?ちょっと読み直してくる
と思ったが今から行くと確実に貫徹コースなので明日にしよう
そういやGWだってのにMtL来なかったんだな…
>>677 あからさまな自演に触っちゃいけませんって茶色い人が言ってた
>>679 ノボル的にはどうだったんだろうね。
1)後々名前に何か意味を持たせるつもりだった
2)モンモランシの響きが気に入った。
3)名有りモブのつもりだから適当に。
後は何だろう?
>>678 トスカーナ地方の慣わしで長男に「姓」の単数形を「名」として付けることがある(eg.ガリレオ=ガリレイ)
トリステインかモンモンの生家に似たような風習があったってことでおk
>>681 3章39話に1行でさらっと書いてるよ。
>>684 サンクス!読みに行ってみたら本当にさらっとで拍子抜けしたぜ
結構どうでもよさそうな細かい部分に設定があるもんなんだな
>>683 へーそうなんだ。わかりやすい例でものすごい納得した。 dクス
アンパンマンを召喚するのもありカナ
://www.nicovideo.jp/watch/sm6692557
アンパンマンの顔はただのアンパンじゃなくてジャムおじさんが特殊な方法で焼いてるらしいぞ
アンパンマンだけ召喚しても1週間も経てば首無しマンになる
ジャムおじさんとバタ子さんはあの世界唯一の人間な訳だが、絶対に別世界の変人科学者だと思う。
ジャムおじさんもバタ子さんも妖精って設定じゃなかったっけ?
いちごえほんに載ってた頃は妖精だったような
あとで設定変わったのかも
あの面で妖精かよ…
ゲームブックだと、呪文が素敵だったかね。
ドラクエは。
血は凍れ 心臓は破裂しろ 体液は沸騰して飛び散れ ザラキ みたいな感じで
あんぱんマン作るには勇気の花が絶対必要なんで他の世界で活躍するのは無理
あとジャムおじさんとバタ子さんは妖精だって作者が画集で明言してる
逆にどこで彼らが人間だって作中で語られてたのかを知りたい
>あの面で妖精かよ…
トロールだってホブゴブリンだって妖精の1種だぜ
シエスタ祖父をジャムおじさんにすればいけるかも
そういえばゼロ魔にはゴブリンって出てこないな
ザキ系とかムド、ハンマとかの即死系の術って目に見えないのが一番怖い理由じゃない
かな〜と思う、他の魔法とかは氷とか火とか出るけど行き成り目に見えるモノが何も
無いのに死んだらそうとう怖いと思う。
>>699 死ねって言われたら死んじゃうようなものだからな……
701 :
689:2009/05/07(木) 10:04:24 ID:6M51+QEh
>>695 そんなに熱くならんでも…
あの世界が妖精界で住人全てが妖精であり、ジャムおじさん達もそれに含まれるのは知ってるよ。
やなせ先生がインタビューでジャムおじさん達は人間ですか?と言う質問に「いえ、妖精です」とハッキリ答えて
>>693と同じ事思ったものw
昔、アンパンマン号開発してるのを見た時に思った事を書いただけなんだが、気に触ったのならスマン。
食パンマンならなんとかなるじゃない?
顔スライスして行けばアンパンマンより持ちそうじゃね?
顔に固定化でいいじゃん
食べられなくなるけどw
それでもマルトーさんなら……
マルトーさんなら何とかしてくれる!
アンパンマン「ぼくの顔をお食べ!」
ルイズ「・・・何この気持ち悪い味のフライド・ビーンズは?」
*欧州人は餡子の甘味や旨味を認識できないことが多いようです
1 マルトーさんががんばる
2 シエスタがジャムおじさんの血筋
3 宝物庫に破壊の杖の代わりにパン工場がある
4 なんとなく当然のようにジャムおじさんがいる
原作でもなぜいるとか誰も気にして無いしなんとなく
いてもおかしくないよな?
超遅レスだがDS版DQ5のデボラはかなり強烈。
ツンツンツンツンデレくらいの人。冷静なエレオノール姉様と言えばどれくらいキツイか解ってもらえると思う。
初対面の主人公に向かって「まぬけ面」「小魚みたい」とか言ってのける人だからなぁ…。
評価する所はちゃんと評価してくれるのでそこはまだましですが。
ちなみに、割と戦士系の能力なので戦力としては微妙に使いづらい。
最強武器が魔神の金槌or奇跡の剣あるいはグリンガムの鞭、最強呪文がベギラゴンって辺りが…。
「ミュータントニンジャタートルズ」から召喚
ただしミュータント・フロッグスを。
>>709 マルコメがカバオ君ポジションになるのが見えた。
食い物関連なら、忍術学園最強の女、食堂のおばちゃんがいる。
「おのこしはゆるしまへんでー!!」
誰一人食事を残せなくなりマルトー感涙。
全員がマルコメみたいな体系になるというオチですね、わかります
食堂のおばちゃんといえばウルトラマンメビウスのCREW GUYSのおばちゃん。
侵略異星人すら操れない強靭な精神の持ち主。
ダイ大でザボエラがザラキを使ってたなあ
「この死の言葉に負けたときお前は死ぬる!」
ザキ系は耳を塞いだら防げるのかしら
黄金聖闘士の牛さんは鼓膜破れても聞こえてたぞ
(あれは死の言葉じゃなくて笛の音だが)
死の踊りは目を瞑ったら防げそうだが
氏の踊りは防げてもそのまま撲殺されると思う>目を瞑る
聴覚にしろ視覚にしろ、即死呪文警戒で感覚一つ封じればアンブッシュ食らう可能性が上がるし戦術上重要な要素になるだろうなぁ
とりあえず1d20でSTに成功すればおっけ
>>715 死の呪文って言っても本質は呪殺だから意味なかったと思う
ダイだったかロト紋だったか忘れたけど鼓膜破っても脳内に直接聞こえてくるっつー描写が有った筈
ソレントの笛も脳に直接響くんだったなぁ。
死霊の盆踊りなら、かなりの精神的ダメージが
なに!キタキタ踊りですと!?
踊りならVIP先生だな
しかしおまえらどんな元ネタの物が来ても絶対ある程度詳しい奴居るな
おかげでしょっちゅうゼロ魔と全く関係ない方向にずれるんだよな
趣味趣向が似通った奴らがゼロ魔を主軸に集まったスレだからな
ここに来るまでゼロ魔なんて名前しか知らなかった
まとめWikiを見るだけで1日最低2万件
一人が4、5回踏むとしても数千人は見ている人がいる計算になる。
ゼロ魔一巻しか読んでないけどここ来てる
気に入ったら2巻、3巻と買ってコンプリートするんだ
ゼロ魔原作読者は平均売上部数の1/100くらいは居るのかねぇ?
俺なんかゼロ魔全く知らないけど
ここの作品を読み漁ったおかげで
大体のストーリーや設定はつかめてる
つもりだ
全く知らないでよく楽しめるな。
端折ったりしてる部分もあるだろうし、読んでた方が間違いなくもっと楽しめるのに。
まぁつかめてる“つもり”なものを声高に言うことはないな
このスレで知って今やっと6巻まで読み終えた
やっぱ書くつもりがあるなら最新刊+外伝3つも読み終えてからの方がよさげかね?
全部読むことをおすすめする
途中まで読んでから書くと後に明かされた新設定が矛盾になることも多いし
実際新刊が出るたびに職人の何人かは頭抱えてるみたいだし
避難所には現行の設定を貫くのも一つの手だと言った人がいた気がする
俺も最新巻は読んどいてほしいけど
12巻読んでタバ冒3巻読んだら驚いたよ
タバサはやっぱりかわいいなぁって
>>738 レスthx
しかし困った事に今度の給料日は絶望的臭い…なにせGWが16連休だしなぁ…
「必ず読め」などとはいわないけど原作を読んでいたほうがより楽しめるSSがあるのは
確かだと思うのです
あとがきのために読んでる
ここでゼロ魔知ったんだけど、原作の方にはイマイチのめり込めない俺がいる
序盤のサイトとルイズのおバカっぷりがどうもなぁ
読み専のうちはまぁ、原作未読でもいいかなぁと思ってる
おかげでサイトがどんなヤツなのか未だもってよく分からんぜw
wikiで今度のトランスフォーマーの映画の項目を見てたら
まさかのブラックアウト復活確定でござるの巻
予告ムービーにスポルコノックが映ってたからよもやと思ってたんだよな……
ディセプティコンの人がどうするのか……
トランスフォーマーとV3って敵の名前が同じだよな
>>739 無理はしたらダメ
強制じゃないし、自分の生活を第一にしてくれ
読み専はただ静かに待つだけよ
サイトとルイズのバカっぷりがダメってんなら原作はキツイかもね
なんだかんだで二人とも沸いてる上にツンデレだからw
バカップルっぷりをニヤニヤしたりマリコヌルったりするのが
俺の原作の楽しみ方の一つだ
マリコヌルって、良いネーミングだなw
なんか原作は全体的に馬鹿っぽく書いてるなぁと読んでて思う
このスレに来るのが先だったモンで、ちょっと好きなSSとのギャップに苦しんだw
なんだかんだいって原作が一番好きだけどな俺は
原索ほどニヨニヨできるSSってここでもほかでも見たことないし
>>748 こ、こっちの方が語感がいいかなって思っただけよ!
…素で間違えた…
ブタ、踏まれてきます
>>745 市街戦において死亡フラグ大尉に気を取られ、ミサイルの直撃喰らって機能停止した後に召喚されてるからいいんでない
ところで、スコルポノックな
>>737 外伝3発売前にタバサがおキヌちゃん召喚の小ネタが投下されたが、今じゃもうできないからな。
幽霊なんていないって気付いただけで、本物見たらさすがにビビるんじゃねえかなありゃ
>>747 サイトとルイズも好きだし、ハルケギニアの設定などが非常につぼなんだが、ラブコメが苦手なので、ここにいるという人間もいる。
原作は、一応全部読んだ。立ち読みだが。
原作を読み返す気にはなれんが、SSは面白いし、読み返したくなる作品もいくつかあったり。
オレは原作は未読だかアニメは全部視聴済み。
そういえば、アンパンマンと言えば、今年のGWはアンパンマンミュージアム
こと香美市立やなせたかし記念館に行きました。
読むだけなら原作未読でも構わないと思う
ただSSを書くつもりなら原作全巻か、アニメ全話かどちらかはクリアするべきだろう。
できれば原作
ゼロ魔は特に原作とアニメの違いが大きすぎるからな
あれほど違うのはほかにヘルシングのTV版くらいしか思いつかん
リメイクドラクエT・Uの説明書にあったザラキが脳の血液を凝固させる呪文と書いてあって地味に怖かった
>>759 昔のアニメは、原作と全然違うのも多かったぞ。
>>761 昔のアニメは原作ではなくて協力って形だったから
デビルマンも仮面ライダーもマジンガーも漫画とアニメが全然違うのが多いんだな
>>759 ヘルシングのTV版?そんなもの この地球上には無いよ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨…
原作を漫画版まで読破してから、『ウルトラ7番目の使い魔(仮称)』を執筆するつもりでゴザル。
後、名前の被る5番目さんの許諾も貰ってから。
そう聞かれてNOと言える人がどれだけいるんだろうな
>>762 いっとくが隼人も武蔵もTVと漫画では全然違うぞ。
ガンソードとか別物だよね
使い魔五つの誓い
一つ、腹ペコのまま戦争に行かぬ事。
一つ、天気のいい日に布団を干す事。
一つ、道を歩く時にはガリア王に気を付ける事。
一つ、主人の力を頼りにしない事。
一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶ事。
いまさらで申し訳ないのですが、まとめwikiへのUPのやり方が、
説明を読んでも よく判りません。
どなたか お願いできないでしょうか?
それと 誤変換(召喚→召還)等の訂正は UP後でも出来るのでしょうか?
ハーメルンのバイオリンひきは?
>>768 あれとかスクライドとか舞Himeは絶対わざと
忍空もかなりアニメと漫画は違ったな。
漫画は独特の毒を含んだ感じがいいのだが、
アニメは普通のバトル物として面白い。
風助が召喚されても亜人扱いしかされないんじゃね?とちょっと思った。
リューナイトもアニメ・漫画・OVAで別物
まぁこれとかスクライドはあえてこうしてるんだけどね
スレイヤーズもだいぶ違ったなぁ
スレイヤーズに関しては、本編の話をすぺしゃるのノリでやっていると考えれば、原作に近かったと。
777 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:19:29 ID:QGrDfX4d
>>773 モンモンが召喚して普通にカエルの亜人として契約されそうです
トライネットとゴンゾ製はまとめて黒歴史送りにしたい
メイヴちゃんはリアルでテレビ破壊したくなった
>>767 竜馬も武蔵も弁慶もゲッターに関わる皆TVと原作とOVAは違うんじゃなくて別の平行世界の物語と思ってる
皆して”虚無”るがなっw
因みに隼人は殆どの場合「置いてきぼり」を食うがw
ぎゃースマン、sageが消えてた
原作と違うと言えばブラックジャック(最近のヤツ)もだいぶ違いましたよね。
原作で死んだからこそストーリーに深み出た患者たちもいたんだけどねぇ……
という手塚話は置いておきまして、流れを若干無視する形で投下よろしいでしょうか?
22:35頃から失礼したく存じます。
>>770 >誤変換(召喚→召還)
まてまて逆だ。
雪風のアニメ版は主人公のイメージ原作と違いすぎた
あんなんじゃねーやい
投下開始ですよ
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「――始祖の祈祷書には『虚無』と書かれておりました。姫さま、それは本当なのでしょうか?」
ルイズおねえちゃんが話した内容は、奇妙なものだった。
『水のルビー』が『始祖の祈祷書』と反応して光を放ち、新たな呪文を浮かび上がらせたんだって。
それが、『エクスプロージョン』。
『ホーリー』とかと同じぐらい白く清らかな光に、『ジハード』よりも強く恐ろしいまでの破壊力を込めた魔法。
しかも、あれだけの混戦の中を、目標を1つ1つ分けて破壊できるというとんでもなさ。
どれだけのMPを支払っても、こんなことをやりおおせることはできないと思うんだ。
これが伝説の『虚無』ってことなら、伝説になるのも当然だと思う。
なんか、虚無って、すごいなぁ……
ゼロの黒魔道士
〜第四十五幕〜 女王に祝福と忠誠を
「ご存じ、ルイズ?始祖ブリミルはその三人の子に王家を作らせ、それぞれに指輪と秘宝を遺したのです。
トリステインに伝わるのが貴女の嵌めている『水のルビー』と始祖の祈祷書」
「ええ――」
そんなに大事なものをルイズおねえちゃんに預けたんだ……
よっぽど、信頼してるのかなぁ?
「王家の間では、このように言い伝えられてきました。始祖の力を受け継ぐものは、王家にあらわれると」
ってことは、ルイズおねえちゃんは……?
「私は王族ではありませんわ」
「ルイズ、何をおっしゃるの。ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこそ公爵家なのではありませんか」
ルイズおねえちゃんがハッとした顔になる。
よく事情は分からないけど、ルイズおねえちゃんが伝説の『虚無』の力っていうのを使えても不思議じゃないみたい。
なんか、ますますすごいことになってきたなぁって思うんだ。
「貴女も、このトリステイン王家の血をひいているのですよ。資格は十分にあるのです」
そう言ったあと、お姫さまがボクの左手を取ってしげしげと眺めてこう言ったんだ。
「この印は、『ガンダールヴ』の印ですね?
始祖ブリミルが用いし、呪文詠唱の時間を確保するためだけに生まれた使い魔の印」
呪文詠唱の時間確保……ってことは、ボクはルイズおねえちゃんを守るための力を持ってるってことかな?
なんか、この左手の模様が、もうちょっと誇らしくなった気がするんだ。
「では――間違いなく私は『虚無』の担い手なのですか?」
「そう考えるのが、正しいようね」
それは、伝説の力ってことで、ものすごいことだけど、お姫さまの顔は沈みっぱなしだったんだ。
「これで貴女方に勲章や恩賞を授けることができなくなった理由は分かるわね?ルイズ」
「……え?ど、どうして、なの?」
ボクには、ちっともわからなかったんだ。
「大きすぎる力は、余計な争いを生む――ですわね」
「そう、『虚無』の力は一国でさえ持て余すほどの力。
その秘密が知れたら、私利私欲のために利用しようとする者が必ず現れ、躍起になるのは目に見えております」
言われてみて、なるほどって思ったんだ。
ダガーおねえちゃんの召喚獣の力は、母娘同士を争わせるひどいことになっちゃったし、
大きすぎる力って、あまり喜ばしいことなんかじゃないのかもしれない。
「だからルイズ、誰にもその力のことを話してはなりません。これは、私と、貴女と、貴女の小さい使い魔との秘密よ」
「――おそれながら姫さまに、私の『虚無』を捧げたいと思います。
神は、姫さまをお助けするために、私にこの力を授けたに違いありません!」
お姫さまと同じように沈んだ顔で静かに話を聞いていたルイズおねえちゃんが、
拳をギュッとにぎって、お姫さまを真正面に見据えて言葉をつむぎだしたんだ。
「いえ――いいのです。母が申しておりました。過ぎたる力は人を狂わせると。
『虚無』の協力を手にした私がそうならぬと、誰が言いきれるでしょうか?
ですから、貴女はその力を一刻も早く忘れ、二度と使ってはなりませぬ」
「私は、姫さまと祖国のために、この地からと体を捧げたいと常々考えておりました」
お姫さまに否定されてもなお、ルイズおねえちゃんがことばを続ける。
それはきっと、ルイズおねえちゃんの決意、みたいなものだと思ったんだ。
「しかしながら、私の魔法は常に失敗しておりました。ご存じのように、ついた二つ名は『ゼロ』。
嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」
だからこそ、意地を張ったり、がんばってきたりしたんだと思う。
でも、そんながんばりだって、きっと単純な理由だったんじゃないかなぁって思うんだ。
「しかし、そんな私に神は力を与えてくださいました。私は自分が信じるもののために、この力を使いとうございます。
それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら、杖を陛下にお返しせねばなりません」
大切な人達を、ただただ守りたいって思うから。
だから、精一杯、がんばってきて、悔しい思いをして、ここまで来たんだろうなぁって思うんだ。
ボクとルイズおねえちゃんは似ている。
ボクは臆病だったから、ルイズおねえちゃんは魔法が使えなかったから、
そんな悔しさが、きっと、後々の覚悟や決意につながってくるんだろうなって思うんだ。
だから、ルイズおねえちゃんのこの覚悟は、とってもうれしいものに感じられるんだ。
そして、ボクももっとがんばらなきゃって思う。
「分かったわ、ルイズ。貴女は、今でも――一番の、私のお友達。
ラグドリアンの湖畔でも、貴女は私を助けてくれたわね。私の身代わりに、ベッドに入ってくださって――」
「姫さま」
ガシっと抱き合う二人は、ほんと仲良しって感じがしたんだ。
「――相棒よぉ、娘っ子達、毎度毎度大袈裟すぎめぇか?」
「んー……いいんじゃない?なんか、友情って感じがして」
デルフはあくびしたそうに言うけど、こういうのって、本当にいいと思う。
『友達だから』。そういうのを恥ずかしくもなく言えるって、かっこいいことだと思う。
「これからも私の力になってくれるというのねルイズ」
「当然ですわ、姫さま」
「ならば『始祖の祈祷書』はあなたに授けましょう。しかしルイズ、これだけは約束して。
決して『虚無』の使い手だということを、口外しませんように。また、みだりに使用してはいけません」
「かしこまりました」
「これから、貴女は私直属の女官ということに致します」
話がとんとん拍子で進んでいく。
お姫さまが隅にあった羊皮紙にサラッと杖をふると、
なんとなくかしこまった感じの書類が一枚できあがる。
「これをお持ちなさい。私が発行する正式な許可証です。王宮を含む、国内外へのあらゆる場所への通行と、
警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。自由がなければ仕事もしにくいでしょうから」
それを小脇に抱えて、うやうやしく一礼をするルイズおねえちゃん。
ボクも、慌ててそれにならった。
「貴女にしか解決できない事件がもちあがったら、必ず相談いたします。
表向きは、これまでどおり魔法学院の生徒として――と、言わなくても、貴女なら大丈夫でしょうね」
優しい笑顔を作って、ルイズおねえちゃんからその後ろのボクに今度は視線を移す。
「これからも、ルイズを、私の大切なお友達をよろしくお願いしますわね。小さき優しい使い魔さん」
「うん、分かったよ!」
言われなくても当然だけど、でも、よりがんばろうって気になった。
今までみんなに助けられた分、いや、それ以上になるぐらい、がんばろうって思ったんだ。
「――あぁ、そうですわ!早速、最初の任務をお願いしてもいいかしら?」
早速、何かがあるみたいだった。
「何なりと!姫さまのためなら地の果てだって行きますわ!」
「そんなに遠くまで行かなくて結構よ、ルイズ」
眉をちょっとだけしかめて苦笑いするお姫さまは、再び羊皮紙に杖をふって、何かの手紙を書き上げたんだ。
「これを、ヴァリエール公爵にお渡し願いたいの」
「私の父に、ですか?」
それをルイズおねえちゃんに渡す。
ルイズおねえちゃんのお父さん?どんな人、なのかなぁ?
「そう。今、信用できる方って、少ないですから」
少し、溜息をつくお姫さま。女王さまの仕事って、やっぱり大変みたいだ。
ダガーおねえちゃん、大丈夫かなぁ……?
「政権を新たに立て直すに当たって、今までの財政や貴族そのもののあり方見直しする必要があります。
アニエスの登用もその一環でしてね。ですので、公爵のお力もお貸し願えないかと――
第一線は退かれたとはいえ、まだまだ影響力がおありですし、清廉潔白で知られておりますから」
難しいことはよく分からないけど、お姫さまががんばるために、ルイズおねえちゃんのお父さんの力が必要っていうのは分かった。
「なるほど。――しかしお言葉ですが、そうしたことなら、父を直接王宮に呼び寄せても良いのでは?」
「ある程度秘密裏に、ですのよ。頭の硬く、腐りきった方々には、か弱い娘が政治に四苦八苦してる方がお望みでしょうし」
……?油断、させるってことなのかなぁ、悪い人たちを?お姫さま、色々考えてるなぁ……
「――姫さま、案外楽しんでませんか?」
「あら、これでも、僅かな楽しみを見つけるのに苦労してますのよ?」
でも、確かに楽しそうだった。お姫さまって、これぐらいタフじゃないとできないのかもしれない。
「引き受けてくださるかしら?」
「もちろんですわ!父も、体の動く内に姫さまのお役に立てることを光栄に思うはずですわ!」
「それでは、お願いね?」
「「はいっ!」」
ルイズおねえちゃんと一緒になって返事をする。
ルイズおねえちゃんのお父さん、か……どんな人なんだろ?
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ピコン
ATE 〜異端者共の巡礼〜
ロマリア連合皇国の歴史をまとめてしまえば、『何度も小競り合いを繰り返した後、始祖の名を使って無理矢理1つになった』
という具合に、身も蓋もない文章でくくられてしまう。
しかし、このハルケギニアにおいて、始祖ブリミルを讃えるブリミル教は絶対無比の存在であり、
ブリミルの弟子の一人である聖フォルサテを祖王とし、
ブリミルが没したロマリアこそ聖地に次ぐ重要な場所であるロマリアは、
少ない国力をその信者の求心力によって十二分に補い、
我が物顔でガリアの南はアウソーニャ半島に聖者の長として君臨していた。
すなわち、この地の王でもある教皇に逆らうことは異端であり、
異端とはすなわち、このハルケギニアでの生を否定することであった。
「――あ〜、なんっか腹立たしい!」
「――分からぬではない。が、口に出してどうする?」
そんな国家の首都、宗教都市ロマリア、神官共の言葉を借りるなら『光溢れた土地』にあって、
不敬なる大小二つの影が、大通りの脇に突っ立って会話をしていた。
感情豊かに怒れる少女と、それをたしなめる青年。
兄妹、あるいは年若い親子といったように見える二人だ。
共に綺麗なブロンドで、肌を言えば陶磁器のように白く透き通っている。
それが、周囲に合わせ、元は白かっただろう薄汚れたローブで全身を覆っている。
美の神とやらがおわすなら、もったいないことだと嘆いたことだろうか。
「臭いし、汚れてるし!ほんっと嫌な感じ!」
「言ってもしょうがあるまい。それとも、騒ぎでも作るつもりか?」
少女がイライラしながら指摘するとおり、ロマリアの街は酷い有様だった。
山奥の魚市場のごとく、腐った匂いと目であふれていた。
ここには救いを求める信者は山のようにやってくるが、
仕事と呼べる仕事はなく、信者たちは配給のスープ群がって1日を過ごすだけ。
それを見て笑うのは、実のならない議論を交わすだけの神官共。
自分たちだけは『光溢れる』の字通りに煌びやかに着飾っている。
光と影、この街では、その境目がわかりやすい形で提示されていた。
「これじゃ血を吸う気にもなれないの!」
「間違っても、吸うのではないぞ。ここは、我々を快く迎えない者達の巣だ」
その二人は、その光にも影にも属していなかった。
あえて言うならば、闇、だろうか。
始祖のご威光とやらが全く届かない、漆黒の闇。
「我らには、約束があるからな。ここでなるべく騒ぎを起こすなという」
そう感情を排除した声で言う青年。
そのローブの奥に、すらりと長く延びる陶磁器の破片が垣間見えた。
エルフ。特徴はその長い耳。
それはハルケギニアで最も恐れられる、ブリミル教の敵。
「でもでも、イライラしてくるんだもの!あいつら見てると!」
そう子供らしい撥ねる声で文句を言う少女。
その尖らせた口に、鋭利な刃物の切っ先が垣間見えた。
吸血鬼。特徴はその白い牙。
それはハルケギニアで二番目に恐れられる、人間共の敵。
よりにもよって、ここ、ブリミル教のお膝下で、異端中の異端、敵の中の敵が2体、
大胆不敵にも大通りの片隅で呑気な会話を繰り広げているのだ。
白いローブで、それぞれの特徴である長い耳や太陽に弱い肌を隠してあるとはいえ、
正体を知られれば、聖堂騎士隊が最上級の武装でもって排除しにくる存在であるにも関わらず。
「それにさぁ、ビダおにいちゃん。エルザ、退屈なんだもん。――たかだか偵察、なのにさぁ」
エルザと自称した吸血鬼がベェーッと舌を出して不満を訴える。
彼女にとって、この仕事は退屈極まりないのだ。
別に暴れられるわけでもなく、主食である血液を大量摂取できるわけでもなく、
ただ『ロマリアの状況を見てくる』この仕事は、根が少女そのものである彼女には退屈極まりなかった。
「気分が悪いことは認めよう。だが、それと仕事とは別の話だ」
やや不服ではある、ということを言外にこめ、ビダおにいちゃんことビダーシャルがつぶやく。
エルフである彼が『打倒エルフ』『聖地奪還』を標榜とする宗教の本拠地にいて気分がいいわけがない。
だが、彼とて任務の重要性が分からぬほど無能ではなく、むしろエルフの中でも慧眼の持ち主として知られた存在であった。
何時かは分からないが、いずれ技を交えなければならなくなるやもしれない相手。
その相手の懐の内を己の目で見るということは、重要な任であることは間違いなかった。
しかし、である。
いくら蛮族を下に見ており、このハルケギニアに来て不快な思いを幾度となく抱いた彼ではあっても、
ここに来たときほど胸糞が悪くなることも無かった。
ここでは、光の名を借りた蛮族の教えが、同族の屍をじわじわと貪り尽くす光景を生みだしている。
いかな蛮族とはいえ、このような陰惨な絵は好んで見たいとは思わぬものだった。
不衛生な大通りに貧民となった蛮族共があふれ返り、それに薮蚊がたかっている。
ビダーシャルも何度か刺された。
ローブの奥なので、かこうにも耳を隠さねばならず、仕方なく被った布の上からポリポリとかきながら、
不遇なる蛮族共を見ていた。
「――やれやれ、お二人とも、こちらにいらっしゃったのですか?」
銀髪のローブの男がゆるゆるとした足取りで異端な二人に近付いてきた。
クジャよりはやや見劣りはするものの長く鮮やかな銀髪に、ナイフのような切れ長の目が似合う美男子である。
「大通りで目立つ場所な上に、陽も高うございますのに。お二人の豪胆さは理解致しかねます」
貴族仕えの給仕のごとく、丁寧で流麗な口上は、聞く者に不快感を抱かせぬよう計算されつくされたものである。
「あ、トマおにいちゃん!終わったの?」
「えぇ、どうにか終わりました。何より、終わりませんと帰ってこれません」
トマおにいちゃん、と呼ばれた男は小さな微笑みを湛えてそう答える。
少しばかり疲労はしているが、一仕事を終えた男特有の良い表情をしていた。
「――情報は?」
「クジャ様はどうやられたのですかね?私めでは『これ』が精いっぱいでして」
そう言って差し出したのは、灰色になった紙片。
だがその色は、よくよく見れば、無数の黒い点が白紙に踊ることによって作り上げられていた。
さらに詳しく見れば、その点の1つ1つが文字であり、言葉であり、意味をなす文章であることが分かる。
それが掌ほどの紙片一面を満たしている。
「――細かいな」
エルフの男は蛮族の器用さに感心した。
エルフも手先が器用な種族として知られている。
それは編み物等の素朴な工芸品に表れている。
だが、今手にしたような紙片、このように文字を限られた空間に詰め込むということを、
精霊の力や蛮族の魔法を借りず成し遂げるなど、そう簡単には信じがたい。
「隠し持ちながら写しましたのでね。バレますと厄介ですし。いやはや、流石に時間がかかりました」
手首をブラブラとさせて“疲れた”というジェスチャーをしながら、
自身が器用である証拠を見せ付けた男が答える。
「これで全部か?」
「最新のものだけで精いっぱいですよ。昔のものまで探っておりましたら、いくら時間があっても足りません」
「曖昧な仕事は好まぬが、ジョセフならば十分と言うであろうな」
それでも、かなりの情報量が集まったことになる。
外見で蛮族でないことがバレる恐れや、ディテクト・マジックで正体が判明する危険性を考え、
この男に潜入させたのは正解だったと見える。
「っん〜!じゃ帰ろっか!ここって息がつまるし!」
エルザが両手を天に掲げて伸びをする。
結局、自分たちが暴れる必要が無かったことに若干の不満を覚えつつ、あくびを1つ。
この分だったら護衛に吸血鬼とエルフという組み合わせは不必要だったのではないか、ということを考えながら。
「もう、でございますか?少しぐらいは休ませていただきたいのですが――これは?」
ビダーシャルが少しばかり高級そうな紙を懐からチラッと見せる。
少なくとも、こっちの紙は灰色になるまで書き込まれてはいない。
せいぜいが短い1文ぐらいだ。
「イザベラからの書状だ。『偵察ごときに何をしてる。急ぎ戻れ無能共』だそうだな」
「うわ。エルザ、カッチーんって怒っちゃうな、それ!手紙だけはえっらそうにさぁ……」
「――ま、仕様がありませんね。主の命は絶対ですし」
この3人は、北花壇騎士団の補佐、という形雇われていることになっている。
所属としてややこしいが、国が人を動かすにはそれなりに名目が必要なのだ。
そのありがたくない名目のため、ガリア王ジョセフの娘、つまりタバサの従姉妹にあたるイザベラが彼らのボス、ということになる。
「トマおにいちゃん、言葉づかいがかたいよ!生意気デコ娘いないんだしさ、もっと気楽に行こうよ!」
「そう申されましても――」
「いいの!わたしが許す!こっちまで息がつまるし!つか息抜きしないと血、吸っちゃうぞ〜!」
子供っぽい悪戯な目で、トマおにいちゃんを見るエルザ。
青年はやれやれとため息をついて、伸ばしていた背筋をやや猫背気味にした。
「――ったく、ガチでダリぃべ?あのデコンパチがよぉ〜……
こちとら平民よ?変態パンツマンと同じ働きできるかっつの!普通にうざデコいわ、あのアマ……」
見事な変わりぶり。先ほどまでの懇切丁寧な雰囲気は消え失せ、路上でイキがっている若者の姿に成り下がる。
「フフフ、やっぱトマおにいちゃん、そっちの方がよっぽど『らしい』よ!」
「ふぅ――やめてくださいよ。ごろつきは卒業したんですから。今はこちらの言葉づかいが素の私です」
再び、背筋を伸ばし、どこに出してもそう恥ずかしくはない貴族の付き人に戻る。
器用なのは手先だけではなく、全身が器用らしい。
彼、トマおにいちゃんことトーマスは、なんやかんやで貴族と付き合ってきた期間が長い平民の1人だ。
彼の父が今は亡き王弟、オルレアン公のコック長を務めていたことから、ラグドリアン湖近くの屋敷に幾度となく出入りし、
今はタバサと名乗るシャルロットお嬢様と平民ながら親しくしていた間柄なのだ。
手品が得意で、いつもシャルロットお嬢様を喜ばせる快活な少年だった。
そんな彼の運命を変えた出来事は4つほどある。
1つ目はかの有名な“無能王”ジョセフによるオルレアン家の取り潰し騒動。
この事件により、オルレアン家の使用人も散り散りになり、路頭に迷ったかつてのコック長もすぐに他界。
トーマスは野良犬のように日々を暮らす毎日だった。
求めては奪い、襲われては殺す、そんな獣のような日々。
2つ目はそんな人獣の世から救われたということだ。
単純に、元来手先の器用さと度胸を買われただけだし、拾われた先、イカサマカジノを経営し私腹を肥やす屑だった。
トーマスに読み書き礼儀作法を教えたとはいえ、それもカジノの給仕兼用心棒をさせるためだけだ。
それでも、トーマスを路傍から救った屑に、若きトーマスは感謝し、一生を尽くすつもりだった。
例えそれが、どんな汚れ仕事につながるものだったとしても、だ。
3つ目は、皮肉にも、かつての主にそれが壊されたことだ。
北花壇騎士団の騎士として、カジノを訪れたかつての主、シャルロットお嬢様ことタバサ(とその従者)の手により、
彼の居場所はボロボロに崩された。イカサマは暴かれ、増えた資金は元の持ち主に返された。
しかし、それを恨むことはない。
彼はどちらの主も好いていたし、所詮、ごろつき上がりの平民であることを意識していたからだ。
だから、屑諸共懐かしき薄汚れた通りに放り出されても、絶望はしなかった。
4つ目は、再びそんな状況から救いだされたことだ。
どこからか、彼らの所業と手並みを聞きつけた、彼以上の銀髪の持ち主が彼らの目の前に現れたのだ。
レストラン脇の、ゴミ捨て場の代理肉を漁る彼らを。
彼の主であった屑は、商才と弁舌を見込まれオークションハウスに雇われた。
そしてトーマスは、再び、器用さと度胸を見込まれてちょっとした汚れ仕事を手伝わされている、というわけだ。
一応はお偉い様方に仕えている身なので、言葉づかいや動作は細心の注意を払っているが、
必要とあれば汚れ役はお手の物という不良らしく振る舞うのはいとも簡単だった。
「え〜。いいじゃん、アウトローなトマおにいちゃん!そっちの方がいいと思うよ?」
「エルザ様、ご容赦を。身よりなき平民は生きることすら困難なのですよ。ここハルケギニアでは」
駄々をこねる吸血鬼の少女をやんわりたしなめるトーマス。
その言葉には実経験に裏打ちされた響きがこもっていた。
アウトローには、野良犬には未来は無いのだ。少なくとも、ここハルケギニアでは。
「その辺、人間って不便だよね〜。やっぱり、屍人になった方が気楽なんじゃない?」
屍人は、吸血鬼の傀儡だ。血を吸われ、吸血鬼の言いなりになる存在。
「それは丁重にお断りさせていたします、エルザ様」
流石に、操り人形になるぐらいなら、貴族にこき使われる平民の方がいい。
トーマスは笑顔でエルザの申し出を断った。
「行くぞ」
仕事を終えればすぐ帰る。ビダーシャルはあくまでも淡々としていた。
「ねぇねぇ、やっぱり血、吸わせてよ!ここ2週間ぐらい我慢してたんだし!」
帰りの道中、エルザがトーマスに抱きつく。
その姿は幼馴染のお兄ちゃんに抱きつく可愛い少女そのものだった。
「ご容赦を、エルザ様――」
「え〜?ケチ〜!直接じゃなくてさ、首からピューって出してくれたの、マグで1杯でいいからさ!」
ただ、その口から出るのは少女としてはかなり異質であったが。
「マグ1杯も出しましたら、平民の身では命の危険がございまして――」
「新鮮なのが飲みたいの!死んだのからとか、紛い物からじゃなくて!」
「そう申されましても、私ではいかんとも――」
「いいじゃん〜!ほら、ピュッと出してよ!あなたの熱いのが飲みたいの!」
「や、やめ、おやめくださ、やめやがれこんちくしょ平民なめんな!?」
じたばたと体を絡ませ暴れる2人を見て、ビダーシャルが珍しく感情豊かにため息をつく。
「気楽なものだな――痛っ」
彼としては、早急にこの居心地の悪い街を抜け出し、
別の吸血鬼、薮蚊にかまれた場所を思いっきりかきむしりたくてしょうがなかった。
おまけに顔の横をが甲虫の類が高速度で横切り、爪か羽で引っ掻かれた。
手当したいところだが、ローブを脱ぐわけにもいかない。
全く、この蛮人の聖なる街とやらはやはりエルフには優しくないと見える。
虫の一匹すらエルフを嫌っているのだ。
精霊の力を、自然の力を信望するエルフの身として、ビダーシャルはほんの少し寂しい気持ちになった。
「ほ、ほら、ビダーシャル様が血を流してますからっ!?」
「あ、ほんとだ――美味しいかなぁ?」
「――飲むなら、帰ってからにしてくれ」
騒がしい不信心者共は騒がしいまま街を出た。
----
以上です。
これでお休み中に書きためてた分は無くなりましたので、
更新ペースはずどんと落ちますが、ちまちまコツコツ書いてまいりますのでよろしくお願いいたします。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
魔道士殿、いいお仕事なさっておいでです。
今から、読ませて頂きますが、私生活守りつつお体壊さん範囲で
これからもガンバッテください。応援してまつ(はあと)
黒魔乙。
俺なんてGW中はほとんどSSを書かなかったぜ!
構想ができない……
投下乙そしてGJでした
やだ何この珍道中超可愛い
アウトローなトーマスが魅力的で素敵です
機関車トーマスが召喚された場合は、亜人扱いなのかな
黒魔さん乙です!いつも読むときは場面に合わせてサントラ再生してます。
>>771 アニメ版、俺は結構好きだけど嫌いだってファンもかなりいるよね
>>795 機関車トーマスは、たぶんガーゴイル扱いじゃね?
長編が駄目なら中編を書けばいいじゃない
機関車って構造上、線路ないと走れないんだぜ…。
じゃあ痴漢者トーマスで
偽善者トーマスじゃと?
よし、蒸気で動くタイムマシンを―――
アルビオン関係のケリをつけるところまでプロットが書き上がったんだけど、
思い切って本編書き始めるかガリア・ロマリア編のプロット書き始めるか迷ってる
ここらへんまで来ると相当な割合で改変が入って独自展開が増えるから、
今までみたいにポンポンとシーンが浮かんでこないんだよね
気分転換に本編書くのも悪くないと思うんだけど、
それで途中で止まったらかえって寝覚めが悪いしなぁ
ここのSSしか読んでないんだけど、原作のサイトってどんな感じ?
「もう一人の左手」と「虚無と狂信者」を読む限りじゃ結構いい男っぽいけど。
一言で表すと単純バカ
馬鹿でアホでスケベで思い込みが激しくて直情型で単細胞
でもやるときはやるアツいソウルを持つ男さ。
あと、まだ見られるか知らんけど、100スレ記念で何人かの作家がリレー形式で書いてる話のサイトは、それぞれ結構原作に忠実だったと思う
ガンダールヴのルーンで徐々に洗脳されてカッコイイ男になっちゃっただけで
もともとは普通
男なんて腐るほどいるのに、なんでサイトが選ばれたんだろうね。
確率論なのか、それとも適合する何かがあったのか。
ヒント; ルイズと最高に相性が良い
地の分でアホって書かれる本物のアホ
どこに繋がってるかも分からん鏡に自ら飛び込んだり
ちょっと優しくされたら、こいつは俺に惚れてるに違いねえと勘違いして寝てるところをレイプしようとしたりするアホ
でも、熱血バカ風のカッコいいところを見せることも多い
>>812 拒否されたらやめたからあれはれっきとした夜這いである。
原作のサイトはビックリするくらいアホだよね
異世界に召喚されたっつーのにほとんど悩んだりしないで、生意気なルイズにあれこれ嫌がらせするのに夢中になってたり
ルイズとちょっといい雰囲気になったと思ったら速攻で夜這いかけてボコボコにされたり
まあバカだけどいい奴だし、2巻の少年っぷりとかかなり好きなんだが
>>809 ルーンの洗脳云々は原作でも曖昧じゃないの?
まぁそれがあったとしてもそれをクリアした12巻以降のサイトはガチで
>>807
まあルーンの洗脳効果はあったとしても11巻だかでテファに消されたしね
むしろルイズがDQN
>>801 三ヶ月ほど前にスレ埋めのネタで書いたが、力及ばなかったらしく保管庫未収録
まぁなんだ、主人公各が適材適所な判断を下すラブコメなぞそうはあるまい?
レモンちゃんもそうそうねぇと思うけどなー
当初ゼロ魔スレを見たとき
サイトサイトと連呼されてるから
某ロックマンエグゼさんとだだかぶりしてたのはいい思い出。
すぐにイメージが変わってったけどナー
にゃんにゃんを忘れてもらっちゃ困るぜ。
しかし、「そこでアンリエッタに傾くなよ」とは思ったがな。
>サイト
学力(つうか一般的な知識)も普通の高校生に比べて恐ろしく劣ってる事から
工業校だったんじゃないかとか推測されてる
>>816 徐々に強くなっていく洗脳なら定期的に消さないといけなさそうなもんだけどな
14巻のサイトはガチ
16巻のサイトはクズなのでちゃんとルイズにジャンピング土下座して欲しい
7巻のイケメンサイトも洗脳効果だと思うと・・・
雰囲気がよくなっては横槍が入って二人の恋路がピンチ!
みたいな繰り返しに若干飽きてきた感はある。
まあ王道といえば王道なんだろうが。
洗脳ではない、物語を経て成長しておるのだ!
……って方がそれっぽいつーか少年漫画的
テメレア戦記1巻の終盤に出てた、自分のドラゴン安楽死させて一緒に落ちていったフランス軍パイロットがヴィンダ持ちで召喚される話を妄想してた頃がある。
一応ドラゴンも一緒だったけどもう手遅れで、最初ドラゴン!?ってwktkしたルイズ超がっかり。
パイロットももう生きる希望を完全に失った状態。無気力に使い魔やりつつ、どっかに作ったドラゴンの墓前で鬱っているところをドラゴン繋がりで興味持ったシルフィに話しかけられてひっそり交流を持ったり、他の使い魔にヴィンダ効果で懐かれたり。
ギーシュ戦では死ぬ口実ができたとばかりに無抵抗でフルボッコされてたところをヴィンダ効果でヴェルダンデ含む使い魔達に助けられる。この辺からルイズ一目置くように。後日お互いの誇りについて語り合ったり。
使い魔品評会で空戦理論の講義でもするかってことになり、参考資料代わりに呼びつけたギーシュとなんか仲良くなったり。
学園での日々とデレ+精神的成長してきたルイズにパイロットの方も情が湧いてきて、少しずつ生きる気力を取り戻していく。
↑な話を「シルフィかわいいよシルフィ。てか使い魔全員モフモフしたいよ」「全てに絶望した男を立ち直らせる覚醒ツンデレルイズ様萌え」というリピドーに突き動かされて妄想していた。
今は吐き出せてすっきりしている。
長いよバカ野郎!
品評会とモットはアニメオリジナルだっけ?
島津豊久を召喚
直政ーー首ィ置いてけーー
ここはハルパゴスを召喚すべき
使い魔になれ?
バーッカじゃねえの!?
こうですか?わかりません!
漫画でなくネットの知識限定でか
アルビオンに行け?
バーッカじゃねえの!?
こうですか?わかりません!
意表を突いてトリステインがゲルマニアに落とされそうですね
>>838 一瞬トリステインをアルビオンみたいに浮かせてゲルマニアに落とすのか?って思ってしまった
これが五月病ってやつか
>>839 なにそのコロニー落とし的発想。
もしくはDIO様的発想。
……姉妹スレに帰ります。はい。
289 :滅殺の人:2009/05/04(月) 21:31:37 ID:GToGOIbM
ちわーす、三河屋でーす。
畜生!規制だと!
……と、言うわけで、どなたか代理をお願いします。
労力をかけてしまい、申し訳ありません。
とのことなので、10分後の16:00より代理いきます。
では開始します。
その頃、ウェストウッド。
小屋の中で、テファとルガールが顔を見合わせていた。
ルガールの手には、手紙が握られていた。
ルガールが、困ったように言う。
「ふむ……いや、如何すれば良いものか……」
「ええ、うん……、だ、大丈夫だよ、ルガールさん! こんなの、姉さんの冗談に決まって……」
「いや、まさか『ルガールに会ってみたいから、トリステインの此処に来て欲しい』とはな」
ルガールが地図のマークが付いた場所を指差す。
「『小屋があるからわかりやすい』か……」
ルガールは、テファに微笑みかけた。
「いいさ。 行ってみるよ」
「えっ!?」
テファはあたふたとし始め、ルガールを止めようとした。
「む、無理ですよ! 此処は浮遊大陸ですよ? 船だって乗ることは出来ないし……」
ルガールは少しも動揺せず、表情も崩さない。
「確か今日は、アルビオンがハルケギニアに接近している筈だったな」
「それでも、一人じゃどうしようもない距離ですよ……。 落ちたら死んじゃいます……」
不安な表情を浮かべるテファに、ルガールは更に不気味な笑みを返した。
ルガールが、小屋の扉に向かう。
「少し、間に受けすぎたかな。 そう、本気な訳が無いな。 ……ちょっと散歩してくるよ。 なに、朝には戻るさ」
「は、はい。 じゃあ」
ルガールは、テファに見送られ、小屋を後にする。
「マチルダ、か……。 信用ならんのだろう? 私のことが。 ……良かろう。 思い出させて貰うよ。 私の大切な物を。 君のその命と引き換えに、な」
sienn
◆◇◆◇
ルイズ達が買い物から帰って来てから数十分後。
ルイズの部屋では、ちょっとした騒動が起きていた。
ルイズとキュルケが睨み合う。 タバサは椅子に座り、本に没頭している。
ルイズが、憤怒の形相でキュルケを怒鳴りつける。
「ちょっとキュルケ! あんたついて来てたんだからわかるでしょ!」
キュルケは両手を目の前でバタバタと激しく交差させた。
「ちょ、いや、待ちなさいよ! あたしは知らないわよ!」
何故、こんなことになっているかと言うと……。
「じゃあなんだって言うのよ……。 ちょっと目を離した隙に、豪鬼が居なくなるなんて……」
そう、豪鬼が消えていたのだ。
買い物から帰り、ルイズが少し部屋を空け、やがて部屋に戻った時に、既に。
今までなんだかんだで部屋の前に居た豪鬼が突然居なくなったことに、ルイズの頭は混乱していた。
「少しは落ち着きなさいよ! 大体、ちょっと散歩に行っただけとか、用を足しに行ったとか、それくらいの時間しか経ってないじゃないの!」
「だけどっ……」
確かに、豪鬼がいなくなってからまだ十分も経っていない。
だが、その僅かな時間さえ、ルイズには不安に感じられた。
薄々感じていたからだ。
豪鬼は、自分達とは住む世界が違う、違いすぎるのだと。
形こそヒトではあるけれど、その中身はヒトでは無いような。
幻獣や虫ならば、そんな事にならなかっただろう。
だが、違うのだ。 豪鬼なのだ。 幻獣でも、恐らくはヒトですらない、『豪鬼』なのだ。
支援
いや、豪鬼がヒトでない、人間でない筈は無いのだが、ルイズはそれをわかっていながらも、心のどこかで、豪鬼を人外にカテゴライズしていたのだ。
自分の中でのその気持ちに、ルイズはどこか戸惑っていた。
中庭。
豪鬼は、地面にデルフを突き刺し、その傍らで一人瞑想に耽っていた。
いつも通りの稽古もせず、まだ一度もデルフを振ってはいない。
豪鬼が、こんなにも瞑想に使う時間が多くしたのには、大きな理由があった。
ひたすら無心に、自らの力を感じる。
自らの奥底にある力。
豪鬼は今まで、その力を引き出して戦ってきた。
その名は『殺意の波動』。
豪鬼はその力を操り、幾多の格闘家を屠ってきた。
だが、今は違う。
それとは違う『異物』が、その隣に鎮座している。
豪鬼は以前、ある男と『死合い』、勝利した。
その男は、豪鬼とは異なる力を使って豪鬼に対抗し、豪鬼と互角に戦い、存分に追い詰めた。
激闘を制したのは豪鬼だったが、その男は豪鬼に確実に異変を残した。
あろうことか、その男は自らの邪悪な力を豪鬼に送り込んだのだ。
――その力の名は『暗黒パワー』……即ち『オロチの力』――
支援
異なる二つの力は交わりあう事無く、豪鬼の正気を奪った。
あの時豪鬼は、今までの求道者としての『豪鬼』を奪い去られ、只の『悪鬼』と化したのだ。
豪鬼程の強者をも狂わせてしまう力。
その力が、こちらの世界に来てからと言うもの、活性化してきていた。
流石に一度経験したからか、何とかその力に支配されてはいないが、これではいつ、豪鬼を飲み込んでもおかしくは無い。
その懸念こそが、今、豪鬼をここに留まらせている理由。
そして、その更に奥深くに意識を集中させる。
すると、他の二つの力とは本質の違う、小さく、弱々しい力……こちらの世界に飛ばされた際に生まれた力が見えてくる。
この力は一体何なのか――
誰かに植え付けられた記憶は無い。
自分で手に入れた力でも無い。
『殺意の波動』とも『オロチの力』とも違う。
ただ、大きな力ではない。 ないのだが――
豪鬼は立ち上がり、地面に突き刺してあったデルフを掴む。
その瞬間、豪鬼に異変が起きる。
謎の『力』が、急激に膨れ上がったのだ。
街の武器店で初めて武器を手にした時、感じた異変と同じ現象。
膨れ上がった『力』は、それでも『殺意の波動』にも、『オロチの力』にも及ぶものではない。
しかし、この程度の力であっても、今の豪鬼にとっては救世主のようなものなのだ。
支援
いつ暴走してもおかしくはない『オロチの力』。
その力は、このままでは『殺意の波動』すらも飲み込んでしまうだろう。
豪鬼はそれに対し、一度、死合いを求め彷徨う事をやめ、ひたすら修行することを選んだ。
そうすることで、『オロチの力』を克服し、コントロールしようとしたのだ。
だが、それでは明らかに時間が足りない。
このままでは、暴走も時間の問題か。
半ば諦めかけていたその時、その『力』は自己主張を始めた。
豪鬼が感じるに、この『力』は『殺意の波動』とは本質からして違うし、『オロチの力』とも決して同質のものではない。
ならば、この『力』を取り敢えず利用する、コントロールすることにより、『オロチの力』に対抗し、やがて全ての力を使いこなす。
幸い、この『力』は、豪鬼を支配しようとはしていないし、そこまで急激な変化を豪鬼にもたらすような物ではない。
せいぜい少し鍛えた程度の人間千人程度の力だろう。
「……この程度の力、扱うに容易いわ」
豪鬼はそう呟くと、剣の素振りを始めた。
「なあ相棒、おめえさんはなんで俺を使おうと思ったんだい?」
ふと、デルフが豪鬼に問いかける。
豪鬼はそれを完全に無視し、ひたすらにデルフを振り続けている。
デルフはそれを大して気にする事無く、喋り続けた。
「ま、答えてくれるたぁ初めっから思っていなかったけどよ……。 まあいいや、本題に入るぜ。 相棒は聞いてるだけで良い」
相変わらず豪鬼は答えない。
ただ無心に、豪鬼は『力』の本質を見極めようと、デルフを振り続ける。
「俺が思うに、相棒、あんたは人を殺し慣れてるね。 俺も昔の事はあんまし覚えちゃいねーが、これだけは分かる。 あんたは修羅の部類の人間だ」
支援
豪鬼は一向に話を聞こうとはしていない。
「そんなあんたが、今は何の因果か俺を使ってる。 あんたにゃそんなの必要無いのに、だ。 ……これがどういう事だかわかるか?」
豪鬼の眉がぴく、と動いた。
実際それが何に対する反応かは分からないが。
デルフはいっそう声色を真面目にし、豪鬼に語りかけた。
「単刀直入に言うぜ。 ……相棒、あんた……」
デルフが一番重要な事を言おうとした瞬間、その声は甲高い女声に遮られた。
「ゴウキっ!」
その声の主は、息を切らせ、肩で呼吸をするルイズであった。
ルイズは、息を整えようとすることも無く、豪鬼の元へ向かう。
豪鬼はそれに構う事無く、まだデルフを振り続けていた。
「ご、ゴウキ……! かっ……てに、いなく、ならないで、よ!」
何故か涙目になり、声も途切れ途切れのルイズは、豪鬼に話しかける。
豪鬼は、そんなルイズに対しても微塵も反応を見せない。
ただ無心に、デルフを振っているだけだ。
「ち、ちょっと! 主人を、無視、する、なんて、この……」
依然ルイズが眼中に入っていない豪鬼のもとに、更なる客人が現れた。
赤髪の女、キュルケと、小さなタバサだった。
キュルケは、未だぜーぜーと息を切らしているルイズを尻目に、豪鬼に話しかける。
「あら、ミスタ・ゴウキ。 お一人で稽古だなんて、精が出ますわね」
豪鬼は全く相手にしていない。
ルイズは、そんな豪鬼に溜息を一つつくと、近くのベンチへ向かう。
「ちょっと、ルイズ? いいの? あんなにヒス起こしてまで探したのに」
キュルケがルイズへ疑問をぶつける。
ルイズは、諦めたように笑いながら、答えた。
支援
「いいわよ。 どうせ、しばらくそうやっているんだろうし、それに、使い魔が強くなるのをどうして止めなくちゃいけないの?」
ルイズがベンチに腰掛ける。 見ると、タバサも同じベンチに座っていた。 ただ、いつもとは違い、その目は本ではなく豪鬼へと向いていたが。
フーケは、中庭の様子を見ながら、舌打ちをした。
「……くっそ、あの化け物がいやがるよ……!」
先程宝物庫を下見した時、僅かな亀裂を見つけていたフーケは、今日中に行動を開始する予定であった。
「ふん……! まあいいさ。 ゴーレムで一捻りにしてやればいい」
フーケはニヤリと笑うと、詠唱を始める。
長い詠唱を終えると、その効果によって巨大なゴーレムが生成された。
フーケは更に笑みを深くしながら、ゴーレムの肩に飛び乗った。
「……は?」
キュルケが呆けたような声を上げる。
その理由は、たった今、巨大なゴーレムが背後に突然現れたからだ。
横を見る。
タバサはもう居ない。 先にあの風竜を呼びに行ったのだろう。
ルイズは……。
居ない。 まさか。
「っきゃああああああああ!」
キュルケは叫び声を上げながら逃げて行った。
ルイズはというと、既にある程度ゴーレムから離れた所に退避していた。
支援
「なんなのよ一体っ!」
ゴーレムを見たときは驚いたが、何故かそこまで混乱することは無かった。
ただ、今そんなことを考えている暇はルイズには無かった。
必死で豪鬼を探す。 そして目に飛び込んできた風景に、我が目を疑う。
なんと豪鬼は、ゴーレムにさえ全く動じず、素振りを続けていのだ。
「ゴウキー! 後ろ後ろー!」
声を張り上げる。 聞こえているのか分からない。
フーケが、ゴーレムの腕を宝物庫に振り下ろさせる。
元々亀裂が入っていた壁はいとも簡単に崩れ去り、大きな穴を作った。
フーケがその中に入り込む。 狙いは一つ、『悪夢の書』。
辺りを見渡す。
すると、様々な宝物の中に、一際大事そうに置いてある巻物を発見した。
巻物には古びた紙切れが一枚掛けられていて、それに『悪夢の書。持ち出し不可』と書いてある。
フーケは笑みをこぼしながら書を手に取り、急いでゴーレムの肩へと戻った。
仕上げに壁に文字を刻む。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。 土くれのフーケ』
フーケは邪悪な笑みを浮かべた。
――注意書に書かれた『Nightmare』の文字に、気付くことも無く。
ゴーレムが歩き出す。 歩くとは言っても、その歩幅のため、ある程度の速度がある。
ゴーレムの肩から警戒をし続ける。
不意に、ゴーレムの歩みが止まる。
「くっ……ここで出てきたかい…!」
ゴーレムの前方には、デルフを持った豪鬼が立っていた。
支援
次スレはこの代理投下が終わってからオレが立ててみる
あと1レス分で規制を受けてしまいました。
すいませんが、どなたか代理の代理をお願いします。
「まあいいさ。 そこからどかなけりゃ、ぺしゃんこにしてやるだけだよ」
ゴーレムが再び歩き出す。
どんどん豪鬼に近づいていき、遂にその足が豪鬼の目の前についた瞬間。
豪鬼が飛んだ。
「な、なにを……」
フーケが驚きの声を上げる。 一瞬の出来事に、ゴーレムは棒立ちになっていた。
豪鬼がデルフを振り上げ、叫び声と共に振り下ろす。
「ぬぅおりゃあ!」
豪鬼が着地すると、ゴーレムは、頭部から一刀両断、真っ二つになり、崩れ去った。
崩れ去るゴーレムから間一髪着地したフーケは、必死の形相で辺りを見回す。
しかし、豪鬼は既にそこから消え去っていた。
「くそっ!」
フーケは怒りと苛立ちに顔を歪めながらも、その場から走り去った。
861 :
860:2009/05/08(金) 16:24:56 ID:IdCI3MtO
代理の代理したらオレもさるった。
代理投下はここ迄です
誰か次スレ立て頼む
誰も動かないことに感激したw
よし、んじゃ次スレを作ろうと思うけどいいかね?
863 :
862:2009/05/08(金) 16:43:12 ID:c+QNfLLn
って、まだ投下終了してないのか。
んじゃ、代理の代理の代理
299 :滅殺の人:2009/05/04(月) 21:59:13 ID:GToGOIbM
今回はここまでです。
うわぁ……文章の密度が……スッカスカだぜ……
支援してくださった方、代理投下をしてくれた方、本当にありがとうございます!
300 :滅殺の人:2009/05/04(月) 22:55:44 ID:GToGOIbM
すみません
>支援してくださった方、代理投下をしてくれた方、本当にありがとうございます
先にこんなことを書いてしまい申し訳ありません。
あらためて、どなたか代理をお願いします。
代理の代理と代理の代理の代理の人、どうもありがとうございました。
16:56までに次スレが貼られなければ、自分が作って張ります。
ん? まだ新スレないのか
ちょっと試してくるので、できなかったら他の方お願い
868 :
867:2009/05/08(金) 16:55:17 ID:eom8N6nJ
乙
>>835.837
奴隷みたいな使い魔生活→一人でレコンキスタどうにか汁→バーッカじゃねえの!?
そしてハルパゴスに扇動されたガリアとゲルマニアによるトリステイン同時侵攻だろjk
>>750 ニヨニヨがコヨコヨに見えて
ルイズが円盤召喚→逃げそうになったので撃墜爆発→エリクサーちょうだい→無い
ってことでコヨコヨのためにエリクサーを求めての冒険が始まる・・・とか浮かんだ
あんだけ愛くるしい異星人に迷惑かけてカード化したり喰ったり斬殺したり使い魔になれとか言ったりする奴は鬼だよな
コヨコヨがガンダールヴになっても先ずギーシュにだって勝てないだろうし
たたかう
G.F.
>ドロー >スコール9999======
アイテム
>ルイズ
アルテマ
フレア
>??????
>ストック
はなつ
G.F.ガンダールヴをドローした!
なんか
>>871見て、使い魔契約前の虚無の面々からはいろいろと採れそうだな〜と思った。
テファから乳成分をドローしようとするルイズが見えた
最高のヒーローといえばラッキーマン
ここはPARどころではないチート愉快犯の灰田さんをだな…
>灰田
学園ソドムの学校襲撃強姦男だっけ
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