あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part225

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part224
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1238848896/l50

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 16:19:56 ID:rBShq063
>>1
新年度でみんな急がしいんかな
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 16:20:18 ID:OR/Mte2n
>>1
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 16:24:15 ID:g3blUSEX
>>1の人お疲れさまなのですよー
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 17:57:25 ID:cjZxIa24
>>1

これはポニーテールじゃなくて乙なんだから
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 18:37:38 ID:y2mLt67R
>>1

今月のゼロクロイツを見て、
虚無のパズルの魔王の骨が復活したらパワーバランスがまずいなと感じた

酒好きのデスレオンを村で唯一乗りこなす人が出てくるかにかかっているが
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 19:01:02 ID:4gasiyeC
(・ω・`)乙 これはポニーテールじゃなくて辮髪なんたらかんたら
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 19:42:14 ID:P+x/WVaQ
>>1
9虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:19:52 ID:LOHaaiRl
>>1

早速ですが20:25頃から投下させてください。

>>6
名前だけ早めに出したけど、当分使うつもりないからダイジョーブダヨ
10虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:26:09 ID:LOHaaiRl
それからというもの、ルイズはキュルケと協力して詔を作った。
意見交換と称して、そんな言い回しはダサいだのセンスがないだのさんざんに言いあったあげく、取っ組み合いのケンカになったり、
三日くらい口もきかなくなったり、オスマン氏に催促されてしかたなく作業を再開したり、
とうとう最後には二人してタバサに泣きついたり、そんなこんなでなんとか詔は完成した。
しかし、そうやって苦労して作り上げた詔は、宮廷貴族たちの推敲によって大半を書き直されてしまったのだった。ルイズはがっくりした。
詔が完成してからも、式で身につける巫女装束を仕立てたり、行程のリハーサルをしたりと、毎日忙しくしているうちに、あっという間に三週間の時が過ぎた。
入浴を終え、部屋に戻ったルイズは、ぼすんとベッドに突っ伏した。アンリエッタの結婚式まであと1週間。
数日後には、自分も王宮へ向かい、アンリエッタに付き添ってゲルマニアへと出発する。
「……そういえば、あいつまだ帰ってこないのかしら」
ルイズはぽつりと呟く。彼女の使い魔であるところのティトォは、未だにタルブに滞在しつづけているのだった。
ここ最近忙しくて忘れていたが、いい加減連れ戻さなければなるまい。
なにせティトォは、夢中になると時間を忘れてしまうのである。
おまけに不死の身体であるため、時間の感覚も人とは若干ズレているようで、放っといたらいつまで経っても帰ってこないに違いなかった。
「とりあえず、姫さまの結婚式が終わったら、引きずり戻してとっちめる」
そう誓いの言葉を呟いて、ルイズは眠りについた。


夜の森の中。ティトォは背筋に寒いものを感じて、ぶるりと身を振るわせた。
「おや、どうしたね?冷えたかな」
「いえ、なんでもないです。ただなんか、変な殺気が」
ティトォはなぜか鳥肌の立ってしまった腕をさすった。
「それよりこれ。ここ一週間分の魔力の計測値の変動を計算したものですけど……」
「おお、できたのか!どれ、見せてくれ!」
コルベールは、ティトォの差し出した羊皮紙を受け取った。焚き火の炎にかざし、データを読み取る。
「ふむ……、ふむ、なるほど……、つまりこれは、絶えず魔力が樹の中を流れ続けているということ……、という事は、やはりこの樹は、君の言うところの『星の樹』なのかね?」
「そうです。少なくとも、同じ性質を持った樹です」
そういいながら、ティトォは魔力を計測する魔法装置を『星の樹』の根から取り外す。
これは、コルベールが研究のため持ち歩いているマジックアイテムを組み合わせて作ったものである。
『星の樹』の研究の最初の一週間は、この装置を作り上げることに費やされた。
コルベールの休暇期間である一週間はとっくの昔に過ぎていたが、彼の本質は研究者である。
そういう人間は、興味の対象を見つけた時には、他のことなど頭の中から霞のように掻き消えてしまうのだった。
ティトォは指でこめかみをトントンと叩きながら、呟いた。
「この大地にも、『星の樹』があった。世界は違っても、同じように大地の法則がはたらいているんだな……」
「この『樹』に流れるのは、ハルケギニアの魔力そのものということか……、いや、途方もない話だな」
コルベールは畏敬の入りまじった声で、『星の樹』の根に触れた。
「大地の法則、エネルギー循環システムとは、ふむ、面白い!なんとも興味深い理だ!ハルケギニアでは、そのような考えをする研究者はいなかった。きみの故郷だという、エルフの治める東方の地は、なるほど学問・研究が盛んな土地のようだね」
ティトォたちは、ハルケギニアより東方の地、ロバ・アル・カリイエと呼ばれる場所から来たということになっているのだった。
「ハルケギニアにも、研究者はいるでしょう。コルベール先生は熱心じゃないですか。それに、トリステインには魔法を研究するアカデミーがあるって聞きました。ぼくはいつか、そこに行ってみたいと思ってるんです」
11虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:28:13 ID:LOHaaiRl
それを聞いて、コルベールは苦笑した。
「アカデミーは、きみのような人間の満足できる場所ではないよ。確かにアカデミーは魔法を研究するための施設だが、多くの研究は、魔法をもたらしたという始祖ブリミルをより理解し、その御心を探るための学問……、神学の域を出ない。
 聖杯を作るための土の組成の研究だとか、始祖ブリミルの用いた火の形の研究だとか、おおよそ生活には役に立たぬものばかりなのだ。変わった研究はすぐに異端のレッテルを貼られ、追放処分になったり研究停止になったりしてしまう」
ティトォは肩を落とした。
アカデミーの研究施設を借りることができれば、かねてより考案していた『実験』を、始められるかもしれないと思ったのに。
「ハルケギニアの貴族は、魔法をただの道具……、なにも考えずに使っている箒のような、使い勝手の良い道具くらいにしかとらえておらぬ。私はそうは思わない。
 魔法は使いようで顔色を変える。したがって伝統にこだわらず、さまざまな使い方を試みるべきだ。
 それなのに、アカデミーの連中ときたら!火の魔法を用いて街を明るくしようとか、風の魔法で荷物を運ぼうとか、そういったより実用的な研究は、下賤ではしたないものだなどと言いおる!まったく嘆かわしい」
コルベールは興奮して叫んだ。
滔々と語り続けるコルベールを見て、ティトォは少し困った顔をして、うーむ、と唸った。
アカデミーのことをもっと詳しく聞きたかったのに、いつの間にかアカデミーへの愚痴になってしまった。
「しかしまあ……、そんな研究をしていられるというのは、世の中が平和な証拠なのかもしれんな。……魔法の優位性は、戦争でこそ証明されてきたのだから」
魔法の優位性、それは単純に魔法が強い力を持っていることに尽きる。
戦争で魔法の力を使い、武勲を上げて、恩賞を授かり力を付けたからこそ、メイジは貴族となリ、今の地位を築いたのである。
魔法に『ファイヤーボール』や『エア・カッター』など、攻撃の呪文が多いのもそのためだ。
「……戦争のための魔法の研究など、あってはならないのだ」
コルベールは、遠い目をして言った。
「私には、夢があってね。魔法をより実践的に使い、生活に根ざしたものにしていきたいんだ。そのために、私は研究をしているのだ。
 異端と謗られようとも、なに、かまうものか。私は信じてる。水の魔法が傷を癒し、土の魔法が工芸品を作るように、全ての魔法は、平和的に利用できるはずだと……」
アカデミーへの愚痴は、いつしかコルベールの夢の話へと変わっていた。
熱心に語り続けるコルベールを見ていると、ティトォの顔に、ふと小さな笑みが浮かんだ。
いい顔してるな。
ティトォは荷物からスケッチブックを取り出すと、コルベールの話に耳を傾けながら、似顔を描きはじめた。
ティトォには、夢を語るコルベールの顔が、とても生き生きとして見えた。
生きることに目標があり、そしてそれに向かって進んでいる。
ぼくの半分も生きてないだろうに、ぼくよりずっと充実した人生を……。
しかし……、似顔を描く手が、ふと止まる。
どうもそれだけではない気がする。
語り続けるコルベールの顔に、時折差す影を、ティトォは見た。何かを隠している、そんな人間のする顔だ。
無意識に鉛筆で、こめかみをトントンと叩きはじめた。
12虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:29:31 ID:LOHaaiRl
「ミスタ・コルベール、ティトォさーん」
すると、森の中から二人を呼ぶ声がした。ガサガサと茂みをかきわけて、シエスタが現れた。
「もう!夜なんですから、そろそろ村に戻ってください。いつかみたいにここで野宿するなんて、だめですからね」
シエスタは腰に手を当てて、眉根を寄せてぷりぷり怒ってみせた。
ティトォとコルベールはちょっとだけばつが悪そうにして、記録用紙や計測装置を片付けはじめた。
ひとまずのデータは取れたから、データの整理は村に帰ってすることにしよう。
シエスタに連れられて帰る途中、ティトォは尋ねた。
「コルベール先生。どうしてあなたは、魔法の研究をしようと思ったんですか?」
コルベールは一瞬きょとんとする。
「それは……」
魔法をより実践的に使うために……、と、先ほど語ったことをもう一度繰り返そうとして、コルベールは気付いた。
ティトォが聞いているのは、もっと根本的なこと。魔法の実践的な活用を研究することを思い立った、そもそもの動機を尋ねているのだった。
コルベールは言おうか言うまいか、少し迷った仕草を見せたあと、口を開いた。
「私は『火』系統のメイジだ。『火』は破壊を司るとされ、もっとも戦いに向く系統と言われている。炎の使い手の中にも、そう思っているものはたくさんいる。しかし、私はそうは思わんのだ」
コルベールはきっぱりと言い放った。
「私は炎が司るものが『破壊』だけでは寂しいと考える。だから私は探しているんだ。『火』の系統の、平和的な利用法。私の力を、誰かのために役に立てる方法を」


翌日、ティトォは目を覚ますと、うーん、と伸びをした。
「んー……。よく寝た」
シエスタの生家、来客用の部屋にティトォとコルベールはやっかいになっていた。
部屋の床には、メモや魔法器具が散らかっている。この三週間、二人はこの部屋を研究の拠点として借りているのだった。
ティトォはベッドから出ると、シャッとカーテンを開けた。
東の空が白みはじめているが、まだあたりは薄暗い。
ティトォはコルベールや家の人たちを起こさないように、そっと外に出た。
そのまま、村の近くの丘へと足を向ける。目の前には、だだっ広い小麦畑が広がっている。
(で……、どうなの?ティトォ)
ティトォの頭の中に、女の子の声が響いた。不死の身体の、魂の同居人、アクアの声だ。
(あのおっちゃんのことさ。『星の樹』を調べたいなんて、いやな感じだよ。もしかしたら、あのコッパゲ『星のたまご』を手に入れようとしてるんじゃないのかい?)
ティトォは指でこめかみをトントンと叩いた。
「それはぼくも気になってた。だから、この三週間、あの人のデータを集めたんだ。表情や、言葉の一言一句、行動の一挙手一投足。データが集まれば、『仙里算総眼図』を使える」
『仙里算総眼図』。事象の断片を知ることで、その全体を透し見ることのできる能力。
人の言葉や表情、仕草などから、その人物像を完璧に読み取ることができるのだ。
「でも、コルベール先生はそんなことは考えてなかったよ。ゆうべ言っていた、魔法を誰かのために使いたいって言葉も、本心からのものだった。そういう人間なんだ。そもそも『星の樹』の事だって知らなかったしね」
(でも、いずれは辿り着くんじゃない?)
頭の中に、今度は別の若い女の声が響いた。アクアと同じく、不死の身体に眠るプリセラの声だ。
(ティトォが言うんなら、きっとその通りなんだろうね。でもね、大きな力ってのは、人を簡単に変えるよ)
「うん……」
ティトォはぽつりと呟いた。『星のたまご』の事を知って、コルベールが変わってしまわないとは言いきれない。
それに、少し気になることもある。
コルベールは、なにか後ろ暗い過去を隠している。
さすがにデータが足りないので、それがなんなのかまでは分からないが、深い後悔……、罪の意識……、そんなものをコルベールは持っていた。
ふいに、ぐう、とティトォの腹の虫が鳴った。
そういえば、ゆうべはずっと『星の樹』を調べていて、夕食を取らなかったのだった。
「……お腹空いたな」
ティトォは呟くと、コートの胸からおまんじゅうをもぎ取った。
おまんじゅうを食べていると、ティトォの元へ、シエスタがやって来た。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:29:49 ID:/iwqDe8N
sien
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:30:30 ID:P+x/WVaQ
よし支援だ
15虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:31:23 ID:LOHaaiRl
「ここにいたんですか、ティトォさん。そろそろ朝ご飯ですよ」
「あ、うん」
見ると、小麦畑の向こうから、日が上りはじめていた。
地平線がきらきらと輝いて、小麦の穂を照らしている。
「綺麗だなあ」
ティトォは思わず呟いた。スケッチブックを持ってきていなかったのが悔やまれる。
「でしょう?わたし、ここから見る景色が大好きなんです。ティトォさんも気に入ってくれて、嬉しいです」
シエスタは朗らかに笑った。
「それに、収穫の時期になると、もっともっと綺麗なんですよ。もう、ため息が出ちゃうくらいで、村の自慢なんです。そのときはぜひ、ミス・ヴァリエールもお連れしてくださいな」
「うん、きっとそうするよ」
ティトォは小麦畑に向かって突き出すように手を伸ばして、思いを馳せた。
黄金色に色づいた、どこまでも広がる小麦畑……、その風景を、ぜひ絵に描いてみたいな、と思った。
「ところでさ、シエスタ。さん付けやめない?言いにくいでしょ」
「あ、はい。わたしもそう思ってました」
「かと言ってちゃん付けもだめだよ」
「えっ」
シエスタは驚いたような声を上げた。
「ティーちゃん、だめですか?」
「絶対だめ!」
そんなふうにやり合っていると、遠くの空から、ポポン……、ポポン……、と音が響いてきた。
「なんだろう?花火かしら」
音は、ラ・ロシェールの方角から聞こえてくる。
ティトォは音の聞こえてくる方に目をやると、指でこめかみをトントンと叩いた。
「……大砲の音?」


ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式は、ゲルマニアの首都、ヴィンドボナで行われる運びであった。
式の日取りは、来月……、三日後のニューイの月の一日に行われる。
そして本日、トリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号は、神聖アルビオン政府の客を迎えるために、艦隊を率いてラ・ロシェールの上空に停泊していた。
後甲板では、艦隊司令官のラ・ラメー伯爵が国賓を迎えるために正装して居住まいを正している。その隣では、艦長のフェヴィスが口ひげをいじっていた。
アルビオン艦隊は、約束の刻限をとうに過ぎている。
「奴らは遅いではないか。艦長」
イライラしたような口調で、ラ・ラメーは呟いた。
「自らの王を手にかけたアルビオンの犬どもは、犬どもなりに着飾っているのでありましょうな」
そうアルビオン嫌いの艦長が呟くと、鐘楼に登った見張りの水兵が、大声で艦隊の接近を告げた。
「左上方より、艦隊!」
なるほどそちらを見やると、雲と見まごうばかりの巨艦を戦闘に、アルビオン艦隊が静静と降下してくるところであった。
あの艦隊が、姫と皇帝の結婚式に出席する大使を乗せているはずであった。
「ふむ、あれがアルビオンの『ロイヤル・ソヴリン』号か……」
感極まった声で、ラ・ラメーは巨大戦艦を見つめた。
本当に巨大、としか形容できない、禍々しい艦であった。
無数の大砲が舷側から突き出ており、甲板には竜騎兵まで積んでいる。
「提督。かの船は叛徒どもが手中に収めてからは、『レキシントン』と名を変えております」
艦長が鼻を鳴らしつつ、巨大な艦を見つめて言った。
「もはやアルビオンに『ロイヤル・ソヴリン(王権)』は存在しない、と言いたいのでしょうな。まったく革命家気取りどもの考えそうなこと」
「しかし、戦場では会いたくないものだな」
16虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:32:34 ID:LOHaaiRl
降下してきたアルビオンの艦隊は、トリステイン艦隊に並走するかたちになると、旗流信号をマストに掲げた。
それを受け、こちらも旗流信号を返すと、どん!どん!どん!とアルビオン艦隊から大砲が放たれた。
礼砲である。
弾は込められていない。大砲に込められた火薬を爆発させるだけの空砲である。
しかし、巨艦『レキシントン』号が空砲を撃っただけで、辺りの空気が震える。
その迫力に、ラ・ラメーは一瞬あとじさる。
空砲と分かっていながらも、実戦経験もある提督をあとじらせるほどの、禍々しい迫力を秘めた『レキシントン』号の射撃であった。
「よし、答砲だ」
「何発撃ちますか?最上級の貴族なら、十一発と決められております」
礼砲の数は、相手の格式と位で決まる。艦長はそれをラ・ラメーに尋ねているのであった。
「七発でよい」
子供のような意地を張るラ・ラメーを、にやりと笑って見つめると、艦長は命令した。
「答砲準備!順に七発!準備でき次第撃ち方始め!」


アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号の後甲板で、艦隊司令官のサー・ジョンストンと、艦長のボーウッドは、左舷の向こうのトリステイン艦隊を見つめていた。
椅子の上でふんぞり返っているジョンストンとは対照的に、ボーウッドは複雑な表情を浮かべている。
今回の『親善訪問』、その裏に隠された作戦に、戸惑いをを覚えていたのだ。
革命戦争(レコン・キスタを名乗る反乱軍が起こした先の内戦のことを、アルビオン新政府はこう呼んでいる)において、敵艦を二隻撃沈する功績を上げ、こうして『レキシントン』号艦長に任命された彼だったが、実のところ、心情的には王党派である。
しかし、彼は軍人は政治に関与すべからずとの意志を持つ、生粋の武人であった。
上官であった艦隊司令が反乱軍側に付いたため、仕方なしにレコン・キスタ側の艦長として革命戦争に参加したのである。
「どうされましたかな?艦長」
ボーウッドの傍らに控えた、長身の貴族が声をかけた。
艦載の竜騎士隊隊長に任命された、ワルドであった。
「わたしは、アルビオンの未来を憂いているのだ。アルビオンは、ハルケギニア中に恥をさらすことになろう。卑劣な条約破りの国として、悪名をとどろかすことになろう」
その言葉を聞くと、ジョンストン司令官は眉をひそめた。
「ミスタ・ボーウッド。それ以上の政治批判は許さぬ。これは、我ら議会が決定し、クロムウェル閣下が承認した事項である。君はいつから政治家になった?」
貴族議会の議員でもあるサー・ジョンストンは、クロムウェルの信頼厚い政治家でもあるのだった。
ワルドもジョンストンの言葉を引き継ぐ。
「それに、ハルケギニアはレコン・キスタの旗のもと、一つにまとまるのです。聖地をエルフどもより取り返した暁には、そのような些細な外交上のいきさつなど、誰も気にも止めますまい」
不可侵条約を破ることが、『些細な外交上のいきさつ』だと?さすがは祖国を裏切った男の言うことだ。ボーウッドは、内心で舌打ちし、ワルドを睨みつけた。
空の向こうのトリステイン艦隊から、轟音がとどろいてきた。
トリステイン艦隊旗艦が、答砲を発射したのだ。
その音を聞いた瞬間、ボーウッドは軍人へと変化した。
作戦開始だ。
政治上のいきさつも、人間らしい情も、卑怯なだまし討ちであるこの作戦への批判も、全て吹っ飛ぶ。
神聖アルビオン共和国艦隊旗艦『レキシントン』号艦長、サー・ヘンリー・ボーウッドは、矢継ぎ早に命令を下しはじめた。
17虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:33:24 ID:LOHaaiRl
「左砲戦準備」
「左砲戦準備!アイ・サー!」
砲甲板の水兵たちによって、大砲に装薬が詰められ、砲弾が押し込まれる。
艦隊の最後尾の旧型艦『ホバート』号の乗組員が準備を終え、『フライ』の呪文で浮かんだボートで脱出するのが、ボーウッドの視界の端に映った。
すると、次の瞬間『ホバート』号の甲板から火の手が上がる。
火はまたたく間に艦全体に広がり、あらかじめ積んでいた火薬の樽に引火し、大爆発を起こした。
残骸となった『ホバート』号が、燃え盛る炎とともにゆるゆると墜落していくのを見て、ボーウッドは士官に命じた。
「旗流信号を掲げろ。文面は次の通りだ。『『レキシントン』号艦長ヨリ。タダイマノ貴艦ノ砲撃ハ空砲ニアラズ。我ハ、貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス』……」


それから数刻後……、その日のうちに、トリステインの王宮に、国賓歓迎のためラ・ロシェールに停泊していた艦隊全滅の報がもたらされた。
ほぼ同時に、アルビオン政府からの宣戦布告文が急便によって届いた。
そこに書かれていた内容は驚くべきものであった。
礼砲でトリステイン艦隊は空砲を用いず、アルビオン艦隊の『ホバート』号を撃沈せしめたというのである。
トリステイン艦隊の攻撃を受け、旗艦『レキシントン』率いるアルビオン艦隊はこれに応戦し、トリステイン艦隊を全滅させたというのだ。
不可侵条約を無視するような、親善艦隊への理由なき攻撃への非難がそこには書かれ、最後に
『自衛ノ為神聖アルビオン共和国政府ハ、トリステイン王国政府ニ対シ宣戦ヲ布告スル』と締められていた。
ゲルマニアへのアンリエッタの出発準備で大わらわだった王宮は、突然のことに騒然となった。
すぐに将軍や大臣たちが集められ、会議が開かれた。
「アルビオンは我が艦隊が先に攻撃したと言い張っておる!しかしながら、我が方は礼砲を発射しただけと言うではないか!」
「偶然の事故が、誤解を生んだようですな」
「アルビオンに会議の開催を打診しましょう!今ならまだ、誤解は解けるかもしれない!」
各有力貴族たちの意見を聞いていた枢機卿マザリーニは頷いた。
「よし、アルビオンに特使を派遣する。事は慎重を期する。この双方の誤解が生んだ遺憾なる交戦が、全面戦争に発展しないうちに……」
そのとき、急報が届いた。
伝書フクロウによってもたらされた書簡を手にした伝令が、息せき切って会議室に飛び込んでくる。
「急報です!アルビオン艦隊は、降下して占領行動に移りました!」
「場所はどこだ?」
「ラ・ロシェールの近郊!タルブの草原のようです!」


タルブの村、シエスタの生家の庭では、コルベールが不安げな表情で空を見つめていた。村人たちもみな家の外に出て、一様に空を見上げている。
先ほど、ラ・ロシェールの方角から、爆発音が聞こえてきた。
驚いて庭に出ると、恐るべき光景が広がっていた。空から何隻もの燃える船が落ちてきて、山肌にぶつかり、森の中へ落ちていった。
村は騒然とし始めた。しばらくすると、空から巨大な船が降りてきて、村の近くの草原に錨を下ろした。
その、雲と見まごうばかりの巨大な船を見て、コルベールは険しい顔をする。
「あれは、アルビオンの艦隊じゃないか。なぜこんなところに……」
村人たちが見守る中、草原に停泊した船の上から、何匹ものドラゴンが飛び立った。
シエスタの母は、庭に出ていた幼い子供たちをぎゅっと抱きしめた。
「いやだ……、戦争かい?」
そう怯えた声で言う。
「まさか!アルビオンとは不可侵条約が結ばれたって話じゃないか!この前、領主様からのお触れがあったばかりだぞ!」
「でもよ、さっき落ちてきた船はなんなんだよ?」
村人たちが、ざわざわ騒ぎはじめた。
18虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:36:24 ID:LOHaaiRl
そうしている間にも、ドラゴンはぐんぐんと村めがけて飛んでくる。
村人たちは怯え、家の中に入った。ぱたぱたと、全ての扉と窓が閉められる。
「ねえ先生、何が起こってるんですか」
シエスタの父がそういうと、コルベールは首を振った。
「わかりません。しかし、これは尋常ではない。村に残るのは危険です。子供たちを連れて南の森に逃げた方がいい」
「待っておくれよ、先生。シエスタがティトォくんを探しに行くって、まだ戻ってないんだよ」
「なんですって!」
そのとき、ぶおん!とうなりを上げて、ドラゴンが村の中まで飛んできた。
騎士を乗せたドラゴンは、家に火を吐きかけた。
「きゃあ!」
家がめらめらと音をたてて燃え上がり、シエスタの母が悲鳴を上げた。
竜騎士隊は村の上空を旋回しながら、辺りの家々にブレスを吐きかけた。
村が燃え盛る炎と悲鳴に彩られていく。
「なんてことだ……、おお……」
コルベールは青い顔で、その光景を呆然と見つめていた。


昼を過ぎた。
王宮の会議室には、次々と報告が飛び込んでくる。
「タルブ領主、アストン伯戦死!領軍も全滅したもよう!」
「偵察に向かった竜騎士隊、帰還せず!」
「いまだアルビオンより、問い合わせの返答ありません!」
それでも会議室では、いまだ不毛な議論が繰り返されていた。
「やはりゲルマニアに軍の派遣を要請しましょう!」
「そのように事を荒立てては……」
「特使を派遣しましょう!話し合いの場を設けるのです!攻撃したら、それこそアルビオンに全面戦争の口実を与えるだけですぞ!」
一向に会議はまとまらないまま、時間だけが過ぎていく。
会議室の上座には、アンリエッタの姿も見えた。
怒号飛び交う中、アンリエッタは青い顔をして、小さく震えている。
会議室では、今回のことを誤解から発生した小競り合いとして、外交での解決を望む声が大きかった。
しかし、礼砲で艦が撃沈されたなどと、言いがかりも甚だしい。
アルビオンは明確に戦争の意志があって、ことを行ったのだ。
アンリエッタは、ちらりとマザリーニの顔を見る。マザリーニもまた、結論を出しかねていた。
アンリエッタは俯いた。
こんなところで言い合いをしている場合ではない。
ほんとうなら、今すぐに軍を率いて、アルビオンの侵略軍を迎え撃たなければいけないのだ。
でも……、どうしようもなく身体が震えて、立ち上がることができない。
怖いのである。
戦争が。そして、強大なアルビオン軍が、怖くてたまらない。
自分でも分かっている。
自分がお飾りの王女にすぎないことを、たびたび思い知らされてきているアンリエッタは、王女としての自覚が薄い。
民を守るため、国を守るため、などという大義名分では、恐怖を払うことができないのだ。
アンリエッタはひざの上でぎゅっと手を握ると、薬指に嵌めた『風のルビー』を見つめた。
ウェールズの形見の品だ。
あのとき、自分はこの指輪に誓ったのではなかったのか。
愛するウェールズが、勇敢に死んでいったというのなら……、自分は、勇敢に生きてみようと。
それなのに、自分はこうやって怯えているだけ。
「ウェールズ様……、わたしは、どうしたらいいのでしょう?なにを頼りに、勇気を奮い起こせばいいのでしょう?」
アンリエッタは聞き取れないほどか細い声で、ぽつりと呟いた。
19虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:38:09 ID:LOHaaiRl
『風のルビー』を見つめていると、ウェールズのことが思い出された。
勇敢にも反乱軍に立ち向かい、命を落としてしまった王子様。
優しくて、凛々しかった、愛しい人。
園遊会を抜け出して、重ねた逢瀬。湖畔で交わした、幼い約束……。
宝石のような思い出が、アンリエッタの胸を締め付けた。
恐怖に縮こまっていた心が、深い、深い悲しみに塗り潰されていく……。
「タルブの村、炎上中!」
その急報に、会議室は騒然となった。
もはや、事態は取り返しのつかないところまで来ていたのだった。
ざわめきの中、アンリエッタは大きく深呼吸をして、ゆっくりと立ち上がった。
一斉に視線が王女へと注がれた。
アンリエッタは、おだやかながらも静かな激情を込めた声で、言い放った。
「あなたがたは、恥ずかしくないのですか」
「姫殿下?」
「国土が敵に侵されているのですよ。同盟がなんだ、特使がなんだ、と騒ぐ前に、することがあるでしょう」
「しかし……、姫殿下……、誤解から発生した小競り合いですぞ」
「誤解?ここにいる全員とも、これが誤解から起こった交戦だなどと、まさか本気で信じているわけではないでしょうね?不可侵条約は、紙よりも容易く破られたのです。
 もとより守るつもりなどなかったのでしょう。時を稼ぎ、戦争の準備を整えるための口実にすぎません」
「しかし……」
アンリエッタはテーブルを叩きつけた。
「わたくしたちがこうしている間にも、民の血が流されているのです!このような危急の際に、民を守ることが貴族の務めなのではありませぬか?領地を、領民を、国を自らの手で守れないで、どうして貴族を名乗れましょうか?」
会議室に、びりびりとアンリエッタの声が響いた。
「アルビオン新政府は、『レコン・キスタ』は、ハルケギニアの統一を叫んでいます。どのみち衝突は避けられなかったというわけですわね。アルビオンを手に入れた『レコン・キスタ』の矛先が、今度はトリステインに向かったのです。
 ならば我らは立ち向かわねばなりません。あの礼儀知らずどもの付け上がりを、これ以上赦すわけにはまいりません。それがハルケギニアの貴族としての矜持というものではありませんの?」
誰も、なにも言わなくなってしまった。
アンリエッタは会議室をぐるりと見回した。アンリエッタに見つめられると、会議の参加者たちは、困ったような顔でふいと目をそらしてしまう。
アルビオンは大国。反撃をくわえたとしても、勝ち目は薄い。敗戦後、責任を負わされるであろう、反撃の計画者になるには腰が引けてしまうのであった。
アンリエッタはため息をつくと、冷ややかに言い放った。
「あなたがたが立たぬというのなら、わたくしが率いましょう。そうやって、いつまでも会議を続けていればいいんだわ」
アンリエッタはそのまま会議室を出ようとする。マザリーニや、何人もの貴族が、それを押しとどめようとした。
「姫殿下!お輿入れ前の大事なお体ですぞ!」
アンリエッタはその手を振り払い、怒りを込めた目でマザリーニを睨みつけた。
「あなたが結婚なさればよろしいわ!」
そう叫ぶと、アンリエッタは会議室を飛び出ていった。
20虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:38:33 ID:LOHaaiRl
「わたしの馬を!近衛、参りなさい!」
中庭では、状況を知っていた魔法衛士隊の面々が集まって、敬礼でアンリエッタを出迎えた。
アンリエッタは用意されたユニコーンにひらりと跨がると、大声で叫んだ。
「これより全軍の指揮をわたくしが取ります!魔法衛士隊、続きなさい!」
腹を叩いて、ユニコーンを走らせた。
その後に、幻獣に騎乗した魔法衛士隊が口々に叫びながら続く。
「姫殿下に続け!」
「続け!遅れを取っては、家名が泣くぞ!」
次々に中庭の貴族たちは駆け出していく。城下に散らばった各連隊に伝令が飛んだ。
その様子をぼんやりと見ていたマザリーニは、天を仰いだ。
どのように努力を払おうとも、いずれアルビオンとは戦になるとは思っていたが……、いまだ国内の準備は整っていないのだ。
彼とて、命を惜しんだわけではない。彼なりに国を憂い、民を思ってこその判断だった。小を切っても、負ける戦はしたくないのだった。
しかし、もはやアルビオンとの交渉の余地はないであろうことは明らかである。ならば、外交努力に傾注することに、なんの意味があろう。
姫の言う通りであった。騒ぐより前に、すべきことがあったのだ。
マザリーニは、会議室に取り残され、呆然とした貴族たちに向き直った。
「おのおのがた、馬へ!姫殿下一人を行かせたとあっては、我ら末代までの恥ですぞ!」


魔法衛士隊を率いてタルブに向かう道中、アンリエッタはぼんやりと考えた。
なんだ。できたじゃないの、アンリエッタ。
アンリエッタは、手綱を握った手にふと視線を落とした。その手は、もう震えてはいなかった。
今のアンリエッタの身体に満ちているもの。それは、怒りだった。
愛するウェールズの命を奪った『レコン・キスタ』への激しい怒りが、アンリエッタの恐怖を払い、身体を突き動かしていた。
貴族の矜持や、王家の責任など、言ってしまえば浮世のしがらみである。原始の感情は、それらよりも遥かに大きな力を持っているのだ。
そうだ、怒りだ。怒りこそが、わたしの両脚に立ち上がるための力をくれる!
アンリエッタは手綱をうち、ユニコーンを走らせた。
21虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/11(土) 20:40:26 ID:LOHaaiRl
今回は以上です。途中の支援ありがとうございます。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 21:16:46 ID:P+x/WVaQ
おまんじゅう吹いたwマテパの人乙です
やっぱティトォとコッパゲ絡めるかー
ティトォの魔法の能力的に絡ませないとウソだよな
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 21:41:49 ID:y2mLt67R
マテパの人乙です

意外とコッパゲの過去が早めにバラされそうな感じ
アニエスもタルブに来たりして


>>9
そうですよねぇ
シエスタが燃やされる村を見て憤慨して
「やめてって言ってるんです」
と復活させる展開も見てみたかったんですがね
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:22:06 ID:G39XK6GC
TAPきたあああああ


今月のゼロクロイツでテンション上がりまくりのところに更新
ここで震えなくていつ震えるんだ
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:43:16 ID:d9vG09k3
前スレの話だけど、久々に1000いったみたい。
悲しむべきか・・?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:46:13 ID:T5KlZ0ZD
スレ消費に一週間か。
一日で消費してたあのコロとは、隔世の感があるな。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:51:20 ID:6ez/22nM
お前ら4月がどれだけ忙しいと思ってるんだ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:57:36 ID:deYGoU5y
無職とまで言わんが、作者が皆が皆暇とは限らない
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:01:55 ID:Ai/LM6zD
12月は師走・クリスマス・歳末
1月は逝く 正月・受験
2月は逃げる 受験
3月は去る 年度末、卒業
4月は年度はじめ 入学、就職、花見
5月は五月病 大型連休
……

いやあ、SSなんて書いてる暇がないわい
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:04:30 ID:FRM3x8vM
5月に五月病にかかった新入社員たちがSS書きに逃避することを期待
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:19:01 ID:dTw+ZCcd
内臓飛び出てたりするゾンビとか呼んじゃって
あーとか言いながらかぶりついてきてもやっぱり召喚のやり直しは
駄目なんだろうか。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:24:55 ID:w04yWsDz
さすがに生命の危機を感じたら僕らのスーパーヒーローコルコル君が使い魔ぶっ殺してくれるだろう

33プリキュアの人:2009/04/11(土) 23:31:55 ID:vJ4sPcwu
プリキュアで書くのはほぼ1年ぶりなんですが、現在公開中のプリキュアオールスターズDXで小ネタができたので投下したいと思います。


【作品名】:映画・プリキュアオールスターズDX
      みんなともだちっ!奇跡の全員大集合

【召喚キャラ】フュージョン


現在公開中の映画の敵キャラです。
少しだけオリジナル解釈が入っているので、その辺を含めて解説は最後に入れてます。

23:40から投下したいのですがよろしいでしょうか?
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:35:07 ID:wUAhEbFX
どうぞどうぞ。支援なんだなー
ルイズがアルビオンから帰って約3週間……
ルイズは、ほとんど部屋から出ることもせず、ずっと閉じこもっていた。

あの日、サイトは行ってしまった……。迫りくるアルビオンの軍隊を止めるために。
あの日、サイトは言ってくれた……。ルイズのことが好きだって。

そんなサイトに、もう、二度と会うことはできない……。
いくら待っても、サイトは帰ってこない……。
目を開けても、部屋にサイトの姿はない……。
耳を済ませても、サイトの声は聞こえない……。
ベットに伏しても、サイトのぬくもりは、もう、どこにもない……。



そんなルイズの部屋をノックする者がいる。
金色の髪に左右の瞳の色が違う『月目』、ロマリアの神官、ジュリオ・チェザーレであった。
彼は、ルイズの部屋で少し話して部屋を出る。
それと入れ替わりに、ギーシュとモンモランシーがルイズの部屋に入った。

「ルイズ、随分と落ち込んでるのね……、気持ちはわかるけど。
 その……彼が死んだって、決まったわけじゃないんだから。」
しばらくルイズは膝をついていたが、ゆっくりと起き上がった。勇気を搾り出すように拳を握り返した。
「……知ってるわ。生きてるもん!」
「そ、そうだよ、あのサイトがそんな簡単に死ぬもんか!」
「そうよ、生きてる!今から確かめるわ…。絶対に生きてるんだから。」
すっくとルイズは立ち上がり、つぶやいた。決心したような、そんな顔だ。
「ど、どうやって?」
ギーシュが怪訝な顔で尋ねた。モンモランシーがはっと気づいたような顔になった。
「サモン・サーヴァント!?」
「そうよ」
ルイズはうなづいた。


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン!我の運命に従いし、『使い魔』を召喚せよ!」
目の前の空間に向かって、杖を振り下ろす。
一旦使い魔として契約した才人が生きていれば……そこに呼び寄せるためのゲートは開かない。

しばしの時間が流れた。
目をつぶっていたモンモランシーは、なかなか目を開く勇気が出なかった。
ルイズも、ギーシュも、誰も口を開かないのがすごく怖い。
あまりの静寂に耐えかね、モンモランシーは思い切って目を開けた。その口から気の抜けたため息が漏れる。
ルイズの前には白く光る鏡のような形をしたゲートがあった。
魂を抜かれたような顔をして、ルイズは呆然とゲートを見つめていた。
それは見まごうことなく、『召喚』のゲートだった。
最後に振り絞った勇気も粉々に打ち砕かれて、ルイズは力なく床に座り込む。


「……チ…カラ……」
ゲートの奥から、何者かの呟きが漏れてくる。だが、ルイズたちはそんな声には聞こえていなかった。
ルイズは呆然とゲートを見つめるだけ、ギーシュはハラハラと涙で頬を濡らしモンモランシーはため息を漏らすのみだ。
「『力』を感じる……。」
モンモランシーがゲートの奥から低く響く声に気づいて顔を上げた瞬間、ゲートに黒い何かが映し出された!
「『力』をよこせぇぇぇっ!!!」
その声と共に、ゲートより黒い粘液が洪水のように噴き出し、ルイズたちを一瞬で飲み込んだ。

冷えた世界が続いていた。
永久に続くかのように、無限に闇は広がっている。
耳をすましても、物音ひとつ聞こえない……
手を伸ばしても、何一つ触れるものはない……
目を凝らしても、ただ暗闇が広がるだけ……

ルイズが感じているのはただひとつ、胸にぽっかりと空いた『穴』から染み出す痛みだけ。
その『穴』の正体を彼女は知っている。……才人だ。


才人は、いっつも不思議な景色を自分に見せてくれていた。
わけがわからないけど綺麗で、なんだかわくわくして、感じたことのない気分にさせてくれる景色を。

才人は、いっつも自分を守ってくれていた。いつもそばにいて自分の盾になってくれた。
フーケのゴーレムに潰されそうになったとき、
ワルドに殺されそうになったとき、
アルビオンの艦隊に対峙したとき、
そして……味方を逃がすために、「死ね」と命令された時……



『そんな才人にお前は何をした?』
暗い闇の奥から、低い声が響く。ルイズはびくっと体をすくめた。

『お前は、自らのプライドを満足させるためだけに才人を踏みにじった!』
ルイズは違う!と声を上げようとした。……だが、口が開かない。
この声が言っていることが本当だと、誰よりも自分が知っているから。

『それでも、才人は、お前のために戦った!』
ルイズは、声から逃れようと必死で耳をふさいだ。胸の穴の痛みが全身に広がっていく。

『才人を殺したのはお前だ!!』
心をバラバラにされるような痛みに、ルイズは悶え、叫んだ!
……だが、その声は闇の底へと消え、静寂だけが残る……


『才人は、死んだ……』
「やめて!」
『才人は、もう帰ってこない……』
「やめてっ!」
『お前の想いは、才人に届くことはない……』
「やめてぇぇっ!」
『お前は、この痛みから一生逃れることはできない……』
悲鳴を上げているのはルイズの心か、それとも彼女自身なのか?
それすらもわからないまま、耳を押さえて逃げようと走り出した。
だが、暗闇はどこまでも続き、声はいつまでも聞こえてくる。


『才人はもういない、サモン・サーヴァントのゲートが開いたのだから!』
『才人は死んだ。アルビオンで兵隊に殺された!』
「……ヴァ…リ……エー……」
『お前の身代わりに、才人は命を落としたのだ!』
「ミス・ヴァリ……エール…」
突き刺すような痛みに震えるルイズの耳に、暗闇の中からかすかに他の声が混じって聞こえてきた。
『お前は、才人に…』
「ミス・ヴァリエール!しっかりしてっ!!」
今度ははっきりと聞こえた。すると、冷え切っていたルイズの左手は、確かにぬくもりを感じた。

意識を取り戻したルイズが見たのは、黒い世界だった。
だが、先程までのような暗闇ではない。ここは間違いなく自分の部屋だ。
部屋中が黒くヌルヌルした、粘液に覆われている。
そう、黒い粘液が大きな『泡』のように部屋全体に広がって、ルイズたちはその中にいるのだ。
床は黒い粘液の『沼』になっていて、ルイズは腰まで使っている。
ルイズの隣にいるのは、メイドのシエスタ。彼女も膝まで『沼』に浸かりながらも、ルイズに肩を貸し助け出そうとしている。
その目は、天井の一点を見つめ、憎憎しげに睨みつけている!

「ミス・ヴァリエール!しっかりして下さいっ!」
「シエスタ!」
「よかった。気がついたんですね」
「な、なんで、こんな…」
「私が食事を届けに来たら、黒いこれが噴き出して、この部屋が……」
黒髪のメイドは、ルイズが意識を戻したのに気づくと、肩にぐっと力を入れて踏ん張った。
ルイズがそれに合わせて足に力を込めても、『沼』の底の感覚がなくバランスを崩してシエスタの体がよろめく。

「は、放して!このままじゃ、あんたまで沈んじゃう!」
「は、はは、放しません!」
シエスタは天井の一点を睨みつけたまま叫んだ!
「いいから放しなさいよ!どうせ、わたしなんか生きてたって……」

『そうだ、才人は死んだ!』
ルイズはその声にビクッとすくみあがった。
さっきの声だ……それは、天井から聞こえる……。


「はな・しま・せんっ!!」
ルイズの隣でシエスタが、天井に向かって怒鳴りつけた。ルイズがそちらに目を向けると、天井を覆った黒い粘液に顔のような姿が浮かび上がっている。
「サイトさんが帰ってきたとき、ミス・ヴァリエールがいなかったら悲しみます!
 私がサイトさんに渡した眠り薬、……この人を助けるために使ったんですよ!
 だから、私も、この手は絶対に放しません!!私はサイトさんが帰ったときに笑顔でいて欲しいの!!」

『才人は死んだ!サモン・サーヴァントのゲートが開いたのが何よりの証しだ』
天井の顔は抑揚もなく、淡々と告げる。
シエスタはルイズの体を必死で支えながら、天井に向かって力いっぱい声を張り上げた。
「だから何だって言うんですかっ!魔法がなんだって言うんですかっ!!
 サイトさんは、約束したんです!学院に帰ったら私の作ったシチューを食べるって約束したんです!!
 だから生きてる!絶対に帰ってきますっ!!サイトさんは約束を破るような人じゃないっ!」



シエスタの言葉を聞いたルイズの心に何かが灯った。

そうだ、才人は自分に言ったじゃないか。「ルイズは俺が守る」って。
『才人は死んだ……』
そんな才人が、ルイズを守れない場所へ勝手に行くなんて考えられない。
『お前たちは、二度と才人に会うことは出来ない……』
だって才人は口にした事は全部守ってきた。
『才人の姿を目にすることなどできない……』
大事なところで、いつも自分を助けてくれた。
『才人の声を聞くことなどできない……』
だから!!
『あきらめろ。無駄なことだ……』


「うるさいっ!」
ルイズの全身に炎が走った。ルイズの心に張った氷を一瞬にして溶かし、蒸発させ、全身に熱がほとばしる。
「あんたに、あんたなんかに、サイトのなにが分かるって言うのよっっ!!!」

その瞬間、ルイズの部屋を覆った、黒い粘液の『泡』がぱちんと弾けた。
ルイズとシエスタの視界が色を取り戻す。足元の『沼』も消えてルイズたちは床に立っている。
いや、『沼』は消えたのではない。部屋の片隅に凝縮され、形を代え、粘々とした人のような姿へと変わる。


「あんた!人の部屋を無茶苦茶にして、一体何者なの?!」
『我が名はフュージョン。全ての生命と融合するもの。お前がその力で呼び出したもの』
「あんたなんか呼んでないわよっ!!サイトのサモン・サーヴァントから勝手に出てきてっ!」
『お前の力をよこせ……。全ての生命体をひとつにするのだ……』
「わけのわかんないことをっ!こんな奴に!」
『生命体は全て不完全だ……。個体がバラバラであるが故に、別れの痛みに耐え切れない……。
 だから、わたしは全てを融合してひとつにするのだ……。そうすれば、別れることも、痛みに苦しむこともない』

「ふざけんなっ!」
「馬鹿なこと言わないで下さいっ!」
ルイズとシエスタが、同時に叫んだ!
目の前のこいつは、こんな意味不明の理屈のために、彼女達の一番大切なものを踏みにじったのだ。
ルイズは怒りに任せて杖を振り上げた。
「そんなに欲しけりゃくれてやるわよっ!!」
小さな腕が杖を振り下ろすと同時に閃光が走る!
一瞬遅れて、爆音が響き、寮全体が低く震動した。



……割れた窓ガラスから入った風が、部屋に充満した白煙を薄くしていく……。
ルイズの部屋は、あちこちが焼け焦げ、煤にまみれている。
フュージョンの姿はなく、部屋の所々に黒い粘液がポツポツと残るだけ。
カーテンは破れ、ベットもグチャグチャになった部屋の中心で、ふたりの少女が煤にまみれた黒い顔を合わせた。

「……ぷっ」
「……ふふっ」
ふたりは同時に吹き出し、煤まみれの顔で一緒に笑い転げた。
その鳶色と黒の瞳は、固い決意に輝いている。
「シエスタ、アルビオンにいくわよっ!」
「はいっ!!」
「あのバカ犬、方向音痴だから迷子になってるんだわ、草の根分けても探し出すわよっ!!」
「行きましょう、サイトさんを探すんです!」
「よーし、早速準備よ!待ってなさい、サイト。わたしの使い魔が勝手に死ぬなんて許さないんだから」



-THE END-

【解説】


「フュージョン」は、ゲル状の身体を持つ謎の生命体で、他の生命体やエネルギーと融合して成長します。
その目的は、全ての生命体の融合とのことですが、それ以上の目的については何も語っていません。

「フュージョン」が生命体と融合する場合、相手の周囲をその体でドーム状に覆い、相手の足元に『闇』を作り出してそこに引きずり込み融合しようとします。
弱気な人間や、迷いをもつ人間は、足元の『闇』に飲み込まれて消えてしまいますが、心を強く持っている限り捕えられることはありません。そのため、フュージョンは相手の一番嫌がることを指摘して動揺を誘います。

「フュージョン」の正体については、映画本編ではほとんど何も語られていません。
しかし、その性質は「Yes!プリキュア5」でカワリーノやデスパライアが使っていた「絶望の闇」や、「ふたりはプリキュア」でベルゼイたちがキュアホワイトを消すために使用した「闇のドーム」に酷似しています。
もしかしたら、フュージョンとは「絶望の闇」が意思を持ったものだったのかもしれません。
(このSSは、以上の推測を元に描いています。)



【おまけ】


ルイズたちが、部屋をでてしばらくしてから……
床にぶちまけられた「黒い粘液」がプルプルと震えた。
そして、そこから人の手がニュっと突き出す!!

黒い粘液にまみれた「手」は、必死に床を探る。手を伸ばした先にあるベットの足を掴むと、もう一方の手を「黒い粘液の水溜り」から出して、ベトベトの体で必死に外にはいずりだした。
先ほど、這い出した粘液まみれの者は、こんどは、「黒い粘液の水溜り」に手を突っ込んでもう一人の人間を引っ張り出した。


「ひ、酷い目にあった……。大丈夫?モンモランシー」
「もう嫌、何でこんな目に合わなきゃいけないのよっ!!」

40プリキュアの人:2009/04/11(土) 23:45:58 ID:vJ4sPcwu
以上で終了です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


映画「プリキュアオールスターズDX」のストーリーは私にはこう見えましたw
冒頭部分は、前に自分で書いた電王の小ネタを流用しています。盗作ではないので念のため。


フレッシュプリキュアも面白いです。
ラビリンスの誰かで書きたいんですが……キャラを掴みきれていません。
いいネタを思いついたら、また書きにきますね。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:25:56 ID:RXOyhcOp


前スレ1000に期待
それと999の小竜姫を個人的には見たいと思うよ
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:28:05 ID:zsyu7esc
うまい事いったので40分から小ネタ投下させてください。
「輪道」より高虎校長を召還です。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:29:04 ID:aD21uxuZ
>>41
日本の外なので三分しか活動できません。






と言うネタは流石にアレかなあ。
44(・||・)な使い魔@:2009/04/12(日) 00:40:10 ID:zsyu7esc
「何ですって! サイト達はもう出発してしまったって言うの」

戦場の慌しさに満ちたアクレイシアの港に、悲鳴にも似たキュルケ叫びが響く。
問い詰められたジュリオも、普段のように軽妙な口を利くことが出来ず、ただ静かに頷くのみであった。

「残念だが…… 予想以上に敵の展開が早い
 君達の援軍を待って要る余裕が無かったんだ」

「そ、そんな」

「やれやれ、せっかく運び込んだ秘密兵器も、無駄足となってしまいましたか」

新造艦・オストラント号を引率してきたコルベールが深いため息をつく。
その視線の先には、一行をここまで遅延させてきた鉄の塊、既に無用の長物と化した、異世界の大型兵器があった。

【タイガー戦車】

製造当時、その驚異的な重装甲と、88mm砲の超火力により当代随一と謳われたこの機体が、
あらゆる兵器を操ることが出来るガンダールヴの手元にあったなら、
たちどころに戦況を一変させ、大切な生徒達の命を守る事ができた筈であろう。
だが、現状では文字通り宝の持ち腐れ、使い所の無い鉄の塊に過ぎなかった。

「ねぇ、ジャン、なんとかならないの?
 戦線はもう、目と鼻の先だって言うのに……」

「……残念ですが、今のオストラント号は燃料が足りません。
 それに、あの重量物をここまで運搬するので、既にメイジ達も限界に来ています」

「…………」

コルベールの冷静な分析に対し、タバサが常ならぬ深刻な表情を見せる。
こうしている間にも、虎街道の前線では、旧友達の死闘が繰り広げられているであろう。
一同の間に、重い沈黙が溢れる。

――と、

「ミスタ・コルベール、【虎の羽衣】の準備を」

「ミ、ミスタ・タカトラ!?」

「……へっ? 
 うッ! ウワアアアァァアアァァ―――ッ!?」


45(・||・)な使い魔A:2009/04/12(日) 00:42:00 ID:zsyu7esc
真横からの声に振り返ったジュリオが、その端正な顔立ちに不釣合いな狂声を上げる。
無理も無い事である、彼の眼前に居たのは、この上ないほどに完全な不審人物であった。

艶やかな黒の長髪に、肩幅の広い、逆三角形の見事な体躯。
上等そうな黒のスーツを着こなした一見優雅な佇まい。

それをブチ壊しにするのは仮面! まさかの仮面! 怪人の如き仮面!

上流階級の貴族が秘密の舞踏会で使うような、魅惑めいた代物ではない。
チェーンソーを手にした不死身の殺人鬼が身に着けるような、シンプルゆえに不気味なマスク。
こめかみの辺りに入った大きな亀裂が、見る者に生々しい惨事の跡を想起すらさせた。

「あ、あ、あ……、 あなたは?」

「私がティファニア・ウエストウッドの使い魔の高虎です」

「そ、そうか、あなたが……!」

ゴクリ、とジュリオが生唾を飲み込む。
四人目の虚無の使い魔が、【仮面】だという情報は、前もって彼も入手していた。
あまりにも杜撰かつ無意味な情報ゆえに、ジュリオは諜報員の拙さを内心毒づいたものだったが
いざ、本人を目の当たりにしてみると、確かに、仮面、としか言いようが無かった。
なぜに仮面? どうしてこの場面で仮面? 一体なんのための仮面なのか?
なるほど、これでは先人も『記すこと憚れる』としか書けないであろう。

「そ、そんな事よりタカトラ、虎の羽衣って、アンタ、まさか……」

キュルケの問い掛けに、高虎の瞳がキラリと光る。
(実際には仮面の奥の瞳が見えるわけがないが、キュルケはその様を
 高虎の放つただならぬオーラから感じ取っていた)

「あのタイガー戦車は、私が牽引しましょう」



46(・||・)な使い魔B:2009/04/12(日) 00:44:12 ID:zsyu7esc
【虎の羽衣】

ペダルの回転により発生した応力を、ローラーチェーンにより後輪へと伝え、
ジャイロ効果により転倒することなく走り続ける事を可能とした、二輪の人力車である。

故・佐々木武雄氏がタルブの地に残した、その異界の名機は、
ただひたすらに速く走る事のみを目的に作られており。
平地ならばどんな名馬よりも速く、まさに地を駆ける虎の如き雄姿を見せた。
それは、高度な治金技術と運動力学によって生み出された、近代科学の結晶そのものであった。

「――ですがタカトラ! いくらなんでも無理です!
 メイジが十数人がかりで保持してきた戦車を、人力で牽引するなどと」

「勿論、独力では無理です。
 ですからあなた達は、ここにいるメイジの皆さんとともに、風竜で追走してきて下さい
 魔法で戦車の重さを軽減してさえくれれば、後はどうとでもなります」

言いながら、高虎は厳重な固定化を施した牽引用の鎖を、虎の羽衣へと結び付けていく。

「無理、無理、無理よ! 高虎ッ!
 メイジが20人がかりで支えて、それでも船の底が抜けそうな程の重さだったのよ!」

「せめて、牽引用の馬が来るのを待った方が……」

「無謀」

四人がみな、口々に仮面男の無謀を止める。
ジュリオの要請により、急遽かき集められたメイジ達は、仮面の平民の奇行に嘲笑すら見せていた。

高虎は一言も反論しない、ただ、かわりに脱いだ。
黒塗りのシックなネクタイを、手馴れた手つきでシュルリと外し、
上等そうな黒のブレザーを惜しげもなくバサリと投げ捨て、
ストライプの入った紺のワイシャツの胸元を、バッ、と勢い良く広げた。
突然の異常事態に、居合わせた一同が絶句する。

「……マ、本気……?」

かろうじてキュルケが呟く。
ぱっと見、首から下までは一流紳士であった筈の高虎、
そのスーツの下から現れたのは、ヘラクレスもかくやという程の見事な筋肉だったではないか。
ランニングシャツから飛び出した両肩は、激流で磨かれた雄大な岩石を思わせる。
レーシンググローブをはめる上腕二等筋の盛り上がりは、生命の力強さすら感じさせた。
いや、驚くべきは露になった肌だけではない。
上等なズボンを内側から押し上げる大腿筋の異常な膨らみは、まさしく本物の走り屋の証明であった。

「なんと言う見事な筋肉……
 そこいらのオークのような、脂肪交じりの雑多な肉体とは決定的に違う
 スポーツと自己節制により長年かけて磨き上げられた、まさに走るための肉体……」

「タ、タバサ……、声に出てるわ」
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:44:31 ID:w+ReLJNP
タイトルにある仮面を付けた競輪学校の校長かw支援
48(・||・)な使い魔C:2009/04/12(日) 00:45:55 ID:zsyu7esc
冷や汗を滲ませながら対手の力量を推測するタバサを無視しつつ、準備を終えた高虎が羽衣に乗る。
ハンドルすれすれまで頭を下げ、引き締まった臀部を天高く突き上げる。
脚部のペダルを最も効率よく回転させるための、本物のレーサーの姿勢であった。

「みんな、まばたきひとつしないで見ていなさい!」

高虎の叫びに我に返った一同が、あわてて杖を構え、詠唱を始める。
直後、高虎がまさに砲弾のように、勢いよく飛び出した。
一直線に伸びた鎖がビギンと音を立て、巨大な戦車がズズッと揺らぎ、
まるで、巨大なカブが抜けたかのように、大きくハネながら動き始めた。

「ほ、本当に動くとは……、しかもこれは、牽引するといった次元じゃあないぞ」

「信じられない……、でも、あんなにハネたら走行が安定しないわ!
 危険よ、タカトラ! 少しスピードを落として……」

「いえ、アレが正解」

タバサの言葉を裏付けるかのように、高虎はかえってスピードを上げていく。
高虎の加速にあわせ、戦車は高速で地面に叩き付けられ、ドゴン、ドゴンと大地を揺るがしていたが、
衝突音の生じる間隔は、次第に大きく開き始め、やがて……

「ゲッ!? ゲェ〜〜〜〜〜! 戦車が浮いた!?」
「そ、そんなバカなッ! いかに我々がレビテーションで軽減しているからって!?」

驚愕の声を上げるメイジ達を尻目に、額の汗を拭いながらタバサが解説する。

「そう、戦車を浮かせるまで加速する事によって
 地面との摩擦は無くなり、余計なエネルギーのロスをカットすることが出来る。
 あの人、外見よりもずっとクレバーな走りをするわ……」

「ク、クレバー?
 ただ全力で走っているだけじゃないの?」

「と、とにかく、このまま間道をひた走れば、前線はもう目の前……」

そこまで言いかけて、何事かに気づいたコルベールが、ハッ、と顔を青ざめさせた。

「あ、あ〜〜……」

「ど、どうしたって言うの、ジャン?」

「ダ、ダメなんだ、いくら彼がケタ外れの実力者とは言え
 彼にはこの間道を抜けられないワケがある」

「ワケ? 一体この先に何があるって言うのよ?」

「それは……、アレだ」

「……ッ!? そ、そんな!」
49(・||・)な使い魔D:2009/04/12(日) 00:47:03 ID:zsyu7esc
コルベールの震える指の先に見えてきた【アレ】に一同が絶句する。
一行の前に立ちはだかったのは、そそりたつ絶望的なまでの激坂であった。

「なっ、何なのよアレ!
 何だってあんなものが間道の出口にあるのよ!」

「間道の出口だからこそ、だよ
 最大傾斜45度を上回る悪夢のような勾配……通称【虎殺し】
 今から300年ほど前、間道沿いを拠点とした野盗の襲撃から旅人を守るため
 時の教皇によって建造された激坂だ」

「激坂って……、あんなモン越えられるワケないでしょ!
 あのスピード・大荷物で転倒なんかしたら、ケガどころじゃすまないわよ」
 
「タカトラ……」

だが、眼前に出現した壁の如き斜面に対しても、高虎は怯む事なくペダルを回す。
男の魂がマシンに宿ったかのように、二つの車輪は恐るべき速度で激坂を一気に駆け上る。
瞬く間に坂の半分を通過し、突破も可能かと思われた……が、

「ああ! スピードが落ちたわ」

「無理もない、ここまでの脅威の激走だけで、太ももには乳酸が溜まっていたはずだ」

「いけない、このまま戦車が地面についたら、体勢を立て直せなくなる」

「な、何とか…… 何とかしないと……!」

その時、キュルケが積んでおいた荷物をまさぐったのは、
悲劇的結末を回避せんとするガムシャラな行動から来たものだった。
だが、この状況で【それ】を手に取った事は、まさに運命と呼ぶしかない、ある種の因果によるものであろう……。




50(・||・)な使い魔E:2009/04/12(日) 00:49:07 ID:zsyu7esc
ジャーン ジャーン

ハルケグニアの空に澄み切った打鐘の音が響き渡る。

「タカトラッ! 頑張って、もう少しよ!」

キュルケが打ち鳴らしていたのは、トリステイン魔法学院に封印されていたマジックアイテム【破壊の鐘】である。
大仰な名前に反し使い方の分からない、大きいだけの鐘であった。
キュルケ自身、その効果を信じていたワケではない。
ただ、鬼気迫る走りを見せる高虎に対し、何とかエールを送ろうとしただけの事であった。

だが、その鐘の音が、高虎の耳に届いたその時……、
一同は、記すこと憚れるとまで謳われた四人目の使い魔の脅威を、目の当たりにする事となった。

「うん? な、何だか心なしか…… い、いや、加速している!」

「そ、そんな、キャア!?」

「これは……!」

筋肉が膨らむ! ペダルが回る!
真っ白なランニングシャツが! 上等なスラックスが勢いよく爆ぜる!
そして、その鍛え抜かれた惚れ惚れするような大胸筋に、【(・||・)】という模様のルーンが煌々と輝きだす!

半裸となった全身筋肉の仮面男が、瀑布の如き勢いで激坂を一直線に駆け上る!

キュルケも、タバサも、コルベールも知らなかった。
自転車を愛するチャリバカ達は、自身の限界を超えた走りの先に、自分だけの【輪道】を持つ事を。
キュルケの持つ鐘には、特別な細工がしてあった訳ではない。
競輪を、自転車を愛するチャリバカ達の想いを乗せた鐘の響き、それこそが、高虎を輪道へと導く魔法の正体であった。

「「「さ、坂を超えた〜〜〜〜〜ッ!!」」」

目の前で起こった本物の奇跡を前に、メイジ達が歓声をあげる。
頂上へと到達し、そのままの勢いで羽衣ごと上空へと跳んだ高虎の眼下に、
激闘を繰り広げる虎街道の光景が広がる。

その時、高虎の背後でビギン、と金属が砕ける音が響いた。

驚くべきことに、先に音を上げたのは、強固な固定化の施されていた筈の、牽引用の鎖の方であった。
頑丈な枷から解き放たれたタイガー戦車が、慣性によってハルケギニアの空へと舞い上がる。
同時に張り詰めていた緊張の糸が切れ、重量を減じていたメイジ達のレビテーションが一気に解ける。

「さあ、才人君! これを使いなさいッ!」

「へっ…… う、うわあああああああああああああああぁアァァァァ―――――ッ!!」
51(・||・)な使い魔F:2009/04/12(日) 00:51:19 ID:zsyu7esc
振り向きざまに才人が叫ぶ、無理もない。
彼の視界に映ったのは、猛烈な勢いで断崖から飛んでくる半裸の筋肉仮面、
そして、重量はゆうに50tを超そうかという、空飛ぶ戦車だったのだから……。

幸いな事に、戦車は放物線を描きながら頭上を跳び越して行ったため、才人は挽肉にならずに済んだ。
そして、勢いのままにタイガーが突っ込んでいった先には……、

「こ! こっちへくるなアァァァ―――――ッ!!」

「あ」

ボゴン!

――と、

その日、もっとも不幸だった女の絶叫を残して、
50tの鉄塊の直撃を受けたヨルムンガントの一団が、無残なボーリングのピンと化した……。





……そして、

【四つの虎の伝説】から十年、

あの日、一人の男が魅せた、ひとつの可能性……【ケイリン】は
極上の娯楽として、また、明日を夢見る平民たちの希望として、ハルケギニアの地に定着しつつあった。

うららかなトリステインの春の空に、例年通り、新入生のどよめきが
そして、あの、伝説の男の声が響き渡る。



「私がトリステイン競輪学院校長の高虎です」
52(・||・)な使い魔:2009/04/12(日) 00:52:17 ID:zsyu7esc
以上、投下終了です。
ネタバレすいませんでした。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:53:12 ID:W5MmFIzd

輪道しらんけど面白かった。
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:09:23 ID:YNI/kJ7S
乙です

実際にこの坂は競輪学校にあるんだよな…
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:36:26 ID:AUKscfOW
ちと亀だがプリキュアの人乙
こういう「本編に返す」タイプのってここだと結構新鮮な気がするな
面白かった
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 03:28:26 ID:prFQ+Vw9
俺以外に輪道を覚えていた人間がいることに驚愕した。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 07:36:25 ID:YxvW2AaO
>真っ白なランニングシャツが! 上等なスラックスが勢いよく爆ぜる!

脳内に「ウェアが小せェんだよーッ!!」
というセリフがこだました
58虚無と賢女の人:2009/04/12(日) 08:15:00 ID:6hq+QgZ0
皆さん、おはようございます。
もし他に予約が入らなければ8:20より投下を開始します。
59虚無と賢女07話 1/11:2009/04/12(日) 08:20:06 ID:6hq+QgZ0
それでは投下を始めます。





ルイズはベッドの上でぱちりと目を覚ました。窓の外には二つの月が光り、室内を煌々と照らしていた。

「……」

ルイズは目を擦りながら上半身を起こすと、ベッドの脇の台に置いてある水差しとコップを手に取って水を一口飲んで喉の
渇きを潤し、物憂い気味なため息をついた。

「どうしたね、娘っ子?」

壁際に立てかけられたデルフリンガーが、そんなルイズの様子に気付いて声をかけた。

「五月蝿いわね、ボロ剣。……静かにしてなさいよ」

気だるそうに答えると、エレアノールの方を見て様子を伺う。ベッドに横たわる彼女は穏やかな寝息を立てており、目を覚ます
様子はなかった。ルイズはホッと安堵のため息をつく。

「そりゃ、静かにしてろと言うなら静かにしてるけどよ。でもよぉ、寝起き悪い娘っ子がこんな時間にはっきりと目を覚ます
なんてありえねーだろ? 気になって聞いてみたっていいじゃねぇか。それに、なんだかうなされてたみてーだし」
「……」

徐々に不機嫌さを眼差しに宿しつつあるルイズであったが、怒鳴り声を上げないように自制する。

「なぁなぁ、いいだろ? 起きた理由くらい教えてくれたって、別にバチは当たるめえよ?」
「……ちょっと夢を見てたのよ」
「夢? そりゃあ、どんな夢なんだい?」
「そこまで教えるわけないでしょ」

その一言でルイズは会話を切り上げる。デルフリンガーも「つれねーや」と鞘をカタカタ鳴らすが、それ以上続けなかった。

「じゃ、静かにしてなさいよ……」

ルイズは一言念押しすると、ベッド横たわり目を閉じる。脳裏に先ほど見た夢―――ラ・ヴァリエールの屋敷、厳しい母と
魔法が使えないことを哂う使用人、『秘密の場所』と呼んでいる中庭の池に浮かぶ小船、そして憧れの子爵……とエレアノール。

「……」

夢の中のルイズに手を差し伸べてきたのは、胸をほんのりと熱くしてくれる憧れの子爵と忠実に仕えてくれる大切な使い魔の二人。

(……どういう意味なの、かしら……)

選びようのない選択肢を決断するように求められている気分になりつつも、ルイズはそれ以上を深く考えずに眠気に身を委ねた。
60虚無と賢女07話 2/11:2009/04/12(日) 08:23:18 ID:6hq+QgZ0
ルイズが寝息を立て始めたのを確認して、エレアノールはそっと身を起こした。

「ありゃ、相棒も起きてたのかい?」
「ええ……。デルフ、静かにしていてくださいね」

元々、眠りの浅いエレアノールは、ルイズのうなり声に目を覚ましていた。声をかけて起こすべきか思案していると、ルイズが
起き上がったので結局声をかけ損ねたのだが。
ルイズの様子を見守り、穏やかな寝息を立てていることを確認すると、ふぅ、と安心する。

「娘っ子の様子が気になるってか?」

ルイズとエレアノールの二人に言われたため、デルフリンガーの声も幾分小さめになる。

「そうですね、先ほどの様子は気になりますし……」

しばらく、そのままエレアノールはルイズを見つめていたが、再びうなされる様子もなかったので、ベッドに横たわる。

「デルフ、おやすみなさい……」
「ああ、相棒もしっかり眠りなよ」





風のメイジ、ミスタ・ギトーは生徒たちからの人気はほとんどなかった。長い黒髪に漆黒のマント、冷たい雰囲気が不気味な
印象を周囲に与えるためでもあったが、それだけではなかった。

「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」

キュルケの答えにミスタ・ギトーはフンと鼻を鳴らす。どうやら、彼にとって望んでいた回答ではなかったようだ。

「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているんだ」
(……甲乙付け難し、でしょうね)

ルイズの側で問答を聞いていたエレアノールは胸中でそう呟く。タバサとの組み手やフーケのゴーレムとの戦い、それに
授業で聞いたことと自分で調べたことを加味して、そのように結論付ける。

(相性の良し悪しもあるでしょうけど)

しかし、キュルケはそのように考えられなかったのか、不敵な笑みを浮かべる。

「『火』に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」
「ほほう。どうしてそう思うかね?」
「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」

ギトーも負けじと不敵で、どこか陰気な笑みを浮かべる。

「残念ながらそうではない」

ギトーは腰に差した杖を引き抜き、キュルケに対して『火』の魔法をぶつけてきたまえと言い放つ。タバサ以外のクラス中の
生徒たち―――無論、キュルケも含めて―――は、いきなりの挑発にぎょっとする。エレアノールは眉をひそめて二人の問答を
聞いていたが、声を挟もうとはしなかった。
二人の間で行われた『実技指導』は結局、キュルケの撃ち出した火球をギトーの烈風が薙ぎ払い、その勢いのままキュルケも
吹っ飛ばした。その結果に満足したギトーは悠然と、そして滔々と『風』の最強であることを語りだした。
61虚無と賢女07話 3/11:2009/04/12(日) 08:26:25 ID:6hq+QgZ0
「―――『風』が最強たる所以は、ユビキタス・デル・ウィンデ……」

低い声で詠唱を開始するギトー。しかし、教室の扉を開けて突如として入ってきた人物に、その詠唱は遮られた。突然の闖入者に
ギトーは眉をひそめた。

「ミスタ? 授業中です」
「あややや、ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」

その声を聞いてエレアノールは闖入者が誰であるか悟る……が、確証を持てずに隣のルイズに確認を取ってみる。

「あの……ルイズ様。ミスタ・コルベールで間違いない、ですよね?」
「うん、そうだけど……何なのかしら、あの格好?」

コルベールは実に珍妙な格好をしていた。頭には馬鹿でかいロールした金髪のカツラ、ローブにはレースや刺繍がところ狭しと
飾り立てられ、必要以上にめかしこんでいた。

「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」

コルベールの重々しい宣言に、教室中から歓声が上がる。その歓声を両手で抑えると、言葉を続けた。

「えー、皆さんにお知らせですぞ」

もったいぶった調子でコルベールはのけぞる。そして、のけぞった拍子にカツラが頭から滑り落ちる。

「滑りやすい」

タバサの機を見るに敏な発言が、教室中に笑いの嵐を引き起こした。エレアノールも顔を伏せて笑い出すのをこらえようと
していたが、痙攣するように肩を震わすその姿は客観的に見て無駄な努力をしているようでもあった。

「黙りなさい! ええい! 黙りなさいこわっぱどもが! 大口を開けて下品に笑うとはまったく貴族にあるまじき行い!」

珍しくも顔を真っ赤にして怒鳴るコルベールの剣幕に、教室を包んでいた笑い声が一瞬にして収まる。静かになったところで、
コルベールは咳払いをして元のにこやかな表情に戻る。

「えー、おほん。恐れ多くも先の陛下の忘れ形見、アンリエッタ姫殿下が本日この魔法学院に行幸されます」

アンリエッタ姫殿下の行幸と聞いて、教室中がざわめきに包まれる。

「したがって、粗相があってはいけません。歓迎式典の準備を行いますので、生徒諸君は正装し門に整列すること」

生徒たちは緊張した面持ちで一斉に頷き、その様子にコルベールは満足そうにうんうんと頷いた。
62虚無と賢女07話 4/11:2009/04/12(日) 08:29:28 ID:6hq+QgZ0
魔法学院の正門をくぐって王女一行が敷地内に入ると、整列した生徒たちは一斉に杖を掲げ歓待の意を示した。本塔の玄関前
では、オスマンが立って出迎えていた。
生徒たちの歓迎と歓声に、アンリエッタ王女は優雅に手を振って応える。

「あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃないの」

ルイズの隣で面倒そうに杖を掲げていたキュルケは、つまらなそうに呟く。エレアノールはその言葉に、思わず苦笑した。

「あら、エレアノールは王女の方が綺麗だと思うのかしら?」
「そういうわけではありませんが……」

そこで言葉を区切り、改めてアンリエッタ王女に目を向ける。すらりとした気品ある顔立ちの中に、薄いブルーの瞳と高い鼻、
そして可憐な唇がバランスよく配置されている見目麗しく瑞々しい美女。かつて、自国の王族を始めとして各国の上級階層の
者たちとよく会っていた経験のあるエレアノールからして見ても、王女の美しさは十分に際立っていた。

「……宝石の美しさと花束の美しさを比べることが出来ないように、キュルケさんと王女の美しさも比べようがありません」
「あら、そうなの?」

キュルケも本気で美しさの優劣をつける気はなかったのか、玉虫色とも言えるエレアノールの感想に軽く頷く。

「じゃあ、ルイズはどう思う? ま、貴女なら王女の方が美しいって言うわよね?」

矛先をルイズに変えたキュルケは、からかい半分の口調で話しかける。しかし、普段なら噛み付くように言い返してくる
ルイズが、まったく無反応のまま一行の護衛隊に視線を釘付けにしていた。その視線に釣られて、エレアノールとキュルケも
護衛隊に目を向けてみる。
その先には見事な羽帽子をかぶり、鷲の頭と獅子の胴体をもった幻獣―――グリフォンに凛々しく跨った貴族の男性の姿が
あった。その貴族をルイズはぼんやりと、そして頬を少し赤らめて見つめていた。

「いい男じゃない」
「はぁ……、そうですね」

キュルケも頬を赤らめて、その羽帽子の貴族を見つめていた。ルイズからツェルプストーの一族は惚れっぽいと聞いていた
エレアノールも、キュルケの唐突すぎる言葉と態度に呆れを隠せなかった。

「いつものこと」

エレアノールとキュルケの陰に座り込んで我関せず本を読んでいたタバサは、普段の口調で淡々とキュルケを評した。





ルイズはまったく落ち着きがなく、部屋の中で奇妙な行動を取り続けていた。立ち上がって部屋の中を行ったり来たりしたと
思えば、ベッドに腰掛けてぼんやりと天井を眺める。そうかと思えば、枕を抱きしめて深く考え込む。エレアノールがお茶を
淹れても、ろくな反応を示さないままお茶を飲み干した。

「なー、相棒。娘っ子は一体どうしたんだ?」

壁に立てかけられていたデルフリンガーに、エレアノールは首を振る。

「昼の……王女一行の行幸のときから、ずっとこの調子ですから……」
「ふーん」

エレアノールが厨房へティーポットとカップを返そうとトレーにまとめ始めたとき、扉がノックされた。そのノックは規則
正しく、長めに二回叩いて短めに三回。
63虚無と賢女07話 5/11:2009/04/12(日) 08:32:51 ID:6hq+QgZ0
「……? 誰でしょう?」

エレアノールが扉を開けて確かめようと思ったとき、ベッドに座り込んでいたルイズがハっとした表情になり、すばやく立ち
上がって扉を開けに走った。彼女が扉を開けると、そこには真っ黒なフードを目深に被り、同じく真っ黒のマントで身体を
隠した少女の姿。その少女は素早く室内に入りながら、杖を取り出して室内に向けて振った。

「ディティクトマジック?」

部屋中に舞う光の粉を見て、ルイズが少女に尋ねた。少女は光の粉の様子を見てから頷いた。

「どこに耳が、目が光っているのかわかりませんからね」

安心したように呟いて、少女はフードを脱いだ。

「姫殿下!」

フードの中から現れたのは学院に行幸し、そのまま逗留することになっていたアンリエッタ王女であった。ルイズは慌てて膝を
ついて臣下の礼を取り、エレアノールも一瞬遅れて礼―――ただし、故郷の礼式であったためルイズとは若干違っている―――
を取った。

「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ。そんな堅苦しい行儀は止めてちょうだい! 貴女とわたくしはお友達じゃないの!」
「もったいないお言葉であります、姫殿下」

目の前で膝をついているルイズをアンリエッタは抱きしめた。

「もう! ここは宮廷じゃないのよ! 母上も、堅苦しい枢機卿も、欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ! 貴女にまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくしは悲しくて
死んでしまいますわ!」

アンリエッタの言葉にルイズはおずおずと顔を上げる。

「幼い頃、一緒に宮廷の庭を二人して蝶を追いかけたでしょう!」
「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ポルトさまに叱られました」

ルイズはどこか懐かしそうに言った。アンリエッタはそのルイズの言葉に、嬉しそうに二度三度と頷いて微笑みを浮かべる。

「そうよ! そうよね、ルイズ! 貴女にはクリーム菓子を取られたこともありましたわね! あの掴み合いのケンカの後、
一緒に叱られましたわね! ああ、わたくしってば、いつも貴女に負けてばかり」
「いえ、姫様が勝利をお収めになったことも一度ならずありました。あのアミアンの包囲戦です」
「ああ! そうよね、あの時はわたくしの一発が上手い具合に決まって勝てましたわね」

幼き頃の思い出を語り合って、あははと笑い合うルイズとアンリエッタ。一方、すっかり蚊帳の外に置かれたエレアノール
は、とりあえず礼を解いて立ち上がった。デリフリンガーもすっかり取り残され、カチャカチャと鍔を鳴らす。

「へー、娘っ子と王女が知り合いだったんだなー」
「よくある話だとは思いますよ、デルフ」

エレアノールには年の近い王族は居なかったので経験はなかったが、貴族は自分たちの子弟を王家の者と懇意にさせるために、
遊び相手として宮廷に送り込むことは珍しいことでも何でもなかった。

「ええ、その通りよ。姫様の遊び相手を、恐れ多くも努めさせていただいたのよ。―――でも、感激です。そんな昔のことを
覚えてくださっているなんて」
「忘れるわけないじゃない。あの頃は毎日が楽しかったわ、何も悩みなんかなくって……」

それまでの朗らかな雰囲気が一変し、深い憂いと悲しみを含んだため息をもらす。その様子にルイズは顔を傾げる。

「姫様、どうかされたのですか?」

アンリエッタは窓の外の月に視線を向けて、寂しそうな微笑みを浮かべる。
64虚無と賢女07話 6/11:2009/04/12(日) 08:36:08 ID:6hq+QgZ0
「結婚するのよ、わたくし」
「……おめでとうございます」

アンリエッタの様子に物悲しさを感じたルイズの声も沈んだものになる。エレアノールは結婚の言葉だけで、アンリエッタの
憂いが何であるかを理解した。

(その婚姻は政略結婚なのでしょうね)

王侯貴族で自由に恋愛して、それが成就することはまずありえない。ましてや、アンリエッタのような美貌の持ち主であれば、
その『価値』がさらに増すために、ますます政略結婚の駒に使われることになる。
エレアノールはそれを悟ると同時に、望まぬ結婚をする前にせめてもの慰めに懐かしい幼馴染に会いに来た、とアンリエッタの
突然の来訪の目的を推察した。

「あの、ルイズ様。よろしければ席を外しましょうか?」

思い出話に部外者は邪魔になる、と考えて提案する。その言葉を聞いて、アンリエッタはようやくエレアノールの存在に気付いた。

「あら、わたくしったら……いやだわ、つい懐かしさにかまけて見苦しいところを……」
「大丈夫です、姫様。彼女―――エレアノールは私の使い魔です。決して姫様の悪いようにすることはありません」

アンリエッタはキョトンとした面持ちで、エレアノールをしげしげと見つめた。

「使い魔? ……人にしか見えませんが」
「人です、姫様」

ルイズの言葉にアンリエッタは、戸惑い半分感心半分の表情を浮かべて頷く。

「そうよね……。昔から貴女はどこか変わっていたけれど、相変わらずね」

そう呟くと、アンリエッタは再びため息を漏らす。

「姫様、本当にどうかされたのですか?」
「いえ……何でもないわ。自分が恥ずかしいわ、こんなことを貴女に話そうとしていたなんて……」
「仰ってください! あんなため息をつくなんて、姫様らしくありません! 何かとんでもない悩みごとがおありなのでしょう?」

ルイズとアンリエッタの問答は徐々に熱を帯びてくる。ただ、それは先ほどの明るさの代わりに、どこか空虚な雰囲気を漂わせ
ていた。壁際でデルフリンガーがポツリと小声で呟く。

「どーでもいいけどよ、あれって王女が娘っ子を誘導しているよなー?」
「……ええ。打算の様子がまるでないところを見ると、無意識のうちに行っているのでしょうね」

トリステイン王家には政治を行使する力がなく、鳥の骨と揶揄される枢機卿が内政と外交を一手に握っているとエレアノールは
聞いていた。だが、目の前のアンリエッタは、人心掌握の術を十分に身につけているようにも見える。老獪な政治家や官僚には
全く効果はないだろうが、国民やルイズのように純粋な貴族の子女であれば、圧倒的な支持を取り付けることができるだろう、
と考えてしまう。
エレアノールとデルフリンガーのどこか冷めた視線を向けられていることに気付かない二人は、ついに問答を終えて頷きあった。

「わたくしをお友達と呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ。……今から話すことは、誰にも話しては
いけません」
「それじゃあ、エレアノール。悪いけど席を外してくれる?」
「いえ、メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す必要はありませんし、貴女の先ほどの彼女に対する評価を信じます」

そして、物悲しい調子でアンリエッタは語りだした。隣国アルビオンで貴族の反乱が起き、今にも王室が倒れそうなこと。
そして反乱軍が勝利すれば次はトリステインに侵攻してくるため、対抗するためにゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと。
そして、その条件の一つにアンリエッタがゲルマニア皇帝に嫁ぐことであったこと。

「ゲルマニアですって!? あんな野蛮な成り上がりどもの国なんかに!」

ゲルマニア嫌いのルイズが驚きの声を上げるが、アンリエッタは仕方ないと首を振る。
65虚無と賢女07話 7/11:2009/04/12(日) 08:39:13 ID:6hq+QgZ0
「好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めていますわ。……でも、アルビオンの反乱貴族どもは、その同盟を
潰すための材料を血眼になって探しています」

そこでエレアノールは、アンリエッタの悩みごとの正体に気付いた。同盟を潰すための材料が存在し、そしてそれは目の前の
王女が深く関わっている事柄なのだ、と。

「姫様、その同盟を潰すための材料とは……?」

ルイズが顔を蒼白にして尋ねると、アンリエッタは顔を両手で覆って、芝居がかかった大げさな仕草で床に崩れ落ちた。

「わたくしが以前したため、アルビオンのウェールズ皇太子に送った一通の手紙なのです。その手紙がアルビオンの反乱貴族の
手に渡ったら、彼らはすぐにゲルマニア皇帝にそれを届けるでしょう」
「姫様からウェールズ皇太子に? それは一体どんな手紙なのです?」

ルイズはアンリエッタの手を握って、正面から向き合う。アンリエッタは項垂れて首をゆっくりと振る。

「それは……言えません。でも、ウェールズ皇太子は遅かれ早かれ反乱貴族に捕らわれてしまいます! そうしたら、あの
手紙も明るみに出てしまいます! そうなったら破滅です、破滅なのです!」

芝居がかかった調子で首を振り、慟哭の声をあげるアンリエッタ。それを間近で見つめるルイズは思わず息を呑み、離れた
ところで見つめているエレアノールは王女の態度に嫌な予感を感じていた。そして、デルフリンガーも同様のことを感じて
いたらしく、カチャっと小さく鍔を鳴らした。

「あー、こりゃあ娘っ子が取りに行くと言うだろうなー」
(そうでしょうね……)

エレアノールも全くの同じ意見を胸中に浮かべていた。そして、感極まったルイズとアンリエッタの会話は、アルビオンに
赴いてウェールズ皇太子から受け取るという形で決着がついた。お互いに褒め称え、言葉に酔っている二人にエレアノールは
小さくため息をついた。

(大切なお友達を戦場に送り込むことを、英雄譚か何かの物語のように考えておられるのでしょうか)

一揆を起こした農民の鎮圧とはいえ戦場に立った経験のあるエレアノールは、アンリエッタの考えの甘さに呆れていた。
アルビオンの状況がどうなっているかは分からないが、ウェールズ皇太子が所属する王党派が敗北寸前であることを考えれば、
その国土の大半は反乱貴族の手中にあると考えて間違いない。つまり、敵中を突破して王党派の元にたどり着き、再び敵中を
突破してトリステインに戻ることになる。言うだけなら簡単だが、それを実際に行うとなると、どれほどの困難があるのか
想像するのも難しい。最良の選択は二人を説得して、行かないことにすることなのだが―――

(あの様子だと、どんな正論を言っても無理でしょうね)

そこまで考えて、その無謀さに再びため息をつき―――扉の外に部屋の様子を伺う者の気配を感じ取って精神を引き締める。
エレアノールは抱き合って感動を共有している二人の横をすり抜け扉の前に立つと、ドアノブを一気に引いて開け放つ。

「うわわぁぁぁッ!?」

叫び声と同時に室内に転がりこんできたのはギーシュであった。

「ギーシュ! あんた、立ち聞きしてたの!?」
「ふ……薔薇のように見目麗しい姫様の後をつけてみればこんな所へ。何事かと思い様子を伺っていたのだが―――」

ギーシュは立ち上がると青銅の薔薇を優雅に構えて、朗々たる口調で言う。

「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけくださいませ!! 『戦乙女』たるミス・
エレアノールと共に見事達成いたします!!」

その宣言を聞いた瞬間、エレアノールは―――厄介なことが増えたために―――激しい頭痛を感じるような錯覚を覚えた。
66虚無と賢女07話 8/11:2009/04/12(日) 08:42:45 ID:6hq+QgZ0
早朝の魔法学院は朝もやに包まれ、時折鳥の鳴き声があたりに響く静けさに満ちていた。交代しながら徹夜で巡回していた
衛士と魔法衛兵隊も気だるそうに身体を解したり、欠伸をしていたりしていた。その様子を横目で見ながら、エレアノールは
馬小屋から三頭の馬を選んでいた。着ている服も普段のメイド服から、動きやすい旅装に変えていた。
アルビオンまでの距離をルイズから聞いていたため、出来るだけ元気のよい馬を選んでいると、背後に気配が生まれたことに
気付き振り返る。

「ご精が出るねぇ。こんな朝早くに出発かい?」
「フー……ミス・ロングビル」

いつの間にか小屋の入り口にフーケが立っていた。両手を胸の前で組み、皮肉っぽい苦笑を浮かべている。

「あんたも大変だね。世間知らずのお姫様のお願いを聞き届けたお嬢様に付き合わされて、戦乱の真っ只中に……だろ?」
「……聞いていたのですね?」

思わずエレアノールは息を呑んだ。

「ああ、あのお姫様はこっそりしてたつもりらしいけど、あたしから見れば目立ちすぎだね。窓の外から聞かせてもらったよ」

緊張しているエレアノールに対し、フーケはまるで世間話をするような気軽さで肩をすくめる。そして、懐から一枚の折りたた
まれた紙を取り出し、エレアノールに投げて寄こした。

「これは?」
「今のアルビオンの状況だよ。無いよりマシ、だろ? ただえさえ大変な時に、よりにもよって世間知らずの貴族のガキを
二人も連れて歩くのだから」

紙を開くと、簡単な地図と何箇所にも書き込まれたメモ、恐らくは軍隊の配置図と進軍予定表。

「いつの間にこれを……?」
「ん、あたしもアルビオンの状況が気になっていてね、調べてもらってたのさ。もっとも、決着がついて状況が落ち着かないと
下手な行動もできないって分かったから、今のあたしには役に立たないメモなんだけどねぇ」

フーケはやれやれとため息をついて、おかげで大損したよと呟いた。

「それじゃ、あたしは逗留してるお姫様一行のおかげで増えた仕事の片付けがあるから、失礼させてもらうよ」

手をひらひらと振って馬小屋を後にしようとしたフーケは、ふと何かを思い出したような表情で再びエレアノールの方を
振り返る。

「もし、ジェームズ一世とウェールズ皇太子に会うことがあったら……いや、やっぱり何でもない」

言葉を紡ぎながら複雑な心境を表情に出してたフーケは、結局整理のつかなかった感情を押し殺すように言葉を止めて、
今度こそ馬小屋から去っていった。
67虚無と賢女07話 9/11:2009/04/12(日) 08:45:34 ID:6hq+QgZ0
エレアノールが三頭の馬を連れて魔法学院の正門までたどり着くと、先に来ていたルイズとギーシュの他に一匹の巨大なモグラ
の姿があった。そのモグラは鼻をひくつかせつつ、ルイズに圧し掛かっていた。

「な、なによこのモグラ!? や!? ちょっと、どこ触っているのよ!?」

押し倒され、転がりながら巨大モグラと組んず解れつの乱闘をしているルイズ。すぐ側のギーシュは何やら眩しいものを見る
ような面持ちで腕を組んで一人頷いており、助ける気配がなかった。
見るに見かねたエレアノールは、デルフリンガーを鞘ごと引き抜いて乱闘中のルイズとモグラの元へと駆け寄り、テコの
要領で巨大モグラをひっくり返してルイズを救い出す。

「はぁ……はぁ、はぁ。あ、ありがとうエレアノール……」

息も絶え絶えな様子で立ち上がったルイズは、服や髪についた土をパタパタと手で払い落とす。そして、ひっくり返ったまま
バタバタと暴れている巨大モグラに視線を、かなり剣呑な光を秘めた視線を向けて、乗馬用の鞭を取り出す。

「こここ、この馬鹿モグラぁ〜!? 主人と似て見境ががが、ないようね……!!」
「ちょっと待ちたまえ! 僕の可愛いヴェルダンデに何をするつもりだね!?」

ルイズの視線、ルイズの動作、ルイズの言葉。その全てに惨劇の気配を感じ取ったギーシュは、慌ててヴェルダンデの前に
割ってはいる。

「決まっているでしょ? この無礼な、えええ、エロモグラに、誰に手を出したのか、おおお教えるのよ」

低く抑揚を抑えられつつも、感情までは抑えられていないために震えている声が、ルイズの怒気を物語っていた。

「だ……だが! ヴェルダンデは宝石が大好きだからね! きっと、ルイズがはめている指輪に興味をもったのだよ!?
だからヴェルダンデはルイズに何ら興味がなかったに違いないのだから、ここは一つ穏便に止めたまえ!?」

それを聞いてエレアノールはなるほど、と頷く。確かに、ルイズの指にはアンリエッタから昨夜預かった『水のルビー』という
青い宝石の指輪があった。しかし、怒り心頭のルイズにはその言葉は届かず、ギーシュごと制裁の鞭を喰らわそうと大きく
振り上げ―――

「すまないが、あまり騒ぎを引き起こさないでほしい」

―――風が舞った。
朝もやの中から、羽帽子を被った一人の長身の貴族が現れた。凛々しくも鋭い顔つきと、よく鍛錬された足取りが高い力量を持って
いると雄弁に表れていた。
ギーシュが慌てふためいて、青銅の薔薇を羽帽子の貴族に向ける。

「誰だ!」

しかし、ギーシュより一瞬早く杖を抜いた羽帽子の貴族は、突風を生み出してそれを牽制する。

「僕は敵じゃない。姫殿下より君たちに同行することを命じられた魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のワルド子爵だ」

ワルドは帽子を取ると一礼をした。魔法衛士隊と聞いて、ギーシュは感嘆の表情を浮かべる。トリステインの全貴族が憧れる
魔法衛士隊、そしてその隊長が目の前にいることに緊張しつつも感動しているのであった。
ワルドはルイズの方へ顔を向けて微笑みを浮かべて両手を広げる。

「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」
「ワルドさま……」

震える声で呟くルイズに、ワルドは駆け寄って抱き上げた。頬を赤く染めて、ルイズはワルドに抱き上げられる。

「お久しぶりでございます」
「相変わらず軽いな君は! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」

エレアノールは朗らかに話し合う二人の様子を見ながら、緊張が解けていないギーシュに声をかける。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 08:48:33 ID:HvccrI5v
しえn
69虚無と賢女07話 10/11 代理:2009/04/12(日) 09:05:02 ID:pJhmlvpu
「どうやらお知り合いのようですね?」
「そのようだね。……しかし、魔法衛士隊の隊長とは心強いね」

うんうんとギーシュが頷いていると、ルイズとワルドの会話がエレアノールたちに向いてきた。

「彼らを、紹介してくれたまえ」

ルイズを地面に下ろし、ワルドは帽子を目深に被り直す。ルイズは最初にギーシュを指差し、続いてエレアノールに指を向けた。

「あ、あの、ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のエレアノールです」

ギーシュとエレアノールは、ルイズの言葉に合わせてそれぞれ頭を下げる。ワルドはエレアノールに、ほう、と興味深げな
表情を浮かべながら、気さくな感じに近寄ってくる。

「ルイズの使い魔が人とは思わなかったな。どうやら、僕の婚約者がお世話になっているようだね」
「いえ、こちらこそ。……それにしても、貴方がルイズ様の婚約者でいらっしゃるのですね?」

ワルドを間近で見て、エレアノールはふと違和感を覚える。一見すると朗らかな表情を浮かべているが、まるで何かを取り繕う
ために貼り付けた笑顔、そしてその視線はエレアノールを値踏みするような光。エレアノールはそれに既視感を覚え、少し記憶を
探ってみるが思い出せなかった。

「ははは、恥ずかしい話だが、軍務で今まで手紙のやり取りもほとんどできなかったからね。君が知らなかったのも無理もない
だろう」

ワルドは浮かべていた苦笑の表情を元に戻すと、口笛を上空に向かって吹く。朝もやの中を突っ切って、一匹のグリフォンが
着陸してくる。ワルドはそのグリフォンにヒラリと跨ると、ルイズに手招きをする。

「おいで、ルイズ」

ルイズは気恥ずかしいのか躊躇うように俯いていたが、やがてワルドに抱きかかえられてグリフォンに跨った。ルイズが
しっかりとグリフォンに跨ったことを確認すると、ワルドは手綱を握って杖を掲げて高らかに叫んだ。

「では諸君! 出撃だ!」

グリフォンが助走をつけるために駆け出し、続いてギーシュが任務の始まりに感動した面持ちで、そしてエレアノールが
それぞれ馬に跨って後に続く。





アンリエッタは出発する一行を学院長室の窓から見つめていた。そして、朝もやの中に一行の影が消えていくと、目を閉じて
手を組んで祈る。

「彼女たちに、加護をお与えください。始祖ブリミルよ……」

その隣ではオスマンが鼻毛を抜いていた。短い祈りを終えたアンリエッタは、あまりにも緊張感のないオスマンへ向き直る。

「見送らないのですか、オールド・オスマン?」
「ほほ、姫、見ての通り、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますでな」

オスマンの答えに、アンリエッタは首を横に振る。オスマンの余裕の態度に感嘆しているようでもあり、緊張感のなさに
呆れているようでもあった。

「トリステインの未来がかかっているのですよ? なぜ、そのような余裕の態度を……」
「既に杖は振られたのです。我らに出来ることは結果を待つだけ。違いますかな?」
「そうですが……」

アンリエッタは少し顔を伏せる。オスマンは手鏡で鼻毛の伸び具合を確かめながら、言葉を続けた。
70虚無と賢女07話 11/11 代理:2009/04/12(日) 09:05:45 ID:pJhmlvpu
「なぁに、彼女ならば、道中どんな困難があろうとも、やってくれますでな」
「彼女? ルイズ・フランソワーズのことでしょうか?」

オスマンは手鏡を置くと、年相応、そしてその肩書き相応の神妙な面持ちを浮かべてアンリエッタへと向き直った。

「ラ・ヴァリエール嬢もそうですが、彼女の使い魔が一緒ならば必ずや任務を達成して帰ってくるでしょうな」
「まさか! 彼女はただの平民ではありませんか!」

オスマンはアンリエッタの言葉に、にっこりと笑って返した。

「彼女の見識と剣技には目を見張るものがございます。恐らくは、姫がお付けになられたワルド子爵にも劣らない、最高の
護衛でしょうな」

ガンダールヴのことを胸の内にしまっておいて、オスマンは言葉を区切る。

「彼女の出自は、この老いぼれにも分かりませんが……世界の果ての向こう側から来たといっても過言ではありませんな」
「世界の果ての向こう側とは……?」
「分かりませぬ。つまりは、それくらい遠いところから召喚されたようですな」

アンリエッタは晴れつつある朝もやの向こう、早朝の青空に目を向けた。―――まるで青空の向こうを見透かすように、
ジッと見つめた。

「ならば祈りましょう、世界の果てまでも……」





以上で投下終了です。

おマチさんも一緒にアルビオン行き、という展開も考えていたのですが
他の方が先に投下されている作品の二番煎じにしかならなかったので、
大人しくお留守番となりました。

裏の社会を知るキャラとしてはタバサと同じくらい使いやすいので、
多分、そのうち幕間か何かで大活躍させるかも……しれませんねぇ。




代理終了
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:11:13 ID:HvccrI5v
賢女の人と代理の人乙
原作分からんけどいつも楽しみにしてる
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 11:02:04 ID:q9tL/t/x
>>70
投下乙、いよいよアルビオン編か……
原作を知っていると逃げてー
ワルド子爵逃げてーなんだがw
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 14:57:35 ID:eQxun8Uy
虚無と賢女読んでると久々にベアルファレスやりたくなってきた。
プレイするたびにノエルEDだけどなwww 投下乙〜。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 17:49:58 ID:y80yGm/T
賢女の人、代理の人乙
どっちの作品も中世ヨーロッパをモデルにしてるから合うねぇ
75ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:21:08 ID:OiSjXrF6
18:30から、ルイズとシエスタのフラグを補強することを目的とした18話を投下したいと思います。
おそらく、5レスになるでしょう。
76ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:30:15 ID:OiSjXrF6
 オーク鬼と呼ばれる亜人の種族がいる。身長二メイルほどの巨漢で、豚に似た顔を持つ性根の凶悪な種族である。
 十数体いるそいつらが、タルブの村の近くに移動してきたのには理由がある。
 この種族はハルケギニアに広く生息しており、どこで出会ったとしても不思議ではないのだが、この一団がトリステインに住んでいた者で
はなく他国からやってきた二つの集団の合流したものと知れば人々は驚愕しただろう。
 その二つの集団は逃げてきたのだ。恐ろしい力を持ったバケモノから。


 二つの集団の片側が出合ったそいつは、最初人間の少年の姿をしていた。
 多数の幻獣と熊や狼のような肉食の獣を従えた二人の少年の一方。それが、オーク鬼たちが住処とする廃村に現れたバケモノである。
 人間の子供を好物とする嗜好を持つオーク鬼に襲われ村人が逃げ出したという、ハルケギニアには珍しくもないそこに少年が現れたのは、
もちろんオーク鬼を討伐してこの村を人間の手に取り戻すためである。
 少年たちの命令に従い獣たちが囲むと、オーク鬼たちは少年たちに襲い掛かった。知能が低いと見られがちなオーク鬼だが、命令をしてい
る人間を倒せば、周囲の獣たちを追い払えるだろうという推測ぐらいはできる。
 それこそが少年たちの狙いだったと気づいたのは、その直後。
 片方の少年の肉体が膨れ上がり、オーク鬼の身長を上回る体格と獣の顔を持つ亜人へと変化する。長い爪を生やした豪腕が振るわれると、
先頭にいたオーク鬼の頭がざっくりと引き裂かれる。
 その後ろを走ったオーク鬼が手にした棍棒で、そいつを殴りつけるが、少年が変化した亜人はダメージを受けた様子もなく、その棍棒を奪
い取り、逆に殴りつけられたオーク鬼が脳漿をぶちまけて倒される。
 こうなればオーク鬼たちも気づく。
 自分たちを討伐に来たのは、このたった一人の亜人で、獣たちは自分たちを逃がさないように取り囲む目的のためだけに連れてこられただ
けなのだと。
 そして、オーク鬼たちは逃げ出すことになる。そのほとんどが倒され、数体のみが逃げ延びることができたのは、幸運なことであったと言
えよう。


 もう片側の集団が出合ったのは、不可解な外観をした亜人であった。体格はオーク鬼たちよりも小柄で、頭部には一本の角を生やし、体中
を薄い紫色の甲殻で包んだ生物というより魔法で動くゴーレムの類を思わせる外観の持ち主。
 そいつはこう言ったのだ。

「たまには、こっちの力も使って慣れておかないと、いざという時に困るかもしれません。悪いけど、遊んでもらいますよ」

 そうして虐殺が始まった。その時のオーク鬼の一団は数十の大集団であった。それがたった一人の亜人によってほとんどが殺しつくされた。
 その亜人は強かった。強すぎた。
 オーク鬼は一体で人間の戦士五人に匹敵すると言われる戦闘力を誇る亜人である。その彼らが、そいつには手も足も出なかった。
 最初に仕掛けた棍棒の一撃は左手一本で受け止められ、そいつが振るった拳の一撃でそのオーク鬼は胴体を分断された。
 そいつにとってオーク鬼の肉体は豆腐の如く脆いらしく、無造作に振るわれる一撃だけで、彼らは絶命していく。
 遠く離れた別の国のオーク鬼たちが獣の顔を持つ亜人に思ったように、彼らもこの亜人には勝てない事を理解した。
 だが、こちらも逃げられたものは、そう多いものではなかった。
 逃げようとした者に、亜人が顔を向けると、その額が光り、そうと気づいたときには、そのオーク鬼たちは頭部を失った屍を晒すこととな
っていたのだ。


 ほとんどが殺しつくされ、逃げ延びた二つの集団はトリステインで合流し、その心にこびりついた恐怖から逃避するため、山を越え森を抜
けここまで来れば大丈夫だと判断したこの地で、タルブの村を襲撃することを決めた。



77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:32:19 ID:qiuMWX9V
しぇん
78ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:32:39 ID:OiSjXrF6
「すごい! すごいです! あの凶暴なオーク鬼たちを二人だけで皆やっつけちゃうなんて、ミス・ヴァリエールもアプトムさんもすごいで
す!」

 興奮した面持ちで叫ぶシエスタに、ルイズは、あー、うん、そうね。と気まずい顔で答えた。

 ルイズの気晴らしとシエスタの休暇の里帰りに来たタルブの村で、三人が最初に見たのは村を襲う巨漢の亜人の群れであった。

「あれが、この村の住人か?」

 などと聞いてしまうアプトムだったが、「そんなわけないでしょう!」とシエスタが返してくる。
 まあ、そうだろうなと思うアプトムが、ではどうするかと頭を捻ったところでルイズが駆け出した。
 アプトムにとっては見知らぬ村人がどうなろうと知ったことではない。
 だが、ルイズは違う。貴族には外敵から民を守る義務がある。魔法の使えない貴族であるルイズにとって、貴族としての在り方は、何に換
えても守らなければならないものなのだ。
 そうして、飛び出したルイズを見捨てるという選択はアプトムになく、二人はオーク鬼を退治することになった。

 はっきり言ってしまうとオーク鬼は弱かった。
 ただの平民からすると、圧倒的な戦闘力をもつ生物なのだが、アプトムからすれば、ただ腕力が強いだけで特別な能力も持たない亜人の集
団など、相手にならない。弓でも撃ってきていたならルイズを守るのに苦労していたかもしれないが、棍棒で殴りかかってくるだけの相手の
腕を掴み投げ飛ばすなど容易なことであった。
 そうして、アプトムに守られたルイズは呪文を紡いだ。
 それは、いつもどおりの爆発の魔法。いつもと違ったのは、唱えた呪文、威力、精度。
 ルイズが呪文を唱えるたびにオーク鬼の足元や顔のすぐ前に爆発が起こり、吹き飛ばされる。
 だが、その爆発は威力に反していつも通りに殺傷力に乏しく、オーク鬼たちに大したダメージを与えなかった。
 だから、本当の意味でオーク鬼を追い払ったのはルイズではなくアプトムである。
 いや、それも正確とは言えない。現実にオーク鬼たちに恐怖を植え付け敗走させたのは、ここに来る前に彼らの仲間を殺害した亜人である。
 彼らは、人間のものと思えない腕力で自分たちを、あしらうアプトムの姿に、ここに来る原因となった虐殺者の影を見たのだ。
 そんなわけで、傍目にはルイズこそがオーク鬼を追い払ったように見えていたが、事実はそうでないと知る少女は、素直にシエスタの賞賛
を受け取ることができないのだった。もちろん、オーク鬼が恐怖する影など知らず、アプトムに対して恐れをなしたのだろうという程度の認
識ではあるが。
 ちなみに、アプトムの方はルイズの唱えた呪文が気になっていた。彼は、ルイズと違って呪文に詳しくないので、それが今まで聞いたこと
のないものであると、始祖の祈祷書に記されていたものだなどと分からない。
 分かるのは、その呪文は、何度も途中で中断させていたものだったのではないかという不自然さだけであった。

79ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:35:08 ID:OiSjXrF6
 その日は、ルイズとアプトムはシエスタの生家に泊まることになった。元々シエスタはそのつもりだったし、村に着いたら宿を借りればい
いだろうと簡単に考えていたルイズの方は、是非とも泊まっていって欲しいと懇願するシエスタの両親に押し負けてしまった。
 というか、本人に実感はないが、ルイズは村を救った恩人である。
 アプトムからすれば、雑魚もいいところのオーク鬼も、多くの平民にとっては充分な脅威であるし、大抵の場合、民を守るべき領主は、倒
しても得がなく犠牲者を出すこともあるオーク鬼の討伐に兵を出すことを嫌い、見捨てる事も珍しくないのだと知る村人たちが感謝するのも
当然であろう。もちろん、全ての領主が民を見捨てるような貴族ではなく、この村の住人が近在の領主を信用していないというわけでもなか
ったのだが。
 そんなわけで、オーク鬼を追い払ったルイズと、その従者であるアプトムの所に多くの村人が駆け寄り、両手を合わせて拝む者まで現れた。
 更に、シエスタから奉公先でお世話になっていると聞かされた彼女の両親が、宿を決めていないという二人を家に誘うのは当然の事であっ
ただろう。実際に学院で世話になっていたのは、むしろルイズの方であるが。
 
 そうして、ルイズは慣れぬ賞賛に悩まされることになった。
 シエスタの家族はもちろん、村長を含めた村中の人間が集まり、ルイズの勇敢さと魔法を褒めちぎるのたが、魔法を賞賛されるというのは
始めての事で、なんだか居心地が悪い。彼女の使う爆発の魔法は失敗として叱責されたり嘲られるばかりで賞賛の対象になったことなどない
のだから。
 なのに村人は、さすが貴族さま! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ。そこにシビれる! あこがれるゥ! だの、こんな凄
い魔法は見たことがないだのと褒めてくる。
 こんな居心地の悪いのは初めてだ。助けてアプトムーっ! なんて思うが彼はここにはいない。
 二人は、ただオーク鬼を村から追い払っただけで、根本的には何も解決していない。
 だから、始末をつけてくるとアプトムは出かけた。その始末という言葉が、オーク鬼を皆殺しにするという意味なのか、もう二度と村を襲
えないよう遠くに追い払うのかルイズは知らない。アプトムが言わなかったという事は、自分が知る必要がないことなのだろうとルイズは、
理解する。


 そして翌日、ルイズは村の近くの草原を横目に眺めながら、シエスタとアプトムを連れて歩いていた。
 別に、どこに行こうという目的があるわけではない。元々、この村に来たのは単なる気分転換であるのだから当然か。
 昨夜は、村の名物料理だというヨシェナヴェやら秘蔵のワインやらを振舞われ、夜遅くまで村人の相手をしていた彼女は、当然のごとく今
朝も中々起きられなかった。
 別に、早起きしなければならない理由はないのだが、起きてみると家にはアプトムとシエスタしかいなくなっており、他の村人たちはとも
かく、家のみんなはどうしたのかと聞いてみて、全員がもう仕事に出ていて、七人いる弟妹も手伝いに行っていると言われると、なんだか何
もしないで寝ている自分が悪いような気がしてくる。
 シエスタは、わたしもいますよと言ってくれるが、彼女は休暇を取ってきているのだし、自分がいなければ家のみんなの手伝いをしていた
だろうと予想ができてしまうので、やはり申し訳ない気がしてくる。
 それで、家を出てみたのだが、会う人間みんながルイズの顔を見ると仕事を中断して挨拶してくる。
 昨夜、ルイズは村の恩人であるだけでなく、この国の大貴族ヴァリエール公爵家の娘でもあると明かしてしまったので、これも当然の事態
なのだが、やはり申し訳がない気がしてしまうのである。
 そんなルイズを見かねてか、シエスタに誘われたのが、この草原である。
 青い空の下、どこまでも続くように見える緑色の絨毯。それは、このハルケギニアでは、それほど珍しくない風景なのだろうけど、それが
とても美しいものだとルイズは感じた。
80ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:37:42 ID:OiSjXrF6
 そして、シエスタに感謝した。疲れていたのだ。体がではなく心が。
 自覚はなかったが、アプトムを召喚してからのルイズは、ずっと気を張り詰めていた。そして、アンリエッタから受けた任務。ウェールズ
の死。ワルドの裏切り。そこから受けた心の傷を癒す間もなく渡された始祖の祈祷書。
 おそらく自分は、張り詰めて切れる直前の糸のようなものだったのだろうと今は分かる。そんな自分を連れ出してくれたシエスタには、ど
れだけ感謝しても足りない。心からそう思う。
 そんなことを考えるルイズに、何かを思い出した様子でシエスタは言う。

「そうだ。この先の寺院に、『竜の羽衣』って秘宝があるんです。見に行きませんか? どこにでもある名ばかりの秘宝なんですけど、ちょ
っとした話のタネにはなると思いますよ」
「秘宝って、どんなの?」
「えーと、実はそれ、わたしのひいおじいちゃんの持ち物だったんですけど、なんでもそれを纏ったものは、空を飛べるそうです」
「飛べるそうです? 本当に飛んでるところを見たことは?」
「ありません。ていうか、飛ぶわけないんです。マジックアイテムってわけじゃないし、誰かが飛んでみろって言ってもひいおじいちゃんは、
もう飛べないって言うだけで。だから、村のみんなも、インチキだって言って信じてないんだけど、おじいちゃんは、とてもいい人だったか
らって好かれてて、今も大切に保管されてるんです」

 へー。と、口に出し、たまには、そういうのを見に行くのも悪くないかなとルイズは思う。
 特にすることもないのである。珍しい物ではあるのだろうし、今度下の姉に会った時にでも話せば、インチキでも喜んでもらえる自信があ
る。
 そう思って行った先で見た物は、なるほど確かに、空など飛びそうもない代物で、だが、それを見て少しだけ表情を変えるアプトムがいた。


「お前の曽祖父の事を聞いていいか?」

 そう言ったアプトムの顔は、いつも通りの感情を読みにくいもので。だから、シエスタも特に思うことなく、知ることを伝え彼を曽祖父の
墓に案内した。

 海軍少尉佐々木武雄。異界ニ眠ル。そう書かれた墓石を見て。アプトムは思う。
 これは、自分や『破壊の杖』を持ち込んだ誰かと同じく地球から来た者の眠る墓である。
 だが、どういった方法で来ることになったのか。自分のように誰かに召喚されて来たのであれば、何の参考にもならない。だが、違う方法
なら……。
 そう考えて、首を振る。その男が、どんな方法でハルケギニアに来ることになったのだとしても、本人がもういなくなってしまっているの
であれば、意味がないではないか。

 そんなどうでもいい一幕はあったが、タルブの村での数日、ルイズは、とても穏やかな日々を過ごした。
 そして帰る時になって、詔をまったく考えていない自分に気づき、夏休み最終日の小学生のように狼狽する事になるのである。



81ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:40:09 ID:OiSjXrF6
「師匠。ぼくは、もっと派手な方が好みなんですけど」
「知ったこっちゃないね。あんたの好みなんて」

 自身の要求を、ばっさりと切って捨てられギーシュは落ち込む。
 アルビオンに来たはいいが、帰れなくなってしまった彼を拾ってくれたのは、マチルダという名のこの女性と、その護衛をしている顔全体
に包帯を巻いた怪しげな風体の男である。ちなみに『ソムルム』と名乗っていた。
 マチルダはともかくとして、男の方は声といい体格といい、彼の見知ったある人物によく似ていたのだが、本人の口からはっきりと違うと
言われたし、念のためにこっそり確認した男の左手には、その人物にはあった印がなかった。
 考えてみれば、彼の知る人物は常にルイズの傍にいるはずなのだから、こんなところで見知らぬ女性と行動を共にしているはずがないし、
あちらが剣を持ってはいたが使うどころか持ち歩きさえしなかったのに対し、こちらの男は普通に剣を使っている。
 これは別人だなと結論付けた彼は、その後、男の剣が聞いたことがあるような気がする声で話すインテリジェンスソードだと知っても、偶
然ってあるんだなぁとしか思わなくなっていた。
 それはともかく、二人に拾われたギーシュがここに来てやっていることは二つ。トライアングルメイジであり、いろいろと実戦を経験して
いるらしいマチルダの教えを受けることと、アルビオン軍の軍艦の建造、整備、修理やら何やらの手伝いであり、トリステインに出兵する際
の人員となる事も決定している。
 もちろん、これは本人が言い出しての事というわけではない。本人としては、祖国トリステインの敵に与するくらいなら死んだほうがマシ
だと思っていたのだから。
 だが、現実問題として、この地でそんなことを言っていても意味がないのである。
 ここで自分はトリステインの貴族だなどと言っても捕まって拘束されるか、悪くすれば殺されるだけであるし、軍艦の整備などにしても彼
がやらなくてもこの街の他の誰かがやるだけである。
 一時は、出兵できないように船を沈めてやろうかと出来もしないことを考えもしたが、現状では表向きトリステインとアルビオンは不可侵
条約を結んでいる。ここで、トリステイン貴族である自分が騒ぎを起こしても自国に迷惑をかける結果にしかならない。
 ならば、ここにいる間は正体を隠し積極的にアルビオン軍に協力して、あわよくばトリステインに戻った時に役に立つような情報を集め、
いざ出兵した時に抜け出してアルビオンからトリステインを守るため戦おうというのが、彼の出した結論である。
 と言っても、自分で考え付いたことではなく、拾ってくれた二人に、こうすればいいのではないかと言われたことを、受け入れただけなの
だが。
 しかし、自分は、それでいいとして、二人は、それでもいいのかと聞いてみたが、二人はレコン・キスタという組織に対する忠誠心はない
ので、別に構わないと答えが返ってきた。
 ただし、聞いたところ、二人の上司はあのワルド子爵で、そちらはレコン・キスタの掲げる大儀とやらを真に受けて婚約者すら欺き裏切っ
た者なので気をつけろと言われ、出来るだけ接触を避けようと誓ったギーシュである。
 ちなみに、拾われて数日経ち、彼は多くの時間を二人と共にしていたが、ワルド子爵と鉢合わせる事態に陥った事はない。
 ギーシュは知らないことだが、ワルドは、包帯の男に疑念を抱いており、その為その男を連れてきたマチルダも信用できぬと、接触を控え
るようにしていたのだった。
82ゼロと損種実験体:2009/04/12(日) 18:42:01 ID:OiSjXrF6
投下終了です。支援ありがとうございます。

原作にないイベントを起こすには原作にない理由が必要だろうというお話でした。オーク鬼にはシエスタフラグのための犠牲になってもらいました。
乳エルフの使い魔にも、オーク鬼イジメをやってもらおうと思ったのですが、アルビオンは地続きじゃなくて意味がないのでやめました。
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:45:17 ID:y0xDJvIH
投下乙です
ヤバいのが来まくりだが収拾つくんだろうかと心配だ
84ウルトラ5番目の使い魔:2009/04/12(日) 18:52:35 ID:9Uuew8Ki
アプトムの人、乙でした。

こんにちは、それでは私も今週分の第43話の投下を始めたいと思います。
問題なければ、感想タイムがあるのであと20分程度はさんで、19:10より開始します。
今回の使用予定レス数は10です。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:02:40 ID:lY9zICGU
アプトムの人乙でした
そして同時に、ウルトラの人に支援です。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:10:07 ID:mTj2OgcS
ウルトラ支援!
87ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (1/10):2009/04/12(日) 19:12:32 ID:9Uuew8Ki
 第43話
 二人の黒い女
 
 ウルトラマンジャスティス
 高次元捕食獣 レッサーボガール
 岩石怪獣 サドラ
 宇宙怪獣 ゴルゴザウルス
 肉食地底怪獣 ダイゲルン 登場!
 
 
 全身を鎧に覆われたような貪欲な宇宙生物、レッサーボガールの群れが凶暴なうなり声を上げて威嚇してくるのを、
ジュリの冷ややかな視線がなでていく。その目的は4匹のレッサーボガール、全ての抹殺だ。
「……」
 感情をあえて排除した冷たい目が、群れの隙を探して左右にゆっくりと動く。そこに、情けをかけて見逃そうなどと
いう甘い考えはない。ただし、ジュリ、すなわちジャスティスは決して好戦的でもなければ力の信奉者でもない。
しかし、宇宙の絶対正義の守護者である彼女の使命は宇宙の秩序を守ること。ひとつの惑星の生態系に他の
宇宙生物が侵入すると、最悪そこの惑星全体を死滅させることがある。かつてジャスティスが戦ったサンドロスしかり、
それ以前から宇宙全体を荒らしまわっていた光のウィルスしかり、身近なところで言えば、外来種であるブラックバスや
アメリカザリガニに日本古来の魚やニホンザリガニが駆逐されたり、オーストラリアに持ち込まれた犬によって
フクロオオカミなどが絶滅させられた例がある。
 まして、それが宇宙規模となれば、時に心を鬼にして侵入者を駆除しなければならない。
 対して、食欲の権化であるレッサーボガールどもも、仲間が一体倒されて、この獲物が見た目ほどやわでは
ないと悟り、今度は用心深く相手の動きを見ながら距離を詰めていくが、彼らはまだジュリのことを過小評価していた。
 突進してきた一体のレッサーボガールの攻撃はバックステップで軽く避けられ、間合いがはずれて体勢を
崩したレッサーボガールは、充分な余裕を持って回し蹴りを繰り出してきたジュリの攻撃をまともに顔面に喰らい、
鉄のように固いはずの額を軽々と叩き割られて絶命。今度こそ、残った3体の間に本能的な警戒心が走った。
 ウルトラマンは人間に姿を変えても、数々の超能力や、超人的な身体能力を発揮することができる。
セブンはウルトラ念力や透視能力、ジャックも融合した郷秀樹の身体能力をMAT隊員の水準以上まで高めたり、
エースもまったくの素人であった北斗と南をTACの試験に一発合格させるほどにしたくらいだ。
 もちろん、これには個人差や同化した人間との相性もあるだろうが、タロウ以降の兄弟達はほとんど人間と
変わらない能力で過ごしている。超能力を度々使用した80も、用途を調査などにかなり限定している。これは、
兄弟達の経験から、あまり突出した能力は人間として生活するなかでうとまれる原因になるかもしれないと配慮して、
あえて超能力を封印しているのかもしれない。
 けれども、異世界の存在とはいえ、宇宙の秩序を乱す者を排除する使命を持ったジュリの場合は力をセーブする
必要はまったくなく、他のウルトラマンに比べてその枠を大きく超えていた。
「ふん……」
 瞬時に間合いを詰めて、一体の首根っこを押さえて地面に引きずり倒す。レッサーボガールも必死になって
抵抗しようともがくが、ジュリの力のほうが強い。
 だが、その隙を突いて、残りの2体がジュリの背中に襲い掛かるが、すぐに反転したジュリは左の一体のボディに
正拳突きを繰り出してのけぞらせ、返す刀でなおも食いついてきた右の一体の額をひじ打ちで破壊する。
 あっという間に5匹の群れが2匹にまで打ち減らされ、残った2匹はなんとかダメージを受けながら立ち上がったが、
口からよだれと血漿を漏らして、受けたダメージの深さが目に見えていた。
 それに対してジュリは息一つ切らしていない。能力を隠す気もないジュリに殺す気で力を振るわれたら、
以前GUYSを手こずらせた怪獣といえども大人と子供も同然、勝負にすらなっていない。
 
 しかし、レッサーボガールにはまだ隠された能力があった。
88ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (2/10):2009/04/12(日) 19:14:12 ID:9Uuew8Ki
 生き残った2体は、絶命した仲間の死骸に群がって、その肉を引き裂いて喰らっていく。するとどうだ、捕食した
2体の体が見る見るうちに巨大化し、あっというまに身長47メートルの巨体に変貌したのだ。
「共食いして自らの質量を増大させたか……」
 巨大化した2匹のレッサーボガールを見上げながら無感情につぶやくと、ジュリは左胸のジャストランサーを
手に取り、あふれ出す金色の光に包まれて、自らもウルトラマンジャスティスへと変身した!!
 
 
「シュワッ!!」
 ジャスティスと、2匹のレッサーボガールが睨み合う。
 まったく隙なく構えをとるジャスティスは、威嚇の叫び声をあげてくるレッサーボガールにもまったく動じない。
いやむしろ、数で勝っているはずのレッサーボガールどもの方が、ジャスティスに気圧されているかのようにすら思える。
 当然だ、いくら凶暴なレッサーボガールとはいえ、ジャスティスの長い戦歴から見れば上にいくらでも強い奴はいる。
まして、今はウェストウッド村のときのように気遣いをしなければならないものは何もなく、不安要素が皆無な以上、
油断しないように用心はしても、恐れる必要などは欠片もなかった。
 十数秒の無益な睨み合いの後、先にしびれを切らしたのは、やはり知能に劣るほうであった。一匹は目から、一匹は
肥大した右腕から破壊光弾を同時に放ってくる。
「シャッ!」
 だが、攻撃を見越していたジャスティスは、まるで瞬間移動したかのように瞬時に2匹の背後に回りこむと、その背中に
強烈なパンチをお見舞いした!
「フウァッ!!」
 拳がめり込み、レッサーボガールはなにが起きたのかも理解できぬままに、背骨を砕かれていく。
 この加速力、本気を出したときのジャスティスの動きは目で追うことも難しい。かつて異形生命体サンドロス、
スペースリセッター・グローカービショップと戦ったときも、敵が反応する以上の加速で間合いを詰めて攻撃している。
こんな真似ができるのは、彼女のほかには宇宙に一人しかいない。
「シャッ!!」
 さらにハイキックを後頭部に決めて前のめりに倒し、首根っこと腰のあたりを掴むと、もう一匹のほうへと投げ飛ばした。
 地響きが鳴り、針葉樹林がなぎ倒される。ぶつけられた一体は、早々に瀕死になったもう一体を乱暴に振り払うと、
目から赤色光弾を放った。けれどもそれもジャスティスが軽く腕を払うだけではじかれる。
 さらに、おかえしとばかりにジャスティスは拳を突き出し、金色のエネルギー弾を放った。
『ジャスティスマッシュ!』
 光弾は狙いたがわずにレッサーボガールの頭部を直撃、派手な火花を散らせて、巨大な鉄槌で叩かれたかのように
レッサーボガールは頭を襲う痛みに苦しむ。
 圧倒的……戦闘が始まって一分足らずしか経っていないが、2匹のレッサーボガールは大ダメージを受けてもだえ、
対してジャスティスは少しもダメージを受けてはいない。サボテンダーのときのように躊躇しなければ、この程度の
相手に苦戦することなどないのだ。
 しかし、食欲と闘争本能にのみ思考を支配されるレッサーボガールには、空いた腹を満たすことしか頭にない。
89ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (3/10):2009/04/12(日) 19:16:35 ID:9Uuew8Ki
突然、レッサーボガールの頭が膨らんだかと思うと、横に大きく二つに割れて、まるでハエトリグサのような形の、
上下に牙の生えた醜悪なカスタネットに変わったのだ。
「ヌ?」
 いかにも、「この口でお前を食ってやるぞ」というふうな変形に、ジャスティスもぴくりとだけだが反応した。
しかし見た目が変わったからといって、それをそのまま真に受けはしない。第一あんなに頭部を肥大化させたら、
重心が上がりすぎて動きにくくなるだけだろう。例えば頭の上に2、3冊辞書でも乗せて走り回ってみるといい、
頭がふらふらして大変になるはずだ。
 だがそれでもこの形態になったわけは当然あった。
 大きく開かれた口から、真っ赤な舌が伸びてきてジャスティスの胴に絡みつく。
 さらに、倒れてもがいていたもう一匹も、同じように頭部を変形させて、舌をジャスティスの右腕に絡ませてきた。
「ウッ、ヌッ」
 獲物を捕らえたと見るや、2匹は舌を引き戻し、ジャスティスを引き込み始めた。このまま手繰り寄せて、
後は大きく開いた口で噛み砕く。ジャスティスもふんばっているが、じりじりと地面をこすって引き込まれていく。
 そして、あと一息で食らいつけるほどに近寄らせたところで、2匹はよだれを垂らしながら大きく口を貝の
ように開いた。
 だが、やはり知能の低い彼らは学習しきれていなかった。この相手と力比べをして、自分達が勝てるか
どうかということを。
「ハァァッ!!」
 あと一足の間合いでジャスティスが全身に気合を入れ、2本の舌を掴んで力を込めると、舌は乾いた
輪ゴムのように簡単に引きちぎれ、そのままジャスティスは、まだ健在だったほうの一体が慌てる暇も
与えずに、奴の上下の顎を掴んで一気に押し開いた!!
「ヌアァッ!!」
 その瞬間、間接が砕ける鈍い音とともに、レッサーボガールは顎をはずされて、まるで壊れたトラバサミの
ようなみじめな姿になって、前を見ることすらもできずに、もう一体の上に倒れこんだ。
 完全に格が違う。レッサーボガールは本来そんなに弱い怪獣ではなく、かつてはメビウスを苦戦させた
こともあるくらいの実力もあるのだが、それでもジャスティスがこれまでに相手にしてきた敵と比べたら、
例えばサンドロスの、その手下のスコーピスと比べても明らかに劣る。スコーピスを雑魚同然に始末できる
ジャスティスにとってはなんら恐れる必要などなかった。
「ハァァ……」
 バックステップで間合いを取り、絡まってもだえている2匹のレッサーボガールに向けて、ジャスティスは
とどめを刺すために、頭上にエネルギーを集中させ、それを両拳を突き出すことによって一気に押し出した!!
『ビクトリューム光線!!』
 避けることなど到底無理、せめて立てれば別次元へと逃げることもできただろうが、それも間に合わなかった
だろう。2匹は仲良く組み合ったまま、超エネルギーの奔流に飲み込まれて、一瞬の後に爆発四散した。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:17:21 ID:YxvW2AaO
支援
91ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (4/10):2009/04/12(日) 19:19:34 ID:9Uuew8Ki
 ジャスティスの、勝利だ。
 
「ハッ!!」
 敵の気配が消えたことを確認したジャスティスは、ジュリの姿へと戻った。
 2匹が吹き飛んだ場所からは、黒煙がたなびいているが、少ししたら消えるだろう。あとに残ったのは、
住民を失ってゴーストタウンと化した小さな村だけだった。
「ここも、か……」
 ジュリは、いずれ森に飲み込まれて消えていくであろう、誰の記憶にも残らない小さな村の残骸を見て、
憮然としてつぶやいた。
 実は、ジュリがこのような村に合うのは初めてではない。このアルビオンという名の大陸を旅するうちに、
同じように怪獣に襲われた村や町をいくつも見てきた。
 ある鉱山では、風石の坑道に入っていった者達が次々に石になって見つかり、採掘を強行させようとする貴族と、
やめるべきとする鉱山師との間にいさかいが起きていたが、それは地底に潜んでいた岩石怪獣の仕業で、
餌を求めて地上まで出てきたところを倒した。
 ある地方都市では、突如地中から生えてきた巨大な花が毒花粉を撒き散らし、根で人間の血を吸っていた
ところを焼き払ってやった。
 ある村では、村のど真ん中に突然空から怪獣が降ってきて、そのまま居座っていたが、悪意がなく眠っている
ばかりだったので、宇宙へ送り返してやろうとしたら、どうにもこいつが赤い色が好きみたいでじゃれつかれてしまい、
しかもこいつの鳴き声には強烈な催眠作用があったみたいで、危うく眠りかけて大変だったが、どうにか
宇宙に運ぶことができた。もっとも、宇宙で寝こけているうちにまた降ってこないとは限らないが。
 また、北の果ての砦に立ち寄ったときは、現地の伝説で雪男と言われているらしい白い怪獣が山から
下りてきて、格闘戦を挑まれてきて相手をしている最中に、空から羽根の生えた腕が鞭と鎌になっている
怪獣が飛んできて襲ってきたが、縄張りを荒らされて怒った白い怪獣と乱闘になり、白い怪獣はそいつを倒すと
充分暴れられて満足したのか、大人しく山に帰っていったのでそのまま見送った。
 
 だが、どうにもこんなちっぽけな大陸にしては怪獣の出現率が高すぎる。人々に話を聞いてみたが、これまで
怪獣などが現れたことはないというところがほとんどだった。それなのに、宇宙怪獣、復活怪獣合わせてこの
数ヶ月ほどの間にそこかしこに現れ始めるようになっていた。まるで、何かに呼び寄せられるかのように次々と、
しかも妙なことに、怪獣が現れるのは辺境の地方都市や小村がほとんどで、国の中心であるロンディニウムを
始めとする大都市圏にはまったくといっていいほどない。それゆえに、国民の大多数はまだアルビオンが安全な
場所だと思い込んでおり、怪獣災害に悩まされる他国からの人民の流入も途絶えることはなかった。
「やはり、何者かの意図か……」
 ジュリにとって、人間達の社会がどうなろうと、それが宇宙正義に触れない限り興味などないが、客観的に
見てみて、このアルビオンという国には何かがあると思わなくてはいられなかった。
 いったん、ウェストウッドに戻ってみるか……あの村を旅立って、一ヶ月程度は経っただろうから、いくらか他の地方や
他国の情報も集まったかもしれない。たまに寄るとティファニアとした約束もあることだし……
 そう決めたジュリは、その足を南へ向けた。
 しかし、数歩歩いたとき、ジュリは背中に刺すような冷たい視線が感じて立ち止まって振り返った。
92ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (5/10):2009/04/12(日) 19:22:11 ID:9Uuew8Ki
 それは殺気、ちょっとでも油断すれば、そのまま躊躇なく命を奪っていく餓狼のような、そんな気配。
"こいつ、いつの間に……"
 ジュリは無言のまま、たった今殺気をふんだんに込めた視線を送ってきた相手を見据えた。
 本当にさっきまで何の気配も感じなかったが、今ほんの10メートルばかり離れた場所に、黒服の上に白衣を
羽織った女が、両手をだらりと下げてこちらを見ていたのだ。
 警戒心を込めたジュリの視線がその女を睨み返す。
 だが、そいつの目はまるで深い空洞、虚ろな暗黒を秘めた黒曜石のように、こちらを馬鹿にしているような、
ないしは底知れない憎悪と欲望をその闇の中に隠しているような、常人には到底不可能な、マイナスの気が凝縮した
邪悪をこめた瞳。そして、長い時間を宇宙の秩序を守るために戦い続けてきたジュリは、それと同じ目に見覚えがあった。
"似ている……サンドロスと"
 かつて葬った、宇宙の全てを自らの好む不毛の大地に変え、全ての生命をその欲望のために滅ぼそうとした悪魔と、
その女の目は似すぎるくらい似ていたのだ。
「貴様、何者だ?」
「クク……」
 ジュリの問いに女は答えなかった。
 その代わりに、そいつはさっきのジュリとほぼ同じくらいの、人間離れした瞬発力でジュリに掴みかかってきた。
「ちっ」
 会話をする気がないのはわかった。やる気なら、こちらも相応の対応をする。
 向かってくる女の手をかわして、その手を逆にねじり上げようとするが、女は腕を掴んできたジュリの手を強引に
ふりほどくと、掌底をジュリの顔に向けて打ち込んできた。
「ぬ、なに!?」
 とっさにガードしたジュリだったが、その女の力は想像以上に強く、押されるままにジュリの体は後方に吹き飛ばされた。
空中で体勢を整えなおして追撃を受けないように向かえるが、その女の戦闘力はジュリでも油断できるものではないことは、
これで明らかになった。
 女は見た目は黒髪の東洋風の顔つき、このアルビオンでは見かけないものだったが、それは置いておいても、普通の
20代そこそこの女性と変わらない体格と細腕なのに、瞬発力と腕力だけ見てもさっきの怪獣より数段勝っている。
「貴様も、この星の生物ではないようだな」
 その一言に、女の眉がぴくりと動いた。
「どうやら、言葉を聞き分ける知能はあるようだな。この星の人間に擬態しているようだが、何をしにこの星に来た?」
 答え次第では、この場で存在を消去するという意思を込めて、ジュリはその女に擬態した生物に問いかけた。
「グ……オマエ、ショクジノ、ジャマスル……キエロ」
「貴様がな」
 片言で話す女の言葉が終わった瞬間、ジュリと女は同時に攻撃を放った!!
 互いに相手の顔面を狙ったハイキック、同じ攻撃同士により、空中で両者の蹴りがぶつかり合い、一瞬鏡に映した
ような左右対称の姿を現出させ、その刹那の後、力に劣るほう、女の体が空中できりもみしながら舞い、廃屋と化した
一軒の家に激突し、基礎が弱っていたその家を瞬時に倒壊へといざなった。
「やったか……」
 ほこりと粉雪と、それにこびりついていた何者のともしれない血潮が風に乗って飛んでいく。
93ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (6/10):2009/04/12(日) 19:23:02 ID:9Uuew8Ki
 ジュリは油断なく家の残骸に歩み寄り、その中に敵の姿を探したが、粉塵が収まった後、あの女の刺すような
殺気の気配はどこにも感じられなくなっていた。
「逃げたか……」
 今の攻撃ごときで死ぬ相手とは思えない。追いかけようにも完全に気配を消している。今日のところは引き分けと
いったところか。だが、奴の目的とこちらの目的が対立する以上、いずれはどこかでまた会うことになるだろう。そのときは、
もう逃がしはしない。
 今度こそ、踵を返したジュリは南へと歩み出し始めた。目的地はサウスゴータ地方、ウェストウッド村。
 
 
 一方、ジュリとの戦いで手傷を負わされた女の姿は、アルビオンの首都ロンディニウムの王城、ハヴィランド宮殿の
一室にあった。
「ウ……ヌヌ」
「これはまた、手ひどくやられたものだな」
 傷を負った女を、冷ややかな目で司祭風の衣装を来た30代半ばの男が机に面杖をつきながら眺めていた。
 ここは、王城の中枢の一角にある、公務に使う机と来客用の椅子しかない質素なオフィス程度の広さの一室。
レコン・キスタによる反乱が起こる前は王の執務室として使われていた部屋だ。
 そこに、左腕を折られて全身にも多数の切り傷や擦り傷を受けたあの女が、憎憎しげにその男を見返していた。
「ウルサイ……アイツ、ワタシノテシタヲコロシタ、ワタシノエサバヲアラシタ……カナラズコロス」
「ふん、仮にも一国の元首様に向かってたいそうな口の聞きようだな。この男は、レコン・キスタ総司令官、オリヴァー・
クロムウェルなのだぞ」
 そう、その男こそ、このアルビオン大陸を二分している反乱勢力のリーダーであった。だが、何故自分のことを
『この男』などと他人のように言うのであろうか。
「キサマノコトナドシルカ、ソレヨリ、ツギノエサバハドコダ?」
「慌てるな。あまり呼び込みすぎて、この大陸から人間どもがいなくなられても困るのだ。まあ確かに我らがせっかく
打ち込んだ楔で呼び寄せた怪獣達が、次々に倒されることになったのは計算外だった。まさか、こちらの世界にも
あんな奴がいたとはな」
 そのクロムウェルと名乗った男は、机の引き出しの中に隠した水晶玉の中に、サボテンダーを始めとする怪獣達を
次々と倒していくジャスティスの姿を見て苦々しげにつぶやいた。
「アイツモイズレクッテヤル、アイツ、キライ」
「慌てるな、今の貴様ではウルトラマンには勝てない。貴様は我等のおかげで怪獣墓場から蘇った。しかし、ただ蘇った
だけで、生前に貴様が食って蓄えたエネルギーは全てゼロに戻り、怪獣を呼ぶ能力も失われたことを忘れるなよ」
「ケェッ!」
 女の顔に怒りの色が浮かび、悠然と机に座っているクロムウェルの喉下に手が伸び、その首筋を押さえた。
「ふふふ、私を殺せば、貴様は利用価値のない欠陥品として即処分されるぞ。またあの退屈なウルトラゾーンに
戻りたいか?」
 なんとクロムウェルは、普通の人間ならば首がねじりきられるほどの握力をかけられながらも平然と笑っているではないか。
女は、その言葉に歯軋りしたが、しぶしぶながら理解したのか手を離した。
94ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (7/10):2009/04/12(日) 19:23:54 ID:9Uuew8Ki
「ふ、いい子だ。わかっているだろうが、我々が打ち込んだ楔で、この国には今でも多数の怪獣が向かっている。
しかし、なにぶん目立つものだからいずれ機能を解明されて破壊されるだろう。そのときのためにも、貴様の能力は
我々としてもほしいのだ」
 クロムウェルが見る宮殿の窓の外には、ロンディニウムの郊外に突き刺さる巨大な石柱があった。その形は、
以前地球に出現して、怪獣や宇宙人を呼び寄せる時空波を発生させていた石柱とよく似ている。いや、まったく
同じものといっていいだろう。
 だが、女はその石柱を一瞥するとつまらなさそうに言った。
「フン、タシカニベンリナモノダガ、コンドハイチドウチコンダラ、ニドトウゴカセナイデクノボウデハナイカ」
「ああ、あれを作るには手間がかかりすぎるのでな。だから貴様を蘇らせたのだ。貴様は腹を満たしたい、
我々は貴様の能力が欲しい、利害が一致している今は手を貸してやる。だから精精多く食ってさっさと力を
取り戻せ、そうでないと利用価値もない」
「オボエテイロ、イズレキサマモクッテヤル」
「ふん、できるならな。その前に貴様も超獣に改造されて、我等の忠実な手駒にされるだろうがな」
 互いに相手への敵意を隠そうともしていない。そこに信頼や協調などは一切無く、ただお互いを利用し合うのみの関係。
だが、いずれどちらが先に裏切ることになろうとも、今はまだそのときではない。クロムウェルはテーブルの上に、
このアルビオン大陸の地図を広げると、その西端の一角を指し棒で突いた。
「大陸西方、この山岳地帯に地底怪獣の存在を示す地震が観測されている。また、宇宙からもここに向けて怪獣が
接近中だ。あのウルトラマンのいる方向とは逆だから邪魔は入らん。さっさと……」
 そこまで言ってクロムウェルが顔を上げたときには、女の姿は部屋の中から影も形も無く消えうせていた。
「ふん、気の早い奴め」
 吐き捨てるように言うと、クロムウェルは地図を片付け、執務机に座って、無感情にレコン・キスタ総司令官としての
事務仕事の書類を片付け始めた。
 
 そんな様子が誰にも見られずに1時間ほど過ぎた後、ドアをノックする音にクロムウェルは顔を上げた。
「閣下、秘書のシェフィールド女史が戻られました。閣下へ至急お会いしたいとのことです」
「うむ、通せ」
 威厳のある声で衛士にそう命じたクロムウェルは机を立って、ドアのそばまで向かった。
 数分後、衛士に通されて部屋の中に黒いローブで身を覆った、まるで喪服が歩いているような女が入ってきた。
「よくいらっしゃいました、ミス・シェフィールド! お待ちしておりましたぞ」
 クロムウェルは、自分の秘書という肩書きの女に、まるで大口の客をすり手をしながら接待する商人のような、
腰の低い作り笑いを浮かべた態度で迎えた。
「あいさつはいいわ。それよりも、最近のあなたの手際の悪さには我等の主も不快を感じているわ。わかっているのでしょう?」
 シェフィールドのほうも、自分の雇い主であるはずの相手になんら敬意を払わない、むしろ自分が主であるような
尊大な態度で接していた。
「ははあ、このアルビオンを王家から奪い取り、その後トリステイン、ゲルマニアを占領して、エルフ共の手から
聖地を奪回するという、私に与えられた大儀を片時たりとも忘れたことはありません。ですが、戦場とはうつろいやすい
ものです。後一歩というところで、王党派に反撃を許し、勝ちの勢いに乗じてサウスゴータまで逆侵攻を許してしまい
ましたのは、私の無能としか言いようがありません。お許しくださいませ」
 床に頭をこすりつけ、まるで尻尾を振る犬のように許しを請うその姿に、レコン・キスタ総司令官としての姿は
どこにもなかった。この男は、レコン・キスタ総司令としてと、この女の忠実な犬としての二つの顔を使い分けている。
95ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (8/10):2009/04/12(日) 19:25:02 ID:9Uuew8Ki
「ふん、お前の無能のせいでこちらはとんだ迷惑よ。王軍をニューカッスル城にまで封じ込めたまではよかったけど、
あとはひたすら負け続けじゃない。おかげで、我が主の計画は大変な遅延をなしているわ」
「申し訳ありません。ですが、遠からずおこなわれるであろうサウスゴータでの決戦に勝利できれば、あとは天秤が
傾くかのごとく、我らが一気に王党派を飲み込めましょう」
 現在、両勢力の規模はほぼ拮抗している。ここでこのパワーバランスが崩れれば、兵力のかなりを占める傭兵などの
日和見主義で戦う連中は、一挙に有利なほうになだれ込むことだろう。クロムウェルは、ここぞとばかりに力説して
チャンスを与えてくれるようにと懇願して見せた。
「そう、そのために私がわざわざあなたの補佐に派遣されたのよ。本当なら、私も暇じゃないんだけど、長年手間暇を
かけた仕事が始まりもしないままに終わるのは嫌ですからね。もし負ければ、お前は王党派の手によって、確実に
首をはねられるでしょうからね」
「ありがとうございます、ありがとうございます。して、いかような方法で?」
 満面に笑みを貼り付けたクロムウェルが、買ってもらったおもちゃを手渡される直前の子供のように言った。
「見なさい」
 シェフィールドが左手にはめた指輪をこれ見よがしに掲げて見せると、クロムウェルはほおと息をつき、ぽつりとつぶやいた。
「アンドバリの指輪……」
 その名前は、かつて水の精霊から盗み出されたという水の力を蓄えているという先住の秘宝。その効力は人の
心を操り、死者を蘇らすこともできるという。シェフィールドはこれを使って、いったい何を企んでいるというのだろうか。
「そう、あなたはただ私の命令に従っていればいいの。王でいたいのならね」
「ははあ。全てあなた様のご意思のままに」
 ひたすら頭を下げ、奴隷のように這い蹲るクロムウェルの姿にシェフィールドは満足げにうなづき、これからやらせる
べき命令を淡々と彼に伝えていった。
 しかし、命令を真剣に聞くような態度をしながら、クロムウェルはシェフィールドの命令にも、アンドバリの指輪の
効力にも、なんの興味も抱いていなかった。
"ふふ……もうしばらくは、お前のマリオネットを演じてやる。今のうちに、人形使いの甘い夢を見ているがいい……"
 その卑屈な態度の裏には、血の通わない冷酷な打算と、人ならぬ作られた者の邪悪な意思がうごめいている。
 窓ガラスに映ったクロムウェルの影が、大きく裂けた口と瞳の無い青い目を持つ異形の姿に一瞬変わった。
 果たして、最後まで利用させ続けられるのは誰になるのだろうか……
 
 
 そしてそのころ、アルビオン大陸の西方の山岳地帯では……
 深い霧に包まれた岩だらけの山肌の上を、山登りの装備をした数人の人間達が必死で駆けていた。
「たっ、助けてくれえーっ!!」
 高山植物に属する高額な薬草を採取するために、現地の住民さえ恐れて立ち入らない山中に勇敢にも踏み込んだ
彼らは、今苦労して手に入れた薬草のかごすら投げ捨てて、悲鳴をあげて山道を走っていた。
 誰も後ろを振り返ろうとはせず、彼らの背後の霧の中から、引き裂くような遠吠えが響いてくる。
 さらに、それに続いて大きな足音が近づいてき、やがて霧の中からハサミのような腕を持った肉食恐竜型の
怪獣が現れた。
「きっ、来たあーっ!!」
 人間の走る速さ程度ではその怪獣、【岩石怪獣 サドラ】からは逃れられない。
96ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (9/10):2009/04/12(日) 19:25:50 ID:9Uuew8Ki
 こいつは奥深い山中に生息し、自分の体から発する密度の濃い霧を隠れみのにして、獲物を誘い込んで喰らう
獰猛な肉食怪獣で、過去に地球でもMATの時代に霧吹山に現れ、その後大量に出現してメビウス、GUYS、ヒカリに
倒されているが、とにかく凶暴なたちの悪い怪獣だ。
 人間達はなんとか霧の中に逃げこもうとするが、サドラは相手が見えなくても、その耳の端についている
電流感知器官で、人間達の放つ微妙な電流を感知して正確に補足し、先端がハサミ状で蛇腹のような形の腕を
伸ばして最後尾のひとりを捕らえ、そのまま口に放り込んで噛み砕いて食べてしまった。
「ひっ、ひゃぁあっー!!」
 もはや声にもならない絶叫を響かせ、残った人間達は涙と鼻水を垂れ流させながら逃げていく。だが、サドラは
ピーナッツをつまむかのように簡単に人間を捕らえて食べてしまう。
 あっというまにたった二人に減らされてしまった一行は、それでも生への執着を捨てきれずに、全力以上の力を
出して走る。しかし、まだ満腹にはほど遠いサドラはなおも腕を向けてくる。
 そのときだった。山の岩肌がぐらりと揺れ、彼らの目の前の地面が突然盛り上がり始めたのだ。サドラは、
それが危険なものであることを本能的に察知し、食事を続けるのを一旦中止して、ハサミを振り上げて身構えた。
「なっ、なんだあれは!?」
「ひっ、ま、また別の怪獣だあ!!」
 地中から姿を現したのは、サドラより大きな体格で、鋭い牙を無数に生やした恐竜型の怪獣、【肉食地底怪獣 
ダイゲルン】だった。
 こちらは地底をその強靭な腕で掘り進み、ときたま地上に出ては動物を襲う怪獣で、腹をすかしたその裂けた
口からはよだれがだらだらと零れ落ちている。こいつも、餌となる動物を求めてここに現れたのだが、目の前の
怪獣が食事のために邪魔な相手だということを察知し、まずはこいつを排除しようと威嚇の叫び声をあげた。
 こうなると、負けじとサドラも咆哮し、たちまち2大怪獣は組み合い、ダイゲルンが殴りつけ、サドラが挟み込んで
両者とも噛み付き攻撃をおこなった後、一旦離れたダイゲルンが口から火炎を吐きかけると、素早い動きで
かわしたサドラが周りにあった岩を持ち上げて投げつける。
 2大怪獣の激突により山道は崩れ、二人の男はガタガタ震えながら、勝ったほうが自分達を食いに来る
であろうバトルを見守っていた。
 と、そのとき霧を裂いて、空の上からかん高い声がして、サドラとダイゲルンが見上げたところに、霧の中から
頭に紅い三本角を生やし、全身がうろこのようなもので覆われたスマートな怪獣が下りてきた。
「さ、三匹目……」
 【宇宙怪獣 ゴルゴザウルス】、かつてウルトラマンタロウに倒されたゴルゴザウルス2世の同族で、テレポート能力
などを持つ。ちなみに、ゴルゴザウルス1世というのもいたらしいが、ウルトラ戦士も戦ったことはなく、その正体は
謎に包まれている。
 今回はハルケギニアを狙おうとして、たまたまここに舞い降りてきたのだろうが、いきなり現れたゴルゴザウルスに、
当然サドラとダイゲルンも怒って挑みかかり、凶暴なゴルゴザウルスもこれを迎え撃った。
 突進してきた2匹の攻撃を、ゴルゴザウルスはテレポートしてかわし、後ろから不意打ちをかけて転ばせ、
さらに背中にのしかかろうとするが、振り返ったダイゲルンの火炎でひるんで引き下がる。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:26:53 ID:3jYHou+m
支援
98ウルトラ5番目の使い魔 第43話 (10/10) 代理:2009/04/12(日) 19:48:45 ID:KlYW8HGg
 2匹から3匹になり、怪獣同士の死闘はますます激しさを増していく。
「ひ、ひいい、なんで、なんでこんなことに」
「お、おかあちゃーん!」
 恥も外聞もなく、二人の男は岩陰で震えるしかできない。
 だが、そのとき彼らの耳を、怪獣のものとは違う足音がすぐそばを掠めていった。
 はっとして、周りを見渡すと、彼らから20メイルばかり離れた岩の上に、白衣を着た黒髪の女性がいつの間にか
立って、怪獣の戦いを見つめていた。
「あ、兄貴、た、助けが来たんですか?」
「い、いや……」
 年配のほうの男は、なぜかその人影を見ても「助けてくれ」と声をかけることはできなかった。
 第一、その存在自体が不自然すぎる。こんなところに女が一人でいることもそうだし、まったく山登りに向かない
服装、それにこの深山まで来ているというのに服に乱れや汚れが一切見られない。
 女は、しばらく怪獣達の戦いを見つめていたが、やがて我慢しきれなくなったように、口元を長く伸びる舌で
べろりと舐めて、うれしそうに言った。
 
「オマエタチ、ウマソウダナ」
 
 それから三日後、現地で死の山と恐れられている山に分け入った無謀な一団のうちの二人が、まるで骸骨のように
やせ細った状態でふもとの住民に保護された。
 彼らは、恐怖に震えながら口を揃えて何度もこう言ったという。
 
「怪獣が、怪獣を食っちまった……」
 
 
 続く
99ウルトラ5番目の使い魔 あとがき 代理:2009/04/12(日) 19:49:34 ID:KlYW8HGg
今週はここまでです。
アルビオン編の前置きとして書きましたが、久々のジャスティスの活躍など、楽しんでいただけたでしょうか。
今回はまた、色々と怪獣を出せました。前回と違って全部の名前を出してはいませんが、ジュリの回想の
中等に登場した怪獣達の名前が全部分かったら、今日から君も怪獣のプロだ(青野声)。
 
さてそれにしても、タバサの冒険の3巻は……タバサの幽霊嫌いがフェイクだったとは。
もはやこの際なのでネタばらししますが、いずれタバサの冒険で、【宇宙悪霊 アクマニア星人】と、
【奇獣 ガンQ】を出す考えがあって、プロットもできてたんですけど見事おじゃんになりました……はぁ。
 
まあ気を取り直して、次回はトリステインに戻って学院に泊まったアンリエッタのお話と、みんなお待ちのワの人のデビューです。
 
それじゃ、新学期を迎えた皆さん、ウルトラ5つの誓い、はらぺこのまま学校に行かぬこと。
それから、道を歩くときには車に気をつけること。
また来週まで、お元気で。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:52:11 ID:o5cw3OCc
ウルトラの人乙でしたー
毎週の楽しみっすよ!
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:53:38 ID:kLuCvfem
ウルトラの乙ー

>みんなお待ちのワの人のデビューです。
>みんなお待ち  のワの  人のデビューです。

ふぅ…憑かれてるのかな……
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:01:26 ID:lY9zICGU
ウルトラの人、乙でした。
オリヴァーは、原作・アニメ版共に死ぬ事になるのですが
恐らくあの超獣が化けてるのではと読んでいますが
どちらにしても今後の展開が読めなくなってきました、次回の話も楽しみです。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:03:59 ID:9sT8EthF
ウルトラ乙です。

>>怪獣達の名前が全部分かったら、今日から君も怪獣のプロだ(青野声)

バオーン、ジュラン、ドラコにギガスは解ったんだけどな…、岩石怪獣だけが…(汗)
それとドラコって設定では鎖鎌を模して手が鞭と鎌になっているけど、実際は両手とも鎌になってるんだよな……なんでだろ?
着ぐるみでも鞭になっている写真があるのに…。
個人的にはドラコ好きなんだけどな…、今回はギガスにボコられたか…合掌。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:09:51 ID:3jYHou+m
多分だが岩石怪獣はガクマだと思う
シチュエーションからするとだけど
αかβは分からん
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:26:20 ID:pkx2uroJ
ウルトラの人乙
とゆーか怪獣詳しいの多いなwww
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:34:56 ID:MgM064Jg
ウルトラの人乙!
クロムウィルは途中まで闇トラマン最強クラスのあの人だと思ってたけど見事に外れたw
続きも楽しみにしてます。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:37:01 ID:1ZY7nnpe
そう言やカオスヘッダーってジャスティス的にはどういう位置づけなんだろうな。
108虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:08:50 ID:CjYRQIjF
ウルトラの人、お疲れ様でした。

大分間が空いてしまいましたが、何とか次の話が書けました。
21:15よりの、投下予約をさせていただきたい。
なんだか以前より書くのにやたら時間がかかるような気がします。
109虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:15:37 ID:CjYRQIjF

「本当に別の場所のようだな」

窓から見える、双つの月を眺めて彼はそう言う。
信用性も疑えるような古い文献でなら月は二つある、と見たこともあったかも知れないが、
彼自身はそれを見たこともないし、信じても居なかった。
世界は広い。一度閉塞的な環境から世界を回った身としては、それは当然の実感としてある。
混沌は無限に広がり、既知の領域などまさしく大海の塵芥に過ぎない、等という説も知識としてある。
そこまで極端な考えはなくとも、未知の世界に対する驚愕や困惑はあまり浮かばなかった。
興味もないわけではないが、それほど多くはない。

「別の場所?何言ってるのよ?」
「独り言だ」
「独り言だろうと構わないわ。どういう意味よ?」
「召喚された、と言うことだ」

ルイズはベッドに腰掛け、彼は窓を空けて縁に寄りかかっている。
二人は部屋に入ってから、何となくその場所に陣取った。
特にその位置に意味があるというわけではない。

「いちいち苛つくわね」
「別に君を楽しませるために生きてるわけじゃない」
「使い魔ならそう心がけなさい」
「そういうものか?」
「そうよ」
「……そういうものか」

窓を閉じて、背中でその縁に寄りかかり、視線だけをルイズに向ける。
使い魔ならそうあるべき、分からない話ではない。
つまるところ、主人の役に立つように振る舞う存在だと、彼らは言うのだから。
なら、彼女は彼に何を求めるのか。

「使い魔なら、か。具体的にどうすればいい?教えてくれるんだろう」
「え――うん、具体的に……って、あんたに何が出来るのよ?」
「答えづらい質問だな……逆に聞くが、何が出来て欲しい?」
「うーん……使い魔には主人の目となり、耳となる能力を与えられるらしいけど」
「それは……視覚を共有するとか、そう言うことか?」
「そうらしいけど、何にも見えないのよ?」
「それは良かった」
「よくないわよ」
「君はそうかもしれないな。で、他には何かあるか?」
110虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:17:15 ID:CjYRQIjF
納得はしてない顔で、それでも追及することは諦めたのか、
眉根を寄せながらルイズが返した言葉は、彼の質問に沿うものだった。

「主人の望む物を探してきたり……」
「それなら犬でも出来るな」
「秘薬とか解るの?」
「秘薬?いや、薬学なら知らない」
「いや、そうじゃなくてね……魔法の触媒に使うものよ。硫黄とか、コケとか……解らないでしょ?」
「どういう場所にあるか知ってれば誰でも探せないか?」
「だから、知らないでしょ?」
「教えられれば解る」
「………………それもそうね」

ルイズは、何故か大きく間を空けて相槌を打ってきた。
自分が学ぶことの出来ない何かとでも思っていたのだろうか?
彼の頭にそんな疑念が浮かんだが、
それの正否を判断するほどの材料は無かった。

「あと、一番重要だけど、主人を守ること。だけど――」
「だけど?」
「あんた、強そうに見えないわ」

そう言われて、彼は思わず自分の両手に目を落とす。
これでも、長い間戦っていたつもりだったが――なるほど、強くは見えまい。
自身の体調の数倍在るドラゴンを投げ飛ばす誰かの影を夢想して、彼は自身の太くはない腕を下ろした。

「それは大丈夫だと思う」
「どこが?あんた、犬にも負けそうじゃない」

彼は、知り合い――に数えて良いのか、通称が犬の動物を思い出して。
まぁ、勝てないと言うことはあるまい。

「まあ、犬なら大丈夫だな」
「……保証されてるはずなのにモヤモヤが晴れないのはなぜかしら?」
「気のせいだろう。で、それで全てか?」
「…………」
111虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:18:23 ID:CjYRQIjF
特に感情は入れられずに――本当に一切、侮蔑も皮肉も込めずに放たれた言葉だったが、
ルイズは眉をひそめて暫し沈黙し、そっと額に手を当てて深く息と、言葉を吐いた。

「……結局良く解らないから、あんたにも出来そうなコトをやって貰うわ。
 洗濯とか、掃除とか……出来るわよね」
「洗濯はどうだか……聞く限りでは期待しない方が良さそうだったからな」
「何が?」
「いや、出来ると思うぞ。やり方さえ教えて貰えば」
「知らなきゃ何も出来ないの?」
「そう言うものだろう」
「……そうね」

それで、その会話は終わったのだと思う。
ルイズは疲れたかのように――というかまず間違いなく疲れて、ベッドにそのまま背中から倒れ込む。

「あー……、なにかどっと疲れたわ」
「寝るのか?」
「寝るわよ――って何処に行くの?」

彼は既に窓から離れて、ドアノブに手をかけていた。
ルイズが上げた疑問に対して、その疑問そのものが不思議なように表情に出して、
彼はルイズの方に向き直る。

「着替えるんじゃないのか?寝間着に」
「そうだけど、だから何処に行くのよ」
「……他人の着替えを覗くような趣味はないし、常識も弁えてるつもりなんだが。
 適当に散歩でもしてくる――色々と考えたいこともある」
「そう……別に構わないけど」

許可を得られなくとも、彼は外に行くつもりだったのだが。
むしろ――今より着替えようと言うときに外に出る許可を出さない人物とは、あまり一緒に居たくはないだろう。
幸いなことに、許可は得られたが。
彼はドアノブを捻った。
112虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:20:10 ID:CjYRQIjF
先ほどは、窓で切り取られていた景色を見上げる。
二つの月。雲は良く見え、星はあまり見えない。
もとより見えないのか、月が明るすぎるだけか。
そんな、どうでも良いことを考えてしまう。
考えたいことがあると、そう言い出てきた――そのつもりだったが、
特に考えたいことがあったわけでもない。
何をすべきでもないのだから。

「どうなんだろうな」

特に何処に行くでもなく、建物から出てそれほど遠くない場所で、呟く。
故郷に帰りたい気分はあった。
たとえ彼らに裏切られていようと、廃墟と成っていようとだ。
だが、別に急ぐほどのことでもない。
もう終わったのだ。
わざわざ自分が帰ってすることはない。
一人の人間として、出来ることは幾らでもあるのかも知れないが、
それはそう、他の一人にでもできることだろう。
帰った方が良いのかも知れないが、帰る必要は何処にもない。
なら、帰らなくてもいい――そこまで考えて、その考えを振り払おうとして、止めた。

「少しくらい休んでも良いか」

疲れてるのか、と言われればそうだった。
持てる力の全てを注ぎ込んだ戦いの後だ。
それが無くても、かの旅路はけして楽なものなどではなかった。
その旅路を思い返すまでもなく、その結果はこの身に刻まれてもいる。
思い返すまでもないことだった。

「――という話なんですけど」
「へぇ――あれ――?」

声が聞こえてきて、思わず空からそちらに視線を落とす。
すこし驚いたかも知れないが、考えてみれば、この学院にいるのがルイズとコルベールと、
医務室にいた名も知れぬ医師の3人しか居ないと言うことはないだろう。
むしろ、驚いたのはその後だった。
声の主達、その視線がこちらを見返してきていた。
二つの月は、夜を彼が知っているそれより余程明るく照らしていて、
それなりに遠くにいた、恐らく女生徒であろうその二人がこちらを見ているのはわかった。

「こんなとこ―――――」
「いや――多分――」

――ルイズは、確か、寮だとか言っていた。
多分、女子寮か何かだろう。
なら、彼女たちの反応も別におかしいことではないように思える。

(――まぁ、そんなところの前に男が立っていたらおかしいんだろうな)

空を見上げているのも飽きていたし、彼はその場を立ち去ることにした。
何となく、何処へと無く歩く。
目的があるでもなく、ただ歩く。
怪しまれるのを避けるのなら、人々が寝静まるまで待つべきか?

(――――はは)

自分は相当疲れてるのかも知れない。もしくは抜けているか。
彼は、虚空に指をなぞらせた。
113虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:21:33 ID:CjYRQIjF
特に人に出会うこともなく、ルイズの部屋の前まで戻ってきた。
いや、見掛けなかったわけではないが、出会っては居ない。それこそ、すぐ横を通ろうとも。
そのことに関して今更何の感慨を抱くわけでもなく、彼はドアノブに手をかけて、捻って。
それを押せなかった。がちゃん、と金属と金属が立てる音がする。

「…………」

思わず、黙り込む。
どうしようもなく理解できる。あえて言うとするのならば、そう、鍵がかかっている。
防犯意識があるのは素晴らしいことなのかも知れないが、はじき出される方はたまったものではない。
泥棒や変人の類なら文句も言えないが、彼はまともな人間である。
――女子寮の前をうろついたり、人がいない隙を見計らったりと、やってることは同じなのかも知れないが。

「ああもう、いやんなるわねー」

どうした物かと腕を組んで、部屋の前で佇んでいると、すぐ近くから声が上がった。

「全く、空気読むってコトを知らないのかしら――あら?」

振り返ってみると、はっきりは見えないが、どうやら女のようだったが。

「ルイズの部屋の前で何してるの?」
「……いや、鍵がかかっていてな、入れないんだ」

否定した方が、怪しいと思えたのか。
彼は素直に返すことにした。
そして、どうやらその選択は間違いでもなかったらしい。

「んー……ああ、ルイズが召喚してた人間かしら?」
「ああ、そうだが――ルイズの知り合いか?」
「そうね。でも、友人ではないわ」
「そこら辺は良く解らないが……鍵とか借りられる場所はないのか?」
「そんなめんどくさいことしなくても大丈夫よ」

そう言うと、彼女は杖を胸の辺りから取り出すと、それを振るってなにやら小さく呟いた。
かちゃん、と何かが落ちる様な音がする。
腕組みを解いて、先ほどそうしたようにドアノブを捻り、押す。
今度は、ちゃんと開いてくれた。
どうやら、彼女は扉の鍵を開けてくれたらしい。
一旦ドアから手を離して、彼女の方を向く。
114虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:22:55 ID:CjYRQIjF
「……礼を言う」
「どういたしまして。ま、ルイズにはこのこと言わない方が良いと思うわよ。あれは――」
「キュルケ!こんな所にいたのか!」

先ほど彼女――キュルケ?が来た方か、そちらから男の声がしてきた。
振り向いてそちらを見てみると、男子生徒だろうか、それが数人塊になってキュルケの方を見ていた。

(……男?)

此処は女子寮じゃあなかったのだろうか?

「どういう事なんだ!今日は僕と過ごすんじゃ無かったのか」
「待ちたまえ!先に約束していたのは俺だぞ!」
「というか、その男は誰だね!?まさかまた――」
「話が良く解らないんだが――」

何だが、自分も巻き込まれているような――
問いかけながら、キュルケとやらの方へ向く。
が。

「……何処に行った」
「ああ、逃げられた!?」
「めんどくさい!ええい君たち、キュルケを捕まえたものが今日の相手だ!いいな!」
「別にそれで構わん!それならば僕がそうなるからな!」
「言ってくれるッ!?」

彼らは口々にそう言うと、恐らくキュルケが居なくなった方向、
――つまり彼の方へと走り出した。
礼儀とかマナーとかそう言う理由ではなく、単純に身の危険から廊下の端に身を寄せる。
石で出来た廊下にヒビを入れかねない勢いで男達は走り去っていき、
彼は呆然としてそれを見送った。

「……騒がしいところのようだな」

困惑はせず、唖然として、彼はルイズの部屋のドアを開けた。
115虚無のメイジと双子の術士:2009/04/12(日) 21:24:32 ID:CjYRQIjF
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
終わり。

いつになったらグダグダが終わるのか、
私にはわからない。
……そのうち終わらせて見せます。

私の想定している印術のイメージは……
なんつーか、シンケンジャーのあれを想像して貰えれば。
116日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/04/12(日) 22:47:20 ID:echEBy6V
皆さんお久しぶりです。
相変わらずの遅筆ですが、6話が出来上がりました。
他に予約がなければ22:55から投下したいと思います。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 22:48:13 ID:PUZdv6t3
支援します
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 22:49:04 ID:jkcimbH/
支援
119『日替わり使い魔 6話 (1/5:2009/04/12(日) 22:56:00 ID:echEBy6V
 
「決闘よ!」

「望むところ!」

 トリステイン魔法学院、本塔の中庭――既に日も落ちたそこに、二人の少女の声が響く。
 片方はルイズ、片方はキュルケ。トリスタニアから帰ってきた彼女たちは、今にも掴みかからんばかりに睨み合っていた。
 そんな二人を遠巻きに眺めるのは、ルイズの使い魔たるリュカ。パトリシアの毛並みを、片手間に手入れしながら。その足元では、プックルが丸くなって退屈そうにあくびをしていた。
 また、レックスとタバサの双子は、なぜか手に手を取り合って立派なダンスを披露している。それを見ていたもう一人のタバサが、何の感情も篭ってない拍手をパチパチと送っていた。そちらの方は、ルイズとキュルケにはまったく興味を示していない。



 なぜこうなったか――それは、学院に帰ってきてからのキュルケの一言に端を発する。

 学院の敷地内に入るなり、彼女は『フリッグの舞踏会』が翌日に控えていることを思い出した。そして、そのパーティーのダンスの相手に、リュカを指名してきたのだ。
 もっともそれだけならば、ルイズが噛み付くのは変わらないだろうが、キュルケの方はただあしらうだけだっただろう。それがこんな喧嘩にまで発展したのは、キュルケが続けて口にした提案にある。リュカの服を、キュルケが見立てると言い出したのだ。
 キュルケの実家であるフォン・ツェルプストー家は、ルイズの実家であるラ・ヴァリエール家と、国境を挟んで睨み合っている関係にある。
 ラ・ヴァリエール家といえば、この国で五本の指に入る大貴族――それと対等に渡り合えるとなれば、その力がいかほどのものであるか、想像に難くない。ならば、そのフォン・ツェルプストー家のキュルケが見立てる服が、ただの服であろうはずもない。
 となれば、ラ・ヴァリエール家の一族たるルイズが対抗意識を燃やすのも、当然の話であった。自分の方が立派な服を見立てると言い出し、どっちがリュカの服を見立てるかで言い争いになったのだ。

(城に帰れば、その手の服の一着や二着、掃いて捨てるほどあるんだけどなぁ……)

 グランバニアの王族であるリュカは、そんなことを思いながらこっそりとため息をつく。もっとも、自分が王族であることは教えてないので、そんなことはルイズたちの知ったことではないのだが。
 とはいえ、妻や子供たちを見れば、リュカが平民などではないことは察しがつくだろう。
 ダンスの話題になったことで、思い出したようにダンスを披露している子供たち――そのよく教育された見事なステップを見れば、その親であるリュカが貴族に連なる者であることは、尚更知れるというものだ。

 余談ではあるが――
 リュカ自身は、子供たちよりもダンスが上手くはない。王子でありながら、物心つく前から一介の旅人、しかも途中十年ほど奴隷として過ごしていた彼にとって、『王族としてのたしなみ』など無縁も良いところであったからだ。
 妻や従姉妹のドリスに、徹底的にダンスを仕込まれたことはあるが――そのドリスに「センスがない」と一蹴されたのは、苦い思い出だ。

 ――ちなみに、自分の身分を明かしていない理由としては、主に二つほどある。

 一つは、自分より身分が上であることを知ったルイズたちが、態度を変えることを嫌ってのこと。
 もう一つは、ハルケギニアとグランバニアでは国交が一切ないため、教える意味がないこと――見たことも聞いたことのない国家の者が「自分は王族」と言ったところで、それがこの国の何に影響を与えるというのだろうか。無駄に混乱させるだけだろう。



 ――閑話休題――



 リュカがそんなとりとめのないことを考えている間にも、ルイズとキュルケの言い争いは白熱していた。
 何やら、リュカを縛り上げて木の上から吊るし、ロープを魔法で切ってリュカを落とした方の勝ち――などという物騒な勝負方法を提案している。
 リュカが思わず「勘弁してくれ!」と横から口を出すも、まるで聞こえた様子もなかった。
 
 ――んで。

「……さすがに奴隷時代でも、こんな扱いはされた覚えはないなぁ……」

 結局吊るされることとなったリュカは、自分の現状にトホホとため息を漏らす。まあもっとも、あの当時に自分たちを監督していたムチ男たちとは違い、ルイズとキュルケには悪意がないのが救い――ある意味、だからこそ余計にタチが悪いとも言えるが――であろう。
 そしてそれを観戦する二人の子供は、別段止めるでもなく、のほほんと眺めている。なんでも、「ミルドラースやエスタークと真正面から戦って平然としているお父さんが、頭から地面に落ちたぐらいでどうにかなるもんか」とのことだ。
 レックスがベホマやザオリクを使えるとはいえ、その信頼に満ちた温かい言葉に、リュカは親として涙が止まらない。そう、これは子供たちの信頼を勝ち得て感動している涙なんだ。そーじゃなきゃイヤだ。イヤなんだってば。
 リュカがそんな感じで人生の儚さに想いを馳せている間にも、ルイズとキュルケは「魔法でリュカを落とした方が、リュカの服を見立ててダンスに誘えるのよ」だの、「べ、別にリュカをダンスに誘いたいわけじゃないけど、服は私が見立てるんだから!」だのとやっている。

 そして、二人の勝負は始まり――

「ロープじゃなくて壁を爆発させてどうするの!」

 先攻で魔法を放ったルイズに、キュルケが嘲笑する。そう――彼女の放った失敗魔法は、まったく狙った場所に命中せず、本塔の壁を爆発させたのだ。その結果に、ルイズは反論もできずに憮然とするしかなかった。
 その後、後攻のキュルケが危なげないコントロールでリュカのロープを燃やし、リュカを地面に落とす。勝ち誇るキュルケを横目にレックスがリュカの元へと行き、剣でロープを切って解放した。

「モテモテだね、お父さん」

 ヒューヒューとはやし立てる息子の物言いに、リュカは苦笑するしかない。勝負に負けていじいじと草むしりを始めたルイズを見ながら、「後でフォローしとくか」などと考える。
 と――その時、不意にリュカの背筋を寒いものが走った。

「…………!?」

 ゾクリとしたその感覚に、周囲を警戒する。見ればレックスも同時に――あるいは、自分よりも反応が早かったのかもしれないが――険しい表情で周囲を見回していた。
 そして直後、その感覚の正体がわかった。自分たち――とりわけルイズのすぐ後ろに、全高30メイルはあろうかという巨大ゴーレムが立っていたのだ。
 そのゴーレムは、リュカたちが見た時には既に足を振り上げており――

「危ないっ!」

 咄嗟にレックスが飛び出し、そのゴーレムの足元にいたルイズに抱きついてそのままゴロゴロと転がった。

「な、何すん――って、何これ!?」

 突然押し倒されたルイズが抗議の声を上げようとするが、先ほどまで自分のいた場所を巨大なゴーレムが足を踏み降ろしていたことに気付くと、さぁっと顔を青褪めさせる。

「大丈夫?」

「え、ええ……あなたが助けてくれたの?」

 自分と大して背格好の変わらない、しかも五つは年下の少年に抱きかかえられているという現状に気恥ずかしさを感じつつ、ルイズが尋ねた。問われたレックスは「うん」と一つ頷くと、ルイズを地面に降ろして剣を抜き、ゴーレムの方に向き直る。
 そのゴーレムはといえば、リュカたちを完全に無視して本塔へと向かい、その拳を打ち付けていた。どこの誰かは知らないが、少なくとも友好的な相手ではないだろう。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! まさかそれであのゴーレムと戦うつもり!? そんなちっぽけな剣で、あんな巨大な敵をどうにかできるわけないでしょ!」

「なるさ。お父さんもタバサも、プックルもいるから」

 背を向けたまま答えるレックスの声からは、微塵の不安も感じ取れない。そして彼は、もう既に杖を構えている自分の双子の妹に視線を向ける。

「というか――あれぐらい、タバサ一人で十分だよね?」

「もちろん」

 双子の兄の言葉に彼女は頷き、静に目を閉じて精神を集中させ、魔力を練り上げる。
 そして、おもむろに杖を振り上げ――

「イオナズンっ!」

 キィン……という甲高い音が聞こえたと思った直後、巨大ゴーレムは想像を絶する大爆発を起こした。
 
 ――ルイズも、キュルケも、そしてキュルケの友人の方のタバサでさえ、その爆発を前に目を白黒させた。
 大魔法――そう呼んでも良いぐらいの大破壊を前に、三人は絶句するしかなかった。

「な、ななななな――」

 ゴーレムがいた場所を中心として粉塵が舞い上がる中、数秒が経ち――ようやっとルイズが声を上げた。もっとも、驚愕のあまり言葉にすらなっていない声ではあったが。
 それとほぼ時を同じくして風が吹き、ゆっくりと粉塵を晴らす。そして見通しが良くなったそこには、元のゴーレムの姿は影も形もなかった。ただ、直前にゴーレムが殴りつけていた壁は、見事に穴が開いていたが。
 そして――その穴から顔を覗かせる、黒いマントとフードの人物の姿。

「あれは――!?」

 リュカが誰何の声を上げるが、その人物はすぐに杖を振り、ゴーレムを生み出した。土のメイジだ。
 サイズこそ一回りほど小さいが、それは間違いなく先ほどと同じゴーレムである。先ほどのゴーレムも、おそらくあのメイジによるものであったのだろう。サイズが小さいのは、残りの精神力の問題か。
 ともあれそのメイジは、自ら生み出したゴーレムの肩に飛び乗り、リュカたちのいる方向とは反対方向に向かって逃げ出した。

「逃げるわっ!」

「わかってる!」

 ルイズの声に応え、リュカはプックルの背にまたがった。プックルは一声啼くと、地を蹴りゴーレムを追随する。
 歩幅が大きいとはいえ、鈍重なゴーレム。それに比べて小柄とはいえ、動きの俊敏なプックル。両者の差は、瞬く間に縮まっていく。

「プックル! 飛べっ!」

「ガウッ!」

 リュカの命令に従い、プックルは一声大きく吼えると共に、大きくジャンプした。
 一息に腰のあたりまで飛び上がり、次いでリュカがプックルの背を蹴って二段目のジャンプをする。更に人間で言うところの肩甲骨のあたりで杖を突き刺し、それを足場にして三段目のジャンプ。リュカは見事、メイジの立つゴーレムの肩に飛び乗ることに成功した。

「ここまでだ」

 リュカは腰に差した鋼の剣を抜き、その切っ先をメイジの首筋に突きつける。
 が――

「…………?」

 リュカは首を捻った。そのメイジは、剣を突きつけられているというのに、まったく反応がない。こちらを平民ふぜいと侮っている、という様子でもない。怯えどころか慢心すら――いや、一切の感情がないのだ。
 まるで人形のよう……と思い立ったところで、「まさか」という思いが浮かんできた。リュカはそのフードを引っ掴み、乱暴に剥ぎ取る。
 果たして、その中にいたのは――

「やられた……!」

 リュカは舌打ちした。フードを剥いだその下にあったのは、ただ人の形を模しただけの土人形。ゴーレムの肩から直接生えているような形で作られていた。
 となればこちらは囮、本物は既に別の方向に逃げていることだろう。そう判断したその瞬間、ゴーレムは役目は終えたとばかりに崩れ落ちた。
 宙に投げ出されたリュカは、地面に落ちる前にプックルに拾われた。危なげなく地面に着地すると、土の中から自分の杖を拾い上げ、そのままルイズたちのところへと戻る。

「……ごめん、逃げられた」

 申し訳なさそうに頭を下げるリュカ。
 と――その時、「きゅいきゅい」と鳴き声を響かせ、いつの間にか空の上にいたシルフィードが降りてきた。その背に乗っていたタバサがひょこっと顔を見せると、彼女も「見失った」と一言で報告した。
 あの場面で囮を使うなど、かなり場慣れしている相手だったに違いない。聞いていたルイズもキュルケも、二人のその報告に特に目くじらを立てることはなかった。

 ――ただ――

 ルイズがリュカたち親子に向ける視線が、リュカには少々気になっていた。
 その視線には、何やら複雑な、それでいてどこか不穏な感情が混じっていた――
 
 ――明けて翌日――

「……はぁ」

 学院に戻って来たミス・ロングビルは、馬から降りるなり疲れたように嘆息した。
 何を隠そう、彼女こそが昨晩学院を襲撃した土メイジである。その筋での通り名は、『土くれのフーケ』――ここ数年、貴族の財産を荒らし回っている、悪名高い怪盗だ。
 そんな彼女が疲れているのは、もちろん昨晩のことである。

「一体なんだい、あの連中は……!」

 周囲に誰もいないことを確認しながら、素の口調で毒づく。
 昨晩、生徒の一人が放った爆発魔法により、強固極まりない宝物庫の外壁に傷がつけられた。それを好機と見て、すぐさま行動を起こしたのだが――ゴーレムで外壁を壊して侵入し、『奇跡の杖』を手に取ったその瞬間、自分のゴーレムが大爆発を起こしたのだ。
 壁の穴から外を覗いてみれば、自分のゴーレムがいた場所に杖を向けている子供の姿が見えた。まさか、あのガキが? などと思うのも一瞬。慌てて魔法で『例のサイン』を残し、返す杖で新しいゴーレムを作って飛び乗ると、更にダミーを作り出した。
 あのゴーレムを一撃で葬るようなのを相手にするのだ。念には念を押して押し過ぎることはないだろう。フーケはゴーレムの巨体に隠れながら近くの茂みへと身を移し、ゴーレムを追撃する猛獣とその背にまたがる男をやり過ごした。
 まったく、予想外に強力な連中が居合わせたもんだ――なんとかやり過ごせたことを幸運に思いながら、彼女は『奇跡の杖』を持って学院の外へと馬を走らせた。

 早馬を飛ばすこと数時間――各所にキープしてあるアジトの一つへと辿り着き、『奇跡の杖』を眺めるフーケ。
 ディテクト・マジックを使い、これがマジックアイテムであることは判断できたが、使い方も効果もわからない。試しに精神力を送り込んで振ってみるも、何も効果が現れなかった。
 そんなことを何度か繰り返し、やがてフーケは匙を投げた。そして、わからないのならばわかる者に聞けば良い――そう思い、杖をアジトに残して学院へと戻った。そのプランも、戻る途中で何パターンか考えていた。

 だがどのパターンでも、最も考慮に入れなければならない懸案事項があった――それこそが、自慢の巨大ゴーレムを一撃で粉砕した、あの連中のことである。

 あんな戦力が学院にいたなどとは、事前の調査でも把握できていなかった。昨晩はうまくやり過ごせたが、事と次第によってはもう一度事を構える必要も出てくる。
 先ほどの言葉は、その不安からのことであった。

(とはいえ、もう杖は振られたんだ……後戻りなんかできやしない)

 盗んだものを横流しするのに、使い方がわからないままでは支障が出る。あそこまでの危険を冒して手に入れた宝物が二束三文にしかならないなど、笑い話にもならない。
 そんなことを考えながら歩いていると――ふと、あるものに気付いた。

「……ゴーレム?」

 それは一体のゴーレムであった。学院の入り口近くに鎮座している。
 直立すれば全高は5メイルほどだろうか。レンガで組み上げられたような、頑丈そうな黄色いボディ。無骨ではあるが、それゆえに力強さを感じさせるその作りは、それなりのセンスと実力を兼ね備えたメイジによるものであると推察できる。

(まあ、あたしのゴーレムほどじゃないだろうけど)

 頭の中で自分のゴーレムと比較するが、すぐに自分の方が優れていると判断する。同じゴーレム同士なら、5メイルと30メイルでは勝負にすらならないだろう。
 すぐに興味を失い、そのゴーレムの脇を通って学院に入ろうとするが――その瞬間、ゴーレムの目がフーケを捉えた。

「……………………」

 ピタリと足を止めるフーケ。じっとゴーレムを見返す。

「……まさか、ね」

 一瞬、このゴーレムから自意識のようなものを感じたが――フーケはそれを気のせいと判断し、すぐに視線を外して再び歩き出した。
 
 フーケが学院長室の前まで辿り着くと、中からざわざわとした喧騒が聞こえてきた。
 ああ、慌ててる慌ててる――フーケは唇の端を吊り上げて笑いつつも、コホンと一つ咳払いし、フーケからミス・ロングビルへと自身のスイッチを変える。
 礼儀正しくノックしてから扉を開く。すると、部屋の中の視線が、一斉に彼女へと集中した。中にいたのは予想通り、学院長オールド・オスマンを始めとした教師陣と、昨晩の現場に居合わせていた女生徒三人。
 そして、平民っぽい青紫のマントとターバンの男に、十代前半とおぼしき男の子。どちらも昨晩目にした姿だ。だが、あの場にはもう一人女の子がいたはずだが、何故かそちらは姿が見えない。

「ミス・ロングビル! どこに行ってたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」

 コルベールが、興奮した様子でわめき立てた。こうして慌ててる貴族の姿を見るのは、フーケとして活動するロングビルの楽しみの一つである。だが彼女はそれを表に出すことなく、落ち着き払った態度を装って口を開いた。

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

「調査?」

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中を震え上がらせている……大怪盗の……仕業…………?」

「「「「「…………」」」」」

 ロングビルの言葉は、途中から尻すぼみになった。というのも、彼女が話している途中から、突然周囲の視線が冷たくなったからだ。
 まさか、ヘマをした? 一体どこで? ロングビルが内心で焦りを覚えていると――

「……何を言っとるんじゃね、ミス・ロングビル?」

 そう問いかけてくるオスマンの目は、なんというか呆れが多分に混じっていた。見れば、他の連中も同じような種類の目を向けてきている。
 だが、ロングビルにとっては、オスマンの方こそ何を言ってるのかわからない。目を白黒させている彼女の元に、コルベールが歩み寄ってきた。

「ミス・ロングビル……今回の件は、フーケの仕業ではありません」

「は?」

「宝物庫に残っていたサインですよ。少々暗号じみた意味不明な文章でしたので、つい先ほどまでみんなで意味を考えていたのです。その結果、犯人は『土くれのフーケ』の手口を模した、いわゆる模倣犯であるという推測が立ちました」

「あのサインが意味するところは、おそらく『フーケのお株を奪ってやったぞ』という意味に違いあるまいて」

 コルベールの説明にオスマンが補足し、呆れたように嘆息する。その態度は、「まったく、大人げない犯人じゃのう」と如実に語っていた。
 だがそこまで説明されても、ロングビルは意味が理解しきれなかった。頭の上に『?』マークを三つほど浮かべる。

「……確認してきます」

 ロングビルは内心で焦りつつも、どうにか平静を保った態度で退出した。
 そして、向かった先は宝物庫――早足で到着したそこは、衛士たちがいまだ被害の検分をしていた。そんな彼らを横目に、自分が昨晩魔法で壁に書いたサインを探す。
 自分で残したものである。もちろん、それはすぐに見つかったが――

「……………………」

 それを見るなり、ロングビルはあまりのことに絶句した。
 そのまま数秒の忘我を経て、一旦フリーズしたロングビルの思考は再び活動を始める。

 ――そして。

「しまった間違えたァァァーッ!」

 恥も外聞もなく、思いっきり叫んで頭を掻き毟った。衛士たちの不審げな視線が集中するが、当のロングビルはまったく気付かない。
 昨晩の自分は、ゴーレムが粉砕されたことに余程慌てていたのか、とんでもない間違いをしていたようだ。もし時間移動ができるならば、昨晩に戻って自分をぶん殴ってやりたい――思わず、そんなことを頭に思い浮かべてしまう。

 そこに残っていたサイン。その文面にはこう書かれていた――



『土くれのフーケ、確かに領収いたしました。まちるだ』
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:05:22 ID:y0xDJvIH
何てお馬鹿さんw支援
125日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/04/12(日) 23:05:45 ID:echEBy6V
以上で投下完了。次回はフーケとの戦闘になります。
とりあえず一巻終了まであと2話ほどを予定。こんな遅筆であとどんぐらいかかるか不明ですが(ノ∀`)
では皆さん、またいつかお会いしましょう(´・ω・)ノシ
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:05:52 ID:KlYW8HGg
乙っした!何やってんだおマチさんwww
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:06:45 ID:M6deh+tL
日替わりの人乙です。
お待ちしておりました
m(__)m
あぁやっちゃったよおマチさんww
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:11:53 ID:9v6d+JIu
乙ですw

おマチさんのゴーレムVSゴレムスかw
泣きそうだな、おマチさんw
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:13:57 ID:kLuCvfem
スクエニ×2 乙ー

>>双子の術士
犬…クーンのことかw
モンスターが正直微妙なのは魔界塔士からのお約束

>>日替わり
なんて阿呆ぅなおマチさんw
こっからどうやって戦闘につながるんだ即バレして終わりじゃないんかw
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:42:44 ID:OFhNHthG
これはあれだな、盗まれた杖のかわりにフローラの杖貰うなりして、事件を無かったことにする気だw
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:01:06 ID:sGM3qwD7
日替わりの人乙。
ドジっ娘おマチさんカワユス。
即バレでタイーホかと思ったが、馬鹿揃いで助かったかw

いや、リュカ達と戦うことになるから、トラウマ植え付けられる前に、あの時点で捕まった方がよかったか・・・
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:02:46 ID:wt+2BSVU
おばドルやマウスやドロンを活躍させて欲しい
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:02:50 ID:o7HrJdvC
マチルダって書いちゃうパターンって他にもあったっけ?
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:11:06 ID:m3A2QVyR
何やってるんだおマチさんwww
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:11:57 ID:gHcL467O
かわいいのうかわいいのう
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:15:25 ID:+3qaMdXW
絵板でロングビルって書いて即タイーホなってたイラストを思い出したw
マチルダだったから即バレせずに済んだのかな?
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:35:55 ID:o7HrJdvC
それだ!絵板だったか
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 01:00:14 ID:4nOh6/h8
ゴレムスにはノーリスクでHP前回の瞑想があるので、非常に厄介だぞ。
やり方しだいでエスタークもゴレムス一体で倒せるからな。
SFC版しかやっとらんから、後のリメイク作はどうか知らんが。
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 01:03:21 ID:TUtWVEB+
星振る腕輪+まどろみの剣のゴレムスで大神殿クリアしたのはいい思い出です
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 01:17:12 ID:RI9bCMBp
慌てすぎワロタ
でもまあ慌ててたから見間違えたで通る範囲かwwww
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 01:41:10 ID:GLECL91a
むしろ「しまった間違えたァァァーッ!」のが致命的w
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 02:43:37 ID:ai5v1rQG
何故これで誰も気づかん?
これじゃみんな一部の作品以外のアンリエッタと同レベルじゃないか!?

しかし仲間モンスター最大は何かな、シーザーは見上げるほど巨大だったが、
ブオーンが元の姿になったら笑うしかないな…
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 03:15:55 ID:E3Hgjfg+
>「あれが、この村の住人か?」

つかみでツッコミがまずボケるとは、なんと心得た奴・・・
144毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:33:48 ID:0rT7Nvwh
どうも、朝も早くからお邪魔します。
規制が解けたようなので、久方ぶりに直接投稿です。
では、他に予定が無ければ毒の爪の使い魔の第33話を6:36から投下します。
145毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:36:43 ID:0rT7Nvwh
では、そろそろ投下開始しますね。

突然のアルビオン――否、新国家『レコン・キスタ』の宣戦布告にトリステインは混乱を極めていた。
首都トリスタニアの王宮内の会議室では、将軍や大臣が集められ会議が開かれていた。
だが、出席者の意見はバラバラで、一向に纏まる気配を見せない。
会議室の上座に座ったアンリエッタの母である太后マリアンヌも、そんな会議の様子に疲れきった表情を見せている。
と、そんな会議の様子を見かねたのか、マリアンヌの隣に座ったアンリエッタが立ち上がった。
「あなたがたは恥ずかしくないのですか?」
突然のアンリエッタの言葉にその場に居る全員の視線が集中する。
そんな彼等の顔を見回し、アンリエッタは凛とした表情で言葉を続ける。
「先程から聞いていれば、一向に纏まりを見せない水掛け論を続けるばかり…。
こうしている間にも、祖国が、民が、危機に見舞われようとしているのですよ?
呑気に話を続けている暇は無いはずです」

そんなアンリエッタに大臣の一人が口を開く。
「しかしながら姫殿下……ゲルマニアとの同盟が結ばれなかった今、トリステインは一国でアルビオン…いや、
新国家『レコン・キスタ』を相手にしなければならないのですぞ? 慎重な対応を心がけねば…」
「慎重と臆病は全くの別物です」
アンリエッタの言葉に、その大臣は一瞬口篭るが、別の貴族が口を開く。
「恐れながら姫殿下…、此度のゲルマニアの同盟破棄は殿下の軽率な行動が原因だと言うではないですか?」
その言葉に今度はアンリエッタが口篭る。
貴族の言葉は続く。
「更にはガリアの王族と思しき女性を、外交問題の危険を省みずに我が城に匿っているとか…。
今のお言葉は正論です…が、此度の混乱には勝手な行動を取る殿下にも責任があるのではないでしょうか?」
アンリエッタは静かに目を閉じる。暫しの沈黙の後、静かに口を開いた。
「…確かに、今回のゲルマニアの同盟破棄の原因は、わたくしの軽佻な行いにあります。
議会の混乱はわたくしが原因とも言えるでしょう。…その事に関してはどれほど謝罪を重ねようと許されるものではありません。
…ですが、今のあなたがたの対応はそんなわたくしでも口を挟まずにはいられません。
敵は正面から宣戦布告を行ってきたのです…、話し合いの席など持たない事は明白。
ならば迅速な対応が求められる筈…、このように無駄に時間を浪費している暇は無いはずです。
…確かに同盟が成り立たなかった以上、我が国は一国で敵を迎え撃たなければなりません。
敵は竜騎士や艦隊も有し、強大です。トリステイン一国では力の差は火を見るより明らか…、戦っても勝機は薄い。
ならば…敵に無条件降伏をするのですか? それだけはありません…いえ、あってはならないのです。
戦わずして敵に降るなど貴族の誇りを捨てるような物……それは死も同然。
なにより民を守らずして貴族を名乗れるのですか? 民を、国を、守り…導いてこその王族ではないですか。
――わたくしは王の器ではないかもしれません…、ただの世間知らずの小娘でしかないのかもしれません…。
ですが…それでもわたくしはトリステインの王族。民を、国を思う心は誰にも負けるつもりはありません。
理不尽な暴力で祖国を蹂躙しようとする者には断固として抵抗します。
わたくしは決して…『レコン・キスタ』に降りはしません!」

アンリエッタの言葉に、最早誰もが口を閉ざしていた。
そんな彼等を一通り見回し、アンリエッタは隣の母に向き直る。
「わたくしが軍隊の指揮を執ります。必ずや…この祖国を守り通して見せます」
そう言ったアンリエッタの表情は決意に満ちていた。
そんな娘の姿にマリアンヌは微笑みながら頷く。
母にアンリエッタは笑顔で返すと、手にしていた物に目を落とす。
その手の中には青い色をしたヒーローメダルが在った。
左手の薬指にはまった風のルビーと共に、ウェールズによって彼の死の間際に託された物だった。

(ウェールズ様……わたくしは、あなたのように勇敢に生きていきます)

心の中で今は亡き思い人に誓いながら、アンリエッタはメダルを強く握り締めた。
146毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:40:01 ID:0rT7Nvwh
――その夜――

――トリステイン魔法学院――



自室へと戻って来たルイズは、指を鳴らしてランプを点ける。
先程までルイズは魔法学院の生徒全員と共にホールでの集会に出席していたのだ。
そこで新国家『レコン・キスタ』による宣戦布告、並びに魔法学院の無期限休校がオスマン学院長により伝えられた。
宣戦布告も驚いたが、それ以上に『レコン・キスタ』迎え撃つ為にアンリエッタが自ら兵を率いる事に驚愕した。
オスマン学院長の話の話を聞いた生徒達は動揺し、口々に大変な事になった、実家に帰ろう、などを囁きあった。
そんな中…ルイズは心中複雑ながら、それでも心の中で一つ決めた事はあった。
ベッドへと歩み寄り、未だ眠り続ける使い魔の顔に手を添える。
「…結局、こうなっちゃったわね…」
彼はよく頑張った。だが、結果として同盟は妨害され、一国で敵を迎え撃たねばならなくなった。
しかし、彼の努力は完全に無駄になったわけではない。タバサの母の身柄を王宮で預かってもらえたのだから。
ルイズは彼の顔を撫でながら呟いた。
「わたし……姫さまと一緒に戦うわね」
そう…それが彼女が心に決めた事。自分が敬愛する姫さまに、大切な使い魔に報いる唯一の方法。
正直禄に魔法も使えない自分に、どこまで…何ができるか分からない。
だが、このまま黙って事の成り行きを見守るよりは幾分もマシだ。何より……彼の努力を無駄にしたくない。
それに何の勝算も無い訳ではない。他の魔法が駄目ならと、爆発の特訓は続けていた。
結果、爆発の場所をある程度までコントロールできるようにはなった。敵の出鼻を挫くには十分かもしれない。
ルイズは懐に手を入れると、何かを取り出した。
それはシエスタの家に置いてあったヒーローメダルだった。
シエスタが”ジャンガの目が覚めるように”と願いを込めてルイズに手渡した物だ。
ルイズは手にしたヒーローメダルをジャンガの頭の横に置いた。
「…絶対戻ってきなさいよ」

ルイズはデルフリンガーに声を掛ける。
「ねぇ…ジャンガの事お願いね」
「ああ…相棒の事は任せておきな。まぁ…お前さんも無理は程々にな、娘っ子」
デルフリンガーの言葉にルイズは笑顔で頷いた。
その時、扉をノックする音が聞こえた。
誰かしら? と考えながら、ルイズは扉を開ける。
そこに立っていたのはキュルケだった。後ろにはギーシュとモンモランシーの姿も在る。
「何よ、あんた達?」
困惑するルイズにキュルケが答える。
「ルイズ…、気持ちは解るけど…一人で無理をしようとするのは良く無いわよ?」
「な、何の事よ?」
「惚けたって無駄よ。単純なあなたの考える事なんて手に取るように解るんだから」
微妙に馬鹿にされた気がするが、ルイズはとりあえず置いておく事にした。
「だから、何を?」
「アンリエッタ王女の所へ行くつもりでしょ?」
図星だった。全く勘だけは鋭い女だ。
ルイズは小さくため息を吐く。
「そうよ。…で、危険だから止めろとでも言う気? 悪いけど…わたしは姫さまの力になるって決めたの」
その言葉にキュルケは笑みを浮かべる。
「別に止める気は無いわ。…ただ、一人で行くよりは皆で行った方がいいじゃない?」
ルイズは目を丸くした。目の前のゲルマニアの女は自分に――否、トリステインに力を貸そうというのである。
途端、ルイズの表情が険しくなる。
「どう言うつもり? ギーシュやモンモランシーはまだ解るけど…あなたはゲルマニアの人間じゃない。
同盟だって結ばれなかったし…今回の事はあなたには関係無い事のはずよ。なのにどうして…」
「別に同盟が結ばれた、結ばれないはわたし達個人の間には関係無い事じゃない。
あなたがアンリエッタ王女の力になるのを自分で決めたように、わたしも自分で決めただけよ」
「でも…あなたはフォン・ツェルプストーの人間で、わたしはラ・ヴァリエールの人間。
いくら何でも家の事情とか…色々と不味いでしょ?」
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 06:41:07 ID:RI9bCMBp
しえん
148毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:43:14 ID:0rT7Nvwh
「だ・か・ら…、その家の事情もこれには関係ないでしょ。
大体、あなたの使い魔とアンリエッタ王女のおかげで、わたしの大切な友人やその母は助かったのよ?
それなのに、このまま自分だけ国に帰るなんて…虫が良すぎるって物よ。
それに…恥ずかしいけれど、あいつに一度命助けられているからね…、恩を返しておかないといけないわ」
「キュルケ…」
キュルケは微笑むと、恭しく礼をする。
「過去の無礼は謝罪するわ。だから、どうかこのフォン・ツェルプストーが、
お力添えするのをお許しになって、ラ・ヴェリエール」
そんなキュルケの態度にルイズは、これ以上無い位に慌てた。
フォン・ツェルプストーの人間がラ・ヴァリエールの人間に頭を下げるなど前代未聞なのだから。
無論、普段のキュルケを知っているギーシュとモンモランシーも、彼女のこの態度には心底驚かされていた。
「か、顔を上げなさいよツェルプストー、…いきなりそんな態度を取られても…困るじゃない」
「ふふ、そうね」
そう言って、キュルケは手を差し出す。
その手をルイズは優しく握り返した。

ふと、ルイズは何かを思い出したように、キュルケの後ろに居るギーシュとモンモランシーに顔を向ける。
「ねぇ、ここに居るって事とキュルケの言葉からあなた達も姫さまの所へ行くのは解るけど…どうして?」
ルイズの疑問にまず答えたのはギーシュだった。
「まぁ…ぼくの場合、父が元帥だからね。家柄上仕方なく、ほぼ強制的に…って事もあるがね」
「嫌々なんじゃないの」
「いや、確かに家の事情も有るが…そうでなくともぼくは姫殿下に協力を申し出ただろうね。
仮にもトリステインの貴族だからね…、お国の為に働こうとするのは当然さ。そして、弱い者を守るのもね」
そんな風に従軍の理由を語るギーシュをルイズは静かに見据える。
昔のギーシュならばこうは言わなかっただろう。…精々前述の理由で強制的に従軍させられたのを嘆いたはずだ。
ルイズは続いてモンモランシーに顔を向ける。
「モンモランシー、あなたは? 戦いは嫌なんでしょ?」
モンモランシーは少し悲しげな表情を浮かべる。
「確かにわたしは争いは嫌よ…。でも、それ以上に傷付いたり…泣いたりしている人がいるのが嫌なのよ。
だから、こんなわたしでも看護兵位にはなれるんじゃないかと思ったの」
そう、と呟くルイズをモンモランシーは静かに見つめ返す。
「ねぇルイズ…、皇太子が亡くなってアンリエッタ様、凄く悲しんでいたの…あなたも解ったでしょ?」
「…ええ」
「わたしがもっと水の扱いに長けていたら…、もしかしたら皇太子は死なずにすんだかもしれない…。
そう思うと…皇太子が死んだ事は私にも責任が有るように感じるの。
代々水の精霊との交渉役を引き受けてきたモンモランシ家の一員のくせに…助けられなかったから」
「モンモランシー…」
ギーシュが心配そうに声を掛ける。
「だからね…この戦争が終わったらわたし、もっとちゃんと勉強しようと思うの。
わたしにはわたしの戦いが、戦い方があって…、もっと強くなりたいと思ったから。
わたしは水の癒しの使い手……わたしの周りに悲しみが在るのは許せない。
在ったら癒さなくっちゃ気がすまないから…」
そう言うモンモランシーの目には決意の色が浮かんでいた。

そんな三人の話を聞き、ルイズは嬉しくなると同時にある事を確信していた。
(あいつが来てから…変わったのかもね、色々…)
ルイズはベットで眠る使い魔を振り返った。
召喚してから問題ばかりを起こしていた彼。
その一方で色々と彼は自分や周りの人達に(本心はどうあれ)尽くしてくれていた。
…それは人生のどん底を経験してきた彼だからこそできた事だと言えるのだろうか?
だとすれば、ある意味では皮肉な事と言える。
だが、理由はどうあれ…彼のお陰で救われた者がいるのは事実。
…今度は自分達が彼の為に頑張る番だ。
(今までありがとう…、今度は私達が頑張るわ。だから…ゆっくりと休んでいてね、ジャンガ)



その翌朝、ルイズ達はアンリエッタの所へ赴くべく、学院を後にしたのだった。
149毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:46:33 ID:0rT7Nvwh
――二日後――

――タルブの村――



「お姉ちゃん…」
不安げな声を上げながら自分にしがみついてくる幼い弟や妹を、シエスタは優しく抱きしめる。
「大丈夫、そんなに怯えないで」
内心の動揺を隠しながら優しくそう言い、窓から外を見上げた。
空には船底に黒い布様な物で覆われた巨大な物体が吊り下げられている、巨大な船が一隻浮いていた。
何が起こっているのか全く解らない…、突然の事にシエスタだけでなく両親も――否、村中の人々が困惑していた。
と、船から無数のドラゴンが飛び上がった。
(何が起こってるの?)
そうシエスタが思った時だ――窓の直ぐ外の地面から、青白い光と共に巨大な生き物が姿を現した。
「え?」
真っ赤なその生き物にシエスタは見覚えがあった。…そう、確かモット伯の屋敷で見かけた事がある。
だが、あれは一抱えほどの大きさだったはず…、目の前のは三メイルは軽くある巨体だ。
と、巨大な幻獣が短くも太い腕を振り上げ、力任せに窓を殴り付けた。
ガシャーン! と音を立てて窓が割れる。割れたガラスの破片が室内にばら撒かれる。
「ムゥーーーッッッ!!!」
幻獣は見た目通りの迫力に欠ける可愛らしい鳴き声を上げる。
だが、シエスタやその妹や弟達にはそんな風には感じられない。感じる暇が無い。
鋭い爪を振り上げ、幻獣がシエスタへと躍りかかる。
その時、幻獣の顔に飛んで来た椅子が激しくぶち当たった。幻獣は痛みにひっくり返る。
シエスタが後ろを振り返ると父と母が居た。
父は震えるシエスタに向かって「森へ逃げろ!」と叫んだ。

騒ぎが起こっているのはシエスタの家だけではなかった。
ある所では青や赤の巻貝を背負った幻獣が、大砲やミサイルを村の至る所に撃ち込んでいた。
別の場所では水晶を持った小柄な幻獣が、炎を操って村中に火を放っていた。
また別の場所では杖を持ったオバケが、メイジのように魔法を操って村人を襲っていた。
空に浮かぶ巨大な船から飛び立った竜騎士の駆る火竜も、村の家々に次々とブレスを浴びせた。

瞬く間に平和な村であったタルブは、阿鼻叫喚の地獄絵図へと塗り替えられていった。



「フン、フフン、フ〜ンフ〜ン♪」
遥か高みに浮かぶ戦艦『レキシントン号』の舷縁の上に乗り、眼下に広がる光景をジョーカーは楽しげに見物していた。
その傍にはフーケ、そしてミョズニトニルンことシェフィールドの姿もあった。
ジョーカーは口元に手を沿え、楽しげに笑う。
「のほほ、中々に良いシチュエーションですね〜。飛び交う悲鳴、逃げ惑う人々、最高ですよ♪」
「ジョーカー、楽しむのもいいが…本来の目的を忘れてはないだろうな?」
シェフィールドの言葉にジョーカーは笑いを引っ込める。
「解っていますよ、シェフィールドさん。忘れる訳無いじゃないですか〜、嫌ですねぇもぉ〜♪」
言いながら再び顔をニヤけさせる。
そんな二人の会話を聞き、フーケが怪訝な表情を浮かべる。
「どう言う事? 『レコン・キスタ』の目的はハルケギニアの統一じゃなかったの?」
「勿論、そうですが?」
何を今更、とでも言わんばかりにジョーカーは答えた。
フーケの表情が更に曇る。
「じゃあ、今そっちの秘書様が言った”本来の目的”ってのは何の事だい?」
「たかが盗人風情が知る必要は無い」
シェフィールドはそう言い、射抜くような視線を向ける。
フーケも伊達に裏の世界を生きてきた訳ではない。僅かに気圧されたが、すぐさま睨み返す。
しかしシェフィールドは顔色一つ変えない。
150毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:49:59 ID:0rT7Nvwh
「ワルド子爵は不手際を犯したゆえ、断罪された。お前も余り余計な詮索は控える事だね」
「言ってくれるじゃないさ」
互いに一歩も引かず、睨み合う女二人。
「シェフィールドさん、マチルダさん、…喧嘩はそこまでです」
唐突にジョーカーが声を掛けた。
シェフィールドがジョーカーを振り返る。
「どうした?」
「お客様のご到着ですよ」



目の前に広がる光景にルイズは唇を噛み締めた。
数週間前…自分とタバサがシエスタに誘われてやって来た平穏な村。
貴族の高貴な暮らしとは程遠かったが…とても暖かく、穏やかだった。
そこには紛れも無く”幸せ”があったのだ。
…それが今はどうだ? 無数の幻獣や竜騎士、艦隊に無慈悲にも蹂躙されている。
美しかった草原も、素朴な感じの家々も焼き払われ、破壊しつくされている。
シエスタがジャンガに見せたかった草原も見る影も無い。
――許せない…、絶対に!
ルイズは馬の手綱を握り締めながら自分達の敵『レコン・キスタ』を睨みつけた。
「ルイズ、あたし達も同じ気持ちよ」
キュルケが声を掛けてくる。
ギーシュもモンモランシーも一斉に頷いている。
「絶対に勝ちましょう」
「当然よ!」
ルイズは力強い声で答えた。

アンリエッタは部隊に的確に指示を伝える。
陽動の為にグリフォン隊が動いた。それを迎え撃つべく竜騎士も動く。
火竜のブレスが、魔法が次々に飛び空を激戦の色に染めていく。

空の戦いが始まると同時に地上の魔法衛士隊も馬を駆り、地上の敵へ突撃する。
それ目掛けて牙をむき出しに、ニヤニヤした笑顔を貼り付けた幻獣達が両の大砲を、ミサイルランチャーを構えた。

『グリッヅ』――背中に星のマークの入った大きな巻貝を背負った中型幻獣。
頑丈な殻で身を守り、腕の代わりに付いている二門の大砲から砲撃して敵を倒す。
殻の色で個体や階級が分かれており、青=二等兵、緑=上等兵、白=伍長、紫=軍曹となっている。

『ジャイアントグリッヅ』――グリッヅの大型種。巨体に見合った巨大な殻は頑丈で、
中には特殊鋼で出来ている種類も存在する。巨大化した大砲は戦艦クラスの破壊力を誇る。
しかし、狙いは正確ではなく、どちらかと言えば四方八方に乱射するだけだったりする。
階級は青=大尉、緑=少佐、白=大佐。

『ジャイアントグリッヅファランクス』――グリッヅファランクスの大型種。
あらゆる幻獣の中で最も凶暴且つ、強力な種族。
両サイドのミサイルランチャーは大型化した分、破壊力も推進力も飛躍的に高まっている。
無論、背中の貝殻もより強固になっており、並の攻撃では傷跡一つ付かない。
階級は紫=少将、黄色=中将、赤=大将。
また、グリッヅの中でも強力な個体である為、その役割もそれぞれ定められており、
少将は旅団長、中将は師団長、最も強力な大将は司令官となっている。

グリッヅの砲撃、グリッヅファランクスのミサイルが魔法衛士隊に次々と打ち込まれる。
下手な魔法なんぞ軽く凌駕する威力の爆風は、魔法衛士隊の隊員達を風の前の塵同然に吹き飛ばす。
それでも砲撃を掻い潜った魔法衛士隊は杖を構え、次々と空気の刃や燃え盛る炎を幻獣の群れ目掛けて飛ばした。
無数の魔法が幻獣の群れに直撃した。ムゥやプヲン、ササミィなどが魔法の威力に次々と消滅する。
だが、それもほんの一部。未だ健在な幻獣の群れは歩みを止めない。
バーニィの炎が、スラッツァのカッターが、マギ達の操る魔法が次々と魔法衛士隊を襲った。
151毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:53:01 ID:0rT7Nvwh
更に魔法衛士隊へと犬のような姿をした幻獣が突撃する。
その幻獣は馬にぶつかるや次々に自爆し、魔法衛士隊を吹き飛ばしていった。

『ブッピィ』――ブルドッグのような姿をした小型の幻獣。
その姿からは想像できないが、全身が爆発物質でできた動く時限爆弾とも言える危険な存在だ。
近づく物に反応し、周囲を巻き込んで自爆する。
ボルクに多く生息し、戦時中は兵器として運用されていた過去がある。

ブッピィの自爆攻撃に怯んだ魔法衛士隊へ、止めとばかりにグリッヅ達が大砲とミサイルランチャーを構える。
照準器になっている両目で狙いを定め、発射しようとする。

――そんなグリッヅ達の一角に、突如として巨大な”爆発”が巻き起こった。



「いい気味ね」
爆発で吹き飛んだ幻獣達が消滅するのを見ながら、ルイズは呟く。
無論、今の爆発は彼女による物だ。
アンリエッタには止められたが、後ろで見ている事などルイズにはできなかった。
向こうではギーシュのワルキューレが、やりムゥとたてムゥの大群と渡り合っている。
ワルキューレの槍が次々と敵を貫く。
別の場所ではバーニィやマギを相手に、キュルケが派手な打ち合いを行っている。
火炎が複数の幻獣を飲み込み、跡形も無く焼き尽くしていった。

以前のままなら、こうは善戦できなかったろう。
それは彼女達の地道な努力のたまものだった。
並みの幻獣は最早、彼女達の敵ではありえなかったのだ。



「旗色が悪いようね」
シェフィールドの呟きに、ふむ、とジョーカーは顎(?)に手を添える。
竜騎士とグリフォン隊の方はともかく、地上の戦況が著しくない。

一番の原因はルイズの放った爆発だ。
爆発はグリッヅ達の一部を吹き飛ばすだけに留まらなかった。
体内の火薬やミサイル、果ては近くのブッピィへと引火し、途方も無い大爆発を巻き起こしたのだ。
それが群れの中心で起きたのだから、被害は甚大だった。
結果として幻獣達の統率は乱れ、ついには混乱から同士討ちすら始めているのもいる。
そこへ魔法衛士隊も攻撃を再開、一気に群れは追い込まれる形となった。
更に悪い事に、誤射されたジャイアントグリッヅファランクスのミサイルの一発が、竜騎士隊のど真ん中で爆発。
多数の竜騎士に被害が出ていた。

ジョーカーは、しかしなんら慌てる事無く、暫くそれらを静観していた。
「ミスタ・ジョーカー、ミス・シェフィールド、どうなっているのだ?」
声に振り返る。落ち着かない表情で喚いている三十代の半ばほどの男が居た。
オリヴァー・クロムウェル――『レコン・キスタ』の総司令官……だが、所詮は傀儡にしか過ぎない小心者。
先程の演説の際の態度は何処へやら…、内心の不安を隠そうともしていない。
そんなクロムウェルの様子に、事情を知らないフーケは怪訝な表情を浮かべる。
と、不安にするクロムウェルに向かってジョーカーは口を開く。
「何を怯えているのですか…クロムウェルさん? あの程度の抵抗はある程度予想通りでしょう。
これからが面白くなる所です。そう…これからがネ〜♪」
楽しそうに笑い、ジョーカーは指を鳴らす。
と、船の置くから何かが大勢やってきた。
その現れたものを見て、フーケが目を見開く。
「な、こいつら!?」
「のほほほほ♪ あの方達への相手としては実にいいでしょう。…恐怖を味あわせるにはネ」
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 06:55:34 ID:Clrla4u4
支援!
153毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 06:57:03 ID:0rT7Nvwh
「えい!」
杖を再度振る。爆発が巻き起こり、ジャイアントグリッヅが三体ほど吹き飛んだ。
それを確認し、ルイズは周囲を見渡す。幻獣の群れも大分数が減ってきた。
このまま押し切れば…いける! …そんな風に思った時だ。
突如、前方の空間が歪み、十メイルほどの巨体のジョーカーが現れた。
「ジョーカー!」
「のほほほほ、お久しぶりですネ〜。元気になさってましたか?」
「おかげさまで、不機嫌よ!」
叫ぶや、杖を振る。ジョーカーの眼前で爆発が巻き起こった。
「アッチチチチチチチ!? な、なんといきなりですか!? ぼ、ぼぼ、暴力反対ですよ!?」
「あんたが言えたセリフ!? シエスタの村を滅茶苦茶にした仇も一緒にとってやるわ!」
顔を摩りながらジョーカーは笑う。
「できるのならやって御覧なさい。…あれに勝てたらの話ですがネ〜」
ジョーカーは言いながら上空を指差す。見れば無数の幻獣が降下してきている。
それは学院でルイズを捕まえたケイジィだ。その鳥かごの様な胴体の中に何かしら人影のような物が見える。
「何よ、兵隊でも降ろして来てるの?」
次々とケイジィが着陸し、胴体の中のものを開放する。
その出て来たものを見て、ルイズ、ギーシュ、キュルケ、モンモランシー、アンリエッタの五人は驚愕した。
「何で…?」
ポツリとルイズが言葉を洩らす。

ケイジィが開放した物――それは、夥しい数のジャンガだった。



「のほほほほ、驚きましたか?」
ジョーカーの笑い声が木霊するが、ルイズ達の耳には入らない。
何故? どうして? その二つの言葉が脳裏を過ぎる。
今学院で眠っているジャンガが…、しかもこれだけの数が?
分身? いや、それだとあれだけの幻獣でわざわざ運んできた意味が解らない。
実体のある奴だとしても、あれは三体が限度だと前に本人が言っていたし、
三体以上出している所も見ていない。
何より……どうしてあいつの所にいる?

解らない…、解らない…、解らない…。

と、悩むルイズを他所に、魔法衛士隊は無数のジャンガ目掛けて突撃する。
先陣を行く隊員の一人が杖を構えた――瞬間、腕ごと切り落とされた。
痛みに悲鳴を上げる暇も無く、爪が首を薙いだ。
瞬く間にやられた隊員を認めた数人が杖を構え、魔法の矢を放つ。
しかし、そこには馬と絶命した隊員がいるのみ。矢が当たり、馬が悲鳴を上げる。
その数秒後にはその隊員達も最初の隊員と同じ運命を辿った。

紫の影が…、紅い風が…、奔る度に命が散り、赤い花が咲く。

時間にして僅か数分――攻撃を仕掛けた魔法衛士隊の隊員達は、一頭の馬も残す事無く壊滅した。

「どうして……どういう事?」
訳も分からず呟いたルイズの耳にジョーカーの声が聞こえてきた。
「のほほほほ、種明かしが必要ですか? 何故…これだけの数のジャンガちゃんが居るかと言うね?」
「当然よ!! こいつらは何!? あんた…一体あいつに何をしたのよ!?」
「別にジャンガちゃんには何もしていませんよ? …まァ、血を少々貰った位ですかね?」
「血?」
ジョーカーの掌に一匹の幻獣が現れた。その幻獣の姿にルイズは見覚えがあった。
…確か、ニューカッスルの城で、ジョーカーが消える直前に呼び集めていた。
「この子達はマイドゥちゃんといいます。お金が大好きな幻獣ちゃんでしてね、
大きなお口で次々と吸い込んじゃうんですよ。『悪魔のガマグチ』なんて呼ばれていたりもするんですよネ」
「それが一体何だってのよ!?」
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 06:59:58 ID:Clrla4u4
あの時の血か
支援!
155毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 07:00:03 ID:0rT7Nvwh
「あの時……この子達を放っていたのは、お金を集める為なんかではないのですよ。
…実は、血を吸い込んで集めさせていたのですよ、はい」
「え?」
ルイズは唖然とした表情を見せる。…血など集めて何をしたというのだろう?
ジョーカーは言葉を続ける。
「マイドゥちゃん達が集めた血を、ワタクシはとあるマジックアイテムに使ったのですよ。
『スキルニル』……血を吸った相手に化ける事の出来るマジックアイテムにネ」
そこまで聞いてルイズは、ハッとなり、眼前の無数のジャンガに目を向けた。
ジョーカーはニヤリと笑う。
「ようやくご理解できましたか? そう、そのとーり! 吸い込み集めたジャンガちゃんの血を使い、
スキルニルによるジャンガちゃん軍団を作ったわけです! あ〜〜、ジャンガちゃんに囲まれてハーレムですよ♪」
ジョーカーは手を組み、心底幸せそうな声を上げる。――対してルイズは怒り心頭。
「あんた! こんな事して、あいつの評判がガタ落ちになるじゃないの!?」
「はて? いつからジャンガちゃんは良き隣人……みたいなものになっちゃったんですか?
ジャンガちゃんは…毒の爪は恐怖の象徴! 安っぽい正義の味方じゃないんですよ?」
「黙りなさいよ!!! ジャンガはもうあんたと一緒にいた時とは違うのよ!!!」
ルイズの言葉にギーシュとキュルケも続く。
「そうだとも! 昔は卑劣な奴だったが、今の彼は勇敢な戦士だ。尊敬に値するほどにね!」
「あたしも彼の事は恨んでいたわ、タバサを傷付けられてね。でも、今は違う……少なくとも恨んではいないわ」
そんな二人の言葉にルイズは嬉しくなった。
(ジャンガ……聞こえてないでしょうけど、あんた…凄く気に入られてるわ。…羨ましい位に)

そんな彼女達の言葉にジョーカーは両手を広げ、大げさな仕草でため息を吐いた。
「ハァ〜…やれやれですね。物事を自分の都合のように曲解し、強引に周囲に認めさせる……我侭ですネ。
――そんな身勝手な方達には少〜しばかりお仕置きが必要のようですネ」
ジョーカーの言葉に呼応するかのように、スキルニルのジャンガ達が一斉に爪を構える。
ルイズ達も杖を構えて身構える。
だが、相手は正体がマジックアイテムでも、曲がり間違ってもジャンガだ。更にその数が数である。
…果たして自分達の力が何処まで通じるか?
「さぁさぁ、ルーン以外完璧に再現されたジャンガちゃんのスキルニルの力存分に味わっちゃってくださ〜〜〜い! イッツ――」
お約束の台詞を口にしようとした瞬間、ジョーカーの顔面に何処からとも無く飛んできたエア・ハンマーが衝突した。
たまらずジョーカーはひっくり返る。
一体誰が? そう思いエア・ハンマーが飛んできた方向を見上げる。
そこには見慣れた一匹の風竜が飛んでおり、その背中にはこれまた見慣れた…それでいて暫く見なかった人影が在った。
「「「タバサ!?」」」
ルイズ達三人は異口同音にその名を口にした。

シルフィードが地面へと降り立ち、タバサは軽やかな身のこなしでシルフィードの背中から飛び降りる。
その動きは実によく洗練されたものであり、一挙一動にまるで隙が無い。
それを見ただけで、キュルケはこの小さな親友が以前とは違う事を悟った。
おそらく、ここ一ヶ月近い間に姿を見なかったのは何らかの修練を積んでいた為だろう。
…その理由もキュルケには何となく理解できた。
(あいつの為……か)
タバサは三人に歩み寄ると静かに口を開く。
「遅れた」
「遅くないわよ、まだまだこれからって所よ」
謝罪する彼女にキュルケが語りかける。
「十分間に合ってるわ。あなたが来てくれて心強いわ」
タバサは静かに頷く。と、ジョーカーが立ち上がった。
「あ痛たたたたた……、もう! 不意打ちとはやってくれますね…シャルロットさん!?」
憤慨したジョーカーが声を上げる。
それをタバサは涼しげな声で聞き流す。
「戦いの最中に喋っている方が悪い」
「ムキィィィィィィーーー! 言ってくれますね!? ならば、お遊び一切無しです!
スキルニル軍団、やっちゃってくださーーーい!!!」
ジョーカーの叫び声にスキルニルが一斉に動き出す――前に、驚くほどの反応速度でタバサが飛び出していた。
156毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 07:03:00 ID:0rT7Nvwh
ジャンガのスキルニルの一体が胴切りにされる。
接近戦用の呪文『ブレイド』で真空の刃を纏った、タバサの杖の一撃による物だ。
容易く両断したその切れ味は非情に鋭い。
だが、恐怖を感じないスキルニルは次々にタバサに襲い掛かる。
毒の爪、速度、分身、カッター…、過去散々に苦しめられたそれらの武器を振り翳して襲い来るそれらを、タバサは迎え撃った。

「な、なんと…」
ジョーカーは驚きの声を上げる。
四方八方から襲い来る爪や蹴り、カッターをタバサはなんとも身軽な動きでかわしていく。
それ事態は別に特別な事ではない。驚いた事は別にあった。
タバサは攻撃を捌きながら、ブレイドで的確にスキルニルを攻撃しているのだ。
爪を避けるとその腕を切り落とし、蹴りが来れば足を切り落とす。
隙があれば胴体へと一撃を加える。実に見事な……踊っているようにも見える華麗な動きだった。
ジョーカーは信じられない物を見ている気分だった。
何しろタバサが接近戦は不得意だと言う事は知っており、何よりも先の決闘でジャンガに手も足も出なかったのだ。
…これほどの完璧な対応ができるとは夢にも思わなかった。これは一体全体どう言う事だろうか?

爪の一撃をかわしながらタバサは杖による斬撃を叩き込む。
相手が両断されたのを一瞥し、別の一体の攻撃を避けた。
――手に取るように動きが解る…、今の自分は彼と並んだのだ。
数回打ち合い、そう確信する。
あの日、タバサは更なる精進を心に決め、ファンガスの森へと踏み込んだ。
そして二度と彼の足手纏いにならないようにと、合成獣<キメラ>を相手にして己を鍛えなおした。
無数のキメラを相手にした結果――苦手だった接近戦を克服し、呪文の威力を高める事に成功した。
今、こうしてジャンガのスキルニルを相手にしている事は、修行の完成となるだろう。
以前と似通った状況で彼と戦う……それは以前よりも強くなった事の何よりの証となる。
…彼を利用されている事に腹は立っている。だが、それが自分の修行の成果の証明になったのは、なんとも皮肉な物だ。
しかし、タバサは内心の複雑な思いを振り払い、眼前の敵へと立ち向かっていった。



「うむむ……少し不味いですかね?」
次々とスキルニルが倒されていくのにジョーカーも少し焦りを感じ始めていた。
空を見上げる。途端、ジョーカーの顔が更なる笑みに包まれる。――太陽が二つの月に遮られ始めていた。
「来ましたよ……日食!」
ジョーカーは天を仰ぎながら叫んだ。
スキルニルが戦闘を止め、ジョーカーの元へと集まる。
「何?」
タバサはその不可解な動きに怪訝な表情をする。と、ジョーカーに変化が起き始めていた。
黒いベールに包まれ、巨体が更に膨張する。
離れていた手が、足が身体と一体化し、長く伸びる。
身体の形も変化を見せ、皿のような円盤状に変わっていく。
それらの変化が終わり、黒いベールが取れ、ジョーカーの姿が露わとなった。
その姿にタバサ達は目を見張る。
それはフラワージョーカーではなかった。
手足は指が無い先端の尖った形で、身体は甲羅のよう。
普段の姿やフラワーの時とは違い、頭と身体は完全に分かれていた。
一言で言い表せば、それは”海亀”そのものだった。
だが、その身体から発せられるプレッシャーは、それまでの物とは段違いなのが肌で感じられる。
「のほほほ……怖いですか?」
ジョーカーが笑う。その笑みにすら恐怖を感じた。
タバサの背を冷たい何かが走る。
見れば、ジョーカーの左腕がいつの間にか炎を纏っている。
ニヤリと笑い、ジョーカーはその左腕を、まるで槍を突き出す前のように大きく後ろへ引く。
タバサは直感的に何かを感じ取った。そして後ろへ向かって叫んだ。
「伏せて!」
タバサの叫びにルイズ達は一斉に伏せた。
直後、頭上を何かが凄まじい勢いで通り過ぎる気配を感じた。
157毒の爪の使い魔:2009/04/13(月) 07:06:08 ID:0rT7Nvwh
「痛ッ…」
「殿下、大丈夫ですか?」
「…ええ、平気よ」
自分を気遣う女性騎士にアンリエッタは答える。
だが、いきなり横から飛び掛られた時には何が何だか解らなかった。
巨大な道化師のような幻獣が変身したかと思うと、その左腕を突き出そうとした。
――その瞬間に目の前の女性騎士に飛びつかれたのだ。
「一体どうしたのです?」
「すみません、殿下。ですが……なにやら危険な感じがしたので」
「危険? 別に何も変わってはいないようですが?」
自分の跨っていたユニコーンが目の前に立ち、その向こう側に魔法衛士隊の隊員達の足が見えた。
と、唐突にユニコーンの身体がぐらつき、アンリエッタの方へと倒れこんだ。
「うっ…」
アンリエッタは短く声を漏らす。――倒れたユニコーンは右半身が無かった。
鋭利な刃物で切り取られたかのような真っ二つの状態であり、その断面は火で炙られたかのように炭化している。
そのユニコーンの骸の向こうに目を向け、アンリエッタは更に愕然となった。
魔法衛士隊の隊員達の姿が無かったのだ。…いや、足はあった――”その上”が無かった。

「のほほほ…、少しやりすぎちゃいましたかね?」
ジョーカーが笑う。だが、後方で起きた惨状を見たタバサやルイズ達は決して笑えなかった。
ジョーカーが突き出した左腕から伸びた炎は、凄まじい勢いと威力で後方の魔法衛士隊を直撃。
炎の持つ凄まじい高熱は、瞬く間に隊員達の身体とユニコーンの右半身を焼失させたのだ。
一目で理解した。あの炎の威力はフラワーの時の比ではない。
タバサはジョーカーへと向き直り、油断無く身構えた。
「ではでは、久しぶりにこの姿で暴れさせてもらいましょうかネ〜? ”ビーストジョーカー”行きますよーーー!!!」

ジョーカー……否、無敵の幻獣ビーストジョーカーは高らかに笑った。

-------------------

以上で投下終了です。
今回もかなり難産でした。アンリエッタの台詞に迷う迷う…(汗)
で、ようやくビーストジョーカー出せました。
しかし初代クロノアをやっていないので、ビーストジョーカーの攻撃方法が全くわかりません(苦笑)
ので、完全オリジナルで行きます。火炎攻撃もフラワーが炎を使えたのでこっちでも使えてもいいかと思いましたので。
あとブッピィの説明文の一部もオリジナルです。
ではまた次回、アデュー!
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 07:21:19 ID:Clrla4u4
毒の爪の人、乙です!

マイドゥが今回の伏線だったとは…
でも所詮は量産型、パワーアップしたタバサに鎧袖一触でしたねw

ビーストジョーカー、強い!
これはジャンガがいたとしてもキツそうだ
対抗できそうなのは虚無…かな?
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 09:46:03 ID:bcHVpLjg
突然思ったのですが
ゴーレム使いは使い魔と同じように
「ギゴーレムが見たもの、聞いたものを認識できる」のでしょうか
もしそうなら土メイジの汎用性は異常なくらい上昇するのですが
そして今執筆中の作品の展開に多大な影響を与えるのですが
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 09:47:53 ID:ABaC2RqA
そんな描写は無いよ。
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 10:07:07 ID:yVr0ggIQ
>>159
ゴーレムが使い魔ならば認識可能。
ただ、使い魔は原則的にハルケギニアの生物が召還されるのがデフォルト
非生物のゴーレムを召喚する事は恐らくないと思われる。
でも正直、動物や魔法生物が存在するとして、魚とか召喚した水メイジは悲惨だよな。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 10:09:14 ID:pOT3M2wA
カエルがあるなら、おたまじゃくしもあるんだろうな
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 10:19:25 ID:hCNTjsur
>>161
ゴーレムが使い魔としてしたがえられてる描写があった。
ただノボルの場合ゴーレムとガーゴイルの区分けを明確にはつけていないみたい。
ガーゴイルはゴーレムの一種であるとして、アルヴィーをゴーレムと表記したり。

だから永続的に動けるほど魔力を付与したガーゴイルを、魔法“生物”として
使い魔召喚も可能という事になってるのかも。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 10:39:47 ID:MZRxH3kG
才人とタバサが戦ってた時シェフィールドの使ってたガーゴイルは
視覚・聴覚の情報と声で双方向のコミュニケーションしてたな。

ギーシュやおマチさんがゴーレム作って同じ事が可能かは不明。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 11:21:07 ID:bcHVpLjg
とりあえず「伝説の使い魔」であるミョイズニトニルンがマジックアイテムとしてのゴーレムを使用した時なら可能
他は不明、描写無いけど多分無理っぽい
どういう位置づけか分からないけど使い魔としてゴーレムを召喚した場合なら可能と思われる
って事ですね
有難うございました
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 11:49:24 ID:iQW6Wzd3
>>165
ミョズニトニルンな

そもそもゴーレムに視力あんのかね
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 11:51:24 ID:bcHVpLjg
>>166
失礼しました
視力に関しては「物を観る」ように作れば(どこか一部をレンズのように精製する)
いいんではないでしょか
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 12:04:05 ID:WA5pb1kW
無茶言うなw

「遠見の鏡」が秘宝クラスなのを考慮しろよ
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 12:19:31 ID:+eLeeKPp
脳が機能していなければ、物は見えない。。
まあ、ファンタジー世界にそんなこというのは野暮だけど。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 12:28:34 ID:Bh9Pi9Pf
とある魔術に出て来たゴーレム使いみたいに特殊なゴーレムを作れる、でいいんじゃないの?
見ることが出来ても人間との認識能力の差で正確に情報を得るのに苦労するとか制限付ければ無茶な展開にはならんだろ
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 12:31:01 ID:GLECL91a
光学センサー=眼ってことにするくらいのご都合は許されていいジャナイ
「ゼロの騎士団」…つーか元ネタのSDガンダムとかもそこらへんはアバウトだw
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 13:23:04 ID:N/xtva2N
>>107
倒すべき敵とは見てたけど、ジャスティスも手の打ちようがなかったんじゃないか?
いくらでも新しいのが出てくるし、弱点も次々に克服してしまう。
コスモスもあくまで心に訴えかけるというムサシの助けがなければ負けてただろう。
 
あと、ウルトラ系のゴーレムといえばコダイゴンがいるが、あれもどうやって操ってたのか結局解明できなかったんだよな。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 14:44:13 ID:CjU6H6aw
原作に無ければオリ設定にならん?
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 14:56:23 ID:wGeND037
>>171
つまりフラッシュロケットの出番もある、ということでよろしいか
175炎神戦隊ゴーオンジャー ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 15:50:15 ID:FuU2KKW3
お久しぶりです。
GP−13投下OKですか?
OKでしたら16:00から投下します。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 15:59:06 ID:bcHVpLjg
>>175
OK! COME ON BABY!
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 16:00:10 ID:1A1OJsS0
ktkr!!
支援!!
178炎神戦隊ゴーオンジャー@ ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:00:43 ID:FuU2KKW3
「炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! GP−13」

次回予告
「バスオンでい! 不思議な若者に出会った嬢ちゃん達。レコン・キスタに狙われてるとあっちゃ力にならなきゃな、兄弟」
「本気でこの私をやる気か!?」
「GP−13 閃光シシャク
 ――GO ON!!」
179炎神戦隊ゴーオンジャーA ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:02:40 ID:FuU2KKW3
 朝靄立ち込める夜明け前。
 ルイズ・ケガレシアは馬に鞍を付けて旅支度をしていた。ヨゴシュタイン・キタネイダスは蛮ドーマで既に出発させている。
「いい、ケガレシア? 私達はアンリエッタ姫殿下からの密命遂行のためにまず、出国してアルビオンに行くのよ」
「確か魔法学院から北西に約400リーグ地点にあるラ・ロシェールからの、アルビオン行き定期船に乗るでおじゃったな」
「どうやら準備万端のようだね、ルイズ。しかし馬では次のスヴェルの夜までに町に到着できるか微妙だな」
 突然朝靄の中から男の声がした。
「何者でおじゃる!!」
 聞き覚えの無い男の声を聞いたケガレシアが、背中に背負ったデルフリンガー(長剣形態)に手を掛ける。
 その言葉に応えるようにグリフォンを連れた1人の長身の青年が姿を現した。ルイズ達同様マントを羽織って立派な羽根付き帽子を被っている。
「僕は敵じゃない。姫殿下よりこの任務で君達に同行する事を命じられたんだ。剣を収めてくれ、ミス」
 男は帽子取ると一礼する。
「女王陛下のグリフォン隊。隊長のワルド子爵だ」
 ワルドと名乗った男はグリフィンの背から颯爽と降りると、ルイズに接近してすっと胸に抱き上げた。
「久しぶりだ、僕の小さなルイズ! 姫殿下のご依頼に感謝しなければならないな。婚約者と再会できる機会を与えてくれたのだから」
「そんな、昔の話ですわ」
「そうだ、そこの彼女も紹介してもらおうか」
「ええ。彼女はケガレシア、私の使い魔であり同志と言える存在です」
180炎神戦隊ゴーオンジャーB ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:05:43 ID:FuU2KKW3
 ――GP−13 閃光シシャク――

「ここがラ・ロシェールでおじゃるか……」
 ワルドのグリフォンに相乗りする事2時間、ルイズ・ケガレシア・ワルドはラ・ロシェールに到着した。
 しばらくして桟橋へ乗船の交渉に言っていたワルドが帰って来て、困ったように言った。
「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」
「もう、急ぎの任務なのに……」
 ルイズも口を尖らせる。
「なぜ明後日にならないと船が出ないでおじゃるか?」
「月が重なるスヴェルの夜の翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近付くんだ。とにかく今夜はもう寝よう。部屋を取った」
 ワルドは鍵束をテーブルの上に置いた。
「僕とルイズは相部屋、ミス・ケガレシアが1人部屋だ。婚約者だから当然だろう」
「結構です」
「え?」
「私達まだ結婚式も済ませていないじゃありませんか」
「確かにそうだけれど……」
「それにケガレシア達といろいろ打ち合わせたい事もあるので」
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 16:07:31 ID:or0hhmUg
一刀両断w
でもまったく可哀相に見えないな子爵w支援
182炎神戦隊ゴーオンジャーC ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:09:05 ID:FuU2KKW3
「ここがラ・ロシェールね……」
 ルイズ達に遅れる事約半日、キュルケ達もシルフィードでラ・ロシェールに到着していた。
「こんな所にルイズ達は何しに来たんだろうな?」
「……アルビオン……」
「そうか、明後日の夜はスヴェルの夜だから……」
「それじゃ、問題はルイズ達がアルビオンで何をしようとしてるかって事ね」
「……情報が足りなすぎ……」
『うーん……』
 3人はしばらく考え込んだがまったく想像がつかなかった。
 とにかく今日のところは日没前に宿を探そうという事になり、3人は宿屋が立ち並ぶ区画に向かった。
「ところであちこちの屋台で売ってるあれは何だい?」
 ふとギーシュが魚型の焼き菓子を売っている露店に目を止めて、キュルケに尋ねた。
「……あれはベイクドティラピア……」
「小麦粉で作った皮に甘く煮た豆を詰めた焼き菓子よ。ラ・ロシェール名物なの」
 とその時、
「食い逃げだーっ!」
「ウグーッ!」
 露店の1つの主人らしい男の怒声の後に、少女らしい甲高い声が上がった。
「食い逃げ?」
 驚いて声のした方向に振り向いた3人の目の前を、ベイクドティラピアの詰まった紙袋を抱えた少女が駆け抜け、少々遅れて露天の主人らしい中年男性が少女を追っていった。
「……あの子……」
「捕まえないと!」
 慌てて少女の後を追う3人。
「待ちなさーい!」
「……こら……」
「ちょっと君!」
「ウグーッ!?」
 露店の主人に続いてキュルケ達も追跡してきた事に気付いた少女は、慌てて裏路地に入って4人を撒こうとする。

 少女を追って裏路地に入ったキュルケ達が右折左折を繰り返して何度目かの角を曲がった直後、
「危ないっ!」
 突然建物の屋根から10体近いウガッツによる急降下攻撃を受け、キュルケはギーシュに襟首を捕まれ引き戻された。
「ウガッツ!?」
「……こんな所にまで現れるなんて……」
「ミスタ・コルベールが睨んでいた通りだな。みんな、いくぞ!」
「ええ!」
「……わかった……」
 ギーシュの言葉に答え、キュルケ・タバサも魔法と体術を駆使してウガッツ達に立ち向かう。
「えい!」
「……ウィンディ・アイシクル……」
「はあっ!」
 ウガッツ達は瞬く間にその数を半分以下にまで減らされ、慌てて敗走する。
「待て!」
「……待って……」
 追撃をかけようとするギーシュだったがタバサに止められた。その直後、
 ――ドッカアアン!
 ギーシュの目の前で石畳の道が大爆発した。タバサが止めていなければ確実に巻き込まれていただろう。
「砲撃!?」
「……また来る……」
「逃げろ!」
 3人はなおも続く砲撃をかいくぐりつつ急いで来た道を引き返し、建物が密集している区域にある廃屋の1つに逃げ込んだ。
 そこでようやく襲撃者も3人を見失ったようで爆音が止んだ。
「……危なかった……」
「さっきのウガッツは砲撃のための足止めだったのね……」
「しかしいったいどこから砲撃してきたんだ? 見たところ空船も浮かんでいなかったし発射音も聞こえなかった」
「……だとしたら相当遠くから……」
183炎神戦隊ゴーオンジャーD ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:13:55 ID:FuU2KKW3
 ラ・ロシェールを見下ろす山頂付近、1体の蛮機獣が悔しそうな表情で呟いていた。
「逃げられちゃった……」
 しばらく町を見渡してキュルケ達の姿を探していたが、
「とりあえずあの3人が来た事だけでも報告しとかないと」
 そう言い残して立ち去っていった。

「そう、キュルケ達も来てたのね」
 ラ・ロシェールの最高級宿屋「女神の杵亭」。その一室でルイズ達は蛮機獣からキュルケ達に関する報告を受けていた。
『―――』
「ええ、攻撃するしないは任せるわ。大切なのはキュルケ達にこちらの狙いを気付かれない事よ。わかった?」
『―――』
「それじゃキュルケ達の監視に戻って」
『―――』
 それを最後に蛮機獣の声は途絶えた。
 ――コンコン
 丁度その時何者かが部屋の扉を叩いた。
「どうぞ……あら、ワルド子爵」
「ルイズ、ミス・ケガレシアが呼んでいたよ。君と内密に打ち合わせをしたいそうだ」
「わかったわ」
「……ところでルイズ、そのミス・ケガレシアの事なんだが……」
 廊下に出ようとするルイズをワルドは呼び止め、
「どうしたんですか、子爵?」
「ゴーレムとも鎧騎士ともつかない怪しい連中と何やら話をしていたのだが……。注意した方がいいかもしれない」
「それなら心配要りません。ヨゴシュタインとキタネイダス、ケガレシアと同じ私の使い魔で仲間です」
「ヨゴシュタインにキタネイダス? しかしさっきはもう1人いたはずだが」
「……もう1人? それではケガレシアに聞いておきますね」

 ルイズはワルドから伝えられたケガレシア達との合流場所に赴いた。
「ルイズ! 丁度よかったでおじゃる」
「心強い助っ人が到着したぞよ」
「心強い助っ人?」
「来るなり、ヒラメキメデス」
 ヨゴシュタインに促されて、害地副大臣・ヒラメキメデスがルイズの前に姿を現す。
「初めましてミス・ルイズ。私、ヨゴシュタイン様の下で害地副大臣を務めるヒラメキメデスと申します」
「初めまして、ヒラメキメデス」
「それだけではないなり。ヒラメキメデスがマジックワールドに到着早々、頼りになりそうなメイジをスカウトしてきたなり」
「え?」
「こちらです、ミス・マチルダ」
 その言葉に物陰から現れたのは……、
「ミス・ヴァリエール!?」
「ミス・ロングビル!?」
「なぜフーケがここにいるでおじゃる!?」
 そう、彼女こそかつて「土くれのフーケ」としてルイズ達の前に立ちはだかった、元トリステイン魔法学院教師・ロングビルだった。
「ほう……、するとミス・マチルダを捕らえた魔法学院の生徒というのは……」
「……ミス・ヴァリエールよ」
「それはさておきミス・ロングビル、お主を襲ったという仮面の男に関して詳しい話が聞きたいなり」
「……って言っても、あんまりこっちも詳しい話は聞かされてないんだけどね。ただとんでもない事を企んでるのは確かだよ。アルビオンを手始めに王家を打倒してハルケギニアを統一、一枚岩になって聖地を奪還するんだとか……」
「……また大きく出たでおじゃるな」
「それで、その連中の名は何だぞよ?」
「レコン・キスタ」
184炎神戦隊ゴーオンジャー ◆955ynBBa1I :2009/04/13(月) 16:17:06 ID:FuU2KKW3
以上投下終了です。
今回の蛮機獣がアレなのはご容赦ください。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 16:28:59 ID:1A1OJsS0
ヒラメフラグ回収乙です!!
ベイクドティラピアは・・・鯛焼き?
蛮機獣のモチーフを予想しながら続き待ってます!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 16:36:33 ID:fSpPIyLs
乙でした
しかし鯛焼きでウグーとか言われると泣きたくなるのは何故だろう
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 16:52:05 ID:gHcL467O
>>186
やりすぎ乙
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 17:00:57 ID:p44n7juf
乙でしたー。
来た!ヒラメキ来た!
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 17:36:43 ID:jXlbj42G
鯛焼き+食い逃げ+うぐぅ=泣ける これ定説w
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:30:49 ID:iMFnAap9
五分後にLouise and Little Familiar's Ordersの代理投下をしたいのですが構いませんねっ!?

ミス・ロングビル……もといフーケを、既に学院で待機していた王政府の人間に引き渡した六人と一匹は、学院長室でオスマン氏に事の次第を一通り話していた。

「ふむ。やはりわしの睨んだ通りじゃったな。街の居酒屋で給仕をやっていたところを採用した時、隠してはおったが目に何がしか一物抱えたような眼光を持っておった。しかしまさか今回の様な事のなったとはのう。」
「では学院長、まさか全ての事を存じた上で……?」
「いや、わしはそう言ってはおらんぞ。どうも君はどこかせっかちな節があるな、ミスタ・コルベール。ただ何時か何かの拍子に尻尾を出すじゃろうと思って泳がせていただけじゃ。
じゃが彼女のことじゃ。拷問される様な目にあおうとて、そうそう簡単に背後の事を吐くような真似はせんじゃろう。」

それからオスマン氏は厳しい表情を欠片も崩さずに生徒達に向き直り、きびきびとした口調で話した。

「さて君たちはよくぞフーケを捕まえ、『鉄拳の箱』を取り返してきた。事前に城の衛士を呼んでいた事もあって引渡しもかなり円滑にいった。そして宝物は元あるべき所に収まった。これで一件落着じゃ。
そこでなんじゃが……君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に申し出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。まあ、ミス・タバサに関しては既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているので精霊勲章という形にはなるじゃろう。」

キュルケとギーシュの顔がぱっと明るくなる。無理も無い。王室から与えられる爵位としては最下級とはいえ、純粋に当人が国家に対して成した立派な業績に対して与えられる実力の称号だからだ。
二人が顔を見合わせてにっと笑う中、ルイズは小さいがはっきりした声でオスマン氏に言った。

「学院長先生。大変申し訳ありませんが、私めはそのお話を辞退させて頂きます。」

Louise and Little Familiar's Orders「Principal's thirty years」

その言葉にキュルケとギーシュ、そしてコルベール氏がぎょっとした顔で、タバサとオスマン氏が興味深そうな顔でルイズの顔を見つめる。
だがルイズは発言を撤回するつもりは無いらしく、どこまでも真剣な表情のまま真正面を見つめていた。
発言の真意を汲み取るべく、オスマン氏は重々しく声をかけた。

「ほう、辞退するとな?それはまたどのような理由から来たものなのかな?」
「はい……今回の一件においてミスタ・コルベールを含む他の四人と私の使い魔は、フーケのゴーレムを見事な連携で打ち倒しました。それが無ければ私達は無事にここまで帰って来れていないでしょう。
しかし……私だけは事実上殆ど何もしませんでした。皆の働きを幇助する何かをした訳でも無く、ただ皆の後について行っただけの様なものです。
その様な私が畏れ多くも『シュヴァリエ』の叙勲など……失礼を重々承知した上で正直な事を申せば、恥じ入って然るべきだと考えます。」
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:38:58 ID:zAxO80Kd
you やっちまいな
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:39:53 ID:iMFnAap9
そのルイズの返答にキュルケはつい「余計な事を……」という顔をしてしまう。
彼女の持ち前の矜持からして考えられなくも無かったかもしれないが、これでは事態が全て円満にいった意味が無い。
だが、オスマン氏はそれについてどうという事はない様に答えた。

「その意思に嘘偽りが無いのであれば成程そうか……君がそこまで言うのであれば、わしから直々に王宮へそれを報告しておこう。ミス・ヴァリエールは受勲を辞退すると。
さて、四人とも。今晩の催し物、『フリッグの舞踏会』を覚えておいでかな?盗まれた箱はこの通り我等の手元に戻り、フーケも捕まった。盛大に執り行おうぞ。」

ここ数日のルイズの相手、そしてフーケの一件でキュルケとギーシュは『そう言われればそんな行事もあったな。』という表情の顔を見合わせた。

「本日の舞踏会の主役は君達じゃ。誰にも引けを取らぬよう、各々目いっぱい着飾って来るのじゃぞ。」

そう言われてキュルケ、ギーシュ、タバサの三人は恭しくお辞儀をし、学院長室を後にする。だがルイズだけはまだオスマン氏に何か用があるのか、微動だにしない。
気になって声をかけようとするが、ルイズはただ一言「先に行ってなさい。」とだけ言ってオスマン氏に向き直った。
これまでの一連の流れからして、流石にこれ以上オスマン氏の前で怒鳴り声をあげるわけにはいかないと思ったのか、声自体は穏やかな物だった。
キュルケ達はルイズが何を話すのか気にはなったが、邪魔をすれば後でまたとやかく言われることになるだろうと思い、後ろ髪を引かれる思いで退室した。
外を歩く足音が遠ざかっていったのを確認したオスマン氏はルイズに真面目な顔をして話しかける。

「どうやらわしに幾つか訊きたい事がおありのようじゃな。どれだけ力になれるかは分からんが。ああそれと……ミスタ・コルベール。スマンが君も少し席を外してくれんか?」

何かいい話を聞けるかと期待していたコルベール氏は、結構がっくりきたようで肩を落とした状態で退室していく。
そしてその足音も消えていった頃、オスマン氏が残されたルイズとミーに向かって言った。

「さて……この場にいるはわしと君達だけじゃ。先ずはそちらから話してはくれんか?」
「……学院長先生は『鉄拳の箱』について何かご存知かと思いまして。その……いつ、どこから、どうやってここに来たかといった事を。」
「ほっほ。君もあの箱の不思議さに気がついたか。いや本当に君は聡いものじゃな。ではその質問に答えるとしよう。……この箱はの、わしがとある人物から譲ってもらった物なのじゃ。」

そう言うとオスマン氏はその時の事を懐かしむかのような表情で話を続けた。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:39:59 ID:39QdKbEo
支援
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:40:46 ID:iMFnAap9
「三十年近く前の話じゃ。まだここの学院長以外に臨時の仕事もやっておった当時のわしは、ここから数リーグ離れた森において邪悪な幻獣を討伐する任務を遂行しとった。
相手の幻獣はそれはもう強力なものでな。あちこちで見境無く暴れ回ったその力は、国土を管理する役人に周辺の地図を何度も書き変えさせるほどだったくらいじゃ。
いくら王宮からの命令とはいえ、死にはしなかったが仲間が次々と幻獣の力の前に圧倒されていくのを見てわしは流石に死を覚悟したよ。
じゃがそんな時、一人の屈強な青年がこれまた屈強ななりをした二匹の獣を操り、その幻獣を見事に打ち倒したのじゃ。丁度君の使い魔のようにの。その青年こそが『鉄拳の箱』の元の持ち主なのじゃ。
様々な詳しい話を聞く限り、彼はタンバという所から来た格闘の武者修行を続ける平民という事が分かった。
じゃがいくら国益をもたらすほど栄誉な事をしても貴族、特に王宮は大っぴらに平民を表彰するわけにはいかない。そこで、仲間を救った彼をわしは極秘裏に学院に招き盛大にもてなした。
その厚意に対し、彼は去り際わしに『鉄拳の箱』をくれたというわけじゃ。もてなしの礼に、そしてわしたち魔法使いの力を認めるという二つの意味合いで。
そして彼はこうも言っておった。『いつか自分のように‘ポケモン’という生涯においての良き鍛錬仲間を見つけた時、必要があればこれを使ってくれ。』と。
しかしモートソグニルに使おうとしても全く反応せず。彼が連れていたポケモンという生き物についてもこの国、延いてはこの世界では現在は勿論のこと、過去の資料を遡ってみても存在していたという証明が何一つとしてない。
完全に扱いかねていたのじゃが、仮にも仲間を救った勇敢な者が自分に感謝の意を示すために残した物。粗末には出来んということでここの宝物庫にしまっておいたのじゃ。
しかしまさか……三十年の時を超えて彼の意に副える日が来ようとは……つくづく運命とは数奇なものじゃな。
まあかなり掻い摘んだ所もあるが、わしが『鉄拳の箱』を手に入れた経緯はこれで以上じゃ。」

長いこと喋ったので、オスマン氏は近くにあったコップに手を伸ばし喉を潤す。一息吐いて今度はその彼からルイズに話が振られた。

「さて今度はわしの方から話させてもらおうかの。先程も言った通りこの世界には基本的にポケモンという生き物はいない。ただの一匹もな。
それに青年の出身地や名前、彼が口にしたそれ以外の固有名詞に関しても様々な文献を調べたが、このハルケギニアに縁がある物ではなかった。
これらの事からわしは……いや、全くもってばかげた話かもしれんが、彼は全く違う別の世界から来たのではないかと推測した。
仮にこれが真実だとすれば、君の使い魔はその青年と同じ境遇にあると思われる。」

それを聞いていたルイズは横目でちらとミーの方を見やる。当のミーはぽかんとした顔で学院長を見つめていた。
素直に聞いていると言えば聞こえは良いが、実際は話されている事の半分も分からないでいただけであった。
その様子を気にする事も無く、オスマン氏は話を続ける。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:41:53 ID:iMFnAap9
「しかしの……さらにその仮定を真実としても、彼と君の使い魔がそれぞれこの世界に来るのに、何故三十年近くもの時間差が発生したのかも分からん。早い話が分からん事だらけなのじゃ。
が、これだけは言える。先日も言った通りその子は伝説の使い魔のルーンを持っており、今回の一件でその真価の一部を発揮した。
今まで君が自分にした事も何もかも考えずに、君が危機に陥ればそれを救わんと動いたのじゃ。それをよく考えてこれからは接することじゃな。
まあ直ぐにとは言わん。徐々に……の。それと……」

オスマン氏は、デスクの右にある引き出しから金貨を十枚取り出し、それを柱の様に積んでミーの前にすっと差し出した。

「学院長。これは……」
「怖い思いをして主人に付き従ったのじゃ。公的には仕方ないとはいえ、それに対する報奨が全くのゼロではあまりにお粗末とは思わんかの?
仔細あって今直ぐに大きな額を渡す事は出来ないが、これはほんのささやかなご褒美じゃ。大事に使うのじゃぞ。」

ミーは手を伸ばしてその金貨を受け取る。その時オスマン氏に「人から何かを貰ったら有り難うと言うのは教わらんかったかね?」と言われ、小さく「有り難う……ございます」と丁寧に言ったのはご愛嬌だった。
やれやれといった感じで見ていたルイズにオスマン氏は少々厳しい口調で注意を促す。

「こういった事を躾けるのも君の責務なのじゃぞ、ミス・ヴァリエール。それに、本人に渡しておいて今更じゃが、君の使い魔はこの世界において金貨一枚が持つ力を知らんじゃろう。
君がそれをしっかり教えてやるかそうしないかで、この子は倹約家にも浪費家にもなる。よいかな?」
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:42:51 ID:iMFnAap9
フリッグの舞踏会が始まるまであと三十分を切った頃になっても、ミーとルイズはフーケ討伐の時と同じ格好のまま自室にいた。
舞踏会に行かない状況は同じだとしても、お互いその理由が違っていたからだ。
ミーはそもそも‘ぶとうかい’という言葉の意味を全然知らなかったし、ルイズはそこで起きるであろう事を想像しすっかり辟易していた。
舞踏会自体には場合によって出席する必要がある。
貴族にとって舞踏会というのは、ただ気に入った相手と呑気に踊るだけの社交の場というだけではなく、様々な情報を交換し合ったり互いの腹の探りあいをしたりする場でもあるからだ。
ルイズも貴族なのだから小さい頃からそういう事はみっちりと教え込まれている。
だが今からいくら綺麗に着飾っても、どうせ男性陣は普段から自分を馬鹿にしている事を全部棚に上げた上で、歯の浮くような言葉を並び立てつつ言い寄ってくるだろう。
一方で女性陣は、自分が何もしていない、何も出来ないのにそんな場にいて調子のいい男性陣から寵愛を贈られる事に我慢出来ず、見え見えの陰口を言うだろう。
どっちにしたってルイズの矜持がそれを許すわけは無い。しかも参加は強制ではないから、そんな胸の悪くなるような物に出る必要も無い。
そもそも明日も授業などで色々と忙しいのだ。わざわざ疲れを残すような事をしたくない。
そんな時、部屋の扉が軽くノックされるのを耳にした。
「はーい。」と答えてミーが鍵を開けて扉を開けると、露出は割りと控えめだがそれでもどこと無く扇情的なドレスに身を包んだキュルケがそこに立っていた。
中の様子を見てキュルケはルイズに声をかける。

「ルイズ!舞踏会行かないの?あともう少しで始まるわよ?」
「あ、そう。早く行きなさいよ。遅れるわよ。」

椅子に座って恐ろしく難しい本を読んでいるルイズはしごく無愛想に答える。
だが彼女が‘行かない’という結論を出すに至った心情的な物や経緯を露ほども知らないキュルケは、今度は声をかける対象をミーに移した。

「ミーちゃん。お姉さんと一緒に舞踏会に行かない?舞踏会は楽しいわよ〜。小さくてもあなたは立派なレディなんですから、昨日買ってきた服のどれかを着て出れば注目されるわよ〜。」
「えっ……でも、あの、御主人様が……」

そこでミーはルイズの方に振り向く。その時点でやっとルイズは読んでいた本を閉じて机に置き、キュルケの元へ歩み寄った。

「昨日買ってきた服?あれはギーシュが只の自己満足でこの子に買い与えた物でしょ?使うかどうかの決定権は私にあるの!
それに!ミーは平民なのよ!着飾って貴族の社交場に出す意味合いが今後のこの子の生涯であるわけ?
もしそれがあるって言うんならこの場ではっきりと手短に述べてもらいたいものだわ!」

キュルケはぐっと言葉に詰まる。ギーシュの件はともかく後の事に関しては何ら有効な反論が出て来ない。
今後ルイズに今以上の人付き合いが要求され、舞踏会等にどうしても出席せざるを得なくなった時でも、ミーは留守番をするか近くで待っているだけでいいのだ。
両者の間に暫しの間沈黙が漂うが、痺れを切らしたかの如くルイズはいつものように怒鳴った。

「無いんだったらあんた一人でさっさと行ってきなさいよ!鼻の下伸ばして待ってる相手がいるんじゃないの?私に構ってる場合?
悪いけどこの子はまだこれからやる事があるし、私いろいろと疲れてるの!分かった?!」
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:43:33 ID:iMFnAap9
それから部屋の扉が勢いよくバタンと閉まり、更に鍵もかけられる。キュルケはやってられないとばかりに肩を竦め、急ぎ足でその場を後にした。
その扉の向こう側では、ルイズが扉を背にずるずるとへたり込み、髪を軽く掻きあげていた。
自分の言っている事は絶対に正しいという確信があったし、何より昨夜の決闘の結果を持ち出される前に、何とか自分の前からキュルケを追い払ってやった。
学院長室にいた時のように、先生方がいる前だと相手も公にするわけにはいかないので黙っているが、こういう場ではそうもいかない。
それにしても……昨日今日と起きた事が起きた事だけに気力は先程の会話ですっかり消えてしまっていた。
隣では苛々した表情のルイズをミーが心配そうに覗き込んでいたが、それが余計にルイズのささくれ立った心を悪い意味で刺激する。
―どうしてそんなに健気でいられるのか。私はそうしようとしてもそう出来ないのに……―
それから暫くして、ルイズは何も言わずその場で次々と服を脱いでいき、次いで明かりを消した後でベッドに向かって倒れこんだ。
双月が照らす部屋の中、一人洗濯物の山に残されたミーは小さくボソッと言う。

「御主人様……ミー、舞踏会にいきたかったな……」

しかしそれに対しての答えは実に静かでそっけない物だった。

「あんたにゃ一生涯必要無い事なの。無理してキュルケ達に合わせる必要は無いの。……分かったなら洗濯物をメイドの所に持っていっておきなさい。
それが済んだらあんたも早く寝なさい。明日も早いんだから。」

その言葉にミーは何かを言いかけるが、直ぐに言ってもどうにもならないと観念したのかやはり押し黙る。
そして洗濯物を籠に纏めて静かにルイズへ一礼して退室した。
残されたルイズはベッドの上で、オスマン氏が語っていた話の事を考えていたが、やがて押し寄せる眠気に勝てなくなったのか、終には軽い寝息をたてて眠ってしまっていた。
だが二人ともまだ知らなかった。世界の大きな変化が彼女達を呑み込もうとしている事を……

以上で投下終了します。専ブラ入れてやっとスムーズに行くかと思ったらこの有様です。
やっと一巻分終了しました。長かったです。
しかしまぁ、反応とどうなるか分からないという点で考えると、もう一つの方をチャラにして、こっちに本腰入れてとっかかるべきなのかとも最近思ったりします。
それでは今日はこれにて。また何時投下できるかは分かりませんが、また近い内に投下したいと思います。
199タイトルが抜けてた馬鹿な代理人 orz:2009/04/13(月) 18:49:19 ID:iMFnAap9
代理投下完了しましたが、このありさまです
作者氏には本当にすみません orz
ちなみに今回タイトルのとこに話数(第12話)とレス数、代理とつけなかったのは
名前欄が長すぎと出たからです

しかしこのルイズ、余裕がないというか後ろ向きだなぁ……
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 18:51:07 ID:AFBNPwi+
>>115
遅レスですまんけど

> いつになったらグダグダが終わるのか、
> 私にはわからない。
1,2シーン1話で書いてるからじゃない?
アニメだと1分もない長さで
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 20:38:02 ID:GD3AQ8LD
>その視線には、何やら複雑な、それでいてどこか不穏な感情が混じっていた――
グレートドラゴンなんて連れてきてた連中に対してナニを今更
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 21:34:08 ID:wGeND037
かがやくいきとかしゃくねつほのお使うしな
俺のところには来てくれなかったが・・・
ラスボスまでスラリン(Lv99)に頑張ってもらったよ

グレートドラゴンってかしこさいくつあったっけ?
かしこさ勝負ならシルフィードも負けてない・・・よな?
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 21:43:26 ID:4RFLWb5V
シーザーには賢さの種無数に投与するという升級コマンドがあるから比にならないな
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 21:46:49 ID:aMAotqlr
調べてみたがレベル3で81らしい。
にしてもリメイク版は仲間になるモンスターやたらと増えたんだな。
205ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:03:24 ID:PV/Rmsjk
皆さん投下乙です。
遅れてスイマセン。外伝「真・使い魔感謝の日」を投下させていただきます。
時間は22時10分を予定しています。
この間のネタも有り今回カードダスは有りません。
206ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:11:18 ID:PV/Rmsjk
ゼロの騎士団−外伝 「真・使い魔感謝の日」

もし、貴方の悩み事を相談して下さいと言われれば、こう答える――主がおかしいのです。
正確には仮の主だが、それでも、ここ最近の自分の主が変だと感じる。
それまで、自分にとっての主とは、主より遅く起きたら鞭で叩かれ、
魔法の失敗を笑うと吹き飛ばされ、少し主の身体的冗談を言っただけで拳が飛び、
身の回りの世話もどきをさせられる……。
言ってから悲しくなったが、それが自分にとってのこの世界の主と言う物だ。

異変は最初、この間の飲み会で遅くなり、部屋に帰って朝寝過した時だった。

「……起きて、ニュー」
少女の声でぼんやり目を開けると、見慣れた少女の顔――ルイズの顔が見える。
自分の顔を覗き込んでいるのだろう、彼女の髪の匂いが自分の嗅覚から脳へと伝達する。
……しまった!
完全にでは無いが、かろうじて、そう思う事だけはできた。
とりあえず、体を強引に起こす、意識は地面にある気がするが、それを気にしている暇はない。
「おはよう、ルイズ、早起きだな、すまない水汲んでく……」
頭に手を当てて、その場にうずくまる。飲みすぎたのだ、突き刺すような頭痛でそれがすぐに理解できた。
ルイズの方を見ようと、顔を向けるが、視界がぼやける。目の前にあるのはコップに注がれた水であった。
「はい、お水よ、アンタ昨日は遅かったみたいじゃない、これでも飲みなさいよ」
どうやら、その水は飲んでいいものらしい。しかし、手が動かない訳ではないがそのコップを取れなかった。
「ルイズ……その……それはお前がくんできたのか?そして、それを飲んでいいと?」
理由が欲しかった、ただ、なんとなく。
「当たり前じゃない、私だってそのくらいは出来るわよ、それにお父様も良くこうやって母様が介抱してたわ」
呆れ顔のルイズがニューに水を更に前に差し出す。
「その、怒って無いのか?お前より遅く起きて?」
「そこまで、狭くはないわよ!飲み会で遅くなったんでしょ、羽目を外す事くらい知っているわよ。
私は先に行くから、それ飲んだら、後からいらっしゃい」
そう言って、ルイズは部屋を出る。
ニューは手の冷たい感触に目を移す。
(まぁ、病人に優しくするのと同じかな)
その時は、そう考える事にした。
207ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:12:18 ID:PV/Rmsjk
そして、一週間
相変わらず、違和感が消え無い。
「……おかしい」
目の前のスープが醒めるのも気にせず、思考する。
別段変りない日常と言える。
しかし、目に見えて分かる事――ルイズの制裁の数が激減した事である。
それまでは日に一度は何らかの理由(たまにニュー自身のせい)で振るわれた暴力的行為がここ一週間全く無かった。
また、何かと理由をつけ連れまわされたが、最近はルイズが用事があるのか一緒に居る時間も減った。
それに、いろいろと世話係の真似事も減った気がする。
「どうしたの、ニュー?」
ルイズが聞いてくる、今日は珍しく二人だけの様である。
この世界に慣れたのもあるが、最近では六人が一緒の言うのも必ずしも不文律と言う訳では無くなってきた。
しかし、見渡してもいるはずであろう、キュルケ達が居ない。
二人で居るのが、最初に会った時よりも苦痛に感じる。
苦痛から解放されたい、そう思いニューは踏み込む事にする。
「……ルイズ、もしかして、私はお払い箱なのか」
人は解らない事があると、最悪の事態を考える。それを極論と言う。
最悪なのは理由をつけて殺したりするのもいる……
使い魔の日が出来た理由の一つが、何となくニューの心に響いてくる。
ありえないと思う、しかし、最近のルイズの様子は明らかにおかしく、正常な判断を奪いつつあった。
「何言ってるのよ、そんな事する訳ないじゃない、なんなのよ?」
「なら言わせてもらうが、この間からおかしいぞ、なにがあった?」
ニューは素直に疑問をぶつける。このままではこちらの身が持たない、怒っている事があるなら謝ろう。
そう考えるニューに対して、ルイズとの距離は縮まりそうにはなかった。
「……最近妙に優しいのが気になる、それに、何をしているんだ?」
「別に他意はないわよ、ただ、この間の感謝の日で思う所があったのよ」
「何だそれは?」
「アンタこの間、お菓子を喜んで食べてくれたじゃない? あの時、ほとんどシエスタに手伝ってもらったのよ」
それは知っている、宴会で彼女のルイズ達に対する愚痴は、聞かれたら大事になりかねない様な内容であった。ルイズは続ける。
「けど、アンタは喜んで食べてくれた、だから、今度は私一人の手で作りたいの」
ルイズの手にはよく見ると火傷の様な跡がある。
この間の傷かと思ったが、思えば、自分があの後、魔法で治したのだ。
「じゃあ、お前はお菓子作りを習っているのか!?」
「なによ、悪い!?」
「いや、悪くはないが……」
予想外の理由にニューは素直に感心する。
どうやら、シエスタに手伝ってもらった自覚はあるようだ、
「この間のやつが、私の本気だと思われるのは不本意なのよ。アンタには私の有難さと凄さをもっと、もっと、思い知らせてやるんだから」
「色々と思い知らせれてはいるんだが……まぁ、ありがとう、ルイズ」
少し悪い事をしたかもしれない。ニューは少しそんな事を考えた。
208ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:13:22 ID:PV/Rmsjk
「あっ、ニューさん、まだ生きていたんですね!」
そんな事を言われるのは、どちらかと言えば敵と対峙していた時だ。
しかし、振り返るとそこには敵では無く、自分にとっての味方であった。
「シエスタ、どうしたんだいきなり?」
メイドの中でも分り易い容姿の黒髪の少女を見ながら、彼女の言葉に少し驚く。
彼女が何か言う前に、さっきのやり取りを思い出し、ニューは、彼女の弟子の腕を聞こうと思った。
「そうだ、シエスタ、最近ルイズがお菓子を習っているようじゃないか? 
どうなんだ、出来の悪そうな弟子だが、私からも面倒見てやってくれ」
ニューの言葉を聞いて、シエスタは話題を提供する口を固くする。
何か禁忌に触れるかの様に辺りを見回しながら、ニューに顔を近づける。
「その事なんですけど、ニューさん……」
周りの音に聞こえないようにした訳では無い。
ただ、シエスタが止まっただけだった。
「ん、どうしたシエスタ?」
「なっ、何でもありません、ルイズ様はとっても筋がいいようです。近いうちに、ご自分で出来るようになりますよ」
「そうか、しかし、忙しかったか?」
「はい、すいません。失礼します」
そう言って、足早にシエスタはその場を離れる。
(まぁ、暇な時に聞いてみるか)
忙しいらしいシエスタを引き留めたと感じて、ニューは少し後悔する。

その日、ニューは珍しい体験をする。
何時も、大体はルイズ達三人は何かしら、もしくは、どちらかと会う。
しかし、その日に限ってはキュルケやタバサ達と会う事は無かった。
もちろん、彼女達の使い魔とも……
数日後
「ニューさん、ニューさん」
小声で自分の名を呼ぶ声は、自分と親しい者の声であった。
彼は振り向き、声を現すかのように、物陰に隠れた少女を見つける。
「シエスタ、どうしたんだ?」
ニューの声を聞いて、彼女は何かを警戒するように近づく。
「ニューさん、この間の件なんですけど」
「ん?ああ、ルイズのお菓子の件か、何かあったのかい?」
この間の件を思い出し、シエスタに聞きそびれていた事を思い出す。
「それなん……」
会話の途中で、シエスタが止まる。
「シエスタ、どうしたの?」
ニューの疑問を、彼の声では無い物が代弁する。
「ミス・ヴァリエール……」
彼女の顔から色が消える。
ニューが振り向くとそこには、昼食を終えたらしいルイズが居た。
「シエスタ、ちょうど良かった。午後からあなたに、お菓子作り手伝ってもらいたかったの」
どうやら、ルイズはシエスタにお菓子作りの手伝ってもらいに来たらしい。
シエスタの回答を待たず、ルイズはシエスタの手を掴み、厨房へと行こうとする。
「これから、お菓子作りの練習か?」
「そう、リハーサルも兼ねて……」
ニューの方に向きなおり、ルイズが笑顔で応じる。
初めて見た時の様な、ニューにあまり見せた事がない、華やかな笑顔であった。
そのまま、彼女達はニューの視界から消えて行った。
「随分、大袈裟だな……まぁ、シエスタがああ言ったからって、ルイズが食べれる物を作るのは大変そうだよな」
結局、ニューは珍しく午後の時間をコルベールの所で過ごした。
209ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:14:13 ID:PV/Rmsjk
意外な事に二人の会話は弾んだ。
少なくとも、ニューが日の暮れた事に気づかなければ、ずっと喋って居た。
夕食を取ろうと思い、食堂に向かう。しかし、ルイズは居らず。
たまたま、そこに居たケティとミリーナの近くの席に座る事にした。
しばらくすると、ニューが何かにぼんやりと気づく。
「そう言えば、最近、料理にハシバミ草出ないな」
付け合わせ等に使われる香草が、ここ数日無い事に気づく。
最初気付かずに食べてしまい、文字通り苦い思いをしただけに、食事の時に何気に注意を払う癖がニューには出来ていた。
「なんでも最近、仕入れたハシバミ草が無くなっているそうですよ」
ソテーにつけられたグリーンピースと格闘しながら、ミリーナは答える。
「まぁ、あまり好で食べる生徒が居ないですからね、ミス・タバサくらいじゃないですか?」
「タバサか……そう言えばここ数日、タバサ達やキュルケ達に会っていないな」
ここ最近、彼女達と会っていない事に気づく。しかし、外国の留学生である彼女達なら、何かしらの理由で帰省する事くらいあるだろう。
「へぇ、珍しいですね、六人一緒のイメージが強いのに」
何かと目配せをしたケティが話に加わる。
ニュー達は六人で一つの認識らしい。
視線の先には、複数の男達がこちらを――主にケティの方を見ている。
「そう言えば、聞きました? ここ最近、夜になると女子寮の地下から悲鳴が聞こえてくるんですよ」
ミリーナが話題を変える。
どうやら、一番喋りたかった話題を切り出せて先程より勢いがある。
しかし、二人の反応は彼女の勢いに追随する者は無かった。
「まぁ有りがちだな、典型的な怪談話だろう」
「怖い話なんかしないでよ、だいたい、地下はただの物置じゃない、反省室は別の所で数十年前に無くなった筈よ」
ニューは心理的、ケティは知識と情報面でミリーナの話を一笑する。
「なんですか! 二人とも面白くないですね」
せっかくの話題をあっさりと終了させられミリーナが顔をふくらませる。
「まぁ、そう言わないでくれ。その手の話は何処にでも有るのだし。
私の居た所でも、夜になると異国の甲冑をきた騎士の霊が現れて、
倒すと絶大な力を持った剣を与えられると言われるのがあるからな」
「怪談と言うよりも、それは辺境に居るドラゴンの類ですよ」
ニューの話を聞いて、ケティが感想を述べる。
結局、ルイズは現れなかった。


二人と別れ、ルイズの部屋に戻る途中、タバサの部屋から声が聞こえた。
二人が帰って来たのか?そう思い、ニューは部屋をノックする。
返事がない。しかし、ドアに近づくと声の原因は解った。
「おい、ニュー、そこにいるのか!? 生きているか?」
声の主は、普段、タバサの部屋に置かれているデルフリンガーの物であった。
「デルフかどうした?」
「誰も居ないか?居ないならすぐに入れ」
デルフが緊張した声で、指示する。
ドアノブを回すと小気味よい音がする。どうやら、開いているようだ。
部屋の片隅にデルフはいた。
「どうした、そんなに慌てて、二人に置いて行かれたのか」
ニューの軽口に対しても、デルフは緊張を解かなかった。
「そんなんじゃねぇ、いいかニュー! 相棒は……」
デルフの言葉は途切れる。

彼女はそこに居た。
210ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:15:41 ID:PV/Rmsjk
「タバサ?」
青い髪の少女は、この部屋の主だった。
彼女は、いつも通りの無表情をニューに向ける。
「何しているの?」
おかしな言葉では無かった。
「デルフに呼ばれてな、そう言えばゼータを知らないか?」
「知っている、シルフィードと一緒」
タバサの無表情は変わらなかった。
その中で、一瞬、デルフが震えた気がするが、気にしない振りをする。
「そうか、ちゃんと授業に出た方がいいぞ、コルベール先生が君達の出席日数のことを気にしていたから」
「……わかった」
そう頷いたタバサの横を、ニューは通り抜けた。
そして、そのまま部屋を出て、ニューは一息ついた。


「……で、結局探検する事になったじゃないですか」
「気になったんだ」
さほど広くない、暗い空間に似合わない声が響く。
次の日、三人は女子寮の地下に居た。
“地下に行け”
昨晩、タバサの部屋を出る時、ニューにしか聞こえない声で得言った言葉が引っ掛かる。
地下――何となく、二人との会話で連想した場所を思い出す。
しかし、中は案外広く場所が分からないので、とりあえず、二人を探索に誘った。
「デルフがあんな態度を取るのが珍しかったんでね、何かあるんじゃないかって」
デルフが、何故そのような事を言ったのか解らなかったが、ここ数日の、気になる気持ちを少しでも、うやむやにしたかった。
「怖い事言わないでください、この地下はずっと物置だったんですよ」
ケティが辺りを見回しながら、歩く。
暗いと言っても、所々にランプがある為、視界がない訳では無い。
しかし、簡単に終了するすると思っていたが、思いのほか広く暗い空間に少し怯え気味だ。
実際には、物置と言うだけあり、部屋の中に備品が置いてあるだけで、変わったものは無かった。
「次はここですね」
ミリーナが、次の部屋のドアを発見する。
「他のドアより、綺麗だな」
そのドアは比較的新しくできたらしく、他のと比べて、暗い中でも真新しさを感じられた。
「地下は増築されていますからね、多分作られて、まだ、間もないんですよ」
そう言って、三人は中に入った。
211ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:17:22 ID:PV/Rmsjk
部屋の中は、今まで見て来た部屋と何ら変わりなかった。
「……特に何にもないですね」
ケティがおっかなびっくりに応える。
部屋を見回すが、確かに変わったものがある訳では無い。
「そうだな……ん、これは?」
近くの机に手を置いた時、ニューは何かに気づく。
「どうかしました?」
「なにか、触った気がするんだ、ん、これは……」
「あ、ハシバミ草ですよ、これ!」
切れ端程度なので解らなかったが、ミリーナの指摘を受けそれに気が付く。
解りづらいが、それは、確かにハシバミ草であった。
「……なんでこんな所に?」
「あ、解りました、きっとハシバミ草を盗んだ犯人が、ここで1人ハシバミ草パーティーを開いていたんだわ」
「んなわけないでしょっ!けど、本当に何でこんな所にあるんですかね?」
ミリーナの指摘の後の、目的は確かに気になる。
「冗談よ、けど、確かに……ん、今そこ何か動きましたわ!」
ケティが、突然何かを感じたらしく、一歩後ずさる。
その方向の先には、ずた袋が数個あった。
(ネズミでもいるのか?)
非常食でもあるのか?そんな軽い気持ちでずた袋を開ける。
ニューはそこで固まった。
「何かありま……」
なにも反応のない、ニューを見て、ミリーナも中から覗き込み、そして、固まった。
ケティはそんな二人のリアクションを疑問に思い、遠くから聞き返す。
「な、なんですの?もしかして、ネズミ?もしくはアタッチメント式多脚間接ムカデ?」
指摘したくなるような長ったらしい名前も、二人の反応を呼び起こす事は出来ない。
しかし、彼は疑問に答えるように袋を開けた。
……そして、ケティもすべて理解した。


袋の中には、シルフィードと一緒に居る筈のゼータの姿があった。

「きゃぁぁぁ!」
真っ先に反応するケティは感受性が豊かだった。
「な、何ですかこれは!?」
心中で叫び続けたミリーナの声にならない声が、やっと世界に届く。
ゼータはロープで縛られて、何か紙を張り付けられていた。
それはこう書かれていた“砥石 竜の爪等、ご自由におとぎ下さい”
良く見ると、ゼータの全身は爪跡で無数の傷が刻まれている。
そして、小声で何かを繰り返し呟いている。
「ハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草
おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしい…………」
ゼータはこの世界に居なかった。
(そうか、そうだったのか……)
ニューはある答えにたどり着こうとしていた。
気になって、他の袋にも手をかける。
「ダブルゼータさん!」
ミリーナの叫びが、更に自分の考えを真相に近づける。
そこには、ゼータ同様にダブルゼータが居た。
212ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:18:49 ID:PV/Rmsjk
紙にはこう書いてあった“接待中 ご予約はお早めに”
ダブルゼータはゼータとは逆に見た目的には異常はないように見えた。
しかし、ある事に気づく。
「……キスマーク?」
ダブルゼータには、かなり大きな唇の跡が無数に刻まれていた。
「もじゃもじゃ……顔に当たる……いや……やめて……」
震えている。何かからの恐怖で
何があったのか聞くべく二人にリカバーをかけてみるが、反応は薄い。
そして、二人に反応するかのように、最後の袋が動いた。
(まさか!!)
そう思い、望みを託し袋を開ける。
だが、ニューの願いは届かなかった。

そこには、頬が痩せこけて、目の焦点が合わないシエスタが居た。

彼女にも紙が貼られていた“試食中 他の方も是非ご賞味ください”
彼女も震えていた。しかし、他の二人よりまだ日が浅いのだろう。
服の汚れ具合が、まだ汚れていなかった。
「シエスタ、しっかりしろ!リカバー」
まだ助かるんじゃないか? そう思い彼女を正気に戻すよう魔法をかける。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめはっ!ここは……あっ、ニューさん!」
正気に戻ったシエスタが、ニューを視線に入れる。
最初は嬉しそうであったが、直に顔を蒼白にする。
「ニューさん、逃げて下さい! 殺されちゃいます!」
「……ああ、解ってる」
もはや、何もかもが理解できた。
思えば、それは巧妙であった。
少なくとも沈みゆく船に居る事に、最後までニューは気付かなかった。
そして、鈍い衝撃で意識が消える。現実と別れを告げる。
「ニューさん!」
現実に居るミリーナは、地面に落ちたニューを直撃した石に目を移す。
そして、それはやって来た。

「……あら、こんな所に居るなんて駄目じゃない、ここは用が無い時以外は立ち入り禁止よ」
……逃げ遅れた、無意識に旅立った彼に事実を伝える声は無情であった。

「……ミス・ヴァリエール……」
声の主はこの世界で最も慣れ親しんだ者であった。
ルイズは部屋の入口に居た。
そして、その脇には、燃える様な赤い髪と冷たい水の様な青い髪の少女達もいた。
「駄目よ、あなた達、ここは関係者以外は立ち入り禁止よ」
キュルケがここに似てはいけない事を促す。
「ミス・ヴァリエール、これは一体どういったことなんですか!なんで、三人がこんな目に!?」
ケティは残酷な殺人鬼を非難する様な悲鳴をあげる。
「あなた達、虐待か何か勘違いしていない? これは、使い魔に対する奉仕よ」
キュルケは事も無げに言う。
奉仕? この、何かに怯える事など、想像がつかないようなダブルゼータが?
二人には話が繋がらなかった。
しかし、ニューが直前に助けた少女はすべてを理解していた。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 22:19:01 ID:pg/SHieV
しえん
214ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:20:57 ID:PV/Rmsjk
「聞かれていたんですよ、あの時から始まっていたんです」
説明と言うよりも、独白、まるで罪を懺悔する様に彼女の声が室内に響く。
それでも、二人には話がいまだ伝わらない。
「話が伝わりません、一体どういう事なんですか?」
それを聞いてルイズは笑顔を浮かべる。それは、見た事も無いほど綺麗な笑顔だった。
楽しいと言う感情も、何かを取りつく為に浮かべる物でも無い。
世界の醜悪すらも全てを祝福するかのような、優しい微笑みで有った。
「私ね、ニューが食べて美味しいって言ってくれた時、凄く嬉しかったの。
しかも、よっぽど嬉しかったのか三人とシエスタで宴を開く位だから。
そしたら、宴の中でニューが言ったの、『ルイズの子守りを世話するくらいなら、騎士の従者の方が十倍は楽だね』って。
私は最初怒ろうと思ったんだけど、でもね、私思う事があったの。
多分罰を与えたとしてもニューは自分の事を認めてくれないだろうって、だからね、私、ニューにちゃんと私の事を主と認めてもらいたくて、お菓子を作る事にしたの。
シエスタも喜んで協力してくれたわ、だって、私のお菓子をちゃんと食べてくれたんだもの」
ルイズが長い独白を終える。
このプライドの高い少女が、怒り以外でここまで素直な感情を出す事など考えられなかったが、二人にはどうでも良かった。
ルイズの独白などよりも、お菓子と言う単語にシエスタが拒絶の表情を浮かべた事が全てを伝えてくれる。
今度はキュルケが前に出る。
女の艶を凝縮したこの美女が、慈母の様な暖かすら感じる。
「私もダブルゼータが使い魔になってから、殿方と交わる機会が少なくなってしまったわ。彼といるとムードもあったもんじゃないし、それに、並の男に対して興味が無くなるの。
ダブルゼータってどんな男よりも面白いから、一緒に居ると男が嫉妬して寄り付かなくなるのよ」
学院の女王として恋愛事情を一手に引き受けたキュルケの事は、ミリーナも知っていた。
しかし、最近ではケティが恋愛事情の的になり、キュルケの事を時代が終わった等と揶揄する輩がいるのも解っていた。
その原因の一つが、彼女の艶を掻き消すかのような存在のダブルゼータであった。
キュルケは続ける。
「でもね、気が付いたの。ダブルゼータって意外にさびしがり屋だから、私の事を取られたくないかも知れないんだって。
そう思うと愛おしくて、私も何かしてあげなくちゃって思って、知り合いに頼んで特別な接待をして貰ったの」
「やめてくれ、胸毛は嫌、胸毛は嫌、何で分身しているの? 従妹? いや、質量を持った残像なんてもっと嫌! 
椅子にくくりつけないで、膝の上に座らないで。嫌、頬に当たる。
髭が、髭が当た……」
接待と言う単語に何やら、特殊な女性の言葉がダブルゼータの口から洩れる。
「『魅惑の妖精亭』って言うの。そこの店長のマドモアゼル・スカロンとマドモアゼル・マカロンに特別にお願いして接待して貰ったの。『もかもか、もじゃもじゃコース』って言うの」
キュルケの独白も終わり、今度はタバサが出る。
「ムラサキヨモギはおいしい、もっと知ってもらいたい」
先の二人と違い簡潔な言葉と共に、2本の瓶とグラスを取り出す。
215ゼロの騎士団:2009/04/13(月) 22:22:18 ID:PV/Rmsjk
「ハシバミ草も好き、食わず嫌いは駄目」
そう言って、タバサが二人の前に瓶の中身を注ぐ。
飲みたくは無かったが、話を円滑に進める上で、二人はそれを飲み干す。
喉に苦みを凝縮された様な味が気管を通り抜ける。
吐き出したら、何が起きるか分からない。
涙すら出す事も許されないような気がして、お互いが心の中で励まし合う。
「美味しさを解って貰う為に、ゼータの好きなお酒にしてみた」
その言葉を聞いて、グラスを見る。
匂いを嗅ぐと確かに、ハシバミ草の匂いがした。
「さて、私達これからニューに対して奉仕をしなくちゃいけないの。後、シエスタにも日頃のお礼をしようとおもってるの」
そう言って、ルイズは手のトレイを開ける。
中にはシンプルなタルトが乗せられている。
ただ、二人は食べてみたいとは思わなかった。
「悪いけど、あなた達は出て行ってくれる? それとも、ニューの分も欲しいの?」
気が付いたら、ミリーナの部屋に居た。
駆け出した。
ただ、それすらも覚えていない位走ったのだろう。
ケティを見る。
彼女の顔も自分と同じ顔をしているのだろう。
その日、昔みたいに二人は一緒のベッドで寝た。
家庭教師に初恋した話も、将来の事を語り合った思い出も、今日の出来事で消えうせるだろう。
地下の音は聞こえない。
ニューとシエスタの声が聞こえるような気がした。
二人は忘れる事にした。

数日後、何やら誓約書らしき物を首に掲げたニュー達を見かけたが、何かやらかしたのだろうか?
原因を自分達は知っているような気がする。ケティに言ったが、彼女は知らないと笑っていた。
たぶん自分の気のせいだろう、ケーキを見て何故か恐怖感を覚えたが、日常は変わらない。

また数日後、今度は金髪の気障そうな少年が鎖をつけて巻き髪の少女に引っ張られている。
ケティはその少年につけられたキスマークをどこかで見たような気がした。

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは後世の子供達から、絶大な知名度を誇る。
偉大なるメイジ ルイズが異世界の使い魔に、自身の手作りケーキを食べさせて絶対の忠誠を誓わせた事から。
「感謝の日」はこう呼ばれている。

「制裁の日」と……

日頃悪い事をしてきた子供は、感謝の日にお仕置きケーキを食べさせられる。
ルイズの名前は、ハルケギニアの子供達にとって恐怖の対象であった。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 22:29:05 ID:Y7KjVuV0
鬼だ……ここに鬼が居る支援。
217ゼロの騎士団 代理:2009/04/13(月) 22:29:55 ID:NBT/OVj2
最後の最後でさるさんを食らいました。
こちらにのせます。 

投下終了です。
まとめにカードダスは載せますが。
キャプテンの奴は小ネタ扱いの方にして貰おうかと考えています。

ルイズは最初、真駆参かニューかキャプテンガンダム、
どれかを召喚するかと考えて、ニューにしました。

次回は本編第六話です。
ありがとうございます。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 22:49:25 ID:GLECL91a
>アタッチメント式多脚間接ムカデ

なにその赤紫斜めマダラ接続式ゾウガメw
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 22:52:28 ID:2eePhDny
>>185
ヒラメ・・・そういやヒラメの香草蒸しだか香草焼きだかが1巻で出てきたよな。
ほかにどんな魚を食べているんだろう?
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:04:18 ID:pOT3M2wA
ブリキの太鼓という映画で
精神が病んでニシンの酢漬けをひたすら食べる病にかかった女がいたな
あれはドイツだったけど
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:19:29 ID:gHcL467O
                         
                   ,。、_,。、 <荒ぶる鷹のポーズ
          _      .く/!j´⌒i.ヾゝ      _
        ((( ι ヽ     / ハハハハ ヽ     ノっ ))))
           | .|      | ! 0 、0 ! |     | .|
           | |     >人 ▽ 人<    .| .|
           | i____ _ハ|  |ハ_ ___ノ i
           ヽ __||_l  |  |  l _||__ ノ 
                  |  |.∞|  |
                  |  .|  |.  |
                 |__|  |__|
                 ./____丶 _
                 .|   | | /   ヽ
                 .|    /   |===
                 |__ ノ / .|  |
                  |  |    .|  |
                   }  {    .| |
                   |  |   (  ヽ
                   |===|   ヽ __)
                    .|   | 
                     .|  |
                    | |
                    / )
                   (___/


222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:55:00 ID:7cBf9gti
>>219
学園って海と近くないよな?
どうやって海水魚系の食材を運ぶんだろ
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:57:00 ID:oBleJJuj
凍らせるんじゃない?
もしくは普通に塩漬けか
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:58:38 ID:NBnQqWcX
メイジに固定化かけてもらってるんだと思う
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:59:33 ID:M/JrlzWl
サモン・ヒラメの呪文を唱えます
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:01:53 ID:7cBf9gti
>>223>>224
俺もそれ考えたけど神に与えられた神聖な魔法をそんなことに〜
て感じになるんじゃないかなぁと思ったんだ
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:03:54 ID:uevdf6g5
ハルケギニアの魔法はかなり生活に密着していそうだしな。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:07:19 ID:KU53Grd7
貴族の位を剥奪されたメイジが運送会社経営してるよ。
しがらみに捕らわれない魔法の使い方で、並の貴族なんて目じゃないほど財産築いてるよ。
権力は金で教会から司祭の位を買ったよ!

とか、ありそうだなぁ。
あの世界の貴族、下手したら平民より貧乏そうだし。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:12:11 ID:ZrgHpiF+
フライング・フィッシュとかスカイホエールとかを捕まえてるんじゃないか?
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:22:46 ID:oBleJJuj
>>226
諸方面でそうなるとしたら、もうちっと平民の技術が発展しててもよさそうなもの
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:45:33 ID:npAUJ8R7
>>226
おおっぴらに研究するのが禁じられてるだけで、みんな多少なりと生活のために魔法使ってると思うんだ
魔法で人工肉作る人までいるし
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:48:50 ID:LfqYPuLY
なんでハルケギニアにはアルコールがあるの?
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:49:10 ID:uevdf6g5
>>228
いや、古今東西、貴族なんて言うのは貧乏なもんだぞ。 ごく一部の例外を除いて。
貴族が押し並べて金持だったのは、中国ぐらいじゃないか?
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:49:14 ID:vHdFOUt4
魔砲使いのSS中では、技術が発達しない様に抑制されてるとあったが、
実際のゼロ魔でも、そこら辺が真実だったりするのかねぇ?
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:52:42 ID:KU53Grd7
>>233
まあ、そんなもんだよな。
日本人は西洋貴族っていうと煌びやかなもんってイメージするけど、実際江戸時代の武士なんて食い詰めて嫁の着物まで質に入れるのザラだったらしいし。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:54:39 ID:LfqYPuLY
武士と貴族の公家は微妙に違うと思うんだが…

まぁ経済状況は似てるけど…
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:59:16 ID:g7DPwyF/
上の方のごく一部は実際にきらびやかな生活してるけどね。
下の方は食いっぱぐれないだけ御の字、という程度。貴族である以上最低限張らなきゃならない見栄という物もあるし。
それでも食うや食わずやが普通って平民の生活よりはよほどましなんだけど。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:00:21 ID:unUDjmfg
封建制下の支配者層という意味じゃ、
西洋貴族と比するべきなのは公家よりも武士階級かと
とはいえ、西洋における封建制と日本の封建制じゃ
かなり言葉の意味合いが違うらしいけどね
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:06:45 ID:LfqYPuLY
あれ…ひょっとしてハルケギニアの貴族は初夜権をもっていたりするのか…

…俺ハルケギニアの貴族になってくるは
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:09:21 ID:r0X3Kqhy
>>239
映画ブレイブハートでは行使しようとしたらそれを切っ掛けに反乱が起きました
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:13:49 ID:YWzQP6tW
実際は結婚の際領主にお金を納めるだけだったそうで、単なる「結婚税」みたいなもんでは
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:25:47 ID:KU53Grd7
>食うや食わずやが普通
そういう意味では、日本の農工商は恵まれてるな。
食うや食わずというレベルにまでひっ迫してたのは精々小作農くらいだ。

飢饉や疫病の蔓延だけはどうにもならんが、それも西洋に比べれば驚くほど被害が少ない。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:33:07 ID:qkladxia
小麦と米とでは収穫率が違うからなあ…。
中世のヨーロッパでは小麦なんて畑に種籾播くだけってレベルなんて話もある。
ハルケギニアは魔法で土壌とかいじってそうだから、多分、もっと裕福。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:40:18 ID:hrF9IFta
麻生極反動政権打倒の炎を!

<戦争と貧窮化>強制の嵐を突き破り反戦反安保・政治経済闘争を爆発させよ

 いまなおアメリカ帝国主義を震源として打ち続いている国際金融危機と世界同時不況の大津
波に直撃され、日本帝国主義はいま、第二次世界大戦後最悪の大不況に叩きこまれている。こ
の未曽有の経済危機への対応不能をさらけだし窮地に追いつめられながらも、麻生政権はなお
も政権にしがみつき、数々の反人民的な諸攻撃の刃を労働者・人民の頭上に振りおろしている

 北朝鮮の弾道ミサイル発射にたいする迎撃と政治的制裁を呼号しながらの、アメリカ帝国主
義国家と共同でのMDシステムを発動してのミサイル迎撃=臨戦態勢への突入。グアムの米軍
基地整備費用をはじめとして六一億ドルを日本政府が拠出することと沖縄・辺野古に米海兵隊
新基地を建設することなどを定めた日米協定の締結と、その国会批准の画策。自衛隊に海外で
の武力行使のフリーハンドを与えるための海外派兵新法の制定の策動。
 そして、「ドル基軸体制維持」のためと称してのアメリカ国債の大量購入や金融諸機関・製
造業諸独占体を救済するための巨額の公的資金の投入。さらにこの政権は、二〇一一年度から
消費税大増税を実施する計画をもりこんだ「税制改定関連法」を衆院で三分の二を占める与党
の数の力で強行採決したのだ。
 アメリカ帝国主義の「一超」世界支配の崩落下で<米・日>―<中・露>―<EU連合>の
三極間の政治的・軍事的対立と経済的争闘戦が激化している現代世界において、麻生政権は、
文字通り世界でただ一人アメリカ・オバマ政権への隷従の道を突き進んでいる。そうすること
によって、日本の労働者・人民にたいして戦争への動員といっそうの貧窮化を強いているのだ

 反人民性をむきだしにしているこの政権は、労働者・人民の怒りと不信に包まれ臨死¥
態に陥っている。それにもかかわらずこの政権がなおも延命しているのは、「連合」労働貴族
どもや日共・不破=志位指導部らの底なしの腐敗ゆえなのだ。
 見よ! 独占資本家どもの大量解雇・大幅賃下げ攻撃が吹き荒れているこのときに、これを
唯々諾々と受け入れ〇九春闘を決定的敗北に導こうとしているのが、「連合」労働貴族どもで
はないか。この大裏切りたるや、「ミクロの論理」から「マクロの論理」への転換の名のもと
に、「労使一丸」となって政府とともに「国難突破」をはかれ、と呼号し、政府・独占資本家
どもの下僕として「救国」産報運動への挺身の誓いをたてた「連合」高木指導部の腐敗の所産
にほかならない。
 見よ! 代々木共産党・不破=志位指導部の腐臭フンプンたる醜態を!「北朝鮮のミサイル
発射」を口実として米日両国家共同で臨戦態勢をとったことにたいして、不破=志位指導部は
日米両政府に「自制」を弱々しく哀願するのみで反対運動を組織することを完全に放棄したで
はないか。まさにそれは、<反安保>を完全に放棄し「MDシステム配備反対」をハナから放
棄した日共翼下の平和運動の反人民性を如実に示すものにほかならない。
 しかも、日本経済が不況を克服し「資本主義の健全な発展」をなしとげるために、「大企業
の健全な発展」を願うと宣言してさえいるのが転向スターリニストたる不破=志位指導部では
ないか。
 すべてのたたかう学生・労働者諸君! そして新入生諸君!
 既成反対運動指導部の腐敗のゆえにもたらされている日本階級闘争の閉塞状況を断固として
突き破れ! いまこそ「麻生内閣打倒!」の炎を日本全土から高く高く噴きあげようではない
か!
中央学生組織委員会

http://www.jrcl.org/
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:42:53 ID:fel0SfZv
むしろ悲惨なのは応仁の室町後期(応仁の乱〜戦国期)の皇族公家。
外壁がボロボロで外から中の様子が伺えるほどに荒れ果てた京都御所。
その日天子様が食べる物にすら窮するほどの貧窮具合で、夕暮れ時になると
女房(宮中の使用人で、中下級貴族出身の娘)が街娼として街角に立ったほどとか。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:43:42 ID:Ip292tWY
革マル派ってまだいたんだ……しかも言ってることが30年前と全く変わってない。
シーラカンスかこいつら……
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:45:30 ID:Ip292tWY
つまり娼婦として街に立つアンリエッタを夢想しろということだな。
ミッション了解。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 02:48:14 ID:unUDjmfg
>>245
朝廷が権威のほかに何も持てなかった時期なので仕方ない
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:04:20 ID:ZrgHpiF+
設定考察スレ向きだろこの話題は。

まあ金持ち貴族といえばベアトリスのとこだけど、あれは金貸しとかして儲けてるようだしな。
つか、中川や麗子みたいな超一流のビジネスマンや、藤堂兵衛やシックスみたいなのが
ベアトリスに召喚されて、パトロンになってもらって商売始めたらたちまち財力でハルケギニアを支配できないか?
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:15:36 ID:dd01Cm+e
>>249
いくらなんても基盤が違いすぎて無理じゃね?
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:16:41 ID:unUDjmfg
>>249
たぶん無理。
そこまで巨大な富の偏在を生みだせるだけの規模の市場が
おそらくまだハルケギニアには存在していない。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:19:17 ID:oBleJJuj
新魔法・風の偏在とか思いついたが効果不明
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:20:21 ID:M/JrlzWl
それでも両さんなら、両さんならきっと何とかしてくれる……金に目が眩むまでは
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:20:41 ID:NIccbvGp
>ビジネスマン
月島召喚か
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:25:24 ID:M/JrlzWl
> ビジネスマン
忍術を少々嗜んでいる単身赴任中のサラリーマンか
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:28:44 ID:fel0SfZv
サイレント・ウルフ自重w
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:32:28 ID:qyy5dsUf
只野仁か
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 03:38:09 ID:M/JrlzWl
女子全体的に逃げてー
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 04:08:47 ID:c1bTKC+x
臭作さんが女子寮の管理人する話しはまだー?
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 05:22:22 ID:PhA3fch0
>>255
フウマ自重
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 07:37:15 ID:0Xifb87x
>253
地獄とかの異世界でも問題ない人だからな
だが多分完全成功の後でオチが
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 07:45:20 ID:oAw7NNXW
会社の概念は、小口の出資者をたくさん集めることでなし崩し的に成立させることは可能だろう。
金融業もあるから、十分な担保があれば法人としてお金も借りられるだろうし、
そこに株式証券を乗せることは不可能ではあるまい。

問題は、知的財産権だな。
一応、本がそれなり以上に広まっているということは、著作権の概念はあるのか?
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 08:01:17 ID:gpLmkKZi
封建制社会では君主が徳政令じゃー、って言った瞬間金貸しが潰れるからな。
そういうことが社会的に許容されない状況ができるまで商人は常に高リスク。
いちゃもんつけて潰して財産没収とか、むりやり軍資金出させるとか幕末でも
普通にあったし。

諸藩の財政再建の基本は借金の棒引きか返済期限の数100年単位での延長
だったし。
あれ?現代の破たん会社の処理も同じのような気が……
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 08:01:22 ID:2MrJtUeI
知的財産権なんて高度な法的概念あるわけないw
ただ、それとは別に特許自体は中世ヴェネチアであったからあってもおかしくはないな
特に、貴族が生産担ってるだけに発表したり噂になったりはするだろうし
暗黙の了解としての形も含めれば成立してる可能性は結構高いと思う

金融業とかはまだ町金や個人金融レベルだったような
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 09:14:22 ID:rMHPYeI9
新魔法・富の偏在!
あなたがメイジなら錬金で無限に硬貨を作り出せる
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 09:17:23 ID:pdGqHgDK
通貨偽造・・・?
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 09:24:06 ID:9SexDLfH
そう考えると
金貨主体の経済から信用通貨に変わるのは無理そうだな
人口の3%程度(人口の一割がメイジ、うち約四分の一強が錬金可能?)がいつでも贋金造り予備軍だもん
インフレ起こして大変なことになりそうだな
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 11:02:05 ID:LfqYPuLY
越後屋召喚で
「お主も悪よのぉ」
「モット様ほどでは」
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 11:11:32 ID:oAE5gYpz
以前小ネタでミナミの帝王ネタがあったなあw
270鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/04/14(火) 11:38:53 ID:VtzRlqN2
定期報告こんにちわ。
書いててちょっと疑問に思ったのでここで質問して…いいのかな?
多重クロスみたいな形になっていくんだけど、問題あるかな。
理由:ガリア組へのテコ入れのため。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 11:48:26 ID:/DQjXj4T
個人的にはサガシリーズならいいんじゃないかとは思うけども
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 12:12:38 ID:0ohOcUZZ
多重クロスは「高確率でgdgdになる」から非推奨

なんであって「ルール的な禁止項目」ではない

ルールだと思ってる馬鹿が暴れるからマナー的に避けとけ

と言う話は頻出だが
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:02:30 ID:iWAubix1
同シリーズとか同系列なら好まれるだろうけど
特に関わりのない作品から持ってこられると多分受けは良くない
問題はないけどな
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:07:34 ID:guRsKTf3
>>273
まったく同じ考え
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:13:59 ID:M/JrlzWl
>>272-273
テンプレに追加したいくらい纏まってるなw
276ふたごの使い魔(1レスのネタ):2009/04/14(火) 13:21:14 ID:Ib+7Wqhu

ルイズが召喚したのは男でなく、女でもなく、そんな性差など超越した存在だった
少なくとも、その周囲に居る人間の中に、面と向かってそれを聞く度胸のある奴は居ない

「ここどこなの!あたしをこんなトコに呼び出して、それにあんたのその格好は何なの!」

ルイズはピーコを召喚した

「大体ねぇ、こういうブラウスはそれなりにバストがあるからこそ映えるのよ、それにこのミニスカ、センス無いわねぇ」

ルイズの使い魔、ピーコは使い魔品評会に出席し、アンリエッタの前で披露されることになる

「う〜ん、こういう白いドレスはね、使い方間違えるとすっごく恥ずかしくなるから、それに髪色、ぜんぜん合ってない」

品評会でアンリエッタが品評されるハメになった

… … …


「あの、ガリアから来たシェフィールドです、ピーコさん、ファッションチェックおねがいしま〜す」

「キツ目のメイクと服を合わせるセンスは好きよ、でも、おしるこに塩じゃないけど、何かひとつ華やかさがあれば…」

「きゅいきゅい!ピーコおじ(タバサパンチ)お、おねぇさま、シルフィーのファッションを見てほしいのね!」

「これは素晴らしいわ、トップレスの上に合わせて、はいてないボトム、全部肌色ってのがまた潔しっていうか」

277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:24:29 ID:ugCaJcQ2
>>276 ここまで「こっち来んな」と思える使い魔はいねぇなw
278鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/04/14(火) 13:50:55 ID:VtzRlqN2
>>271-273
うー、そうですか。
いえ、ミョズ役にWA2からカノンを呼ぶつもりで書いてたんですがちょっと怖いですね。
…いっそ別作品として書き直したほうがいいのだろうか。
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:58:15 ID:VqBNcUcg
先打ちしておくぜ。
以後毒吐きでどうぞ。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 13:58:49 ID:bduLuYLv
>WA2
ひょっとしてワイルドアームズ2のキャラか?
それはマズいでしょ、常隙的に考えて……
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:00:05 ID:bduLuYLv
常隙ってなんだよorz
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:10:44 ID:LCXSzIsk
>>278
同じサガシリーズのキャラで代行させるとか。(GBサガ〜アンサガ)
あれだけ個性豊か&無個性なキャラが多いゲームだし。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:24:02 ID:bx3m+RC6
よし切るか
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:33:13 ID:oAE5gYpz
>>281
常に隙だらけ
つまり>>276のシルフィだろ

あ、>>276
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:35:56 ID:YkB3a4nb
同系列から、というと、平行世界のユーゼスの話がよく出てくるラスボスだった使い魔や、
GXや5Dsのキャラやカードが出てくる社長なんかか。
あと、日替わり使い魔も、5の話だけど4のピサロが出てきたりしたな。
うまく組み合わせれば世界観が広がって面白くなるけど、やはり無関係な作品からはためらわれるな。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 15:20:14 ID:fRHyM9dp
虚神の使い魔の続きまだ〜
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 16:56:05 ID:oCz2rjy+
まとめって携帯からは入れないんだな
前に普通に行けたような気がしたんだが
なんかエラーになる
PCでは普通に入れるのに
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 17:17:43 ID:oCz2rjy+
すまん自決した
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 17:18:01 ID:LCXSzIsk
あらゆる魔具を使いこなすサガキャラか……

サガフロの妖魔キャラ全般(妖魔武具的な意味)
ロマサガ2のボクオーン(マリオネット的な意味)
ロマサガ3の教授(大天才的な意味)
とかが浮かぶ。

フロ2からならクヴェルやツールの研究してるシルマール先生か弟子のヴァン先生だけど、ギュスと交友が深すぎて難しい……

大穴でコッペリア
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 17:32:52 ID:KS9cBmis
>>289
あらゆる武器の技を教えるアバロンの技道場の人
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 17:58:19 ID:rMHPYeI9
>>288
まて、その程度で腹を切るのは早いぞ!
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:00:34 ID:M/JrlzWl
死後の世界ってあるんだな
つーか、死後の世界からでも2ちゃんできるんだな
自殺だからやっぱり地獄なのかね?
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:10:18 ID:K+dny7jS
そういや魔界塔士はネタ多いけど
悲報伝説と時空の覇者は無いなぁ、俺も考え付かんけど
一発レベルだと親父召喚で 0001「ルイズ・・・妹なのか?」とか
ボラージュと幼き三人が呼ばれちゃってどうすんのコレとか
そんなとこだろうか

・・・せんせい呼ぶのはアリかもしんないな
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:39:08 ID:+kLg0ogH
>>267
そのうち1000000000000エキュー金箔が出ちゃったりして
計算しにくいから六桁デノミするんだな
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:42:17 ID:li8yoeCg
>>272
ずるい書き方だね
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:46:45 ID:I/W7rL5T
>267
大抵の土メイジがそれを妄想し、実際にやってみて労力の合わなさっぷりに絶望するんだろ。

「絶望した! 武器を錬金で強化して売った方が遥かに高収入が得られる現実に絶望した!」
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:47:29 ID:aMRlH/1Y
>>278
カノンって名前のドーピングでパラカンストさせた神殺しの人間女じゃだめなのかい?
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 18:52:14 ID:37KGhEaU
>>296
武装錬金とな?
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:15:16 ID:aPvy+3H0
>>283
毒吐きスレに帰れ
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:18:29 ID:AwMIU4KZ
腕があれば問題はない。
つまるところ、問題がないと言うことですね。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:26:07 ID:buOcBapn
ここで大魔王ガノンドロフが降臨なされました
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:31:28 ID:m0ugwMLz
まぁ鋼の人が自分で行けると判断して今まで通り書くんなら、
るーる(笑)から外れても面白い話ができるでしょうよ。
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:34:39 ID:y3+6YkgB
>>302
なんというか……これまでのレス見ての結論がそれってのは、
凄まじい読解力だね。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:45:57 ID:m0ugwMLz
あ゙ー、いや
なんとはなしに毒吐きたくなったけど中途半端な自制心が働いて、
妙な書き込みをしてしまいました。ごめんなさい。

ちょいとどっか逝ってくる
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:46:02 ID:XyfJeY2Y
そんなことよりも蟹の話しようぜ!
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:48:15 ID:AwMIU4KZ
仮面ライダーシザース召喚と聞いて
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:50:10 ID:GSuWLucs
ドラクエは二例ほど例外がいるからな。天空シリーズ。
エスタークとマスタードラゴン
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:50:28 ID:aofKDLpw
露骨にいやらしい鳥が召喚と聞いて
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:50:37 ID:5GT/bNTN
地方妖怪マグロとな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:04:14 ID:AubxWLr6
>>305

マニゴルド召喚と聞いて
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:06:59 ID:AubxWLr6
>>308

いやらしいキャラか…
つQ子
つカモ
つ諸星あたる
つシティーハンター
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:10:56 ID:hWxySZ4f
鳥さんと言ったらワタルのクラマだろ
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:24:15 ID:X9HSAQpb
ルイズならトリートメントもしてるだろうな
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:26:16 ID:ZrgHpiF+
>>305
不動遊星召喚と聞きまして、
サテライトよりハルケギニアのほうが住みいいだろうかな?
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:27:25 ID:6OqTO285
>>309
消防署の方から来てやったぜ?

>>310
マニゴルド「さん」だろ? 小僧……
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:28:13 ID:l5enQbY5
一昔前のヨーロッパと日本の最大の違いは衛星概念だとおもうんだが。
ハルキゲニアは水洗便所どころかボットン式もないんじゃないのか。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:30:25 ID:Z8+X3xR/
>>305
声が某勇者王なランページじゃだめかい?
あと卓ゲ者としてはコレを言わなきゃね

つ 『カニアーマー』
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:30:31 ID:buOcBapn
>>305
残念だがきぬは俺の嫁だ
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:31:49 ID:E6kBj23G
サイトが文句言ってないところからするとそれなりに衛生は保たれてるだろうね
リアル中世みたいに家畜と身を寄せ合って温めあうような環境じゃないだろう
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:33:12 ID:6OqTO285
>>305
少量の塩と数枚の昆布を入れた鍋に放り込み、ごまだれで食うといいものだ

という本題を忘れてた時期が俺にありました
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:40:58 ID:37KGhEaU
魔法がある分、色々とアンバランスなんだろうよ
地球を基準にすると
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:41:13 ID:eC1xREXg
>>316
うむ、月が二つもあることだし、地球とは衛星観念は違うだろう。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:44:36 ID:l5enQbY5
どっかのSSで伝説級の土メイジと水メイジが伝説級の下水道作ったって話が
あるが舞台設定の一環としてすごい納得できた。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:45:33 ID:2r05mYpf
風呂も下水もある(?)んだし、便所も貴族だけそれなりの設備が使えて
サイトはそれを勝手にorルイズに必死に頼み込んで使ってるんだろう
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:48:58 ID:DGjJBAap
>>317
ランページはルイズに召喚されるよりテファに召喚された方が
少しはおとなしくやるんじゃないかなあと思う
召喚されてケンカ売ろうとした瞬間に
「お、お友達になりましょう!」って言われたら
殺せなくなると思うんだ
第9話「カニじゃい」的な意味で
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:57:57 ID:DB+YYGxt
宇宙の果てry

ドーン

「あんた誰?」
「ちゃんと予告してから召喚しろボケ」

スレ住民を召喚
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:58:17 ID:37KGhEaU
>>325
トランスミューテート・・・
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:00:55 ID:IH6LYpgN
>>326
不覚にも吹いた
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:04:56 ID:64aKfvZ4
>>322
誰うま
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:08:06 ID:E0Alz+5l
/ADA\おはようございます、独立型戦闘支援ユニット『ADA』です。操作説明を行ないますか?
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:10:36 ID:buOcBapn
動けええぇぇぇぇーーーーーッ!!
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:11:38 ID:Z8+X3xR/
ADAキタ!これで勝つる!!
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:13:31 ID:64aKfvZ4
投下予約か、あやうく代理投下で割り込むトコでした
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:14:08 ID:buOcBapn
そういえばルイズの左手にガンダールヴの印じゃなくてADAがくっついて、すーぱールイズになってた作品があったな
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:14:09 ID:e4ZYEPPE
>>325
オレもそう思う。
ランページは「憚れる者」に相応しいし。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:15:56 ID:E0Alz+5l
/ADA\誠に残念ながら、誤爆です。申し訳ありません
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:16:49 ID:37KGhEaU
>>335
そういえばあいつのスパークってメタルスダイノボットと共有だったっけ?
いや、メガトロンがランページのを一部切り取ってダイノボットに与えた・・・だったかな
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:17:08 ID:2MrJtUeI
俺の怒りが有頂天になった
339じゃLFO代理:2009/04/14(火) 21:18:27 ID:64aKfvZ4
ミス・ロングビル……もといフーケを、既に学院で待機していた王政府の人間に引き渡した六人と一匹は、学院長室でオスマン氏に事の次第を一通り話していた。

「ふむ。やはりわしの睨んだ通りじゃったな。街の居酒屋で給仕をやっていたところを採用した時、隠してはおったが目に何がしか一物抱えたような眼光を持っておった。しかしまさか今回の様な事のなったとはのう。」
「では学院長、まさか全ての事を存じた上で……?」
「いや、わしはそう言ってはおらんぞ。どうも君はどこかせっかちな節があるな、ミスタ・コルベール。ただ何時か何かの拍子に尻尾を出すじゃろうと思って泳がせていただけじゃ。
じゃが彼女のことじゃ。拷問される様な目にあおうとて、そうそう簡単に背後の事を吐くような真似はせんじゃろう。」

それからオスマン氏は厳しい表情を欠片も崩さずに生徒達に向き直り、きびきびとした口調で話した。

「さて君たちはよくぞフーケを捕まえ、『鉄拳の箱』を取り返してきた。事前に城の衛士を呼んでいた事もあって引渡しもかなり円滑にいった。そして宝物は元あるべき所に収まった。これで一件落着じゃ。
そこでなんじゃが……君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に申し出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。まあ、ミス・タバサに関しては既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているので精霊勲章という形にはなるじゃろう。」

キュルケとギーシュの顔がぱっと明るくなる。無理も無い。王室から与えられる爵位としては最下級とはいえ、純粋に当人が国家に対して成した立派な業績に対して与えられる実力の称号だからだ。
二人が顔を見合わせてにっと笑う中、ルイズは小さいがはっきりした声でオスマン氏に言った。

「学院長先生。大変申し訳ありませんが、私めはそのお話を辞退させて頂きます。」

Louise and Little Familiar's Orders「Principal's thirty years」

その言葉にキュルケとギーシュ、そしてコルベール氏がぎょっとした顔で、タバサとオスマン氏が興味深そうな顔でルイズの顔を見つめる。
だがルイズは発言を撤回するつもりは無いらしく、どこまでも真剣な表情のまま真正面を見つめていた。
発言の真意を汲み取るべく、オスマン氏は重々しく声をかけた。

「ほう、辞退するとな?それはまたどのような理由から来たものなのかな?」
「はい……今回の一件においてミスタ・コルベールを含む他の四人と私の使い魔は、フーケのゴーレムを見事な連携で打ち倒しました。それが無ければ私達は無事にここまで帰って来れていないでしょう。
しかし……私だけは事実上殆ど何もしませんでした。皆の働きを幇助する何かをした訳でも無く、ただ皆の後について行っただけの様なものです。
その様な私が畏れ多くも『シュヴァリエ』の叙勲など……失礼を重々承知した上で正直な事を申せば、恥じ入って然るべきだと考えます。」
340LFO代理:2009/04/14(火) 21:19:17 ID:64aKfvZ4
そのルイズの返答にキュルケはつい「余計な事を……」という顔をしてしまう。
彼女の持ち前の矜持からして考えられなくも無かったかもしれないが、これでは事態が全て円満にいった意味が無い。
だが、オスマン氏はそれについてどうという事はない様に答えた。

「その意思に嘘偽りが無いのであれば成程そうか……君がそこまで言うのであれば、わしから直々に王宮へそれを報告しておこう。ミス・ヴァリエールは受勲を辞退すると。
さて、四人とも。今晩の催し物、『フリッグの舞踏会』を覚えておいでかな?盗まれた箱はこの通り我等の手元に戻り、フーケも捕まった。盛大に執り行おうぞ。」

ここ数日のルイズの相手、そしてフーケの一件でキュルケとギーシュは『そう言われればそんな行事もあったな。』という表情の顔を見合わせた。

「本日の舞踏会の主役は君達じゃ。誰にも引けを取らぬよう、各々目いっぱい着飾って来るのじゃぞ。」

そう言われてキュルケ、ギーシュ、タバサの三人は恭しくお辞儀をし、学院長室を後にする。だがルイズだけはまだオスマン氏に何か用があるのか、微動だにしない。
気になって声をかけようとするが、ルイズはただ一言「先に行ってなさい。」とだけ言ってオスマン氏に向き直った。
これまでの一連の流れからして、流石にこれ以上オスマン氏の前で怒鳴り声をあげるわけにはいかないと思ったのか、声自体は穏やかな物だった。
キュルケ達はルイズが何を話すのか気にはなったが、邪魔をすれば後でまたとやかく言われることになるだろうと思い、後ろ髪を引かれる思いで退室した。
外を歩く足音が遠ざかっていったのを確認したオスマン氏はルイズに真面目な顔をして話しかける。

「どうやらわしに幾つか訊きたい事がおありのようじゃな。どれだけ力になれるかは分からんが。ああそれと……ミスタ・コルベール。スマンが君も少し席を外してくれんか?」

何かいい話を聞けるかと期待していたコルベール氏は、結構がっくりきたようで肩を落とした状態で退室していく。
そしてその足音も消えていった頃、オスマン氏が残されたルイズとミーに向かって言った。

「さて……この場にいるはわしと君達だけじゃ。先ずはそちらから話してはくれんか?」
「……学院長先生は『鉄拳の箱』について何かご存知かと思いまして。その……いつ、どこから、どうやってここに来たかといった事を。」
「ほっほ。君もあの箱の不思議さに気がついたか。いや本当に君は聡いものじゃな。ではその質問に答えるとしよう。……この箱はの、わしがとある人物から譲ってもらった物なのじゃ。」

そう言うとオスマン氏はその時の事を懐かしむかのような表情で話を続けた。
341LFO代理:2009/04/14(火) 21:19:58 ID:64aKfvZ4
「三十年近く前の話じゃ。まだここの学院長以外に臨時の仕事もやっておった当時のわしは、ここから数リーグ離れた森において邪悪な幻獣を討伐する任務を遂行しとった。
相手の幻獣はそれはもう強力なものでな。あちこちで見境無く暴れ回ったその力は、国土を管理する役人に周辺の地図を何度も書き変えさせるほどだったくらいじゃ。
いくら王宮からの命令とはいえ、死にはしなかったが仲間が次々と幻獣の力の前に圧倒されていくのを見てわしは流石に死を覚悟したよ。
じゃがそんな時、一人の屈強な青年がこれまた屈強ななりをした二匹の獣を操り、その幻獣を見事に打ち倒したのじゃ。丁度君の使い魔のようにの。その青年こそが『鉄拳の箱』の元の持ち主なのじゃ。
様々な詳しい話を聞く限り、彼はタンバという所から来た格闘の武者修行を続ける平民という事が分かった。
じゃがいくら国益をもたらすほど栄誉な事をしても貴族、特に王宮は大っぴらに平民を表彰するわけにはいかない。そこで、仲間を救った彼をわしは極秘裏に学院に招き盛大にもてなした。
その厚意に対し、彼は去り際わしに『鉄拳の箱』をくれたというわけじゃ。もてなしの礼に、そしてわしたち魔法使いの力を認めるという二つの意味合いで。
そして彼はこうも言っておった。『いつか自分のように‘ポケモン’という生涯においての良き鍛錬仲間を見つけた時、必要があればこれを使ってくれ。』と。
しかしモートソグニルに使おうとしても全く反応せず。彼が連れていたポケモンという生き物についてもこの国、延いてはこの世界では現在は勿論のこと、過去の資料を遡ってみても存在していたという証明が何一つとしてない。
完全に扱いかねていたのじゃが、仮にも仲間を救った勇敢な者が自分に感謝の意を示すために残した物。粗末には出来んということでここの宝物庫にしまっておいたのじゃ。
しかしまさか……三十年の時を超えて彼の意に副える日が来ようとは……つくづく運命とは数奇なものじゃな。
まあかなり掻い摘んだ所もあるが、わしが『鉄拳の箱』を手に入れた経緯はこれで以上じゃ。」

長いこと喋ったので、オスマン氏は近くにあったコップに手を伸ばし喉を潤す。一息吐いて今度はその彼からルイズに話が振られた。

「さて今度はわしの方から話させてもらおうかの。先程も言った通りこの世界には基本的にポケモンという生き物はいない。ただの一匹もな。
それに青年の出身地や名前、彼が口にしたそれ以外の固有名詞に関しても様々な文献を調べたが、このハルケギニアに縁がある物ではなかった。
これらの事からわしは……いや、全くもってばかげた話かもしれんが、彼は全く違う別の世界から来たのではないかと推測した。
仮にこれが真実だとすれば、君の使い魔はその青年と同じ境遇にあると思われる。」

それを聞いていたルイズは横目でちらとミーの方を見やる。当のミーはぽかんとした顔で学院長を見つめていた。
素直に聞いていると言えば聞こえは良いが、実際は話されている事の半分も分からないでいただけであった。
その様子を気にする事も無く、オスマン氏は話を続ける。
342LFO代理:2009/04/14(火) 21:20:38 ID:64aKfvZ4
「しかしの……さらにその仮定を真実としても、彼と君の使い魔がそれぞれこの世界に来るのに、何故三十年近くもの時間差が発生したのかも分からん。早い話が分からん事だらけなのじゃ。
が、これだけは言える。先日も言った通りその子は伝説の使い魔のルーンを持っており、今回の一件でその真価の一部を発揮した。
今まで君が自分にした事も何もかも考えずに、君が危機に陥ればそれを救わんと動いたのじゃ。それをよく考えてこれからは接することじゃな。
まあ直ぐにとは言わん。徐々に……の。それと……」

オスマン氏は、デスクの右にある引き出しから金貨を十枚取り出し、それを柱の様に積んでミーの前にすっと差し出した。

「学院長。これは……」
「怖い思いをして主人に付き従ったのじゃ。公的には仕方ないとはいえ、それに対する報奨が全くのゼロではあまりにお粗末とは思わんかの?
仔細あって今直ぐに大きな額を渡す事は出来ないが、これはほんのささやかなご褒美じゃ。大事に使うのじゃぞ。」

ミーは手を伸ばしてその金貨を受け取る。その時オスマン氏に「人から何かを貰ったら有り難うと言うのは教わらんかったかね?」と言われ、小さく「有り難う……ございます」と丁寧に言ったのはご愛嬌だった。
やれやれといった感じで見ていたルイズにオスマン氏は少々厳しい口調で注意を促す。

「こういった事を躾けるのも君の責務なのじゃぞ、ミス・ヴァリエール。それに、本人に渡しておいて今更じゃが、君の使い魔はこの世界において金貨一枚が持つ力を知らんじゃろう。
君がそれをしっかり教えてやるかそうしないかで、この子は倹約家にも浪費家にもなる。よいかな?」
343LFO代理:2009/04/14(火) 21:21:38 ID:64aKfvZ4
フリッグの舞踏会が始まるまであと三十分を切った頃になっても、ミーとルイズはフーケ討伐の時と同じ格好のまま自室にいた。
舞踏会に行かない状況は同じだとしても、お互いその理由が違っていたからだ。
ミーはそもそも‘ぶとうかい’という言葉の意味を全然知らなかったし、ルイズはそこで起きるであろう事を想像しすっかり辟易していた。
舞踏会自体には場合によって出席する必要がある。
貴族にとって舞踏会というのは、ただ気に入った相手と呑気に踊るだけの社交の場というだけではなく、様々な情報を交換し合ったり互いの腹の探りあいをしたりする場でもあるからだ。
ルイズも貴族なのだから小さい頃からそういう事はみっちりと教え込まれている。
だが今からいくら綺麗に着飾っても、どうせ男性陣は普段から自分を馬鹿にしている事を全部棚に上げた上で、歯の浮くような言葉を並び立てつつ言い寄ってくるだろう。
一方で女性陣は、自分が何もしていない、何も出来ないのにそんな場にいて調子のいい男性陣から寵愛を贈られる事に我慢出来ず、見え見えの陰口を言うだろう。
どっちにしたってルイズの矜持がそれを許すわけは無い。しかも参加は強制ではないから、そんな胸の悪くなるような物に出る必要も無い。
そもそも明日も授業などで色々と忙しいのだ。わざわざ疲れを残すような事をしたくない。
そんな時、部屋の扉が軽くノックされるのを耳にした。
「はーい。」と答えてミーが鍵を開けて扉を開けると、露出は割りと控えめだがそれでもどこと無く扇情的なドレスに身を包んだキュルケがそこに立っていた。
中の様子を見てキュルケはルイズに声をかける。

「ルイズ!舞踏会行かないの?あともう少しで始まるわよ?」
「あ、そう。早く行きなさいよ。遅れるわよ。」

椅子に座って恐ろしく難しい本を読んでいるルイズはしごく無愛想に答える。
だが彼女が‘行かない’という結論を出すに至った心情的な物や経緯を露ほども知らないキュルケは、今度は声をかける対象をミーに移した。

「ミーちゃん。お姉さんと一緒に舞踏会に行かない?舞踏会は楽しいわよ〜。小さくてもあなたは立派なレディなんですから、昨日買ってきた服のどれかを着て出れば注目されるわよ〜。」
「えっ……でも、あの、御主人様が……」

そこでミーはルイズの方に振り向く。その時点でやっとルイズは読んでいた本を閉じて机に置き、キュルケの元へ歩み寄った。

「昨日買ってきた服?あれはギーシュが只の自己満足でこの子に買い与えた物でしょ?使うかどうかの決定権は私にあるの!
それに!ミーは平民なのよ!着飾って貴族の社交場に出す意味合いが今後のこの子の生涯であるわけ?
もしそれがあるって言うんならこの場ではっきりと手短に述べてもらいたいものだわ!」

キュルケはぐっと言葉に詰まる。ギーシュの件はともかく後の事に関しては何ら有効な反論が出て来ない。
今後ルイズに今以上の人付き合いが要求され、舞踏会等にどうしても出席せざるを得なくなった時でも、ミーは留守番をするか近くで待っているだけでいいのだ。
両者の間に暫しの間沈黙が漂うが、痺れを切らしたかの如くルイズはいつものように怒鳴った。

「無いんだったらあんた一人でさっさと行ってきなさいよ!鼻の下伸ばして待ってる相手がいるんじゃないの?私に構ってる場合?
悪いけどこの子はまだこれからやる事があるし、私いろいろと疲れてるの!分かった?!」
344LFO代理:2009/04/14(火) 21:22:19 ID:64aKfvZ4
それから部屋の扉が勢いよくバタンと閉まり、更に鍵もかけられる。キュルケはやってられないとばかりに肩を竦め、急ぎ足でその場を後にした。
その扉の向こう側では、ルイズが扉を背にずるずるとへたり込み、髪を軽く掻きあげていた。
自分の言っている事は絶対に正しいという確信があったし、何より昨夜の決闘の結果を持ち出される前に、何とか自分の前からキュルケを追い払ってやった。
学院長室にいた時のように、先生方がいる前だと相手も公にするわけにはいかないので黙っているが、こういう場ではそうもいかない。
それにしても……昨日今日と起きた事が起きた事だけに気力は先程の会話ですっかり消えてしまっていた。
隣では苛々した表情のルイズをミーが心配そうに覗き込んでいたが、それが余計にルイズのささくれ立った心を悪い意味で刺激する。
―どうしてそんなに健気でいられるのか。私はそうしようとしてもそう出来ないのに……―
それから暫くして、ルイズは何も言わずその場で次々と服を脱いでいき、次いで明かりを消した後でベッドに向かって倒れこんだ。
双月が照らす部屋の中、一人洗濯物の山に残されたミーは小さくボソッと言う。

「御主人様……ミー、舞踏会にいきたかったな……」

しかしそれに対しての答えは実に静かでそっけない物だった。

「あんたにゃ一生涯必要無い事なの。無理してキュルケ達に合わせる必要は無いの。……分かったなら洗濯物をメイドの所に持っていっておきなさい。
それが済んだらあんたも早く寝なさい。明日も早いんだから。」

その言葉にミーは何かを言いかけるが、直ぐに言ってもどうにもならないと観念したのかやはり押し黙る。
そして洗濯物を籠に纏めて静かにルイズへ一礼して退室した。
残されたルイズはベッドの上で、オスマン氏が語っていた話の事を考えていたが、やがて押し寄せる眠気に勝てなくなったのか、終には軽い寝息をたてて眠ってしまっていた。
だが二人ともまだ知らなかった。世界の大きな変化が彼女達を呑み込もうとしている事を……

以上で投下終了します。専ブラ入れてやっとスムーズに行くかと思ったらこの有様です。
やっと一巻分終了しました。長かったです。
しかしまぁ、反応とどうなるか分からないという点で考えると、もう一つの方をチャラにして、こっちに本腰入れてとっかかるべきなのかとも最近思ったりします。
それでは今日はこれにて。また何時投下できるかは分かりませんが、また近い内に投下したいと思います。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:22:32 ID:buOcBapn
>>336
すげぇ気になる
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:22:54 ID:iG/FzI1u
依然規制は解除されず。何方かコレの一つ前の作品と共に代理投下お願いします。

フーケの討伐から丁度一週間経ったウルの月、ヘイムダルの週ユルの曜日の夕方。ルイズはテーブルに向かって勉強を、ミーはたんまり専用の道具を持って掃除に励んでいた。
この数日、ルイズの癇癪玉はあまり滅多な事では爆発しないようになっていた。まあ起きている時、他人に対して十分に一回は口泡を飛ばすほど怒鳴っていたことからするとかなりの進歩であるともいえたが。
それを少しは認めたキュルケが六日前、あの決闘での結果を持ち出すのは当座の間凍結状態にしておこうという事を言い出してきた。勿論、ルイズがそれを断る理由は無い。
ギーシュやタバサ臨席の元、相変わらず素直になれないツンツンした態度でそれを承諾したが、その際たった一つだけ付帯条件が付くことになった。
それは就寝時間も含めた、ミー自身に自由な時間が与えられた時、ルイズとキュルケ、どちらの部屋に行くかという選択の決定権をミーの意思に任せると言ったものだった。
ルイズは今のところ一勝も出来ず、自室でさせる雑用と授業以外ではミーに一回も会わなかった。
事情を知らない周囲の人間からしてみれば、ただミーがいろいろな意味で『お姉さん』の条件を満たしているキュルケに、無邪気に懐いているといった様にしか見えないだろう。
しかしルイズはまんまとしてやられたという感情しか出て来ない。
持ちかけられたその時こそ気付かなかったが、いくら凍結状態なんて言葉を使おうと、付帯条件のせいで全てが元の状態のままである。
キュルケにはフレイムという名のサラマンダーがいるにも拘らず、ミーまで使い魔になった感じだ。
何とかしようとこの数日様々な策を巡らせたが、自分でこれと思える有効的な物がなかなか見つからない。どれも最終的には碌な事になりそうな感じがしたからだ。
どうすれば良いかと考えていると、ミーが換気のためにと開け放っていた窓から一匹の大きな梟が優雅な動きでもって部屋の中に入って来る。
その梟はヴァリエール家で飼われている、ルイズにとってはとても馴染みある梟であった。

Louise and Little Familiar's Orders「Letters and Reward of the dinner」

「トゥルーカス!」
「ルイズ様。お父様から急ぎの文で御座います。受け取り次第直ぐに目を通すようにと仰せつかって参りました。」
348携帯から347:2009/04/14(火) 21:27:43 ID:AzQ9pyKY
ここでさるさん、誰か続きヨロ
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:32:46 ID:bduLuYLv
いや前の話は既に代理してあるぞ
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:36:13 ID:EhAcIgng
避難所見る限り、多分Deep〜なんちゃらの方じゃないかな?はた迷惑なヤローだな。
あ、あっしは携帯なので出来ないッス。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:37:17 ID:AzQ9pyKY
お恥ずかしい、一つ前とあったので勘違い_| ̄|○
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:41:58 ID:isu2bL1A
>351
間違いは誰にでもあるさ。

ところで過去スレ読み直してて、なんとなく楽魔女の4人を召喚した場合、誰がどれにあてはまるか考えてたんだが。
ファリス→ガンダールヴは妥当。マリア→ヴィンダールヴも順当。サラ→ミョズニトニルンもムダに嵌まりすぎ…
と考えたところで記す事すら憚られる殿下がほっかむりして片田舎で野良仕事してる図を想像した。
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:48:00 ID:X9HSAQpb
ADA召喚も続きが気になるな、爽やかな無双っぷりが心地良い
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 21:50:10 ID:buOcBapn
心拍数で嘘を看破とかな。
355LFO作者 代理:2009/04/14(火) 21:53:20 ID:eUQXGZzc
トゥルーカスと呼ばれた喋る梟はルイズの目の前に、しっかりと封蝋された厚めの封筒を落とした後、二三回部屋の中をぐるぐる飛び回ってから外に出て行った。
父親から急ぎの文など覚えている限りこれまで一度も無かった。一体何があったのだろうかと封を切って手紙を開き、書かれている事の一字一句逃さぬよう読み進めていく。
するとそこには、軍務を退いたとはいえ王宮によく出入りする父親だからこそ知り得た信じられない話が幾つも書かれていた。
まず一つ目は、アルビオンの王政府が共和制を掲げる貴族派『レコン・キスタ』の攻撃によって、遂にニューカッスルで完全に討ち滅ぼされたことだった。
浮遊大陸アルビオンにおける内戦状態は二年前から顕著化しており、ルイズ自身も知らなかったわけではないが、六千年以上昔から続いていた王家の一つがこうもあっさり倒れたことは驚きをもって迎え入れるしかない。
また、最近レコン・キスタにとある強大な力が参入したとの噂もあったが、真実は今のところ定かではない。
更に読み進めていくと、アルビオンの皇太子ウェールズ王子が死んだ際、トリステインの王女アンリエッタが以前王子にしたためた恋文が敵方に押収され、極秘裏にゲルマニアに渡ったという事も書かれていた。
ルイズの顔がどんどん青くなっていく。
と言うのも、王女アンリエッタは来るべきレコン・キスタとの戦いに備えるために近々ゲルマニアの王と、軍事同盟を真の目的とした婚姻の儀を執り行うことが決定していたからである。
また文面には、既にその相手が死んでしまったとはいえ、手紙自体は『不義密通の動かぬ証拠』という事で即座にゲルマニア皇室の元に届いた事。
そしてそのために、本人のあずかり知らぬところで重婚の片棒を担がされたアルブレヒト三世が烈火の如く激怒した事。
最終的には同盟の反故は勿論の事、トリステイン政府側に今後如何なる事が起ころうとも一切援助はしない、自国の気運とトリステインの出方によっては最後通牒も辞さないという、一種の引導を渡した事が事細かに書いてあった。
ゲルマニアがそんな反応をするのも無理は無い。自国の十分の一程度の大きさしか持たない国からの救いの要請にわざわざ手を伸ばしてやったというのに、結果的にはこってりとその顔に泥を塗られてしまったのだから。
あまりの事にルイズは、まるで下手な劇の脚本を読んでいるかのような気になったが、次に書かれていた事は今まで読んでいた事以上に衝撃を受けた。
ヴァリエール公爵家所有の領地の隣に居を構え、今は魔法衛士グリフォン隊の隊長でルイズの婚約者でもあるワルド子爵が、レコン・キスタに寝返ったという事だった。
また父によれば、このトリステイン宮廷においても、誰がとまでは分からぬが、レコン・キスタと金銭や情報の面において水面下で通じている者もいるとの事。
頭の整理が追いつかないまま最後の一枚を読んでみるルイズ。そこには「今月のティワズの週に入るまでに何としてでも実家に戻って来い。」とあった。
震える手で手紙をテーブルの上に置くと、そこがいやに暗くなっていることに気付く。いつの間にか陽は山々の向こうに沈んでいて、夜の帳が下りかかっていたのだった。
だがルイズにとってそんな事はどうでもよいこと。彼女にとっては何の成果も出せないまま、不本意ながらこの学院から去らなければならないということが我慢ならなかった。
だが今から親に手紙を書いてどれだけそれを主張しようと、その学院を管理・運営する国家自体が、大嵐の吹き荒れる大洋にある舵無し船と似たような危機的状況にある以上、意味の無いものとも考えた。
356LFO作者 代理:2009/04/14(火) 21:56:17 ID:eUQXGZzc
ルイズはランプを着け、よろよろと椅子に座り込む。学院内では今のところどれだけの人間が今日自分が知った事を知っているだろうか?
教師陣、特に学院長は王宮に一種の繋がりがある以上何かを知っているとしても、学院にいる生徒の親の大半は領地経営にいっぱいいっぱいで、とてもじゃないが頻繁に宮廷に出入りすることなど無い。
まあ中には自分のように財務面においても発言権においても、一角の力を持つ親がいる者もいるが、知っているであろう内容にバラつきはあると思われる。
そうなると……考え得る限り、自国がこんな事態になっているのをここまで詳しく知っているのは教師陣と自分ぐらいのものだ。
それからルイズは、教師陣が何故それを生徒達に対して公にしないかを疑問に思ったが、その答えはあっさりと出てきた。
そんな事をすればルイズの家のように、生徒達はパニックを起こし、更にそれを知った親達はこぞって子供を実家に戻らせ、学院は王宮からの正式な命令の無いまま閉鎖状態に陥るだろう。
なら自分から今の国家の状態を話して生徒たちを焚きつけるか?
あれこれと考えていると静かに部屋の扉が開き、掃除用具を全部片付けたミーとヒメグマが入って来た。

「ご主人様。ご飯食べに行かないんですか?」

えっ、と思い近くにあった時計を見ると、晩の食事の時間はとっくに始まっていた。
ルイズはランプを消し、ミーの手を引いて本塔へと向かった。


「すみません。今から丁度片づけを始めるところでして……」

ミーと親しい間柄にあるメイドのシエスタが、食堂の中で気まずそうにルイズに話した。
何か残っているかもしれないと考えていたルイズとミーはがっくりと肩を落とし、力無く元来た道を帰ろうとする。
するとシエスタは「あっ」と言って、ある事を提案した。

「賄いならありますよ!ミス・ヴァリエールのお口に合うかどうかは分かりませんが……如何いたしましょう?」

この際なりふりは構っていられない。半ば諦めたような表情でルイズはそれに答える。




357LFO作者 代理:2009/04/14(火) 21:58:53 ID:eUQXGZzc
「それ以外に何も無いんでしょ?いいわ……有り合わせの物でも何でも良いから、とにかく早く持って来て。」
「?こちらで御食事を?」
「私は厨房なんかに行けないわよ。ここでいいわ。」

そうルイズが言うと、シエスタは「かしこまりました。」とお辞儀をしてその場を離れる。
数分後、シエスタは銀の盆に見事な二人分のセット式料理を運んできた。
だいぶお腹が減っていたのかミーはいきなりがっついたが、ルイズは一口二口を慎重そうに食べていく。
しかし、貴族に出す物と同じ食材、同じ調理工程をしたその料理がいつも卓の上に出される料理と比べて劣る訳が無い。
ルイズは一通りの量をたいらげた後、口を拭きながらシエスタに話しかける。
「助かったわ。お礼は何が宜しくて?出来る範囲でなら何でもいいけど。」
「そんな、お礼なんて……あっ!」

再びシエスタの口から出た「あっ」という声にルイズは興味を持つ。

「どうしたのよ?『あっ』て。」
「その……学院長から許可が出たので明後日実家に帰るんですけど……もし宜しければミーちゃんを数日お借りできないかと思って……」

予想の斜め上を行くその一言に、ルイズはぽかんと口を開ける。しかしシエスタの目はどこまでも真剣である。とても冗談で言っているようには思えない。
それからルイズはちらとミーの方を見やる。
ミーは召喚された日以来、この世界での色々な事を教えてくれる、平民という同じ立場のシエスタに対しキュルケやギーシュ並みによく懐いていた。
それに、ここでミーにある程度の自由を利かせるという柔軟な姿勢をとっておいた方が、後々の事を考えた時に得策でもある。
メイジと使い魔は一心同体という事を考えると、多少シエスタの申し出には苦しい所もあるが、いずれ自分の元に戻ってくる事を考えれば、数日だけなら貸してやっても良いとも思える。
それに言い出したのが、ルイズにとってはミーに何をするか分からないキュルケやギーシュじゃないだけまだマシとも思えた。
ルイズは一分ほどその場で考え込んでいたが、やがて冷めた表情のままシエスタに対して返事をした。



358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:01:08 ID:x2wL546V
支援
359LFO作者 代理:2009/04/14(火) 22:01:45 ID:eUQXGZzc
「良いわ。のんであげる、そのお願い。」
「ほ、本当ですか?!」
「但し!貸すのは三日だけよ!あなたがこの学院から出るその時から正確に計っておきますからね。刻限に遅れたりしたら承知しないわよ。」

そう凄む様な表情で言われても、シエスタは相変わらずニコニコしたまま元気良く「はい!」と答え、厨房に向かって行った。
やれやれといった表情でルイズがワインの入ったグラスに口をつけると、隣からか細い声でミーが「御主人様……」と声をかけてきた。

「何?」
「良いんですか?私、シエスタお姉ちゃんの所に行っても……」
「私が良いって言ったら良いのよ。行ってる間の部屋の掃除とかは他のメイドに任せることにするから。」

それだけ言ってルイズは再びグラスに口をつける。
そう、これで良いのだ。ミーが最後に戻ってくるのが自分の所であればそれで良いのだ。
スズリの広場にあるこぢんまりとしたレンガ造りの使用人宿舎に帰ったシエスタは、それはもううきうきとした表情で部屋の扉を開けた。
基本的に使用人は相部屋であるために、部屋の中では同じメイド仲間のローラが明日の支度をしていたが、そんな事はお構い無しだった。
突然入って来たうかれているルームメイトに、ローラは心配そうに声をかけた。

「シエスタ、やけに嬉しそうね。何かあったの?」
「うーうーん、べっつにー♪」
「あっ……そう。」

その様子を見てローラは嘘だと思った。シエスタは上手いこと感情を隠せるような子ではないから何か良い事あったに違いない。
女の性で聞き出そうかとも思ったが、知ったところで自分に何の益も無かったらそれはそれで意味が無い。
結局ローラはシエスタをそのままそっとしておくことにした。
一方のシエスタは自分のベッドの枕の下からある物を取り出す。それは長方形をした謎の物体であった。
シエスタはメイドとして初めて実家から出る時に、曾御祖母さんの形見として父親からこれを託されたのであった。
そしてその時にこうも言われた。

―どんな図鑑にも載っていない‘ポケモン’という不思議な幻獣を従えていた曾御祖母さんが生涯大事に持っていた物だ。
もしこれの存在や使い方、いや、‘ポケモン’という生き物を知っている者がいたら、帰郷の際に必ず連れて来ておくれ。―

今から遡ること六十年前。シエスタの曾御祖母さんは六匹の‘ポケモン’と呼ばれる幻獣を従えてふらりとシエスタの故郷、タルブの村にやって来た。
始めは余所者だと敬遠気味に接していた村人達も徐々に心を開いて曾御祖母さんを迎え入れた。
日々の仕事に従事する中で、時々この道具も使ったりしていたのだが、周りの村人達からは動物好きなちょっと変な人と思われていた。
そして月日は流れ、曾御祖母さんが天寿を全うしてから一ヶ月ほど後に、この道具は完全に沈黙してしまったのである。
ただ誰も使い方が分からなかった故に、その道具はかなり良い状態のまま保存されて今に至る。
曾御祖母さんの大事な形見の事を知っていそうな人がついに現れた!そう思うとシエスタは眠れなくなる。
二週間前に『‘ポケモン’の事を知っている人がいた!』と書いた手紙の返信で、文面からでも嬉しさを読み取れるような父親の言葉は今でもそらで言えるくらいだ。
それにその手紙によれば、曾御祖母さんの形見の品は、村にある寺院の中にまだまだ残っているという。
明後日が待ち遠しい。そう思いながらシエスタはその道具を抱きかかえながらベッドの上で右に左にと転がり始めた。

以上で投下終了します。今回は短い割りになかなか地の分が多くなったです。
これからも一生懸命頑張っていきたいと思います!ではまた近い内に会いましょう。

ここまでです。余裕のある方で良いので201までの方もお願いします。
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:03:48 ID:EhAcIgng
>>351
あ、いや……
俺はあんたじゃなくて‘作者がややこしい書き方しやがってはた迷惑だ’って言いたかったんだ。
こっちこそスマン。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:23:46 ID:YwJJRIEK
いつもながらLFOのルイズには余裕が無い。
というか幼児虐待(ハルケギニアにその概念があるかは不明、カリーヌママの育児方針に比べればマシ?)に見えることも多々有りますし。
これから二人がどのような道を歩むのかがとても気になります。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:24:25 ID:+kLg0ogH
>>335
ランページはトランスフォーマーの居住地区を滅ぼして逃走した血も涙もない奴だからな。
おかげでエイのおっさんと一緒に散るはめになったが。
出来損ないのトランスミューテイトを見たときに実験で誕生した自分と同じ境遇を見出してる(パタパタ犬も同様みたい)から、
テファの事情を知ったらお友達にはなってくれそうだが知る前に虫けら扱いしてぶっ殺しそうな気がしてならん。

トランスフォーマーの立ち位置がシリーズ通して人間よりはるか上ってのがネックだな。
特にデストロン陣営を召喚するのはイボンコ並の無茶といってもいいと思う。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:33:45 ID:37KGhEaU
ワスピーターなら普通に友達になってくれそうな気がする

あースラストに改造されてたなそういえば
何気にトランスフォーマー最長寿じゃなかったっけ?
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:37:49 ID:ybGMzPiC
最初から鬱展開、その後も鬱全開、さらに鬱継続中

正直、気が滅入るだけなんだが
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:41:01 ID:x2wL546V
俺はクックベリーパイのあたりでちょっと泣いたよ
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:44:24 ID:ZrgHpiF+
>>364
じゃあライトな熱血展開の作品や、ギャグ満載のバカSSを読めばいいだろ。
どんなタイプのSSでも、探せば見つかるほど避難所の容量は巨大だからな。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:45:32 ID:bduLuYLv
しかしアンアンが会いに来ない上にワルドがルイズを誑かそうとしない展開も珍しいな
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:47:31 ID:ZrgHpiF+
いかん、まとめWikiの間違いだった。
ワルドの扱いで、その作品の個性の一つが決まるな。
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:50:16 ID:bduLuYLv
果たしてLFOではワルドの出番はあるんだろうか?
いつの間にかエクスプロージョンに巻き込まれてご臨終だったら悲惨だが
(出番的な意味で)
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 22:51:32 ID:YWzQP6tW
全ワルドとか全ギーシュとか全フーケとか全マリコルヌとか全アンアンとか入場が見たいなぁ
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:10:33 ID:5V93UZlj
>>370
スライムになっても生きていた!! 更なる不死身さを兼ね備えて超生物に生まれ変わった!!!
「白き使い魔への子守唄」!! スライムワルドだァ――――!!!

ガチの勝負はすでに俺が完敗している!!
「蒼い使い魔」メッタ刺しワルドだァ――――!!!

シュウと鉢合わせし次第ブラックホールに呑まれまくってやる!!
「ラスボスだった使い魔」消滅ワルドだァッ!!!



パッと思い付くのがこれくらいしかなかったぜ…。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:34:51 ID:DqPN+Ol4
それじゃ「全ワルド入場」じゃなくて「全ワルド退場」だ
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:49:33 ID:yxO6N5wv
蟻と象とはよく言ったもの!!
PWの狂気が今 ルイズの愛でバクハツする!! 「マジシャンザルイズ」ワルドだ―――!!!

インパクト強いワルドで真っ先に浮かんだのがこれだったw
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:52:26 ID:M/JrlzWl
>>360
他の作者さんに気を使ったつもりだったんだろうから、そういってやるなよw
375さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/14(火) 23:52:57 ID:g7DPwyF/
真のマザコンを知らしめたい!
「さあう゛ぁんといろいろ」純愛ワルドダァーっ!

それはさておき予約がなければ五分後に投下。

これまでの話はこちらで。>ttp://www.actionhp.jp/tss/hagane/haganeETC.htm
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:55:14 ID:M/JrlzWl
>>370-371
前に『無断』で似たようなことやってフルボッコにされた人いなかったっけ?
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:57:45 ID:YeAsEXRD
良いロリコンは死んだロリコンだけか…って事で支援
378さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/14(火) 23:58:06 ID:g7DPwyF/
「手を離さないで! 万が一にも戻れた時のために、ばらばらになっちゃ駄目!」
「ワーッ!」
「キャァッ!」
「テファーッ!」
「あいるびーばーっく」

それまでとは比べものにならないほど勢いを増した空気の流れに、ヤン達がそれぞれに絶叫を残し、断絶に飲み込まれた。
タバサだけは無表情のまま親指を立てていたような気がするが、この際それは無視する。

すがりつくルイズの手に力がこもるのを感じ、ショウが腕の中のルイズを見下ろした。
こちらを見上げていたルイズと目があう。
口が動いているので何かを言っているのだろうが、勢いを増したこの暴風の中ではまるで聞き取れなかった。
だが、かすかに微笑んだその表情に安心感が満ちているのは見て取れる。
微笑みを返そうとして、その顔が歪んだ。
ついにデルフを突き立てていた地面そのものがえぐり取られ、ショウ達ごと断絶の中に吸い込まれたのである。
それでもルイズを強く抱きしめ、離れないようにする。
ルイズもショウを固く抱き返す。
そうして意識を失う寸前、ショウはフードを深く下ろしたクロークの男を見たような気がした。
379さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/14(火) 23:59:03 ID:g7DPwyF/
ルイズとショウは宙に浮いていた。二人とも気を失っている。
二人の横に同様に浮いているのは、先ほど離れた森の中から様子をうかがっていた謎の男である。
高度は数百メイル程か、足下に広がる森やそれを貫いて延びる街道、平野に広がる大都市や山の隅にへばりつくようにして存在する集落が一望できる。
何かを探すようにそれらの光景を見渡していた男が、何かに気がついたかのように顔を上げた。

「ほう、運かそれとも呪文か・・私が助けるまでもなかったな。大した物よ・・・そしてワルドも、か。奴も『有資格者』だったと言う事――まこと惜しむべき事よ」

リリス達5人がこちらの世界に戻った事を感知し、その悪運に感嘆の溜息をつくクロークの人物。
こちらの空間に戻る時にヤンが真っ逆さまに落ちて首の骨を折っていたりするのだが、流石の彼にもそこまでは察する事は出来なかった(ちなみに彼がクッションになったおかげで他の四人は無傷である)。
人知を越えた存在である彼だったが、それでも全知全能にはほど遠い。
故にワルドもまた戻ってきた事までは察知できても、それ以上を知る事は出来なかった。
だが元より彼は知る事は出来ても手出しする事は出来ない。
彼にできる事は、ただ状況を動かせる人間を選び、手助けするだけなのである。今のように。

「それはいいんだけどよう、旦那。俺どこかであんたに会った事無かったっけ?」
「さぁな。忘れているなら大したことではないのだろうよ」

そして唯一目が覚めている(?)デルフリンガーが男に話しかけた。
男はそれまでの口調を一変させ、面白げにそれに応える。
特徴のないクロークのフードから覗く、蒼い美髯が笑みを浮かべている。

「うーん、どっかで引っかかるよーな気がするんだよなー。その昔何回か会ったような・・・」
「何か思い出せそうかね」
「んー・・・・・駄目だ、思い出せね」
「そうか」

その口調には旧友に対するような気安さがある。

「ところでデルフリンガー、私がこうして彼らを助けた事は内密にしておいてくれないか」
「何で?」
「何でもだ」
「・・・ま、いっか」

それを諾意と取り、男は頷く。
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 23:59:14 ID:RoyrERYL
モノによってはミンチになったり、首から真っ赤な花が咲いたワルドもいたなぁ。

全ワルド入場より、む〜ざんむざんって感じがするのは気のせいか?
381さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/14(火) 23:59:44 ID:g7DPwyF/
「さて、この辺でいいか」

山に広がる森の中に三人と一本は降り立つ。
男は一本の大樹の根元を選び、ショウとルイズを並べて寝かせた。
二人ともその呼吸に乱れはなく、死んだように眠っている。
その間には鞘に収められたデルフリンガーが置かれていた。

「今はゆっくり休むがいい。新たなる試練はすぐに訪れようほどにな・・・」

一人頷き、男は踵を返す。
その姿が森の中に消えてしばらく。
しゃこん、と音を立ててデルフリンガーが鞘から顔を覗かせた。

「起きろ、相棒! 起きろ! 娘っ子! 朝だぞー! おはようの時間だぞー!」

わめき続ける事しばし。
まずルイズが呻いてうっすらと目を開けた。
ごろりと寝返りを打って騒音の元が目の前のデルフリンガーだと認識すると、寝ぼけた顔のままおもむろに鞘を蹴っ飛ばす。

「いてっ! 何するんだよ娘っ子!」

蹴飛ばされたデルフの柄がショウの鎧に当たり、ショウもまぶたを開いた。

こちらはルイズのように寝ぼけたりはせず、すぐに意識を覚醒させた。
素早く上半身を起こし、周囲を見渡す。
その目がルイズを捉え、安堵の色を浮かべた。

「・・・・・あれ? ショウ? ・・・・そうだ、ここはどこ? キュルケ達は!? ワルドはどうなったの!?」
「あー、落ち着け娘っ子。そこらへん分かる限りで答えてやっからよ」

がばりと身を起こし、パニックを起こしかけたルイズをデルフがなだめる。
言われたルイズは深呼吸をして心を落ち着かせ、髪を手櫛で整え、ショウは胡座の姿勢になり、デルフリンガーを見下ろした。

「じゃあまず最初に、ここはどこだ?」
「知らね」
「私たちを助けたのは誰よ?」
「覚えてね」
「・・・あれからどれくらい経ったの?」
「わかんね」
「・・・リリス達やワルドはどうなった?」
「さーね」

いくつか質問する間に、ショウとルイズの視線は等しく剣呑なものになっていった。

「ねぇショウ、この剣売り払って新しいの買う気ない?」
「刀はこっちじゃ手に入らないからな・・・鍛冶屋でここの金具をねじ切って貰えば余計なおしゃべりは出来ないようになるんじゃないか?」

本気で話しているようにしか見えない二人の様子に、デルフリンガーが震え上がった。

「待て、待て待て待て待てよ相棒に娘っ子! 本当にわからねぇんだって!
 相棒が空間ぶった切ったもんだから俺たちゃ元の世界から吸い出されて、世界と世界の間をさまよってたはずなんだよ!
 それがこうしてどこかの世界にたどり着いて、それはいいけど一体どこの世界かはわからねんだって!
 時間にしても、世界と世界の間には時間ってもんがないから、どれだけ時間が経ったかは調べてみないとわからねーし。
 それに別々に吸い込まれたんだからあっちの嬢ちゃん達の行方なんか俺っちにゃわからねってば!」

ねじ切られてはたまらないと早口で喋るデルフリンガーに、ショウとルイズが視線を合わせる。
取りあえず納得したようでお互いに頷きあい、ルイズは何かに気がついたかのように動きを止めた。
382さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:00:32 ID:+wbrpd7R
「ちょ、ちょっと待って。別の世界ってことは、私たちハルケギニアに戻れないの!?」
「そーかもしれないね。ま、どこも大差ないよ。十分生きていけるって」
「ちょっと、そんなの無いわよ! もうお父様にもお母様にもちいねえさまにも会えないってことじゃない!」
「落ち着けルイズ。まだそうと決まった訳じゃ・・・」
「なによ! この考えなし! あなたが空間なんか斬るからいけないのよきっと!」
「なんだと? お前には言われたくないぞこの桃色頭! 大体お前だったらあの時何とか出来たって言うのか!」
「あー、また桃色頭って言った!」
「言って悪いか!」
「悪いわよ! ご主人様に向かってなんて口の利き方を!」
「ふん、聞きたいなら何度でも言ってやる! 桃色頭! 桃色頭! 桃色頭! 桃色頭!」
「こ、この童顔童顔童顔童顔童顔童顔!」
「あー、相棒に娘っ子。ちょっと現在の状況というものをだね」
「錆び剣は黙ってなさい! この馬鹿犬にはご主人様に対する敬意という物を教えてあげる必要があるわ!」
「主君がそれに相応しければ、敬意というのは自然と芽生えるものだがな」
「何よ女の子みたいな顔してるくせに!」
「だっ、誰が女顔だ! 大体それとこれとは関係ないだろうが!」
「ふふーん、だって可愛い顔してるじゃない!」
「それを言うならお前だって十六にはとても見えないだろうが! 案外実際は俺より年下なんじゃないのか!」
「なっ! なんですってぇぇぇぇっ! 誰がチビのペチャ胸のやせっぽっちの色気なしの幼児体型よ!?」
「そこまで言ってない! ちょ、待てお前やめろ!」
「あなたが謝るまで! 呪文を唱えるのをやめないっ!」
「あー、もう駄目だねこりゃ」

デルフリンガーが肩をすくめるように鞘に引っ込んだ次の瞬間、山に爆発音が轟いた。
同様の音が二度三度と響いた後、爆発は唐突にやみ、山は元の静寂を取り戻す。

「・・・あいたたた・・・・」
「・・・・はぁ、なんでこんな考えなしが俺の主なんだか・・・・」
「うっさいわねぇ・・・・」
「ま、娘っ子が考えなしに暴走するのは毎度の事なんだね」

煤だらけになったショウと煤だらけのデルフリンガー、同じく煤だらけになったルイズ。ルイズの頭には落ちてきた木の枝で出来た大きなたんこぶ。
さすがのルイズももう口論する気力は残っていないのか、ショウのぼやきにも力ない反論を返すだけだった。それでもデルフには一発蹴りを入れたが。
そんな二人と一振りは数十メイルも歩けば森が途切れて視界が開け、ガリア王国の王都リュティスが眼下に広がっている事にまだ気づいていない。
もはや立ち上がる気力も残っていない二人が爆発音を聞いてやってきた地元の猟師に発見されるのはこれから二時間ほど後、日が暮れる直前の事であった。
この国で彼らを待ち受ける新たなる運命と出会いを、この時二人はまだ知らない。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 00:01:04 ID:M/JrlzWl
支援
384さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:03:19 ID:g7DPwyF/
S)TATUS

ショウ Lv.16 G-SAM HUMAN AGE 13 

H.P. 53/152

STR 16
INT 14
PIE 13
VIT 15
AGI 15
LUC 14

SPELL(呪文使用回数)
Mag 9/9/7/4/3/0/0 
Pri 0/0/0/0/0/0/0

SPELL BOOKS(習得呪文)
Mag 1L HALITO 2L DILTO 3L MAHALITO 4L MORLIS 5L MAMORLIS 6L - 7L -
MOGREF SOPIC MOLITO DALTO MADALTO
KATINO LAHALITO MAKANITO
DUMAPIC

Pri 1L - 2L - 3L - 4L - 5L - 6L - 7L -

E デルフリンガー
E ますらおのよろい
E どうのこて

ルイズ Lv.10 G-MAG HUMAN AGE 16 

H.P. 53/53

STR 7
INT 16
PIE 4
VIT 16
AGI 14
LUC 17

SPELL(呪文使用回数) 
Mag 9/8/6/4/2/0/1 
Pri 0/0/0/0/0/0/0

SPELL BOOKS(習得呪文)
Mag 1L - 2L - 3L - 4L - 5L - 6L - 7L TILTOWAIT
Pri 1L - 2L - 3L - 4L - 5L - 6L - 7L -

E つえ
E がくいんのせいふく
E きぞくのマント
385さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:05:44 ID:+wbrpd7R
リリス Lv.16 G-BIS ELF AGE 17

H.P. 34/67

STR 12
INT 17
PIE 18
VIT 11
AGI 16
LUC 13

SPELL(呪文使用回数) 
Mag 9/9/8/4/0/0/0 
Pri 9/9/5/4/6/4/2

SPELL BOOKS(習得呪文)
Mag 1L HALITO 2L DILTO 3L MAHALITO 4L MORLIS 5L - 6L - 7L -
MOGREF SOPIC MOLITO DALTO
KATINO LAHALITO
DUMAPIC

Pri 1L KALKI 2L MATU 3L LOMILWA 4L DIAL 5L DIALMA 6L LORTO 7L MALIKTO
DIOS CALFO DIALKO BADIAL BADIALMA MADI KADORTO
BADIOS MANIFO LATUMAPIC LATUMOFIS LITOKAN MABADI
MILWA MONTINO BAMATU MAPORFIC KANDI LOKTOFEIT
PORFIC DI
BADI

E こおりのくさびかたびら
E ちいさなたて


ヤン Lv.12 G-FIG HUMAN AGE 18 

H.P. 0/118 DEAD

STR 17
INT 8
PIE 7
VIT 18
AGI 14
LUC 3

SPELL(呪文使用回数) 
Mag 0/0/0/0/0/0/0
Pri 0/0/0/0/0/0/0

SPELL BOOKS(習得呪文)
Mag 1L - 2L - 3L - 4L - 5L - 6L - 7L -
Pri 1L - 2L - 3L - 4L - 5L - 6L - 7L -

E カシナートのけん
E えいゆうのよろい
E まもりのたて
E にんたいのかぶと
E ぎんのこて
E かいふくのゆびわ
はじゃのゆびわ
 ほのおのつえ
386さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:06:27 ID:+wbrpd7R
キュルケ Lv.? N-MAG? HUMAN AGE 18 
タバサ Lv.? N-MAG? HUMAN AGE 15 

フーケ Lv.14 N-NIN HUMAN AGE 23 

ワルド Lv.? E-MAG? HUMAN AGE 26 


さぁう゛ぁんといろいろ 第八話 『跳躍』 了

さぁう゛ぁんといろいろ 第一部 『迷宮のハルケギニア』 完



KEEP TRYING, THE GOD SAVE YOU !!
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 00:06:55 ID:wR4l7/u9
ウィザードリィで学園物だとXTHシリーズの印象が強いなあ
388さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:07:44 ID:+wbrpd7R
ウィザードリィを知らない人向けキャラクター解説と用語説明

アークデーモン

シナリオによって違うが、概ね準最強クラスの力を持つ悪魔族。大概は単体で現れる。
本作に登場しているのはティルトウェイトを用いている事からも分かるとおり、「ダイヤモンドの騎士」バージョンである。
「ベニー松山の小説と同じで結局かませじゃねぇか」とか言わないように。


レッサーデーモン、ガーゴイル、フィーンド、ダークライダー(&ダークスティード)

前二つはシナリオ#1「狂王の試練場」に、後ろ二つはシナリオ#3「リルガミンの遺産」に登場する悪魔族。
ダークスティードはダークライダーの乗っている馬。ゲームの上ではそれぞれ別のモンスターとして扱われている。
ガーゴイルはゲームでの分類は「魔法生物」なのだが、石垣版では悪魔族の一種として扱われている。某ドス島伝説の魔神兵(デーモンスポーン)のような、上位悪魔に作られた悪魔と解釈する事も出来るだろう。


グレーターデーモン

戦闘バランスが全般的によくまとまっている第一作「狂王の試練場」において、頭二つ飛び抜けた戦闘力を持つ最強最悪のモンスター。
防御力もHPも高い上呪文が殆ど全く効かず(一応20回に1回くらいは効くが)、その上強力な範囲攻撃魔法を連発してくるのは作中述べたとおり。
装備や編成にもよるが、4,5匹も出てくれば13レベル(一応ゲームをクリアできるレベル)程度のパーティでは逃げるしかなく、逃走に失敗すればそれだけで全滅を覚悟しなくてはならない。
ウィザードリィというゲームを象徴する存在の一つであり、他のシナリオでも頻出する。
単体のスペックではより上位のモンスター(例えばアークデーモン)に劣るとしても、数に任せたその強さが反則的脅威なのはどのシナリオでも変わらない。「戦いは数だよ兄貴」ってなもんである。
石垣版ではゲームのスペックをさらに越えた圧倒的な存在として描かれており、本作でもそれに準じる。


鳳龍虚空斬

鳳龍の剣技のうち、「斬」の三つの禁じ手の一つ。その威力に付いては作中の通り。


謎のクロークの男

現時点ではまったくの謎。つーことにしといてください。
389さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/15(水) 00:09:24 ID:+wbrpd7R
投下終了。支援に感謝。

うわー、盛大にずれまくってる・・・orz

それはともかくアニエスさんメインの外伝を一本挟んだ後に第二部を開始する予定です。
あんな終わり方ですが、第二部までの間にメンバーが誰か死んだり行方不明になってたり、という事はありませんのでご安心を。
でも勿論ヤンは別です。

ではまた、忘れた頃に。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 00:17:38 ID:fm0qzm3C
投下乙です。
ゲーマーとしてキャラクターデータはありがたいです。
ルイズの呪文使用回数が意外と多く、今後どんな魔法を覚えるのか期待できますね。
391ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:21:00 ID:AhJiece6
さあう゛ぁんとの人乙でした〜。
さて、遅くなりましたが予約がなければ 0:25 からシーン19 の運命の扉を開こうかと思います。
今回はかなりご都合主義的な部分があると思いますが、大目に見て頂けると幸い。
392ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:26:36 ID:AhJiece6
大丈夫みたいなので運命の扉を開きます。

空賊に捕らえられた一行は、スキンヘッドの男に従って彼らのフネの中を船尾へ向かって進んでいた。
案内している男の他にも3人程、武装した男達が付いてきている。通路は人がすれ違う事ができる位の幅しか無いので、これ
以上いても邪魔になるだけだろう。
静かな通路は意外と清潔に保たれており、火は灯っていないものの等間隔にランプが据え付けられていた。
一行を案内してきた男は扉の前に直立するとノッカーを鳴らして、扉の中にいる人物に一行を連れてきた旨を告げる。
すると、扉の向うからマリーガラント号で出会った空賊の頭の声が聞こえてきた。どうやらここが船長室らしい。

ヒューはそんな男達を横目にルイズに近付くと何事か耳打ちする、驚いたようにヒューを見返すルイズだったが、使い魔の表
情を見て一つ頷くと、隠していた<水のルビー>を左手に嵌めて目の前にある扉を睨みつけるのだった。

ゴーストステップ・ゼロ  シーン19 “Negotiation”

    シーンカード:チャクラ(調和/双方互角。自然な安定。何らかの均衡。和解。相互協定。)

船長室は意外と広い空間だった、実用性を重視してはいるもののそれなりに立派な家具や手入れが行き届いた寝具や室内、一
見しただけではここが空賊の船長の寝床だとは誰も思わないだろう。

部屋に入った一行の前にはマリーガラント号で見た隻眼の男…恐らくこの男が空賊の頭目なのだろう…がいた。男は豪奢な
ソファに座りながら手の中にある立派な拵えの杖をもてあそんでいる。
周囲には護衛役だろうか、体格が良い数人の男達が壁際に立って此方を見ていた。

「手前ぇら、お頭の前だ。挨拶しな」

案内役の男が頭目の横に立ってルイズ達にドスの効いた声で命じる。
命じられた当のルイズは頭目を上から下まで見た後に一つ溜め息を吐くと以外にも…。

「ルイズよ。」

と、家名は言わないまでも自らの名を告げた。これに驚いたのは目の前にいる空賊達ではなく、ヒューとワルドを除いた友人
達だった、自分達が知っているルイズだったらまず言う筈が無いのである。

(「ちょ、ちょっとルイズ、貴女どういうつもりよ」)
(「ぼ、僕達も名乗った方がいいのかね?」)

あっさりと自らの名を明かしたルイズに少なからず呆れた様な表情を見せた頭目だったが、不敵な表情を浮かべると改めて
ルイズに問いかける。

「ほう、ずいぶんとあっさり名乗るもんだな。トリステイン貴族にしちゃあ珍しい、で?家名も答えて貰えるんだろうな。」
「ええ、貴方が自らの出自に誇りを持って、自分の名を告げる事ができるのならね。」

ルイズがその言葉を発した途端、室内に重苦しい空気が満ちる。
周囲にいた空賊達の表情は明らかに強張り、中には得物に手をかけている者までいた。頭目も杖をしっかりとルイズに向けて
おり、指先一つ動かす事も困難な状況だ。
そんな状況の中、ルイズはいきなり別の事を話し始める。

「まぁいいわ、これからする質問に答えてくれたら私の家名もおしえてあげる。」

いきなり変わった話題にいぶかしみながらも、頭目はルイズに目で続きを促す。

「アルビオンの王党派はまだ健在なのかしら?」
「ああ、風前の灯火だけどな。」

頭目は嘲笑を含んだ声でルイズに答える。

「さあ、答えたぜ。約束通り名乗りな」
「ええ、約束ですものね答えてあげる。私の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 トリステイン王国ヴァリエール公爵家の末娘です。
 ウェールズ・テューダー皇太子殿下、我が国のアンリエッタ姫殿下より密命を受けまかりこしました。」
393ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:28:26 ID:AhJiece6
ルイズはそう告げると微笑をその顔に浮かべながら頭を垂れた。
しかし、室内は先程までとは別の意味で凍り付いている。そんな中、最初に口を開いたのは皇太子と呼ばれた男だった。

「この俺が皇太子だって?こいつは傑作だ!
 お嬢ちゃん、この俺の何処を見てそう思った?」
「お恐れながら3点ほど根拠がございます。」
「へぇ、言ってみな」

ルイズは下げていた頭を上げて、頭目と真正面から向き合うと自説を説き始めた。

「まず、一つ目にこのフネに乗っている船員達の規律です。」
「規律?」
「はい、まず襲撃時まで遡ります。マリーガラント号に乗り込んできた際、無用の混乱が起きていませんでした。
 それから甲板で見た限りですが、酷い怪我を負った人もいません。
 次にこのフネに乗ってからですが、襲撃が成功したというのに騒いでいる声がきこえませんでした。しかも船内は隅々まで
手入れが行き届いている事から、規律がしっかりしているのだろうと推察しました。」
「そいつは買い被り過ぎってヤツだよお嬢ちゃん、俺達の足元は板切れ一枚隔てるだけで奈落の底だ、そんな場所で好き勝手
されたら他の連中にも迷惑だからな、自然とこうなるのさ。」

頭目はルイズの一つ目の説に軽薄な笑みを浮かべながら反論する。
対するルイズは、特に動じた様子もなく一つ頷くと次の説を述べていく。

「それでは二つ目です、それはこのフネの人員構成です。」
「こいつは驚いた!公爵家のお嬢さんは空賊の人員構成に詳しいとはな!」

その頭目の言葉に周囲の空賊も失笑と嘲笑を上げた。
そんな笑いにルイズは唇を噛み締め、手を握り締めて激昂する事をかろうじて堪えた後、震える声で言葉を紡ぎ始める。

「残念ながら、詳しかったのは我が公爵家ではありません。
 この情報は貴方達が解放した船員達から仕入れたものです、その彼等から仕入れた情報では10人近いメイジを抱える空賊
がいるとか。
 しかもその船員達の話では空賊にいるメイジは普通多くても5人だそうです。平和な時ならともかく戦時中ともなれば貴重
な戦力となるメイジは両陣営で引っ張り凧でしょう?
 そんな稼ぎ時にこんな場所で空賊をしている…、すなわち貴方達は王党派もしくはレコン・キスタのいずれかということで
す。しかし現在の戦況を鑑みるにレコン・キスタの線は限りなく低いでしょう、とすると残るのは貴方達が王党派であるとい
う可能性です。」
「面白いな、実に面白い。しかし、それだけでこの俺が皇太子だと断言できるはずがあるまい?」

頭目の問いに一つ頷くと、ルイズは最後の……そしてこれ以上無い確実な証拠を“見せた”。

「最後の理由ですが……失礼ながらウェールズ皇太子、この様な時に王族たる証しを身に帯びるのはどうかと愚考いたします。」
394ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:30:24 ID:AhJiece6
そう述べつつルイズは<水のルビー>を嵌めている左手をウェールズに見えるように持ち上げてみせる。
ルイズの左手を訝しげに見ていた頭目は何かに気付いたのか、自分の左手を見た後で顔を俯けてしばらく肩を震わせていたか
と思うと、やにわに笑い始めた。その笑い声は先程まで伝法な口調で喋っていた人物と本当に同一人物かと疑ってしまいそう
になるほど若々しい声である。

「いや、まさかこんな馬鹿みたいな理由で変装が見破られるとは!」

ひとしきり笑った後、ソファから立ち上がると身に帯びていた変装道具をむしり取っていく。
蓬髪の鬘、薄汚れた眼帯、もじゃっとした付け髭の下から現れたのは凛々しい顔つきの青年だった。

「トリステインからのお客人に大変失礼をした、改めて挨拶させてもらおう。
 アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。
 先程までの失礼をどうか赦していただきたい、此度の内戦では色々とあってね少々慎重になっているのだよ。
 しかし、トリステインに伝わる<水のルビー>がヴァリエール嬢の手にあるということは、貴女はアンリエッタから余程の
信を得ているという事だ、ならば我等も信用できるというもの。
 これより以降、貴公等は我がアルビオン王国最後の客人として迎えよう。
 ようこそ、アルビオンへ。」

そう晴々と宣言した皇太子の左手には石の色こそ違うものの、ルイズの左手にある<水のルビー>と全く同じ意匠の指輪が煌
いていた。



ルイズ達に皇太子が自らの正体を明かした時から、彼女達に対する待遇は先程までとは異なり賓客をもてなすものになった。
杖を始めとする武装や荷物も返還されたのは当然の事として、船員達の態度が無法者の空賊から礼儀正しいアルビオン空軍の
軍人へと豹変した事はその最たるものである。

そうして現在、再び体調を崩して席を外しているヒューを除いたルイズ達は船長室でウェールズ皇太子と対面で会話していた。

「しかし、トリステインからはともかくゲルマニアやガリアの貴族までいらっしゃるとは思いもしなかったな。」
「私達にもそれなりの理由がございます、今回はそれがトリステインの利と一致したまでですわ。」
「しかし、そちらの少女は大丈夫かね?気分が優れないようなら部屋を用意させるが…」
「ああ、お気になさらずとも結構ですわ、この子ちょっと人見知りが激しいもので。」

ウェールズの言葉に対したのはキュルケだった、ちなみにキュルケの隣にいるタバサはマントに付いているフードを深々と被
っているため表情も分かり難い。

「ところで、密使……いや、ラ・ヴァリエール嬢。先程言っていた密命というのは?」
「詳しい事は此方に。」

問われたルイズは一礼すると、懐から取り出した手紙を皇太子に差し出す。
ウェールズは愛しそうにその手紙を見詰めた後、花押に接吻をし、その手紙の封を慎重に開いて便箋を取り出す。
中に入っていた便箋は一枚のみだったが、ウェールズは何度も読み直した後、満足気に微笑んだ。
395ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:32:13 ID:AhJiece6
「手紙の内容、確かに承った、しかし今すぐという訳にはいかない。面倒だがニューカッスルまで足労願えないだろうか。
実を言うと、件の手紙は手元にはなくてね、姫の手紙を空賊船に持ち込むわけにもいかないし……。まぁ、この指輪をした
ままで空賊をしていた愚か者が言う事ではないんだが。」
「そんな、愚か等とは思っておりません。皇太子殿下がこの様な事をしていたのにも何か訳があったはずですから。」
「訳もなにも、必要に駆られて行っているのだよ。
 金のある反乱軍には次々と物資が送り込まれる。しかし、対する我等が王軍は貧乏な上にニューカッスルに封じ込められ
補給すらままならない、補給を断ち物資を奪うのは戦の常道だが、堂々と王軍の軍旗を掲げる訳にもいかないしね、仮に掲げ
たとしてもあっという間に反乱軍に取り囲まれてしまう。だからこそ空賊を装っていたのさ、情けない事にね。
 ところで、先程までの推察は見事だった。流石はヴァリエール公爵の娘御だな、末恐ろしいよ」
「いえ、親に教わったわけでは……」
「何と、それでは自分で気が付いたとでも?」

皇太子の感歎した様子に、顔を赤らめた後。意を決したのか、胸を張ってルイズは皇太子に言葉を返す。

「実は、この部屋に来る前まで何も考えておりませんでした。ああいう事が出来たのは私の使い魔の助言があってこそです」
「使い魔?となるとあの竜が君の使い魔なのかい?」
「いえ、あの竜はそこにいるタバサの使い魔です。私の使い魔は今、床に伏せっている男です。」
「ほう、彼がそうなのか。で?その助言というのはどういったものだったのかな?」
「4つありました。
 よく観る事・情報を思い出す事・王軍である可能性・指輪を嵌めていく事。それだけです」
「なるほど、観察する事と情報を思い出す事でこのフネの違和感に気付き、指輪を嵌めた事で私と私達の正体に思い至った…
という訳かな?」
「はい、後は王族が死んでいない事を確かめれば確定できると思いました。」
「となると、私が嘘をついて王族が死んだと言ったら?」
「恐れながら、御身を盾に帰還するつもりでおりました。」
「杖は取り上げていたはずだが」

そう訝しげに尋ねるウェールズだったが、対するルイズはにっこりと笑って。

「秘密でございます」

と答えるだけだった。
396ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:35:35 ID:AhJiece6
その頃、ヒューが眠っている部屋に忍び込む人影があった。
長いマントに羽根付き帽子、鉄拵えの杖に鼻から上を覆う白仮面……ワルドの遍在である。
音も無く侵入に成功したワルドは腰に差している杖を抜くとヒューが起きない様に小声で呪文を呟く。否、そうしようとした
瞬間、寝台から突き出てきた細い腕が杖を抑える。

「!貴様、気付いていたのか?」
「人の寝顔を見るのは少々悪趣味なんじゃないのか?ワルド子爵。おっと、変な気を起こすなよ?動かなければ殺すつもりは
ない……いや、遍在に言っても無理な話か。」
「何だと?いや、何故私の正体を知っている。」
「ラ・ロシエールで死んだ筈の奴がここにいたら、後は簡単な消去法だろう?ギーシュとオレは端から考えられないし、他の
3人にしたところで、体格どころか性別から違うからな。
 後は遍在かどうかだが、ルイズお嬢さん達の所にいないと現場不在証明が出来なくなる上に殺した後が色々と面倒だ、なら
この場にいる子爵は遍在という事になる」

そう言ってワルドの杖を手放すと、ヒューは難儀そうにベットから起き上がる。左手で立てかけてあったデルフリンガーを取
った後、シーツの中から<駆風>を握った右手を出す。
手放された杖を構えるワルドだったが、同時にヒューの右手に握られた道具がこちらを向く。その道具に穿たれた小さな黒い
穴に遍在とはいえワルドは言い知れない不安を抱いていた。

【止めときな子爵どの、こいつで撃たれたら洒落にならねぇぞ】
「インテリジェンスソード?それに撃つという事は、右手のそれは銃ということか」
【おう、そうとも。それからオレサマはデルフリンガー。相棒の相棒さ】

ワルドは一歩足を引くと構えていた杖を腰に戻す。
未だ仮面は被ったままだが、両腕を組んで壁に背を預ける。ワルドが引いた事を見たヒューも<駆風>を懐に戻し、デルフを
ベッドに立てかける。
両者が戦闘状態を解いた所でワルドが話を切り出す。

「どういうつもりだ?僕がレコン・キスタの一員だと知っているのに何故殺さない。」
「遍在か本体か見分けが付かないからな、一々付き合っていられないさ。
 それに子爵ドノには聞きたいことがある……、何故連中の仲間になった?」
「知れた事、腐り切った現王権を打ち倒して、真にハルケギニアの将来を憂う我々が統一を果たし、さらには彼の地にある
“聖地”を解放する為だ。」
「“聖地”?」
【東にある砂漠の彼方、ブリミルのヤツがハルケギニアに初めて降り立ったとされる伝説の土地の事だよ相棒。
 今じゃあエルフ達が居座っているんでな、人間には行きたくても行けない状態なのさ。】
「成る程、宗教戦争って事か。不毛な話だ」
397ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:37:33 ID:AhJiece6
呆れた様なヒューの言葉に、ワルドは声を荒げる。

「何だと?貴様如きに何が分かる!彼の地の奪還は我等ブリミル教徒にとっては義務とも言うべき尊い願いなのだ!」
「分からんね、アンタ等貴族がどれだけ妄想を膨らまそうと勝手だが、それで迷惑を被るのはアンタ達よりも弱い立場の人間
だ、奪還したいのならしたいヤツだけで勝手に行けって話だよ。
 第一アンタ達貴族はアレだろう?平民を導く為にブリミルとかいうヤツから魔法を貰ったんだろう?ならどうしてその導く
べき平民を殺そうとする、それは義務とやらに反しないのか?
 ここで平民の事は知らない、“聖地”さえ奪還できれば良いというのなら論外だな、アンタ達がいう現王権以下の存在にな
る事は確実だ。
 それに懸けてもいいが、平民にとって“聖地”なんて見た事も無い土地の為に「義務だから命をかけろ」なんて言っても、
納得しないぞ?彼等は彼等の税で生きているアンタ達貴族と違って、日々働かないといけないんだ、夢を見るのはそこら辺を
解決してからにするんだな。」
「……っ!」

ワルドはヒューが言った“貴族としての義務”という言葉に返す事ができなかった。確かに自分達が使う魔法という力は平民
達を教え導く為に得たはずの力だったのだから。
教え導くという事は、即ち生かそうという事に他ならない。教え導いた挙句死なせてしまってはそれまでの労力が無かった事
にもなるからだ。
絶句しているワルドに意外な言葉がかけられる。

「子爵、賭けをしないか?」
「賭け、だと?」
「ああ、この旅の間……というか明日だが、ルイズお嬢さんが魔法を使えれば俺の勝ち。使えなければ子爵の勝ち。」
「その口ぶりからすると、使えるようにするあてがあるという事か?」
「さてな、まぁ勝つにしろ負けるにしろ子爵にはあまり不利益は無いと思うんだけどね。どうする?」
「報酬は?」
「俺が勝ったら子爵にはレコン・キスタを抜けてもらう、ついでにルイズを守ってやってくれ。」
「?よく分からんな。では僕が勝った時は好きにさせてもらう。」

そう言い放つとワルドの遍在は淡雪が消えるように、虚空に消えていく。
最後の一片が消えた時、ヒューは腹の底から大きな溜め息をついた。そんなヒューにデルフが声をかけてくる。

【相棒、良いのかい?あんな約束しちまって。】
「お嬢さんの守り手は多い方が良いからな。その点、子爵ドノは満点だ。」
【へぇ、そりゃまたどうしてだい?】
「腐っている貴族を知っているからさ、子爵ドノはさっきこう言っていたろう?『腐り切った現王権を打ち倒し』って」
【ああ、確かに言ってたな。】
「なら、腐る事・堕落する事に抵抗があるって事さ。これから腐るって可能性はあるけどな、そこは人である以上しょうがない。
 恐らく子爵は潔癖なんだろう。祖国の腐敗を止めたいが自分では力不足、上に立つべき大后は逃げの一手、周辺国は国力を
増し続けている。そんな時、隣国でこの騒ぎだ、彼がこう思ったとしてもおかしくないだろう。『腐りきってしまうのであれ
ばいっその事』ってね。」
【なるほど、要するにやけっぱちって事か。】
「さて、そこだ。自棄という割には一々手が込んだ手を打ってくるからな。まんざら自棄ってわけでも無いんだろう、落とす
のなら旨い汁を吸い上げてから、というのが本音なんじゃないのか?」
【旨い汁ねぇ、そりゃあもしかしてお嬢ちゃんの事か?】
「恐らく間違いないだろう。多分、子爵は何かの拍子でお嬢さんが“虚無”の使い手だと知ったんだろうな。」
【てえと、レコン・キスタ絡みって事か?】
「問題はそこだ、クロムウェルは“虚無”を使えない、これは確定している、確率的にありえないからな。
 そうなると、“虚無”についてある程度の知識を有している人物がレコン・キスタにいるって事だろう。」
【てぇと、連中からお嬢ちゃんを監視しろとでも言って来たってぇのか?】
「それかな、恐らく魔法を使えない貴族の監視でも命じられて気が付いたんだろう。
 となると、連中の後ろには“虚無”の使い手が…ゲルマニアとトリステイン以外の2国の何れかが付いているはずだ。」
【何か芋づる式に背景が明らかになっていくな。】
「とはいってもな、ほとんど想像の範囲さ。それに分かったからといってどうしようもない、ここからはお嬢さん達に頑張
ってもらおう。」

そうしてヒューが船窓から外を眺めると、雲の中に入ったのか、船窓は真っ白に染まっていた。
398ゴーストステップ・ゼロ:2009/04/15(水) 00:40:34 ID:AhJiece6
投下終了、見直したら3点リーダーが多すぎだ自分 orz

何だか、今回は妙に難産でした。
ルイズのフェイト化はここだろうかと思って入れました。ウェールズの指輪は原作でも嵌めっぱなしだった様に記述されてい
たので決め手に使わせてもらいました、指輪の意匠は漫画版で見ると同じものの様に見ので、それに各王家に受け継がれてい
るのならある程度は似通っているだろうと思っています。
(実際、付けてちゃいかんだろうとは思いましたけどね。)
それと、交渉時点でルイズはタクシードライバーと雷神を所持していました。双方共かなり隠匿し易い武装なのでいいかなと
思います。

遅くなったのは中盤以降のヒューとワルドの会話を入れて良いものかぐずぐずと悩みまくった挙句、気が付いたら2週間過ぎ
ていたという馬鹿みたいな事が原因だったりします。
流石にこれ以上はまずかろうと投下に踏み切りました。パラシュートが開くか否かは皆さんの感想次第。
(後は貴族の口調にどうもなれないのも…)

次回はいよいよニューカッスル入城、何とか来週中には書き上げたいと思います。それではまた。

用語

シーン19
<駆風 9−WH>(I)
…銃身にサイレンサーを仕込んだ暗殺用拳銃。トリガーも電気着火式なので作動音も極めて低い。
フルオート可能。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 00:45:03 ID:TpfsvEN/
乙です。

ヒューもチャクラにスタイルチェンジして健康体にするとか!w
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 00:45:39 ID:mm486a+O
ゴーストステップの人、乙

正直、待ちくたびれましたぞw
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 01:09:58 ID:23CznLTS
ゴーストステップ氏投下乙ですー。
首を長くして更新を待っていた甲斐がありました。
あっけなく策謀を看破されたワルドですが、彼の身の振りようによっては、
今後、物語が未知の方向に転びそうですね。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 01:34:00 ID:DgOGMaMY
ずっと待ってました乙
ワの人も道を誤らなければ優秀な人なんですよねー
しかし逆にヒューの死期が近そうで・・・不安ながらも次回も楽しみにしております
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 01:46:56 ID:1hAIZysa
>>364>>366>>368
そういうジャンルごとにまとめたりしたら便利そうだね
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 01:49:03 ID:FRkhFLFo
管理してくれる人がいればな
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 02:00:29 ID:qmhOMBvI
さぁばんとの人もお疲れ様ー
グレーターは正直養殖のイメージが強すぎてあんま強い気がしない
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 02:05:58 ID:/jO6VR0T
乙です
ヒューの死亡フラグコレクターっぷりがががが!

佳境に入って難産が続きそうですが応援してますぜ
407Deep River代理:2009/04/15(水) 02:21:36 ID:fx8V59/3
今日ハ。我、未ダ規制解除サレズ。代理投下何方かお願いします。

Deep River第三話

「ふむ。その噂が真であるならば非常に困った事になるのう。しかし、当人に如何にしてそれを伝えるべきか……」

本塔最上階にある学院長室で、ミス・ロングビルは学院長のオールド・オスマンに、ルイズの召喚した使い魔とロマリアで起きた聖堂騎士大量殺戮事件との関連性を語っていた。
粗方聞き終わったオスマン氏は神経質そうに髭を弄りながら今後の対策を語り出す。

「いずれにしてもじゃ、ミス・ヴァリエールが召喚した生き物がロマリアで事件を起こした生き物と同種であるという確たる物証は今のところ一つとしてない。
あるのは噂という不確定性極まりない状況証拠のみじゃ。ただそれだけの理由で神聖な儀式によって召喚された個人の使い魔を殺処分するなぞ言語道断にして愚の骨頂じゃ。」
「しかしオールド・オスマン。火竜はどのような環境でどう育てようと火竜のままです。今回の事態はそれと同じだと思うのですが……」
「時として虫も殺さぬほどに大人しい火竜が生まれる事もあるそうじゃが、君はそういった事例を知らんかね?確立に賭けるのであれば、わしは少しでも自分に希望を生み出すほうに私財を賭ける性格なのでな。
もし暴れてロマリアの一件と同じ事が起きるのであれば、その時はその使い魔を殺すまでじゃが、仮にその前に同種の生き物であるとの事実確認がなされた際には、何らかの予防策を講じ遂行すれば良い。
我々は人間じゃ。困難に遭遇した際、早々と諦めて何もせずに逃げる諸動物とは違うのじゃ。試行錯誤し、物を作り出し、自分の力以上の物に進んで立ち向かう。それが人間じゃ。
ミスタ・コルベール、ミスタ・エラブル、そしてミス・ロングビル。生徒の上に立つ教師が、かように短絡的な結論しか出せないのでは困るぞい。
それとミス・ロングビル。ミス・ヴァリエールの使い魔がそんなに危険というのであれば、ロマリアの噂話を精査し、似顔絵の一つや二つでも描いて実地調査を行うことじゃ。
それからミスタ・エラブル。君は確か任期満了に近かったかの?」

エラブル氏はコルベール氏と同い年ぐらいではあったが魔法生物学の任期である十五年が後三日で来るといった状況だった。エラブル氏は少し残念そうに「はい」と短く答える。

「安心せい。ミスタ・コルベール、君はミスタ・エラブルの代わりに使い魔の動向と生態を観察し、気になる事があったら逐一漏らさずノートに書き留めておくようにしたらどうかね?」

コルベール氏は、「成程。ミス・ロングビルとの行動とも連動出来る。」と考え「ははあ」と深く頭を下げる。ついでに今度はコルベール氏が質問をした。

「して学院長。この一件、王宮やアカデミーに報告するのですか?」

次の瞬間、彼はそんな質問をしなければ良かったと酷く後悔した。オスマン氏が冷ややかな目と声でその質問に的確な答え方をしたからだ。

「王宮に報告して何とする?ロマリアの一件が事実だと分かったら、暇を持て余した貴族連中にとってこれほど都合の良い戦争道具はありゃせんぞ。
アカデミーなぞ尚更拙い。どんな実験をされる事になるやら分かったものではないからの。君とて生徒の悲しむ顔というものは見たくあるまい?」

コルベール氏は気弱そうに「はあ」と言ったきり黙ってしまったが、内心はオスマン氏の深謀にいたく感心していた。
これでセクハラ癖さえなければ完璧なのだが。まあ人は誰でも短所というものを持ちうるものである。

「ともかくこの件に関しては短いようじゃがこれで終わりとする。ミス・ヴァリエールにはくれぐれも噂を悟られんように伝えるのじゃぞ。」

オスマン氏の厳命に、三人は気を引き締めた返事で対応した。
408Deep River代理:2009/04/15(水) 02:23:04 ID:fx8V59/3
ルイズは寮内にあるトイレの前で困っていた。どう困っていたかというと使い魔の少女、サフィーの扱いに困っていたのである。
別にサフィーが面倒事を引き起こしたわけではない。ルイズはこれまでの人生において、当然ながら子育てという物を全くしたことが無かったので、今後どうすればいいかさっぱり見当がつかないのだ。
まず自分の名前と主人の名前をおぼろげながらも言えるようになった。それは人間の基準に照らし合わせて考えれば信じられないほどの早さであった。
しかしサフィーは亜人である。そういった事は人間の域に止まらないのかもしれない。
取り敢えず、次に覚えさせるは日常生活における身の回りの変化に自分で対応させていくという事だ。
部屋の中でルイズが徐にサフィーのスカートを捲くってみると、誰かは分からないが急にもよおす事になっても困らないように、きちんと処置が施されていた。
だが早くこれを外せるようにならないと、後々嫌な噂を立てられることになるだろう。
この際使い魔としての責務とかは後回しにしたって問題は無い。まずは日常生活で困らない程度に基本的な事は覚えさせておかねばならない。それにこのくらいの事は他の者もやっていることだろう。
そういった経緯でここまでやって来たのだが、厄介な事に名前を言う時以外では、サフィーは基本的に「みゅう」しか言わない、というか言えない。
理解したのかしていないのかも分からない、全くの手探り状態で始めることにルイズは不安を感じていた時、後ろからコルベール氏の声がかかった。

「ミス・ヴァリエール!こちらにいましたか!」
「ミスタ・コルベール……あの何か私に御用ですか?」
「実は君の使い魔についてなんだが……今、少しでも時間は取れますかね?」
「え?ええ、少しなら構いませんけど。何かサフィーについて分かった事があるんですか?」

サフィー?ああ、使い魔の名前ですかと思ってコルベール氏はルイズの使い魔を見やる。
すると亜人の少女はびくっと大きく震えてルイズの後ろにさっと隠れた。どうやらとんでもなく人見知りの激しい性格のようである。

「ははどうやら私はその子に嫌われてしまったようですな。」
「すみません。でも多分サフィーは時間をかけて接しないと相手に心を開かないみたいなんです。実際に私も最初は怖がられましたから。」
「そうなのか……君もいろいろと大変なのですな。さてミス・ヴァリエール。話があるのはその亜人についてなのですが……」

その瞬間にルイズの表情に墨のような暗く黒い影がさっと走った。部屋にいる時にちらとでも疑った事がもし本当になるのだとしたら暗澹たる気持ちになったからだ。
ルイズは一言一句を確かめるように話し出す。
409Deep River代理:2009/04/15(水) 02:28:07 ID:fx8V59/3
「ミスタ・コルベール。サフィーはその、亜人は亜人でも何の亜人なのかは分からないんですね?」
「え?ううむ、確かにどの書籍にもミス・サフィーと同じ特徴を持つ生物は載っていなかった。学院長もご存知ではないそうです。」
「じゃあ、人の手に負えない生き物だとか、災いをもたらすような生き物ではないんですね?」
「まあ、それに関しては未だ調査中です。断定的に言える事は今のところ何もありませんよ。だからあんし……」
「もしそうならサフィーは殺されちゃう。そんなの駄目よ。私にとって魔法が成功した証、いいえ!私の大事な大事な使い魔なのよ!」
「もし?ミス・ヴァリエール?」

心配するミスタ・コルベールを余所にルイズはサフィーをひしと抱きしめて囁くように言った。

「大丈夫よ、サフィー。世界中の人達があなたを狙っても私だけは守ってあげる。怖がらなくてもいいの。私が……命にかけても守るから……」
「ミス・ヴァリエール!」

遠のきかけていたルイズの意識は、そこで一瞬にして戻って来た。
傍にいるサフィーを見ると最初の時と同じ様に酷く脅えていた。まるで雨の日に外へ捨てられた犬の様だと言えば妥当だろうか。
ルイズが落ち着きを取り戻したのを確かめたコルベール氏は溜め息一つ吐いて対応する。

「我々はミス・サフィーを殺すような事はしません。ええ、始祖ブリミルに誓っても良いくらいです。
ただこれまで確認された事の無い亜人ですので、宜しければ我々がミス・サフィーの動向や生態といった物を調査するのに協力していただけないかと。」

その依頼にルイズは少し考え込んでしまう。
それはつまり、サフィーが毎日何時に起きて何時に眠るかとか、何を食べたり、見知らぬ事物についてどんな反応を示すかというのを逐一観察される、或いは自分が先生に報告するという趣旨の物であるという事だ。
大まかな所は教えてもいいが、どこと無く自分の生活におけるプライベートな内容がばれそうになるのが怖い。それに正直言えばそういう事は女の先生に切り出してほしい物だ。

「コルベール先生。調べる人を変えさせてもらうわけにはいかないでしょうか?」
「調べる人?ああ、確かに私では君達も気まずいという事だね。では、ミセス・シュヴルーズあたりに手配してみよう。
彼女なら女性としてきちんと対応してくれるだろうし、君がもしミス・サフィーを養育するにあたって困った事が出てきた時に何かと相談に乗ってくれるかもしれませんしね。」
410Deep River代理:2009/04/15(水) 02:29:02 ID:fx8V59/3
それの方がよっぽど有り難い。ルイズは小さく「それで良いです。」と答え、ほっとした様に一息を吐く。

「ところでミス・ヴァリエール。もう夜も遅いですよ。消灯時間も近付いているのに何をしてたんですか?」

随分とデリカシーの無い質問ね、とルイズは呟きかけた。
いくら彼もある程度の経緯は知らないとはいえ、この場所、トイレの前で女が二人、しかも片方はまるっきし赤ん坊の様な振る舞いしか出来ないときたら、これから何をするのか察してさっさと退散してくれたっていいじゃないか。
だがそんな感情はおくびにも出さず、ルイズはコルベール氏に悪い印象を与えないようあくまでにこやかに応対する。

「サフィーはまだ日常生活が出来ないんです。だから私が手伝って、それから慣れさせて一日も早く立派な使い魔にしないといけないんです!」
「そうか……なるほど、人並みの知能を持った亜人にとって、主人が率先してやるべき動作を教えるというのは良い教育方法です。
良い心がけですね。感心しますよ。ですがそういうものには大抵思わぬ落とし穴が待っているものですよ。」
「どういう事ですか?」
「急がず焦らずじっくり挑んだ方が良いという時もあるということです。
子供が成長することは、親にとってこれ異常ないほどの喜びであることは古今東西変わりはありませんが、あまりにあれもこれもと詰め込もうとすると、子供はパニックを起こして親に反抗するようになってしまうものです。
それにあの人の子供で何々がうまくいったから自分も、と思い違いをして功を焦ろうとすると上手くいかない、という時もあります。要は自分流を模索しながら気長にやってみる事です。
あー……練習もいいですけど、明日の生活に支障が無い程度にしておきなさい。それじゃ、お休み。」

コルベール氏は踵を返し寮塔から出て行った。
ルイズは暫くの間ぼうっとそこに立ちつくしていたが、傍で自分の服を引っ張るサフィーに気づき直ぐに元に戻った。

「ごめんね、サフィー。さ、練習しましょうか。」
411Deep River代理:2009/04/15(水) 02:33:19 ID:fx8V59/3
同じ頃、ロマリアの大聖堂の巨大な一室では、一人の男性が鬼気迫る表情をしている拘束された少女に対しとある術をかけていた。
厳密に言えばそれは人間の少女とは違う。なぜならば彼女は頭に一対の角を持っていたからだ。

『ナウシド・イサ・エイワーズ・ハガラズ・ユル・ベオグ……』

まるで詩を詠うかのように美しく繊細な声が部屋いっぱいに反響する。

『ニード・イス・アルジーズ・ベルカナ・マン・ラグー!』

声が一頻り大きく響き、部屋の空気が陽炎の様にゆらっと揺れた後、術をかけられた少女の表情は一気にとろんと眠りそうなものになる。
そして男性は、今度は教会にある組み鐘が出すよう様な光沢のある声ではっきりと言った。

「君は今日一日何もしていない。そして君は心の内奥から聞こえてくる声を全く知らない。それが何時、そして何故起きるのか。どんな意味合いがあるのか何もかも。」

男性の言葉は、事情を知らないものが聞けば更にショッキングな物となっていく。

「君はここに来る前の事は何一つ知らない。すべて忘れている。どこでどんな人達とどんな風に過ごしたのか。何もかも。分かったかな?分かったなら『はい』とだけ返事をしたまえ。」
「はい……」

亜人の少女は虚ろな声で男性の声に答える。どう見ても一筋の疑問も持たずに。
男性はそれを見ると穏やかに微笑み、自分の配下の者に彼女を拘束から放つよう指示した。
自由の身となった少女は、生まれたての小鹿のようにふらふらと男性に向かって歩く。
それを見た男性は誰にも聞こえないよう小さく嘆息した。

「やれやれ……試験では何とか十日程は持つようになりましたが、安全のためにはまだまだこの処置を毎日続けなければならないとは……骨の折れる物ですね。」

少女は尚も前に向かって歩く。
彼女に偽りのアイデンティティーを与えた見目麗しき男性に向かって。

――――――――――
202 :Deep River作者:2009/04/13(月) 15:15:26 ID:.mucFrBk
投下終了します。長いこと2話目まででほったらかしていてすみません。
ただ他の作品と共に執筆の道を邁進して行きたいと思います。
元ネタは結構カオスな作品でしたが、今作はそこから、避難所行きにならないよう極力スプラッタ成分はプロットの段階で抜いています。
これからこちらも投下速度を上げていこうと思います。それではまた近い内に。

以上です。どうぞ代理投下の程宜しくお願いします。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 06:04:35 ID:0BdcNDB5
ヒューキター


これは・・・ワルド改心フラグか
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 07:48:43 ID:7rMWsst+
ルイズはなぜ素晴らしきヒィッツカラルドを召喚しないんだ?
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 07:52:47 ID:t9+myVXa
>>413
小ネタに既にあるぞ
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 07:58:30 ID:7rMWsst+
>>413
マジか!
見逃してたんだな
サンクス
お礼するぜ
……ただし真っ二つだ!
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 08:15:43 ID:TPieQCog
No,I want two!
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 09:21:22 ID:aOb3YaVM
>>416
メガトロン様なにやってんすか
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 10:16:00 ID:LLZaMQ6q
「ランページはテファが召喚して憚られる者にするのがいい」という意見を見て
「じゃあルイズが召喚するのはダイノボットだな」と自然に思ってしまったんだがどうしたものか。
んでもってジョゼフがメガトロンさまを、教皇がタランスを召喚するのという…
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 10:43:50 ID:gX1MxQWf
メガヌロンとヤメタランスに見えて怪獣大決戦
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 11:04:11 ID:8qO7JwLX
>>403
運営スレあたりで提案しようか迷っていたんだが
@wikiのタグ機能がまさにそういうジャンル分けにもってこいだと思うぞ
http://www35.atwiki.jp/anozero/tag/?sort=tag
今は誤登録されたタグしかないけど
各作品のページにジャンルや属性のタグを登録していけばそれでソートできるようになる
「欝」とか「ギャグ」とか「ロボ召喚」とか「ウェールズ生還」とか「強化シエスタ」とか「イザベラ」とか「ルイズ以外が召喚」とか
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 11:32:23 ID:qURIL1zD
>>420
全てにおいて責任もってやってくれるなら歓迎するがちょっとやってあとは有志に
お願いって考えなら止めて欲しい。
正直、管理人が一括してまとめてるわけじゃないから類似タグの整理とか誤タグの
削除なんかを定期的に複数の人間が行うのは難しいと思う。

そこらへんのとりまとめを
「他にいなければ自分が全部やるぜ」
と思ってるなら応援するからがんばれ。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 12:53:19 ID:1hAIZysa
>>421
既にタグ機能があって、特に整理や削除をしてるわけでも無いのに、
ジャンル分けに利用しようとなったら、それをやれってのは何故?

あんまりベタベタ貼り付けると容量とか無くなっちゃうの?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:09:29 ID:bWOnrz9B
既にある作品のタグ全部整理していくのって、かなりの手間だと思う
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:16:03 ID:1hAIZysa
読んだ人の気が向いたら、>>420にあるような単語を適当に追加するんじゃダメなの?
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:22:28 ID:e9hsPTEN
タグが凄いカオスになると思う
それはいいとしても荒らし目的のタグをどう判断するかが問題
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:28:06 ID:qURIL1zD
>>422
タグを有効活用しようって話は既出なんだが、過去に何も決めずに
好き勝手やった結果がタグがついた物がポツポツできて
まったく使い物にならない状態で今に至ってる。

で失敗してもタグ適当につけたほとんどの人は現状復帰もせずに放置。
見切り発車でやるとまたゴミが増えて容量を浪費するんじゃないかって言う心配
から提案するならそこらへんのフォローもして欲しい。

レスが説明不足なようですまんかった。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:31:04 ID:2+QZUPsx
それならジャンルの名前とかなにを分類するかとか
避難所にスレ用意してそこで一通りタグを決めておけば済むかと
類似タグにもそれで対応できるだろうし
ちなみにいくつかゴミタグ消しといた
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 13:54:26 ID:qURIL1zD
そこらへんの取りまとめを言い出すからにはやって欲しい。
他にもまとめ方のページとかにもタグの編集方や使い方の説明もつけるべきでしょ。

新規更新時は別につけなくても、つけたい人が好きにつければいいって話で
タグの有無がページによって異となるとジャンルでソートが出来るとか言う
最初の目的もまともに出来なくなる。

正直、長編話数順とかも更新できていないのがあるから
更新作業が増えると問題のあるページが増えるだけで
ソートとかに使える有効なページは十分な割合にならない
のではないかと。

タグをつけてくれる人がいる人気作の中で検索するのが目的、
全体を検索できるとは思っていないって話ならこのレスは無意味になるが
それならページが重くなる分のメリットを感じないから個人的には
止めて欲しいと思う。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 14:07:09 ID:2+QZUPsx
積極的に反対しなきゃいけないようなデメリットはないと思うが
タグ付けたくらいでそんなに重くなるのか?

それに確かに一気に全部整備するのは難しいだろうが
navi追加なんかと同じで目についた所から追加していっても長期的に見て無駄にはならないと思う
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 14:12:46 ID:5SWpT9xD
まとめ才人を召喚
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 15:31:02 ID:0l+SlaTN
>>375
投下の度にURL張らなくて良いよ
『これまでの話は検索を掛けて下さい』とでも書いとけ
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 15:58:49 ID:BUifN1hM
別に張ってもいいんじゃねえの?
さして容量食うわけでもなし別に問題ない気がするが
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 16:02:14 ID:j3pXIMkz
スルーしろよ
434出没!使い魔(1レスのネタ):2009/04/15(水) 16:08:19 ID:9GbOxwiF
愛川欣也「おまっとさん!あなたの街の宣伝部長、愛川欣也です、今日取り上げるのはトリステイン王国」

いろんな街に詳しい山田五郎「トリステインですね、あの国は下水道の蓋が面白いデザインなんですよ」

それでは、第十位…真夜中は別の顔、です

 チクトンネにある酒場、魅惑の妖精亭、リーズナブルなお値段で楽しめる店として人気ですが
 深夜になると始まるのは店長のパフォーマンス、これを見るために隣国から来る人も居るとか


シブガキ「ここで薬丸印の新名物!わたくしが見つけてきたのは、魔法のポーション『惚れ薬』…」


では、トリステイン名物、第一位は…ビッチ女王、アンリエッタ!
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 16:20:09 ID:bWOnrz9B
確かにタグつけて回る人決めないとえらいことになる気はする、ニコニコみたいに
んで変なタグ消して回る人も決めてーとなると苦労ばっかにならんかね
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 17:38:47 ID:TC5yzm94
エン・サバー・ヌール召喚
能力的には超当たりの二重丸だがルイズに限らずアイツを従えさせる
器量を持つメイジっているのか?
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 17:56:45 ID:FRkhFLFo
タグに関しては運営スレでやってくれ。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 19:02:24 ID:HQ5gY1jj
いつもニコニコあなたの隣のニャルラトホテプのニャル子さんを召喚
ナイアさんと違ってニャル子さん本人はいい子だからルイズとの学園混沌コメディを繰り広げてくれる!
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 19:44:32 ID:W9wmxK2h
全ニャルラトホテプ入場
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 20:42:35 ID:F7pq9k1Q
虚無の担い手がそれぞれ、
矢野健太郎漫画のナイアルラトホテップ
後藤寿庵漫画のナイアール
デモンベインの……

な感じで別作品の同一人物召喚とか。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 20:44:55 ID:FGHZTXkn
ペルソナの神取がアップをry
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 20:54:57 ID:VaEOYae8
あうー今日も失敗ニャルラ〜
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:03:43 ID:JQFaeZbr
グレートファーザー「パパと呼んでくれ……」
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:28:13 ID:qZBpW3VH
妖神グルメ「ハシバミ草で絶品料理を作って差し上げます」
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:32:44 ID:RwJYLbcj
「這いよれ!ニャル子さん」を忘れてもらっては困る。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:43:28 ID:hS0ctv9m
罪と罰のラゴ
2罰の神取鷹久
時間城の伯爵
偽パパ
ヒトラー
アウグストゥス
ナイアさん
ニアーラさん
ネズミ
CWF
這い寄る混沌
そっと這い寄る混沌
ニャラルトホテプ

あと何か忘れてる気がするが

路地裏の武器屋が伯爵なんてーシーンが今見えた
いっそ輝くトラペゾヘドロンを召喚とか
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:51:39 ID:2BuCw4y/
朝夜の無貌の神なら善い奴だぜ!
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:55:00 ID:W9wmxK2h
登場人物全部ニャル様・・・・・・もうゼロ魔じゃねえや。

>>447
ありゃ暇潰しの愉快犯に近いぞ。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:56:42 ID:QBChwcG0
終末少女幻想と鋼炎にも出ていたような
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:58:30 ID:2BuCw4y/
>>449
アリスマチックの方は上泉信綱だな
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:08:58 ID:EKGsozLG
>>444
奴を召喚したらとりあえずフレイムやらヴェルダンデやらきゅいきゅいの無事は保障されないぞw
真っ当な料理の天才に格上げされたマルトーと料理対決する小ネタなら考えた事あるけど。
オチは使い魔が何匹もいなくなってるって感じで。

>>445
むしろラヴクラフト御大のニャルさまとかこそ忘れてもらっちゃ困るぜ。
闇の跳梁者とかブラックファラオとかさ。
外見的には闇に吠えるもの形態が一番好きだけど。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:16:24 ID:06xaIyLK
アン様がパワードスーツ「メタルウルフ」を召喚

反乱軍、レコン・キスタによりトリステイン王国が陥落した
だが!王都トリスタニアからたった一人の女が立ち上がる!
彼女の通称は”メタルウルフ”。
自由を取り戻すためメタルウルフは戦い続ける。真の正義は砕けない。
何故なら彼女は…彼女は………王女だからだ!!

アン様「オーケィ……レッツパーリィィィィ!!トリスタニアへようこそ!」
マザリーニ「淑女的な登場ですぞ姫さま」
アン様「淑女なのは17時までよ!」

「わたくしは……わたくしは……反乱軍共のような腐ったチーズには決して負けない!
なぜならわたくしは!トリステイン王国王女だからよ! Yeahhhhhh!!」


書いてて思った、なんだこりゃ
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:23:34 ID:7zQQ6kn7
明らかに魔改造だが激しく読んでみてぇw
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:25:06 ID:2BuCw4y/
なんか某筆頭を思い出してしまったぜw
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:25:28 ID:FtMeieUD
こんなビッチなら大歓迎
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:27:24 ID:CuOulRXn
>>452
GJw
乗ったら人格が変わるような機能でも付いてんのかアレw

個人的に信綱だったら召喚されるよりいつの間にかクラスにいたってのがいいな
んで終盤に普段通りの口調でラスボス宣言して才人とルイズを挑発したり。

「ワリィ。”こっち”も欲しくなったんだと」
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:27:27 ID:KpwWcfIc
>>452
そしてラストトリステインヒーローワルドがンフハハハハハハとか笑い出す訳ですね、わかります。
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:29:35 ID:nbdcyaoF
何かこう、ゼロ魔には「お前ら黙って俺に付いて来ぉおおおおい!」って感じのキャラがいないよな。
いたらいたで濃すぎて扱いに困りそうだけど。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:45:01 ID:jhs4SFj6
>>458
最近のはやりじゃないからね、そういうキャラ。
ほかの創作物を見まわしても、いないことはないけどおおむね扱いが微妙。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:46:06 ID:mzRufG5A
>>452
小ネタであったな
メタルウルフルイズが

アン様でもいいなw
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:55:37 ID:Hrg7yiQC
誰が乗っても同じ口調になるけどな
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:59:41 ID:vl9GNqkf
>>452
神監督マッシーンを湖に放り投げるのを幻視した

・・・あると思います!
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:00:57 ID:fqJal7cW
>>456
人格が変わると聞いて。
ゼオライマーを召喚。
使い魔のルーンの影響なのか、何故か乗れてしまうんだけど、いつしか木原マサキの記憶に侵食されていくというのを思いついた。
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:08:09 ID:UxEC2gM4
>>463
ゼロ繋がりで、Wガンダムのゼロシステムとかもあるよね。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:09:34 ID:8qO7JwLX
アン様がめちゃ強ければ
王党派全滅前に自ら援軍に行くアン様とか出来るかも
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:11:46 ID:mzRufG5A
まぁ大統領ならコンビニ行く感覚で宇宙まで出るから援軍ぐらい楽勝ですよ
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:12:10 ID:MCBCADU6
うんこきもちいい
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:18:38 ID:Hc0qz5Dr
>>465
ゼロの社長がそれに近くね?
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:24:46 ID:LI/AASzg
>464
『ゼロワンの使い魔』ですね、だいたい分かると思います。

で、どっちを?
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:39:30 ID:nbdcyaoF
え、トランペットを吹いて暗所恐怖症の人造人間を召喚するだって?
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:45:52 ID:MQH1sOIQ
>>465
姉妹スレの避難所にある
『桃髪の爆発魔と銀髪の騎士』
がまさにそれ

ここのアンアンは、ポルナレフをしてジョースター家以上の黄金の精神と言わしめた黄金アンアン
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 23:46:52 ID:MR1isFDc
ゴーストステップの人乙。
ルイズがすごい成長しててどうしようかとw
しかしタクシードライバーに雷神か…グリーンどころかホワイトエリアでもそう簡単には武装解除されないなw

>452
すげぇ読んでみてぇwww
しかしアン様を教皇に置き換えても面白そうだというか収拾つかなくなりそうでカオスだw
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:13:52 ID:OhKghEqC
>>452
IFスレで是非書いて下され。

…やっぱまずいか。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:32:04 ID:fx/vruy3
>>464
爆発しかできないゼロに召喚されたので、自爆しかできないんですね、分かります。
ルイズが呪文を覚えるとゼロの武装も使えるようになるんですね、分かります。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:51:20 ID:vCpxlgSq
IFと見るたびアイディアファry
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:55:29 ID:V4mN9yUT
この冥界住人め!!
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:56:31 ID:it3FTEtW
ゆゆうじょうパパワー!
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:57:44 ID:xDp1Mo8o
冥界波!!  ジャッ!
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 02:37:27 ID:emdF1I1r
>>469
お前は圏外だ。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 04:53:22 ID:t7cOkKwQ
>>458
1レスのネタで植木等の「日本一の無責任男」から
平均、と書いてタイラヒトシを召喚、ってのを考えたが
元ネタの映画をちゃんと見たわけではないのでやめた

同じ理由で寅さん召喚も構想止まり
釣りバカのハマちゃん召喚は書いたけど
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 05:37:14 ID:Iepk1hlq
>>480
いっそジャスティ・ウエキ・タイラー召還しちゃえよw
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 05:54:05 ID:QPL2f4yb
ロリコンだから従順だろうなあ
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 06:13:57 ID:n5pe5rty
無責任艦長タイラーだっけ?
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 07:16:17 ID:Iepk1hlq
>>483
そうです。

ふと思ったんだがトオル・J・ヒラガーでもイイかも。
コッパゲとタッグを組んで怒濤の如く産業革命を推し進めていく話にww
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 09:18:54 ID:QPL2f4yb
ヒラガーとかルイズ絶対コントラクトサーバントしないだろw
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 10:33:01 ID:dqjHCLAw
>485
ファミ通文庫版ならビジュアル的に大丈夫では?
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 11:01:54 ID:Iepk1hlq
>>485
>>486
いやそこはもう富士見版でコッパゲ強制で……じゃないと面白くないでしょww

つかタイラー一味呼んだら「場違いな工芸品」に何が出てくか気になるな。
下手にヒラガーとか召還したら自分で何でも作りそうだからいらない気もするしw
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 11:10:41 ID:0wRckE5N
>>487
>場違いな工芸品
宇宙を漂う畝傍とかなら丁度いい?
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 11:21:51 ID:Iepk1hlq
>>488
微妙に活躍できない気が。
かといって「そよかぜ」だしたらオーバーテクノロジー過ぎるしなぁ……
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 11:36:14 ID:dqjHCLAw
富士見版一巻の頃の山本君を出したなら、ルイズの行動で胃痛に苦しむ事になりそうだ。
職業軍人として、有能だからこそ王権国家での発言に苦しみながら、常識を知る模範軍人として諫言を……しても、行動を改めそうに無い連中ばかりなのが如何ともしがたいか。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 14:17:03 ID:dMf3f5Nh
「ムーンウォーカー」よりマイケル召喚
「アォ!」とか会話がかみ合わないがスペシャルアタックで七万の兵が
一糸乱れず踊り狂う(で、全滅する)様はいっそ壮観とすらいえるかも
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:00:15 ID:UxUsmPv7
小ネタで見た気がする
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:01:38 ID:H46GClTx
あったね
ギーシュ等男子学生が餌食になってたのがw
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:15:50 ID:dMf3f5Nh
>>492
確認しました
ホントにあった
タイラーもあった
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:31:34 ID:UFm+nVmb
そう言えばここのスレタイは「あの作品のキャラが『ルイズに召喚されました』」であって『ルイズの使い魔になりました』じゃないんだから、
必ずしも契約して使い魔になる必要はないんだよな。
忘れがちだけど。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:43:00 ID:TFqyz3sz
実際契約前に逃げたり大変なことになったりしてる作品もあるしな
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 15:45:58 ID:H46GClTx
しかし契約してないやつなんて避難所のプレデターとブラスレイターのジョセフくらいじゃね?
(自力で解除したポップにしても一応は契約してるんだし)
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:03:13 ID:zb5sTevG
グローランサーのモニカもたしか契約してなかった
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:35:11 ID:teYTBHPR
聖帝とか
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:38:12 ID:dEuuqWNL
小ネタには未契約のまま終了がけっこうあるな
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:38:49 ID:mNLQYHhe
無重力巫女さんも契約してから解いてたっけか。
まあ、使い魔にならずに逃げ出して、ルイズと完全別行動で話を進めてくってのはかなり困難だしな……やって出来なくはないだろうが、アンチルイズ色がどうしても出てしまうだろうし。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:43:49 ID:Z76XJTrg
節子!それクロスとちゃう!
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 16:57:22 ID:H46GClTx
>>501
アンチルイズというのとは違うんじゃね?
ただ本来いるべき味方がいないから本編より追い詰められてるだけで
(プレデターとブラスレイターの方の追い詰められっぷりは流石に同情するけど
 今までにないタイプの話だから続きを見たいのも事実)
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 17:35:41 ID:mNLQYHhe
>>503
もちろん、即アンチだとは思ってないよ。『色が出てしまう』と思うだけで。
でも、召喚した使い魔に逃げられた、という一点だけで、学院での境遇が酷くなるだろう事は予想できるじゃろ?
留年までいっても不思議じゃないし、その辺を少し描写しただけでアンチと騒ぐようなのもいるだろうなーと。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 17:42:31 ID:H46GClTx
改めて考えると契約後じゃなくて『契約する前』に逃げられたら、コッパゲさんの方の責任問題になるんじゃなかろーか?
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 17:55:37 ID:TFqyz3sz
そんなもん書く人次第だろ…
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 18:04:41 ID:mNLQYHhe
>>505
地球の常識で考えるとそうなりそうだが、フーケ関連の教師連中とかギトー先生の描写とかを見てると、あんまりその辺期待できないなあ、と思うのも事実。
学院の責任問題になるかどうかは作者の解釈次第じゃないかな。コルベール先生なら自分から責任感じそうだ、とは思うけど。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 18:19:31 ID:OBO0Pms4
そういえばウルトラの人のエースも
コントラクト・サーヴァント的な契約はしてないような
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 18:21:23 ID:neF0nBmT
あれはサイトと契約してそのサイトとルイズがAと同化してるわけだから………
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 18:25:53 ID:OBO0Pms4
そうだった
あと、ガンダールヴのルーン効果の恩恵受けてたからルイズの使い魔扱いでいいってことか
春も半ばを過ぎまして、皆様どう過ごされているでしょうか?
とりあえず予約が無ければ3分後に投下しますね。
49.感謝の詩

ルイズが学院長の部屋で説明を受けているとき、マーティンは図書館にいた。
分からない事を調べる際にここ以上に最適な場所は早々無いが、
そんな知識の集積場でも、分からない事はある。死霊術師の魔術について等はその内の一つだった。

「ま、ある方がおかしいんだが」

と一通り教師専用の棚と目録を覗いてから、図書館を後にした。
何でこんなことをしているかといえば、原因はマニマルコである。
マーティン自身はこの国の人間では無いのだから、トリステインの為に戦ったりしようという気はそんなにない。
しかし、タムリエル帝国の敵にして死霊術師の長たるマニマルコが戦争に関わっているのなら、話は変わってくる。

もし、かの死霊術師がこのハルケギニアを手中に収め、何らかの手段でタムリエルに戻ったとしたら。
ただでさえ邪神との戦いで疲弊しているタムリエルに、彼の蠱の王が宣戦布告をしてきたならば。
あらゆる国が死霊に包まれ、アンデッドが住まう地になるだろう。
ゾンビが墓の中から這いだし、スケルトンが昼夜関係なく街という街に現れる。
メイジが変化したリッチダムが伯爵となり、帝都の玉座には蠱の王が座って高笑いを上げる。

考えただけで寒気がする。どうにかしなければならない。
つまるところ倒せば良いのだが、問題がある。

「どうすれば倒せるかということだ」

マーティンはメイジギルドにおいて優れた召喚魔法の使い手であった。
タムリエルにおける召喚魔法は、アンデッドの召喚もその内に含む。
学術上「広義の意味での死霊術」に分類されるそれは実験目的でのみ使用を許可される。
戦闘目的で使っているメイジの方が多いが、気にしてはいけない。今のメイジギルドにそんな事を気にする奴はいない。

だからマーティン本人もアンデッドに対して一定の知識を持っているが、
かといってゾンビの作り方や自身をリッチにする方法、更に言えばマニマルコの様に死んでもまた蘇る方法なんて知るはずがない。
一度(正確には二度)倒されても蘇ったマニマルコに対して、普通に挑んでも意味が無いことはマーティンも理解しているが、
死霊術そのものの知識が無い彼には、その対策を練る事ができなかった。

そんなわけで異世界の図書に頼ってみたが、
予想していた通り、そんな事について書かれた書物は見あたらなかった。

「ただのアンデッドなら、それなりにどうにかする自信はあるんだけどなぁ」

遺跡や洞穴、様々な場所でゾンビやスケルトンといったオーソドックスな物から、
実体の無い死霊、メイジや古代の王が変化したリッチ等と対峙した経験のあるマーティンは、
このやっかいな問題をどう片付ければ良いのか、悩みながらルイズの部屋に戻っていく。
名目上、マーティンの主人であるルイズも、二つの月が窓から綺麗に見える自分の部屋で、
詠みあげる詔について悩んでいた。四大系統に対する感謝の辞を、
詩的な言葉で韻を踏みつつ詠みあげなければならないのだが、ルイズは何も浮かばなかった。

「炎は熱いので、気を付けること、とか?」

韻を踏むどころか、詩的のしの字すら踏めていない。
しかしルイズはそれに気が付いていない。まったく詩の才能がないらしい彼女は、
それらは後で考えることにしてベッドにぽてっと寝ころび、始祖の祈祷書を眺める。
国宝だというのに、固定化がかかっていないのかぼろぼろで、中身には何も書かれていない。

「これ、本物なのかしら」

乱暴に扱えば、すぐに破れそうな紙を丁寧にめくっていく。
こういった始祖由来の品には偽物が多い。ルイズもそれくらいは知っている。
偽物か本物かを見分けようにも、リコードは下手に使うと危ないって、
ちいねえさまの日記で嫌というほど思い知ったし。
そこまで考えて、ルイズはオルゴールの事を思い出した。

「あの時は、指輪をはめたら音が聞こえたわね」

返すのを忘れてそのままもらってきた水のルビーを指にはめて、再び祈祷書を見る。
もしも本物だとしたら、何か反応があるに違いない。
そう思って見ていると、突然水のルビーと始祖の祈祷書が光り輝いた。

「……本物だわ」

故意にしたとはいえ、急に光り出したら普通驚く。
ルイズは光る祈祷書に、何か書かれている事に気が付いた。
古代のルーン文字で書かれていたが、ちゃんと授業を受けているルイズには読む事が出来た。

序文

これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、神によって創られた小さな粒より為る。
四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その4つの系統は、
『火』『水』『風』『土』と為す。

ルイズの頭脳は知的好奇心に支配され、詔なんてそっちのけでページをめくる。

我は神より力を奪った。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。
我が神から奪いしその系統は、四の何れにも属し、さらなる小さな粒にも干渉し、
影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四でありまた始祖。始祖すなわちこれ『虚無』なり。
我が神より奪いし力を『虚無の系統』と名づけん。

「力を、奪う?」

その神とは夢の中で歌われたロルカーンの事だろうか、思わずつぶやいてページをめくる。
これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり
『虚無』を扱うものは心せよ。いずれ再び来る災いを呼び起こす者が、異界への『門』を
開けさせぬよう努力せよ。『虚無』は強大なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。
詠唱者は注意せよ。時として『虚無』は強力な力故に命を削る。したがって、我はこの注意書きから封印されし
書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪やシシスの力を用いても、この書は開かれぬ。
選ばれし読み手は我とオリエルが創りし『四の系統』の指輪を嵌めよ。さればこの書は開かれん。

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

文章はそこで途切れて、後には白紙が続いている。
ルイズは、呆然として呟いた。

「オルゴールにリコードをした時に出会ったあんたも、どことなく頼りなさげだったけど。
 いくらなんでも、注意書きまで封印しちゃ意味ないでしょうが」

「そう言ってやるなよ。色々大変だったんだよ」

部屋のインテリアとして扱われつつあるデルフリンガーが、ブリミルを庇った。
ルイズはその言いぐさにカチンと来た。そもそも、この剣が何も言わないから昔の事がよく分からないのだ。
今だって祈祷書について何も言わずに部屋の隅に転がっていたのだ。本物かどうかくらい教えてくれてもいいだろうに。

「ならいい加減口を割りなさいよあんたは」
「やだ、ぜったいやだ」

そのどこか人を馬鹿にした様な物言いにルイズは尚更腹を立てた。剣のくせに、ただしゃべるだけの剣のくせに。
人様にたてつこうなんて6000年早いわ。キッとルイズはデルフをにらみつける。
そして立ち上がり、ふところから杖を取り出す。

「ど、どしたね娘っ子」

デルフは怯えてルイズにたずねる。

「ねぇデルフ。あんた本体どこ?」
「どこだろう、刃かな…」

この後の行動が何となく予想出来たので、デルフはしれっと嘘をついた。

「ふうん」

ヴァリエールの女の血を思わせる表情で呪文を唱え、今正に放とうとした時、ドアが開いた。
マーティンが帰ってきたのだ。彼は怒り顔のルイズと怯えているらしいデルフを見比べる。

「えーと……ルイズ、何かあったのかい?」

ぷいっと顔をそむけて、ルイズはベッドに寝ころんだ。

「た、助かったぜ相棒」
「デルフ、また何かいらない事でも言ったんじゃないだろうね?」
そこまで言ってないとデルフは言ったが、マーティンはあまり信用せずに視線をルイズに向ける。
ルイズは怒りを表せずにむすっとしたままだったが、無関係なマーティンに当たる訳にもいかないので、
むすっとしたまま先ほどの事について話す事にした。


「神の力を奪う……か」

ぼろぼろの祈祷書を調べるマーティンは、そんな話を聞いた事がなかった。
だが、実際にその系統を受け継ぐルイズがいるのだから、どうにかして奪ったのだろう。
マーティンは祈祷書をルイズに返す。

「序文以外は、何も見えなかったのかい?」
「ええ、その後は白紙が続いていたわ。必要になったら見えるのかしら?」

多分そうだろうと頷いてから、マーティンはどうやって祈祷書を手に入れたのかを聞いた。

「あ、そうだったわ。詔を考えないといけないの」

ルイズは、学院長から聞いた話をそのまま伝えると共に、
詩についてとても困っていると話した。

「なんも思いつかない。詩的なんていわれても、困っちゃうわ。私、詩人なんかじゃないし」

マーティンは頷く。そして優しげな声でルイズに話し始めた。

「なるほど。たしかに大変だね。けれど、君は一番大切な事を忘れているよ」
「大切な事?」

「アンリエッタ姫が君に頼んだという事だよ。素晴らしい詩を作らせて読ませるだけなら、
 そういった事が得意な人を指名すれば良い。でも、姫様はそれをしなかった。
 友達である君が作り、君が詠む詩を聞きたかったんだ。だから、そこまで難しく考える必要は無いよ。
思いつくまま、君が考える感謝の詩を綴れば良い。多少不格好でも問題無いさ」

ルイズはハッとした。考えてみればマーティンの言う通り、詩自慢な誰かに任せても良いのに、
アンリエッタは自分を選んだ。きっと適当に選んだのだろうなんて思ってしまった自分が恥ずかしくなり、
顔が赤くなる。

「そ、そうか。そうよね。別に完璧にしなくても良いわよね。炎は熱いので、気を付けること。
 とかでも気持ちが伝わってたら構わないわよね!」

しかし、その言葉を聞いたマーティンの顔は驚愕に満ちた。
友達がスリを行っている現場を目撃した時のように引きつった表情で。

「……ルイズ、今なんて?」

マーティンは油断していた。というのも、ルイズはできる子である。
やればできるではなく、できる、なのだ。元々学業は実習を除いて優秀で、
それらの知識もただ暗記しているのではなく、理論と法則を理解した上で覚えているのだ。
そんな彼女であるならば、貴族のたしなみとして詩歌の一つや二つ、そらんじて言える程度には学んでいるに違いない。
そう思ったからこそ、さっきのような助言をしたのである。
本当にできないとは考えていなかった。
ルイズは何も悪くない。教えなかった親が悪い。ヴァリエール公爵は教えようとしたのだが、
奥さんに却下され、貴族の子女としてはそこまで必要にならない事柄しか教わっていないのだ。
尚、カリーヌ・デジレは詩的、とか雅、とかが全く分からない鋼の人である。

ルイズは何故マーティンがそんな顔をしているのか分からないまま、
言われた言葉に返事する。

「炎は熱いので、気を付けること」
「結婚式は、内々でやるんだよね?」
「王族の式よ。大々的にやるわね。観客もたくさん」
「その中で……ううむ。いかん。それはいかん」

そんな大層な式でこれに近い「何か」を「詩」として詠みあげれば、
彼女はトリステインとゲルマニアの両国で笑い者にされるだろう。
下手をすれば、末代まで語られる笑い話になるかもしれない。
どちらにせよ、ヴァリエール家の名前に泥を塗るのだけは間違いない。

マーティンはとりあえず死霊術について考えるのをやめ、深刻な面持ちでルイズを見る。
ルイズはきょとんとした顔だった。

「いけないの?」
「先ほど言った手前、少し言いにくいけれど。ルイズ、程度の問題だ。もう少し上手いと思っていたんだ」

ルイズは小首を可愛らしくかしげながら、マーティンを見る。

「そんなにダメ?」
「おそらく、君の家名に傷が付くくらいには」
「……なんですってぇええええええ!?」

家名を出されて、ようやくルイズは事態の深刻さを理解した。
大勢の観衆と結婚する二人が見守る中、巫女として詔を詠む自分。
詠みあげた後、背後から怒りの表情で自分を迎えに来る母と長姉の姿を想像して、
ルイズの顔は真っ青になった。

「どどど、どうしようマーティン!安請け合いしちゃったけれど、
 考えてみればとんでもないことを引き受けてしまったわ!」

「ああ、確かにとんでもないことだね」

静かなマーティンと対照的に、ルイズは表情をころころ変えている。
不安で顔を青くしたり、臆面もなく引き受けた自分を恥ずかしく思って赤くしたりと大忙しだ。
ルイズはどうしようどうしようとベッドをごろごろ転がっていたが、
急に止まってマーティンを見た。

「代わりに作ってくれたりとか、しない?」

いつもの彼女なら、絶対にしない行為である。
自分でやらなければ気が済まない性質であり、
自分が任された仕事を他人に頼むなんてとんでもないと考えるのだが、
家名に傷が付くと言うのならば、話は別である。
ここ最近色々あったおかげで名誉欲は減ったが、
だからといって自分の行いで家族やご先祖様に恥をかかせるなど、
ルイズにとって恥ずべき行為だ。
上手い詩が考えられるのなら、一ヶ月の間に自分で考えて作るだろう。
だが、全く思いつかない。そして、彼女が信頼をよせるマーティンが、
いつも失敗を励ましてくれる彼が、それを撤回する程自分の技量は低いらしい。
なら、頼んだっていいじゃない。いっぱいいっぱいのルイズはそう考えた。

雨の日に、拾って下さいと書かれた箱の中に座る犬のような、
哀愁や悲しみや嘆きといった感情を詰め込んだ目つきで、
ルイズはマーティンをすがるように見る。

「こことタムリエルでは魔法について、そもそもの成り立ちやとらえ方が全く違う。
 私はまだ、この世界の魔法を詩で表せるほど詳しく理解出来ていないし……そう言えば結婚式はいつだい?」

「確か一ヶ月後だったかしら。タルブでアンリエッタに聞いたわ」

一ヶ月で出来るだろうか。人々を感心させる程でなくてもそれなりに認められる詩を作れるだろうかと考えると、
マーティンは首を横に振りたくなった。

「一ヶ月、四つの詩、各系統についての理解……すまないルイズ。正直自信が無い」
「そ、そんな……」

ルイズの頭の中は真っ白になった。宮中からの草案についても少しだけ考えたが、
もらったとしても、それはあくまで草案であり決定版ではない。
そこから編修しなくてはならない。もしかしたらその草案もあんまり良くないかもしれない。
良くなかったら作るのは私よね?ガックリとうなだれるルイズは、両手を額につける。

「なんてこと。終わりだわ人生の。ああ、なんてこと」

そのまま顔を左右に振り始め、そして泣きだした。
不憫に思ったマーティンは、何か方法は無いだろうかと考える。
名案がひらめいた。

「そうだ!先生達に頼んでみるのはどうだろうか?」

ルイズはピタリと泣きやみ、マーティンをじっと見る。
目が少しばかり赤くなっていた。

「学校で各系統について教えている先生達なら、それぞれの系統について私達より理解しているだろう。
 それに、ある程度は詩についても学んでいるだろうし」

「そうと決まれば早速行くわ!ついてきて!」

今まで以上にお家の名を汚す等、ヴァリエール家の娘としてあってはならない。
ルイズは早速部屋を飛び出し、とりあえず思いついた先生の所へ向かうのだった。


「なるほど。それでこんな時間に私の所へ来たのだな」

疾風のギトーは、必至な様相のルイズからではなく、
落ち着いているマーティンから事情を聞き取った。適切な判断である。
ルイズの判断が適切だったのかは分からない。風といえばこの人くらいしか思い浮かばなかったのだ。

ギトーは眼光鋭くルイズを睨む。

「ちなみに、風についてはどう言うつもりだったのだ?」
ルイズは臆面無く言った。

「風が吹いたら、樽屋が儲かる」
「ミス・ヴァリエール。私は君の生まれについていつも疑問に思っていたが、今確信に変わった」

いつも通り胸をえぐる一言を添えたギトーは、涙目のルイズを見ながらため息をもらす。
ルイズが先ほどの返事を否定と受け取り、ドアノブに手をかけようとすると、ギトーはニヤリと笑った。

「よろしい。一週間で風の詩を書いてみせよう……私の詩が結婚式で詠まれるとはなんたる名誉か!
風を賛美する素晴らしい詩を姫様に送らねば!さ、考えなければならんのだから出て行ってくれ、早く出るんだ」

結局のところ風について書きたいギトーは、早々に二人を追い出して自室の扉を閉めた。

「次は土ね……シュヴルーズ先生に聞いてみましょう」

約束を取り付けて、少し落ち着いてきたルイズは小走りで駆け、
マーティンはその後をゆっくりと追いかける。


シュヴルーズは自室で、急にやって来たルイズの話を静かに聞き終えてから口を開いた。

「あらまぁ、それはそれは。けれどミス・ヴァリエール。よろしいのですか?
 あなたが作るはずだった詩を、私が作るのですよ?ためしに何か、土で詩的な言葉を言ってごらんなさい」

ルイズは、考えられうる限りの詩的な言葉を探し、口に出す。

「土崩瓦解」
「なるほど、分かりました。あなたには詩の勉強が必要のようですね」

先ほどからダメ出しばかりを浴び続け、ルイズは色々ヘコんできていたが、
シュヴルーズはそんな彼女を励ますかのように優しげな表情を浮かべている。

「聞くところによると、最近魔法が使えるようになったとか。あなたの努力のたまものですよ」
「先生……」

先ほどのどぎつい風の教師と違い、暖かな視線でルイズを見つめるシュヴルーズは、
間違いなくちゃんとした教師の心を持っていた。

「私を吹き飛ばしたのも、無駄では無かったと思ってほっとしています。
 詩は一、二週間で書き上げましょう。この年になってこんな大役を仰せつかるなんて、
 人生とは何があるか分からないものね」

シュヴルーズに優しく撫でられてから、ルイズは礼を言ってゆっくりとドアを閉めた。
見送ったシュヴルーズは羽ペンと紙を用意し、眠る前に詩の始めを考えることにした。


「歌心が……無いって何?」

シュヴルーズの部屋から出て既に数時間が経過している。
水系統で顔見知りでも、そうでなくても全ての先生に当たってみたが、
結局全て断られた。曰く、歌心が無いから結婚式の詔なんて考えられない、とのことであった。
「案外、君の様な人が多いという事じゃないだろうか?」
「多くても詔を詠みあげて笑われるのは私よっ!そしてヴァリエールの名も!!あああどうしようどうしよう」

また頭を抱えながら、ルイズは立ち止まらずに歩く。別にどこか目的地があるわけではない。
失敗を考える事による焦りから、とりあえず動いていないと落ち着かなかったからだが、それが上手く働いたようだ。

「何してるの?」

どこかの廊下を歩くルイズは、声が聞こえた方に視線を向ける。最近それなりに仲が良くなったタバサが、
自身と同じくらいの大きさの袋を、レビテーションで宙に浮かせている。浮かんだ袋からは良い匂いが漂っている。

「タバサ。それ、何?」
「夜食」

それだけ食べるのか、とか何でそんなに食べてそんな体つきなのかとかを問いただす前に、
ルイズの頭に閃きが起こった。そう言えば、この子はたくさん本とか読んでるわよね。と。

「タバサ!歌心っていうか詩心っていうか、そういうの持ってる?」

タバサは何も言わず、頭を左に30度程傾けた。
上手く説明したいが伝わらない。焦っていつもの思考でないルイズに代わり、マーティンが話しかける。

「ミス・タバサ。君は詩を作ったりしたことは?」
「よく作る」
「実は詩について困っているんだ。力を貸してもらっても?」
「分かった」

タバサは、信頼できる友人を大切に扱う。ルイズはキュルケほど信用しているわけではないが、
友人ではある。彼女の行動によって自分は薬を手に入れる事が出来たのだから、
詩くらいなら作っても良いかな、とタバサは考えた。

「ああ、ありがとうタバサ!それで、こういう訳なんだけど」

笑顔で説明するルイズを見て、引き受けた事自体が間違いではないか。
とタバサは思ったが、それを口には出さず、何も言わず頷いた。

「あなた、確か水と風を得意としていたわよね?水の詩を作って欲しいんだけど」
「風は誰に?」
「ギトー先生」
「風の詩も作っておく」

表情を変えずそう言って、夜食を浮かしながらタバサは去っていった。

「ギトー先生は、ダメな類なのかしら?」

ルイズは、なんとなく呟いた。

「出来を見るまで分からないさ」

なんとなく予想は出来たが、マーティンはそう答えた。
「これで三属性は頼めたから、後は火だけね」

ルイズは、夜の暗い廊下をマーティンと共に歩いている。
後一つで終わる事もあって、足取りが先ほどよりも軽い。

「誰かいい人はいないかしら……思いつかないわね」
「ああ、火か……」

マーティンはそういえば、と塔の外に出る道を進む。

「当てがあるの?」
「まぁ、多分」

本塔と火の塔に挟まれた一角にある、見るもボロい掘っ立て小屋に着くと、
マーティンはその戸を叩く。中から現れたのはルイズも良く知る火の教師だった。

「こんな時間に誰かね。おや、これはこれは……」
「どうも。ミスタ・コルベール」
「ここにいらっしゃったということは、暇が出来たということですかな?マーティンさん」

暇とは何のことだろうか、ルイズにはよく分からなかったが、マーティンは微笑んでいた。

「ええ、そんなところです。それと少し別の件で……」

「ええ。構いませんとも!その『タムリエル』について色々聞かせてもらうのですから。
 ささ、ちらかっておりますがどうぞ中に」

真夜中の来訪者である二人を、コルベールは部屋の中に招き入れ、ドアを閉めた。

投下終了。
王族の結婚式で詩の代わりにあんなこと言ったらやばいよな。とか、
学院長から頼まれていたのにそんな節全く無かったな、とか考えてたらこんなネタになりました。
では、また次の投下まで。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 19:31:32 ID:ihSN1NzE
乙です
ルイズのセンスのなさに泣いたw
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 20:16:38 ID:bgBe0QtJ


ギトーはアレだ、原文を見たらイラッとする感じだろうw
先生方はともかくタバサに頼むとか手段を選ばないなルイズ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 21:20:50 ID:9PXC9jt9
おつかれー

つーかコルベール先生が作詩…何かイメージ合わない気がするの私だけかな?
何つーか現代風に理系の人みたいな印象があるんだけどコルベール先生。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 21:44:22 ID:PoidYGYQ
昔の軍人は科学者兼歴史家兼政治家だったと言われている。
封建制度下における学者は超インテリなので文才があっても何も問題が無い。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 21:57:52 ID:uPgxJM0T
江戸時代のまともな学者なら分野を問わず、漢詩ぐらいは作れなきゃいけないとかだな。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 21:58:09 ID:Z85WYOX3
(元)領地持ちの貴族で(元)軍人で教師だからなコッパゲのチート具合は読者全員が認めるところだから
詩の天才でも驚かない
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 22:27:53 ID:OBO0Pms4
今更だが虚無のパズルの最新話を読んだ
アンアンが「勇敢に生きる」と決意したのを見て、
プリセラ姐さんの強さの理由を聞いたときに
ルイズとアンアンがどんなリアクションを示すのか今から楽しみである

ついでに挿絵も見させてもらった
GJ、いい感じだ
2話以降もやるんだよね!?
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 22:48:17 ID:NA1sBqJi
エルダーの人乙です

ふと、思ったんだけど
水の詩を仮にアンアンやモット伯に頼んだら
バタフライ婦人顔負けのエロ小説を書いて来そうだ
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:08:59 ID:P5zF64Hz
ラヴクラフトの「宇宙からの色」から隕石?を召喚。
石を召喚した事でバカにされるルイズ。
しかし契約してしばらくすると、学院中で植物などに異変が置き始める……。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:10:42 ID:MzqjwPOV
>>528
淫乱だからってエロ小説が書けるわけじゃないだろjk
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:18:33 ID:oz5DRib+
>>527
でもあの決意の仕方はちょっとやばげな気がする
確かに一番分かりやすく勇気を奮い起こす方法だけど
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:32:12 ID:OBO0Pms4
血の気が多すぎて取り返しのつかない失敗するかもな

TAPのフォローに期待しよう
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:39:25 ID:T8tRSDsh
しかし、プリセラ姐さんが出てくるのはいつになるんだろう?

タルブに現れたマザコンを坊や呼ばわりしてハァハァさせるのか
七万を無双するのか
スカした面したビダを肉体・精神共にボコるのか…



大穴としてルイズと実家を脱出する際にカリーヌママンと激闘を繰り広げると言うのもあるが
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:57:50 ID:V4mN9yUT
魔法を極めてなかったとはいえジルさんを一方的にボコるほどだからなぁ
ゼロ魔だと相手いないんだよなぁ
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:16:50 ID:yp8XDHOL
>>533
ハァハァ言うなw

俺は、怒りに駆られた末にクロイツを呼び覚まし大暴れするアン様を
全角消去本気ビンタで一喝

アン様が目を覚ますとそこには死んだはずのウェールズの姿が…



なんてあながちシャレにならない姐さん初登場の姿が浮かんで来て困る
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:17:11 ID:Toesz8fE
>>533
一応夢の樹で会って話はしてるな
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:18:32 ID:vNNAMXtJ
そういえばトップ2やドラクエとのクロス作品のように、ルイズの召喚がきっかけで世界全体が巻き込まれるような作品って、他に何がありましたかね。
いえ、召喚される対象を見ていると、そのくらいできそうな力の持ち主がチラホラ居ますし。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:26:37 ID:FA9pzjvm
>>534
ゼロ魔だとっていうか原作でも割とマジで相手いないよね
ラスボスの一角を余裕で圧倒したときは何事かと思った
そりゃ出番も減らされるわ
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:39:30 ID:fO0xZUs8
>>537
BALLs大活躍! とかある意味
540世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:41:20 ID:0xC1D4bi
こんばんは、構わなければ45分より投下させていただきます
541世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:45:02 ID:0xC1D4bi
 
暁は早朝の学園をさまよっていた。
懐に女性物の下着を入れて――である。
洗濯場を探しているのだが、一歩間違えば変質者であった。
無論彼にそんなつもりがあるはずがない。そもそも子供に欲情できるほど彼は節操無しではないのだから。

(しかし広すぎだろこの学校。まるでと言うかまさしく城だな)

豪華な石造りの廊下を歩きながら物珍しげに辺りを見回す。
やはり貴族の子供を預かる学校ともなるとこれくらいの建物でなければならないのだろうか。

考察しながら歩いていると、近くの部屋からメイド服を着た少女が出てきたのが目に止まった。
非常に都合がいい、あわよくば洗濯を頼める。
そう思った暁は歩みを早め、少女に近づいていく。

が、少女のあとに続き洗濯籠を抱えて部屋から出てきた包帯だらけの男を見て、暁は見事に固まった。

男の方も暁に気づいたのか、目が合う。

「おお、暁ではないか。こんな朝っぱらから何をしている」
「お前色々とおかしいだろ、復活早すぎだ」

昨日死にかけていたはずの相棒――ボー・ブランシェがそこにいた。


「えっと……ボーさんのお知り合いですか?」

少女が不思議そうな表情でボーに問い掛ける。

「うむ、こいつが私の相棒の暁巌だ。悪そうな顔だがいい奴だぞ」
「悪そうな顔とかお前に言われたくねーよ珍獣」
「こら!誰が珍獣だ!」

ボーがこちらに向かって吼える。
ああ、こいつほんとに復活しやがったと思いながら暁は脱力した。
昨日は何故こんな鬱陶しい男のことを心配していたのだろうか。暁にとって忘れたい記憶が一つ増えた瞬間であった。

ボーの横では少女が笑いをこらえている。
素朴な感じの可愛らしい少女であった。ボーと並んで絵になるというのは奇跡だろう。
暁の視線に気づいた彼女が、深々と頭を下げた。

「初めまして、こちらでご奉公させていただいてますシエスタです。よろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして、ミス・ヴァリエールの使い魔の暁巌だ。よろしくお嬢ちゃん」

で、とボーの方を見る。

「お前はなんでこの子と一緒にいるんだ?」
「昨日の夜目覚めた時にシエスタが看病していてくれてな。食事までご馳走になったのでお礼にと思って仕事を手伝っているまでの話だ」

さも当然のことのように言うボーを見て、暁は頭痛がした。
何だこいつの生命力は。実は放っておいても死ななかったんじゃないだろうか。
ボーの命を救ってもらったから、とか言う理由で使い魔になった自分を暁は恨んだ。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:45:06 ID:ud+vYKrI
分身支援
543世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:45:59 ID:0xC1D4bi
 
水汲み場では屈強な男が二人と可愛らしいメイドが一人、洗濯板を使って洗濯をしていた。
とてつもなく妙な光景である。

「ボーさんってこういう作業できないと思ってました……」
「俺もだ」

ボーはその無駄に巨大な体躯に似合わず、普通に洗濯をこなしている。
暁とシエスタはそのことに少なからず驚いた。二人ともまず間違いなく細かい作業は出来ないと思っていたのだから当然である。
ボーに言わせると、細かい作業はテレビゲームで慣れているらしい。
……やはりこの男を理解することはかなり難しいようだ。

「そういえばアカツキさんとボーさんはどこからいらしたんですか?」
「そうだな……とんでもなく遠い所から来た」

ボーは興味深そうな顔で暁を見ていた。やはりこの男はここがどこだかわかっていないらしい。
苦笑し、今のうちに話しておこうと結論付ける。

「俺たちはこことは違う世界から来たのさ」

暁はここが自分たちのいた世界とは違うことを説明した。
シエスタは不思議そうな顔で、ボーは難しい顔で暁を見ていた。
当然の反応だな、と暁は苦笑した。

「帰る方法はないのか」
「今のところないらしい。調べてもらってはいるが望み薄だろうな」

そうか、と相槌を打ちボーが黙る。珍しく何か考え込んでいるようだった。

ボーには元の世界でやり残したことがある。
トライデントと対立していた組織、『アーカム』に所属するエージェント――御神苗優(オミナエ ユウ)と言う青年との決着である。
ボーと暁は幾度となく彼と遭遇し、戦った際は二人とも敗北を喫している。
ちなみにボーにとって優は永遠のライバルらしいが、一回戦ったきり相手にされていない。
暁としては「相手にされてないんだからいい加減諦めろ」と言いたかった。
もっとも、暁もまた優と戦いたいと言う気持ちは存在したのでそんなことは言えるはずもないのだが。

「暁、お前はいつまでここにいるつもりだ?」

ここ、とはおそらくトリスティン魔法学院のことだろう。
暁は考える。契約時は助けてもらったボーの命の分働くかルイズが自分を必要としなくなるまで使い魔をやる、と言った。
自分がルイズの使い魔でいる必要がなくなったときまではいる事になるだろう。

「俺のご主人――ルイズって言うガキなんだが、その子が俺を必要としなくなるまでか俺が嫌になるまでだな」
「主人?そのルイズとか言う娘に雇われたのか?」
「違う。何か使い魔を召喚する儀式だかで俺たちが呼び出されたらしくてな。どうしてもそれで呼び出された奴と契約しなきゃならんとかで、使い魔になってやった」

お前の命を救ってもらったってことだしな、と暁は苦笑した。
正直なところ助けてもらったボーの命の分働くとは言ったが、ここまであっさり復活されるとどれくらい働けばいいのか良くわからない。
ボーが死にかけていたのは暁とてわかってはいるが、いくらなんでも復活が早すぎる。
これなら放っておいても問題なかったのではないだろうか。
544世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:46:45 ID:0xC1D4bi
「シエスタお嬢ちゃんも誰かの使い魔ってことはない?」
「いえ、違います。私はメイジではないので詳しいことはわかりませんが、人間が使い魔として召喚されたことは今までなかったらしいですよ」

やはりそうなのか、と暁は頷いた。
コルベール、ルイズも同じことを言っていた。
何が原因かはわからないが、自分たちは相当異質な状況下にいるらしい。

「お力になれなくてごめんなさい」
「いや、お嬢ちゃんが気に病むことじゃないさ」

申し訳なさそうにシエスタが頭を下げる。

「その……イセカイって場所かどうかはわかりませんが、私のおじいちゃんもすごく遠くから来たって言ってました。
 私の故郷、タルブって言う田舎の村なんですけど、宜しければ今度いらしてください。おじいちゃんに聞けば帰る方法がわかるかもしれませんし」

シエスタが気遣うように言った。

「わかった、いつか行かせてもらうよ」
「はい、是非!」

正直なところあまり期待は出来ないが、それは今言う事ではないし万が一もあり得る。
いつかは行くことになるだろうと暁はタルブという地名を心に刻み込んだ。

「うむ、決めたぞ」

そこでボーが大きく頷いた。
ずっと何かを考えていて今やっと結論が出たらしい。

「私もそのルイズとか言う娘の使い魔になろうではないか」

暁とシエスタは大仰に頷くボーを唖然と見ていた。


545世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:47:37 ID:0xC1D4bi
 
『我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!』

周囲が強い光に包まれる。あまりの眩しさにルイズはあわてて目を瞑った。
そして目を開けると、そこには一匹のミノタウロスがいた。

ドラゴンやグリフォンなどの美しい幻獣を期待していただけに、とても美しいとは言えない牛頭で筋骨隆々の魔物が召喚されたことにルイズは落胆した。
だが、そのミノタウロスはあまりにも強かった。
目にも止まらぬ速さで動き、素手でゴーレムを吹き飛ばす。
ルイズは自分の使い魔の強さに歓喜した。見た目は悪いがもうそんなことはどうでも良くなっていた。

『あなた凄いのね!』

だがミノタウロスは「まだまだこんな物ではない」と言いたそうに首を振る。
そして何事か吼えると――彼の姿が4体に増えた。

『嘘っ!』

それは紛れもないスクウェアスペル『偏在』であった。
ルイズにもはや迷いはなかった、こんな強い使い魔を従えることができれば今まで散々自分を馬鹿にしてきた皆を見返すことができる。

それでもやはりミノタウロスとのキスは抵抗があったものの、それくらいは我慢しなくてはならないだろう。
コントラクト・サーヴァントの呪文を唱え、彼と口付けを交わすため顔を近づけていく。
そして後少しのところで彼は口を開き、言った。

『おい、起きろ。朝だ』

彼のその言葉に、ゆっくりとルイズの意識は覚醒していった。


夢の国から現実世界に戻ったルイズが最初に見たのは、見知らぬ金髪の男のゴツい顔だった。

瞬間的に意識が覚醒し、思いっきり後ずさる。
そして「ふぁっ」という情けない声が喉から出――ルイズの体はベッドから転げ落ちた。
546世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:48:19 ID:0xC1D4bi
「一応紹介しておくとこいつはボー・ブランシェ。昨日ご主人様が召喚した死にぞこないだ」

暁が苦笑しながら金髪の男――ボーと言うらしい――の紹介をするのを、ルイズは床に座り込み呆然と聞いていた。
とりあえず立てそうにない、おそらく腰が抜けている。

「よろしく頼む。世界最強の男、ボー・ブランシェだ」

ボーはルイズの前に立つと、右手を差し出した。
どうやら助け起こしてくれるつもりらしい。

「よ、よろしく……私はルイズよ」

ルイズはおずおずとその手を取る、大きくてごつごつした手だった。
ボーの体躯は夢に出てきたミノタウロスに似ている。
まさかこの男の夢だったのだろうか、と思ったがそんなはずはないと否定する。

あのミノタウロスは夢の中だからこそ存在できた魔物なのだろう。
あそこまで強い魔物なんてこの世界にいないだろうし、人間の身であんなことが出来るのは御伽噺の登場人物くらいだろう。
そもそも幻獣に勝てる平民などいるはずがない、自分はやはりはずれを引いたのだ。

「早速だがルイズ、私とも使い魔の契約を結んで欲しい」
「ほへ?」

ボーが真顔で言った。
ルイズは彼が何を言っているのかしばらく理解できなかった。

「私の治療費を出してくれたのはルイズ、お前だそうではないか。そして暁はその借りを返すために使い魔をやっている。
 相棒にだけ私の命の対価を払わせるのは非常に心苦しいので、私もお前の使い魔になって借りを返したいと思うのだ」

何か目の前でボーが力説している。よくわからないがこれだけは言える、暑苦しい。
助けを求め暁の方を見たが、彼は肩をすくめただけだった。
諦めろと言われたような気がした。

「残念だけど使い魔の契約は一人一体なの。だからもう暁と契約してしまったからあんたとは契約できないわ」
「む、そうなのか」
「気持ちだけ受け取っておくわ……」

ルイズはため息を吐いた。
なんだろう、この男の鬱陶しさは。
547世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:49:04 ID:0xC1D4bi
「ならば私に出来ることがあれば言ってほしい。それくらいならば構わんだろう?」
「あーはいはい。じゃあまずそこのクローゼットから下着を取って頂戴」

ボーが難しい顔をするが、それでも不承不承ながらクローゼットに向かう。

「引き出しに入ってるから」

そう言いながらネグリジェを脱ぎ始める。
そしてそれを見たボーが目を見開き、慌てて目をそらした。

「お、夫でもない男の前で寝間着を脱ぐとは破廉恥な!」
「あんたたちは男じゃなくて使い魔と奉公人、だから見られても気にしないわよ」
「そう言う問題か!ええい早く着ろ、目のやり場に困る!!」

ボーが慌ててクローゼットから下着を取り出し、放り投げる。
だがルイズの方を向いていないため、下着は明後日の方向に飛んでいった。
それをため息を吐きながら暁が拾い上げ、ルイズに手渡した。

「鬱陶しいだろ?」
「鬱陶しいわ」

ルイズはゆっくりと着替え始めた。
本当は暁かボーに着替えさせるつもりだったが、とうの昔にそんな気は失せていた。

548世界最強コンビハルケギニアに立つ:2009/04/17(金) 00:49:46 ID:0xC1D4bi
今回は以上です。
いつになったらギーシュとの決闘までいけるんでしょうね?w
当初の予定だと3話目でしたがどう考えても5話目になります、本当にありがとうございました。
文字に起こすのって大変なんですね。

それでは失礼しました。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:54:29 ID:ud+vYKrI
乙ー
ギーシュ戦もいいけどその続きもきたいしてるんよ
ワの字とかに対するボーの反応とか偏在対分身の術とか
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 01:13:08 ID:C95CRixL
永遠のアセリア(本編終了直後)からハリオン・グリーンスピリットを召喚
・・・・彼女って、けっこうマイペースだからすごい事になりそうだ
551世界最強コンビ以下略:2009/04/17(金) 01:14:38 ID:0xC1D4bi
>>549
一応だいぶ先まで考えてはいるんですが、いかんせん筆が遅いわシーンが思ったより進まないわで苦戦中なんですw
なので区切りのギーシュ戦まで早く行きたいなーと。

こんな拙い文に期待してくれるとかとてもうれしいです、どうもありがとうございます。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 01:18:05 ID:2uuyEdex
ギーシュのゴーレムが
ロードスの青銅像ぐらいじゃないと
ボー倒すの無理だろw
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 01:24:09 ID:T55qcCX9
てかおマチさんゴーレム位でないと無理w
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 02:04:51 ID:5hFMOuO1
おマチさんのゴーレムすら、あんまりな光景に呆然としてうっかり再生させ損ねて倒壊しそうなイメージがあるw
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 02:07:20 ID:fO0xZUs8
「おマチさんゴーレム」って言うとなんかアレだな

銀麗ロボみたいな
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 02:09:17 ID:DByJ1rbz
いや、いいねぇ。実に暑苦しい。www
乙!
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 02:11:28 ID:Sevrs7C1
ボーは暑苦しいしアホだけどマジで強いからなw
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 02:16:47 ID:PweGx4ky
ルイズがクロイツになtt……いやなんでもない
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 05:48:26 ID:opUxsCRK
>>551
マジで今一番好き。
早くボーの活躍が見たい。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 06:12:07 ID:6Xj4JJZQ
暁も中期御神苗と同等級の化け物な上に今はガンダ補正有りだからな。
なんかもーこいつらほんと世(以下略)だなw

それはさて置き、他の虚無の使い魔はどうなるんだろ?
ジョセフや教皇んところもコンビで召喚されてたりしてな。
伝説の傭兵夫妻とか双方名前が共通している天才少年と超級格闘家の刑事コンビとか。
御神苗と芳乃のバカップルが召喚されても良いかもしんないけど。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 06:23:04 ID:v+0RfwQc
6000年前の聖地に、ノアの方舟と大佐が飛ばされていたとか……
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 06:28:02 ID:AzL/8jox
>>551
シーンが進まないのは分量が少ないからじゃないんでしょうか
2,3話纏めてやったほうがいいような
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 08:01:36 ID:WCFLy72Y
世界最強コンビ、乙です。
これから通院なのですが、その鬱陶しさが晴れるぐらい、
復活したボーと、頭を抱える常識人(?)に、笑わせて頂きました。

ボーに振り回されてため息をつく、男女デコボコ組の姿が目に浮かんだw
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:03:29 ID:ZuoCZwKA
スプリガンは先史異文明の遺産、その中でもとりわけ危険なものを扱う存在の物語。
この二人はスプリガンではなかったものの、遺産をめぐる戦いに身を投じていたのだからその有用性・危険性は誰よりも熟知しているはず。
……ハルケギニアに、こちらの世界には既に存在していない遺産が漂着していても面白いですよね?
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:11:27 ID:ACDhCG8H
外野が横から口出した展開ほどつまらなく感じるものはないんだぜ!
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:27:50 ID:Dvqolc1i
>>565
落ち着け、それは鏡だ
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:38:22 ID:ACDhCG8H
>>566
ごめん、意味が分かんない
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:59:46 ID:fp5jPyip
鏡を見ろ=あんたの言はあんた自身にたいしても言えるよね
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 11:05:16 ID:9RAzI3+Z
すまんが俺にも分からない
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 11:16:10 ID:QgPUblSV
>>566 >>568
別に>>565は展開に口出してなどいないじゃないか。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 12:31:52 ID:bnIzCPB7
鏡見ろって切り返しはあそこでよく見るよね
プロ批評家の方々はあそこに引っ込んでて欲しいんだが
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 12:56:24 ID:s0WPotGq
流石に住人の展開予想はつまらんと言うことくらいは許容範囲だろう
実際つまらんし
573ジル:2009/04/17(金) 13:10:40 ID:TReslLTF
1320時に投下予定
574ジル:2009/04/17(金) 13:21:22 ID:TReslLTF
 ルイズとロングビルはラ・ロシェールから馬を飛ばし、城へ向かっていた。Y2Kの速度に慣れた躯には、馬が酷く遅く感じられた。
「あーもう! ジルの有り難みがよく判るわ! 馬がこんなに遅いものだったなんて!」
「文句言う暇があったら急ぎな! 裏切者にバレる前に姫に伝えなければならないんだろ!」
「判ってるわよ!」
 ビシバシと馬に鞭を打ち急かす。常に全力疾走状態だ。城まで持てばいいのだ。



 その頃────



「魔法も無しに空を飛べるたあね。おでれーた」
「正しくは飛行じゃないんだけどね。これが科学の恩恵よ。魔法に頼りすぎた文明は、こんな簡単な事にすら気付けなかったの」
 即席パラシュートに吊られ、ジルは雲の上で暇潰しにデルフを抜いていた。
「風の魔法はあるくせに、空気抵抗の概念すら無いなんて。帰ったら学校でも開こうかしら。まずは教科書ね、活版印刷機をコルベールに作らせて……」
 この空いた時間を利用して、ジルはこれからの事を考えていた。この世界がどうなろうと自分に害が無ければ知ったことではない、初めはそう思っていた。しかし、未だに帰る手立てが見つからない。ひょんな事から見つかる可能性
も捨てきれないが、まだ暫くは──ジルの勘では、年単位で──この世界にいる羽目になるだろう。故のギーシュの訓練、政治・戦争への干渉だった。それに、レコン・キスタの言うエルフ討伐は世界大戦に等しいと予想していた。な
るべく小さいうちに鎮圧しないと、帰る方法どころではなくなるだろう。
「……学校ね。魔法学院とどう違うんだ?」
「平民でも学べて、魔法の無い生活に役に立つ事を教えるの。メイジなんていなくても、平民だけで社会は成り立つのよ」
「まるで革命だぁね。で、それからどうする?」
「そうね、国でも興そうかしら」
 ふと、思い付いた、半分冗談半分本気の発想。しかし、考えているうちにだんだんと本気の割合が増えていった。
 貴族という階級の存在しない、魔法が唯一の技術ではない、平民とメイジが平等で共存できる国。自由の国を、この地に造り上げる。ここが中世ヨーロッパなら、何れ起こる解放への動きだ。ならば、その動きを早めてやろう。破壊
という名の新たなる創造、ではないが、貴族・平民・人種・宗教・思想────この国では全ての枠組みが消え去る。ジル・ヴァレンタインが新たな国家の形を書き連ねる。世界は変わる。
「百人の平民で一万のメイジを殲滅できる、と言ったら判りやすいわね。力を見せつければ、貴族なんてどうにでもなるわ」
「だったらよ、魔法無しじゃ帰れねーだろ」
「誰が科学だけと言ったかしら? 確かに科学には不可能はあまりないけど、例えば、科学で物質の原子を別の原子にするには巨大な設備がいるの。魔法なら簡単に錬金できるけど。それだけじゃないわ、魔法と科学を融合させれば
、今まで不可能だった事が可能になるかもしれない。科学で魔法を解析すれば精神力の消費効率が上がるかもしれない。アルビオンまでの風石が劇的に減るかも知れない。可能性は加速度的に増えていくのよ。その過程で、元の
世界に戻る方法が見つかる可能性だってある」
 ジルは饒舌だった。今までにないほどに、デルフにとっては夢物語でしかない話を語り続ける。元の世界に帰るための手段に過ぎない夢物語を。
「信じてないみたいね。六千年も歴史が停滞してるみたいだから無理もないけれど」
 傍らの剣が黙るのを見て、ジルは微笑む。それはこの世界への嘲笑か。これからの世界への希望か。
「雲に入るわね……濡れるのは嫌だわ」
「全くだ。錆びるのは勘弁だぜ」
575ジル:2009/04/17(金) 13:24:33 ID:TReslLTF
「これ以上ないってくらい錆びてるじゃない、変わらないわ。ま、勝負は雲の下に出てからね」
 デルフを鞘に戻して背に負い、ガトリングガンを用意する。
「作用・反作用の法則、実践するわよ」



 シルフィードはその音に気付く。アルビオン、ニューカッスル城上空で、轟音と共に城が崩れ落ちるのを見ていた矢先の事だった。
「きゅい!」
 キュルケがいる手前、声が出せない。喋れないストレスはじわじわと蓄積されているが、この際それはどうでもいい。主人にジルの痕跡を伝えられればいいのだ。
「見つけた?」
「きゅい」
 フルフルと首を振る。見つけてはいない。しかしあの音は────
「ちょっと! わたしのジルはいたの!?」
 キュルケの一言で、シルフィードの何かが綺麗に斬れた。
「私のジルなんて、傲慢にも程があるのね!」
 同時に降り注ぐ杖の一撃。
「喋らない」
「もう我慢の限界なのね! お姉様は相手にしてくれないし!」
「へぇ、韻竜だったのね、あなた」
 突然の真実に、しかしキュルケはあまり動じない。
「それより、ジルはいたの?」
 優先順位の問題だった。
「見えないのね。だけど音は聞こえるのね。城じゃないのね」
「じゃあ、音の場所に!」
「行って」
「きゅい!」
 主の命令に従い、城から離れ、大陸の端を超え、
「?」
「ちょっと!」
 雲の上まで高度を下げる。
「この中なのね。ゆっくり下がりながら進んでるのね」
「この……中?」
「聞こえる。あの銃」
 破裂音が途切れない、彼女達の常識に無い音。火を噴く銃、ガトリングガン以外に出せる物はないはずだ。
「まさか、雲の中で?」
「下で待つ」
 タバサの言葉にシルフィード呼応し、雲を突き抜けた。
「うわ……びしょびしょ」
 未だ雲の中から聞こえる銃声。しかし、その音は近い。大体の位置が掴めるくらいに。
「……いた」
 雲を纏い、撒き散らし、ゆっくりと降りゆく影。その緩慢な動きを裏切るように、銃声が騒がしい。
576ジル:2009/04/17(金) 13:26:03 ID:TReslLTF
「な、何あれ?」
 巨大な傘が。ジルの上にある。いや、ジルが吊られている。
「マジックアイテムかしら?」
「…………」
「魔法じゃないのね。風を受けてゆっくり降りてるのね。ジルったら、頭いい!」
 シルフィードはそれを理解していた。空気抵抗を風と、解釈を少し間違ってはいたが。
「ジル────っ!」
 そんなことはどうでもいいのか、キュルケは最愛の人の名を呼ぶ。ジルはガトリングガンを止め、銃身冷却すらせずに仕舞った。
「遅かったじゃない。パーティーに遅れるかと思ったわ」
「パーティー?」
 ジルはシルフィードの背に舞い降り、パラシュートを畳む。
「ええ。ラ・ロシェールに行くわよ。シルフィ!」
「はいなのね!」



 ラ・ロシェールに降下、既に辿り着いていたウェールズに合流し、Y2Kに乗せる。ギーシュは船酔いで、面倒ゆえにラ・ロシェールに放置した。流石に安全運転だが、肝心の本人の一言で安全神話は崩壊する。
「馬よりは速いが、流石に風竜には負けるのだな」
 遥か前を飛ぶシルフィードを見ての事なのだろうが、迂濶すぎる。キュルケは青ざめ、タバサは台車にしがみつく。
「しっかり掴まることをお勧めするわ。振り落とされたら死ぬわよ」
 ジルは容赦なくアクセルを回す。少しのラグの後、ガスタービンエンジンは甲高い返事を寄越す。
「まさか────」
 ウェールズの言葉は最後まで言えなかった。その加速は矢の如し、いや、比類するものは無い。キュルケたちに倣ってしがみついていたからいいものの、下手をすれば……
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 13:27:19 ID:dLHhxyxx
しえっーん!
578ジル:2009/04/17(金) 13:27:47 ID:TReslLTF
 そこまでで考えるのをやめた。王族としてのプライドが悲鳴を抑え込み、震えるのを制する。頭の中は既に走馬灯が流れゆく。カーブの度に冷や汗が背中を伝う。
 しかしジルは見えないことをいいことに、到着までアクセルを緩めなかった。



 少し時は戻って────



 ワルドは焦っていた。今から逃げるにしても、時間が少なすぎる。レコン・キスタ本拠地であるハヴィランド宮殿に行こうにも、スヴェルの夜は数日前に過ぎたばかりだ。ラ・ロシェールで足止めを食っている間に捕まるだろう。手配書
は国中にばら蒔かれ、潜伏にもくろうするだろう。いや、それよりも、だ。
 やたらと殺気だっている城で怪しい動きを見せれば……
 と、ノックの音で思考が中断される。
「何だ!」
「ケイシーです。アンリエッタ姫殿下からの書状をお持ちしました」
 最近城に増えた平民の使用人の一人だった。料理から書類整理、雑用まで幅広くこなす便利な使用人として覚えていた。
「……入れ」
「失礼します」
 独特の雰囲気の黒髪の男が入ってくる。まるで歴戦の兵士だが、本人に問うと参戦経験はないという。傭兵にしては礼儀正しい。ただ、タルブの出身の者はこういった人間が多いと聞く。
「書状です。ご確認を」
「ああ……────!」
 渡された書状を見て、ワルドは言葉を失う。
『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド
以上の者を間諜容疑及び国家反逆容疑により無期限の拘留に処す。
アンリエッタ・ド・トリステイン』
「既に親衛隊が部屋を囲んでいます。抵抗は諦めるのがいいかと」
 いつも通りの口調で、ケイシーは親切に教えてくれた。
「では、失礼します」
 一人残されたワルドは、屈辱に震えていた。ルイズはまだ城に戻って来てはいない。まさか、あの姫にここまでしてやられるとは────
「完敗、だ」



 ルイズとロングビルが城に到着したのは、ワルドが拘束された後だった。
 城門でひと悶着あり、ルイズのイライラが頂点に達する前に姫が現れたのは僥倖と言えよう。
「姫様、ワルドが……」
「ええ、判っています。既に拘束していますから」
 まさかの返答だった。予想外の答えに、ルイズは混乱する。
「わたくしだって、城で遊んでいた訳ではありませんよ。使用人に平民の監視員を紛れさせていたの」
「もしかして、それは……」
「ジルの案ですわ」
 やっぱり。溜め息をつかずにはいられなかった。抜け目が無いというか、なんというか。
「姫様、報告を。誰にも聞かれない場所で」
「一緒ではなかったのですか?」
 その場にジルとギーシュがいないことが疑問らしい。
「それも報告の件に」
「わかりました。では、私の部屋に」
 アンリエッタの私室で、やっとルイズは報告を始める。
「ジルとギーシュはワルドを騙すためと、ウェールズ殿下の亡命工作でアルビオンに残っています。或いは、もう脱出しているかも知れません」
「……ええ!?」
 王党派のトリステイン亡命は、彼女達の予定には無い。もしアルビオン王党派を匿ったとレコン・キスタに知れたら、攻め込まれる絶好の口実になりかねない。ゲルマニアとの同盟も、どうなるか判らない。
「ご安心を、姫様。ニューカッスル城はあの大陸から姿を消します」
「え? それはどういうことかしら」
「ジルが吹き飛ばします。レコン・キスタの戦力は削れる、死体はバラバラの粉々で身元なんか判りません。そしてトリステインには三百の精鋭が秘密裏に手に入ります」
579ジル:2009/04/17(金) 13:30:25 ID:TReslLTF
 ジルが吹き飛ばす。その言葉の意味がよく理解できなかった。いや、意味はわかる。しかし、どうやったら固定化のかかっている城を破壊できるのだろうか?
「あと、これを」
 アンリエッタの思考と想像を中断させ、ルイズが言葉と手紙を差し出す。何度も何度も読み返されてボロボロになった、ウェールズへの手紙。
「う……ああ……」
 それを震える手で受け取ると、手紙を胸に抱き、アンリエッタは泣き出した。声を圧し殺して、震えながら、静かに。
 生存が絶望的な状況にあった愛しい人が生きている。手紙が銃爪となり、しかし無力な泣き声を他の誰かに見られてはならないという王女の義務感が、泣き叫ぶことを許さない。
 いつまで泣いていたのだろうか。ルイズはただ立ち尽くしていたが、アンリエッタが少し落ち着くと、ハンカチを手にアンリエッタの涙を拭ってやる。
「姫様、大丈夫です。ジルがすぐに、ウェールズ殿下を連れてきます。折角の再会なんですから、泣き顔より笑顔で迎えてあげないと」
「そう……ね。ああ、酷い顔。お化粧で誤魔化せるかしら」
 と、ルイズの耳に、あの騒がしい高音が聞こえた気がした。



 ウェールズに城で拾ったNBCマスクを被せ、門の前に立つジル一行。怪しい風体の男女に、学院のメイジ二人。門番が立ちはだかるには充分だった。
「ジル・ヴァレンタインが来た、とアンリエッタに伝えなさい。さもなくば、強行突破するわ」
「なっ……無礼者! 貴様みたいな平民が、姫殿下の名を軽々しく呼び捨てるとは何事か! それに強行突破だと? 貴族を舐めるにも程がある!」
 取り付く島もない。
「ヴァリエール家の三女でもいいわ。ルイズっていう桃色頭の、色々と小さな娘よ」
 しかしジルは無視して続ける。完璧に舐めていた。
「貴様……己の立場が理解できてないと見える」
「首が飛ぶ前に行った方がいいわよ」
 四人の門番が全員、杖を構えた。
 同時に、ジルが握っていた缶を落とす。地面に到達する少し前に蹴られ、門番の足下へ転がり────
 閃光・轟音。
 視界が白に焼けつき、耳には高音が今も鳴り響いている。
 一人目、顎を蹴り上げられ気絶。
 二人目、ハッシュパピーで撃たれ夢の世界へ。
 三人目、足を払われ倒れたところに鳩尾に膝。
 四人目、見当たらない、と思ったら気絶していた。
「Ok.Go」
 耳栓をしている三人には聞こえないが、進む意志は伝わった。最初の打ち合わせ通りに、堂々と歩いていると、誰にも気付かれなかった。大丈夫か、ここの警備体制は、などと思いつつ、ルイズを探す。
「あ、そこの方。少し訪ねたいのだけど、いいかしら?」
 黒髪を頭の後ろで束ねたオールバックの使用人らしき中年男性に声をかけたジル。見ていた同行者達は一瞬肝を冷やしたが、止めることは躊躇われた。ここで怪しい動きをすれば、感付かれる可能性があった。
「なんでしょう」
「ヴァリエール家の三女を探しているの。ルイズっていう、桃色頭の我儘娘よ」
 ジルに悪意は無い。判りやすい例えであることに間違いはないのだから。
「ああ、その方ならアンリエッタ様の私室におられます」
「らしいわよ。場所はわかる?」
『ああ、この城には何度か訪れた事があるからね』
 ガスマスクのウェールズはくぐもった声で応える。
「ありがとう」
 ジルは使用人に礼を言い、ウェールズに案内を任せる。使用人は、その背中をずっと見つめていた。



「ジル!」
 廊下で立ち尽くしていたルイズは、ジルの姿を見た途端に駆け寄ってきた。
「ただいま」
「よかった……怪我はない?」
580ジル:2009/04/17(金) 13:32:45 ID:TReslLTF
「ハーブもスプレーも使わなかったわ。傭兵もメイジも敵じゃないわ」
 言葉の通り、傷らしい傷は無い。
「それより、お届け物よ」
「へ? って、キュルケにタバサ! あんた達……」
「ついてきちゃった」
「…………」
「学院からつけてきてたわよ。気付かなかった?」
 さも当然と言わんばかりのジルに、少しだけイラっとするが、最後の一人に気付いて追及はやめる。
「……その、変な仮面の人は、もしかして……」
「だから、お届け物よ」
 ジルはルイズの横をすり抜け、『仮面の男』に手招きをする。男が反応して歩きだすのを確認して、アンリエッタの部屋の扉を叩く。
「アンリエッタ様宛にお届け物よ」
『え? あ、はい。どうぞ……』
 聞き慣れぬ声、使用人にしては尊大な口調にアンリエッタは戸惑うが、その有無を言わせない力強さに思わず了承をしてしまった。ジルは扉を開き、男を伴って部屋に入る。
「おまたせ」
「ジル? どうやってここに……それにその方は?」
 アンリエッタは奇妙な風体の男に警戒の色を見せたが、しかしそれもほんの一瞬だけ。
「あ……ああ……」
 ジルがガスマスクを外す。窮屈なガスマスクの空気を振り払う様に首を振ると、そこには金髪の美丈夫がいた。
「アンリエッタ……会いたかった……」
「ウェールズ様……」
 涙を浮かべる二人を見て、ジルはさっさと部屋を出る。ずっとこの部屋にいるという無粋な真似はできなかった。



 感動の再会も終わり、今後について話すこととなった。議題は、城と運命を共にしたことになっているウェールズをどこにどう隠すか。
 アンリエッタ、マザリーニ、ウェールズ、ジル、ルイズと城にいた事件の関係者全員が集まって悩んでいた。キュルケとタバサは国政に関わる事なので、席を外してもらった。
「トリステインの軍備が整うまで、絶対に見つかる訳にはいかないわ。レコン・キスタのトリステイン侵攻は確定しているけど、アルビオン内戦の混乱から立ち直るのにそれなりに時間が要るわ。ニューカッスル爆破で余計にね」
「爆破だって!?」
 ウェールズが悲鳴に似た声を上げる。
「ええ。300の精鋭と城一つ、或いはトリステイン侵攻の時間稼ぎ、比べるまでもないわ」
 当然とばかりに言い放つジルに、ウェールズは絶句。確かにあのままでは無駄死にもいいところだったし、300の忠臣も助かった。しかしその為に歴史ある城を潰すなど……
「城なら代わりもあるし建て直せるけど、人は死んだら代わりが無いの。責任のある者程、死ぬことは許されないのよ。死んで責任を取るんじゃなくて、責任を取ってから死になさい」
 最早ウェールズはぐうの音も出ない。
「と、レコン・キスタに対しては少しばかり時間が稼げたわ。で、何かいい案は無いかしら」
「ヴァリエール公爵領に匿ってもらう、というのはどうですかな?彼ならば信頼できます故……」
 マザリーニが提案する。が、
「絶対に見つからずに、そこまでの移動ができる? ワルドの件もあるし、ラ・ヴァリエール領に鼠がいないとは限らないわ」
「むう……」
「同様の理由で城や他の貴族の領地も駄目。他国に亡命も無理ね。どこかの森の中とかに拠点を作って……も駄目ね。猟師にでも見つかったらアウト」
「そうそう簡単に思い付きませんわね……」
 アンリエッタも眉間に皺を寄せて悩む。これ程に難解な問題は、今まで直面したことが無かった。
「ねぇ、学院はどうかしら」
 ルイズが提案する。ジルは疑問符を浮かべて、その根拠を問おうとするが、
581ジル:2009/04/17(金) 13:36:05 ID:TReslLTF
「空賊の時みたいに変装して……そう、戦時訓練の講師とすれば怪しまれないわ。レコン・キスタとの戦争は避けられない以上、学院からも出征する生徒もいるだろうし、敵もまさか学院にいるとは思わないでしょう? いずれはアル
ビオンを取り返す為の戦力の養成になるから、アルビオンの貴族の方も文句はあるでしょうが、一応納得できる理由にはなるわ。トリスタニアにも近いから、有事の際も早く動けるわ」
 ジルが眼を丸くする。そう、この少女は決して馬鹿や無能の類ではない。謀らずもそれをわずかなりともルイズに自覚させたのはジルなのだが。
「その発想は無かったわ! 素晴らしいわ、ルイズ!」
「確かに、オスマンなら信頼できるわね」
「成程! オールド・オスマンなら!」
 アンリエッタに褒められ、照れてはにかむルイズを尻目に、ジルはウェールズに問う。
「これでいいかしら? あなたの部下達は理解してくれる?」
 その言葉の意味を理解したウェールズは微笑み、しかしその眼には決意の光を見せ、
「責任を果たす機会、だろう?」
と応えた。
582ジル:2009/04/17(金) 13:38:15 ID:TReslLTF
以上です。
583ジル:2009/04/17(金) 13:52:46 ID:TReslLTF
結構前に、「この作品のジルはダメ警官」って呼ばれてたので、それに対する私の解釈を一つ。

 ジルはダメ警官じゃないですよ。
 そもそもSTARSは官民混在の特殊部隊ですから。デルタフォース出身であることから、元々は陸軍の軍人だろうし、故にジルは警察としての役割より軍人としての性格が強いと私は考えています。
 ですから邪魔者や敵は容赦なく殺しても違和感はありません。実際、フォレストゾンビを普通に殺しますし、かつて同僚であったであろう警官ゾンビを殺しまくるし、ニコライをヘリごと叩き落とすルートもあります。C:Vの父親ゾンビを殺したスティーブとは対照的です。
 あと、ネメシスを突き落としたりマグナムリボルバーを片手で撃つなど、元々の身体能力が高いので、戦闘になるとついセガール状態になってしまいます。
 更に、元々上記のジル最強説を軸にネタやブラックジョークで笑って貰えるものを書こうとして書いたものなので、俺TUEEEEE展開は寛大な眼で見ていただけると嬉しいです。というか、ギャグでなければこんな中二臭いタイトルはつけずに無難にしていたはずですから。
 最後に、無限武器を手に入れたら敵殲滅ジェノサイドプレイを一回はしますよね?
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 13:55:07 ID:h1MUR/Fi
>>583
ロケラン全滅プレイなら何度もやりました。上半身が跡形もなく吹っ飛ぶ爽快プレイ最高
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 14:14:57 ID:fO0xZUs8
乙でありんす
色々とおもろいからつい忘れがちになるけど、元々はネタ作品だったんだよなそーいえばw

>ジルはダメ警官じゃないですよ。
論は分かるしある程度納得もいくが、門番四人制圧しちゃイカンだろw
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 14:15:08 ID:ij12zasj
過去作で某運送(株)のネタを混ぜたSSが有ったのを見てルガールを召喚とか…
「町へ行くなら馬に乗るより私が運ぶ方が早いぞHAHAHA!!」
まぁこの手のネタはNGかw

>>583
さりげなく国境無き世界の演説入れんなwww
好きだけどさw
ともあれ乙ー

587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 14:24:39 ID:aERyaX7L
>>583
ジルの人乙でした。
>全滅
そうですね、仕事のストレス吹っ飛ばす為に時々w
特にバイオ3でやってるから魔王のジルにも特に違和感は感じません。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 14:36:47 ID:MsG+sp82
ジルの人、乙
さらばワルド、ようこそウェールズ

そしてジェノサイドプレイならバイオじゃないけどトゥームレイダーでやりました。
最初から全武装ありで弾数無限、謎解きは答えが分かってるので一周目では苦戦するミイラや恐竜をグレネードで爆砕しまくりました。
589鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:45:13 ID:hSwQI764
どうも。
三ヶ月近く間が空いてしまいましたが、やっと終わりました。
5分後から投下しようと思います。
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 16:46:09 ID:ed6PCNxT
ジルの人乙です。
バイオ5はやられましたかね?ジルがさらにやばくなってたw
591鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:52:09 ID:hSwQI764
15話

最初は頭の中が霞がかった様にぼんやりとしていたが、徐々に意識がはっきりとしていった。
だが完全に目が覚めても、自分が今どこにいるのかが解らない。ひとまず彼は起き上がってみた。夜なのか、窓の外は薄暗く部屋はランプの淡い光で満たされていた。

(ん?)
才人は自分の傍らで少女が顔をベッドに埋めて眠っているのに気づいた。
その桃色がかった髪は容易に判別出来る。ルイズだ。つまりここはルイズの部屋なのか、才人はそう思って周りを見渡した。
薄暗くても壁に向けて立てかけられているウォレヌス達の盾や鎖帷子などからここがそうである事は判別できた。

つまり自分はルイズの、女の子のベッドの中で寝ていると言う事になる。その事に気づいて才人は思わず赤面した。
なぜこんな事になっているのか疑問に思ったが、それ以上に彼女の事を意識せざるを得なかった。

薄暗がりのおかげで、彼女の白磁の様な肌はその白さが一層強調されている。
寝ている彼女の顔は思わずハッとする程の麗しさだった。間違いなく、才人が今までに見た女性の中で最も美しい物だと言える。
ただ彼女の顔を見ているだけなのに、才人は自分の動悸がどんどん早くなっていくのに気づき、慌てて視線を彼女の顔から逸らした。

このまま彼女を見続けていたら頭がどうにかなってしまいそうだと言う確かな予感を抱いたからだ。
(落ち着け。こんな事をしてる場合じゃない)
才人は自分にそう言い聞かせ、自分が今どう言う状況にあるのかを把握しようとした。

そもそも自分は寝る前に何をやっていたか……才人はすぐに思い出した。決闘の事を。そう、自分はギーシュが渡した剣を握ろうとして、そこで意識が途切れたのだ。
それとギーシュの嫌らしい、勝ち誇った様な笑みが同時に脳裏に浮かび、強い怒りが沸き出てきた。そして次に浮かんだ疑問は一体あの時何が起こったのか、と言う事だ。
怪我のせいで意識を失った、と言う考えがすぐに浮かんだが、あの時は激痛のおかげでむしろ意識ははっきりとしていた。
才人は医者でもなんでもないが、自分が意識を失ったのは怪我のせいでないと言うのは直感的に理解していた。

とにかく、自分は決闘の途中に気を失った。それはいい。だがなぜ自分がルイズのベッドの中で寝ているのかが解らない。
ルイズがベッドの傍らで寝ていると言うのもおかしい。彼女が使い魔を自分のベッドに寝るのを許すとはとても思えない。だが自分ひとりで考えても答えは出ないのも確かだ。
ただでさえここにいたら鼻腔をくすぐるルイズの匂いや、彼女の寝息に気がいってしまうのだ。
ルイズを起こして聞くと言う手もあったが、酷く疲れているのか、ぐっすりと寝ている彼女を起こす気にはなれなかった。才人はルイズを起こさないように、ベッドからそっと降りた。

彼はひとまず厨房に行こう、と決めた。この部屋の他に知っている場所となると厨房くらいしかない。本当はプッロやウォレヌスに会いたかったのだが、彼らはここにいない。だがマルトー達でも何が起こったのか位は知っているだろう。
それに酷い空腹を覚えていた。胃の中が完全に空っぽになったかのようだ。あそこなら何か食べる物位あるだろう、彼はそう考えながら部屋を出た。

道筋のおぼろげな記憶を辿りながら厨房に向かう間も、才人は決闘がどうなったのかを考えられずにはいなかった。
自分は果たして負けたのかどうか。確かにあの時点では自分は殆ど負けていた。
ギーシュが作り出したあのゴーレムとやらに手も足も出ずにコテンパンにのされ、車に轢かれたらこうなるんだろうなと思うような酷い怪我を負わされた。
あのまま剣を握って勝負を続行したとしても勝ち目はほぼ間違いなくゼロだったろう。だが自分は剣を握っていない。まだ負けてはいなかった。
無論、もしあの時怪我のせいで気絶したというのなら、それは自分が負けたと言う事だ。だが才人はあれが何か別の理由による物に違いないと確信していた。

才人は厨房への道筋をちゃんと覚えていたかどうか、不安に思っていたが杞憂だったようだ。
前にも聞いた料理人達の喧騒が徐々に聞こえてきた。そして才人は厨房にたどり着いた。
592鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:53:00 ID:hSwQI764
厨房の中では前見た時と同じ様に料理人たちが忙しなく動き回っていた。ただ、どうやら彼らは調理をしているのではなく後片付けと明日の仕込みをしているようだ。
どちらにせよ、様々な食材が交じり合った香りが鼻腔を刺激し、ただでさえ空腹だった才人の腹を更にひもじくした。
まずはマルトーを探そうと才人は周りを見渡した。単に厨房にいる人間で少しでも知っている人間が彼ぐらいしかいないと言う理由からだったが、マルトーの代わりに思いがけぬ二人が目に入った。
プッロとウォレヌスである。二人ともこの前の朝と同じくテーブルに座ってお粥の様な物を食べている。

これは好都合だ、そう思い才人が近づくと、彼より先にプッロが先に声をかけた。
「おお、坊主!目が覚めたのか!」
そう言いながら彼は椅子から立ち上がり、ズカズカと才人に歩み寄った。

「怪我の方はもう良いのか?見る限りじゃもうすっかり治った様に見える」
「ちょっと体の節々が痛みますけど、それ以外はもう大丈夫だと思います」
プッロは感心した様に呟いた。
「やっぱりすげえな、魔法ってのは。あんな怪我がたった三日で元通りになっちまうんだから……まあ、とりあえず座れよ」
そう言ってプッロはテーブルの方をアゴでしゃくった。断る理由も無いので才人は言われるままに席に着いた。

「才人君、ここに何をしに来たんだ?食事か?」
ウォレヌスがいぶかしげに聞く。
「ええ、そうです。とにかく滅茶苦茶腹が減っていて……」
決闘やら何やらの前に、今は何でもいいから食べ物を腹に入れておきたかった。厨房の匂いのせいで才人の空腹は我慢ならないレベルに達していたのだ。

才人の言葉を受けてプッロは椅子から立ち上がり、声を上張りあげた。
「おいマルトー!悪いが、俺達のと同じ奴をこの坊主にも出してやってくれないか!?かなり腹が減ってるらしい!」
すると、どこにいたのかマルトーが奥のほうから、大仰に腕を広げながら歩いてきた。

「おうおう!もう完全に良くなったようだな、坊主!それで腹が減ってるって?」
「え、ええ。忙しい所すまないんですけど、何か食べる物は無いでしょうか?」
「そいつらと同じ物なら出してやれるぞ。前と同じ、俺達の賄い食だがね。まだ暖かいからすぐに持ってこれる」
「ええ、それでも十分以上です。今はとにかく何かを腹の中に入れたくて……」
すぐに戻るから待っていろ、と言ってマルトーはその場から去ろうとした。だがプッロが彼を呼び止める。

「ああ、ちょっと待ってくれないか」
「ん?なんだ?」
「俺ももう一つこれが欲しいんだが、いいか?あと酒ももう一杯……」
そう言いながらプッロは空になった椀を指差した。
「プッロ、やめておくけ」
「なんでです?」
「みっともないしそちらにとっても迷惑だろう」
「いや、俺は構わんぞ。料理人にとっちゃ代わりを頼まれるのは勲章みたいな物さ。量もまだ残ってるから問題ねえさ」
そう言うとマルトーは今度こそ下がっていった。才人はマルトーの行動を少し不思議に思った。明日の準備が忙しいだろうに、嫌な顔一つせずにこちらの頼みを聞いてくれる。
思わずこっちが恐縮してしまいそうだ。彼が人の良い男らしい事は解っていたが、それにしたっていやに親切に見える。

「俺たちは結構な人気者になってるんだよ」
彼の考えを察したのか否か、プッロが口を開いた。
「人気者、ですか?」
「おおよ。貴族のクソガキとの決闘に応じ、一歩も引かなかった、ってな。おかげで酒にもただでありつけるようになった。ありがたいことだ」
そう言いながらプッロはコップを持ち上げ中の液体(十中八九酒だろう)をグビグビと飲み干した。そしてマルトーが戻ってきた。

「待たせて済まなかったな」
そう言いながら彼はお粥の様な物と、肉やら煮込んだ野菜やらを盛り付けた皿を二つずつ並べ、楽しんでくれと言うとすぐに持ち場に戻っていった。
やはり準備が忙しいのだろう。だが才人は彼に気を使う様な余裕は無かった。マルトーが持ってきた料理を見て才人の空腹は最頂点に達したからだ。そして彼は殆ど無意識の内にお粥を書き込み始めた。
才人は味を感じる余裕も無いまま食べ続け、気がついたら粥も肉も野菜もなくなっていた。隣を見るとプッロも食べ終わっていた。
空腹も落ち着き、才人はあの時何がどうなったかを聞くとした。
593鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:53:56 ID:hSwQI764
「ハルケギニアとやらの飯は最高だ。いつもこんな物を食えたら良いんだが――」
「あの、聞きたい事が幾つかあるんですが……」
「ん?なんだ?」
「あの時俺はどうなったんですか?気絶したんですか?決闘は一体どうなったんですか?」

プッロは困った様に頭を掻いた。
「それが変な事になってな……あの時意識を失ったのはお前だけじゃない。あの場にいた全員がそうなったんだよ」
「ど、どういう事ですか?」

全員が意識を失った?いったいなぜその様な事が起こったのか、皆目検討もつかない。そしてウォレヌスがプッロに続いて答えた。

「眠りの鐘とか言う道具が決闘を止める為に使われた。その鐘の音を聞いた人間はたちどころに眠ってしまうそうで、あそこにいた人間が全員眠りに落ちた。あのギーシュと言う小僧を含めてな。
 殆どの人間は数時間後に目が覚めたが、君は怪我のせいで三日間も眠っていた。運が良かったな。水魔法とやらが無ければ君は死んでいた」

「し、死んでいた?」
彼らの言葉についていけなかった。決闘が強制的に中止された事や、三日も寝ていたと言う事も去る事ながら、死んでいたとはどう言う事だろうか?
何せ才人が今まで生きてきた中で命が危険に晒された事など一度も無かったのだから、いきなりそういわれても実感が沸かない。だがウォレヌスはお構いなしに淡々と怪我の内訳を述べた。

「肋骨四本と右腕が折れ、鼻骨は潰れていた。顎にもヒビが入っていて、とどめに内臓が幾つも損傷を受けていた。普通なら死んで当たり前の怪我だ」
才人は背筋がゾッとする感覚に襲われた。確かにあのときの凄まじい激痛は忘れられる物ではない。だが自分がそこまで危険な状態にあったとは想像もつかなかった。

「ま、あのジジイに感謝しとけよ。あいつが眠りの鐘を使わせたそうだからな」
「な、なんでそんな物をわざわざ?というかあなた達は起きた後どうなったんですか?ギーシュは?ルイズは?」
「坊主、落ち着け。一度に聞かれても答えられねえよ……とりあえず一つ目に答えるが、眠りの鐘を使ったのは校則違反の決闘を止める為、だからだそうだ」
もっともらしい答えだが、合点がいかない。ギーシュの言っている事が正しければ禁止されているのは貴族同士の決闘の筈だ。

「でも“禁止されてるのは貴族同士の決闘”だったんじゃ?」
「あのガキもそう言って食い下がったんだがね、ジジイいわく“使い魔と主人は一心同体。使い魔に決闘を挑むのは主人に挑むも同然”だとか」

才人は苦しい理屈だと思ったが、取りあえずそれで納得する事にした。一番知りたいのはそんな事ではない。
「それでみんなの目が覚めた後はどうなったんですか?」
「俺達は目が覚めたあと、そのガキ二人と一緒に学院長の部屋に連れて行かれた。一体なぜ決闘騒ぎが起きたのかを答える為にな。そんでガキとルイズ両方が三日間の謹慎処分とやらを受けた」
“ガキとルイズ両方が”?才人は空耳かと思い聞き返した。

「ちょっと待って下さい、ルイズも罰を受けたんですか?」
「ああ、そうだ」
解せない事だった。ギーシュはともかく、ルイズは決闘には直接には関係していない。それなのになぜ彼女が処罰を受けるのだ?

「なんでルイズまで罰を受けるんですか?あいつは関係ない!」
「あの太った女教師が言ってただろ、使い魔の不始末は主人の責任だって。お前が貴族を侮辱したからその責任をあいつが取るって事らしいぜ」
「そんなのおかしいっすよ!使い魔の不始末は主人の責任って言ったって当事者の俺が罰を受けない理由にはならないでしょう!」
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 16:54:09 ID:ed6PCNxT
支援
595鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:54:48 ID:hSwQI764
才人は憤慨した。あまりにも無茶苦茶な理屈だ。決闘騒ぎを起こした自分とギーシュであって彼女ではない。真っ先に罰を受けるとすれば自分の筈だ。
これはどう考えても公平な事ではない。いや、それ以前に自分の起こした行動のせいで他人が咎を受けると言うのが我慢ならない。

「あ〜待て待て、なんでお前がそんなに処罰を食らいたいのかは解らんが、お前はきっちり罰金を受けてる」
「え?罰金?」
いきなり何を言い出すのかと思う才人を尻目にプッロは続けた。

「お前が使い魔として貰う筈の給料、あれが最初の三ヶ月間はパーになった。それ相応の処分は受けるって事さ」
「……そ、そうですか」
一応は自分も罰を受けるらしい。だがまだ貰っても無い金だ。それが無かった事になっても大して実感は沸かない。

「それに、どっちみち謹慎処分が無くたってあいつは授業には行かなかったから大した事は無いさ」
「え?どう言う事ですか?」
いぶかしむ才人に、次はウォレヌスが答えた。心なしか、彼が少し面白そうな表情になったように見えた。

「この三日間彼女はずっと君を看病していた。包帯を変えたり、顔を拭いたり、それこそつきっきりでな」
才人は思わずポカンと阿呆の様に口をあけた。あのルイズが、わざわざ自分の看病を?
にわかには信じがたい事だ。仮に自分を心配したとしてもそんな事をするとはとても思えない。

「君は怪我のせいで気がつかなかったかもしれないが、彼女が君を止めようとしていた時もよっぽど心配だったのか泣いていた」
泣いていた?彼女が自分の為に?才人はルイズが自分を止めようとしていた時の事を思い出そうとした。
確かにあの時は目も殴られたせいで腫れ上がり、まともに物を見られる状況では無かったし、そもそも彼女の顔自体まともに見てはいなかった。
だから彼女が泣いていたとしても気づく事は無かっただろう……そして才人は彼女が自分を真剣に心配してくれたのを嬉しく思うと同時に恥ずかしくなった。そんな心配をさせ涙さえ流させた自分の不甲斐なさに。

「おまけに薬代やら治療費まで全部自分で負担したんだよ」
そこにプッロが付け加えた。
「そんな物まで?……もしかしてそれって高いんじゃないんすか?凄く」
「聞いた所によれば、少なくとも平民が気軽に買える様な物じゃないのは確かだ」

そしてプッロは注意深い人間でなければ気づかない程度に、ほんの少し頬を緩めた。
「やかましいだけのクソガキかと思ってたが、少しは可愛い所もあるみたいだな、あいつ」
薬代まで?驚くよりも前に不可解に思えた。一体なぜ彼女がそこまでしたのかさっぱり解らない。
だがそれならなぜルイズが自分の傍らで寝ていたのも説明がつく。看病疲れで眠ってしまったのだろう。
そして才人はより一層、彼女が自分のせいで罰を受けたのをすまなく思った。

だがそれでも肝心な所をまだ聞いていない。
「あの、それより結局決闘の決着は一体どうなったんですか?あいつが勝った事に?」
「学院長の仲裁で奴の勝ちって事で手打ちになった。忌々しい事にな」
プッロは苦々しそうにはき捨てた。
「…奴の勝ち!」
才人はぎりり、と歯軋りをした。予想はしていたとはいえ、これで決闘はもう名実共にギーシュの勝利と言う事になってしまった。
「ふざけてやがる。俺に言わせりゃ勝負は始まったばかりだった。やっとまともに戦えるって所だったんだ。それなのにあのジジイが勝手に終わらせやがったんだ」
悔しいのはプッロも同じらしい。それもそうだろう、眠りの鐘が使われた時点で満身創痍だった才人とは違い、この二人は無傷だったのだ。
596鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:55:33 ID:hSwQI764
常識で考えれば才人はオスマンに感謝すべきだろう。下手をすれば死んでいたかもしれないのだから命の恩人とすら呼べるかもしれない。
だが才人はプッロと同じく、勝負を中断された怒りしか感じられなかった。
「だがな、俺はこのまま終わらせるつもりなんて無い。お前だってそうだろ?」
そう言いながらプッロは身を乗り出した。

「俺としてはあのガキに目に物を見せてやらなきゃ気が済まん。だからその内――」
「まだそんな事を考えていたのか?言った筈だ、もうこの事は忘れろ、と」
「残念ですがお断りしますね。こんな風になめられたままおしまい、なんて許せませんよ。いいですか?野郎は俺たちとの約束を破った。おまけに喧嘩は中断。このまま忘れるなんて男がする事じゃありませんよ。」
「気持ちは解らんでもないがな、あれはもう奴の勝ちと言う事で落ち着いた。学院長が言った通りそれが一番穏便に済ます方法なんだ。これ以上蒸し返しては厄介な事になるだけだ。
 大体、仕返しと言ってもどうするつもりだ?闇討ちでもするつもりか?そんな事をしたら犯人がお前だって事はすぐに解るぞ?」

プッロはむっとした表情になって言い返す。
「そんな卑怯な事をするわけないでしょう。正々堂々正面から戦いますよ」
「あのゴーレムとやらを一体や二体までならともかく、奴が七体全部出してきたらどうする?勝てると思うのか?そもそも奴が再度の決闘に応じると思うのか?」
「最初から無理だって決め付けちゃ勝てる物も勝てんでしょう!そもそも――」

ウォレヌスとプッロがこんな風に言い合いを続けている間、才人はウォレヌスのある言葉が気になっていた。
ウォレヌスは“一体や二体までならともかく”と言った筈だ。つまりこの二人ならあのゴーレムを倒せると言う事なのか?

才人はワルキューレの無機質ながらも妙に女性的なフォルムと、そしてあの見る事も出来なかったパンチを思い出していた。
……駄目だ、と才人は心の中でかぶりをふった。銃でも持たない限りあの人形を倒せるとは思えない。
そう、例え決闘の再戦をするにしても才人にはギーシュに勝てる方法が全く思い浮かばなかったのだ。
だが彼らは奴と戦えると言っている。

「二度目もあの程度の処分で済むとは限らん。正直な話し、最初から決闘なぞするべきじゃなかった――」
その時マルトーの声が響いた。
「おい!俺達はもう終わったぞ!そっちはもう食い終わったのか?」
「ん?あ、ああ!すぐに行く!」
そう言ってプッロは立ち上がり、ウォレヌスも続いた。
「どこに行くんですか?」
「風呂だ」
プッロによればこれから厨房の皆は風呂に行くとの事で、二人もそれに便乗するとの事だった。
才人は即座についていくと決めた。まだ話しの途中だったし、良く考えてみればもう四日も風呂に入ってない事になる。

三人はマルトーら厨房の人間と一緒になってゾロゾロと風呂場へ向かっていた。そしてプッロとウォレヌスは厨房での口論をそのまま続けている。
「とにかくだ、あの小僧とはもう関わるな。これ以上厄介ごとを増やすんじゃない!」
「いやですね。あんたの言うローマ人の誇りって奴はどこに行ったんです?あのクソガキは俺たちの信義を破ったんだ。それをこのままにしておけと?」

プッロがギーシュに対し復讐を考えている事と、ウォレヌスがそれを止めようとしているのは確実の様だ。
自分は果たしてどうなのかと才人は考えてみた。このまま決闘の事なんか忘れて、無かった事として扱えるか?
いや、それは無理だ。あの痛みと無力感は絶対に忘れられる物ではない。
そう思っていると今度はマルトーまで割って入った。
597鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:56:24 ID:hSwQI764
「プッロよ、俺はウォレヌスに賛成だ。ああ言う貴族のガキと関わるとろくな事にならんぞ?何事も無くあの決闘が終わったのが既に奇跡なんだよ。
 よしんば奴に仕返し出来たとしても、奴の実家が出てくれば恐ろしい事になる。奴はあれでも元帥の息子なんだぞ?」
彼の言葉に他の人間も口々に同意した。
「あんな事はもう忘れた方がいいぜ、プッロさん」
「触らぬ神に祟りなしって言うだろ?」
プッロは忌々しそうに吐き捨てた。
「くそっ!やりにくいったらありゃしねえな、ここは」

結局、自分は一体どうすればいいのだろう。再試合をするにしたって自分では勝ち目なんて万に一つもないのは身に染みて解っている。
そこで才人はさっきから気になっていた事を聞く事にした。彼らがギーシュのゴーレムを倒せるのか、と言う事を。

「一つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「さっきウォレヌスさんは言いましたよね?一体二体までなら何とかなるって。それって本当ですか?」
「……ああ。素手なら無理だが、武器があれば二体までなら倒せる。三体は難しい。四体以上はまず無理だな」
プッロは頷いた。つまり二人とも同じ事が出来ると言う事だろう。そしてウォレヌスの言葉に誇張は全く感じられない。
「そう、ですか……」

才人は驚くと同時に少し放心してしまった。まさか、あんな物を倒せる人間がいるとは……
素手では無理だと言っていたが、剣なんて触った事すらない自分が剣を握っても結果が変わるとは思えない。斬りつけても弾かれるだけだろう。

そして才人は思い出そうとした。あの決闘の時、二人がワルキューレを相手にしてどうなったいたかを。
あの時は周りに気を配れるような余裕は無かったが、それでも少しは記憶に残っている。あの二人は眠りの鐘がなるまでの間ずっと立っていた。
自分が覚えている限りでは一回も攻撃が当たっていなかった筈だ。自分と違って医者の世話になっていないのも彼らが殆ど無傷で切り抜けた事の証だろう。
そう考えると、あれだけ大口を叩いておきながらギーシュが本気を出すと手も足も出なかった自分を才人は情けなく思った。
悔しさを抑えられない。彼の頭の中では何回も決闘の場面が再生されていた。
大口を叩く自分。ギーシュを殴り飛ばし、興奮する自分。ギーシュが倒れ、勝利を確信した自分。そしてゴーレムに手も足も出なかった自分。
ルイズにあれだけ大言壮語をし、ウォレヌスにあれだけお膳立てをして貰っておきながらあの有様。
今ではルイズの言ってた「貴族は平民に勝てない」と言う言葉の意味が良く解る。自分はメイジとしては最も下位のギーシュにすら全く歯が立たなかった。

いや、それは正しくない。勝てるかどうかはともかく、少なくともあの二人は自分の様な醜態は晒していない。
「貴族は平民に勝てない」以前に単純に自分が弱いのだ。それは当たり前の事かもしれない。平賀才人はただの高校生だ。
訓練を受けた兵隊などではない。だがそんな理屈は気休めにもならない。
才人の頭は無力感、悔しさ、情けなさに満たされていた。もしあのまま決闘が中止されず、あの剣を握っていたら?
自分は何の抵抗も出来ずに殺されていたかもしれない。殺される?
そう、あの時は頭に血が昇っていて気がつかなかったが、ルイズやシエスタが言っていた事が本当なら自分は死んでいたかもしれない。

そこまで思い立つと、更に悔しさがつのり才人は思わず拳を壁に打ち付けた。
(クソッ!)
手がじん、と痛んだ。
当然壁には何の変化も無かった。拳を叩きつけても自分の手が痛んだだけ。今度は情けなさが膨れ上がる。
そして才人はとうとう自分でも気がつかない内に涙を流し始めた。だがそれに気づいた者はいなかった。
598鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/04/17(金) 16:57:06 ID:hSwQI764
以上です。本当はだいぶ前に一度完成していたんですが、推敲をする内に展開が気に入らなくなり少しずつ変えていったら結局最初から全部書き直す事になり、こんなに時間がかかってしまいました。
キチンとプロットを練らないとこう言う事になると言う事が身にしみて解りました。申し訳ありません。
次話は二週間程で出来ると思います。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 17:05:12 ID:lbVtmkSn
お久しぶりです
自分は一ヶ月だろうが待ってますんで、じっくりやってください
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 18:09:34 ID:fO0xZUs8
おつさしぶりー
ギーシュとの再開がどんなになるか楽しみだ
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 18:10:53 ID:/Mskf0tj
「ウルトラ大怪獣バトル」のペンドラゴン号がゼロ魔の星に不時着。
602zeropon!:2009/04/17(金) 22:09:24 ID:kgqow6JZ
15分あたりから投下します

603zeropon!:2009/04/17(金) 22:10:46 ID:kgqow6JZ
すいません、sageわすれました
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:12:54 ID:It7DfJMh
待ってたぜ!
605zeropon!:2009/04/17(金) 22:14:33 ID:kgqow6JZ
zeropon!

第七話

『土くれ』のフーケ

ルイズたちが町から帰った後、こんなやり取りがあった。
ルイズはメデンがなぜデルフリンガーをほしがったのか聞いたところ、
「こやつが言った『使い手』という言葉が気になりました。デルフリンガー、『使い手』とはなんです?」
「忘れた」
一言そっけなくメデンに返すデルフリンガー。
「これでも長生きしててな。昔のことは忘れちまうんだよ」
「しかし、『使い手』という言葉は覚えてるのでしょう?」
「それでも中身は忘れちまったんだよ」
忘れたと繰り返すデルフリンガーにしつこく聞くメデン。そんなやり取りをしてるうちに、デルフリンガーが
「だああああああああ!忘れたもんは忘れたんだよ!たとえ溶かされたって思い出せねえって!」
それを聞いたメデンはすうっ、と目を細めるとこう言った。
「では試してみましょう」
「へ?」

と、言う訳で

「うぎゃああああああああああ!やめろおおおおおお!!」
「さあさあとっとと言わなければ、とけてしまいますよ!」
そこはパタポン砦の中、熱気が充満するそこに鎮座するのは巨大な鍛冶用の金床。
その金床の下部は窯になっていて轟轟と大きな音で火を滾らせながら口をあけている。
デルフリンガーはその火の中に放り込まれる寸前の形で握られていた。
「メデン殿・・・いささか無体ではござらんか?」
「お黙り!トン・カン・ポン!」
金床の横、そこに据えられた台の上には、メデン、ルイズ、そして大きなハンマーを持ち頭巾をまいた大きなパタポンが一体。
彼の名はトン・カン・ポン。パタポン族最高の鍛冶師である。彼がこの部屋の持ち主・・・ではない。
「しかしのう、これはちとかわいそうじゃぞう?」
「あなたもです!ブッシュ・シュシュ!口出し無用!!」
デルフを救うかもしれないしぶい老人のような声がすれどもその声の持ち主の姿が見えない・・・いや、最初から見えていた。
「だがのう・・・」
「さあ!ブッシュ・シュシュ!もっと熱を!炎を!あはははは!」
「ううむ、デルの字。すまんのう、これも命じゃてのう、そおうりゃあああ!」
そういうと金床、それ自体から生えた足が、ふいごを踏む。よくみればデルフリンガーを握るその手も、金床から生えており、
そしてその炎を滾らせる窯それ自体が大きな口であった。
彼の名はブッシュ・シュシュ。パタポン族の精霊パタポーナであり、その身を用いトン・カン・ポンに手伝わせて
パタポン族に武器と、合金を与えているのである。
「いやああああああああああああ!」
一層燃え盛る炎に泣き叫ぶデルフリンガー。しかしそれを命ずるほうは、
「あははあははあはは!!!」
くるくると狂ったように回るメデン。目にはすでに狂気が宿っていた。
「ねえ、メデン、さすがにもういいんじゃない?本当に溶けちゃうわよ、それ」
デルフリンガーがかわいそうになった、というより、メデンがやばすぎると感じたルイズが声をかける。
「そうだああ!いいこといううねえええ!ぺちゃぱいのじょうちゃああああああん!よ!ないすひんにゅううう!」
「ブッシュ・シュシュ、最大火力で放り込んで」
ルイズの目にも狂気が宿った。
「いいいやあああああああああ!」
「おぬし、実は溶けたいのじゃろ?」
ブッシュ・シュシュがあきれた様子で言いながら、口の中に放り込もうとした瞬間、
606zeropon!:2009/04/17(金) 22:16:19 ID:kgqow6JZ
ズン!
地響き、パタポン砦の中にいるにもかかわらず響くほどの大きな地響きがした。
「な、なによこれ?外から?」
あわてて外に駆け出すルイズ
「は!炎に浮かれて自分を見失うとは何たる不覚!おまちくださーい!ルイズ様ー!」
パタパタとあわててついていくメデン。そして残ったのは三体。
「・・・俺助かった?ねえ?助かった?たすかったよおおおおおお!」
喜びにむせび泣くデルフリンガー。その上でものすごい残念そうな顔をするブッシュ・シュシュ。
しかし彼は少し考えた後、こう言った。
「のう、デルの字」
「なんだい?おっさん?」
「さびたままじゃあかわいそうじゃから打ち直してやろう」
そういって再び口にデルフリンガーを近づける。
「え?いや、ちょおかまいなくってやめろやめろやめてええええええええ」
デルフリンガーの断末魔の叫びが響き渡るパタポン砦であった。

「なによ、あれ・・・」
ルイズは地響きの発生源をみて愕然とする。そこにいたのは高さ三十メイルはあろうかという巨大なゴーレム。
それが学院の一角の塔をその巨大な拳で殴りつけているのだ。後ろからあわててついてきたメデンも驚く。
「高さ三十メイルのゴーレム・・・あれが武器屋の言っていたフーケという盗賊でしょう。ルイズ様、危のうございますので後ろにさがりま」
「錬金!」
「ルイズ様!?」
メデンの忠告を一切聞かず、ルイズはいつもどうりの失敗魔法、しかし今回はそれを目的とした上で、ゴーレムに放つ。
どん!
しかしその爆発はゴーレムを打ち崩すどころか、塔のほうが爆発、その塔にひびを入れる。
そしてこれ幸いと再び、拳を振るうゴーレム。轟音と共に開いた穴にフードを被った人影が入り込む。
人影がいなくなると共にゴーレムの動きはぴたりと止まった。
「さあ!ルイズ様!今です!今なら安全に逃げられ」
「錬金!錬金!れんきいいいいいんん!!」
「ルイズサマーーーー!?」
メデンの叫びにルイズは雄たけびで返す。
「メデン!私は引くわけにいかないのよ!あいつを倒せば『ゼロ』なんて名前を二度と呼ばれない!呼ばれないの!」
「ルイズ様・・・ですが!このままでは!」
ルイズの爆発でもゴーレムの欠片がぱらぱらと落ちるだけ。質量が桁外れなのだ。そうこうするうちに塔の壁の穴から人影が再び現れ、
ゴーレムの肩に降りる。そして再び動き出したゴーレムはゆっくりとルイズたちに向き直る。目撃者は消すつもりらしい。
607zeropon!:2009/04/17(金) 22:17:09 ID:kgqow6JZ
「あああああ!錬金錬金錬金錬金錬金!」
どん!どん!どん!どん!
ルイズの錬金もむなしく大きく拳を振り上げるゴーレム。そしてすさまじい勢いで振り下ろされたそれは、ルイズとメデンに一瞬黒い影を落とし、
地面ごと二人を叩き潰した。轟音と土煙が舞い上がる中、ゴーレムの肩にのった影はにやりと笑う。しかしその土煙をつきやぶって現れる三つの影。
それは大きな翼を羽ばたかせると、その身をゴーレムより遥かに高く舞い上げる。
それは二メイルはある大きな鳥、そしてそれに乗るパタポンとメデン、ルイズであった。
「だいじょうぶですかー?ルイズさまー」
「たすかった・・・の?」
鳥の手綱を握るパタポンの言葉に安堵したルイズはばっさばっさと空中でホバリングする鳥の上にぺたりとしりもちをついた。
「とりポン達!間に合いましたか!!」
メデンが別の鳥の上でぴょんぴょん跳ねながら言う。若干手綱を握るパタポン、鳥共に迷惑そうだ。
「ルイズさまー、少し揺れますのでつかまっててくださいねー」
ある程度危機的な状況でもあるにかかわらず呑気な声で注意を促すパタポン。
「え?こ、こう?ってきゃああああああああ?!」
パタポンが手綱を引くと、乗鳥?が翼を一瞬にして折りたたみ急降下、次の瞬間、
轟っと言う音と共に今までいた空間をゴーレムの腕が薙いでいった。
「あぶな・・・いいいいいい!!??」
かわした、と思った瞬間、もう一本の腕がルイズたちに迫る、しかしそれもくるりと、横になったとりポンが紙一重でさけ、
ばさりと、一はばたき。勢いのままゴーレムの頭の横を通り過ぎる。フーケの横を通るがその表情はフードで見えない、しかし挙動に驚愕が伺える。
そのフーケの横に、どすり、と何かが突き刺さった。それはモリ。狩りに使われるような三叉のモリが突き刺さっている。
どす、どす
ふたたびフーケの横を通りゴーレムに突き刺さる。それは上空から。フーケが上を見上げると、そこには自分の頭の上を廻る二羽の鳥。
そして夜の闇に紛れる降ってくる何か。空気を切り裂く音共に、無数のモリの雨が降ってきた。
慌てたフーケはゴーレムの腕を頭上に掲げ防ぐ。流石に土の塊を貫通するほどの威力は無いものの、
間断なく振りそそぐそれに、フーケは反撃もできない。
「れええええええええんんんきいいいいいいいいいんん!!!!」
ルイズが鳥から飛び出さんばかりに身を乗り出しながら叫ぶ。その裾をあわててパタポンは掴んでいる、鳥も必死だ。
すさまじい音と共にゴーレムの腕にルイズの失敗魔法が炸裂、しかし今度はモリによって脆くなっていたのか大きく抉れていた。
いける!と思ったルイズは再び大きく杖を振ろう、とした時。急にゴーレムが動き出した。
このままではいけないと、慌てたフーケが逃げ出したのである。
「逃がさないわよ!!」
ルイズがパタポンをべしべし叩きながら必死に(とりポン)が追うが、ずんずんと進むゴーレムにルイズや、メデンを乗せたままでは思うように追いつけない。
そしてフーケのゴーレムが学園の外れの森に差し掛かった時に突如崩れだし、その姿をフーケもろとも消してしまった。
608zeropon!:2009/04/17(金) 22:18:25 ID:kgqow6JZ
七話終わり
次、八話目行きます
609zeropon!:2009/04/17(金) 22:20:34 ID:kgqow6JZ
zeropon!

第八話

フーケ追撃 

「だめだめじゃな、おぬしら」
オールド・オスマンの穏やかな叱責に教師陣は縮こまってしまった。
今現在、この学院長室には学院長オールド・オスマンと教師たち。
そしてルイズとメデン、キュルケとタバサがいた。
「・・・ちょっとツェルプストー、あんたほんとになんでいるの?」
「あら、ヴァリエール。そんな小さなことを気にしちゃいけないわ」
「そうそう」
「・・・あなたもよ、タバサ」
欠片も関わってないはずのキュルケとタバサは、どこからかルイズが呼ばれたことを聞きつけたのか
部屋に入るときにちゃっかり一緒に入ってきていた。
しかもキュルケはまったくお構いなしに、テーブルの上の茶菓子をむさぼっている。
「まったく・・・生徒が戦って教師がぬくぬくとしておるなぞ言語道断じゃ」
オスマンの糾弾は続く。あの日の夜、結局騒ぎを聞きつけた当直の教師がやってきたのは全てが終わった後。
フーケなど影も形も無く、ルイズたちが帰ってきてやっと事情がわかったぐらいである。
「しかし・・・こまったのう。奪われた『生命の芽』・・・いやそれよりもこのまま逃がしたとあっては、
魔法学院の名折れというもんじゃ、というわけでミスタ・ギトー」
「は、はい!オールド・オスマン!なんでしょうか?!」
隅っこのほうで縮んでいた当直だった教師ギトーがびくりとその姿勢を正す。
「ここは汚名返上ということでとってこんか?」
「へえ?!!」
いきなりのことに、両手を伸ばしながらぴょんっと浮くほど驚くギトー。
「し、しかし、いまだにどこに逃げたかすら・・・」
「それならばご安心を」
そういって入ってきたのはオスマンの秘書、ミス・ロングビルである。
「おお、ミス・ロングビル。いままでどこに?」
「はい、フーケの後を追っておりました」
「なんと!してフーケはどこに?」
「ここから四時間ほどの農村の近くの小屋に入る男を確認いたしました」
その報告にざわめく教師達、ルイズたちもその報告を真剣に聞いている。
どんどんと青ざめていくのはギトーの顔色。
「ふむ!これで賊の居場所は分かった。後は捕らえるのみだが敵はメイジばかりを
狙うほどの凄腕。生半可なものならば生きては帰れん。そこで、常々『風は最強』といわれる
ミスタ・ギトーがやはり適任じゃろうて。なあミスタ・・・?ん?ミスタ・ギトーは?」
ふと気づけば、ギトーがいない。いた場所には塵一つ存在しない。
まるで最初からそこに存在しなかったのように。
「偏在・・・だと?!」
「スクウェアクラスの技術をこんなところで!?」
わあわあ叫ぶ教師陣。呆れたオスマンは、
「仕方あるまい・・・誰か他に行ってくれんか?」
その問いに教師達はオスマンから一様に目を背け黙りこくった。
しかし、そんな中一本の杖が上がる。それは教師ではなく、
ルイズ達・・・でもなくその横からあげられていた。
「その任、私達にお任せを」
杖の主はメデンだった。
610zeropon!:2009/04/17(金) 22:22:41 ID:kgqow6JZ

がらごろがらごろ
街道を幌馬車がすすむ。手綱を握るのはロングビルだ。
女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、ルイズにやっぱりついてきたキュルケにタバサ(は、ほとんどしゃべらないが)
ロングビル、メデンと女四人に一匹もいればわりと騒がしい車内であった。
内容的にはギトーの事だが、本人が聞けば三回は自殺するだろう。
ふとキュルケがロングビルに聞く。
「そういえばミス・ロングビルもメイジなんですか?」
「ええ、でもライン程度のものですが」
ロングビルが背を向けたまま答える。
「それじゃあミス・ロングビルも貴族なんですか?」
ルイズの問いにロングビルは少し戸惑った感じで黙ってしまった。
そして彼女が口を開こうとした時、
「人の過去をあんまり探るもんじゃねえ」
低く重い声が響いた。その声は幌馬車の奥の暗闇から・・・いや、黒い塊から発せられていた。
それはパタポンだった。しかしその体躯は普通のパタポンと違いとても大きい。
通常の三倍はあろうかというほど大きなパタポンはその身を黒いマントと、黒い肩当で包み、
幌馬車の奥で目を瞑り蹲っていた。デカポンと言われる種族である彼は
メデンが護衛にと、連れてきたのであった。
「違うか?嬢ちゃん」
「ちょっと!嬢ちゃんって!使い魔の癖に生意気よ!」
「ガ・ツー!ルイズ様に向かってそのような!」
憤然と抗議するルイズ、メデンをガ・ツーと呼ばれたパタポンはちらりと、その鋭い視線で一瞥すると
「生憎、ご主人様ってやつを持った覚えもねえ」
といって、再び目を閉じた。
「なんですってえ!」
「ちょっとルイズ落ち着いて、あぶないわよ」
憤然と立ち上がったルイズをキュルケがたしなめる。
「でもキュルケ!こいつが!こいつが!」
「あら?使い魔を使いこなすのもメイジの実力じゃない?」
「ううー。もういい!絶対に認めさせてやるんだから!」
勢い良く座ったルイズはそっぽをむいてしまう。
「すいません。ルイズ様。ガ・ツーはもともと傭兵なので・・・」
ぷりぷりと怒るルイズをなだめるメデン、そんなルイズを愛おしそうになでるキュルケ。本を読むタバサ。
相変わらず影に蹲るガ・ツー。そして薄い笑みを浮かべるロングビル。
「さあもうすぐですよ」
馬車は目的の小屋に近づきつつあった。

611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:24:10 ID:TMJU3vc3
旅は道連れ 世は情け スレには支援で 時には自演
612zeropon!:2009/04/17(金) 22:24:15 ID:kgqow6JZ

「アレがそうね」
目的の小屋とその周辺が見渡せる位置の茂みにルイズたちは隠れていた。
「ちょっと!もうちょっと縮みなさいよ!」
隠れている、のだがガ・ツーの巨体は茂みに入りきれずほとんどはみ出ている。
「悪いな、作りがでかいもんでね。で、どうするんだ?」
「これだけ近づいても何もリアクションがないってことは・・・」
「多分、罠。でなければもういない」
キュルケの考えをタバサが補足する。既に事件から九時間。
九時間もおとなしくしている盗賊のほうがおかしいのである。
「順当に考えれば偵察ね」
キュルケの提案にうなずき、ルイズが名乗り出ようとしたとき、
「まあ、うだうだしてもしかたねえ。俺が行く」
ルイズの提案を聞く間もなくガ・ツーは立ち上がりずんずんと小屋への歩を進める。
「ちょっと!まちなさい!私も行くわよ!」
「あああ、ルイズ様!軽率な行動はあぶのう御座います!」
ガ・ツーの後を慌てて追うルイズと、そんなルイズを慌てて追うメデン。
「あらら、ばらばらになっちゃたわね・・・?タバサ、ミス・ロングビルは?」
「森を探して来ると言っていた」
タバサの無機質な答え。
「ふうん?へんなの」
「どうする?」
「んーそうねえ。まあとりあえず待機ね」
キュルケがとりあえず待つという判断を下したと同じ頃。
その背後の森から巨大な何かの影がキュルケを襲いつつあった。

「ふん、やっぱりもぬけの殻か」
ガ・ツーは小屋の前まで来ると、堂々と小屋の扉を蹴破り中に入っていった。
中に充満するかび臭いにおい。埃が床にうっすらと積もっており、
ここが長年使われてないことを示す。
ガ・ツーはそのまま奥の部屋を探し出し、ルイズとメデンも手前の部屋を探し出す。
「これは・・・」
メデンが床の上の何かしらに気づいた。
「どうかしたの?」
「いえ・・・なんでもありません」
ルイズの頭に疑問符が浮かんだ瞬間、
「おい!メデン!こっちにきてみろ!」
ガ・ツーの声が奥から響いた。ルイズとメデンが行くと
一抱えはある箱の前にガ・ツーがいた。
「これを見ろ」
そういって箱の前からどくガ・ツー。ルイズとメデンが中を覗くと、
「な!これは!」
箱を除いたメデンが驚愕に目を見開く。
「まさか、こいつが『生命の芽』だとはな・・・」
「これを・・・知ってるの?貴方達」
同様に驚くガ・ツーにルイズが聞く。
「ああ・・・こいつは覇王の・・・」
ガ・ツーが答えようとしたとき、
613zeropon!:2009/04/17(金) 22:25:58 ID:kgqow6JZ
ずずん・・・
響くは昨夜と同じ遠雷のような地響き。
「おいでなすったか」
弾かれたように小屋の外に飛び出ていくルイズ達。
外に出ればそこには見上げんばかりの巨大な影。
フーケのゴーレムだ。そして足元にはキュルケとタバサがいる。
二人は突如現れたゴーレムに十分な距離をとれずにいた。
二人に振り下ろされるは巨人の足。かろうじて避けたもののほとんど爆発に近いその一撃を
もろに食らい、その余波で吹き飛ぶ二人。
タバサはすぐに体勢を立て直すが、より近かったキュルケは
ごろごろと土くれと一緒に転がる。三メイルほど転がりようやく止まるが、
体を強く打ち呼吸もままならない。そんなキュルケを狙い再び振り上げられたゴーレムの足が
キュルケを葬らんと迫る。
「ああぁ!!ファイアアアアボオオオルッ!」
ルイズの絶叫と共に放たれたそれは、いつもの失敗魔法も本来のファイアボールすらも遥かに
凌駕した威力で巨大なゴーレムの足を、膝下から吹き飛ばした。
バランスを崩したゴーレムは後ろに轟音と共に倒れていく。
「大丈夫?!」
倒れたキュルケの元にルイズが駆け寄り抱き起こす。タバサもすぐにやってきた。
「あら、ライバルを・・・助けるなんて随分、ぐうっ、熱血ね」
「本当よ!私もやきが回ったかしら!」
足を痛めたらしく、タバサと一緒にルイズが肩を貸して立たせる。
「離れるわよ!」
っと三人が歩き出す、がそれを覆い隠す黒い影。ゴーレムが起き上がろうとしている。
「なんで?!足を吹き飛ばしたのに!」
見ればルイズが吹き飛ばした足は大地そのものとくっついており、
起き上がるときには周辺の土を吸収し完全に修復されていた。
「ちょっと・・・ルイズ、タバサ」
「何よ!」
必死にその小さな体でキュルケを運ぶ二人。
「私を置いて、いきな、さい!この、ままじゃ!『馬鹿!』」
キュルケの提案を前を向いたまま一言でうち消すルイズ。
「馬鹿」
そして同じように前を向いたまま言うタバサ。
「あんた見捨てて逃げるほど!貴族辞めてないわよ!感謝しなさい、この私が
敵に背を向けてんだから!」
「ルイズ・・・」
しかし、そんなルイズ達を無情にも叩き潰そうと振り上げられる拳。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:26:44 ID:TMJU3vc3
ここは俺に任せて お前たちは早く投下するんだ!!
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:40:13 ID:TMJU3vc3
は、はやく…
お、俺は…も、もうダメだ…   ぐあああっ!!
616zeropon! 代理マン:2009/04/17(金) 22:42:42 ID:EcFjA0hM
「ルイズ!タバサ!逃げて!」
「五月蝿い!!」
「だいじょうぶ」
だが急ぎすぎて三人は足をとられて諸共に倒れる。
そして、三人を襲う巨人の一撃、しかしその間に押し入る黒い風。
それはその暴力の前に片腕だけ、を差し出す。
ずん!
そのあまりの質量に黒い影の足元が砕ける。しかしそれは、受け止めた。
ルイズ達への一切の危害を及ぼさず。数トーンはあろうかという質量を受け止めた。
「ったく・・・あぶなっかしいお嬢様だな」
影の名はガ・ツー。そして遅れてやってきたメデンがルイズに声をかける。
「お怪我は御座いませんか?ルイズ様」
「ガ・ツー・・・メデン・・・」
しりもちをついた体勢で二人を仰ぎ見るルイズ。
「ガ・ツー、まだダメですか?」
「ああ?」
「ルイズ様はまだ御嬢ちゃんですか?」
メデンの問いにゴーレムの拳をぎしぎしと音がなるほどの力で受けとめながら答える。
「は!御嬢ちゃんも御嬢ちゃんだよ、危なっかしいマネしやがって。
考えねえで行動してるうちは御嬢ちゃんさ」
そして三人を一瞥して前を向くと言った。
「ほら、あぶねえからとっとと下がりな、ご主人様」
と、空いた片手をひらひらさせながら言った。それを聞いたルイズ。
ぽかん、と一瞬ほうけた顔をした後、またいつもの勝気な瞳をして、キュルケを再び
タバサと一緒に抱える。そして
「負けるんじゃないわよ!ガ・ツー!」
といって、キュルケ達と小屋のほうに移動していった。
「さてガ・ツー・・・巫女の名において命ずる。」
メデンの言葉と共に、ガ・ツーがマントから覗くモノの柄を掴む。
「薙ぎ払え」
そしてガ・ツーが取り出した其れは、
ー大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎたー
ーそれはまさに『鉄塊』だったー
617zeropon! 代理マン:2009/04/17(金) 22:43:32 ID:EcFjA0hM
209 :zeropon!:2009/04/17(金) 22:32:08 ID:2SJKCndQ
すいません 八のラスト誰かお願いします


というわけで、>>616がラストだ。
618zeropon! 代理マン:2009/04/17(金) 22:45:07 ID:EcFjA0hM
209 :zeropon!:2009/04/17(金) 22:32:08 ID:2SJKCndQ
すいません 八のラスト誰かお願いします


というわけで、>>616がラストだ。
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:46:02 ID:EcFjA0hM
とても大事なことだから二回言いました。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:46:11 ID:2TTrcfZB


なぜ最後にBERSERKwww
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 22:47:59 ID:It7DfJMh
ドラゴン殺しw
622滅殺の使い魔の人:2009/04/17(金) 23:07:58 ID:RLiggLs3
ちわーす、三河屋でーす。
めッちゃ遅くなってもうた……
zeropon! の方、代理の方乙です!
先約がなければ、五分後に投下させていただいてよろしいでしょうか?
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 23:10:10 ID:Jm8AEf93
まて、容量が少ない、今は危険だ!
624滅殺の使い魔の人:2009/04/17(金) 23:12:26 ID:RLiggLs3
なん・・・だと・・・
どうしましょう?
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 23:13:52 ID:2TTrcfZB
次スレ立ててくる!
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 23:14:26 ID:TMJU3vc3
それでも豪鬼なら…豪鬼ならなんとかしてくれる…
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 23:16:21 ID:2TTrcfZB
次スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1239977725/

じゃこのスレに禊を
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 23:16:37 ID:myog6Ku7
滅殺キターーーー!!

次スレでwktk
629滅殺の使い魔の人:2009/04/17(金) 23:18:11 ID:RLiggLs3
ありがとうございます!
なんか、デジャヴを感じるぜ!
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:01:01 ID:It7DfJMh
                               ○________
                   なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|
                                  |:l\\\||.:.|l///|
                     ,. -――- 、    |:|:二二二二二二二 !
                   /        \.   |:l///||.:.|l\\\|
                  f  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\|
                   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
                  _/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
           /´ ̄`ヽ  (  /Tえハフ{  V / /
          /  人   l-ヘ  \:::∨::∧   / ∠   
        / /爻ヽ  ヽ_|::::__ノ   }ィ介ーヘ ./>⌒ヽ  , -─‐-、
        { /∠⌒ヽ }  } Σ___/| | |V::::ノ/   } レ'  , ---、 ヽ    ____,
        レ'彡イ {Uj }ヾミイ|:::::::::::::::::ハ   >∠ /  /     `! |  t´r'⌒
    ⌒)ノ  |  ドこzン八三}≧__::::::::/:∧/ヾ ̄ヾノ_ノ  ァ'-─-、 ゞL__,〃
     (ソ⌒ヽ! ト--イ ⌒__,ハ.' y'´7´l}_, ミy'´7´l}_, -‐┴-、   `ヽ   ̄ ′
      レ)   ! ト--イ (  ノ `ーべ⌒ヽ>y' 〃, -┴┴ミ、_}_}_}_j ヽ⌒) j
      ヽ)、___,>、ト--イ ))〈     ト_チrく    // ̄ヽ、_) / /  _..._
  '⌒>‐ミ、 \)こZヾ--ヘ{{ l|  y' ゝ ヾミ゙)'}|≧>、 / /バ⌒ヽn V/ 〃⌒ヽ
  (⌒ヾ>ニKド、⌒Yく_/ヽj} 人_ゝ__>==1 r彡"´/ / | |   /y'}[__//    `
    ,ィ  ゙̄Vソ,イノ \__ム丁了)ノr'ン´フノ ィ彡/| | ヽヽ. // ヽVソ´
   / / r‐ヘ `Y {    [二[| ,勹77´ ̄ シ三彡'/| |\ ヽV/ミ、_} Kミ、
  { {   トZべ.」 |   [三}〒ラ77 (_)(_) r三/ / | |> \f⌒l/l | L }
 ヾl |  l三ィ∧ l __. [三}⊥.イ工===ァべ/ /,ィ| |/>l{ l>}X.| |゙)レ′
  ヾ, ヽ  {三N>} Y二ヽ」ニ/l⌒ヾ´  /  {O}___」 |/rくゝ _ソ\l |(
   >、 \ 缶jfハ >n' fy' l ⌒y} //⌒\/rヘ l/ /7j\j j
  /∧>、_/フイ/7-Vきy'/1 |(⌒)|}./|ト、   \j.ハ ヽ. //) l| //
  !{ニ///,イ///∠7/Zl{ |ィ^トl|\.j| ノへ.____}へ. V/´ ヽV./
  ゞ〃'Tヽ 〃´ ̄ ̄〃⌒l  VハVj  }ソ       ヽ \  //
  ケミ三彡"     /   ゝ ゞ= 'ノ二/         \ ゝ" /
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:05:47 ID:kb5/vHnh
>>630
てめえ何てセクハラしやがるwww
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:21:52 ID:23ZZCOiz
これはひどいwwwwww
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:23:20 ID:rXgyauDg
なんかこのAAなら許せるwww
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:25:26 ID:+WfbVdVZ
何で薙ぎ払うつもりだww
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:26:42 ID:0X+brA5R
スゲーw
自作?
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:42:48 ID:4h9axDxo
なぎ払えじゃねえなw
突撃ー!とかぶち込めー!だなw
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:45:00 ID:M6bNTiXI
ぶちまけろー

じゃね?
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:46:17 ID:XuvNcW0C
やらないか
じゃねw
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:46:47 ID:j+vyPTlY
つっこめー
にきまってんだろw
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 00:53:55 ID:3q7p3HR8
なんてご立派www
許せるッ!
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 01:05:08 ID:kb5/vHnh
誰か「マーラ様の上にあんなチビジャリが乗っているだと!?許ざん!!!」
とか突っ込めよwwwwww
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 01:12:00 ID:kkGUxtEh
>>641
マーラ様の上だから許せるw
積極的じゃないか
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 01:14:02 ID:VoyfsjxT
>>641
マーラさまは寛大なお心をお持ちなのです、だからご立派なのです
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 01:43:19 ID:W8by0W5U
果たして2年前にご立派さまを書かれた作者の方は、今の状況をどう思っていられるのだろうか。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 02:14:32 ID:fgOWSX89
避難所でやったのにわざわざこっちへ持ち出さないでくれと思ってる
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 02:21:18 ID:OYryZZ12
>>630
ワロタw
マーラ様の人気と存在感は今なお健在だなwww
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 07:08:54 ID:VciI1bKT
>>634
>薙ぎ払う
中心脚だな
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 09:17:10 ID:ip1FiWeB
お前等どんだけマーラ様を信奉してんだよwwww
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 09:55:30 ID:ezfysL5U
うめよう
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:06:47 ID:7TGHH1PN
うめうめ
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:17:11 ID:tbQw77Fr
魔王ですから
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:40:45 ID:DESsuKOJ
?
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:42:13 ID:Gi4olH/c
ね?うめよ?
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:44:13 ID:OGyXIvcV
うめ小竜
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:53:24 ID:YkjnHpMN
500ならカルノフ召喚
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 10:57:06 ID:9aTMk1UQ
     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの
657名無しさん@お腹いっぱい。
                               ○________
                   なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|
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                     ,. -――- 、    |:|:二二二二二二二 !
                   /        \.   |:l///||.:.|l\\\|
                  f  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\|
                   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
                  _/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
           /´ ̄`ヽ  (  /Tえハフ{  V / /
          /  人   l-ヘ  \:::∨::∧   / ∠   
        / /爻ヽ  ヽ_|::::__ノ   }ィ介ーヘ ./>⌒ヽ  , -─‐-、
        { /∠⌒ヽ }  } Σ___/| | |V::::ノ/   } レ'  , ---、 ヽ    ____,
        レ'彡イ {Uj }ヾミイ|:::::::::::::::::ハ   >∠ /  /     `! |  t´r'⌒
    ⌒)ノ  |  ドこzン八三}≧__::::::::/:∧/ヾ ̄ヾノ_ノ  ァ'-─-、 ゞL__,〃
     (ソ⌒ヽ! ト--イ ⌒__,ハ.' y'´7´l}_, ミy'´7´l}_, -‐┴-、   `ヽ   ̄ ′
      レ)   ! ト--イ (  ノ `ーべ⌒ヽ>y' 〃, -┴┴ミ、_}_}_}_j ヽ⌒) j
      ヽ)、___,>、ト--イ ))〈     ト_チrく    // ̄ヽ、_) / /  _..._
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  (⌒ヾ>ニKド、⌒Yく_/ヽj} 人_ゝ__>==1 r彡"´/ / | |   /y'}[__//    `
    ,ィ  ゙̄Vソ,イノ \__ム丁了)ノr'ン´フノ ィ彡/| | ヽヽ. // ヽVソ´
   / / r‐ヘ `Y {    [二[| ,勹77´ ̄ シ三彡'/| |\ ヽV/ミ、_} Kミ、
  { {   トZべ.」 |   [三}〒ラ77 (_)(_) r三/ / | |> \f⌒l/l | L }
 ヾl |  l三ィ∧ l __. [三}⊥.イ工===ァべ/ /,ィ| |/>l{ l>}X.| |゙)レ′
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   >、 \ 缶jfハ >n' fy' l ⌒y} //⌒\/rヘ l/ /7j\j j
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  ケミ三彡"     /   ゝ ゞ= 'ノ二/         \ ゝ" /