あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part220
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part219
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1236498410/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>1乙
>>1すれたて乙
スレ立てお疲れ様です
個人的には出てった方が転載したHPへのリンクなど欲しいな
色々とウロついてるうちにるるるさんを発見したのはおでれーた
許可を取らないで貼る馬鹿が出てきそうで怖いな
更にそのサイトとリンクしているサイトへも行けちゃうだろうし、
中には『2ちゃんねる』を嫌がる人は居るだろうから、止めた方が無難だな
なにより作者が思うところがあっての移住だし
それこそ気になるならGoogleでいくらでも見つかる
わざわざここに貼って波風立てる意味はない
前スレ772に書いてあったサイヤの使い魔読んだあと
おマチさんが死ぬss読んで何ともいえない気分になったぜ
19:45から、原作二巻で偏在としか書いてないんだから、遍在じゃなくてもいいじゃん。な14話を投下したいと思います。
6レスになるはずです。
アプトムの朝は早い。が、この日の場合は、ただ単に寝ていなかっただけである。
何故、寝ていないのかと言えば、夜襲などがあったとしても、すぐにルイズを守れるようにである。
決して、どこで寝ればいいのか教えてもらってなかったからではない。
そんな一日や二日、睡眠を取らなくても平気な使い魔とは逆に、主たるルイズは、今朝も絶賛寝ぼけ中である。
夜更かしすることが習慣付いており、昨夜はウェールズのことやアンリエッタの事で頭を悩ませてなかなか眠れなかった彼女は、眼を覚ま
しても、いつもの通りに頭の半分が眠ったままであり、起こしに来た者の成すがままであった。
ルイズが、意識をはっきりさせた時、そこは礼拝堂だった。
隣には着飾ったワルドがいて、自分もいつの間にか着替えさせられていた。と言ってもいつもの黒いマントからアルビオン王家から借り受
けた純白のマントに変えただけで杖も持ったままであるが、そして前には始祖ブリミルの像を背にしたウェールズが立っていて、離れたとこ
ろには壁にもたれるように立つアプトムがいる。
何がどうしてこの状況?
と、霧がかかったような記憶を呼び起こしてみる。
たしか、寝ていた自分を起こしに来たのはアプトムではなくワルドだった。うん。それは憶えてる。それで、えーと、ワルドが「今から結
婚式をするんだ」って言って、わたしを着替えさせてここに連れて来たのよね。って、誰と誰が結婚するの?
と、周りを見回してみるが、ここにいるのは、自分を含めて四人。つまり、結婚するのは……、
「わたし!?」
素っ頓狂な声を上げるルイズに、ウェールズは怪訝な顔をするが、まあ緊張しているのだろうと流すことにする。
「では、式を始める」
いやいやいや、ちょっと待った、考える時間をください。などと思うルイズであるが、そんな心の声が聞こえた者はいない。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓い
ますか」
「誓います」
勝手に誓わないでよ。お願いだから、この状況を説明してください。どうして、わたしとワルドが結婚することになってるのよ。たしかに
婚約者だけど、これは、なんか違うでしょ。
内心で、そんな悲鳴を上げる彼女に、ウェールズはニコリと笑顔を向けて、詔を読み上げる。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。汝は始祖ブリミルの名において、この
ものを敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか」
無理! 心の中で悲鳴を上げる。
確かにワルドを慕う気持ちはある。だけど、こんな風に何の説明もなく連れてこられて結婚しろと言われて納得できるはずがない。いや、
起き掛けに説明はあったが、そんな頭が働いてないときに言われても困る。
助けを求めてアプトムに視線を向けると、訝しげな眼で見返された。
ウェールズもそうだが、アプトムは、ルイズがこの結婚式についてワルドから何も聞かされていない事を知らない。説明なしに助けを求め
られても困ると言うものだが、困っているのはルイズも同じである。
「新婦?」
呼びかけてくる、こちらも訝しげなウェールズにルイズは慌てて何かを言おうとして、何を言えばいいのか分からずに困惑し、とりあえず
現状を理解しようと努める。
まず、三日前の夜にワルドが自分に結婚を申し込んできた。その時、自分はなんと答えただろう?
答えられなかった。自分がどうしたいと思っているのかも分からなくて黙りこんだルイズに、返事はこの旅が終わるまで待つと言ってくれ
た。
その後ワルドは、その話をしてくることはなかった。というか思い返してみると、アプトムとワルドの決闘やら、傭兵の襲撃やらいろいろ
あったとはいえ、どう返事するか一度たりとも考えなかったというか完全に忘却していた。我ながら酷い話だと思うが、それどころでなかっ
たというのがルイズの言い分である。
そして、今朝になって急にワルドが結婚式をしようと言い出して、反論の暇もなく自分を着替えさせてここに連れてきた。
なんだそれ?
急に腹が立ってきた。自慢じゃないが、というか自慢にならないがルイズは感情を爆発させやすい少女である。本人にも自覚がなかったが、
この城に来てから彼女の心の奥底には爆発の起爆剤となる苛立ちが多く積み重ねられ続けていた。
この城の人間は、人の気持ちを考えない人間ばかりだというのが彼女の見解。
特にウェールズである。彼は愛してくれていて、そして自分も愛しているはずのアンリエッタの事を蔑ろにしすぎている。
アンリエッタが亡命してほしいと言ってくれているのに、それを無視して、自分が正しいのだと、これが彼女のためだと一方的に決め付け
て、王女の想いをなかったことにしようとする。
人の上に立つものとして、それが正しいのだろうということは理解できるが納得はできない。
そんな怒りが、これまで表面に出てこなかったのは、アンリエッタを想っての悲しみの感情が強かったからだ。
しかし、ここに来て、その悲しみは噴出した憤怒に駆逐された。
今のルイズにしてみれば、こちらの意思を無視して結婚式を挙げようとするワルドには、ブルータス、お前もか。という感情しか浮かばな
い。
「誓いません!」
はっきりとした宣言にウェールズが首をかしげる。彼は、まさかこの結婚式が新婦の同意なしに行われたものだなどと考えもしていないの
だから当然である。
「何を言っているんだいルイズ? ああ分かってるよ僕のかわいいルイズ。緊張すると思いもしない事を言ってしまうものだからね。 そう
だろルイズ。きみが、ぼくとの結婚を拒むわけがない」
そう言ってルイズの手を取るワルドであるが、それを彼女は振り払う。
ふざけるなと心の中で叫び、睨みつける。
ルイズにとってワルドは憧れであり、恋してもいた。だけど、許容できないことがある。
アンリエッタの想いを無視し、これが彼女のためだと一方的に決めつけるウェールズに苛立ちを覚える今のルイズにとって、同じく一方的
に自分の想いを決めつけ行動するワルドは、怒りの対象でしかない。
「そうね。わたしは、あなたとなら将来結婚したいと思っていた。でも、それは将来の話。今じゃない。あなたは待ってくれると言ったわ。
なのに、これはどういうこと? あなたにとって、わたしとの約束なんて守る価値がないって事?」
「なるほど。僕は急ぎすぎたようだね。なら、日を改めて式を挙げよう。しかし、せっかく媒酌を受けてくれた殿下の顔を潰すのもよくない。
ここは……」
「黙って!」
目下のものを見守る優しい笑みを浮かべて言ってくるワルドに、ルイズは怒声で答える。
そうではない。彼女が怒っているのは、そういうことではないのだ。ルイズはただ、こちらの考えを勝手に決めつけるなという、ただそれ
だけのことに怒っているのに、それが伝わらない。
それも仕方がないことではある。ルイズの訴えることは、言ってみれば取るに足らぬ小娘の感傷で、大人であるワルドや、王族として貴族
としての立場でしかものを見れないウェールズには理解できないものであった。
もちろんアプトムにも理解できないのだが、彼は最初から理解する気がなく理解した気になってものを言うこともない。
もういい。そう思う。このまま話していても、不愉快なだけだ。
頭に血が上ったルイズではあるが、ウェールズに対して不敬を働いてはいけないと考えるだけの常識は残っている。
とはいえ、このままでは、ワルドとウェールズに対し怒りを爆発させてしまうことは目に見えている。だから彼女は言う。
「アプトム。帰るわよ」
気持ちの通じ合わぬ、しかし忠実な使い魔に呼びかけて、踵を返す。もう、ここにはいたくないから。
そんな彼女の肩に、ワルドが手を伸ばす。
支援は紳士の嗜み
「待つんだルイズ。僕にはきみが必要なんだ! きみの能力が! きみの力が!」
だが、ワルドの手をアプトムの左手が止める。アプトムにとって、ワルドの言い分などどうでもいい。この危険な城からさっさとルイズを
連れ出せるのなら、他の事はどうでもいいのだ。もう終わった話で引き止めようとするなとしか思わない。
「きみは……」
怒りに満ちた眼でアプトムを睨みつけ、そしてルイズを見るが振り返る少女の眼には拒絶しかない。
「子爵……、きみはフラれたのだ。いさぎよく引き下がりたまえ」
そんなウェールズの言葉に、納得したからでもなかろうが、ワルドは落ち着きを取り戻した様子で、天井を見上げ首を振りため息を吐く。
「この旅で、きみの気持ちをつかむために、随分と努力したんだが、こうなってはしかたない。目的の一つは諦めよう」
「目的?」
怪訝な顔をするルイズに、ワルドは唇の両端をつりあげて暗い笑みを作って見せる。
「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できるだけでも、よしとしなければな」
三つの目的とは何だと思うルイズに、ワルドは指を立てて言葉を続ける。
「まず一つはきみだ。ルイズ。きみを手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」
「そうね」
「二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」
「なっ……、ワルド、あなたまさか……」
「そして、三つ目の目的は……」
そこまで言った時、ウェールズが杖を構えた。ようやく、彼もワルドの言葉の意味を察したのだ。しかし、遅い。
閃光の二つ名を持つワルドは、その名に恥じぬ素早さで杖を抜き呪文を唱え、青白く光る杖でウェールズの胸を貫いていた。
「貴様の命だ。ウェールズ」
ワルドの嘲りを含んだ言葉を最後まで聞くことなくウェールズは倒れ、その胸に大きく開いた穴から血を溢れさせる。
「あなた! アルビオンの貴族派だったのね! ワルド!」
「そうとも。いかにも僕は、アルビオンの貴族派『レコン・キスタ』の一員さ」
「どうして! トリステインの貴族であるあなたがどうして!?」
悲痛な声で訴えるルイズ。彼女はワルドに対して強い怒りを感じてはいたが、別に嫌いになったわけではない。恋が醒めたわけではない。
そんな相手の裏切りに傷つかないではいられない。
そんなルイズにワルドは杖を突きつけて言う。自分たちハルケギニアの将来を憂える貴族の連盟に国境はない。自分たちの手により無能な
王家を打ち倒し、その後一つになった戦力で始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を取り戻すのだと。
「昔のあなたは、そんな風じゃなかった。何が、あなたを変えたの?」
「人は変わるものさ。きみとて、昔のままなら僕の言うことに逆らったりはしなかっただろう」
つまりは、そういうこと。ルイズの知るワルドとは十年も前の心優しい少年で、ワルドの知るルイズとは彼の言うことを頭から信じて疑わ
ず、また逆らうということを考えることもできない内向的な少女であった。二人が見ていたのは十年前のお互いであって今ではない。だから、
この破局は必然であったのだが、そのことにお互いだけが気づいていなかった。
「言うことを聞かぬ小鳥は、首を捻るしかないだろう? なぁ、ルイズ」
自分に向かい杖を振ろうとする、かつての婚約者の殺意に晒されルイズは震える。彼女は魔法を使えないことを馬鹿にする心無い悪意には
慣れていたが、人を害する事をいとわない敵意というものには慣れていない。
そんなルイズの前に、アプトムが立ちはだかる。彼のここでの目的はルイズを無事に連れ帰ることなのだから、これは当然。だが……、
「ふん。伝説の使い魔とはいえ、魔法も使えない平民が、左手一本で僕に勝てるとでも思っているのかい?」
その言葉にハッとなるのはルイズ。自分の使い魔を先住魔法を使う亜人だと思っている彼女は、アプトムならワルドとでも互角に戦えると
信じているが、彼は右腕に酷い火傷を負っているのだ。
ここは、アプトムに頼るべきではないのではないか?
そんな心配をするルイズの不安をよそに、彼はも焼け焦げた右腕を掲げて言う。
「左手一本でも勝てるだろうがな。右手を使わないつもりもない」
その言葉と共に、彼の右掌から閃光が走り、杖を持ったワルドの右腕を貫く。
「なん…だと…」
呻くワルドには、何が起こったのか理解できない。
目の前の男の右手が光を放った。そして、その瞬間には自分の右手が肘から失われ、傷口は炭化していた。
「何をした! 貴様ーっ!」
怒りに任せて叫ぶが、アプトムは答えず、ただ前に突き出した右腕の表面の皮膚がボロボロと崩れ落ち、傷一つなく手の平にレンズのよう
な何かを貼り付けた右手が姿を現す。
「貴様。その右手は……」
「怪我なら、とっくに治ってたさ。だが、俺の正体に関する能力のことはルイズ以外には知られない方がよさそうなのでな」
実際には、あと三人ほど彼の能力の一端を知る者がいるが、その事を言う意味はない。
彼の背後では、だったら怪我が治ってることをさっさと教えときなさいよ。心配しちゃったじゃない。などと、ルイズが怒っており、後で
責め立ててくるのだが、今はどうでもいいだろう。
なんにしろ、右腕ごと杖を失ったワルドに抵抗する術などない。その考えが油断であるとは流石にアプトムも思わなかった。だから、まっ
たくの別方向から襲い掛かった風の刃に対する反応が遅れ、その右腕はあっさりと切り飛ばされた。
悲鳴が上がる。それは、アプトムの背後に庇われたルイズの口からこぼれたもの。右腕を失ったアプトムは、動じずに風の刃を放った者の
姿を視界に捉え、そこに港町でルイズを捕らえようとした仮面の男を発見する。
「風は偏在する」
そう呟いて仮面を取った男は、ワルドの顔をしていた。それに驚かなかったわけではないが、別の方向からの攻撃を感じ取り、背後にいた
ルイズを左手に抱えると、アプトムは襲い掛かる風の槌をかわす。
そうして、見回した礼拝堂の中には、右腕をなくした者を含め四人のワルドがいた。
「分身か?」
何気なく呟いた言葉に、ただの分身ではないと答えが返る。
「一つ一つが、本体とまったく同じ意思と力を持つ。今度こそ、右腕を失くしたきみに勝ち目はない」
支援は紳士の(ry
支援砲撃開始!
宣言と共に三方から矢継ぎ早に放たれる風の魔法を、ルイズを抱えたアプトムは回避していく。
だが、全てをかわしきれるはずもなく、傷ついていくアプトムの姿にルイズは自分が足手纏いになっていることを知る。
正直なところ、この日起こった出来事は、ルイズの許容できる範囲を越えていた。突然の結婚式にワルドの裏切り、ウェールズの死に、怪
我をしてたはずの手から光線を出すアプトム。付け加えるなら、アプトムの得体の知れない能力に対して、まったく恐怖を覚えなかったわけ
でもない。
もう思考放棄をしても許されそうな状況でルイズを現実に引き戻したのは、どれだけ傷ついても彼女を守ろうとするアプトムである。
右腕を失くし、残った左腕を自分を抱えるために使っているアプトムに、ワルドに反撃する手段は残されていない。それなら自分がなんと
かしなくてはならない。そうルイズが考えることは必然と言えるものであり、ゆえに彼女は杖を振るい呪文を詠唱する。唱えた魔法はファイ
ヤー・ボール。魔法を撃ってくる三人のワルドの一人に向けて放たれたそれは、当然の如く失敗の魔法となり、狙いもそれてワルドの一人の
少し隣で爆発した。
そのワルドが、本体であったならその失敗魔法には何の意味もなかったであろう。しかし、偏在であったそのワルドは爆発の余波を受けた
瞬間。まるで幻だったかのように消失した。
「馬鹿なっ!」
そう叫んだワルドもまた、光線に胸を貫かれて消滅する。
当然の事態に、何が起こったのか分からなかった残ったワルドたちは、手の平にレンズを貼り付けた右手を掲げるアプトムを見て驚愕する。
「どうした? まさか、右手を再生できるとは思わなかったなどとは言うなよ」
冷笑と共に吐かれる言葉に、ワルドは沈黙する。ライトニング・クラウドを喰らった右手を再生させた相手であるから、まったく予想しな
かったわけではないが、早すぎる。
なるほど。確かにバケモノだ。『土くれ』が敵対したくないと言うのも分かる。
腕だけでなく、ルイズを庇ってついた傷も、すでになくなっているのを見て、勝ち目がないと理解したワルドは考える。
相手は、まだまだ自分の能力を隠しているであろう無傷のバケモノ。こちらは、敵が手の平から出す光線を回避する術すらなく、残った偏
在の片側は片腕を杖ごとなくし戦闘能力は無きに等しい。
勝ち目はなく、もうレコン・キスタの総攻撃が始まる頃だし、時間稼ぎをしなければいけない理由もない。
ならば、これ以上は精神力の無駄だ。フーケの忠告もあり、もしもの事を考えて、礼拝堂には偏在だけを行かせたのは正解だった。最初か
らいた右腕を失くしたワルドも偏在である。そうでなければ、もしこの場に本体がいれば、あの光線に撃ち抜かれ自分は一撃で倒されてしま
ったかもしれない。
手紙を自分の手で奪えないのは残念だが、それは後で死体から回収するとしよう。いかなバケモノとて、レコン・キスタ五万の軍勢からル
イズを守りきれる道理はない。
だからと、ワルドはそこで切り上げることにする。
「どうにも、きみには勝てそうもないようだな、ガンタールヴ。まあ、目的の一つを果たせただけでよしとしよう」
そう言って、偏在たちは消えた。
アプトムはワルドとの戦闘に勝利したのだ。
だけどと、ルイズは敗北感を感じる。自分はただ足手纏いになっていただけだ。自分がもっとしっかりしていれば、ウェールズ王子も死な
なくて済んだのではないかという考えを、止められない。
そして、ウェールズの生死に関心のないアプトムはルイズのような感傷とは無縁であるので考える。
騒がしい音も聞こえてきたし、もうレコン・キスタの総攻撃が始まっているのだろう。自分なら、戦って負けるとも思わないが、ルイズを
守りながらとなると難しい。
だから、と彼は獣化することにした。幸いと言っていいのか、ワルドがいなくなったことで、この礼拝堂には自分とルイズ以外にはウェー
ルズの屍があるのみである。
支援
支援! 支援である!
「アプトム?」
ルイズは、アプトムを先住魔法を使う亜人だと思っている。だから、その姿を人でないものに変えたとしても、不思議ではないと理解はし
ている。
だが、それは突然であったし、前に見たカメレオンに似た亜人の姿ではなく、その時よりも遥かに大きな巨体を持つ、二本足で直立するカ
ブトムシと言う感じの姿になられれば、さすがにギョッとしてしまう。
「脱出するぞ」
どうやって? とバクバクと音を立てる胸を押さえながら尋ねるルイズに穴を掘ってだとアプトムは答える。この姿は、かつて融合捕食で
手に入れたゼクトールと呼ばれる超獣化兵のものである。
このゾアノイドの主な武装は、獣化兵中最高出力を誇る生体熱線砲であるが、それしかできないわけではなく、その巨体に見合ったパワー
や地を潜って進んだり空を飛んだりの能力もある。
その能力で、土を掘り、大陸の底まで行って、そこからは飛んで脱出しようというのが彼の考えである。
ちなみに、穴を掘ったり空を飛んだりは、前に土くれのフーケと戦ったときの姿であるアプトム・フルブラストの形態でも可能なのだが、
一人ではなくルイズも連れて行くのなら穴を掘る自分の体は大きいほうがいいだろうと彼は判断していた。
そんな説明に、自分たちだけ逃げ出すことに罪の意識を感じる彼女は、ウェールズの屍に眼をやり、いや、ウェールズを救えなかった自分
にはそんなことを考える資格はないのだと頭を振る。
「わかったわ。早く脱出しましょう」
そして、姫さまに手紙を返さなければとルイズは、アプトムが開ける穴に飛び込んだ。
もしも、このときルイズの注意力が高ければ、彼女はあることに気づいたかもしれない。
ワルドの魔法に切られた後、再生したアプトムの右手は、新しく生えてきたものである。つまり、礼拝堂のどこかには、切り飛ばされた右
手がなければいけないのだ。しかし、それはどこにもない。
そして、誰もいなくなった礼拝堂で、その男は目を覚ます。
それは、先ほどまでは屍だったはずの者。ウェールズと呼ばれていた男。
ウェールズだった男は起き上がり、不思議そうに自分の薬指に眼をやる。そこには指輪がはまっていた。風のルビーと呼ばれる宝石のつい
た指輪が。一度、それに眼をやった彼は、歩き出す。何かに導かれるように。何かを捜し求めるかのように。
一人、ラ・ロシェールに残ったギーシュが船に乗ったのは、宿が襲撃された二日後の朝。今まさにニューカッスルの城がレコン・キスタに
攻められている頃である。
もちろん、ギーシュがそんなことを知るはずがなく、彼はアルビオンに着いたらすぐにでもルイズたちを追おうと考えていた。
どうやって、ルイズを捜すのか、ということは考えていない。、結局は彼もルイズたちと同じ世間知らずの貴族の学生でしかなかったので
ある。
そんなわけで愛しい使い魔ヴェルダンデと共に乗った船の上で、彼は自分がこれからする事になるであろう大活躍を夢想するのであった。
そんな彼は、途中ヴェルダンデが鼻をひくつかせアルビオンの方向に顔を向け、何かを眼で追うように顔を曲げて行き最終的にトリステイ
ンの方に向けた事には気づいたが、それが何故なのかは分からず、ついでに同じ船に乗っている黒いローブで顔を隠したあからさまに怪しい
女性に気づくことがなかったのであった。
彼の前途に幸あれ。
Shane
投下終了。支援に感謝。戦闘短いですね。反省します。
それと、あーあ、やっちゃったよ。原作沿いでないと話を書けないくせにウェールズの遺体消失とかどうするつもりだよ自分とか思ってみたり。
最後、ギーシュが助けに来るつもりで書いてた私は、どうする? フルブラストをルイズにお披露目するのは、もっと後と決めていたはずだぞ。
と悩んだ末に、ゼクトールに擬態させるのでした。
でも、初お披露目に考えてた場面もゼクトールでいいんじゃね? と思って落ち込んだりもしましたが私は元気です。
ちなみに、私はデザインだけで見るとゾアノイドの中でゼクトールが一番好きです。
性能その他を考慮するとラモチスが一番ですが。
獣化キター!
投下乙ってギーシュどうすんだよw
まあ運良くテファと会えることを祈ろう
アプトムってブラスターテンペストは使えるのかな?
原作じゃあ使わなさそうだけど。
アプトムの人乙です。
ついにルイズの前で獣化しましたか。
しかし4人衆verじゃなくてゼクトールVerとは面白い選択です。
で、切られたアプトムの右手はもしかして・・・
>>26 ゼクトールの出来る事の全ては、アプトムも再現可能ではあろうけど、
ブラスターテンペスト使ったら、殆ど戦闘不能状態となってしまうからな。
博打うたなきゃならないほど追い詰められなきゃ、撃とうとは思わんだろう。
まあ分体がいればある程度打ち放題なんだけどね
適当な名無しを乗っ取ってブラスターテンペストを撃たせる使い捨て砲台化が可能なのよアプトム
でも4人衆モードも十分強いんだよな……。
というかネオ・ゼクトールとかが強すぎるんでそう思えないだけだし。
オメガブラスト状態だったら、さらに武装が強化された上に
ガイバーの超感覚でも極めて探知しにくい超ステルス能力さえ持っているし(武装よりも脅威だと思う)。
この状態ならネオゼクトール相手でもやりあえると思う。
襲い来るレコンキスタ軍5万を全部のっとって「アプトム5万人」。
ガリアもエルフも敵じゃないぜ!
レス見る限りアプトムってぼくのかんがえたレベルな気がするんだが元だとどんなもんなんだ
ダイの大冒険で例えてくれ
無限の再生能力と進化力を獲得しつつツンデレ状態な武人ハドラー(最終形態)程度
ブラスターテンペストは負担こそ大きいが
使って戦闘不能になるほどじゃない
そもそも基本は周りからかき集めた熱エネルギー集束発射するだけなんだから
使えば戦闘不能なのは発射機構の限界超える集束を成すファイナルの方だけの話だ
なまじ元だとアルカンとガイバーギガンティックという僕の考えた最強がいるからなあ・・・
ガイバーギガンティックはおよそ50メートルの巨人になれてブラックホールを作れるし、
アルカンは負傷した状態で惑星破壊可能クラスの隕石を破壊する。
こんなヤツらが揃っているからなあ。
>>33 普通の相手にはほぼ無敵の超魔生物みたいなもんだけど敵にも味方にも
バーン最終形態並のがいるのでそんなに活躍できるわけではない。
アプトムさんがブラスターテンペストを使わないのはチャージ!!が必要だからだと思われ
>>35 ファイナル使ったら戦闘不能どころか、負荷に体が耐え切れずに消滅ですから。
ブラスターテンペスト初のお披露目の時は、使用後に腹の熱線砲は
跡形も無く焼けただれ、背中の翅はズタボロ。
ガスター、ダーゼルブを取り込んでないアプトム分体相手に逃げるしか手が
無かった訳だし、戦闘不能といっても良いのでは?なんて思ったり。
41 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 22:51:03 ID:nSwzcG9u
アプトムの方乙です。
4話「出会いと水の精霊」を投下させていただきます。
23時を予定しています。
よろしくお願いします。
42 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:00:25 ID:nSwzcG9u
ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 4 「出会いと水の精霊」
その場には何とも言えない空気が流れていた。そして、その空気を壊したのは最後に現れた者であった。
「すまないが、君は誰だい?私と似ているのだが」
彼は取りあえず、自分と似た存在のゼータに驚きを感じたらしい。
ゼータは一瞬、団長のアレックスを思い出した。
何となく彼の知っているアレックスに雰囲気は似ていたが、来ている鎧などはゼータの知る物では無かった。
「私は、アルガス王国騎馬隊のゼータと申します。失礼ですがあなたは?」
「君が、もしかすると……私は武者荒烈駆主、イザベラの使い魔なんだ」
ゼータの自己紹介に、荒烈駆主は丁寧に応じる。
青を基調とした見事な鎧で、頭部には金色の見た事のない獣の何かの様なものをつけている。
背中には二本の槍らしきものが背負われており、一種の物々しさを感じさせた。
「あなたは、スダ・ドアカワールドまたはアークやマークスリーと言う言葉をご存じですか?」
(この間見た、真駆参に似ている)
出で立ちを見て、なんとなくそんな事を思う。自分達の鎧とは作りが違うように感じられた。
しかし、それを聞いても、荒烈駆主は申し訳なさそうに、首を振る。
「分からない……私は記憶喪失らしい、気づいたらイザベラに召喚されていたんだ」
荒烈駆主は召喚された時から、記憶を持ち合わせていなかった。覚えていたのは戦い方と、名前のみであった。
「申し訳ありません、貴方が私の知っている方に似ていたもので、その方は我々の団長なのですが名前まで同じなのです」
「へぇ、そいつは珍しいね」
アレックスも興味深そうに、ゼータの話を聞く。
先程までの殺伐とした、空気から穏やかな空気に流れつつあった。
「何をやってるんだいアレックス、さっさとそいつを切ってしまいなよ」
イザベラはゼータを指差し命令するが荒烈駆主はそれを実行するつもりはない。
「イザベラ、穏やかじゃないなぁ、何が起こったんだい?」
イザベラの不機嫌にはなれていたが物騒な単語に、アレックスが首をかしげる。
「実は……」
ゼータがイザベラに変わり先程の事情を説明する。
それを聞いて、荒烈駆主は何となく理解したらしく。
「ふーん、成程、それはイザベラが悪いよ、すまない、君達の機嫌を損ねるような事をしてしまって」
イザベラの代わりにアレックスが謝罪する。
「なんで、お前が謝るんだい!私は王女なんだよ」
「誰だって、そんな事言われれば気を悪くするさ」
イザベラの怒りに対して、アレックスが正論を返す。
一国の重要人物に正論を言うのは時として、自身にとっても危険な事だが、荒烈駆主は意に介さない。
そんな三人の流れを断つかのようにタバサの小さな声が聞こえる。
43 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:01:12 ID:nSwzcG9u
「報告終了、失礼します」
タバサが報告を終え退出しようとする。
「ああ、ありがとう、ごめんね」
「別にいい……」
「ちょっと、王女は私だよ!勝手に話をするんじゃないよ!」
タバサにも謝るアレックスと、それに応じるタバサ。
本来、このやり取りは家臣達を戦々恐々とさせる物であるが、荒烈駆主が間には居る事でどこか抜ける物があった。
「今度、トリステイン魔法学院に来て下さい、私と同じ仲間がいますから」
「ありがとう、今度イザベラと一緒に行かせてもらうよ」
「なんで、私を連れていくんだよ!それに、誰も許可するとは言ってないよ!」
ゼータとアレックスは声を荒げるイザベラに気にせず、約束を取り付ける。
「ではアレックス殿、お元気で」
「ゼータも、タバサ、イザベラと仲良くやってくれ」
タバサにつられ立ち去るゼータと、それを見送るアレックス。
それを呆れながら、見送るイザベラ。
「はぁ、全くもう、どうでもいいわよ」
(こいつはいつもこうだ………)
二人が退場した後、そこにはもうどうでも良くなったイザベラが居た。
その日、イザベラは召喚成功に人生最大の喜びを感じていた。
「できた!私にもサモン・サーヴァントが出来た」
その声は彼女に久しく忘れていた、物事をなしえた者が出せる喜びの声であった。
(やった、私にも使い魔が召喚出来たんだ、これで馬鹿にする人間もいなくなるだろう)
彼女はそう思い、早速自分の鏡を見つける。しかし……
「なんだい、これは!」
彼女の喜びはその声と共に、終わりを告げる。
「なんで、ゴーレムなのよ!」
それは一般的にゴーレムと呼べるものの縮小したサイズであった。
(なんでなんだい、それは私がゴーレム並の能力とでも言いたいのかい)
彼女にとって付き付けられて現実は、あまりにも過酷であった。使い魔召喚において、使い魔は自身の鏡と言われている。
それは、彼女がゴーレムと言われてもおかしくない事であった。
「ふざけんじゃないよ、こんな事じゃまたあいつ等に笑われちまう……」
(せっかく、強くてカッコイイ使い魔を呼んで見下しているあいつ等に、私の恐ろしさを見せつけてやろうと思ったのに………)
仕えていながら、内心では自身を見下している家臣やメイド達が更に馬鹿にするだろう。
そう思うと、目の前で倒れているゴーレムが恨めしく思い、行動に移る。
「いつまで寝ているんだい!ポンコツ!」
荒い言葉と共に、先のとがった部分で倒れている何者かに蹴りを入れる。
しかし、その思いに対しての返事は痛みであった。
「痛っ!な、なんて固いんだい!」
見れば分かるが、材質的に見て硬度が高そうな外見の通り彼女の足に苦痛を与えるだけであった。
(何て固さだよ!けど、それは腕のいいメイジの作ったゴーレムか何かかね……)
ゴーレムの材質はメイジによりまちまちである。
目の前のゴーレムはかなりの固さを誇り、見ようによっては腕のいいメイジのゴーレムと考える事も出来る。
「趣味は悪いけどね……」
44 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:02:09 ID:nSwzcG9u
「……う……こ……こは?」
彼女の蹴りに反応したのか、目の前のゴーレムが目を開けて声を出す。それを見て、イザベラが数歩引きさがる。
「しゃっ、しゃべった!」
ゴーレムとは基本的に作られた人形であり、言葉をしゃべる事はないとされる。
彼女の驚きをよそに、目の前のゴーレムは起き上がり、この部屋の唯一の人間であるイザベラと目が合う。
(うわ、こっち見やがった)
「何だい、お前は、何者何だい!?」
強気な言葉とは裏腹に、彼女の弱気が言葉にも伝わっていたが目の前のゴーレムはそれに気が付いていなかった。
「え……私は……武者……荒烈駆主……だと思う」
「なんで曖昧なんだい!アンタどこから来たの!?何者よ!」
出て来たのは名前のみであり、それも曖昧な為に、彼女を苛立たせた。
「どこから……分からない、私は何者なのだ!」
「私が聞きたいわよ……まぁ、いいわ、私はイザベラガリアの王女イザベラよ!」
自身の言えば多少なりとも目の前のゴーレムも理解するのでは無いか?
(とにかくこいつが何者であっても、契約しなくちゃ)
目の前のゴーレムの素性を明かすのは諦めて、目の前のゴーレムと召喚した目的を実行する。
「王女……君はこの国の姫様のなのかい?」
「そうよ、お前は使い魔になるために私に呼ばれたの!」
イザベラが何も分からない顔の荒烈駆主に指をさす。彼女にしてみればこの契約は不本意であった。
(けど、気に入らないからと言って、殺すのもなんだしね)
しかし、彼を殺して再契約をするのも酷だと思った。
だが、下手に出る訳にはいかず、その事をおくびに出さずに続ける。
「いい、使い魔の契約を拒否したらお前を殺すわよ!私は」
自分としては低音で睨みつける、しかし、その効果は余りなかった。
「いいよ」
彼女の脅し文句を遮り、荒烈駆主はあっさり応じる。
それを聞いたイザベラは、言葉を止め、きょとんとした顔になる。
「……へ?」
「いいよ、特に断る理由もないし」
記憶を失った彼には断る理由がなかった。
そして、何かをする理由も特にはなく彼女の申し出を受け入れる事にした。
(私は何者なのだろう?何をすればいいのか?)
王女なら自分を養ってくれるだろうと言う打算的な考えも無くは無かった。
理由は解らないが、用件を聞いて暴れ出さない荒烈駆主の態度に安心する。
「ふん、わかればいいんだよ!アレックス、今日からアンタは一生私の使い魔だからね!」
「うん、よろしくイザベラ」
それが、イザベラにとって一か月前の出来事であった。
「それから今に至るのよね……」
時間を今に戻し、イザベラは笑顔のアッレクスを見る。
「どうしたんだい、イザベラ?」
(この顔を見ると、怒る気もなくすよ……)
彼の顔はいつも笑っている。少なくともあまり怒った所は見た事が無かった。
「なんでもないよ、今日は疲れたから報告は明日聞くよ、おやすみ」
どうでも良くなり、彼女は家臣を下がらせて、自分の寝室へと戻っていった。
「おやすみ、イザベラ」
彼女が出て行った後、アレックスも隣の寝室に戻って行った。
45 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:03:00 ID:nSwzcG9u
昨日のやり取りでうやむやにしてしまったが、やはり報告は重要な事である。
アレックスの帰還より一夜明け、イザベラはアレックスの報告を聞く。
イザベラは上座に座り、アレックスを呼ぶ。
「アレックス、ラグドリアン湖の調査報告を聞かせてくれるかい?」
「ああ、結果だけを言うとラグドリアンの件は水の精霊が秘宝を盗まれたから起したそうだ」
アレックスは調査報告を語る。
ラグドリアン湖には水の精霊がおり、何かしら関わっているのでは?と考えていたので、それほど驚くには値しない。
「そうかい、で、何が盗まれたんだって?」
(あそこの精霊は気難しいからね、大方盗まれた腹いせかなんかだろう)
話を聞きながら、イザベラは何となくそう思った。
「水の精霊が言うには、アンドバリの指輪と言う物で死者をも生き返らせるものらしい」
アンドバリの指輪は水の精霊の秘宝であり、死者に命を与えたりすることができると言われている。
しかし、水の精霊から秘宝を盗むのは並大抵の事では無く、大抵は水の精霊の怒りに触れて、返り討ちにあうのが関の山である。
もし、そこから盗んだのだとしたら、かなりの腕のあるメイジと考えても良かった。
「ふん、厄介な物を盗んで言ったねぇ、で犯人は誰なんだい?」
「水の精霊が言うには、クロムウェルと言う名前だよ」
「レコン・キスタの奴と同じ名前じゃないか」
(厄介だねぇ……)
出てきた名前に、イザベラは顔をしかめる。
アルビオンは現在内乱状態であり、その状況を作り出したのがクロムウェルであった。
半信半疑であるが、全く無関係と言う訳では無いのだろう。
(返せと言っても、返す訳ないだろうし)
「それで、イザベラ湖の件だけど」
「ん、何だい?」
「水の精霊と約束して、私が取り返すから湖の水を増やさない事にして貰ったから」
アレックスの何気なく言った事に、イザベラは吹き出す。
「な!何勝手なこと言ってるんだい!
だいたい、どうやって水の精霊と契約したのさ、水の精霊ってのは、そう簡単に会えるもんじゃないんだよ!」
水の精霊は一つの意志でもあるが、その力は絶大である。
また、コンタクトを取ろうにも水のメイジが居なければならず、その性格は気難しいの一言であった。
イザベラはアレックスには事前に調査させておいて、後でタバサにこの問題を解決させようと考えていたのだ。
「ああ、その事なんだけど」
アレックスは数日前の出来事を語りだした。
46 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:03:37 ID:nSwzcG9u
ラグドリアン湖は森に囲まれた巨大な湖で、夏の避暑や貴族達の園遊の場としても知られている。
その、周りをアレックスは見回していた。
「ふぅ、どうしたものかな」
アレックスはその様子を見て、一人で呟く。アレックスの居る場所は本来湖から離れている場所であるが、今は数メイルも離れていなかった。
(これは酷いな)
数十メイル先にある、沈んだ民家を見つめる。それだけでは無く、水により壊された板や、カーテンの切れ端などが湖には無数に浮かんでいた。
「一体、何が原因何だ?」
ここ数日は、地震や集中的な豪雨もある訳でも無く。地形の変化や雨によるものとは考えにくかった。
避難した、村人の話では前から少しづつ増えていき、いつの間にか集落を呑み込むほどになっていたらしい。
賊を捕まえたり、魔物を退治するのとはわけが違う。
アレックスはしばし考えこんでいると、向こうから人の姿が見えてきた。
「……あの人に聞いてみよう」
周りの村人たちには聞いたので、彼は向こうから来る金髪の女性に聞いてみる事にした。
「すみません、少し話を聞きたいのですがよろしいですか?」
アレックスが聞くと、目の前の人物はその顔には驚きが混じっていた。
「……ニュー?」
「ん、どうかしましたか?」
その女性はモンモランシーであった。彼女は目の前に居るニュー達と似た種族が居る事に驚きであった。
(ニュー達とそっくりじゃない!)
「いえ、あなたに似たのを知っているから、私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ、水のメイジよ、貴方は?」
「貴族の方ですか、私はガリアの騎士で荒烈駆主と申します。私に似た者が居るのですか?」
記憶のない荒烈駆主も、自分に似た存在が居ることなど初めて知った。
「ええ、私の居る所には、あなたに似ているのが三人いるわよ」
(いろいろと有名だから)
彼らは、召喚されて以来、良くも悪くも高い知名度を持っている。
モンモランシーもギーシュとの繋がりもあり、彼らと何だかんだと会話を交えていた。
「私の様な存在は、この世界では珍しいと聞きましたが」
「珍しいわよ、アンタもアルガスと言う国から来たの?」
彼らが口にしていた異国の名前を、モンモランシーは聞く事にしてみる。
「いえ、解りません、私には記憶がないのです。ところで、ミス・モンモランシーはどういったご用件で?」
「ラグドリアン湖に用があるのよ、けど、昔はこの辺りには無かったはずよ、村も飲み込まれているみたいだし」
自身の記憶をたどる限り、この辺りは湖が見えることなど無かった。しかし、モンモランシーの視界には湖の青色が広がっていた。
「私もそのラグドリアン湖に調査に来たのでが……しかし、どうしたらいいのか解らず、貴女に話を聞こうと思っていたのです」
「まぁ、多分水の精霊が絡んでいるんだと思うわ」
自身が考えられる可能性をモンモランシーは上げる。
47 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:04:23 ID:nSwzcG9u
「水の精霊……何ですかそれは?」
「知らないの?このラグドリアン湖は水の精霊が居るの、多分原因に何かしら関わっているはずよ」
「そうですか、水の精霊に会うにはどうしたら良いのですか?」
(何とかして、水の精霊に合って話を聞かなくては)
アレックスは水の精霊に接触する方法をモンモランシーに問う。
「水の精霊は水のメイジじゃないと会えないわよ。私もこれから合うつもりだから、ついでに聞いてあげるわ」
「ミス・モンモランシーありがとうございます」
丁寧にアレックスが礼を述べる。
(何か、三人とは違うわね)
何とはなしに、モンモランシーは荒烈駆主を見てそんな事を考えた。
二人は会話を交えながら、湖のほとりに向かった。
湖のほとりに来ると、モンモランシーは自身の使い魔を取り出した。
彼女の使い魔はカラフルな色をした小さなカエルであった。
「ロビン、頼むわね」
指を軽くナイフで切り、自身の使い魔に血をつける。使い魔のロビンは一声鳴いた後、湖の中に飛び込む。
「それは?」
「こうする事で、水の精霊が契約した私の血を確認して合う事が出来るのよ、難しい性格だから、余り変な事はしないでね」
「わかりました」
モンモランシーの注意に素直に荒烈駆主が応じる。それと同時に、湖の中心が丘の用に盛り上がり始める。
光に反射されたそれは、巨大なスライムにも見えた。
やがて、そこには人型らしき姿をした者が、荒烈駆主達の2メイル程の所に現れた。
モンモランシーは一息ついた後、一歩前に出る。
「私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ、かつてここで、貴女と契約した者です。
私の使い魔に私の血を与えました。覚えておいででしたら私の前に姿をお見せ下さい」
(なるほど、凄い光景だな……)
ともすれば、神秘的な光景に荒烈駆主は息をのむ。
モンモランシーの言葉と共に、人型は姿を変えて、それは女性の姿になる。
それは、どこともつかぬ声で話し始めた。
「覚えている。単なる者よ。貴様の体を流れる体液を、貴様の使い魔を通して確認した」
水の精霊はどうやら、モンモランシーを覚えているようだった。
第一関門を抜け、モンモランシーはホっとする。
「今日はお願いがあってきました、水の精霊の涙、貴女の体の一部を分けて欲しいのです」
モンモランシーがここに来た目的は水の精霊の一部を分けてもらう為であった。
水の精霊の涙は素材としても貴重であり、ある目的の為に絶対に必要な物であった。
「断る、単なる物よ、我は今やらなくてはならない事がある」
しかし、水の精霊からは拒絶の言葉のみが紡がれる。
「何故ですか、事情をお聞かせ下さい」
「我は秘宝を取り返さなければならない、その為にこの湖を使い探しているのだ」
(湖の水が増えているのは、その為なのか)
アレックスは内心で呟く。水の精霊は自身が盗まれた秘宝を探していたのだ。
48 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:05:03 ID:nSwzcG9u
「もしよろしければ、そのお話をお聞かせ下さい」
話を聞いていたアレックスが事情を窺う。
「貴様は?……使いか?」
「私はガリアの騎士で荒烈駆主と申します」
(嘘、契約した人間以外の話を聞くなんて)
驚いた様子で、モンモランシーは荒烈駆主を見る。
「少し前の事、お前と似た物と、そこの物と同じ物が、我が秘宝であるアンドバリの指輪を盗んでいった」
感情のこもらない声で、水の精霊が語る。
(私と似た物?)
荒烈駆主は自身と似た者とはであった事がなかった。だから、モンモランシーからその事を聞いた時、彼は驚いたのだ。
「だから、我は探し続ける。秘宝を見つけるまで」
「でしたら、私に探させて下さい」
それを聞いて、間髪入れずに荒烈駆主が応じる。
「ちょっと、アレックス!何安請け合いしているのよ」
荒烈駆主の申し出に、モンモランシーが口を挟む。
「私が見つけてきます。自分と似た者が盗みを働くのが、私には許せないのです」
何となくではあるが、荒烈駆主は似た者のせいで、大勢の人間が苦しむのが我慢できなかった。
水の精霊はそれを聞いて、感情はこもらないが、どこか納得した様子でうなづく。
「そうか、貴様が行うと言うのなら水を元に戻してやっても良い」
「本当ですか、ありがとうございます。それと、お願いなのですが、もしよろしければ、貴女の一部を分けてくれませんか?」
モンモランシーの方に目配せし、荒烈駆主が水の精霊の涙を所望する。
「……よかろう、これが盗んでいった物の形だ、クロムウェルという、もう一つは解らん」
(人の方はともかく、確かにニュー達に似ているわね)
現れた二つの形を見て、モンモランシーが感想を漏らす。
二人の前に、新たに二つの形が作られる。その形は一つは人間の形をしており、中年の男の顔であった。
もう一つはアレックスの様な鎧をまとったゴーレムの様であり、顔は違うがどことなく荒烈駆主と似ていた。
ゼータ達が遭遇したバウである。
「では使いよ、期待しているぞ」
モンモランシーに自身の一部を分け与え、水の精霊は姿を消した。
しばらくした後、元の静かな湖へと戻っていった。
「水の精霊と約束するなんてね」
その様子を見ていたモンモランシーが、惚けた様子で呟いた。
傲慢とも言える水の精霊が、約束をして期待する等と言うとは………
「何か信じられないわね、これからどうするの、アレックス」
「とりあえず、帰って報告します。ミス・モンモランシー、ご協力ありがとうございます」
荒烈駆主はモンモランシーに一礼する。
「私こそありがとう、あなたが居たから貰えたわけだし、じゃあね、アレックス」
モンモランシーも嬉しそうに、来た道を引き返す。
荒烈駆主はそれを見届けた後、自身も帰還するべく、置いてきた馬の方向へ歩き出した。
49 :
ゼロの騎士団:2009/03/14(土) 23:07:03 ID:nSwzcG9u
そこで、荒烈駆主はラグドリアン湖での出来事をイザベラに語り終えた。
「そう言う訳だったのかい、しかし、水の精霊と約束するなんて大した使い魔だよ」
(コイツはやっぱりどこか不思議なところがあるね)
そう考えながら、荒烈駆主の報告を聞いた後、イザベラは感想を述べた。
「それで、イザベラ、クロムウェルを捕まえに行きたいんだ、どこに居るか分かるかい?」
荒烈駆主はクロムウェル捕獲に向けて、許可を願った。
「何を言ってるんだい、クロムウェルはレコン・キスタの首領だよ、
いくらアンタが強くでも軍隊に勝てる訳がないだろ!」
イザベラが荒烈駆主の申し出を強く却下する。
「それはこっちで何とかするよ、下手すれば国同士の問題になるんだから」
「そうか、すまない」
(たしかに、そうなるとまずいな………)
荒烈駆主は申し訳なさそうな顔をする。
「とにかく、御苦労だったね次の任務まで休んでなよ」
イザベラは荒烈駆主を労い、下がらせる事にした。
「どうしたもんかねぇ………」
原因をつかみ、解決方法を見つけてきたが、厄介事も持ってきた。
事が事だけに、イザベラは頭を悩ませた。
「31 私は誰なのだろう」
武者 荒烈駆主
記憶をなくしている。
HP 2500
「32 単なる物よ、何の用だ」
水の精霊
荒烈駆主と約束をする。
データ不明 (相手の攻撃を数ターン無効化する)
以上で投下終了です。
5話の前か次に番外を1話挟むと思います。
乙。
番外編はガンファイアーアレックスですか?
乙。
そう言えば機甲神編で水のゴーレムってのがいたな。
実際には水の機甲神アクアリウスだったけど。
乙。
そっか、ナイトガンダムシリーズと武者頑駄無シリーズが一緒に来るとこういうことあるんだな…w
>32
恐らく炎や雷に対しても抵抗力高いはずのアプトム相手に一片残さず消し飛ばす離れ業しない限り、それ普通に可能なんだよな…w
爪の先ほどの体組織が他の生命体に触れた段階で乗っ取り可能そうな感じだったし。
…消し飛ばせるの、ルイズのエクスプロージョン(数年越しの精神力貯蔵状態)くらいじゃね?w 分体隠しときゃそれすら…
関係ないが前スレ>840のエクスデルフ見て、こんなん浮かんだ。
『わたしは ネオエクスデルフ すべての亜人 すべてのメイジ すべての魔法を消し そしてわたしも消えよう 永遠に!!』
前スレ
>>861 デルフの作りにヒミツがあるか
もしくはディスペルが先住魔法限定だとか。
・・・ディスペルってまだ先住魔法相手にしか使ってなかったょね? ょね?
騎士団乙
セリフ以外の文章中に「アレックス」と「荒烈駆主」が混在しているのが気になった
特に使い分ける必要が無ければ統一したほうが良い予感
あと
>>43の7行目
『荒烈駆主が間には居る事でどこか抜ける物があった。』
の部分
『間に入る事で』
の間違いじゃないかな?
揚げ足取るような感じでスマソ
>>53 ヘキサゴンスペル消してるよ。
あとカリンママの呪文も消してるね。
荒烈駆主さすがにHP多いな、主人公だった事だけはあるw
乙でした!
>>53 4巻P243より
「思い出した。あいつら、随分懐かしい魔法で動いてやがんなあ……」
「はい?」
「水の精霊を見たとき、こうなんか背中のあたりがむずむずしたが……、いや相棒、忘れっぽくてごめん。でも安心しな。俺が思い出した」
「なにをだよ!」
「あいつらと俺は、根っこは同じ魔法で動いてんのさ。とにかくお前らの四大系統とは根本から違う、『先住』の魔法さ。ブリミルもあれにゃあ苦労したもんだ」
これによると、デルフが動いてるのとアンドバリの指輪で動いてるのとは同じようなことらしい。
そしてアンドバリの指輪の効果はディスペルで打ち消すことが出来て……。
さらに9巻P240より、
「俺にその“解除(ディスペル)”をかけろ!」
……自殺したいのか、デルフリンガー?
そのうちG-ARMSの面々とかガンドランダーの面々とか・・・忘れてくれ
すまん10巻だった。
>>57 エクスプロージョンが消滅対象をかなり正確に選択できるのと同じなんじゃねーの
そら6000年も生きてたらふらっと死にたくもなるんじゃね?
デルフって四六時中エロゲ主人公状態のサイトと一緒でエロイベントやらギップル悶絶モノのラヴイベントを鞘に突っ込まれた状態で見せ付けられ、しかし自分自身は何か用事が無い限り原則放置
……エクスデルフ見たいになってもおかしくないくらいのひどい境遇だなぁおい
インテリソードって睡眠とれるのかな。
とれなかったとしたら、6000年間ずっと意識を失うことなく、しかも基本的には自分の意思で動くことも出来ないわけだから……。
ある意味、地獄だな。
ちげーよ
ディスペルかけたら消えたのはアンドバリの指輪の「外向きに発生させた作用」であって
指輪そのものが内包する力じゃねえ
その理屈ならディスペルかけられたら魔法の術式そのものが永久に消失して
使えなくならないとおかしい
3×3 EYESの哭蛹みたいにな
>>63 魔法を使ってるメイジにディスペルかけた場合、現在進行形で使ってる魔法は消えるけど、メイジ自身が魔法を使えなくなるワケじゃない、ってことか?
武者から呼ばれた二人はどちらも大将軍経験者。
騎士の方は魔法・技・力、武者の方は心・技・体とかあったな。
スペリオルドラゴンと水晶鳳凰とかもでるのかな。
騎士団様、投下乙です!
武神の鎧装備って事は、風林火山編直後からの召喚?
基本的にお坊ちゃん育ちだから、全身からいい人オーラ漂わせてますな、
イザベラも怒るに怒れんわなこれは。
しかしいいのか荒烈駆主、四代目大将軍になった後、ガベ子という娘っ子と結ばれる筈なのに!
投下乙
>63
実に判りやすいな
なっとくできた
>>66 風林火山編って過去世界(天下統一編だっけ?)へ飛ばされる前だっけ?
>>65 スペリオルドラゴンはすでに真駆参が・・・
あれ?目の前が閃光に包まれて(ry
ゼロの騎士団一話しか読んでなかったんで、まとめ見てきたら六話でルイズがニューに、
アンタは私のご主人様なのよ! とか言ってて吹いた
そういえば作品の中にはウェールズが生きていて王になっているやつも有るけれど、そうなった場合、テファはどうなる、というかどう扱われるんだろう?
ウェールズはテファに親と同じ目に会わせるだろうか?
>>71 ウェールズにとっては従姉妹で、しかしエルフとのハーフで、虚無の担い手だしなぁ。
受け入れるか拒絶するか放置するかの三択になるとは思うが、作者の裁量次第としか。
どっかでテファのエルフ耳が先祖帰りという設定で
誰からも迫害されずに、ちゃんとお姫様として扱われているSSを見たな。
先祖返りっていってもエルフはエルフなんじゃないか?
フェイスチェンジの要領で耳だけ変化させるってSSもあった
耳なし芳一の要領で
テファ「長寿と繁栄を」
773 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/03/14(土) 12:15:51 ID:zbks+upo
「ゼロの剣虎兵」の続きが待ち望まれます
・・・・元ネタの作者の真似までしなくても良いと思う
御大が中断するのは珍しくないけどさ・・・
774 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/03/14(土) 12:21:05 ID:Yk+UtSB9
続き出るのいつになるのかねぇ
なんでろくに作品完結させもしない半人前作家を「御大」なんて大層な呼び方するんだろうなあ。
ちゃうちゃう、御大は田中芳樹のほうを指してるんだよ。
その真似をしないでくれ、ってことさね。
面白いもの書くからでしょ
完結するつまんないのより途中で止まっても面白いもの書く作家のが価値あるよ
作品の質が高いのに一部の過剰反応する奴に
やる気をそがれて筆を置かれたような作品もあるけどな・・・(遠い目)
>82
つまり、火浦功ですね、判ってます……13年待ちましたから(つД`)。
アルスラーンもまだ終わらねえ
つ灼熱の竜騎兵
つ創竜伝
つタイタニア
創竜伝はいらねw
創竜伝は笑いながら読む小説だな
もし続が召喚されたらルイズがどーなることやら
90 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 10:06:29 ID:axBcPSrh
>御大
繭に取り込まれたターン兄弟とギンガナムを召喚ですね
ゼロの剣虎兵なら、大長編を書いて完結させても賞賛されるだけだろ?
新城とルイズのコンビとか、新城と公爵とか見てみたいよな
アンアンは新城に、懇切丁寧に罵倒されて涙目どころじゃないだろうけど
>>91 アンアンだけじゃなくてルイズ含むトリステイン貴族の殆どが罵倒されそうだが
>>73 遅レスだが叔父がカーズとエシディシで従兄がワムウ、周りの貴族が全て
吸血鬼な環境で端から見たらとてもじゃないが幸せとは思えないぞ。
むしろ滅びてくれと思う。ハルケギニアの平和的に考えて
>>87 「クラン」や「自転地球儀」のように他人に放り投げた作品の扱いっつーか立場は・・・・・
そのせいで、「双色の瞳」の続きが止まったんだ!
あ〜っ 腹立つ!
完結しない作品は、ストーリーとしての評価は出来ないんだぜ。
文章の良し悪しは評価できなくもないが。
広げた風呂敷をたためない作家ってけっこういたりするよね。
バキの花山外伝の人とかw
双色の瞳止まってから一回HPで特集されて続き出そうなこと言ってたんだけどな…
アレからもう数年とかねーよw
花山外伝クソ漫画すぎて笑うしかないw
「俺たちの戦いはこれからだ!」とか「俺はまだ登りはじめたばかりだからな」的な
ENDは「完結」に分類していいものでしょうか
>>98
長谷川祐一は意地でも風呂敷たたむよね、きっちりと
どっかの作家は1ダースの後書き中で「大団円なんてつまらないと思いませんか?」と言ったがね
「パッピーエンドって主人公達だけにとってパッピ−な訳で他の奴からしたら全然パッピーじゃない」とか
自分が鬱作品ばかり書いてる事を言い訳した某漫画家は
ワシズ外伝は滅茶苦茶面白いぞ。
パピヨンエンド?
こんにちは、相も変わらず暇があれば超8兄弟のDVDを見ています。ティガとダイナは仕方ないとして、せっかくだから
ガイアにスプリームヴァージョンになってほしいと思ったのは私だけでしょうか。
先約が無ければ39話の投下開始したいのですが、よろしいでしょうか。
可能であれば、10分後の15:00より、お願いします。
今回の使用予定レス数は12です。
最近完結された某作品は、伏線がいくつか回収されぬまま大団円を迎えしてしまった。
あまりの自体にその作家のスレ住人は
これでまだ考察が続けられると喜んだ。
私もスプリームバージョンになってほしいなと少なからず思いながら支援
ええい、この流れは石川賢ファンとしては不愉快だ!
第39話
間幕、タバサの冒険
第二回、タバサと神の鳥 (そのU)
極悪ハンター宇宙人 ムザン星人
バリヤー怪獣 ガギ 登場!
「危ない!!」
ムザン星人の放ってきた破壊光線が、タバサの頭上スレスレを掠めていった。
外れた光線は、そのまま大人一抱え分ほどもある木立に命中し、それを爆砕した後炎に包んだ。
「あれが、あいつの武器……」
タバサはたった今目にした怪物の威力に、表面上は平静を保ったまま、内心では慄然としてつぶやいた。
奴の頭頂部の触覚から放たれる光線は、細いながらもすさまじい威力を持っている。当たれば、それこそ人間
の体などあっというまに灰にされてしまうだろう。
「グゲゲゲ……」
雇われたメイジ達を全滅させ、翼人達をも多数殺害したであろうその光線を武器に、ムザン星人は余裕の足取り
で迫ってくる。自分の強さに相当な自信があるか、こちらの実力を相当低く見積もっているのか、こちらのプライド
からすればまず前者と考えたいところだが、すでにこいつによって4人の熟練のメイジと多数の翼人が殺害されている。
タバサとキュルケはどちらも、自分が誰よりも優れたメイジだなどという自惚れとは無縁な自己評価をしていたが、
ほとんど無防備な様子で首だけを回して光線を撃ってくる相手には、いささか不愉快さを禁じえなかった。
「き、貴族様。なんなんですかあの化け物は!?」
蚊帳の外に置かれていたサムがヨシアを押さえつけた姿勢のまま、悲鳴のように叫んだ。
「あいつがメイジ殺しの真犯人よ。邪魔だからあんた達は下がってなさい!!」
戦闘に巻き込んでは、身を守る術を持たない平民はひとたまりもない。キュルケに怒鳴られて、サムはヨシアを
抱えて走っていった。
けれど、もう一方の被害者達である翼人達は、人間達以上に卑劣な侵入者を追い出そうと攻撃を始めた。
「木の葉は刃となりて、我らに仇なす敵を打つ」
「敵を打つ」
先ほどタバサ達に向けた先住魔法が今度は星人に向かって放たれる。
舞い上がった無数の木の葉がカミソリのように鋭くなって星人へと襲い掛かったが、星人は当たる前に人間を
大きく超えた跳躍力を発揮して、軽々とライカ欅の高い枝の上へと跳びあがって避けてしまった。
けれど、先住魔法にとっては自然全てが武器に等しい。避けた先の木の枝が触手のように変形し、星人の足を
絡めとって動きを封じた。
「ゲッ? ゲッゲゲゲ……」
だが、動きを止められたというのに星人は余裕のままで、あざ笑うような声を発し、光線を今度は翼人の一人に
向けて放ってきた。もちろん、向けられた翼人は風の防御の壁を張り巡らせようとしたが。
「空気は蠢きて……」
彼はその詠唱を完成させることはできなかった。確かに風の防壁は彼の周りに張り巡らされたが、光線は空気の
防壁を無視するように貫通し、彼を一瞬にして炎に包んでしまったのだ。
「なっ!?」
「ロメル!!」
あっというまに灰に変えられてしまった仲間を見て、仲間の翼人達が愕然とうめきを漏らした。
もちろん、タバサとキュルケも先住魔法の使い手を簡単に始末してしまった星人の力に戦慄を禁じえない。
風の防壁は吹雪や炎は逸らすことはできても、光までは動かすことはできなかったのだ。
『ジャベリン!!』
今なら当たるかもと、タバサは星人へ向かって氷の槍を放った。だが、術をかけていた翼人が死んだために
星人の拘束も解け、奴はまた跳躍してそれをも避けてしまった。
「グフフフ……」
着地した星人は、燃え尽きた翼人の死体に歩み寄ると、燃え残っていた、いや、恐らく故意に燃え残るように
加減したのだろう、彼の翼の右片方だけをつまみ上げると満足そうに笑った。
「なんてことを……」
死者を平然と辱めるような行為に、アイーシャは戦慄した。今まで森に攻め込んできた人間達の悪意を大勢
目にしてきたが、この怪物は殺戮そのものを楽しんでいる。
また、タバサとキュルケも今の行為でこの怪物が殺戮を繰り返してきた理由を悟った。
「……あいつは、狩りを楽しんでいる」
いわば、人間が猛獣の牙や剥製を求めて奥地に入っていくようなものだ。翼人からは翼、メイジからは杖を
戦利品として奪い取る。あの光線はライオンが銃の前には無力なように、人間や翼人には防ぎようのない
恐るべき武器だ。
「けど、いくら強い武器があるからって、それだけで勝てるとは思わないでね!!」
そう言うと、二人は分かれて星人の左右から挟み込もうとした。あの光線は確かに脅威だが、一方向にしか
向けられないのでは二人同時の攻撃には耐えられまいと考えたからだ。
さらに、残った二人の翼人も仲間の仇とばかりに呪文を唱える。
「木の根は契約に従いて、我らに仇なす者を貫く槍となる」
いまや、四方から強力な術者に囲まれて、星人の逃れる術はないように思われた。
「グフフフ……」
だが、星人は平然と戦利品の翼を担ぎながら、聞き苦しく喉を鳴らして立ち尽くすだけ。逃げ場もなく、
今にも一斉攻撃が迫っているというのに身じろぎもしない。仮に跳躍して逃れようとしたところで、
空中では狙い撃ちに会うだけだ。歴戦の狩人がそれもわからないとは、いくらなんでもおかしい。
これは罠か!? そうタバサとキュルケが思った瞬間、頭上からシルフィードの声が響いた。
「お姉さま!! 危なーい!!」
その声に、思わず上を見上げたタバサとキュルケは、そこにあったものを見ると反射的に後ろに飛びのいた。
次の瞬間、彼女達のいた場所を"頭上から"の殺人光線が襲って、地面をえぐって爆発を起こした。
だが、攻撃のために地中に意識を集中していた翼人はその攻撃に対処しきれずに炎に包まれてしまった。
「シャベラスタ!! イローゼ!!」
アイーシャの悲鳴が響き渡ったときには、すでに二人は消し炭にされていた。
「あれは、円盤!?」
かろうじて攻撃をかわしたキュルケは、森の木々の上を遊弋する直径10メイルほどの白色の円盤を見つけた。
そいつは羽もないくせに空中を軽々と浮遊し、星人のものと同じ光線を下にいる者達に向けて連射してくる。
「あれが……奴の切り札」
撃ち下ろされてくる光線をなんとかかわしながら、タバサは奴が包囲されてもなお平然としていた理由を
悟った。あんなものに頭上を守らせていたなら、自信を持たないほうがおかしい。
「タバサ、まずいわよこれは!!」
キュルケも光線を避けるので精一杯で、反撃する余地がない。どんなに鍛え上げた人間でも、頭上は最大の
死角なのだ。もちろん、下から狙い撃ちにあう『フライ』での空中戦など論外だ。
「撤退」
「りょーかい。あんたたち、いったん引くわよ!!」
状況の圧倒的不利を見て、タバサは迷わず逃げを選択した。攻めることしか知らない凡庸な戦士だったら、
ここで無理に攻めて全滅していただろう。二人は木陰を利用して、即座に星人と円盤の攻撃から見えない場所
へと逃れていく。
戦いを見守っていたサムとヨシアも、頼みの貴族が逃げ出したのを見ると、自分達も尻に帆かけて走り出した。
見え見えな逃げっぷりだが、星人はメイジでもない人間には興味もないのか、二人の姿に見向きもしない。
しかし、翼人であるアイーシャは話が違った。
「グフフフ」
「ひっ!?」
逃げ遅れていたアイーシャの耳に、星人の邪悪な笑い声が響く。飛んで逃げようとしたが、円盤からの光線が
彼女の逃げようとしていた方向で炸裂して逃げ道を塞いでしまう。
「あ、ああ……」
恐怖に怯えるアイーシャに向かって、星人はネズミをいたぶる猫のように愉快そうに肩を揺さぶりながら迫ってくる。
そして、星人の触覚からついに殺人光線が放たれようとしたとき。
「アイーシャーッ!!」
ヨシアの絶叫と、タバサの口笛が同時に森に響き渡った。
「きゅいーっ!!」
その瞬間、天空から青い弾丸のようにシルフィードが急降下してきて、すんでのところでアイーシャの衣を咥えて
掠め取っていった。
「ガッ!?」
いきなり獲物をかっさらわれた星人は驚きとまどったが、すぐさま振り返って木々の隙間を飛翔するシルフィードに
向けて光線を連射する。が、ハルケギニア最速の風竜には簡単には当たらない。
シルフィードは飛行しながら器用に首を回してアイーシャを背中に乗せると、その後サムとヨシアを拾い上げ、
タバサとキュルケも乗せて全速で逃げに入った。
「追ってくる!!」
当然星人も獲物を逃してはなるまいと、円盤をけしかけて追撃させてきた。頭上から降り注ぐ光の矢をかわしつつ、
シルフィードは森の深いほうへと全力で飛ぶ。
やがて、木々がさらに深く密生し、上空から森の中が完全に見えなくなったころ、ようやく円盤の追跡はやんだ。
「行ったようね……」
円盤の気配が完全になくなり、ようやくシルフィードは地上に下りて一行を降ろした。
生命の危機から解放されてようやくほっと息をつき、地面に足を着いたなかで、アイーシャは救われたことに
お礼を言った。
「あの、ありがとうございます。命を助けていただいて」
そこには何の他意もなく、ただ純粋な感謝の念だけがこもっていた。
タバサは何も顔色を変えなかったが、キュルケはにこやかに微笑み、ヨシアは今にも泣き出しそうなほど
感激に顔を歪ませている。
けれど、サムだけはそんな態度が気に入らなかったのか「ふざけるな!!」と怒鳴ろうと一歩前に出ようとした
ところで、キュルケに肩を掴まれた。
「よしなさいよ、無粋な真似は」
「け、けれどもよ。騎士様達は、翼人どもを征伐しに来たんじゃないんですかい?」
「現場の判断は臨機応変にするものなのよ。第一、そういうことにこだわるんなら、貴族に向かって命令がましく
要求する生意気な平民を、この場で火あぶりにしてもかまわないのかしら?」
サムの顔から血の気が引いた。貴族を怒らせるということが、どれほど恐ろしいことか思い出したからだ。
しかし、サムが大人しく引っ込むと、キュルケはまたいつも通りの人懐っこい仕草に戻って、ヨシアの背中を
アイーシャに向かってとんと押した。
「ほら、ぼんやりしてないで、うれしいなら二人で思いっきり喜びなさい」
線の細いヨシアの体は簡単に押されて、アイーシャの胸のなかに思いっきり飛び込んだ。
「わっ!」
「きゃっ!」
急に抱き合う形となってしまった二人は、普通の男女がそうするように、顔を真赤に沸騰させてあたふたと震えた。
そんなうぶな様子がたまらなくおかしく、キュルケは腹を抱えて笑う。
「あっはっはっ、可愛いわね本当に……そりゃ、こんな彼女がいれば身を挺してでも戦いを止めたくなるか。
ほんと、いい根性してるわねあんた」
「そんな、ぼくはただ無益な戦いは止めたくて」
「はいはい、照れなくてもいいわよ。それにあなたも、こんないい男そうはいないわよ。やるじゃない」
ヨシアとアイーシャ両方を見てキュルケは実に楽しそうに笑っていた。他人の恋人を分捕るのが生きがいの
彼女だが、それはあくまで上っ面だけの遊びの領域であり、本気で愛し合う者同士に入っていくのは無粋で
しかないことを知っている。それに、人間と翼人の種族を超えた恋、これほど面白くて後押ししたくなるものはない。
「ね、ね、あなた達いったいどうやって知り合ったの?」
「あ、はい……ぼくがキノコ狩りに行って足を怪我して動けなかったとき、彼女が魔法で怪我を治してくれたんです。
先住っていうんだろ、初めて見たときは驚きました」
「先住、なんて呼ぶのはあなたたち人間ね。わたしたちは精霊の力と呼んでるわ。どこにでも、精霊の力は
宿っている。それをちょっと借りているだけ」
「そうだ、そうだね。こんなふうにアイーシャはぼくの知らないことを色々教えてくれるんです。そうして、こっそり
森で会って話をするうちに、もっとお互いのことを理解しようと考えるようになった」
「そうね。そうしているうちに……」
二人は、本当にいとおしそうに互いのことを語り合った。
それを聞きながら、タバサは相変わらず無表情だったが、キュルケはまるで大作の歌劇を見終わった後の
ようにうっとりと頬を染めて感じ入っていた。
「すてき!! なんて熱い恋なんでしょう。あなたたち、そこまで来たらもう絶対にひ孫ができるとこぐらいまで
行ってから死になさい。ここまで来ておきながら、愛し合う二人が引き裂かれて終わりなんて陳腐なエンディングは
絶対許さないわよ!!」
まるで自分のことのように、目に炎を燃やしながらキュルケは二人の肩を抱いて言った。どうやら本当に
『微熱』にとって種族の差などは些細なことらしい。
ヨシアとアイーシャは、はじめて自分達の恋の後押しをしてくれた風変わりな貴族に感謝の念を抱きながら、
かたわらでじっと見つめていたタバサにもあらためて礼を言った。
「あの、騎士様、先ほどはアイーシャを助けていただいて、本当にありがとうございました」
「ありがとうございます。あなたは命の恩人です」
「……あなたには、言いたいことがあった。それだけ」
感情の抑揚が感じられない声でタバサはアイーシャに言った。
「もう分かってると思うけど、わたしはこの森の所有権を翼人から奪取するために派遣されてきた。本来なら、
貴方達を討伐するのが、わたしの使命」
「き、騎士様!?」
突然、なんでそんなことを言い出すのかとヨシアは焦ったが、タバサは息を呑むアイーシャに向かって続けた。
「だから、わたしは正面からの激突になる前に、貴女方のこの森からの退去を願いたい。無用な争いを避けたいのは
わたしも同じ」
それは、任務の成否に自身の存在そのものが懸かっているタバサの最大限の譲歩だっただろう。
けれども、アイーシャは悲しげに言った。
「それは、できません。この森は我々のはるかな祖先よりお守りしてきた土地です。これだけは、我々も譲る
わけにはいかないのです」
タバサは答えなかった。翼人がこの森を離れないというのなら、それは自身を含めて村との全面戦争になるという
ことを意味する。そうなれば、ほんの数人でも熟練のメイジの小隊に匹敵する翼人何百人と戦わねばならない。
その戦いで、生き残るかどうかはこの際問題ではないが、どちらにせよ甚大な犠牲が出るだろう。
それを見かねたヨシアが思い切ってタバサに申し出てきた。
「お願いです!! どうか戦いにするのだけは待ってください。本当なら、この森の木はちょっと高く売れそうだからって
目をつけただけで、ここがなければ村の生活ができないなんてことはない、みんな意地になってるだけなんです」
「おいヨシア!! おめえ村のみんなが貧しいままでもいいっていうのか!! それでも村長の息子か!!」
村長の息子であるサムが、その弟であるヨシアを怒鳴りつける。しかし今度はヨシアも引かなかった。
「貧しいのはぼくだって嫌さ、けれどそのために盗賊の真似事なんてできない。ほんのちょっとの贅沢のために、
こうして国中の森がまるはだかになるまで続ける気かい!!」
「なんだと!!」
激昂して手を上げようとするサムを、キュルケが魔法で身動きを封じる。
「やめなさいってば、口で負けて手を上げるのは自分が悪いって認めるようなもんよ。けどね、ヨシア君、わたし達もね。
遊びで来てるわけじゃないから、それだけでは済ませられないの。翼人と争わなくてよくなったから依頼は取り消すって、
そう村の創意で決めてもらわなくちゃ動けないのよ」
「それじゃ、ぼくが村の人達を説得します」
「できるの? それに、それができたのなら、なんで今までやらなかったの」
今度はキュルケも厳しい目つきになって聞いた。生半可な返事は許さない、そういう目に向かってヨシアは
きっぱりと言い放った。
「今までのぼくは、勇気が足りませんでした。アイーシャとの絆が壊れるのが怖くて、傷つくのが怖くて、村から
仲間はずれにされるのが怖くて……けれど、もう迷いません!! 本当に何もかも失う前に、死ぬ気でみんなと
話し合ってみます!!」
追い詰められた若者が、ついに一枚殻を破って大人になる瞬間を、確かにキュルケは見届けた。
「よろしい、その意気は買うわ。けど、村の人の意識を変えるにはもう一押しいるわね……タバサ、どうする?」
「策はなくもない……けれど、あの怪物がここにいる限り、どのみち村にも翼人にも平和は来ない」
「そうねえ、いったん村に戻ろうにも、あの怪物が待ち伏せしてるかもしれないし。いったい何者なのかしら?」
そう言いながらも、あの怪物の正体はおぼろげに見えてきていた。亜人とは違う、けれども高い知能を持ち、
なおかつ魔法とは違う強力な力を操る。
「宇宙人……」
才人が言っていた、ヤプールが配下として操るという者達、ミラクル星人のようにヤプールとは関係なく
現れるものもいるから断言はできないが、奴もそうやってハルケギニアの外からやって来た者なら、あの
強力な光線や円盤も説明はつく。
まったく、やっかいな仕事を押し付けられたものだ。村人と翼人を和解させる以前に、あいつをなんとか
しないことには戻ることすらできない。けれど、今度出くわしたとしたら逃がしてはくれないだろう。さて、
どうしたものだろうか……
だが、そうしてキュルケとタバサが思案にくれていると、アイーシャがよく通る声で二人に言った。
「あの、よろしければこれからわたし達の里にいらっしゃいませんか?」
「え? あなた達の……翼人の住処、とっ失礼、村にですの?」
「はい、今から戻ればどのみち暗くなってしまうでしょう。闇の中では、不意打ちされたら逃れられません。
それに、翼人と人間との和解を望んでくれてる貴女方でしたら、招待しても構わないと。いえ、是非いらして
いただきたいのです!」
アイーシャの要望に、タバサとキュルケは顔を見合わせて考え込んだ。そろそろ日が落ち始めるころだし、
奴がどれだけ夜目が利くのかはわからないけれど、闇の中での戦いになったらこちらが明らかに不利だろう。
かといって、いつ襲ってくるかわからない中で野宿など絶対したくない。食糧も持って来ていないし。
「確かに……翼人が集まってるところなら、奴もうかつには襲ってこないでしょうね」
「わかった……案内して」
結論を出したタバサは簡潔に答えた。キュルケも仕方ないわねとうなづき、ヨシアは当然賛成、サムは
躊躇したが、男なら腹を決めろとキュルケに言われて仕方なくうなづいた。
「ま、大人しくしていることね。さて、翼人達の村か、面白くなってきたじゃない」
そうと決まればよい方向に最大限の期待を向けるのがキュルケのいいところだ。
また、同じ精霊の力、大いなる意思を信じる者同士ということで、シルフィードも期待の声をあげる。
「きゅい、シルフィも遠い親戚と会うみたいで楽しみなのね。お母様から、翼人の人達は大いなる意思を
大切にする立派な人達だって、聞いてたのね」
「へー、そうなの? 人間と亜人達じゃあ信仰が違うって聞いてたけど、別に邪教って感じはしないわよねえ、
まあブリミル教にも賄賂をとったりする神官は大勢いるし、人それぞれってことなのかしら……ん?」
「きゅい、どうかしたのね? ……あ」
「……」
キュルケは、そこで何か大変なことを見過ごしていないかと思った。
まず、気を落ち着けて考えてみる。えーと、自分が話していた相手は誰だっけか?
首を回して一人ずつ確認してみる。タバサ、違う。ヨシア、違う。サムでもない。アイーシャも首を振る。
残ったのは……
目の前の竜と、赤い瞳が見詰め合う。なぜか汗をかいているように見えるが、気のせいだろうか。
ああ、そういえば……さっき円盤が奇襲をかけてきたとき、タバサに危ないと叫んだのは誰だったのだろうか。
もしかして……
「まさか、シルフィードがしゃべるわけないわよねえ……ね?」
「そうなのね、竜がしゃべるなんてことあるわけないのね……」
気まずい沈黙が場を包む。
「ばか……」
がっくりと肩を落としたタバサがそうつぶやいたときだった。
「シッ、シルフィードが……」
「竜が、ドラゴンが……」
ああ、まったく弱り目に祟り目だ。タバサは自分の今日の運勢はどう占おうと大凶に違いないと確信した。
「し、し、しゃべったあーーーっ!!!???」
タバサ以外の人間三人は仰天してひっくり返った。サムとヨシアは兄弟仲良く腰を抜かして、キュルケも
一瞬思考停止に陥ったが、生物学の授業で一応のハルケギニアの幻獣についての知識を持っていた彼女は、
その中から今では絶滅したと言われている、ある種族の名前を思い出した。
「タバサ……まさかシルフィードって……韻竜なの?」
その質問に、タバサは深くため息をついた後、そのとおりだと首を縦に振った。
けれど、平民である兄弟はそんなことは知らない。恐る恐る「韻竜とは何ですか?」とキュルケに尋ねた。
「伝説の古代竜よ。知能が高く、言語感覚に優れ、先住魔法を操る……見るのは初めてだけどね。まさか、
あんたがそんなすごい奴だったとはね」
「きゅい、それほどでもないのね。しゃべれるくらいたいしたことないの、シルフィの父さま母さまなんか、
それはもう大きくて立派で、魔法の力もものすっごくて……」
と、そこまで言ったところでシルフィードはタバサが鬼のような目で睨んでいるのにようやく気づいた。
理由は明白、人前でしゃべらないという禁を破ってしまったため、他に考えられない。
「シルフィード? わたしの言いたいこと、分かる?」
口調は穏やかで、顔つきもいつもどおりの無表情、しかし目だけはビームでも出てきそうなくらい怖い。
「う〜……ご、ごめんなさいなのね。けど、あの場合しょうがなかったのね」
まあ、星人の円盤の存在を教えてくれたときには、手段を選んでられなかったのだから仕方ないと言える。
「それはいい、けど今のは?」
「ご、ごめんなのね……だ、だからご飯抜きだけは勘弁してなのね」
この調子だと、トカゲの干物にされるくらいまで飲まず喰わずもありうると、シルフィードは本気で恐れた。
だが、タバサは何も言わずにサムとヨシアのほうに向き直ると一言。
「他言無用」
とだけ言い放った。
「へ……そりゃまた、なん」
『ジャベリン』の巨大な氷の槍が、二人の目の前に突き刺さったのはサムが質問を言い終わる前だった。
「なんででも。命が惜しいのなら」
「はっ、はいぃ!!」
理由は分からないが、この騎士様は自分の使い魔のことを人に知られたくないらしい。普通なら、すごい
使い魔を持っているなら自慢したくなるんじゃないかと思うが、とにかくまだ死にたくはない。二人は、この
幼く見える青髪の少女が、このときだけ死神に見えた。
けれど、自分の一番の親友がわくわくしながらこちらを見ているのは、果たしてどうしたものかなと、任務
以前に頭が痛くなってくるのを抑えられないタバサであった。
翼人の集落は、そこからシルフィードで10分ほど森の中を飛んだ、古代の原生林のような巨木の集まり、
しかも巨木といっても高層ビル並みの太さ、およそ直径30メイル、高さ70メイルはある超巨木の森の中に
作られていた。
「こりゃ……集落というより、もはや城ね」
それは、巨木を支柱として、伸びた枝を20メイルごとに階層に区切り、さらにそれらを人工的にからみあわせて
空中に作り上げた足場の上に、貴族の邸宅にも匹敵しそうな立派な邸宅がならぶと、地球でこれを例えるの
ならばマチュ・ピチュの空中都市が山ではなく、巨大木を基盤にしてできているとでも思えばよいか。
森の中にあるから、てっきり鳥の巣を拡大したような原始的なものを想像していた一行は、その雄大ぶりに
彼らの文化と技術レベルの高さを思い知った。
「わたしの巣、あなた方の言い方で言えば家は、あの一番上にあります」
アイーシャの案内でシルフィードの背に揺られながら、集落で暮らす何百人もの翼人の姿を見下ろしていると、
翼人と戦って追い払うなどという考えがいかに愚かだったかとつくづく思う。かたくなにエギンハイム村の利益を
主張していたサムも、もはや完全に戦意を失っていた。
やがて、それらの集落の中でもっとも高いところにあるアイーシャの巣、もとい家に案内された一行は、
族長の娘だというアイーシャの紹介で、翼人の長に面会は許されなかったが1日の滞在の許可をもらい、
彼女の家の広間に通されて、森の草を加工して作ったと見えるソファーにそれぞれ腰を下ろした。
「どうぞ、自分の巣……家だと思ってくつろいでください」
まったく、人間の屋敷と遜色がないどころか、無駄な装飾がないぶん、家具や家の元となった草木の色が
美しく際立っていて、芸術的にすら見える。地球風に言うのならば、とてつもなく豪華なログハウスに名工が
木を削りだして作った家具を入れたものとでもいおうか。住み心地のよさでいうならトリステインの王宮すら
遠く及ばないだろう。
それに、アイーシャの入れてくれた薬草茶がこれまた美味い。
「どう兄さん、これでもまだ翼人を鳥だって言う?」
「嫌味を言うな、完全に俺の負けだ」
疲れ果てた様子のサムと、ちょっと勝ち誇ったヨシアの兄弟が仲良く茶をすすっている。
タバサも、もし翼人と全面衝突することになっていたらどうなっていたかと、内心ではほっとしていた。彼らは
森の中で独自の文明を作り上げていた。これを見れば人間が万物の霊長などという考えが、いかに思いあがった
ものであるかということが身に染みてわかる。力に訴えていたら、この任務の成功率はゼロだっただろう。
「けど、よく人間のあたし達を招きいれてくれたわね」
さしものキュルケも姿勢を正してアイーシャに尋ねた。
「はい、実際これまでここに人間が足を踏み入れたことはありませんでした。けれど、あなた方は私の命の恩人
ですから……それに、あちらの韻竜さんの口ぞえが大きかったんです」
そうして窓から頭だけ覗かせてくるシルフィードを示して、彼女はにこりと笑った。
「風韻竜は、私達の間では大いなる意思と強く心を通わせられる存在として尊敬されてるんです。使い魔として
現れられたのには、少々驚きましたが、それでも韻竜としての本質までは変わりませんから、そのご友人の
方々なら問題ないと」
「きゅい、それほどでもないのね」
これまで尊敬の念で見られた経験などなかったシルフィードは首を揺らして喜びを表現した。
なお、その巨体は当然首以外は部屋に入りきれず外に出しっぱなしのために、話を聞きつけてやってきた翼人達が
大勢見物に来ていた。
「それにしても、よくこんな城塞都市を森の中に築き上げられたわねえ」
普段何かとゲルマニア出身であることをひけらかすキュルケも、感嘆した様子で言い、アイーシャは笑いながら
この翼人の里の歴史を語り始めた。
「私達の祖先ははるかな昔、ここにまだ森が無かった頃にこの地にやってきて、それからここを安住の地に選んで
森を育んできたと伝えられています」
「へー、それじゃ昔はここは森じゃなかったわけ?」
どう見ても樹齢数千年は超えている木々の群れの中にいると、ここが森でなかった頃のことなど想像もしにくいが、
ある日突然森ができるわけもない。けれど、察するにそれは昔といっても何千年も前のことのようだ。
「はい、言い伝えでは最初ここは何もない荒野でしたが、私達の先祖は何世代にも渡って木を植えて、ここを豊かな
森に変えていったそうです。そうしているうちに、やがて木の上に巣を作るようになり、そこで子を産み、子孫を
残していくうちに少しずつ巣も大きくなり、今の私達の里のなっていきました。だから、この森は私達にとって
かけがえのない故郷なんです」
故郷……そう聞いて、タバサはガリアの母の眠る屋敷を、キュルケはゲルマニアのフォン・ツェルプストーの
領地を思い出した。
「けど、何もない荒野をわざわざ森にしていくなんて、あなた達のご先祖は随分と気の長いことを選んだものね。
そんなことしなくても、ほかに森を探せばいいものでしょうに」
アイーシャの顔が少し曇った。
「それは……できなかったんです」
「え?」
彼女は少し考えると、この人達になら話してもいいだろうと、翼人の伝説の根幹の部分を話し始めた。
120 :
サーカスの使い魔:2009/03/15(日) 15:18:13 ID:Mk9byNTC
はじめまして、ARDERと申します。
今回、勇気を出して書いてみたSSを出してみようと思ったので上げてみます。
駄文ですが、暇なら読んでみてください
超8兄弟はマン〜A無しでアグル加えた方が良かった、タロウもいないし
と言いつつ支援
122 :
サーカスの使い魔 序章 (1):2009/03/15(日) 15:19:52 ID:Mk9byNTC
「先生!もう一度召還させてください!」
靄がかかったままの頭にそんな言葉が響いた。声が聞こえた方をみるとピンクかかったブロンドの髪をなびかせた女の子がいた。
序幕『開幕のベル』
(あれ?僕は確か宇宙ステーションでフェイスレス……白金と別れてスペースシャトルに乗った筈なのに。)
空に雲は一つも無く、辺りを見渡すと青々とした草原が広がる。そのうえ遠くにはモン・サン=ミッシェルで見たような石造りの城まで見える。まるで……そう中世のヨーロッパのような・・・
周りには目の前の女の子と同じ制服を着た高校生くらいの人たちがニヤニヤしながら自分達を中心に囲んでいる。
「それは駄目だよ。ミス・ヴァリエール」
「なんでですか!」
「この春の使い魔召喚は君たちの属性を固定し、それにより専門課程へと進む事になる。それにこれは神聖な儀式なんだ。好む
好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」
「でも、平民を……こんな小さな子供を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
周りから笑い声がもれる。だが勝の耳には入ってこなかった。
(召喚?使い魔?つまり僕は目の前の女の子に呼び出されたからここにいるってこと?)
ありえない。この科学万能の時代に召喚だの使い魔だのそんなファンタジーのようなもの・・・しかしそれなら今の事態を説明できる。
「確かに前例の無いことです。この子はただの平民ですし・・・」
「ならっ!」
「しかしこれは伝統なのです。前例がなくとも春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールより優先される。なので彼には君の使い魔になってもらわないといけない」
「・・・待ってください。使い魔とは主の盾となり刃となって主を守るもの。そんな危険な事をこの子にさせるんですか!?」
「・・・」
「彼は平民ですし何の力も…そう己の身を守る術さえ無い。」そんな子供を使い魔になんて出来るわけがっ」
一瞬場の空気が凍る。その後笑い声が響いた。
「馬鹿じゃないのか?平民の命なんか気にしてどうすんだよルイズ!」
「そうだぜ、それにどっちにしろもう召喚できないだろ!お似合いじゃねぇか、ゼロどうしさぁ!」
笑い声はさらに大きくなる。そんななか目の前の女の子…ルイズは悔しそうに拳を握り絞めている。
「静かにっ!・・・この際外野は構いません。時間もありませんから無視をしますよ」
「・・・はい」
「仮に彼以外の使い魔を召喚するとします。しかしきみはその前提を忘れています」
「前提?」
「そう、次の使い魔を召喚するという状況。これはすなわちどのような状況ですか?」
「それは前の使い魔が死んで・・・まさかっ」
「その通り。次の使い魔を召喚するには今の使い魔が死んでいなければなりません」
「ッッ!」
「あなたの意見には賛成です。わたしもこの子にそんな運命を背負わせたくはない。しかし彼を使い魔にしないためには彼を殺さなければならない貴女にそれが…人を殺すことが出来ますか?しかも子供を。それに彼が生き残るには使い魔になるしか選択肢はありません」
「………」
「それに先ほども言いましたがこの儀式は神聖なものです。使い魔と契約出来なければ君は留年になってしまうんですよ?今まで何回も挑戦してやっと召喚出来たんです。次が成功する確率も低い。これが最善の方法なんです」
頭の中でもう一度情報を整理する。
やはり信じがたいが今僕は異世界に使い魔として呼び出されたらしい。それを彼女…ミス・ヴァリエールは僕のことも考えた上で使い魔にするのを嫌がっている。
しかし僕以外に使い魔を召還するには僕を殺すしかない。そのうえ今まで成功はなかったらしい。つまり僕を殺して再召喚しても召喚出来なくて彼女は留年する可能性が高いってこと。
ならば僕がとる選択肢は一つしかない
「………でも、やっぱり私には!」
「すみません、ちょっといいですか?」
123 :
サーカスの使い魔 序章 (2):2009/03/15(日) 15:20:47 ID:Mk9byNTC
呼びかけられ驚いたようにこちらを見る二人。それに気付かぬ振りをして話を進める。
「話は聞かせていただきました。僕はここに使い魔として召還されてしまい彼女…ミス・ヴァリエールと契約しなければ死ぬしかない。そういうことですよね?」
“死ぬ”という単語にビクッとするルイズ。
それを確認したのか眩しい男性はこちらを見据えた。
「その通りですしかも…」
「仮に僕を殺しても次の召還で使い魔を召還出来なければミス・ヴァリエールは退学しなければならない」
眩しい男性は顔を顰めながらこちらを見つめる。どうも僕ぐらいの子供から“死ぬ”“殺す”といった単語がポンポン出るのが気に食わない
らしい
「えぇ、まったくその通りです」
「なら話は簡単です。
えっと…ミス・ヴァリエールでいいんですよね?」
「…ふぇ!?なっ何よ?」
いきなりの呼びかけにびっくりするルイズさん。
「僕と契約してください。この方・・・コルベールさんの言うとおりそれが今、この場を終らせる最良の方法です」
ミス・ヴァリエールは表情を歪めた
「貴方、わかってるの?使い魔として契約するということは見ず知らずの私と一生一緒にいて私の為に傷付かなければならないのよ?」
「………もし、そうだとしても僕には帰る場所があるし約束もある。だからここで死ぬわけにはいかいんです」
「……帰れないかも知れないのよ?」
「それはやってみないと分かりません。たとえここが異世界でも………僕は約束したんですから。必ず帰って一緒に動物園に行くって」
ミス・ヴァリエールはうつ向き考えると決心したようにこちらを見た。
「………分かったわ。ちょっと引っかかることがあったけどそこは後で話しましょう」
そういって杖を振りながら呪文を唱え僕の頬に手をそえる。
「それと私のことはルイズって呼びなさい。
なんかこそばゆいから」
そう言って頬を染めながら顔を近づけてきた。僕は自然と目をつむる。
この日、才賀勝はルイズの使い魔になった
投下中に割り込んだ空気読めない・痛いヤツがいるな
支援
ウルトラの人、さる来ちゃった?
126 :
サーカスの使い魔 序章 (3):2009/03/15(日) 15:22:29 ID:Mk9byNTC
やっと手に文字(ルーンというらしい)を刻まれた痛みが引き一息つく。
どうやらこのルーンは珍しいらしく眩しい男性……コルベール先生がメモをとっていた。
そしてメモをとりおえると生徒達に教室に戻るようにと言って飛んでいってしまった。
他の生徒達も空を飛んで教室に戻っていく。
やっぱりファンタジーだ…
「けっゼロのルイズのせいで無駄な時間くったぜ」
「まったくだ。おい、ルイズ!お前は歩いてこいよ!飛べない通しさ!」
「そうだなっそりゃ確かにお似合いだ!」
ルイズさんはクラスメートたちを睨みつけるが何もいわない。
もしかして……
「ねぇ、ルイズさん。」
「何よっ」
「もしかして他の魔法も使えないの?」
「………そうよ」
「だからゼロのルイズなんだぁ」
ブツッ
「けど、こんふぁふぃっ!?いふぁっ!」
「コノクチカ…コノクチカソンナコトをいふのWAっー!」
「ひょっと、いふぁいです!おちついてくふぁさい!アッー」
大変聞き苦しい音声が流れています。少々お待ちください
「ハァ、ハァ。んで何よ?生意気な事を言うならもっかいつねるわよ?」
「・・・いや、別に。僕は召還出来たんだからゼロじゃなくなったなって思っただけなのに」
涙声で文句を言ってみる。……ホントに痛かったんだもん。
「………ハァ。まぁ悪かったわよ。それじゃあ行きましょう。ほら、その大きい荷物持って」
「大きい荷物って?」
「アンタの横にあるでしょ?そのバックみたいなの」
言われた方を見てみるとチェック柄のスーツケースが転がっていた。
……これってまさか
「なによ。そのバック、アンタのじゃないの?」
「いや、僕のですけど。なんでここに………」
「よく分からないけどアンタのでしょ?一緒に呼び出されたんだから。アナタが持ちなさいよ……ってなにしてるの?」
スーツケースに指を差し込み糸を引く。すると中からカボチャ頭の人形が出てくるのと同時にルーンが輝きだす。
「キャッ!?なっなによこれ?」
試しに指を繰ってみる。やはり動かし方は以前と変わらない
「ジャコ……」
「ジャコ?それがその人形の名前?」
「そうです、“ジャック・オー・ランタン”。
そして僕の相棒みたいなものかな?」
試しに乗って浮かんでみる。よしいけるな。けど前より繰る指が早い。このルーンのせいかな?
ルイズさんを見てみると口をあんぐり空けている。
ちょっと人に見せられるものじゃないかも…
「ルイズさん、僕の後に乗ってください」
「えっ嘘っ!これ飛んでるの!えぇっ!?」
……会話になって無い気がします。気のせいでしょうか?
127 :
サーカスの使い魔 序章 (4):2009/03/15(日) 15:23:36 ID:Mk9byNTC
「あの、ルイズさん?」
「どんな原理で浮いてるのよ?……風石?けどこんな小さいのにどこに風石がはいる余裕が・・・もしかしてアナタ貴族?」
どうやらジャコが浮かんでいるのが理解できないらしく混乱してるようだ・・・今から飛ぶのに
「…はぁ。違いますよ。僕は別の世界から来た人間でこの人形は空を飛べるギミックがついてるだけです」
「は?今何て言ったの?」
「いや、だから僕は別の世界から来たんですって」
「そんな馬鹿馬鹿しい・・・」
「でもそうじゃないと説明がつかないじゃないですか。こっちの世界の基本を知らないことも、この人形のことも」
「むぅ・・・」
ルイズさんはなんだか考えこんでいる
僕としては人が飛んでる方がびっくりだけど
「………いいわ、信じてあげる。
ホントは後で異世界人だなんて言う口を正してあげようと思ったけど、嘘を言ってるようには見えないし」
「………(まだ嘘だと思ってたんだ)」
「そのかわり今日の夜、質問攻めにするから覚悟してなさいよね」
「わかりました。・・・じゃあ部屋まで飛んで行くんで後に乗ってください」
「・・・今何て?」
「いや、だから飛んで行くんで後ろに乗ってください。・・・まさかまだ信じてないんですか?」
ミス・ヴァリエールはビクッとした。図星ってことかい・・・
「わっわかったわよ。乗ればいいんでしょ!乗れば!」
胡散臭そうに乗ったことはとりあえず無視してジャコを浮かばせる。
…なんかジャコの出力が上がってる気がする。ファンタジーだなぁー(?)
「ねぇ」
「なんですか?」
「そういえばアナタの名前を聞いていなかったと思って」
そういえば確かにそうでした
「僕は才賀 勝。勝がファーストネームだよ」
「ファーストネームが後って少し変ね」
「そうですか?僕の国ではこれが普通なんだけど」
まぁいいわ、と言って髪を書き上げてルイズさんが僕の肩に手を置く
「これからもよろしくね、マサル」
どっからどうみても荒らしだろコイツ
「私達の祖先がこの地にやってきた時代。おおよそ6千年程前と伝えられていますが、そのころ世界は恐ろしい
災厄に襲われ、今のハルケギニアはどこも荒れ果て、怪物の跋扈する暗黒の時代だったと言われています」
ヨシアやサムが信じられないと驚くのを無視して、アイーシャは続けた。
「ですが、人間達も亜人も絶望しかけたそのとき、突如空から一人の戦士が降り立ち、人々を救うために
怪物達と戦いました。心優しき勇者だったと伝えられる彼は、あるときは穏やかな光を持って怪物の怒りを
静めて地に眠らせ、真に邪悪な者に対しては、闇を消し去る太陽のように勇敢に戦い抜きました……」
「ふーん。まるで、おとぎ話のイーヴァルディの勇者みたいね」
キュルケはぽつりと、幼い頃枕元で読んだ英雄譚の名前をつぶやき、タバサもそれにうなづいた。
「人間にも、似たような物語があるようですが、私達の伝承はれっきとした事実で、大災厄の歴史は他にも
エルフや獣人にも受け継がれているそうです。けれど戦いは熾烈を極め、多くの者がその中で命を落としました。
この地には、その戦いで勇者と共に我らを守って戦い傷つき、いつか傷の癒える時を願って地の底で眠りについた、
私達の古い友人が眠っているのです」
「えっ!? て、それ6千年も昔の話でしょ」
「はい、ですから今もこのすぐ下で眠り続けているのです。よければ、ご覧になりますか?」
今度はいたずらっぽく笑ったアイーシャの無邪気な笑顔に、人間達はただただ意表を付かれてうろたえる
ばかりだった。
そして、夕食をいただいたタバサ達一行は、食後に特別にアイーシャのはからいで翼人達が守り続けてきた
古代の友人が眠るという地下空間へと、巨木のうろを利用した階段を下りていっていた。
「かなり深く潜るわね」
地の底へと続く階段は、感覚だけでざっと計算してみてもすでに30メイルほどは下りている。
けれど、底に到達し階段につながる小さな穴から出たとき、彼女達の目の前には想像だにしていなかった
壮大な光景が広がった。
木の根によって守られた球根状の高さ60メイル、奥行き30メイルもある巨大な空洞、光ゴケによって青白い
幻想的な光によって照らされるそこには、全高50メイルはある巨大な白い卵状の物体が鎮座していたのだ。
「これは、卵……? いえ、繭なの?」
目を凝らして見ると、それは確かにとてつもなく大きいが、絹の元となる蚕の繭によく似た形をしていたうえに、
中に何者かが存在するのを証明するかのごとく、心臓の脈動のようにときおり細かに揺れ動いたりしていた。
その形から、これは何か昆虫の繭なのかと、タバサは聞いたが、アイーシャは首を横に振って答えた。
「いえ、確かに繭の形をしていますが、この中に眠っているのは虫ではありません……伝承では、大いなる翼で
世界の空を駆け巡りし勇者の友と言われています。かつての戦いで傷つき命耐えようとした彼を、私達の先祖は
繭で覆って傷の癒える日まで保護しようとしたのです」
「と、いうことはその大いなる翼を見た人は」
「はい、まだ誰もいません。けれど彼の翼持つ者は風より早く天を駆け、勇者の危機に幾度となく駆けつけたそうです」
大いなる翼……6千年前に翼人達の先祖を守った、恐らくは怪獣。そんなものがこの森の地下に眠っていたのかと
一行はその何者かが眠る繭をじっと見つめ続け、巨大な繭は何も言わずにそこに鎮座して一行を見下ろしていた。
「それに、伝承にはまだ続きがあります。大いなる翼が眠りについたとき、彼の者の友だった地に住まう竜もまた
彼を守るためにこの森のどこかで眠りについた……」
「えっ、てことは……この森のどこかに怪獣がまだ一匹いるっての!?」
ただでさえとてつもなく強い怪獣がさらにもう一匹、どんな奴かはわからないが、だとしたらなおさらエギンハイム村の
人々には、この森に立ち入らせるのはやめさせたほうがいいだろう。
アイーシャは、先祖代々語り継がれてきた伝承の最後の部分を語って聞かせた。
「かつて大災厄の時代、大いなる翼と地の竜は争う関係でした、けれど彼らは勇者に救われ盟友となり、世界の
危機が再び訪れようとしたときには、彼の者達は必ず眠りより目覚め、勇者が守った世界のために立ち上がるで
あろうと、そう言われています」
「世界の危機ね。ヤプールが暗躍して、怪獣が暴れまわる今も立派に危機だと思うけどねえ」
ぽつりとつぶやいたキュルケの言葉にも、繭の中の何者かは何も答えなかった。
だがそのころ、翼人の里とエギンハイム村の中間あたりに位置する森の中で、獲物に逃げられたムザン星人が
恐るべき企てを実行しようとしていた。
「ギ、ギ……ショウタイ、バレタ……カリ、チュウダン……サクセン、ヘンコウ」
円盤に乗った星人が機器を操作して地中に向かって電磁波を放つと、森が地震のように揺れ動き始め、
やがて地中から前に向かって鋭く伸びた角、次いで大きく裂けた口を持つ頭が現われ、やがて森の中に
鞭のような触手を生やした巨大な腕を持つ怪獣が出現し、夜の空に向かってかん高い咆哮を放った!!
「ゲ、ゲ……ユケ、ガギ……ミナ、ゴロシ、ダ」
続く
そうトゲトゲしくならんとこうぜ
テンプレは読んでほしいし割り込みはダメだけどw
支援
919 :ウルトラ5番目の使い魔 あとがき:2009/03/15(日) 15:26:21 ID:pyo7iUt2
今週はここまでです。
最初この話は、ここまでダイゴを残留させてティガを出そうかと考えたんですが、それだとティガ原作と変わらなくなるし、
やはりタバサの冒険では人間の力で解決させたいので、すさまじく酷だと思いますが、ウルトラマン抜きで
頑張ってもらうことにしました。
なお、ムザン星人は劇中笑い声以外はしゃべらなかったので口調はプレデターをモデルにしました。
また、円盤との共同攻撃というのも盛り上げるための創作ですが、星人の技術力からして不可能ではないと思います。
それから、アイーシャの立場は作中で明言されていませんでしたが、さま付けされていたことから族長の娘という立場にしました。
さて、タバサ達の状況が自分で書いてて最悪な状況になってきましたが、人間には知恵と勇気があるということ、
そして、6千年前になにがあって、なにが眠っているのかも書いていこうと思います。
-----------
代理終了
投下乙
しかし繭と聞くとモスラか、ター○Aとター○Xと御大将が眠っているアレしか思いつかない俺w
ウルトラの人、代理の人乙
>>132 テンプレは読んで当たり前の話
読んで「ほしい」とか、守らなくてもいいような表現はやめてほしい
136 :
サーカスの使い魔:2009/03/15(日) 15:35:32 ID:Mk9byNTC
ウルトラ5番目の使い魔さん、ホントに申し訳ありませんでした。
以後、このようなことが無いよう気をつけます。
最後までテンプレ読んでないアホをどうやって信用しろと言うんだ
ウルトラの人も代理の人も乙
繭の怪獣とか色々いそうで案外思いつかないなw
まずsageろ。話はそれからだ。
繭の怪獣ってモスラしか浮かばないw
>>136 ageてる時点で何言っても相手に出来ん
半年ROMってろ
>>136 うわぁ……(通夜のような沈痛な面持ちで)
ageてテンプレ読んでない時点で半年ROMってるべきだろjk
ウルトラの人、代理の人ともに乙です
タバサの冒険は、「人間の力で解決する」みたいなイメージがありましたので
またさらに面白くなりそうです。
今回の話で第28話でも少し話題になっていた彼の事が出てくるとは思いませんでした
今後彼の事や、彼の友達である青年は今どうしているのか
そしてタバサ達は今の状況をどう切り抜けていくのか、楽しみです。
>>136 気にするなよ、誰も『以後』を求めちゃいないからさ
頼むから自分のブログか何かでやっててくれ
>>136 ・書き込みの際、メール欄に半角で「sage」と入れる
・投下予告の際は、内容(クロス作品名とクロスキャラ)と投下時間を必ず入れる
・投下終了時には終了報告を忘れずに
そして最後、わざわざこんな一般常識を言う羽目になるとは思わなかったが……
・他人の投下中に割り込まない
まさか、理由まで言わないとわからないお子様じゃないだろう?
アルカディアへどうぞ、あそこの人達はみんな歓迎してくれますよ(^^)
暗黙の了解どころか、明記されているルールすら守れない奴を歓迎する場なんて無いだろw
理想郷はゴミ捨て場じゃ無い
チラシの裏に書いてゴミ箱に捨てれば良いわけだな
正直
2chのSS>理想郷
かなと思った
はいはい次の話題行こうか・・・・
ラスボスの人来るかね、時間的に
話的に考えると既に飛べる状態で繭になったってことは…
鎧モスラ来ちゃうかこりゃw
あえてバトラを上げてみる
>>136 投下乙。全く読んでないけど。
今回投下は、初回であることを鑑みたとしても最低最悪としか言いようがないけど、
とりあえず私は今後の可能性まで否定する気はないです。
まぁあれだ。半年ROM(リードオンリーメンバー)れ。それからがんがれ。
ウルトラの人、代理の人、乙です!
次回、ウルトラマン抜きでタバサ達がこの難敵をどう退治するのか期待してます。
ヨシアとアイーシャの仲もどうなるのか楽しみです。
アイーシャが語った天空より降り立った勇者って、やっぱ「彼」だよなw
>>157 バトラは繭にはならないぜ、幼虫から直接成虫にメタモルフォーゼ
(ボンボン版ゴジラVSモスラだと幼虫の脱け殻の描写があったけど)
バトラってバトルモスラの略だとなんかで見た記憶があるような
モスラは唯一ゴジラを倒したことがある最強怪獣だといってみる
ゴジラか……ガメラあるいはウルトラマンとの対決はやはり不可能だろうか?
フレディとジェイソンでさえ戦ったのに。
ゼロ魔なら、【ゴジラ×カリン×ゴジラゴーレム ハルケギニアSOS】だな
ジョゼフがゴジラを召喚。滅び行くハルケギニア。そんなある日ロマリアで教皇が巨大な卵を召喚する。
なんだかんだで、海に消える二大怪獣。
数年後、トリステイン魔法学院で一人の少女が三つ首の黄金竜を召喚した時、物語は新たな局面を迎える。
ゴジラとウルトラマンってサッカーとか野球では戦ってるけどガチバトルはないな。確かに見てみたい。
ゴジラはウルトラマンにえりまき取られて倒されてるよ
>>167 サッカーとか野球では戦っているというのも、それはそれで凄い話だよな
>>168 えりまき?・・・ジラースのことか・・・ジラースのことか――――――――――つ!!!!!
>>72 超亀レスだが従兄弟とはいえ、戦中、戦後問わず立て直しつつある王家の権威を根底から揺るがす存在があるという醜聞を果たしてウェールズがただ黙って放置するだろうか?
虚無の担い手という事実を差し引いたって、アンリエッタの様に温情をもって迎え入れるなぞ、アンリエッタよりずっと政務に私情を挟まない彼がするとも思えないし。
>>75 フェイスチェンジって……誰がするの?
ルイズの一件を考えたらテファが系統魔法使える訳無いし、虚無魔法と先住魔法のダブルスタンダードは通用しないし、そもそもテファは育ちで分かるように完全に外界と隔離されたような環境で育ってきた。
知り合える可能性のあるタバサクラスメイジなんて皆無に等しいはずだが?
ロマリアかガリアのどっちかでデストロイヤーじゃね?
>>173 そしてデストロイヤーじゃないほうがゴッド姉ちゃんこと和田アキ子か
ガイガン!ガイガン!
巨大怪獣喚んでどうするんだよ
ウルトラマン自体反対だ
ダン・バロウズ召喚
>>176 コルベール先生(二瓶正也)やマルトーさん(毒蝮三太夫)が頑張るよ!
>>172 使い魔を呼べるメイク……1000エキュー
虚無に目覚めるメイク……1500エキュー
レコン・キスタをさせるメイク……2000エキュー
胸元が革命するメイク……3000エキュー
聖地を奪還出来るメイク……5000エキュー
ファーストキスから二人の恋のヒストリーが始まるメイク……7000エキュー
繭の怪獣と盟友はギャラクシーの主役怪獣二体かな。
ああ、だからキュルケが同行してるのか。
繭の怪獣の復活させるには必須だもんな。
代理依頼に従って21時10分から代理投下を始めますよー。
絢爛舞踏の晩餐会から一夜明け、ギーシュ達は鍾乳洞内の秘密港でイーグル号に乗船するために、疎開
する非戦闘員の列に混じって並んでいた。イーグル号に並列して係留されているマリー・ガラント号から
も長蛇の列が伸びている。一度は破産したと嘆いていた船長は、運賃及び硫黄の代金に加え、疎開に関わる
経費をも受け取れたことで気を取り直したのか、せわしなく出航の準備をしている船員達に発破をかけている。
「これで今のアルビオンともお別れね……」
「……そうだね」
自分の番を待つ彼らは言葉少なだった。周囲を見回しても、昨夜のような笑顔はどこにもなく、皆一様に
沈み込んだ表情をしている。非戦闘員は子供・女性・老人であったが、その内の多くが身内を置いていくこ
とになっているはずだった。父親・夫・息子、愛する者に降りかかる避けられない死をどのように受け止め
ているのか、年若い少年少女には心情を図ることはできない。ただ、どうしようもなく悲しく、絶望を喚起
させるものであることは理解できた。
憂鬱な顔のギーシュの後ろに並んでいたルイズが口を開く。
「わたし、部屋に忘れ物してるの思い出したわ。あんたたちは先に乗ってて」
「早いところ戻ってきなさいよ。乗り遅れたら洒落にならないんだから」
そう言うと、ルイズは一目散に城へと続く階段を駆け上っていった。
「そういえば、あの子爵様は?」
「子爵なら少し遅れてグリフォンで追いかけるってさ。何でも皇太子に用事があるらしいよ」
ふぅんとキュルケは頷き、会話が途切れる。鍾乳洞には乗組員の指示する声が響き、乗船は滞りなく進ん
でいく。しばらく黙って並んでいると、ようやくギーシュ達に順番が回ってきた。
キュルケは心配そうな表情をして、隣のギーシュに話しかける。
「ねぇ、ルイズ何やってるのかしら。もう順番回ってきちゃったじゃない」
「きっと並び直してるんじゃないかな。これだけ人がいちゃあ見つけるのは大変だよ。彼女は背が低いしね」
確かにルイズ程度の身長ならば、同じく乗船を待つ人々に紛れてしまうかもしれない。ギーシュのそんな
ものだよという楽観的な意見に、キュルケも一応の納得をした。しかし、何となく不安を感じていたのだった。
避難船が出航しようとしている時刻、皇太子とワルドは礼拝堂へ向かって歩いていた。戦の準備で忙しい
のか、城内に人気は無い。皇太子としても準備に駆けつけたいところであったが、ワルドにどうか時間を割
いて欲しいと頼まれ、言われるままに礼拝堂へと向かっているのであった。
「子爵、それで私に聞いて欲しいというのは何なのだね?」
「申し訳ありませぬ、皇太子殿下。恐れながら、始祖ブリミルの御許でご相談したいのです」
道中、皇太子が何度ワルドに何用かと尋ねても、返ってくるのは似たようなはぐらかしであった。どちら
にせよ、この日の正午には反乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が始まり、自分は命を落とすのだ。要領を得
ないワルドにかすかな苛立ちを感じたものの、それをあえて指摘し叱り付ける気分にもならない。グリフォン
隊隊長という責任ある職務についているワルドのことだ、それほどおかしな相談でもあるまい。皇太子は
黙って歩き続けた。
結局、そうしているうちに、皇太子とワルドは礼拝堂へと到着した。
「それで、相談とは何かね?」
「殿下、まずは始祖ブリミルへと礼拝をさせて頂けますか。始祖を前にして何もなしで会話を始めるなど、
無礼千万でございますゆえ」
「……それもそうだな」
敬虔なブリミル教徒の鑑とも思えるワルドの言葉に、皇太子は押されてしまう。他国の大使が礼拝している
というのに、アルビオンの皇太子である自分がしないわけにはいかない。皇太子も礼拝堂の最奥部に置かれた、
荘厳な始祖ブリミルの石像へと向き直り、目を瞑って礼拝を行う。ここまでするのだ、余程難しい相談なのだろう。
皇太子は背後で同じく礼拝しているだろうワルドの動きに気付くことはなかった。
今頃は避難船も出航し、ギーシュ達はアルビオンを離れつつあるだろう。ルイズはもう後には引けないこと
を覚悟していた。
(あと一度だけ……、あと一度だけだから……)
ルイズは内心で、誰に対して言っているのか自分でも分からない言い訳をしていた。トリステインで待つ
アンリエッタを悲しませない方法が何かないかと、昨日の夜からずっと考え続けていた。そうして考えに考え
抜いた結果、もう一度だけ皇太子に亡命するよう説得してみようと決断したのだった。キュルケ達に嘘を言った
のは、正直に言えば止められるのが目に見えていたからだ。
とはいえ、このような無謀な賭けに出たのには一応の理由がある。昨夜、しばらくアルビオンに留まると
告げたワルドのグリフォンがあれば、ぎりぎりになっても脱出できるかもしれない。今、ルイズは誠実さを
見せ付けたワルドに心が傾いていた。
皇太子を探して、ルイズは城内を走り回る。残った戦闘員に見付からないよう、気をつけながら扉を開いて
探し続ける。皇太子の私室、アルビオン王の執務室、厨房、テラス、心を逸らせるルイズを裏切るかのように
皇太子の姿は見付からない。
(どこ、殿下はどこにいるの?)
通りがかりに所謂支援というやつを
時折、廊下の角から残留した人々が現れ、危うく見付かりそうになった。人の目を盗みながらルイズは走り
続け、礼拝堂の前に差し掛かったところで、人一人が通れそうな程度に開かれた扉に気が付いた。そこから
こっそりと礼拝堂の内部を覗いてみると、散々探し続けていた皇太子を見つけた。その後ろにはワルドもいる。
どうやら二人は揃って始祖ブリミルへ祈りを捧げているようだった。
(殿下……! ワルドもいる)
声をかけるため、すり抜けるようにして扉をくぐったルイズは、そこで信じられない光景を目にする。
(え……?)
皇太子の背後で礼拝していたワルドが、杖の反対側に差された剣を引き抜いたのだ。ワルドは未だ礼拝を
続ける皇太子にじりじりと近付いていく。
ルイズは考える前に走り出していた。
アルビオンから大分離れ、順調に航行するイーグル号の甲板で、少年と少女が深刻な顔をして周囲の避難民
に声をかけていた。声をかけられた者は、質問を聞くと、皆一様に首を横に振る。それを見た少年達はその度
に焦りの表情を深めていく。散々船内を駆けずり回ったあげく、二人は顔を突き合わせて青い顔をしていた。
衣服は汗で濡れ、肩で息をしている。
「ギーシュ、ルイズはいた!?」
「いいや、探し回ったけどイーグル号の中にはいないみたいだ」
その時、マリー・ガラント号へとシルフィードに乗って探しにいっていたタバサが戻ってくる。キュルケは
焦燥感に駆られながら青髪の少女を問い詰めた。
「タバサ、あっちには?」
「彼女はいなかった。多分アルビオンに残っていると思う」
「そんな……。なんて馬鹿なことを……!」
イーグル号が出航してからしばらくして、中々顔を見せないルイズを心配してキュルケが探し始めた。いる
とすればライデンが保管されている倉庫だろうと足を向けたが、そこにルイズの姿はなかった。嫌な予感がして、
ギーシュとタバサも駆り出し二隻の避難戦を探し回ったものの、どこにもルイズの姿がなかったのだ。
そして、今しがたタバサの言った言葉、乗船していないとすればそれしか考えられない。日は昇りそろそろ
反乱軍が通達してきた正午に差し掛かりつつある。総攻撃が始まればルイズの命はない。かといって今から
シルフィードに乗ってアルビオンへと取って返すことも危険極まりなかった。ニューカッスル城の上空に
陣取っているレキシントンに発見されれば、瞬く間に竜騎士隊に包囲され、炎のブレスによって焼き尽くされるだろう。
彼らにはこの絶望的な戦況を切り抜けるほどの力はなかった。
出勤前に一度だけ支援を
「子爵がいればグリフォンで帰ってこられるだろうけど、もしすれ違いにでもなったら……」
今彼らに出来ることは、ルイズが上手くワルドを見つけて帰還の足を確保できるよう祈ることだけであった。
三人は何となしに物言わぬライデンが鎮座する倉庫へとやってくる。知っている者同士で一箇所に固まって
いたかったのだ。その時、何かに気付いたタバサがキュルケの袖を引っ張った。
「どうしたの、タバサ?」
「彼女の使い魔から音がする」
「音?」
彼らがライデンに近付いてよく見てみると、背中に取り付けられた箱が開いている。その中で、透明な円盤が
うっすらと緑色に輝いていた。かすかな、それでいて甲高い音を発しながら回転している。
三人はそれを見て顔を見合わせた。ライデンは完全に打ち倒されたわけではなかったのだろうか。土のメイジ
であるギーシュが疑問を纏った二対の目にさらされるが、彼としても何ともいえない現象であった。そもそもこの
異端なゴーレムに関して的確の答えを持っている者が存在するのだろうか。
「うーん……。これはどういうことなんだろう?」
一応は己の領分なので、ギーシュが難しい顔をしながらライデンの背中の箱を覗き込むが、やはり何かが分かる
わけではなかった。
しばらくそうして検分の真似事をしていると、徐々に円盤の回転速度が速まり、それと同時に光度も増していく。
そして円盤はついに目も眩むほどの閃光を放出した。
「う、うわわっ! 何だ何だ!?」
驚いて床に尻をついてしまったギーシュの目の前で、ライデンの全身に散らばっているクリスタルも同様に
輝き始める。ライデンの瞳が数回点滅した後、完全に点灯した。赤い鎧を着込んだ巨人は、体内から金属が擦
れるような音を発しながらゆっくりと腰を上げ、ついには立ち上がった。
「ライデンが……」
キュルケは唖然とする。隣に立っていた表情の乏しいタバサも、驚きを隠せないでいるようだった。
ライデンは立ち上がると、頭を左右に振って何かを探しているような行動を取った。そして今にも倉庫の床板
を踏み抜かんばかりに軋ませながら扉へと歩み寄ると、力ずくでこじ開けてしまった。甲板へと出てしばらく立ち
竦んでいると、今となっては相当な距離が開いてしまった、雲の上に浮かぶアルビオンを見上げた。すると背中に
並んだ4本の煙突のような部位から、山賊との戦闘でも見せたように輝く閃光を撒き散らし、凄まじい轟音を上げ
ながらアルビオン目掛けて飛び出していった。
突然倉庫の扉を破って巨大なゴーレムが姿を現したかと思うと、事態の飲み込めない内にアルビオンへすっ飛ん
でいってしまった。甲板で座り込んでいた避難民達は例外なく目を丸くしている。そして、それはライデンを追って
甲板へと出てきたギーシュたちにとっても同様であった。
レスキューダッシュ支援
「もしかして、ルイズを探しに……?」
「かもしれない……」
完全に倒れてしまったと思われたライデンが再び立ち上がり、主人を探して飛び出していった。彼らは呆然と
しながら、遠ざかっていく軌跡を見送る以外にできることはなかった。
ルイズは走った。今までの人生で、最も必死になって全力疾走したと言えるほどに走った。今にも手にした剣
を礼拝している皇太子目掛けて突き出そうとしているワルドへ向かって突進する。
「殿下、危ないっ!」
「ん……? ぐぁっ!」
ルイズは全力でワルドに体当たりを敢行した。背後から思わぬ攻撃を受けたことと、ルイズの叫びを聞いて
思わず皇太子が振り向いた為に突き出された剣は目標を外した。皇太子の心臓を貫かんとした剣は、左腕を深々
と切り裂くに留まった。しかし、目標をそれたといっても皇太子の受けた苦痛は甚大なものであり、鮮血を
撒き散らしながら床に膝をついてしまう。
ワルドは驚愕を顔に張り付かせながら振り向き、そこにルイズの姿を目に留めると、内より湧き上がってくる
怒りに顔を歪ませた。歯軋りをしながらルイズの腹を思い切り蹴り上げ、頭を鷲づかみにして放り投げた。
「し、子爵、貴様っ……!」
呻きながらも立ち上がり、右手に持った杖を振り下ろさんとしていた皇太子に気が付くと、ワルドは表情を
変えることなく空気の針を飛ばす。杖を持った右腕と両膝を貫かれ、皇太子は激痛に叫びを上げながら倒れこんだ。
更にワルドは横臥する皇太子に歩み寄ると、至近距離で空気塊をぶつける。
「ぅごふぁっ!」
肋骨が折れ、内蔵を痛めつけられた皇太子は口から血を迸らせた。まだ息はあるようで、喉を上ってくる血に
よって赤い泡を吹いていた。ワルドは虫の息になった皇太子を見下ろすと、一度頭を蹴り飛ばし、今度はよろめき
ながら起き上がりつつあるルイズの元へ近寄った。
「ルイズ、何故君がここにいるんだい?」
「ワ、ワルド……、おがっ!」
ルイズが言い終わらない内に、ワルドはまたも少女の薄い腹部を蹴り上げる。少女は無力にも床を転がり、平時
ならば参拝者が腰を下ろしている長椅子の足に、後頭部をしたたかに打ち付けた。
歩み寄ってくるワルドの顔は怒りに歪みながら笑うという、悪魔のような醜悪な表情に彩られている。
「僕は、先に行ってラ・ロシェールで待っていろと言っただろう?」
ワルドはもう声も出せないルイズの桃色がかった長髪を無造作に掴むと、少女を片手で持ち上げる。己の視線と
同じ高さまで引き上げると、苦痛に顔を歪ませている少女の頬を思い切り張る。
「全く、言いつけを守れないとは悪い子だ!」
何度も繰り返し頬を張った後、ワルドは赤く腫れ上がった少女の左頬目掛けて思い切り拳を繰り出した。少女
は殴り飛ばされ、長椅子の背に顔を思い切りぶつけられてしまう。何度も殴打されたことで口の中に幾つもの傷
を付けられ、歯茎からは血が流れ出す。顔を打ちつけ、鼻血を垂れ流す少女の姿は、飼い主の戯れて痛めつけら
れる小鳥の様でもあった。
「この旅で、僕がどれほど自分を抑えていたか君に分かるかい?」
ワルドは両腕を広げ、大げさな身振りで話し始める。ルイズは全身を支配する激痛で、身動き一つ取ることが
できない。
「この僕が! 君など及びもつかないほどの力を持っているこの僕が、鼻垂れた一人の小娘のご機嫌取りをする、
その苦痛が……」
そこで言葉を区切るとワルドは少女に近付き、胸倉を掴んで引っ張り上げる。
「貴様に分かるか!?」
怒号と同時にルイズは右頬を殴られる。奥歯の何本かが砕け、空中に血と白く輝く歯の欠片が舞う。
「散々俺を虚仮にした上に作戦の妨害までするとはな……。貴様には失望したよ。虚無の力がなければ、一体誰
が貴様のような世間も知らぬ高慢な小娘に求婚などするものか!」
苦痛で声を出すことは出来なかったが、ルイズは自分の浴びせかけられる罵声を聞いていた。少し疑問に感じる
所はあったものの、昨夜まで誠実な態度を取っていた婚約者。その男の想像を超えた変貌に、思考回路がついて
いかない。
「ルイズ、優柔不断な君のことだ。まだ姫殿下の手紙を持っているんだろう? さあ、渡したまえ」
一転して優しげな声音に変わったワルドの要求に、ルイズは思わず身を丸めて抵抗する。
「おいおい、素直に渡してくれよ。でないと……、もっと痛い目に遭うことになる!」
ワルドは身を丸めて無抵抗のルイズを思うがままに嬲る。哄笑をあげながら暴力を振るうその姿は、本気で
ルイズに手紙を渡すように痛めつけているというよりは、己の心に分厚く沈殿した恨みつらみを発散している
ようであった。
ライデンレーザー支援
「やれやれ、強情だな君は。それじゃあここで面白いものを見せてあげよう。……これに見覚えがあるだろう?」
そう言ってワルドが懐から取り出したものは、白く塗りたくられた仮面であった。ラ・ロシェールを脱出する
際に、奇襲によってライデンを打ち倒した、スクウェアメイジが被っていたあの仮面だったのだ。
顔が無残に腫れ上がり、息も絶え絶えになっていたルイズは、顔を上げたその先に掲げられている仮面を見て、
更なる絶望に突き落とされた。
「ワ、ワルド……、あ……なたは、反乱軍だったの……ね……!?」
「くくくっ、全くおかしくてかなわんな! あの薄ら馬鹿のアンリエッタも、貴様も、そこで転がっている
ウェールズも、どいつもこいつも裏切者の俺を信用する! 愚か者の治める国など滅んでしかるべきなのだ!」
心の底から笑えて仕方がないとばかりに、ワルドは笑いながらルイズを嬲り続ける。
幾度も蹴られ、殴られて転がされるルイズは絶望と悲しみに涙を抑えることができなかった。鼻血の混じった
鼻水を流し、顔をぐしゃぐしゃに歪めながら少女は己の不運と境遇を嘆く。自分はワルドにかすかな不信感を
抱いていた。それでも、ライデンを失って、皇太子の覚悟を眼にしたことで挫けそうになっている時に優しく
慰めてくれたワルドに惹かれはじめていた。少しばかりの違和感などもう構わないと思っていたのだ。しかし、
己の使い魔を襲撃した男の仲間であり、手紙を奪おうとしたのも、皇太子を殺そうとするのも、全て他ならぬ
ワルドだった。
惨めだった。目の前の男に好きなように弄ばれ、なんら抵抗することもできない自分がどうしようもなく惨め
だった。アンリエッタの想いも、ウェールズの覚悟も、何もかもをこの男は蹂躙している。少女は抑えきれない
嗚咽を零す。
「さて、流石にこの騒ぎでは、誰かが駆けつけるかもしれん。その前に貴様を殺して手紙を頂くとしよう。
ウェールズと同じ場所で始末されるのだ。精々光栄に思うのだな」
少女は最早何度目かも分からない殴打を受け、礼拝堂の壁に叩きつけられる。
ワルドは床に転がっていた己の剣を拾い上げると、地位に見合った優雅な足取りで近付いてくる。歪んだ笑顔
を貼り付けた男が歩み寄るにつれ、少女は逃れられない恐怖に縛られた。上手く動かすことの出来ない口から
かすかな声が零れる。
「……助けて」
「そうだ、もっと命乞いをしろ。かといってそれで見逃すほど俺は甘くはないがな!」
ワルドは剣を楽しげに振っている。
「……助けて……!」
「はははは、惨めだなぁルイズ。普段の高飛車な君はどこに行ったんだい?」
少女は助けを請う。ここにはいない己の使い魔に向けて。目の前の男に打ち倒された赤い巨人に向けて。
「助けて、ライデン!!」
少女が全身全霊で叫び声を上げた瞬間、ワルドの左側の壁に亀裂が走り、轟音を上げて石壁を砕きながら赤い
閃光が飛び込んできた。剣を振り上げ、今にも振り下ろそうとした時に飛び込んできた赤き人形ライデンに、
ワルドは振り向くことすらできなかった。猛烈な突進の勢いそのままにライデンは左腕を繰り出し、無防備なまま
左半身に全力の鉄拳の洗礼を受けたワルドは、全身の骨という骨を粉々に砕かれ、筋繊維を引きちぎられた。
反対側の壁まで息絶えた体が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられると同時に頭蓋が砕け、衝撃でひびの入った
礼拝堂の壁が脳漿と血液によって彩られる。
一秒に満たない間に繰り広げられた一方的な戦闘の後、命が風前の灯となっていた少女は、涙で濡れた顔を
上げる。そしてそこにいたのは、自分が心の底から助けを求めた己の使い魔ライデンだった。
「ら、いでん……。らいでん……っ! ぐすっ、うぐっ……、うわぁぁぁぁん!! ライデンっ、ライデンっ!!」
少女は死を迎える寸前に迎えに来てくれたライデンに縋りつく。死の恐怖から開放されたルイズは、恥も外聞も
なく泣き喚いた。
そこに怒号と壁の崩れる騒音を耳にし、数人の男達が駆けつけた。荘厳な礼拝堂の壁に大穴が開き、赤い
ゴーレムに縋りついて大泣きしている大使の少女と、血を吐いて横臥している皇太子を見つけ、彼らは余りの
事態に一瞬我を忘れた。しかしすぐさま気を取り直すと、皇太子へと駆け寄った。
「一体なにがあったのです、殿下!?」
「大使の、ワルドに襲われたんだ……。すんでの所で彼女に救われた……」
水のメイジによる応急処置を受けながら、皇太子はことのあらましを説明した。話を聞き終え、臣下たちは
憤怒の表情となる。
「おのれレコン・キスタめ、大使に成りすまし、殿下のお命を奪おうとするとは何たる外道!
よもや他の大使も……!?」
「言っただろう。私は奴と同じく大使である彼女に救われた。裏切者は奴だけだ。
……そんな奴も、もうこの世にはいないが……」
皇太子が見やった先は、最早人間としての原形を留めていないワルドの遺骸であった。次にルイズに目をやると、
少女は涙も枯れたのか、ゴーレムの足元でへたり込んでいる。表情からは感情が抜け落ち、その瞳には度重なる
絶望で、底の見えない虚無を湛えていた。
皇太子がルイズの治療をするように指示すると、すぐさまに部下は幾度も繰り返された暴行により、傷だらけ
になった少女の治療を始める。応急処置を受ける間も、ルイズは特に反応らしい反応を見せなかった。
部下に肩を借り、どうにか立ち上がった皇太子は、未だ呆然と座り込んでいるルイズに声をかける。
「ラ・ヴァリエール嬢、命を救ってもらっておいて何だが……申し訳ない。
もうこの城から君を逃がしてやれそうもない」
ルイズは俯いたまま皇太子の言葉を聞いていたが、無表情はそのままにすっくと立ち上がった。
「……ライデン、来なさい」
少女は地獄の釜から瘴気に溢れた湯気を吐き出すように、果てしなく暗い声を出す。幽鬼のようにおぼつかない
足取りで礼拝堂の扉へと向かう。
去っていく少女に皇太子に肩を貸している男が声をかけようとしたが、皇太子に静かに制された。レコン・キスタ
による総攻撃が始まる時刻も迫っている。もうルイズは自分達と同じ運命を辿るしかないのだ。
その後、小さな声で呟かれた少女の言葉は、彼らには聞こえなかった。
「殺してやるわ……反乱軍……」
少女は、肉の塊となった己の元婚約者を振り返ることはなかった。
929 重攻の使い魔 ◆ecegNbNqok sage 2009/03/15(日) 20:01:34 ID:gRHGdg9s
以上、ライデン復活。
ヘタレなことが多いワルドさんをきつめの悪役にしてみました。
ルイズが嫌いだとか、そういう訳ではないのであしからず。
以上で代理終了です。
しゅわっち。
……ここまで酷い死に様のワルドは初めてだ
ミンチよりひでぇや
次回はついにレーザーなのか。
あかん、この流れはただの虐殺になるwww
レコン・キスタ逃げて、超逃げてっ
重攻の人乙
そこで終わるなんて殺生なw
ついに、なぎはらえな展開になるのだな。次回が楽しみで仕方がないw。
ライデンでガラヤガかー
何だろうな、あの幻想何たら戦機が思い浮かんだ
なんという黒ルイズ覚醒ガクガクブルブル
あぁ〜っ逃げてー!!レコンキスタ超逃げてーーッ!!
204 :
:2009/03/15(日) 21:46:15 ID:Jtn5+O0I
レコン・キスタへの虐殺フラグがビンビンにたっております!
しかし、このシーンで実際にレコン・キスタが全滅したことってあったっけ?
G・カイン・ファランクスが召還されたSSでも半分くらいだったし・・・
ルイズ「まずはアンタ達の肉体にレーザーとナパームを刻み込むわ」
レコン・キスタ「助けて!誰か!誰かあぁぁぁっ!!」
レコン・キスタ「いやああああああっ!!」
ルイズ「アハハハハ!そう、それよ!まさに至福の悲鳴だわ!」
逃げてー!
>>204 奇妙な使い魔のほうならヘビーウェザーで全滅ってのがある。
・・・ってスレチか?
それ何てマサキムwwww
五分に近いところまで盛り返した、なら魔砲の人の所があるけど他はどうだろう。
やれそうなキャラ(性格的にやる可能性がない場合も含めて)はけっこういるけど、後の話が難しそうだしな。
209 :
204:2009/03/15(日) 21:59:06 ID:Jtn5+O0I
>>206 情報提供サンクスw
しかし、皆さん・・・
そろいもそろって虐殺シーンを見たがってるとしか思えないレスばっかですなw
私もそうだけどw
今までバズーカやグランドボム、近接の落ち着いた戦闘ばかりだったから、みんなライデン初レーザーでワクテカしてるんですよw
レーザーの取説に「人に向けてぶっ放さないでください」って書くべきだと思いますw
全滅とまではいかなくても
ゼロの登竜門とかブラックアウトよんだ奴ではレコンがひどいことになっていたようなw
そういや重攻の使い魔はオラタンverなんだよなぁ。
麻痺効果のあるレーザーネットや高威力のスクリューレーザーに近接の電撃アタックと
色々wktkだぜw
ライデンの人と代理人様乙。
そりゃあ次回はFaid to blackでIn to the crimsonな虐殺劇ですからね、指摘にはディセプティコン・ゼロばりにの殺戮を期待したいねぇ…
ライブ・ア・ライブのでは全滅してるが、そこでエピローグだったな。
>>202 幻奏戦記ルリルラ?
機体が凄いゴツいタイプだから外観イメージは近いかも
ヴィルトクリーガー・ベヘルター(アルゴス)とか
機体と機奏英雄を召還してルイズを歌姫にするとか出来そうだな
アーベント等の空戦機じゃないとアルビオンは辛いだろうけど……
いや……まだ死ねただけマシじゃないかな、ハクオロ召喚ネタよりは
>>204 ディセプティコンや柏木耕一ではほぼ壊滅扱いですな
小ネタでメロスが棍棒で3万人殴り倒してたな。
プレイヤー視点で考えるとレーザー撃って、バズーカ撃っての繰り返し作業になるだろうけど派手に散るレコンキスタ艦隊側にとって悪夢そのものだね。
耕一兄ちゃんが虐殺やらかしてた
怒りだ!怒りしかない!!
>>222 3万人を問答無用でドレインする気か!?
重攻の人&代理の方、乙であります!
ターボショットくるか!?
三万人か・・・・・・・・
メギドアーク
メタトロンの目からビーム
閣下のデコピン
人修羅の地母の晩餐
さあ、好きなのを選ぶんだ
ライデンの人、代理の人乙です。
ワルドは舜殺かよ。
次回はついにレーザー解禁か?
「アクマがこんにちわ」の人修羅が本気になったら、晩餐でアルビオンが崩壊しかねんぞw
ただのアイスブレス(レベル7で習得可能)であんだけの威力描写されるんだぜ?
至高の魔弾とか敵陣に撃ち込んだら……
無双や虐殺ばっかやが、もちっと平和主義者な使い魔はないものか。
顔全体で出してるのか、邪視なのか、口からなのかそれが疑問
>>227 ドモォォン!!久々にあれをやるぞっっ!!
>>228 さすが神聖四文字と敵対しようというだけあるわな
改めて読み返すとワルドがルイズを虐待するとことライデンパンチでワルドが挽き肉になるとこの描写が事細かくてかつエグいのな、でもバーチャロンの小説もこんな感じだったからある意味原作再現かw
>>225 3万人全員アプトムになる。
というのはダメ?
>>228 もし3万人で物理反射とかされた日には…
マサカドゥス以外なら確実にパトるなw
>>231 はいっ! 師匠!!
ここまで虐殺せよな流れなのはきっと、どんなすごいのが召還されても人一人だからだったり
力を抑えようとしちゃってるから、その反動じゃあないかな
つまりうっぷんばらしの壷って事だ
>>229 交渉人ロジャー・スミス
ただし交渉決裂するとビッグオーで暴れ出すので注意
>>236 八つ当たりじゃないだろwwwwwフェアじゃないから叩き潰すだけだよ。もしくは話を聞かないとか
>>236 あいつ、全編を通じてけっこうテンパってたイメージがあるんだがww
>>172 そこで耳の整形手術ですよ
臓器移植ができるのだから簡単だろう
>>236 そもそもあいつ交渉をいつもまともに成功させてねえww
いっつも「ショウターイム!」だ!ww
>>236 最初の契約の時点でショータイム確定じゃねーかw
そして交渉成功すること自体かなり稀
ギーシュもワルドもレコンキスタも水の精霊もまとめてサドンインパクトされそうだなw
話は毎度綺麗にまとめるけど、ネコシエーションは成功してないよね(`・ω・´)
交渉の成功率は結構高かったと思うよ
そもそも交渉が無くて戦闘だけの回や元から無理な交渉をボンボンに押し付けられた以外は
ちょうど清杉よを読んでたせいで
この後、清村がレコン・キスタの一人を殴り倒した
その後やってきたレコン・キスタの大群も全て殴り倒した
なんとかアルビオンは助かった
なんて図が浮かんできた
>>225 三万か…
とりあえず、コルネット(魔族化)が手近な一人に噛み付くだろ
そうするとそいつも感染してコルネットみたいになるから、今度は二人で手近な奴に噛み付くだろ
それを繰り返せば鼠算式に増えてって、最終的にはレコン=キスタ総魔族化の完了だ
あの病気(?)シェルクンチクでケストラーの血のせいだって息子が言ってたけど、
あれって確か自滅だったよな。
交渉人に依頼すんのがそもそも間違ってるような仕事が多すぎるだけだな
なんだそのファーザーが書き殴った漫画のような罪深ぇ展開は
3万……
フレーべは戦った。
そして勝った。
魚住『はらたいらさんに30000人』
ぷよぷよのセリリとかなら
皆仲良くしてねで平和主義だぜ
,─、
見える… ,─ ̄ ̄─、
全てが。 _∠_____\
Γ ________ ̄┐
| │l てハ / ( )/│ /
/ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ |
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UUU | \ _/ | UUU
| 7 ̄\ |
ごめんよ、張ってから思った
ブライの八玉の勇士あたりを召喚するんだ
レコン・キスタ兵が30000人あらわれた!
ハヤテの攻撃!
レコン・キスタ兵を16384人倒した!
>>251 でも、孤独なぷよは同じ色にされるんだぜ。
巨乳が大多数を占めるハルケギニアにおいて、みんな仲良くするってコトは……?
今更の今更だが考えてみればあのネゴシエーターって自由束縛されんのすっげー嫌ってんだよね。
となると241が言ってるみたいに契約の時点で大暴れ決定かwww
「あんた私の使い魔に「雨の中を傘を差さないで踊る自由があってもいい。ビッグオーショウターイム!」「ぎゃあああああ!!」
ナームー
ルイズのエクスプロージョンがICBMの代わりを果たし、世界は崩壊した
>>246 確かコルネットが呪おうとしたら失敗して呪いが還ってああなった筈
>>225 学園革命伝ミツルギから生徒会メンバーを喚んでどうすれば3万人のレコンキスタを退けられるかってのも面白そうだ
レコンキスタの真中にドリル置いとくだけで壊滅しそうな気もするが…
イートマンなら3万くらいどうにかなりそうな気もしなくもないな
まあ、クロムウェル直接殺りそうだが
呪いの薬作ってうっかり自分で飲んじゃったんじゃなかったっけ
FF4のゴルベーザさんED後なら
平和で温厚な人だぜ!
>>263 ディシディアだとそれに更に磨きがかかるww
>>259 餓鬼球だっけ?w
非常識な再生能力と攻撃力を持ってたような
新たなる魔王になろうとしたギータを消し飛ばしてたなw
その後どういう経緯か不明だけどトロンと結婚して
後遺症(?)の暴走が起こるたびにシーザースラッシュで鎮められてたっけ
世界はエクスプロージョンの炎に包まれた!
>>211 バーチャロンはほぼ名前しか知らんが、たしかライデンの肩部レーザーって対人どころか対艦用だよね?
シエスタ「ヒャッハー!」
カトレア「命は投げ捨てるもの(ry」
仮面の男「俺の名前を言ってみろ」
>>255 ラストストーンという凶悪なアイテムを思い出した…
お久しぶりです、予約がないようなら 0:40 からシーン18 の運命の扉を開きたいと思いますがよろしいでしょうか?
なんだかFallOut3な流れだな………。
おっと、メンタスとかジェットでキマっちまったかな俺?
>>274 キタタタタター!
待ってたんだぜ!支援準備
大丈夫なようなので、運命の扉を開きます。
レコン・キスタの襲撃を退けた一行は、アルビオンへ向かう貨客船マリー・ガラント号に乗り込み、空の人となっていた。
乗り込んだ当初は、風竜とグリフォン等という滅多に見られない幻獣で直接乗り込んで来たルイズ達に、暫くパニックに陥った
船員達だったが。法外な報酬と2人のメイジ(ワルドとタバサ)が協力を申し出る事で、何とか首を縦に振らせる事ができた。
しかし、舷側から離れていくラ・ロシエールを眺めていた一行の中にヒューの姿はなかった。
ゴーストステップ・ゼロ シーン18 “Promise & pirate”
シーンカード:レッガー(災難/予期せぬ不運。苦渋。絶望。不本意な屈従を求められる。)
ラ・ロシエールが微かに見える程マリーガラント号が離れた頃。ルイズ達(といっても、船内にある風石に魔力を注いで
いるワルドとタバサ、船室で眠っているヒューを除いた3人だが)は不景気な顔を突き合わせていた。
「ところでルイズ、ヒューは大丈夫なのかい?」
「そうね、本人は大丈夫だって言ってたけど…あの顔色は無いわよ。真っ青通り越して土気色だものね。」
「……分かんない、ヒューはいつもの事だって言ってたけど。」
「けど?」
キュルケの質問に、ルイズは召喚した当時の記憶から印象に残っていた事柄を話し始める。
「確か、召喚した時もかなり顔色が悪かった事は覚えているわ……。最初見た時、行き倒れた平民かと思っちゃったもの。
それから…そう、ミスタ・コルベールが使い魔の説明をしていた時に、“死ぬまででいいなら引き受ける”とか…どうとか…。」
「ちょっとルイズ、それって…。」
「ヒューは病人だった、って事かい?」
「その可能性は高い…いいえ、間違い無くかなり深刻な状態なんでしょうね。」
ルイズが口にした結論にキュルケは口を閉ざした、今からならタバサのシルフィードでラ・ロシエールに送れるだろうが、
そうなるとニューカッスルに入る際、レコン・キスタの包囲網を抜けなければならなくなる。
一応、此方にはワルドを含めればスクエア1人・トライアングル2人・ドット1人という陣容だが、ヒューのお蔭でワルド
がレコン・キスタの一員である事は明白だ。病身とはいえ、最大戦力の一つであるヒューが抜けるのは避けるべきだろう。
しかも、ヒューが抜ける事は即ちタバサもいなくなる可能性が高い、そうなると最早絶望的ですらある。
意を決したキュルケが口を開こうとしたその時、覚悟を決めた表情のルイズが話し始めた。
「けど、ヒューは連れて行くわよ。」
「ええっ!そ、それはまたどうしてだいルイズ?今からならタバサのシルフィードでラ・ロシエールに送れるじゃないか。」
ルイズの言葉に驚いたギーシュが質問をする。
「ええ、連中がいるかもしれない所にね。現状で安全な場所といったら、それこそ学院か姫様の庇護下、後は私達の実家位ね。
しかも、そこまで送ったら間違いなくタバサとシルフィードはこの任務に復帰できなくなるわ。いい?ギーシュ、この任務
はタバサとシルフィードがいるといないとでは危険や困難の度合いが段違いなのよ。
それにヒューに関しては戦力以外にも知恵袋としていて欲しいの。」
ギーシュに対するルイズの説明を聞いていたキュルケは内心喝采を送っていた、流石はヴァリエール!こうでなくては、張り
合いがない。
そう思ったキュルケはギーシュに駄目押しの提案をする。
「そうね、ヒューの状態は思わしくないけど、上手くすればニューカッスルで治療が受けられるかもしれないわ。ならいっそ
の事、ヒューを連れて行くべきでしょう。」
「むむむ、確かに2人の言う通りか。シルフィードがいなくなると必然的に敵陣を抜けなければならないし…、ニューカッスル
なら王家付きのメイジもいるだろうし、ヒューにはそこまで我慢してもらうしかないね。」
「それじゃあ私はヒューの具合を診てくるわ、ワルドとタバサが来たら説明しておいて頂戴。」
「ええ、任されたわ。ヒューにはしっかり休んでおく様に伝えておいて。」
ルイズはキュルケとギーシュに後の事を任せると、ヒューが休んでいる船室へと下りていった。
支援らしきもの
ヒューが眠っている船室の前まで来たルイズが控えめにノックをすると、いくらもしないうちに中からデルフリンガーの声が
響いてきた。
【誰だ?】
「私よデルフ、ヒューは?」
【嬢ちゃんか……入んな、相棒は寝ちまってるから静かにな。】
一瞬、立ち去ろうかと思っていたルイズだったが。頭を振ると、ヒューを起こさない様に気を付けて中に入る。
いくつかの簡素な寝台が置かれているだけの部屋、そんな寝台の一つでヒューは静かに寝息を立てていた。
寝顔を見てみると、乗り込んだ頃に比べて幾分顔色が良くなった様に見えた為、ルイズは安堵の吐息をつく。
ヒューの額に浮かんだ汗をそっと拭ったルイズは、鞘から半分だけ抜いていたデルフリンガーに話しかける。
「ねぇデルフ、ヒューから何か聞いてる?」
【ん?何かって何をだい?】
「例えば…病気の事とか。」
ルイズの言葉にデルフリンガーは沈黙していたが、ぽつりぽつりと話し始めた。
【相棒からは特に聞いてねぇよ。】
「そう…」
【ただ、オレサマには持っているヤツの事がある程度分かる能力がある。それで良ければ話してやる、聞きたいか?】
ルイズの心はデルフの言葉に激しく揺れた、恐らくヒューに直接聞けばすんなり話してくれるだろうと思う。
けれど本人に直接そんな事を聞くのは残酷な事ではないだろうか。
ルイズは2番目の姉カトレアの事を思った。カトレアは生まれた頃から病弱で、領地からほとんど出た事が無いほど身体が弱い、
そんな姉がもし自分の死期を悟っていたとして、それと知らずにもしも自分が姉に病気の事を聞いてしまったなら……。自分は
どれほどの後悔に襲われるのか、そんな恐ろしい事は聞けるはずがなかった、ただでさえトーキョーN◎VAはハルケギニア
よりも医学が進んでいたのだ、N◎VAで治せなかった病がハルケギニアで治せるかと問われたら、難しいとしか言えない。
だからヒューに聞く事も出来なかった。召喚した時の言葉から想像すると、彼自身長くない事を悟っていたのだ、だから使い魔
にもなってくれたのだろう。
ふと、視線を感じて顔を上げると、寝ているはずのヒューと目が合う。
「よう、ルイズお嬢さん。どうしたんだ?今にも泣きそうな顔して。」
「な、何でもないわよ!それより身体の具合はどうなの?フネに着くなりいきなり倒れちゃったからびっくりしたじゃない。」
「ああ、ちょいと無理が祟ったのかもな。心配したかい?」
「そりゃあね、一応私は御主人様なんだし、使い魔の健康管理位当然よ。ニューカッスルに着いたらお城付きのメイジに診て
もらうから、しっかり休んでおきなさい。」
「……そいつはありがたいね。ところでルイズお嬢さん。」
「何?」
「聞きたい事とかあるんじゃないか?」
「っ!な、何の事?別に無いわよそんなもの。」
「そうか、悪かったな変な事を聞いて。」
「…スープか何か貰ってくる。少し寝てなさい。」
そう言うとルイズは足早に部屋から出て行くのだった。
支援
「デルフ」
【何だい?相棒】
「お前、お嬢さんに何か言ったか?」
【オレサマが知っている限りでいいなら相棒の事を教えてやるとは言ったけどな、結局聞かずじまいだったよ】
デルフの答えに苦笑すると、ヒューは話を続ける。
「なるほど、俺なんかよりよっぽど優秀だよ、お嬢さんは。」
【そりゃあどういう意味だ?相棒】
「詳しい症状は分からないだろうが、俺が長くないって事を確信してるんだろう。」
【本当にどうしようもないのか?】
「無理だな、第一今まで生きていた事からしてファイブカード…ありえない位ツイてたって事なのさ。
とりあえず、可能性としてはクローニングによる再生治療が挙げられるが此処では無理な相談だし、仮にここがN◎VAだ
ったとしても治療には時間も金も足りない、XYZだ。」
【で、あとどれ位持ちそうなんだ?】
「そうだな、長くて1週間って所じゃないのか?
何とかルイズお嬢さんとの約束は守れそうだから、俺の終わりにしては上等な所だろう。」
【約束?】
「“お嬢さんの魔法を見つける”、“俺が死ぬまでなら一緒にいる”ってな。
このハルケギニアで最初に交わした約束さ。」
【そうかい、じゃあこの仕事は何がなんでもやり通さなきゃあな。】
「ああ。」
溜め息にも似た言葉をデルフリンガーに返したヒューは、再び泥の様な眠りに落ちていった。
翌日、ヒューは喧騒の中で目覚めた。身体の芯から響く痛みを押し隠しながら寝台から立ち上がるのとほぼ同時に、ルイズ達
が部屋に入ってくる。
「ヒュー!大丈夫なの?」
「この騒ぎだ、そうそう寝てもいられないだろう。アクシデントか?」
ルイズの言葉に答えながらヒューは<弥勒>を装備する。
そして、ヒューの質問に答えたのはルイズではなくワルドだった。
「空賊だよ、ヒュー君」
「空の海賊という事か…、ハルケギニアならではだな。」
「抵抗しようにも僕とミス・タバサは風石に力を送り続けていた所為で、碌に魔法が使えない。
しかも連中に上をとられている、お手上げだよ。」
ヒューは話しながら次々と装備を整えていく、最後にデルフリンガーを鞘に収め直して、右手に持つと苦々しい口調で一言ぼやく。
「空賊が出るとは聞いていたが、まさか本当に出くわすとはな。」
「君は知っていたのかい?」
「可能性としてな、10人以上のメイジが乗り込んでいる空賊がいるという情報があった。」
「10…それはまた」
「何で言わなかったの、ヒュー。」
ルイズの疑問にヒューは肩を竦めながら答える。「知った所でどうしようもないからさ」と。
「どういう事だい?」
「ギーシュ、例えこちらのメイジの全員が魔法を唱える事が出来る状態だったとしても、連中が唱える魔法の方が多い。
しかも上を抑えられているからな、障害物もあまり意味が無い、こういった状況では手詰まりだよ。
一番良いのは出くわさない事、次が逃げる事なんだが…どうも連中は襲い慣れている様だな。
子爵、貴方のグリフォンは此処からでもアルビオンに辿り着けるかい?」
「厳しいな、ミス・タバサの風竜ならば問題はないだろうが……。」
「じゃあ、しょうがないな。ここは潔く降参するしかないだろう。」
ヒューが出した結論に、皆不満はあるものの納得したのか、全員で甲板へ向かう事となった。
支援
一行が甲板に出ると、そこにはマリーガラント号の船員と空賊であろう男達が向き合っている。甲板の中央には魔法で眠らさ
れたのか、シルフィードとヴェルダンデ、そしてワルドのグリフォンが寝息を立てている。
船室から出てきたルイズ達を見て空賊達は喝采を上げた、貴族の身代金は普通に貨物船を襲うよりも金になるからだ、もちろ
んそれなりの危険は伴うが、手に入る金額と比べれば十分以上の見返りだろう。
空賊達の声に身じろぎをした一行(ヒューとワルドは平然としていたが)に、空賊のリーダー格らしい眼帯をしたの男が部下
を3人引き連れて歩み寄ってくる。
「へぇ、貴族の客まで乗せていたとはな、しかも別嬪揃いときた。
俺達のフネに付いている大砲が見えるのなら手前ぇ等も杖と剣を捨ててもらおうか。
おう、この客人から武器を預かって差し上げろ。」
ルイズは屈辱に震えながら空賊達に杖を渡したが、男を睨み付ける目は一瞬たりとも逸らさなかった。
「お前等は俺達のフネに来てもらう、嬢ちゃんみたいな目をしている奴は手が届く所に置いておかねえと何しでかすか分かった
もんじゃねえからな。」
そうして、ルイズ達は空賊船の船倉に押し込められる事となった、杖や剣といった一目で武器と分かる物は全て取り上げられ
たが、それ以外の荷物は全て持たされている。
船倉にある小ぶりな舷窓から外を見ると、どうやら移動を再開したようだ、マリーガラント号はこの空賊船に曳航されている
のだろう、大人しく追従していた。
「ワルド、これから私達どうなるのかしら。」
「希望を捨ててはいけないよルイズ、勝利はいつだって最後まで諦めなかった者にこそ与えられるんだ。」
「そうね、この任務は何としてでもやりとげないと、トリステインで生きる人々が危機に陥ってしまうんだもの。」
決意も新たに「むんっ」と気合を入れたルイズは、ワルドが自分を暖かい目で見ている事に気付いて顔を赤らめた。
「…ワルド、私何か変な事を言ったかしら?」
「ん?ああ、いや君は立派な貴族になったんだな…と思ってね。」
「いいのよ、別にお世辞なんて言わなくったって。私はコモンマジックもろくに使えないダメメイジだってちゃんと分かってるんだから。」
「ルイズ、貴族らしくある事と優秀なメイジである事、そして良き貴族である事は決して等しくはないんだ。」
そう言った時のワルドの表情は、自嘲・怒り・悲しみ…何と表現したら良いのか分からなくなる物だった。
ただ、ルイズはもしかしてこれこそがワルドの本当の顔なのではないだろうか?そう思ってしまい、何故だかこの男が哀れに
思えて悲しくなる。
「ワルド?」
「いや、もうよそう。ただ、今の気持だけは忘れないでいてくれると嬉しいと思ってね。」
「大丈夫、忘れないわ。だって色んな人から教わった大事な事ですもの。」
そう言って笑ったルイズを、ワルドは微笑ながらも決して届かない物を見る目で眩しそうに見ていた。
それから小1時間経った頃だろうか、船倉の扉が開かれると頭を剃り上げた大男が現れて全員に告げる。
「お前等、お頭がお呼びだ、さっさと出ろ!」
船倉に閉じ込められてからというもの、一言も言葉を出さなかったヒューが苦笑いを浮かべながら、一行の最後尾に付いていく。
「やれやれ、何とかなりそうじゃないか。」
支援
クローニングによる再生治療(I)
…読んで字の如く、体細胞を復元する事による再生治療の事。
ヒューの様なケースだと、その治療には天文学的な金額が必要になる。
XYZ(S)
…ラムベースのカクテル。終了、終わり。バイバイ、さようなら、またね、あばよ。
支援ありがとうございました。
ようやくシーン18 を更新できました、実はこれ2回目です、1回目は保存する際に間違って消しました…orz
で、後は仕事が忙しかったりで中々書けずにいましたが、何とか書き上げてうpできたという……何にしても3週間は空け
すぎだと思わなくも無いのですが。
しかし、この話の終盤…なんだかワルドが綺麗ですよ?おかしいと思いつつ、指が進むままに入力していきました。
楽しんでくれたら何よりです。
それではまた、次回はいつ位になるかは分かりませんが、なるべく早く仕上げてうpしたいです。
乙
普通の(汚い)ワルドかと思ったら意外ときれいなワルドなのかこれ?w
乙
ヒュー、頑張って生きてんなぁ。
やっとヒューきてくれた。ずっと待ってたんだからね。
そろそろゴル兄さんでも来てくれまいか
月も二つあることだし。
>ゴル兄さん
ゴル(ゴムに改造された世紀王の)兄さんか?
>>245 クソワロタ
もはや清村マテリアル使いの域を超えてるだろww
>>229 まってくれ、アクマの人の人修羅はすごく平和主義者だぞ?
出来ると実行するの間にはすごく大きな壁があるんだ。
>>290 FF4のゴルベーザ様っす
最終戦から来てくれれば色々後腐れないしなー
うっひゃ〜!?
ゴーストの人来てた〜!
乙であります!
ゴルベーザは小ネタで四天王と一緒に呼ばれてたね。
完全にギャグだったけどw
ゴーストの人、乙です。
元ネタが気になってリプレイ買って読んでみた。
ヒュー(のイラスト)がイメージ以上に若々しくて吹いたw
>>245 ワルドのペンダントの中身がウーパールーパーのウパパーの写真なんですね。わかります
>>296 俺も気になって購入したクチだw
ヒューがかっこよくて困る。
>>298 そう、右上の人。
上から二番目の紫の物体だったら良かったのに
上から二番目の紫の物体は正体はどこ見てるかわからない眼をしたスキンヘッドの黒人だぜ
なるほど、ウォーズマンか
FFのガーランドは・・・。
駄目だ、アンリエッタを誘拐して
立て篭もって全員かかってこいやっちゃう・・・・
どこぞの超絶美形主人公(自称)ならサイト以上にやってくれそうだ(性的な意味で
闇の炎に抱かれtバカなっ
激しく亀だが対3万人戦…
レコンキスタ兵「うわーもうだめだー」
レコンキスタは全滅した
, _ 、 \ `-'rrー-fl、;;;,,..___;;;rr;:ノ\ /ノ) ガチタン!
' ´ ` \(―(三((◎~~0~~0~~◎/川彡'三つ ガチタン!
( ´神`)ノ) ) \―(三ゝ(◎)(◎)( /、⊂ミ∩彡⊃ ガチタン!
ミ 三彡, ソ´ \ ∧∧∧∧/三ミ( ´神`)彡三彡三⊃ ガチタン!
)ミ 彡ノ < ガ >彡川⊂彡川ミ⊃ ガチタン!
ミ 彡゛ < 予 チ >川∪⊃ U川彡⊃ ガチタン!
\( < タ >∪ 川 ∪ミ) ガチタン!
‐───────< 感 ン >─────────────
∩ < の > 点
(´神`)ノ ))) < !!!! > ヽ( ´神`)ノ <ぶぶぅ〜んどどどぅ
( 二つ /∨∨∨∨\ ノ ノ
ノ 彡ヽ /`)l(´神`) l(´神\ ノ >
(_ノ ⌒゙J /ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ\彡
左下のおっさんはこのリプレイの中でもっとも悪人だった。
死んじまったがな。
>>311 『悪人』の前に『格好良い』を付けるのを忘れてるぜ。
『ニューロな』でも可。
>>312 すまん忘れてたw
あのおっさんは古きよきおイヌ様って感じで大好きだったわ。
>>298 何だこの触手付きの淫乱テディベアはwww
>>298 そうか、これがヒューなのか。
俺はスパロボの孫光龍みたいなのをイメージしてたが、まるで違ったな。
,,x-ー:: ":::::
,x '"::::::::::::::::::::
,、'":::::::::::::,, x-‐ ァ:
,,x '"::::::,,、- '" |:::
`"i`ー'" ヾ
! 、 、,,,,,,,,,;;;;;;;;;彡ミ
|,,,,ノi `ーヾ;; '"----、
ヾ::ヽ -┴'~
~|:/ ' ' ' `ー ' "'"
/_
l '' ) i
ヽ,,、'~` U
゙, __ ,-、_,ノ`
|/ ゙, `'" ,,y
|/ 彡 ゙、`-'"
/|/ i
/ ! ,, -'"
| `ー '"|::
| /|||ヽ
/|||||/心
|ヾ/ /`ー
そこでそのAAを持ってくるセンスは度し難い
それ以前にAAを貼るな
>>304 ビッチイラネと返却しようとするガーランドが見えた
てかカトレアかテファが適任と思われ。
>>315 俺もそんなイメージなんだっぜ?
ちなみにユーゼスはどうしてもαの四つ目仮面Verでしか再生されない。
スパロボとはイメージが違いすぎる、スパヒロはやったことない、
ってもんだから、普通に絵板の朴念神形態がイメージされるぜ
授業で錬金失敗して教室で独りで落ち込んでいるルイズ。すると物音が。
「誰!?」
「ピーターパンさ」
涙をぬぐって窓の外を見ると、そこにはエアバイクに乗ったコブラの姿が!
「どうだい、お姫様。月夜の空を遠乗りとしゃれてみないか…」
「まさか…わたし、こんな格好よ」
爆発でボロボロになった自分の格好を見て、恥らうように、悲しむようにうつむくルイズ。
そんなルイズにコブラはやさしく微笑みかける。
「だれも見ちゃいないさ」
そう言うと、ルイズの小さな手をそっと掴まえ、抱き寄せるコブラ。
「月以外はね!」
もしくは
テファのおっぱいを見て「ヒューッ! 見ろよ、やつの筋肉を……まるで鋼みてぇだ!」という才人
というネタですらない妄想が浮かんできた。
お前さんたちがヒューヒュー言ったりするから!!
言ったりするから、こんな!!
スーパーヒーロー作戦は何度もプレイしたが
整形後のユーゼスを思い出そうとすると
時々スパロボZのシュラン=オペルが出てくるので
また再開するとしよう
Zから召喚されるとしたらやっぱジエー博士かジ・エーデルだろうなぁ
ヤツにとってはルイズのお仕置きはまさにご馳走
ルイズが嫌がっても爆発で物足りなくなるまでは仕えてくれるだろう
・・・飽きたらハルケギニアが蹂躙されるだろうけど
レーベッン……あぁっ、レーヴェンッッッ!!
クロスゲーならヒーロー戦記をプレイした
どうも今晩は、流石に三月といえどもこの時間にはすっかり暗くなってますね。
新しい次の話を書き終えたので後十分後に投稿しようと思います。
良ければ支援の方、よろしく御願いします。
腋巫女支援
ヒャッハー!支援だ!
ルイズは今、もの凄く混乱していた。
嫌な夢から覚め、起きたばっかりに鼻を打ち付けた直後アンリエッタ王女が部屋を尋ねてきたのだ。
この国の者じゃなくても国の頂点に立つ者が自分の部屋を尋ねてきたら誰しもルイズみたいに目を白黒させる。
急いで膝をついたルイズを見たアンリエッタ、申し訳なさそうに口を開いた。
「あぁルイズ、あなたならば私の前で膝をつかなくとも…」
「ひ…姫殿下!こ、今夜は如何なる御用で下賤なる私の部屋へといらしたのですか?」
ルイズのかしこまったような感じの声を聞き、アンリエッタは寂しそうな顔をする。
「顔を上げてルイズ!そんなにかしこまらないで頂戴!私たち二人の仲じゃないの!?」
アンリエッタは悲痛な声でそう言うとルイズを無理矢理立たせた。
ルイズも流石に昔の幼なじみということで観念したのか、緊張していた顔を綻ばせた。
「お久しぶりですね、姫さま。」
「えぇ本当にお久しぶりねルイズ。お互いこんなに成長して…昔のように泥だらけになって遊ぶことも出来なくなったわ。」
そう言ってアンリエッタとルイズは思い出していた―――
幼い頃中庭を飛び回っていた蝶を捕まえようと走り回り、お召し物が泥だらけになってまで追っかけ回した……
そしてその後、従徒のラ・ポルトに叱られ、二人共おやつ抜きにされた事も―
「あは…本当に懐かしいですね。」
「えぇ、本当に…懐かしいわね、ルイズ・フランソワーズ。」
昔のことを思い出したルイズはそう言って微笑んだ。
子供の頃は二人とも、将来の道とか考えず無邪気に遊んでいた。
ふわふわのクリーム菓子を取り合って喧嘩したり、ドレスの奪い合いの際アンリエッタのパンチがルイズを気絶させたこと。
それ等は全て、ルイズとアンリエッタの中では思い出と化し、二人をあの頃へと逆戻りさせた。
やがて大きくなって行くにつれ、ルイズは魔法学院へ―アンリエッタは王宮へお互い別の道を歩み始めた。
離れていた時間の分だけ、ルイズは昔のことを思い出し、どんどん微笑んでいく。
一方で微笑んでいるルイズとは真逆にアンリエッタの顔は憂鬱な物となっていた。
まるで後数日であの世へと旅立ってしまうような…そんな感じを醸し出している。
「ホント…あの頃は何の悩みもなく、毎日が楽しかったわ…。」
「姫さま…?どうかしたのですか。」
ルイズはアンリエッタの顔をのぞき込んだ。
そんなルイズを気遣ってか、アンリエッタは精一杯顔を明るくしようとするが…逆にもっと暗くなってしまった。
だがしかしそれに気づくこともなく、彼女は幼なじみにこれからの事に関する事を伝えた。
「実は私…近い内にゲルマニアの皇帝と結婚することになったのよ。」
ルイズはアンリエッタの口から出てきた言葉に即座に反応し、驚愕した。
「えぇ!あ、あのゲルマニアのこ、皇帝とけけけけ、結婚ですか!」
ゲルマニアと聞き、隣にいるキュルケを思い浮かべ、ルイズは信じられないという風な顔をする。
「あんな実力主義者と利害の一致で出来た野蛮な国に姫様が嫁ぐなんて…。」
少々言い過ぎかも知れないが間違ってはいないので誰も咎めることは出来無い。
◇
ここで少し説明を入れてみよう。
ゲルマニアは長きにわたるハルケギニアの歴史の途中で生まれた国である。
ガリア、ロマリア、アルビオン、そしてトリステインと比べればその歴史は余りにも浅い。
そして特徴的なのが「力か金があれば平民でも領地が持て、貴族になれる。」という事である。
常に新しい道を進んで歩むゲルマニアはそれで国力を蓄え気づけばガリアと肩を並べるほどの大国となっていた。
だがそんな実力主義をトリステイン等の貴族達は「メイジでなければ貴族であらず」と、厳しく批判した。
まぁ最も、それが原因でトリステインは国力を上げれず小国として収まっているのであるが…。
では、ここら辺でこの話は置いておくとしようか。
◆
「しょうがないのです…何せ今はとんでもない事になっているのですから…。」
アンリエッタはそう言い、ベッドに腰を下ろしてため息をついた。
今回のゲルマニア皇帝との婚姻は、とある事情で決定が下されたのである。
「とんでもない事…?一体それは…何なのですか?」
ルイズはがアンリエッタに問うと、彼女は口を開き、事情を説明しだした。
―――ガリア、トリステイン、アルビオン。
三つある王権の内一つであるアルビオンでどうやら貴族達による内乱が起こったらしい。
王党派の者達は死にものぐるいで抵抗しているらしいが多勢に無勢で、近いうちに滅ぶと王宮の者達は言っているようだ。
そして王党派が倒れればアルビオンの貴族派の者達は間違いなくこの小国へ攻め込んで来るに違いないと予見したらしい。
アンリエッタはそれを聞き、仕方なく枢機卿やその他の者達の薦めでゲルマニアの皇帝へ嫁ぐ代わりに同盟を結ぶことになった。
「なるほど…その様な理由で婚姻を結んだのですか…。」
ルイズは納得したようにそう言うとイスに腰掛け、大きなため息をついた。
かつて自分と共に遊んだ少女は、政治の道具と化していたのだから。
最初の時とは打って変わって沈痛な雰囲気の部屋でアンリエッタがふと口を開いた。
「でもその同盟が、もしかしたら私のたった一つの過ちで潰えるかもしれないの。」
「なっ…!?」
彼女の口からでた言葉にルイズはイスから素早く立ち上がった。
一体アンリエッタはどんな過ちをしたのだろうか…?
ルイズはアンリエッタの傍によると彼女の横に座り、肩を掴んで顔をのぞき込んだ。
「それは一体どんな過ちなのですか?教えてくださりませんか…姫様。」
彼女の言葉にアンリエッタはハッとした顔になると両手で顔を覆ったた。
「あぁ今私はとても危険なことを言おうとしたわ…私にはもう信用できる人物があなたを入れて数人しかいないというのになんて事を!!」
アンリエッタはそう叫ぶとそのまま床に崩れ落ちた。
そんな幼馴染みを見たルイズはアンリエッタを優しく抱きしめた。
「姫さま、どうかこの私めに聞かせてください。私たち友達でしょう?その絆を今確かめずに何と致します!?」
取り乱すアンリエッタに、ルイズも半ば叫び声のような感じでそう言った。
幸い部屋の壁はちゃんとした防音仕様のため、聞こえることは無い。
それを聞いたアンリエッタは少しおとなしくなるとルイズの手を借りて立ち上がり、再びベッドに座り込んだ。
ルイズも一息つくと椅子に座ると、アンリエッタは喋り始めた。
「正直、これは私自身が片づけるべき問題…そんな事の為に他人を使いたくは無いと思ってるの。
けど…もう今の私にはどうしようも出来なくなってしまって他の誰かに頼まざる得なくなったわ。
…先程話していたアルビオンとの内乱、その二つの派閥の内王党派に属するプリンス・オブ・ウェールズ。
その彼に、ある「手紙」を送ったことがあるのよ…。使いようによっては、ゲルマニアを憤慨させるほどの力を持った。」
ルイズはそれを聞き、目を見開いた。
ウェールズ…その人物は現アルビオン王、ジェームズ一世の息子。
アンリエッタとは血縁上、従姉妹に当たる人物でもある。
ルイズも一度、ラグドリアンの湖で行われたパーティーで顔を見たことがあった。
パーティー自体は三年前の事ではあるが当時のルイズも美しいとさえ思った程の美男子だった。
そんな華麗な皇太子にしたためた、「ゲルマニアを怒らせるような手紙」とは一体どんな内容が書かれているのだろうか。
ルイズはそれが少し気になったが、アンリエッタの表情を見ているとどうもそれが聞き難い。
「そして、貴族派の者達の手にその手紙が渡るよりも早く…誰かがその手紙をウェールズ皇太子から受け取らなくてはならないの…。
戦場と化している白の国に単身乗り込み、尚かつ私を裏切るという行為をしない忠誠心を持った者を…。」
そこまで聞き、ルイズは全てを悟った。
もしかすると…アンリエッタがこの部屋に来た理由、それはもしかして…。
「では、この重要機密を聞いた私は…アルビオンへと行き、手紙を取ってくるのですね?」
ルイズの言葉を聞いたアンリエッタは一瞬ポカンと口を開けたが、すぐに気を取り直すように頭を横に振るとスクッと立ち上がった。
自然とルイズも席を立ち、地面に膝をつくと頭を下げた。
アンリエッタは一度目を瞑り、決心したかのように開けると口を開いた。
「ルイズ・フランソワーズ…、この私アンリエッタ・ド・トリステインからの仕事を引き受けてくれないかしら?」
ルイズは今この瞬間、幼馴染みとしてではなく、王女としてのアンリエッタから重大な任務を言い渡された。
支援
>>314 30秒間だけとはいえ、世界を支配した男だぞw
その淫乱テディベアはw
◇◆◇
「はい、どうぞ。」
シエスタは、丁度良く冷えたタオルをジーッと天井を見つめている霊夢の前に差し出す。
それを霊夢は手探りで受け取るとタオルを鼻の上にかぶせるとシエスタにお礼を言った。
「有り難う、助かったわ…。」
霊夢は軽く鼻を押さえ、なるべく鼻血が出ないように四苦八苦している。
先程までお風呂に入っていた霊夢は色々頭の中で考えていたせいか、いつの間にか鼻血を出してしまっていた。
とりあえずルイズの部屋へ帰るよりも、まずは鼻血を止めようと乾いた服を急いで着て近くにあった厨房へと寄ったのだ。
「ハッハァッ!レイム、お前ボーッとし過ぎてのぼせちまったんじゃないのか?」
「アンタにはそう見えても、私も結構色々考えてるんだけどね…。」
霊夢の近くにいたマルトーが頭に被っていた帽子を机に置いてそんな事を言った。
それに対し霊夢は少し苦虫を潰したような顔をして返事をする。
だがそんな顔も厨房の灯りを消し、暗くなった厨房の奥へと入っていくマルトーの目には届かなかった。
「でも凄いですよね、自分でお風呂を作るなんて…というかあんなに簡単に作れるとは思いませんでした。」
霊夢の横に座っているシエスタが感心したように呟いた。
シエスタ達学院で働く平民や衛士達のお風呂といえば、ほぼサウナと言って良い代物である。
それから少しして、霊夢の鼻血も大分引いてきた時。
厨房の奥に入っていたマルトーが一本のワインボトルとコップを両手で大事そうに抱えて戻ってきた。
「さてと…明日の仕込みも全て終わったし…酒を嗜む時間とするか!」
そう言ってマルトーは机に置いていた自分の帽子の横にそのボトルを置きイスに座った。
やっと頭を下げれるようになった霊夢がそのボトルの中身を見て目を細める。
「就寝前に一杯とはね…伊達に料理長とかやってないわけね?」
霊夢のその言葉にマルトーはガハハと笑うと口を開いた。
「当たり前だ!それに、風や水の魔法が使えるメイジ共はいつでもワインが飲めるよう部屋に置いてんだ。
それに比べ俺達給士なんかは夜中にこっそりバレないよう飲んでるんだぜ?」
「ふ〜ん…じゃあ私も一杯頂こうかしら。丁度何か飲みたかったところだしね。」
「おぅよ、じゃあ待ってろ。コップをもう一つ持ってくるぜ。」
マルトーはそう言うともう一度厨房の奥へと消えていった。
シエスタはそれを見て呆れたようにため息をついてそのボトルを見つめた。
「全く、マルトーさんたら…夕食用のワインを飲んでるのがバレたら言及どころじゃ……って、あれ…?これってまさか……ウソォ!!」
ボトルの銘柄が目に入ったとき、シエスタは驚きの余り大声を上げて立ち上がってしまった。
そして厨房の奥から戻ってきたマルトーを見て、ボルトを指さしながらシエスタはマルトーに言った。
「マルトーさん、一体何処からゴーニュの古酒なんか持ってきたんですか!?うちの学院にはなかったはずでしたけど!」
「ハハハ!なぁに、この前貯めていた給料持って街に出かけたらよぉ…丁度市場でそいつが売られていたから買ったワケよ!」
「ごーにゅ…?なんか変な名前の古酒ねぇ。」
「まぁ名前はともかくとして結構美味だ!さぁさぁ今夜は飲むぞ!」
◆◇◆
「では…、明朝にでも出発し、アルビオンのウェールズ皇太子にこの手紙を渡す。
そして次に姫さまが皇太子にへと宛てられた手紙を受け取って欲しいということですね?姫さま。」
ルイズは先程アンリエッタが急いで書いた手紙を手に持ったまま向かい合ってイスに座るアンリエッタへ問う。
アンリエッタは小さく頷くと、真剣な表情でルイズに言った。
「えぇ、旅のお供には私自身で選抜した者を一人だけ付けます。その者ならばちゃんとあなたを守りきることが出来るでしょう。」
ルイズはそれを聞き頷くと、席を立ち部屋のドアをなるべく音を立てず、少しだけ開けた。
それから廊下に誰もいないのを確認するとドアを一度閉め、此方を見つめているアンリエッタに頷いた。
「では、そろそろ私も自分の部屋に戻ることにします。此度の任務の成功祈っているわ。ちなみに、この話は他言無用で御願いします。
例え親しい者であろうとも絶対にこの事を言ってはなりません。よろしいですね?」
アンリエッタは念を押してそう言い席を立つと、部屋を出ようとする。が、ふと足を止めた。
「姫さま…?」
「忘れていたわルイズ、これをあなたに託しましょう。」
アンリエッタルイズの方へ顔を向けると右手の薬指に嵌めていた指輪を引き抜き、ルイズに手渡した。
台座部分には綺麗な水色のルビーが入っており、美しく輝いている。
「母から貰った「水のルビー」です。道中、路銀の事で悩むならば遠慮無くこれを売り払っても構いません。」
「う…売り払うだなんてそんな事、出来ませんよ。」
「いいのよルイズ、私からせめてもの贈り物として受け取って。」
ルイズはそれを聞いてとんでもないと指輪を返そうとするがアンリエッタその手を受け止め押し戻した。
渋々ルイズは受け取ると表情を引き締め、直立した。同時にアンリエッタも真剣な面持ちで口を開く。
「今回あなたに託した任務にはこの国の未来が掛かっています。是非ともそれを忘れず取り組んでください。
ルイズ・フランソワーズ。先程渡した水のルビーが、あなたをアルビオンの猛き風から身を守ってくれるでしょう。」
ルイズはその言葉に腰に差していた杖を抜き、それを掲げてこう呟いた。
「姫殿下に変わらぬ忠誠を、ヴィヴラ・アンリエッタ。」
アンリエッタは満足したように頷くと踵を返し、ドアノブを掴もうとしたが、ふとその手が止まった。
「そういえばルイズ、貴方はもう二年生なのよね?」
「え…?まぁ、はいそうですがそれが何か…。」
「今まで気にならなかったけど、貴方の使い魔は何処にいるのかしら。」
「いっ…!?」
ルイズはその言葉にギョッとすると冷や汗が出そうになった。
「二年生に進級するには使い魔を召喚しなければいけないのでしょう?なら貴方が二年生になったということは貴方は使い魔を…
貴方、昔良く失敗魔法ばかり出してお母様に怒られていましたね。やはり人間成長するというもの…」
そんなルイズとは裏腹に、アンリエッタの口からはどんどんと言葉が飛び出してくる。
今ルイズが召喚した霊夢は入浴してくるといって部屋から出たままだ。
だが、今この部屋にいなかったのはある意味良かっただろう。
もし部屋にいたら、きっと遠慮の無い発言をアンリエッタに投げかけていたに違いない。
あるいは無視を決め込んでいたかも知れない…
「い、今私の使い魔はそ…外に…。」
ルイズは必死に作り笑顔をしながら言った。
運良くアンリエッタはその作り笑顔には気づくことはなかった。
「あら、そうだったの?この目で見たかったけど…残念だわ。じゃ、また逢える日を…。」
「……はい、この任務。必ず成功させて見せます。」
アリンエッタがそう言い、ルイズがそれに答えるとアンリエッタは部屋を出て行った。
◆
やがて時間も過ぎ、太陽がいよいよ顔を出そうとしている時間帯。
学院の正門近くに植えられている草むらに一匹のジャイアントモールがひょっこりと土の中から顔を出していた。
このジャイアントモールの名はヴェルダンデ。れっきとした使い魔である。
そのヴェルダンデが土から顔を出してから数分が経った後、草むらをかき分け自分のご主人様がやってきた。
明らかに可笑しいデザインのシャツを着込み、ナルシスト的な雰囲気をこれでもかと放つ金髪の男子生徒である。
彼は両手になにやらモゴモゴと蠢く革袋を抱えており、ヴェルダンデがそれを見て目を輝かせた。
「やぁヴェルダンデ。今日もお腹を空かせているね。待ってろよ、今すぐ腹一杯喰わせてやるよ。」
ヴェルダンデの主人、ギーシュ・ド・グラモンはそう言うと袋の口を閉めていた紐を解き中身を地面にぶちまけた。
そこからやけに大きめなミミズがどばどばと地面に落ち、クネクネと地面を這い回っている。
ミミズの大群を見たヴェルダンデはヒクヒクと鼻を動かすと口を開きミミズの群れにかぶりついた。
ギーシュはそんなヴェルダンデの姿を見てウンウンと満足そうに頷くと、ヴェルダンデの傍に何やら光り輝く物を見つけた。
それは色とりどりな宝石や鉱石であった、ギーシュは何十個もあるそれの内一つの鉱石を手に取った。
『土』系統のメイジである彼にはこれら全て上質な素材であり、ヴェルダンデは良き協力者である。
「これは中々良い代物じゃないか、良くやってくれたねヴェルダンデ!」
ギーシュはそう言うとヴェルダンデに抱きついた、ヴェルダンデ自身もそれを悪く思わずヒクヒクと鼻を動かしている。
そんな風にヴェルダンテとギーシュが抱き合っていると、ふとヴェルダンテが顔を別の方へと向けた。
「ん?どうしたんだいヴェルダンデ…。」
ギーシュがそんな風に尋ねるとヴェルダンデは鼻を正門がある方向へと動かしている。
何かと思い、ギーシュは草むらをかき分け、顔だけ出して何があるのか見てみることにした。
ギーシュの目には、大きな旅行用鞄を手に持ったルイズが正門前に佇んでいた。
彼女の傍には、本来居るはずの自分を負かした霊夢がいない事に気が付く。
「あれはルイズの奴じゃないか…一体どうしたんだ?旅行用の鞄なんか持って。」
まさか退学?かと思ったが思い当たる節はあるものの…それ程酷くは無いはずだ。
それに霊夢が近くにいないのは一体どういう事なのだろうか…?
ギーシュがそんな風に考えていると、ふと朝靄がかかった空から一匹のグリフォンが舞い降りてきた。
よく見るとその背中には羽帽子を被った貴族を一人乗せており、グリフォンが着地したと同時に乗っていた貴族もグリフォンの背から降りた。
スラリと伸びた体に無駄のないプロポーション、そして羽織っているマントにはグリフォンを形取った刺繍。
それは間違いなく魔法衛士のグリフォン隊が愛用するマントだ、ギーシュは思わず声を上げそうになった。
(グリフォン隊の衛士がこの学院…というよりルイズにいったい何の用があるんだ?)
途端にギーシュは興味津々になり、今まで以上に気配を殺しながらその様子を観察し始めた。
ルイズと向き合うように地面に降りたグリフォン隊衛士は何か言いながら頭に被っていた羽帽子を取った。
そこから現れたのは、長い口ひげが凛々しい精悍な顔立ちの若者であった。
ギーシュははその顔を見て、今度は立ち上がりそうになったがそれをなんとかして堪えた。
ルイズはその顔を見て頬を僅かに赤く染めると嬉しそうに話しを始めた。
彼にはとても信じられなかった、あのルイズが…まさかあんな出世街道まっしぐらの男と親しいだなんて…
その後二人が何か話し合った後、グリフォン隊衛士はグリフォンに跨ると旅行鞄を手に持ったルイズへ手を差し伸べた。
ルイズはその手を恥ずかしそうに掴み、グリフォンの背中に乗ると、グリフォンはあっという間に学院とは反対方向の、朝靄が漂う森の中へと消えていった。
やがて辺りは呆然としているギーシュと嬉しそうにミミズを食べている自分の使い魔しかいない。
まるでルイズとあの男が最初からただの幻想だったようにさえ思えて。
だがギーシュはちゃんと見ていた、あの男の顔を…素晴らしい才能を持ったあのグリフォン隊隊長を。
「ま、まさかあのルイズが…ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド殿と親しい間柄だったなんて…。」
ギーシュは目を丸くし、信じられないといった風に呟いた。
◇
支援
今朝、博麗 霊夢は起きて直ぐに隣で寝てるはずのルイズがいないことに気が付いた。
昨晩はマルトーと一杯…のつもりが何杯も飲んでしまい結局ほろ酔い気分で寝巻きに着替えてベットに入った。
その時のルイズはベッドの中で寝息を立てて寝ていたのはちゃんと記憶の中にある。
「一体あいつ何処に行ったのかしら…。」
霊夢はそんな事をぼやき、ベッドから出て窓を開けた。
今日は朝靄が掛かっているためか、窓越しに見える朝日の輪郭も曖昧でハッキリと分からない。
とりあえず霊夢は以前掃除の際クローゼットの中から見つけた余計なフリルがない寝巻き―ルイズは「なんで買ったのかわからない」と言っていた。――を脱いだ。
下着姿になると丁寧にたたんでテーブルの上に置いていた自分の服を手に取り、それに着替える。
いつもはあるはずの洗濯物は今日に限って無く霊夢はとりあえず顔を洗おうと水汲み場に行こうとした時、ある事に気が付いた。
「鏡台の近くにあったあの大きな鞄…あった筈よね?」
いつもルイズが旅行用にと買い、鏡台の近くに置いていたあの鞄が無くなっているのに気が付いた。
霊夢はそれに疑問を感じたが、まぁ何処か別の場所に置いたのだろうと思う事にし窓から身を乗り出すとそのまま水汲み場の方へと飛んでいった。
◆
その頃、学院長室にはオールド・オスマンとコルベール…そしてアンリエッタ王女がいた。
オスマンとコルベールの二人は朝早くアンリエッタに起こされ、ルイズが受けた任務の事を聞いてからずっと沈黙していた。
だが、ふとオスマンが大きなため息をつくとアンリエッタの方へ顔を向け口を開く。
「ふぅむ…まさか我が校の生徒がそんな危険な任務に就くなどとは…この老いぼれは思いもしませんでしたわ。」
「ですがあの娘には古き良きヴァリエールの血と、私への深い友情があります。
それに、ワルド子爵は王宮での唯一の信頼できる者であり彼女の婚約相手です。私に出来ることは成功を祈ることだけです。」
アンリエッタが申し訳なさそうに言うと、次いでコルベールが喋り始めた。
「それ程言うからには王宮内では相当な事になっているでしょうか?噂では色々と不穏分子がいると聞きましたが…」
「えぇ…今回のアルビオンに現れた反乱分子『レコン・キスタ』は貴族だけで国を支配しようと言う者達の集まり。
忠誠よりお金を愛する者どもには丁度良い拠り所でしょう。」
アンリエッタはそう言い終えると傍らに置いていた白い包みをテーブルの上に置いた。
「それとこの本を…学院に寄贈しようと思いまして。」
それに興味を示したコルベールはその包みを解き、その本を手に取り、怪訝な表情をした。
「この本はいったい何なのですか?見たところ、文字のような者が書かれていますが…。」
本の表紙にはこのハルケギニアに住む者にとっては見たことのない『文字』が書かれているのだ。
「以前私が幼い頃にアルビオンへ赴いた時に記念にと取ってきた物です。この通り表も中も見たことのない異国の文字で書かれておりまして…」
ペラペラとページを捲るコルベールにアンリエッタは説明を入れた。
やがて最後のページまでくるとコルベールはパタンと本を閉じ、再びテーブルの上へと置いた。
「それと何やら悪魔に似た形の者や異形の絵も描かれているのです。特に大した思い出もないので、好きにしても構いませんよ。」
そう言い終えた直後、ドアの外から見張りをしている衛兵の怒鳴り声が聞こえてきた。
(…だから無理だと言ったら無理だ!この部屋に入るにはちゃんとした許可が…グエッ!)
何かを強く叩いた様な音が聞こえた後、霊夢が御幣片手にノックはおろか挨拶すら無しにドアを開けて部屋に入ってきた。
アンリエッタは部屋へ入ってきた霊夢がメイジが一見すれば細長い杖の様な形をした御幣を持っているのに気づき、急いで水晶の付いた杖を向ける。
「何者!?この王女の目の前で無礼な真似働くことは……」
「はぁ?何言ってるのよ…役者にでもなりたいわけ?まぁそれよりも…」
霊夢はまるで狂言者を見るような目でそう言い。アンリエッタはその言いぐさに心底驚愕した。
今までそんな言葉で話しかけられたことが無い
オスマンとコルベールはというと霊夢の姿を見て「なんでここにいるの?」と、言いたげな目をしている。
霊夢はそんなオスマンの方へと顔を向け目を鋭くさせると口を開いた。
「ちょっと、ルイズの朝食どころかなんで私の朝食もないのよ?
給士から聞いたら「学院長の命令でして…」って言われたからわざわざこんな所まで来る羽目ににるし…。」
霊夢に警戒していたアンリエッタはふと少女の口から出た親友の名前にハッとした顔になり、少女に話しかけた。
「ルイズの名前の知ってるのね貴方?ということはルイズの友達か親友のお方かしら…?」
「イヤ、あんな奴の友達になった覚えは微塵もないわ。」
霊夢はそう言うとアンリエッタの方へと鋭く光る瞳を向けた。
アンリエッタはその瞳を見て、口の中に溜まっていた唾液を思わず飲み込んでしまった。
先程の王女に対するものとは思えない言動と言い、今まで見たことのない気配を発する瞳を見てうら若き王女は目を丸くする。
「貴方は一体…」
アンリエッタは平静をなんとか保ちつつも霊夢に自己紹介を促した。
「私は博麗 霊夢。何の因果かルイズに召喚の儀式とやらで否応無しでこんな所に呼び寄せられた被害者よ。」
「ハクレイ…レイム?…ひよっとしてあなたがルイズの使い魔……キャッ!」
「使い魔にもなった覚えも無いわ。どいつもこいつも私を見たら使い魔使い魔って…。」
迂闊にもアンリエッタがそう言うと、霊夢は愚痴をこぼしながら遠慮無く自分の身長より少し高めの御幣の先でアンリエッタの頭を叩いた。
それを見た他のコルベールはこれ以上ないと言うほど驚くと、急いで霊夢の御幣を持ってる方の手を掴んだ。
「いけませんミス・レイム!この御方は専横の形見であるアンリエッタ姫殿下ですぞ!そんな無礼なことをしたら…」
「あんりえったぁ…?あぁ、ひょっとしてコイツが昨日シエスタの言っていた…」
一人納得した霊夢は御幣を下ろし呟くとアンリエッタは叩かれた場所さすりながら口を開いた。
「どうやら私を見るのは初めてのようですね。私はアンリエッタ・ド・トリステイン、この国の姫殿下であり、ルイズ・フランソワーズの幼馴染みよ。どうかお見知りおきを…」
アンリエッタはそう言うと優雅にお礼をしたが、霊夢はそれを白けた目で見ていた。
「な、何をしているのです!ホラ、あなたも頭を下げてください!」
「何で私がそんな事するのよ?あっちが勝手にしただけじゃない。」
コルベールはそんな霊夢を見て更に目を丸くすると急いで霊夢へ耳打ちをする。
だが霊夢は自分が悪くない風にそう言うとアンリエッタは頭を上げて二人へ話しかけた。
「いえいえ気にしなくても良いですよ。そもそも人間が使い魔になるという事が可笑しいものですよね。とても酷いことを言ってご免なさい。」
「あっそう。…全く、ルイズの奴もとんだ変わり者の幼馴染みを持ってるわね…って、ん…!?」
アンリエッタの言葉に霊夢はうんざりしたようにそう言うとテーブルに置かれていた本に気が付き、驚愕した。
霊夢はその表紙に書かれていた『文字』を見て急いで本を手に取った。
アンリエッタとオスマンはその時、霊夢が真剣な目つきで本のページをどんどん捲っていく。
ページが捲っていく度に霊夢の顔はどんどん険しくなり始め、そしてバタン! と大きな音を立てて本を閉じると再びテーブルに置き、アンリエッタの方へ顔を向けた。
「この本って、何処で手に入れたの?」
「………あなたには、その本に書かれた文字が読めているのですか?」
「まぁね……で、従兄が何処にいるか私は聞いてるんだけど?」
「何ですって!?」
「何と…!」
霊夢の質問にアンリエッタは質問で返すが。霊夢はそれにあっさり答えた。
その答えに、オスマンとコルベールは驚いたが霊夢は一度同じ質問をアンリエッタに投げかける。
アンリエッタは一瞬躊躇うような表情になるが首を振ると霊夢の質問に答えた。
「この本は子供の、アルビオンの…確か、ニューカッスル城で手に取ったような記憶が…。」
「そう、アルビオン…ね。」
霊夢はそう言うとさっさと部屋を出て行ってしまった。
机に置かれた異国の文字で書かれた本――それは今のところ霊夢にしか読めないだろう。
転生を繰り返す家系の者によって作られた幻想の存在や神秘の秘境を明確に記され本。
――それは、霊夢のいた場所では「幻想緑起」と呼ばれる本である。
ひょっとしたらアルビオンに行かないんじゃないかと思ってたwww支援
……いや話作るの難しそうだけどそういうの読んでみたいなと
無重力巫女の人乙でしたー。
ギーシュが目撃した時、駆け落ちと勘違いするのではと思ってしまいましたよ。
とりあえず、霊夢がアルビオンへ行く仕掛けはGJでしたね。
後は霊夢の飛行速度と航続距離がどういった感じになるか興味がありますが、そこは次回をwktkしながら待っています。
後、私事ですが、意外と拙作が受け入れられていることに吃驚デスよ?
しかし旦那と間違えられているとは…、表現力が不足しているという事か。
自分的にはヒューの飄々とした所を頑張って書いているつもりだったんですが、精進あるのみですね…。
ちなみに、旦那だったら話の内容はもっと酷い事になっていると思う。
霊夢の人乙
しかし誰の乱入も無くルイズとワルドだけでさっさと行っちゃうのも珍しいな
すいません、最後の最後でさるさん喰らってしまいました。orz
はい、これで今回の投稿は終わりです。
アルビオンの方は本当に悩みました。
霊夢の性格だとなにも無ければ本当に行きそうに無いなww
では、皆さんまたの機会に。
後一言、アン様は原作であんな性格だからこそ可愛いんだよ?
あれもきっと1つのドジっ娘属せうわおまえなにをするやめ(ry
乙
しかし稗田家のアレは「幻想郷緑起」じゃなかったっけかと
霊夢の人乙です
>>343 いやいや、不足してるなんてことは無いと思います。
ただイラストとのギャップはみんなあったかとw
俺なんかは2.5枚目の微妙に歳いったあんちゃんなんてイメージでした。
代理投下がたまってるようなので一気に行きます!
よろしいですか?
ゼロの社長22話とゼロの黒魔道士第四十幕です。
「『姫様』、失礼します。起床の時間です。」
アニエスが扉を叩き、ノックがアンリエッタの部屋に響く。
普段ならば、侍女達が支度をしに来るのだが、今日は特別だった。
今この部屋にいるのは魔法でアンリエッタに扮したシエスタであり、それを知っているのは極わずかの人間のみ。
またシエスタ自身からボロが出ないためにと、アンリエッタが一番信用できるアニエスにシエスタの事を任せたのだった。
「・・・『姫様』?失礼します。」
一向に主からの返事が無いため、扉を開けて入ると、そこには目の下に少しクマができている
アンリエッタの姿をしたシエスタがいた。
心なしか少し顔色も悪い。
「・・・・・・眠れなかったのか?今日は魔法学院での使い魔品評会に出席する事になっているから、しっかりと寝ておけといったはずだが?」
「そうなんですけれど・・・あいたたた、頭痛が。」
シエスタは昨晩、結局空腹と緊張で一睡もできないままだった。
もっとも、ただの平民だったはずのシエスタがいきなりお姫様の代役。
その心情は推して知るべしと言ったところだろうか。
「とりあえず何か腹に詰め込んで、学園までの馬車の中で眠っておけ。近づいたら起こしてやる。」
「はい。すみません・・・」
ふぅ・・・とため息が出てしまうのは、二人とも同じようだ。
(初日からこれでは先が思いやられるな。姫様たちがアルビオンから行って帰ってくるのに少なくとも5日。
何とか隠し通せれば良いが・・・不安だな。)
一方で、夜通しずっと走りつづけたルイズ達一行を乗せた馬車は、現在昼を過ぎた頃、やっとの事で『港町ラ・ロシェール』にたどり着いた。
「早い・・・ふつう馬で2日の距離なのに。」
「それは馬に乗ってゆっくりしていった時の話だよ。
実際それよりかなりスピードを出せていたし、姫様から頂いたラ・ロシェールまでの地図から最短距離で行けば、
このくらいの時間につけるのはわかっていた。」
ちなみに馬車の速度が通常よりも早くできたのにはわけがあった。
レビテーションの応用で、馬車そのものを浮かせることで荷重を減らすというように利用し
馬への負担を減らしてはどうかというアイデアを海馬が提案し、実行したためである。
なお、馬のコントロールを海馬が担当。コルベールとタバサが交代でレビテーションの制御をしていた。
しかしこの方法。傍目から見たら非常に不気味である。
馬が馬車を引くというよりもむしろ疾走しているくらいの速度を出しているにもかかわらず
その背には馬車が繋がっており、しかも馬車が空を浮かんでいる。
実際にラ・ロシェールまでの道でこれを見かけた人々の間で、あの道には夜幽霊馬車が出るという噂が後々に広まったとか広まらないとか。
「便利なものだな、魔法というのは。」
「こんな事に使おうと思うのはあんただけだと思うわ。」
けろっとしている海馬とは対称的にルイズが顔色悪そうに馬車から降りてくる。
まぁ、そんな速度で走ってる馬車は左右に曲がれば当然のように揺れる。
凄く揺れる。
ある程度吹き飛びそうになる分には二人がコントロールしたものの、それでも細かく曲がり道があった場所でも
何もしないで座っていたルイズの脳みそは激しくシェイクされ、完全に乗り物酔いといった状態だった。
なお、キュルケ、アンリエッタ共にその提案に対して即座に『絶対に揺れる』と判断し
眠りのポーションを使用して睡眠をとるといった対策をとった。
海馬、コルベール、タバサが平気な理由は三人曰く「慣れている」とのことだった。
「うぇ…気持ち悪い…」
「だらしないわねぇ、ルイズ。これからが本番だって言うのに。」
「うっさい。そそくさと寝てた奴に言われたくないわよ…うぇ…」
「ほらほら、きついなら吐いてきなさいよ。一回吐いちゃえばすっきりするわよ。」
「日陰のところで休んでいろ。乗り物酔いは暫くすれば直る。」
ルイズの状態が酷いので、アンリエッタが木陰へと連れて行く。
「も、申し訳ありません姫様…」
「気にしないの。それより、今は姫様じゃなくて…なに?」
流石に服装を変えているとは言え、姫様姫様と連呼していれば気づかれてしまう。
そして一応の対策として、アンリエッタには海馬が適当に偽名をつけた。
「すみません…ピケル様…」
徹夜ということもあってか木陰に入ったルイズはそのままアンリエッタの膝の上で寝てしまった。
そのすやすやと寝てしまったルイズの寝顔を見ながら、アンリエッタは微笑んだ。
「もう、ルイズったら。様はいらないのに。」
偽名とは言え、ルイズが自分を姫ではなく名前で読んでくれることが、少し嬉しかった。
場所は変わってトリステイン魔法学院。
正門前には生徒たちが整列しており、一糸乱れず「姫殿下御一行」を待っていた。
一方でその待たれている姫様はといえば…
「姫様!姫様!そろそろ魔法学院に到着します。起きてください。」
夢の真っ只中にいた。
夜睡眠をとっていなくて、不味いとはいえ食事をとり、馬車の適度な揺れに揺られていれば
意識はすぐに夢の国へご招待であった。
「………ハッ!?」
ガバッと、正門直前で目を醒ますシエスタ。
流石に馬車の中で爆睡していたと言う噂が広まるのは不味い。
姫様的に。
「ふぅ…危ない危ない。」
「本当にしっかりしてくれ…」
ふと寝ぼけ眼でシエスタが学院のほうを見ると、仕事仲間のメイド達が駆けより、馬車のほうへと真紅の絨毯を敷いていた。
シエスタが何気なく手を振ると、そのメイドの少女は顔を真っ赤にして頭を下げ、そそくさと帰ってしまった。
(あ、そうか。私今姫様なんだっけ。)
普段とは違う視点で普段いる場所を見ると、新鮮だなあと他人事のように考えていると、馬車の扉が開いた。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな――――――り――――――――!!」
「あまり気負わなくていい。落ち着いて、城で出る前に教えた通りにやればいい。」
アニエスの言葉を無言で頷き返し、シエスタは馬車から降りた。
しゃん!という杖の音がまっすぐに響き、姫の進む道を作り上げている。
(落ち着いて、気取らず慌てず優雅に。そして何より大切な…)
シエスタは笑顔を見せ、大きく手を振った。
そして一歩づつ、本塔の玄関で待つオスマンとロングビルのほうへと歩んでいった。
その歩みを後ろに続きながらアニエスは思った。
(急ごしらえの代役の割には様になっている。…が、あの笑顔は薔薇というよりも、向日葵だな。)
「ただいまより、本年度の使い魔お披露目を行います。」
司会進行役の教師の声が響く、学院内の広場に特設されたステージでは、生徒たちが次々と
春に召喚した使い魔を紹介していた。
シエスタと学院長は、特設テントの下に用意された椅子に座りながら、次々と披露されていく芸を眺めていた。
「国のためとはいえ王女の代理とは、また難題じゃのう。」
オスマンはなんでもない風を装いながらシエスタに話し掛けてきた。
シエスタも、視線を変えずに答える。
「はい。でも、学院長やアニエスさん達のおかげで、今のところ支障なくすんでいます。」
オスマンには、詳しい事情をアンリエッタ本人から伝えていた。
流石に王女自身が戦地に乗り込むという危険極まりない作戦に反対はしたものの、
アンリエッタの強い意志と同行する海馬、コルベールを信じた上で協力する事となったのだった。
シエスタにかかっている変身の魔法も、オスマンの力による部分が大きい。
「学院長。これは極秘裏の事ゆえ…」
「大丈夫。このテントの中の会話は外には聞こえないようにしてある。」
そう言いながらステージのほうを見ると、モンモランシーがバイオリンと共に使い魔のカエルと音楽を奏でていた。
「だが、問題は姫殿下たちのほうじゃ。いくら海馬くんたちが付いているとは言え、今のアルビオンは戦場。
何事もなく戻ってきてくれればよいが…。」
そう言われてシエスタは再確認した。
なんでもない風に行ってしまったけれど、海馬たちが向かった先は戦場。
そこに行く危険を犯しているアンリエッタ姫殿下の代理人として過ごさねばならない以上、下手な真似はできない。
シエスタはそう思い直しながら、海馬たちの無事を祈っていた。
「ん…。あれ?」
ルイズが目を覚ますと、既に外は夜だった。
「目が覚めた?ルイズ。」
傍らで本を読んでいたアンリエッタが話し掛けてくる。
「馬車から降りた途端倒れてしまったから、とりあえず近くの宿で部屋を借りたの。
他の者はアルビオン行きの船の手配とかで、今は出払っているけど。」
「申し訳ありません。せっかく早く着いたのに、私のせいで足止めを…」
「気にしないでルイズ。予定よりも早くこれたんだもの。少しくらい―――」
「でもっ!急がなければいけないのに!」
「どちらにしても、アルビオンに出航できるのは明日になるわ。ちゃんと体調を整えて明日に備えましょう。
そろそろ皆戻ってくる頃でしょうし、食事にしましょうか。」
「………はい。」
アンリエッタの笑顔と優しい言葉こそがルイズにとっては辛かった。
アンリエッタの為に、ゼロの自分でも何か役に立てれば…
そう思っていたのに幸先から足手纏いになってしまったことが、辛く悔しくて堪らなかった。
程なくして全員が戻ってきたので、場所を酒場に移すことになった。
いくつもの食事が運ばれてきて、皆一様に食事を満喫していた。
アンリエッタは、今まで食べてきたものより遥かに美味しいと喜んでいたし、
タバサはなぜか延々とハシバミ草のサラダばっかり、それもその量がその小さい体のどこに納まるのかというくらいたくさん食べていた。
だが、ルイズはといえば余り食が進んでいなかった。
その様子が気になったのか、珍しく海馬のほうから声をかけてきた。
「まだ体調が戻らないのか?」
「えぇ…ちょっと食欲がなくて。でも、もう大丈夫よ。」
「そう言うことは健康そうにものを食べてから言うんだな。」
「うるさいわね…。あんたに何がわかるのよ…。」
と、その時、ガシャーンと大きな音がして酒場の扉が開かれた。
風体の悪そうな連中が数人…いや、十数人か。
その連中は他の客を押しのけまっすぐにこちらへと向かってきた。
「なっなに!?」
先鋒の二人の剣が、ルイズとアンリエッタのほうへと向かっていく。
ガキン、とそれを武器屋で買った剣で受け止める海馬とコルベール。
海馬は強引に押し返し薙ぎ払うように一人目を切り伏せる。
一方、コルベールもどこで覚えたのか、相手をものともせずに気絶させた。
「ほう、やるじゃないか。しかしこいつら…」
「…おそらく傭兵だろう。彼女が姫殿下だと知ってか知らずかは判らないが、ここで戦闘を続行するのは危険だ。ミス…いや、キュルケ。」
「ルイズとピケルを連れて外へ出ろ!店の中のほうが闘いにくい。適当な窓を蹴破って港へ向かえ!
タバサは俺たちの援護を!適当にあしらったら合流する!」
「オッケー!こういう荒事って、ちょっとわくわくするわ。行くわよ、二人とも!」
「……了解」
キュルケを先頭にルイズ、アンリエッタと続いて玄関から向かって一番奥の窓を蹴破り、3人が外へ出たのを確認すると
残った3人は周りの傭兵達へと戦闘を開始した。
海馬はなぜか、初めて剣での戦闘を行うというのに、体の軽さを感じていた。
(ふむ、これが爺の言っていたガンダールヴの力か。便利なものだが…こんなもの俺には必要ないっ!!)
数人を切り倒したところで、トン、と背中がぶつかったタバサから声がかけられた。
「……質問」
「何だ。」
「ピケルって何?」
「デュエルモンスターズの、魔法の国の王女の名だ。」
「……納得」
「さぁ〜て、このあたりが良い感じかしら」
キュルケ達が走り抜けた先は古びた連兵場だった。
かつては栄華のあったこの場所も、今ではただの置き物場。
夜の闇も相まってそこは酷く寂れているように感じられた。
社長・・・・ぶいにゅー支援
「ルイズ、追っ手の数は?」
「9人。走りながら数えたわ。」
「それじゃ、一人頭3人って所かしら?」
などと言っている傍から傭兵たちが襲い掛かる。
が、その凶刃は彼女達に届く事はなく、一様に通り過ぎた白い閃光によって叩き折られていた。
そしてその白い光はアンリエッタの目の前に降り立ち、白銀の猛虎へと姿を変える。
「ちょっ!?ええっ!?」
「ドゥローレン!我に刃を向ける不届きものを成敗しなさい!」
突如として現れた巨大な虎に驚く傭兵達。
いや、驚いていたのはキュルケもだった。
海馬と同じデュエルディスクを、あろうことかトリステインの王女様が持っているなんて。
そんなことを考えていると、相手の傭兵達にも動きがあった。
所詮獣。数で押せば勝てるとふんだのか、4人がドゥローレンを囲み予備の刀で襲い掛かる。
ただの獣相手ならば、熟達した彼らの技量があれば倒す事は可能だっただろう。
現に彼らは過去にいくつかのモンスター退治を行った事があり、ドゥローレンぐらいの大きさの獅子を仕留めた事もあった。
しかし、その一瞬の油断が命取り。
彼らの目の前にいるのはただの虎にあらず。
ドゥローレンは結界を護る氷の一族のなかで、虎王の名を持つ最強の虎。
その鋭い爪は傭兵達の鎧を軽々引き裂き、ドゥローレンの周りには相手を寄せ付けない吹雪が舞っていた。
迫り来る傭兵達を次々になぎ倒していく氷結界の虎王。
あっという間に追っての内6人が倒される。
「さて、これで6人。私とルイズのノルマは終了でいいかしら?」
ふと見れば、残りの3人は慌てて逃げ出していた。
「なによ、私らが出る幕ないじゃないの。ねぇ、ルイズ」
「うん…そうよね…」
敵を撃退したというのに、なにやら浮かない表情のルイズ。
アンリエッタはといえば、ドゥローレンを戻してデュエルディスクをまたメイド服のスカートの中に仕舞っていた。
「さぁ、港まで急ぎましょう。」
「え、えぇ…。ほら、行くわよルイズ。」
そんな様子を眺めながら、ルイズは思っていた。
(姫様があんなに強いのなら…、私は一体何のためにここにいるのよ。)
ルイズ達は途中で空中から探索に来ていたタバサと合流し、シルフィードの背にのって港まで飛んでいった。
港には海馬とコルベールも既に来ており、アルビオンへの貨物船の船長と話をしていた。
「今から船を出すように言っておいた。敵に狙われた以上、この町に長くとどまるのは危険だからな。」
「いや、ですから。今から出るんじゃ風石の量が足りないんですってば。
今から出航しても途中でおっこっちまいますよ。」
中年の船長はまだ承諾してないと、慌てるように返す。
「風のメイジがいればその分は補えるでしょ?」
「…(コクン)」
「さっきも言ったがこれは王国の勅命だ。断れば、それは貴様の命で償える程度のものかな?料金は積荷の分まで含めて出してやる。さっさとしろ!」
「は、へい。わ、わかりました。すぐにでも!!!」
海馬の脅迫におびえる船長。
船長は駆け足で船員達を集めて、船の出航準備をはじめた。
「お疲れ様です、『姫様』。」
「ありがとう、ア…アニエス。」
学院から城に戻ったシエスタは、ふぅ、と疲れのため息を吐いた。
緊張と周りにいた学生達を騙しているという罪悪感からの疲れがあったが、戦地に向かったアンリエッタや海馬のことを思えば
この程度の事で根を上げるわけにはいかないと、気合を入れなおす。
「でも、あのお料理だけは…」
これから出るであろう夕食の事を思いだし、少し憂鬱な気分になる。
「それなら、食事のときに酒を飲んだらどうか?。
少し位酔いが回れば、多少物の味などわからないでしょう。」
「酔っている上に戻しそうな位不味いものが出てきたら…。」
あの冷めた上に油が浮かんで固まった正直スープといってはスープに失礼な存在を思い出した。
他にも、妙な匂いのするサラダとか、火のとおり方が半端な温野菜。
昨日の食事でちゃんとした味になっていたのは…
「『姫様』に言う言葉ではないがパンでもかじってるしかないんじゃないか?」
「うぅ…でも、ここで付くられている料理よりはお酒は味の心配がいらなそうです。」
思えば、これが悲劇の幕開けであった。
もともとトリステイン城の料理は決して不味いものではなかった。
素材は各地から最良のものが届けられるし、料理人も名の知れたものが集まってはいた。
が、しかし王城の料理というものは、まず完成しても毒見のために数人が試食し、
調理場から食堂までの長い通路や階段通過した上で食卓に並ぶ。
これではどんなにアツアツの料理が作られてもつく頃には冷め切ってしまっている。
名の知れた料理人達も、いつしかどうせ冷めて不味くなったものしか王族の口には入らないと怠惰な姿勢になり、
その料理脳でも錆び付いていった。
もはや彼らは料理人ではなく、ただの作業員と化していた。
今日も作業が終わり、片づけが始まるまで酒瓶を片手に談笑していたのだが
なにやら慌しい声と、ドスドスといった力強い足音が近づいてくる事に気づいた。
「この料理を作ったものはだれだぁ!!!!!!!!」
シーン…と、談笑に興じていた者達も全員が全員、調理場の扉のほうに視線が集中した。
そこにはいつも微笑を絶やさず、美しい花のようだった表情を怒りの色に変えて今にも襲い掛からんとするアンリエッタ王女の姿があった。
しかもその手には、先ほどまで食卓に並んでいた幾つかの料理が載った皿が乗っていた。
「ひ、姫殿下。一体なにが…」
料理長が慌ててアンリエッタ王女の前へと駆け寄る。
いつもと変わらないような料理を出したはずだったのだが、まさか怒鳴り込まれるとは思ってもいなかった。
それは回りの料理人達も同じようで、わけがわからないという表情だった。
「なにが…ですって?えぇ、答えてあげましょう。
あなた達に料理をする資格はなぁい!これなら…いえ、魔法学院の食堂のまかないと比べるのも失礼だわ!」
慌てて追いついたアニエスが、周りでおろおろする侍女達から話を聞くと、
どうやら昨日と同じく食欲がなさそうだった王女が、パンをかじりながらワインを一口飲んだ途端豹変。
いきなりいくつかの皿をつかんで飛び出していったとのこと。
途中で調理室までの道を聞かれたメイドも、あんな恐ろしい表情の姫様は見たことが無いと涙を流していた。
「ひっ、姫様。落ち着いてください。ちゃんと話をしなければ料理人達もわかりませんよ。」
「なら言ってあげるわ。毎食毎食こんなものを出されて、もう我慢の限界!
これが料理!?ふざけるにも程があるわ!せっかく育てられた材料をこんなゴミに変えられて、
お百姓さんたちがこれを見たら何度涙を流す事か!!」
急に今度は泣き出す始末。
アニエスは、この元凶が酒だと直感で判断した。
(しまった…彼女に酒を飲ませるんじゃなかった。まさかこんな結果になろうとは…)
しかし、そのアンリエッタの発言に少しはプライドがあったのか今度は料理長のほうが怒りを顔に表してきた。
「わ、我々が作ったものをゴミとおっしゃりますか!?
ならばこちらも言わせて頂きたい。せっかく作った料理を、毒見や長い廊下を使うことで、ゴミに変えているのは誰だと!」
「料理長!姫様に対してその口の利き方は…」
「いえ!確かに平民の身分ではありますがこのヨシーオ・マルイ。亡き先王直々にこの調理場を任された―――」
「プッ…くくく…あっはっはっはっは」
今度は笑い出した。もう酔っ払いは手がつけられない。
とにかく放って置けば大変な事になると判断したアニエスは強制的にでも自室に連れ帰る判断をした。
「りょ、料理長。姫様は酔っておられる。今日はこの辺で…げっ!?」
ふとシエスタのほうを見ると、その目は据わっており笑い声とは対称的なまでに冷えていた。
「こんなものを作っておいて料理長?先王から任された? 」
そう言うと料理人たちを押しのけて、シエスタは食品庫からいくつかの材料を取り出してきた。
そしておもむろに手袋を投げ捨てるとそれらの材料を使って料理をはじめた。
「なっ!なにぃー!!姫様の包丁が…早すぎて見えない!?」
「みっ、見せ掛けだけだ。あんなスピードで扱えば雑になる。」
ざわざわと料理人たちも周りの侍女たちも誰もがシエスタの料理姿に見とれ始めた。
あっという間に前菜が完成し、次の料理に取り掛かる。
「こっ…これは…」
「なんと…」
あまりの味の違いに、愕然となる料理長や他の料理人たち。
次々に繰り出される魚料理、肉料理、スープ、デザートまで全てがあの食卓に並ぶものとは比べ物にならない味わい。
フルコースが出揃う頃には、この料理場には久しく無かった美味の匂いが立ち込めていた。
料理長は脱帽し、がっくりと膝を落とした。
「姫殿下…。あなたの料理の腕前はわかりました。しかし…」
「理解するところが違っています。…料理長、もう一度、それを食べてみてください。」
シエスタが差し出したのは、最初のほうに出した魚の料理と同じもの。
いくつかの調味料に魚を漬け込み焼くというシンプルな手法の料理だが、それは素材の味を生かした料理だった。
しかし、最初の内に作ったそれは既に冷めていた。
「…………美味い…。」
「確かに、毒見や長い廊下は、作り立てを食べる料理には厳しい相手かもしれない。
しかし、ならば調理法でそれを克服する事をどうして考えないのか。
これは漬け込む調味料を濃い味にすることで、熱を失い冷めてしまった後でも味を保つ事ができる。」
「………」
「料理とは、ただ食べるだけのものではありません。材料を作る人、それを調理する人、
いくつもの人の手を通って食卓に並ぶものです。
先王も、あなたの料理に感動してここを任せたはず。ならば…」
そう言うとシエスタは、動き回ったせいと酔いのせいか、ふらっと倒れた。
転ばないようにアニエスが抱きかかえると、シエスタはそのまま眠ってしまった。
「料理長…あのだな、姫様は大変酔っておられてだな。今日のことはその…」
「我々は…今まで何を作っていたんだ。」
「へ?」
見れば周りの料理人たちまでもが涙を流し始めていた。
「お酒に酔われていたとは言え、姫様にあのような言葉を言わせてしまうなんて…
あえさまつ料理まで…」
「俺たち、間違ってた。間違ってたよ!」
「料理長!!もう一度、ちゃんとした料理を!」
「あぁ、このままじゃ俺たちはただの負け犬だ!!」
(……なんだ、この状況。)
アニエスが戸惑っていると、料理長が泣きながらシエスタの作った料理を味わっていた。
「あんた…姫様が起きたら、伝えてくれないか?明日からは今まで以上のものを作って見せるから、
先王に頼まれた食卓を、二度とあんなもので覆ったりしないと誓うと。」
背にシエスタを抱えながら、アニエスは答えた。
「それは、私の口からよりも、お前達の料理でお伝えすればいい。」
そう言って調理場から立ち去っていった。
結局その夜、調理場から明かりが消える事は無かった。
次の日の朝食は、無駄なく飾らず、思い直した彼らの素直な気持ちが表現されていたが、
シエスタは昨夜の記憶がまるでなく、何があったのかと不思議に思っていた。
以上で22話完了です。
ついにアルビオン上陸まで来た…。なんか凄く時間かかった気がする。
しかし途中から、これ何とのリンクものだっけとかちょっと考えてしまうくらい海馬に出番が無い。
それでは、また次のターンに〜
358 :
:2009/03/16(月) 20:30:25 ID:hXuZ1dHz
引き続き ゼロの黒魔道士 第四十幕 です。
ご了承ください。
「フハハハハハハハ!!踊れ踊れ踊れぃ!!」
「ク、クェェェェェッ!?」
「う、うわわっ!?」
よく、普通の人間の子供がやる遊びに、『鬼ごっこ』っていうのがあるらしい。
鬼役の子供につかまらないよう、他の子供たちが逃げるっていう遊び。
遊びじゃないって点を除けば、これはその『鬼ごっこ』に近い状況だったんだ。
……逃げるしかない。悔しいけど、空中戦はワルドの方が上だった。
「やっこさんブチ切れすぎだろ!?」
「ぼ、ボコ、大丈夫!?」
「クェェ〜……」
詠唱速度の差や、身のこなしの速度はやはりあいつの方が勝っている。
立て続けに巻き起こる風の刃や矢からは逃れるので精一杯になってしまう。
加えて、チョコボが飛べない鳥なのが問題になっていた。
あいつが乗っているのは空を駆け巡るワシの頭をしたクァールみたいな猫っぽい生き物。
ボコは甲板を跳び跳ねるように避けるのに対して、
ワルドはマストの間を縫うようにすりぬけて迫ってくる。
間合いを自由自在に操る相手ってかなり厄介なんだ。
おまけに、この船が敵の物だから、ときどき敵の兵士がこっちを狙ってくるんだ。
……さっきから、何回『スリプル』や『ストップ』を唱えたか分からない。
息もあがってきて、呪文を詠唱するのもきつくなってきた。
「あぁ、やはりこうでなくてはな!やはり力とは、弱き者を睥睨するためのもの!」
ワルドの高笑いが、マストの上の方から聞こえてくる。
逃げていてもしょうがないって思ったのはこのときだった。
帆が何枚も目隠しになって、狙うときは今しかないって思ったんだ。
「違うっ!力は……」
ワルドの言葉を否定しながら、一気にボコを駆る。
折り重なる白い帆を貫くようにデルフを突き出して、狙いはワルドそのもの。
懐までもぐりこんで決着をつけるつもりだった。
「あ、相棒、前に出すぎだってぇのっ!!」
「誰かを守るためにあるものなんだっ!!」
それは、守りたいものを守るための一撃だった……
ゼロの黒魔道士
〜第四十話〜 守るべきもの
「ふんっ!!」
その一撃は、ワルドの腕の一振りでアッサリといなされる。
「クェッ!?」
「うぁああっ!?」
重い一撃。ただの義手とは思えないほど重厚な一撃だったんだ。
そのまま甲板に叩きつけられる。
甲板の木材が体のあちこちに刺さって小さな傷になった。
呼吸が無理矢理、体から引きはがされるように吐き出され、息ができない。
動こうにも、まずその苦しさに反応すらできない。
「悪くない義手だ!しかし、子鼠を痛めつけるには少々加減が利かぬのが難点か」
「く……」
辛うじて首を動かすと、ボコは少し離れたところでぐったりしている。
デルフは、手の届かない位置に転がっている。
なんとか、つかみたいけど、ワルドがそれよりも速く甲板に降りたっていた。
「ほぅ、手ごたえの割には持つな。流石は“神の盾”……だが、しつこすぎるっ!」
「う……が……」
禍々しい金色の爪をつけたその左手で、喉元をしめあげられる。
苦しい。目の前が歪みそうになるぐらい
「相棒ぉぉっ!?」
「あるいは、この左手をまず落としてやろうか?俺のようにな」
「わ……ワルド……」
杖を突きたてられて、声を絞り出すのが、やっとだ。
それでも、意識を手放したらそのまま動かなくなっちゃいそうだった。
だから、声を出すことに意識を集中した。
しゃべる内容は、ほとんど思いつきだ。
「死に際にまだしゃべるか?いいだろう、何を語る?」
「……お前は……何を、したいの……?」
ルイズおねえちゃんを裏切って、レコン・キスタに取りついて、ワルドの狙いが分からなかった。
目の前が真っ暗になりそうだけど、そこに納得がいかなかった。
「なかなか的を射た質問だな。教えてほしいか?冥土の土産にでも?」
「――ワルド殿っ!」
遠くで、駆け寄る足音が聞こえる。レコン・キスタの兵士なんだろうか。
「――やれやれ、余計な加勢が出てきたようだ。冥土の土産をやる暇は無いな。
最も――はなからやるつもりなぞ、微塵も無かったがな!」
「う……ぁ……」
左手の義手で首をつかまれたまま、甲板に思いっきり叩きつけられる。
息をどう吸っていたかを忘れるほど、空気が恋しい。
クラクラして、『苦しい』って声を出すことすらできない。
「生きたまま捕えた方が勲功は大きいのだが――」
揺れる視界の中に、ワルドの突きつけた杖が見える。
「――ガキ共に虚仮にされた恨みは、勲功では贖えなくてな!」
左目と右目の真中の、杖の向こうに、ワルドの歪んだ、醜い笑い顔が見える。
「あの世で俺に詫び続けるがいいっ!!ガンダールヴよっ!!」
聞きたくない勝利宣言が、頭の中にグワングワンと響いた。
-------------------------
ピコン
ATE 〜記憶の歌〜
少女は黄色い鳥の上にいた。
顔色を言えば三日飲まず食わず寝ずで過ごした者と同程度に青白い。
メルカトール号の断末魔は、タルブからもやや遅れて見ることができた。
最初は祝福のための催しの一環であると考えていた。
しかし、直後シエスタの弟からもたらされた急報が、その事実を否定した。
同級生と使い魔の、少年二人が、戦乱の真中へ、鳥馬を駆って向かったという。
まず失ったのは言葉だったが、目の前の現実を失うのも、そう離れた時間ではなかった。
そして、言葉を発せないまま、報を伝えた少年からショコボと呼ばれる鳥を奪い取り、
焔色の爆発が見えた方向を目指したのも、わずかな間であった。
後ろで友が、認めたくはないが心の奥底で友と認めた者たちが止めようとする声が聞こえた。
しかしそれは足枷にはならなかった。
ある焦燥感が、少女の頭を満たしていたからだ。
私は、また置いて行かれてしまう。
また一人取り残されて、泣いたまま終わってしまう。
彼女の乗るショコボは、風を巻いて木々を駆け抜けた。
木々を抜け、現場に近づくにつれ、
大砲の奏でる空気の振動が肌で感じるほどに近づくにつれ、
焦燥感は不安へと変わっていった。
それは彼女と、今、物理的に彼女が追いつこうとしている二人の違いから来る不安であった。
もちろん、自分も彼らも、未だ幼い身であることは承知のとおりだ。
至らず、足りないものがまだまだ多い。
ビビに足りないものは速さだったのだろう。
彼はそれを強さで補った。
何よりも強いそ、の優しさを足した。
ギーシュに足りないものは目標だったのだろう。
彼はそれをビビに見出した。
カッコいい自分を目指すことで歩みを足した。
では、私は?ルイズは小さき胸に問いかける。
何が足りないの?何を足せばいいの?
いくつもの果てないハテナが浮かんで消える。
背が?力が?優しさが?目標が?
何もかもが足りない。
前を進む彼らには物理的に追いついたとして、
この私に一体何ができるというのだ?
私には、追いつけない。
追いつかせてくれない。
いつかは追いつくと思っていた。
共に並んで歩きたかった。
守られるだけは、もう嫌だったから。
できることは何でもやった。
暇があれば、優しくなれるように笑顔の練習だって内緒でやった。
目標も描いた。
毎日毎日、追いつけるように、走った。
毎日毎日、届くように、背伸びをした。
でも、追いつこうとすればするほど、彼らは前に進んでいる。
いつも見えるのは、小さいけれど大きいその背中。
手綱を握る手をじっと見る。
この小さな手では、何1つ、つかみ取ることがかなわぬと言うのか。
手綱を握る手が、ゆるゆると弛み、ショコボの速度が人の走る程にまで落ちる。
大声で、泣き叫びたかった。
情けないほどちっぽけな自分に。
揺れる鳥上で、目から溢れた雫が、頬を伝わり、
風に乗って後方へと流れていく。
泣くのは無駄だと、ルイズも頭のどこかでは考える。
涙で強くなれるというのなら、とっくに強くなっている。
だが、この感情をどう止めろというのだ?
溢れる悔しさが、小さい胸では納まりきらず、
あとからあとから涙腺を伝って流れ出てくる。
バカルイズっ!軽く自分の頬をひっぱたく。
涙で前が見えなくなった頃だ。
何て愚かな悩み事なのか!それでも貴族と言えるのか!
小さき苦悩でウジウジと、みすぼらしいではないか!
自分を奮い立たせる文句を、口で小さくつぶやく。
涙をぬぐって前を見よう。
私は臆病で、いっつも自分の影見てた。
今日こそ影に背を向けよう!
どんな坂道でも這い登って、追いついてやるのだ。
敵に背を向けない者を貴族と言うのだ。
だからといって、己の影ばかりが敵なのではない。
影を作る眩いばかりの光を、しっかり見据えてやる!
それが貴族として、いえ、私が私として、できることだ!
何ができるかではない、やるしかないのだ!
無謀ではある。だが、何もせずに泣くのはもっと嫌だから!
手綱を再び強く握りしめる。
もう、ゆるめない。一直線に追いついてみせる。
そして、勝手な真似をした二人を思いっきり叱ってやるのだ。全てが終わった後で。
滴る頬の水路をぬぐい、混沌と化す空の下を目指し、再び少女は風となる。
覚悟を抱いたルイズの左手、
涙をぬぐったその甲にはめられた指輪の宝石に、
己の小ささを悔やんだ涙が触れ合って、
微小な光の悪戯か、小さき虹を作りだす。
それがじんわりと広がって、懐に潜む白き本と呼応する。
遠い昔に賢人が、言ったとされる事実がある。
奇跡とは、決意の先に光る物。
覚悟を決めた少女が、奇跡の存在に気づき手を伸ばす。
「何なのよ、これ!?」
白い本が、虹色の光を発している。
光源は、無地であったはずの祈祷書に描かれた文字。
いかに秀才とはいえ解読に時を擁する古代ルーンを、ルイズはいとも簡単に読み取った。
否、感じ取ったと言うべきなのだろうか。
それは、『序文』という簡素な言葉と、万物を司る四系統の説明からはじまる文面だった。
「神は我にさらなる力を……
四の何れにも属せず。我が系統は……四にあらざれば零(ゼロ)。
零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん……」
読めぬはずの文字を読む速度が上がる。
文面を書いた人物に思いを馳せれば、もっと感動的だったのだろうが、
その先の文言に、彼女の望む答えがあった。
『命を削る』という危険予告の文面や、
『指輪をはめなければ読めない』という注意書き内の注意書きは飛ばして読み進める。
彼女の視界に映ったのは、1つの呪文。
『初歩の初歩』とされている以下の呪文。
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」
なんのためらいもなく、紡がれる文言。
「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」
聞いたことも無い響き、だがどこか懐かしさを感じさせる。
そうそれは、母がかつて歌ってくれた子守唄のような。
「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ……」
唱えるごとに、体の中の歯車がカチリカチリかみ合っていく感覚がする。
失っていたパーツを、足りなかった部分を、全て取り戻すかのように。
「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……!」
全てを歌いあげた後、ルイズは理解する。
自分のできること、やれること、そしてしたいことを。
彼女は全てを選んで破壊することができる。
彼女は自分の使い魔を助けることができる。
彼女は追いつけなかった背中を守れる。
能力と望みが合致し、彼女は迷うことなく、最後の言葉を叫んだ。
ビビを、ギーシュを、友を、国を、全てを守りたい!!
この呪文は、足りない何かを足す力!!
「エクスプロージョンッッ!!!!」
・
・
・
2つ目の太陽が、ルイズの願望と共に出現ししばらく経った後、
キュルケ、モンモランシー、シエスタが川原で見つけたのは、
満足そうに祈祷書を抱えて眠りこける少女の姿であった。
---------------------------
……目の前が、真っ暗になるものと思っていたら、
強い光が、ボクの瞼を通して瞳の中に入り込んだんだ。
「――なんだ、この光は?」
「十一時二十五分方向中心に光源っ、どんどん広がって――」
「そ、そこら中、光だらけですっ!雲の中のような――」
「――貴様か、ガンダールヴ!!何を、何をしたっ!?」
いくつもの叫びが聞こえる。
ワルドの握力を首に感じる。
でもそれ以上に、もっともっと強くて、優しい感覚を、光の中に感じたんだ。
「……ルイ……ズお姉ちゃ……ん……?」
何故だか分からない。でも、ルイズおねえちゃんの歌が、聞こえたような気がしたんだ。
花火のような音が、それに続く。
いくつもいくつも重なって、まるで何かをお祝する祝砲のように聞こえる。
「なぁっ!?」
驚いたのか、ワルドの手が首から離れる。わずかだけど、息をする余裕ができた。
「そ、操舵部から爆発音!同時刻に動力部からも爆発音がっ!!」
「救難信号です!ハイウィンド号とエンタープライズ号が航行ふの――いえ!周囲の僚艦全てから救難信号がっ!」
「航行不能!航行不能!脱出艇に急げっ!」
「おのれ、貴様が、貴様がっ!この俺を!どこまでも邪魔を――」
さっき離れたワルドの手が、金色の爪が、思いっきりボクの左腕に……
「ぅっ……ぐぁ……」
鋭い痛みの後、軽さを感じる。大きな荷物を失ったような感覚。
そのちぎれるような音に、左腕がどうなったか見たかったけど、そっちに首を向ける力が無い。
「さぁ、次はその首を――」
影になってワルドの顔が見えない。
だけど、光の向こうから、マストが崩れ落ちるのが見えた。
「ぐはぁぁっ!!??」
ワルドの姿は、グズグズに崩れ落ちるマストと共に消えた。
そして、ボクの目の前も……暗くなった。
・
・
・
「おい、相棒、相棒!目ぇ覚ませよっ!おいっ!」
デルフの声が聞こえる。
聞こえるってことは、なんとか助かったんだろうか。
それとも、ここって空の向こう、なのかなぁ……?
「ゴメン……ちょっと……厳し……そう……かな……」
右腕がすごく痛むのに、左腕の感覚が無い。
あぁ、痛いってことは、かろうじて生きてるみたいだ。
マストは、ボクの体を避けて倒れたみたいだ。
……小さくて、良かったなってちょっと思った。
それでも、体を動かすのは少し厳しそうだ。
体に力が全く入らない。
「クェー?」
チョコボの悲しそうな目を、初めて見た。
視界いっぱいに、黄色い羽毛にくるまれた、潤んだ瞳が見える。
「……ボコ……ゴメンね、巻き込んで……」
「――“虹”が見えたら会おう、そう僕は思っていたが――」
静かな声が、今だ続く爆音の中に、微かに、でもはっきりと聞こえた。
「やはり、再会は晴れた空の下が一番だね――雑音が多すぎるのはいただけないけど」
「だ、誰でぇ、こらぁっ!剣一本でも相手すっぞ俺様!」
聞き覚えのある、声。
何かが腐ったような甘さを持った声。
「お久しぶり、ビビ君!会いたかったよ!」
「ク……ジャ……?」
焦点の定まらない風景に溶け込むように、そいつの姿が映っていた。
ボクを、ボク達を“作った”男の姿が。
黒魔道士を、ひどいことに使おうとして作った男の姿が。
「僕達の脚本を、君“達”は見事に砕いてくれた――フフフ、もちろん、良い方向にね!
あぁ、なんと素晴らしい役者達なんだろう!最高の舞台だよ!」
「お……まえ……なんで……」
全てを滅ぼそうとして、ジタン達と一緒にやっつけた男が、そこにいた。
「さて、盛り上がってきたお芝居も、いよいよクライマックス!至高のショーは脚本家も意図できないものになりそうだよ!
何だかゾクゾクしてこないかい?六千年分の集大成を特等席で観劇できるんだよ?」
いくつもの『なんで』や『どうして』が頭に浮かぶけど、それも段々ゆっくりになる。
視界が少しずつ狭くなってきたんだ。
「――だから、君“達”には演じてもらいたいんだ――」
目の前が真っ暗になる寸前、クジャの背筋が凍るような笑顔が目に焼きついた。
「――悲劇に幕を降ろす、重要な役割をね――」
ボクの記憶は……一旦ここで途切れてしまったんだ。
それは、深く、深く沈むように……
--------------
以上です。感動のご対面(?)ですね。
次回はちょっとクジャに色々語ってもらう予定です。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
---------------------------
代理投下は以上です。
連続投稿失礼しました。
乙です
>>343 自分は友達と「これ書いてるのヒューの中の人じゃね?」って話してますんで十分描けてますw
地図はおおまかなのが7巻にあったからなぁ
社長乙。
とりあえずシエスタGJw
371 :
:2009/03/16(月) 21:08:53 ID:hXuZ1dHz
まとめサイトの 「聖樹、ハルケギニアへ」がえらいことになってますな。
消したのか?
消えたのか?
う〜む
1.避難所のまとめwiki更新スレをチェック!
2.書き込みが無ければ、運営議論スレをチェック!
3.書き込みが無ければ、事態を報告!
こんな感じ?
>>343 とりあえず、ギーシュは生きてないよなw>旦那だったら
面白いです>ゴーストステップゼロ
楽しみにしてるので、がんばってください
しかし、ハルキゲニアはニューロにとっては住みにくい世界だぜ(持ちキャストが全員ニューロ入り)
>>369 2巻、4巻、タバサの冒険、10巻、13巻、15巻等の記述によると、
あの地図は原作の記述とはかなり違うもののようです。
例えばアルビオンとトリステインの面積が同じくらいとされてるのにだいぶ違ったりとか。
ガリアが寸詰まりに短いところとか。
ああSOUN HORIZOND書こうとしたけど難しい…話題出してたサンホラー誰か頼んだ
あの歯並びの悪い気持ち悪い人形召喚してルイズが卒倒する絵しか思いつかん
灼熱怪獣を呼んでハルケギニアを火の海にするつもりか?
>374
今は一般に公開されていますが、地図は軍事的に重要なものなのであえて不完全、あいまいな部分を残して頒布されていた時代がありました。
しかしゼロ魔だから、7巻の地図が測量ミス軍事的、それとも、国のプライドなのか微妙なところですね。
>>378 あの地図は実は誰かのオネショじゃないのか?
アクマさんの所のモットさんあたりの。
>>371 エクスデス先生待ちなので、消えたのかと思って焦った。
修正ミスだったみたいで一安心。更新待ち遠しい。
>>376 あらまりが嫌いかw
悲惨な目にあった王家の眷属とか二つの勢力の中間の立場とかはティファニアはありでもルイズ(特に初期)じゃちょっとと思ってルキアでも喚ぼうかと思ってた
>>377 ザン○ラーのことか亜種はある意味最強の守りを持ってるな
>>382 一瞬ザンギュラかと思タ
スーパーウリアッ上!!!
海原雄山なアンアン・・
>>378 ほんのつい最近までロシアの地図もそうでしたね・・・
NASAの衛星写真を元にしたネットマップが普及してロシアも
その恩恵受けたときにだいぶ抗議したとか。
軍事的にまずいから載せるな、と。
あの地図が微妙なのは大賛成します(w
>>379 モットのおねしょ(wwwwww
テラワロス(wwww
しかし中身はシエスタ
シエスタも作品によって色々変わるなぁw
だがしかし「エロい」という共通点は常にある<シエスタ
しっかし、たくさん読んでると自分でも書きたくなってくるねー。
>>389 俺も書いてるんだが、なかなか上手く書けないよー。
以前、結構前のスレで使い魔を召喚して、契約する前に召喚者が自力でさっさと帰還してしまうのが何度も繰り返されるってネタを考えて、それが可能なキャラを聞いたりもしたんだが・・・
何人かキャラを答えてもらったのはいいんだが、書いてみてもどうも面白くなくて。
そのキャラである必要もないなーって感じでな。
なんでそこから一番筆の走った、角から出てくるわんわんをピックアップして書き直してるよ。
オチと題名をどうするか悩んでるが・・・
仕事が切羽詰らなきゃ、近いうちに書きあがると思う。
ソニックが新作で美少女に魔法で異世界へ召喚された上に喋る剣を相棒にしてた
書こうと思ったらゼロの使い魔読んだ事ないって気付くのはよくある事だよね?
クロス先の漫画が長いこと読み返してなくて、どこにあるのか分からなくなったことに気づくことなら。
どこいったー? ないないの神様助けてー。
インディ・ジョーンズを召喚
>>396 で、探してる最中に出てきた別の漫画を読んでるんだな
そういえば最近タバサのハシバミ草サラダの洗礼を受ける使い魔が減ってきた気がするんだが…
ユーゼスとかヒューって食ってないよねハシバミ草。
ユーゼスではシュウが食ってたな自分から
>>393 無理に変な縛りをするよりは、自分が書いてて妄想が膨らむキャラの方がいいと思うぞ。
>>400 そんな描写あったか?
ソニックの台詞難しい
ところどころ英語を使うからややこしいのよ
ゼロ魔の原作未読なので読んだら書くよ、たぶん
エッグマン召喚されたら他の使い魔はエネルギー源にされちゃうね。
自分は
それゆけ 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコから山本洋子ほか数名召喚とか思った。
>>402 英語でとっさの一言、みたいなのでググればいいよ
あと実際にゲームで出てきたのを使うとか
Piece of cake!とか、Not my day!とか
あと
>>403はちょっと表に出ろ
代理スレに依頼が来てる
当方携帯のため代理不可
どなたかよろしゅう
>>408 了解…と思ったけど、長すぎる行がありますと出たよ。
どうしよう。
こっちで勝手に修正とかできないなあ。
書き手の人、どないしますか?
410 :
ゼロの魔王伝:2009/03/17(火) 12:13:32 ID:Mp2S8fzI
修正の方は好きにしていただいてかまいません。よろしくお願い致します。
了解…て、書き込めるんやんw
あー、修正しながらになるので20分くらいから。
ゼロの魔王伝――23
物語の舞台は、一時、浪蘭幻十とドクター・メフィストを輩出した地球の、とある都市に移る。
十数年前に襲った<魔震>によって築かれた瓦礫の王国の中の、人通りの無い馬場下町の裏通りを、目にも鮮やかな幾種もの花模様が踊っていた。
白い月見草、百合、女郎花、秋桜、馬酔木、フリージア。百八十センチを優に超す長身の男のくるぶしまですっぽりと覆う、シルクの生地らしいコートにプリントされた押し花だ。
滴るような陽光の祝福を受け、瑞々しさを失っていない花弁からは、揺れ動くコートの動きに従って、色が付きそうなほど濃密な香りと花粉を散らしているに違いない。
実際の戦闘を行うに当たって最も理想的な筋肉の配置を体現した肉体は、三千度の炎にも耐える耐火耐熱機能を有した黒革のジャケットと、花の揺れる色彩豊かなコートと共に、四方の瓦礫から降り注いできた弾丸の雨を避けた。
コートを見に纏った男が、ちら、と右目を周囲に走らせた。隻眼であった。左目には焼いた刀の鍔を眼帯代わりに当て、精悍と野生と知性とが、これ以上ないほど互いを引き立て合った凄味を湛えた雰囲気を纏っている。
二十代後半と見えるが、醸し出す貫禄と威圧感は実年齢の何倍もの時を命がけの戦場に身を置かねば身につかぬ、修羅の如きものだった。
足音を立てぬ走り方で、さっと瓦礫の一つに身を隠した。敵の獲物の一つはコルト社のASR(アドバンスド・システマチカル・ライフル)2000だ。
火薬発射の弾丸ではなく、ボア付きカーボンフレシットを使用するこのライフルは、一〇〇〇メートルで直径二十センチの的に三〇発を集弾させる性能を持つ。
一世代前は火薬燃焼ガスによって推進力を得ていたが、高密度分子ガスによって無音無煙遮光の発射システムを採用している。
隻眼の男は、不意に空を見上げた。自分の運命に悲嘆し、空の上の存在に助命を乞うたのかもしれない。
大地に走る亀裂の底から噴き上げる妖気の成分が混じった大気は、それ以外の不純物の存在を許さず、天空の青を澄んだ色に見せている。ぽつんと、青空に黒い点と、それよりもはるかに小さくはるかに数の多い小さな点があった。
食肉雀の群れが数百羽規模で飛行船に群がり、マイクロウェーブ銃、火炎放射機で次々と撃退されているのだ。
飛行船の中の乗客たちの肉を貪る凶悪な欲求に突き動かされているのと、妖気に侵された思考が、死への恐怖を微塵も感じていないから、どれだけ同族が死のうとも果敢にアタックを続けている。
時折、攻撃の合間を縫って、落ちて行く仲間に群がる食肉雀もいた。この小さな魔鳥達は、同胞の血肉も食らうのだ。
「空も地上も殺し合いか。この街らしい」
これといった感慨をにじませぬ男の声であった。日常茶飯事の光景の様だ。
瓦礫を穿つカーボンフレシットと、その他の短機関銃らしい軽快な発射音ばかりの世界に、唐突に異端分子が混じった。同時に、男の腹の辺りが大きな炎の花が咲いた。
炎の花を咲かしたのは、男の右手にいつの間にか握られていたリボルバーだ。握りこぶしほどもあるだろう巨大な輪胴を備え、聞く者の鼓膜ではなく臓腑を震わせる暴虐の発射音を轟かせた。
五十口径、五十五口径の拳銃など珍しくもないこの街で、最強の名をほしいままにするオンリー・ワンにしてナンバー・ワンのハンドガンであった。
跋扈する魑魅魍魎、外道邪道の犯罪者どものみならず、持主の同僚や上司の血さえも吸ってきたが故に、それはこう呼ばれる。
“魔銃ドラム”と。
男――新宿警察殺人課に所属する魔界刑事、屍刑四郎(かばねけいしろう)は、空に向けていた瞳をまっすぐ下ろし、目の前で腹に自分自身の頭ほどもある大穴を空けた殺し屋を見つめた。
まだ若い。中学生かそこらだろう。分子レベルで変形してどんな人間にも化ける変装用のマスクが開発されて久しいが、死の苦痛をこうもむざむざと刻んだ顔は、本物と見てよいだろう。
屍は少年が着こんでいたカメレオンスーツが機能を失い、銀色に変わるのを黙って見届けた。
少年の右手にはS・W・M29が銀色に鈍く光っていた。ただし、装填されているのはただの四四マグナムではない。一発でグリズリーも、一発で胴がちぎれる高性能炸薬をたっぷり詰め込んだ手作りの強壮弾だ。
周囲の風景が溶け崩れて現われたカメレオンスーツは文字通り、カメレオンの擬態能力をメカニズムによって再現したもので、百分の一秒で周囲の風景に同化し、装着者がマッハで動きでもしない限りは、まず完璧なカモフラージュを約束する。
ぱくぱくと、少年の唇が動いた。血の糸を引くかの様な声は、声変わりを迎える前のものであった。
即死している筈の少年の生命力に、わずかばかり屍は感心したらしい。頭を吹き飛ばさずに少年の言葉が終わるまで待ったのだ。
「どう……し……て……」
「見破ったのか、か? 勘だよ」
「……」
鉄に血まみれの砂を塗したような、錆びた匂いを嗅いだ錯覚を覚える声だった。噎せ返る様な雄の強さの中に、冷徹なまでの知性と凄惨な戦いをくぐった者独特の鋭さがある。
勘で見破られたと教えられた少年は、そのままがっくりと首をうなだれて息絶えた。その姿に、屍は痛ましさの欠片も見せずに、心から軽蔑するようにこう言い放った。
「千円殺し屋が、プロに手を出すからこうなる」
千円殺し屋とは、魔界都市<新宿>初期の歴史から存在する、文字通り千円程度で殺しを引き受ける一般人である。そう、“一般人”なのだ。
それは小金に飢えた学生であったり、自由な時間を持て余した人妻であったり、ひいきのホステスに貢ぐための金に窮した中年であったり、あるいはふとしたきっかけで手に入れた力を試したい衝動に駆られた者達であった。
誰がそのはしりとなったかは今では分からない。
ただ、その彼ないしは彼女らは人込みの雑踏の中で、千円札や五千円、あるいは五百円硬貨を握った手を突き出した誰かから、そっと金を抜き取って殺しを行う。
無論、これはプロの殺し屋めいた契約事項などない、いわば行きずりの殺人依頼だ。綿密に打ち合わせを行う事などなく、大抵は通りすがりの依頼者が口や指で示した相手を目標に定め各々の持つ技巧で殺人を行う。
たった千円の殺し屋は、無論本格的な技巧や魔術を身につけたプロには及ばぬが、それでも<新宿>の外で溢れる殺し屋にも遜色の無い実力と、彼らをはるかに上回る殺人への禁忌の無さを備える。
千円で突如、平凡な一般人から殺し屋へと変貌し得る住人規模での精神性は、やはりこの街ならではだろう。千円殺し屋ではないが、五百円のお釣りの代わりに、八百屋に旦那を殺させた主婦といった例も、そこそこにある。
この街では人の命は空気の様に軽く、容易く失われる代物であった。
そう言った心根と環境が生み出した恐るべき低価格の殺し屋達は、現在は<新宿>に百人とも千人とも言われている。なにしろほとんどが完全な個人経営であるから、元締めなどといったまとめ役がおらず実態の把握は困難を極める。
ともかく、その千円殺し屋の一人を屍は始末したのだ。多分、新作のゲームを買う為か、携帯電話の使用料金を払う足しにでもする腹積もりだったのだろう。
十数年の若い命を散らした犯罪者にはもはや目もくれず、屍はすっくと立ち上がった。当初十人を越した屍暗殺部隊はすでに八名が、ドラムの餌食となり、今頃死体は妖物達の胃の腑に収まっている事だろう。
少年殺し屋を雇ったのは、急きょ戦力の補充を行おうと思ったからだろうか。もっとも、毛ほども役には立たなかったが。
狙いが、屍の首に犯罪者達が掛けた逆懸賞金五百万円、無論生死を問わず、なのか、それとも先だって構成員五十七名を殺害された暴力団の生き残り達の報復か。
あるいは、殺人嗜好薬を服薬し、小学生に立てこもって児童を殺害した後で正気に返り、自首しようとして、突入してきた屍に八つ裂きにされた十六歳の少年の遺族が雇った殺し屋か。
いずれにせよ、殺人未遂の現行犯だ。襲われた刑事が襲撃者を皆殺しにして、正当防衛を訴えて不問に処されるには十分な罪であった。ましてや、彼らが襲ったのは屍刑四郎。この街で最高最凶の刑事なのだ。
ちり、とうなじを小さな針で突かれたような感覚に従って、屍はドラムを右前方十五メートルの位置にある瓦礫に向けて、無造作に一発放った。成人男性の親指が簡単に収まりそうな銃口からは、毒々しい炎が噴き出す。
六〇口径に届こうかという、重機関銃の弾丸並みの巨弾は厚さ三〇センチを超すコンクリ塊を容易く貫通し、その背後に身を隠していた刺客を抹殺した。コンクリ塊越しに、頭部を撃ち抜かれて赤い雨が噴き上がるのが見えた。
真紅の飛沫の中にきらきらと輝く飛沫の様なものがあった。五〇口径までならものともしない気体装甲だ。使用者の呼吸器官には一切害を与えず、噴霧してから一時間限定で無色の鎧となるスプレーは、ここ最近の売れ筋商品であった。
しかし、その気体装甲も、ドラムの前では少し厚い紙程度の効果しかなかったらしく、使用者は無残な死骸へと変わり果てている。
戦術核の直撃にも耐える妖物“ギガント”の装甲甲殻でも纏っていればともかく、ドラムを防ぐには不足だったようだ。
核兵器を使っても殺しきれない妖物の正確な実数は不明だ。霊的な存在はともかく、確たる物理的な妖物では、一応数種が確認されている。
最低でも七台は核動力のタクシーが走っているという、非核三原則が適用されぬこの街でしか検証できぬ事柄ではあるが。
ドラムの銃身から硝煙たなびく中、屍の背後に残る一の男が立っていた。それまで伏せていた瓦礫から姿を覗かせ、既にビアンキ製のヒップ・ホルスターから抜いていたアメリカン・ルガー“レッド・ホーク”四四マグナムの銃口を向ける。
そこらにいくらでもいる闇医者に受けた生体改造技術で、男の抜き射ちは実に千分の一秒の速さを誇っていた。眼の方にもメスをいれ、闇夜でも星一つあれば昼日中の如く見え、一キロメートル先の枝にぶら下がる林檎を撃ち抜く事も児戯に等しい。
ドラムの銃口は向きを変わらずにいるままであった。男は自分の勝利を確信し、引き金を引き絞った。
音の壁を超えた拳銃弾サイズのHEAT弾頭が先端のライナー部から、二万度を超すジェットスクリームを屍の体内で狂奔させる――はずであった。
トリガー・ストロークが撃発点から遠いダブル・アクションでも、男には屍を余裕と共に撃ち殺す自信があった。しかし、その自信は吹き飛んだ頭部と共に飛散した。
男の半分、実に二千分の一秒のクイック・ドロウを可能とする屍ならではの俊敏さで、左脇の下に突っ込んだドラムの引き金を引き、背後を振り返りもせずに射殺してのけたのだ。
屍は背後を振り返った。同時に屍の右手がブレた。実際には超高速で“ドラム”の輪胴をスピンアウトし、弾丸を発射する際の熱で気化するプラスチック製の薬莢の排莢、及び再装填を行ったのだ。
数千度に達する輪胴ないで特殊プラスチック製の薬莢は気化し、黄金に鈍く輝く空薬莢を残さない。
不必要な筈のスピンアウトをいちいちしているのは気化しきらなかったプラスチックがこびりつき、使っているうちに不具合が生じる可能性が極わずかながら存在するためで、屍はこれを防ぐために行っている。
スピンアウトから六発の再装填まで一秒をきった。銃弾の詰まった弾倉を叩き込めばいいだけの自動式拳銃やスピードローダーを使う回転式拳銃など比べ物にならない速度だ。
自動式拳銃に比べ、安定性と信頼性で勝る回転式拳銃の泣き所である再装填の手間は、この男には無縁らしい。
皆殺しにした殺し屋共の死骸を一瞥する事もなく、屍は歩き出した。コートの内側にドラムを収めた筈だが、ちっとも膨らんではいなかった。本当にしまっているのか、ホルスターはどこにあるのか。同僚たちも知らぬ屍の秘密の一つである。
銀の拍車が着いた黒革のブーツの歩みが唐突に疾走に変わった。これまで幾度となく屍を生き残らせてきた勘が、危険の信号を盛大に告げて来たのだ。
ただの勘と侮ってはいけない。新種の妖物が日々生まれては死に、変異し、犯罪者達の用いる変装・偽装技術、霊的な変貌の術を相手にする魔界都市の刑事達が、最後の最後に頼りにするのは、最新のメカニズムでも魔術でもない。
自分自身の直感だ。魔界都市で生き、法を守護する番人として培ってきた第六感こそが、命を狙うウジ虫どもの欺瞞を見抜く最大の武器なのである。
この街の刑事は軽い予知にも匹敵する第六感を備えてようやく一人前として扱われる条件をクリアーする。
それ位の危機感知能力を備えなければ、海苔弁の海苔や、ドアノブに化けた妖物が牙を剥く前に射殺する事は出来ないし、熟睡している中を液体やガスに化けて襲いかかってきた殺し屋を無意識の状態から反撃を見舞って返り討ちにする事などできやしない。
日常的に生命の危機にさらされる<新宿>区民は、体力・知力・精神力とあらゆる面で区外の人間を凌駕するが、その中でも<新宿>の刑事達は超人的な身体能力の持ち主にしかなれない職業であった。
その<新宿>の魔界刑事の最高峰、屍の勘が足元に迫る脅威を察知し、その体を五メートルほど前方へと跳躍させていた。固い地面の上に着地したブーツの底が白煙を噴いている。屍はそれを気にも留めず走り始めた。
時折、揺れる炎の水面から飛び出ているのは、飛行能力を有する妖物達であろう。頭を吹き飛ばした殺し屋が、最後の力を振り絞って、携行していたカプセルを地面に落としたとは、屍は知らない。
ただ、そのカプセルの中身が、無機物に無限の食欲と飢餓感、そして消化器官を与える疑似生命薬であったのは想像がついた。着地した屍のブーツの底が白煙を噴いたのは、突如食欲を持った地面の分泌した消化液によるものだ。
あのまま留まっていたら、今頃は地面に食べられていた所だろう。文字通りというおうか、驚天動地の事態にも屍はさしたる動揺もない様子だ。
地面のみならず車や家屋に同様に食欲を与え、所持者を抹殺する目的で造られたこの手の薬品も、市場に流通するようになってから数年を経ている。今さら、という所なのだろう。
屍の隻眼は炎の中で蠢く影に、地獄の底で揺らぐ炎の様な憎悪を向けている。
一万度の炎熱地獄の中を平気の平左で闊歩しているのは耐火能力に優れた妖物や、死霊の類であろう。犯罪者同様に、屍の敵だ。今すぐまとめてぶち殺したい衝動を堪えているのかもしれない。
犯罪者に対しては、人権を認めるどころかそもそも人間扱いをしないのが当たり前の<新宿>でも、屍の苛烈さは並ぶ者がいない。閻魔大王だって顔色を悪くすると言われるほどだ。
出来る事なら無抵抗でも射殺してしまいたいのが、屍の本音と言った所だろう。せめてもの救いは、途方もない正義感も持ち合わせている事だ。犯罪者や妖物に一切の容赦をしない代わりに、この男は無辜の市民や弱い者は文字通り命懸けで守ろうとする。
一人の命を救う事に己の命を賭けるのに何の躊躇もすまい。いわば、極めて強い正義感を持った希代の殺人鬼と言った所だろうか。
やがて、屍の瞳から危険な光が去ってから、屍はどこか疲れたような顔で背後を振り返った。世界は光り輝いていた。天上世界から舞い降りた黒衣の天使がそこに居たが為に。
「派手だね」
と、どこか人の好いのんびりとした声で、その羽根の無い天使は屍に行った。ぬーぼーとした顔には微笑の様なものが浮かんでいる。屍は苦笑した。明日世界が滅びると言われても、この調子のまま世界の終焉を迎えるに違いないと思ったからだ。
屍の目に、声の主が映った。
天の業師が技巧の全てを傾けて刷いたかのような流麗な眉の流れ、厳寒な、そして清涼たる冬夜の闇をはめ込んだかのような黒瞳、美の神と契った造詣の神が彫ったかのような理想の鼻梁、触れる風さえ陶然と蕩けるような唇の配置の妙は、唯一無二のモノ。
年のころ二十二,三の青年がその顔に宿す美貌は人の手を離れた世界で作られたかのような、いや事実そうであるに違いないものである。
人類の歴史の始まりから今に至るまでいったい誰がこの美を生み出せるのか、誰しもが作り出すことはできないと、同意するに違いない美しさであった。
そんな美貌も、年がら年中春霞に覆われているみたいなのんびりした所があって、どこか親しみやすさを持っている。
ハルケギニアに召喚されたドクター・メフィストの想い人、秋せつらだ。Dとルイズがティファニアから貰ったご長寿セットのアイディア基のせんべい屋の主人でもある。
「なんの用だ。人捜し屋?」
敵対の感情ではないが、あまり向けられて嬉しい類ではない感情が籠った屍の声だ。大抵の人間は、これだけで胃を悪くする。せつらは昼寝から今起きたみたいなぼんやりとした表情を浮かべているきりだ。
人捜し屋を営むこの青年と、刑事という職業は何かと鉢合わせする事が多く、時には対立に近い状況になる事もある。
かといって屍が完全にせつらの事を敵視していないのは、長年の付き合いもあるし、決して目の前の青年の心根が悪いものではないと知っているからだろうか? たぶん、本人にも分からない微妙な心理だろう。
せつらは、メフィストやD、幻十と同格の美貌に、彼だけが持つのんべんだらりとした雰囲気を纏わせて、肩を竦めた。この仕草だけで感激のあまりに気を失う男女は数知れない。
目下、秋せんべい店は年商三千万を誇るが、その理由の大半はせんべいの味よりも店主の美貌に依る所が大きい。せつら本人も自分の美貌の効果は心得ているどころか、大いに利用してやれという性格だから、営業用の仕草の開発も行っている。
屍にしてみせたのも、営業の仕草の一つだろう。肩をすくめてから、せつらはこう言った。
「近くを通っていたらドラムの銃声が聞こえた」
「まさかおっとり刀で駆けつけて、恩でも売ろうとしたのか?」
「いや。ホトケ様になっていたら、通報してあげようかなと思ってね」
「生憎と御覧の通りだ」
「良かったね」
ぬけぬけと言い放つせつらに、そのまま噛み殺しそうな勢いで歯を剥くのを堪えて、屍は黙って歩き始めた。なんのつもりか、黒いロングコートの裾をはためかせてせつらが横に並んで歩き始めた。
屍は警戒する様にせつらの横顔を見たが、すぐに正面に視線を戻して歩調をやや速めた。ほどなくして、表通りに近い路地に入り、左右にこの街らしい看板を掲げた店が並び始める。
立てかけられた看板や、昼日中も深更の真夜中でも変わらずけばけばしい三原色のみのイラストや、ネオンが輝くそれらは、すべて風俗店のものだった。
区外では文章にするだけでも白い目で見られかねない風俗産業の数々が、この街では現実の代物と化している。
「ヌード界のニュー・ウェーブ、“陰獣艦隊”」
「百倍の愛撫・ヘカトンケイル<百本腕の巨人>の館」
「血まみれのサイボーグ獣姦ショー」
「夢の世界の快楽、ヴァーチャル桃源郷」
などなど、この街らしい人間と人間が行うモノのみならず、サイボーグや強化人間、はては動物、植物のみならず妖物、死霊、ゾンビを相手にこの世ならぬ快楽を提供する店舗が所狭しと並んでいる。
比較的まとも、というか倫理的、道徳的にマシな方を例に挙げると、一種の幻覚作用を用いた薬によって、妄想の中の人物をほぼ具現化し、望みどおりの喘ぎ声や性癖、恰好を取らせて好きなだけ味わう事の出来るヴァーチャル・セックス辺りだろうか。
テレビの中の別世界に住むタレントやアイドル、あるいは身近にいる異性や同性を手に触れる事の出来る存在として具現化し、しかも本物と変わらない――値段相応だが――快楽を得られるこの風俗は、特に区外からの観光客に熱烈なファンが多い。
個室の中で自分以外誰も知らぬ、また知られてはならぬ欲望を吐き出し、仮初の現実とする事の出来るこの悦楽に染まり、足を抜け出す事の出来ぬ者は今も後を絶たない。
屍の、犯罪者などまとめてぶち殺してしまえ、という性情を考慮すれば違法営業の店舗が一店でもあったら、ついでに周囲の店舗もまとめて捜査して廃業に叩きこむ所だが、この通りに並んでいるのは全て区の許可を得て営業している店ばかりだ。
三つ首の怪鳥に乳首を咥えられて喘いでいる美女の看板から出てきた、ホクホク顔の男の顔を見て、屍の目が危険な光を湛えた。どうにも、同僚が出て来たらしい。
そんな屍の横で、こんな場所であってもせつらの髪や頬に触れた風は、珠のきらめきを纏って吹きすぎ行く。この世のレベルを超越した美貌ともなると、居場所がどこであれ関係ないようだ。
じろりと屍の目がせつらの横顔を睨んだ。そのまま射抜きそうなほど強い眼差しであった。
水晶体を変化させて瞳からレーザービームを放つ連中や、虹彩に手を加えて模様を変化させて催眠術を仕掛ける手合いも大なり小なりいるが、本当にレーザーでも撃ちだしそうな屍の視線に、せつらがちらっと見返して反応した。屍が口を開いた。
「なんだ?」
「善良な一市民として刑事さんにお話が」
「……」
妙にへりくだったせつらの言い方に、屍は盛大に眉を顰めた。せつらが、人捜しの仕事で、のこのこと事件現場に顔を出して警察の情報や事件の状況を根掘り葉掘り聞いて回る事があるのは、周知の事実だ。
屍としては情報の漏えいなど、漏らした相手の腕位へし折っても足りないくらいなのだが、<新宿>の申し子とまで呼ばれるせつらの情報網や知識が必要となる事件もあり、そういった行為は暗黙の了解として見逃している。
今回も、警察の掴んだ情報を流せと、せつらは言っているのだ。屍は黙って視線を前に戻し、せつらは了承の合図と判断して、やっぱりのんびりと喋りはじめた。
言い終えたせつらが、ふう、と溜息をついた。長く喋って疲れたのだ。基本的に面倒くさがりだから、百文字以上いっぺんに喋ると疲れる性質らしい。
黙って聞いていた屍が、歯を軋らせる音が聞こえる様な重々しい口調で言った。
「あとで担当の刑事に伝えておく」
「ひとつ、よろしく」
屍は、にぎにぎ揉み手をするせつらを、これまたじろりと見つめた。目の前でぬーぼーとしている美貌の青年が、これまで数千単位の人間と妖物達を屠ってきた人物とは、屍の眼を持ってしても見えない。
この街の特性を考慮するならば、小学生が片手でビルを倒壊させても、まあ、不思議ではないが、四季の巡りが春しかないような青年の雰囲気とこれまでの所業がここまでかけ離れているのはごくまれだ。
屍自身、犯罪者と汚職警官や上司を最低でも一千人は血祭りに上げているが、こちらは外見と纏う雰囲気に似合いの行いといえよう。
せつらの事を外見で判断してはいけないという見本だな、と屍は何度目かの感想を胸の中にしまい、代わりにこう聞いた。
「所でお前なら、ドクター・メフィストがどこに消えたか知っているんじゃないのか? 今、病院を仕切っているのはダミーだろう?」
「さあ? なんでぼくに聞く」
「お前がこの街で一番、ドクターとの関係が深い」
せつらは、珍しく表情を動かした。面倒くさがりが細胞レベルで浸透しているから、顔面の筋肉を動かす事さえ稀だ。その表情を動かしたと言う事は、それだけせつらにとっても大事であるらしい。
ただし、せつらの顔は迷惑そうだった。自分と、メフィスト病院の院長との仲がどのように語られているか、知り腐っているからだろう。少なくとも白衣の医師の想い人が、この黒尽くめのマン・サーチャーである事は確かだ。
「その言い方は止めてくれ。断固抗議する。ぼくはノーマルだ」
と、世界で最も美しいカップルの片割れは、心から否定した。それでもどこかのんびりとして聞こえるのは、普段の調子が調子だからだ。
この若者は、目の前で殺し合いが起きても、ま、頑張って、と声をかけて離れてゆくだろう。基本的に万事に対して無関心なのである。
「では、お前がドクターともっとも濃い関係だ」
「嫌味?」
猛獣の唸り声の様なものが聞こえた。屍が笑ったらしい。せつらは、かすかにむすっと眉を寄せた。よくよく観察しなければ分からないくらいの変化だ。せつらはふと空を見上げた。終日雲を眺めて過ごせたらいいのにと思ったのかもしれない。
「まあ、どこかで患者を治療しているさ。それしか能が無いからね」
せつら以外が口にしたら、どんなに過酷な運命が与えられるか分かったものではない事を口にした。ドクター・メフィストが<新宿>から姿を消して、数日が経過したある日の事であった。
「ふむ」
と、実験の結果をつぶさに観察する科学者のような、ふむ、がハルケギニア大陸アルビオン王国ウエストウッド村の、とある一室で漏らされた。昼も夜も、世界の終わりの日が来ても青い光に包まれているであろう、メフィスト病院院長室である。
院長室の四方に蟠った闇の中へと果てが飲み込まれている万巻を収めた書架や、人類のどんな王朝の栄華も及ばぬ豪奢な造りのシャンデリアや調度品が並び、床面積は百坪にも、あるいは無限の様にも感じられる。
ここでは時間と空間が通常とは異なる形で存在しているせいだろう。黄金と水晶と宝石と、それ一つで一国の財政を賄えそうなほどの豪華絢爛さと品格を伴った椅子の上で、メフィストは鼻の頭を左手の人差し指でぴたりと抑えた。
白衣の医師がこんな事をすると、また何か不治の病を癒す画期的な治療法を発見したのかと、誰もが期待する所だが、院長室を訪れている客人は違うらしかった。
「くしゃみでも?」
闇に紛れても、周囲の闇を呑みこんではっきりとその存在を主張しそうなほど深い黒のインバネスを着た男は、浪蘭幻十その人であった。
Dとトリステイン魔法学院の近郊で一戦交えてから、どのような手段を用いてか、このアルビオンにまで足を運んだらしい。
すでにDに浴びせられた一刀の傷は癒えたのか、誰もが口づける事を願い、あまりの恐れ多さに俯く口元は、薄く三日月の形に吊り上がっている。痛みに歪む様子は皆無であった。
「誰かが噂をしているようだ、というべきかね?」
と、メフィスト。幻十の言葉は正鵠を射ていたらしい。それまでカルテに走らせていた羽根ペンをインク壺に差して、メフィストは椅子から立ち上がった。
その一連の動作の全てに人間の王侯貴族など、性質の悪い酔っ払い位にしか見えなくなるほど気品と優雅さが充ち満ちている。
同等の美貌を持ちながら、せつらや幻十が持ち得ぬ荘厳なまでのメフィストの品格であった。傲岸不遜な幻十でさえも思わず身惚れたか、自分の前にメフィストが腰かけるまで沈黙していた。
「さて、君の当院への入院希望だが」
「はい」
と、幻十はどこかいたずらを仕掛けている子供の様に笑った。結果はもう分かっているのだろう。メフィストの瞳の光は冷厳なままだった。ふと背筋に寒いモノを覚える真冬の夜の様に冷たい瞳である。
「残念ながら受理する事はできん。当院は傷つき、病み、それでも生を望む患者の為に存在している。君は入院の必要性がある様な怪我も病気もあるまい」
「やはりそうなりますか。ここがハルケギニアでもっとも安全な場所だったのですが」
「君のその胸に刻まれた傷が癒える前に申し込むべきだったな」
「まったくです。水魔法とやらも便利ですが、入院を拒否されてしまうようだったなら、治療など受けるべきではなかった」
心から忌々しげに、幻十は胸にそっと指を這わせた。妖しい意図を持って這う虫の様な動きを、メフィストの瞳が映していた。
「仕方ありません。怖い鬼ごっこの相手はぼく自身がするとしましょう」
「君にその傷を負わせた相手、並ではあるまい」
「無論、Dという男ですが、ドクターはご存知なのでは? 好みのタイプと思いますが」
「私の好みはともかく、名前と顔ならば知っている。剣の腕は、見る機会が無かったがね」
「そうですか。では、今度はちゃんと患者として扱っていただけるように気をつけます」
「日頃の行いに気をつける事だ。特に、吸血鬼とはいえ女などを連れ歩くなど、男を名乗るなら恥を知りたまえ」
「肝に命じます」
メフィストの言葉に、この魔界医師の性癖を思い出して、幻十は苦笑したらしかった。もし、目の前に押せば世界中の女だけを滅ぼせるスイッチがあったなら、メフィストはなんの躊躇もなく押すに違いない。
ドクター・メフィスト。ゲイバーを、「報われる事を知らぬ可憐な心の持主達が集まる場所」と評した男であった。まあ、ようするに、男は男と愛し合えばいい、というタイプなのである。
そして、メフィストと幻十の邂逅から数時間後。アルビオン王国とトリステイン王国の交流を繋ぐ港町の一つラ・ロシェールの、高級宿『女神の杵』亭は、星のさめざめとした光の降り注ぐ夜に、燃えていた。
比喩表現でも何でもなく、文字通りに燃えているのだ。
火矢を浴びせられる様に射掛けられ、たちまち炎に包まれ始めた宿の中には、ルイズをはじめとしたトリステイン魔法学院と、魔法衛士隊グリフォン隊隊長の姿があった。
突如周囲を囲んだ傭兵達が放った火矢によって、宿が炎に包まれ始めている事に気づいて脱出しようと、一階に降りた所を、弓矢の一斉射撃に合い、立てかけたテーブルを盾にして一時しのぎをしている所だ。
うちがなにをした、と喚いた宿の主人は、腕を矢で貫かれて床の上をのたうちまわっていたが、ルイズ達にそれを気にする余裕はない。
ルイズやギーシュは、流石にこういった場面を想像はしていても、現実になると勝手が違うようで慌てた様子を見せていたが、キュルケはその性格で、タバサとワルドは経験によって普段の冷静さを失ってはいなかった。
やがて、ワルドが重々しく、しかし決断を決して曲げぬ強さを持った声で、とある作戦を告げた。
本格的に燃え盛り始めた宿を囲む傭兵達の輪の外で、マントについたフードを目深にかぶった男がいた。顔には白い仮面を身に着けていた。Dが、谷間で襲ってきた賊を皆殺しにした際に取り逃がしたあの男だ。
レイピアの様に誂られた杖を腰のベルトに指している様子と、ライトニング・クラウドを唱えた事からメイジである事は間違いない。金で雇った雑兵達を石木を見る目で見てから、白仮面は薄気味悪そうに隣の男達を見た。
二人いる。どちらも平凡な農夫か街人にしか見えない粗末な野良着と麻製のベスト姿の青年たちであった。人ごみに紛れたら、あっというまに見分けがつかなくなってしまう様な無個性さだ。
だが、それなら白仮面が感じている不気味さはなんであろうか。うまく事が運んでいる事を確認しながら、仮面の男は決して口には出さず、胸の中で疑惑の雲を渦巻かせていた。
(クロムウェルが用意したと言うこいつら、一体何者だ。ただの平民、いや貴族にしても纏う雰囲気がおかしい。あるいは、妖魔の類か? 聖地奪還を謳うレコン・キスタが妖魔と手を結ぶとも思えんが……)
白仮面の視線にも何の反応も見せぬ二人から視線を引き剥がし、仮面の奥の眼差しは、宿の入り口で盛大に咲いた炎の花と、二手に分かれるルイズ達の姿を見つけていた。
「なにはともあれ、予定通りか。おい」
白仮面のぞんざいな調子の声に、一応、男達が反応した。じろりと、死んだ魚の様に濁った眼を向けたのだ。肌が粟立つ様な不快さを堪えて、白仮面は命令した。かすかに恥辱の炎が胸の奥で揺らいだが、無視できるレベルだった。
「あいつらはお前の好きにして構わん。殺すなり犯すなり、なんなら食っても構わんぞ」
冗談のつもりで、食っても構わんと口にした白仮面だったが、すぐに口元に浮かべた皮肉の笑みを凍らせた。食ってもいい。その言葉を聞いた途端、男達の口元には卑しい笑みと、淫らさを交えた飢えが滴らせる唾液に溢れていた。
白仮面は知らない。その男達が浪蘭幻十の手によって改造され、半妖物化した元人間たちだとは。
ギーシュとタバサとキュルケは知らない。自分達の相手が、この世のものからこの世ならざるものへと変えられた人間であると。
そして、男達はゆっくりと、傭兵達を蹴散らすキュルケ達へと向かって歩き出した。月と星の光が落とす影は、白仮面や傭兵達のモノよりも黒く、そして邪悪に見えた。
―――ここまでが、本文になります。
クロス元を知らない方に、メフィストや幻十はこういうところから来たんですよ、という説明的なお話でした。あとメフィストの性癖について。
以上の代理投下の方を、どうかお願いいたします。
そういうわけで投下終了。
作者の人、GJでした!
ちなみに当該の修正箇所は最初の投下分だけで、
> 屍は少年が着こんでいたカメレオンスーツが機能を失い、銀色に変わるのを黙って見届けた。
> 少年の右手にはS・W・M29が銀色に鈍く光っていた。ただし、装填されているのはただの四四マグナムではない。一発でグリズリーも、一発で胴がちぎれる高性能炸薬をたっぷり詰め込んだ手作りの強壮弾だ。
です。もともとの文章では「見届けた」から以降で改行していませんでした。
それでは。失礼しました。
魔王の人、代理の人お疲れ様でしたのですよー
・・・・・・・関係無いけど北野君の人帰ってこないかなぁ
ちなみに長文は、だいたい二行半を超えないように書くのがいいんだぜ?
俺も投下でよくひっかけてたから。そこらを目安にしてるんだ。
魔王伝の方、代理の方も乙です。
とりあえず幻十とドクターの同盟がならずに一安心。
エルザの首をミノタウロスの体につなげかねないからなー、あの魔界医師は。
けどギーシュにタバサもキュルケも逃げてー!奴らは男も女も区別しないー!?
こんにちは、本気で忘れられた頃にやってくるさあう゛ぁんといろいろです。
いやー、今回は大変でした。
過労で倒れて目が覚めたら半月後って、何それどこの医療ドラマの導入部?ってな感じで。
半月じゃなくて半日くらいなら「知らない天井だ・・・」ネタも使えたのですが。
それはそれとして予約がなければ5分くらい後に投下。
ちなみに私はメモ帳の横の字数が50になるようにサイズを調整して、二行半を越えないように気をつけることで回避してます。>長文
まぁそれでもたまにうっかり引っかかったりしますけど。
「突然ですが、実は今私たちは戦をしています」
リリスの指が持ち上がり、びし、と視界の一点を指す。
「敵!」
30メイルを超すサイズに成長しつつあるゴーレムと、その肩の上で高笑いを響かせるフーケ。
「味方!」
剣を構え厳しい表情でそれと相対するショウと、呪文を詠唱する事も忘れ呆然と見上げるルイズ。
リリスの大治(ディアルマ)を受けて意識は回復したものの、やや足下をふらつかせているキュルケ。
頭の中で状況を打開する策を必死で練っているのか、常以上に無表情のタバサ。
「当初の目的!」
フーケを忍者に変え、そして塵となって崩れ去った、かつて『破壊の剣』だったもの・・・『盗賊の短刀(ダガー・オブ・シーブス)』。
「風景の一部!」
首から上を無くして大の字に横たわるヤン。ちなみに景気よく飛んでいった首は木立の中。
「作戦内容はただ一つ、『破壊の剣の奪還』! ただし既に遂行不可能、みたいな! ・・・と言うわけで、どなたか手を貸してくれると嬉しいんですが」
ごつん、とかなり重い音がリリスの頭から響いた。
「この忙しいときに何をやっているか」
口調に怒りをにじませて呟いたのはリリスを杖で殴ったタバサである。
目は普段よりわずかに細くなり、殺気すらにじませていた。
彼女にしてもリリスが場をリラックスさせるためにやったのだろうという事は見当が付いていたが、頭で分かってはいてもやっぱり殴りたくなる事もある。
そしてリリスが無言でのたうつのをよそにタバサは全力で頭を回転させる。
彼女に言われるまでもなく『破壊の剣』そのものが消えてしまった(どう見たって再利用は出来そうにない)以上、もはや任務を果たすことは出来ない。
フーケを捕らえるにしても、戦って勝てるなら良いが犠牲を出してまで捕らえる必要もない。
それに今となっては怪しい物だが、ケイヒが、あのショウと同じ剣技を振るい、しかも実力で大きく凌ぐ女侍が近くにいるかもしれない。今ここに出てこられでもしたら、何をどうしようと全滅は免れまい。
ここは撤退すべきではないか、と冷静な考えが頭をよぎる。
・・・あちらが見逃してくれるか、リリスの言っていた「最後の手段」を使うなら、だが。
改めてフーケのゴーレムを見上げる。巨体はようやく成長を止め、先ほどより一回り大きいかと思われるサイズになっていた。
「来る」
タバサが呟いたのと、ゴーレムが僅かに腕を振りかぶり、一行に叩き付けたのが同時であった。
第八話 『跳躍』
咄嗟に五人が散らばり、叩き付けられたゴーレムの拳から逃れる。
この期に及んでまだ呆然としていたルイズはショウが抱きかかえて退避した。
(ああっ、僕のルイズを!)
木陰に潜んでいたワルドはその様子を嫉妬と計算の板挟みになりながら注視している。
一応彼はこの状況をお膳立てした張本人である。当然ルイズたちが学園に帰ってくるまで、また帰ってきてからもその一挙手一投足は彼によって監視されていた。
勿論、ワルドもこんなところでひっそり隠れてるだけで済ませるつもりはなかった。
本来は一人二人倒れた後で登場し、フーケを倒していいところを見せる計画だったが、意外にフーケの腕が立ち、戦いが長引いたことがひとつ。
またフーケがショウに狙いを絞って攻撃を行っているため、上手い事ショウを抹殺してくれるのではと思い始めたのがもうひとつである。
ショウを恐れているが故だと言うことまでは気が回らなかったものの、彼にとっては理由はどうでも良かった。
エルフの使い魔の蘇生の魔法も死体が大きく損壊していれば蘇生は不可能になるはず。
フーケのゴーレムにショウが潰された後、颯爽と現れたワルドはルイズを救い、使い魔を失って嘆き悲しむ婚約者をそっと抱きしめるのだ。
もちろんショウの死体は戦いのどさくさに紛れてカッタートルネードでさらに細切れである。
(我ながらなんと完璧なシナリオだ・・・いける! これはいけるぞ!)
そしていつの間にか手に汗を握り、ワルドはフーケを熱心に応援し始めていたのだった。
人、それを捕らぬ狸の皮算用と言う。
(それに、いざとなれば・・・)
ワルドの手が、隠しにしまった『召喚の書』を撫でる。たかがゴーレム使いに風のスクウェアたる自分が負けるとは思わないが、これを用いれば万に一つの懸念もない。
ワルドの脳裏には既にショウのなきがらの横で泣きじゃくるルイズを抱きしめる自分の姿が確定した未来として浮かんでいた。
だがそんなワルドの妄想にもかかわらず、ショウはしぶとく生き延びていた。
今はルイズをキュルケに任せ、自らおとりとなってフーケの注意を引きつけ反撃の隙をうかがっている。
(ええい、フーケめ。自ら接近戦を挑めばあの間抜けな剣士のように一撃で倒せる可能性もある物を、何を臆病な!)
一面の事実ではあるが、勿論これはワルドが自分の身を危険にさらしてないから言えることであって、ショウにあえて接近戦を挑むなど今のフーケであっても自殺行為である。
無論忍者となった今の彼女であれば勝つ目も無いとは言えないが、忘れてはいけないのは高レベルの侍であるショウは鳳龍の剣術なしでも「斬撃を飛ばす」事が出来るという事である。
対して、スピードと接近戦を武器とする忍者のフーケにはそう言った便利な飛道具はない。
無論同等の力量であれば忍者のスピードは侍のそれを大きく凌駕するし、気の刃を自らの気で相殺すると言う荒技も理屈の上では不可能ではないが、だとしても致命的な飛道具を備えた敵に単身突撃するのはあまりに無謀と言えるだろう。
(くそっ、玉無しの落ちぶれ貴族め! ○○○の□□の糞の山め、××の△から生まれた役立たずめ! 貴様が俺の部下なら即座に軍籍剥奪の上抗命罪で処刑だぞ!)
が、ワルドにはそんな事は関係なかった。
頭の中で思いつく限りの悪態を並べ立て、フーケを罵倒する。
ひょっとすると遍在を使い捨てできる自分を基準に考えているのかもしれないが、その辺は本人にも不明である。
しかしそんなワルドの身勝手な感想などつゆ知らず、フーケはフーケなりに全力で戦っていた。
「はははは! はははははははは!」
えもいわれぬ高揚感に酔いしれ、高笑いしながらゴーレムの拳を次々と振り下ろす。
「そらそらそら、頑張って逃げないと潰しちまうよ!」
40メイル近いゴーレムの肩から、必死に逃げ惑いながらもどうにか反撃しようと無駄な努力をするショウ達を見下ろすのは恐ろしく気分が良かった。
この高さから見下ろせば、人など蟻とは行かないまでもあの学院長のセクハラネズミよりもなお小さく見える。
無力に逃げ散ることしかできず、かといってこの場から撤退するでもないその愚かしさがいっそ愛おしくすらあった。
「ほぉれ踊れ踊れ。せいぜいあがいてみな!」
どうせ奴らが何をしようと今のフーケに傷一つ付ける事は出来ない。
忍者となった今の自分は無敵なのだから――そんな全身を支配する万能感のままに、フーケは蹂躙する。
ゴーレムの拳が、踏みつけが、大地を揺らし木々をなぎ倒す。
足下を這い回るショウ達が、その度に散らばり、転がって必死に迫り来る死から身をかわしていた。
人間の基準で言えばやや鈍い動きだったが、何しろスケールが違う。常人ならしがみついてすらいられないほど激しく動くゴーレムの肩に、しかし忍者となったフーケは平然と立っていた。
そして響き続ける高笑い。無論地響きとは比較にならないほどささやかではあったが、それは途切れることなくショウ達の耳を刺激する。
まさしくそれは一方的な蹂躙であった。
だがそのさなか、ふとフーケは我に返った。
(そう言えば、そもそもなんであたしはこいつ等と戦っているんだっけ?)
元々あの仮面の男の計画(奴が信用できるとしてだが)では、フーケはゴーレムをショウ達にけしかけるだけでよかったのだ。
それがあの小娘どもが思った以上に勘が鋭く、また頭が切れた為に正体を見破られ、直接戦うハメになってしまっただけの事である。
何よりフーケの獲物であり、また連中の目的でもあった『破壊の剣』は壊れてしまった。
(・・・つまり戦う理由なんて、もうないじゃないか)
はたと気づいてしまうフーケである。
あちらにはまだヤンの敵討ちとか犯人の捕縛とか色々あるかもしれないが、彼女には全くない。
手に入れた『忍者』の力についつい高揚してしまっていたが、考えてみればここで彼らを倒してもフーケには一文の得もないのだ。
顔を知られたとしても、それならばガリアなりゲルマニアなりに行けば良いだけの話。
むしろこんな怪物どもと再び出会う可能性のあるトリステインで、これ以上仕事を続ける事の方が危険である。
それに他の連中はともかく、ショウは下手をすればこのゴーレムすら一撃で砕く攻撃手段を持っているかもしれないのだ。
そう気づいてしまうと、高揚で麻痺していた脳髄にあのショウの技を見た時の驚愕と恐怖が急速に蘇ってくる。
忍者がいかに人間離れした能力を持っていようとも、あんな物を喰らって生き残れるとは思えない。
加えてあの内の誰かを本当に殺してしまい、かつショウなりリリスなりが生き残ってしまった場合、とんでもない相手から消えない恨みを買ってしまう事になる。
自分がどれだけ危ない橋を渡っていたかという事に、今更ながら気づいて血の気が引くフーケであった。
ルイズの顔とかすかな安堵がちらりと脳裏をよぎりもしたのだが、そちらは敢えて無視する。
マチルダ・オブ・サウスゴータの妹はウェストウッド村のティファニアだけである。彼女を守るためにはよその娘など気にしていられない。そう自分に言い聞かせながら。
これ偏在使えるやつが忍者になったら凶悪だなw
支援
汚いなさすが忍者きたない
ともかく、そうとなれば彼女の決断は早い。
逃げの一手だ。腕一本くれてやろうとも、とにかく死ななければいい。戦闘機械と称される忍者らしい思い切りの良さと言えた。
ただ方法が問題だった。
フライで逃げるという選択肢はない。
ショウやあのエルフは振り切れるかも知れないが、あちらには自分と同格のトライアングルメイジが二人いる。
しかも遠距離や空中戦を苦手とする土系統の自分に対して、あちらは火と風である。明らかに分の悪い賭けと言えた。
歩幅の違いを活かしてゴーレムで逃げる?
それでは結局の所フライと大差ないし、ゴーレムとフライとでは術者の消耗が違いすぎる。ここまで巨大なゴーレムではなおさらだ。
土の術で地面に潜って逃げるという手も無くはない。学院で宝物庫から破壊の剣を強奪した時もゴーレムで追っ手の目を引きつけて地面に潜み、そのまま地中を移動してその場を逃れたのだ。
が、これはさほどスピードが出ないし、加えて敵に気を感知する事の出来るショウが居る以上、かなりのリスクを伴う。
それがどれだけの精度を持つ物かはわからないが、場所を特定されて、あるいはまぐれ当たりでも大きいのを一発貰ったらそれまでである。
忍者になった影響か、フーケ自身もショウの気による攻撃の前兆を何となく察知できるようになっていたが、来るのが分かった所で躱せなければ意味がない。
またあれが届かないくらい深く潜れば、今度はフーケ自身が窒息して生き埋めになってしまう可能性もあるのだ。
となれば道は二つしかない。
力づくでショウ達を叩きのめして強行突破するか――もしくは口先三寸で煙に巻くかだ。
唐突にゴーレムの動きが止まった。
ある者はいぶかしみ、またある者は好機とばかりに詠唱を開始しようとした所で上から声が降ってくる。
「ちょっと待ちな! これ以上戦っても互いに得はないだろう。『破壊の剣』はぶっ壊れちまった! あたしはお宝を逃したし、あんた達は取り戻す目標を失ったわけだ。
つまり、勝った所でお互いに何も得られないんだよ! それでもあんた達はあたしとの戦いを続けるかい!」
フーケが声を張り上げたその言葉に、ショウ達は互いに顔を見合わせた。
「今まで高笑いしながら私たちを追い回してたのは何だったのよ」
「ねぇ」
「そこ、うるさいっ!」
キュルケとリリスがジト目でこちらを見ながらひそひそ囁きあうのを忍者の聴力で耳ざとく聞き咎め、フーケが怒鳴った。
こほん、と咳払いをして気を取り直す。
「いいけどね、グズグズしているとケイヒが来るよ! あいつとはここで合流して、お宝を引き渡す事になっているんだ!
あたしを倒した所で、そのあとあいつと出くわしちまったらあんた達も無事じゃ済まないだろうねぇ!」
思惑通り、リリス達がぐっと詰まったのを見てフーケは心中ほくそ笑んだ。
九分九厘はったりであると分かってはいても、奴らにこれは無視できない。
仮面の男からケイヒの事を聞いた時にはなんだそれはと思った物だが、災い転じて福となすという所か。
どうやら上手く行きそうだと思った彼女であったが、落とし穴は思わぬ所に口を開けていた。
「わかったかい!? それじゃあたしはトンズラこかせて貰うよ! あんた達もケイヒに出くわさないうちにお仲間を回収してさっさと・・・・・」
フーケの言葉が突然途切れた。
表情は微妙に異なれど、揃っていぶかしげに頭上を見上げる五人。
その高さゆえはっきりとは分からなかったが、それでも耳元を押さえて大きく表情を変えるフーケの顔が、何かしらの変事が起こった事を彼らに教えていた。
その時フーケの耳に聞こえてきたのは、あの仮面の男の声だった。
恐らくは声を中継する風の魔法だろうが、多少くぐもってはいてもこのあからさまに人を見下す響きは聞き間違いようもない。
(聞こえるか、土くれ。そのまま戦い続けろ。少なくともあの黒髪の小僧を殺すまではな)
「なっ・・・!」
思わず叫びそうになり、慌ててフーケは声を押し殺した。
耳を押さえ、囁き声でどこにいるとも知れぬ仮面の男に噛み付く。
(冗談じゃないよ! そもそも直接戦わないでいいって言うから引き受けたんじゃないか! 一見あたしの方が有利に見えるかもしれないけど、こっちはあの小僧の攻撃を一発喰らったら終わりなんだよ!?)
(その為に忍者とやらになったのだろう?)
(あたしゃ忍者なんかになるつもりはなかったんだよ! 大体使っちまったら売れないたぐいのブツだったじゃないか!)
言いつつも、フーケはわき起こる不安をとどめられずにいた。
この傲慢な声の主は、常に自分の都合だけしか考えていない。
この手の人間が自分の意志を通せない場合、まず間違いなく実力に訴えてくる。
そして今仮面の男が取り得る実力行使と言えば。
(そうか。なら、貴様の妹の身の安全は保証できんな)
(・・はったりかましてんじゃないよ。あの子がどこにいるか、あんたはそれだって知らないだろう)
(くくく、なら俺の言葉を無視してみるか? その結果どうなるかは分からんがな)
本質的には間違いなくわがまま育ちのお坊ちゃんだが、困った事にこいつは駆け引きという物も知っていた。
駆け引きのこつは相手の急所、譲れる部分と譲れない部分の境目を見抜き、そこをぴたりと押さえること。
先ほどのショウ達と同じだ。
たとえ九分九厘はったりであることが分かっていても、フーケ・・・いや、マチルダ・オブ・サウスゴータは妹を危険にさらす可能性を無視出来ない。
守る物がある時点で、彼女は絶対的に不利なのである。
ザ・支援
ノリノリですなおマチさんそしてワルドちょっと妄想自重w
無言のまま、ショウ達はいきなり黙り込んでしまったフーケの言葉を待っていた。
無論いきなり襲いかかってくる可能性もあるから、全員が呪文の詠唱なり気を放つ準備なりを終えている。
その中で、それに最初に気づいたのは視力に優れるエルフのリリスであった。
「あいつ、口を動かしてない?」
「あら本当。まるで誰かと喋っているみたいね」
「危なくない? 呪文を唱えてるんじゃないの?」
「・・・・」
緊迫感を持ったささやきが交わされる中、眼鏡の奥でタバサの目がすがめられた。
と言っても、元々あまり目が良くない彼女にはリリスの言葉を確認する事が出来ない。
横のショウをちらりと見たが、彼は彼で小声で呪文を詠唱しながらなにやら考え込んでいるようだった。
その目が急にはっとしたように見開かれる。
そしてタバサが急いで風のルーンを唱え始めた時、頭上から再びフーケの声が降ってきた。
「あんたたち! 悪いけど気が変わったよ! やっぱりショウの命を頂くまでは続けようじゃないか、ええ!」
「?!」
自分から停戦を提案しておいていきなり無茶苦茶な事を言い出したフーケに、ルイズ達が唖然とする。
が、唯一ショウだけは僅かにいぶかしげな表情を作ったのみで、何事もなかったかのように小声での詠唱を続ける。
そして我に返ったルイズ達が、唱えておいた呪文を発動させる直前。
フーケの姿が消えた。
いや、正確には身を翻してゴーレムの背中、彼らから死角になる方向に飛び降りたのだ。
直前までフーケのいた空間にルイズの爆発が炸裂し、ゴーレムの肩と側頭部を削る。
重ねてファイアーボールが飛び、空気とゴーレムの表面の土をあぶる。
さらに一瞬遅れてリリスの持つ最大の攻撃呪文、「死言(マリクト)」が解き放たれた。タルブ村でエンジェルの大半を葬り去ったあの呪文だ。
禁じられた言葉によって巻き起こされた波動が足下の土と周囲の大気とを巻き込み、ゴーレムの全身を無音の音が粉砕する。
粉々の砂礫になって崩れるかに見えたその形が、だが崩れながら、粉砕されながらも次の瞬間にはまた人型にまとまろうとして、また粉砕される。
そのように破壊と再生がせめぎ合う十秒あまり。
ついにゴーレムは耐えきって、見る間に元の人型が形作られる。
「・・そんなんありぃ?」
「ゴーレム作成の呪文を唱え続けたのだと思われる。破壊されながら、同時にゴーレムの肉体を構成し続ける事であのような現象が起こる」
「なんてインチキ! 大体フーケはどこ行ったのよ!?」
「飛び降りただけではリリスの死言(マリクト)を躱せるとは思えない。恐らく・・」
本日二度目のリリスの罵倒は無視して、タバサが疑問に応えようとした瞬間。
ゴーレムが飛んだ。
お帰り支援
実際にはショウ達のいる辺りに向けて身を投げ出したと言った方が正確だろうが、彼らにとっては余り違いはないだろう。
身の丈40メイルになんなんとする人型の土の塊、それもかなり横幅の広いそれが降ってくるのだ。
真下にいる人間にとっては巨人族の拳だの小屋だのどころの騒ぎではない。それこそ山が丸ごと降ってくるのと変わらない。
「嘘ーっ!?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
リリスが喚き、それにキュルケが突っ込みながらも、今度は各人の反応も早かった。
ルイズとキュルケはそのまま一目散に、タバサとリリスは空気の障壁を張る呪文を咄嗟に詠唱しつつゴーレムの影から脱出しようと左右に散らばる。
が、その刹那ルイズの足が止まった。
ショウが動いていない。
剣を左手に持って呪文を詠唱しつつ、落ちてくるゴーレムの一点、胸の辺りを睨んで仁王立ちしている。
何故、とルイズが考えた次の瞬間、周囲が真っ暗になる。
ゴーレムが覆い被さってきたのだと理解し、しかし再びショウに視線を向けて逡巡した所で時間が尽きた。
ルイズを圧倒的な質量が押し潰し、真っ暗になり何も分からなくなった。
一方ショウはキュルケやリリスとは違い、頭上から山が落ちてくるかの如きこの状況にあっても全く心を乱していない。
理由はフーケの存在にあった。
今現在フーケは見事に気配を消している。
ショウの察知をもってしても気のせいかどうか分からないほどかすかなそれを、ゴーレムの胴体の辺りから一瞬感じられたのみ。
そして気配は感じられないのに、全身をひたひたとなぶるような剣呑な予感だけは消える事がない。
ショウにも覚えのある、まさしく練達の忍者に狙われた時の感覚そのものであった。
彼がこの状況でなお動じないのは彼の修練の成果のみならず、その感覚が動くなと命じたからに他ならない。
言ってみれば今の彼は、頭上からゴーレムが降ってくる程度の事を気にしていられないほどに切羽詰まっていたのである。
その感覚から意識を逸らしたが最後、この土の山に押しつぶされるよりもよほど確実な、剣呑な死が待ち受けている。全身の細胞がそう主張していた。
先手という選択肢はない。
確かに鳳龍の剣術をもってすればこのゴーレムの上半身を吹き飛ばすくらいは出来なくも無かろう。
だが万一そこにフーケが居ない場合、ショウは絶好の隙を見せてしまう事になる。
熟練の忍者を相手に、それが致命にならないと楽観できる根拠は何一つない。
そしてそれを抜きにしても、ショウにはそうできない理由があった。
なれば、後の先。
このゴーレムのダイブに乗じて必ず仕掛けて来るであろうフーケの、その攻撃の一瞬の先手を取る。
落ちてくる山のような土の塊。
フーケが潜んでいると思われる辺りから目を離さず、剣を左手にだらりと垂らしてそれを待ち受ける。
そしてゴーレムによって潰されるその時まで一秒を切ったかと思われたその刹那。
「!?」
ショウの視界を覆い尽くしたゴーレムが「ほどけた」。
時は僅かに巻き戻る。
タバサが推理しショウが看破したとおり、フーケはゴーレムの中に潜んでいた。
背中側に飛び降りてショウ達の視界から姿を消し、そのままゴーレムの中に潜り込んで呪文やショウの剣技による追撃を免れようとしたのである。
ゴーレムの巨体の前にルイズの爆発やキュルケのファイアーボールは問題にならなかった物の、リリスの死言(マリクト)の威力は流石の彼女に冷や汗をかかせるのに十分であった。
ゴーレムの巨体の中心近くに潜んでいたにもかかわらず、目の前の土から薄く光が漏れるほどにその身体は削られていった。
必死でゴーレム作成の呪文を唱え続けていなければどうなっていた事かしれない。
エルフってのはやはりとんでもない、そんでこんな術を使えるエルフがあれだけ恐れるんだから、ケイヒとやらは正真の怪物に違いないなどと場違いな感想を抱きつつ、さらに一瞬後のショウの放つであろう剣技の衝撃に備える。
が、それは来なかった。
いぶかしく思いつつも、ならばとフーケは当初の作戦通りショウ達の頭上にゴーレムの身体を躍らせた。
だが元より、ゴーレムのボディプレス如きでショウを仕留められるなどとは思っていない。
これはあくまで見せ技に過ぎないのだ。
ショウの命を確実に奪うための。
さて、今フーケがやっているような土ゴーレムの中に潜り込んでそこからゴーレムを操るという方法は一見攻防一体の上手い戦術に思える。
ゴーレムの最大の弱点である術者を完璧に保護する事が出来るからだ。
だが、ハルケギニアでそんな真似をするゴーレム使いは殆ど聞かない。何故か?
答えは簡単、外部を知覚できないからである。
覗き穴を作れば良いではないかと思うかも知れないが、経験則によって覗き穴程度の視界は大して役に立たない事は広く知られていた。
狭い視界に遮られて敵が足下に接近するのに気づかず、足を破壊され無力化されてしまうのである。
で、あるならば肩が隠れるくらいの穴ないし壁を作り、敵の飛道具に対する遮蔽を取ってゴーレムを操るのが実戦的、というのがハルケギニアの軍隊における常識である。
だが、フーケには何とかなるだろうという妙な確信があった。そして事実何とかなってしまったのである。
風のメイジが空気の流れを読み、水のメイジが人の体内の水の流れを察するように、土のメイジは土を見通す事が出来る。
フーケほどの熟達者ともなれば地中奥深くの水源を正確に感知する事も容易い。
そしてゴーレムの体は土であり、フーケは忍者として並の人間では及びもつかない超人的な感覚を備えている。
つまり、フーケはゴーレムの表面が拾う空気の震動を、自身の耳で知覚するかのように捉える事が可能になっていたのだ。
会話などを聞き取るには些か不自由でも、足音で場所を察知するには十分なほどの。
フーケ自身デタラメだとは思うが、出来てしまったのだからしょうがない。
そして足音や甲冑の音を頼りにショウの位置を特定し、フーケはゴーレムの巨体を宙に躍らせたのである。
閑話休題。
出戻り支援
テステス
「「「「!?」」」」
ゴーレムが人の形を失う。
正確に言えば、ゴーレムがその素材である土に戻ったのだ。
固体化したゴーレムではなく、ただの土なら押し潰されずにすむ・・とは行かない。
40m近いゴーレムを構成していた土である。その4000トン近い土砂が、しかも横殴りの勢いを付けて襲いかかってくるのである。
殆ど雪崩や山津波に巻き込まれるのに等しい。
それに巻き込まれるまで後一秒。
その場を動かなかったショウを含め、誰一人安全圏には脱出できていない。
その刹那、キュルケが考えたのは青い髪の親友と意地っ張りでいじりがいのある桃色の髪の少女。小麦色の髪をした、どこか頼りない剣士。
タバサは母の事、復讐を仕遂げられずに死んでいく事を思った。
リリスの脳裏をよぎったのは、かつて迷宮で生死を共にした黒髪の少年の面影だった。
ルイズの意識は動かない自分の使い魔への「なぜ?」で埋め尽くされて、そちらに気を向ける余裕は殆どなかった。
そしてショウは。
(来る!)
訪れるその瞬間に向け、さらに意識を研ぎ澄ませる。
その一瞬。
生と死が交錯する一瞬を待っている。
その一瞬に向けて、フーケも自分の意識を研ぎ澄ましていた。
ショウがあの技なり呪文なりを放つようであれば今度もゴーレムを楯にして凌ぎ、そのまま押しつぶすつもりだった。
そうでなければ空中で呪文を解いてゴーレムをただの土に戻し、それをかく乱の煙幕としてフライでショウに接近、クリティカルヒット狙いの一撃を放ち、成否にかかわらず地中に逃がれてそのまま戦場を離脱する。
これがフーケの策であった。
あの仮面の男がいつ介入してくるか知れた物ではない。そして奴は恐らく彼女を捨て駒として扱うだろう。
なれば、介入の暇を与えずに事を終えるのが最上にしておそらく唯一の生き延びる道。
拙速であろうともとにかく早くけりを付けねばならなかった。
フーケやショウが全員土に埋もれれば、奴もその確認のために時間を取られる。
仮にあの男がすぐそばに潜んでいたとしても、このゴーレムを構成していた土砂が脱出のためのいい目くらましになってくれるはずである。
既にフライは詠唱済みだ。
一つ気がかりはと言えば、自分が消した気配をショウがどれだけ正確に察知できるか、だ。
ショウの足音はこの期に及んで一歩も動いていない。
間違いなく、自分が攻撃を仕掛けようとしているのに気づいている。だが、いつ、どこで攻撃しようとしているかまでは掴めていまい。
掴ませないための意表を突いたゴーレムの跳躍であり、土砂であり、隠形である。
ただ視覚と聴覚はいくらでも欺けるが、気配ばかりは自分でこれを絶つ以外に誤魔化す方法がない。
だが、逆に言えばそれさえ誤魔化せるなら、降り注ぐ土砂の中でフーケを発見する術はない。
大丈夫、とフーケは自分を鼓舞する。
一瞬後にショウと、あの人間離れした少年と命のやりとりをするのに驚くほどの平静を保っていられている。
気息の乱れも全くない。
いかにショウとは言え、気配を絶った忍者を察知する事は容易くはあるまい。
フーケがどこにいるか正確に掴めない以上、ショウがフーケを倒す術は広範囲の攻撃、すなわち呪文か鳳龍の剣技に依るしかない。
だが鳳龍の剣技の前兆である気の膨れ上がる気配はこの期に及んで感じられなかったし、呪文にしてもこの土砂の中では火炎にしろ氷雪の嵐にしろ威力は半減どころではない。
土砂と共に自由落下しつつ、ショウの目前に達するぎりぎりまで身動きすら殺してフーケは己の気配を絶つ。
フーケはここで死ぬわけにはいかない。
ショウに斬られるのも、あの仮面の男に利用されて終わるのも真っ平御免だ。
そしてなにより妹を、ティファニアを守らなくてはならない。
さっさとこの場を離脱して、アルビオンにいる彼女を一刻も早く安全な場所に移さなくてはならないのだ。
(今だ!)
完璧なタイミングだった。
ショウが土砂の雪崩に巻き込まれた瞬間、フーケはショウに突進した。
途中、一度だけ大地を蹴る。
フライの推進力に、大地の反発力。そして全身の筋力を打撃点に収束させる忍者の体術。それらが一つになり、殺意を持つ疾風となる。
土砂の中でこちらの動いた気配を察したか、ショウはかろうじて反応したが、遅い。
防御にしろ攻撃にしろ、ショウより一手早くフーケの手刀が届く。
狙うは甲冑に守られておらず、咄嗟にかわす事も難しい喉笛。手刀に集中させた「気」は、今や鉄の甲冑すら穿つ威力をその繊手に与えている。
指先を揃えて突き出したフーケの貫手。ショウのあごの下に潜り込んだ指の先で肉がはぜ、骨が砕ける。
ショウの喉笛と頸骨が・・・ではなかった。
砕けたのはフーケの指の骨であり、はぜたのは砕けた骨を飛び出させたフーケの指の肉であった。
ショウの甲冑の首の部分は動きやすいよう柔らかい革で覆われているのみでろくに装甲などない。
にもかかわらず、忍者の体術にフライの推進力、そして先端に集中させた気の威力を加えて繰り出されたフーケの貫手は、柔らかい喉笛と文字通りの薄革一枚の前に、無残にもひしゃげて砕けていた。
「まぎ・しんおうくび」
降り注ぐ土砂の中タバサが呟いたが、それを聞いた者は、フーケを含めて本人以外にはいなかった。
そしてフーケがその痛みを知覚するのと同時に、空だったショウの右手がフーケの腹に当てられる。
――実の所ショウは、フーケがゴーレムの肩から飛び降りたその瞬間から、フーケが接近戦を仕掛けてくる事を読んでいた。
ショウがフーケを圧倒できるほどに読み合いに長けているわけではない。
本気でフーケがショウを殺そうとした場合、それ以外の有効な手段が無いのである。
故にショウはリリス達が攻撃呪文を放っている間も、魔術師呪文1レベルに属する防御呪文「鉄身(モグレフ)」をひたすら唱え続けていた。
この呪文は術者の肉体を硬化させて防御力を高める。
単に回避力を上昇させるだけならば2レベルの「透身(ソピック)」という手もあったが、自身を透明化するこの呪文は視覚以外の感覚に頼る目標には効果が薄い。
常人離れした聴覚を持つ忍者に対して使うには今ひとつ心許なかったのである。
そして1レベルの呪文を使い切る程に重ねがけした鉄身(モグレフ)の効果に加え、全身の気を首の一点に集中させて重点的に守る。
フーケが狙ってくるのは恐らく鎧に守られていない頭部か頸部。その中でも必殺を期す事が出来る死点、両目の間にある烏兎(うと)、鼻と口の間にある人中、そして喉笛あるいは頸動脈のいずれかであろう。
その中で首を集中して守ったのはただの勘だ。
だが戦場を生き残ってきた古強者の直感は時としてあらゆる論理に勝る。
そして今回もその勘がショウの命を救った。
「・・・うっそぉ」
砕けた右手が人ごとであるかのようにフーケが思わず呟いた瞬間、フーケの腹部の一点から内臓全体、そして全身を揺さぶるような「気」の衝撃が走った。
呪文を使えるのは知っていたけど、自分の肉体を錬金して鉄にするような、こんな呪文まで使えるのか。全くとんでもないねぇ。
そう、自らの迂闊さとショウのデタラメぶりに呆れながら、フーケは意識を失う。
こうしてショウ達とフーケとの戦いは、意外にあっけない幕切れを迎えたのであった。
ゴーレムの土砂による山津波にそのまま全員が飲み込まれてしまった事を除けば、だが。
以上、今回はこれまで。支援ありがとうございました。続きは適当に頃合いを見計らって投稿します。
なおまとめはこちら(
http://www.actionhp.jp/tss/hagane/haganeETC.htm)の方に置く予定ですので、まとめWikiのほうには編集しないで頂けるとありがたくあります。
管理人がちゃんとした人に決まれば戻るのはやぶさかではないんですけどもねぇ・・(まとめの過去ログが戻ってないってことはまだ決まってないってことですよね?)。
まかり間違って最強SSリンクの管理人みたいなのがまとめ管理人になってしまうかもと思うと、ちと怖くて載せられません。
ではまた。
お疲れ。
相変わらずルイズよりも主人公らしい使い魔ですな。
しんおうくびってwww
それ何て悟空w
お大事に〜
何方か避難所に投下された重攻の使い魔を投下して下され。
当方、携帯なので代理投下ができないので・・・
いきます。
支援
ニューカッスル城の玄関ホールには、勇敢にも避難せずに残留した300人の人々がひしめいていた。数少ない
王軍を構成する彼らのほとんどはメイジであり、護衛の兵士は10人かそこらしかいない。つまり反乱軍レコン・
キスタの歩兵部隊が、現在の拠点であるこの城に肉薄した時、王軍はそれを押し返す腕力がない。懐に飛び込ま
れれば、数で圧倒しているレコン・キスタに対抗できるはずはなく、短時間で落城することになる。岬の先に
建設されている、ニューカッスル城の地の利を生かし、目前の森を突破した敵部隊が必然的に収斂した所を魔法
で迎撃する以外に、彼らの取れる作戦はなかった。そして数少ない護衛兵は、全員が城の門前に配置された。
元より勝機があるなど考えてはいない。しかし、一人でも多く敵兵を道づれにする。それだけが彼らを突き動
かす原動力だった。国を奪おうとする不届き者。その不届き者に蹂躙される王軍は、それ以下の存在なのか。否、
そのようなはずはない。かつての統治者としての誇り、他人から見て犬死することがどれだけ無様であっても、
最早彼らが自らの存在を示すには、そうする以外になかった。
「我々はこの日、聖地を奪回するという夢物語を掲げる反乱軍レコン・キスタに敗北を喫することであろう。
朕は忠実なる臣下の諸君が、傷付き斃れる様を見るのは忍びない。反乱軍に国を奪われるという事態を招いたのは、
全てこの無能なる王の責任じゃ」
玄関ホールに設えられた簡易の玉座から立ち上がり、王座を追われた王、ジェームズ一世が敗北以外にない
決戦に臨まんとする人々に演説していた。立ち並ぶ人々の目には涙が溜まり、むせび泣いている者すらいた。
年老いた王は、そのような臣下を眺め、同じように目尻を涙で湿らせる。そして、一際大きな声で宣言した。
「だが! 朕は諸君らを置いて逃げはせぬ。諸君らの命は朕の命、朕の命は諸君らの命、斃れる時は一蓮托生じゃ!
確かに我らは斃れよう。しかし、斃れる者にも意地がある! 一人でも多く、あの恥ずべきレコン・キスタを道連れ
にしようぞ! 王家の誇りは我らにあり! 全軍前へ、王家の誇りを見せ付けよ!!」
ホールは割れんばかりの歓声に包まれる。傷付き最早死に体の狼による最後の雄叫びは、窓にはめ込まれた
ステンドグラスを震わせ、秀麗な装飾の施された重い扉を震わせ、ついには城そのものを揺るがした。
その雄叫びの反響するホールを、この場にあっては異質な人間が通りかかった。トリステインからの大使である
ルイズと、その使い魔である2.5メイルもの巨体を持つライデンである。異質な存在は他人の目を引くもの。
ジェームズ一世は一段高い簡易王座に立っていた為に、いち早く少女の存在に気が付いた。
「おお、大使のラ・ヴァリエール嬢! なぜそなたがここにおるのじゃ?
イーグル号で脱出したのではなかったのかね?」
王の様子に、人々は後ろを振り向く。そこにいた少女は昨日見かけたときに比べ、瞳に生気が宿っていなかった。
遠目で眺めていたものは気が付かなかったが、すぐそばで少女の顔を見たものは皆背筋を震わせた。全身に包帯が
巻かれ、片目が隠されている少女は、まるで黄泉より彷徨い出てきた幽鬼のような様子だったからである。
しばらくすると、皇太子が肩を借りながらホールへとやってきた。王は息子の傷付いた姿に驚き、先ほど礼拝堂
で起きた事件を説明すると、皺が深く刻まれた顔に怒りを走らせた。
「レコン・キスタめ……。どこまでも恥知らずな者たちだ!」
王は少女を見据えると、年相応の優しげな声で語りかける。
「ラ・ヴァリエール嬢。息子を暗殺という不名誉な死から救ってくれたことを感謝する。
君も信じていた者に裏切られ、さぞかし苦しいことだろう」
無言で王を見据える少女は何の反応も見せない。王は構わず話し続ける。
「我々としても君を逃がしてやりたいのは山々じゃ。しかし、もうそれも出来ぬ。……申し訳ない」
王が頭を下げるのを見て、臣下たちは涙ぐむ。守るべき大使すら無事返すことが出来ないとは。
落ち込む人々を前にして、少女は大声ではなく、かといって小さくもない声量で答える。
「……構いません。わたしも、戦います。一人でも多くあの恥ずべき、果てしなく汚らわしい反乱軍を道連れに
してみせます」
少女の言葉を聞き、玄関ホールは再び歓声で包まれる。
「おおお、何と勇ましい言葉じゃ! 皆の者、聞いたか! 大使は我が国のために杖を取ると言っておられる!
王軍として遅れるでないぞ! さあ、最後の戦へ向かおうではないか!!」
人々は皆叫んでいた。アルビオン万歳、トリステイン万歳、ラ・ヴァリエール万歳、内容は様々であったが、
ルイズの参戦に彼らの士気は最高潮となっていた。
しかし、そのように盛り上がる人々を前にしても、少女は何一つ表情を変えることはなかった。赤い巨人を
連れて、一足先に城の外へと向かう。ライデンをしても悠々と通過できるほどの大きな玄関扉を潜ると、
数リーグ先には森が広がっている。おそらく、今も総攻撃のために兵士達が身を潜めているのだろう。少女と
巨人は、王軍が陣取る位置よりもやや前に進んで、そこで立ち止まった。そこに後ろの扉から王軍がわらわら
と出て来はじめ、当初の予定通りの配置につく。
少女は誰にも聞こえないほどの声で呟く。
「消し炭にしてやる……」
レコン・キスタの総攻撃まで、あと数刻。
アルビオン王家を打ち倒し、革命を成功させるという華々しい瞬間に立ち会うため、レコン・キスタ総旗艦
レキシントンはニューカッスル城より十数リーグ離れた地点に陣取っていた。歩兵・メイジ仕官によって構成
された部隊が地上から進軍し、攻撃艦隊は空中より全艦一斉射による攻城を行う。甲板にて待機している
竜騎士隊は、斉射が終了すると同時に出撃、地上部隊と連携して残存戦力の掃討にあたる。
レコン・キスタ空軍艦隊司令部所属、レキシントン艦長ヘンリー・ボーウッドは、かつてロイヤル・ソヴリン
と呼ばれた艦の後甲板にて憂鬱な気分になっていた。これより自分は一年前には主君と仰いでいた人々を殺める
ことになる。軍人たるもの政治に口出しするべきではない、という信条を掲げてきた彼であったが、今になって
そのような意地など捨てて王党派に組みするべきではなかったのかという迷いが首をもたげてきた。反乱軍に
参加した上官に従うままにレコン・キスタに編入された彼にとって、レコン・キスタは忌むべき王権の簒奪者だった。
「いやはや、我々レコン・キスタが、ついに古き体制にしがみつく王党派を打ち倒す時が来たようだ!
新たな歴史の幕開けだよ! そうは思わんかねボーウッド君!」
ボーウッドの隣で、わざわざ持ち込んだ私物の悪趣味な椅子に座りながら、レコン・キスタ空軍艦隊司令長官
サー・ジョンストンが胸を反り返らせていた。
「アルビオンをクロムウェル閣下の下に共和国とした暁には、ハルケギニアの諸国は皆戦くことだろう!
いずれハルケギニアは閣下を主君と呼ぶときがくる! 我々の前途は明るいなまったく! ははははは!」
上官のこの男は軍事的な才能が皆無だった。そして約束された勝利を前にしてみっともなく涎を垂らしている。
彼はレコン・キスタ総司令官の信任厚い、貴族議会議員であった。ボーウッドは、クロムウェルが地盤を固める
為に与えた飴を、嬉々として舐めまわす目の前の男を見下していた。政治家としても無能なこの男は、家柄による
強大な発言力を買われているだけのことに気が付いていない。
裏切り者めが、とボーウッドは呟くものの、正直な所自分も大差はなかった。軍人としての信条に従っただけ
だとしても、所詮は己も簒奪者の仲間でしかない。彼はただ沈黙を守った。
「艦長、そろそろお時間です!」
ボーウッドは部下の言葉に頷くと、攻撃を開始する為に指示を下していく。側舷に所狭しと並んだ大砲に砲弾
が詰められ、竜騎士は己の足となる飛竜へとまたがる。まず最初にレキシントンが空砲を撃ち、それを合図として
総攻撃を開始する。
艦長のボーウッド、司令官のジョンストンを含め、この作戦に従事した者の内、己の勝利を疑う者は誰一人
として存在しなかった。
王軍の誰よりも前に出ている少女は、後ろに下がるよう薦める兵士の言葉をことごとく無視した。いい加減説得
する者もいなくなった頃合、少女は己の使い魔に語りかける。声音は低く、年若い女性のものには聞こえない。
「ライデン、あんたが敵だと判断したら攻撃しなさい。手加減をする必要はないわ」
赤い巨人は答えない。しかし、少女は巨人が己の言葉を理解していることを確信している。そして忠実に従うことも。
「あの薄汚い屑どもを皆殺しにするのよ。一人残らず消し去ってやりなさい」
少女の瞳は、空虚でありながら猛烈な業火が燃え盛っている。底のない絶望の果てに少女が見つけ出したもの、
それは魔王によって練り上げられた憎悪であった。罪人を地獄の釜へ放り込み、死のうにも死ねない苦痛の叫びを
最上の美酒とする。ルイズはレコン・キスタを誰一人として逃がすつもりはなかった。現実的に不可能であると
しても、可能な限り焼き尽くしてやる。少女は己の内から沸きあがってくる虚無によって突き動かされる。
正常な人間としての精神を見失っている為か、ルイズは人ならぬ身の己の使い魔と、これまでにないほどの一体感
を感じていた。視界が二つの絵を被せたようにぶれる。そして己の心に、ライデンの心とも呼べる代物が接続される。
General Data
DD-05
HBV-502 RAIDEN
M.S.B.S-5.2
Power Source
Main Generator-Green
Auxiliary Generator-Green
V.converter-Green
Armament
Laser Unit "Binary Lotus"
Zig-18 Bazooka Launcher
Ground Napalm Mk.105......
少女の頭脳に次々と流れ込んでくる、どこの言語かも分からない文字列。しかし、そのような事は大して重要
ではなかった。少女にはこの誰に造られたかも分からない巨人が、城を包囲している連中に勝てる力を持っている
ことが理解できたからだ。主人と使い魔は一心同体、ルイズとライデンは正しく一つの情報系として構成されつつ
あった。
城の手前から眺める敵旗艦は随分と距離を取っている。どうやら自分達の持つ大砲の射程に自信があるらしい。
確かに王軍が保有する大砲では砲弾を敵艦へ届かせることなど不可能だろう。しかし、ライデンは違う。思い上がり
の裏切者共を、つい先ほど理解したライデンの力で焼き尽くしてやる。
日は完全に昇り、大して待つまでもなく戦闘が始まるだろう。だが、ルイズはわざわざ敵に先手を取らせるつもり
はない。裏切者を討つのに礼儀などあるものか。
「……ライデン、準備はいいわね」
精神で繋がっている以上、言葉など必要なかったが、ルイズは己を昂ぶらせるために口を開く。少女はまず眼前
の森を見据えた。最初に地上部隊を調理してやるとしよう。少女は軽く目を瞑ってから思い切り息を吸い込むと、
懐から取り出す。目を見開き、勢いよく杖を振り下ろすと同時に、邪魔者を焼き尽くす閻魔の怒号を発する。
「薙ぎ払え!!」
主人の叫びを受け取ると、ライデンは腰を落としながら瞬時に厳つい肩を変化させる。まるで蓮の花のような
巨大な円盤を両肩に二輪咲かせると、中央から突き出たおしべと、それを取り囲む花びらが振動し始める。そして
次の瞬間、振動音を伴いながら、目も眩むほどの閃光と共に、実体を持たない二本の剣が伸びる。輝く双剣は目の
前の森を舐めるようにして振り降りぬかれた。レコン・キスタ兵が多数潜んでいたと思われる森は、超高熱の光に
薙ぎ払われ、瞬時にして燃え上がった。剣は数十リーグ先まで伸び、盛り上がった地形を吹き飛ばしながら、山脈
にぶつかった所でようやく止まった。
ライデンと同じ水平面にいた者たちは、己が死んだことにも気付かずに現世から消滅した。同時に数個の小規模
な村落もまた、巻き添えとなって消え去った。
「次っ!」
主人の掛け声と同時に、ライデンはルイズを抱え上げると光を噴射しながら天守へと一瞬で飛び上がる。
ライデンと視界を共有しているルイズには、半瞬も待たずに敵戦力を把握する。天守から捕捉可能な敵艦は大型1、
中型11の計12。敵艦隊はニューカッスル城を斉射で攻撃するためか、上下二列に並んでいる。
その様を見て少女は笑う。約束された勝利に胡坐をかく愚か者共め。異界の力を見せ付けてくれる。たかがその
程度の射程に安心していると、死ぬ羽目になる。こちらからすれば目と鼻の先、距離など無いに等しい。少女の心
はどこまでも冷たく、酷薄な様相を見せる。
「撃ちなさい!」
ライデンは再び肩部を変化させる。先ほどと同じように二輪の花を咲かせると、右から左へ一閃、返す刀で左
から右へ一閃。光の剣は敵艦を薄皮のように易々と切り裂くと、遥か上空を通過していった。上下に泣き別れと
なった木造の船体は高熱で瞬時に燃え上がり、火災は搭載していた火薬に飛び火する。敵艦隊の8割ほどが切り
裂かれた船体を爆発させる。戦闘の合図を出す前に攻撃を受けたレキシントンも例外ではない。メイン・サブ
ともにマストを燃やし、大爆発にまみれながら、数騎の竜騎士が脱出したのを事細かに捕捉すると、少女はまた
しても叫んだ。
「一人も逃すんじゃないわよ! 反乱軍は全て地獄に叩き落しなさい!」
肩を戻したライデンは、次に手にした棍棒を炎上する敵艦隊に向ける。その瞳には、生き残っている敵兵士は
煌々と映されている。殲滅という命令に忠実に従い、ライデンは棍棒の先から光の雨を横方向へ降らせた。異界
の魔法は、ハルケギニアの基準からすれば神の目の如く脱出した竜騎士を焼き尽くしていく。直撃を受けた者は
竜もろとも木っ端微塵となり、爆風を受けた者は体を燃え上がらせて、絶叫しながら落下していった。
まだ5分と経たぬ内に壊滅状態へと追いやられたレコン・キスタ艦隊に、ルイズは全く容赦をするつもりは無
かった。今も崩れ落ちていく艦隊に追加攻撃を加えるようにライデンへ命令する。忠実なライデンは、言われる
ままに砲撃を加える。常識外れの爆発力を伴った光弾は、散り散りとなった船体を更に細かく分解していく。
飛び散った破片は燃え尽き、人間であった物体が内蔵を撒き散らしながら船外に放り出される。ついには完全崩壊
を起こし、荘厳な雰囲気を漂わせながら陣取っていたレコン・キスタ艦隊は炎の玉となりながら墜落していく。
ルイズの目に、生残りを示す印は見えなかった。
眼下の雲海へと落下していく残骸を眺めると、ルイズは笑いをこらえきれなくなった。
「ふふ……ふふふ……、あはは、あはははは、あーははははっ!!」
瞬く間に絶望的な戦力差を覆したライデンは、狂ったように笑い続ける主人に何ら興味を持っていないように
佇んでいた。
いざ、自分達を滅ぼさんと進撃してくるレコン・キスタを迎え撃とうとしていた王軍は、全員が言葉を失って
いた。もう数刻もすれば、目の前の森から敵兵がなだれ込んでくるはずだった。しかし、その森はルイズの使い魔
によって瞬時に焼き払われ、敵が突破してくる様子は見えない。城の大砲の射程を大きく上回るレキシントンを
中核とする艦隊が、正しく瞬く間に塵へと返された光景もまた現実離れしていた。
「なんなのだ……。あのゴーレムは……」
燃え上がる森に、ニューカッスル城は赤く赤く照らされていた。目の前に繰り広げられた光景を、皇太子を始め
誰もが信じられなかった。自分達は、今しがた焼き払われた連中と戦い、絶望的な戦力差ながらも勇敢に討ち死に
しようとしていたのだ。それ大使の少女の使い魔であるという赤いゴーレムが、子供が羽虫を叩き潰すように
敵艦隊を撃破してしまった。
天守から響いてくる少女の哄笑を聞きながら、皇太子は戦慄していた。強大な破壊力と、無限の射程を持つよう
にも思われる少女の使い魔を、一体どこの誰が止められるというのだろうか。
ひとしきり笑った後、ルイズは再び無表情となる。今、少女の精神の針は激しく揺れ動いている。ルイズは、
己の感情の動きを制御できていなかった。
炎上する森の所々に示される印を見て、肩についた埃を払うかのような気安さで告げる。
「あら、よく見たらまだ生き残ってる屑がいるじゃない。……ちゃんときっちり駆除しなきゃね。
じゃ、ライデン掃除しといて」
生かすつもりは無い。不本意ながら反乱軍に参加しているなどという理屈など、今のルイズにはなんの意味も
持たなかった。反乱軍はすべからく死すべし。
天守から飛び出し、最初の斉射を生き残った敵兵士の掃討が始まる。瞬く間に目標の上空へと到達すると、
ライデンは円盤状の爆弾を投擲する。その爆弾は体を焼かれ呻いている目標の傍へと落ち、爆発する。兵士の
体が、爆風に紙切れのように吹き飛ばされ、四肢が千切れ飛び散っていく。そして燃え上がる太い木の枝へと、
魚の丸焼きをするように串刺しとなった。
また異なる兵士は、目の前で友軍が肉片を撒き散らしながら死んだのを目の当たりにして気が狂い、散々木の
幹に頭を打ちつけた挙句、炎の中に飛び込んで焼死した。
砲撃で死なないまでも、高熱の爆風を吸い込んでしまった者は、喉や胃を内側から炙られ、この世の者とは
思えぬ亡者の呻きをあげる。眼球は熱で乾ききり、髪は燃え上がる。
ライデンは風竜を遥かに上回る速度で飛び回りながら、数十リーグの範囲を駆逐していく。と、そこでルイズ
はいいことを思いついたとばかりにライデンを呼び戻す。
「この際だわ。絶対に逃げられないようにロサイスも壊しちゃいましょう。
蹂躙される側になった連中の反応が楽しみだわ。……うふふ、あはははは!」
ルイズとライデンは意識レベルで同調している。ライデンが見たものはルイズが見ることができる。ならば
ライデンだけをロサイスへ飛ばし、跡形も無くアルビオン随一の軍港であり、反乱軍の本拠地を粉々にしてくれる。
復興に多大な手間がかかることなど知ったことか。敵は滅ぼさなければならないのだ。
軍港ロサイスは、現在姿の見えない敵に襲撃されていた。遥か彼方から長大な光の剣が伸びたと思うと、係留
されていた軍艦が瞬く間に破壊された。指揮官はすぐさまに敵の捜査と撃退を命じたが、その命令が達成される
ことは絶対にありえなかった。彼らが知る由も無いことであったが、敵は100リーグ以上離れたサウスゴータの
山脈の上から攻撃を加えていたのだ。メイジとはいえ、人間の身である彼らが気付けるはずもない。
ロサイスは次に光弾の雨あられを浴び、石造りの桟橋はパン生地のように引きちぎられる。兵士が詰めている
宿舎も狙い撃ったかのような爆撃を受けて跡形も無く吹き飛んだ。
この地に建設されていたレコン・キスタ総司令部発令所の中で、頭であるオリヴァー・クロムウェルは鼓膜を
貫く爆音に飛び上がった。発令所に集まっていた幹部達も同様に飛び上がる。
「な、なんだ。何が起きたというのだ!?」
普段の飄々とした雰囲気が掻き消え、クロムウェルはうろたえる。幹部達と共に発令所から飛び出すと、目の
前に広がっていた光景は常軌を逸したものだった。ニューカッスル攻城のために12隻もの軍艦を送り出してなお、
多数の軍艦が係留されていた軍港は、原型を留めないほどに破壊しつくされ、あるはずの儀装完了して間もない
新造艦も、老朽艦も何一つ存在しなかった。
そして、遥か彼方の地で、飛び出してきた彼らを捕捉した目があることを幹部達が気付くことはなかった。
間髪入れずに光の剣と光弾が降り注ぎ、彼らの肉体は個々で区別が付かないほどに引きちぎられ吹き飛んでいった。
レコン・キスタ壊滅。アルビオン各地に散らばっている残党が、自らの掲げる主を失ったことに気が付くのは、
しばらく後になってのことだった。
レンコンの調理完了。
タルブとアルビオン侵攻を纏めてさくさく片付けちゃいます。
代理投下完了しました。
ライデンつえーww でもまあ性能差がありすぎるし当然ちゃ当然か。でもこれからどうなんだろ…
作者さん、代理さん、投下乙でした。
圧倒的火力と壊れた心、これからの彼女がどのような道を辿るのか、非常に気になる話でした。
ザマミロ&スカッとさわやかな笑顔が止まらない乙
これでやられたワルドが遍在の方で、生きて再起を誓っているところでこのざまなら最高に無様でいい気味だったがw
ライデンの人、代理の人乙でした
>>同時に数個の小規模
な村落もまた、巻き添えとなって消え去った。
まさかこれでテファが…とか無いよな…
偶の薙ぎ払えは爽快だと思うw
ライデンの人乙!ただルイズの社会復帰は望む!!
本当に薙ぎ払っちまったよ…乙。
スレ史上最大級の大虐殺!こういうのが見たかった
さすがに心が痛……いや全然痛まねーか。それだけのことをした報いなんだからな。苦しみなく逝けただけでも慈悲深いかもしれん。
しかしプリンス、死を覚悟していたらこんなことになっちゃって何を思う?
帰ったらライデンに水をかけながら「ほーらほら気持ちいいでしょー」と南光太郎のように言いながら洗い、周囲を引かせていそう。
まさに悉皆殺し。ライデンパネェ……
ライデンの人と代理の方乙。
しかしこの調子でルイズが壊れたらライデンがシャドウ化しちゃうんじゃないか…あとMSBSが5,2なのねこのライデンは
早すぎない巨神兵だなこりゃ
ニューカッスル戦からの逆転劇はいくつかあるけど、
今回は軍事的にはともかく、政治的にどうなるのかね?
さすが生産コストが激高な長距離支援機…乙
しかしこの場にスペシネフが居たら凄ぇパワーが得られそうだなw
なんというなぎはらえーw
凄惨極まりないはずなのに笑ってしまうのはなんでなんだぜGJ!
さあう゛ぁんとの人が来てるー!?無茶苦茶久しぶりだ!
>>461 別の機体を召喚していたテファの復讐が始まるわけだな
テファはジグラットを召還するんですね、わかります。
ルイズ「いっけねぇ、やっちったぁ…やっべぇ・・・みんなごめんねぇ〜」
コッパゲ「火ィコエー火ィコエー」
ギトー「もう重力が凄いのよ今日は。重力が凄いのよ〜!」
デルフ「男の武器は石だっちゅーの!!男の武器は石だっちゅーの!!」
オスマン「例え血が繋がって無くてもわし等のソウルは一つ!」
ルイズが召喚したのが最強の矛たるライデンならテファが召喚するのは最強の盾ことドルドレイだろ?
テファの使い魔だと憚られる胸ルーンだからやっぱヤガランデかなぁ
いや、ヤガよりも
テファ=胸
テファ使い魔=胸ルーン
胸つながりでファイユーブとか・・・
まさかのハッター軍曹をですね
デルフリンガー装備の景清が……!
ライデンの人乙です。
そして祝さあう゛ぁんと復活!
テファは意表をついてDr.ワタリとか。
>>470 時間制限無しのデスモードが発動しそうだ。
ライデンの人乙です。
明示されてなかったけどこのライデンもガンダ補正があるんだよなあー。
テファが召還するなら人間不信のアイスドールも捨てがたい
ジョゼフもヴィトーリオもヴァーチャロイド召喚してたら、ハルケギニアが更地になるな
安心院とか出てこないかしら…
とか思ってる俺は異端。
アジムをわざわざ漢字に変換するなw
そろそろ、「いぬかみっ」のヒトに復活も祈願したいです
しかしライデンのルイズ、パンプキンシザーズの伍長のように、殺した相手の手が伸びてくる夢を毎夜見る……とかなりそうだな。
>>489 伍長には少尉がいるから大丈夫さ
ルイズには…誰だろ?
予約がなければ続きを5分後に投下したいと思います。
今更ながら思ったけど、これ召喚されたのがライデンで良かったよな…
テムジンとかアファームドとかの場合、ルイズ抱えて高速移動でルイズが地獄見るw
>488
それは無い
「――――――――――――――っ!」
声にならない絶叫が、絶望の悲鳴が森に響く。
それは4000トンの土砂が大地を叩き付ける音をなお圧して響いた。
一部始終を見ていたワルドである。
(彼から見れば)無責任にも場を放棄して逃げ出そうとしたフーケを脅しつけてショウとの戦いを続けさせたは良いが、追い詰められたフーケはワルドの全く想定外の行動に出た。
その結果は見ての通りである。
ゴーレムが勢いよく身を躍らせていたため、土砂は地面に叩き付けられてからも横滑りし、ゴーレムからすれば一、二歩程、およそ10メイル近い距離を移動して止まった。
戦場であった場所に残ったのは高さ10メイル、直径がおおよそ40から50メイルに達しようかという土の山。
取り戻すべき過去も未来の栄光も、手に入れるべき力もそして母親になってくれるはずの少女も、全てはワルドの目の前でこの土砂に押し潰されてしまったのである。
僅かに呆然とした後、ワルドは我に返った。
フライを唱えるのももどかしく、木立の中から飛び出す。
土砂の山に降り立ち、僅かに逡巡する。
何分にも土砂そのものが移動し、攪拌されているため、巻き込まれたルイズ達も今やどこに埋まっているか、かいもく見当が付かなかった。
それにルイズが中で重傷を負っている可能性もある。
強い風で土を吹き飛ばしでもしたら、致命的なダメージを与えてしまうかも知れない。ショウの埋まっている場所が分かれば喜んでそうしただろうが。
だが、このままではどのみちルイズは助からない。
意を決すると、ワルドは杖を抜いて風の呪文を唱えた。
風のスクウェア・スペル「ユビキタス」。
最初にいた一人を含め、5人のワルドが土山の上に現れる。
さらにもう一つ、それぞれのワルドが呪文を唱えた。
それぞれの杖の先端に小さな風の壁が生まれる。
左手でその手応えを確認すると、ワルドたちはそのまま鉄杖の半ばを左手で握りしめ、やや背をかがめた。
踏み固められていない土は軟らかく、足は膝までも沈み込んでいる。
そして杖と先端の風の壁をスコップのように使い、5人のワルド達は一斉に土砂を掘り返し始めた。
(ルイズ! ルイズ! ルイズルイズルイズルイズルイズ!)
鬼気迫る、というのはこういう表情だろうか。
魔法も使わない、たかだか数人の人間によるものとしては驚異的な速度で土が掘り返され、土山の外に放り出されていく。
今ばかりは彼の脳裏にルイズ以外の事象は存在しない。
ただ、ルイズが死ぬ前にここから助け出さなくてはならない、それだけを考えている。
掘り始めてから二三分も経ったろうか、ワルドの一人が杖の先に妙な手応えを感じた。
風の壁同士がぶつかった時に生じる反発なのだが、今のワルドにはそこまで分からない。
そこにルイズが埋まっているかも知れないと思っただけで、彼の脳は正常な判断力を半ば失っている。
すぐさま五人がそこに集まり、集中的に掘り返し始める。
すぐにほっそりした身体、学院の制服のブラウスとプリーツスカートが現れた。
「ルイズッ! 無事か! 僕だ、ワルドだ!」
杖を放り出して素手で土を掻き分け、二人がかりで抱き起こす。
その瞬間、五人のワルドの顔が露骨な失望に歪んだ。
埋まっていたのは体格こそ似ていたが桃色の髪の少女ではなく、青い髪に眼鏡の少女、タバサであったのだ。
「ありがとう子爵、助かっ」
「ええい、お前のような洗濯板に用はない!」
礼を述べる途中でぽいっと投げ捨てられ、ちょうど子熊が遊びでやるように、タバサはコロコロコロと土くれの山の斜面を転がりおちた。
転がりながら綺麗に膝から着地して、ぺたんと女の子座りのような格好になる。
「じゅってんじゅってんじゅってんじゅってんじゅってん」
ぼそりと呟いた彼女の言葉を、当然だが誰も聞いていない。
鈍い痛みを改めて体中に覚え、タバサは僅かに顔をしかめた。
骨まではダメージがいっていないようだが、それでもまともには動けそうにない。恐らく杖にすがって歩くのがやっとという所か。
タバサが圧死や窒息死を免れたのは彼女自身がかけた風の障壁と、リリスが掛けた空気の壁を作る防御呪文「空壁(バマツ)」のおかげだが、それでもダメージがゼロというわけにはいかなかったようだ。
元より彼女の身体はかなり華奢に出来ていて、打たれ強いとはとても言えない。
土山の上から断続的に土が降ってきているのをちらりと眺める。
キュルケやルイズの事も心配だが取りあえず動ける程度に自分を回復させるのが先だと判断し、タバサは水のルーンを唱え始めた。
なんて素直なロリコンだw
ワの人ヒデェw
ワの字死ねwwwwww
風のメイジならではの嗅覚かそれとも愛の力か、ワルドはすぐに次を掘り当てた。
杖の先に手応えを感じ、今度はすぐさま素手で掘り返す。
土の中に潜らせた手が、プリーツスカートの布地に触れた。
「む?」
ふに。
ふにふに。
ふにふにふに。
埋まっているスカートから感じる感触を確かめるように二三回それを揉むと、ワルドは忌々しげに舌打ちした。
「ええい、これじゃない! ルイズ! 僕のルイズはどこだっ!」
身を翻して再び土を掘り返し始めたワルドたちの後ろで埋もれた尻・・・もといキュルケが臀部をつまみ上げられたような姿勢で土の中から浮き上がった。
タバサの「レビテーション」である。
「・・・ほんっと、失礼な男ね・・・!」
憮然とした表情で呟くキュルケのことなど、勿論ワルドの意識の隅にもない。
タバサの水魔法でキュルケが取りあえずの処置を終えたのとほぼ同時。
土山の、ワルド達がいるのとは逆側三分の一ほどが突然吹っ飛んだ。
キュルケは元より、タバサが振り返るよりもなお早く、5人のワルドが一斉に戦闘態勢を取る。
一瞬前までルイズルイズとブツブツ呟きながらひたすら土を掘っていたとは思えぬ、見事な反応であった。
揃って手に持っているのが軟式スコップでなければ少しは見直されて然るべき光景だったが、残念な事にこの場にはまたもルイズはいなかった。
「敵か! "土くれ"か!」
「待って、子爵。あれは多分ショウよ!」
呪文を詠唱しようとしたワルド達をキュルケが止めた。
ぱらぱらと土が舞い落ちる音の中、咳き込む声が聞こえる。
崩れ落ちる土を掻き分け這い出てきたのは、果たせるかなショウであった。
「ちっ」
「子爵、いま舌打ちしませんでした?」
「いや。気のせいではないかね」
空々しい顔でキュルケの追及をかわしたワルドの顔が、不意に憤怒の相に歪んだ。
「それよりルイズだ! あいつめ、あんな事をしてぼくのルイズが巻き込まれでもしたら・・・」
「落ち着いて子爵。ショウには壁を通してでも生き物の存在を感じる能力がある。恐らくは私たちやルイズが居ない方向を見定めて放った。
それより彼ならどこにルイズとリリスが埋まっているかも分かるはず」
「おお!」
現金なもので、ワルドが一転して輝かんばかりの表情になった。
「ねえ、ショウ君!」
いち早くフライで飛び上がっていたキュルケが、ショウの前に着地しようとしてぎょっとしてその動きを止めた。
ショウが肩を貸して土の中から引っ張り出したのは、気絶したままのフーケだったからである。
「ちょっと! なんでそんな女を助けるのよ?!」
「訳は後で話します。それよりも、急いで。あそこの向う側、タバサの立っている所から向こうに7メイル辺りを掘って下さい。6メイル以上地下に埋まってますからこのままじゃ危ないです。こっちは俺一人でもどうにかなりますから」
「わ、わかったわ」
問い詰めようとしたキュルケであったが、確かにショウの言うとおり、埋まったままのリリスとルイズを助ける方が先決である。
キュルケが飛び上がって、ワルドにショウの言葉を伝える。
吹き飛ばした土砂の中程にフーケを横たえると、ショウは少し離れた所の土を自分の手で掻き分け始めた。
別な意味でワルド酷ぇw支援
「待って、子爵。これは多分シエンよ!」
504 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 22:42:45 ID:K98X2KMl
死者はいつもの
※
>>504 ヤンは第七話のラストで首を飛ばされとります。
「「「「「ルイズ! ルイズ! ルイズルイズルイズ!」」」」」
さながら合唱のように、ワルドとその遍在達はルイズの名前を叫びながら土を掘り返していた。
同じ顔が汗だくになりつつ、しかし歓喜の色をたたえながらお題目のようにルイズの名前を叫んで土を掘っているのは、中々に不気味である。
「というかキモい」
「よねぇ」
ぼそっと呟いたタバサの言葉も、キュルケの同意も、今の彼には届いていない。
6メイルも掘るのは流石に大変なので風の呪文で上の土を吹き飛ばしてから作業に入ったのであるが、その進み具合がこれまでにもまして尋常ではない。
さながら雪に熱湯を注いでいるかのように土が消えていく。
「これも愛の力なのかしらねー」
「認めたくない事実も世の中には存在する」
二人が送る何とはなしに白けた視線の先で、手応えがあったかワルドの一人が動きを止めた。
五人のワルドが一斉に杖を放り出し、その周囲に群がって手で土を掻き分け始める。
目をぎらぎらと輝かせたその表情を見て、埋めた骨を掘り出す犬みたいだとキュルケは思ったが流石に口には出さなかった。
「むしろ死んだセミに群がる働きアリ」
「それはさすがに酷いんじゃない、ていうか何で私の考えてる事が分かったのよ」
「なに、観察とちょっとした推理の産物だよ、キュルケ君」
「・・・」
リアクションに窮するキュルケだったが、タバサがワルドが掘った穴の底に降りていくのを見て慌てて自分もついて行く事にした。
「ルイズ! しっかりしろルイズ! 君のワルドだ!」
隠しきれない期待を声と表情からにじませ――表情から見る限り色々と不純な期待も入っている事は疑う余地がない――土を掻き分けるワルド達。
と、その表情が一転して愕然とした物に変わる。
むくり、と土が起き上がり、頭の土を払った。
「――っ!」
「あはは、ルイズでなくてごめんねー」
よこしまな希望に満ちあふれたワルドを一転して絶望のどん底に叩き落としたのは、ターバンを巻いたエルフの司教。苦笑しながら立ち上がろうとするリリスだった。
はっと何かに気づいたワルド達が、立ち上がってショウが吹き飛ばした斜面の方を一斉に向いた。
ショウが土を掻き分け始めて程なく、小手が固く細長い物にぶつかる。ショウも見慣れた、ルイズの杖であった。
それまでよりやや慎重に土を掻き分け、気絶していたルイズを掘り出す。
未だ効力を発揮している空壁(バマツ)の呪文のため、その身体に直接には土は触れていない。
なので生き埋めになったまま気絶しても呼吸は出来ていた。
問題は先ほどのタバサと同様、打撲と圧迫によるダメージがどれほど残っているかである。
呼吸が規則正しくしっかりとしている事を確かめて、ショウはほっと息をついた。
上半身を抱き抱えるようにして土の中からルイズの身体を引っ張り出す。
「ん・・・」
ルイズが身じろぎする。
横抱きに抱え上げようとする手を止め、その顔を注視するショウの視線の先で目がぱちりと開いた。
「大丈夫か、ルイズ?」
「・・・あれ。ショウ? ・・あがごっ!?」
体中の痛みで覚醒したか、ルイズの顔が愉快な表情に歪む。その目尻に涙がにじんでいた。
「だ、大丈夫じゃないわよ・・・体中がすごく痛い・・」
「今リリスさんを掘り出してるから、それまでの辛抱だ」
タバサと同じく華奢なルイズにとり、やはり山津波に巻き込まれたダメージは大きかったらしい。
ショウがその身体をそっと横たえようとした瞬間、ルイズが跳ねるように起き上がった。
「ちょっと! 何よそれ!?」
「え?」
ショウの頬を両手で挟み込み、ルイズが顔を近づけた。
その視線は、血がべっとり付いたショウの喉元に向けられている。
勿論フーケの血なのだが、ルイズから見れば喉に大けがを負ったようにしか見えなかったらしい。
「血だらけで! ええと、水魔法、じゃなくてリリスの回復呪文、いや今掘り出してるからやっぱり水魔法・・」
「落ち着け。これは俺の血じゃない」
ショウが一瞬いぶかしげな表情になった物の、すぐにそれが苦笑に変わる。
「大体喉をやられてたらまともに話せるわけがないだろう」
「そ、そうよね・・・全くご主人様に心配かけ、れげぼっ!?」
ほっとした途端、驚きで麻痺していた痛覚が蘇ったらしい。
再び愉快な顔で倒れ込もうとするルイズをショウが慌てて抱きかかえた。
そのはずみで、互いの唇が触れあいそうになる程に顔が近づく。
「おっと」
ショウにとっては「おっと」程度の事ではあるが、ルイズの顔は真っ赤になった。
そしてワルドにとっては間の悪い事に、彼がショウ達の方を振り向いたのがまさにこのタイミングだった。
sage忘れスマソ
>505
すっかり忘れてますた^ ^
なんというロリドwwwwwwww支援
「「「「「ショウ・・・謀ったなショウ!?」」」」」
五人のワルドが一斉に絶叫した。
ワルドにしてみれば、彼をエルフの司教の救出に回して自分一人でルイズを助け出したのは、自分だけがルイズに感謝されるための奸計としか思えなかった。
無論そう言う事を四六時中考えているワルドならではの発想であり邪推も良い所なのだが、恋する男の嫉妬というのはとかく度し難い物である。
ふっ、とそんなワルドをタバサが鼻で笑う。
「君はいい友人だったが、君のロリコンがいけないのだよ」
「誰に言ってるのよタバサ」
「ワルド子爵、聞こえていたら君の生まれ持った性癖を呪うがいい」
「だからぁ、本当に聞こえてたらどうするのよ」
半ば諦めたように、それでも律儀にキュルケがたしなめる。勿論、ワルドは聞いてなど居なかったが。
取りあえず生き残りが全員土から這い出た後、巻き添えで埋まっていたヤンを掘り起こしながら、ショウ達は交代でリリスの回復呪文を受けていた。
ケイヒの事はあるが、放置しておくとさすがのヤンでも蘇生させる事が不可能になってしまう――多分、ひょっとしたら、もしかすると、恐らく――のでやむを得ない。
これについては言っているリリス本人も半信半疑の体であった。
一方ワルドは遍在と風スコップをフルに使って働きづめであった。
ワルドとしては平民の剣士の死体をこの膨大な量の土山からわざわざ掘り起こすのを手伝う謂われも義理もないのだが、
「その、ワルド様・・・」
「ああ僕のルイズ。そんな顔をしないでくれ。君が困っているのに僕が手助けせずにいられるわけはないだろう?」
きらり、と歯を光らせるワルド。
げに男とは悲しい生き物である。
「そう言えば君たち、僕が5人いるのを見ても驚かないんだな」
「風の遍在とかいうやつだろう? 中々便利だな」
「人手が足りない時には特にね」
ワルドとしてはもう少し驚くだろうと期待していたのに、ショウとキュルケの答えは実にあっさりした物だった。
僅かに憮然とした所にタバサのフォローが入る。
「これでも子爵は一応スクウェアメイジ。仮にもスクウェアのスペルをこれだけ駆使できるというのはそれなりに大した物」
「へー」
「そ、そうですよね、子爵様はやっぱり凄いんですよねっ!」
「一応」や「これでも」に妙に力が入っていたような気もしたが、タバサの微妙なフォローとリリスの気のない相づちもワルドにはもうどうでも良かった。
精一杯無理して褒めてみましたという感じのルイズの賞賛でも、彼にとっては万雷の拍手に勝ったのである。
全くもって男というのは救いがたい。
もうやだこのワルド支援
タバサwwwww黒ぇよwwww支援
ともかく死んだヤンに対してはショウの気配察知も役に立たない。
風の呪文で上の方の土を適当に吹き飛ばした後は、フーケの残した土の山を手当たり次第に掘っていくしかないのである。
作業するのはワルド五人と、タバサに風スコップを作ってもらったショウとで合わせて六人。
感覚の鋭いリリスとタバサがどこに飛んでいったか分からなくなった首の方を探しに行き、一方ルイズとキュルケは気絶したままのフーケを見張っていた。
縛られたフーケ(右手の傷は癒してある)の前に二人が腰を下ろしてしばし。不意にキュルケが口を開く。
「・・・ねえ、ルイズ」
「何よ?」
「まだフーケの事、怒ってる?」
「当たり前でしょ!? ヤンの首をはねて、ショウや私たちだって危ない所だったのよ! あんただって・・・」
ううん、とキュルケが首を振る。その目が、僅かに優しい。
「そうじゃなくて、フーケが優しい微笑みを見せた事」
ぐ、とルイズが詰まった。
ぴくり、と気絶したままのフーケの目尻が何故か動くが、二人ともそれには気づかない。
「あなたが今フーケに怒ってるのって、お姉さんみたいに思えたのが実は敵だったから、裏切られたような気になってるんでしょ」
ルイズは無言のまま、視線を合わせようともしない。
もっとも、キュルケにしてみればそれが既にして十分な答えではある。
むしろ精一杯の虚勢を張っているのがかわいくて思わず抱きしめたくなる所だが、真面目な話なのでそこは我慢。
一方気絶したままのフーケの、今度はこめかみがぴくぴく動いたがやはり二人は気づかなかった。
「まぁ、敵は敵だと思うわよ。あの時は確かに私たちを殺しにかかってたと思うしね」
ルイズは無言のまま。
フーケも気絶したままじっと聞き耳を立てている。
「でも、だからって何から何まで嘘だって言うのは違うと思うのよ。あの時のミス・ロングビルは私から見ても優しい表情を浮かべてたわ」
キュルケはフーケの事を故意に「ミス・ロングビル」と呼んだ。
ルイズの肩がぴくり、と震える。
気絶したままのフーケは、今度は努力して身体の動きを押さえ込んだ。僅かににじみ出る汗までは止められなかったが。
「確かにどこからどこまでが本当かは分からないし、彼女が犯罪者なのも事実よ。でもね、彼女が元貴族で生計を立てるために犯罪に手を染め、私たちを殺そうとした・・・それだけじゃないとは思うのよ。
最初はおとなしくすれば命は取らないって言ってたし、それより何より、私にはあの時に見せた優しげな表情が嘘や演技だとは思えないの」
途中からは明らかに様子がおかしかったしね、と付け加える。
横たわったフーケのまぶたが不自然に痙攣するのをよそに、ついに堪忍袋の緒が切れたらしくルイズがキュルケに食ってかかった。
「だったらあんたはこいつを許せるって言うの!」
「ダーリンを殺されて許せるわけないでしょ、馬鹿じゃないの?」
あっけらかんとキュルケが即答する。
思わず絶句してしまったルイズに向けて、キュルケがさらに言葉を重ねた。
「でもそれは私の答え。あなたにはまた別の答えもあるはずよ、ルイズ。
ねぇ、今私に食ってかかった時、何に対して怒ったの? 私の言葉? それともフーケを許してしまいそうな自分?」
「ッ!」
ルイズが再び視線を逸らし、唇を噛んで黙り込んだ。揺れる瞳はそのまま心の中を示しているようにも見える。
キュルケもルイズに向けていた顔をフーケのほうに戻し、立てた膝に顔を埋めた。
その視線の先で、フーケは不自然なほどに身じろぎもせず気絶している。
タバサがいれば睡眠時と覚醒時の呼吸の深さの違いで、ショウがいれば気の動きで本当に気絶しているかどうかが分かったのだろうが、二人ともまだこちらには戻ってきていない。
狸寝入りを決め込んだままのフーケにとっては、ある意味これが本日最大の幸運であるかもしれなかった。
支援支援
しばし後。
意を決したフーケが自然に覚醒した様子を装って目を開いた。
手足が縛られている事を確認する振りをして周囲を油断無く見回す辺り、中々芸が細かい。
即座にキュルケはルイズにショウ達を呼びに行かせ、タバサとリリスも程なくしてやってきた。
六人、ワルドの遍在も入れれば十人がフーケの周囲を固める。
作り置きしておいたゴーレムももう無い以上、いかに忍者、いかにトライアングルメイジといえどもこの状況から逃れる術はない。
後ろ手に縛られながらも、フーケが器用に身を起こして斜め座りの姿勢になる。
その正面には腕を組んで仁王立ちしたルイズと、それに寄り添うように立つショウとワルドの姿があった。
ルイズの視線を感じつつ、さばさばした表情でフーケはショウに語りかける。
「結局のところ、やっぱりあんたにやられちまったねぇ」
「さっさと逃げないからだ。あの時、最初に言ったように逃げていれば俺たちも追えなかった。何故いきなり方針を変えた?」
「ま、色々あるのさ」
後ろ手に縛られたまま、フーケは器用に肩をすくめて見せた。
「にしてもご主人様はたいそうご立腹のようじゃないか。後腐れ無いようにさっさと斬ったらどうだい?」
「恩人を斬る気はない」
きょとん、とした顔で――もしくはそれを装って――フーケが聞き返した。
「恩? 何のことだい」
「そうよ! なんで私たちがこんな盗賊に恩を感じないといけないのよ!」
ルイズが顔を真っ赤にして怒った。近頃はなかった沸騰ぶりである。フーケには一瞬でも姉のカトレアを重ねていただけに、やはり裏切られたような気持ちなのだろう。
そこまでは察することが出来なかった物の、ショウとリリスがいつもの如くまぁまぁとそれをなだめる。このあたりの扱いはもう慣れた物だ。慣れさせられてしまった、とも言えるが。
一方でキュルケは何とも言えない視線をルイズに送っていた。
「お前が気づかないのも無理はないし、俺もついさっき気づいたことだが」
と、前置きしてフーケの方をちらりと見るショウ。
「モット伯の屋敷で、奴がシエスタを人質に取ったとき、天井が崩れて来たろう」
「ああ、ショウ君の技を受けた天井が上手いタイミングで崩れ始めたわね」
キュルケがうんうんとうなずく。
「それが偶然ではなかったとしたらどうだ」
「・・・つまりあれがこいつの仕業だったって訳? 根拠は何よ!」
しえん
噛み付く先を変えたルイズをあしらいつつ、ショウが一語一語考えるように言葉を紡ぐ。
「魔法を使う気配・・・正確に言えば『行動を起こす気配』と言ったらいいのかな。そう言う物を天井が崩れる直前に一回。こちらを伺うような気配をその後に一回。かすかにではあるが感じた。あの時は消耗していたから、断言は出来なかったんだがな。
で、今日の戦いの中でそれがミス・ロングビル・・・フーケの物と同じだと言うことを確信したわけだ。
ついでに言えばフーケは盗賊だったから気配を消す術に長けているはずだ。今日の戦いの中でも気配をつかむのが一苦労だったしな。このあたりは忍者になったことも関係しているんだろうが」
その言葉に、得心がいったようにタバサがうなずいた。
「そう言えばキュルケとルイズを人質に取ったあの時、フーケは確かに『手のひらをこちらに向けるな』とショウに言っていた。つまりショウがモット伯を打ち倒したあの技――透過波を知っていると言うこと。
私の知る限りではモット伯の屋敷以外でショウがあの技を使った事はない。
ショウは普段から鳳龍の剣技をみだりに使わないように気をつけているから、彼女がアニエスのような『牙の教徒』でないとすればあの場で私たちの戦いを見ていたことになる」
「なるほど、そっちは気づかなかったな」
改めて感心したような顔でタバサを見やるショウ。
一方フーケは、ぶすっとした顔で無言のままだった。
犯罪者として扱ってくれればいい物を、変に「いい人」扱いされてしまっているのがいたたまれない。しかも全くの事実なので反論も出来ない。加えて下手に嘘をついた所でこの生意気な黒髪の餓鬼はあっさりとそれを見抜くから始末に負えない。
要はどうしようもなくきまりが悪くてふてくされているのだった。
「じゃあ、なんでこの女は私たちを助けたのよ?」
ルイズはとりあえず怒りは収めたものの、改めて疑念を口に出す。
しかし言葉とは裏腹に、その顔には様々な感情が揺れていた。
自分に対する期待と疑念、助けてくれた事への感謝、再び裏切られる事への恐れ。ルイズの瞳にそうした物を見て取り、フーケは無言で顔を背ける。
「答えなさいよ!」
重ねて問い詰めようとするルイズ。
それにも無反応なフーケに、キュルケが一歩前に出た。
「ねえフーケ。盗みをするのも、私たちを殺そうとしたのについても、どうこうは言わないわ。自分で言ってたようにそれなりの理由があるんでしょうし、それについては多分私たちが口出しできる事じゃない。
けどね、ルイズの心をもてあそんだ事については、あなたには釈明する義務があるはずよ。そうでなかったら私が許さない」
静かな言葉に、怒りがにじみ出している。
そんなんじゃないんだとフーケは叫びたかった。
もてあそんだつもりはなくて、騙すつもりもなくて、でもここで本当の事を言ったら『いい人』みたいになっちゃうじゃないか、と。
元より汚れ仕事と知って選んだ盗賊の道である。妹たちを養うのに他に選択肢がなかったとか色々理由はあるが、それでも自分で選んだ道には変わりない。
表街道を歩けなくなる事も、万が一捕まったら斬首になる事も。悪党呼ばわりされ、さげすみの目で見られる事も覚悟している。
それでも、いい人扱いされる事にはとても耐えられなかった。
自分を納得させるために無理矢理悪党を気取っているフーケにとって、善人扱いされる事は何より恥ずかしいことだったのである。
心なしか頬を赤くしつつ、ちらりとルイズの方を伺おうとしたその目に飛び込んできたのは、何とも言い難い妙な表情をしたショウの顔。
ぎょっとして反射的に顔を逸らす。が、それも意味がない事をフーケ自身既に理解している。
理屈は分からないが、こいつは気配で他人の感情を読める。顔を逸らした程度でどうこうなるような問題ではないのだ。
「ん? ん?」
様子がおかしい事に気づいたキュルケが自分とショウを見比べるのをよそに、フーケは必死で自分の感情を殺そうとしていた。
だが出来ない。抑えようとすれば抑えようとするほど、心は乱れ、様々な感情が渦巻いていく。
(なんでだよ!? 戦ってる最中は完璧に押さえ込めてたじゃないかさぁ!?)
戦闘では動揺や驚愕、恐怖といった感情を完全に抑え込んでまさしく戦闘機械ともなれるフーケであったが、生きるか死ぬかの緊張感がない状態では感情を殺す忍者の能力も全く役には立たないようであった。
「ねぇ、ショウくぅ〜ん」
「なんですか」
また何か悪巧みしてるだろう、とあからさまに警戒をにじませてショウがキュルケの猫なで声に答える。
「何よ。またショウにちょっかい出す気!?」
「んふふふふ、今回出すのはショウ君じゃないのよねぇ。ねぇショウ君。あなた人の感情を察する事が出来るわよね。今フーケが感じてたのはどんな感情かしら?」
「こ、この小娘っ!」
顔色を変えたフーケがキュルケの方を向くが、残念な事に今絶対的優位にあるのはキュルケの方であった。
「あぁら、私はショウと話をしてるのよ。嫁き遅れのおばさまは引っ込んでて貰えるかしら?」
「誰が嫁き遅れの年増だ! わたしゃまだ23だよっ!」
「年増じゃないの」
「・・あんた、五年後を覚えてなっ!」
「五年後のおばさまは三十路間近のおばあさまですわね」
「この・・・」
ぎりぎりと歯を鳴らすフーケ、口元に手を当てて高笑いするキュルケ。ショウはあまりの緊張感のなさにげんなりとした顔になる。
「・・・で、いいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
以前もこんなやりとりがあったなと思いつつ、改めてショウが口を開く。
諦めたのか、フーケは再び口を閉ざしてしまっていた。
「あの時のフーケからは羞恥心とか・・照れ? そんな物を感じました。罪を犯した事への恥ずかしさ・・でしょうか?」
前半に頷いたキュルケであったが、後半についてはちっちっち、と指を振った。
「それはないわね。彼女、割り切って盗賊やってるみたいだもの。それに、そう言う理由だったら照れるってのはありえないでしょ」
「じゃあ何だって言うのよ?」
これまで黙って事の成り行きを見守っていたルイズが口を開く。
その言葉にも表情にも、ショウが気を読む必要がないほどに心の内が現れていた。
「要するにね、あなたが大好きなお姉様の事を思い出したのと同じように、フーケもあの時大好きな誰かの事を思い出してたんじゃないか、あの時私たちを助けたのもそのせいじゃないかって事よ。
多分、あなたと同じくらいの娘でもいるんじゃないかしら」
「娘なわきゃないでしょうがっ! あたしゃまだ23だと何度言わせる気よっ!?」
「じゃあ妹?」
ぐっ、とフーケが詰まった。
このやりとりもついさっき見たなぁ、とショウとリリスは顔を見合わせて苦笑する。
一対一ならともかく、ショウという生きた嘘発見器を併用されてはさしものフーケも分が悪いようであった。
一方キュルケはこれ以上無いと言うほど楽しそうな顔でフーケの頬をむにむにとこねくり回している。
「ほれ、どうなのよ。ほれほれほれほれ」
「うぐぐぐぐぐぐぐぐ」
キュルケの追求と周囲の視線、そして何よりルイズのすがるような瞳にフーケは耐える事が出来なかった。
「ああ、そうだよ! わたしにゃそこの小娘やメイドの娘と同じくらいの妹が居るんだ!
親もいない、他に頼れる親戚も居ない、そのくせ自分と同じような境遇の餓鬼共を引き取って育てようとするような甘ちゃんで世間知らずで放っておけない、大事な大事な妹なんだよ!
だからあのゲス野郎の屋敷では思わず助けちまったし、あの時もついついその子の事を思い出しちまってそんな表情になったんだろうさ!
正直さっきだってこの小娘ともう戦わずに済むと思ったら結構ほっとした気持ちになったさ!
ああ笑え! さあ笑え! というかいっそ殺せっ!」
言うだけ言ってフーケは地面に倒れ込む。大の字に、と言いたい所だが両手両足を縛られているのでどちらかといえばまな板の上の鯉といった感じか。
そのまま固く目をつぶって続く罵倒に耐えようとするが、覚悟していた笑い声やののしりの声は来なかった。
その代わり皮膚にまとわりつくようないくつもの視線を感じる。
とげとげしい、悪意や敵意と言ったたぐいのものではない。
柔らかく優しくそっと触れてくるような、むずがゆくなるようないたたまれなくなるような感触である。
耐えられずにそっと目を見開いたが、その行動をフーケはすぐに後悔する事になった。
ショウとリリスの温かいまなざし。
「ううっ」
タバサの無表情ながら不思議に温かいまなざしと、キュルケの生温かいまなざし。
「うああ」
万感を込めたルイズの、まさしく妹が向けてくるのと同種のまなざし。
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
筆舌に尽くしがたいまでの気恥ずかしさに苛まれ、フーケがのたうつ。
(いっそ殺せ! 殺してぇぇ!)
かつての少女はまた一つ大人の階段を上る。
死にたくなるくらいの恥ずかしさというものを、今日初めてマチルダ・オブ・サウスゴータは知った。
2時間ドラマの犯人かw支援
しばし後。
釣り上げられた直後は元気に跳ね回っていた魚が時間と共に動かなくなるように、力尽きたフーケは弱々しく地面の上に横たわっていた。
周囲からの視線はまだ途切れる事がなかったが、もはやそれに反応する気力すら失っている。
「さてと」
ここまで敢えて傍観していたワルドが口を開いた。
「そろそろ、ヤン君を掘り出す作業に戻ろうか。フーケはこのままルイズとキュルケ嬢が見張っていればいい。このまま魔法学院に連れ帰って、それから然るべきところに突き出せばいいだろう」
その言葉に、ルイズがはっと気づく。
「あの、ワルド様」
「ん、なんだいルイズ?」
「フーケが捕まったら・・・どうなるのですか?」
不安をむき出しにしたその視線にワルドは僅かの間逡巡したようだったが、結局包み隠さず伝える事に決めたらしい。
「今のところ彼女の罪状は窃盗と強盗、器物損壊だけだ。僕の知る限りでは怪我人は出ても死人は出ていない。普通なら強制労働か鞭打ち刑だろうが、何せ被害件数が多い上に被害者が全て貴族だ。恐らくは縛り首、良くて流刑といった所だろうな」
「そんな?!」
さっとルイズの顔色が変わる。ショウやキュルケも、先ほどまでの雰囲気が嘘であるかのように、沈んだ顔つきになった。
ルイズにすがりつくような目つきを向けられたワルドは一瞬ひるんだが、それでもここは譲れない。
「しょうがないことなんだ、ルイズ。法を破る者は必ず法によって裁かれなくてはならない。そうでなくてはならないんだ。そうでなければ誰も法で守られなくなってしまう。フーケだってその辺は覚悟しているだろう。
それにだ。どんな理由があろうとも君はこいつに殺される所だった。それだけは絶対に許すわけにはいかない」
暗にショウが殺され掛けたのはどうでもいいと言っているがそれはさておき、ワルドはルイズが今まで見た事もないような厳しい目をしていた。
父親でさえ、これほど厳しい顔でルイズを叱った事はない(母親は無論その限りではない)。
おマチさんいいキャラしてるなぁ
おマチさぁーん!俺だぁー!結婚してくれぇー!
「でも・・」
「でもじゃない、ルイズ。僕たちは貴族だ。貴族として人々の範にならなくてはならないんだ。それにここでこいつに慈悲を掛けて解放でもしてみたまえ。こいつは涙を流しながら心の中で舌を出して、またどこかで盗みを始めるだけだ」
決まった、とワルドが内心ガッツポーズを取った。
ルイズには悪いが、『仮面の男』と接触したフーケにはできればさっさと死んで貰った方が望ましい。
それを抜きにしてもワルドはルイズを殺し掛けた彼女のことが憎くて仕方がない。出来るものなら今ここで殺してしまいたいくらいに、というのも掛け値なし彼の本音である。
それにルイズの意志に反して厳しい顔をした事で一時はしこりが残るかも知れないが、長期的には貴族の範たらんとする立派な人間として改めてルイズから尊敬して貰えるはずである。
内心得意満面になりながらも厳しい表情は崩さないワルドと口ごもってしまったルイズ。ショウとキュルケがそれぞれ助け船を出そうとした時、ルイズがきっと顔を上げた。
「それでも・・・それでも私嫌なんです! ちい姉様みたいに笑ってくれた人が死んじゃうなんて嫌なんです!」
この一言はワルドに少なからざるショックを与えた。ルイズにとっても所詮は盗賊、情と理を尽くせば納得してくれるだろうと考えていたのに、正面からそれを否定されてしまったからだ。
だがむしろワルドよりフーケのほうがショックは大きかったかも知れない。
一度は妹と無意識に重ねた少女が、姉のような人を殺したくないと自分の助命を嘆願している。しかも先ほどまでフーケと殺し合いをしていたのにだ。
自分を悪党だと自覚しているフーケであったが、これを聞いて何も感じないほどに醒めた人間ではいられなかった。
(・・参ったねぇ。私はそんな『いい人』じゃないってのにさ)
心中深くため息をつくフーケである。
一方ルイズは感情が溢れて止まらなくなったか、ぽろぽろと涙をこぼし始めていた。
「わ、ワルド様・・・私、私・・・」
ワルドが一歩踏み出すより早く、キュルケがショウの肩を押す。
押されて一歩踏み出したショウの手がルイズの肩に触れ、抱きしめようとしたワルドの目の前でルイズはショウにすがって泣きじゃくり始めてしまった。
(のぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!?!?)
今まで見せていた大人の余裕もどこへやら、ワルドの顔がギギギギギと音を立てそうなくらいに強ばる。
ショウがさすがに済まなそうな顔でこちらを見ながら、またもやキュルケに突っつかれてルイズの背中をさすってやってるのがまたワルドの神経をやすり掛けした。
血涙を流す一歩手前の表情で、ワルドはルイズが泣き止むまで堪え忍ばねばならなかった。
何だこのワルドwwwww
ロリドwwww
ワルドw
しばし後。
さすがに好きなだけ泣いていられる状況でもないと思い出したか、ルイズはショウから離れてハンカチで鼻をかんだ。その目と頬がまだ赤い。
「ごめんなさい、ワルド様。私・・」
「いいさ、僕のルイズ。それに、元々僕はここには居ないはずの人間だからね。居ない人間が口出しするのもおかしな話だろう。僕は何も見なかった、何も聞かなかった。そう言う事にしておくよ」
些か強ばってはいたものの、ルイズが振り向いた瞬間ワルドの顔は「頼れる年上の男」のものに戻っていた。
騎士の情けというべきか、流石にこの点については誰も突っ込まない。いや、突っ込めなかった。
多少はワルドに対してフォローを入れておくべきかとも思ったらしく、キュルケが口を開いた。
「まぁ、ああいう事を聞いちゃったら、流石にそのまま突き出すのもちょっとためらわれるしねぇ。
フーケが縛り首になろうがどうしようが、もう『破壊の剣』は戻ってこないわけだし、ここで子爵様にちょっと目をつぶって頂けるのはありがたいですわ。
何でしたらお礼の代わりにお食事でもどうです?」
「いやいや、婚約者の手前そうも行くまい。お気持ちだけは頂いておこう」
元より彼はルイズ一筋ではあるが、それでも下手に出られて悪い気はしないのか、多少はワルドの表情も穏やかなものになった。
ワルドとしても、ルイズとの雰囲気がいまいちぎこちないのでこうしたフォローを入れて貰えるのはありがたいだろうと読んでの上の提案である。
こう見えてキュルケは人情の機微には中々通じてるし、人の内心を察する嗅覚も発達している。というより、それがなければ恋愛ゲームを楽しんでなどいられない。
時折放つ空気を読めないかのような発言も、決して本当に空気が読めないのではない。
読んだ上でそれをぶちこわすのが大好きなだけである。
そちらの方がよほどたちが悪いのではないかというような話はさておき、フーケを解放する事にリリスやタバサも異存はないようであった。
縄を解かれ、立ち上がったフーケをルイズがじっと見つめている。その視線に気づき、フーケが皮肉っぽくもどこか柔らかい表情を返す。
「は、礼は一応言っておくよ、ルイズ嬢ちゃん」
「言っておくが、またトリステインでフーケという盗賊の話を聞いたら・・・」
ワルドが凄むのを、ぱたぱたと手を振ってフーケがいなす。
「言われなくたってやらないよ。そいつ等みたいな化け物じみた奴らとは、二度とやり合いたくないね。私ゃこう見えても臆病なのさ」
(それに、何を考えてるかは知らないけど、この仮面野郎がこいつらにかかずりあってる間に急いでテファ達を安全な所に移さないとね・・・)
そうした内心と、自らが仮面の男の正体に気づいている事はおくびにも出さず、最後にもう一度フーケはルイズと視線を合わせ、彼女が何か言おうとするのに先んじてフライの呪文で飛び去った。
こうして、ひとまず怪盗「土くれのフーケ」の事件は解決したのである。
しかしごく近い未来に再び彼女とまみえようとは、この時、神ならぬ身の彼らには知るよしもなかった。
長い
さあう゛ぁんといろいろ さん乙です。
前回の投下からおおよそひと月ですか、時の流れは恐ろしいですね。
投下後すぐ始まったテストをどうにか切り抜けて、書き始めたものの
なにせ筆が進まなくて……
え? 自分語りはうっとうしいと、いやもうごめんなさい。
とりあえず今回でやっとこさ契約です。
ペース遅すぎでしょうね。ほんとになんかごめんなさい。
さてさて、先約などなければ5分後に投下開始さしてもらいますです。
「ま、まったく……」
崩れた体制を直し、ルイズは頭を抱えながら太公望に言った。
「何を言うかと思えば…………なんか、あんた、ここの常識にこれでもかってほど疎いみたいだけど、桃くらいはあるわよ……で、もう他に言うことはないんでしょうね? あとでとやかく言っても聞かないわよ?」
うーんうーん、としばらく太公望は唸った。
「しいて言うならば、他の甘味も欲しいかの。わしは甘いものが好きなのでな」
じとっとした目で太公望をにらんだあと、ふたたび頭を抱えながらルイズは呟く。
「…………はぁ……なんでこんなのが……」
そんなやり取りを近くで聞いていたコルベールは、会話にひと段落がついたのを見計らって、ルイズに話しかけた。
「では、ミス・ヴァリエール。ミスタ・タイコーボーも構わないと言っていますし、彼と契約を行ってください」
一瞬の間が生まれた。その言葉でルイズの表情は、一気に間の抜けたのもへと変わった。
不意をつかれたルイズは考える。え、なに、この人は今何と言った?
「あ……え? 契約……ですか?」
不思議そうにコルベールが答えた。
「なんですか? よもやコントラクト・サーヴァントの呪文を忘れてしまったわけではないでしょう?」
「あ! いや! それは大丈夫です! ……でも…………」
なの、その、と言って口籠ってしまったルイズ。その様子を見たコルベールはなぜだろうかと考えたが、すぐに合点が行った。
このルイズという少女、ラ・ヴァリエール家という王国内でも三本の指に入る大貴族の三女でありながら、今まで一度として魔法を成功させたことがなかったと聞く。
ここ、トリステイン王国では貴族とは、それすなわち魔法を使える者。それを使役し平民を守り統治する者。貴族は魔法は貴族としてのステータスシンボルどころか、貴族であるという最低条件といっても過言ではない。
そんな環境の中で、魔法が使えないということは何を意味するのだろうか。当然、周りの貴族、さらに平民からさえ貴族と認められず、嘲笑され。――それは一少女が受けるには大きすぎるものだ。
幸いと言おうか、ラ・ヴァリエールという大きな家名のおかげで、直接的な侮蔑の量は多少は少なくなっているだろうが、それでも辛いものは辛い。
それに彼女の性格だと、その家名ゆえの気苦労もコルベールには推し量ることのできないほどあっただろう。
そんな彼女がようやく魔法を成功した。使い魔召喚の魔法"サモン・サーヴァント"だ。
しかし、使い魔召喚の儀式はまだ完遂したわけではない。もう一つ、召喚したものと使い魔としての契約を結ぶ"コントラクト・サーヴァント"が残っている。
きっと彼女はこの魔法の失敗を恐れているのだろう。そう考えたコルベールはできるだけやさしく、ルイズに声をかけた。
「大丈夫ですよ。サモン・サーヴァントが成功したのです。きっとコントラクト・サーヴァントも成功します。恐れずにやってごらんなさい、時間はまだありますから」
目をまんまるくしながらルイズは首肯した。
しかし、彼女が首肯したのは、その論理に納得したからでもなければ、コルベールの優しさに心を打たれたからでもない。ただ単に"急に話を振られたからとりあえずうなづいた"だけである。
では、彼女がここにきて渋る理由とはなにか。それはコントラクト・サーヴァントで行う"ある"行為にあった。
賢明な読者諸賢なら、すでにお分かりのことであろう。そう「キス」である。
もちろん、召喚の儀式に参加しているのだから、ルイズとて、キスをしなければいけないということは事前に知っていた。
ただ、この事態を招くことになった背景として二つのことがあった。
まず一つ。なぜ"キス"を渋るのか? それは、自分と同じ種である"人間"を召喚したということが原因だろう。加えていうなら召喚された太公望が、若い異性であったというのも一つの要因としてあげられる。
二つ。なぜ"今になって"渋るのか? これは、最初に太公望を"幻獣"と勘違いしてしまったことや、太公望がした、わけのわからない要求が原因である。
これらに気を取られたせいで、ルイズは"コントラクト・サーヴァントで行うキス"のことを考えることができず、心の準備をすることができないで今に至る。
さて、反射的とはいえ、ルイズが首肯してしまったことは事実。それにコントラクト・サーヴァントにおいてキスは、避けることのできない絶対的なものである。
諦めたルイズは、深い深い呼吸で可能な限り呼吸を整える。心臓の鼓動も静まってきただろうか、自分の中でゴーサインをだし、太公望に向き合った。
とたん目に飛び込んでくる、太公望の目が、鼻が、そして唇が、いやがおうにもルイズにキスを意識させてしまう。
静めたはずの心の音が高鳴る。
「ちょ、ちょっと目をつぶってくれるかしら……」
せめて、とルイズは懇願した。
ルイズの雰囲気が先ほどまでとは違うと感じたため、太公望は下手に口を出さずに、ルイズの言葉に従うことにした。
もういちど深い呼吸を一つして、杖を構える。ルイズの口が呪文を紡いだ。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
太公望の肩に手を置き、背伸びするような格好で、ルイズは自らの唇を太公望のそれに重ね――すぐに離れた。
顔を桃色、いや朱色に染めたルイズが、呟くようにコルベールに契約の終了を報告した。
「……終わりました」
「うん、コントラクト・サーヴァントもうまくいったようだね」
契約のためだし仕方なかった。うん、今のはノーカン。等と、ぶつぶつ呟いてるルイズ。そんな彼女を見て、コルベールは満足げな顔をしている。
そして、自分抜きで話が進められていた太公望は、どこか不満げな表情で、ポリポリと頭をかいた。
「……のぅ、なんだかわしだけ置いてけぼりな感じがぬぐえんのだが……さっきのアレは何の意味がってあっつぅ!!」
とりあえず、先ほどの行動の意味を知っておこうと口を開いた太公望であったが、突如左手の甲に感じた熱に中断せざるを得なかった。
左手を振ったりしてる太公望を見たコルベールが言った。
「ああ、大丈夫です。それは使い魔のルーンを刻んでるんです。体に害はないはずですし、熱もすぐに引きますよ」
「あー確かに引いたのぅ。っていうか……んなもん勝手に刻むなっちゅーの」
余熱でもあるのだろうか、浮かんだルーンに息を吹きかけながら答える太公望。
なんとはなしに、その左手にちらとコルベールは目をやる。そこに浮かんだルーンが彼の目を引いた。
「すみません、ちょっとそのルーンを見せてもらってもよろしいでしょうか」
「む? 別にかまわぬが」
スッと太公望は左手をコルベールの方に出す。
「ふむふむ、これは珍しいルーンですな……」
ルーンを熱心に観察しながら、どこから取り出したのか、小さな紙にペンでルーンをスケッチしていった。
その様子を眺めながらふと湧いて出た質問を、太公望はそのまま口に出した。
「このルーンとやらはどういうものなのかのぅ?」
ルーンを書き終えた紙をローブの中にクシャッとしまいながらコルベールは答えた。
「んー、私が答えてもよいのですが……それはミス・ヴァリエールに教えてもらってください。彼女と話さなければならないことも、まだたくさんあるでしょう?」
なにより、と続けたコルベールは後ろに目をやって苦笑する。
なるほど、事情はともかく、あまりこっちばかりヒイキするのはいかんわな。視線の先に居る生徒たちを見て納得した太公望は、首肯して見せた。
それを見たコルベールは、満足した様子で後ろに振り返り儀式の終わりを告げた。
「みなさん。これで契約の儀式は終わりです。さあ、教室へ戻りましょう」
待ってましたと言わんばかりの勢いで生徒たちは飛び上がった。待たされ過ぎたせいか、大声でルイズに何か言う気も失せたらしく、不満のあるものはめいめい近くのものと愚痴をこぼし合いながら塔へと消えていった。
ルイズを除いた生徒の最後の一人が飛び上がったのを確認して、コルベールは再び振り返った。
「では、私はこれで。なにか学院生活で困ったことがあれば、可能な範囲で助力いたしますよ」
それだけ言い残すと、いそいそとした様子で近くの塔の方へ飛んで行ってしまった。
取り残された太公望は、"飛んでいく"彼らを呆然とした様子で眺めながらひとりごちた。
「……人は……飛んだかのぅ?」
かつての太公望と同じ、人の姿をした種の中には飛行できる者もいたが、それだってよっぽど"いきすぎた"者でなければ、何かしらの道具を使っていた。
少しの間、自分の常識の範囲で考えうる仮説を立ててみたものの、それは自分の中で即座に否定された。
しばらくそんなことを続けていたが、結局ここは非常識なところなんだ。という結論に至る。
はぁ。と小さなため息を一つ。
めんどくさいな、と思いつつも、使い魔になることを引き受けたのは自分である。
つまり事の責任の半分以上は自分にあるわけで、すなわち、これからしばらくはこの少女に付き添わねばならないわけで。
そんなわけで、太公望に目の前のなにかブツブツ言ってる少女を放置することはかなわず、声をかけざるを得なかった。
「あーっと、たしかルイズとかいったか。きゃつらみんなして飛んで行ってしまったんだが、お主は行かなくとも良いのかの?」
……返事はない。今だにルイズは「契約だからノーカン」だとか「誰がキスとか決めたのよ」だとかブツブツ言っている。
もう一度声をかけた。
「……おーい、聞いておるのか?」
またもや返事はない。
これは口で言っても無駄だと感じた太公望は、すっと打神鞭を振り上げ――ルイズの頭を軽く叩いた。
その瞬間、ルイズの肩までを包み込むような風が撫ぜていった。
「ひゃっ?!」
「あそこに行くのであろ? お主は飛ばぬのか?」
「え?!……あ、あん、な!」
太公望に焦点はあってるものの今だにろれつの回らないルイズ。
彼が呼び出されたとき、彼女はなぜか心ここにあらずといった風だった。かと思えば急に怒りだしたり、そして今、やっと落ち着いたかと思えば、またおかしなことになっている。
ああ、この娘はこういうやつなのだな。と太公望は自分の中で結論付け、ルイズに聞くのを止め、自分だけで判断することを決めた。
「はぁ。なんだかよくわからぬが、他の者が入ってる場所から入るとするかの」
そうつぶやいて、ルイズを抱きかかえ――飛んだ。
「ふぇ?」
ついさきほど、自身の人生初のキスを捧げてしまった相手に抱きかかえられている。それは、ルイズにとって自分の召喚した使い魔、太公望が飛べることよりも衝撃的なことであり……
太公望を召喚してから、周りの状況を処理しようとフルスロットルで回転していたルイズの脳は、その情けない声を合図に、とうとう活動の休止を決めた。
了です。
あ、太乙万能義手じゃないんだ
支援
なんかこのルイズ可愛いなぁw
>>537 復活の玉で再生したときに左手も治ったよ
っていうか伏義になるとき前に太公望の肉体は消滅して
魂魄が王天君と合体してたような気がする
伏義になった後は分離合体も太公望モードも自由自在ですよ
ダレモイナイ トウカスルナライマノウチ・・・・
予約がなければ五分後に。
指摘されたので今回は短めに切って投下してみます。
伏義は
肉体:王天君
魂魄比 太公望:王天君=3:1
の構成
フーケを見送ったその後。
結局、リリスの還魂(カドルト)の詠唱が森に響くまでには随分と時間がかかった。
日は随分と傾き、これからでは学院に戻る前に日が沈むだろう。
ショウとワルドはさすがに疲れ果てて、ゴーレムの土山にもたれ掛かって座り込んでいる。
リリスの還魂(カドルト)によってヤンの首が胴体と癒着し、失った血が再び脈打ち始めた心臓によって身体の隅々にまで行き渡る。
ワルドにとっては二度目に目にする奇跡であったが、今の彼はそれどころではなかった。
(なんと言う事だ・・・よく考えてみればどさくさ紛れにショウを始末しておくチャンスだったではないか!?
フーケとてあそこで強硬に主張しておけば、後腐れ無く証拠を隠滅できたろうに・・・)
とは言え、フーケに関しては捨て置いてもさほど問題は無かろうと考えているワルドである。ルイズを殺しかけた事については後日必ずやツケを支払わせてやると決心しているが、それはそれ。それよりも問題はショウだ。
ショウが気絶している内に掘り出してとどめを刺しておけば、あの恐るべき使い魔に労せずして勝利できたはずである。
うっかり傷つけてしまったなりなんなり、言い訳はいくらでも利くし、なんならフーケの仕業に見せかける事も可能だったはず。それが事実かどうかはともかくとして、少なくともワルドにはそう思えた。
無論、ショウが居なくなればルイズが無条件に自分を頼ってくれると考えているワルドには、実行していた場合のリスクはまるで見えていない。
ルイズの事で頭がいっぱいだったあの状態ではそんな事は思いついたはずがなく、また下手に時間を掛ければルイズが窒息ないし圧死していたかも知れないという事実も彼の頭からはすっぽり抜け落ちている。
結局の所、悪ぶってはいても中途半端に善良で、世の中の裏を知ったつもりでも中途半端に純粋で、冷酷無比なつもりで中途半端に熱血な、「計算高い策士」には到底なりきれない男なのである。
とは言え当人にはそんな自覚はかけらほどもなく、ワルドは苦悶の中で自問自答し続けていた。
「くそっ・・・何故僕はこんな簡単な事を見落としていたんだ・・・!」
「坊やだからさ」
「ぬぐっ!?」
寸鉄ワルドを刺したのは、リリスを連れていつの間にか目の前に来ていたタバサであった。
向こうではキュルケが蘇生したヤンと早速いちゃついているが、無論そんな物はワルドの意識の外にある。
鼻白むワルドにびっ、と指を突きつける。
「だが、そんな事はどうでもいい」
「どうでもよくないっ! どこから聞いていた!?」
逆上しかかり、いつの間にか周囲から視線を集めているのに気づいて咳払いをする。
「ま、まぁそれはともかく。一体何の用かね、ミス・タバサ」
「それほど大したことではない。ただ、女性の好みがロリ巨乳というのは余り褒められた趣味ではないと言いに来ただけ」
ワルドがひくっ、としゃっくりのような奇音を発した。
動揺しながら否定しようとして周囲からの視線が明らかに真っ白なそれか、良くても半信半疑であることに気づき、内心でさらに動揺する。
余裕を見せるために気障に帽子のズレを直そうとしたが、明らかにその手は震えていた。
まぁ意中の女性に「やっぱり・・」という目で見られれば仕方のない所はあるだろう。
しかもそれがワルドにとっては母親に自分のひた隠しにしていた性的嗜好を知られてしまったのにも等しいとなればなおさらである。
「ち、違うッ!」
「その動揺、どうやら語るに落ちたようだねワルドくん」
「違うと言ってるだろうっ!」
やれやれと言わんばかりに、わざとらしく肩をすくめてため息をつくタバサ。青筋を立て、ワルドがそれを否定する。
「大体だ、そこまで言い切るなら何か証拠はあるのか、証拠は!」
「まあ、真犯人は大体はっきりと推理を述べられないと諦めないのがお約束ではある」
「誰が犯人だ!?」
盛大に唾を飛ばすワルドをいっそ見事にスルーしつつ、タバサがぴっと指を立てた。
「ひとつ。先ほど、あなたは私を洗濯板と言い捨てた」
「い、言ったかなそんな失礼な事を?」
タバサの目が一瞬だけ絶対零度のカミソリのような光を帯びた。
が、すぐにそれを打ち消し言葉を続ける。
支援……そのサイトで更新してこっちで報告するんじゃダメっすか?
「加えてあなたはその直後、キュルケのお尻を思う存分揉みしだいた」
「ええ、そうよねぇ。お尻を好き放題揉まれた挙げ句『これじゃない』と吐き捨てるように言われたのはショックでしたわぁ」
「この証言で明らかなように、被告は肉付きのいい臀部を好まない。過去の言動から推測するに、彼の好みはあくまで子供のような細くて肉の付いていないお尻なのだと思われる」
嫌な圧力を増したルイズの視線と、こちらは混じりっけなしの殺意を込めたヤンの視線を意識して脂汗を垂らしつつ、ワルドがそれでも反論を試みる。
「あ、あれはあくまでルイズじゃないという事であって、それに失礼な事を言ったのは謝罪するが、あの時はルイズを助けようと必死になって切羽詰まっていたから余裕がなかったのであって・・」
「異議ありっ!」
タバサの指がワルドに突きつけられた。眼鏡がきらりと光る。
「人間、切羽詰まっているからこそ本音が出るもの! あの時の、汚らわしい物に触れたかのような表情は、豊満な臀部に嫌悪感を持っていなければありえないっ!」
「そ、それはっ!」
物には勢いという物がある。言ってる事が無茶苦茶でも、勢いさえあれば通ってしまう事もある。まさにタバサの弁論がそれだった。
この時ワルドに最も必要だったのは、男には抗しがたい女性の勢いを受け流すための人生経験だったかも知れない。
無論、筋金入りのマザコンであるワルドにそんな経験を積む余地は全くなかったのだが。
そして彼がうろたえている間にタバサはとどめの一撃を用意していた。
「そして以上の二点を考慮すれば自ずと答えは明らかになる・・・つまりあなたの真の嗜好は子供体型でありながら胸だけは子供ではない女性! 即ちロリ巨乳!」
「ち、違う違う違う! 違うんだっ!」
「違うというなら何故私の事を洗濯板と言い捨てたのか? 単に幼児体型が好きであれば平たい胸を厭いはしないはず。しかし幼児体型自体は好んでいる・・ならば、双方を満たす答えは『豊満な胸の幼児体型』しかない!」
そもそも何で幼児体型が趣味だという事にされてしまっているのかまず突っ込むべきであったが、全く心当たりが無いわけでもないので反論しようにも出来ないワルドである。
それでもここで反論しなければルイズから一生さげすみの目で見られてしまうかも知れない。それを想像してほんの少しだけゾクゾクしたものの、やはりワルドには即座に否定する以外の選択肢はなかった。
「そ、そんなことは無いともルイズ!」
「ならば被告ワルドはそれを立証しなくてはならない。法廷では、常に主張する側に立証責任がある」
いつの間に法廷になったんだという野暮な突っ込みは誰もしない。
それを最も主張すべきワルドは完全にテンパッていて、それどころではなかった。
支援しとくか
「ならそうでない事をしっかりと理解してもらおう! いいね、ルイズ!?」
見えない何かに追い詰められて必死になっているワルドに、ルイズが顔を引きつらせながらも頷いた。
「いいかいルイズ! 胸は大きい方がいいだなどと言っている内は所詮子供だ! どれほど小振りであろうとも、けして無にはならぬ微妙な線の作り出す玄妙なる色香・・・それこそ女性として極めた先にある境地なんだよ!
そう、小乳こそ究極の乳! ならばもはや育たない君の乳は即ち最高の淑女へのパスポート!
あちらのタバサ君には先ほど失礼な事を言ってしまったが、彼女は小乳ではなくもはや無乳故に究極たる資格を失っているんだっ!」
ひくっ、とルイズの口元が痙攣した。
一方タバサは普段以上に無表情になっている。顔だけ見れば、であるが。
「・・・・・・・・・・」
「タ、タバサ。落ち着きましょ。ね?」
冬の永久凍土のごとき静かな怒気に怯えながらも、それをなだめようとするリリスである。
その間にもワルドの暴走は止まる所を知らない。
「無論胸だけで女性を判断するのは誤りだ! 小胸はあくまで最高の淑女へのパスポートに過ぎない!
もう一つ必要な物、それは触れれば折れそうなほどの柳腰! 小胸こそが究極の乳ならばこれこそ至高の腰周り!
そして究極の貧乳と至高の柳腰! この二つが合わさる事によって女性の肉体は絶対の美へと昇華されるんだっ!
撫で肩! 小胸! 柳腰!
どんな画家でも再現できない最高のラインを持つ眉、程良く切れ上がった目尻、金の針のようなまつげ、控えめに存在を主張する耳たぶ、繊細な造形の顎骨、美しい曲線を描くうなじとそこから続く肩へのライン、ほっそりと浮き出た鎖骨!
ブラウスに隠されながらもその慎ましげな存在感を発してやまない脇の下、白柳を削りだしたような二の腕、力一杯つかんだら折れてしまいそうな細い手首、しゃぶりつきたくなるような指先!
思わずかぶりつきたくなるような太もも、なだらかにしてしなやかなふくらはぎ、思わずぞくりと来るようなくるぶし、靴と靴下の中に隠された真っ白な足の指!
それら全てが高いレベルでの調和を取ってこそ女性の美しさは絶対にして永遠となるのだ! そう、ルイズ、まさしく君のようにっ!」
もはや全員どん引きなのにも気づかず、ワルドの熱弁は続く。
単にスレンダーな女性が好きだとか小柄な女性が好きだとかそう言えばいい物を、余計な事を言って墓穴を掘るという生きた見本であった。
とは言え、ルイズを説得する以外にも彼には熱を込めて語らざるを得ない理由がある。
実の所ワルドの母親も彼が熱く語るような、いわゆる撫で肩柳腰の細身の美人であった。つまり、彼が主張しているのは結局の所「自分の母親はどんなに美しかったか」という事なのである。
言葉に熱が入るのも、本人的には仕方のない事だったと言うしかない。
閑話休題。
ふるふると、ルイズがうつむいて震えている。
熱弁を振るった勢いのまま己の言葉に些か酔っていたワルドにとって、それは自分の美を賞賛されて感動に打ち震えている姿にしか見えなかった。
「わ・・ワルド様・・・」
「ああ、分かってくれたかいルイズっ! このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、亡き母にかけて誓おう! 僕が愛しているのは・・・・」
がばりと勢いよく顔を上げるルイズ。その顔は茹で蛸のように真っ赤だった。
「ワルド様の変態っ! ド変態っ! de変態っ!」
どさくさ紛れに愛の誓いを立てようとしていたワルドの顔が、ぴしり、と固まった。
「ちなみに『de』はガリア語の接頭辞で、短く『ドゥ』と発音する」
「誰に説明してるのよタバサ」
そんな会話を交わす二人の視線の先では、ルイズがワルドに詰め寄っていた。相当に興奮しているらしく、もうルイズ本人も何を言っているか分かっていないようにも見える。
そして詰め寄られるワルドの表情は、タバサにロリコン呼ばわりされた時以上に追い詰められたものだった。
タバサが口元を押さえた。その手の下に、にまぁ、とでも表現すべき笑みが浮かぶ。リリスは勿論、キュルケも見た事がないような、暗い喜びをたたえた顔。悪趣味な感性の持ち主なら小悪魔のように可愛いと評するかも知れない。
その笑みを見て、リリスの脳裏に走る物があった。
「・・・ねぇ、タバサ。ひょっとしてわざと? 最初から全部わざとなの?」
「ふ」
無言のまま、タバサの暗い笑みだけが深くなる。その視線の先で、ワルドが滅多打ちにされていた。
「変態っ! ド変態っ! der変態っ!」
「ルイズ、話を!」
「ちなみに『der』はゲルマニア語の接頭辞で、『ダー』と発音する」
「だから誰に説明してるのよあなたは」
「変態っ! ド変態っ! EL変態っ!」
「頼むルイズ、話を聞いてくれっ!」
「『EL』は南方諸国語の接頭辞で、『エル』と」
「だから〜」
「変態っ! ド変態っ! 大変態っ!」
「ル、ルイズ!」
「変態っ! ド変態っ! 変態大人(ターレン)っ!」
「あ・・・」
「変態っ! ド変態っ! THE HENTAI!」
「あ、あああああああああああああああああああああああああああああっ!」
何かがとどめの一言になったらしい。その瞬間、何かが木端微塵に砕け散った音が、少なくともワルドにははっきりと聞こえた。
頭を抱えたワルドの悲痛な絶叫に、びくりとルイズが震える。
「はは・・・ふふふ・・・・ふははははははははははははは!」
絶叫に取って代わった高笑いが、低く重くその場に響いた。
よくわからない激情のままにワルドをののしり続けてしまったが、ひょっとしてやり過ぎたかも知れない。
例え変態であっても、ルイズにとってワルドは幼少期の憧れの王子様であり、カトレア以外では魔法の使えない自分を唯一かばい続けてくれた人間なのである。
ついつい罵倒に力が――ちょっぴり、そう、ほんのちょっぴり力が入ってしまったが、ワルドを傷つけるのはルイズの本意ではなかった。
「あ、あの、ワルド様?」
こわごわと呼びかけるルイズ。ワルドはただ壊れた高笑いを続けている。
「ねえタバサ、ちょっとやりすぎちゃったんじゃない?」
「・・・そうかも」
さすがにタバサも笑みを収めて、リリスとひそひそ囁きあう。
ヤンは先ほど殺意を向けたのが嘘だったかのように、気の毒そうな表情でそれを見ていた。
「は、は、は・・・はははは」
高笑いが力なく立ち消えた。
ワルドの唇から漏れるのはいつの間にか憑かれたような呟きとなっている。
「僕が・・この僕がロリコン呼ばわりされ、ルイズに変態とののしられ、周囲からは白い目で見られ・・・
ルイズは昔みたいにワルド様ってなついてくれないし、抱き上げようとすると恥ずかしがるし、それならそれでもう結婚してもいい年なのに公爵家からそう言う話は全くないし・・・」
誰も、何も言えない。
「ルイズが学生だから毎日会えないのはしょうがないとしても、顔を見たり会話する事さえ中々ままならないし、そもそも軍務が忙しくて虚無の曜日にちょっとトリステインでお茶を楽しむなんて事も出来ないし、忙しさの原因はのうのうと休みを取っているし、
ヒポグリフ隊の隊長は年功序列で出世しただけの無能のくせにこちらを目の敵にするし、衛士隊隊長からもう一つ上にお呼びがかかってもいい頃合いなのに内示が全くないし、輜重隊のド・シニョンは露骨に賄賂を要求して来やがるし、
マザリーニはたかが坊主のくせに国家の政を壟断しているし、有能を気取るなら僕にもっと高いポストを与えるべきじゃないのか?
バスティアンの野郎は将来有望だと思って小隊長に引き上げてやったら天狗になるし、ヴァラールはヴァラールでそんな小僧一人抑えきれないし、レヴェリーは言わないと仕事をやらないし、ガイモンは無能なくせに親の七光があるから首に出来ないし、
ここのところグリフォンのエサの質があからさまに落ちてるし、厩番が無能だから藁が湿って悪臭を放っているし、下働きは石段の隅のこびり付いたシミを未だに掃除しないし、
ポワチエの野郎は根回しだけで成り上がった無能だし、リッシュモンは立場をいい事に私腹を肥やしてやがるし、ルイズは僕に振り向いてくれないし、
ベルトラン伯爵夫人は人妻で年増のババァのくせに色目使って来て気持ち悪いし、レスコー男爵の小娘はぶくぶく太った見苦しい体型のくせに身の程知らずにも文を送りつけて来やがるし、なのにルイズからは手紙一つ来ないし、
領地の作付けは上手く行かないし、天候も悪いからここのところ貸し付けが焦げ付いて赤字だし、『プレガンド』のワインはここのところ質が落ちた上に値上げしたし、『デュ・コロワ』はひいきにしてやってるのにサービス悪いし、
魔法学院はトリステインに近いから実家にいるよりはルイズと会う機会が増えるかと思ったらそんな事は全くないし・・・」
繰り言は続く。
ブツブツ呟くワルドを見る目は、いつの間にか可哀想なものを見るような、あるいは哀れみと同情のそれになっていた。
中でもルイズは意気消沈して、いたたまれない表情でワルドを見ている。
「これもそれも! 何もかもショウ! 貴様のせいだ!」
「ちょっと待て!?」
いきなり顔を上げてキッとこちらを睨んだワルドに、思わずショウが吹き出した。
その他の面子はタバサでさえ唖然とし、ルイズはどうすべきか分からずオロオロしている。
「ワ、ワルド様・・・・?」
「いや、なんだ。よくわからないが落ち着いてくれ子爵」
「黙れっ! 僕がロリコン呼ばわりされるのも、ルイズが昔みたいになついてくれないのも、宮廷の貴族どもが腐っているのも『ラ・ボエーム』のランチセットがまずいのも、全部貴様のせいだっ!」
混乱するルイズと冷や汗をにじませるショウ。二人の声も耳に入らなかったかのようにワルドが荒々しく杖を引き抜き、大股でショウに歩み寄る。
剣こそ抜かない物の、流石に真剣な顔になってショウが身構え、ヤンとキュルケがそれぞれワルドの肩に手を掛けて押しとどめようとする。
「落ち着いて子爵! 別にスレンダーな女性が好きだからってルイズちゃんがあなたを嫌う事はありませんよ!」
「ライバルを意識するのは分かるけど、血を上らせるのは逆効果よ子爵! 殿方が血を上らせるのはベッドの上、身体の一部だけでいいの!」
「・・・ライバルって何がだ?」
必死のヤンとキュルケのフォローも、だが全く無自覚なショウの一言によって台無しになった。
殆ど音を立てて、ワルドの理性の糸の最後の一本が切れる。
「貴様さえ! 貴様さえいなければ!」
吼えたその瞬間。
ずくん、とワルドの全身に震動が走った。
(繋がった)
(繋がったぞ)
「何だ! 何が繋がったというのだ!」
叫びはしたが、実の所ワルドにも既にその答えは分かっていた。
その頭の中に響く声が、隠しにしまい込んだ『召喚の書』から響いてくるのだという事。そしてただの書物だと思っていた召喚の書は、今やワルド自身と強い繋がりで結ばれているという事が。
頭の中の声に、同じく頭の中でワルドが語りかける。
(誰だ。誰だお前達は)
(誰でもいい)
(忌々しきブリミルめに封印されて幾星霜)
(それを部分的にでも解放してくれたお前には礼をせねばな)
(お前に力を与えてやろう)
(さあ、我らを呼べ! お前の望んだ力、全てを圧倒する力をお前に授けてやろう!)
逡巡はなかった。
無意識のうちにワルドは叫んでいた。
「お前達が神でも悪魔でも何でもいい。力をよこせ! 何もかも僕の思いどおりに出来る力を!」
その瞬間、ワルドのそばにいたヤンとキュルケが何か無形の力にはじき飛ばされた。
地面と水平に数メイル飛んできた二人をショウが受け止めようとして、勢いに抗しきれず、三人もつれてさらに数メイル土砂の上を転がって止まる。
ショウとヤンはすぐさま、キュルケはうめきながらもやや遅れて立ち上がる。
状況が掴めずに立ち尽くすルイズを、顔色を真っ青にしたリリスが無理矢理引きずって下がらせた。
タバサは既に呪文の詠唱を始めている。
オレンジ色の火球が生まれた。
大きさは人の身長ほど、両手を広げて立ち尽くすワルドを半円状に取り囲むように――あるいは守るように五つ。
「多分次々に来るわよ! 気をつけて!」
リリスが叫ぶ。
火球が消失するのと同時に、巨体が姿を現していた。
身長は4メイルほど、大きさはフーケのゴーレムには遠く及ばないが、山羊の頭と尾と蹄、毛深い赤褐色の身体に四本の腕を持つ、それは異形の姿だった。
全身を覆う分厚い皮膚と毛皮の下で筋肉が波打つようにうねっている。瞳のない黄褐色の眼からは何をうかがい知る事も出来ない。あらゆる意味で異質、天使たちと同じく、この世のものではない異形・・・それがそこにいた。
レッサーデーモン。
受ける呪文の過半を無効化し、巨人族にも匹敵する打撃力と仲間を呼んで増殖する能力、さらには中級魔術師呪文を行使する能力をも有し、ワードナの迷宮においても中層かそれ以下の階にのみ出現する。
それが「劣った(レッサー)」などと言う名を冠して呼ばれるのは、ひとえに悪魔族(デーモン)という種そのものが人や並の『古き者ども』とは比較にならない戦闘力を有し、その基準の中では劣った存在であるというのに過ぎない。
ぶおう、と山羊の頭が吼えた。
大型草食動物の上げるようなあの重低音の鳴き声だが、そこには明らかに、知性ある者しか持ち得ない、醜悪な殺戮への渇望の響きがあった。
リリスとキュルケ、レッサーデーモンが同時に詠唱を開始し、ショウとヤンが飛び出す。
突如始まった戦いのさなか、ルイズはただ一人呆然と立ち尽くしていた。
「え・・あ・・・うそ・・・」
なんつーしまりもなくみっともない覚醒w ほんとワルド落ち着け。
対照的に恐ろしくシリアスな危機が生じたな。
支援
彼女はタルブ村での密談に参加していないし、その後も『牙の教徒』やケイヒとの関係に関するワルドの疑惑については全く知らされていない。
彼女に教えた場合まず間違いなくワルドにそれを悟られるであろうし、ワルドに直に問いただしたりと言った暴挙に出る恐れもある。
そう言う事で五人の意見が一致し、またワルドがどこで聞き耳を立てているかも分からなかったため、今に至るまでルイズにはそのことは知らされていなかったのである。
だが今回はその判断が悪い方に出てしまったようだった。
そのことに内心歯がみしながらタバサは横目でルイズを見る。
勿論その間にも呪文の詠唱が止まる事はない。
古き者どもと戦う場合、往々にして時間こそが生死を分ける分水嶺となるからだ。
「古きもの」、特に呪文やブレスを持つ敵との戦いが先手必勝である事は、リリスが折に触れ強調してきた所である。
ハルケギニアと異なりパーティ全体を巻き込むような広範囲攻撃が一般的に存在し、かつ有効な防御手段が無い以上、どうしても高レベルの戦闘はそうならざるを得ない。
系統魔法でも高レベルの、例えばそれこそフーケのような土のメイジが居れば土の壁で呪文などを防ぐ事も可能だったろうが、残念な事にこのパーティにはいないし、他の系統では制約が多くてそうした攻撃に対する防御手段としては使いづらい。
一度作れば後はそのまま形を維持する土壁に比べ、例えば風の壁は存在する限り精神力を消費し続けるし強度も劣る。水にしても壁に出来るほど大量の水はそうどこにでもあるわけではない。火が防御に役に立たないのは無論である。
だがそれでも、こうした戦いの時は自分は今後風の壁で味方のフォローに回るべきかと考えつつ、完璧な韻律でタバサは呪文の最後の一節を唱え終わった。
が、すぐに発動させはしない。
一瞬後に訪れる最高のタイミングを待つ。
正面に位置する二体のレッサーデーモン。
その向かって右側にヤンが切り込んだ。
詠唱を続けながらも身をかわそうとするその左足を、身体ごとぶつかるようにしてカシナートの剣で薙ぐ。
分厚い毛皮に刃が潜り込んだかと思うとブチブチと筋組織がはぜる音が響き、骨を断つごりっとした手応えと共に足が膝のすぐ上から断ち切られる。
倒れながらも呪文の詠唱を続けるその喉を逆手に持ち替えたカシナートの切っ先が貫き、その詠唱を永遠に止めた。
一方ショウは向かって左側のレッサーデーモンの脇をすり抜けるように走った。
詠唱を続ける巨体の脇を走り抜けながら、肩に担いでいた井上真改を大きく振り抜く。
走り去るショウの後ろで動きを止めて立ち尽くしているレッサーデーモンの、左鎖骨から右脇の下に薄い筋が走る。
瞬き数回ほどの時間の後、青黒い液体をまき散らしながら頭と二本の右腕が滑り落ち、一瞬遅れて残りの胴体も地に崩れ落ちた。
これがタバサの待っていたタイミングだった。
正面にいた二匹は共に倒れ、ヤンの側に一匹、ショウの側に二匹残ってはいるが、もはやワルドとタバサの間を直接遮るものは何もない。
タバサの振った杖の先からアイス・ストームの呪文が飛び出す。
戦いが始まって以来、ワルドは右手の杖をだらんと下げたまま、いかなる魔法も発動させていない。
理由は分からないがこのチャンスは見逃せなかった。人間がタバサのアイスストームをまともに食らえば、いかに鍛えていようとも良くて重傷、即死してもおかしくはない。
ルイズには悪いが、タバサはこの一撃でワルドを殺す気であった。
ワルドは動かない。
あまりの無防備さにタバサの直感が警報を鳴らした瞬間、アイス・ストームがワルドの手前1メイルほどのところで弾けた。
風の障壁に吹き散らされた、という感じではない。
もっと固い、例えば石壁にぶつかった時のように遮られて、消えた。
ワルドは動かない。
恍惚と天を見上げ、両腕を大きく広げて何かを迎え入れんとするかの如くである。
その口元は何かを呟き、左手にはあの『召喚の書』。
タバサの呪文などそよ風ですらなかったかのように、ワルドはただ恍惚と天を仰ぎ続けていた。
敵の呪文を封じる静寂(モンティノ)の呪文を詠唱しながら違和感を感じていた。
違和感の元を探ろうとして、はたと気づく。レッサーデーモン達の詠唱している呪文の韻律がおかしいのだ。
おかしいと言っても呪文の詠唱がデタラメだとかそう言う事ではない。
レッサーデーモンは魔術師系3レベルまでの呪文を使用する。
つまり普通レッサーデーモンが使うのはそのうちで最大の威力を持つ呪文、大炎(マハリト)なのである。
たまに同レベルでやや威力の劣る迅雷(モリト)を詠唱する個体もいるが、それにしてもその詠唱には範囲攻撃呪文特有のリズムがある。
にもかかわらず、今レッサーデーモン達が詠唱している呪文にはそのリズムがない。
そこまで考えた時リリスは違和感の元に気づいた。
レッサーデーモン達が揃って詠唱しているのは魔術師系3レベルに位置する中範囲攻撃魔法ではなく、魔術師系1レベルの催眠呪文、仮睡(カティノ)だったのである。
(・・・まさか?)
危機感を抱きつつ、レッサーデーモン達よりも一瞬早くリリスは呪文を完成させた。
静寂をもたらす魔法の力場がデーモン達の周囲を包み込む。
内二体は身にまとう魔力の波動によって呪文の効果を霧散させたが、ショウの側の奥にいる一体が無効化しきれず、文字通り沈黙する。
だがショウやヤンの二太刀目も間に合わず、残り二体が仮睡(カティノ)の呪文を放った。
ショウ、リリス、ヤン、そしてタバサはかろうじて耐えた。
キュルケは一度は耐えたものの二度目の仮睡(カティノ)で倒れる。ましてや混乱し抵抗の心構えすらろくに出来ていなかったルイズはひとたまりもなく意識を失うはずだった。
しかし、ルイズは何故か倒れない。そう言った攻撃への特段の抵抗力があるわけでもないルイズがである。
だが幸か不幸か、戦場は混乱していた。タバサやリリスはおろか、当のルイズもこの現象の不可解さには気づいていない。
レッサーデーモンの仮睡(カティノ)によってキュルケは無力化された。
だが大炎(マハリト)を二体が唱えれば、そもそもタバサやルイズは高い確率で死んでいたはずである。キュルケもけして安心は出来ない。
リリスたちの基準で言えば彼女らは三人とも全クラスで最も打たれ弱い「魔術師(メイジ)」でしかなく、マスターレベルを超えたショウやリリス、敵の攻撃に耐えてなんぼの戦士であるヤンとはそもそも耐久力が違う。
それを敢えて仮睡(カティノ)の呪文にしたという事は。
リリスとタバサ、そしてショウが動かないままのワルドに視線を向ける。
ショウはこの期に及んで動かないワルドに疑問を抱いただけだったが、タバサの顔色ははっきりと変わった。
自分の方を向いたタバサに、リリスが厳しい顔で頷く。
ワルドはただ動かなかったのではない。精神を集中する余り己の内面に没入しきった、いわゆるトランス状態だったのである。
タバサは高度な魔法を使う魔法使いが時折そのような状態になる事を知識として知っているのみだが、リリスはそれ以上、より致命的なものだという事を知っている。
今やワルドは召喚の書とリンクし、「あちら側」の存在をかなりの所まで自由に召喚できるようになってしまっている。
あのトランス状態も単なる深い精神集中ではなく、異形の者の召喚を行うために彼の精神そのものが「あちら側」と接続しているのに他ならない。
このままリンクが深くなればどうなるか。
そこまではリリスの知識にはなかったが、どう考えても最悪の事態以外は起こりえないだろう。
支援
「ショウ君! 鳳龍の剣術を使って! ワルド子爵を倒さないと!」
「ですが!」
逡巡するショウの振り向いた先にルイズが居る。リリスの一言は、その顔を青ざめさせていた。
たとえ敵であれ、ワルドはルイズにとって大切な人間には変わりない。
ショウにとってもできれば斬りたくはない相手だった。
「お願い! 勝てるチャンスがあるとしたら、今しかないのよ!」
だがショウは戦場を知っていた。
例えそれが昨日の友であっても、敵を討てなければ仲間が死ぬ。振り下ろすべき時に剣を振り下ろさなければ、自分が死ぬ。
それが戦場だという事を、ショウは骨身に沁みて知っていた。
左の小手の下から、緑色の光が漏れる。震えた心が放つ光は強く、哀しく、そして厳しい。
周囲に風が渦巻き、土を巻き上げる。
その威力を目の前で見ているヤンが慌ててワルドから距離を取った。
「ま、待って、ショウ!」
ルイズが静止する声も、もはやショウには届かない。
己を殺し、ショウは剣を振り下ろす。仲間のために。頼りなく、わがままで、そして誇り高い主のために。
鳳龍――
「・・・・え?」
ワルドがトランス状態から脱したのは、まさにこの瞬間だった。
一瞬遅れて状況を理解したその顔が恐怖と驚愕に引きつる。
当然だろう。気がつけば巨人を一太刀で倒すどころか血と肉のペーストにたやすく変えてしまうような技の目標に自分がなっている。
自身の目でその現場をまざまざと見ているだけに、恐怖はひとしおだ。
逃げるために「フライ」を詠唱しようにも、閃光と呼ばれた彼をしてすらもはや遅すぎた。
それを無意識に理解したか、召喚の書を持った左手と杖を持った右手でかばうように顔を覆う。
「ま、待て! やめろ! 僕を殺す気かっ!?」
ワルドの叫びと共に、ショウが全力の一撃を解き放った。
烈風斬!
大気が渦巻いた。
ワルドを中心として無数の細い竜巻が生まれ、それが融け合って一つの巨大な竜巻が生まれる。
ワルドの姿はその渦に飲まれ、瞬時に見えなくなった。
直近に立っていた生き残りのレッサーデーモン三体もその渦に吸い寄せられ、飲み込まれ、プディングよりもあっさりとすり潰された。
烈風は地面をもえぐり、肉と血と骨と、そして土を程良くかき混ぜる。
数秒後竜巻が収まった時、そこにはえぐれた大地の他何も残っていなかった。
以上、今回はこれまで。支援ありがとうございました。
続きはまた適当に頃合いを見計らって投下します。
そのサイトで更新してこっちで報告するんじゃダメっすか?
>さあう゛ぁんといろいろ氏
投下乙、体調にお気をつけてくださいね。
最初のモンコレネタに笑ったw
>>562 ども。
マイナーなネタを分かってくれて嬉しいですw
避難所にて鬼哭街の復活を確認!
ひゃっほう!宴だァ−!
しかしあらゆるゼロ魔SSで最も真剣にルイズを愛しているであろうワルドなのに
こんなに応援したいワルドには初めてお目にかかったぜ……
さあう゛ぁんといろいろ氏乙です。
ルイズの伊織ばりの罵りっぷりに吹いたwwww
さすがに多すぎるんじゃあないかな?
メイジとしては他を隔絶するほどの力を誇るワルド。
グリフォン隊の隊長ではあるものの、貴族として、上に立つ者として、軍人として、政に携わる者として、領主として、経営者として――有能だったかは明記されてないんですよね。
ダレモイナイ トウカスルナライマノウチ・・・・
予約がなければ五分後に。
鳳龍――
「・・・・え?」
ワルドがトランス状態から脱したのは、まさにこの瞬間だった。
一瞬遅れて状況を理解したその顔が恐怖と驚愕に引きつる。
当然だろう。気がつけば巨人を一太刀で倒すどころか血と肉のペーストにたやすく変えてしまうような技の目標に
自分がなっている。
自身の目でその現場をまざまざと見ているだけに、恐怖はひとしおだ。
逃げるために「フライ」を詠唱しようにも、閃光と呼ばれた彼をしてすらもはや遅すぎた。
それを無意識に理解したか、召喚の書を持った左手と杖を持った右手でかばうように顔を覆う。
「ま、待て! やめろ! 僕を殺す気かっ!?」
ワルドの叫びと共に、ショウが全力の一撃を解き放った。
烈風斬!
大気が渦巻いた。
ワルドを中心として無数の細い竜巻が生まれ、それが融け合って一つの巨大な竜巻が生まれる。
ワルドの姿はその渦に飲まれ、瞬時に見えなくなった。
直近に立っていた生き残りのレッサーデーモン三体もその渦に吸い寄せられ、飲み込まれ、プディングよりもあっ
さりとすり潰された。
烈風は地面をもえぐり、肉と血と骨と、そして土を程良くかき混ぜる。
数秒後竜巻が収まった時、そこにはえぐれた大地の他何も残っていなかった。
残っていない、はずだった。
まだ続くですとw支援
ワルドがこわごわと、顔を覆っていた両腕を開いた。
信じられないといった顔で周囲を見回し、足下を眺め回す。
信じられないのはショウ達も同じである。鳳龍の剣術を防ぐ手段など同等の「気」をぶつける以外に存在しない。
鋼鉄の装甲もなまなかな魔力の楯も、異形の者の呪文無効化能力ですらも圧倒的な気の奔流に対しては無力なので
ある。
さすがに城塞級の防御結界などであれば話は別だが、どのような大魔道士であれそのような物を個人レベルで運用
できるわけがない。仮にあるとすれば名高きニルダの杖の如き神代の神器か、それに匹敵する力を秘めた何かだけ
であろう。
「そうか、『召喚の書』! あれなら、というかあれしかあり得ない!」
「でもそれが分かっても今のところどうしようもない。というか分かっていたなら早く言って」
「う・・・ごめん」
自分より十歳近く年下の少女にジト目で威圧され、リリスは小さくなった。
ショウの烈風斬によって大地に穿たれたくぼみの中、ワルドの立つ周囲だけはまるで隆起したかのようにえぐられ
ずに元の形をとどめていた。
両手を見つめるワルドの顔に安堵の笑みが広がる。右手には己の愛杖。そして左には『召喚の書』。
だがこのとき既に熟練の冒険者であるショウとヤンは烈風斬を防がれた衝撃から我に返っている。
僅かなアイコンタクトを取った次の瞬間、ショウが気の斬撃を全力で叩き付けた。
「ひぃっ!?」
再びワルドの悲鳴。
だが切り裂くと言うより叩き割る事を目的としたかのような荒い一撃はまたしても障壁に弾かれ、行き場を失った
「気」は四散して周囲の土を巻き上げる。
だがここまでは計画通り。
巻き上げられた土煙の中、ワルド目がけて落ちてくるものがあった。
ガンダールヴのルーンを輝かせたヤンである。
装備しているのが全身を覆う板金鎧の甲冑ではなく、胸当てを主とした比較的軽装の鎧(それでも十分「全身鎧」
と呼べるだけの重装備ではあるが)であったことを利用し、跳躍して全身の体重とありったけの「気」を乗せ、力
づくで障壁を突破しようというのである。
ショウの一撃を受けた後なら障壁の強度も下がっているのではないかという期待もある。
たわめていた全身のバネを使い切り、大上段に振りかぶった剣をヤンが叩き付けようとしたその寸前、よく乾いた
薪を真っ二つに割ったような音がした。
注視していたリリスとタバサは、今度こそワルドを守ったものの正体を知った。
剣が振り下ろされ、ワルドを真っ二つにする寸前、その周囲に一瞬だけ黒い半球形の領域が出現した。いや、出現
したのではない。元から不可視の障壁としてそこに存在した物が、負荷を受けて一瞬だけ目に見えたのだ。
それは振り下ろされんとした剣をヤンごと弾き、その身体を小石のように吹き飛ばす。
飛び石のように地面をバウンドしたヤンは肺の中の空気を強制的に吐き出させられ、樹齢二百年以上を数えるであ
ろう大樹にぶつかりその幹を震わせてようやく止まった。
追い打ちを警戒しながらすぐさまリリスが快癒(マディ)の呪文で回復するが、もはやワルドはリリスの方など見
ていない。
「・・・・くくっ」
その喉から引きつったしゃっくりのような音が飛びだした。
最初は低く、徐々に高く。
そして、笑いが高くなるにつれてワルドの背後の空間がぐにゃりと歪み始めた。
歪みが広がるにつれ、風景画に墨汁を落としたかのようにそこに影が現れていく。
影は闇となり、闇は実体を備え、本来この世界に存在しないはずの者どもを形作る。
先ほどトランス状態で詠唱していた召喚の呪が、今になって効力を現し始めたのだとリリスには分かった。
現れる無数の異形の影。
例えば天空に舞う無数の悪鬼。まさしく「石像の悪魔(ガーゴイル)」のごときその姿は見る者に恐怖と嫌悪をも
たらす。
例えば赤く目を光らせる漆黒の馬にまたがった黒き無貌の騎手(ダークライダー)たち。身には真紅のマントを一
枚まとうのみ、角を持つその頭には目も鼻も口もなく、マントの紅を除けばその身体には黒以外の色が存在しない
。
例えば板金鎧の甲冑に身を包み、長剣を構えた騎士の一団。だが面頬から覗く黄色い髑髏を見れば、それらがこの
世のものならぬ「悪鬼(フィーンド)」である事は誰しもが確信できよう。
そうした見るからに異形異類の輩ばかりではない。
一見人間、それも貴族にしか見えないような者も居る。
美しいかんばせに王侯の如き豪奢な装束。深緑色のビロードの上からは金銀をふんだんに使った宝飾を飾る、長身
の流麗な青年がひとり。
だがその頭部の両脇から生えた大山羊の如きねじくれた角と、右手に持つ炎の鞭、なによりこの世のものならざる
美を湛えた秀麗にして異形の面差しは、どうあろうとも人の物ではあり得ない。
アークデーモン。名の通り悪魔の中でも高位に位置する種族であった。
その後ろにはアークデーモンには劣る物の同じくきらびやかな装束をまとう、ねじくれた角と蛇の鞭を持つ人間に似た何かが、王侯に侍る廷臣と言った風情で並んでいた。
中には子牛ほどもある真っ黒い犬・・・口からよだれの代わりに火をこぼす犬が居たとしての話だが・・・を数頭
従えている者もいる。
ヤン、さすがに復活直後は死なないか?支援
折り返し設定解除して置くの忘れた・・・orz
実体化はごく短い時間で行われた。
だがルイズにはワルドの高笑いと異形の者どもの出現が永遠に続くかと思われた。
実際にはショウやリリスが十分な反応を起こすいとまもないほどの僅かな間の出来事だったのだが。
そうして、まさしく形勢は一変した。
ワルド一人にショウ達六人という圧倒的優勢から、ショウ達六人対一軍へと。
そう、そこにいたのは比喩でも誇張でもない、文字通りの悪魔の軍勢だった。
天に舞うガーゴイルだけで優に百は超えるだろうか。
リリスが僧侶系の7レベル呪文を使い切った今、これらを一度に倒せる攻撃手段はない。
いや、リリスの死言(マリクト)をもってしても不可能だ。
これら異形の者達は大なり小なり呪文を無効化するための魔力の波動を生来身に帯びている。知性の高いものであれば、それに加えて魔法を弾くための結界をもまとう。
全ての異形の輩が呪文の無効化に失敗する確率は確かにゼロではないが、そう言いきっていいほどに小さい。
再び森の中に哄笑が響いた。
高揚の笑い。
歓喜の笑い。
そして絶対の優位を確信し、敵をいたぶる事に喜びを見いだす嗜虐の笑い。
もはや立場は逆転していた。
ケイヒをぶつけて殺すしかないと思っていたショウは、今やワルドに生殺与奪を握られた哀れな小動物、地に頭をこすりつけて命乞いをするしかできない虫けらに過ぎない。
見ろ、自分が従えるこの圧倒的な軍勢を。
見ろ、ショウの剣技ですら物ともしないこの絶対的な守りを。
もはや自分はメイジなどと言うちっぽけな存在ではない。
無敵の軍勢を従えてハルケギニアを統一し、いずれはエルフをも討ち滅ぼして聖地を回復する英雄王・・いや、ブリミルに変わる新たなる神だ。
そうとも、エルフを滅ぼす僕が何故エルフに負けて死んだブリミルの如き無能の下に置かれなくてはならない?
「そうとも、僕は神になる! 新しきハルケギニアに永遠の繁栄をもたらす神に!」
無論絶頂にいるワルドは気づかない。
後ろに控えるアークデーモンがその唇を侮蔑にゆがめた事など。
(それにしても頭がぼんやりする・・・そう言えば僕はどうして聖地を回復しようと思ったんだっけ?)
高揚した意識の片隅で冷静なワルドが疑問を投げかける。
その問いに答える声は少なくともワルドの意識のうちにはない。あの召喚の際にごっそりと失われた「何か」と共に、永久に消えてしまった。
それが召喚の、一時的にでも異界を無理矢理につなげた代償だという事を彼は知らない。思い出せない。
だが、この力を使って何をすればいいかは分かっていた。
ルイズだ。
あの少女を、僕の母親を、我が物とするのだ。
マシンガン投下ですな、支援
「・・・ふむ。さすがにいかん、かな」
うっそうとした森の中、呟いた声がある。
全身を覆う、修道士の如きゆったりとした暗色の長衣(クローク)。フードを下ろした顔は影になりうかがい知る事が出来ない。声と、フードから覗く青い顎髭とから男と分かる程度である。
ショウ達の戦っている開けた場所から一マイルほど。一体いつの間に出現したのか、その人物はショウ達の戦いを『見て』いた。
「こうなってみると『あれ』が別の場所にあるのはいささかまずかったな」
散開していたショウ達が集合するのを見つつ、彼は再び呟いた。
その言葉の端々に迷う気配がにじみ出ている。
何かをしたいのに実行する事は躊躇われる、そのようなもどかしさを抱えているようにも見えた。
「まぁ、今はまだ見守るべきか。いざとなれば――む?」
何かに気づいたように、その頭が僅かに向きを変える。
「小石が一つ戻ってきたか。所詮は小石にしか過ぎんが、波紋を起こすやもしれんな・・・」
その先の言葉は形にならぬまま消え、謎の人物は無言のうちに再び森に溶け込んだ。
>>578 まー、長いもんでできるだけ他の人が投下しない時間帯にまとめて。
ショウ達が集合する。
戦うにせよ、逃げるにせよ、散開していては危険だ。
もっとも、集まったからと言って出来る事は殆どなかった。せいぜい仮睡(カティノ)で眠り込んだキュルケを起こすくらいである。
いかに鳳龍の剣、いかにリリスの呪文とて、これだけの悪魔の群をどうこうできようはずもない。何匹、上手く行って何十匹かを倒している間に攻撃呪文を雨あられと喰らってそれまでである。
召喚主であるワルドを倒そうにも、今や鳳龍の剣ですら弾く魔法障壁(シールド)を身にまとっているのだ。リリス達の呪文で倒せる相手ではない。
かと言って、ほぼ純粋に物理的な攻撃であるヤンの渾身の一撃も通用しないのは先ほど証明されたとおりである。
それが分かっているかのように、ワルドも、悪魔達も、ショウ達が集まろうとするのを阻む事も、呪文の詠唱すらしていない。
結局の所、逃げる以外に選択肢などないのである。
だが、唯一この場から脱出する手段を持ち合わせているリリスは泣きそうな顔をしていた。
(ううっ、使いたくない、使いたくないよぉ)
それも当然で、彼女の持つ僧侶系の緊急脱出呪文「帰還(ロクトフェイト)」は自分の身体以外の物は持っていけない。
つまり服も下着もこの場に置いて行く事になる。
心はいまだに十七歳のうら若き乙女であるリリスが泣きたい気持ちになるのも、無理からぬ事ではあった。
「リリスさん」
が、状況はそのような泣き言を許してはくれない。
短い、切羽詰まったショウの声に、リリスは葛藤から引き戻された。
もはや逃げる余裕もないと見たか、悪魔達が手を出してこない今だけが脱出のチャンスなのである。
断腸の思いで、リリスは帰還(ロクトフェイト)の呪文を唱えた。
だが何も起こらない。
最下層へのシューターにレベル1で飛び込む覚悟で呪文を唱えたというのに、何も起こらない。
「リリスさん?」
呆然としながらも、ショウの問いかけにリリスの知識は正解であろう答えを導き出している。
「多分、あの召喚のせいね。この周囲の空間がごちゃごちゃに歪みまくって今にも破裂しそうなせいで、簡単な結界でこちらの転移を封じる事が出来ちゃうのよ。少なくともその結界が解かれるまでは帰還(ロクトフェイト)でも転移(マロール)でも空間移動は無理ね。
今感知してみたけど、この周辺を囲むように張り巡らされてる。気がつかなかったのは迂闊だったわ」
「まぁリリスのうっかりはいつもの事だからしょうがないとして」
「ちょっと、それ酷くない!?」
「つまりそれって・・・」
リリスの抗議を華麗にスルーし、タバサは顔を青くした親友の問いに簡潔に答えた。
「私たちはここから脱出できない」
これはひょっとしてロクトフェイト詠唱か?期待期待
と思ったらもう唱えてスカってた
「さて、諸君」
その言葉を待っていたかのように、ワルドが一歩前に出た。
事実、彼女らが自分たちが逃げられないと認識するまで待っていたのだろう。
己の絶対的優位を見せつけるために。
「大変驚いたことと思う。何故僕が『召喚の書』を持っているのかとね」
「別に」
それをタバサはあっさり切って捨てた。その目にきらめくのは冷ややかな敵意・・・いや、殺意とすら呼べる何かだろうか。
鼻白むワルドだったが、己の優位を思い返して取り繕う。
「な・・・いやいや、この期に及んで虚勢を張る気概があるとは大した物だ」
「別に虚勢ではない」
あくまで冷静に、かつ淡々と対応するタバサに、ワルドはふと不快感を覚えた。
これだけの圧倒的な戦力差の中で何故こいつは僕にひれ伏さないのか、と。
「怖くはないのかい? まさかとは思うが、ひょっとしてまだ僕に勝てる気でいるのかな? それとも逃げられると思っている? そもそも僕が君たちの生殺与奪を握っているのを理解しているかい?」
「別にあなたは怖くない。怖いのは後ろの悪魔」
「・・・っ!」
歯ぎしりするワルドに、再びアークデーモンが侮蔑の笑みを浮かべた。
それには気づかず、ワルドが怒鳴る。
「まだ君は現状に対する認識が足りないようだな! 僕を誰だと思っている!?」
「牙の教徒(プリースト・オブ・ファング)の仲間。レコン・キスタの使い走り。トリステインの裏切り者。他に何かある?」
「む」
「甘く見ないで。それくらいの事はとっくに知っている」
黙り込んでしまったワルド。対するタバサはますます饒舌になる。
「私の推理によればあなたは当初からルイズを監視していた。レコン・キスタの指令があった事も考えられる。
だがストーキングを繰り返すうちにあなたは暴走し、ルイズを手に入れる事そのものを目的とし始めた。
しかしショウを見て自分では勝てないと悟ったあなたは、モット伯が死んだのをいい事に『召喚の書』を手に入れ、これで彼を殺す事を思いついた」
「ぬ・・・っ!」
タバサの圧力、あるいは勢いに気圧されたか、ワルドの足が半歩、後ろに下がった。
「タルブ村では天使を放ってショウを殺し、いい所で出てきてルイズを我が物にする計画だったし、今回の事だって黒幕はあなた。つまりそもそも一連の事件の全てはルイズに対するあなたのせせこましい欲望に端を発している。
そう、あなたの考えなどこの名探偵タバサは全部まるっとお見通しだ!」
「ば、馬鹿なっ!」
無論ハッタリである。
推理するに足る根拠があるならば、タバサがそれをいちいち事細かに説明しないわけがない。
フーケの黒幕がワルドだったという事にしても、風の遠話でフーケが誰かと話していたのなら、近くにいた風メイジのワルドが怪しい、という程度に過ぎない。
この「推理」なるものはそのようにして情況証拠から組み立てた仮説に過ぎなかったのだが、にもかかわらずタバサは断定口調で話した。
相手に、自分が何もかも知っていると錯覚させるために。
果たして勢いに飲まれたワルドは細かい矛盾や故意にぼかした表現に気づかず、それを完全に信じてしまったようだった。
一声うめいたきり絶句してしまったワルドをアークデーモンが冷ややかに眺めている。
ワルドとタバサの対峙が続く中、ショウ達も油断無く身構え続けていた。
刀を握る自分の手が僅かに強張っていた事にショウは気づいた。意識して身体の余分な力を抜くと共に、以前兄がやっていた事を試してみようとふと思いつく。
苦笑を装って口を開いた。
「それにしてもタバサも度胸があるというかなんというか」
「いいじゃない。ああやってどうにか対策を考える時間稼いでくれてるんだから」
返事を返したのはリリスだった。
彼女も実戦経験は豊富だけに、即座にショウの意図に気づいたようである。
「分かってますよ。でもこの状況であいつを挑発するなんて、火事場で油風呂に入るような物でしょう?」
「何それ!?」
くすくすと笑うリリス。キュルケが吹き出し、ヤンも苦笑気味に失笑する。タバサも、注意していなければ分からないくらいにほんの少し、頬をゆるませた。
稚拙ではあるが、ショウとリリスの芝居は一行をリラックスさせる事に成功したようだった。ちなみに油風呂云々は彼の兄が使ったセリフをそのまま剽窃したものであったりする。
だがその時、他の五人が無駄口を叩くその横で、ぷちん、と何かが切れる音が聞こえた。様な気がした。
ルイズである。
先ほどから全く動かず、悲しむべきか、泣くべきか、はたまた混乱し続けるべきか迷っていた彼女は、取りあえず怒る事にしたようだった。
「何でそんなくだらない事話して笑ってるのよ! ワルド様が裏切り者だったのよ!? トリステインに代々仕える軍人貴族で、子爵位を持っていて、魔法衛士隊の隊長なのよ!?
そう言う人が裏切ったという事がどれだけ大変な事か分からないの!?」
「いや、ルイズ、今のはな・・」
「ショウは黙ってて!」
ショウを強引に黙らせたルイズの怒りの矛先はまずタバサに向けられた。
「タバサ! ワルド様がトリステインを裏切ったというのは間違いないの!?」
それを自分に教えなかった事にはルイズも敢えて触れない。
彼女もここ数ヶ月の経験で、それがどういう理由か推察できるくらいには成長している。
「本人に聞いてみればいい」
一方タバサはいつも通り淡々と答えた。
実の所ルイズがタバサを問い詰めるのは八つ当たりに近い。言ってみれば、ワルドが裏切り者だったという事実に向き合い、覚悟を作るために必要なワンクッションなのである。
赤毛の親友と違って論理的に過ぎる所のある彼女はそこまでは推察できなかったものの、それでもルイズに対して苛立ちや反発を見せる事はなかった。
そして、どうにか腹をくくったルイズは今度こそワルドに向き直った。
「ワルド様・・・」
叫んだつもりだった。
だが、その喉から漏れたのは弱々しい、嘆願にも思えるような呼びかけでしかない。
「ワルド様は・・ワルド様は本当に裏切られたのですか。トリステインへの忠誠をお捨てになったのですか・・」
「その通りだ、僕のルイズ」
ワルドからの返答は、誤解しようのない明白な物であった。
ワルドとしてもここは退けない。ルイズに自分がトリステインを、いや、ハルケギニアの既成の権威を打ち倒した上で聖地を回復する事を認識して貰い、その上で自分と共にいてもらうのでなければならない。
「何故! 何故なのですか!? 貴族の義務は・・」
「国家に忠誠を尽くし、領地を治め、名誉を保つ事。だが、その国家に忠誠を尽くす価値がない時はどうなる?
腐敗しきった行政機構と貴族達は私欲を満たす事にのみ汲々とし、国の事など顧みない。そして王家はそれを座視するのみで、なんら義務を果たそうとしない。
知っているかね、ルイズ。トリステインの税吏はね、自分が管轄する区域で飲酒や食事をしても代金を払わないんだ。逆らったら税率を上げられるという事をみんな知っているから誰も逆らえない。やりたい放題さ。
また、宮殿に品物を納入する商人は大概担当の官僚と癒着している。賄賂を送らなければ御用商人から外されてしまうからね。そうした賄賂は価格に上乗せされたり、あるいは納める品物の質を落としたりしてまかなわれる。国の金をそのまま自分の懐に入れているようなものだ。
軍だって腐敗だらけだ。上層部と癒着した商人は質の悪い品物を高値で売りつけ、ろくに実戦経験もない若造が親の七光で高い地位に就く。
そしてマリアンヌ太后陛下は事実上トリステイン王家の家長でありながら王位に就くのを頑なに拒否し引きこもったままだ。
例えお飾りであっても王の存在は国をまとめるのに大きな意味を持つ。そして王族たる者、自らの身を削ろうとも国に尽くさなくてはならない。だがマリアンヌ陛下はそれを拒否し、自分の都合だけで王家の高貴なる義務から逃げている!
アンリエッタ王女とて同じだ! 蝶よ花よと甘やかされて育てられ、次代のトリステインを担う能力も覚悟も持ってはいない!
これのどこに忠誠を尽くす価値があるのだ?」
をを、タバサがラピスの中の人だ
反論しようにも、ワルドの言葉には真実を知るものの重みが確かにあった。それこそ世間知らずの学生には反論できないような。
だがふと、ルイズの脳裏に王女の姿が蘇る。何も考えずに、ただ仲の良い友人でいられたあの頃を思い出す。
それが、弱々しいながらもワルドへの反駁となって現れた。
「でも、だからといって王家への忠誠は・・・」
「いいや、ルイズ! 貴族にとって王家への忠誠以上に優先されるものが一つ、このハルケギニアにはあるはずだ!」
流石に今度は即座にそんなものがあるはずない、と言おうとしたルイズに先んじて、タバサが口を開く。
「なるほど、始祖ブリミル」
「? ブリミルって神様ですよね?」
「えーとね、ブリミルは神と殆ど同じ存在だけれども、一応実在した人間なのよ。
トリステイン、ガリア、アルビオンの王家は全部ブリミルの子孫だし、ロマリアはブリミルの弟子が開いた国。だからブリミルは王家よりえらいって言いたいんじゃないかしら?」
「付け加えるなら教会や王家の権威よりもブリミルそのものの権威を重視するのは新教徒によく見られる考え方。無論、『牙の教徒(プリースト・オブ・ファング)』もその例には漏れない」
キュルケの説明に解説を加えるタバサの、その目に灯るのは暗い炎。怨念の炎、怒りの炎。そして憎しみの炎。
だがキュルケとリリスが目を見合わせ、そんな彼女に心配そうなまなざしを送っている事にタバサは気づいていない。
そしてルイズは無言のままであった。
ワルドの言っている事は間違ってはいないが、どこかおかしいのではないかと思っている。だが、それを否定する言葉を見つけられないでいるのだ。
そしてその迷いをワルドの言葉が上書きする。
「ルイズ! 僕は始祖の名の下にハルケギニアを統一し、聖地を回復する! 僕にはその資格がある! かつて始祖が用い、そして封印したというこの『召喚の書』がこの手にある事がその証だ!
そして君にはその時僕の傍らにいて欲しいんだ! 僕には君が必要だから! 僕が君を愛しているから!」
なんと言う事のない言葉であったが、それがルイズに与えた影響は決して小さくはなかった。
直前までの逡巡が全て吹っ飛び、心臓が鼓動を一回飛ばす。
一瞬だけではあるが、確かに彼女の心は揺れた。
そしてルイズは支援するのであった。
もう俺は日本よりルイズを支援するぜ
ルイズはこれほどまでに直截に自分を求める言葉、自分に対する好意の言葉を聞いた事がなかった。
無論家族は別であるが、家族に言われるのと赤の他人に言われるのではやはり違う。
キュルケもタバサもリリスもヤンも友人と言っていい仲ではあるが、そんな言葉を言ってくれた事はない(当然だが)。
ショウはいつも側に侍って自分の事を命がけで守ってくれるし、なんだかんだと世話もしてくれるが、口げんか(キュルケなどは痴話喧嘩と評するが)はしても、自分に対する感情を直接的な言葉にしてくれた事はない。
結局の所ショウは使い魔だから自分をかまってくれるのではないか、忠義に厚いという「サムライ」だからこそこんな自分にも忠実に仕えてくれているだけではないのか。
感情表現に関してはホウライ独特の「以心伝心」的な考え方の持ち主であるショウであるから、という理解はルイズの中にはない。ハルケギニアの人間にとって、好意とはストレートに言葉で表す物なのである。
そんな文化の壁もあり、残念ながらルイズにはそう言った疑念を否定するだけの自信がなかったのである。
だがワルドは違う。
家族ぐるみのつきあいのあった幼なじみであり、さらには婚約者であるが、それでも家族でも主従でもない。また婚約は親の決めた事であるにもかかわらず、ワルドはルイズ個人を愛していると言ってくれた。必要であると言ってくれた。
家族を除けば誰からも愛されなかった、そして必要とされなかったルイズである(少なくともルイズ自身はそう思っている)。
受け入れるかどうかは別にしても、それまで必要とされた事のなかった少女にとり、確かにそれは心惹かれる言葉であった。
「で、でも私は・・・」
姫様を裏切れない、ルイズがそう言おうとするよりも早く、ワルドが言葉を継ぐ。
「君を騙していた事については済まないと思っている! だけれども、この気持ちに偽りはない! 僕の心は、最初から君の方だけを向いているんだ、ルイズ!」
「耳を貸しちゃダメよ、ルイズ! 理由がどうあれ、あいつは自分の国を裏切った裏切り者なのよ!」
叫んでいるキュルケ自身説得力がない事は承知している。ゲルマニア人が国への忠義を語るなど、トリステインの人間から見ればちゃんちゃらおかしい。だがそれでも、キュルケは叫ばずにはいられなかった。友人を失いたくはなかったのだ。
だがキュルケの努力も空しく、再びワルドの言葉がルイズの心を揺らす。
「いずれ君は偉大なメイジに成長する! 今はその才能が眠っているだけだ!
僕が君を支えるのではない! 僕たちは互いに支え合う事が出来る! 二人で一緒に世界を手に入れよう、ルイズ!」
もしもの話である。
もしも、このままワルドが真摯なアプローチを続けていれば。
もしも、ルイズに今までショウやキュルケ、タバサ、リリスやヤン達と共に重ねてきた冒険の日々が無ければ。
もしも、ルイズがまだ心の中に残るワルドに対する暖かな気持ち、幼い日の憧れを愛と錯覚する事が出来たのなら。
この場では成就せずとも、いずれワルドの恋は実っていたかも知れない。
だが歴史にifがないのと同様、人生にもifはない。
起こる事、起こった事、起こってしまった事。
それだけが全てである。
ッザってェな
自重しろよ
「そんな、私が偉大なメイジだなんて・・爆発だけは少し使いこなせるようになったけど、そんな、そんな・・・」
口ごもるルイズの逡巡を、ワルドはしっかりと見て取っていた。
押し時だ、とも。
その判断はやや拙劣ではあったが間違ってはいない。
恋愛遊戯がそれなりに一般的なたしなみである貴族社会において、ワルドは多くの軍人貴族がそうであるように、そちらの方面に興味を示した事はない。
当然その口説はつたなく無骨であったが、それだけにそこに含まれた好意は間違えようがなかった。
海千山千のキュルケをしてすら、彼は本気でルイズを愛しているのだと断言せざるを得ないほどに。
「ルイズ。幼い頃、君は叱られると裏庭の池にある小舟の中に逃げ込んでいたね。あの頃、君が安らげる場所は自分の部屋のベッドの上か、カトレアさんの部屋か、あの小舟の中にしかなかった。
でも、あの時、初めて小舟の中で泣いている君を見た時僕は思ったんだ。君の安らげる場所になりたいと。
例え世界中が君の敵に回ったとしても、僕だけは君の味方でいようと」
なおも逡巡を見せるルイズと、先ほどから無言のままそれを見守っていたショウの視線がつかの間交わった。
ルイズのすがるようなまなざしに、ショウはただ真剣な視線を返すのみ。
何故なにも言ってくれないのかと考えてしまうそんな彼女の思いを、ワルドの言葉が引き戻す。
この時、ショウを除くルイズ以外の一行はただ沈黙を強いられていた。
彼の全身全霊を込めたその告白は熱く激しく、キュルケをも黙らせる何かがあったのだ。
「君を支えたいんだ、ルイズ。
君を守りたいんだ!
君を一人にしたくはない! いつもそばにいてやりたい!
他の誰にも、その役目を渡したくない!」
もはやワルドの告白は半ばルイズをそのうちに引きずり込んでいた。
だが自分の言葉がどんな効果を上げているかにも気づかぬほど、ワルドもまた己の言葉に没入している。
もう理性や打算は越えて、ただ心のままに彼はルイズを求めていた。
「僕は、僕が君を守るんだ!
それだけじゃない! 僕には君が必要なんだ!
どんな事があっても君となら乗り越えていける!
でも君がいないと苦しいんだ! 居ても立ってもいられなくなるんだ!
ずっと僕のそばに居て欲しいんだ!
ルイズ! 君が好きなんだ、君が欲しいんだ! 僕の隣に居て欲しいんだルイズ!
ルイズ! 君を愛している!
だから・・・だから僕の母親になってくれっ!」
台無しだー
最後の最後で心の内をあけすけに吐露しやがったwww
支援
そのセリフさえなければw
>>592 まあまあ、この作者さんはつい先日まで入院なさってたそうなのでタマってたのでしょう、イロイロと
しかしワルドってばぶっちゃけやがったぁ!
耳に痛いほどの静寂が辺りに満ちた。
どこか遠くの小鳥のさえずりが鼓膜を素通りしていく。
デーモン達でさえ身じろぎ一つしない。心なしか引いているようにも見える。
言ったワルド本人ですら、凍り付いていた。
ワルドとしては僕の妻になってくれ、と言おうとしたのである。少なくともそのつもりだった。
「ひ、あ、ふ」
何かを言おうとして、だが焦りのせいか満足に呼吸が出来ない。
深呼吸をしてどうにかワルドが自分を落ち着かせるのと、ガラス玉のような目になったルイズが無表情に口を開いたのがほぼ同時だった。
彼の言葉に乱れて高揚していた心も、紅潮していた頬も、今はルイズ本人も驚くほどにニュートラルである。
「ししゃくさま・・・いまなんとおっしゃいました・・・?」
奇妙に抑揚のない、平板な調子。
「そ、それはもちろん、その、僕のつま」
「マザコン」
「ぐぉっ?!」
慌てて弁解しようとしたワルドの胸に、言葉の短刀が突き刺さる。無論、放ったのはタバサだ。
何とか立て直そうとするワルドを、女性陣の冷たい視線と言葉が次々にえぐる。
「最低」
「う」
キュルケの、情熱的なこの女性にこれほど冷たい表情が出来たのかと言うほどの一言。
「バカ! 変態! スカポンタン! もう信じらんない、サイッテー!」
「ううっ」
顔を真っ赤にして喚き散らすリリス。
「・・・・」
「うおおおおおっ」
だがワルドにとってはルイズの無言のままの醒めた視線が何より痛かった。
そしてその中でもさらにワルドにとって耐え難かったのは、ルイズの視線に憐憫の色がある事だった。
「やめろ・・・ルイズ、頼む、やめてくれ」
がくり、とその膝が崩れた。
地に這いつくばったワルドを、ルイズが、ショウが、キュルケが、タバサが、リリスが、ヤンが、アークデーモンが、冷ややかな軽蔑の、あるいは何とも言い難い視線を向ける。
悪魔の軍勢と6人の人間が対峙するその間で、ワルドはひとりどん底まで落ちていった。
ホントにどこのシャア・アズナブルなんだ、こいつはwww
支援
駄目だこのワルド…早くなんとかしないとw
以上、今回はこれまで。支援ありがとうございました。
続きはまた適当に頃合いを見計らって投下します。
しかし、長すぎますか?
長いにしてもよそ様の投稿の邪魔になってるわけではないと思うのですが。
それでもお気に障るようでしたら「スルー」を使って頂ければありがたくあります。
長々とすごいな・・・
ああ何てこのワルドはキメ時でことごとく外すんだw
乙
でも一言多いよ
長いことは確かですがずっと待ち続けていたため一気に読みたいのも確か。
私は問題ないと思いますよ?投下乙です。
投下に時間が掛かり過ぎてるんだよ…。
新着あるか開いて投稿途中だったりすると閉口するかなぁ
レスとレスの間隔を短くする事を提案。
感想どうもです。
今回はわるどんオンステージ!
>>606 投下時間ですか。じゃあ次はそこを考えてみます。
前もって投下準備をしておいて、レスできるようになったなら即座に投下していけば良いと思うよ
文章量の割に投下時間が長過ぎ
下手に落とすとさるさん喰らうんですよね・・・やっぱり最初から代理投下お願いした方がいいかしらん。
専ブラから投下すれば「次に書き込みできるようになるまで何秒」って出るからオススメ
Jane使ってます>専ブラ
次からは投下するだけ投下して、さるさんくらったら代理をお願いする方針で行ってみようかと。
あとは投下タイミングで正時またぐようにするぐらいかと
ですね。それではそろそろ失礼します。
みなさまご意見ありがとうございました。
乙ー
次(のワルドのどん底突破)も楽しみにしてるよー
>>598 >ショウが、キュルケが、タバサが、リリスが、ヤンが、アークデーモンが、冷ややかな軽蔑の、あるいは何とも言い難い視線を向ける。
>アークデーモンが、冷ややかな軽蔑の、あるいは何とも言い難い視線を向ける。
>アークデーモンが
味方のはずの悪魔からも軽蔑されるマザコン乙
アークデーモン 『女の価値は胸と尻に決まってんだろ……』
とか思いながらワルドを見ていたのかもしれんwww
この口の滑りっぷり、尊敬意外に何をすれば良いのか分からんな。
作者氏とワルドに対して乙!
>>614 毎日投下しても追い付かない程に筆が進んで仕方がないってんならまだしも、
今は書き溜めがあるだけで、そのうち弾薬も切れるわけでございましょう?
そうでしたら、一週間に一話くらいのペースくらいにした方が良いんでないでしょうか。
今のペースですと、話は長いわ、投下感覚は長いわ、頻繁に投下するわで、凄いですよ?
まぁ快気祝いの景気づけだぃ
とりあえずシケた話は後にしようぜ
他に投下する人いないんだからドンだけ投下しようが別にいいだろ
なるほど、長い投下時間の間に投下しようと思う人はいないわけだな、なるほど
避難所に代理依頼はあったりするけどなw
煽る奴にはあるんですねw
全然関係ないけど、ゼロ魔二期OPのI SAY YESって、ある程度先入観を取っ払って聞くと意外といい曲だよね。
入院生活で貯まってんだか何だか知らないけどさ
こんだけ時間掛けてスレ占有状態になるくらい貯まってんなら
サイトがあるんだからそっちでまとめて更新して報告だけすりゃ良いじゃん
ダレモイナイ? その時だけでレス数も間隔も長々とした投下中にゃいるかも知れんだろw しかも頻度も高い
普通に考えて投下したいんで控えてくださいって書き込めば済む話
投下する本人が文句言うならまだしもなんで関係ないのが文句言ってんの?
ばかばっか
まあ落ち着け。雰囲気悪くしてなんの得がある
他の人の投下中にそんなこと言うの? 頭大丈夫?
そうじゃないとしても、お前そんなこと言えるの?
>>627 言いたいことは凄く分かる。だけど、事実投下はほとんどなかったし別に違反してるわけでもないんだよ
文句とか擁護は毒吐き池、好きなだけわめいてこいよ。
>>621>>628 最大の敵は無能な味方らしいよ
あとね、有能無能、働き者怠け者で4パターンに分類した場合の話なんだけど、
唯一使えないで処刑するしか無いのは、お前と同じ無能な働き者なんだってさ
>>632 占有状態だけど『結果的に誰も居なくて良かったね!』ってこと?
『自分だけが投下したいんだから、テンプレさえ守っていれば好き勝手に投下するよ!』ってのを肯定しているのでは無いよね?
>>636 そんなに読みたくないんならスルーすべきだろう。
確かに時間かけすぎだし頻度も多いが、お前の言ってることはよくわからないぞw
個人的には一日一回投下くらいでいいんじゃないかとは思うけどね。
ルール守って投下して被害もないのになんで責めてるの? ぐらいかな
これが投下したかった人が苦情言ってる、って言うならともかく
作者さんも投下速度改善するって言ってたし別に責める理由もない気がするけど
流れをぶった切って悪いけど代理投下行きます。
> 『結果的に誰も居なくて良かったね!』
こっちね。スレの私物化は2ch全体でタブー扱いだったはず
ていうか避難所に行けばいいじゃん、とは思うけど
アルビオン本土はサウスゴーダ地方郊外、ウエストウッド村においては、
タルブ会戦における大爆発は、対岸の花火よりも小さなものにしか映らなかった。
距離的な問題もあるが、神聖アルビオン共和国にあって、
この地だけはその統治を受けていないことが、大きな理由として挙げられるだろう。
村を覆う林、その切れ間に村への入口となる小道があるのだが、
数か月前までは無かった看板がそこには掲げられていた。
曰く、
「これより先、『籠の鳥社 アルビオン研究所』
生命が惜しく無い限り、立ち入りを禁ず」
である。
近頃売り出し中の武器商人の研究所を謳うその看板は、少し知恵のある人間を寄せ付けなかった。
立ち入った人間を改造し、人間兵器としてこきつかわれるという噂が立っていたためだ。
また、より知恵の無い人間もこの森に近づこうとしなかった。
何しろ、『忘却の森』だ。
この森に迷い込んだが最後、生きて帰ったとして己の名すら忘れるという噂は、
人払いの看板よりずっと昔から地域の伝説として広まっている。
もっとも、多くの都市伝説がそうであるように、その伝説はここ数年のうちにできたものでしかないと、その女は知っていた。
マチルダ・オブ・サウスゴーダ。最近までは土くれのフーケという名が知られており、今はロングビルと名乗る女だ。
帳簿から目を上げて、ググッと伸びをする。
外には彼女の大切な妹――血の繋がりこそはないが、大切な肉親だ――ティファニアの姿がある。
ブロンドの美しい彼女が『忘却の森』の伝説の正体であるということは、この小さな村の住人しか知らない事実だ。
王家に伝えられる虚無の血、それを受け継ぐ彼女が使える魔法が「忘却」だ。
文字どおり、対象者の記憶の一部を消却する恐るべき魔法、それを用い村の安寧は守られていた。
村への邪な思いをもった侵入者は、綺麗さっぱりと目的を忘れ去っていく、という寸法だ。
そこまでして村を守る理由は、ティファニア自身にあった。
マチルダが彼女の後姿を見やる。今は表で花に水をやっているところだ。
その後姿、こぼれる黄金の髪から覗く耳は、ナイフの先ほどに尖っていた。
エルフ、ハルケギニア人が恐れる血が受け継がれている証。
エルフの血と王家の血、交わってはならない禁忌の子。
その存在がマチルダの運命の歯車を狂わせた、といっても過言ではない。
だが、彼女がテファを恨むことは無かった。
恨めるわけがあろうか?自分以上の非運な人生を歩むことになってしまった幼子を。
それに彼女は運命といった物事に対しては、比較的ドライな見方をしていた。
問題は起こるときには起こる、せいぜいそれを避けるか対処することしか人間にはできない。
とはいえ、と彼女は帳簿に視線を戻し、溜息をついた。
近頃、再び人生を狂わされたことは恨みつらみが出る。
あぁ、畜生、あの男に出会わなければ、とマチルダは考える。
支援
とはいえ、悪いことばかりではなかった。
1つ目に、件の人払いの看板だ。
その男は、アルビオン内乱のドサクサに紛れ、この村の権利所を買い取ったのだ。
看板のお陰で村に侵入しようとする大馬鹿野郎の数は大幅に減った。
おまけに、看板の文句ほど酷い実験が行われているわけではない。
せいぜいが新しいゴーレムの動きを確認する程度のものだ。
今村にいる子供が少し手伝えば済むぐらいの簡単な実験だ。
しかし、村1つを買うとなると、かなりのコネがいるはずなのに、
「新兵器の研究所」という名目で、新皇帝サマから承ったとはあの男の政治力には恐れ入る。
それでも、多額の金を代償として支払ったはずだが。
その点についても、あの男は多大な能力を発揮している。
男は、黄金の卵を産む孔雀だった。それが2つ目の悪くはないことだ。
武器商人としての稼ぎはもちろん、表の商売も大したものだった。
ゲルマニアで近頃話題のオークションハウス、「キング商会」。
成金貴族の集まるヴィンドボナにおいて、そいつらの見得を満足させるべく、
適当にいわくをでっちあげた品を、拝金趣味の馬鹿共の競争心をゆさぶって高く叩きさばくという商売は、
かつての盗賊稼業がバカバカしくなるぐらい黒字を出していた。
今つけている帳簿の桁がありえないことになっている。
その中からかなりの額がマチルダや、この村に回ってくることを考えればそう悪い話ではない。
つまり、村の平和、ひいては愛妹の安全を考えれば、その男との出会いは文句のつけようが無かったことになる。
しかし、それでもマチルダは、その男が好きにはなれそうになかった。
何故ならば――
「お邪魔するよ!元気にしてたかい?」
「あ、クジャさん!お帰りなさい!」
「嬉しいかな、新たな役者がまた増えたよ。テファ!すまないけど、手伝ってくれないかな?新たに始まる僕の華麗なるショーのためにね!」
今、表に帰ってきたその男、その露出の多い服装といい、言葉遣いといい仕草といい――
何1つ、マチルダの美的感覚に重なるところが無かったからだ。
理解できない存在、それがマチルダの見たクジャという男である。
ゼロの黒魔道士
〜幕間劇ノ四〜 ウエストウッド茶会談
「えっと――お人形さん、ですか?」
「人間、の方が近いだろうね。彼は生きてるよ」
「え?あ、お人形さんじゃないんですか?それじゃぁ――」
「そう、君が母上から頂いた高貴なる指輪が役に立つ、ってわけだ!」
「な、治るのか!?相棒は無事に治るんだな!?」
「え、け、剣がしゃべった!?」
「こらこらこら、デルフリンガー君!麗しい女性を怯えさせるのはいささか優雅さにかけるよ?
言っただろ?君の相棒は僕にとっても必要な存在なんだ」
「お、おう、すまねぇ――あれ、おれっち名乗ってたっけ?」
「うわ〜、剣がしゃべるんですか?おもしろいですね――」
窓辺からチラチラと見える影と聞こえる声、一体どういう人物が連れて来られ、どういう状況なのかある程度推測がつく。
そこからマチルダ弾きだした感想は、1つ。
何を面倒なことを。である。
この間まで敵対していたトンガリ帽子の使い魔と、そのしゃべる剣が怪我をして来たらしい。
なんとも、クジャという男は、トラブルを持ち込まずにはいられないのか。
溜息をつきつつ、仮にも雇い主である男のために、紅茶の1つでも入れねばとポットを探すマチルダであった。
・
・
・
「――それで?」
小僧の治療があらかた済んだらしく、クジャはさも当然といった風にマチルダの部屋に上がりこんでいた。
「うん、茶葉は悪いが蒸らし時間が丁度いいね」
部屋のテーブルには帳簿ではなく、紅茶のカップとお茶菓子の類が並べられ、優雅な午後の茶会の様相となっていた。
「紅茶じゃないさね、あのお人形の坊やのことさ」
「ビビ君かい?怪我をしていたから連れてきた、何かご不満な点が?」
「――あんたが無償の愛をふりまく輩にゃ到底見えないけどね」
マチルダは疑問に思っていたのだ。
あの小僧に、この男は何を求めているのかを。
以前から何度も聞きだそうとしていたことだが、クジャの真意が知りたかった。
情報の見えない怪しい所で働き続けていることは、かなりのストレスとなっていたからだ。
「――おれっちとしちゃー、何だってフーケがミョズニトニルンと一緒にいるかが不思議だがね」
「ミョズニトニルン?」
汚い言葉遣いで剣が語った名前に、マチルダは首をかしげた。
どこかで聞いたことがあるような気はするが――
「なんでぇ、あんた、名乗ってなかったのか?」
「――全く、重要な事実は舞台の最後まで伏せるものだよ?お客さんの興が冷めるだろ?」
クジャが頭に巻いた朱の額当てをほどく。
白磁のような額には、焼印のような文様が刻まれていた。
「――しかし、早々に見抜くとは、流石ガンダールヴの剣、かな」
ガンダールヴとミョズニトニルン、だと?
頭の中で、遠い昔に聞いたわらべ歌が蘇る。
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、
右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。
あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは陸海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。
あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人…、記すことさえはばかれる…。
四人の僕を従えて、我はこの地にやって来た…
始祖ブリミルとその使い魔の伝説を詠うこの童謡は、ハルケギニアでは有名なものだ。
マチルダにその歌を聞かせてくれた両親も、後に待つ運命を予想だにしていなかったと思うと、胸が少し痛む。
「カカカ、おめぇさんこそおれっちのこと見破ったじゃねぇの」
「――待って、待って、頭が痛くなってきた……」
しかし、感傷に浸る前に頭痛の種となる会話が目の前で繰り広げられていた。
「つまり、あんた達は伝説級……いやちょい待ち、あのとんがり帽子のガキんちょも同じかい?」
神の右手と頭脳が一同に介して、しかもかつての知り合い同士、とは。
歴史家だったら興奮する状況かもしれないが、マチルダはますますもってこのクジャという男が理解できなくなっていた。
しかし、あのチビスケがガンダールヴとは。
確かに、ワルドの野郎を不利な状況にあって逆転勝利していた。
いけすかないが、風のスクウェアであり、魔法衛士隊対等であった男を、だ。その実力はかなりのものと言えよう。
「うん、なかなか着眼点が鋭いね」
否定しなかった、ということは認めたということだろうか。
やれやれ、ということは、この男はどこぞのメイジの使い魔なのか。それもテファと同じ、『虚無』の。
あの桃色髪の生意気貴族も『虚無』ということになる。
まったく、伝説がこうも転がっているとありがたみも何も無いではないか!
「――で、結局、あんた達は何なの?」
溜息混じりに、何度となくした質問を再び聞く。
いい加減、カードを伏せられ続けられる状況にイライラしていたところだ。
「そうだね、この物語の主人公、とでも名乗ろうか?」
「――いい加減にしないと、自慢の髪の毛ごと土くれにしてやろうか?」
もう、はぐらかされるのはゴメンだった。
言葉尻はやや冗談に聞こえるように配慮はしたが、目つきでこちらが真剣であることを伝える。
「おぉ、怖い怖い――そうだな、この際、色々教えておこうか。六千年を経た珍客もいることだし」
「お?カー!ありがてぇな!おれっちをこんな大切に扱ってくれる野郎は久しぶりだぜ!」
いやにアッサリと、求める情報をくれるようだ。
マチルダの肩から力が抜ける。
では、今まではぐらかされていたのは一体なんだったというのだ。
2〜3日に分けるか、避難所とは思うけどね
なんか事情でもあったんだろ
「さてと、どこから説明しようか?僕自身?それとも、ビビ君から?それとも――」
「余計な話は聞く気はしないよ、あんたの素性からきっちり聞こうか」
心変わりがしない内に、色々聞きだすつもりだった。
情報は力だ。それは、たとえ今は雇用主と被雇用者の関係であってもだ。
「そうだなぁ――僕がこの世界の人間じゃないって聞いたら、驚くかい?」
「何を今さら」
少なくとも、こんな露出の多が多い服を好み、変態趣味で金もうけが異様にうまく、魔法にも妙に精通している男が、
同じハルケギニア出身であるということを認める気にはならなかった。
東方よりもっとずっと遠くから来たと言われた方がまだ納得がいく。
「――よし。それじゃぁ、僕が人間じゃないって聞いたら?」
とはいえ、こんな冗談を挟まれるとは思わなかった。
どこからどう見ても――認めたくはないが――彼女自身と同じ人類であると思っていたのに。
「こいつぁおでれーた、まぁ確かにちーっと違う感じはしたけどよ?」
「――どういう意味だい?」
伝説を自称する剣が言うなら、冗談でも無いのだろうか?
「ん〜、分かりやすい言葉を選ぶならね、ゴーレムなんだ。僕やビビ君は」
趣味の悪いゴーレムを作る男もいたものだ、と思ったが、
あのチビスケがゴーレムである、ということにはさほど抵抗が無かった。
確かに、どこか人形のように見え、世俗的では無いとは思ったが。
「僕は、自分の作り方を参考に、ビビ君達、黒魔道士を作った。どうだい?」
「待って、理解が追いついてない――なんだってあんたみたいな――もんが作られたんだい?」
『変態的な』という単語をなんとか飲み込みつつ、そういう質問をする。
「そうだねぇ、どこから説明しようか――まずは聞こうか。人がその人生の終幕を迎えるとどうなる?」
「死ぬ」
「そりゃ息の根が止まるんじゃねーの?」
マチルダと剣が当然のことを答える。何の説明を始めようというのだ、この男は。
「その後だよ、どうなる?」
「――死体になって、燃やされるか埋められるか餌になるか、ってとこじゃないの?」
「あー、クロムウェルとかゆーオヤジにとっつかまれば死体でも動くんじゃねぇの?」
そういえば、あのエロオヤジ、『アンドバリの指輪』とかいうものを持っていたな、と思いだす。
食事の約束は何度となく断ったが、今頃は死体と仲良く会食でもしているのだろうか。
「フフフ、これはなかなか驚いてくれそうだ」
極上の獲物を前にした猫のようにペロリ、と舌舐めずりをするクジャ。
マチルダは、その姿に眉をしかめる。
この男がこうした仕草をワザとらしくした場合、その相手はからかいつくされるということを、この1か月ほどで学んだからだ。
「聞いたことはないかい?人が死んだ後に怨念が残ったり、情念が溜まったりという話は?」
「――幽霊話なら腐るほど聞くけどね」
お宝を狙っていた泥棒時代、そうした話はよく聞いた。
そうした噂のついたお宝というものは、それなりに価値があるという証明でもあるからだ。
とはいえ、マチルダ自身は幽霊なんて絵空事、と考えていた。そんなもんがいられてたまるか。
「そう、幽霊、すなわち、魂さ。人が死ぬと、死体と魂が残る」
「魂、ねぇ――見えないもんを言われても信じにくいさね」
盗賊であれ、秘書であれ、彼女の就いていた職業は徹底したリアリズムの下になりたっている。
目に見える物だけが真実、なのだ。
「君も何度も見たはずというのにかい?」
「――どういう意味だい?」
「『幸運の帯虹』――君達はそう呼んでるそうだね?」
それは、空の高い所を横切る虹の帯。
普通の虹とは違い、弧を描かず、真っ直ぐと広がる色彩の幕。
「あの空にときどきかかるあいつが?死人からフヨフヨ浮いたヤツだってのかい?」
身の毛が少しばかり逆立つ。死人の魂とやらを見て『幸運』だのとのたまっていたというのか。
「正確には、死体からだけとは限らない。生命が誕生するときにもまた魂の流れがあるからね」
クジャが紅茶に口をつけてから訂正する。なるほど、生まれることを『幸運』というならばまだ納得はいく。
「だからこそ、『幸運の』と君達は呼んだんだと思うよ――最も、戦争で敵が死ぬことを『幸運』とした可能性もあるが」
「――与太話にしか聞こえないねぇ。まあいいわ。で、そっからあんたの素性にどう持ってくつもりだい?」
マチルダは、とにかく先に進めたかった。オカルト話で煙に巻かれてはここで話をしている時間がもったいない。
支援
「死した人、いや、あらゆる生命の魂は、その星――と言っても、君達には理解できないかな?世界、と言い変えよう――
その世界ごとに存在する、大きな流れに乗るんだ。お芝居の大筋のように、決まった流れにね」
マチルダの頭の中で、シレ河よりも雄大な光る流れが生まれた。
その流れが空の高いところを悠然と横たわっている。
「そいつが、『幸運の帯虹』ってぇわけか?」
「概ね当たりだね、デルフリンガー君。大きな流れ自体は、世界によっては『ライフストリーム』と呼ばれたりもする。
そして、その流れの特に濃い部分を『幸運の帯虹』と言ったり、『魔晄』や『幻光虫』と言ったりする――」
「つまりは、大量に死んじまったり、大量にオギャーと生まれたりすりゃ『幸運の帯虹』が出るってわけだな?」
「優秀な生徒で助かるよ」
「――それで?」
魂の大いなる流れから頭を引き揚げる。
浪漫的な話ではあるが、クジャの言葉はライフストリームとやらと同じく、彼女にとって流れる先がつかめなかった。
「うん、その魂の大いなる流れは、やがて世界の中心にある存在に集まる――僕たちは『クリスタル』と呼んでいる」
そう思っていたら、魂の流れの方は行先を見つけたようだ。
クリスタル、結晶か。
大きな宝石のようなものであれば、価値があるか?と盗賊らしい想像をおもわずしてしまう。
「クリスタルは、世界を支える基盤だ、いわば舞台装置のさらに土台でね。そこに魂の持つ記憶の情報が流れ込んで、クリスタルはより豊かに育つんだ」
「育つぅ?そのクリスタルってのが生きてるっていうことかい?」
「そう捉えてもらっても結構だ。むしろ、そうした方がここからの話が理解しやすい」
はぁ、とため息をつくマチルダ。
生きている物なら盗むわけにはいかないだろう。
以前、それで酷い目にあった。
あれは嫌味ったらしい貴族のババアから盗もうとしたペットで、
名前が「キャロットちゃん」なんて言うから可愛らしいものと考えていたら――
「魂の運ぶ記憶を糧に、クリスタルは育つ。そして浄化された魂は再び新たな命に宿る――
だけどね、クリスタルが育つのも限界がある。いわば寿命のようなものだね」
「死んじまったら、どうなんのよ?」
「世界の崩壊。舞台が無くなれば役者は存在できないだろ?」
食人植物のウネウネ動く触手を頭から振り払う。
クリスタルとやらは、確かに貴重な存在らしい。
世界を支える基盤となればおいそれと盗むわけにはいかないだろう。
「――で?あんたみたいなゴーレムが生まれた理由は?」
結局、まだ核心部分を語っていないことに気付かされる。
「滅びゆく世界を救うため、って言ったら信じるかい?」
「信じない」
どこのどいつがこの変態パンツ野郎を英雄だなどと考えるものか。
大体、この男が誰かを守ったり救ったりするために動くなどと想像できない。
「ハハハ!やっぱりな!じゃぁ分かりやすく説明するとしよう」
そう言うと、クジャは、紅茶のカップを引きよせた。
「――クリスタルをカップ、中の紅茶を魂としよう」
カップを綺麗に色をつけた爪でピンと弾く。キンと高い心地いい音が部屋に広がった。
「――カップが寿命で砕けようとしている、でも中の紅茶は守りたい、さてどうする?」
「――別のカップに移し替える、とか?」
その前に紅茶を飲んでしまった方が早いとは思うが、
質問の意図を考えるならば、これが正解であろうと、マチルダはあたりをつけた。
「そういうことさ。より正確に表現するならば、『カップを同化させて乗っ取る』ってところだね」
「同化ってーと、あれか?カップをひっつけちまうってことか?」
「そう、そうして、あたかも自分たちのカップ――クリスタルであったかのように、中の紅茶は振る舞うんだ」
頭の中で今の話を反芻する。
砕けようとしているカップを、無理矢理他人のカップとひっつけて、自分のカップであると主張する様を。
家で例えるならば、下宿人が母屋を乗っ取るようなものか、とマチルダは理解した。
昔、父に聞いたカッコウの託卵を思い出させた。
狡猾な生きる知恵を身につけた鳥の話を。
「――勝手な話に聞こえるねぇ」
「そう、実に勝手なんだ。勝手な話をもっと続けよう、空のカップにくっつく場合はいいだろう。
では、中身が既にミルクが入ってるカップとくっついた場合は?」
空になっていたマチルダのカップに、勝手にミルクを並々と注ぎ入れながらクジャが聞く。
こうした場合、先にミルクが入っているし、そのミルクをポットに戻すわけにもいかないだろう。
「あふれるんじゃね?さっきまでの理屈だとよ」
剣が答えた。そう、ミルクが同化先のカップに居座っているのだ。
母屋には既に先住民がいて、満杯状態。下宿人が入る隙魔は無い。
「うん、あふれる。さぁ、どうしようか?」
「――飲んじまう、ってところかね?」
母屋の例えで言うならば、もとから住んでた住人を追い出すってところか。
ますますもってカッコウと同じだとマチルダは思った。
「そういうことさ。ミルクだけを選んで飲みほして、紅茶をどんどん注いでいく、これが答えでね――」
「あー、なるほどなー?ん?そいじゃぁよぉ、おめぇさんのやってたことってぇのは――」
「ミルクを飲みほす、そう、破滅の死神を仰せつかったんだよ、忌々しき創造主にね」
死神、ということは、殺したのか。
もとからいた住人を。カッコウの雛が、もとから巣にあった卵を捨てるように。
なるほど、そうした目的のためのゴーレムというなら、こういった男が必要になるのかもしれない。
「――少なくとも世界の英雄ってよりは信じやすいね、あんたのキャラだと」
「フフ、それは褒め言葉として受け取らせてもらうよ――だが、僕はそんなレールを敷いた創造主に嫌気がさしたのさ!」
「っていうと?」
「お望みのままに破壊をした、そして、そこで生まれた魂の力を、創造主にぶつけることにしたのさ!僕が神になりかわるためにね!」
「――あんた、やっぱり悪趣味だわ」
呆れた。マチルダは心底、この男の言に呆れた。
結局のところ、この男は自分が王様になりたいがために暴れたっていうところだろう。
この男らしい我儘な望みだと、彼女は納得した。
「君に同意するよ。悪趣味だった――そして、溢れたミルク―『霧』って言うんだけどね――
それから作りだしたのがビビ君達、黒魔道士人形なんだ。
彼らを用いてミルクをどんどん飲み干した、というわけさ。魂の力を手にするために」
改めて、あのチビスケに同情する。こんな男の、歪んだ欲望のために作られたとは。
同情しながら、自分のカップに注がれたミルクを啜った。
「あー、と。おれっち、こんがらがっちまったんだけどよ?魂の力ってのはなんでぇ?」
「んー、メイジが魔法を使うだろ?あのとき消費する――こっちの言葉では精神力、だったかな?
あれの根源って言ったらいいよ。もうちょっと複雑なプロセスを踏んでいるはずだがね、魔法の行使には」
「ま、あんた達の存在については理解したわ。信じられないことが多すぎるけどさ――」
とりあえず、この男の素性という意味では、ある程度理解した。
ある程度、だが。
「それじゃもっと信じられないことを言おうか?」
「――まだあんのかい?」
まだ隠し玉があるらしい。まぁしかし、この男が饒舌になっているのだ、せいぜい聞いてやるとしよう。
「僕たちは、既に死んでいるはずだ、という筋はどうだい?」
「こりゃおでれーたな。おめぇさんや相棒は幽霊ってぇことか?」
「ふざけんじゃないさね。どこまであたしを虚仮にすりゃ気が済むんだい?」
オカルト話はもう満腹だった。先ほどの魂の流れ云々の話も、半分にして聞いていたとはいえ、
ここまで冗談くさいことを重ねられたらたまったものではない。
「ふざけてないさ。そういった安い喜劇は嫌いでね――とはいえ、これは仮説なんだが」
「――じゃぁ、今いるあんたは何なんだよ」
また、この男の存在が霧のように煙ってきた。
>>635 あんなに可愛い子が無能なわけ無いだろw
支援
おっと失礼、支援
「よし、じゃぁ順を追って仮説の検証といこうか。まず、大前提、僕もビビ君も寿命を迎えたはずであること――」
「寿命?」
「作られたときにね、虫唾の走る創造主に決められてねぇ。最も、僕もビビ君に短い命しか与えていなかったから同罪かな?」
そのまま死んでいてくれてても構わなかったのに、とマチルダは冷たく思った。
「そんで?相棒が若くして死んじまう予定だったってのはさておいてよ?」
剣が先をうながす。口は悪いが、聞き役としては悪い存在ではないと、マチルダは気づいた。
「次の証明はね、召喚された時間の差さ。確か、ビビ君が召喚されたのはつい3ヶ月ほど前かな?」
「春の召喚の儀式はあたしも見たりしたしねぇ」
それは確認済みだ。皮肉なもので、彼女がこの男と出会う羽目になったのもあのチビスケのせいだと考えると、妙に感慨深い。
「僕と彼の寿命が尽きたのは同時期であったはずなんだ。少なくとも、半年以内。それなのに、僕が召喚されて3年ほど経っている」
なるほど、とマチルダは考えた。
その時間差ならば、あの小僧が死体で召喚されてなければおかしい、となるわけだ。
「あとはそうだな、僕に皺が増えた」
真面目な考察の間に笑えない冗談が混ざった。
「ふざけてんだろ?」
マチルダ自身も、もう若さを武器にとはいえない年齢になってきている。
お肌のハリや艶について真剣に悩み、いいところの化粧ポーションでも買おうかカタログも取り寄せた。
そうだ、と彼女は気づいた。
彼女がクジャを嫌う理由がまた1つ見つかった。
この男、自分より肌のキメが細かく、白いのだ。サラッサラの陶磁器のように。
男のクセに。その事実に気づき、さらに腹が立った。
「真面目さ。メイクがきまらない――そう睨むなよ。いいかい?君はゴーレムに年老いる設定をわざわざ作るかい?」
「――なるほどね」
不服ではあるが、一応の納得はして厳しい視線を取りやめる。
年を取るゴーレムなんて、技術の無駄もいいところには違いない。
それでも、自分より気にならないはずの皺を気にする男に嫉妬の眼差しを向けることを彼女は忘れなかった。
「最も、僕の弟妹はわざわざ成長するように作られたが――まぁいいさ、僕は老いるはずはなかった。なのに老いている」
「なんか、ただの愚痴に聞こえっけどよー?」
剣の言うとおりだ、と思う。段々この剣が愛おしく思えてきた。
人間だったら、一緒に飲みに行ってもいいかもしれない。
「そして最後の理由だ。ビビ君に、製造番号が無かった」
「製造番号?」
「『プロトタイプ66号』、これがビビ君の製造番号でね。それがうなじの部分にあったはずなんだが――綺麗に無かった」
製造番号で66番、それもプロトタイプ、ということは、あんなのが最低70体近くあったということか。
可愛らしい外見とはいえ、あんなのがワラワラ出てくる光景を想像し、マチルダは身ぶるいをした。
「以上から、僕たちは、かつての僕たちではない。なおかつ、僕たちは一度は死んでる身であるはず。
よって、僕たちは、『記憶から複製された幽霊』という仮説が成り立ったのさ」
「全っ然っ理解できない。どうやってよ?どうやって蘇ったっていうのさ?」
マチルダは論理の飛躍を感じた。もし、この仮説が正しいならば、彼女には蘇って欲しい人が何人もいた。この男なんかではなく。
――それは、彼らの望みではないことは理解していたが。
「それはまだ解明できないがね、仮説で言えば、死んだ後の魂が何らかの形で浄化される前にこちらに流れたとか――」
クジャが紅茶のカップをグッと傾ける。その後、カップを持つ自分の手をうっとりと見つめた。
その姿を気持ち悪い、とマチルダは正直な感想を抱いた。
「僕自身、召喚されたときに違和感があったしね」
「違和感ってーと?」
「生まれたての小鳥のようにね、肌が敏感だったんだ。魔力を直接感じるというか――そう、生娘のように」
首筋がかゆくなってくる言い回しに、マチルダは身悶えをこらえて、この男を吟味する最後の質問をぶつけた。
「それで、蘇ったあんたは今、何をしようとしてるんだい?こんなに儲けてさ」
「――僕は命が短かったからね、考えたかったんだ」
先ほどまでとはうってかわって、しんみりとした言い方に、マチルダはきょとんとした。
「何を?」
「生きることの意味をさ――そして、今はその検証段階に入っている」
短く、言葉を切り、窓の外に顔を向けるクジャ。
その顔は、女であるマチルダ以上に色気のある嫉妬すべき横顔だった。
空はもう黄昏に染まりつつあった。
「もうこんな時間か。紅茶、おいしかったよ。さてと――」
「おでかけかい?今度はどこに?」
今日のところはこれまでだろう。この男は忙しく動いている。
今はせいぜい乗っかってやろうとマチルダは考えた。
稼げるし、契約の件もあるし、何より『生きることの意味』とやらに少々興味がわいたからだ。
「――まずはゲルマニア、それからトリステインに顔を出そうかな?舞台がもうすぐ動くからね」
「あ、クジャさん、もうお帰りですか?」
ドアの外には、テファと、テファの背よりも大きな鳥がいた。
「あぁ、テファ――この鳥、もう歩けるのか?」
「えぇ、とっても頑丈な子みたいで――」
「クェーッ!」
その大きな鳥が、突然クジャの頭をその大きな嘴でつついた。
ザクッと音がしそうなほど、強烈な一撃。
それが1度ではなく、続けざまに何度も打ちつけられようとしている。
「う、うわっ!?な、なんだ!?このっ!?鳥がっ!?」
「フフ、気に入られてるんですよ、クジャさん」
取り乱すクジャの姿に、大笑いしたくなるのをこらえた。
良いザマだ。鳥に、もっと頑張れと心で応援する。
「えぇい、汚らわしいっ!!あぁ、くそっ!」
大鳥を引きはがしたクジャの姿は、滑稽なほどに乱れていた。
――そんな姿でも色気があるのは腹立たしかったが。
・
・
・
「――テファ、その鳥、どうしたんだい?」
クジャが飛龍に乗って去り、しばらく笑い転げた後、マチルダは妹に問うた。
「さっきのお人形さんみたいな男の子と一緒に来たのよ、姉さん。この子の方が先に回復したけど」
「ふーん……まぁ、あの変態野郎を追っ払うにはちょうどいいかもね」
真剣にそう思う。番犬ならぬ番鳥にいいのではないかと思った。
「あら、クジャさんってカッコいいと思うけど?」
「――何だって?」
マチルダは彼女の耳を疑った。
「ほら、お洋服のセンスとか、いいと思うし――ああいう格好、ちょっとしてみたいかなー」
「――テファ、頼むからやめて、お願い」
真剣に、今までに無いほど真剣な目でそう懇願するマチルダ。
「?どうして?」
人里離れ、隔離された生活を送らせていたため、世間知らずではあると思っていたが、
ここまで美的感覚がズレていたとは。マチルダはため息をついた。
このままではまずい。いずれ世間というものを教えてやる必要があると彼女は悩むこととなった。
-------------------
今回は以上です。
さてと、ミョズがいよいよ動きますかねぇ?
あ、ちなみに、クジャがどんな姿かっていうのは
……これが一番分かりやすいかな?
/blog-imgs-41.fc2.com/s/o/r/sorasukehiiragi/869.jpg
うん、テファがこんな格好したらそりゃまずいわw
乳&腰でW革命だよ!
……えー、色々と、お目汚し、失礼いたしました。
以上です。代理よろしくお願いいたします。
ということで終わりですよ。
作者さんと代理さん、乙です。
>>640 スレ占有の問題なら避難所投下スレを案内するのだが
代理投下スレの書き込みを見ると@wiki管理人に不信感(前科もあるし)
があるみたいなんで同じ管理人の避難所投下も薦められない罠
>>614 昼間ならシーンごとに切って終了宣言&投下を繰り返して他の投下が無いか
確認しながらやってもいいのでは?
wikiじゃなくて自分でまとめるなら細切れ状態でもページの区切りに悩むこともないし。
まあいろいろやっても投下時間にかかるなら適当なupローダーなり
自分のサイトにテキストでアップしてリンク張ればいいと思うけどね。
黒魔乙ー
これはひょっとして大事な話?
春休みだからか投下が多くてもうじき480kだな。
何いってんの、投下することで私有化、占有化っていうんだったら、全員そうじゃん
規定として一日何レスまで。って決まってるわけでもないんだし、スレの投下ルールに従ってるじゃん。
っていうかさ、このスレの初期って一日に数回投下って猛者が結構いたのよ?
その時代から投下すること自体に難癖つけることはなかったよ(ヘイト作は除く)
結局、「君ら」が気に入らない作品ってだけじゃないの?
お前は何と闘ってるんだ……もう休んでいいんだぞ
『話長い、間隔長い、頻度高い』から占有化って言われてるのに、
投下=そうなるとか、ルールに従ってるからいいとか
初期は日に何度も投下する人がいたとか、擁護になってないよ
そして誰もいなくなった
の危機があるんだから作者以外は黙ってろよ
このスレって数ヶ月周期で定期的に荒れるな。
そんなに投下に文句があるのなら
投下ルールをどう改訂するべきなのかきちんと提案すればいいのに。
ただ文句を言うだけだから話にならんわ。
達人)真スルー 何もレスせず本当にスルーする。■簡単なようで一番難しい■
初級)呼びかけスルー みんなにスルーを呼びかける。実はスルーできてない。初心者にありがちww
初級)失敗スルー 我慢できずにレスしてしまう。後から「暇だから遊んでやった」などと負け惜しみ。
初級)疎開スルー 本スレではスルーできたが、他スレでその話題を出してしまう。見つかると滑稽。
中級)予告スルー レスしないと予告してから真スルーする。
上級)思い出スルー 攻撃中はスルーして、後日その思い出を語る。
達観)完全スルー スレに参加すること自体を放棄する。
特殊)雑談スルー 質疑だけして雑談はスルーする。ゲーム板系
特殊)質問スルー その逆。質問をスルーして雑談を続ける。ゲーム板系
入門)3匹目のスルー 直接的にはスルーしてるが、反応した人に反応してしまう。
見習)4匹目のスルー 3匹目に反応する。以降5匹6匹と続き、激突スルーへ。
馬鹿)激突スルー スレの話題がスルーの話に移行。泥沼状態。
とりあえず五分間隔は長く感じるんだけど、どのくらいが最適なんだろうね?
>>666 流石ですね。ぞろ目を取りつつけん制とは…お見事!
>>665 IDも見分けられないの?
何でもテンプレに入れなきゃ出来ないの?
興味云々の話なんて誰がしてるの?
兎に角480kb越えたんで次スレ立ててくるけどいいか?
テンプレがそのスレのルールだろうと思わなくもない。
暗黙の了解もあるならできれば明記してほしいのだが。
わ、私は一向に構わないんだからね///
>>671 話長い、間隔長い、頻度高い、ウゼーから死ねってテンプレに入れるの?
違ったわ、テンプレに入れないと分からないの?だわ
>>670 お願いします。
>>671 投稿する人がテンプレ守っているのに文句つけられても不快だろうしね。
「暗黙の了解」とか「テンプレに入れなきゃできないの?」なんていってたら
それこそ「常連の占有」になっちまうしね。
そんなに他人に守らせたいルールがあるならきちんと明記するのが当然。
>>675 わからんのでそこまで言うなら入れてもらいたい。
>>673 ああ要するに君はそういうふうに他人を罵倒したいだけなんだね。
そうだね。
いちいちそういうことでイチャモンつける人がいる以上は
テンプレに入れなきゃできないね。
では話の長さ、投稿間隔と頻度、あとウザイの規格をきちんと提案してくれよ。
もう中学生の春休みか
一度は普通に注意すればいいと思うんだ
テンプレ違反じゃないんだし
普通書いてないことはわからんよ
自分ルールは勘弁
>>678 話と投下間隔が長くて頻度が高いからウザイんだよ
規格を決めるなら、長さ頻度だろ
そんなもん無理だし、今回みたいなのはそうそう居ないから追加も無いな
具体的に提案しろといったらそうやって逃げるんだな>ID:f8SQbDfS
にきちんと基準を決めたらもうイチャモンつけられなくなるものなw
>>682 投下するときに頻度とかで文句言われたくないからできれば書いてくれないですかね?
>>683 逃げるも糞も無いだろ、個人で感覚が違うんだから極端なもの以外はテンプレ入りなんて無理だよ
>>684 長い話を長い間隔で続けてやらなけりゃ大丈夫だろ
個人の感覚で逃げるのならば
さあう゛ぁんといろいろ氏の投下に問題はないという感覚も認められるよな。
あれが極端だと思わないという個人の感覚も認めるべきだよな。
そのことがわかったうえで発言しているのか?
>>685 ウザイってのはな
他は他作品の投下に比べれば長く上に頻度が高いだろ
>>681 前にもさあう゛ぁんとの人、似たようなことで似たようなレスされてなかったっけ
そのときは、投下とりやめた作者さんもいたような
あれ違う人だっけ?
なんという俺ルール
明記してないことで責められてもさすがに困ると思うよ
今いる人はいいけど新しく参加する人への障壁にもなっちゃうし
初投下でルールに書かれてないことで責められたら普通メゲる
長さと頻度が原因で文句が出て荒れるんなら書くべきだと思うよ、基準。
つ議論スレ
つ毒吐きスレ
好きな方で好きなだけ語ってくれ。
>>687 極端かどうかは、他作品の投下に比べれば良いだろ
明確に記すことは難しいから、長くなりそうなら時間を跨ぐなりして、チャッチャと投下してもさるさん食らわない工夫しろよ
>>692 空気が読めないってのは2chで書き込むのにかなり問題あると思うが。
>>690 迷惑だろ
>>692 投下する前くらい少しはROMれよ
それに長けりゃ占有化になるくらい分かるだろうよ
まさか占有化禁止って追加するのか?
>他作品の投下に比べれば
比べてどのくらいまでの差が認められるんだ?
「個人の感覚」で判断して投下した結果
「個人の感覚」でウザイとイチャモンつける奴がいるから問題なんだろうが。
>>698 >まさか占有化禁止って追加するのか?
お前がそう文句つけてるんだから占有を定義したうえで付け加えるべきだな。
>>693 話が長くて投下間隔が長くて頻度が高いとウザイから
間隔短くして何日か空けろ
そんな1日1話なんてペースで書き続けられないだろ?
逆にそれが出来るなら専用のスレでも立てろ
マジでそこまで言うんならテンプレにしてほしいんだが。
なんか難癖つけてるようにしか見えなくてこれから投下しづらくなると思うよ。
とりあえず議論スレ行こうぜ
とりあえずID:f8SQbDfSは落ち着け
あんたらが一番ウザイ
投下する人も読む人もモラルが大事
>>699 三つ揃わなけりゃそうそうねぇよ
「個人の感覚」で判断して、「一人二人」に突っ込まれたならスルー
「改めた方が良いなと感じる人数」に突っ込まれたならそうしろ
>>700 占有化するなら専用スレ立てろよ
>話が長くて
長さの基準は?
>投下間隔が長くて
投稿間隔の基準は?
頻度が高いとウザイから
>頻度の基準は?
間隔短くして
>間隔の基準は?
何日か空けろ
>日数の基準は?
結局きちんと規定がつくられるとイチャモンつけられなくなるから
こんなあやふやな俺様ルールしか言えないんだな。
>>709 了解。
ID:f8SQbDfS は難癖つけて書き手を追い出そうとする荒らし。
こいつの発言は全て無視するということで終了だね。
>>707 >「個人の感覚」で判断して、「一人二人」に突っ込まれたならスルー
>「改めた方が良いなと感じる人数」に突っ込まれたならそうしろ
IDを見る限り突っ込んでるのは「一人二人」ですね。
>>713 あまりに鋭い突っ込みw
自分の意見としては頻度高いとは思うが一時的なものならいいんじゃね?ってところ
自棄になってこれ以上の頻度で投下されたらさすがに避難所行ってほしいけどな
>>713 長いからどうにかしろって内容のレスはもっとあるだろ
余所へ行けって内容のレスももっとあるな
まあ次から考えてくれるならいいんじゃないか。
また同じことやったらさすがにアウトだと思うけど。
寛容は大事だが冷静はそれより大事だ
皆落ち着いて全裸になれ
もう俺は既に全裸だ
20分おきに投下を5時間くらい続けてそれを3日ほど繰り返してもいいの?
なんで規制されてるからって適当言ったら規制解除されてるんだよ……
投下時間→改善すると言っている
長いことに関してはもうこれで解決してる
投下も数時間おき。特に不便を強いられた人も居ない
全く問題無いな。
うめうめ
ぶっちゃけ、まとめwikiから逃げ出したヤツが
このスレに投下してるのが信じられん。
サイトがあるならそっちだけでやっててくれ。
宣伝乙としか言えないな。
このスレ=まとめではないから、投下する分には別にいいと思うけどな
投下したい人があまりのペースの遅さに断念したことが有るってんだから改善はするべきだろう
つーか何で繰り返すん?
>>727 別にいいじゃん
スレに投下した作品は絶対まとめにって決まりもないし
>>730 それはいいんだけどさ
975 名前:さあう゛ぁんといろいろ[sage] 投稿日:2009/03/17(火) 15:54:51 ID:X2d54qYM
追伸
まとめは自サイトの方に乗せる予定ですので、まとめWikiのほうには編集しないで下さい。
管理人がちゃんとした人に決まれば戻るのはやぶさかではないんですけどもねぇ・・。
まかり間違って最強SSリンクの管理人みたいなのがまとめ管理人になってしまうかもと思うと、ちと怖くて載せられません。
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どう考えても一言余計。荒らしたいとしか思えない。
確かに言い方は悪いがいちいち突っ掛かるなよ
読者が「俺が気に入った作品を俺が気に入る様に投下させる」ってスレじゃないんだから
問題が有るなら作者同士で決めるべき
ぶっちゃけ俺等は外野
全盛期のレモンちゃん伝説
・3ツン5デレは当たり前、3ツン8デレも
・寝起きデレ照れツンデレを頻発
・ルイズにとってのツンデレはデレの出しそこない
・朝っぱらから妄想ツンデレも日常茶飯
・一回のスイングで鞭が三本に見える
・サイトの後ろに立つだけで浮気相手が泣いて謝った、心臓発作を起こす浮気相手も
・あまりに好きすぎるから異性との日常会話でも浮気扱い
・その日常会話後にもツンデレ
・サイトを一睨みしただけでツンからデレに変わっていく
・サイトの居ない日でも2ツンデレ
・シーズン200ツンデレ記念花束もサイトの腕の中で受け取った
・バットを使わずに手でイってたことも
・自分の妄想でブチ切れてサイトにお仕置き
・サイトの今後から老衰まで妄想なんてザラ、転生して2周することも
・ウェディングレセプションでツンデレた
・刺客のエルフの冷やかしに流暢な魔法詠唱で反撃しながら背面ツンデレ
・グッとガッツポーズしただけで5回くらい惚れ直した
・アルビオンの高い位置からサハラとの境界線での浮気も処理してた
・自分の妄想にツンしてデレまで行くという大サービス
・あまりにデレるので最初から猫耳を付けていた時期も
・フルツンデレすると周囲に怪我人が発生するので力をセーブしてた
・ルイズのツンにクラスメイトの使い魔が怯えてしまうので授業中は警戒されていた
・ツンだけで三回までイけた
・ルイズがツンした瞬間を見ていたコルベールが様子を見に行ったらすでにデレていた
・ツンをしたように見えたが、実は残像で本体はすでにデレていたことも
・ツンと同時にデレだし、ついにはツンを追い抜きデレツン成功
・お仕置きは常に双竜打ち
・2008年トリステイン10大事件 第一位「サイトと結婚できなかった」
・トリステインではサイトに話しかける前にルイズの許可が必要
・浮気相手の処理に一人では手が回らなくなり二人に分裂したことも
は?外野?
>管理人がちゃんとした人に決まれば戻るのはやぶさかではないんですけどもねぇ・・。
こっちのほうが、いまさら蒸し返すなんてなぁ・・・っって嫌な感じ受けたがな
それは確かに思わなくもないが
まあこれ以上やるなら議論スレ行こうぜ、後5KBもないし
>>734 外野だろ?まさかROMってる奴のお陰でスレがあるとでも?
それとも読者が職人を育てたとでも?
まさかアレか?サポーターも選手の一人みたいな考えか?
まあ何にせよ新スレまでは持っていく話じゃないな
さあばんとの人、テンプレのココも重要だから!!
>ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
ね?
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