あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part213

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part212
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1234098502/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 12:50:44 ID:1usFQuak
テンプレは>1だけです。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 12:54:44 ID:Hab/oK0s
おっつー
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 12:57:10 ID:xh1T2RZw
>>1乙なんよ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 13:01:30 ID:RJwh0b0N
>>1
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 13:06:54 ID:PLBlCavp
>>1
乙です。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 13:12:30 ID:qpFIZeJd
この宇宙のどこかから乙
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 13:15:37 ID:iFF8CzDt
>>1乙。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 13:21:59 ID:zIlp/mmn
   ___
      /   
     /     
   /     @   @
   (     ≡(ノ・ω・)ノ >>1乙のリ・マージョン
..     ̄ ̄ ̄
10使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 14:49:32 ID:F4gzwabZ
14時55分よりより投下を開始したいと思います。

召喚するのは、『ビブリオテーク・リヴ』より、『ニコ・アージェント』。

超マイナー漫画なんですけどね……。
11使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 14:55:21 ID:F4gzwabZ
  使い魔人生綺談-01

 果てしなく広大な雲海の中に積層都市ヘブン市は存在した。
 そのヘブン市の東に広がる『月の出平原』の一隅。月の出町
二丁目に、こぢんまりとした図書館が建っていた。
 ただし、外見こそこぢんまりとしているが『メインランド中
央図書館』なる大仰な名を掲げ、その名に恥じず惑星メインラ
ンドで最大の蔵書量を誇っているのであった。
 その館内は館長を務める人物が開発した魔法によって拡張さ
れているのだが、実はかなり無計画に拡げてしまった為、館内
の正確な見取り図が存在しないというお粗末な事になっていた
りする。

 そんな図書館の玄関口にある貸出カウンターにて、眼鏡を掛け
メイド服を着込んだ女性が司書としての作業を行っていた。
 彼女の名はショーシャ606。この図書館ただ一人の司書で
あり、兼館長の小間使いでもある。
 ショーシャが来館者のまばらな貸出カウンターで未分類の蔵
書等にナンバリングなどをしていると、図書館上部にある居住
スペースの方より突如、

チュドーンッ!!

 と爆音が激しい震動を伴って響いて来た。

「お館さま……、また何か仕出かしましたね……」

 ショーシャはこめかみを引き攣らせながら呟いた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
12使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 14:57:19 ID:F4gzwabZ
 その少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
は硬直していた。

 ルイズの目の前には、一枚の木製の扉。細かい意匠が施され
たニス塗りの表面は鈍い光を反射している。金具は良く磨かれ
た真鍮製で黄金に近い輝きを放っている。
 おそらくは腕の良い職人が作り上げた高級な扉であろう。貴
族や豪商が見たら仕事を頼むかもしれない。

 しかし、それはこの場所に、この瞬間に存在するべきもので
はなかった。
 ここはトリステイン魔法学院近くの平原のど真ん中であり、
使い魔召喚の真っ最中であったからだ。

「あははッ! ゼロのルイズッ! 良かったじゃないか使い魔
召喚が上手くいって。君にお似合いだぜッ!」

 一人の少年が嘲りを隠そうともせずに言い放つ。周囲の少年
少女たちも追従するようにルイズに見下した言葉を投げかける。
 ルイズはそれらの言葉に歯をくいしばって耐え、この場にお
ける監督責任者であるジャン・コルベールに向き直る。

「ミスタ・コルベールッ! 召喚の……」

 やり直しを、とルイズが言い掛けたところで、扉がガチャリ
と音をたてて開こうとしていた。
 開こうとしている扉に、ルイズ、コルベール、周囲の少年少
女たちの視線が集まる。

『いったい何が出てくるのか?』

 それが、この場に居るほぼ全員の共通した考えであった。

「おんや? ここは何処じゃ?」

そこに居たのは、幼い少女の声で年寄りくさい喋り方をした、
空色の髪をおかっぱ頭にした十歳ほどの少女であった。

 可愛らしい外見の少女であったが、ある特徴に気付くと、
皆硬直する。
 空色の髪から伸びる、人よりも長く先の尖った耳であった。
13使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 14:59:18 ID:F4gzwabZ
「エルフだッ! ルイズがエルフを召喚しやがったッ!」

 誰かがそう叫ぶ。その声と共に恐怖の念が伝染して行く。

『エルフ』。それはハルケギニアのブリミル教圏おいて、
『聖地』を奪ったとされる最大の敵である。
 魔法を使うメイジでさえも百人が束になり、やっとこさ
一人のエルフに対抗出来るといわれている。

 コルベールは教育者たる者の義務として教え子たちを守る
べく、ルイズと現れたエルフの間に割って入る。無論、いつ
でも魔法を放てるように杖を前方に構えつつ。

「ミス・ヴァリエール。下がりなさい危険です」

 コルベールは目の前のエルフの少女から目を外す事無く
ルイズに言い放つ。
 ルイズはただ硬直し、エルフの少女はいきなり向けられた
険の有る視線に戸惑っている様子であった。

「あー、えーと……。いきなり敵意を向けられるこの状況が
分からないのですが?」

 エルフの少女は畏まった丁寧な口調でコルベールに話しかける。

「エルフは我々の敵です」

 コルベールは堅い口調でそう言う。

「エルフ?」

 エルフの少女は不思議そうな表情をして思案する。そして
得心がいった顔になり、

「あー、ちょっと待て。確かに身体的な特徴は一致するかも
しれんが、私はエルフなんぞおファンタジーな種族ではないぞ」

 と、あっけらかんとした顔で言い放った
14使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 15:01:54 ID:F4gzwabZ
「エルフでは……、無い?」

 コルベールは信じられない顔をする。

「あー、ともかく。その敵意を向けるのは何とかしてほしい
ですな。とりあえず此方には敵対の意思は無いので。
 まあ、まずは名乗っておきましょうか?
 私の名はニコ・アージェント。メインランド中央図書館の
館長を務めている者です」

 ニコと名乗った少女は、そう言いながら軽く会釈する。
 そうなると一方的に敵意を向けているコルベールはいささか
バツが悪くなった。

「あ、はい……。私の名前はジャン・コルベール。
トリステイン魔法学院にて教職を務めております」

 コルベールは一応杖を下すが、視線は外さないように答えた。

「ふむ、コルベールさんですか……。
 ところで一つお聞きしたいのですが……。
私はドアウェイ・システムの連結を行っていたのですが……。
呪術公式に強引に介入してこちらに強制連結したのは、貴方ですか

な?」
「……ドアウェイ・システム?」

 ニコの問いにコルベールは首を傾げるばかりであった。
その様子にニコは説明が不十分かと悟り、言葉を続けた。

「ドアウェイ・システムとは私の開発した魔法でしてな。
別々の場所を、自在に扉などを介して連結するものです」
「別々の場所を繋げるだなんて……。まるで召喚ゲートの
ようですな」
「召喚ゲート? ふむ……、もしかしたら、私のドアウェイ・
システムとその召喚ゲートとかいうのが干渉しあって連結して
しまったのかもしれませんな」

 ニコは顎の下に手を添えて考える仕草をした。

「ちょっと! じゃあ、私の使い魔召喚を邪魔したのは
アンタって訳ねッ!」

 と、ルイズがニコとコルベールの間に割って入り、
杖を突きつける。
15使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 15:05:11 ID:F4gzwabZ
「わ、なんじゃ小娘がいきなり」

ニコは突然のルイズの行動にたじろぐ。

「何が小娘よ! アンタのほうがよっぽど小娘じゃないッ!!」
「な! お主の目にはそう見えるかもしれんが、わしはお主
なんぞよりはるかに年上じゃ!」
「はん! 嘘おっしゃい。その年寄りくさい喋り方だって
どうせ演技でしょ。それに自分は図書館館長? もう少し
マシな嘘をつきなさいよ」
「この外見は先祖がいらんことしくさったからじゃ。
はん、下の毛も生えて無いような小娘が、外見で人を判断するでな

い!」
「ななななな、何でアンタがその事知ってるのよッ! 
すごく気にしてるのにッ!!」

 いらんことを暴露しつつ、二人の口論は白熱していく。
コルベールは、本人はエルフではないと言ったが未知の存在
には違いないニコと、教え子のルイズの間に割って入ろうとするが



「お主は黙ってるのじゃッ!」
「ミスタ・コルベールは黙っててくださいッ!」

 と、二人のほぼ同時の恫喝じみた声に黙らされてしまうのであっ

た。
 二人の口論は果てしなく続くかと思われたが、

「そこまでじゃ」

威厳ある老人の声が仲裁に入った。その場にいたほぼ全員が声の

響いて来た方向、上へと視線を向ける。

「オールド・オスマン……」

そこには白く長い髪と白く長い髭を伸ばした老人が滞空しており。
徐々に高度を落としていき、地面へと着地した。
オスマンはニコとルイズへと歩を進めていく。
そのオスマンを見て、ほう、とニコは声を洩らす。

「ふむ、中々の者のようじゃな」
「いやいや、ワシもそれなりに研鑽を積んできましたが、
貴方ほどではありませんな」

オスマンはニコに評された事に謙遜しつつ、握手をする為か
手を伸ばす。

「ニコ・アージェントじゃ。よろしくですな」
「オスマンですじゃ。よろしくですな」

 二人はにこやかに握手を交わす。オスマンの礼をもって接する姿に、
周囲の者達は少々唖然とするのであった。
16使い魔人生綺談:2009/02/11(水) 15:07:28 ID:F4gzwabZ
今回は以上です。

この先、同作者の『楽園通信社綺談』もキャラも出て来るとと思いますが、
どうぞよろしくです。

ニコを一言で説明すると、ロリババァです。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 15:16:19 ID:zIlp/mmn
元ネタ全然知らんが面白かったよ
続き待ってます
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 15:27:56 ID:RJwh0b0N


ロリババァと聞くとイングリッド嬢を連想するオレ
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 15:51:29 ID:m5fjF1lW
>>1
スレ立て乙。
このところ埋まるまで早いって。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 15:54:39 ID:zlbuiXah
>>19
頑張って追いつくしかないな。
なに、最盛期に比べれば、1/4程度の速度でしかない。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:01:20 ID:zXOJxTtH
>>20
一日1スレの勢いな時もあったよな。
その頃に少しばかり書いてたんだが。

もうすぐまた書けるようになりそうなんだけどな。
しばらく離れてると文もだいぶ変わるもんだなー。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:10:58 ID:Y3UzMxos
>>21

期待してるぜ
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:11:06 ID:riqguuis
あの頃からの残留組も今となってはmtlとソーサリーだけか。
寂しくなったもんだ。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:13:03 ID:eItawOQh
いぬかみのヒトの再訪を期待したい
変態紳士ものとして、あの話はイイトコで中断しているので
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:13:29 ID:PWUwrws9
ジルの人マダー?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:13:35 ID:zlbuiXah
>>23
BASARAの人も最古参の一人じゃ?
完結したっけ?
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:15:40 ID:riqguuis
しまった、BASARAの人が一番古豪だ。
BASARAの人に深く陳謝、そしてBASARAはいつも読ませて貰ってる、これからも頑張って欲しいと激励。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:19:04 ID:83exrsAs
ニコキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
タルブ戦あたりではいちじく艦長も登場か!?
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:28:26 ID:K+A2jqU9
この季節はリアルが忙しいだろうし、そろそろ新刊も出るからなぁ
それでもこれだけ投下があるのがすごい
最初のスレが立ったのが2007年の6月だったか?
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:29:51 ID:8MKSeeFk
MtLは1ヵ月ぐらい更新がないけどそろそろかな?
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 16:55:20 ID:riqguuis
>>30
去年も今頃一時更新が止まったし、忙しい時期なんじゃね?
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 17:09:18 ID:8MKSeeFk
そうか、いい子にして待ってることにするよ
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 17:26:25 ID:qpFIZeJd
また一つ
新作登場
うれしいな

それにつけても
>>11の乙さよ

歌麿です
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:05:49 ID:W76Cq2QW
>>10
佐藤明機か……懐かしいのう。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:22:25 ID:04ilcwqF
今アニメでやっているTOAから来たのはルークだけか。
しかしあの世界の連中は生い立ちに始まる経歴や性格が良くも悪くも一筋縄ではいかないからなぁ。
おまけにそれぞれが自分たちの元の世界に対しての執着が凄そうだから誰喚んでも話が破綻しそうだ。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:28:10 ID:6B5DdWcD
レディアントマイソロジーとかでクロスやってんだから大丈夫じゃなかろか>TOA
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:35:09 ID:riqguuis
そこでシンク召喚ですよ。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:37:11 ID:ZV35HBFe
>>35
アッシュって呼ばれてなかったか?
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:51:00 ID:21HvhZgI
しまった前スレの埋めに間に合わなかった
もったいないのでこっちに投下、一レスのみの小ネタ
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:51:51 ID:21HvhZgI
アルビオン、ニューカッスル城にて。
ワルドとルイズの使い魔が対峙している。
もちろん他のあのゼロSSと同じく、この使い魔もこれまでにギーシュと決闘したりフーケを追跡したりルイズにツンデレられたりしたのだが、彼を語るうえで全く関係ないので割愛する。


ルイズには自信があった。
この使い魔は魔法こそ使えないが強い。
別世界の格闘技「プロレス」を使い、今までも苦労無く敵を倒してきたのだから。
実際ラ・ロシェールでの決闘ではワルドのエア・ハンマーを簡単に防いで一撃でのしてしまったし。
だがルイズは知らない。
この使い魔が「突き技」にはめっぽう弱いことを。

ワルドが名乗る。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!行くぞ!」
使い魔も名乗る。
「次鋒レオパルドンいきます!」

使い魔が唸りを上げる。
「グオゴゴゴ」ドドド
ワルドが何故か使いたくてたまらなかった魔法を放つ。
「エア・ニードルーーーーーっ!!」ピーン
グサ
「ギャアーーーッ」


その後レコン・キスタはハルケギニアを征服した。
ルイズはワルドと結婚した。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:52:43 ID:21HvhZgI
タイトルは「ゼロの次鋒」
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:53:35 ID:ozWsR257
乙……だけどひでぇw
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:56:36 ID:K+A2jqU9
まさに時報、もとい次鋒
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 18:57:21 ID:ywO11WlW
乙。時報じゃ仕方ないな
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 19:05:32 ID:4QxhV6In
新しく召喚された使い魔が、前の使い魔を語るときは、
「嫌な事件だったね」
と言うんですね。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 20:24:48 ID:E6vhdFz8
次鋒ではこうなるのも道理

>>35
アビスはアッシュが召喚されたのが最近投下されてたよ
あれは自分をルークと名乗ってから、言っていることに間違いはないかもしれないけど

アビスキャラは一筋縄ではいかないけど、ストーリーを作れないって事はないと思うぜ
何回か名前が挙がるシンクは特に。明確にテーマを決めれるのが理由
ガイなんかも面白い。使用人経験あり。ルイズ達の兄貴分となれる
ジェイドも頭を捻れば、趣向の変わった話になるかもな
女性人は思い浮かばないけどw
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 20:29:31 ID:riqguuis
ギーシュを虜にして玉の輿に乗ろうとしたけど良く聞いたら結構貧乏だって分かってあっさり捨て、
若くして魔法衛士隊の隊長で将来性有望だけど爵位が子爵だから微妙と思い、
アルビオンで出会ったウェールズは一国の王子だけど、そもそも国が滅びそうだからと後ろ髪引かれながらスルーし、
遂に出会った運命の人には邪魔なコブことシェフィールドがついていた。

そんなアニスちゃんですね。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 20:30:43 ID:VLOU9wV8
ガイはいきなりキスされて気絶だな
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 20:58:19 ID:iIw8ylBt
テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2で20分後に投下します。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:00:07 ID:NyySW6hl
OGからケーヒル召喚しよう
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:00:34 ID:7UW4YBeX
超ドマイナーな某コミックマスターで連載してた熱血!大冒険大陸から召喚とかいう電波を受けた・・・
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:02:21 ID:iQ7HSQQ0
age投下予告とは…たいしたやつだ支援
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:04:52 ID:NyySW6hl
つーか20分は遠いっす……
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:06:44 ID:NyySW6hl
つーか20分は遠いっすよ……
その間は他の人も投下できねぇわけですしね
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:07:07 ID:u3BWMOa9
職業・殺し屋。からイカレた銀髪の蜘蛛召喚。
対人戦闘なら半径20m内無双モードだから、
巨大ゴーレムで戦ったオマチさん以外はバラバラですかね。バラバラですよね?
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:07:44 ID:Qrrct6VO
>>53
帰れカス
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:07:48 ID:sX7uF1gc
テイルズシリーズなら本編終了後のアーチェとか
なりダンドラマCDでは中々孤独な生活をしていたようだし
あーでもマナが無いと魔法が使えないのかorz
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:08:41 ID:F4gzwabZ
>>51
ギルをテファが召喚。
呪いの解除条件は『巨乳のエルフの処女』のキスのみで。

ただし、ハーフなので顔のみが元に戻る。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:13:06 ID:tSbOsgjv
大冒険大陸ならデスピーだろう。
ルイズの不幸エナジーで力を蓄えます。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:13:51 ID:NyySW6hl
>>56
煽って何も良いこと無いだろ……
実際20分は遠いだろ?
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:16:26 ID:iIw8ylBt
主人公のキャラ設定
両親が子供の頃事故で死亡済み現在一人暮らし
実は高貴なパプスブルク王家の血筋が流れている
右目は過去を、左目は未来を見てるので常に左右の目に眼帯をつけている
親友から託された-278℃の剣を持つ
とりあえず主人公が切れたら勝つ素でウルトラマンより強い
いい女は全て主人公の性奴隷かつ非処女でちょいえろ


プロット
ある日突然マルトーに襲われる

突然秘められた能力が解放されマルトーを倒す

そこをクラス一可愛いタバサに目撃される

以後行動を共にし、ある日タバサだけ危険にさらされる

助ける

タバサが惚れる
↓             
寮でセクロス

以下いろいろあって
ラスボスは現実世界の期末試験


こんな感じで5話ぐらいで完結でいきたいと思います。
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:16:26 ID:F4gzwabZ
しかしまあ、このスレには10年以上前のマイナー漫画を
知ってる人々がいるから侮れない。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:16:50 ID:u3BWMOa9
>>60
煽ってもいい事は無く、ただ無駄に時間が過ぎて気がつけば予告時刻になるんだ。
不思議だね。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:18:49 ID:NyySW6hl
>>63
言いたいことが分からん
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:20:17 ID:XU8b0+Y5
>>61
この手のエセ予告
いっぺんまともに完結まで書き上げてほしいと思ってるのは私だ

どーせ書かないってわかってるから
ハイハイワロスワロスで終わっちまうんだよな
驚きが無い
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:20:26 ID:C+7bZrb1
>>64
落ち着いて全裸になろうぜ?
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:20:50 ID:u3BWMOa9
>>右目は過去を、左目は未来を見てる
まず現在を見ろ!!と全力で叫びたいな。
これで第三の眼があって、その第三の眼が現在を見てるとかなったら-278℃を下回る勢いの寒さだ。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:20:57 ID:NyySW6hl
>>61
荒らしじゃないならsageてくれ
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:22:32 ID:7UW4YBeX
ラルシオンが召喚されてエルフにもルイズみたいなやつがいるんだな的な
でもよく考えたらパーティー丸ごと召喚しないと一部のメンバー暴走するよね
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:23:10 ID:NyySW6hl
>>66
風邪ひいちゃうじゃん
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:25:31 ID:s88Pl5MT
>>61
テイルズ関係ないだろw
一応主人公はオリキャラだけどさ

>>65
理想郷とかここのまとめにあるこたあるよ
ここまで酷くないけど原作レイプして中ニ設定てんこもりのキャラ改変は
大概数話で放置されているけど
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:25:38 ID:K3QGtsND
0K下回る-278℃下では物質はどういう状態なんだ?
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:27:30 ID:tSbOsgjv
じゃあ、骸骨王ムクロマンド召喚で、ルイズが契約のキスをしようとすると、
「悪いが私には心に決めた女性がいる」
とか渋い事いったり、見たタバサが気絶したり。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:27:31 ID:zQPOlsvM
無重力になる
75ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA :2009/02/11(水) 21:27:32 ID:rfvVWRt8
 前の人20分経っても姿を表さないようなので、投下予約よろしいでしょうか。

 時間があまりないので30分過ぎから。パスの場合は明日以降にします。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:29:20 ID:OdsPXsTn
うほーーい
待ってましたよーーーー
支援!
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:30:23 ID:u3BWMOa9
>>72
「OK」が「ゼロケルビン」に見えた。いや逆か?
たぶん、寝堀葉堀って言葉にキレたメガネの人にオレがボコられる。
78ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA :2009/02/11(水) 21:31:45 ID:rfvVWRt8
投下開始します。

もし5分経っても続きが投下されない場合は、さるさんを疑って避難所を見てみてください。
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:33:17 ID:F4gzwabZ
しえん
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:33:24 ID:UKVP7Gfb
よろしい
ならば支援だ
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:33:36 ID:CvYZaYLq
待ってました。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:35:25 ID:NyySW6hl
しえん
83ゼロと魔砲使い第24話-01 ◆IFd1NGILwA :2009/02/11(水) 21:36:42 ID:rfvVWRt8
第24話 教皇

 魔法学院襲われる!
 
 謎の敵による学院襲撃の報は、人質の解放と共に早馬で王宮にもたらされ、仰天した王宮側も、先行調査隊として最も足の速いグリフォン隊の精鋭を、それに続いて捕らえられた犯人護送のための部隊を学院に向けて送り出した。
 先行調査団の代表として学院を訪れたワルドは、事件を解決したのが知り合いの二人だと聞いて思わず天を仰いだ。
 
 「やれやれ、まさか君たちだったとはね」
 「あら婚約者さん、心配しなくてもルイズはタバサと一緒にロマリアに向かっている最中よ。この事件には最初から関わっていないわ」
 ワルドはキュルケから事のあらましを聞き、内心ほっとしたのを何とか表に出さぬよう押さえると、具体的な調書の作成に取りかかった。
 キュルケ、ギーシュ、コルベール、そしてオールド・オスマンやギトー、シュヴルーズと言った面々に事情を聞いていく。
 ある意味相手を殺しているだけに、それぞれの事情は他人の耳に入らないように聞き取りは個室で行われた。
 ここで彼はコルベールの過去を知ることととなった。
 
 「ミスタ……話しづらいことをお聞きしました」
 「いえ、任務ですから。犯した罪は忘れずとも、こうして生きていれば贖罪の機会は来るものですね。まあ、贖罪といえるかは微妙なところですが。自業自得でもありますし」
 「ご謙遜なさらずに。ミスタ・コルベール、あなたは立派に生徒達を救ったのですから」
 「そう言っていただけると、少しは救われた気がします」
 
 かなりの大部隊の襲撃という事で、後続の部隊はそれなりの規模になっていたが、そのほとんどが既に倒されていたと判って拍子抜けしたなどという事はあったが、その日の午後には生き延びた犯人の護送やコルベールに一網打尽にされた別働隊の埋葬なども終わった。
 こうして学院にはとりあえずの平和が戻ってきた。
 そう、とりあえずの。
84ゼロと魔砲使い第24話-02 ◆IFd1NGILwA :2009/02/11(水) 21:37:51 ID:rfvVWRt8
 危機は去っていなかったのだ。現実にはともかく、学生達の脳裏からは。
 自分たちが平和をむさぼるように寝こけていたとき、ただ二人気がついたギーシュとキュルケ。
 どうやら彼らはつい先日、内戦の嵐吹き荒れるアルビオンで『何か』を体験してきたらしいと言うことが学生達の間に噂として流れた。取り調べの過程で明かされた事実がいつの間にか漏れ出たらしい。
 何しろその気になれば盗聴の手段には事欠かない。そして取り調べる側も防諜などに気を使うはずもない。好奇心の強い者がその気になればいくらでも調べることが出来た。
 流石に具体的な情報が伝わることはなかったが、キュルケとギーシュが『実戦』を経験したことは広まってしまったのだった。
 もっとも実戦と言っても、二人の体験したのは前線での殺し合いとはほど遠い『戦場の雰囲気』でしかない。
 この事はキュルケもギーシュも聞かれるたびにはっきりと断言した。
 それでも学生達にとっては十分衝撃的事実であった。
 そして思ったのだ。
 もし自分たちに経験があれば。雰囲気だけでも戦場の気配を知っていれば。
 今回のような事態で不覚を取る事はなかったのではないか、と。
 ここで二人の感じたのが『戦場の雰囲気』であって、悲惨で血なまぐさい殺し合いでなかったのが裏目に出た。
 学生達の間に、前線は無茶でも、比較的敵襲の恐れの少ない後方でなら、戦いに赴く者への手助けが出来るのではないか。そしてその雰囲気を学んでおくことは、将来のためになるのではないか。
 これらのことが、学生達の間に学生騎士隊の設立を促す機運を作っていくことになる。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:38:04 ID:04ilcwqF
>>46
にゃるほろ。参考になりますなあ。
それで考えていった時、やっぱり候補はそれぞれ ガンダ=燃え滓、ミョズ=眼鏡、ヴィン=根暗、憚られる=ヴァンなんだろうか。
86ゼロと魔砲使い第24話-03 ◆IFd1NGILwA :2009/02/11(水) 21:38:57 ID:rfvVWRt8
 一方、その頃。
 学院を襲った危機など知りもしないルイズ達一行は、一晩ゆっくり体を休めた後、あらかじめ決められた手順に従って教皇への接触を開始した。
 堂々と身分と立場を名乗ってならともかく、お忍びできている一行が正面切って教皇に会うことなど不可能である。
 当然、そのための手段はあらかじめ指示されていた。
 ルイズ達四人は、この地で巡礼が纏うローブに身を包み、指定された街外れの教会に向かう。
 そこは救貧院や孤児院を併設していると思われる教会であった。
 教会の建物は大変小さく、みすぼらしいが、敷地そのものは意外に広い。柵で仕切られた土地内部に、いくつものおんぼろな建物や粗末な畑が作られているところを見ると、ある程度の自給自足をしている、修道院を兼ねた様式なのかも知れない。
 マザリーニ枢機卿の指示は、ここの教会の司祭に、封をした手紙を渡すように命じていた。
 
 「すみません」
 四人を代表するように、なのはが教会の通用口の扉を叩く。
 程なく出てきたのは、ぼろぼろの、だが清潔そうな着物を着た小さな女の子であった。
 「はい、なんでしょうか」
 たどたどしいながらも、しっかりと挨拶をする少女。
 「わたしたちはアルフォンヌ司祭様に会いに来たものですけれども、司祭様はいらっしゃるでしょうか」
 腰をかがめ、目の高さを少女と同じ高さにして問い掛けるなのは。少女ははきはきとした口調で答えを返す。
 「はい、しさいさまはいませいどうでせっきょうをしています。そのまませいどうにはいっておまちください。せっきょうがおわればじかんがあくとおもいます。できればせっきょうもきいてください」
 説教というのは別に誰かを叱ることではなく、教義を判りやすく講話などで信者に教え諭すことである。
 ずいぶんしっかりした物言いの少女の様子に、なのはは少し感心した。
 「ありがとう。あなたみたいに子供を導けるって言うのは、きっと立派な司祭様なのね。説教も聞かせてもらうわ」
 そう言ってなのはは立ち上がる。
 女の子が通用口を閉めるのと同時に、なのははみんなの方に振り返った。
 「司祭様は今説教の最中らしいです。中で待ちませんか?」
 「ええ。少なくとも悪い人ではないみたいね」
 ルイズも随分としっかりした少女の様子に、なのはと同様の感想を抱いたらしい。
 「立派」
 タバサも同様のようだ。
 一人シルフィードだけは不満そうであったが、タバサの一瞥で黙らされた。
 まあ彼女の場合、人型を取っているだけで疲弊するのに、おしゃべりも封じられ、食事すら不足気味となればストレスがたまるのも無理はない。
 タバサもそのへんの事情は重々承知の上で、あえて彼女を押さえつけた。
 帰り道でのマルチタスクおしゃべり攻撃を覚悟しつつ。
 
 
 
 「そして聖マルコスは、人々のためにその力を持って畑を開きました。人々はそれに感謝し、収穫の時にその一部を聖マルコスに捧げました。それが『マルコス感謝祭』の始まりであり、今でも広く行われている祭りの始まりとなりました」
 改めて開かれている正門から教会に入り、入り口においてある献金箱にいくばかの金銭を投入して、四人はたくさん並べられた長椅子の末席に座った。説教を聞いている人はごくわずかであったが、今日が別に安息日でないことを考えればこんなものであろう。
 むしろ人がいるだけ立派である。
 説教はちょうど終わるところだったらしく、彼女たちが腰を下ろしてすぐに終わってしまった。
 前に座っていた人達が立ち去っていく中、席を立たない四人に司祭は不思議そうに声を掛けてきた。
 「どうかなさいましたか? もし今夜泊まるところもないならば、屋根だけはお貸しできますが」
 食事をといわないのは、居着かれることを避けるためか、それとも純粋にゆとりがないのか。
 おそらく後者だろうと思いつつ、なのはがまず答えた。
 「いいえ、私たちは司祭様に会いに来たものです」
 「私にですか?」
 そう問い掛ける司祭に、ルイズが黙って手紙を差し出す。
 「マザリーニよりの手紙です」
 枢機卿とは言わない。実はこれも指示の一つ。手紙を渡すときには必ず一言一句間違えずに言えと言われた言葉を言っているだけである。
 司祭ははっきりと顔色を変え、緊張した面持ちで手紙を受け取り、封蝋を確認する。
 「連絡先は」
 そう問う彼に今泊まっている宿の名を答えると、彼は頷いていった。
 「おそらく今日か明日には迎えのものが参ります。必ず連絡が付くようにしてください」
 「ありがとうございます。かならず」
 「あなたにブリミルの祝福を」
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:39:01 ID:04ilcwqF
投下中にスマン。
改めて支援
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:40:18 ID:UKVP7Gfb
支援
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:42:39 ID:tSbOsgjv
聖マリコルヌと読んでしまった
支援
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:44:12 ID:tSbOsgjv
ageてしまった……。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:46:33 ID:l9t6h9Dp
支援
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 21:47:12 ID:7UW4YBeX
支援
93ゼロと魔砲使い:代理:2009/02/11(水) 21:49:53 ID:OdsPXsTn
代理投下いたします
94ゼロと魔砲使い:代理:2009/02/11(水) 21:50:48 ID:OdsPXsTn
ゼロと魔砲使い第24話-04


そのまま一行は少し街の様子を眺めながら宿へと戻った。途中不満げなシルフィードをなだめるために平民向けの市場で売っていた串焼きを数本買い込み、あちこちをさまよう。
 判ったことはこの街がほぼ明確に二層に分かれていると言うことだった。
 元からの住民と思われるものは平民であってもそれなりに豊かであり、わりと不自由のない生活を送っている。対して目を覆うほどに貧しいのは、大半が流れ者……難民や流入者らしい。
 「どうやらこの街では、生活の基盤を得るのが難しいみたいね」
 「同意」
 ルイズはそう分析し、タバサもそれを支持した。
 「見た目よりこの街には仕事がない……というか、人手が足りて安定しちゃっているみたいね。発展するわけでも無し、戦争するわけでも無し。なのに名前に釣られて人だけは集まってくる」
 「安定しすぎて新しいものを受け入れる余地があまりない」
 「みたいですね」
 なのはもそう答える。
 「うーん。何となく原因っぽいものは見えたけど、どうすればいいのかしら」
 戻った宿の部屋で紅茶を飲みながらそんなことを考えるルイズ。彼女にしてみればそれは一種の義侠心、こう不幸そうな人を放ってはおきたくないという、優越心と同情心も含んだちょっと上から目線の心理だ。
 だがそれはそれで悪いことでもない。言い換えればそれはルイズに余裕があることの表れでもあるのだから。
 恋愛感情や劣等感にとらわれていないルイズには、それくらい周りを見るゆとりがあった。
 それがなのはという、包容力のある年上の女性を使い魔に持ったルイズのあり方だったのだろう。
 そしてそのことが、また少し世界に影響を与えることになる。



 だがその前に、現実は来客の形を取って、ルイズ達の前に現れた。
 「ジュリオ・チェザーレ、と申します」
 そう名乗ったのは、貴族を思わせる優雅な物腰の少年であった。見た目も美形であったが、それ以上に目を引くのが、左右で色の違う目−−この地では月目と呼ばれる目であった。
 「あなたが迎え?」
 油断なくそう問うルイズに、ジュリオは小さく頷く。
 そして小声でルイズ達に向かってその用向きを伝えた。
 「夕べの鐘の鳴った後、くだんの教会にお越しください。お待ちになっている人がいます」
 「判ったわ」
 多くを問わずにルイズは頷く。
 そこに教皇聖下と直に会ってもおかしくない身分の人物がいるのであろう。
 そう考えたルイズは一つだけ確認する。
 「服装とかはどうするべきかしら」
 「お気になさらずに。どちらかというと目立たない格好の方がよろしいかと」
 どうやら相手は、身なりをあまり気にしないか、あるいはそれなりのものを整えられる人物らしい。
 これで公務を果たすには問題ない、そう判断したルイズは、最後に一つだけ彼に聞いた。
 「後、これは別に答えなくてもいいけど……その名前、本名? それとも偽名?」
 それを聞くと、彼は何とも困った表情をしていった。
 「聞きたくなりますよね……ちなみに本名です。僕もどうかとは思うんですけど。あ、ちなみに歴史上の彼との繋がりはなんにもありませんので」
 「……失礼かも知れないけど、同情するわ」
 ため息をつくルイズに、ジュリオは微笑みながら言った。
 「よく言われますので気にせずに。もう慣れていますから。では後ほど」
 そう言って彼が去った後、なのはがルイズに聞いた。
 「彼の名前、何か曰くが?」
 「かつてロマリアを大発展させた大王の名前よ、ジュリオ・チェザーレって」
 なのはは納得した。日本で言うなら、織田という名字の家の子に信長と名付けるようなものだろう。
 「大変ですね、彼」
 しみじみとなのはも頷くのであった。
95ゼロと魔砲使い:代理:2009/02/11(水) 21:52:01 ID:OdsPXsTn
ゼロと魔砲使い第24話-05


 夕餉のワインも控えめにしたルイズ達は、気合いを入れて先の教会へと向かった。
 再び通用口に向かうと、そこには見覚えのある人物がいた。
 「どうぞ、こちらへ」
 月目の人物、ジュリオ・チェザーレは、ルイズ達に気がつくと、通用口の扉を開き、先導するようにそこをくぐった。
 ルイズ達が後をついて行くと、彼はそのまま教会の裏側へと回っていく。
 そこには司祭が居住していると思われる家があった。
 「お上がりください。彼の方は中でお待ちです」
 まるで自分の家であるかのように、ジュリオは振る舞っていた。
 いぶかしみながらも、ルイズ達も彼に続いて家の中へと入る。すると昼にあった司祭が、ジュリオに頭を下げていた。
 「ここ、司祭様の家ですよね」
 さすがに不思議に思ったルイズがジュリオに聞く。ジュリオは苦笑気味の微笑みを浮かべながら、ルイズに答えた。
 「彼は緊張しているだけですよ。理由はすぐにわかります」
 そう言いながら、彼は立ち止まり、そこにあった扉をノックした。
 「聖下、お客様をお連れいたしました」
 「ご苦労様ジュリオ。すぐにお通しなさい」
 だがルイズ達は−−正確にはルイズとタバサは硬直してしまった。
 今彼は、何といった?
 聖下?
 つまりそれは……。
 「お姉様、どうしたのですか?」
 意味がまるで判っていないシルフィードの声のおかげで、二人は何とか再起動を果たした。
 タバサはシルフィードに「しばらくおしゃべり禁止」と厳命する。
 ルイズもなのはの方を見たが、こちらは明らかに理解していたようだったので、なにも言わずに前に向き直った。
 そうこうしている間に、ジュリオは扉を開いて、一行を中へと促した。
 一人をのぞいて緊張したまま、応接室と思われる部屋に入る。
 中にいた人物を見て、ルイズ達は予想とは別の意味でびっくりすることとなった。
 それは予想とはかけ離れた人物であった。
 もちろんルイズ達には、中にいるのが誰かという予測はついていた。この世に『聖下』と呼ばれる人物は一人しかいない。
 だから彼女たちは、その地位にふさわしい、威厳ある老人の姿を思い浮かべていた。
 だがそこにいたのは。
 どう見てもまだかなり年若い−−せいぜい二十代前半にしか見えない−−美しい男性の姿であった。
 それも尋常ではないレベルの。
 そこに駄目押しするように、ジュリオの声が重なった。
 「こちらのお方が現教皇聖下、聖エイジス三十二世・ヴィットーリオ・セレヴァレ聖下にございます」
96ゼロと魔砲使い:代理:2009/02/11(水) 21:53:03 ID:OdsPXsTn
ゼロと魔砲使い第24話-06


 「どうぞ、おかけください。姫様方」
 ヴィットーリオにそう話しかけられるまで、ルイズはその場に立ち竦んだままであった。
 声を掛けられて、ようやくおずおずと椅子に座る。なのはは一人、ルイズの背後に立ったままであった。
 ちなみにシルフィードも本来はタバサの背後に立つべき立場なのだが、彼女はそんなことは気にもせずタバサの隣に座っている。結果として椅子の真ん中にタバサが座ることになり、彼女は実に居心地の悪い思いをすることになった。
 だがヴィットーリオはそんなシルフィードの無礼を気にした様子もなかった。ただ幼子を見るような目で見つめるだけである。
 そしてそのままスルーして、ヴィットーリオはルイズに話しかけた。
 「マザリーニ様からの手紙は読ませていただきました、ミス・ヴァリエール、『虚無の担い手』よ」
 「あ、はい」
 緊張したままルイズは答える。そんな様子に、ヴィットーリオは優しく微笑みながら言葉を掛ける。
 「これはまたアルビオンの大軍を前に奇跡を起こした聖女らしからぬごようすですね。何か驚くようなことでもありましたか?」
 「いえ、その……まさか教皇聖下がこのような場所に現れるとは思っていませんでしたし、その、あの、こんなにお若い方だとも思っていませんでしたので……」
 最後の方が支離滅裂になる。だがヴィットーリオはあくまでも優しくルイズを見つめながら言った。
 「疑問に思うのも当然でしょうね。教皇は原則終身制。普通私のような若輩者が付く位ではありません。こう言う言い方はなんですが、私が就任した時点で、私より年上の方にはまず次の教皇の座は巡ってこないでしょうからね」
 「不思議と言えば不思議」
 タバサが相づちを打つように言う。ヴィットーリオも頷いて言葉を続けた。
 「ええ、その通りです。三年前、本来ならあなたたちもよく知るマザリーニ枢機卿がこの地位を継ぐはずでした。ですが彼の辞退により、一時期教皇選出会議は荒れに荒れました」
 三年前、理由は不明だが、マザリーニはロマリアからの帰国要請を断っている。
 帰国していればまず次期教皇は確実と言われていただけに、彼はトリステインの玉座を狙っているなどという噂も流れた。
 だがそれは今となってはどうでもいいことである。
 「その荒れ様はひどいもので、一時期はロマリアが内乱を起こしそうなほどでした。そもそもいくらマザリーニが優秀であっても、外国で宰相位にあるものを呼び戻そうとしたという事自体が、人材の不足を意味しています」
 「言われてみれば……」
 ルイズも頷いた。そもそも手元に推挙に値する人物がいれば、要請などかかるはずもない。
 「その頃私は既に枢機卿の一人として選定の候補に挙がるだけの力はつけていました。ですが教皇の地位というものには経験も重視されます。次代を担うと目されていたという自負はありますが、いきなり教皇の座に座れるほどものではありません」
 ヴィットーリオは、その頃を思い出すかのような遠い目をしながら言葉を続けた。
 「ですが当時のロマリアはそんな私にある決断を要求するほど荒れていたのです」
 ルイズ達は思わず唾を飲み込んだ。穏やかな言葉であったが、そこには並々ならぬ気迫が込められていた。
 「それは私にとって秘密であり、そして切り札でした。この状況をひっくり返せる、まさに切り札……もっとも、今となっては、少し早まったかという思いもあります。ですがあのときの私は、今よりもっと若かったのです」
 一瞬、ルイズの目に、若く美しい教皇が、まるで老人になってしまったかのように映った。
 だがそれは、続く彼の言葉の前に消し飛んでしまった。
 「これより我が知りし真理をこの像に記録す」
 それはルイズが知るものとほんの少しだけ違う言葉。だがルイズはそれを知っていた。『像』ではなく、『楽器』と『書』、その二つを。
 そしてルイズは浮かされるようにその続きを言った。
 「この世のすべての物質は、すべて小さき粒より為る。四の系統は、その粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり」
 そうルイズが言った瞬間、彼の顔にはまがう事なき歓喜が満ちあふれた。
 「やはりあなたは、まがう事なき『虚無の担い手』なのですね」
 「聖下……」
 対してルイズは驚きのあまり、声もろくに出ない。タバサも、二人の様子から、何故彼がこの若さで教皇となれたのかを理解した。彼の切り札、それは……
 「聖下、あなたも」
 タバサの問い掛けに、ヴィットーリオは黙って頷くことで言葉を返した。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:04:51 ID:F4gzwabZ
しえん
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:06:43 ID:tLaMwalY
聖マルコメ支援
99ゼロと魔砲使い:代理2:2009/02/11(水) 22:10:48 ID:mPIY6t4A
ゼロと魔砲使い第24話-07-1
 「聖下、お茶が入りました」
 緊迫した雰囲気を打ち破るかのように、ジュリオの声が響いた。
 いつの間にか部屋を出て、お茶の用意をしていたらしい。
 「ちょうど良かった。少し喉をしめらせたかったからね。ああ、使い魔の方もおかけなさい。ジュリオ、君もこちらに」
 そう声を掛けられて、なのははルイズの隣に腰を下ろした。
 彼女の前に、ジュリオがティーカップを置く。紅茶を注ぎながら、ジュリオはなのはに言った。
 「これからもよろしく、ご同輩」
 「えっ?」
 思わずそう言ってしまったなのはであったが、ジュリオはそれに答えることはせず、最後に自分のカップに紅茶を注ぐと、教皇の脇の椅子に腰を下ろした。
 「そう。もう判ったと思いますけれども、実は私も『虚無の担い手』の一人です。私は幼い頃、母が所持していた『火のルビー』と、『始祖の彫像』に触れて、虚無に目覚めたのです。これに関してはいろいろあったのですが、そこは省きましょう」
 言外にあまり語りたくない様子を含ませるヴィットーリオ。ルイズ達ももちろん追求はしなかった。
 「始祖の秘宝は四つ……祈祷書、彫像、オルゴール、そして香炉……始祖は用心深く、秘宝を偽装したようです」
 「と、いいますと?」
 ルイズの疑問に、ヴィットーリオは優しく微笑んで答える。
 「視覚、聴覚、嗅覚、触覚……始祖は後の世で虚無に目覚めるものが、盲目や難聴であってもそれを受け取れるようにしていたと思われるのですよ。もっともそれを開封するための口伝が、いつの間にか失われてしまったようですが」
 「たしかに」
 ルイズも虚無に目覚めるためのキーワードがその内部に隠されていたという、まるで宝箱の中に鍵をしまってしまったような始祖のドジさ加減には、大いに思うところがあった。
 だが別口でそれが伝わっていたというのなら、まだわからない話ではない。
 「幸いと言いますか、ロマリアに伝わっていた秘宝は、『始祖の彫像』。名前とは裏腹な、よく判らない形をした抽象芸術のような変な像なのですが、『触れること』がその扉を開くことだったのが、私に味方しました。
 幼い私は、遊びで指輪をはめ、彫像をおもちゃ代わりにいじっていたのです。そうしたら始祖の声が聞こえたのですから、心底驚きました。
 その時は訳が判らなかったのですが、後にある程度知識が付いた後、心を落ちつけて像に触れる事により、私は虚無に目覚めたのです」
 ルイズ達も納得していた。読めない本や音の鳴らないオルゴールと違い、意味不明のデザインの彫像なら触れることは十分あり得る。偶然であったとしても、そのハードルは他の秘宝より格段に低い。
 「残念なのは、その秘宝が二十年前、とある事件に巻き込まれて失われてしまったと言うことでしょうか。幸い『始祖の彫像』は呆れるほど丈夫で、火にくべようが崖から落とそうが傷一つつかないものなので、壊れたとは思いませんが」
100ゼロと魔砲使い:代理の代理:2009/02/11(水) 22:11:24 ID:ogVUxpkY
ゼロと魔砲使い第24話-07


 「聖下、お茶が入りました」
 緊迫した雰囲気を打ち破るかのように、ジュリオの声が響いた。
 いつの間にか部屋を出て、お茶の用意をしていたらしい。
 「ちょうど良かった。少し喉をしめらせたかったからね。ああ、使い魔の方もおかけなさい。ジュリオ、君もこちらに」
 そう声を掛けられて、なのははルイズの隣に腰を下ろした。
 彼女の前に、ジュリオがティーカップを置く。紅茶を注ぎながら、ジュリオはなのはに言った。
 「これからもよろしく、ご同輩」
 「えっ?」
 思わずそう言ってしまったなのはであったが、ジュリオはそれに答えることはせず、最後に自分のカップに紅茶を注ぐと、教皇の脇の椅子に腰を下ろした。
 「そう。もう判ったと思いますけれども、実は私も『虚無の担い手』の一人です。私は幼い頃、母が所持していた『火のルビー』と、『始祖の彫像』に触れて、虚無に目覚めたのです。これに関してはいろいろあったのですが、そこは省きましょう」
 言外にあまり語りたくない様子を含ませるヴィットーリオ。ルイズ達ももちろん追求はしなかった。
 「始祖の秘宝は四つ……祈祷書、彫像、オルゴール、そして香炉……始祖は用心深く、秘宝を偽装したようです」
 「と、いいますと?」
 ルイズの疑問に、ヴィットーリオは優しく微笑んで答える。
 「視覚、聴覚、嗅覚、触覚……始祖は後の世で虚無に目覚めるものが、盲目や難聴であってもそれを受け取れるようにしていたと思われるのですよ。もっともそれを開封するための口伝が、いつの間にか失われてしまったようですが」
 「たしかに」
 ルイズも虚無に目覚めるためのキーワードがその内部に隠されていたという、まるで宝箱の中に鍵をしまってしまったような始祖のドジさ加減には、大いに思うところがあった。
 だが別口でそれが伝わっていたというのなら、まだわからない話ではない。
 「幸いと言いますか、ロマリアに伝わっていた秘宝は、『始祖の彫像』。名前とは裏腹な、よく判らない形をした抽象芸術のような変な像なのですが、『触れること』がその扉を開くことだったのが、私に味方しました。
 幼い私は、遊びで指輪をはめ、彫像をおもちゃ代わりにいじっていたのです。そうしたら始祖の声が聞こえたのですから、心底驚きました。
 その時は訳が判らなかったのですが、後にある程度知識が付いた後、心を落ちつけて像に触れる事により、私は虚無に目覚めたのです」
 ルイズ達も納得していた。読めない本や音の鳴らないオルゴールと違い、意味不明のデザインの彫像なら触れることは十分あり得る。偶然であったとしても、そのハードルは他の秘宝より格段に低い。
 「残念なのは、その秘宝が二十年前、とある事件に巻き込まれて失われてしまったと言うことでしょうか。幸い『始祖の彫像』は呆れるほど丈夫で、火にくべようが崖から落とそうが傷一つつかないものなので、壊れたとは思いませんが」
 「そんな……」
 ルイズも秘宝が失われたという言葉に衝撃を受けていた。
 「過ぎたことを悔やんでもしかたがありません」
 ヴィットーリオは、そんなルイズを慰めるように言った。
 「ですが今こうしてここに、虚無の担い手が顔を合わせることが出来ました。これは歴史的に見てもまれなことなのですよ」
 「そうなのですか?」
 ルイズの疑問に、ヴィットーリオは返答する。
 「虚無の担い手は、同時期に四人存在するはずです。ロマリアの伝承にもあり、また始祖の伝承にも、四の四という言葉がよく使われます」
 「四の四、ですか?」
 「ええ。これは四人の担い手、四人の使い魔、四つの指輪、四つの秘宝を意味します。これらすべてをそろえることが出来れば、聖地の扉が開く、といわれています」
 「聖地の!」
 ルイズもさすがに驚いた。虚無にそんな意味があるなどとは思いもしなかったのだ。
 「ミス・ヴァリエール」
 そしてヴィットーリオは、力のこもった目でルイズをじっと見つめた。
 「私は教皇として三年間、いろいろ手を尽くしてきました。新教徒教皇などと揶揄されるくらい、いろいろな改革にも挑んできました。ですが現状は、あなたがその目で見たとおりです」
 「聖下……」
 
101ゼロと魔砲使い:代理2:2009/02/11(水) 22:12:10 ID:mPIY6t4A
ゼロと魔砲使い第24話-07-2
ルイズも秘宝が失われたという言葉に衝撃を受けていた。
 「過ぎたことを悔やんでもしかたがありません」
 ヴィットーリオは、そんなルイズを慰めるように言った。
 「ですが今こうしてここに、虚無の担い手が顔を合わせることが出来ました。これは歴史的に見てもまれなことなのですよ」
 「そうなのですか?」
 ルイズの疑問に、ヴィットーリオは返答する。
 「虚無の担い手は、同時期に四人存在するはずです。ロマリアの伝承にもあり、また始祖の伝承にも、四の四という言葉がよく使われます」
 「四の四、ですか?」
 「ええ。これは四人の担い手、四人の使い魔、四つの指輪、四つの秘宝を意味します。これらすべてをそろえることが出来れば、聖地の扉が開く、といわれています」
 「聖地の!」
 ルイズもさすがに驚いた。虚無にそんな意味があるなどとは思いもしなかったのだ。
 「ミス・ヴァリエール」
 そしてヴィットーリオは、力のこもった目でルイズをじっと見つめた。
 「私は教皇として三年間、いろいろ手を尽くしてきました。新教徒教皇などと揶揄されるくらい、いろいろな改革にも挑んできました。ですが現状は、あなたがその目で見たとおりです」
 「聖下……」
 先ほどまでの自信にあふれた様子から一点、頭を落としてしまった教皇をルイズは心配そうに見つめる。
 「その経験は、私に幾つかのことを悟らせてくれました。私の手は、教皇という地位は、それだけで人を救えるものではない、と。そして……」
 「そして?」
 「博愛だけでは、人は救えないのだと……そのためには、『力』が必要なのだと」
 そう言うと、ヴィットーリオは、真正面からルイズの瞳を見つめた。
 それは、狂信と言ってもいいほどの力のこもった瞳であった。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:12:56 ID:s88Pl5MT
さるさんか?
103ゼロと魔砲使い:代理2:2009/02/11(水) 22:14:01 ID:mPIY6t4A
ゼロと魔砲使い第24話-08
「ミス・ヴァリエール。あなたは私に、自分が『虚無』であることの証明を求めているのですね」
 「あ、はい。そうです」
 いきなり話が本題に戻ったために、ルイズは思わず慌ててしまった。
 「レコン・キスタを率いるクロムウェル司教は、自らを『虚無』と名乗っている。死者蘇生という、それにふさわしい力も見せている、とのことですね。あなたの報告の抜粋が、マザリーニからの手紙に記されていました」
 「はい、その通りです」
 話を肯定するルイズ。
 「断言しましょう。彼の『虚無』は偽りです」
 「やはり……ですが聖下、それを証明できるのでしょうか」
 ルイズの疑問に、ヴィットーリオは朗らかに笑いながら答えた。
 「彼が司祭である以上、まず間違いはないでしょうね。『虚無』は選ばれし者……具体的には、始祖の三王家、トリステイン、アルビオン、ガリアの王家の血を引くものか、ロマリア初代教皇聖フォルサテの血を引くものからしか現れないのです」
 「そういえば、そうでした」
 大后妃マリアンヌ様もそう言っていたことを、ルイズは思い出した。自分がいずれ玉座に座ることになるというのも、その話の流れだった。
 「ロマリアにおいては教皇は選考会議によって決まるものであり、王家のように一貫した血を引いているものではないですが、聖フォルサテの血族はかなり厳密に調査されています。
 クロムウェル司教がその血族である可能性は、皆無ではありませんがほぼ無いと見て良いでしょう」
 歴代の血族の中に、自覚なき跡継ぎを作っていた人物がいないとは限らないのだ。
 出奔して行方の判らないものだってゼロではない。
 「もっとも、『レコン・キスタ』に対して証明するとなると、さすがに生半可の証拠では足りませんね。私が一筆書いたくらいでは、偽造扱いされて終わりでしょう」
 「そんな! 教皇聖下の書を偽造扱いなんて!」
 思わず声が荒くなるルイズ。だがヴィットーリオは、力なくいった。
 「良くあることなのですよ。私の名前を勝手に使うなどということは」
 ルイズは押し黙るしかなかった。タバサも沈黙を守っていた。
 「ですが教会としては、神聖なる始祖の力である『虚無』を偽る者を放置できません。その点において、私はミス・ヴァリエール、あなたの味方です」
 「ありがとうございます」
 「ですがそうなると、偽りの虚無を打ち倒し、教えを正す手段は一つしかないですね。というか他の方法ではレコンキスタを崩せないでしよう。ミス・ヴァリエール」
 そこで再びルイズのことを真正面から見据えるヴィットーリオ。
 思わず緊張するルイズに対して、彼はその言葉を口にした。
 
 
 
 「私もあなたと共にアルビオンへ向かいましょう。あなたの虚無を証明し、偽りの虚無を打破するには、それしかありません」
 
 「えええええっ!!」
 
 
 
 さしものルイズも、その場で叫び声を上げてしまうのであった。
104ゼロと魔砲使い:代理の代理:2009/02/11(水) 22:14:22 ID:ogVUxpkY
避難所で宣言したのですが
誰か書き込んでいるようですので私は辞退しておきます
105ゼロと魔砲使い:代理2:2009/02/11(水) 22:15:37 ID:mPIY6t4A
662 :ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA:2009/02/11(水) 21:54:15 ID:7HuCKYsk
今回はここまでです。はっちゃけ教皇様w

物語も大分混沌の様相を示して参りました。

次あたりで久々にちょっと救出組も顔出すかも。

ではまた〜


663 :ゼロと魔砲使い ◆IFd1NGILwA:2009/02/11(水) 21:56:35 ID:7HuCKYsk
以上、代理用投下も終了です。どなたかよろしくお願いいたします。

以上、代理投下を行いました。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:17:10 ID:qRWScoVk
>>99 >>101 >>103 >>105
避難所で宣言してる人が居るのに、何も言わずに代理する人ってなんなの?
被るかもしれないとか考えないの?

目立ちたいだけ?馬鹿じゃないの?
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:20:59 ID:BxVEdSLs
馬鹿にむかって馬鹿じゃないの?って聞くのは可哀想だから止めておこうよ
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:23:10 ID:CvYZaYLq
ちょっとごたついたけどGJ!
教皇がいい具合になってますな。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:23:52 ID:5rvn7ZUm
魔砲の人乙
代理の人も乙
110虚無と賢女の人:2009/02/11(水) 22:26:41 ID:0omFAm/V
魔砲の人も代理の人もおつつですー。

もし、予約無ければ30分から3話の投下を始めます。
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:28:16 ID:mPIY6t4A
避難所のリロードを行わなかった為、宣言に気づきませんでした。
>>100>>104氏、大変失礼致しました。
112虚無と賢女03話 1/8:2009/02/11(水) 22:30:43 ID:0omFAm/V
では投下開始します。

ヴェストリの広場は魔法学院の西側にある広場で、日中は建物と塔に日差しが遮られてほとんど影になっている広場である。
普段から人気もなく決闘にはうってつけの場所であったのだが―――

「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの使い魔だ!」
「え? あの平民の? うわー……、一方的すぎじゃない? ドットとは言っても『青銅』のギーシュでしょ?」

―――今は噂を聞きつけた野次馬で溢れかえっていた。
野次馬のほとんどは、ギーシュが一方的に平民の使い魔であるエレアノールを叩きのめすところを想像していた。ただ、
ルイズと同じクラスの生徒たちだけは、教室中を震え上がらせたエレアノールの殺気を思い返し、複雑そうな表情で
十数歩ほどの距離で対峙している二人を見ていた。

「諸君! 決闘だ!」

ギーシュの宣言に野次馬たちは次々と歓声を上げる。それに腕を振って答え、エレアノールの方へと向き直る。一つ一つが
芝居がかっており、見ようによってはオペラの演劇にも感じられる。

「それでは、決闘の前に名乗りあげさせてもらう。僕はギーシュ・ド・グラモン、二つ名は『青銅』! 『青銅』のギーシュだ!」

青銅の薔薇の造花をオーケストラの指揮棒のように振ってポーズを決める。どこまでもキザ男らしい振る舞いだが、
内心は慌てていた、非常に慌てていた。

(さて、これからどうしよう!?)

食堂のことで、ギーシュは父であるグラモン元帥との組み手を思い出した。「手加減はせんぞ」という父の言葉と共に
向けられた―――文字通り「本気で殺すつもり」の―――視線。その時は恥も外聞も無く泣き喚いた。
先ほどのエレアノールの視線はそれに勝るとも劣らない鋭さであったと……思い返す。『無礼な平民にちょっとした躾』程度の
軽い気持ちで戦える相手ではないと、武門の生まれとしての本能が警告を出し続けている。

(だからといって本気を出すのも……論外だ)

目の前に立つエレアノールは、文句なしの見目麗しい気品ある女性。野次馬の中にも、その美しさに見とれている者もいる。
ギーシュとしても彼女のような美女とは戦うよりも、愛のささやきを交し合いたいと素直に思う。そんな彼女に本気で決闘を
挑んで勝っても、「平民の女性相手に本気戦った」と不名誉な評価になるだろう、主に外見の補正で。そして、負けてしまえ
ば言わずもがな。

「私はエレアノール。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔をしております」

名乗り返されて現実に意識を戻す。このままではすぐに決闘が始まってしまう。彼は覚悟を決めた。

「では、決闘を始める前に勝負方法を決めておこう! このまま戦っても勝敗は明らかだが、平民の身で貴族である僕の
決闘を受けた勇気には、武門の者として敬意をもたなければならない!!」

薔薇の花を振ると花びらが七枚こぼれ落ち、宙をひらひらと舞って―――それぞれが甲冑を着た等身大女戦士の人形になった。
その数は七体。野次馬たちから、おおおぉと歓声が上がる。
続いてもう一度同じように薔薇の花を振って花びらが今度は一枚こぼれ落ち、今度はエレアノールの足元までたどり着いて
一本の剣になった。長さは1メイルほどの青銅製の長剣である。

「これから僕はこの七体の『ワルキューレ』で君を捕まえる、捕まったら僕の勝ちだ。そして君はその剣を使って対抗して、
ワルキューレを全て倒すか、僕から杖を取り上げれば君の勝ちだ!」

エレアノールの方へ杖を向けて宣言し、反応をうかがう。彼女は少し考え込んでいたようだが、納得したのか大きく頷いた。

「ええ、その条件で構いません」

足元から剣を拾い上げて―――剣を握った瞬間、エレアノールの左手のルーンが輝き始める。光るルーンが気になるが、
少なくとも勝っても負けても対等の勝負の結果という状況に持ち込めたことに、彼は胸中で安堵のため息をついた。

(よし、後は出来るだけ穏便に勝負をつけるだけだ……)
113虚無と賢女03話 2/8:2009/02/11(水) 22:33:28 ID:0omFAm/V
「へぇ〜……ギーシュったら珍しく頭を働かせたみたいね? タバサはどう思う?」
「……別に勝負方法はどうでもいい」

野次馬の最前列に陣取って決闘の名乗りと作法の宣言を聞いてたキュルケは、隣に座る青髪の少女―――タバサに話しかける。
名乗りの間からずっと彼女は我関せず本を読みふけっていた。彼女たちから見てちょうど反対側にルイズが黒髪のメイド―――
確かシエスタって名前だったわねと思い出す―――と一緒に見守っているのも見える。

「それで、この決闘の勝負はどっちに軍配があがるかしら? あたしはエレアノールが勝つと思うけど」
「……エレアノール」
「あら、意見が一致したわね。困ったわ、これじゃあ賭けにもならないわよ」

パタンという軽い音を立ててタバサは本を閉じる。それにキュルケは驚きの声をあげる。

「貴女が本から目を離すなんて珍しいわね」

明日は雨かしらと、呟くキュルケにタバサは目線を決闘する二人に固定したまま答える。

「……決闘が始まる。多分、目を離していたら……全部見逃してしまう」

タバサの脳裏にあったのは午前の授業の時、爆発で混乱する教室で見せたエレアノールの動きだった。雑多に動き回る生徒たちと
使い魔たちの間を止まることの無く流水のようにかき分けてルイズへと元へと向かった動き。教室の外から覗いてたタバサでも
その動きを目で追うのが精一杯だった。

「……」

あの動きは易々と体得できるものではない。だからこそ、出来るだけ早く見極めるべきだと、タバサは判断した。





ルイズは不機嫌そうに名乗りを上げる二人を見ていた。主人の意思を無視して勝手に決闘を受ける使い魔。
主人を心配させるなんていい度胸ねと憤る気持ちと、主人の名誉のためにメイジに立ち向かう健気な忠誠を嬉しく思う
気持ちが渾然一体となって、どういう顔をすれば分からなくなっていた。
一方、隣で一緒に立っているシエスタは余裕の表情を崩していない。まるで、最初から勝敗など分かっているかのようにも
見える。

「ねぇ、ちょっと……。さっき言ってたことってどういう意味よ?」
「え? ああ……それはですね、女のカンみたいなものです」
「カン?」

シエスタは満面の笑みを浮かべてそのとおりと頷き返した。

「カンなんかで分かるわけないでしょ! 大体、ギーシュはドットとはいえ立派なメイジよ。いくら腕が立つからって言っても
平民があっさり勝てる相手ではないわ!」
「ええ、普通に考えればそのとおりです、ミス・ヴァリエール。でも―――」

ギーシュの前に七体のワルキューレが並び、周囲からおおおぉと歓声があがる。その歓声でシエスタの言葉がかき消される。

「―――の言ってたとおり人なら―――ドットどころかトライアン―――」
「え? 何? 何言ってるのよ? 聞こえないわよ?」
「あ……、決闘が始まりますよ」

ルイズは聞き直すのを諦めて、顔を前に向けた。主人として、使い魔を見守る義務があるのだ。
114虚無と賢女03話 3/8:2009/02/11(水) 22:36:29 ID:0omFAm/V
長剣は手習い程度で使いこなせないと思いつつも、徒手空拳よりかマシと考えエレアノールは剣に手をかける。
剣を拾い上げると同時に左手のルーンが輝きだして、エレアノールは目を見張った。脳裏には長剣を使い方が浮かび上がる。
試しに軽く振ってみたところ、ビュンという風切り音と共に振りたいと思い描いた軌道を正確に振るうことが出来た。

(これは……道具を正確に使うためのルーンの効果? いえ、ナイフやフォーク、羽ペンには反応してなかった)

戦いのための道具、すなわち武器を正確に使うことが出来るのだろうと考えを続ける。おそらくトラップカプセルも
同じカテゴリーになっていたのだろう。そして、昨夜は気付かなかったが、長剣を持っていると身体が羽のように軽くなった。
これもルーンの効果なのかと推察する。

「準備はいいかね? では、正々堂々とした決闘を始めよう!!」

ギーシュの宣言と共に決闘が始まった。
開始宣言と同時に七体のワルキューレが動き出し、二体が正面に、一体ずつ左右に、残り三体がギーシュの周りに残った。
前衛、右翼、左翼、後衛。堅実かつ基本的な陣形。
エレアノールは遺跡の中での戦闘経験から、酷似した魔物を思い浮かべる。女神像とそれに操られる騎士鎧、騎士鎧が前衛を
固めて、後衛の女神像が天井より柱を落としてくる性質。そこまで思い出した彼女は、まずは様子見して相手のパターンを読み
取るべきと判断し、軽く地を蹴り前衛の二体のワルキューレへ―――

「……えッ!?」

刹那、エレアノールはワルキューレと触れ合いそうになるほど、間合いを詰めていることに気付いた。反射的に長剣を
向かって右手側のワルキューレに対して振るう。

―――弾け飛ぶ鋭い金属音。
周囲の歓声が水を打ったように静まり返る。エレアノールが一瞬で距離を詰めてワルキューレを弾き飛ばした、と周りからは
見えた。

―――激突する荒々しい金属音。
弾き飛ばされたワルキューレは野次馬の頭のはるか上を飛び越えて、学院の壁に激しく衝突してバラバラになる。

(今のは……いったい!?)

間合いを詰めすぎて長剣の腹でワルキューレを打ち据えるだけだったはずと、エレアノールは考える。少なくとも、あんなに
激しく飛んでいくほどの―――野次馬の頭上数メイルを越えて、数十メイル離れた建物に激突した―――力は込めていない。
左手のルーン―――長剣を振るう瞬間、輝きが増したように見えた―――に一瞬視線を向け、続いて左手側のワルキューレに
今度は力を押さえ気味に斬りかかる。体勢を整え、しっかり踏み込み、正しく力を込めて長剣を振るう。

―――かん高く響く金属音。
二体目のワルキューレはバターのように斬られ、綺麗な切断面を見せて倒れた。

(今度は上手く斬れました……が、身体がまるで暴れ馬になったみたいですね)

苦笑しながらバックステップをして―――力加減を間違えて、思ったよりも二倍以上も後ろに下がった。背後にどよめく
野次馬の気配を感じる。正面を見れば、ワルキューレを密集隊形に整えてるギーシュ。攻撃より防御を優先したのだろうと、
エレアノールは判断する。

「行き―――ます!!」

地を蹴り、再びワルキューレ目掛けて駆ける。たった一歩でその距離の半分を稼ぎ、さらに一歩で移動を終わらせる。眼前には
ワルキューレが五体。エレアノールの疾さに全く対応できていない。

「―――えいッ!」

―――切断される耳障りな金属音。
横薙ぎの一閃、三体のワルキューレが胴体を両断され倒れる。残りは二体、ようやくエレアノールの動きに反応して手を
伸ばしてくるが―――遅い。振り切った剣を構え直す時間は十分にあった。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:38:37 ID:F4gzwabZ
紫煙
116虚無と賢女03話 4/8:2009/02/11(水) 22:38:49 ID:0omFAm/V
「はぁッ―――!!」

―――押し潰される重々しい金属音。
斜めに振り下ろされた長剣により、二体のワルキューレは重なり合うようにして倒れた。エレアノールの手にあった長剣も
過負荷に耐え切れずに折れ曲がり、剣として―――武器としての機能を失う。左手のルーンの輝きが消え去り、同時に
羽のように軽かった身体が元に戻る。
エレアノールは使命を終えた元・長剣をワルキューレの残骸の上に放り投げ、

―――軽やかな金属音が響いた。
エレアノールは呆然と立っているギーシュに身体ごと向き直る。

「七体のワルキューレを倒させていただきました。私の勝ちでよろしいですね?」
「あ……ああ、そうだ。この勝負は君の勝ち、だ……」
「それでは食堂での約束を守っていただけますね?」

エレアノールは微笑みながら確認をしてくる。食堂で見せた鋭い眼差し、先ほどの決闘の最中に見せた凛々しい表情、
そして今の微笑み。一瞬、ギーシュはそれに見惚れてしまいそうになる。

「ああ、グラモン家の名誉にかけて履行する。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールへの侮辱は
取り消す。あれは僕にとって最大の間違いだったと認める」

ルイズの方を向き、頭を下げる。相変わらず芝居がかった振る舞いではあったが、その表情はどこか朗らかであった。

「そして……戦乙女、ワルキューレの名前は……エレアノール、君にこそ相応しいと宣言する!」

ギーシュの宣言の瞬間、周囲の野次馬たちから一斉に歓声が上がる。その全ては―――心の底から平民を蔑視している少数
の者を除いて―――エレアノールと、潔く負けを認めたギーシュへの歓声であった。





キュルケは周囲の歓声―――至近距離から聞けば怒号に等しい―――に耳を塞いで耐えていた。同じように歓声に
耐えていた隣のタバサが杖を振り『サイレント』を自分とキュルケ、二人分のスペースを確保するようにかける。

『助かったわ、ありがとう』

ジェスチャーで礼を伝えると、キュルケはキーンと耳鳴りが残る両耳を軽く叩いて落ち着かせる。

一方のタバサはエレアノールの動きを頭の中で正確に思い返していた。僅か数十秒、恐らくは一分と経たずに七体のゴーレムを
斬り捨てた技量。離れたところから、かつ注意深く見ていたのに全てを見切ることができなかった動き。およそ常人とは
思えない運動能力。
最初は歴戦のメイジ殺しなのかと思ったが、どうにも腑に落ちない。

(……能力を持て余していた?)

もし自分の実力を把握しているのなら、決闘開始直後にギーシュのワルキューレを全て斬り倒していたはずだ。しかし、
今の決闘は戸惑いながらも、まるで自分の力を推し量るように―――暴れ馬を御すように―――長剣を振っていた。

(……それに、あのルーン?)

長剣を握ったと同時に輝きだした左手の―――自分の知らないルーン。全てのルーンを把握してるわけではないし、
今のように使い魔の身体能力を向上させるルーンもあるかもしれないと思うが……どこか引っかかる。
タバサの脳裏にエレアノールの正体について知りたいという好奇心と、左手で輝いてたルーン文字の形状がしっかりと
焼きついた。
117虚無と賢女03話 5/8:2009/02/11(水) 22:41:57 ID:0omFAm/V
歓声が周囲を包む中、ルイズはエレアノールへと駆け寄って抱きついた。その顔には満面の笑みが浮かんでいる。

「凄いじゃない! 凄いじゃないのよ!!」

有頂天に舞い上がってエレアノールを褒め称えるルイズに、微笑み返そうとして―――

―――くぎゅううぅぅぅ―――

歓声の中、目の前のルイズにはハッキリと聞こえた、密着していた身体越しにしっかりと聞こえた。音源は……自分が
抱きついているエレアノール。

「あ……」
「え? あぁ、そういえばお昼まだだったのよね?」
「はい……」

先ほどまでの凛々しさがウソのように、伏せた顔を顔を真っ赤にしてか細い返事を返す。

「こういう場面なんだから、もう少し我慢できればいいのにね」

ルイズの率直な感想にエレアノールは苦笑する。ルイズに遅れて寄ってきたシエスタが、彼女に助け舟を出してくる。もっとも、
笑いをこらえようとして表情が少し歪んでいたが……。

「まぁまぁ、ミス・ヴァリエール。空腹は我慢できますが、お腹が鳴くのはどうしようもないですよ」

シエスタの言葉に少し考えて、そうね、と頷く。

「じゃあ、午後の授業のお供は遅れてもいいから食べてきなさい。教室の場所は誰かに聞いてくればいいわよ」
「はい……ありがとうございます」

ルイズの指示に頭を深く下げると、ゆっくりと確実な足取りで歓声の中を食堂の方へと歩き出す。野次馬たちもルート上に
居た者たちは自然に左右に分かれて道を作る。

「本当にあっさりと勝っちゃったわね……」
「ええ……、ちょっと私も驚いたのですけど」
「……? どういうこと?」

シエスタの答え方に疑問を持って振り返る。エレアノールの背中に視線を合わせたまま、どこか呆然としているようにも見える。

「聞いていたより―――いえ、予想より凄いなぁ……と思いまして……」

ふぅん、と相槌をうって、

(カンって言っても大したこと無いのね)

もう一度エレアノールに視線を合わせた時には、既に校舎の影に隠れて視界から消えていた。





学院長室の『遠見の鏡』で決闘を見ていたオスマンとコルベールは、決着と同時に顔を見合わせた。

「オールド・オスマン……。ミス・ヴァリエールの使い魔、圧倒的でしたね」
「うむ、凄まじい動きじゃったのぉ」

コルベールは先ほどの決闘を身震いと共に思い返した。
118虚無と賢女03話 6/8:2009/02/11(水) 22:44:27 ID:0omFAm/V
「ギーシュは一番レベルの低いドットですが、だからといってただの平民に遅れをとることなどありえません。
それにあの動きは平民どころか、訓練された軍人でも不可能ですよ!」
「うむ」
「やはり、彼女は伝説の『ガンダールヴ』!! 一人で千人もの軍隊を壊滅させる力を持つ使い魔! 王宮やアカデミーへ
至急連絡すべきでは!?」
「それには及ばん」

コルベールの提案をあっさりと切ってすてる。食い下がろうとするコルベールを手で制し、机の引き出しから水キセルを
取り出すと、重々しく吸い始める。

「下手に王宮やアカデミーのボンクラどもに知らせてみよ。あやつらのことじゃ、戦争のオモチャにしてしまうじゃろう。
……コルベール君、おぬしはそのことをよく知っているはずじゃ」
「確かに……冷静に考えればそのとおりですね」

コルベールは苦い記憶を思い出したような暗い声色で頷く。オスマンは水キセルを手に持って窓の外に視線を向ける。

「この件は当面、わしとコルベール君との間だけの話じゃ。くれぐれも口外するでないぞ?」
「はい! かしこまりました!」

窓の外はところどころに雲が浮かんでるが綺麗な青空が広がる。歴史の彼方に想いを馳せるには、お似合いの青空。

「伝説の使い魔『ガンダールヴ』か……。いったい、どのような姿をしておったのじゃろうなぁ……」





その時からルイズとエレアノールに対する周囲からの態度が一変した。

ルイズ。魔法の使えない『ゼロ』のルイズ。小馬鹿にし続けていた生徒たちも、そのルイズが召喚した平民がメイジを
圧倒する力量を持っていることで口を潜めだしたのだ。『メイジの実力を知りたければ使い魔を見よ』の言葉どおりならば
ルイズの真の実力はエレアノールを従えるほどである、と考え出したのだ。
その結果、ルイズに面と向かって『ゼロ』と言うのは、犬猿の中であるキュルケだけになった。

エレアノール。『ゼロ』のルイズに召喚された平民の女性。使用人たちからは元から人気が高かったが、この決闘後からは
その人気はさらに高まりを見せた。気難しい職人気質のコック長マルトーも『我らの戦乙女』と、崇拝している女神のように
エレアノールを讃えていた。
学院の生徒たちの中にもその凛々しさに惹かれ、隠れファンクラブを結成する者も―――男女問わず―――現れる。決闘で
敗者となったギーシュもその一人で、同じく隠れファンクラブに参加したモンモランシーといつの間にか仲直りしていた。
一方で名を上げるために決闘を申し込もうとする野心的な生徒も現れだしたが、オールド・オスマンの命を受けた教師たちに
阻まれて、誰もエレアノールに挑むことは出来なかった。

―――ただ、教師の目を潜り抜けて接触しようと機会を狙う者も居た。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 22:45:20 ID:mPIY6t4A
お詫びの支援
120虚無と賢女03話 7/8:2009/02/11(水) 22:47:15 ID:0omFAm/V
数日後。
エレアノールは命じられていた部屋の掃除を終えて、借りていた水桶を水汲み場へと戻しに来ていた。見上げると視界一杯に
抜けるような青空が広がっている。掃除の後は夕方まで自由時間と言い渡されており、久々にゆっくりと日向ぼっこもいいかも、
と考える―――が、

「……あら?」

空から何か大きなものが降りてくるのが目に映った。今まで気付かなかったのは、その青い鱗が青空に溶けこんでいたからか。

「きゅいきゅいきゅい〜♪」

エレアノールの目の前に降り立ったのは一匹の青いドラゴン、ご機嫌そうに鳴きながらつぶらな瞳でエレアノールをジッと
見つめてきた。

「確か……生徒の使い魔でしたね?」

使用人たちから聞いた『今年の大当たり』を思い出す。―――ちなみに、エレアノール自身も大当たりに該当しているらしい。
使用人たちも口を濁していたのでハッキリと確認したわけではないが。
シルフィードと名付けられていた所まで思い出して、何で自分の前に降り立ったのか疑問に思う。

「あの、何か用なのですか?」
「きゅい! きゅいきゅいきゅい!」

……会話がさっぱり成り立たない。エレアノールの言うことは理解しているようだが、シルフィードが言いたいことは
エレアノールに通じるはずがなかった。

(困りましたね……、主の学生さん―――確かタバサさんしたね。彼女に通訳を頼むべきでしょうか?)

困り果てたエレアノールに、シルフィードは「きゅい♪」と鳴くと首を下げて背中を見せ付けてきた。

「乗れ? ということです?」
「きゅい! きゅいきゅい♪」

その通りと言わんばかりに頷く。人懐っこそうなシルフィードに、エレアノールは微笑んだ。

「じゃあ、お言葉に甘えて……、でもあまり遠くには行かないでくださいね」
「きゅい〜♪」

シルフィードの背中によじ登って馬に乗る要領でまたがる。何本か生えてる背びれの一本に背中を預けて、
両手で手前にある背びれを握り締めた。

「準備は整いました、いつでも大丈夫ですよ」
「きゅい♪ きゅいきゅい♪ きゅい〜〜〜♪」

バサっと翼を広げるとシルフィードは、大きく羽ばたかせて宙に舞う。続いて学院を流れる風の中から上空に吹き抜ける風を
選んでその流れに乗り、あっという間に数百メートル上空へと飛び上がった。
121虚無と賢女03話 8/8:2009/02/11(水) 22:49:35 ID:0omFAm/V
その夜。
寮のとある一室。

「きゅいきゅい♪ お姉さま! シルフィはエレアノールの監視だけじゃなくて探りを入れてきたのね!
シルフィはとっても賢いのね! 言われただけの命令を守るだけなのは無能の証なのよね! だから一生懸命考えて
頑張ったのよね♪ きゅいきゅい!」
「……」
「でもでも、エレアノールって人は寒がりなのよね! ちょっと二千メイルほど飛んだだけなのに顔を真っ青にして
震えていたのよね! シルフィは平気なのに変なのよね! きゅいきゅい♪」
「……」
「これだけ頑張ったシルフィにお姉さまはお肉を山盛りプレゼントするのね! 山盛りじゃないとダメなのだからね♪」
「……」
「きゅい? お姉さま聞いてるの!?」
「……」
「きゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅい!! 無視しないでよね! シルフィを早く褒めてお肉山盛りを持ってくるのよね!
お腹が空いてきたのよね! お腹空いたのよね! 可愛いくて有能なシルフィのために早くお肉山も―――」

―――ドゴスッ(重量のある硬い物体を思いっきり振り下ろして、何かに叩きつけるような重々しい衝撃音)―――

「きゅいきゅいきゅい〜!? 痛い痛い痛いのよね!? 頭が割れるように痛いのよね!? まるでお姉さまの杖で殴れた
ような激痛なのよね!?」
「……勝手なことはしない」
「きゅい〜……、でもでもお姉さま!!」
「……貴女の役目は監視、何か気付いたら報告。これをしっかり守る」
「きゅいきゅい! 言われた命令だけを―――」
「命令違反は一ヶ月肉抜き」
「きゅい!! シルフィは全身全霊全力全精力全気力全存在、全財力全権力全火力全政治力をもってお姉さまの命令を
守るのよね! きゅいきゅい!!」
「……あるの? 後半部分」

―――以上。寮のとある一室で行われた、とある生徒と学院の誰も聞き覚えのない声の女性の会話―――
122虚無と賢女の人:2009/02/11(水) 22:53:32 ID:0omFAm/V
以上で投下を終了します、支援ありがとうございました。
対ギーシュ戦、書きやすいかなっと思ってましたけど……
原作のチート級の強さが縛りになって返って苦労しましたorz



>>51
どういうわけか、思いっきり知っています、
マイナーなのに知っていますとも(苦笑
確かにデスピーが召喚されたら面白そうなのですが……、
何となく、召喚されて悪巧み中のぽんこつ大魔王とキャラが被ってるよーな錯覚が(苦笑
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:21:04 ID:9ig2Xen6
>>51
知ってるどころか、家に全巻揃ってるw
ルイズ的に『当たり』は誰なんだろーな? ムクロマンドやデスピーあたりは面白そうなんだけどw
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:22:55 ID:yXdQwmkl
大冒険大陸……魔法を使えないエルフとか?
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:31:28 ID:BirU3PVY
タルブの村には魔神壱號があってシエスタがデラデューンの子孫だったとか……。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:38:27 ID:TiatFabO
ソウルイーターからミフネ召喚とか思いついた
子供好きだし単体で戦闘力が高いからいけると思ったんだが
ミフネの戦闘は文だと描写しにくいな・・・全開モードも一回しか出てきてないし・・・
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:38:31 ID:nnHaCepv
ソードワールドRPGリプレイからマンティコアのグラスバガス様を召喚とか

ルイズ「お母様と同じマンティコアだーナイスよ私」
グラ「僕も裸なら君も裸それが…(ry)
ルイズ「私も裸だアッパラパー(脱ぎ)」

…スマン調子こいた
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:48:27 ID:lIPrh7HB
>>127
住専トリオ改め住専コンビとか呼んであげたら喜びそう
見たくないもの2号が泣くけどw
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:49:48 ID:u3BWMOa9
>126
向こうに鏡が現れた瞬間「ヒャッハー!」とか叫びながら不用意に飛び込むやつが・・・
始祖降臨に並ぶ伝説の誕生だな。狩るのか?
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/11(水) 23:54:47 ID:+oQ4ix4F
>SWリプレイ
マロウしゃんとかスイフリー呼んだら…どうにも不幸なスタートだよなぁ…
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:00:49 ID:Fczy6pzs
見たくないもの2号で思い出したけど、誰かギーシュを女装させるSS書いた人居たよな?
何のシリーズだっけ?

>>130 スイフリーなら小ネタの方で呼ばれてたぜ
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:03:08 ID:EgDj5Hvm
ネタが浮かんだんで書き始めてみたけど、思った以上に難しい
みんなこんな脳味噌消耗することやってたのか
すげえ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:03:15 ID:CwG9jE0e
ふと、強い女装キャラで考えてみようと思ったんだが浮かんできたのが

・忍たまの山田先生
・バキのドイル
・マテパのコルクマリー

うん、何でか微妙なキャラしか思い浮かばなくて困るorz
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:04:26 ID:Z1zMlZ/1
LOSTだったと思うが
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:05:41 ID:4hTyUpF2
GIFTでアルビオンに行く時にギーシュに女装させてたよなたしか
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:07:11 ID:+51DpjTN
原作をあまりよく知らないんだけど、
「アンダーソン君」とかいいながらゾロゾロと無限増殖するグラサンスーツの人とか
ワルドの偏在意味ねーな
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:08:45 ID:Fczy6pzs
GIFTだったわありがと
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:12:36 ID:4hTyUpF2
そのグラサンスーツの人は一人で増えるんじゃなくて他人乗っ取って増えるタイプだな
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:15:03 ID:WLqf3Lsu
>>136
ただのスミスのことならアレは他人に「自分」を上書きして増えるから元となる他人が必要。
俺もガイバーのことをよく知らないけど預言者に上書きして予知能力を獲得した固体が居たから
アプトムと似たようなモノと考えていいと思う
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:16:39 ID:Tnk/O03c
ゼロ魔持ってないんだけど書きたい作品があるのってアリかな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:18:21 ID:IpfdokEv
あとあいつコンピューターウィルスだからネット環境無いとただの人だぜ
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:18:33 ID:dvxDQPwa
>>132
慣れれば御褒美
でも俺は投下すらしていない
死にたい
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:19:59 ID:+51DpjTN
>>138、139
つまり、某七万の軍勢と戦闘したら七万のグラサンスーツの軍になると。
帰還後「ごきげんようミスヴァリエール」×七万・・・語られない四番目ってこいつか
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:22:00 ID:IpfdokEv
>つまり、某七万の軍勢と戦闘したら七万のグラサンスーツの軍になると。
ハルケギニアがウェブ上の仮想世界で無い限り無理
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:23:29 ID:UBJ2yZeP
投下予約が誰もいないなら、25分あたりに予約をさせてもらっていいだろうか?
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:28:42 ID:Ta2lnTsm
あれ、こない?
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:29:28 ID:+51DpjTN
予約ですか、支援ですとも!

>>144
世界観の捉え方によっては可能か・・・むしろ七万のグラサンスーツと才人対峙してしまえ。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:29:40 ID:tQtQppf3
そもそもタイトルも元ネタの提示もなしだから本気かどうか・・・
149ゼロの家庭教師:2009/02/12(木) 00:30:19 ID:UBJ2yZeP
『先生の長い一日!!!』の巻 続き

騒然とする館内。

混乱から人々が暴徒化する懸念もあり、アバン扮するモット伯はここで巡回の意味も兼ねて館内を一回りした。
――この突然の事態、理性を失い不埒な行いに走る人間が出てくるかもしれない……

しかしそうした懸念も、どうやら杞憂のものとなりそうで、
目下のところこの館の人間は皆、自身の“退職金”の確保に余念が無い様子。
壷の取り合いはあるが互いに掴み合うこともない。どうやら先の「争いを見かけたら処分」の宣言に効果はあったようだ。

彼らはモット伯が伯爵であることだけを恐れ敬ってきたわけではない。
彼が明日にはその地位を失うと聞かされようが、メイジである彼に人々を容易く『処分』してしまえる力があることに変わりなく、
また貴族の彼がそれを行うことに何の躊躇もないことを、平民である彼らは誰よりもよく知っている。

それゆえ伯爵の権威は未だ厳然と存在し、アバンがその横を通り過ぎる度、彼らは顔を伏せ息を潜めた。


(これだけを見ても、あの男の人となりがよく判る。しかし、因果応報とはいうが……)

暗く長い廊下を抜け、再び執務室の前まで来てアバンは立ち止まった。
一瞬の逡巡、彼は心に射すものを振り払うように軽く頭を振り、扉を開ける。

「……全然見つからないじゃない!あ〜〜〜もう!!」

部屋の中心には、癇癪を起しつつも頼まれた作業に励むルイズの姿。
クシャクシャと丸めた紙くずを、ポイッと投げ捨てる仕草すらどこか愛らしい、この彼の新しい愛弟子を見ていると、
この子こそはきっと立派な人間に…と、決意を新たにせずにはいられないアバンであった。


「はぁ〜〜〜…ん?」
「ただいま戻りましたよルイズ。調子はどうです?」
「全然ダメ。なにも見当たんない」
あちこちから引っ張り出してきた書類の山の中、仏頂面で答えるルイズ。

「そうですか…ご苦労さまです。私も一通り巡ってきましたが、あるとするならここだと思うんですけどねぇ」
「なによ、私の探し方に問題があったとでも言うわけ!?」
「勿論そういうわけじゃありません。そりゃもうバッチリ探してくれたと信じてますとも!」
まぁまぁ、とジェスチャーで宥めるアバン。ルイズの方も本気で噛み付いたわけでもなく、あっさりと矛を収める。

「そうじゃありませんけど、そうなると普通に探していては目に付かないところがあるんですかねぇ」
首を傾げつつ、改めて部屋の中をぐるりと見渡した。

「確かあそこに絵が掛けてありましたよね?」
「そこの絵と、隅の花瓶と壁際の彫刻ならさっきまでに全部誰かが持ってたわよ」
「じゃあ『絵の裏に隠し金庫が!』なんて早い話も…」
「ないみたいね」

ですよねぇ…と苦笑しつつ顎に手を当て考えこむアバン。しばらくして、ふと顔を上げて呟いた。


「そこ…そこの本棚の陰のランプ。一つだけ消えてませんか?」
150ゼロの家庭教師:2009/02/12(木) 00:31:35 ID:UBJ2yZeP
その言葉にルイズは振り返り、本棚の方へ指を伸ばして何度か打ち鳴らす。
続けて杖も振ってみるが、反応は無し。

「そうね、故障してるみたい」
そう結論付けた。

「故障?ランプがですか?」
「反応しないってことは、魔法でも切れてるんでしょうよ」
「なるほど、“魔法のランプ”というやつですか。しかし……」

室内の壁に規則的に配列されたランプは、どれもシンプルなデザインで統一されている。
その中でも件のランプは特に目立つこともなく、一見しただけでは一つぐらい消えていても目に付き難いが、

「これだけのお屋敷、主人の執務室のランプに不備があるなら直ちに取り替えられそうじゃないですか?
 この部屋に出入りする、主人や客だけじゃなく使用人たちまで含めれば、誰か1人くらいは気付くでしょう。
 特に人によっては間近で見ることになるでしょうし」

近くで見ても細部まで良く手入れのされたそのランプは、指でなぞっても塵一つ付かない。
…つまり、定期的に誰かしらの手によって磨かれているのだろう。
ものはついで、アバンの指からそっと一筋の光芒が伸びたが、ランプの芯に火が付くことは無かった。

「そんな環境の中、このランプが今日たまたま故障したままであるというのは、結構不自然じゃないですかねぇ。
 もちろん中には本当にたまたま、なんてこともあったりしますけど」
半ば独り言のように呟き、一拍置いて脇の本棚に目を遣り、視線をさらに下に向ける。

「この床も隅々まで清掃が行き届いています。誠にけっこうなことですが、
 ……やはり、このあたりに僅かに動かした形跡がある。さてここから導き出される結論は、なんだと思いますかルイズ?」
ま〜た長いひとり演説が始まりそうだ、と早くも気を抜きかけていたルイズは、突然話を振られて思わず欠伸を飲み込んだ。

「ふへ?そそそれはつまりアレよ……」
「つまり?」

首を捻り、天井を見上げ、頬に手を添え、目線がゆっくりと円を描くように三週したところでポンッと手を叩くルイズ。
「ランプが本棚の陰にあって良く見えなかった!」
ガクっと膝が折れるアバン。
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:32:25 ID:/pEzf9Qf
久しぶりなのキターー
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:32:38 ID:tQtQppf3
アバン先生だったのか
支援
153ゼロの家庭教師:2009/02/12(木) 00:32:53 ID:UBJ2yZeP
「……私としては、このランプがなんらかのスイッチで、横の本棚と連動してその後ろに何かあるのでは、と思うのですけれど」
「ああ、そっちね。うん、私もチラっと考えたけど悪くないんじゃない?」
うんうんと頷くルイズに苦笑いしつつ言葉を続ける。

「まぁ嬉しいことに賛同して貰えたようですが、とはいえ推論は推論。これは確かめる必要がありそうですね」
「確かめるって、そんなのどうやって?」
ルイズの率直な疑問に、アバンは待ってましたとばかりにニヤリと笑う。

「フッフッフ、遂にちゃんとこのアイテムを使う時がきましたね。私の……この必殺アイテムをっ……!」
あれ?このセリフどこかで聞いたことがある、と思ったルイズは念のため姿勢を整え、

「でゅわあたたたぁああ!!?」
おどけた調子でポーズを決めようとしたモット伯のメガネ面にアイアンクローを決めた。

「ノー!ノー!ギブギブ!!」
「その手の、くだらない、ギャグは、もう、沢山、なの、わかる?」
「ルイズヘルプ・ミー!!!」

一語・一語に力をこめてしめ上げるルイズに、膝をついて大仰に懇願するアバン。
多少バイオレンスなじゃれ合いが終わると、こめかみを揉みつつ立ち上がる。

「違うんですよルイズ。今回はホントに役に立つンですよコレが」
「……………………嘘くさい」

ルイズが訝しむそのアイテムとは、かつてアバンが一発ギャグに使用し見事にスベった変てこ眼鏡、
その名も「ミエールの眼鏡」だ。


「この眼鏡はですね、見かけこそ単なる宴会用具ですが、その実『これをかければ隠された罠や装置の類を遍く見抜くことが可能』
 とまで謳われる、かなり稀少なマジック・アイテムなのです!」
「……………………やっぱり嘘くさい」

握りこぶしで力説するアバンの熱に反比例するように、ルイズの疑念は深まるばかり。
154ゼロの家庭教師:2009/02/12(木) 00:33:52 ID:UBJ2yZeP
「……大体、そんなアイテムがあるなら最初から使えば――」
「こればっかりは実際使ってみるのが一番早いですからねぇ。さぁさぁチャッチャとかけてみて下さい」
ルイズの言葉を強引に遮り、彼女のかける変装用の伊達眼鏡をサッと奪うと、その手に「ミエールの眼鏡」を押し付けた。

勢いに圧されて渋々と手渡された眼鏡をかけると、アバンの指差す通りにランプ、そして本棚と目線を向ける。
人並み外れて整った顔立ちの彼女がかけると、余計に際立つその珍妙な装飾。
外からみれば甚だ滑稽ではあるが、その当の本人の表情は徐々に強張っていく。

「…………………………………………」
「どうです?ルイズ、何か見えませんか?」
「…………………………………………」
ルイズはゆっくりと首を横に振ると、

「………………この本棚の裏、確かに通路が透けて見える……!」
信じられない、といった様子で呟いた。


「なるほど、これで確信できました。ランプの方はどうですか?」
「……後ろの壁の中になにかあるのは判るんだけど、ちょっと仕組みとかは判らないわ……」
「判りました、ありがとうございます」

未だ驚きを隠せない様子のルイズ。ちなみに驚いてるのは隠し通路の存在ではなく、怪しさ爆発の眼鏡の性能の方である。
そんな彼女から眼鏡を回収したアバン、自身もかけて確認する。

「確かに、一見しただけではランプの方の細かい部分は判りませんねぇ。
 このランプと本棚が一体どのようにして連動しているのか……
 私もこの世界の魔法技術についてはほぼ素人ですし、さて一体如何したものですかネ?」

問いかけとも、独り言ともとれる発言をして腕を組み、再び考えを巡らし始めたアバンに対し、
先ほど同様また自分への問題提起と捉えたルイズは、あっさりとした口調でこう答えた。

「ああ、それなら私にも判るわよ」

思わずその顔を覗き返したアバンの目の前で、ルイズはその手に握った杖を振り、
本棚とその後ろの隠し扉ごと木っ端微塵に吹き飛ばした。

「…………………………………………」
流石に唖然とした表情のアバンを他所に、ルイズは舞い散る粉塵を手で払うと、

「扉があると判ったならぶち破ればいいのよね。第一、今回はその方が『らしい』でしょ?」
やったわ今回は正解ね、と残骸を踏み越え一足お先に通路の奥に消えていった。


「…………………………………………」
しばしの間、無言で立ち尽くしたアバン。爆破で汚れた眼鏡のレンズをゆっくりと拭きおわり、

「……想像以上のその回答、また一つ貴方に惚れこみそうですよ、ルイズ」
会心の笑みを浮かべて隠された通路の闇の中へ消えていった。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:36:24 ID:UBJ2yZeP
以上、投下するには短すぎる気もするが、リハビリも兼ねてなんとかここまで書きました。

あまりの遅筆ぶりには申し開きもできないけれど、今後ともお見捨てなきようにと願うしだいでございます。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:38:06 ID:tQtQppf3


それはそうと
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1227499323/
コレについては言わない方がいいのかしら
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:40:05 ID:UoAifS19
おつです
ずっと待ってますとも
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:42:01 ID:+51DpjTN
お疲れ様でした。

>ずっと待ってますとも
それではラグドリアン湖の水の精霊に誓ってもらおうかな。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:42:22 ID:J/EXcuSP
まさかのアバン先生復活!GJっした!
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:45:50 ID:Ta2lnTsm
ヤバイ、支援しそこねた…そして、実は初めて読んだw

流れは読めんがルイズが可愛いことだけは判る。
とりあえず乙でした
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:49:16 ID:19Y4BFV6
アバンの人乙です
ずっと待ってました!無理せず執筆してください!
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:50:34 ID:kbKOwRDM
ひそかにお待ちしておりました。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:07:33 ID:DBktq5eB
アバン先生を見てるとシタン先生を呼びたくなって来るから困る。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:08:29 ID:usf0uv4q
先生は缶詰たべないのですか?
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:17:50 ID:vxV5Gm9i
アバン先生投下乙ですー。
懐かしい面子が投下してくれるだけでも嬉しいのに、それが自分の待ち望んでいた作品だとは(´;ω;`)ウッ…
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:38:16 ID:5KvaNGdm
>>163
声も一緒で眼鏡で何でもできる天才で奥さんは美人で
みんなからは先生と言われているところまで一緒だからなw
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:46:26 ID:4hTyUpF2
      _, ,_  しょおー
    ( ◎д◎)
      ⊂彡☆))Д´)
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 02:26:28 ID:/eL/G1RN
そして主人公より強い
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 02:30:07 ID:IyouzlH1
終盤に、リコが一回動く間に四回行動したのにはびびったw
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 02:36:07 ID:Btrxn/Qh
>>122
キャラ性能もだけどエンディングじゃ2人で3千人(だっけ?)の軍隊を壊滅させたぐらいだしねぇ
神様すらぶっ殺しちゃうし
原作をやりこんだ人間の一人として応援してます
頑張ってください
171悠二の人:2009/02/12(木) 02:43:22 ID:Ryx/40qU
ふふ、こんな時間に誰も見てないと思うけど
2:48まで予約なかったら投下します
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 02:47:50 ID:VAi2UD9L
支援です
173残り滓の使い魔‐03:2009/02/12(木) 02:48:45 ID:Ryx/40qU
粗末な食事を終え、悠二はルイズとともに教室に来ていた。
大学の講義室のような教室には、既に何人もの生徒とそれぞれの使い魔がいた。
昨日召喚されたときに大半の使い魔は見ていたが、それでもゲームなどでしか見たことのない架空の生き物たちは、悠二を魅了した。

ルイズが席に着き、その隣に悠二も腰掛けようとしたが、ルイズが非難するような目で自分を見ていたのに気づき、床に座りなおした。
しばらくして、先生と思われる中年のふくよかな女性が教室に入ってきた。女性は教室中を見回しながら言った。
「春の使い魔召喚の儀式は大成功のようですね。このシュブルーズ、毎年さまざまな使い魔を見るのが楽しみなのです」

「おやおや。変わった使い魔を召喚したのですね、ミス・ヴァリエール」
シュブルーズの目が悠二で留まり、隣のルイズを見て言った。
そう言うと教室中が笑いに包まれた。

「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
そう誰かが言い出したのを発端に、しばらくの間、
「かぜっぴき!」
だの、
「ゼロのくせに!」
などといった、小太りのマリコルヌという生徒とルイズの小学生レベルの口げんかが続いた。
その後、シュブルーズがマリコルヌ他数名の生徒の口に赤土を押し付けることで教室に静寂が戻った。

授業が開始され、はじめに魔法について基本的な説明があった後に錬金の実演となった。

(魔法を自在法に応用できるのかな?)
多少の期待を胸に秘めつつ授業を聞いていたが、どう聞いても先生は自分の属性である『土』系統の魔法びいきであった。
しかし、シュブルーズが錬金の魔法を使ったときには“存在の力”の流れに微妙な変化があったので、授業を聞いたこと自体無意味ではなかった。

「ルイズ、スクウェアとかトライアングルって何なの?」
「簡単言うとメイジのレベルね。ドット、ライン、トライアングル、スクウェアがあって後者ほどレベルが高いってこと」
「ふーん。で、ルイズは何なの?」
こう聞くとルイズは下を向き黙ってしまったが、シュブルーズにこのやり取りを見咎められ、ルイズが錬金の実演をすることになった。
「先生、危険です」
なぜかキュルケがシュブルーズにやめさせることを提言していたが、先の錬金を見た悠二には、どこに危険な要素があるのか皆目見当がつかなかった。
教室の前にルイズが立ったとき、生徒たちは机の下に隠れていた。悠二は、なぜみんなが机の下に隠れているのかわからなかったが、とりあえず警戒だけはしておくことに決めた。

そして、ルイズが呪文を唱え、杖を振ると、大きな爆発が起こった。

174残り滓の使い魔‐03:2009/02/12(木) 02:51:31 ID:Ryx/40qU
現在、教室にはルイズと悠二しかいなかった。あの爆発の後、シュブルーズは気絶してしまい自習となった。
しかし、爆発を起こした罰として教室の掃除をすることになったのだ。もちろん魔法は使用せずに掃除することになる。
ルイズは不貞腐れているのか全く手が動いていなかった。それに反して、悠二はしっかりと掃除していた。ルイズがゼロといわれている理由も、爆発の後に生徒の誰かがルイズを馬鹿にしているのを聞いてわかった。しかし、悠二はルイズに何も声をかけず黙々と掃除をしていた。

ふと、ルイズが口を開いた。
「どうせあんたも心の中で私を馬鹿にしてるんでしょ! 魔法も使えないくせに威張ってるとか思って! そうなんでしょ! 何とか言いなさいよ!」
ルイズが怒鳴るように喚きたてると、悠二が静かに口を開いた。
「初めから全てができる人はいないよ。努力し続けて、ようやくできるようになるんだ」
悠二は自分の経験を元にルイズに言っていた。
悠二はここに来る前、身体能力向上のためにシャナと早朝鍛錬をしていた。
『振り回す枝を、目を開けて見続ける』
『前もって声を掛けた一撃を避ける』
『十九回の空振りの後に繰り出す、二十回目の本命の一撃を避ける』
『二十回の中に混ぜた本気の一撃をよけて、隙を見出したときは反撃に転じる』
このように段階を経て鍛錬を続けていた。はじめはシャナの振り回す枝を、目を開けて見ていることもできなかったが、努力し続けることでこの段階まで至っていた。

それに、他人がなんて言っても、自分で考えてどうするか決めないとダメだし」
そして、友人である佐藤啓作が悠二を羨望の眼差しで見ていたことを思う。
悠二が“徒”から“存在の力”を吸収し、フレイムヘイズと対等とまではいかないが、劣らぬ力を発揮して戦う姿を。
それを憧れとも嫉妬とも取れる目で見ていたが、彼は自分に出来ることをする、と外界宿に行くことを決断する。
ここに至るまでは、さまざまな葛藤があったようだが、彼なりの結論を出し、慕っているフレイムヘイズ、マージョリー・ドーを助けるという目的のために、羨望などを捨て前向きに進んでいた。

(それに、)
悠二は最初に会ったころのシャナを思う。
(最初は自在法が苦手だったシャナも、いきなり紅蓮の双翼を出せるようになったし)
かつて、敵として『弔詞の詠み手』と戦ったときを思い出す。あの戦いを境に、シャナは突如として自在法を使えるようになっていた。
そう考えると、ルイズが魔法を使えない理由は、悠二には契機がまだだとしか思えなかった。
「ルイズも魔法を使えるようになるよ。僕はそう信じてるし、応援もする。使い魔でいる間は守るっても言ったしね」
「うるさいうるさいうるさい! いいから黙って掃除しなさい! それと、ご主人様に生意気な口を利いたからご飯抜き!」
他人にはバカにされてばかりであったが、悠二の邪気のない「信じている」という言葉にルイズは面食らった。
悠二は不意に怒鳴られ驚いたが、そっぽを向いたルイズの横顔が赤くなっているのに気づき、声は掛けず掃除に戻った。
このあと二人は一言も話すことなく掃除を続けた。
175残り滓の使い魔‐03:2009/02/12(木) 02:53:06 ID:Ryx/40qU
二人は掃除を終え食堂に行ったが、悠二は食事抜きだったことを思い出し、コルベールの所へ行こうとした。
(先生のいる場所の名前は聞いたけど、そこがどこにあるのかはわからないんだった)
ルイズに聞こうにも聞きにくい雰囲気だしな、と食堂の前で途方にくれていた。肩を落としている悠二の前に、シエスタが現れた。

「あの、ユージさんどうしたんですか?」
「コルベール先生のところに行きたいんだけど、場所がわからなくて困ってたんだ」
「ミスタ・コルベールなら図書館にいると聞きましたよ。……ところで、図書館の場所はわかりますか?」
「……よければ教えてくれないかな?」
悠二はシエスタに図書館の位置を教えてもらいコルベールに会いに向かった。

図書館近くの廊下で偶然にも悠二とコルベールは鉢合わせた。
「コルベール先生、少しいいですか?」
「君は、昨日ミス・ヴァリエールの使い魔の……」
「坂井悠二です。あの、このルーンについて聞きたいことがあるんですが?」
悠二がそう言い左手に刻まれたルーンを見せると、コルベールはわずかに眉をしかめた。

「聞きたいことは何かね? 私にわかる範囲でなら説明できるが」
「ルイズに、ルーンは付与効果があるって聞いたんですけど、このルーンの効果って何ですか?」
「もう一度ルーンを見せてくれないかね? ふむ、しかし効果まではわかりかねますな」
そうコルベールは言って、無意識のうちに、持っている本を強く抱えなおした。その仕種を見た悠二は、違和感を覚えていた。
(見間違えかもしれないけど、なんで本を僕から隠すようにしたんだ? 本に、僕には知られたくないようなことが書いてあるのか? そうでもないと、隠すような行動をした意味がわからない)
悠二のルーンから手を離し、若干焦りを感じるような声色でコルベールは言った。
「力になれなくてすまないね。他にも何か困ったことがあったら相談してくれたまえ。私はこれから、学院長のところに行かなければならないので失礼するよ」
そういい残し、早足で去っていってしまった。

(コルベール先生の部屋は外にあるはず。それなのに、違う方向に向かった)
悠二は、戦闘時ばりに考えをめぐらせた。
(このまま学院長に会いに行くってことは、あの本も持っていくということだ。急いでいたということを考えると、早く伝えなければならないような重要な内容)
先ほどのコルベールの行動から推測を続ける。
(それに、さっきルーンの話で明らかにあの本を意識した。ということは、このルーンのことで学院長に急いで報告しなきゃいけないような大事な話か)

悠二は音を立てず、コルベールが行ってしまったほうへ走り出した。
176残り滓の使い魔‐03:2009/02/12(木) 02:55:06 ID:Ryx/40qU
 


悠二がコルベールを追って学院長室に向かっているころ、ルイズは自室のベッドの上でじたばたと暴れていた。
「わかわかわかわか! なんなのあいふは! そえい、ふふへはっへ! ん〜〜〜〜〜!」
枕に顔を押し付けながら叫んでいたので、何を言っているのか全くわからないが、この場面を見れば、明らかに怒っているとわかる光景だった。
ルイズがこうなった原因は、昼食を食べている時にあった。


「あら、ルイズ。もう掃除は終わったの? 意外と早かったわね」
ルイズが食べようとすると、キュルケが不適に笑いながら話しかけてきた。
「ええ、おかげさまでもう終わったわ」
ルイズは、これでもうこの話はおしまい、とでも言うように言い放ったが、それに構わずキュルケは続けた。
「ところで、あなたの使い魔はどうしたの? ここにはいないみたいだけど」
「あいつなら、ご主人様に生意気なこと言ったから食事なし」
それを聞いたキュルケは、意地悪な笑みを浮かべた。
「あの使い魔が何を言ったか知らないけど、満足に食事もできないんなら、そのうち逃げちゃうんじゃないかしら? もしかして、こうしてる今にも逃げてるかもしれないけど」
「そんなわけないじゃない! まったく、失礼しちゃうわ!」
そう言って顔を赤くしながら食事をするルイズを見て、キュルケは満足げな笑みをたたえた。

「いじわる」
キュルケの隣に座る青髪の少女、タバサが呟いた。
「あの子をからかうのって、おもしろいのよね〜」
そう言ってから食事に戻った。

(そうよね、あんまり厳しすぎてもダメよね。そうよ! 飴と鞭の要領よ!)
キュルケにからかわれた後、ルイズはそう考え、食堂の前で待っているだろう使い魔のためにパンを持っていくことにした。
(お腹を空かしているだろう使い魔のためにパンを持っていく優しいご主人様、さらに従順になるでしょうね)
自分が食事を抜きにしたことを思考の脇に置き、ずる賢く笑い、食事を終え食堂を出たが、そこに使い魔の姿はなかった。
(どこ行ってんのよ、あいつったら)
まあ、どうせ部屋に戻って空腹に悶えているのよね、と思い、またしても黒い笑みを浮かべ自室に戻った。

そして今である。意気揚々とした足取りで自室に戻ったが、空腹に泣いているであろう使い魔がいなかった。
(ごごご、ご主人様がせっかく食事を持ってきてあげたっていうのに、あのバカったらどうしていないのよ!)
声にならない怒声を上げ、ルイズはベッドにダイブしたのだった。
しばらく、うつ伏せで枕を抱きしめ、足をバタバタさせ、今いない悠二、パンを持ってくる原因とも言えるキュルケに対し、怒りをぶちまけていた。
ある程度冷静になると、急に不安に襲われた。
(本当に使い魔逃げちゃったのかしら? せっかく召喚したのに。初めて成功した魔法だったのに)
考え始めると、ネガティブな思考が頭の中を埋め尽くし、再度ルイズは枕を強く抱きしめた。
177悠二の人:2009/02/12(木) 02:56:52 ID:Ryx/40qU
投下終了です
次回への繋ぎみたいな感じなので短い気もしますが
178ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:01:39 ID:CnfU1M74
予約がないようなら03:10より、シーン16の運命の扉を開きます。
予定では15kb、後書きを含めると7レスとなる予定。

前回、成長に関して否定的されなかったのは嬉しかったです。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 03:02:10 ID:tl/VDSk/
悠二の人投下乙ー

ちゃんと頭使う悠二なのがいいですなー
180ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:10:51 ID:CnfU1M74
大丈夫そうなので、シーン16の扉を開きます。


ヒューが、レコン・キスタの刺客と思しきメイジの目を掻い潜り、宿へ帰還を果たしたのは真夜中になろうかという時刻だった。
ギーシュと共に取っている部屋に戻り、相方が熟睡しているのを確認すると、戸締りを確認した後、デルフと共にベッドに
潜り込んだ。
極力、声が漏れないように毛布を頭から引っかぶると、データのバックアップを始める。


ゴーストステップ・ゼロ  シーン16 “Duel Game”

    シーンカード:マヤカシ(幻影/裏切りの露見。魔的な襲撃。毒。不実な人間の罠。不確かな夢。)


<IANUS>に保存していた刺客の各種情報を見ていると、共に潜り込んでいるデルフが話しかけてくる。

【相棒、さっきから何してるんだ?】
「襲ってきたメイジの事を調べてるんだよ。」
【で、何か分かったのかい?】
「身長は大体180サント程度、呪文の詠唱速度はかなり速い方だろう。杖の形状から白兵戦もかなり自信を持っている、
体格もそれなり、羽振りも良さそうだったな。」

<ポケットロン>は視覚情報と聴覚情報をデジタル変換して分析した情報から、刺客の3Dデータを作り上げていく。
それを、見ながら会話を続ける。

【へぇ、結構な強敵じゃないか。】
「だな、呪文の選択も問題無い…、あの状況だとエア=ハンマーはかなり厄介だ。」
【そうだな。エア=カッターは避けられるし、ウィンド=ブレイクは対処する時間を取られる。
 しかし、あそこでオレサマを使わなかったのは、何か理由があるのか?】
「大した理由はないな、性分っていうのがかなりあるだろう。後は警戒してるのさ。」
【警戒?今でもしてるだろう。……裏切りか?】
「可能性としてな、あまりにもタイミングが良すぎる。」
【連中がこの街で網を張っていたっていう可能性は?】
「あるだろうな、けど戦力を潰すのなら到着したばかりのお嬢さん達を狙った方がまだ楽だ。」
【そりゃまたどうして、仮にもメイジがいるんだぜ?】
「今では+3人だ。それにこれから疲労も回復するから、リスクは増える一方だろうな。
 加えてあの時点なら、お嬢さんがいる、守りながらとなるとあの子爵でも厳しいだろう。
 というより俺なら狙うね、数少ないスクエアメイジを潰せる機会だ見逃す手はないだろう、それに網を張っていたという
のなら色々仕込めるだろうしな。」
【なるほど、じゃあさっきの襲撃はあくまで、たまたまって事か。】
「ああ、だろうな。
 そこで問題だ、デルフ。“ヤツは何故襲ってきた?”」
【そりゃあ、オレ達が密命を…あれ?】
「そういうことだ、大っぴらに宣伝していない以上、普通に見れば俺達はただのとは言えないだろうが、旅行者だ。
 だったら、どこかで情報が漏れているんだろう。」
【なら、あの子爵かい?】
「そこら辺が妥当だろうな。第一、情報伝達用の魔法が無い以上、一行の中にスパイがいると考えた方が不自然はない。」
【…ただの物取りって線は?】
「脅し文句を言わないっていうのは珍しい種類だな、もちろんそれも頭に入れてる。かなり低いけどな。」
181ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:13:02 ID:CnfU1M74
そこまで話すと、次は逆にヒューからデルフに質問が飛んだ。

「ところで、デルフ。路地裏に入る前に何か言いかけなかったか?」
【ん?何の話だ?】
「あれだよ、心を操る云々の話で何か言いかけただろう。」
【?……ああ、あれな。そうそう、確かに話してたよ。
 『先住』にそういった類のアイテムがあるって話をしようとしたら、腰を折られたんだった。】
「そんなものがあるのか。」
【ああ、確か<アンドバリの指輪>とかいったかな、どこぞの精霊が持っていたはずなんだがな。】
「具体的にはどういった能力を持っているんだ?」

興味を持ったヒューが尋ねると、デルフは特に気負った様子もなく淡々と答えていく。

【そうだな、能力は二つある。一つは相棒も知っての通り“心を操る”、もう一つは“偽りの命を与える”だ。】
「ちょっと待て、二つ目の能力は“生き返らせる”とは違う物なのか?」
【違う、この能力はあくまでも“偽り”の命を与えるというものなんだよ。そうだな、厳密には“死者を思うとおりに動かせ
る”能力って言った方が正しいんじゃないか?】
「なるほど、とりあえずこれで連中が言う『虚無』の種に関する目処は立ったな。
 しかし、相も変わらず魔法やらそこら辺の事に関しては考えたく無いな。」

魔法に関して、思わず愚痴をこぼしたヒューにデルフが軽く返す。

【はっはっは、しょうがねぇさ。オレサマとしちゃあ、あの子爵に同情するがね。】
「同情?なんでまた。」
【相棒を敵に回しちまったからさ。】
「そりゃまた酷いな。」
【酷いもんかね、きっと今頃ばれてるなんて思いもしないで、寝ちまってるに決まってる。】
「まぁ、いいさ。
 子爵には悪いが上手い事やって、楽に勝たせてもらおう。で、アルビオンからお宝を頂くと。」

ヒューが確定事項の様にこれからの予定を話していると、デルフが口を挟んでくる。

【ところで、相棒はどうするんだい?】
「どうって?何が?」
【アルビオンに恩を売るとか考えないのか?】
「とりあえず指輪に関しては教えるつもりだけどな、それ以上はお嬢さん次第だ。」
【お嬢ちゃんの?】
「何を覚えるか分からないから保留っていうのが良いんだろうが。実際、『虚無』に関しては俺は口出しす気はない。
 自分の力だ、自分で管理してもらわないとな。」
【相棒は冷たいねぇ】

デルフの呆れたような感想に、ヒューは苦笑しながら応える。

「相談位なら乗るさ。
 ……ただ、俺はいつまで生きられるか分からないからな。」
【相棒…】
「何だ?デルフ、辛気臭いな。
 気にするなよらしくない。第一、俺はN◎VAで最後の事件を解決した後、どこぞで野垂れ死ぬのが関の山だったんだ。
 死ぬ前にこんな寄り道をしたのは正直意外だったが。まぁ、野垂れ死ぬよりは悪くない最後を迎える事ができそうだからな、
お嬢さんには感謝していたって伝えてくれ。」
【おい、縁起でもないこと言ってるんじゃねぇぞ。相棒にはガンダールヴとしての勤めがあるんだからな、そう簡単には死ね
ねぇよ。】
「どっちが縁起でもないんだか。
 しかし、流石に…今日は疲れたな…。」

そこまで言うと、ヒューの意識は、まるで電力が途絶えたドローンの様に突然落ちた。

【相棒…】

デルフの呟きと共に、ラ・ロシエールの夜は深くなっていく。
182ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:15:13 ID:CnfU1M74
翌日、ラ・ロシエールは何事も無かったかのように朝を迎える。
旅人達は、明日からの過酷な旅に備えるかの如く、いつもより長い休息をとった。
目覚めたヒューが起き出して、1階に下りると酒場兼食堂には全員がいた。
首を鳴らしながら、一同の中に入ってきたヒューを横目に、ルイズが不機嫌そうに口を開く。

「ようやくお目覚め?御主人様を放っておいて、いいご身分じゃない。」
「ん?ああ、おはよう…じゃないな。こういった時はどう言うべきかな、ワルド子爵。」
「そうだね、ごきげんよう。というのがらしいと思うよ?」
「なるほど、んじゃあ。ごきげんようルイズお嬢さん。
 生憎とご機嫌は麗しくない様だが、どうしたんだい?」

未だ寝足りないと態度で示しているヒューに対して、ルイズが怒声を上げる。

「何言ってるの、もう昼前よ?こんな時間までベッドの中で惰眠を貪っているなんて…。」
「しょうがないだろう、昨日は疲れていたんだから。」
「夜歩きしていたクセに、よくもまぁ言えたものね。」
「用事があったからな、しょうがないさ。」
「一体、何の用事よ。」
「それは勘弁してくれ、他人のプライバシーに関係する事だからな。」
「貴方ね、自分の立場ってものを理解してる?」
「してるさ、だからアルビオンくんだりまで付き合っているだろう。」
「だったら!」

立場を理解している、と言ったにも関わらず用事の件に関しては、一言も教えようとしないヒューにルイズは苛立つ。

「その代わりと言っちゃあなんだが、情報を仕入れて来たから、そいつで勘弁してくれ。」

これ以上、押しても埒が明かないと思ったルイズは、妥協することにした。

「何かあったの?」
「とりあえず、現在の戦況とレコン・キスタの情報、それと王党派に関する情報位かな。」

ヒューが挙げた情報を一つずつ聞いた後、報告したヒュー以外の顔色は沈痛なものになっていった。
ワルドがいる為、『虚無』に関しては“クロムウェルが使える”という噂がある位で留めておく。
183ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:17:34 ID:CnfU1M74
「…」
「絶望」
「だね、千対5万って戦争にすらならないよ。」
「ギーシュ、もう千は切ってるはずよ、情報の鮮度からしても5百残っていれば御の字でしょうね。」
「確かに、困ったな。5万を抜かないとなると、かなり厳しいぞ。」

ワルドの言葉にヒューが言葉を挟む。

「いや、別に抜ける必要はないだろう。」
「?どういう事だね、ヒュー君。
 王党派が立て篭もるニューカッスルには、行くフネも乗り付ける港もないんだよ?」
「別にフネだけで行く必要はないだろう、こっちには子爵のグリフォンとタバサのシルフィードがあるんだ。」
「いや、知らないだろうがミス・タバサの風竜はともかく、僕のグリフォンは彼の地まではもたないんだよ。」
「距離的な問題なんだろう?なら簡単だ。」
「何が簡単なんだね。」

訝しげなワルドの前に、ヒューはゴブレットを2つ置いて説明を始める。

「これがニューカッスル。」
「何?」
「そう思えって事だよ。
 で、ここがラ・ロシエール。明日、俺達はここをフネで出発する。」
「何を当たり前の事を…」
「まぁまぁ、ここからが本番なんだ。
 で、このナイフが俺達が乗るフネだ、こいつが俺達を乗せてアルビオンへ向かう…ここで一つ船員に注文を出す。」
「注文?」
「ニューカッスルに最接近した時に連絡をくれってね。」
「なるほど!そのタイミングでならばグリフォンでも到達可能かもしれないな。
 しかも、敵中を突破する事もないだろうから、危険も少なくなるだろう。」

ヒューの提案にワルドが感歎の声を上げる。

「しかし、君の事は噂で聞いていたが…いや全く噂以上だな。」
「それはどうも。」
「いやいや、謙遜はいいよ。話だと腕も立つというじゃないか、どうだいこれから一つ。」

と言うと、ワルドは腰に佩いている杖を叩いてみせる。

「魔法衛視隊の隊長の相手ができると自惚れてはいないよ。」
「いや、これは軽い手合わせ程度だよ。情けない話だが、最近実戦から遠のいていてね、アルビオンに渡る前に勘を取り戻し
たいのさ。」
「まぁ、軽くというのであれば俺はかまわんがね。」
「決まりだな、それでは着いて来てくれ。この宿は昔、アルビオンの侵攻に備える為の砦でね。そういった設備があるんだよ。」

いきなり手合わせをするという話になった2人にルイズは仰天した。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!いきなり何の話をしてるのよ!」
「何って、軽い手合わせだろう?」
「大丈夫だよルイズ、怪我をするつもりも、させるつもりもないから。出来れば介添え人を頼みたいんだけど。」

制止を全く聞かない2人の男を前にしたルイズの肩を、キュルケが叩く。

「諦めなさいな、男ってこうなると止まらないから。」
「けど!」
「危険を感じたら止めればいい。」

キュルケとタバサの意見を聞いたルイズは、しぶしぶながらも了解するしかなかった。
184ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:19:43 ID:CnfU1M74
ワルドを先頭に、一行が着いたのは宿の中庭だった。
元は鍛練場だったのか、広々とした中庭の所々に傷がついている。現在では物置として活用しているのだろうか、厨房側には
樽や木箱が積み上げられている。
2人は適当な位置で対峙していたが、見るものがいれば魔法を使えるワルドに有利な間合いだと分かるだろう。
しかし、これに関してワルドは何も関与していない、しているとすればヒューのほうだった。

「かのフィリップ三世の治下には、ここでよく貴族達が決闘したものさ。と、外国人の君には関係ない話か。」
「そうだな」

ワルドは感慨深そうに話しながら周囲を見渡している。
昨夜とは違い、ここは 広場の中心だ、ワルドはここでヒューの実力を計り、そこそこの怪我を負わせる算段だった。

「古き良き時代。王がまだ力を持ち、それに従った時代に名誉と、誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあったそうだ。
 しかし、実際は下らないことで杖を抜きあったらしいな。そう、例えば女を取り合ったりね。」
「まぁ、人間である以上あまり変わらんさ。」

ヒューは苦笑しながらギーシュを横目で見ると、<弥勒>を身に着け<IANUS>にバックアップを命じる。

そう、ヒューの目的はデータの収得にあった。
ワルドがスパイだという事は確信していたが、昨晩の刺客と同じ杖を所持しているのが腑に落ちない。
トリステインに来てからというもの、多くのメイジに会ってきたが、所持している杖はそれぞれに違っている。
そんな中、刺客と同じ杖を持っているというのは、あからさまに怪しかった。杖に関する疑問は後でギーシュなりに聞くとし
て、今の目的はワルドの音紋データだった、昨晩の刺客の音紋データは既に解析済み。これから取るワルドの音紋データと
照合すれば、昨晩の刺客=ワルドということになる。
ヒューはデルフを抜くと、軽く足を開いて立つ。

そんなヒューにワルドが話しかける。

「ヒュー君、杖はいいのかね?」
「ああ、別にいらないだろう。」
「これは、舐められていると取ってもいいのかな?」
「子爵の様に魔法を使えるならともかく、普通に歩けるのなら特に要らないだろう。」
「もしや、君は平民なのかね?」
「“貴族だ”といった覚えはないな。」

ヒューのカミングアウトに、ワルドは一瞬、思考が停止した。

「!しかし、学院長は。」
「ああ、そういやあの爺さんにも話してなかったか。
 思うんだけどな、自分が理解できないからといって魔法に当てはめようとするのは止めた方がいいぞ?」
「忠告はありがたく受け取ろう。では、始めようか。」

驚愕から一転、余裕の笑みを浮かべたワルドは、手合わせの開始を告げる。


先手はワルド。杖の先端をヒューに向けると、ウィンド=ブレイクを放つ。
扇状に展開されるウィンド=ブレイクは、その影響範囲から避けるのが困難な魔法の一つだ。これに対してヒューはワルドを
中心にして、円弧を描くように走って回避する。
そんなヒューに対して、ワルドは矢継ぎ早に魔法を放つ。

「中々、上手く回避するじゃないか!」
「そいつはどうも!」

ワルドが警戒しているのは、ブロンズゴーレムを切断したという攻撃だ。そんなものを食らったら怪我で済まなくなる可能性
が高い、なるべく魔法で片付ける事にするべく、低位の魔法で追い込んでエア=ハンマー辺りで終わらせるつもりだった。
要は自分がヒューよりも有能だとルイズに知らしめれば十分なので、勝負が決まったら手を差し伸べる位はしようと思っていた。
185ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:21:54 ID:CnfU1M74
対するヒューは、どうすれば上手い事負けることが出来るかを考えていた。
この攻撃を回避する事、それ自体はそう難しくない、何しろ杖を向けている方向からしか攻撃が来ないのだから。
これがN◎VAならそうはいかない。避けたはずの銃弾は跳弾して再び牙を剥き、娼婦の言葉は精神を削る、時には己の装備
すら敵の牙になりうるのだ。
そういった意味ではルイズの攻撃の方が、ワルドの魔法よりも恐ろしいといえる。
今の所、ワルドはウィンド=ブレイクを主体に攻めてきている、恐らく体勢を崩した後にエア=ハンマー辺りで飛ばすか、杖
を突きつけて、勝利を宣言するつもりなのだろう。
周囲を見回して被害を軽く済ませられるような場所を探しだし、突撃する“ふり”をする。

「頭が回ろうとも所詮は平民という事か、これで詰みだ!」

ワルドはその“ふり”を看破出来なかった。魔法が使えない平民がじれて攻め込んできた、と解釈したのだ。
だからこそ、ここでエア=ハンマーをヒューに対して使った。

予想していた攻撃が、予想したタイミングでやってくる。
ヒューは後方に思い切り飛びながら、飼い葉の中に背中から突っ込んでいく。ヒューが突っ込んだのとほぼ同時にエア=ハン
マーが飼い葉に直撃し、それを巻き上げた。


見物していたルイズ達は騒然となった。

「ヒュー!」
「おいおい、大丈夫かね。かなり派手に飛ばされていたが…」

ルイズとギーシュが慌てて、ヒューの元に駆け寄っていく。

「あらら、流石にヒューとはいえスクエアの相手は辛かったのかしらね。」
「多分違う。」

ただ1人、タバサだけが冷静だった。

「え?どういう事よタバサ。ヒューはほら、あの通り飼い葉まで吹っ飛ばされちゃってるじゃない。」
「ここからは小声で。」
「え?…わかったわ。で、どういう意味なの?」
「ヒューはエア=ハンマーが当たる前に飛んでた。後、ギーシュの時に使った移動方法を使っていない。」
「それって、ワザと負けたって事?」

キュルケの疑問にタバサは微かに頷く。

「どういう事かしら…」
「多分、ヒューには何か目的があった。恐らく子爵に関する事。」
「実力を知りたかった…は無いわね、衛視隊の隊長ですもの。」
「直に聞くしかない。」
「そうね、多分何か掴んでいるんだわ…。本当に厄介な男よね。」

キュルケの溜め息まじりの言葉に、タバサも深々と頷いた。
186ゴーストステップ・ゼロ:2009/02/12(木) 03:24:06 ID:CnfU1M74
シーン16
跳弾
…カブトワリの特技、跳弾の事。

跳弾(特)
…文字通り、跳弾を利用して対象を攻撃するカブトワリの特技。
 跳弾を利用して様々な角度からの攻撃を可能とする、回避には知覚が必要になる。

娼婦の言葉
…マネキンの特技、大嫌いの事。

大嫌い(特)
…魅力と表現力たっぷりの言葉や視線で、対象の心を粉微塵にするマネキンの特技。
 精神攻撃は辛い。

装備すら〜
…ニューロの特技、ドミネートの事。

ドミネート(特)
…装備を乗っ取るニューロの特技。
 電制がない装備には使えない特技だが。逆に、あると恐ろしい技能の一つ。

後方に〜
…空蝉による回避の描写。


遅くなりましたが悠二の人、乙でした。
以上で今回の運命の扉を閉じたいと思います。

おかしい。今回こそ、ラ・ロシエールを出るはずだったのに。
大半をヒューとデルフの腹黒会話で使ってしまっているじゃないか。
戦闘もみみっちいし、戦闘シーンが上手い人が羨ましい。

次回こそは本当にラ・ロシエール脱出です、いやマジで。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 04:01:50 ID:A0RfM7J2
乙です!
いやいや、じっくり書いていただければいいのではないかと。
腹黒会話好きですよ?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 06:04:30 ID:FowBhWoF

やっぱヒューかっけぇ
189毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:09:20 ID:rSFkpKyW
おはようございます。
毒の爪の使い魔第30話前半が書き終わりました。
予定その他が無ければ7:15から投下します。
190毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:15:03 ID:rSFkpKyW
では、時間なので投下開始します。

朱に染まった空を、背中にタバサ達を乗せたシルフィードが、アルビオンを目指して飛ぶ。
「それにしても、急ね。いきなり『付いて来て』って言われて、付いて行ったらシルフィードで船を飛び出すなんて」
キュルケは不思議そうにタバサを見つめる。そこで、ハッ、となった。
「ちょっと、そういえばあいつは…ジャンガは?」
その言葉にモンモランシーとギーシュも顔を見合わせる。
タバサは静かに口を開く。
「先に行った」
キュルケ達は一様にキョトンとなる。
「先に行ったって……アルビオンに?」
タバサは頷く。
モンモランシーが驚いた表情になる。
「ちょっ、ちょっと!? あいつは空を飛んだりできないでしょう? なのにどうやって!?」
「ルイズに呼ばれた」
「呼ばれた?」
ジャンガのルーンが消えた事を知らないモンモランシーは首を捻る。
対して、事情を知っているキュルケとギーシュは言葉の意味を理解した。
「なるほど、『サモン・サーヴァント』ね?」
「確かに、それならアルビオンまで瞬時に移動できても不思議じゃないが…」
そこで再び疑問が生まれる。何故”アルビオンでサモン・サーヴァントが唱えられたのか?”
――いや、理由は一つだけある。
「あの男?」
その一言にタバサは再び頷く。
たったそれだけのやり取りだったが、以心伝心な二人の間には完璧に会話が成り立っていた。
キュルケの顔からふざけた感じが消える。
「シルフィードは持つの?」
「大丈夫」
「怪我はまだ治っていないんじゃない?」
「この子も頑張ってくれる」
「きゅい!」
シルフィードが力強い声で鳴いた。
使い魔の返答にタバサは頷き、視線を前に戻す。

夕焼け空に浮かぶ白の国までは、もう少しだった。



放たれた風魔法が床を打ち砕く。
轟音が礼拝堂に響き渡り、砕かれた床の破片が辺りに飛び散る。
床を砕いた風魔法を避けたジャンガは、忌々しそうに相手を睨み付ける。
「あの港町で受けたやつよりも威力がデカイじゃねェか…。テメェ、とことんまで手ェ抜いてやがったな?」
「当然だ。本気を出すほどの相手でもなかったからな。無論、今もだが」
余裕の表情でワルドは憮然と言い放つ。その態度が癪に障る。
「クソッ」
ジャンガは爪を振り翳して突進する。
一気に駆け寄り、爪で薙ぎ払うも、ワルドは軽業師のようにヒラリとかわす。
同時に素早く詠唱し、杖を突き出す。
『エア・ハンマー』、見えない空気の塊がジャンガの身体を吹き飛ばす。
椅子を蹴散らし、ジャンガは床を跳ねながら壁に叩きつけられた。
床に倒れこみ、激しく咳き込む。
顔を上げるとワルドは、余裕だ、とばかりに腕を組んだポーズでこちらを見ている。
その態度がジャンガの頭に血を上らせる。
ワルドは不適に笑う。
「二度も敗北はしない…のではなかったのかね、”元”ガンダールヴ?」
「クソが…」
ヨロヨロとしながらもジャンガは立ち上がり、爪を振り翳して突撃する。
しかし、攻撃は尽くかわされる。掠りすらしない。
何度目かの爪の攻撃をかわし、ワルドは大きく飛び退いた。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 07:15:45 ID:LDYC4ovn
おはよう
支援
192毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:18:26 ID:rSFkpKyW
ジャンガは舌打ちをする。
「チッ、ハエかカトンボみたいにウザッたく飛び回りやがって…」
「実力差も解らずに、突撃する事しかできないイノシシが言える事ではない」
「言ってろ!」
叫び、再び駆け出す。
爪を振り下ろすが、ワルドは杖で受け止める。
そのまま切り払い、杖を突き出した。
詠唱が既に完成していたのだろう、風の塊がジャンガを吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
「ジャンガ!?」
吹き飛ぶジャンガを見て、ルイズが声を上げる。
床に叩きつけられ、激痛が全身を駆け巡った。
痛みを堪え、何とか身体を起こす。
ワルドは笑いながら杖をゆっくりと構える。
「テメェ…」
「これで終わりだ」
そう言い、呪文を唱える。
詠唱が完成し、杖を突き出そうとした瞬間。

ボンッ!!!

大きな音を辺りに響かせ、爆発が起きた。
「がぁっっっ!!?」
ワルドが初めて苦悶の声を上げた。
ジャンガも驚愕に目を見開く。
突然、爆発が巻き起こったかと思ったら、ワルドの左腕が吹き飛んだのだ。
激痛に集中力が途切れた為か、杖に巻きついていた風が霧散する。
爆発でジャンガは、直ぐに誰の仕業か理解した。
背後を振り返ると想像通り、ルイズが杖を振っていた。
思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「あのバカ……ジッとしてりゃいいのに」
ジャンガは焦った。
目の前の男はあのガキを殺そうとしていたのだ。…腕を吹き飛ばされて黙っているはずが無い。
その時、ワルドの怒りに震える声が聞こえてきた。

「…僕の腕が。よくもやってくれたね…ルイズ!」
「ひっ…」
ワルドの怒りに狂った目を見て、ルイズは身震いした。
…過去、あのような表情は見た事が無い。
最早承知の事実だったが、目の前の男が自分の知っている子爵とは違うのを再び思い知らされた。
と、ワルドが再び杖を構える。
詠唱を完成させ、杖を突き出す。
空気の塊……最早、砲弾と呼んでも差し支えない物がルイズに襲い掛かる。
ルイズは全力でその場を飛び退く。
空気の砲弾が壁を粉みじんに粉砕する。
それを見て、ルイズの背に冷たい物が走った。まともに受けていたら命は無かっただろう。

ガラッ

不意に響いた音。
頭にパラパラと何かが降り注ぐ。
何だろう? と天井を見上げる。
天井に罅が入っているのが見えた。
罅が瞬く間に広がる。
ボコンッ、と大きな音がして、天井が崩れ落ちた。

天井が崩れ落ち、ルイズへと巨大な瓦礫となって降り注ぐ。
その光景を見て、ジャンガの脳裏に過去がフラッシュバックした。
193毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:21:00 ID:rSFkpKyW
――瓦礫に埋もれた少女が見えた。

――寂しそうな笑顔でこちらを見ている。

――自分を突き飛ばした為、腕は伸ばしたまま。

――口が静かに動く。

――ごめんね――

――それだけ自分に伝える。

――直後、燃え盛る瓦礫が降り注ぎ、少女の姿を覆い隠した。

気が付けば、ジャンガは駆け出していた。
――間に合え、間に合え、間に合え!
それだけを考え、痛みを無視し、ジャンガは駆けた。

瓦礫が少女を押しつぶす直前、ルイズの小さな身体を抱き抱えられた。



轟音の余韻が辺りに残る中、ルイズを腕に抱いたままジャンガは蹲り、荒く呼吸を繰り返す。
――何とか間に合った。
ジャンガは心底安堵した。…また、同じような光景を見るのは沢山だ。
最も…、今更こんなガキを助けたところで、どうなる物でもないが…。
と、腕の中のルイズが自分を見上げているのに気が付いた。
何を言えば言いのか解らない事と、命の危険に晒された恐怖が入り混じった感じの表情をしている。
「あ、ああ…」
口から漏れる、恐怖で震えた声が聞こえた。
ジャンガはため息を吐く。
「ったく…面倒掛けさせんじゃねェゼ」
「…ごめん」
「フン、解ったら大人しく引っ込んで――ッ!?」
唐突にジャンガはルイズを左腕で横に突き飛ばした。

突然の事にルイズは頭が回らない。
床を転がり、先程降り注いだ瓦礫にぶつかる。
「痛ッ!」
痛みがぶつけた背中に走る。
「つつ…、もう! いきなり何するのよ!?」
当然のように怒鳴りつける。
その足元に何かが飛んで来た。
飛んで来たそれに目を向け――一瞬思考が停止した。
「何…これ?」
呆然と呟く。
落ちているそれは……”腕”、肘から先の腕。
それも見慣れた爪が生えた…、今しがた自分を抱いていた腕だ。
ハッ、となり、ルイズは慌てて顔を上げる。
視線の先には左腕を押さえて蹲るジャンガの姿が見えた。
夥しい血が切り落とされた腕から滴っている。
どうして…などと考えるのは馬鹿らしい、自分を庇ったからに決まっている。
「フン、咄嗟の判断にしては中々だ」
聞こえてきた声にルイズは振り向く。
杖を突き出したワルドの姿が見えた。
腕からの出血は止まっている、『治癒』で応急処置でもしたのだろう。
ルイズは今しがた感じていた恐怖も忘れ、ワルドに向かって怒鳴った。
194毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:23:59 ID:rSFkpKyW
「ワルド! 後ろから不意打ちするのが貴族のやり方!? あなたは貴族としての誇りすら無くしたの!?」
ルイズの声に、ワルドはさも心外だと言わんばかりの表情を浮かべる。
「戦いの最中に背を向ける方が悪い。これは貴族の行う”決闘”ではない”死合い”だ」
「何よそれ!? そんなのただのこじ付けじゃない! 卑怯よ!」

「…いいや、卑怯じゃねェ」

「え?」
ルイズは声の方に顔を向けた。
ジャンガは切られた腕を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
そして静かな口調で続ける。
「戦いってのはこういうもんだ。勝負ってのは文字通り”勝つ”か”負けるか”のどちらかだ。
ここは戦場で俺がヒゲヅラとやっているのは殺し合い…、あの港町でやった試合とは違う。
戦いの最中に余所見なんかすればそれが隙となって、相手にブッ倒される。
弱みを戦場で見せた方が間抜けなんだよ。
卑怯だ何だと言ったって、所詮それは負け犬の遠吠え。
策略に引っかかった方がアホなのさ…。
だから、テメェを助ける為に背を向けた俺が左腕を切り落とされたのも、当然の結果だ」
「で、でも……」
「でもも何も無ェ…。卑怯ってのは”ルールの決められた勝負”で使え。
ルールも何も無い、戦場での戦いに卑怯なんて言葉は存在しねェ。それを理解できないんなら…」
ジャンガはルイズを射抜くような視線で睨む。
「テメェにはこんな戦場に来る資格は無ェ…。この任務を受ける資格もな…。
精々、家や学院でボケ〜ッと平和ボケして過ごすんだな」
「……」
何も言えず、ルイズは押し黙った。
ジャンガはそんな彼女を静かに見据える。
「中々の演説だったよ、使い魔君」
ワルドの言葉にジャンガは振り返る。
「君は戦いと言う物を良く理解している。そこは素直に賞賛しよう」
「テメェに褒められても反吐しか出ないゼ。…それに、腕を切られた事にはイライラしてるからよ」
「そうか。だが、僕もこの通り左腕が無いから、丁度良いではないか」
言いながら杖を構え、詠唱をする。
今度は風ではなく、電気が杖に纏わり付いていく。
「また何かするのかよ?」
「『ライトニング・クラウド』、風系統の強力な呪文さ。まともに受ければ命は無い」
悠長に説明をするワルドは、杖の矛先をジャンガ…ではなく、ルイズへと向ける。
ジャンガはその様子に右の爪で額を押さえ、大きくため息を吐いた。
「どうしてテメェみたいな奴は、こうも次から次へと下らねェ事を思いつくんだ?」
「フッ、その口調では僕の意図を察したみたいだね」
ジャンガはゆっくりと歩き、ルイズの前に立った。まるで自らを壁とするかのように…。
そこでルイズはワルドの考えを理解した。
「ワルド…あなた…」
「僕がこれから放つ電撃をその使い魔が避けようとすれば、ルイズ…君に当たる。
つまり、君の事を守ろうとしている彼は、避ける事無く確実に電撃を喰らう。
これで今度こそ終わりだ」
言いながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべるワルド。
ジャンガはつまらない物を見るような表情で、ワルドを見据える。
「フンッ、魔法衛士隊隊長も地に落ちたもんだゼ。言えた義理じゃねェが……外道だな」
「何とでも言うがいい。君が先程言った通り、負け犬の遠吠えだ。
そんなに言うのならば、ルイズを見捨ててこの場を逃げればいいではないか?」
「そりゃごもっとも。…けどよ、俺も意地って物があるんだよ。それに…」
チラッとルイズを一瞥する。
「このクソガキを甚振れるのは…殺せるのは…、この俺だけだ」
「ならば、その下らない意地とルイズと共に葬ってやる!」
ワルドは詠唱を完成させるべく、残りのルーンを唱える。
電撃対策もしとけばよかったゼ、と考えながらジャンガは来るべき衝撃に備えて身構える。
195毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:26:22 ID:rSFkpKyW
と、そこでデルフリンガーが鞘から飛び出した。
「そうだ! 思い出したぞ、全部!」
「チッ、何だ!?」
忌々しそうにジャンガはデルフリンガーを睨み付けた。
しかし、いつもなら怯えるデルフリンガーはそのまま言葉を続ける。
「いや、思い出したんだよ! 俺は六千年前にもお前に握られていた事がある!」
「ハァッ!? こんな時に何を馬鹿な事を――」
「話は後だ! 相棒、俺を構えろ!」
「あン?」
「死にたくなけりゃ構えろ! 早くしろ!」
ジャンガはいぶかしみながらも、デルフリンガーを構える。
「何をしようと無駄だ!」
叫び、ワルドは杖を突き出す。
電撃の呪文『ライトニング・クラウド』が放たれる。
凄まじい電圧を持った電撃がジャンガに襲い掛かった。
まさに電撃が命中しようとした、次の瞬間。
「何だと!?」
ワルド顔に驚愕の色が浮かぶ。
放たれた電撃がデルフリンガーの刀身へと吸い込まれたのだ。
無論、ルイズはともかく…ジャンガも無傷だ。
一体何が起こった、とジャンガが考える間も無く、次の異変が起こった。
魔法を吸い込んだデルフリンガーの刀身が光り輝きだしたのだ。
輝きが収まると、そこには錆びてボロボロになった剣の姿は無く、磨き上げられた刀身のデルフリンガーの姿が在った。
「こいつは一体…?」
「いや、すまなかったぜ相棒、思い出すのに時間がかかっちまった。
こいつが俺の本当の姿だ。あまりに情けない連中ばかりだったから、嫌気が差して自分の姿を変えたんだったよ」
「…遅すぎるんだよ、テメェ」
「だから、悪かったって言ってるだろ? だがもう安心しな、ちゃちな魔法は全部この俺が吸い込んでやるからよ。
ガンダールヴの左腕、このデルフリンガー様がな」
「…よし。なら、文字通りテメェには”左腕”になってもらうゼ」
ジャンガは片腕でマフラーを外し、それで左腕にデルフリンガーを縛り付ける。
(こんな事に使ってすまねェ…)
口と右腕で固定しながら、ジャンガは自分にこのマフラーを贈った相手に謝罪した。
その作業が終わり、ジャンガはワルドへと向き直った。
ワルドは多少苛立ちを含んだ表情でジャンガを睨む。
「なるほど…、ただの剣ではなかったのだな。まさか魔法を吸収するとは」
「これで、テメェらメイジに対する決定的な防御手段が手に入ったゼ」
ジャンガはニヤリと笑ってみせる。だが、ワルドも余裕の表情を浮かべる。
それを見て、ジャンガは笑いを引っ込めた。
「テメェ…まだ何かあるな?」
「ああ。まさか、ここまで見せる事になるとは思わなかったが…」
杖を構え、詠唱を始める。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
詠唱が完成し、ワルドの姿が揺れ動き、分身していく。
一つ…、二つ…、三つ…、四つ…、本体を合わせて五人へとワルドは増えた。
自分の十八番を見せ付けられ、ジャンガの表情が曇った。
「分身かよ…」
「ただの分身ではない。風のユビキタス…風は『遍在』する。何処からともなく現れ、その距離は意志の力に比例する」
ワルドの分身達は懐から仮面を取り出し、それを顔に付けた。
それを見るや、ジャンガはハッキリと不愉快な表情を浮かべる。
「あのフーケといたのはテメェだったのか…」
ワルドは答えない。代わりに不適に笑って見せた。
「如何に魔法を吸収できると言っても、これだけの数の差はそうそう埋められまい」
「これで君の命運も尽きたな」
「安心しろ、ルイズも同じ所へと送ってやる」
「せめてもの慈悲だ。苦しませずに終わらせてやる」
「では、これでお別れだ」
五人のワルドが口々に喋る。――うるさい事この上ない。

「やかましいんだよ、口煩いだけのゴミ虫が!!!」
196毒の爪の使い魔:2009/02/12(木) 07:33:22 ID:rSFkpKyW
以上で投下終了です。

卑怯常々に関するジャンガの台詞なんかは声優の檜山さんが演じていた別キャラの物が元ネタです。
本当の生き残りをかけた戦いって、卑怯とかって関係なくなったりしますよね?
まぁ、それでも卑怯だとか言われたりする事はあると思いますが。

では、今回はこれで。アデュー!
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 07:37:26 ID:LDYC4ovn
乙です
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 07:44:02 ID:ceoOeqnr
ジャンガさん頑張れジャンガさん
腕が何か大変なことになってるけど
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 08:34:01 ID:Jh8WzHTz
>>122
原作ファンとして乙、流石は武門の生まれ、赤獅子騎士団とは
比べ物にならない判断力と潔さだ!モンモンも惚れるわけだ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 10:05:19 ID:fMsVk+1k
ロマリア教皇が、「こちらの世界の」現教皇を召か……いや、何でもない。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 10:08:14 ID:Mw6x11eK
ハルケが銀河帝国の惨禍に巻き込まれるぞ・・・・

ヤツに勝てそうなのはプーチン・イチロー・セガールあたりじゃないと
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 10:13:02 ID:1Itzpdiz
やつの強さはアリアハンでダークドレアムが群れ成して来るレベルだぞ…
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 10:30:13 ID:pZSL+CUf
ロマリア:老魔法王、あるいは第六天魔王とも呼ばれる破壊神「ベネディクト16世」
ガリア:そんなことより野球しようぜ「イチロー」
アルビオン:冷酷な仮面を封印した、おとこのこ大好きな孤児院のおにいさん(?)「ぷーちん」
トリステイン:「このバカ犬(ゴキャ)ギャァァァァ」その男を罵倒してはいけない「セガール」

こんなところか
204究極のゴーレム:2009/02/12(木) 13:01:42 ID:5HGZIuMq
『究極のゴーレム』を見上げるサイトの顔は、完全に茫然自失と言った感じであった。
現在お宝探し一行は、キュルケの宣言通りにシエスタの故郷であるタルブの村へと辿り着いていた。最も、道中で既に『究極のゴーレム』についてのエピソードをシエスタの口から聞かされていた為、殆どの者が期待はしていなかったのだが。
「まぁ、好事家は割と好みそうな造形かも知れないわねぇ」
「……これが空を飛んだりうごいたりすのかね?想像が付かないよ・・まったく」
 気の無い様子で『究極のゴーレム』を眺めながら、ギーシュとキュルケは言う。珍しくはあるが、一体これにどれ程の価値があるかは想像も付かない。飛ぶことに関してもだ。
 それよりも、好奇心を刺激されたのか、珍しくタバサが熱心に見入っているのが印象的であった。その傍らに、長距離の移動に疲れ果てたのか、シルフィードが寝息を立てている。
 シエスタの曽祖父が乗っていたと言う、『究極のゴ−レム』を安置してある寺院の形にも興味を示しているのか、色々とタバサは周囲を見て回った。少なくともトリステインでは見られぬこしらえである。
 そして、先ほどから呆然と固まったままのサイトは、その様子を心配され、シエスタに声をかけられていた。
『なんだってこんなもんがここに?!っていうか出鱈目すぎだろ!フィクションの世界のロボットがなんで?』
サイトはそのゴーレムを良く知っていたサイトも現代の一般的男子故かなり有名なそのロボットの出てくる作品を見たこともあるからだ。
「ほんと・・・出鱈目だよなぁ・・・」
そしてこれからこのゴーレムはサイトから乗り方を教えてもっらた数多くの人と共に数々の伝説を残していくのだった。
ルイズの場合
「躾のなってない犬にはお仕置きが必要みたいね!」
「このばかいぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
テファニアの場合
「えっと・・・やっぱり叫ばなきゃいけないのかな?」
「あなたの胸に・・・・直撃よ!」
ギーシュの場合
「エナジーフィラー全開!」
「いけえええええ!!!ランスロットォォォォォ!!!!」
ギーシュの場合2
「懐かしいネタだが・・・・分かるかね?」
「メガブラスターーー!!!!!!!!!」
シエスタの場合
「トリステイン防衛隊シエスタ!行きますよぉ!」
「防衛結界!!!」
アンリエッタの場合
「これが我が宝具!」
「約束された勝利の剣!!!!!」
アンリエッタの場合2
「いくよ!」
「デルタロックーーーーーー!!!」
エレオノールの場合
「死神がドアを叩いてんだよ!」
「逝きなこの××××野郎!」
アニエスの場合
「これが異なる力!」
「ライトニング!!!!ブレイカァァァァァァァァァ!!!!!」
青髪の男?
「その動きでは逃げられまい BMセレクト インファイト」
「砕け散れ!」
サイトのお手本
「いくぞおおお!!!」
「究極ゲシュペンストキック!!!!」
それにしてもこのゼロ魔ノリノリである
竜の羽衣が スーパーロボット大戦 ORIGINAL GENERATION ゲシュペンストMk-II
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 16:21:06 ID:J4LMpjFs
俺が時を止めた……2009/02/12(木) 13:01:42の時点でな

そして……時は動き出す……!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 16:37:31 ID:X8Uc4JHS
エアマスターのジョンス・リーが召喚されたらビックリするよな
他の奴らが火水風土と四元素の中、自分を召喚したのは何をやっても爆発を起こす奴

これはもうどう考えても『八極』の系統のメイジだよな
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 16:48:53 ID:TuIbZA77
「八極」とは・・・
「魔法」とは・・・

「大爆発」のことだ!/ことよ!

八極・大爆発でググったら、そんなリーさんの勇姿がニコ動にあったぜ。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 17:24:47 ID:X8Uc4JHS
ジョンス・リーのは良いけど、ルイズのはダメだろwwww
他の人の魔法全否定wwww
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 17:56:14 ID:Lki4yCig
ジョゼフが無明綱太郎召喚

本編終了後の何もかもなくして正真正銘の虚ろな状態の綱太郎とはうまが合いそうだ
ジョゼフの趣味の嫌がらせにも喜んでつきあいそう
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 17:56:22 ID:4hTyUpF2
エアマスターの連中は誰呼んでもえらい事になりそうだwwwwwww
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 17:59:48 ID:Lki4yCig
使い魔なんてやりそうにない制御不能な連中が多すぎるわw
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:01:45 ID:XkJKD2vs
>>210
あの中で割りと常識人の時田は?
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:03:29 ID:ybTl5ATO
ワルドのエア・ハンマーを「なんだソリャ・・・」と言いながら
意に介さず進んでいくリーさんが見えた
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:10:27 ID:R5FjSm6n
どーでもいいが(いやよくないけど)ブータニアス卿はもう帰ってこられないのだろか
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:15:00 ID:A0RfM7J2
まったくもってどうでも良くない。俺も待ち望んでいる作品だが

随分唐突だなおい
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:16:10 ID:4hTyUpF2
>>212
時田は最後に小西と同じ所までいっちゃった気がする
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:18:28 ID:Y2bFdITU
アバン先生の復活が唐突だったからな。

教師つながりでアティ先生帰ってこないかな。ここ見るきっかけになった作品だから、
復活してほしい。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:20:16 ID:Lki4yCig
心の震えならすごい奴ばかりだけど
使い魔やれなんていったらその場でルイズがボコられる図しか浮かばんw
佐伯がきたらキュルケは食われるだろうし長戸やジュリだったらルイズがその場で殺されるw
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:20:45 ID:lnBxuXB0
なんかギーシュがアーマロイドレディ呼んで(レディで)決闘したり、ギーシュ実は左腕にサイコガンがあったり、記憶と顔を変えた宇宙海賊だったり
てのが頭から離れなくなってしまった
明らかにスレちだけどね
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:25:01 ID:WwyGUEiH
>ギーシュ実は左腕にサイコガンがあったり、記憶と顔を変えた宇宙海賊だったり
ワロタwww
それはネタとかじゃなしにマジで見てみたいなぁ。
くわえタバコの代わりにくわえ薔薇をしたりとか、
ヴェルダンデの外皮をバリバリ破ってレディが正体を現す所を想像してしまったw
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:25:10 ID:XkJKD2vs
>>216
マキ戦で憑き物が落ちたように見えたが

他だと月雄、ルチャ、深道弟あたりなら制御が利きそうかな
実力は微妙だけど
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:25:22 ID:LLfmN5JT
谷仮面は面白かったなぁ
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:26:44 ID:X8Uc4JHS
>>212
事情を話せば、渡印前の彼なら期間限定でやってくれそうな気はする
でもフーケ戦あたりで修行の旅に出そうw


ルチャさんが召喚されてルイズを一流のルチャドーラ?にするとか
浦木が召喚されて東大から解放されたりルイズに関節技を仕込んだりとか
山木田が召喚されてタルブで農作業に精を出したりとか


時田・浦木組なら、ある程度発展させられる?
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:30:55 ID:7LY0tvEi
久々きたらアバン先生あって感動した
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:44:43 ID:tFNXh6aS
ルイズが召喚したのが
般若の面装備の一人でゾーマ撃破後のDQV勇者
敵味方(ルイズはプレイヤーなので攻撃対象にならない)の区別無く鬼神のような戦い振りを見せるDQV勇者にルイズ以外が恐怖する。

サマル置去りクリアー後のDQUのもょもと
耐久度と素の攻撃力のみでギーシュ、フーケ、ワルドを蹴散らすもょもとにルイズは力とは何か貴族とは何かを悟る。
ルイズの悟りにもょもと呆然。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 18:53:58 ID:Kuz+KvFZ
とりあえず、幻斗×エルザで抜いてきた。
後悔はしていない。
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:19:43 ID:TgIj18Pt
ハードボイルド風で良い女とのやりとりに定評の有るキャラ召還したらどうなるんだろうか

式神の城のおっさんとかあやかしびとの先生や九鬼師匠とか
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:28:06 ID:11xUtnbz
フィリップ・マーローとか
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:32:37 ID:eTY8cVd5
バトーさん
230異世界BASARA:2009/02/12(木) 19:37:00 ID:NZPT+Cxq
ある程度話が出来たので投下しますが、良いですか?
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:38:43 ID:X8Uc4JHS
>>229がタチコマで再生されてしまったw
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:38:57 ID:+51DpjTN
王ドロボウJINGからジンとキール召喚して
どこぞの砦に仲間救出作戦で『囚われのお姫様を頂戴します 王ドロボウ』って予告状を・・・
「何て書いてあるんだ」「さぁ?」先に字を覚えさせなきゃな。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:41:15 ID:X8Uc4JHS
BASARA支援
234異世界BASARA1/5:2009/02/12(木) 19:47:05 ID:NZPT+Cxq
では投下しますよ。


ラ・ロシェールの街に立て籠もったトリステイン軍の前方五百メイル、タルブの草原に敵の軍勢が見えた。アルビオン軍だ。
三色の『レコン・キスタ』の旗を掲げ、悠々と行進してくる。
生まれて初めて見る敵に、ユニコーンに跨ったアンリエッタは震えた。
その震えをルイズや回りの兵に悟られないよう、アンリエッタは目を瞑って軽く祈りを捧げた。

だが、敵は草原を進んでくる上陸軍だけではない。
視線を上方に転じれば、巨艦『レキシントン』号を旗艦とする大艦隊が隊列を整え始めていた。
そしてその舷側が光る。艦砲射撃である。
何百発もの砲弾が、ラ・ロシェールに立てこもったトリステイン軍に襲い掛かる。
その度に周りで人が吹き飛び、岩が崩れ落ちてきた。
「落ち着きなさい!落ち着いて!!」
恐怖にかられたアンリエッタが叫ぶ。
その時、一発の砲弾が近くの岩盤を吹き飛ばした。
崩れた岩が降り注いで来る。アンリエッタは目を閉じた。

しかし、そこにさらに爆発音が響いた。
恐る恐る目を開くと、杖を構えたルイズがいた。降ってきた岩を、ルイズは失敗魔法で吹き飛ばしたのだ。
「姫殿下!お怪我はありませんか!?」
心配そうな顔をして尋ねるルイズを見て、アンリエッタは安堵の表情を浮かべる
するとそこへマザリーニが近寄り、アンリエッタに耳打ちした。
「まずは殿下が落ち着きなされ。将が取り乱しては、軍は瞬く間に潰走します」
マザリーニが伝令を発すると、トリステインの貴族たちが岩山の隙間の空にいくつもの空気の壁を作り上げた。
その壁によって砲弾は砕け、何とか被害を食い止めることが出来た。
「これでしばらくは持ちましょうぞ」
マザリーニはアンリエッタに告げる。少なくともこれで持ち堪える事が出来る。




しかし、それを許さない男が1人……
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:50:59 ID:zWTpsBRB
支援
236異世界BASARA2/5:2009/02/12(木) 19:51:36 ID:NZPT+Cxq
「彼等は出てこないか……ふむ、これでは少しつまらんな」
地上の様子を見て、松永は顎に手をかける。
と、口の端を吊り上げて笑うと、船内に入る扉を開く。
そこにいたのは……縛られ、猿轡をされた女や子供……
松永がアルビオンで捕らえた貴族達である。
「諸君」
松永が言葉を発すると、縛られた者達は体を震わせた。
「これからトリステインの兵士達に敬意を表し、余興を催そうと思う。なに、きっと楽しんでくれるよ」

「枢機卿!姫殿下!!」
敵艦隊の様子を見ていた兵の1人が2人を呼ぶ。
「どうしました」
「一隻の船からこちらに信号を送ってます」
兵はそう言うと、船から送られてくる信号を読み上げる。
「今カラ余興ヲ開始スル。トリステイン軍ノ諸君モ楽シミタマエ……ひ、姫殿下!」
信号を読み上げていた兵が慌てふためき、持っていた望遠鏡をアンリエッタに渡してきた。
「……あれは!!」
その船を望遠鏡で見たアンリエッタの顔が引き攣る。
彼女が見たのは、船の端にロープで吊り下げられた人間であった。
そして次に繰り広げられた光景に、アンリエッタは恐怖のあまり言葉を失った。


吊るされた内の1人のロープが切られ、船から落とされたのである。


異変を感じたマザリーニも望遠鏡を覗く。
「何と……何と惨い事を……!!」
アンリエッタは目を逸らして口を覆った。
「再び信号です!『コレヨリ、5分毎ニ1人、船カラ落トス。止メタクバ、真ッ向カラアルビオント戦エ』」





「アンリエッタ殿、卿からは“慈悲”を貰っていこう」
237異世界BASARA3/5:2009/02/12(木) 19:53:15 ID:NZPT+Cxq
「ど、どういたします?」
兵が動揺しながらアンリエッタに問い掛ける。
アンリエッタは唇を噛み締める。
籠城を続ければ人質が殺されていく、しかし出て行けば空、地の両方から攻められる……
自軍の事を考えるならこのまま出て行かない方が良い。
だが……
「……出来ない。私には見捨てる事なんて……!」
アンリエッタはキッとアルビオン軍を睨み、全軍に指示を出す。
「全軍進撃!!人質になった者達を救います!!」
「「「オオオオオオオオォォォォーーーー!!!!」」」
怒号と共にトリステイン軍は駆け出し、進撃を開始した。
その様子は松永の乗る船からも見える。
松永の、笑みを浮かべた表情が一変する。
それは汚物を見るかのような冷たい目だった。


「……何だあれは?偽善か?偽善なのか?」


松永久秀は、欲望に忠実な男である。
それこそが人の……生物の本質であると彼は考えているからだ。
だから、松永は理想や、正義というものが気に入らない。
何故己を律してまで生きなければならないのか……
「偽善者共が……ならばその慈悲とやら、余す事なく奪ってやろう」
松永は苛立った様子で呟いた。
その松永の言葉を合図とするかのように、アルビオンの攻撃が始まった。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:53:44 ID:zWTpsBRB
支援
239異世界BASARA4/5:2009/02/12(木) 19:55:07 ID:NZPT+Cxq
進撃してきたトリステイン軍に、アルビオンの容赦ない攻撃が開始された。
上空からはタルブの草原に出てきたトリステイン軍に砲弾の嵐が降り注ぎ、あちこちで人が吹き飛ぶ。
さらに、地上には艦隊の援護射撃を受け、士気の高いアルビオン軍である。
どう考えてもこちらに勝ち目はなかった。
それでも、アンリエッタやルイズは懸命に馬を走らせ、杖を振るう。
(ユキムラがいなくても、姫殿下は私が守ってみせる!)
(命令をだしたのは私……ならば私がやらねば!)
その時、艦隊の舷側が一斉に光った。アンリエッタとルイズは目を見開く。
艦砲射撃による砲弾が、こちらに来る……!
逃げなければ!
だが心で思っても、間に合いそうにない。
ルイズは迫りくる恐怖に目を瞑った。

(私、ここで死ぬのかな……)

ルイズの脳裏に、今までの出来事が浮かんでくる。
姉と比べられ、1人池の小舟で泣いていた事。
魔法学院に入学して、必死に勉強しても失敗ばかりだった事……
それらがまるで走馬灯のように浮かんでは消えていく。

そして最後に、幸村を召喚した時の事を思い出した。
(ユキムラ……)
フーケのゴーレムの時も、ワルドが裏切った時も、幸村は自分を守ってくれた。
だから幸村が戦えない今、自分が姫殿下を……大切なものを守ろうとしたのに……
結局、自分は何も出来なかった。
(ユキムラ。私やっぱり……ゼロのルイズだったよ)



「弱音を吐くのは、まだ早いですぞ」



ルイズは目を開いた。
赤い甲冑を身につけた……会いたくて仕方なかった人が目の前に立っていた。
240異世界BASARA5/5:2009/02/12(木) 19:57:52 ID:NZPT+Cxq
「あ……ユ、ユキ……」
名前を呼ぼうとしたが、声が上手く出ない。
何か……何か言わないと……
ルイズは必死に口を動かして声を出そうとする。
「ルイズ殿」
「え……?」




「よく……よく頑張られましたな」




幸村が振り返り、ルイズに笑いかけた。
「……う、ふぇ……ふええぇぇぇ……」
ルイズの目から涙が溢れる。
心の片隅で、もう目が覚めないかもしれないと思っていたけど、幸村は来てくれた。
そしてまた、私を守ってくれる。
ルイズにはそれが嬉しくてたまらなかった。
「馬鹿ぁ……もっと早く来なさいよ……す、す、凄く怖かったんだから……」
「遅参の将、申し訳ありませぬ。ならば……!!」
ブンッと槍とデルフリンガーを交差させるように大きく振る。





「この幸村!修羅の如く戦い、敵を押し返して見せましょうぞ!!」
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 19:58:41 ID:zWTpsBRB
支援
242異世界BASARA:2009/02/12(木) 20:02:58 ID:NZPT+Cxq
投下終了です。
ところで1つ困った事が分かった。
幸村の時代に飛行機なんてないから、どうやってワルドと戦うか……
まぁそこら辺も頑張って考えます。支援ありがとうございました!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:18:28 ID:zWTpsBRB
乙です
続き楽しみにしてます
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:20:28 ID:fMsVk+1k
世の中には、真田忍軍のグライダーが徳川家康を空爆する話があってだな…
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:24:51 ID:TuIbZA77
BASARAキャラなら、航空力学を無視しようが、驚くにも値しないぜ。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:26:22 ID:5bNDidVF
BASARAの幸村はホバー槍で戦場を駆け巡っていたいような。

公式ページ
ttp://www.capcom.co.jp/sengoku/
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:30:24 ID:Kuz+KvFZ
幸村が竜の一族の生まれ変わりのマンガもあるでよ。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:38:50 ID:3tiDylnv
宙に浮く丸太に乗って突撃したおかたもいるしな。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:39:01 ID:TZ3iyvlZ
ジャンプで飛行機に届いても驚かないぜ
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:40:14 ID:X8Wk9J4y
>>244
柳生十兵衛死す! だっけ?

>>247
虚空戦記 とか 八犬伝 とか 天と地と とか 魔界転生 とか結構同一人物を違う描き方してるよね
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 20:45:34 ID:DqHKlTvk
BASARAじゃない松永を召喚したらどうなるかな?
色々と悪事に定評がある反面、茶道とかにも精通してたし、Hのハウツー本書いたりしてたらしいしなぁ
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:22:37 ID:GfHiWVim
BASARAXなら空もーとべーるはずー
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:40:29 ID:sKBFyBXT
お姫様が信じてくれたから、そーらだって飛べるさぁ
投下予約なければ3分後に投下しますねーい
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:44:33 ID:+51DpjTN
ハルケギニアの技術力なら人間大砲くらい余裕だし(生死問わず)
40.スプーンのカトレア

ツタが屋敷――というよりも立派な城の外壁に絡まり、
いかにも年代物という雰囲気を醸し出している。
しかしこの建物は、まだ建てられて少ししか経っていない。
カトレアの趣味から、植物に手を加えずそのまま育てさせているのだ。
日が傾いて薄暗がりと赤が混じった色に、
照らされ始める城はどこか奇妙で、フォックスは何か不安を感じてしまう。
竜はその城の上を飛んでいる。ルイズはにこやかだった。

「ちいねえさまの家って、いつ見ても変わっているわ。
 それがおもしろいのだけれど」

変わりすぎだろ。とフォックスは心の中でツッコんだ。
ミス・フォンティーヌの噂はよく聞くが、その内容は病弱である事だけだ。
薄幸の美女で凄く――おっきぃ。という感じの噂がよく流れる。
まぁ、噂の元が微税官とかおっぱい大好き伯爵とかその同類だからなぁ。と、
フォックスは噂の不正確性をちゃんと理解している。

様々な情報を流して頭の固い役人を煙に巻く。
それは、彼が盗賊ギルドに入って初めに学んだ事の一つだ。
故に、火の無い所に煙は立たずといった常識を逆手に取ることも、しばしばあった。

だが、この屋敷を見る限り煙どころか夕焼けと勘違いする程の大きな炎が、
辺りを覆い尽くしている様な気がしてならない。その一部を火として見ているのではないのだろうか、と。

グレイ・フォックスは元々アンヴィルという街の伯爵である。そんな彼にとって病弱な公爵家の令嬢で、
名前を変えさせられているということが持つ意味は、
子供も生めぬ娘など意味がない。しかし殺すのは哀れだから僻地にでも置いて人目に触れさせないでおこう。
という事だ。しかし住まいを移してからも姉妹や両親との親交があった事を考えると、
名前の重さから解放しようとする親心とも思える。案外、良いお父さんなのだろうか。

しかし――とフォックスが考える。人の趣味をとやかく言うのもあれだが、
これは色々だめだろうと。ううむとフォックスが答えのない問題に唸っていると、
ルイズが声をかけた。

「どうしたの?」
「あ…いえ、なんでも。私は、どうしましょうかな」
「事情は話すから大丈夫よ。ここはちいねえさまの家だから、話の分かる人が多いわ」

逆に言えば、話の分からない視野の狭い者はここの使用人として相応しくないのだが、
そこまでルイズは分かっていない。
風竜が城の庭に降りていく。使用人の一人が駆け寄ってきた。
ルイズも見知った相手だ。彼は驚きの混じった声で竜から降りるルイズに話しかけた。

「ルイズお嬢様!?一体何があったのですか」
「薬よ!ちいねえさまはどこ?」

この屋敷で「薬」という単語が意味する事はたった一つしかない。

「なんと、ご主人様の病を治す薬が出来たと!?すぐに案内します。どうぞこちらへ!」

なるほど、本当に話が分かる。フォックスは二人の後を着いていく。
何でこんな内装なんだ。と思いながらフォックスがカトレアの屋敷を進むと、
途中でとんでもない生き物に出会った。
身の丈が2・5メイルはあるだろう体格に、
タムリエルのそれと比べても引けをとるどころか、
それらを圧倒する貫禄を持ち合わせている。
どちらかと言えばミノタウロスロードと言うべきかもしれない。
しかしまだ若いのか、全体的に黒い色だ。
ロードと呼ばれるミノタウロスは、雄牛の頭の毛が白いのだ。

「ミノタウロスゥ!?」
「使い魔よ。こんばんはラルカス」

ラルカスからミノタウロスの事を学んでいたから、
ルイズは市場でのマーティンの言葉を、冗談としてしか捉えられなかった。

流ちょうなハルケギニアの公用語が、ミノタウロスの口からわき出る。
フォックスは凄い違和感を持ちながらそれを聞いている。
あいつらはふごふご言ってるだけじゃないのか。
こんな風に話せるのか。とてつもないカルチャーショックであった。

「おお、ルイズではないか。実に…2年ぶりくらいかな?最近ご主人様が疎遠になったと嘆いていたよ」
「そうなんだ。去年の降臨祭の時、ねえさまは床に伏せっていたものね…聞いてラルカス!ちいねえさまの薬が出来たの」

ミノタウロスは目を丸くした。

「なんと!それはそれは…急いで渡さねばならんが、どうやって手に入れたのかね?」
「エルフに作ってもらったの!ちゃんと後で話すわ」

フォックスは奇異の目でラルカスを見ている。
ミノタウロスは特別にあしらえた服を着ていて、先ほどの使用人に比べて身なりは良かった。
少々不格好だが、この体格に合わせる事が難しいのは容易に理解できる。
視線に気付いたラルカスは、首をかしげて尋ねた。

「何かね?」
「知性派ミノタウロスに出会った事がないもんで、つい」

ラルカスは牛の口を開けて思い切り笑った。
大地の唸りの様に大声で笑う様は、よくそうやって笑っていることの証といえた。

「それは、そうだろうとも。わたしも彼女に呼ばれていなければ、獣のままだ」

回復の魔法がひどく弱いが、こっちの魔法って相当凄くないか?
と、フレンドリーなミノタウロスを見て思う。
テファ以外でそこまで凄い部類を見たことが無いから、そんな事を考えてしまう。
タムリエルにも生物操作と呼ばれる生き物を操る魔法はあるが、
こうも上手くはいかないだろう。

「ほら、二人とも早く行くわよ!」

あ、ああ。とフォックスは返事して、隣を走るミノタウロスから襲われないか、
少々怖がりながら前に進む二人に着いていくのであった。
カトレアは、動物たちと一緒に自室にいた。
コロコロと笑いながら動物たちの世話をしている。
動物たちもベッドに座るカトレアに優しく寄り添い、
穏やかな空気が流れる。こうして動物たちと接している時間が、
カトレアは一番好きだった。こうしている間は発作でも起きない限り、
病気の事を忘れていられるからだ。
そうやって、ゆるやかに時間が流れる部屋のドアが勢いよく開く。
とても愛らしい、カトレアと同じ髪色の女の子がそこにいた。

「あら、ルイズじゃない。どうしたの?
 学院はまだ夏期休暇にはなっていないでしょう?」

「ちいねえさま!」

いつもと変わらぬ声色で、ルイズはカトレアの胸に飛び込んだ。
カトレアも優しく抱き返す。

「いつまでも甘えんぼうさんなんだから。
学院を抜け出したりしてはダメでしょう?お母さまに叱られますよ」

ルイズは薬を取り出してカトレアに手渡す。
カトレアは不思議そうにその薬を見た。
ガラスのビンに入れられたそれは、
ピンク色で何の臭いもしない。

「叱られてもいいの。ちいねえさま、ねえさまの病気が治せる薬よ!
 エルフに作ってもらったの!」

「うそ」とカトレアはびっくりして口を開けた。

「エルフに?どうやって?」
「詳しい事は後で話すわ。だからそれを飲んでちいねえさま」

カトレアは妹の頼みを聞き、ゆっくりとその薬を飲んだ。
常に感じていた体の芯の痛みが段々と引いていき――
彼女は激しく咳き込んだ。

「ねえさま!?」
「おお、ルイズ…いえ。大丈夫、何か体から…う」

カトレアの口から大量の血と共に、いくつかの赤い固まりが吐かれた。
彼女の嗚咽が止まり、ルイズと動物たちが泣きそうな顔でカトレアを見ている。
使用人はお付きの水メイジを呼びに走った。
ラルカスはカトレアに小振りの棒を向け、
それから何も無かったかの様に部屋の傍らに止まった。
フォックスは固まっている。血みどろ美人ってか。いや不謹慎だな。
と、頭が上手く働かないで、そんな事ばかり浮かんでしまう。肝心な所がダメなのだ。

「ねえさま!ちいねえさま!」
「体は大丈夫よ。心配しないでルイズ…ちょっと、いえ、とっても驚いたけれど」
「だって、こんなにたくさん血を吐いて…ひっく」

ルイズの目から涙がこぼれ始める。
自分のせいで大好きなねえさまが死んでしまうと思ったのだ。
カトレアは近くの布で口元を拭いて、ルイズを抱きしめた。

「効いているわ。ルイズ。わたしの可愛い小さなルイズ。大丈夫よ。
 確かに効いたの。昔から言うでしょう?良く効くお薬は体に負担がかかるのよ」
「でも、でも…うぇええええん」

カトレアが子供の頃からの掛かり付け医である水のメイジが駆けつけた時、
彼女は泣いているルイズをあやしていた。自分が今仕えている主人は笑っている。
昔からよくやっていた事だ。しかし何か変な固まりが浮いた血だまりの中でそんなことをしている。
その様はもう助からない事を分かりつつ、平然を装っている様にしか見えない。
昔から体が痛んでも、カトレアは敢えて我慢する事が多かったのだ。

ゴクリと医者は喉をならし、ついに来てしまったかと、
震えながら主人の体がどういう状態か調べる。
だが嫌な汗が混じる震えは、すぐに驚きに満ちたそれに変わる。
医者は叫んだ。ただ、叫ぶ他無かった。

「なんと…まさか、な、治っております!」

年老いたメイジの言葉に、ルイズは泣き声を止めた。
カトレアは、やはりコロコロと笑った。真っ赤に染まったドレスを着て。

「薬は効いているって言ったでしょ?」
「ちいねえさまぁあああああああ!!」

今度は、うれし涙であった。


「なるほど…エルフの薬とは興味深い」

水のメイジはフォックスの説明を聞いていた。
この男が何者かは知らないが、元主人の娘の病を治す手助けをした事には変わらない。
例え悪魔の化身であったとしても、感謝の思いで一杯だった。

「ええ、詳しくはその――門外漢なので」
「構いませんとも。カトレア様の病が治った事が分かれば、ご家族の皆様もお喜びになるでしょう」

心からの笑顔だった。杞憂だったなと、フォックスはさっき作った推論を破り捨て、
水のメイジを見る。老齢のメイジはほうと一仕事が終わった様な顔だった。

「私だけでなく、様々な水のメイジがお嬢様の病気を治そうとしましたが、
 さじを投げる他無かったのです。ようやく、仕事が終わった気がしておるのですよ」

「医者の不養生とはよく言ったもの。今後は自身のお体を大切にして下さい」

へんてこな頭巾を被っている割に、マトモな事を言っている相手をいぶかしむ事もなく、
医者は朗らかに笑った。

「ああ、これからはそうしますかな」

フォックスも頭巾の下で、朗らかに笑った。
美しい桃色がかった金の髪の二人は、今浴場にいる。
先ほどの件で、二人とも全身が血にまみれてしまった。
だから綺麗に体を洗っているのだ。

「それで薬をもらえたの」

ルイズの話を頷きながらカトレアは聞きながら、
椅子に座る可愛らしい妹の背中を洗っている。

「けれど、危ない事をしたのね」
「…ごめんなさい」

カトレアはルイズを背中から優しく抱きしめた。

「こんな事は言いたくないけれど、もう少し自分の事を考えて。
 アルビオンで死んでしまったら、わたしはとても悲しんでいたわ」

ルイズが顔を下に向ける。カトレアは何も言わずに頭を撫でた。

「さ、お話はもうおしまい。ルイズ、こっちを向いて」
「ま、前は自分でするもん!」

ルイズが顔を真っ赤にして自分を見ているのがおもしろかったのか、
カトレアはコロコロと笑った。

「失礼なことを言ったわ。そうね、もう自分で洗えるものね」

子供扱いだったが、ルイズは姉の病気が治った事が嬉しくて、
そんな事すぐにどうでもよくなった。
ルイズは、そのままカトレアの胸に顔をうずめる。

「ねぇ、ちいねえさま」

カトレアは優しい目でルイズを見ている。

「私もちいねえさまみたいに膨らむかしら」

カトレアは吹き出し、ルイズの胸を優しく触る。
ひゃん!とルイズは悲鳴をあげた。

「素敵なあなたのことだから大丈夫。わたしよりもっと綺麗になるわ」
「ほんと?」
「せいぜいわたしもこのくらいだったわ。あなたくらいの年の頃はね」

ルイズは頭の中で思い出していた。カトレアは確か今二十四だから……、
十六の時は八年前。自分は八歳。その頃カトレアはどうだっただろう?
なにぶん幼かったのでよく思い出せない。

そんな事を考えていると、気が付けばカトレアがルイズを抱きかかえて、
湯船に浸かろうとしていた。

「ね、ねえさま?」

こんなに力持ちだったかしら。と持ち上げられるルイズは不思議がった。

「そうね…これはわたしが今まで試した薬の効果もあるわね。
 副作用よ。体の芯を治すには至らなかったけれど、
 薬の力は、わたしの体を少しずつ変えていったわ。
 けれど、これで普通の人くらいよ。あなたが軽いのよルイズ。まるで羽みたい」
ん、と抱きかかえられたルイズはそのまま湯船に入れられた。
よく見れば、カトレアの体には固そうな部分もあった。
薬で勝手に筋肉でもがついたのかしら。嫌だわそんなの。
とカトレアの柔らかい部分に自分の体を預ける。
湯船はほんのり暖かく、ルイズは良い気分になる。
カトレアが笑っていった。

「ただ、わたしのベッドで寝ている熊を持ち上げて、下に降ろしたりするくらいしかしないけれど」
「ちいねえさま。それ普通って言わないわ」

冷静にルイズは言った。カトレアは首をかしげてルイズを見る。

「違うわ、そっちが変なのよ。お母さまなんて火竜山脈でドラゴン相手に戦ったじゃない」
「それがおかしいの。普通たった一人であの山に登る人なんていないもの」

カトレアは俯き、そして両手を目に当てて泣き声を真似始めた。

「冷たいのね、わたしの可愛いルイズ。世間知らずのわたしをいじめるの?」
「そそそそ、そんなことしてない!」

やはりカトレアはコロコロと笑った。それでようやくルイズは自分が騙された事に気が付いた。

「ちいねえさま!」
「でもあり得ているじゃない。わたしにとっては、それが普通なのよ」

そう言われて抱きしめられる。自分を優しく抱いてくれるカトレアに何も言えなくなったルイズは、
その感触も手伝って、ゆっくりと頭にもやが漂い始める。暖かくて気持ちよくて、
このまま意識を手放して――

「どうしたのルイズ。ルイズ?」

きゅう。とルイズはのぼせたようだ。
カトレアはそんな自分の妹を抱えて湯船から出る。
右手の薬指にスプーンの頭を模した指輪を嵌めたまま。

投下終了。
なんであの家族であの体であんなに優しくなったのか。それをTESとまぜまぜしながら考えたら、
それなりに暗いお話になってしまいました。では、また次の投下まで。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:01:20 ID:B2Apf5r8
豆粒とか少女と【愛人】とかでは、理由が書かれていたな。
中々、納得したのを覚えている。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:22:17 ID:BGeIBMQc
もしかしてまだあの管理人がまとめやってるのか?
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:26:56 ID:1x1+HiWV
あのとかこのとかじゃ分からんぞよ
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:28:49 ID:/IX4PNbB
自分の知っている事はみんな知っていると信じて疑わないんだよ
自分と他人の分別がつかないとも言う
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:36:09 ID:MhxYiYW2
オブリビの人乙
いいよね……風呂シーンって……ふぅ
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:44:36 ID:q2r4bBFa
268名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:02:19 ID:bfucKP3X
アバン先生復活おめでとう!!
でも先生はやはりチートです。っていうかゼロ魔じゃ勝てる人はいないですな。
エルフとの戦争も防げるでしょう。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:05:20 ID:2Zso/VEb
いや案外アバン先生じゃエルフには勝てないかも
ジョゼフの加速とかにもてこずりそうだし
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:10:42 ID:3tiDylnv
先生が真正面から戦うと思いか?

何気にいろんなアイテムもってそうだしなぁ。
ルラムーン層やら、時のすなやら渇きの石やら銀の竪琴やら反則気味のものを。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:12:55 ID:uOzO8zcA
困ったときにはマホカンタ
先生が使えるのかどうかは知らんが
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:13:17 ID:j/N9+jfY
加速みたいな単純かつ正攻法ならアバン先生も苦戦するとは思うけど反射とかに対してはなんかサラッと対策を立てそうな気がする
アバン先生と戦うなら化かし合いよりも力押しの方がたぶん正解

つっても単純な実力も弱いわけじゃ無いってのが厄介なわけだが
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:15:51 ID:lnBxuXB0
そこでドラゴラムですよ
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:18:51 ID:2Zso/VEb
アバン先生ならルイズの虚無の力を上手いこと使わせるだろうからな
そこまで含めたらだいたいの敵を倒せそう
275名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:20:17 ID:bfucKP3X
あのわすれてませんか?
アバン先生は「アバンストラッシュ」もつかえる達人だとを使えるってことを?
単純な力押しでも先生に勝つのは厳しいでしょう……偏在の本体だってあっさり見抜けると思う。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:22:34 ID:3tiDylnv
アストロンでMP切れ狙いかな。>正攻法に対する対策
シルバーフェザーでMP回復可能だし、ゆっくりのんびり行きましょう。

ルイズにモシャスを使って、シルバーフェザーを併用した虚無魔法連射という最終手段もあるしな。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:22:49 ID:5CxCa4gG
アバン先生なら加速されてもアバン流最速の海波斬で叩き落しそうだが
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:23:24 ID:3tiDylnv
空の技を使えば、造作もないことですね。>遍在
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:23:34 ID:uOzO8zcA
ほとんどのメイジは海波斬で仕留められそうだしな
詠唱なし速攻発動の強力な飛び道具とかメイジにしてみたら悪夢だろうし
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:26:14 ID:j/N9+jfY
その上で下手に卑劣な手や罠を使ってアバン先生本人や周りの人間をハメようとすれば
アバン先生はそれ以上のえげつない返し技を使ってきそうだからなぁ
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:26:36 ID:gPoAiW3O
はだしのゲンを召喚
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:27:14 ID:5CxCa4gG
>>279
そういう話だとガンマン系が呼ばれても悪夢だな
サンダウンキッドとかピースメーカーの主人公とかジャイロツエペリとか
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:28:05 ID:lnBxuXB0
いともたやすく行なわれるえげつない行為ですね
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:28:35 ID:LLfmN5JT
そんな完璧超人こそ倒されるべきだろ
クロスキャラだからって油断してんじゃねぇ
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:30:44 ID:cwtksOYQ
>>281
あるよ
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:31:33 ID:IyouzlH1
>そんな完璧超人こそ倒されるべきだろ
最後は友情の大切さを知って自爆か
287名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:32:26 ID:bfucKP3X
>>277、278、279
そうです、それを言いたかったのです。そもそも原作では周りがすさまじすぎる連中ばかりなので、武術を使わなかっただけです。
エルフの件に関しては、うまく交渉に持ち込めると思いますし、先生の人格はエルフも認めると思う。
むしろ最大の敵になるのはロマリアとか腐った貴族だと思う、ティファの扱いにブチ切れる(ダイのことを思いだして)ても不思議ではないと思うし
聖地奪還戦争の愚かさにも気づくと思う。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:32:41 ID:2Zso/VEb
まあ最終決戦での描写的にそこまで万能でも無さそうなんだがね>アバン先生
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:34:23 ID:r8hSS+iw
>>282
おっぱいリロードの人とかな
まあコッチはルイズが絶対に認められない相手だろうけど(胸的に)
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:34:28 ID:1uAz1ZOe
>>284
喧嘩マン「・・・・・」

スッ
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:36:18 ID:LLfmN5JT
おっぱいエルフで鼻の下伸ばしてるアバンの股関を蹴り上げれば勝てるだろうな
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:36:40 ID:5CxCa4gG
忘れがちだがアバン先生は魔王を倒した正真正銘のドラゴンクエストの勇者の一人です
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:37:17 ID:M9XrdWon
>>286
でも結局悪の道に戻ると…
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:37:21 ID:LLfmN5JT
>290
何も言わず帰るなw
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:37:56 ID:lnBxuXB0
ドラゴン自体は別の人が倒したけどね
296名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:44:02 ID:bfucKP3X
>>288
そりゃ、そうでしょう。
あれはバーンとかハドラーとかバランとか国の一つや二つ一瞬で滅ぼせるような規格外の化けものばかり揃っていましたから。
人間の万能選手(ポップとかマァムは専門家だから力勝負でも活躍できたし)である先生では直接の戦闘とかではとてもきついのでサポート役(それでも勝利に大きく貢献したのでやはりすごいです)に徹したと思います。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:45:52 ID:SLi9Pe6z
アバン先生は器用貧乏なイメージがある。
いや、まあ、マトリフが「勇者ってそういうもんだ」みたいなことは言ってたけど。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:49:36 ID:AvWe32aH
わかっているさ アバン♭
 
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:49:45 ID:1x1+HiWV
そりゃ何でもできて一番だったら他のキャラの意味ないし
あれだ、FF4でセシルの覚える最高の白魔法がテレポなのと同じ理屈
300名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:51:49 ID:bfucKP3X
ゼロ魔の基準だと超人でしょう……先生は……。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:52:35 ID:3tiDylnv
>>296
というか、最終決戦時のどのメンバーとも、一切の縛りなしで1対1をやらせたら、
先生が勝てない奴はいないんじゃないか?

全能ではないにせよ、万能であることは間違いないし、相手に不利なフィールドに引き込むすべにも長けているわけで。
暗殺まがいの技やら、キルバーンのような魔道トラップも、使えることは使えるだろうしなぁ。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:53:34 ID:+51DpjTN
勇者で関係ないこと思い出した。
魔法戦士リウイ(アニメちょっと見ただけの知識だけど)召喚したら・・・
魔法を使えるのに、ギーシュとの決闘では魔法どころか持っていた剣も使わずに。
「男の喧嘩はコレ(拳)だぁー!リウイパーンチ!!」と脳味噌筋肉展開・・・馬鹿だな
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:55:05 ID:3tiDylnv
>>297
器用なのは間違いないが、すべての能力が超一流といえる部分まで行っていれば、貧乏とは言えないと思う。
まぁ、一点特化の神がかった連中にはかなわないにせよ。


ところで、先生の専門は、破邪の技法だっけ?
304名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/12(木) 23:56:12 ID:bfucKP3X
>>302
あんなキウイと先生を比較したら失礼でしょう……。
先生は自分の能力を極限まで活用して知恵と勇気で使いこなしている偉大な勇者です。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:58:54 ID:bpXr1r+4
勇者か。
よろしい熱血!大冒険大陸から勇者アルフレッドを召喚だ。
一見ヘタレな彼だが、超重量の鎧着てたりエルフのカウンターでも防げそうにない大冒険スマッシュがつかえるぞ。
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 23:59:58 ID:SLi9Pe6z
取りあえずアバン先生が出来ることを列挙してみよう。

剣術、槍術、斧、弓、鎖(ムチ?)、徒手空拳で戦える
ドラゴラム、アストロン、メガンテ、マホカトール(増幅用の魔法石なしで島一つカバー)などを使用
魔弾銃やオリジナルのマジックアイテムなどを自作
凍れる時間の秘法を使おうと思えば使える


ああ、そりゃ実力的に「普通の人間」でなけりゃチートだなぁ…。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:00:48 ID:FowBhWoF
勇者・・・?

勇者カタストロフだ!
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:03:26 ID:7Lvn3RJB
シタン先生おもいだした
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:07:30 ID:w0UxNudX
>>304
比べるが失礼なのはわかってる、だが彼もまた極限まで脳を筋肉化した男。
それだけは賞賛に値・・・しねーな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:08:28 ID:cVGP26Rr
さすがにそろそろアバン先生がらみの話はやめた方が良くないか……?

踏み台症候群の方々に目をつけられて
叩きのターゲットにされちゃかなわん
せっかく帰ってきてくれたんだから
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:10:21 ID:ZtfMMCpc
うむ、確かにそうだね。
それではおっぱい談義に戻ろうか…って、ちっがーう!!
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:10:26 ID:Jgh+SkSf
>>282
何故か漫画版スクライドのハーニッシュが浮かんできた
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:11:50 ID:HFpY59Oc
勇者っつったら偉大なる勇者グレートマジンガーだろ
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:12:29 ID:wQWSNLBv
はいはいプロプロ
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:12:39 ID:s3qQApZ9
俺は銭湯のプロだぜ
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:13:47 ID:P4VUuOjP
もう遅いと思うがなぁ……馬鹿一人が喚いたせいでアバンの人がやる気を減退させないことを祈る。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:20:53 ID:IOqERv44
話題になるのってそれだけで作者冥利につきるし本当に嬉しく、とても幸せなことなんだが、
その期待に応えられない時に凄く心苦しい。

あまり真面目に持ち上げ過ぎず、程よく褒めて欲しいというのがきっと多くの作者のワガママな気持ちw
「少し愛して、でも長〜く愛してね」と言っていたのは何時のCMだったかな?
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:28:57 ID:cVGP26Rr
いや普通に話題にするのはかまわんと思うがねえ
使い魔が派手に活躍すると蹂躙だ踏み台だ騒ぐのがいるからなあ……

困ったもんだ
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:30:27 ID:gbTRm1xS
普通に話題にする分にはそんなに問題ないよねほんと……
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:41:14 ID:Z9xKGU3+
そういうのは、使い魔しか活躍しないからだろ
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:41:55 ID:w0UxNudX
>>317
たぶん生命保険のCMですね
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:49:40 ID:/cNYnY6e
>>307
魚屋はゲルマニアに召還されれば活躍できるなw
当然あの値下げ戦争と暴動だか革命だかの二本立てでw
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:49:48 ID:Rvy+QagO
>>311
アバン先生について語り合い、話題を変えたと思ったらおっぱい談義だと……?

あんた、メドローア使えるだろ!?
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:55:26 ID:eD7GYV7g
どっかの国の諺で見た気がする…

ちなみにゼロ魔キャラだと「今だけでもいいから激しく愛して」タイプが多そうなイメージ。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:00:38 ID:BLgGyKkv
>>322
思い出して噴いたじゃねーかw
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:00:46 ID:Rvy+QagO
そして、その「今」が連続すると……
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:05:02 ID:w0UxNudX
>>318、320
確かにチートキャラ召喚すると戦闘とか独壇場万歳だけど、
そんな使い魔を召喚したルイズと周りの人間とのやり取りとか
無敵に見える使い魔の意外な一面とか魅せ方とかあるんだけど。感じ方は人それぞれか。
つかチートキャラの意外な弱点で評価の高い「ハシバミ草」小道具では最強だ。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:16:32 ID:lnAATt+n
>>322
戦える商人経験が有るキャラ召還とか面白そうだな
でもステプリのシャノンとかの武具防具雑貨販売経験有りだと
デルフが値切られまくっていじける可能性が有るか
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:30:19 ID:GxyX66i6
商人といえば去年の夏にトルネコがありましたね・・・
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:33:22 ID:ZoHCWHjA
トルネコの人は野次馬の粘着に負けて来なくなったね
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:34:08 ID:HFpY59Oc
アズラエルがウォームアップ
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:40:05 ID:ei6YtG8k
>>330
トルネコの人はwikiで見て続きを楽しみにしてたんだが、
一体何があったんかな?
またいつもみたくメイジ殺しならぬ「書き手殺し」がその豪腕を振るったとか?
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:54:06 ID:URVRoyuM
毒吐きにて孤立無援で頑張ってたよ
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 02:21:45 ID:1gk/PUsk
>>214を見て、ゼロのガンパレードを一気に読み返した
続きが非常に読みたくて仕方がなくなった・・・・

仕方が無いからPSのガンパレで絢爛舞踏でも狙って見るか・・・
もちろんプレーヤーはイワタマンで
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 02:37:37 ID:a76jXdL4
はじめまして、こんばんは。
初作品を投稿したくてまいりました。

クロス作品は、藤崎竜先生の「封神演技」
召喚されるキャラクターは、作品終了後の「太公望(=伏義=王奕)」です。

先に予定しておられる方や、「投稿やめろ」と仰る方がいないのであれば
この5分ほど後に投稿開始したいと思います。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 02:41:28 ID:LRtnlC+m
ドゾー
337ゼロの最初の人:2009/02/13(金) 02:42:40 ID:a76jXdL4
「オールド・オスマン。王軍から、現時点での今年度卒業見込生徒の総数と、ランク、系統ごとの人数を書類にまとめ、今月のティワズの週ラーグの曜日までに報告するようにとのことです」
「ご苦労。明後日までには早馬を手配して王宮に届けさせるようにしよう。4、5日中には届くであろうから、安心してくれ」
 魔法でペンをいくつも扱い、浮かんだ書類をどんどんと処理していきながらオスマンは答える。このとき、目で書類を追うことはせず、しっかりとロングビルと視線を合わせていた。
 かつてロングビルが秘書の職に就いたころ。初めてこの異常な光景を目の当たりに彼女は、どうすればこのようなことが出来るか聞いたことがある。彼いわく、レビューションと遠見の魔法の応用であり、練習すれば誰にでも出来る事。らしい。
 それを聞いたロングビルは、使えれば何処かで役に立つかもしれないと、こっそり練習したことがある。
 しかし「複数のペンと複数の書類を浮かし、なおかつ複数の視界を展開、そしてそこから来る情報を同時に処理しながら、ペンを動かし正確に文字を書く」などできるはずがなく、すぐに諦めた。
 そんな昔のことを思い出し、この人はやはりすごい人だ。と、微笑みながらロングビルがさらに言う。
「心配なぞしておりませんよ。もしどうしてもしなければいけないのならば、その相手は貴方ではなく早馬でしょうね」
「ほっほ。仕事は正確でしかも速い。おまけに舌まで達者とは、ワシはいい秘書を雇ったもんじゃのう。」
 笑いながら話していると、ペンの動きが止まり、書類が束にまとめられ机に置かれた。
「さて……もう今日やらねばならんことは終わってしまったの。
 むぅ、まだこんな時間か…………そうじゃのう、ちとばかり早いが仕事は終わりじゃ。自室へ戻っても構わんぞ」
「それでは、お疲れ様でした。お先に失礼させていただきます」
「ああ、ご苦労じゃった」
 オスマンはそう言って、ロングビルを見送った後、窓の方向に向き直り物憂げに空を見つめた。
 ここはトリステイン魔法学校学院長室。そこには数々の並行世界で不埒な行為 ―俗にいうセクハラ― を行っていた変態爺とは全く違う「大賢者オールド・オスマン」の姿があった。
 彼が成し遂げた偉業は数知れない。そして偉業は人々に伝わって伝説となる。
 人が、国が、彼に救うたび伝説は増えていく。
 さらに伝説は人に伝わると尾ひれを付け泳ぎだす。そうしてその総数は両手両足ではまったく足りないほどになった。

 曰く、四大系統を全て修めた。
 曰く、300年以上の時を生きている。
 曰く、彼の出陣は、終戦の号砲である。

 彼の伝説の中には虚実のものもある。しかしそれこそ「彼ならこれでも出来る」という周りの評価の高さを表しているだろう。
 彼は、自身のもつその強大な力で祖国トリステインの危機を幾度も救った。
 しかし、彼の素性に関しては謎な部分が多かったため、連絡がつかず、その功績に対し見合った報酬を与えることができずにいた。だが、彼が齢200を超えしばらく経ったころ、突然王宮に姿を現し当時の国王フィリップ3世にこう言った。
「これから、この杖は未来を担う若人を導くために振るいたい。このわしをトリステイン魔法学院の学院長にしてくだされ」
 メリットはあれどデメリットの見つからないその提案に、フィリップ3世は一も二もなく首肯した。
 ハルゲニア一とも言われるメイジが学院長に就任することに対して、反対するような教員、生徒がいるはずもなく、学院の貴族たちはオスマンを歓迎した。
 学院の平民たちは、最初こそ萎縮したものの、平民だからといって差別することなく接してくるオスマンに対し、好感を抱き、歓迎した。
 そして、一般的な学院長職の寿命としては長すぎるほどの間、オスマンは学院長であり続けた。
人望も厚く、学院に関する細々とした事務処理にも手を抜かず、ミスを犯すこともなかったオスマンをわざわざ学院長のポストから下ろす道理もなかったため、オスマンは何十代もの卒業生たちを見届けてきた。
 
しかしながら、元来オスマンの性格は、お調子者で助平。そんな彼が、どうしてこのような偉大な人物となったのか。
 トマトが何故赤くなったかを、気にするものが稀有なように。その理由を気にするものは ―少なくとも今のハルゲニアには― いなかった。
338ゼロの最初の人:2009/02/13(金) 02:44:52 ID:a76jXdL4
 所変わって同時刻。ヴェストリの広場、ここでは春の使い魔召喚の儀式が行われていた。
 ほとんどの生徒が使い魔を召喚し終え、召喚した使い魔との交流を深めていた中。未だに召喚が成功していない生徒が一人いた。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。トリステイン王国有数の大貴族であるヴァリエール家の第三女である。
 集中する。自分の中の魔力を、そして自分の意識を杖に集め、呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴンよ。我の運命に従いし、使い魔を召還せよ!」
 力のこもった詠唱は、爆発を生み出し地面に大きなクレーターを作った。副産物は他生徒からの中傷の言葉。
「おいおい!ゼロのルイズはサモン・サーヴァントでも爆発させるのかよ!」
「万一、いや億一に成功してもあの爆発じゃ使い魔死んでんじゃねーか?」
「ハハハ!!違いないな!!」
 無慈悲な言葉の矢がルイズに浴びせかけられる。ルイズは奥歯を噛み締め、悔しさを飲み込み、今一度杖を振り上げた。
 絶対に、絶対に絶対に見返してやる。神聖で強力で、そして美しい私だけの使い魔を召喚してみせる。私をバカにしたやつらを見返してやる。
 ルイズが気持ちを乗せた呪文を唱えようとした、そのとき。監督教師のコルベールがそれを制止した。
「ミス・ヴァリエール、待ってください!」
 ルイズが苛立ちを隠そうともせず答える。
「なんですか?!まだ授業の時間はあるでしょう?!」
「違います!そこを見てください!」
 言うと同時にコルベールは指を指す。その先は先ほどルイズが"サモン・サーヴァント"で作ったクレーターがちょうどあるあたり。そこは爆発で巻き上げられた土煙に覆われていたが、かすかに中の様子が垣間見れた。そこには確かに黒い影があった。
「成功です!あなたの!ミス・ヴァリエールの使い魔が召喚されたのです!」
 目の前の少女の苦労を少なからず知る教師が興奮しながら言う。
しかしながら、先ほどまで負の方向へ大きく傾いていた少女の精神に対して、正の方向へ強く心を揺るその情報はあまりに強烈過ぎた。
念願の使い魔召喚、魔法の成功だというのにただただ、口をパクパクとするのみで彼女の思考は停止した。
 只、ルイズほどの衝撃を受けないにしろ他の少年少女たちにも目の前の状況は大きなショックであったらしく、誰も口を開けなかった。そんな中、青い風龍を召喚した少女が小さく何かを呟いた。
「ウィンド・ブレイク」その風の呪文で、クレーター近辺を覆っていた土煙が吹き飛んだ。
 ルイズはその少女に小さく一礼する。そしてすぐに影 ―煙は晴れていたが外皮が黒い生物なのか正確な形が判断できない― に向かって駆ける。
 駆けながらルイズは考える。
 よく姿がわからないけど、人間と同程度には大きいわ!きっと幻獣よね、しかもあんなに大きいんだもの!あの青髪の子が召喚した風龍には劣るだろうけど、ツェルプストーのサラマンダー同等程度には強力に違いないわ!
 これでみんなを見返せる!これで姉さまに、お父さまに、お母さまに褒めてもらえる!
 きっと、ルイズはこのとき興奮で盲目になっていたのだろう。そうでなければ駆け寄る途中に自身の召喚したモノの正体に気付いたはずだ。
 そしてルイズはソレにあと5メートルというとき、やっと気付いた。興奮していた精神が急激に冷やされる。あまりのことに再び声を失った。
 何秒か、何分か、時間が過ぎた時やっとのことでルイズは一声もらす。

「…………人間?」
339ゼロの最初の人:2009/02/13(金) 02:46:39 ID:a76jXdL4
 ルイズは近づいて観察する。年は17、18才といった所だろう。素朴な顔だったが、造形は整っており知性を感じさせる顔つきだ。
 しかし、その青年は、サモン・サーヴァントで召喚された、ということを差し引いたとしても、明らかに異質に感じられた。
 その原因の全ては青年の着ていた衣服である。貴族のものとは明らかに違う作りのローブのような妙ちくりんな黒いものを羽織り、その中に橙色の如何とも形容しがたい服を着ていた。靴は大きな黒いもので、髪の色もまた―このあたりでは珍しく―黒だった。
 両手には中の服と同じ橙の手袋がはめられて、その左手には……"杖のようなもの"が握られていた。
 また男は、ルイズ達生徒やコルベールの居る方向に対し背を向けた状態で、膝を軽く抱えたようにして寝ていた。
 つまり、黒い面しか彼女らには見えておらず、見慣れぬ服装のこともあったため、黒い大きな幻獣と勘違いしたわけだ。
 そんなとき男がゴロンと寝がえりをうった。顔や首、袖口に見える手首。そんな"人"の部分が生徒の方向を向く。
 数人の生徒が目の前の事実を理解した。ヒソヒソとした話し声。その声は次第に大きなものになり、ルイズに向けられる罵言へと姿を変える。
「なんだあれ!ヒトじゃねぇか!」
「ゼロのルイズの使い魔は人間!こりゃ傑作だ!!」
 それに混じってスースー、グーグーと規則正しい呼吸音が聞こえる。
 それがルイズの精神を逆なでした。
「こ、こここ、この!!起きなさいよ!!!!」
 杖を空に向け怒りを乗せた呪文を唱える。上空に巨大な爆発が生まれた。周りの生徒の使い魔たちの数匹が暴れだした。
 誰かの蛇が、誰かカラスを飲み込む寸前で、空気の槌に吹き飛ばされる。
 巨大モグラがやたらに穴を掘り、その中に使い魔と人間が何人か落ちてしまう。
 寝ているところを起こされてしまい不機嫌なサラマンダーがめちゃくちゃに炎を吐く。
 そんな阿鼻叫喚の騒ぎをなんとか収めた生徒たちが、ルイズをにらんで怒鳴るように声をあげた。
 しかしルイズは振り向かない。肩で息をしながら使い魔をじっと見ていた。
 なぜなら、そこで彼はようやく目を覚まし、起きあがったからだ。
 目を覚ました彼は「くぁあ」と大きな欠伸をしながら伸びたあと、目をこすりながらゆっくりとあたりを見渡す。
 その動きをコルベールは警戒しながら見つめる。使い魔はコントラスト・サーヴァントで契約するまでは、主に危害を加える恐れがある。召喚されたのがヒトであったとしてもそれは変わらない。
 ルイズはというと、そんな緩慢な動きに内心イライラしていたが、何も言わなかった。
 いや、正確には先ほどの怒り感情に身を任せ荒々しく唱えた呪文のせいで、いまだに息が荒れていた為、言えなかった。という方が正しいだろう。
 太公望にそんなルイズの心象を知る由もなく、しばらく彼はそうしていたが、やがてルイズに目線を合わせ溜息をつき、こう言った。

「そこのおぬし。何故わしはここにおるのかのぅ?」





ゼロの最初の人 01  終了です
340ゼロスト:2009/02/13(金) 02:55:53 ID:TV/Q5aGv
なかなかいいんじゃあないか・・・

さて、自分も5レスほど投下したいですが
予定がなければ、はじめようかと
ルイズは・・・まだ寝ていた。当然と言えば当然・・・なのかは分からんが、今の兄弟には妙に腹立たしく思えた。
「この期に及んでまだ寝ているとは、つくづくルイズには困らされる」
「もう何やったっていいんでしょ?」
「優しく起こしてやる義理はないからな(ニヤリ)」
「(ニヤリ)了解」
不敵に笑う兄弟。例によって、ベッドから叩き落す準備は完了だ。
「さあ起きてルイズ、新たな朝の幕開けだ」「マイクロウェーブ、照射!」
ドッスーン!
「いたたたたた!まったく、何なのよもう!」
「この期に及んで、なお睡眠を欲する気か?」
「うーん・・・分かってるわよぉ・・・ほら、着替えさせてよ!遅刻しちゃうじゃない!」
それを聞いた兄弟、離脱体制準備完了だ。
「紳士である我々にはそういうのはできかねる。自分でやってくれたまえ」それだけならまだよかった。
「目のやり場に・・・困らないけど困るからね」それを聞いたご主人、リミットゲージがマックスだ。
今の彼女なら、おそらくライフストリームに叩き落としてやっても平泳ぎしながら戻ってくるだろう。
「えぇ〜、どうせ私はキュルケと違って出るべきとこも出てないわよー!」

兄弟をリミット技で1ラウンドKOし、着替えを終えたルイズがドアを開けると・・・雪国ではないが、件の人物が立っていた。
「おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
リミット技を使ったはずなのに、もう彼女のゲージは半分近くまで溜まっている。
「あれ?貴方の使い魔は?」
「デリカシーが無いから、そこで伸びてるわよ」
キュルケが室内に目をやると、本当に伸びていた。
「それでね、私が召喚した使い魔がこれなのよ。フレイム!」
――ああ、この女は私をバカにしにきたか自慢しにきたかのどちらかね。
ルイズのリミットゲージがどんどん溜まっていく。
「火竜山脈のサラマンダーなのよ。あたしの属性にぴったりだし、本当に素敵な・・・」
「言いたい事はそれだけ?あのバカのせいで急いでるの。用が済んだら道を空けておいて」
怒り心頭といった様子で言い放つルイズに少し腹が立ったが、とばっちりはごめんなので言うとおりにしておく。
そうこうしている間にルイズが部屋から飛び出していく。「あんたたち、朝食抜き!」と言い捨てるのを忘れずに。
やれやれ・・・と顔をしかめるキュルケであったが、自らの使い魔の様子がおかしい事に気づく。まるで・・・怯えている。
「ルイズにかしら?・・・それにしてはおかしいわ。―――あの『使い魔』?・・・まさかね」
キュルケはその考えを追いやるようにかぶりを振り、教室へと向かっていった。
342ゼロの最初の人:2009/02/13(金) 03:00:35 ID:a76jXdL4
補足……じゃないですけど伝えるべきことかな?とおもい報告します。

今現在、書き手の私が試験期間なので、しばらくの間
この作品の更新頻度はすごく低いと思います。
というか、試験を眼前に控えた学生が現実逃避で書いた感が少しあったりします。
ですが、書いてしまった以上。最低原作一巻分(フーケ戦まで)は書き上げたいと思っております。

あと、私はSSに関してはずぶの素人です。
おかしいところや、アドバイス等ありましたら、ビシビシ指摘お願いします。


>>341
支援です。
朝食を急いで済ませたルイズご一行が教室へ駆け込む。
朝食抜きとは言ったが、本当に何も食べてないはずなのに平然としている兄弟にルイズは疑念を抱いたが、
何故かあの女、もといキュルケがこちらを見てくるのでそっちに意識がいき、その疑念は立ち消えとなった。

教室に着いた兄弟が周りを見渡すと、多種多様な使い魔がいた。別段興味も惹かれなかったが。
とりあえず、『自分達がこの中で一番強い』であろうことを確認すると主人の横に座った。
キュルケがアイコンタクトとばかりに目線を送ってくるので適当に会釈をしたところで、先生がやってきた。
春の使い魔召喚の儀は成功したようですね、だの色々な使い魔がいて楽しみ、だの言っているところに、兄弟と目が合う。
「おやおや・・・ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したようですね・・・」
クラス中に笑いがこだまする。
「ゼロのルイズ!召喚できなかったからって、その辺の平民を連れてくるなよ!」
デヴの生徒がそう言うと、笑い声は一層大きくなる。
――まただ、この不快感。アイムザットの奴を思い出す・・・。――兄さんもかい?・・・僕もさ。
アイムザットとは、彼らのかつての上官であり、『カテゴリーF』と正面きって言い放ちシャギアに殺された人物だ。
『紛い物』とも、『フェイク』とも、『なり損ない』とも、ましてや『カテゴリーF』とも言われていないのに。
この激しい怒りは何なのだ。憎しみは。殺意は。自分の事でないと知っていても、何故だかゼロのルイズという言葉に腹が立つ。
――彼には身をもって我らの怒りを知ってもらうしかないな。――なるほど。悪い事、またするんだね。
異様に切れる彼らの頭の中で、早速打ち合わせが始まる。そして。
――オルバよ。そちらの準備はいいか?――いつでもいいよ、兄さん。
肩を震わせ、怒りに身を焦がすルイズ。今にも怒り出しそうな彼女、その口の前に腕を突き出して彼女を制する。
そして不敵に微笑んだ、最狂にして最凶の使い魔。彼ら流の『仕返し』が、始まる。
「ん?オルバよ、何か聞こえたか?」
「いや?何も。豚の鳴き声みたいなのは、聞こえてきたけどね」
この発言にクラス中は静まり返り、豚呼ばわりされた(であろう)本人も唖然としている。そして我に返った彼は烈火の如く怒り、
「へ、平民の分際でこの僕を・・・よ、よりによって豚だと!?無礼者めが!」
しかし、人を貶める事と謀殺することを、半ば生業としてきたフロスト兄弟は一味違う。
「ああ、人の声だったのか。それは悪かったな、少年」
「僕らはこの国の言語が分からないからさ、何て言っているのか分からなくてね。僕らが元いた世界の基準で考えると、
今の声が一番近かったのが豚の声だった、って訳だよ。だから別に君の事を豚って言っている訳じゃあない。分かってくれた?」
なんという屁理屈。しかもこれに下手に反論した瞬間、豚という発言を彼が彼自身で認めたようにも聞こえる恐ろしいトラップだ。
豚という発言、それだけは断固として認めてはならない。貴族のプライドが、自分のプライドが泣くからだ、と彼は思った。
「ハッ・・・君達がどこから来たかは知らないが、人の言葉を喋る豚がいるとでも思っているのかい!?」
「我々の世界には、人の言葉を理解する魚がいたのだが?」――正確にはイルカだが。
「この世界には、僕らの考えもつかないような生物がたくさんいる。燃えてるトカゲとか、それこそいくらでも、ね。
僕らの世界に人の言葉を理解する魚がいるなら、この世界には人の言葉を話す豚がいたっておかしくないんじゃないか。
それこそ、亜人種って奴かも。と、僕達はそう考えたまでであって、君に無礼者呼ばわりされるいわれはないんだよね」
よく聞いてみれば、彼らの主張のほとんどは屁理屈と詭弁のようなものだ。だが、普段激しい口喧嘩をしない貴族からしてみれば、
何故か妙に正しいような感じもしてくる。正論か詭弁か、その曖昧さが豚、いや失礼、少年の怒りを煽る。
「い・・・いつまでも減らず口を・・・!」
歯がキシキシと悲鳴を上げるほどに食いしばる少年。血管の数本ぐらい切れてそうな彼に、まるで空気を読まずにシャギアは話しかける。
「まあそういきり立つな、マリコルヌ・ド・グランドプレ。君は今朝寝坊をして朝食を満足に食べていないのだろう?
だからそうやって人にすぐ噛み付くし、ちょっとしたことですぐに怒るのだ。次からは遅刻してでも朝食は食べて来ることを勧める」
クラス全員が驚愕の表情を浮かべた。何故この使い魔は彼の名前を、そして寝坊した事まで知っているのだろう?
「き・・・貴様ら、何故それを・・・」その、空中に投げかけられた問いを黙殺してオルバが言った。
「フロスト兄弟のニュータイプ占い・・・。この後君には、臨時の朝食が支給されるよ。楽しみだね?」
「質問に答えろ!何故そんなことまで知っている!?たかが平民のくせに!」
激昂した彼がそういい終わるか終わらないかといったところで、先生の警告が飛ぶ。
「はい、そこまでです。ミスタ・グランドプレ、元はと言えばあなたの発言が原因です。反省なさい」
反論しようとしたところに、飛んできた赤土が彼の口を塞ぐ。
「フフフ・・・ニュータイプ占いは的中しただろう?よかったなぁ少年」
「よかったね、赤土はミネラルたっぷりだよ。君の、その短気も治るかも。――あと・・・」
オルバの全力ビンタが少年を吹き飛ばし、教室中が音さにでもなったかのごとく頬を打った音が響く。
そして、強い怒りのこもったオルバの怒号が大気を震わす。――口の利き方に気をつけろ!!――と。
「オルバ・・・もういいだろう、その辺にしておけ」
「分かった、兄さん・・・」
あまりの事態に、先生でさえも言葉を失ってしまう。ようやく我に返った先生が、
「あなた方も・・・今の言動は主人たるミス・ヴァリエールの代弁にもなるんですよ?
今後はできるだけこういう言動は慎んでください」
と注意するも。彼らは特に悪びれる様子もなく、貴族側からすると「いけしゃあしゃあと」言い訳をする。
「いえね、元の世界で、我々を散々蔑んでた奴を思い出しましてね・・・ついカッとなってやりました」
「僕らも、できれば慎みたいところですが・・・その野郎にはかなり恨みがあるんですよ。反省はしています」
もはや清々しいほどに飄々とした態度で――しかも微妙に答えになってないような返答を――返され、
彼女はそれ以上彼らを追及する気をなくしてしまう。
「私は『赤土』のシュヴルーズです。あなた方の名前は?」
「私はシャギア・フロスト」「僕はオルバ・フロスト」「「以後お見知りおきを、ミス・シュヴルーズ」」

それからは授業に入ったのだが、「本当に」言語が分からない兄弟は授業に参加していない。
しまいにはノートにチェスの盤の目を書き、ツインズシンクロニティを使ってチェスをしだす始末である。
彼らが直感的に「いかん!」と感じた直後。何故か前に立っていたルイズが、何故か手にしている石が、何故か爆発した。
当然兄弟以外のクラスメートは大ブーイング。ルイズには教室の掃除を言い渡された。

「・・・それで、手伝ってはくれないのね・・・?」
「待ってくれ、今チェスがいいところなんだ。勝負がついたら協力しよう」
「そう言ってる間にも、掃除はほぼ終わりかけのところまで来てるんですけど・・・!」
「そりゃそうだよ、僕達は相手を心で感じ取れるんだから。長引いて当然さ」
事実、睨み合いの様を呈していた。相手の作戦を察知し、それに対する予防線を張る。
それを見越してさらに予防線を・・・の繰り返しである。
いわば、千年眼を持つ者同士でデュエルするようなものだ。
なまじ相手の作戦も予防線も見えているだけに、ゲームが山のように動かないのだ。
しかも今回の性質が悪いところはチェスである点で、これがカードゲームなら、
時の魔術師なりなんなりで予防線を破壊することもできれば、
延々とにらみ合っていても、いずれルール上勝負は付く。手札事故が起きれば予防線も張れない。
――が、チェスではそうはいかない。
まるで第一次世界大戦の西部戦線のように、最悪の場合延々と相手とのにらみ合いが続く。
かつてのヨーロッパではないが、そのまま三十年でも百年でも過ぎてしまいそうなほどである。
「じれったいな、早く動けオルバ」
「兄さんこそ」
しかもお互い勝つ気でいるから最悪だ。結局彼らは最後まで睨み合ったままで、ルイズは自力で掃除という呪縛を解き放った。
とりあえず兄弟を一発ずつぶん殴った後、ルイズは兄弟に問いかける。
「それにしても、なんであんなに怒ってたの?あんたたちが馬鹿にされた訳じゃあないじゃない」
お互いに守りを放棄する協定を交わし、そのままノートと向き合ったままでオルバが答える。
「君は、お世辞でもいいから『主人が馬鹿にされたのだから当然だ』と言って欲しい?それとも本当の理由を聞きたい?」
歯に衣着せぬ、着せようともしない兄弟特有の意見に、主人は思わず苦笑を漏らす。
「――我々は『似て非なるもの』だと、以前君に言ったな?・・・そんなところだ」
そう言われてもニュータイプではない彼女には、事情の全部を知っている訳でない彼女には、
たったそれだけの情報から彼らが激怒した真の理由を悟る事は無理だった。
「そんなところだ、なんてところで止められて、納得すると思ってるの?話の半分も理解できてないわよ」
まあ当然か、むしろ簡単にニュータイプに覚醒されては我々のコンプレックスがさらに煽られると前置きし、理由を語りだすシャギア。
「――以前、我々に面と向かって言いのけた奴がいてな。『カテゴリーFめ!』と。そいつは射殺した。これは・・・確か言ったな?
そう。ゼロのルイズ、という言葉を聞くとそいつを思い出す。まるで自分達が『カテゴリーF』とでも言われた気分になる。
――そういった意味では、君と我々とは似ているのかもしれん。君が我々を呼び出したのも、必然だったのかもしれないな」
頭をさすりながらしみじみと語るシャギア。それを聞き、何故か顔を赤く染めるルイズ。追い詰められて頭を抱えるオルバ。
主人との話中にチェスなんてやるなと言いたいところだが、何故かそれすらもおこがましく感じてしまう。
「・・・にしても、ゼロのルイズを返上するにはまだまだかかりそうね・・・いつになったらゼロじゃなくなるのかしら」
チェスの思考をいったん止め、不思議そうな顔をしながら兄弟が主人を諭す。
「僕達がいるのに、ゼロなの?もう1はあるじゃん。1は成功してるじゃん」
「それに、君は魔法(らしきもの)を使えるではないか。確かに4属性とやらはゼロかもしれないが、訳の分からん魔法が
一応使えるではないか。人っ子2人気絶させられる威力を持った魔法(らしきもの)を。それでは駄目なのか?
それはそれとして受け入れ、鍛えていけばいいではないか。威力を人っ子3人分、4人分と。それでは、駄目なのか?」
分かってるんだか分かってないんだか。だがそれ故に温かみのある、ある意味彼ららしい励ましに主人は感激する。
誰も認めてくれない自分を認めてくれた。――顔に見合わず、優しいところもあるんじゃない。
チェックと宣告され青ざめているオルバが、さらに蛇足、もとい補足を加える。
「使えるだけいいよ。――僕らは、システムが全く反応しなかったばっかりに・・・。
反応するか、しないか、しかないんだよ。システムというのは所詮・・・」
そのまま弟との勝負を制し――敗戦を悔しがるオルバを尻目に――、シャギアは主人の心を読んで問いかける。
「なんだ、嬉しかったのか?それなら何度でも言ってやろうか、それでは駄目なのかと――」
これにはルイズも嘆息せざるを、そして苦笑せざるをえない。
「結局あんたたちは自分の事しか考えてないようね・・・。あと!勝手に乙女の心を読むのは禁止!分かった!?」
その言葉に怒りはなく、むしろ晴れ晴れした明るさがあるだけだった。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:09:07 ID:aTl6mkDq
おわり?
348ゼロスト:2009/02/13(金) 03:10:59 ID:TV/Q5aGv
はい、今は終了です。
次はようやっとギーシュにまでたどり着ける・・・はず。
地の文は少ないのは平にご容赦を。昔からのクセで。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:11:55 ID:aTl6mkDq
前スレ>>519
サイフィスはマサキとは会話してないけど、他のサイバスターの主人公となら会話したよ!
アニメじゃない方ね! 設定的にはマサキのサイバスターに宿ってる精霊さんと同じ人?らしいよ!
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:27:01 ID:R8tTP+vV
スターゲイト・アトランティスからジョン・シェパード中佐を召喚
実写でもいいんだよね?
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:32:18 ID:LRtnlC+m
封心の人乙です。
面白そうな感じですね。


とりあえず、誤字や、文章のミスっぽい箇所がいくつかあるから
今度からは書き終わった後、空いた時間にでも見直して
ちょこちょこ添削してから投下すると良いよ。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:34:16 ID:s3qQApZ9
>>351
つ鏡
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:46:09 ID:Rvy+QagO
封神さん乙でーす!
いやー、オスマンのくだりは凄いっすねー。
まず彼に手が加えられていること自体が新鮮で、面白く感じたのですが、
書類処理の説明は面白い上に凄さの説明になっているし、
どうしてこうなったのかもとても気になりました。
そしてシエスタが空飛ぶカバじゃないことを祈ります。

あと自分も誤字が気になりました。
面白いからスラスラ読めるはずなのに、誤字の度につまづいでしまったのが残念でした。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 05:53:09 ID:Irrr09Xl
個人的に書いていたSSが、それまでスラスラ書けていたのにワルド倒したあたりから急に進まなくなった
テファが絡むとクロス元、ルイズ、原作の流れと捌く内容がいっぱい
この辺で更新期間があいている人の気持ちが分かった
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 06:00:21 ID:Q53yX5Wd
>>353
つ鏡
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 06:08:18 ID:GdhhQtaI
ワルド倒したあたりからつまんなくなる
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 06:59:43 ID:ztdZ9kd0
>>356
新しいワルドが現れればいいんじゃないか?
つぎのワルドはうまくやってくれるでしょう、な感じで
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 07:23:33 ID:eptBptG4
なんと画期的なアイデア!
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 07:27:50 ID:LRtnlC+m
>>352
…っっ!!(ビクビクッ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 07:54:12 ID:9YmTSl26
いっそのこと忠臣ワルドとか最初からレコンキスタにいるワルドやルイズ一筋ストーカーワルドにすればいいんジャマイカ。
361ゼロの最初の人:2009/02/13(金) 07:55:19 ID:a76jXdL4
>>351,>>353
いや、なんかもうホントありがとうございます。
あなたたちのためにがんばります。

誤字や文章のミス……やっぱり、そうですよね〜。
しかも、自分の文章って、なんか文と文のつながりが悪いというかなんというか……
とりあえず書き上げた後、何度も添削していこうと思います。

勉強の空き時間に書いて、添削して、添削して。
う〜ん。……なんかとっても更新が遅くなりそうですが見捨てないでくれるとうれしいです。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 07:56:45 ID:Rqw6xqFL
平行世界のワルド大集合。
銀河皇帝ワルドとか原始人ワルドとかサイバーパンクワルドとかメカワルドとかカニアーマーワルドとか。
そしてワルド力を奪われてアルティメットワルドが誕生するんですねわかります。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 08:02:13 ID:F8MXYD8Z
そして最終的には理性を失いながら任務を果たして計画立案者の下に帰還、報告して以後消息不明となるんですねわかります。
複数のワルドの中には『悪魔(ディアボロス)』と呼ばれるワルドもいるに違いない。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 08:16:20 ID:9g2tarp/
>>361
wikiに追加したから、説明をよく見ながら文章の添削ガンバってねーぃ。
期待してるよ。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:07:21 ID:m8QDnh3E
>>362
下がる男召喚は、今は使用中だからちょっと無理か。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:24:52 ID:9YmTSl26
兄弟の人乙。
何故かこの兄弟が吉田創の絵で再生されたw
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:27:55 ID:Ir/7p37b
>>365
なーに、別に今の奴を呼ぶ必要はあるまい。
特に真面目wにデルフを使わせるならむしろ空砦直前の修復中のときでないと。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:42:55 ID:Smh699nu
ラ・アルメイアの幻砦で突如登場、アンゼロットにカタパルト射出されたが目標を外れて何処とも知れぬ空間へ消えて行方不明
になった時、実はルイズに召還されていたと言う幻を見た。
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 09:47:05 ID:Uir58kjD
ワルドはかませ扱いだけど、一応宿敵ポジションだしなあ……
原作はラブコメベースだからいいけど、
ここの作品はアクション主体が多いから
盛り上がる戦闘→仕切り直して次のイベント
って流れがキツくなるんじゃね?
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:01:36 ID:wvYkXzBf
>>360>>362>>363
この反逆者供め!ZAP! ZAP! ZAP!
ミュータントだったり、コミーなワルドに決まっておろう。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:05:55 ID:7ybG5+pe
ワルド後の燃え尽き症候群解決策

アンドバリの指輪で終わりがないのが終わり状態になってもらう
ジョセフの使い魔をライバル系キャラにしとく
速攻でアルビオン→ガリアと戦争を進める
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:07:33 ID:R8tTP+vV
>>367
柊は魔剣がポッキリで今は箒を使いベル様と一緒に別世界へだっけ?
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:10:17 ID:p/wBm32k
1人のワルドを倒そうと、いずれ第2、第3のワルドが……
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:12:05 ID:27/pVUbF
かませって言われてるけどワルドってゼロ魔のメイジの中でもトップクラスの実力を持っているんだよね
四系統の中で最強の風だしスクエアだし
ルイズママンには負けるかもしれないけどタバサやガリアのカスには勝てる
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:19:02 ID:zDD/a42m
ワルドは話の流れでいろいろ変化させれる便利なキャラだと思うが
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:20:11 ID:Ir/7p37b
>>372
いや、ぽっきり折れた魔剣を修復した際に箒にしただけ。
異世界には行っているがベルは全く関係ない。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:20:24 ID:0Ooqmukg
>>331
遅レスだが、あの人がゼロ魔のメイジ達を見たらコーディーとイメージをダブらせて
第二のブルーコスモスを創設しそうな気がする
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:20:55 ID:GkGhYZjB
あのワルドが最後の一人とは思えない
いつか第二、第三のワルドが現れるに違いない


その時我々は一体どうすればよいのだろう・・・・・・・・・
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:23:08 ID:YudnMS4A
まとめは醜態晒した管理人がそのまま受け継いでるだろ
何も期待スンナ
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:24:33 ID:R8tTP+vV
>>376
ありゃ、記憶違いだったか
戻ってくるの?
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 10:45:53 ID:Ir/7p37b
>>380
死ななければな
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:05:15 ID:h/UxQfRy
>>374
タバサのが強いんじゃね?
中盤まではスクウェアとトライアングルの差があるけど裏の仕事かなりやってるようだし
あとワルドよりメンヌヴィルやコルベールのが強そう
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:17:18 ID:IoR/1Igy
>>382
最近のタバサならいい勝負しそうね
コルベールが負けるとも思えないけど、先生はトライアングルなんだよね
生徒の命が懸かったりしたら勝てそうな気もするけど
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:34:55 ID:DPU5gz7M
>>382
某赤い人も言っている。「性能の差が戦力の違いでない」と
そういった御本人は結局負け越したけどな。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:41:02 ID:XHtI84Oi
戦い方が普通と違うからな、そこら辺の連中は
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:43:32 ID:d4RJQa6N
そうそう、一隻で一国を滅ぼしたような戦艦もあることだし、戦の勝ち負けはやってみないと分からん。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:52:03 ID:Vx2ATO/U
>384
あの赤い人がが白い人に"勝った"って言えそうなのって、CCAの頭でのフィフ
スルナの時の”引き分けっぽいギリギリ判定勝ち”と、The Originのテキサス戦
(ブラウブロとの戦闘で消耗してた時の強襲)ぐらいじゃなかったけ?

(戦略的な勝利なら大気圏突入時のジオン勢力圏へのコース誘導とかもあるけど)
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 11:59:40 ID:cv0MWsdF
連邦の物量に負けたと考えれば間違っていないとも言える
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:03:42 ID:spdCB1L6
wikiにあるファウスト先生のタバサが可愛すぎてうっ…ふぅ
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:04:45 ID:spdCB1L6
ファウスト先生のSSに出てくるタバサが可愛すぎるって書こうとしたら何か急にテンション落ち着いてきた
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:11:48 ID:1j5oYPQB
>>390
書こうと思ったときには既に書き終わっているw
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:15:15 ID:s3qQApZ9
書こうと思ったときには既にカき終わっている?
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:18:11 ID:qlNFUHDI
>>389-390
賢者タイム自重しろ!!
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:37:00 ID:PzrGbWLQ
>>361
Wikiで読んだけどこれはなかなか……
次も楽しみにしてます。

最初はジョカ召喚かとタイトル見て思ったけど、
あれ喚んだらまずハルケギニアの文明が消し飛んでリライトされるからなぁ……w
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 12:59:43 ID:6dHNFnDu
>>361
おお!太公望とはいいですね。期待してます。
実は自分も、藤崎竜版のキャラの中で楊?を召喚しようと妄想してました…
ギーシュ戦→妲己に変化
ラ・ロシェールでのワルドとの決闘→五光石
アルビオンでのワルド戦→太公望に変化で風対決

という風に考えてました。
太公望好きなんで、応援してます。頑張ってください。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 13:07:42 ID:lESNtvAR
念のためトリ付けた方がいいかも
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 15:24:31 ID:4CSHwmlP
ルイズがミスター黒幕、無能王ジョゼフを召喚

ゲラゲラ笑いながらルイズの出番を食いまくりそう
398ゼロの最初の人 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/13(金) 15:41:17 ID:a76jXdL4
>>394
>>395
ホント応援ありがとうございます。
たぶん、私の指はあなた方のためのものです。
せっせと働かせますのでよろしくお願いします。

>>396
忠告ありがとうです。
これで大丈夫かしら?
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 16:04:51 ID:w0UxNudX
>>397
やめて!そんなことになったら召喚して数日後
タバサ「あなたの使い魔を殺すことを許して欲しい、代わりにわたしがあなたを守る」
ルイズ「事情はわかんないけど、許可!」今日も平和です。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 16:33:12 ID:C3Ih0wwS
ルイズとジョゼフ…釘宮と小杉十郎太…
ナギとタマか?

「ハヤテのごとく」のハムを召喚して
色々なイベントが進行する中で、ただ何か食べてるだけの使い魔、とか
モンモランシーとは仲が悪い
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 17:53:03 ID:w0UxNudX
三つ目がとおるの写楽は能力的にミョズニトニルン
だが額にスペースが無い!?なんてアホなこと考えちゃった。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 17:56:31 ID:Uir58kjD
目にルーン刻まれるとか想像しちまったじゃねーか!
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 17:56:50 ID:9g2tarp/
>>401
まぶたにルーン焼いたらいいんじゃないか?
光りながら開眼とか、カッコよくね?
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 17:59:30 ID:/pg0pq6n
聖人の眼球みてーに瞳の部分に刻まれるとか
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:01:52 ID:0Ooqmukg
>>402
目にルーンが刻まれたことで目を封じられたのと同じ状態になり、いつものふにゃふにゃ状態とかありじゃね?
この場合は主の方が何をするかいちいち命令しないとミョズの能力も役に立たんが
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:02:03 ID:87vdUS5c
いくら写楽でも痛さに耐えられないだろ!
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:04:10 ID:igpj0GJk
>>384
能力なんぞ使い方しだいだってホルマジオのめんどくせえええなあああが言ってた!
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:08:25 ID:igpj0GJk
三つ目が通るがわかるおっさん達がこんなにいて感心したw
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:24:39 ID:y2XMhHc5
三つ目モードの写楽だったら、始祖の祈祷書あたりのカラクリはあっさり見抜きそうな気がする。
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:27:27 ID:hJWjt/8g
「三つ目がとおる」は再放送の雄だからなw
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:29:00 ID:0Ooqmukg
ところでミョズといえばジョゼフだが、もしジョゼフがシャルル暗殺しなかったら
逆にシャルルがジョゼフを暗殺してたんだろうか?
シャルルが王位に就いたらガリアが別の意味で酷い事になっててシャルロットがぐれてそうだが
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:30:07 ID:yjezrTfI
シャルロットがマントにやたら難しい文を書いたり髪型をリーゼントにするのか
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:36:04 ID:y2XMhHc5
>>411
国についてはよく分からんが、シャルロットはルイズとイザベラとベアトリスを足したような性格になるんじゃなかろうかと予想。
幼少の頃は「よく笑っていた」らしいが、多感な時期に歪んだ父の様を見る内に……とか。
なまじ魔法については天才で父親は王様だから、もう手が付けられんな。

そして唯一の心が許せる友達は、幼い頃に母から貰った人形のタバサだけだった……いかん、ちょっと書きたくなってきたww
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:40:46 ID:GkGhYZjB
>>410
再放送の雄なら一休さんだろう
日本はおろか全世界の何処かで毎日必ずやっているからな、アレ

しかし「一休さん」よりは「あっかんべぇ一休」(あるいはノンフィクション)の
一休禅師のほうがよほどハジけてるというのはどんなだろう
禅師召喚を考えてみたが挫折
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:41:14 ID:hR0TFhmr
>>413
最悪だw それだとガリアの国力はさらに衰退しそうだな。
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:43:37 ID:0Ooqmukg
>>413
下手するとトリステインよりも不正が横行する最悪の状態になってそうだなと思うんだ
国王自らが裏金使って支持を得ようとしてたんだから
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:51:51 ID:y2XMhHc5
またイザベラやアンリエッタ、ウェールズが魔法学院にいない(ウェールズの正確な年齢は分からんが)ことから、シャルロットが魔法学院に留学することもないと思われる。

つまり更正の機会がかなり減少する。
いや、その場合はイザベラが留学してくるのか?
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:57:56 ID:w0UxNudX
シャルルが賄賂贈った事はあったけど
それ以外になんかあった?
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:59:47 ID:m6rpvJZa
原作のそのへんはまだ読んでないんだが
シャルルは兄貴のことで頭がいっぱいで娘はどうでもよかったのか?
ひょっとして似たもの兄弟?
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:02:16 ID:V2O4BgGw
>>416
理想は高くても妥協を知らない指導者ってのは
理想を現実に近づけようとするよりも
現実の方を理想に近づけようとして
共産主義やそれに近い政策を採ったりする事があるからな・・・
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:05:47 ID:y2XMhHc5
>>419
父親としての描写が全くないので、よく分からん。
少なくとも回想でも過去のプレイバックでもシャルルの口から「シャルロット」って単語は出て来てなかったような気がする。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:07:05 ID:m6rpvJZa
トンクス

この世界の王族はろくでもない部分ばかり遺伝するのか?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:08:11 ID:Uir58kjD
実力的にイザベラ様じゃあ復讐とか無理だよなあ
というか騎士団入れられた時点で死亡確定?
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:11:36 ID:RRJVbOCz
メイジ殺しや暗殺者のような技術を身につけてシャルルを倒すかもしれんぞ
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:12:39 ID:0Ooqmukg
まあ流石に評判を気にして騎士団に入れたりはせんでしょ
表面上は自分の娘と同じように扱いつつ飼い殺しか、ある程度の年齢になったら外国に追い出すか
もしくは兄同様に殺すか
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:13:13 ID:VtrCgxoc
>>419, 421

少なくとも、5年前にシャルルが暗殺される10歳ごろまでは「不幸」ではなかった訳だから、
(内面はともかく) 表向きはまともな父親だったんじゃないだろうか。

当時のシャルロットにとって、父親はどうでもよくて母親べったりだった可能性も否定できないけど。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:13:15 ID:y2XMhHc5
イザベラは普通にシャルロットのストレス発散のために苛められると予想。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:15:47 ID:m6rpvJZa
無表情で年上を嬲るのが趣味な歪んだドSのタバサか

素晴らしい
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:16:24 ID:MV2SoH8c
つまりトリステイン魔法学院に感情を殺した青髪デコ釣り目の留学生がいる訳か
そしてサイトの愛人1号に
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:19:32 ID:w0UxNudX
ジョゼフが「記録」で見た出来事が過去にあって和解してたら
人脈のあるシャルルと策略に定評のある(?)ジョゼフによって国は平和に・・・と思ったけど
国を豊かにするために国土を広げるな。つまり他国への侵略・・・
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:21:36 ID:0Ooqmukg
>>429
ジョゼフから虚無を受け継いだ(実際、本編がどうなるか分からんけど)イザベラがガンダの才人召喚して
ルイズがミョズのシェフィールド召喚ですね
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:22:01 ID:eYIDcLKZ
えーと。
ジョゼフが北斗の拳からジャギさまを召喚。
「兄より優れた弟などいねぇ」
とシャルルを始末に行くも、シャルルが召喚したケンシロウに倒され。弟を暗殺しようとしたとしてジョゼフは投獄。
そしてジョゼフは獄中死って流れかな。このスレ的に。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:25:30 ID:m6rpvJZa
エルフは手を結ぶ相手がいないから傍観かなその場合
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:29:20 ID:WTYMRGC2
流れをぶった切るが、零狼伝説やZERO A EVILみたいな持ち主に力を与えるタイプの話が好きな俺は
この手の長編物がもっと増えないかなといつも思ってる
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:30:53 ID:m6rpvJZa
個人的には成長するルイズもだんだんテンプレ化しつつある気がするので
徹底的に力だけを求めて暗黒化していくルイズも見てみたい気がする
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:32:20 ID:IngoPq5g
零狼伝説のルイズとイザベラはいい勝負しそうな気がするな
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:35:21 ID:eYIDcLKZ
>>435
虚無の闇がそれなんじゃない?
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:42:14 ID:0Ooqmukg
あっさり暗黒化せずに葛藤に苦しむ方が自分は好きだな
JOJOスレの吸血鬼ルイズみたいに
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:47:04 ID:w0UxNudX
今思えば初期のルイズって、
ライトサイドにもダークサイドにもどっぷり染まるくらい
いいポジションにいたんだな。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:50:33 ID:WTYMRGC2
初期のルイズは召喚された物次第でどっちにも傾くポジションだよなあ
本人の気質はいい方向の物だけど周りの環境が環境だからすごい傾けやすいよな
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:50:48 ID:1pzMV269
超・亀レスだが
>>317
「少し愛して長く愛して」は昔サントリーREDのCMで大原麗子が言ってました。
1983年のCM。

元はイギリスの言葉らしいけど、そっちは知らない。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:52:12 ID:KHVSnnp+
〜あとがき〜
調子が良かったのでかなり早く投稿できてご満悦な独楽犬です。
今回の話はもしかしたら今までで一番長いかもしれませんね。
何せ一話の倍のボリュームです、書き過ぎだろ正直な話。

今回は前回とギャップが激し過ぎるだろ! ってツッコミが今から聞こえそうな話ですね。
この話は原作で気軽に暴力を振るうルイズを気に掛けて自然と浮かんだ話です。
そのやり取りが好きという方もいるとは思うのですが、私は正直苦手です。
さてあの後、ルイズがどうなるのか…それは次回のお楽しみに。

ルイズの魔法の解釈ですが、オリジナルですので予めご了承下さい。

また、前回の感想ですが、色々なご意見を頂けて大変タメになりました。
やっぱり書いているとどうしても視野が狭まってしまうので、こうした意見は本当にありがとうものです。
十人十色の考えがあり、早々考えが一つに纏まるわけないよな〜と身をもって実感したので、本編も少し形が変わっています。
修正後のほうがしっくりくる感じです。これも皆さんの感想のお陰です、ありがとうございました。<(_ _)>

今まで投稿日を宣言してましたが、これからは出た日にちはあくまで目安ということでお願いします。
実は前回の話、早急に書いていて自分でも色々と気にかけつつ投稿しちゃったんですよね。お陰で中々のツッコミを頂きました。
というわけで、やはり自分が納得できたら投稿するようにします。じゃないと読者にも失礼ですしね。

次回投稿は未定です。それでは次回にお会いしましょう、では。

〜追記〜
言葉不足だったようなので少し補足。

ルイズには力を振るうとはどういうことかを知ってもらいたい、成長してもらいたいと考えています。
原作ではその点が少し欠けているように感じましたので。
ですからヘイト展開にするつもりは最初から毛頭ありませんのであしからず。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:54:30 ID:R8tTP+vV
狙撃手キャラは弾やメンテの問題で詰むと思われていたが弾がなくても大丈夫な人がいた
その名もボブ・リー・スワガー
最新刊ではライフルを刀に持ち替えて数日の特訓により刀の達人となった彼ならガンダールブの力を思う存分ふるうことができる

どうしてあんなことになっちまったんだよ・・・orz
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:08:55 ID:pT37QLzP
>>443
ちょw ボブ・ザ・ネイラー何やってんのw
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:27:58 ID:DQ+TacG0
>443
だって著者がこの年齢で厨二病になっちゃうんだもん
まぁラブクラフトも友人に「俺の考えた邪神どう?」って手紙でクトゥルフ神話の
設定書いて送っちゃうし。あれは黒歴史ノートをなんの躊躇いもなく晒しているのと同じだろ。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:35:08 ID:R8tTP+vV
>>445
酷いわ、あんまりだわ
あー、なかったことにしてえなこれ
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:38:12 ID:46WOETKe
>>401
写楽って三つ目が開いてるときは肉体的にも常人より強くなるんだぜ。
剣もって決闘してたりするし、デルフとの相性も良いかもね。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:39:45 ID:yjezrTfI
赤いコンドルはどうするんだ
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:41:23 ID:4qoAHgr+
>>374
>かませって言われてるけどワルドってゼロ魔のメイジの中でもトップクラスの実力を持っているんだよね

どこかの戦争男の姿が目に浮かんでくる…
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:42:52 ID:w0UxNudX
>>448
何を言っているんだ、もちろん主武器にきまってるじゃないか。
デルフ?「ほう、意思を持つ剣とは興味深いじゃないか」だろ。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:46:41 ID:d4RJQa6N
まあ大抵のバトルもののクロスキャラはワルドごとき物の数じゃないやつばかりだしな。
こうしてみると才人の苦労がしのばれる、すごいよ彼は。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:48:13 ID:yjezrTfI
ワルドが活躍しているか活躍しそうなSSって極めて少ないしな
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:52:35 ID:godGKU4X
>>442
なにこれ
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:57:55 ID:xAFXRvPL
>>452
上条さんと戦ってたワルドは活躍してたほうじゃね?
マチルダさんとフラグも立ててたし
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 20:58:04 ID:9YmTSl26
>>453

誤爆じゃね?
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:01:00 ID:7xSjuJ9i
のだめガンダールヴ

って無いか…無いよな
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:02:44 ID:VvH1K78n
銃弾に関してはホルホース(弾までスタンド)、スネーク(無限バンダナ)、アーカード(漫画、アニメ両方見ても弾が無限に近い)
あと、次元あたりが問題ないな
次元、映画版で木に穴あけて自分で鉄流し込んで銃弾作ってたし
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:03:04 ID:bSGCHV0l
小ネタだがマンモスマンのだと老害ネプチューンマン化してた
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:04:23 ID:IngoPq5g
>>456
もはや音楽ですらないな
460458:2009/02/13(金) 21:04:59 ID:bSGCHV0l
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:05:22 ID:4KT1oLLr
>>452
魔砲使いのワルドは珍しく綺麗なワルドだからこの先活躍する機会があるかも
大丈夫だとは思いつつ、ワルドってだけでなんか裏でセコイ事考えてそうと思ってしまうけど
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:09:00 ID:rONdkP7p
ご立派ほど活躍してるワルドはいないんじゃね
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:12:42 ID:4KT1oLLr
>>434
ARMSのジャバウォックを自分の中に召喚しちゃうルイズ、とか

最初のギーシュ戦で始めての覚醒による暴走状態でギャラリーもまとめて再起不能に
フーケ戦で第2段階に進化
ワルド戦で初めての完全体
ゾンビウェールズ&アンアンコンビとの戦で反物質生成

・・・無理か
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:21:07 ID:w0UxNudX
ママンの事で聖地に希望をもってレンコンに入ってるから
口寄せでママンを呼び出すか、死後の魂について語れる聖職者とかが現れたら
ワルドさんルイズサイドに来る可能性あるよね。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:24:28 ID:GkGhYZjB
しかし実際どんなママンだったんだろう、アレのかーちゃんって?
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:29:59 ID:qJ4+4qvT
じゃあ、ロードス島伝説からニース様召喚でワルドママンを蘇生してもらおう。
英雄ポイントとやらでなんとかなると聞いた気がする。
本当かどうか知らんが。

とりあえず、ウェールズ蘇生なら確実にできるんだろうけど。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:31:29 ID:vWY9EV45
>>453
某サイトで連載してるギーシュ主役のSSの後書き。
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:31:49 ID:7ybG5+pe
そこでドラゴンボール召喚ですよ
とりあえず復活させてみたらフリーザやセルも復活してしまいry
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:32:06 ID:9YmTSl26
>>464

つイタコのアンナ

なんかワルドがファウストポジションになりそうな希ガス。
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:32:12 ID:xAFXRvPL
能力で蘇生できるキャラだと
マンキンのジャンヌとか
確実にワルドはマルコ化するね
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:32:53 ID:/pg0pq6n
ワルドそっくりな母親(ヒゲも生えている)
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:33:36 ID:w0UxNudX
>>465
そりゃあんだけマザコンになるくらいだ、優しいママンだったんだろうな。
ワルド、ワルド呼ばれてるけど、本名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだから
ママンにはジャンって呼ばれてたことになるのか?
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:37:17 ID:Rvy+QagO
ワルドママンをワルドラマンと読んでしまった
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:37:24 ID:9YmTSl26
>>470

なんかルイズとタバサとキュルケとギーシュとワルドが使い魔と一緒に「X!!」やってる光景を幻視したww
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:38:30 ID:yjezrTfI
>473
つまりワルドママンは緑のおばさんなんだな
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:39:12 ID:qJ4+4qvT
solaから四方茉莉を召喚。
ハルケギニアには過去にも夜禍人が召喚されたことがあって、
そんな夜禍人が通りがかりに、おせっかいにもワルドママンを夜禍人にしたことがあってとか妄想した。
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:39:39 ID:w7PndW/E
ウィザードリィやドラゴンクエストなら死者復活は楽勝か。
ウィザードリィの場合失敗の可能性があるけど、レベルダウン覚悟でマハマンなら確実だし。

タバサ母をわざと殺してから復活させたら正気に戻らね?タバサ父は墓から掘り起こせば復活させられそうだし。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:41:49 ID:1pzMV269
俺は強い!そしてかっこいい!
ママー!
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:44:23 ID:1pzMV269
>>477
ウィザードリーでは復活させるには条件があるんじゃなかったっけ?生前鍛えてたとかそんな感じで。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:44:41 ID:4U4LJSYK
なんだこの話題…
ワルドがラブやん召喚とか想像してしまった…
ワルドがダメ人間に…
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:45:23 ID:DQ+TacG0
小ネタでプロアクションリプレイ召喚したルイズがワルドの母親を生き返らせて
ワルドが見事なマザコンぶりを発揮していたな。あまりにも酷いマザコンだった
のでルイズの方から婚約を解消していたが。あとコッパゲ先生の毛根を復活させてたな。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:45:23 ID:w0UxNudX
地獄先生ぬ〜べ〜からぬ〜べ〜召喚。
ワルドの守護霊ママンと対話、ワルド改心。
タバサ幽霊の話ばかりするぬ〜べ〜避けまくり、でも鬼の手でタバサママ正気に。
人外に対する理解もあるからビダーシャルと和解、もしくは鬼の手が原因で更に険悪ムードのどっちか。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:56:39 ID:nHpyYpZe
>>445
覚えとくといい。
作家なんてのは多かれ少なかれ、そんなものだ。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 21:59:55 ID:IB5UVd6T
>>477
ドラクエもなんだか制限あった気がする
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:01:55 ID:md+knl+H
>>477
タバサの外見なら、黒男爵と赤伯爵にお願いすれば復活は簡単だろ
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:16:19 ID:kP/wMU60
死んだやつはなあ、生き返らねえんだよ
喪黒さんを召喚して心の隙間を埋めるのが一番だね
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:21:38 ID:nYMm8R81
私から使い魔の死さえ奪う気なの!
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:23:42 ID:1pzMV269
「この宇宙の真理で、一つだけ気に入らないことがある。
死んだ者は生き返らないということだ」
とキャプテン・ハーロックも言っている。

死者の復活は、愛する者を喪った者にとって等しく希求されるものなのだろう。
無為とわかっていても。
俺は幸い、いまだ経験はないが。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:32:14 ID:/84Gmol2
>>487
わかった!あなたツンデレなんですね!!
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:32:15 ID:Rvy+QagO
>>487
なんだっけそれ
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:33:14 ID:xCmjF6m9
>>490
童貞男のセリフだったと思う
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:33:33 ID:8fiS5M0g
そこで成原成行博士ですよ。
彼を召還してワルドママンそっくりのアンドロイドを。
材料や設備は直感で作る彼には必要なく、
アンドロイドの燃料はごはんだからなぁんの心配もないではないか。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:46:41 ID:1j5oYPQB
>>492
思い出の母との僅かな差異に神経を尖らせて、心を病んでいくんですね。分かります。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:47:55 ID:Rvy+QagO
>>491
ありがとう。
よく分かんないけど、分かんないままにした方が良さそうだ。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:49:13 ID:w0UxNudX
>>492
流石にママンの形をした何か、じゃワルドは納得しないでしょ。
それで満足するようなワルドなら部屋に大小さまざまなママン人形が並ぶことになる。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:50:28 ID:VsP0SzGV
実際、制限一切なしで死者蘇生できるお話は珍しいからなぁ。
記録媒体に保存しておけば、何人でも複製可能という話もあるが、それだってすでに死んでいる人までは蘇生できんし。

ドラえもんにだって無理のようだし、グランゾンの力を使っても造作なくとはいかないし、次元連結システムを応用しても無理っぽいし。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:50:58 ID:xCmjF6m9
ママン人形をフェイスレス指令に作って貰おう!
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:53:02 ID:w0UxNudX
>>496
「もしもボックス」は無しの方向ですね、
遺体にタイム風呂敷かけときゃ蘇生しそうだよね。映画で化石のタマゴから恐竜が生まれるくらいなんだから。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:53:29 ID:AInm0Oxv
>>422
現実でも概ねそうだが
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:54:43 ID:/NF22h4Q
>>487
ガン×ソードのヴァンの台詞

違ってたらスマソ
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:55:33 ID:1pzMV269
>>497
笑わないママン人形を笑わせようとして酷いことに……

それともギィみたいにロケットを奪われると泣き出したりするとか。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:55:34 ID:4KT1oLLr
遊戯王からデュエリストを召喚して死者蘇生!
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:56:22 ID:VsP0SzGV
>>498
もしもボックスはママンが生きているというifの世界を作り上げる装置で、復活させるわけじゃない。

使い方次第で死者蘇生が可能っぽいアイテムは多いけど、死者蘇生はできないことになっている。
そういう設定なんだから仕方がない。
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:56:24 ID:Ik1mFLKH
>>496
一切制限無しってわけじゃないが、キン肉マンはわりと簡単な方法で生き返れるな
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:56:40 ID:URVRoyuM
フェイスフラッシュの出番じゃないか!!
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:56:45 ID:1pzMV269
>>498
原作でドラえもんが「死んだものを生き返らせることは出来ない」って言ってるからなあ。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:57:00 ID:O6jW4Gvh
精霊異境REBISSより゙死者の王゙高須和馬召喚だったら
ワルドの目の前でママン復活>焼き殺す>強制復活>焼き殺(ry
ママン「私の事はいいから…」
ワルド「何でもするからやめてくれぇぇーー!」
これで仲間入り
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:57:17 ID:8fiS5M0g
中身は違うから納得はできないが、
同じ容姿で悪意が全くないママンを憎むこともできず。
さらにママンアンドロイドがしでかす数々のへっぽこの後始末に忙しく、
悪さする暇がない良い人のワルドができそうだ。

そのママンが何故かルイズのいる学校にどこからともなく転校してきて、
周囲を巻き込みへっぽこが加速してわたわたコメディ路線へGO!
やがて閃光のワルド、光画部顧問に就任。
この場合、アン王女は生徒会長の方向で。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:59:17 ID:OB9YRvnD
ドラゴンボールの出番ですね、分かります
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 22:59:48 ID:Rvy+QagO
>>500
ありがとう、スッキリした
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:01:54 ID:RQGK54i9
>>504
リングで死んだ超人は超人墓場で働けば生き返れるという。
まずはワルドママンに超人になる試練を受けてもらうところから始めようか。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:02:01 ID:w0UxNudX
>>509
神龍にお願いする瞬間、突然現れたブタが「ギャルのパンティおくれー!」
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:04:42 ID:Rvy+QagO
>>508
ワルド以外の大人には見えないオッサンが、ママン人形の背中から手を突っ込んで腹話術してたりしますか?
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:04:54 ID:2VIya88Y
ソードワールドのリザレクションならいけるんじゃないか?
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:05:34 ID:trITf2cY
ブタ?マルコメの事ですね解ります
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:05:39 ID:VsP0SzGV
>>509
一年に一度しか使えないというのと、死んでから一定期間の間までしか生き返せないという条件は、
最後まで変わらなかったと思うが。
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:08:16 ID:s3qQApZ9
あんたなら さいぼうのかけらからでも さいせいできるだろ
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:09:49 ID:RRJVbOCz
>>516
ナメック星のは違うし、地球のもデンデになってから制限が色々変わってたような
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:10:26 ID:4WPw4bbY
逆にワルドをロリ属性にした上で
誑かして二重スパイとして利用し、レキンの壊滅を企む黒ルイズというのはどうか
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:15:33 ID:mVhz1GoV
実はワルドのグリフォンは韻グリフォンで幼女に変身するんだよ!

ΩΩ Ω <な、なんだっt(略
521異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/13(金) 23:16:29 ID:5KIxRilL
23:20頃に投下したいと思います
作品:テイルズオブジアビス
召喚者:アッシュ(作中ではルーク・フォン・ファブレ)

今回は決闘編の前半
思ったより長くなったため分割しました
決闘の二話限定でオリキャラがいます
気になる方は注意してお読みください

なお、オリキャラは決闘以外で登場することはありません
今後も新規に登場させる計画はないです
522鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:17:05 ID:FV14t0Ue
果たして4月の私はどうなっているのだろう?
まぁ、それは置いておき、続きが出来ましたよ。
前回、思ったよりワルドの狂気度の受けがよかったので頑張りましたよ。
ギーシュのエロ気味のシーンでも大丈夫だったし、この様子ならいろいろ出来そうだなぁ。
っと、投下予定は23:30で。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:17:26 ID:Wip80xjB
死者がらみっつったらこの人だろ
つ ノヴァ博士
524鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:17:44 ID:FV14t0Ue
おっと、先にどうぞ
525異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/13(金) 23:18:48 ID:5KIxRilL
重なったな
鋼の人、お先にどうぞ

投下時刻を0:30に変更します
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:19:29 ID:fEP3u9F8
>>515
マルコメヌの願いならパンティどころじゃ済まされないだろw
もっと過激な願いが来るw
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:19:38 ID:yMcz20nI
じゃあ、かわりに俺が・・・
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:20:10 ID:DzNiElw4
いやいや俺が
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:20:16 ID:RQGK54i9
譲り合いの精神は時に気高く、時に迷惑である。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:20:36 ID:fEP3u9F8
譲り合いの精神発揮しまくっててワロタ
531鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:20:44 ID:FV14t0Ue
じゃあ先に行かせて貰います。改めて23:30
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:22:34 ID:HcLPEEcM
>>523
プリンは不滅
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:25:59 ID:1j5oYPQB
 こういうときには、
 ・投下予告は基本的に10分前。
 ・予告が重複した場合、原則として先着順
みたいなルールがあると、スムーズだと思う。
 まぁ、ルールを増やすと運用が大変になって投下しにくくなるかもしれんから、
その場の話し合いで十分な気もするが。
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:27:29 ID:kTDOUj23
ギュス様支援
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:29:19 ID:7ybG5+pe
その場の話し合いで十分だと思うぜ
536鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:30:04 ID:FV14t0Ue
 ロベルトの打った『アローレイン』で騎兵隊から逃れた二人は、今度は村の南側、シエスタ一家の家へ向かって走っていた。
住民が避難している西の森に進めなくなったわけだが、南側の丘にある家に行った方が、多少なりとも安全だろうという目算だった。
 村を抜け、勾配のある坂道を二人は懸命に走っていた。二人は背後から騎兵が追いかけてくるのではないかと思っていたからだ。
 家までの道を中腹まで来た所で、シエスタの後にいたロベルト老は大きく咳き込んで俯いた。
「大爺ちゃん?!」
 気の急いていたシエスタは反転して老人に駆け寄り、背中を撫でて様子を見た。
 ロベルトの咳は徐々に収まっていたが辛そうに息をして隙間風のような音をさせていた。
「しっかりして大爺ちゃん。お水飲んでゆっくり息して…」
 避難の時に持たされてそれっきりだった水筒を腰元から引っ張り出し、栓を外してロベルトに手渡す。
 震える手でロベルトはそれを大きく喉を鳴らして一口飲み、二度息を吸ってから、水をさらに二口飲んだ。
「はっ…はっ…はぁっ……やはり、年には、勝てんな。若い頃なら走りながらでも矢を打っていられたのだが」
「まだそんなこと言って!」
「ははは…。しかしここまでくれば一応、安心だろう。ヴィクトリア」
 中身が半分ほどになった水筒を返して、老人は汗を拭った。必死で走っていたせいか腰の矢筒に入っていた矢が毀れ、来た道に続いている。
「…追っ手もいないようだ。あとはエドが戻ってくるまで、お前さんの家で静かに待っていようや」
「うん、そうね…」
 そうして二人が歩調を先ほどより落として、坂道を登ろうとした時、シエスタが足を止めて眼下の村を見た。
「待って。南の入り口から村に人が沢山、入っていくよ…」
 ロベルトを待たせ、近くに生えていた杉に蹴り昇って枝に立つと、村の南から整然と並んだ兵隊が、村の中央に向かってどんどんと進んでくるのが見えた。
掲げている旗には白と緑のチェックに白百合の紋章がはためいていた。
 
 
 
 『タルブ戦役・五―両軍衝突/降り立つ明暗―』
 
 
 
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:30:32 ID:xCmjF6m9
支援
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:32:31 ID:VojOtNbZ
支援


死者甦生とは違うけどホーンテッドジャンクションの会長なら死と再生のルシフェレスの力とバッチの補助でワルドママンの即時転生も可能……

ワルド「ある日突然血の繋がらないママンが出来たならッッ
育てて結婚するのが運命だろうが――!!」

.....アレ?
539鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:32:36 ID:FV14t0Ue
 アンリエッタはまずタルブに入ると配下2400の兵から騎兵100を集め、村を抜けて北で奮闘する銀狼旅団を救援させた。
そして自らは残る2300とともに一度タルブで陣を整えた。精鋭メイジ兵500を先頭に置く中央突破の陣だ。
「敵軍は烏合の衆。誇り高きトリステインの貴族なら打ち払って見せなさい」
「承知仕りました。行くぞ!先行する部隊と合流して敵軍を切り崩すのだ」
 檄に震える兵士達が突破陣を組んで最前線に突撃していく。
 
 
 一方、アルビオン軍は地上、艦隊ともに徐々に停滞状態に陥り始めていた。
 地上部隊は銀狼旅団と石板の砦によって進撃が停止してから、隊長のワルドが手勢を率いて戦線から居なくなり、傭兵を主体としていたために統率を下げた事で
効果的な戦術を殆ど取ることができず、戦線に沿った散発的な攻撃しか出来ない状態となってしまった。それでも壊走しないのは圧倒的戦力差の賜物であった。
 他方上空で対地支援を負っていたはずのアルビオン分艦隊は、初めこそ『火竜弾』で支援をしたものの、やはり銀狼旅団が戦線に参上した辺りから
対地攻撃の手が滞っていた。
 東の丘に陣取った銀狼旅団の一隊が仕掛ける対艦砲撃を受けていた為だが、もう一つは艦隊指揮を任されたボーウッドの心理にあった。
 
 丘と丘に挟まれた隘路の上空一杯に浮かぶアルビオン分艦隊。しかし左翼を形成する『ルプラコーン』級フリゲート6隻はそれぞれに大小規模の火災を起こしていた。
東の丘よりの砲撃を受けてである。
 本来ならば回避運動から反撃に転じるのが定石なのだが、対地支援攻撃に向けて低い高度を保っていた為に適切な機動を行う事が出来ず、また
『ルプラコーン』級は側面に艦砲を搭載していなかった為に反撃も出来なかった。幸いにも旗艦『レキシントン』まで砲撃は届いてはいない上、砲撃自体が
小規模のものの為、火災を上げていても撃沈には到っていない。
 勿論、『レキシントン』艦橋で総指揮を取るボーウッドにも報告が行っていたが、彼は「陣形を崩さない程度に回避を行うように」と通達したのみで、そのまま
眼下の趨勢を見守る姿勢を崩さなかった。
 
 痺れを切らした『本来の』総司令ジョンストンは艦橋に飛び込んでくると興奮気味にボーウッドに捲くし立てた。
「艦長、なぜ左翼の被害を無視するのかね。このままでは撃沈されてしまうではないか!」
「サー。本来の任務である対地支援を完遂する為には陣形を維持する必要があります」
「ではなぜ先ほどから砲撃を行わないのだね!さっさと地上砲撃でかたを付けてしまえ!」
 激するジョンストンにボーウッドはあくまで冷静に…いささか嘲りの色を見せつつ答えた。
「サー。最初の対地支援の後、我が軍の地上部隊は進行の遅延を余儀なくされました。ですから自分の判断としては敵軍が後退を始めた頃合に対地攻撃を行い、
追撃する地上部隊の支援とするつもりであります」
 ボーウッドが余りに得々と語るため、激していたはずのジョンストンは反って拳の下ろしどころに迷い、言葉の先をすぼめた。
「ぬ…そ、そうか。であればよい。しかしだ。できるだけ左翼の艦艇の損傷を少なくするように努力しろ。いいな」
 逃げ口上のようにそう言うと、ジョンストンは自室へと戻っていった。彼は戦闘の間、そうやって部屋に篭っているつもりなのである…。
(ふん…お前は黙って部屋でエールでも飲んでいればいいのだ)
 閉じられた扉を軽蔑の眼差しで見ていると、傍に立つ副官が声をかけた。
「…しかし、良いのですか」
「構わん。…少なくとも司令殿に説明した通りなのは間違いない。艦隊全体の高度を上げれば地面からの砲撃など気にも止まらないが、対地支援を
せねばならない手前、細かに高度を変えるのは風石の無駄が多いじゃないか」
 しれっと言い放つボーウッド。だが副官はボーウッドの心理を少しだけ理解していた。
(艦長は始めから今回の作戦について不承知な部分があった。おまけに艦ではなく陸を狙えと言われ、このような振る舞いに出たのだろう。
艦長は精神的なサボタージュをしているのだ…)
 副官はそれを否とは言えなかった。彼もまたこのような作戦は空の男の矜持を傷つけるものと考えていた。仮にフリゲートが撃沈されても、
それは仕方が無いという自己正当化も出来る。何故なら、フリゲート艦を動かしていたのは生粋の空軍ではなく、レコン・キスタで闘っていた者達だったからだ…。
 
 
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:34:32 ID:S/lLeX2p
支援
541鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:35:16 ID:FV14t0Ue
 戦場にトリステイン王軍が到着してから四半刻が過ぎようとしていた。
 戦況は戦線に王軍が加わった事で潰される間際だったトリステイン側が攻勢を続け、一方アルビオン側は指揮者不在のまま地上部隊が戦い、
分艦隊も飛来を始めたトリステイン魔法衛士大隊との対空戦を開始し、一層地上から注意を離しつつあった。
 時に時刻1400。グラモン元帥率いるメイジ騎兵隊500が東の丘の迂回に成功してタルブ―ラ・ロシェール間街道上、アルビオン地上部隊の背後を取った。
「全兵、進めー!敵兵を蹴散らすのだ!」
 号令とともに各々が得意とする魔法を放ちながら騎兵隊が突撃する。完全に背後を突かれる格好となったアルビオン地上部隊は
隘路一杯に完全に包囲される形となった。
「今です!全軍突撃!」
 前線にて自ら杖を揮うアンリエッタの声に兵士達が応える。
 アルビオン陸上部隊、まさに壊乱する狭間に立たされていた。指揮者不在、加えて空に鎮座する戦艦からは支援の音沙汰がなく、見捨てられたのではないか
という不安に同士討ちすら発生し始めるのだった。
「畜生!一体どうなってるんだ!隊長はどこに行った?!艦砲支援はどうなったんだぁ?!」
 兵士達の怨嗟の声がタルブ盆地北東に沸き立つのだった。
 
 
「殿下!アンリエッタ殿下は居られるか!」
 隘路を塞ぐトリステイン兵士達の中から二人の人影が、そう叫びながら此方に向かってくる。
「静まれ!殿下の御前であるぞ」
 ユニコーンに騎乗するアンリエッタに近寄ろうとする二人を、傍で護衛する兵士達が囲む。二人の内一方は血と泥に塗れていたが、立派なマントと杖を持ったメイジ。
もう一方は派手なくらいに眩い銀のスケイル・ラメラーコートに身を包み、その上から銃と剣を佩びている。
「およしなさい。…そちらはタルブ領主アストン伯と見ました」
「はっ」
 名を言われたメイジ…アストン伯は姿勢を正す。
「この難事にあってよく生き残りました。後は地上の敵兵を下し、空の上の敵に降伏を迫るのみです」
「この度の出征、末代までの御恩にございます…っ」
 ふ、とアンリエッタは戦場にあってわずかに顔を綻ばせた。
「すべてはトリステインを、そして民草を守る為です。敢えて忠誠を確かめるまでもありません」
「なんと、勿体無いお言葉…っ」
 感極まるアストン伯。アンリエッタはそれを脇にもう一人の方へ視線を向けた。
「名を名乗られよ。傭兵部隊の者よ」
「銀狼旅団旅団長、アニエス」
「アニエス殿。此度の参上、一国を代表して礼を言います」
「礼には及びません。そしてまだこの戦、勝利したとはいえませぬ故」
 アストン伯とは正反対に、起立したまま、顔を見せぬままにアニエスは応える。
「…ではアニエス殿、この戦どうやって終わらせますか」
「船を落すのです。旗艦とは言いません。端の一隻でも落せば敵軍はここを抜けて何処ぞへと逃げるでしょう」
「このままではいけませんか」
「はい。仮に地上の兵を掃討しても、ここを移動すれば艦砲を受けましょう。しかし艦に傷を負わせた上に地上の兵を失ったとあれば相手もここを去らざるを得ません」
 と、その時、東にそびえる丘から砲撃音が響く。東の丘では変わらず銀狼旅団の一隊がアルビオン左翼の船に対して砲撃を続けていたのである。
 
 
542鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:37:17 ID:FV14t0Ue
 トリステイン兵士の一人がその者を見つけたのはまったくの偶然だった。
 その者は並ぶ兵隊の群から少し離れたところにぽつりと立っていたのである。
「おい!そこの!」
 兵士はその者に怒鳴りつけた。戦場の正念場で立ち休む者が居てたまるものかという気持ちだった。
「お前もさっさとこっちに来い!休むんじゃない!」
「あぁ…私のことか?」
 その格好は少しくたびれているがかなり上質な兵隊服だ。マントを付けているからメイジなのだろうと、兵士は思った。
「そうだ!あんたメイジならこっちで魔法使ってくれ!」
「魔法…魔法かぁ…わかった…」
 男は懐から一本の軍杖を抜き兵士に近寄ると、瞬間兵士の視界から姿を消した。
「ぐはっ?!」
 そのメイジ兵は次の瞬間、自らを呼んでいた兵士の背後に立っていた。杖を振り下ろし、その先に風の魔法で作り出した真空の切っ先兵士の背中を深く突き抜けていた。
「な…にを……?」
「ふふふ……ははははは……」
 乾いた笑いを上げて兵士を殺したメイジ兵に周囲の兵士が気付き始める。勝ち昇っている中で起きた謎の同士討ちだと、誰もが思った。
「おいあんた、一体何をして…げふっ?!」
 また次の瞬間、何かを言いかけていた兵士の頭が八重に砕け散った。骨と肉と血と、それ以外の何がしかの液体が悲惨し、首なしの兵士が最後にゆっくりと倒れた。
「ははははは……ははははははは!!」
 狂気を佩びた笑いを上げながら、謎のメイジ兵は次々に風の魔法を放つ。周囲のトリステイン兵が、いとも容易く行われるえげつない行為によって
人とは思えないほどの肉塊になって穏やかで晴れやかだったはずの街道の原に散らばった。
「弱い、弱い、弱いじゃないか…やはり今のトリステインでは駄目だ……僕が、この僕がやらなければ……ふははははは…」
 ぶつぶつと何かをつぶやきながら、謎のメイジ…ワルドはトリステイン兵の中に入っていった…。
 
543鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:40:02 ID:FV14t0Ue
「殿下!報告がございます!」
 興奮とは別の気色を浮かべた兵士がアンリエッタの陣営に飛び込んでくる。
「どうしました」
「み、味方同士で殺し合いをしております!」
「何ですって?!」
 このまま勝ちを得ようとしていたトリステイン兵の中で正体不明のメイジ兵が味方を殺しているのだという。
「すぐにその者を捕らえなさい!最悪命を失うようでも……っ!!」
 話す途中でアンリエッタは視界の端に見えた血まみれのメイジ兵を見て、血の激流に顔の色を失った。
 伝令の兵士はアンリエッタの視線を追うと、見えたメイジを指して叫ぶ。
「あの者です!誰か!あいつを捕まえるんだ!」
 アンリエッタを護衛していた兵士達はその言葉に反応する。アンリエッタの指示を待たず、四方から現れたメイジに飛び込んだ。
「駄目!!」
「「?!」」
 アンリエッタが叫ぶも、兵士達は瞬間、メイジ兵から飛び出した風の刃を受けて絶命した。
「ははは…王女の護衛といっても、所詮この程度……」
「…何故お前がここに居る。ワルド子爵」
 護衛から湧き出る鮮血の噴水が大地を染める中、戦慄するアンリエッタに名を呼ばれたワルドが壊れるかというほどに顔を歪めて、嗤う。
「何故などとおかしなことを…私はもとより、トリステインを“解放”する為にここにいるのですよ。愚かなオヒメサマ」
「ふざけるな反逆者。お前はこの戦場で朽ち果て始祖の裁きを受けるのです」
「始祖!…はははは!始祖の裁きとは私の事……愚かなる王室を悉く、始祖の裁きで殺してくれましょう……」
 滅裂とする言葉を繰りながらワルドの杖が空をゆっくりと切った。その時、ワルドの背後から一人の兵士が剣を振り上げて飛び込んだ。
「覚悟ー!」
「ぁん…?」
 振り下ろされた兵士の剣はワルドの影を掠めて落ちた。
「っ!?」
「なんだ、その剣は…?」
「はっ!?」
 ワルドは剣を降ろした兵士からはるかに離れ、なんとアンリエッタのすぐ近くに動いていた。
「なっ…」
「なんだと、聞いているんだ…えぇ?この僕を…俺を……そんな溝鼠の骨で作ったしみったれたもんで殺せると思ってんのかぁ!!!」
 ワルドの叫びに呼応するように、瞬間視界が黒煙が撒かれたように覆われた。
「ぎゃあああああっ!!」
 次に聞こえたのは兵士の悲鳴だった。そして徐々に視界が正常へと戻っていく。
 そこに見えたのは、引き千切れたように八つ裂きに寸断された兵士の死体。そしてそれを睥睨とするワルドだった。
「はははは…さて…アンリエッタよ…」
「っ!…」
 その時、アンリエッタは見てしまった。ワルドの貌を。その狂気に塗り固められた貌を見て、アンリエッタは体験する異種の恐怖、無貌の恐怖を感じ取った。
「はいよぉー!」
 咄嗟手にある手綱を引き、ユニコーンがその場から飛び出して戦場の外縁に向かって走り出した。ワルドはそれをぼんやりと眺めていたが、次には
再び曖昧な風情で嗤う。
「あははは…駄目じゃあないか……せっかく戦場に出てきたのに逃げるなんて…」
 
 
544鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:42:22 ID:FV14t0Ue
「はっ!はっ!はっ!…」
 戦線・東の外縁に向かってユニコーンをひた走らせるアンリエッタ。そこにはほんのすこし前まで顔を見せていたアニエスとアストン伯がいるのだ。
 
 
 時刻1445。包囲と砲撃、そして魔法衛士大隊による攻撃で陸空ともに詰みに迫ろうとしていた戦場は、徐々にトリステインに不利に、アルビオンに有利に働き始めた。
 隘路を防ぐトリステイン軍左翼で謎の同士討ちが発生、それに合せてアンリエッタが急に陣を移動させた。
動いた本陣に合せ、隘路を塞いでいたトリステインの兵士の群が徐々に東に集まっていく。包囲の西側が薄くなったのをボーウッドは見逃さなかった。
「右翼、地上砲撃、敵の薄いところを狙え!」
 直ちに『ルプラコーン』フリゲートと『レキシントン』は準備していた艦砲から『火竜弾』を打ち出す。
層の薄くなり始めていた左翼の兵士達は空から降る炎の雨を浴びて大混乱に陥った。
 ついに艦砲の支援を受けたアルビオン地上部隊が色めく。炎に炙られるトリステイン軍を突破して逆包囲に転じようとしていた。
 この時点でトリステイン全兵3000(+230)から2400(+190)、陸上アルビオン兵3800から3000と数を減らしていた。
 
 
 
 時刻1500現在、戦況は著しくトリステインに不利となっていた。東の丘を背にしたトリステイン王軍を囲むアルビオン地上部隊が徐々に包囲の輪を絞めていた。
地上部隊の背面を突いたグラモン元帥騎兵部隊は、すぐさま包囲に穴を開ける突撃を敢行。かろうじて突破に成功し、
トリステイン王軍は北に向けて包囲脱出を図りつつ、迫るアルビオン兵に漸減遊撃を繰り返した。
 たった15分の包囲でトリステインは兵力を2000まで減らしていた。一方、アルビオン側は依然兵力2500を保ち、さらに地上支援攻撃の放火に緩みもなかった。
 
 
「敵軍は包囲を抜け残存兵力の再編成を行う模様」
「敵軍幻獣騎兵による第四次攻勢、沈静化したようです」
「左翼艦艇の損傷、目下復旧中とのこと」
 『レキシントン』艦橋で次々に飛び込む報告に逐次指示を与えていたボーウッドは、静かに息を吐いた。
「…そろそろ詰みか」
 あとは敵軍の再突撃に合せて艦砲を打ち込み、地上部隊の追撃で敵軍を壊走状態に追い込めるだろう。
 そうボーウッドが目論み、眼下の敵軍の動向に目を注いでいたその時。
「艦長!上空8時方向から此方に向かってくる巨大な影があります!」
「なんだと?艦影か、騎獣か」
「わ、わかりません!」
 導管から聞こえる声に渋い顔をする。
「ばか者!それくらい分からんのか!」
「し、しかしこれは見たことがありません!きょ、距離3000強!依然こちらに向かって飛行しています!」
 眉をひそめたボーウッドは導管を閉じる。
「見たことが無い巨大な影だと?」
 
 
 
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:42:50 ID:godGKU4X
支援
546鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:45:03 ID:FV14t0Ue
「ひょー、相棒もう大分飛んだぜ。そろそろ燃料も尽きるしよ」
 機上のギュスターヴはもう何度目かの『噴射機脱落』レバーを降ろす。飛翔機尾部の噴射推進器を抱えている爪が開き、弱弱しく火を噴いていた二本の噴射機を手離す。
噴射機は落下しながらあらぬ方向にゆるゆると飛んで地面に落ちていった。そして尾部には新しい噴射機がせり出てきて、脇にあるハンマーが噴射機の先端を叩くと、
轟音とともに炎を吹き出し始める。
「あと4本、二回分の燃料しかない。やはり往復は出来ないな」
 方位磁石と眼下の風景を見ながらギュスターヴは言った。
 
 ルイズを追ってタルブを目指したギュスターヴは飛翔機に乗って西へ西へと飛んだ。魔法学院を立っておよそ2時間、ついに目の前には
数日前に見た覚えのある風景が広がっている。
「相棒!前、前!」
「!!」
 見下ろしてばかりだったギュスターヴは前方に首を伸ばした。そこには低く漂う軍艦と、その下で蠢く人の群がかろうじて確認できた。
「あそこが戦場だな…」
「相棒、どうやってあそこに降りるんだよ。まさか戦場のど真ん中に降りるってんじゃないよな?」
 そう話している間も飛翔機は飛び続け徐々に戦場との距離を詰めていく。
「村の中に降りてみよう。…ルイズがタルブの何処に居るかは分からないが、少なくとも空に漂っては居ないだろう」
 と、ギュスターヴが話していた時。空を砕く砲撃音が響いた。
「相棒!」
「!!」
 ばりばりばりっ、と布地の破れる音が一際大きく聞こえ、次に飛翔機はどんどんと高度を落し始めてた。
「戦艦から砲撃くらっちまったぜ?!」
「不時着するぞ!」
 とっさに『噴射機脱落』レバーを引いてまだ轟々と炎を吐く噴射機を切り離す。噴射機があらぬ方向に飛んでいくのを艦砲が狙っていく。
 砲撃で片翼が吹き飛んだ飛翔機を、ギュスターヴは懸命に立て直して地面に向かっていく。
「相棒!村じゃなくて戦場のど真ん中だぜ?!」
「選んでる場合じゃないだろう!!」
 丘と船の間をすり抜けるように飛翔機は飛ぶ。その間も何処からか大砲の発射音が木霊する。
「くぅっ!」
 飛翔機はそのまま、丘に茂る林へと落ちていった。
547鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk :2009/02/13(金) 23:46:26 ID:FV14t0Ue
投下終了。今回ルイズでないしギュス様最後しか出ないし、クロス二次創作的にどうなんだろう。
その代わりワルドのシーンに注力したということでどっこいどっこい(と言う事にしておこう
だんだんクライマックスに近づいてきましたよっと。では。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:58:17 ID:eHJEdfVY
そんなのは稀に良くあること
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:03:55 ID:32q+u7PS
鋼さん、乙です。

>>548
どっちやねんww
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:07:44 ID:JgYC8YR3
>>549
「稀にだが良くある」はブロント語だが実際に可能性が低い事態が頻発しやすい
のは本当に稀にだが良くあることらしい
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:08:51 ID:fKi6rQy0
ブロントって二次ネタだよなやっぱ
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:15:29 ID:LF4qvBYp
ブロントさんを召喚とな!?
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:24:57 ID:XygjqMhD
決闘が終わる頃にはズタズタにされたギーシュがいるんですね
554異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:25:11 ID:Vh/lJ5Jk
鋼の人乙です
多くのキャラクターが生き生きと活躍するのはいい作品の証拠
かなり興奮しながら読ませていただきました

それでは予告どおり00:30に投下します
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:29:39 ID:3+cVDFsX
支援
556異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:29:54 ID:Vh/lJ5Jk
第五話 焔の迷い

五人のメイジが入り乱れる、大変豪華で派手な決闘の舞台となったヴェストリ広場は、今や興奮のつるぼだ。
今日はほとんど無風に近い。雑草をそこかしこに舞い上がらせ、泥を跳ねているのは人間の仕業である。
普通を壊した出来事の楽しみ方は人それぞれだ。
日頃のストレスを発散しようとが叫び倒すのが大半。顔立ちが整った面子が揃ったため、彼らが舞踏のごとく踊る姿を楽しみにする女子がそれなり。
両雄の戦力を真面目に分析するものが少々。賭け事を始める者がこそこそしている。
そして、満場が共通して待ち望んでいることがある。それは、ルイズの使い魔の実力がどの程度あるかということだ。

昨日、大怪我を負った使い魔が召喚された。
儀式の場である、寝転がって休むのに最適な学院近郊の草原は大量の出血など生まれて初めて目にする貴族のお坊ちゃま達が戦慄に震える場となった。
誰もが微動だにせず、声すら出せなくなっていた。唯一、生徒を率いて授業を行っていたコルベールが適切な処置を施すために駆け回っていたのだ。
授業が終了したのは、アッシュが学院内に運び込まれた後だ。皆が皆、胃に重石を抱えて自分の部屋へと帰っていった。
学院は日が暮れるまで不気味なほど静まり返っていた。半ば、お通夜に近い様相を呈していたのだ。
日が沈むにつれ、徐々に広がる闇が学院の生徒と同化していった。
学院に活気が戻ったのは、ルイズの使い魔の怪我は命に危険を及ぼすどころか、明日にでも日常生活が可能なほど軽微だとの報告が駆け巡ったからだ。
重く圧し掛かる枷が外れた開放感は、檻に囚われたことで積もったパワーを解き放ち天高く飛び立つ鳥のように、メイジ達に活力を与えたのだ。
それからというもの、部屋の中で過ごす暇がある者は友人を引き連れてルイズが召喚した使い魔が何者かという推理が始まったのだ。
日常を閉鎖された学院で過ごす貴族たちにとって、未知との遭遇は普段では決して味わうことのできない探究心を大いに刺激する。
しかし、たかだか使い魔風情がここまで貴族の心を揺り動かしたと言っても、常識的に考えれば疑問が残る。
その答はアッシュ自身にあった。

アッシュが召喚された際、『ゼロ』のルイズが世にも珍しい人間を召喚した、と馬鹿にした者が何人かいた。
召喚直後はからかいへと逸らせる空気があった。しばらくしたら、誰もルイズにちょっかいを出そうと画策する人間はいなくなった。
これは、アッシュが重傷だと知ったことが原因ではない。
アッシュの着込む装束を見た事が彼に大きな関心を寄せるきっかけとなった。
アッシュは誰がどう見ても、見間違えようなく騎士であった。ハルケギニアにおいて騎士と称されるのは、ほぼ全てが彼らと同じメイジだ。
自分たちと変わらぬ地位の人間がいると本能的に感じたからこそ、彼らはアッシュを自分らに近い、または対等の存在であると無意識に受け入れていた。
平民の傷には一定の耐性がある彼ら貴族が、大きく動揺したのもこれが理由である。
557異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:30:48 ID:Vh/lJ5Jk
一夜を通して語り倒した貴族の下に、人物像を描くに必要な情報がもたらされたのは翌朝のことだ。
治療を受け持ったメイジの診断どおり、アッシュがルイズと共に姿を現したからである。その際、学院の制服を纏っていたことは彼らに衝撃を与えた。
学院公認と思われるこの処遇は、アッシュがメイジであるとの証明に他ならない。
噂が真実となり、貴族達に一つの基盤を軸とした新しい噂が流れ始めた。それは、アッシュが宗教国家であるロマリアの騎士ではないかという推測だ。
アッシュが着ていた服は、トリステイン、ゲルマニア、及びアルビオンの騎士団の特徴は見られなかった。
そこで、残ったロマリアが槍玉に挙げられたのだ。ロマリアの騎士といえば、教皇より絶大な権力を授かった聖堂騎士が名を馳せている。
ある意味、この予想は的を射ていた。時空が違えど、確かにアッシュは宗教の総本山を守護する騎士である。

この噂が広まったのが朝食のすぐ後だ。
聖堂騎士と言えば、不敬と判断された者に対して略式の宗教裁判を執り行う権限がある。よって、他国の貴族からは畏怖の対象ともなっている。
おかげで、アッシュは触らぬ神になりかけていた。しかし、朝の授業が開始される前のキュルケの発言により状況はさらに二転三転する。
キュルケはアッシュがハルケギニアの外、砂漠を越えた先から召喚されたことを明かしたのだ。
キュルケは学院内でも一目置かれた優秀なトライアングルメイジである。
それに加えて男の心を溶かす魅力も手伝い、アッシュから聞いたという話は信憑性があるものと判断された。
今、ヴェストリ広場で歓声を上げているほとんどの貴族は、アッシュを東の砂漠の先、恐るべきエルフの住処を越えた地、ロバ・アル・カリイエ出身だと結論付けている。
ただ、アッシュの人となりなど本人に聞けばさほど労を費やせずに判明する。貴族たちがそれをしなかったのは、暇を潰す材料を欲しがっただけの話になるからだ。
元々、外界から隔絶されやすい環境で育つのが貴族である。彼らは世界の広さを感じさせるものには興味を示すが、奥底まで手を伸ばす度胸はない。
また、アッシュは貴族とはいえ、名前も知らぬ国の人間。重厚な歴史という土台の上で生を受けたハルケギニアの貴族達にとっては正体不明の異邦人でしかない。
心の深い部分ではアッシュを舐めている節がある。それを先鋭化させ膨れ上がらせたのがド・ロレーヌだ。

ド・ロレーヌの本来の性格は極めて真面目な青年である。そこに風系統のエリート一族の出身という看板を背負うと、真面目が行き過ぎて針となる。
その結果が、高いエリート意識、決まり事を非常に重視する姿勢、人並み以上の分析力、そして、貴族の地位を必要以上に尊ぶ心という歪みを生み出した。
そんなド・ロレーヌだからこそ、使い魔が貴族と同等に扱われるなど我慢がならなかったのだ。
彼にとっては、アッシュなどそこらの平民と大差がない。
その程度の男に屈辱を味合わされた悔しさが今の彼の原動力だ。
ド・ロレーヌは志を共にする仲間と、本人曰く、調子に乗った下郎を躾けるため、ヴェストリ広場で敵の到着を今か今かと待ちわびている。
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:31:35 ID:8meTGBz2
sien
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:31:40 ID:8meTGBz2
sien
560異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:31:45 ID:Vh/lJ5Jk
ヴェストリ広場に足を踏み入れると、騒音になるほど強烈な音波に晒された。
敷地の西側に位置しているから元は涼しい場所だと思われる。今は真夏の日向並みに暑い。
俺の案内役はギーシュだ。意気揚々とスキップしている。目線から外したい野郎は広場の中腹に降り立った。
未だに持ち続けている薔薇は、己の到着を知らしめる印となって天を突き刺していた。
待ちに待ってましたとばかりに野次馬達の音量は時を刻むごとに増大している。ここは鼓膜に優しくない決闘場だ。

「絢爛豪華な決闘の始まりだ。ド・ロレーヌ・モードン・リーウォンのトリオが戦うぞ。相手はギーシュとルイズの使い魔、ルークのコンビだ!」
こんな能天気のパートナーはお断りしたかった。今更どうにもならないので考えないようにしているが。
ギーシュを目線から切り、相手となるロレーヌ達がいるだろう正面を向く。
食堂の時からまるで変化のない、生意気な面をした三人組が俺を睨んでいる。
「どうだい、君らはこの衆目の前で惨めな敗北を晒すんだよ」
ロレーヌの第一声は、侮蔑の中に自分の勝利を僅かでも疑っていない驕りが見える。
戦いの勝敗ほど確証が通用しないものはない。自分の力の劣化を認めた奴に負ける事だってある。
勝利を前提とする時点で、ロレーヌが戦いに身を投じた経験がないことは明白だ。
数と重りという二重のハンデがあろうとも、そう簡単に後れを取ることはない。本来の力を出さずとも。

「それは君のほうさ。紳士の心得を忘れし下郎よ。この『青銅』のギーシュが礼儀を教えてあげよう」
挑発合戦が始まると、周りがもっと煽り立てようと茶化す。喧しすぎて向かい合う相手の声が聞き取りにくい。
「ふん、トッド風情がよく吠える。まあいい、そろそろ始めよう」
踵を返そうとしたロレーヌだったが、半身になったところで顔だけこちらを向いた。口の端を吊り上げてどす黒く醜悪な面となる。
「言い忘れていたけど、この決闘の勝者には褒美が与えられるんだ」
何故だか、初めに言っておけという文句は喉を通らなかった。蓋に跳ね返ったように胸へ堕ちて細かな粒子となり消えた。
「ぼくらは君らのメイドの所有権を賭けて戦うのだよ。勝った者は、あのメイドを思いのままに扱う権利を得る」
当人の都合を一切排除した景品の発表は観衆をどよめかせた。中には、俺も参加するとほざく奴も現れた。
胸の奥を焦がす熱い塊が込み上げてきた。この期に及んで、あの野郎はまだ戯言をほざくか。
しかし、それが言葉として紡がれることはなかった。またも、喉まで上がりかけた罵声が跳ね返された。
思わず、胸に手を当ててしまった。自分の体が、別の何かに摩り替わったような気持ち悪い感覚に包まれたからだ。
俺の中で、何かが起きている。五感だけでなく、第六感でも探れない。奈落の底から得体の知れない病魔が登ってくるようだ。
「最初からそうするつもりだったくせに。ド・ロレーヌめ」
ギーシュの怒気混じりの声が耳に入り、俺は我に返った。
戦闘開始直前だってのに別の事柄に意識を奪われた覚えはほとんどない。何だか、らしくない事が頻発している。
「沈黙は了承と受け取るよ。それでは、始めようか」
マントを翻して歩くロレーヌの背中は小さいわけでもないのに遠く離れて見えた。
ハルケギニアの存在を知った時の様な、自分と世界がズレている奇妙な違和感が俺を侵食し始める。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:32:12 ID:8meTGBz2
支援
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:32:15 ID:8meTGBz2
支援
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:32:20 ID:8meTGBz2
支援
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:32:24 ID:8meTGBz2
支援
565異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:32:50 ID:Vh/lJ5Jk
半ばぼんやりした頭でロレーヌ達の陣形を眺めた。
こちらから見て逆三角形、所謂、鶴翼の陣形だ。前方の二人は奴の取り巻き、三角形の頂点がロレーヌという配置。
ロレーヌを基準として、左翼は片目を前髪で隠している女みたいな野郎だ。整った顔つきのせいか、手を振るうと黄色い歓声が沸く。
右翼はおよそ健康とは思えないほど肌に生気がない。病人でも連れてきたように見える。

一方、俺達はただ二人の人間が並んでいるだけ。俺はギーシュの得意な魔法を知らない。だから、戦術の取りようがない。
ギーシュに直接聞く気は皆無だ。どうせ、こんな優男は計算できるほどの戦力にならない。
俺が敵の陣内に繰り出せば、焼け石に水よりかはましな援護をする程度の期待しかない。
それよりも問題なのは自分自身だ。重体だったのが原因であろう鉛に近い四肢はさておき、それとは別の枷に囚われている。
こいつは喉に膜を張って俺の感情の発露を妨害しているのだ。どうにかしなければ、ただでさえ半減している力が更に衰える。
「ではご両人。ぼくは舞い上げたコインが大地に落ちた時を決闘開始の合図とするよ。準備はいいかね」
ロレーヌは指先に挟んだ杖を振るう。巻き上がる風の圧を受け、コインが錐揉みしながら中空を彷徨う。
「ちょ、ちょっと待て。は、早すぎ」
大慌てでギーシュは薔薇を構えた。あれは観賞用ではなく、奴の杖だったらしい。
俺の準備はろくにできていない。悠長に考える時間もない。となると、やることは一つだ。
コインがロレーヌの茶色く濁った瞳を隠す。黒に鈍く光る金貨は奴の内心を映しているようだった。
光を失った金貨が雑草に乗っかる。その瞬間、俺は大地を蹴り上げた。コインに集中してタイミングを計っていたからこその芸当。

「あっ!」
後ろでギーシュが叫んだ。意表を突かれたのは味方が先だった。
内が澱んでいる時、有効なのはそいつを心の奥底へ閉じ込めるため一心不乱に突撃することだ。戦術の基本、奇襲の役割も果たす。
回転を早める両足が奴らの距離を加速度的に縮めてゆく。
ゼロからマックススピードに切り替えれば、相手は驚いて先手の機会を失う。だが、反撃は予想外に素早かった。
こちらから見て左前方から数発の火の粉が迫ってきた。右翼に陣取ったメイジの火属性の譜術だ。
敵も戦いへの心の準備は万端だったらしい。素人にしては上出来だ。詰めの甘さを加味してもそう思える。
大きなダメージを与えるほどの威力はない。狙いも急所を外している。低すぎる軌道の標的は俺の脚だ。
左足を大地に噛ませ、踏ん張った後に右前方へ飛ぶ。空を切った炎に一瞥もくれず、横にぶれた体をステップの要領で立て直す。
その時、大気を切り裂く音が聞こえた。第一撃を避けた方向と平行にこちらへ接近する氷の刃が視界に入った。間髪入れずの連続攻撃。
「ちっ」
思わず舌打ちするほど、素人にしては見事な手際だ。攻撃の避け際は隙ができる。それを見越しての第二撃。
それでも、直撃は避けられる自信はある。この攻撃も膝より下に逸れているからなおさらだ。
体勢はやや左に流れている。ジグザグに避ければ一瞬棒立ちになる危険性があった。
ステップのリズムを保って跳躍する。ターゲットを外した氷塊は、地面に突き刺さると同時に役目を終えた。
熱狂する観客を尻目に体を引っ張る推進力を得ながら着地した。スピードを落とさず走り出そうとする。
一歩目を踏み出そうとしたら、いきなり両足が浮いた。何が起きたと思うと同時に、胴体が硬い物体と衝突して激しい痛みに襲われた。
「が、はぁっ」
飛んでもいないのに空へと押し戻された。突然の出来事に全身が硬直して動かせない。
俺は受身もろくに取れずに背中から地に落ちた。
566異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:33:46 ID:Vh/lJ5Jk
「か……、ひゅ、はっ」
胸を押し潰されたような圧迫感が肺に圧し掛かっている。空気が喉を通らない。胃液が昇る不快感が押し寄せる。
どうにか呼吸をしようと、上体だけを起こして胸を掴む。触れると、骨に異常がありそうなほどの激痛が走った。
「ぐっ……」
痛みは奥歯を噛み締めて我慢した。肺が空気をよこせと急き立てる。
「わ、き、君、ま、前!前前!」
背後から声が聞こえた。反射的に前方を見ると、炎と氷の雨が降っていた。
「くそっ!」
今の状態では無防備に近い形で追撃を食らう。酸素を求めて苦しむ筋肉に活を入れて、沼地に沈んだ体を強引に引き起こす。
情けないことに転がって逃げるのが精一杯だった。どうにかして攻撃はかわせたが、頭の下が神経から切り離されたように動かない。
どうにか全身の機能を取り戻そうとした時、突如として発生した風に絡め取られた。
風に四肢を支配され、人間を投げ飛ばす暴風に襲われる。勢いが衰えぬ風の力は拘束具となり、俺を学院の外壁に叩きつけた。
「がっ……」
石に殴られたショックは、背骨から剣で突き刺されたような激痛に変化し脳を直撃した。
「かはぁっ!」
口内に溜まっていた胃液が飛び散る。腸から食い物が逆流しかけて吐き気を催す。
俺を縛る風が去ると、自身を動かす力を壁に貼り付けたまま宙へと浮いた。
耐え切れる許容値を超え、意識は闇の中へと誘われる。

視界が途切れる間際、ルイズに支えられているシエスタの姿が目に入った。
両手で口を覆い恐怖に震える眼は、ショッキングな光景を突きつけられたことを如実に伝えている。
その瞬間、ここで終わるなと本能が叫ぶ。両拳を皮が裂けるほど握り締め、上半身を振り上げて眠りかけた頭を叩き起こした。
無数の針が人体に入り込んでるような苦痛を気合で押さえ込み、被害としてはましな脚に神経を集中させる。
どうにか、両足での着地だけは成功した。だが、蓄積されたダメージは地面から伝わる衝撃を吸収させない。体重がもろに掛かった膝はすぐに折れる。
膝立ちで何とか体を支え、倒れ込む愚は犯さぬよう途切れ途切れの神経を下半身に集結させる。
「な、何を考えているんだね」
遠くで誰かが囁いている。外壁に激突した際、後頭部でも打ったのか耳鳴りが酷い。
俯いた姿勢で見えるのは雑草と俺に重なる影だけだ。動かすたびに首筋に電撃が走る感覚に耐えながら、俺は頭上を見上げた。
「杖も持たずに突っ込むなんて正気かい!」
人間の姿を確認すると同時に、聴覚が明瞭となってがなり声が鼓膜を叩く。
俺の前に立っているのはギーシュだった。
567異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:34:48 ID:Vh/lJ5Jk
優勢な戦闘を進める司令が陣形を崩す愚考は犯さない。俺の傍によるのは相方以外にありえないのは当然の話だ。
「丸腰で挑むなんてどうかしてるんじゃないかな」
どうかしてる。その言葉が形となって胸を圧迫しているような気がした。
何かがこみ上げるのを堪えたがり、もっともらしい言葉ではぐらかす。
「俺は……何を食らったんだ……」
「え……、君は何を……」
「あいつらがどんな攻撃をしたか聞いてるんだよ……」
ギーシュが意に沿わない腹立たしさそのままに吐き捨てる。気圧されたギーシュが後ずさった。
「あ……、えっと……。君が一直線に走って、魔法をかわしながら飛んで、ちゃ、着地したらド・ロレーヌのエア・ハンマーが直撃したんだ」
「エア・ハンマーてのはどんな魔法だ」
「く、空気を固めた槌で攻撃するんだ。き、君はそれをまともに受けて……、倒れたと思ったらウィンド・ブレイクで吹き飛ばされたんだよ。」
最初に胸を襲った衝撃がエア・ハンマーで、次に俺を壁に貼り付けたのがウィンド・ブレイクという魔法らしい。
「たいした魔法だ。奴のランクは何だ」
「ラインのはずだけど……。君が受けた魔法はトライアングル・スペル並みの威力があったよ」
話を見るに、ロレーヌの魔法は、本来のものより増幅されているらしい。それを考慮しても、ロレーヌは人を舐めきるに相応の力は備えている。
半減した体力にはでか過ぎるダメージだ。おかげで、忘れていた痛みを思い出した。死にかけで挑むには少々難儀な相手だ。
おかしなことに、その事実を単に事実として受け入れる以外の感情が湧かなかった。
自分でも感知できない何かが横たわっている。そいつに関して、一つ分かることは俺から力を吸い取っていることだけだ。
568異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:35:50 ID:Vh/lJ5Jk
視野にいない連中を探すためだけに首を回す。広場の向こう、要塞に似た強固な城壁をバックに勝ち誇る顔が見えた。
許せないはずなのに、頼りない灯が点るだけになっている。たが、小指の先ほどの炎でも意地は支えれられる。
錆び付いた両膝を強引に駆動させる。金属が擦れる音が響く体を立て直そうと、なけなしのエネルギーを注入する。
半分死んだ人間が無茶をしていると冷めた目で自分を眺めながら立ち上がった。
「だ、大丈夫なのかい」
「知るか。突っ立つくらいは平気なんだろよ」
「それって結構まずいんじゃ……。と、とにかく杖だ。杖がなければ魔法は使えないだろ」
「どういうことだ?」
「何を言ってるんだ。君もメイジだろ。杖を持たぬ貴族は魔法が使えない、つまり平民と変わらない……。メイジの常識じゃないか」
どうやら、ここの魔法は発動時の触媒として杖が必要らしい。訓練さえ積めば誰でも習得できて、特別な道具を必要としない譜術とは相当の開きがある。
ただ、譜術の増幅装置として杖などを携帯する者も多い。だとしても、似ていると扱うのは無理だ。
隣り合っているようでお互いが交差することはない。異世界ってのはこんなものなのだろうか。

「そうかい。生憎、俺の魔法は杖を振り回す類のものじゃない。もっとも、ここで何したって無駄だろうがな」
「そ、それはどういう意味だい」
ギーシュの顔は未開の森に住む民族と対峙したようだと表現すれば適切だろうか。
自分の常識が通用しない異質な存在。価値観の隔たりは動揺を誘う。それがそのまま現れた表情。
かつて、俺もこんな面をしていた時期があったことを思い出させる。
「いちいちうるせえよ。そんなに心配なら武器でもよこしやがれ」
「ぶ、武器。武器があればいいのかい」
そう言ったギーシュは薔薇の造花を振るった。一枚の花びらが千切れ、大気の抵抗を受けながら舞い落ちる。
花びらが腰の位置に到達したら、表面に光の粒子が浮き上がった。それは徐々に花びらを包み、細かい粒子を撒きながら散り散りとなる。
光の粒は明らかに量を増やしながら拡散していき、やがてある輪郭を形成する。
粒子の輝きによって覆い隠されたそれは、光が収縮するにつれて己のありようを俺に示した。
一刀の剣が地面に刺さっていた。お世辞にも上等とは言えないが、紛れもなく武器と言える造形が目の前に出現した。
「僕は『青銅』のギーシュ。錬金の魔法を得意としている。武器の製造なんてお手の物さ」
礼をするのは癪に障る。さっさと柄を手に取り剣を引き抜くことをその代わりとする。
ロレーヌは相変わらず俺を蔑んでいるままだ。剣を握っても、憤怒は彼方を彩るだけになっていた。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:36:41 ID:8meTGBz2
支援
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:36:46 ID:8meTGBz2
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571異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:36:51 ID:Vh/lJ5Jk
無防備で体の前後を強打された痛みの疼きは治まりそうにない。ただ、これくらいは騙し騙しで誤魔化せる。
問題なのは打撃が通用しない部位。戦闘意欲が意思に反して萎む方だ。
ヴァンとの戦いの間、重傷だろうとかまわずアルビーオルを乗り回していた激情が消え失せている。奴らはヴァンの妄執よりも許し難いにもかかわらず。
必ず倒すと誓った自分が一人歩きして、ここにいるのは抜け殻だと思えてしまう。
「それで、武器を手にしたからには、彼らに一太刀は浴びせられるだろ」
「知るか。やってみれば分かるだろ」
ギーシュはあいつらを二人で倒そうとしているのだろう。だが、コンビを組む気がない人間がいる。それは俺だ。
屈んで足の指に力を入れて地面を掴む。膝を曲げた発射台は投石機に似る。
取っ掛かりを外し、剣という名の重石に引っ張られながら再度突撃を開始した。
「こ、こら!僕を置いてくな」
当たり前すぎるギーシュの反応が身に染みた。置いてきぼりは俺もだからだ。
目標はロレーヌじゃない。はるか遠方に去った自分自身を追っているのだから。

前衛から氷炎の礫が両サイドを挟み込む。空いているのは中央だけだ。
ある意味好都合だった。今は直進することしか考えていない。全速力で走らないと達することのできない彼方を目指しているからだ。
ならば、やることは加速以外にない。多少、焼かれようが傷付こうがかまわない。どの道この魔法はダメージを与える威力がない。
己の焦燥を振り払わんと、対となる弾幕を突き抜けた。明瞭になった視界の先に佇むロレーヌを捉える。
右手が強く柄を握り締めた。あの野郎に一発入れれば勝手に抜け出した自分を取り戻せる。
徐々にはっきりと映し出されるロレーヌの面が目に入った。奴は蔑みのこもった笑みを浮かべている。
ロレーヌは口元に寄せた杖を差し出た。たったそれだけで俺の視界は反転した。

透き通っているようで濃く染まっている青い空がある。一点の雲すらない晴天だ。
自分がその一部になったと自覚したら空に吸い込まれた。急速に高度が上がる浮遊感が訪れる。
天空を一気に昇ると、ある人物が現れた。前髪を後ろに流す、肘まで伸びた長髪の男。目を引く鮮血が靡く。
目じりは挑戦的なくせに穏やかさを覗かせている。口元は糸を軽く梳いたように反り返っていた。
そいつは俺のレプリカではない。俺の中から出て行った自分自身だ。緑の眼が揺らぎもせず俺を見つめている。
凍てつく瞳には覚えがあった。幾重の層を作る記憶を紐解く。迷宮のような過去を探る内、不意に馴染んだ背中が横切った。
それは誰かという疑問は、直後に浮かび上がった記憶に押し出された。
あれは俺自信がしていた目の色だ。哀れな最期が決定された者に対して向けていた。
まだ、あの野郎が俺と瓜二つだった頃、アクゼリュスで死ぬ運命だった劣化レプリカを見下す双眸そのものだ。
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:02 ID:8meTGBz2
支援
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:08 ID:8meTGBz2
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574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:11 ID:8meTGBz2
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575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:14 ID:8meTGBz2
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576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:18 ID:8meTGBz2
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577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:37:21 ID:8meTGBz2
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578異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:37:47 ID:Vh/lJ5Jk
星は人を空に留めることを拒む。重力に引かれ、自分の体重を感じながら落ちていく。
抗うと事など無意味にもかかわらず、ぶら下がれる糸を求めて手を伸ばした。
目的は一つしかない。自ら上昇して逃げる写し身を捕らえるためだ。
あれを取り戻さないと、たった今はっきりと感じた胸の空洞を埋めることができない。
願うだけでは成すことなどないと分かっていても、無駄な足掻きをやめようとは思わなかった。
掌で全身が隠れるまで離れてしまい、表しようのない虚無感が瘴気となって心を溶かし始める。
青い空が黒く濁って見える。背中を襲う痛撃を自分が受けたのではないと切り離しながら、物体を永遠に縛る地へと堕ちた。

「くっ……」
岩肌に寝転がったかと思うほど、硬い突起物が当たっているため打撲を負っている背中が疼く。
何かと思って首を傾けると、視界の切れ目から人の腕が入ってきた。だが、血の通う生物のそれではない。
青銅製の人間を模した無骨な腕だった。全体像を確認するために右手を支柱にして体を捻って転がる。
うつぶせになり、背中を突く不快感をもたらしていた青銅の塊を凝視した。
甲冑を被る女を模った騎士が倒れている。感情のない一色の目がこちらを向いていた。
どこぞから人形が乱入するなどありえないだろうから、こいつは誰かの魔法だろう。
ロレーヌらに該当する魔法ではない。となると、こいつは俺の武器を生成した奴の能力との公算が立つ。
「わ、ワルキューレ!」
聞き覚えのある声が駆ける足音を気付かせる。両腕を肩幅に広げ、腕立て伏せの要領で上体を起こした。
安息を苛烈に要求する肉体を無理やり黙らせ、錆びたように軋む骨を強引に動かして顔を上げた。
「君……、やる気はあるのかね」
眉間にしわを寄せた、出来の悪い同僚に呆れ果ててストレスの限度を超した男がいる。
あれだけ失態を晒すようなら、どんなに卑しい人間の文句だろうと反論は出来ない。戦いへの姿勢を咎められるのも当然だ。
俺の闘争心は手で仰いだだけで消えるほど頼りない。にもかかわらず、ギーシュの言葉を肯定することには抵抗があった。
「あるから剣を握ったんだ」
口は出鱈目を吐く機械。唇を上下させるだけならどんな戯言も生み出せる。
「嘘を付くな。敵の的になりに行った、の間違いじゃないか!」
「耳元で騒ぐな。頭に響く」
「悠長なことを……。威勢が良かった君はどこに行ったんだい。まるで別人じゃないか」
そいつは空の上だ。今頃、大気圏を飛び出して惑星を周回しているだろうよ。俺は取り残された残り滓だ。
これほど卑屈になったのは生まれて初めてだろう。劣化レプリカの弱さが伝染したのかもしれない。
性格が似ていると耳にたこができるほど言われ続けた。散々否定してきたのに、今はすんなり認めてしまいそうだ。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:38:35 ID:8meTGBz2
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580異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:38:35 ID:Vh/lJ5Jk
俺は今、どんな顔をしているのだろう。目に掛かる髪の奥で座るギーシュに心配の色を増させるほど惨めなのは確実だ。
落ちぶれたもんだ。これではあの世の六神将に笑われる。それでも、冷笑を跳ね除ける気概が戻ることはない。
情けなさからではない。単に頭が重いからうな垂れる。自分の馬鹿さ加減を自嘲したくなった。
しかし、口端を吊り上げることは叶わない。今度の原因は自分にはない。全身が火傷するような激しい痛みに襲われたからだ。
勝手に背中が反り上がり、急に景色が変わった視界が映したのは真っ赤に染まる不透明な空だった。

綿を思わせるほど軽くなった体が緩やかに仰向けで倒れる。赤い液体が極小の雲となり大粒の雨を降らす。
頬に生暖かい液体が張り付く。徐々に体温が抜けていくような感覚に気付き、それが自分の血だと理解した。
火でも突っ込まれたような右腕を肘だけ曲げて上げると、瞼によって遮られつつある澱んだ視界に映るのは前腕の外側の中央部に刻まれた一の文字だ。
学院の制服のシャツがぱっくりと裂けてただれている。開いたがま口から覗くのは、白地を赤に変える傷口。
意識を自分の内に集中させると、左肩や右の大腿部も同様と思われる傷で血が流れているのが分かった。
腕から流れる、黒ずんでいない純粋な赤の水脈は放置するのが問題なほどだ。
血の気が失せ始めて段々と熱が抜ける中、やけに冷静な頭の隅に、弱さから生み出されたものではない別の何かが湧き出している。
「ド・ロレーヌ!貴様ぁ」
その正体を手繰り寄せる暇もなく、押し殺すギーシュの声が己に集中していた意識を現実に引き戻した。
急激な視点の転換は目を開かせ、青々と茂る絨毯を広がらせた。雑草が頬をくすぐる葉がむずむずする。
辺りを伺うと、野次馬達が騒がしく蠢いている。どいつもこいつも興奮しきりで、純粋に娯楽を楽しんでいる。
俺達は観客を喜ばせるための哀れなピエロ。今の自分にはぴったりかもしれない。
「どうしたんだい、ギーシュ。ぼくは怒られるような無礼を働いたつもりはないんだけどな」
「ふざけるな!無防備な相手を攻撃するなど、卑怯じゃないか」
「これは決闘、戦場においては隙を作る者が間抜けなのだよ。君たちの都合など知ったことか」
もっともな話だ。戦地では精神を乱した奴から死ぬ。心ここにあらずの人間は屍として転がる以外の能はない。
七年もかけて培った戦士の心得を役立たずにした人間の末路には、孤独に悶えて果てるのがお似合いかもしれない。
「それより、ミスタ・ファブレ。意気揚々としていた君はどこにいったのかな。あまりにやる気を見せないようだと、我々の興が冷めてしまうよ」
そいつはとっくに氷が張られて幽閉されたよ。残念なことに、分厚くなりすぎた氷塊は破壊不可能だ。
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:38:41 ID:8meTGBz2
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582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:38:45 ID:8meTGBz2
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583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:38:59 ID:8meTGBz2
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584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:39:12 ID:8meTGBz2
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585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:39:15 ID:8meTGBz2
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586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:39:18 ID:8meTGBz2
支援
587異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:39:26 ID:Vh/lJ5Jk
矛先は真下へと引かれた。なのに、地面を押して、起きろと促す左手は何なのだろう。
痛みで痺れが走ってろくに力が込められない。それでも、痛覚に刺激された神経と弛緩に堪えて腰を上げようとする。
意図していない左腕の足掻き。まるで、何者かに乗っ取られたようだった。
「まだ心が折れたわけではなさそうだね。安心したよ。こんな簡単に終わってしまったら、消化不良もいいところだ」
左肩の激痛に耐える。震えて滑りそうになる手を、指を土に食い込ませて固定することでどうにか座るまでに体勢を持ち直した。
自分がしていることが分からない。血にまみれて泥の中に沈んでいるような身がどうして突き動かされるのか。
それ以前に、ここまで落ちぶれた原因も皆目検討が付かない。
一つだけ確実に言えることは、このまま眠るのは釈然としないってだけだ。

右足を折りたたんで尻の下に収める。少し屈んで右手を地面に密着させる。そのまま、鉄石を背負わされた重さに逆らって真っ直ぐ立ち上がった。
苛立ちを覚えるほど歓声が喧しい。少しでも気を抜いたら、音波だけで倒れそうだから、更に鬱陶しい。
俺の真後ろにはロレーヌがいるだろう。奴と俺を結ぶ直線の先にギーシュが立っている。
奴も全身のそこかしこから血が流れていた。悔しさと憎しみが混じる瞳は、向いているのは俺で、捉えてるのはロレーヌだと思えた。
「お互いボロボロだな。続ける気はあるかい」
ギーシュの震えは屈辱や恐怖から来るものではないだろう。奴らを倒せとの声なき叫びの結果のはずだ。
圧倒的な力の差を見せ付けられようと衰えぬ負けん気は、癪に障るが、賞賛してもいい。
「でなきゃ、立たねえよ」
本当は立つだけでやっとだ。ギーシュ程度の闘志にも劣る決意でしか戦いに挑んでいなかった。奴から漲る力の波長がそれを教えてくれた。
言葉は飾り。では、再び剣を求めるこの左腕は何だ。俺を戦いへと導く意志の残滓がある。
荒廃しきった俺を取り戻すには頼りない一滴の雫。頼りなくとも、今はこいつにすがるしかない。
地面に刺さって俺の腰まで伸びている剣に掌を被せる。杖代わりを支点にして振り返る。
勝利を確信した笑みを絶やさないロレーヌを視界に捉える。
掌を滑らせて柄を握る。何度も、奴を許すなと言い聞かせて剣を持ち上げた。
横薙ぎ払った剣先は鋭さを感じさせずに垂れている。こいつを誤魔化すためには頭を真っ白にするしかない。
「ロレーヌ。貴様が脚光を浴びるのは終わりだ。せいぜい、余韻を楽しんどくんだな!」
痛みなど関係なく腹の底から叫ぶ以外に精神を高揚させる方法は思いつかなかった。
それでも、乾いた砂を巻き上げる嵐の前では悲壮感が漂うほど虚しく響いているのを隠し通すことはできない。
羽ばたく鳥の軌跡を追う。俺に影を落とす闇を照らせる光明は未踏の空へと逃げて行く。
588異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/02/14(土) 00:40:22 ID:Vh/lJ5Jk
投下終了
支援を下さった皆様、ありがとうございます

先に決闘のみ登場するオリキャラ解説
・リーウォン・シゼス・ワイルディア(水系統のドット)
→元ネタはリオン・マグナス(TOD)
&エステル〔エステリーゼ・シゼス・ヒュラッセイン〕(TOV)
&ゼロス・ワイルダー(TOS)
備考:モテるらしい。猫が好き。無類の女好き

・モードン・フランシス・ド・ウィンラー(火系統のドット)
→元ネタはダルタニャン物語のクロムウェルの片腕であるモードント
備考:風っ引きとはこの男?

らしくないアッシュ。発動しないガンダールヴ。その謎が明かされるのは次回
・・・ギーシュが空気王になっちまった

まだまだ至らぬ部分が多いと思います。なので皆さんの御意見を待ってます
かなり厳しい指摘は然る場所で。必ず拝見します

前半としましたが、次回の投下は一週間後に何とか間に合わせます
次回こそ予告どおりギーシュの真骨頂
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:43:54 ID:3+cVDFsX

らしくないと思ったら…次回に期待。
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 00:48:25 ID:rIK0mKIX
投下乙

重傷とはいえガンダ補正で軽く勝利するかと思ってたぜ
しかしルーンが発動しないのは予想外だな

ロレーヌフルボッコは次回に期待しようw
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 01:34:22 ID:mGO01rRO
白騎士物語で構想を練ったり潰したりしているが...
騎士のアークだけ召喚して良いものか以前に、出るかもしれない次回作を待ってから書いた方がいいのだろうか
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:19:18 ID:OMR9CUqz
そしてどこをどう間違えたか定かではないが
黒騎士が召喚される展開に

ブラックウィングとかズワースとかガラバも一緒に
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:20:26 ID:1oIQnYcg
ルーンファクトリーからミスト召喚

ミスト「ルイズさんは魔法が使えないんですか?」
ルイズ「……そうよ」
ミスト「あ、もしかして魔法成功率0%だからゼロのルイズだったりしますか?」
ルイズ「何よ! 言いたい事があるならはっきり言えばいいでしょ!」
ミスト「そんなルイズさんにプレゼントです」
ルイズ「プレゼント?」
ミスト「はい」
ルイズ「何、これ?」
ミスト「カブの種です」
ルイズ「カブの種?」
ミスト「しかもこのカブの種、今なら何と鍬とジョウロがセットで付いてくるんです。
    うわぁ、すごくお得ですね」

そんなこんなが色々あってきっとハルケギニア一のカブ農家「カブのルイズ」になるんだよ
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:29:15 ID:ioC+GvHz
ニコッ
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:29:15 ID:XIggEQMt
ルイズがパワプロクンポケットの主人公を召喚 

パワポケなら問題無いな
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:40:42 ID:xgoXHmlv
春の使い魔召喚の儀式で、ルイズに限らず生徒たちがパプワ島の住民を召喚。
とんでもないカオスな展開になりそうですなww
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:42:12 ID:DxOKhPoJ
空の軌跡からエステルとヨシュア召喚。

ガロードとティファ以上の桃色空間に悶え苦しむルイズの姿が見えるww
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:43:37 ID:Lr3L4yfj
マリコヌルがマミヤくんを呼ぶんですね、わかります。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:43:52 ID:mh5nYV44
イトウくんとタンノくんは誰を追い掛け回し始めるのだろう?
やっぱ見た目イケメンのギーシュか?w
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:51:06 ID:NJ1G1ZJ2
取り柄のない平凡な浪人生を召喚したらどーだ?
五代君とか

惣一郎さんをルイズが召喚したら、それなりに大事にしてもらえそうだけど
アルビオンで死亡だろうな
ラムちゃんを召喚したら・・・虎縞ビキニで学院をウロツイテイル彼女がこの世界の青少年の
リビドーをどれ程刺激するか!
興味がある
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:59:09 ID:xgoXHmlv
キュルケはイトウくん、タバサはクボタくんを召喚でw
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:05:28 ID:rpXmJum8
ギーシュはタンノくん……と言いたいところだが、
属性考えるとモンモランシーの方か
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:08:05 ID:ws0EH7Db
ガンマ団の連中は?

つかクロスキャラが一人や二人じゃなくて、組織とかごと大勢来てるのもあるよな。
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:09:16 ID:rpXmJum8
そういや、複数作品からクロスしてくる作品って何かあったっけ
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:10:51 ID:xgoXHmlv
最初はパプワにキレていたルイズも段々と慣れて、中盤あたりから同じペースになってくるんですねw
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:12:04 ID:6NP/CFKu
>>603
男塾だと1号生みんなでやってきてたな
契約シーンはルイズがちょっとだけ哀れだった
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:14:19 ID:/oYEbPlB
>>600
ルイズの部屋のお隣に穴を開けてキュルケの情事を覗き見する四谷さんですね
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:15:04 ID:Lr3L4yfj
>>602
ギーシュはモックンで決まりだろ
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:22:13 ID:hZcPz25H
>>604
原作者が同じではない作品の複合クロスは、『三人』があった。
それ以外で何かあったっけ?
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:22:50 ID:xgoXHmlv
>>599

初登場時のワルドもでしょうw
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:25:14 ID:6NP/CFKu
>>複数作品のクロス
ラスボスもそれに該当する
それぞれ微妙に横のつながりもあったりするけど一応別々の作品
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:29:52 ID:4tcFN7m5
>>604
ゼロの魔獣も。魔獣戦線とゲッターロボと虚無戦記が混ざってる。
微妙に繋がってることが示唆されてる作品群ではあるけど、基本的には別作品
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:47:53 ID:7N+vvcj9
>>604
魔王伝なんかモロそれだろう
全く違和感無いけどな!
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 03:56:15 ID:gn55Xkmg
>>595
何 人 殺 す 気 だ
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 04:23:49 ID:BbgoMYLm
>>614
有名な縦読みだったりヒロインが自爆したり枕営業でアイドルになったり
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 05:54:25 ID:TclJ5/rX
パワポケではよくあること
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 06:00:35 ID:/AUdusQT
>>600
ついにベンゾーさんの時代が来たのか!
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 07:06:37 ID:/0UT7NCq
>>588
遅レスだけどもルークの人乙
文章に厚みを持たせた表現が大変好みです
とりわけ最後の一節が添える空気が印象的でした
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 07:43:42 ID:61ROt88L
>>615
某笑顔とアンサイクロペディアでしか知らないが……

ルイズBAD ……魔法覚醒せず、引きこもりになってしまう
シエスタBAD …最後に操られて殺される
アンアンBAD …誰も信じない独裁者になる
アンアンGOOD …ウェールズと結婚
タバサBAD  …依頼失敗で死亡
イザベラBAD …暗殺される
カトレアBAD …病気が悪化して死亡

こんな感じになるのか……野球ゲームでこれは無いな。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 08:14:26 ID:NJ1G1ZJ2
ルイズTRUEEND
サイト帰還するけど、自由に「門」を作れるようになり
留学生としてサイトの学校に転入
暴力デレの毎日を・・・と書いたけど本編こうなる可能性高いよな
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 08:20:06 ID:mh5nYV44
タバサ涙目展開が好きなのでゴーストバスターズのスライマー召喚。
まぁゴースト映画繋がりで、ニューヨークの幻風味なシャルル召喚なんてのも別の意味で涙目か。
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 08:35:44 ID:vh831ZuK
超遅レスだが>>507
パソコンパラダイスで連載されてた読者参加ゲームから召喚なんて無茶振りすんなw
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 09:06:42 ID:98qjkm4h
>>619
パワポケは野球バラエティーですから
戦闘力高い主人公けっこういるし
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 09:21:02 ID:rpXmJum8
>>622
言われて初めて思い出した
懐かしいなおいw
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 09:23:48 ID:vPkPvyr/
>620
最近の流れならトゥルーエンドは左手にルーンの痕跡だけを残して永遠に離別の寂寥系帰還エンドだろ



そして二次創作用に>620系のifエンド追加して公式もあれこれ展開するというw
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 09:26:37 ID:vPkPvyr/
REBISSならやはり一番印象深いのが「まいっちんぐ」大流行だな
アレで真面目に話を作ったライターに敬礼!
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 10:26:50 ID:7HKOQZYq
対七万戦で「降伏は無駄だ。抵抗しろ」 ってか

8の主人公が一番戦闘能力が高いんじゃなかったっけ?
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 10:47:13 ID:WyF7o4Ti
>>625
最近そういうENDのゼロ魔SS読んだ事あるけど、後半はかなりの欝&グロだったなぁ
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:19:26 ID:XIggEQMt
ルイズの魔法を使いたいという気持ちがパワポケ7のヒーロー達を呼び出した! 
最後は野球で決着ですね。
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:28:34 ID:e9lvS+KD
ゼロ魔世界で野球をやるなら――「魔法の使用を許可する。ただし直接または間接的に殺傷を行ってはならない」という文言が付きそうですね。
抜け道としては「燃えるバットでピッチャーライナー」とか、三塁から代走としてヴェルダンデが地面の下をホームまで掘り進むとか。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:33:02 ID:ws0EH7Db
>>630
ドラベースの秘密道具みたいに1試合に何回までとか制限を加えないと、単なる魔法合戦になるぞ。
そういや割れぬならの人がトリステイン対ガリアで野球対決してたな。
最近投下してくれないけど帰ってこないかな。
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:48:29 ID:xdYZyDUr
キャプ翼で小ネタもあったな
あれは爽やかな読後感があって大好きだぜ
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:49:02 ID:Fq0RlE8r
>>630
バット型の専用杖があったり。
タバサが風を操りながら空気抵抗を減らしたストレート投げたり。
イリュージョンで分身魔球投げたり。
燃える魔球を投げたり。
サイトが「これが男(侍)の野球だ!」とか言いながら、高く飛び上がって海老反りの体勢からボール投げて
背骨がいったりするんだな?
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 12:53:25 ID:e9lvS+KD
小難しい理由をすっ飛ばして、渡久地が沖縄でやっていた「ワンナウツ」という投手対打者というシンプルなゲームが、何故か正式な決闘の作法として採用されている世界はどうだろうか。
これなら小ネタっぽくて書きやすいかもしれないし。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:01:01 ID:P9F8KPgI
じゃあ自分で書けば良いじゃん
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:04:08 ID:0Tf3Dngk
サッカーだとゲルマニアがえらい強くなりそうだな
ハルケギニアにはブラジルもアルゼンチンもスペインもポルトガルも出てきてないわけだし
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:09:18 ID:MUihLi1S
トリステインにはタルブがあるじゃないか!
シエスタの祖父によっては精鋭揃いになるぞ
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:10:56 ID:fKi6rQy0
そして最後に喧嘩上等ロボが現れすべてをぶっ壊す
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:27:18 ID:PM6wG0CH
スーパー独歩ちゃんが魔法に興味を持ったようです
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:31:27 ID:pLtdc5QM
独歩ちゃんなら回し受けで炎も掻き消せるしメイジ相手でも大丈夫DA・NE
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:32:13 ID:0Tf3Dngk
最適なのは武器も扱える足無くす前の烈だな
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:33:27 ID:Fda2Asb2
サッカーといえば今人気の
イナズマイレブンから召喚とか
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:34:28 ID:1EGQ2Aqf
矢でも鉄砲でもライトニングクラウドでも持って来いやァ・・・ッ!
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:39:47 ID:yJQeq9/I
でもルイズの爆発だけはカンベンな!
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 13:52:09 ID:CnOsR9Pc
ゴーストステップ16話のwikiのまとめ、

デルフとの会話が大分読みやすくなって、戦闘シーンも描写が増えて
こちらとしてはかなり満足w
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:04:11 ID:FNoqsZtB
GGXXからカイ=キスクが召喚されたようです
647クソル:2009/02/14(土) 14:07:05 ID:fKi6rQy0
恥知らずなカイ使いがいた
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:15:36 ID:wGlLeoVp
ブロントさんを召喚とな!?
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:18:20 ID:wrj0WaGk
謙虚な騎士だからみんな尊敬しちゃうな
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:41:41 ID:32q+u7PS
ギーシュ「グラットンすごいですね」
ブロントさん「それほどでもない」

小ネタはは思い浮かぶけど大まかな流れが作れない!不思議!
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:44:24 ID:PKjBVaZE
>>647
こんなところにレスしてないでクソル金返せ
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:48:26 ID:7exSVUjC
ブロントさんが召喚されたら他の虚無の使い魔は
汚い忍者、よしくん、ファイナルタツヤとか?
悲惨だ・・・
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 14:52:18 ID:M9V5TC27
>>630
「コブラ」のラグ・ボールみたいな格闘野球になるな
長島巨人軍が召喚されれば魔法など無意味だが
654使い魔人生綺談:2009/02/14(土) 15:26:10 ID:sF624C6D
15時30分より投下開始しようかと思います。
655使い魔人生綺談:2009/02/14(土) 15:30:30 ID:sF624C6D
使い魔人生綺談-02


「オ、オールド・オスマン! その者はエルフなのかもしれ
ないのですぞ!」

 にこやかな様子のニコとオスマンを見て、コルベールは
焦るかの様に言う。

「ふむ……、ミス・アージェント。貴方はエルフなのですかな?」

 オスマンは何気なくそうニコに聞く。

「あー、さっきもそこのコルベールさんとやらに言ったが、
わしはエルフなんぞではないな。おそらくお主らのいうエルフ
とやらも……」

 ニコは話しながら自分の人のものより長く先の尖った耳に触れ、

「こんな耳をしているのかもしれんがな。あくまでわしは
長耳族という種族なだけじゃよ」

 ニコはそう説明するが、

「そうは言いましても……」

 コルベールは懐疑的であった。

「ミスタ・コルベール。あまりに疑うのも失礼じゃぞ?
 なに、ワシが保証しよう。ワシとて長く生きとるから、
マジものの生エルフに何度か会ったことがある。
彼らとミス・アージェントは纏う魔力からして質が違っておるよ」
「は、はあ……、オールド・オスマンがそう言われるのでしたら」

 コルベールは、一応納得した様子であった。

「ところでオスマンさん。ここは何処なのでしょうか?」

 ニコは周りを見渡しつつオスマンに聞く。

「ここはトリステイン王国のトリステイン魔法学院ですじゃ。
ちなみにワシはそこの学院長を務めております」
「おお、そうなのですか。……ああ、ちなみにわしは
メインランド中央図書館にて館長を務めております。
 しかし、ふむ……、トリステインですか……」

 ニコは思案顔になる。そこへ、

「お館さま。いったい何をやらかしたのですか?」

 と、眼鏡を掛けた赤毛の二十代手前ほどでメイド服を着込んだ
女性が、ニコが出てきた扉から現れた。

「おお、ショーシャか。ところでショーシャはトリステイン王国
という所を知っておるか?」
「は? 何ですかいきなり、藪から棒に」
「いいから答えるのじゃ」
「はあ……。まあ、少なくともメインランドでは聞いた事の
無い国名ですね」
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:31:04 ID:nPkd9cF2
ロリババァ支援
657640:2009/02/14(土) 15:32:59 ID:sF624C6D
 扉から現れたショーシャは困惑しつつもそう答えた。

「トリステインを知らない? いったいどこの田舎者よ」

 ルイズは信じられないものを見た顔で言い、ショーシャは
それに更に困惑を深める。

「これこれ……。えーと、ミス……」
「ヴァリエールですわ。オールド・オスマン」
「ミス・ヴァリエール。自分が知っている事が全てと思っては
いかんぞ? ミス・アージェント、そしてそちらはミス・ショーシ


でよろしいですかな? ガリア、アルビオン、ロマリア、ゲルマニ

ア。
これらに聞き及びは?」

 オスマンはルイズを軽くたしなめ、ニコらに質問を投げかける。

「ふむ、単語の聞き及びこそはあるが、それらは国名じゃろ?
 少なくともメインランドでは聞き及びはないな」

 そう答えるニコの後ろでもショーシャが頷いていた。

「ふむ、そうですか……。ところでメインランドとは?
 少なくともワシは聞き及びがありませんが?」
「知らない? ……ああ、もしかして。ショーシャ、星を見ることは出来るか?」
「星を見るって……、ああそういう事ですね」

ショーシャニコの云わんとすることを察し、空を見上げた。
それを見てオスマンが、

「えーと、彼女は何を?」
「ああ、天体観測をしてもらい、星図を見てもらっております」
「昼間ですが、見えるのですかの?」
「ええ、ショーシャは少しばかり特別ですから」
 
 とニコとやり取りをしていると、ショーシャは観測を終えた
様子であった。

「お館さま、星図がメインランドと全く一致しません。
おそらくは……」
「他の惑星。下手をすれば並行世界とドアウェイが連結して
しまったようじゃな……」

 ニコはそう言いつつ嘆息した。

「あの、オールド・オスマン。実はミス・ヴァリエールの使い魔
召喚の途中なのですが、いかが致しましょうか?」

 コルベールがオスマンへと問いかける。

「いかがというと?」
「はい。結果はどうあれ、ミス・ヴァリエールは彼女らを召喚
した事になると思われます。したがって……」

 彼女らを使い魔に、と言い掛けたところでコルベールは止められ

る。
658使い魔人生綺談:2009/02/14(土) 15:34:53 ID:sF624C6D
「馬鹿者。滅多な事を言うでないわい。確かに使い魔召喚は
大事で神聖なものじゃ。じゃが、何にも例外というものはある。
ふむ。ところでミス・アージェント。お聞きしたいことがあるので

すが」
「ふむ、何ですかな? スリーサイズですかな?」

 ニコは軽口にて返し、オスマンは、それは又の機会に、と返す。

「実は我々は使い魔召喚の儀式を行っていたのです。使い魔候補
となるものは、見た目は銀色の鏡状の召喚ゲートをくぐると
されています。ミス・アージェントはそういた物に憶えはあります

かな?」
「ああ、それについてじゃが、わしのドアウェイ・システムと
召喚ゲートとやらが干渉したのだと推測しておる。
 ふむ、そうじゃ……」

 ニコは何やら言いながら右腕を軽く振るう。そうすると中空に
三十センチ程の杖らしき物が出現し、ニコの手のひらに収まる。
そして杖を軽く扉に向けて振るうと、杖の先端部分に輝く
幾何学模様が現れる。
 円や線を組み合わせた様な幾何学模様が暫く中空にて踊り、
矢印状の模様が二つ形成され、ニコとルイズを指す。

「……どうやら、わしの構築したドアウェイ・システムの
呪術公式にそこの娘さん……」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ


「……ルイズの召喚の魔法が混在してしまっているようですな」

 ニコは杖を仕舞いつつそう説明した。それを聞きオスマンが唸る



「むむむ、困りましたのう……。使い魔召喚は適性を見極める
のにも大事なものですからな。正規の手順ではないとはいえ、
ミス・アージェントを召喚したともいえますからな」
「なら、彼女を使い魔に……」

 と、コルベールは提案するが、

「馬鹿を言ってはいかんよ、ミスタ・コルベール。彼女は知性
ある存在で、獣ではない。おいそれと一生を縛る訳には
いかんじゃろうが」
「ならば、そっちのメイドに……」

 ルイズは平民ならと、ショーシャを見て発言するが、

「まてい、ショーシャはわしの小間使いじゃ。渡せるか」
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:35:40 ID:nPkd9cF2
支援
660使い魔人生綺談:2009/02/14(土) 15:36:35 ID:sF624C6D
 と、ニコが反論する。

「ふーむ、困ったのう。……ふむ、すぐには結論は出んじゃろう。
 とりあえずミスタ・コルベール。ミス・ヴァリエール以外の
学院生の皆を引率して学院に帰りなさい」
「はい、分かりました。では皆さん、帰りますよ」

 コルベールが号令すると、学院生らは杖を振って『フライ』の
魔法を唱え、校舎へと飛び立つ。

「さて、ミス・アージェント。申し訳ないのですが、
ご足労願えますかな?」
「ああ、構わんよ……。ところでオスマンさん。
飛んでは行かないので?」

 ニコはこちらの了承を聞いてから先導するかのように
歩き始めたオスマンに言う。

「ああ、それなのですが。ミス・ヴァリエールは……」
「ふむ、少々未熟な訳ですか……」

 ルイズはそれを聞き軽く顔を俯かせる。そんなルイズを見て
ニコは、ならばと言いながら彼女に向って手をかざす。

「え? あ? きゃ!」

 ルイズは自分の体が突然に浮遊するのに驚き、その横では
ニコも同様に浮遊している。

「ほう、自分と他者の同時に『フライ』を掛けられるですか……」

 オスマンは感嘆の声を上げる。

「なに、わしの使う魔法と、オスマンさんらの使う魔法は
まったくの別系統なのでしょうな。さほど驚く事でもありませんよ」

 ニコはオスマンが自分自身の魔法で浮遊するのを見届けると、
校舎に向かって飛ぼうとする。

「あのー、お館さま。私はどうしましょうか?」

 飛び去ろうとするニコにショーシャは声を掛ける。

「あー、そうじゃの。夕飯までには帰る。とりあえずは、
この扉に変なものでも行き来しないようにしていてくれ」
「はあ、分かりました。あまりそちらにご迷惑な事は
しないでくださいよ?」

 そう言って、ショーシャは飛び去るニコとルイズとオスマンを
見送るのであった。
661使い魔人生綺談:2009/02/14(土) 15:37:43 ID:sF624C6D
 今回は以上です。
 支援感謝。

 使い魔契約はやる予定ですが、その候補となるキャラが未だ出ず。

 あと、オスマンがきれい過ぎるかなぁ……。


 原作を読み返したら、ニコって軽く千歳超えてるっぽいんですよね。
 でも見た目十歳。
 すごいロリババァだ。


 途中、名前欄を入力ミスした orz
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:47:21 ID:yJQeq9/I
乙ルギスタイル

才人も喚んじゃえ!w
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:48:46 ID:tFNrvti/

凄く乙
楽しみにしてるぜ
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:53:30 ID:UMOIvT5I
・・・凄いババァだ。
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:55:05 ID:QYEB1Eug
たいした奴だってばよ
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:57:13 ID:1Si7hCnC
さすが、オスマン
安易に召喚されたからって知性ある人間の一生を縛る契約をさせたコッパゲとは格と思慮深さが違うぜ!
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 15:58:52 ID:nPkd9cF2

さすがのオスマンも見た目ょぅι゙ょには紳士っぽい
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:00:23 ID:ElbAb0uy
このオスマンは小五ロリの境地にいるんだな
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:08:12 ID:mDGk2iHi
ショーゴノイドってあったっけ
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:08:47 ID:mDGk2iHi
やや、間違えたショーヨノイドだった
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:10:25 ID:nvjZNLkO
ショーゴノイドは一応最後に出て来てショーヨノイドを惨殺してたぞ
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:17:56 ID:tUzLUOBl
ロリババァ乙


>>669
何かと思ってぐぐったら…
日本はもうダメだと思った
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:05:24 ID:uSTZeovX
>複数作品クロス
しもべの人が戻ってきてくれないかなあ

そういや永井ダイナミック系作品って少ないよねえ
ハルケギニア地獄地震後の世界とかやって欲しいなあ
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:10:31 ID:PM6wG0CH
だから極道兵器を呼べと何度も…
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:14:19 ID:B1wDvpMg
乙でした。

>>672
俺もググって見た。
伊魔崎斎ってまだ生きてるんだ、というのが正直な感想。
日本がもうダメなのはわりと同感。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:17:46 ID:7exSVUjC
何かと思ったらただのロリアニメか
江戸時代から触手プレイの浮世絵がある日本ならまだまだ大丈夫だ
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:21:48 ID:kGm97h4S
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:46:29 ID:NLdNuudf
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:52:39 ID:tUzLUOBl
もうやだこの国
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:54:05 ID:gbbrRu7h
>>673
バイオレンスジャックか・・・
誰がサタンだ?
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 18:22:53 ID:m5g8dTS/
SS書いている合間に、キャットルーキーの四方が加縫に式神を呼べと言われて
ルイズを召喚ってネタを書いているけど、やっぱスポーツキャラは難しい
ゴールドアーム書いた人は凄いと思った。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 18:29:11 ID:ws0EH7Db
複数作品クロス、スパロボがいい例だろうけど、まったく違った世界観を複数共有させるのは大変だろうな。
とりあえずラスボスの人がんばってください。あなたのおかげでエレオノールが好きになった。
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:14:00 ID:CYOTU6x5
石川賢の描いた武蔵を全員召喚した小ネタもある。
なぜか十数人全員がガンダールヴだったが
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:23:11 ID:CZjOvbss
あれ凄かったなw
ていうか賢ちゃん武蔵書きすぎw
投下予約なければ3分後に投下しますね。
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:34:35 ID:rA/dcd66
進路クリア どうぞ
41. 病と嫉妬

ふと、ルイズが目を覚ます。
そこは湯船の上ではなく、カトレアの部屋だった。
使用人が掃除したらしく普段通りに戻っている。

「ティファニアだったわね。あんのコブ付きエルフ」

治ったのはありがたいけど、何であんな治し方なのよ。
ねえさま死ぬかと思ったじゃない。と一人頭の中であの憎たらしい胸を、
こね回しながらそんな事を考える。そうこうしていると、
どうしたの?だいじょうぶ?と言いたそうにつぶらな瞳の動物たちが、
ルイズの近くに集まって来た。

「大丈夫よ。心配してくれているの?ありがとう」

近くの何頭かの頭を撫でてから、ルイズはベッドにごろんとした。
治って良かった、とルイズは嬉しそうにコロコロ転がり、
私が治したんだ。と勢いよくゴロゴロ転がって、勢いよくベッドから落ちた。

「あいたたた…あら」

逆さまの視点の中、一つの物がルイズの目に映る。
古ぼけた本だ。隣には表紙に何も書かれていない真っ黒の本があった。
それが何かルイズに分かるはずもない。彼女は古ぼけた本を手に取った。

「これ、ちいねえさまの日記帳だわ。昔持っていたもの」

カトレアは外を走るどころか、まともに立って歩くことも出来ない時期があった。
ベッドの上で、じっとしたまま一日を過ごすのはあまりにも苦痛であろう。
そう思ったヴァリエール公爵はこの日記帳を送った。

人の秘密が書かれたそれ。特にカトレアの物となると見てみたい。
ルイズは誘惑に駆られて開きそうになる。

「だめ。だめよルイズ。そんなことしたらちいねえさまが悲しむわ。
 それ以前にロックの魔法が掛かっているから、下手に開けようとすると爆発してしまうわ」

誘惑に負けたルイズはどうしたものかと日記帳を見る。
自分の魔法をコントロール出来ている訳ではない。
コモン・マジックもいくつか試したが、凄惨な結果に終わってしまった。
これで諦めれば良いのだが、しかし変なところで頭が回るルイズは、
一つの方法を思いついた。本に付けられている鍵とは何の関係も無い『虚無』の呪文だ。

「リコードの魔法を使って、この日記が書かれた時に行けばいいじゃない」

そうと分かれば早速行こう。時間はだいたい八年前。
本当に、自分とカトレアが同じだったかどうかを調べるために、
ルイズはリコードの長い呪文を詠唱し本の記憶を探る事にした。
これなら中身を見ていないと言い訳も出来る。と屁理屈混じりの思考と共に。
「あんた誰?」

そこは抜けるような青空の下ではなく、白くて殺風景な部屋だった。
目の前には、大きなベッドで布団を被って寝ている女の子がいる。
背格好はルイズにそっくりで、手にはまだ新しい日記帳があった。

「ち、ちいねえさま?」

「はぁ?また幻覚かしら。幻聴まで聞こえるなんて。
ほんと、アカデミーは変な薬しか作らないわね。
 まぁ、エレオノールが丹精込めて作っているんでしょうけどぉ?」

イメージの違いからショックを受けるルイズを余所に、
その少女は病的なまでに真っ白な髪を面倒そうにかいた。
その顔は痩せこけていて、目は鋭くルイズを睨んでいる。
肌の色も土気色に近く、生気はほとんど感じられない。

「ああ、そういえば――背格好以外はそっくりかしら。
 ルイズに。私がこの世で一番嫌いなルイズに」

ルイズの視界がグラリと揺れる。自分でも分からない内に、
その言葉を聞いて倒れたのだ。

「どうでもいいわ。ああ、そうだ。もしあの子が来たらあんたが代わりに面倒見てくれない?
 もうたくさんよ。なんでわたしの所にばかり来るのかしら…
 頭痛い、お腹も変だし…もう嫌。おやすみ幻覚さん」

ルイズは、言葉のほとんどが理解出来ていなかった。
ただ、ゆっくりと辺りを見回す。おそらく自分の家のカトレアの部屋で、
窓の外の色から今は昼間だと分かった。

カトレアが何度か、苦しげに呻きながら眠ろうとしてしばらく経ち、
ようやくウトウトとし始めた頃、扉が勢い良く開いた。

「ちいねえさま!」

小さなルイズがいた。泣いている。カトレアがピクリと動く。
モゾモゾと布団の中に入ろうとするが、小さなルイズがそれを阻止した。

「おきて、ちいねえさま。あねさまがいじめるの!」

カトレアはため息をついてから、布団から出る。
どうしようもなさそうな顔で見て、小さな子供の頭を撫でた。

「ルイズ、どういじめられたの?」
「もっとちゃんとしなさいって。わたしが魔法使えないのは変だって」

覚えてる。この次に私は励まされた。ルイズは自身の記憶を遡って、
過去の記憶を思い出した。

「大丈夫よ。変じゃないわ。ちっともね。すぐに使えるようになるわ。安心なさい」
「ほんとに?」

「ほんとうによ。さ、ここにいたらあねさまにもっと怒られるわよ?
 早く戻った方がいいわ」

「うん。ちいねえさまありがとう」

作り笑顔でカトレアは手を振り、扉が閉められてから今のルイズを見た。
「面倒見ろって、言わなかったっけ?」
「え、い、あ?」

混乱するルイズを、あらん限りの侮蔑の表情で見てから、カトレアは舌打ちした。

「幻覚に話しても無駄ね。無駄ついでに聞いてよ。こんなこと誰にも言えないし」

眠気が消されたカトレアは、暇つぶしをルイズに向けた。

「あの子ね。一々わたしの所に来てこんな事があったあんな事があったとか言うのよ。
 頭痛いってのに。しかも決まって後少しで眠れそうな時によ!?
 信じられないわ。空気が読めない星の下で生まれたのでしょうね。
 ああ、あの子はどうしたら静かになるのかしら…そうね、息しなくなったら何も言わなくなるわよね。
 ねぇ、そう思わない?幻覚さん。首でも絞めて…う、あ…」

急に、カトレアは酷く咳こんだ。ルイズははっとしてカトレアに近寄ろうとしたが、
カトレアの殺気が籠もった叫び声で近づくことが出来なかった。

「来るな!もう嫌よ。体が痛むだけの魔法も…苦い上に飲んだ後は体中が軋む薬も、
 母さまの意味のない努力もいらない!…楽にさせてよ。なんでこんな辛い思いしてまで、
 治る見込みの無い病気背負って生きなくちゃいけないのよ…なによ。
 魔法が使えない程度で泣いて。こちとら魔法どころか歩くことすらままならないっていうのに、
 皆ルイズルイズルイズルイズ……うるさいったらありゃしない」

ついにカトレアは血を吐いた。ルイズは、未だ殺気を放つカトレアに近づき、
ヒーリングを唱える。スクウェアクラスの効果で幾分かマシになったのだろう。
しかし、カトレアはルイズの頬を引っぱたいた。

「幻覚じゃないならあんた誰よ!さっさと出てけ。
 ここはわたしの部屋なんだから、わたし以外はいらないの!
 誰もいらない!何もいらない!皆、みんな嫌い!」

ルイズは何も言えず、部屋を走り去って――
気が付けば魔法が解除されて、フォンティーヌの寝室に戻っていた。


「私…わたしは…」

勝手に涙がこぼれていく。部屋の扉が開いた。
カトレアとラルカスが普段通りに部屋の中に入る。
ルイズの様に驚いたカトレアが言った。

「なにかあったの、ルイズ?」
「ごめんなさい。ごめんなさい…」

カトレアは不思議がった。にこやかにしていたのに、
一人ウィザーシンズ以外に何か変な事したかしら?と、ただ虚ろな目で泣いて、
謝るだけのルイズをじっくり見るとその原因が分かった。昔の日記帳である。

「に…に、良いのがないわね…まぁいいわ。勝手に読んだのかしら?」

ぽんと手を叩いてカトレアは納得した。おそらく『虚無』でも使ったのだろうと。
ルイズはただ謝っている。魔法の事はまだ何も言っていなかった。

「どこまで見たの?」

泣いているルイズを抱きしめて、カトレアは優しくルイズに聞いた。
ルイズは姉の胸の中で、消え入りそうな声を出す。
「…首、締めたいって。エレオノール姉さまに叱られた時」

どの時だろうか。と消えそうな声を聞いてカトレアは思った。
ただ、結論は一つだ。今もルイズは嫌い。

「そうね、そう思った時もあるわ。だってあなたの事嫌いなんだもの」

ビクリとルイズの体が震えた。ラルカスが驚いてカトレアを見る。

「か、カトレア?」
「ラルカスは黙っていてくれないかしら?これは姉妹の問題なの」

そう言われたら、黙るほか無い。カトレアはルイズを見る。
ルイズは目が涙に濡れているせいで、姉がどんな表情か分からなかった。

「それよりね、ルイズ。わたし今でもあなたの事嫌いよ。
 この世で一番嫌いだわ。何よりも嫌い。大嫌い」

ルイズはさらに大声で泣き出した。
全部私が悪いんだ。だから嫌われたって仕方ないんだと、
ただただ、涙を流して苦痛に耐える。カトレアに抱きしめられたまま。

「だって仕方ないじゃない。あなた――こんなに可愛らしいのに泣き虫なんだもの」
「ふぇ?」

カトレアがルイズの顔を拭いた。泣きはらしたルイズの真っ赤な目には、
普段通りコロコロ笑いそうな笑顔のカトレアが映った。

「ルイズ、覚えておいて。嫌いと好きは表裏一体なの。
 わたしがこの世で一番好きなあなたは、この世で一番嫌いでもあるのよ」

ルイズは訳が分からなそうな顔をしている。
カトレアは、ルイズのほっぺたを甘くつねった。
うにょーんと伸びる。

「柔らかいわね。エレオノール姉さまがよくされるのも分かるわ」
「ちいねえさま、怒ってない?」
「別に。一緒に日記の続き見ましょうか」
「やだ、もう見たくない」

そう言わずに。とカトレアがアンロックで鍵を外して中が開かれる。
ルイズはそれを恐る恐る覗いた。書き殴られた文字、内容はその日の出来事や体の痛みについて。
次のページには隅の方に小さく書かれた白い髪の女の子と、真ん中に書かれた桃色がかったブロンド髪の女の子の絵。
パラパラとめくっていくと時折血の後も見受けられた。

「昔、といっても二十四年前だけど。当時は、
わたしみたいなのが生まれてもすぐに殺されてたのよ。
表向きは流れた事にしてね」

よくあることよとカトレアは言った。
貴族とはなんだかんだいっても、最終的に見栄と伊達に生きる者達である。
そんな連中が体に不具合のある子供を育てたいと思うだろうか。
上流階級の中でも特に位の高い貴族などは、その意識が強く、
そうした子供は「無かったこと」にするのが暗黙の了解だった。
「母さまは、そういう生まれではなかったからでしょうね。
 頑張ってわたしを生かそうとしたの。お父さまや皆の反対を押し切ってね。
 お父様を悪いと思っちゃだめよ。それが「常識」だったのよ。
 お母様も戦傷の治し方はよく知っていたでしょうけれど、病については素人なのにね。
 悪い人じゃないわ。母親として立派だと思う。けれど死なせてくれた方が、
昔のわたしは喜んだわよ?例えそれが、後味を悪くする物にしかならないとしてもね。
結局私は生まれてからずぅっと毎日、酷い苦しみと闘う事になったわ」

ヴァリエール公爵の一目惚れから成立した結婚話は、
逆玉の代表例としてよく挙げられている。
挙げた連中の家が何故か何処かへ吹き飛ばされるのは、
トリステイン七不思議の一つにもなっている。

「それで、ねぇルイズ。
 あなたが気持ちよく眠れそうな時にたたき起こされたら、
 しかも毎日の様にそれをされたら、
 静かにさせるにはどうすればいいかとか、考えたりしてみないかしら?
わたしね。夜中とかに体中が痛くなって眠れなくなる日が多かったの。
だから少しでも昼間の間に寝たかったの。それにあなた、
わたしのベッドによく潜り込んできたわね」

笑顔のまま世間話をする様に話すカトレアは、逆に恐ろしく見えた。
ルイズは反射的に謝る。

「ご、ごめんなさい!」

そしてまた泣きそうになる。よしよしとカトレアはルイズを撫でた。

「怒っていないし、謝って欲しいわけでもないわ。
 ただ、どうかしら。というお話よ。
 結局わたしは八年くらい前にフォンティーヌに移り住む事になって――
 ああ、あったあった。ここからだわ」

ルイズは日記を見る。ただ、「寂しい」だけがページの最初から最後まで、
大量に書かれている。文字が、痛みを訴えていた。

「ルイズ。あなたがいてくれたから、わたしは正気でいられたのでしょうね。
 病気が悪化したのとわたしの体が大きくなったから、
こっちで本格的な治療をする事になったのよ。
 アカデミーの実験体代わりと言っても差し支え無いわね。
 でも、それ以治す外方法が無かったのよ。エレオノール姉さまは、
 よくわたしに泣いて謝ったわ。全部自分が悪いんだって。そんな事ないのにね。
そんな痛みと闘うだけの毎日よ。体はさらに軋んで痛んで大変よ。
 薬のせいで胸は大きくなったけれど、この方法はオススメしたくないわね」

と冗談交じりにカトレアは言うが、ルイズは真剣に聞いていた。
泣きそうな顔の妹をよしよししながら、カトレアは話を続ける。

「それでね、そんな生活が続くともう本当に頭の中にね、未練がなくなっちゃったの。
 楽になりたい。楽になりたい。それしか考えられなくなったわ。
 でも、時たまあなたの事を思い出して止まるの。お手紙を送ってくれていたしね」

「ちいねえさま…」

自分が魔法を使えなくて抱いた負の感情が、ひどくちっぽけに思えた。
少なくても、そこまで思い詰めた事は無かったからだ。
精神的な苦痛は、肉体のそれに比べて遙かに楽なのだと、
今更ながらにルイズは理解した。少し悲しげな顔でカトレアは続ける。
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:39:12 ID:rA/dcd66
支援
「残念だけど、それも永遠には続かないのよね。
 どうやって死のうかと考えたとき、自分で死ぬのはダメだって思ったの。
 それは甘えだって。何でそう思ったのかは分からないわ。
 でも、死ぬのなら獣にでも食われるのがお似合いだって思ったのでしょうね。
 どうやってかは本当に思い出せないわ。けど、確かにわたしは近くの森に行ったの。
 嵐の日の真夜中にね。そこでおもしろい人に会ったわ」

「誰?」
「シェオゴラスというお年を召した王子さ――ルイズ?どうしたの」

ルイズは思いっきりむせた。カトレアの表情がああ、と変わる。
その目は、以前狂気の島を統治していた老人の目に少し似ていた。
鳶色の目の瞳が猫の様に細くなったのだ。

「ふうん、知っているのね。その反応を見ると」
「ち、ちいねえさま?」

カトレアは普段通りにコロコロと笑うが、雰囲気が違った。
冷たくなったわけではないし、かといって熱いわけでもない。
ただ言いしれぬ不気味さを持った笑顔だった。

カトレアは真っ黒な表紙の本を手にする。
名前すら無いその本は、全ての禁忌が記されたマジックアイテムだ。
オブリビオンのある書庫で入手する事が可能であり、
実際にモリアン・ゼナスという男もこの本を読んだ。
しかしその副作用として、見た者を普通のままではいさせない。
多少緩和されているとはいえ、常人なら死を選ぶ苦しい病を患っているのにコロコロ笑えて、
読めば気が触れる本を読んでも平気ということは、つまり――

本の力に飲み込まれないほどの、
とんでもなく強い精神力を持つに至ったということだが、
ルイズにはそんな事、分かるはずがない。
そもそも、この本が何かすらルイズは知らないのだから。

ばさり、と日記帳がベッドから落ちる。ルイズは考えたことすら無かったカトレアの部分が目に入ってしまった。

桃の空が笑ってる。暁に飲み込まれた私は極楽鳥についばまれ、
丸い顔した蝶になる。シェオゴラス様が踊る。だから猫目のわたしも踊る。
踊るわたしは何なのか?きれいな縄で飛ぶわたし。
フォークじゃないフォーク。だからスプーン。
そう、スプーンのカトレア。ビッグヘッドはおもしろい――

「ちいねえさま?これって…」

また息苦しさを感じながら、ルイズは尋ねた。
気分は最悪で自分がどんな表情をしているかさえ分からない。
カトレアは、うふふと含みを持った笑いと共に答えた。

「虚無の魔法の事は知っていたけれど、ヘルマイオス様との契約で教えちゃいけなかったのよ。ごめんねルイズ。
 けど、これでおあいこという事にしないかしら?ああ、この指輪はシェオゴラス様にもらった物だから」

どういうこと。わかんない。わけわかんない。
ルイズは、変わった指輪を嵌めるカトレアに恐怖を抱いた。
ほんの少し目が変わっただけだが、ルイズにとってはそれだけではない。
まるで今まで接してきたカトレアが全て演技であったかの様に錯覚してしまう。
実際の所どちらが演技なのか、それを判断することは難しい。
なにせカトレアは「昔の」シェオゴラスに感銘を受けたからこそ、今も生きているのだから。

「どうしたのルイズ?わたしはわたしのままよ。それともあなたが変わったのかしら?
答えは日記の中に。もう一度――入ってみたらどうかしら?」

コロコロ笑うカトレアが怖くなったルイズは、逃げるようにリコードで本の記憶に入っていく。
それがカトレアの目論見通りであるともしらずに。
ルイズが意識を手放すと、ラルカスはううむと頭を捻らせ、彼女に布団をかけた。

「いきなりすぎやしないかね?カトレア」

虚無だなんて初耳なのだが。とラルカスは言うが、
カトレアは意にも介さず歌うように口ずさむ。

「ねぇラルカス。雄牛のラルカス。あなたもわたしと同じかしら?少し違うかしら?
違っているのが普通だけれど。みんな違ってみんな良いって言うじゃない。
あなたもわたしもみんなと随分違っているけれど、それで良いのかしら?」

何も言わず、ラルカスはカトレアの頭を無骨な手で撫でた。
カトレアはいつもの様にコロコロと笑って、ミノタウロスの頬にキスをした。

「君がそういう風にごまかすときは、何かあるということだね」
「さぁ、どうかしら?」

どこまで本気でどこまでが演技なのか。なんとなく、何度か出会ったあの老人の面影を主人に見るラルカスであった。

投下終了。
カトレアさんの痛みは、7巻245pのホーキンスの思考から、せめて水魔法で感覚を麻痺させて楽に…
という考えが出ていないため、こういった風に。脳移植しているから麻酔は可能?
そこらの話は次回以降で。では、また次の投下まで。
支援ありがとうございます。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:43:47 ID:vbiFzwkx
>>674
永井じゃねえ
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:49:06 ID:sF624C6D
しえん
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 20:51:44 ID:yJQeq9/I
乙子みすゞ
698381:2009/02/14(土) 21:10:16 ID:9iSziZEv
699698:2009/02/14(土) 21:13:00 ID:9iSziZEv
すみません。
別のスレで書き込んだまま「381」にしてました。
申し訳ないです。
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 21:54:10 ID:4/VbUCAA
複数作品のクロスは、公式でクロスさせてれば堂々とやれるんだがな。
ウルトラの人は、そのあたり上手くやってると思う。
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 21:58:32 ID:CZjOvbss
ていうか、複数クロスで呼ばれてるのってまぁ、公式である程度クロスしてる作品ぐらいじゃね?
ラスボスはユーゼスがスパヒロとスパロボ両方に出てるし、魔獣は新説でゲッターとラグースらしきのが出てきてる
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:00:24 ID:PM6wG0CH
クロノ「クロス」の出番だと聞いて
703名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:04:35 ID:4/VbUCAA
でもそういう公式クロスは、シリーズ作品にある程度の歴史がないと作られないという罠。
704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:05:55 ID:yJQeq9/I
トリガーもクロスも両方好きな俺はきっと異端
でもラジドリは無理っぷす
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:09:20 ID:OMR9CUqz
ラスボスは

ユーゼス
→スパロボ(平行世界の自分)
 →ダークブレイン(OGS?)
  →デブデダビデ・スカルナイト・クリスタルドラグーン(グレイトバトル※ユーゼス未登場)
 →シュウ(基本設定はOGっぽい?)
  →魔装機神LOE(邪神ルート)
→スパヒロ

って感じだから結構複雑にクロスしてる
コンパチヒーローとかロア(グレイトバトル)も出てこないかな・・・
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:12:42 ID:wZ9aXe02
クロノクロスしかやってない俺はもっと異端
707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:17:27 ID:VOetHsFy
クロノクロスなんてありませんよ

ヘルシングやサイバスターや東京魔人学園がTVアニメ化されてなかったり
テッカマンブレードに続編がなかったりするのと一緒です
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:18:28 ID:PM6wG0CH
>>707
酷いwwwww
でも荒れる可能性あるから控えてね
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:20:09 ID:Lkiq9fPt
オブリビオンの作者乙であります。

箱○も戻ってきたことだし、シロディールに戻っt………

おや?
荒廃した大地にデカイ鼠や黄色い肌の巨人がいる世界に…………
シンセンナニクダ!グシャ!
710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:21:14 ID:4/VbUCAA
>>705
まずスパヒロ→スパロボαでユーゼス、
α→魔装機神でシュウ、
α→OG→OG外伝→グレイトバトルでダークブレイン、
OG→無限のフロンティアでアインスト、

さらにそれらがゼロ魔の世界で……って、なんだこの複雑なクロスは……。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:23:19 ID:7exSVUjC
クロノクロスはトリガーの続編ではなく単発と考えるなら十分面白かった
細かいとこでいろいろ不満はあるけどさ
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:23:59 ID:HBtwvrCO
クロノクルセイドのクロスが読めるのはここですか?
713名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:28:17 ID:sF624C6D
クロノスヘイズのクロスが読めるのはここですか?
714名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:28:43 ID:janoTBcN
あー、コミック8巻の最終決戦の後、ロゼットの前に帰ってくるまでの間
ルイズに召喚されて使い魔やってるクロノ……



おや、意外と違和感無し?
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:36:19 ID:OMR9CUqz
>>710
あぁ無限のフロンティアがどうこうと言ってたな
こっちはやったこと無いからわからんかった

アインスト出てるんだ?
まぁキョウスケ・エクセレン他のオマージュ?キャラが出てるから当然といえば当然だけど
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:53:01 ID:yJQeq9/I
>>714
クロノに魂喰われて余命ウン年とかのロゼットが発作で苦しんでる時に、ルイズやシエスタなんかとラブコメしてたわけですね!許せん!
まぁそれでもいいかもしれんけど、サテラ復活くらいの頃のクロノが妥当でないか
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:12:49 ID:QIQ4EpVC
>>709
ポストアポカリプティアに居続けて心が荒んだら、
シロディールの豊かな緑の中でゆっくりしてください。
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:29:46 ID:7w//0aPF
>>716
ロゼットが亡くなった後じゃないと、クロノとロゼットがかわいそうすぎるから、おまいさんの意見に諸手をあげて賛成だな。
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:38:50 ID:hwXs0PGA
平将門が召喚され
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:41:51 ID:PM6wG0CH
どうやら>>719はTATARIをうけたようだな
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:43:22 ID:gAEzzM7L
メガテンかwww
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:44:18 ID:b1cRsY2Z
バビル2世のアレとか
723名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:46:23 ID:fKi6rQy0
ニャルラトホテプ(ry
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:53:51 ID:Ewe+lL1T
誰かTATARI BREAKERを、うしおととらを呼べ!!
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:54:35 ID:VOetHsFy
シャントット様がry


あの人なんでコスモス側なのかよくわかんないし
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:55:39 ID:PM6wG0CH
行くぞー!とらー!
727名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:57:02 ID:7exSVUjC
シャントット様を呼んでゼロ魔を蹂躙せずおもしろい話が書ける作者がいたら掘られてもいいわ
728名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:57:10 ID:wDSbhQcl
しるかよ!うしおー!
…とらの人帰ってこないかなあ
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:57:20 ID:vSRJpsxj
流れぶった切るんだが、召喚されるキャラの世界設定がハルケギニアの設定を変えちゃう作品ってまずいのかな
どの程度の世界改変だったら許されるのか、全くだめなのかがよくわからん
730名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:58:29 ID:PM6wG0CH
序盤はやめといて中盤あたりからやれば結構自然
731名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:58:34 ID:P9F8KPgI
クロス先が完全上位でゼロ魔世界がおまけにならなければ良いんじゃないかな
732名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:00:15 ID:Hbt9pZ6Z
>>729
るるるとか好きだったぜぁ
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:01:48 ID:CoV4aysG
シャントット様ってのディシディア ファイナルファンタジーに出てきた人ですよね。
確か、オンラインの方からの。
ディシディア ファイナルファンタジーで小ネタ、思いつきそう。

>>719
シルフィととらのカップリングがよかったですよね。
本当、帰ってきてほしいです。
734名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:02:03 ID:8Q8/S6MH
あのお方が来たら蹂躙する以外選択肢ないからな
あれでも研究者としても偉大だからオスマンと交渉すればまあ学院には居ついてくれるかもしれない
ルイズが使い魔になれなんていったら消し炭にされそうだし
気まぐれでジョゼフのところに殴り込んだりレコンキスタを殲滅したりもしそうだが
735名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:02:53 ID:iqV6hYqb
原作で描写されてる部分はキープ、語られてない部分はイジり放題、で良いのでは。
736名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:03:00 ID:js1KlrWE
>>729
>どの程度の世界改変だったら許される
避難所だったらご立派くらいの改変が可能なのは確認済み

本スレはどうだろう?
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:03:13 ID:/AUdusQT
好きな作品のSSを晒す場が他に無いからここを使っているだけだと思われたら荒れる

ぶっちゃけ避難所が無難
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:07:22 ID:iqV6hYqb
そう言えば、
「おっ、このキャラって原作じゃ出番少ないけど良い味出してるよなぁ。よし、あの作品のあのキャラと絡めつつ、自分なりに掘り下げてみるか!」
こういうのって、改変の内に入るのか?
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:08:10 ID:mhtBAWzA
意味無く改変とか、都合により改変とか、このシーン出したいために改変とか
短絡的なのはマズイだろうね
だけど、本当に練ったシナリオのための改変だったらいいんじゃない?
でも、整合性保つのとか、大変だと思うよ
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:09:14 ID:xmFDrT1W
>>734
シャントットは、開発曰く「負けない人」であるってことしか知らんけど、テキトーな理由でっちあげて弱体化できんのん?
ザーフィの月匣に入ったベルが弱体化したみたく、この世界の常識(ルール)では力を発揮できないー、とか
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:10:56 ID:Cj6nx6hv
>>740
自重したあのお方を見て楽しいのか!?
あと、「様」をつけろよデコ助野郎ッッ!!!
742名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:12:22 ID:eDEcp+Ef
遅レスですがエルダーの方、乙でした。
まさかのダーク・カトレア降臨。
体は病に、心は狂気に蝕まれてたなんて……ステキすぐる。
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:14:46 ID:xPbBXjRh
ん〜…とりあえず他の作品を読んでみて考えます
744名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:15:52 ID:t7gVNG4T
>>732
まとめにないが、どこで読める?
745名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:17:06 ID:mHfEQh7h
シャントット博士(ていうかFF11の黒魔)が使うのは精霊魔法だからむしろ威力が上がりそうだな
弱体化させるなら人形を使うくらいだが人形ですら
初級魔法でプレイヤーの最大魔法を軽々と超えてくれる
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:23:00 ID:iTIKI7Jr
DFFは据え置きでデカデカと登場してるガブラスはともかく
知名度が低いであろうシャントットが出たのが凄い不思議だったぜ

あとアシュラマン
747名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:26:52 ID:xmFDrT1W
>>744
・・・ごめんなさい。うっかりしてました。
少々はばかりのある事柄ですので、どうにか自力でお探しください
748名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:30:30 ID:mhtBAWzA
749名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:34:42 ID:hBK7Liel
>>746
ありゃ・・・おいてけぼりは なしだぜー!

ギルガメッシュの参戦でバーボンに・・・そんな時期が俺にもありました
750名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:38:29 ID:mHfEQh7h
FF11から出すならシャントットかマートだろうしな・・・

いやならやめてもいいんじゃぞ? と言うオスマンを想像した
751名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:47:01 ID:15MX9rV4
>>746
11はスクウェアの稼ぎ頭だというのにこの扱い
くやしいのうくやしいのう
752名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:50:51 ID:gfslRxCM
>>751
今時そんな言葉使う奴がいるとは思わなかった
元ネタ知らんけど
753名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:51:25 ID:wxZR22Uy
>>739 キャラが召喚の門を通った時に、元の能力が変わったり力が上がったりするのはOKかな?
    あとキャラの能力がチートっぽかったりするとマズイだろうか?
754名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:53:02 ID:0M3Uv703
>>752
はだしのゲン
755名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:53:20 ID:hBK7Liel
据置しかプレイしないライト層からすれば11?って感じだろうし仕方ないけどな
>>750
全ナンバーから召喚するとは思ってなかったから
「11からシャントット?ハハハまたまた御冗談を」って感じだった

それを考えると最新作と時期が合わなかったのは幸運だったんだな
756名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:53:34 ID:15MX9rV4
>>753
自分がその設定で魅力的な話をかける自信があるならいいんじゃないのかね
757蒼い使い魔 第36話:2009/02/15(日) 00:54:47 ID:Y8FyPcJT
アトルガンミッションでそれらしいこと匂わしてたしなぁ
アレキサンダーの残骸に時空の歪みができてそこに入って
ディシディアに参戦したとか、そういう設定らしい

アレ伏線だったんだなw
758名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:55:26 ID:Y8FyPcJT
やっべ名前消してねぇ!
ごめんさい……
759名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:57:16 ID:mhtBAWzA
>>753
ゲートにそんな機能なんか無いわけなので、それこそ安易な改変になるんじゃないかな?
キャラの能力がチートでも、敵に回るんだったら。とかmtlみたいに暗躍する方向で動くんだったら
いいんじゃないの?
テンプレドラえもんだったら、面白くも何ともないけど。
760名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:59:06 ID:wxZR22Uy
>>756 ガンダ補正って事にして、魅力的になるよう書いてみるよ。
761名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 00:59:33 ID:DbOJoX8A
シャントット様は魔力は無限に等しいわ連続魔じみた事もできるわ近接戦闘も達人だわで最強すぎる
762名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:01:52 ID:15MX9rV4
タルタル観的には美人らしいし

問題なのは性格だけだな
763名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:04:23 ID:mHfEQh7h
意外と11プレイヤーがいることに思わず微笑みが鬼なった
764名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:04:35 ID:gfslRxCM
>>760
必ずしも厳密に原作の設定に沿う必要もないんじゃないかなー、と思う
ケースバイケースで
それにチートであっても、周囲のリアクションの描き方によって魅力的に見えるかもしれない
765名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:06:04 ID:wxZR22Uy
>>759 原作1巻でルイズが「召喚されたのが猫の場合、ゲートを通る事によって
人間の言葉を喋るようになったりする」とか言ってた気がするんだけど、あれを
拡大解釈するのは改変になるんだろうか? 因みにmtlとかテンプレドラえもんって何?
766名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:09:19 ID:iqV6hYqb
>>757-758
一瞬、これから投下が始まるのか、と思っちまったじゃねーかww
767名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:12:28 ID:gfslRxCM
つうか、召喚されるのが地球の現代人以外の存在なら、少なくともタルブ周りや場違いな工芸品は
嫌でも変わらざるを得ないんじゃない?
768名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:15:24 ID:mhtBAWzA
それくらい、反応のいい作品読んで傾向見てみたら。と思うのだが?
文章書きするんだったら、分からないからってオウム返しに聞くんじゃなくて
前後からの類推とか、自己判断しようよ。
769名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:15:53 ID:js1KlrWE
変えたほうが自然ではあるが、変えないのも一つの手だと思う
770名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:16:30 ID:C51Jo9aw
>>757
蒼の人FF11やってるのか、アトルガン終わらせてるって事はけっこうやり込んでるね
オイラも2垢で1800日↑程度のプチ廃だったけど
アトルガン出た頃から課金だけしてほとんどやってないんだよね
シャントット様活躍するならミッションだけでもやってみようかな。
771名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:18:50 ID:ky0QJzxQ
>>765
使い魔にしたら。だから、契約してルーンを刻んでからだろ。
獣が人語を話せるようになる能力のルーンって感じじゃないか?
だから、別の能力あたえようと思ったらガンダ以外にしないと。
772名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:22:01 ID:dzijSbB+
>>767
地球とは違う世界観とのクロスでもあえて地球製の品物を出すことで
ハルケギニア・クロス先の世界とは他に第三の世界の存在をほのめかすのに使えるかも
そしてルイズは世界は広い事を知って、その世界でさえも更に大きい世界から見ればちっぽけかもしれない
そんな世界から見て貴族だとか魔法が使えるとか、そんな事は取るに足らない現象の一つだという思考にいたって変っていく

とか出来るかも・・・でもルイズは元が頭固いし無理かな
773名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:26:24 ID:3TMlCZw+
ぶっちゃけ面白ければ成長、つまらなければキャラ改悪です
774名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 01:34:25 ID:jcX9fIqU
PSP版ペルソナはピアスの少年に多少なりの我というか個性は出るのだろうか
775名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:01:51 ID:INMX9s4q
>>774
ストーリーいじったりはしないだろうからそこらはPS版のままだろ
召喚するのに我がいるなら、漫画版とか

漫画版の兄貴の方が別作品のクロスで書かれてるのは見たことあるけど、
そういえば、ピアスの少年がクロスでっていうのは、あんま見ないな
776名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:06:11 ID:TmttKr0Y
いっそのことルシファー閣下に降臨していただきますか
777名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:13:09 ID:+oEK3Ko9
ベガスから来たにせエルヴィス召喚
ギーシュと本当に戦わせます!
778名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:25:08 ID:1i2l4DYO
設定自体は作品によって結構変わりまくってる
シエスタ周りはよく魔改造されるし、ガンダ補正のおかげで生きられるとかあったりする
ワルドとかたまにいい奴になったりロリコンになることもある
だからやりたいならキャラなり設定なりを変えてもいいとは思う
ただその作品内で整合性が取れなかったり、ゼロ魔キャラが空気になったりするのはやっぱりNGだな
あんまり世界観が変わるようなら避難所でやった方が無難だが
779名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:36:49 ID:SRWzSGpe
ワルドがいい奴になってる作品てどれだ?
780名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:39:26 ID:3tXjpE6o
とりあえず魔砲の使い魔とご立派様が思いついたが綺麗なワルド
他には何か有ったっけ?
781名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:41:48 ID:xmFDrT1W
ブイスリャアのワルドは綺麗・・・か?
782名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:41:57 ID:SRWzSGpe
ご立派様のワルドを綺麗なワルドというかwww
魔砲は読んでたけどワルドの覚えがないな
読んでみるか
783名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:42:03 ID:eXr5bVku
ここのスレじゃないが石仮面とか
784名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:44:31 ID:DbOJoX8A
エデンの林檎のワルドも結構綺麗だぞ
785名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:47:26 ID:SRWzSGpe
ガンパレのワルドは国を憂えて裏切ってるから
ある種綺麗なワルドだなと思った
786名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:47:37 ID:js1KlrWE
ご立派のワルドは綺麗だけど汚い

あとは蛮人あたりか
787名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:50:01 ID:3tXjpE6o
えー、だって前に同じような質問した時にご立派ワルドの名前が挙がってたよw
あとローゼンメイデン召喚のワルドもイケてた感じもあるな
788名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:51:07 ID:TfdXA8Vr
わる〜いワルちゃんワンドセル♪
789名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:53:36 ID:M1eUpilb
世界観まで融合させてクロスさせていると言えばやっぱりるるるとmtlだなぁ。
790名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 02:54:02 ID:SRWzSGpe
ご立派様のワルドは綺麗に壊れたワルドで綺麗なジャイアン的なワルドではなかろうwww
791名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 03:10:14 ID:oONuJVvd
>>775
兄貴何の作品に出てるん
792名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 03:20:22 ID:ky0QJzxQ
>>791
ネギま
793名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 03:26:17 ID:6v9iGvQ+
エデンの林檎の続きが楽しみなんだけどな
794名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 03:30:08 ID:bPWSxZaF
>>791
俺が言ったのは>>792であってる
795名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 04:41:10 ID:TfdXA8Vr
>>790
マザコンを克服したワルドに最早死角無しという事かw
でも確かに、ジョゼフのブラザーコンプレックスと同じで、ワルドも自身の抱えるマザーコンプレックスを
浄化する事が出来ればきっと憑き物が落ちたように真人間になれるんじゃないかなとかオモタ
796名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 04:57:11 ID:8CwYIHJK
>>795
マザコンが消えてもロリコンがあるじゃないか
797名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 05:02:02 ID:mygb4Bw1
つまりワルドの場合マザコンを解除した後、エルザとのフラグを立てればパーフェクト・ワルド爆誕というわけですね、わかります
798名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 05:11:08 ID:HyDYoc23
綺麗なワルド……綺麗なジョセフって「愛しのシェフィ」以外で
いたかな?
799名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 05:17:00 ID:6v9iGvQ+
ゼロのしもべでロリコン確定してなかったか?<ワルド
800ゼロのエルクゥ26 0/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:34:16 ID:5lmKUyUL
おはようございます。お久しぶりになってしまいました。
残念ながら拙作のワルドさんは退場済みですが、ロリコンもたまにはいいよね!
5分後に投下始めたいと思いますが、ただ今進路クリアでしょうか?
801ゼロのエルクゥ26 1/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:41:21 ID:5lmKUyUL
ダレモイナイ、トウカスルナライマノウチ……

------------------------------------------------------------

 一匹の風竜が、夜を切り裂いていく。

「お兄ちゃん、もうすぐアーハンブラに着くよ」
「ん……んん」

 夜空を駆ける風竜の背びれにもたれかかって目を閉じていた少年の肩を、傍らにいた少女が軽く叩いた。

「……ああ、もう着いたのか。サンキュー、エルザ」

 それまで眠っていたらしい少年は、頭をさっと振って軽く目を擦ると、少女に向かって微笑んだ。
 ハルケギニアには珍しい黒い髪がさらりと揺れる。ろくに整えられていないざんばらな髪だったが、どこか精悍さを感じさせた。

「いいよ。これからお兄ちゃんにはたっぷり働いてもらわなきゃいけないんだからね?」

 エルザ、と呼ばれた少女―――どちらかといえば、まだ少女とも呼べない、人形のような幼い風貌をした女の子は、サラサラと輝くブロンドの金髪をそよ風に揺らしながら、いたずらっぽい微笑みを浮かべた。

「なんだよ、エルザは手伝ってくれないのか?」
「ここまで風の精霊にずっと頼みっぱなしだったし、疲れちゃった」
「おいおい……」
「だってー。こんな速度で風に煽られてたら、髪がぐしゃぐしゃになっちゃうもん」

 風竜は、全速力で空を駆けている。強烈に吹き付けているはずの風にも、二人の服や髪はそよそよと薙いでいるだけだった。
 それを為しているのは、年齢相応にぷくっと頬を膨らませている、このエルザなのだった。

「あのな……今から何をしに行くのか、ホントにわかってんのか?」
「わかってるよ。ヘンな悪霊に取り憑かれたエルフを退治しに行くんでしょ? 精霊の加護のなくなったエルフなんて、わるがしこい人間なんかよりよっぽど楽勝だよ。へーきへーき。むしろビダーシャルさんだけで全部倒しちゃうんじゃない?」

 ハルケギニアならばどれほど力あるメイジでも怖れを抱くエルフ族に対して、年端も行かぬ少女が何でもない事のように言い放つ。
 この一帯に住む人々が見れば、例外なく目を剥いたであろう。

「……まあ、そうかもしれねえけど、その代わりめちゃめちゃ凶暴になってるんだぞ」
「ただ力が強いだけなら、どうってことないじゃない。今この大地を我が物顔で支配している人間が、竜や、私たちや、オーク連中より力が強いとでも言うわけ?」
「いや、そういうわけじゃねえけどさ……」

 自分は人間ではないとでも言うように、皮肉げに口元を歪めるエルザ。
 そしてそれは、その通りだった。彼女は先住魔法を扱う亜人……その内でもエルフに次いで恐れられている、吸血鬼と呼ばれる先住種族なのだった。

「はぁ……ま、エルザがそんなに余裕そうなら大丈夫……なのかなぁ?」
「そーそー。どーんと、可愛いエルザちゃんにかっこいいところを見せるつもりで行ってきなさいって」
「言ってろ……ん、そろそろか」

 少女とのやりとりに緩んでいた少年の顔が、地平線に霞む城の姿を捉えるや否や、キッと引き締められた。その額に刻まれたルーンが、煌々と光を放ち始める。
802ゼロのエルクゥ26 2/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:42:37 ID:5lmKUyUL
「……あは」

 その横顔を見つめていたエルザが、外見通りの年齢ではとても身につけられないような、ひどく妖艶な笑みを浮かべた。
 それは、紛れもない『女』の顔……それも、その人形のような幼さと相まって、魔性とも言える色気を放つそれだ。自制心の足りない男であれば、思わず襲いかかり、その幼い体躯を組み敷いてしまいそうになるような、そんな顔。

「……ん、どした? 俺の顔に何か付いてるか?」
「目と鼻と口ー」
「あのなあ……」

 ことさら子供っぽい言葉で返された少年は呆れたように視線を正面に戻し、エルザはそれを見て心から楽しそうな笑顔を浮かべた。

「―――来い」

 速度を弱めていた風竜の周囲に、いつの間にか幾つもの影が随行していた。
 翼を持った人型だった。翼人と言うには禍々しく、悪魔と言うには貧相なそれは、魔法で動くガーゴイル。魔法技術大国、ガリア王国の技術の粋を凝らして作られた、神の頭脳専用の戦闘人形だ。

「行くぞ、エルザ」
「うん。サイトお兄ちゃんっ!」

 抱きついてきた少女に片手を添えた少年―――神の頭脳ミョズニトニルン、平賀才人は、ためらいなく風竜の背を蹴り、その身を夜空に躍らせた。

§

「―――っ!?」
「どうかしたかね? ミス・ヴァリエール」
「いえ……なんだか犬が調子に乗って種馬までクラスチェンジしているような電波が……」
「ふむ?」
「ううん、何でもありません。少し疲れているだけだと思います」

 頭を振って毒電波を追い出したルイズは、ここが学院長室である事を思い出し、居住まいを正した。

「うむ。大任ご苦労じゃったな。申し出のあった使い魔の召喚については、明日にでも手筈を整えよう」
「……はい、ありがとうございます」

 王宮からの帰りの馬車が学院に到着するなり、ルイズは報告がてら、オスマンへと直談判しに学院長室を訪れていた。
 次の使い魔を召喚させて欲しい。自分の才能は、『サモン・サーヴァント』にこそあるのかもしれないから、と。

「無理はするでないぞ、ミス・ヴァリエール。君のこれまでの経緯を見知っておる人間としては、軽々しく言うのは憚られるが……我が学院の教師に、生徒の相談を無碍に扱うような人物を選んでおるつもりはないからの。悩みがあれば、気軽に相談するとええ」
「お心遣い、感謝致します」
「うむ……では明日、準備が出来次第、使いを寄越そう。今日はゆっくり休みたまえ」
「はい。失礼致します」

 社交辞令を崩さないまま、ルイズは優雅に一礼すると、学院長室を去っていった。
803ゼロのエルクゥ26 3/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:43:49 ID:5lmKUyUL
「……教師というのは、難しいものじゃのう。のう、モートソグニルや」

 オスマンの体を、使い魔であるハツカネズミが駆け上がって肩まで昇ると、何かを耳打ちするかのようにちゅちゅう、と鳴いた。

「……ピンク、か」

 ゾクぅっ!

「〜〜〜〜ッ!?」
「どうした? 娘っ子」
「いや、何だか寒気が……はあ、何なのかしらさっきから」

 どうにも、変な感覚が鋭敏になっているようだった。ルイズはふるふると頭を振り、怖気を振り払う。

「ま、良かったじゃねえか。使い魔、すぐに召喚できるってよ」
「うん……」

 希望が叶えられたと言うのに、ルイズの表情は浮かないもののままだった。
 それ以上はどちらも口を開かず、ルイズは黙々と足を進める。
 昼下がりを幾分か過ぎた学院内はちょうどティータイムらしく、社交に忙しい生徒達で賑わっていた。
 そんな中、本人の身長ぐらいある長剣を軽々と担いで歩くルイズは悪目立ちしていたが、本人は好奇の視線を気にする素振りもなく、まっすぐに女子寮塔へと入っていく。
 石造りの寮は、時折ひそひそと話す声が漏れ出してくる程度で、ひんやりと静まり返っていた。

「…………」

 ルイズは、部屋に戻って思索にふけるつもりだった。
 自分の魔法の事。これからのトリステインの事。呼び出される使い魔の事……そして、『自分の体』の事も。
 考えたい事はいくらでもあって、そのどれもが、図書館でどれだけ本を漁っても載っていないであろう、答えの見えない問いだらけだった。
 自分を守って死んだというのに、死に目にすらあえず、亡骸もない耕一。それを悲しむ暇もなく、まるで使い捨てのように、次の使い魔を召喚しようとしている自分。
 罪悪感を振り切るように、頭の中を思考でいっぱいにしたかった。思い出してしまって悲しみに暮れられるなら、それもいい。
 そんな陰鬱な気分のまま、寮の階段を踏みしめていく。
 フライの魔法で窓から出入りする不精な生徒は案外多く、階段はいつも人気が少ない。
 『ゼロのルイズ』にとっては、そんな些細な事すら、気分をささくれ立たせる要因だったのだ。……これまでならば。

『エルフの軍勢ですってえっ!? だ、大事件じゃないのっ!!』
「っ!?」

 ほんの少し前までの日常だったというのに、どこか遠い昔の懐かしい記憶を掘り返しているかのような気分に浸っていたルイズは、突如響き渡った声に息を呑む。

『エルフを一人で倒せって? ふざけてるのこれ? しかもガリア花壇騎士って何よ! もう、しっかり説明してもらうわよ!』

 すぐ横の扉から聞こえてきているその声は、とても聞き覚えのあるもので……その部屋が、声の持ち主の親友のものだという事を思い出したルイズは、思わず足を止め、耳をそばだてていた。
804ゼロのエルクゥ26 4/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:45:03 ID:5lmKUyUL
『タバサ! 行っちゃダメよこんなの! すごく危険どころの話じゃないわ、絶対に死んじゃうじゃない!』

 "イル ・ウォータル・スレイプ・クラウディ"
 怒鳴り声にそんなルーンが被さったのは、その時だった。

『うっ! こ、これって……た、タバ、サ……!』

 ばたん、と何かが倒れるように床が鳴り、続けて大きな羽音と窓が開く音がして、ルイズは思わずドアノブに手を掛けていた。
 ノブを捻り、鍵の掛かっていなかったドアを開いたそこ―――タバサの部屋は微かに白く煙っており、ばったりと床に倒れ込んだキュルケが小さく寝息を立てている。
 そして、開かれたままの窓からは、青い風竜の影が小さく空に消えていった。

§

「くぅ……まだ頭がクラクラするわ」

 ルイズが肩を起こして揺さぶると、キュルケはすぐに目を覚ました。
 『眠りの雲』による眠りの深さは、術者の力量と意志に比例する。無防備な相手に全力を込めれば、スクウェア・メイジなら三日三晩ほど、トライアングルでも丸一日は、叩いても起きない程度に眠らせる事が出来るという記録があるが、
 幸いながら、キュルケに掛けられたのはごく浅いもののようだった。

「一体何があったのよ。エルフがどうとかって聞こえたけど」
「そうよ! タバサが! タバサが大変なのよ! ……あうぅ」
「ああもう、大人しくしてなさいって。まだ『眠りの雲』が抜けきってないんだから」

 キュルケは弾かれたように立ち上がろうとして、立ち眩みを起こしてよろめいてしまう。

「そんな暇ないのよ。早く追いかけないと……!」
「どうやってよ。今から出てって、シルフィードに追いつけるの? いいから落ち着きなさい」
「くっ……」

 ルイズが肩を押さえつけるようにしてベッドに座らせると、キュルケは歯噛みしながらも抵抗はしなかった。
 余裕という字が服を着て歩いているような女だったあのキュルケが、ここまで取り乱している。ルイズは、何があったのだろうかと疑問に思うと同時に、あの頃の―――二年生に上がる前までの自分だったらどうしていただろうか、とも思った。
 いつも馬鹿にされている恨みとばかりに攻撃しただろうか。それとも、こんなのコイツらしくないと困惑しただろうか。
 ……少なくとも、こんな風に他の事を考える余裕はなかっただろう、という事は断言できそうだった。

「で、何があったのよ」
「……これよ」

 幾ばくかの落ち着きを取り戻したキュルケに再度尋ねると、キュルケは握り締めていた書簡を差し出した。

「……これは、何の冗談?」

 さっと目を走らせたルイズは、素直な感想を口にした。
 攻め寄せたエルフの軍勢を一人で撃退しろ? そんな事が出来るメイジがいるなら、過去の聖戦でとっくの昔に聖地を取り戻せているだろう。
 過去の戦いの記録から、メイジ対エルフのキルレシオは1:10。手練れのメイジ数人に歴戦の傭兵を加えた10人で、ようやくエルフ1人を倒せるかどうかというところなのだ。こんな命令、正気の沙汰ではない。
805ゼロのエルクゥ26 5/5 ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:46:11 ID:5lmKUyUL
「冗談なんかじゃないわ。タバサの顔は、そういう顔だったもの」
「これが冗談じゃないんなら、命令書じゃなくて死刑執行書ね」

 くだらない、といった風に、書簡をキュルケに差し戻した。

「というか、ガリア花壇騎士に北なんてあったかしら? 確か、ヴェルサルテイル宮殿にある西南東の花壇になぞらえて三騎士団が作られたって、歴史では習ったけど」
「そんなのどうだっていいわよ。タバサが行っちゃった事には変わりないんだから。ああもう、どうすればいいのかしら」

 ぎゅっと、キュルケが自らの体を抱きしめる。

「……タバサの後を追っかけるつもり?」
「出来るならすぐにでもそうしてるわ」
「その文書が本物なら、エルフと戦うのよ」
「別に、エルフと事を構える必要なんてないわ。タバサを連れ戻せばいいのよ」
「他国のシュヴァリエに王印付きの命令を無視させて、その後はどうするの?」
「……うちの実家でもどこでも、保護してみせるわ」

 問答を繰り返すうちに、キュルケの目に熱が篭り始める。
 キュルケは、部屋の中を見回して、ニンマリと笑みを浮かべた。ろくでもない事を考えている顔だ。

「……はぁ」

 ルイズは大きく溜め息をつく。
 それは、見るからに活き活きとしはじめた目の前の『微熱』に対してではなく……多分に、自らの心の内に向けられた物だった。

§

 ―――そうだ。決して喪わせるものか。

 キュルケはぐるりと部屋を見渡した。備え付けの調度品以外には、種々様々な本が詰まった大きな本棚だけが目立つ殺風景な部屋だ。
 こんなに心地の良い空間を手放すわけにはいかない。燃え盛る『微熱』には、『雪風』の冷たさがちょうどよいのだ。
 沸々と、胸の奥から情熱が湧きあがってくる。

「……はぁ」

 目の前では、呆れたとばかりにルイズが溜め息を付いていた。
 何よその態度、と少々の反発を覚えるが、今は些事にかかずらっている場合ではない。
 まずは大急ぎでトリスタニアまで出て、竜籠を探さなければ。正規のものは手続きがとろすぎるから、モグリでも何でも……
 と、そこまで考えた時だった。

 ―――我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――

 朗々と耳に響く詠唱が、思考を強制的に中断させた。

 ―――5つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、"使い魔"を―――

 その杖が振り下ろされる瞬間、キュルケは、火の赤でも、水の青でも、風の緑でも、土の茶色でもない―――その全てが混ざりあった、純白の力を幻視した。

 ―――召喚せよ。
806ゼロのエルクゥ ◆yxbMPy6fic :2009/02/15(日) 05:47:07 ID:5lmKUyUL
以上です。目覚めの一服に楽しんでいただければ幸い。
失礼致しました。
807名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 06:12:22 ID:Cj6nx6hv
ヒャッハー!投下来てたぁー!!!乙だぁ!!!
808名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 06:24:06 ID:W60FLjeC
投下乙!

>>592に影響されたのか書き始めてしまった。
今までくだらない小ネタしか書いてこなかったから数話書き上げてもこのスレに投下できる規格か判断できない...
809名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 06:29:20 ID:mygb4Bw1
ヒャッハーァ!!投下乙だじぇーぃ!!
『全てが混ざり合った純白』という表現も珍しいなぁ、と。大概は漆黒扱いになるか、逆に全てを塗りつぶす純白という表現になるので。
本筋とはまったく関係ないけど!
次回、どんな使い魔が召喚されるのか非常に楽しみです。
810名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 06:46:46 ID:ljX0s58C
エルクゥの人、久々の投下乙であります!

サイト、何だかあちこちにフラグ立ててるようですねw
タバサにイザベラ、そしてエルザか…
タバサもアーハンブラに来るみたいだし、こりゃ修羅場が来るかな?w
サイトにくっつくエルザに嫉妬して、タバサもくっついたりしてほしいですね
タバサがんばれ!

ルイズの召喚来ましたね〜
再び耕一が来るのかはたまた…
次回も楽しみにしております!
811ゼロの最初の人 02 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:24:36 ID:H2eM5A5m
試験勉強が一区切り付き、さあ書くかと意気込んだのが 午前4時30分
空が白むどころか太陽に挨拶できる時間になって書きあがったのが 午前8時20分

書き出したら後戻りができなくなって書き上げました。投下してもよろしいでしょうか?

よろしければ8時半から開始します。
812名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 08:28:47 ID:HSTwsbGb
支援!

でも少しは寝た方がいいですぞ!
813ゼロの最初の人 02 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:31:21 ID:H2eM5A5m
 通常、人は他人と会話を行う際、意識的にそれを行うか否かの違いはあれど、次の相手の発言をある程度"予測"するものだろうと、作者は考えている。
 予測ができれば、自身の次の発言を考えておくことができ、スムーズに会話することができる。さらに予測のうまい人なら、自身の発言に対して相手がどのように返してくるか。までも予測し会話をコントロールすることができるのかもしれない。
 逆に会話が苦手な人は、次の発言を予測できないため、相手が何を発言してくるかわからない。日常風景に例えるなら、常に先のわからない曲がり角をが連続して続く道を移動するようなものであろう。
 閑話休題、今のルイズの精神状態はその"予測"ができる状態になかった。

 唱えたはずの呪文は、使い魔を召喚する呪文。なぜか呪文で召喚されたのは人。
 その「使い魔召喚の儀式で人を召喚した」という事実が、ルイズの心を平時の状態にさせなかった原因のすべてである。

 魔法が成功したということに"喜び"
 人を召喚したことを野次る者へ"怒り"
 召喚したのが人ということが"哀しい"
 そして、成功しうるかも知れない、まだ見ぬ魔法達が"楽しみ"

 その異なる感情たちが一度に心に同居してしまったため、混乱していしまい、非常に不安定な状態にあった。
 そんなところに、その原因である"召喚してしまった"使い魔が話しかけたのだ。
 「使い魔に話しかけられる」なんてことを一切考えなかったルイズは、間の抜けた顔をしながらも何とかこたえようとするが、返答はうまく言葉になるはずもなかった。
「へ?な、ななに」
 なおも言葉を紡ぐことのできないルイズを見て青年は微笑を浮かべながら答えた。
「そんなに焦らずともよい、深呼吸でもして、少し落ち着いたほうがいいのぅ」
 いつものルイズなら、身元の分からない人間の言葉に従うようなことはなかっただろうが、なにせ今の状態のルイズは"普通"ではないため、素直に従い深呼吸することにした。
 青年とルイズがやり取りをしてるとき、その現場に一番近くに居た人間。コルベールが近づいてきた。
 彼はルイズに比べると"普通"の精神状態にあったため、彼の持つ"杖"の意味を考えることができた。そして自分の中で出た結論を心に置きながら青年との会話に臨む。
「ちょっとよろしいですかな」
「おお、おぬしでもかまわぬ。すまぬが、何故わしがここにおるかしっているかのぅ?」
「すみませんが、その前にあなたの名前を聞かせてもらえませんでしょうか、ずっと"あなた"では呼びにくいもので」
「ん?そういえば名乗ってなかったかの。わしは」
 ここまで言って言葉に詰まる。自分には1つの大きな記憶と2つの小さな記憶があり、それに伴い名乗るべき名前も複数ある。どうしたものかと考えようとしたが、自然に、ある名前が口をついた。
「――太公望というものだ」
814名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 08:32:42 ID:KLVFOtsn
しえーん
815ゼロの最初の人 02 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:33:40 ID:H2eM5A5m
 "太公望" この名前をなぜ選んだのだろうか。
 彼にそれを断言することはできないが、きっと彼がこの名前で得たものが一番多いからだろう。
 コルベールが不思議そうに尋ねてきた。
「ミスタ、タイコーボーですかな……?」
 メイジ、強いては貴族の象徴であるともいえる、杖を見たとき、コルベールは彼のことをどこか小国の貴族だと考えたのだ。
 しかし、その名前に家名らしきものはなかった。しかも、聞いたこともないイントネーションである。
 あまりに"予測"と違うその答えに聞き返さずにはいられなかったのだ。
「ああ、たぶんそうだのぅ。で、おぬしの名前は何だ?わしにだけ名乗らせておくというのはこの国では無礼にならないのかの?」
 普通なら"たぶん"という部分に引っ掛かったろうが、自身の名前を聞かれたため、貴族という身分のものとしては名乗らざるを得ない。
「ああ、申しわけありません。私はこのトリステイン魔法学校の教員をしております。ジャン・コルベールと申すものです」
「…………は?……すまぬちょっと待ってくれ」
 そう言って、目を閉じ頭に手をやり考え込むポーズを見せる太公望。数秒後すぐに口を開いた。
「この国の隣国の名前は?」
「え?はぁ、ゲルマニアなどがありますが」
「んじゃ、ここの通貨は?」
「ドニエ、スゥ、エキュー。ですね。ええと、それぞれの価値は必要ですか?」
「いやかまわん……なら、殷、周、崑崙山脈、金鰲列島、この中に聞き覚えのある単語はあるかの?」
「……いえ、どれも聞いたことがありません」
 苦笑しながら頭を掻く太公望。どうやらまたややこしいことになったらしい。
「はぁ……ちょっと質問攻めするが構わんかのぅ?」
 コルベールが答えようとしたとき、ルイズが割り込んできた。太公望に言われた深呼吸のおかげか、まだ少し息は荒いが、頭は冷えているらしく、思考を練ることはできるようになるまでに回復していた。しかし、落ち着きを取り戻すには、まだ少し足りなかった。
「あ、あんた、貴族でしょ?なんでそんなことも聞いてるのよ!っていうかどこの貴族よ?!国は?家名は?!」
 どうやら、太公望の名乗りの少しあとに復活したらしい。いちいち説明するのも面倒なので、太公望は軽く答える。
「うるさいのぅ、一息にそういくつも質問せんでくれ。
 というかわしは、おぬしの言うところの"貴族"の意味すら分からぬ。だからこそ、こうして質問してるんだろうが」
「へ?き、貴族じゃないってじゃあ何なのよ!」
「だから、それはあとで話すから、こっちの話を進めさせてくれんかの」
 コルベールが太公望につつける。
「ミス・ヴァリエール、すこし落ち着いて彼の話を聞いてあげなさい。一方的にまくしたてることが貴族のすべきことですか?」
 ルイズが少しだけ口をとがらせながら、頷いた。
 それを見た太公望は、コルベールに顔を向け、質問を開始した。
816ゼロの最初の人 02 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:35:01 ID:H2eM5A5m
 太公望は現時点でコルベールから、すべての質問に対して満足いく答えを得ることができていた。

 ここは、ハルゲニア大陸の西側に位置するトリステイン王国という国であること。
 この世界の、トリステインを含むほとんどの国は王政で、政治を行うのが"貴族"とよばれるものであること。
 貴族は全員、魔法を使うことができ、メイジと呼ばれること。
 魔法は生活に密着しており、貴族は魔法を使うことで平民を統治していること。

 これらの話から察するに、どうやらここは地球とは別の星であるか、異なる世界であるといえるだろう。向こうに居たころは"魔法"なんてものは一度も聞いたことがなかったし、説明に使われる地名などに一切の聞き覚えがない。
 しかし、もう地球でやることなんてあるはずがなく、自堕落な生活を送っていた太公望にとっては、まぁなったものはしかたない。と割り切ることができることであった。
 そのことをコルベールに話すと少しホッとするような笑みを浮かべた。
 ちなみに、太公望とコルベールが会話している間、ルイズは太公望をにらみながらも、話に横やりを入れてくることはなく、ちゃんと黙って聞いていたことを伝えておく。
 そして、太公望の質問の内容はここの"場所"に関するものから、自分がここに居る"理由"に変わる。
「で、結局、わしはなぜここに居るのかのぅ?」
 すこしだけ、コルベールが言い淀む。そのときずっと黙っていたルイズが話に割り込んできた。ようやく落ち着けたようで、先ほどのように怒鳴ってくるようなことはなかった。
「コルベール先生、このことは召喚した私に責任があります。彼には私から説明してもよろしいですか?」
「あ、ああ、そうですねお願いします」
 コルベールが一歩下がりルイズに場を譲る。
817名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 08:36:48 ID:ljX0s58C
支援いたそう!
818ゼロの最初の人 02 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:40:59 ID:H2eM5A5m
 ルイズの目を見て太公望が言った。
「ここからはおぬしが説明してくれるのか?」
「ええ、タイコーボーでよかったわよね?
 まず結論だけを述べるとあなたはサモン・サーヴァントで、私の使い魔として召喚されたってわけ」
 太公望が少し嫌な顔をしながら答えた。
「使い魔?……ハァ。また聞き覚えのない言葉が出てきおったのぅ」
「メイジは何者かは聞いたでしょ?で、使い魔はそのメイジと一生をともにするパートナー。サモン・サーヴァントは使い魔を召喚する呪文で、主に相応しい使い魔を召喚するらしいの」
「らしいって……また適当だのう」
 呆れたように言う太公望に、ルイズが溜息を吐きながら返す。
「ほんとよ……なんでアンタみたいなのが……ハァ……
 で、ここからが本題だけど、タイコーボーには私の使い魔になって欲しいの。というより召喚された以上なってもらわなくちゃだめなのよ」
 コルベールはルイズの言葉に一人息を呑んだ。「使い魔になれ」そう言われたら普通の人間なら怒るだろう。しかも、相手は異世界から来たという得体のしれない人物である。こっそりと杖を抜き、何が起こっても対応できるように用意した。
 そして、太公望が答える。

「まぁ……別にかまわんかの」

 ルイズはその答えを聞いて、うれしいながらも哀しくなる。使い魔召喚の儀式の成功が半ば確定した喜びと、使い魔が人であることの哀しみで素直に喜ぶことはできなかった。
 コルベールは心底ホッとし、杖をしまった。教え子が無事だったことと、杖を使うことがなかったこと、使い魔召喚の儀式がきちんと終了しそうなこと。その全てに安堵した。
 太公望は二人を見て少し首を傾げたが、ふとあることが頭をよぎった。このことを確かめないことには、自分はここに居ることができない。
 そして、ゆっくりと口を開いた。

「最後にひとつ聞いていいかの?返答によるが、わしは使い魔になることができないかもしれぬ」
 
 一息ついたところにすぐ訪れた衝撃の一言。
 「使い魔になれないかもしれない」
 その一言の持つ重要性は相当なもので、またそれを言った太公望の声にもそれだけの重みが感じられた。
 緊張する二人に太公望が一言放った。

「桃はあるのかの?」

 二人はズッコケた。





了です。
819ゼロの最初の人 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 08:43:26 ID:H2eM5A5m
一応推敲をしたつもりではいますが
所詮突貫工事なので
おかしな点があればどんどん突っ込んでやってください。

>>814
>>817
サンクスです!
あと休日に限り睡眠は昼間とってます。
820ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/02/15(日) 08:57:36 ID:yTNITONY
お久しぶりです、9:15位から投下したいと思います。
821名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:06:19 ID:SRWzSGpe
>>819


突っ込めというので突っ込む
推敲は書き上げてから時間を置いてやった方がいい
誤字脱字誤変換も表現の違和感も気付きやすいから

疑問符と感嘆符のあとで文を続ける場合には空白を入れるのがお約束だぜ

あと個人的にはネットの読み物に行頭の一字下げは不要じゃねぇかと思う
まぁ趣味の問題なのでこれはどうでもいいかと

中身についてはまだなんとも言えんが頑張って下されぃ
822ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/02/15(日) 09:16:25 ID:yTNITONY
では次から投下しますね。
823ゲーッ!熊の爪の使い魔1/7:2009/02/15(日) 09:17:16 ID:yTNITONY
第十二話 破壊力の方程式

フーケ討伐隊の一行は馬車でフーケの隠れ家へと向かっていた。
そして馬車の中は、強大なゴーレムを作り出せるフーケとこれからやりあいに行くというのに、
それを感じさせないかのように雑談で盛り上がっていた。
緊張を紛らわすためということもあったが、それ以前に沈黙が怖かったからだった。
狭い馬車の中で響いてくる、コーホー、コーホーという呼吸音。
馬車の走る振動だけではその音を掻き消すには足りなかったのだ。
それゆえ、ロングビルがなぜ今は貴族ではないのかと聞いたり、それをたしなめたり、
なぜクマの格好をしていたかを質問したり答えたりと喋っていた。
キュルケにとっては意外なことにタバサすらも積極的に参加していた。
まあ、幽霊といったホラーなものが苦手な彼女にとっては幽霊などではなく
目の前の人物が発するものとは言え会話もなくコーホーと響くホラーな状況はひときわ耐えられなかったからであるが。
そんなこんなで無口なウォーズマンや御者のロングビルですらが質問をされた時には喋り、会話に参加していた。
ただ一人、「実況」の二つ名をもつ生徒のみが沈黙を守っていた。
そして移動を続けること数時間、一行は森の中の小屋の前、少し離れて影になったところに立っていた。
「ここがフーケの隠れ家なの?」
「ええ、昨晩遅くにこちらへ入っていくフード姿の人影を見たという情報があります」
それを確認して一同は考え込む。
「じゃあ、一気に突っ込んで倒しちゃいましょう」
「馬鹿ねえ、ルイズ。相手はあのフーケなのよ。
一気に突っ込んであの大きいゴーレムなんて出されてごらんなさい、
私の炎やこの子の氷が盗賊風情に後れを取るとは思わないけど、
わざわざ真正面からぶつかっていくのも優雅じゃないんじゃなくて?」
「何言ってんのよ、正々堂々と正面から行くのが貴族ってものでしょ!
それを盗賊ごときを相手に真っ向から行かないなんて、さすがはツェルプストーの家系ね」
「一回取り逃がしてるルイズに言われたくないわね、
って言うか一人相手にこの人数で攻めて正々堂々もないでしょうに」
「う、うるさいわね!」
と、ルイズとキュルケがいつものように口論を始めた中、タバサが口を開いた。
「そもそもフーケが今あの中にいるのか分からない、……あまり人がいる感じがしない」
これまでも家の任務でたびたび戦いに身を置いた経験からさまざまな状況、
この場合についてはそこにフーケがいないこと、についてもタバサは考えていた。
そして実際、小屋には人の気配が感じられなかった。
824名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:18:25 ID:Tn0DYA9p
sien
825名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:18:29 ID:Tn0DYA9p
sien
826ゲーッ!熊の爪の使い魔2/7:2009/02/15(日) 09:18:41 ID:yTNITONY
そしてウォーズマンも続いた。
「ああ、俺もあそこからは人の気配は感じない。もっともそういうことは得意じゃないんで断言はできないが」
これまでウォーズマンは主にリング上で一対一、もしくはタッグマッチで二体二、で向かい合って戦うことが多かった。
それゆえ、相手を探るということに関してもせいぜいリングやその周辺に限ったことであり、
離れた小屋の中を気配で探るということに関してはこれまで多くの任務をこなしてきたタバサのほうが勝っていた。
そのタバサでも、この静かな状況でははっきりとまではいないということはできなかった。
「結局いるかいないかわかんないのね」
「はっきりとはな。
気配を感じないのも場合によってはすでにこちらに気づいて気配を殺して待ち構えているからかもしれない」
「じゃあどうするのよ?」
それに対しタバサが意見を出す。
それはだれか一人が小屋の様子をうかがい、残ったものは周りに待機して援護するというものだった。
問題はだれが小屋に向かうかだが、
「それは俺が引き受けよう」
と、ウォーズマンが名乗りを上げた。
「あんたが強いのは知ってるけど、大丈夫?」
「ああ、心配するな、ルイズ。それに俺はおまえたちと違って魔法や飛び道具は持っていない。
どっちみち援護役にはなれないからな」
「気をつけてね……、あ、あんたは私の使い魔なんだからこんなところでやられちゃだめよ!」
「ああ、分かった」
ルイズの素直でない気遣いを受けてウォーズマンは小屋へと歩いて行った。
「じゃあ、わたしはあたりを見てきます」
「私は空から見ている」
そしてロングビルはあたりへ偵察に行き、タバサはシルフィードに乗って上空に待機した。
周りを見に行ったロングビル以外の皆が見守る中小屋のドアが開けられるが、
「……どうやら、誰もいないようだ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、隠れられるようなスペースもないし本当にどこかへ出かけているか、それとも周りで待ち伏せているか、だ」
「こ、怖いこと言わないでよ」
「常に最悪は想定しておけ、ルイズ。でなければ足元をすくわれることになりかねない。
現実にはさらに想像もしないようなことが起こることもあるんだ。
せめて自分の思いつく範囲だけでも覚悟は決めておけ。
おれも一度痛い目にあったことがあるからな」
そういうウォーズマンの脳裏には苦い記憶が浮かんでいた。

まさか、うめーうめーと蛍石を食い出すとは思わなかったよ、あのメシウママンモス。
827ゲーッ!熊の爪の使い魔3/7:2009/02/15(日) 09:20:10 ID:yTNITONY
まあ、そんなことはさておき、フーケはいないようなので上空にタバサを監視に残して家探しをしてみた。
「それにしても汚い小屋ね、ええと、なんだろ?これかしら」
そして探していると、ルイズは一つの箱があるのを見つけた。
古く汚れた小屋の中、その箱だけがきれいでしっかりとした見た目をしていた。
そして中身を確かめようとしたその時、
ゴゴゴゴゴゴゴ!
と轟音が響いてきた。
皆がそれを聞き外に飛び出すと、そこには巨大なゴーレムが現れていた。
ルイズとキュルケが一瞬気を呑まれている中ウォーズマンはとっさにフーケの姿を探す。
しかし森の木々にでもまぎれているのかフーケの人影をとらえることはできず、
それは上空にいるタバサにとっても同様だった。
そんな中、戦いの始まりを告げるように「実況」の二つ名をもつ生徒の声が響いた。
「さあ、とうとうフーケのゴーレムが現れました!
迎え撃つのはわがトリステイン魔法学園の生徒たち!
いったいどのような戦いを見せてくれるのかーー!?
なお、実況はこの私が、解説はこの前私が購入したインテリジェンスソードのデルフリンガーさんでお送りします。
彼は6000年もの時をすごしてきているそうなので、その解説には期待してください」
「え、いや、俺は剣だぜ、せっかく買ったんだから武器として使ってくれよ」
「おおーっ、ゴーレムに魔法が撃ち込まれていくーーっ!」
デルフリンガーの言葉を無視して発せられた実況の言葉通りに、ルイズたちは一斉に魔法を打ち込み始めた。
しかしそれらの攻撃を意に介さずにゴーレムは地上にいるルイズたちへと拳を叩き込んだ。
「巨体ゆえの剛腕がうなるー!これは万事休すかーー!
い、いや、これはっっ!」
「スクリュードライバーー!」
とっさにウォーズマンが前へ出て回転しながら突っ込み、ゴーレムの腕を粉砕した。
828ゲーッ!熊の爪の使い魔4/7:2009/02/15(日) 09:21:49 ID:yTNITONY
「へー、結構やるじゃねえか、あのウォーズマンってのも。今のも見た目だけじゃなく理にかなってやがるぜ」
「と、いいますと?すごい技だとはわかるんですが具体的にはどういう理屈なんでしょうかデルフさん?」
「いいか、小僧っ子。前進する力と回転する力ってやつを組み合わせるとすげえ貫通力が生まれんだ。
今みたいな勢いで回転しながら突っ込んで、しかもあんな爪までつけてりゃあそりゃあ土の塊でできたゴーレムの腕くらい砕けらあ」
「なるほど、そうだったんですか、これはフーケの敗北は必至か!?
い、いや、これは!」
不利と叫ぶ実況を無視してゴーレムは砕けた腕の部分を地面に押しつけた。
そしてそのまま腕を再生してしまったのだ。
「なんと、地面の土を失った腕にしてしまった!これは勝負が分からなくなってきた!」
それを見たウォーズマンは上空のタバサに視線をやった。
それを受けたタバサはすかさず地上に降り立った。
「ルイズたちを頼む」
「わかった。私たちは上から、あなたは下から」
そうしてルイズとキュルケを乗せてシルフィードは再び舞い上がった。
腕を再生し、姿勢を立て直したゴーレムがそこを狙って拳を振るうが、
再度のスクリュードライバーで足を破壊され、パンチは空を切ることになった。
「おおっ、今度は足を狙いました。これなら破壊だけでなく体勢を崩すこともできてより効果的ですね」
「いや、そうでもないぜ、よく見て見な」
その言葉通り、ゴーレムは砕かれた脚で膝をつくとあっさりと足を再生して立ち上がった。
その様子を、さっき嫌がっていた割にはしっかりとデルフが解説する。
「ほれ、やつは地面につきゃあすぐに自分を直せんだ。いまみたいにしたって脚だか膝だかをつきゃあすぐに元通りよ。
足とかを狙ったところで姿勢を崩してぶっ倒れるってのは難しいぜ」
その言葉通りさらにウォーズマンのスクリュードライバーが加えられ、
体の一部を破壊されても多少姿勢を崩す程度ですぐに再生し、地上のウォーズマンへ攻撃していく。
また、上空からの魔法攻撃も最初の時のように表面を少し削る程度でほとんど効果がない。
なお、このような激しい戦いの中でも実況の声は「実況」の使う魔法による風に乗って皆の耳に響いていた。
829名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:22:13 ID:Tn0DYA9p
支援
830名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:22:18 ID:Tn0DYA9p
支援
831名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:22:22 ID:Tn0DYA9p
支援
832名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:22:29 ID:Tn0DYA9p
支援
833ゲーッ!熊の爪の使い魔5/7:2009/02/15(日) 09:22:58 ID:yTNITONY
戦闘が始まって少したち、状況はこう着状態に陥っていた。
ゴーレムには上空からの魔法はあまり効果がなく、ウォーズマンのスクリュードライバーのダメージもすぐに回復される。
しかしゴーレムの攻撃も、シルフィードは上空の届ない高さにおり、
地上のウォーズマンに対してもその動きを捉えきれずにいた。
だが、
「だめ、このままでは私たちが負ける」
と魔法を放つ合間にタバサが言った。それに対してキュルケが異を唱える。
「えっ、なんでよ!?悔しいけどこっちの魔法は効いてないけど向こうだって攻撃が当たってないじゃない」
「今はそうだけど、このまま続けばウォーズマンの体力がいずれ尽きると思う」
「ウォーズマンが?確かに戦いが始まってからスクリュードライバーって技を連発してるけど、
それならゴーレムを再生させ続けているフーケだって先に精神力が切れてもおかしくないじゃない。
そもそもウォーズマンが前に戦ったのってギーシュの時だけでしょ?
あんなんでウォーズマンの限界なんてわかる分けないじゃない、どうしてそんなことが言えるの!?」
と、今度はルイズも問い詰める。
「戦い方の問題」
「戦い方?」
「そう、例えば今の様に魔法を打ち込むというのはメイジである私たちにとって当然の戦い方、何もおかしくない。
フーケにしても同じ、学園の件から考えても巨大なゴーレムを用いるというのはフーケの得意な手段と思われる。
でもウォーズマンは違う」
「どうして?前の決闘でも今やってるスクリュードライバーでギーシュを倒してたじゃない」
「でも、それだけじゃなかった。クマちゃんの時に彼は様々なプロレス技を使っていた。
そう、彼の戦い方はプロレス殺法」
「そ、そういえば……」
「だけどそれは基本的には対人の技、あのゴーレムには通じない。
プロレスの投げ技も組み技もあの巨体相手では使うことができない」
「た、確かに……、じゃあ、それってつまり」
「そう、ウォーズマンはつなぎの技もなくいきなり大技だけを出し続けるという不自然な戦い方をしていることになる。
これでは必要以上に消耗する」
そう断言するタバサにルイズはショックを受ける。そんな彼女に追い打ちをかけるようにさらに実況の声が響いてきた。
834ゲーッ!熊の爪の使い魔6/7:2009/02/15(日) 09:24:36 ID:yTNITONY
「ああーーっっと、これはどうしたことか!?ウォーズマンがスクリュードライバーを打つ間隔が鈍ってきたーー!
一部とはいえゴーレムを砕くほどの攻撃、やはり連発するのは無理があるのかー!?」
そんな、どうしよう。このままではウォーズマンがやられてしまう。何か手はないの?
その時ルイズはふと、懐に抱えた箱のことを思い出した。
小屋の中で見つけた、破壊の爪が入っていると思しき箱だ。
そうだ、これを回収したのだからもう戦わないでもいいんじゃないだろうか?
……しかし、貴族が背中を見せるわけにもいかない、でもこのままじゃウォーズマンが、
いや、そうだ、この破壊の爪をウォーズマンが使えば何とかできるんじゃ?
杖とかロッドとか言う名前じゃなくて爪、という名前だったから
メイジの自分にとって武器として使うという発想は出てこなかったがウォーズマンなら話は別だ。
今だってベアークローという爪、本人は自分の一部と言っていたが、を使って戦っているじゃない。
そう思いルイズは箱を開けると確かにその中には爪が収められていた。
しかし、それはルイズにとって意外であり、また見覚えのあるものだった。
「え…こ、これは……、いいわ、お願い、ウォーズマンに近づいて!」
「何言ってんのよ、ルイズ、この状況じゃ悔しいけど近づいて援護しようにも邪魔になるだけよ!」
「でも、この爪をウォーズマンに渡さなきゃ!」
「わかった」
それを聞くとタバサはシルフィードを翻した。
そしてゴーレムがウォーズマンへの拳を空振りさせた一瞬に合わせウォーズマンに近づいた。
その時に合わせルイズは破壊の爪をウォーズマンに投げつけた。
「ウォーズマン、これを受けとってーー!」
それを見たウォーズマンはすかさずキャッチし右手にその「破壊の爪」、いや、
左手に装着したものと同じ爪、ベアークローを装着した。
そしてルイズに向かって叫んだ。
「ルイズよ、ベアークローは投げるものではなく腕につけるものだーー!」
「イ、 イエッサ!」
835ゲーッ!熊の爪の使い魔7/7:2009/02/15(日) 09:25:44 ID:yTNITONY
ってなんで私は叱られているのかしら、思わずイエッサなんて言っちゃったし。
でも迫力あったしなんだかウォーズマンの背後にモップかぶった男のオーラまで見えたし。
そんなルイズの思いとはたぶん関係ないがウォーズマンは続けた。
「だが、ありがたい、ルイズ」
「ベ、別にどうってことないわよ」
そんな言葉にルイズはあっさりとうれしくなった揚句、照れ隠しの言葉を返していた。
「おおーっ、なんと!破壊の爪とはウォーズマンのベアークローと同一だったーー!!」
「でもよ、爪が一本から二本になったくらいで何か変わるのかよ?」
「そ、それはどうなんでしょうか?さあ、これでいったいどのような展開になるのかー!?」
それを受けるかのようにウォーズマンは言った。
「俺の超人強度は100万パワー、このままではやつに決定打は与えられない。
しかし、二本のベアークローで100万パワー+100万パワーで200万パワー!!
いつもの2倍のジャンプがくわわって200×2の400万パワーっ!!
そしていつもの3倍の回転をくわえれば400×3の、
ゴーレムマン(超人強度580万パワー)、おまえをうわまわる1200万パワーだーっ!!」
なに、100万って数大きすぎじゃない、単位どうなってんの?
って言うかゴーレムマンって誰?
そんなルイズの疑問をよそに、飛びあがり両手の爪を突き出して回転し突っ込んでいくウォーズマンの体が光に包まれていった。
「ウォーズマンが1200万パワーの光の矢となったーー!!」
実況の声を受けそのままゴーレムへまっすぐに突っ込んでいった。
ズガガガガアァァァンンッ!!!!
そして、ゴーレムを木端微塵のミジンコちゃんに粉砕してしまったのだった。
もはや、ゴーレムが再生することはなかった。
「こ、これはすごい!!なんとあのゴーレムをただの一撃で完膚なきまでに破壊してしまったーー!!
これはとんでもない技だーー!」
「そうか、そういえば聞いたことがあるぜ」
「今の技について何か知っているんですか、デルフさん?」
「いいか、世の中には「二刀流×高さ×回転=破壊力」っつー方程式ってのがあってよ、今のはそいつを利用したわけよ。
しかし、おでれーた、ここまで完璧な形で破壊の方程式が見れるとは長く生きてみるもんだぜ」
「なるほど、それならば今の威力も納得というわけですね」
そんなわけあるか!
ルイズは今の流れに納得できずにいた。
何が、というかすべての理屈がおかしい。無理があるというかもう無茶苦茶だ。
でも口にしたらなんだか負けな気がして結局ルイズは内にため込んだままだった。
未だ、ルイズには「ゆでだから」は受け入れられずにいたのだった。
836名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:27:20 ID:mygb4Bw1
えーと、もう何処からどう突っ込めばいいのかわからないけど面白いからまあいいか支援!
837ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/02/15(日) 09:28:30 ID:yTNITONY
以上で投下を終了します。
こういう形でデルフを出してみましたがどうでしょうか?
838名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:46:57 ID:niN7EM3N
1200万パワー理論キターwwww
839名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:56:50 ID:urcDUYkx
「まさか、うめーうめーと」

吹いた
840名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 10:04:38 ID:Jl5bEzOL
超人同士だと意味がないからやらないけど超人には基本的に巨大化する能力があるとかいう設定があったような
841名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 10:24:45 ID:rNx4tPcE
>>840

まぁ、それはゆでだから。
842名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 10:50:21 ID:RYguUZad
実況は何者なんだろうw
843名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:07:00 ID:fe4hDZj9
超人強度の数字が大きすぎる、というけど、
きちんと万単位じゃないカニベース・2パワーが存在するんだから
何かしら意味はある・・・と思いたいねw
844名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:08:47 ID:swmZiuY6
バッファローマンの威力計算の速度は異常


ゼロの使い魔の世界にワールドエンブリオの主人公と官守を・・・電話ないからだめか
845虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:38:45 ID:H/N7rHW7
11:45頃から投下させてください。
短いですが、今回で第二話は終わりです。
846名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:41:13 ID:ZRDMhMk6
テンションあがってきたぜー支援!!
847名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:42:19 ID:swmZiuY6
支援します
848虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:45:24 ID:H/N7rHW7
炎を纏ったままのルイズは、ティトォとウェールズの元に駆け寄った。
穏やかに呼吸を繰り返すウェールズの姿を見て、ルイズはほっと胸を撫で下ろした。
「よかった……」
ルイズは思わず涙ぐむ。しかし、使い魔の前で泣くなんてみっともないと思って、ぐっと鼻の頭に力を入れ、ぐしぐしと目尻を拭った。
「『スリープ・クラウド』の魔法のせいで眠ってる。でも、じきに目を覚ますと思うよ」
そういうティトォの顔には、汗の玉が大量に浮かんでいる。
ウェールズの治療、ルイズの魔力強化、仙里算総眼図の計算をすべて平行して行ったのである。ティトォはすでに、疲労困憊していた。
「あが……」
倒れたワルドが上げたうめき声に、ルイズはびくっとなって振り返った。
見るとワルドは全身にひどい火傷を負って、とても痛々しい姿だ。
ワルドは震える手を、何やら足の方に伸ばす。
ティトォがくいっと右手を振ると、同じようにルイズの身体が動いた。
魔法の炎を通じ、ルイズの身体を操ったのだ。
「ルイズ、呪文を!」
ルイズが呪文を呟くと、ワルドの右足が爆発した。
「ぎゃっ!」
痛ましい悲鳴に、ルイズは思わず顔を背ける。ワルドの右足は、爆発で奇妙な方向にねじ曲がっていた。
「やめとけワルド。ブーツに仕込んだ杖を使おうとしたな」
ティトォは冷静に宣告した。
『仙里算総眼図』
『1から10を知る』能力。相手の言葉や表情・仕草などから、その人物像を分析し、状況・周りの環境などを考慮し計算することで、相手の行動を完璧に先読みする。
魔法ではなく、ティトォが100年かけて編み出した技能である。
ただし膨大な情報の取り入れと、そこから集中・計算する時間が必要であり、なおかつ行動の完全先読みは1分程度が限界だったりするのだが。
「お前の行動はすべて読める」
まァここは、ハッタリかましておこう。
「左のブーツにも杖を隠しているのはわかってるんだ。おかしな真似をしてみろ、左足も吹き飛ばすことになるぞ」
さて……、これからどうしよう。杖を取り上げて、『レコン・キスタ』の情報を吐かせる?いや……
外から、馬の蹄や竜の羽音が聞こえてくる。貴族派の攻城が始まったのだ。すぐにもここに、5万の軍勢が押し寄せてくるだろう。
『イーグル』号はすでに出航してしまっており、脱出のすべはないのである。
とすれば、逆にワルドの口から、こちらの情報が貴族派にもたらされる可能性もある。
(いっそのこと、ここで確実に始末……)
そんなティトォの考えが、炎を通じてルイズにも伝わった。
殺す。
ワルドを?
それを考えると、ルイズは急に怖くなった。
裏切り者のワルドは、間違いなく縛り首を言い渡されるだろう。でも、刑を自分が執行するのだと思うと、どうしようもなく足が震えた。
ルイズはためらい、思わず杖の先をワルドから外してしまった。
ワルドはそれを見逃さず、最後の力を振り絞り、左のブーツに仕込んだ杖に手を伸ばした。
『フライ』の呪文で宙に浮いたワルドは、天井に開いた穴から弾丸のように外へ飛び出した。
「しまった!」
「は!敵の心は読めても……、味方の心は読めなかったようだな!ここにはすぐに我ら『レコン・キスタ』の大軍が押し寄せる!……おやおや、我らの軍勢は、もはや城の目と鼻の先だぞ?」
穴の外から、ワルドの捨て台詞が響いてきた。
「愚かな主人ともども灰になるがいい!ミョズニトニルン!」
それっきり、ワルドの声は聞こえなくなった。まんまと逃げ仰せたようだった。
ルイズは呆然と天井の穴を見つめていたが、やがて俯いて、唇をぎゅっと噛んだ。
最後の最後で、まんまとワルドを取り逃がしてしまい、悔しかったのだ。
「……ごめん」
「ううん、言ってもしょうがないよ。それより、ここから逃げる手を見つけないと……」
849虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:46:08 ID:H/N7rHW7
ニューカッスルの秘密の港に停泊していた二隻のフネは、とっくに出航してしまっている。
5万の敵は、300の王軍をものともせずすぐにここまでやってくるだろう。
さて、どうする……?
ティトォが考えはじめたとき、ふいに足がふらりとなった。
(あ、まずい……)
そのままティトォは、どさりと地面に倒れ込んだ。同時に、ルイズの身に纏われていた魔法の炎がかき消えた。
「ふあ?」
ルイズの体から急に力が抜け、よろけたルイズは礼拝堂の壁に寄りかかった。
足ががくがくと震え、立っているのもやっとである。
身体強化の反動であった。
「ティトォ、どうしたの?」
見ると、ティトォは倒れ伏している。魔法の使いすぎにより疲労が限界を超え、意識を失ったのだ。
ティトォは気絶し、ルイズは立つのもやっと。おまけに外には今にも城に突撃せんとする5万の大軍。
「そんな、どどどーしろってのよこれからぁ!」
ルイズは思わず悲鳴を上げた。
すると、その声に答えるように、ウェールズの瞼がぴくりと動いた。
ウェールズはむくりと起き上がると、怪訝な顔で自分の胸をぺたぺたと触った。
ワルドによって貫かれた胸の傷は、ティトォの魔法で跡形もなく消えていた。
「わたしは……、そうか、きみたちが助けてくれたのか」
「殿下!」
ルイズはなんとか身体を動かし、跪いた。
ウェールズはすぐにしゃがみ込み、ルイズと視線の高さを同じにした。
「ラ・ヴァリエール嬢、そんな行儀はよしてくれ。跪かねばならぬのは、わたしの方だ。うっすらとだが覚えているよ、わたしの身体を包んだ、癒しの炎のあたたかさを」
ウェールズは、床に倒れるティトォに、心配そうに視線をやった。
「彼は、無事なのかい?」
「魔力を使いすぎただけです、命の心配はありません。……申し訳ありません。憎むべき裏切り者を取り逃がしてしまいました。すべてわたしの責任でございます……」
「ワルドはスクウェアメイジ、退けただけでも大したものだよ。それに、アンリエッタの手紙を守り通してくれたのだ」
ウェールズの言葉に、ルイズはポケットの手紙に手を伸ばす。ポケットからアンリエッタの手紙が覗いていた。
「恥じることなどない、誇りに思いなさい」
ウェールズはルイズの肩を優しく叩いた。ルイズはかしこまって、深く頭を垂れた。
「それに、どうやら間に合ったようだ。きみたちにはいくら感謝しても足りないな」
「そんな、もったいないお言葉で……、……『間に合った』?」
ルイズは顔を上げ、怪訝な顔でウェールズを見た。ウェールズは、喜びを隠そうともせず、ニコニコと笑っている。
外から大砲の音と、突撃ラッパの音、そして兵士たちの怒号が聞こえてくる。
「そうとも、あの音を聞きたまえ、どうやら貴族派の一斉攻撃が始まったようだ。間一髪とはまさにこのこと!裏切り者の手にかかり、危うく戦の前に臣下のものたちを残して先に逝くなどという恥を晒すところだった」
「え。え。え」
「きみたちはわたしに、王家の勇気と名誉を発揮するための機会を与えてくれた。本当に感謝の言葉もない」
ウェールズは深々と頭を下げた。
ルイズにはウェールズが何を言っているのか、まったく理解できなかった。しばらく口をぱくぱくさせていたが、やっとのことで喉から音をひねり出した。
「……その、殿下?」
「なんだね」
「で、殿下は、これから貴族派を迎え撃つおつもりなのですか?」
「無論だ。これは王家に生まれたものの義務。内憂を払えなかった王家に、最後に課せられた義務であるからね」
「で、でも……、でも……」
ルイズは愕然とした。
考えてみれば、そうなのだ。
たとえワルドの裏切りがなかったとしても、ウェールズ皇太子は『レコン・キスタ』の軍勢と戦うことを決めていた。
『レコン・キスタ』の軍勢は五万。王軍に勝ち目はない。ウェールズはこの戦いで命を落とすだろう。
だったら、なんのためにわたしとティトォは戦ったの?
なんのために、命がけで皇太子の命を助けたの?
850名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:47:28 ID:5TVdjb38
しえん
851虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:47:45 ID:H/N7rHW7
「……そんな顔をしないでくれ。案じてくれているのかい?わたしたちを。きみは優しい女の子だな」
ウェールズは微笑んだ。
「本来ならば勲章でも受け取ってほしいところだが……、さて困ったな、倒れゆく王家には授けられるようなものは何もないんだ。……そうだ、これを」
ウェールズは自分の指から『風のルビー』の指輪を外し、ルイズに握らせた。
「王家のルビーだ。どうか受け取ってくれ。そして、これはお願いなのだが……、アンリエッタに伝えてくれないか」
ウェールズは目をつむって言った。
「ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと」
呆然とするルイズに、ウェールズはもうひとつ、小さな石版のようなマジックアイテムを手渡した。
「これを。ニューカッスルの秘密の港へ行きたまえ。桟橋の向かいの鍾乳洞の奥でその石をかざせば、隠し部屋の扉が開く。中には水と保存食がたっぷりひと月分はあるはずだ。
 きみたちはそこに隠れ、戦いをやり過ごしなさい。扉に偽装の魔法がかけられているから、めったなことでは見つかるまい。ほとぼりが冷めた頃合いを見計らって、脱出しなさい」
そう言うと、ウェールズは立ち上がり、礼拝堂の扉に向かっていった。途中、ワルドに切られた水晶の杖を拾ったが、小さく肩をすくめると放り投げてしまった。
ウェールズが礼拝堂を出てしばらくの間、ルイズは呆然としていた。
遠くから聞こえる大砲の音や、火の魔法が爆発する音で、ルイズは我に帰った。
戦闘が始まったのだ。轟音に入り交じり、兵士たちの怒号や断末魔の叫びが聞こえてくる。
ルイズは言うことを聞かない足にぐっと力を込め、立ち上がった。
「……わたしは、死なないわ」
ぽつりと言うと、ルイズはティトォの足を抱えて引きずりながら、ニューカッスルの秘密の港へ向かった。
ティトォはやせている方だが、小柄なルイズにはその身体は重たかった。
それでもルイズは下腹にぐっと力を込め、港への階段を下りはじめた。
死なない。
こんなところで、こんな遠く離れた国で、死んでたまるもんですか!
アンリエッタの手紙を無事持ち帰るという任を果たすためにもルイズは生き延びなければならないのだが、なぜかあまりそのことは思い浮かばず、ただ『死んでたまるか』という衝動がルイズを動かしていた。
それは、死ぬための戦いに向かう、ウェールズや王軍の人間たちへの反発心であるかもしれなかった。
そんなふうにルイズは必死だったので、引きずっている気絶したティトォのことまで頭が回らなかった。
ルイズは今、ティトォの両足を脇に抱えるようにしているので、ティトォの上半身が地面に引きずられる形になっている。
そんな状態で階段を下りると、一段ごとにティトォは石造りの階段に頭をぶつけることになった。
ごつんごつんと鈍い音が響き渡り、ティトォの頭は壊れた腹話術の人形のようにがっくんがっくんと踊った。
ルイズはもう、ティトォを引きずるのに必死なので、そんなティトォの面白い有様には気が付かなかった。
ワルドとの戦いで付いた傷が開いたのか、ティトォの頭から血が流れ、ぶつかるごとに階段を赤く染めた。
「こんなところで……、死なない!」
生きる決意を口にするルイズの後ろで、ティトォは今にも死にそうになっていた。


鍾乳洞の中に作られた港にたどり着くと、ルイズはきょろきょろと辺りを見回した。
見ると、桟橋の近くに小さな横穴がある。あれがウェールズの言っていた、秘密の部屋への入り口だろう。
遠くでずーん、と爆発の音がして、鍾乳洞の全体がびりびりと震えた。地上での戦闘が激しくなっているのだ。
ぐずぐずしてはいられない。
852名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 11:49:01 ID:swmZiuY6
テンションあがってきたぜー!
支援
853虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:49:13 ID:H/N7rHW7
ルイズはティトォの足を抱えなおす。すると突然、ぼこっとルイズの足下の地面が盛り上がった。
「なに?」
ルイズは驚いて、後じさった。
「敵?下から来たの?」
ルイズは地面を見つめ、杖を構えた。
ティトォの魔法による強化は解けてしまっているが、なんとかするしかない。
ルイズがごくりと唾を飲むと、盛り上がった土の中から茶色い生き物が現れた。
「あんたは!」
ルイズは驚いて叫んだ。茶色い生き物はもぐもぐと鼻をひくつかせ、つぶらな瞳でルイズを見つめている。
「ギーシュのジャイアントモールじゃない!なんでこんなことろに……、きゃあ!」
突然巨大モグラがのしかかってきて、ルイズは悲鳴を上げた。
巨大モグラは鼻をふんふんと動かして、ルイズの身体をまさぐった。
「ちょっと!そこダメ!そんなとこ触んないで!いや!いやあ!」
ルイズがモグラと取っ組み合いをしていると、モグラの出てきた穴から、ひょこっとギーシュが顔を出した。
「こら、ヴェルダンデ!どこまでお前は穴を掘る気なんだね!いいけど!って……」
土にまみれたギーシュは、モグラと絡み合うルイズと、横たわるティトォの姿を見て、とぼけた声で言った。
「おや、きみたち!ここにいたのかね!」
「ななな、なんであんたがここにいるのよ!ていうかこのモグラなんとかしてよ!」
「こらヴェルダンデ、いけないよ」
ギーシュは優しくヴェルダンデを引き剥がした。ヴェルダンデは名残惜しそうに、ルイズの『水のルビー』と『風のルビー』の匂いを嗅いでいる。
「なるほど、いきなり穴を掘りはじめたと思ったら、そういうことだったんだね。水のルビーの匂いを追いかけてきたんだね。ぼくの可愛いヴェルダンデはなにせ、宝石がとびきり大好きだからね。ラ・ロシェールまで穴を掘ってきたんだよ、彼は」
「ここは雲の上なのよ!どうやって!」
そのとき、ギーシュの傍らに、キュルケが顔を出した。
「タバサのシルフィードよ」
「キュルケ!」
「お久しぶり、ヴァリエール。ねえ、こっちも大変だったのよ?宿を襲ってきた連中の中に、あのフーケがいたんですもの。連中、犯罪者の手を借りるくらいあんたたちにご執心だったみたいね。
 だもんで心配で、ここまで追いかけてきたってわけ。言っとくけど、あんたを心配したんじゃないわよ?わたしが心配したのはダーリンのことよ」
そう言ってティトォを見ると、キュルケは悲鳴を上げた。
「きゃあ!ダーリン!」
そこではじめてルイズはティトォの状態に気付き、色を失った。
ティトォの頭は血まみれで、ルイズが運んだ後に血の跡が引きずられていた。軽くスプラッターであった。
そういえば階段を下りる時、ティトォをさんざんぶつけたような……
「うむむ、これはひどい!いったいだれがこんなことを!」
ギーシュも顔をしかめて、唸った。
「は……、はは、話は後よ!すぐにここから逃げるの!敵がそこまで来てるのよ!」
ルイズは震える声で言った。
「逃げるって、任務は?ワルド子爵は?」
「手紙は手に入れたわ!ワルドは裏切り者だったの!あとは帰るだけ!」
「なんだ、よくわからないが、もう終わってしまったのか」
ギーシュがなんだか残念そうな声で言った。
854虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 11:50:55 ID:H/N7rHW7
「とにかく、行きましょ。ダーリンの手当てをしなきゃ」
キュルケとギーシュが、ティトォを抱えて穴に潜り込んだ。そのまま穴の中を進むと、アルビオン大陸の真下に通じていた。
二人がティトォの身体を空中に放ると、風竜の背中に乗ったタバサが、それを器用に受け止めた。
続いてヴェルダンデが身を踊らせると、風竜シルフィードがその身体を口にくわえた。
ヴェルダンデは不満そうな鳴き声を上げたが、仕方がない。ヴェルダンデの身体は大きいので、背中に乗せると他の人間が乗れなくなってしまうのだ。
「我慢しておくれ、可愛いヴェルダンデ」
続いてキュルケとギーシュが飛び降りようとして、ふと気付いた。
「……あら?ルイズは?」
穴の中に、ルイズの姿はなかった。まだ鍾乳洞の中にいるのだろうか?
「おーい、何をしてるんだね!早くしたまえ!」
声をかけても返事がないので、二人は引き返し、鍾乳洞の地面から顔を出した。
見ると、ルイズが地面に倒れていた。
キュルケたちの姿を見て、気が抜けてしまったのだろうか。ルイズは気を失っていた。


ルイズは、夢とうつつの境をさまよっていた。
うつつのルイズは、キュルケたちが自分の身体を抱え、シルフィードに乗せてくれたのだということがぼんやりとわかった。
頬に風を感じる。アルビオンが、遠く離れていく。
夢の中のルイズは、巨大な樹の枝の上に立っていた。上にも下にも、あらゆる方向に枝を伸ばす巨大な樹。『夢の樹』であった。
ルイズはきょろきょろと周りを見渡した。きっとここには、アクアがいて、ティトォもいる。
頭を階段にぶつけたこと、ティトォに謝らないとな……、と思ったが、ルイズはなんだかティトォに会いたくなくて、枝をつたってその場を離れた。
歩きながら、ルイズはぽろぽろと涙をこぼした。
自分たちは助かったけど、たぶん、王軍は負けたのだろう。
ウェールズも……、姫さまの大切な人も、死んでしまったのだろう。
ルイズには、どうしてウェールズが残らなければならなかったのか、最後まで納得できなかった。
きっとティトォなら、そうしなければならなかった理由を的確に教えてくれるんだろう。
でもルイズはその言葉を聞きたくなくて、ティトォから離れようとしていた。
ふと顔を上げると、枝の先に、背の高い女性の姿があった。
涙で視界がにじんで顔がよく見えなかったが、その長くて綺麗な髪は、ルイズと同じ桃色がかったブロンドの色をしていた。
「や」
女は、軽く手を挙げて挨拶した。
その女は初めて見る姿であったが、ルイズはなんだか、ずっと一緒にいたような気がしていた。
そうだ、この人はきっと。ティトォやアクアと同じ、不死の三人の最後の一人……
女はルイズに近付くと、袖でルイズの涙を拭ってやった。その手つきが優しくて、ルイズは故郷の下の姉の姿を思い出していた。
「……男ってさ、バカだよね」
女は寂しそうな笑顔を浮かべて、ぽつりと言った。
その言葉を聞くと、ルイズは俯いてぎゅっと唇を噛んだ。
裏切り者のワルドのこと……。
死んでしまった皇太子のこと……。
いろんな感情が暴れだして、耐えられなくなって、ルイズは女の胸に飛び込んだ。
女に抱きついて、ルイズはわんわん泣いた。こんなに泣くなんて、本当に久しぶりのことだった。
女は黙って、ルイズの頭を撫でてやった。
その手はとても優しくて、悲しみに沈むルイズの心を、ほんの少しだけ温めてくれたのだった。


第二話:おわり
855虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/02/15(日) 12:00:37 ID:H/N7rHW7
以上です。支援ありがとうございます。
以下超長いチラ裏

ゼロ魔原作二巻分の話をやるに当たって、少し心配でした。
なにせ、原作二巻のキモは、ルイズとサイトのすれ違いと、関係の変化だと思うのです。
このお話では、ルイズとティトォの絆を深めるというより、すれ違いが大きくなってしまうんだろうなと思っていたので
なんだか味気ないお話になってしまうような気がしてました。
でも実際書いてみると、予想に反して、とても楽しかったのです。
読んでくれる人がどう思ったはわかりませんが、書いてる分にはすごく楽しかったです。
なにせ、冒険です。傭兵集団との決死の戦い、浮遊する大陸への旅。冒険は無条件にワクワクするものなのです。
21世紀の作家ヤマグチノボルは、「冒険もいいけどラブコメも大切だよね!」という至言を残しましたが
逆もまた然りだと思いました。
ラブコメもいいけど、冒険も大切だよね!

次回から「最初のクライマックス」こと原作三巻分に突入します。
856名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 12:05:51 ID:RYguUZad

結局ウェールズ死ぬのかよw
まぁ裏切り者の手にかかって死ぬよりは100倍マシだけど
857名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 12:35:13 ID:eXMVoxuo
熊の爪の人乙でした
858名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 12:36:47 ID:ub74XIFS
投下乙
どーでもいいけどキン肉マンクロスの後にマテパクロスが投下されてると運命的なものを感じるw
859名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 12:37:48 ID:xmFDrT1W
ゆで理論的に冒険も大切だよね乙
860名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 13:06:00 ID:8vz2Qc1y
>>858
原作者がキン肉マン大好きだからなw
ttp://ranobe.com/up/src/up338640.jpg
ttp://ranobe.com/up/src/up338642.jpg
861名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 13:12:35 ID:xmFDrT1W
>>860
「倍率ドンさらに倍!」を思い出したw
862名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 13:15:18 ID:8HEpQ8j8
いつ見てもウォーズマン計算式はゆで理論だな
863名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 13:20:45 ID:RYguUZad
>>860
さりげに杉小路も清村に負けないくらいの超人だよな
864名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 13:37:11 ID:hPyxZG5d
>>863
そうでもないと清村をいじれないんだろう
865名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:11:32 ID:DbOJoX8A
マテパの原作者はドラゴンボールも好きだよな・・・
866名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:12:32 ID:Bs4MlpBC
亀だがライスピのワルドは綺麗なワルドだと思う。
というかあれはウェールズ周りが熱すぎた。V3の群れが空気化するほどに
867名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:23:12 ID:S2HXso8R
『もう一人の左手』だっけか?
あれはもう続きは無理かな
レコン・キスタ側がいい味だしてたけど、トリステインやアルビオン側があまりにもアレすぎたのは正直やりすぎだ
あとV3を何人も出しすぎたせいで個々のV3に関しては影が薄くなってたと思う
(その結果V3よりも才人やルイズにレコン・キスタ組の方が目立ってた感じがするし)

中盤以降は才人とルイズ、才人とシルフィードのラブラブシーンとレコン・キスタVSウェールズの駆引き合戦だけが
楽しみで読んでたなぁ
868ウルトラ5番目の使い魔 第35話:2009/02/15(日) 14:33:44 ID:EQWaL8OC
皆さんこんにちは、35話、ワイルド星人編の後編を投下したいと思います。
開始時刻はいつもどおりに10分後の14:45からで、長さは前回並みなので、またさるさんを食らってしまいましたら
すいませんがよろしくお願いします。
 
なお、ワイルド星人であって、決してワルド星人ではありませんので、そこのところ絶対にお間違えのなきように。
つかワルド星ってどんな星だっつの。
869名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:35:38 ID:HGREKxih
しえん 
870名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:39:30 ID:iqV6hYqb
エースの変身バンクが一番好きだ、あのクルンクルンと回るところが何とも。
八兄弟で当時の変身バンクを使ってくれなくて嘆いたのは俺だけじゃないはず支援。
871名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:44:38 ID:jS38NKME
ワイルド星人そしてサイト達はどうなるのか
期待と不安を胸に抱きながら支援
872名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:46:09 ID:P4UX2LGP
毎週日曜日は支援day
873名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:48:04 ID:iqV6hYqb
そう言えばこの話のワルドって今何やってるんだ支援。
874ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (1/14):2009/02/15(日) 14:48:05 ID:EQWaL8OC
 第35話
 あの超獣の闇を撃て!!
 
 宇宙野人 ワイルド星人
 宇宙同化獣 ガディバ
 蛾超獣 ドラゴリー 登場!
 
 
「ふははは、出でよ!! 超獣ドラゴリー!!」
 突如天空に開いた真っ赤な裂け目からヤプールの召喚に応じて、緑色をした体に極彩色の模様をあしらい、
長く伸びた牙を生やした昆虫の頭と、腕のように進化した羽に鋭い爪を持った超獣、蛾超獣ドラゴリーが降り立ってきた。
「ふふふ……また会ったな、ウルトラマンAよ」
「ヘヤッ!!」
 ナースの残骸の上に乗り、ヤプールは荒々しく咆哮をあげるドラゴリーを見上げながら愉快そうに笑う。
 ヤプールが人間の姿を借りてエースの前に現れたのは、超獣ホタルンガと戦ったとき以来、あのときと変わらぬ
不気味な黒装束で、奴はそこに立っていた。
「まったく忌々しい奴よ。あれからも何度もわしの邪魔をしてくれて……しかし、わしの侵略作戦は着々と進行している。
この世界が我々の手に落ちるのも時間の問題だ。そして、貴様にもここで死んでもらおうか」
(ヤプール……)
(まさか、こんな真昼間から出てきやがるとは)
(それだけ、自信を深めてるってことかしらね……人を馬鹿にして)
 エースの中で、才人とルイズも自ら姿を現してきたヤプールに驚いていた。
 白昼堂々、エースへの深い憎しみを込めた声で、ヤプールの宣告は続くが、包囲陣を敷いている銃士隊がそれを
見逃すわけもない。
「貴様、そこから動くな!!」
「ん? いたのか、人間どもよ」
 20丁以上の銃を突きつけてくる銃士隊を、庭を這うアリ程度の価値にしか感じないふうに、ヤプールは今やっと
アニエス達がいたことに気づいたと言わんばかりに、平然と見下しながら答えた。
「貴様が、ヤプールなのだな!?」
 敵の首領が目の前にいるという胸の高鳴りを抑えながら、アニエスは銃口を向けつつ怒鳴った。
「いかにも、我が名は、異次元人ヤプール……正確には、その意識の集合体と言ったほうがいいかな。理解できるかね? 
下等生物の諸君」
 薄ら笑いを浮かべながらマントを翻すヤプールに答えたのは、銃士隊の一斉射撃の洗礼だった。
 だが、それらの弾丸の全ては老人の体に当たる前に、直前で突然失速して、ボタボタと足元に転がった。
「なに!?」
「はっはっ、そんなものでは、この私は殺せないよ。さて……ぬ? 貴様」
 ヤプールが足元を見下ろすと、傷ついたワイルド星人が、這いずりながらもヤプールの足首をがっちりと握り締めていた。
875ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (2/14):2009/02/15(日) 14:49:21 ID:EQWaL8OC
「フィルムを、返せ!」
「ちっ、生命エネルギーを集めた時点で、貴様はもう用済みなのだ。さっさと死ぬがいい」
 ヤプールはワイルド星人の手を乱暴に振り払うと、その体を銃士隊のほうへと思い切り蹴り飛ばした。
「ぐはあっ!!」
「ふっ、愚か者よ」
「貴様!!」
 アニエス達もヤプールのあまりにも残忍な所業に、怒りを込めて剣を抜く。
 だが、ヤプールはすでに彼女達などは目に入らない様子で、ドラゴリーを見上げて楽しそうに笑った。
「ふふふふ……かわいい奴よ。さあ、ドラゴリーよ、わしからのプレゼントだ」
 ヤプールが宇宙カメラのフィルムを天に掲げると、ヤプールの腕を黒いガス状の蛇、ガディバがとりまいて、
フィルムに込められた生命エネルギーを吸収していく。
「ふふ、行け、ガディバ!!」
 ガディバはヤプールの腕から放たれると、一直線にドラゴリーの胸に吸い込まれていき、ホタルンガのときと
同じようにドラゴリーの全身に取り込んだ生命エネルギーを行き渡らせ、パワーアップさせた。
「ゆけ、復讐せよドラゴリー!!」
 ドラゴリーの目が赤く光り、全身からどす黒いオーラが放たれる。
 かつてマリアロケットを破壊することを果たせずに、メトロン星人Jrもろともエースに倒されたとき、さらに復活して
メビウスに倒された先代の怨念も受け継いだこの個体は、悪人のマイナスエネルギーをも取り込んで、凄まじい
邪悪なパワーに満ち溢れていた。
(あの禍々しい気配、フーケのときよりもずっと冷たい……)
 特に、超獣の邪悪な力を間近で感じたことのあるルイズは、その気配を肌で感じ取ったようだ。
「シャッ!!」
 エースも、奴から立ち上ってくる強烈な殺気が吹雪のように全身を打ち、うかつに手を出せない。
 こいつは間違いなく、以前の個体より強い。
「ははは、数十人分の邪念を取り込んだドラゴリーに、果たして勝てるかな? では、健闘を祈るよ」
 ヤプールの背中の空間がひび割れ、ドラゴリーが出てきたのと同じ次元の裂け目が生まれる。
「ふははは、はーっはっはっは!!」
「待て!!」
 哄笑しながら次元の裂け目へと消えていくヤプールに向けて、アニエスは自分の剣を投げつけたが、寸前で
裂け目は破片が逆再生のように元に戻って塞がり、剣は何も無い空間を切って、地面に乾いた音を立てて転がった。
 
 だが、残るドラゴリーは恐ろしげな叫び声をあげると、その身に込められた怨念の命ずるままに暴れ始めた。
 大きく裂けた口から真っ赤な火炎がエースに向かって放たれる。
「!? シュワッ」
 間一髪、右に跳んでかわしたエースのいた空間をすり抜けて、火炎はその先にあった煉瓦作りの建物を飲み込むと、
頑丈に作られているはずのそれを瞬間的に摂氏数万度に加熱して、あっという間に泥のように赤熱化した
溶岩に変えてしまった。
(こ、こりゃあ、並の怪獣の火炎なんかとは比べ物にならない熱量だぜ)
876ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (3/14):2009/02/15(日) 14:50:50 ID:EQWaL8OC
 火炎というより、もはや熱線と呼ぶべき威力に才人は戦慄した。かつて復活してメビウスと戦った個体は
強力な光線を使うようになっていたが、こいつは明らかにそれ以上だ。
 けれども、だからこそこいつはここで倒さなければ、トリスタニアはあっという間に焼け野原にされてしまう。
「ヘヤァッ!!」
 敵が強いと分かっているなら、こちらも最初から全力で向かうのみ。
 正面からぶつかり合い、エースより頭一つ飛び抜けた巨体に目掛けて、パンチ、キックを打ち込んでいく。
 だが、まるで巨木のようにドラゴリーの体は揺るぎもしない。逆に無造作にはたくように振り下ろされてきただけの
腕の一撃で、エースのほうが吹き飛ばされてしまった。
「ヌゥォォッ!!」
 なんという重い一撃だ。かつて地球で戦ったときのドラゴリーもかなりの腕力を持っていたが、このドラゴリーは
レッドキング、いやキングジョー級以上のパワーを持っている。
 さらに奴は今の一撃で自分のパワーに自信を持ったらしく、今度は自分からエースへ向けて突進してきた。
「テヤッ!!」
 大熊に向き合う坂田金時のごとく、エースはドラゴリーの突進を正面から受け止めようとした。
 が、勢いが強すぎる。エースの4万5千tの体重が、まるでマネキン人形のようにあっけなく弾き飛ばされてしまった。
「ヴッ、フゥーン……ッ」
 ここまでとは。元々力自慢の超獣だったのだが、かつてとは幕下と横綱くらいに違いがある。
(エースだめだ、接近戦じゃとても敵わない!!)
 才人も焦り、エースに離れるように告げる。
 このまま長引かされては不利だ。ならば一撃必殺で一気にケリをつける!!
 エースはドラゴリーに向かって、投げつけるように腕をL字に組んだ。
『メタリウム光線!!』
 3色の破壊光線が真っ直ぐにドラゴリーに叩き込まれる。
 だが、直撃して爆発が治まった後には、何事も無かったように平然と立つドラゴリーの姿があった。
(ヤプールめ、ドラゴリーをここまで強化するとは、これが人間の生命エネルギーを大量に吸収した威力なのか)
 パワーで敵わず、光線も効かない。早くもエースの決め手のほとんどが封じられたことになる。
 だが、実戦で攻撃の効かない敵が現れるなどよくある話だ。宇宙の平和を守るために、こんなところで膝を折る
わけにはいかない。
 
 
 そして、地上に残された人々も、黙って戦いを見守っているということはできなかった。
「全隊散って非難誘導に当たれ! 命令を聞かない者は殴ってでも言うことを聞かせろ!」
877ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (4/14):2009/02/15(日) 14:52:08 ID:EQWaL8OC
 破壊されていく街から民衆を逃がすために、銃士隊は街のほうぼうに散っていく。それらを見送ると、アニエスと
ミシェルは、ナースの隅に倒れているワイルド星人に歩み寄った。
「ぐ……ぬぅ」
 彼は豊かな体毛のあちこちに血がにじんでいる重傷であったが、かろうじてまだ息はあった。
「隊長、すぐに始末しましょう!!」
 ミシェルはすぐに剣を抜いて星人に突きつけたが、アニエスはそれを手で制して言った。
「待て、こいつにはまだ聞きたいことがある。おい、簡単に死ぬな! 貴様にはヤプールの情報を洗いざらい吐いて
もらうからな!!」
 これまで完全に謎であったヤプールの情報を知るための、またとない生き証人だ。何としてでも生きていてもらわなくては
せっかく近づきかけた敵の影がまた遠ざかってしまう。アニエスは感情を押し殺して傷の止血を始めた。
 けれども、星人は荒い息の中で苦しげに言った。
「無駄だ……この傷では、もう長くはないだろう。それに、私はヤプールに利用されていたに過ぎん……奴に関する
詳しいことなど、ほとんど知らん……ぐぅ」
「だったら今しゃべってもらおう!! ヤプールに利用されていたなら、隠す必要もないだろう。言え、ヤプールとは
何者で、どこから来るのだ!」
「ふ……奴らはこことは違う世界に住む生命体で、我々もまた、違う世界からここに連れて来られた、まあ……
お前達の文明レベルで理解できるかは知らんがな」
 ワイルド星人の言葉で、アニエスは先日立ち聞きしたエレオノールの推論を思い出した。
 ……こことは違う世界がある。信じがたいが、あの話は本当だったのか。
「ならば、その違う世界とやらにはどうすれば行ける?」
「ヤプールと……戦う気かね……ゴホッ、無駄だよ。君達の力では次元の壁を突破することはできない……
私のナースも壊れてしまったしな。素直に無力さを自覚して、ウルトラマンにすがったらどうだね?」
 だが、その言葉を聞いたときアニエスは激昂して、ワイルド星人の胸倉を掴んだ。
「ふざけるな!! 自分の家に入った泥棒に何もせずに手をこまねいているようなことなどできるか、我々は力に怯えて
縮こまっている奴隷ではない。この国を守る戦士だ!!」
「た、隊長、落ち着いてください!!」
 驚いたミシェルが慌てて引き剥がし、後ろからアニエスを羽交い絞めにするが、その怒りはまだとけない。
「ミシェル、お前は悔しくないのか、我々はその存在価値そのものを否定されたのだぞ。いや我々だけではない、
人間そのものが、蹂躙されるだけの無力なものだと言われたのだ」
「それは……」
 返す言葉が見つからずにミシェルが沈黙すると、ワイルド星人は自嘲的に笑った。
「ふ……ふふふ」
「何がおかしい?」
「同じだな。お前達も……決して敵わないと分かっている相手に、それでもなお立ち向かおうとする。そう、
お前達が絶対的な力の差があるにも関わらず、ヤプールの侵略に立ち向かおうとするように、我々も種族の
老化という、逃れられない運命に抗おうとして、その結果がこの様だ……ぐっ」
 ワイルド星人の口から血がしたたり、本当にもう長くないことがわかる。
878ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (5/14):2009/02/15(日) 14:53:03 ID:EQWaL8OC
「我々は、貴様らとは違う。今は無力かもしれないが、いずれ必ずヤプールを倒せるだけの力を手に入れる」
「よいな。未来がある者は……お前達には、老いさらばえて滅び行く者達の気持ちはまだ分かるまい」
 それは、なった者にしか分かりはしないだろう。けれど、だからといってやっていいことと悪いことがある。
「老いてなお、若さをひがんだりせず、懸命に生きている者もいる」
 あの鳥の骨と呼ばれているマザリーニ枢機卿も、老体に鞭打ってトリステインのために尽くしている。アニエスの、
数少ない信頼できる人物の一人だ。
「それは、次世代に希望をたくせるからだ……われ……われには……もはや、受け継ぐべき、若者も……
子供も、いないのだ」
「だから、手を汚してでも、若さを手に入れようとしたのか?」
「そうだ……幾千、幾万年にもわたって積み上げられてきた種族の全てが、残らず消えてなくなる……
恐ろしいことだと……おも、わぬか?」
 アニエスとミシェルは、黙ってそのことを想像した。
 そして、過去の忌まわしい記憶を交えて、アニエスは吐き出すように言った。
「私も、幼いころ村を焼き払われ、全てを失ったことがある。だから、失う恐怖は分かるつもりだ……」
「隊長……」
 ミシェルは、これまで聞いたことの無かったアニエスの過去の一端を知って息を呑んだ。
「私はそのとき、生きる気力を失い、未来への希望などまったく持っていなかった。だが、時が過ぎていくに
従って、次第に何としてでも生きていこうと思うようになった。私の村を焼いた奴に復讐するためにな。確かに、
未来が無くなるということは耐え難い絶望だろう。しかし、だからといって他人の未来を横取りしてよいなどいう
詭弁は成り立たん」
「わかって……いるさ……だが、お前達の未来も、今日で潰えるかもしれないがな……」
「なに!?」
 思わず叫んだアニエスの背後で、建物が崩れる音とともに、とてつもなく重い物体が倒れる轟音が響いた。
 振り向いたその先に、信じられない光景が広がる。
「ああっ!! ウルトラマンが」
 ミシェルの悲痛な声が響く。
 圧倒的な力を発揮するドラゴリーの前に、ウルトラマンAの命運は尽きようとしていたのだ。
 
「グ……ヌォォ」
 地面に倒れ伏し、カラータイマーを激しく明滅させながらエースはうめいた。
 今のドラゴリーは、かつてエースが戦った初代や、才人がTVで見たメビウスと戦った復活体とはレベルが
違いすぎる。もはやドラゴリーの姿をした別の怪獣と呼んでも差し支えはないくらいだ。
(ちくしょう。これまでの怪獣なんかとは桁違いだ……)
 あまりにも常識を超えたパワーアップに、才人も悔しさをにじませてつぶやく。
879名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:53:32 ID:tWxpl6HX
支援
880ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (6/14):2009/02/15(日) 14:54:10 ID:EQWaL8OC
 考えてみれば、フーケ一人のときでさえホタルンガを並外れて強化させたのだ。その何十倍にも当たる
人間のエネルギーを吸収したらどうなるかは子供でもわかる。そのために、ヤプールはワイルド星人を
利用して人間の生命を集めさせたのだ。
「グゥゥ……」
 ひざを突きながら、何とかエースは立ち上がってドラゴリーに向かって構える。
 ドラゴリーは、よろめくエースとは裏腹に、余裕しゃくしゃくといった様子で喉を鳴らして笑っていた。エースが
戦闘開始から消耗しきっているというのに、奴はまるでダメージを受けていない。
(エース、どうすりゃいいんだよ!?)
(奴のパワーアップの要因である宇宙生物を、なんとかして取り除ければいいのだが……)
 焦る才人に、エースはそう答えた。
 要はドラゴリーのパワーアップは、ガディバという超高出力の補助エンジンをつけたようなもの、潜水艦でも
通常動力型と原子力型では性能が段違いなように、無限の体力とパワーを持つということは、それだけでも
無敵に限りなく近づく。しかし、そのガディバをドラゴリーと分離する方法が見つからない。
(くそっ、こんなときにGUYSがいてくれたら)
 幾度もメビウスの危機を救った頼もしい防衛チームの名を、才人は思わずにはいられなかった。
 けれど、ここにはTACもGUYSもいない。エースは一人で戦い、この世界を守らなければならないのだ。
(ちょっと、そんなまだるっこしいこと考えてないで、ギロチン技で一気に切り裂いてやったら?)
 焦れたルイズが物騒なことを言うが、エースはそれも無理だと断じた。
(いや、メタリウム光線が通じなかった以上、切断技も致命傷にはならないだろう。残りのエネルギーでは……)
 光線技はエネルギーを大量に消耗し、その変形型である切断光線はさらに消耗度が大きい。万一とどめを
しくじったら、その時点で負けが決定する。
 勝ち目は、いまやかなり少ないが、ここで負けてはトリスタニアが蹂躙される。エースは、万一のときは
敵を封印する最後の技、エースバリアーを使うべきかと思ったが、それはエースのエネルギーの大部分を使う上に、
恐らく同化している才人とルイズにまで悪影響を及ぼしてしまうだろう。かつて南夕子を重症に追い込んだこの技は
まさに諸刃の刃……だからこそ、これまで使わなかったのだ。
 けれども、ドラゴリーは当然そんなことはお構い無しに凶悪なうなり声をあげて突撃してくる。これを正面から
迎え撃つのは無理と判断したエースはとっさにジャンプしてかわした。
「トォーッ!!」
 空中で回転しながらドラゴリーの頭上を飛び越える。
 だが、街並みを蹴散らしながら突進してきたドラゴリーは、エースに避けられたと思うと、急停止して反転すると、
反対側へ着地したエースに向けて目から稲妻状の破壊光線を放ってきた。
「ヌワァッ!!」
 メビウスと戦った際に見せた雷撃破壊光線はエースの体を捉え、激しく火花を飛ばした。
 そのまま、ドラゴリーは仰向けに倒れたエースに圧し掛かり、好き放題に殴り始める。
「グワァァッ!!」
 倒れながらもなんとか腕を使ってガードしようとするが、奴の打撃は受け止めてもなお激しく衝撃が伝わってくる。
881名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:54:19 ID:JyaklwY+
ムルチのバラバラシーンはグロかった……支援!
882ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (7/14):2009/02/15(日) 14:55:40 ID:EQWaL8OC
(エース!!)
 才人とルイズも必死に呼びかける。エースの死は、すなわち同化している彼らの死に直結する。しかしそんなことは
どうでもいい、目の前で苦しむエースが心配なのだ。それに、才人にはもう一つ恐れていることがあった。
 
 ……まずい、ドラゴリーといえば……
 
 かつて初代ドラゴリーが起こした惨劇がエースと才人の脳裏に蘇る。
 そして、悪い予感は遂に現実のものとなった。
「ガッ、ウァァッ!!」
 ドラゴリーの鋭い爪の生えた腕がエースの首を狙ってくる。なんとか掴まれる前に腕で持ちこたえようとするものの、
凄まじいパワーに今にも弾き飛ばされそうだ。
(まずい!! ドラゴリーは以前怪獣ムルチを引き裂いてるんだ)
(なんですって!? じ、冗談じゃないわよ)
 そうだ、ドラゴリーは超獣屈指の怪力を持っており、その腕力だけで敵の体を引き裂くなどたやすい。初代
ドラゴリーは、ウルトラマンジャックを苦戦させたほどの怪獣ムルチを簡単にバラバラにしたことがあるのだ。
「ウォォッ!!」
 押し返そうとするが、エネルギーが乏しくなってきていることもあり、今にも押し潰されそうだ。奴に掴まれたら
いかにエースといえどもスノーゴンにやられたときのジャックのように五体バラバラにされてしまう。しかし、
どうすることもできない。
 
 
 そんなエースの窮地を、アニエスは血がにじみそうなくらい強く拳を握り締めて見つめていた。
「エース……おのれ、我々はここで見ていることしかできないのか!?」
 このときほど、自分が剣士でメイジでないことを憎いと思ったことはなかった。剣でメイジを倒すことはできる。
しかし、剣では超獣に届かせることすらできない。どんな系統でもいい、一瞬でも奴の目をそらすことさえできれば……
 すでに王軍も緊急出動しているころだろうが、今更到底間に合いはしない。
"彼もまた、戦えば傷つき、倒れることもある……"
 以前エレオノールの報告を立ち聞きしたときの言葉が脳裏をよぎる。
 こうなれば、せめて敵わぬまでも一糸むくいるか……自分の望みは果たせなくなるが、この国が、いや世界が
滅びるのを見てからよりは死に際がすっきりするだろう。
 アニエスが悲壮な覚悟を決めようとしていた時、その傍らで同じように立ち尽くしていたミシェルも。
 ……私も、戦うべきなのか……
 そう思い、懐の中にしまっていた、ある物に手をかけるべきか、最後の選択をしようとしていた。
 
 だがそのとき、倒れていたワイルド星人がぽつりと言った。
「ウルトラマンを……助けたいか……?」
「なに!? ……当然だ。我々の恩人が危機に瀕しているのに、見過ごすことなどできるか」
883名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:57:03 ID:iqV6hYqb
支援
884名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 14:57:07 ID:P4UX2LGP
支援
885ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (8/14):2009/02/15(日) 14:57:13 ID:EQWaL8OC
 アニエスは怒気を交えて叫ぶ。こんなときに、無力な自分達をこいつはあざ笑おうというのか。しかし、ワイルド星人は
途切れそうな声で、ナースの残骸の隅に転がっている生命カメラを指差して言った。
「ならば、私の……生命……カメラを使うがいい。超獣が吸収した生命力を、吸い返すことができるはずだ……けぼっ!」
「な、なに!?」
「き、聞こえなかったか。その、生命カメラで超獣を……弱体化できるかも、と言ってるんだ」
 その予想だにしなかった言葉に、思わず狼狽をあらわにしてアニエスは叫んだ。
「貴様、どういうつもりだ!?」
「ふ……私も、ヤプールに利用されていた身……ささやかな、復讐さ……フィルムが……ないから、吸い切れは
しないだろうが、無いよりは、ましなはずだ」
「ぬぅ……」
「隊長、こんな奴の言うことを信じるのですか!?」
 アニエスは迷いを見せるが、ミシェルは侵略者の言うことなど信じられないと、言葉を荒くする。
「……ふ……信じたく……ない、なら別にいい。だが、疑っている時間が、あるのかな?」
「!?」
 見ると、ドラゴリーの爪が今にもエースの首にかかろうとしている。アニエスは遂に決断して宇宙カメラを拾い上げた。
「……機構は銃とほぼ同じだ、使い方はさっき見せたとおり……」
「礼は言わんぞ、だが、貴様の分も恨みは晴らしてきてやる!!」
 そう言い捨てると、アニエスはライフルのように宇宙カメラを構えて、スコープにドラゴリーの姿を映しこもうとした。
 だが。
「くっ、だめだ、奴とエースが近すぎる。これではエースまで巻き込んでしまう!!」
 宇宙カメラの威力がどれほどなのかは分からないが、万一エースまで悪影響を与えてしまっては元も子もない。
宇宙カメラにはピントの調節機能も当然あるのだが、アニエスには使い方が分からない。
 どうしようもないのか!? 歯軋りしながらアニエスが叫ぼうとしたとき、彼女の前にミシェルが進み出た。
「隊長、私が超獣を引き離します。その隙にお願いします」
「なに……? ミシェル、お前、それは!?」
 そのとき、ミシェルの手には銃士隊の標準装備である剣でも銃でもなく、一本の杖が握られていた。
「はっ!!」
 ミシェルが素早く呪文を詠唱し、杖を振るうと、公園の地面がはがれて巨大な塊になり、もう一度振るうと
それが弾丸となってドラゴリーの目に飛び込んでいった。これは土系統の魔法、しかも飛ばした土塊の大きさ
からしてトライアングルクラスのものだ。
「ミシェル、お前メイジだったのか!?」
「説明は後で、それよりも早く!!」
 ドラゴリーは突然目に飛び込んできた大量の土に驚いて、エースへの攻撃を忘れて体を起こしている。
チャンスは、今しかない!!
「ちっ!! 喰らええぇ!!」
 今度こそ完全にフレームにあわせたドラゴリーに向かって、アニエスは宇宙カメラの引き金を引いた。
886ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (9/14):2009/02/15(日) 14:58:14 ID:EQWaL8OC
 そのカメラの銃身からは、輝くビームも高速の弾丸も飛び出しはしなかった。けれども目に見えない光線が確かに
発射され、ドラゴリーの体内に巣食っているガディバの生命体を捉えていた。
 突然、ドラゴリーの体が凍りついたように動かなくなり、奴の口から苦しげなうめき声があがる。
 やったのか? アニエスとミシェルは息を呑んで見つめる。
 すると、ドラゴリーの体から黒い霧が噴出してきた。宇宙カメラの影響でガディバがドラゴリーと同化しきれなく
なって苦しんでいるのだ。二人は、ここぞとばかりにエースに向かって叫んだ。
 
「ウルトラマンエース!!」
「今だ!! やれ!!」
 
 その声に応えて、エースは渾身の力でドラゴリーを跳ね飛ばした。
 
「テェーイ!!」
 
 ドラゴリーの巨体が押し返されて、エースは雄々しく立ち上がる。
(アニエスさん、ミシェルさん……ありがとう)
 二人の声を確かに受けて、エースの中から才人は礼を言った。
 そして、二人が作ってくれたこのチャンスを逃すわけにはいかない。
 エースは残った全エネルギーを、頭上のウルトラホールに集中させた。高圧エネルギーがエースの両手と
ウルトラホールの間で凝縮されて、光の刃と化していく。
 これで最後だ!! 裂帛の気合とともに、エースは作り出した3つの光輪をドラゴリーに投げつけた!!
 
『ウルトラギロチン!!』
 
 光の刃は狙い違わずにドラゴリーの首、そして両腕に命中すると、強度の弱っていたそこを一瞬にして寸断した!!
 
「やった!!」
 
 アニエスとミシェルの口から同時に、同じ歓声があがった。
 首と腕を失ったドラゴリーの胴体の切断部から、溢れたエネルギーが激しい火花となって噴き上がる。
それはまるでその身に込められた怨念が炎となって具現化しているかのように燃え盛っていたが、やがて
体内のエネルギーのバランスが完全に崩れたとき、制御を失ったガディバもろとも、かつての個体同様に
大爆発を起こして木っ端微塵になって吹き飛んだ!!
 
(勝った……)
 ドラゴリーの破片が風に乗って飛んでいく。
 ヤプールの怨念によって三度生を受けた超獣は、再びウルトラマンと人間の力によって倒されたのだった。
 
(それにしても、恐ろしい敵だったわ……人間の邪念ってものが、ここまで凶悪な力になるとはね)
(そうだな。今度の敵はエースだけでは勝てなかっただろうな)
(だが、奴を倒したのも、また人間の力だ。見てみろ、この世界にも勇気ある人々がいる)
887名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:01:27 ID:iqV6hYqb
一番好きなギロチン技はバーチカルギロチン支援
888名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:04:48 ID:mygb4Bw1
5番目さんが投下するときはいつもウルトラ超合金のAで遊んでるぜ支援!

…エースブレードとガスタンク爆弾何処にやったっけ…?
代理スレで、毎時0時にリセットされると聞いたので、可能かテストしてみます。
これが無事載りましたら、またこちらで投下しますのでよろしくお願いします。
890ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (10/14):2009/02/15(日) 15:10:01 ID:EQWaL8OC
 エースの視線の先には、見事な敬礼を送ってくるアニエスとミシェルの姿があった。
 そのとき、エースの胸中には北斗星司隊員として戦っていたときの仲間達の記憶が二人の姿と重なって見えていた。
ホタルンガ、マッハレス、ガスゲゴン……TACが助けてくれたからこそ勝てた超獣は数多い。ウルトラマンは
決して無敵ではない。その強さの影には平和を守ろうとする人間達の活躍が常にあったのだ。
(アニエスさん、ミシェルさん。すげえな、たった二人で超獣に立ち向かおうとするなんて)
 才人は、たとえ近代兵器が無くとも、やりようによっては超獣とも戦うことができるんだと知った。
 そう、たとえウルトラマンを倒すほどの強豪怪獣でも、たった一人の人間に敵わずに苦しめられることもある。
(今回も、また銃士隊にいいところを取っていかれたわね。悔しいけど、あの人達は本当に強いわ)
 ルイズもまた、単純な力では計り切れないアニエス達の強さを感じ取っていた。
 しかし、それは別に銃士隊だけの特別な力ではない。未熟な身でありながら勇敢に怪獣に向かっていった
ギーシュ達WEKCの少年達、タバサやキュルケ達、みんな頼もしい味方達、彼らもまた歴代の防衛チームに
勝るとも劣らない勇気を持っている。
 エースは、地上で敬礼を送ってくる二人に向かって一度うなづいて見せると、平穏を取り戻した空を見上げて飛び立った。
「ショワッチ!!」
 
 
 戦いは終わった。しかし、それは全ての解決を意味しない。
 消え行くエースを見送って、アニエスとミシェルは、すでに呼吸も途切れがちになっているワイルド星人の元に立った。
「終わったぞ」
「ああ……お、わった……何も……かもな」
 短く消えそうな声で、ワイルド星人は言った。
 終わった……それは戦いのことではない。任務に失敗して、彼の帰りを待っているであろうワイルド星そのものの
歴史が、今終わろうとしているのだ。
「ワイルド星人だったか、我々は……」
「い、うな……私は、負けた……それだけだ……星に残してきた者達も、間もなく全て死に逝くだろう……ほんの、少し……
さ、きに逝く」
 静かに、しかし確実にワイルド星人の顔から血の気が引いていく。もはやどんな治療も手遅れだろう。もっとも、彼には
すでに生き抜く生命力が残されていないが。
 そこへ、ルイズと才人も沈痛な面持ちでやってきた。二人の姿を見ると、ワイルド星人はわずかに笑みを浮かべて言った。
「若いな……いいものだ、我らは、遠い昔にそれを失ってしまった……ふ、この星なら……簡単に、生命を集められると
聞いたが……どうやら、大間違いだった、ようだ」
 ハルケギニアの人間の底力を見誤っていたことに、ワイルド星人は今更ながらに苦笑した。
891ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (11/14):2009/02/15(日) 15:11:10 ID:EQWaL8OC
「ワイルド星人、なんでヤプールなんかの口車に乗ったんだ。あいつがどういう奴か、知らないわけじゃないんだろ?」
 才人は、なぜワイルド星人ほど知的な宇宙人がヤプールに利用されていたのかと、疑問に思っていたことを尋ねた。
「当然だ、奴は……宇宙でもっとも信用してはいけない者達……し、かし、もはや地球では防備が強固になりすぎて、
だから……罠だと分かっていても……奴らの提案に、乗る以外に、方法はなかった」
「じゃあ、だまされているとわかっていて……」
 そこまで……そこまで追い詰められていたのか。
「そうだ……万に一つ、奴の手をかいくぐれることに、私は賭けた。もっとも、そうするまでもなかったが……な」
 戦う気はなかった。本来なら友にもなれたかもしれない温厚な種族の一人が、今や無念の死を遂げようとしている。
しかも、そうなるように手をかけたのは他ならぬ自分達だ。
「ごめん……」
 ワイルド星人の血まみれの姿を見ると、自然と、才人の口からはその言葉が出ていた。
「あやまるな……お前達はお前達の、当然の権利を行使しただけだ……一方的に、侵攻したのは……私だっ、ぐっ!」
「……」
「だが……お前達が邪魔したせいで……我等の、種族が絶滅することになったのは変わりない……だから、私は……
お前達を、決して……許さない」
「……」
 何も言わずに、一同はたった一言だけ送られた、恨みの言葉を胸に飲み込んだ。
 確かに、彼のやったことは悪だ、しかしそれを悪と断じて正義面して誰が糾弾できるか、たとえ悪だと分かっていても、
あえてその道を選んで手を汚さなければならないこともある。一つの正義、一つの論理で全て丸く治められるほど、
この世は単純にも親切にもできていない。
「私の死と共に、ワイルド星人は絶滅する……無念だ……父の宿願を、果たすことができなかった」
 父の宿願!? その言葉を聞いて才人の脳裏にある記憶が蘇った。
「まさか、かつて地球に来たワイルド星人はあんたの?」
「なに!? ま、まさか、うぐっ! ……わ、私の父を知っているの、か?」
 そうだったのか、かつてウルトラ警備隊と戦い、無念にも地球の土に返ったワイルド星人は彼の……
「ああ、聞いたことがある。地球で、ウルトラ警備隊を相手に、たった一人で戦い抜いた。侵略宇宙人ばかりの中、
話し合いを持とうとした数少ない一人だったと」
「そうか、君は地球の……そうなのか……父も最期まで、戦い抜いたのか……その生き様を、覚えていた者がいたのか」
 ワイルド星人の目に、一筋の涙が浮かび、そして流れて消えた。
 もはや、何も言うべき言葉を無くした一同は、ただ黙って、戦士の死に行く姿を見守る。
「……さらばだ……そして……」
 それを最後に、ワイルド星人のまぶたが閉じて、二度と開かれることはなかった。
 
 
 それから数時間後、4人の姿はトリスタニアから少し離れた丘にあった。
892ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (12/14):2009/02/15(日) 15:12:09 ID:EQWaL8OC
「ここなら、空がよく見える。彼のふるさとにも、少しは近くなるだろう」
 彼らは、ワイルド星人の遺体を名も無い丘の一角に埋めて、墓標も無い墓を作った。
 すでに破壊されたナースや、ドラゴリーの死骸は王立魔法アカデミーが検分を始めている。しかし、敵とはいえ
勇敢に戦って死んでいった戦士の亡骸を、研究材料にされるのは忍びない。
 こんなことで彼が許してくれるとは思えないが、せめて安らかな眠りぐらいは……
「今回は、結局誰も救えなかったわね……」
 ワイルド星に、何人の星人が残っているかは分からないが、間接的にとはいえ彼らを死なせてしまったのは
間違いない。それに、結局奪われた人々の生命は取り返せなかった。全て罪人のものだからと、割り切ることは
し切れない。あの中に、改心出来た者達がいたかもしれないのだ。
「ウルトラマンは神じゃない。救えない命もあれば、届かない願いもあるさ」
 それは、才人を通して言った、北斗星司の言葉でもあった。
「そうね……今回はエースも危なかった。アニエス達が援護してくれなかったら、どうなっていたか」
 ヤプールは、確実に戦力を強化してきている。今度のドラゴリーは、いわばドーピングされていたようなもの
だったが、いずれそんなものに頼らずともさらに強力な超獣を生み出してくるようになるだろう。
 やがて、名も無い墓にアニエスとミシェルが敬礼をすると、二人も見よう見まねで同じように敬礼をした。
「わたし、どうしても彼を憎みきれないわ。大勢の人を殺して、街を壊した原因のはずなのに」
 ルイズがぽつりと言った言葉に、才人も空を見上げて言った。
「あの人は俺達自身みたいなものだったんだな。俺もお前も、いずれはしわくちゃのじいさんばあさんになって死ぬ。
よく言えねえけど、人の若さを奪って若返れるって分かったら、その誘惑に俺達はあらがえるかな?」
 二人は視線を落として、アニエスが手に持っている宇宙カメラを見た。
 不老不死、不老長寿、よくセットにされて言われるように、不老は人間にとって永遠の憧れだ。その夢を
可能にする道具が目の前にある。
「正直、なってみないと分からないわね。けれど、これはこの世にあっていいものじゃない。それだけは言えるわ」
 こんなものがあれば、欲深い人々はこぞって手に入れようとして争いを起こすだろう。強者が弱者の生命を
奪って君臨し続ける世界、そんな地獄も夢物語ではない。
「そうだよな。アニエスさん、そいつは」
「分かっている。これは人間が持つには危険すぎる悪魔の力だ……今ここで、破壊してしまおう」
 ミシェルも、黙ってうなづいた。本来なら、鹵獲品としてアカデミーに引き渡すべき代物だが、その中の誰か
一人でもこれを公にすれば、恐ろしい事態を招くだろう。
 才人は、剣を失っていたアニエスにデルフリンガーを抜いて差し出した。
「おっ、やっと俺っちの出番か。どーせなら戦いの最中に使って欲しかったが、この際ぜいたくは言わねえぜ。
さっさと派手にいくかい!!」
「借りるぞ。ほぅ、なかなか持ち心地がいいな。そんじょそこらの数打ちやなまくらとは大違いだ」
893名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:12:24 ID:5TVdjb38
しえん
894名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:12:43 ID:iqV6hYqb
まあバルタン星人なんてウルトラマンたちに滅ぼされたようなもんだがな支援。
895ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (13/14):2009/02/15(日) 15:13:09 ID:EQWaL8OC
「おめぇさんこそ、なかなかの腕前みたいだな。使い手に持たれるのが一番だが、あんたみたいな手だれに
使ってもらえるのもうれしいな」
 やっと来た出番に、デルフもけっこううれしそうだ。アニエスのほうもデルフの感触が気に入ったらしく、まるで
棒切れのように軽々とデルフを振り回している。
「では、やるか……それっ!!」
 高く投げ上げた宇宙カメラに向かってアニエスは跳び、その天頂で華麗に一閃して宇宙カメラを四分割した。
「ルイズ、とどめだ!!」
「まかせなさい!!」
 最後に、ルイズが爆発で吹っ飛ばすと、宇宙カメラは二度と復元不能なくらいに粉々になって、風に消えていった。
 ルイズとしては、失敗ばかりの自分の爆発が当てにされるのは気持ちのいいものではないが、派手に吹っ飛ばして
気も晴れたから差し引きプラスということで納得していた。
 やりきれない思いは残る。しかしこれでようやく終わったのだ。
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか、魔法学院へ」
 これでやるべきことは全てやった。ヤプールもあれだけ念を入れた作戦が失敗した以上、しばらくは大人しく
しているだろう。
 ルイズに言われて、才人は満足げなデルフを受け取ると、ルイズといっしょにアニエスに一礼をした。
「それじゃあ、俺達はこのへんで」
「ああ、今回もお前には世話になったな」
「いえ、今回はアニエスさん達がいたからですよ。正直俺なんか大して役に立ってませんって……じゃあ」
 最後に、固く握手をして二人は別れていった。
 
 その背中を見送りながら、アニエスはミシェルに振り向くことなく問いかける。
「ところで、お前は私にずっと魔法が使えること、すなわちメイジであることを隠していたな……素性には謎が
多かったが、お前はずっと剣士として振舞ってきたのに」
「……私は、確かに元貴族の家柄ですが、それは隊長といえども……」
「言いたくないなら、別に無理に聞こうとは思わん。しかし、なぜずっと隠し通してきた禁忌を破ってまで魔法を
使った?」
「それは……自分でも、うまく説明できません。使うつもりは、なかったのですが……隊長、私は……」
 素性を偽っていた以上、隊を放逐されるのが当然だろう。長年積み上げてきたものを一瞬で突き崩される
ことになるが、今更仕方も無い。
「その気持ちがあれば、銃士隊としての資格は充分だ。お前が何を望んでいるのかは知らんが、銃士隊として、
いや一個の人として誇りを持ち続けるのならば、他に何も言わん」
「……隊長、そんな甘い判断でよいのですか? 私はあなたをだましていたのですよ」
 まさかのアニエスの回答に、ミシェルは正直驚いていた。
 得体の知れないものを懐に入れておくのだけでも普通じゃないのに、自分の素性を一切探ろうとはしてこない。
896ウルトラ5番目の使い魔 第35話 (14/14):2009/02/15(日) 15:14:01 ID:EQWaL8OC
しかしアニエスは事も無げに言った。
「お前が明確に私を裏切ったなら、遠慮なく私はお前を斬ろう。しかし、裏切る可能性があるだけで部下を
切り捨てるようなやり方は、私は好かん」
「私が、ここであなたを殺して、隊長の座を奪いに来るとは考えられないのですか。今なら侵略者と戦って殺された
といえば理由は成り立ちますし、正直、正面きって戦えば私はあなたを倒せるだけの自信はあります」
「お前こそ、メイジ殺しの私を見くびるな。第一、お前は私が見込んで副長に据えた、その判断は今でも間違っている
とは思わん。ツルク星人のときも、中途半端な覚悟の持ち主が、命を懸けて戦えるわけがない。どういう根を
持っているにせよ。トリステインを愛しているという一点においては、私と同一だろう」
「……」
 もう、ミシェルには言うべき言葉が何もなかった。
 確かに、彼女には口に出せない過去の闇がある。それは、銃士隊としては決して許されることではないだろう。
 本当のことをいえば、ここでアニエスを暗殺することも視野に入れていたのだが、それでもなお平然と自分を
そのまま使おうという、この人は大馬鹿なのか、それともとほうもない器量の持ち主なのか。
「ただし、どんな理由があるにせよ。お前がこの国に仇なす存在になったら、私はお前を殺す。それだけは覚えておけ」
「……はっ!」
「では、我々も戻るぞ。部下達が待っている」
 アニエスはゆっくりと、停めてある馬の元へと歩き始めた。
 そして、仕えるべきたった一人の指揮官の背を見ながら、青い髪の女騎士は、遠い昔に失った懐かしい何かが、
胸の中に戻ってくるような、そんな感触を知らず得始めていた。
 
 
 続く
897ウルトラ5番目の使い魔 第35話 あとがき:2009/02/15(日) 15:15:49 ID:EQWaL8OC
これでワイルド星人編は終わりです。数多くの支援、どうもありがとうございました。
見返してみればセブンからはこれが初でしたね。
それにしても、銃士隊率高いな、私の作品は。これからも事あるごとにこの二人は出てくることになると思うので
よろしくお願いします。
それと私も『大決戦!超ウルトラ8兄弟』のDVD買いましたが、何回見ても超かっこいいです。特にセブンの
『イリュージョニック・スラッガー』はすげーって思いました。いつか作中でグリッターメタリウム光線を撃たせてみたいです。
 
皆さんの応援のおかげで35話までこれました。
次回は再び魔法学院に戻ります。では、また来週。
898名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:18:03 ID:mygb4Bw1
乙でしたー
…って、8兄弟の映画もうDVDになってたのか!?
買いに行かないと…。
899名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:23:37 ID:iqV6hYqb
乙。
ウルトラシリーズは後味の悪い中途半端な終わり方もチラホラあるが……まあ、さすがに2次創作でそこまでやる必要も無いよなぁ。

そう言えばGUYSのアーカイブドキュメント内では、ジャミラは「国際会議場を襲った、ただの怪獣」と扱われているとか。
この分だとギエロン星獣も似たような扱いなんだろうなぁ……。
900名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:24:59 ID:hPyxZG5d
ワイルド星人がワルド星人に見えたのは俺だけじゃないはず
901名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:28:27 ID:BI86pfiB
お疲れ様です

キングジョーの残骸がハルケギニアで発見されてアカデミーが調査してたら
起動、暴走してしまうとか

GUYSドキュメントとやらではメイツ星人はどんな扱いなのだろう

平成ウルトラは全く見てないけど劇場版は見てる
アツいぜアツいぜアツくて死ぬぜー
902名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:32:53 ID:iqV6hYqb
>>901
メイツ星人については、取りあえず事件のあらましは記録されている。
コノミちゃんだかテッペイ君だかがドキュメント内を調べてたくらいだから、一般公開はされてないと思うが。
903ゼロの最初の人 ◆fiNSn9pg1Y :2009/02/15(日) 15:36:53 ID:H2eM5A5m
自分がしたことはただ疲れて眠り、十分に睡眠をとったから起きる。ただこれだけのことなのに
スレッドをチェックしてみればこんなにもたくさんの作品が投下されてるではありませんか
嗚呼、なんと素敵なことでしょう!
ビバ!ゼロの使い魔! ビバ!クロスオーバー!

でもこの素敵な作品たちは、作家の手で一つ一つ丹念に練り上げて作りあげられたものなわけで。
なにはともあれ作家様方、お疲れ様です。
体や私生活に害を及ぼさない程度に頑張ってください。

>>819
ああなるほど。至らないところがいくつもありましたね。
とりあえず、行頭の一字下げは続けるとして、他のことは以後気を付けていきます。

本当にありがとうございました。



それはそうと、作品投下時以外にトリ付けとくのってどうなんだろうか?
今回は、どうしても>>819様に"ありがとう"を言いたかったから付けてみたんだが
ってか長レスごめんなさい。
904名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:41:31 ID:xmFDrT1W
>>903
落ち着いて。
顔洗ってコーヒーでも飲んで目を覚まして。
905名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 15:46:45 ID:jS38NKME
ウルトラ5番目の使い魔さん乙でした
今回の話はウルトラシリーズにもまれにある重い話でしたが
それを含めてこのような話を作ったウルトラ5番目の使い魔さんは凄いなと思いました
906名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 16:09:08 ID:ZtxBsIGc
ふと思いついた。

トップをねらえ2!のノノが召喚されたらどうだろう?

・・・

・・・

・・・ノノの描写難しくて自分には無理だった・・・orz
907名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 16:16:45 ID:ve8Cq0hD
>>906
まとめwikiを
ゼロの七号で
検索しろ
908名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 16:25:45 ID:xKV9TldK
>>906
ゼロの七号を読め。何気にギーシュが大出世してる……ああ、地位じゃなくて能力の方ね。
909名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 16:43:08 ID:etFuazkl
この召喚されましたシリーズを見てると
脳内BGMで最強○×計画が流れる俺は少し寝てくる。
子作りは無理だろ・・・俺・・・
910名無しさん@お腹いっぱい:2009/02/15(日) 16:55:27 ID:WAeXudmY
>>897
ウルトラ5番目の使い魔さん、今回もGJ!!でした。
確かに、「ウルトラ」には、「故郷は地球」「怪獣使いと少年」「MAC全滅」等、
救いの無い後味の悪い話も多々ありましたね。

今回のAは今までで1番、大苦戦した戦いでした。これから更に超獣は手強くなるんだろうな。
あと、Aの掛け声の再現率マジパネエ!www
最後に、故郷の為に命を掛けたワイルド星人の死に、黙祷ーーー!!
911名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 16:56:24 ID:M8pVH1Wv
>>903
あんまり言いたくないけど騙り防止。
912名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 17:26:34 ID:dVXwHwn8
>>840
>>超人同士だと意味がないからやらないけど超人には基本的に巨大化する能力があるとかいう設定があったような
巨大なのはあくまで『フーケの操るゴーレム』であってフーケ自身では無いから、じゃ無いかな
おそらくウォーズマンが巨大化してゴーレムと同じ大きさになったらフーケ自身も巨大化、操るゴーレムはフーケに比例して更に大きくなる
そう考えたら回りの被害がいたずらに大きくなるだけだしウォーズマンが巨大化せずに戦ったことにも納得できる
913名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 17:31:38 ID:iqV6hYqb
>>912
>フーケ自身も巨大化

ちょっと待ってくれ。
914名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 17:35:37 ID:u0W9Zz9E
>>913
まあ、ゆでだし。
915名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 17:45:03 ID:4PikNLP8
今回のスレは1000行くのが先か、500kb行くのが先か
916名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 17:45:12 ID:RYguUZad
ウルトラの人乙
めちゃくちゃ熱い展開だなw
俺こういうの大好物だ
917ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:35:39 ID:L4j18lrA
18:45から、風雲アルビオン編の始まりを投下したいと思います。
24KBくらいあるけど大丈夫だよね?

8レスくらいです。
918ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:45:13 ID:L4j18lrA
 ルイズの就寝は遅い。夜遅くまで勉学に励む彼女は、ゆえに一度寝入るとまず目を覚ますことはない。
 そんなわけで、朝になって、アプトムに起こされないかぎり目覚めるはずのない彼女は、しかし今回に限って自分の洩らした寝言で目を
覚ます。

「いけない人ですわ。子爵さまは……。え? そんな、恥ずかしいですわ。って、あれ? なんでアプトムが出てくるの? って今度は誰?
 アンタ誰よ?」

 何の夢を見てるんだか? とアプトムが見ていると、パチリと眼を開いたルイズと眼が合う。

「あれっ? あれっ? えーと、わたし何か寝言を言ってた?」
「いや、聞いてない」

 さらっと嘘をつくアプトムに、ルイズはうーんと頭を捻る。寝言など人に聞かれないにこしたことはないが、さっきまで良い夢を見てい
た気がする。それがどんなものだったのか、目覚めと共に忘れてしまったので思い出したいと質問をしてしまっていた。
 が、睡眠時間の足りていない彼女は、すぐにまた眠りの世界に旅立つ事になるのだが、その前に、いつも黙って自分に従ってくれている
アプトムの姿に、不意にある考えが頭をよぎった。
 アプトムは、最初に召喚した時から、故郷に帰ることを望んでおり、ルイズに従っているのも、いつか彼女が彼を帰す魔法を作り出すと
いう約束によるものである。
 しかし、よくよく考えてみると、サモン・サーヴァントとは対象の前に召喚のゲートを開く魔法であり、そこを潜るかどうかは、相手の
意思に委ねられている。
 ならば、彼が召喚されたのは、彼自身の意志によるものではないだろうか? そんな疑問を思い浮かべた彼女は、特に深い考えもなく口
に出し、「事故だ」という答えを聞いて納得し、次に起きた時にはそんな質問をしたことも、夢のことも完全に忘却してしまうのであった。
 そして、ルイズが寝入ったのを確認して、アプトムは一人考える。
 思い出すのは、彼が召喚されたときに融合捕食をしかけた斥候獣化兵。今思えば、ルイズが召喚しようとしていたのは、あの獣化兵であ
り、彼のゾアノイドはそれに応えてゲートを潜ろうとしていたのではなかったか。つまり自分は、そこに割り込んだ乱入者であり、そのク
セ自分を帰せと無理難題を言っているのではないか。
 だが、だからといって地球に帰る事をあきらめることは出来ない。彼には自分の生き方を変えることなど出来ないのだから。
 まったく、何故今頃になってそんな事を聞いてくるのだとアプトムはルイズを睨みつける。
 初めて会ったときに言われたのなら、知ったことかと無視もできたろうに、短くとも共にいた時間のせいで多少なりとも情の移ってしま
った今では、気にせずにはいられないではないか。



 そんな主従の、どうという事のない出来事があったある夜、一人の女性の元に不審者が現れていた。
 女性の名はミス・ロングビル。学院長秘書の立場を持つ女性である。
 夜遅くまで起きていた彼女が何をやっていたのかというと、手紙を書いていた。
 ミス・ロングビルには、もう一つの名がある。土くれのフーケという盗賊としての名である。彼女がこの学院に勤めるようになったのは、
学院の宝物庫にあるマジックアイテムを盗み出すためであり、盗賊としての仕事が終わればすぐにでも出て行くつもりであった。
 そして、今回の仕事が終わったら、一度妹の元に帰るつもりであったのだが、その仕事が変な失敗をして帰る機会を逸してしまった。
 仕事が失敗した今も彼女が、いつまでもこの学院に留まっていることに特別な理由はない。ただ単に、出て行くきっかけがないからであ
り、学院長秘書という身分に支給される給料が、仕事の失敗の埋め合わせに充分なものであるという理由からである。
 そんなわけで、自分が盗賊などというヤクザな仕事をしていることを知らない、遠く離れた地に暮らす妹に、帰るのが遅くなるという言
い訳を並べた手紙を書いていた時、その男はやってきた。
919名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:46:41 ID:S2HXso8R
容量を喰わないように支援
920ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:47:36 ID:L4j18lrA
 その男は風と共に現れた。
 開いた窓から吹き込んだ微風にカーテンが揺れた時、白い仮面で顔を隠したその男は月明かりに照らされ立っていた。

「『土くれ』だな?」

 問いではなく確認ですらない断定に、しかし彼女は何を言われたのは分からないと、とぼけて見せる。
 学院長秘書のミス・ロングビルと盗賊の土くれのフーケを繋げる事実を知るものは、彼女の知る限り一人しかいない。そして、その一人
は決してその事実を人に話さないだろう確信があったから。だが、男の次の言葉に彼女の演技は引き剥がされる。

「再びアルビオンに仕える気はないかね? マチルダ・オブ・サウスゴータ」

 自身以外は妹ぐらいしか知らないはずの名を突きつけられ、彼女は蒼白になる。

「あんた、何者だい?」
「質問しているのは、こちらなんだがな」

 くつくつと喉を鳴らして笑う男に、彼女は否と答える。アルビオン王家は彼女の仇である。父を、家を、全てを奪った敵だ。そんなもの
に仕える気などないと怒鳴りつける。
 そんな彼女に男は笑いを収めることなく、勘違いするなと返す。

「王家に仕えろなどと誰が言った? アルビオン王家は、じきに倒れる。お前が仕えるのは、王家が倒れた後の我々有能な貴族が政を行う
アルビオンだ」

 有能な貴族ね。と彼女は呟く。そういえば聞いたことがある。今、アルビオンでは王家と貴族が争い、王家が劣勢にあると。
 もっとも、それは彼女には関係のない話である。
 かつて、アルビオン王家に仕えた貴族の家に生まれた彼女は、しかし今はもうその王家に恨みはあっても忠誠心などない。かといって、
王家に復讐をしようという考えもない。かつては、そんな想いもあったが、自身と妹を食べさせていくのが精一杯の最初の生活と、その後
の多くの孤児を抱えた現実の前に、磨耗した。

「へえ? で? 王家を倒して何をしようってんだい? アルビオンの新しい王様にでもなりたいのかい?」

 バカにしたように笑う彼女に、男は冷淡に答える。

「我々はハルケギニアの将来を憂う高潔な貴族の連盟だ。ハルケギニアは我々の手で一つになり、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を取り
戻すのだ。アルビオンなど、手始めにすぎんよ」

 高潔ときたか。と彼女は内心で笑う。
 ご立派な理想を語る者は、自分自身それを信じてなどいないと彼女は知っている。信じるのは、駒として使い捨てられる者たちだけだ。
 彼女は捨て駒になどなる気はない。大体、アルビオン一国を支配できたところで、ハルケギニアを統一するなど夢物語だし、仮にそれが
出来たところで聖地にはエルフがいる。
 この世界で最強の魔法使いたるエルフたちに勝てるものなど、この世界に一人も……、いや、二人くらいならいるような気がするが、そ
れは置いといて、ハルケギニア中の貴族を集めても勝ち目などない。
 ついでに言えば、彼女はとある事情からエルフという種族に特に悪感情を持っていないし始祖ブリミルに対する信仰も薄い。ので、聖地
なんかエルフにくれてやれよという想いがある。
 とはいえ。
921名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:49:32 ID:iqV6hYqb
今更こんなこと質問するのも何なんだが、容量チェックってどうやるんだ支援。
922ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:50:07 ID:L4j18lrA
「『土くれ』よ。お前には選択することができる」
「あんたらの手下になるか、ここで死ぬかを?」

 皮肉で答えてみるが、男は悪びれもせずに「そうだ」と頷いてくる。
 最初から男には、彼女に選択の余地を与えるつもりなどない。べらべら自分たちの目的を喋ったのも、そういう理由があるからだ。
 戦って勝てるとは思わない。土メイジの自分は、正面からの戦いに向いていないと彼女は自覚している。
 だから彼女は、「まあ、いいさ。アルビオン王家には恨みがあるし、エルフを倒して聖地を取り戻すってのも面白そうだ」と嘘をつく。
 罪悪感はない。誇りなどない。生きるためならなんでもする。それが、彼女の生き方だから。

「それで、これから旗を振る組織の名前は、なんていうんだい?」
「レコン・キスタだ」

 こうして、ミス・ロングビルという名の学院長秘書は、学院から姿を消すことになる。休暇届を提出してであるが。
 それが、本当に単なる休暇で終わるのかどうか、それは彼女自身にも今は分からない。



 その日、学院は喧騒に包まれていた。
 いつも通りの朝を迎えて、いつも通りの授業が始まると思われた日常に、この国トリステインの王女アンリエッタが訪問するとの連絡が
入ったからである。
 当日になって急に連絡を入れてきたり、それを歓迎したりと、この国の貴族というやつは、刹那的な情動で生きているのか? などとア
プトムは思ったが、口には出さない。これも、いつも通り彼には関係のないどうでもいい事だからである。
 そんなわけで、魔法学院の正門をくぐる王女一行を整列して出迎えるルイズたち学院の生徒を、アプトムは塔の屋根に登り、そこから興
味なさげに見ていた。
 貴族ではなく、学院で働く使用人でもない使い魔という立場のアプトムには、王女が来たからと言って何かをしなければならない義務は
なく、自分から何かをしてやろうという意志もない。ついでに王女というものに興味もない。
 しかしまあ、部外者が多く学院にやってきているのにルイズから眼を離して何事か起これば困ったことになるなと、遠くから観察してい
たアプトムは多くの生徒たちが王女に注目している中、ルイズが別の人間に視線を向けたことに気づいた。
 それは羽帽子をかぶり、鷲の頭と獅子の体を持つ幻獣に乗った口ひげも凛々しい男であった。
 知り合いか? と思ってみるが、本人に問いただしでもしない限り分からないことであるし、ルイズの知人であったとしても自分とは関
わりのないことだと、彼はその男の事を考えるのをやめる。翌日には、その男と顔を合わせることになるなどと、この時点では考えもして
いない。
 ついでに、ルイズの隣に立っているキュルケが、その男を切ない眼差しで見ていたりしたのだが、その事にはアプトムは気づかなかった。
 キュルケはアプトムを嫌い敵視していたが、アプトムにとってキュルケはよくルイズと話をしている少女だという程度の認識しかなかっ
たのである。
 なんにしても、明日からはまた、代わり映えのない毎日が続くのだろうというアプトムの予想は、その日の夜に覆されることとなる。

 いつもなら机に向かっているはず時間に、惚けた顔でベッドに腰かけたルイズに、さてどうしたものかとアプトムは考える。
 ルイズに何があったのかなどアプトムには分からない。昼間見た男が関係しているのだろうという事は分かるが、それで何故ルイズがこ
ういう状態になるのかなど彼の知るところではない。
 分からないなら聞けばすむことだろうが、彼がルイズとの間に望んでいるのは契約という感情を差し挟まない関係である。相手の内面に
踏み込むような行動は避けたいところだ。
 それならば、相手の心情など気にせず、魔法を使えるように勉強をするか寝ろ。とでも言えばよさそうなものだが、昨夜の寝惚けたルイ
ズの言葉に多少の罪悪感を覚えてしまった今のアプトムには、それも難しい。
 本当に、どうしたものだろうかと悩んでいたところに、人の気配を感じたアプトムは扉の方を振り向き、そして扉をノックする音を聞い
た。
923名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:50:18 ID:0kiQEwwG
専ブラ入れてたらわかるよ支援
924名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:52:24 ID:6GSBsr2+
支援
925ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:52:36 ID:L4j18lrA
 珍しいな。そう思ったのは、彼が知る限り、この部屋に誰かが尋ねてきた前例がなかったから。この学院でもっとも多くルイズと言葉を
交わすキュルケですら、この部屋に尋ねてきたことはない。
 だから、彼が扉の外にいる者に対する警戒を解かなかったのは当然の事であろう。だが、その警戒がルイズに向けられているはずもなく、
ノックを聞いたルイズが、はっと顔を上げ扉に走るなどとは想像もしていなかったアプトムが止める間もなく、彼女は無警戒に扉の向こう
にいた黒い頭巾をすっぽりかぶって顔を隠した少女と対面していた。




 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは夢見がちな少女である。そうでなければ、どれだけ努力してもかなわな
かった魔法を使うという夢をいつまでも持ち続けることなど出来なかっただろう。
 そんな彼女は、自分にとって都合の悪い想像というものをあまりやらないが、逆に都合のいい妄想ならばよくする。
 昼間、王女一行の一員として学院にやってきた一人の男、いわゆるヒゲダンディーは彼女の知り合いである。しかも、ただの顔見知りな
どではなく特別な関係と言っても良い相手である。彼と前に会ったのは、十年程前のことだが、それでも彼女の中の彼に対する想いは色あ
せずに残っている。
 そして、それは彼も同じだろうか。同じであって欲しいと感じる彼女は妄想の翼を羽ばたかせる。
 王女に随伴してきた彼に、ルイズは一目で気づいた。ならば、きっと彼も自分に気づいたはずだ。そうなれば彼は自分に会いに来てくれ
るだろう。そうでなくてはならない。何故なら、彼は自分の……。
 そんな事を考えていた時に、来客があったのだから、彼女がヒゲダンディーが尋ねてきたのだと思い込むのは当然の事で、開いた扉の向
こうにいたのが期待していた相手ではなかったと気づいてフリーズしてしまったのも致し方ない。
 そんな彼女に構わず、黒頭巾の少女は部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると、ルーンを唱え探知の魔法を使って、この部屋が監視されてい
ないか確認し、そうして初めて頭巾を取った。
 そこにあった顔は……、

「姫殿下!」

 そうルイズが呼んだとおり、この国の王女アンリエッタであった。




 アンリエッタ・ド・トリステインは、とても恵まれた人間である。
 彼女は現在この国で唯一といっていい王位継承権の持ち主であり、優秀な水のメイジであり、美しい容姿であり、多くの人に好かれるま
っすぐな気性の持ち主である。
 そんな彼女であるから、多くの人間に好かれるし、甘やかされもする。
 彼女には、望んだことが叶えられなかった経験が非常に少ない。
 それは、王女と言う身分のせいでもあるし、基本的に我侭を言わない控えめな性格のせいでもある。
 だが、そんな人生経験は当然のごとく彼女の人格形成に多大な影響を及ぼす。
 よほどのことでない限り、自分の望んだことは必ず叶う。そんな歪んだ思考を持つようになってしまったのも、そのよほどの基準が多く
の人間の考えるそれと大きく乖離してしまっているのも、彼女一人の責任とは言えまい。
 そんな彼女が今回望んだのは、恋する男性に送った恋文の回収である。
926名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:53:33 ID:RYguUZad
>>921
ギコナビなら右下に現在のデータの使用量が示されてるぜ
ちなみに今のところ485kBぐらい
927名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:54:11 ID:S2HXso8R
辛辣だが的確な評価だ支援
928名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:54:29 ID:iqV6hYqb
ヒゲダンディーてww支援。

>>923
やっぱ導入するべきかなぁ支。
929ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:55:04 ID:L4j18lrA
 アルビオンという国がある。その国では、現在貴族たちが王族に対し反乱を起こし内乱が起こっているのだが、その戦で王家が倒れる事
は、もはや避けられない事態となっており、勝利した後の反乱軍は、次にトリステインを攻めるであろうというのが、この国の政治を取り
仕切る者の考えであった。
 アルビオンに比べて、トリステインの国力は低い。
 単体でアルビオンに勝つことができるわけもなく、ゆえに他国と同盟を組む事に決めたトリステインはゲルマニアの皇帝の下に、王女を
嫁がせることにした。
 この国の唯一の王位継承者を他国に嫁がせることに反対するものがいなかったわけではないが、反対する者たちに代案があったわけでは
ない。結局この決定は覆らなかった。
 さて、この決定に対して、アンリエッタに不満がなかったわけではない。彼女には恋する男性がいて、その相手と結ばれる未来を夢見て
いたりもした。
 しかし、このおめでたい頭の持ち主である王女にも、それが自分には叶わぬことと理解できていた。
 とても不本意ではあるが、ゲルマニアに嫁ぐ決心をした彼女は、その障害になるかもしれない、ある品物のことを思い出した。
 それが、アルビオンの皇太子ウェールズに送った恋文である。
 それのことを思い出したアンリエッタは、激しくうろたえた。
 アルビオン王家が倒れ、ウェールズ王子が持っているはずの、その恋文が貴族派の者たちの手に渡ってしまえば、自分の決死の覚悟は無
駄になり、この国の民の平和も脅かされる。

 ここまでは、ごく普通の思考であるのだが、ここからがアンリエッタという少女の歪んだ思考である。
 恋文を回収しなければならないと考えた彼女は、まずどうやってと言うもっともな疑問を頭に浮かべた。
 この国の政治を取り仕切る人物であるマザリーニ枢機卿に相談するという案は真っ先に捨てた。
 あるいは、誰よりもこの国のことを考えているのだろうが、『鳥の骨』などとも言われる男を彼女は嫌っている。
 そもそも、アンリエッタのゲルマニアへの輿入れの話を持ち出したのも彼なのである。それが、最善の選択だと理解しても彼女が好意を
持てなくなるには充分である。
 では、他の誰にと王宮の貴族たちの顔を思い浮かべて、それを切り捨てた。嫁ぎ先が決まった娘が、他の男に送った恋文を回収しようと
しているなどという醜聞を迂闊にもらすわけにはいかない。大体、王宮の貴族たちは、最終的に自分のゲルマニアへの輿入れに同意した者
たちである。そんな連中に自分のプライバシーを明かす気にはならない。
 では、誰に頼むかと考えて、彼女は自分の親友とも言える幼馴染のことを思い出した。
 貴族の誇りを重視しながらも、自分の心を大事に思いやってくれて、王女にあるまじきいろんな我侭も二つ返事で聞いてくれる大切な
『おともだち』ルイズ・フランソワーズのことを。
 他人が聞けば、それは本当に友達なのかと疑問を感じてしまう認識だが、あいにくと彼女には、他に本音を語れる親しい相手というもの
が当のルイズ以外にいないので、この認識に疑問を感じたことがない。

 かくして、アンリエッタはルイズに会い、その事を話し頼み込み、快く快諾し更には望まぬ婚姻をしなくてはならない彼女を慰めてくれ
さえした友人に、ああ、これで全ては上手くいくと安心した。さすがに、その回収すべき手紙が恋文であるとは言わなかったが。
 それが、戦地にろくな魔法も使えない世間知らずの小娘を送り出すという、危険どころではない所業であるという自覚はない。
 ルイズが、失敗するかもしれない。それどころか死ぬかもしれないという可能性には思い当たらない。彼女の望むことは、よほども事で
ない限り叶うのだから。
 これは、アンリエッタの頼みごとに、いつも疑問を差し挟まず素直に聞くルイズにも問題があるのだが、ルイズにも言い分がある。
 姫さまのやることが間違いだったことがない。それが、彼女の認識なのだから。
 実際、ウェールズに送った恋文を回収しようという考えに間違いはない。頼む相手を間違えているだけで。
930名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:56:26 ID:S2HXso8R
笑うしかねぇorz支援
931ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 18:57:34 ID:L4j18lrA
 なんにせよ、王女の頼みを受けたルイズは、かたわらにいるアプトムに顔を向けた。その顔には「もちろん手伝ってくれるわよね」と書
いてあり、彼は任せろと言わんばかりにルイズの頭に手を置き。

「わかった。その手紙は返してもらってくるから、大人しく待っていろ」

 と言った。
 アプトムが快く承知してくれたことに気をよくしたルイズはニッコリ笑い。そして、アレ? と疑問を覚えた。
 今この男は、なんと言っただろうか? 大人しく待ってろ? 待ってろ?

「今、待ってろって言った?」
「言ったぞ」

 うん。やっぱり聞き間違いじゃなかった。つまり、アプトムは一人で行くから自分にはついてくるなって言ってるわけだ。

「って、なんでよ!?」

 叫んでみるが、アプトムは動じない。

「何がだ?」
「頼まれたのは、わたしなのよ。わたしが行かなくて、どうするのよ!」
「どうもしなくていい。使い魔の仕事は、メイジができないことを代わりにやることだろう?」
「わたしは貴族なのよ!」

 貴族が、自分に与えられた任務を人に押し付けられるわけがないと言うルイズに、アプトムは、それがどうしたと答える。お前に、この
依頼が果たせると思っているのかと。自分が何者かを見つめなおしてみろと。
 そして、ルイズは黙り込む。彼女は貴族である。貴族の誇りにかけて、姫さまの頼みに答えなければならない。そして、彼女はゼロのル
イズである。魔法の成功の確率ゼロのルイズ。
 そんなお前に、姫さまの与える任務をこなせるのか。アプトムはそう言っているのかとルイズは、歯噛みする。だが、それは思い違い。

「おまえは、貴族である前に学生だろう。貴族がどうのこうのに、縛られるのは学院を卒業してからでも遅くない。大体、王党派と貴族派
が争っている中、皇太子に会いに行くという任務は、世間知らずの学生に果たせるほど簡単なものなのか?」

 ルイズが魔法を使えるかどうかなど関係がない。魔法が使えようが貴族だろうが、学生という未熟な存在であるルイズは、この任務を受
けるべきではないのだとアプトムは言っているのだ。
 それは正論であり、召喚されて以来、ルイズに忠実であったアプトムの言葉であるから、彼女は頭ごなしに否定ができない。

「でも、アプトム一人じゃ、王党派の人たちに信用してもらえないかもしれないし……」

 それでは、手紙を返してもらえないかもという苦し紛れの言葉は、ルイズがいても信用される保証はないし、平民のほうが貴族派に怪し
まれる心配がなくていいだろうというアプトムの返答に切り払われる。
 それでも納得することなどできないルイズは、「あの、ルイズ。その人は?」というアンリエッタの言葉に、そういえばと、説明してな
かった事を思い出す。ずっと、この部屋にいるアプトムのことを今頃になって尋ねてくるアンリエッタもどうかしているが。
932名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:58:11 ID:6GSBsr2+
このビッチ害獣認定級だな
933名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:58:24 ID:0kiQEwwG
そろそろ容量大丈夫か? 支援
934名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 18:58:37 ID:iqV6hYqb
アンアンもルイズも色々とひでぇww支援。
935ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 19:00:08 ID:L4j18lrA
「こいつは、アプトム。わたしの使い魔です」
「使い魔?」

 確かに本人もそんなことを言っていたけど、とアンリエッタは首を傾げる。

「人にしか見えませんが……」
「人です。姫さま」

 人間じゃなくて亜人ですが。とは言わない。敬愛する姫さまといえど教えるわけにはいかない事もある。

「そうよね。ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「ほっといてください」

 ルイズにとってアプトムは自慢の使い魔であるが、ただの平民であると通している以上、周りの眼が冷たくなるのは仕方がないと、最近
になって彼女は理解していた。
 それはともかく、ふとルイズは浮かんだ疑問を口にする。

「じゃあ、アプトム一人で行くって言うの?」
「そのほうが身動きがとりやすいしな」
「でも、アプトムってトリステインの生まれじゃないわよね。というか魔法に頼らないと帰れないくらい遠くの生まれでしょ。案内なしで
道が分かるの?」

 そう、アプトムはハルケギニアの人間ではない。地球という他の天体から召喚されてきた者だ。そんな彼にアルビオンへに道が分かるわ
けがなく、交通手段についての知識もない。
 だが、その辺りについても考えがある。
 アンリエッタは、この部屋に一人で入ってきたが、この女子寮まで一人できたとはアプトムは思っていない。彼の見たところ、この王女
はルイズにも負けない浅はかな思考の持ち主だが、それでも一人で出歩くほど能天気ではないだろうし、本人がそのつもりだったとしても
周りの者は、この国の王位継承者が護衛もつけないで出歩くのを許したりはしないだろう。
 現に、この部屋の外。扉の向こうからは、この部屋の様子を伺っている何者かの気配があり、それが王女の護衛なのだろうとアプトムは
予想する。
 その護衛が、アンリエッタが連れてきた者なのか、勝手に着いてきた者なのかはアプトムの知るところではない。
 どちらにしろ、自分がアルビオンに向かう道案内にはちょうどよかろう。
 だからと、「こいつを連れて行く」と扉を開けて中に招きいれようとして、アプトムは、そこで扉に耳を当てて盗み聞きしていたらしい
金髪巻き毛の少年と顔を合わせた。

 それは、王女の護衛などではなく、ルイズと同じく、この任務に連れて行くには不適切なただの学生であったのだけど、今更勘違いでし
たと言うわけにもいかない状況である。
 この計算外の事態にも、表面上は平静を装ったアプトムではあったが、内心ではそうではなかったため、同じ学生の身分であるギーシュ
は良くて自分は駄目だというのには納得できないと言うルイズに反論しきることができず、結局ルイズはアプトムと何故かギーシュの三人
でアルビオンに向かう事となり、ルイズはアンリエッタからウェールズへ充てた手紙を受け取り、ついでに路銀の足しにと王女が母親から
頂いたという指輪も預かった。


936名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 19:02:20 ID:0kiQEwwG
あと5kbしかないけど大丈夫かな?
支援
937ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 19:03:39 ID:L4j18lrA
 ギーシュ・ド・グラモンは、軟派な外見や性格とは裏腹に、貴族としての誇りを強く持つ少年である。
 彼の尊敬する父は、元帥の地位を持つ勇敢かつ優秀な軍人であり、彼も将来はかくありたいと思っている。
 その父親が好色な性質であったことが、彼の女性に対するだらしなさの原因の一つであるが、それは置こう。
 彼には、許せない相手がいる。ゼロのルイズと呼ばれている少女が召喚したアプトムという名の男である。
 あの男のせいで二股をかけていた少女二人に振られたから。その後に起こった決闘で勝負にもならずに負けたから。というわけではない。
 それがないとは言わないが、彼にはそれ以上に許せないことがあった。
 それが、あの男の自分を見る眼。
 彼は、貴族である。貴族は平民になど負けてはいけない立場にいる。その自分に、あの男は勝利した。それだけなら良かった。それだけ
ならお互いの健闘を称えあうこともできただろう。
 だが、あの男は自分を見ていないと気づいてしまった。あの男にとって自分は、炉辺の石ころにも等しい。彼我の実力差を考えれば、あ
の男がそういう眼で見てくるのは当然なのかもしれないのだけど、それを彼は許せない。
 そんな眼で見てくる相手が明らかに自分より優秀だと分かるメイジで、例えば女王を守る魔法衛士隊隊長なんかなら、彼もそんな風には
思わずに負けを認めていたのだろうが、ギーシュのアプトムという男への認識は魔法の一つも使えないただの平民である。そんな相手に見
下すどころではない眼で見られることを許容できるほど彼の矜持は安くなく、ゆえに必ずや、あの男の心に自分の名を刻んでやると心に誓
っていた。
 そんな彼であるから、何度もアプトムに対して、決闘を申し込んでいた。
 錬金で作り出したゴーレム『ワルキューレ』に、武器を持たせて挑ませたこともある。落とし穴を掘ってワルキューレに誘導させて動き
を封じる策を練ったこともある。パワーで勝てないのならと軽量化を図ったワルキューレで100メイル走をしかけて勝負したこともあるし、
走り幅跳びだってやった。パワーもスピードも敵わないのなら頭脳だと、ワルキューレにチェスの勝負を仕掛けさせたこともある。
 しかし、一度たりとも勝利をつかむ事はできなかった。自分を敵だと認めさせることすらできなかった。
 代わりと言っては何だが、クラスメイトの眼が生ぬるい物になってきたが、ギーシュは気にしない。深く考えたら、泣いちゃいそうだし。
 そんな現在の彼にとって、何よりも優先されるのはアプトムに自分を認めさせることであり、ゆえに長らく可愛い女の子を見ても興味を
抱く事すらない毎日を送っていた。
 そんな彼だが、アンリエッタという、この国の王女に対してまで、無関心でいることはできなかった。
 平民が貴族に対して従属する義務があるのならば、貴族には王家に従属する義務があり、それは名誉ですらあると彼は認識している。そ
んな彼にとって王女とは憧れの対象であり、その相手が若くて美しい女性となれば、お近づきになりたいと考えるのは当然のことであろう。
 とはいえ、だから何をしようと考えたわけではない。父親ならともかく、彼自身はただの学生の身分である。そんな彼に、王女と直接顔
を合わせるという栄誉が得られるはずもない。
 だが、いずれは自分もあの美しい王女に謁見が許されるような立場になってやるとギーシュは夢を描く。
 それが、多くの若い貴族が胸に描き、しかし成し遂げられずにあきらめていくであろう妄想の一つであろうことだなどと、彼は思わない。
 彼は若く、夢は若者の特権なのだから。
938名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 19:04:58 ID:S2HXso8R
8レスならこれで終わりか支援
939名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 19:05:16 ID:0kiQEwwG
もう限界かな?
スレ立ていってくる。
940ゼロと損種実験体:2009/02/15(日) 19:05:17 ID:L4j18lrA
 それはさておき、ギーシュは学院の中庭で月を見ていた。
 大地を優しく照らし出す二つ月の一つに、若く美しい王女の面影を見出すことなど、彼には容易い。
 今夜の、寝る前の自分大活躍妄想劇場に王女に登場してもらうため、彼は王女の姿を心に刻み込む。ちなみに、もう一つの月には、最近
疎遠なモンモラシーの姿を見出していたりもする。
 そんなとき、彼は視界の隅を横切った人影に気づいた。
 その人影は、真っ黒な頭巾をかぶり、正体が知れなかったのだけれど、ギーシュは一瞥でそれを王女と見抜いた。
 単に、何とか王女とお近づきになれないかなと思っていたときに、たまたま通りかかった女性がいたので、特別な理由もなく関連付けて
しまったというのが、正しいのだが、事実として、その人影は王女アンリエッタその人であった。
 王女を見たギーシュは、とくに深い考えもなく、後をつけていくことにした。後をつけて何をしようと考えていたわけではないし、王女
がお供もつけずに一人で歩いていることにも、特に不信感を抱くこともなかった。彼に限ったことではなく、トリステイン貴族は、深く考
えるよりも、その時のノリで動くことが多いゆえの行動である。
 そんなわけで、王女を追って女子寮に入っていったギーシュは、ある一室に入っていったのを見送り、即座に扉に耳を当て聞き耳を立て
た。

 そうして、図らずも王女に直接頼みごとをされる機会を得た彼は、貴族としての矜持と、美しく王女への思慕とアプトムへの対抗心ゆえ
に、この国の存亡にも関わりかねない任務に参加することになるのである。
941名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 19:05:32 ID:WpiW0zZb
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part214
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1234603732/
942ゼロと損種実験体
投下終了。支援に感謝。今回は○○は……であるが多くて文句が出ないかドキドキします。
アプトムが融合同化で喰った斥候獣化兵は、ルイズの使い魔をやる気満々でしたよ?

風雲アルビオン編では、なんとかギーシュを活躍させたいと思います。