【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚87人目】

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@お腹いっぱい。
携帯でご覧の方は携帯ビューアのorz もしくは携帯用2chブラウザiMona をご利用ください
【orz】http://orz.2ch.io/top.html
【iMona】http://imona.net/
     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ジョジョの奇妙な冒険」のクロスSSスレよ。
    〃  `ヽ     他にも避難所にしか掲載されてないSSとかもあるから一度見てみなさい 
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは900か950を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′

【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚86人目】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1229398899/

●まとめサイト                               ,〜'´  ̄ヽ
http://www22.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1.html         ミハ^^ヽヽ(  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●避難所.                           ____. -' ヽル::::д)ζ <批判は避難所だ!君の意見を聞こうッ!
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9292/     =='、 ̄ニ|::... . . . . ...::::: :: ::〉:::.:ヽ     |_________________
●ジョジョの奇妙なAA集               ' ´   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`!:::::::::::.. :i
ttp://jojoaa.web.fc2.com/                         `y::::::. ::ト、
●ジョジョスレUPローダ                            〉::::::::. .::`ヽ
ttp://vblave.hp.infoseek.co.jp/                        ハ:::::::: ..:λ:i
●アニメAA保管庫 ゼロの使い魔ページ                /:::::::::: .:/::::i´
ttp://aa.tamanegi.org/anime/zero-tsukaima/
*******************************************************
*スレ運営について意見のある方は運営議論スレへどうぞ    . *
*http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1184936505/ *
*******************************************************
2召喚済みの人(?)たち:2009/02/05(木) 02:50:06 ID:Zg8H1IKm
第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬

第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー 
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ 

第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草

第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ  ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー

第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク リキエル

SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio

バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン
ジョナサン+才人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース) 蓮見琢馬(小説・『The Book』より)
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 02:50:51 ID:Zg8H1IKm
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 02:54:11 ID:Zg8H1IKm
以上テンプレ
容量オーバーしてたので勝手ながら立てさせていただきました。
漏れ・抜け・何らかのミスがあったらすいません

あとジョルポルの人乙
マンティコアは蠍の尾と人面or猿面を持つ=詠唱ができる強力な魔獣なんですが……
バグベアーとバックベアードがごっちゃになるゼロ魔世界でそれは気にしたら負けかと
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 04:06:21 ID:Xds99iip
ポルジョル乙
のこのこ会談しにいったら頭から抜かれるぞwwww
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 13:33:07 ID:r38chauN
前スレの兄貴
ミノタウロス相手に腕一本犠牲にして立ち向かう兄貴は異常。
フツー腕一本犠牲にして生き延びれば御の字なのに立ち向かうところが兄貴だよなあ…
GJです!

前スレのポルジョル
いやあもうカリーヌさんとジョルノさんの一触即発寸前のような雰囲気が恐ろしすぎる。
関係は悪くないはずなのに一つ間違いがあると死ぬギャングじみた雰囲気と言うべきなんだろうかコレは。
GJです。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 19:45:07 ID:wTrgPCGO
ジョルポル来てるー!GJでした!
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 21:21:17 ID:dnz92lXJ
新スレに気付かず、前のスレッドで更新押してた……orz
1乙だオラァ!


ついでに、ジョルポル投下乙!

ラルカスの行動が徐々にジョルノの真意から離れているようですね。
これが種火になってパッショーネが内部瓦解!?とかありえんか……。
ジョルノの立場が少しずつ危なくなってる気がするぜ。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/05(木) 23:57:52 ID:P18QyCFU
おかしいな……感想がここまでつかないとは。いい作品なのに
よし、俺が感想を!

と思ったら容量オーバーしてる事に気づいたよ……

ともかく乙!
10ポルナレフ+ジョルノ:2009/02/06(金) 07:47:33 ID:XRiWmOpD
1乙です!

前スレを次スレが立つ前に容量オーバーさせてしまってすいません
レスいつもありがとうございます。レスは次を書いていく燃料です。書きたいからryな露伴先生は精神的にも凄すぎますw
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 14:34:38 ID:8WPQQC81
味も見ておく精神も必要だがな
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 16:51:25 ID:feNZVtgH
カリン母さん可愛いよカリン母さん
しかしプッチと接触するのは諸刃の剣どころか“ヤバいフラグがON!”だから困る

ほのぼのもいいけど、泥臭い政争モノも大好きなんだぜ!
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 18:56:29 ID:awjvwf9e
>>9
何という俺

ポルジョル乙!
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 20:28:27 ID:rMg2Omns
       |              /
       |           /           /
   >>久々に私たちの出番なので1乙 !   /
                    r 、
  r┐             _ /   \_
.<ヽヽ二>'  ̄ ̄ ` ー、   r'´ ,. - ―― - 、__}     _ _
  } } r‐┐ /  ヽ   \ |/         \
 く/ L{´  从   | !,. | |  | /| /ハ. ! |  ! ヽ
 | |  | >、i ヽ |≦、/ /!  |/>‐く レリ‐< |  〉
 | |  |{  ヒ}` |/ヒ} 」レ| |  .| { ヒ}   ヒ} } |/|
 | |  ハxx    - 、 xx{ !ハ  とxx     xx |  |   
./ ハ  |  /⌒V  / | |  ∧ ,ィ'⌒¬  人! |
/  |  .|\{   /イ  ! ヽ  ハ.{_ _ _ソく  /り
   /  |r―>く_/::|  | \\ |┴ -{. r∨ ̄}
 /   .|:\{f女V:::ハ  ! ! |>ヾ. /ぅ、`┴rー-ヘ
/    /:::::::\_/::/ヽ  ∨ノ. |/ニヽ{ レハ  }---く
   /::::::::::::><_/::\ ∨ !| ,ニ ]:::::::∧ }__]
  /:::::::::::::::::::::∧:::::::::::::::}  ∨ | `く___/ /ニヽ/
  |:::::::::::::::::::/|! !|\:::::::/  | | \ノ|――‐{ ニ、 |
  |::::::::::::::/  |! !|  ヽ/  ∧|  /    |`ーく
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 22:23:52 ID:pu4FBs8A
超像可動ジョジョの奇妙な冒険第三部スタープラチナ買った?俺は買った。
なかなか出来が良い。顔が第三部当初の承太郎似と後半の中間程度なのも気に入った。
値段も3500円程度だから手ごろだと思う。
第二弾空条承太郎も予約済み。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/06(金) 23:25:16 ID:Kxjek4F+
え〜と、宣伝乙!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 09:02:22 ID:yV5GK5w/
どうせ出すならリボルテックで出せばよかったのに
あといい加減三部のフィギュアは腐るほど出てるんだから
クレイジーダイアモンドとかキラークイーンとか4部系作れよ
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 17:04:16 ID:S65cLTz/
俺もリボルテックスティッキーフィンガーズとか欲しいかも
関係ないが何故原型が出来てるはずのアークが出ずドラゴンとネオゲが出る!?
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 22:31:37 ID:mKBvfIBJ
リボルテックだと本体の顔とかの造型に不安が残るんだよな。一騎当千の関羽みたいに。
超像は、あみあみとかホビストとかのギャラリーでのクォリティー、ほぼそのままだし。
てか、ここまで動くのにリボルテックにする必要あるの?
ただ、個人的に手の差し替えのとき手が滑って、ちょこっと指差しの手の塗装が剥げたのが……気にするほどじゃないんだけど。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 23:07:10 ID:9Z2CuL6Y
個人的には各部のボスから出して欲しい
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/07(土) 23:47:03 ID:4gZF71Fd
サーフィス出したら、俺はその根性に敬意を表して衝動買いする。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 00:32:19 ID:pi1W5LNW
>>19
三千五百円は高いんだよ
別に買えない値段じゃないけど買う気になる値段じゃねえよ
ただでさえ三部は過去にも沢山出てたし今更三部フィギュア出されても買う気になれん
ホワイトスネイクとかハイウェイスターとかそういうのだしてくれよ
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 01:09:29 ID:V8CG4Qez
サーフィスってwwwww
トリッシュとスパイスガールとか、仗助とクレイジーダイアモンドとかはだして欲しいな。
それにしてもスタプラ以外にほぼ完全な人型のスタンドがいないのはなぜだろう?(意味はわかるよね?)
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 09:37:01 ID:LJz7WzZZ
せっかく投下がきてるのになんで「投下乙」しねーんだ?
俺がやってやるよッ!



ERROR:このスレッドは512kを超えているので書けません!




>>1さんおつかれでーす
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/08(日) 19:22:23 ID:plLgpWQO
>>24
よう俺
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 01:02:05 ID:lMRh26BN
トリステインをトリスティンだとずっと思っていたでござる
そしていまいち筆が進まない……
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 02:22:24 ID:nw75DQxK
何をぉ!
俺なんか原作持ってるのにジョゼフをジョセフとずっと思ってたんだぜッ!
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 00:10:22 ID:mN7JGgOG
>>26
驚愕の新事実orz
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 04:17:49 ID:GdSZwsX6
>>28
やっぱ間違えるよねー
トリステインよりトリスティンのほうがなんか発音もしやすいきがするし
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 09:45:28 ID:imD1qXYe
ティンの発音に違和感バリバリな俺は異端ということか
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 11:30:43 ID:pb/YtGti
宇宙が何巡かしたから地名がちょこっと変わっちゃったんだよきっと

32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 12:00:59 ID:5e3oQ9er
ティン、ティン…
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 13:22:23 ID:Iw7ZtOOU
解ってるだろうが、「TNTN」とか「ティンときた!」とか禁止な。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 19:09:55 ID:wVeGGLd9
岩男が死んだときの音は?
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 19:10:52 ID:IyCVgC9Q
ティウンティウンティウン
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 21:21:34 ID:zywRYkaB
イン・ア・サイレント・ウェイとかACT2で考えたら怖くなった。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 00:04:49 ID:v1Npdjva
まだまだ止めていられるぞ・・・
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 01:52:05 ID:s5TYZUIS
だが入門
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:24:57 ID:pECP/JqK
このスレに一人、ディアボロがおる。>>40やろ。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:43:18 ID:+ecHnlj3
            -‐  '´ ̄ ̄`ヽ、
          /・・/:・,へヾヽ・:\
         //,::'/ /レ'/   ヽハ 、・.ヽ
         〃 {_{ル'´    リ|l.│・:i|
         レ!小ノ    `ヽ フ|l:i・ i|
          ヽ|l ●   ●  |: ・|ノ!   でぃあぼろーん
            |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  |・, |
           |: /⌒l,、 __, イァト |/.|
           | /==イ,┃, ,_┃XXヽ:|
           | || |il !トー癶-イXX/━||
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 21:45:01 ID:eTY8cVd5




42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:04:32 ID:F5QXa3wN
さっきサブ・ゼロの使い魔を読み直してきた。やっぱり面白いな。
ところで、ホワイト・アルバムの「超低温」でワルドのライトニング・クラウドを
防ぐアイディアが何処かに載っていたような気がするんだが、どんなアイディア
だっけ?
気になって仕方が無いんで誰か教えてほしい。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/12(木) 22:57:31 ID:rXcQLU+Z
ものすごく温度が下がると超伝導になって云々
とかじゃなかったっけ?
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 00:01:21 ID:4JI+58KB
絶対零度に限りなく近いレベルになった領域があれば、物理的に電気が通らなくなるかも。
周りにいる人間みんな即死するけどね。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 01:59:45 ID:t1mZNIl3
温度を下げて原子の振動を止めてどうにかするのかと思ったけど
ホワイト・アルバムなら自分の周りに超伝導の道を作ってそこに雷を誘導するとかそんな感じかな
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 13:48:17 ID:smw5T1Hj
純粋な氷は果たして電気を通すのだろうか?通さないんじゃね?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 14:39:10 ID:dXYQlxFn
超純水は電気を通さない。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 18:44:39 ID:7xSjuJ9i
ザ・ワールド
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 19:25:29 ID:pXC4xv0y
天地無用であったなぁ
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:36:34 ID:zE2yexrq
仮面のルイズを一気読みし、その後廉価版のJOJO第二部をパラパラと読んでいた。
……奴か、ひょっとしてブルートてのは奴か。
ストレイツオ戦の時にジョセフにタックルかまして蹴りくらいまくってた奴なのか。
仮面ルイズの心の支えに最も近いのは、デルフとあいつなのか!?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 23:39:38 ID:BmZGy7XN
そのブルりんであってる
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:07:41 ID:bBKOPY5g
だがブルりんは割とディア襤褸では強敵
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 02:57:04 ID:IdEfPXDJ
持ち込みしない素もぐりだと、ディスクの引き次第では強敵だな
近づくと必ず掴まれて移動不能はちょっち痛い
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 10:58:46 ID:VnVmzGwH
移動しないから寝てない限り必ず先制とられるしな。
レベル5になるまでは出来る限り素手では戦いたくない相手だ。



しかしただの人間として極限に近い身体能力を持つであろう、
ドノヴァンより強いってのはどうなんだろ?w
いや、ドノヴァンも「試練最強の敵は一階のドノヴァン、リアルラックがないと普通に死ぬ」と
言われる強敵なんだけどさww
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 11:00:29 ID:WyF7o4Ti
というか一般人なのに、仮にも吸血鬼であるヌケサクより強いのはどうしてなんだろw
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:28:13 ID:zJBl3lnK
ヌケサクのどこが強いんだ?
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 16:40:26 ID:+5m5d2qz
打たれ強さがあるところ?
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 17:16:19 ID:PM6wG0CH
萌えるところだろう
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 19:27:11 ID:s2gP2B1N
胃壁じゃね
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 21:26:31 ID:bBKOPY5g
一・二部の吸血鬼の恐ろしさはどこへ……
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 22:57:31 ID:IdEfPXDJ
>>60
オーノーだズラの人は地味に強敵
あいつレベルの攻撃数回分に耐えられる防御力があれば、その後もしばらくは安泰
タルカス・ブラフォードも地味に強いぜ

しかし柱の三人のウザさは更にその上を行く…見えないワムゥに二回攻撃カーズ
特にACDCはある意味究極生物以上にウザい&怖い
出会い頭に怪焔王とかもうトラウマもんですたい…
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 23:08:10 ID:WyF7o4Ti
>>61
開幕大部屋モンスターハウスだと敵を蹴散らしてもアイテムが半分は消し炭になってるのが嫌なんだよな……
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 03:28:53 ID:qBqE5/6T
切り裂きジャックがいるやん
血管針の四匹はまぁ比較的ラクだが
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 09:17:43 ID:EH1WZsn7
部屋の出入り口にブルリン+欠陥針4匹は即死コンボ
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/15(日) 19:48:00 ID:GPKmno0n
サンタナのこともたまには思い出してあげてください
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 03:55:38 ID:gfo//D5U
ゲス野郎として死んだペッシが
ルイズを護衛していくことによって誇りを取り戻していく話が読みたいのう
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 17:33:11 ID:097o2onG
大冒険版だと兄貴のDISCをINしないといまいち弱そうだ
スタンド自体はけっこう強いんだがな
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 19:30:17 ID:fhZXecSQ
大冒険の影響でクラフトが好きになったなぁ…。
BGMがたまらん
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 19:32:32 ID:8aQDnSYj
大冒険ってもう配布してないんだな
残念
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 23:40:24 ID:bSb2TYrn
「でぃあぼろだ」に最終版があったよ。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/16(月) 23:57:05 ID:YCADwOZy
再配布禁止だと言ってるのに再配布するペッシが居るから困る
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 08:40:48 ID:1uE/Mgqu
ディスクチェンジのBGM無しでいいからコンシューマ化してくんねーかな
1部のゲームよりは売れそうな気するんだけど
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 16:54:20 ID:rkDeJ+FE
非能力者の早人とか召喚してみれば・・・
どうなるかねぇ・・・
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 17:24:03 ID:eqCA67GG
愛する旦那も息子も行方不明か…
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 18:06:41 ID:hj5dEnuD
ではむしろ本人が行方不明に

子供が父も母も行方不明か……
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 19:38:55 ID:hqYTA1BL
逆に考えるんだ 
母親も早人も一緒に召喚しちゃえって
そう考えるんだ
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 20:59:19 ID:JqdbQ2Ci
早人に盗撮趣味がなければあの夫婦実はとてもうまくいったんじゃないだろうか
旦那の中の人違うけどw
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 21:47:50 ID:mZChpx1w
吉良さんになってから奥さんが惚れ直してましたからね
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 23:31:24 ID:cs2sQpx2
吉良さんも猫草の時に微妙にフラグっぽい発言してたし。
あのまま10年くらい経ったら、ひょっとしたら愛の力で殺人鬼でなくなった吉良さんとかあり得たんだろうか。
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/17(火) 23:55:26 ID:geEQJ2F1
あの人が愛するという事は、手首にするということだ。
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 00:35:35 ID:3ddj5Dg/
愛の力でトラウマと特殊性癖を克服した吉良か……
スタンド使えなくなってそうだなw
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 01:02:58 ID:cfGuuHbc
続きまだかな…
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 07:54:06 ID:LAFSi2rI
逆に考えるんだ。性癖という運命を乗り越え、
スタンドの力に頼らずにすむほどの強さを手に入れたんだと考えるんだ。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 18:28:44 ID:c6kXpEZ5
吉良と言えばデッドマンズの吉良の続きが気になる
吉良視点でもルイズ視点でもいいんだがなぁ・・・
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/18(水) 18:30:04 ID:8c9rgU4v
ルイズ視点の方はフーケ戦で吉良に蹴り入れられたとこで止まってたな
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 16:02:05 ID:5SOAlyLA
ディエゴの母が熱いスープを手に盛ったシーンってさ
手塚作品のなにかが元ネタだって聞いたんだけど。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 16:45:31 ID:OM7E8srY
>>86
「どろろ」だと思われ
ttp://www30.atwiki.jp/ichi-1/pages/13.html
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 16:55:39 ID:57e4gWHF
ウェカピポ死亡age
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 18:21:47 ID:ad6qKy1W
>>88は磔刑だ。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 19:06:32 ID:7vOdvbv2
今週のUJか。エピタフ自重
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 19:17:48 ID:Zk5Ls9Bb
>>87
ずーっと気になってたんだけどやっぱり見たことがあった!両方とも衝撃的だったな

>>90はスタンド攻撃を受けている!
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 19:40:27 ID:57e4gWHF
新手のスタンド使いか!?
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:10:26 ID:UEYsPovO
丸1日書き込みがなかったか
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:50 ID:X1X2Tip2
キュルケが常識人過ぎて筆が走らないぜ……
ルイズなら多少の障害など踏み潰しながら猪突猛進してくれるのに
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:07 ID:sjieDWmN
ゼロの来訪者読み直してました、キュルケの妄想にウヒヒ
復帰してくれないかなぁ…
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 00:45:52 ID:Xww9zwIY
>>94
逆に考えるんだ。
キュルケはアヴドゥルのポジションだと考えるんだ。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 00:54:41 ID:Ynq0pAEi
ガオン!
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 07:26:34 ID:6yD3VjAF
粉微塵か・・・
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 10:21:44 ID:RwZxD4CT
最新刊見たぜ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 16:44:25 ID:vbBDKvq1
地面から出てる竹筒に尿を流し込む役か…
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 16:56:36 ID:gLTX6ra0
きゅっ…キュルケが竹筒に…だとっ!
なんてけしからん/////
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 17:04:15 ID:jmc3sryV
だが外見がアヴドゥル
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 21:50:30 ID:vbBDKvq1
もうキュルケはアヴドゥルってことでいいよ
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 00:36:38 ID:dDm8n2W1
承太郎=タバサ
ジョセフ=ジョゼフ
アヴドゥル=キュルケ
ポルナレフ=ギーシュ
花京院=イザベラ
イギー=きゅいきゅい
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 00:47:02 ID:grKmjWbB
キュルケ!
イザベラ!
シルフィード!

終わったよ……
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 00:58:56 ID:5pbH6vPe
そこにギーシュも加えてあげるよ
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 01:09:16 ID:gew457DM
生きてるのに
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 01:11:27 ID:5pbH6vPe
ははは、ご冗談を
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 01:18:31 ID:NSSMatZt
キュルケ!
イザベラ!
シルフィード!

えっと・・・あと誰だっけ?
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 09:33:14 ID:TGCj4wIe
ルイズが出てこねえことに涙目www
当てはまるやつが3部にいないからかなー……・
えっと 『力』のゴリラにレイプされかけた少女=ルイズ ってことでおk?
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 10:34:36 ID:e3Mi+saZ
家出少女かー 結局三部メンバーに入らなかったよくわからんキャラだった
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 10:39:19 ID:Qrk0lMoU
ホルホースが何だって?
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 10:55:01 ID:QRZWDl8s
一人くらいはレギュラーに女性キャラがいないと拙くね?と投入されたが
「別にぶっちゃけこいつ居なくてもいいんじゃね?」と消されたと予測。

この漫画に女性キャラなんて要らないだろ、って漫画でも
編集が強制的にねじ込むことは多いらしいからねぇ。
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 11:04:45 ID:xFqmvm2P
ルイズの立ち位置はDIOですねわかります

そんでもってタバサに倒されて才人の嫁の座を奪われると

あれ?デルフ=アヌビスと考えれば才人ってカーン?
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 11:04:51 ID:Qrk0lMoU
ざわ・・・
  ざわ・・・
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 12:56:21 ID:IkWereH1
>113
一応前はリサリサとかいたからさ
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 15:17:05 ID:gew457DM
萌えキャラブームに乗じてスタートした6部の舞台は女子刑務所だったな
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 16:00:21 ID:mKLDzXaq
オナニー大好きの女の子、ジョリーンが個性豊かな仲間とともに監獄の中のわるいスタンドつかいを倒す話だったからな。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 16:13:40 ID:HLtOYGe4
>>117ー118
まずはsageてからだ
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/22(日) 17:17:16 ID:dDm8n2W1
大統領の能力でハルケギニアへも行けるの?
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 03:21:07 ID:aUNpBVx+
どう考えても『隣り』の世界じゃないだろ
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 15:55:12 ID:3fJVDTH5
十分後に投下しようかと思います。
しかしこの時間、ひといるんだろか。
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 15:56:37 ID:f+LunxI9
\ここにいるぞ!/
124使空高:2009/02/24(火) 16:05:44 ID:3fJVDTH5
一章十三節〜土くれは機を逃さない〜

 遠く月明かりの下、闇色の森は黒い絨毯のようにも見えた。その上を春の夜風が撫でていく。
 梢の擦れあって起きる微かなさざめきは潮騒のようで、繁った葉が波打つ様が、さしづめ寄せて返
す波だった。風はリキエルのもとにも届いて、夜気にさらされて冷えた体を余計に凍えさせていく。
 三度四度そんなことが続いて、風は出し抜けに弱まったが、一度飛ばされた熱はなかなか戻ってこ
なかった。体の自由が利かず、満足に身震いもできないリキエルは、首をすくませてぶるぶると細か
く振った。しつこく寒気の残る首の後ろは、見上げるようにして熱を渡らせる。
 上げた目線の先には、ちょうど月が来ていた。月齢か何かが関係しているのか、ふたつの月はいつ
にも増して明るく、近くの星がよく見えないほどだった。それでもちょっと目を転がすだけで、幾百
もの星のまばゆさに行きあえるのは、それだけ空気が綺麗なのだ。
 リキエルは、星を見るのがわりと好きだった。フロリダに住み始めてから見つけた趣味である。と
は言っても、夜空にそう強く惹かれたというのではないし、望遠鏡を買うほどの酔狂でもない。ごく
軽い天体観望だった。夜の家路を行くときなどに、ときたま思い出したように空を仰いで、しばし凝
然とするだけで満足がいった。
 星を見ている間だけは、まぶたこそ上がらなかったが、不思議と汗をかくことはなかった。その日
の疲れも常からある色々なわずらいも、吸い取られたようになくなった。ほんのいっとき息苦しさを
忘れられた。連想して首筋のアザにまで考えが及ぶこともあったが、それでパニックになることもな
かった。
 むかしベッドの上で父親の写真を眺めていたときの感覚に、それはわずかに通じるところもあるよ
うだったと、リキエルはいまにして気づいた。
 ――星座とかってのはあるのか。
 ふとそう思った。ハルケギニアにも決まった星座などはあるのだろうか。
 もし無いとなると、困るでもないがなかなか寂しいことだ。詳しく知ろうとは思わないが、夜空を
見るのと同じに、星座について考えるのは嫌いではない。
 星は数多あって、一見して無法にも思えるほど散らばっている。それらが形や名前、ときには役割
を与えられてできる星座という概念に、リキエルの心は不思議と強く握り締められる。手の届かない
ものへの憧れか、自分の心にぴたとした定まりを持たないことからくる、羨望のためだとリキエルは
思っている。
 ひとつ確証になりそうなことがあった。存分に満足がいくまで星を見たあとには、いつも決まって
絶望が襲ってくるのである。自分に対する虚無感と無力感を伴う、色濃い絶望だった。絶望だと感じ
るのは、リキエルがその感覚をよく知っているからだ。パニックを起こすたびに身をさいなむ絶望は、
耐え難いものではあるが、ある意味ではとっくに馴染み深いものになっている。
 ――それでも懲りずに星を見てしまうのは……。
 オレの心や精神とかってものが、完全ではないからだ。心の満たされないものを、星を見るときの
安堵でごまかしているのだ。そしてそんな半端な心根だから、羨みとか憧れなんてものも感じる。
 夜空を眺めることは、リキエルにとって憂さ晴らしであり、自身の無力を再認することだった。そ
ういうわけだから、リキエルは星を見るのが好きではあっても、そう頻繁に眺めることはしなかった。
あるいは、ちょっといい気分になったところで切り上げた。いまも空を見上げていたのは、ものの十
秒ほどだ。
 リキエルは、また益体も無いことを考えたり、呆然と風景を眺めたりするだけになった。
 そのとき下のほうで、すました声ととげとげしい声が言い合った。
「いいこと? ヴァリエール」
「いいわよ? ツェルプストー」
 キュルケとルイズである。リキエルはうんざりした気持ちで下を向いた。くそ、と小声で悪態をつ
いた。
「あのロープを切って、リキエルを地面に落としたほうが勝ちよ。あたしが勝ったらリキエルはあの
剣を使う。いいわね?」
 キュルケが含めるように言った。
125使空高:2009/02/24(火) 16:07:55 ID:3fJVDTH5
「使う魔法は自由。あたしは後攻でいいかしら」
「どうぞ、勝手にすれば」
「ま、それくらいはハンデよ。足りないかもしれないけど」
 剣呑な一瞥をキュルケにくれてから、ルイズは無言で一歩踏み出し、リキエルを見上げた。
 リキエルは縄で縛られて、本塔の壁に吊るされていた。地上まではざっと二十メイルある。落ちれ
ば、簡単に命も落ちていく高さだった。そのろくでもない事実を忘れるために、延延と物思いにふけ
っていたのだが、この辺りが潮時らしかった。悪あがきとばかりに、リキエルは一時間ほど前のこと
を思い返してみる。
 プレゼントと言ってキュルケが持ち出してきたのは、ルイズとリキエルが武器屋で薦められた、シ
ュペー卿の鍛えという触れ込みの大剣だった。
 その剣はキュルケの語ったところでは、たったの四千五百エキューだったそうである。それと聞い
て目を丸くするルイズに、リキエルはそれが、即物的にどれほどの価値になるのかをたずねた。
 エキュー、ドニエといった呼称だけならば今までに何度か耳にしたが、相場といったものにまでは
理解が行っていない。知っているのは長さや距離の単位だけだ。こちらは呼称こそ違うが、数字的に
は元の世界のものとほぼ同じだったから、覚えるのは楽だった。
「立派な庭のついた立派な屋敷を買って、立派な池を掘らせて立派な厩舎を建てて、ついでに立派な
山を造ってもお釣りがくるほどの大金よ」
 低く小さく抑えてはあったが、ルイズは刺々しい声で早口に言った。そしていまの自分の懐具合を
鑑みたか、驚きからさめると、露骨に悔しそうな顔になった。
 くらりとくるようなことを聞いて、リキエルは早々に自分の中の価値観をほうり捨てることにした。
立派とやらの程度は知れないが、ルイズが言うくらいだから、それは相当なものだろう。
 ただ実のところ、キュルケの話は大概が嘘なのである。武器屋の親父がキュルケに提示した剣の売
値は、本当は新金貨で四千五百だった。それはそれで破格と言えるが、買値のほうも半分以下の千に
とどまっている。キュルケが値切ったのだ。しかもその無茶な値切りを通すのに、自分の色まで仕掛
けている。
 要は、キュルケは見栄を張っているわけなのだが、ルイズにもリキエルにも、それを看破するほど
の目はなかった。ただただ驚いたり、悔しがるばかりである。
 リキエルたちの反応に気をよくしたキュルケは、ことさら得意げに自国のメイジが鍛えた剣を自慢
し、最後には猫なで声になって、リキエルに使ってほしいと言った。ついでにルイズのおけらをから
かった。
 もちろん、キュルケと顔を合わせるだけで一両日は不機嫌でいられるルイズが、いつまでもただ黙
っているはずはなかった。顔面に朱を注ぎ直すと、猛然とキュルケに噛みついていった。
 そうして始まった娘二人の口げんかは、延延と終わりの気配を見せず、夜が更けこんでも、勢いを
増して続くだけだった。リキエルは初めての乗馬や久々の人混みで疲れていたから、壁を背に床に座
り込んで、それを見守っていた。
 口げんかと言っても大方の流れは、ルイズが噛みついて、平然とキュルケが受け流してからかい、
またルイズがいきり立つというものである。単純だった。どちらかが飽きるか疲れるかすれば、その
うち収まる程度のいさかいだった。
 事実、二人の言い争いはじきに下火になって、次第に冷戦の兆しを見せ始めた。落としどころとし
ては妥当である。だが、雲行きがおかしくなったのはそこからだった。
「だいたい厚かましいのよ。使い魔の使う道具なら間に合ってるの」
 ルイズが言った。冷ややかな口調ではあったが、すがめた目と噛みこまれた歯とを見ると、います
ぐ怒鳴りたいのを、ようやく押さえ込んでいるだけらしかった。かなり苛立っている。
「そういうわけだから、折角ですけど剣はお返しするわ」
「それを決めるのはリキエルなんじゃない?」
「主人のわたしが駄目と言ってるでしょう。だから駄目に決まってるのよ」
「嫉妬はみっともないわよ? ヴァリエール」
「嫉妬? 誰が嫉妬してるのよ」
126使空高:2009/02/24(火) 16:09:55 ID:3fJVDTH5
 キュルケは腰に手を当て、ついと顎を突き出すようにした。長身のキュルケがそうすると、さして
上背のないルイズは余計にちっぽけになったように見える。
「そうじゃない。リキエルに剣を買って上げたかったんでしょう? あなた。それを、先にあたしが
プレゼントして見せるもんだから、嫉妬してるんじゃなくって?」
「誰がよ! やめてよね! ツェルプストーの者からは豆の一粒だって恵んでもらいたくない! そ
んだけよ!」
 とうとうルイズは怒鳴ったが、キュルケはまったく意に介した様子もなく、口笛でも吹き始めそう
な、余裕をたたえた顔で続けた。
「嫉妬でないなら僻みかしらね。錆びをかき集めて造ったようなボロ剣も買えない、自分の貧乏さ加
減を僻んで、店一番の品を軽く手に入れたあたしに難癖をつけてるんじゃないの?」
「なんですって」
「大変ね、お金のない家に生まれると。あ、お家よりも前にお国が貧しいのかしらね。トリステイン
の貴族ったら、プライドばっかり高いからかしら、上辺だけは飾りたがるもの」
 ぼけっとしていたリキエルだったが、はっとしてルイズの顔色をうかがった。
 自国と生家の柄を、ルイズは何より誇りに思い敬愛している。リキエルの見る限り、それは心の支
えにもなっている。そのナイーヴな部分を、こう粘っこく貶められるのは、耐え難い恥辱を受けるの
と同じことだろう。いまのキュルケの言葉は、相当に響いたはずである。
 はたしてルイズは、尋常な様子ではなかった。目を見開いて唇を震わせている。憤りの度がどこか
を越したのか、額から首筋までの血が引けて、もともとの色白が痛々しいほどになっている。
 そんなふうに色を失っているのに、表情は笑みを作っていくから、自然と不気味な顔になる。むご
い形相だった。じっと見ていると、薄ら寒い感じさえした。
 出来損なった冷笑をたたえて、ルイズは毒を吐いた。
「あんたなんか、ただの色ボケじゃない。ゲルマニアで男漁りばかりしてたもんだから、そのうち相
手にされなくなって、あわててトリステインに留学して来たんでしょ? 恋の狩人とか微熱とかいろ
いろ言ってるけど、単におおお、お、男がいなくちゃ生きていけないってだけでしょッ。男なら誰で
もいいんじゃないの? もう色狂いよね、ここまで来ると。なんて浅ましいのかしら!」
「……言ってくれるじゃない」
 ルイズが言い終えるころには、キュルケの態度も一変していた。さっきまで平気の平左といった風
情でルイズをいなしていたのが、まるで嘘だった。
 物腰に力がこもり、所作のいちいちにしなやかさが見られなくなった。表情の消えた顔からは、そ
れでも十分に苛立ちが汲み取れて、一見冷ややかに細められた目にも、隠しきれない険があった。
 やがてキュルケは、ルイズと同じような睨み顔になった。ルイズはそれを、二、三本の皺を眉間に
足しながら、口の端を横に引き伸ばして結び、さらに睨み返した。そうしてしばらくの膠着があって
から、どちらともなく杖を抜き、先を向け合った。
 このままじゃあ、けが人が出かねないなとリキエルは思ったが、二人を積極的に止めようとは思わ
なかった。巻き添えを食いたくなかった。まさか殺し合いにはならないだろうからと、そそくさベッ
ドの陰に逃げた。そこにはキュルケの知り合いらしい娘がいて、本を読むのに没頭していた。
 ――そういえば、こいつはなんなんだろうな。
そう思って、リキエルは少しばかり観察してみた。
 綺麗な娘である。体つきはルイズ以上に子供っぽいが、線だけみればキュルケよりも緻密だ。顔も
同様で、鼻筋や顎の形、頬の肉づきなどをみても過不足がない。目の大きさが際立つようではあるが、
そういうところも含めて、うまい具合に均整がとれている。
 ただ、いかんせん面白みに欠ける顔とも言えた。秀麗は秀麗なのだが、少しそれに過ぎるところが
ある。そう思わせるのは、不躾な視線を向けられても動かない、表情の乏しさかもしれなかった。
 リキエルはすぐに飽きて、ルイズとキュルケに目を戻した。即発の状態が続いている。
「決闘よッ!」
 同時に言い放ち、二人が堰切ったように動き出した。後ろに足を送ってキュルケが杖を振り上げる
のに、ひと呼吸遅れてルイズが応じ、半歩踏み出して腰を沈めた。手を伸ばせば触り合える距離で対
峙し、二人してすぐさまルーンを唱え始める。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 16:10:09 ID:6iJ9VXUt
おお、久しぶりの投下ですな
128使空高:2009/02/24(火) 16:11:55 ID:3fJVDTH5
 黙黙と本を読んでいた青髪の娘が、敏捷な動きを見せたのはそのときである。娘が脇の杖を引っつ
かんで、右から左にぶわと振るうと、やわらかい風が部屋を横切り、生き物のようにキュルケとルイ
ズの杖にからんで、そのままもぎ取ってしまった。
 大儀そうにまた杖を立てかけて、娘は言った。
「室内」
 あっけにとられたのはルイズだった。躍起になったところに、思いがけない方向から水を差された
と感じた。そしてそれは、すぐ苛立ちに変わった。
「なにこの子。さっきからいるけど」
「タバサよ」
 キュルケが肩をすくめた。
「あたしの友達」
「なんで、あんたの友達がわたしの部屋にいるのよ」
「なあに? いまごろ気づいたわけ。とってもとっても鈍いわね」
「なんでいるのかって聞いてるの。悪いのは頭だけじゃないのね」
 ルイズとキュルケは、また睨みあった。上がった熱は、杖を奪われた程度では下がりがきかないよ
うで、両名それならばと、今度は取っ組み合いでも始めそうな勢いがある。
 例によってリキエルは傍観を極めこむつもりだったが、我が身が可愛ければ、むしろここで仲裁に
入るべきだったのかもしれない。
 タバサがまた音も立てずに動いて、キュルケに何ごとか耳打ちした。にやりとキュルケが頬を歪め
て、ルイズに伝言の耳打ちをした。忌々しげだったルイズがふんふんと頷いて、納得顔になった。
「ね、いい考えでしょう」
「考えたのはあんたじゃなくて、そのタバサでしょ」
「小さいことにこだわるから小さいままなのかしら」
「早く出ましょう、外へ。ええ、いますぐに。早急に、さっさとねッ」
 ――……外だ? 徹底してるんだな、わざわざ屋外に出てまでやりあうのか。そういえば、ギーシ
ュとの決闘もそうだった。
 ひとり感心するリキエルを置いて、三人娘は列をつくって部屋を出て行った。ちょっとして、ルイ
ズだけが駆け戻ってきて、さっさと来なさい! と怒鳴った。
 寮を出てしばらく歩き、やがて本塔に着いた。
 唐突だった。タバサがどこからか縄を取り出して、リキエルをぐるぐる巻きにし、その端をいつの
間にか呼んだらしい、彼女の使い魔と思しきドラゴンに咥えさせた。落とさないでね、シルフィード
と言うキュルケの声がちょっとばかり小さいと思えば、もうそこは地上二十メイルだったのである。
リキエルがあっと叫ぶ間の早業であった。
 ――で、オレの体を使って的当てか。小娘どもぉ、正気かよォ〜。
 とリキエルは、方法を提案したタバサと、喜々として乗ったキュルケを呪った。ルイズにしても、
頭に血がのぼっていたのはわかるが、難色くらいは示してほしかったと思った。
 また風が出てきた。縄がきしきしと音をたてる。
 本塔のどこかに括りつけられたらしい縄は、シルフィードに乗ったタバサが見ているようだが、こ
の娘の部屋での態度を思い返してみると、リキエルは心許なく思うほかない。はじめに部屋に入った
ときも観察していたときも、タバサは本に熱中しきりで、リキエルのほうを見ようともしなかった。
 もしいざという時があって、それでも本を読むばかりでいられては困る、とリキエルは不安になる。
ルイズとキュルケの杖を奪い取ったことから、周りに関心をはらっていることはわかったが、初対面
な上に平民の自分にもそうであるかはわからない、と思うのだ。
 下の二人も、見たところ縄を切ることにばかり目が行っていて、後のことを考えているのかひどく
疑問だった。上調子なままで放たれた魔法が、体にぶちあたらない保証はない。キュルケの腕前は知
らないし、ルイズは十中八九で爆発を起こすだろう。そしてそのルイズが先攻である。
 思い至って、リキエルは胸の辺りが風のせいばかりではなしに冷えていくのを感じた。いざという
のは、案外近くに迫っているのかもしれないと思った。背筋が不快にざわめいて、頬に汗が流れるの
がわかる。リキエルは歯を食いしばった。ちくしょおおお、来やがったッ!
129使空高:2009/02/24(火) 16:13:56 ID:3fJVDTH5
 いつも突然だった。発作は場所を選ばず、特別なきっかけも要らず、気まぐれにリキエルを襲って
はいつの間にか去っていく。嵐と同じだった。それでなくとも常から息苦しい気分でいるのに、どう
してこんな目にあうのかと、リキエルはこの感覚がするたび、無力感と絶望のほかに、どうしようも
ない焦りと苛立ちを覚える。
 呼吸がろくにできなくなり、歯の間から耳障りな音が漏れ、唇は乾いていく。目に映るものが出た
り消えたりを繰り返し、白くなったり緑になったり、急に真っ赤になったりする。全身から汗が噴き
出す。考えることが細切れになる。吹きつける風が熱くなる。痛くなる。
 ついに両まぶたが落ちたが、リキエルはその少し前から、ほとんど何も見えてはいなかった。酸欠
で意識を失いかけていた。
 そんなリキエルの様子に、しかしルイズたちは気づかなかった。だらりと首を落として、微動もし
ない様は、傍目にはふてくされて俯いているように映った。
 ルイズは杖を振った。命中させやすいということで、『ファイヤーボール』を放とうとしたものだが、
杖先からは火花さえ出ず、一拍の後にリキエルの背後で爆発が起きた。規模は大きく、本塔の壁には
酷いひびが入った。大失敗だった。
 頭を抱えるルイズを押しのけ、キュルケが嫌味なほど華麗な所作で『ファイヤーボール』を唱えた。
無論ルイズへのあてつけだった。キュルケは『火』系統のメイジで、腕はトライアングルクラスであ
る。
 ひとの頭より大きな火の玉が、キュルケの杖の先から一直線に飛ぶ。縄が一瞬で燃え落ちて、リキ
エルは真っ逆さまになる。すぐさまタバサが飛んできて、『レビテーション』でリキエルの落下を止め、
傷ひとつつけずに地上まで降ろした。
 キュルケが歓声を上げた。


 本塔の入り口近くに、ローブを目深に被った一人のメイジがたたずんでいる。『土くれ』のフーケと
いう。
 フーケは盗賊だった。主に貴族の屋敷を仕事場に選び、金品や芸術的価値のある品を奪い、特に珍
しいマジックアイテムの噂が流れれば、三も聞かずに参じて掻っ攫っていく。大胆な手口を使うこと
でも知られており、『錬金』の魔法で壁を破るのはまず常套で、ときには巨大なゴーレムで押し込みを
働き、そのまま屋敷を半壊させることもある。城下に出没し始めたのは近年のことだが、それ以前か
らトリステイン国内では被害が相次いでいおり、貴族らの頭を悩ませている。希代の盗賊なのだ。
 その盗賊がいま目をつけているのが、魔法学院の本塔にある宝物庫だった。
 フーケは『レビテーション』を使って浮き上がり、塔の五階あたりで止まって、外壁に手を当てた。
ややあってから下りてくると、フーケは舌打ちして、壁を靴裏で蹴りつけた。乾いた音がして、細か
い壁の欠片がぽろぽろと落ちる。
 ――確かに、ただの石ではある。
 けどあんまり分厚すぎる。ここまでとは思わなかった。
 宝物庫の『固定化』は強固で、容易に『錬金』を受けつけない。では力押しならばどうかとフーケ
は考えていたが、どうやら、それもままならないようだった。どう足掻いても、多くの時間と精神力
を割かれることになる。
 だが今回の獲物には、既にかけ過ぎるほど手間をかけている。いまさら引けない。なにより国中の
貴族を震え上がらせた盗賊の意地が、それを許さなかった。フーケはまた舌打ちした。
 不意に、いくつかのひとの気配と草を踏む音がした。どうやら近づいてきている。フーケは咄嗟に
本塔を回りこんで、影の中に入って息をころした。


 そのゴーレムは、気づけばいた。実際は塔で影になっていたのが、明かりの下に出てきたというだ
けだったが、そう思えてしまうほど突然に、それは姿を見せたのである。
130使空高:2009/02/24(火) 16:15:55 ID:3fJVDTH5
 見とれてしまうほど巨大な土のゴーレムで、三十メイルはあるだろうとルイズは思った。完成度や
動きの細やかさから鑑みて、トライアングルクラスの、それもかなり強い力を持ったメイジが操って
いるのがわかる。
 緩慢だが確かな足取りで、ゴーレムは一歩一歩とこちらに歩いてくる。その肩に、黒ずくめの人間
が立っているのをルイズは認めた。きっとあれが術者ね。
 術者はこちらに気がついている風だったが、止まるつもりはないようだった。
 そんなふうに冷静に見ていられるのは、事態がまだ飲みきれていないからだと、これも沈着な思考
でルイズは考えた。証拠に、いまさっきまで目の前に居たキュルケは、早々に逃げを打っている。
 ――このまま居たら、踏み潰される。
 ルイズはようやく我に返った。同時に、底冷えするような恐怖を感じる。ゴーレムはだいぶ近づい
て来ていて、いっそ土の壁が迫ってくるような、異様な威圧感にさらされた。ふとした瞬間に気を抜
いたりすれば、そのまま腰も抜けてしまいそうな気がする。
 だが、視線を舌にずらした途端、そんな恐怖はどこかへと飛んだ。
「リキエル?」
 本塔の下に、縄で巻かれたリキエルが転がったままになっている。命の危機だというのに、身じろ
ぎひとつしない。縄のせいで満足に立ち上がれないにしても、あんまり動きが無さすぎる。ちょうど
何かの拍子に落ちた蓑虫が、羽を成すこともなく、蓑の中で息絶えたような格好だった。
 ルイズは駆け出した。もう思い出していた。あの使い魔は、ことあるごとにパニックを起こすよう
な奴だった。まぶたが落ちると言って騒いだことは一度や二度ではないし、ほんの少しの間部屋を空
けて、戻ってきたら喉を押さえてえずいていたこともある。縄を打たれて、高いところに宙吊りにさ
れて、そんな常人でも恐慌を来たすようなことに、そんな奴が耐えられるわけがないのだ。
 わかり切ったことの筈だった。まるで動かないということは、リキエルはいま、気を失うかそれに
近い状態でいるに違いなかった。キュルケとの張り合いなんかでのぼせ上がってと、ルイズは自分の
迂闊さに腹が立った。
 走り寄って覆いかぶさるように組み付き、リキエルを仰向けにする。全身の力が抜けてしまってい
るのか、むしろ硬直しているためなのか、ひどく重かった。
 月明かりに照らされた顔は、締まりなく顎が垂れ、上下の歯の間から、わずかに舌の先が覗いてい
た。両目は半ば開いていたが、その奥の瞳は小刻みに震えていて、焦点が定まっていなかった。呼吸
をしていて、血色も悪くないのはよかった。
「リキエル。起きなさいリキエル! 早く目を覚ますのッ」
 ルイズはリキエルの肩を掴んで、無茶苦茶に揺すった。
「潰れちゃうわよ! 死んじゃうのよ!」
「…………」
「起きなさいってば! こんなっ、ロープで縛られて寝てるんじゃないわ!」
 喚きながら、ルイズはリキエルの縛りを解きにかかった。そうしている間にも、着々とゴーレムは
近づいてくる。もう目と鼻の先だった。
「起きなさいってば! 這うか転がるかくらいできるでしょ!」
「ルイズ、よせ。さっさと逃げろ」
 いきなりリキエルが口をきいたのに驚いて、ルイズは手を止めかけたが、すぐにまた動かし始めた。
手が震えてしまい、結び目に上手く指が入らない。
「起きてるならそう言いなさいよ。……く、このロープ。あんた自分で動けないのッ?」
「無理だ。さっきから力が入らなくてなァ。縄が解けても、お前の力じゃあオレを引きずっても間に
合わないぜ。だからよォ〜ルイズ、もう逃げろ。お前まで踏み潰されてしまうからな」
 肘がきしむほど腕に力をこめた。半ば苛立ちでそうしていた。縄が解けないのと、リキエルの勝手
な言葉のせいである。身を挺して助けようとしているのに、逃げろとはなんだ。言う声が、やたらと
落ち着いているのにも腹が立った。この馬鹿使い魔、いつもいつも、なんで死に掛けになるとべらべ
ら喋るようになるの!
 ゴーレムが、とうとう一歩のところまで迫った。ルイズはそれと気づいていたが、怒りと苛立ちを
あえて募らせることで、恐怖を押し込めていた。
131使空高:2009/02/24(火) 16:17:55 ID:3fJVDTH5
 周囲に影が落ちた。どうやら、頭の上にはゴーレムの足がある。さっき見ていた様子から考えれば、
もうあと何秒も数えないうちに、土の塊は落ちかかってくるはずだった。ようやく縄は解けたが、リ
キエルに言われた通り、自分にはそのあと引っ張って行けるだけの力は無い。気づけば腰も抜けてい
る。万事休したとルイズは思った。
 だがゴーレムは、何かに痺れたように数瞬、動きを止めた。
 その隙を逃すまいというように、タバサがシルフィードを殺到させた。シルフィードは、群生する
草に後ろ足がつくほど低く飛び、突き抜けるような勢いでルイズたちを引っつかむと、ゴーレムの股
を抜いて再び飛び上がった。そのときの颶風で、そこらの草は根こそぎなぎ倒された。
 思い出したように、ゴーレムが足を踏み出した。ルイズには、さっきより心持ち軽々とした動きに
見えた。


 学院の敷地を出て、ゴーレムをただの土くれに戻すとき、フーケはにやりと笑った。腕には、布を
被せた筒状のものを抱えている。それが狙いの品だった。
 ――ひびを入れてくれたのには、助かったね。
 あのひびのおかげで、宝物庫を破ることができた。こうして『破壊の杖』も手に入った。魔法が使
えず、『ゼロ』とかいう呼び名で馬鹿にされているらしいが、そのゼロには感謝の言葉を贈りたいくら
いである。
 ――さて……。
 もうひと仕事だと、フーケは笑いを引っ込めた。そして森の闇に消えた。

◆ ◆ ◆

 宝物庫が破られた件は、夜の間に学院全体に知れていた。教師たちは、朝から宝物庫へ集まり、現
場の検分も兼ねた緊急の会議を行っている。
 フーケという盗賊は、有名なわりにその実態を知る者がいない。はっきりと顔を見た者はおらず、
性別も年の頃も、何ひとつ正確なところはわかっていないのだった。貴族の屋敷や関係する施設ばか
りが狙われることから、貴族に恨みを持つ者ではないかとも言われるが、その話も憶測の域を出ない。
 それでも名が割れているのは、現場に必ず刻まれる犯行後声明のためだ。検分した教師たちも、宝
物庫の壁に『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と刻まれてあるのを見つけてい
る。ちなみに、『土くれ』の二つ名は本人が名乗ったものではなく、現場に土くれしか残さないその手
際から、いつしか呼び習わされるようになったものである。
 検分が終わり、応急の処置として壁の穴がふさがれると、さて今回の責任は誰にあるかという話に
なった。まっさきに糾弾を受けたのは、昨夜の当直であるミセス・シュヴルーズだった。
「申し訳ありません」
「謝罪はけっこうです」
 教師たちの輪の中から、木で鼻をくくるような声が上がった。周りの教師を押しのけて出てきたの
は、ミスタ・ギトーである。年若く優秀なメイジだが、物言いにずけりとしたところがあって、しか
も短気な男だった。
「それよりミセス・シュヴルーズ、この失態をどうするおつもりか。おめおめと鼠賊の侵入を許し、
あまつさえ『破壊の杖』を奪われるとは。自覚に欠けますぞ?」
「…………」
「泣いたって、お宝は戻ってはこないのですぞ。それとも弁償ができますか、あなたのお給料で『破
壊の杖』が? 無理でしょうな。確かこの前、家を建てたそうですし」
「……申し訳ありません」
 シュヴルーズは、目に涙して繰り返した。その涙を拭こうと、震える手でハンカチを出したが、目
に当てる前に取り落としてしまった。慌てて膝を屈してハンカチを拾う。が、そのまま立ち上がれず、
シュヴルーズはついには泣き伏した。
 折りも折り、ようやくオスマン氏がやってきた。オスマン氏は、まず泣き崩れたシュヴルーズに目
を見張り、次いでギトーをじろりと見た。ギトーは決まり悪く顔を背けた。
132使空高:2009/02/24(火) 16:19:56 ID:3fJVDTH5
「これこれ。女性を苛めるものではない」
 オスマン氏が、子供を叱る口ぶりで言った。
「君はどうも怒りっぽくていかんな。ミスタ……えーと、ギトギト君?」
「ギトーです、ギトー! 私は油汚れじゃありませんッ」
「そうじゃったか。いやぁ、惜しかったの。まあ、君の名前なんぞはこの際どうでもいいんじゃ。そ
れよりも聞きたいことがあるでな。ここにお集まりの教師、全員にじゃ」
 そこでいったん切って、オスマン氏は教師一人ひとりの顔を、覗き込むようにして見た。その視線
は柔和で静かなものだったが、教師たちはその瞳の中に、重々しい威厳のようなものを感じた。それ
は偉さや、力の強さといったものとはまた違う、幾重にも年輪をこさえた大樹の持つような、悠久を
思わせる威風だった。
 こほんと空咳して、オスマン氏は口を開いた。
「この中で、当直の仕事をまともにしたことのある者は、何人おられる?」
「…………」
 教師の誰一人として、問いかけには答えなかった。あるいは青ざめて、あるいは口惜しげに、だん
まりを通すだけである。言い返そうにも言葉がないのだ。詰問を受けたときのシュヴルーズと、だい
たい同じだった。
「気持ちはわかる、まさかという気持ちはの。じゃがそれこそが、賊につけ入られる隙になったのは
紛れもないことじゃ。そう、我々には油断があった。慢心があった。メイジだらけのこの学院にと、
たかを括っておった。責任は、私を含めた全員にあったのじゃ」
 沈痛な面持ちで言いながら、オスマン氏はシュヴルーズの肩に手を置いた。そして優しく撫でさす
った。顔をあげたシュヴルーズが、若い娘のように腕にすがりついてくるのを、オスマン氏はとめな
かった。
「去ったことは、去ったことじゃ。過去はええ。それよりも、我々は事後の対策を、それも最善の手
を考えねばならん」
 そう、鋭く言い切ったのに応えるようにして、宝物庫の扉が開いた。
 入ってきたのは、まず先頭がコルベールである。その後ろにルイズ、キュルケ、タバサが続き、最
後のリキエルが扉を閉めた。教師のほとんどが、この場に生徒がいることを訝しがり、そのうちのさ
らに何人かは、片目の平民の不景気面に、露骨に眉をひそめた。
 コルベールがオスマン氏に近寄って、その腕に引っ付いているシュヴルーズをじろじろ見てから、
背後のルイズらを引き立てた。
「連れて来ました。彼女たちです」
「うむ。では昨夜のことを、詳しく話してくれるかの?」
 シュヴルーズを引っぺがしながら、オスマン氏が言った。
「はい」
 強張った声と顔で、真っ先にルイズが進み出た。こういうことに馴れがないのか、どうやら少しば
かり緊張した様子である。
 ルイズは現場で起こったことを、決闘のこと以外は残らず喋った。突然に土ゴーレムが現れたこと。
その肩に乗った、黒ずくめのメイジのこと。ゴーレムが宝物庫の壁に、四度にわたって拳を打ちつけ
たこと。破壊された壁の中から、黒ずくめメイジが持ち出したもののこと。城壁を越えたゴーレムが
崩れて、ただの土になるまでのこと。途中でどもりつつも、すべて細かに語った。
 語り終えるとルイズは、一息ついて呼吸を直してから、これで全部ですと言った。
「そのメイジは、現場に何か残していったかね?」
「いいえ、土の山しかありませんでした」
「ではほかに、何か気づいたことなどはなかったかの?」
「わかりません。これといったことは……」
 ふんふんと頷きながら、オスマン氏は眉の端をぽりぽりとかいた。そうして俯く姿は、ごく真剣に
考え事をするふうではあったが、見ようによってはだるがっているようでもある。
133使空高:2009/02/24(火) 16:21:55 ID:3fJVDTH5
 事実は後者であった。オスマン氏は心底、この件を面倒に感じている。さっきまで言っていたこと
は、当直のことでの叱咤は本心だが、そのあとについては半ば以上、自分の株を上げるための方便で
ある。そのお膳立てのために、コルベールに入ってくるタイミングを指示する徹底ぶりだった。そし
てルイズの話の内容から、事態が予想したより厄介らしいと知って、一気に面倒くさくなったのであ
る。
 本音をひた隠しに、オスマン氏は長いあごひげを梳いた。
 そのとき、また宝物庫の扉が開いた。現れたのはオスマン氏の秘書、ミス・ロングビルである。二
十人近いひとの群れにも眉ひとつ動かさず、乱れのない足取りで、その群れをかき分ける。
「申し訳ありません」
 オスマン氏に向かってロングビルは頭を下げた。
「朝から、急いで調査をしておりました」
「と言うと、この件について? ……仕事が早いの、ミス」
「はい。早朝にフーケのサインを見ました。宝物庫のほうが、どうも騒がしかったものですから。そ
れからすぐに、外に調べに出ました。結果を言いますと、フーケの居所がわかりましたわ」
「な、なんですと!」
 色めき立ったのは、それまでは静かにしていたコルベールである。
「いったいどこに?」
 ロングビルの語ったところでは、フーケと思しき人間は、学院から半日ほど歩いたところにある、
森の中の打ち捨てられた小屋にいるとのことだった。近くにいた農民が、その廃屋に、黒いローブを
まとった男が入るのを見たらしいのだ。さらに農民は、こうも言ったらしい。ローブの男は、大事そ
うに木製のチェストを抱えていたと。
 瑣末な情報ではあったが、その程度のことでも、ほかに何もない状態では重要な手がかりといえた。
少なくとも、確かめてみる価値はありそうだった。
「そこは、歩いて半日ほどなのじゃな?」
「そうです。馬で四時間ほどでしょう」
「よし、捜索隊を編成する」
 オスマン氏が言うのに、コルベールが待ったをかけた。
「それよりも、王室に報告したほうがよいのでは? 王室の衛士隊ならば確実でしょう」
「ばかもの!」
 鋭くオスマン氏は言った。日和見にできるほど緩い事態でないことは、面倒に思える程度には承知
の上だ。
「報告なぞしとる間に、フーケは意気揚々、山でも海でも好きなところへ逃げられるわ。そもそも、
これは魔法学院の問題じゃぞ、当然学院の者の手で解決せねばならん! さあ、我と思う者は杖を揚
げよ。フーケを捕らえて、名を上げようと思う貴族はおるかッ」
 しばらくしても、杖は揚がらなかった。その場にいる貴族たちは、言い交わしたように全員が、不
自然に視線を泳がせている。シュヴルーズを自覚に欠けると言っていたギトーも、足元から視線を上
げようとはしない。
 皆が皆、気まずい沈黙に耐えかねて身じろぎを始めたころ、とうとう一人のメイジが顔の前に杖を
掲げた。ルイズである。
 つまらなそうに髪をいじっていたキュルケが、それを見て片眉を上げ、やがてこちらも杖を掲げた。
さらにそれを受けて、タバサがのんびりと杖を掲げ上げる。
134使空高:2009/02/24(火) 16:23:55 ID:3fJVDTH5
「あらタバサ、あんたはいいのよ。あたしはヴァリエールに、美味しいところを取られたくないだけ
なんだから」
 慌てたようにキュルケが言うと、タバサはキュルケとルイズを交互に指差した。
「心配」
「そう? ありがとうね」
「……ありがとう、タバサ」
 軽い口調だが、熱の入った声でキュルケが返し、ルイズも一拍遅れて目礼した。
 教師陣から、悲鳴のような声があがった。捜索隊は、とりもなおさず捕縛の役目を兼ねる。相手が
やり手の盗賊メイジともなれば、危険な役目だった。ルイズたちのような、年端もいかないメイジに
務まるものではない。何より生徒に危険を冒させるわけにはいかない。
 だがその声も、オスマン氏がいちいち宥めて黙らせた。
「確かに彼女たちは生徒じゃ。しかし敵を見ている。……少なくとも、いまの君らよりはまともに働
けそうじゃ」
 あんまりな物言いに、数人の教師は顔を上げたが、どの顔もまたすぐに下を向いてしまう。言い返
す口を持たないようだった。
 オスマン氏は心うちでため息をついた。教師が、生徒の前でそんなことではどうすると思った。一
人や二人くらいは杖を揚げるかと期待したが、ちょっとやそっと煽ったくらいでは、誰も何も言い返
しもないようである。各々の中の火種が、どうにも小さすぎるらしい。これだから、君らには任せら
れんと言うのじゃ。
「まあ、大丈夫じゃろうて」
 ぽんと手を叩いて、オスマン氏はルイズらに向き直った。
「と言うのもな、まずミス・タバサは、シュヴァリエの称号を持つ騎士じゃ」
 キュルケを含めたその場の貴族は、一様に驚いた顔になって、タバサをまじまじと見た。
 シュヴァリエというのは、王室から下される爵位のひとつである。最下級のものではあるが、その
位を手に入れるには著しい業績が要るため、その他の下位の爵位と比べ、数段も重みを異にする。家
柄や領地に左右されず、一個の人間の能力を認め 称える意味で与えられる、まさに称号だった。
「続いてミス・ツェルプストー。聞き覚えのある方も多いのではないかの? ゲルマニアの軍人の家
の出じゃ。彼女自身、トライアングルクラスのメイジでもある。それから、ミス・ヴァリエールは…
…そうじゃな」
 オスマン氏は淡く言いよどんだ。ルイズの評判は、特に魔法が使えないことは耳に入っている。褒
めるに難しいものはあった。だが、大の大人が尻ごみする中、一番に杖を揚げたのは他でもない彼女
である。胸のうちで動く老婆心に照らしても、その見上げた意気を、自分がそぐようなことをしては
ならなかった。
 ――ガンダールヴのこともあるしの。
 危険な任務ではあるが、あるいはそういった中でこそ、ルイズの使い魔が伝説の力を見せるかも知
れなかった。生徒による探索隊の編成を認めたのは、その見極めのためでもある。ある種の賭けであ
った。
「かのヴァリエール公爵家の息女で、学業においては他の生徒に抜きん出るものがある。しかもその
使い魔はメイジと決闘し、善戦するほどの剣の腕を持っておる。その一部始終、聞き及んでおる方も
多いはずじゃ」
 最後の言葉は教師たちに向けたものだったが、視線はリキエルに定まっている。
 思えば、直接に顔を見るのは今日が初めてだ。こうして間近に見れば、実に頼りなげな青年である。
過日鏡の向こうで奮戦していた姿とは、似もつかなかった。決闘のときの鬼気迫る感じとはうって変
わって、肩に重石を乗せているような、鬱したところが目立つ。そしてその肩にはさらに、本人のあ
ずかり知らぬところで、大きな期待をかけてしまっているのだ。
 応えておくれよ、とオスマン氏は思う。身勝手は承知の上である。だが真実、任務の無事の成功を
願う気持ちでもあった。
「さて、まだ反対を唱える者はおるかの? ……おらんな。ではあらためて、魔法学院は、諸君らの
努力と貴族の義務に期待する」
 ルイズたち三人に向かって、いよいよ厳しくオスマン氏は言った。リキエルからは、あえて目を外
した。
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 16:24:39 ID:ZxE7hzYG
ふははははは、支援だ!
136使空高:2009/02/24(火) 16:25:55 ID:3fJVDTH5
 その声にあてられてか、三人は顔を引き締め、姿勢も正した。
「杖にかけて」
 三人が唱和し、礼にのっとった辞儀をする。教師たちは、その光景に胸打たれたというような顔を
した。この段にきて、ようやく貴族としての羞恥を、はっきり感じる者が出始めたようだった。
 さすがにこれはこたえたらしいの、とオスマン氏は思った。これでもうちぃと、マシになるかの?
 ――……いや。
 と思い直した。ずっと座りこんでいたのだ、いきなりは歩くまい。次は立てるかどうかじゃな、と
思ったのだ。







投下終了。
まぁた名前欄忘れた……俺の頭はざるかあああ!?
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 17:47:29 ID:kOyB2Bw+
投下乙ッ!!
ゴーレムが数瞬止まったのはスタンド発現の片鱗なのか!?
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 18:20:19 ID:PixEmC4c
乙!次回も楽しみすぎる
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 18:22:56 ID:iRPK74BV
踏むのを戸惑ったのかと思ったけどそういうのもありか
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 21:12:43 ID:zl2J1SK+
相変わらず文章umeeeeeeeeですね
これが読ませる文か
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 21:16:12 ID:kvijRG85
>>139
使空高さんとこのおマチさんは、キレイなおマチさんだから…
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 04:37:43 ID:Q3JskJpj
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「おれはホテルから飛び降りて死んだと思ったらホテルのトイレで切り刻まれて死んでいた」

な…何を言っているかわからねーと思うが投下します
143はたらくあくま 1/3:2009/02/25(水) 04:38:18 ID:Q3JskJpj
25 命の限り、悪の限り

東の山の向こうから、茜が紫に追われ行く。星屑をはべらせて、双子が白い顔を浮かび上がらせる。

オールド・オスマンの物語は、短く単純なものだった。
三十年も前になるだろうか。ある日、オールド・オスマンはとある森に分け入った。気分転換の散策に、あわよくば希少な薬草を見つけに。
ところが、彼を迎えたのは夜行性のはずのワイバーンだった。前脚を持たない飛竜であるワイバーンは、いわゆるドラゴンに比べ、格段に知性が低い。
神の不興を買ったか、あるいは、その手の無い造形が知能の発達を妨げたか。その一見して威厳をも覚えさせる巨体とは裏腹に、猛獣の頭と猛禽の心を持つ。
弓槍程度なら軽く避ける敏捷性はどこへやら、鱗の胸にいくつかの穴。苦痛にのたうち回ったか、ひどく汚れていた。
正気を失った翼竜は、その濁った瞳でオールド・オスマンを捉え、襲い掛かった。
ひらりとはいかず、無様に木陰を伝い逃げるオールド・オスマン。口の端から血泡をこぼしつつ、木々をなぎ倒すワイバーン。紛れも無く時間の問題だった。
息を切らせ、喉を空気でこすりつつ、必死で走るオールド・オスマン。それでも杖を構え、ルーンを唱え、火球をイメージする。獣を脅かす炎をこの種は未だに恐れ、ブレスを吐くことすら出来ない。
視界も足場も悪い地形で、予期せぬ敵に追われつつ、精神を集中させ、魔法で反撃する。そうそう上手くいくはずもなく、叢の下に潜む岩に足を取られ、盛大に倒れこむ。
死ぬ。全力で起き上がろうと手をついたその時、進行方向から草を踏み分ける音。一匹ではなかったのか。血の気の引いた顔をあげる。そこには一人の男がいた。
一見して衰弱していると判った。頬はこけ茶色の髭は伸び、顔色はおそらく今の自分と大差ない。泥沼のような色の服は破れ、その下の皮膚も破れていた。
だが、男は目に嫌な光を灯し、迫りくるワイバーンに向かって二杖の一本を構える。むしろ担ぐ、と言ったほうが適切な構え方。
次の瞬間、杖の先から煙が出た。発せられた音と相まって、場違いに派手な印象を受ける。それを強く補強する、後方からの爆音。
頭の上に線を引く煙、その後を追うように首を回す。胸に大穴を空け、自らの血溜りに沈むワイバーン。肉の焦げる臭いが煙にのってやってくる。
驚愕。詠唱ぬきの原始的なマジックアイテムの破壊力か、あれが。そして爆音。爆音だと? 物が爆発する魔法など聞いたことがない。何者だ、この男は。
オールド・オスマンは命の恩人に目を戻す。食いしばった歯を剥き出しに笑う顔。目の焦点がほどけ、男もまた草むらに倒れる。


暗くなった学院長室。月光に背を向け、老人のシルエットが手を打つ。卓上に、本棚の端に、扉の上にあるランプが一斉に明かりを灯す。
小さな光源で部屋を照らしだせはしない。部屋の隅々、影が揺らめく。
「で、どうなった」 デーボは先を促す。どこか階下から、管楽器のものらしい音がてんでに聞こえてくる。音合わせか何かだろうか。
「すぐに学院に運んだ。やせ細っていた彼は軽かった。持っていた杖の方が重いようにすら感じられた。
 ともあれ、我々は出来る限りの看護をした、が、手遅れだった。彼は生死の境を二日ほどさまよい……」 魔法の光に照らされる沈鬱な表情。それが本物かどうか。
「死んだか」 話の内容が本当かどうかすら、今の自分には判別できない。
杖はそう、本物だろう。M72対戦車ロケット。それを持っていたその男は、まず間違いなく米兵だ。あちらからこちらに召喚されたのだ。
だがそれを手に入れた経緯は? 無意識の内に、デーボは剣の束に親指を這わせる。
「心残りは多い。命の恩人の名前すらわからない。今となっては、ベッドの上で最期を迎えさせられたのだけが慰めだ」頷く老人。遠い目をして続ける。
「彼は死ぬまでうわごとのように繰り返していた。『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』とな。
 私は、せめて彼の亡骸を故郷に帰そうとした弔ってやろうと、な」 目が動き、こちらを見る。故郷? アメリカか。そいつが帰ったなら。おれも帰れるか。何のために?
144はたらくあくま 2/3:2009/02/25(水) 04:40:27 ID:Q3JskJpj
何か、何かが頭の片隅に閃く。

それを塗りつぶすように、主人の言葉がよみがえる。次いで顔貌が、桃色の髪が揺れる姿までもが脳裏に浮かびかける。それは今はどうでもいい。
「無理、だろう。それは」 幻影を振り払い、思考を今に引き上げるための一言。だが老人はそれに鋭い眼差しを返す。
「そう、無理だった。私は初めは簡単だと思っていた。彼の杖も、服装も、身につけていたペンダントの文字も、始めて見る物ばかりだったからな。
 自分の無知を恥じたが、逆に、これだけ特徴的ならば誰かは知っているだろう、とも考えた。もしそれが上手くいかなくとも、この目立つ風体ならば
 森に入る前の道筋を辿ることも、さほど難しくは無いだろう、と。」 デーボを見据え、喋り続ける老人。
「学院全てのメイジに聞いても、あの杖が何なのか判らないと言う。ペンダントに彫られた文字も判らない。そもそも杖もペンダントも、材質すら判然としない。鉄と何かの合金だとしか判らない。
 噂が尾ひれを付けて城下町まで広まった。王宮勤めの学者や、魔法研究所の者までやって来おった。しかし、誰一人として判らなかった。あの杖がなんなのか、どうやって使うのか。
 不可解に思いながらも、私は彼の足取りから追うことにした。
 だが、それすらも判らなかった。四方の町も、街道から外れかけた村も、翼人達の集落にすら分け入った。それなのに誰一人としてそんな人間は知らないと言う。
 どういうことだ? 彼はあの森で生まれ育ち、一人であの杖を作り上げたとでも言うのか?
 そんなことは不可能だ。道も無く、切り開いた炭焼き小屋の一つも無く、夜には竜が飛び回る。そんな所で一人では暮らせない。
 一人ではなかったとしたら? 私は危険を顧みず森に舞い戻った。しかしいくら探しても、たった一つの焚き火跡しか見つけることは出来なかった」
 おれがここの文字が読めないように、こいつらもアルファベットは読めないか。水差しから小さなグラスに水を注ぎ、喉を潤す老人を見つつ、そんなことを思う。
 
「結局、何一つ判らなかったと言っていい。残ったのは彼の亡骸と杖の噂だけだ。私は彼を一本の杖と共に埋葬し、もう一本を宝物庫にしまいこんだ。恩人の形見としてな……」 苦々しい面持ちで語る老人。
 私はずっと調査し続けていた。三十年、進展はなかった。だが、ここに来て事態は大きく動いた。おぬしは杖を使いこなし、ゴーレムを破壊した」 眼光が鋭さを増し、睨みつけるかのようだ。
「そして今また一つ。『無理だろう』。そう言い切ったな、今。魔法も知らず文字も読めない、おぬしが何故言い切れる? 『無理』な理由を知っているからではないか?」 真剣そのものといった面持ちで問い詰める。
145はたらくあくま 3/3:2009/02/25(水) 04:41:10 ID:Q3JskJpj
その真剣さに、デーボの胸中に疑問が湧く。こいつは何故、こんなにも真剣なんだ? 恩人に報いるため? 三十年間もずっと? 馬鹿な。弔いのために、命を失いかけた場所に戻る? 馬鹿な。
違うな。こいつは多分、あの杖が、ロケットランチャーが欲しいだけだ。使い方は知りたかったが、使って欲しくは無かったか。
やつの言葉の端々に現れている。死体についてではなく、持ち物に執着している。
名誉が欲しいのか、武力が欲しいのか。純粋な知的探究心か。それとも王宮に献上して、金子でも賜るのか。
金。思い至る。おれにも必要だ。おれにこそ必要だ。ややあってデーボは答える。
「ああ、知っている」 それを聞いて、老人の瞼が微かに持ち上がる。期待しているのか。デーボは薄く笑って付け加える。
「…対価はなんだ?」 なに? 呟きが漏れる。何を言っているのか判らない、という顔になる老人。
「おれは『無理』な理由を教えてやる。あんたがその『無理』をなんとかするかどうかは、おれの知ったことじゃない。で、あんたはおれに何をくれるんだ?」
「何だと。おぬし……」 眉根をしかめる。真似をするデーボ。口元はにやにやと歪んでいるが。それを見て、老人の表情が変わる。
「そうだな、字でも教えて…」 とぼけたような顔つきで口にする。デーボは頭を振る。年寄りの相手はこれだから困る。
「そうじゃない。判るだろ? それとも聞きたいのか? 金が欲しい、と」 それを聞いた老人が溜息をつき、机の引き出しを開ける。
「やれやれ、ここでそう来るとはな。おぬしの主人に報告せんといかんな」 一枚取り出し、放る。受け取ったそれは金貨だった。
持ち替えて親指で弾く。部屋の隅に飛んでいき、快い音を立てて転がる金貨。それを見て、再度けげんな顔をする老人。
「なんだ、まさか金の値打ちも知らんのか?」 呆れたように言う。まさか、知っているさ。この剣もそれで買ったんだ。
「そういえば、さっきの勲章の話だが」 言いながら剣を抜く。左手に光。反射的に椅子を鳴らし、素早く立ち上がる老人。手には杖を握っている。
「おいおい、いきなり何だよ。自分だけ金貨一枚でキレたか?」 剣が呆れたように言う。大体そんなところだ。

「その勲章に年金は付くのか?」 つまり、そういうことだ。老人が憎々しげにこっちを見る。
「ああ…。お前も勲章が欲しいのか、俗物だな、おい」 楽しげに喋る剣。何を聞いている。大事なのは胸飾りじゃない。金だ。
「さらに低俗じゃねーか。……まあ、そうだな。精霊勲章ともなれば、1年で小さな家が建つぐらいは出る…」 喋り出したデルフリンガーを遮るように、老人が大声を被せる。
「馬鹿を言うな! おぬしに叙勲の申請だと? 平民のおぬしに…」 反論する老人。それをさらに剣が妨げる。
「ああ! そうだ! 思い出した! 行きの馬車の中であの盗賊、『わたくしは、貴族の名をなくしたものですから』とか言ってたな、そういえば!
 その平民が、なんで爵位に勲章まで付くんだ?」 わめく剣。おれと話しながら、周りの話も聞いていたのか。こいつの視聴覚はどうなってやがる。
「彼女は平民だった。雇い入れるにあたって、私の遠縁としたのじゃ。魔法学院長の秘書が平民では、いらぬ軋轢を招くからのう」 話を逸らそうとしてのことか、すんなりと答える。

「つまり、遺族年金というわけだ」 剣が陽気に言い放つ。老人は動きを止める。デーボは聞く。その場合はどうなる?
「夫婦親子じゃねーからなあ…。ま、墓が立つぐらいにはもらえるだろ。さもなきゃ最悪、無縁仏になっちまうもんな。貴族様が」 何がおかしいのか、ヘッヘと笑う剣。老人を見る。厳しいその表情が肯定している。
「時間はどの程度かかる」 老人に直接問いかける。
「まだ払うと言ったわけではない」 老人は憮然として答える。
「そうか」 剣先を左右に振る。相手も杖を握りなおす。
「こんな狭めーとこでやりあうつもりかよ、お前ら」 呆れつつも、楽しげな響き。だが、デーボにそのつもりはない。
こんな隙の無い奴と、正面からやりあう理由は無い。もっと簡単に、もっと効果的な方法がある。動きを止める二人。
階下から流れる交響曲。それを聞き、老人の目が見開かれる。学院長ともあろうものが、気付くのが遅い。笑みがこぼれる。嫌らしい笑みが。
おれが剣を振らなくても、もっと相応しい奴がこいつの首を刎ねるだろう。罪状? 監督不行き届きといったところか。
保身のために庇った犯罪者、そんな奴に自らの学院の生徒が――貴族の子弟が――殺されればどうなるか。考えれば簡単なことだ。
手近な所で、ルイズを切り殺すイメージ―――
146はたらくあくま 4/3:2009/02/25(水) 04:42:35 ID:Q3JskJpj
心臓が握りつぶされる。嘔吐感。眩暈。瞳孔が急激に拡散する。脳が膨らみ行く感覚。恐怖。
それは駄目だ。あり得ない。あってはならない。親殺しどころではない禁忌。
他の誰をどうしようが、ルイズは駄目だ。考えたくもない。
もっと他の、誰でもいい。例えばギーシュ、キュルケ、タバサ、あの香水の女、名も知らぬガキども。
「もっと弱そうなのがいくらでもいるだろう。今も、酔って、踊っているはずだ」 心拍数が下がる。何とか平静を取り繕う。
音楽の流れる方へ視線を逸らす。老人は自らの運命に捕らわれて、動けない。



取り巻きと共に笑いさんざめくキュルケや、ひたすら食事に専念するタバサを後に残して、ルイズは早々に引き上げる。
声を掛けてくる男子生徒にも、着飾って舞踏会に顔を出せる自分にもうんざりする。それだけが理由ではなかったが。
松明に照らされた、静かな廊下を一人歩く。騒がしい会場とのコントラストが心地よい。服の衣擦れが、油のはじける微かな音が、自分の足音がすべてだった。
自分の部屋に戻ってくる。鍵が開いている。またしても掛け忘れたか。
「早いな」 闇の中からの声にルイズは飛び上がる。月光を避けるように部屋の隅に座る使い魔。壁に背をもたれ
「あ、あんたねえ! 戻ってるなら明かりぐらい点けておきなさいよ! 気が利かないんだから!」 照れ隠しか、腹立ち紛れか。自分でもよくわからないままに使い魔にぶつける。
デーボは軽く手を叩く。部屋は相変わらず闇に包まれている。あれ? ランプの異常かと、慌ててルイズも続いて手を打つ。部屋に光が戻る。
え? なんで? ルイズの疑問に、使い魔は短く答える。おれには魔法の素養はないら、しいな。
言われて初めて気づく。これもまた魔法なのだと。家族の誰もが、学院のだれもが当たり前のように使っている、この簡素な仕組みのランプもまた、魔法なのだと。
そうなのだ。明かりを見ながら、何か考え事でもしているのだろうか無言の使い魔。ルイズは見る。この男は魔法を使えない。
あの破壊の杖、マジックアイテムなんかじゃない。以前言っていた、ここではない世界。その産物だ。魔法とは違う論理で動くもの。
自分はあの杖は使えなかった。だが、ランプを灯すことは出来る。魔法の力。わたしはゼロじゃない。
「わたしは、ゼロじゃ、ない……」 当たり前だ。呟いた言葉を耳ざとく拾う使い魔。
「お前が本当にゼロなら、おれはここにはいない」 その言葉に何が込められているのか、口調から感情は読み取れない。
「ねえ、帰りたい?」 俯き加減に訪ねる。
「そこが問題だ。何か…が…」 顔をしかめる使い魔。整っていない顔立ちが更に崩れる。
「いや。ここも向こうも同じだ。良い事もあれば悪い事もある。そもそも帰れない」 使い魔は吹っ切るように立ち上がり、ドアへと向かう。
どこへ行くか訪ねる。振り向きもせず、短く「残飯」と答える背中。
思い切って言う。

「ありがとう」

使い魔が振り向く。何か言おうとしたが上手い言葉が見つからなかったらしく、手を振って廊下に消える。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 04:46:29 ID:oC9U3ZDN
支援
148はたらくあくま:2009/02/25(水) 04:49:09 ID:Q3JskJpj
支援無駄にしてゴメンなさい、これで終わりです

ひさーしぶりに投下しました。投下しましたーって言うのも忘れるぐらい久しぶりだがや!
こんな変なテンポで第一巻完!
次から(個人的に)楽しい楽しい二巻ですーって、まあいつになるかアレですけど
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 07:15:27 ID:6p3RSnsu
アクマ来たー!待ってました!!
描写うめぇぇぇー面白いよ、次も待ってます!!
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 09:14:21 ID:0vXhPtm2
デーポ!デーポ!
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 09:27:09 ID:VQS6w+nM
デーポ デーポ デポ 男の子〜♪
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 10:26:40 ID:unUcqRqo
>>151
顔だけデーボなポニョを浮かべてしまった
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 12:06:31 ID:EPHvWxQF
黒い!黒いよ!!
暗殺者も老人も剣もろくな奴らじゃねぇwww
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 21:33:45 ID:YrTaK+y6
最近ホルホル君が来ないね。スランプなのかしらん?
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 21:37:12 ID:oC9U3ZDN
きっとプレステ3を・・・
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/25(水) 21:40:32 ID:EPHvWxQF
窓から投げ捨ててる?
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 07:56:00 ID:YhgT+WVy
MHP2Gベスト版を買ったせいで執筆速度が思い切り下がったでござる
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 12:47:59 ID:Hpm7CRlX
>>157
クロススレでモンスターを召喚したルイズを執筆する作業に戻るんだ
結構あるよねモンスター召喚ネタ
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 16:50:18 ID:B65b7vBZ
>>158
スケアリー・モンスターズと申したか。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 17:28:57 ID:btKMIZcp
恐竜なら使い魔としても問題ないよな
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 17:52:01 ID:R+QYiN95
周りの人間が次々に使い魔に・・・
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 19:21:19 ID:IMwpdVq9
ゲッター線ふらすぞコンニャロー
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/26(木) 21:25:09 ID:i8tjkDRf
違う意味で虚無るぞコンチクショー
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/27(金) 03:21:25 ID:dy3aQSai
こちらのwikiだと折り返しが多く
てさ
テキストで心いくままに書いてる
けど、お勧めのソフトは無いかな



こんな風になるのが嫌なんだよな……
ワードだとなんか違うようだし、ほかの筆者さんは何を使って書いているんだろう
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/27(金) 09:57:30 ID:RN+6Aywm
一行ごとの字数制限かけるんじゃだめなのか?
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/27(金) 17:13:07 ID:jGubiPe9
気になるなら時間あるときにでも直せばよくね?
ソフトに関しちゃ、避難所で聞いてみるのも手。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/27(金) 22:26:21 ID:FZFCVdWC
>>164
clipfanの行分割(指定文字数で自動改行)と
行連結(自動改行された文章の行末改行コードを消去)を使ってます。

ttp://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se163168.html
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/01(日) 18:52:40 ID:WSaeppiR
44時間26分経過!
まだまだパワーを感じる・・・
まだまだ止めていられるぞ・・・
やはりジョースターの血は よくなじむ!
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/01(日) 19:20:19 ID:ADIvy3Pp
じじい…あんたのいうとおり
ここのところ少々過疎になったようだぜ
しかしな……こんなもんじゃあねえ………
まだ飽きたりねえぜッ!
170ポルナレフ+ジョルノ:2009/03/01(日) 23:34:20 ID:nMYK2nhz
短いけど投下を行わせていただきたいッ
23:45分からの投下予約をさせていただきます
171ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/01(日) 23:47:19 ID:nMYK2nhz
時間になったので投下を開始します。

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
俺がサイトの奴に協力していたらジョルノはいつの間にか俺を置いてトリスティンに戻っちまいやがった。
な、何を言っているかわからねーと思うが、俺にも何が起こったのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった!
ちょっとした冗談とか最近アイツが忙しいみたいだからとかそんなちゃちなもんじゃねー恐ろしい疎外感を味わったぜ!

「うっさいわよポルナレフ! 今明日の演説を覚えてるんだから静かにして!」
「わ、悪い」

怒鳴りつけられた俺はやるせなさから深くため息をついてソファに寝そべった。
ジョルノがトリスティンに戻ってから…アルビオンで王党派が勝利し今俺を怒鳴りつけてきたルイズが聖女様になっちまってからもう暫くが経っていた。

『ニューカッスルの聖女』なんて呼ばれるようになったルイズの奴は張り切っていて、毎日楽しそうに聖女の仕事をこなしてる。
教会やウェールズ達からの指示通りに演説をしたりちょっとした集会に顔を出して顔を売る毎日だ。


俺は相変わらずだが、ついでの今のアルビオンや他の奴らの近況も報告しておこうと思う。

ウェールズ王は頑張ってるらしいが、今のアルビオンはすげー最悪な国になっちまってる。

今のアルビオンは知っての通りガリアとゲルマニアの軍を置かれちまってて、半分以上の領地が二国に統治されちまってる。
内乱で貴族の数が減っちまったせいで二国が統治してる領地に回す人材はないとは聞いているが…アルビオン側は腸が煮えくり返ってるようだ。

そりゃそうだ。
内乱に勝ったと思ったら他国に賞品を分捕られちまったんだからな。
暫定的になんて言ってるが、ガリアにもゲルマニアにもアルビオンに領地を返還する気は更々無いのは、亀の中でマンガ本を読んでる俺にだってわかるくらいあからさまだ。

それに加え、領土が減った今の状態で内乱中ずっとテューダー王家を支えてきた貴族達に褒美を分配したんで不満が続出している。
渡さなくても不満は持っただろうが、得られるはずの貴族派の所領がないってのはデカかった。
懐だけでなく、他国の軍が我が物顔で駐留している現状にプライドも傷ついてる…ウェールズ王はどうする気なのか俺にはわかんねぇ。
他国に渡っちまった領地の貴族や、テファと一緒に復帰したテファの親父さん関係の貴族共は先祖伝来の土地が他国の貴族や政敵達に分配されて殆ど戻ってこないんでキレてるしな。

ゲルマニア軍と市民が衝突したって話も耳にするし、貴族派の残党がゲリラ的に攻撃をしかけてるって話も聞いている。
昨日も元貴族派のメイジが見回りをしてたゲルマニア兵士を襲うって事件があったくらいだ。
治安はまだまだ悪いし、正直復興はあんま進んでねぇ。

まぁ例外も、あるっちゃある。
テファの領地とジョルノの領地だ。

ゲルマニアがジョルノにアルビオンの領地を褒美として与えた。
テファが貰った領地の近くだって話で、まだまだきな臭い話も耳に入る今のアルビオンの中じゃあ奇跡的に治安が良く復興も進んでいる。
聞くところによるとテファの父親縁の貴族だった奴らが代官を務めているってのと、組織の人間が裏で街や村の平和を守ってるらしい。
テファニア王女をお守りしてウェールズ陛下の下へお連れしたとか、ウェールズを暗殺から守ったとか王党派の首領クロムウェルを討ったとかで人気もあるし、金も撒いて人気取りもバッチリだ。
内乱中に彼等から搾り取ったお金で開いておいた銀行からアルビオンへの貸付もおいしいです、らしい。

テファはこの国の王女として仕事を少しずつ始めている。
足りない所はマチルダ姉さんとかがフォローしてるから評価もいいらしい。
ずっとジョルノと一緒に行動してたんで、アイツに置いてかれたのはちょっとショックだったようだが今は見た感じ大丈夫そうだ。

領地は突然現れた王女様を慕って人が集まり始めてるらしい。
治安もジョルノと同じ理由でいいんで今の所うまくいくんじゃねぇかなって雰囲気がある。

心配なのはジョルノもテファも味方も多いが潜在的な敵も多いってことだ。
愛人の子でハーフエルフって生まれは受け入れがたく、現状の不満を向ける矛先に挙げやすい。
今は他国へ向いているが、他国人で成り上がりの若造と仲が良すぎるってのも内心不満に思う奴がいるらしい。

それに…牛野郎が協力してるとこだな。全く尻尾は掴めてねぇがなんかこそこそしてやがる気がする。
ジョルノには悪いが、あの牛は案外腹黒だぜ。
172ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/01(日) 23:49:37 ID:nMYK2nhz
すいません一部おかしい所かあったので直しますOTL

>俺は相変わらずだが、ついでの今のアルビオンや他の奴らの近況も報告しておこうと思う。

俺は相変わらずだが、周りは色々変わっちまったんでついでに今のアルビオンや他の奴らの近況も報告しておこうと思う。

です
173ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/01(日) 23:53:28 ID:nMYK2nhz
マチルダ姉さんはテファを支えてやりながら時々ここに飲みに来る。
組織との関係とか、案外ストレスが溜まってるようだ。

苦労人同士最近ちょっとだけ親密になったような気がするぜ。

ん?
まさか…これがサイトが言ってたフラグって奴か?

俺がフラグの予感に首を捻ったその時だった。

「師匠、飯持ってきたぜ!」
「おお! メルシィー。ンン〜〜ッ」

狙ってたんじゃねーだろうなってタイミングでサイトが今日の夕飯を抱えてやってきた。
パーカーの上にマントを羽織った姿に相変わらず似合ってねぇなと笑いながら、俺は皿に盛られた料理を一口つまみ。

一口で唸り声をあげた。

「ト・レ・ビ・ア・ン、だぜ。サイト! 今日はどうしたんだ? いつもと比べてやけに…えーっと、お前が前に言ってたそうだ! メシマウ? ウマ?だぜ」
「へへっ、昨日こっちの飯があんまり美味くねーってラルカスに言ったろ。そしたらアイツ、ラ・ロシェールで働いてたコックを連れてきてくれたんだぜ」

得意げに言うサイトに俺は、おおーっと歓声をあげた。
ラルカス…!! 野郎ッ俺を美味い飯で買収しようって魂胆と見た!!

「この俺がそんな手に引っかかると思って「師匠…せめて手を止めてから言おうぜ」

飯はいただくが信用はしない。
両方やらなくっちゃならねぇのがツライとこだな。

「アンタ等、うるさいって言うのが聞こえないのかしら?」
「わ、悪かったって。そう怒るなよルイズ「様!」あーはいはいルイズサマすいません」

全く誠意の篭っていない謝罪をしながらサイトは持ってきた料理をテーブルに並べていく。
その言い方が癪に障ったのか、ルイズが亀の中に頭を突っ込んできた。

「何よその言い方! 私はね、公爵家の娘で聖女様なのよ!? 本当だったらアンタみたいな平民じゃ一生かかっても関わる事がないんだからね!」
「何だと!? お前が枢機卿とかに利「止めとけって、飯が不味くなる」
「「フンッ」」

俺が止めに入ると二人は同時にそっぽを向いた。
こうして見ると仲は最悪なような気がするんだが、二人とも素直じゃねぇんでよくわからん。

サイトは、シュヴァリエとかいう爵位を与えられ、聖女様付の護衛になった。

マリコルヌの使い魔じゃないかって?
詳しくはしらねぇが、竜を複数同時に操るサイトの使い魔としての能力を利用しようって言う連中の方が声がでかかったんだろうさ。

サイトがプッチ枢機卿から貰ったとか言うヴィンダールヴの能力はそれだけ強力だった。
…もしかして、サイトがこれだけ取り立てられたのも野郎が関係してるんじゃねぇのか?

DIOの友人だとか抜かす野郎が何を考えているのかわからねぇからって俺が過敏になってるのかもしれない……ただの思い付きだったが、そう考えると驚くほど納得がいった。
飯を食う手を止めて俺は考え込んだ。
だがその間に食器を並べ終えて飯を食い始めるサイトを見下ろして、…アホらしくなった俺は考えるのをやめた。

どっちにしろ今はなるようにしかならねぇ、とあっさり結論がでたからだった。

「そういやミキタカはどうした?」
「パッショーネの職人とかの前で地球の道具に変身してる。簡単な奴から再現しようとしてるらしいぜ。服とか農具とか本当に色々変身させられてるって話だ」
「そか」
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/01(日) 23:57:15 ID:F1SILvmi
支援だッ
175ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/01(日) 23:59:14 ID:nMYK2nhz
素っ気無い俺の返事。
それと共に二人の間に奇妙な沈黙が訪れた。

「………………ミキタカに頼んでさ。テファ用のブラが出来たら見せてもらえるようにしようぜ」
「だな。ジャンにも手紙送っとくぞ」

トリスティン紳士たる彼なら新型の船に乗って一目散にやってきてくれるはず…そんな確信があった。

ジャン。
今はゲルマニアで研究をしている紳士仲間のことを思い出したポルナレフはしんみりとした口調で呟いた。

「ジャン・ジャックめ。無茶しやがって…」

ルイズにしたことが許せないサイトは、紳士的に聞き逃した。


ポルナレフがしんみりとしている頃。
ジョルノはガリアへ向かう道の途中、立ち寄ったある大きな街の教会に足を運んでいた。
当初の予定ではただ通り過ぎるだけの予定だったその場所で最も良い貴賓室に通されたジョルノの目の前にはプッチ枢機卿が寛いでいた。
ルイズの母カリーヌの頼みにより、プッチとカリーヌを引き合わせる為連絡を取ったところプッチはすぐにココで落ち合おうと連絡を寄越したのだった。

カリーヌを別の部屋で待たせ、ジョルノへと友好的な笑みを浮かべるプッチにジョルノは問いかけた。

「プッチ、何故ルイズを聖女にした? 『テファをこのハルケギニアで帽子を被らずに暮らせるようにする』その為に今のブリミル教を改革していく予定だった。だがそれに聖女ルイズは必要ない」
「ジョジョ。だからこそだ」

プッチは幼い生徒を諭す教師のような顔つきで返事を返した。

「私は、結果だけを求めている」

そう言って腰掛けていたふかふかのクッションで覆われた椅子から立ち上がったプッチは、同じ真っ赤な椅子に座り自分を見上げるジョルノにはっきりと言った。

「時間は有限だし機会という物もある。過程や方法を選んでいると、そこにつけこまれ何時までも目的にたどり着けないだろうからな」

一瞬だけ苦々しい口調で吐き棄てたプッチの表情は、ブリミル教のシンボルマークの枠が嵌められた窓から差す光に照らされて肩書き通りの聖職者らしさを持っていた。
正しい道を模索する求道者のようだった。
挫折を味わった者…運命のような抗い難いものに今も苦しめられ続けている者のように見るものには見えただろう。
「そんな私だからこそ、いつかは結果にたどり着くだろう。そこまでして目指しているわけだからな。いいかジョジョ。もう一度言うが大事なのは結果なんだ」

徐々に熱を帯びる神父の表情を爽やかな笑み、しかし何処か怜悧なものを含んだ表情で見つめながらジョルノは話を聞いていた。

「私は君の父を神を愛するように愛していた。良く似ている君も同様に愛している。その君の目的を達成するのに十年や二十年かかっても達成できないような方法を選ばせるわけにはいかなかったのさ」
「なるほど。確かに貴方の言う事は、本当に大事な事だ」

噛み締めるように言うジョルノにプッチはうむ、と大きく頷き返した。

「わかってくれたようで嬉しい。知らせられなかったのは申し訳ないと思うが、まさか君があの場に居合わせるとは思ってもいなかったのだよ」

ジョルノはそこで、ふと気付いたかのように視線をあらぬ方向へとやった。その向けられた方向に何があるかに気付いたプッチは笑みを深くする。

「ああ、公爵夫人を余りお待たせするわけにはいかないな。会ってくるとしよう」
「頼みます。僕はこのままガリアへ向かわなければいけませんからね」

ジョルノに言われ、プッチは自信に満ちた態度で胸を叩いた。

「任せてくれたまえ。今度はこちらから連絡しよう。その時に良ければ私の計画を聞かせよう」
「それは楽しみですね」
「楽しくなるさ。まだ詳しくは言えないが、帰る為の手立ても見つかるかもしれない」

相槌を打つ年下の友人に思わせぶりに言って、プッチは共に部屋を後にした。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 00:00:35 ID:iNBmVowC
支援ぬ
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 00:00:45 ID:+pXrqaji
粉みじんになって支援
178ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/02(月) 00:02:25 ID:+SqK7qiV
ジョルノはプッチが言った言葉、特に『帰る為の手立て』について考えながらプッチへ別れの言葉を言い、教会の外へと出て行った。
王族達やガリア内の組織の様子を見に行くというジョルノと笑顔で別れたプッチは、教会の中へと戻っていった。
ギシ、と微かに軋む廊下を進み、カリーヌが待つ部屋へと向かう内にプッチ枢機卿の表情からは笑みが消えていく。
赤く染め挙げられた扉の前に立ち、懐から手袋を取り出したプッチは指にぴったりとフィットするそれを嵌めてから扉を開けた。

ジョルノと会っていた部屋よりは落ちるが、大事な客を持て成す為の部屋には毛足の長い絨毯が敷かれ、その上にカリーヌが膝を突いてプッチ枢機卿を迎えようとしていた。
トリスティン有数の大貴族が頭を垂れて迎えるのを見ても、プッチ枢機卿は何の感慨もなく細めた目で見つめゆっくりと部屋に入っていった。

ゆっくりと入っていきながらプッチは今目の前にいるカリーヌが遍在であるか否かを見定めようとした。
だが、枢機卿に会うに当たって武器を持つのは不敬だと言う理由から杖は持っていないが、カリーヌが本体かどうかプッチには見当がつかなかった。


扉が閉まる。

「お待たせしてしまったようですな」
「拝謁の機会を下さり感謝いたします。プッチ枢機卿閣下」
「楽にしてください。感謝はネアポリス伯爵様にされるとよい。私も彼からの申し出でなければ貴方とは会わなかった」

面を上げたカリーヌ、はプッチ枢機卿の物言いに返事が一拍遅れた。
服だけでなく、肌も黒いこの枢機卿の表情には、友好的な色が全く見受けられなかった。
相手がたとえロマリアの枢機卿であろうとも、いやだからこそトリスティンでも五本の指に入る大貴族であるヴァリエール公爵家のカリーヌ。
彼等が今現在祭り上げている聖女ルイズの母であるカリーヌに向けるには、余りに配慮に欠けていた。
敵だとでも言わんばかりだと感じたカリーヌに向けて、プッチは薄く微笑んだ。

「用件はわかっておるつもりです。なんでも聖女ルイズのことでご相談があるとか」
「はい。あの子は」
「ちょっと待ってください。まだ私の話は終わっていない」
「申し訳ありません…はしたない真似をいたしました」
「いえ、娘を思う貴方の事と思えば、当然と言えましょう。それで聖女ルイズのことですが…あの娘には既存のブリミル教の教義を否定して分裂させる役目が終わるまでは利用させてもらう」
「…!?」
「そのまま"楽にして"聞きたまえ。あえて言っておくが今私に毛筋でも傷を付けたなら、教皇聖下が直々にヴァリエール家を破門するぞ」

一瞬のうちにブーツの中に仕込んだ小型の杖を引き抜いたカリーヌの手が、その言葉で止まった。悔しげに眉根を寄せるカリーヌをプッチは鼻で笑う。

「何故ルイズを…閣下の目的がそれならば、虚無が使えるにしても、あの子では役者不足ではありませんか!?」
「友人の頼みと私の目的を一致させた結果の人選だ。公爵夫人、私は、使い魔としてハルケギニアに召喚された平民なのだ。その腹いせにブリミルが残したものを壊したり君達を苦しめようというわけだ」

始祖ブリミル…その王家の血はヴァリエール家にも流れている。
プッチ枢機卿が使い魔でしかも平民であるということや、今の教義を変えようとしている友人がいるという話も十分カリーヌにとっては驚くに値する事だったが、カリーヌはそれを押さえ込みプッチに言う。

「つ、使い魔にされかけたというお怒りは最もだと思います。ですが! それは聊か度が過ぎているのではありませんか?」

平民がメイジの使い魔になれば、それはある意味では幸運ではないとさえカリーヌの、トリスティン貴族の常識は感じていたが、相手に合わせて彼女はそう語りかけた。
だが、その言葉にプッチ枢機卿の表情はカリーヌの譲歩に険しくなる。
怒りが表情を歪め皺となって顔に走り、細められた眼が暴力的な光を放ちながらカリーヌを睨みつけた。

「度が過ぎているだと? いいか!!」

どうしようもない愚者を糾弾しているかのような自分に酔った、鋭い声がプッチから発せられた。

「六千年かけてろくすっぽ進歩しない怠惰な猿以下の原住民が、主がお生まれになって二千年足らずで既に月に足跡を残した私達を誘拐し、肉体と精神を汚したのだぞ!?」

叫ぶプッチの言葉に含まれた差別的な感情に嫌悪するカリーヌへと禍々しい笑みが向けられる。

「寧ろ君の娘の件に関しては言えば魔法が使えるようにしていただいてありがとうございます、と感謝されるべきじゃあないか?」
「イカれてる…」

呆然とするカリーヌをプッチは蔑みを込めて嘲笑った。
179ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/02(月) 00:05:32 ID:+SqK7qiV
怒りに顔を赤く染め、感情の迸りを魔力のオーラとして身に纏いながら、だがあくまでも怒りなど欠片も仕草や声に出さずにカリーヌは言う。

「…それならば、どうして貴方を召喚したメイジだけに」
「既にそれは済ませた。だが『DIO』の息子までがそんな目にあったと知った。これは最早個人を超越している問題だ。憎むべきは個人ではなく付け上がったメイジ共の慣習!」

迷うことなくプッチは言う。
それを聞いて、怒りと養豚場の豚でも見下ろすような不遜な態度が見られる目の前に男と交渉し、娘の安全を確保するなどと考えた自分をカリーヌは恥じ入った。
この男とは、どうやっても手を取り合うことなど出来ない。
そう実感していた。

「そして何より…私達を誘拐せずにいられない貴様らの呪われた血統だと私は理解した。完全な虚無など復活させん。してもどーでもいい代物にまで私が引き摺り下ろしてやる」

言いたいことを言って少しは溜飲が下がったのか、怒りを納めてプッチは部屋を去ろうとする。
交渉は入るまでもなく消滅していたし、プッチは無駄な時間をここで過ごそうとは思わなかった。

扉を開けて、プッチは肝心なことを忘れていたと愉しげな表情を浮かべて振り向いた。

「ん、そうだ。公爵夫人、ギアスという禁呪を知っているかね? 私が死ねばそれによってトリスティンは勝ち目の無い戦争状態に入るだろう。貴様は娘が何事もなく役目を終えられるように静かにしているのだな」

トリスティンで最強と呼ばれたメイジへこれ以上ない釘を刺して、プッチは部屋を出て行く。
部屋を出たプッチは、彼の用が済むのを飼い犬のように待っていた枢機卿の旅に同行する神官達と合流し、一人に嵌めていた手袋を棄てるよう言いつけて出立した。

残されたカリーヌは、一方的に姿を見せたどす黒い悪に生まれて初めて足元が崩れるような感覚を味合わされていた。

ギアス『制約』。大昔に使用が禁じられた心を操る水系統の呪文。
かけられた者は、任意の条件を、時間や場所などの条件を満たした時に、詠唱者が望む行動をとる。
発動するまでは、呪文にかかっているのかどうかは見破れずかかっている本人も気付かない。

しかもそれをかけられたのは他国の貴族や聖職者であり、かけたのは枢機卿の地位にいる者。
見つけるのは、かけられた可能性のある者達の地位を考えれば見つけようとすることさえも容易ではない。

だがこのままプッチ枢機卿の思惑に乗り続ける事も出来ようはずもない。

今はまだおぼつかない足取りで、カリーヌは動き出した。

To Be Continued...

以上、投下したッ
180ポルナレフ+ジョルノ 二章_10:2009/03/02(月) 00:13:59 ID:+SqK7qiV
支援ありがとうございました

今回は現状把握話にしました。
ポルナレフだけは相変わらずです。プッチはほぼ詰んだので調子に乗り始めました

投下途中、文章が荒すぎると感じたので後ほど修正を行うかもしれないです…
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 00:42:50 ID:k0h50Gpn
GJ
カリンさんみたいな最強キャラが手も足も出ずに心をへし折られる様って…
…なんていうか……その…下品なんですが…フフ…… 「ぼkk(ry
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 02:03:50 ID:nWgw2zRU
さすがは6部のラスボスであり、DIOの親友!!
トリステイン最強のメイジ相手に、口だけで勝利を収めやがったww
とはいえ、ここからが正念場、次回に期待するッ!!
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 02:11:31 ID:nWgw2zRU
さすがは6部のラスボスであり、DIOの親友!!
トリステイン最強のメイジ相手に、口だけで勝利を収めやがったww
とはいえ、ここからが正念場、次回に期待するッ!!
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 12:25:55 ID:gAamlqqv
何故だろう、今まで一度も感じた事のない共感!
それを俺は神父に対して感じている!!
というかあまりにも個人的な恨みでハルケギニア引っ掻き回すつもりかwww

この時点で、地球組でルイズ側に立ちそうなのが才人・ポルくらいかなぁ
ミキタカは説得すれば仲間になってくれそうだが、ジョルノは微妙だし
まあ神父が目的を達成してもそれはそれで面白そうなんだがw
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 20:11:01 ID:XvAjIPvF
おお!GJ!!
何かプッチの台詞読んでたらすげー爽やかな気分になったぜ!
確かに6000年足踏み状態の連中に貴族だなんだで威張られたくは無いわなwww
プッチとカリーヌが正面対決すればカリーヌの圧勝だろうけど、全く手も足も出ない展開がおもしろい!!!!!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 21:54:55 ID:6zWG/nco
逆に現代文明が6000年持つかというと……正直怪しい。
だけどもちろん生まれ育った日本に住むのが快適で一番いいけどね。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 22:43:23 ID:Vbilk1PP
C-MOONやメイドインヘブンならプッチ勝てるんじゃね?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 22:57:13 ID:FMBfjO+c
現時点の能力がホワイトネイクだからな…
とはいえスタンドが見えないって事はプッチがかなり有利なわけだけど。
スネイクは長射程だし、一撃で一切合切片が付くし。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 23:05:08 ID:gAamlqqv
しかし政治的な駆引きではカリスマ+白蛇を操るプッチには例えヴァリエール家でも勝てんしなぁ……
おまけに迂闊に殺す事も出来ないし、更にはジョルノの方もルイズに対して嫌悪感持ってるし
……これって詰んでね?
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/02(月) 23:05:27 ID:w5ImDs0S
虚無の力でメイドインヘブンに進化とか。なんか「加速」って微妙に似てるし
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 15:58:31 ID:mpvvQgYl
ポルポルが何とかしてくれるさ。
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/03(火) 17:29:06 ID:sNY/pXm1
>>190
というか材料のザ・ワールドも存在してる件。
必要な残りの条件は大体で言うと
36名以上の罪人の魂、14の言葉、重力の少ない場所の3つ。
他はともかく、承太郎に会ってないから言葉は分かんないんだよな
(第6部開始前から来たとするとだけど)魔法で何とかなれば別だけど。
193ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:05:32 ID:Gno7OhK3
10分から投下したいんですけど誰か居ますかねッ!?
194ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:11:12 ID:Gno7OhK3
沿道に連なる人垣を抜けて、少し離れた民家の壁に寄りかかる。
ここから窺う観衆はまるで一つの塊の様で、先程の少年の靴先さえ見えない。
歓声は遠く、パレード見物に熱中する市民に彼の姿は映らない。
疎外感にも似た感情が込み上げるのを感じながら、それに彼は納得を覚えた。
この勝利はトリステイン王国のものであり、余所者である彼に向けられたものではない。
身体を斜に傾けながら天を仰ぐ。見上げる先は遥か彼方、そこにある故郷を思い描くように。

「異国の地にて故郷を想うか、私も今はそんな気分だよ」

不意にかけられた言葉が、上の空だった彼を地上に引き戻す。
どこか懐かしい、アルビオン訛りの混じった響きに彼は振り返った。
竜騎士隊隊長の瞳に映ったのは、かつての宿敵ボーウッドの姿。
彼等が顔を合わせたのは、これが初めてではなかった。
しかし顔と名前を知っているだけの繋がりに過ぎなかった。
そして、両者が互いを意識し始めたのは内戦が始まってから。
アルビオンとトリステイン、幾度となく二つの空で衝突を繰り広げ、
誰よりも相手の存在を知りながらも、こうして言葉を交わすのは初めてだった。

「すまない。誇りがあるのならば自ら命を絶つべきなのだろうが、
今もこうして生き恥を晒し続けている。無様と笑ってくれて構わない」
歴史に残る不名誉な奇襲を仕掛け、トリステイン艦隊ごと多くの人命を奪った。
たとえ命令された事であろうと実行したのはボーウッド自身。
そして彼の部下である竜騎士隊を壊滅寸前に追い込んだのも彼の采配だった。
“もしかしたら自分を殺すかもしれない”
そう分かっていながらボーウッドは彼を追ってきた。
彼に討たれるならばそれも本望だと心に決意を秘めていたのだ。
しかし返ってきたのは嘲笑でも罵倒でもなかった。

「生き恥は俺も同じだ。アルビオン王家に忠誠を誓っておきながら、
トリステイン王国に身を窶している。騎士を名乗るのもおこがましい」
「な……何を言うッ! それは全て―――」
「『全てアルビオンを想えばこそ』……それは貴殿も同様の筈だ」

突然の切り返しにボーウッドは思わず息を呑んだ。
自分を見つめる彼の真摯な眼差しは反論の余地さえ与えない。
しばしの沈黙の後、ボーウッドは黙って頷いた。

サー・ヘンリー・ボーウッドは生粋の軍人であった。
内戦の発端となった『ロイヤル・ソヴリン』号での反乱。
その時、彼は艦の乗員として任に当たっていた。
艦の指揮権は既に貴族派にあり、それを止める事など出来なかった。
無論、テューダー王家への忠誠を忘れたわけではない。
しかし彼は軍人であって政治家ではない。
独断で行動した結果、祖国に招くであろう混乱を恐れていた。
個人の考えだけで軍を動かす事の危険性を認識していればこそ、
命令に逆らうよりも従い、内戦を早急に終わらせる道を選んだのだ。
内紛が長期化し、疲弊し切ったアルビオンが他国に侵略されるぐらいならばと、
心を鬼にし貴族派の人間として数多くの同胞達を死に追いやった。

だが、その結末はあまりにも無残なものだった。
信じていた議会は暴走し、異議を唱える者は次々と粛清され、
そして無謀とも言える軍拡を続けた挙句、今度は外にまでその野心を広げていった。
一人になる度にボーウッドは心中で幾度も己に問い質した。
“彼等の犠牲は何だったのか”“こんな戦いに意味などあるのか”と。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 01:11:41 ID:lFOqjSUK
しえんッ!
196ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:12:22 ID:Gno7OhK3
「私は過ちを重ねすぎた。償うにはあまりにも大きな罪だ。
いや、何をして贖えばいいのかさえ判らないのだ」
奪った命の代償など存在しない、クロムウェルのように『虚無』の力でもない限りは。
どのような謝罪の言葉も死んでいった者達には届かないのだから。
まるで懺悔にも似た言葉を洩らすボーウッドに彼は独り言のように呟く。

「トリステインは建造中の新造艦を中心に艦隊を再編するらしい」
「……それはアルビオンへの侵攻を目的としたものかね?」
「恐らくは。ただ、先の戦いで多くの空軍士官を失った彼等には、
艦隊を運用する人材も、それを鍛える時間も無いのは確かだ。
乗員も魔法学院の学生など急遽掻き集めた新兵ばかりだ」

「そして、アルビオンも同様、艦隊と貴殿をはじめとする優秀な人材も失った。
だが旧式艦ばかりとはいえ残存艦艇数だけならトリステイン・ゲルマニア連合軍に匹敵する。
アルビオン上陸戦では数と数をぶつけ合うだけの消耗戦が繰り広げられるだろう」
「それに手を貸せと言うのか、祖国を侵攻せんとするトリステイン艦隊に!
今一度この手を同胞の血で汚し、罪で罪を洗い流せと言うのかッ!」
激昂したボーウッドが彼の襟首を掴んで引き千切らんばかりに吊り上げる。
血走らせた彼の目を真っ向から見据えて竜騎士は頷く。
彼の憤慨を理解しながら、それでも冷酷に徹して彼は続ける。

「クロムウェルは倒れ、艦隊もその大多数を失った。
もはや神聖アルビオン帝国には当初の戦意など残されていない。
次の戦いで連合軍が圧倒的な勝利を収めれば講和に応じざるを得ない。
連合軍とて未だに何万もの兵を擁する地上軍との全面的な対決は避けたいはずだ」
より多くの命を救う為ならば多少の犠牲はやむを得ない。
騎士の、噛み締めた唇から赤い雫が線となって伝う。
空の大陸を祖国とする彼等にとっては手足をもぎ取られるにも等しい苦痛だ。
既に戦争を避ける手段は残されていない。
ならば一人でも多くの命を救う事だけを考えるべきだ。
彼の胸中を余す所なく理解したボーウッドが襟首から手を離す。
よろめくように壁に背を預け、来た時の彼と同様に天を仰ぐ。
「軍人になってから覚悟していたつもりだった。
だが今頃になってようやく気付いたよ、……命とは重い物なのだな」
「ああ。俺も死の間際まで判らなかった」

遠くに聞こえる喧騒を耳にしながら二人は沈黙を保った。
その静寂を打ち破ったのはどちらでもなく、こちらに近付く複数の靴音だった。
見れば、傭兵と思しき数人の男達が彼等の周りを取り囲んでいた。
穏やかではない空気の中、一回り長身の傭兵が口を開く。
「サー・ヘンリー・ボーウッド卿と、アルビオンの竜騎士隊長殿に相違ないな?」
確信を持って放たれた言葉に二人は頷いて肯定を示す。
誤魔化せるような状況ではないと判断したのだ。
彼等の返答に笑みを浮かべると、その男は背を向けて歩き始めた。
「少し付き合ってもらいたい。なに時間は取らせませんので」
それに従い、ボーウッド達は後ろから男に付いて歩く。
男の言葉は要請ではなく強制だと彼等は察していた。
振り返れば、退路を塞ぐように数人の男が彼等の背後についていた。

ボーウッドは彼等の目的を大体予想できていた。
恐らく人目に付かないところまで連れて行き、集団でリンチを加えるのだろう。
捕虜になったとはいえ、彼等の恨みが消えたわけではない。
むしろ、手を下す事さえ出来ずに歯痒い思いをしていたに違いない。
そこに監視も付けずに無防備に歩いていれば、こういう結果になるだろう。
視線を隣に移せば、竜騎士は自分の杖に手をかけていた。
それに手を当てて静かにボーウッドは首を振る。
無駄な血を流す必要はない、これ私の責任だ。
罪を犯した者は相応の罰を受けねばならない。
捕虜となった以上、命の危険はない。
ならば彼等の気の済むまで殴られてやろうと覚悟を決める。
197ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:13:53 ID:Gno7OhK3
「着きましたぜ」
案内されるがままに辿り着いたの一軒の酒場だった。
二階建ての上の階を宿とする典型的な造りで、
上品さの欠片もない、いかにも傭兵が好みそうな店だった。
店内に足を踏み入れる男にボーウッド達も続く。
そして、目にした光景に思わず彼等は息を呑んだ。
そこは正に兵士達の溜まり場だった。
決して狭くはないホール内に、まるで敷き詰められるように屈強な男達が屯する。
傭兵ばかりではない、休暇を与えられたであろう正規兵の姿も見受けられる。
その中にはトリステイン艦隊の生き残りもいるだろうとボーウッドは視線を落とした。
「連れてきましたぜ、ニコラの旦那」
「ありがとよ。おまえも席に着いてな」
男と入れ替わるように日焼けした浅黒い肌の傭兵が立ち上がる。
体格でいえば先程の男とは比較にならないが、保つ空気が貫禄を感じさせる。
呆然と立つ二人に近付き、杯を手渡してワインをなみなみと注ぐ。
それが終わると今度はホールに振り返り全員の手に杯があるかを確かめた。
やがて満足げな笑みを浮かべると彼は杯を天に掲げた。

「戦友に!」
そして唐突に叫び、一息にその中身を飲み干した。
「戦友に!」「戦友に!」「戦友に!」
彼に続くように次々と兵士たちも歓声を上げてワインを呷る。
突然の乾杯に驚く二人を余所に、彼等は杯を空けていく。
直後、ボーウッドの杯を持つ手が震えた。
自分がここに呼ばれた理由、言葉の意味に気付いたのだ。
あの杯はアルビオンもトリステインもなく捧げられた。
戦いで死んでいった両国の兵士、戦友であった者たちの鎮魂の為に。
さらには、戦いを終えて生き延びた者全てを戦友と呼び合い、
今この瞬間に酒を酌み交わせる事を至上の喜びとして祝杯を挙げた。
ホール中の人間の注目が集まる中、ボーウッドも杯を掲げる。
「戦友に」
言い終えると共に彼は喉の奥にワインを流し込む。
その飲みっぷりの良さに、酒場から割れんばかりの拍手が響いた。

(……見ておられますか、陛下)
竜騎士隊長は込み上げる涙を堪える事が出来なかった。
頬を伝う涙が杯の中に零れ落ちて波紋を呼ぶ。
貴族派も王党派も他国の兵士さえも肩を並べて笑い合う。
その姿が昔日のニューカッスル城の大ホールと重なる。
軍服を纏ったウェールズが告げた言葉を昨日の事のように思い出す。
“パーティーを延期して貰いたい! しばしの間、我等がこの手に勝利を収めるまで!”

(陛下。時間はかかりましたが、ようやくパーティを再開できました)
豪華な食事も高価なワインもなく寂れた酒場の片隅で、
彼もボーウッドに倣うように杯を持ち上げた。
ウェールズ陛下に『イーグル』号副長、竜騎士隊の隊員と五百人の仲間、
そしてトリステインから来た使者の少女たちと使い魔を思い浮かべて彼は高らかに告げた。

「我等が誉、偉大な戦友たちに乾杯!」
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 01:15:28 ID:lFOqjSUK
支援
199ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:15:43 ID:Gno7OhK3

それとほぼ同時刻。パレードに沸き返る城下町からやや離れた豪奢な屋敷、
そのサロンでもささやかな祝宴が挙げられていた。
もっとも小規模なだけであって振る舞われる料理やワインは最高級品、
そして出席する貴族達も誰もが一度は耳にしたことがある有力貴族ばかりであった。
彼等は口々にアンリエッタへの不満を募らせる。
「全く、姫殿下には困ったものですな。我々が穏便に解決しようとしているのに臆病者だなどと……」
「その通り。勝ったからいいものの、あれで敗れていればどうなっていたか」
中には会議でアンリエッタに罵倒された者たちもおり、さらに怒りを滲ませる。
そんな彼等を宥めながら屋敷の主は微笑さえ浮かべて彼等に告げる。
「だが我々は勝利しました。アルビオンはもはや脅威ではない。
彼等から奪い取った領土は我々に新たな富を齎してくれるでしょう。
それに戦争に備えるという名目で増税する事により平民どもからも搾取できる」
まるで舞台の上で演ずるような身振りで、大仰に語る男の言葉に貴族たちは歓声を上げる。
しかし、その中の一人が若干不安の混じった声で本音を吐露する。
「消耗としているとはいえ、敵はあの軍事大国アルビオンだぞ。
果たして、あの怪物抜きで確実に勝てるという保証はあるのか……?」
その言葉に動揺したのか、互いの顔を見つめ合ってざわめき始める。
観衆の反応の良さに酔い痴れていたにも関わらず、
思わぬ邪魔が入った男は不満を露にしながら語気を強めた。
「何を言われるか! 連合軍の総戦力はアルビオン軍など遥かに凌駕している!
あのような不愉快な畜生の手を借りずとも竜が蟻を踏む潰すかが如しだ!」
「そうですぞ! 大体、奴はもうハルケギニアには存在しない!」
屋敷の主に同意するように喧々囂々と弱気になった男を詰る声が響く。
それに気を良くした主が再び襟を正して訂正を加える。

「いや、ここは“存在さえしていなかった”と言うべきでしょうな」
ミス・ヴァリエールの使い魔。犬の姿を装った怪物は記録の上でも、その存在を抹消された。
各国の非難を避ける目的で、彼等は全ての証拠を根こそぎ隠滅した。
だが、それは自分たちの保身を図る為だけではない。
敵であろうと貴族は始祖に連なる血筋の、選ばれた存在だと彼等は確信していた。
貴族とは絶対的な存在として君臨しなければならないとする彼等が、
まるで紙屑を千切るかのようにメイジを蹴散らすバオーの存在を容認できるはずもない。
魔法も使わず、それ以上の力を行使する怪物は、彼等にとってアルビオン以上の敵だった。
そしてアルビオンではニューカッスル城を包囲する大軍を撃退し、
タルブでは艦隊に大打撃を与えた上に、あのトリステイン最強のワルド子爵を倒すという、
決して無視できない戦果を上げ、さらにその脅威を強めた。
「あのままならば使い魔に爵位を与えねばならぬ所でしたな」
「そうなったら我等は犬と同列か。平民どもの物笑いの種だな」
冗談めかして誰かが言った言葉に爵位を持つ貴族が心底嫌そうな表情を浮かべる。
この中の誰一人として命を捨てて戦った彼に恩義を感じる者はいない。
大袈裟な振る舞いで屋敷の主は声を張り上げる。
「アルビオンも! 怪物も! 我等を脅かす者は全て去った!
さあ祝杯を挙げようではないか! 我々の輝かしい未来に!」


トリステインの国境よりおよそ千リーグ離れた内陸部に位置するガリアの王都リュティス。
その東の端に存在する壮麗な宮殿、ヴェルサルテイルの中心『グラン・トロワ』の玉座。
そこに鎮座するガリア王ジョゼフは退屈そうに杯を満たすワインを左右に揺らしていた。
やがて、それにも飽きたのか、傍らに置いてあった人形を手に取り語りかける。
「ミューズ、余のミューズよ。この退屈を紛らわせる楽しい話を聞かせてくれ」
その奇行に小姓たちは怪訝な表情すら浮かべず、ただ無表情を貫き通す。
もはや日常と化した異常な言動に一々反応する者など、この宮殿にはいない。
200ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:16:47 ID:Gno7OhK3
「報告いたします、我が偉大なる主ジョゼフ様」
その声を発したのは手にした人形ではない。
ましてや宮殿に人の声はなく、ただジョゼフの頭の中に響くのみ。
それは遠くトリステインの地にいる彼の使い魔シェフィールドとのルーンを介した会話。
他の誰にも聞こえない従者の言葉にジョゼフは耳を傾ける。
「トリステインは新造艦を中心に戦力を増強し、アルビオンに攻め込む姿勢を見せております」
彼女の言葉を耳にしてもジョゼフは表情を変えなかった。
そうなるように仕向けたとはいえ、あまりにも予定通りで面白みに欠けたのだ。
かといって自分の思惑通りにいかないのも腹立たしい。
この子供のような性格をジョゼフは自覚した上で“難儀なものだ”と自嘲する。

「全ては我が主の思惑通りに。全ては我が主の手の中に。
まさか、この戦いが全て『虚無の少女』を覚醒させる為の茶番だったとは、
アルビオンもトリステインも思いもしないでしょう」
それは恐怖か、それとも歓喜だったのか、
シェフィールドは身体を震わせながら己が主を讃えた。
『虚無』を目覚めさせるのに必要なのは、爆発的なまでの激しい感情。
ワルドもバオーもそれを引き出す為の生贄にすぎなかった。
少女と親しい関係にあったワルドを裏切らせ、様々な手段で彼女の心を傷つけたのもその為。
さらにはアルビオン艦隊という脅威を突き付け、『虚無』の力に頼らざるを得ない状況を作り出した。
この世界に運命を繰る神が居たとしても、我が主の足元にも及びはしないだろう。
「ミューズ、それは少し違うな」
感慨に耽っていた彼女をジョゼフの失望混じりの声が引き戻す。
冷たく言い放たれた言葉に、シェフィールドは死より恐ろしい恐怖に駆られた。
彼女にとって死を命じられるよりも恐ろしいのは、ジョゼフに見捨てられる事だ。
何が気に障ったのかを思案しながら彼女は主に謝罪しようとした。
しかし、それを遮るようにジョゼフは平然と呟く。
「余の目的は戦争を引き起こさせる事だ。『虚無』など連中をその気にさせる餌に過ぎん。
いや、戦争さえも手段だ。余はなハルケギニア全土が悲哀と憎悪で満たされるのを見たいのだ。
その最も効率的な方法が戦争であって、それ以上の物があるというならそちらを選ぶ」
狂気に満ちた主の返答に、シェフィールドの身体が再び打ち震えた。
彼女は確信した、この感情は畏怖だと。
王などという器で収まるような人物ではない。
己の意思一つで世界さえも揺るがせる、そんな彼に仕える歓喜が彼女を満たす。
彼女にとってジョゼフは神にも等しき存在であった。
「ミューズ、もう一度聞かせてくれ。タルブに血は流れたのか?」
「はい。斜陽で大地が赤く染まるように」
そうか、と嬉しげに答える主の声にシェフィールドは狂喜しそうになった。
彼を喜ばせられるのならハルケギニア全ての人間が犠牲になろうと構わない。
見下ろした先には、観衆に盛大な歓声で迎えられるパレード。
彼女らは知らない。自分達が誰かに操られているなどとは露にも思っていない。
(さあ踊りなさい人形達。互いに殺しあって我が主を楽しませるのです)
まるで人形を繰るかのようにシェフィールドは指を動かす。
この世界は舞台だ。彼女の主人であるジョゼフを喜ばせる為だけの舞台。
最高の悲劇を演出する為だけに全ての人間は存在し、与えられた役をこなす。
幕が下りた瞬間、舞台に役者が残っているかどうかなど彼女にはどうでもいい事だった。
201ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:17:42 ID:Gno7OhK3
その後、報告を続けるシェフィールドにジョゼフはふと訊ねた。
「盗まれた『アンドバリの指輪』だが、その行方はどうなった?」
「はい。“土くれのフーケ”を名乗る盗賊が保有しております」
「ふむ。クロムウェルに代わる“道化”だが、一つ面白い趣向を思いついた。
急ぐ話ではないが、機があるようならば取り戻せ」
悪戯を思いついた子供のように、ジョゼフは楽しげに笑みを浮かべる。
気を良くした彼の間隙を縫ってシェフィールドは疑問を口にした。
「それと例の使い魔の件ですが、あれでよろしかったのでしょうか?
必要とあれば残された証拠を使いトリステインを糾弾する事も可能ですが」
「ミューズ、余計な手出しは無用だ。あれはただの嫌がらせなのだからな」
珍しく自分の意見する従者にジョゼフは愉快そうに言い放った。
彼にはトリステインを混乱させる意図など毛頭なかった。
主の真意を掴めずにきょとんとしてシェフィールドは聞き返す。
「嫌がらせ、ですか?」
「そうだ。自らの手で使い魔の存在を抹消させる。
ただ、それを連中にやらせたかっただけだ」
シェフィールドの言うように全ては彼の思惑通りだった。
しかし、この戦いでの被害は想像していたものには程遠かった。
薄汚い傭兵どもの一方的な虐殺を目にした使い魔は人間に絶望したはずだった。
ニューカッスルを再現するように、タルブでも力の限りに殺戮を繰り広げてくれると期待していた
だが何を思ったのかは分からないが、奴は力を抑えて被害を最小に抑えたのだ。
そして、虚無の少女もまた同様に“虚無”を発動させながらも人を殺さなかった。
婚約者に裏切られ、騙され、傷付けられ、使い魔さえも殺されれば殺意に目覚めると考えていた。
もし“虚無”が艦内の人間を対象に発動していればタルブは地獄と化していただろう。
生き残ったアルビオンの兵士は恐慌状態と化してトリステイン軍に雪崩のように押し寄せ、
もはや互いに全滅させるより他に収拾のつかない事態に突入していた。
しかし、そのジョゼフの野望は脆くも虚無の主従によって打ち砕かれた。
彼女たちは黒幕の存在も知らないままジョゼフに一矢報いていた。
だが、それが彼の不興を買ってしまった。
“バオー”の情報を流布したのはルイズを追い込む為だった。
愛情を注いだ使い魔の存在さえも消し去らねばならない苦悩、それを彼女に与えたかった。
他に理由など無い。ただそれだけの、気まぐれによる思い付きだ。
「愛情か。俺には到底理解できんな」
一人呟くジョゼフに答える者は誰もいなかった。

シェフィールドとの会話が終わり、人形を戻したジョゼフが再び杯を手にする。
しかし、注がれた赤い雫を一滴も口にすることなく杯を倒す。
「タルブに血に染まった」
大理石の床に零れたワインがまるで鮮血のように広がっていく。
それを気に留めることなくジョゼフは小姓に杯を突き出す。
器に満たされるワイン。だが、それも飲まれぬまま床に捨てられた。
「だがまだ足りん。もっと、もっとだ」
小姓の手から瓶を奪い取り、その中身を全て床にぶち撒ける。
一面赤に染まったのを見届けて、ようやくジョゼフは満足げに笑みを浮かべる。
「この世界全てが悲しみで埋め尽くされれば、俺の心も悲しみで満たされるのだろうか」
ジョゼフの脳裏に浮かぶのは唯一人、彼に感情というものを芽生えさせた血を分けた兄弟の姿。
「そうすれば俺はまた泣けるのだろうか。シャルル、おまえを手にかけた時のように」
202ゼロいぬっ!:2009/03/04(水) 01:18:53 ID:Gno7OhK3
以上、投下したッ!
次回はギーシュたち学院のメンバーの後日談で。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 01:26:54 ID:lFOqjSUK
支援したッ!
ディ・モールト乙ッ!
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 03:29:55 ID:uX1rAdgg
戦争は終わったのに、それは「一つの戦い」が済んだに過ぎない……
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/04(水) 18:43:10 ID:lRxsY8q0
争いなんてくだらねえぜ!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 00:53:36 ID:5FS4tiGS
全ての生物は互いに食い合い争い合って進化するのだっ!
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/05(木) 19:50:54 ID:f15fOLHd
祝SBR17巻発売
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/06(金) 21:52:14 ID:8uXeDwRw
遅くなったけど、いぬの人、GJでした!
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 03:08:42 ID:mc30F9t1
>>188
遅レスだが戦って勝てないのは
面と向かってスポーツのような戦いをすればでしょ
近距離型でもあるまいしジョジョキャラがそんなカリーヌに有利すぎる条件に持っていくことはなくね?
それこそ今回みたいにプッチの得意そうな舌戦とか陰謀にはめたりするでしょ

スタンド使いたちの戦闘の恐ろしさは自分の圧倒できる土俵で戦うところ
遠距離だったりギャンブルだったりじゃんけんだったり脳の中だったり
どんな武術の達人でもポーカー勝負なんていう超専門外な戦いでは勝てない

つまりジョジョにおいての強い弱いは
自分の土俵まで持っていける知略にあると思う
その点プッチは承り君を倒すほどのジョジョ屈指の知略の持ち主
うん詰んでる
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 13:55:30 ID:sbZMD1hH
自分で手は下さず密かに誘導するだけ(同士討ちだったり、敵を排除したり)で自分は得をするみたいなのが一番怖い
他人を利用するのが上手いのがプッチ

まさに、いともたやすく行なわれるえげつない行為
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/07(土) 14:14:30 ID:RQbBknY0
ジョルノを味方につけないと勝ち目ないけど、ジョルノもテファの為にハルケギニアの社会体制を変えるという
目的を持ってるから、現時点ではプッチと敵対しないだろう
ジョルノもザ・ワールド手に入れてからはだんだん父親に似てきてるし
(本編ジョルノならプッチ曰く『一番大事なのは結果』という発言に異議を唱えてたろうと思う)

早く元のジョルノに戻って欲しいんだが

あといまだに利用されてるのに気付かずに頑張っているルイズが哀れだな
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 15:27:15 ID:UgGkraHz
wikiに更新履歴が欲しいな・・・。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 15:49:57 ID:58zGV7cL
あれ?なかったっけ?
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/08(日) 22:57:23 ID:UgGkraHz
ごめん、普通にあったよ!
215ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:24:47 ID:Kc9kqXat
10時半から98話前編を投下するッ!
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 22:32:22 ID:NVANTFV9
いぬの人きたー 支援する!
217ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:35:22 ID:Kc9kqXat
……邪悪な竜はイーヴァルディに問いかけます。
“小さき者よ、おまえは何故に恐れぬ? 
いかなる騎士も我が咆哮に慄き、尾の一振りで杖も捨てて逃げ去っていくというのに”
“怖くないわけがない。今だって剣を握る手は震えている。
だけど恐怖に負けて何も出来なくなるのはもっと怖い。
目の前で大切な人が奪われても、ただ震えている事しか出来ないなんて――”
怯えを拭い去り、イーヴァルディは真正面から竜と向かい合って答えました。
“そんなの死んだ方がマシだ!”
“ならば死ぬがいい! 己を知らぬ小さき者よ!”
竜の口より吐き出された吐息によって周囲は炎に包まれました。
洞窟の岩盤は瞬く間に溶け、赤い川のような溶岩と化して流れ落ちたのです。
いくらイーヴァルディが強いと言っても、このような炎を浴びては助かるはずもありません。
竜が勝利を確信した次の瞬間、その顎の下で何かが光を放ちました。
そこにあったのは左手から光を放ちながら槍を向けるイーヴァルディの姿。
炎を吐いた時、彼は咄嗟に竜の懐へと飛び込んだのです。
渾身の力を込めた一突きは竜の顎を穿ち、そのまま頭を串刺しにしました。

断末魔をあげて倒れた竜は呪いを込めて彼に言いました。
“我は鋭き爪と牙、そして巨大な体と何物も寄せ付けぬ頑丈な鱗を持って生まれた。
それ故に恐れられ、疎まれ、厭まれ、無力な小さき者どもに迫害されてきたのだ。
次は貴様の番だ、小さき者よ。その力故にいずれはおまえも我と同じ道を辿る”
“そんな事にはならない。僕には自信がある”
“愚かな……。小さき者どもは弱く脆い。我に生贄を差し出して命乞いまでした。
そんな連中が貴様を裏切らぬとどうして信じられる?”
怒鳴るように唸り声を上げる竜に、イーヴァルディは言いました。

“たとえ裏切られても僕は裏切らない。
皆に嫌われたとしても、絶対に彼等を嫌いになったりしない。
だから何があっても僕はおまえのようにはならない”

“……………………”
イーヴァルディの答えに竜は何も言い返せませんでした。

“小さき者、いや人間よ。おまえの名は何だ?”
“イーヴァルディ”
“……そうか。偉大なるイーヴァルディよ、おまえの名をこの洞窟に刻もう。
永い時が流れ、誰もがおまえを忘れたとしても、その名と志を思い出せるように”

死ぬ間際、竜は残された力を振り絞って壁を爪で引っ掻きます。
そして名前を書き終えた時、既に竜は息絶えていました。
イーヴァルディは死んだ竜の眼を閉じると、
洞窟の奥で捕まっている少女を助けに洞窟の奥へと向かいました。
218ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:36:46 ID:Kc9kqXat
「さて今日はここまでです。この続きはまた来た時にしましょう」
ぱたんと絵本を閉じて朗読を中断すると、さっきまで上がっていた歓声がブーイングに変わる。
“ええー、どうして?”とか“最後までやれよな”とか“嫁き遅れのけち眼鏡”とか、
実に可愛げのある無垢な子供たちの言葉に、思わず引きつった笑顔が浮かんじゃいます。
いっぺんしばき倒した方が彼等の……ひいてはトリステイン王国の未来の為な気がしますね。
親を見て子は育つと言いますから連帯責任で親も同罪です。
私だからいいようなものの、他の貴族なら打ち首にされてても文句は言えませんからね。
これだけの心の広さを持ちながら、どうして私の胸は平らなのでしょうか?
始祖と神への信仰心が足りないのでしょうか?
ああ……。でも、見返りを求めて祈りを捧げるのは不敬ですし、実にもどかしい。
きっと栄養が足りないのだと割り切り、秘書の一人も養えないダメ主人に心中で悪態を尽く。

「こら! 生意気を言うんじゃない! せっかく足を運んでくださったのに」
よほど娯楽に飢えていたのか、それとも畑を焼かれて仕事を失ったのか、
村の子供たちと同様に朗読を聴きに来ていた、子供たちの父親と思しき屈強な男性が子供たちを叱る。
押し黙って謝る子から一目散に逃げ出す子など反応は様々だが、非難の声は一瞬にして掻き消された。
私の気持ちを代弁してくれた彼への感謝と、悪ガキどもへのスカッと爽やかな笑いが込み上げる。
「それに、あの人だって好きで嫁き遅れている訳じゃないんだ!
そういう本人にもどうしようもない問題を論うのは人として最低だぞ!」
「…………………」
嫁ぎ遅れなんて言葉、一体どこで覚えやがったのかと思ったら。
そうですか、貴方が主犯ですか。後でちょっと顔を貸していただきましょう。
やっぱり中央はともかく、地方の教育は相当遅れていますね。
今はこうして巡回しての朗読会で精一杯ですが、
いずれはちゃんとした教育機関を設けてみっちりと叩き込んだ方がいいでしょう。
特に目上の者への礼儀を……徹底的に。

さよーならーと元気良く手を振る子供たちに手を振り返す。
公民館代わりに使われている村長の家からそれぞれの家へと帰って行くようだ。
(……さてと私はどうしましょう?)
見上げれば陽は傾き、空は朱に染まっていた。
今から帰るとなると夜通し馬を走らせなければならない。
正直、戦争が終わったばかりで治安が悪いタルブでそんな真似はしたくない。
女性の一人旅なんて襲ってくださいと言っているようなものだ。
いくら杖があったって寝込みを襲われたらたまったものじゃありませんから。

「あの、宜しければウチにお泊りになられては?」
そう言って声をかけてくれたのは先程の男性。
別に宿代を請求するとかそういうのではなく心からの善意のようだ。
大したもてなしは期待できないが、それでも宿泊費が浮くのはありがたい。
最近は色々あって財布の中身がピンチなのです。
よろしい。その殊勝な心がけに免じて特別に減刑しましょう。
本来ならば針串刺しの刑に処す所を再起不能程度に。

「申し出は嬉しいのですが、よろしいのでしょうか?」
「ええ。狭い所ですが食事だけは絶品ですよ。
タルブには美味しいワインと“ヨシェナヴェ”という郷土料理もありまして」
ほう。それは実に素晴らしい。是非、ご相伴に与りたいものですね。
私、実は読書の他にもグルメにも目がない性質でして。
今度纏まった休暇と給料が入った暁にはトリステイン食べ歩きツアーを敢行し、
“トリステイン王国グルメ紀行”として大々的に出版しようかと目論んでいる程です。
それがヒットしたら次はガリア王国ですね、今から楽しみです。
気分が良いので恩赦にしてあげましょう。でも次はありませんよ?
219ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:40:13 ID:Kc9kqXat
「明日朝一番にハンスが息子と城下町まで行商に行きますので、その馬車に同乗させてもらえば」
「そうですね。城下町なら駅もありますし十分です」
近々、戦勝パレードも開かれると聞いてますので見学していくのも悪くないでしょう。
もっとも今回は歴史上類を見ないほどの大勝利だっただけに観衆で大騒ぎになるのは目に見えてます。
ですので揉みくちゃにされた挙句、女王陛下の馬車の車輪しか見えませんでしたとか、
そんな悲惨な結末しか想像できないので大人しく帰る道を選択します。
平民のようなタフさも高級貴族のような権力も無いのが我が身の悲しさというべきでしょうか。
その虚しさはヨシェナヴェでお腹を満たす事で紛らわせるとしましょうか。

翌朝、満腹感による心地よい眠りから後ろ髪を引かれる思いで起き、
快くハンスさんの馬車に乗せてもらって、さっそく出発しようとした直後。
「これ、お願いします」
手紙を携えた男の子が突然私の前に現れた。
“私ってば罪作りな女ですね”と恋文か何かと勘違いして慌てたものの、
よく見ると宛先はトリステイン魔法学院で相手はシエスタという女性。
どうやらメイドとして奉公している姉への手紙を頼みたいらしい。
タルブのような辺境、それも戦争があったばかりで混乱している所では、
せいぜい郵便配達が来るのは数ヶ月に2、3回程度。
なるべく早く届けたいのなら首都近郊で出した方が確実と考えたのでしょう。
「分かりました。引き受けましょう」
私の返答に、花が咲いたように少年が笑顔を綻ばせる。
大した手間ではありませんし、報酬はその顔だけで十分過ぎます。

カラカラと乾いた音を立てて車輪が回る。
遠ざかっていくタルブの村と手を振る村人達。
未だに焼き払われた畑や森には戦いの爪痕が残されている。
しかし、彼等はこうして日々の生活に戻ろうとしている。
その一方で平原に横たわり朽ちていくだけの戦艦の残骸。
果たして、本当に強かったのはどちらだったのか?
その答えが出る頃には、また一面に広がるブドウ畑が見られるでしょう。


「良かった……。皆、元気でやっているんだ」
かさりと郷里から届いた手紙をポケットにしまい、シエスタは自分の仕事に戻った。
それでも畑は大損害で仕送りを増やさないといけないのに、
ここで職務怠慢でクビになりましたじゃあタルブには帰れない。
せっかくマルトーさん共々、戻ってきたミスタ・コルベールに許してもらえたんですから。
―――でも、私はやっぱり悲しいです。
ミス・ヴァリエールが戻っても、ミスタ・コルベールが戻ってきても、
結局“彼”が戻ってくる事はありませんでした。
二度と戻ってこないんじゃないかって出て行く前から薄々気付いていました。
なのに洗濯に行く時、ついブラシを持って行っちゃうんです、もう使う相手は居ないのに。
マルトーさんもまだ慣れていないのか、いつもより多く作りすぎてしまうそうです。
特にミス・ヴァリエールはまだ立ち直る事さえ出来ずにいます。
そして、ここにももう一人……。
220ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:42:08 ID:Kc9kqXat
シエスタが注文されたケーキをテーブルまで運ぶ。
そこにはティーカップに口を付けるキュルケと、
その向かい側で陰鬱とした表情を浮かべるギーシュがいた。
彼の手元には一口も手を付けられずに放置されて冷めた紅茶。
キュルケがケーキを食べ終わってもギーシュは微動だにしない。
生気の抜けきったような彼にキュルケはびしりとフォークを突き付ける。
「アンタねえ、いつまで落ち込んでるつもりなの!?
そんなんじゃ折角の美味しい食事も台無しじゃないの!」
「……悪いけど放っておいてくれないか」
あの日以来、ギーシュは自分の進むべき道を見失っていた。
“彼”が死んだのはギーシュにとっても悲しい出来事だった。
だが、それだけならば彼は立ち直っていただろう。
たとえ死んだとしてもトリステインと主を守ったその名誉は永久に残される。
貴族にとっては名誉は何よりも重たく価値のあるものだ。
そして願わくば自分もそうありたいと思っている。
だからこそ期待を裏切られた彼の失意は一方ならぬものだった。

“ミス・ヴァリエールの使い魔の存在に関する全ての証拠を隠滅せよ”
語る事も許されずに彼の存在は歴史上から抹消された。
その決定が下された時、ギーシュは作りかけだった“彼”の銅像を打ち壊した。
泣きながら何度も何度も拳を叩き付けた、言葉にもならない嗚咽を洩らして。
信じていた物は何だったのか? そもそも信じるに足るものだったのだろうか?
あの戦いは? 自分が生き延びた事に意味はあったのだろうか?
今なら判る。何故ワルド子爵がこの国を裏切らねばならなかったのかが。

「……僕に何が出来るって言うんだ」
ギーシュはこの戦で多大な戦果を上げ、戦勝パレードにも参加するはずだった。
だが彼は断った。そんなささやかな抵抗が彼に出来る精一杯だった。
彼一人いなくなっても支障はない。ギーシュの兄も父親も参加しているのだから尚更だ。
不貞腐れる彼の襟を掴んでキュルケは叫んだ。
「『出来るか』じゃなくて『する』のよ! 
ルイズはきっと立ち直るわ! そんな時に私達が落ち込んでてどうするのよ!」
「いつもみたいに気障な笑みを浮かべなさいよ!
あの子を笑って迎えられなくて何が友達よ! 
戦場で銃や杖を振り回すだけが勇気じゃないでしょう!?」
言い終えたキュルケの口から荒い吐息が漏れる。
俯いた彼女の眦には微かに何かが光っていた。
彼女だって悔しくないはずがない。
屈辱に耐え、激情を抑え、彼女は必死に何かと戦っていた。
ギーシュは悟った。自分はずっと逃げていたのだろう。
立ち向かうべきものから目を逸らし抗う事さえ止めていた。
彼の眼に力が宿るのを見届けてキュルケは囁く。
「それでも立ち直れないなら……手を貸してあげるわよ?」
色気を帯びた唇を舐め取り、妖艶な笑みを浮かべるキュルケ。
掴んだ襟を更に引き寄せ、そして自らも顔を近付ける。
「手伝うって……どうやって……」
「野暮な事は聞かないの」
彼女の潤んだ瞳に狼狽する自身の顔が映り込むのが分かる。
批判も抵抗も蕩けた頭では何も思い浮かばない。
ただ、戦場で鷲掴みにした彼女の感触だけが鮮明に蘇る。
このまま流れに身を任せようとギーシュは眼を閉じた。
だが結局その瞬間は訪れる事はなかった。
221ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:44:29 ID:Kc9kqXat
いつまで経っても何もないことに不審を感じたギーシュが目を開く。
目の前には先程とは打って変わって蒼褪めた表情を浮かべるキュルケ。
「そ、それじゃお邪魔しちゃ悪いから、また今度ねギーシュ」
まるで尻尾を巻いて退散するようにテーブルから離れる彼女を呆然と見送る。
なんだろう?新手の放置プレイの一種だろうか?と思案に暮れた直後、
急激に周囲の温度が低下したような、そんな悪寒を感じ取って恐る恐る振り返った。
そこに居たのは見覚えのある一人の少女。
金色の巻き髪と細い両肩が怒りに震えていた。
モンモ……、と彼女の名を呼ぼうとするのと、
氷塊によってテーブルが砕け散るのは全くの同時だった。
「落ち込んでいると思って慰めに来たら……あんな女にまで!」
「誤解だよモンモランシー。僕は君以外の女性なんて……」
「お黙り!」
反論しようとしたギーシュの口を水の塊が塞ぐ。
さながら球状の水槽に頭を突っ込んだような形となり、
吐き出した空気が泡となって彼の頭上へと昇っていく。
上がるべき水面など何処にもないし、手で振り払おうにも水面をバシャバシャと跳ねるだけ。
無駄な足掻きは余計に酸素を消耗させ、瞬く間にギーシュは窒息状態に追い込んだ。
「戦場に行ったって聞いて私がどれだけ心配したか……」
指を折り重ねて祈るような仕草でモンモランシーは心情を吐露した。
食事にも手が付けられないほど彼女はギーシュの身を案じていた。
これはその八つ当たり。だからギーシュは甘んじて受け入れるべきだと彼女は考えていた。
ちゃんと聞いているのか、ちらりと視線を向けた先には顔を紫に変色させたギーシュの姿。
白目を剥いた形相は正しく溺死体そのもの。

「ギ……ギーシュ!」
さすがにやりすぎたと反省しつつ即座に魔法を解除する。
慌てて駆け寄ろうとした彼女の横を見知らぬ女性が追い抜いていく。
そして、そのままギーシュを抱きとめると彼の顔をハンカチで拭った。
「ああ、ギーシュ! 貴方の手紙受け取ったわ!
軍の人が来て届けてくれたの! やっぱり私の事を愛してくれたのね!」
「ちょっと誰よ貴女! ギーシュから……」
「ギーシュ様から離れなさいよ!」
一応とはいえ自分の彼氏を膝枕する女性にモンモランシーが抗議しようとした瞬間、
今度は別の女性がその女を突き飛ばしてギーシュを奪い取る。
目の前で繰り広げられる展開にモンモランシーは唖然と立ち尽くす。
朦朧とする意識の中、ギーシュは彼女達の顔を見やる。
浮気ではないが何度か一緒に食事をした仲だった。
しかし、彼女達に手紙を出した記憶はない。
必死に思い起こそうとするギーシュの脳裏に閃く“軍の人”という言葉。
ああ、そうだ。間違いない、僕が出立前に書いた遺書だ。
あの時は半ば自棄になって思いつく限りに愛の言葉を綴りまくったんだ。
どうせ死んでしまえば責任を追及される心配はないし、
生きて帰ったならその遺書は廃棄される運命だった。
それが何の手違いか、彼女たちに届けられてしまったのだろう。

ギーシュの視界の端に浮かぶのは、幽鬼の如きモンモランシーの姿。
彼女を愛するが故に手紙を書けなかったなどという言い訳は成立しない。
ゆらりと身体を揺らしながら掲げられる杖に電流のように力が迸る。
普段のドット・スペルに嫉妬心を乗せてライン級!
さらに浮気相手が2人なので倍のトライアングル・スペル!
「ギーシュさまーー!」
あ、スクエア・クラスに到達したね、今。
手を振りながら走り寄ってくる別の少女を眺めながら、
ギーシュは自分の死期を“これでもか!これでもか!”というぐらいに悟った。
その刹那。ギーシュ・ド・グラモンに正当なる権利の下、一人の少女から神罰が下された。
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 22:45:59 ID:NVANTFV9
しえん
223ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:46:07 ID:Kc9kqXat
「ヴェルダンデ。頼みがあるんだ」
半死半生の姿を晒す主人に寄り添いながらヴェルダンデは何度も頷く。
徹底的な仕置きの後、集まった女性陣は彼に愛想を尽かせて立ち去ってしまった。
この場にいるのは、彼の使い魔であるヴェルダンデのみ。
再起不能なまでに身体も心も打ち砕かれた主の為ならば何でもしようと固く誓う。
無念の涙を零しながらギーシュは彼には実行できない命令を告げた。
「……いっそ僕をこの場に埋めてくれないか」
「喜んで!」
困惑するヴェルダンデの背後で、スコップを手にマリコルヌは嬉しそうに応じた。


ざくざくと地面を掘り返して土遊びする生徒達をオスマンは窓から見下ろしていた。
ほんの少し前まで休校騒ぎがあったとは思えない、なんとも微笑ましい光景だ。
もっとも一歩間違えれば学院どころか世界が終わりを迎えていたかもしれないが。
オスマンは振り返り、事態の収拾に尽力した教師を労う。
「ご苦労じゃったのう、ミスタ・コルベール」
「……いえ、私は何も。全ては彼女達と“彼”のおかげです」
「謙遜の必要はあるまいて。偏在とはいえ、あのワルド子爵を倒し、
『光の杖』を敵の手に渡らぬようにしたのじゃからのう。
あんな物は無い方がいい。過ぎた力は欲と争いを生むだけじゃ」
「はっ……」
オスマンの配慮にコルベールは深く頭を下げた。
本来ならば理由があったとはいえ宝物庫の品を紛失するなど許されない事だ。
厳罰を下そうとする宮廷に対し、オスマンは一歩下がらずにこう答えた。
『貴公らは、かの使い魔に対するあらゆる証拠を隠滅せよと言われたはずだ!
“光の杖”とてその1つ! ならば彼を罪に問えば、それこそ証拠が残るのではないか!?』
老齢に達しているとはいえ眼光は鋭く、凄まじい彼の剣幕にたじろぐ様に彼等は去っていった。

「あの、ミス・ヴァリエールですが……」
「うむ。彼女には特別に休みを与えた。
“彼”との思い出多き学院よりも実家でゆっくりと心を整理すべきと思ったのでな」
心配していた彼女の事を聞かされてコルベールは安堵の溜息を漏らす。
生徒想いの実に彼らしい態度に、オスマンは思わず笑みを零した。
そして髭に手をやりながら得意げにオスマンは続ける。
「なあに、過去は誰にでも乗り越えられるものじゃよ。
そして、その先にある未来を掴む力となる。のう、ミスタ・コルベール?」
「は……はあ」
それが彼女だけではなく自分に向けられた言葉だと悟り、コルベールは言葉を濁した。
火の魔法を戦いに使ったとはいえ倒したのは人ではなく偏在のみ。
まだ彼の中では戦いに踏み切れない部分が存在していた。
「まあ、まだ時間がかかりそうじゃがのう」
ルイズとコルベール、その両者に向けてオスマンは告げる。
それでも、この老賢者は彼等が立ち直ると信じていた。
“虚無”と“ガンダールヴ”そしてアルビオンとの大戦争の予兆。
時代は大きな転換点を迎え、多くの人間をその奔流に飲み込もうとしている。
これから彼等には幾度となく後悔し、苦悩し、決断を迫られる時が来るだろう。
だからこそ彼等には強くなってもらいたいと切に願う。
運命は人の努力を嘲笑うほど残酷なものではないのだから。
224ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:47:23 ID:Kc9kqXat
「それとミスタ・コルベール」
「はい、なんでしょうか?」
部屋を出て行こうとするコルベールをちょいちょいと呼び止める。
不思議な顔をして足を止めた彼に、にやりと性質の悪い顔を浮かべて告げる。
「一人で秘密を抱えるのは良くないと教えたはずじゃが?」
「っ…………!」
「おお、そういえば一人ではなかったな」
次第に蒼白になっていくコルベールの表情を嬉々として見上げる。
まるでイタズラが成功した子供みたいにはしゃぐ老人に、
表情を凍りつかせたままコルベールは問いかけた。
「……オールド・オスマン。貴方はどこまでご存知なのですか?」
「さてのう。ワシは全知全能の始祖でも神でもない、ただの老いぼれじゃ。
しかし、それでも間違いなく言えるのは……」
立てかけてあった杖を手に取り振るう。
直後、開け放たれた窓から心地よい爽やかな風が室内に吹き込んでくる。
さながら生命の息吹というべきか、それを身体に沁み込ませながら。

「世界はそんなに捨てたものではない、といった所かの」
楽しげに皺を寄せてオールド・オスマンは笑った。
225ゼロいぬっ!:2009/03/10(火) 22:49:51 ID:Kc9kqXat
投下したッ!
次回はラ・ヴァリエールの人々で綴る後編です。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/10(火) 23:29:17 ID:NVANTFV9
投下乙であります
ギ、ギーシューッ!! ムチャシヤガッテ(AA略

彼は居なくなっても世界は回って物語は続くって感じですか、続き期待してますー
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 02:07:47 ID:urQl87G5
どんどん終りが近づいていく
寂しいのう
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 04:19:26 ID:0gXqb/e4
どこまでいってもギーシュはギーシュ、そこに安心を覚えないこともない、かもしれない。
彼がいなくても世界は続いていて、寂しいけれどそれこそが彼の望みのような気がして。
近づいてくる終わりを静かに待ちたいと思います。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/11(水) 22:28:52 ID:2ez8dgS0
遅くなったけどゼロいぬの人GJでしたー!
どれだけフラグをたてようと、どんな恋人がいようと、何処かさまにならないのがギーシュ。
次回も楽しみにしてます。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 00:05:17 ID:DMsb5/c6
大きく遅れて、ゼロいぬに乙!
なにやら伏線が出てきて、本当にもうすぐ終わるのか若干心配。
でも、続くなら続くで嬉しいし、続きに期待するぜ!

今日やっとゼロ魔の最新刊読んだ。
エレオノール姉さまの系統がやっと判明!……でいいのか?
専攻している研究分野が得意とする系統と同じとは限らないし……
扱いに困る。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:19:19 ID:H5h3uEsJ
むしろ、元素の兄弟の素の魔力+魔法薬で増幅ブレイドが
ヘクサゴンスペルやカリンの竜巻より魔力多いって扱いになってて吹いた
銃弾が額に当たっても弾くし、北花壇騎士団の連中はバケモノか!
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:24:24 ID:gg6wsW9r
別に多くはなってないだろう
ヘクサゴンとか竜巻は広範囲魔法でその全部を吸収したわけでもないし、それを一気に行ったわけでもない
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:28:30 ID:il2gtPX9
>銃弾が額に当たっても弾くし
クラフトワークより凄いと思ったが、ゼロ魔世界の銃って地球の銃より威力弱かったな

ゼロ魔世界でなら銃弾をほとんど体内に食い込んでない状態で固定できるか?
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:32:46 ID:H5h3uEsJ
>>233
いや、サイトの銃なので普通に現代の銃
連射できるなんてすげー それくれって全然動じてないヘンタイだった
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:37:26 ID:il2gtPX9
>>234
最新刊読んでなかったけどマジですか
旧ルパンの超硬質液体でも身体に塗ってんのかw
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:42:45 ID:H5h3uEsJ
>>235
間接に先住の魔法使ってガンダールヴと互角かそれ以上(サイトの心のふるえしだい)の速度で動き
デンドロのビ゛ームサーベルのような極太「ブレイド」使って
さらに銃は当たった場所に「硬化」の魔法を使うことで弾く
感情が暴走するリスクの魔法薬を飲むとさらに強化されるヘンタイ、サイトとほぼ相打ち

最新巻よんでないなら、結末やサプライズに関わるのでネタバレなしだとこんなもの?
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 14:44:45 ID:H5h3uEsJ
追記
デルフによると、間接に先住仕込むのは普通はそんな危険なこと誰もしない
でもこんな戦闘特化ヘンタイメイジは6000年のメイジの歴史だとたまに居るラシイ
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 16:17:22 ID:PaWTReHJ
>>233
まあ日本人になじみが無いだけで
銃て言ってもピンからキリまであるからな
掠っただけで人間が真っ二つになったバレットライフルとか
撃つだけで大の男の肩が外れる化け物ハンドガンとか現実世界にはあるからな
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 16:23:55 ID:H5h3uEsJ
どんな拳銃でも3連射で胴体ぶちあてられたり、額に直撃してノーダメってのはすごいとおもうけどねー
しかし、13通りの銃への防御法があって、一番簡単なのが硬化って、他にいったいどんなトンデモがあるやらw
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:19:08 ID:1iOfucsY
当然そのうち一つは当たる面積を最小にして(ry
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:22:16 ID:9XSWcC6k
むしりとった髪の毛に魔力を流してばらまきバリヤーにするとか
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:28:11 ID:j+asD1Hh
それでも、それでもホルホースならなんとかしてくれる…!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:49:05 ID:iqFA/3Hg
「硬化」で防ごうとしたら銃弾が曲がって耳の穴にぶち込まれたでござるの巻
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 19:54:12 ID:yGUCr7io
そもそもホルホースのスタンドなら銃見えないし発砲音もしないから不意打ちで瞬殺できる予感
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 20:43:54 ID:H5h3uEsJ
スタンドが見えない設定なら、逆に瞬殺出来ないスタンドのほうが珍しい気がする
非戦闘系のスタンドくらいかなー? スタンド使い以外には見えないってかなりスゴイ利点だよね
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 21:29:41 ID:A9rpAnxo
ほいほいスタンド勝負してるけど本当は恐ろしいんだよな
見えないってことは気付く事ができなんだからな
非戦闘だって怖い。サバイバー見たいのがあるし
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 21:41:32 ID:H5h3uEsJ
パールジャムを感知できないと、食事さえ大惨事になりかねないしな、惨事のあとに賛辞だが
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 22:53:43 ID:0rhm4Gnj
>>247
山田君〜座布団一枚〜
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 00:54:56 ID:aYlJnFpf
仮面さんも来てくれないかなぁ ハァ…
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 00:02:48 ID:5r4LkvRU
あと十五時間ちょいか
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 11:11:32 ID:pKVf91sV
>>246
いくらスタンド使いは引かれあうって原則があってもそれで戦いになるってわけではない……筈だよな?
トニオさんみたいなのもいるわけだし
ひょっとしてしょっちゅう戦ってる本編のほうがおかしいのか
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 14:54:53 ID:+PDX+Ci6
スタンド使いになるって事は、それだけ異常者であるとも言える。
トニオさんだって一歩間違えばバトルになってた。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 15:25:37 ID:12hRWIT1
大体スタンドはその人間のコンプレックスや性癖から誕生するもんだからな
吉良は証拠が残るのが何よりも恐れてるから
あらゆるものを消滅させる爆弾能力を手に入れたし
つまりスタンドそのものが人間性の歪みなわけで
歪んだ人間じゃないとスタンドが発言しにくいわけだ
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 15:29:01 ID:r/nLT5TK
たしかに喋るスタンドはレアですね>発言
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 15:29:11 ID:WxWCX3h8
俺なんかすぐにでもスタンド発現しそうだ
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 15:30:24 ID:1pD7MjJ/
俺の下はスタンド!だ
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 17:33:02 ID:SsZz6NAy
太くて硬いビッグマグナムと申したか
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 20:04:21 ID:ko1o8tSr
しかしポークビッツ
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 15:19:28 ID:S2l8ch9U
そうなんだよな〜。
オレって情けねえよなあ〜。
死にたくなった。
     ↓
ハイウェイ・トゥ・ヘル発動。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 09:27:27 ID:QcSUrSKe
>>259を中心に半径100m以内の野郎どもが全員、○○○○以外を切り刻まれた。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 22:34:02 ID:8927Bo62
過去ログを見てたら『ヘビー・ゼロ』の最後の投稿がちょうど一年前の今日だった。
久しぶりに読み返そうかな……
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 23:00:13 ID:eeruWVdW
命日に故人を偲ぶのはかまわん
好きにするがいい
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 00:33:10 ID:PUqrXUNM
勝手に殺すんじゃあないッ!
264戦闘零流:2009/03/21(土) 04:17:15 ID:6hhItnc1
第2部ジョセフを主人公にしたやつを投稿させてもらいます。
導入部分でまだ原作のまんまです。すいませんw
題名「戦闘零流」
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 04:18:50 ID:NJlnQogU
sageろッ
266戦闘零流:2009/03/21(土) 04:19:35 ID:6hhItnc1
二人の男が対峙している。
二人は2mに届きそうな身長とがっしりした筋肉質な体躯だ。
しかし片方の男の風貌は現代の我々から見ると明らかにオカシイ。
足にはプロテクター。
そしてフンドシのようなものしか身に纏っていない。
まるで古代の戦士のような出で立ち。
しかしその衣装を超えて明らかに異質な点があった。
男の頭からは角が生えていた。
男の名はカーズ。
冷酷非道な究極の生命体(アルティミット・シイング)。
そしてそれに立ち向かうのは男こそ我らがヒーロー。
名をジョセフ・ジョースター。通称JOJO。
つい先ほど隻腕になってしまった波紋の戦士。
今、二人の戦いは正に最終局面を迎えていた。


「おああああ!くらえ!波紋疾走(オーバードライブ)!」
空を鋭く切り裂き、JOJOの蹴りが放たれる。
アルティミット・シイングとなる前までは致命傷になるはずであったその蹴り。
しかし…

「は」

「もん?」

「はもんしっそうだとォーッ!!」

ギャァバ!
カーズの肘鉄によってJOJOの蹴りは撃墜されすっ飛ばされる。
「ぐああっ」
呻くJOJOを見てカーズはフンっと嘲笑う。

「JO…JO…!?」
傷ついた体を横たえ二人の戦いを見ていた男、シュトロハイムは驚愕した。
波紋疾走に触れたはずだ!波紋が流れたんじゃァないのか!
だがカーズはピンピンしてるっ!逆に吹っ飛ばされ苦しんでいるのはJOJOだ!
ブショア!
水がぶちまけられる様な音が聞こえる。
「うう…うがァァァ、こ…この衝撃は!と…溶けるッ!そんなばかなッ!おれの脚が溶け
る、こ…この効果は!」
JOJOもまた驚愕していた。
「そおうだッ!『波紋』だよォ!このまぬけがァァーーーーーッ!太陽を克服した、この
カーズにできないと思ったのかッ、このウスノロめがァ!しかもその効果からみると、き
267戦闘零流:2009/03/21(土) 04:20:19 ID:6hhItnc1
さまの数百倍の強さの『波紋』を練ることができるッ!」

_____人間とて強い直射日光をあびれば火傷で皮フが水ぶくれになる。
普通の人がJOJOの波紋をうければ、しびれて気を失う程度であろう。
しかしJOJOが受けたのはその数百倍!肉が液化しはじめさらに気化しはじめた_____

「どうだ。自分で『波紋』をうけた気分は?」
JOJOは余りの痛みにもんどりうって倒れこむ。
「ぎぃやああああ!」
悲痛な叫びを聞きカーズは実に愉快そうに口角を吊り上げる。
「んん〜実にナイスな返事だ。」

JOJOは思った。


決定的だ…
おれは…
これから死ぬんだな
…決定的に…

JOJOはいともすんなり、それを受け入れた。
恐怖はなかった。痛みもなかった。後悔もなかった。
『やるだけやったんだからな』
そう思った。
圧倒的悪の前にあるのは、氷のように冷たい冷静な死にゆく自分を見る目だけだった。
シュトロハイムも同じだった。動けなかった。
シュトロハイムは生きながらヘビにのまれるカエルの気持ちを理解したと思った!

コォオォオオオオ…
「この呼吸法だ……。波紋使いのきさまを『死』という暗黒の淵につき落とす儀式には、
やはりこの『波紋』が。」

バリッ
バリバリ
「ふさわしいーーーーッ!」
ブーーン!

カーズの波紋は十分に練られたようだった。
JOJOは呟く。
「は…もん。ハ…モン。『波』『紋』。おれの何百倍もの…。」
カーズの腕が頭上に掲げられそして猛烈な勢いで振り下ろされる!
「無限の谷底へッ、溶けて流れ落ちろォォォォ!」
268戦闘零流:2009/03/21(土) 04:21:25 ID:6hhItnc1
シャバァ!

その輝く波紋を纏った腕を見てJOJOは思った。朦朧となっていたのでそれは、『思った』
よりも『感じた』に近かったがとにかく思った。
(『波紋』だって!?)
JOJOの右手にはいつの間にか『赤石』が握られていた。
JOJOは赤石をカーズの前にとっさにかざした。
JOJOはなぜカーズの前に『赤石』をかざしたのか、彼自身理解できなかった。
無意識だった。
『赤石』が『波紋』に吸いつく様に勝手に動いたと感じた。
しかしJOJOの肉体は知っていた。
生きぬこうとするJOJOの肉体が動かしたのだ。
JOJOの生命の大車輪がJOJOの直感をプッシュしたのだ。

ドグシャァ!!
『赤石』がカーズの波紋に触れる!
瞬間!赤石に収束された『波紋』の超エネルギーはJOJOの右手を貫き大地を貫いた!
「なにィィィィィィ!赤石!」
「せ…赤石は波紋増幅器だった…。」

そしてそのエネルギーは一気に噴火活動のパワーとなって頂点に達したッ!!
ホッゴン!!!
ババババ!
シュトロハイムは今、地球の怒りを目の当たりにした!
「が…岩盤ごとふたりが押し上げられたッ!」
吹き上げるマグマエネルギーは留まることはなかった。
ドゴォーーーーz____ン!!
二人を乗せた岩盤は見る見るうちに天高く舞い上がっていく。
「RRRRRRYY!!い…岩ごと猛烈なスピードで飛ばされるッ!フン!たしかにすさまじいパ
ワー。しかし、このカーズが噴火ごときでけし飛ぶとでも思ったかJOJO!鳥に変身して逃
れてやるッ!」
しかし!カーズが飛び立とうとしたその刹那、『それ』がカーズの首に突き刺さった。
「なっ」
『それ』はJOJOの腕だった。
JOJOは自分の悪運というものを実感していた。
「さすが地球のエネルギー…ものすごいスピードッ!だからおれのさっき切断された手が
飛ばされつき刺さったか!」
続けてJOJOは得意の弁舌でカーズの注意を逸らす。
「そうカーズ、きさまは『これも計算のうちかJOJO』…という。」
驚愕のあまり冷静さを欠いたカーズは、JOJOのペースに嵌らざるを得なかった。
「これも計算のう…」
ドゴッドゴッドゴドゴッ!
JOJOの切断された腕が飛んできたのに気をとられた一瞬がカーズの運命をわけた!
269戦闘零流:2009/03/21(土) 04:23:20 ID:6hhItnc1
よけられるはずの下からの灼弾岩にさらにおしあげられた!!
RRRRRRRRREEK………!
カーズの叫びが離れていく。この勢いにカーズはなす術も無かった。
「当たりまえだぜッ!このJOJOはなにからなにまで計算づくだぜーッ!
(ほんとはちがうけど、カーズがくやしがるからこういってやるぜ。ケッ!)」

カーズが…JOJOが…天を貫かんばかりに吹き上げる炎の柱に消えていった。
難を逃れたシュトロハイムは呆然とそれを見ることしかできなかった…。
「JO、JOJOォォォォォォォ!」

灼熱の噴出物は地球の動きを脱出して大気圏外までぶっとんでいく。
〔1975年 カムチャッカ半島トルバチク火山の観測より〕
火山のエネルギーは我われの想像以上にすさまじい。
地球のパワーをもってしても、カーズを殺すことはできない。
しかし。地球はカーズを大気圏外に追放したのだ。

(おわった…。おばあちゃん、シュトロハイム……スピードワゴン、スモーキー。そして
リサリサ…みんな、あばよ。)
JOJOに恐怖は無かった。今あるのは充足感のみだった。
JOJOは皆のことを思い、そして今は亡き友シーザーのこと思い…その瞳を閉じた…。


8時間後生還したシュトロハイムは、次のことをスピードワゴンに語った。
1939年2月28日ジョセフ・ジョースター 地中海ヴォルガノ島にて死亡…。


「星!?ば…ばかなッ!」
大気圏外に放逐されたカーズは地球のエネルギーに、そしてJOJOの奇策に憤っていた。
「RRRRRRRYYYEEEEEEEE!!宇宙空間だと!」
カーズの背から管状の排出器官が突き出る。カーズは今だあきらめていなかった。
「フンッ!体内から空気を噴出させて!」
まだ自分は敗北していない。その確信をカーズは持っていた。
「その圧力抵抗で軌道を変え!地球へ戻ってやるわ!」
空気を猛烈に生産し噴出する。しかし…。カーズは宇宙というものを未経験だった。
カーズの計算は宇宙には通用しなかったのだ…。
ミシミシ…ピキミシィピキ…
排出口から空気吹き出た瞬間から、瞬く間に体内にまで凍結が襲ってきた。
「ぎぃやぁぁああああ!だ…だめか!こ…!凍るッ!く…空気が凍ってしまう、外に出る
と凍ってしまうッ!き…軌道を変えられん、も…戻れんッ!」


ドオーーーーーーン
__カーズは__
2度と地球へは戻れなかった…。鉱物と生物の中間の生命体となり永遠に宇宙空間をさま
ようのだ。そして、死にたい思っても死ねないので
__そのうちカーズは、考えるのをやめた。
270戦闘零流:2009/03/21(土) 04:24:42 ID:6hhItnc1
とりあえず以上です。
しかし全然ゼロの使い魔関係ねぇw
次回をお待ち下さい。
お目汚し失礼しました。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 10:17:09 ID:3FuTgRN+
原作と同じことしか書かれていない場合、原作を読んだことのあるやつは読む必要がない
わかるな?
272戦闘零流:2009/03/21(土) 10:27:52 ID:6hhItnc1
>>271
そのとおりだった
ついでに盛大にageてしまったこともあやまる
以後気をつける
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 12:27:22 ID:s8in1T+m
こっからゼロ魔に行くのねって思ったら終わった…
まるっとカットしても問題ない気がするんだが
精々召喚後のジョセフの回想で済むレベルじゃないか?
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 13:29:03 ID:rVzteIHg
ジョセフ召喚か……
そういえばあのちい姉様とジョセフのSSはあれで完結なのだろうか
作者さんは短編と言っていたが続きが気になる終わりかただったな
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 13:30:43 ID:7t99WnOv
>>274
最後にGERが出てきた奴?
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 14:57:34 ID:nCD2owFc
>>271
半年ROMってろ馬鹿
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 14:58:38 ID:nCD2owFc
間違えた>>272だった
ごめんね>>271

278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 17:46:05 ID:6kkGkGnK
>>271
わざわざ前書きとしてやる必要はやっぱあまりないな。ただやるなら
今後に期待
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:04:47 ID:z7tgP4nP
流れブッタ切って大作投下までの前座小ネタを投下したい。

許可を
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:10:23 ID:DUYOvw8T
だが断る!
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:17:00 ID:EbjbTexb
空いてるではないか、行け
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:18:55 ID:z7tgP4nP
>>280 >>281
グラッツェ!

では「ゼロの悪霊」投下いきます。
小ネタだから期待しないでね!
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:20:37 ID:EbjbTexb
しえん
284ゼロの悪霊:2009/03/21(土) 23:22:44 ID:z7tgP4nP

神様、これは私に対する罰なのでしょうか?

コモンマジックすら一度も成功させたことの無い「ゼロのルイズ」である私が
生意気にも強く美しい僕を望んだからでしょうか?
力強いグリフォンや天を翔ける優雅なペガサスあるいは伝説上のドラゴンみたいな
伝説の幻獣だったらいいいなー、などと不遜な心構えで
使い魔の儀に臨んだ私への戒めなのでしょうか。
 
使い魔の儀は確かに成功した。
 
しかし出てきたのは望んだ様な幻獣などではなかった。
その日から静かなそよ風のふく日常は無くなり、暴風の吹き荒れる日々が始まったのだ。
 
       ・・・・・・・・ 
あの日から私は憑りつかれたのだ。
 
 
 
 
--------呼び出した『悪霊』に
 
 
 
 
 
 
『アギャギャギャギャーー!!ココノピッツァモ美味ェェーッ!』
『ウェェェェェン!ルイズ、ルイズゥゥ!No.3ガボクノピッツァヲ盗ッタァァァ!!!』
『オォー、スゲェ!コノ下着本物ノシルクダゼ!所デブラハネーノ?』
『ヘイ、チビッ子。今日ノ吉ノ方角ハ北北東、凶ノ方角ハ南西デ女難ノ相モ出テイルゼー。
 ラッキーアイテムハ『ピンク色ノバケツ』マ、アレバノ話ダガナ〜。』
 
 
「やかましいっ!!静かにしなさいよこのバカッ!!」
 
 
『OK!MASTER! LET'S KILL DA SON OF A BEEITCH!!』
『[静かにしろ]トイウ言葉ハ使ウ必要ハアリマセン…何故ナラ
 [ぶっ殺す]トアナタガ心ノ中デ思ッタノナラソノ時スデニ行動ハ終ワッテイルノデス』
 
 
「ちょっ…やめてやめて!殺すとか言ってないし!アレ傷つけたら私だって傷つくから!!
 私は静かにしろって…」
 
 
『[静かにしろ]か。それがお前の願いか?
 なんでも三つ叶うというのにそんなつまらない願いd』
 
 ・・・・・・・・・・・
「もういいから帰ってぇぇーーーッ!!!」
 
 
 
    --------------ゼロの悪霊『達』  NOT TO BE COUNZTINUED・・・
285ゼロの悪霊:2009/03/21(土) 23:27:45 ID:z7tgP4nP
前スレぐらいにあった
「ルイズがスタンド使いじゃなくてスタンドそのものを呼び出す」って話が
出て
学園でこれといった友達がいないルイズに話相手がいないってキツクね?
→じゃあ自立意思のあるスタンドならいいだろ

って話を元に書いたんだ。落ちがなくてスマナイ。

あとヨーヨーマッを書くのを忘れてた…
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:33:50 ID:EbjbTexb
おいおいおいおいおい、「チート」トリックさんはどうしたんだよォ
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/21(土) 23:59:19 ID:nCD2owFc
>>286
チープトリックだッッ!!!
お前は『磔刑』だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 13:18:40 ID:CxowZwht
>>285
GJ!
しかしこれだけいると日常だけでなく戦うときもワケワカランことになりそうだなw

>>275
そうそう
完結作品のところにないからいつか続きを書く予定だったりしたのかなって

長編とかだと静かにと奇妙(奇妙は読めるとしても当分先だろうが)を激しく待ってる
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 13:27:08 ID:Z1NWJUmc
121 :水先案名無い人[sage]:2007/10/10(水) 18:15:25 ID:AVJysNkA0
マジェント!マジェント!マジェント!マジェントぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!マジェントマジェントマジェントぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!マジェント・マジェントの黒髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
SBR13巻のマジェントたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
飛行機発明されて良かったねマジェントたん!あぁあああああ!かわいい!マジェントたん!かわいい!あっああぁああ!
ウェカピポも生きてて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!SBRなんて現実じゃない!!!!あ…漫画もよく考えたら…
マ ジ ェ ン ト ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!アメリカぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のマジェントちゃんが僕を見てる?
表紙絵のマジェントちゃんが僕を見てるぞ!マジェントちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のマジェントちゃんが僕を見てるぞ!!
ヒマラヤ男の涙ってマジェントちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはマジェントちゃんがいる!!やったよウェカピポ!!ひとりでできるもん!!!
あ、マジェントちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ大統領ぅうう!!ジャ、ジャイロー!!ジョニィいいいいいいい!!!ルーシーぃいいい!!
ううっうぅうう!!俺の想いよマジェントへ届け!!ハルゲニアのマジェントへ届け!
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 15:19:00 ID:kDqEd5Mh
そんな事より野球しようぜ!
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 16:35:07 ID:JV48JMJI
でも断る
292戦闘零流:2009/03/22(日) 22:08:49 ID:SZXnbUPO
一応、前回のカーズ戦の後の展開を書いてきた
もう一度チャンスが欲しい
だれか許可を
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:10:59 ID:ppYKeG17
よし来い!
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:13:57 ID:kwRKrJ4c
『許可』しないィィィィーーーッ!
295戦闘零流:2009/03/22(日) 22:17:15 ID:SZXnbUPO
ありがとう
では投下させていただきます
296戦闘零流:2009/03/22(日) 22:18:35 ID:SZXnbUPO
爽やかな風が吹くのどかな場所だった。
ハルケギニアと呼ばれる世界に存在する由緒ある王国、トリステイン。
その王国内に存在するトリステイン魔法学院。その敷地の外れの丘に人だかりが見える。
「さっさと終わらせろよ!」
「いつまでまたせんだ!ゼロのルイズ!」
「もう何回目だよ。忘れちまったよォ〜!」
「もう帰りましょうよー。成功しっこないわよー!」

少年少女達の罵声が飛び交う。

その中心には桃色の髪の少女がいた。
彼女は、頭の禿げ上がった中年男性に言った。
「ミスタ・コルベール!もう一度!もう一度やらせて下さい!お願いします!どうか、も
う一度…!」
中年の男性ジャン・コルベールは悩んだ。
時間的な余裕もすでになく、未だに『サモン・サーバント』は成功する気配は無い。
しかし少女が誰よりも勤勉で努力家であることを、禿げ上がった教師は知っていた。
彼女に納得いくまでさせたやりたい。そしてできることなら成功させてあげたい。
頭輝く教師、コルベールはそう願っていた。
「……わかりました。ですがもう時間も時間です。あなたの疲労も溜まっている。次が最
後ですよ。それで駄目ならば明日にしましょう。」
コルベールは微笑みながら桃色髪の少女に告げた。
少女は頷く。
そして。
桃色髪の少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは集中した。
これまでの短い自分の人生の中でおいてもかつて無いほどに集中した。
(なんとしてでも『サモン・サーヴァント』を成功させる!もはや後ろは無いのよ!自分
を信じるのよ!ルイズ!)
自分を必死に叱咤し観衆の冷たい視線の中、彼女は叫ぶ。
「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ…神聖で美しく、強力な使い魔よ!私は心より
求め、訴えるわ!我が導きに…答えなさい!!」
彼女がそう叫んで杖を振り下ろした瞬間、爆音が響く。

ドォゴォオォォォォ

盛大に煙が巻き上げられ視界を塞ぐ。
(お願い成功して!このさいなんでもいいわ!頼むから何かいてちょうだいッ!)
土煙が風で掻き消えていく。爆心地に影が見えた。

「な、なんだ!何かいるぞ!」
「ウソだろッ!『ゼロ』が成功するなんて!」

周りで囃し立てていた生徒たちは驚いたが、ルイズも驚いていた。
297戦闘零流:2009/03/22(日) 22:21:14 ID:SZXnbUPO
しかしルイズのそれはベクトルが違っていた。
やった!成功した!
そう思った。
しかし土煙が完全消え去った後、彼女の高揚は一瞬にして霧散した。

そこに倒れていたのは男だった。どう見ても人間の男。しかも血だらけ。
左腕の肘から先が存在しておらず、右膝は何かで溶かされ抉れている感じだ。
体の各所に火傷、切り傷、打撲も見られる。
左腕の、磨かれた鏡のように綺麗な切断面からはおびただしい量の血が湧き出ていた。

亜人でもない只の平民のように見えるが今はそんことはどうでも良かった。
「……………ッ!!!ミ、ミスタ・コルベール!こ、この人!どうしよう!怪我をッ…!
わ、私がッ!私の爆発で…殺…した!?死んでしまった!あ、あぁ……!そんな……!」
ルイズは顔面を蒼白にし声を震わせた。ルイズは怯えた。
自分の爆発で!一人の人間の命が失われてしまった!自分は他人を傷つけ、とうとう取り
返しのつかないことをしてしまった!
『ゼロ』どころではない。自分は最低最悪だ。ルイズの中を絶望が駆け巡っていた。
貴族にとって平民など、どれ程失われようとも代替が利くモノでしかなく、基本的に殺す
も奪うも貴族の自由である。それが常識であった。
しかし、ルイズは魔法が使えずとも心は誇り高い貴族であった。民草は略奪の対象ではな
く守るべきもの。ヴァリエール家の根幹の思想は清く正しいものだった。
囃し立てていた生徒たちも衝撃を受けた。
これ程生々しい傷や血など見たことが無かった。平民が死のうが気に掛けるまでも無いが
凄惨な死体(と思われる男性)には恐怖した。

「皆さん落ち着きなさい!ミス・ヴァリエールも落ち着くのです!大丈夫。大丈夫です!
少なくとも、あなたの爆発が原因ではありません!左腕は明らかに鋭利な刃物によるもの
です。それにまだ彼は息があります。誰か!救護室に知らせなさい!」
コルベールの発言に、観衆の中から即座に青髪の少女と赤髪の少女が飛び出していった。
コルベールは『レビテーション』で、男を浮遊させすぐさま救護室へ向かっていった。

コルベールが去り際に授業の終了を告げたので、ざわめきながらも生徒たちは解散した。
しかし、ルイズは唖然とした表情のまま、ただ地面に座り込んでいた…。


To Be Continued…
298戦闘零流:2009/03/22(日) 22:22:23 ID:SZXnbUPO
ここまでで1
次からは2と考えてください
299戦闘零流2:2009/03/22(日) 22:24:02 ID:SZXnbUPO
目を開けると天井が見える。
見たことねーな。この天井。
JOJOは思った。
腹が減ったな。フライドチキンでも食いてーな。
JOJO天井を見続けてボーーッとしていた。
すると突然声が聞こえた。
少女の声だ。
この声からするとナカナカのカワイコちゃんだな。
瞬間的に考えたことはそんなことだった。
「先生!目を、目を覚ましました!!」
部屋の隅で老人と何ごとかを話し込んでいた様子の男性はこちらを振り返り寄ってくる。
「おお!目を覚ましたかね!良かった良かった!君、調子はどうだい?まだどこか痛むと
ころはあるかね?」
JOJOは上半身をノッソリ起こして、ベッドの側にいた少女や寄ってきた男性を見やった。
少女はまるでメルヘンな世界から抜け出してきたような見事なピンクの髪をしている。
目覚めた自分を見て、心底安心してるって顔だ。
ひょっとしてオレに気があるのか?それにやっぱり予想通りのカワイコちゃんだぜ!JOJO
は喜んだ。
一方、男性の方を見ると眩しかった。見事に禿げ上がっていた。
うおっまぶし!JOJOは目を細めた。
「…おたくらが助けてくれたのかい?助かったぜ。おれの名はジョセフ・ジョースター
ってんだ。JOJOって呼んでくれよ。名前と苗字の頭とってJOJO。」
明朗に喋りだすJOJOを見て、男性は安心した。
「どうやら大丈夫みたいだね。安心したよ。私の名はジャン・コル「ちょっと!あんたそ
の口調なんなのよ!平民のくせに態度悪いわよ!」
男性の発言中に突然、少女が割り込んできた。
JOJOはびっくりした。邪魔された男性もびっくりしていた。
JOJOはいきなりキレられる程失礼な態度をとったつもりは無かった。
自分はヴォルガノ島の火山にぶっ飛ばされて、どうやら助かったらしい。
そう思ったから、助けてくれたと思われる人物に友好的に振舞ったのに。
だったのに…。いきなり強い口調で言われたらカチンとくるものだ。
「にゃにい〜!なんだてめーいきなり!結構フレンドリーな挨拶したじゃねえかよ!いき
なりケンカ腰かよ!」
JOJOはまだ若かった。
目覚めたてだろうが腹が減っていようが血は沸騰するのだ。
桃色髪の少女の怒りもまた増したようだった。
「私たちの格好を見てわからないのっ!?私たちは貴族なの!平民がそんな口聞いていい
と思ってるの!?」
「うるせーてめえー起きたてで、んなもんわかるかってーの!それにジョースター家だ
って貴族だぜ、このアマ!」
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:32:27 ID:ppYKeG17
あれ?規制になった?
301戦闘零流2:2009/03/22(日) 23:43:08 ID:SZXnbUPO
「!!」
JOJOの、自分は貴族だという発言にルイズは驚愕し黙った。
二人の口論に気圧されていた禿げた男も衝撃を受けていたようだった。
桃色髪の少女は顔を蒼くしている。
JOJOは、そんスゲーこと言っちゃったかなオレ、と思っていた。
そんな三人のやり取りを見ていた老人がJOJOのベッドに近づいてくる。
「ミス・ヴァリエール、落ち着きなさい。彼は病み上がりなのだよ。」
老人は優しい口調で少女を諭すとJOJOに向き直った。
「失礼致しました、ミスタ・ジョースター。私の名はオスマンと申します。こちらにいる
禿げがジャン・コルベール。そしてこちらの少女がルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン
・ド・ラ・ヴァリエール。」
コルベールはショックを受けた。
初対面の席で自分の説明は『禿げ』。自分はそれ以外のアイデンティティは無いのか。禿
げていることがそんなに悪いのか。罪なのか。もっと他に言うことがあるだろう。
コルベールは悲しまずにいられなかった。
そんな悲しみをよそにJOJOとオスマンの会話は続いた。
「ああ。おれの名はジョセフ・ジョースター。JOJOと呼んでくれ。」
少し穏やかな顔になったJOJO。
それを見てオスマンも微笑みながら頷く。
「ミスタ・ジョースター。平民と見誤ったことをお詫びいたします。マントも杖も見当た
らなかったものでつい平民だとばかり…。しかしここトリステインにジョースターの家名
を持つ貴族はおりませぬ。その名から察するに外国の方でございましょう。お伺いしてよ
ろしいですかな。」
オスマンと名乗る老人の言葉をうけてJOJOは少し慌てた。
「あーいや、そんな畏まられてもなー。貴族ってもオレは元貴族って言った方があってる
と思うし。そんな堅苦しいのもキライなのよん、おれ。」
その言葉を聞いた三人はばつの悪そうな顔をしたが安堵した様子だった。
「オレはイギリス人だから確かに外人だろーが…ここってイタリアだろ?トリステインっ
てどこ?村の名前?」
『元』貴族と聞いて気を取り直していた少女が再び噛み付いてきた。
「あんたトリステインも知らないの?どこの田舎貴族だったのよ。イギリスなんて国、聞
いたこともないわ。」
……。
………。
…………。
JOJOはちょっと混乱してきた。
「………ちょっとまて。イギリスを知らねえってマジ?おまえらこそ田舎モンなんじゃあ
ねーのか?それにさっき変なこと言ってたな。杖とかマントとか……そんなもんで貴族の
証になるわけねーだろ。」
三人は目をぱちくりさせながら顔を見合わせた。
302戦闘零流2:2009/03/22(日) 23:46:29 ID:SZXnbUPO
少女は心底あきれたという風な顔だった。
「………我々はイギリスを知らないし彼…JOJOはトリステインを知らない…どういうこと
でしょうかオールド・オスマン?」
コルベールの疑問にオスマン老人は軽く答えた。
「ふーむ、どうやら我々とは異なる文化圏から召還してしまったようだの。ロバ・アル・
カリイエとかよくわからんものもあるしの。世界は広いということじゃな。」
「そんな簡単に………。」
そんなあっさりすませていいものかとコルベールは少しあきれた。


何とか一命を取り留めさせたJOJOに対して、コルベールはルイズに『コントラクト・サー
ヴァント』を行うように指示していた。
ルイズは当初、前例がないだのファーストキスが何だのと渋ったが進級をたてにとって契
約させた。
男が友好的とは限らないし、目が覚めぬうちに契約を済ませてしまった方が良い。
契約してしまえばある程度の強制力が働くはずだし安心だ。
そうすればルイズも進級させてやれるという思いからだ。
契約は成功した。男の体を調べると首筋に星型の印が刻まれていた。
変わったルーンだが成功は成功だ。
この男のことを思うとちょっと可哀相なことをしたなという気もするが、まぁ命も救って
あげたし良しとしよう。
そんな感じで軽く考えていたコルベールだったのだが、目覚めた男JOJOの話を聞いて少し
後悔した。
元貴族ということは、何かの理由で貴族の称号を剥奪されているに違いない。
大抵、剥奪される理由は権力闘争に敗れただとか、知ってはならないもの知ってしまった
だとか、いわくつきの込み入った理由が多いのだ。
しかもJOJOはどうやら温厚な人物ではなさそうだ。
ルーンが刻まれているとはいえ安心できなかった。


どうすれば穏便にことを運べるか。
そう悩んでいたところで、またもやルイズがフライングした。
「とにかく!『イギリス』の元貴族だか何だか知らないけど、もうあんたは私の使い魔な
のよ!元貴族ってことは今は平民なんでしょ。これからは口の利き方に気をつけなさい。
いいわね!」
(あぁ…!ミス・ヴァリエールなんてことを!ストレートすぎます!)
コルベールは直情的な生徒にガックシきていた。
ルイズという少女は悪い人言ではないのだが、髪の毛に悪い。
ストレスが!胃がきりきりする!
こんなことを言われたら、このJOJOという男は……!
303戦闘零流2:2009/03/22(日) 23:49:43 ID:SZXnbUPO
「またてめーか、このアマ!イギリスもしらねー田舎モンに言われたくねーぜ!しかも使
い魔ってなんだよ!御伽噺の読みすぎだっツーの!胸と一緒でおつむが足らねーみてーだ
な!」
コルベールとオスマンの顔がみるみるうちに蒼くなる。
二人は知っていた。
今まで何人もの生徒たちが、この地雷を踏んで散っていったのかを。
ミス・ヴァリエールに『胸』の話題はヤバイ!
「……いいいいいいま何ていったのかしら?わわ私の気のせいかしら?胸が足らないって
聞こえたんだけど!むむむむ胸がどうかしたのかしら!!」
「なんどでも言ってやるぜ、けっ!さっきからエラソーにしやがって!この………………
ペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイ……!!」
コルベールとオスマンはケツの穴にツララをぶち込まれた気分だった!
カール・ルイスにもフローレンス・ジョイナーにも負けない速さで駆けた!
ここにいるのはヤバイ!逃げろーーー!!



カッ



救護室
設備壊滅。再起可能。(修繕費ルイズ持ち)

ジャン・コルベール
全身に火傷。裂傷。打撲。重症。吹っ飛んできた破片で左上腕骨骨折。重症。
再起可能(治療費ルイズ持ち)

オールド・オスマン
全身に火傷。裂傷。打撲。左前腕骨複雑骨折。右大腿骨骨折。頭蓋骨陥没骨折。重症。
再起可能(治療費ルイズ持ち)

ジョセフ・ジョースター
波紋とベッドで素早くガード。その際に足をひねって捻挫。軽症。
再起可能(治療費タダ)

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
ほとんど外傷なし。ただし1週間の謹慎と治療費の額に……泣いた。再起可能。


To Be Continued…
304戦闘零流2:2009/03/22(日) 23:52:08 ID:SZXnbUPO
以上です
途中で連投規制にかかってしまった
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 00:29:13 ID:cXdNZ7nn


ところで聞きたいんだが…今まともに投下されてる作品ってどんくらいある?
ディモールト続きが気になるのが何個もあるんだが
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 12:43:11 ID:N2UZDvk3
投下乙だが、コッパゲ先生とオスマンが重傷すぎるw
学院長と教師にこれだけの重傷負わせたら普通は退学だwww
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 14:42:34 ID:KoZOU86c
>>306
もっともな意見だが…こう考えてはどうだろう?
たしかに生徒の魔法で学院長と教師が重傷を負ったことは大きな不祥事だが
真の教育者たる彼らはルイズの将来の事を考え、あえて不問に処したのだと
……けっしてダメ生徒の失敗魔法で負傷した自分たちの失態を隠すためなど
ではなくて
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 14:46:01 ID:KoZOU86c
すみません、ageてしまいました……
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 20:09:49 ID:U1PORlYG
>>305
まとめの更新履歴とか見てみれ。
おおまかにはわかるとオモ。
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 20:24:18 ID:ZElU+vPq
>>305 まともに投下ってのがどの程度の頻度なのかにもよるって状態とだけ

詳しく語り合うなら避難所(ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9292/)で、じゃないか?

>>305の ディモールト続きが気になる作品についてどこが好きでどこが悪いか語ってくれたり、作者さんにエールを送ってくれてもいいんだぜ…
そうすれば、作者さんが見て投下に繋がるかもしれない…
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 22:59:56 ID:pbHunqAD
そういや俺みたいに書かなくなってもスレに居座ってるの何人いるかね?
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 20:17:38 ID:TS7xqoNO
>>311
書いて下さいよw
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 18:02:44 ID:dJXGfW1d
投下・・・待って・・ます・
314ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:23:04 ID:+/3wTrrB
代理投下します。
315ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:24:02 ID:+/3wTrrB
ラ・ヴァリエール公爵は落ち着かない様子でカップに注がれた紅茶を啜った。
魔法学院に入学して以来、顔を合わせていない娘が帰ってくるのだ。
悪い虫が付いていやしないか、悪い級友にいじめられていないかと不安だった彼が、
その帰りを今か今かと待ちわびるのは至極自然な事だった。
しかし、彼の心境はとても複雑であった。
彼に突き刺さるような視線を向ける二人の女性。
愛する家内と長女、実質的なラ・ヴァリエール家の支配者コンビだ。

「分かっていますね。けっして甘い顔はしないように」
「そうよ。あれだけ忠告したのに戦場に行くなんて!
今回は運が良かっただけ。調子に乗ったら次は間違いなく死ぬわ」
「わ……分かっているとも。ルイズには厳しく私から言っておこう」

その言葉が信用に足らないとばかりに、さらにジロリと鋭い眼が向けられる。
身体を縮こませるようにして公爵は再びカップに口を付ける。
トリステイン有数の実力者も家庭ではほとんど立場がなかった。
厳格な性格で知られるラ・ヴァリエール公爵だが、所詮は可愛い娘には勝てない男親である。
ましてや末娘でメイジとしての出来も悪いとなれば放っておけなかった。
彼女達もルイズが嫌いなわけではなく、その身を心配しているからこそ怒っているのだ。

ここは心を鬼にして彼女を厳しく罰するのが正しいのだろうが、ルイズに嫌われると思うとどうにも腰が引けてしまう。
かといって“出来ません”などと答えようものならどうなるか。
最小限に手加減されたとしても半年は施療院から出られなくなるだろう。
そしてルイズは徹底的な制裁を加えられて一生もののトラウマが刻まれるかもしれない。
やはり、名目上とはいえ家長である私がやらなければならない事だ。
そう言い聞かせて己を奮い立たせる彼に、老執事が声をかけた。

「旦那様。ルイズお嬢様がたった今お戻りになられました」
「う、うむ。では早速出迎えに……」
「必要ありません。エレオノール、あの子をここへ」
「ええ。頬を引っ張ってでも連れてきます」

席を立とうとする夫をカリーヌが制す。
命令ではないただの一言。
だが、それは絶対遵守の力を以って公爵を椅子に釘付けにした。
鼻息荒くエレオノールが出て行ったことで、必然二人きりの状況が作られる。
張り詰めた空気を察した老執事は“さて、歓迎の支度を”と、
あからさまな言い訳をしながら、そそくさとその場を立ち去った。
316ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:25:05 ID:+/3wTrrB
二人の間に重苦しい沈黙が流れる。
幻覚だと分かっていても身体が重く感じる。
遂に耐え切れなくなったラ・ヴァリエール公爵が口を開いた。

「それにしても戦場に単騎で出向くとは……まるで誰かの若い頃のようだな」
「……何を仰りたいのですか?」
「その、なんだ、おまえも人の事は言えない訳だし、今回だけは特別に……」

刹那。妻の猛禽じみた眼差しに全身が凍りつく。
幾多の戦場を駆け抜けた彼女の迫力は凄まじく、
曰く、一睨みで大軍が武器を捨てて逃げ出した、とか。
曰く、睨まれただけで火竜がお腹を見せて服従を示した、とか。
曰く、イタズラ好きの子供に『烈風カリンが来るぞ』と告げると大人しくなる、とか。
そんな伝説級の怪物に立ち向かう彼の心境は如何ばかりのものだったろうか。
気分はイーヴァルディの勇者どころか捧げられる生贄の少女であった。

「私は別に戦場に出た事を怒っているのではありません。
家長の指示に背いた、それに対し罰を与えるべきだと言っているのです。
規則は規則。それを特別だと許せば次も同じ過ちを繰り返すでしょう」

静かに響くカリーヌの言葉は規律を重んじる騎士のそれであった。
強すぎる力を持つが故に、それを抑制する規則が必要だと彼女は自覚していた。
力に溺れぬよう驕らぬようにカリーヌは己が信念を貫いてきた。
その教えがあればこそ三姉妹の誰もラ・ヴァリエールの権力を傘に、
他の貴族達に傲慢な振る舞いをしなかったのだろう。

「それともう一つ、私はまだ若い。今すぐ訂正してください」

返答に困った公爵が苦笑いを浮かべる。
いいかげんなおべっかは逆に彼女を苛立たせ、
“一番上の娘が嫁き遅れといわれる歳で若いもないだろう”と、
正直に答えればそれが自分の辞世の句となるだろう。
言葉に詰まる彼の目の前で大きな音を立てて扉が開け放たれた。

「ちびルイズを連れてきましたわ」
「御苦労」

始祖の助けをその身に感じながら公爵は安堵の溜息を洩らす。
おほん、と咳払いして気を取り直し威厳ある態度で臨む。
だが、彼が目にしたのは見る影もない自分の娘の姿だった。
気落ちなどという生易しいものではない。
悲嘆に暮れた表情は幼い頃の面影を隠し、
その瞳からは輝きが失われ、絶望だけを色濃く映す。
公爵は何を言い出せなかった。
今の彼女はまるでヒビ割れた硝子細工のようで、
少しでも触れてしまえば壊れてしまうように思えたのだ。
317ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:25:55 ID:+/3wTrrB
一方、エレオノールは情けない妹の姿に苛立ちを覚えていた。
いつもの無駄に元気な彼女なら口答えの1つでもしてくる。
それなら頬を引っ張って訂正させるのが楽しみでもあったのに。
今のちびルイズは見ているだけで辛くなってくる。
まるで生きている意味さえも失ってしまったかのような絶望。
それに身を浸す妹に発破をかけるつもりで言い放つ。

「たかが使い魔一匹死んだぐらいで、いつまで落ち込んでるつもりよ!
代わりに、また新しいのを召喚すればいいだけじゃない」

学院に赴く以前と同じ様に頬を抓り上げて怒鳴る。
そしてルイズは痛みに耐えながら“ごめんなさい、エレオノールお姉さま”と答える。
それはごく当たり前に繰り返された日常的なやりとり。
なのに、彼女の反応はそれまでのものと大きく違っていた。
伸ばしたエレオノールの手を振り払い、怒りを滲ませながら彼女を睨む。

「代わりなんて……、代わりなんている訳ないじゃない!」

思わぬ反撃と気迫にたじろぐ姉に、胸の内を吐き出すようにルイズは叫んだ。
そのまま部屋を飛び出す妹をエレオノールは呆然と見送る。
初めての反抗に彼女は狼狽し、我に返った時には既に彼女を見失っていた。

「しまった! 逃げられたわ!」
「追う必要はありません」

駆け出そうとしたエレオノールをカリーヌが呼び止める。
何故、と困惑の眼差しを向ける娘に答えず、彼女は続けた。

「もし見つけても『顔を出す必要はない』と伝えなさい。
そのような情けない顔を晒す者にラ・ヴァリエールを名乗る資格はありません」

ぞくりとエレオノールの背筋が震えた。
お母様は本気で言っていると彼女は直感したのだ。
鉄の規律という言葉が頭を過ぎる。
硬く、決して曲がらず、そして人の温もりには程遠い冷たさ。
正しく彼女の判断はその通りの物だった。
イエスともノーとも答えず、そそくさとエレオノールは立ち去った。
こうなれば一刻も早くルイズを見つけ出して一緒に謝るしかない。
そう考えて彼女は屋敷の探索に乗り出した。

「………………」
去ってゆく娘を視界にも収めず、カリーヌは紅茶を口に運ぶ。
自分の娘の考えなど見え透いていたが、それを咎める事はない。
どの道、エレオノールにはルイズは見つけられない。
あてもなく、ただ闇雲に屋敷内を探し回るのがオチだ。
もし彼女を見つけられるとしたら、それは……。

「カリーヌ。その、いくら罰にしても厳しすぎるぞ」

思案に耽っていた彼女をラ・ヴァリエール公爵の声が引き戻す。
額から冷や汗を流しつつ気圧されながらも彼は反論する。
彼とて妻に恐怖するだけの男ではない。
もしその程度の男なら、とっくにカリーヌに見放されていただろう。
318ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:27:32 ID:+/3wTrrB
「罰ならばルイズは既に受けています」
「え?」
「それも最も重く、一生背負っていかなければならないものを」

ルイズと目を見合わせた瞬間、カリーヌは直感した。
彼女と同じ想いをした自分だからこそ理解できた。
“自分の判断で大切な何かを失ってしまった”と。
失った物は決して戻る事はない。
これから先、彼女は何度も後悔と共に思い返す。
どうしてもっと上手く出来なかったのか、
何故もう少し冷静に考えられなかったのか、
他に方法はなかったのだろうかと悔やみ続ける。
それは逃れる事の出来ない罪として永遠に彼女を苛む。

ルイズは初めて自覚したのだ。
自分の判断が誰かの命を奪うことになる、その重みを。
恵まれていた彼女には失うことを知らなかった。
だから命も名誉も頭では分かっていても本当の意味では理解していなかった。
大切な物を失なってようやく彼女はその恐怖を知った。
これで彼女はスタートラインに立ったのだ。
何の責任を伴わない判断など存在しない。
これから先、彼女は何度も重要な決断を下さなければならない。
覚悟なき決定に意味などない。悩み傷付いた末に選んだ結果だからこそ意味がある。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは強くならねばならない。
何度膝を屈そうとも立ち上がり、前へと突き進めるぐらいに。

「私たちに出来る手助けはありません。
あの子が初めて自分の足で立ち上がった時のように見守るしか」

手を貸してやれない事を恨めしく思いながらカップを置く。
寂しげに呟く妻に、夫は力強く答えた。

「心配はいらない。ルイズは強い子だ、私たちの子を信じよう」

何の根拠もなく言い放った夫にカリーヌは笑みを浮かべる。
普段の彼女からは想像もつかない優しげな微笑み。
鉄仮面で素顔を隠し鉄の規律に身を縛ろうとも、
『烈風カリン』が一人の女性である事に変わりはない。
戦況さえ変える力を持った彼女とて思い悩み、悲しい決断を迫られた事もあった。
そんな時、彼の言葉に何度励まされただろうか。
彼女は単騎であろうとも一人ではなかった。
倒れぬのは、その身体を支える誰かがいたから。
突き進めたのは、その背を押す誰かの手があったから。
感謝を言葉に乗せずに笑みで応えた彼女に。
「ひぃ…! す、すみません! 何の根拠もない事を言って…!」
これ以上ないほどラ・ヴァリエール公爵は怯えていた。
満面の笑みを向けたにもかかわらず、命乞いをするかのように震える亭主。

その瞬間。彼女の中でスイッチが切り替わった。
彼女の精神テンションは今! マンティコア隊隊長時代に戻っているッ!
火竜山脈の主が戦慄し、大地を踏み鳴らす軍勢が恐怖した当時にだッ!
冷酷!残忍!その彼女の杖がラ・ヴァリエール公爵に向けられた。
319ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:28:44 ID:+/3wTrrB
ルイズは一人、屋敷の中庭で佇んでいた。
そこは幼い頃より彼女が隠れた秘密の場所。
遠くで響く轟音もここまでは届かない。
辛い事があった時はいつもここに逃げ出してきた。
それは今も変わらないのか。夢中で走り続けて、気が付けば自分はここにいた。
咲き誇る花々に彩られた無人の庭園。
そこに面する池に反射した陽の光が眩いばかりに輝く。
ささくれた心でさえ美しく、また懐かしく思える光景。
……もし出来るなら“彼”にも見せたかった。
同じ世界を見て、同じ気持ちを共有したかった。

俯く彼女の背後で茂みを掻き分ける音が響く。
(まさか、もう見つかったの…?)
徐々に近付いてくる物音に彼女は連れ戻される事を覚悟した。
いや、どちらかといえば諦観だったのだろう。
もうどうなろうと構わない、そんな自暴自棄に似た感情が沸き上がる。
しかし立ち尽くすルイズの視線の先に現れたのは、柔和な笑みを浮かべた女性だった。

「おかえりなさい、ルイズ」
「……ちい姉さま」

込み上げる感情に堪えきれずルイズは姉の胸に飛び込む。
それをカトレアは身体全体で包み込むように受け止めた。
安らぎに満ちた温もりに、張り詰めた感情が解れていくのを感じる。
エレオノールやカリーヌにさえ心を開かなかった彼女だがカトレアは別だ。
いつも庇い、慰めてくれた優しい姉はルイズにとって母親よりも母親らしく思えた。
ルイズの髪を梳くように繊細な指先が頭を撫でる。
子供扱いでもイヤな気分にはならない。
孤独から解放された安堵からか、ルイズの瞳から涙が一滴零れ落ちた。

「……本当はアイツと一緒に、ちい姉さまに会いに行きたかった。
でも、もう居ないの……もう何処にも居ない」
「忘れなきゃいけないのに、いつまでも引きずっていちゃいけないのに。
アイツもそれを望んでるって分かっているのに……出来ないの」

誰にも言えなかった本音を吐露しながらルイズは泣いた。
大粒の涙と共に、閉じこもっていた殻が次第に崩れていく。
“誰かに伝えたかった”孤独の中にあっても彼女はずっと思い続けていた。
使い魔と過ごした日々は記憶に深く刻まれ、それ故に彼女を苦しめる。
悲嘆に暮れる彼女を優しく、しかし力強く抱き締めてカトレアは言った。

「それでいいのよ、ルイズ。大切な想い出なら忘れてはいけない」
「え?」

姉の返事を理解できず、ルイズはきょとんと目を丸くした。
だって彼女を立ち直らせようとした友達も家族も、
そして彼の存在を隠匿した貴族達も、誰もが“忘れろ”と言った。
しかし、最も信頼している姉は“忘れるな”と告げた。
その真意を測りかねて戸惑う妹にカトレアは問いかける。
320ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:31:31 ID:+/3wTrrB
「初めて会った時の事を憶えてる?」
「……はい」
「一緒に遊んだ時の事も?」
「………はい」

問いに答える度にアイツとの思い出が蘇る。
広場を逃げ回るアイツを追いかけた最初の出会い。
投げた棒を咥えて楽しげに尻尾を振りながら戻って来るアイツの姿。
どれもが昨日の事のように鮮明に思い出せる。
ぎゅっとカトレアの服を掴む手に、思わず力が篭る。

「それは全部、ルイズにとって辛い思い出なの?」
「……いえ、違います」
「辛かったり悲しかったり、だけどそれだけじゃない。
楽しかった事も嬉しかった事も全て大切な思い出よ。
決して無くならない、ルイズの心の一部なの」
「私の……心に」

カトレアの言葉に従うように、そっと自分の胸に手を当てる。
どくんどくん、と脈打つ鼓動とは別に確かな温もりがそこにはあった。
ルーンの繋がりは絶たれたけれど、それでも“彼”を感じ取れる。
使い魔と過ごした日々は、思い出と共にそこに存在していた。
いつかは声を思い出せなくなるかもしれない、
姿さえも忘れてしまうかもしれない、だけど一緒にいた事は忘れない。
私の心にある限り、私は決して貴方を忘れない。

「一人で立ち上がるのは難しいかもしれない。だけど貴女は違う。
ルイズの大切な友達も、私も、姉様も、皆が貴女を見守ってくれているわ」

涙は止まらなかった。悲しいだけじゃなくて嬉しかった。
公爵家に生まれながら魔法が使えない、そんな自身の出生を不幸と思った。
だけど、今は心から感謝している。
ラ・ヴァリエールに生まれたからカトレア姉さまに会えた。
エレオノール姉さまやお父様、お母様、大切な家族と出会えた。
キュルケやタバサ、ギーシュにコルベール先生、多くの友人と巡りあえた。
――――そして、アイツとも。

多くの出会いと別れを重ねてようやく彼女は気付いた。
自分が如何に家族や友、仲間に恵まれていたのかを。
そして、その絆こそ今の自分を支える力だという事に。

まるでこの世に生まれ落ちた時のようにルイズは泣き続けた。
それを愛おしく抱き寄せながらカトレアは確信した。
“ルイズはきっと立ち直る。今よりもっと強くなる”と。
そこには彼女の切なる願いも込められていた。
今度、挫折した時は慰めてあげられないかもしれない。
それどころか、あるいは……。

咳き込んだ口をカトレアは手で押さえた。
赤錆にも似た味が口の中いっぱいに広がる。
見れば、こびり付いた赤色が白磁のような手を汚していた。
妹の綺麗な桃色の髪を汚さぬように手を遠くへ離す。
321ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:32:25 ID:+/3wTrrB
もう長くはないと自分でも判っていた。
いや、“自分だからこそ”かもしれない。
そのせいでルイズをまた泣かせてしまうかもしれない。
“ごめんなさい”と心の中で詫びながら、もう一方の手で彼女を撫でる。

「私の可愛いルイズ。今は泣いていいの」

いつまでこうしていられるかは分からないけれど、今だけは胸を貸してあげられる。
強くなってねルイズ。私がいなくなっても大丈夫なぐらいに。
―――そして、貴女の心にいつまでも私を居させて。


(全く……。損な役回りね)
植え込みの陰に隠れながら様子を窺っていたエレオノールが愚痴る。
カトレアの部屋に逃げ込んだと思い探してみれば、ルイズどころかカトレアも不在。
慌ててカトレアの足取りを使用人達に問い質しながら、ようやくここを探り当てたのだ。

エレオノールとてカトレアに負けず劣らずルイズの事を心配していた。
だが彼女はどうしようもないほど不器用で、上手く愛情を表現できなかった。
そういう所が血筋なのだろうかと、つい思い悩んでしまう。
カトレアにしがみつき泣きじゃくるルイズを見て、
子供の頃と全く変わってない事に安堵と呆れが同時に込み上げる。

「しばらくぶりだものね、もう少しぐらい見逃してあげるわ」

溜息を零しながら、カトレアに似た温かな眼差しがルイズに向けられる。
直後。彼女の脳裏に妹に泣きついた先日の自分の姿が蘇った。
その光景がカトレアの胸で泣き続けるルイズと重なる。
鋼の令嬢とまで呼ばれた彼女にとって、あの失態は闇に葬りたい過去だ。
もし使用人が目撃したならば即座に生き埋めにし、
掘り返されないように真上に教会を建築していたであろう。
見ているだけで恥ずかしい記憶を揺り動かされるという、正に生き地獄。
遂に耐えかねたエレオノールが飛び出して叫ぶ。

「ここにいたのね、ちびルイズ!」
「え、エレオノール姉様!?」

恥ずかしさからか、飛び跳ねるようにカトレアから離れるルイズ。
その彼女目掛けてエレオノールは手を伸ばした。
一瞬にして彼女の頬を抓り上げると教師のような面持ちで彼女に告げた。

「『お』が抜けてるわよ」
「ほ……ほへんはひゃい……へれほほーるほへえはは」

じゃれあうような姉妹喧嘩、それを遠巻きに見ているカトレアがくすくすと笑う。
幼き頃より当たり前のように繰り返されてきた日常の風景。
だけど、いつの日かルイズは思うだろう。

姉妹で共に過ごしたあの日々は黄金にも勝る思い出だったと。
322ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:33:18 ID:+/3wTrrB
エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール
……心配かけさせた分、滞在期間中ずっとルイズを思う存分抓る。
彼女を見送った後日、バーガンディ伯爵から『もう限界』と言う言葉を最後に婚約を解消される。
そのストレスは後に訪れるルイズと平賀才人に向けられる事となる。

カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ
……勝手に部屋を抜け出した事でエレオノールにこっぴどく叱られる。
ルイズの滞在中は自室で大人しく動物達に絵本を読み聞かせて過ごす。
 
カリーヌ・デジレ
……彼女の機嫌が直るまで使用人でさえ迂闊に近づけない緊張状態が続く。

ラ・ヴァリエール公爵
……再起不能。滞在期間中も面会謝絶状態が続き、ルイズと会話できないまま別れを迎える。
この寂しさと悲しみは後に平賀才人に八つ当たり気味に炸裂する事となる。
323ゼロいぬっ!(代理):2009/03/25(水) 20:35:08 ID:+/3wTrrB
693 名前:ゼロいぬっ![sage] 投稿日:2009/03/24(火) 22:24:52 ID:cHNLclts
以上、投下したッ!
量があったので前・中・後編に3分割しました。
今回は中編で次回が後編です。
学院に戻ったルイズと“あの人”の話です。


========
以上。代理投下でした。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 20:56:00 ID:KGsTorFU
作者の人も代理の人も乙です!!!!
ってかホントに犬が終っちゃうとか軽くウツになる・・・ G.E.R.が欲しい
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 04:05:11 ID:NA0cweqj
優しくて、厳しくて、不器用な家族たち、最高です。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 23:46:26 ID:dVxSuny/
ほしゅ
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 16:37:34 ID:ldMC4hSP
ゼロいぬさん乙です!
つい最初から読み直しちゃっちゃったよ…あと支援絵を見返してあまりのほのぼのさと今のギャップに鳴いた
ルイズは家族に恵まれてるなあ
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:28:18 ID:YiSoLNnQ
最近どんどん寂しくなる
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:30:36 ID:wO8TQs7g
避難所に銃杖さんきたーーーー!
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 17:43:41 ID:5xVPT4Up
本当?
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 17:46:36 ID:d/zFo05p
投下じゃなくて近況報告だった件について
…まあじっくり待ちましょ
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:02:13 ID:ycdT3xXA
作者が「きた」のは間違いないが・・・あ、4月馬鹿か
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 00:39:47 ID:vob73dzg
>>329
29日の相談スレのやつ?
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:59:35 ID:F/Ixa9dE
寂しいので「ぬるぽ!」
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 01:01:24 ID:/BgOzFPm
ガッ
>>333
日付見ればいいと思うよ
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 21:28:48 ID:lxmiG87w
仮面成分が不足しています…
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 00:19:51 ID:Mfwj87bV
お、規制解除された。

汗腺からヌルヌルしたもの出しつつ、投下を待ってます。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:23:00 ID:h8+MBeqg
自分は空高成分が不足しとります
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:34:12 ID:4s5wwt6e
DIO様…
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:59:33 ID:jN+AHsQG
気のせいか、最近血が黄色くなってきたんだ…
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 23:47:13 ID:rvRECf8C
待ってるとかじゃかなくて感想とか見所とか挙げた方が作者さんも喜ぶんじゃないかな。
>>340と同じく、次第に周囲と打ち解けていくリゾットが好き。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 00:25:57 ID:MG+y0wgj
アニキの人は生存確認できてるからあんまり心配はしてないが……
それでも……まってます……
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 14:22:11 ID:ddsKQHVR
イルーゾォまだかなぁ
最初の段階でルイズとイルーゾォはあくまで主従の関係にしかなれないだろうって明言されてるのが珍しい作品だし
キュルケが本気で惚れてるっぽいのも珍しい
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 06:59:31 ID:Nll2UBti
タクマのを幸せになって欲しいと言う意味で続きを待ってる。
でもあの文章は面倒だろうから大変だろうな
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 21:15:33 ID:lmsu23mo
俺はブチャラティの人を待ってるぜ
ウェールズ様の出番前倒しも刺激があって実にイイ、きゅいきゅいとフラグが立ってるのも本当にイイ
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 21:36:57 ID:3Pr+5TUZ
セッコかわいいよセッコ
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 23:54:24 ID:APhap3bb
>>345
待っててくれたのか。
ごめん。これから再開する。大学生になってから初の執筆だ。
ここからやり直そう。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 00:48:58 ID:zibCGjp1
そろそろ忘れ去られてるけど、承太郎また召喚されないものか…
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 01:35:20 ID:ohB2weh+
作者さんの復活を喜びつつ40分から投下します。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 01:36:51 ID:zibCGjp1
支援させていただこう
351ゼロいぬっ!:2009/04/09(木) 01:39:45 ID:ohB2weh+

「ふう……」
ようやく屋敷の手前に差し掛かり、ここまでの疲れが出たのか、
女性は手に持った荷物をどさりと地面に下ろした。
汗だくになった額を袖で拭い、曇った眼鏡を拭き直す。
王都トリスタニアから最寄の駅まで馬を走らせ、そこからは荷物を抱えての徒歩。
女性の一人旅にしては優雅には程遠い、かなり過酷な旅だったと言えよう。
王都までの道程も人任せとはいえ荷馬車の乗り心地はあまり良いとは言えない。
ましてや舗装など碌にされていない辺境なのだから、その労苦は推してしかるべきだろう。
腰が痛む度に、伯爵へのお土産として受け取ったワインを投げ捨てようかと何度思った事か。
奇跡的に生き残ったワインを抱えて女性は屋敷ではなく、そこから少し道を外れた。

屋敷の傍らにある林の中、燦々と降り注ぐ日差しを緑のカーテンが遮って薄く影を落とす。
一応管理はされているものの、手入れをする人手も資金もなく放置された荒地。
かろうじて道と判るそれを雑草を踏み分けながら彼女は歩む。
辿り着いたのは、木々に囲まれた一際拓けた空間。
その中央には彼女の背の数倍はあろうかという石碑が建っていた。

そこに綴られているのは、これまで貴族の名門モット家が歩んできた足跡。
初代から始まり、上に書かれた文字ほど掠れて読み取れない。
無論、記録として残されている都合のいい事ばかりだけで
高級貴族として地位を確保する為に張り巡らせた謀略や奸計には触れられていない。
ジュール・ド・モット伯爵に関しても女癖の悪さや惚れ薬と窃盗の件も記されず、
ただ一言『タルブ戦において兵を率いて勇敢なる活躍をせり』とあるだけだった。
モット伯の秘書である彼女は石碑にワインを置くと恭しく頭を下げた。

「伯爵様。タルブへの巡業よりただいま戻りました」

それは戦場から戻ってきたモット伯の指示によるものだった。
施療院の簡素なベッドに横たわり、自身の待遇に不平を唱えるでもなく、
急にそんな事を言い出した主に彼女は目を丸くした。
自分の死期を察し犯した罪業の重さに後悔を感じたのだろうか。
今更、善行を積んだとしても彼の罪が消える事はない。
そんな打算で開くほど天国の門扉は軽くはない。
しかし、それでも間際の安らぎになるのならと彼女は了承した。
専用の馬車もなくタルブとの往復だけでも重労働だったが、
復興を遂げていく自然豊かな村とそこに住まう人々に触れて学んだ事、
そして絵本を心待ちにしている子供たちの笑顔は何よりの報酬だった。
そこだけは主に感謝しなければならないのだろう。

「いつまでそうしているおつもりですか」

眼前に立つ石碑に向かって彼女は問いかける。
しかし、返ってくるのは木々のざわめきと鳥の鳴き声だけ。
静寂の中で彼女は再度、力強く詰め寄る。
352ゼロいぬっ!:2009/04/09(木) 01:41:24 ID:ohB2weh+

「もう十分お休みになられたでしょう。
いいかげんにしないと職務怠慢で処罰を受けますよ」
「何を言うか。私はもう一生分働いた、だから後は好きにやらせてもらう」
「そんなのは認められません。人は汗を流して働くからこそ、その日の糧を得られるのです。
何もしないで食事にありつこうとするのは始祖と神への大逆になります。
人には愛を。罪には罰を。労働には対価を。ついでに今月の給料もまだじゃないですか」

反論する主に、ちっちと人差し指を左右に振りながら澄まし顔で答える。
つらつらと並べ立てられる説教にモット伯は嫌気が差したように本へと視線を落とす。
徹底してサボタージュを決め込む主人の姿に秘書は深く嘆息した。
“目つきの悪い天使にあの世から叩き出された”との言葉どおり、
モット伯は致命的な傷を負いながら奇跡的な回復を遂げて施療院から出てきた。
しかし、とある事件により王宮に愛想を尽かしたのか、
体調不良を理由に、仕事もせずにこうして本を読んで日々を怠惰に過ごしていた。

「ここも見つかったとなると、どこにも逃げ場はないな」
石碑の影に隠れながらモット伯はぽつりと呟いた。
仕事もしないで屋敷にいるとジャベリンの如き冷たさと鋭さの混じった秘書の視線が飛んでくるので、
気の休まる場所を見つけて読書に耽っていたというのに、今では秘書とのかくれんぼだ。
まあ逃げ場もなくなったようなので、この辺で降伏すべきだろう。
ぱたりと本を閉じて、モット伯は両手を上げて秘書の前に歩み出る。
抵抗を諦めた捕虜の姿に、有能なる敵指揮官は腕を組んでうんうんと頷く。

「よろしい。貴殿の賢明なる対応に免じ、食事は一日3回差し入れよう。
豆のスープと固くて噛み切れないパン1個、虚無の曜日には代用肉を」

上機嫌で遊びに興じる秘書の目がモット伯の持つ本に留まった。
表紙に絵が描かれたその装丁から彼が読むには珍しく絵本だと分かった。
その視線に気付いたモット伯は手を下ろして本を開く。

「ああ、これか…。これは例の絵本だよ、ミスタ・コルベールに協力してもらった」

その言葉に秘書は静かに息を呑んだ。
少し前に、モット伯が作った一冊の絵本。
少女に命を救われた犬が彼女の為に奮闘するという、そんな何処にでもあるような御伽噺。
だが、“ある真実”を知る者にとっては決してありふれた話などではない。
挿絵の一枚、主人公である犬の絵に目を向ける。
口に剣を携えて巨大なゴーレムに挑む小さな犬の姿。
それは空想の世界の産物などではない。
実在し、そして存在を抹消された英雄の記録。
353ゼロいぬっ!:2009/04/09(木) 01:42:13 ID:ohB2weh+

「こんな物を発行して大丈夫なんでしょうか?」
「なに、これはただの絵本だ。連中は絵本など読まんし、
気付いた頃に慌てて回収すれば真実だと知らせるようなものだ」
自慢の髭をいじりながら飄々とモット伯は答えた。
その楽しげな表情に秘書は“ああ、そういえば”と思い出した。
こと嫌がらせに関しては主人の右に出る者などいなかった、と。
ページを捲りながらモット伯は誰に言うでもなく呟いた。

「もしかしたら私と同じ様に考えた者が『イーヴァルディの勇者』を…」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、ただの独り言だ」

『イーヴァルディ』が存在したかどうかなど分からない。
頭の固い学者に言わせれば平民の夢物語と答えるだろう。
だが、その名と功績は伝説として今も語り継がれている。
彼は永遠となった。物語を通して人々に彼の勇気と優しさを伝え続ける。
それは、彼に助けられた誰かの切なる願いだったのかもしれない……。


ジュール・ド・モット
……タルブ戦での功績が認められるも、その後の職務怠慢により褒章を逃す。
辺境や山村を巡回して絵本を読み聞かせるなど平民の文学教育に貢献する。
死後、平民文学の開花への貢献から『平民文学の父』と称される。
354ゼロいぬっ!:2009/04/09(木) 01:44:33 ID:ohB2weh+
投下したッ!今回は短いですが、ここが一区切りだったのでそうしました。
最近はちょっと寂しいですが、完結まで頑張ります。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 01:45:41 ID:DiOsJ4p1
支援
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 01:48:37 ID:zibCGjp1
しえん
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 03:33:14 ID:Bi8mKSU1
投下乙でした
いつも微妙にオンタイムに間に合わないな

ところで98の後編で良いのだよね?
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 10:10:39 ID:+CEM3H6V
二部好きの俺としてはカーズの続きが読みたい
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 13:24:05 ID:XaQW9xGU
モット伯いい味出してるなぁwww
秘書さんは彼の道楽に一生つきあわされそうだが
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 17:43:42 ID:llNjGFEK
ゼロいぬの人乙でした!
こうやってみんなのその後に決着をつけていくのか!
まだまだ終わらないことに俺歓喜w

しかしさびしくなったなあ。
ゼロの茨の続きとかこないかなあ。
アヌビス神の続きこないかなあ。
ギーシュの奇妙な(ry

仮面の人だけは絶対に続きを書いてくれるって。
完結させてくれるって。
それだけは確信している!
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 02:59:05 ID:4gasiyeC
続き読みたいよぉ
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 08:06:52 ID:ZiyYqfIx
ちょっと短編書いて見たんだけど、投下してみていいかな?
あんまりハッピーなエンドじゃないけど。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 08:18:54 ID:ZiyYqfIx
誰も居ないようなので、投下してみます。
364使い魔ックス:2009/04/11(土) 08:21:18 ID:ZiyYqfIx
頭が痛い。
ルイズは鈍い頭痛を感じて目を覚ました。
体も痛い。節々が痛む。腕が痛い、足が痛い、背中が痛い。何でこんなに痛むのよ!
やんなっちゃうわ、全く…それにしてもここどこかしら?
よっこらせと体を起こし、痛む肩を解しつつ周りを見る。どうやらここは礼拝堂の様だ。天井は高く、窓には大きなステンドグラスがはまっている。
そして自分は木製の長イスに座っている。後ろに十列、前に二十列ぐらいイスが続いている、丁度礼拝堂の出入り口に近いイスに寝ていたのだ。
なるほど、固い長イスに寝てればあっちこっち痛むわね。でもなんでこんな所に寝てたのかしら?
イスに座ったまま首を捻る。
……思い出せないわ。うーん…。それに何だか喉が痛い。
ヒリヒリするわ。この感じはまるで…飲みすぎた時の…
…そうあの召喚の次の日の朝の様に……。

人生であれほど惨めな日は無かったわ。あの日のために何度も何度もサモン・サーヴァントについて予習をした。
今までトリステイン魔法学院で呼び出された使い魔を全て覚えた。国内で召喚された平均的な使い魔の飼育法を50種類暗記した。
だけど何も呼び出せなかったわ…。
何度も何度も爆発が起きて、そのたびに土埃を、周りの同級生からの罵倒を、全身に浴びて、それでも…それでも努力したものは必ず報われると信じて頑張ったわ。
でも駄目だった…。途中から爆発さえ起こらなくなって、でも何ども呪文を唱えなおしたし、色々変えて試したりもした。でも駄目だったわ…。
皆を先に教室に行かせて、コルベール先生は態々私と歩いて一緒に教室まで戻ってくれたけど、何の慰めにもならなかった。
次の日私がどうなるかは判りきっていた。凄く惨めだった。家族にどんな顔で会えばいいんだろう?いつも私に難癖つけるツェルプストーでさえ、もはや眼中に無いという態度で私を無視した。
耐えられなかった。だから飲んだ。ひたすら飲んだ。コック長を脅して強い酒をありったけださせたわ。次の日の朝は酷い頭痛と喉の痛みを感じたわ。
そして私の退学を告げに来る教師がいつ部屋来るかとビクビクしていた。
だけど違った。コルベール先生が私の味方をしてくれたの。
曰く「サモンの呪文が出来なくなったのは、既に小さな使い魔を召喚していたからだ」と。
確かに、私の爆発のせいであたりに土埃が立ち込めていた。カエルやトカゲやムシの類を呼び出したのだとしたら、見えなかった可能性がある。
だけど殆どの教師は単なる召喚失敗だと決めつけた。サモンを連続でやった為魔力がなくなったのだろうと。
もし既に使い魔を召喚しているのなら、今日もう一度サモン・サーヴァントをやってみろ、と言われた。召喚の日に小動物を召喚しているのなら、今召喚の呪文を唱えても爆発しない、という訳だ。
コルベール先生はこれにも反対した。曰く召喚の儀式は神聖な物なので、やり直しは出来ないという。私を助けてくれようとしたのだが、話はこじれにこじれた。
最終的には進級派と退学派で教師陣が真っ二つに割れてしまった。だがコルベール先生と、何故か味方してくれたギトー先生の強い要望もあり、私の処遇は保留となった。
最初はその事を喜んだが、同級生たちが使い魔を連れて歩く中、たった一人で歩く私の気持ちは更に悲惨な物になった。
365使い魔ックス:2009/04/11(土) 08:22:06 ID:ZiyYqfIx
そんな中、土くれのフーケが学院の宝物庫を襲撃して破壊の杖を盗み出した。
これはチャンスだ!天が私に与えたチャンスなのよ!そう思った。
今こそ名誉挽回の時だ!とフーケ討伐を志願した。だがコルベール先生とギトー先生に強く反対され、その願いは適わなかった。
使い魔すら持てない私に討伐の任が与えられる訳が無かったのだ。
その後フーケはギトー先生の偏在が捕まえたらしい。正体はオールドオスマンが不用意に雇った秘書だそうだが、私には関係ない。
結局私は使い魔すら持てないゼロ以下のままだったのだ。
自殺を考えた事もあった。自分の顔に錬金を掛けてやろうかと思ったり、備品室の毒薬を眺めていたり、首をつったら苦しいのかな?と考えたりしていた。
しかし出来なかった。良いのか悪いのか、常に私に重圧として圧し掛かっていた家名が、自殺と言う貴族として恥ずべき行為を思いとどまらせた。
自殺する事より、今生きている方が恥なのではないか?と思い始めたある日、私の幼馴染であり、時期トリステイン国王になるであろうアンリエッタ王女が学院にやって来た。
最初私はアンの顔を直接見ることさえ出来なかった。あまりにも自分が卑しいものだと思えて仕方が無かった。
それにきっと私の事なんか忘れているだろう。そう考えていた。
その考えは間違っていた!夜になり、何と姫殿下がお忍びで私の寮の部屋に御出下さったのだ。
そこで私は、可哀相な幼馴染がゲルマニアの王と婚姻を結ぶと言う悲劇と、それを邪魔する手紙の存在を聞かされた。
さらに姫はその手紙を私に取り戻して来て欲しいと仰せになられた!
学院に来てから、いえ、生まれてからこれほど嬉しいと思った事はないわ!ゼロと呼ばれた私が、アンリエッタ殿下から直々に命を受けるなんて!!
その日の夜はあまりの興奮で睡眠薬が必要だと思えるほどだった。翌々考えると、アンは私の家名を必要としたのだと思う。
翌日、私が出立しようとしていた時グリフォン隊の隊長で、私の婚約者でもあるワルド様が来て下さった。アンリエッタ殿下から私を守るように命じられたと言う。
やはり、私の存在はアルビオン王家に対して礼を失さぬための飾りなのだろう。何の実績もない私が重要な任務に就く理由はそれしかないのだから。
それでもやはり私は嬉しかった。何かの、誰かの、そして国の役に立てる!それだけで私の心は弾んでいた。
…ラ・ロシェールに着くまでは。
町に着くとそこにはあの忌々しいツェルプストーとその腰巾着が居た。
あら〜、偶然ね〜とか言っていたが、おおかたワルド様を見て我が物にしようとつけて来たに違いない!でも残念でした!ワルド様は私の婚約者でした!!
それにその夜に正式なプロポーズを…。

あッ!…思い出したわ!…ここがどこだか。
あの忌々しいツェルプストーとは次の日の夜、賊の集団に襲われた時に別れて、そして船に乗って、海賊が襲ってきて、それがウェールズ殿下でそしてワルド様が式を挙げようと…
そうだわ!それで私どうすればいいのか判らなくて…昨日はワインを沢山飲んじゃって…
なるほど、道理で頭がガンガンして喉が痛い筈だわ。
だけど、何で礼拝堂に誰も居ないのかしら?確かここで式を挙げる事になって……あら?
366使い魔ックス:2009/04/11(土) 08:22:50 ID:ZiyYqfIx

ルイズが前に目を向けると、最前列のイスに誰かが座っている。ヴァージンロードの直ぐ横の場所だ。何でさっきは気づかなかったんだろう?
最初長髪なので女性かと思ったが、それにしては体格がいい。翌々目を凝らして見ると…。
「ワルド様!?」
思わず立ち上がって叫ぶように言った。
それは帽子を脱いだワルドだった。
結婚式の当日、新郎が礼拝堂に居るのは不思議ではない。だがその後ろ姿が、ガックリと肩を落としうつむいている姿が、ルイズを不安にさせた。
まさか…私との結婚を考え直していらっしゃる…?
「ワルド様…?どうなさったんですか?」
恐る恐る声を掛ける。ワルドの返事は無い。
ルイズはワルドの方へヴァージンロードを歩いていく。
「あの…ワルド様?」
やはり返事は無い。自分の膝を見つめるようにうつむいたままだ。
何かを読んでるのかしら?ルイズの方からは膝に何が乗っているのか、イスの背もたれが邪魔で見えなかったが、ワルドの座っている場所が、礼拝堂の中で一番明るいステンドグラスの前の部分なのでそう思ったのだ。
もしかすると、結婚についての書物を読んでらっしゃるのかも…その後の生活についての事も…。
その後の事を考えて途端に気恥ずかしくなるルイズ。やっぱりまだ早いと言うか、その…お母様に聞いて置きたいことも色々あるし…。
そうよ!婚約者同士なんだし今ここで急いで結婚する必要は無いわ!やっぱり帰ってからにしましょう。ウェールズ殿下もわかった下さるわ!
「ワルド様、やっぱりその…………!!」
ルイズはワルドに、今は結婚を望まぬことを言おうとした。
そのためワルドの背後に近づいていた。
そして見えた。
ワルドが膝の上の『何を』見つめていたのか、が。
「何よ…これは!?
何なのよこれは!!
本なんかじゃあ無く…これは!!
ワルド様が見つめていた物は…!!ちくしょう!!これはッ!!!!」
367使い魔ックス:2009/04/11(土) 08:23:31 ID:ZiyYqfIx
ワルドは抱えるように持っている。少女の体を。
ワルドは静かに見つめていた。その顔を。
ルイズにとって馴染み深い、その顔を。
ただ一点、その少女の胸には、まるで赤い薔薇をつけているかの様な、真っ赤な穴が開いていた。
「そうよ!これは…!!喉が痛かったんじゃあ無いわ!!…そうよ私の胸には!!クソ!!胸には…!肺には!!穴が開いていたのよ!!」
ルイズは叫ぶ。その口から、胸からガボガボと血が噴出して床に落ちる。それにも構わず叫び続ける。
「私は既に言っていた!!式の取り止めを!!!そして…!!そして私の体は!!!このクソ野郎に!!!」

ワルドは静かに見つめていた。自分の小さな婚約者を。血の気が失せて尚愛らしく美しいその顔を。自分が何を思って見つめているのか判らない。
自分の崇高な目的の前には邪魔になるだけの、取るに足らぬ娘だったのだ。だが…他の者に、小さなこの体が蹂躙される前に、どこかに自分の手で埋葬しよう。
そう思っていた。
その前に、この水のルビーは回収させてもらう。ルイズの小さな手から指輪を抜こうと動いた瞬間。
「はッ!」
風の微妙な動きで背後に気配を感じた。
しまった!ルイズを抱えている今の状態ではッ!と顔を庇うように腕を上げ、後ろを振り返る。
「…誰も居ない…?」
次の瞬間、目の前の自分の右腕からブシューッと血が噴出し、メリメリと音を立て引きちぎられていく。
「うわあああああああああああああッ!!!」
悲鳴をあげ、礼拝堂の真ん中へ転がるように逃げるワルド。
「なッ!何なんだああああああッ!!」
傷口を押さえ、痛みに耐えるその視線の先で、千切られた右手が何者かに咀嚼されて消えてく。
「ま…まさかッ!……ルイズなのか!?」
血に濡れて浮かび上がったその顔は、見間違えるはずも無い、先ほどまで眺めていた婚約者の顔だった。
「こ…これが!これが虚無の力だというのかッ!!こんなッ!!死せる者を蘇らせるだけでなくッ!!!死んだ自分自身までも!!!」
だが!と、
残った左手で杖を抜く。
「ボクはここで死ぬわけにはいかない…!!」
ルイズまでの距離は約5メイル。戦って勝てるかどうかは判らない。ならば退くのだ!
閃光の二つ名をもつこの私なら、ルイズが一歩近づくまでにフライを詠唱を完成させ………!!
突然、ワルドの胸から盛大に血が噴出した。
368使い魔ックス:2009/04/11(土) 08:24:47 ID:ZiyYqfIx
「なんだってぇぇぇ!!」
何が起きたんだ?!馬鹿な!ルイズはまだ4メイル先にいるというのに…!
自分の胸から噴出していく血を浴びて、目の前に浮かび上がってくる姿があった。
「き、貴様は……ウェールズッ!」
ウェールズのエア・ニードルが、ワルドの胸を貫いたのだった。

「ねえルイズ…ボクの可愛いルイズ…?まだ怒ってるのかい?」
ニューカッスル城の庭をルイズは歩いている。さっきからご機嫌を取ろうと必死についてくるワルド。
「何度も謝ってるじゃあないか、本当に悪かったと思ってるよ」
黙って大またに歩くルイズの後ろで、大きく身振り手振りを付けて話している。
「だからビックリしたんだって…君が突然襲い掛かってくるから、だから…うっかり君の遺体を床に落としてしまったんだよ……。本当は落とすつもりはなかったんだ…。本当さ!」
「ワルド子爵…。いい加減諦めたらいいんじゃないかな?」とウェールズ。「謝る内容も違うしね」
「…やっぱり殺してしまった事を怒っているのかい?ルイズ」
「……もういいわよ」と立ち止まって機嫌悪そうに呟くルイズ。「むしろ…死んだら何だかスッキリしたわ。自分が召喚の儀式の日に呼び出した能力も、判ったし」
「喜んでもらえたのかい?!」
「空気を読むとか以前の問題だよ、子爵。ついでに先の無い右腕を振り回すのは不気味でしょうがない。それで…ミス・ヴァリエール。今後どうするつもりかな?」
黙って庭園を…いや、庭園であった場所を見渡すルイズ。死屍累々と膨大な数の兵士達が倒れている。その大半は体の一部を何かに食いちぎられていた。
「そうね…」腰に手を当てながら言う。「死んだら家柄とか貴族とかどうでも良くなったけど……」
「けど?」とウェールズ。
「先ずは胸の穴を何とかしましょう。三人ともポッカリ穴が開いてるのは、マヌケ過ぎるわ」
「そうかな?」自分の胸を見ながら呟くワルド。「お揃いでボクは嬉しいけど」
それを無視して、「私の体は?」とウェールズに聞くルイズ。
「父が固定化して安全な場所に保管している筈だよ」
「じゃあ、先ずはあっちの体の傷をふさいで、こっちの傷が埋まるか試して見ましょう」
「賛成!」と先の無い右腕を上げるワルド。
「それから後は?」
「まあ、死んでしまった訳だし、折角だから…」ニヤリと笑うルイズ。
周りに散らばる死体から、見えない兵士が立ち上がって行く。
「この大陸一つ、私の墓標にしてみましょうか」
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 08:25:52 ID:ZiyYqfIx
以上です。
今更ながら、スタンド単体召喚って避難所のほうが良かったですかね?

370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 09:08:07 ID:M4PJWRL7
なんてヤバイ能力をwもう惨劇しか想像出来ない辺りがタマラナイ
マックスの人GJっした
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 11:10:09 ID:AbL1iJbG
GJ!
リンプ・ビズキットは虚無っぽいなw
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 13:04:16 ID:0eCb53HM
これはいいw
見えない死者の軍勢とか怖すぎるww
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 14:40:53 ID:Msne7BMy
まず確実に先手を取られるからな、この能力w
というか死んでからの方がほのぼのしてていいな
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 16:38:09 ID:Z+TEfPxH
先手取れるならジャスティスと手を組んだらメチャメチャ強い!!
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:01:23 ID:hyl3oZ8A
死体はジャスティス
魂はリンプ・ビズキットで操るのか
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:46:16 ID:eb4KeRQL
この能力は限界はわからんが死体が多ければ多いほど強くなるから恐ろしい
しかも魔法使えるということは見えない偏在とかできるな
生きてるうちに能力がわかればまた違ったのかもしれないな…
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:04:19 ID:t2W+DYRC
怨霊大陸アルビオンとか恐ろしすぎる……GJ!
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 00:06:55 ID:G8AWbYbQ
タバサ涙目ですね
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:20:14 ID:gHcL467O
                         わっほい
                   ,。、_,。、 わっほい
          _      .く/!j´⌒i.ヾゝ      _
        ((( ι ヽ     / ハハハハ ヽ     ノっ ))))
           | .|      | ! 0 、0 ! |     | .|
           | |     >人 ▽ 人<    .| .|
           | i____ _ハ|  |ハ_ ___ノ i
           ヽ __||_l  |  |  l _||__ ノ 
                  |  |.∞|  |
                  |  .|  |.  |
                 |__|  |__|
                 ./____丶 _
                 .|   | | /   ヽ
                 .|    /   |===
                 |__ ノ / .|  |
                  |  |    .|  |
                   }  {    .| |
                   |  |   (  ヽ
                   |===|   ヽ __)
                    .|   | 
                     .|  |
                    | |
                    / )
                   (___/


380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 21:38:37 ID:FFeuWRpp
普通に見ても腹筋崩壊ものだが、このスレの住人ならカエルの小便ほどさらに腹筋が崩壊できる。

【ジョジョ第3部】うろ覚えで振り返る 承太郎の奇妙な冒険 PART10
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6440447


1はこれ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5744341
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:03:38 ID:0URMtg7d
どうやらDIOは二日ほど時を止めることが出来るようになったらしい
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:08:54 ID:vDTPSpih
時を二日止めても常人からしたら一瞬にも感じないだろw
きっとディアボロが二日ほど時を飛ばしたんだ・・・
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 22:31:59 ID:Via0+cGk
とりあえずブチャラティの人に期待
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 00:20:10 ID:SaWfkrGd
>>378
最新の外伝みるよろし。
タバサと幽霊のネタで考えてた俺涙目。
385sage:2009/04/16(木) 08:49:22 ID:1o8QETVR
銃は杖よりも強しってまだ連載してるの?
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 08:54:11 ID:1o8QETVR
HA!HA!HA!
sage忘れましたごめんなさいorz
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 23:31:35 ID:pXiJba75
タバサがサモンサーヴァントでグレイトフルデッドを呼び出したら
やっぱ終始ガクブル状態になるんだろうか
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 03:32:46 ID:7VAJPRmU
タバサの幽霊苦手はフェイクでしたとさ
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 04:53:26 ID:NSImiX0O
エンポリオ召喚して慣れさせよう
流石に無生物の幽霊なんぞ恐くあるまい
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 19:02:47 ID:AQ7XWnir
>>389
既に避難所で連載してる。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 19:33:47 ID:J3pOO9J0
つまりブチャラティがタバサに、「この味は(ry」フラグ。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 13:47:43 ID:d3Hp/U/5
誰か大統領と決着がついたらss書いてほしいな
でも能力が難解だからどう扱うかムズイな
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 15:44:25 ID:0fw7VUos
難解っていうかわけ分らんです。
なんだよ隣の世界って。男の世界の方が分かりやすいよ。
隣の世界に移動しようとしたらなんかハルケギニアに着いちゃった、とかどうだろう。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 16:13:33 ID:XNIseYe4
隣……?
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 17:20:06 ID:sOj0Up9D
全然関係ない作品の単語だけど、並行世界の運営みたいなもんじゃねーの?
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 23:46:11 ID:4h9axDxo
>>393
分岐世界とかパラレルワールドも知らないのか
ドラえもんとかアニメとかで散々出てくる設定だろ
ゲームだとクロノクロスとか
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 12:53:14 ID:E8KcVD7u
マジェントが犬すぎて泣ける
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 13:29:52 ID:uTVfqm8d
康一アンアンの人はどうしたかな
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 13:46:02 ID:Xh7AVJ/I
康一とアンアンしてるよ
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 15:54:11 ID:nA5VLUiQ
嘘だろ承太郎
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 17:04:17 ID:/i5yHVSr
新刊のアンアンとデルフの扱いに俺が泣いた
どうしよう…
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 17:06:57 ID:DjhMyziV
>>401
扱いが悪いからどうだというのだ
貴様に何ができるというのだ
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 17:52:22 ID:IMYaKQOt
>>402
仕方あるまい。アンアンファンとしてアンアンヒロインものを書くしかないだろう
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 19:09:22 ID:jw1s7VF8
つまりはアン庚の人カムバックお願いします
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 03:50:55 ID:Zd4Y/4Ac
アンアンがアンジェロ召喚とな?
水つながりで
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 06:26:51 ID:eoRboPJz
18禁鬱展開ですねわかります
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 14:31:24 ID:3bRkBeRk
水繋がりならクラッシュとかどうだろ
アンアンが放った水系攻撃魔法を交したと思ったら
その水たまりから鮫が出てきて首とか食いちぎりにかかる
新ジャンル「武闘派アンアン」
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 19:11:04 ID:4R+q1CKD
水つながりなら・・・。
FFでしょw
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 20:31:33 ID:7OWxt8Ve
18禁的クラッシュ&アンアン……
色仕掛けされてホイホイベッドについてきたら
クラッシュにチンコ喰いちぎられたでゴザルの巻
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 21:25:03 ID:XR5xCz16
てめぇのキンマタ食いちぎってやるぜメェェェェェェェェェン!で御座るな
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 22:01:53 ID:q+p4vQz9
>>380
ネタバレになるが、銃杖ネタが出てるな。糞笑った。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 10:29:36 ID:eAtKfXhJ
水系統メイジとクラッシュって相性抜群だな水たまりをあちこちに作れるんだから
ところでフレイムが鳥頭の亜人になってても違和感無いよね
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 11:20:21 ID:+wibCAaU
出番が少ないから問題ないよ(棒
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 15:20:45 ID:l9jDhyuP
いっそのことコルベール先生の使い魔がマジシャンズレッドだったらいい
似合いそう
NGワード:使い魔はフサフサしてるのに……
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 19:23:49 ID:mk59pviX
水系統なら
ダークブルームーン
ゲブ神
アクアネックレス
クラッシュ
フー・ファイターズ
キャッチ・ザ・レインボー
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 20:41:10 ID:WF4Hpzlg
案外水系のスタンドって多いんだな。
逆に炎系って言えるのはマジシャンズレッドとサンぐらい?
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 21:20:13 ID:r2+h6/uY
ブラックサバスも炎系ですよね!
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 21:23:54 ID:cwUx5iv5
>>416
炎使いの少なさは聖闘士星矢もそうだな。
白銀聖闘士に一人いるだけだったような。
やっぱ炎って使いにくいのだろうね。

LC冥王神話になってようやく蟹さんが魂を焼却してたけど。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 22:31:51 ID:+bB2ffjY
大きく分けるならホワイトアルバムなんかも水系だな
炎系はキラークイーンも入るんじゃね?
シアーハートアタックは熱を追尾するわけだし
銃が火薬で弾を撃ち出すことから、エンペラーやピストルズもありかと
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 22:44:39 ID:nB+XZhxs
>水系
水を熱湯にするスタンドを忘れてないか。
あとキャッチ・ザ・レインボーは水とはちょい違うんじゃね?
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 22:58:00 ID:D609a9rN
>>419
ホワルバは水でも火でもなくただ低温だろ
氷=水ってのはゲームのやり過ぎだ
キラークイーンも炎じゃなくて爆弾、爆風なんだからどちらかというと風系
爆弾だから酸素ないと爆発しないけど
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 23:07:51 ID:+bB2ffjY
>>421
別にホワルバが風でもいい
アイスジャベリンは水+風だからな
水のがしっくり来るってだけ
ペットショップの方がそれっぽいけどさ
あとキラークイーンはシアーハートアタックの熱探知で考えた
と言うか、そんなに深く考えると複数当てはまったり何も当てはまらないのばかりだぞ
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 23:11:09 ID:mk59pviX
ああ、そういえばここゼロ魔とのクロススレだったな
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 23:14:05 ID:r2+h6/uY
俺も忘れてたぜ
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 01:01:22 ID:MIYaZZfA
>>420
水を熱湯にするスタンドは炎系っぽい気が・・・。

関係ないが、コルベールは空気を油に錬金してから火をつけていたが、
最初から空気を炎に錬金すりゃ良かったんじゃあないかな?
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 01:10:39 ID:Z/qmnM4B
油に錬金して肺に吸い込ませてから火をつけて
肺まで黒コゲにして確実に殺す技法とかじゃなかったっけ?
>空気を油に〜
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 01:23:59 ID:zjwybHPV
空気を炎に錬金って無理なんじゃね?
とりあえず読み返したら空気中の水蒸気を油にする→
そこに火の玉を浮かべて点火する→酸素を急激に消費させる
→相手の肺の酸素も奪い尽す→窒息死
えげつないなあ"爆炎"

少なくとも小説版で人間の質量のある幻を焼いて
人焼き殺しちゃったってgkbrしてたアヴさんには使えなさそうだ
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 01:24:31 ID:lHTpHJPw
ポルは平気で焼くくせにな
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 07:24:04 ID:uvxFoxT2
ポルナレフだから仕方ない
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 08:22:02 ID:HVASeOha
エシディシを忘れちゃいませんか
スタンドじゃないけど

プラネットウェイブスって炎系なのかな
隕石だから熱そうではあるけど
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 22:11:33 ID:O2tUN5yB
どっちかってーと土な気がする
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/24(金) 16:50:50 ID:Y7+mBCSZ
土+土+火+火のトライアングルっぽいよね隕石
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/24(金) 17:08:25 ID:aZgAJ8xF
アースウィンドアンドファイア−だから
土+土+風+火のスクエアじゃね?
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/24(金) 17:32:51 ID:K4jIBR2M
ティータイムは何十話も同じ場面から先に進まないけど、
空を飛べる魔法と視界に依らなくても相手の位置を探れる魔法と
あと風の魔法で目眩ましを吹き飛ばせば終わりなことを話に持ち込むのは禁句なんだろうな。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/24(金) 19:24:25 ID:5Sl+TULk
空を飛んだらほかの魔法が使えない+目立つので集中攻撃されるおそれがある
探知魔法は敵味方の区別がつかないので結局意味ないとか
霧は自然現象の霧じゃなくて、マジックアイテムで作り出したファンタジー霧
簡単に風で吹き飛んだりはしないとか
さらに探知魔法などを阻害する効果があるとか考えれば

ティータイムはまだ読んでないんでわからんけど
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/25(土) 18:32:38 ID:m71Xzv0U
要は後付上等ということで
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/26(日) 12:19:21 ID:45LT7NR5
>>435
その風も魔法なんだぜ。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/26(日) 20:30:22 ID:ktDVyB3k
避難所のぜろいぬ、代理投下しておk?
439ゼロいぬっ!代理:2009/04/26(日) 20:40:51 ID:ktDVyB3k
そうして『はじまり』はやり直された。
広場に数いた生徒たちの姿はなく、桃みがかった髪の少女を中心に、
褐色の肌の少女と青い髪の少女、そして眼鏡をかけた教師が見守るように立つのみ。
あの日よりも温かな風が木の葉を運んで吹き抜けていく。

彼女の前には火が焚かれ、それがパチパチと音を立てる。
ソリが黒く焦げて焼け落ち、彼女の日記と研究資料もただの灰へと変わる。
記録も思い出も等しく炎の中へと消え去っていく。
穏やかな風が灰を舞い上げて彼方へと運び去る。

「本当にもう大丈夫なの?」
心配そうに訊ねるキュルケにルイズは小さく頷いた。
答える彼女の瞳からは意志の力が感じ取れた。
余計な心配だったと安堵の溜息を漏らすキュルケの横で、
タバサは黙って事の成り行きを見守る。
彼女は知っている、人は大切な者を失う事で強くなるのだと。
悲しみを乗り越えた時、人はそれを糧にして成長する。
同類だからこそ分かる。彼女は完全に過去を払拭したわけではない。
今も燻るような炎が彼女の胸の内を焼いているのだろう。
だから見届けようと思う。それが彼女の運命に関わった自分の務めだと思うから。

「では、よろしいですね。ミス・ヴァリエール」
「はい。ミスタ・コルベール」

教師の指示を受けて、彼女は杖を天高く掲げた。
空をキャンバスに絵を描くように杖の先端を振るう。
かの時をなぞる様に紡がれる詠唱。
しかし、その仔細は微妙に異なっていた。

「宇宙の果てのどこかにいる私と運命を共にする者よ!」

従者としてではなく、共に肩を並べて苦難な道程を歩もう。
悲しい時は慰め、辛い時は肩を貸し、互いの背を預けて戦おう。

「誇り高き魂と、曇る事なき意志を、そして絶望に屈さぬ勇気を継ぐ使い魔よ!」

名前も残す事さえ許されなかった彼のルーンを、その想いと共に受け取って欲しい。
彼が遺したものを明日へと、そして未来へと伝えて欲しい。
それがいつの日か、誰かの希望として伝わっていくように。

「私は心より求めうったえるわ!」

そこまで告げてルイズの動きが止まった。
ここから先の言葉を紡ぐのを躊躇ったのだ。
言えば、それは彼との決別を意味する事になる。
前の使い魔との契約が終わり、新しい使い魔が呼び出される。
それは彼が死んだ時点でも決まっていた事だ。
だけど、彼女はその一歩が踏み出せずにいた。
440ゼロいぬっ!代理:2009/04/26(日) 20:42:51 ID:ktDVyB3k
まるで夢のような日々だった。
あの日、彼を召喚した時からずっと。
守ってあげると誓ったのも。
街でデルフと出会って、首輪を買ってあげたのも。
フーケのゴーレムを退治したのも。
モット伯との騒動だって。
姫様に頼まれてアルビオンに行った事も。
私が虚無の担い手だなんてことも。
そして、タルブでの戦いも。
ずっと、ずっと、夢だったんじゃないかって、そう思った。

本当の私はうたた寝の中にあって、明日の召喚が上手くいくかどうか、
ベッドの上で不安そうにしてるんじゃないかって。

誰かが夢だと言ってくれれば気が休まったかもしれない。
もし、そうなら彼もどこかで生きていてくれる、
私の存在も知らずに、楽しげに野原を駆け回っているだろう。
夢から醒めて、私は新しい一日を過ごせばいい。

でも、夢じゃない。夢で終わらせたくはない。
あの日々が幻なんかじゃない、かけがえのない宝だったから。
だから幕を引こう。他ならぬ私自身の手で。

「我が導きに答えなさい!」

それは出会いと別れの言葉。
一つの物語は終わり、そして少女は少年と出会った。
彼女の使い魔、『ゼロの使い魔』に―――。


「デルフ」
「何だ相棒?」
「俺は前の奴の事なんて、これっぽちも知らねえけど」

全てを聞き終えた才人は扉に背を預けながら、ずるずると腰を下ろした。
気力を使い果たしたかのように座り込んで呟く。
あまりにも違いすぎる。才人には彼のような力も覚悟もない。
背負った物があまりに大きすぎる、その現実に立ち上がる気力さえ失われていた。
何故、自分なのか、それを問いかけようにも神にまで声は届かない。
愚痴を零すように才人は続ける。

「……とんだ大馬鹿野郎だ。何にも報われねえじゃねえか。
何にも遺せなかった、そいつの一生に意味なんてあったのかよ」
「意味はあったさ。それもとびきりデカイやつがな」

デルフの意外な返答に、俯いた顔を起こす。
それに、まるで当然のようにデルフは告げた。

「相棒は、嬢ちゃんは命に代えても守り通した。
だから生きている。だからお前さんとも出会えた。
それ以外に何の意味が必要だって言うんだ、この大馬鹿野郎」

デルフの叱咤が部屋に強く響き渡る。
二人の巡り会いは運命だったのかもしれない。
だけど、それに繋がる未来を勝ち取ったのは彼だった。
今があるのは惰性なんかじゃない。
過去という時間を瞬間として生きて戦った者がいたから。
ここにあるのは誰かに守られてきたものなのだ。
処分しろと命じられた首輪を彼女が隠し通したように。
441ゼロいぬっ!代理:2009/04/26(日) 20:44:51 ID:ktDVyB3k
「やっと分かったような気がするぜ、相棒。
なんで今頃になって、その首輪が出てきたのかな」

視線を落とした先には擦り切れ褪せた首輪。
その感触を確かめながらデルフの言葉に耳を傾ける。

「それはバトンだ。前の相棒から今の相棒へ受け渡されたバトンだ」

寿命のないデルフは多くの生命を生まれ死んでいくのを見つめてきた。
彼の目を通して見た人の一生はゴールの見えない競争のようだと思った。
あっという間に駆け抜けていく者、ゆっくりと一歩ずつ踏み締めていく者、
倒れても立ち上がり、足を止めても再び歩き出し、自分の歩んだ道を振り返る。
善も悪もなく一人一人が、ただあるかどうかも判らないゴールへと向かう。
それは長命の種族から見れば儚く、また愚かしい行為に映るかもしれない。
しかし、デルフはそれを羨ましくも思う。
そう思うからこそ剣として彼らの人生に関わるのだ。
デルフは一度だけ前の相棒に生まれを聞いた事がある。
ここに来るまでの彼は生きていなかった。
生きる意味も知らずに、ただ心臓と脳が動いているだけの実験材料。
きっと嬉しかったに違いない。自分の人生が得られた歓喜に沸いたのだろう。
誰よりも早く走り続けてゴールを駆け抜けてしまった。
それできっと満足だった。
ただ、一人残されるルイズの事を不安に思ったんだろう。
だから袖を引っ張って相棒を連れてきた。
共に支えあいながら彼女と一緒に歩んでくれる奴を。

「お前さんに未来を託したい、そんな気持ちの表れなのかも知れねえな」
「……買いかぶりすぎだ。俺はそんな御大層な奴じゃない」

デルフの言葉に才人は謙遜ではなく本心で答えた。
彼の覚悟も勇気も力も引き継げるほど自分は強くないと。
だけど、と付け加えて首輪を力強く握り締めた。

「俺は絶対にルイズを一人にしない、それだけは誓える」
「ああ、きっとそれが聞きたかったんだよ、アイツはな」

この宣誓は前の相棒に届いただろうか。
いや、聞こえているはずだ。
だから安心してくれ。お前が選んだ奴に間違いはなかった。
そして俺も全てをかけてでも相棒を守る。
それがお前を死なせちまった、俺のせめてもの償いだ。
442ゼロいぬっ!代理:2009/04/26(日) 20:46:55 ID:ktDVyB3k
「いつまで掃除してるのよ! 早くしないとラ・ロシェール行きの馬車が出ちゃうわよ!」

ばんと景気よく開け放たれ、主人である少女が飛び込んでくる。
見渡せば掃除は途中で放棄され、デルフとお喋りしている使い魔一匹。
凄まじい剣幕で捲くし立てる彼女の言葉を背中で受け止めながら、
才人はそっと首輪をポケットにしまった。
しばらく、ここには戻っては来れない。
これからルイズと共にアルビオンに、戦場に赴くのだ。
だから一緒に戦場に連れて行こうと思った。
背中に蹴りを受けながら、平賀才人は雑巾の入ったバケツを手に立ち上がる。

「すぐに終わらせるから待ってろ」
「え? う、うん」

文句の1つも言わずに作業に戻る才人にルイズは違和感を覚えた。
もしかして、どこか頭を強く打ちつけてしまったのかとさえ思った。
手際よく掃除を始めた才人の背中を遠い景色のように見つめながら、
ふとルイズは思いついたように彼に訊ねた。

「……ねえ、アンタ、ひょっとして背伸びた?」
443ゼロいぬっ!代理:2009/04/26(日) 20:48:55 ID:ktDVyB3k
701 :ゼロいぬっ!:2009/04/25(土) 17:06:54 ID:dPBRqNnM
以上、投下したッ!
今回は99話前編です。
さすがに、そろそろ終わりそうです。
エンディングだけで時間がかかりすぎですね。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/26(日) 21:50:22 ID:vf2PyHAb
ゼロいぬの人と代理の人乙!!
ついに終わってしまうと思うと、名残惜しいな
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/27(月) 02:36:55 ID:vh+aOgND
彼から才人へ、受け継がれる絆と物語。
終わりが来るのは寂しいですが、楽しみにしています。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/27(月) 19:01:09 ID:tEmxOF/6
家のパソコンが規制食らってて、ようやく書き込めた!


GJだ!
そして乙だ!
というか七万戦でラストって…どんだけ俺らに涙を流させるつまりなんだ…!
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/28(火) 00:57:28 ID:qJMUPSu2
おぉっ!待ってたぜ!
ついに最終ステージか

完結まで読めるよろこびと、とうとう終わってしまう寂しさが…
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/28(火) 01:21:58 ID:2T7OSoc1
目から熱い汁が止まらんぜよ乙
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 09:31:23 ID:MQBt6pkF
コルベールの使い魔は『サン』で決まりだろう。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 12:24:04 ID:z/Ip1HxG
コルベール先生の額に青筋が!
>>449が消し炭に変えられちゃう!!
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 14:11:01 ID:5bU6EHGn
コルベールのスタンド・・・意外っ!それはブラックサバス!あっというまに自滅するっ!
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 19:15:39 ID:OwDo5Il1
錠前で自爆に3ドニエ
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 21:29:51 ID:dqowS4ks
いっそハイウェイトゥヘルにすればいいんじゃね?
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/30(木) 22:04:10 ID:7Y1jshG7
じゃあシビル・ウォーで
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 01:08:50 ID:Qd1jC6I8
クリーム・スターターで髪がフサフサになりました
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 01:12:30 ID:M7DoUy80
何故か髪をとられてハゲになるギーシュしか想像できない
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 05:36:15 ID:IGXwIIVx
>>454
あれいまいち能力がわからん……
設置型なのか?
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 06:42:08 ID:g4vSN2C4
火系統そのものなのに全然挙げられないブ男レッド
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 09:55:42 ID:nso8P9fc
>>458
コッパゲ 「よし、アヴドゥル君 リズムを合わせて」
アヴドゥル 「あ…あの…コルベール先生、私は…とても恥ずかしいんだが」
キュルケ 「ジャン! 貴方そんな趣味があるなんて!! 私を騙してたのね!!」

こんな場面がすぐに頭に浮かんできた俺はちょっと変なのかもしれない
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/01(金) 10:29:47 ID:Y78208hI
キュルケならそこに平然と混ざりそうだ
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 12:45:19 ID:LAt7dy+U
広瀬康一君をハルケギニアに召還したいんですが、投下してもいいですか?
今までの2作品とは別物で、これが初投稿になります。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 13:02:41 ID:qycM4Dfu
スレは空いているではないか
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 13:13:44 ID:LAt7dy+U
ありがとうございます。ではちょいと失礼して・・・。
不調法がありましたらお許しください。
464S.H.I.Tな使い魔1:2009/05/02(土) 13:15:43 ID:LAt7dy+U
広瀬康一はネアポリスの抜けるような青空を仰いだ。
「いい天気だなぁ・・・」
今彼はイタリアでの用事をすませ(ついでの観光もすませ)ネアポリス駅行きのバスを待っている。バス停にいるのは康一だけだ。
観光名所だという町外れの教会を見てきた帰りである。
人通りが少ないのはシエスタ(イタリアではみんなそろってお昼寝をするらしい)の時間帯だからだろうか。
少々トラブルはあったが、パスポートも帰ってきたし、旅費もまだ十分ある。
康一はこれからフランスも見て回って、最後にパリのディズニーランドに寄って帰る予定だった。

そこまで考えて康一は由花子のことを思った。
「由花子さん、あんまり大騒ぎにしてないといいけど・・・」
由花子に「イタリアへ汐華初流乃という人物を探しにいってくる。」と話したところ、なぜか烈火のごとく反対されたからだ。
あまり人には話さないように、と承太郎さんから言われていたので、しつこく問い詰めてくる由花子に、康一は正直げんなりしてしまった。
結局最後には自分もついていくと言い張る由花子から逃げるようにイタリアにやってきたわけだが、あの由花子さんのことだ。今頃仗助くんたちに当り散らしていることだろう。(由花子はパスポートをもっていなかったので連れて行くわけにもいかなかったのだ。)

そこでふと康一は自分の左手に何かの気配を感じて振り返った。
そこにはいつのまにか、巨大な楕円形の鏡のようなものがあった。康一がこのバス停に来たときにはこんなもの無かったように思ったのだが。
「さっきまでこんなのあったかなぁ。」
オブジェかなにかだろうか。康一は鏡に映る自分の顔を覗き込んだ。
鏡に映る自分は二年前から何も変わっていない気がする。
もうすぐ18歳になるというのに康一の身長は157cmのまま一向に伸びる気配を見せない。
仗助くん(180cm)や億泰くん(178cm)と比べてずっと身長が低いのは今更気にしていないが、恋人の由花子さん(167cm)より10cmも低いのは我ながらどうかと思う。
二人連れ立って歩いているとよく店員さんに「ご姉弟ですか?」と言われる。
映画館に行ったときなど、一度何も言わないでいるうちに小学生料金のチケットを渡されてしまった。
そうした勘違いにブチ切れる由花子さんを宥めるのはもうデートの定番になってしまっていた。
ちなみに由花子さんは逆に、高校生だといっても信じてもらえないことが多いくらい大人びているから、カップルと見てもらえないのはしかたないのかもしれない。

康一は人差し指で軽く、鏡の自分の顔が写っている部分を拭ってみようとした。もうこれでイタリアを後にするという状況で、広瀬康一は少々油断していたのだ。
だから、表面を撫でるだけだったつもりの指が一瞬のうちに手首まで飲み込まれてしまったのには心の底から驚いた。
「こ、これは・・・!?」その瞬間手首から全身へと走るように電撃のような衝撃が走った。
「が、は・・・っ!もしかして・・・これは『スタンド攻撃』!?」
康一は意識を手放すまいと気力を振り絞りながら、鏡から手首を抜こうとした。
しかし、鏡はものすごい力でずるずると康一の体を引きずり込む。
とっさに残った左腕でバス停のパイプをつかんで踏ん張るが、今にも離してしまいそうだ。
「ACT3!この鏡を攻撃しろぉぉぉ!!」
「S.H.I.T!」
康一の叫びと共に現れた人影が、鏡を殴りつける!
だが、ACT3と呼ばれた人影の拳も鏡に触ることは出来ずに沈み込み、逆にずるずると鏡の中へ引きずりこまれていく。既に両腕を肩まで飲み込まれて身動きもとれない。
「ダ、ダメデス。コイツ、触レナイノニ・・・マジに(Ass Fuckin)『ヘヴィ』ナパワーデス・・・!引キ摺リ込マレマス・・・」
「く、くそっ!どうなってるんだ・・・僕にはこの鏡は壊せないッ!!『本体』を叩くしか・・・」
どこかに『本体』がいるはずだ・・・!康一はこの鏡をあやつっている『スタンド使い』を探そうと首をめぐらせたが、やはり、周りには人影一つ見られない。
「近くに本体もいない・・・!それなのにこのパワーは、遠隔自動操縦型か・・・?」
だとしたら状況は絶望的だ。一人で脱出はできそうにない、本体も見当たらない、そして何よりいつも自分を助けてくれる仲間はここにはいなかった。
せめてこいつのことを誰かに知らせなければ・・・。康一は叫んだ。
「承太郎さーん!」
だがその時既に、ACT3はもう頭部まで鏡に飲み込まれてしまっていた。それまでとは比べようもない衝撃が走り、ついに康一は抗すべくも無く意識を手放した。
465S.H.I.Tな使い魔2:2009/05/02(土) 13:17:01 ID:LAt7dy+U
 「あんた誰?」
康一が目を覚ますと、不機嫌そうな顔で覗き込んでいる女の子と目があった。
白人である。多分13〜14歳といったところだろうか。それはもう映画で見るようなとびっきりの美少女といっていい。服装は白いブラウスに黒のプリーツスカート。ここまではいいのだが、その上から黒いマントを羽織っている。
康一はなんとなく、以前見た映画で出てきた、吸血鬼のことを思い出した。彼女のマントには襟がないので白くて細い首が見える。よし、どうやら吸血鬼ではないようだ。
半分寝ぼけた頭でここまで考えて、はっと康一は跳ね起きた。
「ここは・・・どこ!?」
「質問に質問で返すなんて平民の癖に生意気ね・・・もう一度聞くわ。あんたは誰なの?」
眉根を寄せて更に身を乗り出す女の子の迫力に、康一はなんとなく気おされてしまった。
「ぼ、僕は広瀬康一。日本人ですけど・・・。」
「ニホンジン?なにそれ、国の名前のつもり?」
康一はめんくらった。いくらなんでも日本をしらないなんて!白人の人がいるし、ここはまだイタリアのはずだけど・・・。
風が頬を撫ぜた。青臭い草原の香りがした。康一があたりを見回すと目の前の女の子のようにマントを着たたくさんの少年少女がものめずらしそうにこちらを見ている。今日はハロウィンかなにかだろうか。って、そんな馬鹿な・・・。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
誰かがそういうと、まわりからくすくすと笑い声が聞こえる。
しかし目の前の少女は肩をいからせ、顔を真っ赤にして怒鳴り返す。
「う、うるさいわね、キュルケ!ちょっと間違っただけよ!」
「ちょっとだって?はーて、ルイズの魔法が間違えなかったことなんてあったっけなー?」また別の誰かが揶揄するように言うと、人垣が爆笑した。
一方康一は混乱する頭を必死に整理していた。
「(僕はさっきまでイタリアにいて・・・。そうだ、変な鏡のスタンドに引きずり込まれたんだった。・・・じゃあ、ひょっとして僕は『まだスタンド攻撃を受けている』・・・・?でも、なんだか様子がおかしいぞ?)」
知らない場所で、見たこともない格好の人たちに囲まれ、しかし自分には傷一つないようだ。こんな妙なスタンド攻撃があるだろうか。

ルイズと呼ばれた女の子は、そばに来ていた中年の男性(やはりマントを着ているしおまけに杖まで持っている!)に訴えた。
「コルベール先生!もう一度召還させてください!これは何かの間違いです!」
「うーむ、気持ちは分かるが・・・ミス・ヴァリエール。『使い魔』の召還は原則として一度きりの神聖なる儀式なんだよ。自分の『使い魔』に不満があっても、やり直すことは認められていない・・・」コルベールと呼ばれた男は清々しいほど物寂しい頭を掻いた。
康一は使い魔ってなんだろう。と首を傾げた。まさかその使い魔というのが自分のことを言っているとはまだ思い至らない。
「で、でも『使い魔』が平民だなんて聞いたことありません!」ルイズはなお言い募る。
「だが、平民を『使い魔』にしてはいけないという法もないからね。可哀想だが監督者として一度した召還をなかったことにするなんて許すわけにはいかないよ。それとも今回の『サモン・サーヴァント』はあきらめるかね?」
「そんな・・・『使い魔』がいないと、進級できないのでしょう!?」
「そうなるね。だが僕としてはそれが精一杯の譲歩だ。さぁ、選びなさい。この平民を『使い魔』にするか、あきらめて留年するか!」
466S.H.I.Tな使い魔2:2009/05/02(土) 13:17:50 ID:LAt7dy+U
ルイズは目に涙を浮かべ、しばらく歯を食いしばって悔しげにコルベールを睨めあげた。しかし覚悟を決めたように康一のほうに振り返る。
ぎょっとする康一にずかずかと近づくと肩を左手でドンと押した。ちょうど立ち上がろうとしていた康一が尻餅をつくと、その上にのしかかるようにして跨ってくる。
「ちょ、ちょっと君・・・!」康一が顔を赤らめて後ずさろうとするが、動かないでと真剣な目で言われ、動けなくなってしまう。
ルイズは諦めたように―半分自棄になったように―目をつぶると、手に持った小さな棒のようなものを康一の顔の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
鈴のような声で、呪文のようなものを唱え始めた。
すっと、杖を康一の額に置いた。
そして、ゆっくりと顔を近づけてくる。睫毛が長い、まるで西洋人形のようだ。
「ちょ、ちょっと君、なにを・・・」ごくりと生唾を飲みながら、思わず仰け反る康一の肩をルイズの左手が引き寄せる。
「動かないで・・・」
「いやでも、僕には恋人が・・・」
だからやめてくれ、と最後まで言い切ることはできなかった。
「いいからじっとしてなさい!」と言うやいなや、えいやっとその小さな唇が押し付けられてきたからである。
唇に感じる柔らかい感触に康一は固まってしまった。
「(ああ・・・なんてことを・・・・)」
思わず息を止めて目を閉じる。心臓が早鐘のように走り出す。
「(これはラッキー!って思えばいいんだろうか・・・。でも僕には由花子さんが・・・)」
ルイズが唇を離す。
ぷはっと止めていた息を吸うと、離れ際わずかに女の子の甘い香りがした。
「終わりました。」
ルイズはその場で立ち上がり、顔を真っ赤にしてコルベールに言う。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したけど『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね。」
コルベールは嬉しそうに言った。
康一はまだ顔を赤くして混乱していた。
「ななな、なんでキスしたの!?というか君は誰で・・・あーもう、さっぱりわからないよ!!」
ルイズは少し潤んだ瞳で叫ぶ。
「うるさいわね!あんたはわたしの使い魔になったのよ!わたしだって嫌だけど・・・あんたが出て来ちゃったんだからしかたないでしょ!!」
康一はそれに言い返そうして、そのとき、突如として左手の甲に激痛が走った。
「ぐわああぁぁぁぁぁ!」
まるで焼き鏝を当てられているようだ!康一は左手を抱えて悶え苦しんだ。
みると手が光り、なにか文字のようなものが刻まれていっている。
「(そうだ、油断した・・・やはり僕は『まだスタンド攻撃を受けている』!!)」
コルベールと呼ばれた男性が、何か言いながら、ゆっくりと近づいてくる。自分が何をされているかは分からないが、このままではやばい!
康一は覚悟を決めた。戦わなければならない!
そして呼ぶ。自らの半身、『魂のヴィジョン』(スタンド)の名を。
「エコーズACT3!その男を攻撃しろォー!!!」
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 13:19:36 ID:qycM4Dfu
やっちゃえ支援
468S.H.I.Tな使い魔3:2009/05/02(土) 13:21:22 ID:LAt7dy+U
 召還の儀式の最後の一人、ルイズが数十回の失敗の後になんと平民を呼び出してしまったとき、トリステイン魔法学園の教師、コルベールは驚いた。なにせ人間を召還するなどというのは今まで前例がない。
しかし、同時に彼は、落ちこぼれで見栄っ張りだが、その実影で涙ぐましい努力をしているルイズのことを、とても心配していたので、形はどうあれ、初めての成功を心の底から喜んだ。
ルイズは不満だ、やりなおしたいと食って掛かってきたが、コルベールはそれを許さなかった。
「(使い魔が何であるか、なんて長い目で見たら大した問題ではないんですよ・・・)」
 使い魔によってメイジの才能を見る向きもあるが、それを言えば我が学院の長にして大賢者オスマンの使い魔はハツカネズミではないか。
それよりも、使い魔を従えたという事実こそが大事なのだ。ルイズへの風当たりもきっと弱まるに違いないし、そのほうが彼女に必要なことのはずだ。 
だから、コルベールの心配を知ってか知らずか、ルイズがしぶしぶとコントラクト・サーヴァントを成功させたときは肩の荷が下りたような気すらした。
使い魔が人間だということは、後で学長と相談して何らかのフォローを入れよう。使い魔になる平民は少し可哀想な気もするが、なに、気にすることはない。
トリステイン最大の大貴族、ヴァリエール公爵家三女にとって唯一無二の存在になれるのだ。決して粗略にはされまい。
 後は使い魔の少年の手に浮かび上がってきた奇妙なルーンを写し取って学院へ帰ろう。
 コルベールはルーンを近くで見るために少年の手を取ろうとした。
油断しきっていたコルベールは、さっきまで顔を赤くして混乱していた少年の目に、いつの間にか『覚悟』の光が見えていることに気がつかなかった。

「エコーズACT3!その男を攻撃しろォー!!!」
『ACT3 FREEZE!』
 その瞬間コルベールの体は草原にめり込むほどの勢いで前のめりに墜落してしまう。
「な・・・なんだ・・・?」コルベールは何かに躓いたのかと思い立ち上がろうとした。だが、意に反して腕をあげることすらできない。
「コルベール先生、何もないところで転ばないでくださいよ!」遠巻きに見ていた生徒達が笑う。だがコルベールは自らの身に起きたことの異常性に気づき始めていた。
「(う、動けない・・・!これは・・・私の体が『重くなっている』!?この少年の仕業か?そんなはずが・・・!重力制御など、例え土のスクウェアでも出来るものではない・・・!)」
 ビキビキと体中の骨が軋む音がする。呼吸すらままならない。
 いつまでも起き上がらないコルベールを生徒達が不思議に思い、騒ぎ出す。
「コルベール先生いつまで寝転がっているんだ?」
「ていうか、おい!あれを見ろよ!ゴーレムか?」
「見たことがない形・・・っていうか、微妙に浮いてる気がするんだが・・・」
「まさかメイジ・・・?でも杖は持ってないぞ!?」「マントも着てないしな。」
 コルベールは目だけを辛うじて動かして、少年を見上げた。
469S.H.I.Tな使い魔3:2009/05/02(土) 13:23:43 ID:LAt7dy+U
 すでに契約の刻印も済んだのだろう。立ち上がった少年はコルベールを見下ろした。
「それ以上・・・ぼくに近づかないでもらう・・・」
 そしてその少年の前に、白い小さな人影が見える。体中に翠色の装飾を施した見たこともない形状のゴーレムだ。
ゴーレムはコルベールを指差して言った。
『射程距離5mニ到達シマシタ。S.H.I.T!』
 このゴーレムがやったことなのだろうか。
もしかしてミス・ヴァリエールはとんでもないものを召還してしまったのでは・・・?
 だが当の本人は事態の深刻さをまるで分かってないようだ
 「そのゴーレム、あんたの?コルベール先生に何をしたの?」
 「今度はこっちが質問する番だっ!!いったいぼくに何をしたんだ!!」
康一はルイズを睨みつけた。
 「なによ。そんな目したって怖くないわよ!あんたはもう私の使い魔になったんだから、私の言うことを聞きなさい!私の質問に答えるのよ!」ルイズは命令した。
ファーストインプレッション(第一印象)が大事なのだ。使い魔に我が侭を許せば後が大変である。イニシアチブを取らなければならない!・・・と本に書いてあったのだ。
 「使い魔だって?それはすごく・・・すごく嫌な響きがするぞっ・・・!人間というよりは、まるでペットを呼ぶような・・・」
「ペットじゃないわ。まったく・・・使い魔も知らないなんて、どこの田舎者よ・・・。とにかく、あんたは私が召還したんだから!私の言うことを黙って聞けばいいのよ!平民!」
 「じゃあ、ぼくに攻撃してきたのは君・・・?」
 そこで康一は気がついた。この女の子はスタンドが見えている。
 つまりこの子はスタンド使いだ・・・!
 「もう一度聞くよ・・・。ぼくに何をしたんだ・・・?この左手の印は何?」
 「それは使い魔のルーンよ!あんたが私のものになった証よ!あんたは一生私に仕えるのよ!」
 康一は震えあがった。
 「じょ、冗談じゃないぞっ!ぼくはそんなのまっぴらごめんだっ!今すぐ元のところに戻してくれ!」
 「知らないわよそんなの!あんたが勝手に来たんでしょ!私だって、あんたみたいなチビの平民が使い魔だなんて嫌よ!」

康一は目の前のルイズと呼ばれる女の子を攻撃するべきか考えていた。
しかし、自分よりも小さな女の子(きっと中学生くらいだろう)を攻撃するにはためらいがある。
それに、なぜかこの口の悪い女の子からは、不思議と『悪意』が感じられないのだ。
自分を拉致し、無理やり使い魔とやらにしようとしているにも関わらず!

470S.H.I.Tな使い魔3:2009/05/02(土) 13:25:17 ID:LAt7dy+U

ルイズはこの生意気な平民をどうしてくれようかと考えていた。
意味の分からないことを喋るし、変なゴーレムは出すし、何よりこっちの質問にまるで答えようとしない!使い魔の癖にご主人様をなんだと思っているんだろう!
そしてなにより、やっと手に入れた使い魔に、舐められるのだけは絶対に嫌だった。
二人の間に険悪な空気がただよう。
そこに車に潰されたカエルのように、未だ地面にへばりついたままのコルベールが割って入った。呼吸がほとんどできないので今にも死にそうなか細い声である。
「ちょ、ちょっと待ってください・・・。こんなところで争ってもしょうがありません。ミスタ、何か誤解があるようですから、どうか落ち着いた席で話し合いを・・・。」
「疑問はおありでしょうが、私からちゃんとお答えします。これは我々にとっても前例のないことなのです・・・」
康一は懇願するコルベールを見ながらしばらく考えていた。
自分は被害者のはずだ。でも攻撃したという当人達からはなぜか悪意を感じないのだ。
それどころかまるでこっちが理不尽なことをしているような空気すらある。
それにこの小さな桃色髪の少女はともかくとして、こっちの男性はまだ話が通じそうだ。
「・・・わかりました。ちゃんと説明してくださいよ!ACT3!3 FREEZEを解除しろ!」
康一がそういうとコルベールの目の前からゴーレムが消えた。それと同時に体の自由が戻ってくる。
コルベールは軋む体をなんとか立ち上がらせ、服についた草を掃った。
「えーと、大丈夫ですか?」康一が気遣う。
「ええ、なんとか・・・」コルベールは苦笑いした。
実はあまり大丈夫ではなかった。ものすごい圧力で地面に押さえつけられていたので息をするたびに肋骨が痛む。
骨は折れていないと思うのだが・・・。
コルベールは一つ大きく息をすると、ざわめく生徒達に向き直った。
「さぁ、みなさんはもう学院に戻りなさい!」
「ミスタ・コルベール!ルイズとその平民はどうするので?」人垣の中から手があがる。
「学院長と話しあった上で今後のことを決めます。みなさんは自分の使い魔をしっかり慣らして、しっかり明日の授業の準備をするように!では解散!」
コルベールは手を叩いて帰るように促した。
471S.H.I.Tな使い魔3:2009/05/02(土) 13:25:59 ID:LAt7dy+U
奇妙な平民や突然現れて突然消えたゴーレムに興味津々な生徒達だったが、彼らも自分の使い魔を召還したばかりである。
二言三言なにやら唱えて杖を振ると、大人しく言いつけにしたがって飛び去っていく。
「さぁそれではとりあえず学院長室までお越しください。そこで話を伺いましょう。ミス・ヴァリエール。当然ですがあなたにも来てもらいますよ。」コルベールも数語の呪文と共に浮かび上がり、生徒達の後を追っていく。
「と、飛んだ・・・」康一は愕然としている。空を飛ぶスタンド使い?しかも全員が?
そしてそれを横で見送る桃色の髪の女の子に聞いた。
「君も飛ぶの?」
ルイズはそれを聞くと、きっと康一を睨みつけ、ぷいっとそっぽを向いた。
そして早足で歩き去っていく。
 未だに自分の置かれた立場がいまいち分かっていない康一だったが、いつまでもここにいるわけにもいかないので、彼女の後をついていくことにした。
472S.H.I.Tな使い魔3:2009/05/02(土) 13:27:12 ID:LAt7dy+U



みなが立ち去った後、二人の少女がまだ帰らずに残っていた。
「ねえタバサ。いったい何があるって言うの?」
一人の少女は先ほどルイズにキュルケと呼ばれた少女である。大きく開いた胸元からは褐色の肌が覗き、はっとするような色気がある。その足元には大きなトカゲを従えている。
「ルイズの使い魔が気になるの?きっとマジックアイテムか何かをもっていたのよ。」
と腕を組む。
「たしかに不思議なゴーレムだったけれど、小さいしすごく弱そうだったじゃない?ミスタ・コルベールは不意打ちで転ばされてしまったんだわ。」
いかにも「これだからトリステインの男は」と言わんばかりに鼻を鳴らす。
しかしタバサと呼ばれたもう一人の少女――青いショートヘアーで、グンパツな女性と比べてこちらは背が小さく、なんというか・・・平坦だった――は真剣な表情で先ほどコルベールが倒れていた場所にしゃがみこんだ。
「見て。」
タバサはぼそりと言った。
「何?落し物でもあったわけ?    え・・・これって・・・」
キュルケがタバサのそばまで行くと、今まで草で隠れていた『跡地』が見えた。その場所だけ地面が人型にめり込んでいる。
「深さは10サント近くあるわね・・・。でもどうして転んだだけでこんなことになってるのかしら。」キュルケはアゴに指をあて、
「実はミスタ・コルベールの体重が100リーブル(約470kg)くらいあった・・・とか?」冗談めかして笑った。
タバサは笑わずに振り返り、言った。
「只者じゃない。」
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 13:30:02 ID:LAt7dy+U
以上です。

まだ書き溜めはあるのですが、行が長いと書き込めなかったりして想定と違うところがあるので、今日はここまでにしたいと思います。
お許しがあれば、また手直しした続きを投稿する予定です。
ではお目汚し失礼しました〜ん
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 13:34:13 ID:qycM4Dfu
投下乙です
まあ普通は揉めるわな


>使い魔になる平民は少し可哀想な気もするが、なに、気にすることはない。
何という外道



あと名前欄の数字が3のままですぜ
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 14:18:04 ID:nGzuDbKv
ディモールト、ディーモルトベネ!って奴ですかぁ
これからの展開に期待してます、待ってます!!
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 14:29:22 ID:eQBWt182
GJ
康一結構好きなキャラだからうれしいぜ
がんばって完結させてくれ
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 14:56:13 ID:8Z5I7mMk
乙です!
久々に面白い作品が見れそうでオラワクワクしてきたぞ!
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 18:46:35 ID:mW3p56UN
>>474
悪意のない邪悪だわな
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 21:56:38 ID:38SiahTv
オツオツオツオツオツオツ 乙ゥ!!! そしてGJ!!!
続き・・・ 待ってます・・・・
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 22:56:25 ID:mWxSjPMa
久々の新作GJ!

展開が面白くてこんな程度じゃまだ読みたりねぇ


さて、由花子さんがコントラクトの事を知ったらどうなるんだろうね?
481S.H.I.Tな作者:2009/05/02(土) 23:23:18 ID:W8wlSxGR
拙作を喜んでいただけているようで、うれしさ半分恥ずかしさ半分といったところです
少し速いですが、修正も終わりましたので、4話と5話を投下したいと思います。
482S.H.I.Tな使い魔4:2009/05/02(土) 23:25:10 ID:W8wlSxGR
 ルイズと康一は二人の男性と向かい合い、ソファーに腰を下ろした。
 一人は先ほどの中年男性、コルベール。そしてもう一人の老人をコルベールは学院長のオールド・オスマン氏と説明した。
 一言で言うと、『まるで魔法使いみたい』な容姿である。深緑のローブ、傍らには長い樫の杖を置いている。
白い顎鬚を長く垂らし、それをいじりながら康一のことを興味深そうに見ている。
一見何も考えてなさそうな顔をしているが、康一はその目の奥に深い知性の光を見た気がした。
まるで、ジョセフ・ジョースターさんのようだ。
 「ふむふむ、君がその平民の使い魔かね。・・・なるほど、いい面構えをしているのぉ。」
 その一言に、康一の隣に座っているルイズは露骨に『そうかしら。チビだし、彫りも浅くてハンサムとはいえないと思うけれど・・・』という顔をした。康一と目があって、またぷいっと横を向く。
 オスマンはほっほっほと笑って、康一に尋ねた。
 「それで君はどこから来たのかね?」
 「日本です。いや、えっと、鏡に飲まれたときはイタリアのネアポリスにいたんですけど・・・。」
 「日本、イタリア、ネアポリス・・・と。それはどのへんにある国なのかね?」
 「どのへん・・・ですか。えーっと、日本はユーラシア大陸の東側にある国で、イタリアは逆にユーラシア大陸の西側、ヨーロッパの中にある国です。ネアポリスはイタリアの都市の名前で・・・」
 康一は懸命に世界地図を思い浮かべた。
 「ふーむ・・・コルベット君。」
 「コルベールです、オールド・オスマン。」コルベールが訂正する。
 「おお、そうそう。コルベール君じゃったの。今彼が言った国の名前を一つでも知っているかね?」
オスマンは尋ねた。
 コルベールは困ったように首を横に振った。
 「いや、全く聞いたこともありませんね。ハルケギニアの外の話でしょうか。エルフの住まう、サハラよりも更に東方の国のことなら、我々が知らないこともあるかもしれませんが・・・」
 「(サハラ砂漠なら知っているぞ!)」と康一は言おうとした。
 しかし、日本とイタリアは、まさしくサハラ砂漠を挟んで東と西である。二人の話とは大分食い違いそうなので、康一は黙っておくことにした。
 オスマンはコルベールと話を続けている。
 「そうか。わしも長く生きておるが、そんな国の名前は聞いたことがない。彼の話は本当だと思うかね。ゴルバット君。」
 「コルベールです。オールド・オスマン。彼の言っていることが本当かどうかはわかりません。」
 コルベールは少し言いよどんだ。
「ただ・・・私は先ほど彼の不思議な力を体験しました。いきなり自分の体が重くなったような・・・」
 「ほう。重くなった、とな。見たところメイジでもなさそうなこの少年がそんなことができるとも思えんが・・・ちょっと君。えーっと、なんという名前じゃね?」
 「康一です。広瀬康一。」
 「そうか。ではミスタ・コーイチ。その不思議な力を、わしにも見せてくれるとうれしいのじゃが・・・」
 「嫌です。」康一はむげも無く断った。
 「なぜじゃね?」
 「ぼくはここにそんな話をしに来たんじゃないからですよ。この状況を説明してくれるっていうからここにきたんですよ!説明しないならぼくを早くもといた所に返してください!」
いい加減我慢も限界に近づいていた康一は立ち上がって叫んだ。
 康一はまだこれがスタンド攻撃であることを微塵も疑っていなかった。
 「まぁまぁ。ミスタ・コーイチ。そうかっかなさるな。聞きたいことがあるならいくらでも説明するからまずは座りなさい。」
康一は不満そうにしながらもしぶしぶ腰を降ろした。オスマンは手を組んで身を乗り出した。
 「興味深いことだが、どうやら君は我々のことをよく知らないらしい。ここがどこだか分かっているのかね?」
 「知りませんよ!さっきもいいましたけど、いきなり鏡のようなものに吸い込まれて、気がついたらあの草原にいたんです!」
 「ここはトリステインの魔法学院じゃよ。聞いたことはないかね?」
 「ま、魔法学院?」
 さっきからちょくちょく言ってるけど、魔法ってなんだ。もしかしてドラクエとかFFとかで出てくる魔法のことじゃないだろうなー。
康一はからかわれているのかと不安になった。
483S.H.I.Tな使い魔4:2009/05/02(土) 23:26:05 ID:W8wlSxGR
 「魔法って・・・なんです?」
 「魔法も知らないなんてどんなところから来たのよ!」ルイズが信じられないものを見るように言った。
 「ミス・ヴァリエール?」
コルベールが静かにするよう促すと、ルイズは黙り込んだ。
 「おほん。魔法というのはじゃね・・・こういうもののことじゃよ。」
オスマンはそういうと懐からコインを一枚取り出した。
杖を手に口の中でむにゃむにゃと呪文を唱えると、それまで机の上に置かれていたコインがふわりと浮かびあがった。
 「う、浮いてる!?」
康一は驚いた。部屋を見回してもスタンドの姿は影も形も見えない。
 もしかして・・・馬鹿げているとは思うが、本当に魔法とやらが存在するのだろうか。さっきみんなが飛んでいたのも魔法の力?
康一はめまいを感じた。
 「これは『レビテーション』という魔法じゃ。そして先ほど君は『サモン・サーヴァント』という魔法でここに召還されたようじゃの。」
 「さっきも言ってましたね。『使い魔』がどうとか・・・」
 「うむ。『サモン・サーヴァント』は使い魔を召還するものじゃ。使い魔とはメイジの・・・そうじゃな。助手のような仕事をする。」
 オスマンはこれがわしの使い魔、モートソグニルじゃ。といってハツカネズミを見せてくれた。
「普通はこのように人間以外の動物や幻獣が呼び出されるものじゃが、今回はどうしてか人間である君が呼び出されてしまったようじゃの。」
 「じゃあ、これはなんです?そこの女の子に・・・えーっと、『キス』されたらこんなのが刻まれちゃったんですけど。」
康一はルイズのほうをチラッと見ながら、左手に刻まれた印を見せた。
 「き、キスじゃないわよ!契約よ契約!誰があんたなんかとキスしたりするもんですか!」
ルイズは康一以上に顔を真っ赤にした。
 オスマンはまぁまぁと二人を宥めた。
 「メイジは使い魔を召還すると、『コントラクト・サーヴァント』で使い魔と主従の契約をするのじゃよ。それは通常口付けによって行われるんじゃ。それはその証のようなものじゃの。」
 「いやですよ!なんでぼくがこんな我が侭な子のペットみたいなことをしなくちゃいけないんだっ!」
康一は声を荒げた。
 由花子と出合った頃別荘に閉じ込められたときのことを思い出した。
あの時も石鹸を食べさせられそうになったり、電気椅子に座らせられそうになったりと人間扱いされなかったが、今度は正真正銘のペットにされてしまうという!
「うむ、君のいうことはもっともじゃ。わしとしても君を帰してあげたいのはやまやまなんじゃよ。」
じゃが・・・とオスマンは背もたれに身を預けた。
「じゃが、あいにく我々は君のいた国がどこにあるのかすら分からんのじゃよ。」
「そんな・・・」康一はがっくりと肩を落とした。
 「こっちに呼び出したのなら、送り返す呪文はないんですか?」
 「うーむ、通常は使い魔になることを同意しているものが召還されるから、送り返す魔法なんてものはないんじゃよ・・・」
 つまりぼくはその『サモン・サーヴァント』ってやつで、魔法の国なんていうゲームの世界みたいなところに、使い魔にするために連れたわけだ。
しかも帰る方法はないという!康一は頭を抱えた。
 「そこでじゃね。どうじゃろう。しばらくこちらで使い魔としてやっていく気はないかね?」
 「はぁ!?」康一は顔をあげた。
 「使い魔召還の儀式はメイジとして生きていくうえでは避けて通れないものでの。そこのミス・ヴァリエールが2年生に進学するためには今、君という使い魔がどうしても必要なのじゃよ。」
 ルイズは顔を俯かせた。
 そんなこと知るもんか!と叫ぼうとした康一をオスマンは押しとどめた。
 「それに想像してみなさい。見ず知らずの世界で、行くあても先立つものもないんじゃろう?食べるものはどうするかね?屋根がない生活はつらいぞい?替えの服はもっているかね?」
 「ぐっ・・・」康一は反論しようとしたが、できなかった。確かに自分はこのわけのわからない世界で身分を保証するものはなにもないのだ。
「少なくとも使い魔として生活するならばミス・ヴァリエールのメイジとしてのプライドにかけて衣食住は保障される。ミスタ・コーイチの故郷のことはわしも興味があるし、調べてみよう。」
オスマンはウインクをして見せた。
「どうじゃ。それまで使い魔として生活してみんか。ミス・ヴァリエールは進学でき、ミスタは住む場所を得る。ギブ&テイクというやつじゃの。」
オールド・オスマンは右手と左手でそれぞれ二人を指差した。
指差されたルイズと康一はお互いに顔を見合わせた。
484S.H.I.Tな使い魔4:2009/05/02(土) 23:27:04 ID:W8wlSxGR



結局その後も言葉巧みに説得され、康一はしばらく使い魔として暮らしていくことを同意させられてしまった。
なんだか上手く乗せられたような気がしないでもないが、実際他にどうしようもないのだからしかたがない。
ルイズは先に部屋を出ている。これから康一が住む場所に案内してくれるらしい。康一も彼女の後を追おうと立ち上がった。
「最後に一つだけいいかの?」オスマンが康一に声をかけた。
「なんです?」
「帰る前に、その『重くする魔法』を使ってみてはくれんかね?わしも魔法を見せた。これもギブ&テイク、じゃよ。」とにっこり笑ってまだ浮いたままのコインを指差した。
康一は溜息をついた。断ろうかとも思ったが、確かめたいこともあった。
「ACT3。」
『YES!MASTER!』
 康一が呼ぶと、突然テーブルの上に白い人影が浮かび上がり、オスマンとコルベールは思わず仰け反った。
 康一はその様子を見て確信した。
 「(やはり・・・見えている・・・)」
 「こ、これがその『ゴーレム』とやらかね?」
 「ゴーレムじゃなくて、『スタンド』ですけれどね。ACT3!そのコインを重くしろ!」
 『S.H.I.T!』
 ACT3が空中のコインを両手で触る。
すると、ズン!!という音を立ててコインが黒檀のテーブルにめりこんだ。
 「おおおお・・・」オスマンとコルベールは立ち上がった。
 「私はさっきこうなっていたのですね!」
 コイン一枚でこの重さだ。自分が受けていた圧力を思うとぞっとした。
 「うむ、半信半疑じゃったが、まさか本当にこんなことが・・・『スタンド』とは、いったいなんなのじゃね?マジックアイテムの類かと思うのじゃが・・・」オスマンは問いかけた。
 「え〜っと、ギブ&テイク、ですよね?」康一は尋ねた。スタンドはもう消えている。
 「うむ、それがどうかしたかの?」
 「じゃあこれより先は、帰る方法が分かってからってことで。」
康一はにっこりと笑った。くるりと背を向ける。
オスマンは驚いたような顔をして、それから額を叩いて笑った。
 「ほっほっほっほ!こりゃ一本とられたの!」
 「それじゃ、失礼しま〜っす。」康一は扉から頭を下げるとバタンと扉を閉めた。

 外に出ると、ルイズが遅いじゃない!といいたげな目で康一を待っていた。そして、「こっちよ。」と歩き出していく。
 康一は「(ひょっとしてぼくはとんでもない約束をしちゃったんじゃないだろうなぁー)」と先行きにどんよりとした不安を感じながらツカツカと揺れる、自分よりも小さな桃色頭についていった。




 康一が出て行った後、コルベールはテーブルに埋まったコインに手を伸ばした。
 完全にめりこんでしまっているが、もう重くはなっていないようだ。爪を立ててようやく引き起こし、つまみあげた。
 「大したものですね。ハンマーで叩いてもこうはなりませんよ。」
コルベールは、裏返したり弾ませたりしてみたが、やはりただのコインだ。
オールドオスマンはその様子を横目で見ながら言った。
「実はの。今そのコインが重くなっている間、わしはレビテーションをかけ続けていたんじゃよ。力を測ろうと思っての。」
「そ、そうだったのですか!?それで、どうでした?」コルベールは目を輝かせて聞いた。
オスマンはただ首を振った。
「全力で持ち上げようとしたが、ピクリともせなんだ。底が知れんよ。」と背もたれに体をあずける。
コルベールは青くなった。あの大賢者と称えられたオールド・オスマンでもその力を測りかねるというのか。
「あの少年、何者なのでしょうか。『スタンド』とはいったい・・・」
自分達はひょっとして、生徒に得体のしれない「なにか」を押し付けたのではないだろうか。
オスマンはゆっくりと立ち上がると窓を開け、中庭を見下ろした。明るい太陽の光が差し込み、コルベールは目を細めた。
「『スタンド』とはなにか、彼がどこから来たのか。それはわしにもわからん。」
オスマンは何か遠くを見ているような目をして語った。
「じゃがのコンバートくん。あの少年は非常に澄んだ目をしておった。やさしく純粋で・・・まっすぐな目じゃった。ミス・ヴァリエールにとって害になることはあるまい、とわしは思うのぉ。」
そして振り向いて笑う。
「それどころか彼を召還したことは、彼女にとって・・・いや、もしかすると我々にとっても望外の幸運なのかもしれんぞ?」
コルベールは、そうだといいですけど・・・。と溜息をついた。
そして、私の名前はコルベールです。とだけ付け加えた。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 23:27:06 ID:XHvbwJKX
支援「した」ぞ!
486S.H.I.Tな作者:2009/05/02(土) 23:29:37 ID:W8wlSxGR
以上が4話になります。
続いて5話にいきますが、規制がかかったらごめんなさい。
487S.H.I.Tな使い魔5:2009/05/02(土) 23:30:37 ID:W8wlSxGR
 「とりあえず座りなさい。」
 部屋に入ってそうそう、ルイズは命令した。
 「・・・座るってどこに?」康一は尋ねた。
 広い部屋である。うちのリビングくらいの大きさかなぁと康一は思った。
 扉から入って正面には大きな窓が開いている。もう暗くて外の様子はわからないが、二階だし景色はよさそうだ。
左手には大きなクローゼットと姿見の鏡が置いてある。そして右手には大きなベッド。ベッドの近くには窓に面するように机と椅子が置かれていて、机のうえにはなにやら分厚い本が開いたままになっていた。
「そうね・・・そこの椅子でいいわ。」マントを入り口近くの帽子掛けにかけながら、ルイズが机の前に置かれている椅子を示した。
康一は言われたとおりに椅子に座り、きょろきょろと辺りを見回した。調度品も一つ一つが飾り気があって、いかにも高そうに感じる。
そうしていると、ルイズがやってくる。腰に手を当てて溜息をついた。
「やっと二人きりになれたわね・・・」
とびっきりの美少女にこんなことを言われてドキドキしない男がいるだろうか!だが、えてしてそういった期待は裏切られるものなのである。ルイズは椅子に座った康一の前に立つと眉を吊り上げた。
「さぁ、白状してもらうわよ。あのゴーレムはなに?」
召還してから今まで、無視されたり教師に割り込まれたりと、質問を邪魔され続けてルイズは我慢の限界にきていたのだ。
やっぱりね・・・。康一は半ば予想はしていたものの、がっくりとうなだれた。
「君にも見えてるんだよねやっぱり・・・ぼくの『スタンド』が。」
「それ!それよ!あんたそいつをどこから出したわけ?」
「どこから・・・といわれてもなぁ・・・」
消えている間、『スタンド』がどこにいるのか、なんてあまり考えたことはなかった。
「まぁ、あえて言うならぼくの体から、かなぁ。」
「嘘!どこかにマジックアイテムを隠してるんでしょ。見せて!」
と手を突き出す。
「そ、そんなのないよ!」
「しらばっくれるんじゃないわよ!あんたみたいな平民がゴーレムを作るなんて、絶対ありえないんだから!」ルイズがつかつかと近づく。
「だから、ゴーレムじゃないったら!それにさっきから平民平民言ってるけど、なんでそんなことがわかるのさ!」
確かに自分は庶民的な家庭の出だが、見ただけでそんなことが分かるのだろうか。
「何言ってるのよ。あんた杖を持ってないし、マントも着てないじゃない。・・・ていうか、あんたって魔法を見たこともないんだったわね。じゃあ貴族にも会ったことがないんだ・・・」
貴族・・・どうやらこの世界では「貴族=魔法を使える人」「平民=魔法を使えない人」ってことらしいぞ?と康一は気づいた。
「まぁそんなことはどうでもいいわ。早く見せなさい!」
ルイズがずいっと近づいてくるので、康一は椅子から立ち上がって後ずさった。
「そんなものはないったら。あれはぼくの『スタンド』だよ。」
「じゃあ、その『スタンド』を私に渡しなさい。」
「だから『スタンド』は渡せるようなものじゃないんだったら!」
ルイズが詰め寄り、康一が下がる。二人はぐるぐると部屋の中を回る。
「ええい、もう!じれったいわね!」
ルイズは痺れを切らして康一を突き飛ばした。康一はちょうど後ろにあったベッドに倒れこんでしまう。
「いいから出しなさい!」
ルイズが康一の上に覆いかぶさり、康一の学生服を脱がそうとする。
「ちょ、ちょっと待って!何をしてるんだぁー!」康一はびっくりして叫んだ。
「うるさいわね!あんたが大人しく出さないのが悪いんでしょ!どこに隠してるの!?」
すごい力である。康一よりも小さいはずの女の子が、抵抗する康一から無理やり服を剥ぎ取っていく。
「だからマジックアイテムなんかないったら!大体もしあったとして、なんで君に見せないといけないのさ!ああっ!ズボンは!ズボンはやめて!」
「やっぱりあるのね!わたしはあんたのご主人様なんだから、使い魔の全てを知る権利があるのよ!!」
「そんな無茶苦茶なぁー!」
488S.H.I.Tな使い魔5:2009/05/02(土) 23:33:04 ID:W8wlSxGR
その時、バタンという音がして突然扉が開いた。ベッドに入ろうとしたところでのルイズの部屋からの大騒ぎに、文句をつけに来たキュルケである。
「うるさいわよルイズ!こんな遅くに何大騒ぎして・・・」
その後に言葉を続けることはできなかった。
なぜなら。ちょうどその時康一はパンツ以外の全ての衣服を剥ぎ取られたところで、最後の砦であるパンツが引き摺り下ろされるのを阻止すべく、必死の防衛戦を繰り広げており、
ルイズは「ここね!ここに隠してるんでしょ!」といいながら、髪を振り乱し、乱れる服装も意に介さず康一にのしかかろうとしていたのだ。
時が止まった。
固まるキュルケと康一をよそに、ルイズは自分の状態にまだ気づいていないようで、
「なによキュルケ。今忙しいから話なら後にしてくれない?」と息を荒げながらのたまった。
「えーっと・・・」キュルケはぽりぽりと頬を掻いた。
「ルイズったら、思ったよりも情熱的なのね。わたしは襲うより襲われる女になったほうがいいと思うけど、それは個人の自由だものね。」
ルイズはキュルケの言葉をしばらく考え、ようやく今の自分の状態に思い至ったようだ。ぱっとパンツから手を離すとキュルケに詰め寄る。
「ちちちちちちち違うのよキュルケ!これはそんなのじゃなくて・・・!誤解よ!誤解だわ!」
「いいのよヴァリエール。気にしないで。恋愛の形は自由なのだから。ただ男の子に好かれたかったらもう少し慎みを持ったほうがいいとだけ忠告しておくわね。」
といいながら扉へと戻っていく。
「待ってキュルケ!話を聞いて!」
「『ご主人様なんだから使い魔の全てを知る権利があるのよ』ねぇ。あのルイズが言うわねぇ。」
ルイズは耳まで赤くして、それはそういう意味じゃないわよ!と言おうとしたが、キュルケはその間にするりと扉の向こうへ逃げてしまった。
「それじゃ、ごゆっくり〜♪」
バタン
・・・・・・・・・・・・・。
ルイズはその場にぺたんと座り込み、頭を抱える。
キュルケは面白おかしくこのことをみんなに話してしまうだろう。そうしたら自分の評判は地に墜ちてしまう・・・!
「嫌がる使い魔を初日で手篭めにした・・・」とか「使い魔に手を出すなんて・・・欲求不満がたまっていたのね。」とか「ミス・使い魔イーター」とか呼ばれてしまう・・・!
「おはよう!ミス・使い魔イーター!」
「あっ!使い魔イーターがこっち見てるぞ!」
「隠せ隠せ!ぼくらの使い魔も美味しくいただかれてしまうぞ!」

「破滅・・・破滅だわ・・・」

康一はルイズが正気にもどったのを見て取ると、剥ぎ取られた服で体を隠しながら、ルイズの肩を叩いた。
「えーっと、落ち着いたんだったら。ぼくのズボンを返して欲しいんだけど・・・」
ルイズは座り込んだままぼんやりとした目で康一を見て、視線をおろした。そしてようやく自分がまだ手に康一の学生ズボンを後生大事に握り締めていることに気がついた。
その瞬間、それまで脱力していたルイズの叩きつけるようなビンタが飛んできた。
「あんたのせいだからねっ!!!」
バッシィィ――z__ン!!!!
威力が強すぎたらしい。康一は吹き飛びながら、ぼくが何をしたっていうんだ・・・と思いつつ気絶した。
489S.H.I.Tな作者:2009/05/02(土) 23:34:31 ID:W8wlSxGR
以上になります。お目汚し失礼しました〜
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 23:35:43 ID:sWUhJkvP
乙せざるを得ない
これは期待
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 00:10:33 ID:A2/Ht4bS
            γヽγヽ    ギャルルルルルルルルルル
         L⌒」U丿U γヽγヽ
       /   ∧_∧\U丿U丿
ギャルル /    |  t \\  「コッチヲ乙ッ!!」
 ルルルル     |__ ●●)) |=   「コッチヲ乙ッ!!」
  ルルル γつ__\冊|/ /))))  ((((⌒ ⌒))))
      γ|  |\_」   ノノノへ ((((   ノノノノ_
      / |  |  0)))) ̄ ̄   \ \      へ  /  /
    γ    \ノノノ  ) ∪ __ \ |    / / /_  /
   γ       ̄  /  /(O゜)ヽ\|)))//_ ∪| /
    |  \      /     ー―‐′   (O゜)\ |/
    \\      /    ⌒        \_ノ  /ヽ
     \      /    ∪     へ    〃 /6ノ
      / ̄ ̄ ̄ ̄|  ∪             ∪/
     /        |       /⌒ヽ  ∪  /
     | / ̄ ̄ ̄\|       /    |    ノ
     |/        |      \___丿  /\
     |         |   \   ー   /   \
     |         |     \ __/      \
                                  \
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 01:56:17 ID:N5V/wPNE
由香子嬢が次元の壁を渡るアップを始めたようです
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 02:00:30 ID:Df3I59LQ
うp主の命懸けの投稿に僕は敬意を乙するッ!!
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 02:01:25 ID:R6Ul4QpG
ひ、ひどいあんまりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!なルイズだよねw
これから先が楽しみだ、やるときはやる康一君の明日はどっちだw

ホントにGJ&お疲れ様でした
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 10:35:26 ID:eEL+bpRl
投下乙
しかしいまさらながら思ったのだが
なんで康一くんは制服着てイタリアに入ったんだろう
修学旅行じゃあるまいし
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 10:37:46 ID:iq47sip0
>>495
きっと承太郎から強い勧めがあったんだよ
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 15:17:00 ID:6NMyJntD
財団がらみの仕事ということで正装 => しかし正装が制服しかなかった
とか
498S.H.I.Tな作者:2009/05/03(日) 18:31:39 ID:fdjuYp0M
今日は一日暇だったので、10話くらいまで書いたりしてました。
とりあえず6〜8話を投下しようと思うのですが、よろしいでしょうか。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 18:32:55 ID:OwjdON/L
>今日は一日暇だったので、10話くらいまで書いたりしてました。
露伴乙
支援の準備は出来てるぞ
500S.H.I.Tな作者:2009/05/03(日) 18:34:28 ID:fdjuYp0M
ありがとうございます。
では投下させていただきます。
まだしばらくは康一君の受難が続きます。
501S.H.I.Tな使い魔6:2009/05/03(日) 18:35:32 ID:fdjuYp0M
 窓から日の光が康一の寝顔を照らす。まぶしくて、康一はもぞもぞと起き出した。
 ベッドに目をやると、毛布に包まった塊のようなものが寝息を立てている。
 「そっか・・・ぼく、あのまま気絶しちゃってたんだ・・・」
 毛布が膝元にずり落ちている。気絶していたぼくに一応毛布だけはかけてくれたらしい。
 立ち上がり、うーん・・・と背伸びをする。堅い床で寝ていたので体の節々が痛い。
 ここで康一は自分がまだパンツ一枚であることに気がついて、あわてて投げ散らかしてある服を着込んだ。
 今日から使い魔としての生活が始まるらしい。
 正直現実味がない。これが魔法の国だなんて、今でも夢だったような気がする。
 しかし、実際には自分は知らない天井を見上げて目覚め、毛布からはご主人様(ということらしい、ぼくは認めたくないけど!!)の白くて小さな足が覗いている。
 康一はこのご主人様(仮)を起こそうかと思ったが、先に今自分がいる場所を見て廻ることにした。
『魔法の国』というやつに康一は少年らしい興味を覚えていたし、なによりあの恥ずかしい大騒ぎの後、すぐに顔を合わせるのはなんだか気まずいからだ。
康一は音を立てないようにこっそりと扉を開け、部屋の外へと抜け出した。


康一は建物の外に出ると大きく深呼吸をした。
康一は朝の冷たい空気が好きだ。草の葉の露に朝日が当たってきらきらと輝くのも好きだし、まだ人気が少なくてシーンと静まりかえっているところも嫌いではない。
ただ、それが見知らぬ場所で自分が余所者だと、なんだか入ってはいけない場所に立ち入っているような気分になる。
康一はとりあえず顔を洗うために水場を探すことにした。
しかし昨日も思ったが、こうして歩いていると明らかに自分達の時代とは文化や文明が違う。まるで話に聞く中世ヨーロッパの建物のようだ。あちらこちらに康一には用途の分からないものが設置してある。
時々何かの文字が書かれていたりもするのだが、康一には読むことができなかった。
と、ここで康一は、はっと気づいた。
「ぼくって今まで何語をしゃべっていたんだ?」
日本語だけでなく、露伴先生のおかげでイタリア語の読み書きもばっちり、それに英語もほんのちょっぴりなら分かるが、思い返してみるとあの人たちが喋っていたのは聞いたこともない言語だった気がする。
「でも、会話は通じるんだよなぁー。どうしてだろ。」
露伴先生にイタリア語を扱えるようにしてもらったときと似た違和感がある。なぜか言葉の意味が分かり、なぜか言いたいことがイタリア語になるのである。(まぁ、ここの言葉は話ができるだけで読み書きはできないみたいだけど・・・)

そんなことを考えながら水場を探してうろうろしていると、渡り廊下の奥から籠をもった黒髪の女の子がやってくるのが見えた。白と黒を基調としたエプロンドレスである。
「(うわー、メイド服だよー!)」
当然だが康一はメイド服を見るのは初めてである。というよりメイドさんという存在は、現代日本ではほとんどいなかった。
「あのー、すいませーん。」
康一が声をかけると、向こうもこちらのことに気づいていたのだろう。足を止めて微笑んでくる。
カチューシャでまとめた黒髪とそばかすがかわいらしい。
「はい、何か御用でしょうか。」
「いや、ご用といったほどのことじゃないんですけど、顔を洗いたくてですね。水場を探しているんですよ。」康一は頭を掻きながら説明した。
「かしこまりました。それではご案内いたしますね。」
こちらです。とメイドさんが案内してくれる。
歩いていると、あの・・・。とメイドさんが話しかけてきた。
「ひょっとして、ミス・ヴァリエールが召還されたという使い魔の方ですか?」
「え、ぼくのことを知ってるんですか!?」
「はい、平民が使い魔になるなんて初めてのことですから。噂になってますわ。」
少女は変わった服装だから遠くからでも一目でわかりました。と笑った。
「そっかー。ぼくは広瀬康一です。よろしく。」
「わたしはシエスタです。何か困ったことがあったら言ってくださいね?」
シエスタ!康一は昨日までいたイタリアでは、シエスタはお昼寝という意味だったということを思い出し、この少女がお昼寝しているところを想像してふふっと笑った。
その様子を見てシエスタが首を傾げる。
「? 何か?」
康一はごまかすようにあわてて手を振った。
「い、いえ。なんでも!いい名前ですね!」

水場はそこから歩いてすぐのところにあった。
康一は綺麗で冷たい水で顔と髪を簡単に洗った。
502S.H.I.Tな使い魔6:2009/05/03(日) 18:36:52 ID:fdjuYp0M
「はぁー!さっぱりした!」
「ふふふ、それはよかったですわ。」
シエスタはここに洗濯にきたらしい。篭の中を覗くと結構な量の洗濯物が入っていた。
「手伝おうか?」
手持ち無沙汰な康一は聞いてみた。
「お気持ちはうれしいですが、お仕事ですから・・・それよりも、ミス・ヴァリエールの元へ帰らなくてもいいんですか?」
シエスタは康一に尋ねた。
「うーん、戻ってルイズさんと顔を合わせるのがなぁ・・・」
康一は首をひねった。
「喧嘩でもなさったんですか?」
「まぁ、そんなところ。」
「だめですよ。貴族の人に逆らったら、大変なことになっちゃうんですから。」
シエスタは忠告してくれた。
「『貴族』・・・かぁ・・・。ねえシエスタ。貴族って怖い?」
康一が尋ねると、シエスタは洗い物の手をぴたりととめた。
「そうですね・・・ここだけの話、正直怖いです。私たち平民は貴族のきまぐれでどうでも好き勝手にされちゃいますもの・・・。康一さんは貴族が怖くないんですか?」
えーっと・・・。康一は言いよどんだ。
「まぁ・・・ぼくが住んでたところには貴族がいなかったからさ。」
「やだ康一さんたら、わたしをからかってるんですね?そんなところあるわけないじゃないですか。」
シエスタはクスクスと笑った。
「でも・・・」
シエスタは空を仰いだ。
「そんな場所があったらいいなぁ。わたしもいってみたいなぁ・・・」
康一はなんと言えばいいのか分からなくなった。
シエスタはしんみりとした空気を吹き飛ばすように。
「な、なーんて。そんなことあるわけないですよね!いいんです!貴族様は魔法っていうすごい力が使えて、私達平民は敵いっこないんですから!生まれたときからそう決まってるんです!」
康一はこの世界の『貴族』と『平民』の関係を理解した。
この世界では魔法が使える貴族が絶対で、使えない平民は生まれた瞬間から奴隷同然なんだ。
きっとシエスタも今まで嫌な思いをたくさんしてきたのだろう。
ぼくも少し前までは何の力もないただのコゾーだった。でも今は他の人にはない『スタンド』がある。でも、貴族ではない。使い魔だから平民でもない。
「(ぼくは、ここではいったいなんなんだろうなァー・・・)」


そうして雑談をしているうちに、日は昇り、少しずつ人通りが多くなってきた。
シエスタの洗濯物も終わって、康一はルイズの部屋へ戻ることにした。
別れ際、シエスタに「がんばってくださいね!」と手を握ってもらったのもあるがなにより、
「いつまでも逃げてるわけにもいかないもんなぁー」
きっとなんとかなるさ!
康一はこれでなかなか前向きな性格だった。
503S.H.I.Tな使い魔7:2009/05/03(日) 18:38:05 ID:fdjuYp0M
康一が部屋に戻ると、まだご主人様(仮)は毛布を頭から被って丸まっていた。
何時に起こせ、とも言われていないのだが(というより時間が分からないが)、康一はとりあえずルイズを起こすことにした。
「ねぇ、君。起きなよ。」
毛布を揺さぶる。
だが、ルイズは「違うもん・・・食べないもん・・・使い魔食べないもん・・・」だのと寝言をつぶやきながら起きようとはしない。
「もう、しょうがないなぁ。ほら、いい天気だし、起きろってば!」
康一は無理矢理、がばっと毛布を剥ぎ取った。
息を呑んだ。
長い桃色の髪の毛が、ゆるやかなウェーブを描いてシーツに広がり、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
その中で胎児のような格好で眠る少女は、急に毛布が奪われたせいだろう。雪のように白くて細い手足を更に縮こめて眉根を寄せた。
康一は何か見てはいけないものを見てしまった気がしてあわてて視線を逸らした。
「あ、朝だよ!起きなくていいの?」
康一が明後日を向いたまま声をかけると、それまで丸まっていた少女が、シーツの上でゆっくり伸びをして、起き上がった。
まだ寝ぼけたようにぼんやりとした表情で、あんた誰?と聞いた。
康一は呆れた。
「昨日君に無理矢理召還された広瀬康一だよ。もう忘れたの?」
ルイズはあー、そういえばそうだったわねー。とつぶやいて。それからようやく昨日の夜のことに思い至ったのだろう。
「あ、あのねー。昨日のことは・・・」
「分かってるって。でも、ぼくが何も持ってないことはわかっただろ?」
ルイズはまだ言い足りないようだったが、まぁいいわと自分を納得させたようだった。
そして自分の格好に気づく。
「わたし、あのまま寝ちゃったんだわ・・・」
ルイズは康一が気絶した後、どうしようどうしようと一通りおろおろしたあと、もうどうにでもなれ!とそのままベッドに飛び込んだのだった。
康一に毛布をかけることにまで気が回ったのはまさしく奇跡といえる。
ルイズはもう一度大きく伸びをして、それからブラウスのボタンに手をかけた。
ボタンをはずしていくほど、その奥の下着が垣間見えて行き、康一は悲鳴をあげた。
「ちょ、ちょっと!何でいきなり脱ぐんだよ!」
ルイズは、はぁ?と怪訝そうに言った。
「だって、昨日着たものをそのまま着てたら気持ち悪いじゃない。」
「ちがうよ!ぼくが見てないところで着替えてくれって言ってるんだ!」
「なんで?」
「なんで?って・・・乙女の恥じらい・・・とか。」
康一はぼそぼそとつぶやいた。
「あのねー。もう一回断っておくけど、あんたはわたしの使い魔なのよ?使い魔に見られたくらいでいちいち恥ずかしがってられると思ってんの?」
ルイズはブラウスを脱ぎ捨てたところで腰に手を当てた。
本当に恥ずかしくないらしい。
昨日あれだけあわてたのも、単に体面の問題だったようだ。
もう本当に男として見られてないというか、犬猫の扱いなのね・・・。
康一は改めてがっくりときた。
ルイズは肩を落とした康一をしばらく見ていたが、気にすることなく今度はスカートを脱ぎ始めた。
康一はあわてて背中を向けた。
そこにルイズから声がかかる。
「下着。」
「は?」
「気が利かないわねー。取ってっていってるの。」
「し、下着くらい自分で取ってくれッ!」
「あんた使い魔なんでしょー。それくらいやるのは当然じゃない。」
うぐっ!康一はさらに言い返そうとして言葉を飲み込んだ。
康一はこの世界の『使い魔』について何も知らない。
確かに自分は使い魔になることを承諾した。しかしまさかこんなことまでさせられるとは!
「(お姉ちゃんの下着だと思おう。お姉ちゃんの・・・)」
康一はいろいろと後悔したが、とりあえず言うとおりにすることにした。
背を向けた後ろで、するすると下着を外す音がする。
そりゃー、そうだ。新しい下着を着るには古い下着を脱がなくちゃいけないですよねー!
「(お姉ちゃんが着替えてるだけだ。お姉ちゃんが着替えてるだけ・・・)」
康一は心の中で繰り返して乗り切った。
「ブラウスとスカート。」
もう言い返す気力もない。同じくクローゼットをあさり、下着姿のルイズを見ないようにして手渡した。

504S.H.I.Tな使い魔7:2009/05/03(日) 18:40:24 ID:fdjuYp0M
「なにしてんの。あんたが着せるのよ。」
「な、なんだってー!?」
いい加減に我慢の限界だ!
そりゃあ女の子の着替えに立ち会えてちょっと嬉しいのはあるが、この扱いはあんまりだ!
康一はルイズが下着姿なのにも構わず向き直った。
「平民の召使いがいるときは、貴族は自分で服なんて着ないの。知らないの?」
「ふざけるなっ!それくらい自分でやってくれ!ぼくをなんだと思ってるんだ!」
「使い魔でしょ?衣食住を世話するかわりに使い魔をやるんだったわよねー?」
ルイズは椅子に腰掛け、ふふん♪と足を組んだ。
「そ、それは・・・でもいくらなんでも・・・!」
「あんたを誰が養うと思ってんの?さぁ、早くしなさいってば。」
もうぐうの音もでない。
とほほ、な康一は出来るだけルイズのほうを見ないようにしてプリーツスカートを手に取った。


「さて・・・と。」
すっかり着替え終わったルイズは姿見で身だしなみを整えている。
一方の康一はすっかり尊厳を踏みにじられてげっそりとしていた。
「使い魔がこんな大変なものだなんて思わなかったよ・・・」
「何言ってるの。まだ、なーんにもしてないじゃない!」
ルイズは腰に手を当てた。
康一は今のうちに使い魔は何をすればいいのかを聞いておくことにした。
「他にぼくは何をすればいいわけ?」
着替えを手伝ったり雑用をしたりするだけなら、それはただの召使いな気がする。
「そうねぇ・・・」
ルイズはアゴに人差し指をあてて首をかしげた。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。」
「はぁ」
スタンドとスタンド使いのようなものだろうか。
康一もACT1の視界を借りることで、半径50m程度の偵察を行ったりすることがある。
「でも、無理ね。わたしあんたの見てるものとか聞いてるものがわかんないもん!」
それは正直助かるなぁ。と康一はほっとした。
そんなことになったらプライバシーもなにもあったもんじゃない。
505S.H.I.Tな使い魔7:2009/05/03(日) 18:41:05 ID:fdjuYp0M
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば、秘薬とか薬草とか、鉱石とかね。」
でも・・・とルイズは続けた。
「あんたには無理そうね。頭そんなに良さそうにはみえないし。」
康一はムッとしたが、実際学校の成績がよかったわけでもなかったし、秘薬だのなんだのというのもさっぱりだったので何も言わなかった。
「そしてこれが一番大事なんだけど・・・使い魔は主人を守る存在なのよ!あんた、昨日ゴーレム・・・・えっと、『スタンド』だったっけ?それを出してたでしょ?ひょっとして強いの?その『スタンド』」
康一はうーん、と唸った。
康一は自分のスタンドを信頼してはいたが、強いか?と聞かれると返答に困った。
康一は今まで数々の戦いを経験してはいるが、実際1対1で戦って勝ったことはあまりない。
強敵との戦いではいつも誰かのサポート役だった。
『エコーズ(ACT1、2、3)』を他のスタンドと比べると、時間を止められる承太郎さんの『スタープラチナ』は最強すぎるので除外するとしても、
仗助くんの『クレイジー・D』のようなパワーとスピードもないし、億泰くんの『ザ・ハンド』のような一撃必殺の能力もない。
露伴先生の『ヘブンズ・ドアー』には何度戦っても勝てる気がしないし、あの殺人鬼吉良吉影の『キラークイーン』には相手にもならず一度殺されかけている。
そうして考えて行くと、真正面から戦ったら自分が知るスタンド使いのほとんどに、自分は勝てないだろうなぁ。と思う。
自分だけで勝てたのは由花子の『ラブ・デラックス』と玉美の『錠前』くらいだが、『ラブ・デラックス』ともう一回戦ったら手も足も出ない気がするし、玉美にいたっては、戦闘力では一般人と変わらない(玉美は康一よりもさらにチビだし!)。
康一が沈黙すると、ルイズは溜息をついた。
「まぁ・・・そもそもあんたにそんなのを求めるのがおかしいわよね・・・」
ルイズはまだなにやら考え込んでいる康一を眺めた。
第一印象は『チビ』だった。同年代の女の子の中でもかなり小さいほうに入るルイズ(153サント)と目線がほとんど同じなのだ。
多分実際の身長はルイズよりも少し高いとは思うのだが、そのキャラクターのせいなのか、自分より小さく感じる時すらある。
力も弱かったし、何か一芸に飛びぬけているようにも見えない。
そして何よりも、文句ばっかり言うくせに、頼りない性格。当てになるはずがない。
「わかったでしょ?あんたができそうなのって、掃除や洗濯みたいな雑用くらいしかないのよ。だから文句を言わずに働いてよね!」
でも君が思ってるよりは役に立つと思うんだけどなぁ・・・。康一は思ったが、たぶんそれを言い出しても余計に面倒なことになるだろうと思ったので黙っておくことにした。
506S.H.I.Tな使い魔8:2009/05/03(日) 18:42:18 ID:fdjuYp0M
「そろそろ朝食の時間ね、あんたもついてきなさい。」
とルイズが言うので、彼女について康一は部屋を出た。
すると丁度康一の左手のドアが開いて、女の人が出てきた。
「(あっ、昨日の女の人だ)」
と、康一は気づいた。
炎のような真っ赤な髪と褐色の肌。ルイズと同じ服装(たぶん魔法学院ってやつの制服なんだろう)なのに、上のボタンを大きく開けて豊満な胸を露出しているせいかずいぶんと印象が違う。
ルイズが『美少女』ならばこちらは『美女』だろう。とびっきりの、とつけたいところだ。
康一はついつい胸元に目が行きそうになるのをこらえた。
「(だ、だめだだめだ!こんなところ由花子さんに見られたらどんな目にあうか!)」
付き合うようになってからの由花子は、暴力で康一をどうこうすることはなくなった。
だが、代わりにあの気の強そうな目を細めてずっと康一を睨むのである。
・・・もう由花子さんには会えないのかなぁ・・・。
 康一は切なくなった。
『美女』はこちらに気づくとにこりと笑った。
「おはようルイズ。昨夜は楽しめて?」
「た、楽しんでなんてないわよ!あれは使い魔の持ち物をチェックしてただけなんだから!勘違いしないでよね!」
「まぁ、あなたの恋路には口を挟む気はないわ。それより・・・」
ルイズが「恋路って何よ!色ボケキュルケ!」と叫ぶのを無視して、キュルケは康一のことをじろじろと眺めた。
「な、なに?」
康一はこんなに色気のある人と出会ったのは初めてだったので、目のやり場に困って顔を赤くした。
「ふーん・・・ホントに人間じゃない!人間を使い魔にするなんて、さすがはゼロのルイズ!」
ルイズはむっとした。
「うるさいわね。私だって好きで平民を呼び出したわけじゃないわよ!」
ぼくだって好きで君に召還されたわけじゃないよ!と康一は思ったが口には出さなかった。
「あたしも昨日使い魔を召還したのよ?どこかの誰かさんと違って一発で成功したわ。」
そういうと、キュルケの部屋からのそりと大きな何かが姿を現した。
「うわぁ!」
康一は飛びのいた。
真っ赤なトカゲである。それだけなら一向に構わないのだが、その大きさが虎ほどもあった!
四つんばいなのに頭が康一の胸の高さにある。なぜか尻尾の先が松明のように燃え上がっており、むんという熱気が康一のところまで届く。
使い魔といわれて犬とか猫とかネズミとかを想像していた康一は悲鳴をあげた。
「そ!それなに!?」
「あたしの使い魔・・・『火トカゲ』のフレイムよ。見て!この大きさ!鮮やかな炎!わたしにぴったりの使い魔だわ!」
「あんた『火』属性だもんね。」
ルイズは苦々しく言った。
「ええ、あたしは『微熱』のキュルケ。ささやかに胸を焦がす情熱の炎よ!」と胸を張った。
さらに突き出した胸に、康一はごくりと生唾を飲み込んだ。これはさぞやモテることだろう。
キュルケは腰を屈め、康一に顔を近づけた。大きな胸がさらに強調されて、康一はドギマギした。
「それで・・・あなたのお名前は?」
「ひ、広瀬康一・・・」
「そう。変わったお名前ね。あたしはキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。」
そして康一の耳元に唇を近づけて言った。
「あたし、あなたに興味があるの。また今度二人きりでお話したいわ・・・」
「はわわわわ・・・」康一は顔を真っ赤にした。
「ちょっと!わたしの使い魔になにしてんのよ!!」
ルイズが二人をぐいっと引き離す。
「あら、独占欲?力ずくは醜いわよルイズ!」
「違うわよ!この色ボケ!!行くわよ、平民!」
康一の襟を引っつかんでずるずると引き摺っていく。
「わ、わぁ。ちょっと!歩く!歩くから!」
康一は引き摺られながら悲鳴をあげた。
「またね〜〜♪」
キュルケは満面の笑顔で手を振って見送った。
507S.H.I.Tな使い魔8:2009/05/03(日) 18:43:04 ID:fdjuYp0M


「ほんとにもう!ツェルプストーなんかにデレデレしてっ!この馬鹿犬!」
ついに犬に格下げですかぁー!?もう怒る気も失せる。
「あの人と仲悪いの?」
「ヴァリエールとツェルプストーとは先祖代々犬猿の仲なのよ。」
ルイズは歩きながら説明した。
要するに、ルイズのヴァリエール家とキュルケのツェルプストー家はトリステインとゲルマニアっていう二つの国の国境沿いで領地を接していて、代々何かと戦ってきた間柄らしい。
しかもなぜかいつも恋のライバルでもあったようで、代々ヴァリエール家は代々ツェルプストー家に恋人を取られ続けてきた歴史があるのだという。
「なんとなく想像つくなぁー」
康一はちらりとルイズを見た。
ものすごくきつい性格のルイズと比べて、あっちのキュルケは包容力がありそうだ。
それに何より、ストーン!としたルイズとボイーン!としたキュルケ。
ふらふらとあちらに行きたくなったヴァリエール家ご先祖様達の気持ちが康一にも分かる気がした。
「・・・なによ。」
ルイズがじろりと睨む。
「いーえ・・・なんでも・・・・」
康一は目を逸らした。


「うわぁ!すごい豪勢だなぁ!!」
康一は目を輝かせた。
ここは『アルヴィーズの食堂』。トリステイン魔法学院の貴族は、みなここで食事をとる。
学院の中で最も高い、真ん中の本塔の一室にある食堂は、驚くほど広い空間だった。
学校の体育館ほどの広さがあるだろうか。だが、これだけ広いのに、イタリアで見た教会の大聖堂ような荘厳な雰囲気を漂わせている。
3列に並べられた長い長いテーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられ、その上には燭台が並べられ、フルーツの篭やでかい鳥のロースト、ワインや鱒の形をしたパイなどが所狭しと並べられている。
ゴクリ・・・。康一は口の中でよだれが出てくるのを感じた。そういえば昨日の昼に召還されてから何も食べていないのだ。
「うわぁー!すごい豪勢な食事だなぁー!朝からこんなに食べられるかなぁー!」
康一はここにきて初めて、「召還されていいこともあるなァー!」と思った。
ルイズは眉をひそめた。
「何言ってるの。ここは貴族の食卓よ?あんたみたいな平民が席を同じくできるわけないじゃない。」
「え・・・?」康一は目を見開いた。
「じゃあ、ぼくの朝食はどこにあるっていうのさ!」
そういうとルイズはそこで初めて気がついたように、「あー、そういえば。」と言った。
「あんたの食事、手配するの忘れてたわ。」
「わ、忘れてただってェー!!」
「しょ、しょうがないじゃない。手配するような暇がなかったんだもん。」
ばつが悪そうにしてつぶやく。
「じゃあ、ぼくは何を食べればいいのさ!」
「一食抜いたくらいじゃ死にはしないわよ。悪いけど我慢してちょうだい。」
「ぼくは昨日の夜も食べてないよっ!」
「うるさいわねー。わたしだって食べてないわよ。それよりも、椅子を引いてちょうだい。気の利かない使い魔ね。」
「こ、このぉー!!」
こいつ、可愛い顔して血も涙もないッ!ギブ&テイクといっても限度がある!大体お前がぼくを無理矢理こんなところに連れてきたんじゃないか!!
康一は踵を返した。
「ちょっと、どこ行くのよ。」ルイズが呼ぶが、
「知るもんかッ!!」康一は振り返らずにアルヴィーズの食堂を後にした。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 18:46:14 ID:OwjdON/L
そういえばACT3って人を押しつぶすほどのパワーはないんだっけ
康一が漆黒の殺意に目覚めたらそれくらいは出来そうな気が
509S.H.I.Tな作者:2009/05/03(日) 19:01:58 ID:fdjuYp0M
以上、6〜8話になります。
書き込み規制とか入っちゃうので投稿方法考えたほうがいいかなぁ。
次回から康一くんに救いの手が差し伸べられたりするようです。
ではお目汚し失礼しました〜ン
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 19:06:25 ID:fdjuYp0M
>>508
押しつぶすほどのパワーはないのに、石畳やアスファルトにめり込んだりしてますよね。
どれくらいの『重さ』がかかるのか、判断が難しいところだったりします。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 19:31:39 ID:N5V/wPNE
おれはそれを納得するために重くするものの回りに力場みたいなのが出来ているんだ!って思うようにしてる
まさに重りを付けられているような
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 19:42:38 ID:OwjdON/L
対象を押し潰すというより重くしているって事だろうか
となると殺すつもりでやったら潰れるんじゃなくてそれこそ大地に文字通り沈んでいくのかも
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 20:07:50 ID:7X4pNHfs
舗装道路にめり込むくらいだからその気になれば50t以上はかかってるもんだと思ってた
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 21:00:11 ID:Df3I59LQ
何よりうp乙です!
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 23:02:54 ID:h26HM8V+
流石は第四部常識と良心担当の康一君だぜ投下乙

Act3は「シアーハートアタックを無力化したい、近付かれたくない」という
康一の願望で発現したと考えたら、あの瞬間に一番好ましい結果は
「シアーハートをものすごく重くして地面にめり込ませて動きを止める」だったと思う

で、超重力をかけた物体そのものが重さで潰れない理由は、Act3発現の直前に
承太郎のオラオララッシュでもシアーハートを破壊出来なかったのを目撃したから、
「僕のエコーズではシアーハートを破壊出来ない」という無意識の制約がかかっちゃった
為に「対象の物体を重くして地面にめり込ませる効果」までで止まったと愚考。
HBの鉛筆を折るように出来て当然だと考えられなかった結果ではなかろうか?
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/03(日) 23:14:36 ID:fdjuYp0M
>>515

なるほど・・・なんだかすごく説得力を感じますね。
『重くなるけど、潰れない』
そんな能力でもいいですよね。スタンドなんですし。
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 00:54:37 ID:KTNFqz7k
上から押さえつけるってより対象自身が重くなるって感じかね
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 01:49:43 ID:IvfAKTzc
SHITの人乙
メイジ相手だと杖重くしたら一発のような気がするがどうなるかねー
GW中暇すぎるからGW中だけでも爆速更新してくれればうれしいぜ
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 02:15:03 ID:bn2DRXII
>>518
重くして、その後どうするんだwwww
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 06:47:57 ID:nXJMPtYT
杖重くしたら魔法唱えられないし勝ちってことじゃね
振らなくても手で握ってるだけで魔法が唱えられるのならアウトっぽいし
そもそも杖を重くできるくらい近づけるのなら本体重くしろって話だが
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 07:56:23 ID:Dlre0bKo
今思い付いたんだがAct2で「シーン」って尻尾文字付けたら魔法唱えられなくなるんじゃね?
522S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 10:31:41 ID:DFmcJLF2
もう少ししたら8〜11話をうpさせていただく予定です。
ひょっとしたら夜にもう少しだけうpれるかもしれません。
ただ、明日から更新スピードがゆっくりになると思います。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 11:18:14 ID:M9+IDAS1
>>521
どこかのSSで読んだんだが、敵の刃物に対して康一の身体に『カキーン!』という音を貼って
刃物を防ぐとかやってたのを思い出した
524S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 11:46:59 ID:DFmcJLF2
勘違いしてました。9〜11話でしたね。
ではちょっと失礼して、投下させていただいてもよろしいでしょうか。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 11:51:35 ID:AM3Wv46F
S.H.I.E.N!
526S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 11:53:02 ID:DFmcJLF2
ありがとうございます。ではいきます。
527S.H.I.Tな使い魔9:2009/05/04(月) 11:53:46 ID:DFmcJLF2
アルヴィーズの食堂を飛び出した康一だったが、しばらく歩いたところで座り込んでしまう。
「あー、お腹減ったなぁ・・・」
お腹がグルグルと鳴る。さっきまではこの異世界に気を取られて意識しなかったが、お腹が減ってしかたがない。
「そういえば・・・」康一は思い出す。
昨日は駅についてから昼飯を食べようと思っていたところを捕まったのだ。
つまり、これで丸一日食べてないってことになるんじゃないのかァー!?
「衣食住は保障されるんじゃなかったのかァ〜?約束が違うよ〜。」
さっき豪勢な食事を見たせいで余計につらくなってきた。
康一はお腹をおさえて溜息をついた。
「あら、コーイチさん。どうかされたんですか?」
え?と顔を上げた。黒髪のメイドさん。朝に会ったシエスタだ。
「ああ、シエスタか・・・。いや、大したことないんだけどさ・・・ルイズにご飯を抜かれちゃって・・・」
お腹がグルグルキュキュキュ〜!と鳴いて、康一は顔を赤らめた。
「まぁ、それは大変でしたね!こちらにいらしてください。まかない食でよければお出しできますよ。」
シエスタは康一の手を取った。
「ええっ!いいのぉ〜!?」
「もちろんです。ささ、こちらにいらしてください。」とシエスタは康一の手を引いてくれる。
シエスタの笑顔が天使に見えて、康一はちょっとだけ涙ぐんでしまった。


「ゥンまああ〜いっ!」
康一はシチューをガツガツとすくった。
「よっぽどお腹が空いてたんですね。」
シエスタはクスクスと笑った。
康一がつれてこられたのは食堂の裏手にある厨房の一角だった。
大きな鍋やオーブンなどが並んでいる。あちらこちらに色々な食材が貯めてあるのが見える。
そこでシエスタは、康一のためにパンとシチューを持ってきてくれたのだ。
この世界に来てから初めて優しくされた気がする!
お腹を満たす幸福感ともあいまって、康一はほろほろと涙を流した。
「こんなに美味しい食事は初めてだよぉ〜!」
空腹は最高のスパイスというのは本当だ!と康一は思った。
「ふふ、大げさですね、コーイチさんは・・・」
シエスタは流れる涙をハンカチでそっと拭いてくれた。
たぶん、童顔で背の低い康一を年下の男の子だと思っているんだろう。
康一はたぶん同い年くらいだろうと思ってはいたが、優しさが心地よいのであえて何も言わなかった。
「ぼく、召還されてからこんなに優しくされたの、初めてで・・・本当にありがとうございます〜!」
「いいんですよ。平民同士助け合わないと、ですしね。」
シエスタは笑った。
「それにしてもひでぇ話だ!」
40過ぎで太めの男がやってきて怒ったように言った。
彼はマルトーさん。この魔法学院で料理長をしているらしい。
康一を連れたシエスタが事情を説明すると、同情して食事を出してくれたのだ。
「無理矢理使い魔にしておいて、メシも与えないなんざ、平民をなんだと思ってやがる!」
康一の肩に手を載せる。
「貴族はいつも勝手なもんさ。平民がいなきゃなんにも出来ない癖して、いっちょ前にいばりやがって。おまえも災難だったなぁ。こんなもんでよけりゃいつでもご馳走するからいつでもこいよ?」
「はい!ありがとうございます!」
康一は初めて味方が出来た気がして嬉しくなった。
でも・・・とシエスタが康一を気づかうようにいった。
「あまりミス・ヴァリエールを嫌わないであげてくださいね?」
「どうして?」
康一は尋ねた。
「ぼく、あいつに召還されてから今までろくな目にあってないんだけど・・・」
「ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです・・・・」シエスタは目を伏せた。
話によると、シエスタが以前貴族にいびられているときに、ルイズが助けてくれたことがあるらしい。
528S.H.I.Tな使い魔9:2009/05/04(月) 11:54:31 ID:DFmcJLF2
「想像つかないなぁ〜」
康一は首をひねった。
「多分ミス・ヴァリエールは焦っておられるんです。だから周りが見えなくなってるんじゃないでしょうか。」
「焦る?どうして?」
「えーっと、それはですね・・・」シエスタが言いにくそうに口ごもっていると、
「コーイチ!コーイチー!どこにいるのー!出てきなさーい!」
とルイズの呼ぶ声がする。
「噂をすれば、ってやつだね。」
康一は溜息をついた。でも、美味しい食事と優しさをもらった。しばらくがんばれそうだ。
「ありがとうマルトーさん。シエスタ。ぼく、行くよ。」
「そうか、がんばれよ。」
「またいつでもいらしてくださいね!」
二人に見送られ、康一はルイズの声がするほうへ走っていった。


康一が走ってくるのを見つけると、ルイズは怒ったように言った。
「どこいってたのよ。」
「ぶらぶらしてただけだよ・・・。」
厨房のことは言わなかった。何か言われたらたまったものではない。
さっき喧嘩したばかりで、少し気まずい康一に、ルイズが「これ。」と手を突き出す。手には一個のパンが乗っていた。
「・・・何これ。」と康一が聞くと、ルイズは少し顔を赤くした。
「お腹が減って倒れられたら困るでしょ!ほら、早く食べなさいよ!」
ルイズはパンを押し付けると、スタスタと歩き去っていく。
康一は押し付けられたパンを見た。多分食卓から康一のために取ってきてくれたのだろう。
ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです。というシエスタの言葉を思い出す。
「ほら、早く来なさいよ!授業に遅れちゃうでしょ!」
いつまでもついてこない使い魔をルイズが呼ぶ。
「も〜・・・しょーがないなぁ〜」
康一はパンをくわえると、小さなご主人様(仮)を追いかけることにした。
529S.H.I.Tな使い魔10:2009/05/04(月) 11:55:14 ID:DFmcJLF2
魔法学院の教室は、以前大学見学のときにみた講義室のようだった。
ただ、全体が石造りだし、天井の明かりは蛍光灯ではなく、何か白熱電球のような光がふわふわと浮いていたりするのだった。
「(うーん、魔法だ・・・)」
康一は改めて、ここが魔法の世界だということを確認した。
ルイズと康一が入ると、教室のあちこちからクスクスという笑い声がする。
ルイズはそれが聞えないふりをしていたが、康一からはルイズの耳が赤くなっているのがわかった。
教室を見回すと、様々な動物がいる。というか見たこともないような生き物があちらこちらでうようよしている。
でっかい目玉おばけがふよふよと浮いていたり、下半身が蛸の女性が大きなあくびをしていたりするのが見える。
康一は目を擦ってみたがやはり見間違いや幻覚ではないようだ。
誰も騒ぎにしないところを見ると使い魔というやつなのだろう。
その中に朝出会った赤くて大きなトカゲをみつけた。
案の定、その近くの席にキュルケが座っていた。周りを男達に囲まれているのを見て「やっぱり男のほうが放っておかないよなぁー」と思う。
向こうもこちらに気づいて、康一にひらひらと手を振ってきた。
こちらも手を振り返したら、ルイズに後頭部を叩かれた。
ルイズが席の一つに座ったので、康一も隣に座った。
ルイズが変な顔をした。
「あんた、なにやってんの?」
「なにって・・・」
「そこはメイジの席よ。使い魔は座っちゃダメ」
「じゃあ、どこに座ればいいのさ!」
どこを見渡しても『使い魔用の席』なんてものは見当たらない。
「床に座ればいいじゃない。」
ルイズはさも当然そうにいった。
康一はまた出て行きたくなったが、ぐっとこらえてルイズの近くの段差に座り込んだ。
石畳に座るとおしりがつめたい・・・。康一は黙って立ち上がると、教室のうしろに立っていることにした。
ルイズはその様子を見ていたが、何も言わなかった。
そうしていると、扉が開いて中年の女の人が入ってきた。
紫色のローブに身を包み、帽子を被っている、ややふくよかで優しそうな人である。
彼女は教壇に立ち、教室を見回すと、満足そうに微笑んでいった。
「皆さん。春の使い魔召還は、大成功のようですわね。『メイジを知るには使い魔を見よ』といいます。このシュヴルーズ、みなさんが立派に使い魔を召還できたことを誇りに思いますよ。」
クスクスという笑い声が教室のあちこちから聞える。
シュヴルーズは教室の後に立っている康一を見つけると、誰だろうかとしばらく考えていたが、思い至ったらしい。
「ああ、そこの平民の男の子は、ミス・ヴァリエールの使い魔ですね?なかなか個性的というかなんというか・・・」
と先生が呆れたようにいうと、教室がどっと笑いに包まれた。
ルイズは顔を真っ赤にして身を縮めている。
シュヴルーズはさっと手を振り、教室の笑いを沈めると、教師の顔に戻って言った。
「それでは授業を始めます。私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。二つ名の通り、『土属性』のメイジです。では、まずはおさらいから。魔法の四大系統はご存知ですね?」
教室を見回す。
「ミスタ・マリコルヌ?」
名前を呼ばれた太っちょな生徒が立ち上がった。
「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。「火」「水」「風」「土」の四つです!」
シュヴルーズは頷いた。
「よくできました。ミスタ・マリコルヌ。これに今は失われた『虚無』の系統を加えて、全部で五つの系統があります。我々メイジは、今までこの始祖より与えられた『系統魔法』を使い、人々の暮らしを豊かにしてきました。」
シュヴルーズは講義する。魔物から土地を解放し、開拓し、建物を立て、暮らしに必要なものを作る。病気を癒し、天候を読み、人々を守る。魔法の恩恵があるからこそ今の世の中があるのだと。
康一はうーん、と腕組みをした。なるほど、メイジが威張るのにも理由があるんだなぁ〜。
シュヴルーズは教卓を右に左にと歩きながら続けた。
「そうした系統魔法の中で、『土』は一際生活に密着した属性であると言えるでしょう。そこで、まずは皆さんに『土』系統の基礎である、『錬金』のおさらいをしてもらいます。」
そういうと杖を振った。
教卓の上に数個の石ころが並べられる。そのうちの一つに杖を当てた。
シュヴルーズが短いルーンを唱えると、そのただの石ころが一瞬眩しく光り、黄金色の金属に変わっていた。
530S.H.I.Tな使い魔10:2009/05/04(月) 11:56:54 ID:DFmcJLF2
「う、うわぁー!ただの石っころが黄金になったぁー!!」
康一は思わず声をあげた。
教室中からまた小さな笑い声がする。
ルイズは康一をキッと睨み、ぱくぱくと口だけで「あんたは黙ってなさい!」と言った。
シュヴルーズは康一のことを少し見た。
「・・・いいえ、これは黄金ではなく真鍮です。私はただの『トライアングル』ですから・・・。黄金練成は『スクウェア』クラスでないと不可能です。」
教室を見回す。
「みなさんのほとんどは『ドット』か『ライン』ですが、真鍮への練成は『ドット』クラスでも可能です。」
「せんせー!『ゼロ』クラスでも可能でしょうかー!」
金髪の少年が手を上げて言うと、教室がどっと笑いに包まれた。
ルイズがその場でがたっと立ち上がった。
「ギーシュ!あんたは黙ってなさいよ!」
「別に、ぼくはただ授業における健全な質問をしただけだよ。無駄口は慎みたまえ『ゼロ』のルイズ。」
金髪の少年は手に持った薔薇で口元を隠し、にやりと笑った。
なんとなく康一はむっとした。
「はい、そこまでです。静かにしなさい。」
シュヴルーズが手を叩くと、再び教室が静かになる。
「ミスタ・グラモン。お友達を挑発するものではありません。」
シュヴルーズが注意すると、ギーシュは「かしこまりました、ミセス。」と大仰に一礼をした。
「では、ミス・ヴァリエール。あなたに、この真鍮への錬金をやってもらいましょうか。」
教室がどよめいた。
「え、わたしですか?」
ルイズは自分を指差した。
「そうです。さぁ、教卓の前に出てきなさい。」
と机の上の小石を杖で示した。
ルイズはなぜか立ち上がらない。どうしようかと迷っているようだ。
発表するのが恥ずかしいのかな?だとしたら意外な一面だ。と康一は思った。
「さぁ、恥ずかしがらずに!私はあなたが非常に勤勉な生徒であると聞いてますよ?落ち着いてやれば大丈夫です。さぁ、失敗を恐れずに!」
シュヴルーズは促した。
ルイズはそれでも迷っていたようだが、やがて決心したように立ち上がった。
教室から悲鳴が上がった。
「ルイズ、やめて。」
キュルケがおびえたように言う。
「うわぁー、ゼロが魔法を使うぞぉー!」
「みんなかくれろぉー!!」
それらの声を意に介することもなく、ルイズは緊張した面持ちで教室を降りていく。
ルイズがシュヴルーズ先生の前に立ったころには、教室内の生徒は皆机の下に隠れていた。
シュヴルーズはそんな生徒達を不思議に思ったが、とりあえずルイズに試させることにした。
「さぁ、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を思い浮かべるのです。この場合は真鍮ですね。」
ルイズはその言葉にこくりと頷くと、一度大きく息をして手にもった杖を振り上げた。
思い切ったように、目を瞑り、杖を振り下ろす。
531S.H.I.Tな使い魔10:2009/05/04(月) 11:57:51 ID:DFmcJLF2

その瞬間。石ころが机ごと爆発した。
爆炎と机の破片が飛び散る。生徒達は机の下に隠れて無事だったが、シュヴルーズは至近距離で爆発を喰らい、吹き飛んだ。
教室の後方にも爆風が及んだ。
「ACT3!」
康一はとっさにスタンドで身を守った。
だが、隠れ切れなかったほかの使い魔は爆風と爆音でパニック状態になる。
火トカゲは火を吹き、バジリスクはカラスを石にした。目玉オバケの触手に絡み取られたマリコルヌの股間に大蛇が噛み付いた。
「うぎゃぁーー!!!」
教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
一方この惨状を巻き起こした張本人といえば、最も近くで爆発を受けたはずなのに、吹き飛ばされもしないで立っていた。
ただ、全身煤と埃まみれで、服はぼろぼろ。スカートが破れて、少しパンティが見えていた。
こほっ、とルイズは煤で真っ黒な咳をした。
「ちょっと失敗したみたいね。」
教室中から怒号が飛んだ。
「どこがちょっとなんだよ!この魔法成功確率『ゼロ』のルイズがぁーーー!」
「だからやめてっていったじゃない!」
「メディック!メディーーック!」
「もう、ヴァリエールは退学にしてくれよ!!」
康一は、ようやく『ゼロ』の意味を理解した。
532S.H.I.Tな使い魔11:2009/05/04(月) 11:59:20 ID:DFmcJLF2
「ミス・ヴァリエール。罰としてあなたにはこの教室の片づけを命じます。もちろん、使い魔に手伝わせてはなりません。」
騒ぎに駆けつけたコルベール教師はルイズにそう命じた。
ミセス・シュヴルーズは完全に意識を失っていたし、生徒達は今にもルイズを吊るし上げんばかりだった。だからルイズに同情的なコルベールでもそうさせざるを得なかったのだ。

それから一時間。まだ片付けは終わる気配を見せない。
教卓はばらばらに吹き飛んでいたし、教壇にも大穴が開いて使い物にならない。黒板は真っ二つに折れて右側が地面に伏せられていた。
生徒達の机は、距離があったためばらばらにこそならなかったものの、あちこちにヒビが入ったり吹き飛んだりして、前二列は半壊状態。後で取り替えなくてはならない。
窓ガラスは一枚残らず吹き飛んでいる。剥げた塗装に吹き飛んだ照明、床一面の煤や埃etc。要するに教室を一つまるごとぶち壊してしまったのだ。片づけがそう簡単に終わるはずもない。
だからこそいきり立つ生徒達も溜飲を下げたのだが・・・。
ルイズは今、半分に千切れた黒板と格闘しているところである。その小さな体をいっぱいに使って、黒板を外に引きずり出そうとしている。
康一はそれを手伝うわけにもいかず、さりとて放っておくわけにもいかず。その様子を見ていることしかできないのだった。
「す、すごい爆発だったね!」
なんだか気まずい康一が話しかけた。
「あれを喰らったらどんな敵でもKOしちゃうよ!」
できるだけ明るい調子で言ったのだが、ルイズはこちらに振り向きもしない。
バツが悪くて康一は頬を掻いた。
「痛っ!!」ルイズが右手を押さえた。
「だ、大丈夫?」
康一が駆けつけると、ルイズの手からは血が滲み出していた。恐らく折れた断面を握ってしまったのだろう。
「怪我してるじゃないか!」
康一はルイズの手を取った。
「触らないでよ!!」
ルイズは康一の手を振り払った。
「その手じゃもう無理だって・・・。休もうよ。」
ルイズは手を押さえたまま、黙って首を振った。
「でも・・・大体、女の子一人でこんなのおわりっこないんだよなぁ〜」
康一は途方にくれた。
「・・・成功するかもって・・・」
ルイズがぼそりとつぶやいた。
「え?」
「成功するかもって。今度こそ成功するかもって思ったのよ。」
ルイズはうつむいたままい言った。
「そ、そうだよ!誰だって失敗することくらいあるよ!あんまり気を落とさないで!」
康一は励ましたが、ルイズはぶんぶんと頭を横に振った。
「今まで、一回も魔法が成功したことなんてなかったのよ。小さい頃からそう。どれだけ試しても、爆発するばっかりでただ一度だって成功したことなんてなかったの・・・」
康一は息を呑んだ。
「わたし、小さいころは、大きくなったら魔法が使えるようになるんだって思ってたの。お父様やお母様の期待に答えられるって。ヴァリエール家にとって恥ずかしくない娘になれるって信じてたの。」
ルイズは何かに耐えるように上を向いた。
「でも・・・だめだったッ・・・!今の今まで、一度も期待に答えられたことなんかなかった・・・。いつの日か・・・いつの日か・・・ずっとそう思い続けてきたけど・・・」
康一は躊躇いがちに言った。
533S.H.I.Tな使い魔11:2009/05/04(月) 12:00:37 ID:DFmcJLF2
「でも・・・ぼくの召還は成功したんだろ?」
「そうね。呼んだのがあんたみたいな平民で、みんなには馬鹿にされたけど、あれが初めての成功といっていいわ。」
ルイズは、吐き捨てるようにハッと笑った。
 「だから、ちょっと夢みちゃったのよ・・・。一度魔法が成功したから、これからは他の魔法も使えるようになるんじゃないかって。わたしも・・・これからは貴族として胸を晴れるんじゃないかって・・・。でも、その結果がこれよ・・・。」
『ルイズは焦っている。』康一はシエスタが言った言葉の意味がようやく分かった気がした。
「で、でもさ!これからもっとがんばったら、いつかきっと・・・」
「知ったような口聞かないでよっ!」
ルイズが康一につかみかかった。両手で襟元を握りしめる。康一の目の前で瞳から涙がこぼれた。
「わたしだってがんばってきたわ!だれよりも勉強したわ!だれよりも魔法を練習したわ!座学だって、作法だって、誰にも負けない!でも・・・」
襟を握り締める手が緩んだ。その場にぺたんと座り込む。
「でも、魔法だけは・・・貴族として絶対に必要な魔法だけはどんなにがんばっても使えなかった・・・。だから私はゼロのルイズなのよ。どんなにがんばっても、永遠に貴族になれない。ゼロのまんまなんだわ・・・。」
ルイズは血に染まった右手を胸で抱きしめた。煤まみれの床に涙が落ちた。

ずっと爪先立ちをしていたんだ。と康一は思った。
ルイズはずっと強いふりをしていたんだ。自分の弱さを誰にも悟られないように。
何より、ぼろぼろな自分に、まだがんばれるんだと信じさせるために。
康一は初めて、彼女の力になってあげたい。と思った。
でもどんなに頭の中を探しても、かけてあげられる言葉を見つけられなかった。
だから代わりに、康一は『見せる』ことにした。
「『エコーズ』・・・」
「え・・・?」
ルイズは煤と涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげた。
「『エコーズ』っていうんだ。ぼくのスタンド。」
康一は「ACT1!」と叫んだ。康一の横に、突然白い生き物が現れた。
ルイズはこんなでたらめな生き物をみたことがなかった。
なんと形容したらいいのか、兵士が被っているような兜に小さな手と長いしっぽをくっつけたように見える。兜の下に目らしいものとくちばしがちょこんと覗いている。
その不思議な生き物は、康一の手からハンカチを掴み取ると、呆然と座り込むルイズの膝の上にふわりと飛んできた。
「なに・・・これ・・・」
「『エコーズACT1』だよ。ぼくの『スタンド』」
「でも、前に見たのと全然違うわ!」
「あれはACT3。ACT1はエコーズの一番進化前ってことになるかな。」
奇妙な化け物が目の前にいるのに、なぜかルイズは怖いと思わなかった。
ACT1が小さな手に持ったハンカチで、涙に濡れたルイズの顔を拭く。
そして小さな声で「ギャアース!」と鳴いた。
「ふふっ・・・」
なぜだろう。ルイズの目にはこの不恰好な生き物がひどくユーモラスで、可愛く見えてきた。
ルイズは『ACT1』をぎゅっと抱きしめた。
冷たいようで暖かい、堅いようで柔らかい。不思議な抱き心地だと思った。
「ぼくはさ、つい2年まで何のとりえもない・・・そうだな、ただの『平民』だったんだよ。でも、ある事件がきっかけで急に『スタンド』って力を得たんだ。」
だからさ・・・。康一はしゃがみこんだ。
「ルイズにだって、いつか『きっかけ』があるかもしれない。誰にもその『運命』がいつ来るかなんてことは分からない。まだ、諦めるのは早いんじゃないかな。」
といってルイズの目を覗き込んだ。
「それに『メイジを知るには使い魔を見よ』なんだろ?こんな面白い使い魔を持ってるメイジなんて、世界中で君だけだと思うんだけどなァ〜。」
康一は大仰に手を広げて見せた。
ルイズはようやく、「馬鹿犬のくせに・・・」といって笑った。

534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 12:01:58 ID:wRbycQaA
支援
535S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 12:02:24 ID:DFmcJLF2
以上、9〜11話です。
失礼しましたァー!
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 13:17:44 ID:JaGeLypy
>>535
あなたのおかげで大分活気が戻ってきました
感謝!そして乙!
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 13:56:45 ID:/5nvF0wK

康一君らしさが出てていいね
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 13:58:26 ID:QpKEJO9d
流石康一君だ!Good!!
SHITさん乙でした〜ん続き楽しみに待ってます
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 16:00:35 ID:VlTTTnsS
ディ・モールト乙でした!
この流れからすると次はギーシュ戦か
康一がACTをどう扱うか見物だな〜
540S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 20:12:42 ID:DFmcJLF2
S.H.I.Tな作者です。毎度お騒がせしてすみません。
12〜14話が完成したので、投下してもよろしいでしょうか。
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 20:17:13 ID:BW4e1PGD
支援する!
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 20:18:02 ID:JaGeLypy
きた!康一きた!これで勝つる!

潤いの雨支援
543S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 20:18:59 ID:DFmcJLF2
ありがとうございます。
ではちょっくら失礼して投下させていただきます。
544S.H.I.Tな使い魔12:2009/05/04(月) 20:19:51 ID:DFmcJLF2
ルイズと康一は、素直にコルベール先生のところへ行くことにした。
ルイズが手に怪我をしてしまったことを話すと、コルベール先生は片付けはもういいから医務室で治療してもらいなさい、と言ってくれた。

「でも、その『スタンド』っての。人前では使わないほうがいいわね。」
治療してもらった帰り、ルイズは思いついたようにいった。
手は水属性のメイジによる治療の後、包帯が巻かれている。
これで、一日もすればほとんど傷はふさがるのだそうだ。
「え、なんで?」
康一はびっくりして尋ねた。
「その『スタンド』のことがあんまり広がると、多分まずいことになるのよ。」
ルイズは歩きながら考えた。
「あんたは知らないかもしれないけど、ここでは『系統魔法』は絶対なの。あんた『スタンド』を杖も詠唱もなしで呼び出せるじゃない。『先住魔法』だと思われる可能性があるわ。」
「『系統魔法』はさっき授業で言ってたけど、『先住魔法』って何?」
「『先住魔法』は『自然の力を借りて事象に干渉する魔術』よ。エルフや一部の幻獣が使うと言われているの。」
康一が詳しいね、というとルイズは少し得意げに、「座学なら誰にも負けないって言ったでしょ?」と胸を張った。
「でも、始祖の与えたもうた『系統魔法』以外の異能の力はみんな『先住』として人くくりにされてしまうことが多いのよ。だからあんたの『スタンド』も『先住』として扱われる可能性があるわ。」
「『先住』だって思われたらどうなるの?」
「異端者は通常火刑に処せられるわ。」
康一は首をひねった。
「『カケイ』って・・・なに?」
「火あぶりのことよ。」
「ゲエエエェェェー!!」
ひ、火あぶりだってぇー!あの磔にされて下から火をつけられるって奴ですかぁー!?
「ど、どうしよう。ぼく、ACT3をみんなの前で使っちゃったよぉー!」
「今のところは大丈夫よ。みんな『ゴーレム』を作り出すマジックアイテムを持っていたんだろうって思ってるから。」
康一は、マジックアイテムを探すため、服までひん剥かれたことを思い出した。
「だから、誰かに問い詰められたら「ロバアルカリイエのマジックアイテムです」って言っておけば、とりあえずごまかせるはずよ。」
「ロバアルカリイエ?」
「エルフが住むサハラよりも東の世界のことよ。エルフといつも争っていて、かなり技術が進んでいるらしいの。」
「ふーん・・・。」
日本も世界の東の端だし、まぁ嘘は言ってないかな。
とりあえず火あぶりにはされないらしい、と康一は安心した。

それからルイズと康一は一度部屋に戻った。
ルイズがあまりにもぼろぼろなので着替えるためだ。
体を水で塗らした布で拭い(水は康一が汲んできた。)、まっさらな服に袖を通すと、ルイズは大きく息をついた。
「あー、さっぱりしたわ!」
やっぱりこちらの目を気にせず裸になるので、康一は全力で背中を向けている。
「もう大丈夫?」康一は目を瞑ったまま聞いた。
「ええ、こっち向いていいわよ。」
康一はほっとして振り向いた。
「でも、いつまでも恥ずかしがってちゃ、困るわね。使い魔なんだから、それくらい慣れなさいよ。」
とルイズは腰に手を当てた。
545S.H.I.Tな使い魔12:2009/05/04(月) 20:20:38 ID:DFmcJLF2
「無茶いわないでよ・・・。むしろぼくは君につつしみってやつを持って欲しいんだけど・・・。」
「って、あんたも顔、汚れてるじゃない。」
ルイズは康一の嘆願を無視して歩み寄ってくる。
そして手に持った布で康一の顔を拭ってくれる。
「(それ・・・さっき君の体を拭いたやつなんじゃ・・・)」
だがルイズに気にした様子はない。やっぱり男としてみられてないのね・・・別にいいけど。
ルイズは拭きながら尋ねた。
「そういえば、『ACT1』と『ACT3』がいるなら、『ACT2』もいるわけ?」
「まぁね。ぼくの『エコーズ』は三つの形態があるんだ。それぞれ、『射程』とか『パワー』とか『能力』が違うんだよ。」
「能力?」
ルイズは首をかしげた。
「なんか特別なことができるわけ?」
康一は自分のスタンドについて説明しようとしたが。
カラ〜ンカラ〜ンカラ〜ン
どこからか、鐘の音が聞えてきた。
「もうこんな時間なのね。」
ルイズが手に持った布を手桶に戻した。
「あの鐘、なんなの?」
「昼休憩の予鈴よ。さ、食堂に行くわよ。」


アルヴィーズの食堂に入った二人に、無数の視線が突き刺さった。
「そりゃあ、そうだよなぁー」康一はたらりと汗を流した。
ルイズの爆風をもろに食らったミス・シュヴルーズはあの後すぐに回復したものの、今日の二年生のクラスは、一日自習という形になったからだ。
そのほかにも怪我をしたり、使い魔が再起不能しかけたり(水のメイジの治療で問題なく回復したらしいが)した人がたくさんいる。
ルイズのことを知らずに指名した教師の責任でもあるのだが、ルイズを恨むなというのも無理な話だろう。
だがルイズはそんな視線などまるでないかのようにして、自分の席へと座った。
「(タフな性格だよなぁー。こういうところはちょっと由花子さんに似てるかも。)」
康一はルイズに尋ねた。
「えーっと、ぼくも座ってもいいのかな?」
ルイズは振り向いた。
「朝もいったでしょ。ここは貴族の食卓よ。あんたは座っちゃダメ。」
康一はしょぼくれた。はぁー、そりゃそうだよね・・・。いや、正直ちょっと期待してたんだけど・・・。
とぼとぼと出て行こうとする康一をルイズが呼び止める。
「ま、待ちなさいよ!」
え?と康一が振り向くと、ルイズがテーブルに置いてあったバスケットを康一に押し付けた。
「さっき、厨房にあんたの食事を頼んでおいたのよ。ここは貴族の食卓。あんたは座っちゃダメ。だから、これをそのへんで食べてきなさい!」
康一はバスケットを覗き込んだ。中には美味しそうなサンドイッチが入っている。
「ルイズさん・・・」康一はちょっとうるうるときてしまった。
「ば、馬鹿ね。何泣いてるのよ!うっとうしいからどっか行きなさい!」
ルイズは照れくさそうに康一を追い払った。
「食べ終わったら、入り口で待ってるから!」
康一は手を振った。
康一があまりにも分かりやすく喜ぶので、なんだかルイズも嬉しくなってしまった。
ルイズは小さく頷いた。
546S.H.I.Tな使い魔13:2009/05/04(月) 20:21:39 ID:DFmcJLF2
ルイズは久しぶりに上機嫌だった。
何かが良くなったわけでもない。午前中もやっぱり魔法は失敗してしまった。
それでもルイズの心は軽かった。
ここ最近ずっと味気なかった食事も、今はなんだかとても美味しく感じる。
康一が教室で言ってくれた言葉を思い出した。

そうだわ。わたし、まだ17なんだもの!これからどんなことがあるか分からない。
まだ自分の『運命』に絶望するのは早すぎる!
使い魔だって、最初はみんなと違ってたからがっかりしたけど、よく考えたら人間なんだから、猫や鳥を召還するよりずっと上等だわ。
ルイズは食事を終え、ナプキンで口元を拭いた。
午後は自習らしい。せっかくだから魔法の練習をしよう!
そこに数人の男子が通りがかった。
そのうちの一人が、ポケットから小瓶を落としたので、ルイズは声をかけた。
「ちょっと。何か落としたわよ。」
ん?と振り向いた顔を見て、ルイズはゲッという顔をした。
ギーシュ・ド・グラモン。さっき教室でわたしに嫌味を言った、キザで嫌なやつ!
「なんだいルイズ。もう片付けは終わったのかい?」
ギーシュがいかにも嫌味な口調で言った。
ルイズは思わず怒鳴りそうになったが、我慢することにした。
確かに、自分の失敗のせいで彼にも迷惑をかけた。だからぐっと堪える。
「ええ。ミスタ・コルベールにもういいって言われたの。それより、その小瓶。あんたが落としたんでしょ?」
と、床に落ちている紫色の小瓶を指差した。
今度はギーシュのほうが、ゲェ〜!!という顔をした。だが、瞬時に表情を取り繕うと、
「し、知らないね。それはぼくのものじゃないよ。適当なことを言わないでくれたまえ。」
と背を向けようとする。
「嘘!あんたのポケットから落ちたの見たんだから!いいから持っていきなさいよ!」
別にギーシュのことなんかどうでもよかったが、適当よばわりされたのは我慢ならなかった。
すると、ギーシュと一緒にいた友人達が、「おおっ!」と騒ぎ始めた。
「おい、ギーシュ!それってもしかしてモンモランシーの香水じゃあないのか!?」
「そうだ!この鮮やかな紫色の小瓶・・・間違いない!モンモランシーのだ!ギーシュ・・・お前モンモランシーと付き合ってるのか?そうだろ!」
「あ、あんまり騒ぐんじゃない!いいかい?彼女の名誉のために言っておくが・・・」
ギーシュが否定しようとしたとき、ルイズの後にあるテーブルから、一人の女の子が立ち上がった。茶色のマントだから一年生だろう。
その栗色の髪をした可愛い少女は、涙ぐんだ目でギーシュを見つめた。
「ギーシュ様・・・やはりミス・モンモランシーと付き合っておられたのですね・・・」
ぼろぼろと涙がこぼれる。
ギーシュは慌てて女の子の肩を抱いた。
「い、いやだな。ケティ。そんなつまらない勘違いで美しい顔を涙に濡らさないでおくれ。ぼくはいつだって君一筋なんだから・・・」
「へぇ〜〜〜?君一筋・・・ねぇ。」
ギーシュはぎくりと固まった。ゆっくりと声をしたほうに顔を向けると、きれいな金髪の巻き髪をした女の子が立っていた。
「ギーシュ。あなた、やっぱり一年生の子に手を出していたんだ・・・」
ギーシュはケティの肩を抱いていた手をぱっと離した。
「ちち違うんだモンモランシー!彼女とはラ・ロシェールの森まで遠乗りをしただけで・・・。ああっ!その薔薇のように麗しい顔を怒りにゆがめないでおく・・・!」
その瞬間、バッチコーーン!と食堂中に響くいい音をさせて、ケティのビンタが飛んだ。
「ギーシュ様!最低です!」
そして泣きながら走り去っていった。
「ああっ!ケティ!」
思わず手を伸ばしたギーシュに、背後からドバドバとワインが振りかけられた。
ギーシュがゆっくりと振り向くと、モンモランシーはワインの空き瓶を床に投げ捨てたところだった。
「二度と私に近づかないで。」
凍りつくような声色でそれだけ言うと、つかつかと歩き去っていく。

要するに二股をかけていたらしい。ルイズは馬鹿なやつ。とつぶやいて立ち上がった。
ワインまみれで立ちすくむギーシュの横をすり抜けて出口へ向かう。
「待ちたまえ・・・!」しかしそこでギーシュがルイズを呼び止めた。
「・・・・なに?」
ルイズが振り向くと、ギーシュはルイズに薔薇の造花をつきつけた。
「君の軽率な行動のおかげで、二人のレディの名誉が傷ついてしまった・・・。どうしてくれるのかね?」
ルイズは薔薇を払いのけた。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 20:21:51 ID:BW4e1PGD
硬いパンじゃない支援
548S.H.I.Tな使い魔13:2009/05/04(月) 20:22:29 ID:DFmcJLF2
「わたしの知ったことじゃあないわ。ギーシュ。二股かけてたあんたが悪いんじゃない。」
まわりの生徒達がやんややんやと騒ぎ立てた。
「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」
ギーシュの顔に赤みがさした。
「ぼくは君が呼び止めたときに、知らないといったはずだ。そこで引き下がっていれば、こんな騒ぎにはならなかった!」
ルイズは呆れた。心の底から呆れた。こんなやつが貴族を名乗っていいのだろうか。
だから馬鹿にした口調で斬って捨てた。
「あんたが二股をかけるのが悪いんでしょ。『青銅』・・・いや、『二股』のギーシュ?」
集まってきた人垣がどっと笑う。
ギーシュは思わず頭に血が上りそうになったが、それを堪えた。
相手は『ゼロ』のルイズだ。この僕が何をむきになることがある。
ギーシュはやれやれ、と溜息をついて見せた。
「まぁ、君のような似非貴族に、マナーを期待するのが間違いだったか。いいさ、行くがいい。『ゼロ』のルイズ。」
似非貴族!これ以上ルイズの心に突き刺さる言葉は他になかった。
「・・・ヴァリエール家を馬鹿にするならタダじゃおかないわよ、ギーシュ。」
ルイズが声の震えを押さえつけるようにして言うと、ギーシュはふふん、と笑った。
「僕はヴァリエール家を馬鹿にしてなんかいないさ。ヴァリエール家はトリステインでも最も由緒正しき家柄の一つだ!僕はとても尊敬しているよ!」
ただね・・・、ギーシュは口元をゆがめた。
「君は別だ、ルイズ。由緒正しきヴァリエール家に相応しくない落ちこぼれ。未だに魔法の一つも使えない似非貴族とは君のことさ。」
ギーシュはルイズを指差した。ルイズはその指に、自分の心臓を抉られたように思った。怒りと悲しみで言葉が出てこない。
「今日も授業をぶち壊してくれたね。君のような似非貴族がメイジのふりをしているから、僕たちはとても迷惑しているんだ。」
ルイズを助けに入る者はいない。みな、少なからずもルイズに思うところがあったのだ。
ところで・・・。ギーシュは、ルイズの耳元で囁いた。
「君・・・本当にヴァリエール公爵家の子どもなのかい?」
ルイズの頭が真っ白になった。気がついたときにはギーシュに杖を突きつけていた。
「決闘よ!!」
ギーシュは一瞬ぽかん、としたようだったが。やがてぷっと吹き出した。
周り中がどっと笑い出す。
「あはははは!ルイズ!君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?君が僕と決闘だって!?」
ギーシュが馬鹿にしたようにいった。ルイズは震える声で答えた。
「そうよ!わたしはあんたに決闘を申し込むわ!」
ギーシュは、笑うのをやめた。でもねぇ・・・
「この学院では決闘は認められていないんだよね。特に『貴族と貴族の決闘』はね・・・!だから、君がこうお願いするなら受けてもいいよ。」
芝居がかった口調で続けた。
「『今まで貴族のふりをしていてすみませんでした。わたしはしがない平民ですから決闘を受けてください』とね。」
口笛が飛んだ。騒ぎを聞きつけてあつまった人垣から「いいぞー!やれやれー!」と野次が飛ぶ。
くやしい!くやしい!くやしい!くやしい!
ルイズは手を裂けんばかりに握り締めた。
どうがんばっても、わたしよりこいつのほうが貴族らしい・・・。そんなことくらい自分が一番分かっている。
貴族にも、平民にもずっと馬鹿にされてきた!誰もはっきりとは言わなかったが、ギーシュが言っているのは、ずっと自分が思ってきたことなんだ。
わたしはギーシュが憎いんじゃない・・・反論できない自分が情けないんだ!!
涙で視界がゆがむ。座り込んでしまいそうだ。
でも、こんなやつの前で泣いたりするもんか!泣くもんか!泣くもんか!泣くもんか!
ルイズは必死に唇をかみ締めてギーシュを睨みつけた。

そのとき、高らかに声が響きわたった。
「それなら、ぼくが決闘を申し込むよ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ざわめく群集をかき分けて、ゆっくりとギーシュの前に立ちふさがったのは、『ゼロの使い魔』と呼ばれた、小さな平民の男の子だった。
549S.H.I.Tな使い魔14:2009/05/04(月) 20:23:59 ID:DFmcJLF2
小さな少年である。
女の子ですら、大体が見下ろす形になる。
男と比べると、頭一つ分以上は低い。
メイジでもない。強そうにも見えない。
しかし、その目を見た群衆は、なぜか自分から道を開けた。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

康一は、驚くルイズの肩に手を置いた。
その手からは「もう大丈夫だから。」という覚悟が伝わってくる。
康一はルイズの前に進み出た。
ギーシュは、突然しゃしゃり出てきたチビの平民を見下ろした。
「なんだって?よく・・・聞えなかったんだが。もう一度言ってくれるかな、平民。」
「ぼくがお前に決闘を申し込む。そういったんだ。」
ギーシュはようやく、目の前にいるのがルイズの使い魔だということを思い出した。
「ああ、君はルイズが捕まえてきた平民だったか。どうせ使い魔召還が出来ないからといって、その辺の子どもをさらって来たんだろう。平民の出る幕じゃない。どきたまえ。」
「嫌だね。」
康一はギーシュを指差した。
「おまえはルイズの『誇り』を不当に侮辱したッ!その償いをしてもらう!」
「ふん、ばかばかしい。君になにができるというんだね。」
「お前をじゃがいもだって目を背けるようなぼごぼごの顔面にしてから、ルイズに言った言葉を取り消させるッ!」
ギーシュは目を細めた。
「平民の癖に口だけは達者だな。その勇気に免じて見逃してやろう。さっさと『ゼロ』を連れて逃げ帰るがいい。」
「逃がしてください。の間違いじゃないのか?」
「・・・なんだと?」
ギーシュは聞き返した。
「『僕は女の子に振られて恥をかいたので、ルイズにやつあたりをしました。この上平民にぼこぼこにされるのは嫌なので、見逃してください。』お前はそういうべきじゃないのか?」
ギーシュは覚悟を決めた。ここまで侮辱されて放っておいたら、貴族としての沽券に関わる。
「いいだろう。そこまで死にたいのなら相手をしてやる!ヴェストリの広場まで来い!」
ギーシュはマントを翻し、食堂を出て行った。
「ギーシュとルイズの使い魔の決闘だァー!」
ギーシュの友人達がわくわくした様子でそれについて行った。
周りに集まった人垣も、この面白そうなイベントに興味津々だ。
既にヴェストリの広場への移動を始めている。
自分もそれについていこうとした康一をルイズがしがみつくようにして引き止めた。
「あ、あんた。何言ったか分かってるの?死ぬわよ!?」
ルイズはさっきまで自分が追い詰められていたのをすっかり忘れてしまったのかのようだ。
「あのくそったれな貴族をぶっ飛ばして、君に謝らせる!」
「無理よ!」
ルイズは悲鳴をあげた。
「ギーシュはあれで強いのよ?『ドット』メイジだけど、一度にたくさんのゴーレムを操れるの!同じ学年で、あいつより強い奴なんて数えるほどしかいないわ!」
康一は袖をつかむルイズの手を押さえた。
「ぼくはこの世界のメイジについてあまり知らない。ひょっとしたらぼくなんて相手にならないほど強いのかも・・・。でも、あれはぼくが今戦わなくちゃいけない敵なんだ!」
「だから、君はぼくを信じてほしい。大丈夫!ぼくは負けるつもりなんてこれっぽっちもないからね!」
康一はルイズの手を離させると、ヴェストリの広場に向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
ルイズは康一の目に、思いがけず強いものを感じて、うろたえながらも彼を追いかけた。


ヴェストリの広場は、『風』と『火』の塔の間にある普段人気のない中庭である。
群集について行った康一は大きな人垣があるのを見つけて、そこに分け入った。
550S.H.I.Tな使い魔14:2009/05/04(月) 20:25:25 ID:DFmcJLF2
人垣を抜けると、すでにギーシュは薔薇の造花を手に待ち構えていた。
「とりあえず、逃げずに来たことはほめてやろう。」
「這い蹲るのはお前のほうだ!逃げる必要なんかこれっぽっちもないねッ!」
そのとき、康一はギーシュの奥の人垣の中に、知っている人を見つけた。
「(シエスタだ!)」
きっと騒ぎを聞きつけて駆けつけたのだろう。
シエスタは野次を飛ばす観衆の中で、懸命に「コーイチさん!逃げてください!」と叫んでいる。
「そっか・・・」
康一は気づいた。自分がこれから『スタンド』を使えば、普通の平民でないことがばれてしまう。
「(ごめんね、シエスタ。騙すつもりはなかったんだ。君によくしてもらってすごくうれしかった。)」
 シエスタは裏切られたように感じるだろうか。康一は心を痛めた。

そのとき、康一の体に光る粉のようなものが振りかけられた。
「なにっ!?」
「ギーシュ!大丈夫だ!この平民、『マジックアイテム』はもってないぜ!」
声がしたほうを振り向いた。さっきギーシュと一緒にいた仲間の一人だ。
「お前ぼくに何をしたッ!!」
「何って、『ディテクト・マジック』さ・・・」
かわりにギーシュが答えた。口元に笑みを浮かべている。
「君が魔力を持った品を持っているかどうか調べた。当然だろう?これは僕と君との一対一の決闘だ。他人の魔法に介入されるのは不愉快だからね。まぁ、持っていないようで少し感心したよ。」
ギーシュは薔薇の造花を振った。
一枚の花びらが地面に舞ったかと思うと、甲冑を着た女戦士のような人形が現れた。
「僕の名はギーシュ・ド・グラモン!『青銅』のギーシュだ。当然自分の魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
これが『ゴーレム』・・・!人間程度の大きさだが、全身が金属でいかにも堅そうだ。
それに自分に比べるとずいぶんと大きい。体重が違いすぎる。まともに殴りあえるわけがない。
「いくぞ!!叩きのめせ!ワルキューレ!」
ギーシュが命令すると、ゴーレムがドン!と土煙をあげて突進してきた。
康一は身構えた。
「(でも、君は勘違いをしている。ぼくの『エコーズ』は『マジックアイテム』なんかじゃない。ぼく自身の能力!)」
「そのワルキューレが、ACT3の重さに耐えられるか試してやるッ!」
康一は声高にACT3を呼

『異端者は通常火刑に処せられるわ。』

「はっ!?」
康一は、突然ルイズが言っていたことを思い出した。
そうだ・・・『エコーズ』が『マジックアイテム』じゃないことがばれてはいけないのだ。
つまり、今ここで『スタンド』を使うわけにはいかない!?

康一が気づいたときには、ワルキューレが目と鼻の先まで接近していた。
「しまった!!」
避ける間もなく、ワルキューレの青銅製の右拳が顔面を捉え、康一は吹き飛んだ。

ギーシュは地面に這いつくばった康一を見下ろし、大きく手を広げた。
「さぁ。哀れな平民に貴族との『絶対的な差』というものを教育してあげよう。」
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 20:25:58 ID:BW4e1PGD
支援した!
552S.H.I.Tな作者:2009/05/04(月) 20:26:42 ID:DFmcJLF2
以上になります。
次回から康一VSギーシュ戦の本編になります。
毎度失礼いたしましたぁー!
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 20:28:15 ID:BW4e1PGD
この康一くんなら由花子さんが惚れるのも分かるw
乙でした!
スタンドなしで戦うのかそれとも…気になりすぎて仕方ない!
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 21:22:45 ID:/5nvF0wK

俺の中でドドドが止まらない
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 21:45:36 ID:JaGeLypy
        __      __   _      __
    /::ヽ.   「::::l /}  /:::/ /´::::/     /´::::> ,.-.、_        __,,..、
    〈:::::::ハ  |:::::j '´   |:::::/ /:::::::/./!   /:::::/ /:::::/      /::::::::j__
    ';:::::::l l/ _    l::::i /:::::::://:::/  /:::::/ /::::://::7   ,:'::::::::/::::::〉    __
     V:::::l /::::}.   l:::::!ヽ一' l/   /::::::< └-' 〈_:/  /::::://:::::::/,.ヘ.  /:::::/
     V:::レ::::::::r'  .l:::::l       /:::;へ::::\      /:::::<  ー-'<:://::::::://:ヽ
.       ';:::::::::/   ;:::::└‐:::ァ    ∨  丶;::::>.    ,'::::;ヘ::丶、  ´ /::::::::/':::::::/
.       ';::::〈     !::::;_:::::::/          `     レ'   `¨   /:::::::< ヽ;;/::::>
       ヽ::::〉    |::/  ̄                        /::::;::::::::\ ヽ'
.          V     U                             〈:::/ \/
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 21:58:10 ID:qazRWOuV
.━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・
.━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨…
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/04(月) 23:27:34 ID:f32t9umD
な、なんだこりゃ・・・!!
ほんの…ほんの一日目を放していたんだ…このスレから!
だが…これは…この投下量は一体なんなんだあああああああ!!!

GJ!!!
何というクオリティとスピード!!!
さ、康一殿!ギーシュの身長を縮めてやってくださいよ!
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 00:31:23 ID:LuBP+jkO
今の康一は間違いなく髪の毛逆立ってるな
サイトと同じ流れで倒すのか、JOJO風に奇策で切り抜けるのか
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 00:36:07 ID:vXqdi1jj
投下乙です!
康一がこれからどんな戦いと心意気を見せてくれるのか楽しみにしてます!


ところで45分頃から投下してもいいでしょうかね?
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 00:38:17 ID:WtXcsBfO
支援
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 00:42:09 ID:O31llzae
S.H.I.E.N
562ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:46:35 ID:vXqdi1jj
 大地を揺るがす轟音の後、訪れたのは場違いともいえる静寂だった。
 ほんの数分前まで空を占めていたレコン・キスタの艦隊は一隻の例外なくタルブの草原

に叩き付けられ、友軍の地上部隊の大半を道連れにした。
 昨日、美しく広大な草原であったそこは、中央に巨大な湖を生み出していた。
 しかしその湖は風光明媚で知られるラグドリアンの湖とは比べることが出来ない。
 かつて艦船であった木材の残骸と、かつて人間であった肉塊が湖面に浮かび、霧の様な

土煙が立ち込める湖上。それを照らすのは、月に蝕まれた日の光。
 地獄の一風景を現世に呼び出してしまったかのような凄惨な光景の端の中、トリステイ

ン軍は時でも止められたかのように動くことが出来なかった。
 しかし、この停止した時の中で動くことの出来る人間は二人いた。
 この光景を作り出したウェールズ、そしてアンリエッタである。
「どうなさいました。枢機卿」
 王女の可憐な唇から漏れたのは、戦の最中に呆ける行為を咎める響き。
 アンリエッタの声で逸早く我に返ったマザリーニは、喉も裂けよとばかりの大音声を張

り上げた。
「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! トリステイン国王女アンリエッタ殿下とアルビ

オン皇太子ウェールズ殿下の伝説の魔術、オクタゴンスペルによって!」
「オクタゴンスペル……!」
 マザリーニの叫びに、将兵達の時が再び動き出していく。
「さよう! 王家の血に連なるメイジにのみ許された伝説の詠唱! 各々方、これで始祖

の御意思、そして祝福がどちらにあるか示された! 彼奴らは今、始祖の鉄槌を下された

のですぞ!」
 今、何が起こったのかを目撃したトリステイン軍は枢機卿の言葉をすぐさま受け入れる

。腹の底から湧き上がる原始的な衝動は、水面に広がる波紋のように苛烈な砲撃を耐え抜

いた軍勢に伝播していった。
「うおおおおおおおおぉーッ! トリステイン万歳! アンリエッタ王女万歳! ウェー

ルズ皇太子万歳!」
 鬨の声が上がる中、アンリエッタは自分を離すまいと回されている腕の感触に幸せそう

な微笑を浮かべていた。
「ウェールズ様……ああ、まるで夢のよう。もし夢だったとしたら……二度と覚めなくて

も構わない。そう思います……」
 ウェールズはその言葉に、ほんの少し困ったように微笑んだ。
「これが夢であってたまるものか。僕達は手に入れたんだ……これは現実なんだよ、僕の

アンリエッタ」
 恋人同士によく見られる、世界には二人きりと言わんばかりの甘い空気は、マザリーニ

の控えめな……しかしよく通る咳払いで掻き消えた。
563ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:48:45 ID:vXqdi1jj
「オッホン。王女殿下と皇太子殿下のお邪魔をするのは出来うる限り避けたい所ではございますが……まだもう一仕事していただかねば困ります」
 アンリエッタは勿体つけた物言いのマザリーニに、悪戯っぽく笑った。
「うふふ、ごめんなさい枢機卿。王城に帰ったら、ゲルマニアに使いを出さねばなりませんものね」
「その通りですな。わたくしにドレスの裾を投げ付けたように、あの成り上がりに婚約破棄を通達してやらねばなりますまい」
 変われば変わるものだ、という感慨がマザリーニの胸中を占める。
 あの会議室での演説で、王家に飾られる花でしかなかった少女は王女になった。
 そして今、皇太子の腕の中で王女は最上級のスクウェアメイジに成長を遂げた。
 なんと出来過ぎた物語だろう、と思える。物語の筋としては使い古された陳腐な筋だ。
 王女がこれ以上ない危機に立たされた時、王子様が突然現れて共に手を携えて危機を打ち破る――しかし、それが現実に起こったとなれば、そしてその物語が生まれた瞬間に立ち会えるとなれば。
 せいぜいが慌てふためくセリフと演技しか許されない端役者だとしても、体の中から浮き上がるような歓喜は否定することが出来ない。
 マザリーニは、主役の二人を眩しげに見上げ、二人の目を見つめた。
「さあ、これより勝ちを拾いに行きましょう。皇太子殿下、王女殿下――いや」
 帰ったら、この題目を脚本にした舞台を上映させよう。それを国威発揚に用いれば、しばらくはこの劇の話題で持ち切りになるだろう。
 ならばせめて、決め手になるセリフを告げる役得くらいはあっていい。
「アルビオン国王、ウェールズ陛下。トリステイン国女王、アンリエッタ陛下」
 恭しく頭を垂れた枢機卿に、二人の王は強く頷く。
 アンリエッタは水晶の杖を掲げ、ウェールズは愛用の杖を掲げた。
「全軍突撃ッ! 王軍ッ! 我らに続けッ!」
 地を揺らすような轟きを上げ、トリステイン軍は熱狂に浮かされ駆け出した。


 *


 ルイズは、熱狂とは無縁だった。
 友軍の戦艦を竜巻ごと落とされたレコン・キスタ軍はほぼ壊滅状態であったが、撤退さえ許されることなくトリステイン軍の突撃を受けている。
 しかしルイズは突撃に加わる事無く、ラ・ロシェールに一人立ち尽くしていた。
 先の艦砲射撃でのトリステイン軍の被害は決して少なくない。大勢の負傷兵と共に友軍を見送る形となったルイズは、遠い空を飛んでいる飛行機を呆然と見上げていた。
564ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:51:05 ID:vXqdi1jj
 王女の助けになりたい、という意思は確かにあった。
 しかし、自分の出る幕などなかった。
 竜騎士隊と命を賭けて戦ったのは、異世界の飛行機械を駆る奇妙な老人。
 危機に瀕した王女様を助けたのは、魔法の唱えられない友人ではなく、国を追われた王子様。
「……何よ。何よ」
 自分は何も出来なかった。自分がした事と言えば、舞台に上がることも出来ずただ指をくわえて物語を眺めているだけ。
 魔法を使うことも出来ない。戦いに赴くことも出来ない。
 ぽた、ぽた、と白く形の良い頬を伝って涙が落ち続ける。
 涙を止めようと両手で顔を覆うが、涙は次から次へと手の隙間から落ちていく。
「何がメイジよ……! 何がヴァリエールの末娘よ……! 私、何も出来ないじゃない! 何も出来ない……ただの、ただの……!」
 遠くから聞こえる戦の戦慄きすら、ルイズに届くことはない。
 今まで自分を支えていた貴族の矜持も、今遂に枯れ果てた。
 くたり、と身体から力が抜け、馬の背へ崩れ落ちた。
「う、う、うわぁぁぁっ……うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!」
 視界が歪む。嗚咽を抑える事など出来ず、溢れる心の迸りを吐き出すように叫んだ。


 *


 ルイズの説得を聞き入れて戦闘空域から離脱したジョセフは、ルイズの言葉が嘘でなかったことをこれ以上ないほど目撃した。
 ラ・ロシェールから放たれた巨大な竜巻が、空に浮かんでいた艦隊を飲み込んで地上へ落ちて行く様を文字通り『高みの見物』してしまい、流石のジョセフと言えども度肝を抜かれていたのだった。
「……うーわー、ありゃオクタゴンスペルだぜ。あの王子と王女ってトライアングルだって聞いてたが、化けたなありゃあ。俺っちもさすがにおでれーたぜ」
 カチカチと金具を打ち鳴らしながら叩く軽口でさえ、ジョセフの右耳から入って左耳から通り抜けていた。
「……こいつぁえれーモン見ちまったわい。昔戦ったワムウの神砂嵐もすごかったが、こんな芸当が人間に出来ちまうとはな。魔法恐るべし」
 雲より高い空の中、凍えるような寒さの中でも額に浮かんでいた汗を、手の甲で拭った。
「さて、墜落しちまう前にどっかに着陸しちまわんとな。いくらなんでも人生で五回も墜落するのはナシにしたいわい」
565ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:53:26 ID:vXqdi1jj
 うるさく鳴っていた金具の音が止み、ぼそりとデルフリンガーが囁いた。 
「二度と相棒とは一緒に乗らねえ」
「うるさいぞ」
 くくく、と二人揃って笑い合えば、シュル、と小さな音を立てて紫の茨が左腕から伸びた。
「ん? どうした相棒。何かあったのかい?」
 当のジョセフは、片眉を上げてハーミットパープルを見た。
「……いや、わしゃ出した覚えなんかないぞ」
「あん?」
「なんでか知らんが出てきた。……む」
 手袋の中から漏れる光。何度か起こってきた経験に従って手袋を脱ぎ落とすと、使い魔のルーンが眩く輝いていた。
「どうしたことじゃ、こいつぁ。デルフよ、お前なんか心当たりないか?」
「知らねえよんなこたぁ。俺っちも長生きしてきたが、スタンド使いが使い魔になったこたぁねーからよ」
 怪訝そうな呟きと視線を受けていたハーミットパープルは、ルーンが刻まれた義手の甲へと滑り、まるで穴へ潜る蛇のようにルーンの中へ潜り込んで行った。
「なんだ!? こいつぁ……! 引っ込め! ハーミットパープルッ!!」
 今まで起こったことのない状況を前に、ハーミットパープルを引っ込めようとするが、茨はジョセフの意思に従わない。消えるどころか、茨は次々に増える一方だった。
「なんじゃ!? 一体何がどうなっとる!?」


 *


 崩れかけた街に、少女の慟哭が響く。
 どれだけ泣いてもルイズの中から濁った感情が引く事はなかった。
 泣いても、泣いても。
 どれだけ泣いても、自分が無力な存在であることは変わらないのだ。
(始祖ブリミル、あんまりです……! どうして、どうして私だけ……!)
 人目を憚らず泣く。こうして泣いていれば、誰かが見つけて抱きしめてくれた。
 しかし今は誰もいない。
 カトレア姉様も、ワルドも、ジョセフも。
 自分の側には誰もいない。誰も、いない。
 だからこそ、叫んだ。小さい頃からずっと、心の中で蟠っていた叫びを。
「私に……力があれば……! 何も出来ないのは、もう嫌……! 私に力を! 守られているだけなんて、見ているだけなんて、もう嫌! 私に、私にっ……『力』を……!!」
566ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:55:48 ID:vXqdi1jj
 固く目を閉じて、喉も限りに叫び――

 ――不意に、抱きしめられた。
 誰かが自分を抱きしめている。

 ルイズはこの感触を知っている。いや、この暖かさとこの力強さを知っている。
「…………ジョセ、フ…………?」
 ルイズを包んでいたのは、茨だった。
 見間違えることなどない、紫の茨。
 ハーミットパープルが、華奢な体に巻き付いていた。
 泣く子をあやすように優しく、それでいて力強く逞しい。
 空を見上げれば、飛行機は空を飛んでいる。ジョセフはここにいない。
 左手から何かが迸ってくる感覚がある。左手を見てみれば、ハーミットパープルは自分の左手の甲から出ていた。そこから現れたハーミットパープルが、自分を包み込んでいたのだった。
「これも、スタンド能力なの……?」
 訝るように呟かれた言葉に応えるかのように、ハーミットパープルはしゅるしゅると動いていく。
 茨の一本がポケットの中に入り込み、ポケットに入っていた『水』のルビーを取り出してくる。そのまま茨がルイズの手を取り、指にはめさせた。
「ちょ、ちょっと。一体何を……」
 ルイズの疑問も意に介さず、続いて懐から始祖の祈祷書を引っ張り出した。
 結局詔は完成せず、戦場へ向かうアンリエッタを追うのに慌てていれば、ラ・ロシェールへ持ってきてしまったのだ。
 ハーミットパープルがルイズの眼前へ祈祷書をかざした、その時。
 突然、『水』のルビーと『始祖の祈祷書』が光り出したのに、びくりと肩を震わせた。
「……何よ、これは……」
 突如放たれた光に目を眇めていれば、白紙だったはずの紙面に文字が書かれているのが見えた。
 それは果たして古代のルーン文字であったが、学年でも指折りの勉強家であるルイズは難なくその文字を読める。ページにびっしり書かれた文字列を目で追っていく。

『これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す』

 視線を素早く走らせ、内容を読み解いていく。ルイズの視線が最後の行を読み終わった瞬間に、ハーミットパープルがページをめくってくれた。
567ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 00:57:50 ID:vXqdi1jj
『神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化をせしめる呪文なり。四にあらざれば零。
 零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん』

 読み進めていく内に、ルイズの鼓動は高ぶっていく。
「虚無の系統……伝説じゃないの。伝説の系統じゃないの!」
 祈祷書を読み耽るルイズは、頬を濡らした涙を拭くことも忘れていた。ハーミットパープルがポケットから取り出したハンカチで拭ってくれているのも気付かないまま、胸の中で大きくなっていく鼓動ばかりを強く感じていた。

『これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり。『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。『虚無』は強力なり。
 また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。
 選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。

 ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
 初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』 』

 その後に古代語の呪文が続く。
 読み終わったルイズは呆然とする。虚無が強力なら厳重にするのも理解できるが、それにしたってここまで厳重にしたら気付かないで一生を終えたりする可能性高すぎるでしょう、とか当然言いたかった。
 が、それよりも今、余りにも多くの事が一度に起こり過ぎて混乱しかけていたルイズの思考が、段々落ち着きを取り戻してきていた。
 祈祷書から、自分を包み込んでいるハーミットパープルに視線を移すとそっと撫でてみる。茨に棘は生えているが、先端に触れてみても痛みはない。

『メイジと使い魔は一心同体よ』

 ジョセフを召喚した夜、滔々と語っていた言葉を思い出す。

『ハーミットパープルの能力は念写に念視!』

 武器屋を探す時に、ジョセフが見せてくれたスタンド。
568ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 01:00:33 ID:vXqdi1jj
「……もしかして。私が……力を欲しいと、心から願ったから? ハーミットパープルが、私の中に眠っている虚無の力を探し出してくれたの……?」
 もしハーミットパープルがなかったら、果たして自分は祈祷書を読めていただろうか。
 『水』のルビーを指に嵌めた後で、祈祷書を開いて読もうとする機会など考えにくい。
 だとすれば、なんて迂遠なことだろうと思う。
 自分の中に眠る力を見つける為の大きな扉を開くために、異世界のスタンド使いを――それも探索能力に長けた――連れてくるだなんて。
 しかしそうでなければ、一生気付かないままだったかもしれない。
 一生、ゼロのルイズとして蔑まれる人生を送っていたかもしれない。
 しかし今、ルイズは自分の系統に気が付いた。
 ジョセフの力を借りられたのは、彼が自分と一心同体の存在だったから。主人の切なる願いを感じ取ったハーミットパープルが、主人の望む物を探し出したのだ。
「…………ジョセフ…………!」
 今、ここにいない使い魔を掻き抱くように、自分を包む茨を抱いた。
 再びルイズの目から涙が零れる。
 しかし、先程の涙とは違う。
 暖かく、暖かく、暖かく……――嬉しくて流れた涙だった。
 ぐ、と袖で涙を拭うと、まだ暗い輪を作る太陽を見上げ、続いて飛行機に目をやった。飛行機は日蝕の輪に向かってはいない。むしろゆっくりと高度を落としていっているのが見えた。
 ルイズは、祈祷書に目をやる。静かに、しかし大きく息を飲んでから、右手にある杖を握り直した。
(ダメよ)(やらなくちゃ)
 二人のルイズがいる。
 呪文を唱え始める。
(何をする気なの)(そんなの決まってるわ)
 沸き立つような心の波、冷ややかに祈祷書の呪文を追う視線。
 まるで何度も聞いた子守唄のような懐かしい旋律を紡いでいく。
(そんなことをしてはダメよ。ジョセフを帰すだなんて)(帰さなきゃいけないのよ)
 初歩の初歩の初歩の虚無、エクスプロージョン。
 聞いた事もないのに、初めて使う魔法だというのに、ずっと前から知っていた。
(馬鹿げてるわ! そんなことの為に、伝説の力を使うだなんて!)(伝説の力だからこそ使うのよ。エクスプロージョンなら……虚無の力なら、飛行機をあの日蝕の輪へ持ち上げることが出来る!)
 リズムが体の中に沸き起こり、駆け巡る。
 今、何をしようとしているのか、ルイズは十分すぎるほど理解していた。
 自分を優しく支えてくれてきた使い魔を、自らの魔法で、自らの手の届かない世界へ帰そうとしているのだ。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 01:01:58 ID:qR+rJYbr
支援ッ!
570ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 01:03:05 ID:vXqdi1jj
(やめましょう! 今なら間に合うわ! 簡単よ、今すぐ詠唱をやめて、日蝕が終わるのを待つのよ! 誰にも判らないわ、私が何もしなかったからって誰も責めないわ! そうよ、ジョセフだって、きっと仕方ないって――……)
(私が許さないわ!!)
 囁くのは、ルイズ。一喝したのも、ルイズ。
 二人とも紛れもないルイズであり、ルイズの本心。
 二人に共通しているのは、ジョセフを大切に思っているということ。
 しかし、決定的な違いがある。
 一人は、ジョセフを慕い縋ろうとする少女のルイズ。
 もう一人は、ジョセフを誇りに思う貴族のルイズ。
 帰したくない、帰してあげたい。それは同時に存在する、ルイズの本心。
 どちらにも転ぶ。どちらかを選ぶ。そしてルイズは選んだ。
 詠唱は、止まらない。
(駄目、駄目よ! そんなことしたら、私は一生使い魔のいないメイジになるわ! ジョセフが死ぬまで新しい使い魔を呼べないのよ! 使い魔が欲しくてジョセフが死ぬのを願ったりするなんて、そんなことはいやよ! やめて! やめましょう!)
(そんなことは願わないわ、決して! だって、だって、私は――……)
 長い詠唱の後、呪文が完成した。
 その瞬間、ルイズは己の呪文の威力を完全に理解した。
 これは、大いなる力だ。
 先程の艦隊を、ただ一人で打ち破れる。いや、それだけではない。自分の視界に映る全てを巻き込み、しかも自分の破壊したいものだけを破壊できる。
 今なら、まだ引き返せる。この杖を振り上げなければ、まだ引き返せる。
 これだけの力を使えるのは、最初の一回だけ。今まで溜め込んできた精神力を使ってしまえば、また溜め込むのに時間が掛かる――使ってもいないのに、ルイズには当たり前のように理解できていた。それは自分の系統だからだ。
 そう、今までゼロだと蔑まれてきた自分が伝説の担い手だったのだ。
 この力があれば、敬愛するアンリエッタ様の力になれる。
 両親に、姉達に、友人達に、教師に、胸を張れる。
 私は、立派なメイジなのです。
 ちょっと奇妙な使い魔がいるけれど、私は一人前のメイジなのです……

 杖を握る手に、力を込めた。一瞬、自分を包んだままの茨に視線をやり……そして、何かを吹っ切るように空を見上げる。
「私は……私はぁッ!!!」
 涙が落ちるのにも気付かず、天高く杖を振り上げた。
「ジョセフ・ジョースターの主ッ!! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのよぉーーーーーーーッッッ!!!」


 *
571ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 01:05:36 ID:vXqdi1jj
 ハーミットパープルが自分の制御を外れたのに警戒はしつつも、今最優先すべきなのは無事に不時着することである。
 今にもオシャカになってしまいそうなゼロ戦を宥めすかしつつ着陸場所を探していたジョセフは、突如眼下で膨らんだ光の球に気付く。
 まるで小さな太陽のように鮮やかで激しい光を放つそれに、思わず腕で目を覆った。
「なんだぁーーーーッこいつはッ!!」
 回避運動を取ろうにも、下から膨れ上がる光の球の速度は、どう逃げようともゼロ戦を捕らえる。ガンダールヴのルーンが突き付ける非情な現実が、ジョセフの頭に否応なしに浮かぶのだった。
「落ち着けよ相棒。ありゃあ、虚無の魔法だ」
「なんだと!? 虚無!? それがなんで今頃……」
「そりゃあ、虚無の担い手が使ったんだろ。ふつーのメイジにゃ使えねぇ」
「お前、そんな暢気な……!」
「俺の敬愛する相棒に含蓄ある素晴らしい言葉を送るぜ。ダメな時ゃ何やってもダメ」
「ただ諦めてるだけじゃないかそいつァー!!」
 狭いコクピットの中で何を言い合おうと、結果が変わる事はない。
 迫り来る光の球がゼロ戦の腹に当たる瞬間、覚悟を決めて目を固くつぶる。
(ああ……ここでオシマイかッ……すまん、スージー、ホリィ、承太郎、ルイズ……ッ!)
 しかし、終わりの時は訪れない。
 不意に感じた奇妙な感覚に恐る恐る目を開けた。
 結論から言えば、光の球はゼロ戦を飲み込まなかった。
 光の球は、ゼロ戦を飲み込むのではなく――
「こ、こいつはッ! ゼロ戦を『押し上げている』ッ!?」
 風防ガラスの外に見えたのは、『垂直に落ちて行く雲』。否、そう見えるのは自分達が垂直に上昇しているから。
 どこへ向かうのか。
 思わず上を見上げたジョセフの目には、今にも途切れそうになっている日蝕の輪が見える。
 その瞬間、ジョセフは全てを理解した。
 操縦桿から手を離し、側壁に凭れ掛かる。
「そうか……ルイズ……。お前、魔法使えるようになったんじゃなぁ……」
 満足げに微笑むと、目を閉じて生意気な孫娘の顔を思い返した。
「なあ、デルフリンガーよ」
572ゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶:2009/05/05(火) 01:08:10 ID:vXqdi1jj
「なんだい相棒」
「いきなり召喚されて大変な目にもあったが……だが、楽しかった。とても楽しかったよ」
 かちり、と一度金具を鳴らし、剣はしみじみと呟いた。
「ああ。楽しかったな……本当に心からそう思うぜ」
 日蝕の輪は、どんどん近付いてくる。
「相棒の世界ってのは、俺っちが活躍できるような世界かい?」
「んーむ……DIOも倒したところじゃからなあ。お前の出番はないんじゃないか?」
 イヒヒと笑うジョセフに、デルフリンガーは嫌そうな声を上げた。
「また武器屋の店先で安売りされるのだきゃカンベンしてくれよ、相棒」
 そしてまた、二人で笑い合う。
 光の球は輝きを増していく。
 まるで月に隠れた太陽の代わりになろうとするかのような、黄金の輝きを。
 その時、ジョセフは確かに見た。
 日蝕の輪を潜った瞬間を。


 *


 不意に現れた光の球を、タルブにいた者達は見上げていた。
 不意に現れた光の球は、特に目立った何かを起こすわけでもなく、現れた時と同じように不意に消えた。
 その光の球が如何なるものだったのか理解できる人間は、一人だけの当事者を除いては誰一人存在しなかった。
 そのたった一人の当事者も、今までの人生で蓄積してきた精神力を全て使い果たし、馬の背の上で気を失っていたのだから――



 【ジョセフ・ジョースター (スタンド名・ハーミットパープル) 地球へと帰還】



  To Be Continued →
573隠者の中の人 ◆4Yhl5ydrxE :2009/05/05(火) 01:14:24 ID:vXqdi1jj
以上投下したッ!
よし言いたいことがあるのはよーく判る。とてもよーく判る。
ちょっとサボってたらいつの間にか三ヶ月時を吹き飛ばされたんだ……何を言っているか(ry
ちょっとコードギアスの最終回付近見ながら書いてたらいつの間にかゼロ魔もジョジョも設定ブッちぎった展開になってたんだ……何を言っt(ry

次回投下でゼロと奇妙な隠者・帰還の挨拶は最終回です! 多分!

後IDの最後がjj! ジョジョってことなのか!
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 01:18:18 ID:O31llzae
投下乙です!
隠者大好きだから次回最終回なのはさみしいよぉー!
>>573
まあ!ジョジョったら、いけないひとッ!
575S.H.I.Tな作者:2009/05/05(火) 09:04:04 ID:jIZo1W3V
おはようございます。
後少ししたらS.H.I.Tな使い魔15話の前編後編を投稿します。
ただこれでしばらく爆速更新は出来なります。申し訳ない・・・
576S.H.I.Tな作者:2009/05/05(火) 10:12:38 ID:jIZo1W3V
   | \
   |Д`) ダレモイナイ・・トウコウスルナラ イマノウチ
   |⊂
   |
577S.H.I.Tな使い魔15 前編:2009/05/05(火) 10:13:44 ID:jIZo1W3V
ギーシュは早速ワルキューレに叩き伏せられた少年を見下ろした。
大口を叩いていたわりにはあっけない。
しかし、この平民がしゃしゃり出てきてくれて、正直助かったかな、と思う。
モンモランシーとケティにあんな振られ方をしたから、このままでは自分の株が急落するところだった。
思わずルイズにやつあたりしたところに現れたこの平民。
おかげで、決闘に注目が集まって、自分の失態は雲散霧消することだろう。
「立ちたまえ!あれだけの口を利いたのだ。これくらいで終わらせる気はさらさらない!」
少年は、片手で顔を抑えながらおぼつかない足取りで立ち上がった。頭から血を流している。
しかし不思議だ。とギーシュはその様子を見ながら思った。
この平民はなぜ、あの『白いゴーレム』を持ってこなかった?
ギーシュは、ルイズの召還の一部始終を見ていた。
召還された平民が、何もないところから『白いゴーレム』を生み出したのも覚えていた。
あのような小さなゴーレムに自分のワルキューレが負けるとは毛頭思っていないが、あれを作り出したという『マジックアイテム』が唯一警戒すべきものだと思っていたのだが。
「(あれだけ自信満々だから、てっきり持ってくるものだと思っていたが、予想外だったね・・・)」
持っていないなら、残っているのは女の子にも負けそうなほど弱そうな、ただの平民が一人。
「(悪いが、ぼくのワルキューレとしばらくダンスしてもらうよ。)」
ギーシュはにやりと笑った。


康一は口の中に違和感を感じて、ぷっとそれを吐き出した。
真っ赤な鮮血と共に、歯が一本地面に転がった。
「く、くそっ!なんてことだッ・・・!」
動揺したところにまともに喰らってしまった・・・!
青銅の硬くて思い拳は、危うく一発で自分の意識を刈り取るところだった。
「(どうする!?)」
康一は、ゆっくりとこちらに近づいてくるワルキューレを見た。
『スタンド』は出せない。こんな衆人環視のなか、『スタンド』を出せば、間違いなく『先住』扱いされる。
かといって、生身であのくそったれワルキューレと戦って勝ち目があるとも思えない。
「とにかく・・・とにかく、あの攻撃を避けなくては・・・!」
このワルキューレ。パワーはなかなかだが、スピードは大したことはない・・・!
『スター・プラチナ』や『クレイジー・D』に比べれば蠅が止まるような速度さ。
『ACT3』でも余裕で翻弄できる!
だが・・・!
ワルキューレが拳をふりあげる。
「(来るのが分かっていても、生身では避けきれない!)」
顔面をガードした両腕の上から、青銅の拳が叩き込まれる。
ミシッ!と両腕から音がしたような気がした。
軽い康一の体は突き上げるようなパンチの衝撃でふわりと浮き上がった。
その康一の脇腹に叩き込まれるワルキューレのミドル・キック。
康一は血を吐きながらサッカーボールのように吹き飛び、人垣に激突した。
人垣は康一を広場へと押し戻し、康一はふらついて膝をついた。
「まだやるかい?」
ギーシュは尋ねた。これ以上やると『イジメ』になってしまう。それはあまり美しくない。
康一は何も言い返さなかった。
その代わりに、ギーシュとの間に立ちふさがるワルキューレの左足に、体勢を低くして渾身のタックルをいれた。
「あの平民、ワルキューレを倒そうとしてるぜ!!」見物客から歓声があがった。
しかし・・・
「(う、動かない・・・!)」
ワルキューレは康一の全質量を受け止めてなお、ビクともしなかった。
「忘れたのかな?『青銅』なんだよ?まさか中がすっからかんの空洞だとは思ってないだろうね。重さは少なくとも50リーブル(約235kg)はある!君のようなチビがどうこうできるわけがないだろうッ!!」
ワルキューレは、左足にしがみつく康一を軽々と引き剥がすと、大きく頭上に掲げて背中から地面に叩きつける!
その衝撃で康一は思い切りバウンドした。息が止まる・・・!
ワルキューレは悶え苦しむ康一を足でいたぶった。蹴り転がし、踏みつける。
578S.H.I.Tな使い魔15 前編:2009/05/05(火) 10:14:32 ID:jIZo1W3V

「もうやめて!」
ルイズが飛び出してきたのはそのときだった。
横たわる康一に覆いかぶさる。
「もう・・・もう勝負はついたわ!こいつの負けでいいから!」
ルイズは必死に叫んだ。
ギーシュはフン、と鼻を鳴らして鼻白む。
「これはぼくとその平民との決闘だ。その平民が『まいった』というまで勝負は続く・・・」
でもまぁ・・・。ギーシュはアゴをなでた。
「ぼくも弱いものいじめは趣味じゃない。ルイズ。主人である君がかわりに『すみませんでした』と謝るのならば、この場はこれで収めようじゃないか。」
ルイズはすぐに謝ろうと思った。このまま康一がボロボロになるのを見ていられない。
だが、ルイズの肩に、倒れていた康一が手をかけた。
「ま、まだ・・・終わってない・・・」
ルイズの肩を借りて立ち上がる。
「ルイズ・・・言っただろ・・・?『ぼくを信じてくれ』・・・って。まだ大丈夫。まだ終わってない・・・」
「もう無理よ!もうあんたは十分がんばったわよ!」
泣きそうになりながら叫ぶルイズに、康一は目じりだけで笑った。
そして、「け、決闘の邪魔だから・・・引き止めておいて・・・」と近くにいる見物人の一人に頼んだ。
見物人たちがルイズを引き剥がす。
「ダメよ!もうやめなさい!死んじゃうわ!!」
ルイズが叫ぶが、康一はもう振り返らない。
「大した根性だね。平民。立ち上がって何があるわけでもあるまいに・・・」
ギーシュが賞賛した。
「お、お前のワルキューレはぜんっぜん大したことないけどね・・・。」
康一はハッ、と笑いながら強がった。
ギーシュはピクリと眉を引きつらせた。
「なんだと?もういっぺんいってみろ・・・」
「何度でも言ってやる・・・。こんなハナクソみたいなゴーレムの一匹操れるくらいでいい気になってるなら、お里が知れる・・・そう言ったんだッ!」
「野郎ッ!!」
ワルキューレが大きく一歩を踏み出して、康一に殴りかかった。
康一は体勢を低くして、ワルキューレの足元に飛び込んだ。
「頭脳がマヌケか!?ワルキューレにタックルなど無意味だ!!」
しかし康一は、タックルの軌道よりもさらに体勢を低くする!
背中から飛び込むようにしてワルキューレの股の間をすり抜け、一回転してそのまま走り出した。
「あいつ、直接ギーシュを狙うつもりだ!」
観衆がどよめいた。
距離15m!
ギーシュは笑った。
「フー。まさかそのぼろぼろの状態でそんな芸当をして見せるなんてね。いや、マジに恐れ入ったよ・・・。」
距離10m!
「窮鼠猫を噛むっていうのか?普通なら、『どうやって許してもらおうか。助けて神様!』って考えるべきところを、まだぼくを倒す気でいるとは・・・」
距離5m!!
「だがっ!『運命』とはそう甘いものじゃあないのだよ!『平民は貴族には勝てない』これは絶対なんだッ!」
ギーシュが造花を振った。花びらが舞い散り、康一がギーシュに殴りかかる寸前で6体のワルキューレになった。
康一はワルキューレに蹴り飛ばされて地面に転がった。
579S.H.I.Tな使い魔15 後編:2009/05/05(火) 10:15:20 ID:jIZo1W3V
「・・・平民。名前は?」
ギーシュが這いつくばり血を吐きながら痛みに悶える康一に尋ねた。
「ぼくに全力を出させた平民の名前だ・・・覚えておこう。」
「広瀬・・・康一だ・・・」
康一がふらふらと立ち上がった。
「でも、『全力を出させた』ってのはちょっと違うな・・・『ぼくをボゴボゴにした平民』として覚えておけばいい・・・」
7体のワルキューレが円を描くようにして康一を囲んだ。
「まだそんな口が叩けるとはね・・・。まぁいい。一応最後にきいてやろう。 まだ、やるかい?」
康一は血まみれになりながら、ギーシュを睨みつけた。
「・・・・ってこい。」
「・・・なんだって?」
「かかってこい。っていったんだ。このマヌケ面。かかってきた瞬間、お前は敗北するッ・・・」
「君はもう・・・君はもう・・・」
杖を振り上げる。
ギーシュは覚悟を決めた。この平民を・・・殺す!
「君はもうおしまいだぁあ―――っ!!ワルキューレッ!!!」
七体のワルキューレが同時に突撃する。
逃げ道など・・・ない!!
「コーイチ――――ッ!!!」
ルイズの悲鳴と共に
グシャアッッ!!!
ワルキューレが殺到し、激しい金属音とともに激しく激突した。
後に残るのは死の静寂のみである。

「フゥー。つい殺してしまった。平民相手に大人気なかったかな。カッとなってしまった。」
ギーシュは少し乱れた髪を手で撫で付けた。
「しかし、これで平民じゃない新しい使い魔が召還できるってものだろう!僕に感謝したまえよ!」
とルイズに言葉を投げかけた。
しかし・・・
様子がおかしい?
ルイズは・・・いや、その周りの観客達も、みなポカーンとした目で僕のことを見ている。
いや、僕じゃない。その更に奥を見ている・・・?
「言ったはずだ・・・」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ギーシュは振り向くこともできずにたらりと汗を流した。
「『かかってきた瞬間、お前は敗北する』とッ・・・・!」

「と、飛んだ・・・!」
「あそこからギーシュの背後までジャンプするなんて、平民に可能なのか!?」
「あの跳躍力は一体なんだァー!?」
一部始終を見ていた観客が悲鳴をあげた。
「ずっと待っていた。お前が複数の『ゴーレム』を出すのを・・・。観衆から、僕を隠す『死角』を作ってくれるのをッ!!!!」
あの瞬間、7体のゴーレムで覆い隠された『死角』で行われたことに気づいたのは、遠見の水晶球で様子を伺っていたオールド・オスマンと、飛びぬけた動体視力を持つタバサだけだった。
康一が絶体絶命のピンチに陥ったそのとき、『死角』の中に『緑色の生き物』が現れて、地面に『なにか』を貼り付けた。その瞬間『地面が跳ねた』のだ!
ボヨヨヨ〜〜〜ン!

「ゲエエエエエェエエ!!」
ギーシュは腰を抜かして飛びのいた。
そこに立っていたのは、確かにさっきワルキューレたちに潰されたはずの『平民』!
しかしなぜ、こいつがここにいるんだぁー!!

「さぁ・・・次は・・・『お前の顔をボゴボゴにする』番だな・・・」
「ば、馬鹿なッ!!!」
ギーシュは自分に言い聞かせた。
ぼくは貴族だ。こんな平民に負けるわけがない。そうさ!ちょっとびっくりはしたが、それだけだ。こいつはこれ以上なにもできない!
ギーシュは立ち上がった。
お互いに激突して動きを止めていたワルキューレたちも、次々と立ち上がっていく。
「ちょっぴり・・・ほんのちょっぴりだけ驚いたよ。でも、それだけだ!ぼくもワルキューレもピンピンしているぞ!!お前がワルキューレに頭蓋骨をぶち割られる『運命』に何も変わりはないッ!!」
580S.H.I.Tな使い魔15 後編:2009/05/05(火) 10:17:26 ID:jIZo1W3V
「やっぱり・・・言い直すよ・・・・」
康一は滴る血を拭いもせずにギーシュを指差した。
「『かかってきた瞬間、お前はすでに敗北《した》!』」
ギーシュは激昂した。
「ふざけるなこのチビがぁー!ワルキュー

『ギーシュ様!最低です!』

「え!?」
突然耳元で声がしてギーシュは振り向いた。
「け、ケティ!?」
しかし振り向いても誰もいない。遠巻きに見守る観衆がいるだけだ。

『二度と私に近づかないで。』

今度の凍りつくような声色は・・・
「ま、まさかモンモランシー?!」
だが、やはりギーシュの周りにいるのは、血まみれの平民だけだった。
それなのに、声が・・・声が聴こえる!!

『ギーシュ様!最低です!』
『二度と私に近づかないで。』
『ギーシュ。あなた、やっぱり一年生の子に手を出していたんだ・・・』
『ギーシュ様・・・やはりミス・モンモランシーと付き合っておられたのですね・・・』
『それってもしかしてモンモランシーの香水じゃあないのか!?』
『二度と私に近づかないで。』
『ギーシュ様!最低です!』

「や、やめろぉー!!!?」
ギーシュは耳をふさいでその場に膝をついた。
だがどんなに耳をふさいでも、その『声』は頭の中でグワングワンと鳴り響く。
頭が破裂しそうだァ――!!
「平民・・・!貴様何をしたぁぁぁー!」
「さぁね・・・格好つけたがりで、体裁が何よりも大事なお前に、似合いの結末を用意しただけだ・・・!」
581S.H.I.Tな使い魔15 後編:2009/05/05(火) 10:18:08 ID:jIZo1W3V
空中に飛び上がった瞬間のことは、あのタバサを持ってしても目で追うことができなかった。
誰もの視線が外れた一瞬、康一の体の影から『小さな白い手』が現れて『文字のようなもの』をギーシュに投げつけたのだ。
オールド・オスマンだけはその様子を辛うじて捉えていた。
「さぁ・・・謝ってもらうぞッ!!」
康一が詰め寄る。
「や、やめろぉー!!来るなァ――――!!」
康一は、中腰になったままで押しとどめようとするギーシュの手を払いのける。
拳を振り上げた!
「う、うわぁぁぁぁー!」
「君がッ!!」右拳がギーシュのあごに直撃する!
「謝るまでッ!」左拳がギーシュのみぞおちにめり込む!
「殴るのをッ!」右拳がギーシュの脇腹をくの字に折り曲げ。
「やめないッ!!!」左拳がギーシュの顔面を捉えた。
「オオオオラァァァァァァ―――――――――!!」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!!
康一に残る全てを注ぎ込んだ渾身の、左右のラッシュ!
「ホガァー!!」
ギーシュは『じゃがいもだって目を背けるようなボゴボゴの顔面』になって吹き飛んだ。
「謝れーッ!」
康一は叫んだ。
「ふ、ふいまへんでひたぁー!!ぼくがわるかったからゆるひてくらはいー!!!!」
ギーシュは豚のような悲鳴をあげた。
康一はそれを聞くと、ACT1を解除した。
正直、限界だ・・・。もう一秒だって立っていられない。
ルイズが泣きそうな顔をしてこっちに走って来るのが見える。
「(だから、ぼくを信じろっていっただろ?)」
そう言おうと思ったのに声がでなかった。
ルイズのほうへ行こうとしたのに、足が動かなかった。
そのまま、力なく地面に倒れこんで、康一は意識を手放した。
582S.H.I.Tな使い魔15 後編:2009/05/05(火) 10:20:09 ID:jIZo1W3V
以上になります。
>>556
ドドドお借りしました!

とりあえず書きたいところまでかけてほっと一息といったところです。
それでは、アリーヴェデルチ!
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 10:52:17 ID:LuBP+jkO
ディモールトGJ!
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 11:14:42 ID:uMjF7OGJ
投下乙
康一かっこよすぎ
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 11:37:37 ID:4iCMMLCN
ちょwwww本当に更新早過ぎwww
ディ・モールト乙です!
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 12:37:02 ID:pJKym4Ds
更新早いのに珠玉の作品とか最高すぎる

スタンドが見えるってことをとても上手に話しに盛り込んできたなぁ。
見えるだけなら幾らかあったけど、エルフ扱いされる→処刑されるかもで決闘での制約は素晴らしいと思ったわ
戦闘もジョジョっぽいし人物も荒木の絵で想像できた。ギーシュの台詞も秀逸だったし、なにより勝ち方が康一君らしくまたジョジョらしかった

とにかく乙
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 18:26:13 ID:ule5GZfy
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!乙!!乙!!!乙!!!!乙!!!!!
やった!これが我らの康一君!!燃える展開に痺れたっすよぉ
SHITの作者さんGJ!&お疲れ様っした
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/05(火) 19:04:50 ID:wQNp1Qdy
隠者のヒト乙!
ずっと待ってたよ
589味見 ◆0ndrMkaedE :2009/05/06(水) 15:00:31 ID:QpXZ4Jtc
やーった、やーったったった、でーきーたー!!!
最終話まで、でーきーたー!!!
完結!m9(`・ω・´)
うほっほーい!!!11

これから校正がはじまるお……投下できるのは夜だな
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 15:02:39 ID:aCVGPsfV
おやお久しぶり
ってあそこから一気に最終話か
凄い量になりそうなw
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 16:01:34 ID:q6SXrrKE
>>589
お久しぶりで。wktkしながらまってますよ
592S.H.I.Tな作者:2009/05/06(水) 17:13:05 ID:Qz+RbCM/
S.H.I.Tな使い魔の16話と17話をこっそり投稿しちゃってもよろしいでしょうか。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 17:17:45 ID:+YB8KiXp
カモ〜ン
594S.H.I.Tな作者:2009/05/06(水) 17:20:26 ID:Qz+RbCM/
ありがとうございます。
では失礼しまーす
595S.H.I.Tな使い魔16:2009/05/06(水) 17:21:24 ID:Qz+RbCM/
康一は、一本の道を歩いていた。
隣では仗助くんと億泰くんがいて、一緒に馬鹿話をしている。
道の左手からは、露伴先生が現れて、一緒に取材に行こうとぼくを誘う。
康一どのー!という声が聴こえた。右手から玉美と間田さんが合流する。
やれやれだぜ・・・。という声が聴こえた。後ろでは承太郎さんがぼくたちを見守ってくれている。
由花子さんが道端に立ってぼくを待っていた。並んで歩く。
仲間達と共に歩く。
こうして歩いていれば、ひょっとしたら雨が降るかもしれない。小石に躓いて転んでしまうかも。
でもぼくには仲間がいる。寂しくなんかない。

この道は、杜王町へと続いている。


えーんえーん・・・
康一はふとあたりを見回した。
子どもの泣き声が聴こえる気がするのだ。
康一は道をはずれ、その声の主を探しにいくことにした。
声を追い、藪を分け入って進むと、小さな池が現れた。
池の真ん中には小船が浮いていて、鳴き声はそこから聞こえてくるようだ。
子どもが池に一人取り残されて泣いているんだ。と康一は思った。
康一は池の中に踏み込んだ。そこまで深くはない。腰ほどの高さだ。
じゃぶじゃぶと水をかき分けて進む。
船にたどりつくと、ピンクブロンドの髪の女の子が毛布にくるまっていた。
女の子は小船の中で、独りぼっちで泣いていたのだ。
「もう大丈夫だからね。」
康一はその女の子を抱き上げた・・・。



康一は目を開いた。
知らない天井?いや、馴染みこそないが、ぼくはこの部屋を知っている。
コンコン、とノックがあり、扉が開いた。
目を向けると、黒髪でメイド姿の少女が現れた。
「コーイチさん。目が覚めたんですね!」
「し、シエスタ!?」
シエスタは胸に手をあて、大きく息を吐いた。
「よかった・・・。心配したんですよ・・・。あんなに大怪我して・・・!」
康一はようやく、自分が何をしていたかを思い出した。
「そっか・・・。ぼく、気を失っちゃってたんだ・・・」
「はい。三日三晩ずっと眠り続けてました。」
「そんなに!?」
徹夜でゲームをしてしまった翌日だって、そんなに眠ったことはない。
「頭を強く打ってましたから、そのまま起きないんじゃないかって心配しました・・・。」
康一はワルキューレに散々殴られたり蹴られたりした時のことを思い出した。
「他にも、両腕にはヒビが入ってましたし、歯も折れてました。肋骨は3本ほど折れて、一本は肺に突き刺さっていたそうです。」
「う、うわぁ。重症じゃないか・・・。」
康一は他人事のように答えた。自分の体を触ってみる。
「でも・・・あれ?その割には痛くないんだけど・・・。」
脇腹を触ってもうずく程度でそんなに痛くはない。腕にもあまり違和感はない。舌で口の中を確認したが、折れたはずの歯が元に戻っていた。
「ええ。コーイチさんをここに運び込んだミス・ヴァリエールが、先生に頼んで、水魔法の治療を施してくださったんです。」
596S.H.I.Tな使い魔16:2009/05/06(水) 17:22:05 ID:Qz+RbCM/
シエスタは窓を開けた。
窓から日の光が差し込んできて、康一は目を細めた。
そして気づいた。
自分のベッドのうえにルイズが頭を乗せて眠っている。
ピンクブロンドの髪が太陽の光を反射してきらきらと光っている。
「ミス・ヴァリエールはこの三日間、ずっと学校にもいかず、ほとんど寝ないでコーイチさんの看病をしていたんですよ?」
「そうなの!?」
康一はルイズの寝顔を見つめた。
この我が侭娘が、そんなにぼくのことを心配してくれたのか・・・!
康一はルイズの頭を撫でた。
ルイズは、う〜ん・・・とムズがっていたが、不意に目を開けると、がばっと起き上がった。
自分の頭に手を当てて顔を赤くする。
「ななな何してんのよ!!」
「いや、寝顔が可愛かったから・・・つい。ずっと看病してくれてたんだって?」
ルイズの顔が、ボッっと音を立てて真っ赤になった。
「ば、馬鹿じゃないの!犬のくせに・・・!自分の使い魔が怪我したら、面倒を見るのは当然でしょ!!」
そしてはっとした表情になった。
「そういえば、体は大丈夫なわけ・・・?」
心配そうに尋ねる。
「うん。もうなんともないよ!」と腕を振り上げて見せた。
実はその瞬間、脇腹にビキッっとした痛みが走ったが、辛うじて表情には出さずにすんだ。
「そう・・・よかったわ・・・。」
ルイズはほっと胸をなでおろした。
「あんまり無茶するんじゃないわよ。あんた、下手したら死んでたのよ?」
「ごめん・・・。」
康一は頭をかいた。
ルイズはそんな康一に一つ溜息をつくと、立ち上がる。
「じゃあ、どいて。」
「え?」
「わたし、あんたが寝てる間ほっとんど寝てないの。眠いの。」
「え、ご・・・ごめ・・・」
「だからほら!ベッドを空けなさいよ!」
ルイズは康一をベッドから引き摺り出すと、そこにするりと飛び込んだ。
毛布にもぞもぞと猫のように包まる。
そしてそのまま寝息を立て始めた。

「追い出されちゃったよ・・・。」
苦笑いするとシエスタと目があった。
ふふふっと笑いあう。
「それじゃあ、ちょっと厨房にいらっしゃいませんか?お腹が減ってるんじゃないかと思うんですけど。」
「そういわれると・・・」
代わりに康一のお腹がグルグルキューと返事をした。
「・・・減ってるみたい。」
「よかったぁ。」
シエスタは嬉しそうに手を合わせた。
「マルトーさんに、コーイチさんの目が覚めたら連れてくるようにって言われてたんです。」
シエスタは康一に、あの学生服を手渡した。
「寝ておられる間に、洗って修繕しておきましたから。」
康一にとっては、こちらで持っている唯一の服である。
「ありがとう!助かったよ!」


康一は、寝ている間に着せられていたのであろう、パジャマのような服を脱ぐと、いつもの学生服に着替えた。
そしてシエスタについて、厨房へと向かうことにした。
597S.H.I.Tな使い魔16:2009/05/06(水) 17:23:12 ID:Qz+RbCM/
二年生最強のメイジ。ギーシュ・ド・グラモンが食堂で女の子を苛めていると、平民の少年がそれを止めに入った。
「まちな!」
「何者だ貴様!」
ギーシュがその少年に杖を突きつける。
「てめーみたいな屑に名乗る名はねぇぜ・・・・」
「平民の分際で貴族に楯突く気か・・・?いいだろう。かかってこい!」
「てめーは俺が裁くっ!」

そして始まる決闘。
「この『平民』がぁー!『貴族』様に勝てると思ってんのかぁー!」
ギーシュはゴーレムを作り出し、少年に襲い掛かった。
「オラァ!」
少年が鉄拳を振るうと、ゴーレムは一撃で砕け散った!
「な、なんだとぉー!?」
「なめるなよ?全力を出せ。貴族!!」
「ひ、ひぃぃ!や、やってやるぅ!!」
ギーシュが杖を振るうと、数十体のゴーレムが少年を取り囲んだ!
「げへへ!平民の分際で舐めた口聞いたことを後悔させてやるゥー!!」
少年に襲い掛かるゴーレム達!
だが、少年はゴーレムの一体を踏み台にして飛んだ!
「な、なにぃぃー!馬鹿なぁー!」
ギーシュは驚愕した。
少年はギーシュの背後に華麗に着地すると、ギーシュをギロリと睨んだ。
「次はてめーの番だ・・・」
「はひぃぃー!」
ギーシュはあまりの恐怖に失禁して腰を抜かしてしまう。
「右の拳で殴るか左の拳で殴るか、あててみな・・・。」
少年はギーシュを見下ろした。
ギーシュはごくりと唾を飲んだ。
「ひ、一思いに右で・・・やってくれ!」
「NO!NO!NO!」
「ひ・・・左?」
「NO!NO!NO!」
「り・・・りょーほーですかぁー!?」
「YES!YES!YES!」
「もしかしてオラオラですかぁー!?」
「YES!YES!YES!OH!MY!GOD!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――!!」
少年のラッシュでギーシュは「ひでぶ!」と言いながら吹っ飛んだ!
顔面を血だらけにされたギーシュは命乞いをした。
「今まで威張ってすみませんでしたァー!もう平民を馬鹿にしないので、許してくださーい!」
「てめーら貴族が平民を苛めるようなことがあれば、またすぐにボコボコにしてやるからな。」
「わ、わかりましたー!」
ギーシュは土下座をした。
「やれやれだぜ・・・・」
少年はくるりと背を向けた。
「助けていただいて、ありがとうございました!」
苛められていた少女が礼を言うと、
「気にするな・・・」
とだけ言って去っていく。
「ま、まってください!」
少女が叫んだ。
「あなたの・・・あなたのお名前は?」
少年は顔だけを少女に向けて言った。
「俺の名はコーイチ。しがない平民さ・・・」
598S.H.I.Tな使い魔17:2009/05/06(水) 17:24:45 ID:Qz+RbCM/




あれから三日。これが現在平民の間で噂されている決闘の詳細である。



あの決闘を見ていた平民はシエスタだけだった。
シエスタは興奮のままに、平民の仕事仲間に『平民の少年が貴族に勝った』決闘のことを話した。
シエスタから聞いた平民は、またその仲間に聞いた話を伝えていく。その仲間はまた別の仲間に。
「きっと、こうだったのさ・・・!」「・・・だって聞いたわよ!」「・・・だったらしいぜ!」
噂をするうちに膨らんだ想像が付け足されていき、逆にいくつかの情報が抜け落ちていく。
こうして、本人がいない間に、康一は
『弱きを助け、強きを挫く勇者』にされてしまったのだった。


「う、うわぁ・・・」
康一は青くなった。
なんだか、話が無茶苦茶美化されている。
しかも平民の代表みたいにされてるし・・・。
話を聞いていると、まるでその決闘をしたのが承太郎さんだったように思えてくる。
「(少なくともぼくみたいなチビのことじゃないよね。その主人公。)」
厨房にやってきた康一は、集まってきた平民達に取り囲まれ、話ようやくその噂を知ったのだった。
康一は誤解を解こうとした。
「い、いや。そんな大したもんじゃないですよ!実際ぼくだってボコボコにされて、今まで寝てたんですから!」
「でも、ギーシュって貴族に勝ったのは本当なんだろ?」
マルトー親父が尋ねた。
「それは・・・まぁ。そうなんですけど・・・。」
オオオオオオ!
集まってきた平民達がどよめいた。
「しかも素手でぼこぼこにしたって聞いたが?」
「それも、確かにそうなんですが・・・」
オオオオオオオオオ!!
歓声があがる。
「しかもトドメに、その貴族、『ゆるしてください!』って泣いて謝ってきたんだろ?」
「まぁ・・・それもだいたいその通りですけど・・・」
ヒャッホ――――――!
帽子が乱れ飛ぶ。泣き出したり、抱き合ったりしている人もいる。
康一の首にマルトーの毛深い腕が廻される。
「可愛い顔して、おめぇはすごいやつだ!コーイチ!『我らの拳』だ!」
「お、おおげさだなぁ。」
599S.H.I.Tな使い魔17:2009/05/06(水) 17:25:27 ID:Qz+RbCM/
康一は困った。結果的にばれない形になったが、スタンドを使ったわけで、素手だけで倒したわけではない。しかし、
『いやー、実は『スタンド』っていうみなさんの言う『先住魔法』みたいな力を使ったんですよー!』
なんて明るくネタバレした翌日に火あぶりにされたりしたら困る。実に困る。
それになにより、これだけ喜んでいる人たちを悲しませるのは憚られた。
「おおげさなことなんてないぞ!」
マルトーは大きく首を振った。
「俺達平民は、いつもいつも貴族のいいなりにされてるんだ。それに逆らって殺されたやつを、俺は何人も知ってる。」
他の平民も静かに頷いている。
「俺達平民が一人の貴族を倒そうと思ったら、武器を持って数人がかりさ。それだって返り討ちにあうことすらあるんだ。」
それなのに・・・!マルトーはぐっと拳を握り締めた。
「お前は一人で、しかも素手で貴族を倒しちまった!こんな痛快な話聞いたことがない!だからお前は英雄だ!『我らの拳』だ!」
シエスタはその様子を見て嬉しそうに微笑んでいる。
「ちょ、ちょっとシエスタ!なんとかしてよ!それに、その噂すごい誇張してるよね!あいつ別にもらしてなんかなかったし、ゴーレムも7体しかいなかったよ!」
「そのくらい演出の範囲内ですわ。」
シエスタは嬉しげに胸を張った。どうやら話を大きくするのに積極的に関わったらしい。
「俺はお前と知り合えてうれしいぞ!俺がみこんだ男だけあった!コーイチ!俺はおまえの額にキスしてやるぞ!」
とマルトー親父が分厚い唇を近づけてくる。
「うわぁ!マルトーさん!ちょっとまって!キスは・・・!キスはいいからぁー!!」
康一は悲鳴をあげた。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 17:26:04 ID:m/2s7lOt
SHIEN
601S.H.I.Tな作者:2009/05/06(水) 17:27:27 ID:Qz+RbCM/
以上になります。
なお、597の名前欄は

S.H.I.Tな使い魔17

です。
うっかりミスなので、どうか脳内で修正してやってください。
では失礼いたしました〜ん
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 18:32:59 ID:1OCurQTs

おもしろいけど細かいところで召還じゃなくて召喚だよ
それとルイズに犬って呼ばれるようになるのはキュルケの誘惑された後だったと思うよ
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 18:52:53 ID:NIf0Q4j+
なんという条太郎www
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 19:01:04 ID:QpXZ4Jtc
支援、しそびれたー!gj!
荒木節がいい味出してるなー。
>>590
すまない。本章は思い切り難産だったわけだが、
実は分量は大して多くないのよ。
まあ、今から避難所に投下するから、気が向いたら読んでくだされ。
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 19:37:39 ID:+YB8KiXp
>>597
すごい話があったもんですねー。ね、コーイチ殿?
コーイチ殿?どうかされやしたか?
606S.H.I.Tな作者:2009/05/06(水) 20:59:32 ID:LIC2eqQ6
>>602
>おもしろいけど細かいところで召還じゃなくて召喚だよ
い、いやぁ。わざとですよわざと!
ちょっと普通とは違う感じにしたくてですね!
別に言われてすぐに元データを涙目で総置換なんてしてませんからね!

>それとルイズに犬って呼ばれるようになるのはキュルケの誘惑された後だったと思うよ
実は8章ですでに誘惑されてたりするんです。犬扱いはそれからですね。

607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 22:54:11 ID:fRqJmrf+
まあでも康一のエコーズACT3は
破壊力もスピードもBだし本気出したら
ワルキューレ7体程度は基本性能だけで捻れるんだよな
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 12:13:33 ID:FXl6l3Va
S.H.I.Tな使い魔を途中までwikiに登録してみたんだが
『「』で始まる文の文頭に空白があるケースと無いケースがあるのが気になった
意図的なものなのか、ミスなのか
609S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 12:31:24 ID:ET0LUARJ
>>608
う、うわぁ。ありがとうございます!
元々、まとめサイトだけ読んでた人間なんでちょっと感激です

文頭の空白についてなんですが、2chの仕様が分からなかったり、Wordで小説書くのが初めてだったりしたもので、
最初のほうはいろいろ試行錯誤しちゃってたりします。

基本的に文頭は一文字空けたいんですけど(読みやすくするために)、その形で投稿するやり方がいまいちよく分からないんです。
いちいちスペースうつのが面倒なので、改行時に自動的に頭をあけるようにしてるんですけど、それって投稿時に反映されないようで・・・
なので、後でまとめて直しておこうかな。と思ってます。傍点など、投稿時に消えてしまっている部分もありますので。


後、もう少ししたら18話、19話を投稿させていただく予定です。
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 12:37:43 ID:FXl6l3Va
通常は文頭の「の前には空白は置かないのでは?(特別な効果を狙う場合を除外して)
とりあえずダラダラと登録しておこうと思うので、後に必要があれば修正してください
611S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 12:40:20 ID:ET0LUARJ
そういえば、横書きだとそうなのかもしれませんね。
では文頭は空けないようにしておきます。
612S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 13:19:54 ID:ET0LUARJ
それでは18話と19話を投下したいと思うのですが、失礼してもよろしいでしょうか。
18話は少し長め、19話は短めになります。
613S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 13:35:09 ID:ET0LUARJ
   | \
   |Д`) ダレモイナイ・・S.H.I.Tスルナラ イマノウチ
   |⊂
   |
614S.H.I.Tな使い魔18:2009/05/07(木) 13:36:10 ID:ET0LUARJ
康一は、学院の中庭で荒く息をついた。髪も服も、もみくちゃにされてボロボロである。
ちょうど厨房での熱烈すぎる歓迎から逃げてきたところなのだ。
「歓迎されるのはうれしいけど、引け目があるぶん素直に喜べないんだよなぁー」
褒められれば褒められるほどなんだか申し訳なくなってくる。
以前テスト中、はずみで他の人の答案が目に入ってしまったときの気分だ。
いい点数を取って先生や親に褒められたが、嬉しいというよりも後ろめたくなってしまうものだ。
康一はところで・・・と、あたりを見回した。
「ここ・・・どこだ?」
康一のまわりを塔が囲んでいる。
このトリステイン魔法学院は、中央の本島を囲むようにして、火や水などといった名前を冠する塔が立ち並んでいる。
どれもこれも似たような石組みの建物なので、まだここに来てまもない康一は自分がいるのがどこなのかわからなくなってしまった。
「ここは火の塔と風の塔の間にある中庭ですよ。」
康一が振り向くと、メガネをかけた女性がこちらに歩いてくるのが見えた。
妙齢の美女といっていい。緑色のストレートな髪が風になびく。
それにしてもこっちの人の髪の毛はカラフルだよなぁー。と康一は思った。
「えーっと、どなたです?」
「わたくしはオールド・オスマンの秘書をやっています。ロングビルです。あなたをお迎えにきました。」
ミス・ロングビルは「お目覚めになったと聞いたので。」と微笑んだ。
「オスマンさんがぼくに何か用なんですか?」
ひょっとして帰る方法が分かったのだろうか。
「詳しくは直接お話したい、とおおせつかっておりますの。ついてきて頂けますか?」
「いいですよ。」
康一は二つ返事で承諾した。
そもそも、部屋を追い出され、厨房から逃げてきた康一には、行くところがなかった。
「よかったですわ。それではこちらへ。」
ミス・ロングビルは康一を先導して歩き出した。



ミス・ロングビルはノックをしてから扉を開けた。
以前にも来た事がある。学院長室だ。
「失礼しまぁーす。」
ロングビルに続いて康一も中に入った。
康一の中では、学校の職員室に来るときのような感覚である。
「おお、よくきてくれたね。ミスタ・コーイチ!」
奥の大きな机の向こうに座って、書きものをしていたらしいオールド・オスマンが、相好を崩した。
「ギーシュ・ド・グラモンとの一戦。遠巻きながら見させてもらったよ。もう体は大丈夫なのかね?」
実はあのとき、決闘をとめようとした教師達をオスマンは制止し、遠見の水晶球でその様子をすべて見ていたのだ。
当然康一のことを観察するためである。
「お、お陰様で・・・。」
康一は冷や汗を流した。
最初にあったとき、スタンドを見せてはいけないと知らなかった康一は、堂々と目の前でACT3を出してしまっているのだ。
オスマンはロングビルに目配せをした。
ロングビルは一礼して学院長室から出て行く。
二人っきりになったオスマンは、康一に椅子をすすめた。
「まぁかけなさい。いろいろしなければならない話もあるしのぉ。」
薦められるまま、康一はソファーに腰掛けた。
その正面に座った気のいい老人は、第一声でこういった。
「きみの『スタンド』は『マジックアイテム』ではないんじゃのぉ。」
康一はぎくりとした。
火あぶり、という単語が意識を横切る。
「さ、さぁ。どうでしょうね。」
康一はとぼけてみた。
オスマンは目を細めた。
615S.H.I.Tな使い魔18:2009/05/07(木) 13:36:53 ID:ET0LUARJ
「あの時、『ディテクト・マジック』をかけた生徒は、君が『マジックアイテム』を持っていないといった。しかし、君は以前見たのとは別の、二体の『スタンド』を出した。」
まさか全部見られていた!?
康一は驚愕した。
死角を使い、一瞬の隙を使い。できるだけばれないようにしていたのに!
康一は黙り込んだ。
「わしは、このハルケギニアで人よりも少々長く生きてきた。そのせいか、どうも常識に捕らわれてしまうことがあるようじゃな。」
ほっほっほっほ、とオスマンは笑った。
「どうしたかね?なにやら緊張しているようじゃが・・・」
ひょっとしたら、今すぐ逃げたほうがいいのかもしれない。
今なら目の前に座っているのは老人一人。切り抜けることができるかもしれない。
康一は半分覚悟を決めた。
「・・・この世界では、『系統魔法』以外の異能の力は『先住』と呼ばれているそうですね。」
「ほう。よく知っておるのぉ。」
「・・・ぼくの力が『系統魔法』によるものでないとしたら、どうしますか?」
康一は部屋の窓を確認した。あそこを破って飛び出せないだろうか。
「この部屋の窓は、スクウェアクラスの『固定化』がかけられておる。体当たりしたくらいではやぶれやせんよ。」
康一は身を硬くした。
心を読まれた!?そういう魔法でもあるのだろうか。
オスマンは顔の前で手を組んだ。
「君はどうやら誤解をしているようじゃの。わしが君を『先住』の使い手として王宮に突き出すと思っているのかね。」
康一は何も言えずに押し黙った。
「少しこの老人の話を聞いてもらえるかの?」
オスマンはソファーにもたれかかった。
「我々メイジが『系統魔法』を扱うことで、特別な地位を築いていることは知っておるね?平民やちょっとした魔物など、訓練されたメイジが一人いれば簡単に蹴散らせてしまう。」
「しかし、例外もある。それがエルフじゃ。エルフは始祖ブリミルの時代より聖地をめぐり、戦ってきた相手。そして、我々メイジは、『先住魔法』を使うエルフ達についぞ勝った事がないのじゃよ。」
「だから我々は『先住魔法』を極端に恐れるのじゃ。自分達が知らない力は、『先住』として恐れ、狩り立てる。」
じゃが・・・。オスマンは続けた。
「本来『先住魔法』とは自然界に宿る精霊の力を借りて力を行使するものじゃ。じゃから、別名を『精霊魔法』とも呼ばれておる。」
「ひるがえって君を見るに、君が見せてくれた3体の『スタンド』は、自然界の精霊とは明らかに異なっておる。わしも長く生きるが、そんなものは見たことがないのじゃよ。」
「じゃから興味が沸く。どうじゃね。『スタンド』とはなんなのか、わしに教えてはもらえんじゃろうか。」
話せる所まで構わんぞ?とオスマンはウィンクした。
康一は観念した。

「・・・『スタンド』は、『生命エネルギーが作り出す、パワーあるヴィジョン』と言われています。ぼくは、自分の『分身』って言ったほうがしっくりくるんですけど・・・」
「『分身』かね。」
「ええ、『スタンド』は『スタンド使い』の魂の形や強い思いを反映すると言われてます。ですから、一人一人形状も能力も違うんです。」
「君が『ACT3』と呼んでいたものは、『ものを重くする能力』というわけじゃな?」
「ええ。まぁそういうことです・・・。」
オスマンはこの康一の告白に驚くと同時に少し興奮していた。
「(この歳になってまだ知らぬことがあるとは、この世界も捨てたものではないわい!)」
しかしそれを表情には出さない。
「しかし・・・その『スタンド』とやらはどうやったら手に入るものなのかね?」
「いろいろです。生まれつきもっている人もいますし。ぼくは『矢』に貫かれて『スタンド使い』になりました。」
616S.H.I.Tな使い魔18:2009/05/07(木) 13:37:46 ID:ET0LUARJ
「『矢』・・・とは、あの弓で飛ばす矢のことかね?」
「はい。ある特殊な矢で刺されると、『スタンド使い』になる可能性があります。」
「可能性・・・ということは、なれないこともあると。」
「はい。相性のようなものがあるようです。」
「『矢』か・・・」
オスマンは何かを考えるようにして顎鬚を撫で付けた。
「何か心当たりでもあるのですか?」
「いや・・・恐らく君がいっているものとは違うじゃろう。じゃが、宝物庫に『弓と矢』がしまってあるのを思い出したのじゃよ。」
「そうですか・・・」
「(まぁここに『あの弓と矢』があるわけがないよなぁー。)」
黙り込んでしまったオスマンに、この際なので康一は疑問をぶつけることにした。
「あの・・・実はぼく、すごく不思議に思うことがあってですね・・・」
「ん?なんじゃね。いってみなさい。」
「本来は、基本的に『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えないんです。」
「なん・・・じゃと・・・?」
オスマンは目を見開いた。
「でも、こちらの人はみんな『スタンド』が見えるみたいで・・・。だから最初、みんな『スタンド使い』だと思ったんです。」
「ふーむ・・・」
オスマンは腕組みをした。目を瞑って何かを考えているようだ。
「あのー・・・」
康一は不安になって尋ねた。
「ぼくはこれからどうなるんでしょうか。」
オスマンは目を開けた。
「君さえよければ、ミス・ヴァリエールの使い魔を続けてくれるとうれしいんじゃがの。」
「よかったぁー!」
康一は胸をなでおろした。どうやら大事にはならなさそうだ。
「驚かせてすまなかったの。もう帰ってもいいぞい。」
「あ、はい。それじゃ、ぼくそろそろルイズの部屋に帰りますね。」
康一は立ち上がった。
扉に向かう康一にオスマンは「君の『スタンド』じゃが・・・」と声をかけた。
「はい?」康一が振り向く。
「メイジではない、平民に見せたことはあるかね?」
「? えーっと・・・そういえば、ない・・・のかな・・・?」
「今度ためしに見せてみてはどうかね?ひょっとして何かわかるかもしれん。」
「はぁ・・・わかりました。」
康一は首を傾げながらも頷いた。



康一が出て行った後、オールド・オスマンは本棚から一冊の分厚い本を取り出した。
ぱらぱらとページをめくり、とある章で目を留める。
「・・・『ガンダールヴ』・・・か・・・」
その本を机の上に置く。
開かれたページには様々な紋章のようなものが並べられている。
そのうちの一つ。『始祖の使い魔』という項目に描かれていたのは、康一の左手に使い魔の印として刻まれているルーンだった。
617S.H.I.Tな使い魔19:2009/05/07(木) 13:38:38 ID:ET0LUARJ
康一は、学院長室を退室すると、とりあえずルイズの部屋に行ってみることにした。
ひょっとしたらそろそろ起きてるころかもしれないし。
ガチャリと扉をあける。
ルイズはあどけない寝顔を晒して、すぅすぅと寝息を立てていた。
まぁ、三日間も寝ずにぼくの看病をしてくれてたんだもんなぁ。
もう少し寝かせておいてあげようかな。
康一はルイズを起こさないようにして部屋を出た。
そのへんをぶらぶらしてこよう。

 
お昼もかなり過ぎた頃にルイズは目を覚ました。
もぞもぞと起きあがり、きょろきょろと周りを見回す。
「コーイチ・・・?」
あいつどこいっちゃったのかしら。
ご主人様が寝てるってのに出かけてるなんて、いけない使い魔だわ・・・
ふと気づいた。
「あいつ・・・今日からどこで寝させればいいのかしら。」
当初は当然のように床に寝させる予定だった。
でもなぜか、今はそれが悪いことのように感じるのだ。
なぜかしら?
守ってもらったから?
嫌われたくないから?
「そ、そんなことないわ!あいつはただの使い魔だもの!」
じゃあ、この硬くて冷たい床に寝させる?
「・・・それはちょっと・・・」
ルイズは、んー、と唸った。
「そ、そうね。私は優しいご主人様だから、床は勘弁してあげるわ。床は!」
じゃあどこに寝させようか・・・
自分の座っているベッドを見る。
大きなベッドである。
わたしもコーイチも小さいし、十分一緒に寝れる広さはあるわね。
「だ、ダメよ!ダメダメ!いけないわルイズ!結婚の約束もしてない男と一緒のベッドで寝たりなんかしたらお母様に叱られちゃう!」
だいたいあいつは犬っころだ!キュルケに誘惑されてだらしなく鼻を伸ばしていた。
一緒のベッドに寝たりなんか襲われ・・・
ルイズは康一の間の抜けた顔を思い出した。
「・・・襲われないわね。多分。」
大丈夫。子犬を抱いて寝るようなものだ。い、いや抱かないけど!
ルイズは誰にでもなく言い訳した。
「まぁ・・・ちょっとしたごほうびってやつよね!変な気起こしたらひっぱたいてやるんだから!」
なんだかルイズはわくわくしてきた。
一緒のベッドで寝ていいわよ、って言ったらあいつどんな顔するだろう!
ルイズはベッドを飛び出して、午後の授業に出ることにした。


次にルイズと康一が顔を合わせたのは夕食時のアルヴィーズの食堂である。
ひょっとしたら・・・と顔を覗かせると、ルイズはちょうど席についたところらしかった。
なぜか上機嫌なルイズに自分の夕食を渡された康一は、さて・・・と考えた。
「どこで食べようかな・・・。」
もう暗くなってきたし、外では食べたくない。
厨房に行こうか・・・でも、今はきっと忙しい時間帯だろうし、康一に構っている暇はないだろう。
そうしていると、暗闇の向こうから火の玉のようなものがふわりふわりと揺れているのが見えた。
「ま、まさか!あれ・・・・・・ひょっとして人魂ってやつですかぁー!?」
しかもその火の玉はこちらに近づいてくるように見える。
「ま、まさかこの世界にも幽霊がいるのかぁー!!」
杜王町の鈴美さんを思い出す。
618S.H.I.Tな使い魔19:2009/05/07(木) 13:39:19 ID:ET0LUARJ
しかし、その人魂が近づいてくるにつれ、人魂の下に大きなトカゲが浮かび上がってくる。
「ふ、フレイム?」
あれは確か、キュルケさんの使い魔、フレイムだ。
「なーんだ。びっくりした。お前だったのかぁ。」
康一はほっとした。そういえば、フレイムの尻尾は常に火が揺らめいている。なぜ、その辺に燃え移らないのかよく分からないが、そういうものなんだろう。
フレイムは康一の足元に来ると、きゅるきゅると人懐こい声をあげて康一を見上げた。
「な、なんだ?ご主人様とはぐれちゃったの?」
康一は恐る恐るフレイムを撫でてみた。
あたたかい・・・。滑らかな鱗は確かに爬虫類なのだが、まるでサウナの壁を触ったときのような熱さがある。
やっぱこの世界の生き物って面白いよなぁ。でも、なんか可愛いな。でかいけど。
康一がその肌触りを楽しんでいると、フレイムがもぞもぞと近づいてきて、康一の夕飯が入ったバスケットをぱくりと加えた。
「アッ!こら!食べちゃだめだってば!それはぼくのごはんだって!」
しかしフレイムは康一の抗議に耳を貸すこともなく、背中を向ける。しばらく歩いてからこちらに振り向く。
「・・・ひょっとして、ついてこいって言ってるの?」
きゅるきゅる。フレイムはバスケットを咥えたままで答えた。
しょうがないので、康一はフレイムについていくことにした。


フレイムを追ってしばらく歩くと、建物の中に入る。階段をのぼり、ルイズの部屋を通り過ぎ、ある扉の前で止まった。
「ここって、確かキュルケさんの部屋・・・だよね?」
フレイムが康一を見上げる。きゅるきゅる。
「入れっていうのか?でも、勝手に入っていいのかなぁ・・・」
康一は躊躇ったが、それでもフレイムがじっと康一を見つめてくるので、ドアノブに手を伸ばした。
「失礼しまーす。」
恐る恐る扉をあけて、顔を覗かせる。
部屋は真っ暗だ。しかし、カーテンからわずかに入ってくる月の光が、ぼんやりと椅子に座った女性のシルエットを浮かび上がらせる。
「いらっしゃいコーイチ。扉をしめてくださる?」
キュルケの声がしたので言うとおりにする。
「あのー、キュルケさん?暗くてよく見えないんですけど・・・」
康一がそういうと、キュルケが指を弾いた。
すると、康一の左右にある蝋燭に火が灯された。
奥に向かって順番に蝋燭の火が灯っていき、最後にテーブルの上にある燭台に火がついて、部屋の中をぼんやりと浮かび上がらせる。
テーブルには白いテーブルクロスをかけられ、アルヴィーズの食堂の料理が霞むようなご馳走が並べられている。
その向こうに、キュルケが座っている。いつもの大きく胸の開いた制服だが、マントは外している。
「待っていたわコーイチ。よろしければ、あたしと夕食をご一緒していただけないかしら。」
揺らめく蝋燭の光に照らされたキュルケは、あっけにとられる康一を見て妖しく微笑んだ。
619S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 13:41:03 ID:ET0LUARJ
以上になります。
こうやって細かく投稿するより、まとめて投稿したほうがいいんですかね。
なんてことも思いますが、まぁ気が向いたときに書けた分を、ってスタイルが生にあっているようなのでこれで行きたいと思います。
それではお目汚し失礼したしましたぁ〜ん
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 13:57:48 ID:FXl6l3Va
誰もいないと思っているな

投下した瞬間、お前はすでに登録《された》!
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 14:12:02 ID:QMULSlem
>>612-619
てめえはオレを乙らせた…
622S.H.I.Tな作者:2009/05/07(木) 14:12:56 ID:ET0LUARJ
  |l、{   j} /,,ィ//|     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     | あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
  |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     < 『おれは最新話を投稿したと
  fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人.    |  思ったらいつのまにか登録されていた』
 ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ   | 催眠術だとか超スピードだとか
  ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉.   | そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ. │ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
  /:::丶'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ \____________________
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 16:38:27 ID:rWsvZJSy
そんなに恐ろしいなら今すぐ削除してもいいんだぜ?ポルナレフ…
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 17:18:17 ID:KZU2qTJw
あ、ありのままry

SHITの作者さんの速さにマジで驚いたぜ
良作をありがとう
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 19:52:58 ID:cep6byaa
乙なんだぜ・・・しかし弓と矢か
一応オリジナルスタンドは鬼門だぜ、と言っておくかな
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:12:29 ID:y5O2bkGD
俺の大好きなキャラがまだ召喚されてないと聞いて
放置作品有るだけど投下してもオーケー?
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:13:11 ID:pzUCe0c4
投下したなら使ってもいい!
支援
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:15:02 ID:i7AcXx7b
いちいち聞く必要なんてないよ。「投下した」なら使っていい!
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:16:13 ID:y5O2bkGD
「中にいたのは、俺だったァーーー!!!……あれ?」
「あんた、誰よ?」
二つの月が照らす中。呼んだ女と呼ばれた男。
これが二人の出会いだった。

これは二人のダメ人間がお互いを更正しあう過程の手記である。

「ほら、早く起きなさい」
「Zzz…」
「起きろッて言ってんでしょうがこのヌケサク!!!」
そういいながら藁山の中で寝ている男に蹴りをかます少女。
名前はルイズ(中略)ヴァリエール。
「イテ、イテテテ、起きる、起きます!だからどうか蹴らないで!!」
そう藁の中で懇願する男。
名前は不明。愛称ヌケサク。
二人は先日主従の契りを交わした仲である。
両者ともにその事実を否定しているがこれは紛れも無い真実。
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:16:59 ID:y5O2bkGD
「掃除した?」「してない!」
「洗濯した?」「してない!」
「ご飯は?」「食いたい!!」
「ふざけるな、このヌケサクが!!」「ヌケサクじゃねぇ!!」
朝早くからそんなやり取りをする二人。
どちらも自分の我を通そうと必死である。ある意味ユニーク。
「あー、もう!!いいから、早く着替えさせて!」「断る!!」
そう吐き捨てるように叫ぶと彼は部屋を飛び出し、部屋の前にいた私にぶつかる。
「……」「……」
私と彼の間に沈黙が流れる。
「お、おはよ「GYAAAAA、で、で、で、でたーー!!」
そう叫んで部屋の中へと逃げ込むヌケサク。
私としては仲良くしたいのだが、彼は私のことがどうも嫌いらしい。
やはり吸血鬼がどの程度不死身なのか試したのが悪かったのかもしれない。
「な、何着替えてるときに入ってきてるよ、ヘンタイ!!」「さっきと言ってることが違うじゃねーか!!」
中に入るなりまた言い争いを始める二人。本当に仲が良い。
「あらタバサ。珍しいわね、あなたがこんなところにいるなんて」
部屋の戸を眺めている私に親友のキュルケが声を掛けてくる。
「なに、ヌケサクの観察?」「そう」
キュルケは一言「良くやるわね」とだけ言って私の手を持って歩き始める。
「なに?」「あら、朝ご飯よ。食べに行くでしょ?」
有無を言う暇もなく、手を引かれ、二人の部屋から遠ざかっていく。
「この、ヌケサク!アンタなんかこうしてやる!!」「や、やめて下さい!ルイズ様ー!!」
そして聞こえる二人の声。非常に気になる。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:17:44 ID:y5O2bkGD
朝食後、いつものように授業を受け、いつものようにルイズは失敗した。
ヌケサクはルイズの失敗魔法の余波で気絶してしまった。
ちなみに彼は吸血鬼ではあるが日光に当たっても平気らしい。
そのため、彼はこうやって授業を聞いたり、歩き回ったりできている。
(後述:それとなく本人に聞いたところルーンが関係しているようだ)
その後昼食となったのだが、ここで事件は起こった。
ぼんぼん息子のギーシュがあろうことかヌケサクに決闘を申し込んだのだ。
発端はどうやらメイドの扱いらしい。まぁらしいといえばらしい話だ。
ヌケサクはというと二つ返事でその申し出を受けた。
一応失敗に失敗を重ねて召喚した使い魔なので一応ルイズも止める。
「勝てるわけないじゃない。馬鹿なの?死ぬの?」
しかしヌケサクはそんなルイズの言葉に耳を貸さず私の案内の元、ヴァリスト広場へと歩いていく。
これにはルイズも苦笑い。
傍から見ればただの無茶無謀であっただろう。
しかし私には自信があった。
決闘がとても面白いものになるという自信が。
そろそろ決闘が始まる。
決闘が終わったら内容を忘れないうちににこの手記に残しておこう。


驚くべきことが起こった。ヌケサクが圧勝したのである。
ザマミロ&スカッとサワヤカの笑いを浮かべてギーシュを見下ろすヌケサク。
ギーシュは自分が何をされたのか分からずに、まだ尻餅をついている。
喪服を着込んで弔いに来ていたルイズも立ち尽くしている。
誰もが受け入れがたい真実。私はここであえてはっきりと書こう。
彼は青銅を千切って、切り裂いて、噛み砕いた。
それはもう、電光石火というが如きスピードで。
チートだとか反則だとかそんなチャチなもんじゃあだんじてない。
これはきっと彼のルーンの付与効果だろう。
実際に彼が駆け出そうとした瞬間、ルーンがぼんやりと光っているのを見た。気がする。
調べがいがありそうだ。
「タバサ、あんたってそんな風に笑う娘だったっけ……?」
……キュルケが隣にいるのを忘れていた。
「笑ったんじゃない。出そうなくしゃみが出なかっただけ」
「ああ、気持ち悪いわよね、あれ」
そこで何故かくすくすと笑うキュルケ、不気味である。
キュルケはその私の表情を見て何かを察したらしく
「あなたにもそんな人間らしいところってあるのね」と空を見上げながら呟く。
わけが分からない。だが今は触れないでおこう。
いま気になるのはやはり彼のルーン。
「あなた、またその顔。風邪でもひいてるの?」
「問題ない」
私は腰を上げ、図書館を目指す。
ルーンの形はしっかり頭に叩き込んでいるから問題はないだろう。
(端に走り書きでガンダールヴ?と書いてある。)
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:18:27 ID:y5O2bkGD
綿密な調査の結果彼のルーンは伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものであることが判明。
だからどーだコーダいうわけではないが。
今日は城下町に来ている。
なぜか?
今朝いつものように部屋の前で張っていた。
が物音ひとつしないので、不本意ながら「アンロック」を使い、部屋に入ってみると
「蛻の殻…?」そう、部屋の中には誰もいなかったのである。
そこで私はあることを思い出す。
つい数日前のことだ。

「アンタ、白兵戦があんなに強いんなら剣でも持てば?」
「いいかもな、買ってくれよ」
「分かったわ、次の休みの日に買いに行きましょう」

そういえば今日は虚無の曜日。
「まんまと出し抜かれた」
そう思った私はすぐさまシルフィードに彼らのことを聞く。
どうやら彼女は起きたばかりらしく
「むー……そういえば、馬が二匹足りない気がするのね」
とだけいってまたうとうとと眠りの淵から身を投げようとする。
「寝ないで、事は急を要する。その馬を追いかけて」
「流石のお姉さまでも、その命令には従えないのね。それじゃあおやすみなのね…」
ガッシ!ボカッ!
「まだ眠い?」
「ぜんぜん!もう目はパッチリ冴えたのね!だからお願いお姉さま、それ以上杖で殴らないで!
それ以上やられると私死んじゃうのね!」
「よろしい、目標は馬二頭、食べちゃダメ」
そういって私はシルフィードと飛び立つ。
こういうとき、私は彼女が使いまで本当に良かったと思う。
「まったく、使い魔使いがあらいのね…」
飛びながらそう愚痴が聞こえてくる。後でおいしい草でもあげよう。


現在帰路に着いている。
城下町で記すのは流石に憚られたのでここで一気に書いてしまう。
まずは町に着いてから。
探すのに骨が折れると思ったが意外と簡単に見つかった。
「何で盗まれて気付かないのよ!!」
「しかたねェだろ!気付いたらなかったんだよ!」
路地のすぐ傍、剣の看板のしたのあたりから聞こえてくるわめき声。
聞き間違えるはずもない、ルイズとヌケサクだ。
私がそこを訪れると、果たしてそこには取っ組み合い寸前の二人が立っていた。
音もなく歩み寄り、二人の様子を観察する。
どうやら財布をスられたらしい。
「気をつけなさいって言ったそばから……一文無しじゃない!!」
「知るか!そんなに言うなら自分で持ってれば良かっただろうが!!」
だんだんと人が集まり始めた。
これ以上目立つのはまずい。
私は二人の手を掴み、武器屋に飛び込んだ。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:19:11 ID:y5O2bkGD
「あれ、何で?」
「GYAAAAAA!!なんでお前が!?」
「状況は理解している、少し黙って」
二人は憮然とした表情ながら腕を引かれるがままになってくれた。

「おう、いらっしゃい。ここはとりすていんいちのぶきやだよ」
「あの、タバサ・・・?」
ルイズがおずおずと話しかけてくる。
「何?」
「お金、無いのよ」
「少しなら持ってるから、立て替えてあげる。」
いいの?と目を輝かせるルイズ。
財布を開けると……よかった、生活費+必要経費で新金貨で百枚くらいはある。
名工の鍛えた剣は無理だが安い剣なら十分足りるだろう。
大きく頷いて肯定して見せる。
「お、おきゃくさんおめがたかいね。それはげるまにあのめいこうがきたえたけんで…」
価格はなんと…新金貨で6と0が四つ。
「新金貨百で収まるものをお願い」
「わかりました、しょうしょうおまちを」
店主は店の奥へと引っ込む。
店主が居なくなると、店の隅から一人の男が声を上げた。
「ネエちゃん、冷やかしなら帰んな」
現在この店には私たちと店主しかいない。
もしかして、おばけ?
私は身体が強張るのを感じた。苦手なのだ。どうもお化けだけは。
「どうしたどうした、さっさと帰んなっつってんだ!」
「こらっ、しずかにしろでるこう。だいじなおきゃくさんなんだ。
やぁやぁ、これはでるこうがごめいわくをおかけしたようで」
「お化けじゃないの?」
「はい、でるこうはうちのみせでゆいいつじゅうねんかんうれのこっている『いんてりじぇんすそーど』です」
それを聞いて安心した。
お化けじゃないんなら怖くはないもの。

店主が持ってきた剣を見ながら、ルイズはどれが使いやすいのかを聞いている。
ヌケサクはどうしているのかと見てみると、彼はあの『デル…何とか』に興味を持ったようだ。
そーっと指を伸ばし、そのグリップに触れてみたり刀身に触れてみたりしている。
「触んなスカタン!この、ヌケサクッ!!」
「テ、テメェ、やっぱりアヌビスの野郎の知り合いか!?」
「アヌビスゥ〜?知らねーよ、とっとと離せ、このヌケサクッ!!」
そういって剣と喧嘩をしている。
……剣と喧嘩、結構ウケるかも。
「あの、タ、タバサ?顔どうかしたの…」
「……問題無い」
どうやらまた顔がおかしくなっていたらしい。
「ちょ、馬鹿触んなって…嘘だろ、お前『使い手』かよ!!」
「『使い手』だァー?やっぱりお前もスタンドかッ!!」
「意味わかんねぇよ!!」
「うるさいわね、少し静かにできないの!!?」
なんだか仲もよさそうだし、あの剣にしておこう。
別に『十年売れ残ってるんなら安いだろう』とかは考えてない。
「あれ、いくら?」「い、いいのかい、おきゃくさん!」
「構わない」「そ、そうかい!あいつはしんきんかにまいでじゅうぶんだ」
なんという破格。これは予想外。
「おきゃくさん、くしゃみならかおをかくしたほうがいいですよ」
「ごめんなさい」
なにやら最近顔が崩れやすくなってるみたいだ。気をつけておかないと。
私は店主に金貨を二枚突き出す。
「さっそくそうびしていくかい?」
店主がそんなことを言っていたが、私は気にせずに二人を引っ張って店を出た。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:20:04 ID:y5O2bkGD
ありえないということはこういう状況を言うんだろう。
私たちの目の前には大きなゴーレムがいて、ソイツは学校の塔を攻撃している。
隣を確認すると、ヌケサクはだらしなく口をあけて食い入るようにそのゴーレムを見ていた。
「ヌケサク!あんたの出番よ!!」
そんな呆然としているヌケサクを、ルイズはシルフィードの上から突き落とす。
どうやら戦わせるらしい。20メイルはあるあれと。
「んなーーーーーーー!!!!」
ヌケサクは声を上げながら落ちていった。上空30メイルから。
普通の人間なら即死だろうが、彼は平気だろう。
「いきなり突き落とすんじゃねえ!!死ぬかと思っただろうが!!!」
「うっさい!殺しても死なないくせに!!それよりもあいつ倒してきて!!!」
どうやら彼女たちは忘れているようだ。彼がまだ買った武器を装備していないことを。
彼はなんとかゴーレムの足に噛り付いたがすぐに振り落とされてしまう。
そして、一気に足で踏み潰された。
さすがに死んだかとも思ったが、どうやら無事のようだ。
彼を踏み潰したのを確認したからか、ゴーレムは砂へとその姿を変えてその場からいなくなる。
そのうち、その場に残されたのは塔の壁であった瓦礫と静寂、そして踏み潰されたカエルみたいにぐちゃぐちゃになっているヌケサクだけになった。
あくまで潰れた蛙というのは「見るも無残」というのの比喩だ。実際に蛙が潰れたところなんて見たこと無い。
そういえばあのモンモモンモとか言うこの使い魔、蛙だったっけ。試してみるのも悪くないかも。
「タバサ、タバサ!!聞いてる!?」どうやら声をかけられていたらしい、ぜんぜん気づかなかった。
「何?」「ヌケサクを拾いに行ってくれないかしら?」
私は小さく肯定し、その旨をシルフィードに伝える。
「きゅい、きゅいきゅい!!」
たぶん『気持ち悪いから行きたくないのね!!』とでも言ってるんだろう。
ガッシ、ボカッ!!
シルフィードはゆっくりとヌケサクのほうに向かって滑空を始めた。

to be continued…?
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 22:23:38 ID:y5O2bkGD
以上、投下『した』ッ!!

Q.なにこの作品?
A.勢いから生まれた長編

俺の大好きなヌケサクちゃんウフフ

あと、後述させていただきますが
これはタバサの冒険を読まずに書いたので『お化け嫌い』状態になっています。
もし、許可しなァい!という事なら書き直しますのであしからず。

放置作品については一年ほど空いているので思い立った時に投下させていただこうと思います。

それでは、拙い文章ですが何かあれば。
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 23:16:23 ID:H8lCkPOt
ワロタw
こういうノリもたまにはいいよね!

んで、タイトルが無いのは仕様ですかい?
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/07(木) 23:19:31 ID:n8GSlRNx
投下乙そしてGJでした
ヌwケwサwクw
これは予想外のキャラ
頑張れヌケサク超頑張れw
638S.H.I.Tな作者:2009/05/08(金) 01:41:34 ID:pzTceqC6
>>624
……ごっ……ごっご ごめーーん ワアーッ

>625
心配しないでおk、とだけ言っておくぜ!
639S.H.I.Tな作者:2009/05/08(金) 01:47:55 ID:pzTceqC6
連投スマソ。
>>623
まとめの編集の仕方とかよくわかんないから、登録はマジで助かりますです!

それから明後日あたりからしばらく更新が途絶えるかもです。
ネタが尽きたわけではなくて、純粋に忙しくなるから。
では、失礼します!
640610:2009/05/08(金) 09:46:01 ID:yynoFMiT
>>639
言い方が悪かったようだ
カッコから始まる文は通常は文頭に空白を置かない、と言うべきだった
カッコから始まらない文は普通に文頭に空白を置いて字下げした方が一般的だと思う
好みの問題もあるが、字下げした方が読みやすいと考える
字下げしないと区切りが無いので、途中でちょっと戻って読み返したりする際に探しづらくなる
文頭に 「 などがある場合はそれ自体が区切りとして認識されるため不要

なお、wikiの特殊な機能として文頭が「・」から始まる場合に箇条書きとして処理するようだ
なので文頭が「・」から始まる場合にはその前に全角空白を挿入するよう訂正した

5話の以下の箇所
「それじゃ、ごゆっくり〜♪」
 バタン
 ・・・・・・・・・・・・・。
↑ココ(全角空白挿入)

8話の以下の箇所
 だが、代わりにあの気の強そうな目を細めてずっと康一を睨むのである。
 ・・・もう由花子さんには会えないのかなぁ・・・。
↑ココ(全角空白挿入)
641S.H.I.Tな作者:2009/05/08(金) 11:15:05 ID:3hd7YQaw
>>640
なるほど。了解しました。
編集感謝します。

ワードで一文字あけようとすると、色々不都合が出てきたので、この際メモ帳で書こうかなぁと思ってます。
投稿したのを直す程度なら自分にもできそうなので、すでに投稿したものは後でまとめて直しておこうと思います。

それではS.H.I.Tな使い魔20話。投稿させてもらってよろしいでしょうか。
642S.H.I.Tな作者:2009/05/08(金) 11:30:09 ID:3hd7YQaw
     |∧∧
     |・ω・)    ダレモイナイ...
     |⊂     バルタン スルナラ イマノウチ...
     |

        (V)∧_∧(V)
         ヽ(・ω・)ノ  フォッフォッフォッ
          /  /
         ノ ̄ゝ

             (V)∧_∧(V)
              ヽ(   )ノ  フォッフォッフォッフォッフォッ
              /  /
          .......... ノ ̄ゝ
643S.H.I.Tな使い魔20:2009/05/08(金) 11:31:12 ID:3hd7YQaw
一人で食べる食事というのは味気ないものだ。
だから、そんなときにやってきた食事のお誘いは大歓迎なわけで。
しかも誘ってくれたのが十人中十人が振り向く絶世の美女であれば、もうなにも言うことはないのであった。


「おいしそーだなあ―――!いただきまあ―――す!」
目の前のステーキにかぶりついた康一は、目を輝かせた。
「おいしい!」
キュルケは微笑んだ。
「喜んでいただけてうれしいわ。あなたのために特別に用意したんですもの。」
「へぇー!うれしいなぁ!」
どれもこれも絶品だ!
しかし、グラスを手にしたところで康一はキュルケに尋ねた。
「これってワイン・・・ですよね?」
「それがどうかして?」
「いやぁ、ぼくの国ではお酒って大人にならないと飲んじゃいけないものだったんですよ。」
あら・・・。とキュルケは目を丸くした。
「あなたのお国はどちらなの?」
「え!?え、えーっとぉー、ロバアルカリイエ・・・てとこかな。」
康一はとりあえずルイズが言っていたようにすることにした。
「そう。あなた東方の出身なの。だから顔つきもそんなにエキゾチックなのね。」
キュルケはワイングラスを軽く掲げて見せた。
「でも、ここはトリステインなのだから、あなたも気にせずに飲めばいいと思うわ。」
「そ、そうかな?じゃあ、ちょっとだけ・・・」
グラスをちびちびと傾ける。
「あれ、でもなんだかお酒って感じがしないね。結構飲めるかも・・・」
「いいワインは人を選ばないの。お気に召した様で良かったわ。」
ふーん・・・。そういうもんかぁ・・・。ワインをちびちびと舐めながら康一は感心したが、ふと疑問に思った。
「そういえば・・・どうしてぼくを食事に誘ってくれたの?わざわざこんな料理まで用意して・・・」
ヴァリエールとツェルプストーの因縁の話を思い出した。
「ひょっとして、ルイズのことが聞きたいの?でもぼく、まだここに来てから日も浅いし、そんなにすごいことは知らないよ?」
おほほほほ。とキュルケは口に手を当てて笑った。
「あたしはルイズなんて眼中にないの。それにこんな回りくどいことはしないわ。」
キュルケは顔を赤らめた。
「あたしが知りたいのは、あなたのことよ・・・」
「ぼ、ぼくですかぁー?」
キュルケが潤んだ瞳で見つめてくる。康一はなんだかドキドキしてきた。顔が赤くなるのがわかる。
「最初はちょっとした興味だったの。ルイズがあなたみたいな不思議な使い魔を召喚したから。」
キュルケは立ち上がった。
「あなたは小さくて可愛らしいわ。でも、見ているうちに分かったの。あなた、その瞳の奥に、それだけじゃない『何か』を持ってる。」
キュルケはテーブルクロスを指でなぞりながら、ゆっくりと康一のところへ歩いてくる。
「トドメに、あの決闘。ギーシュを倒したあなた、すごくかっこよかったわ。まるでイーヴァルディの勇者のようだった・・・。あの時のあなたの強い瞳を見て、あたしの心は今までにないくらい燃え上がってしまったの。」
康一の肩にそっと手を乗せた。
「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね。」

ほっぺたに、スープがついてるわよ?
キュルケは康一の耳元で囁くと、頬についた汚れを、小さく舌を出して舐め取った。
644S.H.I.Tな使い魔20:2009/05/08(金) 11:33:22 ID:3hd7YQaw
「なななななななにを!!」
康一はガタン!と立ち上がり後ずさった。
しかし、足元がおぼつかなかない。
ふらつく康一の手を、キュルケが握った。
「急に立ち上がったら危ないわ。ベッドに座りましょ?」
「う、うん・・・。」
どうしたんだろう。頭がぼうっとする・・・。
康一はふらつきながらも、キュルケに導かれるまま、ベッドに腰掛けた。
キュルケも隣に座って、しかし、康一の手は離さなかった。
暑くなってきたわね。とキュルケはブラウスのボタンをもう一つ外した。
ついそちらに目が行く。
康一君を責めるのは酷である。正常な男であれば目が行かないわけがないのだ。
しかし康一は慌てて目を逸らした。
「からかってるの!?」
すでに顔は真っ赤だ。
「いいえ。あたしは本気よ。あなたが好きなの。あなたのことがもっと知りたいのよ。」
キュルケは、康一の手を握っているのとは別の、もう一方の手で康一の膝頭を軽く弄った。
「う、うわぁ!」
こ、これはなんだかまずいぞ!と康一は思った。
このままではまずいことになる!
「ま、待って!ぼくには恋人がいるんだ!」
「あら、そうなの?でも当然よね、あなたのような可愛いくて頼もしい魅力的な男の人を、女が放っておくわけないもの。」
「い、いやぁ。そういうわけでもないけど・・・」
今まで由花子さん以外に浮いた話などまったくない康一である。
でもね・・・。
キュルケは続けた。
「ここはハルケギニアよ。はるかかなたにあるロバアルカリイエは、あたしたちの恋を邪魔できないわ・・・!愛してるの!コーイチ!」
キュルケは康一の頬を両手で挟んで、情熱的な口づけをした。
ベッドの上に押し倒されると、康一の頭の中で世界がぐるんぐるんと回転した。
押しのけようとしたが、腕に力が入らない。
あたまがぼーっとする。

ごめん由花子さん・・・。ぼくはこのへんてこな世界でお星様になりそうです。

そのとき。バターン!とものすごい音がして、扉が開いた。

.━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・━┓・・
.━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛. ━┛
「・・・なにをしてるわけ?」
廊下の明かりを背にそこに立っていたのは、白い肌にくっきりと青筋を立て、ドラゴンも逃げ出しそうな怒気をまとった、康一のご主人様だった。



数分後。康一はルイズの部屋で正座をしていた。
髪型を貶されたときの仗助もかくや、という勢いでプッツン来ていたルイズは、キュルケから康一を引っぺがし、そのまま襟首を持って部屋まで引き摺ってきたのだ。
ルイズが康一を見下ろす。まるで、道端に落ちた馬の糞を見るような目である。
康一の顔は未だ真っ赤だ。
部屋に連れ帰ってからもぼーっとした様子を見て、ルイズがようやく酔っ払っていることに気づいたのだ。
645S.H.I.Tな使い魔20:2009/05/08(金) 11:34:03 ID:3hd7YQaw
「(そっか・・・これが酔っ払うってやつか・・・)」
康一は回らない頭でぼんやりと考えた。
ルイズの手には乗馬用の鞭が握られている。
「・・・で、食事に誘われたわけね。」
「うん。」
「初めてのお酒を飲まされたと。」
「うん。」
「ついでに、ベッドにも誘われたと。」
「うん。」
「お酒のせいで、ろくな抵抗もできずに。」
「うん。」
「わたし、言ったわよね。ツェルプストーなんかにデレデレするなって。」
「うん。」
「デレデレしたら死刑って言ったわよね。」
「うん。・・・・・・え!?そんなこと言ったっけ?」
「言ったのよ。心の中で。」
康一は目をあげた。ルイズの目が本気と書いてマジだったので、康一は言い訳するのをやめた。
ルイズはぷるぷると震えている。
「それなのに・・・!それなのに・・・・!この・・・!スケベ犬がぁー!!!」
バシンバシンと鞭が振り下ろされ、康一は悲鳴をあげた。
「い、痛っ!やめっ・・・!痛い痛い!」
逃げまわる康一を、ルイズは鞭を振り回しながら追い回した。
「(がんばった使い魔に、せっかくご褒美を用意してたのに!一緒のベッドで寝させてあげようと思ってたのに!)」
よりによってキュルケに先を越されてしまうなんて!
べ、別にわたしは康一を誘惑しようとしたわけじゃないけど!あの万年発情期のキュルケと違って!
ルイズは追走劇の結果、ボロ雑巾のようになった康一を見下ろした。
「もう・・・知らない!」
ルイズは鞭を投げ捨てて、ベッドにもぐりこんだ。
ようやく折檻から開放された康一がふらふらと起き上がった。
ルイズは毛布にもぐりこんで丸くなっている。
「・・・ぼくは、どこで寝ればいいんでしょう。」
凍て付くような視線が帰ってきた。
「犬は床って、相場が決まってるわ。」
今度は毛布すらなかった。
しかたなく康一は、部屋の隅に丸くなった。
寒い。床が自分の体温を奪うのがよく分かる。
ぼくがなにをしたっていうんだ・・・
康一は涙交じりの溜息をついた。
646S.H.I.Tな作者:2009/05/08(金) 11:35:41 ID:3hd7YQaw
以上になります。
なんだか最近書き込みすぎかなぁという気もしてきましたが、
ご容赦願えれば幸いです。

それでは!
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 12:14:30 ID:E2EwLBqA
スレに活気を呼び戻してくれたSHITさんに感謝!感謝!!大感謝!!!
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 13:54:53 ID:xjC9CcWU

なんだかんだ言って更新はやいよね
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 15:13:32 ID:Yu3Slhr0
投下乙そしてGJでしたー
由花子さんが不穏な空気を感じてアップを始めたような気がします
早く帰らないと杜王町とイタリアがヤバイぞ康一くん
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 15:20:50 ID:ijsC9kkz
下手するとサモン・サーヴァント関係なく由花子さんが愛の力でハルケギニアにやってくるぞ
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 16:41:48 ID:4h6fyU2/
その、なんだ。由花子さんならしょうがないな
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/08(金) 19:06:26 ID:WeK2MUWC
康一君に会いに杜王町に来たジョルノ
→由花子さんと遭遇
 →矢が由花子さんに反応
  →レクイエム化してハルケギニアにIN
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 01:00:19 ID:426nB/Zy
もう少しでキュルケが殺されるところだったな
由花子さんなら時空だろうがハルケギニアだろうが愛のパワーで次元の壁ぶち破ってきそうw
今ごろイタリア中探し回ってそうだし
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 01:12:29 ID:szCXpNrV
愛の力というより、ストーカーの執念に近いものがあるかも

ラブ・デラックスが進化してワールド・ドアを開く能力を身につけてしまいそうだ

それにしてもこの康一とルイズ、なかなかラブコメ向きな感じに仕上がっているな
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 01:19:41 ID:426nB/Zy
由花子さん乱入で一気にホラーになりそうだがな
いやマジでwサイコサスペンスにw
人のよさそうな康一の彼女がこんなに異常だとは思わないだろうw
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 01:59:28 ID:q56Qhi+0
髪の毛が次元をこじ開けて由花子さん乱入

普通にホラーだな
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 02:19:41 ID:APVim0cM
水の精霊よろしく
康一を取り戻す為にハルケギニア全土を埋め尽くす勢いで迫り来る髪の毛を想像してしまった
恐すぎる
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 06:13:49 ID:RpWlZ/GI
イタリア行きを頼んだ承太郎はいまごろ酷い目に…
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 07:58:15 ID:ZQjW/njW
すでにラブ・デラックスがキュルケの髪に進入したようです


ていうか、いつまでたっても帰ってこないから由花子さん杜王町を荒らしまわった挙句、承太郎のところに乗り込みかねない
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 08:52:59 ID:k3QmhgKP
>>659
いやいや、杜王町を荒らす前に露伴先生経由で「イタリア」に行ったって事まではわかるんじゃないだろうか。
今頃はパッショーネやSW財団を顎で使って「鏡」を探している頃だろう。
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 15:54:07 ID:tPq2ermb
ザ・ハンドの右手に潜り込んでハルケギニアにIN!
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 16:16:49 ID:G96nVl8k
異次元=ワールドドア。この発想はなかったwww
イギーとかアブさんとかも送られてたりしてな
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 17:46:12 ID:jc5GUsZg
ポルナレフの爪崎が使い魔!
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 17:48:55 ID:mCdWhb/2
立入禁止の『入』が使い魔!
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 18:45:28 ID:cBzvaJa4
DIO邸の床やら壁やらが使い魔!
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 18:50:29 ID:n/H5Vgv4
>>662
その場合はアヴさんが両腕無し状態で召喚だな
クレイジーDやキラークィーンなんかは手で殴らないと特殊効果発動できないが
両手なしでもマジシャンズレッドは炎出せるのかね?
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 18:50:38 ID:APVim0cM
ルイズ「わ・・・私は、『失敗』なんてしてない。
『空気』が・・・『空気』がっ!『火』を吹いたっ!」

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール────死亡
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/09(土) 18:54:11 ID:ToEEQQ4I
マジシャンズレットは口からも炎吐いていたような。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 20:11:22 ID:thkPWYKH
>667
億康がガオンした接触弾と申したか
あれ異次元行ったまま爆発しなかったらもう爆弾作れなくなってたのかね
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 20:52:14 ID:KlQeOKkE
ガンダールブでもアヌビスに操られるんだろうか
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 05:37:30 ID:pDm0qOOt
アヌビス無双のはじまりです
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 09:37:25 ID:7qPM+BTj
戦闘終了
アヌビスの勝利です
お疲れ様でした
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 13:42:11 ID:i+TwK9ot
遅くなったけど、SHIT乙!

この康一、「寝顔が可愛かったから」とか無自覚に直球を投げ込んでくるな
そのまま反応してしまうルイズも可愛いね
674S.H.I.Tな作者:2009/05/11(月) 14:09:56 ID:QNRyIBzf
お久しぶりです。ただいま自宅から大分離れたところですが、投稿させていただいてもよろしいでしょうか。
幕間1と21話の2本になります。
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 14:17:23 ID:7qPM+BTj
カモーン
676S.H.I.Tな作者:2009/05/11(月) 14:19:06 ID:QNRyIBzf
ありがとうございます。
それでは投稿させていただきます。
あ、一応断っておきますが・・・

ま、幕間1は由花子談義が盛り上がる前にもう書いてたんだから!勘違いしないでよねっ!!
 「説明してもらうわっ!!」
 山岸由花子は開口一番に叫んだ。
 ここは杜王グランドホテルの一室である。
 「やれやれ・・・ノックをすればこちらから開けるってのに。」
 空条承太郎は般若のごとき形相で睨みつけてくる由花子を前に、溜息をついた。
 山岸由花子は、制止するホテルマンたちを(文字通り)ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、『ラブ・デラックス』で部屋の鍵を無理矢理に開けて入ってきたのだ。
 「用件は大体見当がつくがな。」
 「当然、康一くんのことよ!」
 由花子は承太郎に詰め寄った。
 「イタリアにいった康一くんからの連絡が、四日前から途絶えたわ。一日一回は連絡するっていっていたのに!そして帰国予定日になっても帰ってこないの!」
 「これってどういうわけかしら。康一くんは責任感のある人よ。予定を曲げてわたしに心配をかけるようなことをする人じゃない!なにかあったのよ!」
 由花子は拳を握り締めた。
 「もし、康一くんに何かがあったら、あんたを絶対に殺してやるわッ!」
 由花子の髪がざわめく。
 象でも気絶しそうな殺気のなかで、承太郎は静かに口を開いた。
 「康一くんは無事だ。」
 「・・・なんであんたにわかるのよっ。」
 由花子が眉をひそめた。
 「康一くんに何かがあったのではないかとは、俺も思っていた。こちらへの連絡も途絶えていたからな・・・。だから康一くんがどうしているか調べることにした。」
 「だからどうやってよ!!」
 「ジジイ――ジョセフ・ジョースター――に『ハーミット・パープル』で『念写』をさせた。ジジイは電話口で言った、『康一くんは無事だ』とな。そして・・・」
 承太郎は一通の手紙を出して見せた。切手も印鑑もあて先すら書いてない手紙である。
 「これがさっきSW財団の特別便で届いたばかりの、念写した写真だ。ジジイは、『写真を見ればわかる』といった。ちょうどこれから開けるところでな。」
 というと、ペーパーナイフで手紙の上部を切り、写真を取り出した。
 「こ・・・これは・・・!」
 承太郎はその写真を見た瞬間に冷や汗を流した。
 「(ま、まずいぜ・・・『これ』をこいつに見せるわけには・・・!)」
 写真を見たまま固まってしまった承太郎に、由花子が痺れを切らす。
 「ねぇ。何が写ってるの?わたしにも見せて!」
 承太郎は沈黙したまま答えない。
 ようやっと、重い口を開く。
 「・・・この写真は俺が預かる。見ないほうがいい。」
 由花子は目を見開いた。
 「どういうこと!?まさか康一くんの身に何かあったわけ!?見せて!」
 「康一くんは無事だ。安心しろ。だが、君がこの写真を見る必要は・・・」
 「いいから見せろって言ってんのよこのウスラボゲッ!!!」
 由花子は承太郎の手から写真をひったくった。
 承太郎は早くも二度目の溜息をついた。 

 なるほど。康一くんは確かに無事である。
 写真の康一くんは、ベッドに寝そべる、胸の大きな赤髪の美女に抱きしめられていた。
 そしてその腕を、ピンクブロンドの美少女が引っ張っている。
 二人とも、康一くんを渡すまいという気持ちが一目で見て取れる。
 状況を見たまま一言で説明するならば、『修羅場』の写真なのだった。
  
 承太郎は写真を見つめたまま微動だにしない由花子を置いて、部屋を出た。
 廊下では、ホテルの支配人が心配そうにしながら様子を伺っていた。
 「部屋の修理費用はスピードワゴン財団に請求してくれ。」
 承太郎はそれだけを言った。
 ふと気づいて、封筒を逆さに振った。
 封筒の中には、小さなメモが入っていた。
 『康一くんもやるもんじゃ!!しかしこの写真、由花子くんには見せないほうがいいのぉ。』
 「ジジイ・・・。そういうことは先に言え!」
 承太郎は支配人を連れてそこを離れた。
 「やれやれだぜ・・・」
 それが合図だったのだろうか。
 300キロはある巨大なベッドが、頑丈なホテルの扉を爆音と共にぶち破った。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 14:21:13 ID:7qPM+BTj
投下宣言して十分くらいレス付かなければ投下していいんじゃないか?
そして支援
「今日は虚無の曜日だから、学校は休み。町に買い物に行くわよ。」
 翌朝。康一に起こされたルイズは着替えを済ませるとこういった。
 昨日のことを怒ったままでいいのか、許せばいいのかわからないといった顔をしている。
「へぇ!買い物かぁ!」
 康一はルイズの複雑な心境には気づかずに目を輝かせた。
 この魔法の世界ってやつで、どんなものが売られてるのか興味がある。
「でも、ぼく、ここのお金持ってないよ?」
 康一は、ズボンのポケットに入れっぱなしだった財布から紙幣や硬貨を取り出した。
 ルイズは目を丸くした。
「これ、あんたの国のお金なわけ?」
「うん、まぁね。こっちがぼくの国の通貨の『円』で、こっちがぼくが君に召喚された時に居た国の『イタリアリラ』だよ。」
 康一は右手と左手に一万円札や百円玉などといった『円』、そしてイタリアリラをそれぞれ分けて見せた。
 ルイズは100円玉をつまんでみた。
「・・・なんだか材質が安そうね。鉄かしら。」
「うーん、材質はよくわかんないけど・・・」
 鉄・・・だっけ?康一は頭をひねった。
「お金の材質もわかんないのに、よくそれで通貨として使えるわねー。」
「えーっと、よくわからないけど、そういうものなんだよ。」
「まぁ、細工は結構綺麗な気がするわ。でも、ここでは鉄くずね。」
 むこうでは結構大金なんだけど・・・。康一は肩を落とした。
 予想はしていたことだが、自分はここでは無一文なのだ。
「お金の心配はしなくていいわよ。」
 康一が見ると、ルイズは当然でしょ、といった顔をする。
「あんたはわたしの使い魔なんだからね!主人がお金の面倒をみるのはあたりまえでしょ!」
「そっか!そういえば、ぼくってルイズの使い魔だったよね。助かるなぁー!」
 ルイズは思わず頬を緩めかけたが、あわてて表情を取り繕った。
「それじゃ、朝ごはんを食べたら早速出発よ。」
「うん、わかったよ。ところで、町までってどれくらいかかるの?」
「馬で3時間ってところかしらね。」
 康一はピタリ動きをとめた。
「心配しなくても学院にあんたの分も借りられるはずだから。」
 康一にそういうと、ルイズは先に歩き出す。

「うま?」
 康一は冷や汗を流した。



「まさかあんたを馬に乗せるだけでこんなに手間取るなんてね・・・」
 ルイズは心の底からあきれた様子で言った。
「そんなこと言ったって、馬になんか触ったのも初めてなんだから!」
 康一は馬上で四苦八苦している。
 厩で手綱を渡されても乗り方すらわからず、見よう見まねで乗ってみると後ろ向きにまたがってしまい、それまま馬が歩き出したので落馬してしまったりした。
 しかもその後、手伝ってもらってなんとか乗れたものの、男性用の鐙に康一の足が届かないハプニングまで起こってしまい、それを取り替えるのにまた時間がかかったのだ。
 しかしルイズは、なんだかんだと文句を言いながら、コーイチに馬の扱いを教えてあげるのが意外と楽しそうな様子である。

680S.H.I.Tな作者:2009/05/11(月) 14:23:50 ID:QNRyIBzf
>>679
のタイトルは

S.H.I.Tな使い魔21

の間違いです。

orz
681S.H.I.Tな使い魔21:2009/05/11(月) 14:24:48 ID:QNRyIBzf
 一方そのころ、キュルケは自分の部屋の窓際でぼんやりと外を見つめていた。
 思うのは、ルイズの不思議な使い魔。コーイチのことである。
 キュルケはもともと、たくましくて頼りになる男のほうが好みである。
 コーイチのような自分より小さな男に恋したのはいままで初めてだった。
 小さくて純朴そうなコーイチを見ていると、守ってあげたくなるのだ。
 でも同時に、いざというときの勇気や頼もしさはそこらに転がっている男連中なんか比べ物にならない。
 可愛さと頼もしさの両方を併せ持つコーイチを思うだけで、キュルケの胸の内は、ちりちりと微熱に焼かれるのだった。
 「それに、あのミステリアスなところも・・・。興味が尽きないわ・・・」
 キュルケは物憂げにため息をついた。
 そのとき、眼下の門を誰かが出て行くのが見えた。
 馬に乗っているのが二人。あの桃色はルイズだわ。そして少し後をついていくのは・・・
 「ダーリンだわ!」
 キュルケは立ち上がった。
 二人は町の方角へと馬を走らせていく。
 「ルイズ。色気じゃあたしに勝てないからって、もので釣るつもりね!」
 キュルケは歯噛みした。
 ツェルプストー一族には、恋敵が居たほうがさらに燃え上がる。代々そういう血が流れているのだ。
 今すぐ追いかけたい!しかし、今から馬を手配して追いかけても、到底追いつくことはできないだろう。
 「じゃあ、方法はひとつしかないわね!」
 キュルケは杖とマントをつかむと、部屋を飛び出した。


 
 馬というのは歩く生き物であるからして、座っていると一歩一歩上下するものである。
 康一は、鞍にしこたま尻を突き上げられ、悲鳴をあげながら馬の扱いに苦心していた。
「西部劇とかだと颯爽と乗ってたりするけど、これあんまりいいものじゃないなぁ。お尻が痛いし。」
「慣れればなんともなくなるわよ。それに馬にも乗れなかったら馬鹿にされるわよ。」
「馬鹿にされてもいいから早く休みたいよぉ。後どのくらい?」
「まだ半分も来てないわよ。」
 康一は絶望的な顔になった。  
 その上にふっと大きな影が落ちた。
「あれ。なんだろう。」
 康一は不思議に思って空を見上げた。
 すると、羽ばたきの音とともに、空を飛ぶ大きな竜が自分めがけて降下してくるのが見えた。
 康一は驚いたが、もっと驚いたのは康一が乗っていた馬である。
 恐怖でパニックを起こし、街道を全速力で走り始めたのだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
 康一は振り落とされないようしがみつくばかりである。
「コーイチ!」
 ルイズは立ち上がる馬を制するのに手一杯で助けに行くことができない。
 竜は爆走する馬に滑空して追いついた。背後に存在は感じるものの、康一は振り向くこともできない。
「(し、死ぬぅー!)」
 竜に食べられるか、馬から落ちるか!
682S.H.I.Tな使い魔21:2009/05/11(月) 14:25:31 ID:QNRyIBzf
 しかしそんな康一の背後に、ふわりと何かが降りてきた。
 康一の手から手綱を取ると、強く引いて落ち着かせる。
「どう!どう!」
 康一はその声に聞き覚えがあった。
「きゅ、キュルケさん!?」
 キュルケは馬を落ち着かせると、花のような笑顔で微笑んだ。
「驚かせてしまったみたいね。ごめんなさい。」  
 康一を背後から抱きしめるような格好である。
「ど、どうしてここに!?」
「コーイチが町に行くのが見えたから、友達の竜に乗せて貰って追いかけてきたの。迷惑だったかしら?」
「迷惑だなんて・・・びっくりはしましたけど。」
 どうやら竜の上から助けに降りてきてくれたらしい。康一は胸をなでおろした。
 そんな二人の横に、先ほどの竜がゆっくりと降りてくる。
 竜の背には眼鏡をかけた小さな女の子が乗っているようだ。
 ようやくルイズも自分の馬を落ち着かせることができたようで、ものすごい勢いで馬を走らせてきた。
「キュルケ!こんなところで何してるのよ!!」
「あーらルイズ。あたしがどこでなにをしようと、あなたに関係あるのかしら。」
 キュルケは右手で手綱を持ち、左手で康一を抱きしめている。
「関係あるわ!わたしの使い魔から離れて!」
「あら。あたしはダーリンを助けてあげたのよ?」
 頬を康一の頭にすり寄せる。胸が背中に当たるので、康一は赤くなった。
「あ、当たってるんですけど・・・」
「当ててるのよ。」
 キュルケはルイズのほうを向いてにやりと笑った。
 ルイズの額には青筋が浮いている。ピキピキという音が聞こえてきそうだ。
「キュルケ。その馬はわたしが手配したの。だからあんたは乗っちゃ駄目。ていうか、誰がダーリンよ誰が!」
「しょうがないわねぇ。」
 口では言うものの降りる気は毛頭ないキュルケである。
「それじゃ、ダーリン?こんな慣れない馬にのって疲れたでしょ。あの風竜に乗っていかない?」
 いいでしょ?タバサ。と竜に乗っている少女に尋ねた。
 少女はそ知らぬ風に本を読んでいるが、キュルケはそこに同意を見たらしい。
「かまわない、ですって。」
「ええっ、ほんとう!?」
 馬には辟易していたところだ。しかも、初めて近くで見る竜である(遠くで飛んでいるのは何度か見た)、乗せて貰えるなら乗ってみたい。
「だっ!ダメよ!ダメ!ご主人様をおいていくなんて使い魔失格なんだから!」
 ルイズが叫ぶ。ツェルプストーに康一をとられてはたまらない。
「じゃあいいじゃない。ダーリンも馬に慣れるまでは一緒に乗ってくれる人が必要だわ。」
 先にいって待ってて、と風竜を先に行かせると、キュルケは馬を御して歩き出す。   
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
 ルイズがあわてて追いかける。

『じゃああたしの後ろに乗ればいいじゃない。』
 とはまだ言えないルイズだった。 
683S.H.I.Tな作者:2009/05/11(月) 14:27:06 ID:QNRyIBzf
以上になります。
タイトルミス、たびたびすみません・・・
それでは失礼しましたぁ〜ん
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 14:28:10 ID:7qPM+BTj
今の由花子さんなら殺気で遠隔殺人が出来ます。断言してもいい

由花子さんと康一くんの関係をみたらこの人たちはどう思うだろうか支援
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 14:55:47 ID:i+TwK9ot
ハーミットパープル盗撮キター!
帰国即死亡のフラグが立ったようだ
まず監禁は免れそうにないな
異世界へ行ってましたとか言い訳にしか聞こえないだろうし
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 16:40:24 ID:jkvtuiuT
由花子さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
康一くんの無事を祈りたいw
乙でした!
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 16:48:42 ID:hL9Eg3s8
なんらかの方法で「見られている」事実に気づいたら恐ろしくて帰るに帰れんな

ルイズ「ほ、本当に帰らなくていいの?」
康一「ルイズをほおっておけないよ!(ほんとは怖いから帰れないなんていえないよなぁー、とほほ)」


無論このやりとりも見られている
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 18:23:05 ID:OwZEa6Wo
由花子…さん…の深すぎる愛情が怖いww
689名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 18:52:44 ID:YQFVPVxZ
由花子さん、普通に家一つをスタンドで潰し壊すからな……
おそろしやおそろしや
690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 20:45:54 ID:IkzFr9rq
全身の関節を外して折りたたんで世界扉に体をねじ込もうとする由花子さん
691名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 20:47:26 ID:pIznPWlH
なんにせようpディ・モールト乙!!
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 21:30:35 ID:2Pqnu5Po
GJ!GJゥ!
あ〜あよりによってw
まぁアレだ康一君イ`w
693名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/11(月) 23:04:27 ID:3C7Cg0J4
まぁその内他の虚無持ちに召喚されるんじゃね?
694名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 00:40:31 ID:ig1hNFn2
そういや、露伴と康一が一緒に召喚されるのって無いよな。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 01:49:46 ID:vvHITRlk
「ルイズの使い魔の露伴の使い魔みたいな康一くん」の図が浮かんだ
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 09:40:51 ID:cwySiIwp
そういえば康一に凹にされたギーシュにも
小人化フラグは立ったのか?
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 13:25:47 ID:ADkl3w7P
>>694>>695
ルイズと露伴の両方の面倒見なきゃならない康一君がストレスで胃を壊すので
トニオさんも一緒にすべきだなw

というか露伴は存在感と行動力がありすぎるキャラだから目立ちにくくなるんで
億泰のような戦闘力はあるけど頭脳戦苦手なキャラと組ませたらバランス取れそうな
698名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 13:58:00 ID:zcOItUjj
俺の墳上裕也はまだですか?ハイウェイスターかこいい
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 16:36:22 ID:cPhwQmrf
>>698
お前墳上だろ

「言いだしっぺ書き手化の法則」というものがあってだな……
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 18:58:50 ID:OSh8bW8b
あの世界体臭処理が進んでなさそうだから、変装とかあっという間にばれるな


「フーケを追跡するのはかまわねーが・・・ミス・ロングビル。その前にあんたからフーケのにおいがする理由を聞かせてもらおうか」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

見たいな感じで
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 19:01:13 ID:ADkl3w7P
あれって思うんだが凄い強烈な匂いを嗅がせたらどうなるんだろ?
犬なんかはあまり強烈な匂いだと鼻がしばらく役に立たなくなるらしいが
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 19:07:10 ID:eSKyBzOW
というか時速60k以上でフーケは逃げられるのか
703名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 19:09:42 ID:cPhwQmrf
>>701
「エ"ン"ッ!!」ってなる
704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 21:37:54 ID:DooaW9fJ
>702
ゴーレムの大きさを考えるとそこそこ早足で動くだけで歩幅の関係で60km行くんじゃね?
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 21:51:44 ID:dYDXzbEb
噴上だったら寧ろおマチさんをメロメロにしてしまいそうな気がする

ところでブリミルの使い魔1号であるサーシャさんをぎゅーっと抱き締めたいんですが、どうしたら良いですか?
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 21:59:16 ID:KWz+0Jyw
墳上は物語にならなくねえか・・?
ハイウェイスターの速度じゃギーシュのゴーレムが墳上に接近するより先に倒してるだろうし
臭いでフーケや仮面の男の正体速攻見破るし
戦艦も遠距離操作で忍び込ませたハイウェイスターが楽に墜とせる
707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 22:53:44 ID:tbOXOauL
墳上でも糞紙でもねー、「噴」上だッ!
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 22:55:45 ID:OSh8bW8b
>>705
タイム・ドアの虚無スペルでおk
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 23:03:08 ID:U1k+cN2E
遍在って臭うの?
710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 23:14:29 ID:cPhwQmrf
>>709
臭いがしないから一発で見破る
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 00:02:02 ID:Fw+9YNPl
決闘イベントでギーシュにボコられる

不思議な部屋でケティとアンアンが喧嘩するのを目撃するギーシュ
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 09:01:16 ID:eH8InoiC
これまでにも何度も噴上の話題は出て来れども
自分含めて誰も書こうとは思わないのはある意味凄いなぁ

>706
まず噴上は女絡みでなきゃやる気出さなさそうだ
つまり噴上が活躍するかどうかはいかに早く取り巻きギャルズを形成するかにかかっている
当然そんな事ルイズが許すはずも無いが・・・
713名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 09:13:39 ID:uEYuoirz
>>711
なぜそこでアンアンが出てくる
714名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 10:46:53 ID:WjmZcrnK
アンアン?モンモン?・・・きゅいきゅい!
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 16:01:09 ID:3Ays/69e
ボコられる前にハイウェイスター飛ばしてギーシュのパワー吸収して倒せるだろ
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 16:34:17 ID:nmp96ycP
下手したらゴーレムやら偏在に込められてるエネルギー吸い取って
無力化しそうだしな
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 16:56:25 ID:rxKGkpEK
そういや噴上のスタンドって自動追跡と遠距離両方兼ね備えてるのか
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 16:58:39 ID:8h+eX6Pq
ハイウェイスターってなにげに超強いよなぁ
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 22:23:48 ID:SD1sFPl8
ホルホル再登場です。

【ジョジョ第3部】うろ覚えで振り返る 承太郎の奇妙な冒険 PART14
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm7028012

シャルロットは少ししか登場しないけど、少し+α。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 03:33:59 ID:WOU86S5f
でもハングリーさが売りだったから全快後も同じだけ強いとは限らないんだよな
メイジは基本飛べるから逃げるのも楽だし
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 04:42:47 ID:lvuI02eq
でもボコボコにされても回復手段があるってやっぱり強い
ハイウェイスターはやられてからが本番かもな
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 08:43:02 ID:Gj2RS+9z
>721
そう言われると本体はデーボかカルネの方が向いてるんじゃなかろうかと思う
723名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 09:54:00 ID:VU0FZMiq
噴上はここぞと言うときには活躍してくれたけど、基本ビビリっぽいから強さがよく分からん
エニグマ戦でもう少し積極的に戦闘に参加してくれたらイメージ変わったかも知れんけど
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 11:24:52 ID:i6cvXkvy
ふと思ったんだが、吉良の屋敷に残っていた衣服の匂いを噴上に嗅がせて
吉良を探すというのは出来なかったんだろうか?
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 12:13:55 ID:opgOk7S/
>>724
言ってはならないことを・・・
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 12:17:43 ID:1NjzHp9r
吉良の強さと異常性を聞いて拒否したんじゃね?
ビビリな裕ちゃんらしく
727名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 12:52:46 ID:+Ry3HddL
シンデレラの全身メイクで
汗腺とかの分泌液まで変えて臭いを変えたんじゃあなかろうか
それか人に見つかりにくい運勢に変えさせたとか
728S.H.I.Tな作者:2009/05/14(木) 13:54:46 ID:opgOk7S/
ところで、S.H.I.Tな使い魔22話、23話を投稿したいと思うのですが・・・
許可願えますでしょうか。
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 14:01:17 ID:rWUtnm1S
おっけぇ〜〜〜〜っすよぉ〜〜〜〜
730S.H.I.Tな作者:2009/05/14(木) 14:02:00 ID:opgOk7S/
ありがとうございます。
それではちょっくら失礼しますね。
731S.H.I.Tな使い魔22:2009/05/14(木) 14:05:12 ID:opgOk7S/
 一行が町の入り口までやってきたのはそれから二時間後だった。
 タバサは近くの岩場に腰を下ろし、本を読んでいた。先ほどの竜がまるでタバサに話しかけるようにして顔を寄せている。
「おまたせ、タバサ。」
 キュルケが康一の馬から飛び降りた。
「遅れたけど紹介するわね。あたしの親友、タバサよ。」
 本を読んだままのタバサの肩を抱き寄せた。
「こ、こんにちはー」
 康一は馬から降りて声をかけてみたが、反応はない。
「無愛想な子ねー」
 ルイズはあきれたように言った。
 キュルケが康一にずっとくっついたまま離れなかったのでご機嫌ななめである。
「ちょっと無口なだけよ。それにルイズも無愛想さでは負けていないと思うわよ?」
 キュルケが軽く受け流すと、ルイズがむっとして睨みつける。
 空気が険悪になりそうだったので、ルイズが爆発する前に康一は話題を探した。
「え、えーっと、そういえばルイズは何を買うつもりだったの?」
「・・・あんたにいろいろ買ってあげなくちゃいけないじゃない。杖とか。」
「杖?」
 メイジでもない自分に杖などいるのだろうか。
 ルイズはコーイチの耳元に口を寄せた。
(あんたの『スタンド』。魔法だってことにしたら都合がいいでしょ?)
「ああ、そっかぁ!」
 康一は納得した。
 スタンドをおおっぴらに使えないおかげで、ギーシュとの決闘ではひどい目にあった康一である。
 杖さえ持っていれば、『スタンド』も『東方式のちょっと変わった魔法』としてみて貰えるかもしれない。
「なに、どういうこと?ダーリンって魔法が使えるわけ?」
 キュルケは理解できない様子である。タバサは黙ったまま何も言わない。
「(そっか。康一の『スタンド』のこと、知ってるのわたしだけなんだ。)」
 秘密を共有しているようでなんだか嬉しい。
「(そうよ。キュルケが無駄に色気を振りまいたって、所詮は他人だわ。わたしはご主人様なんだもの!)」
 自信を取り戻したルイズは、とたんに上機嫌になった。
「たいしたことじゃないわよ。ちょっとあんたにはいえないけど。」
 なんて澄まして見せる余裕まである。
 キュルケからすると、非常におもしろくない。
 康一から聞き出そうとするも、言葉を濁されるから余計である。
 ほら、さっさと行くわよ。背を向けるルイズに向かってつぶやいた。
「いいわ。いずれじっくり聞き出してあげるんだから!」
 



「へぇ!なんだかいろいろなものがおいてあるなぁ〜!」
 康一はきょろきょろと興味深そうに店の商品を覗き込んでいる。
 露店に挟まれた通りは非常ににぎやかで、人でごった返している。
 売っているものも、肉や野菜や服などといったよくみるものだけでなく、日本では到底見れないようなものも並んでいる。
 ビン詰めの目玉なんかがあったりしたが、あんなの何に使うんだろう。
「ここはトリステインで一番の大通り、ブルドンネ街よ。」
 ルイズは心持ち得意げに説明した。
「え?一番の大通り!?」
 康一は驚いた。単に近くの街だと思っていたのだ。
「それにしては・・・ちょっと小さい気もするなぁ〜」
 意外と規模の小さい国なんだろうか。
「なにわけわかんないこと言ってんのよ。ほら『杖』の店はこっちよ!」
732S.H.I.Tな使い魔22:2009/05/14(木) 14:05:55 ID:opgOk7S/
 ルイズは康一の手を引いた。
「あ、ちょっと待って!あの路地の奥に、『剣』の絵が描かれた看板が見えるんだけど・・・」
 康一は薄暗い路地を指差した。
「そうね。武器屋があるんでしょ。それがどうかしたの?」
「いやぁー!ちょっと感動っていうか・・・!」
 ゲームでよくあるような武器屋の看板が実際にあるのだ。
 うわぁ、やっぱりファンタジーな世界なんだなぁ!と康一はわくわくした。実際の武器屋ってどんな感じなんだろう。
「ちょっと見てくるね!」
 康一が走り出すので、ルイズはあわてて追いかける。
「こらー!武器屋になんて行ってどうするのよー!」
「やっぱりダーリンも男の子なのねぇ。」
 キュルケとタバサも後を追った。



「おーい、坊主。ここはおもちゃ屋じゃねぇぞ。」
 武器屋の店主は、さきほど入ってきた小さな少年に声をかけた。
 ちょうど客もおらず、暇だったから構わないのだが、あまりにも目をきらきらさせて店を見回しているので苦笑する。
「あ、ごめんなさい。ぼく、こういう店、初めてきたんですよねー!」
 まぁ害もなさそうだから放っておくとしようか。金も持ってなさそうだし。 
 と、そこへ今度は貴族の小娘が入ってきた。
 すかさず店主は腰を低くした。
「いらっしゃいませ貴族様!当店はまっとうな商売をしておりまさ!怪しいものなんてなにも・・・」
「別にこの店に用があるわけじゃないわ。」
 もみ手をする店長に、ルイズは興味なさげに返した。
「ほら、コーイチ。行くわよ!」
 ルイズが袖を引っ張るが、康一は「もうちょっとだけ!」と壁にかけられている武器にかじりついている。
「(へぇ、ひょっとしてこの坊主は貴族の従者かなにかか。ってことはカモがネギしょってきたのかもしれん。)」
 店主はにっこりと笑った。
「なんならお似合いのを見繕いましょうか?」
 康一は嬉しそうに振り向いたが、残念そうに首を横に振った。
「ごめんなさい。ぼくって、お金もってないんですよね。」
 店主は貴族の小娘を見たが、買い与える気など毛頭なさそうである。
 そこに今度は、まぶしいほどの色気がある赤毛の美女と、青髪の娘が入ってきた。こちらも貴族らしい。
「あたしが買ってあげてもよくてよ?」
 キュルケが康一に声をかけた。
 しかしルイズが立ちはだかる。
「わたしの使い魔に変なものあたえないでよ!それに剣なんか買ってもしょうがないじゃない!」
「いいでしょ。あたしが何を買おうと勝手だし、コーイチが何を貰うのも勝手だわ。」
 あのー、と康一が声をかけた。
「剣って杖の代わりにならないの?」
 杖はただの棒じゃないから、代わりにはならないけれど・・・とキュルケはあごに人差し指をあてた。
「でも、魔法衛視隊なんかは、大体レイピア形の杖を持ってるわね。それに、傭兵をやってるメイジで、杖の機能を持たせた武器を使ってることはあるらしいわ。」
 康一は財布を握っているルイズを見た。
「どうせ買うならそういうのがいいかなぁ〜。って思うんだけど・・・高くなるのかな。」
 店主がすかさず割り込んだ。
「いえいえ!当店は平民用の武器だけでなく、メイジ様にもぴったりな武器も多数取り揃えておりますですよ!傭兵のお客向きの商品などは、貴族様が使う杖などよりお安くできまさ!」
 意地があるので決して口にはしないが、実は康一の治療費やらなにやらで、少し懐が心もとないルイズである。
 自分が知っている店は貴族用の高級な店で、かなりの出費を覚悟していただけにその言葉には少し惹かれた。
「ま、まぁコーイチがそんなに欲しいなら、考えないでもないわ。」
 ルイズが同意して見せると、店主は「では少々お待ちください!」と奥に引っ込んだ。
 あの貴族の小娘たちと従者。関係は良くわからないが、雰囲気は貧乏貴族ではない。
 おそらくかなりの金を持っているはず、と店主は睨んだ。
 笑顔で一本の長剣を抱えていく。
「こちらなどはどうでしょう。かの高名なシュペー卿の鍛えし大業物!ちょっとお値段は張りますが、鉄を紙のように切り裂くって触れ込みでさぁ!もちろん、お望みのように杖の代わりとしても使えますぜ!」
 宝石や金の装飾の散りばめられたいかにもな宝剣である。
「・・・ちなみにそれ、いくらなの?」
「そうですねぇ。本当はエキュー金貨で2500はいただきたいところですが・・・今回は、2000エキュー。新金貨なら2500で結構でさ!」
「2000!?ちょっとした家屋敷が買える値段じゃない!」
「いいものは値が張るものですぜ?命を懸けるものですからねぇ。」
733S.H.I.Tな使い魔22:2009/05/14(木) 14:07:12 ID:opgOk7S/
 店主がもっともな顔をして言う。
 ルイズは顔をしかめた。
「・・・もっと安いのはないわけ?100くらいの。」
「まともな剣を買おうと思えば、少なくとも新金貨で200はしますがね。まぁそこにあるのは一律200ってものでさ。」
 店主は店の隅で剣が無造作に束ねられている一角を指差した。
「しかし、貴族様の従者に持たせるには、あのあたりの凡庸なのは少々物足りないと思いますがねぇ。」
 すると、突然、ガチャガチャという音とともに声が聞こえてきた。
「誰が凡庸だ、このスットコドッコイの詐欺親父!!このデルフリンガー様をそこらの剣と一緒にするんじゃねーよ!」
 一行は驚いて声のするほうを見つめた。
「だいたい、そんなコゾーに持たせるならおしゃぶりのほうがお似合いだぜっ!」
「こ、こらデル公!お前はだまってろ!」
 一本の錆びた長剣がカチャカチャと鍔を鳴らしているので、タバサがするりと引き抜いた。
「こら!小娘!勝手に触ってんじゃねぇよ!」
 タバサはそんな剣の罵声に耳を貸さず、しばらく見つめてから康一に手渡した。
「インテリジェントソード」
「ま、まさかこの剣がしゃべってるのかぁ〜!?」
 康一は手に持ってしげしげと剣を眺めた。でもスピーカーはついてないしなぁ。
 すると、それまで騒いでいた剣が、突然黙り込んだ。
「・・・おでれーた。おめぇ『使い手』か。」
「『使い手』ってなに?」
 当然ながら今まで剣など触った事もない康一である。
「俺の柄を握ってみろ。」
 言われるがままに、両手で柄を握ってみる。
 すると、康一の左手のルーンが青白く光を放ち始めた。
 キュルケが叫んだ。
「だ、ダーリン!手のルーンが光ってるわよ!?」
734S.H.I.Tな使い魔23:2009/05/14(木) 14:11:46 ID:opgOk7S/
 この場にいる全員が驚いたのは間違いない。
 しかし一番驚いたのはピカピカ光っている当人である。
「うわぁ!」思わずデルフリンガーを投げ出す。
 途端光が消える。
「こら!もっと丁寧に扱え!」
 床に落とされたデルフリンガーが文句を言う。
「ご、ごめん。」
 康一がデルフリンガーを再び握ると、やはり手が光を放つ。
「あ、あんた。なんで光ってるの?」
 ルイズが恐る恐る尋ねた。
「知らないよ!この印、ルイズがつけたんじゃないかぁ!」
「ダーリン。体はなんともないの?」
「うーん、なんともない・・・かな?」
 キュルケは気遣ってくれるが、なんともないどころか体に力がみなぎる気がする。
 ほかの剣を握ってもやはり光るようだ。
「へ、へぇ?最近の従者さんは光るんでございますねぇ。綺麗なことで・・・」
 わけのわからない店主が無意味なお追従を言う。
 タバサがぼそりと言う。
「あなたはたぶん特別。人間が使い魔になれたのも、あなたの『能力』もそう。」
 じっと康一の目を見つめる。
「あなたは、誰?」
「誰?と言われても困るんだけど・・・。」
 ぽりぽりと頬をかいた。
「そういやこいつは『使い手』って言ってたなぁ。」
 康一は剣に聞いてみることにした。
「ねぇ。『使い手』って言ってたけど、君はぼくのこと知ってるわけ?」
「しらねぇ。でもおめーが『使い手』ってことはわかる。俺は『使い手』に使われるためにいるからな。」
 店主が口を挟んだ。
「そいつの名前はデルフリンガーでさ。頑丈ではありますが、錆びは浮いてるし、口は悪いしで買い手がつかなかったんで。まったく、剣にしゃべらせるなんて誰が始めたんでしょうかねぇ。」
 しかし康一は面白いと思った。どうせ剣として使う気もないんだから、しゃべり相手になればいいや。
 それにこの良く分からないルーンについて、この剣は何かを知っていそうだ。
「じゃあ、ぼくはこれを買うよ。」
「おっ!分かってるなぁ!これからよろしくな相棒!」
 デルフリンガーが嬉しそうにはしゃぐ。
 しかしルイズは渋い顔をした。
「そんな錆ついたのより、もっと綺麗なのにしなさいよ。」
 実際引き抜いて見ると、デルフリンガーはあちこちにがたが来ている様子で、正直見栄えはよくなかった。
 しぶるルイズに、店主がこっそりと耳打ちをした。
「あの剣でしたら、新金貨で200・・・いや、100で結構でさ。もちろん鞘もお付けしますよ。」
 とたんにルイズの態度がころりと変わった。
「しょ、しょうがないわね!コーイチがそんなに欲しがるんだったら、それでもいいわよ!」
 あの2000エキューの剣をねだられて、ツェルプストーの前で恥をかくのに比べれはずっといい。
 それじゃあ・・・。とキュルケが進み出た。
「あたしは、このシュペー卿の剣を買ってあげようかしら。」 
「な!?」
 ルイズは驚愕した。いくらツェルプストーとはいえ、2000エキューは大金のはずである。
 しかし、キュルケはふふっ、と笑うと店主のいるカウンターに身を乗り出した。
 大きな胸がたゆんと揺れる。
「ねぇ、ご主人?この剣を買って差し上げるわ。でも、もうちょっとお勉強していただけるとうれしいのだけど・・・」
 主人はごくりと唾を飲み込んだ。
「そ、そうですねぇ。それでは、1800エキューってところでいかがでしょ。」
 キュルケは店主から視線をはずさない。
「えーっと、それじゃあ1600エキューでは?」
「ねぇ、店主さん。あなたお名前は?」
「へ、へぇ。ゴドーといいますが・・・」
 キュルケが人差し指で店主の頬をなでる。
「ねぇ、ゴドー。あたし、あなたはもっと出来る方だと思っていたのだけど・・・」
 店主の背筋にぞくぞくとした快感が走った。
「は、はぁ。それじゃあ、なんとか1200までがんばらせてもらいます。」
735S.H.I.Tな使い魔23:2009/05/14(木) 14:12:29 ID:opgOk7S/
「ミスタ・ゴドー・・・。ちょっと暑くなってきたと思わない?」
 キュルケがブラウスのボタンをひとつはずした。
 胸の谷間がさらに奥まで見えそうだ。店主は鼻の下を伸ばした。
「わ、わかりました。赤字覚悟で800までがんばります。」
 次のボタンをいじりながらキュルケが店主を見つめている。ああっ!お胸のお目目が見えそで見えない!!
「400!400で!」
「ごめんなさい。あたし、新金貨しか持ち合わせがないのだけれど・・・」
 さらに前傾になる。最後のボタンがはち切れそうだ。
「し、しししし新金貨で結構でございますぅー!!」
 キュルケがにこりと笑った。
「あら、そう。ありがとね♪」
 途端にするするとボタンを元に戻し、金をドンと置いた。
「いい取引ができたわ。また機会があればよろしくね。ダーリン。それじゃいきましょ?」
 あっけにとられる店主を残し、シュペー卿の剣と康一を持って店を出て行ってしまう。
 タバサはだまってそれについていく。
 ルイズはまだぽかん、としていた。
 生き馬の目を抜くどころの話ではない。強引に色仕掛けで毟り取っていったのだ!
「な、なんて女・・・!」
 ルイズは店主(ゴドー)と顔を見合わせた。


 ルイズが金を支払い、あわてて外に飛び出すと、三人がルイズを待っていた。
 キュルケがひらひらと手を振る。
「ルイズ。遅かったわね。どうかしたの?」
「どうかした、じゃないわよ!何よさっきの!色仕掛けだなんて何考えてるのよ!!」
「安く買えたんだからいいじゃない。」
「恥ずかしくないのかっていってんのよ!」
 キュルケは髪をかきあげた。
「そんな小さなことばっかり言ってると、いつまでも胸が大きくならないわよ?」
「な、なんですってぇー!?」
 ルイズは手で胸を隠すようにしている。わたしだって・・・わたしだってそのうち大きくなるんだから!
「そんなことより、あなたが買った剣。あれでいいわけ?」
「何がよ。」 
「あなた、杖を買いにきたんでしょう?あんな杖の代わりにならない剣を買っちゃったりして・・・。」
「いいのよ。どうせ魔法なんて使えないんだから。」
 康一が口の前に指を立てたジェスチャーをした。いっちゃだめだよぉー!
「あ・・・。」
「へぇぇぇぇぇ。それなのになんで杖を買ってあげようなんて思ったのかしらねぇー。」
 してやったりとキュルケがにやついている。
 ルイズはばつの悪そうな顔をした。
「まぁ、どうせこの間ダーリンが呼び出した『ゴーレム』のためなんでしょうけどね・・・」
「な、何でそんなこと分かるのよ!」
 ルイズがあまりに動揺しているので、キュルケはおかしくなった。

「だってあなたたち、分かり易すぎるんですもの!」
736S.H.I.Tな作者:2009/05/14(木) 14:13:45 ID:opgOk7S/
以上になります。
以降も不定期更新となりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
それでは失礼いたしましたぁ〜ん
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 14:39:29 ID:rWUtnm1S
投下乙

シュペーソード、ほかのSSだと見た目だけのナマクラとか低い評価が多いけど、そうかなるほど杖にもなるから高いのか
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 16:30:03 ID:f6P9OCVR
>>724

 ( ´・ω・` ) ・・・・
 ( ´・ω・`)つ「ジョセフの念写」
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 16:58:30 ID:i6cvXkvy
>>738
……その方が確実だったなw

重ちーが引きちぎってきたボタン使って念写
     ↓
全員でフルボッコ
     ↓
第 四 部 完 !!
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 18:00:06 ID:r7/qPALL
おじいちゃんは孫にかっこつけるためにリスカしてボケが進行しました
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 19:40:38 ID:dsOZaq4S
>>740
お前も呆けてるぞw
742名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 21:28:29 ID:jZor8ir2
>>737
なるほど、スゲーわかりやすい。



しっかし投下速度速いですね〜
乙!
何か康一君だと一人だけジョジョ絵で想像してもふつーに馴染んでて面白いw
でもデルフ使い状況なんてあるのかな?
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/14(木) 21:57:31 ID:mfW5CBzp
>>737
なんか新しい着眼点だよな
自分で決めたスタンドの縛りを上手く利用してるのが凄いと思うわ
744名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 19:53:26 ID:+ol76V51
投下お疲れ様です。
面白かったです。
745名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 22:39:20 ID:L8URzbmo
シュペー卿の剣が価値があったことって初めてじゃないか?
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 02:25:58 ID:XvfFH53r
銃杖
747名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:01:28 ID:6i97IUao
銃杖の続き読みたいお…
748名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 11:18:08 ID:LRT5wyEH
避難所にきてるお
749名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/17(日) 22:25:06 ID:6i97IUao
>>748
本当だ!
早速読んできます!
750名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 03:47:27 ID:j4zWfyzL
避難所ゼロ犬
751ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:34:37 ID:qCzeh0IO
息せき切らしてアルビオン軍の伝令が陣中を駆け抜ける。
歓喜とも困惑とも取れぬ表情を浮かべながら天幕の中へと入り込む。
左右には衛兵が立ち、その中央では二人の男がテーブルに地図を広げて軍議を行っていた。
アルビオン軍と連合軍の配置を示す白と黒の駒。
数に勝る連合軍はアルビオン軍を半包囲し、戦の趨勢も決したかに見えた。
しかし、それを覆す報が伝令より齎される。

「報告します!連合軍内にて叛乱が発生した模様です!
詳細は不明ですが敵軍は混乱し、中には同士討ちを始める者達も!」

その報告にホーキンスは思わず耳を疑った。
優勢な状況にある連合軍で内部分裂など有り得ない。
何が起きたのかを把握しようとする彼の隣で、
表情一つ変えないまま総司令は報告された地点の駒の配置を動かす。
ホーキンスが見下ろした先には、アルビオン軍によって包囲される連合軍の縮図が広がっていた。
もし、このまま完全に包囲し殲滅する事が出来たならアルビオンの勝利は確定する。
息を呑むホーキンスの横でアルビオン軍総司令は呟いた。

「さもありなん。所詮は目先の利益で繋がっていた連中に過ぎない。
勝利を前にして主導権を握らんと、どちらかが仕掛けたのだろう。
いくら御題目を立てようと正義は我等にある。アルビオンの民もそう気付いたはずだ」

果たしてそうだろうか、とホーキンスは疑念を払拭できずにいた。
レキシントンでの戦いの時も『ロイヤル・ソヴリン』号が反旗を翻すなど、
貴族派が苦境に立たされると何故か戦局を覆すような反乱が起きた。
もし、それが誰かの意志によって引き起こされたのだとしたら我々は何の為に戦っているのか。
信念も誇りも何の意味も持たない、ただの駒ではないのか。
かつて憧れた理想との落差にホーキンスは悔しくて唇を噛んだ。

「これより我が軍は追撃戦に移る。陣頭指揮は任せたぞホーキンス。
この天候では軍船も容易に出港できまい、アルビオンから一人として生かして帰すな」
「はっ! ……ですが、本当によろしいのですか?
トリステインのアンリエッタ女王は陛下の従兄妹君……いえ、それ以上の」
「ホーキンス」
「出来すぎた真似をしました、お許しを」

低く響いた声にホーキンスは身を固くして頭を下げた。
しかし、それを窘めもせず頭を上げるように促すと彼は続けた。

「私とて彼女を信じたかった。だが、現に彼女はアルビオンに侵攻した簒奪者なのだ。
正統たるアルビオンの継承者である私が戻ったにも関わらず彼女は軍を退こうとはしなかった。
私は私情は捨てたのだ。貴族派も王党派もなく、ただアルビオンを守る為に。
それが私を匿ってくれたクロムウェル司教へのせめてもの手向けだ」
752ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:40:18 ID:qCzeh0IO
私情を捨てた……か。
時折、人とは思えぬ冷たさを感じたのはその所為か。
アンリエッタ女王が軍を退けなかったのも仕方あるまい。
巨費を投じて侵攻しておきながら何の成果も上げずに帰還したならば、
トリステイン王国は諸侯貴族や平民の反発を受け、その権威を失墜させただろう。
同盟国のゲルマニア帝国との兼ね合いもある。
恐らくは彼女は身を引き裂かれる想いで戦っていたに違いない。

だが、同情できるほど我々は優位に立っていない。
ここで連合軍を逃せば一時的には勝利しても、
最終的には圧倒的な国力の差に平伏す事になる。

「それでは行って参ります。ウェールズ陛下」
「ああ、吉報を期待している」

恭しく礼をして天幕を立ち去る。
用意してあった軍馬に跨ったホーキンスが全軍に指示を飛ばす。
反乱を起こした兵を加えれば総勢七万という途方もない軍勢。
大地を踏み鳴らしながら迫り来るその姿は、さながら山が動いたようにさえ見える。
それを天幕の傍らで眺めながらウェールズは呟いた。

「どうせ人形ならば自由意志など無い方が楽というもの」

否。それはウェールズの口を借りた繰り手の言葉。
死を迎えても尚、ウェールズの身体は悪夢に囚われたままだった。

ウェールズ・テューダー
……死後、トリステイン王国の宮廷内にある霊廟に安置されるも、
シェフィールドの手により奪われ、生ける屍として彼女の手駒にされる。
王党派と貴族派を束ね、神聖アルビオン共和国の議長として君臨する。


夜が到来したかのように立ち込める暗雲。
暴風が吹き荒び、張り詰めた帆が悲鳴じみた声を上げる。
軍勢から逃げ惑い、船へと殺到する人々で港は埋め尽くされた。
その狂乱と悲鳴を背に受けながら一隻の船が港から離れようとする。
遠ざかっていくアルビオンの大地を船室からアンリエッタは見た。
見捨てられたと思い、乳児を抱いて飛び降り自殺を図った母親を兵士が止める。
なんとしても船に乗り込もうと軍艦に押し寄せる民衆とそれを防ぐ兵士達。
誰もが口々に助けを求め、絶望の中を這いずり回っていた。

「船を止めなさい! 私は最後まで残ります!」
「女王陛下、それはなりませぬ!」
「何を言うのです! タルブの時と同じく、
王家の者が威光を示さねば誰が従うというのですか!?」
「なればこそ! 誰よりも先にこの場を離れるべきなのです!
陛下より先に逃げ出したとなれば彼等の名誉は失われましょう!」

アンリエッタの言葉をマザリーニは力強く遮った。
多くの軍備と兵、物資に本国から伴ってきた民衆。
失われる物は確かに大きい。再起までには長い時間と労力を要するだろう。
だが、決して取り返しのつかない物ではない。
真に恐れるべきはアンリエッタ女王を、
トリステイン王家の正統な血筋を絶やしてしまう事に他ならない。
要を失えばトリステインは瞬く間に瓦解する。
753ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:42:16 ID:qCzeh0IO
「非難や中傷に耐えられぬというのならば、この私をお斬りください!
全ては矮小な枢機卿のしでかした事と、広場に首を晒せば皆納得するでしょう!」
「………………」

死を厭わぬマザリーニの決意にアンリエッタは返す言葉が見つからなかった。
命よりも重いとされる名誉さえも捨てて汚名を被ろうとする忠臣に、
どうやって引き下がれと命ずる事が出来るだろうか。
己の重責を新たに感じ取りアンリエッタは確認するように呟いた。

「……生きる者の責任ですか」
「御意」
「ならば私は罪を負いましょう。民を、兵を、罪無き人々を見捨てた罪を」
「お供します。たとえ、その先が地獄であろうとも」

視界の端に消えていくアルビオンを眺めてアンリエッタは告げた。
ここで失われたものを決して忘れる事はないと。
神と始祖に縋るように伸ばした手を振り払った事を、
哀願する彼等の視線を振り切って背を向けた事を、
思い出す度に彼女は後悔し続けるだろう。
地獄に等しい責め苦を受けようとも、それでもアンリエッタは生きる道を選んだ。

アンリエッタ・ド・トリステイン
……タルブの勝利を国威啓発に利用した軍部により、やむを得ずアルビオンとの開戦を決断。
前の使い魔の頃には出来なかった分、平民である才人にもルイズと変わらぬ扱いで接する。
生涯独身を貫きハルケギニア有数の名君として後世に名を残す。

マザリーニ
……アンリエッタの腹心として誠心誠意仕える。
時に無鉄砲になりがちな彼女を抑え、よき相談役となる。
ただ、才人を重用する事には些か疑問を抱いており、
貴族の特権を軽んじるアンリエッタと度々衝突する。
彼もまた、アンリエッタと共にハルケギニア史に足跡を刻む。


「ダメだ! 許可無き者は船に乗せられない!」

停泊している軍艦に押し寄せる者を兵士達が妨げる。
船の数は十分に足りているものの、荒天で作業が一向に捗らない。
その合間にもアルビオン軍はすぐそこまで迫って来ているのだ。
出港の準備を整えた艦に乗せてもらおうと詰めかける。
しかし、最優先で逃がされるのは高級貴族の士官で、
身分の低い者はとても乗せてくれそうにない。
多くの者が諦めて別の船を捜す中、ギーシュは一人の少女を抱えて兵士に歩み寄った。

「志願兵か。残念だがこの艦は満員だ。他のを当たれ」
「僕じゃない! 彼女を乗せてくれ、今すぐだ!」

叫ぶギーシュに兵士は彼の腕の中へと視線を下ろした。
桃みがかったブロンドの髪の可愛らしい少女が静かに寝息を立てている。
それを見て、兵士はギーシュの気迫に納得した。
恐らくこの少女は彼の恋人なのだろう。
ここに残ればアルビオンの連中にさんざ嬲り者にされた挙句、
殺されるか奴隷として売り飛ばされるに違いない。
なら、我が身を犠牲にしてでも助け出したいという気持ちは良く分かる。
だが規則は規則。そのような感情論で語れば、ここにいる全員を助けねばならない。
754ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:45:53 ID:qCzeh0IO
「すまないがそれは出来ない。軍規には従ってもらおう」
「彼女はラ・ヴァリエールの三女だ!」

ギーシュの言葉に兵士は声を詰まらせた。
こちらを見据えるギーシュの眼差しに曇りはない。
もし、彼の言う事が本当だとしたら……?
顔を強張らせる兵士に畳み掛けるようにギーシュは続ける。

「もし、彼女の身に何かあってみろ!
彼女を見捨てたアンタは間違いなく処刑される!
いや、アンタだけじゃ済まされない! その累は家族や友人にまで及ぶ!
他に誰も乗せられないなら、まずアンタが降りるべきだろう!?」

権威を傘に着た悪辣な笑みを浮かべてギーシュは兵士に迫る。
たじろぐ兵士の姿にギーシュは勝利は確信した。
慌てた兵士が艦長へ伝令を遣すと返事は呆気ないほど早く返ってきた。

「ラ・ヴァリエール嬢の乗艦を認めます。
この艦は間もなく出航します。さあ、こちらへどうぞ」
「ああ、ありがとう」

横に退いて乗艦を促す兵士にギーシュは礼を告げた。
そしてルイズを兵士に預けると安心したように彼は艀を降りていく。
当然ギーシュも乗るものだと思っていた兵士は目を丸くさせて呼び止めようとした。

「“任せとけ”彼女が起きたら才人がそう言ってたって伝えてくれ!」

ギーシュはそう叫んで大きく手を振った。
彼は才人にルイズを託された。
ギーシュが認めた親友の願いだったから、
あの時と同じ様に、また彼を助ける事は出来なかったから、
せめてルイズだけは、彼の一番大切なものだけは守りたかった。
満足げな笑みを浮かべて艦を見送るギーシュに、兵士は心よりの敬礼で示した。

「あ、ちょっと待った! もし僕が逃げられなかったら
“実に勇敢な最期だった”って学院に居るモンモランシーに……」

嵐に紛れて遠ざかっていく軍艦にかけた声はもう届かない。
彼女に格好つけ損なったとギーシュはがっかりしたように肩を落とす。
そんな彼の周囲をトリステイン魔法学院の生徒達が取り囲む。
全員が志願兵としてアルビオンとの戦争に参加した連中だ。
恨みがましい目でギーシュを睨みつけると彼の襟を荒々しく掴む。
755ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:49:41 ID:qCzeh0IO
「どうして“ゼロ”だけ行かせたんだ!
上手く言えば俺達も乗せてもらえたかもしれないだろ!?」
「そうだ。いくらラ・ヴァリエールだからって特権を振りかざしていいものか!」

貴族として特権を振りかざす人間の言う事か、そう言おうとしてギーシュは口を噤んだ。
どうも悪友と付き合いだしてから口が悪くなったような気がする。
だが気分は悪くない。ああいう風に生きられるならどれほど楽だろうか。

「僕達にあの船に乗る権利はない」

神経を逆撫でると知っていてギーシュは平然と口にした。
激昂する彼等を見上げながら、それだけはどうしても譲れなかった。
ルイズを船に乗せたのは、彼女を守る為に残った才人の『権利』。
命も名誉も何も残らない戦いに望む、彼の当然の権利だ。
それを知っているからこそギーシュは船には乗らなかった。

鈍い音が響きギーシュの身体が投げ出された。
頬に走る痛みと熱。それを実感して初めて殴り飛ばされたのだと理解した。
拳を鳴らしながら志願兵達が倒れたギーシュへと詰め寄る。
その眼には憎悪の炎を灯し、まるで親の仇にでもあったかのような殺意を滾らせる。
否。正確には自分達の仇だろう。ギーシュが助かるかもしれない望みを断ち切ったのだから。

「てめえ、もしも逃げ遅れたら俺達は……」
「間に合うさ」

再び殴りかかろうと拳を振り上げる男を前に、ギーシュはさも当たり前のように呟いた。
彼だって命は惜しい。本当に危険なら我先に逃げ出していただろう。
だけど彼は知っていた。アルビオン軍は追いつかない。
七万だろうが百万だろうが、そんなのは関係ない。
走り出したアイツを止められる奴なんていやしない。

「アイツが“任せとけ”って言ったんだ、間に合うに決まってるさ」

なあ、そうだろう……才人。


ギーシュ・ド・グラモン
……タルブ戦後、すっかりやさぐれるものの、
モンモランシーの香水を巡り才人と決闘、前任と同様に彼を認めるようになる。
今ではすっかり気の合う悪友として無理やり遊びに付き合わせている。
サウスゴーダでは一番槍を果たし精霊勲章を授与される。
後に水精霊騎士隊の隊長に就任し数々の武功を立てる。
756ゼロいぬっ!代理:2009/05/20(水) 11:53:57 ID:qCzeh0IO
「これは何の真似だね?」

後甲板で作業監督をしていたボーウッドは訊ねた。
彼の周りには杖を向ける船員、その多くは魔法学院からの志願兵だ。
トリステイン軍が窮地に陥った事でアルビオンの兵達は裏切るのではないか、
もしかしたらこの船と船員を手土産にするつもりかもしれない、
そんな妄想に取り憑かれた彼等は暴発するように反乱という行動に移したのだ。
それはアルビオンの士官だったボーウッドが自分達の上官という耐え難い屈辱もあったのかもしれない。
いつアルビオン軍が襲ってくるかもしれない状況で新兵が冷静を保つのは困難だった。

杖を突きつけられているのに平然と振る舞うボーウッドに対し、
彼等の手は震え、杖の先端も定まらずに揺れ続ける。
呆れ顔でそれを見つめながらボーウッドは溜息混じりに聞き返す。

「それで? 私を殺した後は誰が指示を出す?」
「え?」

思わぬ問いかけに全員がお互いの顔を見合わせる。
そんな事、言われるまで考えもしなかったという表情を見せる。
ここにいるのは皆、操船経験のない素人の集まりにすぎない。
的確な指示を貰わなければ満足に船も動かせない。

「この中に近辺の岩礁の位置を把握している者は?
視界の利かない嵐の中で正確な航路を辿れる者はいるか?」

ボーウッドの言葉にざわめきが小波のように広がっていく。
元々、計画的な反乱ではない彼等に今後の見通しなどある筈もない。
うろたえる彼等を一通り見回した後、ボーウッドは大きく息を吸い込んだ。

「全員、直ちに所定の位置に戻らんかァ!
マリコルヌ、スティックス、貴様等は大砲と砲弾を外に運び出せ!
余分な荷物は全て破棄する! 可能な限り外の連中を艦に収容する!」

天を揺るがさんばかりの怒号に蜘蛛の子を散らすように船員は走り出した。
特に名指しで呼ばれた二人は青い顔をしながら慌てて作業に取り掛かる。
まさか、これだけの船員がいるのに一人一人の名前を憶えていたとは。
それに杖を向けられていながら揺るぎもしない豪胆さ。
ボーウッドとの格の違いを思い知らされ彼等は身震いした。

(……どうにも私には戦運がないようだな)
混迷の様相を呈する港を見下ろしながらボーウッドは一人ごちる。
圧倒的な軍勢を率いながらトリステイン王国に敗北し、
優勢なトリステイン側に付けば今度はアルビオン大陸から追い出される始末。
早々に隠居してしまった戦友を恨めしく思う。
元々アルビオンの軍人である彼にはこれ以上トリステイン王国の為に戦う義理はない。
タルブ戦での借りはアルビオン上陸戦で存分に果たしたと言っていい。
この混乱に紛れて姿を消したとしても誰も疑いはしないだろう。
どうするべきかと悩むボーウッドの耳に竜の羽ばたきが響く。
見上げた先にはアルビオン王国の紋章を掲げる竜騎士が数騎、
荒れ狂う暴風の中を隊列を乱すことなく飛び立っていった。

サー・ヘンリ・ボーウッド
……タルブ戦後、捕虜となりトリステイン軍に士官として従軍。
経験不足の新生トリステイン艦隊に協力し、アルビオン上陸戦において多大な貢献を果たす。
アルビオン撤退戦において脱出船団を先導して無事に帰還を成功させる。
その功績に免じ、アンリエッタ女王から軍役の終了を告げられ自由の身となる。
以降、軍を引退して幸せな余生を過ごす。
757ゼロいぬっ!代理
「隊長、これからどうされるおつもりですか」

飛礫の如く降り注ぐ雨音にも掻き消されぬように隊員が声を張り上げた。
多分、そのような質問をしたのは後にも先にもこれっきりだろう。
常ならば撤退するトリステイン艦隊を護衛するべきだ。
だがウェールズが存命しており、さらにはアルビオンの実権を取り戻したという報が彼等の心を乱した。
もし事実だとするならトリステイン王国に加担する理由などない。
彼等は誇り高きアルビオン王直属竜騎士隊、王に刃を向ける事は有り得ない。
夢にまで見た王国の復権、それを前にして平静でいられるはずもなかった。

「……それを決めるのは俺じゃない、お前達だ」

一際大きく羽ばたいて隊長の火竜はその場で滞空する。
静かに告げた言葉が激流にも似た嵐の中で透き通って響く。
振り返り、隊の全員を眺めながら彼は話を続けた。

「ウェールズ陛下の下に戻りたい者がいるなら止めはしない。
このままトリステイン王国に残るのもいいだろう、自分で決めろ」

彼の突然の言葉に隊員達は己が耳を疑った。
隊員達にとって正しいのは王と隊長の命令、それだけだった。
常に先陣を切って戦場を駆け抜ける彼の姿が灯台の光のように道を示してくれた。
しかし彼は自分で決めろと言った。隊長としてではなく戦友として。
戸惑いながらも一人の隊員が彼に聞き返した。

「隊長は……ウェールズ陛下が生き延びたとの話を信じていないのですか」
戦場で虚報が飛び交うのは当然の事であり生存説はその最たる物だ。
その多くは敵を混乱させる物であったり誤解から生じる物など様々だ。
その問いかけに隊長は歯を食いしばりながら答えた。

「出来るなら信じたい。何度もそうあって欲しいと願った。
トリステイン王国の霊廟で陛下の遺体を目にした後もな」

手綱を掴む隊長の手が震える。
アルビオンから生還し、絶望的ともいえるタルブ戦を潜り抜け、
そうして再会した物言わぬ主の姿を前に彼はどれだけ嘆いただろうか。
死んだと分かっていたとしても目の前に突きつけられた真実は重すぎた。
叶うならば持てる全てを犠牲にしてでも蘇って欲しいと願った。
かつてワルドが母親の遺骸の前でそう願ったように。
そしてアンリエッタがウェールズの亡骸の前で思ったように。

しばらくして二騎の火竜が大きく羽ばたいた。
火竜の見据える先は連合軍のいる港ではなくアルビオン軍のいる内陸。
他の隊員が困惑する中、隊長と二人は互いに敬礼を交わす。
それはここまで共に戦ってきた戦友との訣別を示していた。

「今まで御世話になりました隊長。御武運をとは言えませんがお達者で」
「ああ。さらばだ戦友」

次第に小さくなっていく二騎の火竜を彼は見つめる。
たとえ敵味方に別れようとも彼等は間違いなく戦友だ。
しかし、これから戦うべき相手に言う事ではないとあえて黙した。
そして残った連中へと振り返り再度訊ねた。