アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ22
『アニタちゃんですか? 元気ですよ。日に日に私やマギーちゃんの読書量を超えていってるのが怖くもあるんですけどねぇ』
「末恐ろしいな。あの元本嫌いが。さすが、紙使い三姉妹の末っ子だ」
まあ、答えなんて訊いてみるまでもなくわかりきってたんだけどね。
螺旋王の実験に参加させられていたアニタ・キングは、間違いなくあの場所で死んだ。
けど、私が帰ってきた世界ではアニタはちゃんと生存していた。螺旋王の存在すら知らないことだろう。
……つまり、これが多元宇宙ってこと。
あの実験場にいたアニタは、私がいる宇宙に住んでいるアニタじゃなかった。
時間軸が縦で、平行世界が横の関係にあるとしたら、多元宇宙ってのは斜めなのかな、とにかくまったくの別物らしい。
SFは解釈の幅が広いからあんまり得意じゃないんだけど、本嫌いを克服したアニタは、今もこの世界で幸せに暮らしている。
それは、スカーに殺された読子・リードマン……センセーについても言えることだった。
あの放浪癖を持ったぐうたらの無職は、今インドのあたりをふらついているらしい。
監視役である私が二日ほど拉致られていた間に、またふらふら〜っと旅に出てしまったんだそうだ。
無事の証として、つい最近私のアドレスにメールが届いた。古本市でたいそう買い込んだとかって内容だった。
アニタやセンセーが死んで、悲しんでいるだろう私はどこかの宇宙に絶対いる。
でもここにいる……螺旋王の実験から生きて帰ってきた菫川ねねねは、二人の生存を素直に喜んでいる。
本当に、あの殺し合いはなんだったんだろうな。
アンチ=スパイラルの言っていたことを真に受けるわけじゃないけど、そう思わざるをえない心境だった。
『この前なんか、神保町のブラックリストに挙げられたりなんかして……』
「ねぇ。あんた、『フルメタル・パニック!』って本、読んだことある?」
『ふるめたるぱにっく……? いいえ、たぶん読んだことないと思います。どこから出ている本ですか?』
「富士見書房」
『聞いたこともない出版社です……く、詳しく聞かせてくださいっ!』
ビブリオマニアでも知らない本がある、とはねぇ……。
イタリアの俳優のサインが入ったあの本は、あそこを発つときにルルーシュに返してもらった。
ここではフォルゴレなんてスター、誰も知らないんだろうけど。
存在しない本に存在しない人物のサイン、これぞ多元宇宙の産物ってカンジだな。
「まあ、そういうのは帰ってからね。センセーが戻ってきたら、一度連絡よこせって言っておいて」
『お帰りはもうすぐなんですか?』
「う〜ん、どうしようかな……ま、気が向いたら帰るよ」
『帰るときには連絡くださいよ! アニタちゃんとマギーちゃんと私と、み〜んなで迎えに行きますから!』
「あー、はいはい。いい加減切るぞ」
ガチャン、と受話器を戻す。ったく、こそばゆいったらありゃしない。
でも、ま……これが日常っていうか、幸せっていうか、ハッピーエンドの後ってことなんだろうな。
今頃、他の奴らはどうしてるのかね。
ゆたかや舞衣は元気にやっているだろうか。元気でいるといいな。
ギルガメッシュとジンは考えるだけ無駄だし……スパイクやルルーシュは割とどうでもいい。
……貴様には俺たちを長期的、かつ特殊な刺激の少ない場所に移す義務がある。
ルルーシュの要求を呑んだアンチ=スパイラルは、ご丁寧にも私たちを元の世界に帰して下さった。
モルモットとしての未来を選んだ、っていう意味でなら、この宇宙も奴らの監視下なんだろうけどさ。
今も上から見てんのかな、あの性格悪いヨダレ魔人。まあ、気にしても仕様がないけど。
ジェントルメン復活計画だとか、螺旋王による新世界創造計画だとか、そういうのはもう簡便願いたい。
好きな本書いて、好きな本読んで、それで余生をすごす……これ以上のハッピーエンドってないでしょ。
ああ、うん。そうだな。『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』を書いて、つくづく思う。
みんな、本が好きなんだ。
私も、これ読む奴らも。
◇ ◇ ◇
執筆疲れで爆睡……といきたかったんだけれど、どうにも気持ちが高ぶってて、ベッドに沈む気にはなれなかった。
夕暮れ時。私は散歩に出てみることにした。普段は歩かない海沿いの道が、なんとも新鮮で心地いい。
……次、なに書こうかな。
こうやって散歩している間でも、私はそんなことばっかり考えている。
作家の創作意欲ってやつは、留まることを知らない。それはプロだろうがアマだろうが同じ。
センセーに会う前、作家になる以前からこうだった。作家、菫川ねねね先生はいつだって全盛期だ。
本を書きたい。本を読んでもらいたい。
物語を、世界を、お話を創りたい。
これから先の未来、私はどれだけの作品を残せるだろうか。
明確な数なんて考えても出てこないだろうけど、たぶん膨大な数になるだろう。
想像したら、なんだかうずうずしてきた。頭の中が構想で広がっていく。
次回作の主人公は……傲岸不遜で、気丈な、王子様みたいな奴にしよう。
ガッシュとギルガメッシュを足して二で割ったような奴。
今思えば、あそこで出会った奴らはみんなキャラ立ってたな。
小説から抜け出たような、キャラクターのモデルにぴったりの個性派揃いだった。
いい刺激になったよなぁ、あれ。閉鎖された空間だからこそ、創作意欲も湧き立つってもんだ。
やっぱ、ちょっと懐かしい。
あんなのは二度とゴメンだけど。
あいつらにもう一度会える機会があるとしたら――
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
――私が物思いにふけながら、海沿いを歩いていたときのことだ。
すぐ傍の海岸が突如として爆音を上げ、濛々と白煙を見せている。
「おいおいおい、なんだってんだいきなり?」
季節はずれの花火、なんて規模じゃない。
紛れもない、あの世界では日常茶飯事だった爆発が、戻ってきた日常でも目の前に。
そんなまさか、という思いを胸に抱きながらも、私は興味本位で近づいてしまった。
爆心地の傍まで歩み寄って、晴れていく情景を見やる。
と、白煙の中から小さな影が飛び出してきた。
私の足元まで転がり込んでくると、その人影は幼い声で、
「クッ……忌々しい奴らめ! 雑種の分際で我の命を狙おうなどとは、身の程知らずも大概よ!」
――頭の中のイメージ、次回作の主人公候補と、目の前の少年が合致した。
この、金色の鎧を着込んだ、金髪の生意気そうなガキんちょ。誰かと被る。
そう、ギルガメッシュだ。私の新作をいち早く読了した、ファン第一号。
そのギルガメッシュをまんま子供にしたような、ガッシュと合体させたような少年がそこにいた。
「……おい。こんなところでなにしてやがる英雄王」
「ウヌウ!? 女、貴様いつからそこにいた! 我の背後を取るとは、雑種にしてはなかなか……む!?」
ガッシュと被るのはその見た目よりもまず、こいつが大事そうに抱えている本が原因だ。
色は赤ではなく金色。メッキでも貼り付けたような目に悪そうな金ぴかだ。装丁だけでいくらかかるんだろうか。
その金ぴかの本が、よりにもよって輝いている。金色が、というわけではなく、光を放っているんだ。
よりにもよって……この菫川ねねねに反応するかのように。
「雑種よ! 我の本を拝読することを許す! 内容が理解できるかどうかだけ聞かせろ!」
ギルガメッシュもどきから本を渡され、私はページを開いていく。
……読めるし。ザケルとか書いてるし。思わず、笑いたくなった。
いや、無理。我慢できるかこんなもん。私は静かに爆笑した。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「ウヌウ、なにを呆けているのだ雑種!? 読めるのならば、貴様が選ばれし存在ということなのだぞ!?」
こっから先は聞かなくてもだいたいわかる。
「貴様は光栄なことに、我のパートナーに選ばれたのだ! 人間と魔物が組んでの戦いの儀!
即ち……千年に一度開かれる、魔界の王を決める戦いの! それも優勝候補たる我のパートナーにな!」
予想どおりだ。すがすがしいくらいにお約束だ。
私の世界とはまったく関係ないことだと思ってたんだけどね……ハハハ、スゲーな、多元宇宙。
「む――本を構えろ雑種! 奴らが再び仕掛けてくるようだぞ!」
ギルガメッシュもどきが警戒を訴え、それでも私は笑うことをやめられなかった。
白煙の晴れた向こう側から、海岸を爆破しギルガメッシュもどきを追い詰めただろう二人組が姿を現す。
もちろん、人間と魔物のタッグだ。片方は小柄で、片方は長身の人間。手には本を持っていた。
「ふん。ここまでがんばって逃げてきたようだが、そろそろ観念するのだな。トドメを刺すぞマロキヨ」
「おう。魔物の王を決める戦い、俺とおまえの初勝利を飾るとしようじゃないか。いくぜシュガッ」
まんま顔を不細工にしただけのニセ清麿とニセガッシュじゃん。一昔前のロボアニメかっつーの。
ああ、つまりあれだ。私の宇宙でも、魔界の王を決める戦いだかが人知れず始まるってわけね。
んで、私もそれに巻き込まれる。紙使い騒動の次は螺旋力騒動、そんでもって魔物かよ。
こっからなんだ、ブリタニアが日本を占領でもするのか?
それとも巨大隕石を返すために蝕の祭なんてのが始まったり?
錬金術師に恨み持った馬鹿が軍に喧嘩売るって展開は?
ガンダムファイターやカウボーイが助けに来ても歓迎しねーぞ。
いや、待てよ……そういやそもそも、私はどういう条件でここに帰されたんだっけ?
条件出したのがルルーシュで、それを承諾したのがアンチ=スパイラルだったよな。
つーことは、この展開は二人が運んできた災厄とも解釈できるわけだ。
ちょっと思い出してみるぞ……。
『―― 貴様には俺たちを長期的、かつ特殊な刺激の少ない場所に移す義務がある!! ――』
『―― 自らモルモットの道を選ぶとはね。期待はしないが、せいぜい長い目で見させてもらうことにするよ ――』
長期的かつ特殊な刺激の少ない場所、ねぇ……。
期待はしないが、せいぜい長い目で見させてもらう、ねぇ……。
おい、話が違うぞタコすけ。
「さあ雑種! 我のパートナーとして、その務めを果たせ!」
「ふ、ざ、け、ん、なぁあああああああああああああああああああああ!!」
私は、力の限り叫んだ。
私は、力の限り本を遠くに投げ飛ばした。
私は、力の限りハッピーエンドを星に願った。
おいアンチ=スパイラル! やっぱあんたみたいなのじゃダメだ!
この菫川ねねねに筆を貸せ! 特別にあんたのためだけに執筆してやる!
本当のハッピーエンドってのがなんなのか、教えてやるからそこに正座すれ!!
◇ ◇ ◇
―― アメリカ 闇酒場『蜂の巣』 ――
おい、また来たのかおまえ。
なに? 作家は世界を創ることを放棄しただと?
なになに……なるほど。いや、それはあたりまえだろう。
彼女は他人から与えられた物語をただ綴るだけの機械じゃない。
創作家の中にはそういったことをする奴もいるがな。彼女は違う。
彼女は自分の意思で世界を、物語を創造する作家、というだけの話だ。
創作活動とは、おまえのような部外者にせがまれてやるものじゃない。
創作と創造は表裏一体とは言ったがな、なんというか……。
……というより、わざわざ試しにいったのか?
ひょっとしておまえ、暇なのか?
ああ、そうか。
まあいい。
【アニメキャラ・バトルロワイアル2nd R.O.D(シリーズ)――――HAPPY END?】
以上、投下終了です。
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。
,
よくぞ完結した
GJ!
全エピローグの投下、これで終了かな…乙でした。
保守
保守よりもなんかで埋めた方が良くないか
埋め
【糞スレランク:C】
犯行予告?:0/916 (0.00%)
直接的な誹謗中傷:12/916 (1.31%)
間接的な誹謗中傷:0/916 (0.00%)
卑猥な表現:51/916 (5.57%)
差別的表現:5/916 (0.55%)
無駄な改行:2/916 (0.22%)
巨大なAAなど:3/916 (0.33%)
同一文章の反復:0/916 (0.00%)
by 糞スレチェッカー Ver1.26
http://kabu.tm.land.to/kuso/kuso.cgi?ver=126 まだまだ他に比べたらマシでしょう
埋めるにしては結構残っているな
919 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/12(金) 17:10:54 ID:HONtoeyt
今ならあげれば埋まるだろう
うめ
テスト
梅
000 THE OPENING ◆P2vcbk2T1w ロージェノム、Dボゥイ、相羽シンヤ、モロトフ
001 JING in ROYAL『E』 ◆hNG3vL8qjA ジン、ヨーコ
002 この血塗られた指先で救えるのなら ◆oRFbZD5WiQ 小早川ゆたか、Dボゥイ
003 嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w 糸色望、カレン・シュタットフェルト
004 人の名前を変えんじゃねえ!!(前編)
人の名前を変えんじゃねえ!!(後編) ◆WcYky2B84U 素晴らしきヒィッツカラルド、カミナ、ビクトリーム
005 シモン、あなたはどうしていますか? ◆XzvibY6nJE ニア、ドーラ
925 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/12(日) 00:05:59 ID:X/HydRJS
保守
006 それが我の名だ ◆tu4bghlMIw 結城奈緒、ギルガメッシュ
007 ラピュタの雷 ◆5VEHREaaO2 ムスカ大佐、エドワード・エルリック
008 泥棒の少女は知らず探偵に力を教える ◆d5V5t.thbI 金田一一、ミリア・ハーヴェント
009 バトルロワイヤル開始! ファイター大集合! ◆SEE7n9Y/L2 シュバルツ・ブルーダー、衛宮士郎
010 ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs 柊つかさ、風浦可符香、柊かがみ
011 Cat Blues ◆P2vcbk2T1w スパイク・スピーゲル、読子・リードマン
012 主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k ルルーシュ・ランペルージ
013 熱血ハートのサイボーグ ◆10fcvoEbko クロ、八神はやて
928 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 08:22:49 ID:u48RxDV5
あげ
014 「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ ジェレミア・ゴットバルト、シャマル
015 立つ鳥後を濁さず ◆AZWNjKqIBQ 木津千里
016 鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o ティアナ・ランスター、クアットロ、キャロ・ル・ルシエ
017 せめて歩ませよ我が外道の道を ◆AaR9queMcU ニコラス・D・ウルフウッド
018 破壊者二人と仮装強盗 ◆ARkjy9enog スカー(傷の男)、ヴィシャス、アイザック・ディアン
019 線路の影をなぞる者(レイルトレーサー) ◆hsja2sb1KY リザ・ホークアイ、クレア・スタンフィールド
020 番外バトルってレベルじゃねーぞ!! ◆g6Z9FGx6uY ミー
021 怒れドモン! 恐怖のバトルロワイアル ◆/eRp96XsK ドモン・カッシュ、エド
931 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:35:47 ID:rbT0B6ev
あげ
932 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
コスプレイヤー、マニア、おたく、占い師 募集!
ライブチャット「マニアカデミー」