あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part223

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part222
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1237906820/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:00:42 ID:45gwcC8S
>>1
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:01:21 ID:OgmnFVO6
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:05:24 ID:W0EhFzH9
スレ立てZ

ヒーロークロスラインから召喚するとしたら誰が面白いだろう
並行世界という設定上、召喚というより向こうからやって来るってパターンになるかもしれんが
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:10:28 ID:OhBudO5s
そりゃ侵略大帝じゃね?
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:12:23 ID:vtGmDKbn
おまけ漫画があれば、そこから村枝賢一を召喚に決まりだぜ!
7滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:25:10 ID:PKR0JeZy
>>1乙!
先約が無ければ、30分程後に投下させていただいてよろしいでっしょうか?
8滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:25:52 ID:PKR0JeZy
あ、ミスです。
30分頃です。
9聖帝軍正規兵:2009/03/31(火) 21:31:23 ID:1QGXBGbY
下がれ下がれぇーーー!スレを開けろーーー!
聖帝様のご投下だぁーーーーーー!
>>7>>8
予約は消毒だーーー!
ヒャッハッハッハ!見たか!こいつのように消毒されたくなかったらさっさと支援しろ!消毒されてぇか!

削除人<そうだな、予約は消毒すべきだな

あべし!

滅の人の15分後ぐらいに。
10滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:32:21 ID:PKR0JeZy
深夜、森のはずれ――
ルガールは、周りに人気が無い事を確認するように周りを見渡す。
「いない、な」
そう確認すると、足を踏ん張り、手を構え、自らの力を練り始めた。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
周りの木々がざわつき、虫は飛び立つ。 寝ていた鳥は起き上がり、激しく鳴きながら飛び立つ。
ルガールには、力を増幅させるほど不可思議な力が集まっていき、ルガールの髪は金髪から白色へと変わっていく。
そのうち、一際大きな光の柱がルガールの足元から生まれ、それがおさまると、ルガールの姿は大きく変わっていた。
金髪は完全に灰色か白色かと言う色に変わり、肌も浅黒く変わっていた。 右手は赤く変色し、右目には生気が宿るが、逆に、どちらの目も狂気を孕んだ赤い輝きを放っていた。
そのあまりの力に、新品同様だったタキシードは所々がボロボロになっている。
「烈風拳!」
確かめるように、地を這う光を放った。
それは木に命中し、一撃でそれを消し去ってしまう。
ルガールは、自らの手を見つめながら呟く。
「私の殺意の波動もオロチの力も健在……。 だが、何故だ? オロチからの強烈な支配が感じられん……。 
逆に、自分が周りに溶け込んだ、いや、何か『妖精』のようなものと同化している様な……。 ふん、下らん感覚だな。 下らん……なのに、何故? 何故私の中の『悪』が目覚めんのだ……!?」





オスマン。
トリステイン魔法学院の長を務める老齢の男である。
常人と比べ遥かに長く生きては来た、偉大なメイジである……筈なのだが。
「オールド・オスマン。 セクハラです」
その正体は、自らの秘書に対するセクハラを趣味とする、ただの変態だった。
「良いではないか。 こんな歳になると、楽しみが無くてのう」
学院長室は、学院本塔の最上階に位置している。
白い口ひげと髪を垂らし、重厚なセコイアの机に座っている。 ……と、言うところを見ると、非常に偉大に見えるだろう。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:32:39 ID:vtGmDKbn
支援
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:33:38 ID:rj57SsND
ここには地球じゃないからね・・・・ 支援
13滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:33:46 ID:PKR0JeZy
しかし、その手は秘書の美しい女性、ロングビルの尻に伸びていた。
しかし、そのようなセクハラにも、ロングビルは決して冷静な態度を崩さない。
「真実はどこにあるんじゃろうか? 考えたことは無いかね? ミス……」
セリフだけなら、深みのある哲学的な言葉を放つオスマン。
「少なくとも、私のスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」
オスマンは、悲しそうに顔を伏せる。
「モートソグニル」
机の下から、ハツカネズミが現れる。
ネズミは、ちゅうちゅうと鳴きながら、オスマンの肩によじ登る。
「そうか、白か。 やはりミス・ロングビルには純白が――」
言い終える前に、ロングビルからの回し蹴りがオスマンの顔面に向かう。 ロングビルは足が腹を蹴るつもりが、顔に向かっていることに気付きハッとするが、もう遅い。
しかし、ロングビルの足がオスマンに当たることは無かった。
オスマンが、冷静に腕を構え、受け止めたからだ。
「お、オールド・オスマン! 申し訳ありません!」
「ホッホッホ、良いんじゃよ」
オスマンは、受け止めた足を床に下ろしながら呟いた。
「トゥーイージー。 何つって」
「トゥー?」
「あ、いや、なんでもないんじゃよ」
そんなやり取りをしていると、不意に学院長室のドアが勢いよく開いた。
「オールド・オスマン!」
現れたのは、コルベールであった。
息を荒くし、表情からは興奮と、少しの不安が見て取れる。 また、わきには、古い書物を抱えていた。
「なんじゃね?」
オスマンは、先ほどの出来事を感じさせないような重々しい態度でコルベールを向かい入れた。 ロングビルは、既に机に戻っていた。
「たた、大変です!」
「大変なことなど、あるものか。 全ては小事じゃ」
「ここ、これを見てください!」
コルベールは、抱えていた書物をオスマンに見せた。
「『始祖ブリミルの使い魔たち』。 こんな古いもんを漁っておる暇があったら、もっと有用なことをしなさい、ミスタ……コーハン?」
「コルベールです! なんですかその、鉄球でも振り回しそうな名前は!」
「そ、そんな細かいことはダイヤボーじゃよ。 で、これがどうかしたのかね?」
「これも見てください!」
コルベールは、豪鬼のルーンのスケッチもオスマンに見せた。
オスマンの表情が変わる。 目が厳格さを漂わせた。
14滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:36:01 ID:PKR0JeZy
「ミス・ロングビル。 席をはずしなさい」
ロングビルが退室するのを見届けると、オスマンは口を開いた。
「説明したまえ」





「分かったでしょ。 『ゼロのルイズ』。 わたしは、魔法も何にも出来ないのよ!」
昼休み前。 教室の掃除を命じられた豪鬼とルイズが、やっと掃除を終わらせたのである。
とはいっても、やったのはほとんど豪鬼である。
『ゼロ』。 豪鬼は先ほど始めてその意味を知った。 しかし、だからどうだと言うのだ、と豪鬼は思っていた。
初めから強い者など居はしない。 力が無いのなら、精進すればいい。
しかし、豪鬼は何も言わないので、ルイズは豪鬼が自分を馬鹿にしていると思ってしまった。
「な、何よ、何か言いなさいよ……。 あんただって、わたしを馬鹿にするんでしょ!? 『ゼロのルイズ』って――」
「黙れ」
「え?」
「下らん弱者の戯言を、これ以上我の耳に入れるな」
ルイズははじめ呆気にとられたが、徐々に怒りが湧いてきた。
「な、何よあんた――」
「黙れと言っている!」
あまりの威圧力に、ルイズは腰を抜かせてしまい、ペタンと床に座り込む。
それでも、虚勢だけは口からあふれ出た。
「ご、ご飯抜きよ! ご主人様にそんなこと言うなんて――」
「黙れ小童! 主人だと? 笑止! その情けなく腰を抜かすその姿のどこが主だと言うのだ! 恥を知れぃ!」
そう言うと、豪鬼はルイズを置いて教室を出る。
「な、何よ……。 何なのよ……」





15滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:39:32 ID:PKR0JeZy
豪鬼は、廊下を歩いていた。
何故、自分はあそこまで感情的になった?
普段なら、あの程度の小童は相手になどしないのに。
いや、それよりも問題は飯だ。
空腹を耐えることは簡単だが、その後の死合いに響く。 エネルギーの摂取は大切なのだ。
とりあえず食堂に来てはみたものの、ルイズが居なければどうしようもない。 かといって、あの豪華な食事は害でしかない。
狩りでもするか。
そう考えていると、後ろから気配を感じた。
「ミスタ・ゴウキ!」
赤髪の女、キュルケだ。 何故か笑顔で、体を密着させてくる。 邪魔だ。
「あたし、知ってるのよ。 あの教室で、爆発の破片を全て打ち落としたの」
「ほう」
そういえばこの女は、一人だけ爆発から隠れていなかったか。
キュルケは周りを見渡すと、首を傾げた。
「あら? ルイズは?」
「知らん」
「あ、でも、ルイズが居なきゃお食事も出来ないわね? じゃあ、あたしとご一緒しない?」
「笑止」
適当にあしらって、廊下を進む。 すると、黒髪の生徒とは違う服装の少女が話しかけてきた。
「あの、どうしました?」
「む……。 うぬは」
そう言うと、少女は自己紹介をした。
「あ、私は、この学院で、ご奉公させていただいている、メイドのシエスタと申します。 あなたはもしかして、先日ミス・ヴァリエールに召喚されたって言う……」
「我が名は豪鬼」
「ゴウキさん、ですか。 変わったお名前ですね」
「ああ」
豪鬼は、そのまま廊下を歩き出そうとするが、シエスタによって呼び止められた。
「あの、どこへ行くんですか?」
「む……」
「もしかして、ご飯を頂いてないんですか?」
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:42:43 ID:ju/22f8F
支援だ!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:43:42 ID:rj57SsND
支援
18滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:44:11 ID:PKR0JeZy
どうするか、と豪鬼は考えたが、ここで嘘を言っても仕方が無いので、本当のことを言う事にした。
「ああ」
すると、シエスタは豪鬼を誘導するように言った。
「こちらにいらしてください」
シエスタは歩き出し、豪鬼もそれについて行った。

連れて行かれた先は、食堂の裏にある厨房だった。
シエスタの話によると、ここで貴族たちの食事を作っており、そのあまりで作った賄いでよければ、出してくれるという。
豪鬼はそれに甘え、厨房の隅に座ってまっていた訳だ。
シエスタが皿を抱えて持ってくる。
「はい。 本当に余り物ですが……」
「構わん」
一気に食べてもいいことは無いので、きちんと咀嚼しながら食べ進めていく。
やがて豪鬼が食べ終わり、食器を片付けると、シエスタは仕事に戻る。
「さて、私はお仕事に戻りますね」
ケーキの乗った皿を持って厨房を出て行こうとするシエスタを、豪鬼が呼び止めた。
「待て」
「はい? なんでしょう?」
「手伝おう」
「……へ?」
「……恩は返す」
しばらく呆気に取られていたシエスタだったが、クスッと一回笑うと、了承した。
「なら、デザートを運ぶのを手伝って下さいな」
「うむ」
豪鬼の、この世界での初仕事がはじまる。







今日の「滅殺!」必殺技講座
・無し

今日の「死ネィッ!」必殺技講座
・烈風拳
地を這う飛び道具。 正確にはギースの烈風拳をパク)ry盗んだもの。
性能はギースのものと同じであるが。『ダブル烈風拳』にパワーアップさせることは出来ない。
結構使い勝手が良い。
コマンド「(右向きのとき)下、右下、右+パンチボタン」





「必殺技講座など容易い!」
「スゴーイ!」
「ハッハッハァ!」
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:45:17 ID:5Zc8bG5u
乙。
デザート運ぶ豪鬼・・・怖っ!
20ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 21:46:41 ID:s5r7pckU
 ネイガーの方、代理の方、乙でした。
 秋田県民として、応援しておりますww
 ……しかし、もし例の『人工衛星』が本当に秋田にぶつかった場合、SSを書いてる場合じゃなくなるかも知れませんなぁ……。

 滅殺の方、乙でした。
 おお、何だかオスマンが達人っぽいですね。
 しかし……豪鬼が食事してるシーンって、何だか想像が出来ない……。

 それでは聖帝の方の15〜20分ほど後に投下させていただきます。
 正確な時間については、聖帝の方の投下が終わり次第お伝えいたします。
21滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:47:14 ID:PKR0JeZy
今回はここまでです。支援ありがとうございました。
ああまたネームミスった……
ちなみに「ハッハッハァ!」はGルガが瞬獄決めた後に言う台詞(?)です。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:47:36 ID:rj57SsND
乙でしたー


・・・・所でまとめに載ってないのでまとめたいんだが
どのスレが第一話だったっけ? 過去ログ消しちゃったので見れない
txtのうpお願いしていい?>滅殺の人
23滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:48:54 ID:PKR0JeZy
>>19
禊と金剛でケーキを切ります。 嘘です。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:49:51 ID:45gwcC8S
滅殺乙
そういえばGルガールが召喚される小ネタがまとめにあったな
25滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:49:57 ID:PKR0JeZy
>>22
txtとは何ぞや?
ごめんなさい。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:51:41 ID:PKR0JeZy
では、聖帝の人の支援をば
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:52:06 ID:45gwcC8S
>>25
テキストファイルの形式
.txt
メモ帳とかで作成した文章は大抵これになる
28滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:53:18 ID:PKR0JeZy
あ、一話は202だったと思います。
本当に無知でもうしわけありません。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:54:35 ID:rj57SsND
了承

あとでdat変換して探すか

次は聖帝の人か どうぞ
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:55:06 ID:Ftivv4Or
滅殺の人に聖帝の人にラスボスの人……今日は投下ラッシュだなぁ。ありがたやありがたや。
もちろん、支援しまっせw
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:56:19 ID:mmg9ALXT
今日はやけに投下が続くのう

まずは滅殺の人おつー

>>空腹を耐えることは簡単だが、その後の死合いに響く。 エネルギーの摂取は大切なのだ。
まだこれと言った相手を見つける前から死合うことを考えているとは・・・

そして聖帝さま支援
32滅殺の使い魔の人:2009/03/31(火) 21:56:35 ID:PKR0JeZy
>>29,>>30
本当にありがとうございます!
33帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 21:58:45 ID:1QGXBGbY
日が沈んだとはいえ、月が二つ存在しているハルケギニアの夜は完全な闇に包まれるという事は少ない。
その月明かりの元の下、四つの影が動いていた。
景気のいい爆発は当たる事なく、全てを焼き尽くすような炎も、鎧すら打ち破るような氷の矢も、三つの影が追うたった一つの影には当たる事はなかった。

「やはり……な」
放たれた魔法を全て避けきった影――サウザーが腕を前に掲げると動きを止めた。
「やはり、貴様が最も実戦慣れしている。避けたつもりだったのだがな」

サウザーの腕に奔る僅かな一本の赤い線。全て避けたと思っていたが
その殆どが囮で死角からの数本が本命という事に気付いた時には、一本の氷の矢が腕を掠めていた。
サウザーが向けた言葉の先に居るのは、氷の矢を放った主であるタバサだ。
無論、他の二つの影はルイズとキュルケである。

「並みの使い手ならば、遅れをとっていたかもしれんな。くっはっははははは」
笑うサウザーとは対照的に、三人の息は上がっている。
散々振り回された挙句、放った魔法は殆どが避けられ、唯一タバサの放った物が一発掠めたのみ。
体力的にも精神力的にも一杯一杯なのだが、肝心のサウザーは息を乱すどころか、汗すらもかいてはいなかった。

第四話『否媚』

「はぁ…はぁ……なんで…あんたはそんな平然としてられるのよ……!」
「…間じゃ……ないわね……」
「……しかも、本気じゃない」
四体当地して息を乱すルイズとキュルケ。タバサも声こそは涼しいものだが、汗で額に青髪が張り付いている。
魔法が使えると言っても、体力的には一般人とそう大差はなく、南斗鳳凰拳伝承者であるサウザーと比べるのは酷というものだろう。

「俺が本気ならば、貴様らなぞとうの昔に死んでいる。雑魚が何人束になろうと……この俺を倒す事はできん」
基本的に、魔法は杖の先から放たれるために、ルイズとキュルケの魔法を避ける事は容易い。
視線と杖の向く先を見て魔法を放つ場所を先読みさえすれば当たる事はまず無い。
ただ、タバサの放つ氷の魔法は、大気中の水分を凍らせるという性質のものだけに、どこから飛んでくるかの先読みができずにいたが
それすらも殆どを避けきったのは、南斗聖拳の拳士としてのサウザーの力量が桁外れであるという事の証明に他ならなかった。
なにせ杖を向けたと思ったら、その先にサウザーの姿は既に無く、いつの間にか後ろを取られていたり
一人が放った魔法が他の二人に当たりそうになったりと、それはもう散々な光景が展開されていた。

召喚され、四日目から始まったルイズとの手合わせ。
手合わせと言っても、仕掛けるのはルイズだけで、サウザーが手を出す事は無い。
爆発の正体を見極めようという考えもあったが
そもそも、魔法に当たるつもりが無かったので、サウザーにとってこれは手合わせと呼べる代物ではない。
その二日目からは、騒ぎを聞きつけたキュルケとタバサも加わっての三対一の乱戦模様となっているのだが、ご覧の有様であった。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 21:59:52 ID:PKR0JeZy
ヒャッハー!
前座が終わって、やっと聖帝さまとラスボスさまがお通りになるぞー!
支援
スパロボも北斗も大好きです
北斗は全巻読みました。
αも全部やりました。ディストラ最高!
35帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 22:00:24 ID:1QGXBGbY
「精々、足掻いて俺を楽しませる事だ。そうでなければ意味が無い」
俺は蟻の反逆も許さん。と言っていた時と比べれば考えられない物言いだったが、多少の心境の変化と、遊びと考えれば何のことは無い。
魔法に関してはズブの素人なのだから、聖帝をしても学ぶべき事が多く、この三人。
特にタバサは前もそうだったが、どういうわけか知らないが実戦慣れしていて攻撃が幅広い。
本や人づてに聞いたりするのと、実際に目で見るのとでは対応力が大きく違う。
そういう意味では、この場はサウザーにとっても好都合な事と言えた。

「……ちょっと、どこ行くのよ。まだ終わってないわ」
ようやく落ち着いたのかルイズが顔を上げたが、サウザーはどこからか調達したマントを羽織り歩き出していた。
「今のお前達に何ができる。せめて万全を期してかかってこい。……そこの小ネズミもな。ふふ……はははははははは!」
ただでさえサウザーの動きすら捉えきれないのに、精神力、体力を消耗した状態ではそこらのモヒカンと同じである。
笑いながら余裕を崩さず立ち去るサウザーを見送るしかなかった三人が、小ねずみという言葉に疑問符を浮かべた時、近くの茂みが音を立てて動いた。

「だ、誰!?」
「や、やあ。奇遇だね……はははは」
茂みの中から引き攣った笑みを浮かべ出てきたのは、先日、サウザーに完膚なきまでに叩きのめされたギーシュ・ド・グラモンだった。
顔から滝のように冷や汗を流し小刻みに震えているあたり、よっぽどサウザーが怖いらしい。
「ギーシュじゃない、なにやってるのよ」
「い、いやぁ、君たちが毎夜、彼と戦っているのを見て心配になってね。」

「それなら、最初から出てくればいいじゃないの」
「……いや……だってほら……あの時は僕も本気で殺されるかと思ったんだよ。また同じ目に遭うかと思うとさ……君たちなら分かるだろう!?」

『俺に逆らった者に降伏が許されると思っているのか?』

貴族の決闘のルールに従い、参ったと言ったにも関わらずにサウザーはそう言ってのけた。
その点、死ぬかと思ったのはキュルケとタバサも同じだ。
三人が助かったのは、ルイズの『貴族は敵に背を向けない』というある種サウザーと同じ考え方である。
とは言っても、ルイズ自身はその事には気付いてはいなかったが。

「メイジを雑魚扱いとはね、あたしもこんなの初めてよ。ねぇルイズ。サウザーっていったっけ?彼一体何者よ、どこから来たの?」
「オールド・オスマンはロバ・アルカイリエに伝わる拳法の使い手とか言ってたけど……よく知らないわよ。話してないし」
学院においてサウザーがルイズと行動を共にするという事は滅多に無く、大概は好き勝手に別行動を取っている。
今のところルイズが分かっている事と言えば、サウザーが名乗っていた聖帝。
つまり、南斗聖拳の帝王いうぐらいで、後は知らない事だらけだ。
その為、会話らしい会話もあまりせず、唯一、この時だけが会話をする数少ない機会なのだが
前述のとおり散々に振り回されそれどころではなかったりする。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:00:36 ID:rj57SsND
支援
37帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 22:02:09 ID:1QGXBGbY
「……南斗聖拳」
オスマン曰く、ガンダールヴにも匹敵するという伝説の暗殺拳。
暗殺という件が少々物騒ではあるものの、並のメイジでは相手にもならない事は既に己が身を以って証明されている。
ルイズにとって、御伽話にも近いガンダールヴなどよりは洒落にならないものを召喚してしまったという実感があった。
事故か偶然か分からないが、キュルケのサラマンダー、もしかしたらタバサの風竜より凄いのかもしれない。
そう考えると少し嬉しくもなったが、同時に悔しくもある。
今のところ、あくまでサウザーから気に入ったから力を『貸してやる』と言われているだけで危うい状態である事は間違いない。
それこそ動物でも拾うかのような扱いである。気が変わればどうなるか分からないし、なにより言動からしてそれは拙かった。
百歩譲って自分だけならまだいいが、逆らう者は平民、メイジ、それこそトリステインだろうと潰しにかかるかもしれない。
思い過ごしかもしれないが、どちらにしろ契約できないまま施しでも与えられるかのような状態はルイズにとっても非常によろしくなく
本人も好きな時にかかってこいと言っているのだから、できるだけ早く負かして契約させようと思っていたものの……現実はそう上手くいかないものだった。

「南斗聖拳ねぇ。あなたなら何か知ってるんじゃない?」
呟きが聞こえていたのか、キュルケがタバサに問いかけてみた。
「……見たことも聞いたこともない」
「タバサでも知らない……か。それにしたって――」
そこまで言って続きが途切れた。
なんと言っていいか分からなくなったからだ。

ワルキューレを軽く粉砕する力を持ち、人間離れした跳躍力。
地面に付けた十字傷もそうだが、真に恐ろしいのは空気の流れを感じ取る鋭敏な感覚を持つ風使いのタバサですら追いつけない体捌きにある。
そして、まだ底を見せきってはおらず、さっきまでのはサウザー曰く遊びらしいが、あの時は間違いなく殺す気だった。
両腕を無造作に下げ、限りなく見下した笑みを浮かべながら、まるで汚物でも消毒するかのようなあの眼を直視した時、経験した事の無い感情を味わった。
今まで数多くの男に見られてきたが、あんな風に、路傍の小石のように見られた事は一度だって無かった。
実に不愉快だ。無論、自分を気にも留めないサウザーもそうだが、一番気に入らないのはそうされて何も出来なかった事だ。
ああまでされて、黙っていられるようなタマでもなく、ルイズにかこつけて何とか一泡吹かせてやろうと思っているのだが、その結果がこれだよ!!!

「――案外、人間じゃなかったりしてね」
手も足も出ず、唯一出るのは口ぐらいのもので、半分冗談めかしてキュルケがそう続ける。
「……まさかね。あはははは……」
乾いた笑いが虚しく響いたが、それに続く者はその場には居なかった。
正直なところ、人間技とは思えない物を散々見せられたおかげで、そんな下手な冗談には笑えないのだ。

そんなこんなで、今日も平穏無事?に終わっていった。



――次の日
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:03:04 ID:rj57SsND
支援
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:03:45 ID:mmg9ALXT
>>34
前座ってなんだ前座って

それは置いといて南斗支援拳
40帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 22:04:26 ID:1QGXBGbY
カチャリ、と食器の音が響く。
量こそ多少多いものの、サウザーの前に置かれた料理は、他の貴族の物と比べて顕職ないものである。
もっとも、場所は食堂ではなく、わざわざ自室に運ばせるという高待遇っぷりだったが。

この世界、文化レベルは中世より少し上といったところで歴史だけは長いようだが、魔法があるせいか技術の方はあまり発達していない。
とはいっても、比較対象が世紀末モード突入!(cv:千葉 繁)という具合に崩壊しているので、どちらがいいかと聞かれれば百人中九十九人はこちらを選ぶ。
そのうち城下も視察しておくかとも思ってはいたが、足が無いので止めた。
馬なら学院にもいるため移動手段そのものは存在する。
ただ、サウザーの言う足とは、玉座が付いたあの素敵な聖帝バイクの事である。
あの荒れに荒れたオフロード満天の荒野をサスペンション機構をガン無視したような聖帝バイクに乗り、頬杖を付きゆったりしているのだからやはり只者ではない。
黒王クラスの馬なら乗ってもいいが、あんなのがホイホイ居るはずもなく
つまるところ無いものねだりであって、そもそも玉座部分だけに作らせるとしてもタイヤでなく車輪でというのはどうにもシュールというやつだ。

「ふむ……」
一先ず手にした食器を置く。
口に合わなければ、いつものように下げさせるつもりだったが、食材が良いのか職人の腕が良いのか悪くない。
「両方……だろうがな」
いくら食料を集めさせていたとはいえ、世紀末で新鮮な食材が手に入る事はほとんどありはしない。
ガソリンだけは無駄にあったが、常に水と食料は欠乏している世界に比べると、こちらの世界の食糧事情は比較にもならない。
もちろん、ここの場所そのものが特別というのもあるだろうが、どうやら料理ごとテーブルを叩き割るという事にはならずに済みそうだった。

それにしてもと、思考が別の方に向く。
魔法のルールや法則やらは、数度の実戦を経て理解したが、サウザーをしてもルイズの魔法の謎はまだ見切れていなかった。
杖の方向や視線で先読みはしているものの、時間差無しで爆発が起こるのだからたまったもんではない。
コントロールや予備動作は荒削りでまだまだというところだが、訓練したり奇襲という方法を取れば十分に脅威になり得る。
なまじ威力が拳王の一撃と同等という事であればなおさらというところだ。

「……くだらんな」
いっその事、そうなる前に始末するかと考えたが、一瞬でその考えを消した。
南斗聖拳最強の、南斗鳳凰拳の世紀末の帝王。聖帝サウザーがたかだが一人の小娘の資質を恐れるなどとは実にくだらない事だ。
むしろ、そうするよりは利用した方が遥かに良い。
ラオウのようにケンシロウの資質に惚れたというわけではないが、それなりに気に入っているのも事実である。
素質が目覚めればよし、よしんばそれで向かってくるようであれば、叩き伏せ屈服させればいいだけだ。

ともあれ急を要する事でもなく、そう急ぐ事もない。
ケンシロウでさえ、素質が目覚めるには数年の時を必要とした。
ましてや、一度はシンに完膚なきまでに叩きのめされ、そこから数多の強敵との出会いと別れを繰り返し、この聖帝と対等の相手になった。
開花するには一体何年かかるのか分かったものではない。
41帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 22:06:21 ID:1QGXBGbY
――サウザー様……あなたは、愛を知らなければ覇王になれません……

ふと、あの女。サクヤが今わの際に遺した言葉が脳裏を過ぎった。
「……ふん、やはり喰えぬ女だ。気に入らぬ」
ならば、ケンシロウに敗れたのも必然だったということか。……あまり認めたくはないが、奥義を尽くして敗れたのも事実である。
「ならば、ラオウもケンシロウに敵わぬ……か」
そして、哀しみを知らねばラオウも覇王になれないとも言っていた。
病に侵されたトキではラオウの相手は務まるまいが、ケンシロウとラオウは遅かれ早かれ戦う宿命にある。
このままラオウが哀しみを知らずにそうなれば、恐らく勝つのはケンシロウのはずだ。

だが、もしラオウが……、とそこまで考えたが、最早、関係の無い事だとしてその思考を打ち切った。
仮に世紀末の世に舞い戻れたとして、どちらが勝利者となろうと身体の謎が見抜かれた以上、今のままでは敵うまい。
愛を知らぬが故に敗れたというのなら、愛を知れば覇王に、ケンシロウに勝てるのか。
馬鹿馬鹿しいと思わないでもないが、聖帝という肩書き以前に、一人の拳士として一度敗れた相手を越えねばならぬと思うのは至極当然の事である。

そんな事を考えていると、二、三回扉をノックする音が聞こえ、続けて知っている声が聞こえてきた。
「失礼いたします。ワインをお持ちしました」
「む、ご苦労」
サウザーが入室を促すと入ってきたのは、よくよく縁があるのかシエスタだった。
「料理長から、アルビオン産の秘蔵の一品をサウザー様にお渡しするように言われました」
どうやらもうすっかり帝王という噂は広まっているらしく、間違ってはいないのでサウザーもこれは特に否定したりはせず
その上、普段の言動が限りなくKINGなので平民の中で疑う者はほとんど居なかった。

グラスにワインが注がれないので目だけ動かしてシエスタを見たが、何やら少し慌てている。
どうやら、持ってきたのはワインだけで、詰まっているコルクが抜けないらしい。
「……あ、申し訳ありません。コルク抜きを忘れてしまいましたので、すぐに取ってきます」
「待て」
間髪入れずに待て、と言われシエスタの身体が思いっきり硬直した。
椅子に座る威圧感丸出しの男はトライアングルメイジをも圧倒した王、というのがシエスタの認識である。
機嫌を損ね咎められるのではないかと思ったのも無理はない。

今にも平謝りしそうなシエスタを見て埒が明かないと思ったのかサウザーが指を立て、それを横に薙ぐ。
風を切るような音がすると、一瞬遅れてワインの瓶に切れ目が浮かび上がり、そこから先が床に落ちていった。

「す、凄い……瓶がまるでチーズみたいに……」
「ふっ、中々面白い例えだな」
確かに鋼鉄すら引き裂くサウザーの手にかかればそこら辺の物はそう例えても間違いではない。
軽く離れ業を見たシエスタが驚きながらも傾けると切り口から赤い液体がグラスへ注がれる。
いい色合いだ。香りも申し分なく、少し口にしただけで上物という事が分かった。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:09:01 ID:rj57SsND
支援
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:09:03 ID:mmg9ALXT
聖帝バイクはやっぱりお気に入りだったのかwww
支援
44帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/03/31(火) 22:09:42 ID:1QGXBGbY
「くっくはは、なるほどな。俺の居た場所では手に入らぬような上物だ」
なにせ、どこぞの酒場ではメチルアルコールを客に飲ますような世界だった。
あの世界では新しく酒が造れるような環境ではなかったし、そういった趣向品の類は戦前の物なのだが、ワインというものは保存が結構難しい。
そこ等辺に寝かせておけばいいというものではなく、温度、湿度全てが良好でなければダメになってしまう。
おまけに、そこに放射能の影響があると言えば、後はお察しくださいというところである。

「お気に召されたようでなによりです。……その、よろしければ少し、お聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「まぁ、よかろう。何だ」
今のところ、聞かれて拙いような話は無く、元より隠すような事は無い。
聖帝十字陵の建設に子供を使っていたという事も聞かれれば話してもいい。
こちらでそんな事を言えば非難されそうなものだが、要は価値観の違いにすぎず、力こそが正義という時代では力の無い者はただ蹂躙されるのみ。
当然、別世界に来たからといってその価値観が変わるわけでもなく、独裁の星は今だ健在であった。

「それではお聞きしますが、サウザー様のそれは先住魔法なのでしょうか」
杖を持ち、一般的にメイジと呼ばれる者が使う魔法を系統魔法に対して
エルフや吸血鬼などの亜人と呼ばれる者が精霊の力を借り行使する魔法が先住魔法と呼ばれている。
先住魔法に関しては本で知った程度だったが、こればかりは実際に知る機会が無いのでサウザーも放置していた。

「何故、そう思う」
「それは……あんなに高く飛ぶ方を見たことがありませんでしたし、杖も持たずに地面を斬ったのを見て……」
逆に質問を質問で返されると、少し臆しながらシエスタがそう続けた。
それを聞くと、なるほどな、とサウザーも納得はできる。
手刀により真空を生み出し、離れた敵も衝撃波の斬激により切り裂く南斗聖拳。
南斗爆星波を見ていたのだろうが、それを見て先住魔法とでも思ったようだ。

「これは、我が偉大なる師オウガイが命を賭して継承された最強の拳法。魔法などというものではない」
「魔法ではなく……拳法」
血の滲む様な修練に耐え抜いた者だけが習得できる先人達が練り上げた南斗聖拳。
さわりの所だけ教えてやったが、シエスタはひどく感心したようで時折相槌を打ちながら話に聞き入っていた。
なお、この後話が伝わったのか、料理長のマルトーを中心に拳の王。
即ち『拳王』と呼ばれるようになり、それを知った時この傲岸不遜の帝王にしては珍しく苦虫を二、三匹纏めて噛み潰したような顔をして笑っていたという。

投下したッ!
うん、シエスタがサウザー相手に敬語使わないとか絶対無理。

TOUSANしたり第二次就職大戦作戦完了したりで引越しやらで一杯一杯だよ。
兄貴の続き当分先だこれ……
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:11:37 ID:rj57SsND
乙でしたー
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:12:01 ID:mmg9ALXT
聖帝さま乙っしたー!
>>拳王
複雑だろうなぁ
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:12:28 ID:PKR0JeZy
乙!
拳の王で拳王とかwwwww
展開が上手すぎるwwwww
48ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:16:56 ID:s5r7pckU
 聖帝の方、乙でした。
 『拳王』……むう、確かにサウザーにとっては内心、色々と含むところのある呼び方ですな。

 ちなみに私は北斗の拳ではシンが好きです。
 いや、冒頭に出た時はそうでもなかったんですが、後の回想シーンでユリアを南斗の将たちに渡すところでグッと来たんですよね。
 ……何でこんな趣味なんでしょうか、私。

 それでは、22:35から投下を行います。

 なお、今回少し行数の調整に自信がない箇所がありますので、もしかしたら投下の最中にモタついてしまうかもしれません。
 レスが中途半端な長さでブツ切りされている場合は、『調整に失敗したんだな』とでも思ってくださいww
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:19:43 ID:mmg9ALXT
ラスボス支援ー

シンは序盤の敵で割りとアッサリやられたから弱いイメージ有るけどケンちゃん怒り補正のパワーアップと考えれば
南斗六聖拳の中ではサウザーの次くらいに強いと思ってるぜ
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:27:23 ID:rj57SsND
事前支援
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:32:08 ID:PKR0JeZy
支援
大丈夫ですwww俺はいつもその場その場なんでwwww
52ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:35:00 ID:s5r7pckU
 もはや馴染みになりつつある感覚の中を漂いながら、ルイズは夢を見る。
(……でも何て言うか、前触れなくやって来るから困るのよね、この夢……)
 いっそのこと、普通の劇場のように『上映日時』でも決めてくれないものか……などと思うが、さすがに夢にそこまでの柔軟さを求めるのは無理だろう。
(まあ、とにかく……)
 ルイズは用意された『舞台』を鑑賞し始める。どうせ見せられるのなら、じっくりと見た方が得だと思うからだ。
 ……だが、今回は今までの物とは少々異なる点があった。

「お前はETFのメフィラス星人!」
「久し振りだな、ウルトラマン。君たちが光の国から地球へ戻って来なければ、こんな真似はしなかったのだが……」

 十字架に磔にされている『光の巨人』たちと、それに対峙する『黒い異形』と『赤い異形』……確か名前はメフィラスとヤプール、だっただろうか。
 いや、この際その名前はいいとして、問題はその登場人物である。
(仮面の男が、いない……?)
 今までの夢には必ずあの男がいたはずなのに、今回に限ってその姿がない。
 どういうことだろうか。

「地球のことはもう諦めるんだ!」
「それはこちらの台詞だ。……地球圏は銀河系の中でも封鎖された宙域。君たちM78星雲の宇宙警備隊や銀河連邦警察は、干渉を避けているはずではなかったのかね?」

 しかしそんなルイズの疑問に構わず、登場人物たちはやり取りを続けていく。

「……地球人は若い種族だ。他星系と接触するのはまだ早い」
「彼らは愛と凶暴さを危ういバランスで両立させている種族だからな……」

(危ういバランス、って……)
 ……言い得て妙な表現かも知れないが、それをこんな人間とは似ても似つかない赤いトゲトゲだらけのヤツに言われたくない。

「だからこそ我々は地球人が銀河連邦の仲間入りを果たすその日まで、君たちのような侵略者から地球を守っているのだ」
「……我々を地球に追い詰めたのは君たちなのだぞ。この宇宙でETFにとって安息の地は、あの封鎖宙域しかない」
「ETFが惑星間規模での犯罪行為を行なわなければ何も問題はない!」

(う、うーん)
 完全な水掛け論である。
 この悪いヤツらは『光の巨人』に追い立てられたからチキュウとやらに来ざるを得なくて。
 『光の巨人』は、この悪いヤツらを追いかけていって、結果としてチキュウにやって来た。
 この場合……。
(悪いのはメフィラスとヤプール……って言うのは簡単だけど、こっちの『光の巨人』にも責任が全くないって訳じゃないし……)
 悪いヤツには悪いヤツなりの理由がある。
 それに納得が出来るかどうかはまた別問題だが、その理由にある程度の筋が通っていた場合、判断に物凄く困ってしまう。
 ……などとルイズが思っていると、『舞台』の上のメフィラスとヤプールは更に言葉に続けた。

「犯罪? 違うね……我々は自らの意思や欲求に従っただけだ」
「それに何故、我々が宇宙の守護神を気取るウルトラ族や銀河連邦ごときの言いなりになる必要があるというのだ?
 この宇宙にはお前たちの作る秩序なぞ要らぬ。……必要なのは混沌だ」

(……やっぱり悪いヤツだわ、コイツら)
 危うく真剣に考えそうになってしまった自分に腹が立つ。
 要するにこの連中は、他人の迷惑を考えずに自分のやりたいことを好き放題にやった結果、『光の巨人』と……ギンガレンポウとやらに追い立てられたのだ。
 だったら、同情する余地など全くない。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:36:32 ID:rj57SsND
支援
54ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:37:30 ID:s5r7pckU
 ここで、いきなり場面が変わった。
 先程までは荒涼とした荒野のような場所だったのに、いきなりどこかの建物の中になったのだ。
 そして登場人物も、『光の巨人』や異形たちではなく、普通の人間……と、片目を隠すデザインの妙な兜を被った男に変わった。
 今回もまた『仮面の男』はいない。

「ハンターキラー! 宇宙刑事でありながら、銀河連邦警察を裏切り……俺の父さんをマクーに引き渡した男! 貴様が何度よみがえろうとも、父さんの遺志を継いだこの俺が……必ず倒す!!」

 ……どうも、仇討ちの場面らしい。
 話を聞く分には、一方的にこの『兜の男』が悪いようだが……。

「フン、青いな……ギャバン」
「何だと!?」
「お前は、銀河連邦警察の本性に気付いているのか?」
「どういうことだ!?」

(ま、また……?)
 ついさっきにせよ、この場面にせよ、どうも『悪人の言い分』を聞かせられている。
 ……前の『力の使い方』のように、そういうコンセプトなのだろうか?

「ペガッサシティ爆破事件後、銀河連邦警察は地球圏への干渉を中止した……」
「……ああ」
「それが何を意味しているか……考えたことはあるか?
 銀河連邦警察は地球圏を封鎖し……、そこに我々やETFの宇宙人共を閉じ込めるつもりなのだ!」

(? えっと……)
 チキュウとかチキュウ圏、というのはおそらくハルケギニアではない『別の地方』、例えばロバ・アル・カリイエみたいなものだろう。
 しかし、『そこに閉じ込める』とはどういうことだろうか?
 そのようにしてルイズが『舞台』の中のセリフに疑問を抱いていると、『兜の男』は補足するように解説してくれた。

「奴等は地球圏を救う気など無い。
 それどころか……地球圏を巨大な牢獄に仕立て上げ、地球人を犠牲にすることで宇宙の平和を保とうと目論んでいる。
 奴らは『正義』という大義名分を振りかざし、自分たちの都合を押し付けているだけだ!」

 つまり、犯罪者をまとめてチキュウ一帯に押し込めて、そこから出さないようにするということか。
(……何よ、それ)
 それじゃあ、そこに元々住んでいる人間たちは犯罪者に蹂躙されてしまうではないか。
 確かに理には適っているかも知れないが……。

「それに、お前の父ボイサーが命をかけて守り抜いた、ホシノスペースカノンを量産し……その力で、他の星を支配する気だ。
 所詮、奴らも『正義』という名の暴力を振りかざす組織に過ぎん!!」

 『正義』という名の暴力と、大義名分を振りかざす。
 それは、自分のいるハルケギニアでも日常のように行われていることだった。
 ……いや、もしかすればトリステインだって、『正義』の名の元に他国を侵略することもあるかも知れない。
(……………)
 思考の淵に沈みかけるルイズ。
 だが……。

「……分かっていたさ」

 『兜の男』が原因で父を殺された……と言った男は、それを承知した上で啖呵を切る。

「だが、そんな組織の中にも……コム長官のように、陰ながら支援してくれる人もいる。
 ……だから、たとえ銀河連邦警察が手を引こうと……たとえ戦いの中で、傷つき、力尽きて倒れることになろうと……俺は……この地球を見捨てはしない!
 母さんが生まれ、父さんが愛したこの星を……共に戦った仲間のいる地球を、必ず……必ず守ってみせる!!」
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:38:13 ID:BRFTZoZ8
超闘士列伝読んでるとヤプールに同情しそうになって
メビウスを見ると思い直すよね

支援
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:38:49 ID:rj57SsND
支援だ
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:38:54 ID:xdaQzsQJ
支援
58ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:40:00 ID:s5r7pckU
 またいきなり場面が変わる。
 今度は……何だろう、巨大な顔が壁にめり込んでいるようなバケモノが、白銀、赤、青の鎧を着込んだ三人の男と、そして一人だけ趣の異なる赤い服を着込んだ男と会話をしていた。
 相変わらずと言うか何と言うか、やはり『仮面の男』は見当たらない。

「人間……特に地球人は、心の中に強力な悪意を持っておる……」
「そんなことはない!!」
「愚かな……。その証拠に、この星には悪がはびこっているではないか。
 ダークのプロフェッサー・ギルしかり、ネロスの桐原剛造しかり……奴らは、自分の心の解放に成功した者たちだ」

 ルイズの脳裏に、豹変したワルドと乱心したアンリエッタの姿がよぎる。
 ……いや、アンリエッタを『そのカテゴリー』に分類するのは早計だとは思うのだが、最近に起こったことでもあるし、『心の移ろいやすさ』という観点からすれば……まあ、事例の一つではあるだろう。

「我がフーマが、不思議ソングによって悪を植え付けなくとも……この星は悪に染まっておる。悪の美しさに彩られておる。
 何故、お前たちは自分の心に対して素直になれんのだ? 何故、心を抑圧する必要があるのだ?」

 これはチキュウという場所の話だ。
 ハルケギニアとは、何の関係もない。
 だが……かと言ってハルケギニアが悪に染まっていない、ということにはならない。
 ……果たして、自分の住んでいる世界は……どうなのだろうか?

「銀河連邦警察は、地球人を悪とみなし地球圏の封鎖を決定した……。お前たちは、銀河の同胞から見捨てられたのだ。
 だが、我がフーマは違う。お前たちを悪の同胞として迎えてやる」

 『顔のバケモノ』は、笑いながら悪への誘惑を行う。

「さあ……己の本質を……悪を素直に認めるのだ……」
「違う!!」

 しかし青い鎧を身にまとう男は、その誘惑をキッパリと跳ね除けた。

「自分の中の悪を認めることは……確かに辛いことだ。
 だが、それが全てではない! 人を思いやる心や、愛……そんな素晴らしい物を、みんな心の中に持っているんだ!
 悪に流された者は……自分自身に負けた者たちだ!」

(……………)
 そう、確かに人間の心は悪だけで出来ているわけではない。
 それくらいは、ルイズにも分かる。

「……だが悪に負けないということは、正しく強く自分の心を持つこと……それは孤独で辛い戦いだ……」

 …………分かってはいるが、同時に悪に流される者がいるのも事実。
 それを否定することは出来ない。

「お前たちは、そんな人の心の弱さを利用しているだけに過ぎない! そんな力なく弱い人々の為にも、俺たちは、お前たちに負けはしない!!
 クビライ! 貴様を、倒す!!」

 そして鎧を着込んだ男たちと『顔のバケモノ』の戦いが始まる……。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:40:06 ID:BRFTZoZ8
銀河連邦警察警視総監 支援
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:40:30 ID:rj57SsND
支援
61ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:42:50 ID:s5r7pckU
 ……と思ったら、また場面が転換した。
 今度は、数人の男女と……妙に顔がシワクチャの、変な鎧兜を着ている老人のような人物が対峙している。
 『仮面の男』は、いない。

「これ以上悲しい戦闘ロボットを造り出さないために……地球の平和と未来を守るために……僕はお前を倒す!!」
「愚かな……。人造人間こそ次世代の地球を担う存在だというのが分からぬか? か弱い人間に取って代わる存在だというのが分からぬか?」
「何だと!?」

 ジンゾウニンゲン、というのが何のことなのかルイズにはよく分からないが、会話の内容からすると『人間とは違うもの』のようである。

「脆弱な肉体を持ち、感情に左右され、つまらぬ争いを繰り返す生き物なぞ……この星には必要ないのだ。
 お前たちも知っておろう……。この地球は様々な敵に狙われておる。宇宙人、怪獣、超科学兵器……それらの脅威に対して人間はあまりにも無力だ」

(な、何だかやたらと危ない場所みたいね、チキュウってところは……)
 よくそんな危険なところで生活が出来るなぁ、とそのチキュウ人とやらに対して変な感心を抱いてしまうルイズ。
 しかし『様々な敵に狙われている』ということよりも、ルイズの心を掴んだのはその前のセリフだった。
 ……感情に左右され、つまらない争いを繰り返す生き物。
 どうにも……いわゆる『悪』と呼ばれている人間たちの言葉は、自分の心を揺さぶってくる。

「人間では第三の敵からこの地球を守ることは出来ぬ。不死身の身体を持ち、永遠の帝国・ネロスを支配する余こそが地球の守護神となり得るのだ!!」

 だからと言って、この傲慢さは受け入れられる物ではないが……。

「不老不死の身体と揺るぎのない精神を持つ人造人間たちよ……余の傘下にくだれ。そして余と共にこの地球を支配しようではないか」

 先程の『顔のバケモノ』と同じように、敵である者たちを引き入れようとする『鎧を着たシワクチャ』。
 しかしこれもまた先程と同じく、彼の敵たちはその勧誘を拒絶した。

「断る! 古賀博士はそんなことのために僕を……超人機を造ったんじゃない!」
「そうだ。光明寺博士も弱き人々を悪の手から守るために、俺やイチロー兄さんを造った!」

 『鎧を着たシワクチャ』は、そんなジンゾウニンゲンたちの主張を一笑に付す。

「笑止! 人間共がお前たちをどんな目で見ていたか忘れたのか? 人外の力を持つお前たちを恐れ……時には敵視し、あまつさえ戦いの道具として利用する!
 お前たちは兵器として人間共に使役されているだけなのだ。その証拠に人間共はお前たちだけをこのゴーストバンクへよこしたではないか!!」

(兵器、として……)
 ルイズの心に影が差す。
 自分の『虚無』……いや、それを扱う自分自身とて、そう扱われる可能性は高い。
 自分が今抱えている問題と照らし合わせながら、ルイズは悩み始め……。

「違う!」

 しかしその自分の悩みを消し飛ばそうとでもするかのように、ジンゾウニンゲンたちは叫ぶ。

「僕たちのことを理解し、同じ人間として認めてくれる人たちもいる!」
「そんな人たちを守るために、俺たちは戦っているんだ!!」

 だが『鎧を着たシワクチャ』は低く笑いながら、彼らを馬鹿にするような口調でこう言った。

「クッ、ククク……そうか。だが、お前たちはいずれ人間の本性を知ることになるだろう。憎しみ、妬み、残忍さで彩られた人間のあさましい本性をな……」
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:44:07 ID:rj57SsND
支援
63ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:45:00 ID:s5r7pckU
「……むにゃ」
 夢から覚める。
「…………?」
 ルイズがまず最初に思ったのは、今の夢にいつもの『仮面の男』が出ていないことについてだった。
「別にいないからどうしたってワケでもないんだけど……」
 気になることは、気になるのである。
「う〜ん……」
 取りあえずの仮説くらいは、すぐに立てられた。
 これまでの夢の内容からすると、あの仮面の男は(理屈はよく分からないが)時間とか空間をあっちこっちに行き来したりすることが可能らしい。
 とすると、もしかしたら今の夢は『仮面の男は直接には関わっていないが、仮面の男が見ていた光景』であるとも考えられる。
 まあ、ほとんどこじつけに近い理屈だが。
「……でも、それでどうして、そんな光景をわたしが見ちゃうのかしら……?」
 最大の疑問は、そこだ。
 あの夢の意味。
 ……最初はそうでもなかったが、回を重ねるごとに少しずつメッセージ性が強くなっている。
 しかも微妙に今の自分が置かれた状況と関わりのある内容だ。
「……………」
 ルイズは上半身を起こし、自分の机の上に置かれている手紙に目をやった。
 つい先日に伝書フクロウが運んできたその手紙には、物凄く大まかに言うとこのようなことが書かれている。

 『近々行われる予定のアルビオン侵攻作戦に当たり、従軍せよ』。

 差出人はもちろん、アンリエッタである。
 実際には挨拶や『これは極秘事項であって絶対に他言してはならない』などという前置きが書かれており、加えてもう少し柔らかく諭すような言い方なのだが、要約するとそうなるのだ。
「……………」
 祖国の……トリステインのためを思うのなら、一も二もなく了承して、帰郷のついでに両親に従軍への許可を貰うべきである。
 だが、ルイズは了承が出来なかった。
 ……正確に言うと、その場での即座の了承が出来なかった。
 『取りあえず考える時間をください』と書いた返事の手紙をしたため、伝書フクロウに持たせて帰させたのだ。
 その返事に書いた回答の期限は、この夏期休暇が終わるまで。
 それまでに、従軍するかしないかを決めてアンリエッタに報告しなければならない。
「はあ……」
 溜息をつく。
 アンリエッタの思惑は分かっている。
 自分の『虚無』を戦場に投入して、あのタルブでの光景を再現させたいのだ。
 当然と言えば、当然の考えだろう。
 しかしそのような力の使い方は……ハッキリ言って『自分の望む力の使い方』ではない。
 いや、アルビオンだけに向けられるのならまだ良いが、この自分の力がゲルマニアやガリアなどの他の国に向けられない保証などどこにもない。
 自分が兵器扱いされることを、果たして自分は許容が出来るのだろうか?
 出来るわけがない。
 ……いや、そこに正当性や深い理由があれば話は別だが、少なくとも一方的に『使え』と命令されただけで使う気などはない。
64ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:47:30 ID:s5r7pckU
「……………」
 この問題ばかりは自分の使い魔であるユーゼスにも相談してみたのだが、その回答は……。
 ―――「お前の出した結論には従うが、最終的にその結論を出すのはあくまでお前だろう。自分で考えることだ」―――
 という、にべもない物であった。
「それは確かにその通りだけど、せめて少しくらいアドバイスとかくれたっていいじゃないの……」
 そのユーゼスは今、三日ほど休暇を貰ってアルビオンのシュウの所に行っている。
 ルイズとしてもこの問題をしばらく一人で考えたくあったので、許可を出したのだ。
 そしてユーゼスが戻った直後に、自分たちはそのままラ・ヴァリエールの領地に向かう予定となっていた。
「やっぱり、父さまにもお話を伺った方が良いのかしら……」
 とにかく、時間は有限だ。
 従軍するにせよ、しないにせよ、いずれ近い内に結論は出さなくてはならない。
 出さなくてはならないのだが……。
「うぅ〜……」
 どうしても、夢の内容が頭をよぎる。
 何でこんなタイミングで、あんな夢を見てしまうのだろう。
 『悪』と呼ばれたそれぞれの存在たちは、口々に『人間の本質は悪だ』と言っていた。
 ……一理ある、と思う。
 チキュウとやらだけではなく、このハルケギニアでもそうだ。
 各地ではほとんど絶え間なく戦争が起こり、表には出て来ないしルイズも直接見たわけではないが……人身売買まがいのやり取りが平気で行われ、ささいなことで傷付け合い、殺し合う。
 夢の中の登場人物の一人は、『彼らは若い種族だ』と擁護した。
 また別の登場人物は、『それでも自分はチキュウを守る』と言い切った。
 また別の登場人物は、『素晴らしい物を、みんな心の中に持っている』と語った。
 また別の登場人物は、『自分たち理解してくれる人たちを守るために戦う』と断言した。
 ―――自分では、あそこまでキッパリと言うことは出来ない。
 それだけでも彼らは、凄いと思える。
「でも、それじゃわたしは……」
 自分は、どう結論を出せばいいのか。
 彼らにならって『人間の中にも良い人は沢山いる』とでも言って、自分が『悪』と判断した者を倒すのか?
 何の感情も思考も差し挟まず、ただ人形のようにアンリエッタに従い、敵を屠るのか?
 それとも……逆に『人間など下らない』と断じて、この国を見捨てるのか?
「……ああ、もう……!」
 どうにも判断がつかない。
 善と悪。
 強さと弱さ。
 美しさと醜さ。
 人間は、一体……どちらが本当なんだろうか?
 そして。
「わたしは……どうすればいいんだろう」
 従軍するか、しないか。
 ……おそらくは、ここが大きな分かれ道になるはずだ。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:48:58 ID:rj57SsND
支援
66ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:50:01 ID:s5r7pckU
 アルビオンの首都、ロンディニウムから南に約三百リーグほど離れた地点に、ロサイスという港町がある。
 通常であればトリステインの港町であるラ・ロシェールなどとの交易によって、かなり賑わっているはずの町なのだが、戦争気運が高まっている現在の情勢では、その賑わいも鳴りを潜めていた。
 とは言え、都市機能が完全にストップしているわけではない。
 観光客は激減したが、元々その地で暮らしている人間たちの生活は続いているし、町にある様々な店も営業中である。
 ……その営業している店の一つの、とある宿屋にて。
 ユーゼス・ゴッツォとシュウ・シラカワが対面していた。
「…………お前の滞在している村とやらに行く予定が、何故ロサイスの宿屋になるのだ?」
「申し訳ありません。あなたが来ることを話したら、同居人の一人が猛反対してしまいまして」
 物凄い剣幕で『不用意にティファニアの近くに人間を招くなんて、何考えてるんだい!!』と自分に詰め寄ってくる緑髪の女性と、『ね、姉さん、落ち着いて〜!』とその女性をなだめるハーフエルフの少女を思い出し、苦笑するシュウ。
 ……ユーゼスがティファニアを見てどうこうするとも思えないが、マチルダがあれだけ反対している以上、無理に連れてくることも出来ないだろう。
 というわけでユーゼスとシュウの落ち合う場所は、急遽ウェストウッド村からロサイスになったのである。
「そう言えば、ビートルはどこに隠しました? あれだけの大きさです。私のように『かくれみの』でも使えない限り、そうそう都合のいい隠し場所があるとも思えませんが……」
「……心配するな、『誰にも見つからない場所』に隠してある」
「『誰にも見つからない場所』……? ああ、成程。まったく、便利な能力ですねぇ」
 ちなみにこのロサイスまでの移動手段については、普通に(ハルケギニアの感覚からすれば『普通』でもないが)ジェットビートルを使っていた。
 本来ならば空間転移を使って一瞬で移動したかったのだが、ユーゼス以外に扱えないとは言え、色々な意味でジェットビートルは目立ちすぎている。
 アレを魔法学院近くの広場などに置きっ放しにしていると、
『ユーゼスはアルビオンに行ったそうだが、ビートルはあそこにあるぞ』
『じゃあユーゼスはどうやって移動したんだ?』
『そもそも本当にアルビオンに行ったのか?』
『アイツは何を隠しているんだ』
 ……などということになりかねない。
 よって、ビートルで移動せざるを得なかったのだ。
 なお、シュウに話した『隠し場所』だが……。
(……さすがに『私の空間』に隠しておくのはやり過ぎかとも思うが、下手に人目に晒すわけにも行かんからな……)
 ユーゼスは、自分が創り出した空間にジェットビートルを押し込めたのである。
 かつてガイアセイバーズとの決戦の時にユーゼスが創造した世界。
 亜空間、異次元空間、簡易的な並行宇宙……呼び方は様々だが、少なくとも通常空間ではない。
 本来ならばそのような世界を創り出したり、クロスゲートを開いたりするためには様々な条件が必要なのだが、このハルケギニアは次元交錯線が極度に不安定な上に、時間軸と空間軸が複雑に絡み合っている。
 つまり、やたらとゲートが開きやすくなっているのだ。
 そこに付け込みさえすれば、今の不完全なクロスゲート・パラダイム・システムでもかなりのことが出来る。
 ……もっとも、本格的に因果律を操作する気などユーゼスには無い。
 せいぜい創った空間を物置の代わりに使う程度である。
 ある意味では『能力の盛大な無駄遣い』と言えるだろう。
「……私はお前と雑談をするためにここまで来たのではない。早速、話に移らせてもらうぞ」
「ええ。何をするにも、情報の整理は必須ですからね」
 ともあれ二人はそれぞれの目的を果たすために、話し合いを開始した。
67ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:52:30 ID:s5r7pckU
 トリステインの首都、トリスタニアの西の端にある魔法研究所……通称アカデミー。
 高くそびえるその塔の四階に、エレオノールの研究室がある。
「……………」
 飾り気のほとんどない研究室の中で、エレオノールは書類仕事に打ち込んでいた。
 彼女の専攻は土魔法……『美しい聖像を作るための研究』なのだが、王立魔法研究所の主席研究員ともなればそれだけに専念しているわけにもいかない。
 特に、ここ最近は(許可は取っていたとは言え)個人的な事情から魔法学院に出向しっぱなしだったので、様々な仕事が溜まりまくっていたのであった。
「……ふう」
 ペンを置いて、息をつく。
 考えるべきことは、山ほどあった。
 迫りつつあるアルビオンとの戦い。
 妹の得た力、『虚無』。
 王宮の今後の動向。
 実家はどう動くのか。
 そして……ユーゼス・ゴッツォのこと。
 特に妹の『虚無』がアルビオンとの戦いにおいてどのように使われるのかは、最大の懸念事項である。
 妹もまさか自分から『戦場に行きたい』などと言うほど愚かでもないだろうが、王宮からゴリ押しでもされたら拒否のしようがない。
 あるいは……人質でも取られて脅迫される、とか。
「有り得なくはないから、困るのよね……」
 しかしその場合、人質候補になるのは自分なのだろうか。
 ……いや、脅迫とは実際にそれを行う必要などない。
 『それをやるぞ』と少しほのめかすだけで、立派に効果を発揮出来るのだ。
「まあ、ここで私がアレコレ考えても、どうにもならないんだけど……」
 そのような政治方面は、主に父であるヴァリエール公爵の領分である。
 ……確か、今の魔法学院は夏期休暇で、近々ルイズは実家に帰省するとか言っていたか。
 せっかくだから、自分も帰ってそのあたりを家族でよく話し合ってみよう。
 ルイズが帰って来るということは、その使い魔であるユーゼスも一緒にヴァリエール領に来るということだから、ユーゼスともルイズの今後について話し合おう。
 いや、待てよ。
 魔法学院の夏期休暇は、確か二ヵ月半ほど。
 その期間中、ユーゼスはずっとヴァリエール領にいるわけである。
 だったらその間、ヴァリエール家の長女たる自分は、ユーゼスと一緒にいても何も問題がないのではなかろうか?
 まあ、さすがにアカデミーの仕事もあるし、四六時中一緒にいるわけにはいかないが。
 しかし、二ヵ月半。
 これは長い。かなり長い。
 これだけあれば、男女の仲などどう転がったっておかしくはない。
 二人きりになったり、急接近したり、良いムードになったりすることだって一度や二度や三度じゃないだろう。
「……いや、別にそういうことになって欲しいわけじゃないのよ、うん。ただ……可能性、そう、可能性の話なの。あくまで『そうなるかも』って可能性。
 それに、私は別にユーゼスのことが……す、好きってわけでも、何でもないんだから。向こうはどうだか……知らないけど」
 誰が聞いているわけでもないのに、わざわざ声にまで出してそう自分に言い聞かせつつ、脳内で二ヵ月半という時間を活用したアレコレを練り始めるエレオノール。
「そうね……まずはダンスの手ほどきくらいはしてあげなくちゃ。あとはエスコートの仕方ね。それと、たまには二人でトリスタニアまで遊びに行ったりして……」
 もはや自分の思考が完全に脇道に逸れていることにも気付いていない。
「せ、せっかくだから、私の部屋に通しても……い、いえ、駄目よ、いきなり男性を自分の部屋に連れ込むなんて、レディのすることではないわ!! ……でも、彼がどうしてもって言うんなら……」
 そして椅子に座ったままで身体を微妙にくねらせながら、エレオノールは色々と突っ走り始める。
「ああ、いけないわ、ユーゼス! そういうことは結婚するまで……いえ、結婚しても三ヶ月は駄目なんだから! ああ、でも、そんな強引に迫られたりしたら、私……!」
 冷静に考えてみれば、今エレオノールの頭の中で行っているようなことをユーゼスがするわけがないのだが、妄想が少しばかり暴走しているエレオノールはそれに気付かない。
 そしてそのまま約5分ほどが経過し……。
「……はっ!?」
 脳内劇場が『末の妹と誠心誠意話し合った結果、ユーゼスを助手兼召使いとして正式に譲り受けた』という場面になって、ようやくエレオノールは正気に戻った。
「い、いけないいけない。つい考え込みすぎてしまったわ……」
 そしてアカデミーの主席研究員は、気を取り直して思考を元に戻す。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:53:28 ID:8frm/LKR
支援
69ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 22:55:00 ID:s5r7pckU
「ま、まあともかく、今後のことは今後に考えるとして……」
 今は取りあえず、仕事である。
 差し当たって書類の片付けと、もう一つの仕事……『最近になって新しく発見された鉱石の分析』を行わなくてはならない。
「『鉱石の分析』、ねぇ……」
 まあ、自分の研究のメインテーマは『美しい聖像を作ること』なのだから、その原料になる可能性を考慮して、様々な物質の特性を把握しておく必要はある。
 その繋がりで、『物質の分析』もまた自分の領域ではある。
「ここ数ヶ月の間に、アルビオンやロマリアの各地で見つかった鉱石……」
 エレオノールは箱の中に仕舞われていたそれを開封する。
 出て来たのは、『青い鉱石』と『赤い鉱石』である。
 エレオノールはその二つをそれぞれ直接左右の手に取って、まじまじと観察を始めた。
 色は、透き通るような青と赤。
 サファイアやルビーよりは、どちらかと言うと水晶に近い色合いをしている。
 一応『ディテクト・マジック』をかけてみたところ、この二つの鉱石は同じ性質を有しているらしいことが分かった。
 また、風石や土石のように魔法力に近い物が込められていることも分かったのだが、その『込められている力』の正体が何であるのかは分からない。
 よって、その力を引き出す方法もよく分からない。……と言うより、燃料として使用が出来るのかどうかすら分からない。
 産出された土地についての情報も目を通してみたが、これが本当に『各地』に……山の中、洞窟の中、平原、荒野、果ては建築物の中からも発見された例があり、どのようにして産出されるかの手掛かりすら分からない。
「うーん……」
 このように分からないことだらけの『青い鉱石』と『赤い鉱石』ではあるが、もう一つだけ分かっていることがあった。
 硬いのである。
 それはもう、考え付くだけのあらゆる手段を用いてもヒビ一つ入らず、スクウェアクラスの土メイジが『錬金』をかけてみても何の変化も起きないほどに。
「何なのかしらね、これ……」
 カンカン、と二つの鉱石を打ち合わせてみるが、それでどうなるわけでもなかった。
 ……ともかく、仕事として渡されたからには何らかの結果は残さなければなるまい。
「さて、と」
 よく分からないモノを理解するための第一歩は、まずはジッと観察してみることだ。
 そうすることによって他の人間では気付かなかったことに気付くかも知れないし、またパッと見ただけでは気付かなかったことに気付くかも知れない。
 よって、エレオノールは『青い鉱石』と『赤い鉱石』を手に取り、それらから発せられる奇妙な輝きに意識を集中し……。
(あ……れ……?)
 それを見ている内に、何だか。
(…………ぁ…………)
 意識が遠く、なって……。


 コンコン、と木材を叩く音が部屋に響いた。
「!」
 その音でエレオノールは我に返る。
「私、何を……?」
 ふと手元を見れば、詳細を調べるように言われた『青い鉱石』と『赤い鉱石』がある。
 それをじっくりと観察しようとした所までは記憶があるのだが、それ以降の記憶がない。
「おかしいわね……」
 『青い鉱石』と『赤い鉱石』は、相変わらず奇妙な輝きを放ち続けている。
 まさか……自分の意識が遠くなったのは、この二つの鉱石のせいなのだろうか?
「…………っ!」
 反射的に『青い鉱石』と『赤い鉱石』から手を離すエレオノール。
 ……一度そう思ってしまうと、今自分が手に持っているこの得体の知れない物質が、とてつもなく危険なものに思えてきてしまった。
「って、研究者にあるまじき考えね……」
 何でもそうだが、余計な先入観は『正しい結果』を導くための最大の障害となる。
 まあ、『そのような可能性がある』程度に留意しておくのが無難なところだろう。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:56:10 ID:rj57SsND
支援
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:59:32 ID:Ftivv4Or
ミルトカイル石は危険すぎる…!
支援
72ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 23:00:05 ID:s5r7pckU
 と、そこまで考えたところで、再びコンコン、と木材を叩く……ノックの音が響く。
「……ミス・ヴァリエール? いらっしゃらないのですか?」
「あ、待って。すぐに出るわ」
 どうやら来客のようだ。
 エレオノールは頭をブンブンと振って意識をハッキリさせると、その来客を迎えるべくドアへと向かった。
「あ、どうも。いつもの方からのお届け物ですよ」
「いつもの方? ……ああ、ユーゼスね」
 そのやり取りで、そろそろユーゼスからレポートが送られてくる頃だったことを思い出す。
 二人の魔法に関するレポートのやり取りは、まだ続いているのだ。
 そしてエレオノールは封に包まれたレポートを受け取り、運んできたアカデミーの事務員に礼を言うと、あらためて椅子に座り直した。
「えーと……。今回のテーマは何だったかしら」
 丁寧な手つきで封を開けながら、何について書かれているのかを思い出す。
 しかし思い出すまでもなく、そのテーマは開封された包みの中から自分の目の中に飛び込んできた。

 ―――提供された『患者』の情報から判断を行った、個人的な見立て―――

「……………」
 思わず手が止まる。
 そう言えばラグドリアン湖での一件が終わった後に、色々な情報をユーゼスに渡して上の妹の『病状の把握』を依頼していたのだった。
 どのような結果が書かれているのか……不安ではあるが、期待もある。
「……取りあえず、読んでみないことには始まらないわね……」
 恐る恐る、ページをめくる。
 最初の但し書きに『私は専門の水メイジでも医者でもなく、また直接その“患者”を見てもいないので推察が多くなる』と書かれているが、それは承知の上だ。
 そしてエレオノールは長々とユーゼスの筆跡で書かれたそのレポートを熟読し……。
 結論の部分に差し掛かった所で、動きをピタリと止め。
 その部分を何度も何度も読み返し。
 どうやら自分が初見で捉えた意味以外に、解釈のしようがない……と、納得が行かないまでも辛うじて理解すると。
 自分が読んでいたレポートを、感情に任せて机に叩き付けた。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:01:08 ID:rj57SsND
支援 さるった?
74ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 23:02:30 ID:s5r7pckU
 ―――そのレポートの結論部分には、こう記述されている。



 他に良い例えが思い浮かばないので、建築物に例えてみる。
 建築物を建てるには、まず設計図を描き、それを元にしてしかるべき土地に土台を作る。
 続いてその土台を軸として、建築物の骨組みを作る。
 そして骨組みを文字通り骨子として、壁や屋根などを作るという手順になっている。
 しかし、この家が何らかの事情によって破損なり老朽化なり劣化なりした場合、その部分を継ぎ足す、作り変える、外から支えるなどして『補修』を行う。
 これが『通常の治療』である。
 しかし、この『患者』の場合は根本となる『土地』か、あるいは『設計図』に致命的なミスがあると思われる。
 治療すべき箇所を治療すれば、それに呼応するかのように別の部分が警鐘を鳴らす。……通常の疾病であれば、まずこのような事態にはならない。
 この『患者』は、バランスを取ろうとして問題があると思われる部分の重量を増減などしても、結果的にバランスが取れずに揺れ続けている状態に等しい。
 『建築物』自体をいくら補修しても、不安定な揺れは治まらない。ならば『土地』自体か『設計図』に欠陥があると見るのが妥当だ。
 なお、その対応策として『土地』に杭を打ち込んで強引に地盤を強化させる、という手段もある。
 しかし、それでは表面的にはしっかりしたように見えても、確実にその『土地』の寿命は削られるだろう。
 『崩壊』までのカウントが目減りするだけだ。

 また、提供されたそれぞれの情報から判断するに、この『患者』の残りの寿命を大まかに算出した場合。
 もっとも、これは『安静にしていた場合』の話で、肉体的・精神的な負担が重なれば寿命は更に縮まる可能性が非常に高いが、この場では端的な結論のみを記述する。

 私の見立てでは、短くて1年。
 どんなに長くても、あと5年以内にこの『患者』は確実に死ぬ。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:03:24 ID:rj57SsND
うわぁ 支援
76ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/03/31(火) 23:03:50 ID:s5r7pckU
 以上です。

 今回はスパロボで言うところのインターミッション的な話でした。

 なお、ルイズの夢のシーンにもあるように、スパヒロのシナリオはとにかく出て来る悪役(ユーゼス含む)が揃いも揃って、『地球人は愚かだ』、『地球人は凶暴だ』、『地球人は悪だ』……などと言いまくっています。
 10年ほど前にプレイした当時は『寺田さん、何か嫌なことでもあったのかなぁ』と余計な心配をしたものです。
 今のスパロボのシナリオを見るに、その傾向は……まあ、あんまり変わらないような気もしますがww

 それとカトレアの病状については、あくまで私個人の解釈です。
 ……原作を読む限り、カトレアって何だか近い将来に死にそうなイメージを受けるんですよね、どうも……。

 ちなみに、現実の医者が患者の家族などに『そういう宣告』をする時には、『治る可能性はゼロではありませんが、極めて低いです。覚悟はしておいてください』みたいに、えらい回りくどい言い方をするらしいですな。

 ……しかし自分で書いておいて何ですが、ユーゼスとシュウが内緒話をしてると物凄い陰謀を企んでるように見えてしまう……。
 どっちもそういう系統のキャラですから、仕方がないと言えば仕方がないんですけど。
 …………いや、あんまり大したコトを話してるワケじゃないんですよ?

 それでは皆様、支援ありがとうございました。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:04:16 ID:0oV9CAYY
ちょ、幾らなんでも言葉を選ぼうよ支援
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:04:30 ID:rj57SsND
乙でしたー
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:04:48 ID:oliL2mxQ
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:05:19 ID:0oV9CAYY
終わってたorz
乙です
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:06:19 ID:Ftivv4Or
ラスボスの人、投下乙でした。
なんだかユの字のレポート読んだエレオノールが、ミルトカイル石に心を支配されそうな予感がしてきました…
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:06:44 ID:X8q0YTbH
乙です

シュウはまあヘタに手出しせずにほっとけば無害なヒトだからな
現世的な欲望とか少ないっちゃ少ないし利用しようとしたらまあご愁傷様だけど
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:07:31 ID:uWVQXmXV
流石に容赦ねえなユーゼス乙。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:12:22 ID:ffSqs8u7
ヒーロー戦記でのメフィラスの不憫さとヤプールの外道さは異常
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:14:21 ID:nYg3jsu+
ラスボスの人、乙です。
支援しようと思ったら、投下終わってました orz

>何だかやたらと危ない場所みたいね、チキュウってところは……
ジャスミン茶吹いたw
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:15:48 ID:5lFPBwum
乙です
姉さん仕事の方は大丈夫かと気になってたけど問題なさそうですねw
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:15:54 ID:TJCC1RQI
どうせならメフィラスと1stガンダムのアムロ・レイとで戦わせて欲しかったなあ。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:27:57 ID:mmg9ALXT
ラスボス乙ー
これで寝れる
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:46:10 ID:ygTUHOqp
帝王はシェスタを鍛えてお師さんと同じ境地に達しそうなフラグ。

頑張れユーゼス!お前のフラグ能力を今こそ……!
なんだったら因果的にこう、ラブラブに!
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 23:54:12 ID:QKpAeBJQ
ヒーロー戦記でのジェリドの強さとアムロの微妙さは異常
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:00:44 ID:MZ12lB+Q
ラスボスの人って秋田に住んでたのか…
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:24:21 ID:ThWQowCv
ねらう
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:45:37 ID:gMvn2VwI
シェスタって誰ね?
94魔法少女リリカルルイズ:2009/04/01(水) 00:48:06 ID:5h1CmIE4
深夜ですが55分から投下させてください
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:53:34 ID:1lVXA0Xm
支援、支援だ
96sage:2009/04/01(水) 00:55:25 ID:L9tPIZFj
testes
97魔法少女リリカルルイズ:2009/04/01(水) 00:55:39 ID:5h1CmIE4
大地は足下にあり盤石なもの。
それは浮遊大陸アルビオンにおいても変わらない。
この空に浮かぶ巨大な岩塊がなんの支えも無く浮いているにもかかわらず、それが落ちるなどと考えるものはハルケギニアのどこにもいない。
アルビオンを遠くから見た時には、それは浮いて当然のものとして見えた。
アルビオンを空から見下ろした時には大地に等しく不動のもとして見えた。
その上に立った時には、揺るぎないものとして感じた。
キュルケはそれらを特別意識していたわけではないが、常識、当たり前のものとしていた。
だが今はわずかに疑念を覚えている。
こうしてアルビオンを間近で下から見上げると、盤石さの根拠となる巨大さ、堅牢さが逆にいつ落ちやしないかという不安の根拠となってのしかかってくるようだ。
そのわずかの不安を胸に見上げる岩盤の向こうには、ニューカッスル城がある。
そこにはルイズがいるはず。
「間違いない。この上だ」
そして、それは岩盤に向かって鼻を上げているヴェルダンデがルイズの持つ宝石の位置をかぎつけたと傍らにいるギーシュに伝えたことで確信となった。
地上から穴を掘るとレコン・キスタが邪魔をしてどうやっても長すぎるトンネルの中を這わなければならない。
だったら、他に道はないのか。
──あった。
アルビオンの浮遊大陸という特性が他の道の可能性を作っていた。
大陸の下から掘ればいいのだ。それなら、わざわざ戦場を避けて遠くから穴を掘る必要はない。
しかも地上のニューカッスル城に集中しているためかレコン・キスタはこの近辺にはいない。
「タバサ、お願い」
タバサが頷くとシルフィードは翼を羽ばたかせる。
大陸の岩盤ギリギリまで接近するし、シルフィードは翼の動きを変えた。
小さく、何度も羽ばたいて首筋を岩にくっつけて空中に静止する。
その飛び方はシルフィードにとってはかなり辛いのか、きゅいきゅいと鳴き声を上げていた。
「今度は僕らだね」
ヴェルダンデはシルフィードの首筋から大陸にしがみつく。
爪を立てた前足を何度か動かすと、そこにはもう四つん這いになれば人が入れるほどの穴が口を開けていた。
「よし、いいぞ。ヴェルダンデ。そのままルイズのとこまで掘っていくんだ」
そう言う頃にはヴェルダンデの姿はカーブを描くトンネルの奥に隠れ、土をかき分ける音でしかどこにいるかわからなくなった。
「では、ミス・ツェルプストー。どうぞ」
レディファーストというやつだ。
ギーシュは不安定なシルフィードの背中にあってもそれなりに紳士的にトンネルの方に促す。
それをキュルケは黙って殴った。
「あたたたっ!」
「馬鹿なこと言ってると殴るわよ」
ギーシュに悪気や下心があるかどうかは置いておくとして、いくらキュルケでも学院制服の短いスカートでトンネルを潜るのに男を後から着いてこさせるような感性は持ち合わせていない。
相当いいのが入ったらしく、頭を押さえるギーシュがまずはトンネルに潜り込む。
次に入ったキュルケはタバサに手を貸そうとしたが、それに対しをタバサは首を横に振った。
「どうしたの?」
「私はここで待っている」
タバサはルイズの救出に随分熱心だった。
それなのに、ここで待つと言うのはどうしてだろう。
そう訝しむキュルケに気付いたのか、タバサは言葉を続けた。
「シルフィードがいる」
空中に静止するのはシルフィードにとってかなり辛いことのようだ
周りを適当に飛んでいて、ルイズを助けた後にトンネルの入り口に戻って来るようにした方がずっといいだろう。
それに、今はいないが万が一レコン・キスタに発見された時には逃げる必要がある。
そういった時の細かな指示はタバサ意外にはできそうにない。
「わかったわ。こっちは任せて」
口を開かずタバサは首を縦に振る。
後ろ髪を引かれる思いもしたが、今はルイズを助ける方が大事とキュルケは魔法の光を灯してトンネルの奥に進んだ。
98魔法少女リリカルルイズ:2009/04/01(水) 00:57:00 ID:5h1CmIE4
アルビオンを見上げる少女は耳に入る音が風だけになるのをじっと待っていた。
高空にあるアルビオンの周りでは常に風が吹いている。
それでも近くに何かいるのなら耳を澄ませば音が聞こえてくるものだ。
風に交じってわずかにがさごそと土を削る音が聞こえていた。
それは遠ざかり、やがて風の音にまじりって彼女の耳に届かなくなる。
少女はゆっくりと顔を上げ胸元に手を当てた。
「お姉様。行くの?」
その声に少女は頷いて答えた。
「1人じゃ危ないのね。私も行くのね」
少女は首を横に振り、否定を伝える。
「みんなが帰ってきた時に」
「でも危ないのね」
少女の意志は変わらない。
それに気付いた少女の語りかけていたものは、不満げなうめき声を上げながらも渋々賛同した。
「待ってて」
少女は呟く。
自分の持つこの世界のものではない力を使うための言葉を。
「……アップ」


3万人のレコン・キスタの中を駆け抜け、その先にあるニューカッスル城の城壁にとりつき、よじ登って城内に侵入する。
それが人間であれば不可能であろうが、ユーノは違う。
フェレットに変身した彼を見とがめるものは誰もいなかった。
野生の小動物が戦場から逃げだそうとしていると思うのがせいぜいで、勘の良いメイジでやっと誰かの使い魔だと考える。
それにしても、まさかニューカッスル城内のメイジの使い魔だとは誰も看破できなかったし、したとしても小動物の使い魔に何ができると気にもしなかっただろう。
「相棒、ちょっと落ち着け」
小さくなっているデルフリンガーの言葉を聞いても、ユーノははやる心を抑えきれず、さらに足を速めようとした。
(ルイズ……ルイズ)
ユーノの叫びは声ではなく念話となって広がる。
小さな城でも声ならば石造りの壁に遮られてしまうが、念話なら関係ない。
(……ルイズ……どこにいるの?返事してよ)
ワルドはラ・ロシェールで襲撃を仕掛けてきた。
その彼がルイズに同行している。
もしや、という思いがユーノの頭をよぎった。
(ユーノ、ユーノなの?)
やっと帰ってきたルイズの声は驚きの色を含んでいたものの落ち着いていた。
それはずっと心配していたような危険に、ルイズが直面しているわけではないということだ。
(ルイズ、今どこにいるの?)
ほっとしながらもユーノは立ち止まり、念話が聞こえた方向を見た。
いくつかの建物があるが、どれがルイズのいる建物かまでは分からない。
(礼拝堂よ。これから結婚式を挙げるの。ユーノも早く来て)
その念話でルイズのいる場所は分かった。
だけど、ユーノ再び嫌な予感に襲われる。
ラ・ロシェールでのワルドとルイズが話していたこと。それとルイズが今言ったこと。
そこから浮かぶ想像がユーノの体を締め付けた。
(結婚式って、誰と?)
(もちろんワルドよ)
音の立つ早さで血の気が顔から引いていくようだった。
フェレットでなければ、顔が青ざめているのが分かったかもしれない。
「だめだルイズ!」
その言葉をユーノは念話だけでなく、口からも出した。
「その人はルイズの味方じゃない。ラ・ロシェールで襲ってきたのはその人なんだ!」
地面を蹴るユーノは礼拝堂を目指して空を飛び、その姿をフェレットから人間へと戻した。
99魔法少女リリカルルイズ:2009/04/01(水) 00:58:31 ID:5h1CmIE4
「どうしたのだね、ラ・ヴァリエール」
突然、石のように動きを止め、目を見開いたルイズに結婚式の媒酌人たる礼装に身を包んだウェールズが問うた。
礼拝堂で行われているたった3人の結婚式が終わるまであと少し。
ワルドが始祖ブリミルにルイズを妻にすることを誓い、後はルイズがワルドを夫とすることを誓う。
それで2人の婚姻は成立する。そのはずだった。
なのにルイズは誓いの言葉を口にする寸前にその口を閉じた。
その上、今は体と唇を小刻みに震わせ、その顔には絶望と驚愕と怒りと……それらを交ぜて作った絵の具で塗りたくったような表情をあらわにしていた。
「どうしたんだい、ルイズ」
ワルドは身をかがめ、冠の下のルイズの顔をのぞき込んだ。
それを見返すルイズの顔には、さらに疑念という絵の具が加えられた。
「どういうこと?どういうことなの?ワルド」
ルイズは後ずさりブリミルの祭壇と、そしてワルドから離れる。
それは明らかに拒絶を表していた。
「どういうことだと?いったいなにを言っているんだ?ルイズ」
ワルドの手が伸ばされる。
それを払いのけ、ルイズはさらに後ずさった。
「とぼけないで。ラ・ロシェールの事よ。私たちを襲ったのはあなただったんでしょ」
「なに?待つんだ、ルイズ。それはどういうことなんだ?」
新婦の証したる冠、それと純白のマントをかなぐり捨ててルイズは叫んだ。
「ユーノが教えてくれたわ」
「ユーノだと?それはキミの使い魔なのか?それともあの少年か?君は私よりあんな素性の分からない少年の方を信用するというのか?」
「信用するわ。だって……」
ルイズはその言葉を確信を込めて言い放った。
「ユーノは絶対、私に嘘をつかない!」
その時、礼拝堂の扉が開かれ日の光が射し込んできた。
床に映る光は道のように祭壇まで伸び、それは一つの影によって二つに分断されていた。
影を作るもの。それはデルフリンガーを手に持つユーノ・スクライアだった。

***************************************
今回はここまでです
やたら時間がかかりましたがようやく全員ニューカッスルに集合しました
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:58:32 ID:fSo+2su9
支援
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 01:14:42 ID:GDd3fA95
投下乙。
ユーノはやっぱいい男だな。
しかしかなり間が開いていた為か、
原作以上にすっごい感動の再会のように感じるのは自分だけだろうか?
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 01:54:09 ID:vkuofD1h
乙乙
いいね、盛り上がってきたね
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:47:14 ID:q5YhA9Ny
投下お疲れ様です。

皆凄い作品ばかりだ・・・。
お初です、もし良ければ私も一つ投下してもよろしいでしょうか?
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:53:09 ID:/ihAScyi
ええ、構いませんよ。
どうぞどうぞ。
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:54:21 ID:/ihAScyi
あ、>>103sageてね
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:58:12 ID:1lVXA0Xm
>>103
・sageる
・タイトルとクロス先、時間を予告する
・名前欄にはタイトルを書く
・自分の作品を見返して不安になる
・誤字を見つけて慌てて直す
・それでも克服して投下

これでおk
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:59:33 ID:FIvh2hQJ
>>103
あとできるだけ投下時間を予告してくれた方がいいかもね。
なんていうか、いきなり投下されれば驚くし普通は総すかんだからね。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 03:22:43 ID:KqA0DBD3
テンプレ読んでないと、
「あんなこと言ったのに、スレはおろかテンプレすら読んでないってどういう神経してんの?」
って思われるから気を付けてね。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 03:25:31 ID:KqA0DBD3
やられた、4月バカか
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 04:42:01 ID:AnmmXBip
4月バカみたいだな
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 06:57:27 ID:j0TUbifq
う〜〜ん、いよいよタバサと謎の際どい格好の黒の幼女メイジとの明らかに…?
何故にユーノやヴォルケンは普通に生身でハルケギニアで活動すとるのに
謎の際どい格好の黒の幼女メイジだけはウルトラマンパターンで活動してるのか?
下手をしたら際どい格好の謎の熟女メイジの母親にタバサが鞭で打たれてしまうのか?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 09:28:08 ID:q5YhA9Ny
>>103です。もうしわけありません、皆さんのお返事を待とうとして寝落ちしてました(汗)

皆さんの温かいお言葉ありがとう御座います、これから気をつけます。
では、これより投下します。
113虚無の雷神:2009/04/01(水) 09:44:17 ID:q5YhA9Ny
――――――――世界は平等なんかじゃない。

世界を救いし隻腕の英雄亡き後・・・
邪神が封印されし地に街を築き・・・
自らが結界の役割を果たし・・・
永き平和への礎と成す・・・

それは、とある地に伝えられし英雄譚の一説だ。
全ての伝説に、伝承が生まれる。
どのような地であっても、そこに伝説は生まれ、語り継がれていく。
語り継がれていく伝承はやがて人々の記憶となり、それは記録としてしか残らなくなる。
そして・・・いつかその記録すらも埃を被り、歴史の闇に沈んでいくのだ。

【―――されど憐れむ必要はないのです。】

誇り高き右腕に刻まれし雷の紋章・・・
その者達を召喚せし 流麗たる少女・・・
虚無の謎 紋章の秘密・・・
少年と少女の軌跡 異界の系譜・・・

【ワタシもアナタも誰ひとり逃がれられないのですから――――】

第1話 【異界召喚】

弱い者ほど、徒党を組む。
どんな場所、どんな種族であれ、行動は一緒だ。
けど、こと人間と言うモノは、その動きが謙虚な物となる。
彼らは自分たちが弱くないという証の為に、【身代わりの羊】を探す。

(そう・・・僕は当然のように、その【身代わりの羊】となった)

【役立たず】、【無能力者】・・・石を投げられ、全身に暴行を受け続けた。

(・・・幼い頃から受け続けてきたその痛みは、まるで灼けた石を身体に・・・そして心に押し付けられ続けた痛みのようだった・・・。)

父と母はいない。
虚弱な母は僕を生んで間も無く死に、父も僕が5つの時に山で石の下敷きになって死んだ。
僕を引き取ったのは、僕の血縁とは全く関係の無い女性だった。
僕が女性から最初にかけられた言葉は【役立たず】という罵りの言葉だった。

(・・・僕は何も言わなかった。)

最初の頃は、泣いたり喚いたりもした。
だけど、そうすればそうするほど余計に殴られ、蹴られ、怒鳴られ、苛められた。
だから、僕は喋らなくなった。
ひとり唇を噤み、膝を抱えて耐えていた。
どんな【雨】であろうと、時が過ぎれば過ぎ去る・・・それは【嵐】とて同じなのだから・・・。
114虚無の雷神:2009/04/01(水) 09:46:25 ID:q5YhA9Ny
少年は誰もいない丘の上で、自分の右腕を見つめる。

「・・・・。」

右腕に刻まれし、【雷神の紋章】
手の甲から腕にまでいたる、誇り高き紋章。雷神の民の証だ。
されど・・・少年にとって、それは恥さらしの紋章だった。

「・・・・。」

立ち上がり、意識を右腕に集中する・・・だが、結局何も起こらなかった。
雷神の紋章・・・それを刻まれて生まれてくる者達・・・その者達こそが【雷神の民】。

「・・・・・・・・。」

溜息を一つ、少年は力なく座り込んだ。
雷神の民の特質・・・それは、その腕と伝説に起因する・・・雷神の民は雷を放つ事が出来るのだ、通常なら。
・・・そう、少年は生まれてから十数年、一度も雷を出せなかった。
だから、少年は一族全ての民から疎まれ続けた。
早い者は3歳で雷を出し、遅くても5歳には自らの物とする・・・だが、少年だけ、いつまで経っても雷を放つ事が出来なかった。
やがて少年は、周囲の人々から役立たずと罵られるようになった・・・。
輝かざる紋章を見つめ、少年は諦めるように瞳を伏せた。
そんな少年の心を支配するのは、一つの疑問だった。

(本当の力って、何?)

里の者達は皆、自身の雷を人に見せて、強さを競っていた。
遠目から見ていた少年は、当然のように行われる光景を目にしながら、心の中で問い掛ける。

(本当の強さって・・・何?)

雷が使えるから【強い】のか?
力があるから【強い】のか?
分からなかった・・・少なくとも、雷を使う事の出来ない自分には何も分からなかった。
自分が生きている意味があるのかさえも、少年には分からなかった。
誰にも存在を認められない、だから自分を認識できない。
誰にも理解されない、だから自分を理解できない。
誰にも必要とされないから・・・自分の生きている価値すらも、少年にはわからなかった。

「・・・・・・・。」

このまま、自分なんていなくなれば良い。
どうせ誰の意識の中にも自分がいないのであれば、自分が死んでいなくなっても一緒の事だ。
荒んだ心を抱えた少年は、家からくすねて来たナイフを自らの首に当て―――――――
115虚無の雷神:2009/04/01(水) 09:47:52 ID:q5YhA9Ny
「――――え?」

誰かに呼ばれたような気がして、少年はもたげていた首を上げ、声が聞こえた方へ顔を向けた。
目の前に・・・大きな鏡があった。

「・・・・・。」

突然現れた鏡を呆然と見つめ続ける。
その不思議な鏡は、何かを待つように、少年の前に佇んでいた。

「・・・・・?」

その鏡の向こう側で、何かが見えた気がした。
目をこらして鏡を覗き込む少年・・・その先で、少年は聞く・・・そして見る。
誰かは分からない・・・しかし、誰かが【自分】を呼んでいるのを。

「・・・・・。」

だからかもしれない。少年が、鏡に手を伸ばしたのは・・・。
誰かが自分に手を差し伸べているように見えたから・・・だから・・・少年は。
次の瞬間、少年の姿は【世界】から消失した。


「あれ・・・?さっきここにいたような・・・・?」

少年を探していた少女が、不思議そうに誰も居ない丘の上で首をかしげた。

「・・・・・・そう・・・・・・・。」

黒き書を持った、黒い衣装の、黒い長髪の少女が悠然と微笑んだ・・・。

そして、少年が気がつくと・・・目の前に桃色の髪をした少女が立っていた。
この人は誰なのだろう・・・僕はどうしたんだろう・・・思考がまとまらず、少年はただ呆然と少女を見上げていた。
こちらを見つめてくる少女が、おもむろに口を開いた。

『アンタ誰?』

聞いたこともない異国の言葉に、少年は首をかしげた。

――――――――――――――――――――――――――

これで一話終了です。
キャラはSound Horizonの雷神の系譜に出てくる雷神の少年です。
誤字・脱字や誤った表現などがあるかもしれませんが、よろしくお願いします
116蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:14:34 ID:BrrwLzeG
作者より避難所から要請があったので転載します
117蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:15:02 ID:BrrwLzeG
絶好調規制中!そんな中41話書き上がったので、
まことにお手数ですが、代理をお願いします……
今回は話の繋ぎなので短いです、展開もアレです、期待はしないでね!
では行ってみませう
118蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:15:23 ID:BrrwLzeG
「何よ便利屋って、どういうの?」
「言葉の通りだ、内容は問わん、様々な依頼を受けそれを遂行する」
首をかしげるルイズにバージルは簡単に説明をする、
ルイズは大体理解したのか、納得したように頷いた
「ふぅん、あんたはそれを昔やっていたんだ?」
「そうだ、わずかな間だったがな」
バージルのその言葉にルイズは「へぇ……」となにやら意外そうな表情でバージルを見つめた。
「何だその顔は」
「いえ、あんたが働いていたなんてね、ちょっと意外だったわ」
「何故だ」
眉を顰めるバージルにルイズが肩をすくめた。
「だって、想像できないんだもん、あんたが働いてるとこ」
「……まぁいい、ともかくだ、あの部屋は言うなれば事務所だ、寝るための部屋ではない」
バージルは不愉快そうにそう言うと、踵を返し屋根裏部屋を後にしようとした。
慌てたルイズは、バージルのコートの裾を握りしめる
「まだ用があるのか? 俺はこれから部屋の準備に取り掛かる。お前は昼には起きて店の掃除だろう、早く寝ろ」
バージルが鬱陶しそうに振り向く、視線を下に向けると、ルイズが口をへの字に曲げ、何やら言いにくそうに口を開いた。
「ぅ……、あ、あの部屋があんたの事務所なら、あんたも寝るときはこの部屋よ、
ご主人さまがこの部屋なんだもの、あんたもここで寝るのは当然でしょ……それと……」
ここで寝ろ、との言葉にバージルはあまりいい表情をしなかったが……黙って聞いた。
「それと、何だ」
「じ、準備はわたしが起きてからにしなさい!」
「それまでどうしろというんだ」
「うぅ〜〜……いいからここにいる!」
バージルのその言葉にルイズは顔を真っ赤にしながら言うと、
そそくさとベッドに横になると毛布をかぶってしまった、
バージルは仕方なく、適当に積まれた木箱の上に腰かけると腕と脚を組み目をつむる……。
「ちょっと」
毛布から顔を出したルイズに声をかけられ、再び目を開ける。
「こっち来なさい」
「一々注文の多い女だ」
バージルはうんざりしたように呟き床に腰を下ろす、そしてルイズの眠っているベッドに背を預けた。
横になる気配がないバージルにおずおずとルイズが声をかける。
「……寝ないの?」
「必要ない」
「そ……おやすみ……」
ルイズはそう言うと、バージルの背中に頬をくっつける。
確かにひどい場所だが……、一つだけうれしいことがあった。
ここにはあのバカ竜がいない、忌々しい惚れ薬の効果もようやく切れたと思ったのに!
まったく、この冷徹傲岸不遜でどこまでも朴念仁で空気を読まないバカ使い魔のどこがいいのだろうか?
他にもバージルを好いているであろう連中がいない、それは素直に喜ばしい。
わたしはー、別にー、こんなバカ悪魔ー、好きじゃないけどー……。
とかなんとか小さな声で呟きながらルイズはちょっぴり幸せ気分で頬を摺り寄せて目をつむる。
頬を染め、この長期休暇ぐらい、もっと構ってもらうんだから……と呟く。
それと……、街の噂を逐一拾って姫さまに報告しなきゃね、
忙しいことになりそうだと思いながらルイズは眠りに落ちて行った。
119蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:15:49 ID:BrrwLzeG
しかし。
ルイズのささやかな願いと幸せは、様々な意味で打ち砕かれることになる。
それが判明したのは、翌日の夜のことである。
その日も『魅惑の妖精』亭は繁盛していた。
ルイズはげんなりしながら、先日のように料理やらを運んでいた。
ルイズを見た酔っ払いの反応は二通り、まずは、この店ではこんなガキを使っているのか、と
いろいろな部分が小さいルイズを見て怒る連中である。
こういうお客様にはルイズはワインをたっぷりサービスすることにした。
壜を逆手に持ち、背筋を伸ばしお客様の前に立つと、何かの儀式なのか、壜を持った左手を水平に伸ばし、右手を左上腕部に添える。
そして壜を両手にもち、顔面目がけ振り抜き、壜ごとプレゼントするのである。
もう片方は特殊なご趣味をお持ちのお客さまだ。
ルイズは容姿だけはバカみたいに可愛らしいので、その筋の人達にとっては逆に喜ばしいらしい。
そういう連中は黙っていればおとなしそうに見えるルイズをナめ、決まって小さなおしりや太ももを撫でようとする。
ルイズはそう言う連中には足技をサービスすることにした。
そんなに触りたきゃ好きなだけ喰らわせてやると言わんばかりに、魔人化キック13を受けていただくのである。
そんなわけでお愛想の一つも言えないルイズは、当然一枚もチップをもらえない。
スカロンに呼ばれ、「ここで他の子のやり方を見学しなさい」と、店の隅に立たされた。
なるほど、他の女の子達は巧みであった。
ニコニコとほほ笑み、何を言われても、されても決して怒らない。
すいすいと上手に会話を進め、男達を褒め……、
しかし触ろうとする手をやさしく握って触らせない。
すると男達は、そんな娘たちの気を引こうとしてチップを奮発するのであった。
あんなことできるわけないじゃない、とルイズは唇を歪めた。
メイジは貴族のこの世界、生まれたお家はヴァリエール、おそれ多くも公爵家!
領地に帰ればお嬢様! のルイズである。
明日世界が終わると言われても、あんなお愛想はかませない。
しかも、こんな恥ずかしい恰好で……。

格好?
その時、ルイズは改めて今の自分の姿を確認する、昨日と同じキャミソール姿である、
中身は確かに自分でもダメダメだと自覚しているが、外見はかなりの線いってるんじゃないかしら。
ちらっと店に置かれた鏡に気がつく、その前で何度かポーズをとってみる。
親指などをくわえて、ちょっと上目づかいにもじもじなど、してみた。
うん、恥ずかしいカッコですけど、わたし可愛い。
腐っても貴族、あふれ出る高貴さにはここにいる女の子の誰だってかなわない。わよね、きっと、たぶん。
120蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:16:05 ID:BrrwLzeG
この姿をみたらバージルも見とれるんじゃないだろうか?
そう考えると、ルイズはちょっとうれしくなった。
なによばか、今頃わたしの魅力に気が付いたっておそいんだから!
なんだその格好は、そうか、ご苦労なことだ、せいぜい稼いで早く金を返せ、期待はしていないがな。
……うん、だめだ、想像上ですら、こんなことしか言ってくれないやあいつ……。
がっくりと肩を落として溜息をつくと、ふと壁に張られた羊皮紙が目に入った。
そこには『依頼、なんでも引き受けます、詳しくはミ・マドモワゼルまで』、とだけ書かれていた。
「あの……ミ・マドモワゼル、この張り紙は?」
ルイズは壁に張られた羊皮紙を指差し、スカロンに尋ねる、店ではこう呼ぶ決まりだ。
「え? あぁこれ? 昨日バージルくんと話してたでしょ? 
その時に頼まれたの、こうやって宣伝しておけば、依頼が来るかもしれないってね」
ルイズはなるほど、と小さく頷いた、酒場には多くの情報とともに、様々な人々が集まる。
こうして張り紙を張っておけば、依頼が舞い込む可能性もあるのだ。
スカロンが了承したのは、便利屋が評判になればその分、酒場の利益も上がるから、という理由だった。
もちろんきちんと部屋代も払い、仲介料として報酬の一割を払う、そう言う約束もあるらしい。
ルイズにとって驚きだったのはそれらは全てバージルが自分から提案したことだ、
やはり昔、便利屋をやっていたことが少なからず影響しているのだろうか。
「それで、何か依頼は来たんですか?」
ルイズが尋ねるとスカロンは小さく首を横に振った。
「まぁ、まだ始めたばかりだから、仕方がないわ、さ、それよりルイズちゃん、お兄さんの心配よりもっと他の子を見てお勉強なさい」

「バージルぅ……終わったわよ……」
空が白み始めるころ……ようやく仕事から解放され、ふらふらな足取りでルイズがバージルがいる"事務所"のドアを開けた。
部屋の中はすっかり改装されており、二つあったベッドは撤去され、部屋の奥にはよく言えばアンティークの机、
応接のための二対のソファとテーブルが置いてある。
ただ、その事務所の主はというと、偉そうに机と同じ、古びた椅子に腰かけ、机に足を投げ出し本を読んでいた。
ドアが開かれても眉ひとつ動かさず、反応すらしなかった。
ルイズが客だったらどうするつもりなのだろうか? 接客する気ゼロ、酒場で働いているルイズといい勝負である。
「あんたね……私が客だったらどうするつもりだったの? 無愛想にも程があるわよ?」
ルイズがそんなバージルを見て呆れたように呟く。
「どの口がほざく」
バージルは冷徹に切り捨てると読んでいた本を閉じ、掛けていた椅子から立ち上がった。
「やっぱり仕事は来てないみたいね」
「まだ始まったばかりだ、いつまでこの状態が続くか分からんがな」
バージルはあまり気にしていないのか、しれと答えた。
121蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:16:23 ID:BrrwLzeG
「あ〜〜、本当、空の上は涼しいわねぇ……」
キュルケがシャツのボタンを全て外し、手で凹凸のはっきりとした身体を仰ぎながら呟く。
場面は唐突に切り替わり、翌日……
タバサとキュルケの二人は、シルフィードに跨りトリスタニアへ向かっていた、
夏の容赦ない日差しのおかげで寮塔の部屋の中はまるで蒸し風呂、
キュルケはタバサの部屋で、彼女の生み出すキンキンに冷えた氷の粒が混じった風を堪能していたのだが、
読む本がなくなった、とのことで、街への買い出しの付き合いに来ていたのだった。
「それにしても」
キュルケはじっと本を読み続けるタバサを見つめる。
「ねえ雪風。あなたってばまるで新教徒みたいに本が好きなのね。
それってもしかして新教徒の連中が夢中になって唱えてる『実践教義』ってやつ?」
――実践教義、始祖ブリミルの偉業とその教えを記したと言われる書物『始祖の祈祷書』の講釈を忠実に行うべしと唱える一派だ。
タバサは本を閉じると、キュルケに手渡す、タイトルは『悪魔学の実際』と書かれていた。
「ずいぶんアレなタイトルね、どうしたのこれ」
「もらった」
短く返すタバサを横目で見ながらキュルケが本をあけ中身に目を通す。
なるほど、中身は悪魔に関する解説、あるいは研究書のようだ、悪魔と対峙する際の心構え等が書かれていた。
「信仰は尊き支え、でも直接の力にはならない」
本の中身を引用したのか、タバサが呟く
「ま、そうよね、あなたが新教徒なワケないわよね」
キュルケはそう言うと、本をタバサに手渡し、自慢の髪の毛をかきあげた。

「おねえさま〜……お腹がすいたのね〜……」
そうこうしながらトリスタニアの城下町にやってきた二人……、
否、変化を使ったシルフィードを含めた三人はブルドンネ街から一本入った通りを歩く。
時刻は夕方に差し掛かったばかり、うっすらと暮れゆく街に、魔法の明かりを灯した街灯が彩りを添えてゆく。
買い物も終え、夕食でも食べていこうと、三人はチクトンネ街を歩いていた。
そんななか後ろをふらふらと歩いていたシルフィードがついにだだをこね始めた。
「もういい加減許してほしいのね! シルフィはここ最近お肉やお魚を食べてないの! 野菜ばっかり! おなかすいたおなかすいた!」
流石に哀れに思ったのか、シルフィードの懇願を無視しているタバサにキュルケが囁きかける。
「ねぇ、ああ言ってるけど、そろそろ許してあげたら?」
タバサはそれすらも無視しすたすたと歩みを進めていく、反逆の罪は重い。
「ふぅ……それじゃどこにしましょっか、なにか変った店とかないかしらねぇ……」
キュルケはそんなタバサを見ながら小さくそう言うと、あたりを見回した。
その様子を見たシルフィードはしょぼんと肩を落とす、
そうやってしばらく歩いていると……一軒の店の前で急にシルフィードが顔をあげ、くんくんと鼻を鳴らし始めた。
「タバサ、どうしたのこの子?」
「……?」
何かおいしいものの匂いでも嗅ぎつけたのだろうか、シルフィードはしきりに匂いを嗅ぐ仕草をすると、突然表情を輝かせた。
「きゅいきゅい! おにいさまのにおいがする! きゅい! 行ってくるのね! ええい、おどきちびすけ!」
そう叫ぶや否や、タバサを突き飛ばし店の中へと猛然と駆けこんでいく、
「ちょっ! どこ行くのよ! タバサ、大丈夫?」
倒れ伏したタバサを抱き起こし、キュルケは店の看板へと視線をやる
「……『魅惑の妖精』亭?」
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 10:17:14 ID:enYnG0dw
しぇん
123蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:19:17 ID:BrrwLzeG
「いらっしゃいませぇ〜〜〜〜!」
シルフィードを追い、店内に足を踏み入れた二人を、背の高い、ぴったりとした革の胴着を着た男が出迎えた。
「あら! こちらはお初? しかも貴族のお嬢さん、まあ綺麗! なんてトレビアン! 店の女の子が霞んじゃうわ!
わたしは店長のスカロン、今日は是非とも楽しんでくださいまし!」
「今入ってきた青い髪をした女の人を探してる」
そう言って身をくねらせて一礼するスカロンにタバサが尋ねた、
「あら、さっきの子のお知り合い? でしたら上の便利屋へ駆けあがって行きましたわ」
スカロンはにこやかにそう言うと奥の階段を指差した。
「便利屋?」
タバサとキュルケはお互いの顔を見合わせる、そして奥の階段を駆け上がって行った。
124蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:19:37 ID:BrrwLzeG
――一方そのころ、二階の便利屋では……
「今日は仕事がくりゃいいなぁ、相棒?」
壁に立てかけられたデルフリンガーがおもむろに口を開く。
バージルは椅子に腰かけ、机に足を投げ出しながら本のページをめくった。
「期待はしていないがな」
「まったく、働く気があるんだかないんだか……、とりあえずよ、暇なら店に名前でもつけたらどうだ?」
「必要ない、この店も今だけ、一時的なものだ、この先続ける予定はない」
「いいじゃねぇか、名前! そうだなぁ、『DevilMayCry』は流石にアレだから……『SuperUltraViolet』ってなぁどーだ!?」
「却下だ、どっから出てきたその単語は、それに狙い過ぎだ」
かなりメタな単語にバージルが眉を顰める。
「店の名前など必要ない、この話はこれで……」
これ以上は危険と判断したのか、バージルがデルフとの会話を打ち切ろうとしたその時
「おにいさまぁ〜〜〜!!」
聞き覚えのある声と、階段を勢いよく駆けあがる音にバージルの表情が険しくなる。
――バターン!! と勢いよく事務所のドアが開け放たれた。
「.......Damn you!」
バージルは呻く様に呟くと、ドアを開け現れた人物……シルフィードを睨みつけた。
「おにいさま!! きゅいきゅいきゅい!! 逢いたかったのね〜〜!!
シルフィさみしくてひもじくて死んじゃうところだったのね!! きゅいきゅい!」
シルフィードは一気にまくしたてると、険しい表情のバージルに構わず、彼の胸に飛び込んだ。
バージルは即座に反応し机を蹴りあげる、一見して相当な重量があるとわかる古い机は軽々と宙に舞い
飛び込んできたシルフィードに直撃、下敷きになってしまった。
「きゅぅ〜……ひどいのね〜……」
「なぜこいつがここにいる……」
バージルが忌々しそうに呟くと、ドアの方向に視線を送る、
「やはりお前達か……」
「ダーリン! なにやってるのこんなところで?」
そこにいたのはやはり、シルフィードの主人であるタバサとキュルケであった。
「こっちのセリフだ、なぜここにいる」
「あたしはこの子の買い物の付き添いよ、帰る前に夕食でも済まそうと店を探してたのよ、そしたら急にその子がここに入っちゃうんだもの」
バージルは一応納得したのか、小さく鼻を鳴らすと、シルフィードの上にのしかかる机をもう一度蹴りあげた、
机はくるくると回転し正しい位置に収まる、そして椅子に腰かけると、先ほどと同じように机に足を投げ出した。
「それで? ダーリンはここでなにしてるの? 便利屋って聞いたけど」
キュルケとタバサが応接用のソファに腰掛ける、もう一対のソファにはシルフィードが倒れていた。
「言葉の通りだ」
バージルは短く答えると、ルイズと同じように簡単に説明をした。
「ふぅん、なんでも依頼をこなす……ねぇ……」
「主に荒事……悪魔退治専門、と言いたいところだが、そう言う類の依頼がないのが現状だ」
バージルはそう言うと静かに目を閉じる。
「気になったんだけど、なんでこんなことを?」
「ルイズに付き合わされているだけだ、俺も本来ならばこんなことはしていない」
バージルはしれと言うと、キュルケ達に、女王から情報収集の任務を授かったことを包み隠さず話した。
こいつらなら話しても問題ない、というのもあったのだろうが、実際は秘密の任務がどうとか、彼にとっては心底どうでもいいことである。
「へぇ……面白そうねぇ、で? あの子は今どこにいるの?」
「気がつかなかったのか? 下の酒場だ、妙な格好で給士をしているはずだ」
それを聞いたキュルケはこの夏初めて見せる特大の笑みを浮かべた。
「うっふふふふふ! いいこと聞いちゃったわ〜、ちょっと下に行ってからかってこようかしら」
キュルケはうれしそうに立ち上がる、それに続く様にタバサもソファから立ち上がった。
「待て」
軽い足取りでドアへと向かうキュルケとそれに続くタバサをバージルが呼び止める
「タバサ、お前は残れ」
125蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:20:04 ID:BrrwLzeG
下に向かったキュルケを見送ったタバサは再びソファに腰かける。
「シルフィード」
しばしの沈黙の後、バージルは静かに目を開けると、シルフィードの名前を呼んだ。
「きゅい!」
ソファに突っ伏していたシルフィードががばっと顔をあげ復活する。
「おにいさまがシルフィのことを呼んで下さった! うれしい! きゅいきゅい!」
ソファから飛びあがり嬉しそうに腰を左右に振りながら小躍りするシルフィードを二人がジロリと睨みつける。
「少し黙れ、お前に聞きたいことがある、あの時、竜族に伝わるスパーダの伝説を知っていると言ったな? 聞かせてもらう」
シルフィードはその言葉を聞くと、そんなこともあったな、と思い出したかのように首を縦に振った。
「きゅい、ずっと昔から伝わっているのね、えーっと、たしか、むむむむ……」
そう言うと少し思い出すように目をつむっていたシルフィードが謳うように伝説を語り始めた。

――世界は闇より生まれた――

果てなき闇 混沌の坩堝 だがその世界にも一条の光が差し やがて二つの世界が生まれた。
闇の世は魔界 光の世は人界 二つの世は共にあり続けた 長い永い間
だが世界は闇へと還る 闇が光を覆う時 世界は再び混沌の坩堝と化す
人界と魔界が交わるその時、その者は現れる

――SPARDA

魔の世界の住民でありながら誇り高き魂を持った者
スパーダは同胞に仇なし 光の世の為に剣を取る 我らの為に剣を振る
その剣は世を覆う混沌すらも斬り伏せ ついには再び世界を二つに分かつ
スパーダは闇の再来を恐れ 魔剣の力を持ちて魔の世界を切り離す
闇に与した悪しき者共や 闇の世の者である己とともに
永らえた我らは彼を崇める 光の世を救った英雄と
そしていつしか彼をこう呼び始める

スパーダ ――伝説の魔剣士――

「……これが竜達の間に伝わる伝説なのですわ、きゅい! 一字一句間違ってないのね! ……たぶん」
語り終えたシルフィードはなぜか偉そうに胸を張った。
「人界と、魔界が交わる……?」
それを聞いたバージルは顎に手をあて、なにやら深く考え始めた。
この伝説が事実ならば、一度ハルケギニアは魔界と一つになり"かけた"
それをスパーダが阻止、魔剣の力で世界を再び二つに分けたと言う。
ラグドリアン湖の水の精霊も、「二つの世が再び混じり合う時スパーダが現れた」と言っていた
「闇が光を覆う時……か」
バージルは小さく呟くと顔をあげた。
「おにいさま? シルフィお役に立てたかしら? きゅいきゅい」
「……礼を言う」
「お役に立てた! おにいさまのお役に立てたのね! きゅい!」
シルフィードは感極まった様子でバージルに抱きついた。
「タバサ、用は終わった、連れていけ」
バージルがタバサを見ると、シルフィードを顎でしゃくる。
タバサはこくりと頷くと、嬉しそうにきゅいきゅい鳴きながらバージルに頬ずりするシルフィードの後頭部を杖でおもいっきり殴りつけた。
「ぎゃん!」
タバサは一撃でシルフィードの意識を刈り取ると、シルフィードの襟首を掴み、ずるずると引きずりながら部屋を後にした。
126蒼い使い魔@代理:2009/04/01(水) 10:20:35 ID:BrrwLzeG
「今日もやっぱりヒマだなぁ相棒」
「やかましいのは来たがな、昨日も言ったが、始めたばかりはこんなものだ」
日もとっぷりとくれ、時刻は深夜を回った、今日の来客はキュルケとタバサの二人だけ、
しかも仕事を持ってきたわけではなく、ただ偶然入ってきたというありさまだ。
それとは逆に一階の酒場は今日も大盛況、バージルの便利屋とは大違いである。
「しっかし、お前さんが昔やってたころってのは、どういう仕事があったんだ?」
バージルにデルフがカチカチと音を立てながら尋ねる。
「俺は賞金稼ぎからの転向組だった、依頼される仕事の多くが荒事だった」
バージルはそう言うと、読んでいた本をパタンと閉じ、机の上に投げだした。
「どのみち、開業したてだ、まずは犬探しの依頼でも来ればいい方だ」
「迷い犬や猫を探す相棒ってのもなかなかに想像しにくい部分はあるぜ」
デルフが想像したのかカチカチと笑う、それには構わずバージルは椅子から立ち上がると、窓辺に立ち、外の月を眺めながら言葉を続けた。
「とはいえ、このあたりではあまりなじみがないのだろう、期待はしていない、
当分の間はくだらん依頼を持ってくる客も多いだろう、その辺も覚悟している」
バージルはそう言うと、ドアへと視線を向け、静かに語りかけた
「お前もそのクチか?」
その言葉に反応するように、かちゃり……と静かにドアを開け、入ってきた「くだらない依頼を持ってきた客」――タバサを見た。
「いつか来るとは思っていたが……いささか早すぎはしないか?」
呆れたような不躾な視線を送るバージルに、タバサは短く答えた。
「依頼がある」



というわけで、今回はここまでです
せっかくの便利屋編なんでいろんなことさせていきたいと思ってます
では、お手数ですが、どなたか代理の程、お願い申しあげます……

127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 10:52:03 ID:Kadydbbb
蒼の人&代理の人
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 11:50:09 ID:ICdwB/Np
雷神乙
ついにきたッ!
期待してるぜ
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 12:18:41 ID:5F3Ii/RH
蒼の人&代理の人乙
依頼人第一号はタバサか。
よく考えたら、あの兄貴が金で言うこと聞いてくれるのは今だけだろうからな。
このチャンスを逃す手はないな。

ところで、タバサって給料とか貰ってるんだろうか?
いくら何でも体裁ってものがあるから、流石にただ働きはないと思うが・・・
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 12:37:11 ID:mQUBH/oh
「―――」使うの好きな人多いなぁ
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 12:48:44 ID:0e1WZWdS
前スレ埋めようぜ
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 15:01:03 ID:FAjcdwXS
リリカルの人GJ
まだJSの反応はないみたいだけど、どこで発動するか見物だ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 15:33:26 ID:ueXM8FSW
>>130
旧文体では「――」ってカギ括弧の代わりにセリフの前につけるものですよね。
最近では、登場人物の思考をあらわすとき、括弧「()」の代わりに使うとか。
一つの文章の仲に自己注釈を内包する場合に使ったりとか。
例)
妙高型の当時の評価は「飢えた狼」であり当時の日本海軍は額面通りに受け取った様だが、これは明白な揶揄――と偏見。狼は欧州では恐るべき害獣であるから当時の東洋人に対する一種の畏怖と侮蔑だろう――であり恐らくそこに好意的賞賛など一欠片も内包してはいない。

前者の代表例は『家無き娘』
後者二つは佐藤大輔氏が好んで使う手法ですよね。
ちなみに、「―」は三点リーダーと一緒で1文字として考え、二つづけるのが原稿用紙にプリントアウトする文章を書くときのルールだったはず。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 15:40:25 ID:m5WBFRh1
>>133
「沈黙でない間」に使うのはやっぱりおかしいだろうか?
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 15:46:45 ID:MZ12lB+Q
>>134
使い方による。
同じセリフでも、

1.「そうだな」
2.「……そうだな」
3.「そうだな……」
4.「――そうだな」
5.「そうだな――」

こんな感じに、読者の受け取り方が微妙に違ってくるし。
個人的には「……」は普通に沈黙、「――」は含みを持たせた沈黙って感じで使ってるけど。
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 15:58:36 ID:ueXM8FSW
>>134
>>135
強ち間違いではないと思う。
先に例を挙げた御大も『征途』で似たような表現を使ってるし。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 16:03:26 ID:tvq9JXaE
>>112といい豪鬼といい、思いつきが横行してるのはお前らが甘いから
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 16:46:31 ID:G8x32LtL
え?もう一回言って?
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 17:03:11 ID:KbX2syLr
鉄郎、このスレは初代から思いつき80%で進行してるのよ
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 17:21:38 ID:yOGciFrq
核兵器を反応兵器と呼称しとったやつね。
 
つかアマチュアばかりなんだから、思いつきばかりで当然。
問題は始められた作品を、どんな形にせよ終わらせられるかどうか。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 18:00:13 ID:PrUuM3Kw
春厨のSS完結率なんか0と言って過言じゃ無い
召喚シーンだけで終わるのも珍しい事じゃ無い
期待するだけ無駄だから気楽に流し読みしてればいいんだよ
142滅殺の使い魔の人:2009/04/01(水) 18:43:30 ID:xs3SVc+6
>>137
フ・・・・・・反応に困るとはまさにこのことか
投下は10時頃になると思いますです。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 18:49:55 ID:ICdwB/Np
反応すんな
144滅殺の使い魔の人:2009/04/01(水) 19:08:09 ID:xs3SVc+6
>>143
ごめんなさい
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:13:04 ID:SMrveAfJ
遅れたけど雷神の人乙!遂にサンホラ系が来たぜ!
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:15:35 ID:PrUuM3Kw
なんかもうね
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:16:36 ID:gMvn2VwI
>>142
ネタ混じりでも作者が反応しちゃダメだろ、思わず噴いちゃったじゃないかw
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:20:53 ID:x14NXu0c
今試しに書いてる途中なんだけど
RPGとかにある戦闘不能ってどういう状態なんだろうな。それと並行して蘇生魔法とかさ。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:23:18 ID:xs3SVc+6
>>148
瀕死状態のことじゃね?
蘇生はなんていうかすんごい回復的な
分かるよその気持ち。 KOとかなんなんだよと。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:23:29 ID:SMrveAfJ
ゲームにもよるからな。
ほんとに死亡だったり気絶だったり瀕死だったり
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:23:38 ID:hadeyluS
>>148
気絶しているってことにしてるRPGもあるな
蘇生魔法は肉体まで消滅している者には効果無しとかでいいんじゃね?
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:31:26 ID:vUSIn3wU
ドラクエの場合は棺桶を引いてるから蘇生に死体は必須なんだろうな。
ぬわーされたパパスさんが生き返れなかったのも説明が付く
153さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:41:24 ID:o470cBtz
それも多分腐ったりしてない死体な。
5のマリアの兄貴(神殿から逃がしてくれた人)が蘇生できなかったのもそれなら理解できる。

それはそれとして、予約がなければ50分あたりから投下。
154さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:49:54 ID:o470cBtz
「それで、言いたい事はそれだけかね、ミス・ツェルプストー」

余りに怒ると人は笑顔になるというが、どうやら本当らしい。
目の前でルイズのくちびるを奪われたショックから再起動を果たし、満面の笑みを浮かべたワルドは、それはもう怖かった。

「あら、何かまずい方向に行っちゃったかしら」

体中に靴跡を付けながら、キュルケがタバサに囁いた。

「・・・どうせあのままでもじり貧だったし、結果は大差ない」

溜息をひとつつき、タバサはワルドに向き直った。
先ほどから怒気と共にワルドが放射している物がある。
それは殺気。
それまであった痛めつけようなどと言う意図を全く含んでいない、純粋な殺意。
タルブの村でケイヒの殺気を感じていなかったら、タバサやリリスはともかくルイズは耐えきれずに気を失っていたかも知れない。
直接彼女に向いたものではなかったとは言え、若くして魔法衛士隊隊長の一角の座を占めた男の殺気はそれほどのものであった。

「ルイズ」
「な、何よワルド」

僅かに声が震えた。
それに気づいたかどうか、殺気は微塵も衰えさせぬまま、笑みを引っ込めたワルドは言葉を続ける。

「これが最後だ。僕の所に来い。そうでなければ君の使い魔を殺す。君の友人たちも殺す。魔法学院にこいつらをやって、そこにいる全員を殺す。ヴァリエール家の人々、そこに仕える者も一人として生かしてはおかない」
「そ、そんな事が・・・」
「出来ないと思うかね?」

今度ははっきりと震えの来た声で何かを言おうとしたルイズを、ワルドが――口調だけは――やんわりと封じる。

「例え“烈風”カリンといえども、こやつらを二、三十匹もけしかければ生きのびられはすまいよ。君の場合と違って手加減する必要はないのだからな。
 だが」

と、ワルドは一度言葉を切った。
155さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:51:25 ID:o470cBtz
「君が僕の元へ来るというならこの場は引き上げよう。君の友人にも、君の家族にも、そして君の使い魔にも手を出さない。僕の母に掛けて誓おう」

重々しく頷いたワルドをショウが睨む。

「仮にそうしたとして、お前が約束を守るという根拠は」
「あるわ」
「・・ルイズ?」
「今ワルドはお母様に誓ったわ。だったらワルドがそれを違える事はない。ワルドにとって、お母様はそれくらい大切な存在なの」

無論、ルイズが物心つくかつかないかの頃に死んだワルドの母とワルドの事など、ルイズが直接知る訳もない。これは父から聞いた事である。
もっとも、当時のルイズの反応が「それだったら私がワルドのお母様になって上げる!」だったのは手ひどい運命の皮肉と言うしかあるまい。

「言っておくが、実行できないなどとは思ってくれるなよ、ルイズ。やると言ったら僕はやる。君の仲間も、学院も、ヴァリエール家も、いや、たとえトリステイン全土を殺し尽くそうとも僕は君を手に入れてみせる。
 必ず、なんとしてでもだ」
「今度は俺にも分かる――こいつは、必要だったら本気でトリステインの人間を皆殺しにする気だ」

視線はワルドから外さぬまま、ショウが吐き捨てる。
気がつけば、ルイズの歯がカタカタと鳴っていた。
今更ながらにワルドの持つ力に恐怖し、トリステイン一国を殺し尽くすと言い放つワルドに恐怖し、そして自分の選択にそれだけの重みが生まれてしまった事に恐怖している。
多少の修羅場をくぐり抜けようとも、ルイズは未だ十六歳の少女に過ぎなかった。一国を背負って立つべく養育された訳でもなければ、全てを仕方がないで済ませられるほどに冷酷でもない。
そんな少女がそれだけのものを背負う覚悟など、出来ているはずもなかった。

「その通りだ。よく考えたまえ、ルイズ。トリステインの全ての人間の命が君の選択にかかっているのだ。君が選択を間違えれば、貴族も平民も関係なく平等に全てが死に絶える。全てが、だ」

ワルドの視線から逃れるように、ルイズは視線をさまよわせる。
キュルケはまっすぐに真摯な視線を見返してきた。
タバサはいつも通りの無表情なまま。
リリスは困ったように微笑んだ。
ヤンはもぐもぐと何かを言おうとしていたが、言葉にならなかった。
そしてショウ。
ルイズの視線にショウが視線を返し、気づけば結構長い間見つめ合っていたらしい。
ワルドを含めた五人の視線が集中している事にルイズは気づいた。

「あ、あの・・」

それに押されるように、ルイズの口から言葉が出る。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:51:58 ID:tjxhs97f
ととモノしながら支援
157さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:52:09 ID:o470cBtz
「ショウは、ショウはどうすればいいと思う?」
「俺に聞く事でもないだろう。モット伯の屋敷で、お前はなんと言った?」

ぶっきらぼうな返事に、ルイズがはっとする。

「でもこれだけは言えるぞ。俺に出来るのはせいぜいお前と、お前の大事なものを守ってやるくらいの事だ。だから、どんな状況になろうともお前は俺が守ってやる。
 何せ俺は・・・俺はその」

口ごもるショウ。
ルイズは息を詰めてその続きを待った。
その後ろでキュルケの目が、時と場合をわきまえずにキラキラと輝き始める。

「その、ルイズの使い魔だからな」

これまでのそれと何が違ったのか、ショウが言ったその言葉にそれでもルイズの顔がぱっと明るくなる。キュルケが小さく「チッ」と舌打ちしたのは誰もが無視した。

「うん!」

最高の笑顔でルイズは頷いた。
土を蹴りつけ、ワルドに向き直って正面から対峙する。
キッと眉を寄せ、杖を突きつけた。

「ねえ、ワルド。私はあなたに憧れてたわ。ひょっとしたら恋だったかも知れない。でも違うの。もう違うのよ」

その声は凛々しくも厳しい。
ワルドは無言のまま、ルイズの言葉を聞いている。

「ショウも、キュルケも、タバサもリリスもヤンも、ギーシュやモンモランシーやシエスタたち学院のみんなも、勿論父様も母様もちいねえさまも私の大切な人達よ。誰か一人でも死んだり怪我したりしたらと思うとぞっとするわ。
 でも、だからって脅迫に屈するなら、それは逃げよ。それは冷静に物事を判断しているのではなく、行動を起こしてもいないのに最初から失う事を恐れて何もしない事を選択するに過ぎないわ。
 ワルド。私は貴族よ。貴族というのは魔法が使える人間の事でも、爵位を持つ人間の事でも、領地を持つ人間の事でもないわ。
 貴族とは、敵に後ろを見せない人間の事をそう呼ぶのよ!」

ふう、と深く息を吐くワルド。見ようによっては、感動に打ち震えているようにも見えたかも知れない。

「美しい・・・本当に美しいが、同時に愚かだよルイズ。これで僕は君の大事なもの全てを壊さなければならなくなった」

心底から残念そうに言うワルドに最後の一瞥をくれ、ルイズは杖を振り上げた。

「みんな、私に命を預けてちょうだい。詠唱の時間を稼いで」

言うなり、ルイズは詠唱を始めた。
時間を稼いだからと言って、ショウですらどうにもならないこの状況を自分にどうにか出来る訳がない。だがそんな考えは頭の片隅にも浮かばなかった。
ただ「命を預けろ」と自然に言葉が口を突いて出た。
気がつけば知らないはずの、見た事も聞いた事もないはずの呪文を口にしていた。まるで生まれた時から知っていたかのように。
158さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:52:53 ID:o470cBtz
"神により地の奥底に封印されし闇の国に――"



ルイズが口ずさむ詠唱に、リリスとアークデーモンが同時に僅かな反応を示した。
だがリリスは取りあえず疑問を忘れ、手早く空壁(バマツ)の呪文を唱え始める。
先ほどとは違い、今やキュルケやタバサも壁となって、残りの五人全員で中央のルイズへの攻撃を防ぐ陣形である。
タバサも攻撃は捨て、精神力の消耗を承知で風の障壁を全員に張り巡らせる。
そこにさらに空壁(バマツ)を重ねれば、ヤンやショウ並みとは言わないまでも、板金鎧を着て楯を構えた程度の防御力は確保できるはずであった。
ショウは突撃してくるレッサーデーモン共を一体でも多く無力化すべく、鳳龍の剣技を放つタイミングを伺っている。
ヤンは自分の仕事は変わらないとばかりに、いつも通り剣と楯を構えてルイズの右斜め前に立つ。
そしてキュルケは湧き起こる笑みを止める事が出来ないでいた。
何と言っても自分はフォン・ツェルプストーでルイズはラ・ヴァリエールである。数百年の因縁を持つ仇敵どうしである。
それが自分の使い魔に対してならともかく、こともあろうにこのあたしに、ツェルプストーに対してヴァリエールが『命をくれ』と頼み込んできたのだ!

(ここで見栄を張り通して見せなければ、あなた方に顔向けできませんわよねぇ、ご先祖様?)

ありったけの精神力をつぎ込んだ最高の炎の呪文を用意しながら、キュルケは不敵に、そして艶やかに微笑んだ。



「やれ! ルイズ以外を悉く殺し尽くせっ!」

まさか・・・な。だがたとえ疑惑だけであってもその存在を許す訳にはゆかぬ

一方ワルドが目を血走らせて絶叫するのと同時に、ルイズの詠唱を聴いたアークデーモンが僅かに眉根を寄せて呟いている。
アークデーモンは片手を軽く振り、レッサーデーモンのみならず、自らの直衛である奈落王(ヘルマスター)とその引き連れるヘルハウンドをも全て投入した。

問題はこの男だが・・・まぁよい、やりようはいくらでもある

殺せ、殺せと憑かれたように叫ぶワルドに冷たい一瞥をくれ、アークデーモンもまた呪文の詠唱を開始した。
159さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:53:39 ID:o470cBtz
"鳳龍百撃斬!"

突貫してくるレッサーデーモンども。
その先陣十数体の足が、チーズのように穴だらけになる。
ぽっかりと、赤い毛皮に黒く空いた穴から青黒い血が噴き出し、ショウの技を受けたレッサーデーモン達は悲鳴を上げて折り重なるように倒れた。
さらに後続のレッサーデーモンが足を取られて転び、それを免れたものは積み重なった仲間を迂回する事を余儀なくされる。

"百撃斬!"

再びショウの技が飛び、迂回した一隊がまたもや足を穴だらけにして動けなくなる。
直接動きを止めたのは全体の二,三割程度ではあったが、それでもそれらを即席の障害物代わりに用いる事で、ショウ達はレッサーデーモン共が殺到してくるのを遅らせる事が出来ていた。
敵はルイズを巻き込む広範囲攻撃呪文が使えないし、仮睡(カティノ)などの行動阻害呪文も通用しにくいだろうことは先ほどの攻防で証明済み。
実質物理攻撃しかできないなら、足を止めて動けなくしてしまった時点で遊兵(戦闘に参加できない戦力)と化す。
倒せずとも時間を稼げばいいのであるから、取りあえず戦闘に参加する敵の数を減らそう、という判断であった。

"百撃斬!"

もっとも、いかに鳳龍の剣といえど百を越す敵を全て食い止める事など不可能ではある。
雪崩を打って押し寄せたレッサーデーモンがついにショウ達を押し包んだ。その巨体が日の光を遮り、さながら壁に覆われたかの如くである。
ショウはそれでも剣を振るい、当たるを幸いと悪魔共を切り伏せる。だが切り伏せれば後ろに控える新手が現れるだけで、一向に彼らを囲む敵の数は減らない。
頼みの鳳龍の剣術も今日は爆裂波、透過波、烈風斬、そして数度の百撃斬と幾度となく行使を重ねており、最早限界に近い。
それでも、命を預けろと言われてそれに頷いた以上、その言葉を真実にするのが侍の矜持であった。

「ぐっ、がはっ!」

一方、ヤンがやっている事は先ほどとなんら変わらない。
彼の左側はショウだから良いとして、右側にいるキュルケを守るためには剣でフォローも入れなければならない。
自然、身体で受け止めなければならない攻撃は少なくなかった。
人間の二倍の巨体から繰り出される一撃は、駆け出しの戦士であれば即死しかねない勢いを持っている。
最高級の装備にリリスとタバサの防御呪文を受けたヤンがそれをまともに食らう事はほぼ無いが、それでもこんな無茶な戦い方を続けていれば、自然限界は遠くはないはずであった。
だがヤンは戦士(ファイター)である。
パーティで最も防御力に恵まれている彼をおいて仲間の楯になれる人間は居ない。
防御力と耐久力で言えば、ショウですら彼には一歩譲るのである。
正直ヤンはルイズがこの状況をどうにかできるとは余り信じていない。
それでもルイズを守るのは、それが彼のパーティにおける役目だからである。
愚直に己の役割を果たし続ける、ある意味それこそが戦士というクラスの神髄である事に彼本人はまだ気づいていない。
一方キュルケは初手で全力の火球を叩き込んだ後は火花を散らす呪文で敵の視界を奪い、行動を阻害し続けている。
タバサは風の障壁を維持しつつ回避に専念し、リリスは先ほどと同様に治療呪文の詠唱に忙殺されていた。
160さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:54:20 ID:o470cBtz
"古より絶えたることなき浄めの炎よ――"



レッサーデーモンの鉤爪に切り裂かれたキュルケの右腕に最後の大治(ディアルマ)を唱え、次に自らに通常なら解毒呪文と同レベルにあるために滅多に使われない回復呪文、治癒(ディアル)を唱えようとして、リリスの身体が硬直した。
あり得べからざる詠唱を、その耳が捉えたからだ。
今まで悪魔達は攻撃呪文を全く使ってこなかった。
ごく初歩の攻撃呪文や、高位僧侶の使う強力な単体攻撃呪文を除けば(そして悪魔族に僧侶系の呪文の使い手は決して多くない)、リリス達の世界の攻撃呪文は効果範囲が広すぎて、ルイズを巻き込まずに攻撃できないからだ。
だからリリス達もこの戦いにおいては敵が攻撃呪文を使ってくることはないと思っていたし、仮にそうでなかったらとっくの昔に決着がついていた事だろう。
だが。だがこの呪文は。
レッサーデーモン達の雄叫びの中で切れ切れに聞こえてくる、アークデーモンが詠唱しているあの呪文は!

「爆炎(ティルトウェイト)だとっ!?」

自ら魔術師呪文を操るショウも気がついたらしい。

「嘘っ!?」

顔色を変えたのはヤンだった。
身体が僅かに動きを鈍らせた隙にレッサーデーモンの拳がその身体を捉え、彼にくぐもった声を上げさせる。
爆炎(ティルトウェイト)。魔術師系7レベルに属する、リリス達の世界における最強の攻撃呪文である。
彼もそう何回も見たことがあるわけではないが、攻撃呪文の威力を減衰させる迷宮の魔法結界の中でさえ大概の怪物を、いや、無効化できなかったほぼ全ての怪物を即死させるだけの威力を有していた。
あの威力が自分たちに、それも魔法結界のない野外で向けられるとすれば、まず何がどうなろうと生きてはおれまい。
ショックにもかかわらず敵の攻撃を捌き続けるのはさすがであったが、それでもその顔色が青くなるのだけは止められなかった。
そして呪文に集中して周囲が全く見えていないルイズはともかくとして、他の二人にも事態の深刻さは伝わったらしい。

「って、ひょっとしてリリスの死言(マリクト)よりも強力なの? どうするのよ」
「ショウの技で、ここから狙い撃てない?」
「無理だな」

拳を打ち下ろしてきたレッサーデーモンを開きにしつつ、ショウがタバサの提案を退ける。
無論、この会話の最中も彼らはそれぞれの前にいるレッサーデーモンと交戦している。

「鳳龍の剣技は撃てて後1,2回。こいつ等を突破するには心許ないし、かといってここから打てばレッサーデーモン共が楯になって一撃必殺とは――」
「いかないか」

舌打ちし、リリスはアークデーモンの方を一瞥する。
林立するレッサーデーモンの足を透かして、アークデーモンのまとった深緑色がちらりと見えた。
横殴りに振るわれた丸太のような腕をかがんでかわし、もう一つ舌打ち。

「しょうがないわね、やるだけやってみますか! ちょっと回復が遅れるのは勘弁ね!」

自らを鼓舞するように言い放つと、リリスは静寂(モンティノ)を唱え始める。
これが効けばよし、効かなかった時は・・・考える必要もないだろう。
あらん限りの高速で呪文を詠唱するリリス。その集中を妨げないため、ショウはこれまで以上にカバーに専念する。
一方回復呪文が遅れるのを覚悟し、ショウを除く残りの三人は回避と防御に専念することにした。
短いながらも息詰まるような時間が過ぎる。
最高位の呪文である爆炎(ティルトウェイト)に対し、2レベルの呪文である静寂(モンティノ)の詠唱時間はかなり短いとはいえ、詠唱を始めたのは相手の方が大分先である。
効くかどうかの前にまず、相手が詠唱を終える前にこちらの詠唱が終わるかどうか、リリスは時間とも戦わなくてはいけなかった。
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:54:27 ID:PrUuM3Kw
支援
162さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:55:16 ID:o470cBtz
"我に仇なす邪なる者共の――"



"静寂(モンティノ)!"

追い詰められた集中力のゆえか、本人も信じがたいほどの驚くべき早さと正確さでリリスは静寂(モンティノ)の呪文を詠唱し終えて見せた。
相変わらず、林立するレッサーデーモンの足の隙間から見える深緑色のビロード。
それに向け、リリスの渾身の呪文が放たれる。
だが、詠唱は止まらない。
リリスの呪文により自らの周囲に発生しようとした魔力をアークデーモンのまとっていた魔力の力場が打ち消し、沈黙の力場が発生する前に魔力を消滅させ、呪文の効果それ自体を打ち消してしまったのだ。
時を同じくして、レッサーデーモンの後方でこれらを督戦していたヘルマスターがレッサーデーモン達から離れる。
それは、アークデーモンの呪文の完成がごく近い事を意味していた。

「ワルド!」

いちかばちか、やけくそ気味にショウが声を張り上げる。

「アークデーモンの呪文の詠唱をやめさせろ! このままではルイズも巻き込まれて死ぬぞ!」
「何!?」

無視するかとも思ったが、即座にワルドは行動を起こした。
自らの斜め後ろに向き直り、アークデーモンに指を突きつける。

「おい! その呪文の詠唱を辞めろ! 今のままでも奴らは全滅できる!」

残念だが、ワルドよ。あの娘は『虚無』である可能性がある。我らはそれを見過ごす事は出来ぬ

「・・・なっ! 何故お前達がそれを!?」

愕然とするワルドの様子に得心したか、アークデーモンが頷く。

やはりか。それ以外の事であれば従ってもやろうが、あれだけは別だ。人間如き羽虫など群れた所でどうという事はないが、あれは、我らの仇敵――いや天敵と言っていい存在の血と力を受け継ぐものゆえにな

「知った事か! 今すぐやめろ!」

もう遅い

「やめろぉぉ、ぉ?」

ワルドの絶叫が唐突に途切れる。
アークデーモンはそれを不審に思ったが、爆炎(ティルトウェイト)の呪文の詠唱はもう残り僅かであり、それを完了させる事を優先する。
それが命取りだった。
詠唱し終わる直前、アークデーモンの周囲を影が覆った。
思わず上を仰ぎ見た彼の視界一杯に広がるのは、頭上から落ちてくる土の壁。

彼の失敗は三つあった。
一つ、周囲を守っていたヘルマスター達をショウ達との戦いに全て投入した事。
二つ、これは彼ばかりではなく異形の者の通弊だが、人間の力を甘く見すぎていた事。
三つ、そして彼の立つ位置が、フーケのゴーレムの残骸だった土の山のすぐそばだったという事。

土の山から突然生えてきた、長さ十五メイルの土の腕。固く握られた、直径四メイルはあろうかという拳が上から十分に加速をつけ、アークデーモンに叩き付けられる。
呪文の精神集中のさなかであり、何より完全に意表を突かれたアークデーモンはそれを回避する術を持たない。
次の瞬間、詠唱を完了させることも、自分に降りかかった事態を理解することもなく、アークデーモンは文字通りハエのように叩き潰された。
163さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:56:24 ID:o470cBtz
地響きが森を揺らす。
アークデーモンを叩き潰した拳の一撃は、レッサーデーモンの足下を透かしてショウ達からも見えていた。

「あれは!」

警戒と喜びが入り交じった顔でショウが叫ぶ。
地面の染みとなったアークデーモンのすぐそば、森から姿を現したのはやはりフーケ。“土くれ”のフーケであった。

「はっ、人間様を舐めんじゃないよ羊野郎」

その姿を認め、混じりっけなしの歓喜と共に、ワルドが叫ぶ。

「よくやったフーケ! 先ほどの失敗は帳消しにしてやるぞ! さぁ、ショウ達にとどめを刺せ!」
「馬鹿かあんたは。何であたしがあんたに味方しなくちゃいけないのさ」

喜びもつかの間、冷め切った表情でこちらを見下ろすフーケに、その顔が強張る。
次いでその顔が朱に染まり、怒りが口を突いて出た。

「おのれ、裏切ったかフーケ!」
「は、お坊ちゃんには分からないだろうねぇ。あたしは故あらば寝返るのさ!」

もっとも、フーケはこの男の味方になったつもりは最初からない。
脅迫して仲間に引き込んだくせに裏切るのか、とはお笑いぐさであった。
それならそう言えばいいものだが、まぁその辺は言葉の綾である。

「なら貴様も死ね! やってしまえ!」

ワルドの命令と共に金属板の触れ合う音がして、フーケは取り囲まれた。
先ほどの攻撃で生き残っていたフィーンドと、後退していたヘルマスター、そしてヘルマスターが引き連れるヘルハウンドが半円状に包囲する。
森へ逃げ込むしかないであろうこの状況で、だがフーケは見下したような笑みを浮かべた。
その視線の先で、15メイルの巨大な腕が音もなく持ち上げられる。
今度は拳ではなく腕全体で悪魔達を叩き潰そうと巨大な土の塊がフーケのすぐ横の地面に叩き付けられ、だが流石に警戒していたか、後ろからの不意打ちをフィーンドやヘルマスター達は左右に分かれて避けた。

「ふん、そんな攻撃が通用・・・」

ワルドの言葉が途中で途切れる。
奇襲をかわされてなお消えないフーケの笑み。
その意図する所を正確に理解したからであった。
ひょい、といった感じの気安さで、地面に叩き付けられた腕の手の平にフーケが飛び乗った。
フィーンドの剣やヘルマスターの鞭が届くよりも、二呼吸ほど早い。
ワルドが呪文で仕留めろと改めて命令するよりも早く、腕は力一杯、オーバースローでフーケを放り投げた。
164さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 19:57:05 ID:o470cBtz
"現(うつつ)の身を焼き尽くし――"



腕ゴーレムの手の平に乗ったフーケは自分の身体が一瞬重くなり、次いで「フライ」で空を飛んでいる時はまた別種の、自由落下している時と同じ浮遊感が全身を包んだのを感じた。
放り投げられる時の加速による負荷は思ったほどでもなかった。
虚勢を張るまでもなくニヤリと笑みを浮かべる余裕さえあったほどだ。

「あんたらもブッ飛びな、ベイビー」

飛んでいく自分を見上げ、そろって間抜け面を晒すワルドとデーモン達に、フーケはアルビオン流の侮辱の仕草をしてみせる。
次の瞬間、轟、と空気が唸りを上げた。
地面すれすれ、大気を引き裂いて、フーケの作った「腕」が大きく振り回される。
それに巻き込まれたフィーンド共が派手に吹き飛ばされ、その鎧が卵の殻のように容易く砕けて中から黒い煙が上がったかと思うと、次の瞬間鎧ごと黒いもやと化して空気に溶け込む。
拳の通過する空間から僅かに外側にいたものの、運悪く先端が頭をかすめたヘルマスターは角をへし折られ、首を異様な方向に曲げて地面に転がった。
腕と地面の間に挟み込まれたヘルハウンドたちは、炎を吐く暇もなくすり潰されて赤い染みとなった。
そのまま、人間で言えば裏拳のような形で拳がワルドに叩き付けられるかと見えた瞬間、障壁に叩き付けられたその拳が木端微塵に砕け散った。
障壁の中にはやはり衝撃は全く伝わらなかった物の、さすがに4メイルの拳が十分な加速を付けて飛んできたのは刺激が強すぎたらしく、足をもつれさせて転んだのが唯一のワルドに与えたダメージだった。

「チッ、やっぱりダメかい。こうなりゃあの娘の呪文に期待するしかないかねぇ」

舌打ちしながらフーケはくるりと身体を宙で反転させ、着地点を探る。
丁度真っ正面に一体のレッサーデーモンの顔面があるのを確認すると、再び身体をひねった。
放物線軌道を描いて飛んできたフーケを叩き落とそうと、横殴りに振るわれた腕を軽やかに蹴り、さらに高く飛ぶ。
レッサーデーモンが上を仰ぎ見てこしゃくなチビを叩き潰そうと腕を振り上げた次の瞬間、その目と目の間にフーケのブーツの硬いつま先がかかと近くまでめり込んでいた。
瞳孔も虹彩も無い目を眼窩から半ばはみ出させ、血とは違う透明な液体を両目から溢れさせてレッサーデーモンが動きを止める。
クリティカル・ヒット。
烏兎と呼ばれる必殺の急所を正確に貫き、フーケは一撃でレッサーデーモンの生命活動を停止せしめたのである。
そのまま額を蹴りつけてつま先を抜き、後方に身を翻して僅かに自由落下した後、今度は山羊よろしく髭の生えた顎を蹴りつける。
後ろにゆっくりと倒れていくレッサーデーモンにはもはや目もくれない。フーケはそのまま音も立てずふわりと、ショウ達の作る円陣の内部、ルイズのすぐ横に着地した。

「この期に及んで呪文に没入してるのは頼もしいんだか危なっかしいんだか・・・」
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 19:59:17 ID:tjxhs97f
しえん
166さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:00:30 ID:o470cBtz
ルイズを一瞥して呆れ気味にぼやいたフーケに、ショウが声を掛けた。

「味方、ということでいいんだな?」
「取りあえずの間はね。あのうさんくさい髭野郎が気になったから戻ってきてみれば、ドンピシャだったよ」
「可愛い可愛い妹のルイズが心配になったのよね?」
「うぐっ」

キュルケの指摘に思わず言葉を途切れさせたフーケに、パーティ全員が程度の差はあれ笑みを浮かべる。

「笑うな、この小娘ども!」
「いえいえ感謝しておりますわ『お姉様』。一つ借りておきます」
「・・・・・・・チッ」

舌打ちをして防御に加わろうとしたフーケに、今度はタバサが声を掛けた。

「確認したいけど、あなたを動かしていたのはワルド子爵?」

ピン、とフーケの中でひらめく物があった。
心の中で邪悪な笑みを浮かべつつ、言葉を選んで吐き捨てるように口に出す。

「ああ、そうさ。顔と名前を知ったのはついさっきだけどね。
 ある晩、仮面を付けたあいつがやってきてね。妹と、妹が育てている孤児達を人質に取って、あたしに貴重な魔法のアイテムを盗み出し、奴の計画に荷担するように命令したのさ。
 おかげであたしは盗みをやるハメになり、長い事命令に従い続けなきゃいけなかったって訳だ」

リリスとヤン、キュルケが深い同情を表情に浮かべた。
タバサは僅かに眉を寄せたが何も言わなかった。
確かに嘘ではない。嘘ではないが、いくつかの事実を隠して誤解を招くような表現を故意に用いているのも事実である。

「家族を人質にとって犯罪行為を強要するなんて、分かってはいたけど本気で最低な男ね、子爵!」

視線は目の前のレッサーデーモンから離さないまま、キュルケが叫んだ。リリス達もそれに同調する。

「泥棒の罪を全部フーケに押し被せて、自分は貴重なマジックアイテムを手に入れ、旨い汁を吸っていたのね! それともレコン・キスタや『牙の教徒』の資金源だったのかしら!」
「貴族にしちゃ気さくでいい人だと思った俺が馬鹿だったよ! ルイズちゃんがお前みたいな最低の悪党に騙されなくて本当に良かったぜ!」
「ちょっと待てーっ!?」
「「「待つか!」」」

いつの間にかフーケの全ての犯罪の責任を押しつけられる形になったワルドが絶叫するが、無論それで納得するキュルケ達ではない。

「・・・まぁ、似たような事はやっていたのだろうし、大した問題ではない」

計画通りとばかりにほくそえむフーケを一瞥し、誰にも聞こえないように、タバサがぼそりと呟いた。
167さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:02:18 ID:o470cBtz
"その魂を御身が下へ還さんがために――"



濡れ衣を着せられてアウアウ言っているワルドを置き去りにしたまま、パーティはレッサーデーモンとの白兵戦を続けている。
ルイズの詠唱ももはや終盤ではあるが、防御呪文があるとは言え前衛職ではないリリス・キュルケ・タバサには流石にダメージと疲労の色が濃い。特に防御力と体力に劣るタバサ・キュルケは既に限界に近かった。
だが、ここへ来てのフーケの加入はほつれる寸前だった防御線をぎりぎりの所でつなぎ止めることになる。
といってもタバサやキュルケに代わって壁になった訳ではない。
そもそも本来忍者はこうした防衛戦を得意としない。
特に装甲で敵の攻撃を防ぐのではなく身のこなしで敵の攻撃をかわす無手の忍者にとって、足を止めて敵と殴り合うのは自らの長所を殺すのに等しいからである。
だから、ルイズを守るためにフーケが出来る事があるとすればそれは味方の防壁の前で縦横無尽に動き回り、味方への圧力を減らす事・・・言ってみれば機動防御とも言うべき戦術であった。

ショウやヤンは自分で何とかして貰う事にして、キュルケはまずリリスの正面のレッサーデーモンの膝の正面に、足に体重が乗ったタイミングで真っ直ぐ突き蹴りを放つ。
異形の者とは言え、人間と同じ形状をしていれば身体構造も大差はない。
膝の半月板が割れる感触がフーケの足の裏に伝わった。
レッサーデーモンの巨体の頑丈さ故か、蹴り抜かれた膝が本来の正反対の方向に曲がる、とまでは行かなかった物の動きは大幅に鈍った。
苦鳴を上げるレッサーデーモンは放置し、次いでフーケが狙ったのはキュルケの右前方にいる一体のふくらはぎ。
全身の回転を乗せた鋭い回し蹴りがふくらはぎの急所に決まり、レッサーデーモンが悶絶して膝を突いた。
無論その時にはもうフーケは身を翻し、キュルケとリリスの間をすり抜けてタバサの目の前の一体に向けて走り出している。
そのまま跳躍し、背の低いタバサを軽々と飛び越えたフーケを、レッサーデーモンの黄色い眼が捉えた。
先ほどまでのフーケの行動を見ていたか、小癪なハエを叩き潰そうと横殴りに腕を振るう。
だがそれもフーケの予想の範疇。
先ほどの再現のように身をひねり、襲ってきた腕を蹴ってさらに一段跳躍。ひねりを加えつつ空中で倒立してレッサーデーモンの頭の横を通り過ぎたかと見えたその瞬間、倒立した姿勢から裏拳気味に繰り出された手刀がレッサーデーモンの首を綺麗に切断していた。
一抱えもある山羊の首が落ち、青黒い血を噴水のように吹き上げながらレッサーデーモンが倒れた時、フーケは既に次の獲物のあばらを数本まとめてへし折っていた。
今フーケは味方を守る必要もなく、自由に動き回る事が出来る。
対してレッサーデーモン達はショウ達を包囲するため肩が触れ合うほどに密集し、満足に回避行動を取る事も出来ない。
しかも倒す必要はなく、最悪牽制するだけで良いのだから、忍者であるフーケにとってこれ以上有利な戦場もそうはなかった。

しかし、フーケの参入によってぎりぎりの所で戦線の崩壊を防いだとは言え、それもあくまで一時の事でしかない。
攻撃の密度は減ったものの、疲労と負傷が蓄積しているのは変わらなかった。
そしてリリスにもタバサにも、それを完全に回復させるだけの治療呪文の持ち合わせは既にない。
状況が累卵の危うきにあるのは変わらなかった。
そしてついに破綻が訪れる。
足下をふらつかせたキュルケがレッサーデーモンのパンチをまともに受けた。
肩口から入った一撃に鎖骨と肩を砕かれたか、左手をだらんと下げて物も言わずにうずくまる。
かさにかかって繰り出された追撃を、ヤンは割って入る事で自分の身体で防ぎ止めたが、それは当然戦線に大きな穴を作り出す事になった。

「くっ!」

"鳳龍双波斬!"

咄嗟にショウが繰り出した二条の気がヤンの持ち場の前にいた二体を仕留めるが、そんな物はその場凌ぎでしかない。
交代するべき控えがあちらにはまだ数十体残っているのに対して、こちらにはもう予備戦力はない。フーケを円陣に参加させてキュルケが抜けた穴をふさぐので精一杯であった。
だがそれとてもう限界だ。
今はまだ何とかなっているが、フーケという遊撃部隊が居なくなった以上、増した圧力に遠からずタバサかリリスが潰れる。
そうなれば、レッサーデーモンの巨体ならこちらの防御を抜けてルイズに直接手を伸ばせるようになってしまうだろう。
そうなったらいかにショウ達が踏ん張ろうとも、押し切られる。
ショウやヤンの顔にも既に疲労の色は濃い。今は内心の焦りを顔に出さないでいるのが精一杯であった。

(まだか!? ルイズ!)
168さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:03:21 ID:o470cBtz
"その大いなる炎の力を我に――"



それは呼びかけ。
自分の内面に存在する呪文の式への呼びかけであり、自らのうちに眠る魔力への、そして森羅万象に内在する大いなる魔力への呼びかけであった。
その時、ルイズは全てを理解していた。
何故自分が魔法を使うと常に爆発が起きていたのか。
何故四系統のいずれもが自分の物でなかったのか。
何故自分はこのような呪文を知っているのか。
全てはルイズのうちに、生まれた時から存在したのだ。
ただ思い出せなかっただけ。
ルイズはその記憶を持っていながら、思い出す事の出来ない性を持って生まれてきた。
だが、今彼女は本来必要な鍵なしにその枷を打ち壊し、自らの奥に秘め隠された真実(オカルト)へと到達したのである。

(ルイズ!)

それは幻聴か、それとも心と心が通じたのか。
トランス状態の中で響いたその声に、ルイズの意識は急速に覚醒してゆく。
この数ヶ月で聞き慣れてしまった、時として妙にルイズをいらだたせ不安がらせる、そしてどこか懐かしさを持った声。
ああ、そうだ、自分は常にこの声の持ち主と共にあったのだ――。
そこでルイズの意識は完全に覚醒した。
固く閉じられていた瞳を開き、それとともに唱え続けていた呪文の最後の一節を力強く詠唱する。

"我に貸し与え給え!"

閃光が走った。
ショウ達の周囲を光る魔力力場が覆い、これから生み出される魔法効果の唯一の安全地帯とする。
次の瞬間、震動と、熱と、轟音と、目を開けていられないほどのまばゆい光が走り、周囲を埋め尽くしていたレッサーデーモンは、悉くその光の中に消え去った。



"爆炎(ティルトウェイト)!"
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:03:30 ID:xs3SVc+6
支援
170さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:04:14 ID:o470cBtz
先述したように、爆炎(ティルトウェイト)はショウたちの世界における最強の攻撃呪文である。
この世界と次元の壁一枚を隔てた異空間において原子核融合を発生させ、その際に生じる熱と衝撃波だけをこちらの世界に呼び込み、効果範囲内の全てを焼き尽くす。
放射線や放射性物質を発生させない代償としてその効果範囲や熱量は本来のそれと比して微々たるものではあるが、それでもその威力は凄まじい。
一千度を越える炎は火炎に耐性のある炎の巨人や火竜でさえ即死させ、衝撃波は人間サイズの生物ならば問答無用で吹き飛ばし破砕する。
この「熱と衝撃波をこの世界に呼び込む」と言うところが鍵だ。実はルイズが魔法の失敗によって起こす"爆発"は即ち不完全な爆炎の呪文なのである。
未だショウ達のうちでは誰も知らぬ事ではあるが、ルイズは虚無の使い手である。
その血統に始祖ブリミルが隠した呪文の情報はルイズの中に不完全な形で発露しており、本来魔法を発動する際に例えば「ロック」や「レビテーション」と言った個々の呪文に注がれるべき魔力を全てバイパスによって「爆炎」の呪文に導いてしまう。
それで何故本来の爆炎の呪文が発動しないのかといえば、ルイズの精神には「爆炎」の呪文へ魔力を導く経路だけが存在し、肝心の「爆炎」の呪文そのものはごく不完全な形でしか存在しなかったためである。
魔力を注ぎ込んだ量に応じて異空間での核融合は発生するものの、それによって生じる熱と衝撃波をこちらに呼び込む為の次元の経路を充分に開くことが出来ない。
結果としてこちらの世界に呼び込まれるのは衝撃波だけ、しかも本来の数百分の一にしか過ぎない。残りは次元の壁を越える際のロスによって相殺されてしまう。つまりそれがルイズの発生させる「爆発」という現象の正体なのである。
ならばもし呪文が完全なものとなり、その威力を十全に発揮すればどうなるか?
答えは今、まさに目の前にあった。

呪文によって異界からもたらされた爆炎と衝撃波が、ルイズ達を中心にあっという間に広がり、レッサーデーモンを、森を、そしてワルドをも殆ど一瞬のうちに飲み込む。
超高熱の火炎が全てを焼き尽くし、大地を揺るがす衝撃波があらゆる物を打ち砕く。
時間にすれば僅か数瞬であったろう。
だが炎が消えた時、そこに残っていたのは巨大なクレーターのみであった。



眼下に広がるのはガラス化した緩やかな斜面。爆炎の余熱か、キラキラと陽光を反射するその表面に陽炎がたゆたっている。
距離にして二百メイル、深さにして十メイルほども下った後はまた緩やかに登りに転じ、数百メイルばかり向こうまで続いている。その先にようやく森が姿を現していた。
ショウ達以外、クレーターの中で動くものは何もなかった。

「信じられない・・・これがたった一つの呪文のもたらした結果だって言うの?」

呆然とキュルケが呟く。タバサもまた呆然と、魂が飛んだかのようにただ眼下の風景を見つめていた。

「多分、そうだと思います・・・結界の外で爆炎(ティルトウェイト)唱えたのを見た事なんて俺もないんですけど」
「・・・」

同じく呆然とするヤンに対し、リリスは無言のままで疲労した脳をフル回転させていた。
ありえないのだ。
威力がではなく、悪魔族が一匹も生き残っていないという事が。

何度も繰り返しているように殆ど全ての悪魔族は呪文の魔力を打ち消す対抗魔力の力場を身にまとっている。
これは強力な呪文、あるいは強力な術者であれば抜ける、と言ったたぐいの物ではない。
1レベルの小炎(ハリト)であろうと7レベルの爆炎(ティルトウェイト)であろうと、また唱えたのが1レベルの駆け出しであろうとマスターレベルの達人であろうと、同じ個体が持つ対抗魔力であれば常に同じ確率で無効化に成功、あるいは失敗する。
例外は一切の魔力抵抗を許さない禁断の呪文、変異(ハマン)と大変異(マハマン)くらいの物である。

つまり、生き残った=呪文無効化に成功した個体が居なければおかしいのだ。いかに爆炎の呪文とて、対抗魔力で打ち消されれば一切のダメージを与える事は出来ない。
レッサーデーモンの対抗魔力はアークデーモンほどではないにしろ決して低くはない。ましてやあれだけの数が居て全部が全部無効化に失敗するはずがないのだ。

(敵の策? それともハルケギニアでは私たちの知っている呪文が異なる働き方をするという事?)

悩みつつ、周囲を注意深く観察するも答えは出ず、また動く者の姿も、異形の者が出現する徴候である空間の歪みも捉える事は出来なかった。
171さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:05:19 ID:o470cBtz
ふうっ、とルイズは大きく息をついた。
魔力と共に全身に満ちていた高揚感は消え、重い疲労がずっしりと肩に乗っている。
全身から発汗して、ブラウスや前髪が張り付いて気持ち悪かった。
だがそれでも、達成感があった。
満足感があった。
自分はやり遂げたのだ。
自分は、魔法が使えたのだ!

ショウと目があった。微笑みかけてくるショウの胸へ、ためらうことなく飛び込む。

「お、おいルイズ?」
「私・・・私ね・・・」

戸惑うショウの声など聞こえていない。
泥や返り血のはねた鎧も気にならない。
今のルイズはただ、満足だった。
ショウの首に手を回し、顔を近づける。
幸せそうな顔が、ショウに近づいてくる。

「な、なんだ一体?」
「私ね、私・・」

背伸びすれば唇と唇が触れ合いそうな距離。
視線が絡み合い、ショウが身体を硬くした。その頬が赤い。
キュルケがぐっと拳を握り、リリスも両手で目を隠しつつ、指の間から二人を注視している。
タバサは無表情を装いつつも、耳がほのかに赤く染まっていた。

「私・・・・・・・・・・・・・・なんだっけ?」

あれ、と心の中で首を傾げるルイズ。
あの時自分は何かを見たはずなのだ。
全てを知って、全てを理解し。そしてどうやら、その全てを忘れてしまったらしい。

(・・・・ま、いっか)

そのまま湧き起こる衝動に身を任せ、ルイズがもう少し背伸びをしようとしたその時。

「使い魔とのキスなど、許さぁぁぁぁぁんっっっっ!」

喉も裂けよとばかりの絶叫が響く。
がぁぁっ、と吠える獅子のような表情で――言っている事は些か情けないが――両手を振り上げる。
一行のすぐ近く、ガラス化したクレーターの底を突き破ってワルドが復活した。
172さあう゛ぁんといろいろ:2009/04/01(水) 20:06:28 ID:o470cBtz
これにて今回の投下は終了。
支援ありがとうございました。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:07:36 ID:tjxhs97f

0083とかダンバインとかネタ豊富だw
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:07:50 ID:UNLYRZJO
GJ!
しつこい男だなワルドは……w
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:08:24 ID:SMrveAfJ
乙!
あれで生きてるワルドすげぇw
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:26:11 ID:6vWGSnMv
GJ
>「使い魔とのキスなど、許さぁぁぁぁぁんっっっっ!」
えーwww
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:37:50 ID:bep87Lpr
乙でした!

…ワルドって本当に人間なのか?
なんかもう熱湯かけないと死なないような気がしてきた…。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:41:25 ID:fFqFb76V
ワルドは『ワルド』という生物です

社長とヒューとアルガス騎士団とエースとTAPの続きまだああああ!?
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 20:44:29 ID:d/zFo05p
>>177
頭もがれても一週間は生きていて死因は飢死なんですね、わかりたくありません

誰かアシダカ軍曹連れて来いw
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:00:49 ID:LAGwpdBm
予約がないようでしたら、5分後から投下したいのですが、よろしうございますか?

6レスほどの小ネタです。タイトルは『使い魔(るい)は友を呼ぶ』、召喚される
ものについては伏せておくということで。
初投稿でもたつくかもしれませんが、よろしくお願いします。
181使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:05:12 ID:LAGwpdBm
それではいきます。


 この宇宙の全てを動かしているような、そんな大いなる意志はあるのだろうかと、私、ルイズは考えることがある。そもそも宇宙が一つだなんて、誰が決めたの?ひょっとしたら、無数の宇宙が泡のように生じ、滅びているのではないだろうか。
 じゃあ、その無数の宇宙が浮かんでいる永遠の絶対時間を支配できたら、凡そ森羅万象を支配できるのかもしれない。
 さらにとりとめもない思いは続く。この世界の最初には何があったのだろうか。光だろうか?闇だろうか?「はじめに闇ありき」ふとそんな言葉が浮かぶ。
 ブリミルの教えが唯一絶対だなんて、本当なのかと、不遜で冒涜的なことを考える。いや、唯一絶対の真理などあるのかしら?全ては相対的で、混沌の渦の中で争っているだけじゃないの?それとも、それすら何か大いなるものの予定通りなの?
 あの使い魔が現れてから、私は変わり始めている。自分で認めたくはないが、ちょっと(ちょっとだけよ?)怒りっぽいということに変わりはない。キュルケと口喧嘩するのは日常茶飯事で、マルコメ他の冷やかしに青筋を立てるのもこれまた日課のようなものだ。
 腹立たしいことに、魔法も失敗し続けている。
 でも、寝る前に少し考えるようになった。無駄にスケールの大きなことを。
 たとえば、世界がどうなっているのかなんて、ついこの前まで考えたこともなかった。
 今の私には、このハルケギニア全体までもが変わろうと、脈打っているように感じる。アルビオンではレコンキスタなる輩が反乱を起こし、もはや王家は風前の灯。他にも、暴動や国同士の小競り合いがあちこちで起こっているという噂話を聞く。
 噂話?そう。はっきりとした声明などが出されたわけじゃない。表向きはいつもどおり、でも暗がりに入ると、貴族も、平民も、誰もが声を潜めてささやき合う。噂は噂を呼び、お話と現実の区別もあやふやになっている。そのうち、噂が現実にならないとも限らない。
 この世界が、何かを孕みつつあるようにさえ感じられるのだ。
 眩暈がする。もしかすると、本当の危機が影で動いているのではないか。
 もし、普通の少年でも使い魔として呼び出していたら?私は相変わらずヒステリックに突っ走っていたのだろうか?生意気で言うことを聞かない駄犬とののしって鞭打つとか?そういえば、あの男を鞭打つとか、考えられないし。
 もしこうなったら・・・?あの時ああだったなら・・・?
 可能性が無数の世界を分岐させていくような気がする。
 全ては、あの、金髪の男が現れてからだと思う。悪魔が来たりて笛を吹き始めた、なんて。でも、その笛の音が人間に聞こえるとは限らない。何しろ、今まで知られていない怪物たちが現れたという噂もあるのだから。
 本当に、何が”きっかけ”になるかなんて分かったもんじゃない。

 それにしても、さっきからハエの羽音が耳障りね。ん?こんな時間にノック?誰かしら・・・・・・


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 少なくともあの日、あの使い魔召喚の儀式が執り行われた日ほど、私が自分の全てを賭けて何かを望んだときはない。
 メイジの実力を見るなら使い魔を見よ。この言葉はハルケギニアの貴族たちにとって疑う者のない大前提である。ここで呼び出されたものはメイジの実力を示す看板となるのだから、進級を予定する生徒たちにとって最も重要な日となることは言うまでもない。
 強ければ強いほど良い。賢ければ賢いほど良い。そうでなくても、何か呼び出せれば、ゼロではない。
 だから、なんでも良いから呼び出したいと、強く願った。どんな生き物でもいいの、と。この際、大嫌いなカエルでもいい!爪のあるものでも、翼のあるものでも、鱗のあるものでもいい!

 ヘビでもいいから!

182使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:06:05 ID:LAGwpdBm
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 」

 何度となく繰り返される爆発。私がいる周りだけ、地面が浅くえぐられていた。巻き起こる砂埃が肌に髪にまとわり付く。服の中までザラザラしていた。でも、それがどうした。何度失敗しても、私は呪文を唱えるのを止めなかった。 

「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

 いや、竜だのグリフォンだのと贅沢を言わなくても、何か出てきてくれればそれでよかった。それだけで、私はメイジとしての自負を満足させることが出来る。何かが呼び出せれば。自分がゼロでないとさえ証明できれば。

「応えなさい!」

 それは呪文だったのだろうか。もはや型に沿った召喚の言葉ではなかったと思う。青い髪の少女が風竜を呼び出したことで、一同が大いに盛り上がっていたのは何時間前のことだっただろうか。
「応えなさい!」
 ゼロのルイズ、と冷やかす声が何度となく浴びせられていた。足元から這い寄るような不安を無理やり押し殺して、詠唱、爆発を繰り返した。私を見る視線には、もはや嘲りの情さえ含まれてはいなかった。
 誰が石を石と、樹を樹と呼ぶことにいちいち感情を込めるだろうか?自分がゼロであることを証明し続けている者に、いちいちお前はゼロだと感情を込めて告げる必要があるだろうか?
「応えなさい!」
 私に注がれる視線はどこまでも冷たい。眼。眼。眼。私は獣の眼、竜の眼に囲まれている。
 応えるもののない呼びかけを繰り返しては地面に穴を掘り続ける愚かな少女よ。王国でも一、二を争う名家に生まれながら、魔法を使えない無能な娘よ。そろそろ現実を知るがいい。半日爆発を繰り返し、無意味な徒労を続けるゼロのルイズ。
 お前はどこまでいってもゼロなのだ。
「・・・ミス・ヴァリエール、残念ですが・・・続きはまた、明日にしましょう。」
 ついにそう告げたのは、担当教師のコルベールだった。明日?冗談じゃない。それは事実上、留年するということ、引いては自分がゼロであるということを自ら認めることに等しいのだ。絶対に受け入れられなかった。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 」
 私は無視した。そして再びの爆発。
「ミス・ヴァリエール!」
 今度も無視した。だが、これ以上失敗を続ければ、力ずくで止めさせられることにもなりかねない。
 私は、これが最後という覚悟を込め、呪文を唱えた。

「永遠なる始祖ブリミルの名において、ガンダールブ、ヴィンダールヴ、ミョズニトニルン、聖なる位階の名において、さらに口にできぬものの名において!オ・チオス、イクトロス、アタナトスにおいて、秘密の名アグラの名において、アーメン!」

 あとで聞いた話だと、私はそんな呪文を唱えていたという。髪を振り乱し、眼を血走らせ、突きつけるように杖を向け、狂ったように叫んでいたそうだ。アタナトス?アーメン?どういう意味だったのだろう?
 叫びつつ、私は始祖も、魔法学院も、この世界も、何もかもを呪うように叫んだ。私にゼロを突きつけてくる者一切を、今私に向けられる残酷な罵倒に倍する悪意と敵意、いやそれ以上の想いを以って。自分自身の全て、魂を込めて。

 世界一切に反逆するような、傲慢なる意志を込めて、最後の一言を絶叫した。

「万人の父の名の下に行う、わが要求に応えよ!」


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183使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:10:10 ID:LAGwpdBm
 私の使い魔は、一言で言えばよく分からない男だ。ぱっと見、それほどおかしな相手ではない。いや、むしろ上等と言って良いだろう。礼儀、身なり、振る舞い、全てに気品がある。温厚で、知的で、いくらかの皮肉と微笑を絶やさない。
半端な貴族よりはるかに貴族的であり、一方で、平民やメイジを差別することもない。何よりその・・・ハンサムだし。
 だが、時にとてつもなく偉大な存在に感じられた。とてつもなく邪悪な化け物にも思えた。これ以上賢い者はいないと思われるほど賢く感じられたし、これほど愚かな行いをした者はいないという気がすることもあった。
 無限のプラスと無限のマイナスが打ち消しあって、辛うじて普通の人間に見えている。そんな男だ。
 良く言えば優雅、悪く言えば暇人。
 ああ、そうそう、弱いと感じることだけはない。
 しばしば、彼は姿を消した。そんなときは、どんなに探しても、彼を見たものはいなかった。
 気がついたら傍にいて、驚かされるなんていつものことだ。いるはずがない場所にいることなどしょっちゅうだった。
 そういえば、ヴェールを被った喪服の女性を学園内で見た、という噂を聞くようになったのは、彼を呼んだあとからだったか。その女性は、金髪の男の子を連れていることもある。噂にはなっているが、それ以上誰も気にしていないのが、不思議といえば不思議な話だ。

 初めて使い魔をつれて教室に入った日。授業初日ということもあり、皆が自分の使い魔を連れていて、騒々しいことこの上なかった。だが、最後に私が彼と部屋に入った瞬間、別に示し合わせていたわけでもないのに、誰もが沈黙した。
 私のことなど、誰も気にしていなかったというのに。人ならぬ、使い魔たちさえ。

 ギーシュ、あの気障な優男が、私の使い魔に決闘を申し込んだことがあった。二股をかけていたことがばれたらしい。私は、そんなしょうもないことで使い魔の身を危険にさらしたくはなかったのだが、彼はあっさりと受け入れた。
 決闘はヴェストリの広場で行われた。仰々しく口上をまくしたてるギーシュに対して、彼は微笑を崩すことがなかった。
”王の中の王”を思わせるような、けれど何の力みもない余裕を見せ付ける使い魔にぶち切れて、彼は魔法を使おうとした。ご自慢の青銅人形ワルキューレたちを呼び出し、袋叩きにしようとした。
 私は、残酷な私刑が始まる予感に、メイドの少女が手で顔を覆ったのを見た。
 何も、起きなかった。
 どんなに杖を振り、花びらを落としても、何も起きなかった。
 ギーシュは慌て、焦り、やがて呆然と立ちすくんだ。
 僕は混乱している。頭の上にそんな看板が立っているような間抜けさ。
 使い魔はやれやれとばかり肩をすくめ、ゆうゆうと歩み寄り、空ろな表情のギーシュにデコピン一発。どんな力が込められていたのかは知らないが、それだけでギーシュは失神し、使い魔の勝利となった。
 最初は下卑た盛り上がりを見せていた野次馬たちが、ぽかんと見ているだけだったのは無理もない。
 よく分からないのはこの後のことだ。公衆の面前で平民に貴族のプライドを傷つけられたギーシュは、目を覚ました後、当然ながら激怒した。逆恨みもいいところなのだが、気持ちが理解できないとは言わない。共感はしないけど。
 詰め寄る彼に対して、使い魔は穏やかな口調で語りかけ、少し話がしたいと、二人で誰もいない部屋に入った。私やキュルケ、タバサはその部屋の前にいたのだが、何も物音がしなかったし、中で何かあったとは思えない。
 まあ、部屋に入る使い魔の目に”悪しき輝き”を見たような気はしないでもない。
 だが、再び二人で出てきたとき、ギーシュは使い魔と、そして私に誠意を込めて謝った。正直、さっきまで荒れ狂っていたのに、何があったのかと驚いてしまった。
 それどころか、ギーシュは彼を「閣下」と呼び始めた。今では、何人かの生徒や教師もそう呼んでいる。当の使い魔はといえば、別に喜ぶでもなく、嫌がるでもなく、面白そうに微笑を浮かべているだけだ。
 モンモランシーによれば、その後、ギーシュの性格にいくらかの変化があったらしい。賢くなったように感じられる一方、何か外してはならない枷が外れたような気もするという。さしあたり、何かしでかしたりしていないのは、幸いといっていいのだろうか。


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184使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:11:31 ID:LAGwpdBm
 昼過ぎから始められた召喚の儀は、本来ならもっと早くに終わるはずだった。日が傾き始めても続けられたのは、つまるところ私が失敗し続けていたからに他ならない。既に夕方を過ぎようとしていたのは間違いないから、誰も気づかなかったのかもしれない。
 あの季節、あの時刻はこれほど暗かっただろうか?
 冬至の真夜中でさえ、闇はあれほど重く、ひたひたと迫ってくるものだろうか?
 今となっては、そんなことを考えてもしょうがない。
 はっきりしていることは唯一つ。
 ひときわ大きな爆発が光をもたらした後、砂埃の中に何かがいるのを感じた。
 そのとき私は、目が眩んで倒れそうになっていた。爆発のショックか、疲労が限界に達していたのかは分からない。
 だから、その何かが空に、とてつもなく巨大な影、窮極の凶々しさと神々しさを兼ね備えた影を映したような気がしたのは、ただの幻覚だったのだろう。あとで聞いても、誰もそんなものを見ていなかったのだから。
 巨大な六枚の翼を持つ何かなど。
 そして、ふらつきながらも何とか立ち直った私は、ひどく涼やかで優しげな声を聞いた。
「やあ、こんにちは」
 目の前に、一人の若い男が立っていた。


 まず何よりも、オールバックにした長い金髪が目を引いた。本物の金よりも金らしく輝いていた。すらりと背が高く、貴族のものとは違うが、ひと目で高級なものと分かるような、仕立ての良い服を着ていた。
「こんな世界だったとはね。しかも・・・・・・フフ。」
 軽く驚いていたように見えたのは一瞬のことで、面白そうに独り言を呟いた。その微笑みに、私は否応無しに惹きつけられた。一方、完全に魅了されることもなかった。キュルケをはじめ、ずいぶんのぼせている女の子たちもいるけど。
 多分、心の底の底で途轍もない危機感を感じたからだろう。それは、呼び出したモノとメイジを結び付けている因果の糸だけを伝ってきたに違いない。誰一人として、この男にそんな不安を感じた者が(少なくともこのときは)いなかったのだから。
「ゼロのルイズが平民を呼び出したぞ!」
「どっかから連れてきたんじゃねーの?」
「あ・・・でもカッコいいかも。いや、すっごいイイ男じゃない!?」
 ザワザワと騒ぎ立てる生徒たちを他所に、ミスタ・コルベールがやってきた。
「驚きましたなミス・ヴァリエール・・・まさか人間を呼び出すとは。」
 私が呼び出したの?
「そうですよ!サモン・サーヴァント、成功ですよ!」
 なんだか頭がくらくらする。焦点が定まっていない私に代わって、先生が事情を説明していた。

「ふむ、使い魔ですか・・・いいでしょう。」
「え、い、いや、そんなにあっさりと・・・・・・本当によろしいのですかな?」
「ええ。帰る手段がないのでしょう?それに、これはまた運命でもあり、つまりは・・・”きっかけ”ですよ。・・・・・・魔法世界とは、大いなる意志も、なかなか面白い玩具を用意していたものだ。」
「は?」
「いえ、何でもありませんよ。それで、使い魔になるには、どうすれば?」
 そうして、半ば朦朧とした意識の中、私は彼とコントラクト・サーヴァントのキスをした。初めてのキスだったのだが、不思議と気にならなかった。自分が引き寄せられているようにさえ感じていた。
 契約の印は、彼の右手の甲に現れた。どのルーンとも異なるそれを見て、コルベール先生がいたく興奮していた。
 余談ながら、そのルーンは確かに未知のものだった。

 後日判明したところによると、右手のルーンは始祖の使い魔、ヴィンダールヴのものだという。伝説に言う、あらゆる幻獣を操る使い魔。獣の王。地獄の四王子。恐怖の三首領。11番目のクリフォト・・・・・・何それ?
 本人が言うには、「なるほど、私にはそういう側面もあるのだろうね。」とのこと。

 時々、考えるのだ。考えてしまうのだ。
 そもそも、私があの男を呼んだのだろうか?
 あの男が来るために、私が使われたのではないだろうか?と。
 ともあれ、私は、彼と契約したのだ。他ならぬ、あの金髪の男と。


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185使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:12:38 ID:LAGwpdBm
 ついこの前、学院の秘宝を、怪盗フーケが盗み出したという事件が起きた。”破戒の篭手”と呼ばれていたそれを取り戻すため、捜索隊が結成された。教師たちがフーケを恐れたので、立候補したのは私たち、つまり私とキュルケ、タバサ、そして使い魔なのだけど。
 ミス・ロングビルの導きにより、とある小屋の中で破戒の篭手はあっさり見つかった。使い魔は、この”はんどへるどこんぴゅーた”は、この時空には必要のないものだと言った。後で、本来の持ち主の下に返しておきたいと。
 はんどへるど何ちゃら、というのが何なのかは分からない。問い詰めても、微笑を浮かべながらはぐらかされるだけだし。抽象的で曖昧な言葉で煙に巻かれるのもいつものことだ。
 で、そこをゴーレムに襲われた。30メイルにもならんというゴーレムだから、当然危機も危機。でも、私は引き下がりたくなかった。絶対に譲らないと、貴族の誇りにかけて立ち向かおうとした。
 おかげで踏み潰されそうになったのだが、次の瞬間には、数十メイル離れたところで使い魔に抱きかかえられていた。目をつぶってしまったので何が起こったのかは分からない。いろんな意味で自分がドキドキしていることだけは分かったけど。
 タバサの竜、シルフィードに乗って空から見ていたキュルケたちにも、そのとき何が起こったのか分からなかったらしい。
 その後、ゴーレムは凍りついたように動きを止めた。これまた何があったのかわからないが、超高温の炎で焼かれて消し炭にでもなったかのように、生気が消え、見た目は変わらないが、スカスカになった。
 そして、使い魔のデコピンをきっかけに崩れ落ちた。
 実はフーケだったミス・ロングビルもあっさり取り押さえられた。彼女も何だかんだの挙句、デコピンで失神した。クリティカルですね分かります。
 破戒の篭手はオールド・オスマンに返された。後のことは、知らされていない。行方不明になったなんて噂もあるけど、まあ、いつものことよね。
 それにしても、デコピン・・・なんという万能攻撃。

 また、これはかなり後に聞いたのだが、タバサと一緒に吸血鬼退治に行ったことがあるらしい。正体を現した吸血鬼は小さな女の子の姿をしていた。だが、いくら可愛らしくても吸血鬼は吸血鬼。先住魔法で二人を殺そうとした。
 何も起きなかった。
 タバサが言うには、というかその吸血鬼の言葉によると、なんでも、精霊たちが恐れて言うことを聞かなかったそうだ。吸血鬼の幼女もやがて異常に怯え始めた。速やかに滅ぼそうとしたのだが、使い魔に止められた。
 この娘については、私に任せてほしいと。そんなこと、普通なら聞くはずもないのに、なぜか彼女はうなずいていたという。例のあの口調のせいだろう。言いたいことはハッキリ言いなさいよね!こう、具体的に!
 その後、その吸血鬼がどうなったか定かではないが、少なくとも被害は完全に治まったらしい。

 さらにさらに、シエスタ、例のメイドの少女によると、最近、マントと帽子を身につけた黒尽くめの若者をたまに見るという。モミアゲが特徴的な美形だそうだ。視界の端に捉える程度なので、見間違いかもしれないですねと笑う。
 黒猫を連れているというから、メイジなのだろう。でも、この学院にそんなやついたっけ?


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186使い魔(るい)は友を呼ぶ:2009/04/01(水) 21:13:23 ID:LAGwpdBm
 気が付いたら、私は自分のベッドの上で横になっており、傍の椅子には彼が座っていた。どうやってここまで来たのだろう?誰かに聞いたのだろうか?
「・・・・・・使い魔の仕事は以上よ。でもあなた、感覚も繋がってないし、秘薬の知識もないわね。」
「そうだね。まあ、この世界の知識はおいおい身に付くだろうな。」
「大丈夫なの?」
「知識を伝えたりするのは得意なのでね。」
「?あと、私の護衛だけど・・・あなた、普通の平民みたいだし、無理・・・ね?」
 なんで疑問形にしたのだろう?
「殴り合いはしたくないな・・・まあ、デコピンくらいで済むような相手ばかりだといいんだけどね。」
「んなわけないでしょ・・・まあいいわ。それより、本当にいいの?メイジじゃないみたいだけど・・・人間が呼び出されるなんて初めてのことだから。あなた、どこから来たの?」
「遠いところ、さ。とても、遠い。敢えて言うなら・・・・・・ふむ、コキュートス?」
「何よそれ。」
「まあ、気にしないことだ。それに、人に使われるのも初めてではないのだよ。」
「あなた、何者?」
「ただの暇人さ。大丈夫、必要なとき、君のとなりにいることを約束しよう。」
 そう言って、ニヤリと笑う。私は、まあいいわ、と思いながら再びベッドに身を横たえた。
 今にして考えれば、男を自分の部屋に入れていることを恥じらいもしなかったし、ご主人様に対してどことなく偉そうな口調を咎めようという気にもならなかったのが不思議だ。
 なんで人間なんか・・・!とさえ思わなかったなんて。後で生徒たちにからかわれて、初めて人間なんだ、と思い直したくらいだ・・・・・・あれ、人間って、なに?え?・・・・・・・悪魔?

「今日はまだ、寝具の用意が出来てないの・・・そこの椅子か、床で寝てもらうしかないんだけど。毛布はあるから。」
「別に構わないよ。」
 眠い。どうしようもなく眠い。だが、いちばん大事なことをまだ聞いていなかった。
「そういえば・・・あなた、名前は?」
「名前かい、私は・・・」
 そうして、彼は名乗ったのだ。ルイ・サイファーと。




真・女神転生シリーズから、ルイ・サイファーを召喚。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:14:08 ID:o470cBtz
閣下かいw
支援。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:14:29 ID:LAGwpdBm
以上です。ありがとうございました。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:20:56 ID:1RCm5xcN
元ネタのエンゼルハートを見たり読んだりするとルイ・サイファーのイメージが崩壊するんだぜ
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:33:48 ID:NxFakyC1
閣下、私めはいつも貴方様をお慕い申し上げます。
作者様、乙で御座いました。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:50:02 ID:qOd70ot6
ついにルイ・サイファー様が来たか
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 21:50:27 ID:XdV8Xlvh
>188
順序がバラバラなのは、意味があってですか?
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:05:01 ID:sSO17S9o
デコピンやら王の中の王やら真3マニアクスの閣下の必殺技ばかりじゃないかw
そのうちノクタンとかも出てくんのか
あの世界観は時間軸あんまり関係ないからな
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:06:48 ID:LAGwpdBm
>>192
アンアンが部屋に訪れる直前、アマラ宇宙とかアカラナ回廊的な妄想に耽りながら、
ルイズがぼんやり過去を思い出してるような感じが出したかったから、みたいなー?

読み返してみたらバラバラすぎたかも。精進します。

195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:07:52 ID:HF+H/gEk
デコピンでふとジャイアントロボのあの人が出てきた
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:09:16 ID:MZ12lB+Q
>>195
アレは指パッチンじゃないか? ただし真っ二つだけど。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:09:38 ID:PrUuM3Kw
もっと推敲してから投下した方がいいよ

ぶっちゃけ下t(ry
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:14:25 ID:hx8ptx2X
 「や、め────」
 クラッシュする。
 融ける壁。解ける意味。説ける自己。可変透過率
の滑らかさ。乱交する時間。観測生命と実行機能。
小指のない手。頭のない目。走っていく絨毯。一
重。二重。三重。とんで七百七十の檻。破裂する
風船。初めから納まらないという約束。毒
と蜜。赤と胎盤。水銀灯と誘蛾灯。多重次元に屈折
する光源観測、泳ぐ魚、真相神澱にて詠う螺子。道
具、道具、道具。際限なく再現せず育成し幾星へ意
義はなく意志はなく。叶うよりは楽。他の誰でもな
いワタシ。洩れた深海。微視細菌より生じる矛盾。
俯瞰するクォーク。すべて否定。螺鈿細工をして無
形、屍庫から発達してエンブリオ、そのありえざる
法則に呪いこそ祝いを。

こんな感じで携帯で書きたいんだけどいい?
学校ないからひまだ〜
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:16:43 ID:PrUuM3Kw
4月1日だからって御冗談を ハハッ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:18:31 ID:tvq9JXaE
ついにルシフェル様が登ったか
これであとはシヴァ様とニャル様が呼ばれれば主要神話系網羅だな

だれか神教の男根よんでもいいぞ
201滅殺の使い魔の人:2009/04/01(水) 22:19:31 ID:xs3SVc+6
ちわース、三河屋でーす。
先約が無ければ、五分後に投下させていただいてよろしいでしょうか?
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:21:17 ID:V+yz59j0
チン・・・ご立派様は既に来て完結済みですので
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:25:52 ID:U+bjy/ZY
支援
204滅殺の使い魔:2009/04/01(水) 22:26:07 ID:xs3SVc+6
森――
「お、おい、エルフが居るぞ!」
みすぼらしい服を着て、何故か装飾品を体中に付け、杖も持った者が三人。 この者達を見れば、誰もがこの者達が『没落メイジ』と分かる。
この場にはティファしかおらず、自ずとメイジ三人がティファを取り囲む、という構図が出来上がっていた。
「おいおい、ガキじゃねーか。 何でこんなんにビビッてんだよ」
男が一人笑い出す。
それに呼応するかのように、他の二人もニヤニヤと笑い出す。
「いや……」
ティファが怖がるように後ずさる。
「まあいいや。 連れて行こうぜ。 エルフの女は高く売れるぞ!」
男たちはだんだんとティファとの距離を詰めていく。
「い、いや……」
その時。
「ティファっ!」






「……!」
「どうしました?」
「……いや」
豪鬼は、シエスタの仕事を手伝っていた。
……とは言っても、ケーキの乗った大皿を持つだけだが。
今、一瞬、本当に一瞬だけ、殺意の波動を感じたのだが、この世界にそれを使う者が居るはずは無い。
そう結論付けた豪鬼は、すぐに仕事(の、手伝い)に戻った。
シエスタと豪鬼は、順調にケーキを配っていく。
その途中で、金色の巻き髪に、フリルの付いたシャツを着た、気障なメイジを見かけた。 バラをポケットに挿している。 そのメイジを、周囲の友人達が口々に冷やかしている。
「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
気障なメイジは名をギーシュと言うらしい。 彼はそっと唇の前に指を立てた。
「付き合う? 僕にそのような特定の女性は居ないのだ。 薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
205滅殺の使い魔:2009/04/01(水) 22:27:25 ID:xs3SVc+6
俗物め。 豪鬼は特に興味を持たずに、仕事が終わるのを待った。
その時、ギーシュのポケットからガラスの小壜が落ちた。 豪鬼は勿論無視したが、シエスタがそれに向かっていった。
「あの……落し物です」
少しおどおどとしながらシエスタがギーシュに話しかける。
ギーシュはそれを一方的に無視し、振り向くことは無かった。
「お、落し物ですっ!」
シエスタが意を決したように大声を出す。 ギーシュはそれを鬱陶しそうに見ると、一言言い放った。
「これは僕のじゃない。 君は何を言っているんだね?」
しかし、その小壜を見た友人達はそれを見ると、大声で騒ぎ始めた。
「その香水は、ミス・モンモランシーの香水じゃないか!」
「そうだ、その色は、モンモランシーが自分のために調合している香水だ!」
「と、言う事は、ギーシュ、君はミス・モンモランシーと付き合っているんだね?」
「違う。 いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが――」
「ギーシュ様!」
「ギーシュ!」
ギーシュの言葉を遮るように、二人の少女が怒鳴る。
片方は栗色の髪の少女。 涙をボロボロと流している。
もう片方は、いかにも気が強そうな金髪ロールの少女。 彼女は逆に、怒りに震えている。
「あ、いや、違うんだ、君たち……」
「嘘つき!」
弁解しようとするギーシュに、栗色の髪の少女がビンタ放つ。
ビンタはギーシュに命中し、ギーシュは唖然とその少女を見つめた。
「ち、ちょ、ケティ……」
「さようなら!」
ケティと呼ばれた少女が走り去っていくのをギーシュが唖然と見つめていると、今度は頭上からワインがどぼどぼとふってきた。
「嘘つき!」
その少女もまた、ギーシュのもとを走り去っていった。
206滅殺の使い魔:2009/04/01(水) 22:29:04 ID:xs3SVc+6
沈黙が流れる。
ギーシュは、ハンカチでゆっくりと顔を拭くと、首を振りながら呟いた。
「あのレディ達は、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
余裕を演じてはいたが、その手は拳を握り、震えていた。 
そして、その矛先は後ろで震えていたシエスタに向かった。
「君のお陰で大変なことになったよ。 一体どうしてくれるんだい?」
「も、申し訳ありません!」
シエスタはギーシュに謝り続ける。
その様子を見ていた豪鬼は考えるより先に、体が動いていた。
「そこまでにしておけ」
「なんだい君は?」
「その者の知人だ。 名は豪鬼。 ルイズとやらの『使い魔』」
ギーシュは心の中でほくそ笑んだ。
いくら平民と言えど、女性に手をあげることは出来ない。 いいカモが入り込んできた。
「その君の知人のせいで、二人のレディの名誉が傷ついたんだぞ? どうしてくれるんだい?」
そんなギーシュを、豪鬼は一言で突き放した。
「うぬに責任がないとでも言うつもりか?」
ギーシュの周りがどっと騒ぎ立てる。
「そうだギーシュ! お前に責任がある!」
ギーシュは顔を紅潮させると、拳に入る力が強くなった。
「いいかい? 給仕君。 僕は知らない振りをしたんだ。 話を合わせる機転くらいはあって当然だろう?」
「笑止。 所詮俗物よ。 己の程度を知れ」
ギーシュの表情が固まる。
「き、貴様! 貴族に対してなんて口をきくんだ!」
「うぬの矮小な器で貴族だと? 下らん」
豪鬼は心底呆れたように言う。
「い、良いだろう。 君に貴族に対する礼儀を教えてやる」
「笑止」
口調こそ穏やかに戻ったが、ギーシュの顔からは、ありありと怒りが見てとれた。
「ヴェストリの広場で待っている。 ケーキを配り終えたら来たまえ」
207滅殺の使い魔:2009/04/01(水) 22:30:33 ID:xs3SVc+6
ギーシュとその友人達は、食堂から去っていった。 一人残っている。 見張りのようだ。
豪鬼が後ろを見ると、シエスタが震えながら豪鬼を見つめていた。
「あ、あなた、殺されちゃう……」
そんなことを言うシエスタに、豪鬼は一度ふんと息を吐くと、こう答えた。
「笑止。 死など、既に覚悟のうちよ」
だが……、と豪鬼は付け足す。
「『餓鬼の喧嘩』で死ぬつもりは無い」
死すならば強者との死合いの果てで。 そう決めていた豪鬼にとっては、ギーシュとの決闘など喧嘩でしかなかった。
「だが、恩は返す」
「だ、だめ! あなた死んじゃうわ!」
シエスタは、とうとう食堂から走り去ってしまった。
豪鬼はそれを見送ると、見張りとして残っていたギーシュの友人に話しかけた。
「……連れて行け」
豪鬼の態度に、見張りの生徒は舌打ちをすると、豪鬼を広場へと案内した。




ヴェストリの広場。
広場の名の通り、それなりの広さがあるのだが、今は野次馬の生徒達で込み合っていた。
「諸君、決闘だ!」
ギーシュが薔薇の造花を掲げると、周囲の生徒達の興奮は最高潮となった。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手は……ルイズの平民だ!」
ギーシュは手をあちこちに振り、歓声に応えている。
対して豪鬼は、たったまま目を瞑り、集中に入っている。
広場の中心で、二人は向かい合う。
「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてあげようじゃないか」
ギーシュは芝居がかった、見下すような言い方で言った。
「……」
「さて、でははじめようか」
ギーシュが言った。
ギーシュはニヤリと笑うと、薔薇の造花を振る。
造花からは花びらが一枚落ちた。
その瞬間である。
なんと、花びらは甲冑を来た女戦士のの形の人形へと形を変えた。
「……」
「僕はメイジだ。 だから魔法で戦う。 よもや文句はあるまいね」
ゴーレムが突進を仕掛ける。 
豪鬼は初めて目を開く。
そして、大きく構え――





208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:31:45 ID:gMvn2VwI
支援
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:33:09 ID:MZ12lB+Q
ギーシュ戦って色々な意味で第一関門だよな支援
210滅殺の使い魔:2009/04/01(水) 22:33:59 ID:xs3SVc+6
森。
「あぁ? なんだこのおっさん」
メイジの一人が、割って入った『白髪の男』に話しかける。
「君達はメイジかね?」
『白髪の男』は、三人のメイジに問う。
すると三人はニヤニヤと笑うと、持っている杖をわざとらしく掲げる。
「ああ! 俺達はメイジさ! トライアングルも居るんだぜ?」
それを聞いて、『白髪の男』は、ニヤリと笑う。
「そうか……」
「なに、そのエルフのお嬢さんを渡してくれれば、何もしねえ。 だが、もしも邪魔をするってんならなら……」
三人は一斉に『白髪の男』に杖を向ける。
「……クク……ハッハッハ……!」
『白髪の男』は三人を見渡すと、笑みを崩さぬまま、右手を目の前にかかげ、こう言った。
「良かろう。 では――」






異なる舞台で、遠く離れたその場所で、二人の声が木霊する――






        「滅殺!」
    「お手並み拝見と行こうか!」

   ――Ready?――
   Fight!
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:35:48 ID:fFqFb76V
盛り上がってきたな
支援
212滅殺の使い魔の人:2009/04/01(水) 22:35:50 ID:xs3SVc+6
今回はここまでです。
必殺技講座は今回はお休み。
支援ありがとうございました!
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:37:38 ID:MZ12lB+Q
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:37:40 ID:DqFYnR68
逃げてー!何かもう逃げてー!!
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:38:24 ID:gMvn2VwI
ちょっと加減を間違えただけでトリステインの地形が変わったり、アルビオンが落ちたりするんだろうなあ……
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:44:52 ID:gB4PZaF+
>>215
たかがモヒカンレベルの相手に大技など使わないから問題ない
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:45:33 ID:1RCm5xcN
ルガールは負けると自爆するしな
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:52:05 ID:mYIp31uZ
よく鍛えられた人間に対してジェノサイドカッター1発で8割近く持ってきますし……
あんまり鍛えてないメイジなら開幕10割確定じゃないですか!
KOFルガールならですけど。

超逃げて〜
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:54:57 ID:XdV8Xlvh
二人ともデコピンですね、分かります。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:59:29 ID:fFqFb76V
あの二人ならデコピンで大岩も余裕で粉々にぶっ飛ばせそう
221MtL:2009/04/01(水) 23:05:57 ID:PJDkyqeC
豪鬼の人、投下お疲れ様でしたー。

特に何事も無ければ15分から投下を開始しますー。
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:15:25 ID:7hcOkOMj
1. 彼の二つ名は【鋼】バージョン 原作知識有 ウェールズ 憑依 題目は 彼の二つ名は【疾風】

2. 彼の二つ名は【鋼】バージョン 原作知識有 垣根帝督 憑依 題目は 【とある科学の未元物質】


SSが読みたい!
223MtL:2009/04/01(水) 23:16:34 ID:PJDkyqeC
マジシャン ザ ルイズ 3章 (56)運命の交差

 落ちる、落ちる。
 重力に誘われ、頭を下にして真っ逆さまの落下行。
 それが彼、ギーシュ・ド・グラモンののっぴきならない現実であった。

「ひ、いいいいいぃぃぃぃぃ!」

 躊躇いが無かったと言えば嘘になる。
 だが、それでもよく決心したとギーシュは自分自身を誉めてやりたいくらいだった。
 何せ女性二人の命を救う為に、男ギーシュ、こうして命を張ったのである。
 後悔はない。
 だが、そんな心意気とは関係無しに、やはり怖いものは怖い。
 びゅうびゅうと耳に押し寄せる風の音、目まぐるしく変わる光景、体全体を包み込む圧力は馬に乗っているときのそれなど比較にもならない。

ああ、やっぱり止めておけば良かったかなァ
 一瞬そんな考えがよぎる。
 よぎる、が、

       今はそんなことを考えている時ではない。

「なぜなら! そんなことをしていると僕が死んでしまうからっ、サァァァァァァァ!」
 叫んでパニックに陥りそうになっている頭を必死に鎮める。
 重要なのはタイミングだ。
 早すぎても死ぬ、遅すぎても死ぬ。
 これから彼が唱えようとしている『フライ』はそういうものなのだ。

 恐怖のあまりに今すぐ唱えてしまいそうになるフライを、ギーシュは理性を総動員して必死に堪える。
 こんな高さで唱えて、ゆっくりふよふよ降りていくなど無謀に過ぎる。弓や魔法の的にしてくれと言っているようなものだ。
 かといって遅すぎれば地面に激突、どうなるかなど考えたくもない。
 繰り返すが、重要なのはタイミングなのである。

「そうは言ってもねぇ! アーハハハハハハッ!! アッッハッァァァァァ!?」

 正直、もう何が何だか分からない。
 あとどのくらいの時間で地面に激突してしまうのかも分からない、今どのくらいの高さにいるのかも分からない。
 それに、さっきからだんだんと頭が真っ白になってきている気がする。
 総じて『もしや僕は今、新たな領域に突入しようとしているっ!?』などと本気で思ってしまうくらいには、彼は錯乱していた。
 真実は気圧の急激な変化で意識がホワイトアウト仕掛けているのと、脳内でどばどば出ているお薬の関係で、ちょっと頭が愉快なことになっているだけであるのだが。

「見えるっ! 僕にも何かいろいろ見えるよモンモランシー!」
『頑張って、ギーシュ、愛してる、抱いて!』
「嗚呼! 僕を導いてオクレ、モンモランシー!」

 真っ白になって消えていく意識の最中、ギーシュは幻覚のモンモランシーに最高の笑顔を返しながら、彼はこの先の生涯で幾度となく経験することとなる、墜落からフライを唱えたのだった。


224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:17:39 ID:PrUuM3Kw
支援
225MtL:2009/04/01(水) 23:20:00 ID:PJDkyqeC
 喧噪が聞こえる。
 次にギーシュが己を取り戻したとき、最初に目に入ったのは真っ青な空だった。
 広すぎる空に、自分が仰向けに倒れているのだとすぐに気付かされた。
 ついで、当然のことのように背の下に堅い感触があるのに意識が行って、恐る恐るそれを触ってみる。
 そして安堵。まぎれもなくそれは大地の感触だ。
 彼は帰ってきたのだ、大地に。

「……た、助かった、のか……」
 なんとかそう口にしてみてから、ギーシュは体を起こした。
 何がどうなって自分が地面に倒れていたのかはいまいち判然としなかったが、とりあえず体をいろいろ動かしてみて、目立って痛むところがないことにギーシュはほっとため息をついた。
 そして余裕が出てきたところで、自分がしっかり掴んでいる堅いものに気がついて、ギーシュはそちらに目を向けた。
 彼が落下の最中も抱き続けていたそれは、鞘に収められた一本の大剣である。
 と、それに気付いたギーシュは、あるものを探して慌てて周囲を見回した。
 幸い目当てのものはすぐに見つかった。ギーシュは自分のすぐ近くに落ちていたそれを見つけると、大慌てで引き寄せた。
 背嚢、である。
「だ、大丈夫かな。何か壊れているものは……そ、それよりも今役に立ちそうなものは何か……」
 そう言って、ギーシュはごそごそと背嚢の中身を物色し始めた。
 先ほどから嫌というほど耳に届いている喧噪。それは目を覚ましたギーシュが、戦場のど真ん中にいたという事実に直結している騒がしさなのである。
 彼はこんなこともあろうかと持ってきた、『役に立つ何か』を、その中から探し始めた。

 では、そもそも彼が背負っていた背嚢とは何だったのか。
 明かしてしまえば、そこにはギーシュがアカデミーのウルザの部屋から持ち出した、様々なマジックアイテムが入っているのである。
 今から戦場に行くという段で、ウルザの部屋に忍び込むことを思いついたギーシュが、そこを適当に物色して放り込んできたものがそこには入っているのだ。
 だが――
「ああっ、参ったっ!」
 中を確認したギーシュが声を上げる。
 背嚢から出てきたのは、ミニチュアサイズの不細工な人形(後ろのゼンマイをまいてやるとチクタク動く)、道化師が被るような帽子、用途不明の奇抜な形をした分度器、蓋が開かないランプ、にやにや笑っててむかつく像、象牙の杯、etcetc……。
 中から出てきたのは、到底何に使うのか分からないようなガラクタの数々だった。
「くそっ、こんなことになるのが分かっていたら、面白そうなんていう基準で選ばずに、あの机の横にあった、いかにもって雰囲気の宝珠を持ってきたのに!」
 嘆くも後の祭りである。


 と、そのときギーシュの前に影が差した。

 多くの英雄譚において、英雄の行く先には次から次へと危難があらわれる。
 この場合もそうだ。
「アニキィ! ニンゲンだ、こんなところにニンゲンのガキがいるぜェ!」
「ほ、ホントなんだな。アニキ、アニキー!」
「おお、本当じゃねぇか。オスなのは残念だが、それでも他のニンゲンより柔らかそうだ」
 現れたのは子供くらいの体躯をした、赤茶けた肌の亜人達であった。
 手にはあまり切れ味の良さそうにない刃物を握っている。
「な、なんだ君たちは……!?」
 とっさに『戦利品』を抱え込むと、ギーシュはそう亜人達に問うた。
「き、聞いたんだな。アニキ、こいつオデ達のことを聞いたんだな」
「死ぬぜェ! 俺たちの名前を聞いたら死ぬぜェ! 超死ぬぜェ!」
「へっへっへ、おめぇらそんなにビビらせてやるなよ。俺たちはなぁ、ゴブリンロード第一の配下『モンスのゴブリン略奪隊』よっ!」
 そう言って名乗りを上げたのは、さっきから「アニキ」と呼ばれている、他の亜人よりも一回り大きい一匹である。
 どうやら彼がリーダーらしい。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:20:20 ID:6DyKebZ1
>彼はこの先の生涯で幾度となく経験することとなる、墜落からフライを唱えたのだった。

何・・・だと・・・?
支援
227MtL:2009/04/01(水) 23:23:04 ID:PJDkyqeC
「流石だアニキィ! 俺たちのヘッドはいつだってバックレガイだァ!」
「ば、バックレガイってなんなんだな?」
「バッカおめェ、バッドクレイジーガイの略に決まってんだろぉよォ!」
「頭良いなおまえ。ところで1+1はなんぼだ?」
「4に決まってまさァアニキィ!」
「馬鹿野郎ォ! 4は縁起が悪いって言ってるじゃねぇかよォォォォォ!」
 ……知能はあまり高そうではない。

 ゴブリンが喧嘩を始めたチャンスと見て、ギーシュが抜き打ちで振るった。
「行け! ワルキューレ達よ!」
 そして唱えていた呪文を発動させる。
 薔薇を模した杖の花びらが舞い散り、すぐにそれは六体の戦乙女へと変化して、敵に突進をしかけた。
 ギーシュの一八番、青銅のゴーレムの錬造である。

「な、なんなんだな、だな!?」
「あ、アニキィ、どっから沸いて来たんだこいつらァ!」
「おちつけおまえら! こういうときはとりあえずドラム叩くぞドラム!」
「で、でたァ! アニキ必殺のゴブリンウォードラムだァ! ぎゃああああ!」

 ワルキューレ達が俊敏な動きで襲いかかり、ゴブリン達は大混乱に陥っている。
「良し!」
 思った以上に奇襲が上手くいったことに、ギーシュが拳を握る。
「ワルキューレ! そのままそいつらを叩きのめせ!」
 気をよくしたギーシュはそのまま次の指示を飛ばした。

 だが、悲しいかな素人は所詮素人だった。
 彼は致命的なミスを犯した。
 彼はその場に止まるべきではなかったのだ。
 敵に見つかったのなら、即座に逃げ出すべきだったのだ。
 また、ワルキューレによる奇襲が成功したなら、その隙にさっさと逃げるべきだったのだ。
 そして、味方のいる場所まで逃げて、誰かに保護を願うべきだったのだ。
 だが、そうするには彼は若かった。あるいは幼かった。

 生き残りたいなら、分不相応な英雄願望などかなぐり捨てて、逃げるべきだったのだ。

「なんだ何だぁ? こっちからウォードラムが聞こえたぞ?」
「ヒッヒッヒ、敵じゃあ、敵がおるどぉ!」
「ヒャッハー! 敵だ敵だぁ!」
「ゲェ!? 爆弾兵だ、爆弾兵がいるぞー!」
「打たせてくれよぉ、いいだろぉ、その剣打たせてくれよぉ」
「パイルパイルパイル! 追うぜ追うぜ追うぜぇっ!」
「……俺の後ろに立つなゴブ」

 気が付いたときには、既に無数のゴブリン達に囲まれた後だった。
「……どうしよう」
 ギーシュが呟く。

 ――本当に、どうしよう。


228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:23:45 ID:PrUuM3Kw
Mtgとさぁう゛ぁんとはワルドがラスボス化しとるな支援
229MtL:2009/04/01(水) 23:26:20 ID:PJDkyqeC
 ところ変わって今度は空。
 そこでもまた、一つの激突が起こっていた。
『ウィンディ・アイシクル』
 ルーンに従い、タバサの杖から氷の矢が四本同時に放たれる。
 だがそれは、炎のブレスによって、敵に到達する前に溶け消えてしまう。

「次、右仰角太陽の方向二十五度六秒上昇、後機首を上に垂直落下荷三秒、騎首を上に反転して上昇全速四秒、減速しながら破片群に紛れ込んで水平飛行」
「ちょちょっ! お姉さまそんなに早口で一辺に言われてもシルフィ覚え……」
「いいから、早く」

 時間が惜しい。
 言葉を交わす間も敵の攻撃は続いている。
 先ほど炎を吐いた口から、今度は氷のブレスが放たれた。それをシルフィードは紙一重で回避してみせ、主人の指示に従って空を飛ぶ。
 それを見たドラゴンは、必死に逃げ回る仔竜をはっとあざ笑い、魔法を唱えて追い立てる。
 竜の爪先から赤と青が織り混ざったような紫電がほとばしり、それが一直線にシルフィードの進む先に向かった。
 稲妻は速い。それは避けようのない一撃である。
 だがシルフィードが雷にうたれる寸前、突如行く手に現れた白い雲によって、稲妻がかき消されてしまった。
 タバサが風と水を使って作った雲が、稲妻を放電させてそれを凌いだのである。
「ほう……」
 竜が示した一時の感心。しかしシルフィードはその好機を逃さず一気に距離を離していった。
 竜が感嘆したのはシルフィードの逃げ足にではない、先ほど雷撃を防いだタバサの手際にである。
 雷撃の速度を考えれば、防御のための雲の盾を事前に用意していなければ、あのタイミングで迎撃はできない。
 つまり彼女はこちらの攻撃を呼んで先手を打ったのである。
 それは長い長い時を生きてきた竜にして、タバサを賞賛せしめるほどの戦闘センスだった。
「楽しませてくれる」
 竜はどう猛そうな口でそう言って、カカッと笑った。

「タバサ! 凄いじゃない! どうして雷撃が来るって分かったの!?」
 背後から興奮した様子のモンモランシーの声が聞こえてくる。
 疑問の回答は『炎のブレス、氷のブレスと来たから次は雷』そう単純に考えてのことだった。防御の方法として雲を選んだのは、あるいは炎のブレスを吐かれたとしても、防御効果が望めそうな呪文だったから用意したに過ぎない。
 しかし今のタバサには、そんなことを説明している余裕はなかった。
 やらねばならないことは山ほどあるのだ。

 彼女は腕を伸ばして杖を水平に構え、次々にルーンを唱えて立て続けに魔法を完成させた。
 すると一つ呪文が完成する度、杖の先から氷の槍が作られ、それが飛行するシルフィードに置いて行かれるようにして、作られた先から背後へと流れていく。
 いや、事実タバサはそれを空間に『置いて』いるのだ。
 槍をたっぷり十数本は射出したころ、咆吼を上げてタバサ達を追いかけてきていた竜が、最初に氷槍を仕掛けたあたりに差し掛かった
 その途端、空間に設置された槍達が次々時間差で次々放たれ始めた。
 時間差を利用したトラップである。
 あの竜にとっては多少五月蠅い程度の仕掛けかもしれないが、足止め程度にはなるだろう。
 今は少しでも、作戦を考える為の時間を稼がなければならないのだ。


「ええと、次は……な、なんだったかしらね? お姉さま! 忘れちゃったのね!」
「後機首を上に垂直落下荷三秒、それから騎首を上に反転して全速上昇四秒よ!」
「思い出した! そうだったのね! ありがとうモンモン」
「どういたしまして……って、あたしはモンモンじゃなーいっ!」
230MtL:2009/04/01(水) 23:29:21 ID:PJDkyqeC
 モンモランシーとシルフィードのそのようなやりとりがある中も、タバサは呪文を唱えながら必死に考えを巡らし続ける。

 今は逃げおおせているが、こんなものは一時凌ぎでしかない。
 言うなれば、長距離走のつもりで走っている相手に、全力疾走を仕掛けているのと同じだ。
 そうしてやっと、ひいき目に評価して対等という程度の状況。
 こんな調子で魔法を連発していれば、やがてそう遠くない将来にタバサの精神力は尽き果てる。
 そうなったら勝ち目はない。
 何か決定的な打開策、それが今彼女達に必要とされているものだった。


 タバサの呪文とシルフィードの早さで、何とかドラゴンの追撃をやり過ごしたタバサ達は、一端フネの残骸が無数に残る空域を経由して上昇を果たし、今は戦闘空域を外れて雲の中に突入していた。
 当初は高度を上げることで謎の吸引力に引っ張り込まれることを警戒して速度を緩めていたシルフィードだったが、幸運なことに上昇中、突然吸引力が弱まったことで、見つかる前に全力で雲に逃げ込むことが出来たのである。

 とりあえず使えるものは何でも使う。
 そう決めて、一息ついたタバサは、直ぐに後ろにいるモンモランシーに声をかけた。
「……モンモランシー。指示の、補佐をお願い」
 普段滅多に話さないタバサに突然声をかけられて、モンモランシーが目をぱちくりとさせた。
「指示って……この子の? さっきみたいな感じで」
「そう」
 実際、先ほどのやりとりはかなり有り難かった。
 先ほどシルフィードに言った長い指示は、杖を構えることで疎かになる飛行操作を補うための事前指示であったのだが、シルフィードが実際にそれをこなせるかは賭けであった。
 だがその賭けも、後ろでモンモランシーが指示を復唱してくれたおかげで何とか乗り切ることができた。
 熟練の竜騎士と竜ならば、そのあたりは経験と阿吽の呼吸で合わせてしまうのだが、それをこの幼竜に求めるというのは酷というものである。

「………」
「……出来る?」
「ええ、出来る、けど……それよりもタバサ、聞いてほしいことがあるの。もしかしたら、私の魔法であのドラゴンを倒せるかも知れないのよ」

 モンモランシーはそう前置いて、自分がウルザから授かった秘本から二つの魔法を習得してきたこと。そのうちの一つが、実際にウェザーライトを襲ってきたドラゴンを撃退して見せたことを説明した。
「だから、もしもあのドラゴンも他のと同じように『召喚』されたものなら、きっと私の魔法で倒せると思うの」
 大ざっぱに外から『召喚』されたとしかモンモランシーは説明しなかったのだが、タバサはその説明だけであのドラゴンにも少なからず効果があると見積もった。
 聞いた限り、要は召喚されたものを元いた場所に戻す呪文なのだろう。
 赤と青の鱗を持った韻竜、そんな噂は聞いたことがない。となれば、元いた場所は秘境か僻地、それだけ遠くに飛ばしてしまえば脅威ではなくなる。そう考えてのことである。

「……もう一つの呪文は」
「ああ、そっちのことは気にしないで。防御に使えそうだから覚えてきたけど、今はあんまり意味が無さそうだから」
「……わかった。距離は」
「十メイル……いえ、五メイルでお願い。そのくらいの距離なら絶対に外さない……と思う」
「五メイル!?」
 そこで、それまで黙って聴いていたシルフィードが思わず口を挟んだ。
「何言ってるのモンモン!? そんなの絶対無理なのね!」
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:32:10 ID:PrUuM3Kw
今は無きDODもワルドがラスボスだったような気ガス支援
232MtL:2009/04/01(水) 23:33:13 ID:PJDkyqeC
 五メイル。それは余りに絶望的な間合いだ。
 地上なら兎も角、空中軌道戦闘において五メイルまで距離を詰めるとなると、それこそ神業に等しい。
 殆ど不可能と言っても良い。
 だが、そんな無茶に対してタバサは首を縦に振った。
「分かった」
「お姉さま!?」
「どのみち、他に手段がない」
 そう答えたタバサが、突然シルフィードの手綱を捌いた。
「きゅい!?」
 突然軌道を変えられて、錐揉みに近いロールを強いられるシルフィード。そのすぐ側を三つの火の玉が流れ過ぎていった。

「見つかった。このまままっすぐ」
 タバサはそれだけ言うとすぐに呪文の詠唱に入ってしまう。
「もうお姉さまったら! モンモン、しっかり捕まってなさいなのよ!」
「えっ、何!? ぎゃあっ!」
 慌ててモンモランシーがタバサにしがみついたのと、シルフィードが全力で羽ばたいたのは殆ど同時。
 竜は華麗に雲を舞う。
 デッドチェイスは始まったばかりだ。



「ほう。その熱には覚えがある……ツェルプストーの娘か」
「ええそうよ。そしてそれ以上は覚えてくれなくて結構。今から私が焼き尽くしてあげるから」
「はっ、面白い。これだから戦いは止められぬ。燃やし尽くしたと思っても、向こうから新しい熱がやってきてくれるのだからな」
「……言ってなさい。すぐにその口を閉じることになるから」
「よかろう」
 言ってメンヌヴィルは燃えさかる火猫からひらりと飛び降りた。
「おまえの相手はこの俺一人だ。存分にかかってくるが良い」
 肩に重そうなメイスを担いで、メンヌヴィルが傲岸不遜に言い放つ。

 対してキュルケはタクト型杖を懐から取り出すと、体を低くする。
 その様は飛びかからんとする豹のようだ。

 一方で騎手の手を離れた炎獣は、ぐるぐると喉を鳴らしながら、キュルケ達から一定の距離をとって大回りに動いている。
 その距離は二十メイルほどもあるが、俊敏な獣からすれば一足飛びの距離なのは先ほどの件からも明白である。
 それを見てもはや逃げることは不可能と悟ったカステルモールは軍杖を構えると、非戦闘員ということになっているマチルダを庇う為の位置取りをした。
 そして最後の一人、ヘンドリックはというと、彼は火猫に対して攻めに出るつもりなのか、じりじりと距離を詰めるべく動いていた。
「お嬢、あの火猫は私が」
「……ええ、頼んだわ」
「副長を、いや、あの男を止めてやって下さい」
「………」
 なんと答えるべきか、怒りの感情に支配されたキュルケには、返すべき言葉が見つけられない。
 結果として、彼女は地を蹴り前に飛び出すことで、最後になるかもしれない部下との会話に終止符を打った。
233MtL:2009/04/01(水) 23:36:36 ID:PJDkyqeC
「ふんっ!」
 既に口の中で詠唱を終えていたのだろう。キュルケが前に飛ぶや否や、メンヌヴィルは淀みない動作でメイスを振るい、そこから直球一メイルはある巨大な白い火の玉を生み出した。
 骨まで瞬時に焼き尽くす白い炎。常人ならば本能的に身を竦めるところである。
 だが、
「ほうっ」
 と、感嘆の声を漏らしたのはメンヌヴィルだった。

 キュルケは正面から迫る炎を見据えながら、それでも全く避ける動作を見せず、一直線にメンヌヴィルへ向かって走ってくる。
 彼女がしたことと言えば、精々体勢を更に低くして、左手を前に突き出したことくらいである。
 いくら長身のメンヌヴィルによって放たれたといっても、人を焼くことに特化された炎である。体勢を低くした程度でやり過ごせるものではない。
 そんなことも分からぬほどに愚鈍であったのか? あるいは気でも狂ったのか?
 一端は疑念に目をすがめるメンヌヴィルであったが、キュルケが次にとった行動によって、今度はその眉を跳ね上げることになった。
 キュルケは火の玉が自分にぶつかる直前、突き出した左手を、火球の下部に突っ込んだのである。
 防御のつもりであるならば、そのようなことに何の意味がないことをメンヌヴィルは知っていた。
 左手を犠牲にするか? しかし魔法の火勢は小娘一人の左腕を燃やし尽くした程度で衰えたりはしない。全くもって無駄である。
 しかし、そんなメンヌヴィルの予測に反して、白炎はキュルケの左手を焼いくことが出来なかった。
 それどころかキュルケは無傷の手を炎球の表面で滑らせると、更に下へと潜り込ませたのである。
 そこまでの動作を見て、メンヌヴィルはその意味するところを知った。
 彼女は左手に、防御の為の魔法を一点集中させているのだ。

 火球の下にまで腕を滑り込ませたキュルケは、そのまま左手を跳ね上げて火球の軌道を大きくずらした。
 そうやって出来た隙間。彼女はそこに、地を擦るようにして素早く躍り込む。
 すれ違う一瞬、短く切り揃えた髪がちりちりと音を立てた。もしも以前のような長い髪だったなら、それこそ無事では済まなかったろう。

 己の顔のすぐ傍を火球が通り過ぎていったというのに顔色一つ変えず、自分を見据え続けている娘の姿を見て、メンヌヴィルはにぃっと顔を歪めた。
 心の奥底からわき上がる感情を隠しきれないのだ。
 それは一言であらわして、『歓喜』である。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:38:39 ID:PrUuM3Kw
支援
235MtL:2009/04/01(水) 23:39:26 ID:PJDkyqeC
「素晴らしいっ、素晴らしい温度だっ! 貴様の父と母もなかなかの温度の持ち主だったが、おまえはそれ以上だっ!」
 メンヌヴィルは口の両端をつり上げて、狂喜に酔いしれる顔でキュルケにメイスを突きつけた。
 途端、キュルケの目と鼻の距離から吹き出す白い炎。
 今度こそ白い濁流がキュルケに襲いかかった。
 焼き焦がした肉の匂いを思い描き、メンヌヴィルの顔は一層喜びに染まる。
 だが、

「むぅ!?」
 次の瞬間、メンヌヴィルの顔が驚愕に染まった。

 白い輝きの中を、鮮烈な赤が散っていた。
 人を瞬時に焼き尽くすだけの熱量を持った炎が、キュルケが突き出した左手、それに阻まれているのである。
 真っ白なメンヌヴィルの炎、それがキュルケの左手に触れた先から赤い火の粉になって宙を舞う。
 いっそ幻想的とも言える光景の中、キュルケは口を開く。
「いつもいつも白い炎ってのは芸がなさ過ぎたわね。そんな熱いの、何度も見せられたら嫌でも覚えちゃうじゃない。そう、微熱くらいが丁度良いのよ」
「温度操作か!?」
 キュルケの左手にかけられた魔法、メンヌヴィルが防御魔法だと思っていたものは、その実防御のための魔法ではなく、白炎を自分の扱える温度に変化させる魔法だったのである。
 カラクリに気付いたメンヌヴィルが咄嗟に炎の温度を調節しようとするが、その時にはもう既に、キュルケが目と鼻の先に飛び込んできていた。

「終わりよ。地獄で詫びなさい」
 キュルケは冷徹な声でそう言い放ち、タクト型の杖をメンヌヴィルの鍛えられた腹筋に両手で押しつけた。
 そして唱える、炎を意味するルーンの調べを。
「ウル・カーノ・ゲーボ!」
 必殺の呪文が発動すると同時、紅蓮の炎が大空洞内を赤く照らし出した。
 キュルケの魔法により、炎がメンヌヴィルの体内を貫いて、奔流となってその背中から迸ったのである。

                       「多くの場合不幸の運命というのは、複数の不運が重なって起こるものだ。
                        また、多くの場合、本当に不幸な人間は自分のことを不幸だとは思っていない」
                                          ――テフェリー
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 23:41:42 ID:EQeYP7sk
ルガール運送私怨!
237MtL:2009/04/01(水) 23:43:25 ID:PJDkyqeC
以上で投下終了です。

今回からヴィン・ミョズ戦に入りました。
ギーシュだけはわくわくゴブリン王国にご招待。

結局サイドストーリーの「キュルケの冒険」をかけていないうちにキュルケ・メンヌヴィル戦に入ってしまいました……
完結後に、あるいは書くかも、です。

ではではー。

238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:07:19 ID:F+DlHjEK
1. 彼の二つ名は【鋼】バージョン 原作知識有 ウェールズ 憑依 題目は 彼の二つ名は【疾風】

2. 彼の二つ名は【鋼】バージョン 原作知識有 垣根帝督 憑依 題目は 【とある科学の未元物質】


SSが読みたい
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:12:18 ID:eq4WS4Iz
投下乙
モンスとかウォードラムとか…
いいぞもっとやれw
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:17:27 ID:8lsfx8ww
メール欄に「sage」って入れれば余計なトラブルを避けれるきがする。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:47:55 ID:tFKcTDPh

ギーシュ、せっかく前回カッコ良かったのに微妙にしまらないな
まあそれがギーシュのいいところだけど
そして中盤完全にフェードアウトしてたと思ったらやっぱあるんだキュルケの冒険w
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:49:02 ID:ZYLr4Qmq
メンヌヴィルはこれで終わりかな?
なんかまだ隠し球持ってそうな気もするが
243ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:53:19 ID:PN7zP635
ようやく書きあがりました・・・。

予約無ければ55分くらいから投下させてください。

召喚キャラはスプリガンからボー・ブランシェ、暁巌の二人です。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:55:15 ID:51eeD518
これまたコアなネタを・・・・・・支援
245ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:55:27 ID:PN7zP635
「心配するな、奴と決着をつけるまでこの私が死んでたまるか。早速弱者を助けに行かねば・・・急ぐぞ!」

夜の森の中に、二人の男がいた。
片方の男は血まみれで、息も絶え絶えだった。
それでも立ち上がり、歩き出した彼をもう片方の男が気遣っている。

「おまえ本当に大丈夫なのか?」
「しつこいぞ!私は不死身なのだ!この程度の傷で死ぬはずが――」

そのとき唐突に二人の前に巨大な鏡が現れ、眩い光があたりを包んだ。

そして鏡が消えたとき、彼らの姿も世界から消えていた。




「我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」

爆発が起こる。
それはまた一つ、少女が失敗を積み重ねたことを意味していた。

ここはトリスティン魔法学院。
各国の貴族の子弟に魔法をはじめとした様々な教育を行う、由緒ある魔法学校である。

少女――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは2年次への進級のため、春の使い魔召喚の儀式に臨んでいた。

彼女は焦っていた。
同級生たちが次々と召喚を成功させる中、彼女だけが10回以上の失敗を積み重ねているのである。
使い魔を召喚できなければ留年か、下手をすると実家に連れ戻されてしまう。

周りからは容赦ない野次が飛ぶ。
彼女の手は怒りで震えていた。それは無神経な級友たちへの怒りであり、彼女自身への怒りだった。

「ミス・ヴァリエール、力を抜きなさい。深呼吸して心を落ち着かせるのです」

傍らに立つコルベールが優しくルイズを促す。
はい、とルイズは頷く。
一度大きく深呼吸し心を落ち着かせ、今一度召喚の呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」

再び爆発が起こる。また失敗か――と落胆しかけたとき、彼女はそこに何かが存在していることに気付いた。

二人の男が倒れていた。
片方は黒髪を逆立てた男。もう片方は金髪の、ミノタウロスのような体格をした男。

黒髪の男のほうは一瞬呆けた後、警戒するようにこちらを見ていた。しかし金髪の男のほうは起き上がる気配がなかった。

気でも失っているのだろうかと思い金髪の男をよく見たとき、ルイズはようやく気付いた。
彼は血まみれだった。ルイズでも危険な状態だとわかるほど、彼の体はボロボロだった。

「し・・・死んでる?」
ギャラリーの誰かがかすれた声でつぶやいたのが聞こえた。

ルイズたちへの警戒を解いたのか、もはやそんな余裕もないのか。
黒髪の男が金髪の男の肩を揺すりながら何事か叫んでいた。

コルベールも慌ててそちらに駆け寄る。

ルイズはただ呆然とその光景を見ていた。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:55:50 ID:MiWMrzTM
>>243
その二人できたか
支援
247ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:56:42 ID:PN7zP635
黒髪の男は壁にもたれかかり、腕を組んで目を閉じている。ルイズは正面の椅子に座り、男のほうをじっと見ていた。
二人は医務室の中にいるコルベールを待っている。
金髪の男はあのあとすぐさま皆によって学院の医務室に運ばれた。
けっこうな時間が経過したが、まだ金髪の男がどうなったのかはわからない。

「ねぇ、あんた名前なんていうの」

ルイズは沈黙に耐えかねて男に尋ねた。男は閉じていた目を開き、少しだけ微笑んだ。

「暁巌(アカツキ イワオ)だ。もう一人のほうはボー・ブランシェ。お嬢ちゃんは?」

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。ルイズで良いわ。それでアカツキ、あんたたちどこから来たの?」

暁の出で立ちはルイズから見て明らかに妙だった。地味な色の衣服にベルトを巻きつけてあり、ベルトには何か変なものが色々とくっついている。
平民なのは間違いないのだろうが、暁のような出で立ちをルイズは見たことも聞いたこともなかった。

「日本だよ、さっきまで富士山のふもとにいた。それでここはどこなんだ?変な能力を使う子供やら見たこともない生き物がいるってことはアーカムかトライデントの施設か何かか?」

気付いたらさっきの場所にいたからな、と言って暁は肩をすくめた。

「ここはトリステイン王国のトリスティン魔法学院よ。ていうかニホンってどこ?アーカムカトライデントって一体何?そもそも魔法を知らないってどういうことよ」

ニホンだのフジサンだの、ルイズのまったく知らない単語が乱舞していた。
それに暁のいう『変な能力』はどうもボーとか言う男を運ぶ際に皆が使った『レビテーション』と『フライ』のことを言っているらしい。妙に驚いていたのを覚えている。
初歩の魔法すら知らないなんて、一体どんな田舎から来たというのか。

二人はしばらく見つめあった。
目の前に珍獣がいたらこうなるに違いない表情で。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:57:06 ID:jhvsXTPB
mtlの人乙
何げにモンモン大活躍だよなこのSS
そして支援
249ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:57:24 ID:PN7zP635
「なるほど、よくわかったわ」
「ああ、俺もよくわかった」

二人は簡単に地理や魔法について話し合った結果、一つの結論に至る。

こいつが何を言っているのかわからない。と言う結論である。


ただ、ルイズにとっては「とんでもない田舎から来たのだろう、東方かもしれない」と考えれば済んだのに対し、暁にとっては非常に頭の痛い状況だった。

(下手するとここは異世界か……)

暁は商売柄、帰らずの森のような『異世界』としか表現できない場所をいくつか知っている。
まったく知らない地名、当たり前のように変な能力を使った子供たち、見たこともない生物。
短時間で暁自身が得た情報から考えて、ここがアーカムかトライデントの施設でない限り『異世界』と言われても納得ができる。
もっとも『異世界』で生きた人間たちが普通に生活していたなどと言う話は聞いた事が無いのだが。
ルイズが自分を騙して遊んでいてくれればどれほど気が楽か。暁は眉間を指で押さえながらそんなことを真剣に考えていた。

「まぁ、あんたたちがどんなへんぴな所から来た平民でもこの際気にしないわ」

ルイズが不服そうな顔でそう言った。
こっちは気にするんだ、と暁は言いたかったが我慢した。

そしてルイズが何かを言いかけたとき、医務室の扉が開き中から頭髪の寂しい男が現れる。
男は暁に微笑み、言った。

「お連れの方は、大丈夫ですよ」

ここに飛ばされて以来ずっと緊張していた暁の肩からようやく力が抜けた。
250ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:59:03 ID:PN7zP635
「それで、俺に使い魔になれと?」

暁は頭髪の寂しい男――ここの教師でコルベールと言うらしい――から現状について説明を受けていた。

自分たちは使い魔召喚の儀式でこの場所に召喚されたこと。
その儀式で呼び出された生物と使い魔の契約をしなければならないということ。
人間が呼び出された前例がないこと。
そして、召喚した使い魔を送り返す手段がないこと。

暁は考える。
何か飼い犬になるようで若干嫌だったが、ここの連中にはボーの命を救ってもらった借りがある。
金で返せるあても無い。もし自分が使い魔になることで借りが返せるのであればそれでいいかもしれない、と思った。

「いいぜ、仲間の命を救ってもらったわけだしな」

「おお、同意してくださいますか」

「ただし帰還する方法が本当にないか調べておいてくれ。お嬢ちゃんが俺を必要としなくなるか仲間の命の分働いたら、できれば帰りたいんでな」

その言葉にルイズが何か反論しようとしたが、コルベールによって制される。

「それで構いません、ありがとうございますミスタ・アカツキ。ではミス・ヴァリエール、早速契約の儀式を」

コルベールに促され、ルイズがこちらに歩み寄ってくる。
かがむように言われたので目線の高さまで腰を屈めてやる。
今まで意識していなかったが、良く見ると整った顔立ちだなと、暁は思った。
それだけに今の不機嫌な表情は少し残念だった。

「なぁ、お嬢ちゃん。何でそんなに不機嫌なんだ?」

「うっさいわね!当然じゃない平民の、それもあんたみたいな野蛮そうな男が相手なんて!」

悪かったな、野蛮人で。と笑いかけてやる。
ルイズはまだ何か言いたそうそうだったが「むぅ」とつぶやき呪文を唱え始めた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

ルイズの顔が急接近してくる。
何をするのかまったくわかっていなかった暁は一切反応できなかった。
そして二人の唇と唇が触れ合う。

「感謝しなさいよね、あんたみたいな平民で野蛮人の男が貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

そう言ったルイズの顔は赤かった。
暁は不思議そうな顔でルイズを上から下まで見た後、ため息を一つつき残念そうに言った。

「・・・・・・5年後に期待だな」

「なぁぁぁんですってぇぇぇぇぇ!!」

廊下に乾いた音が響いた。
251ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 00:59:45 ID:PN7zP635
さらに襲い掛かってこようとするルイズをコルベールが必死に抑えている。
初めてだったのに、初めてだったのにと半泣きになっているのを見て暁は若干申し訳ない気分になった。
謝っておいたほうが良さそうだ、と思い口を開こうとした瞬間、体が熱くなり左手に激痛が走る。当然ながら引っ叩かれた頬の比ではない。

「何だ畜生!」

慌ててグローブを引き抜く。
露出した左手には、何か妙な文字が浮かび上がっていた。

「ああ、使い魔のルーンが刻まれたようですな。おめでとうミス・ヴァリエール、コントラクト・サーヴァントは成功です!」

いまだに暴れているルイズを抑えながら、コルベールは彼女に賛辞の言葉を送った。
もっとも、本人は聞いていなかったようだが。


ルイズの暴走はとりあえず暁が手を合わせて謝罪したことで何とかおさまった。
どうもルイズは自分の体に非常に強いコンプレックスを抱いているらしい。

(とりあえず身体的特徴については今後触れないようにしよう)

暁は女性を怒らせるのが楽しいなどと思ったことはない。
それに、ルイズは本当に5年後に期待できるので――こんなことを口に出したらまた引っ叩かれそうだが――あまり奇抜な表情はさせないほうが良いだろう。
こちらを睨んでいるルイズを見ながらそんなことを思った。

「そ、それにしても珍しい形のルーンですな。スケッチさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「別に構わんが。これが使い魔の印みたいなもんか?」

「ええ、そうです。見たことのない形状なのは・・・あなたが人間だからかもしれませんね」

鎖か首輪のようなものだろうか、と暁は考える。
だとしたら大失敗だったがもう色々と遅い。
自分の判断の甘さを恨みながら、本日何度目かのため息を吐いた。

「では私は失礼します。ミス・ヴァリエール、ミスタ・アカツキと仲良くするのですよ」

スケッチを終えたらしいコルベールが立ち上がり、言う。
そして「絶対無理だ」という顔をしているルイズに苦笑すると、立ち去った。

医務室の前に二人だけが残される。
非常に気まずい空気が流れる。はっきり言って重苦しい。

「まぁなんだ・・・その、これからよろしくな。お嬢ちゃん」

「ご主人様と呼びなさい・・・。はぁ、もう仕方ないわね」

ルイズは諦めたようにため息を吐き、歩き出した。

「部屋に帰るわ。案内するからついて来なさい」

「はいはい、ご主人様」

――まずは仲直りからはじめないとならないようだ。

憮然とした態度で歩くルイズの後を歩きながら、暁は苦笑した。
252ゼロのスプリガン:2009/04/02(木) 01:00:27 ID:PN7zP635
以上で1話目終了となります。
非常に拙い文章で、しっかりキャラが描けているか不安ですが。
次回は書きあがり次第投下します、失礼しました。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:07:36 ID:63DYSM6+
GJ!
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:08:24 ID:MiWMrzTM
次も期待してますね
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:25:43 ID:EOr+ma4L
スプリガンの世界って割と魔法使いいなかったか?
巌クラスじゃ結構魔法使いとも戦ってると思うが
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:27:15 ID:yNAzxd0W
うーむ、あのミスターお笑い芸人が起きたときが楽しみだ。

しかし、題名が気になったが、この二人はスプリガンではないのでは?
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:30:56 ID:PmnKf74K
乙ー

ボーがこの世界の貴族を見てどういう反応をするのかが楽しみだ
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:32:55 ID:7K7QLxQk
mtl乙
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:35:46 ID:PN7zP635
>>255
空を飛んだり物浮かせたりは朧の軽気功への優の反応から無いだろうと判断させていただきましたw

>>256
ほかにタイトルが浮かばなかったので。
なんかいいの無いですかw
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:38:17 ID:QQH3batF
最強コンビハルケギニアに立つ、とか。w
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:45:42 ID:PN7zP635
じゃあそれでww
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:46:34 ID:48L6XfIp
まだ読んでないけど、有名な傭兵とお笑い芸人の組み合わせで>>260を出されちゃ何も言えないな。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:48:04 ID:QQH3batF
と、訂正。「世界最強コンビ」でした。w>あの二人
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:57:14 ID:48L6XfIp
暁のキャラがとても彼らしかったので次も期待してます。
アーマード・マッスル・スーツを着てたら光りっ放しになりそうなのが気になるw
そしてボーさんは、鍛え抜かれた身体のせいで光りっ放しになりそうなのが心配です。

>>257
最初は、「優れた者が人々を導くだなんて素晴らしい世界だ!」かもしれない。
最初はねw
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 01:57:26 ID:PN7zP635
では次回から「世界最強コンビハルケギニアに立つ」にさせていただきますw
ネタ以外を少しでも期待した自分はまだ甘いwwww
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 02:01:38 ID:48L6XfIp
世界最強コンビはネタ以外の物も込められた最高のタイトルだと思うぜ
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 02:07:26 ID:yNAzxd0W
なるほど、その名前なら何も問題はないな。
あの暑苦しさも、今はもうみな懐かしい。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 02:08:03 ID:K01I/5kp
遅い感想だけどラスボスさんの赤い石と青い石って見たとき
すわプルトンかって思ってしまったw
無限のフロンティアやったことないからミルトカイル石のことがさっぱりわからんす。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 02:17:07 ID:kc2ryXtd
ワープロ以下の熱血馬鹿ktkrwww
あらゆる意味でこいつに対抗できるのはBASARAの幸村とハガレンのアームストロングぐらいだな。
……何か今俺の脳内がものすごくむさ苦しい騒音空間になってるのだが……
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 02:50:13 ID:QQH3batF
BASARA知らなかったが、幸村ってアレに対抗できたのかwww
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 04:02:55 ID:Gup4S0PT
蒼い使い魔の続きまだ〜?
読みたくてしょうがねぇよ〜
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 04:38:53 ID:dx11TzxC
もうエイプリルフール終わったぞ
273ttp://thumb.vipper.org/vfile/vip1167524.jpg:2009/04/02(木) 06:46:49 ID:A80Wvsd5
                , '´〈    |  l  ト-‐ヽ
           /  /`ヽ  , 、| _/ヽ‐‐ヽ丶、\
          / ┌く、/ ̄/      ヽ  ヽ ヽl
         /   | ./   /        ヽ     \
            |   _,|_/       / |      !   、  ヽ
        │  | /      /   |       l ! l  !   !ヽ
         !   |/     /  /   /!      !| | | !   |l│
         |    |   /  /   / | !l.   /|レ }イ │  | !|
        │   |    | -/l ‐,t/-、|l |   /, -┬,〉 !   | l
         |     !   | 〆-;'‐┬ /' | / |ソノ |  !  / そろそろ
        / /   | |  !` lヽノ'  '  |/  '"´  l /| /     寝るのであります・・・
        / /     ヽト、 ヽ  ̄´     ,    |' !/ヽ、_ 
      /〃    |   !ヽ`ゝ         , イ :|'´ ̄\二ニ‐
       '´/   /| /   |  |`ヽ、      ̄  /,‐| :!     >ー、
      ∠_ , '/  |/|   !  !::`ー.ニ - 、__/ヽ/ | |   /   ヽ
  , ‐=ー ─ ∠. ‐'´ |Λ/ヽ ヽ _::::: ̄`:V:|.=‐- 、| !  /     ∨|
 /    ̄\  ̄ \ レ' /:\ ヽ`ー-、::_丿)::`ヽ! //          { !、
./      |  ー -ヽ/`ヽ:::::ヽ ヽ ー/ヽ}〈 :::::: ! /ヽ      l ヽ / | l
|        .|       \  ヽ:::::ヽヽ:/  ヽ \:::!,イ  ヽ _ - ! l /  ! |
|       /::\  ‐─‐ ヽ  \:::ヽヽ   !  l:/::|   |    / /  ' |
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 07:23:18 ID:IwJyDc4b
ボーはいい男だよな、暑苦しいけど。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 08:26:41 ID:OAXIfPrG
しかし今時の漫画にはない暑苦しさだけどな。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 08:38:34 ID:pZyYutyd
時代が時代なら「レッツゴージャスティーン」で何かに目覚めてんだろーなーw
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 08:55:52 ID:qmHjIlYi
ザ・ビースト梅原ダイゴ
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 10:24:25 ID:oPa0tXEj
ボーがネオナチとしてキャプテン・アメリカと戦うという場面を幻視
当然後に共闘
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 10:26:00 ID:BpiFMwC8
とうとう閣下までやってきたのか・・・・・ハルケギニアが受胎する日も遠く無いな
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 10:27:46 ID:5eKmOJ4U
ハルケギニアが孕むだって!?
281罵蔑痴坊(偽):2009/04/02(木) 10:43:09 ID:iTKF00h6
>278
ナチと言われるとダンディーしか思い浮かばねぇ。脳内の天自重しろ。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 10:49:10 ID:uT4vpCR7
ハルケギニアに魚を生(マリネ、カルパッチョ等)で
食う文化ってあったっけ?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 11:06:37 ID:F0g/H5vb
女神転生3からカグツチ召喚
ハルケギニア受胎がおこりルイズが人修羅化
キュルケやタバサたちとコトワリをめぐる戦いを繰り広げる

なんて妄想が浮かびました
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 11:10:19 ID:gVzhxbg+
>>283
上半身裸で刺青マガタマルイズ……い、今すぐ妄想をSSにする作業に戻るんだ!!
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 11:52:38 ID:/dHH4Lm6
そして上半身裸刺青マガタマルイズがイラスト化されると…
こういうながれですねわかります
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 12:31:53 ID:ANs+rlRM
>>282
ハルケギニアの文化がブルボン朝に準じているなら魚にしろ肉にしろ
生で食べる事はまず無いと見ていいでしょう

しかし「固定化」や「水魔法(による凍結)」などが存在する以上食品の鮮度はこっちの
「あの時代」とは比べ物にならないくらい良質と考えることもできます
結局は書く人の気分次第ってことでねすか?
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 12:39:11 ID:MzNX/sBi
鮮度が保たれるなら胡椒なんかは普通の調味料扱いで安いんだろうか?
紅茶なんかは固定化が使えない平民から広がりそうだなあ
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 13:14:12 ID:ANs+rlRM
>>287
おそらくは。
胡椒などのスパイスの必要性がさほど切羽詰ってないが故に東方が「謎の地方」
扱いで調査も交易も殆ど行われてないのでしょう
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 13:45:50 ID:yNAzxd0W
人間を生で喰うような使い魔ならいろいろ呼ばれてるけどな。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 13:47:37 ID:BpiFMwC8
>>283
どれがどのコトワリになるのか気になるな
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:28:02 ID:HFSoMOBp
ストライクウィッチーズのキャラを召喚するとしたら、誰が良いかな?
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:31:25 ID:ES0pmfdR
アホヤネン大尉だな。
ヤマグチノボル的に考えて。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:36:27 ID:6IwTP65O
パンツを呼べばいい
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:49:19 ID:uOzD/SDU
パンツじゃない
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:50:51 ID:jhvsXTPB
いらん子の面子は誰を呼んでもそれなりにうまくやれそうだ
ただし迫水、てめーはダメだ!
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 14:54:44 ID:/dHH4Lm6
ルート66をバイクに二人乗りして爆走してる途中のシャーリーとルッキーニのコンビを。

しかしストライカーが無いという。
個人的にはエイラとサーニャのコンビが好きだがな!
あとアホヤネン大尉を呼んじゃうと貞操がやばかろう。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:03:35 ID:ES0pmfdR
「はいっ、ご主人様のお尻を撫で回しているであります!」

ルイズにセクハラの限りを尽くす迫水ハルカか……いいな。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:23:51 ID:mUXczo6p
>>288
鮮度を保つ必要性がないとするなら、そもそも香辛料自体が流入していない可能性が考えられますね。
その場合、無論香草の類はあっても見た目よりも味が単調だった可能性も。
醤油とかつくれば味の革命が起こせそうですが……そもそも、ハルケギニアに麹がいるかどうかが謎。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:30:27 ID:7K7QLxQk
かもすぞー
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:33:19 ID:hMFykShY
>>298
酒の類があるんだから普通にいるんじゃね
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:33:56 ID:EOr+ma4L
>>283
閣下はマガタマ持ってるから
人修羅化だけならルイ・サイファーの人の作品でなるかもしれないぞ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:37:50 ID:ANs+rlRM
「腕利きの料理人」がいる以上香辛料が存在しない、というのは考え難いです
が、まあ味付けが単調というのはありえますね
はしばみ草のサラダが嫌われても残されても食卓に提供されるのもそうであれば納得
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:41:50 ID:48L6XfIp
>>295
ヤエーッ!!
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:42:32 ID:zhiQfD63
ウィッチーズなら魔力を持ってるから、杖と契約したら普通に魔法が
使えるんでないかい。
・・・このネタで誰か一本書かない?
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:43:40 ID:48L6XfIp
>>278-279
この流れで閣下ってあると、多重人格のチョビヒゲを思い浮かべてしまうw
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:44:30 ID:PlJZFXqD
>>304
がんばれ
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:44:32 ID:48L6XfIp
>>304
sageロ、自分デ書ケ
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 16:07:08 ID:+IR4SybX
>>304
お前みたいに自分で書けもしねーで書いてくれとかほざくまぬけが一番うざい。
消えろ
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 16:21:06 ID:LXGdx+uP
クレオパトラ・ダンディVSボー・ブランシェと申したか

BASARA謙信VSヴィーナス謙信でも可
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:15:04 ID:HH78p+QS
>>308
キサマが一番不要なり!風と共に消え行け
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:47:14 ID:7iIxv4ki
教もまた、鮫の話をする作業がはじまるお……
312ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 17:51:00 ID:tLEySOjY
お久しぶりです。
紆余曲折あって現在無職(爆)の魔砲の人です。

食事した後、1800〜1830頃に、投下のために来ます。

出来ればさるさん対策のために1800までにと思ったのですが、ちょっと時間足りなそうなので。

もう少しだけお待ちください。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:52:00 ID:jUd30WJY
>>310
いやいや
お前の方こそ不要だろ
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:55:51 ID:7iIxv4ki
いや、不要なのは俺だよ。
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:04:20 ID:KZNkj68P
>>314
なに言っているんだよ。
就活でもう4社落とされた俺の方が不要だよっ
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:06:23 ID:yNAzxd0W
>>312
あなたは必要ですので支援します。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:11:27 ID:ANs+rlRM
誰が不要とか必要とかそんな事はどうでもいいから支援するんだ、支援
318ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:14:17 ID:tLEySOjY
帰還しました。
これより投下開始します。

五分以上間が空いたときは、さるさんを疑って避難所の方を確認してください。


なお、『ゼロと魔砲使い』は、13巻発売の時点で設定を作られており、14巻以降の設定とは矛盾する面があることをご了承ください。

ジョゼフさん、あの死に様は情けなさ過ぎます〜
319ゼロと魔砲使い 第25話-01 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:16:33 ID:tLEySOjY
第25話 真実



 教皇聖下参戦……あまりにも意外な言葉に、ルイズ達はしばし固まってしまった。
 そんな彼女たちの様子に気がついたヴィットーリオは、優しく諭すように言葉を掛けた。
 「ああ、なにもいきなりこの場から、というわけではありませんよ。いくら何でもそれをやってしまったらロマリアが大混乱に陥ってしまいます」
 「で、ですよね」
 何とか復活するルイズ。
 「お忍びでないとまずいのは確かですが、それでも数日の不在を納得させる建前は必要です。まあ周辺の視察にかこつけて、ということになるでしょう。ちょっと視察の目的地が変わるだけのことです」
 「は、はあ……」
 何ともアバウトな物言いに、ルイズはため息をつくしかなかった。
 「とはいえ、早急な行動が必要なのは確かです。こちらも直ちに準備を整えますので、明日もう一度この場へ来てください。マザリーニへの書状など、受け入れの手筈を整えてもらわなければなりませんからね」
 「判りました」
 ルイズが頷いたことによって、当面の問題はこれで決着が付いた。ヴィットーリオも冷めてしまった紅茶を飲み干すと、改めてルイズ達を見渡してから、ゆっくりと言葉を発した。
 「さて、これでとりあえずの用件は終わりましたね。まだ時間は大丈夫ですから、この機会に何か聞きたいこととかはありますか? 答えられることならばお答えしますよ」
 「実際滅多にないことですよ、聖下と直談判できるということは」
 隣からジュリオも話を促す。
 ルイズはタバサの方を見つめ、まず持ってきた荷物から『始祖の祈祷書』を取り出した。
 それにルイズのはめている『水のルビー』を添えて差し出す。
 「お話の前に、どうかこれをお改めください。トリステイン王家に伝わる秘宝、『始祖の祈祷書』です」
 「おお……」
 そこまでは予想していなかったのか、ヴィットーリオは感嘆の声をあけだ。
 「これはわざわざ……ありがとうございます、ミス・ヴァリエール。ありがたく拝見させていただきます」
 一緒に差し出された水のルビーをはめ、祈祷書を開くヴィットーリオ。
 それと同時に、祈祷書に光が満ちた。
 「これは……」
 しばし後、ヴィットーリオは祈祷書を閉じ、指輪を外してルイズに返却した。
 「ありがとうございます。ミス・ヴァリエール。実にすばらしい呪文が手に入りました」
 「そ、そうですか?」
 「ええ。まさに今の状況にもってこいの呪文です。中の中の中、“転移扉(トランス・ドア)”。私の知識と力の及ぶ限り、好きな地点へ繋がる扉を生み出す呪文です」
 「おめでとうございます」
 思わずそう言ってしまうルイズ。そんなルイズを心からの感謝を捧げる目で見つめるヴィットーリオ。
 「どうやらこの呪文はあくまでも自分がよく知る場所にしか扉を開くことが出来ないようなので、これでアルビオンまでひとっ飛び、とは行かないようです。ただ、帰還の手間が大幅に省けるのは大きいですね」
 「すごいですね……私はいまだに“爆発”しか使えませんのに」
 微妙に落ち込むルイズに、ヴィットーリオは再び声を掛ける。
 「心配することはありません。今の私のように、虚無の力は、それが必要になったとき、初めてもたらされるもの……それに」
 そこでいったん言葉を切り、改めて姿勢を正してヴィットーリオは言葉を続けた。
 「あなたはおそらく『攻撃』を司る虚無。その力が呼び起こされるのは、戦いの中という可能性が高いのです」
 「攻撃、ですか?」
 「はい。ガンダールヴを従えるのは、攻撃の属性を色濃く持つ虚無が多いらしいと、教会に伝わる伝承では語られています」
 ヴィットーリオは、何かを思い出すように視線を中に向け、続きを語りはじめた。
 「明確なものではありませんが……虚無にも系統魔法のような、四つの区分けがあるといわれています。
320ゼロと魔砲使い 第25話-02 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:17:18 ID:tLEySOjY
 ガンダールヴを従えるものは『攻撃』。
 ヴィンダールヴを従えるものは『移動』。
 ミョズニトニルンを従えるものは『援助』。
 記すことさえはばかれるものは『心理』。
 
 厳密なものではなく、あくまでも傾向だそうですけれども」
 「あ、あの……」
 申し訳なさそうに、ルイズが小さく手を上げる。
 「その……ヴィンダールブとか、ミョズニトニルンって、どういう意味ですか? 使い魔の名前だとは判りますけど……」
 一瞬ぽかんとなるヴィットーリオとジュリオであったが、すぐにその顔は元通りの優しげなものになった。
 「これは失礼……ミス・ヴァリエールは、急なことでまだ虚無の伝承について聞く機会がなかったのですね。これは私のミスです」
 そして傍らのジュリオに向けて視線を向ける。それだけでジュリオは察したらしく。多その場で立ち上がると、姿勢を正してから言った。
 「まずはこの歌を聴いてください。虚無に関わる、古くから伝わる歌です」
 そしてジュリオの口から、見事な歌声が流れ出した。ルイズ達が、シルフィードに至るまで思わず聞き惚れてしまうほどの。
 
 
 
 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
 
 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
 
 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
 
 そして最後にもう一人。記すことさえはばかれる……。
 
 四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。
 
 
 
 「こんな歌が……」
 感嘆するルイズ。
 「これはわりと古くから伝わっている歌です。別に虚無の担い手が現れたのは六千年ぶりというわけではありませんからね。この歌も市井に伝わっていないわけではないのですが」
 「知らなかった」
 タバサもぽつりと漏らす。ヴィットーリオはそんな二人を眺めて、諭すように言う。
 「魔法学院のようなところですと、これに関する文献は一般生徒には閲覧できないところにあるでしょうからね。授業で習う性質のものではありませんし」
 ルイズも納得したように小さく頷いた。
 「今度調べさせてもらいますわ」
 「それがいいでしょうね」
 そう言うと、ヴィットーリオは、おもむろに立ち上がった。
 「さて、話は尽きませんが、さすがに時間がまずそうです。明日の午後にはしかるべき手段を記した書状をここで受け取れるようにしますので」
 「判りました。このたびはわざわざのご助力、ありがとうございます」
 深々と頭を下げる一同。シルフィードはタバサに頭を押さえられてであるが。
 「では、再会を楽しみにしていますよ」
 「僕も、麗しいお嬢様方に会えるのを待っています」
 優雅に立ち去る教皇と、嫌みなくらい似合うウインクを残して去るジュリオ。
 その姿が消えたとたん、ルイズは深々と息を吐き出した。
 「き、緊張した〜〜〜〜」
 「お疲れ様でした」
 それまで彫像のように無言で立っていたなのはが、優しく声を掛ける。
 「そういえばなのは、立ちっぱなしでつらくなかった?」
 「このくらいでへばっていたら武装教導隊は勤まりません」
 心配そうなルイズに、力強く答えるなのはであった。
321ゼロと魔砲使い 第25話-03 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:18:50 ID:tLEySOjY
 一方、そんな和やかさとは無縁の場所もあった。
 アルビオン、円卓の間では、苦り切った表情の貴族達が卓を囲んでいた。
 
 「よもやあれだけの兵が返り討ちに遭うとは……」
 「魔法学院がそれほど手強いとは」
 彼らの元に魔法学院襲撃が失敗したという報告が届いたのである。
 この問題に関して、今更誰の責任である、などと言い出すものはいなかった。
 さすがに今そんなことを言おうものなら、むしろそのことをこの期に及んでと批判されることが目に見えていたからである。
 「しかたありませんでした。私の手元には皆さんより少し詳しい報告が届きましたが、今回の失敗は、計画の不備ではありません。まさに予想外というべきものだったようです」
 「と、おっしゃいますと?」
 そう発言をしたクロムウェル司教に、貴族の一人が問い掛ける。
 「こちらの予想を超えていた部分は二つ。一つは襲撃の手を逃れた教師が、ただ一人で百名近い兵を一撃で粉砕できるほどの実力者であったこと」
 「な、なんと……」
 「そこまでの腕利きが」
 驚きの声を上げる貴族達。
 クロムウェルは、まだインクも乾いていなさそうな報告書を片手に、説明を開始した。
 「名前をジャン・コルベール。詳しい経緯は不明ですが、どうやらかつて、あの『ダングルテールの虐殺』の時、あのメンヌヴィルの上官だった人物のようです」
 「な、なんと……」
 彼らの間に驚きと同時に納得の表情が浮かび上がっていた。
 彼らはメンヌヴィルの強さ、恐ろしさを知っている。その上司ともなれば、いかほどのものであろうか。
 「それに加えて、学院で優秀な生徒の一人が、実戦を通してトライアングルからスクウェアになってしまったとか。戦場ではままあることと聞きますが、このようなタイミングでとなると、いささか皮肉なものを感じます」
 「うーむ……」
 貴族達は思わず考え込んでしまった。そこにいささか場違いとも思われるほど明るい司教の声が響く。
 「ですが皆さん。今はそのことを悔やんでいる場合ではありません。うまくいかなかったとはいえ、状況が決定的に悪くなったわけではありません。トリステインの援助が届き、体勢を立て直しているとはいえ、万全ではないのです」
 「そうか、この作戦はあくまでも側面攻撃。正面に大きな影響が出たわけではない」
 「そうです。後々のことを考えると少々頭が痛いですが、これは始祖が策略ではなく、堂々たる力によって決着をつけよとおっしゃっているのでしょう」
 その言葉に、貴族諸侯達の間に力がみなぎってゆく。
 「そうだ。数こそ互角なれど、まだ相手の補給は十分ではない」
 「城も被害を受けているから、籠城できようもない」
 「降伏した兵達の統率もまだ取れているとは言い難いはず」
 「ならば勝機は十分にある! むしろあまり時間を与えてはいかん!」
 皆の士気が上がっていく。
 「ならばはじめましょう。乾坤一擲の戦いを。これで負けるようでは、諸国を統合してエルフ達に勝つなど夢のまた夢!」
 「決戦を!」
 「決戦を!」
322ゼロと魔砲使い 第25話-04 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:19:43 ID:tLEySOjY
 大いに意気を上げた貴族諸侯達によって、全軍上げての決戦が挑まれることになった。
 「最後に皆さん」
 そしてまとめるように、クロムウェルは語る。
 「残念ながら確実とはいえませんので詳細は伏せますが、わたくしには幾つかの秘策があります。うまくいかずとも損にはならず、決まれば一気にこちらが優勢になるものです。戦いの展開次第ですが、多少の不利は気になさらずに」
 「……虚無、ですか?」
 「それは言わぬが華というものです。始祖の加護が我々にもきちんとあることを証明するだけのことです」
 「それは心強い」
 それを最後に、会議は終了した。やがて会議場には、クロムウェルただ一人が残っていた。

 そこにやってくる人物が一人。
 
 人物は女性であった。その姿を知る者は、クロムウェルがいつも秘書として連れている人物であるときが付いたであろう。
 彼女の姿を見たとたん、クロムウェルはそれまでの威厳あふれる姿を崩し、まるでおびえる子供のような有様になった。
 「シェフィールド、本当にアレで良かったのかい?」
 「ええ、とてもお上手でしたわ」
 その女性は、長い髪を幅広の布で束ねた、独特の装いをしていた。布の一部が額を隠すように巻かれている。
 それは必要があってのことであった。その布の下には、ある紋様が刻み込まれているのだから。
 彼女はおびえるクロムウェルを、愛し子のように抱きしめた。
 「ご安心を。あなたの背後には我々が付いています。こたびの戦いの際にも、あのお方からの援助があります。彼らは予想外の敵によって崩れることになりますわ」
 「シェフィールドっ」
 さらに力強く彼女を抱き寄せるクロムウェル。その姿は女を抱く男と言うより、むしろ母を抱きしめる子供のようであった。
 そんなクロムウェルの背を、シェフィールドは優しくさする。その顔に、見るものを凍らせそうな酷薄な笑みを浮かべつつ。
323ゼロと魔砲使い 第25話-05 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:21:31 ID:tLEySOjY
 そしてそこから遠いガリアでは。
 
 「約束を違えて申し訳ない」
 「気にするな。意図してのことではあるまい」
 ガリア王ジョゼフの前に、久方ぶりにビダーシャルが姿を表していた。
 「それにしても時間が掛かったものだな。傷か深かったのか?」
 「いえ、怪我はありませんでしたが、シームルグの羽根を使う羽目になりまして」
 それを聞いたジョゼフは事情を察して大笑いした。
 「そうか、アレは確か故郷への帰還しか出来ぬもの。そなた、エルフの里まで帰る羽目になっておったのか」
 「どのみち即座に報告せねばならぬ事があったゆえ、僥倖であったともいえましたが。ただそれ故、連絡と帰還が遅れたことについてはお詫びを」
 「よいと言ったではないか」
 再び頭を下げるビダーシャルを、ジョセフは諫めた。
 「だがそういうことだとすると、彼の使い魔は」
 「はい、紛れもないシャイターン、それも最悪のものでした」
 「最悪、とは?」
 問うジョゼフに、ビダーシャルは普段決して見せない感情の揺らぎをあらわにして、歯を食いしばりながら言葉を続けた。
 「最低最悪、かつてエルフに致命的な被害を与えたシャイターンの魔法……彼女はその使い手でした。伝承のシャイターン同様、本人の人柄は決して邪悪なものではない……ですがそれ故に、自らの悪を自覚することがない」
 ジョゼフは思わずそのシャイターン、タカマチナノハの方に同情した。
 「本人は邪悪ではない。それ故に自らの悪に気づかず、認めようとしない。皮肉なことに邪悪でないが故に返って言葉が届かない……無邪気に、自覚なくこの世界にとって致命的な毒となる。それ故のシャイターン」
 「わしからすればそちらの言い分が一方的なものに聞こえるがな」
 皮肉るように言うジョゼフ。
 対するビダーシャルは、表情一つ動かさぬまま、答えを返した。
 「これは大いなる者により定められた天理。蛮人には理解及ばずとも、守らねばならぬ絶対の法。それ故に本来不干渉を定められた人の営みに、我らは干渉することになるのだ」
 「で、協力がほしいと」
 「ああ。残念ながらこちらから打って出たのでは、シャイターンに勝つのは我らであっても難しい。そもそも我々の魔法は、拠点を定め、そこを守るためのもの。打って出てしまっては普段の半分の力も出せぬ」
 「それでも我らよりは強いと思うが?」
 不敵な笑みを浮かべつつ言うジョゼフ。対して苦い笑みを浮かべ、ビダーシャルは返す。
 「買いかぶりだ。地を定めず、契約抜きでは我らとてそなたらと大して違いはない。そちらのスクウェアなら、対一で我らを討ち取ることも出来よう」
 「そんなモノなのか?」
 「その程度のモノだ。我々の力は契約に大きく依存している。そしてあのシャイターンは、そんな我を正面から打ち砕くだけの力があるのだぞ」
 そこには一切の過大も過小もなかった。ただ彼我の戦力差を冷徹に見つめる目があった。
 「ただでさえそれだけの力があるのに、奴にはこちらのすべてを崩壊させるあの呪文がある。あの滅びの呪文を使われたら、我々には為す術がない」
 「そこまでやっかいなのか、その呪文は」
 「ああ。威力も桁違いだが、それ以上にその特性が恐ろしい。あの魔法が発動するとき、周辺の精霊がことごとくシャイターンに『喰われて』しまう。つまりあの魔法の発動地点の周辺では、すべての魔法が根こそぎ破壊されてしまう。
 例外は器物などにがっちりと食い込んでいる魔法くらいであろう。いわゆる魔法道具のたぐいだな。その本体までは破壊はしないものの、発動している効果や、我々の契約、そちらの使う系統魔法などはすべて無力化されてしまうのだぞ」
 「スキルニルのたぐいも元に戻ってしまうと言うことか」
 「そうだ。いわばすべての守りをはぎ取られたところに、それらの分の力をすべて喰らってふくれあがった攻撃が炸裂するのだ。何人たりとも耐えられるものではない」
 ジョゼフはその言葉を肯定しつつ、追加するように言葉を重ねた。
 「その上その攻撃は、人は殺さぬもののある種の魔法道具などまで破壊するそうだな」
 「ああ、特に精霊の力を結晶させたようなものは根こそぎやられてしまう。手持ちの風石が全滅する羽目になった」
 「それでシームルグの羽根を使うことになったのか」
 納得するように言うジョゼフ。
 「そのとおりだ。それはともかく、本題に入ろう」
324ゼロと魔砲使い 第25話-06 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:22:16 ID:tLEySOjY
 その言葉にジョゼフも姿勢を正す。表情も友人としてのものから為政者としてのものに切り替わる。
 「我々長老会議は、ガリア王に対して一つの協力を要求したい。対価として我らの地の通行と交易、及びサハラの地における風石の採取を認めよう。
 「これは厳しい要求のようだな」
 エルフ側の対価はまさしく『大盤振る舞い』と言ってよかった。これほどの対価を差し出す以上、要求の方も半端ではあるまい。
 そしてそれは文字通り半端ではなかった。
 「要求はただ一つ、シャイターン・タカマチナノハの抹殺に対する全面協力。たとえトリステインを初めとする他の国すべてを敵に回してでも、その完遂を要求する。なお、先の対価はあくまでも報酬。必要経費として、エルフの戦士及び魔法具などを随時提供する用意もある」
 さすがに一瞬ジョゼフの顔にも驚愕が浮かんだ。エルフ達は、たった一人の人間を殺すために、部族のすべてを掛けると言っているのだ。
 「くっ……くっくっくっ、はっはっはっ!」
 ジョゼフの口から、何とも名状しがたい笑いが漏れる。
 「そうか、おまえ達はそこまであれにこだわるのか。いいだろう」
 その返事を聞いて、「報告が有りのますので」と言って退出するビダーシャル。
 彼が退出して一人になった室内で、ジョゼフはひとしきり哄笑を続けていた。
 笑いながらも脳裏に浮かぶのは、かつての思い出。
 彼が玉座を継ぎ、そして狂王と言われるようになるまでの出来事。
 
 
 
 それは平穏なる過去。
 いまだ自分が皇太子であり、弟もまだ少年であった頃。
 今とは全く違う、笑いに満ちた時。
 それが初めて崩れたのは、父から自分と弟が、真新しい本を渡されたときであった。
 
 
 
 
 「父上、これは?」
 表紙になにも書かれていない、手製本と思われる本を見てシャルルが問う。
 近年開発された印刷と製本の技術によって、まだまだ高価ではあるものの、書物はある程度裕福な平民の手にも届くものになりつつある。もう数年もすれば、真面目に働いている平民なら月に一冊程度の書に手が届くまでになろう。
 この流れはジョゼフも後押しをしていた。何より彼自身、読書が大好きだったと言うこともある。
 だが、今手渡されたものは、明らかに個人の手によって作られたものだ。紙こそ使っているが、これが羊皮紙だったら昔の筆写本そのものである。
 そして父は、弟の質問に答えた。
 「これはわしが手ずから引き写した本じゃ」
 「父上が、自分で?」
 ジョゼフは驚くより先に訝しがった。決して暇ではなく、健康も害している父王が、わざわざ手ずからの筆写で本を作るというのは、決して愛情だけのこととは思えない。
 だがシャルルはそうは思わなかったらしい。父が息子達のためにわざわざ、と思ったようだ。
 「父上、ありがとうございます! お忙しいのに、わざわざ」
 少年らしい満面の笑顔を父に向ける弟。
 そして父は何故か笑みを−−明らかに臣下や使節向けの、作られた笑みを、二人の息子に向けていた。
 シャルルは気がつかなかったようであるが、ジョゼフは気がついた。
 そのことを疑問に思っていた彼の上に、父王の声が降りかかる。
 「その本はの、非常にためになる智恵の泉なのじゃが、残念ながら記載の一部に始祖の教えに逆らっている部分があってな。一応禁書の扱いになっておる。じゃから決してこの場にいない人物に見せてはいかんぞ」
 「父上、そのようなものを……」
 心配そうに上目遣いで父を見る弟に対して、父はさらに言葉を掛けた。
 「安心しなさい。おまえが一度読んだ程度では、どこが始祖の教えに反しているかなど判るものではあるまい。実際、その問題部分というのはごくわずかなものでしかないのじゃ」
 「でも……」
 「読んでみれば判るのじゃが、この本は『大賢者』と呼ばれるものから語られたことをまとめた説話集のようなものなのじゃ。内容には問題ないとわしも思うのじゃが、後にこの賢者が異端とされてな」
 そういわれてジョゼフにも何となく事情がつかめた。おそらく書の内容……賢者の語りはごく真っ当なのに、その当人が異端とされたためせっかくの智恵まで異端とされたのだろう。
 憚りながらも読ませたい、という父王の心遣いが、ジョゼフにも伝わった。
 
 
 
 ……と、この時点ではジョゼフもそう思い、父に感謝の言葉を述べていた。
 
 ……実際に自分の部屋で、書を読んでみるまでは。
325ゼロと魔砲使い 第25話-07 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:23:19 ID:tLEySOjY
 『大賢者プレシアの語り』
 それが書のタイトルであった。内容は筆者が幼少の頃、地元を訪れた物知りの美女・プレシアから聞いた雑学をまとめたものだと書かれている。
 『○月○日のプレシアさんのお話』
 という、いかにも子供っぽい書き出しで各章が始まるこの説話集は、ものすごく斬新な目で世の中を見つめている物語であった。
 読んでいるだけで、プレシアという知的な女性が、田舎町の少年少女達に、井戸端あたりで様々な知識を、子供にも判るような語り口で教えている情景が目に浮かんだ。
 お堅い父の字面と内容の落差が激しいのが唯一の難点であったが。
 初めは驚きの連続であった。ほんの身近な、子供が何気なく聞いてくるような質問に対して、賢者は驚くべきような視点と理屈で答えを返す。
 たとえば、『何故雨が降るの?』という質問に対して、賢者は海と太陽と大地と風の間にある、莫大な規模の水の循環で答えていた。
 これなど些細な始まりに過ぎない。100近くにも及ぶ質問は、子供の気まぐれのようにいろいろなところに飛び、そのすべてに対して賢者はこのようなとてつもない答えを返していた。
 ジョゼフは興奮した。幼心、というにはいささか歳を食い過ぎていたが、そうとしか言えないものに火が付いた。
 その日だけで七度は読み返した。三日後には内容をすべて暗唱できた。
 そして四日目……それに気がついてしまった。
 
 
 
 「あ、兄さん」
 普通の家庭と違い、王族は家族が顔を合わせる頻度がどうしても一般家庭や貴族に対して低くなりがちである。今のように、家族で顔を合わせるのが四日ぶりなどと言うことも珍しくはない。
 「シャルル、そちらは大過ないか」
 「うん、今回の野外鍛錬でも、怪我一つなかったよ。そうそう、僕、初めて獲物を仕留められたんだ! あの本のおかげで」
 「あの本の?」
 ジョゼフは首をひねる。獣の仕留め方は書いてなかったはずだが……ああ。
 思い当たる節があった。獣ではなく、森についての部分だ。内容はもっと大きいもので、森や川は単独でそこにあるのではなく、お互いが影響を及ぼし合っているという教えがあった。
 案の定、シャルルの答えもその部分についてであった。
 「ほら、森や獣は、お互いに与え合い、奪い合って生きているってあったじゃない。だから僕は、猟師さん達みたいに獲物の来そうな場所とかを見抜けたんだ」
 「それはすごいな」
 「うん、カーター達もびっくりしてた」
 だろうなあ、と、ジョゼフはシャルルお付きの武官達の顔を思い浮かべた。
 「獣の通る道を推測して、出てきたところをマジックアローで仕留めたんだ!」
 「そうか、それはすごいな」
 シャルルは自分と違って魔法が得意だからなあ、と思いつつも素直に弟をほめるジョゼフ。が、次の瞬間、ジョゼフはあることに気がついてしまった。
 「……? 兄さん、どうかしたの?」
 そんな兄の様子を不思議そうに見るシャルル。
 ジョゼフは慌ててその場を取り繕った。
326ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◆IFd1NGILwA :2009/04/02(木) 18:25:11 ID:tLEySOjY
 父はあの本が『異端』だといっていた。が、すっかり暗記してしまった内容を思い返してみても、あの書に異端と思われる記述は全くなかった。ただ、普通とは少し違う角度から、始祖に匹敵しようかという深い叡智で森羅万象について語っているだけであった。
 が……今思い返してみれば。
 あの書の記述の中には、『魔法』がただの一言も出てきてはいなかったのだ。
 ジョゼフには判る。あの書に書かれていた知識は、どれも合理的で、且つ実に納得のいくものばかりであった。夢物語にしては実に筋が通りすぎていて、その内容は真実としか考えられなかった。
 だが、そこに『魔法』の言葉はない。それはすなわち……この世の真実を解き明かすのに、『魔法』は必要ない、もしくはさして重要ではないということになる。
 今こそジョゼフはあの書が異端とされていた理由が、そしてそれの意味する危険性が理解できてしまった。
 貴族は魔法を持ってその根幹と為す。それは王であっても変わらない。
 だがこの書は、間接的に魔法を否定している。いや、否定はしていない。が、魔法というものが今の世で考えられているような『絶対』のものではないと証明してしまっている。
 そしてそれは、魔法をもたらしたもの……偉大なる始祖の御技の否定に繋がる。
 なにが大したことはないだ。おそらくあの書は最大級の危険文書として教会が目の敵にしているに違いない。あの書に書かれた叡智が広まれば、今の貴族と宗教に対する最大の脅威となる。あの書に書かれた叡智とその応用は、平民であっても可能なのだ。
 自分は弟のように魔法は使えない。だからあの本の叡智を素直に受け入れてしまった。
 だからこそ気がつけたとも言える。
 あの物言いからすれば、シャルルはこの危険性に気がついていないのかも知れない。
 そしてそれは、数日後、再び父王があの本について聞いてきたとき、決定的なものになった。
 
 
 
 「そうそう、二人とも、この間の本は読んだかな?」
 父の言葉に、先にシャルルが答えた。
 「はい! とてもおもしろく、ためになりました! 何で異端になったのかが不思議なくらいすばらしい本だと思います」
 「はっはっはっ、じゃろうな。だが一応異端は異端。みだりに内容について人に話してはいかんぞ」
 「判りました……残念ですけど」
 ジョゼフは二人の様子を冷静に観察していた。そして父王の表情に、そうと意識していなければ気がつかない影が落ちたのを、ジョゼフは見逃さなかった。
 「ジョゼフはどうかな?」
 ここでジョゼフとシャルル、二人の資質の差が出た。
 「はい、私もシャルルと同じく、すばらしい本だと思いました」
 「そうか」
 やはりほんのわずかに影が落ちる父王。それを確認した上で、ジョゼフは言葉を重ねる。
 「ただ、私はシャルルほど聡明な質ではないので、いささか疑問に思ったこともありました。出来れば父上に詳しいお話が聞きたいのですが、時間は取れますでしょうか」
 「うむ……いささか難しいが、息子にそう言われては父として応えぬ訳にもいかんのう」
 「あ、兄さん、それはずるいです! 出来れば僕も父上のお話は聞きたいです」
 シャルルが子供らしい焼き餅で割り込んでくる。王は、
 「まあ、すぐにはいずれにせよ無理じゃ。じゃが何とか時間は作ろう」
 「約束ですよ!」
 そう意気込むシャルルを、ジョゼフは醒めた目で見つめていた。
 シャルルにはまだ早いのだろうか、と思いつつ。
 
 そしてその夜、ジョゼフは内密のうちに呼ばれたのである。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:31:59 ID:ctQQYNVf

支援
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:35:21 ID:gXYatVcB
支援
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:39:25 ID:11G5ibwH
もう手遅れではないかな支援
330ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:42:56 ID:0JctTOdx
代理投下を行います。
331ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:43:51 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-09 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:30:07 ID:rld6vBB2
 「……シャルルは気づかなかったようじゃな。さすがにまだ早かったか。あるいは、資質か」
 父がジョゼフに向かって最初に言ったのが、この言葉であった。
 ジョゼフはため息混じりに告げられた言葉に、やはり、と思った。その日の夜、シャルルが寝ている時間に呼び出されたことが、その裏付けであった。
 「この書には魔法のことが全く書かれていない、ということでしょうか」
 そうずばりと問い掛けるジョゼフに対して、王は頷くことで答えを返した。
 そして壁の書棚に向かうと、なにやら怪しげな操作を行う。と、書棚の一部が動き、そこから隠し階段が現れた。
 「父上、これは……」
 「おまえには、これを見る資格がありそうじゃな」
 ジョゼフの質問には答えず、王は階段を下りていった。
 
 そこにあったのは、小さな部屋であった。魔法による明かりによって照らされた隠し部屋の壁には、たくさんの書物が置いてあった。
 「すべて禁書じゃ。そしてほとんどが、おまえに見せたあれと同じ、大賢者プレシアの教えを綴ったものでもある」
 「なんと……」
 ジョゼフの思いは、その時これだけの書を残した、大賢者の元に飛んでいた。
 「好きに読むがいい。この書には王として立つために覚えてくと役立つ知識がたくさん詰まっている。そしてよく考えよ。直接的には書かれていないが、その書の内容には、大きな謎が隠されている」
 「謎、ですか?」
 「うむ。おまえなら読み取れるであろう。そしてどうするかは、おまえ次第だ」
 「父上は……読み取れたのですか?」
 当然の疑問に、王は疲れたように答えた。
 「何とか、な……だが私はそれを見なかったことにした。私にはどうすることも出来ないほど、大きなものだったからな。だがひょっとしておまえなら、わしを越えられるかも知れぬ」
 そう言って父は、階段を上がっていった。
 
 
 
 
 
 
 
 その時はまだ気づかなかったが、この日王は自分の後継者をジョゼフに定めていたのであろう。
 しばらくの間、ジョゼフは父の示した大賢者ゆかりの書物に没頭した。
 それはあまりにも深い叡智であった。自然だけではなく、社会のあり方や、市場経済などに関しても、いくつもの見方が語られていた。賢者の語りは、あくまでも『そういうものがある』ということを示すだけであり、どれが理想であるかなどとは決めつけていなかった。
 そこから読み取れたのは、賢者はあくまでも『知識』としてそれを語ったのだ、ということであった。こんなものもあるよ、と例を示してくれただけなのであろう。
 ただ、それはこの地にはない発想の知識だったので、それを聞いた人は驚いたのだろう。
 そして是非とも記録しようと思い、こうして語録や説話の形で、記録が残されたのだと判る。
 そして幾多の書を通して、ジョゼフは二つのことに気がついた。
 一つは、この書が書かれたのが約六三〇〇年前、すなわち、始祖がこの地に降臨する前の時代であるということ。
 そしてそれだけの長い間、これだけの叡智が、地に埋もれていたということ。
 そう、ジョゼフは気づいてしまった。
 人間の持つ可能性に。知性の持つ可能性に。
 人はもっともっと先に進めるはずであることに。
 それからのジョゼフは勉強を重ねた。歴史を学んだ。
 そして気がついてしまった。
 この世界が、呪われていることに。
332ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:45:49 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-10 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:31:01 ID:rld6vBB2
 それは不可思議なことであった。
 人には知恵がある。これだけの年月があれば、もっと先に進めるはずである。
 だが、この世界は全く変わっていない。
 いや、正確には一度変わっていた。始祖以前と、始祖以後で。
 始祖のもたらした魔法。これによって以前と以後の歴史は明らかに変わった。始祖以前の歴史はほとんど資料も残っていないが、わずかな資料から、今の世界から貴族と魔法を除いた、平民だけの社会があったらしいことは判った。
 そして始祖によってもたらされた魔法によって、生活の水準は上がり、社会にも大きな変化が訪れた−−わずか百年ほどの間だけ。
 それ以降は今とさして変わらない、貴族による統治がずっと続いていた。
 六千年の永きにわたって。
 そう、六千年、だ。
 始祖が魔法をもたらした百年。その百年の間に、劇的に社会が、文化が、生活が激変したのは残された資料が物語っている。
大賢者に関わっていない資料−−すべて禁書扱いのもの−−のほとんどは、『魔法による社会と生活の変化』に関して、驚きと喜びを持って語った随筆のようなものが多い。
 魔法がもたらされ、生活水準が上がって、飢えや怪我で命を失う人が激減している様子が手に取るように読み取れる。
 だが、その手の記録の最後の方……魔法伝来から百年あまり経った時点での社会の様子は、まるで今の時代の記録を読んでいるかのようであった。
 ジョゼフはこの点に、強い違和感を持った。
 表の書庫に行き、『固定化』の恩恵で今に残る数千年前の記録を読み解く。
 そして理解してしまった。
 この六千年、世界はずっと、昨日と同じ今日、今日と同じ明日を過ごしていたことに。
 停滞の呪い。
 ジョゼフはそんなモノを信じたくなってしまった。
 
 
 
 時は無常にも過ぎる。変わらぬ日々の中、父は少しずつ体調を崩し、文字通りの『崩御』が目の前に迫ってくるのを感じる。
 宮中の諸勢力が、徐々に二つに割れていく。
 そして運命の日は訪れる。
 病床で王は、ジョゼフを後継者に指名した。
 そしてその後まもなく、彼は始祖の元へ還っていった。
 それは長子相続という面から見れば、ごく真っ当なものであった。ただ一点を除けば、ジョゼフには為政者としていかなる問題もなかった。
 その問題も、本質的には問題はなかった。が、同時に最大の問題になった。
 彼が、まともに魔法を使えない。その一点こそが。
 宮中は大きく二つに割れた。王の意を尊重し、ジョゼフを王と認めるものと。
 魔法が使えないという一点から王の資格無しとし、シャルルこそが正統なる王であるとするものと。
 そしてその勢力比は……圧倒的に後者が勝っていた。
 
 王位を継いで後、ジョゼフはすぐにそのことに気がついた。ごり押しせねば通らない自分の意。それすらも実現の段階で官僚達の手によってねじ曲げられていく。
 特に何かを変えようとする動きに対してそれは顕著に表れた。
 表だって反乱のようなものが起きないのは、為政者としてのジョゼフは先の一点以外全く瑕瑾が無く、政務能力を持って貶めることが出来なかったからであろう。
 加えてシャルルが自分の登極を祝福を持って受け入れていたのが大きい。
 反対派が内心王に掲げているのはシャルルである。そのシャルルが賛意を示している以上、表だった行動に出ることは出来ない。
 そう考えているのは見え見えであった。
 しばらくはそのままだった。だが、すぐに気がついてしまった。
 こいつらは変わらない。今のままでは、自分を含めて、何一つ。
 彼は日々政務をこなす裏で、ひたすらに考えづけた。停滞を、呪いとも言えるこの停滞を打ち破る何かを。
 それほど時を得ずに、一つの答えに気がついた。
 大きな力が必要である。世の中に衝撃を与えるには、いずれにせよ、大きな力がいる、と。
 ガリアは大国であるが、世の中を動かそうとしたら大きな力がいる、と。
 だが現状では、それは難しかった。国内をまとめるには力が足りない。反対派を粛清しても、結局は己の力をそぎ落とすことになるだけなのも判っていた。
 それが変化を迎えたのは、些細な気まぐれがきっかけであった。
333ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:46:22 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-11 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:31:44 ID:rld6vBB2
 始祖の香炉、という秘宝がある。名前だけは知っていた。今自分が常に手にはめている、『土のルビー』と並ぶ初代の頃より伝わる宝。
 だが、常に王の指にある土のルビーとは違い、香炉は厳重に秘蔵されている。
 この時、王宮で宝物庫の整理点検・目録更新があり、ジョゼフは初めてその香炉を目にすることになった。
 そして侍従長より聞いた、香炉に関するおもしろい逸話。
 「これは香炉としては、不思議なことに役立たずなのです」
 「役立たず? 香炉が?」
 「はい。見たとおりの簡素な作りなのに。誰かがいたずらか呪いかで魔法を掛けたようで。香炉でありながら、この香炉にくべられた香は、一切の薫りを失うのです」
 ジョゼフは唖然としてしまった。誰だ、そんなとんでもないいたずらをしたのは。
 ……決まっている。この香炉が『始祖の香炉』である以上、犯人は一人しか考えられない。
 「偉大なる始祖のいたずらなのか?」
 「かも知れません。あるいは教訓ともいわれています」
 「ほう?」
 ジョゼフは少し興味がわいてきた。侍従長に続きを促す。
 「始祖の名を冠する宝物は四つあると伝わっています。トリステインに伝わる『始祖の祈祷書』、アルビオンに伝わる『始祖のオルゴール』、ロマリアのとある言えに伝わる『始祖の彫像』、そして我がガリアの『始祖の香炉』です。ですが……」
 「ですが?」
 言い淀んだ侍従長に、さらなる催促をする。
 「どれも不思議なことに『意味のない』ものばかりなのです。
  トリステインの祈祷書は、中に一切の文字が書かれておらず。
  アルビオンのオルゴールは、いかなる調べも奏でず。
  ロマリアの彫像は、何を象ったのかが誰にも理解できず。
  そしてガリアの香炉は、いかなる薫りも発せず、です」
  「なるほど。一つだけならともかく、そろいもそろって、となれば、始祖が謎かけの一つ位しておるのかもな」
  ジョゼフの言葉に、侍従長も力強く頷いた。
  「我が国を初めとする研究機関で、謎の解明に挑んだこともありましたが、結局のところ何も判らなかったそうです。特に我が国の香炉の場合、他と違って明らかに魔法の介入がありますからな」
 文字のない書は子供にでも作れる。
 意味不明な彫像も何とでもなる。
 だが、音のしないオルゴールとなると細工物の知識が必要になるし、ましてや薫らない香炉は明らかに異常だ。
 香炉はただの入れ物で、香が薫るのは香自身の働きだ。なのにそこに入れると薫りがしないというのは明らかに何か別の力が働いている。
 「おもしろい。少し見てもいいか」
 思えば、これこそがジョゼフにとって、最初の分岐点であった。もしここで彼が香炉に興味を示さねば、後の歴史は大幅に変わっていたことであろう。
 他の人では許されないことであっても、王ならば通る。
 管理のものは難渋を示したが、それでも王の意向がまかり通った。
 
 
 
 そしてこの日、ジョゼフの人生は第一の激変を迎えた。
334ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:46:52 ID:0JctTOdx
:ゼロと魔砲使い第25話-12 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:32:41 ID:rld6vBB2
 「まさか、この俺が、な……」
 ジョゼフは悩んだ。自らの内に眠っていた魔法の力、『虚無』。
 始祖の直系たる証。最高峰の魔法。
 この事実を公開すれば、ガリアのすべてが自分になびくことは明白であった。
 だが一つだけ懸念があった。
 前例がなさ過ぎる。始祖の秘宝に秘められていた謎は、虚無である自分にしか理解できない。
 すなわち、自分が『虚無の担い手』であることを証明することが難しいのだ。
 自分が得た『虚無』は『加速』。すばらしい力であるが、いささか弱い。万人に自分が『虚無』であることを証明するには、ある意味わかりやすさが足りない。
 魔法具のたぐいであろうといわれる可能性も高い。
 証拠がいる、とジョゼフは考えた。
 一つだけ幸いなことがあった。虚無に目覚めると同時に、コモンマジックが使えるようになったのだ。とりあえずそのへんは秘密にしたまま、ジョゼフは始祖に関する文献を調べまくる。
 結論として思い至ったのが『使い魔の召喚』であった。
 かつて始祖は、『四人の人間』を使い魔として持っていたと伝えられている。そして今の世に、『人』を使い魔として持つメイジは存在していない。もし自分が正しく『虚無の担い手』、始祖の後継たる存在ならば、『人』を使い魔として召喚できるのではないだろうか。
 そう考えたジョゼフは、密かに準備を整え、召喚に挑んだ。
 
 
 
 それが第二の激変となった。
335ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:47:15 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-13 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:33:17 ID:rld6vBB2
 「ここは……」
 術は成功し、召喚のゲートから現れたのは、紛れもない『人』であった。
 やはり、と思う中、ジョゼフは現れた人物に注目した。
 若い女性であった。やや儀式張った服装からは、ロマリアの神官を思い起こさせる。
 だがそれ以上に注目すべき点は、彼女が血にまみれていた点であった。
 彼女自身には外傷は見あたらない。混乱はしていたが、その手に凶器を持っている様子もない。
 だとすると、これは護衛か敵の返り血であろう。
 ジョゼフは使い魔召喚の儀式における注意事項を脳裏に思い浮かべながら、ゆっくりと話しかけた。
 「言葉は、通じているようだな」
 「……あなたは? それにここは」
 「私はジョゼフ。結果的にだが、そなたを召喚したものだ」
 幸い彼女はきわめて理知的な性格であり、冷静に状況を受け止めた。
 情報が交換され、そしてジョゼフは驚くべき事を知った。
 「そちらも……か」
 「私としては、うらやましい話ですけれども」
 彼女の名はシェフィールド。但し本名ではなく、地位に付随した、役名のようなものらしい。真の名前は、明かさない風習があるらしい。
 身分は神官。そして出身地は、東方−−ロバ・アル・カリイエだという。
 だが、そんなことはジョゼフにとっては些細なことであった。
 彼に最大の衝撃を与えたのは、東方の現状であった。
 東方は、戦争の中にあるという−−一万年を遙かに超える、永遠の闘争の中に。
 ジョゼフの問いに、シェフィールドは答えた。
 東方は永遠の闘争の中にある、と。
 彼女は神官の家系であり、過去の記録を知ることが出来る立場にあった。
 生まれた時より続き、一度は終わったはずの戦いが、その直後より再び繰り返された。その光景に心を痛めた彼女は過去を調べ、そして知ったという。
 誰も気にしていないこの戦いが、遙か過去より延々と続いているものであると。
 ジョゼフは思わずそのことを詳しく聞いていた。
 彼女も問われるがままに答えた。
 彼女の調べによれば、まるで誰かがわざわざこの地に戦いを起こし続けているようだ、と。
 これに対してジョゼフは、ハルケギニアを覆う、永遠の停滞について思うことを語った。
 平和なのがうらやましい、と彼女は言ったが、ジョゼフの真意を誤解したりはしなかった。
 ジョゼフの方も、永遠の闘争に、一つ不審な点を感じた。
 戦争は文明を加速する。大賢者の知識から、ジョゼフはそれを悟っていた。
 それは本能に直結した意志である。死にたくないという原初の本能が、武器を、防具を、戦術を、戦略を進化させる。
 だが彼女の語る永遠の闘争には、それがなかった。いや、『意図的に抹消』されていた。
 ジョゼフの問いに、彼女は語った。そういうものが萌芽することはあったらしいが、たちどころに対抗策が打たれて、定着することはほとんど無かったと。
 これが決定的な疑惑になった。彼女から過去の記録を聞き、新戦術の発見とそれが潰えるまでの経過を聞く限り、発見はまれなのに対抗手段の確立があまりにも早すぎる。
 まるで誰かがそれを望んでいないような様子であった。歴史に介入して、意図的に抹消したような印象を色濃く覚える。
 そうでなければ、これほどの長い間、戦争が続くことはあり得ない。
 戦争は巨大な消費だ。人か、物か、意志か。いずれかが不足して、戦いは終わる。正確には続行不能になる。
 なのにそれが続けられるということは、そのためのシステムが出来上がっていることに他ならない。
 戦争をするためにのみある世界。そんな世界でもない限り、そこまでの永きにわたって戦争状態を継続することなど、出来るはずもない。
 それははからずしも、ハルケギニアのあり方に似ていた。永遠の闘争と、永遠の無変化。
 意図は違えど、一つの世界を永遠に保つという点では全く同じであった。
 そうしたことを二人は話し合った。そしてシェフィールドは、ジョゼフの使い魔となることを受け入れた。
 現れた証は『ミョニズトニルン』。すべての魔導具を自在に使いこなす、始祖の使い魔が一つ。
 ここにジョゼフは、虚無の担い手たる確かな証を得た。
 だが、彼はそれを持ってガリアの掌握を行うことをしなかった。
 なぜならばそれは……
 
 
 
 ミョニズトニルンの力により、彼に第三の激変を与える事実が判明したからであった。
336ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:48:01 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-14 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:34:01 ID:rld6vBB2
 ミョニズトニルンはあらゆる魔道具を使いこなす。
 それは始祖の秘宝といえども例外ではないはず。
 そう考えたジョゼフは、彼女に『始祖の香炉』の力の解析を望んだ。
 その結果−−
 
 ジョゼフは、知ってしまった。
 この世界の真実の一端、大賢者の残した言葉の意味。
 
 
 
 「この世界は『大いなる者』の遊戯場である」
 
 
 
 はっきりと理解できたわけではない。そこまで踏み込むには、ジョゼフの智でも及ばなかった。
 難しいのではない。足りないのだ。
 異国語で編まれた文献は、その異国語を読めねば理解できない。そういうことだ。
 彼に理解できたのは、ハルケギニアの停滞も、ロバ・アル・カリイエの戦争も。
 自然のことではなく、意図的に為されていた、という事実。
 この事を知った時、ジョゼフは狂った。
 いや、ある意味正気に返ったとも言える。
 
 「シェフィールド……壊そう、この世界を」
 「御意」
 「まずはエルフか……この軛を断ち切るには、奴らの存在を利用せねばなるまいな」
 
 
 
 
 
 
 
 そしてガリアの地に、「狂王」が出現した。
 弟を暗殺し、
 その妻を辱め、
 娘も、姪も利用し尽くす、慈悲を忘れた王が。
 そして、そんな王の前に現れた、最大の「駒」。
 あのエルフが心底より恐れる、絶対の力。
 文字通り世界そのものを『物理的』に破壊できる存在。
 「もうすぐだ。もう少しで、力が集まる。ロマリアも動いた。ゲルマニアも機を見て動くであろう……我々が動けばな。アルビオンに、すべてを集める。手向かうがよい、異界のメイジ、タカマチナノハよ」
 ガリアの王は哄笑する。
 「その力で、我諸共、すべてを破壊するがよい。ためらわば、我が壊すのみ」
337ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:48:30 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い第25話-15 ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:35:07 ID:rld6vBB2
 そしてガリアの地に、「狂王」が出現した。
 弟を暗殺し、
 その妻を辱め、
 娘も、姪も利用し尽くす、慈悲を忘れた王が。
 そして、そんな王の前に現れた、最大の「駒」。
 あのエルフが心底より恐れる、絶対の力。
 文字通り世界そのものを『物理的』に破壊できる存在。
 「もうすぐだ。もう少しで、力が集まる。ロマリアも動いた。ゲルマニアも機を見て動くであろう……我々が動けばな。アルビオンに、すべてを集める。手向かうがよい、異界のメイジ、タカマチナノハよ」
 ガリアの王は哄笑する。
 「その力で、我諸共、すべてを破壊するがよい。ためらわば、我が壊すのみ」
 
 
 
 
 
 
 
 そして、時空の間では。
 
 「どうして、ここで待機なんですか!」
 金髪紅眼の女性が、黒髪黒眼の男性にくってかかっていた。
 女性の名前は、フェイト=T=ハラオウン。
 男性の名前は、クロノ=ハラオウン。
 名前からも判るとおり、二人は家族である。クロノは結婚して家を出ているし、フェイトは養子であるのである意味他人でもあるが、兄妹であるのもまた事実である。
 二人が今いるのは次元航行艦『アースラ』のブリッジ。
 未知の次元空間を旅してきたこの船は、あとわずかで目的の世界に接触をする、その寸前で停止していた。
 「慌てるな、フェイト」
 一刻も早く親友の元に駆けつけたい妹をなだめるべく、クロノは言葉を綴った。
 「まず初めに、ここでいくら待機をしていても、向こう側での到着時間は変わらない。つまり、相手を待たせることにはならない」
 「でも!」
 「逆に、慌てて突入したら、むしろ大幅な遅延をもたらす可能性が高い」
 「う……」
 言葉を途切れさせるフェイト。
 ここぞとばかりにクロノが言葉を重ねていく。
 「向こう側の世界とこちらの時間の流れには、大幅な差違があるんだ。ここまではよかった。だが、最後の接触……相手の世界への突入は、やり直しがきかない。
 最初の接触で、相手の時間流のどの位置に接続できるかが決まる。現時点の観測結果では、推定誤差五十年……うまくいけば彼女の召喚直後になるが、最悪だと五十年後になる」
 フェイトの目に疑問が浮かぶ。何か方策はないのかと。
 「いま最新の観測データを元に正確な進路を算定しているが、それでも誤差を五年以内にするのが精一杯だ。だが、一つだけ希望はある」
 「何、それは!」
 希望、の一言に弾けるように反応するフェイト。
 「この世界は魔力の反応がきわめて大きい。そんな中に、明らかに彼女が発したと思われる魔力の残滓があるんだ。今現在においてもこれが大きな手がかりになっている」
 「魔力の残滓って……なのはが、大規模な魔法を?」
 「おそらく。負担が心配になるくらいの物らしい。明らかにリミット3を外している」
 「そんな……」
 よろめくフェイト。
 「彼女がそこまでするとなると、平穏に過ごしている可能性は低い。だが、皮肉にも、それが希望になっている」
 「どういうこと?」
 問うフェイトに、クロノは図を空中に提示しながら説明した。
 「三角測量だよ。後一度、彼女が大規模な魔力を放出してくれれば、そのデータを元に補正を掛けながら突入できる。そうすれば、間違いなく、その直後の時空にピンポイントで突入できる。諸刃の剣だけれどね」
 「なのは……」
 親友の嘆きをよそに、『その時』は着実に近づいていた。
338ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:49:06 ID:0JctTOdx
ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA:2009/04/02(木) 18:36:40 ID:rld6vBB2
以上、ここまでです。

やっとジョゼフの本音が書けました。

まあこの世界においては、ということで。シャルル君も天然ですし。


では、代理、お願いいたします。Wikiには自分で上げますので。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:49:36 ID:GxqEJlP/
340ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:49:45 ID:0JctTOdx
代理投下終了です。
341ゼロと魔砲使い 第25話-08 ◇IFd1NGILwA 代理:2009/04/02(木) 18:50:04 ID:0JctTOdx
代理投下終了です。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:51:42 ID:48L6XfIp
大事なことだから二回言ったんですね、分かります。

乙!乙!
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:01:41 ID:IlrnOHbX
作者さん、代理さん、乙でしたー。
「綺麗なジョゼフは好きですか?」というフレーズが脳裏を過ぎったのは何故だろう。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:02:58 ID:Jcghi0Ds

>本人は邪悪ではない。それ故に自らの悪に気づかず、認めようとしない。皮肉なことに邪悪でないが故に返って言葉が届かない……無邪気に、自覚なくこの世界にとって致命的な毒となる。
自分のこと言ってないか? ビダーシャル。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:06:29 ID:jvKXj/9+
恐ろしい世界だな……。GJであります。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:20:21 ID:5h8rrQsm
投下乙ー

考えてみりゃアリシアの復活はアンドバリのアレだしな。
普通に幸せだったと思ってたけど、プレシアが一層歪んだ可能性もあるのか。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:21:57 ID:uOzD/SDU
グロブローを思いだした
348291:2009/04/02(木) 19:29:35 ID:HFSoMOBp
>>292-297
ミカ大尉はモンモンと被るし、
迫水は…、Δ地帯を夜襲するから…

無難に宮藤芳佳元軍曹に。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:33:28 ID:R7SGMyv1
>>348
キュルケとマチルダさんがピンチです
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:41:47 ID:vNvOflT5
>>343
自分は「愛しのシェフィ」のジョセフさんが一番、好きだ!
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:52:13 ID:HFSoMOBp
>>325
プレシアって…あのフェイトさんを生み出した
プレシア=テスタロッサか…
まさに近畿…もとい禁忌の書の著者に相応しいな。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:24:24 ID:KBFjV2dp
プレシアと聞いてまず思い出すのがプレシア・ゼノサキスな俺
テスタロッサな母さんとのギャップが激しすぎるぜ
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:25:34 ID:QQH3batF
GJ!
そして強制休職中、もうすぐ無職ほぼ確定の俺からエールを送るぜ。ドンマイ!

後一応突っ込んでおくけど「ミョズニトニルン」な。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:26:20 ID:ekvKCCPm
>>318-341
作者殿も、代理の方もお疲れ様です。
ミッド組、突入一歩手前のこの状況、どう展開するのか続編が楽しみです。
次回も心からお待ちしています。

最後に、作者様の再就職が成功することをお祈りしています。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:34:00 ID:KBFjV2dp
そういえばハルケギニアではキャロのヴォルテール召喚はできるのだろうか
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:39:22 ID:0JctTOdx
そういえば、大いなるものがアンドバリの指輪をつくった。というのがあったな。
それが死者蘇生を可能にするということは。
ひょっとして、ハルケギニアという世界自体がMade in アルハザードなんてことも……
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:44:39 ID:1l8Ylc0z
アブドゥル・アルハザードはただのきちがいアラビアンだろ
358魔導書作者:2009/04/02(木) 20:45:57 ID:KZNkj68P
こんばんは。
就活で、コテンパンに落とされている作者です。
落ちた腹いせに書いていたら、なんか色々膨らんできてしまいました。
20:50分から07のa版を投下しようと思います。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:46:43 ID:lcqsEN2P
ビッグ・O的な話だな
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:49:54 ID:QQH3batF
何というグッドタイミング。貴方は山さんか。そして支援。
361魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:50:17 ID:KZNkj68P
その者は追う――追うたびに血が吹き上がる。
その者は斬る――斬るたびに肉が飛び散る。
その者は燃やす――燃やすたびに灰が風に乗る。
その者は戦う――戦うたびに傷が増える。
その者は憎む――憎むたびに己が削れていった。
その者は復讐者(アヴェンジャー)である。

始まりは奇妙な本との出合い。
その時間には死んでいるはずの愛すべき者と過ごした熱い夜。
それが――彼が深遠へと足を踏み出す切欠だった。

ただひたすらに追って、追い詰め、斬って、燃やして、戦って、憎んで憎んで
憎んで――憎悪と闘争の日々を過ごす。
彼は憎む――愛すべき者を殺した男を。
彼は憎む――愛すべき者を模った老人を。
彼は憎む――愛すべき者を汚した魔術師を。
激怒で憤怒で憎悪で怨嗟で烈火で業火で焼き尽くすためだけに。
才無き身を酷使し、脆弱な精神を削り、気高き魂を火にくべながら。
ひたすらに追い続け戦い続け憎み続けていた。

その手に持つはか細いステッキと一冊の本。
本がばらけた。
『……アズラット』
それは宙を舞うと、纏わり付くかのように彼の周囲を回る。
彼はそれを見ない。
手が印を組む。
「ヴーアの無敵の印において――」
つむぐ言葉は力に満ち――否、溢れて堕ちる。
『……アズラットっ』
「力を与えよ――」
第二指と第五指を上げ、印を結ぶ。
「力を――」
手に持つステッキが炎に包まれ、その身を燃やし始める。
だが彼は炎すら異に解さず、鍛造された魔刃を握り締め。
「――力を、与えよ!」
業火が全てを燃やし尽くし――

『――アズラットッッ!!』

妾は叫び続けた。

……“妾”?
それは誰? 妾は/我は/妾は/我は/妾は/……『わたし』は――



「これは由々しきことだ」
翌朝、関係者一同が揃った中。一通りの事情を聞き終えたオールド・オスマン
は言った。
その言葉で薄く靄がかかったルイズの思考が回復する。
「ちょっとルイズどうしたのよ」
ひそひそとキュルケが話しかけた。
「なんでもないわ、ちょっと夢見が悪かっただけよ」
そっぽを向くとルイズは改めてオスマンへと視線を向けた。
事件の目撃者と言うことでこの場に同席を許されたルイズ、キュルケ、タバサ、
そしてアルの4人。
それぞれがいつも通りの格好の中、ルイズはデルフを背中に佩いている。
その4人に奇異の視線が向けられるが4人とも無視……はおろかアルにいたって
は欠伸すらかましていた。
オスマンは集まった教師たちを見て重々しく口を開く。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:51:16 ID:0JctTOdx
支援
363魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:51:29 ID:KZNkj68P
「この魔法学院を開いて100余年。国から、いや大陸から一心の信頼を保って
きたこの学院にとって、今回のことはただ賊が入ったことではすまない」
それはそうだろう、なにせここは魔法学院。メイジの巣窟。王宮の宝物庫と引
きを取らないと言われるこの学院の宝物庫が、大胆かつ容易く破られたのだ。
ことによっては学院の存在意義にすら波紋を広げるだろう。
一同が息を呑んだ中、教師の1人が声を張り上げる。
「昨日の当直は誰だ!」
その言葉にそっとコルベールが前に出る。
声を張り上げた教師――ギトーはコルベールに詰め寄ると騒ぎ始めた。
「ミスタ・コルベール。あなたはいつも当直時間まで自分の研究室へ篭ってい
るという。昨日は虚無の日。他の教師が出かけている中、たとえ当直時間外だ
としても、周囲に気を配らねばならないのではないかね?」
あまりといえばあまりな言い分だが、コルベールは素直に頷く。
「返す言葉もございません。この事件のことも私の責任の一端でしょう」
「そ、そうです! この責任は全て――」
一瞬怯みそうになったギトーはそれを恥じるように更に口を開こうとして。
「――止めぬか」
オスマンが止めた。
「ですがっ」
「今はつまらぬ責任追及をしている時間か?」
ギロリと睨むと、ギトーは黙る。
いつとは違う、凍りつくような気配。そこにいるのは飄々と他人をからかう色
ボケ老人ではなく、生きた伝説として名を馳せる大陸有数の魔法使いの姿だっ
た。
押し黙る皆を見渡すとオスマンはとある紙を掲げた。
「これは宝物庫に張ってあったものだ」
その紙には端麗な文字で『破壊の杖と異端の書、確かに徴収いたしました。土
くれのフーケ』と書いてある。
「土くれのフーケだと!」
「あの巷の……っ」
「巨大なゴーレムを操るという……」
その言葉にざわめきが広がる。
「止めんか」
騒ぎ出す教師達をオスマンが再び止めると、厳かに言う。
「賊に宝物庫を襲われたとあっては学院始まって以来の最大の恥。これより捜
索隊を編成する。我こそはと思う者は、杖を掲げよ」
その言葉に一様は。
「…………」
誰も動かなかった。
誰もが他人の顔を見ては視線を逸らし、できるだけ目立たないようにそわそわ
と周囲を窺うだけである。
それはそうだろう。宝物庫のあった塔はその重要度の高さゆえ、並のメイジで
は太刀打ちできないほどの防衛性を持っていた。
それを呆気なく打ち破ったフーケはおそらくスクエア級。仮にトライアングル
だとしても、スクエアに近いトライアングルであることは想像に難くない。
そんな相手と正面きって戦いたい者などいるはずもない。
「情けない……それでもお主らはメイジなのか……」
それを見て嘆きか呆れかオスマンは手で顔を覆う。
「あ、あの……」
おずおずと豊満な中年女性――シュヴルーズが前に出た。
それにオスマンが少し声を和らげる。
「おお、ミセス・シュヴルーズ。お主が出てくれるのか?」
その言葉にシュヴルーズは大きく首を振った。
「い、いえ!」
「……ではなにかね?」
怪訝になるオスマンにシュヴルーズが弱弱しく切り出した。
「その……これは王宮に連絡を取り、追撃の者達を派遣されては……」
「そ、そうだ! そうすればいいんだ!」
「なに王宮もこんな事態ならば早々に動いてくれる!」
364魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:52:47 ID:KZNkj68P
浮かれ気味に――己が出なくてもいい、という状況を想像し話し出す教師達に。
「そうかそうか」
オスマンはその手の杖を握り締め。
「お主らが行かぬとあれば、ワシが行くまでじゃ」
そのまま出て行こうとするのを教員全員が止めに入る。
「ま、待ってくださいオールド・オスマン!!」
「なにをする。離さんか!」
教師達を振り払い向き直るオスマンをギトーは必死に説得しようとする。
「もしもオールド・オスマンを行かせたのならば、我々の立つ瀬がありません!」
その言葉にオスマンは顔を赤くし。
「馬鹿者どもが! 相手の名を聞いて萎縮し震えて杖を抱えるような者たちに、
そもそも立てる面目などなかろう!」
あまりの剣幕に、止めに入っていた教師達が1歩下がった時。
「失礼します」
部屋の扉が開き、1人の女性が入ってくる。
「おお、ミス・ロングビルではないか。今までどうしておったのだ?」
オスマンの問い掛けにロングビルは手にした書類を抱え直しながら答える。
「フーケが壊した塔の修繕費用の試算と、他に盗まれた物がないかリストの作
成を。あと、フーケの手がかりを探しておりました」
「ほほう、それで。なにか掴めたかの?」
少し篭った期待にも、ロングビルは首を横に振る。
「いいえ、さすがにたいしたものは……」
「そうか……」
落胆の声。それに乗っかるようにシュヴルーズが呟き。
「や、やはり……そもそも今フーケがどこにいるのかもわかりませんし……王
宮に」
そんな言い訳じみた言葉に
「はん、そんなこともわからないのか。この世界の魔法使いとやらは」
どこからかそんな声が返ってくる。
一斉に視界が集まる。そこには、いかにも見下すような目で教師達を見るアル
がいた。
「ちょっと! アル!」
咄嗟にルイズが注意するが、それをギトーが睨みつける。
「君……どこの平民かは知らないが、これはメイジしかわからな――」
「戯言は聞き飽きた。少々黙れ下郎」
「な、かっ!」
言葉を失うギトー。彼はすぐさま憤怒に顔を赤くすると口を開こうとして。
「――ほう。お前さんにはフーケの居場所がわかるというのか?」
オスマンが先を制した。
「直接ではないがな」
オスマンに向かっても不遜な態度を崩さないアルにハラハラとしていたルイズ
は、次の言葉で拍子抜けする。
「ふむ、ではお前さんにフーケ捜索を頼もうかの」
「待て」
それに不機嫌そうにアルが待ったをかける。
「なんじゃ?」
「確かに妾は居場所を探る術があるとは言ったが、汝らに協力するいわれはな
いぞ」
オスマンは目をまん丸にすると。
「何を言うか。力は天の采配。あるからには使わねばただの宝の持ち腐れ。そ
れとも、そんな力など本当は無く、ただ言ってみただけかの?」
ほっほっほと笑われて、アルの額に青筋が立つ。
「なんだと! 妾にかかればフーケだかブーケだかなんぞ1000人単位で見つけ
てくれるわ!」
「いやいや、無理はせんでいいんじゃ。無理なら」
どうどうと手で押さえるオスマンにアルは更に加速する。
「くどい! 妾ができると言ったらできるのだ!」
「ふむ、なら頼もうかの」
「ふん、すぐに見つけて――ん? なにか乗せられた気がするのだが?」
そして頷いてから、アルは不思議そうに首を傾げた。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:53:18 ID:0JctTOdx
支援
366魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:53:57 ID:KZNkj68P
「気のせいじゃ」
あっさりとオスマンは話を逸らすと声を張り上げる。
「これでフーケの居場所を探る手段はできた。それで再び問おう」
その場全員に緊張が走る。
「フーケの捜索隊へ、我こそはと思う者は、杖を掲げよ」
オスマンは皆を見渡し、声をかけた。
「のう、ミス・ヴァリエール」
「なんでしょうか」
「なぜお主が杖を上げておる」
「――っ」
揃いに揃ったメイジたちの中、ルイズだけが手に持つ剣を掲げていた。
その剣を即座に杖と判断したオスマンは、優しく話しかける。
「ミス・ヴァリエール。お主は学院の大切な生徒の1人じゃ。じゃからお主は
――」
「誰も杖を上げないじゃないですか!」
行くのを取りやめようとするオスマンをルイズは遮った。
そして真剣な目でオスマンを見定める。
「それに、アルはわたしの使い魔です! メイジと使い魔は一心同体。アルが
行くというのに主人であるわたしが行かないわけにはいきません!」
ふうむ、とオスマンは呻いた。
相手は公爵家の娘。この間の決闘騒ぎでさえ肝を冷やしたというのに、これ以
上危険に晒すのは心臓に良くない。だが、彼女の使い魔を使うからには、メイ
ジとして彼女の気持ちもわかる。
「じゃがのう……」
オスマンが言いよどんでいると。
「しかたないわねぇ……」
今まで黙っていたキュルケが杖を上げた。
「ミス・ツェルプストー、お主まで……」
呻きを前にして、キュルケは胸を張る。
「我が家の宿敵ラ・ヴァリエールが杖を上げているのに、このツェルプストー
が杖を上げないはずはありませんわ」
そしてその横からすっとまた1本杖が上げられる。
「あら、タバサ。あなたは付き合わなくてもいいのよ?」
「……親友」
言葉少なな友人の言葉にキュルケは顔を綻ばせた。
「なによ、あんたはこなくていいのよ」
ぶつぶつとルイズが呟くが、キュルケはあえて流した。
「ふむ、2人が付くなら安心じゃろうて。2人はトライアングル、しかもミス・
タバサは若くしてシュヴァリエの騎士でもある」
一瞬周囲がざわめいた。
「では、他にはおらぬか?」
オスマンが教師達を見渡すが杖を掲げる者は誰もいなかった。
「それではこの者たちに、フーケ捜索の任をまかせる」
そうして、この場は決まった。



ガタゴトと揺れる車輪に合わせ、田園風景が揺れる。
馬車に揺られるはルイズ、アル、キュルケ、タバサそしてロングビルである。
「すいません、ミス・ロングビル」
ルイズが口を開き、御者を務めているロングビルへと申し訳なさそうに言った。
「いえ、いいのよ。あなた達は馬車を上手く操れないでしょうし」
先ほど捜索隊は決まったが、肝心の移動手段でいきなり蹴躓いた。
相手は盗賊。どこに行くかはわからず、早くしないと遠くに行ってしまう。だ
からと言って『フライ』などを使っては精神力の消耗が激しく、徒歩では追い
つけず、そもそもルイズは魔法が使えない。
そしてタバサの風竜は目立ちすぎるため却下。
1人ずつ馬に跨るのも手であったが、間の悪いことに昨日の虚無の曜日に真夜
中まで馬を乗り回していた輩(バラを咥えた馬鹿)がいたらしく、人数分が確
保できなかった。
367魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:54:59 ID:KZNkj68P
そして残ったのが馬車馬だが、馬車を扱う技術は普通の乗馬とは違う。
誰も御者など勤めたことが無く、経験がなかったのだ。
困り果てる4人に助けを出したのがロングビルであった。
慣れた手付きで手綱を操りながらロングビルはルイズに微笑む。
「それに、私も心配でしたから」
「ありがとうございます」
ルイズが微笑み返すと頭にポヨンとか、ムニュウとかとても柔らかそうな感触
と重みが広がった。
「それにしてもミス・ロングビル。随分と手馴れていますわね」
キュルケだった。
その自慢のバストをルイズの頭に預け、覗き込むように御者席へと顔を出す。
「普通、貴族は馬車を操りませんわよ」
男なら10人いれば10人が喜ぶであろうその状況。だが、ああ……貧しきむ……
心を持つルイズが喜ぶはずもない。
「キュルケその無駄に重い物をどけなさいよ!」
鬱陶しそうに頭を振るが、魅惑の果実は退けず。キュルケは当然無視……どこ
ろか自慢するかの如く逆に押し付けながらロングビルへと視線を向ける。
ロングビルは、馬の方向を修正し口元に苦笑を浮かべた。
「私はもう、貴族の名を捨ているもので。生きるために色々やりました」
「へえ……それはどんな経緯で?」
その言葉にキュルケが食いついた。
「…………」
好奇の目を向けるキュルケにロングビルが寂しげな微笑を浮かべるだけ。そこ
をルイズが嗜める。
「キュルケ。変な詮索は止めなさいよ」
「なによ、いいじゃない。ねえ、ミス・ロングビル」
その言葉にも意に反さずに更に詰め寄ろうとするキュルケ。
「キュルケっ!」
「あなたはさっきから五月蝿いわね」
「人ととして聞いて良いことと悪いことが――」
口論が始まろうとしていた所を。
「――汝ら少しは黙らんか!」
御者台の上。ロングビルの横から怒鳴り声が上がった。
2人はギョッとしてそちらを見て。馬車の端で読書をしていたタバサは一度そ
ちらを見た後、また読書に戻る。
「よくもまあ、ぴーちくぱーちくと。これでは集中できん!」
怒鳴り散らすアルの手には、先に錘をつけた鎖が垂れ下がっていた。
なんの力か、ただ吊るしてあるのにクルクルと回っている。
「ねえアル……」
「なんだ」
偉く鬱陶しそうにアルが振り返った。
ルイズはそれも気にせず、疑いバリバリの目でアルを見る。
「本当にそれで、フーケの場所がわかるの?」
それにアルは鼻を鳴らし、見下すような目で返した。
「万事抜かりない」
そもそもがこのアルの発言がフーケ捜索の引き金となったのだが。

初めにアルがしたことは壁を壊された宝物庫に入り、なにかしらの“臭いを嗅
ぐこと”であった。
『くんくん……かなり“臭い”な。これを追えばよかろう』
そう言うとアルは懐から錘付きの鎖を取り出し、行く先を指定したという流れ
なのだが。

「それってどういう原理よ?」
疑わしき目を崩さないルイズ。
「ふむ、これはダウジングと言ってな。初歩だが物を探す魔術だ」
「物? 人じゃなくて?」
ひらひらと手を振った。
「人も探せるが、あの宝物庫には“かなり濃い臭い”が充満していてな」
「臭い?」
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:55:29 ID:vY+NNT0f
支援
369魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:56:25 ID:KZNkj68P
それにアルが頷く。
「ああ。それも飛び切り一級品のな。だが臭いはすれども、姿は見えず。恐ら
く盗られたのは臭いの元であろう。あの狸爺が慌てていたのも納得だ」
少し乗せられたことを根に持っているらしい。
「それで、その盗まれた『破壊の杖』と『異端の書』を探すわけ?」
「その通り、ようは盗品を取り戻せばいいのだ。汝にしては冴えているではな
いか」
「一言余計よ!」
それにルイズが返したとき。
「む」
アルの声が変わった。
「どうしたんですか?」
ロングビルが聞くと、アルは手元の錘の動きを見る。
「近い……」
錘は大きく揺れ、アルが慎重に方向を探るように翳すと
「そこの中だ」
森を指差した。
「本当に? まだ馬車で1時間ほどしか走っていませんよ?」
怪訝なロングビルだが、アルの自信は揺らがない。
「ふん、汝はわからんかもしれんが。これほどの反応。間違えるわけがない」
錘は森へと引っ張られるように伸びていた。
「…………」

馬車を降りた5人は一先ず森へと入ると、程なくして森の奥で小屋を見つけた。
「そこだ」
小屋はいかにも、長年放置されていたようで見事なまでにボロボロであった。
そして中にフーケがいる可能性を考慮して、誰が先陣を切るかという話になっ
たのだが。
「即座に行動できる、素早い人物」
「そうね、できるだけすばしっこいのいいわね」
「ええ、なにかあってもすぐに離脱できますからね」
「うむ、そのような者がいたならばなぁ?」
4人の視線が1人に集まった。
「ちょ、ちょっとっ! なんでわたしを見るのよ!?」
1歩後ずさるルイズ。
「だって……ねえ?」
「適材適所」
その言葉に皆頷き。
「ということだ、諦めな貴族の娘っ子」
カチャカチャと、からかうような声で背中のデルフも同意した。
「わ、わかったわよ!」
そういうとルイズが先頭に立ち、その後ろにアル、キュルケ、タバサが立つ。
「それじゃあ、あたしとタバサが続くわよ。ミス・ロングビル、あなたは外を
警戒してくれませんか?」
「ええ」
ロングビルが頷き、4人は小屋へと近づいていく。
ルイズは扉の前に来る。デルフへと手を回し握るとルーンが光を放つ。
後ろを振り向くとキュルケとタバサは杖を手に持ち、アルはペロリと舌なめず
りをした。
顔を見合わせ頷き合い。
「――せーのっ!!」
一気に踏み込んだ。
「――」
だが。
そこに広がっていたの、外見に相応しい場所であった。
蜘蛛の巣の張った椅子。埃の積もった食卓。だが詰まれた薪は妙に新しく、床
には埃の上に足跡が残っている。
そしてその部屋の隅には奇妙な――
「貴族の娘っ子。人の気配はねえよ」
デルフが囁く。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:57:09 ID:0JctTOdx
支援
371魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:57:31 ID:KZNkj68P
「あんた、そんなのわかるの?」
「ああ、すっかり忘れたぜ」
うっかりうっかりと言うデルフにルイズは溜息を吐いた。
「……もっと早く言いなさいよ」
ルイズは力を抜いて手を放すと、ルーンの輝きは失せる。
「誰もいないわ。それと『破壊の杖』と『異端の書』らしき物があるわ」
そして外へと声をかけた。
「どうやら、罠もなさそうね」
どやどやとキュルケに続いてアルとタバサが入ってくる。
「どれがそうなの?」
部屋を見回す3人に、ルイズが片隅のそれを指した。
そしてそれを見たキュルケは驚きの声を上げ。
「これが……盗まれた宝?」
タバサは目を目開き。
「――」
アルは――
「な――なぜこんな物がここにあるっ!?」
驚きと憤慨と苦渋とが混ざった声で叫んだ。
「ア、アル?」
その様子が気になり、ルイズが声をかけるがアルはぶつくさと呟くばかり。
「こんな物が……いや、なにかの間違いでは……だが、目の前にある物と、気
配は……」
「ちょっと、どうしたの――っ!?」
そしてただ事ではないと強く声をかけようとした時。
「――伏せて」
いきなりタバサに背を押され、全員が床に倒れる。
「ちょ、ちょっとっ」
いきなりのことに抗議しようとした言葉は。
――ズガンッ!!
小屋の屋根が吹き飛ばされることで飲み込まれた。
「な――」
綺麗に上半分が吹き飛ばされた小屋の外。
そこには30メイルほどはある、巨大なゴーレムが佇んでいる。
そのゴーレムの肩にはフードの人影。
「フーケっ!!」
叫びに反応するかのように、ゆっくりと腕が振り被られた。
それを見たキュルケは舌打ちをして立ち上がり、未だ混乱しているルイズを立
たせる。
「ほら、ぼさっとしない! 逃げるわよっ!」
そのまま手を引っ張ろうとするキュルケ。
「ちょっと待ってっ。『破壊の杖』と『異端の書』はっ!?」
ルイズがソレに視線を送るが。
「死んだらなんにもなんないでしょ!」
「でも――」
まだ反論しようとするルイズに、キュルケはいきなり抱きつき。
「っえ!?」
そのまま飛んだ。
――ズズン……
その場所をゴーレムの腕が押し潰す。
「いつまでも駄々こねてるんじゃないわよ!」
付いた泥を払いながらキュルケが怒鳴った。
「――っ!」
ルイズは反射的に顔を背ける。
そこでは、ゴーレムが『破壊の杖』と『異端の書』をすくっている所であった。
「汝らいつまで悠長に喧嘩しておる!」
先に離脱していたのか、後ろにアルとタバサが立っている。
「ふん……」
ルイズが顔を背けると、タバサは静かに言う。
「一旦、戦況を立て直す」
そして指を唇で咥えると、高い音色が響く。
372魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 20:58:51 ID:KZNkj68P
「立て直すって、タバサ。あなたのシルフィードもすぐに来るわけじゃ――」
すると森の上空を黒い影がよぎった。
「きゅい!」
「来たよー!」
バサリと黒尽くめになったエルザを乗せたシルフィードが目の前に降りてくる。
「…………」
あまりといえば、あまりの登場の早さに声も出ない一同。
「どうせすぐ後をつけてくるのはわかってた」
しれっと言うとタバサは早々にシルフィードに乗り込む。
「早く」
タバサに促されるように次に乗り込むキュルケとアル。
だが。
「ルイズ、なにやってんの。早く乗りなさいよ」
キュルケが声をかけるが、ルイズはその場を動こうとしない。
フーケは宝を回収したのか、ゴーレムがダラリと腕を下げてこちらへ向き直っ
ていた。
「っち。汝、はよせんか!」
アルがイラつきながら言うが。
「わたしは、引かないっ」
その言葉に息を呑んだ。
「なにを言って――」
「――来る」
ゴーレムが1歩踏み出した。
アルの反論は呑みこまれ、タバサの指示でシルフィードは空へと舞い上がる。
そしてそれを見送りルイズはデルフを握った。
「おいおい、貴族の娘っ子。いくらなんでも、こりゃあ無謀ってもんだろ?」
カチャカチャと鍔が鳴る。
「無謀でもなんでもないわ」
スラリとデルフを抜き、煌々とルーンが輝く。
「それにね。わたしは貴族の娘っ子じゃなくて――ルイズよ」
「っは。その気位気に入った! さすが『使い手』だ!」
スッとデルフを構えると、ルイズは息を吸う。
「いくわよ!」
そして爆発するようにゴーレムへ向かって走り出した。



「馬鹿! あの子! なにやってのよ!」
キュルケはシルフィードの上で怒鳴った。
下ではルイズがゴーレムへ向かい、攻撃を行っている。
「タバサ! あの子に近づいて!」
吹き付ける風にも負けず、タバサへ声を張り上げるが、返って来た返事は簡潔
だった。
「無理」
「なんでよ!」
即座にキュルケが怒鳴る。感情が昂っていた。
「昨日と同じ理由」
「……っ」
つまりは、人数が多すぎるのだ。
このまま、遠くから魔法を使うのはいいが。牽制以外のなにものでもないだろ
う。
「どうしたらいいのっ!」
「ふむ――なんともめんどくさい契約者だ」
噛み砕かんばかりに歯を噛み占めるキュルケの傍から、そんな声が上がった。
その声の主へと顔を向けると。露骨にやれやれと肩を竦める銀髪の少女がいて。
「こちらは任せるぞ」
「なにを――」
ひょいっと虚空へ向かい、飛び降りた。
「へ――っ」
373魔導書が使い魔-07a:2009/04/02(木) 21:00:06 ID:KZNkj68P
突如のことに固まるキュルケ。即座にタバサが『レビテーション』を唱えよう
と杖を構え。
――紙が舞った。
バサバサと、少女の体が“紙へと分解して”いく。
「なに……あれ」
そっと呟いた言葉はその場の全てを体現していた。
紙は風に逆らう不自然な動きで、渦を巻いて眼下を目指す。
その先には――
「――ああもう! 誰も彼も勝手なことばっかりっ!」



「はあああああっっ!!」
ルイズは全体的に動きの遅いゴーレムの足元へ、一瞬の踏み込み。
そして踏み込みの勢いをそのまま剣を振る力へと変換し、横薙ぎに振り抜く――
「どうっ!?」
渾身の力を込めた一撃は、見事ゴーレムの足へと食い込み大きな裂傷を作るが。
「ダメだ! やっぱりこいつすぐに治りやがる!」
出来た傷はすぐに埋まっていく。
「っく!」
そのまま、間髪いれず2撃目を入れようとルイズは振り被る。
「危ねえ! 下がれ!」
「っあ!」
デルフの言葉に、振り被った体勢から無理やり足首だけで後方へ跳躍した。
――ゴバッ!!
間一髪。横へ振るわれた腕が、ルイズがいた場所を地面ごと削る。
大量の土砂が舞い、木々にぶつかりそれを押し倒す。
「あっぶな」
「気をつけな。当たればただじゃすまねえぞ」
「見ればわかるわよっ」
緊張からかジワリと額に汗が浮く。
「次が来るぞ!」
「――っ!」
ゴーレムが大きく足を振り被る。
それを避けようとルイズが足へと力を込め――
「痛!?」
足首から大きな痛みが奔り、ガクンと膝を突いた。
先ほどの跳躍の時に負荷を掛けすぎたのか、ズキズキと響くような痛みが広が
る。
「おい! なにやってるんだ!」
カチャカチャと急かす声に顔を上げた。
「うるさ――」
ゴーレムの足が目の前で、こちらへ向かい蹴りだされる所であった。
一気に巨大な爪先が迫り――
目の前に――大量の断章が渦を巻いて割り込んできた。
書の断片は渦の中心へと集まっていき、その中心で少女が手をかざし、印を切
り――
「――第四の結印よ」
聖句と共に五芒星形が浮かび、それはあらゆる障害から護る盾となる。
――ガッ!!
そして大量の土の塊と盾とが拮抗した。
「ぐっ――!!」
バチバチと火花を飛ばし、双方力をぶつけ合う。
じりっとアルの手が震えた。
それに対しゴーレムに更なる力を込めようとして、フーケは杖を振り上げ――
ゴーレムがフーケを覆うように腕を上げる。
すると、火球と風礫が土の表面で弾けた。
上空のシルフィードから放たれたタバサとキュルケの援護である。
気が逸れたのは一瞬。だが僅かにゴーレムの力が緩まり、アルは防禦陣を、防
勢から攻勢へと切り替えた。
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:02:08 ID:ekvKCCPm
支援
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:04:08 ID:0JctTOdx
支援
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:13:06 ID:tGfPC2eG
さる喰らっているみたいだ

代理入りますわ
377魔導書が使い魔-07a(代理):2009/04/02(木) 21:13:47 ID:tGfPC2eG
腕を振るう。
「――弾け飛べっ!!」
今まで耐えることへと注がれていた力が、迎撃へと変わり。ゴーレムの足を弾
き飛ばす。
「――っ!?」
予想外の衝撃にゴーレムがたたらを踏み、重々しい音を響かせ木々を巻き込ん
で大きく倒れた。
それを見たアルは鼻を鳴らすと振り返る。
「なにをやっておる、このうつけ! 汝1人で渡り合える相手か。身の程を知
れ!」
叱咤されたルイズは一瞬怯むが、すぐにカッとなり言い返す。
「五月蝿いわね! そんなのやって見なくちゃわからないじゃないっ!」
その様子に、まずいとアルは感じた。
(力に呑まれかけているな)
望んでいた魔法ではないにしろ、与えられたルーンの力。いや魔法で無いから
こそ、ルイズはその力に頼り溺れそうになっている。
(だが……それにしては、少々おかしくもある)
その反面、それだけでは説明しきれないような差異もある。
まるで何かに急かされているような強迫概念をルイズから感じるのだ。
そう、かつて擦り切れ燃え尽きた――契約者達のような。



ルイズは焦っていた。
なにが、ではない。
あえて表現するなら全てに対してルイズは焦っていた。
状況が、立場が、環境が、工程が――“物事の歯車が回り始めてから”ルイズ
の焦りは始まっていた。
魔法/学院/仇敵/使い魔/契約/事件/ルーン/力……
昔からルイズは自らを急かしていた。
早く速く――
足りない部分を補うために駆け抜け、足りない部分を埋めるために暗中模索し
常に走り続ける。
そして春の使い魔の儀式に“成功してしまった”のだ。
そこから彼女の胸で常に空回りしていた思いが噛み合ってしまう。
途中、魔法という力はまだ身に付いていないとわかったが。それとは別の新た
な力が宿ったことでそれは補われる。
今まで噛み合わなかったばかりに、加減をしらない歯車が回ったのだ。
当然の如く、全力で回される歯車は周囲との齟齬を起こし。
本人はそれまでの経験が無いゆえに、知らずにして磨耗していく。
だが、たとえ気づいていたとしても。貴族たらんとする彼女は、止まることは
しないであっただろう。
そして――胸を突くような覚えの無い“記憶”が彼女を更に追い立てる。
それはふと気を抜くと瞼の裏に浮かぶ――怒れる男の形相――
――憤怒と憎悪の道の果てにて――
    ――業火と悪鬼羅刹共々を貪り――
        ――復讐という艶華を咲かせ――
            ――虚無という空ろと共に枯れゆく――
それはドロリとルイズの心へと染み渡り――
目の前でなにごとかアルが叫んでいる。
その言葉は認識できる、理解もできる。
だが、納得するわけにはいかない。できるはずもない。
なぜなら貴族とは――
「……わたしは貴族よ。魔法を使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ」
視界にアルの姿があるが――それは“自身の使い魔”としてしか認識されない。
「敵に背を向けない者を、貴族と言うのよ……」
それは錆び付き、捻じ曲がり……だが折れることができなかった者の声であっ
た。
まるで自分に言い聞かせるような言葉と共に、剣を握り締め立ち上がる。
「お、おい……」
378魔導書が使い魔-07a(代理):2009/04/02(木) 21:14:44 ID:tGfPC2eG
カチャリと鍔が鳴るが、反応はしない。
「……わたしは……貴族なのよ」
本来、そんなことがわかる者はいるはずもないのだが――
「――」
かつての己を抉られる者がここいる。
理由や経緯こそ違えど。捻じ曲がった信念を“かつて抱えていた者”と“現在
も抱える者”は、出会っていた。
そして立ち尽くす2人の意識の外……モゾリとゴーレムの手が動く。



「っち」
フーケは押さえきれない苛立ちと共に舌打ちをしつつ、体を起こす。
ゴーレムごと倒れる瞬間に、翳していた手で自分を覆ってなんとか大事は免れ
たのだ。
集中力が切れず、ゴーレムが形を保っているのは奇跡以外なにものでもない。
今回のヤマはアクシデントの連続である。
宝を盗み出す段階で生徒に見つかり、ほとぼりが冷めるまで隠そうとした宝を
嗅ぎつけられ、やりたくはなかったが口封じさえも上手くいかない。
わかっている。こんな商売がいつまでも上手くいくはずもないことを。こんな
ことをして、まともな死に方をするはずもないことを。
だが、誰にでもあるように――彼女にも譲れないことがあるのだ。
そっとゴーレムの指の隙間から空を覗く。
まだ警戒しているのか、そこにゴーレムの上空を旋回する風竜の姿があった。
タバサとキュルケと言ったか。両方ともトライアングルのメイジであり、さす
がに油断はできないが。そもそもフーケとは経験量が違う。
貴族……つまりはメイジ相手に盗みを働いてきた彼女にとって、メイジ相手の
虚の突き方や弱点は熟知している。
次に、ゴーレムが倒れた原因。今回最大のイレギュラーを覗き見た。
今までフーケが見てきた人間の中ではぐんを抜いて高い身体能力を発揮する少
女――ルイズ。その使い魔であり、ゴーレムの一撃を真正面から防ぎ弾き返し
た少女――アル・アジフである。
ルイズに関しては、ゴーレムを作る時間さえあれば気にするほどのことではな
いが。問題がアル・アジフと名乗る少女であった。
空中に紋章を描き、それが30メイルあるゴーレムの攻撃をも防ぐ障壁となる。
どう考えても普通の魔法ではない。
先住魔法とも考えたが。職業柄たまに入る裏の情報からして、それも違う気が
する。
なにがともあれ、現実は現実と受け止め現状の打開を図らなければならない。
相手は数が多い。いくら自分が熟練したメイジとはいえ、長期戦となればこの
ゴーレムを維持する精神力が先に切れるだろう。
そのためにはどうするか。
空にはメイジを乗せた風竜が舞い、地には攻撃を防ぐ少女がいる。
ゴーレムによる直接攻撃は双方共に効き目は薄く、かといってこのゴーレムが
あるからこそ有利な面があるのだ。
だとすれば、どうすればいいのか。
ギリリと杖を握りこみ――気が付いた。
しかも再び空を見ると、風竜も高度をいくらか落としてきている。
そして下の2人はこちらのことを見ていない。
ニヤリと笑うと、フーケはゴーレムへと指令を送った。


「あの2人はなにやってのよ!」
キュルケは再度怒鳴った。
先ほどのアルの一撃はルイズを救い、ゴーレムを倒れさせるといった度肝を抜
くことをやってのけた。
だが未だフーケのゴーレムは健在であり、こちらは決定的な一手を持たないこ
とをキュルケは理解している。
だからこそ、地上で倒れたゴーレムに注意も払わずにいる2人を見て苛立ちを
隠せない。
379魔導書が使い魔-07a(代理):2009/04/02(木) 21:15:25 ID:tGfPC2eG
何度もそんな2人に注意を促そうとも思ったが、ここは上空。今日は風が強く、
声はかき消され。魔法で声を届けようにも、さっきから沈黙を守るゴーレムの
対策を思うと不用意に魔法は使用できない。
ゴーレムの上を旋回しつつ見守る中で、キュルケの苛立ちは溜まっていく。
それにゴーレムが動かないことも拍車をかけていた。
そしてとうとう――
「タバサ、シルフィードの高度を落として!」
苛立ちを消化しきれず、風も強いこともありタバサへと叫ぶ。
「危険」
タバサの返事は短く。
「そうだよー。メイジは危険なんだからね」
「きゅい!」
おまけも付いていた。
だが、危険なのは下の2人も一緒であり、せめてそれを意識させねばならない。
「お願いタバサ……」
「…………」
それにタバサは考えるように黙り込むと。
「きゅいっ」
杖を下へ向け、シルフィードがそれに応えるように降下を始めた。
ルイズたちのいる場所はそこそこ拓けているが、シルフィードが降りるには少
々狭い。
手早く降りるために、『レビテーション』を予め準備しておく。
そうしていると、ふと視界の端でなにかが動いた気がした。
それに真っ先に反応したはエルザだった。
「シルフィ! 避けてっ!」
「――っ!?」
姿勢が急激に傾く。
その空いた空間を――唸りを上げて生木が埋めた。
「あ――」
ふわりとキュルケの体が浮く。
下へと意識を向けていた彼女はシルフィードの背から宙に放り出されていた。
高度が低い今、普通なら詠唱すら間に合わなかっただろう。『レビテーション』
を用意していたのが幸いした。
浮力を持った体で、嫌な予感を感じつつ先ほどの木が来た場所を見る。
そこには立ち上がりながら、手近な木々を引っこ抜いているゴーレムの姿あっ
た。
ゴーレムは腕を振り上げると、第二投を放つ。
それはキュルケを回収しようと近づいていたシルフィードへと向かう。なんと
かシルフィードは避けてはいるが、これではキュルケにうかつに近寄れない。
そして、このままではこちらも狙われかねない。
そう思った時、ゴーレムの肩口。
フーケの視線の先に気が付いた。
それはシルフィードやキュルケには向けられず、地上へと向けられている。
キュルケは急いで地上へ降下し始めた。



それに気が付いたとき、我が目を疑った。
空を木々が飛んでいるのだ。
否。飛んでいるのはなく、投げられているのだが。そこまで思考が回らなかっ
た。
常識外れな物事にここ最近数多く出会ってはいるが、それでも常識外のことに
出会って平然とできるほどの耐性はルイズにはまだない。
なにより、
「なに!?」
それは魔導書であるアルも驚いていることから仕方がなかった。
振り向いた先には、半身を起こしたゴーレムがおり。その手には、そこらから
引き抜いたのか木が持たれている。
木といっても、ゴーレムの大きさからいって小枝のように見えるが、当然の如
く成木である。
380魔導書が使い魔-07a(代理):2009/04/02(木) 21:16:09 ID:tGfPC2eG
次々とゴーレムは手にした木々を空へ投擲し、その先ではタバサの風竜がそれ
を避けている。
そして、ようやくそれを認識した時、そのゴーレムの肩――フードの下に隠さ
れたフーケの視線がこちらへ向いている気がした。
「汝! 下がっておれっ!」
再びアルが手を翳す。
またも聖句と共に障壁が現れると、それに木が衝突した。
障壁に阻まれ、一瞬火花を散らすと木は弾かれ後方へと流れていく。
だが、それだけですむはずもなく。ゴーレムはすでに次の木を振り被っている。
そして、投げられた。
「くぅ……っ!」
それも障壁は弾くが、さらに次が来る。
先ほどのゴーレムの一撃と比べるといくらか軽いであろうが、絶え間なく続く
投擲はアルを唸らせるには十分であった。
「ぐ、くっ!!」
アルの声に耐えるようなニュアンスが入り始める。
「ア、アル……大丈夫なの」
足首の痛みを我慢し、アルへと近づく。
「ふんっこれしき……と言いたい所だ、がっ!」
衝突した木が折れ、その破片が地面にぶつかり抉る。
「少々、不味い、な……」
そう言うアルの額には汗が浮き、息が上がっていた。
「おいおい、白い娘っ子。お前大丈夫かよ」
デルフの言葉にアルは薄く笑う。
「ちと、魔力が足らんだけだ……せめて、正式な契約さえ、結ばれておれば……」
それはポツリと漏れた小言であり、なんの意図もないものであったが。
その言葉は、ルイズの胸を抉る。
自分さえ/魔法さえ/契約さえ、ちゃんと出来ていればこんなことにならなかっ
たのでないか。
「わたしさえ……ちゃんとしていれば……」
深く、己の底へと陥りそうな声に対しアルが叫ぶ。
「汝! 沈んでいる場合か!」
次が来た。
それは今までの木々ではなく、巨石であった。
「無駄だっ!」
印の光は鈍ったものの、破壊されるにはまだ足りない。
巨石は障壁にぶつかり、派手に火花を散らした後、粉々に砕け散る。
そう、まるで砂のように粉々になり。視界を覆う粉塵となった。
「なんだとっ!」
それはゴーレムの一部を脆い岩に変化させ切り離した物だとアルが理解できる
はずも無く。
そして、粉塵の中から巨大な爪先が現れる。
それが前と同じならば、まだ青息吐息ながら耐え切るか拮抗できただろう。
だが、現れた爪先は黒く染まった鉄であった。
――ドバンッッ!!
1秒にも満たない対抗は障壁の罅へと変換され、砕け散った障壁と共にアル
が吹き飛ぶ。
「ぐっああっ!!」
直撃こそ免れたが、茂みを突き破り遠く木の幹に叩きつけられた。
「アルっ!!」
ルイズは吹き飛ばされたアルへと視線を向けるが。
「おいっ! 他人を心配している暇はねえぞ!」
それで自分の陥っている立場を理解した。
一陣の風が粉塵を巻き上げ、晴れた視界を占めるように土の巨人が聳え立って
いる。
「こりゃ……やべえな……」
デルフが呟き、ルイズの手が震えた。
足に走る鈍痛が、凍りつくような悪寒が鮮明になる。重い絶望が腹へと溜まり、
吐き気を促す。
「…………」
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:16:49 ID:bwtHdRHV
>347
「コード・ハルケギニア」ですね
しかしこのスレで要塞シリーズ知ってる奴なんて、他にいないだろうな
382魔導書が使い魔-07a(代理):2009/04/02(木) 21:17:01 ID:tGfPC2eG
フーケが杖を振るう。
ゴーレムがそれに合わせて腕を振り上げる。
その瞬間は、冗談みたいに間延びして感じられた。
噂に聞いた走馬灯は無い。ただ、ゆっくりと……本当にゆっくりと時間が流れ
る。
懺悔もなく、後悔は多すぎ、絶望には飽きていた。
伸びる腕、迫る土壁、削られていく景色――割り込む赤い髪。

「――あんたなにしてんのよっ!」

突き飛ばされた。
「え――」
本当にゆっくりと、視界が離れていく。
そこには普段からいがみ合っていた仇敵がいて、それが見たこと無いほどの怒
り顔でこちらを睨んでいて、自分を突き飛ばした瞬間にほんの少しだけ笑って、
杖を握った手が印象的で、彼女は何事かを呟いて――
――ルイズが倒れる。視界が一瞬途切れた。
かなりの勢いがあったのか、ゴロゴロと転がった後。
再び見た光景は。
先ほどまでルイズがいた場所へ――

――土くれの腕が、柱のように突き立っていた。

地面へみっともなく四肢を投げ出したまま、ルイズの視線は離れない。
「っち」
フーケが舌打ちをした。
ゴーレムが腕を上げる。
そこには――

――誰も立っていない。

「――あ、あああ……」
何かが……決定的何かが、砕け割れる音を確かに聞き。
砕けた何かが、喉から搾り出された。


「――あぁぁぁぁあああああああっ!!」
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:17:44 ID:tGfPC2eG
127 :魔導書作者:2009/04/02(木) 21:06:37 ID:R8Doyfsg
今回はここまでです。
なんだか、色々ぶっちぎっていきそうなルイズが好きです。

b版に関してはほぼ8割方完成しているので、早ければ明日にでも投下できます。
では、拙い文を読んでくれてありがとうございます。

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代理終了
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:40:01 ID:fm32JCd1
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 22:03:04 ID:p3Pk7OLp
乙。
オスマンが格好良くてなおかつ老獪だな
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:08:12 ID:nIqNZq4h
>381
いあ、知ってはいるけどね
荒巻氏の要塞シリーズだね
確かにあれもシミュレーションなのは確かだ
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:22:52 ID:UrAkdM2k
        、ゞヾ'""''ソ;μ,
       ヾ  ,'3     彡
       ミ         ミ   荒巻スカルチノフの要塞
       彡        ミ
       /ソ,, , ,; ,;;:、ヾ` 

  l ./====/ \| .l ,、| ./ , 、    \''゙ <.| i=' `l ヽ\     _  7 フ,、
  / /.l`‐- ゙、| |=| .i- l ./= ,>   /,_、.ノ| |.| !∧.| l'    !、`'゙ _,,,..ゝ_,、
. /  |.| || | | |.|`' __'`ノi、l / /    二| /'゙∠,,> = '゙l .|     ゙7 .l ∠~_,,,,.)
 ~| |.| !! |.| .|.| | | .|ヽ. ./     .フ  <'ヾフ / .| .|    /!./ /_  ゙
  | .|.!-'`二l  .|| |._| .|/  `‐-   /,、 |゙、ノ.>  '-┐、 `.-‐'' .// ./ ヾ‐---‐、
  |_,,,|   \_丿!-‐'>,.-'゙~`、/   ` |_,,l/-‐'゙‐、_| `‐- -‐' ヽ_/  `‐- - ‐'
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:24:16 ID:yNAzxd0W
仮想戦記の類からの召喚はまだないかな。
オストラント号の代わりに富岳号、日本武尊、轟天号、土佐、紀伊、
播磨、やまと、みらい、そして大和
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:58:41 ID:uOzD/SDU
>388

ほとんど海中か海上の戦艦か潜水艦じゃねえか
轟天号はともかく他のはオストラント号のかわりにするのは難しいだろ
どいつもこいつもガリア両用艦隊内陸にいても圧勝しそうではあるけど
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:59:02 ID:8kkZbIXy
皇国の新城が召喚されたのが、それに近いかな?
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:03:44 ID:yNAzxd0W
>>389
風石大量に積載して空中戦艦にしちまえば?
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:07:48 ID:+nFNdFFM
やまとは空中戦ダメだろw
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:09:47 ID:IRlYDdu8
いっそ戦国自衛隊から(ry
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:12:53 ID:nE2Tnwte
ゴルベーザ兄さん召喚出来て
ジョセフがしでかしたこととか知ったら憤慨しそうだなぁ。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:16:07 ID:WRmZ2o/b
>>394
「Wメテオやってもいいですとも」ですね分かります。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:22:09 ID:YAgJKXFT
ヴィランドサガからトルフィンを
うん、言うことを聞くようなやつじゃないな
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:36:47 ID:YppdeE/q
帰り方を探してやるから使い魔やっとけ。って言われたら従うしか無いんじゃね?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:03:26 ID:tMPQ/QEF
まとめWiki見たら、
ご立派な魔王や
しゃべるポンティアック・ファイアバードトランザムまで才人の代わりに召喚されてんのな。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:09:37 ID:rODQqK62
>>388-389
愚連艦隊なら平成編の後に宇宙戦艦手に入れているはず
複合和紙装甲の宇宙戦艦なんだろうな……
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:11:15 ID:L4PK5Sjt
>>388
そこはホレ、現実世界にも仮想戦記ばりの代物が…
ゼーアドラー号やら雪風やらが。

生身だったらルーデルとかヘイヘとか舩坂とか。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:14:14 ID:Yb8qHfjc
もう銀河中心殴りこみ艦隊ならぬ東方中心殴りこみ艦隊にしようぜ!1
402虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 01:50:02 ID:axIX4tx7
2:55頃から投下させてください。
403虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 01:50:37 ID:axIX4tx7
2時じゃない
1:55でしたごめんなさい
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:52:43 ID:muKi8ZIf
一瞬ぎょっとしたぜ支援
405虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 01:55:23 ID:axIX4tx7
朝の冷たい空気の中、風竜の背中から、キュルケ、ギーシュ、タバサ、ティトォはタルブの村を見下ろしていた。
村の近くには、見渡すかぎりのだだっ広い小麦畑が広がっている。上質の小麦が採れることで有名な土地なのである。
タバサは小声で風竜に命じる。きゅい、と一声鳴くと、風竜はばっさばっさとはばたいて、村の広場に降りた。
するとたちまち大騒ぎになってしまった。
「うわあああ!竜だ!竜!」
カンカンカン、と鐘がならされ、村人たちが家から飛び出してくる。
村人たちは、風竜を遠巻きに取り囲んだ。棒やくわを持って、みな一様に怯えた顔で風竜を見つめている。
「あちゃあ、失敗したわね」
キュルケが困ったように呟いた。田舎に暮らす人たちにとって、竜は恐怖の象徴なのだ。
どうしたものか、とキュルケが立ち上がろうとすると、なにやら驚いたような、若い女の声が聞こえた。
「まあまあ!みんな、どうしたの?」
キュルケたち四人は、風竜の背中から顔を覗かせて、声のする方を見た。
すると、純朴な感じの、黒髪の女の子がこちらに駆け寄ってきていた。
「はぐれ竜が迷いこんできやがったんだ!危ないから家に隠れてろ!」
「いやね!おじさん、あの竜の背中を見て。あれは貴族様の竜じゃない」
少女はくすくす笑う。
村人が竜の背中を見ると、なるほど、貴族のマントを身にまとった人影があった。
「ほら、みんなもそんなに怖がらないで。いいですか、貴族の乗る竜には、危ないことなんてなんにもないんですよ」
少女はそう言って、村人たちを落ち着かせる。その口ぶりは、なんだか得意げであった。
村人たちが、棒やくわを降ろすのを見て、一行は風竜の背中から降りた。
キュルケは髪をかきあげて、黒髪の少女のほうを向いた。
「助かったわ。あなた……」
黒髪の少女は、驚いた顔になった。
「まあ!魔法学院の皆さんじゃありませんか」
「あっ!きみは!」
ギーシュも驚いたように叫ぶ。キュルケは怪訝な顔になった。
「なによ、ギーシュ。知り合い?」
「学院のメイドだよ。彼女は、そのう。ぼくのちょっとしたトラブルの現場に居合わせてね……」
ギーシュは気まずげに呟いた。どうもあんまり話したくないらしい。
ごにょごにょ言うギーシュの言葉を、ティトォが引き取った。
「シエスタじゃないか。そっか、ここはきみの故郷だったのか」
「あっ、あなたは……、アクアちゃんのお兄さんの……、ティトォさん、そう、ティトォさんだ」
シエスタは、自分と同じ黒髪の少年を見て、ぽんと手を叩いた。
そっか、あんまりお話しする機会がなかったから、顔忘れてたけど。
いつもいつもミス・ヴァリエールがアホだの使い魔だの愚痴ってるティトォさんだ。
「ティトォさんがいるってことは、ミス・ヴァリエールもいらっしゃるんですか?」
「ルイズはいないよ。なんだか、行き違いになっちゃったみたいで」
「そうなんですか……」
シエスタはちょっとだけしょんぼりした声になった。
そんな様子を見て、キュルケはぴんと来た。
そういえば最近、ルイズがメイドと仲良くしてるって噂を聞いたことがある。それがこのシエスタなのだろう。
「それで、どうして皆さんタルブに?」
「宝探しに来たのよ」
「はい?宝……、ですか?」
シエスタは首を傾げる。この村に宝物があるだなんて、初耳だ。
406虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 01:56:26 ID:axIX4tx7
「『魔王の骨』って言うらしいけど、聞いたことないかな」
「魔王の……、うーん。あ、ひょっとして。でも、あれは……」
「なになに?」
キュルケが目を輝かせて、ずいと身を乗り出した。
「いえ、みなさんの言う『魔王の骨』かどうか、ちょっと分からないですけど、心当たりが一つ……」
「それ!それよ!それにちがいないわ!ねえ、案内お願いできるかしら」
「え、あ、あう。はい。わかりました」
キュルケの勢いに押されて、シエスタは後じさった。
「それじゃ、あの。付いてきてください」
シエスタはそう言って、村はずれの森に向かって歩き出した。
キュルケたち一行も、その後に続いて歩き出す。
シエスタは先導しながら、ぽつりと呟いた。
「それにしても、なんだか魔法学院からのお客さんが多いなあ」


「これが『魔王の骨』か」
「そうね、確かにそう呼ばれるのも納得ね」
ギーシュとキュルケはそれを見て、感嘆の声を上げた。タバサはノーコメントだった。
タルブの村から少し歩いた森の中、窪地となった場所に、それはあった。
「すごいな」
「そうね、すごいわね」
ギーシュとキュルケはそれを見て、ぽかんとして呟いた。タバサはマントの下から本を取り出して、読みはじめた。
「確かにすごいけど……」
キュルケはため息をついて、首を振った。
「これは、とてもお宝とは言えないわねえ」
シエスタに案内されて、やってきた森の中にあったものは、まさしく巨大な骨であった。
森の木々より遥かに背の高い、アーチ状の骨が、何本も地面から突き出ている。形からしてこれは肋骨だろうか。
そのままぐっと視線を先にやると、ところどころに背骨らしい部位が地面から突き出ている。
「大昔の、竜の骨じゃないかって言われてます。削り取って薬にして飲んでる人もいます。通りがいいから、村のみんなは「とんがり岩」って呼んでるんですよ」
シエスタが説明した。
「竜って言っても、きみ。こいつはゆうに百メイルは越えてる!そんなに大きな竜なんて聞いたこともないよ!」
ギーシュはぶるりと身を震わせた。
「なんだっていいじゃない。もう骨なんだもの、なにができるっていうじゃなし」
「うん、まあそれはそうだが、でも考えてもみろよ。こんなにでっかいドラゴンが、かつてはこの空を飛び回ってたんだぜ。なんというか、ロマンをかき立てられる話じゃないかね」
ギーシュはうっとりと、巨大ドラゴンの背中に跨がった自分の姿を思い浮かべた。
竜騎士隊、グリフォン隊、マンティコア隊の三隊で構成されたトリステイン王国の魔法衛士隊は、男子の憧れの的である。
その中でも竜騎士隊は、花形であった。当然ギーシュも少なからず憧れている。
突然ギーシュの足下が盛り上がって、ギーシュはバランスを崩して尻餅をついた。
見ると、地面から顔を出しているのは、ギーシュの使い魔の巨大モグラであった。浮気性な主人に、モグモグと抗議の声を上げる。
「ヴェルダンデ!ああ、ごめんよ、きみというものがありながら、つい余所見をしてしまったようだ。でもわかっておくれ、なんたってぼくはきみのことが一番大事なんだからね」
ギーシュはすさっ!と巨大モグラに抱きついた。
「あんたはいつも余所見ばっかりでしょ」
キュルケは気のない声で言った。結局お宝を見つけることができなかったので、もう『魔王の骨』への興味を失ってしまったようだった。
タバサも地面に座り込んで、すっかり読書モードである。
ティトォはと言うと……、『魔王の骨』を見つめて、何やら考え込んでいるようすだ。その顔には、真剣な表情が浮かんでいる。
「ダーリン、あなたもあの骨が気になるの?殿方って、ああいうのがお好きなのね」
キュルケはくすくすと笑った。
「いや……、違う」
「?、なにが?」
キュルケはふと、ティトォの顔を見た。
ティトォは『骨』とは違うところに視線をやっていた。ティトォが注目しているのは、巨大な骨ではなく……、骨を取り囲むように生えている、樹の方だった。
指でこめかみをトントンと叩いている。ティトォが考え事をするときの癖である。
よく見ると、ずいぶんと変わった樹だった。周りに生えている森の樹とは違って、葉が一枚もない。
そして葉の代わりに、丸い木の実のようなものが枝にくっついていた。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:57:40 ID:kvSqJ5t/
支援
408虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 01:58:53 ID:axIX4tx7
「あの樹がどうかしたっていうの?」
「あれと同じ……、いや、似ているものをぼくは知ってる。あれは……」
ティトォの言葉は、背中からかけられた声に遮られた。
「おや?君たちは!こんなところで何をしているのだね」
どこかで聞いたことのある声に、キュルケとギーシュは振り返った。
「ミスタ・コルベール!」
木陰から現れたのは、つるりと禿げ上がった頭の魔法学院の教師、コルベールであった。メイドのシエスタといい、意外なところで、意外な人に出会うものである。
「おはようございます、ミスタ・コルベール」
コルベールの姿を見ると、シエスタはぺこりと頭を下げて挨拶した。
「おお、おはよう。どうしたんだね、君がここに来るなんて、珍しいね」
キュルケは首をかしげて、シエスタに尋ねた。
「あなた、ミスタ・コルベールとどういう知り合いなの?」
「ミスタは、二日前くらいからタルブに滞在してらっしゃるんですよ」
「そうとも!」
コルベールが叫んだ。
「わたしは休暇中なのだ。そこでこのタルブの村へと、研究にやってきたというわけだ」
見ると、コルベールはなにやらいろいろな道具のつまった鞄を肩にかけている。
コルベールの生きがいは、研究と発明である。研究対象を探して、休暇となるとあちこちの遺跡を探索している。
そして大抵は、なにも成果を得られぬまま帰ってくるのであった。
「はあ、そうなんですの。確かにミスタの興味を惹きそうですものね、これ」
キュルケはこんこんと『骨』を叩いてみせる。
コルベールは一瞬きょとんとしたあと、笑いながら言った。
「いや、違うんだよミス・ツェルプストー。わたしが研究しているのは、骨ではない。そのまわりの、樹のほうさ」
「樹?」
キュルケは怪訝そうな声を上げた。ギーシュもその言葉に、辺りを見回す。
「ただのへんてこな樹じゃないですか」
「いや、この樹には、なにか不思議な性質があるのだ。私は偶然にもそれを発見した」
「不思議な性質?」
「そうとも!この樹には、魔力が流れている。といっても、わたしたちが操る魔力とは少し違う種類のエネルギーだ。
 そのエネルギーは、動物や植物に影響を与えているようなのだ。まだ調べている途中だから細かなことは分からんが、とにかく実に興味深い樹なんだよ、これは!」
コルベールは興奮してまくしたてる。
「樹じゃないですよ」
ふいに、ティトォが呟いた。コルベールと、キュルケ、シエスタ、それにギーシュは、ティトォのほうを見た。
タバサは本を読んでいたが、なにやら訳知りな様子のティトォの声の響きに、本に視線を落としたまま、耳を傾けた。
ティトォは自分に注目が集まっているのにも気付かないようすで、その奇妙な樹を見つめながら、言った。
「これは、根です」


『星の樹』
それは、この大地の心臓とも呼ぶべきもの。
大地の奥深くを中心とし、地表に向かって根を伸ばす。
大地をひとつの生物と考えるなら、張り巡らされた『星の樹』の根は、大地の神経や血管のようなものである。
根を伝って、大地の持つエネルギーは大地のすみずみにまで行き渡り、大地を潤す。
森は広がり、新たな草花が生まれ、生き物は次の段階へと進化する。
そして動物が卵を温めるように、大地より生み出され、育てられた動物や植物、火や水は、また大地を温める。
そしてまた、大地は新たな命を産み落とす。
これこそがエネルギーの循環法則。
『星の樹』は、エネルギー循環を司る特別な樹なのである。
そして『星の樹』は、その根に大地のエネルギーを少しずつ溜め込んで、存在の力の結晶体『星のたまご』を実らせるのだ。


その日の昼、ティトォたち一行はシエスタの生家で昼食をごちそうになった。
ふるまわれた野うさぎのミートパイは極上で、ここしばらくまともな料理を口にしていなかった一行は、夢中になって平らげた。
細い身体のわりに健啖家であるタバサなど、おかわりまでしていた。
貴族が家の料理をおいしいと言ってくれるのが嬉しいのか、シエスタの両親は気前よく追加のパイを焼いた。
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:00:00 ID:kvSqJ5t/
支援
410虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 02:00:22 ID:axIX4tx7
食後には、あまった生地に砂糖をまぶして焼き上げた菓子パイがふるまわれた。
「パイづくしって感じねえ」
キュルケは、ナプキンで上品に口元を拭いながら呟いた。
「タルブは、上質な小麦が採れるんですよ。パイとパンは、この村の名物なんです」
なるほどな、とティトォは納得したようすで、お茶をすすった。
地表に顔を出した『星の樹』の根は、土地に恵みをると言われているのだった。
シエスタが食器を片付けていると、小さな子供たちが部屋に入ってきた。
シエスタの兄弟姉妹たちである。母親に、シエスタの手伝いをするよう言われてきたのだ。シエスタは、八人兄弟の長女であった。
「あっ!パフ・パイだ!いいな、いいなあ」
「シエ姉ちゃん、ぼくたちのは?ぼくたちのぶんはないの?」
子供たちは、バスケットに盛りつけられた菓子パイを見て、騒ぎだした。
「こら!だめよ、お客様がいらっしゃるのに、失礼でしょ」
「あたしもパイ食べたい!たーべーたーいー」
「ぼくも!ぼくも!」
「あなたたちにはあとで焼いてあげるからね、ほら、お皿持ってってちょうだい」
シエスタは食器を持たせると、子供たちを部屋から追い出した。
それから、少し頬を染めて、ぺこりと頭を下げた。
「すす、すみません。騒がしくって、もう」
「あら、元気があって、かわいいじゃないの」
キュルケは机に頬杖を付いて、くすくすと笑った。
「まったくです。子供は元気なくらいがいい!」
コルベールもうんうんと頷いた。
シエスタは苦笑いする。
「でも、あの子たちったら元気すぎて。ほんと、困っちゃいます」
口ではそんなことを言っていたが、久しぶりに家族に囲まれたシエスタは、幸せそうで、楽しそうだった。
そんなシエスタを見ると、なんだかこっちまでほほえましい気分になって、ティトォは目を細めた。
しかし同時に、どうしようもなく胸が締め付けられる。
思えば、ルイズにも、キュルケにも、タバサやギーシュにだって、家族はいるだろう。
でも、ティトォには……、ティトォとアクア、そしてプリセラの三人には、もう家族はいない。
100年前のあの日、全て失ってしまった。
父さん。
母さん。
みんな。
アロア。
マギ……
ぎゅ、とティトォはテーブルの下で拳を握りしめた。
いつか必ず、全てを終わらせます。奴を、この手で……
ギーシュはきょとんと、ティトォの顔を見て、言った。
「……きみ、どうしたんだい?そんな顔をして」
「ん。いや、なんでもない」
ティトォはそう言って、バスケットの菓子パイを取って、かじった。
カリカリとした歯触りが心地いい。
テーブルの面々も、パイに手を伸ばした。
すると、コルベールがふと思い出したように声を上げた。
「はて。そう言えば、きみたちがなぜこんなところにいるんだろう。授業はどうしたんだね?」
ギーシュとキュルケは、あちゃあ、といった顔になって、ついとコルベールから目をそらした。
タバサは黙々とパイを食べ続けていた。


翌日、魔法学院。
キュルケとギーシュ、そしてタバサの三人は、モップやバケツを持って廊下を歩いていた。
授業をサボって宝探しをしていたことは、コルベールにあっさりばれてしまった。
「授業をすっぽかすなんてとんでもない!すぐに帰らなくてはいけません。ああ、いけませんとも!」
そう言って、コルベールはキュルケたちを魔法学院へ送り返したのである。こうして秘宝を求めての冒険旅行は終わりを迎えた。
411虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 02:02:22 ID:axIX4tx7
魔法学院に戻ると、こわい顔をした教師たちが三人を出迎えた。
なにせサボりまくっていたものだから、教師たちはカンカンに怒っていたのである。
そんなわけで、キュルケとタバサとギーシュは、罰として魔法学院全ての窓ふきと、さらには大講堂の掃除を言い渡されたのだった。
そして、三人がほこりっぽい講堂の床をモップで磨いていると、ルイズがやってきた。
「お久しぶりね」
ルイズはそう言って、腕を組んで講堂の壁に寄りかかった。そして、冷ややかな目でキュルケとタバサ、ギーシュを見回した。
「何日もどこへ行ってたのかしら?」
「宝探しよ」
「無断で授業をサボるなんて、どういうつもり?そんなのは不良のすることよ。あら、いやね。そういえばあんたってば、ツェルプストーだものね」
なんだか理由になってない理由でもって、ルイズは嫌味ったらしくキュルケをなじった。
「ギーシュ、……はともかく、優等生のタバサまでキュルケにそそのかされて。ほんとにしょうがないんだから。今回のことはいい薬になるでしょうね。この広い講堂を磨くのは、さぞかし大変でしょうからね」
ルイズは優等生ぶった口調で、ネチネチと小言を並べた。
キュルケはそんなルイズの態度を気にしたふうもなく、燃えるような赤髪をかきあげた。
「あら、でも宝探しの冒険はすばらしかったわよ?忘れ去られた遺跡……、魔物が跋扈する森や洞窟……、危険とロマンあふれる冒険の旅……、学院では決して経験できない、刺激的な日々だったわ」
ルイズは、うぐ、と喉の奥で音を出すと、悔しそうに眉根を寄せてうなった。
なんのことはない、要するにルイズは、宝探しの旅に自分だけ仲間はずれにされたような気がして、悔しかったのである。
ルイズはぶるぶるぶる、と身体を震わせると、そんな嫉妬まじりの感情を押し隠し、ツンと胸を反らせた。
「はん、でも結局宝は見つからなかったんでしょ。むむむ、無駄足じゃないの」
今度はキュルケが、ぐ、と喉を鳴らした。
ルイズとキュルケはしばらく睨み合って、う〜〜、と唸っていたが、やがて「ふん!」と鼻を鳴らして、そっぽを向いてしまった。
「まあいいわ、そんなことより、あいつはどこ」
「あいつって?」
ギーシュが尋ねる。
「ティトォよ。わたしの、使い魔の。あんたたちと一緒だったんでしょ」
「彼はいないよ」
「はあ?」
ルイズは頓狂な声を上げた。
「ぼくたちは宝を探して、タルブの村へ行ったんだが……、そこで、ミスタ・コルベールと会ったんだ」
タルブ。どこかで聞いたような……、ルイズは首をかしげた。
そうだ、思い出した。シエスタの故郷の名前だった。
「タルブには変わった樹が原生していてね、なんでもティトォによると『星の樹』というんだそうだ。ミスタ・コルベールがその『星の樹』を研究していると聞くと、手伝いたいと言い出してね。そんなわけで、ティトォはタルブに残ったんだよ」
ぼくたちは学院に追い返されちゃったんだけどねえ、と言って、ギーシュはモップで杖を付いて寄りかかり、ため息をついた。
ルイズはもう、最後のほうはギーシュの言葉を聞いていなかった。
「はあ?宝探しに行った先で、変わった樹を見つけて、それを調べたいから帰って来れないですって?はあーん?はあーん?」
ずだん!とすごい音が大講堂に鳴り響いた。ルイズが足で床を思いっきり踏みつけたのだ。
「あいつどこまでやりたい放題なのよおぉぉ!姫さまの結婚式までもう一月ないじゃないのよおぉぉ!」
ルイズは怒りのあまり、ずだんずだんとやたらに地団駄を踏んで、変なダンスを踊りはじめた。
キュルケはなんだか呆れたように、そんなルイズの様子を見ていた。
「姫殿下の結婚式と、あんたの使い魔さんになんの関係があるってのよ」
「大ありよ。いいことキュルケ、わたしはね、恐れ多くも姫殿下の式の巫女を任されたのよ」
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:03:18 ID:kvSqJ5t/
支援
413虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 02:04:38 ID:axIX4tx7
ルイズはキュルケたちに説明した。
アンリエッタの結婚式で、自分が詔を詠みあげること。その詔を、自分が書き上げなければならないこと。そのため、読書家の使い魔に手伝わせようと思ったこと。
なんというか他力本願極まれリ、といった感じだが、なにしろ人には得手不得手というものがあるのであるので、ルイズの判断はまったく賢明であるといえた。
もしルイズの作った詔を読み上げたりしたら、アンリエッタの結婚式は、長きにわたる語りぐさとなるに違いなかった。
もちろん悪い意味で、である。ルイズには悲しいほど文才がないのだった。
「なるほど、その王女の結婚式と、この前のアルビオン行きって関係してるんでしょ?」
ルイズはちょっと考えたが、それくらいは教えてもかまわないだろう、と思って、こくりと頷いた。
「あたしたちは、王女の結婚が無事行われるために、危険を冒したってわけなのねぇ。名誉な任務じゃないの。それってつまり、こないだ発表されたトリステインとゲルマニアの同盟が絡んでるんでしょう?」
なかなかに鋭いキュルケであった。ルイズは、憮然とした表情で三人の顔を見回した。
「誰にも言っちゃだめなんだかんね」
「言うわけないじゃない。あたしはギーシュみたいにおしゃべりじゃないもの」
するとギーシュは、心外だといった顔で、格好を付けたポーズを取った。
「ぼくだって言いやしないさ!なにしろ、姫殿下の名誉がかかってるからね」
ルイズはタバサを見る。この子はまあ、心配ないだろう。無口だし、そんな口が軽いようには見えない。
「それにしたって、あんた、どうするのよ?詔を作るなんて、無理よねえ」
ルイズは俯いた。
キュルケは、ルイズの肩に手を回した。そして、わざとらしい微笑を浮かべる。
「手伝いましょうか?危険な任務を果たしたんですもの、あたしたちにだってその権利はあってもいいと思うけど」
「なに言ってんのよ、あんた、ゲルマニアの人間じゃないの!外国人に姫さまの式の詔を任せるなんて、だめよ」
「あんたねえ、アンリエッタ姫がどこの国に嫁ぐのか忘れたの?トリステインとゲルマニアは、同盟国になったのよ」
キュルケは小さく鼻を鳴らした。
キュルケの言うことはもっともだったが、ヴァリエール家の宿敵であるフォン・ツェルプストーに頼み事をするのには、どうにも抵抗があった。
ルイズはちらりとギーシュのほうを見た。
ギーシュは、造花の薔薇を手に持って、優雅な動作でそれを振ってみせた。
「おや?僕に頼みたいのかい?任せてくれたまえよ!姫殿下が嫁いでしまわれるのは悲しいが、このギーシュ、心を込めて姫殿下にささげる詔を!」
ルイズはため息をついて、かぶりを振った。ギーシュはだめだ。センスが悪い。
しかも最近ますます悪くなってる。マントやシャツに宝石なんか縫い付けて、悪趣味極まりない。
こういうセンスが悪いってことは、詩のセンスも悪いってことなのである。
と、なると。残ったのは……
ルイズはタバサのほうを向いた。あまりしゃべったことはないのだが、いつも本を読んでいるし、うってつけに思えた。
「ねえ、タバサ。お願いしたいんだけど……」
しかしタバサは、本をパタンと閉じると、首を振った。
「ガリア人」
そう一言呟いて、また本を広げた。説明としてはそれで十分だろう、と言った口調だった。
「あなた、ガリアの貴族だったの?」
キュルケがちょっと驚いたような声を上げた。ルイズは少し呆れたように言った。
「キュルケ、あんた友達でしょ。それなのに知らなかったの?」
「あら、友達のことを全て知っているべきだなんて考えは、傲慢よ?」
キュルケはそういって、意地の悪い笑顔でルイズを見つめた。
「で、ルイズ。あなた他に誰か、頼むアテはあるのかしら」
ルイズは、うううう……、と唸ったが、やがて観念して、がくっと頭を下げた。
「……お願いするわ、キュルケ」
キュルケは愉快そうに笑った。
「最初っからそう言えばいいのよ。始祖と四大系統への感謝を詠みあげる、ね。えー、こほん。『おお、炎よ!身を焦がす情熱よ……』」
「あのねキュルケ、歌劇じゃないんだからね」
ルイズはため息をついて、窓の外を見た。雲ひとつない青空が、どこまでも続いていた。
アンリエッタ姫の結婚式まで、あと一月……。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:05:34 ID:kvSqJ5t/
誰もいないのか支援
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:08:00 ID:FIhN71Jj
俺もいるぞ支援。いや、読みふけってた。
416虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/04/03(金) 02:08:22 ID:axIX4tx7
今回は以上です。途中の支援ありがとうございます。

余談ですが、知人が第一話の挿絵を描いてくれました。
暇な奴、もといありがたいことです。まとめのupろだに上げたので、よければ見たってください。
up0102.zip
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:15:04 ID:kvSqJ5t/
乙でした
シエスタとの関係が
ルイズ>>>ギーシュ>使い魔(ティトォ)>キュルケ=タバサ
というのはなかなか斬新ですな
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:22:46 ID:CJB1zCAl
投下乙です
星の樹ktkr
シエスタ、たしか少し前に竜にビビリまくってたのにw
挿絵、ちょっと癖があるけどいい感じだな
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:29:30 ID:kvSqJ5t/
>>410
>地表に顔を出した『星の樹』の根は、土地に恵みをると言われているのだった。
誤字ハケーン
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:43:38 ID:YapC5rBP
>>383
おうおう、なんだか色々ピンチだ。しかし、書が何の魔導書なのか気になるな

水神クタアトか、それとも妖蛆の秘密か、金枝篇か、または今まで出てこなかったまったく別の魔導書か。
色々気になるけど、とにかく乙!
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 02:55:03 ID:fpczNdR6
マテパの人乙ー。
ムリアの時に大変なことになったのに、よくコッパゲの事を手伝う気になったなティトォ。
あ、あと挿絵いいねぇ。雰囲気でてるわー。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 03:11:30 ID:FvseUDBK
>>421
コッパゲがグリちゃんと同じことしないように見張ってるとか
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 04:48:58 ID:5AJMUe04
ティトォの人乙です。

タルブの村の名物に過剰に反応してしまった…
そう、過剰に
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 05:00:24 ID:muKi8ZIf
寝てたorz
マテパ乙ですー
挿絵の友人さんもいい仕事じゃないっスか。ティトォvsゴーレムとかかっけぇ

>>423
……おめーは「万華鏡」や「ウルトラマンコスモス」にでも注目してろこのスットコドッコイ!
425ttp://www.vipper.org/vip1167964.jpg:2009/04/03(金) 05:02:07 ID:rF/VRFqU
        │   |    | -/l ‐,t/-、|l |   /, -┬,〉 !   | l
         |     !   | 〆-;'‐┬ /' | / |ソノ |  !  / そろそろ
        / /   | |  !` lヽノ'  '  |/  '"´  l /| /     寝るのであります・・・
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 06:07:01 ID:Rsc69Xbt
TAP乙
ずっと待ってたんだぜ!
これで今週の残りも生きていける

あとティトォって特殊な状況を除いて100年前から忘却ってものが無くなったんじゃなかったっけ?
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 09:07:21 ID:wwpqBD6R
おお、久々の魔砲の人だ!
GJGJ

昔、某漫画で『原罪は無邪気なり』ってのがあったなぁ・・・
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 09:08:58 ID:iT29dg3n
今週も良かったです。
ところで、
ゼロ魔の住人でも魔王の骨から
クロイツを出現できるんでしょうか。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 09:18:48 ID:25huK6Ow
ts
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 11:04:24 ID:jerKfDIk
おぉ、『ゼロと魔砲使い』の人、お待ちしておりました!

…ふむ、アースラでハルケギニアへ向かうと、
時間軸のズレは最大で50年程ですか…。

いやてっきり、ビダーシャルがジョセフに語っていた、
「相手の自滅により聖地に封じた悪魔」と言うのが、
その時代に着いてしまったアースラではないのかと、
密かに憶測してたんですが、その線は無さそうですね。

でも、プレシアが始祖の時代に流れ着いた位ですから、
ベルカ関連の兵器がハルケギニアに来てても可笑しく無さそう…。
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 11:14:15 ID:mC1NZ2Rc
テスト
432夢幻竜作者:2009/04/03(金) 11:35:23 ID:mC1NZ2Rc
一応生存報告。忙しい毎日が続いていますが現在全作品において鋭意執筆中。
この二ヶ月以内には書き溜めた状態で、それぞれが再開出来ればと考えています。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 12:40:11 ID:tMPQ/QEF
>>291
「竜の羽衣」=ストライカーユニットとすると、

シエスタの曾祖母がウィッチになるから、
シエスタは平民じゃ無くないかな…
あと芳佳は軍人なのに剣の腕はからきしだし。
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 12:55:41 ID:3A5VRrZ3
4月だし就職とか進学でここを離れちゃう作者さんとかいるのかなぁ?
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 13:25:56 ID:E56XKg/w
メイジ=系統魔法を使える人間だから
あっちのメイジとは違う魔法使いだからメイジ扱いされなかった。
で何とかなるんじゃないかな。
FFTの人だとシエスタがケアル使ってたし。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 13:40:06 ID:00FNIagC
>>427
サンダー・マックイイーンですね わかります。

>>435
アメ公発の不況のせいで色々拙いからなぁ
かくいう自分も、需要低下<待機状態!!!<倒産確定<第二次就活大戦勃発さぁね。
大戦が無事終結したからまだいいけど、失敗してれば世紀末の種籾状態になってたからしれんから洒落になんねー。

さて……兄貴の続きを進めるために八巻買ってこよう。
ヒャッハァーー
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 13:42:29 ID:IB0aJKKg
兄貴ィ、誤爆してるよ……
俺と一緒に帰ろうぜ
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 14:15:38 ID:THx7LWez
明日にも北朝鮮のミサイルが来るかも知れないと思うと、恐ろしくってSSも書けないぜ…
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 14:17:35 ID:awWhFQF9
>>473
聖帝様でもあるから問題無いんだぜ
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 14:36:11 ID:HaZCIBfr
見当違いなロングパス
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:03:31 ID:bbMuTCzx
ティファニアがジンとキールを召喚して
マチルダと物取り合戦という小ネタ考えたんだがスレチか?

非常に書きたいが、残念なことにパソコンがぶっ壊れた…
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:15:24 ID:QCY+02H8
ミスト・レックスが召喚されて、主従成長しないコンビ

杖が盗まれたゴタゴタが解決した所で
「でもそれって、本質(宿直しない教師陣の対応)的な解決になってませんよね」

アルビオンから逃げ出したあと、
「いや〜、ワルドは強かったですね」

うははは、一部は体験するはずなのに安っぽいぞww
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:15:28 ID:tMPQ/QEF
じゃあ
パソコンが直るまで作文用紙に書いとけ。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:29:54 ID:FdE8CN0d
>>441
wikiを見れば分かると思うけど、ルイズ以外が召喚してるパターンもあるよ

パソコン壊れて書けないとか言われても困るわ……
漫喫にでも行くか、上で言われてる原稿用紙に書いて携帯から投下?
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:36:40 ID:tMPQ/QEF
>>351
確かに、これが平民に広まったら…

ハルケギニア世界を滅ぼすのは民主主義や共産主義では無くて、自然科学主義だな。

プレシア=テスタロッサは魔導師というよりも自然科学者だし。
まさにアーサー=C=クラークの金言の通りだな。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:45:29 ID:tMPQ/QEF
>>438
テポドンミサイルが日本に命中するのは、
ルイズが錬金に成功する確率と一緒…
て…まさかルイズがテポドンを…
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 17:56:20 ID:lempexXA
>>445
自然科学主義が、何もないところから湧いて出るわけでもないぞな。
少なくとも、宗教的権威がある程度打破されない限り、そういうものは主流にはなれないし、
宗教的権威が打破される状況になれば、王権も無関係じゃいられまいて。
448虚無の闘神:2009/04/03(金) 18:17:59 ID:iRoBlPz8
>>438
安心せいどうせ何時もの撃つ撃つ詐欺な上に>>446の言う位の確立だ
449樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:22:33 ID:yLKcAgn4
予約がないようなら、18時25分頃投下します。
Sound Horizon より、樹氷の王を召喚。
前編の方は練習スレに投下済みです。ちょっと読みにくい気がします。
お手数ですが、そちらの方を先にご覧ください。
450樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:25:19 ID:yLKcAgn4
 ルイズの必死の形相の願いに、少年はしばし考えた後頷くと、静かに物語を語り始めた。
 「凍てついた魔女」の物語を。


 ある女が男の子を庇う様にして雪原を歩いていた。
 絶え間なく吹き付ける白い嵐が彼女達を襲う。
 かじかむ手足、凍えそうな身体。前の見えないほどの吹雪は確実に二人の体力を奪っていく。
 それでも、彼女は弱音を一つも吐くことはなかった。
 彼女は母親だから……


 母子だけの生活は、貧しい暮らしだったけれど、温もりがあった。
 男の子は、母の全てを包み込むような優しい微笑みが大好きだった。
 母は薬草について豊富な知識を持っていた。
 僅かな夏の間に芽吹く様々な薬草を集めては乾燥させて、お茶やスープに入れたり、薬にしたりしていた。
 男の子は薬草採りや、薬草を大きな鍋でグツグツ煮るのを手伝ったりしていた。

 それだけではない。母は不思議な力の持ち主だった。
 男の子が外で遊び、転んで擦り傷だらけで帰ってきても薬草を擦り付けておまじないをとなえるだけで痛みはなくなった。   
 母の手は荒れていて滑らかとはいえなかったけれど、触れてくれるだけで心までも温かくなった。

 また、天気を読むのがとても上手かった。
 特に天候が不安定で、いつ吹雪が起こるか分からない冬の天気予知は、この地に生活する人々にとって非常に役に立つものといえた。
 それなのに、と男の子は不思議に思う。

 どうして僕達は村から離れた所に住んでいるんだろう。
 このことを聞いたとき母さんはとても悲しそうな顔をして、ただ「ごめんね」と言った。
……じゃあ、これは聞いちゃいけないことなんだ。
 母さんを悲しませるようなことなんだ。

 男の子は疑問を胸に閉じ込めたまま、母子はそれでも肩を寄せ合い生きてた。
――それなりに幸福だった。あの日が来るまでは。


 醜きは人の世。迫害の歴史は繰り返す。
 ある日の夜、村人が家に押し寄せてきた。
 皆、手に松明や鍬、鋤を持ち、顔はまるで何かに取り付かれたかのように鬼気迫る表情だった。

「この魔女め!お前のせいで作物が育たなかったんだ!」
「ここから出て行け!!貴様の呪いのせいで人が大勢死んだんだぞ!」
「いや、捕まえて、火炙りにするんだ!」

 都合の悪いことは全て他人のせいにしたいのだ。
 暗い時代の犠牲者、災いを引き受ける者。生贄という名の救世主……

 母子はすぐさま外へ飛び出すと、雪原を抜けて追われるように森の中へと逃げた。
 吹雪の中、暗い森をただ進む。
 男の子は何が起こったのか良く分からなかったけれど、唯ひとつ、もう二度とあの小さくも温かかった家に帰れないことは分かった。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:26:15 ID:FIhN71Jj
もっというのなら自然科学は神学の一部で、もともとは神の作った世界の研究というところから出発してる。
世界をどう解釈するのかという意味において宗教と科学は同根の存在。
ただし宗教は不明の要素に人格を与えたりしているわけだが。
魔法のある世界で自然科学が発達しないのは、教義と世界が基本あんまり矛盾しないから。
教義とは違う世界のありようを追求し続けた結果として、現代科学は存在する。

まあそういうのはかなりどうでもいいことで、何がいいたいかというと魔砲使いの人は続きが楽しみだというなんだが!
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:26:35 ID:K95mQITq
いや、時空管理局が介入するなら魔導士至上主義になるはずだ
453樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:27:08 ID:yLKcAgn4
 女が逃げている間に思っていたのは「この子を守りたい」、それだけだった。
 忌み嫌われた魔女の力を使い続ける。いまやその血は薄れ、彼女が扱えるものは小さな魔法のみ。
 それでも彼女は命の焔を削り、力を使い続けた。
 それは、何人とりとも通さぬような樹氷の森の結界。
 母の子に対する愛は奇跡を生む。
 命を燃やすことで体の底からありえないほどの力が湧き上がってくるのが分かった。
 朦朧とする意識の中、最後に、愛しい子のために巨大な城を作り上げる。

「この子を誰も傷つけぬように」
「この子が誰にも触れられぬように」
「この子がこの世にある恐れのあらゆるものから守られるように」

 それは、もはや狂気とも言える愛だった。

「お願い、どうかこの子だけでも」
「生きて欲しい……」

 母親の願いは命と引き換えに氷霧達によって叶えられる。
 それは、古に伝わる魔女の契約。
 命と引き換えにして、大切なモノを守る秘術……


 激しい吹雪の中に佇む二つの影があった。
 凍ってしまった女の氷骸と、決して凍らない少年。
 少年の流す涙は、寒さの中、凍ることなく流れていく。
 冷たい空気を吸ったとき胸の中が凍りつくような感覚もなく、吐く息も白くない。
 あんなに疲れて寒さで凍りつきそうだった体も、完全に回復した上に寒さも感じなくなっていた。

 少年はもう人間ではなかった。
 母の命と引き換えに、魔女の結界に守護された樹氷の森を支配する、凍てつく樹氷の王となっていた。


「と、まぁこんなところだね。
そして、愛という名の呪縛、その想いは今も僕を縛っているのさ。
樹氷の森は世界中の何処にでも現れる、何処にも存在しない森。
人の目に触れぬように留まることなく、流浪の民のように彷徨うモノ。
ああ、ちなみに君が気にしてた耳は僕が人間じゃなくなった時の影響だと思うよ。
昔、人間だった頃は君と同じだったし」

 歪んだ笑みを浮かべる少年に、ルイズは何も言えなかった。
 こんな話は聞いたことがないが、作り話とは思えないほど少年の話は真に迫るものがあった。
 実際に氷の魔女の呪縛による結界は体験済みだ。
 話によると、少年の世界での魔女とは杖を使うことはなく、使える魔法もまじないのように効力があるかどうか分からないものばかりだという。

 それどころか、魔法すら使えない、通常の薬の調合をする医師的な役割をしている者や、星読みや天気を読むことなどの占い師的な役割をしている者が魔女とされていることが大半であった。
 そして、それらの男女はひっそりと貧しい暮らしをしているものばかりであり、災害や疫病などがあった際にはいきなり魔女として追われることになるという。
 いや、追われるならまだしも捕らえられて拷問にかけられた上に、証拠がなくとも死罪になることがほとんどらしい。
 それこそ数百年の間に何十万、何百万の魔女達が処刑されたのだ。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:27:36 ID:0PptJgn+
>>433
魔力の減退が早い人だったとかにしておけば良いんじゃないか?
その辺は匙加減にもよるだろうけども
455樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:28:41 ID:yLKcAgn4
「確かに、私達の世界ではありえないことばかりだわ。
それに貴方の言ってることも嘘とは思えない。
まさか、別の世界から召喚しちゃうなんて……」
「ああ、そうだった。
それで、君はどうして僕を呼んだんだい?
ツカイマとか言ってたっけ。
樹氷の森を知らないってことは『樹氷の花』が目当てって訳でもないんだろうし」

 樹氷の花?いったいそれは何なのかと聞こうとしたとき、突如氷の檻の中に風が吹き荒れ始め、雪を生み出し、あっという間に吹雪になった。
 凍り付きそうな寒さがルイズを襲う。

「な、何するのよいきなり!」
「……どうやら、無理矢理この氷の檻に入った者がいるみたいだね」

 そう言った少年の目線を追いかけると、そこには試験監督であったコルベールの他に、キュルケ、タバサといった意外なメンバーまでもいた。
 白い嵐で視界がかすんでいるが、どうやらあの分厚い氷を炎で溶かして中に入ってきたらしい。
 微かに外の明るい光が見える穴があるのが分かった。

「無事ですか!?ミス・ヴァリエール!!」
「ミスタ・コルベール!!それに、ツェルプストー達まで!!
どうやってここに!?」

 大声でないと聞こえないほど風は吹き荒れている。
 タバサがどうにか風を弱めようとしているが、上手く言っているとは思えなかった。
 風はますます寒さと激しさを増し、息をするのもつらいほどになっていた。

「本来なら、僕が招いた者しか入れないようになっているんだけれどね。
まさか魔力の通っている氷を溶かして来るなんて……」

 少年が呟くと、溶されていた穴をふさぐように瞬時に氷柱が生えてしまった。
 すると、それと同調するように吹雪が収まっていく。
 そして、ルイズを挟んで油断なく杖を構えている三人と、どこか面倒臭そうな顔をしている少年が対峙することになった。

「僕を捕らえるつもり?
樹氷の花も持っていない僕なんて、捕らえても何の価値にもならないと思うよ」

 まただ。樹氷の花。さっきから少年が口にする言葉。
 察するに、それ目当てで少年のもとに訪れるものもいるようだった。
 とても価値があるものらしい。

「ミスタ・コルベール、あの耳は!!」
「エルフ……」
「な、なんと! ミス・ヴァリエール、早く此方へ!!」

 キュルケの叫びにタバサはぎゅっと杖を握り締め、コルベールは更に眼光を鋭くしてルイズを呼ぶ。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 
えっと、彼はエルフでもなんでもなくて、むしろ魔女に守護された森の王であって、
人間なんだけど人間じゃなくなっちゃったていうか!!
と、とにかく特殊な存在なんです!!」
456樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:30:09 ID:yLKcAgn4
 少年を庇うように立ちはだかり、一気にそう捲くし立てたルイズに三人は呆気にとられる。
 これまでのことをルイズが三人に説明する間、コルベールやタバサは少年から決して目を離そうとしなかったが、少年はただぼんやりと話を聞いているだけだった。

「では、彼はこの世界の住人ではないというのですね、ミス・ヴァリエール」
「はい、そうだと思います。
作り話の可能性もあるかもしれませんが、実際に彼の力を見てみると、
とてもそうとは思えません」
「そうですか……」
「話は済んだのかい?
じゃあ、どうして僕を呼んだか説明してもらえる?
さっきから全然話が進んでなくて、退屈なんだけど」
「あ、ああ。そうですな。
ミスタ……失礼、何とお呼びすれば宜しいでしょうか?」

 そこで、ルイズは始めて自分は名乗ったが、この少年の名前を聞いていないことに気がついた。
 普通ならお互いに名乗りあわずに話を進めるのは失礼かもしれないが、あまりに急な展開にそこまで頭が働かなかったのである。

「呼び名なんてどうでもいい。僕には意味のないことだからね。
君達の好きに呼んで構わないよ」
「ちょっと貴方……!!」

 教師に対するあまりにもひどい態度に腹を立てたルイズは少年に詰め寄ろうとしたが、ふと少年の瞳に目を向けると、今まで深い色をしていた瞳が急に揺らめいたように見えた。
 あれは、哀しみ……? 
 考えているうちに怒るタイミングを逃してしまったルイズを尻目に、コルベールは使い魔召喚の儀式と使い魔についての説明を少年にしていく。

「ふぅん、じゃあ、僕にその使い魔になれって言うのかい?
その、主人の手となり足となり、一生をかけて主人を守る使い魔に?」

 またしても、少年は歪んだ笑みを浮かべていた。
 その自嘲とも嘲笑ともとれる笑みは、見ている者の心を掻きむしるような不安を与える笑みだった。

「無理だね。僕がどんな存在であるか話しただろう。
僕には『誰も触れることはできない』のさ。
常に氷の結界が僕を取り巻いて、それは通常は外の世界と切り離されるようになっているんだ。
今はこの世界に来たばかりだから強行突破すればなんとか入れたみたいだけどね。
そんな僕が主人を守ることなんて出来るはずがないよ。
まぁ、君が僕の世界に来るっていうなら話は別だけど」
「そんな……」
「僕が使い魔にならないと、君には都合が悪いんだっけ?
ま、これも運命の女神の導きさ。僕のことはこのまま放っておいてよ。
そのうち樹氷の森と城も作られるだろうから、新しいこの世界を彷徨うとするさ。
お詫びに『樹氷の花』があれば君にあげられたけど、それもできないや。
全部城に置いてきちゃったし」

 落胆していたルイズだが、先刻から気になる言葉が再び出てきたので、思い切って聞いてみることにした。
457樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:31:23 ID:yLKcAgn4
「ねえ、『樹氷の花』って何なの?」
「ああ、説明してなかったっけ。
煎じて飲めば、どんな病気も治る儚い希望の淵に咲く花の名前さ」

 ルイズ達は思わず絶句した。そのような薬草は世界に存在しない。
 なぜならその存在は生命の意義を脅かすようなものになるからだ。
 不老不死や万病の薬は強力な魔法が存在するハルケギニアにおいてですら夢物語でしかない。
 もし、本当にそんなものがあったら、金貨何千、何万枚どころかそれこそ領地が買えるほどの価値があるだろう。

「本当に、どんな病気も治るの!?」
「……私も、知りたい」

 いつもは無口なタバサのいきなりの発言にルイズは驚く。
 思わず振り向くと、いつもの冷静沈着でもの静かタバサのイメージとはかけ離れた表情をしていた。
 そんなタバサを、心配そうにキュルケが見つめている。
 タバサにも、ちい姉さまのような不治の病を持つ、大切な人がいるのかしら……
 ルイズが優しい自分のすぐ上姉の姿を思い浮かべながらそんなことを考えていると、少年は猫のように目を細め、薄い笑みを浮かべながら話を続けた。

「本当さ。
僕には『この世のありとあらゆる恐れ』――つまり、病気や怪我、老いや死は訪れない。
……母さんがそう望んだからね。
その僕の魔力が篭った花だもの。不老不死にはなるほどではないけど、病気くらいなら治るだろうね。
この花を目的に樹氷の森を目指す人は大勢いたよ。
中には無理をしたせいでそのまま自分が病気になって病死しちゃったり、道に迷って凍死や餓死しちゃったりした人もいたけど。
たまに、僕の気まぐれで招かれて森に辿り着いた人も確かにいたんだよ」

 ふふふ、と少年は笑う。
 どうして、人が死んでいるというのにこんなにも無邪気に笑えるんだろう。
 ルイズは少年が恐ろしくなった。少年の笑い声が心の中まで入り込み、ぐちゃぐちゃと掻き回されるような感じがして気分が悪くなる。
 それでも、話を聞きたかった。自分の大切な家族のために。
 気分の悪さをぐっと我慢して、ルイズは一番聞きたかったことを聞いた。

「貴方の魔力を篭めたということは、この世界でもその花を栽培できるの?」
「……できるよ」

 一瞬、ルイズには少年の瞳がまた哀しく揺らめいたように見えた。
 しかし、見間違いだったのか、少年はあの歪んだ笑みを浮かべている。

「まぁ、できないことはないんだよ。でも、材料がいる。無から有は生まれないんだ。
母さんが命と引き換えに、魔女の契約を結んだように、ね……」

 ルイズの心臓はバクバクと脈打っていた。聞いてはいけない。
 聞いてはいけない。聞いてはいけない――嗚呼、それでも、走り出した衝動はもう止まらない。

「材料って、何?」
「人間さ」

 簡潔に、微笑を浮かべて、きっぱりと少年は言い切った。
458樹氷の王〜虚無の魔女〜中編:2009/04/03(金) 18:33:03 ID:yLKcAgn4
 ルイズ達は凍りついたように動けなくなる。まるで、人の命を何とも思っていないかのような発言。
 元は人間だったなら、その命の大切さは誰よりも知っているはずなのに。
 少年は、このように人間を超越した考えを持つに至るまで、どれほどの年月を過ごしてきたのだろうか。
 何がこんなにも少年の心を捻じ曲げてしまったのだろうか。
 その中で、逸早く正気を取り戻したコルベールが、少年に続きを促した。

「人間……と申しましたな。それは、いったいどういうことですかな?」
「僕には誰も触れることはできないって言ったよね。
僕の身体は魔女の呪縛で魔力に満たされた、言ってみれば魔力の塊のような存在なんだ。
だから、僕に触れた人は呪縛に絡めとられ、たちまち凍り付いて、物言わぬ氷になるのさ。
まるで生きている時を封じ込めたような氷像にね。
その氷を削り取って溶かして飲ませれば、万病の薬になる」
「……!!それでは、花というのは……!!」
「本物の花っていうわけじゃないんだよ。
ふふふっ、だって、だだの氷像って言うにはあまりにも綺麗だったんだもの。
まるで、永遠に枯れない花みたいに……。
だから、『樹氷の花』って名前をつけてあげたんだ。
凍てついた僕の世界に存在できる、唯一の花なのさ」

 少年の目は狂気を孕み、ギラギラと輝いていた。
 それでいて、まるで人形のように無機質で、全ての物に諦観しているような印象を与える。

「それは、貴方が森に入って来た者を襲い、氷付けにして命を奪ったということですかな?」

 コルベールは瞬時に呪文を唱え、巨大な炎の玉を杖の先に作り上げる。
 他の三人も、それに習って、それぞれに杖を構えた。

「……いや、進んで僕に触れてきた変わり者ばかりだったよ。
ふふっ、生きることに、特別な意味なんて無いんだよ。全ては消え往く運命なのさ。
それを知りながら、それでも、終わり往くモノは永遠を望む……
愚かだね。そんなことをしたって、唯忘却と喪失の狭間で揺れるだけなのに……」

 少年は謎めいた言葉を放つと、そのまま黙ってしまった。
 辺りを支配していた狂気じみた重苦しい空気が消える。
 コルベール達は、少年に攻撃する意思がないと分かると、困惑しながらも杖を収めた。
 そして、改めて少年の衝撃的な告白による思考が場を支配する。

 タバサは全身の血の気が引いていくのを感じた。
 自分の代わりに毒を喰らって、心を壊されてしまった可哀想なかあさま。
 かあさまのために、自分の心を殺し、憎い相手の傀儡人形になって生きてきた。
 毒はどんな魔法薬を用いても、治すことが出来なかったが、樹氷の花は、ある意味では精霊に近いあの少年の魔力の塊だ。
 もしかしたら、治せるかもしれない。
 かあさまのためなら何でもできた。この手はもう、取り返しのつかないほど汚れてしまっている。
 それなら、それならば、あと一度だけ。この手で――
459樹氷の王〜虚無の魔女〜中編:2009/04/03(金) 18:34:24 ID:yLKcAgn4
「タバサ!」

 いきなり呼ばれ、身体がビクリと跳ねるが、そのままふわりと熱に包まれる。
 キュルケが背後からしっかりとタバサを抱きしめていた。
 そこで初めて、氷の檻によって身体の熱が奪われて冷え切ってしまっていたことに気がつく。

「タバサ、私は貴女が何をそんなに苦しんでいるのか分からない。
でも、お願いだから自分を見失わないでちょうだい
貴女、泣きそうな顔をして震えていたのよ」

 少年の囁きに捕らわれて、凍りつきそうになった心がゆっくりと溶けていく。
 思わず、泣き出しそうになりながら、身体に回されていた手をぎゅっと握り返した。
 大切な親友は、心の水底に捕らわれている時、いつもそっと背中を後押ししてくれる。
 忘レモノの存在を思い出させてくれる。
 だから、自分は澱まずに流れていくことができるのだ。

「ありがとう」
 聞こえるかどうか分からないような声でポツリと言う。
「いいのよ。私達、親友でしょ?」
 茶化すように帰ってきた声は温かかった。


 人間を材料にするなんて。ルイズは思わず身震いした。
 確かに、ちい姉さまの病気を治すためなら、何でもしたいと思った。
 でも、それでも、そのために他人を犠牲にすることなど、できるはずがない。
 そんなことは、ルイズの貴族の精神に反している。
 自分のエゴで他人の命を奪うなど、到底許されることではない。
 嗚呼、でも。それでも。
 ふと、ある考えが思い浮かんだ。それが失敗しても、成功しても自分にとって利益となる、ある方法を思いついたのだ。

「ミスタ・コルベール……私、彼とコントラクト・サーヴァントをします」
「!?ミス・ヴァリエール、何を言っているのですか!?」

 コルベールが驚くのも無理はなかった。
 コントラクト・サーヴァントとは呪文を唱え、使い魔となすものに接吻して初めて効力を持つ魔法だ。
 しかし、少年を相手にそれをすることは、死を意味する。
 彼の話の通りならば、彼に触れたもの全て冷たい氷に成り果ててしまうからだ。

「できる可能性はあるんです。
少なくとも、彼が樹氷の森に捕らわれる魔女の呪縛を断ち切ることができるかもしれません」

 ルイズは、自分の考えを述べていく。少年も、胡乱げな視線を投げかけながらもおとなしく聞いていた。


 まず、この世界に少年が召喚され、一時的ではあるが樹氷の森から引き離すことができたこと。
 これは、ルイズの使い魔召喚の魔法の力が上回っていたからだと考えられる。
 使い魔とはメイジにとって一生のパートナーであり、見えない絆で結ばれているという。
 その強固な絆が少年を異世界に導いたのではないだろうか。
 だとすれば、使い魔の契約を結ぶコントラクト・サーヴァントによって、凍てついた魔女の契約の書き換えを行うこともできるかもしれない。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:35:34 ID:tMPQ/QEF
>>453
いかん…読んでいて、寒さで目から水っ洟が…。
なんか、「母の子に対する…」の所でテファやタバサのお母さんを思い出した。
461樹氷の王〜虚無の魔女〜中編:2009/04/03(金) 18:35:48 ID:yLKcAgn4
 より強い魔力で「主人に付き添い共にいる」契約を行えば、少年を樹氷の森に捕らわれる呪縛から解き放てる可能性はある。
 また、「使い魔は主人に危害を加えない」という契約も同時に結ばれるため、主人となるルイズの身体が氷になるのを防げるはずだ。

 しかし、これはあくまでも可能性の話だ。
 もし魔女の呪縛の方が強ければ、ルイズは契約を失敗し、命を失う。
 何せ、凍てついた魔女は命を懸けてまで契約を行ったのだ。その強さは計り知れない。

「いけません!そんな危険なこと、許可できる訳がないじゃないですか!!」

 コルベールは思わず叫んだ。
 自分の大切な教え子を、いや、たとえそうでなかったとしても、若い命をみすみす捨てに行くような行為に賛成することなど誰ができようか。

「ルイズ!貴女、何を考えているの?進級することがそんなに大事!?
そりゃあ、家名に泥を塗ることが、古き伝統を持つトリステインじゃどんなに重い意味を持つか、私にも分かるわ。
でもね、死ぬかもしれないのよ!あなた、使い魔のために一生を終わらせる気なの!?」

 キュルケもルイズを必死に説得する。
 妙に頭が冴えているルイズは、それに言い返すこともせず、いつもからかってきたキュルケが涙を浮かべているのをただ見ていた。
 こんなにも真剣に自分を心配してくれるキュルケは意外だったし、それが嬉しかった。
 自分でも、不思議なくらい心が静まっているのが分かる。
 そして、今まで一言も喋らなかった少年にふいに話しかける。

「あなたは、やっぱり使い魔になりたくないかしら?」

 少年はわずかに驚いた表情を浮かべると、またあの歪んだ笑みを浮かべた。

「さぁ、ね。
成功したとしても、僕は君の使い魔という新たな呪縛に捕らわれるだけ。
どっちにしろ状況は変わらないし、いいよ。使い魔になっても」
「……交渉成立ね」

 馬鹿なことはおやめなさい、とコルベールが止めようとした瞬間、新たな氷がルイズと少年以外の者の身体の自由を奪った。
 三人は動けないように足元を氷付けにされ、杖を振るえぬように杖ごと手元も氷に包まれた。

「ミス・ヴァリエール!!」
「「ルイズ!!」」

 あら、タバサったらあんなに大きな声もだせるのね。ちょっとびっくりしちゃったわ。
 それにしても、キュルケがあんなに私のことを心配してくれるなんて、いままでからかってきたのは愛情表現だったのかしら?
 あ、ミスタ・コルベールがこのせいで監督不届きを理由に首になっちゃったりしないわよね……
 命の危機に瀕しているのに、ルイズはそんなとりとめのないことを考えていた。
462樹氷の王〜虚無の魔女〜中編:2009/04/03(金) 18:36:52 ID:yLKcAgn4
「ミスタ・コルベール、私は杖に誓います。
この契約は私が望んで行ったことであって、この場にいる者すべての者に何の落ち度もなかったことを。
私の家が何か言ってきたとしても、責任は私に全てあったと伝えてください。
そして、これはお願いなのですが……。
もし、私が契約に失敗して樹氷の花になってしまったら、
その時は……ちい姉さま、いえ、私の姉であるカトレア姉さまに使って下さい。
ううん、ちい姉さまだけじゃないわ。
ちい姉さまみたいに不治の病に苦しんでいる人に、できる限り行き渡るようにして下さい。
タバサ、貴女も大切な人が苦しんでいるのでしょう?」
「……っ!!」

 タバサは、何も言えなかった。それどころか、一瞬でもルイズが儀式に失敗する暗い思いがよぎった自分が醜くて、汚くてたまらなかった。
 そんなことを見越していたかのように、ルイズは続ける。

「実を言うとね、私もちょっぴり失敗しちゃったらいいなぁなんて考えちゃったりしてるのよ。
きっと、私以外の人がこんなことしてても、そう思っちゃったと思う。
だって、私、魔法が使えなくて、いつも家族に迷惑かけてばかりだったでしょ?
惨めで、悔しくて、仕方なかったわ……。
そんな私を、いつも優しく励ましてくれたのがちい姉さまだったの。
だから、私思ったわ。ちい姉さまの病気を、どんなことをしてでも治してあげたいって」

 しんと静まる中、ルイズは続ける。

「あ、本当に失敗したいわけじゃないのよ。それだけは言っておくわ。
ただ、ここで、使い魔の契約ができなかったら、ここで契約せずに逃げ出してしまったら、
私は一生『ゼロのルイズ』のままだと思うの。そんなのは絶対嫌だわ。
それに、メイジの実力を測るには、まずその使い魔を見よっていうでしょう?
契約はしてないとはいえ、私は樹氷の王というとてつもない存在を呼び出した。
だから、私はゼロで終わるはずがない。
その存在に見合った偉大なメイジになってみせるわ。
これは、私の誇りを賭けた儀式なのよ」

 そう言うと、ルイズは少年と向き合った。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:41:50 ID:yyiFk2v2
私怨
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:42:49 ID:tMPQ/QEF
>>458
北花壇騎士のタバサは人殺しはしていないと思うが…。
465樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 18:44:34 ID:iQ3Hf1A9
携帯から失礼。
さるさんくらいました。
以上で投下終了です。

途中までタイトルに中編つけるの忘れてたorz
王の一人称や性格はLostの「永遠の少年」を参考にしています。
そっちの彼の方が開き直っている分スゴイですが……
同一人物という訳でなくても、
こんな境遇ならこのくらい性格が捻くれてそうな気がします。

466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:48:21 ID:H+R4gYqe
代理してもいいんだぜ
面白いし
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:54:49 ID:EDR1J4B5
これは間違いなく秀作
続きwktk
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 18:55:27 ID:HY+X+o70

ルイズがどうなるか楽しみです
469樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/03(金) 19:03:22 ID:yLKcAgn4
>>464
すみません。
サンホラのネタを紛れ込ませるのに夢中で失念してましたorz

救いようのないほどバッドエンドが多いサンホラ世界と交わってしまった
この世界のタバサは、人を殺めてしまったことがあると
脳内補完して下さい……

後編も見直し次第投下したいと思います。
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 20:07:14 ID:FIhN71Jj
ぐはっ。
リロードすべきだった。
そして書き込んでから別のスレいってたから、全然きづけなかった…!

樹氷の王の人GJでした!
続きがあるのなら支援したいけど、今から帰るので、家のパソコンは規制食らってて無理なんだ。
すまぬ。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 20:39:36 ID:tMPQ/QEF
しかしハルケギニアの人々が芳佳の犬耳セラスクを見たら…どんな感じなんだろうか…
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 20:43:56 ID:ad5jRd69
>>471
変わった服を着て先住魔法を使う亜人!
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 20:49:59 ID:mm/hD7Aw
樹氷の王の人、乙でした。
SHネタとは予想外!!しかも話のネタが凄く良かったです。
続き楽しみにしてます。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 20:56:59 ID:tMPQ/QEF
>>472
初めは水兵服の様なものを着た(平民)で、
契約の儀式の時にガンダールウのルーンと共に犬耳と尻尾が出て(亜人)
ルイズと錬金の先生(名前忘れた)を助ける時に治療能力を使って、(先住魔法を使う亜人)
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:17:40 ID:zTncwaC6
>>474
シエスタのノーマルなセラ服でもギーシュやマリコルがトリップしかけてたから、
多分男どもまとめてノックアウトじゃね。

赤城ごと呼び出したらさらにすごいことに。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:21:44 ID:mIAdMQuh
>>474
いや、ギーシュとブタは特別だw
477476:2009/04/03(金) 21:22:30 ID:mIAdMQuh
>>475だったw
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:29:22 ID:kvQSwpTG
>>476
モンモランシーがセーラー服着たときに教室中の男の注目の的になったが、教室中の男は全員ギーシュとマリコルヌだったのか?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:31:09 ID:8WDmqwUI
しかし、セーラー服の件を見て思うけど
アンリエッタがセーラー服を着て、クルリと回転すれば
トリステイン中の貴族が服従しそうだよな
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:44:57 ID:dtfFU+NU
強いキャラをルイズに召喚させて(原作の敵キャラでは力不足)対抗勢力を作る時
どの様なパターンがあると思いますか?
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:53:06 ID:hcl4VLIR
ある程度長く続いてる作品全部読めばいいんじゃね?
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 21:55:56 ID:Rsc69Xbt
同レベルの強キャラを用意する
強キャラの能力に制限をかける
強キャラが実力を発揮できない状況を作り上げる
戦術・戦略で勝負する

ぱっと思いつくのはこんなところか
具体的にどうするかと言われたらなんとも言えんが
483鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/04/03(金) 21:57:00 ID:En35adDO
生存報告。
妹者の回線を使ってきております。
鋼の使い魔第二部は鋭意製作中。というか原作とのすりあわせとか乖離とかをしつつ、がんばっております。
ネタ分ましましでお贈りしたいと思っています。スパロボ分とかWA2分とかを抽出してですね(ry
8月末日の締め切りを目指してオリジナルも考えてますがスレチですね。ではまた。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:00:26 ID:V8eXSU3g
ワルドは立ち位置的に無茶な強化がしやすいように思うねぇ
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:04:17 ID:ad5jRd69
ミョズ、ヴィンダなどに強キャラをあてがうってのがあるね。

ラスボスの人もそんな感じ。
中にはガンダ含めて全部仮面ライダーV3(それぞれ別の平行世界出身?)なんて変わりダネもありますね。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:08:13 ID:FQEImlhu
ゾイドのジェネシス系キャラ喚んでガリア側にジーンを喚べばメカワルドも夢じゃない!!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:11:00 ID:THx7LWez
ラスボスは便利すぎる能力を「どう使わないで済ませるか」に苦労してるような。
最近はそうでもない気がするけど。

でもアレでウルトラマン化したり、因果律の操作(仕組みはよく分からんが)しまくったりしてたら、確実に詰まらなくなってたと思うよ。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:16:27 ID:lTW9nIaH
MtLはワルドが敵勢力の黒幕の後押しでハイパー化して、元々のミョズ・ヴィンぶっ殺して自分の部下に与えてるな。
というか、あの作品の場合はそれ以上に強すぎる主人公がどんどん空気化して原作キャラが大活躍という珍しいパターンなのだが。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:26:23 ID:sabSDpCA
>>480
件の強いキャラとゼロ魔キャラの交流が見たいんじゃあ的な動機の場合、
戦闘は三行で済ませて書きたい場面だけ書くw
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:28:17 ID:47Hkz0yG
○○は戦った、そして勝った。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:30:55 ID:XiiJ8jEt
スイーツ(笑)
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:33:39 ID:q/PuNdKn
長々と戦闘してる方がおかしいんだ
命の取り合いなんて終わるときは一瞬よ
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:34:43 ID:ij8Nut98
雪苺娘が好きだからスイーツ馬鹿にすんなよ
230円だからって馬鹿にすんなよ
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:35:32 ID:MmFLB22n
>>483
続き待ってますー
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:36:43 ID:EishLYzO
だが、上位階の魔導師の戦いの場合は、宇宙をひっくり返したり表返したり裏返したりと時の概念を
取っ払った戦い方しますんで・・・・ぶっちゃけ、人間の安全なんて関係ねえ
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:46:00 ID:OWG6ScAV
どうあがいても強い者には勝てない
現実は非情である
497滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 22:47:06 ID:Ank0UheY
ちわース、三河屋でーす。
先約が無ければ、五分後に投下させていただいてよろしいでしょうか?
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:48:11 ID:EishLYzO
そして、強者降臨。まるで狙い済ましたかのようなロックオンである。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:48:32 ID:lMKtpw54
事前支援だ
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:49:14 ID:wjJaSDsF
>495
それはあのロリペド魔術師ですね わかります
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:49:55 ID:7JRP1wIM
>>483
鋼の人の生存報告に俺大歓喜
気長にまつぜ〜
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:50:01 ID:gD6QDQbf
ギーシュ涙目の支援
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:50:38 ID:EishLYzO
>>500
というか、あの世界の魔導師はオール変態性癖系というか、常識を360度回った上で異次元方向にぐるぐると
504滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 22:52:40 ID:Ank0UheY
「僕の二つ名は『青銅』。 青銅のギーシュだ。 従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
豪鬼に向かって、ゴーレムが突進してくる。
豪鬼は一歩も動かない。 が、ゴーレムの行く手を阻むように、右手を前に出した。
ゴーレムが間合いに入り、豪鬼が突き出した手を払おうと腕を振る。 その瞬間。

――豪鬼が、消えた――

「なっ……! ど、どこだ!何処に行ったっ!」
ギーシュが辺りを必死で見回す。 周りの野次馬達も同じように何処だ何処だと視線を動かした。
一人の生徒が気付く。
「う、上に」
時既に遅し。
豪鬼がゴーレムの頭上から手刀を構えて落下していく。
混乱状態のギーシュは、不覚にもワルキューレを棒立ちにさせている。 無論、突然の出来事に反応は出来ず。
「ふんっ!」
豪鬼の手刀がワルキューレに命中し、その青銅の体を容易く両断する。
『天魔朱裂刀』……相手の攻撃をすんでの所で見切り、頭上から手刀を叩きつける技である。 大抵の者はその一瞬の出来事に全く反応できず、成す術なく当たってしまう。
ワルキューレ『で、あった物』は、力なく左右に倒れた。
「う、うわあぁぁぁぁぁ!」
半狂乱のギーシュが、滅茶苦茶に薔薇を振る。
新たなワルキューレが六体、ギーシュの周りに現れる。
豪鬼はゆっくりと構えなおすと、目を見開き、口を開いた。
「我は、拳を極めし者。
……うぬらの無力さ、その体で知れい!」






505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:53:14 ID:lMKtpw54
真空支援拳!
506滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 22:55:08 ID:Ank0UheY
一方、森では。
「潰れろ!」
一人のメイジを掴んだ『白髪の男』は、それを大木に叩きつけ、大木ごとメイジを屠る。
その足元には、既にもう一人のメイジの亡骸が横たわっていた。
「さて……あとは君一人だ。 『トライアングル』君?」
『白髪の男』は、ゆっくりと振り返る。
少女は既に遠くへ避難し、震えながら傍観していた。
残ったメイジは、がくがくと震えながら、手に持った杖を『白髪の男』向ける。
「どうした? 早くしたまえ」
「ひ、ひぃ!」
メイジの放った炎の玉は、一直線に『白髪の男』に向かう。
「ハッハッハ!」
――『白髪の男』の前に、緑の光が現れた――






場所は戻り、ヴェストリの広場。
「な、なんなの、あいつ……」
『平民とギーシュが決闘をする』。
それを聞いたルイズは、他の生徒と同じように広場に来ていた。 豪鬼の命を救うために……。
だが、それも要らぬ心配だったらしい。
ルイズの目には、青銅のゴーレムが豪鬼に真っ二つにされると言う衝撃の光景が飛び込んできていた。

また、広場の別の場所では、キュルケと、小さな幼い印象を受ける生徒が、二人の決闘を見つめていた。
「な、何だったの? 今の……。 ねえ、タバサ」
キュルケが引きつった笑みを浮かべ、隣の少女、タバサに話しかける。
「……わからない」
一言でその問いに返答するタバサ。 その言葉には感情が感じられないが、しかしその目は、驚きと興味で見開いていた。

507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:57:08 ID:Rsc69Xbt
支援

運送ktkr
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:57:11 ID:lMKtpw54
ルガールエクスキュージョン?

いやダークバリアーか 支援
509滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 22:57:46 ID:Ank0UheY
そんな中、急に広場の生徒達人ごみの一部が割れた。 中から現れたのは、オスマン、ロングビル、コルベールの三人だった。
ロングビルが、オスマンに対し説明を始める。
「片方がギーシュ・ド・グラモン。そしてもう片方は、ミス・ヴァリエールの使い魔です」
それを聞くと、コルベールとオスマンは顔を見合わせた。 コルベールは驚いた表情をしている。
「オールド・オスマン……!」
「うむ……」
「オールド・オスマン」
「なんじゃ? ミス……」
ロングビルは、普段からは考えられないほどに真面目になっているオスマン達に威圧される。
「い、いえ、『眠りの鐘』の使用許可を求めているようでして……」
「要らん。 こんな子供の喧嘩に秘宝など」
オスマンはそれを一蹴するが、その目は警戒心をありありと表していた。



広場の中心で、豪鬼とそれを囲うように位置したワルキューレ達が睨み合う。
豪鬼は一向に構えから動かず、ワルキューレ達を警戒するそぶりも見せない。
対するギーシュも、先ほどのワルキューレにおいて、カウンターを受けたため、迂闊には動けない。
広場内を静寂が包む――
「行け! ワルキューレ!」
静寂を破ったのは、ギーシュだった。 ワルキューレに指令を出し、それを受けたワルキューレ達は、一斉に豪鬼に向かって走り出す。
しかし、それが豪鬼に達することは無かった。
「滅殺……」
「なっ! と、止まれ!」
豪鬼の変化に、ギーシュが咄嗟にワルキューレを制止させる。
「……」
そう豪鬼が呟く。 小声のそれは、しかし大きな威圧感を持ち、ギーシュの判断を鈍らせた。 豪鬼はそれを尻目に、手を『天』に向かって突き上げる。
「我が拳、 とくと味わえ」
「……くそ! 行け! ワルキューレ!」
そして再びワルキューレ達が動いた瞬間、豪鬼が突然、突き上げていた右手を振り下ろし、地面を殴ったのである。
「あ、じ、地震!?」
ただそれだけのことで、地面が揺れる。 豪鬼の足元の地面から光が溢れる。 それはさながら火山の噴火のように。

510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:57:54 ID:sO6cjEBt
ルガールの愛豹はロデム支援
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:58:27 ID:ad5jRd69
ルガール運送社長支援!
512滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 23:00:06 ID:Ank0UheY
やがて地震が収まり、広場の生徒が豪鬼達に視線をを向ける。 そこには既にワルキューレの姿は無く、ぐちゃぐちゃにひしゃげた鉄の塊が、豪鬼の足元に転がっていただけだった。
「あ……あ……」
腰を抜かし、ズルズルと後ろに下がっていくギーシュ。 豪鬼は、そんなギーシュに一瞬で近付き、そして、手を振り上げた。
「ひぃっ!」
ギーシュが必死で後ずさる。 それを、周囲の人間は助けようとしない――否、周りの者達も同じくその場を動けないのだ。 
しかし勇敢にもその威圧に耐え者がいた。 コルベールだ。 コルベールは、あたふたとギーシュに駆け寄る。 そして、豪鬼にその杖を向ける。
「み、ミスタ・グラモン! 大丈夫かね!?」
「あ、あ……?」
「済まない、ミスタ・グラモン……。 こんなことなら、私が止めれば良かったのだ……!」
そんなコルベールを見たオスマンは、あえて声を掛けなかった。
「帰るぞ、ミス・ロングビル」
「え、あ、はい」
オスマンが身を翻す。 それに少し遅れて、ロングビルも歩き出す。 コルベールの大声が聞こえる。 
オスマンは呆れたようにため息をつき、呟いた。
「阿呆が」
次の瞬間、オスマンの後ろで大きな騒ぎが起こった。
「へ、平民が消えたぞぉっ!」
「ど、どこだ!? また上か!?」
「い、いや、上じゃない! 地面か!?」
そう、豪鬼は、既にその場を去っていたのだ。殺気だけを残して。
 ロングビルはオスマンに追いつくと、一つ、疑問を口にした。
「オールド・オスマン。 あれならば、『眠りの鐘』を使用するべきだったのでは?」
オスマンは立ち止まり、いつものように髭を撫でながら言った。
「いや、それは無いじゃろ。 実際、どちらも怪我という怪我はしておらんしな」
「……は、はあ」
それに……、と小声でオスマンが呟く。
「……あの男に、そんなものが通用するとは思えんな……」
「は?」
「いや、なんでもない」
オスマンは悟られないように小さく、本当に小さくため息を付くと、これからの苦労に、気が重くなる思いで、ある人物に思いを馳せる。
「『あの方』ならば、どうするのかのう……」





513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:00:52 ID:lMKtpw54
沈没船をブチ上げたあの技か? 支援
514滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 23:03:36 ID:Ank0UheY
今日の「滅殺!」必殺技講座
・天魔朱裂刀
俗に言う『当身技』。 コマンドを入力し、構えに入る。 その一瞬に相手が打撃技をしてきた場合、即座に反撃すると言う技である。
その性質上、多少の読みが必要になるため、使い所は制限されるか。
コマンド「(上段の場合)下、下+パンチボタン三つ同時押し。(下段の場合)下、下+キックボタン三つ同時押し」
・金剛國裂斬
ギーシュのワルキューレを一撃で葬った技。
実際の威力はこんなものではなく、エアーズロックを一撃で叩き割り、地盤を破って地獄へと行けたりしてしまうハチャメチャ技。
作者はアレク使いなので詳細は分からないが、かなりの威力を発揮する様子。
ゲーム中では、暗転後、地面を思い切り殴り、その衝撃波で攻撃をするという業になっている。
コマンド「下、下、下+パンチボタン三つ同時押し」


「地盤を叩き割って……で、どうしたの?」
「死合った」
「あ、そ。 もう慣れてきたわ」


今日の「死ネィッ!」必殺技講座
・ゴッドプレス
突進しながら相手を片手で掴み、さらに加速しながら最後には画面端に叩きつけるという技。
ちなみにこの技、ルガールの象徴的なものとなっている。
コマンド「逆半回転+パンチボタン」


「オリコンでこの技を連続で放つのは男のロマンと言うやつだよ、テファ」
「すごいです! ダメージは勿論大きいんですよね!」
「……君の純粋さが辛い……」
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:05:17 ID:JqG/FVuM
>>483
待ってるぜ!
516滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 23:05:41 ID:Ank0UheY
今回はこれで終了です。
え?やりすぎ?きこえんなぁ?
ちなみに、豪鬼の去り方はZERO2の豪鬼EDのあれです。
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:06:21 ID:Rsc69Xbt

さすがに序盤でかカイザーウェイブとか瞬獄殺とかジェノサイドカタッとかの大技は使わないか

まぁ十分規格外なわけだが・・・
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:06:58 ID:JqG/FVuM
>>516
乙!
そして下げ忘れすまぬ。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:08:19 ID:lMKtpw54


某格ゲーエンジンのルガちゃんのAorEXグルの運送スペシャルはロマンよぉ
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:16:26 ID:ad5jRd69
乙ッッ

>>517
いや金剛國裂斬って大技なんです力゛ッ
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:18:13 ID:YppdeE/q


「あの方」はアポカリプスとかベガとか?w
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:20:45 ID:YppdeE/q
>>512で脱字発見しましたけんども、こんな感じかしら?

×しかし勇敢にもその威圧に耐え者がいた。
○しかし勇敢にもその威圧に耐えた者がいた。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:23:06 ID:JqG/FVuM
>>521
いやいや、あの方と言えば……

死んでも死なず、悪夢として蘇るあの方だろ?
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:23:09 ID:2YQQuAZk
滅殺の方乙です!

ところで話は変わるのですが、私ちょっとFF4のゴルべーザ召喚ものでも作ってみようかなと思っているものです。
そこで相談があるのですが……彼の鎧についてはどうすればいいと思いますか?
だってあれ、かっこよくて好きなんですがイラストではどうみても 脱 げ な い ようにしか見えませんorz
好き勝手に消せるだとかちょっとしたオリジナル入れないと、一応彼人間ですし、食事だとかどうすんだという話になりそうな気がバリバリです。
そこらへんはどうすれば良いでしょうか? 好き勝手やってもいいのでしょうか? あ、当然性格だとかは原作に忠実にするつもりです。
ご意見よろしければお願いします。
525滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 23:23:24 ID:Ank0UheY
>>522
あ、本当だ。
本当にすいません、そしてありがとうございます!

話は変わりますが、今少し単発の小ネタを考えてます。 「ゼロの使い魔会議」みたいな。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:24:19 ID:JqG/FVuM
また下げ忘れたし……吊ってくる
527滅殺の使い魔の人:2009/04/03(金) 23:25:04 ID:Ank0UheY
>>523,>>521
おまえらwwwwwww思っても言うなwwwww言わないでくれwwwww
ま、誰かはまだ考えてな(ry 秘密ですが。
528仮面ライダー玉袋:2009/04/03(金) 23:27:39 ID:qMQbTN6w
12時くらいになったら投下します
キャラは仮面ライダー剣のカリスで
10話ぐらいストックがありますが、手直しするかもしれませんので小出しでいきます
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:28:54 ID:THx7LWez
>>525
まさかとは思うが、他の人のキャラを無断で拝借とかする気じゃなかろうな…。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:31:57 ID:ZAOMyUOb
>>529
いや、その言い方だとなんというか……
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:35:52 ID:eADqYkPA
>>529
以前、そんなネタを考えてるってのがいたな。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:36:39 ID:YppdeE/q
そういうことしたバカいたなあ……
全選手入場ネタだっけ?

>>524
脱がないで入浴して脱がないで就寝する
というかむしろ鎧が本体
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:38:38 ID:t1PjC+83
>>524
ゴル兄さんか。洗脳前と後で性格変わるかな?
いや、どのみちハルケギニアに来た以上はゼムスから離れるということで、洗脳も関係ないか。
鎧に関しては……まあ、「脱げそうにない」で通しちゃったらどうだろ。あくまでも「脱げそうにない」だけで、実際に脱げるかどうかは別問題で。
そして着脱シーンは、誰一人として目撃することができない不思議仕様とかにすればw
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:38:52 ID:Rsc69Xbt
つまりアインストゲミュートだと
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:39:22 ID:YppdeE/q
脱がないで入浴とか言ってたから、「洗濯前と後」って読んじまったw
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:41:10 ID:YppdeE/q
>>528
遠いっす
投下予告の時点で30分以上もスレを専有状態ってのは不味いと思うっす
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:42:44 ID:D/UgMceX
>>528 玉袋ってなんだよぅ?
きゃんたまのことか?
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:44:14 ID:YppdeE/q
水道橋博士の相方かもしれん
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:49:54 ID:RVnB5GLh
>>524
いっそTAの褐色マッチョなゴル兄さんを出せばいいんじゃないかな。
あれなら鎧の問題は解決しそうだけど…。

そういえば、FF4TAがWiiウェアとかいうので配信する予定だとか…。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:51:49 ID:y6wZx5yh
>>529
毒吐きスレのいい餌食になるのが関の山か・・・
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 23:54:29 ID:ad5jRd69
>>527
きっとサガットを2度倒してベガも倒して
シャドルー基地をサイキョー流道場にしたは良いけど
そうとは知らないナッシュに爆撃されちゃった直後の
火引弾(サイキョー!)なんですねそうに違いありません。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:08:00 ID:1Y/A3qkX
>>540
それ以前の問題じゃね?
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:16:32 ID:/dKcdvo9
人様のキャラを勝手に使うってんだったら問題だよな


で、結局ライダーは来ないのか?
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:19:03 ID:pb7ggT3Z
>>524
携帯のFF4後日談のゲームだと半裸だよなwそれを元に考えればいいんじゃね?
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:22:35 ID:/H/LPJng
>>543
このスレ自体がNGと言いたいのか?
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:23:54 ID:dLVf0hqa
>>545
違うだろ
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:25:24 ID:UImMYycD
ライダーの人、どうなんでしょうか……?
投下はいらっしゃってからにしたほうがいいですかね?
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:27:19 ID:w68WGv17
>>547
単なる嫌がらせだと思うから無視した方がいいと思う
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:27:50 ID:gEcj1q1R
>>547

投下しちゃいなYO
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:27:57 ID:3xsYwuzE
予約した時間に現れない=キャンセルでいいんじゃない?
551樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/04(土) 00:30:13 ID:UImMYycD
では、0時35分より、
樹氷の王〜虚無の魔女〜後編を投下します。

これにて完結です。
小説を書くのも投稿するも初めてだったけれど、
とにかく思いを形にしたくて頑張りました。
少しでも心に残るモノがあったなら幸いです。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:30:59 ID:r9064os7
支援せざるを得ない
553樹氷の王〜虚無の魔女〜後編:2009/04/04(土) 00:35:30 ID:UImMYycD
「さて、これが成功するかどうかは運命の女神のみぞ知るってね。
ふふっ、君も相当な変わり者だね。
会って間もない僕と、命を賭けてまで契約を望むなんて」
「……目を閉じて」

 コルベール達は、ただ見守り、祈るしかなかった。
 動けない身体では、ルイズの誇りと存在をかけたこの儀式の成功を祈ることしかできない。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、使い魔と成せ」

 そう呪文を唱えると、ルイズは目を閉じ、少年に口付けた。
 その瞬間、身体の凍結が始まる。
 手足の先から感覚がなくなるのが分かり、目を開けると先の方から急速に白い氷になっていくのが見えた。
 ただ、痛みはない。身体は寒すぎてもはや何も感じられず、息もできない。
 しかし、苦しいということは全くなく、安らかな眠りに落ちていくように目の前が暗くなっていく。

 ああ、失敗しちゃったんだ。
 あんなに偉そうなことを言ったのに、私はやっぱり「ゼロ」だったんだ。
 もしかしたら、この身を万病の薬にして役立たせるために、私はこの少年を呼んだのかもしれない。
――これが、私の運命だったのかもしれない。

 そんなことを考えながら、ルイズは意識が暗闇へと堕ちていくのを感じていた。



 どのくらい時間が経ってしまったのだろう。
 自分は死んでしまったのか。ふとそんなことが頭をよぎる。
 目を開けると、暗闇の中に光が見えた。
 その光はどんどん強くなり、やがて闇全体を包み込む。
 あまりの眩しさに目を閉じる。

 しばらくして、そっと目を開いてみると目の前に氷の城があった。
 周りは樹氷の木々に囲まれており、地面は雪で覆われている。
 曇っているために辺りは薄暗く、雪が音を吸い取って、耳鳴りがするほど静かだった。

 自分は凍り付いてしまったのではなかったのか。
 此処は何処で、どうして自分はここにいるのか。
 あまりの展開に唖然としていると、雪を踏み分けて、森の奥から誰かがやって来るのが分かった。

 黒髪の、美しい少女だった。
 粗末な身なりをし、疲労から顔には翳りが見えたが、それを差し引いても十分に魅力的だった。
 少女は、氷の城に驚いていたようだったが、ルイズの方には見向きもしなかった。
 ルイズが声をかけても何の反応もせず、そのまま素通りして、おそるおそる門を開け、場内に入っていく。

――もしかして、私は意識だけここにある状態になっているのかもしれない。
 夢の中にいるような感覚から、ルイズはそう判断する。
 とりあえず、此処にいても仕方がないので少女を追って城の中に入っていくことにした。

554樹氷の王〜虚無の魔女〜後編:2009/04/04(土) 00:37:29 ID:UImMYycD
 長い廊下を抜け、少女は導かれるかのように場内を進んでいく。
 そして、一番豪奢な氷の扉を開けると、玉座にはハルケギニアへ呼び出したはずの樹氷の王が座っていた。

 これは、過去の記憶?
 
 ルイズが疑問に思っていると、まるで夢の中の画面が切り替わるように断片的な場面が目の前で展開された。
 目まぐるしく変わっていく情景に普通なら対処できないが、通常とは比べ物にならない速度で頭の中で情報が処理されていく。
 次々と流れ込む情報をルイズは難なく吸収し、瞬時に思考する。
 不思議なことに、人の心や記憶までもルイズは感じ取ることができた。


 黒髪の少女はどうやら病弱な母のために樹氷の花を取りに来たらしい。
 だが、彼女は若き樹氷の王に一目で激しい恋に落ちてしまった。
 彼女は城に住み着き、毎日愛の言葉を紡ぐ。少年は哀しい瞳でそれを黙って聞いているだけだった。
 そして、樹氷の花を渡すから外の世界に帰るように何度も彼女を説得する。
 しかし、彼女は聞き入れようとせず、少年に愛を囁き続けた。
 外に出れば二度と少年に会えなくなると分かっていたからだ。
 母のことは気がかりだったが、自分がいなくとも妹がついているし、なにより少年に会えなくなるのは耐えられなかった。

 少年もまた、彼女を愛するようになっていた。だが、少年は決して彼女の愛に応えることはできない。
 なぜなら、彼は永遠に年をとらず、彼女に触れることも叶わないからだ。
 愛しくて堪らない彼女の温もりを、傍にいながらも決して感じることができない。
 彼女にそのことを伝えても、彼女は離れなかった。
 それどころか、ますます増大した彼女の愛は狂気を孕み、ついにはこんなことを言い出したのだ。

「私はいつか、老いて死んでしまうわ。ただ枯れ行く花のように生きていくのは嫌。
それならば、せめて今、貴方の腕の中で永遠に朽ち果てぬ花になりたい。
貴方の思い出の中で永久に咲き続ける花になりたいの。
お願い。私を愛しているのなら、応えて頂戴」

 少女は毎日、愛を問い続けた。
 来る日も、来る日も問い続け、少年はそれを受け流し続けた。
 ついに持ってきた食料が尽き、痩せ細りながらも少女は愛を問う。
 少年には「餓え」がない。当然、久遠に冬であり続ける森に食べる物などないのだ。
 少女の艶やかだった黒髪は色あせ、瞳は光を失っていく。
 日に日に痩せ、弱っていく愛しい少女を、少年は見ていられなかった。
 少女はもう、立ち上がることさえ困難になっていた。

 少年は少女の問いに応え、
 そして、二人は遂に結ばれた……

「ありがとう。私の愛に応えてくれて。
愛しているわ、樹氷の君。
どうか、樹氷の花を求めている人がいたら、私を使って頂戴。
それが、母さんへのせめてもの罪滅ぼしよ……」

 そう言い残すと微笑みながら彼女は少年に口付け、そのまま物言わぬ花となった。
 腕の中の少女を抱きしめ、少年は声を立てずに泣いた。

555樹氷の王〜虚無の魔女〜後編:2009/04/04(土) 00:39:56 ID:UImMYycD
 少年の記憶が流れ込んでくる。
 ルイズの目から止めどなく涙が溢れる。胸が張り裂けそうだった。
 少女の死で、心の底に沈めたはずの記憶が蘇ってきたのだ。
 それは、母親の最後の言葉の記憶だ。

『ありがとう。私の元に生まれてきてくれて。
愛しているわ、愛しい子。
呪術を封じた母さんの体は、万病の薬になるはずだわ。
もし、貴方に何かあったら、私を使って頂戴。

ごめんなさい。
傍で見守ってあげられなくて。

――さようなら。』

 耐えられなかった。少年は慟哭した。
「うああああああああああああっ!!!」 
 聞いている者の心に、鋭利な刃物で切り裂くような痛みを与える叫びだった。



 少年は何百年もの間に、このような経験を何度も繰り返していた。
 花を手に外の世界に帰っていくものもいれば、あの黒髪の少女のように樹氷の花に成り果てる者もいた。

 いつの間にか、場面は切り替わるのをやめ、ルイズはまた玉座の間にいた。
 少年は、玉座に座り、哀しい瞳をしながら並べられた花を見つめている。

――愛とは、何なのだろう。
 少年の考えていることが、ルイズに流れ込んでくる。
 
 母さんは、僕を愛した。僕を守るために、命を落としてまで魔女の契約をした。
 それで、僕はこの城に一人ぼっちになった。
 寂しかった。一人でいることは耐えられなかった。
 だから、外の世界から人を招いた。わずかな間でもいい、話し相手が欲しかったんだ。
 でも、僕を愛してくれた人は、樹氷の花になることを望む。

 愛されることが恐ろしかった。でも、孤独に耐えられない。
 だから人を招く。そして、また一つ樹氷の花が咲く。

 これが愛? 命を投げ出して、僕を一人にして、自分だけ安らかに逝くのが愛なの?
 
 苦しさ。哀しさ。孤独。後悔。諦観。絶望。――憎しみ。
 ルイズの心に少年の様々な暗い感情が渦巻き、許容量を超えて心が壊れそうになる。

 生きることに、特別な意味など無い。
 全ては消え往く運命と知りながら、彼女達は永遠を望んだ。
 僕の心の中で生き続けることを望んだ。
 心の中で生き続ける、か。
 普通の人間なら、できるのかもしれないね。
 人は、終わり往くモノだもの。
 大切な人との日々を胸に抱いて生き続け、思い出と共に死ぬ。
 だけど、僕はどうなるの?
 永遠を生きる僕は、忘却の彼方へ彼女達を押し流すことしかできない僕は、
 いつか彼女達を『喪失』する。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:40:50 ID:4a4xJ/Vx
これは支援
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:41:34 ID:w68WGv17
支援
558樹氷の王〜虚無の魔女〜後編:2009/04/04(土) 00:42:27 ID:UImMYycD
 嗚呼、苦しくて、仕方がない。狂ってしまえたら、どんなに楽だろう。
 いっそのこと、皆いなくなっちゃえばいいのに。
 僕以外のもの全て、いなくなっちゃえば、こんな思いはしなくてすむかもしれないのに。
 苦しいクルシイ苦しいくるしいくるしい……たすけて、かあさん。

 おねがいだから、ぼくを、おいていかないで。

 ルイズの心の中で、何かが弾けた。



 少年は、自分の体が温もりに包まれているのを感じ、驚愕した。
 目を開けると、凍らずにいるルイズに抱きしめられているのが分かった。

「私、残された人の気持ちなんて、考えなかった。
ううん、考えようともしなかったわ。
私は、私もちい姉さまも両方助かる道を探すべきだった。
どんな困難が待っていようともね」

 ルイズは自分が樹氷の花になった後のことを想像した。
 ちい姉さまはきっと病気が治ったとしても、一生苦しみ、悲しみの中で生きていくことになっただろう。
 自分はもう少しで重い枷を大好きな姉に付けてしまうところだったのだ。
 それだけではない。自分の死は、多くの人を哀しませ、後悔させるだろう。
 家族も、自分を助けに来てくれた先生と、……友人も。

 必要なのは、強い意思だった。
 ルイズは過去の映像を見て、この孤独な少年を心から救ってあげたいと思った。
 契約に失敗しても、成功しても良いという半端な考えでは、そんなことができるはずはない。
 絶対に契約を成功させること、それのみを望み、集中しなければ魔力を全力で注ぎ込むことなどできる訳がないのだ。

 ルイズは少年を抱きしめながらも、上半身を少し引いて、少年の顔と見合わせる。
 そして、泣きながら微笑んだ。

「私と、共に生きましょう。樹氷の森を抜けて、この広い世界で。
あなたはもう一人ぼっちじゃないの。
私だけじゃない、色んな人と触れ合って生きていけるわ。
その身に触れるだけで人が凍りついてしまう魔法も、私が絶対に解いてみせる。

確かに、貴方は永遠を生きるもの。私は先に老いて死んでしまうでしょうね。
でも、喪失を恐れないで。
人間だって、忘れながら、失い続けながら生きているのよ。
でもね、必ず、どうやっても消えずに心に残るものがあると思うの。
それを大切な人の心に刻み付けるために、人間は生きてるのよ。

私も、貴方の心の奥底に、凍えぬように温かいものを刻み付けてみせる。
約束するわ。私は絶対に偉大なメイジになって、貴方を導く者になる」

 少年は、しばし呆然としていたが、溜息をつくと、困ったように微笑んだ。
 今までに見てきたものとは違う、外見相応の幼い笑顔だった。

「そんな、偉そうに全く根拠のないことを言われてもね……
まさか、本当に契約を書き換えるなんて思わなかったよ」

 少年の深い襟ぐりによって見える胸に、使い魔のルーンが淡く光っていた。
559樹氷の王〜虚無の魔女〜後編:2009/04/04(土) 00:45:24 ID:UImMYycD
「でも、永遠を生きる間の暇つぶしにはなりそうだ。
何せ、ずっと森の中に篭っていたからね。
外の世界なんて何百年ぶりだろう。

まぁ、せいぜい僕を楽しませてよね、ルイズ?」

 いたずらっぽく笑うと、氷の檻とコルベール達を捕らえていた氷の枷が掻き消え、春の日差しがルイズ達の身体を包み込んだ。
 冷えていた体がじわじわと温まっていく。
 少年も、眩しそうに目を細めながらも、小さく笑みを浮かべている。
 肌も髪も雪のような少年は、光を反射してまるで細氷のように輝いていた。
 思わずルイズが見とれていると、猫のように首根っこをつかまれ、少年から引き剥がされる。
 反転されたと思ったら、抱きしめられ、たわわな胸に顔を埋める羽目になった。

「いつまで抱き合ってるのよ! あんたはもうっ、本当に……心配かけて」

 後ろからも、手が回ってきて別の温もりに包まれる。

「……無事でよかった」

 キュルケとタバサ、二人に挟まれて抱きしめられる形になり、ルイズは思わず体の力が抜けた。
 今になって、やっと死への恐怖が襲ってきて、幼子のように泣くのを止められない。
 二人からも小刻みに震えが伝わってきて、泣いているのが分かる。
 しばらく三人は、お互いに抱きしめあい、泣きあった。



「な、何よ、もう。二人とも、泣きすぎなのよ!
言ったでしょ。私は偉大なメイジになるって。
こんな契約、成功して当たり前なのよ!!」

 だいぶ落ち着いて、自分の置かれている状況に気づき恥ずかしくなってきたところでルイズはようやく解放された。
 コルベールも目に涙を光らせながらその光景を見守っていたので、ますます恥ずかしくなる。
 
 気持ちを切り替え、ルイズは使い魔となった少年に向き直る。

「ねぇ、貴方の名前、聞かせてくれない?
だって、貴方は『此処』で生きていくのよ?
もし教えてくれないなら、私が勝手に付けちゃうけど……」

 どうする? とルイズは首を傾げ、赤くなった眼を細めて笑う。
 少年は、目を見開いた後、意地悪そうな笑みを浮かべた。

「その必要はないさ。
名前なんて、呼ばれる機会がなかったから忘れてたけど、たった今思い出した。
母さんが、僕に残してくれた名前。

僕の、名前は――」


                          〜FIN〜

560樹氷の王〜虚無の魔女〜:2009/04/04(土) 00:47:27 ID:UImMYycD
以上です。

最初はタバサに召喚させて、SHらしく鬱展開な小ネタに……
と、考えていたりしましたが、今となってはルイズに召喚させてよかった
と思います。
樹氷の王は常々可哀想な奴だと思っていたので、
救われるような話を書いてみようと思いました。
鬱小ネタもあるので機会があったらまた書いてみたいです。

今後、少年とルイズがどうなっていくのか……
今のところ少年にはルイズしか触れられないから、いい感じになって
ツンデレ同士バカップルになるのか。
それとも、運命からは決して逃れられないのか……

それは、皆さんのご想像にお任せします。
支援ありがとうございました!!
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 01:05:19 ID:w68WGv17
〜FIN〜付いてるから多分終わりなんだろうけど
終了報告もしてくれると嬉しいな

とりあえず乙
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 01:12:08 ID:baZVm5x5
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 01:31:58 ID:r9064os7
乙!
SH万歳!
良いものを読ませてもらった
また機会があったら投下してくれると嬉しいな
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 03:24:19 ID:F9Ni9A59
>560
乙です
元ネタ知らなくとも楽しめた
召喚シーンだけでもこれだけ内容が濃ければ全然ぉkっスよ
ルイズ召喚でマジ正解
タバサ召喚とか想像するだに鬱すぎて耐えられねー!
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 04:15:36 ID:BBLZGqmj
安易な鬱ネタでお涙ちょうだいなんて勘弁
やっぱり物語はハッピーエンドでなくちゃ!
つー訳で乙です

しかし、今後の展開を考えると非常に困った使い魔ですな
なにしろ彼に触れたら即氷結

ミダス王じゃないけど、keep outのテープが必須になりそうだw
566魔導書作者:2009/04/04(土) 04:21:48 ID:hsh6wSa8
SHの人お疲れ様です。
こんな夜更けですが、07のb版が完成しましたので04:25に投下します。
もしおヒマな方がいれば支援をお願いできませんでしょうか。
あと、もし五分以上間隔が空いた場合、高確率でさるさんを食らっています。
その場合、どなたか代理をおねがいします。
567魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:25:05 ID:hsh6wSa8
『――あぁぁぁぁあああああああっ!!』

アルの覚醒を促したのは、慟哭であった。
それは、悲しみはぬるく、絶望は甘く、虚無さえも埋め尽くし、胸の内を噛み
砕き掻き毟り抉り出すような“痛み”である。
胸がズキリと痛んだ。
魂に刻まれた傷が、その声に共鳴し鮮やかな痛みを唱和する。
その声は――己を写している。
そして薄ぼんやりとした思考のまま目を開けようとして。
――過剰、過重、過送、逆流、逆送、逆転。
「ぐっああっ!!」
アルの体を強大な力の本流が駆け抜け、視界が白く染まった。
目を見開き、背を反り返す。
存在が=書物が=活字が=言語が=己が押し流されそうな衝撃。
拙いはずであった繋がり(パス)から、溢れた力は本来の量からいって微々た
るもの。
だがその量はアル・アジフの許容量をとうに超えている。
(っっっ!! このまま、ではっ! 妾自体が消し飛んでしまうっ……力の誘
導っを!!)
無我夢中で術式を組み立て、幾分もマシになってくる。
徐々に戻ってくる視界と体の制御。
そして白から彩色された世界の中心に、ソレはあった。

「――ああアあァァぁアああアアッッ!!」

仰向けに倒れ、土に草に汚れ、空へと己の全てを吐きださんとするかのような
ルイズがいる。
「――ぐくぅっ!」
通り抜ける力の総量が上がった。
それは例えるなら飽和寸前の河のようなうねりを持ち、ルイズの昂りと共にそ
の量を増していく。
アルはこの事態をある程度は予想していた。
不完全とはいえ、ルイズは仮にも魔導書と契約を交わした者なのだから。潜在
能力の高い低いはあるものの、最低限の魔術資質は有している。
資質のある者なら、その感情の昂りで高い魔力を練り上げることはある。
だが、その量はアルが予想していたよりも大きく上回っていた。
それはアルがこの世に存在してから、今まで感じたことの無いほどの――そう、
かの大導師(グランドマスター)さえも凌ぐかと思われるほどの魔力。
「くぁ……つぅ……っ!」
アルは必死に術式を操作し、魔力を誘導していく。
それでも、人の身で大海原の波を受け止められないように。いくら巧みに術を
操っても、漏れば出てくる。
「―――――――」
不意に……慟哭が止む。
流れを押さえ込む傍ら、ルイズへと視線を向けると。
彼女は、ゆっくりと、非常にゆっくりと体を起こしていて。
そのか細き手が、俯いた己が顔を掴み、空へと向けられ。
開かれた口元が震えた――
「――アアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッッ!!!!」
魔力の波が数段上がる。
「――っ!?」
それは術式の脆弱な部分を突き破り、怒涛のごとく突き進み、体中のいたる所
を駆け巡り満たし飽和させ。
奥の奥まで、隅の隅まで、裏の裏まで余すことなく蹂躙し――その最奥(禁忌)
へと流れ――触れた。
ガチャリ――と、なにか身体(書物)の奥底で鍵が開く音がした。
――強制接続(アクセス)。
「な――」
その瞬間、アルの体から、断章が舞った。
568魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:26:08 ID:hsh6wSa8
それはアル・アジフ(母体)の意思とは関係なく渦を巻き――ルイズの元へと
飛んだ。



――感情情報の飽和。
――飽和情報の流失。
――流失情報の展開。
――展開情報の実行。
――――世界の裏、常識の乖離、非常識の常識、法則の隅、演算の誤差、超法
則を超越する超々々法則、犬を見たら怪異と思え、猫を見たら異形と捉え、人
を見たら■■■■の手先だと確信しろ――――
「あぁぁぁぁあああああああーー!!」
――世界が広がる。
非常識が脳髄へと直接注ぎ込まれ、常識の外枠情報が強制的に“無垢な魂”へ
と刻み込まれ穢してゆく。
――世界が広がる。
この世は薄氷の上に成り立った世界であり、その薄皮の下には恐ろしき存在が
いる。
――世界が広がる。
「アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッッ!!!!」
頭が弾け飛びそうなほどの情報。
脳髄を焼き、脳を砕き、心を割り、魂を食らおうとする“知ってはならない知
るべき知識”。
それらは圧縮され折り畳まれ詰め込まれた超々々高密度情報体として脳髄を駆
け巡り、強制的に解凍、開封されていく。
許容量を大幅に超えた情報に脳髄は焼き切れる寸前で、脳は破裂寸前、読むだ
けで汚染される情報を刻まれ心は引き裂かれ、魂は陵辱される。
絶え間ない苦痛が、身体を、魂を犯し――それがどうしたというのか。
苦痛、蹂躙、陵辱、洪水、破壊、再生、甘美全てがごちゃ混ざり合いルイズを
虚空の底へと押し流そうとするが。
ルイズの意識はそこになかった。
圧倒的な情報が渦巻く中で、ただあるのは――

――憤怒――

――死んだのだ――彼女が――目の前で――怒れ――何にだ――怒れ――フー
ケ――否――ゴーレム――否――学院長――否――魔法学園――否――天気――
否――世界――否――運命――では……ではではではでは――何に怒ればいい
のだろう?

――それは――“己”――

不甲斐ない己に怒れ、後先を考えない己に怒れ、不用意な己に怒れ、泣き叫ぶ
己に怒れ――“キュルケを死なせた己に”怒れ!!
憤怒、怒号、激怒、憤慨、怒気、譴怒、赫怒、震怒、積怒、怒火、怒声、怒張、
駑馬、怒髪、暴怒。
在りとあらゆる力を使い、己を許すな――
刻み込め。その胸に、心に、魂に……っ。
殺したのはフーケであっても『死なせたのは己』だと!!
解凍情報にある断片術式復刻――術式自動演算開始――

「aAAAAAAAAAAaaaaaaaaaa――!!!!」

脳内で異形の演算が組み立てられる。
――さあ、怒りを種火に――苦痛に彩られた艶華を咲かせ――腐れ落ちようで
はないか――
甘い声が心の内から涌き出てくる。
それに抗うすべはなく、抗おうとも思わなかった。
「や、止めろ! その術式は――っ!!」
569魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:27:00 ID:hsh6wSa8
目を見開いたアルが、なにかを叫んでいる。
デルフが怒鳴っていた。
「なにをやってやがる! そんなことしたらお前がやばいんじゃねえのかよっ!」
一瞬だけ、魔術の構成が崩れかけるがすぐに持ち直す。
まだ術式は完成していないのに、足元の枯れ葉が炎上した。

フーケは慄いた。
「な……なんだっ」
狂ったように叫んでいた少女から突如吹き出した魔力に。
それはありえないほどの量と、質と、恐ろしさを持っている。
今すぐここを離れろと本能が絶叫する。
だが、その声をフーケはねじ伏せた。
意識を集中すると、ゴーレムの腕は鉄となり。
杖を振り上げ、それに合わせてゴーレムが右腕を振り上げる。
――やばくなる前に『殺す』!

「――っあぁぁっ!!」
フーケが焦燥に駆られた声を出し、ゴーレムが右腕を振り上げる。
それは余りにも力強く、雄雄しく……そして余りにも遅かった。
腕が振り下ろされるよりも早く。
霊気燃焼機関『アルハザードのランプ』を劣化複製完了。
        術式名〈灼熱呪法〉

溢れる力が、止めない魔力が、際限なく膨れ上がり――

『――それが、彼女の望むことなのか?』

「――え?」

――その瞬間、眼前が全て炎へと染まった。

そこは熱くなく、ただ炎の草原がどこまでも広がる炎と白の空間。
その炎の中で、わたしは1人……いや彼と向き合っている。
円柱の帽子を被り、スーツに身を包んだ黒い髪と、浅黒い肌の異国風の男。
わたしは、彼を知っている。
夢で、幻で、あるはずもない記憶で――彼を知っている。
彼の体はボロボロだった。
斬られ、抉られ、焼かれ、引き裂かれた後が生々しく身体に刻まれ、彼の潜り
抜けた地獄が容易に想像できる。
わたしは、その身を焦がす思いを想像し顔を歪め――彼が笑いかけた。
「――っ」
彼の浮かべる笑顔は困って苦笑するかのようで……口が開かれる。
『君のすることが、彼女の望むことなのか?』
その言葉に、胸を突かれた。
なにを言っているのか。
揺らめく炎が全てを焼き尽くせとのたまう。
キュルケはわたしの仇敵で、いつも挑発してきて、いらないのに喋りかけて、
独りの時はからかって、張り合って、喧嘩して、陽気で、楽しげで、魔法が使
えないわたしを“対等と見ていた”
……そんなキュルケが、命を懸けた仇討ちなんて望むのだろうか?
脳裏に浮かんだのは――楽しそうに微笑む笑顔だった。
「……あ……うぅ……」
視界が歪み、頬を暖かい水が伝った。
「うわぁ……あぅぅ……ぁぁ……」
自分が愚かしかった。
こんな、虚勢ばかりを張るわたしは、ぼろぼろのわたしは、彼女に命を救われ
たのだ。
「あああ、うぁぁあああああーっ!」
彼は優しい微笑で、わたしを見詰めた。
そして現実へと帰る。今わたしは、その命を燃やし尽くそうとしているのだ。
570魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:27:55 ID:hsh6wSa8
今更止める術はなく、力は臨界点まで達している。
なんて、愚かで救いがたいのだろう。
すると。
『ならば少しの間、私の力を貸そう』
その言葉と共に、周囲の炎が一斉に彼へと絡みついた。
炎は男を焼き、焼けた端から光になっていく。
そして光は、わたしから炎を遠ざける。
「なん――で?」
驚愕するわたしに彼は手に持つステッキを投げた。
『彼女を頼んだぞ。新しきマスター・オブ・ネクロノミコン』
受け取ると微笑を浮かべ、炎が全てを、白の世界をも焼き尽くす。



アルは目を逸らせなかった。
ゴーレムが腕を振り下ろす瞬間を。
術式が完成するにせよ、先に一撃が振り下ろされるにせよ結果は同じである。
胸を占めるのは、助けられなかったという失望と、また契約者を殺してしまう
という絶望。
その二つを噛み締めながら、アルは見続け――
「な――」
息を詰まらせた。



ゴーレムの一撃を叩き込もうとした時、フーケは殺したと確信した。
あの少女がどんな魔法を使おうとしていたとしても、手先を鉄へと変化させた
ゴーレムの一撃は防げまい。
殺意を乗せた右の拳を、眼下へ振り下ろし、地面へと叩き付け――耳を疑った。
――ガンッッ!!
それは、人を殴りつけた音ではなかった。
「――痛ぇっ! なにしやがんでぃ!」
そして、そんな声が拳の下から聞こえた。
「なん……だって?」



強烈な圧力にギチギチと刀身が鳴る。
「痛ぇ! すんげぇ痛ぇ! なんとかしてくれ!」
鉄の拳と地面の間に挟まれた状態でギャアギャアと騒ぐデルフ。
「あーもう、少しは静かにしなさいよ」
鉄の天井の下、デルフをつっかえ棒にしながらルイズは鬱陶しげに返した。
それを見て、アルは呆然としている。
「生きて……いる……いや、そもそもなぜ生きていられる」
手を鉄に変えたゴーレムの一撃に耐えているデルフの強度も驚愕物だが、それ
以上に“柔らかい地面に剣を突き立てるだけで”攻撃を防いでいることが一番
の驚きであり。
「まさか――」
アルは、その剣先が“空間に突き立てられている”ことに気が付いた。
魔術師なら、常識という枠に囚われず虚空を疾走したり、掴むこともできるが。
未だルイズは魔術師ではなく、たとえ魔術師だとしても、それができる位階
(クラス)に行くのには才能と時間が必要となる。
それに、ほぼ暴走状態だった術式が完全に止まっている。
少なくとも先ほど片鱗を見せただけで、漏洩した術式に振り回されるような者
ができる業ではない。
その驚愕の度合いはフーケも同じらしく、ゴーレムを動かすことすら忘れてい
た。
「早くっ! 早くしてくれっ!! ものすんげぇ痛ぇ!」
ガチャガチャと鍔を鳴らすデルフに、ルイズは溜息をつくと。
「はいはい。それじゃあ」
571魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:29:35 ID:hsh6wSa8
拳を握り締め――
「――これをどかすわよ」
――ゴッッ!!
鉄の拳へと、そのちっぽけな拳を叩き付ける。
誰が見ても無謀で無意味な行動。
だが、アルには“その世界の裏”が見えていた。
叩き付けた拳。そこから、限界まで膨らんでいた〈焼滅〉の意思がゴーレムの
手へと浸透し。

――小さな太陽が生まれた。

眩い光に誰もが目を伏せ。
そして光が収まった時、ゴーレムの右腕は消えていた。
「――」
驚愕を顕にするフーケをよそに、ルイズはゆっくりと立ち上がる。
少しふらついた。
〈灼熱呪法〉は大量の魔力を消費する。
どの道、術式は完成していたので使わなければ無駄になっていた。
立ち上がると足首に鋭い痛みと――革で絞り上げられるような感触がし、それ
は痛みを緩和させた。
「……ずいぶんとすげなぁ」
感心するようなデルフの呟き。
何気なく手元を見ると、手が黒く染まっていた。
いや正確には黒い革のようなものに包まれている。
それは手袋やブーツのように両手足を包み。途切れた端は淡く発光して、蛍の
ような光を散らす。
目を閉じた。
頭痛を伴う情報の洪水は未だ脳内で荒れ狂っているが、それは人間の許容でき
る範囲まで抑えられている。
――情報の添削を実行。
――汚染情報を優先として、閲覧レベルが高い情報を所有者がその位階に達す
るまで封印を開始。
――現在使用可能呪装を表示(欠損情報、使用制限あり)
――アトラック=ナチャ(不可)、ニトクリスの鏡(不可)、バルザイの偃月刀、
ロイガー=ツァール(不可)、ド・マリニーの時計(不可)、ク■ゥ■■(欠
落)、■■カ■(欠落)、その他呪装(不可)――
――使用可能呪装はバルザイの偃月刀のみ。十分だった。
高速で情報が整理、封印、添削されてゆく。
世界の裏に潜む陰が、常識を食い破ろうとしている非常識があることを捉えら
れる。
ああ、これが魔術師の視点だと理解した。
たとえ――たとえこれが借り物の力だとしても、世界を操れる万能感が巡る。
ゴーレムを見上げた。
未だ心は荒れ狂うような熱を持つのに、頭の芯は凍り付き透き通る。
怒りはある、憎しみはある、悲しみはある――だが、それら全てを制御し、心
を燃やす燃料とした。
「アル、ボロ剣――」
その声に我に帰ったアルはこちらへ顔を向け。
ルイズは冷めた思考で誓う。
「倒すわよ」
その声にアルはニヤリと笑うと埃を払ながら立ち上がり。
「当然だ。というか、汝。さっきまで泣き叫んでいた分際で仕切るな」
「ははっ、ちげぇねぇ!」
それに同意するデルフに不貞腐れながら、ルイズはデルフを構える。
そこには、ようやくこちらへ向かって攻撃を再開しようとするゴーレムがいた。
「ふん、今度は無様を晒すなよ」
ゴーレムが手を振り被り。
「そっちもねっ」
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 04:30:09 ID:oK+bxsU9
支援
573魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:30:33 ID:hsh6wSa8
投げつけられた木を2人は、飛び出すように左右に避けた。

ゴーレムの周囲を右回りに疾走する――
足は多少痛むが、ブーツの効果か痛みは緩和され、ルーンが今までにない輝き
を発して身体が軽くなる。
「どうする!」
ゴーレムは片手である。
「当然行くに決まってるでしょ!」
アルへとゴーレムが投擲をした瞬間を狙い、デルフを振り被って、突っ込む。
「おい! 同じことしても意味ねえぞ!」
「わかってるわ!」
左腕しかないゴーレムはすでに腕を振り切っており。こちらへ攻撃する術はな
いはず!
グングンとゴーレムの姿が大きくなり。
ニヤリとフードの下の顔が笑った気がした。
――ドバン!
ゴーレムの目前まで迫ったとき、突如ゴーレムの肩から失った右腕が生えた。
「なんだとぉっ!?」
驚愕するデルフの声が聞こえ、右腕は真っ直ぐとこちらへ向かい伸びる。
相対速度で爆発的に迫る腕を前にして、左手のルーンが眩い輝きを放ち、ルイ
ズは飛んだ。
スレスレを通り過ぎる腕、反転する世界の中でルイズは言った。
「ボロ剣、我慢しなさいよ」
「へ?」
――選択呪装〈バルザイの偃月刀〉
手袋の文字が浮かび輝き、デルフへと光が集まると炎と化す。
「あっつぅぅうっ!!」
吹き散らされた炎の中から、黒光りする偃月刀が現れた。
ルーンがその武器の最適の使用方法を提示するが――無視した。
この武器は……そんなもの(ルーン)では使いこなせない。
認識する世界から自分へと知覚を集中させ、頭、胸、腹、足、腕を伝い剣へと
意識が流れていく。
そして、剣を伝い――世界の裏を認識せよ。
――世界が、広がる。
視界は空からゴーレムの腕へと回転し。
「何度もやらせるかい!」
フーケが叫ぶと、眼下の腕が鉄へと変わるが――問題ない。
「はぁぁああああっ!!」
回転の勢いを利用して、偃月刀を振り切った。
ズズンっ――
切断された腕が地面へと落ち、土へと還る。
「おお、すげーな! ……でもなんか、俺の扱いがひでぇぞ」
なんなく着地したルイズにデルフが賞賛と文句を送り。
それにルイズはしれっと返す。
「だから、我慢しなさいよ、て言ったでしょ『デルフ』」
カチャリと鍔が鳴った。
「はっ! それでもひでぇよ『相棒』!」
ルイズは偃月刀となったデルフを構えた。



フーケは歯噛みする。
技とらしく作った隙へ飛び込んだルイズを迎撃するどころか、返す刀でゴーレ
ムの腕を切断されたのだ。
それも、鉄へと変化させた腕をだ。
少し前まで、足手まといだった少女の変貌に戸惑いを隠せなかった。
ゴーレムの腕を再生させていると、気配を感じ無事な左腕を翳させる。
表面に爆発が起きた。
「どうした! こっちがお留守だぞ!」
そんな威勢と共にアルが手から魔力弾を放つ。
574魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:32:16 ID:hsh6wSa8
「ちぃっ!」
それを防ぎながら、再生したての腕で森から木を毟り投げつけた。
だが、そんな攻撃に当たるはずも無く。
「ははは! 当たらんぞ!」
歯を食いしばるが、挑発には乗らない。
後ろを振り返ると、やはり大剣を持ちこちらへ駆ける少女の姿がいた。
ゴーレムへ振り向き様に腕を振り被り、鎌で草を刈り取るように振り抜く。
それをルイズが大きく跳躍して避わすと、残る腕を振り被り――
――ドドン……
ゴーレムの背中に、魔力弾が次々と直撃する。
「ちょこまかとぉっ!!」
アルへ注意が向けばルイズが、ルイズへ注意が向けばアルが。
常に対称的に動く2人に翻弄され、激昂しかけたフーケに何か引っかかった。
(風竜のお嬢ちゃんは――どこに?)
その考えに至ったとき。
「きゅぃぃぃいいいっっ!!」
「上かぁっ!!」
その鳴き声に空を見上げると、こちらへ急降下する風竜の姿がある。
「やらせるかぁ!」
ゴーレムが手に持つ木を投げつけた。
「きゅいきゅいきゅいきゅいっ!!」
それをスレスレでシルフィードは回避し、その首に跨るタバサが準備していた
魔法を解き放つ。
空気中の水分という水分を集まり、巨大な氷柱が出来上がり。
「『ジャベリン』!」
タバサが杖を翳すと、それは猛烈な勢いで迫る。
普通ならそれで決着が付いていただろう。
だがフーケも並のメイジではない。
「ぅおぉぉおおおおっ!!」
伸び切る直前のゴーレムの肩を崩す。腕は勢いをそのままに肩から外れ『ジャ
ベリン』と激突した。
砕けた氷と土が舞い、その中をシルフィードがゴーレムを這うように猛スピー
ドですれ違う。
フーケはそれを見てすぐに攻撃しようとし――影が差す。
「かーくごーっ」
再び見上げた空には、こちらへ跳躍する黒尽くめの小さな影――エルザがいた。
「三段構えっ!?」
とっさに下がったフーケのいた場所にエルザは着地すると、一切の間を持たず
にこちらへと迫った。
「――っく!」
杖を構えるが密着距離まで間合いを詰められる。
こちらへ組み付こうとするエルザに、杖を持たない方の手で短剣を抜き斬り付
けた。
「あぶなっ」
それをエルザは避わすと、フーケは杖を構える間合いを取ろうとする。
だが、エルザが絶妙な間合いを取り。常にメイジにとって嫌味かつ自分は逃げ
やすい位置へ移動していた。
「ふふん、伊達に50年以上人間相手にしてきたわけじゃないよ……てりゃぁ!」
そして、一気にエルザが間合いを詰める。
斬りかかる短剣を紙一重で掻い潜ると、身体へと組み付いた。
「くぅっ!」
引き剥がそうとするフーケに構わず、エルザは大きく口を開ける。
フードの奥でメキメキと犬歯が伸び鋭くなった。
「いただきまーす!」
見えない位置だが、ぞくりと悪寒を感じフーケは短剣を逆手に持つと。
「舐めんじゃっ無いわよ!」
自らの身体を刺し貫くかのように短剣を振るった。
「おおっと!?」
フーケの肩に短剣が突き立ち、さすがにエルザもフーケから離れ――そこへフ
ーケが蹴りを放つ。
575魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:33:39 ID:hsh6wSa8
「ぎゃんっ」
それはエルザの腹に当たり、ゴーレムの上から弾き出した。
「はぁっ……はぁっ……」
肩から手を離すと、杖を持ち替える。
突き立った短剣はそのままに下を見る。そこでは落ちたエルザをシルフィが回
収しているところだった。
「よくも……っ」
怒りに燃えるフーケはゴーレムへと指令を送る。
それにゴーレムは応え。地面から吸い上げた土で腕を再生させながら、叩き落
とそうとして。
桃色の髪が目に入った。



今ゴーレムは、タバサの襲撃を受けて立ち尽くしている。
ルイズが足を止めると、アルが傍へ寄ってきた。
「無事か?」
「ええ」
本当は足の痛みが少し酷くなっているが、そこは我慢する。
「さて、この木偶の坊をどうしてくれよう」
そういうとアルがゴーレムを見上げた。
30メイルもある巨大なゴーレム。
並大抵の方法では破壊できないだろう。
先ほどの〈灼熱呪法〉ならば、破壊も可能ではあるが、あれを生身でもう一度
使えば身体が持たない。
「っく……あやつがいれば……あんな泥人形なんぞ……」
そんな呟きが聞こえたが、触らないでおく。
どうするかと悩む中――
――脳内で。
――イメージが弾けた。
――それは、偃月刀を手に戦う男。
――その偃月刀を男は振り被り……
偃月刀を握り締めると、ギチリと手袋が鳴る。
「アル援護して」
「なにをする気だ?」
ルイズのゴーレムを見る目は鋭く、アルへと顔を向けると笑いかけた。
「もちろん、倒すのよ」
それにアルは、目を丸くした後。ニヤリと笑い返す。
「上等だ。しくじるなよ」
「ふんっ」
ゴーレムへと向かうと、ルイズは偃月刀を握りなおす。
ルーンが自らを発行させ、漲る力のまま。
「行くわよ!」
「応とも!」
2人は弾けるように飛び出した。
森の中を駆ける、駆ける、駆ける――!
近づいていくゴーレムの上。争う影が2つあり、そのうち1つがゴーレムから落
とされた。
そしてシルフィードが影を救い、そこを狙ってゴーレムが腕を振り上げる。
狙うのはそこだ。
強く強く強く強く、強く偃月刀の柄を握り締める。
それに伴いルーンの輝きは際限なく高まり。
木々の下を抜ける。
近づいていくわたしを見て、ゴーレムが腕を振り上げ――表面で爆発が起こり
阻害される。
アルが魔力弾で援護していた。
「はぁぁあああああっっ!!」
倒木を足場に、偃月刀を背後へと振り被りながら思いっきり踏み込み――その
瞬間、ブーツから魔力の本流が溢れ、倒木を踏み砕き宙へ飛翔した。
風を切る感触が頬を撫ぜる。
576魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:34:43 ID:hsh6wSa8
近づいていくゴーレムを前にして目を瞑る。
心に浮かぶは様々な感情。
怒り、悲しみ、憎しみ、寂しさ。
引き裂こうかという感情の渦が熱く熱く胸を焦がす。
キュルケのことを思い、ボッと胸に火がついた。
その感情を魔力へと変換し、魔力を感情のままに魔術へと組み立て、偃月刀へ
と流し込んでいく。
「――ッ」
目を見開く。
振り被る偃月刀に力を溜めに溜めて――投擲した!
偃月刀は円盤状に広がると、ものすごい速度でゴーレムへと迫り……その胸に
突き立つ。
それを見たフーケは、ゴーレムへと指示を出し。
ルイズは手で印切ると宣言した。
「――燃やせっ!!」
その言葉に、偃月刀へと込められた魔術が反応した。
偃月刀を中心として、構成される魔力を燃料とし――その全てを燃焼させる。

――二度目の太陽は、少し小さかった。

着地したルイズの目の前には、上半身を大きく円状に抉られたゴーレムが佇ん
でいる。
そこへデルフが落ちてきて、ルイズはそれを掴む。
その姿は元の錆が浮いた大剣へと戻り、所々煤が付いている。
「……投げるわ燃やすわ……ひでぇぜ相棒」
ブツブツと文句を言ってきた。
「いいじゃない、大活躍だったんだし」
ルイズがそう言うと、ボロボロとゴーレムが崩れだした。
「上出来だな」
声に振り返ると、腕を組んだアルがいる。
「またあんたは偉そうに……」
そう言い力を抜くとルーンから輝きが薄れ、ルイズの手袋とブーツが解け、頁
が舞った。
それはグルグルと回ると、アルへ向かいその体へと張り付き同化していく。
「ふむ」
アルが頷き。ルイズの世界が少し揺れた。
今まで興奮からか薄れていた足の痛みが戻り、疲れからか立つのも辛かった。
「おいおい、大丈夫かい」
ふらつくルイズの傍で、バサリと風が舞った。
シルフィードが地上へと降り立つ。その背から、もう少しだったのにぃ! と
なぜか悔しがる少女を連れタバサは2人の前へと移動した。
「――」
タバサを前にしてルイズは俯く。
キュルケはタバサの親友だと聞いている。それを自分のせいで死なせてしまっ
たのだ。
すっとタバサがこちらを見上げ、その口を開ける。
そこからどんな罵倒雑言が飛び出そうとも、ルイズは受け止めるつもりであっ
た。
「……彼女を――」
ルイズはぐっと唇を噛み締め。
バチッ――ガラン。
「いて!」
手に石飛礫が当たり、デルフを取り落とした。
ハッと痛む手を掴み、そちらを向く。
そこには、片腕を血に染めるボロボロのフードの女。
「フーケっ!?」
ルイズは落ちたデルフを拾うとするが。
「動くんじゃないよ!」
フーケが杖を向けて動きを制した。
「そこの2人もだっ! 妙な動きをしたら容赦なく殺すからね」
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 04:35:02 ID:oRhnoM2q
しえん
578代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:55:43 ID:jqCksno4
その声に、動こうとしたタバサとアルも止まる。
「そこの小さい娘。杖を地面に置きな」
息も荒くフーケは命令する。
それに従い、タバサはゆっくりと屈むと杖を置く。
「ふん、ずいぶんと執念深いな。さっさと逃げておけばいいものを」
それにフーケはフードから覗く口元を歪めた。
「こっちも色々事情があってね。目撃者は消さなきゃいけないんだよ」
フーケの一番の特性は、その大胆な盗みではなく、常に正体が不明なことであ
る。
例えそれが性別であっても、バレる訳にはいかない。
「随分とあたしをいたぶってくれたね。お返しはちゃんとするよ」
フーケがチロリと青ざめた唇を舐め、杖を握り締め。

「それじゃあ、あたしからもあるわよ」

突如声が響いた。
その場の全員が振り返ると、そこに木に持たれるキュルケがいた。
「はあい」
場違いな挨拶をすると、キュルケが手に持った物を投げた。
それは細身の剣であり、ルイズへと向かい放物線を描き。
「ちっ!」
我に返ったフーケが魔法を唱えようとするが。
剣を掴む。ルーンが再び輝き、ルイズは一足でフーケへと踏み込み剣を振るう。
「ふ――」
「く――」
咄嗟にフーケが後ろへと飛び、剣は杖とそのフードを切り裂いた。
跪いたフーケの懐からバサリと書物が落ち、切り裂かれたフードが落ちた。
「勝負あったわね」
剣を突きつけたルイズは、フーケの顔を覗き込み――驚きの声を上げる。
「……ミス・ロングビル」
そこにはオールド・オスマンの秘書ロングビルの姿があった。
「ど、どうしてっ。ミス・ロングビルがフーケだなんて」
困惑するルイズ。キュルケが前に出る。
「あなたがフーケでよろしいですね? ミス・ロングビル?」
ふん、とフーケは鼻を鳴らした。
「見ての通りさ。あたしが“土くれ”のフーケさ」
「なにがあったのかは知りませんが、詳しい話は後で。賊は賊として捕まえさ
せてもらいますわよ?」
キュルケはそう言い、タバサが頷く。
杖もなく、片腕は動かず、囲まれた状況でさすがに逃げ道を見出せないのか。
「……好きにしな」
逃げ場は無く、フーケがそう吐き捨てた時。
“………ぅ……いぇ……”
そんな声が聞こえた。
全員が周囲を見渡すが、気配は無く。
「そこだっ」
アルの指し示す場所には、フーケが落とした『異端の書』があった。
その表面には、フーケのものだと思われる血がべっとりと付着している。
付着した血が、書へと染み込み消える。
すると表紙の文字が輝きを放ち、書が独りでに開き始める。
――バラバラバラバラバラバラ……
書から頁が渦を巻き飛び出す。
それは驚愕するルイズへと向かい舞う。
慌ててルイズが下がると、頁はグルグルとフーケの眼前に吹き溜まる。そして
中央へと集まっていき――
「……ら……ら……」
声が聞こえた。
「――ルルイエ異本っ!」
呻くようにアルが言う。
するとフーケの前に、どこか遠くを見詰める異国風の姿の少女が立っていた。
579代理:2009/04/04(土) 04:56:10 ID:wdw5pJBt
その声に、動こうとしたタバサとアルも止まる。
「そこの小さい娘。杖を地面に置きな」
息も荒くフーケは命令する。
それに従い、タバサはゆっくりと屈むと杖を置く。
「ふん、ずいぶんと執念深いな。さっさと逃げておけばいいものを」
それにフーケはフードから覗く口元を歪めた。
「こっちも色々事情があってね。目撃者は消さなきゃいけないんだよ」
フーケの一番の特性は、その大胆な盗みではなく、常に正体が不明なことであ
る。
例えそれが性別であっても、バレる訳にはいかない。
「随分とあたしをいたぶってくれたね。お返しはちゃんとするよ」
フーケがチロリと青ざめた唇を舐め、杖を握り締め。

「それじゃあ、あたしからもあるわよ」

突如声が響いた。
その場の全員が振り返ると、そこに木に持たれるキュルケがいた。
「はあい」
場違いな挨拶をすると、キュルケが手に持った物を投げた。
それは細身の剣であり、ルイズへと向かい放物線を描き。
「ちっ!」
我に返ったフーケが魔法を唱えようとするが。
剣を掴む。ルーンが再び輝き、ルイズは一足でフーケへと踏み込み剣を振るう。
「ふ――」
「く――」
咄嗟にフーケが後ろへと飛び、剣は杖とそのフードを切り裂いた。
跪いたフーケの懐からバサリと書物が落ち、切り裂かれたフードが落ちた。
「勝負あったわね」
剣を突きつけたルイズは、フーケの顔を覗き込み――驚きの声を上げる。
「……ミス・ロングビル」
そこにはオールド・オスマンの秘書ロングビルの姿があった。
「ど、どうしてっ。ミス・ロングビルがフーケだなんて」
困惑するルイズ。キュルケが前に出る。
「あなたがフーケでよろしいですね? ミス・ロングビル?」
ふん、とフーケは鼻を鳴らした。
「見ての通りさ。あたしが“土くれ”のフーケさ」
「なにがあったのかは知りませんが、詳しい話は後で。賊は賊として捕まえさ
せてもらいますわよ?」
キュルケはそう言い、タバサが頷く。
杖もなく、片腕は動かず、囲まれた状況でさすがに逃げ道を見出せないのか。
「……好きにしな」
逃げ場は無く、フーケがそう吐き捨てた時。
“………ぅ……いぇ……”
そんな声が聞こえた。
全員が周囲を見渡すが、気配は無く。
「そこだっ」
アルの指し示す場所には、フーケが落とした『異端の書』があった。
その表面には、フーケのものだと思われる血がべっとりと付着している。
付着した血が、書へと染み込み消える。
すると表紙の文字が輝きを放ち、書が独りでに開き始める。
――バラバラバラバラバラバラ……
書から頁が渦を巻き飛び出す。
それは驚愕するルイズへと向かい舞う。
慌ててルイズが下がると、頁はグルグルとフーケの眼前に吹き溜まる。そして
中央へと集まっていき――
「……ら……ら……」
声が聞こえた。
「――ルルイエ異本っ!」
呻くようにアルが言う。
するとフーケの前に、どこか遠くを見詰める異国風の姿の少女が立っていた。
580代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:56:54 ID:jqCksno4
「ルルイエ異本?」
聞き返すルイズにアルは苦虫を潰したような顔をする。
「妾たち魔導書の中でもとりわけ厄介な部類だ……」
「あんたが厄介って……」
その言葉にルイズは息を呑んだ。
ふらふらと揺れるルルイエ異本は、こちらへの関心は無いようでフーケへと向
き直る。
「な、なんだい……」
どこか怯えるような声を出すフーケに近づくと。
「血……血……足りない……構成……足りない……」
その血の流れる傷口へと指を突き入れた。
「ぎっ!?」
苦痛の声を出し、フーケはルルイエ異本を止めようとするが。
「ぁ……あぁぁ……ぁぁああっ!!」
何か体から吸い上げられる“おぞましさ”に硬直した。
ぐらりとフーケが倒れルルイエ異本に寄りかかった。
「ら、ら……まだ、足りない……ら」
寄りかかられたルルイエ異本はふら付きながらされるがままとなる。
「まずい……」
アルが焦ったような声を出す。
それを感じたのではないのだろうが、ルルイエ異本はフーケの顔を掴み、その
オッドアイで瞳を覗き込んだ。
「ぁ……あぁ……」
「あなた……知ってる……強い、魔力……持ち主……を、知ってる」
その呟きと共に体から“神聖な邪気”があふれ出す。
「くそっ!」
アルが手を翳し、タバサが杖を構える。
「当てても構わん!」
魔力弾と風の塊がルルイエ異本へと迫り、直前で弾かれた。
「力が足りんかっ!」
その横をルイズが疾走する。
瞬く間に距離を詰め、剣を振り――
――ザザザザザザザザザザザザザザッ!!
フーケとルルイエ異本が大量の頁の渦に巻かれ、剣は空を切る。
回転する頁は空へと舞い上がり――
「ま、待てっ!!」
アルの言葉虚しく虚空へと去っていった。
後に残されるのはボロボロのフードと杖の残骸だけだった。
「なによ一体……」
ルイズは膝を突くと剣を放り。
「というか、生きてたのねキュルケ」
キュルケへと目を向ける。
「勝手に殺さないでくれるかしら」
軽く憎まれ口を返すぐらいだ、体に異常はないのだろう。
「どうやって生き残ったのよ……どこにも姿がなかったじゃない」
「ああ、それはね……」
ルイズを突き飛ばした後、咄嗟に『錬金』で地面に穴を掘り潜り込んで、ゴー
レムの一撃を凌いでいたらしい。
妙にタバサが冷静だったのも、それを空から確認してたからのようだ。
「まあ、衝撃で杖は折れて、さっきまで気を失っていたんだけどね」
それを聞いたルイズは、大きく息を吐き出した。
「なんなのよ……もう……」
死なせてしまったと、散々悲しみ荒れていた自分が馬鹿馬鹿しくなる。
『異端の書』は少女になって飛んでいって、フーケはそれに連れて行かれて――
「あ、そういえば。『破壊の杖』はっ!」
思い出しかのようにルイズが言うと。
「……フーケは持ってなかったわね」
「隠せる大きさじゃない……」
キュルケとタバサの言葉に、ルイズの顔が青く染まる。
思い出される自分の行動。思いっきりぶっぱなした魔術。
581代理:2009/04/04(土) 04:57:27 ID:wdw5pJBt
ごめんなさいミスりました代理お任せします
582代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:58:06 ID:jqCksno4
「ま、まさか――」
「うむ、汝が燃やし尽くしたのだろうな」
アルが頷くと、ルイズはその場にへたり込む。
「そ、そんなぁ……」
そんなルイズをキュルケが笑う。
「ばっかねぇ」
「誰のせいだと思ってのよ!」
思わず言うルイズに。
「「「「あなた(汝/相棒)のせいでしょ(だろう)」」」」
「きゅい」
4人と1匹と1本が返す。
「なによーー!!」
ルイズが空へと向かい叫び声を上げた。



学院長室でオスマンに迎えられ、4人は事件の報告をした。
フーケの正体と『異端の書』と『破壊の杖』の行方。
「そうか……ミス・ロングビルがの……」
それらの経緯を報告するとオスマンは深々と息を吐き出した。
「あ、あのオールド・オスマン……」
おずおずとルイズが前にでる。
「ん? なんじゃ、ミス・ヴァリエール」
「あの、結局2つとも宝を取り戻せなくて、オマケにフーケまで逃がしてしま
い――」
宝のうち1つは自らが焼滅させたのだ。小さくなるルイズの頭に、ぽんとオス
マンは手を置いた。
「いや、いいんじゃ。お前さんたちが無事なら。のうミスタ……コールタール」
「私は発癌性物質ではなく、コルベールです! まあ、そうです。あなたたち
が無事ならそれに勝るものはありません」
コルベールが頷き、くしゃりとオスマンは笑いかける。
「で、でも――」
まだ何か言いかけるルイズを、オスマンが遮った。
「今日は『フリッグの舞踏会』じゃ、フーケの騒ぎでゴタゴタしておったが問
題なく開かれるじゃろう」
キュルケが顔を輝かせる。
それにオスマンはほっほっほと笑い、促す。
「もう報告はよいぞ。存分に楽しんでくるとよい」
その言葉にキュルケとタバサは早々に退室し、ルイズも礼をして退室しようと
したが。
「アル、どうしたのよ?」
その場を動かないアルへと声をかける。
「先に行っておれ。我は少々ここで休む」
偉そうに言うアル。
「あんた、なに失礼なことを――」
ルイズは目を吊り上げるが。
「ええんじゃええんじゃ」
オスマンの手前、怒るわけにもいかず渋々と退室していった。
「翁よ、少し聞きたいことがある」
「なんじゃ?」
きょとんとするオスマンへ、アルはいきなり切り出した。
「あの魔導書『ルルイエ異本』をどこで手に入れたのだ。あれは本来、この世
界にあるはずのないものだ」
ふむ、とオスマンは頷き手を顎へ当てた。
「そうだの……お主には話してもよさそうだのう」
オスマンは昔を思い出すように目を閉じる。
「あれはもう、200年ほど前になるかの……」
当時大陸中を渡り歩いていたオスマンは、旅の途中である老人と出会い意気投
合し、行動を共にするようになる。
その旅は奇妙なことの連続であった。
583代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 04:59:18 ID:jqCksno4
老人は主に遺跡を巡り、調べ。その途中途中で摩訶不思議な生物と出遭い、戦
い。不思議な物品を回収、または破壊してきた。
ほぼ大陸を制覇した頃。ある日、老人が一冊の古書をオスマンへと渡す。
老人はその本を、どこか安全な場所へ封印するために大陸を巡っていたという。
その古書を頼むと、老人はどこぞへと消え。オスマンは後に魔法学院を建て、
その宝物庫で古書に強力な封印を施した。
「……ということじゃ」
そこまで話すとオスマンは息を吐く。
「その老人の名は?」
「……わからん。最後まで教えてくれなかった」
それにアルは頷き。
「そうか。邪魔したな」
その言葉を残し、パタリと扉が閉められた。



その後、学院長室にての会話。
「そういえば、結局あの『破壊の杖』とはなんだったんですか?」
「うむ、あれはワシが大陸を旅している時に行き倒れた青年を助けてな」
「ほうほう」
「その青年は水と食料を分けると、錯乱してらしく謎の発言と行動の後、お礼
と言って無理矢理に押し付けられたものなのだ」
「はあ……では、なぜ破壊の杖と?」
「その青年が『アイム! ロックンロール!』と言って杖を構えると、家ほど
もある岩を一撃で吹き飛ばしたのじゃ」
「それは興味深い!」
「まあ、渡されても。ワシには一切使い方がわからんかったのじゃが」
「その青年は?」
「背中にみょうちきりんな箱を背負ったまま、どこぞへ爆走していった」
「……それで?」
「ワシはそれを破壊の杖と名づけて宝物庫へ放り込んだ。終わりじゃ」
「…………」



その日、フリッグの舞踏会は大きな賑わいを見せる。
耽美な衣装を身に纏った生徒達が集まる中、フーケを追い詰めた、とオスマン
から直々に賞賛された4人は注目の的となる。
今まで自分を馬鹿にしていた男たちが、ここぞと目の色を変えて寄ってくる。
キュルケは楽しんでいたが、ルイズにはうんざりであった。
何度目かもわからぬダンスの誘いを断り、ふと周囲を見回す。
先ほどまで、タバサと競うように料理を貪っていたアルの姿がなかった。
どこに行ったのか探すと、その姿はすぐに見つかる。
「どうしたの?」
テラスに腰掛けているアルの隣へ並ぶ。
チラリとルイズを見ると、アルは視線を外へと戻す。
「いや、いい月夜だと思ってな」
テラスから身を乗り出すと、吹き付ける風が冷たく、視線の先には野原に佇む
白き巨人が見えた。
「…………」
「…………」
互いに無言。
ただ、風だけが吹き抜けて――
――ぐるるるる……
「ふむ、腹が減ったな」
「……あんた少しは空気を読みなさいよ」
ガクリとルイズは崩れ落ちた。
双子の月夜に照らされて、穏やかに夜は過ぎていく。
584代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 05:00:28 ID:jqCksno4
「――届いた」
双子の月が見下ろす学院の中でもっとも高い場所。
フーケが破壊した宝物庫がある塔の天辺で、彼女はしたりと言い放つ。
暗闇を押し固めた黒髪に熟れた豊満な身体を、まるで拘束するかのように隙間
無く着込んだ黒いスーツ。その肌は区切られたように白く、そして潤っている。
夜闇に溶けるかと思われるその黒は、まるで夜闇が明るいと言わんばかりに黒
く黒く黒く闇を貪り。
夜闇に際立つかと思われるその白は、まるで夜闇が仲間だと言わんばかりに白
く白く白く闇を犯す。
もしも最たる美を突き詰めれば、彼女はその1つとなるだろう。それは醜歪の
極致へ至り、美乱の根源を踏破するような甘く、ひたすら甘く、限りなく甘い
蟲毒のような美である。
彼女は豊満な胸を抱えるように腕を組み、気軽にそこに座る。
「多少、本来の脚本よりも早めに進んでいるけど。概ね予定通り」
楽しそうに笑いながら肩をすくめる、おどけるような一人芝居。道化を気取ろ
うにも上る舞台はなく、他に役者はおらず、周囲に観客はいない。
「おおっ神よ! 我が愛しの父! 我が嘲笑すべき主! ここに笑いあり、涙
あり、傷あり、怒りありの大活劇は始まりました!」
否――道化はすでに舞台へと上っている。
「大根役者はみな揃い、笑いの劇を真剣に、悲しみの劇を笑いながら、拙い劇
をしたり顔で、怒りの劇を悲しみながら!」
否――役者はすでに舞台へと配置されている。
「民衆たちを虐殺する灰被り姫を! 王子が眠った姫を貪る白雪姫を! 堕落
し朽ち果てるピノッキオを! 互いを殺しあうヘンゼルとグレーテルを!」
否――観客はすでに舞台へと見入っている。
道化は笑う。
「まだ幕は昇ったばかり。お帰りになるにはまだ遠く、食い入るまでにはまだ
早い」
手を大きく広げ、芝居がかった仕草で立ち上がり、クルリと回る。
「舞台はまだまだ未完なれど」
遠く地平を……いや、この舞台(世界)そのものを見つめ。
「役者はまだまだ拙いけれど」
眼下には煌びやかな光を発する舞踏会を、そこで踊り楽しむ役者(人々)を見
つめ。
「彼らの劇を時に楽しく、時に悲しく、時に傷つき、時に怒りながらご覧くだ
さいませ」
塔の鋭角の屋根に”直角に立ち”ながら、両の手を広げる。
「そう――外なる宇宙の神々よ!」
虚空を――虚空の向こう側、闇のまた闇、星のまた星、宇宙のまた宇宙へ――
”燃えるような三眼”で見上げると。
亀裂のような口を広げ“醜歪な美笑”を上げた。

『ハハ[ハは]はハ“はは”ハ「ハ」ハはハは――!』

道化はただ独り舞台端で踊る。
それはとてつもなく滑稽で、とてつもなく優美で、とてつもなく邪悪だった。



風なびく草原の只中。
その機体はただ独り佇むのみ。
「…………」
その胸に心臓はなく、その巨体には露ほどの力すら流れていない。
傷つき傷つき傷にまみれ。永劫に近い時を潜り抜け。ようやくその役目を終え、
眠りに付いた鋼の巨人。
友と戦い、友と巡り、友に慈しみと共に眠りを告げられた機神。
彼はもう戦うことはなく、戦うことすら出来ない。
かつて魔を断ち、神をも殺した剣は。自らその身を折り、そして錆び果てるに
任せるのみ。
ならば、
585代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 05:01:29 ID:jqCksno4
――ヴォン!
これはいかなる奇跡なのか。
主動力である術者の魔力もなく、補助の電力も使い切り――そもそもハートレ
ス(心臓無し)である彼の目に、光が灯る。
確かに剣は折れた、確かに剣は錆びた。
世界から見放され、時から忘れ去られた。
ギ、ギギ……ギ――
力がないはずの機体の首が動く。
軋みを上げ、顔を向けた先にあるものは、トリステイン魔法学院。
無機質なその瞳は、邪悪なる意思を感じ取り。目に宿る光は、熱く、眩く、苛
烈で――折れてもなお、剣は剣足りえるのか。
「……――」
だが、瞳から光が消える。
風が吹き草原を揺らした。

まだ彼を――剣を求める声は、ない。
586代理◇魔導書が使い魔-07b:2009/04/04(土) 05:02:12 ID:jqCksno4
152 :魔導書作者:2009/04/04(土) 04:42:40 ID:JccM4ubc
これまでです。
ようやく終わった第一巻分……長かった。
二巻目以降はしばらく間を置いて、その間は外伝的な物を書いていくつもりです。
次のタイトル予定は「イザベラと暗殺者」
では読んでくれた人、支援してくれた人、代理の方ありがとうございます。
乞うご期待!……期待してくれる人がいればですが……

----
代理投下完了。乙。
587ゼロの使い魔はメイド08代理:2009/04/04(土) 08:44:20 ID:8xHylmvy
魔導書の人&代理の人GJ!
wikiにまとめましたので後でゆっくり読ませていただきます。
特に問題がなければ45分から
「ゼロの使い魔はメイド08」
代理投下します。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 08:45:34 ID:8xHylmvy
結局、何の対策もないまま、品評会の日はどんどん近づいていた。
 「うーん、こっちがいいかしら? いや、こっちのほうが?」
 ルイズは色々な服を引っ張り出してきながら、シャーリーの前を行き来している。
 何をしているのかというと、品評会の服を選んでいるのだった。
 挨拶だけで終わるにしても、いつものメイド服では少々華がなさすぎる。
 シャーリーが召喚時に来ていた服もちょっと地味だ。
 何気にトリステイン、ハルケギニアのそれとはデザインが異なっているので、悪くはないのかもしれない。
 それでもさほど差異があるというわけでもないので、よく観察せねばわかりにくいだろうが。
 しかし、色々と服を持ち出してはみたものの、
 「今いち、しっくりとくるのがないわねえ?」
 であった。
 ルイズの服も着れないことはないのだが、学院内では基本制服で過ごすので、それほどたくさんの服があるわけではない。
 かといって、まさかパーティー用のドレスなどを貸すわけにいかないし、さすがにサイズの問題もある。
 また、ルイズとシャーリーでは髪の色、瞳の色、雰囲気、年齢と色んな違いがあった。
 それゆえ、ルイズが着て似合う服も、シャーリーだとどこかチグハグになってしまうのである。
 他のメイドの服を借りるという案も出たが、生憎とシャーリーと同年齢のメイドはいない。
 比較的年が近いのはシエスタだったが、背丈はもちろんスリーサイズにも違いがありすぎた。
 これではルイズの服のほうがましである。
 前に街で買ってやった服もあるが、シャーリーの選んだものは比較的地味なものだった。
 礼服としても使えぬことはないが、品評会にはちょっと……というものである。
 「少なくとも、そっちの対策はしとくべきだったわねえ……」
 今さらながら、ルイズは頭を抱えていた。
 そんな主人にシャーリーはちょっと、いや、かなり困ってしまう。
 シャーリーも年頃の女の子であるから、お洒落には興味がないわけではない。
 しかし、メイドの身分でそんなことを考えられるわけもなかった。
 さらに仕事に慣れるのに一生懸命で、そういったことに気を向ける余裕はなかった。
 ましてやってきたのは、身も知らない、おとぎ話のような魔法の国。
 とにかくにも、まず環境・生活に慣れるのが第一であったのだ。
 「ああん、もう、どーしよう!」
 ついにルイズはへたりこんでしまった。
 シャーリーは何も言えない。
 そんなことをやっていると、いきなり部屋に入ってくる者がいた。
 「ルイズ、いるわよねー?」
 赤い髪と褐色の肌の美女……キュルケ。
 キュルケはルイズを見て、にまっと笑う。
 何だかおっきな猫みたいだな、とシャーリーは思った。
 「さっきからバタバタとうるさいと思ったら、シャーリーと何してるのかしら?」
 「変な言い方しないで! 明日着る服を選んでるだけよ!」
 ルイズはフンッ!と 鼻息を荒くする。
 「なるほどぉ。確かに、メイドの服じゃあちょっとねえ?」
 キュルケはシャーリーを見ながら、うんうんとうなずいた。
 「で、着せる服で悩んでいると――」
 「そうよ。悪い?」
 「悪いなんて言ってないわ。むしろいいことよね?」
 キュルケはシャーリーに近づき、くいっとその指先で顎を持ち上げる。
 「あ、あの……」
 驚くシャーリーの瞳を、キュルケはじっと覗きこんだ。
 「素材は十分にいいんだから、これをそのまま、ってのはもったいない話……」
 「だから、やめてって言ってるでしょう!?」
 ルイズはシャーリーを抱き寄せるようにして、強引にキュルケから引き離した。
 「せっかくだけど、あんたのコーディネートはお断り!! 用がないならとっとと帰って!!」
 ルイズはキュルケにべーっと舌を出した。
 「まったくゼロのルイズは、胸もゼロなら寛容や柔軟性もゼロなのね」
589ゼロの使い魔はメイド08代理:2009/04/04(土) 08:47:31 ID:8xHylmvy
「好きなように言えばいいわ。ほら、出てって出てって」
 ルイズは一瞬不快そうな顔をするものも、しっしと手を振ってみせた。
 「……あ、そう」
 キュルケはそんなルイズに、つまらなそうに肩をすくめた。
 「はいはい、それは失礼をいたしました。邪魔者は早々に退散いたします」
 「わかればいいのよ」
 ルイズは勝ち誇ったように鼻から蒸気のような息を噴き出す。
 「品評会の時、その子に変なカッコさせるんじゃないわよう?」
 キュルケは去り際にそう言い残し、ドアを閉めた。
 「まったく! 相変わらず嫌な奴なんだから!」
 「……」
 あっけにとられて二人の淑女の言い争いを見ていたシャーリーだが、その視線はいつしかルイズへと注がれていた。
 何故、あの人と仲が悪いんだろう?
 それが、シャーリーの疑問だった。
 確かにあまりルイズと気性が合うようなタイプには思えない。
 でも、そんなに悪い人には思えなかった。
 何というのだろうか。
 お互いに何かというと張り合い、喧嘩をするきっかけを探しているようにも見える。
 「あの……」
 ――どうして、いつも喧嘩をなさるんですか?
 つい、好奇に駆られてシャーリーは口に出しかけたが、
 「え?」
 「い、いえ。なんでもありません……」
 ルイズが振り返った時、シャーリーはハッとして言葉を飲み込む。
 いけない、これはいけない。
 主人のことに、興味半分で口を挟むというのはメイドの分を越えている。
 第一無礼だ。
 メイドとしては、あるまじき行為である。
 シャーリーは内心で自分を叱りながら、無意識のうちに頭を下げていた。
 そんなシャーリーの態度をルイズはきょとんとした顔で見ていたが、
 「あは、あはは……。そういえば、毎度毎度みっともないところを見せてるわね……」
 ルイズは今さらながら赤面して、照れ隠しの苦笑いを浮かべた。
 「あ、いえ……」
 「自分でも、レディーとして恥ずかしいことだとは思うわけだけど……。色々と、譲れないこともあるのよね」
 そう言って、薄桃色の髪をした淑女は、ベッドに腰をおろした。
 「あいつ……ツェルプストーと、我がヴァリエール家は昔っから対立し続けたのよ」
 ルイズは説明しようとして、ちらりとシャーリーの顔を見る。
 どこまで話せばいいのだろう?
 「……まあ国境沿いに領地で隣あっててね、戦争が起こった時も何度も戦ってるし……。根が深いわけ」
 「はあ……」
 「だから、あいつに挑発されると私もすぐにむきになっちゃうのよねえ……。恥ずかしいわ」
 ルイズはこつんで自分の頭を叩く。
 実は勢いで、先祖代々恋人や婚約者を奪われ続けて話をしかけたが……。
 いざシャーリーの顔を見るとさすがに話せなかった。
 色んな意味で恥ずかしすぎる。
 また、大声で他人にくっちゃべるような内容でもない。
 そういえば、と思考が記憶の中から古いものを引っぱりだす。
 何代前かのご先祖様で、ツェルプストーに奥さんを取られた人がいたわけだが。
 他人事なら笑いの種だが、当人からすれば腸が煮えくり返るような気持ちだったに違いない。
 その奥さんのほうは、その後どうなったのだろう?
 ツェルプストーの妻になったのか、それとも愛人になったのか……。
 あるいは、すぐに別れてしまったのかもしれない。
 何しろ相手は、あの色きちがいのツェルプストーである。
590ゼロの使い魔はメイド08代理:2009/04/04(土) 08:48:47 ID:8xHylmvy
どうでもいいが、何となく気になった。
 仮に別れたとしたら、トリステインにはなかなか戻りにくいかもしれない。
 あるいは、その後ゲルマニアで生活したのだろうか?
 ルイズは未経験だが、外国暮らしというのは、なかなかにしんどいものらしい。
 まして、伝統を重んじ石頭と他国から言われるようなトリステインの貴族が、奔放なゲルマニアでうまく暮らせたのだろうか。
 「まあ、いいわ」
 ルイズは気を取り直し、一枚の服を手に取った。
 あれこれと古いことを考えても意味はない。
 まずは、シャーリーの服をどうにかしなければ。


 「まーたヴァリエールのやつをおちょくりに行ってたのかい?」
 イザベラは銃の手入れをしながら、ノックもなしに部屋に入り込んできた悪友に言った。
 「まあね」
 キュルケは悪びれる様子もなく、イザベラのベッドに腰をおろす。
 「よくもまあ、飽きもせず……」
 イザベラは呆れた声でつぶやいた。
 「だって面白いんだもん」
 キュルケはそう言ったが、
 「そのわりにゃ、今日はつまらなそうな声出すね」
 イザベラは振り向きもせずに言った。
 「わかっちゃった?」
 キュルケはぼふっと、イザベラのベッドに身を放り出す。
 胸元が大きく開かれたその格好は、男の名のつく生き物なら見惚れずにはいられないだろう。
 あるいは、同性であっても惹きつけられるかもしれない。
 「お前は自分が駆け引きに優れてると思ってるんだろうが……見る奴が見れば全部駄々漏れさ」
 イザベラはにこりともしないで言い放った。
 「一本取られたわ。やっぱりイザベラは鋭いわ……」
 「ニコニコした面の下で、何か企んでるかわからないのが、いっつもそばにいたんでね」
 「……それって、ひょっとしてあなたのお父様のこと?」
 「………………」
 これに対し、イザベラは無言。
 「……ごめん。気に障ったなら、謝るわ」
 「いや? よくわかったな」
 イザベラはくるりとキュルケに顔を向けて、眼を細めた。
 笑っているのか、それとも獲物に狙いをつけているのか、よくわからない顔だった。
 「あなたは、ほとんど実家のこと話さないけど、時々何気なくこぼしてるから――」
 「そうかい。なら、それだけのことと、聞き流しときな」
 イザベラは、今度は本当に笑みを浮かべると、また銃の手入れを再開した。
 キュルケはゆっくりと身を起こしてから、イザベラの背中を見つめる。
 「……そのほうが、いいかもね」
 「ああ、そのほうがいい」
 イザベラの答えに、キュルケはどこかアンニュイな表情で息をついた。
 悩ましげな目元が、匂いたつような色香を放っているが、それを感じ取る者は部屋にはいない。
 「何だか、最近のルイズはからかいがいがないのよね。妙にお姉さんぶっちゃってさ」
 「私としちゃ結構なことだがね。お前さんとの阿呆な言い争い、ありゃちょっとした騒音公害だ」
 イザベラはケケケと声を出して笑う。
 「つれないんだから……」
 「何を今さら。あたしゃ世界一つれない女だよ」
 「あ〜あ。せめて、あの使い魔の子が、男の子だったらねえ。そしたらもうちょっと楽しみがあるのに……」
 「お前は十二、三の餓鬼まで食っちまうのか? そのうち色恋沙汰で後ろから刺されるぞ?」
 「お生憎様。恋に命を燃やすのは、フォン・ツェルプストーの伝統なのよ」
 キュルケが体をくねらすと、そのはずみで、大きなバストが揺れた。
591ゼロの使い魔はメイド08代理:2009/04/04(土) 08:49:54 ID:8xHylmvy
「どうせ他人の男や女を取ったとか、取られたかって話だろ? くだらないとは言わないけど、刃傷沙汰に私を巻き込むなよ?」
 「あら、その時は助けて〜って、泣きつくかもよ? だって私たち、お友達だもの」
 イザベラの毒舌に、キュルケはにんまりと笑って見せる。
 「……言っとくが、一年の時の馬鹿騒ぎみたいもん想像してるのなら、脳みそがスイーツだよ?」
 イザベラは振り返ると、何とも言えない薄気味の悪い笑みを浮かべた。
 一年前の新入生歓迎会の折、キュルケは他の女子と悶着を起こしたことがある。
 原因は色恋沙汰、本人いわく『情熱』のためだ。
 その時は風魔法でドレスを切り裂かれたりと色々あったのだが。
 「な、なによ……?」
 キュルケは、イザベラの笑いに驚き、思わず身を縮める。
 「国の恥になるが、話してやろう。私の故国、ガリアのど田舎で起こった話さ」
 イザベラは手入れの終わった銃銃を置き、椅子ごとキュルケのほうへ向き直した。
 「別にどうってこたあない。さっき言ったように惚れた腫れたって話がきっかけだけどね」
 イザベラは伏目がちに話し出す。
 「ある男がある女に振られた。それだけじゃなく満座の中で恥もかかされた。それが始まりさ」
 「それじゃわけわかんないわよ。もっと具体的に話しなさいよ」
 「じゃあ、言おうか? ある男が嫁になる女を、式の当日に別に男に掻っ攫われた。そいつの名前も言おうか?」
 「……いえ、いいわ」
 キュルケは首を振る。
 「花嫁さんは色男と駆け落ちしちまった。で、村中の前で大恥かかされた男は、どうしたと思う?」
 「どうしたの?」
 「しばらくは家の中に引きこもってたそうだけど、しばらくたったある日、ぷっつん切れちまった」
 キュルケの質問に、イザベラは頭をさして人差し指をくるくる回した後、ぽんと手を開いた。
 「切れた? ……自殺でもしたの」
 「それだったら、まだ良かったんだけどねえ?」
 余計な手間もかからないしさあ、とイザベラは皮肉げに笑い、肩をすくめた。
 「そいつはその晩、村中を駆け回って、花嫁と色男の家族・親族を殺して回った。餓鬼も含めて数十人、よくやったもんだよ」
 イザベラは笑顔でものすごい話をした。
 キュルケは言葉をなくして、イザベラの顔を見る。
 「しかし、いくら暴れまわったって所詮一人、それもただの平民だ。追われる形になった男は、結局捕まる前に自分に自分で始末をつけた」
 「死んだってことね……」
 「ああ、そうさ。迷惑な話だろ? モテない男の嫉妬とか逆恨みってのは嫌だねえ」
 「――うわ」
 キュルケはげんなりした顔で顔を覆った。
 「他にも、色々あるぞ? 話してやろうか?」
 「……遠慮しとくわ」
 ニヤニヤ笑いのイザベラに、キュルケは全力で拒否の念を示した。
 これにイザベラは不意に表情を引き締め、
 「男と遊びのは勝手だけどな? もっと遊び方を考えなきゃ、くだらないことになるよ――」
 「あなたの言うこと、わかる気はするんだけど……。でも、無理ね、きっと。性分だもの」
 「だろうね……」
 イザベラは苦笑した。
 「あんたは地獄に落ちても色恋沙汰で一生懸命だろうよ」
 「もちろん。でも、私にだってそれなりのモラルはあるわ」
 「へえ?」
 「欲しいものは何だって奪うけど、相手の一番大事なものには手を出さない。それだけは守ってるの」
 「それが賢明だろうよ」
 「でも、イザベラ?」
 「あん?」
 「さっきの話、本当のことなの?」
 「――ああ、事実さ。十何年か前の話らしいがうちの領内の、すぐ隣で起こったことだからね」
 そう言ってから、イザベラは口に手を当てる。
 「もっとも、あんまりいい話じゃないから、村の連中や取り調べた役人もあんまり話してないだろうが……間違いは無い」
592ゼロの使い魔はメイド08代理:2009/04/04(土) 08:51:49 ID:8xHylmvy
「ふーん」
 「何せうちの親父が拾ってきた話だからな。情報筋は確実さ。っとに、親父は奇談とか珍談とかいうのが死ぬほど好きでね」
 あちこちから集めてくんのさ。横で聞かされるこっちの身にもなれって……と、イザベラは顔をしかめる。
 キュルケは何とも言えない顔で、
 「ユニークなお父様なのね……」
 「ああ、死ぬほどユニークだよ。ぶん殴りたくなるくらいにさ」
 イザベラはけっとつぶやき、窓の外を見た。
 双子の月に、青い髪の少女は父の顔を思い浮かべているのだろうか。
 それから、イザベラは後頭部を掻きながら、
 「言っておいてなんだが、深くは聞くなよ?」
 「そうね。そのほうがいいわね。何となくわかったわ」
 キュルケも、イザベラの横に立って月を見た。
 「ねえ、イザベラ? いつか、あなたをうちの実家に案内したいわ」
 「ゲルマニアには何度も行ってるが……そういや、あんたのうちは行ったことないね」
 「でしょ? だから」
 「遠慮しとく」
 「どーして?」
 「そうなったら、今度はあんたをうちの実家に案内しなきゃならなくなるだろ? だからダメだ」
 「あら、そんなこと気にしなくっていいのに」
 「こっちには気になるんだよ」
 悪友の誘いに、イザベラはふんと鼻を鳴らしてみせた。


 隣の部屋では――
 「ああー、どうしよう〜〜! やっぱり良い服がない〜〜〜!!」
 服の山の埋もれて、ルイズが頼りのない悲鳴を上げていた。
 というか、この山を整理するのは結局シャーリーなのだから、余計な仕事を増やしただけであったりする。
 結局、この晩は何の進展もないままふけていった……。

 ※

 これにて投下完了です。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 09:21:56 ID:MLNRFUDH
魔導書の人とメイドの人と、代理の人おつかれさまです!

>魔導書
よりによってルルイエ異本と最凶最悪の道化の神様が登場、
しかし伝説のキ〇〇イの前には霞んで見えてしまうのですが(苦笑

>メイド
帰還をお待ちしておりました。
前々から思っておりましたが、劣等感のないイザベラってすっごく良いですね。
それにしても一人の男が一晩で数十人って、津山事件ですねー……動機もほぼ一緒ですし
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 09:31:04 ID:REONOgUs
乙!!久し振りのシャーリー!!待ってて良かった。
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 09:55:33 ID:qlSyXIYs
シャーリーの人乙です。
お待ちしておりました
m(__)m
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 09:57:52 ID:+MVZ5CTz
ロマリアにエマが呼ばれてたらちょっとかわいそうかな
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 12:29:13 ID:OHl3RvgK
北のミサイルも召還してほしいぜ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 12:34:19 ID:rUtLPriX
時事ネタ混ぜる俺カッコイイはよせ
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 12:37:51 ID:PUdZ1U7c
ガミラスの超大型ミサイルでも召喚したら?
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 12:42:11 ID:6RTt7NX7
意表をついてキラー召還
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:01:46 ID:7QyQNlEq
>>600
なるほど、ガイゾック首領キラー・ザ・ブッチャー召喚か……見たいな
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:09:13 ID:/BgOzFPm
やめろよ。人間爆弾なんて見たくねぇよ
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:16:14 ID:bN8/ahYk
ジョゼフは結構好きそうだな>人間爆弾
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:16:56 ID:bN8/ahYk
上げちまった
スマン
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:25:15 ID:S6MLGnbS
キラーというとマリオに出てくる大砲の弾丸もそういう名称だったな
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:39:34 ID:7QyQNlEq
                   / /::::::/~/メ、::::::/:://l:::::::::::::::::::::::::::::::::::
                 /  ハ:::j/ィ‐‐、ヽ_、//::::、:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::
                /   ∧l/:.`、 (ッ Y } ハーァ-::;;-:.、_:_:_:_.:::::::::::::::
              /l    '、ハ!:::ヽゞー-ソノlリ '´リ:.:/∠云ヾ、lヘ、:.:.::::
         _,,、-‐´  |    ::|  ::::;;:´:::;;;:::::/  ::::r_~,、-‐-、`リ`|::::`丶
  -‐‐‐`ヾ ̄    ヽ,   |   .::|     .::::/   ::l::::ヽ (ッ  V/::::/::::::::
       ヽ     '、  |    ハ|     ::::/    `:、:::ミ:::- 彳::/:::::/::   
        ヽ      、 |   | | √   :〈 _      ::::;;;-フノ:::/ノ::::
         ヽ     ! |  | :| !{iヽ、            ノ彡./::::::
          ヽ  /ヽ l   | :|  //`ヽ丶、       イ;;::::/:ソンヘ::
           ∧´    l |:  | ハ \ヽ、 `ヽ`ニ‐ァ 〉  ア´ソソィ''リ l <俺が、ルイズのところに行くのか?
          / ',   l::|  |  :} `::::、\`_ー_ゥン ´ ,.ィ´   /    |
         /   |  /:..|  |  :| 、:::::::::ー    ,.イ/   /    |
        /    | /::::::|  |  ヽ、  ´,.. -‐''´/    /      /
       /     |/::::::::/\∧  ‖:::: ̄::::::::::/     /    /
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 14:50:02 ID:tfZfqque
ミサイル・・・・・・・グランゼルorスカイゼル召喚
あるいは「ロケット戦士召喚!」(声:森川智之or高橋広樹)
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:03:05 ID:6RTt7NX7
ギャラクシートリッパー美葉の巡航ミサイルるーくんでもいいな
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:03:46 ID:eyPer39r
ゼロの使い魔はメイドのヒト
投下ありがとうございます
お待ちしておりました。
次回も楽しみにしております
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:07:33 ID:8RWtlfty
本名の長い人工知能ミサイルでも呼べばいいよ
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:10:26 ID:DdpTR8kR
ノーマッドのことか・・・ノーマッドのことかああああああああ!!

でもあいつはミサイルの制御システムのコンピュータコアだったような
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:14:52 ID:6RTt7NX7
神林の作品になんか無茶長い名前の人工知能戦車なかったっけ?
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:17:38 ID:1Y/A3qkX
>>606
容量食うからAAやめれ
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:33:57 ID:nWIRFDRh
兵器の流れで光翼型近接支援残酷戦闘機エヴァッカニア・ドゥーム様が
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:35:59 ID:Z0CbT7Qz
コンビーフの形の秘密を教えろ……
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:40:14 ID:ooEaOxFc
>>615
正確に言うと「コンビーフの缶の形の秘密」な。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:43:44 ID:7QyQNlEq
>>613
すまん、俺の童貞魂が先走った、これからは自重する
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:50:18 ID:tfZfqque
じゃあ兵器の流れで鈴木ロボ子召喚
メイドサンダーこと山田摩騎召喚でも可
姐さんの戦闘力は兵器呼ばわりしたってどこからも文句でまい

本人以外から、は
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:51:53 ID:W4I4hvTJ
>>612
あの発情する戦車か
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 15:56:17 ID:oRhnoM2q
兵器つーたらアレよ、
比類なき原子力猫パンチ発射装置とか餅月あんこロボとか
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:00:48 ID:tfZfqque
・・・・・・・・するってぇっとナニかい?
発情する戦車とかメイドサンダーとか原子力猫パンチ発射装置とか
餅月あんこロボとかでもガンダールヴの印は反応するんですかい?
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:04:18 ID:PUdZ1U7c
アナライザーを召喚
スカートめくりの連発で学院が桃色天国に
戦車を持ち上げたりレーザーガンを跳ね返したりするから役に立たないこともないだろ
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:08:59 ID:Tc7tcfov
戦車か・・・アーマードコア・フォーアンサーから雷電召喚
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:10:46 ID:7QyQNlEq
ふと思った、パッパラ隊から、水島君を呼ぶと身体の頑丈さもあって、
チート・ガンダールブになりそうだと
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:15:43 ID:wKS+8oaS
操兵とか絶対奏甲とかリューとかエムブリオマシンとか聖機兵とかキングスカッシャーとか
そんなファンタジー世界で活躍するロボットを…
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:17:30 ID:rUtLPriX
では素手で戦車と戦えるフロンティアの目黒さん喚ぼうか
先住魔法にすら勝てるかもしれん
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:18:53 ID:xfEc1YLe
>>624
ルーン無しで普通にチートだけどな?

生身で鉄骨を束で抱え、しかもそれ投げて戦闘機撃墜したりするしミサイルの飽和攻撃受けてピンピンしてたりする
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:20:23 ID:tfZfqque
ファンタジー世界で活躍するロボット・・・・・・・キラーマシンとか
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:20:24 ID:DdpTR8kR
>>627
とびかげやランコにはいいように振り回されてるけどな
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:32:48 ID:tfZfqque
水島君を召喚すると不死身遺伝子が・・・・・・・・
ツェルプストー家に入ってしまうぞ
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:38:27 ID:Ei1UuSoB
>>627
死に設定かと思ってたが
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:38:27 ID:xfEc1YLe
桜花と一緒に召喚すれば大丈夫
まあその場合契約自体大変難しく無理矢理契約したらルイズが焼かれるけどな!
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:04:18 ID:DdpTR8kR
>>631
終盤でもランコの仕掛けた(爆発とかする)罠を生身で潜り抜けてきたような
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:11:31 ID:LITkKObl
兵器ならわくわく7のポリタンクZがあるぞ
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:13:30 ID:eyPer39r
若い人は知らないだろうが「けっこう仮面」のお姉さんを召喚する
風上君
しかも衆人環視でなく、前日にこっそり召喚したら・・・・
で、翌日に秘書さんみたいな落ち着いた大人の女性として「召喚しました」と学院長に報告したんだが・・・
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:18:48 ID:7QyQNlEq
>>635
超過激だから止めとけ? いいか、決してジャンプとかしちゃいけないからな?
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 18:02:35 ID:mC5GwiNB
>>627
だがな、そんなキャラでも熱湯でやけどするのが
世の常なんだぜwww
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 18:14:04 ID:oRhnoM2q
不死身の呪いを受けたロリコン傭兵はどうだろう
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 18:14:43 ID:eyPer39r
>>635-636

オスマン校長が呪いにより「学園長・サタンの足の爪」に!
しおき教師の魔の手が魔法を使えない劣等生ルイズに迫る
その時参上!けっこう仮面

一件落着後 「けっこう仮面の正体は誰なんだろう?」

青銅の親父 「ワシの代でも噂になっていたな」
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:25:34 ID:xxE+//tH
>>638
でたとこプリンセスのコハクかwww
不死身なだけであんまし強くないんだよなww
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:29:47 ID:ZsBqopV9
不死身の傭兵といえばブラッド
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:32:14 ID:pfv3569+
ブラッドさんは何十何百の子どもを育ててる歴戦の勇士だからな。アリアさんが欲しいところだが。
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:33:12 ID:zLmGXoKj
>>623
戦車と言えばメタルスラッグ!
高火力で跳ねるししゃがむ万能戦車。
奧の手の捨て身メタスラアタックも強力。
整備も簡単らしいし。


だがメタルマックスも捨て難い……
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:35:01 ID:7QyQNlEq
そこで、スワンの街で負けたガルシア召喚か……
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:37:03 ID:vV9y02en
>>631

ギャグとは言え、死んでも生き返るパッパラ隊の連中や物理法則ガン無視のとびかげが居るからアドバンテージが低いんだよね>不死身
そりゃ忘れがちになるよw
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:37:05 ID:zLmGXoKj
下げ忘れすまん
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:39:28 ID:1Y/A3qkX
>>641-642
「てめーらオレがいないと思って、調子ぶっこいてんじゃねーだろーな」
ブラッド・ボアル様が巡回に参られました
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:45:09 ID:hXkP4Rtk
なんだぁ・・・戦車だぁ・・・?男なら拳ひとつで勝負せんかい!!
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:54:41 ID:1fiStZ2G
>>648
ルイズ「なにが虚無だ、てめえの虚無はでたらめだよ」
ジョセフ「あ・・?あ・・?」
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:58:06 ID:eyPer39r
ルイズが勇次郎を、ティファがケンシロウを、それぞれ召喚
ジョセフは赤木リツコ博士を、教皇は・・・・誰が良いと思う?
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:58:11 ID:DdpTR8kR
>>645
しっと団の生命力は恐怖に値する
消し飛んでも復活するしな

スーパースターマンも同レベルか
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:58:40 ID:pe8sKUDs
ワクワク7だとどうしてもティセを思い出してまうな
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:59:21 ID:DdpTR8kR
>>650
教皇は教皇を呼ぶしかあるまい(聖闘士的な意味で
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:02:48 ID:1Y/A3qkX
>>650
荒らしじゃないなら、とりあえずsageてくれ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:03:47 ID:83pOMJOG
>>643
メタルマックスか、チェルノブとかも意外といけるかも
メタルつながりならメタルブラックかなストーリーわかりにくいけど
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:10:17 ID:kESYlP8N
Black…?てつを…だと…………?
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:31:38 ID:gVqvVzfw
>>656
ここにはゴルゴムもクライシス帝国もいませんよ。
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:33:08 ID:r0HInLFG
エルフの仕業か!
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:34:20 ID:zLmGXoKj
>>656
ギーシュとの決闘→ゴルゴムの仕業
フーケ戦→ゴルゴムの仕業
レコン関連→ゴルゴムry
ってなるな。確実に。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:43:27 ID:Dr8U14G5
メタルマックスと聞いて、『からっポリタン召喚』とか変なことを思い浮かべてしまった
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:43:33 ID:pRurR2Ya
そんなにゴルゴムゴルゴム言っていると
関係ない事件までゴルゴムの仕業と思い込み濡れ衣を着せて構成員を襲撃しかねん
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:46:59 ID:xsxAs2en
ゴルゴムゴルゴム・・・・・・
どうもそのネタ聞いてると、何事もすぐに決め付けて人の話を聞かないというイメージになる。
本編見てたから、そんなことはないと、分かってはいるんだがなあ。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:58:27 ID:KM91E8PE
阪神タイガースが勝っている!→ゴルゴムの仕業だ!
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:00:29 ID:0FrFzOyx
>>660
貴族の誇りに溢れた野バスを召喚というのも
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:05:00 ID:83pOMJOG
>>661
ウェールズ皇太子が暗殺された・・・ゴルゴムの仕業だ!
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:17:14 ID:4a4xJ/Vx
また規制か・・・
667虚無の闇:2009/04/04(土) 21:17:59 ID:4a4xJ/Vx
ってあれ、解けてる……
今のうちだ! 30分から投下します
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:24:24 ID:v3Sjqrw7
悪ルイズ支援

>>ゴルゴムの仕業
基本的に一番悪いのは、本当に裏で糸を引いてるゴルゴムなんだ
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:31:22 ID:N2tk/1J8
>660
うろつきの方なら考えないでもなかった。

うらつき童子召喚とか考えてませんから!
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:32:32 ID:3qnBzBGw
待ってました!
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:36:37 ID:govfMXKb
容量が危ない
という訳でスレ建て行ってくる
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:39:44 ID:govfMXKb
失敗、以下誰かよろしく
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:42:00 ID:Ei1UuSoB
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part224
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1238848896/
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:43:17 ID:kESYlP8N
OTU
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:46:13 ID:R22ZdA1k
153 :虚無の闇:2009/04/04(土) 21:32:28 ID:gkYs3gxI
なんかまた規制されてるんですが……
なんぞこれですよ……

どなたか代理お願いします

=====

容量は確認した所13kb 正直ギリギリ
>673が立てた新スレで代理投下すべきか?
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:50:46 ID:dU9j/6ii
>>675新スレで
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:51:19 ID:R22ZdA1k
>>676
把握 じゃあ新スレに行って来るわ
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:56:53 ID:z0tqM4kB
mixiにコミュある?
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 22:43:17 ID:cwwlN9vP
>>643
メタルマックスだと、ポチ召喚とかどうだろう?
破壊の杖連射版装備で主人に従順。
サーガのベルナール召喚で目から怪光線に驚くルイズも捨てがたい。
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 22:51:53 ID:ZsBqopV9
軍艦ザウルス・・・(ゲフゲフ
アルファさんやレッドフォックスが見てみたい
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 22:55:16 ID:7QyQNlEq
バトー博士が行って、技術革命(戦車技術だけ)にコルベールが複雑な顔をする
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 22:56:12 ID:r0HInLFG
>>680
アルファは小ネタであったよ
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 22:59:11 ID:ZuQE2Ki9
メタルサーガって戦車大好きなお嬢と男の娘と執事が1番記憶に残ってるな
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 23:01:05 ID:/dKcdvo9
>>641
子供の出したなぞなぞに正解して「よっしゃー!」と叫んだブラッドさん(当時4XX歳)の事ですか?
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 23:45:36 ID:1xSXKqw3
メタルサーガって原作はまったく知らんのだが、某所で酷い踏み台クロスがあったせいで、すごく印象が悪い作品になってしまった。
ゼロ魔の世界に召喚されたら、ギーシュやワルドが悲惨なことになりそうだ。
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 23:57:37 ID:EGNIQVfj
ブラッドって聞くと挑発してる間にロケランの集中砲火にあう某アクションゲームの7ボスを思い出すなぁ………
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:03:04 ID:51tEEEot
>>685
なのはクロスか?
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:03:51 ID:Fa2x3MXM
ブラッドって聞くと、最近はブロッケンブラッド
689名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:11:01 ID:HwCw11ZX
>>685
某所の悪口なら某所で言えよ、一々こちらに持ち込むな
特定原作に対する印象操作をするんじゃないよ
そういう叩きは実際にそういう作品が投下された時だけにしろよ
690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:11:06 ID:w+kSf8L0
ここでユーベルブラッドを挙げてみる
691名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:17:13 ID:W4gGLJ89
>ユーベルブラッド
ケインツェルをアレ以上強くしてどうするつもりだw
というか、復讐行の邪魔しちゃダメだろう
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:19:53 ID:JCoV9OaI
ユーベルブラッドはあいつ復讐相手が手の届かない所に行ってしまったら
今度こそ本当に発狂するんじゃ無いだろうか
693名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:22:35 ID:QntyJD3o
まだ体がまともに動かなかった頃のケインツェルの武者修行、と当てはめれば何とかなるのでは?
694名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:26:46 ID:ZO1jvHBB
ユーベルブラットとブラッケンブラッドが
タイトルだけだとどっちかわからなくなるときがあるのはきっと自分だけだろう・・・・・

守流津健一が喚ばれたとしたら、
どうやってノイシュヴァンシュタイン桜子を出すのかが肝かな。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:35:45 ID:Fa2x3MXM
俺たちには、魅惑の妖精亭がある!
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 00:37:09 ID:raSbEysf
ここから女装少年ネタに流れるんですねわかります
『おと×まほ』から白姫彼方召喚とか
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 01:13:33 ID:MIfjO4eA
ゴルゴムの仕業vsシグマの仕業
698名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 01:21:03 ID:mpKwvvUm
準にゃん召喚と申したか。

一通り事件を解決した後、準がいなくなって自分の気持ちに気付いた雄真が迎えにくるんですね。書きたいです。
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 01:23:17 ID:JCoV9OaI
守流津健一はあのナリでサイトの数百倍は強いんだよな……
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 01:24:18 ID:Fa2x3MXM
真白なる使い魔の続きを期待する流れか、ってあれは微妙に女装美少年ものと言えないか
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 03:44:52 ID:2RxpWxz+
ブラッドと言う事でブラッディーロアの漫画版からファング召喚とか

武器使えるわ変身出来るわで結構な当たりっぽいな
ただ竜繋がりでタバサが青龍の子を召喚したらヤバい事になる……逆夜這い兼病んデレ的な意味で
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 08:25:14 ID:w+kSf8L0
ラスボスだった使い魔にロア出てこないかな
OGじゃなくてコンパチのほうで
闘球王装備してたら尚良し
703名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 10:17:31 ID:YDBWNyyQ
埋め

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part224
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1238848896/
704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 13:47:23 ID:+/vh1mlT
賀ノ多うつきが召喚されないかなあ
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:11:46 ID:39iP5wkD
500kbならso4から誰か召喚
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 16:58:10 ID:IvDZALgd
                                          ○________
                              なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
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707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:33:50 ID:l+7kC1Et
>>702
田中マルクス装備と見間違って焦ったぜw
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:35:31 ID:Ny4f4DAJ
706 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/04/05(日) 16:58:10 ID:IvDZALgd
                                          ○________
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
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709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:36:49 ID:Ny4f4DAJ
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
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710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:42:05 ID:6CjtYoFD
500なら「らくだい魔女はゼロの使い魔」連載開始
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:42:45 ID:Ny4f4DAJ
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
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712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 17:43:20 ID:l+7kC1Et
大量に余ってる時ならまだしも、残りが少なくなったらなぎ払わなくて良いよ
713名無しさん@お腹いっぱい。
           ト、  ト、 |\   ∧
         _|:.:.:\|:.::ヽ!:.:.:.\/:.:.|
        _>:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|/|
        \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.へ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.¨フ
       弋´:.:.:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.く
       <:.:.イ:.:.:.:/.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.!:.:!.:.:.:.ヽ:.:_,>
      弋´.:.:.:.:.:.:/.:.:.:./ |:.:.!:.:.:.:!:.ハ.!.:.:.::.:\
       <:.:./.:.:/:/T ト、∨:.:.:/!レ小:.:!:.小、>
       <:八 小| 代圷 |:.:Wイタヽ小|ヽ!   まずはその、ふざけた幻想をぶち殺す!!
        厶込、N   ̄ レ !  ̄ ム、
         rイ!.ハ     , j   八 \
         / V  ヽ  ー : -'  イ    \_
      ,. -へ.  \  >、 _, ィ \ /¨「 ̄ ̄ `ー 、
     /     ヽ   \  /  ',  \ !       }、
     /     / !   \   |\ソ |       /  \
.    /     /  ,    /マニ/ / ,厶    ∠、    ヽ、
   /     /   ',  ∧ G〉/ / /  \/   \     \
  厶-―-、 /    |./  ∨|/ r' つ  ノ Yヽ    \     \
  |     \  !      |イ| {レ '´ ィク )     ` 、    \
  |       ヽ !      |d |    '   / )        \.    \
  ∨   \  |/        | ! 〉    ' , ィ }            \   \
  ∧     \/        ! /    ,. -―'            ヽ    ヽ、
  i ヽ     }       /   /                  |     !
  |    ,. --- ∨     /   ∠、                  ! ,__   ノ
  /ー‐ 彡'  ̄¨ 弌  /     / ヽ \___              ヽ_ト― ´
  `ー<_∧     }/    , '| ! /      |
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