あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part213
しえん
まあバルタン星人なんてウルトラマンたちに滅ぼされたようなもんだがな支援。
「おめぇさんこそ、なかなかの腕前みたいだな。使い手に持たれるのが一番だが、あんたみたいな手だれに
使ってもらえるのもうれしいな」
やっと来た出番に、デルフもけっこううれしそうだ。アニエスのほうもデルフの感触が気に入ったらしく、まるで
棒切れのように軽々とデルフを振り回している。
「では、やるか……それっ!!」
高く投げ上げた宇宙カメラに向かってアニエスは跳び、その天頂で華麗に一閃して宇宙カメラを四分割した。
「ルイズ、とどめだ!!」
「まかせなさい!!」
最後に、ルイズが爆発で吹っ飛ばすと、宇宙カメラは二度と復元不能なくらいに粉々になって、風に消えていった。
ルイズとしては、失敗ばかりの自分の爆発が当てにされるのは気持ちのいいものではないが、派手に吹っ飛ばして
気も晴れたから差し引きプラスということで納得していた。
やりきれない思いは残る。しかしこれでようやく終わったのだ。
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか、魔法学院へ」
これでやるべきことは全てやった。ヤプールもあれだけ念を入れた作戦が失敗した以上、しばらくは大人しく
しているだろう。
ルイズに言われて、才人は満足げなデルフを受け取ると、ルイズといっしょにアニエスに一礼をした。
「それじゃあ、俺達はこのへんで」
「ああ、今回もお前には世話になったな」
「いえ、今回はアニエスさん達がいたからですよ。正直俺なんか大して役に立ってませんって……じゃあ」
最後に、固く握手をして二人は別れていった。
その背中を見送りながら、アニエスはミシェルに振り向くことなく問いかける。
「ところで、お前は私にずっと魔法が使えること、すなわちメイジであることを隠していたな……素性には謎が
多かったが、お前はずっと剣士として振舞ってきたのに」
「……私は、確かに元貴族の家柄ですが、それは隊長といえども……」
「言いたくないなら、別に無理に聞こうとは思わん。しかし、なぜずっと隠し通してきた禁忌を破ってまで魔法を
使った?」
「それは……自分でも、うまく説明できません。使うつもりは、なかったのですが……隊長、私は……」
素性を偽っていた以上、隊を放逐されるのが当然だろう。長年積み上げてきたものを一瞬で突き崩される
ことになるが、今更仕方も無い。
「その気持ちがあれば、銃士隊としての資格は充分だ。お前が何を望んでいるのかは知らんが、銃士隊として、
いや一個の人として誇りを持ち続けるのならば、他に何も言わん」
「……隊長、そんな甘い判断でよいのですか? 私はあなたをだましていたのですよ」
まさかのアニエスの回答に、ミシェルは正直驚いていた。
得体の知れないものを懐に入れておくのだけでも普通じゃないのに、自分の素性を一切探ろうとはしてこない。
しかしアニエスは事も無げに言った。
「お前が明確に私を裏切ったなら、遠慮なく私はお前を斬ろう。しかし、裏切る可能性があるだけで部下を
切り捨てるようなやり方は、私は好かん」
「私が、ここであなたを殺して、隊長の座を奪いに来るとは考えられないのですか。今なら侵略者と戦って殺された
といえば理由は成り立ちますし、正直、正面きって戦えば私はあなたを倒せるだけの自信はあります」
「お前こそ、メイジ殺しの私を見くびるな。第一、お前は私が見込んで副長に据えた、その判断は今でも間違っている
とは思わん。ツルク星人のときも、中途半端な覚悟の持ち主が、命を懸けて戦えるわけがない。どういう根を
持っているにせよ。トリステインを愛しているという一点においては、私と同一だろう」
「……」
もう、ミシェルには言うべき言葉が何もなかった。
確かに、彼女には口に出せない過去の闇がある。それは、銃士隊としては決して許されることではないだろう。
本当のことをいえば、ここでアニエスを暗殺することも視野に入れていたのだが、それでもなお平然と自分を
そのまま使おうという、この人は大馬鹿なのか、それともとほうもない器量の持ち主なのか。
「ただし、どんな理由があるにせよ。お前がこの国に仇なす存在になったら、私はお前を殺す。それだけは覚えておけ」
「……はっ!」
「では、我々も戻るぞ。部下達が待っている」
アニエスはゆっくりと、停めてある馬の元へと歩き始めた。
そして、仕えるべきたった一人の指揮官の背を見ながら、青い髪の女騎士は、遠い昔に失った懐かしい何かが、
胸の中に戻ってくるような、そんな感触を知らず得始めていた。
続く
これでワイルド星人編は終わりです。数多くの支援、どうもありがとうございました。
見返してみればセブンからはこれが初でしたね。
それにしても、銃士隊率高いな、私の作品は。これからも事あるごとにこの二人は出てくることになると思うので
よろしくお願いします。
それと私も『大決戦!超ウルトラ8兄弟』のDVD買いましたが、何回見ても超かっこいいです。特にセブンの
『イリュージョニック・スラッガー』はすげーって思いました。いつか作中でグリッターメタリウム光線を撃たせてみたいです。
皆さんの応援のおかげで35話までこれました。
次回は再び魔法学院に戻ります。では、また来週。
乙でしたー
…って、8兄弟の映画もうDVDになってたのか!?
買いに行かないと…。
乙。
ウルトラシリーズは後味の悪い中途半端な終わり方もチラホラあるが……まあ、さすがに2次創作でそこまでやる必要も無いよなぁ。
そう言えばGUYSのアーカイブドキュメント内では、ジャミラは「国際会議場を襲った、ただの怪獣」と扱われているとか。
この分だとギエロン星獣も似たような扱いなんだろうなぁ……。
ワイルド星人がワルド星人に見えたのは俺だけじゃないはず
お疲れ様です
キングジョーの残骸がハルケギニアで発見されてアカデミーが調査してたら
起動、暴走してしまうとか
GUYSドキュメントとやらではメイツ星人はどんな扱いなのだろう
平成ウルトラは全く見てないけど劇場版は見てる
アツいぜアツいぜアツくて死ぬぜー
>>901 メイツ星人については、取りあえず事件のあらましは記録されている。
コノミちゃんだかテッペイ君だかがドキュメント内を調べてたくらいだから、一般公開はされてないと思うが。
自分がしたことはただ疲れて眠り、十分に睡眠をとったから起きる。ただこれだけのことなのに
スレッドをチェックしてみればこんなにもたくさんの作品が投下されてるではありませんか
嗚呼、なんと素敵なことでしょう!
ビバ!ゼロの使い魔! ビバ!クロスオーバー!
でもこの素敵な作品たちは、作家の手で一つ一つ丹念に練り上げて作りあげられたものなわけで。
なにはともあれ作家様方、お疲れ様です。
体や私生活に害を及ぼさない程度に頑張ってください。
>>819 ああなるほど。至らないところがいくつもありましたね。
とりあえず、行頭の一字下げは続けるとして、他のことは以後気を付けていきます。
本当にありがとうございました。
それはそうと、作品投下時以外にトリ付けとくのってどうなんだろうか?
今回は、どうしても
>>819様に"ありがとう"を言いたかったから付けてみたんだが
ってか長レスごめんなさい。
>>903 落ち着いて。
顔洗ってコーヒーでも飲んで目を覚まして。
ウルトラ5番目の使い魔さん乙でした
今回の話はウルトラシリーズにもまれにある重い話でしたが
それを含めてこのような話を作ったウルトラ5番目の使い魔さんは凄いなと思いました
ふと思いついた。
トップをねらえ2!のノノが召喚されたらどうだろう?
・・・
・・・
・・・ノノの描写難しくて自分には無理だった・・・orz
>>906 まとめwikiを
ゼロの七号で
検索しろ
>>906 ゼロの七号を読め。何気にギーシュが大出世してる……ああ、地位じゃなくて能力の方ね。
この召喚されましたシリーズを見てると
脳内BGMで最強○×計画が流れる俺は少し寝てくる。
子作りは無理だろ・・・俺・・・
>>897 ウルトラ5番目の使い魔さん、今回もGJ!!でした。
確かに、「ウルトラ」には、「故郷は地球」「怪獣使いと少年」「MAC全滅」等、
救いの無い後味の悪い話も多々ありましたね。
今回のAは今までで1番、大苦戦した戦いでした。これから更に超獣は手強くなるんだろうな。
あと、Aの掛け声の再現率マジパネエ!www
最後に、故郷の為に命を掛けたワイルド星人の死に、黙祷ーーー!!
>>840 >>超人同士だと意味がないからやらないけど超人には基本的に巨大化する能力があるとかいう設定があったような
巨大なのはあくまで『フーケの操るゴーレム』であってフーケ自身では無いから、じゃ無いかな
おそらくウォーズマンが巨大化してゴーレムと同じ大きさになったらフーケ自身も巨大化、操るゴーレムはフーケに比例して更に大きくなる
そう考えたら回りの被害がいたずらに大きくなるだけだしウォーズマンが巨大化せずに戦ったことにも納得できる
>>912 >フーケ自身も巨大化
ちょっと待ってくれ。
今回のスレは1000行くのが先か、500kb行くのが先か
ウルトラの人乙
めちゃくちゃ熱い展開だなw
俺こういうの大好物だ
18:45から、風雲アルビオン編の始まりを投下したいと思います。
24KBくらいあるけど大丈夫だよね?
8レスくらいです。
ルイズの就寝は遅い。夜遅くまで勉学に励む彼女は、ゆえに一度寝入るとまず目を覚ますことはない。
そんなわけで、朝になって、アプトムに起こされないかぎり目覚めるはずのない彼女は、しかし今回に限って自分の洩らした寝言で目を
覚ます。
「いけない人ですわ。子爵さまは……。え? そんな、恥ずかしいですわ。って、あれ? なんでアプトムが出てくるの? って今度は誰?
アンタ誰よ?」
何の夢を見てるんだか? とアプトムが見ていると、パチリと眼を開いたルイズと眼が合う。
「あれっ? あれっ? えーと、わたし何か寝言を言ってた?」
「いや、聞いてない」
さらっと嘘をつくアプトムに、ルイズはうーんと頭を捻る。寝言など人に聞かれないにこしたことはないが、さっきまで良い夢を見てい
た気がする。それがどんなものだったのか、目覚めと共に忘れてしまったので思い出したいと質問をしてしまっていた。
が、睡眠時間の足りていない彼女は、すぐにまた眠りの世界に旅立つ事になるのだが、その前に、いつも黙って自分に従ってくれている
アプトムの姿に、不意にある考えが頭をよぎった。
アプトムは、最初に召喚した時から、故郷に帰ることを望んでおり、ルイズに従っているのも、いつか彼女が彼を帰す魔法を作り出すと
いう約束によるものである。
しかし、よくよく考えてみると、サモン・サーヴァントとは対象の前に召喚のゲートを開く魔法であり、そこを潜るかどうかは、相手の
意思に委ねられている。
ならば、彼が召喚されたのは、彼自身の意志によるものではないだろうか? そんな疑問を思い浮かべた彼女は、特に深い考えもなく口
に出し、「事故だ」という答えを聞いて納得し、次に起きた時にはそんな質問をしたことも、夢のことも完全に忘却してしまうのであった。
そして、ルイズが寝入ったのを確認して、アプトムは一人考える。
思い出すのは、彼が召喚されたときに融合捕食をしかけた斥候獣化兵。今思えば、ルイズが召喚しようとしていたのは、あの獣化兵であ
り、彼のゾアノイドはそれに応えてゲートを潜ろうとしていたのではなかったか。つまり自分は、そこに割り込んだ乱入者であり、そのク
セ自分を帰せと無理難題を言っているのではないか。
だが、だからといって地球に帰る事をあきらめることは出来ない。彼には自分の生き方を変えることなど出来ないのだから。
まったく、何故今頃になってそんな事を聞いてくるのだとアプトムはルイズを睨みつける。
初めて会ったときに言われたのなら、知ったことかと無視もできたろうに、短くとも共にいた時間のせいで多少なりとも情の移ってしま
った今では、気にせずにはいられないではないか。
そんな主従の、どうという事のない出来事があったある夜、一人の女性の元に不審者が現れていた。
女性の名はミス・ロングビル。学院長秘書の立場を持つ女性である。
夜遅くまで起きていた彼女が何をやっていたのかというと、手紙を書いていた。
ミス・ロングビルには、もう一つの名がある。土くれのフーケという盗賊としての名である。彼女がこの学院に勤めるようになったのは、
学院の宝物庫にあるマジックアイテムを盗み出すためであり、盗賊としての仕事が終わればすぐにでも出て行くつもりであった。
そして、今回の仕事が終わったら、一度妹の元に帰るつもりであったのだが、その仕事が変な失敗をして帰る機会を逸してしまった。
仕事が失敗した今も彼女が、いつまでもこの学院に留まっていることに特別な理由はない。ただ単に、出て行くきっかけがないからであ
り、学院長秘書という身分に支給される給料が、仕事の失敗の埋め合わせに充分なものであるという理由からである。
そんなわけで、自分が盗賊などというヤクザな仕事をしていることを知らない、遠く離れた地に暮らす妹に、帰るのが遅くなるという言
い訳を並べた手紙を書いていた時、その男はやってきた。
容量を喰わないように支援
その男は風と共に現れた。
開いた窓から吹き込んだ微風にカーテンが揺れた時、白い仮面で顔を隠したその男は月明かりに照らされ立っていた。
「『土くれ』だな?」
問いではなく確認ですらない断定に、しかし彼女は何を言われたのは分からないと、とぼけて見せる。
学院長秘書のミス・ロングビルと盗賊の土くれのフーケを繋げる事実を知るものは、彼女の知る限り一人しかいない。そして、その一人
は決してその事実を人に話さないだろう確信があったから。だが、男の次の言葉に彼女の演技は引き剥がされる。
「再びアルビオンに仕える気はないかね? マチルダ・オブ・サウスゴータ」
自身以外は妹ぐらいしか知らないはずの名を突きつけられ、彼女は蒼白になる。
「あんた、何者だい?」
「質問しているのは、こちらなんだがな」
くつくつと喉を鳴らして笑う男に、彼女は否と答える。アルビオン王家は彼女の仇である。父を、家を、全てを奪った敵だ。そんなもの
に仕える気などないと怒鳴りつける。
そんな彼女に男は笑いを収めることなく、勘違いするなと返す。
「王家に仕えろなどと誰が言った? アルビオン王家は、じきに倒れる。お前が仕えるのは、王家が倒れた後の我々有能な貴族が政を行う
アルビオンだ」
有能な貴族ね。と彼女は呟く。そういえば聞いたことがある。今、アルビオンでは王家と貴族が争い、王家が劣勢にあると。
もっとも、それは彼女には関係のない話である。
かつて、アルビオン王家に仕えた貴族の家に生まれた彼女は、しかし今はもうその王家に恨みはあっても忠誠心などない。かといって、
王家に復讐をしようという考えもない。かつては、そんな想いもあったが、自身と妹を食べさせていくのが精一杯の最初の生活と、その後
の多くの孤児を抱えた現実の前に、磨耗した。
「へえ? で? 王家を倒して何をしようってんだい? アルビオンの新しい王様にでもなりたいのかい?」
バカにしたように笑う彼女に、男は冷淡に答える。
「我々はハルケギニアの将来を憂う高潔な貴族の連盟だ。ハルケギニアは我々の手で一つになり、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を取り
戻すのだ。アルビオンなど、手始めにすぎんよ」
高潔ときたか。と彼女は内心で笑う。
ご立派な理想を語る者は、自分自身それを信じてなどいないと彼女は知っている。信じるのは、駒として使い捨てられる者たちだけだ。
彼女は捨て駒になどなる気はない。大体、アルビオン一国を支配できたところで、ハルケギニアを統一するなど夢物語だし、仮にそれが
出来たところで聖地にはエルフがいる。
この世界で最強の魔法使いたるエルフたちに勝てるものなど、この世界に一人も……、いや、二人くらいならいるような気がするが、そ
れは置いといて、ハルケギニア中の貴族を集めても勝ち目などない。
ついでに言えば、彼女はとある事情からエルフという種族に特に悪感情を持っていないし始祖ブリミルに対する信仰も薄い。ので、聖地
なんかエルフにくれてやれよという想いがある。
とはいえ。
今更こんなこと質問するのも何なんだが、容量チェックってどうやるんだ支援。
「『土くれ』よ。お前には選択することができる」
「あんたらの手下になるか、ここで死ぬかを?」
皮肉で答えてみるが、男は悪びれもせずに「そうだ」と頷いてくる。
最初から男には、彼女に選択の余地を与えるつもりなどない。べらべら自分たちの目的を喋ったのも、そういう理由があるからだ。
戦って勝てるとは思わない。土メイジの自分は、正面からの戦いに向いていないと彼女は自覚している。
だから彼女は、「まあ、いいさ。アルビオン王家には恨みがあるし、エルフを倒して聖地を取り戻すってのも面白そうだ」と嘘をつく。
罪悪感はない。誇りなどない。生きるためならなんでもする。それが、彼女の生き方だから。
「それで、これから旗を振る組織の名前は、なんていうんだい?」
「レコン・キスタだ」
こうして、ミス・ロングビルという名の学院長秘書は、学院から姿を消すことになる。休暇届を提出してであるが。
それが、本当に単なる休暇で終わるのかどうか、それは彼女自身にも今は分からない。
その日、学院は喧騒に包まれていた。
いつも通りの朝を迎えて、いつも通りの授業が始まると思われた日常に、この国トリステインの王女アンリエッタが訪問するとの連絡が
入ったからである。
当日になって急に連絡を入れてきたり、それを歓迎したりと、この国の貴族というやつは、刹那的な情動で生きているのか? などとア
プトムは思ったが、口には出さない。これも、いつも通り彼には関係のないどうでもいい事だからである。
そんなわけで、魔法学院の正門をくぐる王女一行を整列して出迎えるルイズたち学院の生徒を、アプトムは塔の屋根に登り、そこから興
味なさげに見ていた。
貴族ではなく、学院で働く使用人でもない使い魔という立場のアプトムには、王女が来たからと言って何かをしなければならない義務は
なく、自分から何かをしてやろうという意志もない。ついでに王女というものに興味もない。
しかしまあ、部外者が多く学院にやってきているのにルイズから眼を離して何事か起これば困ったことになるなと、遠くから観察してい
たアプトムは多くの生徒たちが王女に注目している中、ルイズが別の人間に視線を向けたことに気づいた。
それは羽帽子をかぶり、鷲の頭と獅子の体を持つ幻獣に乗った口ひげも凛々しい男であった。
知り合いか? と思ってみるが、本人に問いただしでもしない限り分からないことであるし、ルイズの知人であったとしても自分とは関
わりのないことだと、彼はその男の事を考えるのをやめる。翌日には、その男と顔を合わせることになるなどと、この時点では考えもして
いない。
ついでに、ルイズの隣に立っているキュルケが、その男を切ない眼差しで見ていたりしたのだが、その事にはアプトムは気づかなかった。
キュルケはアプトムを嫌い敵視していたが、アプトムにとってキュルケはよくルイズと話をしている少女だという程度の認識しかなかっ
たのである。
なんにしても、明日からはまた、代わり映えのない毎日が続くのだろうというアプトムの予想は、その日の夜に覆されることとなる。
いつもなら机に向かっているはず時間に、惚けた顔でベッドに腰かけたルイズに、さてどうしたものかとアプトムは考える。
ルイズに何があったのかなどアプトムには分からない。昼間見た男が関係しているのだろうという事は分かるが、それで何故ルイズがこ
ういう状態になるのかなど彼の知るところではない。
分からないなら聞けばすむことだろうが、彼がルイズとの間に望んでいるのは契約という感情を差し挟まない関係である。相手の内面に
踏み込むような行動は避けたいところだ。
それならば、相手の心情など気にせず、魔法を使えるように勉強をするか寝ろ。とでも言えばよさそうなものだが、昨夜の寝惚けたルイ
ズの言葉に多少の罪悪感を覚えてしまった今のアプトムには、それも難しい。
本当に、どうしたものだろうかと悩んでいたところに、人の気配を感じたアプトムは扉の方を振り向き、そして扉をノックする音を聞い
た。
専ブラ入れてたらわかるよ支援
支援
珍しいな。そう思ったのは、彼が知る限り、この部屋に誰かが尋ねてきた前例がなかったから。この学院でもっとも多くルイズと言葉を
交わすキュルケですら、この部屋に尋ねてきたことはない。
だから、彼が扉の外にいる者に対する警戒を解かなかったのは当然の事であろう。だが、その警戒がルイズに向けられているはずもなく、
ノックを聞いたルイズが、はっと顔を上げ扉に走るなどとは想像もしていなかったアプトムが止める間もなく、彼女は無警戒に扉の向こう
にいた黒い頭巾をすっぽりかぶって顔を隠した少女と対面していた。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは夢見がちな少女である。そうでなければ、どれだけ努力してもかなわな
かった魔法を使うという夢をいつまでも持ち続けることなど出来なかっただろう。
そんな彼女は、自分にとって都合の悪い想像というものをあまりやらないが、逆に都合のいい妄想ならばよくする。
昼間、王女一行の一員として学院にやってきた一人の男、いわゆるヒゲダンディーは彼女の知り合いである。しかも、ただの顔見知りな
どではなく特別な関係と言っても良い相手である。彼と前に会ったのは、十年程前のことだが、それでも彼女の中の彼に対する想いは色あ
せずに残っている。
そして、それは彼も同じだろうか。同じであって欲しいと感じる彼女は妄想の翼を羽ばたかせる。
王女に随伴してきた彼に、ルイズは一目で気づいた。ならば、きっと彼も自分に気づいたはずだ。そうなれば彼は自分に会いに来てくれ
るだろう。そうでなくてはならない。何故なら、彼は自分の……。
そんな事を考えていた時に、来客があったのだから、彼女がヒゲダンディーが尋ねてきたのだと思い込むのは当然の事で、開いた扉の向
こうにいたのが期待していた相手ではなかったと気づいてフリーズしてしまったのも致し方ない。
そんな彼女に構わず、黒頭巾の少女は部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると、ルーンを唱え探知の魔法を使って、この部屋が監視されてい
ないか確認し、そうして初めて頭巾を取った。
そこにあった顔は……、
「姫殿下!」
そうルイズが呼んだとおり、この国の王女アンリエッタであった。
アンリエッタ・ド・トリステインは、とても恵まれた人間である。
彼女は現在この国で唯一といっていい王位継承権の持ち主であり、優秀な水のメイジであり、美しい容姿であり、多くの人に好かれるま
っすぐな気性の持ち主である。
そんな彼女であるから、多くの人間に好かれるし、甘やかされもする。
彼女には、望んだことが叶えられなかった経験が非常に少ない。
それは、王女と言う身分のせいでもあるし、基本的に我侭を言わない控えめな性格のせいでもある。
だが、そんな人生経験は当然のごとく彼女の人格形成に多大な影響を及ぼす。
よほどのことでない限り、自分の望んだことは必ず叶う。そんな歪んだ思考を持つようになってしまったのも、そのよほどの基準が多く
の人間の考えるそれと大きく乖離してしまっているのも、彼女一人の責任とは言えまい。
そんな彼女が今回望んだのは、恋する男性に送った恋文の回収である。
>>921 ギコナビなら右下に現在のデータの使用量が示されてるぜ
ちなみに今のところ485kBぐらい
辛辣だが的確な評価だ支援
ヒゲダンディーてww支援。
>>923 やっぱ導入するべきかなぁ支。
アルビオンという国がある。その国では、現在貴族たちが王族に対し反乱を起こし内乱が起こっているのだが、その戦で王家が倒れる事
は、もはや避けられない事態となっており、勝利した後の反乱軍は、次にトリステインを攻めるであろうというのが、この国の政治を取り
仕切る者の考えであった。
アルビオンに比べて、トリステインの国力は低い。
単体でアルビオンに勝つことができるわけもなく、ゆえに他国と同盟を組む事に決めたトリステインはゲルマニアの皇帝の下に、王女を
嫁がせることにした。
この国の唯一の王位継承者を他国に嫁がせることに反対するものがいなかったわけではないが、反対する者たちに代案があったわけでは
ない。結局この決定は覆らなかった。
さて、この決定に対して、アンリエッタに不満がなかったわけではない。彼女には恋する男性がいて、その相手と結ばれる未来を夢見て
いたりもした。
しかし、このおめでたい頭の持ち主である王女にも、それが自分には叶わぬことと理解できていた。
とても不本意ではあるが、ゲルマニアに嫁ぐ決心をした彼女は、その障害になるかもしれない、ある品物のことを思い出した。
それが、アルビオンの皇太子ウェールズに送った恋文である。
それのことを思い出したアンリエッタは、激しくうろたえた。
アルビオン王家が倒れ、ウェールズ王子が持っているはずの、その恋文が貴族派の者たちの手に渡ってしまえば、自分の決死の覚悟は無
駄になり、この国の民の平和も脅かされる。
ここまでは、ごく普通の思考であるのだが、ここからがアンリエッタという少女の歪んだ思考である。
恋文を回収しなければならないと考えた彼女は、まずどうやってと言うもっともな疑問を頭に浮かべた。
この国の政治を取り仕切る人物であるマザリーニ枢機卿に相談するという案は真っ先に捨てた。
あるいは、誰よりもこの国のことを考えているのだろうが、『鳥の骨』などとも言われる男を彼女は嫌っている。
そもそも、アンリエッタのゲルマニアへの輿入れの話を持ち出したのも彼なのである。それが、最善の選択だと理解しても彼女が好意を
持てなくなるには充分である。
では、他の誰にと王宮の貴族たちの顔を思い浮かべて、それを切り捨てた。嫁ぎ先が決まった娘が、他の男に送った恋文を回収しようと
しているなどという醜聞を迂闊にもらすわけにはいかない。大体、王宮の貴族たちは、最終的に自分のゲルマニアへの輿入れに同意した者
たちである。そんな連中に自分のプライバシーを明かす気にはならない。
では、誰に頼むかと考えて、彼女は自分の親友とも言える幼馴染のことを思い出した。
貴族の誇りを重視しながらも、自分の心を大事に思いやってくれて、王女にあるまじきいろんな我侭も二つ返事で聞いてくれる大切な
『おともだち』ルイズ・フランソワーズのことを。
他人が聞けば、それは本当に友達なのかと疑問を感じてしまう認識だが、あいにくと彼女には、他に本音を語れる親しい相手というもの
が当のルイズ以外にいないので、この認識に疑問を感じたことがない。
かくして、アンリエッタはルイズに会い、その事を話し頼み込み、快く快諾し更には望まぬ婚姻をしなくてはならない彼女を慰めてくれ
さえした友人に、ああ、これで全ては上手くいくと安心した。さすがに、その回収すべき手紙が恋文であるとは言わなかったが。
それが、戦地にろくな魔法も使えない世間知らずの小娘を送り出すという、危険どころではない所業であるという自覚はない。
ルイズが、失敗するかもしれない。それどころか死ぬかもしれないという可能性には思い当たらない。彼女の望むことは、よほども事で
ない限り叶うのだから。
これは、アンリエッタの頼みごとに、いつも疑問を差し挟まず素直に聞くルイズにも問題があるのだが、ルイズにも言い分がある。
姫さまのやることが間違いだったことがない。それが、彼女の認識なのだから。
実際、ウェールズに送った恋文を回収しようという考えに間違いはない。頼む相手を間違えているだけで。
笑うしかねぇorz支援
なんにせよ、王女の頼みを受けたルイズは、かたわらにいるアプトムに顔を向けた。その顔には「もちろん手伝ってくれるわよね」と書
いてあり、彼は任せろと言わんばかりにルイズの頭に手を置き。
「わかった。その手紙は返してもらってくるから、大人しく待っていろ」
と言った。
アプトムが快く承知してくれたことに気をよくしたルイズはニッコリ笑い。そして、アレ? と疑問を覚えた。
今この男は、なんと言っただろうか? 大人しく待ってろ? 待ってろ?
「今、待ってろって言った?」
「言ったぞ」
うん。やっぱり聞き間違いじゃなかった。つまり、アプトムは一人で行くから自分にはついてくるなって言ってるわけだ。
「って、なんでよ!?」
叫んでみるが、アプトムは動じない。
「何がだ?」
「頼まれたのは、わたしなのよ。わたしが行かなくて、どうするのよ!」
「どうもしなくていい。使い魔の仕事は、メイジができないことを代わりにやることだろう?」
「わたしは貴族なのよ!」
貴族が、自分に与えられた任務を人に押し付けられるわけがないと言うルイズに、アプトムは、それがどうしたと答える。お前に、この
依頼が果たせると思っているのかと。自分が何者かを見つめなおしてみろと。
そして、ルイズは黙り込む。彼女は貴族である。貴族の誇りにかけて、姫さまの頼みに答えなければならない。そして、彼女はゼロのル
イズである。魔法の成功の確率ゼロのルイズ。
そんなお前に、姫さまの与える任務をこなせるのか。アプトムはそう言っているのかとルイズは、歯噛みする。だが、それは思い違い。
「おまえは、貴族である前に学生だろう。貴族がどうのこうのに、縛られるのは学院を卒業してからでも遅くない。大体、王党派と貴族派
が争っている中、皇太子に会いに行くという任務は、世間知らずの学生に果たせるほど簡単なものなのか?」
ルイズが魔法を使えるかどうかなど関係がない。魔法が使えようが貴族だろうが、学生という未熟な存在であるルイズは、この任務を受
けるべきではないのだとアプトムは言っているのだ。
それは正論であり、召喚されて以来、ルイズに忠実であったアプトムの言葉であるから、彼女は頭ごなしに否定ができない。
「でも、アプトム一人じゃ、王党派の人たちに信用してもらえないかもしれないし……」
それでは、手紙を返してもらえないかもという苦し紛れの言葉は、ルイズがいても信用される保証はないし、平民のほうが貴族派に怪し
まれる心配がなくていいだろうというアプトムの返答に切り払われる。
それでも納得することなどできないルイズは、「あの、ルイズ。その人は?」というアンリエッタの言葉に、そういえばと、説明してな
かった事を思い出す。ずっと、この部屋にいるアプトムのことを今頃になって尋ねてくるアンリエッタもどうかしているが。
このビッチ害獣認定級だな
そろそろ容量大丈夫か? 支援
アンアンもルイズも色々とひでぇww支援。
「こいつは、アプトム。わたしの使い魔です」
「使い魔?」
確かに本人もそんなことを言っていたけど、とアンリエッタは首を傾げる。
「人にしか見えませんが……」
「人です。姫さま」
人間じゃなくて亜人ですが。とは言わない。敬愛する姫さまといえど教えるわけにはいかない事もある。
「そうよね。ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「ほっといてください」
ルイズにとってアプトムは自慢の使い魔であるが、ただの平民であると通している以上、周りの眼が冷たくなるのは仕方がないと、最近
になって彼女は理解していた。
それはともかく、ふとルイズは浮かんだ疑問を口にする。
「じゃあ、アプトム一人で行くって言うの?」
「そのほうが身動きがとりやすいしな」
「でも、アプトムってトリステインの生まれじゃないわよね。というか魔法に頼らないと帰れないくらい遠くの生まれでしょ。案内なしで
道が分かるの?」
そう、アプトムはハルケギニアの人間ではない。地球という他の天体から召喚されてきた者だ。そんな彼にアルビオンへに道が分かるわ
けがなく、交通手段についての知識もない。
だが、その辺りについても考えがある。
アンリエッタは、この部屋に一人で入ってきたが、この女子寮まで一人できたとはアプトムは思っていない。彼の見たところ、この王女
はルイズにも負けない浅はかな思考の持ち主だが、それでも一人で出歩くほど能天気ではないだろうし、本人がそのつもりだったとしても
周りの者は、この国の王位継承者が護衛もつけないで出歩くのを許したりはしないだろう。
現に、この部屋の外。扉の向こうからは、この部屋の様子を伺っている何者かの気配があり、それが王女の護衛なのだろうとアプトムは
予想する。
その護衛が、アンリエッタが連れてきた者なのか、勝手に着いてきた者なのかはアプトムの知るところではない。
どちらにしろ、自分がアルビオンに向かう道案内にはちょうどよかろう。
だからと、「こいつを連れて行く」と扉を開けて中に招きいれようとして、アプトムは、そこで扉に耳を当てて盗み聞きしていたらしい
金髪巻き毛の少年と顔を合わせた。
それは、王女の護衛などではなく、ルイズと同じく、この任務に連れて行くには不適切なただの学生であったのだけど、今更勘違いでし
たと言うわけにもいかない状況である。
この計算外の事態にも、表面上は平静を装ったアプトムではあったが、内心ではそうではなかったため、同じ学生の身分であるギーシュ
は良くて自分は駄目だというのには納得できないと言うルイズに反論しきることができず、結局ルイズはアプトムと何故かギーシュの三人
でアルビオンに向かう事となり、ルイズはアンリエッタからウェールズへ充てた手紙を受け取り、ついでに路銀の足しにと王女が母親から
頂いたという指輪も預かった。
あと5kbしかないけど大丈夫かな?
支援
ギーシュ・ド・グラモンは、軟派な外見や性格とは裏腹に、貴族としての誇りを強く持つ少年である。
彼の尊敬する父は、元帥の地位を持つ勇敢かつ優秀な軍人であり、彼も将来はかくありたいと思っている。
その父親が好色な性質であったことが、彼の女性に対するだらしなさの原因の一つであるが、それは置こう。
彼には、許せない相手がいる。ゼロのルイズと呼ばれている少女が召喚したアプトムという名の男である。
あの男のせいで二股をかけていた少女二人に振られたから。その後に起こった決闘で勝負にもならずに負けたから。というわけではない。
それがないとは言わないが、彼にはそれ以上に許せないことがあった。
それが、あの男の自分を見る眼。
彼は、貴族である。貴族は平民になど負けてはいけない立場にいる。その自分に、あの男は勝利した。それだけなら良かった。それだけ
ならお互いの健闘を称えあうこともできただろう。
だが、あの男は自分を見ていないと気づいてしまった。あの男にとって自分は、炉辺の石ころにも等しい。彼我の実力差を考えれば、あ
の男がそういう眼で見てくるのは当然なのかもしれないのだけど、それを彼は許せない。
そんな眼で見てくる相手が明らかに自分より優秀だと分かるメイジで、例えば女王を守る魔法衛士隊隊長なんかなら、彼もそんな風には
思わずに負けを認めていたのだろうが、ギーシュのアプトムという男への認識は魔法の一つも使えないただの平民である。そんな相手に見
下すどころではない眼で見られることを許容できるほど彼の矜持は安くなく、ゆえに必ずや、あの男の心に自分の名を刻んでやると心に誓
っていた。
そんな彼であるから、何度もアプトムに対して、決闘を申し込んでいた。
錬金で作り出したゴーレム『ワルキューレ』に、武器を持たせて挑ませたこともある。落とし穴を掘ってワルキューレに誘導させて動き
を封じる策を練ったこともある。パワーで勝てないのならと軽量化を図ったワルキューレで100メイル走をしかけて勝負したこともあるし、
走り幅跳びだってやった。パワーもスピードも敵わないのなら頭脳だと、ワルキューレにチェスの勝負を仕掛けさせたこともある。
しかし、一度たりとも勝利をつかむ事はできなかった。自分を敵だと認めさせることすらできなかった。
代わりと言っては何だが、クラスメイトの眼が生ぬるい物になってきたが、ギーシュは気にしない。深く考えたら、泣いちゃいそうだし。
そんな現在の彼にとって、何よりも優先されるのはアプトムに自分を認めさせることであり、ゆえに長らく可愛い女の子を見ても興味を
抱く事すらない毎日を送っていた。
そんな彼だが、アンリエッタという、この国の王女に対してまで、無関心でいることはできなかった。
平民が貴族に対して従属する義務があるのならば、貴族には王家に従属する義務があり、それは名誉ですらあると彼は認識している。そ
んな彼にとって王女とは憧れの対象であり、その相手が若くて美しい女性となれば、お近づきになりたいと考えるのは当然のことであろう。
とはいえ、だから何をしようと考えたわけではない。父親ならともかく、彼自身はただの学生の身分である。そんな彼に、王女と直接顔
を合わせるという栄誉が得られるはずもない。
だが、いずれは自分もあの美しい王女に謁見が許されるような立場になってやるとギーシュは夢を描く。
それが、多くの若い貴族が胸に描き、しかし成し遂げられずにあきらめていくであろう妄想の一つであろうことだなどと、彼は思わない。
彼は若く、夢は若者の特権なのだから。
8レスならこれで終わりか支援
もう限界かな?
スレ立ていってくる。
それはさておき、ギーシュは学院の中庭で月を見ていた。
大地を優しく照らし出す二つ月の一つに、若く美しい王女の面影を見出すことなど、彼には容易い。
今夜の、寝る前の自分大活躍妄想劇場に王女に登場してもらうため、彼は王女の姿を心に刻み込む。ちなみに、もう一つの月には、最近
疎遠なモンモラシーの姿を見出していたりもする。
そんなとき、彼は視界の隅を横切った人影に気づいた。
その人影は、真っ黒な頭巾をかぶり、正体が知れなかったのだけれど、ギーシュは一瞥でそれを王女と見抜いた。
単に、何とか王女とお近づきになれないかなと思っていたときに、たまたま通りかかった女性がいたので、特別な理由もなく関連付けて
しまったというのが、正しいのだが、事実として、その人影は王女アンリエッタその人であった。
王女を見たギーシュは、とくに深い考えもなく、後をつけていくことにした。後をつけて何をしようと考えていたわけではないし、王女
がお供もつけずに一人で歩いていることにも、特に不信感を抱くこともなかった。彼に限ったことではなく、トリステイン貴族は、深く考
えるよりも、その時のノリで動くことが多いゆえの行動である。
そんなわけで、王女を追って女子寮に入っていったギーシュは、ある一室に入っていったのを見送り、即座に扉に耳を当て聞き耳を立て
た。
そうして、図らずも王女に直接頼みごとをされる機会を得た彼は、貴族としての矜持と、美しく王女への思慕とアプトムへの対抗心ゆえ
に、この国の存亡にも関わりかねない任務に参加することになるのである。
投下終了。支援に感謝。今回は○○は……であるが多くて文句が出ないかドキドキします。
アプトムが融合同化で喰った斥候獣化兵は、ルイズの使い魔をやる気満々でしたよ?
風雲アルビオン編では、なんとかギーシュを活躍させたいと思います。