【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.15

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1名無しさん@お腹いっぱい。
アニメでも大活躍し、過去リプレイ作品で異世界慣れした我らが“下がる男”柊蓮司……
そんな彼や他の登場人物達がもしも○○の世界に飛ばされたらor○○キャラが第八世界にやって来たら…?
そんなナイトウィザードのifストーリーを語るスレです。

■ 注意事項 ■
・不要な荒れを防ぐ為に、sage進行で御願い致します。
・冥魔(荒らし)に反応するあなたも冥魔です、スルーしましょう。
・次スレは>>975を踏んだ方、若しくは475kbyteを超えたのを確認した方に御願い致します。
 また、重複防止の為に次スレを立てる人は立てる前に宣言を御願い致します。
・荒らし、カッコ悪い。
・Q.ナイトウィザードって○○のパクリ?
 A.とりあえずほぼ全て何かのパクりです。初版が2002年3月発売なのでそこから判断してください。

■ SSを投下する方へのお願い ■
・NWキャラをクロスさせたい作品世界に送り込むも良し、
 逆にクロスさせたい作品のキャラをファー=ジ=アースを中心とした
 きくたけワールドに招いてNWキャラ達と掛け合い活躍させるも良し、
 SS創作者の想像の赴く儘に楽しめる物語を書き込んで下さいませ。
 但し、NW関連スレと云う事で片方は「ナイトウィザード」で御願い致します。
・801等、特殊なものは好まない人も居るので投下する場合は投下前にその旨を伝えましょう。
・各作品の初投下時は、クロスする作品名を最初に御願い致します。
 そうすれば読者も読み易いでしょう。
・SSの内容が18禁の場合は地下スレ(検索ワードは「卓上ゲーム」)へ。
・NW側からのホストキャラはNW公式作品に登場しているキャラを主軸として、
 SS創作者オリジナルのキャラをストーリーに絡める場合はあくまで脇役としての
 立場で参加させて下さいませ。
・御互いの作品を尊重しましょう。一方的なクロスは荒れる原因ですよ。

■前スレ
【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231387941/l50

■関連スレ
ナイトウィザード -Night Wizard!- セッション43
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1231565440/l50
【ネタバレ】ナイトウィザードその17【卓ゲ雑談】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1226916695/l50
菊池たけし セブンフォートレス ナイトウィザード82
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1235156739/l50

■関連リンク
http://www.fear.co.jp/nw/(原作ナイトウィザード公式)
http://www.nightwizard.jp/(TVアニメ公式)
http://www42.atwiki.jp/nightwizard/(アニメ版まとめWiki)
http://www32.atwiki.jp/nwxss/(過去SS保管庫)

  ●私立輝明学園(ナイトウィザード!)
  ●私立宮神学園(極上生徒会)
  ●九州要塞(ガンパレード・マーチ)
  ○トリステイン魔法学校(ゼロの使い魔)
  ●麻帆良学園(魔法先生ネギま!)
  ○光綾学園(ぱすてるチャイム Continue)
  ○ザールブルグ・アカデミー(アトリエ シリーズ)
  ●私立天香學園高校(九龍妖魔學園紀)
  ○エルクレスト・カレッジ(アリアンロッド)
  ○リオフレード魔法学院(異界戦記カオスフレア)
  ●私立六道学園(異能使い)
  ●私立銀誓館学園(シルバーレイン)
  ●総合学園都市(とある魔術の禁書目録)
  ●私立無限学園(美少女戦士セーラームーン ミュージカル)
  ●私立夢境学園(あるある!夢境学園)
  ●私立五重必殺学園(狂乱家族日記)
  ○星鐵学園(けんぷファー)
  ○アルレビオス学園(マナケミア シリーズ)
  ●国立番町学園高校(番長学園!)
  ●私立迅速高校(速攻生徒会)
  ●私立鶴ヶ峰学園(コータロー!まかりとおる)
  ●都立蓬莱学園高校(蓬莱学園!)
  ●県立斉東高校(HUNTED じゃんくしょん!)
  ●九江州中学校(ダイソード)
  ●私立聖創学院大附属高校(Missing!)
  ●私立月臣学園(スパイラル 推理の絆)
  ○暗黒不思議学園(迷宮キングダム)
  ●都立大門高校(リアルバウトハイスクール)
  ●私立桃月学園(ぱにぽに)
  ○マジシャンズ・アカデミイ(まじしゃんず・あかでみぃ)
  ○マジック・アカデミー(QUIZ MAGIC ACADEMY シリーズ)
  ●私立春風高校(究極超人あ〜る)
  ●都立御苑女学園(アルカナハート シリーズ)
  ●私立穂群原学園高校(Fate/stay night & 氷室の天地)
  ●神撫学園(輝光翼戦記 天空のユミナ)
  ●私立陣代高校(フルメタル・パニック! シリーズ)
  ○私立万魔学園(足洗邸の住人達)
  ○ホグワーツ魔法学校(ハリー・ポッター シリーズ)
  ●デュエル・アカデミア(遊戯王GX)
  ●尊秋多学院(終わりのクロニクル)
  ○アリアダスト教導院(境界線上のホライゾン)
  ●国立安房国里見高校(TRIGRAM 8)
  ●私立CLAMP学園(CLAMP作品)
  ●私立聖祥学園附属小学校(魔法少女リリカル☆なのは)
  ●男塾(魁!男塾 & 暁!男塾)
  ○学園都市・ツエルニ(鋼殻のレギオス)

とりあえず、まとめ。半分も分からねぇ。自分が知ってる作品で書いていくしかないな、こりゃ。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 00:56:27 ID:IakKg8a2
>1乙。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 07:31:30 ID:GcfY386N
ふしぎ星の☆ふたご姫 Gyu! のロイヤル・ワンダー学園もクロスさせられ
ないかと思ったが、生徒の年齢が総じて低いのと、つい中の人ネタに走って
しまいそうだなー
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 09:49:15 ID:yGuvvf6M
なんというか、ここまで学園が並んでいると……
異能バトルではなく、野球やサッカーやテニヌなどの異能スポーツの方が面白そうな気もしてきた
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 10:04:54 ID:WLsW9s99
>>5
そこで学園生活最大級のイベント

「体育祭」「文化祭」でつよ
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 11:27:23 ID:vKdGpmbD
>>6
蓬莱学園になるだけな気が……
学園毎に代表出して「ガンボール」対決なんて楽しいかもしれん

機体は

光綾学園:ランサー
輝明学園:ギャラクシアンライナー
九江州中:ヨゴ

とかで
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 13:41:52 ID:G9zWAbSx
ガンボールって何だ?
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 18:01:39 ID:vo/PpnXP
>>4
SO☆RE☆DA
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 15:01:32 ID:I8LqA+zD
前スレ埋まったよー。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 20:20:56 ID:y7oIJTLD
学園世界の妄想ネタが出来上がりました。

問題ないようならば、九時ごろに投下したいと思います。
12学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:03:37 ID:ELXaaIgC
 きーんこーんかーんこーん……

 こんな異常な状態でも、学校のチャイムは間抜けに響く。
「えー、今日は転校生を紹介する……」
 そして、こんな異常な状況でも転校生とは来るものらしい。
 担任教師(三十代 恋人募集中)がカモンと一言。

 ぶっ!?

 扉を開けて、入ってきたのは二人の女生徒。
 その二人の顔を見た瞬間、輝明学園の生徒たちは、誰ひとり欠ける事無く盛大に噴き出した。

「え〜、このような状況下でも転校してきた奇特な転校生。
 ベル・フライさんとアゼル・アンさんだ」

 その瞬間、教室には蜂の巣を突いたような混乱が発生する。
 問答無用な阿鼻叫喚の中で、ベル・フライと呼ばれた少女―――裏界第二位の魔王、ベール・ゼファーは深々と溜息をついた。


 事の発端は、地球時間で約三日前に遡る。 

13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:04:18 ID:4TKGp62p
うおお、遅れたが支援
14学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:04:58 ID:ELXaaIgC
 裏界帝国の片隅に、寒風吹きすさぶ荒野が在る。
 荒廃の魔王、アゼル・イヴリスの領地である。
 近づくものから、意思に関わらず容赦なくプラーナを奪い取る彼女の元を訪れるのは、裏界広しとも言えど、ベール・ゼファーぐらいのものだ。
 意気揚々と、突如発生した奇妙な忘却世界を使った新たなゲームに、アゼルを引き込もうとやってきたベルであったが、聞こえてきた声に、形のよい眉を顰める。
 声のうち一つは、アゼル・イヴリスのもの。普段から、暗いというか真面目すぎなきらいがある彼女に珍しく、届くのは心の底から愉しんでいる笑声だ。
 そしてもう一つ、どこかで聞いた覚えの在る、しかし、誰のものか思い出せない声。その正体不明も愉しんでいる様子だが、何故か、ベルの心には引っかかりが在った。
 もっとも、正体不明の声の主が気になるものの、この魔王はそんな物で行動を制限するような性格ではない、いつものように荒廃の魔王に声をかけ――――――。

「やはりここに来たか。
 待っていて正解だったよ、ベル」

 振り向いた正体不明の声の主に、凍りついた。

「あああああああ、アステートッ!? 何で貴女がここに!?」
「うん?」

 流し目に、再び凍りつくベル。
15学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:06:16 ID:ELXaaIgC
「あ、あすてーとさま、なにゆえここにいらっしゃるのでせうか?」
「うむ。お前が仲良くしてもらっている彼女に、挨拶しにきたんだが」
「いや、そうじゃなくてっ! あんた封印されてる筈でしょうがッ!!」

 流し目。
 硬直。

「ふ、ふういんはどうされたのでせうか?」
「お前、私が何処に封印されていたのか、忘れたのか?」
「……――――あ、輝明学園、ね」
「そうだ。
 で、今その輝明学園はどうなっているのかな?」
「―――なるほど……。そういう事……」
「そうだ。奇妙な事になった所為でな、叩き起こされる破目になったのさ」

 軽く肩をすくめる、大公爵アステート。
 曰く何でも、目が覚めて久しぶりに裏界を廻っている途中らしい。
 ならば、こんな所で油を売っている必要はないので、嘘であるとベルは確信している。

「でも、何でアゼルのところにいるんですか!?」
「言っただろう。
 お前が仲良くしてもらっているようだから、礼を言いに来たのさ」
16学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:10:11 ID:ELXaaIgC
 ぐりん。と首をめぐらせ荒廃の魔王を睨みつけるベル。

「ちょ、ちょっとアゼルっ!! 誰が誰に仲良くしてもらってるですって!?」
「ご、ごめんなさい。ベル」
「それに二人で何話してたのよっ!! って、なんで目を逸らすのよアゼル!
 笑いを堪えてる様に見えるのは何故かしらッ!!?」

「そんなもん、古代神時代のお前の思い出(失敗談)に決まっているだろうに」

 大公爵の言葉を引金にして、裏界の荒野に、蝿の女王の絶叫が轟いた。

 ………。

 裏界帝国の一角、普段人影のない荒野には、現在三つの影が在った。
 一つはこの領域の主、『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
 普段の暗い影など何処ふく風と、ころころと彼女は鈴のような笑声を上げていた。
 二つ目は、裏界第二位の実力者、『蝿の女王』ベール・ゼファー。
 何時もの自信に溢れた姿は見る影もなく、頬を紅潮させて俯いている。肩が震えているのは、羞恥か怒りか。
 最後の一つは、悪徳の七王が一柱。『大公爵』アステート。
 螺旋くれた二本の角が、肩までかかるウェービーヘアから突き出し、六対十二枚の黒翼を背負っているグラマーな女性。
 輝明学園秋葉原分校の地下迷宮に封印されていたが、その輝明学園自体が異常事態に巻き込まれた為、
 封印が弱体化、覚醒に至ったと言うこの大魔王は、ベール・ゼファーの主人にして恋人という立場だ。そして、先ほどからアゼル・イヴリスに語って聞かせている話からして、それに偽りは無さそうだ。

「―――でな、コイツ。そのときなんて言ったと思う?」
「………。『だって、そのほうが面白いでしょ?』ですか?」
「あたり。
 わざわざ危ない橋を渡りたがったり、相手の勝利条件を設定してやるなんてな。全く、誰に似たんだか」
17学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:12:05 ID:ELXaaIgC
「……間違いなく、あんたよ。アステート(ボソッ)」
「うん? ナンカ言ったか?」
「な、なんでもないです!」 

 アステートが語るたびに、アゼルは鈴のように笑い、ベルは酸性物質に触れたリトマス紙のようになっていく。
 爆発寸前の爆弾を連想するのが、容易になってきたベル。
 それに気付いているのかいないのか、アステートは過去を暴露し続ける。
 そして、迎える臨界。

「あ、あんた――――!」

 いい加減にしときなさいよッ!!!
 主従の立場を放り投げ、荒野に二度目の絶叫を響き渡らせかけた瞬間。

「お、来たか。るー………」

「ふむ。懐かしい気配だと思えば、やはりキサマだったか、アステート。
 キサマが解放されているとは、少々事態が深刻になってきたな」

 歪んだ空間の奥から、進み出た小さな影。
 ぱっと見て不遜な態度なその少女に、大公爵は首を傾げ、

「さいふぁー………って、
 しばらく見ないうちに、変わったなお前」

 裏界第一位の魔王の名を呼んだ。

「ふん。久しいな、大公爵。
 地の底での眠り姫の真似事は、意外に退屈だったのか?」
「そうでも無いよ、金色の魔王。
 できればもう少し、ひたって居たかったさ」

 二人の魔王の、視線が絡み合う。

18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:13:14 ID:ELXaaIgC
「で、ルー・サイファー!
 アンタまで何しにきたのよ!?」

 外見年齢六歳の魔王は、蝿の女王を冷めた半眼に晒して、

「見当も付かんのか、ベール・ゼファー。
 久しぶりに飼い主に出会って頭の廻りが鈍くなったのか?」
「な・ん・で・す・っ・てぇえ……?」

 荒野に、金色と白銀の魔力が火花を散す。

「聞こえなかったか蝿の女王。耳まで悪くしたのか?」
「―――っ!! あんた、この場でぶち殺されたいの?」
「……。はんっ、口だけは立派だな」
「……いぃ度胸してるじゃなぁい。
 このっ、あたしがっ、あんたに対策を立てないとでも思ってんの?」
「ほぅ。その頭、少しは建設的なことが考えられるようにはなったのか―――。
 苦しゅうない。そのスポンジの詰まった頭で考えた結果、ここで見せてみるがいい」

 荒野に、攻勢魔力が吹き荒れる。

「ディヴァインコロナッ!!」
「エターナルブレイズ」

 陽光にも似た閃光と、命を食い尽くす紅蓮が放たれる。
 絡み合う二つの魔術。反応し臨界を迎えるエネルギーの塊。
 二つの攻撃魔法が破壊を撒き散らす瞬間。

「アゼル。頼む」
「分かりました」
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:13:40 ID:bFeItlNp
支援ですか?
20学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:14:17 ID:ELXaaIgC
 割り込む影。
 プラーナを食い尽くす荒廃の力が、魔力を奪い去り、攻撃魔法を消滅させ、

「喧嘩するなら外でやれ、ついでに私の話を聞いてからにしろ」

 睨み付ける大公爵の眼力が、闘争の空気を破壊する。
 二手三手先を組み上げていた金色の魔王と蝿の女王は、ふんっ、と子供のように視(死)線を外し合った。

………。

 「それで? (はむ)何故ここに居るのだアステート。
(はむ)聞いてやるから(もぐもぐ)疾く話すがよい(ごっきゅん)」

 荒野に出現した茶卓を囲んで、ルー・サイファーが問い詰める。チョココロネに齧り付いているのは、ご愛嬌である。

「いま、輝明学園がおかしいだろう?」
「他の世界の奇妙な学校と混ざり合っているようだな。
 それがどうしたのだ」
「………。五月蝿いんだよ」
「………何がだ?」
「どうやら封印の上に学校を作るのは、そこかしこで見られる手法らしくてな……。
 私が、気持ちよくベルの助けを待っているその横で、アラハバキだのラガヴリだのが好き勝手に暴れまわり………と、安眠妨害この上ない」

 そんな理由か。
 どーん。と、空気が一気に白っぽくなった。

「………なにそれ?」
「えーっと……」
「………あの部下(ベル)にして、この主人(アステート)在り。といった感じだな」
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:15:26 ID:ELXaaIgC
 白けた視線を向けてくる三魔王に気付いているのかいないのか、『大公爵』アステートはヒートアップの一路を辿る。
 もちろん、三人の視線は、更に色を失っていく。

「そーゆーワケで、うっとおしいからアイツラ何とかしてくれ」

 アステートが言葉を結ぶ。
 そのときにはもう、テーブルにはルーしかいなかった。

 ベルは主の言動に脱力し涙して、アゼルはそれを慰めており、義務感百パーセント話を聞いていたルーも、既に真面目に考える気は失せている。

「あー、アゼル。行ってみるか?」
「え?」
 唐突かつ意外なルーの提案に、アゼルは思考に置き去られた。
「だから、例の学校にだ。我がプラーナ吸収能力を抑えて、万が一のために服の下に魔殺の帯を巻いておけば、問題はないと思うぞ」
「………良いんですか?」
「ああ。
 ベルと一緒に行って来い」

 ぱあぁ。っと、ひまわりのような笑顔が生まれた。

「ちょっと、何であたしまで―――っ!?」
「輝明学園への潜入は慣れているだろう? 何も知らないアゼルを一人で放り出すのかお前は」

 アステートに流し目を向けられて、身体を強張らせたベルに、最早拒否権などなかった。


 などという経緯を経て、転校生ベル・フライとアゼル・アンが誕生したのだった。
22学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:16:33 ID:ELXaaIgC
 転校初日の昼休み。
 転校生ベル・フライはごつんと額を机に押し付けていた。天板がひんやりとしていて気持ちいい。
 彼女の正体を悟れない他世界の学生たちの質問攻めにあって、体力を使い果たしているのだ。あの、ナツミとかいうファルファルロウをほーふつとさせる女が、非常に厄介だった。と、脱力しながら反芻する。
 
「ベル」
 呼びかけられた声に首をめぐらせれば、
「なに? アゼル。ってアンタ元気ね、疲れてないの?」 
「ううん。みんな初めての事ばかりだから―――」

 だから楽しいと、荒野に一人佇んでいた魔王少女は笑った。

 他者と触れ合う事こそ、彼女が望んで止まなかったもの。念願叶い、浮かれるのも仕方あるまい。
(ま、アゼルのこんな顔が見られるんなら、ルーの奴に感謝してやってもいいかしら。ってナニ考えてるあたし)
 意外と言うか、異常なことばかり重なった結果、導かれた今の状況だが、考えてみれば悪くはない。
 もともと、ココで遊ばせてもらう心算だったし、手に入れた生徒としての立場は、ゲームに更なる彩を加えてくれる事だろう。
 そして、アステートの真意もまた、ここに来て理解できた。勿論、安眠妨害という事もあるのだろうが、それ以上にココは奇妙だ。

(おそらく、それに気付いたからこそ、わざわざ私を送り込んだって所ね……。回りくどい事を)

 彼女は、蝿の女王の主人にして恋人。このベール・ゼファー、つまらない奴の下につく気も、連れ添う気も無い。
 『大公爵』アステートの、粋と洒脱と酔狂は、ベール・ゼファーのそれを超える。

(くすくす。
 貴女が私のやることを、上から見て楽しむのは何時もの事だけど、参加者ではなく傍観者を選んだ事、後悔しても知らないわよ『大公爵』)

「ね、ベル」
 
 アゼルの声に、思考の海から引き戻される。

「お弁当、一緒に食べない?」
「お弁当? そんなもんあたし持ってきてないわよ」
「大丈夫、ベルの分も作ってきた」
「………いつの間に」

 にこにこと、華が開くような笑顔をうかべるアゼルに、ひたすらに浮かれてるわね、コイツ。と、ベルは嘆息して、学生がやるように机をくっつける。

 荒廃の魔王のお弁当は、普通においしかった。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:17:49 ID:bFeItlNp
投下スピード大丈夫? 支援
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:19:40 ID:4TKGp62p
何故料理スキルを持ってる荒廃の魔王。
つかなんでもアリだな大公爵。支援
25学園世界ネタ:2009/03/03(火) 21:19:57 ID:ELXaaIgC

以上です。

因みに、アステートは完全に私の妄想です。
公開されている情報から考えるとこんな感じかな。と、考えてみました。

長々とスレ汚し失礼しました。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:21:18 ID:4TKGp62p
>>25
GJ! なんというかもう、普通に女の子してるアゼルで大満足w

ベル様の昔話も聞けて、落とし子としても大満z・・・・あれなんだこの蠅
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 21:30:58 ID:fkkyk/1r
乙。

ところで、創作発表板に……

【小中】学園クロスオーバー【高大】
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220108165/l50
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 22:03:43 ID:fV4DNvqD
そろそろ滝沢が転校してくるな。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 22:25:58 ID:jxdvgzvD
いやここは「転校生」で。「転攻生」でも可。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 22:48:53 ID:gE9NikRt
>>25
投下乙です
アステートは半ばオリキャラなんだろうけど
ベル様の上司だと思うと遺憾全然なくてこまる
良いイジメ(玩具)っぷりでした
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 00:20:13 ID:LXRdELFr
>>28
ウィザードと手を組んだ秘密教育委員会と、
この異常事態を期に世界の掌握を企む大陸学園および裏の教育委員達か…
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 00:22:16 ID:j8+hl95e
この学園世界で企みするには少々難易度が高いような…
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 00:39:13 ID:3Z2Uej98
で。
学園テンプレそろそろ作ろうか。
他の人が投下しづらい空気はマズいし、だらだら流れもこの辺にしようや。

とりあえず「NWキャラは絶対に一人以上登場させること」って縛りは最低限必要だよね
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 02:28:51 ID:b1ei6e4y
パライソ中学校やアスベルレンジャースクールもOK?
文月学園も入れたい
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 02:31:57 ID:hPR7/RJ5
>>34
お前の書きたいものを書け。
36罵蔑痴坊(偽):2009/03/04(水) 09:08:11 ID:oLuwb/mk
>33
先生、質問があります。錆びる女はNWキャラ扱いでもいいですか?
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 09:23:03 ID:3Z2Uej98
>>36
えーと……マジレス希望?
そんなわけないよな。うん。

とりあえずこのスレのある板名を30回読もうや。な?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 11:35:26 ID:7C5CdT+R
>>33
ぶっちゃけ、俺は条件はそれだけでもいと思う。
下手に縛るよりはその方がいい。

ただ、NWキャラの条件に、「アニメ登場」の縛りを入れるかどうかは決めたほうがよさげ。
そうしないと、>>36みたいに、「ネットラジオのパロディドラマに柊と競演した」みたいな、
遠い親戚どころかお前他人じゃん、みたいなキャラまで挙げられてしまう。

板的に、アニメ登場キャラにしたほうが無難だとは思う。
個人的には、もうちょっと緩めて欲しいところだけどね。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 11:44:27 ID:ocB9w5ct
>38
こういうとき、アンゼロットやロンギヌスは使いやすいよね
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 13:03:49 ID:uXZM4E7e
もっと緩くか……
「第八世界の登場人物と言えるキャラ」あるいは「NWのルールに則って作られているキャラ」あたりが丁度良いんじゃない?


……ジジイ四天王ネタを書こうとしているんだが
分からない校長キャラが多かったり、輝明学園の校長のキャラが薄くて話を作りづらい……
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 13:06:11 ID:Gio/77PS
サプリ、小説、リプレイキャラメインがアウトだときついな。キャラの幅的な意味で
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 13:08:10 ID:ocB9w5ct
>41
それなら、背景でいいからアンゼとか出そうぜ!って言えるから何とかなるのでは。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 13:10:52 ID:7C5CdT+R
>>41
出しちゃいけないってことはないっしょ。
「アニメ未出演のNWキャラ」は、「クロスさせる他作品」の扱いにすればってことで、
別に「アニメに登場したNWキャラ」もだせば。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 13:37:06 ID:ocB9w5ct
>43
一理はあるけど難しいね。


例えば、メインキャラが3人登場するSSだとする。

3人とも他作品キャラで、脇役としてアニメ版NWのキャラが途中にちょっとだけ出てくる……というのは、
クロスとしてはあんまりバランスは良くないと思われるかもしれない。

でも、メイン3人のうち1人がアニメに登場していないNWキャラだったとしたら、
そんなに不自然ではないかもしれない。

うまく言い表せないけど、そんな印象。

45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 14:19:22 ID:Gio/77PS
例えばアニメには落とし子も吸血鬼も忍者も勇者も錬金術師も龍使いも出てこなかった。
この系統のキャラがメインの話書くときにはアニメ外のキャラの方がしっくりくると思う
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 14:35:20 ID:nPK0ODUe
いや、時代的にアニメ準拠だと(旧版準拠なので)侵魔召喚師と落とし子はいないから、出ないのは当然かと
アニメ縛りってきついよね
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 17:25:35 ID:uDI1xXhZ
まずはメンバー集めて甲子園を目指さないといけないな。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 19:24:54 ID:2aUwUBgS
>43
個人的には>40の案がちょうどいいと思う。
例えば合わせる作品側が中学生だった時とかは柊を下げるのも確かにアリだが、いのりとかのような現役中学生の方が合う場合もあるだろうし。


あと1st時代にはクラスは無かったが錬金術師や侍、仙人、落とし子は設定上いるはず。
ついでにアニメの頃なら侵魔召喚師も技術の体系化に向けた召喚実験位は終わってるだろうし。

ただし、錆びる女やザーフィとかは論外。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 21:56:11 ID:3Z2Uej98
つーか、そこって当たり前のラインじゃないのか<NW作品のキャラを使う
いかに卓ゲ民が悪ノリしすぎてるかって話な気もするけど。

まぁ、そのラインが妥当な感じかなーと俺も思うな
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 22:21:25 ID:ocB9w5ct
・ちょい役でいいので、アニメに登場したNWキャラも出そうぜ!

くらいで。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 22:41:26 ID:xeOmjXvW
・NWのキャラが出ている(アニメに限らず)
・アニメのキャラが出ている(NWに限らず)

これを両方満たしてるくらいが良いんじゃないかなあ。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 22:41:36 ID:hPR7/RJ5
ベル・ゲームメンバーはギリアウト?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 22:56:50 ID:3Z2Uej98
>>52
お前さん、出して話を書いてくれるのか?
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 22:58:34 ID:j8+hl95e
>>52
限定版を持ってない俺からしたらアウトだが、スレ的にはセーフだろう。
あなたが書ければだけどね。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 00:22:51 ID:MhEXdhT+
先生同士の懇親会で未成年でお酒が飲めなくて周りのテンションについていけず、同類同士でひっそりと友情を深めるまほうせんせいと魔法先生w
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 00:24:31 ID:uqwYmomU
>>55
書くといいよ。ろんぎぬす使って。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 01:51:58 ID:4oq44CPR
>>55
べっきーも混ぜてあげてw
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 02:55:27 ID:RhZwcRR1
>>55
よし、そこにリオフレードのサンプルキャラクター、新米魔法教師を(ry
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 09:23:17 ID:uqwYmomU
>>57-58
汝の成したいように書けばいい
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 23:09:31 ID:HmkRxlnK
結局、

1.ナイトウィザードキャラ(アニメ未登場可、リプレイ登場可)
  を混ぜる事。
2.ザーフィや宮沢茉莉などは(登場させる場合)notNWキャラとして登場させる。

でO.K?
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 23:24:35 ID:WhIcHd2m
それに賛成
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 00:41:08 ID:t2lZPyuB
問題ないんじゃないかな。
その縛りがないとまたいつまでもグダグダするのは目に見えてるし

あとまぁ、基本的にクロス先は「学校」であることかな。当たり前といえば当たり前だが。
「学院」「学園」なんでもいいが、「学び舎」としての機能があること、みたいな。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 00:48:19 ID:dc/o9abk
>>40
・輝明学園理事長代理
・光稜学園校長
・ガルデローベ学長

…対抗して学園世界美人校長四天王ってネタを思いついたけど、後1人思いつかん。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 01:28:35 ID:4Pb3nTPS
>63
輝明学園の理事長代理って誰?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 01:55:19 ID:RKoVMjwz
つか、わざわざネタ出ないって言うくらいなら、
自分の書きやすいネタで書けばいいんじゃねーの?
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 06:44:56 ID:9GiXD0yQ
>>64
このSSの中だとくれはが就任してる。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 11:27:20 ID:cwom2oqG
学園世界のテンプレート(仮)

1.ナイトウィザードキャラ(アニメ未登場可、リプレイ登場可)を混ぜる事。
2.原則としてクロス先は、学び舎としての機能をもつ組織、施設が登場する作品にする。
3.ザーフィや宮沢茉莉など、NWに関わりの在る別作品のキャラクターは、NWキャラとして登場させてはならない。

で、問題なし?
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 11:33:40 ID:oLdzFKiK
問題なし
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 16:47:21 ID:t2lZPyuB
おーけーですよー。

……あまりにもルール制定に関して無関心な人が多すぎる気はするけど
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 17:50:15 ID:zIL9Jm+N
学園のアイディアだが、最初から学園があるんじゃなくて、ラビリンスシティみたいに、どんどんどんどん合体していって、カオスな展開になっていく、というのはどうだろう?
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 17:55:16 ID:oLdzFKiK
それでいいと思う
今の流れからするとまだSSになってない学園もあるし名前も挙がっていない学園もあるから
そういうのを初登場させた時に書いた人が新しく湧いて出た学園か実は元からあった学園かを決めていけばいいんじゃないかな
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 19:23:36 ID:6qknngxb
>>67
作品投下の際に@学園世界を入れてもらえれば分かりやすいかと
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 19:59:16 ID:fyuxBvki
既存のSSに組み込んじゃうのはさすがにまずいか。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 20:54:45 ID:7ImzH9fM
通常連載の人がきたらそっち優先にしとけよ〜。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 21:39:10 ID:t2lZPyuB
>>73
たとえばどれよ。
そこまで言うからには何か書きたい話があるんだろ?

個人的には、このスレの作品であり、その上作者さんからOKでりゃいいと思うけどね。
さすがに余所のを三次するのは許容できんが。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 22:19:38 ID:lFBuwPuB
学園世界のオープニングっぽいものを書こうかとおもったけど、くれはを理事長代理の座に着かせる流れに持っていけそうになくて断念
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 22:22:48 ID:oLdzFKiK
時系列順番に追っていく必要もないんだ
気にせずじっくり考えてくれ
78こうですか?@学園世界 ◆1IXdmMAgHc :2009/03/07(土) 00:28:51 ID:0J/PmkMT
降りてきた。連載の方は…しばらくお待ちくださいorz

>>73

学園世界の平和と秩序を守る、学生のための組織、『極上生徒会』
各学園から選ばれた代表とも言える彼ら執行委員は、学力や身体能力を超えた“何か”を持つ生徒が多い。

そう、それは例えば学園公認で恋人と婚約者の二股をかける冒険者志望の少年であったり、
錬金術を学ぶ学生の身でありながらその最終目標たる“賢者の石”の精製に成功した少女であったり、
世界中でも片手で数えられるほどの数しかいないと言う伝説の系統魔法の使い手の少女とその使い魔である“日本人”の少年であったり、
圧倒的な力と不思議な魅力で多くの友を持つ番長であったりする。

そしてまた、この世界に新たな“学園”が現れた。新たな極上生徒会執行委員と共に。



「もう暗いし今日はここまでにすっか。みんな大丈夫…ぽいな。うん」
極上生徒会特別執行委員“下がる男”柊蓮司は立ち止まって後ろを振り向き、まだまだ元気なメンバーを見て言う。
「え〜もうなのさ〜?ナツミはまだまだいけるのさ〜」
不満げに口をとがらせる少女の名は、ナツミ・キャメロン。光稜学園の執行委員の1人。
スカウト志望の彼女は持ち前の好奇心と勘でもってどこへでも行く、冒険少女である。
「俺も問題無い。だが、俺は柊の意見に賛成だ。後方支援が期待できない任務である以上、できる限り消耗は避けるべきだ」
むっつりと無愛想な顔のまま答える少年の名は、相良宗助。陣代高校極上生徒会執行委員。
幼いころから過酷な訓練を受け、世界を渡り歩いた、傭兵。
「う〜んそうだね。もう暗いし、拾った材料の整理もしたいから、私も柊くんに賛成かな」
背中に背負った籠いっぱいにつまった木の枝だの石だの木の実だのを見ながら言う少女の名は、エルフィール・トラウム。通称エリー。
ザールブルグ・アカデミーの執行委員であり、転移前は街で工房を経営しながら勉強していたと言う、錬金術師の卵である。
「う〜。分かったのさ。みんなが言うなら仕方ないのさ。じゃあさっそく準備をするのさ!」
持ち前の切り替えの早さで手早く野営の準備を始めるナツミ。他のメンバーも手伝い、あっという間に野営の準備が整う。
「やっぱり全員慣れてんな。得意そうなメンバーを集めたってのは伊達じゃねえってとこか」
野営の準備が終わるまで、少し離れて辺りの警戒役を買って出た柊が、関心する。

将来は探検家を目指し、日夜勉強を重ねる冒険少女。
戦闘技術だけでなく、サバイバルの訓練も受けたと言う歴戦の傭兵。
材料集めのために数週間ほど大自然の中で過ごすこともあると言う、探索慣れした錬金術師。

柊以外は今回の任務のために執行委員の中から選ばれた、ベストメンバーである。
「にしても…な〜んか引っかかるんだよな…」
一息ついて、柊が1人辺りを見渡し、首をかしげて言う。
「転送魔法の失敗で飛ばされたとか、森の中で迷子だとか…」
とある学園の敷地内、欝蒼と生い茂る大森林の中で。
79エレニアックの迷子@学園世界 ◆1IXdmMAgHc :2009/03/07(土) 00:53:51 ID:0J/PmkMT


きっかけは新たな学園の出現だった。その新たな学園が選んだ極上生徒会の執行委員。
彼女が唯一苦手とするテレポート魔法に失敗し、行方不明になったのが、2日前。
探索魔法やら偵察用ラジコンやらを駆使して、この森の中にいるらしいことが分かり、柊を中心に探索チームが結成されたのが今朝のこと。
そして丸1日。森の大分奥までやってきて、現在に至る。
「ん〜?ひ〜らぎど〜かしたのさ〜?」
奇妙なデジャブに考え込んでいた柊にナツミが声をかける。
「ん?ああ、何でもねえよ」
考えるのをやめ、ナツミに返事を返す。
「そ〜なのさ?だったらいいのさ!あ、それとエリーがごはんできたから来てほしいって言ってたさ!」
「お、飯か。そ〜いやいい匂いがするな」
さっさと考えを切り替えて、他のメンバーのところへ向かう。
いい匂いがここまで漂ってくる。濃厚なミルクの匂い。
「今日はエリーが作ったほうれんそうとチーズのシチューらしいのさ。あとデザートはエリー特製200点満点チーズケーキだって言ってたのさ!」
嬉々としてメニューを語るナツミ。無理も無い。
昼、食事当番を任された宗助が用意したのはカ○リーメイト。歩きながら食った。腹は膨れたが、味気ないことこの上なかった。
「おう。そりゃ〜うまそ…!?」
途中で言葉を切り、月衣から剣を抜く柊。
「ぴ!?どどどど〜したのさ!?」
突然の出来事に動揺するナツミに、柊は静かに言う。
「…静かにしてくれ。なんか、いる」
エリーのそばに座っていた宗助も気づいたらしい。立ち上がってエリーをかばうようにそばに立ち、銃を抜いている。
辺りを油断なく見渡す。
漂う緊張感。緊張した面持ちで柊はゴクリと唾を飲み込んだ。

そして、次の瞬間、事態は一気に動く!

ぐぅ〜きゅるるるるる…

なんとも言えない脱力する音が辺りに響き渡り。

「出てこい。3秒以内に出てこなければ、敵とみなす。1,2…」

その音を敏感に察知した宗助が茂みに銃を向け。

「ち、違うんです!あたしはその怪しいものとかじゃなくてただちょっと迷子になってて2日間水と木の実しか食べて無くてお腹がすいたな〜と思ったら
 いい匂いがしてきて!…ってえ」

ガサッと立ち上がりしどろもどろに説明を始めた少女が何かに気づいて目を見開き。

「レンジ!?」「リルカか!?」

柊と少女が同時にお互いの名を呼んだのは。

80エレニアックの迷子@学園世界 ◆1IXdmMAgHc :2009/03/07(土) 00:55:06 ID:0J/PmkMT
「ああ、こんなに食べたのは2日ぶりだよ…あと1日見つからなかったら餓死してたかも」
1人で鍋の中身を食い尽し、幸せそうにリルカは言う。
「そ〜か。新しく来た学園っつうのはファルガイアの学園だったのか」
感じていたデジャブの正体に深く納得しながら柊はリルカに話しかける。
「いや〜あたしも驚いたよ。生徒会に行こうとしたらこんなところに飛ばされて、ようやく人がいたと思ったらまさかレンジだったなんて…
 って言うかレンジって学生だったんだね」
「ちげ〜よ!ちゃんと卒業してんだよ!色々あって生徒会にいるけど!」
「違うの?その学生服とかすごく似合ってると思うよ?」
「似合ってても違うの!って言うかこの服は陰謀だ!色んな意味で!」
リルカの素直な感想に必死の否定をする柊。
「柊くん、知り合いなの?」
エリーが柊に尋ねる。
「ああ、前にちょっとな」
前にリルカと知り合ったときのことを思い出して言葉を濁す柊。
「そうそう。初めて会ったときは空から降ってきて頭から地面に突き刺さってたりしたよね」
「…それは普通は死ぬと思うんだが、平気なものなのか?」
「…その話、詳しく聞かせて欲しいのさ」
リルカの口から出たさらっと非常識な発言に宗助が真顔で聞き返し、ナツミが好奇心を丸出しにグッと詰め寄る。
「うん後でね」
ナツミに笑顔で答えたリルカが立ち上がり、全員に対して向きなおる。
「と、ゆ〜わけで3人にははじめましてでレンジには久しぶり!今度、極上生徒会の執行委員になった、リルカ・エレニアックです!ど〜ぞ、よろしく!」
笑顔で自己紹介。
「ナツミはナツミ・キャメロンって言うのさ!よろしくお願いするのさ!りるりる!」
「…相良宗助だ。相良か宗助、好きな方で呼ぶといい。よろしく頼む」
「エルフィール・トラウムです。エリーでいいよ。よろしくね。リルカちゃん」
「おう、これからまた頼むぜ、リルカ」
リルカの自己紹介に4人はそれぞれに返事を返す。
「にしても結構奥に来たもんだ。こりゃ帰るのは大変そうだな」
安堵を込めて、辺りを見渡し、溜息をつく柊に気づいたリルカが笑顔で言う。
「それなら大丈夫!お腹いっぱいになって気づいたんだけどポケットの中にちょ〜ど1個テレポートジェムが…」

「「「「やめと(いて欲しいのさ/いていた方がいい/いて欲しいかなそれは/けって流石に!?)」」」」

今度は4人が全員はもった。
81エレニアックの迷子@学園世界 ◆1IXdmMAgHc :2009/03/07(土) 00:56:11 ID:0J/PmkMT
今日はここまで。
ちなみにリルカとレンジの出会いは…「アガートラムが多すぎる」を参照ってことでひとつ。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 00:58:05 ID:BntScRs9
ちょ、宗助が出るとは思わんかったw

なにはともあれGJ
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 01:54:35 ID:X8RIamZb
乙ですっ!

既存SSへの組み込みというのは、まさにそんな感じです。
特に最初から知り合いだったりするっていうのは、場合によっては便利そうですね。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 01:58:14 ID:X8RIamZb
そういえば、質問です。

複数の作者さんがSSを書くという前提なので、設定の矛盾などは絶対に出てくると思います。
例えば同じクロス先の人物を出した場合とか。
こういう場合、書く方も読む方も、特に何も気にしなくていい……ということで良いのでしょうか。

逆に、他の人が作った設定に乗ってしまう場合とか。
さらに元の作者さんが派生とは異なる設定にしてしまった場合とか。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 02:11:58 ID:THl65aCh
・後で自分で消化する予定の伏線は、伏線だということを明らかにしてしまう。
・後で使いたい設定とかこのキャラ出す予定だとかは可能な範囲で明かしてしまう。(やりすぎると他の作者がやりづらくなるので程々に)
あたりは気をつけたほうがいいんじゃない?


書いてる間に競合起こしたら作者どうしでどうにかしてもらう方向で。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 02:35:00 ID:gZ8+M7Mn
シェアワールドですって言い張れば……
てか、今書いてる奴もモロにシェアワールドだなぁ……独りよがりになっちまうかも
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 02:54:53 ID:dSVHd7Z6
ちょっと、思いついたのでSSを書いてみました。
問題が無ければ、これから投下してみます。
88とある机少女の憂鬱@学園世界:2009/03/07(土) 02:58:40 ID:dSVHd7Z6
ここは、輝明学園の天文部の部室。
私は部長のエリスちゃんやくれはさんと世間話をしていた。

「エリスちゃんもくれはさんも大変ね、なにせ『あの』柊君が相手なんだから」
と炬燵でみかんを食べながら私は言った。

「「…愛子ちゃん」」
と、エリスちゃんとくれはさんは疲れた顔で私に言った。

「うん、青春だわ!」
なんでこんな話になっているのかというと…。

柊君ったら、女の子を助けて『また』フラグを立てちゃってるんだよね。

まぁ、この世界じゃそういった人って結構いるんだけど。
どこかの正義に味方なブラウニーや幻想殺しな男子とか。
…そういえば、横島君もそうだっけ?

でも、こういった人達って何故か鈍感が多いのよね。
お陰で恋敵は増える物の、特定の誰かとくっつき難い。
でも見ている側は冷や冷やしている訳で、こうして雑談しながら、相談に乗っているのだ。
89とある机少女の憂鬱@学園世界:2009/03/07(土) 03:00:45 ID:dSVHd7Z6
さて話は変わるが、なんで私がこの学園世界に居るのかというと。
あれは横島君を初めとした除霊委員のみんなにおキヌちゃん達六女の三人組、弓さんに連れられて来た雪乃丞君達とで私の中の学校で勉強会や除霊での相談事をしていた時だったわ。

いきなり揺れたと思ったら、私の中にたくさんの学校が現われたのよね。
後で調べたら、私の中に現われたんじゃなくって私の中の学校がこの世界と融合しちゃってたのだった。
お陰で大まかだけど、この学園世界の事がリアルタイムで解っちゃう訳で…。
その能力で色々と便利に過ごしているだけど。


でも、問題があるとすれば…世界と融合したせいで私がこの『学園世界』の管理者になっちゃたのよねぇ、はぁ〜〜〜。
そのせいで私はかなりの重要人物になっちゃったのよ。
お陰で『かの』極上生徒会にも在籍している。


「愛子ちゃん、どうしたの、急に呆けて?」
とくれはさんが怪訝な顔をして聞いてきた。

「あ、御免ね。 ちょっと昔を思い出しちゃって」
そうして、私は二人の相談に乗っていたのだった。


さて、この話が終わったら斉東高校の聖徒会の面々に会いに行きますか。
同じ学校妖怪(あっちは学校霊だけど)同士、色々と話題には事欠かないのよね。
…あそこの理事長先生には会うたびに家の学校に来ないかと勧誘されるけど。
90とある机少女の憂鬱@学園世界:2009/03/07(土) 03:04:03 ID:dSVHd7Z6
ここで終わりです。

かなり短い話でしたが、こんなのが思いついたんです。
SSを書くなんて、五年ぶりでした。
下手な話とは思いますが、楽しんで頂けたら幸いです。
どちらかというとSSよりもネタかな、この話?
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 13:16:29 ID:PDwP3wGh
執行委員についてだが。

「各学園から一人選出」って形よりは「有志」って感じにした方がいいのではないかと思った。
単なるもめ事解消屋であって、政治的な権力とか権限とかは持たない方がたぶんきちんと機構として働くと思う。
実際に武力を有してる以上、「各陣営から〜」って形にすると、政治的な意図で交渉が行われる場になりかねない。

そうなった場合、柊がきちんと機能するかは微妙。
ただでさえああいう奴だから、また新しい勢力ができたりして管理が難しくなる。
ついでに言うなら、作者が一人でない時点で、裏の勢力抗争劇がきちんと筋通ったものが書けるとは思えない。

よって、執行委員は拝命したのは柊だけにして(卒業生だしいつでも動ける的な意味でも有用。)
あとは有志による「お手伝い」という形にすることを提案したい。
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 13:47:02 ID:2sZLwpu3
ただ、もともと各校に風紀委員会とかの治安維持組織があるしな。
蓬莱学園とかリオフレードの風紀委員なんて小国の警察組織を凌駕する規模だし。
そういうところの連中は組織として動くだろうから、全部を善意の協力者にするのも不自然だと思う。
各治安維持組織から抽出されたメンバー+善意の第三者のスパロボ方式が良いんじゃなかろうか。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 13:54:53 ID:PDwP3wGh
というか、各校の風紀は各校内のみの活動でいいと思うんだって。
違う文化を持つ学校が隣接してるから、諍いが起きて、それへの対症療法として特別執行委員がいるわけだろ?

そこに組織が加わると、利権が絡んでややこしくなりすぎるから、完全中立な立場の人間が求められるわけだ。
だから、「お手伝い」の方がいいのではないかと再度提案する。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 14:18:41 ID:2sZLwpu3
ああ、そこで、イメージの違いがあるんだ。
>>92さんはいろんな学校が隣に立ってるイメージなんだよね?
俺は同じ敷地内にいろんな学校の校舎が融合したのがごちゃっと立ってるイメージなんだよ。
だからいろんな学校の施設が入り混じっていて別れようがないイメージ。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 18:26:33 ID:PDwP3wGh
まぁ確かにイメージの差もあるんだが……
単にその方が書きやすいと思うからなんだけど。

各学校の組織が内側を見守る警察兼軍隊とするなら、
特別執行委員は国連軍(ちょっと行動力があり、中立。ただし政治的干渉力ナシ)的な。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 20:36:02 ID:HvgeQh2W
誰もいないうちにちっと思いついてしまった小ネタを携帯から欲望のままに投下〜。
97リアルバウト小話@学園世界:2009/03/07(土) 20:38:47 ID:HvgeQh2W
えーと、こんなんでも平気?
輝命学園廊下。
「涼子〜。ちょ、こっちきてみぃ!」
高校がこの異常空間に巻き込まれて幾日、初日の大混乱の余波もようやく抜け、
そのために駆けづり回っていた涼子(主にこの事態にテンション上がりきった我が校の馬鹿共を暴走する前に叩き潰す役目)は、
休息や息抜きの意味も兼ねて、まだ接触していない他校のエリアの視察に来ていたのだった。それなのに。
「なんでこいつも付いて来ちゃったのかしら…。」
目の前には調理実習室と書かれた部屋をドアの隙間から伺う長身の男。浅黒い肌に虎縞のバンダナ、見るからに暑苦しいオーラを纏う野生児、草薙静馬である。
「ほらほら、こっちやって涼子。」
動物園に来た幼稚園児が如きテンションの静馬に辟易しつつ、嫌々近寄ると静馬に頭を掴まれてドアの隙間に突っ込まれた。
涼子は文句を言うために息を吸って、…目の前に広がる異様な光景を目にして吐き出すのを止めた。
紅い髪の少女が黙々と玉ねぎを刻んでいた。それだけなら異様というよりは多少ほのぼのとする光景と言えなくもない。が、その隣でグツグツと泡を噴きあげる寸胴鍋の凶々しさが全てを壊していた。
98リアルバウト小話@学園世界:2009/03/07(土) 20:41:42 ID:HvgeQh2W
まず、おそらくステンレス等では無いであろう鍋と蓋の間からこぼれる泡がなぜか黒い。時折紫とか濃緑とかも混じっていたりする。
あと広い調理室の彼女が使用しているその一角だけ天井の色が変わっている。
おそらく湯気に当たった影響なのだろう、傍目にもわかる程腐食していた。
そして、もしかしたらこれが一番大事かもしれないことだがその盛大な音を立てて噴きあがる鍋は火にかけられていなかった。
…ようく聞けばグツグツというよりは、何かの生物がのた打ち、怨嵯の声を漏らしているような音にも聞こえてくる。
「(これは…、呪術儀式?)」
それは涼子にとってこの光景を評するに最も妥当な答えではあったが、その直後に聞こえた紅い少女の呟きは彼女の予想を遥かに上回る物だった。
「…あとは、これを入れればカレーの完成。」
即座に首を引っ込めて静かにドアを閉める。振り返ればそこには静馬が輝かんばかりの笑顔で迎えてくれた。
「良かったな涼子!お前のがマシや!!」
「なにがよっ!!?」
何となくわかってはいたものの、取りあえず御剣涼子は叫んでおいた。



ええ、静馬にコレを言わせたかっただけですとも。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 21:03:25 ID:0J/PmkMT
>>95
ざっとこんな感じでどうだろう?役職ってよりは資格に近い感覚で。

・普段は自らの所属する学園の学生として生活する(特別執行委員の柊蓮司は除く)
・自らの所属する学園内においては特別な権限は無し。生徒会からの依頼に従事している間は公欠扱いとなるってくらい
・執行委員には執行委員用の0-phoneが支給される。他校の執行委員と連絡を取るときに割と便利
・他校にて執行委員がもめ事を起こした場合、その責任は極上生徒会がとる
・ちなみに、正当な理由なく他校と揉めごとを起こすと、生徒会直々にかな〜り厳しい罰が科せられるので、執行委員は色々自重することw

100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 21:09:42 ID:srGXWxC5
そういうややこしくなりそうなところは江田島塾長の一声で決まりましたで済ましていいんじゃねw
>>98
GJ!
やっぱ涼子ですよね!
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 21:26:37 ID:PDwP3wGh
>>99
あ、いやなんか制度とかまでは考えてなかったからむしろありがとうございます的な。

単に組織とかに縛られにくい完全中立が執行部としてあるとバランスがとりやすいし、
ネタ的に使いやすいよなと思っただけッス。だから「資格」って表現はやや気に入ったかも

みんなが使いづらいってならそりゃ却下してくれてOKだけど
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 21:32:53 ID:teVxQY4M
いいんじゃない?
それでも使いづらいって場合は、執行委員代行という地位とか第4の組織とかを新たに作り出すまでよ!
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 21:58:01 ID:M8pVpk3u
ティンクルセイバーの世界征服部とか、正義の味方部とかでねぇかなぁ…

流石にマイナー過ぎるかw
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 22:32:42 ID:PDwP3wGh
>>103
自分で書けばいいじゃないか。違うか?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 22:58:28 ID:ASVcPUip
>>103
プロットは考えてるんだ、プロットは・・・・orz
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 23:07:10 ID:/CowwEId
個人的には「シナリオ」という形のSSがあってもいいかなあと思ったりはしてる。
そればかりだとヤだが。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 01:09:55 ID:UQlzWNXR
>103
真っ先に至宝エリスに懐いている鈴鳴はやなが幻視されたんだぜ。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 01:10:53 ID:UQlzWNXR
あ、変換ミスった

×至宝
○志宝
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 09:13:58 ID:g8I92/nc
やはり番長が必要。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 09:17:21 ID:jxjsHCvc
>>109
そう思うなら統一番長大会でも書けばいいんじゃないの?
俺は別にどーでもいい。決めるのは、お前だ。
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 09:23:51 ID:g8I92/nc
>>110
最近やたらと雑談に突っかかって、だったらお前が書け!という人増えたなあ。
正直鬱陶しい。新手の荒らしか?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 09:28:34 ID:0eYhhcgU
>>111
SSスレでアイデアばかりだしてるのがいやがられるのはどこでも一緒だよ。
ここはむしろ甘い方だと思う。

特に学園はリレーでやろうとしてるんだから、1スレネタでもなんで投下してみりゃいいのさ。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 09:30:55 ID:g8I92/nc
>>112
アイデア?
ただの雑談のネタレベルだろ。それに対してウダウダ言うのおかしい。
114小ネタ@学園世界:2009/03/08(日) 10:32:02 ID:1JClRVfR
事件発生当初の混乱も一応収まった学園世界。しかし、トラブルの種は尽きず、騒がしくも楽しい日々が続く。
そんなある日、学園世界に住み着いている犬・猫をはじめとした動物たちが次々と獣耳美少女に変身する(雄も漏れなく美少女に)という椿事が発生。
猫たちの平穏を脅かすこの異変を放っては置けぬと立ち上がる三人の少年少女。

一人は、特に輝明学園生徒というわけではないが、たまたま学園に訪れていたところを事態に巻き込まれてしまった猫科人狼あげは。
一人は、聖華学園退魔聖徒会に所属する、あっさり人間捨てて悪魔になる道を選んだ聖獣バステトこと笹塚千代。
一人は、全ての生きとし生けるもののために働く『ネコの王』を受け継いだ小学生、伍岳修。

はたして3人はこの事件の謎を解き、猫たちに平穏をもたらすことが出来るのか!
115小ネタ@学園世界:2009/03/08(日) 10:35:50 ID:1JClRVfR
ほーこくしょ
しっぴつしゃ:ささづかちよ

げんきょーは<まじしゃんず・あかでみい>のフランクラム・シュタインきゅーじゅがつくった『ミミガーアストレイ』のぼうそうでした。
みんなできょーじゅをとっつかまえてふくろだたきにしたあと、ぽんこつをすくらっぷにくらすちぇんじさせてやりました。

…エーネウスさんまじパネェ−。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 10:37:19 ID:1JClRVfR
とゆワケで何の前振りもなく小ネタ投下。
こんなんでもいいんだよね?
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 11:17:49 ID:t7UnkYpG
予想された顛末と結末に1_たりともズレがねぇー?!!
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 12:13:25 ID:v16X2EQI
>116
GJ
・・・ふと、後日談みたいな話を思い付いたのですが、あとで投下してもよいですか?
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 12:16:46 ID:1JClRVfR
>>117
そこが肝だよキミィ
あとネコしか助けようとしてないところ

>>118
感謝
投下するならば支援を
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 12:24:03 ID:v16X2EQI
ありがとうございます。
投下は夕方くらいになりそうです。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 15:13:47 ID:VTRtLqt+
5〜10行くらいのSSとか、会話程度であれば
TRPGでGM経験者なら書けると思うぜ?

そういう書き方をすれば、たぶんアイディアだけ云々とは言われなくなるという裏ワザを紹介。
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 16:13:47 ID:jxjsHCvc
別に全部俺が言ってるわけじゃないから、全員の代弁をしてるつもりはまったくないが

雑談のネタ出しして書けば?と言われるのはむしろ普通の流れ。
ついでに言うなら、卓ゲの民は脱線始めると酷いから、それへの対抗策的な意味もなきにしもあらず。
実際、本当に最近自重しなさすぎだよ。

感想レスとかなら別にそんなこと言われないんだし、
作品ならもっとそんなことは言われない、とだけ言っておこう。
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 18:45:11 ID:ySDUNNGL
>>115
娘。よ 簡単な漢字もかけないというのは高校生としてどうだろうかと父は思う。
124120:2009/03/08(日) 18:51:50 ID:GlfzSz97
7時から投下します。
125猫耳少女?の悩み@学園世界:2009/03/08(日) 19:03:42 ID:GlfzSz97


―――学園世界特別居住区

様々な世界の“学園”のみが転移すると言う今回の事件以降すぐに発生した問題の1つに、住むところの問題がある。
学園内の寮などに住まずに学園の外、実家やアパートなどから通っていた学生たちが一斉に帰る場所を失くしたのだ。
各学園の寮に編入するなどの対策も考えられたものの、それで足りるはずもなく。
学園世界には大量の“帰宅難民”が発生した。
一説には万を超える数の“帰宅難民”を受け入れるために科学と魔法、2つの力を結集し、突貫で作られた、学生たちの“街”(各学園が協力した、最初の機会でもある)
それが学園世界特別居住区である。
発足当初は学生同士のトラブル(常識の違う異世界人を含む若い男女が集まっているのだから当然と言えば当然である)も頻発したが、
少し経った今では居住区住みの住人たちも時々もめたりはするもののお互いうまくやっているようだ。

コンコン
「すまない。竜之介はいるか?」
居住区に乱立する学生寮の一つ“学園世界輝明寮”の一室でくつろいでいた竜之介の部屋のドアが叩かれ、声が掛けられる。
「ん?その声は…あげはか?」
学園世界に来てからは猫のたまり場で寝泊まりしているはずの人狼の少女の来訪に、竜之介は首をかしげる。
「ああ、そうだ。少し相談したいことがあってな。すまないが開けてくれないか?」
訪ねてくるなんて珍しいと思いながら、ドアを開ける。
「どうしたんだ?お前がここに来るなんて珍しい…」
あげはの方を見て声をかけようとした竜之介が思わず言葉に詰まる。

まっすぐで艶やかな黒髪と金色の瞳。
ブレザーが制服の輝明学園では見かけることのない、詰襟のガクラン。
ガクランの上からでも分かる、ふくよかな胸。
腰から下げた、刀。

そして、ズボンに開けた穴から飛び出た黒い尻尾と、黒髪と同じく黒い猫耳。

あげはのすぐ後ろにもう1人、人狼の少女がいたのだ。
「君が竜之介か。なるほど、よい目をしている」
竜之介を澄んだ瞳で見つめ、少女は自らの感想を口にする。
「…詳しいことは今から話す。とりあえず、中に入ってもいいか?」
突然の出来事に呆然とする竜之介に、あげはが声をかけた。
「あ、ああ…」
とりあえず頷いては見るが、相変わらず混乱している。
「さて、どこから話したらよいものか…」
数分後、部屋に据え付けられた小さなちゃぶ台を囲みながらあげはは考え込む。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
事態が飲み込めず、混乱していた竜之介がようやく再起動し、竜之介はあげはに話しかける。
「なんだ?」
「えっと、あの、その…」
とっさに言葉が出てこず、言葉に詰まる。
「…ああ、そう言えばまだ、名乗っていなかったな」
その様子を見て、困っているのを察したのだろう。もう1人の人狼の少女が助け船を出すようにポツリと口にする。
「そ、そうだ!うん。えっと…君、名前は?」
それに乗り、少女に名前を尋ねる。
「名前か…そうだな」
その問いに何故か少女は少しだけ考え込んだのち、自らの名を口にする。
「私の名は、ニィサン=ミンシアード。ニィサンと皆からは呼ばれている」
と。
126猫耳少女?の悩み@学園世界:2009/03/08(日) 19:10:55 ID:GlfzSz97


少しして。
「じゃあ、ニィサンは」
「ああ、今は光稜学園で厄介になっている」
「へえ…じゃあ冒険者志望ってことか?」
確かあそこは冒険者の育成学校だったよなと考えながら竜之介はニィサンに問いかける。
だが、その問いにニィサンは首を横に振る。
「いや。私は光稜の学生では無い。あの子が通っているから、自然と私も住み着いた。それだけだ」
「あの子?ってじゃあ学園転移にはたまたま巻き込まれたのか?」
「いや、それも違う。私とあの子はいつも一緒にいるからな。だから巻き込まれたのも必然だ」
「どういうことだ?学生でもないのにいつも一緒って…」
「それについては…あげはから話を聞いた方がよいだろう」
竜之介の緊張がほぐれ、話を聞く体制が整ったのを見計らい、ニィサンはあげはの方を一瞥する。
あげはの方も竜之介たちが話している間に考えをまとめ終わったのだろう。よどみなく話し出す。

「先日、私が巻き込まれた『獣耳少女事件』については、知っているか?」
「ああ、確か学園世界中の動物が全部獣耳美少女に変わるって奴だろ?」
「そうだ」
「でもあれって、もう解決した事件だろ?それに、それとニィサンに何の関係が?」
「うん。実はそこのニィサンはな…猫なんだ」
「そっか猫か。うん確かに猫系っぽいな」
猫。そう言われて改めて竜之介はニィサンを見る。凛として、どこか泰然とした雰囲気。
確かにどちらかと言えば猫に近い気がする。
「猫系の人狼って結構いるんだな…うん?人狼?」
納得した直後、首をかしげる。
「光稜学園のあった世界って人狼いるのか?それに…」
竜之介はニィサンの傍らに置かれた刀を見る。
人狼にとっての最大の武器、それは自らの牙と爪。熟練した人狼ならその威力は“箒”や“遺産”にも匹敵する。
それに加えある程度以上の獣化状態だとそもそも武器を扱えなくなることも相まって人狼は竜之介のクラスである
“龍使い”以上に“武器”の使い手の少ないクラスだったはずだ。
「武器使いの…人狼?」
「違う」
竜之介の疑問に、あげはは首を振る。
「違う?どういう事だ?」
「だから言っただろう。ニィサンは猫なんだよ」
「???」
「…私が説明しよう」
困惑する竜之介にニィサンが声をかける。
「あの事件のあと、私は個人的にフランクラム教授に頼み、この姿に変えてもらった。その前まで、私はただの猫だった」
「…ああ、そっか。そう言うことか」
ニィサンの説明でようやく納得した竜之介が頷く。
「じゃあ、元猫の猫耳少女ってことか」
「そう言う事になる。猫の姿よりはあの子の手伝いもしやすいだろうと考えて、この姿を選んだ。
 刀に関しては、私は君たちの言う“転生者”に近い存在でな。前世で身に刻んだ剣の技を生かそうと考えての選択だ」
喋り終え、ニィサンは再び沈黙する。
「ああ、事情は分かったよ。で、俺に頼みたいことって?」
事情を理解した竜之介があげはに尋ねる。
「うん。実はだな…」
竜之介の問いにあげははわずかにタメを入れ、その頼みを口にする。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 19:11:27 ID:e6ER0KIu
ぱすてるチャイムContinue、好評発売中!
128猫耳少女?の悩み@学園世界:2009/03/08(日) 19:21:05 ID:GlfzSz97
「ニィサンに、お前のブラジャーを分けてやってくれないか?」
かな〜りアレな頼みを。
「はぁ!?どういうことだ!?」
思わず聞き返す竜之介にあげはが冷静に返す。
「ニィサンは最近まで猫だったから服を持っていない。学生服は購買で売ってたし、下はニィサンの知り合いから借りれたが、
 上は手に入らなかったらしい。それでお前のサイズがちょうど同じくらいだったことを思い出してな。
 お前なら月匣に入れて持ち歩いているだろうし、普段は必要ないだろうからな。ちょうどよいと思ったんだ」
そしてあげはと先ほどから沈黙を続けるニィサンがじっと竜之介を見つめる。静かに、じっと。
「う…いやまあそう言う事情なら…」
美少女2人に見つめられ、思わず“変身”しそうになっている自分を誤魔化すように自らの月匣に手を突っ込み、いくつかブラジャーを取り出す。
「すまない。感謝する」
それを受け取り、ニィサンは竜之介で笑いかける。
「う…いやその、困ったときはお互い様ってことで…そのってぇ!?」

ボン

一瞬目をそらし、再びニィサンを見た瞬間驚愕のあまり、竜之介は変身する。
「うん?どうかしたのか?」
目の前であっさりと学生服を脱ぎ、ブラジャーをつけようとしているニィサンを見てしまったのだ。
「ちょ…ちょちょちょちょっと!?何でここで」
「ああ、ここに来る間にこすれて痛くてな。それに別に気にすることも無いだろう?」
「いや気にするって!大体女の子がこんなところで!」
混乱する竜之介の言葉に、2人の獣耳少女は同時にキョトンとして言う。
「「…女の子?」」
「…え?」
その反応に思わず素になって聞き返す。
「ニィサンは、オスだぞ?あの教授が『獣耳の男にする機械なんて作る気が無い』と言うから女の姿だが」
「ついでに言えば、前世でも私は、男だったぞ」
2人の答えに。
「な、なんか騙された気がする…」
振り回されっぱなしの竜之介が汗をたらりと垂らしながら言った。



一方その頃。光稜学園では。
「あれ?ルーシーどうしたんだこんなところにうずくまって?」
「気にしないでください。ただちょっと自分の発育の悪さを呪っていただけです」
下着どころか普段着まで小さくて着られないと言われたエルフ耳の少女がどっぷりと落ち込んでいたりするのだった。



以上です。

>>127
名作ですよね。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 19:29:59 ID:e6ER0KIu
>>128
GJでした

ぱすてるチャイムContinueも好きだが、無印のほうこそ名作だと俺は思ってる
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 21:05:45 ID:U5yTs/Ay
ぱすちゃCがありならグリスヴァもありだなと思った今日この頃(横でプレイしつつ)
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 21:16:23 ID:40BOxi7P
学園世界の最終目標ってそれぞれの学園を元の世界に戻すでいいんだよな
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 21:29:37 ID:jxjsHCvc
それでいいんじゃね?
と言いつつ、あんまりだらだら続けると通常投下がし辛い空気になるからなぁ

なんかの時間的区切りつけるか誰か職人の勇気ある投下を待つかしかないけどな。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 21:45:47 ID:o+9RV2ev
>>130
あれ、時間単位が日、じゃなくて年、だぞw
どんだけ長いんだw
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:18:59 ID:1tb7gH8r
まかでみのケモミミ教授かよ。
納得した。
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:29:30 ID:r+oG0/lD
全板規制に巻き込まれてる作者もいるだろうなー
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 23:13:01 ID:jxjsHCvc
やめろよ……
いくら……いくら全板規制ったって、一年はねーんだ。
自分に言い訳するのは、そろそろやめにしよう……

大丈夫、俺たちの心の中には確かにあるだろ……?
いつまでも。いつまでも続きを待ち続けるという気持ちが……
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 23:55:24 ID:ylLDaox2
板別で年単位放置とかはあるけどね。


・・・・その場合は代理投下スレになんかアクション有るかorz
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 23:55:35 ID:VTRtLqt+
5年までなら待てる
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 23:56:33 ID:W1QnS3To
半年くらいは早いほうで、1年くらいは普通だよな
ここらへん近辺の板にいるとうっかり忘れるが
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 06:35:21 ID:HGc0Dz2E
>>132
いっそどっかにレンタル掲示板借りてそこに専用スレ立てて投下でも良いかもね。
確かルイズが召喚しましたスレで本スレ投下にふさわしくないって判断した作品はそっちに投下ってやってた気がするし。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 08:09:05 ID:hkkkFFl1
>>140
悪くない提案だが……

・管理人の問題
・過疎により落ちる可能性

の二点がクリアできないと難しいなー。
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 09:29:42 ID:HZTipVrO
今回は別に期間限定リレーでも何でもなく
単に手軽にSSを書くためのレギュレーションでしかないから、別にいいんじゃないのー?

少なくとも自分は何とも思わん。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 14:26:20 ID:hkkkFFl1
>>142
>>141の発言は読む側の問題じゃなくて、
書き手で他の話を投下し辛い人がいるんじゃないか?と考えた結果の発言だと思うけど。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 22:12:50 ID:GEofvSGa
142を書く側の発言と読んだのは自分だけか
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 23:49:07 ID:PpCeXKIZ
その為の、創作発表板では?

正直、NW縛りが……
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 00:29:04 ID:djJyY+Z5
え、マジで?
俺今現在進行形で執行部ネタ書いてるのに。

……投下は最速で土日予定だから、それまでに移動かそうでないか決定してほしいなぁとか自己中なこと言ってみる。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 00:36:32 ID:aJeZbI2z
いきなり創作発表板とか言われても懐かしすぎて反応できん。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 14:07:19 ID:zvaL40D6
>>144
ここにも居るぜ。
学園ネタSS、未完SSの続き、非学園ネタSS。どれでもこのスレにあったものなら作者さんが投下した時に投下すればいいだけの話。
読み専住人がごたごた騒ぐものでもない。
式神の城リレーは「東京に城が落ちてくる前になんとかしなきゃやべぇ!」っていうホットスタート型で、いつまでもダラダラ続けにくかった&異常に盛り上がっちまったからもあるし
学園ネタはリレーっていうよりはシェアードワールド用の共通設定として使えそうだから期限を設ける必要もないように思える。
もし誰かが学園世界の問題を解決してしまっても、”それ以前の時間軸”ってことで書きたい人はまだまだかけるんじゃね?
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 14:28:33 ID:djJyY+Z5
うーん……
たぶん>>143が言いたかったのは、書き手読み手の話よりも

> 書き手で他の話を投下し辛い人がいるんじゃないか?と考えた結果の発言だと思うけど。

のことの方だと思うんだが。

正直、今書いてる俺からするとこれまで頑張って書いてた人の投下場所を、
俺のネタとか話の流れとかで投下し辛い空気にするくらいなら、別の場所行けと言われれば行くけど。

しばらく学園世界の話しかレス続いてないから投下し辛いってならどこか行くし、別に構わないならここで落とすよ。


ところで、勝手に執行委員に桃月学園生1人、「学園都市」学生2名、私立穂群原学園生2名、火の国中学学生1名、外部協力者1名いれちまうけどおk?
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 15:18:49 ID:zvaL40D6
書き手側の意見として(名無しじゃなくてちゃんと分かる形で)「学園都市のネタが続いて他の作品投下しづらい」という意見を言ってる人を見かけた記憶がない
仮に、気にしている書き手さんがいるとしても、このスレで読み手書き手問わずに「今は学園都市ネタ以外は投下すんな!」なんて意見はまったく見かけていない
上記二点の理由から「書き手側が投下するネタを自重する必要はない」と思うぜ?
むしろこうやって書き込んでる俺が言うのもなんだけど、こういう話題でgdgdするほうが良くない気がする
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 18:54:04 ID:sWklZ5an
>>150同意。
余計な心配してgdgd議論するより、エールの一つも送ったほうが建設的だと思うぜ
というわけで、ネギま×ちびらぎの人へ、続き楽しみに待ってまーす!
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 19:30:58 ID:aDnJvH4L
>>149
執行委員のメンツは基本「言ったモン勝ち」でいいんじゃね?
上限とかも決めてなかったよな。


というわけで、薙刀が超絶に上手い某美佐輝学園(合ってるかな)の生徒会長をですね(ry
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 19:35:51 ID:ot/mO7QJ
元蒼雷の人だっけ?

単行本で確認したら美咲輝学院だった。
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 20:08:46 ID:djJyY+Z5
>>152
むー。いや、なんか宣言とかしたら被らずにすむかな、とか思ってみたんだけど。
必要なかったなら、ムダにレス消費して申し訳ない。

つーか俺色々ムダに考えすぎなのかもな。つくづく申し訳ない。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 20:16:03 ID:ot/mO7QJ
というか最低限>60を満たしてさえいればあとはSSを書くのに使いやすい設定を
作者が取捨選択すればいいんじゃないか?


あとは「いい大人なんで他人や他作品のキャラを無闇に貶めないように」あたりを守ればいいかと。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 20:30:01 ID:WQa3Gpsr
目録の学園都市だけでも沢山学園があるから執行委員が数十人や百人以上いても不思議じゃないな
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 20:55:08 ID:aDnJvH4L
>>153
それそれwやっぱり字が違ったかww

あの人なら他の学園メンツにも対抗できると思うんだ
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 21:33:33 ID:w4YKpnGT
あれ?目録の中に原野否学園(とっても少年探検隊)がないな
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 21:42:53 ID:VrmMSQ4W
>158
おお、そう言えば。

しかし、彼ら探検部は人数が多いので、NWキャラを入れるのが大変だ。

「と言うわけで、今回我々は執行部の依頼を受け秘宝を探しに……」
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 21:56:59 ID:MZ+cRFsa
双子の片方が風邪引いて、カメラ担当ということで。
161少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/11(水) 22:25:13 ID:/Pq5YW1W
長めのを投下します。多分最終的には前後篇か3回位になる予感。
162少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/11(水) 22:27:44 ID:/Pq5YW1W
静かに暮らすこと。それが少女に与えられた使命だった。

日曜日。
全学園の生徒が一斉に休みになるこの日、学生たちが行きかう町並みを、少女は1人静かに歩いていた。
少女に友はいない。
この世界に無数にある“学園”の中ではごく普通、と言う評価の少女通う学園の中で、少女は孤独だった。
別段それを気に病んだことは無い。いなかったからと言って困ったことも無かったし、普通の女の子と慣れ合う気にもなれなかった。
以前は休みの日には時折図ったように現れる青年と約束し、出かけることもあったが、こちらに来てからはそれも無くなった。
…青年は“学生”では無かったから。

少女はただ静かに暮らしたかった。父に言われたとおりに。
だからこそ。
「も、モンスターだぁ!?」
街中に突如怪物が現れ。
「グハ…に、逃げろ…」
吹き飛ばされた極上生徒会の執行委員が息も絶え絶えに少女に声をかけ。
「ひゃっほう!女…女だぁ!」
少女が逃げられないよう怪物が結界を張った時。
「…はぁ」
1度だけ、溜息をついて見せた。

少女を取り巻くのは2mを超える“鬼”とそれよりは小柄な数体の“子鬼”たち。
「うまそうだ…」
「くっちまおうぜ…」
「右腕は俺のだ…」
「じゃあ俺は左脚を貰うぜ…」
子鬼たちが少女を取り囲み舌舐めずりをしながら誰がどこの部分を食らうかを算段する。
「おっと逃げようなんて思うなよ?」
「異界化させたぜ?逃げられねえよ」
「精々うまそうな悲鳴を上げて俺らに食われろよ?」
脅しの言葉を口にして少女をおびえさせようとする子鬼たちを、少女は冷めた目で見つめる。
「なんか喋れよ!」
「ぶるっちまったか?」
「助けを呼んでみちゃどうだ?誰も来ねえけどな!」
子鬼たちの言葉を聞き流しながら、少女は自らのやるべき行動を取った。
足もとに落ちていた剣(先ほどまで執行委員が使っていたものだ)を拾い上げ、構えたのだ。
「…!ひゃっほう!おもしれえじゃねえか!」
「馬鹿だろ?怖くておかしくなったのかい?」
「いいぜやってみブヒャ!?」
返答の代わりに放った一撃が瞬時に子鬼を絶命させる。
「こ、このアマ!?」
「よくもやりゲヒャ!?」
流れるように、もう1体。
「死、死ねよてめえ!」
ようやく事態を飲み込んだ子鬼が振り下ろした棍棒を半身をそらしたのみでかわす。
「な!?」
驚愕に目を見開いた子鬼が最後に見たもの。
それは眉間に迫りくる紅の混じった銀色の刃だった。
163少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/11(水) 22:30:26 ID:/Pq5YW1W
「…ウガァ!」
一拍遅れて振り下ろされた巨大な拳をバックステップでかわす。
その場に残された子鬼の死体が一瞬にして肉塊に変わる。まともに当たれば少女も同じ運命をたどるだろう。
だが、それを目にしてなお、少女の目は冷めたままだった。
「…モンスターと言っても、斬れば死ぬのね」
冷めた目のまま、ポツリとつぶやく。
少女のいた世界では、おとぎ話の中の存在にすぎなかった、モンスターと言う存在。
だが、それは大して恐ろしいものではない。少なくとも、今、この場にいる連中は。
これなら充分な訓練を積んだ傭兵辺りの方がよっぽど強いし、少女の“仲間”と比べればそれこそただ力が強いだけの木偶に過ぎない。
そう判断し、少女は終わらせるべく再び構えを取る。
「…プレシズ・ヘル」
呟くように技の名を口にし、剣と共に舞う。流れるような連続攻撃。それが終わった時。
「ガ…ガヴァ…」
切り刻まれた巨体の“鬼”が血泡を吐きながら倒れ伏し、淡く光る緑の液体へと変わる。
よく見れば先ほど少女が倒した子鬼たちも同様に緑の液体に変わっていた。

「…終わったみたいね」
辺りを包んでいた“異様な気配”が消えたのを確認し、少女は持っていた剣をその場に捨て、身を隠して、気配を断つ。
「おい!大丈夫か!?」
その直後、恐らくは執行委員の仲間であろう少年たちが倒れた少年に駆け寄る。
「あ、ああ…?確か俺は」
目を覚まし、状況が分からないと言うように辺りを見渡す少年。
「すげえじゃねえか!1人であいつら全部倒すなんて!」
「え?いや俺は確か…あれ?あの子は?あの、お下げの女の子」
「は?そんな子いないぞ?もしかして、頭でも打ったのか?」
「つうかひでえ怪我じゃねえか!よっし、すぐに運ぶぞ」
「おう!行くぜ」
「あ、おい…いてえ!?もっと優しく運べよ!」
慌ただしく去っていく少年たちを黙って見送ったのち、少女はそちらへと視線を向ける。悟られぬよう、さりげなく。
先ほどから感じる強烈な視線の正体をそれとなく確認する。野次馬に紛れた、その気配を。
そこに立っていたのは人ごみに紛れて立つ、やせぎすの少年。手には本くらいの大きさの箱を持っている。
ねっとりとした嫌な気配。かつて、少女の“仲間”であった、爆弾狂のテロリストを思い出し、少女はわずかに眉をひそめる。
その少年は事件が解決し、波が引くように去っていく野次馬にまぎれその場を立ち去っていった。
そして、再び平穏を取り戻した町並みの中で。
「…はぁ」
この学園世界の厄介事に巻き込まれたことを自覚した少女が2度目の溜息をついた。

少女はただ静かに暮らしたかった。
己が正体を悟られないように。
…いつか、転移前、少女のいたあの国が滅ぶ、その日まで。
164少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/11(水) 22:31:16 ID:/Pq5YW1W


「お呼びですか」
輝明学園。多くの“ウィザード”を抱えた学園の校長である荻原総一郎に呼ばれ、斉堂一狼ははせ参じた。
「うむ。1つ、おぬしに頼みたいことがあってな」
一狼の問いに重々しく頷いて、荻原は一郎に問う。
「…先頃のモンスター襲撃の件は知っているかの?」
「…は。何でも昨日は白昼、居住区に現れ、一般人生徒6名が軽傷、執行委員1名が重傷。そう、聞いております」
「うむ。それなんじゃがな…」
言いながら荻原は懐から1つの瓶を取り出し、置いて見せる。
中に入っているのは淡く光る、緑色の液体。
「これはな、現場に落ちておったモンスターの“残骸”じゃ」
「残骸…なるほど。かすかにプラーナを感じます」
じっと観察し、一狼はすぐにそれの本質をつかむ。これは相当量のプラーナを含んでいる。
「うむ。調べてみたところ、これはワシらの言うところの“魔石”に近いものらしい」
「魔石ですか?と、言う事は…」
「ああ、そのモンスターは本来“この世界にいてはならぬもの”と言うことじゃろうな」
“魔石”それは第8世界に顕現した“異形”が残す、プラーナの塊。
“常識ならざる存在”が第8世界に存在するのに必要なエネルギーの電池と言った類のものである。
「これだけでは無い。これまでのモンスターの襲撃でも何度か同じものが残されておった。
 …どれも人が多い場所、時間に起こった“襲撃”でばかりな」
「つまり…誰かが“召喚”している可能性がある、と?」
「ワシはそうにらんでおる」
クリスマスの事件を経て大きく成長を遂げた少年を頼もしく思いながら、荻原は再度頷いて見せる。
「どこのものがやっているのかは分からん。それだけに厄介なのだ」
この学園世界にはモンスターの“召喚”を生業とするものたちも少なくない。
実際に輝明学園にもエミュレイターと契約し“魔王”を召喚する、侵魔召喚術師と呼ばれるものたちがいる。
それだけに、下手に生徒会に任せては、いらぬ軋轢を生むかもしれない。
「…了解しました。僕にお任せ下さい」
そこまで悟り、自分が呼ばれた意義を理解した一狼が、静かに荻原に告げ、その場より立ち去る。

この学園世界において、闇から闇に葬り去るべき案件。
それが発生したときに動く、いわば影の執行委員と呼ばれるべきものたちがいる。
執行委員になりうるだけの“力”とその力を明かせぬ“事情”を持つ学生たち。
あるいはひそやかに光の当たらぬ場所からこの世界を守る道を選んだものたち。
学園世界の長老、『ジジイ四天王』の指揮のもとに動く彼らには一つの名がある。

「うむ。頼んだぞ。“カゲモリ”斎堂一狼よ」
この学園世界において、下がる男にも匹敵する“力”とそれを明かせぬ“掟”をあわせ持つ、1人の学生忍者にちなんだ名が。



本日はここまで。少女の名は次回に明かす予定です。
そして1つだけ言うと…Rは正直アレだった。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 22:35:24 ID:aDnJvH4L
>>164
>ジジイ四天王
一人始末すれば、めでたくG−3になってマグネットコーティングが使えるようになるのに・・・・。

とまれ、GJでした。
少女の正体がさっぱりわからんw
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 22:52:15 ID:aJeZbI2z
>165
技名でぐぐるんだ!


しかし極上生徒会の執行委員と書かれるとついつい個人的な脳内イメージはあの制服を着た女子になってしまいましてですね、
つまりなにがいいたいかというと要するにアレですよあれ、一言でいう所の女装ショt(
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 23:14:40 ID:kJMYYTRe
モトネタガ カカレナイト ホカンコノ ナカノ ヒトハ スゴク メンドウデス
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 23:40:05 ID:1qH7z2Rf
>>164
GJです。GJなんですが・・・テンプレに

>・各作品の初投下時は、クロスする作品名を最初に御願い致します。
>そうすれば読者も読み易いでしょう。

と、あるんですけど・・・

保管庫の中の人、いつもお疲れ様です。クロス先は、少女が「みつめてナイト」、“鬼”がメガテンだと思います。
違うかもしれませんが。
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 00:06:07 ID:G4/trvE2
なるほど、手が刀傷だらけでだから夏でも手袋を外さない
みつめてナイトの真とか、裏とか付くヒロインのことですね

鬼の方は異界化と緑の液体でメガテン系だとは予想付いたけど
170とある机少女の憂鬱@学園世界:2009/03/12(木) 00:27:04 ID:VzxXSFhS
テンプレを忘れていました、すいません。

>>88-89のクロス先はGS美神です。
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 00:37:25 ID:3vYZyR9y
むぅ……しかしどうするかな。
書こうとしてた執行部が「うわーもうだめだー」要員になってしまった。

……正直な話、学校内の風紀委員とかはいくらでもそうされて構わんのだが
柊とか含めてめちゃくちゃクセのある少数精鋭的なイメージでキャラかき集めて書いてたから投下し辛い。

アレか。各学園から1名ずつ選出された「執行委員」を「うわーもうだめだー」要員にして
今書いてるのを「特別執行委員」として用語書き直すか?

別に裏の執行委員がいることは歓迎なんだけども。
やっぱり書き出す前にレギュレーションきちんと決めとくべきだったかなぁ……。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 00:45:10 ID:b+qu7q42
なぁに、ロンギヌスしかり神聖騎士団しかり
ストーリー展開上、特別部隊はうわーだめだー要因になる事はよくある事さ
そこから必要な人員を「リベンジ」とか「決死の覚悟」とかで立ち上がらせ
見事にやり返すという手法で燃える展開に。とすれば問題ではない…はず
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 00:49:51 ID:jhAvxaN0
>171
精鋭のはずのロンギヌスも「うわーもうだめだー」要員になっているんだから
そこは拘らなくていいんじゃないか?

大体超人ばかりにしてしまうと輝明学園とか美咲輝学院とか番長学等の超人的な
能力者が多い学校しか出せなくなってしまうじゃないか。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 00:59:53 ID:QIiLdOYo
エキストラなら関係ない……よ?
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 01:15:28 ID:3vYZyR9y
いや、こりゃたぶん俺が悪いわな。

「執行委員」ってのが「学校間のいざこざをなんとかする集団」だって書いてあったのを見た気がして
「あぁ、そりゃきちんともめ事なんとかできる実力がある人間が集まってるんだろうな」って安易に解釈しちゃったんだよなー。

実際別にどこかの学校の○○、みたいに個人的なキャラの絡みや動きがあるのは当然面白いんだけど
ある程度きちんと働いてる治安機関がないと、世界が安定しなさすぎるから。
あれだ。成田の橋シリーズの護衛部隊とかみたいなイメージ。

別にうわーだめだ要員作らないと、柊の活躍場所が単独になるんだよな。

エリーとか宗介がそういう「一山いくらのその他大勢のNPC」と同格とされたら、なんか変な感じしないか?っていう話なんだけど。
176少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/12(木) 02:09:19 ID:BKc3PstB
>>175
ぬう。すみません。

私としては>>99の『基本資格みたいなもの』と言う所から『なるのはそんなに難しくない』のではないかと言う考えでした。
それで、その中でも宗助やエリーなど特殊な連中は活躍度の高さから目立つ、と。

言わばタクティクス系で言う顔キャラと汎用キャラ位には性能差があるのではないかと言う考えです。
必ずしも荒事に向いている連中のみでもないだろうし。

…ようするに悪魔4体を1人で相手して勝てる執行委員はさほどいないんじゃないかと。
少女の方は学園世界でもトップクラスの剣の腕前と考えています。精鋭中の精鋭であろう8人の中でも上位の強さだったので。
177少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/12(木) 02:40:27 ID:BKc3PstB
あ、ちなみにクロス先は>>168の言う通りで問題ありません。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 02:47:25 ID:oAopn9np
つ負けロール

うわーだめだーを行うとしても、他の隊員に比べてそれなりに善戦した描写なりを加えれば違和感は薄まると思うぜ
柊はもちろん、宗介やエリーだって、完全無欠の完璧超人って訳じゃないんだし、



例の隠密の人はクールで格好いいキャラなのは間違いないが
個人的にはあんまり強いという印象はなかったっけなぁ(まぁその前に戦う父とか別ルートのマザコンの方が強かったせいもあるが
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 03:16:50 ID:F5tDpCHh
っていうか、柊や宗介だと
「うわーだめだー」
が実によく似合うわけだが。

流石にNPCとか脇のときだけど。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 07:32:29 ID:g5vNOTY9
>>175
ちょっと前に話に出てた各校独自の風紀委員とか美化委員とかをうわーだめだ要員にしとけばいいんじゃない?
それでも小国の軍隊に匹敵する戦力だろうから敵の強大さの演出は十分できるだろうし。

「くそ、くたばれエミュレイターども!」
「狂的科学研究部から調達した怪光線銃、どこに飛ぶのか分からねえよ、これ!」
「もう少し持ちこたえろ、今モナドトルーパー部と航空研究会に支援爆撃を要請した!」
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 08:34:59 ID:3vYZyR9y
負けロールってのは後に勝つ時ドラマチックになるから使う手法であって
単に誰かの強さを現すための存在は単なる「引き立て役」って言うと思うのだがどうなんだろうな

しかしこんなことでgdgdするのもスレに対して申し訳ないか。
さてどうするかなー。みんなの認識とは違う設定で書き進めちまってるから流石にマズいよな、お蔵入りさせるか。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 10:24:44 ID:K2rh+hkJ
そうだよな、一人で魔王と戦える柊も、何人もいたら雑魚だしな。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 13:41:15 ID:pTjru27l
>>181
あんまりやりすぎると誘いうけUZEEEって勘違いされちうぜ、ハニー?
別に学園世界系だからってなんでもかんでもきっちり合わせないとだめなわけないじゃん
「いろんな世界の学園が召喚された」っていう基本設定さえあえば、委員会だのなんだのが存在してない前提のストーリーでもいいと思うよ? 極端なこと言えば
というわけで、今すぐ投下する作業に戻るんだ! はりー! はりー!

>>182
異世界の柊達軍団ですねわかりまs
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 19:39:28 ID:GOQFF6fC
優秀なはずのキャラや強いはずのキャラが「うわーだめだー」となるからこそ敵の強さが伝わってくるんだ
雑魚が何人やられたところでその敵が強かったのか雑魚が弱かっただけなのか判らん
べジータがやられたら「こいつ強えー」とおもうがヤムチャがやられたところで「まあヤムチャだし」ですまされる。そういうもんだ
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 19:43:04 ID:47DD/TUT
NWとクロスした時点で、物語上の倒す運命に無いキャラクターだと
どんなに強く(LV高くても)てもボスに勝てないの法則に支配されるんですね、分かります
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 20:35:47 ID:QIiLdOYo
そうそう。
逆にいえば、運命さえ宿っていれば、特殊能力のない生徒でも倒せる。

まーりゃん先輩とか。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 20:42:26 ID:voClSd6V
番長学園がクロスしている以上、30人以上の集団になるとモブにされる。
大魔王だろうが伝説の勇者だろうが。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 20:48:36 ID:AEQxyD0I
神聖騎士団みたいな「うわーだめだー」がパターンになってる最強集団があればいいんだよな
学園物縛りではそういう集団ないかな
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 21:14:09 ID:QIiLdOYo
>187
30人だっけ?
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 21:28:05 ID:jhAvxaN0
番学は100人だった希ガス。
そして雑魚の数=HPになるんだよな。

宗介「単分子カッターの攻撃でミノタウルスの集団に172点のダメージを与えたぞ、GM」
GM「じゃあミノタウルスの集団の中の172匹が『うわーだめだー』とか叫びながら吹っ飛んでいくねw」
191少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/12(木) 22:03:20 ID:BKc3PstB
今回の議論で、1つ話を思いついた。
クロス先は「ぱすてるチャイムcontinue」なんだけど、書いてもいいものかな?
前回、いいところなしで負けた1人の執行委員。彼のフォロー的な話になると思う。
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/12(木) 23:40:35 ID:xtymo+Wl
OKです!
お願いします
193少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/13(金) 04:47:45 ID:FyBxdpwy
>>192
では今週末までに完成させて投下いたします。
194みつやん:2009/03/13(金) 10:34:03 ID:/iyePlDk
連載の方が資料の問題で進まなくなってご無沙汰してたら、なんかものすごい盛り上がってて驚いた子です(挨拶)
ちなみに、資料の問題とは、我が家のPS1st(十余歳)が老衰を訴え始め(ロードで固まる)、LOMが進められなくなったこと……(汗)
我が家にあるPSは、1stとPのみ! ……この機会に、今更ながら2nd買おうか悩んでます。3ndって1stソフト対応してるんですか?(汗)

そんな事情で、ハードの問題が解決するまでLOMクロスお休みです。せっかくくれは合流したのにっ……!(泣)
……で、書きたくても資料ないし、せっかく盛り上がってるし、もらえるネタは拾っとけ! な精神で学園世界便乗を企んでみます。
それで一個質問というか確認。

>>78様こと『エレニアックの迷子』作者様
戦争ボケ軍曹とヴァイオレンスツンデレヒロインのカップルが大好きなみつやんは、是非彼らを出したお話を書きたいのです。
具体的には、陣代高校がこの学園世界に墜ちた直後、宗介と柊のファーストコンタクト的なお話を。
そちらで書かれたエピソードより前の話、という形になるのですが、もしそちらでも過去話とか考えてたら被っちゃうよなぁ、とか思って……
……問題ないでしょうか……?
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 13:25:38 ID:yizKXRWn
Wikipediaソースですまないが
PS3の下位互換性は
>日本国内では20・60GBモデルのPS3ではPS/PS2用のゲームソフトを、40・80GBモデルではPS用ソフトのみがプレイ可能である。
>メモリーカードスロットがないため、PS/PS2のセーブデータを取り込むには「メモリカードアダプター」が必要(PS2用ソフトで遊べない40GBモデルが発売された今では、販売されている箇所が少なくなりつつある)。
ということらしい。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:09:07 ID:BwdF+FEJ
無難に中古のPS1本体をもう1機買った方がいいんじゃないか?
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 18:32:39 ID:WQqa0sxh
お金があるならPS2とPS3、というパターンが理想かもしれない。
お金が無いなら投げ売りされてる初代でも。

ただしアクロバッティックな置き方をしないと動かない可能性はあるけどね!
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 18:41:51 ID:H5h3uEsJ
アクロバテックというと、縦に置いたりひっくり返したりですね(実話)
199みつやん:2009/03/13(金) 18:52:01 ID:/iyePlDk
>>195様、>>196様、>>197様、>>198
わざわざありがとうございます!
うーん、難しいなぁ(汗) お金はあんまりないですし、普通に安い初代を買うか……
って、アクロバットな置き方……!?(汗) ……それやったら、うちの子動くかな……?

あと、友達が「実家の倉庫においてきた初代ならタダであげてもいい。倉庫がかなり散らかってるから、発掘作業は手伝ってもらうけど」という申し出を。
発掘って、埋まってるの?……動くのか、そのPS(汗)
…………とりあえず、うちの子をアクロバットセットで試して、それで駄目なら、
来週その友達の実家の倉庫の整理手伝って、貰えたやつが動くか動かないかで改めて考えます(汗)
200 ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 19:19:03 ID:41B9Uw9V
みつやんさん、新作期待してます。

「月と星と柊と」第11回の投下予告に来ました。

学園SSの流れについては「これが終ってから投下すればいいや」と思って、推敲を繰り返しているうちに日にちが経ってしまいま
した。「自分の投下で流れが変わったら気持ちいいだろうな」とか「ガン無視されて雑談が続いて、自分の作品が“その程度でしか
ない”と証明されたら恐いなぁ」とか思いましたけど、流れ自体が悪いとは思いませんでしたよ。

ただ、このスレに投下する以上はNWキャラと他作品キャラの掛け合いを中心にしないと。
スレを見ていて時々思うのですが、自分の好きなキャラの名前を出したいだけで、NW勢と絡ませる気も、そもそも、お気に入りのキャ
ラに何かをさせるつもりもなさそうな書き込みをチョクチョク見かけるのは気になりますね。

ひさしぶりなので、作品紹介を少し。

クロス先:「超女王様伝説」 及び 「セブン=フォートレス」シリーズ

前回までの粗筋
 故郷・エル=ネイシアが古代神の手に落ちた事に気付き、帰郷の準備を勧めるアンゼロットだったが、第三世界を征服した古代神・古女
王(エンシェント★クイーン)エルヴィデンスは、自らが打ち倒したエル=ネイシアの“世界の守護者”にしてアンゼロットの初恋の相手
である星王神エルンシャを冥魔王とし、第八世界へと送り込む。
 アンゼロットを攫い、忘却世界・ラグシア城跡 100階ダンジョン最深部に篭ったエルンシャは儀式魔法によりアンゼロットと幻夢神
の接続を断つが、柊たちの活躍により、肉体こそ無くなったものの柊を依り代にして復活し、正気を取り戻す。
 だがしかし、ベール=ゼファーの写し身を依り代に、自らの写し身・闇風姫(シャドウ★ゼピュロス)を顕現させたエルヴィデンスはア
ンゼロットが八大神から切り離されている今こそ好機と判断、アンゼロットを捕らえて自らの本体の封印を解かせるべく、ダンジョン中の
冥魔を呼び寄せて柊たちに戦いを挑んできたのだった。


では21時50分から投下します。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:39:48 ID:tIkTxhUn
この発言を勇気あると受け止めるべきなのか、空気の読めないと言うべきなのか。
ちょっと悩むところだな
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:03:58 ID:6Egtz9vR
普通に連載してる人の方に空気読めってのは流石に何様って感じだぞ。
むしろ学園の方が道を譲るのが筋だと思うんだが?
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:08:15 ID:lBbW+KvZ
>>200
支持します。
楽しみにして待っていますね。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:14:05 ID:tIkTxhUn
>>202
それはごく当たり前のことだよ。
別に口挟む気はないしむしろ歓迎。
俺が言いたいのはこっちな?

> スレを見ていて時々思うのですが、自分の好きなキャラの名前を出したいだけで、NW勢と絡ませる気も、そもそも、お気に入りのキャ
> ラに何かをさせるつもりもなさそうな書き込みをチョクチョク見かけるのは気になりますね。

ちょっと前にこれでグダグダ言ってたやついたじゃん。
名前が出てる状態で、そいつにケンカ売ってるも同然なんだよな。
俺としては作者の考え方には肯定的だけど、
読み手のかなりの数の人間にケンカ売ってる発言して大丈夫なのかなって心配になった、とゆーこと。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:46:45 ID:BwdF+FEJ
逆にそういう発言をさせるほど読み手側の空気読んでない発言が目立つと言うことじゃないか?
読み手の漏れらが某スレで言うところの「読み手様w」になったらSSスレはおしまいだぜ?
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:55:23 ID:6Egtz9vR
まぁそれぞれ色々思うところがあるのは承知だが、今ここでグダグダし始めても仕方あるまい。
とりあえず月星柊の人への支援へ向けて全裸待機だ。
207 ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:03:39 ID:41B9Uw9V
ども。「月と星と柊と」第11回を投下します。
スレの現状については自分でもちょっと言い過ぎた気はするんですが、SS投下直後に投下無視してスレ違いの雑談は始まったときは流石
に思うところがありました。いや、俺のが無視されたのは詰まんなかったからでしょうけど。

では、投下しますね。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:04:41 ID:6Egtz9vR
ばっちこーい
209月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:05:38 ID:41B9Uw9V
 一瞬で背後を取った黒翼の戦姫は、柊の背骨と肩甲骨の間に槍を突き立て、背中から胸を貫いていた。

「ぐ・・・がぁっっ・・・てめっ・・・・・・く、空間転移・か・・・・・・」

 呻きながら首を捻り、背後に視線を向けようとした柊を
 凛々しさと妖艶さを兼ね備えた少女の左手と両の翼が優しく抱きしめ
 豊かな双丘が、鎧越しに柊の背中に押し当てられる。
 
 たおやかな腕が肩越しにまわされ、細く美しい指が柊の胸を妖しく撫でまわし。
 右の黒翼が、ウィッチブレードを握る右腕を押さえ。
 左の黒翼が、晶の魔剣を握る左腕を押さえ付けた。

「柊蓮司よ。お前の誤りも正しておこう」
「ぉ・・・おおっぉぉっぉ・・・ぉ・・ぁ・・・」

 右手で槍を捻り、柊の喉から漏れる苦悶の声を心地良さそうに聞きながら。

「お前が私を倒せないのは、私が運命に守られている為、ではない。私は、如何なる運命にも縛られてはいないのだ。
 私はより弱き者には敗れず、より強き者にのみ打ち倒される。そして、お前の力は私に及ばぬ。それだけの話だ」

 黒髪の戦姫は色鮮やかな唇を柊の耳元に寄せ、甘い声で囁いた。

「ベール=ゼファーとて、其の気に成りさえすれば、何時でもお前を殺せたのだ。とても、とても簡単にな。
 だが奴は下らぬ縛りゲーに拘り、幾度となく敗退を繰り返してきた。他の魔王にしても、大規模な儀式魔法に力の大半を注ぎ込んで
 弱体化して尚、充分な護衛を置かず、無防備になった瞬間を狙われて倒されてきた。
 裏界の魔王は、決して本気を出そうとしない。其ればかりか、自らハンデを付けたがり、折角手にした優位を容易く溝に捨てたがる。
 何故だと思う、柊蓮司?」 

 言葉とともに、槍を持ち上げる。柊の足が床を離れ、声にならない苦鳴が上がる。

「裏界の三下雑魚魔王どもは、な。既に、諦めているのだよ。天界への復讐も、表界の侵略も、な。
 あの下司どもは、ただ、弱者を虐げる事で自分達の弱さを忘れたいだけなのだ。
 だから、“本気を出しさえしたら、自分はとても強い”と思い込み続ける為に、絶対に本気を出さないのだ。

 其れにな。もしも表界を滅ぼせてしまったら、次は天界と戦わねば成らぬが、奴等にそんな気概は無い。
 奴等は、無力な人間を相手に威張り散らしたいだけなのだ。本当に表界を滅ぼす気などありはせぬのだ。

 お前はそんな情けない連中の隙を付いて倒してきた。
 其れが出来るように、幻夢神が取り計らっていたのだと思っていたのだが・・・・・・
 裏界のぽんこつどもの愚昧さは、幻夢神が手を下すまでも無いほどだったのだな。

 お前に運命の加護が無かったのならば、お前が魔王に勝ってこれた理由は他に考えようも無い。
 私が奪ったベルの力と、お前の貧弱な実力を照らし合わせるに、な」

 槍を更に高く持ち上げ、より強く柊を抱き締める。柊の耳に唇を押し当て、睦言のように囁く。

「痛いか? 苦しいか? 柊蓮司。痛いだろうな。心臓を、貫いたのだからな。
 だがな。お前は死ねんよ。お前の取り込んだ星王神の力が、死ぬ事を許さぬ。
 首が飛ぼうが、脳が潰れようが、エルンシャがお前を死なせはせぬ。なあ、そうだろう、エルンシャよ?」
『当然だ。何があろうと、柊君を死なせはしない』

 激痛に声も無い柊を措いて、古女王は仇敵に語りかけ。
 異世界の“世界の守護者”は、頼もしくもあり、聞きようによっては残酷にも聞こえる答えを返した。
 柊の体内ではエルンシャの治癒力が駆け巡り、その命を繋ぎ止めてはいたが、瘴気の槍が刺さったままではそれ以上の回復は適わず、
ただ、柊に致命傷の苦しみを与え続けるのみだったのだ。

 いっそ・・・・・・このまま死なせて欲しい気も・・・少しだけ・・・ほんの少しだけ、しなくもないぜ。
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:06:46 ID:6Egtz9vR
四円
211月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:07:01 ID:41B9Uw9V
 柊が頭の片隅でつい気弱な事を考えている間も、異世界の神々は更に言葉を交わし続けた。

「エルンシャよ。私は此れから、この男に己の無力さを思い知らせて遣る心算だ。
 そして心を砕き、体内からお前を引き抜き、私の操り人形にしてアンゼロットに差し向け、奴に殺させるのだ」
『愚かな。あの優しいアンゼロットが、大切な友人を手にかけるはずがなかろう』
「かけるさ。世界を守る為に必要ならば、な。実際に、イクスィムにはそうしたのだ」

 エルヴィデンスは薄く哂い、柊を抱えたまま身体の向きを変えると、広間の向こうにいるアンゼロットとコイズミの後ろ姿を、胸の
痛みに耐え続ける柊の視界に入れた。
 二人は冥魔の群れへの対処に追われて此方の様子を覗う余裕もなく、柊の苦境に気付かぬまま、ダンジョン中からこの部屋を目指し
て集まってきた白狼と海魔と魔梟と黒豹と黒天使へと魔力を込めた光を放ち続けていた。

「アンゼロットは柊蓮司を倒すだろう。そして、悩むのだ。
 本当に、そうする事が必要だったから殺したのか? それとも、心の底ではこの者を羨み、憎んでいたからなのか、とな。
 其の迷いこそが、私の精神干渉への抵抗力を下げるのだ。お前は実に便利な道具だよ。“下がる男”」

 戦姫は再び向きを変えて翼を開き、柊の背中に左手を当て、アンゼロット達とは逆側へと、掌から放った超高密度の圧縮空気で勢い
よく打ち出した。

「ぬぉぉぅっっ!!」

 血の帯を引いて宙を飛び、広大な封印の間を横断する。明滅する魔術文字がびっしりと掘り込まれた壁が瞬く間に近づいてくるのを
しかと見据え、柊は空中で姿勢を整えて両脚で壁に“着地”、全身をバネにして衝撃を吸収し、床に飛び降りて。
 直後、熱いものが喉をせりあがり、盛大に吐血した。

「ご、がぁっ・・・・ごほっ・・・・・げほっ・・・・・」
『今、治療しよう、柊君』

 慈父神の優しい声が脳裏に響くや、暖かいものが全身を満たし、気付けば背中から胸へと開いた穴は跡も残っていなかった。
 まだ少し肺の中に血が溜まっていて気持ち悪いが、闘争の高揚がすぐに忘れさせてくれるだろう。

「お・・・・・・さんきゅ、な。さっきは不意を付かれちまったが、もう二度とあんなヘマはしねぇぜ!」
『頼りにしているよ、柊君。君も私を信じて、防御と回復は私に任せて攻撃に専念してくれ』
「言われるまでもねぇ!!」

 言って柊は晶の魔剣を月衣に仕舞うと、自分の魔剣を両手で強く握り締め。
対する戦姫は、大きく黒翼を広げて左手を振り上げた。

「さあ来い、柊蓮司。お前の無力さを教えてやろう」
「いちいちフルネームで呼ぶんじゃねぇ!!」

 柊は咆哮とともに床を蹴り― 直後、正面から吹きつけた突風に出鼻を挫かれた。
 次いで、柊を包み込むように球状の結界が形成され、月衣の“常識”遮断の力すら書き換えて死を齎す真空を作り出す。
 柊の全身の毛細血管が破裂し、噴出した血潮が結界の内側に張り付いて内部を覆い隠し―
 
(ミスったな!)

 エルンシャの治癒魔法に癒されながら柊は心の中で快哉を叫び、血煙を隠れ蓑に床に転がっていた金ダライ ― 上の階で柊が落と
し穴に投げ込み、丁度、この部屋でエルンシャに挑んでいたベルの脳天を打った物 ― を敵のいる方向に蹴り飛ばして囮にすると同
時にウィッチブレードに飛び乗り、真上から真空結界を脱出して奇襲をかけ― ようとして。
 横殴りの突風に吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。

「ぐ、ふぉっっ、つっ、ぃってぇ―」
「素人の浅知恵だな」

 顔を床に打ち付けた柊の耳に、エルヴィデンスの嘲笑が突き刺さる。

「お前も神々の戦場に立つつもりなら、プラーナの反応で敵を“視”ろ。肉眼など―」
212月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:08:42 ID:41B9Uw9V
「―っるせぇよ!」

 柊は叫び、敵の台詞を遮って身を起こし。
 迎え撃つ戦姫は左手を一振りして鎌鼬を、翼を羽ばたかせて高密度に圧縮した瘴気の散弾を撃ち放つ。

 無数の鎌鼬と瘴気の弾丸が織り成す弾幕の中を、ジグザグに走りながら掻い潜る。
 その一発一発が、先日スクールメイズで出会った錬金術師見習いの少女の放ったディバインコロナを遥かに凌ぐ威力を持った攻撃魔
法の数々を、或いは避け、或いは魔剣で迎撃し、或いは多重障壁を信じて自らぶつかり、プラーナを振り絞って耐え忍び、少女の姿を
した邪神を自らの剣の間合いに捕らえるべく距離を詰める。

 ウィザードが魔王に挑む際には、先手を取って一気に畳み込み、何もさせずに倒すが鉄則。
 その定石に則るべく全身からプラーナを吹き上げて迫る柊に、戦姫はその手の槍を向け―

「タンブリング・ダウン」

 意識を刈り取った。

 一瞬の空白の後、肩に鋭い痛みが走り、すぐに痛みの質が変わる。
 視界が大きく揺れ、目の前に黒髪の戦姫の顔が見えたかと思うと、天地が逆転し、戦姫の姿が瞬く間に遠ざかっていく。

 戦姫が槍で肩を刺し、グイと捻って持ち上げ、投げ飛ばしたのだと気付いたときには背中に強い衝撃を感じていた。封印の間の中央
付近からアンゼロット達のいる戸口近くまで投げ飛ばされ、ロンギヌス・コイズミに抱きとめられたのだ。

「す、すまねぇ、コイズミ。助かっ―」「失礼!」

 皆まで言わせる事なく、コイズミは慌てて柊を後ろに投げ、両手を広げて前に出た。
 戦姫が、圧縮した瘴気の弾丸を打ち出して追い討ちをかけていた。

「やべぇっ!」

 態勢を崩して床に倒れ込み、なすすべもない柊の目の前で。
 戦姫の放った攻撃魔法が、アンゼロットとエルンシャが張った多重障壁に威力を減じられつつも、コイズミの肩を胸を腹を打つ。

「がぁはっ!」「コイツッ!」

 崩れ落ちるコイズミの姿に激怒し、柊は背筋だけで床から跳ね起きて。

『待ちたまえ、柊君!』

 エルンシャの静止も聞かず、正面から突進した。

 魔剣を振るう。槍で捌かれる。体勢を崩される。刺突が繰り出される。身を捻って避けようとして―

(間にあわねぇ!)

 戦姫の槍がエルンシャの張った泥の障壁を貫き、アンゼロットの展開した魔力障壁を打ち破り、柊の腹に突き刺さり。
 咄嗟にその槍を掴もうと手を伸ばすより早く槍が引き戻され、剣の間合いから逃げられ、追撃を封じる圧縮空気の砲弾が放たれる。

「集え、風の精!『エアリアル・ストラーイク』!」「生命の刃・護法剣!」

 多重障壁を打ち抜いた大気の破城槌に魔剣を叩きつけ、身体の両側を凶風が吹き抜ける中を鋭く踏み込み、間合いを詰める。
 いつものように、左肩を狙って袈裟斬りに切りつける。
 戦姫の左の黒翼が弧を描くように動き、柊の斬撃を撫でるように捌いて脇に除け。
 柊が魔剣を引き戻すより先に槍が突き出され、アンゼロットとエルンシャの展開した多重障壁に速度を下げられながら心臓に迫る。
 身を捻り、辛うじて刺突を避けながら、漸く落ち着いてきた頭で柊は対策を思案した。

 エルヴィデンスは柊の動きを完全に見切り、どんな動きにも遅滞なく対応している。
 今日、初めて会ったにも拘らず、まるで旧知の仲であるかのように柊の癖や太刀筋を完全に把握しているのだ。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:09:34 ID:6Egtz9vR
支援
214月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:11:24 ID:41B9Uw9V

(多分、奪ったベルの記憶を元に対策を立ててるんだろうが・・・・・・・・・・・・それなら、これはどうだ?)

 左手を、魔剣の峰の中ほどに添える。

“脇取り”。

 ロンギヌス史上最強の魔剣使いと呼ばれた男との手合わせの中で、見様見真似で覚えた型だった。

「この技をベルに見せたこたぁねぇッッ! 流石に初見じゃあ見切れねぇだろっ!」

 喉を狙って切っ先を突き出す。槍で捌かれるや、受けた槍を軸に「梃子の原理」で柄頭を横薙ぎにして顎を狙う。
 戦姫が槍を傾けて柄頭を止めると、柊は添えた左手で刀身を押し出し、戦姫の首筋に刃を押し当てようとして。
 滑るように動いた槍の軸によって防がれた。

「未熟者め。この程度、初見でも充分に見切れるわ」
「ちっ! やっぱ、付け焼刃じゃ駄目かよッ!」

 構わず、一歩踏み込んで。正面から魔剣を槍に押し当て、両の腕に力を込める。いかに戦姫、いかに古代神といったところで、肉体
的には十代半ばの小娘だ。実戦で鍛えぬいた大の男を相手に、純粋な力比べに持ち込まれては―

 ビクともしなかった。

「って、おい!」
「いくら鍛えたところで所詮は人間。神の力に抗えはせぬさ」

 事も無げに言われる。逆に押し込まれる。膝が床に付く。槍の穂先が、首筋に近づく。
 このままでは頚動脈を掻き斬られると、柊が戦慄したそのとき。

『火界の守護者の
 ひとりにして
 次元のかなたにありし
 異界の“炎”を守護する
 ジュグラッドよ・・・』

 エルンシャが呪文を唱える声が響き、柊の足元に魔法陣が展開され、“火”の属性のプラーナが吹き上がり。
 それを見た戦姫もまた、美しい唇で呪を紡ぎ、呼びかけに応えて邪精の群れが舞い集う。

「古代に生まれし
 天駆ける白き魔獣よ
 四精霊界の彼方より
 その姿を我が前にさらし

 我に従属せよ」

『遥かなる元界に燃ゆる
 聖なる白炎を
 我がもとにもたらさん・・・』

「スピリチュアル=ファング!」『ヘブン=フレイム!』

 鍔競り合う柊と戦姫の間で、呼び込まれた大量の邪精と火界の聖なる白炎が激突し、爆発し、双方を大きく弾き飛ばし。
 床に叩きつけられた柊が身を起こすより早く、瘴気を孕んだ闇風が吹き荒れ、柊のみならずアンゼロットを、まだ床に倒れたままの
コイズミをも巻き込み、咄嗟にアンゼロットが展開した魔力障壁を打ち破り、全身を打ち据えて体力を削ぎ取った。

「ぐぁ・・あ・・・・く・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・ア、アイツ・・・今、呪文だけで精霊獣を呼びやがった・・・・・・」

 ベルですら、ここまで簡単に精霊獣を召喚し、支配出来た様子はない。事前に、それなりの準備をしていたようだったというのに。
215月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:12:29 ID:41B9Uw9V

『ん? 驚くほどのことではないだろう? ただの八神魔法だと思うが。あの技は闇天姫もよく使っていたよ』
「そう・・なの・か? ・・・・にしても、目茶苦茶動きが速えぇ・・・・動きに驕りとか侮りの欠片もねぇし・・・・・魔王の戦い方じゃねーぞ」
『戦姫達は長年の間、同格の相手同士で戦ってきたからね。驕りなど持ちようもないのだよ』

 魔王が鈍重な戦車なら、戦姫は戦闘機に例えられるだろうか。パワーと耐久力よりも、スピードとスキルの高さが目についた。
 尤も、パワーもまた、多重障壁に遮られてイマイチ威力が分かり難いが、並の魔王ならば一撃で倒して余りあるだろう。

「そーいや、アイツ、俺の攻撃力が150とか言ってたが、アイツのはどのくらいなんだ?」
『520だよ。と言っても分かりにくいか。大陸斬が200だと聞いたから、大陸が二つ沈む程度の威力になるのかな?』
「俺は、んなモンで殴られてんのか・・・・・・・・」
「それよりも、本当に警戒すべきなのは戦術ですわ」

 アンゼロットがコイズミに蘇生の光を浴びせつつ、通路に姿を見せた巨大なヤドカリに三日月型の魔力を投げつけて両断しながら注
意を促した。
 もしも、範囲型の攻撃魔法を最初に使っていたならば、コイズミのワイドカバーで攻撃を一人に集め、アンゼロットとエルンシャが
多重障壁を張って被害を最小限に済ます事も出来たのだ。
 だがエルヴィデンスは、まず最初にコイズミを倒し、、更に、そのスピードを生かした連続攻撃を行なって何度も何度も防御魔法を使
わせた後で範囲攻撃を仕掛けてきた。
 守護者といえど、一定時間内に連続して行使可能な防御魔法の回数は限られる。古女王は巧みにその隙を狙ったのだ。

「メタな表現をしますと、防御魔法を重ねがけするのに必要な行動カウントが足りなくなったのを見計らって範囲攻撃を行ったのです」
「ほんとにメタな表現だな、おい」
「それより、柊様・・・・怪我の手当てを―」
『それは私に任せてくれ。コイズミ君の傷も治そう』

 エルンシャの言葉と共に、ポタリ、と一粒の雫が落ちた。

「雨?」
「まさか。ここは百階ダンジョンの最下層なんだぜ?」
「何を言っているのですか。エルンシャ様の治癒魔法ですわ」

 困惑する柊とコイズミの上に、温かい慈雨が降り注ぐ。瞬く間に傷が癒える。四肢に力が漲る。指先まで感覚が鋭敏になる。
 もう一度、活力を取り戻す。戦う力が、湧いてくる。

「ありがてぇ! 全快したぜ!」「ありがとうございます、エルンシャ様!」

 柊とコイズミは頷きあい、力強く床を踏みしめて。柊はエルヴィデンスに、コイズミは戸口に迫る冥魔の群れへと向き直った。

「エルンシャ様、柊さん。わたくし達も冥魔を一掃してすぐ援護に向かいます。もう少しだけ堪えてください!」
「へっ! 先に片付けて手伝いに来てやるぜ!」

 幻夢神から切り離され、直接介入禁止の制約から解き放たれた今のアンゼロットにとって、一体一体の冥魔はさしたる脅威ではない
が、あまりにも数が多すぎる。しかも、冥魔達はワイドカバーや連続波状攻撃によって範囲攻撃の効果を最小限に押さえていた。
 総てを片付けるには、まだまだ時間がかかるだろう。

 仲間達に背中を預け、柊は再び敵を睨みつけた。火界の聖なる白炎を浴びたにも関わらず、火傷一つ負った様子のない、古代神を。

『柊君。エルヴィデンスの槍術は我が娘の一人、闇風姫(シャドウ★エア)を依り代としたときに写し取ったものだ。あの姿もな。
 私は娘達の記憶を吸収した事がある。今から君に、闇風姫の槍術に関する記憶を送る。参考にしてくれ』
「おぉ! なんか、何から何まで済まねぇなぁ」
「ふん。私の動きを読めたとて対策の取りようもあるまいに。エルンシャよ、そやつは剣を取って二年にも成らぬ素人なのだぞ」

 エルヴィデンスの嘲りを無視し、柊は改めて敵を見た。いくつか隙を見つけたが、与えられた知識が、それらは総て誘いだと告げた。

「おっし、いける! これだけ分かりゃ、負ける気なんか全然しねぇぜ!」

 今まで様々な戦いを経験してきたが、敵について此処まで多くの情報を得て戦った事など一度もない。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:13:18 ID:6Egtz9vR
紫煙を
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:13:46 ID:BwdF+FEJ
支援
218月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:14:19 ID:41B9Uw9V
 それに、今日はレベルも年齢も下がっていない。
 月衣には上質の魔石がぎっしりと詰まり、無限とも思える魔法力を持ったファンブルしないヒーラーが供にいる。
 敵は(柊の割り当て分は)たった一人。しかも、何の因縁もない、ただ倒せば良いだけの敵だ。
 柊のウィザード人生の中で、最高に恵まれた条件で戦えるのだ。
 相手が ― 今までに戦ってきた誰よりも ― 戦いの駆け引きに長じているくらい何だというのだ。

 戦姫が槍を構え、流し込まれた情報が柊に次の手を教えた。
 三段突きが来る。一突き目は顔への牽制。二突き目は右足を浅く刺し、本命の三突き目が喉に来る、と。

「いくぞ」

 鋭い踏み込みとともに、戦姫が槍を突き出す。一突き目は顔への牽制。完全に見切り、微動だにせずに見送る。
 二突き目が下段を狙う。柊は右足を庇うように槍の軌道上に剣を置き― 左の太ももを浅く刺された。

「―!」

 驚愕から立ち直るより先に三突き目が喉に迫る。慌てて魔剣を持ち上げて防ぐも、戦姫はすぐに槍を杖のように持ち替え、石突きを
横に振ってコメカミを狙う。柊は魔剣を翳してその一撃を受けたが、戦姫が素早く石突きを引き戻すと同時に逆側から槍の穂先が襲い
来て、エルンシャの張った多重障壁を引き裂き柊の頚動脈を掻き切った。
 鮮やかな紅い噴水が上がり、傷口から噴き出す“再生の火”に灼かれて蒸発する。瞬く間に血が止まる。
 柊はよろめきながらも倒れるのを堪えて魔剣を振ったが、戦姫は易々と受け流し、槍を構えなおした。

 “エルンシャの娘”闇風姫(シャドウ★エア)の記憶が柊に、古代神の写し身・闇風姫(シャドウ★ゼピュロス)の次の手を教える。
 穂先で牽制し、石突きを振って顎を打ち上げ、鳩尾に石突きを突き込んでくる、と。

 柊が魔剣を打ち込む。戦姫が槍を杖のように握って捌く。槍の切っ先が柊の目の前に来る。

(これは牽制― !)

 一旦引いた穂先が、再び顔に突き込まれる。咄嗟に半歩横に跳び、同時に首を傾ける。槍が頬を抉り、素早く引き戻される。
 柊は魔剣を振りかぶり、振り下ろそうとして― 一瞬早く、戦姫の槍が魔剣の鍔を突いた。

「うおっ!」

 柊の身体が後ろに揺らぐ。反射的に踏ん張ろうとして― 自分から倒れ込む。
 一瞬前まで顎のあった位置を石突きが打ち上げ、次いで鳩尾を狙って突き下ろされた。
 咄嗟に転がって避ける。石突きに打たれた床が打ち抜かれ、忘却世界の次元構造に穴が開き、火の精霊界に繋がった。
 プラーナを開放し、吹き上がる業火に耐えた柊は、身を包む衣服状の魔道具・スターイーグルの飛行機能を起動して床を滑るように
飛んで即席の精霊門から遠ざかると、跳ねるように床から身を起こし― 呻いた。

「・・・・お、おい、記憶と動き違うみてぇだぞ?」
「当然だ。お前の動きに対応して、途中で動きを変えているのだからな。其処まで見切れなんだは、お前の未熟よ」

 戦姫は喉の奥でクククッと笑い、片手を翳して床の精霊門を閉じ― その隙を狙い、柊は再度、正面から突進して間合いを詰めた。
 又しても魔剣と妖槍が交錯し、黒翼が翻り、多重障壁が展開されては打ち破られる。

 激しい打ち合いの中、一瞬の間を見つけた柊は大きく跳び退り、魔剣を寝かせて右脇に引き付け。
 対する戦姫は、左手を突き出しながら身を屈め、右手に持った妖槍を脇に引き寄せて、まるでビリヤードのキューのように構え―

「魔器ッッ! 開ッッ放ゥゥッッ!!」「ふっっっ!」

 裂帛の気合を込め、音速を超えた刺突を繰り出した。

 突き出された二条の閃光は正面から激突し、双方の切っ先同士がぶつかり合い。
 魔剣の切っ先が、槍の穂先に食い込んだ。

 槍が裂ける。槍が裂ける。槍が裂ける。
219月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:16:13 ID:41B9Uw9V
 戦姫の槍が裂けていく。柊の手にした魔剣によって。鋭い刺突によって。縦に二つに裂けていく。
 その様に柊が勝利を確信した瞬間、戦姫は槍を手放し、刺突の勢いも其の侭に、柊に喉輪落としを決めていた。

「ぐがっっぁ!」

 喉を握り潰され、後頭部を床に叩きつけられた柊の上に戦姫の身体が覆い被さり、一対の黒翼が柊の両腕を押さえ込む。

「油断したな、柊蓮司。私にとって、槍は手札の一つに過ぎぬのだ。が、今の刺突、人の身にしてはなかなかのものだったぞ。
 どれ、我が槍を砕いた褒美をやろう」
「でめ゛っ、放じや゛がれ゛っ!」
「ふふっ、女に押し倒されるのは初めてか? だが、これくらいはした事もあるだろう?」

 戦姫は左手で柊の頭を掴んで固定し、ゆっくりと顔に近づけ―

『いかん! 口移しで瘴気を吹き込み、君を冥魔に変えるつもりだ!』
「や゛、や゛め゛ろ゛ぉぉぉぉぉぉ!」

 色々な意味で危機感を覚えた柊は喉を握られたまま叫び、身を捩ったが、神と人とでは肉体の基礎能力に差があり過ぎた。
 組み伏せられたまま身動きの取れない柊の口元に、瘴気を湛えた艶やかな唇が近づき―
 重なり合う寸前、戦姫は柊から身を?ぎ放し、弾かれたように跳び退くや、一瞬前まで彼女がいた空間を銀色の魔弾が通過した。

「エルンシャ様から離れなさい!」
「妬いたか、アンゼロット!
 この程度で嫉妬するようでは、お前が第八世界に去った後、私がエルンシャと何をしたか知ったら憤死してしまうのではないかな?」
「エルンシャ様! この女とナニをされたのですか!!」

 冥魔の掃討の合間に此方の戦局を伺い、柊たちの危機を救ったアンゼロットに向けてエルヴィデンスはからかいの言葉を投げかけ。
 揶揄されたアンゼロットは、たちまち眦を吊り上げると、殺気を剥き出しにして柊を、その中に宿る初恋の相手を睨みつけた。
 それは柊の心に、シャイマールやゲイザーと対峙したときでさえ感じなかった怖れを齎したほどの、実に鬼気せまる表情だった。

「ま、待てよ、アンゼロット・・・・・・い、今はそんな話してる場合じゃねぇだろっ! 後にしろよ、後に・・・・・・
 つか、なんで俺が言い訳してんだ? お、おい、アンタもなんか言えよ」
『何もしていないよ、アンゼロット。どうか落ち着いてくれないか?』
「はっ・・・・・・申し訳ありません、エルンシャ様。わたくしとした事が、邪神の戯言に惑わされてしまいましたわ」
「・・・・・・普段と全然態度が違うじゃねーか。不気味で仕方ねーぜ」

 常日頃暴虐極まるアンゼロットの殊勝な姿に先程とはまた違った怖気を覚えつつも、柊は床から身体を起こし、戸口の様子を覗った。

「おい、冥魔の方はどうなってんだ?」

 こちらの闘いに介入する余裕があるのなら、概ね片付いたのだろう。
 アンゼロットの助けがなければ、組み伏せられて身動きの取れないまま唇を奪われ、瘴気を吹き込まれて冥魔にされていた筈だ。
 さっき、大口を叩いておいて情けないが、アンゼロットには、なるべく早くこっちを手伝いに来て欲しい気分になっていた。

「後少しで片付きますから、もうちょっと堪えて下さい。それとエルンシャ様? 後でお話がありますから、覚えておいて下さいね?」
『? ああ、わかったよ、アンゼロット』
「いや、アンタ、わかってねぇだろ・・・・・・」

 どうやら、この後にもう一つ、世界の危機が待っているようだ。
 気が重くなった柊の視界内で、戦姫が振り上げた左手に新たな槍を生み出し、投擲する構えを見せた。

「“ダンシング・スピア”!」

 戦姫の手を離れた槍は空中で踊るように軌道を変え、柊の死角に回り込む。更に戦姫は両手の中に弓を作り出し。

「ボウ オブ ゼピュロス!」

 圧縮空気の矢を撃ち放つ。
220月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:18:10 ID:41B9Uw9V

「ええい、くそ!」

 柊は踊る槍への対処をエルンシャに任せて風の矢のみを打ち払い、防御結界に阻まれた槍を意識から外して強引に接敵した。
 魔剣を一閃させて弓弦を断ち切ると、戦姫は弓を杖のように持ち替えてクルクルと回し始め―

「はっ! あ、あれはっっ! ル・ムリネ!!」
「知ってんのか、コイズミ!」
「フランス式杖術の一種に似ています! 遠心力で威力が上がっていますので、お気をつけくださ―」

 コイズミに皆まで言わせず、丸ノコのような音をたてて回転する弓が打ち付けられる。魔剣で受けた柊の手がジンと痺れ、握力がな
くなったところへ更にもう一撃を受け、手から魔剣が打ち落とされた。

「しまっ―」

 慌てた柊の目の前で戦姫は床に落ちた魔剣を足で跳ね上げて手に取ると、一振りしてバランスを確かめた。
 艶やかな唇の両端が、ついっと、笑みの形に吊り上る。

「良い剣だな。少し借りるぞ」
「てめっ、返しやがれ!」

 柊は月衣から晶の魔剣を引き抜き、鋭い斬撃を繰り出して。
 一太刀で戦姫の弓を斬り飛ばしたが、二の太刀は自分の魔剣に受けられた。
 魔剣に刻まれた魔術文字が ― 本来の持ち主の手に無いにも関わらず ― 淡い光を放ち、柊は愕然とした表情でそれを見た。

「在り得ねぇ・・・・俺の魔剣が、俺以外の誰かに力を貸すなんて・・・・」
「ふふ、驚いているな、柊蓮司。エルンシャの娘たちを攫い、自分の部下として使っていた私だ。魔剣一本手懐けるくらい造作も無い。
 さあ、自らの魔剣の切れ味、とくと其の身で味わうが良い」

 戦姫は弓を捨て、舞うような動きで魔剣を振るい、柊はたちまち全身を切り刻まれたが、それらの攻撃はエルンシャの防御魔法に遮
られて致命傷には至らず、更に、エルンシャの治癒魔法により傷付く端から癒えていった。

 湯気を吹き上げて癒えていく無数の傷を意識の外に追いやって、間に割って入った踊る槍を叩き折り、苛烈な斬撃を繰り返す。
 その猛攻を捌きつつ、古女王は呪詛を混ぜた言霊を発し、柊の耳に注ぎ込んだ。

「柊蓮司。お前は本当に未熟で、頭が悪く、臆病で、我儘な、甘やかされた子供なのだな」
「何を言って―」『聞くな! 呪言による精神攻撃だ!』
「お前の太刀筋には無駄が多い。速度も足らん。技量も足りん。覚悟も足りん」

 淡々と、柊の剣の“欠点”を指摘していく。

「人の子にしては出来た方だが、神と戦うには全く足りぬ。
 敵を捕捉するのに肉眼に頼り、碌に制空圏も築けず、縮地も動作の最適化もごく偶にしか出来ない。
 よくもまあ、この程度の腕で神々の戦場に出てきたものだ」
「待てこら、それはハードル高すぎだろう!」
「甘ったれるな、小僧。お前のレベルに合わせて手加減してくれる古代神など、裏界のぽんこつどもくらいなものだ」

 易々と魔剣を受け流しながら、心を刻む言葉の刃を投げつける。

「正式な訓練を一切受けていない、実戦だけで鍛えた剣。故に技の引き出しが少なく、一度太刀筋を見切られれば更なる対策は取りよ
うもない。お前の剣は、お前より技量の劣る者にしか通用しない。言い換えるなら、弱いものイジメ専用の剣だ」
「てめッ、言いたい放題言いやがって!」

 腕に力を込め、今までに倍する速度で振り下ろす。風すら切り裂く斬撃を、半身になって回避した戦姫はガラ空きになった胴へと無
造作に左手を突き出した。古代神の写し身の手刀が、エルンシャの張った泥の障壁と魔力障壁と水幕結界と木の葉の防御陣を次々と打
ち破り、柊の鳩尾に深々と突き刺さる。一撃で胃が破れ、喉に血が込み上げた。

「ぐぅぁ・・・・・・は・・・・ぁ・・・・・」
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:18:42 ID:6Egtz9vR
シ・エーン
222月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 22:21:51 ID:41B9Uw9V
「柊蓮司。お前には、下僕のように命を武器とする覚悟も、神の戦士として永遠に闘い続ける覚悟もない。
 目の前で気に入らない事があったとき、その瞬間だけ暴れて終わり。なんとも身勝手で傍迷惑な男よな」
「こんのぉッッ!」

 柊は血を吐き捨てながら怒りを込めて剣を振るい、避けられ、カウンターで神殺しの魔剣を突き込まれ、喉に突きつけられた。

「死ぬ覚悟が無いからこそ、一撃に命の総てを込めず、技に勢いが足りなくなる。
 永遠に闘い続ける覚悟が無いからこそ、一撃で敵を葬ればそれで良いと考え、技を放った後に隙が出来る。
 技量以前の問題として、お前は考えが甘すぎるのだ」

 突きつけた魔剣の切っ先で柊の喉を撫で上げて。

「何か反論はあるか、柊蓮司?」

 太古の邪神は、裂けるような笑みを浮かべて訊ねかけ。
 柊は声を絞り出し、唸るような口調で問いに答えた。

「・・・・・・俺は“人間”だ。下僕にも、神の戦士にもなる気はねぇ」
「ならば、お前は不良品だ。主八界に生きる生物としてな」
「不良品って言うなぁ!」

 柊は叫び、突きつけられた魔剣を振り払うと、後ろに跳んで距離を開け。
 古代神は、柊を蔑みに満ちた瞳で見つめて言葉を継いだ。

「お前達の種族は、本来、神の食料となる愛と安らぎに満ちたプラーナを生産させる為に創られた。
 後に、一部は食用から軍用に転用されたがな。
 下僕にも神の戦士にもならんなら、お前は無価値だ。乳を出さん牝牛に、戦わぬ闘牛に、一体何の価値がある?」
「人間は家畜じゃねぇ!」
「家畜なのだよ! そのように創ったのだ! 我等108の古代神がな!」

 今は邪神と呼ばれる原初の創造神は、不遜なる神殺しの魔剣使いの反論を一蹴し、更に柊を否定する。

「人の子は、神無くしては生きられぬ!
 創造主たる我らに総てを捧げ尽くす事こそ、人の子らの在るべき姿!
 そして、人の子らに、あらゆる苦悩から開放された無上の幸福を与える事こそ、我等神々の在るべき姿!
 神殺しよ! 如何なる神にも仕えず、気紛れに暴れ回るだけのお前は、世界に苦痛を撒き散らす害悪に過ぎぬと知るがいい!」

「俺だって、神と名の付くモンを片っ端から殺して回ってる訳じゃねぇ! ガッコの屋上の神社には時々手ぇ合わせてんだよ!
 それと! 誰が、てめぇなんぞに世界を任せるかってんだッッ!」

 怒号とともに、柊の猛攻が始まった。魔剣をきつく握り締め、腕に力を込め、石造りの床に足跡が着くほど強く踏み込み、剣を振る。
 対する戦姫は柊の動きを先読みし、脚を踏み出そうとした場所へ、腕を振り下ろそうとする場所へと魔剣の切っ先を突き出し。
 柊はそれを避け、不自然な体勢、不自然な軌道で刃を振るい、容易く受けられ、捌かれた。

(く・・・・何もかも、見透かされてやがる・・・・・)

 やることなすこと、片端から封じられる。すべて、気勢をそがれてしまう。

 風が吹く。風が吹く。風が吹く。胸の中を、冷たい風が吹き抜ける。魂を冷やす、風が吹く。

 “成功のイメージ”が、湧いてこない。
 何をしても防がれる。カウンターを取られる。
 動きが縮む。踏み込みが浅くなる。次第に押されだす。防戦一方になる。

「そろそろ、自分の無力さが分かってきたか、柊蓮司。
 お前の剣技も、お前の覚悟も、聖姫戦争にて我が依り代と刺し違えた200の英霊の誰よりも劣るわ!」
「―っく!」
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:24:22 ID:6Egtz9vR
私怨
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:25:57 ID:9kRvBqDe
しえんしえん
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:55:32 ID:N3V1kfKz
支援
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 23:26:58 ID:TLpJP28L
弱いイメージをして反逆するんだ!支援
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 23:47:12 ID:/iyePlDk
さるさん? 支援
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 23:51:16 ID:G8ayNL4Q
シェーン!!
T・バーッグ!!
229月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/13(金) 23:53:57 ID:41B9Uw9V
 戦姫の左手が一閃し、動きの鈍った魔剣使いを殴り倒す。
 もう何度目になるのか。またしても床を這う柊を冷ややかに見下ろして、エルヴィデンスはその中に宿る仇敵に語りかけた。

「腹立たしくはないか、エルンシャよ? 
 私は封印に縛られ、お前は身体を打ち砕かれ、お互い、儘ならぬ身を押して八方手を尽くして手勢を集め、泣く泣く下僕を殺し合わ
せてきたというに、その間、第八世界では此奴如きが最強と呼ばれるような、実に温い馴れ合いしかしていなかったのだぞ?」
『それは違うぞ、エルヴィデンス。我等は互いに、相手を殺すために戦っていた。だが、柊君達は仲間を守るために闘っている。
 目的の違いが闘い方の違いとなって現れた。それだけの事だ』
「ふん。お前も父親なら、子供は甘やかすばかりでは碌な育ち方をせんと知るがいい」

 言って、エルヴィデンスは左手に瘴気の塊を作りだし。

「“黒の魂”!」
「ぁぐぅがぁッ!」

 床から身を起こした柊の胸へと抉り込んだ。

 意識が、弾けた。
 完全な虚無に落とされた。
 そして、暖かく安らぎに満ちた、逞しい父の腕に抱き上げられて。
 意識を回復した柊は即座に剣を振って戦姫の手を振り払い、今一度、敵との距離を開けた。

「くっ、かはっ、・・・・・・や、やばかった・・・い、今のはヤバかった・・・・・・・」
『ふっ、エルヴィデンスよ。忘れたか。瘴気を浄化する“星の錫杖”を創ったのは、私だよ』
「ふん、精神を侵食する瘴気を一瞬にして浄化しおったか。エルンシャめ、思ったより遣りおるわ」

 喘ぐ柊を、その身に宿る星王神を見つめてエルヴィデンスが毒つき。
 柊は ― どうにか、正気を保ちはしたものの ― 胸の中を冷たい風が吹き抜けていくのを感じていた。

「・・・・・・・・・なあ。ひょっとして・・・・・・・俺、いらないんじゃないか?
 なんだか、俺とアイツが戦ってるっていうより、アンタらの綱引きの綱になってる気分なんだが・・・・・」
『いいや、そんな事はないよ、柊君。わたし一人では今のエルヴィデンスには敵わないだろう。君が居てくれるから―』

 慈父神の励ましが、遠くに聞こえる。

 風が吹く。風が吹く。風が吹く。胸の中を、冷たい風が吹き抜ける。魂を冷やす、風が吹く。

 自分は、なんて無力なのか。
 剣が、当たらない。攻撃に、耐えられない。
 エルンシャの助力がなければ、立つこともままならない。
 頭が重い。身体がだるい。気が重い。目の前が次第に暗くなってくる。

 思えば、立ったまま戦闘を終えられるようになったのは、アンゼロットの依頼を受けるようになってからではなかったか?
 それ以前は、戦うたびに致命傷を負い、地に這わされていたのではなかったか?
 自分の勝利は、アンゼロットに用意されたものばかりではなかったか?

 自分には、何も出来な―

『柊君。この迷宮は、私が冥魔王化している間に創造し、配置した冥魔で溢れていたのに、君はどうやってこの部屋までこれたのかな?
 自分で言うのもなんだが、そう簡単に突破出来る防御ではなかった筈だ』

 無力感に苛まれた少年の心に、慈父神の暖かい思念が問いかけた。

「それは・・・・・・落とし穴の底をブチ抜いて・・・・・・・出来る限り、戦闘を回避したんだ・・・・・・・」
『そんな突破法があったのか。柊君、それは誰が考えたものなのかな? アンゼロットか? 幻夢神か?』
「いや・・・・・・・違う・・・・・・・これは、俺が・・・・・・・」
『なら、君は道のないところに、自分で道を切り開いて此処まで来たのではないか。
“自信を持て。君はもっと輝ける。”
 娘のガイアが、良く仲間に囁いている言葉だが、君にもこの言葉を贈りたい』
230月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/14(土) 00:01:04 ID:mKmEBG5d
「・・・・・・・いい、娘さんだな。抱き締めて頭を撫でてやりたいよ」

 柊は、上の階で武器を交えた幼姫と同じくらいの歳の幼女が、お姉さんぶってプリンセス・モンスターを叱咤している光景を思い浮
かべて頬を緩ませた。優しく、力強いプラーナが胸の中を満たしていく。
 チラリと戸口を見た。冥魔の攻勢は大分収まりつつあるようだ。たぶん、もう少しで片付くだろう。なら、自分にも時間稼ぎくらい
は出来たのだ。いや、出来るのだ。なら、出来る事をするだけだ。一人や二人では敵わない相手でも、頼もしい仲間たちと一緒に知恵
や力を合わせれば、きっと勝てる。勝つ方法が、きっと見つかる。だから、今は。

(1分でも、1秒でも、アイツを引き付けておくんだ!)

 その眼差しに強い決意を込め、魔剣を構え直す。気配を探る。慎重に、間合いを計る。

「さあ、来いよ。俺は、まだまだ戦えるぜ」
「ふむ、これほど斬り刻んでも心折れぬか」

 古女王は感嘆の声を上げ、しげしげと柊を見つめ直し。

「お前のプライドは、お前の剣技に支えられえている訳ではないのだな」
 
 呟いた、その瞬間。
 柊は全身が総毛立つのを感じた。
 背筋に氷を流し込まれたような感覚がする。身体が震えだす。またもや、呼吸が乱れていく。

「手段に拘って目的を見失うのも馬鹿らしい。お前は別の使い方をするとしよう」

 柊は敵の瞳を見た。其処に憎悪の色はなかった。殺意もなかった。敵意すらも存在してはいなかった。
 柊は、その目付きを見たことがあった。それは敵を見る目ではなかった。
 そう、あの目付きは・・・・・・姉が、壊れたバイクをどうやって直すか思案しているときと同じもの―――!!

「舐めやがって・・・・・・・」
『舐める? それは違うぞ、柊君。エルヴィデンスは君を高く評価しているよ。
 ただ、同じテーブルを囲んだプレイヤーとしてではなく、盤上の駒として見ているだけだ』
「そーゆーのを舐めてるっていうんだよ」

 荒く、浅く、早くなっていく呼吸を、無理やり整える。
 今までも、決して手を抜いていたわけではないが、殺すためではなく心を傷付けるための攻撃だった。しかし、この先は・・・・・

『気付いていたか、柊君。エルヴィデンスは、奪った神殺しの魔剣では、君に致命傷を与えていないという事に』
「ああ。俺を操り人形として使うために、心を狙っていやがったから―」
「エルンシャよ。お前にも少しはいい目を見させてやろうと思ったが、お前の事はもう良い」

 戦姫の細い指が、エネルギー・ブースターのトリガーにかかり。
 戦姫の細い腕が、巨大なウィッチブレードを脇に引き寄せ、刺突の構えをとった。

「アンゼロットは、私が、何の苦しみも悲しみも感じぬようにしてやるから安心するがいい」
「てめッ! この物好きな莫迦を神殺しの魔剣で殺して、アンゼロットの心を壊すつもりか!」
『・・・・・・柊君。神殺しの魔剣で斬られては、私も意識が無くなるかもしれない。
 だが、今までの闘いから分かるとおり、完全な防御は無理だ。
 勝算は低いが、エルヴィデンスに憑依を試みてみよう。肉体の制御を阻害しながら、我が浄化の光によって内側から瘴気を払えば―』
「待てよ! それじゃ、アンタが取り込まれるかもしれねぇじゃねぇか!」

 叫んだ柊の脳裏には、先程、エルンシャがベルに倒されたときのアンゼロットの泣き顔が鮮明に浮かび上がっていた。

(あいつのあんな顔、初めて見たぜ・・・・・・いや、“あの顔”だけじゃねぇ)

 アンゼロットがエルンシャの前で浮かべた表情は皆、今まで柊が見た事も、否、アンゼロットでも、あんな顔をする時もあるのだと
想像した事すらなかったものばかり。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 00:02:53 ID:lWMY/0CJ
支援
232月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/14(土) 00:03:16 ID:mKmEBG5d
 柊はギリッッと歯を食いしばり、次いで、自らの中に宿るアンゼロットの同胞に向け、吼えた。

「アンタはぜってぇ殺させねぇぜ! 俺に考えがあるから、このとおりにしてくれねぇか!」
『待て、柊君。それは―』「言い争ってる暇はねぇ! やれる事を全部やるしかねぇんだよ!」

 心を読んだ慈父神の抗議を捻じ伏せ、柊はありったけのプラーナを解放し、その全身を金色の爆光で包み込んだ。

「ほう・・・・・・」

 眩い閃光を放つ柊の姿に、エルヴィデンスは感嘆の声を上げた。

 与えられた勝利を実力と勘違いした、甘ったれた未熟な餓鬼だと思っていたが、この短時間で驚く程の成長ぶりだ。
 自分にもう少し余裕があれば、是非とも捕獲して手元に置きたいものだ。さぞや、調教のし甲斐がある事だろう。
 だが、手を抜く訳にはいかない。裏界の敗因は、正に、其処にこそあるのだから。

 柊の身体を覆い尽すプラーナの輝きは、内に秘めた星王神の欠片の光が隠れる程だ。
 油断すれば、掠り傷くらいは負うかもしれない。
 そして、その程度の傷であっても、この後に控えるアンゼロットとの闘いに響く可能性は無視出来ない。

「お前の心意気に免じて一太刀くらいは受けて遣りたいが・・・・・・生憎、此方も余裕が無くてな。全力で迎え討たせて貰うぞ」
「抜かせよ。実力で一本取ってやるぜ!」

 柊は叫び、心眼で敵を捕らえ、神速の踏み込みで間合いを詰め、最適化された動きで魔剣を振るい―

「遅い」

 エルヴィデンスは神速の超反応で其の斬撃を捌き

 柊の胸に、神殺しの魔剣を突き立てた。

「肉体のポテンシャルを此処まで引き出せたのは大したものだが・・・・・・ポテンシャルそのものが足りなさ過ぎた」

 魔剣を引き抜き、柊を“視”る。その身には、もはや命の輝きも、星王神のプラーナも感じ取れはしなかった。

「クックック。エルンシャよ。幾らお前でも、流石に神殺しの魔剣で刺されては―」
『リザレクションソウル!』
「何ッ!」

 晶の魔剣のシャードが輝き
 柊の命の灯火が再び燃え上がり
 その手の魔剣が跳ね上がり

 意表を突かれ、その刺突を避け損なった戦姫の
 鎧の
 隙間に
 魔剣の切っ先が、食い込んだ。

「そうか! プラーナの輝きを目晦ましに、エルンシャの魂を魔剣に移―」
「生命のッッ、刃ぁぁっっっ!!」

 古代神の驚きの声を掻き消して。

 忘却世界・ラグシア城跡 最深部に、柊の咆哮が轟いた。
233月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2009/03/14(土) 00:07:37 ID:mKmEBG5d
今日はここまで。

初めて、さるさんというものを経験しました。今までの倍以上の投下量でしたからねぇ。無理もない。
でも、どうしても反撃するところまで一気に投下したかったし。

ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。

実は、殺陣の参考に戦姫と同格とされる幻天使ライキのデータを確認したんですが・・・

あれ? 柊が一回動く前に二、三回攻撃出来る?
柊の攻撃は・・・・・・クリティカルしないと当たらない?
つか、コイツ、戦い方次第じゃアステートにも勝てるんじゃ・・・・・・
攻撃力と防御力は付与魔法でブーストするとして・・・・・・・どうやって、攻撃を当てよう?

・・・と、いう具合に随分と色々悩みました。

で、悩んだ結果がこれだよ!

10レベルと60レベルの実力差を踏まえた上での逆転劇に、ちゃんと説得力を持たせる事が出来ているでしょうか?

ナイトウィザード系のスレでは、何があっても「運命」で何とかなるって意見をよく見かけますが、エル=ネイシアには「運命」はありませんよ。
純粋なゲームデータと、基本設定を利用した口プロレスが総てです。
ではまた次回。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 00:30:20 ID:qO1ZPWgD
裏切りのワイヴァーンが、(魔剣さんに)裏切られのワイヴァーンになったわけですね、分かります。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 00:42:47 ID:lWMY/0CJ
乙〜。
シリアスなシーンにしれっと雷電とかガイアが俺にもっと輝けと囁いているとかを混ぜるな危険w
んー逆転劇に関しては、肉を切らせて自体は王道なんだけど
なまじデータが見えてるからちょっと……とも思ってしまうな。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 01:00:22 ID:dJC6MNs8
魔剣が寝取られた〜、イラッ☆
柊がいろいろ言われまくって、突き飛ばされてるだけ。
シリアスとギャグは分けましょう。
結局言われまくってこのまま終わったら、ただのアンチだと笑うしかないかも。

こっからのカタルシスに期待します。
237エレニアックの迷子@学園世界 ◆1IXdmMAgHc :2009/03/14(土) 01:40:13 ID:zqidr+IJ
早めにしといた方がよいと思うので、返答だけ

>>194
構いません。やっちゃってください。投下を楽しみにしております。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 02:18:15 ID:AlLCe7J0
>>236
いや、さすがにそれはお前がアンチだw
ようするに、今の今までずっと柊を心身ともにいたぶらせて、こっから逆転のカタルシスが出てくるってことでしょ? なんというドS作者なのかw 頑張ってください。
ただ
>「自分の投下で流れが変わったら気持ちいいだろうな」
とかは正直キモイというか、作者さんはみんな本音で思ってはいるんだろうけど、わざわざ言うな、とはちょっと思った
239みつやん:2009/03/14(土) 09:32:03 ID:vEe8jxTc
>>月星柊の方
乙&GJです〜! 柊ボッコボコw ここからの反撃に期待ですw
データ面から戦闘組むとか、自分には絶対できない(汗) ルルブ、NW2ndのしか持ってないし(汗)
っていうか、元々戦術とか考えるの苦手なんで、戦闘シーンはいつも呻きながら書いてるんですけどね……
だから、自分はあなた様を尊敬しますw

>>237
わーい、ありがとうございますw
っていうか、返事聞かずにフライングで書き始めてたりしてたんですが(<おい)
ところで許可のお言葉に、何故かテッサの「構いません、発射しちゃいましょう」って寝言を思い出しましたw
……学園クロスじゃテッサ出ないけど(汗)

書き始めて、柊と宗介のベクトルが正反対だと気づいた(汗) 根っこは近いんだけど……
つか、常に人間相手に戦ってきた宗介と、人外相手にしてきた柊とじゃあマインドセットが違って当たり前なんですが(汗)
ファンタジーとリアル系のクロスは難しいですね……
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 09:58:32 ID:Sw00PXiR
>239
大丈夫、テッサなら宗介をはさんでかなめの反対側に座ってるから。
241少女は静かに暮らしたい@学園世界:2009/03/14(土) 10:13:12 ID:zqidr+IJ
>>239
昔、テッサは2週間だけ高校生だったことがあってだな…w

それはさておき。

>191で言った話が描きあがったので、投下してもよろしいですか?OKならば11時より。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 10:20:22 ID:ktxIWMSR
>>241
いいんでない?
あ、それから昼から自分も投下予定だから、支援人は残っててくれると嬉しいな。
243少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 11:00:40 ID:zqidr+IJ


―――光綾学園、男子学生寮

「…ってえ…やっぱ無茶だったか…」
その一室で、薙原ユウキはベッドの中で痛みに顔をしかめて呟いた。

あの後は大変だった。
居住区で簡単な治療を受けた後は光綾に運ばれ、神術での治療を受けながら、校長先生に叱られた。
1日たった今も、身体中が痛くてベッドから起き上がれずにいる。それに。
「フィルには泣かれるし、リナとセンパイには怒られるし…本当に大変だった」
昨日1日の間に起こった出来事を思い出しながら、目を閉じて昨日の自らの行動を反省する。
「勇気と無謀は違う…か」
ベッドのそばで校長先生から言われた言葉が頭をよぎる。
「分かっていたつもりなんだけどな…」
苦笑する。考えなしに動く無謀と、見て見ぬ振りができない勇気。
もしユウキがそれらを併せ持った少年で無かったならば、今頃彼は光綾学園にはいなかっただろう。
「しっかし俺なんかが執行委員で良かったのかな?」
薄々感じていた疑問が鎌首をもたげる。

ほっとけない。
そんな気持ちで光綾学園と他の学園とのいざこざに関わっているうちに、いつしか自分が選ばれていた、極上生徒会執行委員。
ユウキの頭に他の極上生徒会執行委員たちの雄姿が思い浮かぶ。
同世代の少年少女とは思えぬほどのとてつもない力を持った“ヒーロー”と呼ぶにふさわしい連中。
その中に混じって、彼らの実力に驚いてばかりいる、ちょっと剣が使えるだけの冒険者“見習い”
それが今のユウキの姿であり、実力だった。
「今にして思えば、あれは失敗だったな」
あの時、戦う術を持たない普通の学生たちがモンスターに襲われているのを見た瞬間、気がついたらユウキは飛び出して、モンスターに斬りかかっていた。
そのことは反省も後悔もしない。あの場で自分が戦わなければ、戦う術を持たない普通の学生にもっと被害が出ていた。
だが、もう少しやりようはあった。
例えば0−phoneで仲間を呼んで、到着まで守りに徹する余裕と機転があれば、あんな結果にはならなかった。冷静に振り返ってみるとそう思う。

『忘れないでください。あなたは1人ではありません。必要な時には遠慮なく仲間を頼ること。それは決して恥ずかしいことでは無いのです』

校長先生直々のお叱りから飛び出した、1つの言葉がユウキの頭に反響する。
春からのダンジョン実習で身にしみて分かってたはずの言葉。
なぜあの時は頭に思い浮かびもしなかったんだろう?

そんなことを1人考えていた、そのときだった。
「…薙原ユウキさん、ですね?」
どこからともなく響いた声に、ユウキはビクリと身を震わせる。
「…だ、誰だ?」
ユウキのわずかに震えた声に答えるように景色がわずかに揺らぎ、忽然と少年が現れる。
「…すみません。故あって、勝手に上がらせていただきました。僕は、斎堂一狼と言うものです」
丁寧な口調。だが、今まで何も無かったはずの空間から現れた少年を、ユウキは油断なく観察する。
「その制服、確か輝明の…もしかして柊先輩の言ってた“ウィザード”って奴か?」
前に極上生徒会でもひときわ目立つ、特別執行委員が言っていた。輝明学園では異能の力を持った奴を、そう呼ぶと。
「はい」
ユウキの問いに一狼は短く応じ頷いてみせた。
244少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 11:06:30 ID:zqidr+IJ


「…なるほど、昨日のモンスターのことか」
「はい。今のところこの件について最も詳しいのは、あの場にいたあなたでしょう。ですから…」
「っと、ストップ」
挨拶もそこそこに昨日の件について問いかける一狼を遮り、ユウキは先ほどから気になっていたことを言う。
「とりあえずさ、敬語はナシで話そうぜ。俺も斎堂も学生同士なんだしさ」
「…分かった」
言われて口調を改め、一狼はユウキに再度問う。
「何でもいいんだ。昨日薙原が倒したモンスターのこと、気がついたことがあったら教えて欲しい」
「倒した…か。それなんだけどさ、あいつら倒したの、俺じゃないぜ」
昨日の出来事を思い出しながらユウキは答える。
「俺じゃない?どういう事だ?」
「いや、あんとき…モンスターに吹っ飛ばされた所にさ、女の子がいたんだ。
 その後のことは気絶してたから分からないが…モンスターぶっ倒したのは多分、その子だ」
少なくとも自分があの後無意識のうちに全滅させたと言うよりはしっくり来る。
自分より強い、剣士の女の子。
条件を満たす人間は極上生徒会には何人もいたし何より光綾学園にもユウキより腕の立つ剣士で、同時に女の子である“センパイ”がいる。
“ユウキにとっては”幸運なことにそんな女の子が戦いに巻き込まれた。
だからこそ、自分は今こうして寮の自室で痛いとか悠長なことを言っていられる。
それがユウキなりの結論だった。
「黒髪でお下げの女の子だ。後は…そういや昨日は結構暑かったのに手袋をつけてたかな」
あのときの一瞬で見た少女のことを必死に思い出しながら、ユウキは思い出せる限りの特徴を説明する。
「斎堂がモンスターについて調べてるってんなら、多分俺よりその子のが詳しいと思う」
「そうか…ありがとう。今度はその子を探してみるよ」
黒髪のお下げと手袋。そして剣の使い手。少女の特徴を一狼が頭の中に刻み込んでいるところに、ユウキが声をかける。
「あっと、そうだ。頼みがあるんだ」
「頼み?」
不思議そうな表情をする一狼にユウキは自らの頼みを告げる。
「その子に会ったらさ、伝えて欲しいんだ。『あんとき助けられた執行委員が“ありがとう”って言ってた』ってさ」
裏表のない笑顔で。
「…分かった。伝えとく」
その屈託のない笑顔に釣られるように、一狼も笑顔で答えた。
245少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 11:12:04 ID:zqidr+IJ


「それじゃあ、僕はもう行くよ」
「ああ、気をつけてな。それと、あんがとな」
「ん?ありがとうって…?」
ユウキの返答にちょっとだけ疑問を覚え、一狼は問い返す。
「いやそのさ、斎堂は、あのモンスターの襲撃事件を調べて、止めるつもりなんだろ?」
「うん。そのつもりだ。それが僕が受けた任務だしね」
「今回のこと、悔しいが俺の今の実力じゃあこれ以上のことはできない。
 だから、代わりに解決してくれるって言う斎堂には感謝してもしたりないくらいだなって思ったんだよ。そう思ったら自然に、な」
ちょっとくさかったかなと照れて笑う。
「…えー、その、うん。分かった。今回の事件は、絶対解決してみせる。だから薙原も、早く元気になってくれ」
任務で動いている自分にそんな言葉が掛けられると思っていなかった一狼はちょっとだけ驚いてどもったあと、言葉を絞り出した。
「当然。俺はさっさと怪我を治して、もっと強くなるつもりだ。困ってる人を、ちゃんと助けられるくらいにな。
 斎堂も、困ったことがあったらいつでも言ってくれよ。お前は俺の恩人なんだ。大概のことなら相談にのるぜ」
「ああ、その時は頼むよ」
今度は素直に、言葉が出てきた。

「…薙原。お前は強いな」
去り際。一狼は思い浮かんだ思いを言葉にする。
「へ?全然だろ。斎堂みたいな“力”も無いし、実力だって生徒会の中じゃあ多分下から数えた方がはやいぜ?」
一狼の言葉にユウキはきょとんとして答えた。
「いや、強いよ」
かつて、自分の実力不足を痛感させられた経験がある一狼には分かる。
自分の“弱さ”を素直に認めること、その上で“出来ること”を考え行動すること、自分に“出来ないこと”ができる奴を素直に頼り感謝すること、
そして“出来なかったこと”を悔み続けず、次出来るように努力すること…
それらは本当は、ものすごく難しいことだ。
「薙原みたいな奴が、極上生徒会の執行委員で良かった。僕は心からそう思う」
そんな、心からの言葉を残し。
一狼はユウキの部屋から去った。

「…俺みたいな奴が、執行委員で良かった、か…」
1人部屋に残ったユウキが、一狼の残した言葉を噛みしめる。
「…俺って現金な奴だったんだなあ」
その言葉に励まされ、先ほどまでの悩みが消えているのを確認し、苦笑する。
「ま、そう言われちゃあ頑張るしかねえよな」
気力が充実している。少しでも早く怪我を治して、学校に行きたい。そう考えている。

コンコン
『おーいユウキ、起きてるか?お見舞いに来たぞ。みんなも一緒だ。開けてくれ』

外から声が聞こえる。光綾学園の愛すべき友人たちの声。
「おう、今開ける」
その声に答え、ユウキは笑顔でドアの方へと歩いて行った。

…極上生徒会の執行委員に、1人の少年がいる。
優秀な戦士ではあるものの、つわものぞろいの極上生徒会の中では並みの強さ、そんな少年だ。
だが、彼には多くの友がいた。自らの学園で共に学ぶ友と、様々な学園の生徒と交流を結ぶうちに見つけた、新たな友が。
多くの生徒にしたわれた彼は、多くの友の助けを借りて、1つの“学園世界”の危機を救い、『赤毛の冒険者』と呼ばれるようになるのだが、それはまた、後の話。


―――

今日はここまで。
「強い奴は多いし、それで選ばれる人間も多い。だけどそれ以外の“何か”で選ばれる奴もいる」
それが私なりの極上生徒会執行委員と言うものへの回答です。

ちなみに“この時点”での彼の実力は原作で言うところの2〜3Lv位と想定しています。
ゆくゆくはウィザードたちと比べても見劣りしないくらいには強くなるでしょう。
246次弾装填完了―――:2009/03/14(土) 12:27:22 ID:lbWx58gx
装填完了でーす。

一応珍しく前書き。
執行部絡みのネタで被っちまった上に、設定面がだいぶ異なるんで注意書きとも言う。

こちらの執行委員は―――

・基本的に全員志願制(一部キャラは指令を受けている場合もある)。
・戦闘力のあるなしは問わないが、志願してない者は入らない。
・そもそも「他校間のいさかいの調停」が目的であって、外敵への備えではない上学校内のことは基本的にその学校内で縄張りがあるため、介入権利はない。


くらいかな?そもそもの設定が違うんで申し訳ないが。

ではどーぞ。
247執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:29:25 ID:lbWx58gx
 小等部の終鈴が鳴ってしばらく時が経った。

「ミユ、お待たせ」

 そう言って、笑顔で教室の一室から外に出て、待っていた少女に笑顔で駆け寄る少女が一人。
 長い銀の髪。赤い瞳。白磁のような肌と、まるで妖精のような風貌でありながら、その纏う空気は神秘的というよりは快活に明るい。
 制服なのだろう、胸元の大きな赤いリボンが揺らして勢いよく飛び出してきた少女を見て、それまで茫洋と虚空を見ていた、ミユと呼ばれた少女が少し頬を染める。

「お疲れ様、イリヤ」
「待たせちゃってゴメンね。掃除当番がなかなか終わらなくって」

 いかにも待ちわびていました、という様子がありありと取れる黒髪の少女―――美遊=エーデルフェルト。
 そんな空気を微塵も気にせず、重ねて謝る銀髪の少女―――イリヤスフィール=フォン=アインツベルン。

 彼女達はこの学園だらけの町に転移した学園の一つ、穂群原学園小等部に在籍する、いわゆる小学生である。
 廊下にはごく普通の小学生の女の子が二人、連れ立って歩いているだけ。
 の、はずであるのに。

『いや〜、もう美遊さんの待ちっぷりってばまるで子犬かメイドのごとくですね!』
『姉さん。美遊様は事実 侍女(ハウスメイド)です』

 その二人の鞄から飛び出したのは、羽が生えてふよふよと浮く五角星のリングと青いリボンが生えてふよふよ浮く六角星のリング。

 彼女(?)達の名は『愉快型魔術礼装カレイドステッキ』。
 リングは仮の姿、有事にはステッキになるなんか愉快で不思議な凶悪反則魔術礼装である。
 なお、このリングたちには人工的に作られた精霊が宿されており、
 羽ステッキに宿っている方が『ルビー』、リボンステッキに宿っている方が『サファイア』という固体識別名があったりする。

 イリヤと美遊はひょんなことから彼女たちのマスターとなり、ひょんなことから知り合い、ひょんなことから友だちになったのである。
 ひょんなことがありすぎだというツッコミは心の内にしまっておくように。

 ともかく。
 そんな超のつく強力な魔術品のマスターをやっている小学生の女の子達は、喋る丸い物体達に動じることもなく同じ速度である場所を目指して歩く。
 ルビーがふわふわ浮きながら、イリヤに面を向けて(どっちが顔かはわからないが)話しかけた。

『けどまーイリヤさん。学校がこんなことになって最初はかなりテンパってましたが、なんだかんだで慣れちゃいましたねぇ』
「……まあ、わたしよりもリンさん達の方がすごいテンパりっぷりだったけどね」
『仕方のないことかと。わたし達の創造主ですら無茶苦茶、と称した事象のようでした。その後非常に面白おかしそうに笑っていましたが』
「通常の魔術的事象からはやはり筆舌に尽くしがたいほど『魔法』なせいもあると、思う」

 この世界における魔法と魔術の違いについては、まぁ後ほど。長くなるしあとがきあたりで。

 ともあれ。イリヤと美遊は、なんだかんだでこの世界に慣れてしまっていたのだった。
 自分の兄や知人が同じ学校内におり(高等部だが)、ちょっと不思議な事象にもやけに順応の早いクラスメイトたちに囲まれていたというのも慣れに拍車をかけていた。
 また。隣り合う見知らぬ学校も、通っているのは同じく子ども。子ども同士が仲良くなるのに、そう時間はかからなかったのである。

 彼女達は今日あったことを笑顔でおしゃべりしながら、穂群原の校門を抜け、町並みを歩く。

248執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:32:09 ID:lbWx58gx
 ***

 次々と転移する学校の中で、学生達が生活するために必要な施設を全て有している学校は少ない。
 麻帆良学園や、『学園都市』、リオフレード学園などのように一つの「町」を有する学園は第一次産業から学園内に存在するものの、
 ひがな増えていく『学園』の全ての人員に対する供給が可能なはずもない。
 よって、まず食物をなんとかしようということで地下に農業施設を突貫工事で設立。成長促進技術の限りを尽くしてなんとか食料の自給を保っている。

 次に必要になるのは学校以外の住居だ。
 これもまた、居住区が完成するまでの間は学校でなんとか暮らし、突貫工事を敢行。
 なんとか人数に見合う必要最低限の住居空間ができて、ライフライン系も整備された。
 各文化スタイルに合わせ、多種多様な―――あけすけに言えば雑多な居住区ができたはいいが、きちんと整備されるのはこれからの話になるだろう。

 閑話休題。
 食と住がなんとか人間の増加に追いついてきた現状で、これから必要になってくるのは『整備』である。
 たくさんのものが必要に応じて生産されるシステムが整った後、今度はそれをよどみなく行き渡らせるために様々なものの流れを整理するというシステムが必要になる。
 それは各校の代表である『極上生徒会』が管理していくことになるだろう。

 しかし、それでは対応しきれぬ問題がある。
 様々な思想と様々な思惑を持った人間の集まる一つの「学校」が、一つの場所に大量に転移してくるのである。
 特に交流のない人間が大量に集まっていれば、ささいなすれ違いを起こすのは当然のことだ。
 また、それが一つの校内ならば学校内でいくらでも対処ができる。

 けれど、問題はその『ささいなすれ違い』が、他校間で起きた場合だ。
 決着をつけるのは最近発足されたばかりの学園の長の集合体・『極上生徒会』だが、他校間のすれ違いを話し合いができる程度の落とし所に持っていくのは非常に難しい。
 よって、『極上生徒会』はとある『委員』の設置を決定した。

 他校間のあらゆる揉め事やトラブルを調停し、両者の言い分を聞き、『すれ違い』を『悲劇』に発展させぬために。
 日夜この学園世界中を飛び回る、地位も権力もなく、特別な報酬も用意されてはいない。
 それでもこの町で『悲しいこと』を生まないために駆けずり回る、もの好きな集団。

 この学園世界では知らぬ者のない委員たち。その名を。

 ―――『生徒会執行委員』という。

249少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 12:33:11 ID:zqidr+IJ
支援
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 12:34:23 ID:vEe8jxTc
支援です〜
251執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:35:05 ID:lbWx58gx
 ***

 学園世界中央部、最近作られた極上委員会管理棟。
 3棟ある内の並び立つ北側が会議棟。南側が来賓の待合や、委員会専用食堂などのある予備棟だ。
 寄り添うように存在する、壮麗な装飾や大きな門のある二つの棟に比べ、
 1kmほど離れたところにひっそりと立つ、やけに普通の学校の、それも部活棟のような雰囲気満載の棟が東棟である。
 東棟は、初期の極上委員会の寝泊りに使われていた宿泊施設だったところを、現代の教室のような形に改装しただけの場所だ。
 居住区が完成した今は大本の存在意義を失いはしたものの、最近になってその施設を使う者ができたため、東棟の最上階は今も無駄なく使用されている。

 そんな東棟5階―――最上階にある、一番大きな教室の前に、イリヤ・美遊とステッキたちは歩いてきていた。
 イリヤが、いつもの通りに真新しい白い木の戸を開く。そこには―――

「あ―――っ! また! またですかっ!?
 ですからっ、ここの書き方はこうじゃないって何回言ったらわかってくれるんですかっ!?」

 ―――セーラー服に、頭に花畑を繰り広げている中学生の少女と。

「……だから、俺はこういうの書くのは向いてないんだって……」

 ―――なにやら机に突っ伏して脱力した様子のやたらとガタイのいい目つきの悪い不幸そうな青年がいた。

 花畑の少女の名は初春 飾利(ういはる・かざり)。
 超能力者開発に力を入れる『学園都市』。
 その風紀を守る『風紀委員(ジャッジメント)』の一員でありながら、執行委員の手伝いを申し出た中学一年の少女だ。

 実のところ、あらゆる問題をあらゆる手段を用いて禍根を残さぬよう調停することを使命とする執行委員であるものの、
メンバーとして登録されている人間は、どちらかというと実力行使系の能力者が多い。
 彼女のような特技を持つ(情報処理力・デスクワーク特化)メンバーの加入は、組織として大きな力となるため、
『風紀委員』の二束の草鞋でも構わないので、と加入が即決されたという経緯があったりする。

 なお、イリヤたちが入ってきた戸に近い側面の壁には、壁一面の地図が、反対側の壁には黒板の代わりにホワイトボードがある。
 ホワイトボードには「相良」・「エルフィール」・「植木」とかいった名前の印字された磁石が貼り付けられており、一枚につき一行分のスペースが用意されていた。
 そこには「本日日直のため遅れる」とか、「エルクレストに別種の薬草をもらいに行くため来れませーん」とか、
「3日後には来ると思う」とか、「眠いから家帰って寝る」なんてピンキリの内容が書いてあったりする。

 実にフリーダムな予定表だ。

252執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:36:54 ID:lbWx58gx
 ところで。
 なんだか燃え尽きている様子の青年に、羽をばたつかせながらルビーが近寄り話しかける。

『あらあら、また始末書ですかー?
 始末書の書き方を 12歳(ちゅうがくせい)に教わる 19歳(しゃかいじん)とか、本っ当に見てられませむぎゃっ!?』

 ルビーの言葉をえらく中途半端な場所で途切れさせたのは、先ほどまで魂が抜けたように突っ伏していた青年だ。
 顔を上げることまではしないものの、右手に思い切り力を込めて、ルビーをわし掴んだのだ。

 めりめり、とか。みしみし、とか。なんだか怪しい音がルビーの全面から響きだしている。
 地獄の底から響くような低い声で、青年がルビーに告げた。

「……来て早々、言いたい放題言ってくれるじゃねぇかこの馬鹿ステッキが……っ!」
『なっ、なんですかこの暗黒面の全開さ加減は―――っ!!
 普段の不幸から来る諦めっぷりからはありえないくらい積極的に破壊衝動に身を任せていませんかこの人―――っ!?
 しーきゅー、しーきゅーっ!
 サファイアちゃん、今こそ理不尽な暴力に対して姉妹愛からくるパワーオブラブで敢然と立ち向かう時です―――!!』

 テンパってる時もおちゃらけは失わないルビーちゃんに乾杯。
 そんなルビーに対し、助けを求められたサファイアはどこまでも冷静だった。

『……私が思うところ、柊様は慣れないデスクワークのストレスをため過ぎ、臨界点に達しているものと推測されます』
『わーぉサファイアちゃんてば 超冷静(クールビューティー)ー!
 さあ、そのクールな思考で今こそ私を救う時です、ファイトっ! 頑張れサファイアちゃんっ!!』
『そんなところに藪をつついた姉さんの自業で自得です』

 姉妹愛からくるパワーオブラブ、5秒で崩壊。

 閑話休題。
 今まさにルビーを握り潰さんとしているのが、ほぼ一日中この部屋で待機しているこの部屋のヌシ。
 『肩書き:学生』にして『特別執行委員』を拝命したただ一人のこの学園世界の住人。
 デスクワークのストレスで潰れかけている、柊蓮司その人だった。

 とまぁそんな感じでいつもの通りの喧騒に包まれている執行部室。
 それを止めたのは、執行部室に先にいてオセロに興じていた二人の内の一人だった。

「図星つかれたからってモノに当たるってのは、ちょっと了見狭すぎッスよ柊さんハイ角取りー」
「あぁぁこれでもう角三つ目っ!? 勝てるわけないじゃないこんなのっ!」

 角を取りながら言ったのはメガネの地味そうな黒髪セーラー服の少女。その制服は初春のものとはまた違い、違う学校の生徒であることがわかる。
 彼女の名はベホイミ。
 割と初期にこの『学園世界』に転移した「桃月学園高等部」に在籍する高校一年生だ。

 ベホイミの言葉に自分のやったことを振り返ったのか、力なくルビーから手を離し、今度こそ本当に燃え尽きたように脱力する柊。

253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 12:38:31 ID:nFHTwaeS
ベホーっ!?支援
254執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:39:02 ID:lbWx58gx
 明るい茶色の髪を振り乱しつつベホイミにオセロでボロ負けしつつ涙目になっていた少女が、そんな柊に目を向けてベホイミに一言。

「―――ちょっとアンタ。言いすぎなんじゃない? 本当の屍みたいになってるわよアレ」
「だいじょぶッスよー。たぶんもうすぐ帰ってくる頃ッスから―――お、角4つ目取り」
「ちょっ……アンタには容赦ってもんがないワケっ!?」

 完全なる敗北の決まった少女がばん、と机を叩く。
 少女の名は御坂 美琴(みさか・みこと)。
 初春と同じく『学園都市』のうちの能力者180万人の第三位。たった7人しか存在しない 超能力者(レベル5)の一人。
 超電磁砲(レールガン)の異名を持つ、『学園都市』の中でも五指に入る超名門お嬢様学校「常盤台中学」の誇る電撃姫。
 お嬢様学校に通う質実剛健の中学2年生である。

 群れるのが苦手な彼女がここにいるのは、『学園都市』がこの世界に転移してきた当初、色々と柊に(彼女視点で)借りを作ってしまい、
それを解消するために彼女いわく仕方なく手伝いをしている、というのが経緯である。
 最初は仕方なく、といった様子が強かったものの、今では執行部のクセの強い人間達との交流にも慣れたのか、意外にも順応しながら活動に参加している。

 それはともかく。
 ベホイミが言った『帰ってくる』はずの存在は、まるで出待ちしていたかのように扉を開いた。

「ただいまー、であっりますよっ。
 おや、美遊にイリヤ。今日は遅めでありましたな、何かあったのでありますか?」

 銀髪。ツインテール。ゴシックロリータ。赤い双眸。〜であります。
 絶滅社の誇るおバカ吸血鬼傭兵・ノーチェである。

 学生でもない彼女がなぜこの世界にいるかというと、彼女の所属組織が原因である。
 彼女が所属するのは傭兵派遣会社・『絶滅社』であるわけなのだが、絶滅社と契約していたり所属していたりする人材が輝明学園には幾人もいる。
 その輝明学園秋葉原分校が通称・『学園世界』という特殊な結界内に強制的に転移されてしまった。
 結界内と外で連絡は取れるものの、結界内に転移してしまった『学校』に『所属している』と認識されてしまった人間は結界外に出ることが不可能であると判明。
 よって、その世界の調査兼『なんとかしてその状況を打破してこい』というなんとも抽象的な命令を受け、調査能力に長けたノーチェが派遣されたのだ。

 とはいえ、派遣されたノーチェが『所属』を決めてしまってはミイラ取りがミイラになる。
 よって特定の学校内ではなく、またさまざまな学校が起こす揉め事の解消にも役立ち、さらに学校の垣根を越えて行動することが可能な執行委員に任じられたのだった。

 閑話休題。
 柊ほどではないものの、この部屋にいることの多いノーチェが自分達より後から入ってくることに驚きつつ、イリヤが挨拶を返す。

「あ、ノーチェ。
 今日はわたしが掃除当番だったんだ。ミユには待っててもらったの」
「おぉ、それはお疲れ様でありますよ。一本いっとくでありますか?」

 ノーチェが月衣からするりと取り出したのは、一本の缶ジュース。
 そこには「あんこ生クリーム炭酸」の文字。キャッチコピーの『ぎちっと!しゅわっと!』という文字がなんだか微妙に飲む気を無くす。
 イリヤは困ったような笑みを浮かべながら、この学校世界の無駄なチャレンジ精神をちょっと恨んでみたりした。

「も、もーちょっとマシなのない……?」
「ふつーなのでありますか?
 『濃い恋乳酸よぉぐると』と『超絶☆誓って普通のオレンジ! −果汁0%−』ならあるでありますが……」
「えーと……じゃあオレンジの方で。ミユにはもう一個の方あげるね」

 「あんこ生クリーム炭酸」を片付けると、今度は両手にまた違う怪しい缶ジュースを取り出したノーチェ。
 好意を無碍にするのもためらわれたため、両方を受け取ると左手の乳酸飲料のクセに真っ黒い缶を美遊に渡す。
 イリヤからもらった、というだけでそれを好意的にキラキラした瞳で見つめながら小声で「……ありがとう」と礼を言う美遊。
 なんでこんなにこの子はルートを攻略されたかのごとくイリヤへの好感度がMAX状態なのかは原作を読んでいただきたい。

 『プリズマ☆イリヤ』 全2巻 好評発売中!

255執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:40:59 ID:lbWx58gx
 ともあれ。
 ノーチェは先ほどイリヤに勧めたばかりの「あんこ生クリーム炭酸」と、「体液変換効率10割オーバー 最強のスポーツドリンク」をオセロをしていた机の上に置く。
 さーんきゅ、と美琴が炭酸を受け取るところを見ると、彼女のお使いで缶ジュースを買いに行っていたらしい。
 と、そこでなにやら屍になっている柊に気づいた彼女は、初春に「野菜炒めジュース・レバニラ風味」を手渡しながら声をかける。

「蓮司ー、どうかしたのでありますか? もう明日の矢吹並に死んでるでありますよー?」

 ほらほら「特別キャンペーン!カフェイン増量中プレミアムコーヒー」でも飲むでありますよー。と笑顔で缶コーヒーを差し出す。
 その言葉にようやく顔を上げる柊。
 しかしその目にはやはり覇気がない。

「……遅いっつーの。お前がいない間に俺がどれだけ死ぬ気で紙と格闘してたと思ってんだ」
「何言ってるでありますか。
 蓮司がこれまで解決してきた事件を一つ、各方面に提出するために必要な手続き書類全部書こうとすると、蓮司がこれまで書いた紙の量の3倍は必要でありますよ?」
「……マジでか?」
「命令違反に特例のオンパレードでありますからな。
 その仕事量を他の誰かが肩代わりしてくれていたというのをかみ締めながら、たまにはお前も苦労を味わえというめぐり合わせでありましょう」

 今度こそ肩を落とす柊。
 そんな様子を見て、初春が困ったように笑いながらノーチェに言う。

「まぁでも、人間適材適所とかありますしね。
 柊さんに始末書を書かせるよりは、代理人が書いた方がよほど効率が上がります」
「確かにその通りではありますが。頼り切られても困るのでありますよ、もともと蓮司の仕事なわけでありますし。
 蓮司にも少しくらいデスクワークのいろはを覚えてもらおうかと思って飾利にコーチを頼んだでありますが、少しくらいは成果あったでありますか?」
「短時間すぎるのでどうにも……でも、最初に比べればまだマシなんじゃないですかね」

 初春は渡された缶ジュースを丁寧に鞄に入れると、自分のペットボトルを取り出す。

 事実問題。
 ノーチェがここに配属されたのは、事務処理能力が0に近い柊の補佐、という意味もあったりする。
 戦力を行使する必要のある『調停執行』を行う『特別執行委員』である柊蓮司が、デスクワークに気を取られては一番大切な実務に障害が出る。
 彼個人単独で一日平均8.5件の事件調停をしているため、報告書作成の時間がないのだ。
 なお。『執行委員』というのは、柊一人ではいくらなんでも日々増え続ける学校間のいざこざに対処するのが不可能であると『極上生徒会』が判断したため、
各校に公募告知を行ったところ、一部の学校の生徒会から貸し出された者もいれば、個人的に手伝いを申し出た者もいたりする『調停執行』を行うための委員だ。

 ノーチェはそんな初春の言葉を聞きながら、うんうんと頷きつつ答えた。

「向上心は大事でありますな。とはいえ、やはり一朝一夕では不向きな仕事を完璧にこなすのは無理でありますか。
 蓮司にデスクワークって、飾利が肉体労働に従事するくらいムダなことでありますし」
「ノーチェさん酷いですよー。いくら私が腕立て一回もできないほど体力ないからって」

 それは十分役立たずだと思う、と本人以外の全員が思うもののさすがに声に出す者はいなかった。
 空気を読まないノーチェすらもツッコミを入れぬまま、話をそらそうとする。

「え、えぇと……。
 あ。でも蓮司っ! せっかく途中まで書いたのですから、その報告書くらいは自力で―――」

 書くでありますよ、と言おうとしたその時。
 イリヤたちがいるのに近い側の壁の一部に赤い光が点滅した。
 そちら側の壁はこの学園世界の地図となっており、その地図の一区画が赤い光を放っている。全員がそちらに視線を向けた。
 一番はじめに動いたのは初春だ。彼女は自分のデスクに駆け寄り充電中の携帯をいじり、叫ぶ。

「―――事件発生ですっ! 場所はB−13地区『アッシュフォード学園』前!」
「……って。また都合よく事件が起きるでありますなぁ。
 それで、どうするでありますか蓮―――」

 司、とたずねようとノーチェが地図から目を離し、先ほどまで話していた柊の方を振り向くと―――

 そこには誰もいなかった。
256執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:43:09 ID:lbWx58gx
 一瞬あっけにとられるノーチェ。
 がらがら、と反対側から音がした。反射的にそちらに目を向ければ、いつの間にか窓まで移動していた柊が窓を開け、窓のさんに足をかけていた所だった。
 先ほどまで屍のようにどろりとした濁った瞳をしていた柊が、いつものように悪いながらも強い眼差しに戻っている。
 彼は、イタズラしにいくやんちゃな子どものような表情で、窓から身を乗り出しながら一言告げる。

「悪ぃ。やっぱ俺にはこっちの方が性に合ってるみたいだ。
 つーワケで。ノーチェ、その報告書も含めて俺の書類仕事任せた」
「れ、蓮司っ!? ちょっと待っ―――」
「じゃーなっ!」

 にやりと笑いながら、窓から身を躍らせる。

 ――― 先にも書いたとおり、ここは五階。
 当然のように重力が彼の身を掴み、地面へと叩きつけんとする。そんなことはあの部屋のヌシである柊は百も承知。

 4階。  彼はその不敵な笑みのまま、空中で身体を捻る。
 3階。  虚空―――月衣から鉄の塊を引き抜いた。
 2階。  最近新たに取り付けられたイグニッショントリガーに指をかける。
 1階。  フルスロットル。

 彼の身長よりもさらに大きな鉄の塊が、柊を乗せたまま青い魔力光を吹き上げながら墜落寸前で空へと一直線に駆け上がる。
 最近改造された彼の魔剣に、ウィッチブレード型になった際追加された機能である。

 瞬きほどの時間で空を駆け上がり、空気を引き裂き箒星の如く駆けていくその姿を見ながら、部屋に残された全員は同時に呟いた。


『……逃げたな、あの野郎』


 まぁ、確かにああやって駆け回っている方があの男らしいといえばそうなのだが。

 部屋に一陣の風が吹き込むと同時、地図に新たな二つの光点が灯る。さらに、執行部に取り付けられているテレビ電話回線に入電。
 初春はテレビ電話の入電先が今さっき柊が向かったばかりのアシュフォード学園であることを確認し、ノーチェに応対を任せた。
 自身はレッドアラームの点滅先を特定する。

「二ヶ所同時に事件発生の模様です。
 B−09地区・『楯神高校』と『牙の塔』の境で一件、D−21地区『アキハバラ第三中学校』内グラウンドで一件起きてます。
 御坂さんにB−09地区、ベホイミさんは下の転移経路使ってD−21地区の調停をお願いできますか?」
「あーはいはい。任せときなさいって」
「了解ッスよ。下に行ってるんで転送先指定とかよろしくッス」

 二人はのそのそとオセロの台を片付けると、さすがに柊のように窓から降りるようなことはせずに戸を開けてそれぞれの現場に向かう。
 ノーチェはなにやら黒髪に紫色の瞳の線の細い青年となにやら話し込んでいる。どうやら向こうの生徒会の人間のようだ。
 それを目の端でちらりと確認しながら、初春はこの東棟の下の階にある転送陣に必要事項を入力。
 転送のロックを解除し、手元のマイクのスイッチを入れる。

「じゃ、行きますよベホイミさん。転送先は目標近くの舞島学園高校の屋上です。
 うっかり悪魔に会っちゃっても無視決め込んでサクっと目標に向かってください」
『舞島って……あぁ、<落とし神>の桂木君のいるトコッスね。りょーかい無視決め込むッス』

 じゃ、ディーヴァが出てくる前に片付けてくださいね。お願いしますー、と言いつつ赤いボタンをぽちっとな。
 転送陣の起動音が消えるよりも早く、初春の指が分身したかのように超高速―――亜音速に近い速度で閃いてみっつの現場近くの配置カメラ映像を呼び出した。
 そして事件の下手人と思われる人間を能力・外見・生命力波長・言葉使い・心拍数・目の毛細血管配置などから即座に割り出す。
 マイクに向かって話しかけた。
257執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:45:51 ID:lbWx58gx
「ベホイミさん転送無事ですか?
 アキハバラ第三中学内で起きてるのは、赤毛の内、メロンパンで洗濯板の方のシャナさんと死武専のマカ・ソウル=イーター組のケンカみたいです」
『うわ、またッスか。いーかげん大人になってほしいもんッスね―――と。
 視認したッス。んじゃ、これから一人で拳で語りに行ってくるッスっ!!』

 赤毛の少女―――シャナはちょっと異界の存在にぴりぴりしやすいところがある。
 それで起きたトラブルも実は数少なくはない。ストッパーの坂井悠二がいれば少しは緩和されるのだが、今はいないようだ。
 ともあれ、ベホイミは無理とは言わなかった。ならばなんとかなるのだろう。

 0-Phone の通話ボタンが切れるのを聞いて、初春はマイクを切り替える。

「あ、御坂さんですか?」
『はいはーい。初春さん、何かわかった?』
「はいっ!
 御坂さんに向かってもらってるところですけど、楯神高校内の能力者『ゲートキーパー』と牙の塔の『魔術士』がちょっとしたいざこざ起こしたみたいです。
 具体的に言うと、でっかい怪獣みたいなパンダが楯神高校内で顕現しちゃって、それに驚いた牙の塔の『魔術士』が攻撃。
 どっちもおさまりがつかなくなってるみたいですね」
『メンドいなぁ……確かどっちも遠隔攻撃能力者いたわよね?』
「そうですね。『牙の塔』側は教師たちまでは出ない、って宣言してますからそこまで危険なことにはならないと思いますが―――」
「もしもーし、美琴ー? まだ現場到着してないでありますなー?」

 と。初春の背後にマイクがかっさらわれた。
 当然、声の主は先ほどまでテレビ電話で話していたノーチェである。情報交換は終了したらしい。
 彼女はいつのまにか出していた大きな水晶玉に手を当てたまま、美琴に話しかけた。

「実はここにちょっといいお話があるのでありますよ」
『……なにそのすごく怪しい発言』
「まぁまぁ、ダマされたと思って今走ってる所の次の角を左に曲がってみてほしいであります」

 ノーチェの言葉に、美琴は疑問を持ったようだったが、納得いかないながらも『……? わかったわよ』と言いながら左に角を曲がる。
 その変化は劇的だった。

『な……ちょ、アンタ……っ!?』
「ふっふっふ、わたくしからのプレゼントでありますよー。
 『一つ 執行委員への一般生徒の手助けは、当人が了承した場合のみいかなる場合にも優先して構わない』。
 たぶんその人は断らない人だと思うでありますから思い切り使っちゃって構わないでありますよー」
『なっ、ぐっ―――うー、色々と納得いかないから帰ったら、絶対、アンタを、焼く。
 けどとりあえず礼だけは言っとくわ、ありがと』

 ほら行くわよこのヘンテコ! ぐぁっ!? なんですかなんなんですかレールガンのミコト様っ!? ふーこーうーだーっ!!
 ……などというドップラー効果を引き連れながら、唐突にぶちんと通話は切れた。
 定期的な電子音を聞きつつ、遠い目をしてノーチェは呟く。

「やっぱり焼かれるのでありますかー。なかなか複雑な愛情表現でありますなー……」

 それがツンデレとゆーもんである。諦めろ吸血鬼。
 黄昏ているノーチェからマイクを奪い返しつつ、初春が言う。

「もう、マイク返してくださいね。
 それで。お話は終わったんですかノーチェさん?」
「あー……なんか厄介なことになってるみたいでありましてな。
 蓮司に回線つなげてもらえるでありますか? あと現場周辺の映像出してほしいでありますよ」

 言われ、初春の指が再び閃く。
 モニターに現れた映像を見て、初春が絶句した。
 それも無理はない。アッシュフォード学園の敷地ギリギリを、なんだか踊るように5mほどの高さの人型兵器ががしょんがしょんと動いている。
 この学園のあった世界に存在する「ナイトメアフレーム(KnightMare=騎士の馬)」と呼ばれるタイプの人型兵器だったはずだ。
 ノーチェが状況を補足した。
258執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 12:48:16 ID:lbWx58gx
「いやぁ、なんかアッシュフォードの生徒会長、ミレイが何をまかり間違ったかあれに乗ってしまい、
 さらによくわからない自動操縦プログラムを押してしまってあんなことになったらしいのであります。
 ついでに、ほらこっちも見るでありますよ」

 ノーチェが指した違うカメラ映像を見ると、そのナイトメア大の人形がとなりの学校から出現した。
 いや、人形というには機構のようなものが見当たらない。正確には塊というのが正しいかもしれない。
 白単色のロボットのような人形は、学校の垣根を踏み越えて真っ向からナイトメアと組み合った。

「……あの隣の学校、『南陵高校』ってトコでありましてな。
 実は『神』として作られた人たちとか、それと互角に戦うような人間がわんさかいる学校なのでありますよ……。
 アレは『重力神』・更科 遊風稜(さらしな ゆせみ)の土塊人形『無尽(つくな)』でありますか。
 なかなかに壮観でありますなぁ」
「いやいやいやいや『壮観でありますなぁ』じゃありませんって!
 土塊人形ってことは、アレ無人機でしょう!? アッシュフォードの生徒会長さんに何かあったらどうするんですっ!
 その遊風稜さんになんとかアレ止めてもらうとかできないんですかっ!?」
「遊風稜なら今テスト中とかで携帯出られないみたいなのでありますよ」

 テスト中ならテストに集中しておいてほしいモンである。
 
 ともあれ。テンパっている様子の初春に対し、ノーチェは乾いた笑いを吐き出してマイクを再び初春から奪う。

「―――とまぁ、そんな感じなのでありますが把握できたでありますか、蓮司?」
『ようするに、遊風稜が制御に本気出せるようになるテスト終了までにアッシュフォードの生徒会長さん助けろってこったな?
 具体的にあとどれだけ猶予あるんだ』
「遊風稜は、姉の小春と同じようにそこまで勉強得意な類ではないでありますからな。
 たぶん最後の最後まであがくと思うでありますから―――終鈴まで。ざっとあと10分というところでありますか」

 その言葉に彼は溜息。
 しかし、どこか楽しそうに柊は言った。

『相変わらず無茶なこと言うよな、お前』
「蓮司は誰かれ構わず無茶なことさせられてるではありませんか。
 あの8倍はある魔王を叩き斬ったことがあるならこの事態もなんとかできるでありましょう?」

 初春はそのやりとりを聞いていたが、どう考えても無理だとしか思えない。

 たった一人。時間制限がある。バックアップはない。自分の何倍も大きな敵。数も向こうが上。誰にも被害を及ぼさぬようにしながら、一人の少女を救い出す。

 そんなことは、まるで童話の中のできごとである。
 なのに、なぜ。
 この二人はそれを『できる』と確信に満ちた顔のままで、軽口を叩きながら実行に移そうとしたがるのか。
 ノーチェは続ける。

「アッシュフォード側に確認はとったであります。生徒会長さえ無事なら、ナイトメアがどんな形になってても問題ないそうであります」
『景気のいい話だな。
 ―――了解。多少は派手になると思うから始末書よろしくな』
「ちょっと蓮―――」

 ぶち。
 ……デスクワーク漬けの毎日は彼の心にトラウマを残したらしい。
 先ほどまで見せつけられた信頼関係が無に帰すようなやりとりであった。
 電話を切られた彼女は、脱力して顔を伏せる。

「……結局、わたくしが肩代わりするハメになるのでありますな……」
「ざ、残業なら手伝いますよ? 今日は風紀委員のお仕事も持ってきてますからずっとここでお仕事できますし」

 がくりと肩を落とすノーチェをなんとかはげまそうとする初春。
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 12:52:22 ID:MNG3svm1
支援
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 12:54:37 ID:ktxIWMSR
うふふ。さるさん。
……、わかってる。わかってはいた。結局わたしは。こういう存在。

うふふ。うふふふふ。
261執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 13:00:10 ID:lbWx58gx
 そんな二人を見ていたイリヤがぽつりと呟く。

「大人って、大変なんだね……」
「……おそらく大人かどうかはあまり関係ない」
『信頼関係見せつけるのかと思いきやこの仕打ち。なかなかやりますねー柊さん。
 イリヤさんのお兄さんと鈍感さでは同レベルと見ましたが、サファイアちゃんはどう思う?』
『フラグを、ブレイカーです』

 別にノーチェには柊フラグは立っていないのだが。

 閑話休題。
 と、オペレーター二人が沈んでいると、再びの入電。
 今度は麻帆良学園都市からだ。電話を取ると、モニターに出るのは大きなメガネに広いおでこの、髪を結んだ少女だった。
 葉加瀬 聡美(はかせ さとみ)。麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部3−Aに所属し、大学部ではロボットの研究を行う理系の天才少女である。

『やっほー……って、あれ。
 なんか、お取り込み中でした?』
「ハカセさん。なにか御用ですか?」
「うぅ、ちょっと人間関係について本気出して考えてみただけでありますからお気になさらずでありますよ……」

 ようやく精神ダメージから回復したノーチェはモニターの向こうの葉加瀬に話しかける。

「それで、どうかしたのでありますか? この部屋に聡美が電話なんて珍しいでありますな」
『あぁ、それなんですがー』

 この執行部室に直通のテレビ電話は、各学校生徒会室か大きすぎる学校内の場合は職員室にも置いてある。
 ノーチェはこの少女と実際に友人であるものの、生徒会に所属しない一学生がこの回線を使用することはほとんどないと言っていい。
 それを指摘された葉加瀬は少しばかりバツの悪そうな顔をした後、両手を顔の前で合わせ、叫んだ。

『ごめんなさいノーチェさんっ!
 ちょっとうっかりウチの工学部が発射したミサイルが麻帆良外に出ちゃったみたいなんですっ!』

 沈黙。

「う。う、うっかりで済ませないでくださいよおぉぉぉぉぉぉっ!?」

 初春、爆発。
 当然である。火気管制にうっかりなんてあってほしくない。

「さ、聡美っ!? もし本当にうっかりだったとしても軽すぎではありませんかっ!?」
『ですからごめんなさいって言ってるじゃないですかー! しかも私のせいじゃないんですけどー!?
 と、ともかくっ!
 麻帆学内ならある程度迎撃もできたんですけど、学外に行ってしまいましてっ! 下手に対空撃墜とかしちゃうと被害が出てマズいと思って電話したんですっ!』

 葉加瀬自身もやや混乱気味なのか、聡明な彼女には珍しく語気が荒い。
 あわてても仕方がない、と思い直し、ノーチェは初春を振り返った。

「そ、そうでありますか……。
 初春っ、そのミサイル捕捉できたでありますか?」
「しましたっ。えーと、目標は今火の国中学上空を通過中―――墜落予定地点は、雛見沢分校です!」
「さーとーみぃぃぃぃぃ―――っ!?」
『ごっ。ごご、ごめんなさーいっ!?』

 唐突にバイオハザードの恐怖に叩き込まれる世界であった。
 どうなんだそれ。
262執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 13:02:10 ID:lbWx58gx
 閑話休題。
 初春がさらに状況を報告する。

「そんなことでテンパってる場合じゃありませんっ!
 目標着弾まで、あと83秒しかありませんよ、どうするんですっ!?」
「えぇとうわーそんなこと言ってる間にあと80秒切ってるでありますしっ!?」

 と。この部屋に残る二人の少女が互いの顔を見合わせる。

「……この流れは、わたし達が行くしかないよねミユ」
「あと80秒……階段を下りるまでに5秒、転身に3秒、転送準備に10秒、転送完了までに2秒―――充分可能」

 イリヤは困ったように頭をかきつつ、美遊に話しかけた。
 美遊はいつものように冷静に言葉を告げて、頷く。
 二人で頷きあうと、イリヤが初春に向けて言った。

「じゃあ、そういうことなんで転送準備お願い! 行こう、ルビー!」
『アイアイサーですよイリヤさんっ! 全国のトロピカルなファンにストロベリーな血みどろの夢を!』
「サファイア」
『存じて上げております、美遊様』

 それだけ言うと、二人(と二つ)は返事も待たずに部屋を後にする。

 なお。
 雛見沢分校で毎日行われる『部活』。
 今日の敗者である『口先の魔術師』前原 圭一(まえはら けいいち)に与えられた罰ゲームは、『魔法少女のコスプレで家に帰ること』になったとか。

 それはともかく。
 部屋に、窓から一陣の風が吹く。
 ノーチェが肩から力を抜き、ぽつりと呟く。

「なんというか、学生ってたくましいのでありますなぁ……」

263少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 13:04:00 ID:zqidr+IJ
支援
264執行委員の喧騒:2009/03/14(土) 13:06:10 ID:lbWx58gx
 ***
この世界の学生達は、実はそんなに弱くはない。


 「狙射(シュート)っ!」

 空気を裂いて落下地点を目指すミサイルに、一閃の光条が放たれた。
 それは カレイド(万華鏡)の魔法。それこそはありとあらゆる魔術法則を無視し、「魔法使い」が作った「空想を現実に奇跡として成す」アーティファクトの力。
 しかしその狙撃式魔力弾を、ミサイルは魔力感知型自動誘導センサーによってかわした。
 イリヤが思わず呟く。

「あー……やっぱダメかぁ。ねぇルビー、誘導弾にするのは無理?」
『地味なんでイヤです。
 まぁ、冗談は置いといて。誘導弾もできなくはないでしょうが、イリヤさんはぶっつけ本番で確実に当てる自信ありますー?』
「……やめとくよ」

 誘導弾の練習、やっておかないとなーと思うイリヤであった。
 それはともかく。
 確実にミサイルに当て、撃破するのはセンサーのせいで難しいとこの場の全員が認識している。
 サファイアが現状を整理した。

『センサーでこれほど完璧に回避されてしまうと、当てるのは難しいかと。
 弾速最大の狙射でも無理では、より遅い砲射では迎撃は不可能です』
「……つまり、回避できない状況になれば構わないということ?」

 美遊が言った言葉に、なるほど。とルビーが頷いた。

『結局のところ、あれは爆薬を詰めたミサイルってことなわけですね。
 確実に当てて破壊、という手段を取るよりはハデに回避不可能なだけの弾幕を張って掠らせて誘爆狙い、と』
『しかし美遊様。誘爆という手段を取るのならば、周囲への被害を考慮する必要があるかと』

 サファイアの冷静な言葉に答えたのは、イリヤだった。

「なんだ、だったら簡単だよ。わたし『達』は一人じゃない。
 一人が攻撃、その後すぐもう一人が防御。それでなんとかなるんじゃないかなー、と思うんだけど」

 どうかな? と尋ねるイリヤに、美遊は微笑んで頷いた。

「……うん。きっと、二人なら大丈夫。
 イリヤは弾幕をお願い。私は一度見たことがあるから志向制御平面を理論的に形成できるし、イリヤの方が散弾射は得意」
「まかせて!
 よーっし―――それじゃ、行こうかルビーっ!」
『オーケーですイリヤさんっ! いつにもまして友情パワーがほとばしってて私としては嬉しい限りですよーっ!
 豪華絢爛、リリカルマジカルクレイジーに、ド派手に根こそぎ跡形もなくで参りましょうっ!』

 イリヤが美遊の少し前に出る。桃色のリボンが風になびいた。両手で掴んだステッキを、思い切り振りかぶる。
 そんな彼女を見ながら、美遊は頼もしげに自身のステッキを見つめた。

「サファイア、わたし達も。志向制御平面の物理エネルギーへの対応の細かい応用はお願い」
『すでに術式応用を開始。いつでも作戦を開始できます』

 その言葉を背後に聞きながら、イリヤが声をかけた。

「じゃあ行くよミユ。カウント3で開始ね!
 1、2ーのぉっ!」

 さんっ!という少女たちの声が空に響き。
 蒼穹を爆光の渦と大量の魔法陣が染め上げた。

265執行委員の喧騒@学校世界:2009/03/14(土) 13:07:24 ID:lbWx58gx
 ***
世界に唐突に生まれた崩壊の危機など、笑顔で吹っ飛ばしてしまうくらいには。


 大鎌と刀が幾度も打ち合う。
 大鎌を振るう少女は、くくった髪を揺らしながら身の丈ほどもある鎌を重そうな素振り一つ見せずに振りまわし続ける。
 大質量の武器を、しかし特に疲れた様子もなく振り回し、振り下ろし、薙ぎ払う。

 それに相対するのは一振りの刀を持った赤く長い髪の少女。
 俗に野太刀と呼ばれる大きさの刀である。
 小柄な少女は、やはり身の丈ほどもある刀を打ち下ろし、突き出し、振りかざす。

 金属同士が硬質な音を響かせながら、一合、二合と打ち合っていく。
 赤い髪の少女が速度で勝るものの、大鎌の少女はまるで視点が複数あるかのように、死角からの攻撃に対しても正確に迎撃を行っている。
 結果、大鎌の少女がやや防戦状態であるものの、赤い髪の少女が攻めあぐねる、という展開で小康状態を保っていた。

 しかし、両者ともそれではらちがあかないことはわかっている。
 ならば。
 二人の少女が互いの武器を一際強く打ち合わせ、反動で距離を離す。
 同じことを考えている少女達は、生まれたほんのわずかな時間でその決断を行動に移す。

 すなわち、次の一撃に全力を注ぎ込み目の前の敵を全力をもって排除する―――っ!

 その、二人の少女が己の力を限界まで隠して0距離で開放することまで、まったく同じ思考で少女が距離を詰めた、その時だった。


 横薙ぎに大鎌を振るう―――その動きの機転になる左肩を、見知らぬ右手が掴んで止め。
 刀をすくい上げるように振るう―――利き腕の右肘を、同じ人間の左手が押し留めていた。


 壮絶な刃の饗宴の間に割って入ったのは、一人の少女。
 赤いマントをなびかせて、桃色を基調とした制服を着ただけの、武器を持たぬままに不敵な笑みを浮かべる少女。
 はっ、と笑みを吐き出しながら、彼女は―――ベホイミは、挑発的に言葉を紡ぐ。 

「いーかげん、大人になってもらえないッスかね。
 そろそろ同じ人が起こす事件止めるのもメンドくなってきたわけッスよ。
 いつも通り、一言だけ言わせてもらうッス。『止まれ―――」

 でなければ、と言いながら彼女は笑みを崩さぬまま、自身が動きを止めている少女達に視線を向けて。
 続きの口上を口にした。

266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:09:01 ID:Zo84Xfos
思炎だ!うけとれえぇえええ!!
267執行委員の喧騒@学校世界:2009/03/14(土) 13:10:06 ID:lbWx58gx
 ***
そんな世界の危機の最前線で、悲劇を生まないために、戦場に赴き続ける者達がいた。


 黒いローブを来た少年少女達が、口々になにやら叫ぶ。
 同時に光が生まれ、空気が破裂し、炎が吹き上がる。
 彼らは魔術士の育成機関・『牙の塔』に所属する魔術士だ。
 天人と呼ばれるものの血を受け継ぎ、声を媒介に世界を一時的に変革する術を持つ彼らは魔術士と呼ばれ、その異能を思う存分発揮する。

 その彼らが何と戦っているのかと言えば、同じ年頃の少年少女達だ。

 そちらは学ランにセーラー服の子ども達。
 それだけならば普通の学生の可能性もあるかもしれないが、やはり彼らは普通の学生ではありえない。
 彼らが手をかざす、それだけで虚空に光のゲートが開く。
 ゲートからは風が渦巻き、動物が現れ、雷が迸る。
 異世界とこの世界との門の開閉を可能とする能力を持った少年少女達―――門の守護者・ゲートキーパー。
 インベーダーと呼ばれる侵略者達を狩る、ゲートキーパーの集団『ゲートキーパーズ』。彼らが所属するのが、この楯神高校なのだ。

 きっかけは単純なことだったものの、一度始まった争いはなかなかおさまりはしない。
 学校の境は、いまや戦場さながら。
 未だ死人は出ていないものの、いつ出てもおかしくはない。そんな混戦乱戦がすすみ極限状態の中。


 突如現れた太陽の如きオレンジ色の光の筋が、戦場を灼く。


 次いで、光の筋の後を追うように場の全体を衝撃波が吹き荒れる。
 まったく予期しなかった方向から、あまりに広範囲を吹き荒れた暴風と衝撃波に、戦場が一時硬直する。
 その場にいる全員が、目の前にいる相手を見ることも忘れてオレンジの光条の発射地点を見た。

 そこにいたのは、短めのスカートを風に煽らせている茶髪の少女。
 右手を前に突き出したまま、余裕をもったまま戦場全体を見つめている。
 ……なお。
 おまけのように彼女の後ろには息を荒げて顔を伏せている黒髪短髪つんつん頭の少年がいたりもする。

 ともあれ。
 彼女は―――御坂美琴は、その場の視線全てに宣戦布告するように、不敵な笑みのままに告げる。

「まぁ、くだらないはじまりにしろ、ケンカが始まった以上どっちも退けない気持ちはわからないでもないけどね。
 アンタらも、くだらないことで死人が出るとかはもっとくだらないと思わない?
 だからあえて言わせてもらうわよ。
 『止まりなさい―――」

 でないと、と彼女は自分を見つめる数多くの目に対し、何一つ気負うことはなく。
 ただ単に真実を告げるように、口上の続きを口にする。

268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:12:10 ID:nFHTwaeS
支援だ!
スリンガー教官とトリステイン魔法学院という劇物反応起こしそうな組み合わせは流石に…面白そうだっ!
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:12:36 ID:omhDSbzC
週末+規制解除の勢いはスゲェな支援
270執行委員の喧騒@学校世界:2009/03/14(土) 13:12:37 ID:lbWx58gx
 ***
彼らの名を―――



 5mほどの大きさの人型兵器「ナイトメアフレーム」。
 同じくらいの大きさの、白い土人形「無尽」。
 それらは、がっちりと組み合ったまま力を拮抗させていた。
 真正面から手と手で組み合い、互いに互いを倒そうとする。
 拮抗したその状態を、無尽がナイトメアを放り投げようとすることで終わらせようとしたその時だ。


 ―――上空から、『斬撃』が降ってきたのは。


 ナイトメアを放り投げようとした無尽の左前腕が、肘関節から叩き『斬られ』る。
 投げられかけたナイトメアは、しかし推進力の他に姿勢制御機能も果たす、脚部装備の補助ホイール・ランドスピナーにより倒れることはなかった。
 一旦両者は距離を離し、状況を把握しようとする。
 そんな混乱の最中に、両者に声がかけられた。

「……ったく、本当に面倒事が減らねぇな。片付ける側の身にもなってくれ」

 その声は両者の足元から。
 言葉の内容の割に疲れを感じさせない、それでいて不敵な声。
 先ほど無尽の腕を斬り落とした斬撃の影響で彼らの足元は土ぼこりが舞っている。
 それを、不意に吹いた突風が晴らすとそこには。

 巨大な鋼の刃を地面に突き刺して、ヘーゼルの髪を風にあおらせることなく、目つきの悪い青年―――柊蓮司が立っている。
 彼は声のままの不敵さで、両者に向けて宣言する。

「―――執行委員だ。
 時間がないから、前置きはこれだけで済ますぜ」

 自分の身体の数倍の大きさのヒトガタ2体を相手に、怖れることなくただ宣言する。

「止まれ。
 でなけりゃ、勝手に止めるぞ」




―――『生徒会執行部員』、と言う。


 おしまい。
271執行委員の喧騒の中身こと夜ねこ:2009/03/14(土) 13:14:13 ID:lbWx58gx
この話書くために色々と部屋の中を漁ったら、なんか中学時代に買った漫画が出てきて気が付いてみたら一日過ぎてた(挨拶)。
どーも、ここ数日迷走しまくってた夜ねこです。
シェアワールドものは書いてるとめっちゃ気ぃ使います。誰かの設定潰すのが怖いんス。
その割にシェアワールド書きまくってないか?という質問についてはまぁ黙秘権。
好きなのよ! どこかの誰かと言葉をかわして一つの夢のカタチを作り上げるのが!!(うるせぇ黙れ) いや、単にみんなで何か作るの好きなだけッス。


じゃあとりあえず出展ー。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン                  私立穂群原学園小等部@プリズマ☆イリヤ
美遊・エーデルフェルト                           同上
カレイドステッキ ルビー                          @プリズマ☆イリヤ
カレイドステッキ サファイア                        同上
イリヤさんのお兄さん <「ブラウニー」衛宮士郎(えみや しろう)>     私立穂群原学園高等部@出展はプリズマだがFate仕様か天地仕様はお任せ
リンさん <「あかいあくま」遠坂 凛(とおさか りん)>           同上               
植木 <植木 耕介(うえき こうすけ)>                   火の国中学@うえきの法則(『+』仕様も可)
「風紀委員」初春 飾利(ういはる かざり)                  『学園都市』内中学校@とある魔術の禁書目録
「超電磁砲」御坂 美琴(みさか みこと)                   『学園都市』内常盤台中学@同上
ふーこーうーだー!!の人  <「幻想殺し」上条 当麻(かみじょう とうま)> 『学園都市』内高校@同上
ベホイミ                                  桃月学園@ぱにぽに/その他氷川作品
柊 蓮司                                  @ナイトウィザード
ノーチェ                                  同上
パンダ使いのゲートキーパー <「百獣」の鳳 妃玲(フェン・フェイリン)>  楯神高校@ゲートキーパーズ
黒髪紫眼の青年 <ルルーシュ=ランペルージ(ヴィ=ブリタニア)>      アッシュフォード学園@コードギアス 反逆のルルーシュシリーズ
生徒会長・ミレイ <ミレイ=アッシュフォード>               同上
「落とし神」の桂木 <桂木 桂馬(かつらぎ けいま)>            舞島学園高校@神のみぞ知るセカイ
シャナ                                   @灼眼のシャナ
坂井 悠二                                 御崎高校@灼眼のシャナ
マカ                                    死武専(死神武器職人専門学校)@ソウルイーター/SOUL EATER
ソウル=イーター                              同上
更科 遊風稜(さらしな ゆせみ) <一神殿「重力神」遊風稜>         南陵高校@神さまのつくりかた
更科 小春(さらしな こはる) <一神殿「空間神」・「戦神子」小春>     同上
葉加瀬 聡美(はかせ さとみ)                        麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部@魔法先生ネギま!?
「口先の魔術師」前原 圭一(まえはら けいいち)               雛見沢分校@ひぐらしのなく頃に

学校名のみ

リオフレード学園   @異界戦記カオスフレア
エルクレスト     @アリアンロッド
牙の塔        @魔術士オーフェン 無謀編(個人的なイメージとしてはキリランシェロ時代)
アキハバラ第3中学校 @アキハバラ電脳組

272執行委員の喧騒の中身こと夜ねこ:2009/03/14(土) 13:16:51 ID:lbWx58gx
うっわすごいズレたorz。変に合わせない方がいいのかもなぁ……。

……とまぁ、シナリオソースになりそうな所から個人的な趣味まで各種取り揃えてみました。
個人的にはまだまだ出したい学校はあったけども、これ以上を一話でまとめんのは正直厳しいと判断。
久しぶりに柊書けて楽しかった。次はあかりんの話を書きたいなーと思ってたり。学園話じゃないけど。

そしてやっぱりノーチェがいるのは……趣味です。悪いか。(悪いと思え)
公式でこれ以上取り上げられる気がしないから勝手にキャンペーン張ってるだけでございますよ悪いか。(悪いよ)
柊にデスクワーク任せるってのは、やっぱり無意味に近い失敗人事だと思います。中の人が代わりにやってくれるならともかく。
適材に適所しておこうと思うのって、割と普通なことだと思います。明らかに人事間違えてるのがわかってるなら。

あー、それから美琴ですが、別に柊フラグは立ってませんよ?
単にこっちに『学園都市』が転移した時に、色々と勘違いして派手に暴れてしまい、
それが勘違いだとわかって、執行調停した柊に「これだけのことしてお咎めナシとかあたしが許せないからなんかさせなさい」とのたまい。
何も考えてない柊が「あーじゃあ、手が足りないからたまに手伝ってくれ」と言ったため「じゃあ借り返すためにやったげるわよ」という経緯。
別にそれ以上はない。というか上条さん一筋ですよ? 学園世界で友人がいっぱいできた今では、割と望んで力を貸してるのです。

さて、おいらの中の執行部はこんな感じなわけでありますが、実は色んな人とのイメージからはかけ離れてることが判明。
正直色々とこれからの執行部使ったお気楽トラブル冒険展開考えてたものの、やめた方が無難、かな。
みんなと一緒に同じ一つの世界を共有する以上は、『すりあわせ』って必要だよね。セッションで一人好き勝手言い出すようなもんだしね。

まとめの方。他の方の設定とあまりにかけ離れてるようだったら隔離項目にして下さいー。
みんなの共通認識世界なのに勝手な俺設定詰め込んだ自分が悪いわけですし。

では。
次また何か書けた時にお目にかかれれば。
あとがきのこんなところまで見てくださった貴方に感謝を。

PS 
はい? 型月世界の「魔法」と「魔術」の違いですか?
「小さな奇跡」が「魔法」、魔法枠の魔法が「魔術」だと思えばいいと思うのですよー?
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:19:20 ID:nFHTwaeS
乙でしたー。
また大量にぶち込みましたねーw

ルルーシュあたりはある意味この世界のままの方が幸せになれるかもにゃー。
でも学園世界にも普通に『悪い奴』は居るだろうから安心は出来ないかー。
アレイスター=クロウリー(byとある魔術の禁書目録)とかすんごくどす黒いしー。
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:19:47 ID:3CsuR5mn
支援する!
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:23:47 ID:Zo84Xfos
GJ!いい感じにカオスってるなぁ
ジジイ四天王はじめ、教師陣がそろそろどういう行動にでるか非常に気になるところ

具体的にはタイガーとか子供先生(牙の塔)とかまほうせんせいsとかシュタインとか…
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 13:25:12 ID:MNG3svm1
乙です。

やっぱ柊は前線で戦わないとなw
277少年は英雄を目指す@学園世界:2009/03/14(土) 13:26:26 ID:zqidr+IJ
そこはそれ。鳥取は卓ごとにあるんです。そして設定は縛られるもんじゃなくてふくらますためのもんです。
作者ごとに解釈が違うのは、アリじゃないでしょうか?
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 14:40:18 ID:SCYIR966
>>272
これはいいカオスw GJですw

これはこれで、面白い設定かな、と思うのです。
言い換えると。次も待ってます、とw
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 14:55:08 ID:ojJu6h7V
オーフェンの魔術と魔法の違いもありますなw
人間、天人が使うモノ=魔術
神様が使う奇跡=魔法

それはそれとして、乙でございますた
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 17:11:18 ID:qO1ZPWgD
どんだけ風呂敷広いねんw
そしてどんだけどんだけどんだけノーチェ愛しとるねんwww


遅れた支援代わりにツッコミを一つ
>志向制御平面@264
「指向」?
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 21:00:48 ID:QZvWVL+v
「赤い髪の冒険者」…アドル? 学園じゃないか。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 21:15:23 ID:Xj+jt8yV
学園世界って3つ以上を絡めるのが推奨?
リストになっているので少ししか使えるのがないからNW+αで描いてみたいんだけどいいんだろうか
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 21:31:56 ID:DWtoCShB
別に推奨ではない、汝の書きたいように書くがいい…と神も申しております
NWとのクロスって事を忘れない程度なら書ける範囲で自由に書いていい…はず
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 21:34:00 ID:QZvWVL+v
縛りじゃなくて可能性だと思う。
普通クロスSSスレだと多重クロスって嫌われがちだけど、ここの(特にリレー)は完全フリーだから
他所ではやりにくいことができる。
285少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 08:55:33 ID:2I/ZXBEy
9時から、投下します。
286少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 09:00:40 ID:2I/ZXBEy
光綾学園から少し離れた、“通学路”の一角。
あの時感じた“異様な気配”を再び感じ取った少女は、歩みを止めた。
「…思ったより早かったわね」
空を見上げれば、そこには女の顔をした鳥がぎゃあぎゃあと不快な声を上げている。
恐らくは、少女の居場所を告げているだろう。
しばらく空を旋回していた鳥が舞いおりてくる。
その先にいるのは、あのとき見かけたやせぎすの少年。
「よくやった。戻れ。凶鳥フリアイ」
傍らの鳥に話しかけると鳥の姿が幻であったかのように消える。
「見つけたぜえ…」
少年が大きめの辞典くらいの大きさの箱を開き、いじりながら少女に話しかける。
見慣れないデザインの制服。そしてその眼に宿るのはどろりとした殺意。
「言われたんだよ…マグネタイトを集めてきたら、強制労働から解放するって…
 悪魔使って、ここの連中ぶっ殺して来いって…こいつ渡されてよぉ…」
まるで悪夢にうなされるように、少年は呟く。
「俺の悪魔…勝手に殺すんじゃねえよ。邪魔すんなよ。うぜえんだよ…」
カタカタと、箱をいじる音と少年の声だけが響き渡る、静寂の空間。
「まずはお前から、ぶっ殺してやるよぉ…」
タン!とどこか小気味よい音を立てて、少年は箱をいじるのをやめる。
「…来い!邪鬼オーガ!妖獣ヌエ!」
少年の呼びかけと共に、少年の前の地面に魔法陣が描かれる。
そしてその魔法陣から現れるのは昨日倒した“鬼”が2体とサルのような顔をした、奇妙な“獣”
「1人だろうが女だろうが丸腰だろうが関係ねえ…ぶっ殺してやる!」
その様子を見ても冷めた目のままの少女に少年が吠える!

最初に動いたのは獣だった。
吠え声を上げ、よだれを垂らしながら少女の喉笛を噛みちぎろうと少女に迫る。
そして一方の少女は。
「…別に、貴方がここで何をしようと、興味は無いわ」
目の前の非現実を見てなお、冷めた目のまま、虚空に手をやる。
「私は火の粉が降りかかれば、それを払う。それだけだもの」
そして何かを握りしめる動作と共に引きぬいた瞬間、少女の手にひと振りの細剣が現れる!
「グァ!?」
目の前の少女が突然武器を持ったことに動揺するものの、既に走り出して止まることも出来ずに獣が突っ込む。
細剣を構え、万全の迎撃態勢をとった少女に対して。
その結果。
その場には少女の代わりに眉間を貫かれた獣が倒れ伏すこととなった。
287少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 09:04:51 ID:2I/ZXBEy
(…あのフィクサー。ふざけた格好だったけど腕は確かなようね)
獣の眉間から剣を引き抜きながら少女は考える。

光綾学園の購買は、アイテムか金貨、銀貨でし払えば他校生にもアイテムを売る。

以前仕入れた情報を元に調達に訪れた、光綾学園。
妙に軽い口調ながら“裏”の人間であることを匂わせる彼女から、少女が買ったもの。
それはあの店で一番出来が良かった、“ファルネーゼ”と言う細剣を1本と…
(“時空鞘”と言ったかしら。こうも簡単に武器が隠せては、護衛も大変ね)
彼女が異世界の学生から買い取ったという、武器を隠し持つための“異空間”を作り出すアイテム。
本来ならば少女のような“一般人に武器を所持していることを知られてはいけない人間”くらいにしか用が無いはずなのだが、
何故かその学園から持ちこまれるものではありふれたものらしく、比較的安価で譲ってくれた。

「く、クソ!オーガ、行け!あの女を俺に近づけさせるな!」
少年の命令を受けて鬼たちが突っ込んでくる。戦術も何も無い、突撃。
「…あなたたちも大変ね。馬鹿な指揮官を持って」
その様子に、少女は憐れむように呟き。
放った2回の突きは、2体の鬼の喉元を正確に貫いた。

「ひぃ!?」
自らの戦力を全滅させられた少年がおびえた悲鳴を上げる。
「な、何かないか…」
“彼”に託された悪魔召喚プログラムをいじくって目の前の“化け物”を倒せるような悪魔を探す。
(コイツじゃダメだ。これもダメ。駄目駄目駄目駄目…これだ!)
必死に調べ、少年はそれにたどり着く。“彼”が最後の切り札として用意していた、強力な悪魔。
「こ、こい!邪鬼ギリメカラ!」
そして、その言葉が響くと同時に、魔法陣が再び現れ、1つ目の、象の頭を持つ悪魔が現れる。
「やれ!その女をぶっ殺せ!」
その悪魔は召喚されるとほぼ同時に。
“主”の命令を忠実に実行してみせた。

ドスゥ!

「…な、何で…」
自らの胸を刺し貫いた“悪魔の”剣に少年は茫然と呟く。

グシャアッ!

少年が思わず落した箱を、悪魔が踏みつけて粉々に粉砕する。
悪魔は“主”に命令されていた。
自分が“召喚”された場合、“召喚者”を殺し、パソコンを破壊せよ、と。
「ぐ…ぐふぇ…」
主の手駒が事切れたのを確認し、悪魔は少女の方に向きなおる。
「…どうやらあなたを倒せば、終わりのようね」
構える。少女は経験と勘で悟っていた。目の前の“化け物”は強い、と。
そんな少女に、悪魔は無造作に近づき、剣を振り下ろす。

ブオンッ!

技も何も無いが、恐ろしく早いその一撃を少女は紙一重でかわし、反撃にうつる。
剣を振り下ろしたことで無防備に曝された、悪魔の胸、そこにめがけて神速の突きを繰り出す。
「プレシズ・キ…!?」
技名と共に、必殺の一撃を繰り出そうとした瞬間だった。
ぞくりと。
少女の背筋に何かとてつもなく恐ろしい予感が通り過ぎる。
それを受けて、剣の軌道がそれる。胸…心臓から大きく離れた、右肩へ。
そして、少女の剣が悪魔の右肩に届いた瞬間。
辺りにパッと鮮血が舞った。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 09:08:41 ID:XQqdgkBq
ギリメカラ支援
物理反射怖いよ物理反射
289少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 09:08:47 ID:2I/ZXBEy


「…つくづく非常識な、世界ね…」
少女が初めて顔を歪めて見せる。その、痛み故に。
力の入らない右手を必死で握りしめる。零れおちそうになる剣を取り落とさないように。

距離を取って、少女は悪魔をにらみつける。
…左手で“自らの”負傷した右肩を抑えながら。
剣が悪魔の右肩に届いた瞬間、少女は右肩に傷を負った。
…まるで、“自分の攻撃を受けた”かのように。
そらさなければ、心臓を破壊され、少女は死んでいただろう。
(困ったわね)
おまけに悪魔は完全に無傷だ。どうやら自分の剣は通用しないらしい。
少女は、魔法を使えない。
戦う術は剣の技しか知らぬ少女には最悪と言ってもよい相手だった。
(撤退したいところだけど…)
逃がさないとばかりに距離を詰めた悪魔が斬りかかって来る。
その攻撃を剣で弾く。
「くぅ!?」
悲鳴を飲み込む。
剣がぶつかり合うたびに震動が右肩に伝わり、新たな血があふれ出る。
(…難しいわね)
無理とは思わない。撤退に失敗すれば、ほぼ間違いなく、死ぬ。
生き残るには、何としてでも逃げ出さなくてはならないのだ。
防御に徹しながら、少女は必死に辺りの状況を探る。何でもいい。逃げ出せるだけの隙を作るなにかを。

だからこそ、少女は気づいた。

「伏せて!」
そんな声と共に小型の何かが投げ込まれた瞬間。
既に少女はバックステップで十二分に距離を取っていた。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 09:09:05 ID:+i0cNANf
支援。
291少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 09:10:49 ID:2I/ZXBEy


爆音。
小型の炸裂弾が爆発し、辺りに火が飛び散る。

グォォォォ…

怒りと痛みに悪魔が声を上げるなか、斎堂一狼は少女と悪魔の間に降り立つ。
「大丈夫ですか?」
一狼がこの戦いに気づいたのは、偶然だった。
得た情報を元に、輝明学園に戻り、少女について調べてもらおうと思った直後。
“月匣”に似た何かの発生を察知したのだ。
そして、やってきた先にいたのは…
「あなたですよね?昨日、モンスターを倒した、剣士の少女と言うのは」
黒髪のお下げと、血まみれの手袋。そして手にしている業物の細剣。
状況から見て、間違いないだろう。
「ここから先は任せて下さい。コイツは、僕が倒します」
そう言うと自らの月衣から忍者刀を引き抜き、構える。
その直後だった。
「…待って。そいつに剣は効かないわ」
「え…?」
「実証済みよ」
少女が一狼に対して最初に言ったのは、冷静な戦況分析。
「それと…」
少女は一狼との悠長なおしゃべりを許している悪魔の方を見る。
攻めあぐねている様子だ。何かを警戒するように、距離をつめようとしない。
良く見れば、あちこちにかなりの火傷を負っている。大した威力でもない、炸裂弾で。
続いて、一狼を見る。今駆けつけたばかりの“無傷の”一狼を。
少女は一狼に問いかける。
「あなた、“火”を使った攻撃は出来るかしら?」
「火?」
「そうよ。魔法でも爆弾でも何でも良いわ。火を使って、攻撃してみて。一撃目は…かすり傷程度の浅い攻撃でお願い」
「…分かりました。炎よ纏え…《エンチャントフレイム》!」
一狼が魔法を使って武器に炎を纏わせ、悪魔に切りかかる。
「てやあ!」
シュッ
その攻撃は狙い通りに悪魔の腕にごく浅い傷をつける。
「やはりね…」
傷がついた悪魔の腕と無傷の一狼の腕を見比べて、少女は確信し、少年に叫ぶ。
「そいつ、炎が弱点よ。炎をまとった攻撃ならば、跳ね返せないみたい」
「了解!」
少女の言葉に応え、再び《エンチャントフレイム》を纏わせた刃を鞘に納め、居合の形を取る。
「…プレシズ・ヘル!」
続いて少女が斬りかかる。ただし、今度は攻撃する代わりに、当てないように気をつけてのフェイントの応酬。
舞いのように繰り出されるそれは、巧みに悪魔の視界を遮り、悪魔の剣を跳ね上げて弾き飛ばし、悪魔を無防備にするそれは、一狼の攻撃へとつながる準備。
「…今!」
体勢を完全に崩し、無防備な姿をさらさせたところで少女が離れ、一狼に合図を送る。
「斎堂一狼…参る!」
そして、最良の一瞬をつかんだ一狼の一撃が悪魔を捉え。

スパァン!

一刀のもとにその首を切り落とした。
292少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/15(日) 09:14:19 ID:2I/ZXBEy


報告書
作成者:輝明学園所属 斎堂一狼

モンスターによる襲撃の犯人は、所持していた学生証より“軽子坂学園”の男子学生と判明。ただし、現在学園世界に該当する学園は発見できず。
なお、調査中、襲撃犯より襲撃を受け、交戦。襲撃犯はその戦闘中にモンスターの暴走に巻き込まれて死亡。
遺留品は破壊されたモバイルパソコンが1台。回収するものの、損傷激しく内容等の確認は困難。
モンスター召喚の媒体となっていたことから何らかの特殊なプログラムが入っていたものと思われる。

―――輝明学園 屋上

荻原への報告を終え、少女と一狼は人気のないベンチで話をしていた。

「本当に良かったんですか?」
治療のためと、共に報告してもらうためについてきてもらった少女が荻原に言った言葉について、一狼は再度問いかける。
「よかったって…何が?」
「あなたが“カゲモリ”になるって言いだしたことについて、ですよ」
“カゲモリ”として、輝明学園と契約を結びたい。そう、少女が言いだした時には、本当に驚いた。
「…ドルファン学園側には私の存在を知らせない、また、その存在を悟られぬよう輝明学園が最大限の便宜を図る。
 その一環として私に輝明学園の“ウィザード生徒”としての身分とその証明書を発行し、女子用の呪錬制服を支給。
 ドルファン学園の外では輝明学園に所属する“強化人間”として扱い、購買の利用等の権利基準は輝明学園所属のウィザード生徒に準ずる。
 なお、私の身元等については一切の詮索を行わないこととする。任務に必要な装備等はそちらが用意する。
 報酬は別途結んだ契約に基づき決定。…契約条件に特に問題は感じないけど?」
首をかしげ、すらすらと先ほど結んだ契約内容を羅列する少女に、一狼は心配そうな顔で聞く。
「ですが、いつ死ぬかも知れない、危険な仕事ですよ?」
「…それも問題ないわ」
一狼の問いに、少女は遠い目をしてみせる。
「帰還すること自体は私にとっても必要だもの。そのために動くのは、当然でしょう?それに、死ぬ覚悟ならとうの昔にできてるわ」
それを当然のように言う彼女に、一狼は何も言えなくなる。
しばしの沈黙。その気まずい空気に耐えられず、一狼は自己紹介を始める。
「…そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。僕は斎堂一狼と言います」
「そう。私はライズ。ライズ・ハイマーよ」
それに答える形で少女…ライズが名乗る。
そしてまた、沈黙が訪れる。
(ど、どうしよう…すっごく気まずい)
って言うか今まではそれどころじゃなかったけど、よく考えたら女の子と2人きりなのだ。
まずい。実にまずい。
(最近は、姫宮で慣れたと思ったのに…思ったのにぃ〜!?)
意識を始めたら、一気に気になる。どうしよう。
「…どうかしたの?」
「へ!?あ、いや、その…」
そわそわと落ち着かない様子の一狼を訝んだライズに話しかけられ、一狼は、更に動揺する。
(ま、まずい何か話題、話題…)
必死で考え、言葉を絞り出す。そう言えば言って無かったなあとかそんな感じで。
「あ、そ、そうだ!薙原さんが、あっと、あ、その、ライズさんが助けた執行委員の人がありがとうって伝えてくれって言ってました!」
(し、しまったあ〜!?)
別に今言うこっちゃないだろと後悔しきりの一狼。

だが。
「…別に、私は生き残るために戦っただけよ。助けたわけじゃないわ」
ライズはそっけなく呟くと、ぷいっと視線を横にそらす。その反応に。
(もしかして…照れてる?)
少しだけ、ライズを近くに感じる一狼だった。

…ちなみに。
その後、「斎堂一狼が屋上で美少女と2人っきりで会っていた」と言う話は尾ヒレどころかむなびれと背びれまで生えて
とある人造人間の少女に伝わり、それがまた新たな騒動を引き起こすのだが、それはまた、別の話。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 09:16:37 ID:+i0cNANf
噂って広まるのもいつの間にか内容変化するのも早いよね。
まあとりあえず一郎強く生きろ支援。
294魔人は静かに暗躍する@学園世界:2009/03/15(日) 09:17:42 ID:2I/ZXBEy


「…死んだか」
学園世界。いまだ誰も訪れるものの無い地下深く。そこに存在する、学園世界に現出した“魔界”。
そこで1人の少年が呟いた。
「実験用の使い捨ての割には大分もったな」
交渉の機能を削ることでさして“才能”のない人間でも扱えるようにした、悪魔召喚プログラムの簡易版。
その“実地試験”の結果に少年は満足して、嗤う。
少年の名は挟間偉出夫。魔界と…“魔界に飲み込まれた学園”を支配する“魔神皇”
「さて、次の一手はどうするか…」
しばし黙考する。自らが学園世界を手にするための方策を。
彼…挟間は一度死んだ。幽閉の塔を攻略した、1人の悪魔召喚師と悪魔と合体した1体の魔人の手によって。
そして、蘇った。理由は分からないが、今の、この不完全な形で。
彼は今、この魔界から出ることができない。だが、奇妙な確信がある。
学園世界とその世界が持つ膨大なマグネタイト。
「あいつも、アモンももういない…私は、今度こそやり遂げるのだ」
それを手にしたとき、自分は“唯一神”にも並ぶ真の“魔神皇”となる、と。
「…そうだ。次は、こうするとしよう」
次の方策を思いついた、孤独な魔人は。
再び闇を蠢きだした。

…彼は、まだ知らない。
後に自分が“極上生徒会”や“カゲモリ”たちと激しい戦いを繰り広げ、“学園の敵”と呼ばれる存在になることを。
そして、自らの再臨と学園世界魔界化の計画が、学園世界の、とある少年少女たちの手でつぶされる未来を。

…彼は、最後まで理解しない。
自分が“生かされている”駒の一つであることを。
自分の他にも“学園の敵”が存在し、お互いを知らず蠢いていることを。
そしてその“学園の敵”の背後に存在する、“何か”の存在を。

闇は蠢く。様々な思いを乗せて。

―――

以上です。キャンペーンの第1話風にしてみましたが、続く予定は今のところ無いです。

>>281
色々かぶりますよね。赤い髪とか天然のフラグメイカーだとか(こっちはジャンル上ちゃんと1人と結ばれるだけマシだけどw)
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 10:43:04 ID:FQwymlOr
>>294
おつぐっじょぶ!
一狼君が活躍してて嬉しい。
学園世界の「明確な敵」が出てきた初めてのお話、かな?
話が広がりそうで続きが楽しみです(いけしゃあしゃあ
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 11:24:40 ID:8/suOAaX
女神転生はifか
しかもアキラルートだと?w

そういやまだ学園世界じゃペルソナ使いは出てないんでしたね
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 12:10:39 ID:FQwymlOr
え? リオフレード学園が(以下検閲削除
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 12:22:47 ID:WITeKfO2
>>297
……あんまりそーゆーことばっかり言ってると「卓ゲ民自重しろよ」って怖い人がくるぞ。やめとこうぜ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 12:31:18 ID:KJJDSinO
>>298
だいじょーぶ。リオフレードも混ざってるから。
カシス先生が、かがみん達に授業してる光景が発生してるに違いない。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 15:48:44 ID:l7UJ4g9/
そーいえば、スクメズとか光綾学園の訓練用ダンジョンとかエルクレストの実習ダンジョンとか、ダンジョンものにも事欠かないんだよね。

いちおー、一本アイディアはあるんだけど……
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 15:57:16 ID:WITeKfO2
>>300
あるなら形にすればいいだけでは?

つーか、設定だけ語るにしてもきちんとまとめて整理する必要がある気がする。
フィールドが広すぎて、現時点どこになにがあるのかわからんのだが。
まとめがほしいな。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 16:08:14 ID:FQwymlOr
むしろ、多少の矛盾は気にしない方向のほうがいいかも。
それをネタに結びつける、までは行かなくても、自分で気に入らない設定は
自分の中でなかったことにするとかさ。
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 16:46:04 ID:l7UJ4g9/
>>301
うん、それでね。ひとつ思い出せないことがあるんだけど……

光綾学園にゴーレムっていたっけ?
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 17:04:49 ID:2I/ZXBEy
>>303
ランサーって言うゴーレムっぽいものならいる。基本は戦闘用だけど、一応メイド型なんてのも試作品で作られてたりするw
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 17:16:58 ID:l7UJ4g9/
あー、いたいた!

よし、これでネタに繋げられる!
306少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/16(月) 00:07:22 ID:msFcZdno
カゲモリについての話を書いていたら色々酷いことになった件。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 00:07:47 ID:bwZcko2w
柊がまかでみの榮太郎先輩になぜかハンバーガーを勧める、という微妙なパロディを幻視したんだが形にするべきか否か…。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 00:33:50 ID:Wla/+YoT
幻視したものは形にするのが作法かと
309NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 01:46:00 ID:p7RucbhK
学園世界、で真っ先に思い浮かんだのが
あらゆるヒロイン達との絡みを片っ端から蹴っ飛ばして蓬莱寺京一とかとラーメン食いにいく柊蓮司
でした。
他にルートなんてありません。ヒロイン? 何ソレ


ともかく、55分ごろから投下します


カッとなって書いた。反省している
・・・だが後悔はしていない!(PC1っぽく)
310NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 01:57:45 ID:p7RucbhK
 

「ようこそ、パピヨンパークへ!」
 そこは新緑生い茂る庭園。
 白亜の噴水が鎮座する広場の中央で蝶の怪人は高らかに謳う。
 全身に歓喜の色を称えたパピヨンを胡乱気に凝視しながら、マフラーの少年――ソウヤはどう反応すべきかわからなかった。

 銀成市での戦いを終えたソウヤはパピヨンに連れられて程近い山奥に建てられたテーマパークへとやってきていた。
 『パピヨンパーク』の名の通り、パピヨンが蝶野家の遺産にあかせて作り上げたものであるらしい。
 聞けば着工は昨年の末だというのに見る限りかなり建築は進んでいるようだった。

「なんだ? 聞く限りこういうトコロに来るのは初めてだと思ったが」
「いや……それはそうだが」
「ならば子供らしくもっと喜ぶがいい。生憎アミューズメントの方は未稼働だがな」
「……」
 パピヨンの言葉にソウヤは難しい顔をして黙り込んでしまう。
 彼のいた『世界』にはこういった類のモノなどもはや失われて久しく、そんな世界に生れ落ちた彼もまたそんな風に遊んだ記憶はついぞない。
 ――両親と遊んだ記憶さえも、物心ついた頃には既に遠いモノだった。
「……オマエのいた世界には娯楽すらないのか。なんともぞっとしないな」
 ソウヤの険しい表情を見て取ってパピヨンはつまらなそうに鼻を鳴らして肩を竦める。
「『奴』も存外つまらん目的を持っていたモノだ。何事にも常に余裕と遊び心がなくては」
 言いながらパピヨンは庭園の片隅を指差した。
 釣られてソウヤがそちらに眼を向けると……何もなかった。
 何の変哲もないただの植木だ。手入れが行き届いているらしく幾種もの花が鮮やかに咲き誇り、その回りを蝶々が嬉しそうに舞って――いや。
「……!?」
 光景の違和感に気付いてソウヤは思わず眉を潜めてしまった。
 縮尺がおかしい。花に対して明らかに蝶が大きすぎる。
 普通蝶と言えば精々が掌サイズなのだが、視線の先にいる蝶は20cmを超えているようにも見えた。
 鮮やかなメタリックブルーの色彩は見事なものではあるが、やはり大きすぎて少し奇妙さを先立たせてしまう。
「な、なんだアレは」
「見てわからんか?」
「わからない」
「嘆かわしいな」
 パピヨンは盛大に溜息を吐き出し哀れんだような眼でソウヤを見つめた。
 しかしそんな眼で見られても、わからないものはわからない。
 眉を顰めるソウヤをよそに、蝶仮面の怪人はまるでダンスのステップを踏むような軽やかな足取りでその植木へと歩み寄る。
 そして、慈しみが溢れ出す様な仕草で空を舞う蝶々に手を指し伸ばすと恍惚の笑みを浮かべた。
「アレキサンドラトリバネアゲハ。世界最大の蝶にしてワシントン条約で取引が禁止されている程の蝶希少種だ」
「ワシントン条約……って、なんでそんなのがここにいる!? 大丈夫なのか!?」
「これだけではないぞ、世界中の珍種希少種なんでもござれだ。ここは蝶の楽園パピヨンパークだからな」
 愕然とするソウヤを無視してパピヨンは嬉々とした表情で次々と蝶の解説を始めてしまった。
 言われて見れば確かにここには様々な種類の蝶が飛び交っている。よく見れば違いもそれなりにわかる……のだが。
 ソウヤからすれば(おそらく一般人なら大体そうだ)それらは単に『蝶』でしかなかった。
 あまりにも嬉しそうに解説を続けているパピヨンを半眼で眺めやりながらソウヤは、
「……よく集めたもんだな」
 無難な事しか口に出せなかった。
 一応聞く耳は持っていたのか、パピヨンは解説をぴたりと止めると口の端を歪ませてから口を開く。
「何しろ俺は蝶天才……と言いたいがな。流石に発案から一ヶ月足らず、パークの建造と並行してこれだけの種を集めるのは物理的にも金銭的にも不可能だ」 
「……? 実際こうして集めているじゃないか」
 僅かに眉を潜めたソウヤの目線を受けて、パピヨンは皮肉気に笑みを深める。
 くつくつと漏れるような嗤いを零しながら、彼は呟くように言った。
「ちょっとした伝手ができたんでな。流石は"遍く空を飛ぶモノを統べる女王"と言っておこう」
「……? 何の話だ?」
「関係のない話さ。俺にも、オマエにも、アイツ等にもな」
 肩を竦めたパピヨンは踵を返して歩き始めた。
 これまでとはやや雰囲気の違う背中を追ってソウヤも歩き出し、二人は庭園を後にして山道へと向かっていった。


311NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:06:23 ID:p7RucbhK
 


 緑林生い茂る(ここにも沢山の蝶がいた)山道を歩いていくと、緑に混ざって遠めに白い建物が見えてくる。
 あれがパピヨンのラボか、とソウヤが心中で呟くと、前を歩いていたパピヨンが唐突に声をかけてきた。
「件の特殊核鉄の件だがな。悪いが製造は少しばかり遅れるぞ」
「なっ……どういう事だ!?」
 悪びれもしない言いようにソウヤは思わず食ってかかってしまう。
 しかし彼の態度はある意味で当然のものだった。
 何故ならソウヤが『この世界』に来てパピヨンと接触を持ったのも半ばそれが目的だったからだ。
「先の戦いで武藤の奴が核鉄を壊してしまったそうでな。それを造り直さないといけない。
 まあ既にレジメはあるから、一つ造るのも"二つ造る"のもそう手間じゃないが、とにかくそっちができるまでお前の方は後回しだ」
 戦力はなるべく多いほうが良いだろう? とパピヨンは背中越しにソウヤを見る。
 しかし彼は僅かに視線を彷徨わせると、彼の視線から避けるように僅かに俯いて漏らした。
「……必要ない。特殊核鉄さえあれば、後は俺だけで全部やる。俺はあの人達には極力関わらない方が――」
「それは困るな。大いに困る」
 搾り出すようなソウヤの言葉を遮り、パピヨンは仰々しく腕を広げた。
 彼はまるで道化地味た動きで煽るように謳う。
「お前みたいなサプライズがいるんだ、アイツ等には極力関わって貰わなくては面白くないじゃないか!」
「……面白くない、だと?」
 そんな事を言われればソウヤとしては反論せざるを得ない。
 僅かに剣呑な空気を漂わせて、彼は刺すようにパピヨンを睨みつける。
「これは遊びじゃないんだ。世界の存亡がかかってる」
「遊びのようなモノさ。つい先日だってれっきとした世界の危機だったぞ?
 ウィザードの連中も日夜世界の危機に立ち向かっているらしいし、聞く限りここ一年でそういう類はかなり増えている。
 安っぽすぎてもう笑い話にもならんな」
「……っ。ウィザードだか何だか知らないが、俺は真面目に話をしている!」
 頭に血が昇りかけて、ソウヤは思わず懐の核鉄に手を伸ばしかけた。
 しかしそれを為すよりも早く、パピヨンが制止するかのように腕を差し出した。
「なら真面目に話をしてやる。お前の言う世界の危機とやらを確実に防ぐためには戦力は多ければ多いほどいい。
 だがお前が自分の存在をなるべく公にしたくないという。なら、イリーガルに近い武藤達と手を組むのが妥当だ……違うか?」
「くっ――」
 咄嗟に反論の言葉が思い浮かばずにソウヤは黙り込んでしまう。
 何しろ武藤 カズキや津村 斗貴子となるべく関わりたくないのは彼自身の個人的な事情であり、彼の至上の目的である『世界』を護る事とは何ら関係はないのだ。
 方向性は異なっていても私情を優先させたという点において、彼はパピヨンを非難できなかった。


312NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:08:53 ID:p7RucbhK
 


 黙りこんでしまったソウヤを見てパピヨンは満足そうに笑みを浮かべると、軽く肩を竦めてから踵を返し再び歩き始める。
「まあそんなに憤る必要はない。何しろ今の俺は蝶ノリ気だ、一刻も早く次のゲームに専念するためにさっさと後片付けをやってしまうさ」
 まるで小躍りするように歩を進めていくパピヨンの背中を見やりつつ、ソウヤは大きく溜息を吐いた。
 『パピヨン』との付き合いはそれなりに長い――矛盾しているようだが、彼にとっては正しい――のだが、未だにその性格を把握しきれない。
 ソウヤの言をまるきり信じていない訳ではないだろうに、何故もこう楽しそうにできるのかわからなかった。
「……何がそんなに楽しいんだ」
「――楽しいに決まっている!」
 独白めいたソウヤを呟きを聞きとがめたのか、パピヨンは弾けるように叫んだ。
 感極まったのか彼はニアデスハピネスを展開し、無数の黒死蝶を舞わせながら躍るようにターンして空を仰ぐ。
「これこそパーティだ!
 ウィザードだのエミュレイターだのいう無粋な客はいない。俺達の、俺達による、俺達のためのパーティ!
 そしてプロデュースは勿論この俺、蝶人パピヨンだ!
 パピヨンパークの落成記念としてはこの上ないイベント、派手に盛り上げて……!」
「待て待て待て! 公にするなと言っただろう!?」
「ん? ああ、そう言えばそうだったな」
「くっ、こいつ……」
 疲れ果てた表情で肩を落とすソウヤに、パピヨンはほくそえんで背を向けた。
 無論、ソウヤに言われた所でパピヨンとしては自重する気など毛頭なかった。
 今回のウィザードにまつわる一件のように他人の尻馬に乗ったり乗せられたりは御免こうむるが、自分で画策するのならば彼はどこまでもアグレッシブなのである。
 それとなく情報を錬金戦団にリークすればすぐにでも戦士たちが飛びついてくるだろう。
 勿論主賓は武藤 カズキと津村 斗貴子であるから、彼等の相手も用意しなければならない。
 特殊核鉄の精製と同時に、片手間で研究していた量産型ホムンクルスの資料を記憶から掘り起こして実働させる。
 パークの完成までにやる事が山積みだったが、パピヨンは正直わくわくが止まらなかった。
 今にも笑い出してしまいそうな衝動を必死に抑えつつパピヨンはソウヤを伴いラボへ向けて歩き出す。
 彼等の饗宴の開催は一月先か、二月先か、いずれにしろそう遠い事ではない。
 夜闇に踊る魔法使い達の与り知らぬ青空の下、錬金術の担い手達の新しい闘いが始まろうとしていた。

 



313NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:12:15 ID:p7RucbhK





 ※ ※ ※



 ――それはここではない世界。
 人々の住む世界を表と呼ぶなら、そこは闇の巣食う裏の世界。
 ヒトには計り知れぬ魔性が跋扈するその世界の中、侵魔と呼ばれるモノですら侵し難い領域があった。
 伝説になぞらえて呼称するのならば、それはまさしく万魔殿と呼ぶに相応しい。
 何故ならばそこは、この世界の総ての魔性を統べる王の居城ゆえに。



「……申し訳ありません」
 謁見の間の静謐を破らぬように、巨大な書物を抱えた黒髪の少女が言葉を紡いだ。
 彼女が跪き、頭を垂れているその先――玉座には、一人の少女が座っている。
 裏界に存在する序列第二位の『大公』が一柱、侵魔を統べる王、"金色の魔王"ルー=サイファーはその二つ名に相応しい豪奢な金の髪を僅かに揺らす。
 彼女は肘掛に頬杖をついて、言葉なく銀の瞳を傅く少女へと向けた。
 視線を向けられた、ただそれだけで黒髪の少女――"秘密侯爵"リオン=グンタは内心を貫く悪寒を堪えなければならなかった。
 玉座の王は別段殺気を放っている訳ではない。
 ただ"そこに在る"というだけで、凡百の侵魔などは消し飛ぶほどの威圧をリオンに与えているのだ。
「ベリトのみならず、モーリーまでも討たれましたのは私の未熟。処罰はいかようにも――」
「よい」
 ただの一言でリオンの言葉を封殺すると、ルーはリオンから目線を外し虚空を見つめる。
「目的は既に果たしていたのだ、『その後』の事など総て些事に過ぎん。もっとも……蝿が紛れ込んだ時点で見る価値も失せたがな」
 僅かに眼を細め、言葉を切る。
 金色の魔王が一体何を考えているのか、リオンは全く計り知れない。
 たとえその腕に抱える書物を紐解いたとしても、おそらくは窺い知る事はできないだろう。
 少しの沈黙の後、ルーは静かに瞑目し誰に言うでもなく言葉を紡ぐ。
「世界結界への干渉は速やかに行われた。イコの情報は正しかったようだ」


 先年の夏に起こした『夢を食らうモノ』による世界結界への干渉は世界全土を覆う事に成功した。
 ただ、これはその起点をファージアースの人間にしたものであり、度を過ぎているとはいえあくまで『人々の意思――その世界にいる人間の意志によって常識が構築される』
という世界結界のシステムに則ったものだった。
 だが今回起点として使ったのは、媒介こそファージアースのものではあるが歴としたエミュレイターである。
 それでも、以前のそれと同等以上の速さで世界結界に干渉し世界レベルで異常を引き起こすことに成功したのだ。
 今回の一件においてルー=サイファーが求めた成果はただその一点のみ。
 状況を利用して世界を滅ぼそうとしたのはリオンの独断に過ぎない。
 それで彼女の目論見が成功していれば望外の成果となっただけで、それが叶わなかったとてルーにとっては些かの痛痒もなかった。



314NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:15:39 ID:p7RucbhK
 

 
「……間もなく刻は満ちる。それまでに蝿に穢されたその身体を癒すがよい」
 瞑目したまま金色の魔王は静かに告げる。
 リオンは一顧だにしない主に恭しく頭を垂れると、踵を返して歩き始めた。
 天を衝くほどの巨大な扉を開き、場を後にする。
 その時、
「リオン」
 ふとルーがリオンを呼び止めた。
 僅かに身じろぎして振り返れば、ルーは僅かに眼を開けてこちらを見つめていた。
 身も心も凍てつかせるような銀月の瞳が、黒髪の少女を射抜く。
「……戯れに聞くが。先の顛末、汝の書に記されていたか?」
「―――」
 金色の魔王の言霊にリオンは―― 一切表情を崩さず、静かに瞑目した。
 普段と変わらぬ無貌の相を以って彼女は、

「……はい。私がウィザード達に敗れる事は、この書に記されておりました」

 そう答えた。

「……。ならばよい」
 僅かな沈黙を伴ってルーはそう呟き、話は終わりと手を払った。
 リオンは僅かに頭を垂れて扉の向こうへと姿を消す。
 金色の魔王は僅かに力を込めて書物を抱えていた彼女の姿を、言葉もなく見送った。



315NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:19:59 ID:p7RucbhK
 



「―――いいのかね?」
 玉座の王ただ一人となった謁見の間にそんな声が響いたのは、リオンが辞して少ししてからの事だった。
 ルーは誰何の声を上げる事なく、目線さえもやらず瞑目したままその来訪者に口を開く。
「……構わん。内通し敵対しているのならともかく、少々遊んだ所でどうこうする気はない」
 それに――と言いかけて不意にルーは眉を寄せ、口を噤んだ。
 広大な広間に沈黙が下り、ルーがそれ以上言葉を続けようとしない事を悟ると、来訪者は唇を僅かに歪ませて彼女が言いかけた言葉を継ぐ。
「――それに、自分といるよりベルといた方が気安かろう……かね?」
「……っ」
 その瞬間、ルーは表情を露にして来訪者を睨みつけた。
 立ち並ぶ柱の一つに背を預け、紫と茶の瞳に愉悦を滲ませてルーを見つめる妙齢の美女。
 薄絹のみを纏うその姿は扇情と言うよりは神秘を漂わせ、長く伸びた翡翠の髪は清流を思わせる。
 殺気すらも漂わせたルーの銀眼を、彼女――"風雷神"フール=ムールは涼風の如くに受け止めて笑みを深くした。
「直接言ってやればいいだろうに。無闇に心労をかけてはいらぬ方向に流れ出しかねない」
「……そんな事はお前に言われなくてもわかっている」
 与えた威圧も柳に風と理解したのか、ルーはどこか諦めたように玉座に身を沈めた。
 そしてフールには視線を向けないまま、頬杖をついて一人ごちるように漏らす。
「だが、アレは少々度が過ぎる。手綱を緩めれば自制が利くまい」
「確かに。陰に篭ってはいるが、あの子はどちらかと言えばベル寄りだからね」
 理解しているじゃないか、と可笑しそうにくすくすと笑うフールにルーは眉を寄せて不快感を露にし、小さく鼻を鳴らした。
 そして彼女は僅かに眼を細めると、冷徹な王の貌でフールを見据える。
「それで、よもやそんな戯言を繰るためだけに我の許に来たという訳ではないだろうな?」
「……まさか」
 ルーの気配の変化を感じ取ってか、フールは薄い笑みを収めて真っ直ぐに彼女を見返した。
「『例のもの』だがね、どうにも見つからない。対存在が集っている以上この世界にあるとは思うのだが……こうなると幻夢神が手元に抱えている可能性が高い」
「……やはりか」
「アニーに情報を渡して吟味させれば確証は得られようが、流石にそれはまずかろう?」
「わかっている」
 フールの報告にルーは忌々しげに呟くと、瞑目して静かに息を吐いた。

 ルー=サイファーが探しているモノは、自身がこの裏界に封じされた際に分かたれた力の半身だ。
 表界への侵攻にあまり乗り気ではなく、そして『彼女』の事を知る数少ない魔王の一柱であるフール=ムールに捜索を任せていたのだが、
結局徒労……というよりは予想通りの結末に落ち着いてしまった。
 こうなってしまうと幻夢神本体なりアバターなりを引き摺りださねばソレを取り戻す事は叶わない。
 どの道侵攻を強めれば出てくる事にはなるだろうが、闘いを始める前にソレを手にしておきたい所だった。


316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 02:22:23 ID:nTkwMl4/
志縁だ
317NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:25:31 ID:p7RucbhK
 


「……で、どうするね? アレの加護がないまま計画を発動すれば、いかなキミとて大きな減退は免れまい。『前の時』のように裏方に徹するのかな?」
「……」
 フールの言葉にルーは数瞬沈黙を保つ。
 そして彼女は瞑目したまま、努めて感情を抑えて静かに告げた。
「アゼルを連れて行く」
「―――」
 そこで初めてフールの表情が僅かに崩れた。端整な眉がほんの少しだけ驚きに持ち上がり、次いで怪訝の表情を滲ませた。
 しかしルーは彼女のその変化を理解しながら、そして彼女がその言葉の意味を理解している事をわかっていながら、言う必要もない事をあえて口にする。
「アレを連れて行けばこの身もいくらかは保たせられよう。それに、事態が動けば恐らくベルも動く。
 アゼルがいれば足止めする事もできよう……その力量とは関係なく、な」
「……傍観者の私が言えた立場ではないが。あの子にそれをさせるのかね」
「――そうだ。アゼルがそれを"する"のではない。我がそれを"させる"のだ」
 金色の魔王は揺らぐ事なく断言する。
 アゼルが動くのは彼女の意思ではなく、あくまでルー=サイファーの意思によるものだと。
 確かにルー=サイファーほどの神格を持つ存在であるのなら、アゼルのみならず他の魔王級侵魔であろうと、本人の意思とは関わりなく手駒として操る事は可能だ。
 それをできるだけの《カリスマ》が彼女にはある。
 だが――
「……そんな事をするからベルやパールに嫌われるのだよ、ルー」 
 嘆息交じりに吐き出したフールの声に、ルーは僅かに苦笑を漏らした。
 そして彼女はどこか自嘲めいた声色で、裏界の支配者と呼ばれるにそぐわない表情でフールを眺めやる。
「今更好かれようなどとは思わない。
 有象無象の侵魔共がひしめき合い骨肉相食むこの世界に必要なのは友誼による協和ではなく、暴力による混沌でもなく、絶対的な力による統制だ。
 それでこの裏界の秩序と均衡が保たれるのなら――『私』は暴君でいい」
「……真面目すぎるな、キミは。キミとベルと……パール辺りを足して均等に割れば丁度いいと思うのだがね」
「……私もそう思う」
 囁くようなルーの返答に、フールは小さく口の端を歪ませた。
 それに釣られるように、ルーの口元にも笑みが浮かぶ。
 裏界の支配者たる"金色の魔王"には相応しくなく、外見相応の少女に似つかわしい表情だった。
「私はそんなキミが大好きだよ、ルー=サイファー」
「だったらいつまでも日和っていないで私に力を貸せ、フール=ムール。必要ならば座も用意してやる」
「今でさえキミから受けた『公爵にして伯爵』などという嫌がらせに耐え忍んでいるのだよ? その上にもう一つ号を加えられたらたまらんよ」
 フールは笑顔のまま肩を竦めると、鷹揚に柱から背を離して歩き出した。
 長く伸びた翡翠の髪を揺らしながら扉に向かっていく彼女の背中を、ルーはじっと見つめていた。
 その視線に気付いたのか、フールは背中越しにルーを見つめると労わるように声をかける。
「たまには私の領域に足を運んでくれ。ここ数年はご無沙汰だろう?」
「ベルが世界結界を綻ばせて以来、有象無象の雑魚共や魔王達が活性化していた。そんな状況で私がのうのうと静養などできまい?」
「……あまり気を張らぬように。パトリシアも心配している」
「お前も、あいつも、協力はしないくせに心配だけはする訳だ。まったく恐れ入る」
「ふふ……まあ、件の計画が成就すれば状況も落ち着こう。その時は是非に」
「……そうだな」
 ルーの返答にフールは満足気に微笑を浮かべると、空気に溶けるようにその場から姿を消した。
 僅かに揺れ動く空気の中に風雷神の残滓を感じながら、ルーは静かに眼を閉じる。
 静寂が降りた空間の中、孤高の王としての表情を取り戻した金色の魔王は宣誓するように呟いた。
「そうだ、計画は成就させる。ベルにも、魔王達にも、ウィザード達にも、邪魔はさせない。望むべき我が世界のために――」
 


318NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:30:31 ID:p7RucbhK
 




 ※ ※ ※




 ――謁見の間を辞したリオンは、遥か続く回廊を彼女にしては珍しく足早に進んでいた。
 金色の魔王の居城から転移して辞する不敬など侵せようはずもない。
 だから彼女は、一刻も早くこの場を立ち去ろうと歩を進める。
 うわべだけの表情は取り繕えた。だが、知らず書物を抱える腕に力がこもっていた。
 ルー=サイファーがそれを見逃すはずもない。
 リオンは自分が何故あのような台詞を吐き出したか、自分でも理解できなかった。
 己が主であり、絶対の支配者であるルー=サイファーに対して偽りを述べるなど、あってはならない。
 だというのに、あの銀の瞳で射竦められ、言霊を突きつけられた時、口から零れたのはあの言葉だった。
 これではまるで――
「――ヤな事が起こるのです」
「……っ!」
 不意に響いた声にリオンは大きく肩を震わせ、歩みを止めた。
 真っ直ぐに伸びた回廊のすぐ脇に、テラスのベランダに腰掛けた兎耳の少女がいた。
「……イコ=スー」
 兎耳の少女――"魔王女"イコー=スーは満面の笑みを浮かべると、まるで跳ねるようにベランダから飛び降りるとリオンの許に駆け寄ってくる。
 そして彼女は覗きこむようにしてリオンを見上げると、
「ルー様との話は終わりました?」
「……はい」
「そうですか。……ルー様はちょっと疑り深いのです。イコが"ちゃんと教えた"情報はいつだって正しいのに」
 そう言って膨れっ面をしてみせるイコの顔をリオンはじっと見つめていた。
 その視線に気付いたのか、イコは再び子供のような顔を見せてから踊るようにくるりと回ってみせる。
「それで、リオンはこれから"どうする"んですか?」
「……、」
 くすくすと笑いながら尋ねてくる少女にリオンは僅かに眉を寄せた。
 それは怪訝というよりは、不快といった方が正しいのかもしれない。
 予言を繰る魔王でありながら――否、そうであるからこそ、そのように覗き込まれるのは彼女は好きではなかった。
「イコ=スー。貴女……"視えて"いるのですか」
「もちろん」
 短く答えて魔王女は笑みを深める。
 一見すればそれは無垢な少女のそれかもしれないが、彼女を知るものが見ればそれは魔的な笑みと言うべきだろう。
 何故なら彼女は『愚者を導く公女』であるが故に。
「リオンはリオンの好きなようにすればいいのです。イコ達の能力は類を見ないレアモノなんですから、羽目を外したってそうそうどうにかされる訳はないのです」
「そのような事――」
「現にイコはアスモデートにも情報を流してますよ?」
「っ」
 屈託なく言うイコにリオンは思わず言葉を詰まらせた。
 力による統制を旨とするルーにとって、力による混沌を愉しむアスモデートはある意味でベール=ゼファーよりも嫌悪すべき対象でもある。
 仮に他の魔王がそのような事をすれば、即座に粛清されるのは間違いない。
 だが、当のイコはそれを全く気にする風でもなかった。
「だから、リオンがベルとよろしくやってたってルー様は別にどうって事ないのです。まあ度が過ぎれば怒るかもしれないですけど――」
 今回はちょっとやりすぎたかもです、などと言ってイコは苦笑を閃かせる。
 付き合いきれなくなってリオンは小さく息をつくと、彼女を置いて歩き出した。



319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 02:33:33 ID:nTkwMl4/
流石ルー様だ!支配者スタイルが激痺れるぜ!
流石はイコだ!預言者本家は伊達じゃない!
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 02:35:26 ID:mMTZLvxV
しっえーん
321NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:35:59 ID:p7RucbhK
 


 ルー=サイファーと反目しようとするなどできるはずがない。
 力量の点から言っても、カリスマの点から言っても、ルー=サイファーは現存する他の七王からは群を抜いた存在であり、その下にある事は己が身の保証ともなる。
 リオンの性情として世界の支配者となるよりもあらゆる秘密の蒐集を好む以上、現在の立場が最も望ましいのだ。
 実際ルー=サイファーの統治は磐石だ。
 皇帝シャイマールの跡目を継いだとされる頃から彼女の支配が揺らいだ事は一度として存在せず――それは『未来』においても確約されている。
 間もなく発動する彼女の計画の顛末。
 ベール=ゼファー辺りなら「結末のわかったゲームは面白くない」などと言ってそれを知る事を拒否するだろうが、ルー=サイファーにそのような戯れ事はない。
 彼女の計画の成功は自らが抱える書物に――絶対の運命に確約されている。
 ファージアースを掌握すればルーの力はもはやベルはおろか他の七王級の魔王達が結束したとしても覆りようがなくなるだろう。
 だが――仮に、確約された運命が覆るとすれば。
 書の記録によればルーの計画に関わるのは、奇しくも彼女の繰った運命を覆した魔剣使い。
 そして先程ルー自身が口にしたように、彼女は『その後』に起こった運命の破綻を見てはいないのだ。
 だが、あの男がそれを為し得たのは守護者の加護があったからにすぎない。
 あの男単独では――"何らかの要因"がなければ運命を覆す事など叶わぬはずだ。
 
「……」
 果てのない回廊を歩みながらリオンは絶対のはずの運命を覆された紅い極光を思い出し、固く口を結んだ。
 胸が疼く。
 あの時に生まれた感情と、胸を穿たれた痛みと、胸を貫いた『彼女』の言葉がない交ぜになって、心をかき乱す。
 運命は覆らない。ルーサイファーの勝利は揺るがない。
 だが、それが揺らいだとしたら。
 あの時のような光景をもう一度目の当たりにしたら。
 その時、自分は―――



322NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:38:32 ID:p7RucbhK
 



「――さよならなのです、リオン=グンタ」
 遠ざかっていく小さな背中を見送りつつ、イコは小さく微笑んで呟いた。
 もしリオンが平常心を保って彼女の事を留意していれば、あるいは見透かせたのかもしれない。
 この時のリオンは彼女がそうであると知っていながら、それを完全に理解してはいなかった。
 "魔王女"イコ=スー。
 動かせぬ現在、まつろわぬ過去、ゆるぎなき未来を見通す者。
 その彼女が、意味もなく言葉を語る事などありえないと。


"では、ルー=サイファー様。約束通り――"
"ああ、約束は護ろう。――次は敵同士かもしれぬぞ"
"――はい"


「――んふっ」
 紅の瞳で垣間見た未来に、彼女は思わず笑みを零す。
 総て必要なことなのだ。
 アスモデートに情報を流す事も、その結果訪れる少年の結末も。それがやがて訪れるルーの計画の顛末を左右する"要因"なのだから。
 それに続く夢見る神の決断。無限光と七つの宝玉。堕ちた魔王と少年の未来。時を逆しまに刻む冥魔の王。
 一つの小石が連なりやがて総てを押し流す土石流となるように、総ての要因が絡み合って未来を形作る。
「……だから、ベルと仲良くして下さい。それがルー様のためになるんですから」
 イコは満足そうにそう呟くと、跳ねるようにしてその場を後にする。
 これからエイミーの許へ赴き、目指す未来へ向かう際に副次的に発生する『悪影響』の対処のために、ラビリンスシティの件をエイミーと話し合わなければならない。
「ルー様が『留守』の間、ちゃんとやっておかないと怒られてしまうのです」
 まるでお使いを頼まれた子供のように、兎耳の少女はぱたぱたと回廊を駆けて行く。
 その紅い瞳に何が映っているのか。それを知る者は彼女以外にいなかった。




323NIGHT WIZARD cross period:2009/03/16(月) 02:41:13 ID:p7RucbhK
今回は以上です。真・魔王祭り前編
クロスSSなのに全然クロスしないという言語道断の回。でもまあ一応本作の内容を踏まえて、という事なのでご容赦下さい
本作は時間軸上『過去』のものですから、今回と次回のエンディングは『次』へのオープニングでもあります

最初は武装錬金パート。『ゲーム版武装錬金』に続く
キャラデザ時点でやや出落ち風味のソウヤに関してはゲーム版にて
キャラゲーとしては優秀なのでファンの人にはオススメです
いわゆる無双系アクションですが難易度はややヌルイですし、ジャンプ的タイマンが多くてちょい涙目だった斗貴子さんの真価も見られます
バルキリースカート的にも、翻るスカートの中身的にも(エロスはほどほどに)

ルー=サイファーパート。『合わせ鏡の神子』に続く
ゲストに満を持してのルー=サイファー様と、我があるj・・・もといフール=ムール姐さん。
俺の中でルー様とフール姐さんはこんな関係。ポイントは一人称。
あとついでに『アゼルがベルに敵対した理由』と『決戦時ルーがアレを出さなかった理由』を適当にでっち上げ
更についでにルー様の死亡フラグもでっちあげ。
このSSはいわば俺の鳥取なので好き放題やってます。でも正直こういうのが書き手の特権だよね

リオン=グンタパート。マジカルウォーフェア全般及びファンブック『オペレーションケイオス』に続く
ゲストはイコ=スー。時間軸の都合で"未来を視る"彼女が絶好調。これが本当の預言者プレイという奴なのです。
リオンがルーからベルへと乗り換える過程を書いてみたんだが・・・うーん、まだ足りないかなー


予想以上に長くなってしまったので一回切って続きは後日に


324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 07:25:54 ID:O+1RPrc0
起きたら、キテター
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 08:54:05 ID:bwZcko2w
GJ!!
イコ様が素敵すぎるだろう常考…(ゴクリ)。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 09:05:53 ID:5pMqnI7X
こ、このイコ様は・・・、ちゃんさまのゲボクであるところの俺ですらくるものがあるな
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 09:31:19 ID:ZQBnlz7A
\キャーイコサーン/
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 11:06:56 ID:Wu5UiAWV
ちょっとラビリンスシティ行って魔王になってくる
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 11:17:21 ID:v+8q1OUn
蝶乙です。春の真・魔王祭り(前編)堪能させていただきました。
後に起こる諸々の事件へのつながりが、おお!とさせてくれます。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 11:49:19 ID:ntDieY79
>>323
ベル様何やってんすかーーーーーー!?w
そしてフルムル様かっこよすぎーーーーーーーーーーーーー!?w


いや、マジGJです。
ルー様悪そうでいいですねぇw
331夜ねこ カーテンコール1:2009/03/16(月) 16:58:04 ID:v6LqhVPc
 近所の古本屋によってみたら、某「格闘の王者」の昔の4コマ13冊セットが500円とゆーのを見かけて衝動買い(挨拶)
 レス返しに参りました夜ねこでございますー。
 意外と好意的に受け止められてる、のかな?
 一応今書く予定の話もあるので、亀の歩み速度な上で同じスレを使う方々が「構わないんじゃないか?」ということでしたら……俺、書いてもいいのかな?

 ま、まぁとりあえずレス返しを。
 実は「よると〜」シリーズ最終話のレス返しもしようと思ったけどログ流れでできなくなったのはヒミツ。

 >>253
 Yes, ベホイミ。
 一応彼女は「新感覚〜」仕様ですが、「桃月町の〜」を経由したベホイミなのかは謎。ていうか決めてないともいう。

 >>266>>275
 いやいやなんでそこまで熱こもった支援くださってますかっ?
 アレです、「執行委員の〜」シリーズ(シリーズ化するかまだ決まってないだろう)は
 お気楽極楽能天気、派手に過激に進展ナシで行く気なんでそんな熱さはないハズなのですけども……? あ、でも支援ありがとうございますっ!
 まぁ、先生方は先生方で結構勝手してくれるんではないでしょうか?

 >>268>>273
 うーす、作品楽しみに待ってますー。
 ルル山がここで何するかは何一つ決まってません。黒の騎士団作った後なのか、ブリタニアに帰りたがってるのか、ギアス所持してるかどうかも決めてません。
 ひょっとしたら何も持たないまま、賭けチェスしながらただの学生続けるかもしれません。
 危機に巻き込まれない保障はないけど、あの最期とは違う何かを見つけるかもしれません。幸せかどうかはあいつ次第ってコトで一つ。
 アレイスターは……原作世界をどうこうする気はあってもここの征服とかを狙うタマじゃないと思うんですよねー。
 ただ、『ありとあらゆる状況を自分の利につなげる/どちらに転んでも自分が得をする』タイプの黒幕なんで、最終的に『実験場』くらいの認識ではいるかも。

 >>269
 もうホント皆さん週末になると勢いスゴいッスね。おいらももちょっと早く書けるようになりたい。

 >>276
 あざーっす。
 やっぱり無謀ですよねー、前線立たない柊とか(笑)。つーか誰だよノーチェが来るまであいつに報告書書かせてたの。理事長代理ですか、そうですか。
 あいつはああいうところにいてこそ輝きます。前線でパーティレベルなら指揮もどきもしますがね。

 >>277
 むぅ……これはもはや『学園世界』を『同じ卓』とみるのではなく、『別卓/鳥取』として見ろ、ということなんだろーか。
 いや、書き手の方にそう言っていただけるのは嬉しいのですが、それはもう『シェアワールド』ではなくて『お題モノ』なんですよねー。
 作者ごとに解釈が違うのはともかく、設定面が異なるのはまとめる際に面倒なことになりかねないんで、自分一人が勝手続けていいものやらと思ったわけで。
 どうすべきなんでしょーね。自分一人で決めていいもんでもないでしょうし。
 まぁこんな話続けてる自分も充分ウザいのだろうけれども。まとめの人のことを考えるとすると、続きを書いてもいいことになっても隔離項目にするのが無難かな、と。
332夜ねこ カーテンコール2:2009/03/16(月) 17:00:08 ID:v6LqhVPc
 >>278
 カオスっぷりを誉めていただけて嬉しいです(マテ)。
 けど自分の出した執行委員のうち、ベホ・イリヤ・美遊の3人が魔法少女(ベホは?だけど)なのはどうなのかと。偏りすぎだ馬鹿野郎と。
 某海鳴の白い魔法少女は執行委員にする予定はありません。確かあの時点で時空管理局嘱託だったはずなので。
 個人的には、『執行委員は中立立場でないと困る』って理由から組織員の加入は生徒会の方からストップがかかってます。手伝いは積極的にしてくれるかも。
 初春は―――まぁ、アレは別枠です。それくらい事務の手が足りてないと思っていただきたい。

 >>279
 あざーっす!
 オーフェンのは本気で忘れてた(汗)。実家にあるんで取りに行かないと牙の塔は書けないな、コレ。
 なお。夜ねこのイメージ的には、牙の塔は天魔の魔女とかブラックタイガーとかチャイルドマン教室とかの全盛期。
 キリランシェロファイトっ! 負けるな! 生きろ!

 >>280
 ノーチェは人生、柊は話のネタ兼熱、イリア姫は愛、フール=ムール様は俺の主(どんな答えだ)。
 風呂敷に関しては、自分はたたむ気がありません。投げっぱなしです。ジャーマンです。とりあえず使えそうな設定をばらまく技です。
 そして「指向」が正解です。誤字確認まだまだ甘いんだな自分、とちょっと黄昏てる2○の春。指摘ありがとうございました。

 錬金クロスの方
 乙ですー。
 相変わらず伏線の回収っぷりがすさまじい。
 自分は伏線敷いても長い間我慢できない性質なんで、こういう話が書ける人はマジ尊敬します。
 あ、それから蓬莱寺さんちの京一さんはキャラ的にとても柊に通じる部分があると思います。魔人学園は懐かしいものがありますね。
 魔人学園のデフォ名が「緋勇 龍麻」だからあだ名が「ひーちゃん」で被るんですよね。あれか、小蒔みたいに名前で呼ぶと思えばいいのか。>京一とラーメンルート

 さて。とりあえず次にお目にかかるのはしばらく先―――それもあかりんがメインのお話になる予定です。
 それが書きあがるまでに『学園世界』へのスタンスを決めようと思っています。それではまた。
333少女は静かに暮らさない@学園世界:2009/03/16(月) 19:37:44 ID:msFcZdno
>>295
ありがとうございます。ウィザードの割に常識人な彼は色々と便利ですね。
ちなみに“学園の敵”は割と多めにいるんじゃないかと思ってます。
イメージ的には1キャンペーンの大ボス級。倒しても“学園世界”は解放されませんってな感じ。
…その後ろの“何か”はとりあえず私は設定する気はありません。

>>296
一番“魔界”が無傷で残っているルートなのでこれに。他のルートだと魔界は壊滅状態ですからねえ攻略的に考えて。

>>331
むう。確かにシェアだとそう言う問題はあるかも知れませんね。ちょいと考えが足りませんでした。
後付けで色々すり合わせるのはどうでしょう?“執行部直属の執行委員”と“普通の執行委員”はちょっと違うとか。
…分かりづらいかな?難しいもんです。

それはさておき。

閑話休題的に次のお話。

「カゲモリの基本設定語るつもりのお話にしたら作者の悪ノリで若干1名超とばっちり」

そんなお話を、8時半ごろから投下しようかと思います。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:24:13 ID:m2+EuYw6
支援(まだ早い
335陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:29:27 ID:msFcZdno
―――浅間山高校

「ふう…」
校庭内に立ち並ぶ仮設テントの隅っこで、寝袋に入りながら少年がため息をついていた。
「今日も大変だったなあ…」
遠い目をして呟く。今日の昼間に起こった出来事を思い出しながら。
「よりにもよってゆうなの奴、ドラゴンの住みかに迷い込むなんて」
これまでにもこう言うことは何度もあった。
ヤクザ、妖怪、地底怪獣、忍者、パンダ、タヌキ(あと本人は忘れてるけど宇宙人)…
天性のトラブルメイカーである“お隣さん”を守るため、多くの戦いを繰り広げてきた。しかし。
「こっちに来てから色々ありすぎなんだよなあ〜」
5日前、突然に起こった、異世界への転移。
何故か色んな世界の“学園”が集まると言う珍事に巻きこまれてからと言うもの、少年はロクに休む暇がないほど忙しかった。

幼馴染の危険を未然に防ぐこと113回(いつもの5割増しくらい)
幼馴染がモンスターの類に襲われて戦闘になること63回。
迷子になった幼馴染の探索に出ること18回。
色々あってダンジョンを探索することになること6回。
柊蓮司に遭遇すること4回。
柊蓮司と共に学園世界の危機から学園世界を救うこと1回。

わずか5日の間にこれだけの出来事に巻き込まれたのだ。
今は少年の正体を知る3人に手伝ってもらって何とかなってはいるが、こんな生活が続いたら…
「…このままでは僕は過労死するかも知れん」
あんまし愉快じゃない結論に達して、少年は顔を青くする。
「いやいや。大丈夫大丈夫。ど〜せそのうち帰れるだろ〜しゆうなだって今回のことで反省して少しはマシに…」
ぶんぶんと愉快じゃない結論を振り払って自分に言い聞かせる。ポジティブ、ポジティブ。
「…ダメっぽいな。ゆうなのドジは筋金入っちゃってるし」
ダメだった。ネガティブハート続行中。
「う〜んマジで何とかしないとなあ…」
「それなら、ワシに1つ、よい考えがあるんじゃが…」
「!?」
唐突に話しかけられ、少年は戦闘態勢を取る。
寝袋から瞬時に“消え去り”、忍者装束を纏って人影の背後を取り、忍者刀を突き付ける。
「ほほう。その若さでとんでもない錬度じゃな」
だが、その声は少年の“更に背後”から聞こえた。
「…何者だ」
瞬時に飛んで距離を取り、油断なくその老人を見据える。
(…父さん、いや下手すると爺ちゃんに匹敵する腕前だぞ…)
老人の“忍者”としての実力に半ば恐怖すら覚えながら。
「…怪しい者じゃよ。だが、敵では無い」
その老人は落ち着き払い改まった口調で言う。
「ワシの名は輝明学園校長、荻原宗一郎。本日は折り入って頼みたいことがあり、はせ参じた次第。
 まずは刀を納め、話を聞いてはくださらぬか。陰守家次期党首、陰守マモル殿」
「…分かった」
少年…陰守マモルは黙って刀を納め、聞く体勢をとった。

この、1人の少年と1人の老人の出会い。
全てはそこから始まった。
そして時は流れ…
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:35:38 ID:gxrJUuyl
支援
337陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:36:13 ID:msFcZdno
―――輝明学園桜花寮

「…それは浮気。確率は割と高い。みのさんも言っていた。男の秘密には、要注意」
お土産のまんじゅうをぱくつきながら、黒髪の少女は言った。
「そ、そんなこと!だって、一狼君に限って、そんな…」
そのお土産を持ってきた茶髪の少女が狼狽して言う。
「環境が変われば、人は変わる。いわば、異世界デビュー」
お土産のまんじゅうを食べるスピードは決して緩めず、黒髪の少女は更に“助言”をする。
「あうう…やっぱりそうなのかなあ…」
助言に打ちのめされ、濡れた子犬のように落ち込む茶髪の少女。
「…新しい恋に生きるのも、1つの人生。考えてみる?」
「それはダメ。だって私は…一狼君の“所有物”だもん」
お土産のまんじゅうを食いつくした黒髪の少女の提案を茶髪の少女は顔を赤くして瞬時に却下して見せた。

黒髪の少女の正体はオクタヘドロン製造“人造人間”鈴鹿葉月。
茶髪の少女の正体は絶滅社製造“人造人間”姫宮空。

同じ人造人間であることのよしみと春休み中、スクールメイズによく潜っていた縁で親しくなった2人の少女。
空は、葉月によく相談に乗ってもらっていた。正直人選を間違っている気がするが、空にそんな知識は無いので仕方がない。
そして、今日の2人の議題は…
「…斎堂一狼の、姫宮空にも言えない秘密。そして、秘密の影には他の女の姿。やはり、浮気の可能性が高い」
「はうう〜…一狼君が、遠い、遠いよ…」
空が悲しげにぼやく。

斎堂一狼と、姫宮空。輝明学園がこの学園世界に来てからと言うもの、2人の距離は開きっぱなしである。

まず最初に学園のみ転移したため、住んでいたボロアパートのお隣さん状態から男女別の寮暮らしになり。
一狼のみが校長に呼ばれて空にも秘密の任務を引き受けるようになって一緒にいる時間がどんどん短くなり。
そのうち一狼が別の学園で見知らぬ少女と話をしているのが目撃され。
ついに先日、輝明学園の屋上でとある少女と2人きりで“激しく情熱的な男女の密会、キスはディープで”を行っているのが目撃された。

「…やっぱり、私じゃあ…“人造人間”じゃダメなのかな…一狼君も、普通の人間の女の子の方がいいのかなあ…」
「分からない。だけど、種族の壁は厚いと聞く。乗り越えるのは、大変」
“人ならざるもの”と“人”の間に、恋愛は成立しえないのではないか。それが、自らの正体を知った後の、空の最大の“恐怖”だった。
余りにも、違い過ぎる。戦闘兵器として作られた自分と一狼ならばなおさら。
「今日も校長先生直々の頼みがあるからって行っちゃうし…」
そんな言葉と共に授業終了後すぐにどこかに出かけて行った一狼のことを思いながら言う。
「…危ないお仕事じゃないと良いんだけど…」
心配だ。せめて自分も手伝えればいいのにと考えながら呟いた、そのときだった。
「その心配はない」
はっきりと葉月が言う。
「ありがとう葉月ちゃん。慰めてくれるんだね」
珍しいと思いながら空は、にっこりと笑って礼を言う。
だが葉月は慰めのつもりは0だった。
「斎堂一狼の本日の動向なら、聞いている。それから判断するに校長直々の依頼と言うのは嘘の可能性がある」
「…え?」
空が、固まる。笑顔のままで。
「本日の斎堂一狼。彼はザールブルグアカデミーに向かう姿が目撃されている。輝明学園の女子と一緒。女子は身体的特徴から“屋上の少女”と同一人物だと思われる」
空は笑顔のままで固まったままだ。
「女の子と2人。相手は屋上の少女。向かった先は危険地帯ではなく、他の学園。任務よりは、デートの可能性が高い。故に危険は、無い」
そんな、葉月の分析と結論を聞いた瞬間。

ガンッ!

色んな意味で真っ白になった空ががっくりとつっぷしてちゃぶ台に頭をぶつけた。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:41:05 ID:m2+EuYw6
私怨
339陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:41:33 ID:msFcZdno
―――ザールブルグアカデミー

「…木を隠すには、森。と言うわけね」
初めて訪れるアカデミーの様子を観察し、輝明学園の制服に着替えた“屋上の少女”ことライズ・ハイマーは一狼に尋ねた。
「はい。もちろんそれ以外に学長のドルニエ様の考えもあるのですが、その意味も大きいと思います」
ライズの言葉に、一狼は頷く。
ザールブルグ王立魔術学校、通称アカデミー。
錬金術を研究している学園であると言う以上に学園世界で有名な理由に“自由学園宣言”がある。

『道は違えど、我らは研究の徒。真理を追うものよ。集え』

学園世界の長老『ジジイ四天王』の一角である学長、ドルニエの言葉を受け、この学園はすべての学園世界の生徒の出入りを自由としている。
学園内の自治は各学園が行う。
この原則のもと、他校の生徒が気軽に入るわけにもいかない学園世界の各学園の敷地において、ここは貴重な情報交換の場となっていた。
そして集まった各学園の研究者や彼らの友人、材料収集や護衛の依頼を購買で受けてきた生徒たち。
民族どころか種族レベルでてんでばらばらの生徒たちがアカデミーの随所を行きかっている。
「ここならば誰がいてもおかしく無いですからね。こちらです」
何度も通いすっかり慣れた歩調で一狼はアカデミーの図書室へ向かう。
現在は本を全て持ち出して閉鎖され、このアカデミーで唯一人気のない場所となっている図書室。
その本棚を動かすと…
「…隠し部屋?」
「ええ。元々はドルニエ学長の研究室だそうです」
そう言いながら奥へと進んでいく。そしてその奥には…
「…誰もいないわね」
本や実験器具、怪しげな装置が並んでいるだけの、せまい部屋だ。人気は無い。
「二重に隠されているんです。何でも昔、この研究室を自力で発見したアカデミーの生徒がいたとかで」
そう言いながら一狼は沢山ある装置の1つを指さす。精巧なミニチュアの入った、ガラスの球に。
「今からやる手順を、覚えてください。忘れると入れなくなりますから、確実に」
「分かったわ」
そして、一狼はいつもよりゆっくり、丁寧にいつも通りの手順でガラスの球に触れて行く。
すると、カチリと音がしてガラスの球が輝き出す。
「…これで入れます。まずはライズさんから。このガラスの球に触れてください」
「…」
無言でコクリと頷き、ライズはその球に手を伸ばす。元が魔法の存在しない世界の出身のせいか、少しだけ緊張している。
そして、ライズの手が球に触れた瞬間。
一瞬の閃光と共にライズの姿が消える。
「…さて、僕も行くか」
輝きを失ったガラス球を再度起動する。そして手慣れた様子でガラス球に触れて、閃光と共に消える。
そして研究室には再びいつもの静寂が戻った。

―――EVANGELINE'S TEA ROOM

“カゲモリ”の創立メンバーの1人であり、このアーティファクトの製作責任者の名がついた“カゲモリ”の集会所。通称『エヴァの茶室』
そこに漂う雰囲気に、ライズは思わず身を固くする。
独特の、ピリピリした雰囲気。かすかに響く剣戟の音。少女はそれを知っている。それは“お父様”と共に向かった…戦場の気配。
ライズは油断なく虚空に手を伸ばす。時空鞘におさめた剣を抜くために。そして、剣を握りしめたその瞬間だった。
「大丈夫。多分、いつものです」
後ろから声をかけられ、思わずビクリと身震いする。
ライズは後ろを振り向く。そこに立っていたのは、斎堂一狼。
「いつもの?」
納得が行かないとでも言うようにライズが尋ねる。
「はい。最初にここに来た時は、みんな驚くんですけど、あの2人がいるときはいつもこんな感じですよ」
そして、奥を指さして、言う。
「こっちです。さ、行きましょう」
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:43:27 ID:WeiXkaNV
支援
341陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:44:59 ID:msFcZdno
少し歩いて出た、広い部屋。そこは一種異様な光景だった。

「いい加減にしなさいよ!この甲賀の性悪狐!いっつもいっつもアタシの邪魔ばっかりして!」
「それはこっちのセリフですわ!この伊賀のお間抜け狸さん!貴方が邪魔をしなければマモル様と2人きりでしたのに!」
「あ!やっぱりあんなこと言って、マモル兄ちゃんと2人きり狙ってたんじゃん!しかもアタシが来れないように細工までして!」
「それはそっちも同じでしょう!?お陰でマモル様はお1人で行ってしまいましたわ!ゆうなさんを助けるために、あんな危険な場所に!」
「1人じゃなくて耳之介も一緒!だからこっちのが上!大体、そう思うんだったら貴重なメンバーの到着邪魔するような真似しないでくれる!?」
「少なくとも貴方にだけはそれを言われる筋合いはないですわ!」

動きやすい格好のツインテールの小柄な少女と、同じような格好のポニーテールの少女がお互いにお互いを罵り合っている。ただ罵りあっているのではない。
お互いに一狼の使う剣に似た、東洋風の剣で斬り合いながらだ。ライズの目から見てもかなりの手だれ同士。その斬撃がぶつかり合い、剣戟の音を響かせている。

そしてそれをおろおろと止めようとする、普通っぽい感じのツインテールの少女。
「こ、こんなところでやると危ないよ!二人ともここは仲良「弓塚さんは黙っててください!」「さっちんは黙ってて!」あう…」
「放っておけ。いつものことだ。どうせ決着はつかん」
弓塚&さっちんと呼ばれた少女に対し、落ち着き払って茶を飲みながらたしなめるのは、小等部位の年齢にしか見えない幼い少女。
傍らには緑の髪をして、不思議な耳飾りをつけたメイドが無言で控えている。
「………」
そして1人我関せずと言った様子で大きな杖を抱えて黙々と本を読む、青い髪でメガネの少女。
ちなみに背もたれにしているのは小山ほどもある巨大な竜だったりする。

「もうあったま来た!今日こそ決着をつけてやる!」
距離を取ったツインテールの少女がどこから取り出したのか大きめのスイカほどもある爆弾を取り出す。
「望むところですわ!」
一方のポニーテールの少女が手品のように両手いっぱいに投げナイフを持ち出す。
「伊賀忍法奥義…」
「甲賀忍法奥義…」
そして部屋の中とか関係なしに忍術の奥義が炸裂しそうになった、その瞬間だった。
「…いつも言ってるだろう。火器を使うなら外でやれ、と」
茶を飲んでいた少女の言葉と共に爆弾が凍りつき。
「…飛び道具も禁止。壁に穴が開く」
杖を手にした少女が呪文と共に起こした風の槌がナイフを残さずたたき落とす。
「…何事?」
目の前で繰り広げられた異常事態についていけず、珍しく素でライズが呟く。
「いつものことです…」
それに、創立メンバーであったが故にすっかり慣れてしまった一狼が疲れた声で答えた。
342陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:47:27 ID:msFcZdno

「あ、斎堂君。最近あんまり来てなかったからちょっと久し振りだね。
 それと…新しいメンバー?名前は?あ、私は弓塚さつき。弓塚でもさつきでもさっちんでも好きなように呼んでね」
最初に2人の存在に気づいたのは先ほど止めようとしていたツインテールの少女…さつきだった。
八重歯を見せる人懐こい笑みを浮かべて握手を求めてくる。普通だ。この場にいるのが不思議なほど普通だ。ちょっと目が紅いけど。
「…ライズ・ハイマーよ。ライズでいいわ」
その普通っぷりに毒気を抜かれ、手を握り返すライズ。
「え、新しいメンバー?」
「まあ、これはこれは。斎堂さんが連れてくるなんて、珍しいですね」
先ほどまで激しい斬り合いをしていた2人の少女が近寄って来て、名乗る。
「陰守山芽だよ!よろしくね!ライズさん!」
「陰守ホタルです。よろしくお願いしますね。ライズさん」
完全に同時に名乗り、そして同時にお互いをにらみつける。

「…ちょっと“雲隠ホタル”。なにどさくさに紛れて嘘ついてんのよ」
「…こっちのセリフですわ。“服部山芽”さん。そのような嘘をついて、恥ずかしくないんですか?」

一触即発の空気。っていうか既に2人とも剣を抜きかけている。
「ああ!2人とも抑えて抑えて!」
それを慌てて止めに入るさつき。幸薄い少女である。

「“雪風”のタバサ。タバサでいい」
次にやってきたのは人形のような青い髪の少女。
「それと…挨拶」
ちらりと後ろを見て先ほどまで背もたれにしていた竜に一言かける。
「わかったのね!おねえさま!」
なんと竜がそれに応えて喋る。その事実に思わず息を飲むライズの前で、竜が1人の女性へと姿を変える。
青く長い髪と豊かな胸を持つ、大人の女性。その女性は子供っぽいしぐさで挨拶をする。
「シルフィードなのね!よろしくなのね!きゅいきゅい!」

そして、最後に残った少女がちらりとこちらを見て、言う。
「…ふん。雰囲気からすると“吾妻兄妹”の同類、と言ったところか。まあいい。
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。エヴァでいい。それと…」
「絡繰茶々丸です。よろしくお願いします。ライズ・ハイマー様」
丁寧な口調で茶々丸と名乗ったメイドが深々と頭を下げる。

「えっと、今ここにいるのは、これで全部ですよね?エヴァさん」
一通り名乗り終わったところで一狼が確認する。
「ああ、他は全員出払っている。後はそのうち会うこともあるだろう」
「分かりました。では次はこの中を案内します。結構広いので、はぐれないようにしてください」
「分かったわ。じゃあ、行きましょう」
そして、ライズを伴って一狼は中を案内する。
客室(そのうちの1つには『さつき専用』と書かれている)、食堂、厨房、浴室…果ては学長手製のアイテムが納められた薬品庫や書斎、遊戯室まで。
「ずいぶん充実しているのね」
ライズがその設備に関心する。
「はい。任務によっては1週間は所属学園に戻れないこともありますからね。そう言う場合のセーフハウスでもあるんですよ」
「なるほどね」
そんな会話をしながらあちこちを見て回った。
343陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:49:46 ID:msFcZdno
「あ、おかえり〜」
数時間後、再び最初の部屋に戻ってきた2人に、さつきが声をかける。
「さて、もう日も落ちた。斎堂も戻ってきたことだし、私は帰るぞ」
2人が戻って来たのがちょうど良い契機となったのだろう。座っていたエヴァが立ち上がり、帰り支度を始める。
「あの〜…今日はエヴァさんのところに泊まっていいですか?ここに残るのも寂しいし、かといって外で下手に1人でいると、先輩に再殺されそうで」
そんなエヴァにおずおずとさつきが尋ねる。エヴァが仕方ないと言った感じで頷くのを見て、嬉しそうにほほ笑む。
「あ、じゃあそろそろアタシも帰るよ。そろそろマモル兄ちゃん戻ってきてるだろうし」
「そうですわね。では、私もそろそろ」
さつきの必死の頑張りでとりあえず今日は戦わないことにしたらしい山芽とホタルが残像と共に瞬時に制服に着替える。
「…帰る。そろそろ夕食の時間」
「もうおなかぺっこぺこなのねー!」
タバサとシルフィードも帰る準備を整える。
「後は…」
エヴァがちらりと一狼とライズの方を見る。
「僕も帰ります。今日はライズさんの案内を頼まれていただけなので」
「私もここに用は無いわ」
それに答えて一狼とライズが口々に言う。
「そうか。ならば途中までは全員一緒に帰るか」
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:50:38 ID:WeiXkaNV
そして支援
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:51:08 ID:m2+EuYw6
そして支援へ……
346陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:52:03 ID:msFcZdno
―――再びザールブルグアカデミー

「結構時間立ってたんだね」
「すっかり真っ暗ですわね」
図書室をでて、忍者コンビが辺りを見て言う。
日が落ちて真っ暗になったアカデミーの内部を揃って歩く。
途中には蝋燭が何本か立っているもののその程度では充分とは言えずかなり暗い。
「どうでしたか?カゲモリのみんなは?」
「…ずいぶん個性的なのね」
斎堂の問いに溜息をつきながらライズは率直な感想を口にする。自分の“仲間”も十分個性的だと思っていたが、まだまだ甘かったようだ。
「しかし本当に暗いな。電灯の一つも入れれば良いものを」
「ちょっと不気味ですよね。なんか幽霊とかでそ「馬鹿!」あ!」
世間話モードに入っていたさつきがエヴァに窘められる。
それで自分のうかつさに気づいたさつきがおずおずとタバサの方を見る。

カラン

タバサが手にしていた杖を取り落とした。真っ青だ。ついでに言えばちょっぴり涙目だ。
「あちゃー…大丈夫だよ?幽霊とかって実は滅多なことじゃでないし」
杖を拾ってタバサに渡しながら必死にフォローするさつき。何気に自分がそっち系なのはスルーで。
「…本当?」
「うんうん。私も割といつもここにいるけど、今まで見かけたこと…」

ミシィ

静寂に包まれたアカデミー内でその音が響き渡り、さつきとタバサが思わず抱き合う。
「…何の音だ?斎堂、見てきてくれ」
エヴァが訝しげにして、一狼に言う。
「分かりました」
そう言って1人先行する。
「何の音だろう?まさか本当に幽霊なんてこと…」
そんなことを言いながら奥に目をこらした一狼が固まる。
そこには、自らの握力だけで石の壁を“握りつぶし”た…
347陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:55:35 ID:msFcZdno
「一狼君…酷いよ…信じてたのに…」
幽霊より怖いものがいた。
「ひ、姫宮…何でここに?」
狼狽する一狼に、空は静かに問いかける。
「一狼君こそ。今日はお仕事じゃ無かったの?なんで、ここで女の子とデートしてるの?」
「ち、違う!本当に任務で!いや詳しくは言えないんだけど!」
“カゲモリ”の活動は構成員以外には秘密。本当のことを言うわけにもいかず苦しい言い訳を強いられる一狼。
「おい。斎堂。幽霊の正体は分かったか?」
「ああ、エヴァさん!ちょうど良かった。そ、そうだ!本当にデートじゃない!その証拠に今日はみんなで…あ」
みんなでいた。そう言えば姫宮も納得してくれる。そう思って助けを求めようとした一狼が、特大の地雷を踏んだことに気づく。
だって今日のメンバーは…
「うん?その服、輝明学園の…ウィザードか?」
「…情報照合完了、ウィザードです。タイプはアタッカー/人造人間、2年2組の姫宮空と思われます」
「へ〜人造人間かあ。葉月ちゃんとも知り合いなのかな?」
「かも知れませんね…あれ?確か斎堂さんも2年2組ですよね?もしかしてお知り合いですか?」
「あ、ちょっぴり私に似てる気がする。えっと、姫宮さん、だっけ?こんな所でどうしたの?」
「…とにかく。幽霊じゃないなら大丈夫。怖くない」
「あ、おねえさま復活したのね!よかったのね!きゅいきゅい!」
タイプは違えど共通点が1つ。それは美少女勢ぞろい。まさにハーレム状態なのだ。
「…ご愁傷さま。早く誤解が解けるといいわね…こじれると、大変だから」
その状況に“出会い”を増やしすぎて大変なことになっていた、とある青年を思い出したライズが、珍しく同情的に、ポンと一狼の肩を叩く。
(た、頼む!隊長殿、古泉さん、玲二さん…この際カゲモリで男なら誰でもいい!ここにきてくれ!)
そんな少年の内心の必死の祈りは天には届かなかった。そして…
「そんな…1人じゃなくてたくさんの女の子と一緒なんて…一狼君の…一狼君の…」
目にいっぱい涙を貯め、姫宮空が大きく息を吸い込み…
「ひいらぎれんじぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!」
脱兎のごとく逃げ出した。リミッター解除の全速力で。
「え!?ちょっと、それ悪口なの!?って言うか待ってくれ!誤解なんだ姫宮!…無茶苦茶はやい!?」
必死の全力疾走で追いすがる一狼。あっという間に2人は見えなくなった。

…その後、斎堂一狼が姫宮空の誤解を解くのに、1週間の時を要したと言う。
348陰たちの集い@学園世界:2009/03/16(月) 20:56:52 ID:msFcZdno
今日はここまで。以下設定。

カゲモリ(陰守)

学園世界の最初期、『極上生徒会』が成立する前から存在する、学園世界(と紺若ゆうな)の平和を“陰”から“守”る特殊部隊。
元々は輝明学園校長“荻原宗一郎”が忍者“陰守マモル”と出会い、その実力を見込んだことから始まり、
学園世界の長老として尊敬される『ジジイ四天王』間での調整の末、創立された。

初期メンバーはマモルの他は『ジジイ四天王』が責任者である学園のうち、ザールブルグ以外の3校から1人ずつ選出され
隊長に浅間山高校『陰守マモル』
輝明学園『斎堂一狼』
トリステイン魔法学院『“雪風”のタバサ』
真帆良学園『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』
の4名。

また、ザールブルグアカデミー学長ドルニエの研究室が集会所として提供された。

その後、彼らの友人や各学園内で自らの能力を隠して暮らしていたものなどをスカウトしてメンバーを増やしていき、現在に至る。
(余談だが新規の構成員や“カゲモリ”の案件は宗一郎自ら行脚して集めている。輝明学園の運営が理事長代理に任されているのはそのため)
元の世界では正体を隠して暮らしていたものが多いためか、構成員には自らの正体を隠すのに長けた、隠密や忍者、人外種族が多い。
なお、自らが“カゲモリ”であることを『ジジイ四天王』と“カゲモリ”の構成員以外に明かすことは禁止とされている。
そのため任務中は“購買経由で依頼を受けた学生”として行動する。
この際、自らの学園内では非戦闘員を装っている構成員は任務中は輝明学園の“ウィザード生徒”として扱われる。
ちなみに任務中以外は基本的に束縛は無いのでメンバーは割と好き勝手に学生生活を謳歌している。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:58:37 ID:WeiXkaNV
乙です

「ひいらぎれんじ」は悪口だったのかw
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:17:17 ID:BZMYL08e
>>348
乙。
……さっちんとエヴァの組み合わせって、なんかどっかで見たよーな?
まぁ偶然だろうけどもww

執行委員問題はどうしようか?
作者さんたちが書きづらいという現状はどうにかしたいところ。
名前変えた別役職とかにした方が楽かね?
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:37:21 ID:Uw5+dErq
>348
乙。
時に、ジジイ四天王は後、春高の柳昇とリオフレードのアウゼロンとまかでみの学長と江田島平八と他に何人いましたっけ?
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:42:09 ID:ntDieY79
>>348
オチでリアルに吹いたw
忍者の全力疾走に互角とは。姫宮、恐ろしい子!w

>>351
マテ、四天王なのに何人いるんだw
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:49:50 ID:BZMYL08e
>>352
んー?
つまり>>351は「それだけ校長出したいからオレに書かせてくれませんかへっへっへ!」
と言いたいんだと思うよ?

で、どうしようか。誰かが書きにくくなる事態は早めに解消したいなーと俺は思う。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:51:35 ID:Uw5+dErq
>352
四天王が5人以上いるのは、クロ高以来の常識です。

鳥取で申し訳ないが、某政令指定都市のアナログゲーム四天王。当人達が確認しているのが6から8人、更に数人が昇格待ちらしい。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:54:46 ID:Uw5+dErq
>353
おう、春高とリオフレードは引き受けた。江田島も頑張るから、まかでみとムーンスター・エンターティメント・アカデミーをお願いします。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 21:57:29 ID:Wla/+YoT
4の累乗天王とか4の階乗天王とかがいるんだな
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 22:03:20 ID:BZMYL08e
>>355
両方知らんww無理。

確かに言葉が足りなかったな。俺が言いたいのは執行委員関連の話題。
俺的にはノーチェの人の話の続き読みたいんだ。
本人がうまく設定がまとめられないからって諦めるんなら、
卓上ゲーマーの妄言スイッチでなんとかしてみれば案外書けるよーになるんじゃね?と言いたかったわけだ。

どうかね、俺と妄言トゥギャザーしねぇ?
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 22:19:53 ID:Uw5+dErq
>357
執行委員関連のネタは無いので、何とも。

今あるのは、しのキャラ何でも屋に足りないNWキャラ補充について。

ミナリ「我々が大手を振って歩くにはNWキャラと組む事が必要。
 故に、輝明学園天文部に入部させて貰いました」
エリス「部長の至宝エリスです。おかげで廃部を免れそうです」
茉莉「まあ、ここからなら柊君も呼び出しやすいよね」

黒エリス(課外活動を隠れ蓑に先輩に近づく気か……!)
錆びる女(そう、一緒にいればチャンスは多いのよ……“元”ウィザードさん?)

 一方その頃。

グィード先生「そして顧問はァ!」
宮沢虎吾郎「この私がぁ!!」

 廊下でクロスカウンター。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 23:09:21 ID:WqpggZmq
規制くらってたんでとうとうモリタポ買っちまったよorz

>>351
クッキング・オン!にも確かいたな
それに夢境学園の校長もじじいだ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 23:15:41 ID:ntDieY79
>>353
シナリオ「校長が多すぎる」ですねわかりますw

>>354
伝統じゃしょうがないな。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 23:38:25 ID:6gicaFy6
「一狼くんのひいらぎれんじ〜!」ワラタwwwwwww

なんか、清水義範の「杜撰」を思い出したw
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 11:26:51 ID:4W7KiJCV
汎用性が高過ぎるな、ヒイラギレンジ。


「はわ」言語を越えるかも。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 12:33:56 ID:lHtkwDEW
なんというか、執行委員だけだと非常に寂しい気がした。

つまり新聞部とか報道部とか図書委員とか、そーゆーのが
越校機関(学園の垣根を越えて活動する機関。今考えた造語)として存在してもいいのではないかと!
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 12:40:48 ID:gSCVjlnq
進め!聖学電脳研究部ですね。分かります。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 12:48:13 ID:lHtkwDEW
>>364
研究関連は研究者同士が勝手に結びついてる設定じゃなかったっけ?
原作知らんけど
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 13:20:05 ID:4W7KiJCV
報道系の団体も勝手に、校外協定結びそうだよな。


…もちろん、「抜け駆け上等!」なんだろうけど。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 13:28:38 ID:pWhFixuC
報道系の連合組織か・・・桃月学園はダメダメだなw
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 14:49:20 ID:lHtkwDEW
>>367
綿貫は……まぁ、綿貫だからな。

ほら、グラサンの方はそこそこいけるんじゃね?
369学園世界ネタ:2009/03/17(火) 18:54:19 ID:z72E+E2+
宜しければ、19時過ぎから投下したいと思います
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 18:57:43 ID:PlckynO/
宜しいです♪
序 章  支配者の箱庭 _a_flag_


 最初に、鈴の音が聞こえた。

 誰も居ない空間で、かしづく彼女はその音色に身を硬くする。
 数々の『魔』が幽閉されし牢獄、『裏界』。
 その中でも、魔王を名乗り配下を従え、領土を持つことを許されている彼女が、まるで処罰を待つ罪人のように微動だにしない。

 りん、りりん―――
 本来か細い鈴の音は、この広大な空間の隅々に滲み渡る。
 りりん、りん―――
 その鈴は、彼女の主が好んで身につける装飾品。
 りん、りりん、ちりりん―――
 鈴の音が止む。変わりに耳に届いたのは、先ほどまでの音色をそのまま言葉にしたような声だった。

「ふうん。良く見つけたわね。一応褒めてあげるわ」

 膝をつき、臣下の礼を崩さぬ彼女の頭上から、その声は告げた。

「有難きお言葉。有り余る―――」
「ま、あたしの下僕だもんね、この程度は当たり前」

 追従の科白をばっさりと切って、声の主は視線をめぐらす。
 金色の髪を二つに括る紐の鈴が、頭の動きに合わせて音を奏でた。

 だだっ広い空間だった。天井は高く、幅も奥行きも狭苦しさなど感じさせない。ちょうど、大きな体育館の中央に立ったときの感覚が近いだろうか。 
 しかし、その六方を囲む壁の質感はなんとも形容しがたい。岩といわれればそうだと思うし、金属といわれても頷かないものはないだろう。
 この空間は、見るものによって姿を変え、『変わったこと』に対する認識の変化によって、更に変化を繰り返す認識の迷宮。
 その最深部に位置する、総ての始点。所謂『震源』。即ち、最も認識の影響を反映する場所。
 故に、一秒たりとも安定しない空間に、彼女の主は鬱陶しそうな視線を向け

 ぱちん。と、指を鳴らす。

 その瞬間。薄暗い空間はピンクの光に満たされ、床には白虎の敷物が出現し、甘ったるい香の匂いが充満する。一度たりとも視線を上げない彼女の視界には入らないが、文化的、歴史的背景などの統一感を無視した色とりどりの壺が、壁際の棚に収まっている。
 その光景は、彼女の主の私室と全く同じ。そしてその風景が現れて以降、わずかばかりも空間は揺らがない。
 指打ち一つで、揺らぎ続ける迷宮を、自身にとって最も過ごし易い空間に固定したのだ。
 幾ら『魔王』の一角であるとは言え、彼女にはそんな真似など出来ない。そう、人間から見れば同じ『魔王』とは言え、彼女とその主の前には絶望すら生温い実力差が存在する。

 力の差。
 ソレは、彼女ら裏界に住まうものにとって、唯一絶対の真理にして、犯すことの出来ないルールであった。

「これで、よしっと。
 うん。あたしったら相変わらずいい趣味してるわね。でも―――」

 自画自賛する『主』が言いよどむ。
 それは、期待していた画家の新作に、僅かばかりの瑕を見つけたときのような、
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:10:28 ID:+r8TbU1K
支援

「ねぇ、あんた、顔を上げなさい」  

 彼女は即座に、面を上げる。但し視線は合わさない。それは不敬に当たるからだ。しかし、

「何処見てるの? あたしの目を見なさい」

 『主』は言う。
 いつもなら、自分を正面から見据えるような下僕など、仮令それが偶然の結果であろうとも、容赦なく処断するその魔王は、彼女に視線を合わせることを要求した。
 すぐに実行する。待たせることもまた不敬なのだ。
 『主』の目を見た瞬間、視界が闇に塗りつぶされる。
 『主』の繊手が彼女の顔を鷲掴みにしたためだ。

「ねぇ。この部屋どう思う?」

 天真爛漫に、ギリギリと、万力のように締め付ける五指。

「―――――ァッ、す、すばらしいと思い」

 絶え絶えの息の下から、零れ落ちた返答は、大気を引き裂く音に掻き消される。
 それは、彼女の身体が空を舞った音。僅かな浮遊感の後、強烈な衝撃が全身を襲う。

「すばらしい? そうね確かに私のセンスは超☆最高。
 でもね、この部屋は完璧ではないの、なぜなら大事なものが欠けているから」

 みしみしと、圧迫され軋む頭蓋骨。あまりの苦痛に声も出せず、ガクガクと四肢が痙攣を起こす。

「ね、『アレ』はどこなの?
 運んでた連中がウィザードに捕捉された事はもう知ってるの、まさか、盗られた。なんて事はないわよね?」

 『主』は更なる力を五指に込めた。

「………ぁぎがっ、い、こ、こちらぅぐあっ、此方、です」

 彼女は震える腕で、月衣から身の丈ほども在る長い包みを取り出し、
 言い終えると同時、噴水のように脳漿をぶちまけた。

 人間ならば即死。しかし彼女は魔王。この程度の傷ならばじきに回復するし、頭部を握り潰されようと、意識はしっかりと残っている。

「なんだ。ちゃんとあるんじゃない。だったら早く出しなさいよね」

 『主』は、己の身長をゆうに越える包みをはがし、中身を取り出す。

「うふふ、これでこの世界はこのあたしのモノ。
 待ってなさいよ、ベール・ゼファー。今に世界で一番、強くて可愛いのが誰かを思い知らせてあげるんだから」


 迷宮の奥底で、とびっきりの災厄が芽吹いたことを、今はまだ、誰も知らない。
第一章  日常 _at_strange_days



 上条当麻は、不幸な人間だ。

 どれくらい不幸かといえば、自分のベッドを居候の女の子に奪われバスルームで眠らざるを得ず。
 寝床(ユニットバス)に寝惚けて潜り込んできた居候に、朝一番で悲鳴と共に噛付かれて朝日を拝むくらいに不幸だ。
 それだけに留まらず、朝っぱらから件の居候と怒鳴りあって再び噛み付かれ時間をとられた挙句、遅刻を免れようと電車に飛び込んでみれば、
何故か信号の故障でダイヤが大幅に遅れ、諦めて全力疾走すれば道路工事で遠まわりを余儀なくされ、
その途中で常盤台中学のビリビリ中学生に遭遇し何が気に触ったのかレールガンキャッチボールに強制参加。
 学校についたらついたで遅刻スレスレ。慌てて教室に飛び込めば、「遅いわよ、貴様」の一言と共におでこ女子に右ストレートを貰い、
気絶して目が覚めたらホームルームはとっくに終了。結局遅刻扱いにされている。
 と、授業が始まるまでだけでこの調子。
 授業が始まったら始まったで、全時限で先生に当てられ、休み時間に自販機に向えば総て売り切れ、
昼に購買に行けば買ったパンが踏み潰される。廊下に出れば校内キャッチボールの流れ弾が直撃し、
跳ね返ったボールで壊れたスプリンクラーでびしょ濡れになる。などなど。
 クラスメイトから、「あいつを置いとけば不幸避けになる」と、避雷針代わりに重宝される不幸体質は伊達ではない。

 そんな風に、何時もどおりの一日を過ごした放課後、上条当麻はグデーッと机に突っ伏していた。
 唯一の御洒落ポイントである黒いツンツンヘアも心なしかしんなりしている様に見える。
 気力体力共に限界値ギリギリの上条としては、こうやって多少なりとも身体を休めて体力を回復したいところだが、
 神様とやらはどうあっても上条当麻を休ませる気はないようだ。

「なぁなぁ、カミやん。
 お疲れのとこ悪いけんやけど、ちょこっとこれ見てくれる?」

377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:17:38 ID:lHtkwDEW
しえにゅ
 悪いと思ってるんなら、休ませろコラ。
 と声の主に半眼をぶつける上条だったが、エセ関西弁を操る青髪ピアスの大男は、何処吹く風と手に持っているチラシを突きつけてくる。

(ん〜。なになに………、学食メニュー決定戦? イベントのチラシか?)

 口を開く気力も無いのか、ナニコレ? と視線だけで問い返す。

「今度、光陵学園でやるらしいねん。一緒に行く?」
「………。思いっきり他所の学校じゃねぇか。部外者が行って良いのか?」
「そんなん勿論―――」

 満面の笑顔で頷き返す、青髪ピアス、

「―――不法侵入に決まってるやん」
「ヤメロ馬鹿」

 上条のツッコミ魂が、疲労を駆逐した。 

「そういや、てめぇこないだも他所の学校(まじしゃんずあかでみぃ)に忍び込もうとして捕まってただろうが。
 しかも無理矢理巻き込んだ俺を囮にしやがって。今度やったらホントに極生に酷い目に合わされるぞ」
「見損なったでカミやん!! 光陵学園いうたらエルフ耳の巨乳校長、歌って踊れる魔法少女とか二次元記号満載の楽園(シャングリラ)やんか!!
 寧ろオタクの聖地(エリュシオン)言うても過言やない!!
 それを極上生徒会(ゴクセー)恐いからって諦めてしまうなんて、貴様それでも二次元戦士か!!
 修正したる!!」
「こないだも似たようなこと言ってとっ捕まったんじゃねぇか!!
 ちったぁ学習しろってか涙流しながら詰め寄るな鬱陶しい!!」
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:19:04 ID:+r8TbU1K
駄目だこいつ早く何とかしないとw支援

 拳を握る一八〇越えの大男、青髪ピアス。既に鬱陶しいを通り越して暑苦しい。
 上条と押し合い圧し合いを繰り広げる横から、別の声が降ってくる。

「にゃー。楽しそうだなぁカミやん」
「おお、土御門いいところに。
 この馬鹿止めるの手伝ってくれたら、上条さん的支持率が一万八千は上がります事よ」
「あ、小豆相場より激しい変動ぜよ……」

 この世界の住人の常として奇妙な口調なのは兎も角、大の男がにゃーにゃー猫なで声を出すのは背筋が寒くなるが、背に腹は変えられないと言うか、青髪ピアスな大男に迫られるよりは十分ましである。
 モテたいがために、金髪アロハにサングラスという不良ファッションに身を包んだ土御門元春は、

「で、カミやんは行かないのかにゃー?」
「えっ!? なに!? オマエも光陵行くの!? 何時も舞夏に飯作って貰ってるくせに!?」
「何時もじゃないぜよ。最近は三日に一度ぐらいだにゃー。
 って、そんなコトはどうでも良くて。あの学校にはエルフがいるからにゃー、ツルペタばんざい」

 シスコンでロリコンと言う(本人否定)ひたすらに濃ゆい隣人なのだ。
 ガクッ。と脱力した上条は、殆ど反射的に絶叫する。

「結局ソレかっ!?」
「お前は何でもかんでもつるつるのぺったんこにしやがって、エルフさん言うたら妖艶な大人キャラ一択やろが!!」
「にゃー、青ピ、それは妄想力が貧困ぜよ。
 トールキン発、ソードワールド経由のステレオタイプに縛られるなんてまだまだ甘いにゃー。ビバひんにゅー」

 なにをう。と、焼け石にガソリンをぶっ掛けたように空気が加熱。
 鉄板を置けば一人でに熱を持ち、目玉焼きぐらい作れそうな程の議論は、際限なく輪と大風呂敷を展開する。
 今までと変わらない馬鹿な会話。そのうち殴り合いにまで発展して、キレた吹寄制理にどつき回されるだろう。
 少し前までなら単に二次元の話だったエルフだのなんだのは、しかし現在では、事実リアルな話題だった。
 原因不明の多重次元融合現象。ソレも学校施設だけをピンポイントに繋げる異常事態が起こった結果、
二次元と、ファンタジー、オカルトと呼ばれていた事象を含んだ世界の存在が確認されるに至った。
 そんな異常事態に、科学バンザイな学園都市の生徒たちは当初戸惑ったものの、もともと超能力という不思議に身近に触れていることや、
発達段階の子供ならではの適応性の高さゆえに、一週間、二週間と過ぎる内に次第に順応して行き、今では1+1=2が当然であるのと同様、
当たり前のことと受け入れていた。
 どれくらい、受け入れられているのかといえば、

「あのなぁ、エルフ=ひんにゅーって公式こそソードワールドのスタンダードだろ。
 だったら俺は巨乳エルフを推すね。そして性格属性は面倒見のいいお姉さん。これ上条的マイフェイバリット」
「ソレも既に通った道だにゃー。先人に敬意を表すのは結構だが、萌属性に関してそれは足踏みと変わらないにゃー」

 などという二次元会話が、

「貴様、上条当麻!! いい加減にしときなさい!!
 立派にセクシャル・ハラスメントよ、それ!」

 本気で、嫌がらせ(セクハラ)認定されるぐらいだ。

 かくして、クラスの三バカ(デルタフォース)こと、上条、土御門、青髪ピアスは、クラスの半分の支持を受けた吹寄制理によって、K.O.される。
 後に残ったのは、死屍累々と転がる三バカと、肩をいからせる吹寄に、惜しみなく注がれる主に女子方面からの拍手喝采であった。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:23:00 ID:lHtkwDEW
ダメだww
この3バカなんとかしねーと支援
行間 一

 大気を震わせる雄叫びは、そのまま世界を揺らす呪文となって顕現する。
 開いた口のその奥にわだかまる闇。
 闇が固まり刃となり、彼に向って飛来する。

 冥属性攻撃魔法<ダークブレイド>。

 闇の刃を放ったのは、山羊頭人身の怪物。裏界に住まう悪鬼の一種。レッサーデーモン。
 侵魔としては下級に分類されるが、人間との実力差は明白。決して嘗めて掛かっていい相手ではない。
 しかし、それでも彼の相手をするには、力不足であることは否定できない。

 男が手にする刃が、光に包まれる。ルーンが発光し浮かび上がる力ある文字。
 込められた魔力が、闇色の刃を文字通りに霧散させる。

「はっ、こんなもんで俺をやろうだなんて、ちぃいっとばかし考えが甘いんじゃねぇのか?」

 こうして、攻撃を防がれるのは何度目か。
 そうして、何匹の同種が眼前で屠られたのだろう。

 全長約二メートルに及ぼうかという、巨大な刃。
 端から端まで刀身を備え、下から三分の一ほどのところに柄が備わっている奇妙な構造。
 インテークやダクト、ノズルの様な奇妙な部品を取り付けた、剣というカテゴリからは余りに外れていて、
 しかし大別、剣としか表現の仕様の無い『武器』。
 ウィッチブレードという、科学魔術相半ばの白兵戦用戦闘箒。
 それを、軽々と振り回す、男。

 彼の名は柊蓮司。
 元の世界でも、そしてこの世界においても名を知らぬものなどいない、ウィザードだ。

 勿論、裏界の住人たちの間にもその名は知れ渡っている。
 それは現在彼らと相対している下級侵魔も例外ではない。後にマジカルウォーフェアと呼ばれる魔人間戦争の当初から、最終決戦までを戦いぬいた、ベテランウィザード。
 侵魔と人の間に在る、狩猟者と被狩猟者の関係は、今この場においては逆転している。
 下級とは言え、『彼』も侵魔の端くれ、たかが人間に上を行かれることに屈辱を感じないわけではない。しかし―――、
 
 そして柊は間合いを詰める。
 二メートル超の凶器は、だらりと無造作に下げられている。
 拳を握り、デーモンは腕を振り上げる。
 
「此処はテメェらの来るところじゃねぇ。
 とっとと巣穴に戻りやがれ」

 倒れこむように、最後の間合いが侵略される。
 振るわれるデーモンの拳を、膝を撓め重心を落とす勢いで加速し前進。結果、回避。
 虚しくも空を切る魔の豪腕。しかしウィザードの動きは止まらない。
 ゼロからトップスピードに乗った勢いで、突き出す刃を加速、ノズルからの噴射で更に加速。
 
 巨大な刃が、侵魔の腹を貫通する。
 背中から飛び出す刀身。力を失い、倒れこむまえに身体が虚空に霧散する。 
 今際の際で、己がどんな表情を浮かべているのか、『彼』は見えずとも確信していた。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:27:47 ID:lHtkwDEW
まだイケそうな気がするにゃー支援
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:32:44 ID:PNmzI+Eo
とり急いで支援
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:33:56 ID:PNmzI+Eo
…って、それまでの投下ペース的に時既に遅しってやつですかにゃ?
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:33:56 ID:+r8TbU1K
まさかサルに引っかかったとか支援
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:37:47 ID:lHtkwDEW
30分内に10投稿……あ、こりゃ100パー引っかかったなと経験者は語ってみるー。

だがしかーし! たまに他人の支援により解除されることもあるんだ・ZEと言いつつ支援。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:43:39 ID:PlckynO/
柊力で上条さんの能力が下がれば上条さんが不幸脱出
幻想殺しで柊連司の柊力を破壊すれば柊連司が不幸脱出
不幸能力決定戦開催と聞いて支援
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:45:20 ID:PlckynO/
漢字間違えたけどたぶんきっとそれは伏線・・・・かも


* * *


 最後の侵魔が消滅し、続いて何も現れないことを確認して、柊蓮司は息をついた。
 どうやら、無事に退治できたらしい。

 此処、学園世界には時々侵略者が現れることがある。
 今回は侵魔の群だったが、裏界の住人に限らず、様々な敵が発生し、襲い掛かってくる。
 何故彼らが現れるのか、詳しいところは何も解らないが、それでも黙っているわけには行かない。
 現在の柊は、それらを退ける役目を請け負っている。敵が居住区に入り込む前に、水際で叩きのめす。
 勿論、柊だけではなく様々な能力者がこの世界と住人を護る為に戦っていた。
 
 近づいてくる足音の主もその一人。
 こつこつ、とローファーが地面を打つ音は、割と耳に馴染んだもの。

「お疲れ、柊。
 こっちも終わったわよ」

 声の主は、紺系チェック柄のプリーツスカートと、ベージュ色のブレザーを着こなした少女。
 彼女の名は、御坂美琴。
 学園都市のサイキッカーたちの中で、序列三位に列せられる超能力者(レベル5)。
 淡い褐色の髪に褐色の瞳が健康的な、お嬢様らしからぬお嬢様である。

「お疲れさん。
 大丈夫だったか」
「大丈夫よ。
 あの程度の連中ならどれだけ出てこようと恐くないわ」

 柊の言葉に、美琴は快活に笑う。
 学園都市で最高位の電撃使い(エレクトロマスター)には、下級侵魔の相手は役不足だったようだ。

「柊って割りと心配性よね」
「当然だろ、一応俺は社会人(オトナ)だからな」
「の、割には制服(そんな服)着てるけどね」
「うるせぇ!! 好きで着てるわけじゃねぇ!!」

 思わず怒鳴るブレザーな柊。きゃーっ! と、美琴は楽しそうな悲鳴をあげる。
 そのタイミングで、柊の懐から軽快なメロディーが流れ出す。
 0-Phoneの着信音。
 美琴に向って何か言いたげだった柊だったが、無視することも出来ずに携帯のフリップを開く。

『お疲れ様でした、柊さん、御坂さん』

 電話の向こうから聞こえてくるのは、こういったときにオペレーターをかって出てくれる少女の声だ。
「お疲れ、初春」
『とりあえず監視エリア内の敵性反応はすべて消滅を確認しました。
 何体か取り逃がしたようですが、問題になるほどではないと思いますよ。
 後は、帰ってきて報告書をまとめてもらうだけですね』
 報告書という響きに「うげぇ」と、柊が呻けば、「もう代理人を用意してます」と、電話口から返って来た。 
「しっかし、なんだってあんな小物ばっかりが群れてたのかしらね。
 例えば動物でアレだけの群れだったら、統率する親玉が居てもおかしくないのに」 
『いえいえ、そうでも無いんですよ。
 レーダーを見ていた限りでは、さっきのエネミーたち、御坂さんたちが接触した瞬間、数体を遠くに配置して、残りが防衛線みたいなのを築きましたからね』
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:49:52 ID:lHtkwDEW
くくくっ、ほら息を吹き返した。
あとはドリルかい?ドリルが必要だよねさぁ手術開始さあぁぁぁ!!支援。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:49:59 ID:+r8TbU1K
おお、復活したか支援
 何気ない美琴の呟きに、電話の声が反応する。
『一応、撤退戦らしきことをやろうとしていたようなんですが、こっちの攻撃力で壁を崩して、あらかた食い尽くしちゃった感じですね』
「ま、攻撃力が取り得の魔剣使いと超電磁砲だからね」
 と、美琴が返答したところで、先ほどから何も言わない柊に視線を向ける。
「? どうしたの柊。なんか気になることでも在るの?」
 彼は、美琴に視線を合わすと
「いや、俺が最後に斬った奴。なんか、嗤ってたんだよ」
 ウィッチブレードを突き刺して、消滅するまでの数秒で、あのデーモンは、確かに笑みを浮かべていたと思う。
 それも、此方を蔑むような、気分の悪い笑みを。
「『嗤ってた?』」
 電話と美琴の声がシンクロする。
 侵魔が、人間に倒されるとき、大抵悔しそうな表情を浮かべるのだ。
 奴らからすれば、人間はエサでしかないのだから、そちらの方が自然といえる。
 その状況で嗤っていたとなれば、それは

「もしかしたら、俺たちは奴らを追っ払ったんじゃなくて―――、
 まんまと、逃げられたのかもしれねぇな」

 沈黙が落ちた。

 逃げられた。
 追い散らしたのではなく、群の殆どを斃すことに時間を割いている内に、重要な存在を逃がされた。
 勿論、今の段階では仮説でしかない。
 仮説でしかないのだが、もしそうだとすれば、事態は何も解決していないことになる。
 それに、たかが人間相手に侵魔がそこまでして逃がさなければ成らないものとは、一体―――。
 
『と、兎に角。二人とも一度戻ってきてください!
 詳しいことはまた後ほど、みんなで話し合いましょう』

 電話の向うからも、落ち着かない声音が届く。
 「おう」/「わかったわ」と、肯定の意を返し、帰路につく柊と美琴。

 魔剣使いと超電磁砲の内心には、表現の仕様の無い、嫌な感覚が渦巻いていた。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 19:51:34 ID:PlckynO/
支援し
以上です。支援ありがとうございました。
クロス先は、とある魔術の禁書目録です。言うまでも無さそうですけど一応。

さるさん? とやらを喰らいました。此処まで長い投下は初めてだったので、吃驚です。
どれくらいのインターバルが在ればいいでしょうか?

では、お付き合い頂き、有難うございました。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 20:04:24 ID:lHtkwDEW
>>398
乙でーす。
まさか 超電磁砲お姉様(だいさんい)と 幻想殺し(さいこうのさいじゃく)がくるとはww
こいつら一緒にバトったりするんですかね? 原作でもまともな共闘シーンないのに。やべぇ超期待。

柊が彼らとどう絡みながら物語を紡いでいくのか、楽しみにさせていただきますw

PS ところで、失礼ですが以前禁書板でなにかSSを書かれた覚えはございませんか?
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 20:20:44 ID:lHtkwDEW
PSのPS
このスレだと、正直今回支援は多かった方です。
この板の制限上、さるさん回避は厳しいかと。

とゆーことで
回避策その1:このスレの行数制限・60行ギリギリまでフルに使って投下する
回避策その2:投稿制限は○時ジャストにリセットされるため、○時ちょうどではなく、半くらいから投下を開始する

……くらいかと。
この2つをしてもどうしようもない時は、まぁ諦めて時間潰しを探しましょう。現実は非情である、です。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 20:26:26 ID:stUG2J7k
>>363
それを聞き、色々考えてみて。

N(ナイチチ) D(脱出) K(研究会)

と言う組織名が頭をよぎり。

…あまりの豪華メンバーっぷりに色んな意味で涙が出た。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 22:40:40 ID:73NdUGdc
鳥坂先輩やリウィも(OBなので)特別執行委員やってないかなぁ?
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 22:48:34 ID:0dB7/nOm
鳥坂先輩…ダメだ、一瞬で口で負けるベルしか想像できねぇ
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 22:49:07 ID:+r8TbU1K
鳥坂先輩は引っ掻き回す方だから執行委員には入らないだろw

あと、リウイは原作からして学園ものじゃないので巻き込まれないだろうな。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 23:45:23 ID:/EkGV89f
柊と御坂は相性がいいからなぁ。前衛後衛の役割分担だけでなく声的な意味で。
しかし魔剣はWBだが何故制服wバーレスクの時みたくロンギヌス仕様のコートで良いじゃないか。
406学園世界ネタ:2009/03/17(火) 23:50:58 ID:HaCrlCoi
0時から投下宜しいでしょうか
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 23:56:29 ID:PlckynO/
宜しいです♪
408保健委員会の主張@学園世界:2009/03/18(水) 00:01:39 ID:b9c1CXu7
「もう一度、言ってくれますか?」
生徒会長の問いに、
「ああ、我々『保健委員会』は 現時点での学園世界の解放に断固反対する。と言ったんだ」
俺、フロレンス看護学院代表兼『学園世界・保健委員会連合』保健委員長・七代 崇(ななしろ たかし)は言い放った。

それから大罵声合戦。まあ、俺が途中で、
「一応、今の時点での全学園・生徒の『元の世界』の座標は既にこちら(フロレンス)で特定出来てるから、帰そうと思えばすぐ出来るんだけどな」
などと言った事が火に油を注ぐ結果になった訳だが。
案の定「自分勝手だ」「何を考えている」「いつまでも学生では居られないんだぞ」「ニート乙」などと言われ放題。
やはりみんなストレスが溜まっていた様だ。変に暴発する前につついて正解だったな。

<一時間後>

……出す物出した様だし、そろそろ理由を説明するか。
「感染症対策には時間がかかるんだよ。ついでに言うと病人が出ていないってだけで安心はしてないよな?発症してなくても媒介ならする可能性はあるんだぞ?
流石に故郷で『未知の病原菌発生!人口九割減!』なんて悲劇は誰にも起こさせたくはないからな……解放の為の『解放』など賛成出来るはずないだろ」
流石に黙り込んだ執行委員達を見渡した後、一息ついて、隣に立っていた保健委員会副委員長・木梨 幸水(きなし ゆきみず)に残りの説明を任した。
「コースイさん、後よろしく」
苦笑した後、コースイさんは自分の体験談を語り始めた。
「以前、俺はABCウィルスと呼ばれる未知のウィルスによって一握りの子供達しか生き残れなかった世界に……」
「実はこのウィルスは水疱瘡とほぼ同質の……」
「今まで水疱瘡の存在しなかった世界……」
……ホント『召喚師』にとっていつ聞いても心臓に悪い話だよな。
409保健委員会の主張@学園世界:2009/03/18(水) 00:03:25 ID:b9c1CXu7
コースイさんの話が終わり、最後に俺が締め括った。
「一応、帰る手段の『一つ』は確保している、と皆には伝えて欲しい。
ただ、『どうしても』早急に戻らなくてはならない者以外はもう少し待って欲しいんだ。
早急に戻る者を最優先で検査・治療を行いたい。そして、故郷の世界では受けることが困難な治療を全生徒に提供したい。
……それにはどうしても時間と出来る限り多くの世界の協力が必要だ。
だから、重ねて言うが、もう少し待って欲しい。そして、『危険性』が有るが故に無理にでも帰還を実行する者が居れば『妨害』も辞さない覚悟がこちらには有ると言う事を心に留めて貰いたい」

<そのころフロレンス看護学院では>
「北部地区でモルボル菌が大発生してます!」
「万能薬の在庫は?」
「彼の病気の治療をお願いします」
「オクタヘドロンから量産型『紅衣』が届きました!」
「フォーティア魔法学園に納入して!」
「伝説の樹周辺でしっと団の発生を確認!」「なぎはらえっ!!」
「病名は?」
「月臣学園の鳴海君のテロメア再生治療の準備整いました!」
「ペドフィリアです」「無理!」
「大変です! 魔王様が『外』で拾ってきたラダム樹が活性化を!」
「研究室を隔離して、早く! 七代君の馬鹿!」
「ままー、どこー?」
「沈静化しました!」
「おしおき水、どこかしら?」

地獄の様な喧噪の中、
「すやすや」
完成させたワクチンの山の脇でシェノン=ヤンディが安らかな寝息を立てていた。
410保健委員会の主張@学園世界:2009/03/18(水) 00:05:14 ID:b9c1CXu7
短いですが以上です。覚悟はしてたけどNW分が少ないorz。
次回の一般保健委員の話はNW分たっぷりの予定。
デウスエクスマキナチャート用に「終わらせる」為の手段は持っているが、それを「今の所」使う気がない団体を設定しました。
よろしければ使ってやって下さい。

【保健委員会】
魔法医療専門学校である「フロレンス看護学院」が主体となった学園世界最大の医療団体。
様々な世界の医療技術を統合させ、発展させて、患者を一人でも多く救うことが目的。ただそれだけ。
医薬品はザールブルクアカデミーなどから購入したり、オクタヘドロンから輸入したりして賄っている。
それでも手に入らない物などは最強クラスの召喚師である「七代 崇」が召喚している。

追加校
フロレンス看護学院:angelbreath 
フォーティア魔法学園:Magus Tale
武蔵野薬科大学:時空のクロス・ロード

乱文乱筆失礼しました
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 00:09:12 ID:rV5TYaG1
支援
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 00:17:01 ID:L3vJd4Xs
……学園世界って、リレーでなくてシェアワールドだったのでは?
その場合デウスエクスマキナチャートが必要とは思えんのだが。

いやまぁ、これすらも拾うかどうか勝手だと言うなら、俺の発言は戯れ言以外の何者でもないけどね。
しかしまとめの人がどんどんまとめづらくなるなぁ
……少なくとも俺はどうまとめりゃいいか想像もつかん。
413保健委員会の主張@学園世界:2009/03/18(水) 00:28:13 ID:b9c1CXu7
>>412
あ、すいません。
一応、使うつもりは全くありません>デウスエクスマキナチャート
ですが、これだけのメンツがいて誰一人「終わらせる」手段を持っていないのは不自然に思いましたので、こういう風に書きました。
勿論、どうしようもなくなってしまった時には躊躇いなく「送還」を使うでしょうが>たたる
例えばラ・グースと虎と爆烈王の戦いに巻き込まれるとか
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 00:31:49 ID:L3vJd4Xs
ふぅん……。
とりあえず乙。言い忘れてた。スマン。
どうでもいい確認とっても構わないか?

あなたは「月と星と〜」の作者さん?
415414:2009/03/18(水) 01:16:08 ID:L3vJd4Xs
あ、いや変な意味じゃなくてさ。

なんか書き方とか似てるなー、と思ったから聞いてみただけなんだ。
もしそうなら長編書きながら短編とかすごいなーというだけの話。
もし違ったなら失礼した。重ねてゴメン。
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 02:56:08 ID:FxJ5TP/I
>>414
>もし違ったなら失礼した。
ってそれはそれで月と星と〜の作者の人に失礼な言い方じゃないか?
本当に戯れ以外の何者でもないからもう黙ってて
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 05:31:18 ID:DdIAZc+d
う〜ん。これだとさ…他の方法で帰還手段見つけても帰らしてもらえないから他の手段探すモチベーションが無くなるなあ…
しかも若干1名の俺SUGEEEEEで解決ってのも…悪いけど俺は黒歴史扱いにさせてもらうよ。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 05:54:22 ID:SwRcA3lf
・実は勘違いだった
・実は方便だった
・実は(個人ならともかく)大規模にやろうとするのは何らかの理由で無理だった
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 07:10:30 ID:O32YgAfC
・やろうとすると「影の黒幕(の誰か)」が妨害してくる。

ぶっちゃけ校長にマーリンとかもいるんだし、力技でなんとかなるんなら何とかしてるんじゃないか?
第8世界は今では次元間航行能力を確立してるんだし。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 07:19:18 ID:L3vJd4Xs
>>418-419
それって俗に言う「黒歴史」ってことじゃね?

「その展開は面白いか?」の一言で終わる話だと思うけどな。
「いつでもこんな状態なんとかできるけどなにもしないよ、理由は特にない」と言ってるも同然なわけで。
一生懸命なんとかしようと頑張ってる連中が書かれても、そういう奴がいると一気に緊迫感削り取られるよなー。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 10:20:32 ID:KkZsF1AR
でも本文中に行動している描写がある訳じゃないし続きがまだない現状でまだ黒歴史にする必要はないかと。
ブラフとしての発言ならこの程度普通に飛び交ってそうだし(勢力争い的な意味で、帰還できる可能性を示唆するのは意味がありますし)

まあ単体送還なら一部は普通にできそうだしな(裏界魔王とか)
でないと神宮寺百合子とか侵魔召喚師とか召喚獣とか使う奴がまともに戦えない。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 10:26:14 ID:5V5v5f6I
なんだかゲヘナっぽい話になってきたな・・・・。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 11:39:52 ID:1k5QSOE8
個人的には着眼点は面白いと思うので
『もし事態を解決できる手段が見つかったとしても即時の使用は控えて欲しい』ということにしちゃえばいいのではないかと。

あと地形に関しては誰も触れてないよね、今のところ。
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 15:29:08 ID:wIgy42Y/
べつに妨害を振り切って帰ろうと試みても良いんじゃないのか。
公衆衛生の維持というひとつの社会正義のために行動する組織と、
個人的事情や別の社会正義のために行動する個人や組織の対立、
といった展開はある種のテンプレであるし。
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 15:33:32 ID:L3vJd4Xs
つーかアレか。いくつか状況を動かす要因があるわけか。

1.この現象を力づくで片付けられる、と豪語するキャラが宣言してしまっている
→キャラ一人によって解決できることならば、そもそも世界が成り立たない。
よって、力不足とするか基本的にそんな力持ってるキャラはそういうことを喋らないのが普通。
形成されたばかりの世界を崩壊させたり、なんのカタルシスもなく解決案を提示する行為のため、いくらか反感をかっている。

2.ウィルスが蔓延しているため世界を元に戻せない設定にした
→ウィルスに対抗する保健委員の話が書きたかったのだろうと推測。
それは別にシェアな以上なんの問題もないが、しかし他の解決策が見つかった場合に、実行への大きな妨げになるのが明白。
学校を元に戻せるとしても、別の要因が解決しなければ帰還できない設定となるため。

こんな感じ?
確かに後の作者さんが取捨選択を決めればいい話だけどね。
……しかし、誰かも言ってたがこれまとめ人がまとめるの大変だぞー?



地形に関しては、山とかがあることを書いてた作品と、学校に識別番号つけてた作品があったはず。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 16:05:45 ID:SwRcA3lf
>2.ウィルスが蔓延しているため世界を元に戻せない設定にした
これはものすごく違う。

・元に戻した時にどんな病気が流行ってしまうか「分からない」
のであって、確定事項は何にも書いてないよ。

後で
今回の現象の場合は、元の世界に戻る過程でその元の世界には無かった病原体は消えてしまう=送還する場合は対策の必要なしだった
…というご都合主義的なルールだったことが判明して保険委員たち超☆涙目
とかでも矛盾しない内容だと思うんだが。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:04:42 ID:KkZsF1AR
流れをぶったぎるがちょっと質問。
とある作品を混ぜようと思ったんだが、そのとある作品特有のウィルスとか寄生生物とかの
感染拡大を押さえるために学園世界にある高濃度の魔力(本来存在しなかった環境)によって学園世界の大気中でそのウィルスや寄生生物が生きられないとかいう追加設定を加えるのはアリ?

ぶっちゃけレネゲイドウィルスとかだが、この辺は感染しても困るが治療方法が確立されると作品の根本が崩れたりするんだが。

【馬鹿はブラストハンドに魅了されている】
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:14:33 ID:dCv4P/0e
学園境界に来てから感染したら治療の可能有で、
元から感染していた場合は治療不可で基本OKだと思うぞ。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:25:12 ID:IFbLXy2+
>>427
セルフツッコミは鬱陶しい。

それはともかく、あなたがそれでいいと思うのならばそれでいいんじゃない?
それによって整合性が取れると思うのなら。
上で出たようにダメだと思ったら黒歴史になるだけだし
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:26:44 ID:L3vJd4Xs
>>426
それもそーか。
確かに「世界に蔓延している」とは記述がないな。

結局「わからないから世界を元に戻すことに反対する一団」が存在するのは確かだから、
元に戻す際にとんでもない抵抗をしてくる可能性がある、が正確と。

自分たちの悪魔の証明(他世界の病気が他世界の人間に感染することは有り得ない)が完成するまで、
世界を元に戻すことを制止し続ける「保健委員」ねぇ。

どっからどう見ても悪役にしか見えない件について。
つーかどうやって証明すんだそんなの、臨床試験ナシでそんな証明できるはずもないぜ?
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:40:22 ID:HWw6SFO3
卿<逆に考えるんだ
   新しい悪役ネタが出てきた、と
   こう考えるんだ
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 19:56:36 ID:eLrS3+8A
つまり、元の世界で適正が無くて力を持てなかったキャラが、
他世界の能力に覚醒するといった展開はNGって事でFA?
正直、敵側に二つ以上の異能力を持たせたいなぁとか妄想していたのだが

まぁ流石に厨二が過ぎるし、その辺が妥当なところかねぇ?
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 20:03:49 ID:SwRcA3lf
>430
ちょいと作者にとって都合が悪い方向の誤解釈や俺拡大解釈が過ぎるんじゃないのか?
まず証明するべきことが間違ってるし、現実世界における悪魔の証明がクロス世界でも悪魔の証明であるとも限らない。
なんでわざわざ都合が悪い方悪い方にばっか考えるんだ、書いてるわけでもないのに。


こう言っちゃアレだが、君は思い込みが先行しすぎてて、読解と想像を怠る癖があるように見える。
自分で書く予定がないなら設定周りには口出さないほうが良いと思うよ。

作者(予定)ならスマン
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 20:06:35 ID:oSzPnesN
>>432
でもん☆ぱらさいと。

感染初期なら安全に除去できるが、
長期になると後遺症がでる。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 20:19:56 ID:L3vJd4Xs
>>433
書く気はないよ。

確かにちょっと妄想が過ぎた感があるのは認める。
けど>>426で1は否定してないよね。

言いたいのはそれだけ。あとは全部枝葉末節。

実際に後に続くかどうかは作家さん達が決めることだしな。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 21:13:03 ID:qAUjthYX
>432
元々一般人の場合は例えばペルソナ能力なら、地域や一部の結界内、狭界内限定なら使用可にする
場所から離れるとただの人に戻るとかどうかな
当然元の世界に帰ると能力を失う

二つ以上の異能力なら装飾アイテム装備で使えるようになる魔法スキルのような物なら即実践的にするならOKかな
ちなみに某マナケミアのコモンスキルという物が該当し装備は2個まで

それ以外だと一から鍛えなきゃならないので片方の能力レベルは低いとする

後は複数能力を使えるけど時間をかけて能力を切り替えないと使えないことにする
つまり戦闘は常に一種類の能力しか使えないメニュー画面切り替え方式能力

マイナーアクションで能力を切り替えるペルソナのワイルド能力もあるけどこれは強力すぎる

無能力者は何にでもなれるけど、元から能力を持っていると持ってる能力が邪魔してしまうでどうかな
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 21:24:34 ID:dSTSFnDf
まあ、結局はノリです。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 21:59:21 ID:5Uml7zL2
>437
確かにその通りだがぶっちゃけ過ぎだ。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 22:07:42 ID:DdIAZc+d
>>432
敵ならいいんでない?ぶっ倒されるの前提なんだろうし。

普通の一般人属性が特殊能力身につけるとか、特殊能力持ちが2つめってのは味方がやる場合はちょっと扱いを考えた方がよいかと。
下手にやるとスコップになるんで。

…まあ、普通の学生でも冒険者系の連中から護身術程度に剣習ったり、普通の人向けな錬金術系の便利アイテムを使ったり、
某執行委員から『元海兵隊仕込みの地獄の特訓』を受けて本当に学園世界は地獄だぜフゥーハハハハハァー!になったりならできるんじゃない?
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 22:32:01 ID:N1x2XzPO
デモンパの悪役の「悪魔憑き」だったカインが「一つ星のVIP能力者」だった、とか
柊蓮司がクエスターだったとか、ルールが変わると職業から変わるロードス島パーティーとか
卓ゲじゃその辺自体がネタになるし。
面白ければいいんじゃね?

【昔、迷宮リレーの時の若獅子パーティーをD20つながりでコンバットシェルに乗せたり操兵に
乗せたりしてやろうと書きかけてたら企画自体が立ち消えて涙目だった俺、参上】
441保健委員会の主張@学園世界:2009/03/18(水) 23:59:33 ID:b9c1CXu7
すいません、なんか色々とお騒がせしてしまって。
次回の冒頭で「言い過ぎたorz」って入れる予定でしたが、本筋ではないので少しネタバレします。
エンジェルブレス本編で最後には「無かった事」にしてしまいましたが、ヤバイものを異世界から召喚してしまい、世界を滅ぼしかけた過去があるんです>主人公
それで過敏になっているって設定です。
妨害もせいぜい「送り返す」程度です。
後、「少し待って欲しい」って言っていたのは「医療データベース」を作る時間が欲しいのと、その間に発症する様な「外で『対処』する時間のない」病気の見極めの時間が欲しかったからでした。
また、月衣で「普通の」病原体の罹患を防ぐって言うのも考えています。だからオクタヘドロンから「紅衣」を輸入してたりなどと伏線を張ってました。

本当にお騒がせして誠に申し訳ありませんでした。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 00:21:27 ID:8pYfzEK/
>ヤバイものを異世界から召喚してしまい、世界を滅ぼしかけた過去

まあ、よくあることだから気にしないでいいと思うよ。
前世で愛した相手(主人公はすっかり忘れてた)がヤンデレになって帰ってきて、
主人公の生みだした超融合のカードでで12個の宇宙を抹消しようとしたこともあったんだし。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 00:39:56 ID:qaSs4/MX
まぁこれ以上引っ張るとまた変なの沸くから話題を唐突に変更しようぜ!

……とりあえず、今のとこSSになってて(予定とか1レスネタとか以外という意味で)
学園世界にあることが確定してる学校ってどんなのがあったっけ?

学園世界名所巡りツアーとか考えてみたんだけど、
追加学園とか許可すると絶対収拾がつかないので今存在がSSで確定してる学園でなにか名所っぽいところがある場所あるかな?
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 00:51:13 ID:NoeTA2uk
この流れをとーとつにさえぎってプリキュアの人元気かなー、続き読みたいなー
とか学園世界と関係ないことを口走っとく
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 00:57:27 ID:i/alAv3c
>>443
名所といえば……

フォーティア魔法学園:大小の世界樹
麻帆良学園:神木「播桃」
光綾学園:ダンジョン
蓬莱学園:南部密林

こんな感じかな?
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 01:42:26 ID:PGXHNnXO
>>445
つ まかでみ:佐久間榮太郎の研究室、シュタイン教授の研究室
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 01:44:01 ID:PGXHNnXO
あ、あと用務員室忘れてた。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 02:13:53 ID:9gXoZBfY
学食:トレンチコートに割烹着のおじさん
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 05:02:43 ID:A3rqopD9
>>443
『九州要塞』のガチで動く巨大ロボとか、『トリステイン魔法学院』のアルヴィーズの食堂(特に夜)なんかは割と見応えあるだろ〜なと思う。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 07:34:40 ID:qaSs4/MX
>>448
もう一度言うな?
「これまでSSに描かれてて参加が確認されている学校」で、名所。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 09:51:29 ID:t1xhoZyy
とりあえず、
輝明学園秋葉原の名所といえば、
屋上の社と電波塔とヒイラギレンジとスクールメイズ。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 10:00:34 ID:vHdIe4gW
>輝明学園秋葉原校
正門の鳥居とその左右にある阿吽の仁王像と十二支で時間を表す大時計を忘れないでくれ。
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 11:45:23 ID:vHdIe4gW
…ダメだ、地形をネタに一本書いてみようと思ったけど、上手く纏まらない。
とりあえず、シナリオフックとして置いとくので好きに使ってください

『学園海』
学園世界の南西に広がる、海と見紛うばかりの超☆巨大な湖である。
湖底が『外』の海とつながっているのか海水になっており、魚が流入してくるため重要な食料供給源となっている。
(ただし、ここからは『外』へと脱出できない)
湖岸は一部砂浜となっており、リゾート地としても適している。

湖底には女神転生系の世界からやってきた『龍王オトヒメ:Lv36』が住処を構えており、「この湖の魚は皆わたくしのしもべである」と主張する。
学園世界成立初期に接触可能。
対話によって漁の許可を得ても良いし、武力によって排除しても良い。
戦闘になった場合は『妖魔イソラ:Lv11』の軍団(最低でも100体)をけしかけてくる。
会話する場合は仲間内に女性が居ると好感度が下がり、交渉難易度が上がるので注意。
また、彼女以外にもこの湖の底には何かが潜んでいるという。

とまあ、こんな感じの場所を設定してみました。
ぶっちゃけ水着でキャッキャウフフできる場所が欲しかっただけですが。
使う使わないはご自由に。オトヒメの存在を無いことにしてもいいです。
かわりにエンダネス島(byカルドセプト)を設置するとかでもOK。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 13:31:00 ID:5q6ZaLsd
>>453
ギルマン(@アリアンロッド)の大群じゃあかんのか?w
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 16:01:09 ID:qaSs4/MX
>>454
ギルマンが水着でキャッキャウフフ展開を希望とな?

書きたいならナイトウィザードを絡めてくれ。
宜しければ19時40分ごろから投下します。

>>399‐400
アドバイスありがとうございます。
禁書版ですか? 私は投稿した事在りませんが……?

>>405
学園世界の初期の方でアンゼロット仕様の特別な呪練制服が――
というネタがあったので、そこに乗っかりましたw
第二章  遁走逃走 _ran_ran_ran_

 1

 「ああああああああああああああああっ!!!」
 日の暮れた学園都市に、上条当麻の絶叫が木霊する。

「何ですか何なんですか一体!! ねぇ神様なんか上条さんが悪い事したんでしょうか!!
 理不尽だよありえねぇよ、何で俺の周りにはこんな物騒な連中しか集まらないんですか!! 
 そこんとこ原稿用紙にまとめて今すぐ顕現して教えやがれバカヤローォオオオオ!!!!」

 全力疾走中に大声を出すなど、科学的には褒められたことではない。
 その証拠に、上条の疾走スピードは、絶叫前と絶叫後では確実に落ちていた。
 それを見て取った後ろの連中が、いきり立って速度を上げる。

「お待ちになってください、そこの少年。我々は貴方に先日のお礼がしたいだけなのです。
 一生懸命動かしているその足をお止めになって、どうか我々と同行してください。
 でないと非常に困ったことになりますよ」

 と、言う意味の日本語を、ひたすらにガラの悪い似非関西風口調で吐き散らすのは、先ほどから上条を追いかけている男たちである。
 ひーふーみーよー……、全部で八人。まるで計ったかのように、おそろいの革ジャンとレザーパンツにパンクなブーツで決めた集団。
 勿論色は黒で統一。
 とある世紀末でバギーを乗り回しているような、頭がモヒカンでないのが不思議なぐらいな集団。
 誰が何処から見ても即答する、『典型的な不良』ども。
 革ジャンやズボンのあちこちにリベットを打っている辺り、もはやウケを狙っているのだろう。と、上条は思う。

「あなたの逃げ足の速さは良く分かったので、いい加減観念してください」

 教養を感じさせない顔が、そんなニュアンスの絶叫を放った。

「うるっせぇ!! ボコボコにされないだけマシと思え、このIQ80(サル並)野郎ども!!」

 言い返した上条は非常に強烈な既視感を覚えたが、そんなものは錯覚である。
 二度の絶叫で格段に落ちたスピードを引き上げる。

(ちぃいっくしょう!!! 不幸だぁああああ!!!)

 恨み心髄な『初対面の不良』どもに追いかけられて、上条当麻は走り続ける。



 事の発端は、一時間ほど前に遡る。



 上条当麻は不幸な人間だ。
 今日も朝から理不尽な目に遭い、何とか学校生活を乗り切ったかと思えば、
悪友と一緒くたに仕切屋おでこ娘(吹寄制理のこと。ベアナックルなものだけを指す)にどつき倒され。
 「セクハラや無い、純粋な美ぃに対する評価や――プゲラっ」
 などと、余計なことを言って更に殴られた青ピのとばっちりを受けて、再度強烈な頭突きをもらったのだ。

 そんなこんなの後、家路に付いた上条だったが、学生寮に戻る前に買い物だけでもしておこう。
 と、ちょっと離れた場所にある、業務用スーパーに足を向けたのが、更なる不幸への足がかりだったのかもしれない。

 上条当麻が通う学校は、東京の西を丸ごと開発した学園都市の中でも、南の方に存在する。
 これは、中学校や高等学校が多く存在する第七学区が学園都市の中央やや南よりに在り、上条の高校が、その第七学区の南の方に敷地を確保しているからだ。
 目的地の業務用スーパーは、学園都市の中央北東よりの、第四学区に存在した。
 第四学区は食品関連の施設(レストラン)が多数立ち並び、ブロックごとに違う文化圏の料理屋が営業している、此処だけで世界中の料理が味わえるという触れ込みの街だ。
 そして、多重次元融合現象が発生している現在、学園都市にやってきた他所の学生たちが、最も集まる学区である。故に、他の学生とのトラブルが最も発生し易い地区でもある。

 上条が遭遇したのもそういった類のトラブルだった。

 いかにも柄の悪そうな連中が、見慣れない制服を着た女子学生に絡んでいる。
 その場を穏便に済ませようと、知り合いを装って間に割り込めば、空気読み(エアリード)機能がエラッタかの様な天然の受け答えで、目論見は見事に失敗。
 仕方がないので不良に一言物申そうとすれば、そのうち一人が上条の顔を見て「どっかで見たことがあるような」と洩らし、それが一気に伝播して、「テメェあんときの!!」と集団で襲い掛かってきた。しかし、上条は彼らに見覚えが無い。
 それは、とある事情で上条当麻が高校一年生の夏休み以前の記憶を失っているからなのだが。
 それはともかく不良どもの顔に見覚えが在ろうとなかろうと、数で負けている喧嘩など、出来たものでは無い。
 それなりに喧嘩慣れしている上条だが、一対三以上の戦力比で、正面から立ち向かうほど強くはないし、オロカでも無い。
 一応超能力開発施設の学生らしく、右手には奇妙な力が宿っているが、こんな状況で役に立つものでも無い。
 無い無い尽くしに明け暮れて、上条の作戦が逃亡になったのも当然な流れである。

 かくして、敵に追いつかれず、また引き離さないように相手が疲れて諦めるよう仕向ける、地獄の持久走(サドンデス)が始まったのだった。


 2

 持久走が始まって、そろそろ時計の針が一回転する頃合。
 第四学区の風景は、とっくの昔に背後に追いやられ、今は妙に寂れた光景が広がっている。
 人通りが全く無い、割れた街灯が明滅を繰り返す道を、上条は駆け抜け、後ろを振り返る。
 と、その足をとめた。上条の後をついてきた足音がなくなっていたのだ。

「はぁ、はぁ、やっと撒いたか」

 両手をひざに置いて荒い息をつく。
 ぐるりと頭をめぐらせて見れば、随分と寂しい景色が目にとまる。
 追いかけっこに夢中になっているうちに、第四学区を通り抜けて別の学区に入ってしまったようだ。
 前時代的な風景から推察するに、学園都市の北東の端、第十九学区だろう。この辺りは開発に失敗して、急速に寂れてしまったと聞いたことがある。
 ペタンと、へたり込みそうな衝動を堪えて大きく息を吸った。すえた臭いが鼻を突いたが、加熱した肺に夜気が心地好かった。

「あ、やっと見つけた」

 上条が走ってきた方向、五メートルほど向こうから声が届く。
 ギクリ。と、上条の身体が硬直する。この状況に、ひたすらに既視感を覚えるが、それは間違いなく錯覚だろう。

 声の発生点には、一人の女の子が立っていた。
 紫を基調に襟と袖に白を配色した品のいいブレザーに、まるで黒い布を巻きつけたかのような指貫グローブと、ニーハイソックス。
 ミディアムカットのアッシュブロンドは、僅かな星の光を照り返し、此方を見詰める瞳はダークゴールドに濡れている。
 街を歩けば、すれ違う男共が誰でも振り返るような、そんな美少女。

「良かった。私の所為で怪我させてたら、どうしようかとおもった」

 夜の闇の中で、柔らかな笑みを浮かべる。
 それは間違いなく、第四学区で不良どもに囲まれていた、異世界の生徒。私立輝明学園の女子生徒だった。
 ふんわりと、春風のような笑みを浮かべる少女に、上条は、

「あの、つかぬ事をお聞きしますが、わたくしの後ろを走ってた連中はどうしたのでせう?」
「え? 眠って、貰ったけど」

 どうしてそんな事を聞くの? と首を傾げる少女に、

「やっぱりかぁあああああ!!」

 頭を抱えて絶叫した。

 上条当麻が、わざわざ地獄の持久走を行ったのは、この少女ではなく、寧ろあの不良たちを護る為といった意味合いが強い。
 その訳は、彼女がまとう制服に在る。
 私立輝明学園の女子用制服。
 学園都市が超能力者を開発する為の組織だとしたら、輝明学園は『ウィザード』という魔術師を養成する為の機関だ。
 そして上条の経験上、『魔術師』とか言う連中には、素人相手でも決して手を抜かない弾け野郎ばかりが集まっている。
 具体的には似非神父とか似非神父とか似非神父とか。
 そんな奴に、この街の不良―――『開発(カリキュラム)』から零れ落ちた『不良』能力者が、束になっても勝てるとは、上条には思えなかった。

 九割九分九厘間違いなく。起こるのはきっと惨劇。
 それを回避する為に、一時間も楽しくもない追いかけっこ(サドンデス)を繰り広げた。
 だというのに、結局のところ彼らが倒されて終わったとなれば、徒労感があふれ出るのも仕方あるまい。

「ふ、不幸だ………」
「あの、その、ごめんなさい………でも、あの、酷い怪我とかは、させてないから」
 
 文字通り、魔法で『睡眠』(ねむ)ってもらっただけだと、少女は言った。

「あー、それなら、まぁ―――。
 自業自得といえば自業自得だからな………」

 上条は溜息一つ。大きく背伸びをする。

「まぁ、アンタも怪我とか無いようだし、それで良しとしねぇとな」
「―――実を言うとね、困ってたの。ナンパされるの(あんな事)初めてだったから」

 そう言って、彼女は恥ずかしそうに小さく微笑んだ。

「……ありがとう。あなたって、優しいのね」
「(そんなコト言われると、純情少年の上条さんは照れてしまいます)
 って、そうだ、あんた時間大丈夫か? もうそろそろ最終下校時刻を越えるだろうから、ゲート閉まっちまうぞ?」
 
 時計を見ずとも、既に紫紺を通り越して昏蒼に近づいている空から、結構やばい時間だという事は見当が付く。
 一部施設を除いて、学園都市は他所の学生に解放されているとはいえ、最終下校時間までには居住地に戻っている事が原則だ。
 そして、街を出入りする為のゲートは、第十一学区。此処から結構離れている。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 19:45:16 ID:ZUf6JCHq
支援
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 19:46:03 ID:qaSs4/MX
おっしゃあ来やがれ支援っ!
 このままじゃ、帰れなくなるのではないかと、上条は懸念した。
 それに対して、しかし少女は相変わらずの柔らかな笑みで、

「大丈夫。今日は学園都市に泊まるつもりだから。
 ちゃんと、ゲートのところの警備員(アンチスキル)さんに、そう言ってるの」
「そうなのか? あ、でも、何処の学区のホテルか知らないけど、今の時間からじゃ、チェックインは難しくないか?」
「大丈夫。一緒に来た友達が、部屋を取ってくれてるはずだから。
 心配してくれて、ありがとう」

 そう言うと一言、さよならを告げて、踵を返して進みだす。
 こつこつと、幾らか進んだところで、ふと、彼女は立ち止まった。 
 そこで、くるりと半回転して、かつかつと少々早足で戻ってくる。
 そうして上条の目の前で止ると、もじもじと上目遣いで覗き込んできた。
「?」
 疑問符を浮かべ、首を傾げる上条の仕草に、彼女は頬を染め、意を決した様に、 

「あの、第六学区って……どっち?」

 上条は、耐え切れずに吹き出した。 

「わ、笑わないでよ………」

 羞恥で頬を赤くし、少女は上目遣いに上条を睨む。
 迫力不足だが、む〜っ。と、唸る姿にゴメンゴメンと手を振って

「送ってくよ。第六学区の、なんてホテル?」
「―――パラス、アテネ……」
「うわ、一流の高級ホテルじゃネェか」
 俺なんか一生縁が無いとこだぞこん畜生。
 ボソリとした呟きは、彼女の耳に入らなかったようで、
「でも、良いの? 最終下校時刻なんでしょ?」
「まぁ、良くは無いんだろうけど。
 学園都市で、他所の学生さんがなんか事件に巻き込まれるってのも、アレだしな。
 そういう事なら警備員(アンチスキル)も解ってくれるだろうさ」

 ほら、行くぞ。
 と、上条は歩を進める。
 わ、わ。
 と、少女は慌ててその後を着いて行く。

「あ、そうだ。自己紹介がまだだったな。
 俺は、上条当麻。アンタは?」

 差し出される右手。
 彼女はその手を握り返し、

「私は、アゼル。
 よろしく、上条君」

 バキン。と、何かが壊れる音と共に、周囲に荷物をぶちまけた。
 
 因みに、二人がその場を後にするまで、それから10分ほどかかったという。 


 3

 ナイトウィザードと呼ばれる『魔法使い』達は、常に『月衣』という個人結界をまとっているらしい。
 それは、空間断層とでも言うべきもので、無制限にではないが、様々な荷物を収納する事が出来る。
 他にも、物理衝撃などの常識的なダメージを極限にまで抑えたり、空を飛んだりなど様々な機能を持つという。
 更に付け加えるなら、と言うより、寧ろ此方の方が重要な機能なのだが、『常識』を遮断し、『非常識の存在』であるウィザードなどを、世界結界の修正から護る能力もあるらしい。
 この辺りの事は、異世界人の上条にはよく解らない。
 何でも第八世界という彼らの地球は、世界結界という『その時代の常識を決定し、非常識な物を排除する』結界で覆われているらしく、『魔法使い』のような非常識な存在は、本当ならば存在できないようだ。

 しかし、現実にウィザードは存在する。
 それを可能にする裏技が『月衣』。世界の真実を知ってしまった者の、紛れも無い異能の力だ。
 そして上条当麻の右手には、特殊な力が宿っている。
 それが異能の力であるのなら、たとえ神の奇跡であっても否定する異能(チカラ)。第八世界の結界と同じように、非常識を排除する右手。

 などという会話が、自分の月衣を壊されたことに、しきりに首を傾げるアゼルと上条の間で交わされていた。 
 
「―――だったらその右手は、
 仮令どれだけ強力な魔法でも、どれだけ忌まわしいチカラでも、触れるだけで打ち消せるんだ……。
 ―――凄いのね」
「そうでも無ぇよ。
 効果があるのは手首から先だけだから、応用は効かない。
 異能の力に触れなければ発動しないから、学園都市の身体検査(システムスキャン)じゃ、無能力(レベル0)判定しか出ない。
 恋人ができるわけでも、テストで百点をとれるわけでも無い。
 無い無い尽くしで、有難味は薄いなぁ」

 夜の空には丸い月。
 第六学区は、学園都市のアミューズメントが集中した地区だ。全体的に浮世離れした雰囲気のなかに、少々毛色の違う建物が一棟。その白い建物が二人の目に入った。
『ホテル パラスアテネ』
 少々場所にそぐわない、高級観光ホテル。
 その豪奢かつハイセンスな造りに、根っこの方から枝葉の先端まで、これ以上ないほどに庶民な上条当麻は、ストロボフラッシュを直視したように仰け反った。

「くわぁー!! 金持ち趣味丸出しなクセに何ですかこの嫌味のなさは!!
 駄目だ直視できない、ココの敷居は上条さんには高すぎる!!」

 ホテルの前で頭を抱えて奇声をあげる上条を、戸惑った瞳で追うアゼル。

「あの、上条君?」
「ん? なんだ?」

 さっきまでの、異様なテンションが嘘のように、素に戻った上条。
 アゼルはそんな彼に、一瞬なんだか得体の知れないものを見るような視線を向けたが、すぐに引っ込めて、柔らかな笑みを浮かべる。

「上条君。本当に、色々ありがとう」
「気にすんなよ。じゃあな」

 エントランスの前で頭を下げるアゼルに手を振って、その場を後にする上条。
 いいことしたなと、満足に浸って、家路に向う。

(しっかし、こんなラブコメじみたイベントが上条さんに起こるとは、世の中侮れませんなぁ……)

 こんな幸運が自分に訪れる事など、統計学的に言ってありえないのだ。今までの経験則からすれば、このイベントは壊滅的な不幸へのフラグでなくてはならない。
 一時間の徒労は精神に来るものがあったが、それもさっきの代償だと思えば、納得できないわけでも無い。
 唯一残念なのは業務用スーパーの特売を逃した事ぐらいだが、それで明日にでも餓え死ぬという事は無い。
 まぁ、今朝方の騒動で腹ペコシスターに冷蔵庫の中身は食い尽くされているから、明日は空きっ腹で登校する事になりそうだが、

(ん? ちょっと待て―――)

 何かが意識の端に引っかかった。
 それは多分、思い出さないほうが幸せで居られるようなものの類だが、きっと思い出さないなら思い出さないで更に酷く不幸な目に遭いそうなことだ。

(なんだ? 俺は一体何に引っかかったんだ?)

 数瞬前の思考を脳味噌から引っ張り出してきて、キーワードを指折り並べてみる。

(幸運、統計学、ありえない、経験則、壊滅的、不幸、フラグ、一時間、徒労、スーパー、特売、餓え死ぬ、腹ペコシスター、食い尽くす、すきっぱ――――
 ん? 腹ペコシスター? 食い尽くす?)

「って、ああああああああああああ!!? インデックスのこと本気で忘れてた!!!!」

 人混みの中心で絶叫する姿に、周囲から奇異の視線を向けられるが、気にしてはいられない。

「や、ヤバイ。このフラグは致命的か―――?」

 このまま帰って学生寮の扉を開ければ、居候の白い修道女が「とおまぁあ〜」と、邪神の喇叭のような声色で、はいずってくる事間違いなし。
 そして、人外の俊敏さで飛び掛って、上条の頭骨を噛み砕くのだ。

「うわぁぁあああ!! ナニこの不吉な未来予測!! 外れて欲しいけど、多分的中率百パーセントだ!!」

 取り敢えず、この時間でも開いているスーパーに飛び込んで何か買い込んで、急いで寮に戻らねば。
 さもないと、第七学区の学生寮には、少女に頭を噛み砕かれた死体が一つ転がる事になるだろう。

「ふーこーうーだーぁあああ!!!」

 砂塵を巻き上げて、ドップラー効果つきで絶叫しても、夜空のお月様は何も返してくれない。
 ただ丸く、そして血のように紅く、上空から眺め見下ろしているだけ―――

「え、紅い?」

 満月が紅く見えることは多々ある。
 日が落ちて、東の空に昇ったばかりの月など、まるで血のような色をしているだろう。
 それは、月光が大気を通過する際に、波長の短い青い光線が大気に阻まれ、代りに波長の長い赤い光ばかりを人の目が捉えるからだ。
 その現象は、夕日が赤く見える原理と同じであり、透過する大気の層が厚くなる水平線近くに、光源が位置するときに見られる自然現象。

 しかし、天空に位置する月は中天に在りながら、赤々と不気味に輝いている。夜とは言えまだ、満月が昇りきる時間でもあるまいに。
 奇妙な現象に、上条の足が止る。周囲でも、第六学区にひしめく数万の人々が、心を奪われたように空の奇景を眺めやる。


――――瞬間、世界からすべての音が消えた。


 「!!?!」 

 光が氾濫する。
 極彩色の街を、そのまま砂粒に砕いて一箇所にぶちまけたような。
 画材屋に置いてあるありとあらゆる絵の具の色を、混ざらないように混ぜ合わせながら、一箇所に吸い込むような。
 マーブリングされた光の奔流。
 その流れが、崩れ落ちたように上条を飲み込む。


 ―――よぅおひさつかれしぶん

「!?」

 ―――ロォ今日のとオオころはオンこれタンピン人イーいいペードですラ一満願
 
「!!?」

 ―――よっみせしゃけいえああそういうわか十いひと七やすみ連数少ない鎖ァ

「な、んだ……これ……」

―――これから帰りかよっしゃ来たアラシうおおおとんでもないのがなんだろねあれテメェツミ飛んだぞはら月が赤いけままけたーよっ
しゃかっシフトたまにならこれやー これやがコミやがったなたー一緒でいいですけるかどこかに砥石しらウロついたら何 サマ店長な
んこれで十三殴り易いし地区展の作だったのかこれおいみぱみしーぶっこきゅうりょまたねぇかへんな月店員居ないとぴこぴなぁああ――――

 意味の無い言葉の羅列を延々と耳元で囁かれ続ける。
 混線した無線のように一つ一つが重なって、暴力的に襲い掛かる声声声。
 イヤホンの音量が急激に上げられたような、音の氾濫に根こそぎ持っていかれる。

「他人(ヒト)が―――――入って、くる」 

 混ざり合う感覚に、泥のような嫌悪が腹にたまる。
 食道を逆流して、吐き出される熱い泥。
 一度ならず、何度も何度も。
 強制的に頭を通り抜ける他人の言葉が、思考が、強力に身体を圧迫する。
 吐いた。吐いた。吐いた。
 戻すものがなくなっても、胃液だけが逆流する。

「………う、げぇ! がほっがっ、がほっ、うごぉ………」

 万色の氾濫に視覚は狂い、
 万音の濁流に聴覚が死ぬ。

「―――――!」

 胸を貫く強烈な吐き気。
 脳髄を揺する、不気味な悪寒。
 精神を締め付ける、圧倒的な孤独。
 平衡は無く、地に立つ足すら覚束ない。
 痛くなるような無音、狂おしいまでの光。
 
 そして唐突な暗転。
 叩き付けられる人外の感覚に、精神が働かせた防衛機構。

 崩れるようにへたり込んだ。
 目を瞑り、耳を塞ぎ、爆撃に怯える子供のように、上条はそこで蹲る。



 それから、どれだけ経ったのか。



 吹きつける風に頬をくすぐられ、上条当麻は目を覚ました。
 脳に入り込んでいた奇妙な声は、もう聞こえない。
 目に入ったのは地面。
 黒々としたアスファルトは、まるで何百年と言う時を経たかのように乾きひび割れ、無残な屍を曝し、そこかしこに大きな亀裂を作っている。
 身体を起こせず、仰向けに寝転がれば、夜空の中心には紅い月。
 青昏い空に赤々と、毒々しく。今にも猛毒を零しそうな大きな穴。

 力を振り絞って身体を起こす。
 腹筋に力を込め、上体を起して、

「え?」

 信じられなくて目を擦る。
 もう一度目を開いて、それでも、理解が追いつかなかった。

「うそ、だろ?」

 上条を中心に360度、どれだけ目を凝らし、どれだけ周りを見回しても、

「何も、   無い」

 呆然と、声が。
 第六学区。
 学園都市のアミューズメント施設が集結した浮世離れした街並は、最早、何処にも存在しない。

 カラカラに乾いた荒野。
 吹きぬける風に埃が舞う。
 静かな廃墟は、戦場跡を連想させる。 
 まるで、戦争の記録映画。その中に迷い込んだよう。
 唯、戦場跡と異なるのは、何処にも火の手が無い事、そして、一つも死体が転がっていない事。

 広い広い空間の中、上条当麻は唯一人。

「な、なんなんだよ。これは………。なんなんだよ………」

 声が震える。
 立ち上がった、足が竦む。
 圧倒的な寂寥に、押しつぶされそうになる。

「なぁ、居ないのか? 誰か居ないのか!?」

 返って来るのは、無慈悲な静寂。
 この地区には、一万以上の人間がひしめいていたと言うのに。

 耐え切れなくなって走り出す。
 現実を否定したくて走り出す。
 自分以外が皆、■んでしまったなどと、そんな幻想―――

 この広い世界で、自分ひとりが唯、一人ぼっち。
 そんなこと、耐えられそうに無かった。

 がらり。と、何かが崩れる音がした。

 弾かれるようにそちらを振り向く。
 そこはしばらく前まで、街並みに少々そぐわないホテルが建っていた場所。

「!? 誰か居るのか!?」

 急いで駆けつける。
 巨大な建物が壊れたわりには、少なすぎる瓦礫を掻き分けて、
 上条は、彼女を見つけた。
 駆け寄って、声をかける。
 反応は無く、唯虚ろな声で小さく呟くだけ。
 焦れた上条は彼女の肩をつかんだ。
 バキンと、何かが壊れる音がして、途端、バネがはじけるように、

「かみ、じょう……くん?」

 アッシュブロンドの髪を揺らし、ダークゴールドの瞳を大きく見開いて、

「ああ。無事みたいだな。何処か痛い所とか……うおっ!!?」

 黒い帯を巻いた両腕を、上条の身体に回して、抱きついた。

「っなっ、ちょっ」
「駄目っ! 離さないで」

 いきなりの行動に、泡を食って肩から手を離しかけた上条だったが、鋭い声に手を止める。

「よかった。キミは、無事だったのね」

 上条の身体に、自分の身体を押し付けて、心の底から、安堵したように。
 覗きこむように、上条の無事を確かめる少女。
 彼女は、数分前まで彼と共に居た、少女だった。

「ああ――。アンタもなんとも無いみたいだな。アゼル」

 兎に角も、自分以外の存在を確認できて、上条はほっと胸をなでおろした。 
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 19:56:02 ID:qaSs4/MX
そういえば、誰かが言ってたなー、上条さんとアゼルの組み合わせ問題支援
行間 2


 ―――よぅおひさつかれしぶん

 知らない誰かが流れ込んでくる。

 ―――よっみせしゃけいえああそういうわか十いひと七やすみ連数少ない鎖ァ

 知らない何かが流れ込んでくる。

 ―――ロォ今日のぅおひさつかれしぶんとオオころはオンこン人イーいいペードですラ一満願

 流れ込んだ全ては、私の中で渦巻き続ける。

 ―――よよっみせしゃけいぅおいころはいいペードういうわか十いひと七やすみ

 普通ならばきっと狂ってしまうそれも、

 ―――いころはいいペードロォよせしゃけよっみせしゃけいえあすみ連数少ない鎖ァですラ一願

 もう、慣れてしまっている。

 私の名前は、アゼル・イヴリス。
 荒廃の魔王。全ての命に忌み嫌われるもの。
 近づいたもの全てから、無差別にプラーナを奪い取る怪物。
 裏界の荒野で一人佇んでいた私は、今はこの夢のような世界で暮らしていた。
 どうしてそんなコトができたのか? それは私を造ったひとが、私の力を抑えていてくれたからだ。
 だから私は、誰とも触れ合う事のできない惨めな怪物は、人間みたいに学校に行って、人間みたいにお喋りして、人間みたいにご飯を食べて、人間みたいにみんなと遊んで、人間みたいに誰かと触れ合えた。
 この身に宿る、忌まわしい力を忘れたフリをして。

 ―――ぅおひさいいペーしゃけいえああそういうわか十み連数ァ願
 
 でも、その夢ももう終わりだ。
 他ならぬ、私を造ったあのひとが、私の力を解放したのだ。

 ―――これから帰りかよっしゃ来ロォ今日のとオロォ今日のとオオころはオンこれタンピン人
イーいいペードですラ一満願オころはオンこれタンピン人イーいいペードですラ一満願たアラシ
うおおいころはよぅおひさつかれしぶんいいペードぅおひさつかれしぶんおとんでもないのがな
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のとオオころはオンこれタンピン人イーいいペードですラ一満願ー一緒でいいですけるかどこか
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トたまにならこれやー これやがコミやがったなたー一緒でいいですけるかどこかに砥石しらウ
ロついたら何 サマ店長なんこれで十三殴り易いし地区展の作だったのかこれおいロォ今日のと
オオころはオンこれタンピン人イーいいペードですラ一満願みぱみしーぶっこきゅうりょまたね
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れタンピン人イーいいペードですラ一満願いひと七やすみ連数少ない鎖ァ十三殴り易いし地区展
の作だったのかこれおいみぱみしーぶっこきゅうりょまたねぇかへんな月店員居ないとぴこぴな
ぁああ

 流れ込んでくる人間のプラーナ。
 流れ込んでくる、モザイク状に混線した存在。
 流れ込んでくる―――断末魔。最後の思考。

 そして―――、

―――これは、アゼル!? きゃ

 大切な友達の声も、そこに混ざっていた。

「……ベル――」

 足を抱え、頭を抱え、子供のように蹲る。
 こんな事したくなかった、もっと夢を見続けていたかった。
 もっと誰かと、触れ合っていたかった。
 驚愕は怒りに変わり、怒りは諦観となって、最後に絶望が、この身を満たす。
 私は、全てを貪る怪物だ。
 大切な友達すら、その牙にかけた裏切り者。
 こんな私に、一体誰が触れるというのだろうか?

 他ならぬ私自身が、私のユメを壊したのだ。


―――居ないのか? 誰か居ないのか?

 また一つ、声が届く。
 また一つ、誰かを吸ったのか。

―――誰か居るのか

471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:04:03 ID:qaSs4/MX
支援ですのー。

 声は止まない。この街にいた一万以上の人を、大事な友達を喰らってなお、
 まるで私を責めるように。否、責めているのは私自身か

―――大丈夫か!

 こんな些細な幻想(ユメ)すら護れない。
 自分自身を―――

 バキン。と、何かが壊れる音がした。
 頭の中に響く声が、最後まで巻き取られたカセットテープのように途切れて終わる。
 ワカラナクテ、弾けるように顔を上げた。
 
 夜空には、大きく紅い丸い月。
 心休まる紅を背負って、彼は私前に居た。

 蹲る私の肩に手を置いて、『それが異能の力なら、たとえ神様の奇跡であっても打ち消す右手』で、私に触れて、

「かみ、じょう……くん?」

 上条当麻。
 ついさっき知り合った男の子。
 初対面の私を助けてくれて、誰も傷つかないように、私に絡んできていた人たちも傷つかないように、身体を張ってくれた優しい人。
 幻想殺し(イマジンブレイカー)という、表界の結界と同じように、非常識を排除する右手を持った少年。
 
「ああ。大丈夫か、何処か痛い所とか……」

 彼が生きている。私の力に曝されて、それでも。
 唯それだけが、とても嬉しくて。
 この忌まわしい力に犯されない誰か、そんな誰かが存在すること自体が私の幻想。
 それなのに、彼の右手は私の肩にあって、覗き込むように私の身を案じてくれていた。

 体が自然に動いていた。
 腕を背中に回し身体と身体を寄せあう。
 
 彼の温もりが、私に伝わる。勇気をくれる。
 大丈夫だ、彼が居れば、この温もりが在れば、私は戦える。この幻想を、護っていける。
 
 私の名前は、アゼル・イヴリス。
 荒廃の魔王の二つ名を持つ、裏界の最終兵器。
 私は、生涯で二つ目の、護りたいものを見つけた。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:06:19 ID:qaSs4/MX
ら、ラブストーリーは突然に……だと?
支援。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:07:29 ID:vHdIe4gW
アゼルは天然エロス
上条さんは不幸体質

この二つの公式から導き出される結論は…わかるな?支援
以上です。支援ありがとうございました。

上条さんと彼女の組み合わせのイメージソースは、結構前のこのスレで出てきた。
それってなんてダブルアーツ? です。

でわ、お付き合い頂きありがとうございました。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:08:36 ID:UTmdRt43
こんなところで上条さんとアゼルのダブルアーツネタが実現するとは……
侮りがたし学園世界
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:13:00 ID:qaSs4/MX
乙ですの。

ずっとあなたを待ってた。雨が降っても、風が吹いても。と気色の悪いことを言ってみる。
いや、事実待ってた。話がどう動くのか次回を楽しみに待たせていただきます。

アゼルがほんとそーゆー子だが上条さんはもうちょっと自分の身(はらぺこしすたー的な意味で)を心配しなさい(笑)
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:15:25 ID:vHdIe4gW
おつですー
何時上条さんによってアゼルが剥かれるかwktkですよ?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:25:17 ID:7Me/mSY5
剥いちゃったりしたら良くて半殺しだろうね
やましい気持ちからではなくて、人助けの為に已む無く剥いたりしたのだとしても
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 21:09:31 ID:5q6ZaLsd
某索引とアゼルの保護者な蠅の女王様が、いろいろと勘違いして上条を追いかける図を想像した俺は、ちょっとちゃん様に怒られてくる・・・・。


GJ。アゼルはやっぱり、NWに数少ない正統派ヒロインだなw
481特別執行委員異聞1@学園世界:2009/03/19(木) 23:37:52 ID:Mr+uN3Fx
 極上生徒会特別執行委員。
 この学園世界の様々な揉め事(トラブル)に立ち向かう執行委員の中でも特筆されるべき異能者。

 この肩書きを持つ人物として特に知られているのが“下がる男”柊蓮司なのはいうまでもない。
 が、それは彼一人の事ではない。

 え?>252で「ただ一人」とあるじゃないか?

 それは、『肩書き:学生』の特別執行委員の事である。

  ※  ※  ※

「やあ、ご飯を食べないとお腹がすくじゃないか」
 東管理棟最上階の一室の片隅、電気炊飯器を抱えた学ラン下駄履きの少年が床に座り込んでいる。
 そばで茶碗とお箸を手にしたベホイミがキラキラした眼で待っている。
 如何にも腹ペコな顔の柊が机に突っ伏している。

 R・田中一郎。

 私立春風高校光画部の『OB』にして『備品』であり、常人を上回る身体能力や、“壊れても気が付かない”高い冗長性をもった、無印良品なロボット「違うよ、アンドロイドだよ」……である。

  ※  ※  ※

「お腹ペコペコであります。オカズも用意して欲しいのであります」
 ゴスロリ、銀髪ツーテール、黙っていれば美少女なのに……

 ノーチェ。

 なんか説明するのも今更だが、柊蓮司と色々波長の合う、吸血鬼傭兵以下略。
「あー、酷いのであります!」

  ※  ※  ※

「しかしまぁ、どこでもご飯が作れるというのは便利な世界でヤンスなぁ」
 犬耳犬尻尾。手には魔法の品らしき弓が一張り、防具無し(ココ重要、テストに出ます)。

 ベネット。

 ちょっとだけムーンスター・エンターテインメント・アカデミーの学生劇団を手伝った、と言うだけでこの世界の一員になってしまった『三下』少女。
 詳細はアリアンロッドリプレイ『ルネス殺人事件』参照の事。まあ、ベネットだし。

「……って、なんでアッシだからでヤンスかーっ!?」
482特別執行委員異聞2@学園世界:2009/03/19(木) 23:38:37 ID:Mr+uN3Fx

  ※  ※  ※

「……で、酒は?」
 パツキンヘアーにボンキュッボンなないすばでぃを包む派手な服。その上から白衣。

 香椎あやめ。

 聖九洲学園の美人保険医だが、むしろ問題児。金もコネもあって、その上(本気でやれば)医師としての腕も確か。
 柊蓮司の傷口に酒を吹き付けるのが楽しくて出入りするうち、特別執行委員の顧問の一人と言う事になった。

「……他の顧問の先生って……!?」

  ※  ※  ※

「……なんで香椎先生に付き合わされるんですか……卒業してまで」
 そんな香椎の世話を焼く羽目になった、黒髪の美少女。濃厚な視線にはついぞ気付かず。

 佐々木絵真。『英麻or英魔』にあらず。

 聖九洲学園の卒業生の筈だが、アルバイトと言うかなし崩し的に特別執行委員の非常勤事務処理要員。
 柊蓮司にフラグを立てていない、数少ない少女。自覚は無いがS=F的にはプリンセスのクラスかも(ファンクラ部が)。

「……フラグって何ですか?」
483罵蔑痴坊(偽):2009/03/19(木) 23:42:18 ID:Mr+uN3Fx
……と言うわけで、春高を絡めてみた。
ひみほけ組は、ヒーラーがいないなと思っていたら生えて来た。
なので、ちゃんと任務に参加出来るヒーラー役募集。

追加校
*ムーンスター・エンターテインメント・アカデミー(アリアンロッド)
*聖九洲学園(ヒミツの保健室)
484休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 10:59:53 ID:DfI+H51i
>>453
1つ思いついたので、投稿します。
485休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 11:01:12 ID:DfI+H51i
休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や真帆良、蓬莱など“学生の遊び場”が充実している学園に遊びに行くもの。
購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。
居住区で、出会った異世界の同好の士たちと様々な“同好会活動”を行うもの。

そして、彼女、“大いなるもの:真壁翠”の選んだ、休日の過ごし方は…

―――学園海

「アイスキャンデー、アイスキャンデー。冷たくてあま〜いアイスキャンデーはいかがですか〜?」
いつ来ても熱い常夏の海、その晴れ渡った砂浜に、水着姿の翠の声が響く。
(ああ、やっぱり休みの日はこうじゃないとね!)
なんてなことを考えているせいか、実にいい笑顔である。
実のところ、学園世界にいる限り、翠は別に働く必要はない。
食事は寮に帰れば出てくるし、希望すれば材料だけ受け取って自炊するのもOKだ。
その他の日用雑貨も必要な分はちゃんと支給される。高級品やら嗜好品の類は流石に自腹だが、贅沢は敵がモットーの彼女にはあまり縁も無い。
ならば何故、翠はこうして“アルバイト”をしているのか。
(部屋でな〜んにもしないでごろごろしてるなんて、もったいなくて死ぬかと思ったよ!)
とどのつまりは、趣味である。

『学園海で、海の家やりま〜す。手伝ってくれる人、ぼしゅ〜ちゅ〜。報酬は応相談。ご連絡は光綾学園のモノアイが素敵な鉄仮面さんまで by謎のお姉さん』

そんな怪しげなチラシを居住区で拾った翠が、速効で申し込んだ、このバイト。
女子は休日を利用して海に泳ぎにきた学生たちに、冷たいものを売る売り子を任される。

ちなみに。
(時雨は…ちょっぴり可哀そうかな。あの食堂、ものすっごくきつそうだし)
翠が、自分が心配だからとついてきた、1人の使徒に思いをはせる。
男子は『焼いた海の幸』や『具がキャベツとモヤシのみの焼きそば』、『ほぼ汁オンリーのカレー』など、海の家ならではのメニューを作る仕事を任されていた。
正直体力的には今一つの時雨にはかなりきつい仕事だが、時雨に売り子ができるとも思えないので仕方が無い。

「すみません。3本ください」
翠が時雨のことをなんとな〜く考えていると、声をかけられる。
「は〜い。まいど〜。1本“100円”なんで、3本で300円になります」
良い笑顔で返答し、相手の反応を見る。

1本100円。そう言った場合の相手の反応は大きく分けて二通りに分かれる。
1つは何の疑問もなしに素直に100円支払う場合。
そしてもう1つの反応。それは…

486休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 11:03:08 ID:DfI+H51i
「100…エン?もしかして、異世界の通貨じゃないとダメなんですか?」
首をかしげ、尋ね返してくる客。
「いえいえ、そんなこと無いですよ」
にっこりと笑顔で答える。こういう客こそが、狙い目なのだ。
「それじゃ、1本あたり“銀貨1枚”なんで3本で銀貨3枚になりま〜す」
「ああ、銀貨。分かりました。はい、どうぞ。3ゴールド」
クーラーボックスの中の銭箱に大量に入った銀色のコインを見て納得し、ちゃりんと音を立てて翠に銀貨を渡す。
「ありがとうございました〜。またどうぞ〜」
アイスキャンデーを手渡し、丁寧にお礼をする。
「…おお。本当に冷たくて甘いや。やっぱり異世界の技術はすごいな〜」
受け取った客はちょっと感動して友人たちのところへ戻って行った。

“日本人”には100円。異世界人には銀貨1枚。それがアイスキャンデーの売り子に言い渡されている値段だった。
実のところ“銀貨1枚”は日本円だと1000円くらいにはなっている超ぼったくり価格なのだが、
世の中うまくしたもので銀貨が流通してるような世界では熱い砂浜で食べられるアイスキャンデーは“かなりの贅沢品”となるため値段設定に文句を言われたことも無い。
ちなみにどっちでもない場合は売り子の判断に任せることになっている(翠もドルやポンドで受け取った経験があったりする)

(正直相手次第で値段が100倍変わるたいやき屋さんみたいでアレなんだけどね〜)
その客の背中にちょっぴり罪悪感を感じながら、翠は売り子の仕事に戻る。
(この前の子は凄かったなあ『銀貨2枚って…2ドニエ?かさばるからエキューしか持ってないわ。お釣りはいらないから、これでいいでしょ』って言って金貨で支払うし。
 …その直後に不幸そうな執事っぽい男の子連れた子に『100円?小銭は持ち歩いて無い。釣りはいらないからこれでいいか?』って言われて福沢先生を渡されたときは
 ちょっぴりへこんだけど)

頭では色々考えながらも口上を言いながら練り歩くのは忘れない。翠ほどのアルバイターともなるとこれぐらいは当然なのだ。
(さってもうすぐお昼休みだし、もうひと頑張り…)
考えるのをやめ、売り子に集中しようとしたそのときだった。

「やめてください!」
聞きなれた声が聞こえたのは。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 11:06:34 ID:67fM4XIC
市円!
488休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 11:06:39 ID:DfI+H51i

「なんだよ〜いいじゃんかよ〜。ちょっと付き合うくらい」
「アイスだったら全部俺らが買ってやるって。な?」
正直あんまりタチのよくなさそうな、まあどこにでもいる不良学生に、売り子仲間の女の子が絡まれている。
(あの子は…ああ、ソフィアちゃんかあ〜)
遠目に確認し、絡まれているのが戦う力のない“普通の少女”であることを確認し、翠は辺りを見渡す。
(アリカちゃんか…七村さんはっと…この辺にはいないなあ〜)
下手をすると翠以上に強い、アルバイト仲間の“武闘派”を探してみるが、見つからない。
(しょうがない。やりますか)
とりあえず魔法を使えば何とかなるだろう。そう思い翠が向かおうとしたとき。
「困りますねえ…お客さん」
(うっわ!?)
その男の容貌に、思わず足を止めてしまう。何故ならば。
「あんだぁ…!?」
「うちのアルバイトに手ぇ出されちゃあ、あっしらも商売あがったりでしてね。勘弁してもらえねえですかい?」
アフロにグラサン、口髭。熱い砂浜にも関わらず、きているのは黒のスーツだ。
渋さ満点の声で吐き出されるその台詞には強烈な威圧感がこもっている。
この光景を見たら誰もが思うだろう。その男は…
(や、や○ざ!?)
固まっていた翠が思わず走り寄る。
「お嬢さん。怪我は、ねえですかい?」
「あ、あの…その…」
不良たちが泡を食って逃げだしたのを確認し、男が少女に話しかける。だが、少女は震えてしまってうまく喋れない。
「ちょっと待った〜!」
少女と男の間に割って入る。
「ん?お嬢さんは…ああ、お仲間の売り子さんですかい」
「そ、そうよ!あんた、あの不良たちを追い払ってくれたのはいいけど、ソフィアちゃんに何するつもりよ!?」
見た感じ、間違いなく“戦える”人間である男。
その男は、グラサンをくいっと持ち上げて、言う。
「…こりゃあ、すまねえ。確かに知らぬ人にゃあこええだけですわな。名乗りやしょう。
 あっしは磯野第八中学っつう学校で数学を教えさせてもらってる、マサと言うもんです。
 実はルビィの姐さんに頼まれましてね、これからはあっしらがケツ持ちをすることになったんでさあ」
「…磯野第八中学校?どっかで聞いたような…あ!この前の極通に載ってた!?」
その名前に『極上生徒会通信』で読んだことを思い出し、翠が声を上げる。
学園海で起こった磯野第八中学校の“一部の教師”とこの海の支配者である“乙姫”との抗争事件。
あわや学園海と学園世界の断絶かと言う事態だったが、その前に極上生徒会が動いて何とか手打ちにしたと聞いている。
「ええ。あんときはちょいと永澄さんと燦お嬢が乙姫と揉めましてね。そんときに助けられたのがルビィの姐さんだったんで。
 まあ、そんときの縁もありやして、今はこうしてケツ持ちさせてもらってるんでさあ。
 …ちょいと長話がすぎやした。そいじゃあ、売り子、頑張ってくだせえ」
礼儀正しく頭を下げ男…マサが去っていく。
「はあ〜ちょっと怖かった…」
「そ、そうですね…」
その場に残された2人の少女がため息をつきあう。
「にしても…あのお姉さん、何者なんだろう?」
彼女たちの雇い主であるピンクの髪の女。あんな可愛い顔してどう見てもや○ざな人たちと繋がりがあったり、乙姫との揉め事を解決したり。
一体彼女は何者なのか?
その謎は深まるばかりである。
489休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 11:07:53 ID:DfI+H51i
今日はここまで。
いやあ海と言ったらこの人たちが黙って無いんじゃないかな、と。埼玉には海が無かったから余計にw
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 11:10:13 ID:xgbUxcY5
>>489
そーいえば瀬戸花(だよね?)はこれまで名前出てなかったような・・・・w

GJでした。紫帆、相変わらず便利屋やってんのな・・・・w
491【学園海】設定した奴:2009/03/20(金) 11:42:30 ID:z8IQYnBO
ぐっじょぶでしたっ!
自分が出した設定をこうも上手く料理してくれると凄い嬉しいです。
てか瀬戸の花嫁!何で思いつかなかったかなぁ…orz。自分ずっとバイオハザードみたいなパニックホラー方面にばかり発想が偏ってましたw。

そして紫帆もそうですがアリカって…マイスターオトメがなにやってますかw。
492参上!復讐の蟹少女!!@学園世界:2009/03/20(金) 11:52:02 ID:67fM4XIC
思いついたまま勝手に投下
1レスネタ
登場人物:NW?キャラのみ、独自設定アリ


彼女は困惑していた。何が困惑していたかというと、一度は帰って来れないと思っていた場所に帰って来れたと思ったら、
その居場所にまるで自分がいた某ナイトウィッチのような――ではなく、
帰ってきた場所が、以前の様子と大きく異なっていたからだった

「――お、俺がいない間に、何があったんだ…ッ!」
懐かしい学舎は以前とはほとんど変わりがないように思えるが、その周辺が大きく変化していた
数多くの学園が商店街かアーケード街のごとく建ち並び、彼の母校・輝明学園も例外ではなかった……
近代的な建物ならまだいい、問題なのはファンタジー的、あるいは未来的な建物やらが、
それはもう最初からそこにあったように、移動させた形跡なく立ち並んでいたのである
しかも、世界樹のような大木やら伝説の桜のようなものも様々な学校で立っており、まるでありがたみが薄いように彼女は感じられた
ちょっと視線を遠くに延ばせば、さらに巨大ロボやら古城のようなもの(実は図書館)も垣間見える

何かしら衝撃があったものの、とりあえず彼女は気を取り直す
なぜなら彼女には目的があるからだ!!
「ま、まぁいい。なんにせよ、俺のやる事に変わりはない!
 待っていろよくれは!今度こそ柊蓮司を倒し、お前を奴の魔の手から救ってやる!!」

彼女の名は――トウガ
かつて柊と死闘(と思っているのは本人のみ)を演じた、かの下がる男のライバル(と思って以下略)だった男である
――いやまぁ、現在は女だが

* * *

トウガは学校同士の隙間に存在する路地裏(と言う名の校舎裏)に来ていた

「…あいつが卒業しただとッ!!馬鹿な!ありえん!」
先程訪れた天文部の部長と名乗る少女から聞いた話を思い出す――
天文部に行けばくれはと会える確率が高いと踏んでいた矢先、
「くれは先輩なら、柊先輩と一緒に卒業しましたよ?」と、衝撃の事実をつきつけられた
その時は一瞬だが意識を手放しかけ、更にその後の話はまるで頭に入らなかった
(「あ、でも理事長室にいると思いますよ?」という言葉は聞き逃した)

「…ク、転生する時期と年齢を間違えさせるとは…柊め!小癪な策を使いおったな
 強くなった我を恐れているのか!?どこまでも卑怯な奴だ!おのれーー!!!!!!!!!
 こんな世界!すぐにでも出ておまえに追いついてやるぜ!!待っていろ柊!!そしてくれは!!!」


――こうして、彼女は学園世界へとやってきた

後に柊やくれはがこの世界にいることを知って一悶着起こしたり
 海老男やら冬木の虎やらといった(主にイロモノな)面々と行動を共にする事になるのは、また別の話
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 14:49:04 ID:IR4fZiHZ
      ___/_)
     /     ノ
    , -ヽ___フ`ヽ、
   /∠二ヽ  ∠二ヽヽ
   l { {:::::} } { {:::::} } l 
   | ヽ--一'   ヽ---' |
   ヽ_   __   _/   【 保 管 】
    ヽ  ̄    ̄ /
      >r-r‐r‐く     ●月と星と柊と #11
     / / ,ハ  ト、    ●NIGHT WIZARD cross period #23
      | |  | | ||
     L_|  ヽ/  |_」   ●学園世界(数えるのが面倒なくらい多いので割愛)
     し^ヽ__/し′
      | | |  | | |

学園世界のネタですが、
クロス先とか学校別に分類しようかと思ったけど、無理でした。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 18:13:12 ID:llEE3KiG
パロディで書いてみたいんだがストーリーや台詞回しがパロディ元と重なるってOKなんだろうか

主曰く 人は パンのみにて 生きるにあらず
されど また曰く
人民に パンと 自由を!
市民に 娯楽を!

で始まるSSを書き始めたんだけど前半の展開や台詞回しがパロディ元とほぼ一緒になりそうなんだ
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 18:30:20 ID:gzgO4wVJ
俺はそのパロディ元は知らんがなぁに、問題はないさ
いざとなればパロディ元とほぼ一緒という事をネタにすればいいのさ!
と、某所で再構成SSを読みまくっている俺が言ってみる

まぁ、流石にキャラの名前を変えただけとかで最初から最後までまったく同一の展開ってのはマズイが
後半が大分異なってくるんなら問題ないんじゃね?
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 20:06:08 ID:oxMNCsrG
>>489
おぉうGJー。
今学園世界でちょうど瀬戸花ネタ入れたばかりだったからすごいシンクロナイズ。

ところで、書いてたからわかるんだが……あの学校って第三中じゃなかったっけ?
497休日の過ごし方(アルバイト編)@学園世界:2009/03/20(金) 21:03:00 ID:DfI+H51i
>>490
便利屋系の人々が集ってますんで。そりゃあもう。

>>491
“漫画版”で“卒業前”辺りを想定しています。マシロきゅん可愛いよマシロきゅん。

>>496
wikiによれば原作が“第三”、アニメ版が“第八”だそうです。知識のベースがアニメ版だったので、そっちになったのでしょう。
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 21:20:13 ID:oxMNCsrG
>>497
d。アニメは見てなかったから失礼なことを言いました。申し訳ない。

まぁ、大したネタで使う気もなかったから充分修正きくし、問題ナッシン!
しかしアルバイターズは楽しそうだなぁ。こんな学生生活の楽しみ方もアリですな。
紫帆は結局武闘派扱いだしなw流石はキュマ。

時雨は下手すると「柊暗殺計画実行班」とかそんな感じのグループを作りそうと勝手に妄想した。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 22:14:53 ID:CpMhS1Ym
それよか時雨はバーベナ学園ジェラシーマスク軍団の中に混じってそうだ。
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 22:47:13 ID:bO7wsUhw
通りすがりの…アイスキャンディ屋さんよぉー!!
な翠を想像して老酒噴いた。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 23:59:07 ID:EDWYvSBr
>>486
細かい話で恐縮だが、銀貨3枚で3ゴールドっておかしくない?
普通ゴールドって金貨じゃね?
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 00:00:24 ID:4HcAajq4
>>492
あ、あなたはあの柊がいろんなブレイクスルーを使いまくるSSの作者の方ですね!
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 00:07:46 ID:U2zuhQoL
>>502
誰もがあえてツッコんでないところをツッコむなよ……。
504492:2009/03/21(土) 00:27:37 ID:lxy+I2/Z
>>502
残念ながらあのSSの作者ではなく、以前このスレで「邪道カップリング万歳!」と叫んだ方なんだ。すまないね
更に言うと今回投下したのは、書いてた女トウガSSを再利用した代物だったり……
まぁ影響はかなり受けているのは言い訳しないよ>例のSS
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 07:23:04 ID:QKw0/Een
>>501
昔、ダイの大冒険のアニメで宿代を払う時に出したのは
銀貨と銅貨だった気がするんだ…
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 07:43:50 ID:Ym9UnT6l
>>501
そもそも学園世界に普通を求めるのが間違ってる
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 08:21:10 ID:b3jx/fDo
銀や銅が金より価値が低いなんて誰が決めた?
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 08:33:48 ID:QKw0/Een
そういや昔のアニメでアルミがすごい貴重だっていう宇宙人がいたなぁ
アレなんだっけ?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 09:21:51 ID:LSiiC75l
やっぱ店で使うとなると共通通貨作らないと面倒だろうな
銀行で通貨を交換がデフォなんだろうけど
レート決めて銀行に預けてクレジットカードとかポイントカードにチャージして使うやり方なら
端末とカードの普及をクリアすれば楽なんだけど
学園都市の人材と業者と資材等の豊富さに期待しないといけないが

もちろん、学園以外の何かの施設も飛ばされてくるというのは、
土地神の支配地域とか広い範囲で学園の土地と判定されて学園だけ切り取れずに周囲丸ごと飛ばされたとか、
都市その物が学園と判定されたとかないと持っていけないけど
誰が判定するのかは知らんがその辺は似た状況になるクロスエッジとか参照だろうか?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 09:28:20 ID:b3jx/fDo
一方、輝明学園購買部はあらゆる通貨での利用を可能としていた。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 09:32:16 ID:Ym9UnT6l
>>509
為替レートの問題はあるけどとりあえずMugen-Kun配っとけばいいと思う
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 09:34:32 ID:NxCIsdnr
>508
藤田和日郎の短編漫画にそんなのあったなあ。アニメはちょっと記憶にない。
一番安い通貨が金属価値のおかげで一躍高価にって発想はそんなに珍しくないらしい。
洋モノだとニッケル(1セント)が凄い高価な世界に〜ってファンタジーを読んだ記憶があるし。
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 09:41:01 ID:U2zuhQoL
いやいや、こういう時は全世界的に存在するものを基準値段として価値を合わせて変換レートを決定するがよろしいかと。

具体的には塩か米か小麦あたりで。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 10:13:15 ID:n9vTh314
>>508
藤子F先生の「チンプイ」に、アルミが宇宙的に貴重な金属だというエピソードがあった。
自分が知ってるのは漫画版だが、アニメにもなってたかな。
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 10:16:45 ID:b3jx/fDo
まつたけーまつたけー。
516魔神皇編@学園世界:2009/03/21(土) 10:36:10 ID:g2UtxtdY
第2話のOPを11時から投下してもよいですか?
今回のクロスは「みつめてナイト」がメインになる予定。他にも色々混ざりますがね。
517歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/21(土) 11:00:03 ID:g2UtxtdY
―――学園世界特別居住区

「はぁ…」
少女は、学園世界に来て何度目になるか分からない溜息をついた。
突然に発生した、学園の転移。転移した先には同じようにやってきた、たくさんの学園があった。
楽しくなかったわけでは無い。
伝説やおとぎ話の中の住人に過ぎないと思っていたモンスターや妖精、見たことも無いような機械、魔法使いや勇者とでも言うべき戦士たち。
そんなものが普通に闊歩する世界は、夢見がちな少女に大きな驚きと感動、興奮をもたらした。
あいにく普通の力しか持たない彼女が舞台に上がることは無かったが、ただの“観客A”でいるだけでも十分に面白い。
面白い。だが…
「みんな、元気にしてるのかな…」
時折ふと我に返り思い出すのは、“学園の外”にあった少女の故郷のこと。
アルコール中毒の父親、謝ってばかりいる母親、頭の弱い弟、気障で金持ちの婚約者。そしてなにより…
「…あの人も、無理をしてないと良いんだけど」
少女の脳裏に1人の青年が思い浮かぶ。東洋人で、どこかつかみどころの無い、1人の傭兵の姿が。
時折一緒に出かけたときに見せる優しい表情とは裏腹に、戦争で数々の武勲をあげ“ドルファン最強の傭兵”と呼ばれていた青年。
少女は、その青年に淡い憧れを持っていた。競争率は高かったから、結ばれるとは思っていなかったが、それでも一緒にいれば楽しかった。
「はぁ…」
故郷のことを思い出すたび、少女は溜息をつく。この夢のような時間から現実に引き戻されて。
「帰ろう…」
鬱々とした表情のまま、少女は再び居住区を歩きだした、そのときだった。

きゅー…んきゅーん

悲しげな鳴き声に、少女は足を止め、辺りを見る。
既に暗くなった居住区の外を歩いている人間は、少女1人。
「泣いてる…えっと」
心やさしい少女は、あちこちを探しまわる。見捨てるなど、思いつきもしなかった。
そして…
「あなた…怪我してるの?」
寮と寮の隙間に隠れるようにして震える1匹の子狐、よく見れば足からは血を流している。
「…こっちにおいで。手当て、してあげる…っつ!?」
心配するように手を伸ばした少女が、子狐に噛みつかれる。鋭い痛みが指先に走った。
「…大丈夫。怖くないよ。ね?」
涙をこらえて笑顔を作り、少女は子狐をなでる。落ち着かせるように。
子狐はそれをじっと見つめ…

ペロ…ペロ…

少女の、先ほど自らが噛みついて出来た傷をいたわるように舐める。
「良かった…分かってくれたんだね」
そう言うと少女は子狐を抱き上げる。子狐は暴れることも無く抱かれるままに大人しくしている。
「…行こう。この近くに、私の住んでる寮があるから、そこで手当てするね」
そして少女はゆっくりと自分の住む寮“ドルファン学園女子寮”へと歩きだした。
518歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/21(土) 11:05:28 ID:g2UtxtdY
―――同時刻、学園世界特別居住区

「忍法!暗黒流星の術!」
自らの3倍はあろうかと言う1つ目の巨人の巨体を軽々と抱き上げ、斎堂一狼は飛んだ。
空中で反転し、きりもみ回転を加えながら落下し、地面に頭から叩きつける。
「ゲ、ゲヴァ…」
叩きつけられた巨人は2度3度痙攣し、動かなくなった。
「伊賀忍法!串夕立ち!」
服部山芽が高く投げ上げた無数のクナイが雨のように降り注ぎ、空を飛びまわる異形の鳥たちに降り注ぐ。
無数の刃の雨に、鳥たちはたまらず地面に落下した。
「甲賀忍法…火炎ホタル」
異形の獣たちの間に流れる、淡い紫の煙。そしてそれが意思を持つかのように獣たちを包み込み、次の瞬間、着火されて激しく燃え盛る。
雲隠ホタルの住んでいた甲賀の里に伝わる、特殊な比率で合成された、可燃性ガス。それは獣たちだけを正確に焼き滅ぼす。
「…プレシズ・ヘル」
そして、流れるように放たれる、ライズ・ハイマーの必殺の技が獅子の頭を持つカメを切り刻んでいく。
分厚い甲羅の隙間を正確に貫く攻撃がカメの体力を瞬時に奪い去る。
「…これで、終わりのようね」
とどめとばかりに眉間に剣を突き刺し、辺りの状況を確認したライズがわずかに緊張を解く。
「ええ、もう出てくる気配も無さそうですね」
先ほどまで辺りを包んでいた“異様な気配”も消えている。どうやら勝利したようだ。
「楽勝だったね!アタシのがホタルよりも早く終わったし!」
「あら…ですが倒した数は私の方が多いですよ?速いだけでは…ねえ?」
「何よ!?」
「何ですか!?」
緊張を解き、いつものように喧嘩を始める2人をほっといて、ライズは考え込む。
「…?ライズさん、どうしました?」
それを見て、一狼がライズに尋ねる。若くして、異様なまでに戦場慣れしているライズの戦況判断は、一狼も頼りにしていた。
「…こいつら、“撤退戦”を仕掛けてきたわ」
「撤退戦?」
「ええ、戦闘で勝ち目のなくなった部隊が、全滅を防ぐために行う戦い方よ。前衛が時間を稼いでいる間に“指揮官”が逃げる戦い方」
「指揮官ですか?ですが、逃げだした敵にそんなに強い奴なんていましたっけ?」
振り返ってみる限り、一狼が先ほど倒した巨人とライズが倒したカメ。この2体が飛びぬけて強かったように思う。
「…別に、強い奴が指揮官とは限らないわ。極端な話、優秀なブレーンと忠実な兵隊がいれば自身の戦闘能力は0でも問題無いもの。
 指揮官に求められるのは、カリスマと、正しい判断。それだけよ」
嫌な予感がする。撤退戦を行えるだけの頭と、判断力のある相手。
「…イチロー、逃げ出した敵の中に、1匹、小さな“狐”がいるわ。そいつを探して」
そんな奴をほっといて、勝利したなんて言う気にはなれない。
「狐?そいつが指揮官なんですか?」
「ええ、私が攻撃した直後、あのカメが私に突っ込んできたわ。なりふり構わず、がむしゃらにね」
ライズは確信を込めて頷く。
「…キリングがよく言ってたわ。“戦争は、指揮官を無力化して初めて勝利と言えるのです”とね」
ライズに戦術のイロハを叩き込んだ“爺や”の言葉を思い出しながら。
519歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/21(土) 11:10:23 ID:g2UtxtdY
―――ドルファン学園女子寮

「良かった。もう大丈夫みたいだね」
怪我をした足に包帯を巻き、ミルクをなめ始めた子狐に、少女は安堵した表情を見せる。
「あなた…名前はなんて言うの?」
もきゅ?
「ああ、ごめんごめん。喋れないよね。いいの。忘れて」
苦笑して否定してみせる。
「とりあえず名前が無いと不便だよね…え〜と」
しばし考える。何か良い名前を。
「…そうだ。“チェフェイ”でどうかな?」
突然、天啓のように頭に思い浮かんだ名前を口にする。
こーん!
それを聞いて子狐…チェフェイは嬉しそうに一声、鳴いた。
「良かった。気にいってくれたんだね」
それを聞き、少女は座りこみ、チェフェイに目線を合わせる。
「私は…ソフィア・ロベリンゲって言うの。これからよろしくね、チェフェイ」
こーん!
少女…ソフィアに応えるようにチェフェイが更に一声鳴く。
「…ふああ…なんだかちょっと眠くなってきちゃった…」
その声を聞いて急に眠気が襲ってくる。お風呂とかまだだけど、抗えそうもない。
「今日はもう寝るね。お休み、チェフェイ」
着替えもせずに倒れこむようにベッドへ入るソフィア。
いくばくもしないうちに寝息を立て始める。
「…」
そんな、ソフィアの様子をじっと見つめるチェフェイ。
「…フフフ」
先ほどとは打って変わった、人間の女性の声で笑い出す。
「いいわよ。ソフィア。これから、よろしくしてあげるわ。だってあなたは“契約者”だもの」
自らの口中に残ったソフィアの“血”を味わうように飲み下す。
「力を、与えてあげる。強い、強い力。誰にも負けない、好きなように振舞えるだけの力。だから…」
それは、純真無垢とはかけ離れた邪悪な笑み。それを浮かべながら。
「代わりにあなたの“心”をちょうだい。ソフィア・ロベリンゲ」
“妖獣チェフェイ”は少女の寝息を聞きながら、嗤った。
520歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/21(土) 11:11:14 ID:g2UtxtdY
今日はここまで。今回は…4,5回かな?

>>349 
まあ、色んな意味で有名ですので。学園世界でもフラグをガンガン立ててどんどんへし折っているのでしょうw

>>350
・普通人に近い感性
・隠れなきゃならない事情もち
・ついでにエヴァと絡めるような人

と言う条件で自然と決まりました。クロス先はメルブラってことになるのかな?

>>351
最初は4人でしたよ?ええ、“最初”は。

>>352
色々解放していたんでしょう。プラーナとか。

>>361
清水さんと言うと、西原さんと組んでやってた社会とか好きだったなあ

>>362
学園世界の共通語。それがヒイラギレンジ
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 11:18:59 ID:b3jx/fDo
投下乙です。
……ああ、そうだ。1つ聞いておきたいことがあります。

既に何話か連載されていますが、
こういう場合は共通のタイトルをつけたほうが便利かなと思います。
何かありませんか?
522魔神皇編@学園世界:2009/03/21(土) 11:22:43 ID:g2UtxtdY
とりあえず『学園世界の戦い(魔神皇編)』くらいでお願いします。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 12:42:37 ID:b3jx/fDo
>522
了解、修正しておきました
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 12:43:49 ID:XqPX/9T2
>>516-520
投下乙&GJ。

まさか貪欲なる魔界のBossとは……
ちなみに、まさか宝箱全部は開けない……よね?

【それはゲーム本編だ】
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 22:05:35 ID:+Wse1pF4
>>520
乙です。
最初は拾った少女がライズかと思った。
それはともかく、味方に潜伏した狐が、今後どうなっていくか楽しみです。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 22:22:16 ID:4HcAajq4
NWで狐か PC版で散々戦ったなぁ
527歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:37:41 ID:Z6vBCWY9
つい最近、廉価版が発売されていたそうです。それを嬉しく思いつつ、第2回。
…ジャンル上、18歳未満にはお勧めできない作品「ぱすてるチャイム continue」
今回の作品、4つ目のメインクロス先です。

それでは、9時45分からお送りいたします。
528歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:44:57 ID:Z6vBCWY9
例え今の異常事態においても、授業はちゃんと行う。
それは、学園世界を学園世界たらしめている基本ルールの1つである。
学園世界が成立して安定した今、世界中の学園では、今日も学生たちが勉学に励んでいる。
普通の授業、特殊な授業、両方が混在しつつも“学園の中”では今までと同じ日常が繰り返されているのだ。

―――光綾学園 実習用ダンジョン

毎週土曜日、冒険者の養成学校、『光綾学園冒険科』の3年生は、ダンジョン実習を受ける。
学園側で準備した『実習用ダンジョン』、モンスターやトラップ、鍵のかかった扉が配置された実戦さながらのダンジョンで、
卒業と将来の冒険に向けて、実習を行っている。

「はぁ…」
実習日、竜胆リナは1人とぼとぼとダンジョンの出口に向って歩いていた。
「うかつだったわ…まさか2つ目の部屋の入り口に仕掛けてあるなんて」
ちょっぴり自己嫌悪する。自らの不注意でトラップに引っ掛かり、仲間とはぐれた自分に対して。
「…新しい階層に入ってすぐだったのはある意味ラッキーだったけど」
特殊な魔法のかかったこのダンジョンでは、前の階層に戻る階段を登ればすぐに外に出られる。
幸い今まで通ってきた1本道ならば迷うことも無いし、モンスターに襲われる心配だって無い。
「ユウキもナツミももう出てるだろうし、アタシも早く戻らないと」
幸い“下校時刻”まではまだ1時間以上残っている。戻ればまだまだ、探索を進められるだろう。
「それにしても…静かね」
どこまでも通路と部屋が続くダンジョンは静寂に満ちていた。
他の学生もこのダンジョンで実習を受けているのは確かだが、どこを攻略してるかはまちまちであり、パーティーを組んでいない限りははちあわせることも無い。
「なんか…変な感じがする」
リナの背筋にぞくぞくと悪寒が走る。
「…気のせい気のせい。さっさとでよっと」
それをブンブンと振り払い、再び歩き出したときだった。
…ってうれしいはないちもんめ…まけーてくやしいはないちもんめ…
「…え?何か…聞こえる」
その“歌”を聞きつけて、リナが立ち止まる。
…あのこがほしい…あのこじゃわからん…このこがほしい…このこじゃわからん…
透き通るような声で響く、聞きなれない歌。
「これ…何の歌?」
そうだんしましょ。そうしましょ…
「だんだん…近づいてきてる!?」
未知の恐怖に足がすくむ。だんだんと近づいてくる、女の子の歌声。
「…きーまった…」
そして、その子供がリナの前に現れる。
「こ、子供?…いや、モンスター!?」
狐のお面をつけ、毬を持ち、狐の尻尾が生えた女の子にリナは半ば反射的に杖を向ける。
「り〜なちゃんがほしい…」
歌いながらゆっくりと手を伸ばしてくる女の子。それに対し…
「フレイムアロー!」
リナは半ば反射的に詠唱した火の基本魔法を女の子に叩き込む。
ボウッ!
火が少女の着物を少しだけ焦がす。だが、その程度では女の子は止まらない。
「くっ…だったら…熱く燃え猛る、炎のマナよ!」
一発反撃を受ける覚悟で詠唱の長い魔法を使用する。数時間前に習得したばかりの火属性最強の魔法、“爆炎”の魔法を。
「…だめだよ。プリンパ」
「きゃあ!?な、なにこれ!?」
だが、それは女の子がリナに向けてはなった魔法で止められてしまう。
頭の中をぐちゃぐちゃに掻きまわされたような感覚。考えがまとまらない。知っているはずの魔法が思い出せない。
「こ、こないで…」
混乱で杖を取り落とし後ずさるリナ。だが、そのリナの言葉に耳を貸さず、女の子は無情に距離を詰める。
そして…少女が氷のように冷たい手でリナに触れ。
「…も〜らったぁ…」
嬉しそうに呟いたのを最後に、リナの意識は暗転した。
529歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:48:18 ID:Z6vBCWY9
―――光綾学園 実習ダンジョン入口

…い、おい!リナ!
「…え?」
目を覚ましたリナが辺りをきょろきょろと見る。そして目の前には…
「…きゃあ〜!?」
見慣れた赤い髪の幼馴染に抱きかかえられているのを確認し、リナは半ば条件反射で、幼馴染をぶん殴った。
「へぶぅ!?」
しっかりと体重の乗ったパンチを受けて幼馴染…ユウキがのけぞる。
「…って、あ!ご、ごめん!」
その直後、状況を理解したリナがユウキに謝る。
「ってえ…いきなり殴るなよ…とにかく、大丈夫か?」
「うん。平気。怪我とかも無いみたいだし」
さっと身の回りを確認し、問題無いことを確認する。
「まったく、あの後、1時間も戻ってこないから、心配したぜ」
「1時間!?」
ユウキの言葉に、リナが驚いて声を張り上げる。
「ああそうだ。ずっと戻ってこないから、まさか1人で奥に行ったのかと心配になってナツミと一緒に探しに行ってさ。
 んで戻ってきたら入口でぐ〜すか寝てるんだもんなあ…まいったよ」
冗談めかしているが、明らかな安堵の表情を浮かべてユウキはリナに言う。
「ま、とにかく、無事ならいいや。帰ろうぜ」
「うん…そうだね。着替えてくる」
立ち上がり、服についた泥を落として、更衣室へ向かう途中、ふと考える。
「…じゃあ、あれは…夢だったのかな?」
「うん?なにがだ?」
「ううん。何でも無い」
誤魔化すように笑顔でユウキにそう伝え、リナは更衣室へ向かった。
…それは光綾学園では、比較的よくある光景。だが、既に“異変”は始まっていた。
その“異変”に彼女が気付くまでには…それから2日後、月曜日の朝まで待たねばならない。

―――ドルファン学園女子寮

きゅーん…きゅーん
「…ん、んん…あ!」
夕刻、ようやく目を覚ましたソフィアが跳ね起きる。
「が、学校!?」
ドルファン学園は土曜日も授業がある。当然今日も、普通に登校日だった。
「…もう完全にダメね…」
窓の外を見る限り、既に授業はとうの昔に終わっている。
明らかな“ずる休み”。いつものソフィアなら深く反省し、落ち込むところだ。だが。
「…ま、いっか」
はふぅと1つ息を吐き、ソフィアは伸びをして、今日の失敗を忘れることにする。
「…1日中寝てたから、疲れが全然ないなー」
身体が軽い。ついでに心も。明日も休みだと思うと、余計にだ。
「明日はバイト休んでどこかに遊びに行こうかな…」
色々やりたいことがある。学園世界ならではの楽しみ方。
「まあでもとりあえずは…」
きゅうっとお腹が鳴る。昨日の昼から何も食べていないから、お腹がペコペコだ。
それにちょっと照れて、ソフィアはチェフェイの方を見る。
「ご飯にしよっか?チェフェイ」
こーん!
ソフィアの提案に、チェフェイが元気に鳴き声を1つ挙げた。
530歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:52:13 ID:Z6vBCWY9
―――学園世界特別居住区

「…おいしかったね。チェフェイ」
居住区にいくつもある“食堂”の1つ。ペット持ち込みOKの食堂で食事を終え、チェフェイを抱いたソフィアが軽い足取りで歩く。
「これからどうしよっかなー…」
幸せそうにうずくまるチェフェイを撫でながら、ソフィアはこれからのことを考える。
まだ夕刻、暗くなりきっていない時間。このまま帰るには、早すぎる。
「そうだなあ…せっかくだし、どこか遊びに…」
景色の良いところにでも、そう考えていた時だった。
きゅい!?
腕の中のチェフェイが一声鳴いて、ソフィアの腕から飛び出す。そして路地裏へと姿を消す。
「あ!?チェフェイ!?」
すぐに追わないと。そう考えていたときだった。
「…あら?貴方は確か…ソフィア?偶然ね」
後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
「あ、えっとあなたは…ライズさん?」
「そうよ。今日は学校に来ていなかったから、調子でも悪いのかと思っていたわ」
ドルファン学園の制服を着た、お下げの黒髪と、いつもつけている手袋がトレードマークの少女。
ドルファン学園のクラスメイトに出会い、ソフィアはしまったあーと言う顔をする。
「いえ…実はただの寝坊なんですよ。つい、うっかり」
「珍しいわね。貴方は寝坊なんてしない、真面目な子だと思っていたのだけれど」
恥ずかしそうに言うソフィアの答えに、ライズは意外そうな顔をする。
「はい。私も初めてです。寝坊で学校をさぼるのは…ライズさんは今からご飯ですか?」
「いいえ。それはもう少し後にするわ」
ソフィアの問いにライズはかぶりを振り、ソフィアを見つめ、言う。
「今は、少し探し物をしているの」
「探し物ですか?」
「そう…小さな、子犬くらいの大きさの“狐”をね」
狐。その言葉が出てきた瞬間、ソフィアがビクリと震える。
「狐…ですか?なんでまた?」
「…ちょっとね。ソフィアは、知らないかしら?」
全てを見通しているかのような、冷たい瞳。その視線に貫かれ、ソフィアはすくむ。
「さあ?ちょっと…分りませんね」
ダメだ。本当のことを言ってはいけない。心の中の何かがソフィアにそう命じる。
「…そう。分かったわ。ありがとう」
感情のあまり感じられないお礼を言って、ライズはソフィアへの興味を失う。
「もう行くわ。それじゃあね」
そして、ライズは何処かへ去って行った。
「な、なんだかちょっと怖かった…」
緊張の糸が切れ、ソフィアは息を吐く。ソフィアはライズに何故かこの前、海で出会った“アフロの男”に似た空気を感じていた。
まるで彼女が“社会の裏側の人間”であるとでも言うような。
「そんなわけ、ないよね」
ブンブンと自分の考えを振り払い、ソフィアは歩き出す。
「そうだ。チェフェイを探さないと…」
そして思い出す。ライズと出会う直前、何処かへ行ってしまった、チェフェイのことを。
531歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:55:55 ID:Z6vBCWY9
―――学園世界特別居住区 路地裏

「あ、いたいた。チェフェーイ!」
人気のない路地裏で、チェフェイの姿を見つけ、ソフィアは駆け寄る。
「もう、一人でどこか行ったら危ないでしょ。また怪我でもしたら…」
子供をあやすようにチェフェイを叱る。やさしく撫でながら。
「さ、もう行こう。帰ったら、お風呂、一緒に入ろうね」
そして、再びチェフェイを抱き上げ、立ち上がった時だった。
「…え?」
唐突に、世界が変わる。まるでココが“現実”では無いかのような“違和感”
「え?え?」
その感覚のずれについていけず、辺りをキョロキョロと見渡す、ソフィアの眼にそれが写った。
オオオオォ…
怨嗟に満ちた声を上げ、地面から湧きだすように現れる、どろどろした何かの群れ。
チョンチョン!チョンチョン!
不快な鳴き声を上げて飛びまわる人の首そっくりな怪鳥の群れ。
クワセロ…クワセロ…
狂気に満ちた目で1人と1匹をじっと見つめる、子供くらいの大きさの子鬼の群れ。
「こ、これって…モンスター!?」
今や路地裏は、魔界と化していた。
「ど、どうしよう…逃げないと…」
今まで感じたことのなかった“死への恐怖”に怯えながら、ソフィアは必死に逃げ道を探す。
「だ、駄目…どうしよう?」
どの道を通るとしてもモンスターのそばを抜けなくてはならないことに気づいて絶望する。
「…チェフェイ!?」
思わずへたりこんだ、その時だった。
ガルルルル!
牙をむき出しにして、子鬼たちに飛びかかるチェフェイ。
グア!?
突然の攻撃に、驚きの声を上げる子鬼を見て、ソフィアは冷静さを取り戻し、立ち上がる。
「そうだ…チェフェイを…助けないと…」
混乱していた心が、静かになって行く。思考がクリアになり、生き残るための方策を冷静に計算し始める。
そして、ソフィアは気づいた。自らの“中”に宿った、生き残るための“手段”に。
「…熱く燃え猛る、炎のマナよ…」
朗々と、歌うように言葉を紡ぎ出す。
「…踊り狂いて、全てを焦がし…」
いつから使えるようになったのか、ソフィアにも分からない。だが、確信がある。これが…
「…そのうちに飲みこみて、全てを滅したまえ…」
今、ソフィアたちが生き残る手段だと。
「…フレイム…ブラスト!」
そして、叫ぶように“詠唱”を終えた瞬間。
辺りが“爆炎”で赤く染まり、ソフィアとチェフェイ以外のすべてを焼き滅ぼした。
532歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 09:57:19 ID:Z6vBCWY9

「す、すごい…」
焦げ付いた地面の“黒”とモンスターの残骸の“緑”にソフィアは茫然と呟いた。
今でも信じられない。これを自分がやったのだなんて。
「…あ、チェフェイ!?」
路地裏の更に奥、よく見ないと気づかないような一角にチェフェイが駆けこむ。
「もう、どこに行くの?」
すぐに追いつき、抱き上げてソフィアはそれに気づく。
「…ここかな…ってなんだこりゃ!?」
路地裏の惨状に声を上げる、紫色の制服を着た、東洋人の少年の存在に。
その声に、思わず息を殺し、ソフィアはチェフェイを抱いて隠れる。
「…かなり強力な火属性の魔法で焼かれたのか?」
黒く焦げた地面の土を触り、少年は呟く。
「とにかく、連絡を…あ、ちょうどよかった。ライズさん」
(また、誰か来た…え!?)
少年に次いで現れた人間にソフィアは驚きの声を上げそうになり、それを必死に飲みこむ。なぜならそれは…
「気配を感じて来てみたのだけれど…凄いわね。まるで今ここで爆弾でも爆発したみたい」
ソフィアのクラスメイトであるライズが東洋人の少年と話をしている。
「ええ。ここで戦闘があったみたいですね。ここ一帯、かなり強力な魔法で焼きつくされています。やったのは魔術師だと思うんですが…」
「その魔術師はもうここにはいない。そう言うことかしら?」
「そうです。この緑の液体があるってことはまた例の奴らなんだろうけど…とにかく、タバサかエヴァさんに見てもらいましょう。
 魔法ならば、あの2人の方が詳しいはずです」
「そうね」
そう言うと東洋人の少年が虚空から取り出した機械をあちこちに向けたあと、ライズを伴って足早に去っていく。
そして後には…
「ライズさん、あなたは一体…?」
クラスメイトの正体に疑問を覚えた、1人の少女だけが残された。



今日はここまで。あんましNWキャラが出てきてないってのは…今後治していかないとなあ…

>>523
修正乙です。

>>524
原作とは微妙に色々変っています。宝箱回収イベントにするわけにもいかないんで。
ちなみに1個“奪う”たびに強化されていきます。どっちも。

>>525
暗躍します。そりゃあもうw

>>526
PC版かあ…実はプレイしてないですよね。武蔵野分校と秋葉原分校が両方あったらちょっと混乱するかも知れませんけど。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 10:54:35 ID:pyFP5G7C
確認しておきたいのですが、

 第01話01 少女は静かに暮らしたい
 第01話02 少年は英雄を目指す
 第01話03 少女は静かに暮らさない
 第01話04 魔人は静かに暗躍する

 第02話01 歌い手は魔に魅入られる
 第02話02 歌い手は魔に魅入られる

っていう認識でいいんですよね?
同じ作者さんなのは間違いないと思うんだけど……数が多くて何が何だか。
534歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/22(日) 10:57:38 ID:Z6vBCWY9
>>533
そうです。今回から同じ話の間はタイトル統一していくことにしました。
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 10:58:15 ID:ftemuAPE
暮らしたいと暮らさないはもともと前後編みたいだぞ?
英雄を〜は外伝扱いだと思ってたけど。

作者さんが答えてくれないとわからんけどな。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 10:59:34 ID:ftemuAPE
……リロミスorz

うん、ごめん
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 11:01:13 ID:pyFP5G7C
>534
じゃあその認識で進めます。

>535
まあ、シーン1とシーン3が直接繋がってるなんてのは、よくあることだし…。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 11:10:09 ID:eI2RfCn5
オープニングの最初のシーンとミドルの最初のシーンが繋がってるなんて、よくあることじゃないか。

【なんか、めっちゃさわやかな笑顔】
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 11:17:22 ID:pyFP5G7C
    /`ー-‐'\
 .   / 〃~^^~゙ヽヽ
   | 〈(从ハ从)〉|     【保管とか色々調整】
   レ'<リ ゚ -゚ノリヽ!
      ⊂)水iつ  ハ__ハ   学園世界の戦い(魔神皇編)
      (_/v^v〉  (,,゚ -゚)
        `じフ 〜(__)

SS作者さんは、保管庫の自分の分もチェックしておいてください。
収録ミス、収録漏れ、作者間違いなど何度かやっちゃってますので(笑)
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:07:52 ID:/4mwiCII
>>539
いつもいつも乙ですー。
あ、じゃあミスとかそういうわけじゃないですが、ちょっとやっていただきたいことが。
それは投下後に書きますね、よろしくお願いします。

……さぁて。
このタイミングで投下開始とか、どんだけさるに対してツンデレなんだとか言われそうですが。
しかし、断言します。俺はあいつのことが大嫌いです。
こう、見た瞬間メンチ切ってそっぽ向きたくくらい。嫌いです。だから嫌いなんだって!!

とまぁそんな感じで10分から投下開始ー。
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:10:09 ID:zb3zQJZ3
いやよいやよも好きのうち、さるさんガンバれ
542執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:12:00 ID:/4mwiCII
 『学園世界』。
 小さくて大きな 結界(セカイ)の中に次々に『学校』が転移してくる「この場所」の通称である。
 最近は『学校転移(インターポート)』の頻度も減り、当初あったほどの混乱からは抜け出している者も多い。
 また、『学園世界』そのものの規範を決める統率役として、各校代表が集う『極上生徒会』が結成されたことにより、
様々な状況の整備が始まっていることも混乱を収める重要な要素だろう。

 『学園世界』に転移してきた学校は、『極上生徒会』の定めた『学校ID』を発行されており、各校にナンバリングがされている。
 『極上生徒会管理棟』と呼ばれる、基本的に極上生徒会の執務が行われている棟を中心とし、
半径1q圏内を『A』区、さらにその外から5q圏内を『B』区というようにアルファベットで中心からの距離を、数字で学校転移が何番目に起きたのかを表している。
 なお、この『学園世界』が出来てから完成した建物は、一つを除いてアルファベットと4ケタのナンバーで呼び表すことになっている。

 その、除かれた一つ―――『例外』が、『学園世界』内『A−0』というIDを持つ建物だ。
 具体的に言うのなら、この世界の中心とされた場所にある『極上生徒会管理棟』である。
 3棟ある管理棟の内、『A−0<n>』―――つまり、会議棟とも呼ばれる『北棟』の数ある執務室の一つ。
 その中には今、青年と少女が一人ずついた。

543執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:13:08 ID:/4mwiCII
***

「―――『カゲモリ』ってのが、いるらしいな」

 青年は、壁にもたれかかったままそう言った。
 その表情はいつもの通り無愛想そのもので―――しかし、少女は彼との付き合いの長さから、相手が少し不機嫌なのを察知した。
 この部屋を執務室として使う、この部屋の主の少女―――赤羽くれはは、自分用の机と自分用の椅子に座り、曖昧に笑った。

「はわっ? な、なにそれ。何のこと?」
「とぼけんな。
 お前が理事長代理やるって言ってる時から、なんか変だとは思ってた。
 あのじいさん本業は忍者だし、なんか探るために代役立てる必要があって―――また貧乏くじ引かされたんだろ、お前」

 うぅ、とくれはの口から悔しい気持ちとともにうめき声が漏れた。
 この青年は、基本的に(恋愛的な事柄はともかく)空気の読める人間で、身内を責めるような真似はほとんどしない。
 にも関わらず今回容赦してくれないのは、くれはが彼に大切なことを隠していたからであり、隠したまま、自分が大変なことを背負い込んでいたからである。

 彼は目の前で誰かが泣くのに憤る人間であり、自身のことで泣かれるのは困る人間であり、知人が知らないところで一人で困っているのを見過ごせない人間である。
 だからこそ、一人で抱え込もうとしていたくれはに対して少し不機嫌な態度をとっている。
 これだけ長い付き合いなのに、何も言ってくれなかった彼女に対してよりも、これまでそのことに気づけなかった自身に対して。

 赤羽くれははそんな彼が頼もしいながらも、少し悔しく思っていた。
 けれど、疑問点は解消しておくべきだ。どこかから情報が漏れているのなら、それは管理責任を問うべきである。

「どのくらいのこと、知ってる?」
「そういう連中がいて、じいさんが作った組織だってこと。
 で……あと、2年の斎堂だっけ? そいつがいるってことくらいか」
「そっか。けど、どうしたの?
 執行委員の仕事、すごく忙しいって聞いてるよ。他のことなんか調べてられないくらい忙しい、って」
「あのな……。
 ウチにアイツを外部協力者ってことで入れたのお前だろうが。一応絶滅社から出向で、斎堂とも同僚で何度か顔合わせてる。
 ついでに言うと、アイツが絶滅社から受けた任務ってのは『この異変の調査・解体』だ。
 妙な人の流れとか力の流れとかを探っていって、そっちを調査してたら結果そうなったってこった」

 青年の表情に呆れが混じる。
 くれはは頭を抱えたくなった。そういえば、彼の側に便利だろうと思ってつけた少女の存在を忘れていた。
 彼女自身の戦闘能力は、そう高いものではない。しかし、それが情報収集能力に限定すると話は別だ。
 彼女の情報収集力はこの『学園世界』内でも5指に入るほど。彼女自身がそう頭が良いように見えないため忘れがちではあるが、けして侮ることの出来ない類の相手だ。
 青年自身がいかに調査に向かない能力な上、そういった技能を持ち合わせていなくとも、これでは情報が筒抜けである。

 うぅ、ともう一度だけうめいてくれはは答える。

「―――うん、そうだね。いるよ」
「……最初っから素直に認めときゃ、そんなに追い詰められる必要ないだろうが」
「だって……実際、秘密なんだよ?
 あたしだって校長先生に色々と頼まれてるから多少知ってるだけで、正確な人数も誰がそうなのかもきちんとは把握してない。知ってる人は本当に少ないの。
 そうでなきゃ、『カゲモリ』の意味がないんだもん」

 なんだか納得がいかなそうに……というよりもスネたように見つめてくるくれはを見て、青年は一つ溜息。

「『カゲモリ』―――各学校への内定兼諜報活動と、『学園世界の敵』を排除するために生まれた特殊機関、か」

544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:15:11 ID:zb3zQJZ3
愛に障害は必要だとおもう支援
545執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:16:53 ID:/4mwiCII
 青年が同僚から聞いた話としてはこうだ。
 『カゲモリ』と呼ばれる特殊機関は、『生徒会執行委員』と同じくこの『学園世界』が形成されてからできた学校の垣根を越えた機関―――『越校機関』である。
 なお、同じく学校の垣根を越えた『越校機関』に、『極上生徒会』や『執行委員』が存在する。
 さておき。
 『カゲモリ』という機関は、各学園内では自身の力を存分に振るえず、正体を隠して暮らしていた者がその力をもってこの『世界』の平和を守ろうとしている集団である。
 その業務はというと、各学校内の不穏因子の内定や『掃除』、そしてこの世界を敵にまわしてでも己の望みを叶えようとする『学園世界の敵』を影から影へ排除すること。
 『学園世界』に生きる人々のいさかいを調停し、目に見える『敵』を掃討する『執行委員』を表とするなら、まさに裏の機関と言えるだろう。

 青年は頭をかきつつ、くれはに問う。

「んで? 俺にああいう仕事まわしたのは、『カゲモリ』の隠れ蓑が必要だったから校長に頼まれたってことか?」
「あ、それは違うよ?
 それはあたしの―――っていうか生徒会の意思。
 『カゲモリ』の人たちは事実隠れて動くのは得意だけど、全面的に争いが起きてる真っ只中に行って『止まれ』って言える人は立場とか能力上多くなくてさ。
 隠れ蓑とかそういうのじゃなくて、必要とされたからできたのが『執行委員』だよ」

 くれはは笑顔で答えてやる。
 彼女が語ったのは事実だ。実際、彼が『執行委員』に任命されてから、学校間のいさかいで怪我をする人間が大幅に減った。
 それは意味のないことでは断じてないのだから、妙にへそを曲げられても困るのだ。
 彼自身も子どもじみた問いであったことを自覚したのか、もう一度溜息。

「―――事情は把握した。とりあえず、ノーチェの奴には他の連中に話さないようには言ってある。
 もっとも、あいつらも別に気にはしないと思うけどな。何しろ物好きばっかりだ」
「そうしてくれたなら嬉しいな。『執行委員』に今いなくなられると困っちゃうもん」
「それで。もう一つ確認させてもらうが―――」

 そう言って、特に気負いを見せず青年は告げる。
 いつものように、自然体のまま。


「その、『学園の敵』とやらが出た時に、俺が近くにいた場合は勝手に対処するぞ?」


 くれはは目を瞬かせた。
 それは、青年から出るとは思っていなかった一言だ。
 そもそも彼はいつだって事後承諾だ。ただでさえ年がら年中トラブルにつきまとわれているような人間である。
 そんな彼が、自分以外の誰かが対処する可能性の高い余計な厄介事を。しかも事後承諾ではなく事前に、厄介事が起これば首を突っ込むと宣言した。
 長い付き合いのくれはが言葉を失うほどの行為である。

 絶句した彼女を見て、青年がバツが悪そうに問う。

「……なんだよ、どうかしたか?」
「はわ〜……だって、すごい珍しいじゃない。
 あんたが先にこれしますって言うのって。大丈夫? 仕事のしすぎで知恵熱でも出てるんじゃない?」

 茶化すなよ、と青年がツッコミを入れた。
 彼はいつもの半眼に戻ると、告げる。

「別に。後で余計なことしたって言われるのは面倒だしな。だったら先に言っといた方が気が楽だろ。
 今宣言してんのは俺個人であって『執行委員』全員じゃねぇから、あいつらまで範囲に入れるんじゃねぇぞ」

 そう言って、彼は踵を返す。扉に手をかけながら、それに―――と言葉を続けた。

「一応卒業した身分としては、学生には学生時代を思う存分謳歌してもらいたいじゃねぇか。
 仕事として受けてる奴がちょっと頑張ればできることなら、なんとかしてやりたいもんだろ?」

 表情は見えない。
 その言葉は相変わらずぶっきらぼうで。
 けれど、それが彼なりの情の表しかたであることは、聞けばわかるような声音だった。
546執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:19:08 ID:/4mwiCII
 一人になった部屋の中、赤羽くれはは強く拳を握りしめる。
 青年の言葉がどういう意味か、彼女にはわかっている。
 彼が背負う揉め事の調停を含む出動は一日少なくとも5件、多い時は10件を超える。この一月で巻き込まれて『学園の敵』と戦ったことも1度や2度の話ではない。
 当然、毎回無傷で済むはずもない。それだけの殺人的スケジュールの中で、少しのミスから大きなケガをしたこともあると聞いている。
 いくらありとあらゆる学園の人間が存在し、医療設備も異様なまでに整っていてすぐに治療できるからとはいえ、ケガをして痛くないはずも、やはりない。

 それでもなお。
 青年はさらに荷物を背負いこもうとする。誰かが笑えるのなら、と無理を通そうとする。
 目の前の全てを助けられないことなど当の昔に知っているはずの彼は、それでもその 無理(ねがい)のために体を張り続ける。

 それを、文面でしか追うことの許されない自分の立場が、とてつもなく歯がゆく感じたことも少なくはない。
 そんな憤りを、一つの溜息に込めて彼女は吐き出す。
 天井を見上げて、誰にともなく彼女は呟いた。

「アンゼロットって、いつもこんな気持ちでアイツを見送ってたのかなぁ……」

 世界の守護者も楽じゃないね。と呟く声が、部屋に響いた。

547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:19:13 ID:zb3zQJZ3
支援
548執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:21:14 ID:/4mwiCII
 ***

 同じく<A−0>区画東棟5階、執行部室。
 そこには今、3人の学生と1人の事務員がいた。

「はーい。これ、ウチのお兄ちゃんから。いつもわたしがお世話になってるから、って張り切って作ってくれたんだよー」

 大きな3段重を取り出したのは、穂群原小等部のイリヤスフィール=フォン=アインツベルン。
 彼女の言う「お兄ちゃん」は、「衛宮 士郎」。
 穂群原学園高等部に通っており、家事全般を完璧にこなし、壊れたものの修理のために穂群原内を歩き回る少年で、ついたあだ名は「ブラウニー」。
 最近では、穂群原以外の学校からもその能力を重宝されており、「座敷わらし」に格上げされかけているとかいないとか。
 その物品修理の能力だけではなく、「調理実習に忍び込みたい学校No.1(麻帆学新聞部調べ)」に輝いた強者ぞろいの穂群原の中で、
「和の蒔寺」・「中華の遠坂」・「洋の間桐(妹)」・「家庭料理の三枝」と並び、「折衷の衛宮」と黒一点に輝く強者の一人である。

 そんな名前が『学園世界』中に名の響く人物直々の差し入れなのだから、その場のテンションが盛り上がらないわけがない。

「おおぉ……、この卵焼きのコゲ一つない絶妙な火加減、冷めてもおいしく柔らかなから揚げ、よく味の染みてる割に素材の食感の損なわれていない筑前煮。
 さすがは『穂群原五天星』の一人―――すっげーっ!!」

 いきなり料理解説をしながらから揚げをまぐまぐと食べる、チョコレート色の髪に深い緑の瞳の少年の名はアルヴィン・ケンドール。
 エルクレスト・カレッジに通うオルランド寮住まいの少年で、噂と情報収集が趣味な彼は、しかし別段執行委員ではなかったりする。
 そんな彼がなぜここにいるかと言えば、ちょっとした好奇心と上級生に与えられた任務のせいである。

 エルクレスト・カレッジは、比較的最近『学校転移』が起きたこともあり未だこの世界の勝手がわからない。
 『極上生徒会』の構成員には代表生徒が選ばれることとなり、オルランド・シェフィールドの2寮からそれぞれのプリフェクトが仲良く参加することになった。
 ……仲良く、である。
 たとえ出会った瞬間幽波紋(龍と虎)背負って舌戦繰り広げる間柄でも仲良く、である。たぶん。おそらく。メイビー。

 しかし、未知のことに関して情報は多い方がいい。
 そう考えたオルランド寮のプリフェクトは、顔見知りの好奇心の強いこの少年に校外の情報を集める役割を頼んだのである。
 ただでさえ情報収集が趣味であるアルヴィンはその頼みを快諾。
 授業の休憩時間になってはこっそりと抜け出し、色々な所を見ていったところ―――
最終的にこの学園の事情を知るための場所として、この『学園世界』の最新の地図が張り出されている執行部室によく顔を出すようになったのだった。

 もちろん、執行部室に執行委員以外の人間を長い時間置いておくのは問題がある。
 各学園内にも執行委員に対してよく思っていない人間は確かに存在している。
 各生徒会の中には、露骨に彼らに敵愾心を持っていたり、隙あらば利用しようと考えている者すらいる。
 その中で一部の学校に肩入れするようにも取られかねない行為をするのは、つけこまれる隙になりかねない。
 よって、アルヴィン自身にもエルクレスト・カレッジにも忠告を数多く行い、水面下の協議を行った結果、一つの結果を弾き出した。

 『アルヴィン・ケンドールを生徒会直属越校機関・報道組織(仮)の代表とする。
  また、報道組織(仮)の施設建設の間、その身柄を執行委員預かりとし、事務研修期間とする』

 学校間の情報伝達の役割を果たす機関の必要性はこれまでに『極上生徒会』でも何度も取り上げられてきた問題であり、
そこにちょっかいをかけてきた行動力のあるアルヴィンは、格好の存在だったわけである。
 そんなわけで、B区画のどう考えても学校が転移するには無理がある隙間土地に「報道組織(仮)」の専用施設を立てる間、アルヴィンは執行部仮所属となったのだった。

 ……とゆーか、なんで西洋ファンタジー学園のエルクレスト・カレッジ所属の人間が筑前煮なんて食べ物を知っているんだ。
 意外とすごいぞアルヴィン。

 閑話休題。
 その隣の椅子でタコさんウィンナーを口に放り込んでいるのは、緑色のつんつん頭の少年だ。
 彼は重箱のタコさんウィンナーを飲み下すと、ぽつりと呟く。

549執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:22:41 ID:/4mwiCII
「うん、うまい。……けど、俺は森の料理のが好きだな」

 少年の名は植木 耕介(うえき こうすけ)。火野国中学に通う高校3年生である。
 火野国中学が転移してきた当初、近くにいたトリステイン魔術学院の一部生徒といざこざを起こし、
(まぁ相手が確かに悪いわけであるが)トライアングル相手にモップ一つでケンカを売り、果ては調停執行が必要と判断され、柊を引きずり出した少年である。
 そんな経緯があったにも関わらず今彼がここにいるのは、
その調停執行の翌日、彼が名前を出した森こと『森 あい』に引きずられて謝りに来た際、戦闘記録を見た初春と宗介にスカウトを受けたのが原因だ。

 ちなみに。
 彼の言う『森の料理』というのは、普通の材料を使って作ってもなぜか見た目は「旧支配者の煮込み」のようになる凄まじい見た目であるが、
味は『割とうまい』の部類に入るという、なんとも見た目とのギャップの激しい料理のことである。
 味の部分に関しては、某破滅的な料理の腕前の少女たちに見習っていただきたいものである。

「耕介は相変わらずでありますなぁ。
 あーっ! アルヴィン、それわたくしのっ! わたくしの小龍包でありますからっ!?」

 自分用の小皿に取り分けた小龍包(しょうろんぽう)を横からかっさらわれて涙目なのはノーチェ。
 後衛のスペルキャスター系相手にシーフが本気出している。超大人気ない。
 そんな彼女に、ただ1人立っている少女が声をかける。

「ノーチェさん。取り合いをしなければならないほど数が少ないわけではありませんので、落ち着いてください」

 エメラルド色の長い髪、機械っぽい飾り耳、「超包子」のロゴの入ったユニフォームを着た背の高い少女。
 彼女の名は絡操 茶々丸(からくり ちゃちゃまる)。麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部所属の3年生である。
 なお、別に彼女も執行委員所属ではない。
 茶々丸は麻帆良学園によって開発されたロボットであり、実用試験兼実地によるデータ採取のためにさまざまな経験を積んでいる最中なのである。
 超包子という移動屋台のウェイトレス、というのもその一つだ。
 彼女は、自身の開発者の1人である葉加瀬が先日執行委員に迷惑をかけたということで、葉加瀬に頼まれそのお詫びの品として超包子の出前を運んできたのだった。

 実は、こういった差し入れは意外と結構ある。
 執行委員には敵が多い、と前述したが、多くの一般レベルの生徒にはそれほど敬遠されてはいないのだ。
 いわれなき災害に襲われた時、命を助けてもらった者がいる。
 仲裁できない争いに巻き込まれそうになった時、それから守ってもらった者がいる。
 彼ら自身に学園そのものを動かすような力はないが、それでもその行為によって確かに助けられた人間はいて、それを感謝する者もいるのである。

 ―――基本的に、差出人不明のものは何が起きるかわからないため一回走査されてはいるが。

 個人宛の小包が届くこともある。
 この間ベホイミ宛に届けられた鈴原 未来(すずはら みらい)からの小包の中には、やけにきちんとした形のドクロ型型抜きクッキーが入っていた。
 ……他の執行委員が未来の行く末を深く心配したのは言うまでもない。
 彼女がこのクッキーの作り方を教わったのは、実家が甘味処をやっているという某聖祥の白い魔法少女だったりするのは、やはり心配する所かもしれないが。

 閑話休題。
 執行委員2人、外部の人間が2人と珍しいことになっている執行部室。

 そんな所でがらがらー、と戸が開かれる。

「ふぇんひ、ほうほうひはほはっはんへんぐひあふは?」
「……とりあえず口ん中のもの飲んでからしゃべれ、お前は」

 口いっぱいに(無銭で食べられる)食料を頬張って喋りかけるノーチェに、脱力しながら半眼でツッコミを入れるのはこの部屋のヌシであるところの柊だ。
 彼は用事がある、と言ってこの部屋にノーチェを1人残して出かけていたのだった。
 柊が仕事と食事以外の時間この部屋にいないのはごく珍しいことであるため、彼が出かけた後やってきた植木・アルヴィン・茶々丸は驚いたものだった。

550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:23:16 ID:zb3zQJZ3
このままNWキャラだけで行くのかと一瞬思ったけどクロスキャラ出てきて安心した
551執行委員の楽観:2009/03/22(日) 14:25:16 ID:/4mwiCII
 んぐんぐと一生懸命飲み込もうとしているノーチェの言いたかったことを、植木が代弁する。

「用事は終わったのか?」
「あぁ、もともとそう大した用でもなかったしな。面倒事はさっさと済ませてきた。
 っていうか久しぶりだな、茶々丸。元気か?」
「変わりありません、お気遣いありがとうございます。柊さんの方は?」
「こっちも相変わらずだ。……物騒さも相変わらずなんだけどな」

 言いながら、彼は席について置いてあったおしぼりで手を拭くとひょいひょい、と春巻きと焼売と卵焼きとポテトサラダを皿に取って手を合わせる。
 柊自身、一度超包子に訪れたことがあり、その際に店長の五月と茶々丸と話をしたことがあったのだ。
 一口かじりながら、彼はたずねる。

「で。こっちの中華っぽいのは茶々丸のトコの差し入れってことでいいんだよな?」
「はい。正確にはハカセがこの間のミサイル誤射の件のお詫びとして、とのことですが」

 あー、とようやく思い当たる柊に、相変わらずですね、と茶々丸。
 相変わらずトラブルに首を突っ込んでいることに対して指摘されるも、柊としてはそれがこの町での日常だ。
 よほど強烈な思い出でもない限りは、事件の一つ一つに関して覚えているはずもないのだった。
 バツが悪そうに乱暴に口の中にあった焼売を飲み下すと、行儀悪く箸の先で重箱を指す。

「んで? こっちはどこの差し入れなんだ?」
「あ、それはウチのお兄ちゃんから。いつもお世話になってますって」
「衛宮か、そりゃ楽しみだ。……っていうか、イリヤは料理しないのか?」

 その一言で「う」と動きを止めるイリヤ。
 顔を伏せてしまったイリヤを見て、ぴょい、と彼女の懐から飛び出すのはカレイドステッキ・ルビーの省エネモード。

『対朴念仁用必殺奥義っ、ルビーサミングっ!!』
「どうあっ!?」

 ※サミング……目潰しのこと。文字通りの方。当然反則技。
 ルビーの飛び出しいきなり必殺奥義を何とか首をそらして回避する柊。
 回避されてもルビーは動じない。そのまま柊に片翼をびしぃっ!と指して告げる。

『さすがは前衛型、避けられましたか。だがしかーし! 全国10億人の恋する乙女の敵っ、朴念仁撲滅のためならルビーちゃんは負けません!
 いいですかそこの多次元多世界型朴念仁、耳をかっぽじってよーくお聞きなさいっ!
 あなたに、思い人の方が料理が上手だから料理の勉強することをためらってしまうオンナノコの気持ちの何がわかるって言うんですかっ!?』
「る、ルビー。追い討ち、それ追い討ちだから」

 ルビーの言葉にさらにダメージを受けるイリヤ。
 柊としてもあまりに(彼視点で)理不尽な急所攻撃にツッコミをいれようとしたが、ルビーのあまりの剣幕にそのタイミングを逸した。
 さすがは策士のルビーちゃんである。

『女の子の甘くてすっぱくてもはやベリーベリーベリーすら生ぬるい葛藤をなんだと思ってやがるんですかっ、
 このデリカシーをおかーさんのお腹の中に置き忘れてきたとしか思えない先天性デリカシー欠如症候群のハタ折り式おバカさん―――っ!』
「いや、なんつーか、その。
 ……俺、そこまで言われるようなことしたか?」
「さあ?」
『えーいここにもいやがりましたか先天性以下略2号が―――っ!?』

 ルビーに気圧された柊が助けを求めるように植木にたずね、タコさんウィンナーを頬張っていた彼は首を傾げるだけに終わった。
 もちろんキレっぷりが二乗されるルビーちゃん。
 なんか朴念仁相手に嫌な思い出でもあるのだろうかといわんばかりの喝っぷりだ。

552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:27:19 ID:pyFP5G7C
支援ビーム
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:27:20 ID:zb3zQJZ3
なんか平和だ、惨劇とが起きそうなほど平和だ
554執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:28:06 ID:/4mwiCII
 いいですもうそこに正座なさいこの先天性おバカ共、とマジ説教を開始しかねないルビーの声を止めたのは、蚊帳の外に置かれていた茶々丸の声だった。

「思うのですが、イリヤさん」
「ん? なに茶々丸さん。今のわたしはちょっとハートがブレイクしてるのー。なぐさめなんかいらないよー」

 イリヤの周囲は光の恵みが減っているかのような光景が広がっていて、ちょっと涙が止まらなくなりそうだ。
 ともあれ、そんなイリヤにあくまで無表情のままに茶々丸が提言する。

「料理の仕方がわからず、またお兄さんの方が料理が上手だから努力し辛いと仰っておられましたね」
「うんそーそー。どうせね、ママもわたしも不器用なのよー。
 細かいことは考えずに大容量でゴリ押し上等なのようふふふふ」
「要は、そのお兄さんに料理を教えてもらえばいいのでは?」

 硬直。
 「わたしは今までそのことを考えたことがありません(英語の例文風味)」並の衝撃がイリヤとルビーを襲う。
 さらにそこにアルヴィンが追い討ちをかけた。

「ナイスアイデアっ! 料理も上手くなれるしその時間中ずっとお兄さんと一緒にいられるって特典付きだなっ!」

 おぉ、と小さな呼気が漏れると同時、彼女は同じクラスの男子にすら負けたことのない自慢の足で二人に近づき、その両手を握る。
 あまりの勢いに、茶々丸ですらが少し雰囲気に呑まれる。

「―――二人とも、ありがとう。わたし、今日家に帰ったらすぐにお願いしてみる。
 誰にも邪魔はさせない。それがたとえセラでもリズお姉ちゃんでも向かいのあかいメイドでもことあるごとにやってくる虎でも通い妻気取りの黒いのであってもね……」
『あぁン☆ イリヤさんがヤる気全開フル充電っ!
 今ならありとあらゆる壁をぶち抜いてこの世界取りにいけそーな気がしますっ!!』

 とても『ヤル』が物騒な響きに聞こえて仕方がありません。本当にありがとうございました。


 閑話休題。
 イリヤとルビーがやけに物騒な気を全身から発しているのを横目に、彼らは席に戻って食事を再開する。
 茶々丸が新たに岡持ちから取り出したあんかけ焼きそばとお重に入っていたいなり寿司を取りながら、柊はアルヴィンに聞いた。

「ところでお前の方はどうなんだよ。
 たしか、生徒会直属の報道部の始動まであと一週間かそこらなんだろ?」
「あぁ。今はまだ一緒にやってくれる人を色んな学園まわって探してるんだけど、ちょっと広すぎてな。
 あんた達はなんかそういう人の話とか聞かないか?
 行動力があって、好奇心満載で、ちょっと猫みたいに殺されかねないけど機転が利いて危機は脱するタイプ。そうでなきゃ頭がよくて人をまとめるのに長けた人間」

 と、肉まんの欠片を口に放り込みながらアルヴィン。
 前者は記者として必要な能力で、後者はそれを記事にしたり編集したりするのに必要な能力である。
 自分の性格指向に合わせてどんな人間が必要なのか考えた上での発言であった。アルヴィン、意外にプロデュース仕事が得意なのかもしれない。

 その彼の言葉に最初に答えたのは、茶々丸だった。

「麻帆良学園では、すでに報道の仕事にたずさわっている朝倉さんか、自分で自分をプロデュースするだけの処理力を持つ千雨さんをオススメします。
 本人が了承してくれるかは自力での交渉次第と思われますが」
「ほうアサクラとチサメ、と。茶々丸さんからの情報なら信頼性ばっちりだな。後で麻帆良学園都市に行かせてもらうよ」

 少しだけ目を細くし、メモをまじめに取るアルヴィン。
 その真面目さを全面に押し出せばもっと女性にモテる可能性もあるだろうに、まったくもってもったいない少年だ。
 彼は、茶々丸の隣へと視線を移す。

「それで、植木の方は?」
「好奇心なら森が一番だな、人をまとめられるかはよくわからん」
「また森かよ、お前ら本当にアツいなぁ」
「? アツいって、なにが?」

 これで彼氏彼女の関係でないというのは本当にサギだと思う。
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:29:46 ID:zb3zQJZ3
しえん
556執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:30:27 ID:/4mwiCII
 どこぞの幼馴染どもよりもよほど熱々な本編であるのだが、しかし彼らの関係が言及されているのはおまけページのみだという。
 アレか。やはり植木が天然なのが全ての障害で元凶なのか。

 閑話休題。
 と、そこへトランス状態から戻ってきたイリヤが話に加わる。

「ねぇねぇ、何を話してるの?」
「お帰りイリヤちゃん。いや報道部作るのに人材が必要なんだけど、なんかオススメしてくれる人いない?」
「オススメ、かぁ……うーん、お兄ちゃんたちの高等部にいる、人間観察大好きメガネっ娘こと穂群の呉学人・氷室 鐘(ひむろ かね)さんとか?
 わたしも会ったことはないんだけど、なんとか探偵とかいってちょっと有名だった時期があるしね」

 あごに可愛らしく指をあてて考えるイリヤ。
 正直な話、小学生にそんなことを聞くアルヴィンもアルヴィンであるのだが、それだけ追い詰められている証拠だと受け取ってほしい。
 最後に彼はノーチェと柊を見る。

「で、お前らは?」
「俺ら一くくりかよ」
「なんだよ、同じ世界から来てるんだろ? そっちから来てるのは輝明学園だけなんだから、一緒に聞いても問題ないじゃないか」

 そもそも柊はまともに学校に行っていたとは言いがたく、ノーチェに至っては輝明学園に行ったことすらなかったりするのだが。
 ともかく。
 求められれば断れないのがノーチェという少女である。
 知っている輝明学園生は数少ないが、なんとか頭の中で適正のありそうな知人を探し―――ぽん、と手を叩く。

「思いついた、でありますっ!」
「おぉ、聞いてみるもんだ。で、なんていう奴なんだ?」
「斎ど―――」
「よーしノーチェ、ちょっとこっち来ような?」

 彼女がみなまで言う前にがし、と首根っこを引っつかんでぷらぷらさせながら回れ右する柊。
 アルヴィンの目が点になっている間に、深く溜息をつきながら柊はノーチェに話しかける。

「……まぁ、ある程度予想ついたっちゃついたんだが。
 お前が輝明学園の人間で知ってる奴とか、絶滅社関連以外じゃ考えらんねーもんな」
「そりゃそうでありますよ、わたくしに何を望んでるのでありますか」
「知らない時は知らないって言うのも間違ったことじゃねぇっての。お前、なんて言おうとした?」
「へ?
 最近ユイは荒砥山に行っててここにいないでありますし、
 秋葉原校内限定なら純粋に破壊工作しかできない灯よりは、忍者で隠密行動が得意な一狼の方が向いてるかと―――」
「あいつは今じいさんに連れまわされてて大変なんだろうが。お前が言ったんだろ。
 ついでに、隠密行動をやってる奴が表舞台に立たされたら本業がやり辛くて仕方ないっつーの」

 柊の至極尤もな説明もなんのその。
 ノーチェはいっそ(ない)胸を張って答える。

「大丈夫でありますよ。昼は下着メーカーの冴えない社員、夜はヤクザの三代目組長とゆー職業の方も世の中には……」
「なれってか。静かなるドンになれってか」
「……無理でありますな、一狼では」
「わかってんなら無茶なことをさせようとすんじゃねえよ、ただでさえ学業とウィザード両立させてんだぞ」
「蓮司とは一味も二味も違うでありますな」
「このまま5階の窓からアスファルトに向けて文字通りノーロープバンジーさせてやろうか?」
「ぼーりょくはんたーい、でありますっ!」

 月衣を持っている以上そんな『事故』は特にダメージにならない上、ノーチェは吸血鬼であって肉体再生スキルには事欠かないためほとんど意味がない行為なわけだが。
 ともあれ、柊はその場でノーチェを掴んでいる手を離す。べちん、と真正面から落下するノーチェを尻目に柊は正面のアルヴィンを向き直る。

557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:33:01 ID:zb3zQJZ3
しえん
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:34:39 ID:ftemuAPE
さる。俺はな……やっぱりお前なんか大嫌いだこの野郎―――っ!?
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:36:56 ID:C0TN2fC7
紫煙
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:40:28 ID:zb3zQJZ3
10分間書き込みが無ければさるさんはID:/4mwiCIIの嫁
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:41:29 ID:ftemuAPE
阻止。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:44:05 ID:zb3zQJZ3
>>561
いいよ、ならもう、さるさんはお前の嫁ってことでいいよ
563執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:49:16 ID:/4mwiCII
「悪ぃ、このバカの言ったことは気にしないでやってくれ。
 で。俺からこれといって勧められるような奴は特にいない。あえて1人挙げろって言われたらマユリくらいだが、正直あいつは今どこにいるのかわからん」
「輝明学園内にいるのか、ダンガルドの命令で違うところにいるのか。それさえもよくわからないでありますからなぁ。
 一時期赤羽理事長代理の直属にいたこともあったでありますが、『学園世界おむすびの旅』に出てからは現在地もハッキリしないのでありますよ」

 なにをしてる高レベル魔術師。
 アルヴィンはうんうん、と頷きながらその言葉に答えた。

「……なんか、すごい人なんだってことだけはわかった気がする。マユリ、な。探せたら探してみるよ、ありがとう」
「行動力もある、好奇心もある、協調性もある、常識もあるという珍しい人間でありますからな。
 味方に出来れば心強いと思うでありますよ」
「うん、うん……っと。結構いるもんだな。他にも誰かいたら教えてくれないか? 片っ端から声かけてくつもりでいるからさ」

 そう言ったアルヴィンの言葉に、口々に語りだす執行委員たち。
 茶々丸はともかく、彼らは学園内を飛び回っている生活を送っているために、色々な学校の学生とも交流がある。
 ぐだぐだと益体もない案を挙げるヒマな執行委員+1。


564執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:50:19 ID:/4mwiCII
 その時、ぴんぽーん、とインターホンが来客を知らせる。
 先ほどまでおでこと床が刺激的なランデブーを繰り広げていたノーチェが、ふらふらしつつ教室の外へと向かう。

 そんな彼女を放りっぱなしで話はヒートアップ。
 果ては報道する時にアイドルみたいなのいたらうまくいくのでは、つまり磯野第三中の江戸前 留奈か瀬戸 燦入れとくとかどうよ、とか。
 いやいや機材扱える人が必要だし、御川高校の『こわしや』に協力頼んだ方がよくない?
 などと喋っていた時、ノーチェがまだふらふらしながら、学生カバンほどのサイズの小包を持って戻ってくる。とゆーか、まだ目がぐるぐるしていたりする。

 植木がたずねた。

「おかえりノーチェ。なんだったんだ?」
「うぅ……黒いローブを目深にかぶった中肉中背のボイスチェンジャーでしゃべる人が、これを執行部室に届けてくれって言ってたのでありますよー」

 そんなあからさまな『怪しい人物』から小包なんぞもらうなという。
 しかし、ここで会話をしているのは『学園世界天然バカ決定戦』でも行おうものなら見事にトップ10入りする内の二人である。
 特に何かを疑うこともなく、へー差し入れか。と答えて植木が小包の紙をはがす。
 そこには。


 なんだか簡素にくみ上げられたプラスチックの箱。
 隙間からは色とりどりのコードが見える。
 そして極めつけに、デジタルの時計がついており、当然ながら一秒経過するごとに一秒時間が減っている。


 執行部室の空気が凍りついた。
 そしてその時計のカウントが2分を割ると同時に、その空気を壊したのはノーチェだった。

「―――なんとゆーか、こう。まるで……時限爆弾みたいでありますな?」
「そのものだよっ!?」
「え、そうなのか?」
「植木さんわかってなかったのっ!?」
「ジゲンバクダンって、なんだ?」
「ある一定の時間に達すると炸裂する爆発物のことです」

 一応上からノーチェ・柊・植木・イリヤ・アルヴィン・茶々丸の順である。
 状況をきちんと把握した5秒後、ノーチェが慌てだす。

「ど、どどどどうしたらいいでありますかっ!?
 しまった、やっぱりさっきの人は怪しい人だったでありますかっ!?」
「今さらそこに気づくのっ!? ど、どうしようかルビーっ!?」

 ちなみにイリヤも充分テンパっている。
 そんな彼女にルビーチョップをくらわせながら、ルビーがくるりと回って答える。

『イヤですねぇ、落ち着いてくださいよイリヤさん。
 転身(プリズムトランス)してしまえば、この量のC4如きの爆発でイリヤさんに傷一つつくわけないじゃないですか』
「あ、そっか。ノーチェと柊さんは月衣持ちのウィザードだから、やっぱり死んじゃうようなことはないよね」

 自分が死ぬようなことはないと知って、イリヤは一瞬にして落ち着きを取り戻す。
 ゲンキンさんである。
 さらに茶々丸が補足する。

「私には飛行仕様がありますので、植木さんとアルヴィンさんを抱えて逃げるくらいのことでしたら特に問題ありませんが」


 再びの静まり返る部屋。


565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:50:27 ID:zb3zQJZ3
支援
566執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:52:36 ID:/4mwiCII
「あれ。じゃあひょっとして全然慌てる必要ない、とか?」
「なんだ、そうなのか」
『まったく、人騒がせですねー』

 普通は人騒がせどころの話ではない。つーかテロだぞもうちょい慌てろよ。

 閑話休題。
 何気なく弛緩した空気が漂いかけたそこに、茶々丸が冷静に告げた。

「しかし、この部屋に置いてある機材と資料は守れないわけで跡形もなく吹き飛びますが」


 三度止まる空気。


 機材と資料が跡形もない→復旧作業→デスクワーク処理通常の数倍→初春マジ泣きの図式が全員の頭をいとも簡単に駆け巡る。
 いや別に初春が全部やるわけではないが、少なくともここの機材が吹っ飛んだ場合初春が本気で落ち込むことは間違いない。

 全員が再び爆弾の時計に目をやると、ちょうど残り1分をさしている。
 イリヤが慌てながら言った。

「そ、そーだっ! 確かベホイミさんとソースケさんは爆弾解体できたはずっ!」
『んー、それはちょっと遅かったですねー。
 お二人ともさすがに最寄の転送陣使ってこっちに来てもらって爆弾を解析した後バラすっていうのを1分でやるのは無理でしょう。
 最初にいてくれれば問題なかったんですが』

 ルビーに言われてがくりと肩を落とすイリヤ。
 茶々丸が無表情なままに告げる。

「申し訳ありません。
 私も解析、分解をするには専門的知識がインプットされていないため、最適解の模索の時間が5分ほど必要になります」
「そ、そっか。じゃあしょうがないねー……。
 ―――あ、そうだノーチェっ! ノーチェの水晶玉でどうすればいいかを調べてもらえばっ!」

 茶々丸の発言で一度は落ち込んだイリヤであったものの、彼女は最後の砦を思い出す。
 情報収集・捜索・調査にかけては、この『学園世界』でも屈指の魔法使い、見た目はただのおバカ吸血鬼がここにいることを。
 その見た目おバカはおぉ、と手を打つと破顔した。

「うっかり忘れてたでありますよ。
 よーし、そうと決まれば簡単であります。ウチの伝家の宝刀を見せてあげるで―――あげるでー……あれ?」

 一見何もない虚空―――月衣に手を突っ込んで。逆の手を突っ込んで。果ては自分の上半身をそのまま月衣に突っ込ませる。
 よくわからないゴスロリ物体が下半身だけ出してうぞうぞもぞもぞと動くという光景はもはやシュール通りこして滑稽ですらある。
 3秒ほどそのシュールな光景が広がっていたものの、そのゴスロリはすぽんと頭を出した。
 五体満足になったノーチェは困ったように笑った。

「あ、あははー……申し訳ないでありますー、水晶玉ちょっと家に置いてきたみたいでありますよー」
「そ、そんなっ!?
 水晶玉のないノーチェなんて、ただのよく食べるおバカじゃないっ!?」
『そうですよ! ちょっと死ににくいだけのおバカじゃないですかっ!?』
「わたくしの存在意義、水晶玉九割な認識なのでありますなー……」

 イリヤとルビーのダブルツッコミに、ちょっと世の中の世知辛さを味わうノーチェであった。
 まぁアレだ。ファンブったお前が悪い。

 閑話休題。
 爆弾を解体することが不可能とわかってテンパるイリヤとルビー。
 部屋のすみっこでさめざめと落ち込むノーチェ。
 爆弾を持ったまま硬直するアルヴィン。
 無表情ながらもオロオロする茶々丸。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:55:16 ID:zb3zQJZ3
こんなときはとりあえずヒイラギレンジの月衣に突っ込むが正解な気がするんだぜ
568執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:55:48 ID:/4mwiCII
 そんな光景を見ながら残り30秒を切ったことを確認し、柊は立ち上がるとかたわらの植木に声をかけた。

「植木」
「なんだ?」
「アレ、いけるか?」

 言って彼が指差すのは窓の外。
 この区画は『極上生徒会』専用の区画であり、東棟の壁から1qの間何もない。
 しかし植木は柊の言ったことを正確に理解したらしい。

「もちろん」
「よし。んじゃ、頼むわ」

 そう言い残して、柊はアルヴィンに向けて歩を進める。
 植木は右手に意識を集中させると、右手の平にスタンプのようにあるモップ型の紋が小さな光を放ち、そこからモップが吐き出された。
 彼の右手にあるのは、彼のいる世界に存在する職(ジョブ)能力と呼ばれる特殊能力者の持つ二つの紋の一つ、『道具紋』だ。
 職能力者は右手の道具紋に1人1つの道具をしまっておき、いつでも取り出すことができる。

 しかし、職能力はそれだけの力ではない。
 もう一つの紋、『効果紋』を発揮してこそ職能力者は一人前なのである。
 職能力者とは『道具』に『効果』を与える者たちのことであり、その内一つの能力を発現した植木の能力は―――

「モップに―――」

 取り出したモップを両手で掴み、構える。
 同時。左手の『効果紋』が小さな光を放った。

「―――『掴(ガチ)』を加える能力!」

 気合いの声を上げると同時、モップの毛の部分が窓へ向けて風を裂き奔る。
 モップは開いていた窓を超え、何もない空間をただひたすらにまっすぐ進む。
 空を裂いたモップの道は―――東棟から1q離れた南棟の外壁に巻きつき掴んで、止まる。

 あまりに突然にできた棟同士を結ぶ道。
 植木はモップの柄を持つ手に力を込め、アルヴィンから爆弾をかっさらった柊にアイコンタクト。
 柊は小さくそれに頷き返すと、そのまま窓を飛び越える。
 ウィザードとしての身体能力を活用して、東棟と南棟をつなぐモップの道のど真ん中に着地、膝を軽く曲げて力を溜める。
 それを確認し。

「いっ、……けえええぇぇぇぇっ!!」

 モップを持ったままの植木は、柊の重量が加わったことでたわんだモップの毛を、渾身の力を込めて一気にぴんと張りなおす。
 植木の作った即席のトランポリンの力を借りて、柊は勢いよく上空へと跳ね上がった。

 爆発まで、10カウントを切る。

 ウィッチブレードを月衣から取り出し、3秒だけ最大開放。
 加速加速最大加速。
 『学園世界』内の最高を誇る建物を眼下に見下ろせることを確認。トリガーから指を離す。
 右手にまだ抱えたままの爆弾を、思い切り上に向けて振りかぶる。

569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 14:58:16 ID:zb3zQJZ3
しえn
570執行委員の楽観@学園世界:2009/03/22(日) 14:59:05 ID:/4mwiCII
 カウント5。

 不安定な体勢から、右手の力一本で爆弾を思い切り上に向けて放り投げる。

 カウント4。

 これまで進んでいた『上』に向けて月衣を展開。爆弾を投げたことで崩れた体勢を利用し、体をぐるっと反転。足場と化した月衣を踏む。

 カウント3。

 数秒とはいえとんでもない加速を果たしていたウィッチブレードの勢いを完全に殺すことにより足や膝に奔る痺れ。

 カウント2。

 無視。そのまま踏んだ月衣を蹴る。

 カウント1。

 重力に囚われだす体。しかしそれでも時間は足りない。できるのなら背後にある爆弾から可及的速やかに離れたい。けれど―――

 0。

 圧倒的に時間が足りない。
 爆炎と爆風と衝撃が背後から体を叩く。
 もちろんウィザードはこんなことで死んだりはしないが、痛いものは痛い。
 しかし、それよりも大切なことがある。
 爆風や衝撃でウィッチブレードとともに嵐の中を揉まれるように落下しながら、なんとか風を読み衝撃をいなし、安定を取り戻し空中で静止すると同時、爆発地点を見る。

 上空、いまやかなり離れた空の上。
 爆発地点は煙に覆われているものの、空を飛ぶ類の学生に被害があったようには見えない。周囲を見回しても建物のガラスが割れたような被害もない。


 それだけ確認すると―――柊は、体を相棒の腹に預けて脱力する。
 目の前に広がるのは、いまや爆煙の吹き流されて青い平和な空。
 とりあえず報告書は怪しい人間から厄介なものを拾ってきたノーチェに丸投げすることを固く心に決め、大きく一つ溜息。
 あー、と無意味に声を上げてひたすらに平和に青い空に向け、誰にともなく一言。

「……ったく、大人ってのもラクじゃねぇわ」

 その表情は、どこか諦めたように。
 けれど微かに、確かに―――その表情を見ることが出来る者がいたのなら、嬉しそうに笑っている、と称しただろう顔だった。


 この街には、平和を守る者たちが複数存在する。
 その中でも最も全世界的に知られた存在の名を『極上生徒会執行委員』という。
 彼らは一日中学校同士のいさかいを『調停』し、力なき人々を蹂躙せんとする『悪意』に対して日夜立ち向かい続けている。
 そして。今日も、また―――

おわる。
571執行委員の楽観の中身こと夜ねこ:2009/03/22(日) 15:02:19 ID:/4mwiCII
 この時期は特番が楽しみ(挨拶)。
 舌の根が乾かない内に書いちゃいました、夜ねこでございます。
 いやだって嬉しかったんだもん! ネタ拾われてうっかり書く気になっちゃったんだもん(もんはやめれ)!
 つーかマジ申し訳ない。思いついちゃったもんは仕方ないじゃんよ、と言い訳してみる。ちゃんとあかりんの話は書きますよ?
 柊と植木のガチバトルシーンをちょっと書こうと思ったけども、ムダに長くなると判断。ばっさりカットしました。

 とりあえず出展。これまで出てないキャラ限定ですが。

「和の蒔寺」 <蒔寺 楓(まきでら かえで)>         穂群原学園高等部@氷室の天地。別にFateでもなんの問題もないけど。
氷室 鐘(ひむろ かね)                    同上
「家庭料理の三枝」 <三枝 由紀香(さえぐさ ゆきか)>    同上
「洋の間桐(妹)」 <間桐 桜(まとう さくら)>       同上@Fate/stay night。
セラ                             @プリズマ☆イリヤ
リズお姉ちゃん(リーズリッド)                同上
ことあるごとにやってくる虎 <藤村 大河(ふじむら たいが)> 同上
アルヴィン=ケンドール                    エルクレスト・カレッジ@アリアンロッドリプレイ・ハートフル
オルランド寮のプリフェクト (カミュラ)           同上
シェフィールド寮のプリフェクト (シャルロット=イエミツ)  同上
森 あい(もり あい)                     火野国中学@うえきの法則(+)
絡操 茶々丸(からくり ちゃちゃまる)             麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部@ネギま!?
鈴原 未来(すずはら みらい)                 桃月第三小学校@新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん
聖祥の白い魔法少女 <高町 なのは(たかまち なのは)>    私立聖祥学園附属小学校@魔法少女リリカルなのは無印&A's
荒砥山のユイ <ユイ=ヴァン>                @ナイトウィザード/ソウルアーツ
江戸前 留奈(えどまえ るな)                 磯野第八(三)中学校@瀬戸の花嫁
瀬戸 燦(せと さん)                     同上
御川高校の『こわしや』                    御川高校@こわしや我聞

 さて。勝手に色々と考えたあげく、こんな話に……。
 執行委員関連の設定は、個人的に整理をつけるとこんな感じ。

 ・『極上生徒会執行部付執行委員』と、『各校選抜執行委員』があって『執行部付』の方が『執行委員の〜』シリーズの連中。
 ・『執行部付〜』の連中は『執行部室』に直で入れる連中。要は極上生徒会直属・本部・本店……とまぁ、そんな感じのがこっち。
 ・『各校選抜〜』の連中は、危険度が低いと判断された事件を解決するために各校が同盟を結び作ったグループ。こっちはまぁ自警団みたいなもの。
 ・『各校選抜〜』は『極上生徒会』の感知するところにない、ということになっている。そもそもそっちにコネはない。学生互助組織的な感じ。
 ・『執行部付〜』と『各校選抜〜』の間には特になんの関係もない。名前が似ているだけ。
 ・たまにこの二つが同じ現場にかち合うこともなきにしもあらずだが、別段縄張り争いをする気もないため、協力することが多い。
 ・ついでに名前が本気で紛らわしいため、『各校選抜〜』の方は最近『執行委員』から『選抜委員』、もしくは『自警委員』なんて呼ばれるようになったりとか。

 別の名前をつけて区別してみたけど、これ俺の中の区別であって別にみんなの区別とゆーわけではないのでスルーされる方はスルー推奨。
 なんで、別にこんな設定無視しちゃってくださって構わないのですよ。マジで単なる俺設定だし。

 まぁそんな話はさておき。
 ……正直ノーチェは色々とこの学園の情報を探ろうと思えばマジである程度知れる能力があるため、今回はこんなことをさせてみた。
 もっとも、この話が気に食わない方、自分のノーチェ贔屓がイヤな方はスルー推奨。
 ちなみに『カゲモリ』に関してももうちょっと深いとこまで知ってるけれども、柊に話したのはこれだけ。
572執行委員の楽観の中身こと夜ねこ:2009/03/22(日) 15:04:12 ID:/4mwiCII
 柊が冒頭でくれはに確認してるのは、『本当に執行委員に意味があるのか?』ということ。
 自分は他人によって手のひらで転がされてばかりだけど、自分の知り合いが手のひらで転がされるのは我慢ならないとゆーわがまま勝手な野郎です。
 別に利用されてるわけじゃないとわかったら、保護者オーラ全開なわけですが。
 19歳に大人ぶられるのもなぁ、と思ってみたりする(お前がやらせてるだろうに)けど、実際にかなりバカな類だけど、それでも頼りになる類のバカなのである。

 書類書きやらせると5秒で屍になるけどな!

 なお、執行委員書かれる方がもしもいて下さった場合のために、あまり役にたたない(妄想)資料を。

 <執行委員の執行部室にいる頻度>
 常駐−柊……むしろ住んでんじゃないのかコイツ? 外食と用事で出かける以外はここにいる。
    ノーチェ……柊よりは多い頻度で外に出る。 丸一日いないことはないけど。
 非常勤(多)−初春……週の半分以上顔を出す。 マジ仕事熱心。彼女がもしも一週間顔出さなかったら仕事滞りまくりになることうけあい。
        イリヤ・ルビー……初春と同じ頻度。 小学生はヒマなのです。遊ぶかお手伝いの2択だ。
        美遊・サファイア……同上。 おはようからおやすみまで、いつもイリヤを見つめます。
 非常勤−宗介……週に2度ほど。 陣代高校の見回り、かなめの護衛などもあるため。
     植木……同上。 とりあえずなにかに巻き込まれてるため。
     ベホイミ……同上。 バイトとか色々あるんですよ。ドクロとかな。
     美琴……同上。 彼女にも怖いものの一つや二つあるんです。寮監とか。
     エリー……週に1度ほど。 学校の課題とか生産とかで忙しいのです。
 他のキャラはあんまりよく知らないんで、知ってる人が設定してほしいのですー。

 <東棟設備>
 5階  執行部室・給湯室・洗面所・来賓室
 4階  転送陣
 3階  上階の転送陣のための設備一式
 2階  仮眠室・倉庫・リネン室(洗濯機・乾燥機など)・洗面所・更衣室(男女別)・シャワー室(男女別)
 1階  ラウンジ・自販機コーナー(実験品多し)・洗面所
 ※近くに銭湯あります。

 <執行委員的時系列>
 初日   輝明学園転移。その他複数の学園の転移が次々に認められる。
 2日目  荻原校長、くれはに輝明学園理事を任せる。
 3日目  『カゲモリ』発足。
 5日目  『極上生徒会』、発足。この時点で管理棟3棟はすでに建ってる。
 7日目  『特別執行委員』に柊が任命される。
 10日目 『執行委員』公募始まる。東棟が柊の管轄物に。
 17日目 ep:『執行委員の喧騒』
 21日目 エルクレスト・カレッジ、『学校転移』
 30日目 ep:『執行委員の楽観』

 こんな感じ?

 では、今回はこのへんで。
 言っとくけど、さるは俺の敵だから(超断言)。それ以上でも以下でもないから。マジだからっ!
 なお、ちゃんとあかりんネタも書く気はあります。あるってば。ちゃんと書くもんワタシ(もんはないだろう気色悪い)!
 ……けどまぁそれはそれとして、また思いついたらなにか書いてもおk? 



PS >>539氏 よるのある風景、第4話になってるヤツは外伝なんで、そのようにしていただけると助かります。
PS のPS ノーチェがソウルアーツ掲載能力『月下の魔城』とるようなことがあったら、外見はきっとダンボールハウスだと思うの。
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 15:06:45 ID:zb3zQJZ3
>571
ノーチェって何で学園世界にいるだろう?と思ったぐらいでとくに気にしてない
そして乙
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 15:16:27 ID:aFhFyG/b
乙〜。
重箱の隅をつつくよーで悪いが、アルヴィンはアコ/バードだぞ
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 15:39:27 ID:LtshdEF/
乙〜、しかし最近の流れは保守ネタというより学園世界がメインになっとるなぁ〜

そのうち魔王スレみたいに学園世界ネタに乗っ取られたりしてw
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 16:04:22 ID:pyFP5G7C
学園世界に関係ないネタで書いてるけど
学園世界ブームが来る前に既に筆が止まっていた僕。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 17:16:12 ID:pnGnIb76
>554を見てネタを思いついた元ネタはペルソナ4
知ってる人は知っているP4主人公のネタ。

ある下がる男が言った
「あぁ。今はまだ一緒にやってくれる人を色んな学園まわって探してるんだけど、ちょっと広すぎてな。
 あんた達はなんかそういう人の話とか聞かないか?
 行動力があって、好奇心満載で、ちょっと猫みたいに殺されかねないけど機転が利いて危機は脱するタイプ。そうでなきゃ頭がよくて人をまとめるのに長けた人間」

行動力もある、好奇心もある、協調性もある、常識もある、更に頭が良くて人をまとめるのに長けて料理も板前クラス。
腕っ節も強く、困った人たちを助けて面倒見もいい。
勇気は豪傑、知識は博士級を越えては生き字引、根気はすでにタフガイクラス、
寛容さも菩薩を越えてオカン級、口を開けば説得力は言霊使い。
なぜそんなすごいのと問われれば、彼はこう返すだろう「二週目だから。」
「シスコンだろ?」と聞かれたら「ナナコンだ」と返すユーモア持ち。

いつも冷静なクールガイだが黙ってても満ち溢れるカリスマと口を開けばクールでありつつ漢気溢れて時々お茶目。
フォローも当然忘れない。
見かけは二枚目クールでスタイリッシュな身振りのシティボーイ。当然老若問わずにモテモテ男。
もし六股してもナイスな船もでないし刺されもしない。

誰もがこう思うだろう。
そんな完璧超人いるのか?と。

だがいた!
とある田舎の稲羽市に存在する八十神高校に在籍する自称特別捜査隊リーダー。

他の学校の人々は彼の事をこう呼んだ。

「番長」もしくは「ペルソナ番長」と。

後に執行部室に設置されるカオスな中身の冷蔵庫と、何も無い壁にベルベットルームと書かれた札、
人が並んで余裕で入れる大型テレビが設置されるのは彼のポケットマネーで買ったものである。
「資金なら十分にある二週目だから。」
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 18:05:17 ID:znXLXn3c
デジタルゲートじゃないが、通れる人について行けば中に入れるんだよなあ
よーすけのバイトより稼いでる番長より、苦労して貯めたカネが仲間の
装備品に消えていく番長の方が見てて楽しいのは個人的な思い出
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 18:37:30 ID:B2c+xrap
初めてなのですが投下していいでしょうか
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 18:40:56 ID:ftemuAPE
するといいと思うの。
581執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 18:53:16 ID:B2c+xrap
主曰く 人は パンのみにて 生きるにあらず
されど また曰く
主曰く 人は パンのみにて 生きるにあらず
されど また曰く
人民に パンと 自由を!
市民に 娯楽を!

例えいかなる状況においても人は生きることから始めねばならず、そしてまた、生きるためには食べなければならず、
この世界に強制的転移を余儀なくされた学園生徒、関係者もその理からは外れることはできようはずもありません。
学園世界に起こる様々なトラブルに対応する執行委員にとってもそれは軽視すべからざる重大事項です。
これから私が語る恐怖の出来事、執行委員および生徒会を震撼させたあの忌まわしい事件もその何よりの証であり、
これより逃れようする行為がいかに愚かであるかを示すものです。
全ての事件がそうであるように、この事件の発端もほんの小さな出来事から始まったのです。

「ワンタンメンにするね」「ギョーザとライスかな」「焼肉定食、大盛りでお願いします」「んー、五目チャーハンにタンメン」
「コッペパンを要求する」「チャーシューメンであります」「やあやあ、スモークチーズはないかい?」
「私はニラレバ炒めに豚汁」「じゃあ、カレーライス」「中華丼で」「ヒトデみたいなものでお願いします」
「ごはん……おねがいします」「麻婆丼一つ」
「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」「ニンニクラーメンチャーシュー抜きチャーシュー追加」「それにハシバミ草いれて」
「卵丼を」「エビチャーハンと半ラーメンだな」
「チャーシューメンと半ライスだ」「こっちはエビ炒飯」

事件の発端を特定するのは時に難しいことでしょう。
しかし、ここではあえてこれをその発端としてみたいと思います。
執行委員も学園の委員の一つである以上、部屋を一つ与えられています。
この日の執行部室には珍しく二桁以上もの人が詰めかけていました。
というのも執行委員はその激務から今までその活動についての報告書をほとんど出しておらず、
この日ついに提出を余儀なくされたという事情があります。
ただ、これについては報告書の様式が学園世界に集まった学園ごとにばらばらであり、
それを統一するのに手間がかかったためであり、執行委員の不手際によるものではないことを明記しておきます。
かかる事態にもかかわらず多くの人が執行部室に集まった理由の一つとして、
この日報告書作成およびその手伝いに来た者の昼食代は全て生徒会持ち、と言うのがあったのは否定できません。
ただ、これには一つ予想していなかったこともあります。
この日の輝明学園の食堂は清掃のため閉店していたこと、また通常であれば秋葉原には多数の飲食店があるのですが、
転移により最寄りの飲食店が中華料理を主力商品とする上海亭のみになっていたことです。
すなわち、この日の昼、彼らの胃袋を満たすと言う使命は上海亭の双肩にかかっていたのです。
さて、上海亭に出前を頼むにあたり、とある立候補をした生徒が全員の注文を聞いたのですが、
その生徒はいざ注文をするために電話をかけたところで重大なミスを犯しました。
注文の内容を忘れてしまったのです。
そこで……

「ワンタンメンにするね」「ギョーザとライスかな」「焼肉定食に加えて焼き魚定食。双方大盛りでお願いします」
「変えずに、五目チャーハンにタンメン」「コッペパンを要求する」「チャーシューメンでありますよ」
「やあやあ、スモークチーズはあるかい?」「ニラレバ炒めに豚汁」「カレーライス!」「中華丼はやめてカツ丼」
「かわいいヒトデみたいなものでお願いします」「やっぱり、ごはんを」「麻婆丼を大盛りに」
「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」「ニンニクラーメンチャーシュー抜きチャーシュー追加」「それにハシバミ草いれて」
「卵丼はやめて中華丼」「エビチャーハンと半ラーメンだったけど、ラーメンは普通ので」
「チャーシューメンと半ライスだ」「エビ炒飯」

一部中華でもなんでもないがある気もします。
このとき注文内容が若干変わってしまったのは時間の経過により彼らの空腹感がいっそう高まっていたからでしょう。
ここにおいてようやく注文が完了しました。
そしてそれからまたしばしの時間経過。待てど暮らせど彼らが注文した料理は来ませんでした。
「上海亭か?おい、いつまでかかってるんだ?俺たちを空腹で殺す気か!」
業を煮やした彼らの代表として上海亭に抗議の電話を入れたのは一応、仮の執行委員のリーダー、柊蓮司です。
「そんなこと言っても、こっちも全力でやってんですよ。だから言ったでしょ。せめて注文を統一してくれたらって」
582執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 18:54:52 ID:B2c+xrap
「いいから、とっとと持ってこい!」
かかる交渉の後、待つことしばし。
しかし出前は来ませんでした。
いくら時計の針が何周したかを数えても。
「貴様ぁ、俺たちの忍耐にも限度というものがあるぞ!」
「すいませんね。たった今出たところですよ」
「そういう時は誰だって今出たって言うもんなんだよ!」
柊も昔よく言ってたよね。
「やかましい!出た言ったら出たんだ!おとなしく小銭握りしめて待ってろ!この、下がる男が!」
向こうから電話を切ると執行部室内の注目を一心に浴びる柊蓮司はぐるりと振り返って叫びます。
「みんな、聞いてくれ。最新の情報によると出前はたった今、出たそうだ」
「なにぃ?」
「それはほんとうですか?」
「我々を欺こうとする欺瞞情報ではないか?」
このとき、口々に上がる不満の声を、柊蓮司はガラにもないリーダーシップで押さえていました。
空腹の方が調子いいのかな。あいつ。
「一度だけ、一度だけだ。信じて待とう!だが、無制限じゃねえ。30分、それがギリギリの妥協線だ。その30分が過ぎても出前が来なかった場合いかなる報復に出るか。各自、検討しながら待っておくように!」
ある意味柊蓮司の成長に出会えた感動に涙して30分。
それでも出前は来ず。そして、さらに30分。
しかし出前は来なかったのです。
「いい加減にしろよ。おとなしい俺でもしまいには怒るぞ」
「おっかしいな。タケシのやつ、出てからちっとも返ってこねえし。おれも困ってるんだ」
「てめえの事なんか聞いてねえんだよ!出前する気があるのかないのか、どうなんだ?」
彼らの血糖値は下降の一途をたどり、精神面への影響は甚大でした。
ですから、柊蓮司のこの乱暴極まりない言動も彼らの代弁であり、誰一人として非難するようなことはなかったのです。
「だから、タケシがな」
「だから、そんなこと聞いてねえ!外回りがいないならあんたが自分で持ってこい!」
「そう言ってもよう」
「ああ、そうか。持ってくる気が無いない無いとそう言え!」
「でもよう」
「そんときはなぁ、二度と出前はとらねえからそう思え!バカヤロー」
「なにぃ!バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
でもねえ、柊。
ここで電話切っちゃうのはまずくない?
「ああっ、何しているのでありますか!」
「補給線はあそこだけだというのに!」
「だから、柊蓮司には交渉は無理だと何度も……」
「言ってない、言ってない」
「交渉は決裂したんだ!出前は……出前は来ない!」
泣き崩れる執行部室の一同。
「あんた達、何しているのよ。なによ、執行委員がたかが昼食を抜いているくらいでその醜態は」
ですが、こんな時にも冷静というか、そういう事とはお構いなしの人はいるもので。
「私の若い頃はねえ、300年くらい不眠不休、飲まず食わずで戦いに没頭したものよ」
誰かというと……まあ、ベル・フライさんなわけで。
「なぜここにいるーーーっ」
正体モロバれだけど。
「決まってるでしょ。手伝いに来たのよ。それに、まあ委員会活動しくなったし。第一、そんなの今更でしょ」
「今更?」
「誰が注文取ったと思ってるの?」
「は?」
そういえば、と部屋の中を探すと、この騒ぎにもかかわらず黙々と仕事を続けている人がいました。
「アゼルっっっ」
今まで誰も気づかなかったってのもなんだなー、と思います。はい。
どうやら委員会活動したかったというのはアゼルさんみたいです。
「全く、どいつもこいつも学園を代表してるって言うのに半人前で……とにかく、私はこれからホグワーツに打ち合わせに行くから、えーと……そこの、レイフォンフォン」
「ぼ、ぼくですか?」
583執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 18:56:14 ID:B2c+xrap
「そう、だらけさせないように。いいわね」
「あの……」
「アゼル困らせたら、殺すわよ」
それで、ほんとに行ってしまったわけだから誰も止められなかったわけで。
「魔王ってのは冷酷だな。実際」
「ああ、まったくだ。たぶん今までで一番冷酷なんじゃないか」
裏界の大公、蝿の女王、ぽんこつだなんだと言われている彼女がどれほど冷酷か。
このとき、私たちは初めて理解したのでした。
酷いよ、ほんと。


そして悪いことは常に重なるものです。
「謝りましょう」
この事態を打開するため、私たちが出した結論はこれでした。
出前をやめる、と言う選択肢はありません。
お昼ごはんが生徒会持ちなんてもう二度とないと思うし。
「はい。上海亭」
「こちら執行委員会、執行部室」
「おお、飯食ってねえ割には元気そうだな。なんか用か?」
この時の柊蓮司は滝のような涙を流し、悔しさをかみしめていました。
「前言を撤回する。改めて出前をしてくれ」
「わからねえな。なんの話だ?」
「だから、貴様をバカヤロー呼ばわりしたことを撤回すると行ってるんだ!バカヤロー」
もう、誰か止めてあげようよ。
「お、おじざん?ごめんであります。本人も反省しているであります」
「まあ、いいさ。で、注文は?さっきと同じでいいのか?」
「もちろんであります。お願いするであります」


これで食事にありつける。
誰もがそう思っていました。
ですが、30分たっても、1時間たってもまだ来ません。
またも裏切られた、彼らはそう思ったのです。
「もうゆるさねえ。こうなったら乗り込んでやる」
よほどお腹がすいていたのでしょう。
おとなしいだとか、冷静だとか、無口な人もこの時ばかりは拳や拳銃や杖を振り上げて柊蓮司に賛同し、シュプレヒコールまであげていたのです。
それを止めたのが、この人。
「待って」
アゼルさんでした。
「みんなで行ったらお見せの人が困ると思うから。私が行っくる」
「え?」
「私が注文したから」
言ってることはわからないでもないのですが、このときのアゼルさんはうつむいた姿がどことなく頼りなさげでした。
だからといって、やる気の彼女を止めるのも気が引けてどうしようかとみんなが考えていると……
「私も一緒に行くにょろ」
誰かついて行けば安心です。
それを言い出した頼りがいのある人は誰か
「うん、行こう。ちゅるやさん」
「おまえかーーーーっ」
「にょろ〜ん」
いや、まあ、ねえ。
「皆さん心配していますよ。しょうがないので行きましょう」
再びの立候補にみんな光明を見た思いをしたことでしょう。
「風子にお任せください」
「またかーーーっ」
その、あの、ね。
「アゼルさん。ちゅるやさん。迷子にならないように風子と手を繋いでいきましょう」
何かいろいろ力尽きてしまった私たちには、それを止めることは世界を救うよりも難しかったわけで。
584執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 18:57:20 ID:B2c+xrap
それから1時間。
上海亭からもうにはもうとっくに帰ってもいい時間のはずです。
なのに、3人とも戻ってきません。
そんな時です。電話が鳴り出しましたのは。
「はい、もしもし。こちら執行委員」
「にょろ〜ん」
その電話からはちゅるやさんの声と一緒にメキメキ、だとがバキバキ、だとかドカーン、とか音が聞こえていました。
「何があったんだ?おい」
「にょろ〜んにょろ〜んにょろ〜ん」
「にょろ〜んじゃわからねえよ。他に何か言ってくれ」
「にょれろ〜〜ん」
「わかるか!」
がちゃ、つーつーつーつー
突如切れた電話の発信音に不安をかき立てられ、みんなは一斉に立ち上がり、執行部室を出て行きました。


その時の学園から上海亭への道行きはかなり壮観でした。
ある者は、走って。ある者は飛んで。ある者は轟天号と名付けた自転車で。
そのほか、車、バイク、飛行機、箒、竜、ASに汎用人型決戦兵器。などなど
あー、どっちかというと百鬼夜行か。
どこの世界の危機と闘っても互角以上に戦えそうでした。
そして、上海亭。着くなり柊蓮司は戸を開けて
「おい、親父。ここに誰かこなかったか?」
「……来た」
上海亭の親父さんは随分若い人でした。
赤い長い髪と赤い瞳。
輝明学園の服の上にエプロンを着ています。
そして、部屋の隅にはガンナーズ・ブルームがありました。
ぶっちゃけ、灯ちゃんが中華鍋とお玉持っていたのよね。
「お、おい。なら、これは」
店内には所狭しと無数のお皿が並べられ、その上には形容のしがたいモノがいくつも並べられていました。
そしてそのお皿の上にある何かは、一斉に柊蓮司達に襲いかかったのです。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


事件の真相とは得てして単純なものです。
つまりはこう言うことです。
柊達の注文を了承した上海亭の親父さんは調理を開始したのですが、その後、突然現れたエミュレイターだか悪魔だかに襲われました。
それは、ちょうどその時、上海亭に来店していた緋室灯により撃退されたのですが親父さんは負傷してしまいした。
注文を受けながらもそれを作れない親父さんの男泣きの涙に感動した灯ちゃんは親父さんにこう申し出ます。
「私がかわりに作る。私は料理の達人。和洋中、フランス、ドイツ、イギリス、パプアニューギニア、ブラジル、チリ、ハイパーボリア、ルルイエの料理ができる」
灯ちゃんはその言葉を証明するために、一品作りました。
それを一口食べた親父さんは感動のあまり安心して店の奥で寝てしまったそうです。
なので灯ちゃんが親父さんに変わって出前の分を作っていたそうです。
アゼルさん達は、先にできた料理が冷めないうちにと持って帰ったんだそうです。


さて、灯ちゃんの中華と柊達の戦闘は熾烈を極めました。
星の光で鍛えられた聖剣も、極めた魔法も、オーバーテクノロジーの粋で作られた兵器ですらも決定的なダメージにはならなかったのです。
それを一言で表すとすれば……あの人の言葉が適当でしょう。
「料理はせめて<雑>にとどめてください。お願いします」
このままでは学園世界は中華料理によって滅ぼされてしまいます。
みんなも倒れてしまい、柊蓮司も満身創痍。
剣を杖に膝で立つのが精一杯です。
「ちくしょう。腹が減ったな。せめてなんか食ってれば」
585執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 18:58:27 ID:B2c+xrap
「ちくしょう。腹が減ったな。せめてなんか食ってれば」
「だったら、これを食べてよ」
普段であれば、こんな時に渡されたカツ丼なんて柊蓮司も食べなかったでしょう。
ですが、その食欲を刺激する香りに柊蓮司は耐えられず、添えられた割り箸を手に取り、ごはんとトンカツと溶き卵を一緒に口の中にかき入れたのです。
「コロモは花が咲いたようにからっと香ばしく、肉は柔らかくジューシー!卵も絶妙の半熟!こ、これは!」
その時奇跡が起きました。

「うー」

柊蓮司の手足には力が蘇り

「まー」

プラーナの内包値や解放力は通常の数十倍になり、最大値まで回復

「いー」

あまつさえ、巨大化したのです

「ぞーーーーーーー」

そして、体中からあふれる黄金のプラーナのみで暴れる中華を跡形もなく蒸発させてしまったのです


これが今回の執行委員壊滅事件の全てです。
ちゅるやさん、風子ちゃん、アゼルさんは柊がハイパーモードになるまで逃げていたようです。
そうそう、一つ書き忘れていました。
この事件を解決させたカツ丼を作った彼こそ、学園世界最高と言われる少年料理人。
「おいしーよっ」
ミスター味っ子こと味吉陽一くんです。
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 18:58:30 ID:Z6vBCWY9
支援
587執行委員壊滅す@学園世界:2009/03/22(日) 19:00:49 ID:B2c+xrap
投下終了です

名前を出さなかった人を省略すると
レイフォン@鋼殻のレギオス
ちゅるやさん@にょろーんちゅるやさん
風子@CLANNAD
味吉陽一@ミスター味っ子

です

後分かっている人は分かっていると思いますが、
この話はTV版機動警察パトレイバー29話「特車二課壊滅す」のパロディで
話の前半の流れや台詞回しがそれと同じになっています
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 19:10:05 ID:OGciGNlL
懐かしいwww最高wwwww
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 19:19:14 ID:6RWV8S1z
報道かー。リオフレード放送部@カオスフレアのナーミア部長は協力してくれるか、報道の権力からの
独立を掲げて敵に回るか微妙だなー。

NWキャラだとコミックの幼馴染の娘とか、PS2版の2年生のクラスメート(もう3年か)とかいるけど、
どいつもこいつもイノセントだな。

蓬莱の放送部に有名キャラって誰かいたかな?
宜しければ20時30分ごろから投下しようと思います。

>>539
保管作業ありがとうございます。
とある世界の騒動日程の二章が、収録漏れしてないでしょうか?
第三章  仔山羊のナミダ  _she_can_not_cry_

 1

―――はじめに、彼女はごめんなさいと頭を下げた。
   
 
 現在進行形で、上条当麻は非常に困っている。
 その原因は、今すっぽりと上条の両腕の中に納まっている一人の少女であって、

(うわ、なんか、あたって、ふにゃっと、ぐにゃっと)

 なんだか、文章で表現してはいけない感触が、胸の辺りに発生しているからだ。

 夜空に紅い月が昇った後、気色悪い光と音が乱舞して、気がつけば学園都市最大のアミューズメント街が、そこに居たすべての人々と共に消滅していた。
 生存者は、おそらく上条と彼の腕の中に納まっている彼女の二人だけ。
 こうなっては、未開の荒野に二人っきりで放り出されたようなもので、心細いのだろう。
 当然、上条もこの荒野同然の廃墟で自分以外に無事な者を発見できて、非常に助かっている。

 だからといって、

(ナニゆえそんな格好なのですか、あぜるさん!?!)

 瓦礫の中で、彼女を見つけたときは、上条自身焦っていたこともあって気付かなかった。
 数分前に別れの挨拶を済ませたときには、彼女は間違いなく輝明学園の制服を着ていた筈。紫を基調とした、ハイセンスなセーラー服。

 ソレが影も形も見当たらないのは何故なのだろうか!?

 一応は、インナーらしき黒い帯を全身に巻きつけているが、それでアゼルのアレやソレが隠れるわけではないし、拘束されているようなその姿は、非常にアレだ。
 思春期真っ盛りの健康な男子高校生(かみじょうとうま)には、少々刺激が強すぎる。
 そのことに気付いているのかいないのか、彼女――アゼルは顔を上げ、上条の瞳を見つめる。

(う、うわ、何この体勢。え、え、え、え? どーゆー事)

 至近距離で、見上げるように見つめられて、思春期脳がオーバーフローを起しそうになるが、

 はじめに彼女は、ごめんなさいと頭を下げた。

「い、いや何も考えてません事よ、どこぞの聖人よりエロいだなんて………。
 って、え?」

 上条は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
 ごめんなさい。と、いきなり謝られても、リアクションの選びようが無い。

「この街は、私が―――」



「見つけたぞ魔王。アゼル・イヴリス」



 ざくりと、巨大な剣を背中につきたてられたような気がした。

「!?」

 泡を食って振り返る。尋常ではない憎悪。まるで相手をズタズタに引きちぎり、それでも尚飽き足らず、更に酷く壊しつくすような。
 同じ人間が放っているのかと、信じたく無い、信じてはいけないと、そんな事を思ってしまうほどの、強烈な感情の波。
 その中心は、幾人かの男たちだ。軍服のような揃いの衣装と、能面を貼り付けたかのような無表情。
 その異様な雰囲気に、上条は咽が干上がっていくのを感じた。

「………」

 震える手で、アゼルは上条の右手を握り締める。

「この惨状、貴様の所業である事は既に明白!!
 本性を現したな荒廃の魔王!! 此処で大人しく狩られるがいい!!」

 ある種の軍事訓練を受けた者特有の動きで、手にした物を構える男たち。
 その、杖のような槍のような何かは、強い光を纏い始める。
 焼き焦げるように、急速に高まる剣呑な空気。耐え切れず上条は叫んだ。

「ちょっと待ってくれ!! アンタ達は一体何なんだ!! 一体如何言うことなんだよ!?」
「ふん。そういえば貴様、異世界の人間だな。
 良かろう、説明してやる」

 構えた光はそのままに、男たちのリーダーと思しき者は告げた。

「ソレの名は、アゼル・イヴリス。
 裏界の名だたる魔王の中でも、一、二を争う危険性を孕んだ一柱だ」
「………え?」

 予想外の科白に、上条は間抜けな声をあげた。

 第八世界には、侵魔という悪魔が出没する。
 魔王というものがどれくらいのものなのか、上条には解らない。
 しかし、夏の海で遭遇した大天使『神の力』は、比較対象にならないだろうか。
 もと居たところに戻ると、そのためだけに地球の自転を操作し、全天に展開した魔法陣で半球を焼き払おうとしたあの天使は、見た目、年端も行かない少女の姿をしていた。
 この少女も、上条の右手にすがり付いているようなこの子も、そんな怪物だと、そう言うのだろうか?

 そんな上条を他所に、『リーダー』は続ける。

「その力は、周囲のありとあらゆるプラーナを奪いつくし、世界を荒廃させる。
 そう、今この場のようにな!」

 荒廃した世界。
 言いえて妙だ。この『元』第六学区を表現するのに、それ以上の言葉があるだろうか。
 この惨状。
 この荒涼とした風景を、今上条の右手を握って、震えている女の子が、女の子のカタチをした魔王が、造り上げた。と、

「考えてみろ、少年。
 貴様のように規格外の右手があるのなら兎も角、此処にひしめいていた数多の人間が一瞬の内に消え去ってなお、唯一人だけ平然と存在している事実。
 それこそが、その女が犯人であると告げているではないか。
 理解したか? 幻想殺し。
 理解したなら今すぐソレを引き渡せ、ソイツは幾万もの人間を虐殺した怪物なのだ」
 上条の右手を握り締めて、弱々しく、俯いて震える彼女が、そんな恐ろしい存在だと。
 握られる右手が、汗をかいているのがわる。この大人しそうな女の子が、そんな怪物だというのか。
 得体の知れないナニカが、右手から這い上がってくるような気がして、上条は、恐る恐る彼女を見る。
 そんな上条の貌を見て、少女はふんわりと微笑んだ、

「全部、本当の事よ」

 そして、泣き出しそうな顔で、そう言った。
 
「え?」
「だから、全部本当のこと。
 私は魔王で、荒廃の力でこの街を滅ぼして、一万人以上の人を殺したの」

 アゼルは一歩、上条の前に踏み出す。

「言い訳はしません。貴方たちが私を裁くというなら受け入れましょう」
 でも、聞いて下さい。と、彼女は続ける。
「いまこの世界に、私とベル以外の魔王が入り込んでいます。その魔王は―――」

 その声の、その言葉を遮って、
 深緑の光線が迸った。

 ストロボフラッシュを間近で見たときのように、圧倒的な光量が、一瞬上条の視覚を掻き混ぜる。
 思わず目を瞑った瞬間、抱え込むように引っ張られた。
 バランスを崩し、たたらを踏む。はたして、上条は射程をはずれ、光線が頭を掠めるだけに留まった。
 遠くで起こった爆発が、ずん。と、足元を震わせる。

「他の魔王だと? 場かも休み休み言え、貴様とベール・ゼファー以外の何者が居るというのだ。
 安いぞエミュレイター。
 そんな言い訳で、我々がお前たちのような害虫を見逃すとでも思ったのか?」

「貴方たち……」

 上条を抱え、自身もその場を跳び退いたアゼルは、男たちを睨み付ける。

「今、上条君ごと撃とうとしたわね……」
「は。当然だろう?
 その男の右手が貴様に触れている限り、貴様はあの忌まわしい荒廃の力を使えない。
 その様子では、荒廃の力どころか、簡単な魔法や特殊能力の発動すら不可能のようだな。
 つまり、今この場をおいて、貴様を斃すチャンスなど無いのだよ。そのためならば、一人や二人の、ましてや異世界人の命など、大した代償では無いさ。
 嗚呼――。幻想殺し、上条当麻。
 貴様の名は、命をもって世界を救った男として、後々まで語り伝えてやろうじゃないか」

 男たちが手にする武器が、次々と光を抱く。

「死ね! エミュレイターども!!」

 間髪入れず、放たれる幾筋もの光条。一つ一つが、人間を原子分解するに十分な熱量を伴った一撃。 
 轟音と共に、次々と突き刺さる光の槍。
 衝撃と熱波が荒れ狂い、夜空を紅く焼き焦がした。

「………」

 男たちが固唾を呑んで見守る中、着弾の煙幕がゆっくりと晴れる。
 光槍の直撃を受けた地面は、ドロドロに赤熱し溶解して、火口のような惨状を曝している。
 マトモな生き物ならば、近くに居る事すらできない熱波が渦巻く中に。

 はたして、上条とアゼルは影もカタチも存在しなかった。
 
 が、

「仮にも名を持つ魔王が、この程度で消え去る筈は無い!!
 逃げたぞ、探せ!!」

 『リーダー』の号令で、男たちは四方に散らばった。

「あははは、あはあはは、あはははははは!!
 逃げても無駄だエミュレイター共!! 必ず狩り出して、挽肉(ミンチ)にしてやる!」
 2

 「この悪党」

 第八世界、ファー・ジ・アース。
 かつては『表界』に在り。しかし世界結界に弾かれたものたち。
 彼らの集う世界、『忘却世界』。それらをまとめ呼称する名称、即ち『狭界』。
 その狭界の中で、最大勢力である忘却世界は、その名をラビリンスシティと言った。
 嘗て金色の魔王が作り上げた、“別荘”にして“庭園”。そこには名のある魔王たちが、各々の領域を創り上げている。

 ラビリンスシティの中央にそびえる宮殿。
 かつて金色の魔王の居城であり、今は誘惑者エイミーが見出したウィザードを、玉座に戴く城。
 その城の一室で、螺旋くれた角を生やした彼女は、扉を開けるなり目前の少女にそう言い放った。

「………。顔を見るなりそれか?」
「褒めてやったんだ。侵魔(私たち)にとって嫌な呼称ではないだろう?」

 部屋を横切ると、高級そうなソファに乱雑に腰を下ろす。
 迷惑そうな部屋の主の視線を無視して、

「アゼルの力を解放したんだってな」
「ああ。あやつにとって、あの力は無視できるものではないだろう。
 自分のものが横取りされる事を、何よりも嫌うやつだ。しかも、それが我に供給されているとなれば、是が非でも妨害しに来るだろうて」
「で? いきなり街中で解放か。一万人以上のプラーナもオマケについてきて、言う事は無いな」
「いや、ソレは思わぬ副産物だ。 
 アレは服の下に魔殺の帯を巻いていたのでな、密着するほど近くに居るものならば兎も角、あれだけの人間を喰い尽くすとは思ってもみなんだ」

 部屋の主は、ぱくりとチョココロネにかじりつきながら、

「何かの要因で魔殺の帯の機能が破壊されていたのだろう。
 アレも、今までならばすぐに異常に気付けたのだろうが、力に怯えずに済む様になった分、少々平和ボケしていたようだな」

 軽く肩をすくめた。

「まぁ、特に問題はあるまい」
「まぁな」

 螺旋くれた角の女性は、この部屋の主たる少女に視線を流して、

「で? 私をこんな所に呼び出したのは何の為だ?」

 少女は、不躾な視線を正面から受け止めて、

「なに、少々尋ねたい事があるだけだ。
 ―――あやつに、情報を流したのは汝か?」

 室内の空気が、帯電する。

「どうしてそう思うんだ? それで、私にメリットがあるのか?」
「メリットなどと、汝ら主従の思考回路など、我にはわからんよ。
 面白そうだから。の一言で、何をしでかすか予想がつかんのが汝らだろうに」

 螺旋くれた角の女性は、その少女の物言いにクスリと笑うと、

「酷い言い種だ。それでは、まるで私たちは単なる愉快犯じゃぁないか」
「そういっておるのだ」

 少女は、一言で切り捨てる。
 対して彼女は何も答えず、
 沈黙が、部屋に落ちた。

「まぁよい。貴様を問い詰めるなど、熔けたチョコレートを、手でつかもうとする様なものだ」
「………。それはアレか? 糠に釘とか、豆腐にかすがいとか、そういう事が言いたいのか?」
「暖簾に腕押し。とも言う。
 行ってよいぞ、そして傍観者を気取るが良い」

 しっし。と、まるで野良犬でも追い払うかのように手を動かす。

「私は犬か!」

 ぞんざいな扱いに文句を言いながら、彼女はその部屋から退出する。
 そして、入れ違いにもう一つ、部屋に気配が現れた。

「ヤなことがおこるのです」
「ふむ、汝か。ちょうど良いところに来た。
 ラビリンスシティの運営についてだが………」

 金色の魔王の居城で、彼の城の真なる主は、今日も多忙に過ごしている。
 3
 
 学園世界での揉め事を解決するのは、全学校の代表が集まった極上生徒会の仕事である。
 ただ、すべての案件を合議制の会議を通していては、即応力という点でどうしても遅れてしまう。
 その欠点を補う為に組織されたのが、些細なすれ違いが拡大する前に潰して回る役職。火種が火事になる前に、消して廻る火消し役。
 それが、『生徒会執行委員』であった。

 時間は少々前後して、完全下校時刻の『執行委員』の部室。

 滑らかに、十本の指がキーボードの上を滑ると、ディスプレイの上に次々とウィンドウが開いて消えて、必要な情報だけがピックアップされていく。
 その様子は、まるで一流のピアニストの演奏を見ているようで、柊蓮司は純粋に感嘆の声をあげた。
(尤も、一流のピアニストなんぞ見たことは無いので、あくまでそんな気がするだけだが)
 
「すげぇな、初春」
「いやー、そんなこと無いですよ。風紀委員(ジャッジメント)やろうと思ったら、コレぐらいは必須スキルですから」

 飴を転がすような、甘ったるい声で無駄話をしながらも、コンソールを操る指は一時も留まる事はない。
 初春飾利という名の彼女は、幾つもの季節の花を頭に飾った、遠目には花瓶を乗っけているようにも見える女子中学生である。  
 
 現在、執行委員の部室には彼女と柊、そして御坂美琴の三人しかいない。残りのメンバーはみな、本日の業務を終えて『家』に帰ってしまっている。
 彼らが残っている理由は一つ。本日午後に発生したデーモン群発事件の調査であった。

「でました」

 後ろの方で、「柊、あんたこんな事もできないわけ?」「喧しい、情報収集は苦手なんだよ!」などと戯れているH&Mコンビを他所に、初春は目的の情報をディスプレイに投影した。

 学園世界には0-Phoneの霊界経路を応用した防犯カメラが多数設置され、そのカメラがカバーしている領域は、広範囲にわたる。
 『プライベート』な空間や、いまだ探索が済んでいない不明領域を除いて、極上生徒会の管理領域内で映像に残らない場所はない。と、言っても過言ではない。
 初春の作業は、それらの映像を呼び出すもので、どれどれ、と他の二人が覗き込んでくる。
 ウィンドウには、数時間前に柊と美琴が蹴散らしたデーモンたちの映像が映っていた。

「相良さんに協力してもらって、レーダーの反応から、デーモンたちの進路を予測。
 進路上の防犯カメラの映像を複数呼び出してありますけど、此方の監視網に引っかかったのはほんの短い間ですからね、大した情報は無さそうです」

 初春がそう言って、少々残念そうな顔をする。
 そこで画面を食い入るように見ていた美琴が、その一点を指差した。

「ねぇ、初春さん。ここ、拡大してくれない?」

 美琴が指差したのは、デーモンの集団、その中央付近だった。
 キーボードの上を指が走り、画像が拡大される。少々荒くなった静止画をみて、

「何だこれ? 棒か?
 美琴。お前こんなの持った奴と戦った覚え、あるか?」
「………。いや、記憶に無いわね。こんな目立つもの見逃すとは思えないから、まず間違いないと思うけど」
「そうだよな、俺も覚えが無い。
 初春、これ別の角度で映ってる奴は無いのか?」

 柊の要請に、再び初春がキーを叩く。

「在りました。ドンピシャです」

 ディスプレイに映像が再生される。
 群を右斜め上から撮影しているその映像には、長い棒状の何かを捧げ持つようにして歩を進めるデーモンの姿があった。

「このデーモン、ちょうど群の中央辺りにいますね。
 この隊列が変わっていないのなら、戦闘開始後、すぐに後ろに下げられた個体の一つとみて、まず間違いないでしょう」

 初春が結論付けて、三人は顔を見合わせた。

「つまり、あのデーモンたちは、この棒みたいなのを運んでた、ってこと?」
「そう、なるな。
 問題なのは、この棒みたいなヤツが一体何なのかって事だ」
「侵魔が群の大半を犠牲にしてまで、守らなければならないもの……ですよね」

 う〜ん。と、三人で首を傾げる。

「なんか強力な武器、とか……は、違うわよねぇ」
「だろうな。そんなもんがあるならわざわざ逃げたりしねぇよ。
 もしかしたら、使えなかっただけって可能性も在るけど」
「それは、発動に何か条件があるとかですか?」
「使うだけの魔力が足らなかったとか……。
 駄目だな、情報が無さ過ぎて推測すら出来ねぇ。
 そうだ、初春、ちょっといいか?」

 何かを思いついたのか、伸ばされた柊の指が、とあるURLを打ち込んだ。

「なんですこのページ? データベースですか?」
「なになに? 
 ? ちょ、超時空、多次元機甲、特務武装、黄金天翼神聖魔法騎士団?
 ―――ナニコレ? どっかぶっ飛んでるオカルトサイト?」
「ロンギヌスって言う世界の守護者直属部隊のデータベースだ。
 今までに確認されたエミュレイターの情報が記録されてるから、検索かければなんかヒットするかもしれない」

 即座に、初春が作業に取り掛かる。が、

「やっぱり駄目です。二メートル以上の棒状のものって条件だけだと、多すぎて特定できません」

 あーっ! っと、美琴が短気な声をあげた。

「ねぇ、柊。アンタの知り合いに侵魔の事に詳しいヤツって、居ないの?」
「知り合いねぇ……。奴らのことに詳しいとなれば、『魔術師』。
 特に『侵魔召喚師』だろうけど……、知り合いはい(コネクション)ないなぁ」
「あー、もう。肝心なとこで役に立たないわねアンタ!」
「うぉい!! ヒデェ言いがかりだなソレ!! だいたい―――」

 売り言葉に買い言葉、柊が続けようとした言葉は、

「「「!?!?!?!?」」」 
 
 唐突に、部屋中を照らしだしたレッドランプに遮られる。 

 初春飾利が、慌てて携帯に手を伸ばす。
 極上生徒会から送られてきた情報に眼を通し、一瞬呆然となった彼女は、震える声でこう告げた。

「き、強力な侵魔(エミュレイター)反応を、学園都市内で感知、そして、その後―――、
 が、学園都市の第六学区が、しょ、消滅したそうです」

 え? と、美琴の表情が強張った。

「学園都市……で? 第六学区が、何ですって!?」
「だ、だから、第六学区が………消滅したそうです」

 自分たちが住む街に、突如訪れた災厄に固まる二人。

「初春。他には?」

 柊が先を促す。

「確認されたのは魔王級のエミュレイターで、月匣の展開が確認された後、第六学区が消滅した。と」
「魔王級!? ベルか!?」
「いいえ、ベール・ゼファーではなく、アゼル・イヴリスだそうです。
 執行委員はただちに集合。協力し、状況把握と事態収拾に努めよ。
 それから、アゼル・イヴリスが学園都市の男子高校生を人質にとって逃亡した。と」

 そういって、大写しになった映像に、御坂美琴は心臓が止るかと思った。

「アイツ、なんで!?」

 ぴょんぴょこ重力を無視したような、非常識な挙動で跳ねる様に走る少女の腕に、抱えられている少年。
 初見の印象はきっと、平凡な男子高校生。
 唯一の特徴といえば、つんつんに逆立った黒髪くらいのものだろうか、しかし、美琴がその顔を見間違うわけは無かった。
 硬直した美琴を他所に、どやどやと足音が近づいてくる。
 火急の知らせを受けて、集まってきた執行委員たちだろう。

「あと、それから、もう一つ在ります」
 言い出しにくそうに、初春が付け加える。
「本件は、アゼル・イヴリスの殲滅を最優先。人質の少年の生死は不問にする。って」

「―――ッ!?」 
 
 潮が引くような音を立てて、頭に血が上ってゆく。
 気がつけば美琴は、部屋の壁を思いっきり殴りつけていた。

「ごめん。ちょっとアタマ冷やしてくる」

 前髪から放電し、バチバチと音を立てながら、夜のように平坦な声でそう言って、彼女は室外に出た。
 その後姿に声が掛かる。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 20:45:15 ID:ftemuAPE
ぐっ―――支援出遅れたんだぜ 支援!
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 20:51:50 ID:ftemuAPE
しかし、今日1日でまさかここまで埋まるとは……新スレ必要でヤンスなぁ支援
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 20:55:35 ID:OGciGNlL
さるった?
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 20:57:52 ID:ftemuAPE
そりゃ支援ナシならそうじゃろ
復帰まであと少しだけどな支援

「美琴。俺たちは、絶対に見捨てないぞ」

 ふざけた命令なんぞ聞く気はない。人質は絶対に助け出してみせる。
 その上で、ちゃんと全部、片付けるんだ。

 その声に―――、

「ありがと、柊」

 御坂美琴は、その場から立ち去った。

 二分後、美琴の姿は廊下にすえつけられた水飲み場に在った。
 顔を洗う。
 バシャバシャと水を被って、備え付けの姿見を見れば、顔色は少々赤みを帯びる程度。
 冷たい水は、血の上った頭を、ある程度冷ましてくれた。
 理不尽な命令に激昂している暇は無い。冷静になれと、自分に言い聞かせる。
 御坂美琴は、彼に救われた。美琴だけでなく、彼女の大切な妹達も、ルームメイトも、また。
 だからこそ、今度は美琴が彼を救う番だ。第二二学区の時の様に、たった一人で死地に跳び込ませはしない。絶対に。

「よし」

 ハンドタオルで水気をふき取った後、ピシャリ。と叩いて、美琴は息を吐く。
 そこで、ポケットに入れておいた自分の携帯が震えているのに気がついた。
 何気なくディスプレイを見やって、其処に表示される名前に、

「うそ……」

『上条当麻』
 
 それは現在、魔王の人質になっているはずの少年からの電話。  
 慌てて、通話ボタンを押す。

『もしもし、そちら御坂さんちの美琴さんでせうか? こちら上条さんちの上条さんです。
 聞こえますか、もしもーし』

 スピーカーから這い出る巫山戯た声は、間違えようも無く本人のものだった。

「……どうなってんのよ、いったい」
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:01:27 ID:ftemuAPE
支援なの
 4

 『男たち』は、一つ思い違いをしていた。
 幻想殺し(イマジンブレイカー)に触れている以上、アゼル・イヴリスは簡単な魔法も、どんな特殊能力も使用することは出来ない。
 ソレは正しい。今のアゼルでは、月匣は愚か月衣すら展開できないし、空間を渡るといったマネも出来ない。
 だからといって、素の魔王の身体能力は人間のソレを遥かに凌駕する事に、変わりは無いのだ。

 雨のように降り注いだ光の槍をかわし、その足でアゼル・イヴリスは夜の街を駆け抜ける。
 飛ぶように、舞うように、矢のように、風のように。
 
 広大な敷地を持つ第二十三学区、陸運の要である第十一学区をこえて、周囲の風景には研究施設が多くを占めるようになってくる。
 アゼルは、その中の一つに飛び込んだ。
 既に、使う者が居なくなった、空虚な空間で彼女は、はぁ。と溜息をつく。

「大丈夫? 上条君」
「…………」

 へんじがない。ただのしかばねのようだ。
 
 他人に抱きかかえられて、夜の散歩と洒落込んだ日には、ブレインとストマックが危険なぐらいにシェイクされるのは、当然といえば当然であって、

「……あの、平気?」
「うぇっぷ………。
 アゼルさん。あなたにはこれが平気そうに見えまして? 見えるなら今すぐ眼科へLet’s Go!!」

 逃亡してから今まで、よく中身をぶちまけなかったな。と、上条は自分で自分を褒めてやりたい心境だった。まぁ、戻すものなどもう残っていないのだが。

「うぉおお、ふ、ふこうだ………」

 グルグルと、脳と胃の労働争議に付き合うこと数分。
 数分後、何とか気分が落ち着いた上条は、魔王と呼ばれた少女を見据える。

「―――で? 事情、説明してくれるんだろうな?」

 命を狙われた事や、荷物よろしく運ばれたダメージでそれどころでは無かったが、落ち着いた今なら、訊き質せる。

「…………」

 しばらく逡詢して、アゼルはぽつぽつと語りだした。

「私の名前は、アゼル・イヴリス。
 裏界最強の魔王、ルー・サイファーによって造り出された、最終兵器。
 第六学区を消滅させたのは、私の力です―――」

 曰く、その力は自分ではコントロールできなくて、今までは創造主が抑えていたが、突如解放された。
 曰く、学園世界に別の魔王が入り込んでいて、能力開放はそいつと戦わされる為だった。
 曰く、すべてを喰い尽す荒廃の力は、その魔王にとって目障りだから、餌として最適だった。
 曰く、力をある程度抑えられるはずの魔殺の帯(今身体に巻いているもの)の機能が何故だか停止していた。
 曰く、その所為でほぼ最大出力で荒廃の力が発動し、これだけの被害を出してしまった。

 話し終えたアゼルは、何かを堪えるような表情で、ずっと握ったままの右手(イマジンブレイカー)を、更に握り締めて、

「私は、この世界が好き。
 人間たちどころか、裏界の侵魔たちからも忌み嫌われていた私が、人間みたいに学校に行って、人間みたいにお喋りして、人間みたいにご飯を食べて、人間みたいにみんなと遊んで、人間みたいに誰かと触れ合えた。
 そんな奇跡を、許してくれたこの世界が大好き。其処に住んでるみんなだって大好きなの」

 だから、

「この世界を、私は、護りたい。
 ここに住んでいるみんなを、私は護りたい」

 曇りの無い瞳で、

「だから、これは私の我侭。
 ごめんね、こんな事に巻き込んで。
 ごめんね、これ以上巻き込もうとして」

 魔王と呼ばれる少女は、微笑んだ。

「それでも、私に力を貸して欲しい。
 図々しいお願いだっていう事は解ってる。でも―――」

 ごめんなさい。
 それ以上何も言わず、アゼルはもう一度、頭を下げる。
 と、突然。両手で掴んでいた右手を引っ張られ、前のめりにバランスを崩してしまう。
 頭からつんのめるように上体が泳げば、ゴチンと、上条の拳が待ち構えていた。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:03:50 ID:ftemuAPE
一緒に行こうぜ支援っ!

「いちいち謝るな。
 もう、お前一人の問題じゃないんだ―――」

 上条の右手を離せば、それだけでもっと大勢の犠牲が出る。
 ならば、上条当麻に拒否権など、最初から無いのだ。

「それに、その魔殺の帯ってのが壊れてたのだって、原因になりそうなのは俺の右手しかないじゃねぇか」

 握手をした時。月衣を壊した時に、一緒に壊していたのだろう。
 それでも、何故か形だけは残っていたようだから、アゼル自身も気付かなかったのだけれど、それだって何時もの不幸の結果だと思えば、頷けるものがある。

「だからお前は、余計な事してくれたなバカヤロウ。って、怒ればいいんだ。
 責任取って手伝いやがれこのヤロウ。って、そう言えばいいのさ」

 右手(チカラ)が必要なのは、これ以上被害を広げない為。
 周りの人間すら気に掛けなければ、そんな必要など無いのだ。
 それでも、アゼル・イヴリスは人間を護ろうと、魔法も異能も封じられたとしても、申し訳無さそうに、上条に協力を頼むのだ。

「そんなお前に頭下げられて、断るとでも思ってんのか。
 見くびってんじゃねぇよ。ちったぁ、俺を信用しやがれ」

 アッシュブロンドの頭を撫でられて、アゼルは、ただ呆然と、呆然と目を見開いていた。

「―――ごめんさい」

 ゴチン。と、再びアゼルの頭に、拳が落ちる。

「違うだろ?」
「――――うん。
 有難う、上条君。ありがとう……」
  
 アゼルは、俯いて肩を震わせる。



―――始めに、彼女はごめんなさいと頭を下げた。
―――そうして次に、ありがとう。と、微笑んだ。
行間4

 第一〇学区の廃墟。
 知識があるものならば、『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』に、使用されていた施設だと言うだろう。その、浅からぬ因縁を知らず、

「取り敢えず、だ。
 そのもう一人の魔王とか言うのを倒せばいいんだろ?
 その、お前以外の魔王ってのはどんなヤツなんだ?」

 上条当麻は、斃すべき相手の情報を魔王少女に求める。

「名前は、パール・クール。二つ名は『東方王国の女王』。
 階級は無いけれど、これは、本人が裏界帝国ではなくて、東方王国という独立勢力のトップだから。
 ただ、本人は裏界の最大の実力者に対抗して『超公(プリマ・ヘルツェーゲ)』を自称しているの。
 群雄割拠の裏界で、ほぼ唯一の統治機構である裏界帝国に、正面から喧嘩を売って、それでも潰されていない、かなりの実力者よ」
「それって、つまりお前より強いのか?」
「私は、能力が特異なタイプだから。
 直接的な戦闘力では、間違いなくパール・クールの方が上だと思う」

 この娘も、一瞬で街を壊滅させるような非常識さんだが、相手はもっとぶっ飛んでいるらしい。

「それで、そのパール・クールが、特殊なアイテムを使って、この世界をぶんどろうとしているって、お前の上司は言ってるわけだな?」
「ええ。
 『東方王国旗』と言って、彼女の支配地であることを証明するものらしいわ。
 直接見たことは無いけれど、二メートルくらいの旗らしいわ。
 どう言う効果があるのか解らないけれど、その『旗』を掲げた場所はすべて、パール・クールの持ち物になるそうよ」

 かつて、航海に出た冒険家たちが、後の植民地となる地域に、自国の旗を立てていったようなものだろう。

「……なるほど、国権の象徴、支配の証ね。
 『使徒十字(クローチェディピエトロ)』みたいなもんか。
 ってことは、パールって魔王と戦わずに済ませようと思ったら、ソレを何とかしなくちゃいけないって事だな」
「ええ。そう出来ればいいんだけれど。
 まず場所が判らないし、きっとそこを本拠地にしていると思うわ。
 他の人間(ひと)たちの協力が得られるなら良かったんだけど。私たちだけで見つけて攻略するのは難しいと思う」
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:05:55 ID:ftemuAPE
ガンガンいこうぜ(支援的な意味で)

 正直、八方塞がりかも知れない。と、少々悲観気味だが、上条はにやっと笑った。

「いんや、そうでも無いぜ。
 この世界の学生は、皆、逞しいからな。
 なにしろ世界がこんな状態になっちまって、それでもこんなに早く順応しちまうんだから」

 ズボンのポケットから傷だらけの携帯電話を取り出して、

「それに、執行委員って連中はさ。いろんな所で起こる揉め事を、無償で解決する御人好しどもだ。
 必ず、力になってくれる」

 メモリーから呼び出した番号にかける。
 果たして、数回のコールの後、回線がつながった。

「もしもし、そちら御坂さんちの美琴さんでせうか? こちら上条さんちの上条さんです。
 聞こえますか、もしもーし」

 電話の向こうからは、掠れたような少女の声が届く。

『……どうなってんのよ、いったい』

「御坂、御坂。なんか混乱してるとこ悪いけど、ちょっと調べものしてくれねぇかな?」
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:07:42 ID:OGciGNlL
支援〜
* * *

 
 同時刻。『迷宮』の最深部、『震源』。

「ふぅん。じゃあアゼル・イヴリスの居場所はまだ解らないんだ?」

 その部屋の主は、すえつけられたソファに座って、天真爛漫にそう言った。
 金の髪を二つに括り、髪留めの紐には銀の鈴が揺れる。
 白い小袖と、膝上で断ち切られた緋袴。巫女の神秘さに快活さを付け加えた衣装を纏う、少女。
否、少女のカタチをした災厄の塊。
 即ち、魔王『パール・クール』。

「残念ながら。
 ですが今、手駒を使って捜索させている所です。あと数刻もしないうちに発見できるでしょう」

「早くしてよね。あたし、待たされるのきらいなんだけど」
「はっ。急がせます」
「で? ベルの方はどうなの? やっぱりアゼルに吸われちゃった?」

 楽しそうに、言う。
 ライバルとして、敵愾心を燃やしている相手が、飼い犬に噛付かれた。など、最高の笑い話である。
 何時に無くご機嫌そうなパールの様子に、彼女は胸を撫で下ろした。

「この世界の中に、ベール・ゼファーの存在は感じられません。
 おそらく、アゼル・イヴリスの能力で消滅したものと思われますが、相手はあの蝿の女王。
 ひょっこり顔を出すかもしれませんので、手駒には警戒するよう厳命しております」
「そ、手回しがいいのね。
 でも減点、人が折角いい気分だったのに、余計な事いうんじゃないの」

 パチン、とパールが指を鳴らせば、彼女の身体が吹き飛ばされる。
 グシャリ。と、嫌な音を発てて、壁に激突した。

「ま、確かにこの程度でリタイアするようなヤツじゃないわね」

 魔王は嗤って、部屋の一点に視線を向ける。

「折角なんだから、試し撃ちの的にぐらいはなりなさいよね、ベル」

 視線の先には、風が無いのにも関わらず、はためく『旗』が在った。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:07:48 ID:ayCrb5z/
仕事前に支援
以上です。支援ありがとうございました。

色々伏線とかを明かした回です。
もう少し残ってますが……残せてるでしょうか?

でわ、お付き合い頂きありがとうございました
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:11:14 ID:ftemuAPE
……にゅえん?
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:16:22 ID:qBzqwDYV
こりゃあ、いよいよ本格的にダブルアーツっぽくなって来てるなぁ
ラブシャッフル展開wktk
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:19:01 ID:ftemuAPE
>>660
乙ー。
緊迫感バリバリでしたw
使徒十字……は、アレですよね。大覇星祭の時の。
ちゃん様の旗にも攻略の鍵とかあるのかな?
それにしても、かなり禁書読み込んでおられますよね。地理とか。すごいなーと思います。
しかし、今回のアゼル狩りをしようとした方はどなたなのでしょうね?執行部への根回しのできる人間のようですが。

あー次回楽しみ。お待ちしてますー。
620619:2009/03/22(日) 21:21:42 ID:ftemuAPE
アンカミスorz……。

それはともかく。スレ住人の中に、どなたか次スレ立てられる方はいらっしゃいませんかー?
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:25:23 ID:OGciGNlL
試してみよう・・・
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:27:21 ID:OGciGNlL
おお、成功した〜
つうわけで次スレです。
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1237724778/
623罵蔑痴坊(偽):2009/03/22(日) 22:03:27 ID:oqlREIuq
>584
あ〜る君が拾われたようでちと嬉しい。

Q:でも、彼は自炊出来るよ?
A:おかゆライスですが、かまいませんか?

それはさておき、ぢおん体育大学が来ていたら、と言うのを考えた。

江田島とザクで戦った時は押され気味だったが、生身では互角なドズル校長の勇姿が視えた。

……どこのモビルファイターだよ。
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:33:10 ID:YqYnK6yi
学園世界ネタって
ある人が投下した話と別の人が投下した話で矛盾が生じたらそれぞれを平行世界として扱うのかな
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:36:47 ID:B2c+xrap
矛盾はネタの元がここの精神だと思います
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:46:05 ID:X0mxbIMx
>>624
1、完全に平行世界として扱う
2、その矛盾に関してだけは平行世界として扱う
3、その矛盾を解決する解釈をネタにSSを書く

好きなのを選べ。
要するに、矛盾なんて気にすんな、整合性取れたらいいが、
取れなくたって構うこたぁない。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:48:17 ID:ftemuAPE
矛盾はネタのもと、とか言ってもキチンと全部なんとかできるわけでもないんだから、せめて
「なんとかしたい場合は好きに解釈してOK。ただし、回収できない場合は平行世界扱い」とかにすればいいのに

はじめらへんはもうちょっと詰めよう、って言ってた人もいたような気がするけど
結局固める話ナシにここまで来ちゃってる以上、
「矛盾が出たなら別物としてもよい」としないとこれから先同じノリで書こうとした人が書きづらくなると思いませんか?
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:28:51 ID:eI2RfCn5
>>587
なんというか・・・・コメントしにくいなw
とまれ、GJw

>>571
な、なにいいいいいいいいいいいい!?
蒔の字って料理できたのかっ!!(本気で驚いてる

GJ、です。
柊がツンデレっぽくと萌え転がってる俺きめえwwwwww



つか関係ないが。
おまいら支援の間くらいマジメになれんのかw
629罵蔑痴坊(偽):2009/03/22(日) 23:40:22 ID:oqlREIuq
それはそれとして。

ジャスティスVが
「月よりの使者、ジャスティスレッド!」
「リリカル、マジカル、ジャスティスレッド!」
「考えるな、感じるんだ。ジャスティスレッド!」
「芸術は爆発だ、ジャスティスレッド!」
「ジャスティスレッドの、ジャスティスレッドによる、ジャスティスレッドの為の……」

こんな感じで……

「えー、ジャスティスレッドと申せば、今や、我が国ではあたくし一人で……」

……最早一人もいないじゃないですか……
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:48:51 ID:ftemuAPE
>>628
マキジはあれで料亭の味が出せる強者設定だぞ?
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 00:01:03 ID:mWioAFky
ところで4レス程度の小ネタが浮かんだんだけど、
1レス目がほぼクロス元からの引用のみになっちまうんだが。
大丈夫だろうか?
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 00:11:40 ID:tdb5sCBT
>>631
残り容量を見て発言してください。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 10:55:38 ID:vHSRh5zW
とっくに次スレに移行していたのか
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 10:59:39 ID:kICpzdr0
>>630
マ ジ デ ィ ス カ

ただの脳筋暴走娘と思ってたのに、そんな萌え設定が・・・・。
きのこ恐るべし。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 11:09:10 ID:5MH5CLt4
確か実家が呉服屋だから和関係だけは強い設定だったはず。
636名無しさん@お腹いっぱい。
蒔寺は骨董品(和物限定)の鑑定も出来るからなぁ。
ホロウではあんまり得意じゃないと言いつつ九谷焼だったかの真贋を見抜いていたし。
『氷室の天地』だと料理勝負のお題、ふろふき大根を完璧に作ってのけた恐ろしい子。

2品目のグラタンは冷凍物をレンジでチンする有様だったけど。