あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part208
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part207
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232706531/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
テンプレ終了
7 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:43:00 ID:Fr4AsY+8
>>1 乙です
では改めまして投下したいと思います
ヽ |l | /ヾ|、 ノイ /! /_,|イ'l´ | \ この感じ… 乙ね…
_______∧,、_ 〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| / ト、 ヽ _ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄/ |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ 7 .! ヽ \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ | | / |ヽ、| 〉
9 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:47:17 ID:Fr4AsY+8
その日、トリステイン魔法学院では、春の使い魔召喚の儀式が執り行われていた。生徒達は自分の使い魔となる生物の容貌を期待に胸を膨らませたりしているが、彼らの系統を判断するための大事な儀式なのだ。
大方の生徒達は召喚を終えたが、派手な爆発を繰り返すだけで、一向に使い魔の姿を見せない召喚を繰り返している生徒がいた。
召喚に全く成功しない彼女を、周りでその様を見ている生徒は指差し、声に出して嘲り笑う。普段から魔法の成功を見せたことのない彼女を馬鹿にする者は少なくない。彼女は半ば自棄になって召喚に挑んだ。
「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに応えなさい!」
何度目かも判らない召喚に、とうとう彼女の使い魔は現れた。だが、その使い魔の容貌は他の生徒の召喚したもののそれと大分異なっていた。
10 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:49:34 ID:Fr4AsY+8
赤く立派な馬を繰り現れたのは、剣と盾を背負い、緑色の服と帽子とスカートのような衣装を身に纏う、金髪の青年だった。一見すれば彼は、ハルケギニアで魔法の使える貴族からすれば、身分の低い平民だった。
―ゼロのルイズが平民を召喚した!
取り巻きが、いつもの調子で彼女――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを馬鹿にしようとしたところで、青年の、人間とのある違いに気が付いた。ハルケギニアの人間との、決定的な違いに。
その違いに気付いた時、彼らは驚愕し、開けた口を塞ぎもせず、無様に腰を抜かし、震え、中には逃げ出す者や穏やかならぬ物腰で杖を構えるもいた。
ハルケギニアの人間には無い、長く尖った耳。それを持つとされている者は、この大陸では、少なくとも人間にとっては脅威の存在だった。
生徒の一人が、未だその使い魔の正体に気付いていない他の生徒に、叫んだ。
「エ ル フ だ ぁ ぁ ぁ あ あ あ !」
11 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:51:54 ID:Fr4AsY+8
そこからはもう大騒ぎだった。
転びながら必死に逃げ出す生徒もいれば、大声を上げて泣き出す者もいた。
彼を召喚した当の本人であるルイズには、とんでもないものを喚び出してしまったという後悔の念を抱いていた。
今回の召喚式の監督官を務めていた教師ミスタ・コルベールは、この恐怖すべき存在を目の当たりにして、最初は頭が真っ白になったが、すぐに生徒に避難するよう指導した。
一方、突然に召喚された、エルフと呼ばれた青年は、何が起きたのか理解出来ていなかった。
自分は平原で馬を走らせていた。愛馬の散歩のつもりで。それが突如として目の前に出現した鏡に馬ごと突っ込み、気が付いたら見知らぬ格好をした者達に包囲されていた。彼らに敵意は無さそうだったが。
12 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:54:10 ID:Fr4AsY+8
暫く周りを見渡した後、自分の知る土地ではないと直感的に判断すると、目の前に突っ立っていた桃色髪の少女にここは何処かと尋ねようとした時、彼らの一人がいきなり叫び出した。
だが、それが何を意味する言葉かは解らなかった。自分の知る言語ではない。では、他の大陸に来てしまったのだろうかと青年は考えた。
青年が呆気に取られていると、いつの間にか自分を見ていた者達は殆どいなくなっていた。彼は馬から降りると改めて目の前の少女に優しく尋ねた。
「ア|,ココH├コテΓiΠ?」
だが、尋ねた後で、そういえば言葉が通じないのだったと思い出し、苦笑する。
1レスの投下量はもっと多い方がいいと思うよ
支援しとくが
14 :
ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:56:39 ID:Fr4AsY+8
一方、尋ねられたルイズは言葉にならない呻き声を上げるにとどまる。その時、彼女の後ろから悲鳴のような声が飛んできた。
「ミス・ヴァリエール! そのエルフから離れなさい!」
その言葉にルイズは正気に戻り、青年から離れる。その様子を青年は不思議そうに見たが、今度はミスタ・コルベールに尋ねようと、馬を引いて歩み寄る。
近寄る青年に対してミスタ・コルベールは後退る。一歩進めば一歩下がる。埒が明かないので、腰を抜かして逃げ遅れていた男子生徒に、他人に道を訊くかのように手を上げると、彼はヒッと呻いて持っていた杖を顔の前に持ち、しかし意識を失ってしまった。
よく見れば、皆が皆、杖を持っていたことに気付く。服装からすると魔術師だろうかと青年は考える。
攻撃してくる気配を見せないエルフと思しき青年の真意を、ミスタ・コルベールは探る。しかしそれは、青年から離れ逃げた筈のルイズが再び青年の前に飛び出してきたことで中断された。
「ミス・ヴァリエール!? 戻りなさい! エルフは危険だ! 使い魔の召喚ならやり直しを……」
ミスタ・コルベールが制止するが、ルイズは振り向かずに言った。
「……召喚の儀は神聖なもので、やり直すなどという行為は許されない筈です。それに、彼を喚び出したのは私です。やらせて下さい、コントラクト・サーヴァントを!」
「ミス・ヴァリエール! 危険です!」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
早口にそう唱え、青年に契約のキスをしようとしたが背が足りない。震えていたが迷いのない両手で青年の頬を挟み、その顔を自分に近付け、近付いてくるルイズの顔に彼が何かを言う前にルイズは契約のキスをした。
15 :
ゼロの伝説:2009/01/26(月) 00:00:58 ID:Fr4AsY+8
突然キスをされたことに青年は驚き、ルイズの両肩を掴み引き剥がす。それと同時に左手の甲に激しい痛みと熱さを感じ、思わず右手で抑える。それが治まった直後、今度は左手ほどではないが右手の甲にも痛みと熱さが彼を襲った。
普通のコントラクト・サーヴァントでの使い魔の様子とは違うことに、ミスタ・コルベールは疑問に感じた。何故、両手とも抑えたのか。
二度目の痛みが治まり、青年の様子が落ち着いたことにルイズは安堵した。だが次の瞬間、いつの間にか抜刀されていた青年の長剣の切っ先は、彼女の首まで0.001メイルもない位置にあった。
「何をした」
青年は冷たい声で問うた。
「答えろ」
「つ、使い魔のルーンを刻み込んだのよ」
「何だ、それは?」
困った。このエルフはそんなことも知らないのだろうか。いや、人間のやることなすことなど知りたくもないといった敵対心の現れだろうか。
それにしても、だ。
「貴族が使い魔を使役することぐらい、知っているでしょ?」
「ツカイマ……?」
そこから説明しなければならないのだろうかとルイズは思ったが、ヘルパーみたいなものだと告げると、青年はとりあえず剣を下げ鞘に仕舞った。
間違っても「奴隷なみたいなものだ」などと言っていれば、間違いなく殺されていたに違いない。エルフと人間との関係を考慮に入れれば、それはルイズに限らずハルケギニアの人間にとっても確信だった。
まさかとは思うが書きながら投下してるなんて事は無いよなぁ
支援
つかもっと1レスに書き込めるだろ
携帯使ってるとかの言い訳はなしだぞ
なんか間隔が長いな
支援
とりあえず支援
20 :
ゼロの伝説:2009/01/26(月) 00:06:57 ID:R4BJygb5
その時、青年は周りの生徒が何を言っているのかを聞き取ることも、その意味を理解することも出来た。
「ほ、本当に大丈夫なのかよ。エルフを召喚するだなんて、危険なドラゴンや植物よりも質が悪いぞ」
「馬鹿、目を合わせるな、声がデカい」
エルフとは何のことだろうか、ドラゴンなら、魔力を与えられて動き出した巨大な何かの竜の骸と一戦交えたことはあるが。召喚という言葉も気になる。青年はルイズに尋ねた。
「自分の種族も分からないの? あなたみたいに耳が長い人のことを、こっちではエルフって呼ばれてるのよ。召喚は、使い魔を呼び出すことね」
暴れる様子のない青年を見てほっとしたのか、ルイズはご主人様然とした態度で返した。
種族という言い方に疑問を覚えたが、今は気にしないことにした。エルフとはこの土地での、自分のような容姿を指す言葉だろう。青年はそう考えたが、ここに来させられた理由がまだよく解っていないことに気付き、ルイズに尋ねた。
「あたしがあんたを使い魔として召喚したからよ」
「あそこにいる奴らは、」
言いながら、先程の生徒に指を差す。差された二人が少し悲鳴を上げた。
「ドラゴンも召喚されるみたいなことを言ってるが」
「勿論、召喚したのも居るわ。ただ、私が召喚したのが偶々あなただっただけ」
「人間と魔物の召喚される可能性は平等にあるということか」
「そう、人間と魔物は……え……?」
魔物というハルケギニアでは聞き慣れない単語に、ルイズは魔法生物のことと解釈した。だが、彼は最初に何と言った。
「俺以外に召喚された人間もいるのだろうな。それにしても、魔物の方が多いな。人間が見当たらない」
「あ、あなた、エルフなのよ?」
「この地方ではそう呼ぶらしいな」
「その長い耳は何なの? 飾り?」
「馬鹿を言え、生まれつきだ。それにハイリアの人間は誰もが長く尖った耳だ」
青年が自らを人間、人間と繰り返し言うのにルイズは、彼はもしや耳の長いただの人間なのではないかという危機感を抱いた。
そしてそれは、ルイズが青年に尋ねた質問の答えによって決定的となった。
「あんた、魔法使える?」
「魔法力はあるが術の方は駄目だ」
「そんなぁぁぁああああ!!!」
少女の悲痛な叫び声を、トリステインの青い空は嘲笑うかのように見下ろしていた。
初投下で慣れてないだけか?
取り敢えず支援
支援
23 :
ゼロの伝説:2009/01/26(月) 00:10:53 ID:R4BJygb5
第一話はこれで以上です
支援していただいた方々、ありがとうございました
>>17 ごめんなさい
この携帯全角1000文字までしか(ry
乙
>この携帯全角1000文字までしか(ry
落ち着いた場所のパソコンで投下すればいいのに
とりあえず書き溜めるのは携帯でもかまわんから
投下のときはPCにしてくれ
まぁまぁ
今回はゆっくりでも投下しきればおkでは?
次からはPCでお願いしたいが・・・
27 :
魔導書が使い魔:2009/01/26(月) 00:17:33 ID:CsaE4Dn7
伝説の方、投下乙!
頑張って書いていた続き! でも頑張れば頑張るほど、kbが増えて進まない罠。
まだ途中なのに予想以上に多くなったので一度投下しますw
28 :
ゼロの伝説:2009/01/26(月) 00:17:34 ID:R4BJygb5
すみません……次からはPCで来るようにします
では名無しに戻ります
横幅絞った方がよくね?
30 :
魔導書が使い魔:2009/01/26(月) 00:18:43 ID:CsaE4Dn7
おっと、言い忘れてた30分に投下予定。
>>24 それネタで言ってるんじゃねぇの?
そっちのが最悪だけど
かぶりそうな予感
朝の空は曇っていた。
分厚い雲が空を端まで覆い、雨が降る気配はないが陰鬱な空気をかもし出す。
朝食も大量にお代わりをし、お世話になったタバサは手早く身支度を整える。
昨日は明け方近くまでエルザの話を聞いていたのでかなり眠いが、眠気自体に
は慣れているので我慢である。
なんとか今日中には無人の村の調査を終えておきたい。
村長に頼んで揃えた物を袋に詰め背負う、かなり重いがしょうがない。
玄関を出ると村長が見送りをする。
「騎士様、どうかお気をつけて」
無言で頷くと、村長の後ろからひょっこりとエルザが顔を出す。
眠かったからか、朝食では顔を見なかったのだが。
「…………」
視線を向けると、エルザはその手に持った杖を見て少し顔を強張らせたが小さ
く手を振った。
タバサは右手で振り返そうと思ったが、杖を持っていることに気がつき左手で
振り返す。
「っ」
恥ずかしそうに顔を引っ込めるエルザ。
それを見た村長は一瞬驚いた顔をしたが、その顔を微笑みに崩し頭を撫でた。
「行ってくる」
タバサはわずかに口元を緩ませると、そう言い背を向ける。
「お気をつけてー」
後ろでは村長とエルザが手を振って見送っていた。
タバサを見送る村長とエルザ。
だが少し離れた場所でも、タバサの姿を見送る者が1人いた。
「行ったか……」
薬草師のレオンである。
レオンは家の物陰からタバサを見る。
その視線は鋭く、なにか切迫した者特有の空気を漂わせている。
タバサが村の外へと出るのをレオンは確認すると、後ろへ振り返った。
そこには集まった多くの男たちがいる。
彼らは一様に不安げな顔をしてレオンを見た。
「い、言われたとおり集まったけど、どうするんだレオン」
「どうするって、吸血鬼狩りに決まってるだろ?」
その問いにレオンはさも当然と応える。
「え、で、でもそれは騎士様が……」
意を唱える口調は尻すぼみに小さくなる。
それはレオンの視線によるものだった。
まるで全てを見下すような冷たい視線。
“なにかの一線を越えようとしている”目であった。
それに皆はどことなく居心地の悪さを感じる。
「いいかい、みんな」
これだけなら、皆も考え直しただろう。彼はどこか間違っていると。
「あの騎士のいうことを信じる必要は無い」
だが彼は常人より頭が回り、カリスマを持っていた。街でそれをフルに発揮す
れば貴族には成れなくても大商人ぐらいにはなれただろう。
「確かにあの騎士が言うことも一理ある。僕も噂に踊らされていた部分もある」
初めは、相手を持ち上げ自分の非を肯定する。
「だが逆に考えてくれ。噂と言うのは完全に荒唐無稽の話なのかを。火のない
所に煙は立たないように。噂と言うのは完全な偽りではないんだ」
そこに疑問の楔を打ち込んでいく。
「所詮、あの騎士は余所者だ。そして見たかあの容姿を。どう見ても子供だ。
そんな子供になにができるというんだ」
それは元々暗い感情を持て余していた男たちに、再び黒い物を植え付けていく。
「あいつに、この村のなにがわかるというんだ。あいつにとってこの村はただ
の気楽な任務地だ。なにかあっても見捨てればいい。だが、僕たちにはこの村
しかないんだ!」
時に熱く、時に淡々と。感情と理性を織り交ぜ彼は語る。
それに男たちは次第に共感に心を揺り動かされ、話から耳を背けられなくなる。
「わかってくれみんな! 吸血鬼がこの村を襲ってからではもう遅いんだ……
僕は……僕たちの手でこの村を守りたいんだ!」
レオンには人を引き付ける才能があった。
そしてそれは、今この場で身を結んだ。
男たちは顔を見合わせると。
「そ、そうだな。たしかに、あんな余所者の騎士のいうことなんて聞く必要は
ねぇ」
「そうだ! 俺たちのことなんてわかるはずがねぇ!」
「俺たちで村を守るんだ!」
口々に叫びだす男たち。
それを見たレオンは、先頭へ立ち言う。みなへ響くように、みなへ伝わるよう
に。
「僕たちで僕たちを守るんだ! 吸血鬼狩りだ!」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
彼らは愚かだった。どうしょうもなく愚かだった。
だが、愚かというものは決して悪い物ではない。
誘導され先導されそれを盲目的に妄信的に信じることは悪いことではないのだ。
物事がわかる、事情がわかる、状況がわかる、恐怖がわかる。賢いというのは、
逆に全てが見えすぎるのだ。
矮小なる人の身では、見えすぎる視点というのは酷過ぎる。だからこそ、人は
見えない振り、見ない振りをして自身を守るのだ。
それが――
「待ってろよ……アレキサンドル……お前なんかにあいつは渡さない」
ただ一個人の思いによって動かされているとしても、だ。
「もうお姉さまったら……んぐっ……昨日は、シルフィードのことを……んぐ
っ……忘れてっ!」
薄暗い雲の下。悠々と響く非難の声。
タバサは時折、船を漕ぎそうになるも黙って背びれに背中を預ける。
報告の村へは道が険しく途中大きな谷がいくつもあることから慣れない者は
2日、慣れた者でも1日はかかる距離らしい。なにが起こるかわからない今の
状況。少しでも精神力を温存するためにシルフィードを呼び空から目的の村へ
と向かっているのだが。
「本当……んぐっ……にひどい……のねっ!」
先ほどからシルフィードは、そんなタバサへ恨み言を漏らす。
「これからは……っ……シルフィードに……んぐっ」
「……シルフィード」
「……んぐんぐっ……きゅい?」
なにかと疑問の声を上げるシルフィードにタバサは、欠伸を噛み殺すと言った。
「お行儀が悪い、食べながら喋らない」
「んぐーっ! きゅいきゅい! それもお姉さまが悪いのね!」
構わず騒ぎ立てるシルフィードにタバサはため息をついた。
今朝、シルフィードのことを忘れていたことを思い出したタバサは村長に、
できる限り新鮮な肉を大量に用意してもらえるかと掛け合った。
すると、ちょうど先日大量に獲物が捕れていたらしく、余っていた猪と鹿の肉
をかなりもらえた。
呼び出され、怒り心頭だったシルフィードも、袋いっぱいの肉に喜んだ。今も
それを食べながら飛んでいるのだが。
「お姉さま!……んぐっ……たとえどんなことが……んぐっ……あっても、食
べ物の恨みは……んぐぐ……忘れないのねっ!」
お腹が満たされ始めてもシルフィードの恨みは根深く、こうして食べながらも
グチグチと文句を言ってくる。
さすがに自分に非があるため、『サイレント』で会話を遮るわけにもいかず、
眠気のために本を読む気にもならない。かといって眠るにはシルフィードの喋
りはうるさかった。
「……あふ」
これなら精神力の温存など考えずに『フライ』を使い、自分1人で行った方が
よかったかとも思い始めたとき。
「それで、これからは……んぐっ……シルフィードのことを……きゅいきゅい
っ! お姉さまお姉さまっ!」
急に大きく騒ぎ始めるシルフィードにわかりにくいが、うんざりとした雰囲気
を出しながらタバサが振り向くと。
「村が見えたのね!」
そこには確かに森を切り開いた場所があった。
タバサの表情が引き締まる。
「上空を旋回」
「きゅい!」
ゆっくりとシルフィードが村の上空を旋回する。
下を眺めて見るが、人がいる様子はない。
しばらくそのまま旋回し、完全に無人とわかるとシルフィードを村の中心へ降
り立たせた。
シルフィードが羽ばたく度に土煙が舞う。
マントで土煙から顔を守りながら、シルフィードが着地すると同時に下りる。
「なにか、嫌な空気なのね」
シルフィードが呟いた。
それにタバサは同意だった。
どこか、腐った物が出す特有の腐乱臭のような空気を薄っすらと感じる。
それに顔をしかめるが、タバサは周囲を見渡した。
「きゅ、きゅいっ!」
一言で表すならここは、廃村という言葉がよく似合っていた。
崩れ、腐り、色褪せた家々、周囲の草木は枯れ果て、屋根の落ちた小屋、割れ
た窓、散乱した皿や桶、半開きになっている扉などが寒々しい。
そこまでなら廃村という単語一つですむだろうが。
「きゅいっ!? お、お姉さまっ!! あ、あそこっ!!??」
シルフィードが怯えるような声を出し、その指し示す方へタバサが向くと。
「…………」
そこにあるのは地面に広がる大きな黒っぽい染み。
人より五感の鋭いシルフィードは言う。
「あ、あれ血の臭いがするのねっ!」
タバサが目を細めた。
血の広がりよう、これが1人の血であるとしたら本人はまずは助からないだろ
う。
周囲をよく見回してみると、そこらの地面に同じような染みが無数にある。
「きゅ、きゅいーっ!?」
騒ぐシルフィードの横、タバサは脳内で廃村の単語の前に『呪われた』とつけ
る。
「……やっぱりなし」
と、自分で考えて怖くなったので止めた。
タバサは辺りを見回すと、じゃりじゃりと粉っぽい地面を踏み締め進む。
「お、お姉さま待って〜!」
その後ろをヨチヨチとシルフィードが追った。
タバサは歩きながら、家や道、周囲を検分する。
近くにあった家を覗き込む。
ひっくり返った鍋、テーブルに乗った木皿、椅子は倒れ、床には大きな黒い染
み。
それを気にすることなくタバサは中心へと進んでいく。
「お、お姉さまはなんで平気なのねっ!」
ブルブルと震えながらシルフィードが後ろで言う。
タバサはそれに言葉を返すことなく、屈むと染みへと指を伸ばした。
ザラリ、とこそげ落ちた染みが指へつく。
指と指とで擦り合わせると臭いを嗅ぐ。
「……古くは無いけど、新しくもない」
風に晒されていたせいか臭いは無かったが、室内であるからか雨には晒されて
はいない。まだすくえるほどであることからそこまで古くはない。
ざっと2週間前だろうか。
村が無人になったと思われる時期と重なる。
ふと視界の端に、なにかが入った。
そちらに目を向けると、そこにあるのは零れ乾燥したシチューの残骸と、まだ
ら色のヌイグルミ。
元は白かったのだろう。その半身に点々と黒を染込ませたヌイグルミは、その
無機質な瞳をこちらに向けてくる。
ボタンを縫い止めただけの瞳が、なにかを訴えているような気がした。
「…………」
立ち上がり家を出る。
広がるのはうらびれた光景。
「お姉さま……怖いのね」
腐った壁、崩れた屋根、朽ちた家、萎れた草、荒れた畑、枯れ果てた草木。
それは、陵辱の後であった。
かすかに残る直前までの生活臭が、逆にその生々しさや不可思議さと得体の知
れない恐怖を煽る。
だが、なにかがタバサの頭に引っかかった。
無人の村、朽ちた家々、荒れ果てた畑、まだ古くない大量の血痕。
「まだ……古くない?」
どこかおかしかった。
血痕の具合からいっても、1ヵ月は経っていない。だが死体1つ無く、村全体の
様子だけを見るならばもう1年近く放置されたような荒れ具合。なのに地面は
まるで死んだかのごとく草木を生やさず、枯れ果て朽ち果てている。
なにか、説明しきれない気持ちの悪い違和感ばかりが募る。
そこで、ふらりと、突如地面が、揺れた。
「?」
いくら踏ん張ろうとしても揺れはひどく、体を平行に保てない。
揺れは収まらず。まるで船に乗ったかのように、ゆらゆらと地面は揺れ続ける。
「お姉さま!」
シルフィードの必死の声を聞いて初めて、自分が揺れていることに気がついた。
「あ……」
自覚した時、体から力が抜ける。
「きゅい!」
倒れる体をシルフィードが支えた。
かろうじてシルフィードの足に背を預けることで倒れることを免れたが、それ
が限界であった。
呼吸は浅く、血の気が引き、嫌な汗が出る。意識は気を張っていないといつ途
切れるかわからない。
毒性のガスでも発生していたのかと思っていると、シルフィードがなにかに慄
くように言う。
「お、お姉さま……早くここから離れるのね……」
「まだ……わか、らないこと、が」
少し喋るだけでも息が上がる。
「早くするのね! おかしいと思っていたけどここは――」
ぶるりとシルフィードの体が震えた。
「――精霊が死んでいるのね……」
まるで神が死んだと告げられた信者のように、その声には絶対的な何かが崩さ
れる恐怖があった。
「それは……」
なにかとタバはが聞こうとしたが。
「話は後! まずは離れるのね!」
シルフィードはタバサの服を咥えると、背中へと強引に乗せる。
「しっかり掴まってるのね!」
そう言うとぶわりと土埃を立てながら、シルフィードが羽ばたく。
そしてそのまま、一気に空へと上る。
「……く」
タバサは必死に背に掴まる。いつもの安定感はなく、体が落ちそうになり。
「これはっ」
覗き込んだ地面に、なにかがあった。
高度がある程度まで上がると、それは脳内で補完されより鮮明になる。
それは地面に広がった無数かつ大きな血痕。だが村全体に在るそれは、一様に
とある方向へと尾を引くようにちぢれていく。
その方向には森、山。さらに先には――
「お姉さま大丈夫なのね?」
シルフィードの心配そうな声が聞こえる。
タバサはなんとか背に乗り直すと、その声は応えずに静かに言う。
「村へ――」
「きゅい?」
「ザビエラ村へ戻って、大至急」
――ちぢれる血痕の先は、遠くザビエラ村がある。
その日、アレキサンドルは前から約束していたミーシュとの野苺を採りに行っ
ていた。
「いっぱい採れましたね」
「ああ、おっかぁが喜んでくれればいいな」
余所者であるアレキサンドルに優しくしてくれたのは向かい家の娘であるミー
シャである。
ミーシュは若く、器量も良く、機転も利くいい娘である。もう40代に近いアレ
キサンドルをなぜ構うのかはわからないが、好意を持っているようで。アレキ
サンドルも恋愛感情まではいかないが、それなりの好意を示していた。
その彼女は、病気で苦しんでいる母の好物である野苺パイを作ってくれると言
った。
野苺パイの1番重要な材料である野苺を一緒に採りに行くことを条件として出
され、そんなことならと1、2も無く頷いた彼を誰が責められようか。
「今日は本当にありがとう。あと、野苺パイをお願いします」
「ふふ、いえ、私も楽しかったですし。パイ作りならまかせてくだ……あれ?」
「どうしたんだ?」
「あ、あれっ!」
そしてミーシャと共に、籠いっぱいの野苺を採って帰ってきたアレキサンドル
が目にしたのは、村から上がる黒く長い煙。
嫌な予感がした。
あの方向には、自分の家がある。
そして今、家には母が1人でいるはずだ。
脳裏でチラリと昨日のレオンの顔が横切った。
バサリと籠が落ち、野苺が地面に散乱する。
「おっかぁっ!」
「アレキサンドルっ!」
ミーシャの声を置いて、アレキサンドルが走り出した。
家に近づいていくと遠巻きに見る村人たちがいる。
誰もが動こうとせず、ただ呆然とその炎を見入るだけ。
息を切らせてアレキサンドルは走る。
そして、いよいよ家が見えた。
そこにあったのは、燃え上がる炎を囲う松明を持った集団と――
――焼け落ちる我が家であった。
「おっかぁぁぁあああ―――っっ!!」
「――っ!?」
その叫びに松明を持った集団が驚いたように振り返った。
アレキサンドルは驚いている連中へと突っ込み掻き分け進む。
「おっかぁ! おっかぁっ! おっかぁっ!!」
必死になって人の壁を潜り抜けた先に。
「ああ、アレキサンドル? なんだ君はこの家にいなかったのか」
炎を背に立つ青年――レオンがいた。
その顔を見て、アレキサンドルの頭に血が上る。
支援
「てめぇか! 俺の家に火をつけたのはっ!」
「そうだけど、それがどうしたのかな?」
レオンの冷静な言い方に、ぶちりとアレキサンドルの脳内で何かが切れる音が
した。
「レオォォオオンッ!!」
怒りに身を任せ、拳を握りアレキサンドルはレオンへと殴りかかり。
「押さえつけろ!」
レオンの号令により飛び掛るように男たちがアレキサンドルへとしがみ付く。
「離せ! 離せっ!」
力を振り絞り抗うが次々に手が伸び、アレキサンドルを捕まえる。
「ぐっ!」
そして数人の手によりアレキサンドルは、地面に這うように押さえつけられた。
「無様だな」
それを見下ろしレオンは吐き捨てるように言う。
「なんでこんなことをしたっ! おっかぁはどうしたんだっ!!」
睨みつけるようにレオンを見上げ、レオンは――
「はは……」
笑った。
「ははは、ははははははっ! なんでこんなことをしたかって? あったま悪
いなぁ……わからないか? ここまでなってわからないのかな?」
その言葉に、全てを見下すかのような視線で、全てを唾棄するかのような口調
で答える。
「吸血鬼退治だよ。そしてここまでくれば、誰が吸血鬼か……わかるよね?」
バキリと柱が折れる音がして、アレキサンドルの目の前で燃える家の屋根が崩
れ落ちた。
「――あ」
ひらりと、なにかが炎から舞い、空を漂うと、ゆっくりと地面へと落ちる。
それは――服の切れ端であった。
「ああ……あああああっ!」
「うわっ!」
「急にこいつ!」
「おい! もっと押さえつけろ!」
急に暴れ出すアレキサンドルを必死に押さえつける男たち。
レオンはそれをつまらなそうな瞳で見て、口を開こうした時。
「あ、アレキサンドルっ!」
その声が響いた。
皆がその声に振り向く。
そこいたのは。野苺を入れた籠を持ち、息を切らしたミーシャであった。
「こ、これはなんなの! みんな何をしているの!?」
彼女が周囲を見回す。
「なんでみんながここにいるの」
すると男たちは一様に目を背ける。
それにミーシャは1歩前で出て言う。
「なんで、アレキサンドルの家が燃えているの! なんで、アレキサンドルが
押さえつけられているの!」
ミーシャが前に出るたびに、男たちは気おされるように下がっていく。
目に涙さえ溜め、訴えるミーシャが更に進もうとした。
「なんで――」
「これは、しかたがないことなんだ」
だがそこでレオンが1歩ミーシャの前へと躍り出た。
「レオン……」
驚くミーシャにレオンは優しい笑みを浮かべて近づいていく。
「ああ、よかった。無事だったんだねミーシャ。」
「え、無事?」
「僕は心配だったんだよ」
「心配?」
「そうさ。だって、君はアレキサンドルと仲良くなって。僕は気が気じゃなか
ったよ」
なにかレオンから不吉なものを感じ、ミーシャが1歩下がる。
「そ、それがこのこととなんの関係があるの!」
その言葉に酷く苦悩するかのようにレオンは顔をゆがめた。
「僕は君がいつ吸血鬼の牙にかかるかと恐ろしかった……だから、僕は君を守
るために今ここにいるんだよ」
ミーシャの背筋を言い知れない感覚が奔る。
「レオン……あなた、なにを言ってるの」
その言葉にレオンはニコリと笑いかけた。
「でも、これで大丈夫だ。吸血鬼は僕らが倒した。そして残ったグールもこれ
から退治するから」
レオンの視線がアレキサンドルへと向けられる。
「あ、アレキサンドルはグールじゃない!」
必死な叫びも。
「ああ、可哀想なミーシャ。もうグールによって洗脳されてしまったんだね」
彼の心には届かない。
顔が引きつるのをミーシャは自覚した。
そこで、彼女は思い出す。
「そ、そうよ! そんな勝手なことをして、村長が許すわけないわ!」
とっさに思いついた案。確かに放火に殺人と到底見過ごせることではない、村
を統率する者に頼るという手は有効なはず、だった。
だが、レオンは気にすることもなく。
「ああ、村長? あの人なら村長を辞めてもらった」
その軽い口調に、気負う様子もない言葉が響いた。
「え?」
ミーシャはその意味を捉え損ねた。
困惑するミーシャを横に、レオンは淡々と事実を述べていく。
「あの人はもう駄目だね。みんなの不安を汲み取らないで、自分のことばかり。
こんな正体もわからない余所者を村に入れたかと思えば、あんな子供の騎士に
へこへこしちゃって」
言葉が進むたびに、ミーシャは頼るべき場所が崩れていくのがわかる。
「まあ、新しい村長は後で決めるとして。大丈夫、君を守るための障害はこれ
でないよ」
彼は狂っている、ミーシャはそう思った。
何も言えないミーシャをどう判断したのか、レオンは男たちへと指示を飛ばす。
「さて、随分と話したね。じゃあそろそろ、グールを殺そうか」
レオンの様子に戸惑うようなどよめきが男たちに奔る。
「い、いや、レオンそこまで……」
だが。
「グールは吸血鬼と同じで本性を隠せるんだ。もし暴れだしたら僕たちじゃ抑
えきれない。これも、村を守るためなんだ」
その言葉で男たちは沈黙した。
「ほら、早く」
のそのそと男たちが動き出す。
「――や、止めてっ!!」
我に返ったミーシャがアレキサンドルに駆け寄ろうとするが。
「おっと、危ないよミーシャ」
それをレオンが押しとどめる。
「止めて! 離してレオン!」
数人に押さえらたアレキサンドルは力なく項垂れたまま動こうともしない。
「…………」
そこに斧を持った男が近づいていく。
「これも、村の、君のためなんだよ。ミーシャわかってくれ」
「そんなの嘘よ! こんなの違うわっ!」
否定するように首を振るミーシャを困ったようにレオンは言い。
「大丈夫。グールが死ねば、君は元に戻る」
優しい笑顔をミーシャへと向けた。
「いや! いやぁぁぁあああっっ!!」
支援!
そして斧が振り上げられ。
「――ギャアアアッ!!」
生肉を打ち付けるような生々しい音が響いた。
「――え?」
それは誰が発した言葉だろうか。
泣き叫んでいたミーシャが、笑っていたレオンが、項垂れていたアレキサンド
ルが、斧を振り下ろそうとしていた男が、囲んでいた周囲の男たちが、それを
遠巻きに見ていた村人たちが。
――全てが、それに注目した。
それは、異形だった。
手がある、足がある、頭がある。
ローブで全身が顔さえも隠れているとはいえ、その膨らみから女とわかるそれ
は、言葉の上だけなら常識の範囲内だろう。
だが、そのローブから伸びる異形がその常識から1歩踏み外している。
子供の胴ほどの太さがあり、1メートルはあるその長さ。ローブの腕が収めら
れている部分から左右1対となって伸び、材質は鉄だろうか重厚な黒に所々錆
びが浮き、先端は鋭く引っ掛けるように折れ曲がっている。
それは――戦艦などを繋ぎとめるような巨大な鉤爪であった。
人の持てる重量ではない。人の持つ物ではない。なにより“人を殺す物”では
ない。
「きゃああっ!!」
直視したミーシャが悲鳴を上げた。
異形の爪を持つ女の足元、そこにザクロのように胸を抉られた男が倒れている。
その女は軽々と爪を振るった。
飛んできた血が、周囲の人々を正気にさせる。
「な、なんだこいつは!」
「化け物だ!」
騒ぎ出す村人たち。
そこで再び彼らは凍りついた。
「――醜い」
艶のある、まるで娼婦が発するような甘い声。
だがそれは、この場に似合わぬ魔性の声。
その声は、人々の心を呪縛するようにローブの奥から響く。
「醜い三文芝居に、醜い愛憎劇、醜い茶番に、醜い結末」
するりとローブが緩む。そこから出てきたのは、仮面。
「なにをやっているのかと見てみれば。憎み愛し怒り許し殺し合う、くだらな
いお芝居」
抉りぬいたかのような瞳に、切り裂いたかのような口。全ては三日月のような
鋭さを持って全てを嘲笑する。
「別に嫌いじゃないし、こうしてどろどろとした物が集まるのはいいけど。も
う……飽き飽きするわ」
まるで何もかもが憂鬱だと言っているような様子に、人々は言葉を発すること
すらできない。
だが、その呪縛を打ち砕く声が響く。
「――っ! なにをやっているみんな! あいつは吸血鬼だ!」
レオンが声を張り上げる。
その声に、ようやく人々は呪縛から解放される。
「そ、そうだ!」
「あいつを! 吸血鬼を殺せ!」
我に返った男達が松明を、クワを、鉈を持って襲い掛かる。
「私が、吸血鬼ですって?」
だが、それは慌てる風も無く。
「そんな脆弱な生き物と一緒にしないでくれる?」
クルリと、服を見せびらかすかのようにその場で回転した。
噴出す血が、抉られた肉が、砕かれた骨が広がった。
「ぎゃああっ!!」
悲鳴が上がる。
ぬるりと血が滴る鉤爪を、なにごともないように扱いながら女は言う。
「私はそうね……メイガス(魔術師)、または道化師とでも呼びなさい」
嘲笑の仮面が場違いな道化を演じている。
怯えるように1歩下がる男達。
「怯むな! 相手は1人だ! 囲めばどうにでもなる!」
レオンが必死に叫ぶ。
だが男達はその声にも動かない。いや、動けない。
目の前の恐怖の塊に、体が言うことを聞かない。
道化師が仮面を向ける。
「ひっ!」
男たちが恐怖に凍りつく。
「いいわねぇ……その顔」
仮面が嘲笑する。
「それじゃ、あなたたちも」
まるで楽しむかのように、ゆっくりと鉤爪が振り上げられ。
「楽しみなさい」
血の華が咲いた。
一斉に逃げ惑う男たちを、ネズミを狩るかのように道化師は壊していく。
初めに近くに居た男の頭が砕かれ、背を向ければ背中を骨ごと抉られ、反応で
きなければ腕を、足をもがれ、自棄になり突っ込めば貫かれる。
抉られ、叩き潰され、砕かれ、撒き散らされ。
血が、肉が、骨が、悲鳴が舞う舞う舞う舞う。
1回転すれば、悲鳴が上がる。
2回転すれば、肉が裂かれる。
3回転すれば、頭が割られる。
それは一方的な蹂躙だった。
数分もしただろうか。燃え盛る炎に彩られ、その場は血溜りとなった。
動く者がいなくなり、残されたのは4人。
呆然と、アレキサンドルは道化師を見る。
ミーシャも現実に心が追いついていないのか、言葉を発することもしない。
レオンもただパクパクと口を動かすのみ。
「さあ、あなたたちも遊びましょ」
血と肉の惨劇を作った道化師が、3人へ足を踏み出そうとした時。
「――がっ!」
急に頭を押さえてうずくまった。
「っく……なによ一体っ……うるさい……っ」
ブツブツと何かと喋る声が仮面から漏れる。
「……勝手に……それは、あんたの都合じゃ」
困惑する3人をよそに、道化師の1人の会話はヒートアップしていく。
「……わかったわよ……やればいいんでしょ。だから黙りなさいっ」
やがて道化師が立ち上がる。
「くっ!」
身構えるレオンだったが。
その爪がまるで魔法のように消えていた。
代わりにローブから伸ばされた、透き通るように白い腕。
「な、なにあれ……」
その手には、鉄表紙の本が握られていた。
それは見るだけで、魂の心から汚染されるような妖艶ななにかを放つ。
錆が浮き出た鉄の表紙に手をかざすと、その本は独りでに開き始める。
「――っ!」
バラバラと捲られるページ。
「■■――■■■―…―…■■■……■――」
そして仮面の奥から蝿の羽音のような“音”が漏れ出してくる。
ひどく、不快ななにかを煽る声であった。
パタリと本が閉じられる。
嘲笑の仮面が、3人へと向けられた。
「ごめんなさいね。あなたたちの相手をしてあげたいけど、ちょっと事情があ
るの。だから――今はこれで我慢してちょうだい」
そこで――怪異は起きた。
ぬるりと血が滴る鉤爪を、なにごともないように扱いながら女は言う。
「私はそうね……メイガス(魔術師)、または道化師とでも呼びなさい」
嘲笑の仮面が場違いな道化を演じている。
怯えるように1歩下がる男達。
「怯むな! 相手は1人だ! 囲めばどうにでもなる!」
レオンが必死に叫ぶ。
だが男達はその声にも動かない。いや、動けない。
目の前の恐怖の塊に、体が言うことを聞かない。
道化師が仮面を向ける。
「ひっ!」
男たちが恐怖に凍りつく。
「いいわねぇ……その顔」
仮面が嘲笑する。
「それじゃ、あなたたちも」
まるで楽しむかのように、ゆっくりと鉤爪が振り上げられ。
「楽しみなさい」
血の華が咲いた。
一斉に逃げ惑う男たちを、ネズミを狩るかのように道化師は壊していく。
初めに近くに居た男の頭が砕かれ、背を向ければ背中を骨ごと抉られ、反応で
きなければ腕を、足をもがれ、自棄になり突っ込めば貫かれる。
抉られ、叩き潰され、砕かれ、撒き散らされ。
血が、肉が、骨が、悲鳴が舞う舞う舞う舞う。
1回転すれば、悲鳴が上がる。
2回転すれば、肉が裂かれる。
3回転すれば、頭が割られる。
それは一方的な蹂躙だった。
数分もしただろうか。燃え盛る炎に彩られ、その場は血溜りとなった。
動く者がいなくなり、残されたのは4人。
呆然と、アレキサンドルは道化師を見る。
ミーシャも現実に心が追いついていないのか、言葉を発することもしない。
レオンもただパクパクと口を動かすのみ。
「さあ、あなたたちも遊びましょ」
血と肉の惨劇を作った道化師が、3人へ足を踏み出そうとした時。
「――がっ!」
急に頭を押さえてうずくまった。
「っく……なによ一体っ……うるさい……っ」
ブツブツと何かと喋る声が仮面から漏れる。
「……勝手に……それは、あんたの都合じゃ」
困惑する3人をよそに、道化師の1人の会話はヒートアップしていく。
「……わかったわよ……やればいいんでしょ。だから黙りなさいっ」
やがて道化師が立ち上がる。
「くっ!」
身構えるレオンだったが。
その爪がまるで魔法のように消えていた。
代わりにローブから伸ばされた、透き通るように白い腕。
「な、なにあれ……」
その手には、鉄表紙の本が握られていた。
それは見るだけで、魂の心から汚染されるような妖艶ななにかを放つ。
錆が浮き出た鉄の表紙に手をかざすと、その本は独りでに開き始める。
「――っ!」
バラバラと捲られるページ。
「■■――■■■―…―…■■■……■――」
そして仮面の奥から蝿の羽音のような“音”が漏れ出してくる。
ひどく、不快ななにかを煽る声であった。
パタリと本が閉じられる。
嘲笑の仮面が、3人へと向けられた。
「ごめんなさいね。あなたたちの相手をしてあげたいけど、ちょっと事情があ
るの。だから――今はこれで我慢してちょうだい」
そこで――怪異は起きた。
「いやぁぁああっ!」
ミーシャが悲鳴を上げた。
――あ、ぅあぁぁ……
――ぉおぉおお……
そこには無惨と散った肉塊があるだけだった。
だが、それは常識の、現界の理を破る。
水の秘法には死者を甦らせる術があるという。水の先住魔法には死者を操る魔
法があるという。
それでも、これと比べても――ここまで、おぞましくないだろう。
それはあまりにも死を冒涜していた。
現界への恨みか死の苦しみか、うめき声を上げて、肉が、骨が、死体が動き出
す。
ある者は腕がなく、ある者は足がなく、ある者は頭が砕けている。
「こ、これは……あの時のっ!」
その姿は、レオンが森で見た複数の影と酷似していた。
死体はずるずると、様々なものを引きずりながら迫ってくる。
レオンはミーシャの腕を掴む。
「ミーシャ! 逃げよう!」
だが、腕を掴まれたミーシャは。
「アレキサンドルは!」
だがその視線はレオンを捕らえていない。
自身が危機に晒されようとしているのに、アレキサンドルは動かない。
「あんなやつは放っておけ!」
さらにレオンがミーシャを引っ張ろうとしたが。
「いやっ!」
その手をミーシャが振り払い、アレキサンドルの方へと走っていく。
「ミーシャ!」
伸ばされた手は空を切り、レオンは迫り来る死体の群れとミーシャを見て。
「……くそ!」
ミーシャに背を向けて走り出した。
「アレキサンドル!」
ミーシャがアレキサンドルの元へとたどり着く。
「しっかりして! アレキサンドル!」
「…………」
肩を掴み揺らすが、反応は無い。
「逃げましょう! はやく!」
その間にも死体たちは近づいてくる。
道化師は呆れているのか仮面の下で笑っているのか。こちらを見てはいるが、
何も行動を起こさない。
立ち上がらせようとミーシャが腕を引っ張るが、筋力と体重差によって動かせ
るはずもなく。
もう、死体たちはすぐそこまで迫っていた。
「ん〜っ! ん〜っ!」
ポツリとアレキサンドルが口を開く。
「なあ……ミーシャ……」
「ん〜……な、なにアレキサンドルっ」
「家が燃えて……おっかぁが死んで……村がこんなになって……俺に、生きる
意味ってあるのか?」
「――っ!!」
乾いた音が響いた。
熱い頬の感覚で、アレキサンドルは自分が叩かれたのだと知った。
「生きる意味とか考える暇があるならっ……必死に生きてから考えてよっ!」
「…………」
呆然とアレキサンドレはミーシャを見上げる。
ミーシャは怒鳴りながら涙を流していた。
「……不快だわ」
その声に振り返ると。
眼前まで迫る死体たちと、その奥で爛々とした目を向ける仮面があった。
「――あ」
レオンは必死に走っていた。
「なんでだよ! なんであんなやつに!」
少しでも、少しでも遠くあの化け物から遠ざかるために。
「くそっ! くそくそくそっ! なんでうまくいかないんだよ!!」
だが走りながら漏れるのは生き残ることへの歓喜ではなく、不条理な現実への
恨み事ばかり。
「どうしてだ! どうしてミーシャは振り返ってくれない!」
うわ言のように繰り返す言葉。
「なぜだなぜだなぜだなぜだ、なぜだっ」
己が非凡ではないと自覚していた彼は、己への自信のために非を自覚しない、
認めない。
結局、彼は長所を自覚するぐらいには賢く、欠点を見落とすほどに愚かだった
だけなのである。
「くそ……まずは早くここから――」
ふと、レオンの視界の端に仮面が写りこんだ気がした。
「――っ!!」
とっさに振り向くが、そこにあるのは変哲も無い家々。
安堵のため息を付きながら、レオンは走りだそうとして。
「あら、どこに行くの?」
正面に嘲笑の仮面があった。
「な、なぜここに! 追い抜かれた気配も無いのに!」
驚愕するレオンに道化師はひどくつまらなそうに言葉を吐く。
「驚くところはそこかしら? もっと周囲に気を配ったほうがいいわよ」
「なにを――」
そう言い掛けてレオンは気が付く。
「なにかが……聞こえる」
「はーい、妖魔が漂う怪異の喜劇。第2幕のはじまりはじまり」
道化師が、全てを笑わせるべき道化が、全てを見下し踏み砕く嘲笑の声を上げ
た。
初めは呻き声だった。
それは徐々に大きくなり、多くなり。
何かを引きずる音、咀嚼する音、そして――遠くに数々の悲鳴。
「――っひ!?」
周囲からソレは現れた。
体を欠損させ、顔には死に際の苦悶の表情を刻み、老若男女、人種も性別もな
にも隔たり無く、全てが平等に生者を引きずり込もうと狙う。
「な、なんでっ! こんなにいなかったはずだ!」
「ふふ、なに言ってるの? こんなにもんじゃないでしょう“あなたの知り合
いは”」
「な、なんだと……」
その死体の顔ぶれに見覚えがあった。
「ま、まさか……」
すごい事になってきたな
支援!
それは、先に逃げたはずの村人たちであった。
「大当たり」
道化師は陽気に、仮面の下からでもわかるような嘲りの声を上げた。
「私の作ったゾンビたちは特製でね。殺した相手を同じ存在に“引きずり落と
す”ことができるの。今頃、先に逃げた連中は、森に潜ませた奴らの仲間入り
かしら」
では、遠く聞こえてくる悲鳴はなんなのか。
「は、あ……あ、あああ……」
すでに動く術を忘れていた。
まるで水飴のように絡みつく甘い声が、レオンの耳へと入っていく。
「あなたの三文芝居のおかげで、随分と助かったわ。すばらしいぐらい怨嗟に
染まった怨霊たちが集まった。感謝したいぐらいだわ」
そうして道化師はゆっくりと歩み寄っていく。
「これはほんのお礼」
晒された手がレオンの顎を掴んだ。
「怨嗟の濃そうなあなたは――たっぷりと可愛がってあげるわ」
「ああ、あああ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!??」
「――いい苗床になってちょうだい」
山と森に囲まれ、林業と有名な特産物で盛んだったザビエラ村。
その日、この村は生命の一切を余さず残さず消え去った。
50 :
魔導書が使い魔:2009/01/26(月) 01:06:15 ID:CsaE4Dn7
今回は以上です。
予想以上に話が膨れ上がってますね……。
次で外伝は最後なります。投下予定は来週!……には書けてるといいなぁ……。
では、ありがとうございました。
しえん
支援
普通にタバサ死亡フラグな気がしてならないが。
作者様乙。
ティベリウス女体化ー?
妖艶な美女の(臓物)ポロリ……ウッ
乙です!
凄惨なオチになっちゃいましたね
タバサはどうなるのか不安です
ようやく新しい箱360に買い替えて久しぶりに4プレイしたけど…
やはり自分のネロとゲームのネロはどこか違う……難しいもんですね
予約が無ければ、5分後ぐらいに第五話投下したいと思います
Zero May Cry - 05
「おい」
ネロは自分に用意された昼食を見て、ドスの効いた声でルイズへ尋ねた。
「な、何よ」
流石のルイズもネロの機嫌が悪いと察したようだ。
しかし、それも無理ないことと言える。
「もっとマシな飯はなかったのかよ?」
「だ、だから次からはもっとちゃんとしたのを用意するって言ってるじゃない!」
「俺は『今』まともな飯が食いたいんだけどな」
「今はそれで我慢してってば!」
ネロの前に置かれているのは黒いパンのような塊と限りなく薄い色をしたスープ。
両方とも少しばかり口に入れてみたがどちらも食べれたような代物ではない。
「我慢? お前、自分はまともな飯食っといて人によくそんなことが言えるもんだな」
「う、うるさいわね。私は貴族なんだからこれぐらいの食事は当然なの。それにあんたは使い魔でしょうが!」
「ハッ。貴族貴族って、貴族がどうかしたのかよ」
その言葉にルイズは思わず立ち上がってネロに怒声を浴びせようとしたが、それよりもネロが席を立つほうが早かった。
ネロはそのまま目の前の飯には目もくれずその場を立ち去ろうとした。
「ちょっと! 何処行くつもりよ!」
「飯にありつける所さ。もっとマシな飯にな」
そのままネロはルイズの側を離れてゆく。しかしルイズの方もルイズで、腹を立てた彼女はネロをそれ以上呼び止めようとはしない。
それどころか「もう知らない!」とぼやいている。ネロはその声が聞こえたのか聞こえてないのか、歩みを止める事はなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃、学院長室にコルベールが訪れていた。その手には分厚い書物が握られている。
彼はこの学校の学長でもあるオールド・オスマンにルイズが召喚した使い魔―――ネロの事と、彼の左手に刻まれたルーンの事を報告しに来たのだった。
「フム……。その男……傭兵の類なのかね? ミスタ・コルベール」
「恐らくはそうかと。背中に大きな剣と、腰に銃……と思しきものを持っていましたから」
そして、コルベールはそこまで言って手に持っていた大きな本をオスマンの前へ出す。
「それよりも問題なのは、彼の左手に刻まれたルーンです。調べた所………、これに酷似しているものだったのです」
そう言って彼がオスマンに見せたのは本の一ページに載せられたルーンだった。
それを見たオスマンの瞳が細められる。それと同時に、この話を側で聞いていたオスマンの秘書、ミス・ロングビルへ席を外すように指示を出した。
残った二人は神妙な顔つきで件の本の一ページを眺めていた。
「これは………伝説にのみ存在する使い魔のルーンじゃぞ……。ましてや、あのヴァリエールの三女が召喚するなど……」
オスマンはそこで瞳を閉じると同時に一旦言葉を切り、コルベールの顔を真正面から見据えて言った。
「これは失われしペンタゴンの一角に関わる事じゃ……」
オスマンのその一言を受け、コルベールは驚愕の顔付きで呻くように声を出した。
「ま、まさか……!」
「事の真実はどうあれ、この件は一切口外してはならん……!」
「しょ、承知いたしました!」
普段の彼からは想像もう出来ないオスマンの無言の迫力に、コルベールは頷く以外になかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
食堂を後にしたネロは、何か『食えるもの』にありつけないかと、庭をうろついていた。
そんな彼の目に付いたのは多くの生徒達とその使い魔達。何事かとネロは彼らに視線を送りつつ立ち止まった。
屋外に置かれたテーブルやそれに備え付けられた椅子に座って、生徒達は己の使い魔を見せ合ったりそれを種とした話題に勤しんでいる。
ネロはルイズが口にしていた言葉を思い出す。
(今日は午後の授業はお休みで、召喚したばかりの使い魔とコミュニケーションを取るのよ)
―――どうりで騒がしいわけだ。
そんなことを思いつつネロはその場を後にしようと歩き出す。
すると。
「ネロさん! どうしたんですか?」
「? ああ……。あんたは、確か………」
「シエスタですよ」
「そうだったな。シエスタじゃねぇか。お前こそどうしたんだ?」
目の前にいるメイド服の少女の名前を思い出せなかったことに僅かに負い目を感じたのか、ネロは視線をあらぬ方へ向けながら彼女へ逆に質問した。
それでもシエスタは、屈託のない笑みを浮かべてネロへ答えた。
「ご自分の使い魔と親睦を深めている皆様のお食事などを用意してたんですよ」
そう語るシエスタの両手にはトレイが握られており、その上には皿に乗せられたケーキがあった。
それを目にしたネロは反射的にそれへ左腕を伸ばし、ぶっきらぼうに掴み取った。
「あっ! ダメですよ、ネロさん! それは先程ミスタ・グラモン様に頼まれた………!」
シエスタが言い終える前に、ネロはそのケーキを口の中へ放り込んでしまっていた。
しかしそんなことをしつつも悪気はないのか、ネロはにやりと笑った。
「気にすんなよ。そのグラモンって野郎に何か言われたら俺に言いな。穏便に済ませてやるからよ」
ネロの凄みのある笑顔にシエスタが一瞬気圧されたその時。
「おーい! ケーキはまだかい?」
あまり遠くはない距離に座っている金髪の少年がシエスタに声を上げた。
―――今思えば、それがこの少年の不幸だったのかも知れない。
そんな少年に対して、シエスタが彼に新しいケーキを持ってくるように伝えるより早く、ネロが叫んでいた。
「ハッ、 悪いな坊ちゃん。お前のケーキは腹が減ってたから俺が食っちまったぜ」
少年に対してネロは自由な左手を大きく広げて挑発するようなポーズを取った。思わず口を開けたままネロを凝視するシエスタ。
ネロが放った言葉だけでなく、その態度にも少年は腹を立てたようで、勢いよく席を立ってネロに向かって歩み寄った。
「何だね君は!? 人のケーキを食べておいてその態度は許せないな!」
そこまで言って少年―――ギーシュ・ド・グラモンは己が対峙している青年がルイズの召喚した使い魔であることを悟る。
するとギーシュの態度はより一層に大きくなっていく。
「君は確かミス・ヴァリエールの召喚した使い魔君じゃないか。流石はゼロのルイズだね。主人が主人なら使い魔も使い魔といったところかな?」
「俺にはそのゼロよりお前の方がよっぽど大したこと無さそうに見えるけどよ」
その一言に眉をヒクッと振るわせたギーシュは手に持っていたバラの花を模した杖をネロへ突きつけた。
先ほどからのネロの不遜な態度、そして平民に自分のケーキを取られたという怒りも手伝って、ギーシュはネロのその傭兵めいた外見を気にすることなく言い放つ。
「平民風情がそれ以上の無礼は許さん! ついでに、君に少し貴族に対する礼というものを教えてあげよう……」
そして彼は高らかに宣言した。
「この僕、ギーシュ・ド・グラモンは君に決闘を申し込む!」
決闘という単語を聞きつけたのか、次第にネロとギーシュの周りには生徒達の人だかりができていた。
しかしネロ本人は、ギーシュのその言葉を受けて笑みを浮かべた。同時に心底楽しそうに言い返す。
「いいねぇ。こういう展開を待ってたんだよ」
「フン! ヴェストリの広場で待っている! 精々許しの言葉でも考えてから来るがいい!」
そう言ってギーシュは行ってしまった。
その背中を見つめながらネロは相変わらず物騒な笑みを浮かべたままでいる。そんな彼にシエスタが慌てた様子で声をかける。
「ネロさんダメです! 無茶ですよ! 貴族の決闘というのは本当に命をかけて行うものなんですよ! それに……!」
そこまで言って、シエスタはネロの右腕を見やった。今でも思い出せる。初めてネロと会ったあの日、ネロは右腕を使えずに左腕だけで洗濯をしていた。とても苦労していたようにシエスタの目には映っている。
「ネロさん、右腕怪我してるじゃないですか! そんな体で……!」
「あの悪魔共をブッ飛ばしてから、つまらねぇ相手としか戦《ヤ》ってねぇんだよな……」
「え……!?」
シエスタは目の前の青年が口にした単語に言葉を失った。
悪魔―――確かにこの青年はそう言った。悪魔をぶっ飛ばしたと。その言葉が何を意味するのか―――。
「シエスタ。そのヴェストリの広場ってのは何処だ?」
「は、はいっ!?」
その時、シエスタはできればネロを止めたいと思っていた。
しかしネロ本人の顔を見たシエスタは、それが出来なかった。
「こ、こちらです………」
無意識の内にネロから目を逸らし、シエスタはネロに言われるままに彼をヴェストリの広場へ彼を案内した。
―――その時のネロの顔には、今後の展開を心待ちにしているような笑みが浮かんでいた―――
―――to be continued…….
以上で投下を終了します。次回もよろしくです
自分が思うネロは少しだけ好戦的な面があるんで、今回はそんなネロがちょっと出てます
そろそろ書き溜めて置いたやつの修正に入ろうかな……
DMC4乙です
一箇所誤字が
“どうり”→“どおり”です
漢字で書くと、“通り”
失礼しました(_ _)
>>62 あぐ;
素早い指摘をどうもありがとうございます
危うくこのまままとめに載せるところだった……
まぁ、原作の態度とかからしてみると、幾分性格が柔らかい気がするが・・・・・てか、ダンテ成分入ってやしないか?wwwwww
でも、好戦的ってのは彼の設定だからOKOK
ちなみに、ネロは暗殺の仕事もこなしている経験があるよ。言ってみれば人殺しに慣れてるし、言い方キツいけど血に汚れてる。
反抗的で、キリエ大好きなネロの行動に違和感を感じるが、それでも応援はしてる。
なぜならゼロ魔もDMCも大好きだから。
ついでに言うと、自分もネロを使ってクロス創作してる1人。ジャンルは違うが頑張ろうぜ。
>>64 やっぱダンテみたいな感じします?ww
自分も書いてる途中で首をかしげるようなことが何回もありましたね
「これ、どっちかっつたらダンテの台詞じゃね?」みたいなw
ネロみたいなキャラは再現が難しいけど、その分愛着が湧きますよね
そちらも頑張ってください
66 :
魔導書が使い魔:2009/01/26(月) 02:38:17 ID:CsaE4Dn7
ネロの人乙!
そして今更ながら自分が一部二重投下している部分を見つけて激しく鬱……orz
坊やの人乙
かつての俺と同じ更新速度、
いやはや、考えるの楽しいんだよなぁホント
んでマジに書くの止まんないの
DTゲージがなくならないように頑張れ
だーれもいないね?
それじゃあ、07:40からシーン11の運命の扉を開きましょうか。
【ところで相棒、荒事が起きそうな時になんでこのオレサマを連れて行かねぇんだ!】
「すまん忘れてた。」
【そりゃねえよ。オレサマ剣だぜ?相棒だろう?存在意義無くなっちまうよぅ。】
ヒューはデルフの愚痴を聞きつつ、会場から失敬してきたワインと肴を手にバルコニーで1人飲んでいた。
パーティに出るようにルイズからは命令されていたが、どうにも苦手だった為、途中で抜けてきたのだ。
どちらにしろ、ああいった空気は慣れていないし。無用心に酔う気にもなれない。
パーティ会場では学生達が笑い楽しみ踊っている。中にはタバサの様にひたすら食い気に走っている者もいるが、これは少数
だろう。
そんな中、パーティ会場から1人の女性がヒューの所にやって来る。
ゴーストステップ・ゼロ シーン11 “舞踏会の夜”
シーンカード:カブト(庇護/父性。男性ゲストの協力。精神的な恩恵を被る。)
女性はマチルダだ、彼女は髪と同じ翡翠色のドレスに身を包んでいる。その姿は、彼女が貴族時代には社交界の華であった事
を確信させるに足るものだった。
「あら、1人寂しくお酒ですか?ミスタ・スペンサー。」
「誰かと思えば、ミス・ロングビル。いやお美しい、さぞ引く手数多でしょう。」
「ええ、少し疲れてしまったので涼みに来た所です。ミスタ・スペンサーは踊らないのですか?」
「ははっ、もうそんな年ではありませんよ。それに貴族の若い方々と踊るなど、とてもとても。」
「謙遜ばかり、見ましたよ?貴族の令嬢方から申し込まれていたではありませんか。」
「残念ながらダンスはずぶの素人なのでね、ご令嬢方の足を踏んづけるのが落ちと逃げの一手ですよ。」
ヒューとロングビルは、バルコニーの手すりに背中を預けてパーティ会場を見ながら会話を続ける。
「まあ、冗談はこれ位にして。驚いたよ、あの爺さん給金のアップを申し出てきやがった。」
「良かったじゃないか。」
「腹の底で何考えてんだか…。」
「金で片がつく事ならそれで済ませときたいんじゃないか?使うべき時にケチって、後々火傷するのも馬鹿らしいしな。」
「なるほど、で。アンタとしては何を企んでるのさ、ただの同情心で見逃したって訳でもないだろう?」
「勘が良いね。」
「良くなきゃあとっくに縛り首さ。で、何をさせたいんだい。」
マチルダはおどけるように、首へ手を当て舌を出して見せた後、不意に真面目な顔を見せヒューに聞く。
「戦争が近い。」
「?いきなり何を。」
「最近、マルトーの親父から聞いた話なんだが。微妙にアルビオン関連の品物の値段が上がっているらしい。」
「それがどうかしたのかい?そんなの商人共が値段を上げているっていう話じゃないか。」
「かもしれないな、けどまぁここに傭兵の動きが挟まれば一気にキナ臭くなってくる。」
「傭兵の動きって、アンタこの学院から殆ど出てないじゃないか。何でそんな事。」
【オレサマだよ、姐さん。】
「!」
突如聞こえてきた声に周囲を見回すマチルダ。その視界に、鍔近くの金具をカタカタ鳴らす一本の剣が入った。
「インテリジェンスソード?」
【おう、オレサマの名はデルフリンガー。伝説の使い魔の相棒たる伝説の剣ってヤツだ、気軽にデルフって呼んでくれ。】
「あ、ああ。で、アンタ何を知ってるのさ。」
【オレサマこの間まで武器屋にいたんだけどな、ちょいと前に盗賊くずれの傭兵どもが武器やら火薬やら買いに来たんだ。
で、武器屋の親父が聞くわけよ。一体何事だってね。
傭兵共はご機嫌な感じでこう返したのさ。そろそろ戦争が起きそうだから安い内に色々買っとくんだ〜てな。
ああいった連中はこういう事に関しては恐ろしく鼻が利くからな。まず間違いなく戦争になるぜ。】
「で、アルビオンって訳かい。」
「ああ、そこでだ。何か掴んだら教えて欲しいんだ。
何しろこっちじゃあ情報収集の勝手が違うからな、君みたいな立場の人間に協力してもらえると助かる。」
「ああ、分かったよ。アタシの方でもそういった情報は最優先で確保しときたいしね。」
「済まないな、弱味につけこむ様で気が引けるんだが。」
「何、言ってるんだい。言ったろう?こっちにも利があるんだ。持ちつ持たれつさ。」
「ああ、そう言ってくれると助かる。…っとそういえば忘れてた、これを持っててくれ。」
ヒューはコートのポケットから出した道具をマチルダに渡す。
「これは?」
「俺の故郷の<K−TAI>っていう道具。俺の<ポケットロン>やルイズお嬢さんの<ウォッチャー>と連絡がとれる道具
だよ。一応、ここから王都までなら問題無く連絡はとれるから持っていてくれ。
それからこの道具は水や衝撃に弱いからな、少し位なら問題はないけど気をつけてくれ。使い方は、この横にある螺子を
回して連絡を取りたい相手の記号を出した後に螺子を押し込む。
ルイズお嬢さんは五角形、俺は天秤だ。とりあえず天秤に合わせて使ってみてくれ。」
「あ、ああ。
天秤に合わせて…強く押し込むのかい?」
「軽くで問題ない。」
「じ、じゃあ行くよ。」
マチルダがジョグダイアルを軽く押し込むと、ヒューの<ポケットロン>に着信が入る。
「これで繋がった状態になる。で相手が会話できる状態ならそのまま話が出来るし、無理ならこの後に出るメッセージに従
って伝言を伝えてくれればいい。
用事が終わったらその螺子を素早く2回押すか、螺子で四角の記号に合わせて…そう。それで止めれる。
反対にこっちから連絡が入る場合、相手の記号が出て震えるようになっているから、その時は。」
「螺子を押すんだね?」
「そういう事、簡単だろう?あとそいつは一定時間光に当てていないと止まってしまうから暇を見て光を当ててくれ。
大体1日1時間も当てておけば問題はない。」
「へぇ、なかなか便利な道具じゃないか。」
「本当は<ウォッチャー>か<ポケットロン>を渡したかったんだけどな…。」
「どう違うんだい?」
「色々と違う。
とりあえず、他人には見せないように気を付けて使ってくれ。」
「分かってるさ。
おっと、お嬢様が睨んでいるじゃないか、アタシはこれで退散させてもらうよ。」
「飲みすぎるなよ?」
「誰に言ってるんだい。」
そう言い捨てるとマチルダはパーティ会場の中へと溶け込んで行った。
入れ替わるように、ルイズがヒューの所へ来る。
今日の、というか純白のパーティドレスに身を包んだルイズは、正に大貴族ヴァリエール家の娘だと思わせるような出で立ち
だった。
「お楽しみだったみたいね。」
「お嬢さんもな、なかなか立派だったよ。しかし、いいのかい?結構お誘いがあったみたいだけど。」
「ふん、いいのよ。連中いつもは人の事馬鹿にしているくせに、こんな時だけは擦り寄って来るんだから。
ところでマチルダに何渡してたの?」
「連絡用の道具だよ、音と静止画像しか繋がらないけどね。」
「へぇ、どういう風の吹き回しかしら。情にほだされたってわけ?」
「否定はしない、けどまぁ比重としては情報を集めたいっていうのが大きいかな。」
「情報?」
「そう、情報。色々と妙な噂を聞いてるんでね、判断材料が欲しいのさ。」
「ふうん、情報ってそんなに大切な物?」
そのルイズの疑問にヒューは、ふと、真面目な顔になって返す。
「ああ、あるに越した事は無い。
いいかい?ルイズお嬢さん、情報ってヤツはある意味手足や知識と同じだ。あればそれだけ選べる選択肢が増える、反対
に何も知らなかったら事態に流される事しか出来なくなる。
マチルダの件もそうだ、ろくに事情を把握せずに官憲に突き出していたらどうなる?遠からず孤児院にいる子供達は困っ
た事になっただろうし、もしかしたら孤児院の子供達は死んでしまうかもしれない。
俺たちは幸運な事に、彼女の正体を前もって知る事ができたから選択ができた。けど、何も知らず、予想を立てる事も無
く、あの廃屋に行っていたら?
彼女か俺達どちらかが死んでいたかもしれない。下手をすると、彼女が俺達を殺す事でトリステインとゲルマニア・ガリア
連合の戦争になったかもしれない。」
「せ、戦争?そんな馬鹿な事あるわけないでしょう?」
ヒューの突飛な言葉にルイズは笑いながら応える。しかし、続くヒューの言葉に戦慄を覚えていった。
「いやいや、良く考えるんだ、ルイズお嬢さん。
<破壊の杖>の奪還に赴いた貴族は君とキュルケ、そしてタバサだけだ、大人は学院秘書のミス・ロングビルと使い魔の
俺だけ、学院の教師は誰一人付いて来なかった。
さて、奪還に行ったのがトリステインの貴族の子弟だけなら何も問題は無かった。まぁ、学院長や教師連中の責任問題に
はなるだろうけどね。
だけど、キュルケとタバサは違う。」
「あ…」
「分かったろう?彼女達の死はすなわちトリステインと他国の外交問題に発展する可能性があるんだ。
ガリアに関しては今の所、良く判らないんだが。
恐らくゲルマニアはそういった機会は逃さないだろうな。キュルケの実家、ツェルプストー家はルイズお嬢さんの家と領地
を接しているんだ。そこそこ…いや、かなり力がある貴族とみて間違いないだろう。そこの令嬢が他国で死んだとなると…戦
争は無いとしても、紛争は起こるだろう。」
ルイズは今回の事件がもたらす最悪の結果に恐怖した。
確かにそうだ、あの2人は他国からの留学生。こういった事に関わらせるべきではない人物である事は、少し考えれば分か
る事だったのに、“土くれ”のフーケ捕縛という甘美な響きに惑わされて想像すらしていなかった。
「本当に最悪の状況っていうヤツだけどな。
ルイズお嬢さん、俺たちは人間だ、獣と違って優れた肉体は持っていない。だけどな、考え・想像するという力を持って
いる。だったらそれを使うべきだろう?
そして、想像し考える為には情報がいる。なるべく真相に近く、そして多くの情報がね。それさえあれば対策も選択肢も
より多く用意できる、だろう?」
ヒューはそこまで言うと肩をすくめてルイズに笑いかける。
「そうね、本当にあの時はどうかしてたんでしょうね、今更ながら恥ずかしいし、情けないわ。」
「というわけで、彼女に何か掴んだら教えて貰えるように依頼したのさ。」
「ん、分かったわ。悪かったわねヒュー、妙な事で絡んじゃって。
…そういえば、ヒューっていつから彼女が怪しいって思ってたの?」
「いつから?…そうだな、不審を抱いたのはフーケの潜伏先を報告した時かな。
もっとも、あの時は農民に化けたフーケに騙されている可能性もあったから、首を捻る程度だった。」
「どうして?」
「報告をしたのは何時だった?」
「えーと、確か午前9時位かしら?」
「まあ、そんな所だろう。
じゃあ、そこから逆算してみようか。近在の村まで片道30分位として往復1時間、聞き込みが上手い事いったとして30
分、報告した時間を引くと?」
「午前7時30分。」
「で、樵小屋までの距離ってどれ位だった?」
「ええと。確か学院から徒歩で半日、馬で4時間…馬?」
「そう、馬で4時間。普通の農民は馬は持っていないだろう?持つなら牛だ。
仮にその農民が馬で見て来たとしたら、その農民は午前4時位にそこにいたという事だ。一体そいつは夜の森で何をして
いたんだろうな?見ていたとしても、どれだけ遠出してるんだって話さ。」
「そうね…、決定的だったのは、やっぱり宝物庫?」
「だな、宝物庫で話した事は大体、外の足跡で分かっていたから、後は足跡の照合と犯行時の動きで確定したっていうのが
正確な所だ。」
「動き?」
「暗闇の中、壁の穴から保管場所まで寄り道せずに行ってたんだ。なら犯人は宝物庫の中を熟知している人物…だろう?」
「?ああ!確かにそうよね。月明かりがあるとはいえ、ほとんど見えないもの。
そんな中で目標までまっすぐっていうのは、内部を知っている人の仕業っていう事だものね。」
ヒューの説明に納得して頷くルイズ。
「こういった事も想像力を働かせなければ難しいけどな。」
「むう…、ねえヒュー?想像力を鍛えるってどうしたらいいの?」
「…そうだな。例えば人間観察、あそこにいる人達を見てどういった人生を過ごしてきたか、どんな家庭だったか、どんな
性格か、そういった事を想像するのさ。
軽い所を行ってみようか、ギーシュを見てどう思う?」
「え?うーんそうね。
お父上のグラモン元帥を尊敬していて…」
【舞踏会でダンスを踊らないお姫様なんざはじめて見たぜ…、つうかオレサマ出番あるのかなぁ…。】
デルフの愚痴と共に舞踏会の夜は更けていった。
支援だ!
この支援、止められんぞ!
神業扱いだから。
シーン11
K−TAI(I)
…携帯電話。ポケットロンよりもCDなアイテム。バディは搭載していないので他人でも扱える。
静止画像の撮影、転送位は可能にした。(実際のアイテムは会話のみなので…、流石に今よりも技術が下とかないだろ)
お嬢さんは五角形、俺は天秤
…五角形=系統魔法ではないメイジ、というアナグラム。
天秤=トーキョーN◎VAにおけるフェイトの互助組織、N.I.K.(ニック)の鑑札に使われているモチーフの一つ。
N.I.K.(Y)
…N◎VAにおけるフェイトの互助組織、あの街においてかなり信用がある組織の一つ。
仕事の斡旋や情報の利用が基本的な業務。また、加盟メンバーが望めば短期間の講習も受けられる。
戦争
…あくまで可能性の問題。しかし、キュルケとタバサが死んだ場合、重大な外交問題になるであろう事は考えられる。
今回の運命の扉はここで閉じます。
おかしい、おマチさんとヒューを軸にして、シーンカード:マネキンの大人な回にするつもりだったのに。
書き終わったら情報談義と裏っぽい話でいっぱいだ!www
舞台は舞踏会なのに全くと言って言い程触れていないね…、結構軽い回にするつもりだったんですけどね、なぜだろ?
そこまでラブが苦手か私!そこまで枯れなきゃいかんのかい!
まぁ、それはともかくとして。実際問題よくもまあ、オスマン翁はルイズ達を生かせたもんです。
おマチさんに3人が殺されてたら、とんでもない事になるよね?
それとも一応、魔法なんていう危険な技術を教えている学校だから、入学時に念書とか書かせてんのかな?
とりあえず、これで1巻分は終わり。次回からは2巻のアルビオン編です、一応それに伴ってシーンカードはリセットします。
遅くなりましたが支援ありがとうございました。
ああっ!後書きに誤字が…orz
○…行かせた
×…生かせた
乙ですー。
ルイズがハルケギニア初のフェイトになりそうですなぁ。
>>77 ウケたようでなによりw。
どの神業かは考えてないけどな!
仕事終ったら、書き溜めてたDark Kight版バットマン召喚話を投下します
お名前まちがいさがし
ワノレド
夕八゙サ
オスマソ
ギー゙ノュ
オ人
モソモラソシー
ヒューの人おつー
確かに3人とも王族だったりかなり力を持つ貴族だから万が一死んだらまずいね……
>>79 投下前にもう一度予告してね
まちがい探し
才人=スケベ
ルイズ=ツンデレ
タバサ=メガネ属性
オスマン=ドスケベ
ギーシュ=かませ犬
フーケ=かませ犬U
ワルド=宿敵
ジュリオ=誰だっけ
テファ=革命
エルザ=DEAD OR ALIVE
デルフ=千の風になって
ワルド=誰だっけ
ワルド=多人数プレイなロリコン
>>84 100点満点
クロスキャラ=主役
作者方=頑張って!!
アッシュと聞いて片手がチェーンソーなスーパーの店員さんかと思ってしまったのです
モット=かませ犬W
アニエス=誰だっけV
バーガンディ=地上最強の忍耐力の持ち主
89 :
某書き手:2009/01/26(月) 16:06:03 ID:HwTR3Pna
三週間程前に投下したのですが未だwikiに登録が無いんです。
壺が無くdat落ちしたスレが読めないので、この場合再投下はありでしょうか?
>>89 自分で登録しても無問題だったはず。
テキストが残っているなら、自己登録してみても。
自分もその方がいいと思う
再投下しても誰か登録してくれるとは限らんし
社長と管理人とジル以外でエルザ生存ってなにかある?
>>92 ゾーマのかな
しんでたほうが幸せだったかもしれないが
確かゾーマ召喚(2つあるからどっちだか忘れたが)で拷問されたあげくに配下に
>>93 いつだったか作者がハンバークにするって言ってたやつですか?
虚無の闇だな
俺が続きをえktkしながら待ってるものの一つだ
黒いルイズには何か魅かれるものがある
>>89 最近やってないから今できるかどうかわからないけど、
どの作品か言ってくれれば代わりに登録してもいいし、
自分でやりたいけどログがないというなら手持ちをうpするけど?
黒いのは構わんし、主要キャラが死んでもいいけど、拷問とかエグいのは勘弁してほしい……
ぜろろさんまだかな
>>92 別スレだけどジョジョ×ゼロ魔クロスのまとめの方にある
ホルホースの話(「銃は杖よりも強し」ってやつね)のエルザはホルホースと
良い仲になって生存するよ。作品自体も面白いのでオヌヌメ。
教えてくれ 張五。
改造人間とか体が一部サイバー化されているキャラは
定期メンテとか必要ないんだろうか?
サイバー義眼とかさ、なんかの拍子に故障したらどうすんだろ。
むしろ故障をネタにすればいいじゃん
観測されない限りその事象は不確定だからね
>>98 拷問なんてひどいことは出来ないから
俺はおっぱいエルフに異端尋問という名目でいろんなことしてくるよ
誰がエグいことじゃなくてエロいことをしろと(ry
>102
>>103 なるほど。その発想はなかった。
電気食らったり、強い衝撃を受けたら
故障して大変なんじゃないかと思ったんでね。
ハルケギニアって識字率は低いのに
平民も入れるスカロン亭にはメニューがあるんだよな
字読めない人はどうやって注文取ってるんだろ
>>107 物語の展開に不都合なことは極力触れない。
普通死ぬような出来ことで、普通に死んでお終いなんて話はつまらんだろ。
そういうのはここぞという場面で使って盛り上げるのがベストだ。
>>108 店員に聞く。
>>108 予算を伝えてどんな物が食べたいか言えば見繕ってもらえるさ
後、他の客が食べてるの見て同じのを注文するとかかな?
文字の読めない才人は魅惑の妖精亭で注文するために、多大なる時間と努力を惜しまず文字の勉強をした。
一方メンヌヴィルは店員に聞いた。
>>107 ルーンがあるじゃないか
故障を自己再生するとか適当な設定付け加えるとか
>>109 「ゴクウ」なんかいい例だね
あの「眼」は一切メンテないし
「如意棒なんかいつのまにやらどこからかスペアなんぞ用意しておった
ま、そういうことです
ネギ召喚
流れを切ってすみませんが
17:05頃から投下させてください。
>>116 そうでした。
まちがえました。
なんてこった
ホワイトホワイトいぬフレア支援。
港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること早馬で二日、アルビオンへの玄関口である。
港町でありながら、狭い峡谷の山道に設けられた、小さな町である。
人口はおよそ三百ほどだが、アルビオンと行き来する人々で、常に十倍以上の人間が町を闊歩している。
峡谷に挟まれた薄暗い街の一角に、はね扉がついた居酒屋があった。『金の酒樽亭』である。
ならず者がたむろする酒場で、しょっちゅう武器を付き合わせての喧嘩騒ぎが起きるので、
見かねた主人によって『人を殴る時はせめて椅子をお使い下さい』という張り紙がなされている。
さて、本日の『金の酒樽亭』は満員御礼であった。
「アルビオンの王様はもう終わりだね!」
「いやはや!『共和制』ってヤツの始まりなのか!」
「では『共和制』に乾杯!」
彼らは、アルビオンの王党派に付いていた傭兵たちである。王党派の敗色濃厚と見て、内戦状態のアルビオンから逃げ帰ってきたのだった。
そして、ひとしきり乾杯が済んだとき、はね扉が開いて、長身の女が一人現れた。
女はすみっこの席に腰かけると、ワインと肉料理を注文した。
女は目深にフードを被っているので、顔の下半分しか見えなかったが、それだけでもかなりの美人に見えた。
こんな汚い酒場に、こんなきれいな女が一人でやってくるなんて珍しい。店中の注目が、彼女に注がれる。
幾人かの男が、目配せしながら立ち上がり、女の席に近付いた。
「お嬢さん。一人でこんな店に入っちゃいけねえよ」
下卑た笑いを浮かべながら、男の一人が女のフードを持ち上げた。ひょお、と口笛が漏れる。
女が、かなりの美人であったからだ。切れ長の目に、細く、高い鼻筋。
女は『土くれ』のフーケであった。
フーケが男の手を、ぴしゃりと払いのけた。
すると一人の男が立ち上がり、フーケの頬にナイフを当てた。
「気の強いお嬢さんだ!でも気をつけなよ、ここは危ない連中が多いからな」
男はニヤニヤといやらしい笑いを浮かべている。
しかしフーケはナイフに物怖じした様子も見せず、身体を捻り素早く杖を引き抜いた。
素早く呪文を唱えると、男の持ったナイフが、ただの土くれに変わり、ぼとぼととテーブルの上に落ちた。
「き、貴族!」
男たちは後じさった。マントを羽織っていなかったので、メイジと気付かなかったのである。
「わたしはメイジだけど、貴族じゃないよ」
フーケはうそぶくように言った。
「あんたたち、傭兵なんでしょ?」
「そ、そうだが。あんたは?」
年かさの男が口を開いた。
「誰だっていいじゃない。あんたたちを雇いにきたのよ」
フーケはそう言って薄い笑いを浮かべた。
その隣には、いつの間にそこに現れたのか、白い仮面とマントを身に纏った男が立っていた。
魔法学院を出発して以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしであった。
ティトォとギーシュは付いていくのがやっとで、途中の駅で二回、馬を交換したが、ワルドのグリフォンはタフで、まるで疲れを見せていなかった。
「ちょっと、ペースが早くない?」
抱かれるような格好で、ワルドの前に跨がったルイズが言った。雑談を交わすうち、ルイズの喋りかたは昔のような丁寧なものから、今の口調に変わっていた。
ワルドがそうしてくれと頼んだせいもある。
「ギーシュもティトォも、へばってるわ」
「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんだが……」
「無理よ。普通は馬で二日かかる距離なのよ」
「へばったら、置いていけばいい」
「そう言うわけにはいかないわ」
「どうして?」
ルイズは、困ったように言った。
「だって、仲間じゃない。それに……、使い魔を置いていくなんて、メイジのすることじゃないわ」
「やけにあの二人の肩を持つね。どちらかがきみの恋人かい?」
ワルドは笑いながら言った。
「こ、恋人なんかじゃないわ」
ルイズは顔を赤らめた。
「そうか。ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて知ったら、ショックで死んでしまうからね」
そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。
「もう、人をからかって」
ルイズはぷいと顔を背けてしまう。
ギーシュが恋人?冗談じゃないわ。
確かに顔は可愛いけど、キザだし、落ち着きがないし、はっきり言って趣味じゃない。
おまけに彼女いるし。モンモランシーが。フラれたみたいだけど。
じゃあティトォは?
そういえば、キュルケも姫さまもワルドも、彼の顔見ると『恋人?』なんて聞いてくるのよね。
そんなに恋人同士に見えるもんなのかしら。
そりゃまあ、四六時中一緒にいる男女なんて、恋人くらいのものかもしれないけど。
……そういえば、わたし今ティトォと同じ部屋で寝泊まりしてるのよね。
男の子と一緒に暮らしてるのに、よく考えたら、あんまり意識したことなかったわ。
なんでだろ?
使い魔だから?
わたしなんかよりずっと長生きしている、不死の人間だから?
違う世界の人だから?
……なんだか、そういうのじゃない気がする。
いい言葉が見つからないけど……、なんだか、ティトォのことは、よく分からない。
ルイズがもの思いに沈み、黙ってしまうと、ワルドがおどけた口調で言った。
「おや?ルイズ!ぼくの小さなルイズ!きみはぼくのことが嫌いになったのかい?」
その言葉に、ルイズは頬を染めた。
「だ、だって、親が決めたことじゃない。それに、もう小さくないもの」
ルイズは頬を膨らませる。
「ぼくにとっては未だに小さな女の子だよ」
ルイズは先日見た夢を思い出した。生まれ故郷のラ・ヴァリエールの屋敷の中庭。
忘れ去られた池に浮かぶ、小さな小舟……。
幼い頃、そこで拗ねていると、いつもワルドが迎えにきてくれた。
親同士が決めた結婚……。
幼い日の約束。婚約者。こんやくしゃ。
あの頃は、その意味がよく分からなかったけど……、今ならはっきりと分かる。結婚するのだ。
「嫌いなわけないじゃない」
ルイズは、ちょっと照れたように言った。
「でもワルド、あなた、モテるでしょ?貴族の憧れ、魔法衛士隊の隊長さんだもの。何も、わたしみたいなちっぽけな婚約者のことなんか相手にしなくても……」
「ぼくは決めてたんだ。父と母が亡くなって……、領地を相続してからすぐに、ぼくは魔法衛士隊に入った。立派な貴族になりたくてね」
ワルドは笑って、ルイズの顔を見た。
「立派な貴族になって、きみを迎えにいくって、決めてたんだ」
その言葉に、ルイズは顔を茹だらせて、俯いてしまった。
ワルドのことは、そりゃ、嫌いじゃない。確かに憧れていた。
でも、ワルドはルイズにとって、遠い思い出の中の人だった。
ワルドのことは、夢に見るまでずっと忘れていた。
ワルドが魔法衛士隊に入ってからは、会うこともなくなっていたし、婚約だって、とうに反故になったと思っていた。
それがいきなり、婚約者だ、結婚だ、なんて言われても……、ずっと離れていた分、本当に好きなのかどうか、まだよく分からない。
「旅はいい機会だ」
ワルドは落ち着いた声で言った。
「いっしょに旅を続ければ、またあの懐かしい気持ちになるさ」
「もう半日以上、走りっぱなしだ。どうなってるんだ。魔法衛士隊の連中は化け物か」
ぐったりと馬に体を預けたギーシュがぼやいた。
隣を行くティトォも同じように、馬の首にぐったりと上半身を預けている。
なんだか疲れきっていて、言葉を返すのもつらそうだった。
そんなティトォに、ギーシュが声をかけた。
「ぼくもあまり体力ある方じゃないけど……きみはまあ、ずいぶんと貧弱だねえ。そんなんで使い魔が務まるのかい」
「馬なんて乗ったことないんだ。大目に見てよ」
ティトォは苦笑しながら返す。
「ねえ。港町に行くのに、なんで山に登ってるんだろ?」
ティトォがそう言うと、ギーシュが呆れたように言った。
「きみは、アルビオンも知らないのか?」
「ぼくは、住んでいるところからあまり離れたことがないんだ」
この言葉の半分は真実であった。
ティトォたち不死の三人は、ここ50年ばかり、天然結界の中に引きこもっていたのだから。
そのときだ。
ふいに、ティトォたちの跨がった馬めがけて、崖の上から松明が何本も投げ込まれた。
松明は赤々と燃え、馬を進める峡谷の道を照らした。
「な、なんだ!」ギーシュが怒鳴った。
いきなり飛んできた松明の炎に、戦の訓練を受けていない馬が驚き、前足を高々とあげて、ティトォとギーシュは馬から投げ出された。
と、それを狙って、ヒュウと風を裂く音がした。
「危ない!」
ティトォがギーシュを突き飛ばす。次の瞬間、ティトォの肩に矢が突き刺さった。
ティトォはその衝撃で、地面に倒れた。
ひ、とギーシュが息を呑む。
「敵襲だ!」
ワルドの叫びとともに、無数の矢が崖の上から放たれた。
「わっ!」
もはやこれまでと、ギーシュは思わず目をつむった。そのとき……。
一陣の風が舞い起こり、それはみるみる大きくなって、小型の竜巻となった。
竜巻は飛んできた矢を巻き込むと、あさっての方に弾き飛ばした。
グリフォンに乗ったワルドが、杖を掲げている。
「大丈夫か!」
ワルドの声が飛んだ。
「ぼ、ぼくは大丈夫です。でもティトォが……」
ギーシュは震えながら答えた。
「ティトォ!」
ルイズが叫ぶ。
ワルドは地面に横たわるティトォの姿を見ると、チッと小さく舌打ちをして、崖の上を睨みつけた。
ワルドが崖の上に向けて、杖を振るおうとすると……。
そのとき、ばっさばっさと、羽音が聞こえた。どこかで聞いたことのある羽音である。
崖の上から男たちの悲鳴が聞こえてくる。どうやら、いきなり自分たちの頭上に現れたものに、恐れおののいているようだった。
男たちは夜空に向けて矢を放ちはじめた。しかし、その矢は風の魔法で逸らされた。
次に小型の竜巻が舞い上がり、崖の上の男たちを吹き飛ばす。
「おや、『風』の呪文じゃないか」
ワルドが呟いた。
「ワルド!わたしを降ろして!」
ルイズは叫ぶと、グリフォンから飛び降りた。
ワルドはあわてて『レビテーション』の魔法を唱える。
ふわりと地面に降り立ったルイズは、倒れるティトォと、その隣でおろおろしているギーシュの元へ駆け寄った。
「ティトォ!」
「大丈夫、心配しないで」
ティトォは痛みに顔をしかめながら、むくりと起き上がった。
動く方の手でライターに火をつけると、たちまち炎がティトォの全身に燃え広がった。
肩に突き刺さった矢が、ボン!と炎に押されて抜けた。
ティトォの傷は、みるみる消えていく。回復魔法『ホワイトホワイトフレア』の力であった。
それを見て、ルイズはほうと安堵のため息をついた。ティトォの魔法をはじめて見るギーシュは、目をぱちくりさせている。
「そうよね。あんた、不死の体だものね。心配することなかったわ」
ティトォがライターの炎を消すと、身体を包んでいた炎も消えた。
ルイズがふと上を見上げると、ワルドのグリフォンの姿がなかった。どうやら崖の上で、襲撃者たちの相手をしているようだった。
「ワルド、大丈夫かしら……」
「大丈夫だと思うよ。あの人、強そうだし。夜盗なんかには負けないよ」
「どうして夜盗だって分かるのよ。アルビオンの貴族の仕業かもしれないじゃない」
「貴族……メイジなら、弓なんて使わないでしょ」
あ、そうか、とルイズは小さく呟いた。
「それに、メイジが大挙して来てたら、ぼくたち生きてなかったかもしれないよ」
「なに言ってんのよ。あんた、不老不死なんじゃない」
「いや……」
ティトォが、崖の上を見上げたまま言った。
「確かに、この体は不死身……、どんなダメージをくらっても生き返る。強力な魔法によって、ぼくらの魂がつなぎ止められているからね」
ティトォはそう言って、胸の中心に手を当てる。
「でも、同じく魔法の力なら、ぼくらの魂と不死の体を結ぶ鎖を、ぶっちぎることができるんだ」
「え」
魔法の力なら。それって。
ティトォはやや緊張した面持ちで、言葉を続ける。
「そう、この魔法がありふれているハルケギニアでは、この不死の体の優位性は、だいぶ失われているかもしれないね」
横にいるギーシュは、何が何やら分からず、ぽかんと二人のやり取りを聞いていた。
やがて崖の上の騒ぎが収まると、ワルドのグリフォンといっしょに、見慣れた幻獣が姿を見せた。
ギーシュが驚きの声をあげる。
「シルフィード!」
確かにそれはタバサの風竜であった。その背中に、シルフィードの主人のタバサの他に、見慣れた赤髪の宿敵の姿をみとめ、ルイズは一気に不機嫌になった。
「何しにきたのよッ!ツェルプストー!」
キュルケはシルフィードからぴょんと飛び降りると、優雅に髪をかきあげた。
「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こして、後をつけたのよ」
これはお忍びの任務なのよ、そんなこと知らなかったわ、などとやり合っているルイズとキュルケを尻目に、タバサはいつものように本のページをめくっていた。
キュルケに叩き起こされたままのパジャマ姿であった。
グリフォンが地面に降り立つと、ワルドは襲撃者のリーダー格とおぼしき人間を、三人ほどグリフォンの背中から突き落とした。
襲撃者たちは地面に投げ出され、口々にワルドたちを罵った。
「こいつらはただの物取りだそうだ。捨て置いてかまわないだろう」
そう言うワルドに、ルイズとの口論を切り上げたキュルケがにじり寄った。
「おひげが素敵よ。あなた、情熱はご存知?」
ワルドはちらっとキュルケを見つめて、左手で押しやった。
「あらん?」
「助けは嬉しいが、これ以上近付かないでくれたまえ」
「なんで?どうして?あたしが好きって言ってるのに!」
とりつく島のない、ワルドの態度であった。
「婚約者が誤解するといけないのでね」
そう言って、ルイズを見つめる。ルイズの頬が染まった。
「なあに?あなたの婚約者だったの?」
キュルケはつまらなさそうに言った。
キュルケはワルドを見つめた。
遠目では分からなかったが、目が冷たい。まるで氷のようだ。キュルケは鼻を鳴らした。
なにこいつ、つまんない、と思った。
ワルドはティトォに視線をやった。
「きみ、大丈夫なのかい?肩を射られたように見えたが」
「そうだよ!きみ!あの魔法はなんなんだい?傷を癒す炎なんて、はじめて見るよ!」
ギーシュも疑問をぶつけた。
ティトォは炎の回復魔法・ホワイトホワイトフレアのことを、二人が納得する程度に説明した。
その話を聞くと、ワルドもギーシュも、とても驚いたようだった。
目を見開いて驚く二人を見ると、キュルケはなんだか愉快になって笑った。
そうよ、やっぱりティトォの方がずっと面白いわ。
「許してちょうだい!ちょっとよそ見はしたけれど、あたしはなんたってあなたが一番心配だったのよ!」
キュルケがティトォにしなだれかかると、ティトォは困ったように笑った。
タバサはそんなキュルケを横目で見て、小さなため息をついた。
あれは友人の悪い癖であった。
ワルドは颯爽とルイズを抱きかかえ、ひらりとグリフォンに跨がった。
「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに向かおう」
支援
一行は、ラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした。
ワルドが『桟橋』で乗船の交渉に言っているあいだ、一行は一階の酒場でくつろいでいた。
といっても、ギーシュとティトォは一日中馬に乗ってクタクタになっていたので、机に突っ伏して、半分死んでいた。
男連中の情けない姿に、ルイズはため息をついた。
「まったくもう、しゃんとしなさいよね。みっともない」
「アウアウアー」
「アウアー」
もはやまともな返事すら帰ってこなかった。
キュルケは介抱を口実に、ここぞとばかりにティトォに擦り寄ろうとしたが、ルイズが油断なくキュルケの行く手をブロックした。
何度かの攻防ののち、キュルケは鼻を鳴らした。
「欲張りね、ヴァリエール。あなたにはあの子爵さまがいるでしょうに。ティトォまでそばに置いておきたいの?」
「違うわよッ!」
そんなんじゃない。
ティトォは確かに、今一番身近な男の子だし、優しく接してくれるけど……
なぜか彼と話していると、心に引っかかるものがある。
それが、ルイズにティトォと一定の距離を置かせるのだった。
だから、ティトォが他の誰かと付き合うことになったとしても、ルイズは多分、素直に祝福できるだろうと思っていた。
しかし……
「ツェルプストーの家には、小鳥一匹くれてやるわけにはいかないわ」
色ボケの家系(キュルケ曰く『恋する家系』だそうだが)であるツェルプストー家は、ヴァリエール家の恋人を誘惑し続けてきたのだ。
今から二百年前、キュルケのひいひいひいおじいさんのツェルプストーは、ルイズのひいひいひいおじいさんの恋人を奪ったのである。
さらに、ルイズのひいひいおじいさんは、婚約者をツェルプストーに奪われた。
さらにさらに、ひいおじいさんのサフラン・ド・ヴァリエールなど、奥さんを取られたのである。
そんなわけで、使い魔をキュルケに取られるようなことになったら、ご先祖様に申し訳が立たないのであった。
そうやって二人が睨み合っているところに、困った顔をしながらワルドが帰ってきた。
「アルビオンに渡る船は、明後日にならないと出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに……」
ルイズが口を尖らせる。
机に突っ伏した男二人は、内心喜んだ。これで明日は休んでいられる。
「どうして明日は船が出せないの?」
アルビオンに行ったことのないキュルケが尋ねる。
「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンがもっともラ・ロシェールに近付くのさ」
ワルドは鉤束を机に置いた。
「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った。キュルケとタバサは相部屋だ。そして、ギーシュとティトォが相部屋」
そう言いながら、部屋の鍵をそれぞれに渡して行く。
「そして、ルイズとぼくが相部屋だ」
ルイズがはっとして、ワルドを見る。
「婚約者だからね、当然だろう?」
ひゅう、とキュルケが口笛を吹いた。
貴族の子女らしからぬ行為だったが、キュルケがやると妙に様になっていた。
「大胆ね。もっとも、殿方は強引なくらいがいいのかもしれないけど」
キュルケの野次に、ルイズは顔を耳まで真っ赤に染めた。
「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」
ルイズはうろたえて、叫んだ。しかしワルドはルイズを見つめて、呟いた。
「大事な話があるんだ、二人きりで話したい。部屋で待っていてくれないか」
キュルケとタバサ、幽霊のようにふらふらしたギーシュ、俯いて顔を真っ赤にしたルイズは、それぞれの部屋に向かって行った。
後には、机に突っ伏してへばっているティトォと、その向かいに腰掛けたワルドが残された。
指一本動かせないほどの疲労が、ティトォの身体を机に縫い付けていた。
ホワイトホワイトフレアを使い、魔法の炎を身に纏えばこの程度の疲労は一瞬で回復するのだが、こんなことに魔法を使うのも情けない話なので、やめておいた。
ティトォはふと、何十年か昔のことを思い出していた。
『おいティトォ。聞いたぜ、もうすぐメモリア発つんだってな』
そうティトォに話しかけるのは、不死の体を手に入れてから出来た、かけがえのない友人、バレットだ。
『三人で話し合ったんだ、ぼくらだけで暮らそうって。今まで匿ってくれてありがとう』
『三人だけか、気をつけろよ。なんなら護衛でも付けるか』
『父ちゃん、護衛なんていらねーって。アクアやプリセラが千人分つえーよ』
無邪気に言うのは、バレットの幼い息子、グリンだ。
『ま、そりゃそーか』
『でもティトォも強くなんないとだめだぞ!』
『そうだ、お前はもっと強くなってから帰ってこい!』
『はあ……』
そんなやり取りを思い出して、ティトォは苦笑いした。
(魔法や『技』を鍛えることはしたけど……、やっぱもっと体力付けなきゃダメかな)
ワルドはティトォの前に、コトンとワインの入ったグラスを置いた。
「あ、ありがとうございます」
コップの中身をぐいと飲み干すと、ティトォはやっと上半身を起こし、ワルドに礼を言った。
ワルドの前にもワインの入ったグラスが置かれている。ワルドは人の良さそうな笑顔で、ティトォを見ていた。
「部屋、行かなくていいんですか?ルイズが待ってますよ。あ、でも、まだあの子学生だし、あんまり強引なのはどうかと思うんですけど」
ティトォは自分で言っておいてなんだけど、大きなお世話だよなあ、と思った。
しかしワルドは気分を害したふうもなく、ティトォに話しかけた。
「きみと話がしたくてね。使い魔くん」
「ぼくと?」
「フーケの一件で、ぼくはきみに興味を抱いたのだ。先ほどグリフォンの上で、ルイズに色々聞かせてもらった。なんでもきみは、系統魔法とは異なる理の魔法を使うそうじゃないか。
実際、ぼくもこの目で見させてもらったが、いやはや驚いたよ。『火』が傷を癒すとはね。おまけにきみは、伝説の使い魔『ミョズニトニルン』だそうだね」
どうやらルイズは、不死の身体のことは黙っていてくれたようだ。しかし、おや?とティトォの心に疑問が浮かぶ。
誰が『ミョズニトニルン』の事を話したのだろう。それはルイズも知らないことのはずであった。
「ぼくは歴史と兵に興味があってね。フーケを尋問した時にきみの話を聞き、王立図書館で調べたのさ。その結果『ミョズニトニルン』に辿り着いた」
「はぁ。勉強熱心ですね」
「ああ、何しろルイズの使い魔が、彼女と歳の近い男ときたもんだ。婚約者としては、気が気じゃなくてね。色々調べておかないと気が済まないのさ」
ワルドは冗談めかして言った。
「あはは。ぼくはルイズの使い魔です。そんなんじゃありませんよ」
ティトォは苦笑した。
「心配なら、なおのことルイズのそばにいてやった方がいいんじゃないですか。ぼくも部屋で休みます。もう、慣れない馬で疲れちゃって」
「待ちたまえ」
ティトォは席を立とうとしたが、ワルドがそれを引き止めた。
「使い魔というのは、契約の段階で主人への愛情と忠誠を植え付けられる。そうでなければ、野生の動物を側に置くことはできないからね。
しかし、きみは人間だ。きみがそういった呪縛にかかっているようには見えない。ならば、人が人に仕えるには、何か理由があるはずだ。忠誠か、束縛か、それとも恋慕か……」
ワルドの顔からは先ほどまでの笑みが消え、真剣な表情になっている。
「魔法衛士隊の隊長なんてやっていると、色々汚いものも見ることが多くてね。いつの間にか、人の顔を読むのが得意になってしまった。だが……」
ワルドは、ティトォのその人形のような瞳を見つめた。
「きみの顔からは、なにも分からない」
ワルドとティトォの間に、しばしの沈黙が流れた。
「きみは、何を考えている?なぜ、ルイズに仕えているんだ?」
ティトォは、静かに席を立った。にこりと笑って、ワルドの問いに答える。
「ぼくはルイズの友達です」
それで説明としては十分だろう、と言った口ぶりだった。
「それじゃあもう、失礼しますね。ワイン、ありがとうございました」
ティトォが去っていくと、ワルドは小さく鼻を鳴らした。
得体の知れない少年だ、とワルドは自分のグラスのワインをぐいと飲み干した。
以上です。
支援ありがとうございます。
乙
ワルドがポコペムのジョギーさんの台詞をw
乙。楽しませてもらいました。
そうだよなあ、ここじゃ不死の体もあまり役には立たないんだよな・・・。
>>129 いやでも元ネタでも襲ってくる敵は全員魔法使いじゃないか
>>79 もしかして: dark kNight ?
バットマンかぁ・・・・ステキだな
アイアンマンとかも考えてるんだけどザセツした。
昔古代のイギリスにタイムスリップした際エクスカリバーで
クシ刺しになってから魔法の類いジンマシンが出そうなくらい嫌ってるからなぁあのアル中
バットマンと言えば、スーパーマンとのクロスオーバーで出てきた老バットマンというのを考えたことはある。
ざせつしたけど。
アメコミは魔法や異世界が何度も登場してるから
召喚されたキャラの順応は早そうだな。
ルイズに従順になるかは別として。
愛しのバットマンでも呼ぶんですか?
マテパの人乙です。
安井顔の二人を想像してワロタw
マテパの人乙したっ!
読んでてふと思ったんだけど
あうあ〜あうあ〜あうあうあ〜♪
ってなんでしたっけ?
ティトォとギーシュの発言(?)
で頭をよぎったんだが・・・・・・
天罰!天罰!天罰!天罰!FuuFuu!
フェイクバットマンと戦う麻宮騎亜版のバットマンは来日してるね。
「私はあなたになりたかった」
と、フェイク・ファーでルイズになるアンアン
マテパの人乙です、そろそろアクア再登場くるか??
しかしジョギーさんのセリフって結構重いんだな、ジョギーさんがギャグキャラ風だから全然感じなかったがw
「あう〜」と言うとタマちゃんにフルボッコされた時の原田さんを思い出す、もともと安井のセリフなんだがw
141 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 21:24:13 ID:WqQSe2dG
>>135 その作者、俺の母校出身だわ。図書室に本がある。誰も借りないし読まないけど。
不死身の三人の中では唯一の男手なのに、なんで一番貧弱な印象あるんだろうなティトォはw
プリセラはともかくアクアだって大した事ないはずなのに
>>137 君が言ってるのはエンジェルラビィの歌の事だと思うけど
ゼロ魔原作2巻でもサイトが「アウアウアー」って言ってるぜ!
>>143 でもアクアはミカゼの投げたゴーラの実を蹴り返してミカゼの顔にクリーンヒットさせるだけの力はあるぜ?
アクア=パワフル、プリセラ=姉御、ティトォ=華奢
だべ?
アクアは攻撃的な性格。
ティトォは穏やかな性格。
その違いで貧弱っぽく思えるんだろう。
アメコミからならぜひ惑星ゼン=ラからの使者を呼ぼう
魔法も攻撃魔法じゃなくて補助魔法だしな
ティトォ自身も参謀だし
その補助魔法WWFも効果を見ると
回復能力・肉体強化・魔力強化・成長促進
わかり易く言うとスカラにバイキルトにピリオムに常にベホイミに加えMP回復と魔法効果UP、経験値UP
と結構チートなんだけど
>アメコミ
そういえばスポーンのが出だしだけで中断してるな
完結してるのではデス召喚のやつが素晴らしい話だった
ヴェノムも再開して欲しいぜ
ヘルボーイで書きたいんだが筆力がなあ
印象もあると思うが、アクアって真面目に結構強いんじゃないかな?
初期のミカゼが反応もできなかった相手を瞬殺してるし、ジール・ボーイとも
途中までタイマンで戦ってるし。
魔法の威力が強いだけじゃ無理だろ?
151 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:13:50 ID:AFLFGTMI
7話投下予告させていただきます。
22時20分を予定しています。
よろしくお願いします。
>>148 結構どころかありえないくらいチートだよ
ムーンアデルバのチートっぷりにはかなわないが
>>149 GIFTは俺のツボを刺激しまくるんだ
再開心待ちにしてる
あとできればプレデターも……
ゼロ魔とマテパのクロスにおいて一番問題なのは
果たしてハルケギニアの魔法でティトォ達が死ぬのかどうかだよな
マテパの魔法はありとあらゆるモノの根本的な存在を変換してるけど
ゼロ魔の魔法は精神力で既存の現象を起こしてる感じなんだよな
水を作る魔法だって大気中の水分を集めてる感じだし
まあ一言で言うなら魔法としての格が違うというかなんというか
>>153 それを決めるのも作者のさじ加減一つさ。
それはそれとして、騎士団を支援する。
>>153 でもマテパの魔法ってその分『超』が付くほど一芸特化だからな
汎用性ではハルケ魔法に及ぶべくもないからその辺でバランス取れるだろう
騎士団支援
158 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:21:02 ID:AFLFGTMI
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン7
ルイズが目を覚ますと、光の奔流の中にいた。
「・・ここはどこ?」
(ルイズよ、異世界の力ある少女よ)
意識は、完全に覚醒してるとは言い難く、聞こえる声も遠かった。
「・・あなたは?」
(ルイズよ、汝の世界は大きな闇に包まれる。汝は戦わねばならん。)
光の意思が声となって、ルイズに語りかける。
(力には技を、技には魔法を、魔法には力を、これを忘れるでないぞ)
「何勝手な事言ってるのよ、意味分かんないじゃない。アンタは誰なの答えなさい!」
「我は、異世界の勇者達を預かりし者、いずれ汝の前に現れる。」
最後の方の声は遠くて、かろうじて聞こえた。
「・・何勝手なこと言ってるのよ」
勇者という、自分に最も遠い言葉に、ルイズは溜息をつくばかりだった。
窓からは、朝日はようやく一部をのぞかせていた。
159 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:21:22 ID:AFLFGTMI
「こうやって、主のフォローをするのは何度目だ?ルイズ」
ニューが、濡れたモップで床を拭きながら、背を向けているルイズに問う。
(キュルケの言っていた意味が、ようやくわかったよ)
ニューが、ルイズの使い魔になって一週間が過ぎた。
その間、ニューはルイズの二つ名の由縁を嫌というほど知る事となった。
(始めは、魔法の練習中に誤って生徒を吹き飛ばしたな、
次に厭味な教師に向けて魔法を放ってやっぱり吹き飛ばした・・
まぁ、あれは教師がルイズにやれと言ったんだし、傷を治すだけでよかった・・・
そして、今日は錬金を行おうとして、今に至るか・・よく私を召喚できたな)
ルイズとの一週間を振り返り、今ではニューは、対ルイズ用救護班として認知されはじめていた。
「・・アンタは私を見下しているんでしょ、魔法が使えないゼロのルイズって」
今まで沈黙を貫いてきた、ルイズが唐突に話だした。
「貴族は魔法を使える者、けど、私は一度も成功する事がなかった。
お父様やお母様はそれでも、私に優しくして下さった。
私はこの魔法学院で、立派なメイジになると誓ったのに、こうして魔法に失敗して使い魔に馬鹿にされる・・・」
ルイズは、魔法が使えない辛さよりもそれに対する、諦めと現状を受入れ含まれていた。
(コイツはすごい、私なんかよりずっと・・・当たりを引いたと思ったけど、私が惨めなだけじゃない)
「ルイズ、私の家は騎士の家だったんだ。」「・・え」
意識をニューの一声に呼び戻され、ルイズは箒を持つ手を落としそうになる。
「私もルイズ位の年の頃、騎士の修業を積んでいた。しかし、私にはまったく剣の才能がなかった。」
「魔法が使えるなら、別にいいじゃない」
ハルケギニアの常識に基づいて、ニューの話を指摘する。
「アルガスでは騎士が一番偉いんだ、この国のメイジみたくね、
何よりわたしは、お爺様や父様みたいに立派な騎士になりたかったんだ。」
(そう、なりたかったんだ・・)
ニューは、過ぎ去った過去に思いをはせる。
「物思いに耽ってないで、続けなさいよ」ルイズが話の続きを求める。
「剣の才能がなかったが、私には魔法の才能があった。
だからと言って私には法術士になろうとは思わなかった。」
「どうして、別に才能があるなら、そうすればいいじゃない」
武功を立てられるなら、より能力に適している方が良い。ルイズもそれは解っていた。
「ルイズ、君に何かほかの才能があったとしよう。君はメイジを諦めるかい?」
「諦める訳ないじゃない!」
ルイズが即答する。
「そう諦められなかったんだ、私は騎士になりたかった。」
「あ!」
ルイズはニューの問いの意味が分かった。
「たとえその才能があっても、もし法術士になったら本当に騎士の道を閉ざす事になる。
私には、それが怖かったんだ。」
「・・・私にどうしろって言うの?」
ルイズがニューに何かを求める。
「するんじゃない、私は剣では無く魔法を見つけた。今は後悔はしていない。
だが、ルイズ、君はまだ若い、後悔しないはずがないんだ。
だから、君の出来る事を、君にとっての答えを見つけるんだ」
ルイズは、使い魔としてでは無い優しい視線を感じた。
「わっ分かっているわよ!!偉そうなこと言ってないで、掃除するわよ!私までご飯食べられないじゃない!」
そう言って、箒を拾い掃除を再開する。
「・・ニュー・・」「どうした、ルイズ」
ニューの声がやさしかった。
(・・ありがと・・)
ルイズの優しい声は、その場に響く事はなかった。
160 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:22:11 ID:AFLFGTMI
ニュー達三人は、ほぼ一日のライフサイクルが決まりつつあった。
朝、ゼータが剣の鍛錬を積み、ニューが雑用をシエスタとこなす。
ダブルゼータは寝ている。
午前中、ニューは授業に出る。
「ニュー、ルイズ、おはよう」
モンモランシーが声をかける
「ちょっと!なんでニューが先なのよ!」
「ニュー、何かあったら主のフォローお願いね」
ルイズを無視して、ニューに使い魔の役目を伝える。
「了解、何も起こらないのが一番なんだけどね」
ニューも慣れてきたのか、軽口が交る。
授業が始まるとニューは熱心に聞いた。
もう、やっていた所なので、ルイズはニューの様子を観察する。
「なんでそんなに熱心なの、こっちの魔法は使えないんでしょ?」
小声でルイズが聞く。
「魔法を体系としてあるのが素晴らしいのだ。
アルガスはそう言った物がないので、最初は師匠から教わるようになるが、
ある程度になると独力で修行しなければならない。」
僧侶ガンタンクUに教わったのを思い出す。
「それも大変ね・・・」
「だから、こうやって人に魔法を教えられる学校は大変興味深い」
ニューは一人でうなずく。
(じゃぁ自力で、あんな魔法使えるなんて、アンタ天才じゃない)
ルイズは、自分の凄さに気づいていないニューを少し嫉妬の目で見つめていた。
ダブルゼータは授業が暇なので、使い魔達と同じように、広場にいる。
「ヴェルダンデ、やめろ俺はミミズは喰わん。アルフォンス、その木の実は酸っぱすぎて俺には喰えん!」
ハリマオスペシャルに勝った後、ダブルゼータは使い魔達に王と認識されていた。
今では使い魔達が自主的に貢物をする。
ゼータは、主にロングビルの手伝いをする代わりに、字を習っていた。
話す事は出来るが、本を読むことができないのであった。
ロングビルにしても、ゼータを監査うする事は有効であったし、彼は有能だった。
「これは、なんて書いてあるのですか、ミス・ロングビル」
「これは、「今とは違う時代、ハルケギニア」と読むんですよ。」
授業中のため、図書館は二人だけであった。
昼食が終わると、ニューもやってきて、二人が自主的に文章を勉強する。
どうしても解らない時は、読書中のタバサに聞く事にした。
外では、相変わらずキュルケとダブルゼータがカルチョを開催していた。
例のカルチョはまだ、挑戦者が減る事はなかった。
161 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:23:08 ID:AFLFGTMI
ルイズが教室を破壊した次の日
ゼータが鍛錬を終えて帰る途中、私服姿のシエスタに出会った。
「シエスタ、どこかに遠出かい?」
自分の荷物であろうバックを見て、ゼータが尋ねる。
「ええ、私、その、今度モット伯様のお屋敷で働く事になったんです。」
「なんだって、突然じゃないか!」
そのような事は聞いてなかったので、当然ゼータは驚く。
「昨日、学校に来たモット伯が私の事を気に入ったらしくて・・・」
「だとしても、いきなりではないか?」
貴族という事を差し引いても、それは理解しづらい事であった。
「けど、モット伯は私に今の何倍の給金を払ってくださるそうですし・・
ゼータさん達と別れるのは辛いけど・・」
ゼータにはようやく理解できた。
「ありがとうございます。私、皆さんに会えてよかったです。さようなら」
早口と共に、学園を背を向けてシエスタが歩き出す。
「シエスタ・・」
ゼータは、唯その言葉しか出なかった。
「・・・確かに、シエスタは連れてかれたよ、
モット伯が気に入って違約金代わりに大金を払ってな・・」
昼、厨房でマルトーがばつ悪そうに事情を話す。
「なぜ、シエスタなんだ?他にもいるじゃないか」
シチューの皿を空にした、ダブルゼータが疑問を口にする。
「モット伯は、若くて、綺麗なメイドを自分の屋敷に集めるのが大好きなのさ、
奴は王宮にも顔がきくから、誰も見て見ぬふりだ!」
自分の言葉から出る無力さに、マルトーが机を叩く
「なぜ、止めなかったマルトー殿!!」
シエスタの表情の暗い意味が分かり、ゼータも激昂する。
「落ち着け、ゼータ!」
ニューがゼータを嗜める。
「俺はお前たちみたいに、魔法が使えないし、
力があるわけじゃねぇ、平民は貴族に逆らえないのさ!」
自嘲気味なマルトーの声も力がなかった。
それから4人の間には沈黙が流れた。ダブルゼータの食器の音を除いては。
162 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:24:03 ID:AFLFGTMI
「・・で、アンタはどうしたいの?」
「当然だ、シエスタを助けに行くのだ」
その解答を誰も外さなかった。
「馬鹿じゃないの!アンタ、自分の言ってる意味が分かっているの?」
「民を虐げる者の、横暴を見逃す騎士がいるものか!」
(まるで演劇ね・・)
二人のやり取りを見て、キュルケが溜息をつく。
昼食の後、ゼータが三人に用があると言い、タバサの部屋に集まっていた。
三人はゼータがシエスタの件を話した時、この展開は予想がついていた。
そして、予想通りの展開に、ルイズが噛みついたのだ。
「いい、アンタの話通りなら、モット伯は大金を払ってシエスタを雇ったのよ!何にも問題はないはずよ!」
そもそも、貴族と平民に労働契約はない。しかも、金銭を支払っているモット伯の行いに問題はない。
「ある!貴族である事を笠に着て民を何とも思わない、その行いが既に貴族として許し難い。
それともルイズ殿はそう言った行いを何ら恥じる事はないのか?
貴族は平民を物のように扱っても構わないというのか!?」
ルイズの観念からいえば、それは痛いところであった。
「そっ、それは・・確かにモット伯の行いは貴族らしいとはいえない、だからって・・・」
(ルイズ!何、場の空気に流されているのよ)
あっさりと場に流されかけているルイズに、キュルケが呆れる。
「ゼータ、確かに、あなた達ならモット伯からシエスタを取り戻せるでしょうね」
キュルケがルイズに変わり説得に入る。
「もちろんだ、だから今す「モット伯はこの国の伯爵なのよ」」
キュルケがゼータの言葉を待たず、言葉をさえぎる。
「あなたの国の貴族の家に、その理由で殴りこんだら、あなたの王国ではどうするの?」
「!」
ゼータがキュルケの意味を理解する。
「そう当然、騎士団のあなた達がその者を討伐する、どんな理由があってもね、この国でも同じよ、
あなたが正しかろうと、国はあなたを賊として捕える。そして、
それは、当然主であるタバサにも手が回る。その辺をおわかり?」
(そうだよなぁ・・・当然そうなるよな)
以外にも、少し遠巻きから冷静に、ダブルゼータは事の成り行きを見ている。
ゼータ同様に正義感が強い彼であるが、彼は世間を知らない訳ではない。
その点では、ずっと騎士の中で育ってきた、ゼータよりも事の問題を理解している。
「当然、ルイズやタバサにも、そして、シエスタにもそれは及ぶのよ。」
キュルケが、起こるであろう結果を提示する。
「あなたも騎士なら、命令にしたがう事、
自分の意に反する事でもやらなくてはならない事があるのは解っているでしょう?
シエスタだって、当然それは解っているわよ」
「なら、どうすればいい!このまま見捨てらばいいのか!?」
ゼータが周囲に問う形で自分の現状を嘆く。
「どうしようもないじゃない・・・」
誰もが思っていた言葉を、ルイズは口にする。
一人だけを除いて。
支援
支援
支援
166 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:24:47 ID:AFLFGTMI
「・・我に策あり」
沈黙の中、今まで一言もしゃべらなかったタバサの口が動く。
「タバサ!?」
彼女の意外とも言える意思に、キュルケも驚く。
「バレなければいい・・・」
あまりにも簡潔な答えに、その言葉に皆が脱力する。
「って!そんなの簡単に出来る訳ないじゃ「フーケはゴーレムを使う・・・」え?」
そう言って、タバサがゼータたちを見つめる。
「あなた達が土くれのフーケのゴーレム」
「タッ、タバサ!?」
事態を呑み込めないニューが思わずたじろく。
「キュルケは土くれのフーケ」
キュルケの方に振り返り、キュルケの役割を決める。
「タバサ、私は火のメイジよ、それに、この恰好じゃ、バレるじゃない」
キュルケが問題点を指摘する。
「何もしなくていい、ただ指示を出すふりだけすればいい。制服を脱いでフードと仮面をつければバレない」
そう言って、自分の部屋の中にあった。フードと仮面を渡す。
フードは使い込まれたもので、何箇所か継ぎ接ぎがある。
しかし、仮面の方は、仮面というよりも銀の兜であり、顔を判別する事は出来ない。
「アズナブルよりも、マーキス派」
彼女の意味を理解できるものは、この中にはいなかった。
「なぁ、そう言う奴って、叩けば埃が出るようなやつだから、何かそう言った品を抑えればいいんじゃないか」
ダブルゼータが、意外な方面から提案する。
「まぁ、モット伯は清廉な人物とは言い難いし、それも有りかもね、
けど、アンタがそう言った事を考え付くなんて意外ね」
ルイズが本当に意外そうに、ダブルゼータの提案に驚く
「これでも、悪党の屋敷に乗り込んだのは初めてじゃないからな!
そういった奴は大抵どこかに、盗品やヤバい品を持っているのさ!」
ダブルゼータが自身の経験を自慢げに話す。
「つまり、アンタはこんな事をするのが初めてじゃないって訳ね」
ダブルゼータの案の根拠を知って、ルイズは、ただ溜息をつくばかりだった。
支援
168 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:25:32 ID:AFLFGTMI
夜 モット邸 近郊の森
ルイズ達一行は、馬と共にそこに潜んでいた。
「ちなみに、アンタが持っているものは何?」
「何って、木だが・・」
「何で木なんか持っているのよ!」
ダブルゼータは、近くにあった長さ7メイル程、直径0・6メイル程の木を抱えている。
「武器代わりに使おうと思うんだが・・」
「そんなもの普通、振り回さないわよ!ちなみにそれで何をするつもりなの?」
聞きたくはないが、ルイズが一応その武器の主要目的を聞く。
「聞いていなかったのルイズ、私達が表でかく乱している隙にゼータが突入して、シエスタを救出する。
その後は、ここに隠した馬に乗って無事退却よ!ちなみに、タバサとルイズはここで退路の確保よ」
ルイズが忘れたと思ったのか、呆れながらキュルケが決まった作戦の確認をする。
「そういう意味で言ったんじゃないわよ!なんでこんな所にいるのよ!
だいたい、アンタさっき反対してたじゃない!!」
「バレなきゃ、問題ないわよ。それに殴りこみなんて楽しくなりそうじゃない♪」
これから起こるであろう出来事に、キュルケは嬉しさを浮かべる。
「アンタ、バッカじゃないの!だいたい、ニュー、あんたも何でいるのよ!?」
自分の使い魔に、問題点を流す。
「ルイズ、君こそ何で此処にいるんだ?危険かもしれないんだぞ?」
「当たり前のこと言わないでよ、アンタが行くなんて思ってもみなかったわよ!
アンタが捕まったら私にも迷惑かかるのよ、そうしたらどうしてくれるの?」
結局、あの部屋に行くことになった、全員が行く事になった。
ルイズは一応反対したが、面白さに参戦を決意したキュルケと、
何故かやる気のタバサによって連れてこられてしまった。
「大丈夫だ、ルイズ・・」
ニューが唐突に、真剣な顔でルイズを見つめる。
「ニュー・・」
「いざとなったら、私のソーラ・レイで屋敷とモット伯を、跡形もなく消してしまえばいい。」
「なに、真顔で物騒なこと言っているのよ!!この馬鹿ゴーレム!」
自身に対する心配では無く。証拠を消すことによる自身の安全を得る提案するニューの顔にルイズは拳を叩きこんだ。
支援
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支援
172 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:26:15 ID:AFLFGTMI
「じゃあ、そろそろいくわよ!」
「よくないわよ!!」
キュルケが作戦発動を告げ、当然のごとくルイズが反対する。
「先陣はこのゼータが切る。後に続けぇっ!」
「ちょ、ちょっと!ゼータ待ちなさい!話聞いてないの!?」
端から作戦を無視するかのように、馬に乗ったゼータがモット邸の門に向けて突撃する。
「何やってるのよ、あの馬鹿ゴーレム!!」
心の準備ができていないうちに勝手に先端を開いたゼータに、ルイズが全力で罵声をぶつける。
「貴様、何者だ!?」
門番達が気づき、入口の門を固める。
「雑魚に用はない、どけっ!」
勢いに乗ったまま、門番の槍の柄を一瞬で切り落とし、高さ約2メイルの門を飛び越える。
「うそ・・なんて奴なの・・」
乗馬の心得があるルイズから見て、今の技術は並ではない事にすぐ気付いた。
「はしゃぎすぎだ、馬鹿物が・・・キュルケ、私たちも行くぞ。」
「オッケー」
そう言って三人が飛び出す。
敷地内に入ったゼータを、異変に気付いたガーゴイルが飛びかかる。
「ふん!」
掛け声とともに、左右より飛びかかった番犬を模したガーゴイルを、ほぼ同じ速さで解体する。
そして、近くの窓を破って侵入する。
「すごいのね、彼も・・」
初めて見るゼータの技にキュルケも、少し驚きの色も見せる。
「アレックス団長に、剣で匹敵するのはアイツくらいだからなぁ。さぁ、派手に暴れようぜ!」
そう言いながら、持っていた木で門の前にいた門番をなぎ倒す。
「バズレイ!」
ニューの声と共に、爆発が起こり門が破壊される。
(こんなことなら、わたしも暴れたいわ)
二人の景気の良い暴れ様にキュルケは少し不満がたまった。
「私の名前は怪盗フーケ、「土くれ」のフーケ、悪逆非道なモット伯に天誅を下しに来た。いけゴーレム達よ!」
声をいつもより1オクターブ上げて、キュルケが凛々しく命令する。
予定より少しずれながらも、シエスタ救出作戦は開始された。
「何が起こった!」
自室にいたモット伯は、爆発音と当たりの喧騒に動揺する。
「どうやら、獲物が来たようですな。」
「ドライセンどういう事だ!?」
あらわれたドライセンに、モット伯は怒りをぶつける。
「これが狙いですよ、獲物たちを始末して目的を果たす・・・それだけの事です。」
「なんだと!貴様「とりあえず私は外を片付けます。中に入ったネズミをよろしくお願いします。」まて、ドライセン!」
一方的に告げて、ドライセンの気配が遠ざかる。
「何だというのだ・・・癪だが、シエスタを取られるわけにはいかん!あれには大金を出したのだ!」
自分の欲を優先させるべくモット伯も自室を後にした。
支援
支援
175 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:26:48 ID:AFLFGTMI
爆発音や、何かを倒す音がモット邸から聞こえ始めた。
「始めたわね・・・タバサ、アンタなんでこんなこと考えたの?」
ルイズが、おおよそこのような事を考えそうにない少女に蛮行の理由を問う。
「彼の力が見たかったから・・・」
「それなら、適当に剣で何か切らせればいいじゃない!」
ルイズは、その答えでは納得できなかった。
「だめ・・実戦で使えるか知りたかったの・・・」
「実戦って・・でどうなの?」
「合格・・性格以外は」
タバサが辛口で採点する。
タバサは、ゼータが身のこなしからある程度の実力を持っていると気づいていた。
だが、内心では自分の評価が過小評価であると知った。
(彼は強い・・彼ならきっと、私の仕事にも付いてこれる筈)
苛酷になっていく、自分の任務を彼なら付いてこれる。タバサは確信した。
「あなたって、本当にわからないわ・・」
最近になって、話す様になったが、彼女とコミュニケーションを取るキュルケを少し見直した。
「!・・だれ?」
タバサが唐突に杖を森の暗闇の方に構える。
「ほう、俺に気づくとは大したお嬢ちゃんだ」
闇の中から、賞賛と共にそれはあらわれた。
「なに、アンタ・・・」
現れた者を見て、ルイズの声に驚きと恐怖が交る。そして、タバサが庇うように前に出る。
闇の中から出てきたそれは、ルイズ達とさほど大きさは変わらなかった。
紫色の鎧に身を包み、頭の高さには、赤い一つ目が浮かんでいる。
身の丈と変わらない大振りの剣を2本の剣を持ち、それを楽に扱っている。
それは、物語に出てくる、サイクロプスを彷彿とさせた。
ゆっくりとそれは近づいてくる。
「俺は闘士ドライセン、お前たちが召喚したガンダム達とお友達だよ」
その言葉は友好的とは思えない、忌々しさを感じさせた。
「ニュー達を知っているの!?あんた達もスダ・ドアカワールドってところから来たの?」
ニューたち以外にも、スダ・ドアカワールドからやってきた異邦者に、ルイズは驚きを隠せない。
「その通り、ちなみに、俺はお前達のお友達と遊びに来るつい・・」
「エアカッター」
言葉が終わる前に、タバサがエアカッターを放つ。
「ふん!人の話は最後まで聞くって言われなかったかいお嬢ちゃん達。」
振った剣の圧力で空気の針が叩き折られる。
タバサは、次の行動を決めていた。
「エアカッター」タバサがもう一度放つ。
「無駄だ!」
もう一度針を叩き折る。しかし、それが狙いであった。
タバサが、魔法と同時に駆け寄り、完成させた魔法を唱える。
「エアハンマー」
ドライセンの振りおろした剣の反対側に回りこみ至近距離で魔法を放つ。
至近距離での空気の鉄槌を受け、ドライセンは木に叩きつけられる。
「やったの?」
タバサがドライセンを吹き飛ばした事に安堵するルイズ。
「だめ、キュルケ達と合流する。」
タバサがルイズの手を取り、モット邸の入り口を目指す。
「この!待て、ガキ共」
すぐに、復活したドライセンの声と、木を切り倒す音が後ろから聞こえる。
ルイズはその音を背にし、後ろを振り向きたくなかった。
(何でニュー達と同じ世界の化け物が、こんな所にいるのよ。)
ここ最近、異常事態になれたルイズであったが、その認識が甘い事を改めて思い知らされた。
176 :
ゼロの騎士団:2009/01/26(月) 22:27:39 ID:AFLFGTMI
「13お前達ならいつでも大歓迎だ」
料理人マルトー
料理で体力を回復させる。
HP+50
「14いい加減にしないと刺しますよ、オールド・オスマン」
学院秘書ロングビル
手にはフォークを持っている。
HP 40 (バトルカードを入れ替える。)
以上で投下終了です。ありがとうございます。
支援
騎士団の人、乙。
>「アズナブルよりも、マーキス派」
…どうやら、俺はこの作品のタバサとは相容れないようだな…。
テラ腐女子w
騎士団の人乙
騎士団の方、乙でしたー。
…ところで、
アズナブルはまだ分かるけど、マーキス派って一体?
乙
そうだよな、サイトもそうだけど召喚されるのは「貴族の理屈なんか関係ねえ!」ってヤツが多いけど
割とゼータ達も『騎士』って考えに凝り固まってるから、タバサとか他の誰かが横槍入れないと動けないよなw
乙ー
>>180 ゼクス=マーキス(ガンダムWのキャラ)だと思う
騎士団の人乙
最近はこれが楽しみの一つ
>>182 ゼクスのこと忘れてたw
騎士団の人乙!勢いある作品はえぇなっ!
さて、勢いのある作品のある後で不安ですが投下させていただきたく存じます。
22:50頃からよろしくお願いいたします。
GJ
支援せざるを得ない
投下開始です
―――
「せいっ!」
「わぁっ!?」
デルフとアニエス先生の剣が交叉する。
ギーシュのゴーレムや、ワルドの杖とは全然違う、重みのある一撃。
手にビリビリっとした衝撃が伝わる。
「ほぅ?多少は心得があるのか?」
「え……う、うん、まぁ、その、心得、かなぁ?」
ガンダールヴの力って、心得とかに入るのかなぁ?
「ふむ、なかなか悪くない反応だ、では、こう動けば――どう出る!」
「わたた!?」
重心をずらす、一歩を踏みこむ、剣をまっすぐ突き立てる。
それらを一度の動きで全部やってしまうアニエス先生。
こっちはそれを下からすくい上げるようにしてなんとかかわす。
「やるな、もう少し速く行くぞ!!」
「え、ちょ、ちょっと待っ……うわぁぁっ!?」
それは、まるでダンスのように、
打ち合う音は異国のお祭りの太鼓のようで、
お日さまの光を受けた剣がキラキラと輝きをこぼしながら、
ボクはその真っただ中にいたんだ……
―ゼロの黒魔道士―
〜第二十九幕〜 少年は誇りを胸に
「ふんっ!甘いっ!!」
「く、てぇいっ!!」
何度目かの剣の交叉。
こちらから攻めようとしても届かない、届かせてくれない。
「攻めようとした途端アラが目立つな!無謀と勇猛は別物と知れ!」
「わわっ!?」
横なぎの一撃。
体に届く寸前で止める。
何とか、止められた。
でも、何度も何度も繰り返していると、
どんどん手がしびれてくる。
「遅い!相手をよく見ろ!」
重い。
剣そのものの重さよりもはるかに、重い。
相手を、よく見る。
鋭い目つきには隙がほとんど無い。
前に出れば上から、
横に出ればそのままなぎ払われる。
「どうした?もう終わりか?」
剣にこめられた力が、ぎりぎりと強くなる。
ふんばっていなくちゃ後ろにふっとばされ……
後ろに?
そっか!
「終わりじゃ……ないよっ!!」
後ろに、剣圧を逃がす。
受けるんじゃなくて、受け流す。
これで、相手にも隙が……
「ふむ、気づくのが遅いが、まぁ正解だ」
「え」
全然できていなかった。
ゴツンという鈍い痛み。
柄の部分で殴られたらしい。
「い……いたたたた……」
ズレた帽子を直しつつ、殴られた部分をさする。
「ふぅむ、実力はそこそこあるな。戦略眼も悪くない」
剣をクルッと回して鞘におさめるアニエス先生。
その姿は悔しくなるぐらい決まっていた。
「――だが、熱くなりすぎだ!攻勢に入ろうとしたときの単調さは何だ?」
キッときつい目で睨まれて、ちょっとひるんでしまった。
うーん……単調な……
あ、『ガンダールヴ』のせいかな?
『ガンダールヴ』の力は、ボクらのいたところの『バーサク』に近いものだと思う。
力や、素早さは上がっている。
そうじゃなきゃ、こうやってアニエス先生と打ち合うことすら無理じゃないかなぁって思う。
『バーサク』では、その代償に、戦うことしかできなくなる。
『ガンダールヴ』の力を使った時も、確かにザワザワする感じ、
なんか冷静になれないところがある。
攻め方が単調になるって、多分そういうことなんだろう。
……『トランス』のときは?
うーん、もしかして、あのときは偶々バランスが取れたってことなのかなぁ?
『トランス』で、『ガンダールヴ』のザワザワする感じを抑えられた、とか?
「いいか、心は熱くとも、頭は冷静に!これが基本だぞ!分かったか!返事!!」
「う、うんっ!!」
「――返事は『はい』だ!もう一度!」
「は、はいっ!!!」
「ところで――お前は、何のために強くなりたい?」
「え?」
アニエス先生が、真剣な顔で聞く。
「剣を合わせれば分かる。お前は、強さを求めている。何のためだ?」
剣を合わせれば分かるって、すごいなぁって思う。
何のために強さを求めるか?答えは、決まっていると思ったんだ。
「……大切な人を、泣かせたく、ないから」
そのために、もっともっと強くなりたい。
そうすれば、悲しませたりしなくて、すむんなら。
「――いい答えだ。その誇りを胸に、励むといい」
アニエス先生は、その答えにニッコリと微笑んだ。
あ、こんな顔もできるんだなぁって思った。
でも、ちょっとその顔は、寂しそうな感じがした。
「……先生は?先生は、何のために?」
だから、ついつい聞いてしまったんだ。
「ぬ?うーむ――」
アニエス先生は、その質問に言葉を濁す。
「ふむ、まだ日は高いな――もう一戦行くぞ!!答えはわたしに一撃を与えたら教えてやる!!」
「は、はいっ!!」
ともかく、いつも『トランス』できるとは限らない。
なら、心がけなくちゃいけない。
『ガンダールヴ』の力を使っても、冷静でいられるように。
……ルイズおねえちゃんを、二度と悲しませないために。
ボクは、この人から何かを学べるかもしれない。
デルフをしっかりと構えなおした。
――――
ピコン
ATE 〜少女は誓いを胸に〜
まったく、ビビはどこに行ってしまったのか。
ルイズは噴水前の広場を見渡して溜息をつく。
ここで待つと約束したではないか。
「そこのあなた、この辺でとんがり帽子の男の子を――」
屋台の店番に話しかける。
甘そうな香りがする屋台だ。
ビビさえいれば、即座に買い食いするのに。
泣いた分、ルイズのお腹は救難信号を告げていた。
前に進むにしても、涙以外栄養が必要だなと、小さく笑ってしまう。
「へいらっしゃい!あぁ、あのちまっこいガキですかい?
それなら、ルーネスってぇ近所の悪ガキにひっぱられてっちまったなぁ〜」
「悪ガキに?」
また何かトラブルに巻き込まれたか、とまた溜息一つ。
頼りになるんだかならないんだか、と自身の使い魔の姿を思い浮かべる。
自分より小さく、少々おっちょこちょいで、トロいところのある少年を。
しかし、イザというときには、その小さな背中を、実際よりも大きく大きく見せて、
ルイズを守ろうとしてくれる勇敢なその姿を。
「ルーネスのヤツなら、きっと西外れの空地だなぁ!
最近、あそこで悪ガキ共とつるんで何かやってるらしいですぜ?」
「そ、ありがと!」
「あぁ、ちょい!せっかく質問に答えたんすし、買ってってくださいよぉ、お嬢さん!」
「――後で、買いにくるわ!」
ビビと、後で食べよう。
クックベリーパイよりは安っぽそうなお菓子だが、
今の気分を晴らすにはちょうどよさそうだった。
まったく、ビビは何をしているのか。
ルイズは西外れの空地に着いて溜息をつく。
なるほど、悪ガキらしい小さい姿が4つほど空地にいる。
そしてその視線はどれも、激しき剣舞に向けられていた。
驚くことに、一人は女性だ。平民にしては顔立ちの整った方だとルイズは思う。
そしてもう一人は、やはりというか、自分の探していた少年だった。
その剣舞は素人目に見ても鮮やかで、
銀色のリボンが舞うように、目まぐるしい光があたりにこぼれていた。
キィンキィンと剣と剣が合わさる音が拍子をとり、
それは放っておけば、無限に続くように見受けられた。
「ちょっとビビ!!待ってないってどういうことよ!!!」
だからこそ、割って入る。
放っておけば、明日の朝日が来るまで続きそうだったからだ。
「ルイズおねえちゃん!!」
「――迎えか?――貴族?」
女性の眉間に皺が寄る。
あからさまにこちらを威圧する空気。
貴族だから何だと言うのだ、ビビに何をしてるんだと、こちらもにらみ返す。
「お前すんげーなっ!!!」
「先生相手にあんなことできるなんてすごいよ、君!!」
「やるじゃない!」
「すごいなぁ――」
その空気を壊すように、少年達が歓声をあげて、ビビを囲んでしまった。
「あ、ちょ、ちょっと待っ……助けてぇぇ〜……」
もみくちゃになる使い魔を見て、やっぱり頼りになるんだかならないんだかサッパリ分からなくなってしまう。
「コラ!お前たち!感心している場合か!お前たちも見習え!このたまねぎ共が!!」
女性が、声を荒げもみくちゃの中からビビをつまみあげる。
少年達の顔が、おもちゃを取り上げられたみたいになっているのに苦笑してしまうルイズ。
「――貴族の従者、というわけか、お前は」
ビビをルイズの方に放り投げ、女性はため息をつく。
「ちょ、ちょっと!?」
「わたたたたた!?……いたたた……」
乱暴なことをする女だと、ルイズは相手を睨みつけた。
「乱暴な女だよなぁ〜、相棒?」
デルフの気の抜けた声がする。
「な!?剣がしゃべった!?――インテリジェンス・ソードか!」
驚く女性。それにちょっと優越感を覚えるルイズ。
「……デルフ、あんまり失礼なこと言っちゃダメだよ?折角色々教えてもらったのに……」
剣をたしなめるビビ。
先生、と言ったか?なるほど、教師であればあのような険しい表情にもある程度納得がいく。
平民に何ごとかを、おそらくは武術でも教える職業についている者なのだろう。
「――貴女、ビビに何を?」
とはいえ、ビビを放り投げるような女は問いたださなければなるまい。
「――放り投げたことは詫びましょう、貴族様――ご従者を無碍に扱いまして」
嫌悪感を崩そうともしない謝り方に、怒りがおさえられそうになかった。
「な!!!何よその態度!!!大体ねぇ、ビビは従者じゃないわよっ!!!」
「ほう?それでは、何だと言うのだ?」
使い魔、と答えようとして、一瞬ためらうルイズ。
単純に使い魔とその主、そのような関係であるのかと、疑問に思ったのだ。
ときに、頼りになり、ときに、自分を励まし、常に、優しい少年。
彼は、自分にとって何なのか?
改めて、考える。
色々な単語が浮かんで消える。
一番当てはまりそうな言葉は、実にシンプルなものだった。
「――私の、友達よ!大切な、ね!!!」
友達、そう。友達だ。
越えたいと思う存在であり、一緒に歩いていきたいと思う存在。
友達以外に適切な言葉は無いだろうと、ルイズは納得した。
「友?友だと?――は、ははははははは!!」
険しかった女の顔が、何が可笑しいのか破顔する。
「ちょ、ちょっと!!あんたさっきから失礼じゃない!?」
思わず、怒るルイズ。
散々バカにされている気がしてならなかった。
「くくく、いや、くくく――すまない、すまない。まさか、そんな戯言を言う貴族がいるとはな!」
「ざ、戯言って何よ!!!」
ますます腹が立つ女だとルイズは思った。
「平民を友と言う貴族、か――そのような戯言、わたしは嫌いではない」
「へ?」
気の抜けた声が漏れ出てしまった。
それぐらい、女が見せたのは、気持ちのいい笑顔だった。
「ルイズ、と言ったな?――ビビよ、お前の守りたい者は、この貴族か?」
「え?う……うん……」
「――誇るがいい、守るに足りる人物らしいぞ!はははははは!!」
訳が分からない。笑いだす女と、戸惑うビビとルイズ。
「――行きましょ、ビビ!!」
「う、うん……えっと、先生、ありがとうございました」
「――あぁ、また来い!いつでもしごいてやる!!」
「またなー!」「いつでも来いよー!」「元気でねー!」「またね!」
まったく、ビビは何をしていたんだ。
ルイズは大通を歩き、また溜息をついた。
訳の分からないことを言う女と、ビビを慕う少年達に囲まれて、
一体何をしていたのかサッパリ分からない。
「いい?私に断らず、勝手に行っちゃわないこと!」
「う、うん……わたたたた……」
そう、勝手に行かないで欲しい。
自分に背中を見せたまま、勝手にどこかに行かないで欲しい。
「あ!ほら、またどっかに行こうとして!!」
「しょうがねーだろ、娘っ子よ〜?相棒、人ごみに流されやすいんだからよぉ」
こういうところは、頼りないなとまた溜息が出る。
「あーもう!しょうがないわねぇ!!――ほら、手!手をつないでれば勝手に行かないでしょ!」
「あ、う、うん、ゴメンね、ルイズおねえちゃん」
ギュッと、その小さな手を、自分よりも小さなその手を握る。
こんな小さな手で、守ってくれたのかと、目の奥が熱くなる。
「……ルイズおねえちゃん?」
いけない、ビビが見ている。
そうだ、貴族たるもの、涙を流す時と場所は選ばなくては。
「な、なんでもないわよ!さぁ、行くわよ!!」
強い言葉で、また背伸びをしてしまう。
似合わない背伸びを。
誰かの背中に追いつきたくて、誰かと肩を並べたくて、
精一杯の背伸びを。
いつかきっと、いつかきっと、
背伸びをせずに、もっと自然に歩けたらいいな、と思う。
もっと気楽に、肩を並べて、歩けるようになりたいと思う。
自分より、はるかに小さな、使い魔――友達と。
「あ、そうだ、さっき美味しそうな屋台があったけど、寄ってく?甘くてフワフワで――」
「え、ルイズおねえちゃん、また甘い物?ラ・ロシェールでも一杯食べてたような……」
「甘い物は別腹なの!行くわよ!!」
「ひ、ひっぱらないでよ〜……」
今は、ちょっと背伸びをしてしまうかもしれない。
でも、いつか来るその日が来るように、明日からもっとがんばろう。
ルイズはその小さな胸に、小さな小さな誓いをした。
――――
ピコン
ATE 〜男は怒りを胸に〜
「――もう一度その口を開いてみろ、貴様っ!!」
「どうすると言うのかい?まったく、役者不足にもほどがあったよ、君の演技」
アルビオンはハヴィランド宮、男たちの口論はますます熱が入る。
最も、一方的に髭の男が怒気を露わにし、
それを軽々と銀髪の男が受け流すそれを、
口論と言えるのかどうかは、判断に困るところであろう。
「油断した?焦った?勝手に暴走した挙句、肝心の品は何一つ手に入れられない――
失望の色を隠せないよ。実に茶番だね!」
「黙れ!貴様が、貴様が情報を寄越していれば!!あの帽子のガキを知っていたのだろう!?」
失った左腕がもし今あれば、間違いなくこの舐めきった態度をとる男を殴っただろう。
それほどに、ワルドの怒りは頂点付近にあった。
「言ったとして、聞いたかい?『小娘一人ぐらい楽に籠絡してみせる』と息まいてた君が?
僕がフォローしなかったら、今頃この城すらも失っていたかもねぇ、誰かさんのせいで」
「き、貴様っ!!」
何がフォローだ、とワルドは思う。
隠れてコソコソ伺っていたのか、こちらの動きは全て抑えられていたらしい。
その上で、全てが終わった後にノコノコ出てきて手柄をかっさらいやがった。
かつての王子の亡骸と、その部下共のなれの果て、そして無傷の城。
わざわざ本隊の突入を遮って、「全てお任せを」などと断り、手柄を手中にしたと聞いた。
結局、俺はこいつに踊らされていただけなのか?
怒りで奥歯が噛み砕けんばかりに力が入る。
「その辺にしたまえ、クジャ君!」
「あぁ!クロムウェル『皇帝陛下』!お見苦しい所をお見せいたしまして!えぇ、ご随意に!」
よくもよくも舌が回るわ、態度も変えるわ、怒りを通り越して呆れてしまう。
礼拝堂に歩み入るは痩せた男、おおよそ『皇帝陛下』と呼ばれるには相応しくない男だと、ワルドは思う。
しかし、彼には『力』がある。
「ふむ、そして、『コレ』が戦利品というわけか!」
「えぇ!残念ながら、『手紙』と『ルビー』は失いましたが、陛下の就任祝いには十分ではないかと!」
大仰なクジャの仕草。
コイツは他人の神経を逆なでするコツを心得ているのだろうか、一つ一つが癇にさわる。
「はっはっはっ!無傷の城と『コレ』が何よりのプレゼントだよ!実にすばらしいね!」
『コレ』は静かに、死んだように眠っていた。
いや、間違いなく死んでいるだろう。
ウェールズ王子の亡骸、それだけは間違いなく自分が仕込んだものだと主張しなければならない。
だが、それすらもかなわない。
自分は、逃げて帰ってきた。
小僧相手に左腕を失った上で、だ。
それに比べ、この腹の立つ男はゴーレム軍団を率いて悠々の帰還を果たしている。
横から来て、全てを掻っ攫って。
これでは、どちらが功労者かと問われれば間違いなく後者が選ばれる。
それに異を唱えることは、僻みとしかとらえられないだろう。
血管が浮き出るほどに、ワルドは現状に、ふがいない自分に、卑怯なるクジャに怒っていた。
「さて、さて、さて!プレゼントの包みを開けるとしようかな!」
左手を、王子の遺骸にかざすクロムウェル。
虹をカンバスに押しつけてそのままずらしたような、禍々しい色合いの光がジワリとにじみ出る。
王子の躯が、ピクリと動く。
虚無の力、それは死者をも動かす力。
ワルドが、何よりも欲する力。
「――おはよう、皇太子」
クロムウェルの顔が、愉悦に歪む。
「――久しぶりだね、大司教」
生気の感じられない、虚ろな声で、王子が答える。
「今は皇帝だよ、このアルビオンの皇帝だ」
「これは失礼した、閣下――」
欲しい。
獲物を狙う輝きが、ワルドの瞳に宿る。
「いやはや、素晴らしいお力ですな、陛下!――あぁ、ところで、御相談ですが」
「ふむ?何だね?」
下劣な笑顔のままで、クロムウェルがクジャにふりかえる。
「流石に、この連戦で僕のゴーレム部隊も摩耗してましてねぇ――
メンテナンスをしなくてはならないので、一度引き返させてほしいんだ」
見ると、礼拝堂の外にはガチャガチャと大量の物言わぬ兵。
こんな連中に手柄を取られたのかと、またワルドは歯噛みする。
「ふむ?ゴーレムといえど消耗品か――残念だな!すぐにでもトリステインに攻め入りたいところだが!」
「戦いで貴重なデータも得ましたし、次回はもっと強化いたしますよ。
あぁ、ついでに勝手ながら、船を一隻お借りしたく――何しろ、大部隊ですので」
「あぁ、よいよい!君との取引は今後も続けたいからね!クジャ君!また世話になるよ!」
「フフフ、それでは、お言葉に甘えて――僕の留守中の御用は、そこの秘書にお申し付けください」
クジャの指し示す方向には、いつの間にやらフーケの姿があった。
薄汚い盗賊風情の次なる狙いは小賢しい武器商人の秘書か、とワルド侮蔑の視線を送る。
どいつもこいつも、思い通りにならない力ばかり。
いいさ、そんな力ならば不要だ、とワルドは自分を慰める。
「クロムウェル皇帝陛下、以後よしなに――」
「これはこれは、美しい秘書殿だな!」
ニヤリ、とまたクロムウェルの野郎が顔を歪める。
どうせ夜に呼ぶことでも考えているのだろう。
力をそんなことにしか使わない下衆が。
「さて、それでは、皇帝陛下。またお会いする日まで――」
「あぁ、次なる戦でも色々頼むぞ」
最後まで舞台役者か色街の男娼かといった風情で如才なく一礼をして去る男。
ガチャガチャとお付きの物言わぬ兵どもを従えて凱旋か。
けっこうな御身分だと唾の一つもはきたくなる。
「あぁ、そうだ、ワルド君」
「――なんだ、武器商人」
嫌悪感を隠そうとせず、クジャを正面から見据えるワルド。
「見える『力』が全てじゃない、見えない『力』に足元をすくわれないように。
――これが僕からの忠告さ。ご迷惑じゃなけりゃ受け取ってくれよ」
「ふんっ!」
訳の分からない言葉で俺を煙に巻くつもりか、
とばかり鼻息でそのありがたい忠告とやらを吹き飛ばす。
クジャの姿が見なくなったことで、やっと心が落ち着いた。
あのような男は戦場を汚す。
ワルドは、その機会をぬい、クロムウェル『皇帝陛下』に話かける。
「――閣下、あのような男に頼ってはいずれ足下を――」
「――君には失望してるんだがね、ワルド君!」
しかしこれをアッサリと跳ね返す『皇帝陛下』。
「君が全てを入手してくれるのでは無かったのかね?
嘘つきと、金さえ払えば全てを用意する武器商人。どちらを私が信用すると思う?」
クソッ。
ワルドは奥歯を噛みしめる。
事実が事実だけに言い返せない。
「だが、私はまだ君の力に期待しているよ。次はもっとうまくやりたまえ――
それでは、行こうか、皇太子殿、秘書殿。――えーと」
「ロングビル、と及び下さい、皇帝陛下――」
「――ロングビルさんか、どこかで前に会ったっけ?」
「いえ、初対面だと存じますわよ、皇太子さま?」
左腕を失った男を残し、談笑する一団が場を後にする。
力だ。
礼拝堂に一人残ったワルドは、顔の無い始祖の像を睨みつける。
始祖よ、俺はあんたほどの力が欲しい。
全てを手に入れる力が、
全てを眼下におさめる力が、
死すら蹂躙する力が、
俺をコケにした連中をたたきのめす力が。
『聖地奪還』を標榜とする『レコン・キスタ』にあって、
ワルドは特に信心深いというわけではなかった。
そこにあるのは、単純な力への憧れ。
力さえあれば、力さえあれば、力さえあれば――
何も、失わなかった。
腕も、母も。
「始祖よ、俺はあんたを超えてみせる。『力』を手に入れてな」
男は、今は耐えることを誓う。
いずれは、『皇帝陛下』の虚無の力を奪い取れるなら奪い取り、
『力』でもって聖地を平らげ、
全てを、取り戻すために。
失ったもの、全てを。
怒りを胸に、男は礼拝堂を辞した。
―――
投下完了です。
次回は、早めにできれば……修羅場が修羅場が修羅場が来るよ来てるようわわわわわわ(壊れかけ)
というわけで、お目汚し失礼いたしました。
黒魔導師の人、乙。
細かいんだが、デルフを使ってるってことは『真剣勝負』形式の訓練か?
才人ですら訓練時には木剣を使ってたのに、やけに危ないコトするなぁ。
黒魔の人は原作読んでないから細かい事は考えてないんだろ
乙です。
クジャイヤミすぎるw
ワっさんカワイソス
原作読んでないなんて言ったっけ?
なんにせよビビの人乙。俺の知ってるクロス元の中での数少ない連載作品だから頑張ってほしい。
前に原作読んで無いってどうよ?って流れの時に
黒魔の書き手は原作未読と言ってた
まぁどーでもいいけどね
わざわざ原作未読発言したのかw
原作と言ってもアニメとコミックもあるわけで。
アニメとコミックはラノベからの派生だろw
SSにするなら一番情報が多いラノベを読むのは必須だろw
騎士団の人乙です。
ソーラレイてwwwマテυwww
次回にwktk。
逆に原作は全部読んでるけどアニメは1話分ぐらいしか見てないとかはいいんだろうか
板が板だし必須とまで伊湾でいいじゃん
ゲーム版しかやってないとかだとヒくけどw
ここでSSが書きたくて原作全巻集めて読んでアニメも集めて見た
それだけで正直つかれた
だが、これから本番
>>209 ゼロ魔は小説が大本なんだし、それを読んでればアニメやコミックはどうでも良いんでない?
それにアニメに関しては、デルフがサイトをテレポートさせたり、
ギーシュ(とキュルケ?)が先住魔法を使ったりと酷い改悪もあるらしいしさ。
つーか、アニメもコミックも小説が原作でしょ?
>>204 まぁ、ゼロ魔側をどう考えてるかだよな。
クロス先を出したいだけとかなら、小説まで読んだりしないわな。
>>202 そういやスダ・ドアカワールドにもスペースコロニー有るんだよな…
まあコレは武者ガンダムと騎士ガンダムの舞台が海を挟んで居るだけで同じ世界だから
大鋼の話で登場した廃コロニーは同様に騎士側にも存在しているってだけなんだけど
てか原作未読で書くのって難しくね?
>>ソーラレイ
ラクロアンヒーローズ騎士ガンダム物語だったかな
それでナイトガンダムが覚える最強も呪文がソーラレイ
多分以降のナイトガンダムのRPGでもソーラレイはある・・・と、思う
記憶が定かではないが
>>208 原作未読でアニメも見た事無かったけど、ここのSSをいくつか読んだら
だいたいのキャラやストーリーは把握出来た
>>206 アニメってそんなんになってんのか、ひどいな……
>>210 で、SS書くために原作買ったんだろ?つまり、そういうことか?
>>211 キュルケもギーシュも「XXXXの聖霊よ〜」って言いながらヨルムンガントに攻撃してた
>>208 アニメとかコミックの他に、ゼロ魔の二次創作を読んだりして書いちゃうんじゃない?
何がなんでも使い魔を犬呼ばわりさせたりとか。
>>211 俺も見てなかったから知らなかったんだけど、
又聞きしてググッて驚いた
>>212 俺はとある影響で二次創作は原作へのオマージュがモットーなんだな
だからSSを書く以上は一応原作を読んでおかないとと買いました
まぁ原作未読でもアニメかコミック把握してるならそれで良いと思うけどね。
二次創作しか読んでないのはさすがに論外としか言えないが。
ちなみに自分はこのスレのおかげでゼロ魔全巻揃えた。浮気しすぎで未だ読みきってないから早く読み終えねば……
黒魔の方、乙です。
ちょうどFF9で遊んでいますが、やはりワルド程度ではクジャを相手にするには役不足ですなw
クジャのゴーレムとはもしかして黒魔導士兵ですか?
次回も楽しみにしています。
役不足……?
ちゃんと読んでないだろお前
>>218 ニホンゴムツカシイ
汚名挽回に通じるものがあるね。
>>216 まぁ、こういうコミュニティーで、名無しで書き捨てる以上の発言をしようと思うのなら、原作は読むべきでしょう。
全編に溢るるラブコメ分に脳漿に鋭痛を感じながらも原作読破して、さらにアニメまで見た俺はそれを広く推奨する。
まぁ、ラブコメ嫌いでハーレム嫌いの人間が嗜むものじゃないよな。
先輩と話を合わせるために頑張ったんだが。
二次創作は、結構読める話も転がっているんだが。
アニメルイズ<<<<原作ルイズ
役不足は間違えれば当然突込みが入るし
正しく使っても無知が突っ込んでくる
力不足とかで誤魔化したりもしてたけど
もう初めから使わないほうが賢い気がする
力不足でいいじゃん
>>213 『火の精霊よ!』『土の精霊よ!』って言ってただけだし、ありゃ単なる口語呪文みたいなもんじゃないの?
水の秘薬だって水の精霊の一部で作られてるんだし、そういう口述あってもおかしくない気がするが
まあヨルムン埋めたギーシュの土魔法は、ホントにドットの魔法かよって感じだったがw
役者不足なんて書いてたマンガがあったが、明らかに違和感あった。
力不足でもいいし、荷が勝ち過ぎてるなんて表現もあるから無理に使わなくてもいいだろうに。
確信犯も一般的な意味は誤用だと聞いたが、どうなんだろ?
荷が重すぎる
とか。
言語は変化するものなんだから
その辺の突っ込みは無粋だと思うんだよなあ
まぁ、誤った使い方をするくらいなら、無難な表現で済ましとけって
ことだな。
まぁそこら辺は一人一人の読み手の感覚の差だろうね
深く考えなくていい
>>229 本人が間違ってると気づいてない場合もあるんだぜ
役不足:演者の力量 > 役の難度
役者不足:演者の力量 < 役の難度
どちらも演劇ネタで反意語になってるからな。
確信犯みたいに意味が変遷してきたのと同列にみるのは如何なものか。
>>225 テラヒドスw
精霊への語りかけで発動するのは先住魔法。
キュルケとギーシュが正真正銘の異端になってるぞ
アメコミのキャラってどの時点のどの作品かによっても性格が違うよね
そもそも役者不足って言葉はガイエ以前に使われていたのか?
初期のバットマンと今のバットマンじゃ住んでる宇宙も違うしな
役不足:役が不足している(役者に対して)
役者不足:役者が不足している(役に対して)
よく考えれば分かりやすい間違いだよね
そしてゲシュタルト崩壊が起きてきたのも私だ
『ら』抜きも気になるご時勢ですね。
『ら』抜きも普通に使われるようになりましたが
知的なキャラのしゃべりには『ら』抜きをして欲しくない感じ。
キャラ作りの一環? みたいな?
>>237 ら入れ言葉よりはましだろう。
シリアスなキャラが、うっかりら抜き言葉を使ってもまだ許せるが、逆はかなり萎える。
あれ?バットマンの人まだ投下無し?
ちょうどThe Dark Knight観終わったから期待してたんだがw
関係ないけど最近のヒーローは内面で葛藤するのが流行ってるな
前田利益が召喚され
慶次「ルイズ、"ちぇす"をせんか」
242 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:33:20 ID:nwzGmPKe
こんばんは、色々あって気の重い最低野郎です。
劇場版にあわせようと思ったらもう1月も終わりですね……。
「例えSS作者にだって、俺は従わない」
書いててこんなことをキリコに言われた気がしましたね、ホントw
それでは1:35分あたりから投下させていただきます
割りと切実な質問なんだが
おまいらがSS書くときってさ
キャラとしての立ち方が声優の実力で支えられてるような奴を文章に起こす時どうしてる?
アニメで声優の声でセリフを聞いた時は個性抜群なんだが
文字に起こして文章で書くと違和感を感じるキャラ、みたいな
なんかこう上手く出来ないんだよね
やっぱァとかぁとかを細かく使った上で読み手の脳内再生に任せるしかないんだろうか
244 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:36:01 ID:nwzGmPKe
第6話「決闘」
決闘の準備をするため、部屋へと向かうキリコとその後を追うルイズ。
道中、ルイズは考え直すよう説得していたが、キリコはほぼ無視して部屋に戻る。
そして部屋に入るなりこう言った。
「やつの魔法を教えてくれ。」
戦う相手の情報は、少しでも多いほうが良い。
それは時に、戦場での生死にさえ直結することを、キリコはよく知っていた。
答えを待ち、じっと静かにルイズを見る。
「……どうしても、引く気は無いの?」
やめさせたいルイズは問う。しばし、互いに無言で見つめ合っていた。
やがてルイズは目線をそらすと、大きなため息をつく。
「はぁ〜……。わかったわ、そこまでやる気なら、私はもう止めないわ。
ギーシュの魔法も教えてあげる。けどその代わり、一つだけ命令を聞きなさい。いい?」
ルイズはそう言うと、キリコに向けて右手の人差し指を立てる。
頷いて、キリコは了承した。
「『絶対に勝つこと』。主人を無視して、勝手に勝負受けておいて、負けたから謝りましょう?
私はね、そんな恥さらしな真似はぜぇ〜〜〜っっったいにお断りなんだからっ!!」
決意を変えぬキリコに対する、ルイズができる最大限の譲歩だった。
キリコもまた踵をそろえ、無言の敬礼で答えた。
トリステイン魔法学院は、本塔と各属性を現す五本の塔から成り立つ。
五大属性を現す各塔は本塔と通路で結ばれ、さらに各塔を結ぶ形で外壁が構成されている。
その形は、丁度ペンタゴン(五角形)の形になるよう設計されていた。
ヴェストリの広場は周囲五塔のうち、『風』と『火』の塔の間にある中庭である。
構造上西側にあるので、日中でもあまり日の差さないこの広場に今、多くの生徒がひしめいていた。
噂は広がり、賑わいをききつけ、刺激に飢えた生徒はまだまだ集まってくる。
その広場中央のあたりに、杖として使っている薔薇を携え、ギーシュは待っていた。
憂さ晴らしの獲物が来るのを、今か今かと待ちながら。
「ルイズと使い魔の平民がやってきたぞっ!」
生徒達は歓声をあげる、命知らずがやってきたと。人垣をわけ、キリコとルイズがやってきた。
「とりあえず、よくぞ逃げずに来たことを褒めようじゃないか。」
ギーシュの挑発的な言動を聞き流しながら、キリコはぐるりと辺りを見回す。
地面は起伏もなく平坦。遮蔽物となりそうなものは、周囲には見た限りなし。
(正面から戦うほかないか。)
無駄撃ちを避けるため、自動小銃のセレクターをセミオートにしながら、キリコは考える。
ギーシュは戦闘で、主に複数のゴーレムを操るとルイズから聞いていた。
人ではない、命を持たぬ相手。自分の持っている銃で、どの程度攻撃が効くかはわからない。
もし囲まれでもされた時、ゴーレムを倒して抜け出せるか?
また仮にゴーレムを倒せても、ギーシュの使う魔法がそれだけとは限らない。
直接的な攻撃魔法を使われて、果たして避けることはできるのか?
あらゆる状況を想定し、対応を考えるが、それが実戦で出来るかといえば、否である。
>>243 回数重ねて練習するしかなくね?
原作とか設定資料とか読み漁るしかなくね?
要は観察じゃね?
支援しえーん
247 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:37:43 ID:nwzGmPKe
(どの道、やってみるしかない。)
敵の戦力も、戦場もある程度わかっている。準備もしていた。
ならばあとはただ、戦うだけである。
覚悟を決めるキリコ。そのとき左手のルーンの輝きが、少しずつ増していた。
そんなキリコを見ながらギーシュは言う。
「それが君の武器か。あのゴーレムは使わないのかい?」
「……。」
いくら魔法を使うメイジとの勝負といっても、魔法以外は至って普通の人間だ。
これが大軍団ならともかく、流石に一人相手にATを使用する気はキリコにはない。
今のキリコの装備は、常に携帯しているアーマーマグナムと、自動小銃。
それとそれぞれの予備の弾が少々に、ナイフ一本といったところだ。
他にも手榴弾などがあったが、数は多くないので持ってきてはいない。
現状では補給の見込みが期待できない以上、そうやすやすと使うわけにもいかないからだ。
ATを使わないのも、このあたりの事情が関係していた。
何も言わずに睨んでくるキリコが不愉快なのか、ギーシュは内心で苛立つ。
「ふん……では始めようか。勝敗は実に簡単、『降参する』と言ったほうが負けだ。」
ギーシュはそう言うと、薔薇を一振りする。花びらが一枚、宙に舞った。
するとそこから、一体の甲冑を着た人形が現れた。
「……っ。」
キリコは即座にライフルを構える。また身体が軽くなる感覚がした。
「僕の二つ名は『青銅』。この青銅のゴーレム、ワルキューレで君の相手を務めよう。」
(様子見か……。)
現れたゴーレムは一体だけ。力量を図ろうという魂胆だろうか、もしくは余裕の表れか。
全力をださないで戦ってくれるのなら、それはそれでありがたいとキリコは思った。
ギーシュはワルキューレを動かし、一歩一歩、ゆっくりとキリコに向かわせる。
対するキリコは動かずに、その動きを注視していた。
「……。」
ワルキューレがキリコの距離が縮めていくと同時に、ギーシュとの距離は次第に開いていく。
「どうしたんだい、怖気づいて足も動かせないのかな?」
ギャラリーから、醜き笑いと野次が溢れ出る。
「はーっはっはっ!そろそろ命乞いでもした方が良いんじゃねーの!?」
「びびってちゃつまんねーぞ、平民ー!」
「こっちはお前に賭けてるんだ、ちゃんと戦えー!」
実に浅ましき生徒たち。果たしてここは本当に、貴族の子女が通う学院であろうか?
生徒達の声も、キリコは耳に入れることはなく、ひたすらワルキューレに注意を向けている。
ワルキューレが一歩近づいてきた。キリコは動かない。また近づいてくる。キリコはまだ動かない。
近づく。動かず。近づく。動かず。近づく。動かず。近づく。
(……っ!)
キリコが駆け出した。ギーシュもワルキューレを突進させる。
どちらも一直線に駆けていき、突進の勢いそのままに、ワルキューレはキリコへ殴りかかる。
ここでキリコは動きを変えた。
左足を横へ僅かに突き出して制動をかけ、そこを軸に身体を捻り、攻撃を紙一重で避けた。
さらにその際、攻撃が空振りして無防備なワルキューレに向け、引き金を引く。
甲高い発砲音が一発、広場に響いた。
248 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:39:06 ID:nwzGmPKe
時間はほんの少し遡り、学院長室。
図書室から全速力で駆けつけたコルベールは、キリコのルーンについて説明していた。
「ふ〜む……行き着いた先が、まさか伝説の使い魔『ガンダールヴ』とはのぅ。」
説明を受けたオスマンは、どこか胡散臭げにスケッチと書物のルーンを見比べる。
「そうです!間違いありません!ほら、彼のルーンをとったスケッチとこの―」
「あ〜わかったわかった、それはもう聞いたわい。」
興奮気味な様子のコルベールを、オスマンは落ち着けさせる。
「確かに同じルーンじゃ。それはワシも認めよう。
だがの、それだけで決めるのはちと早計……前にも同じこと言った気がするわい。」
そのときドアがノックされる。
「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン。」
扉の向こう側から聞こえてきた声は、オスマンの秘書、ミス・ロングビル。
余談だが、彼女に対して、オスマンは数々のセクハラを日常的に行っている。
また、それを叩きのめすミス・ロングビルの戒めも同様だ。
しかし、そんな掛け合いは、決して二人以外知ることはない。
コルベールが来る前にも勿論あったのだが、それはまた別の話。
閑話休題。
オスマンはミス・ロングビルに問いかける。
「何事じゃ?」
「ヴェストリの広場で決闘が行われているらしく、大騒ぎになっています。
教師の方々が止めようとしましたが、生徒の数が多すぎてとても……。」
「かぁ〜〜〜っ……。これだから、暇をもてあました貴族の子女というのは性質が悪い。
誰じゃ、そんな馬鹿げたことをやっておるのは?」
額に手をつけながら、再びオスマンは問いかける。
「一人は、二年のギーシュ・ド・グラモンで、もう一人が……。」
そこでミス・ロングビルは言いよどむ。
「グラモン……あぁあのグラモンとこのバカ息子か。
まったく親が親なら子も子じゃ、どうせ色恋沙汰じゃろ。で、もう一人はどこのどいつかね?」
「それが、その……ミス・ヴァリエールの使い魔の男です。」
オスマンとコルベールは顔を見合わせる。
「騒ぎを止めるため、教師達から『眠りの鐘』使用の申し出が着ておりますが。」
オスマンの目つきが変わった。
「いや、秘宝の使用許可はださん。放って置くように言いなさい。」
「はい、わかりました。」
そう言ってミス・ロングビルは、扉の前から去っていった。
それを確認したオスマンは、壁にかかった鏡に向けて杖を振る。
程なくして、鏡にヴェストリの広場の様子が映し出された。
「伝説が本物かどうか、この目でしかと確かめてみるかのぅ。」
249 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:41:58 ID:nwzGmPKe
弾丸を受けた衝撃で、ワルキューレはそのまま前のめりに倒れた。
キリコは回転しつつあった身体を止め、銃を構えなおす。
その動きに合わせるかのように、左手のルーンがさらにj輝きを増していく。
銃のセレクターを三点バーストに変え、倒れたワルキューレの首と両膝に撃ち込む。
弾は恐ろしいほど正確に撃ち抜き、首と両膝を破壊した。
するとワルキューレの動きが止まる。
(ある程度の破壊で、無力化くらいはできるか。)
冷静に分析するキリコに向かって、驚愕に染まった顔でギーシュは叫ぶ。
「な、なんだそれはっ!?」
そこから広場の空気は一変していった。
「銃じゃないのか……?あれ。」
「あんな形の、見たこともないぞ。」
ハルケギニアの常識から外れた武器に、皆動揺を隠せないでいる。
「今、連続で発射してなかったか?」
「もしかして『東方』で作られたんじゃ……。」
口々に疑問や憶測を言っていく生徒達。
(銃、銃だってっ?バカなっ!あんな短時間で何発も撃てる銃なんて、聞いたことないぞ!?)
キリコの使っている武器。それが『銃』などとはありえないと、ギーシュは思っていた。
ハルケギニアの銃は、火薬を載せた火皿に、火縄か火打石で着火するという方式が主流だ。
銃の形態も、それぞれの方式に長短二種類の銃身がある。
ただ、どれも一発撃ってはこめ直さなければならない上、射程距離も命中精度もよろしくない。
キリコの世界からすれば、もはや歴史博物館の資料レベルに値する代物であろう。
だがハルケギニアという世界の技術水準は、未だにそのくらいのもでしかないなのだ。
キリコは今し方破壊したワルキューレから、それを作り出したギーシュへと視線を向ける。
視線に気づいたギーシュは、慌てて新たなワルキューレを作り出す。
「ワ、ワルキューレェッ!!」
今度は槍を装備したワルキューレが、総勢六体現れた。
(本気を出したか。)
一気に増えた敵を見ながらキリコはそう思った。ふと、違和感を感じる左手を見る。
(光っている……。)
いつもより身体が動いたり、銃を正確に撃てたりするのと、このルーンは関係があるのか。
しかしキリコには、未だ何も分からないままだった。
(……まだやることがあったな。)
思い出したようにキリコは思考を切り替え、答えの出ない疑問を封じる。
左手から視線を戻すと、その先には依然キリコを睨みつける、ギーシュと六体のワルキューレ。
(今はこいつに勝つのが先決か。)
キリコが再び銃を構えると、それに応じるかのように、左手のルーンがさらに輝く。
倒すべき敵へ向けて、キリコは再び駆け出した。
250 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:43:52 ID:nwzGmPKe
「くっ、一体倒せたからといって、調子に乗るなよっ!」
ギーシュもキリコへ向け、ワルキューレを突進させて迎え撃つ。
だがその動きは、キリコには緩慢なものに見えていた。
(遅いっ。)
一番近いワルキューレが突き出す槍をかわし、隙の出来た右側の肘と膝にバースト射撃を与える。
倒れる様子を横目で見送ると、次の目標に移る。
一体目の直ぐ右斜め後ろにいた二体目の、首と両膝に向けて撃つ。
両膝から下を失って、突進の勢いそのままに地面に激突。衝撃で、破損した首が千切れた。
後方から迫ってきていた三体目と四体目は、先二体の残骸を避けようと一瞬止まる。
キリコはそれによって出来た隙を見逃さず、素早く三体目の首へ撃ち込む。
その頭部が地面に落ち始める時には、既に四体目の膝に撃ち始めていた。
(ウソだろっ!?なんで僕のワルキューレが、こんな簡単にっ!しかも平民なんかにっ!)
ギーシュは焦りと恐怖で、ワルキューレの操作が徐々に雑になっていく。
四体目も、やはり首と膝を撃ち抜かれて地面に崩れ落ちた。
その隙を突こうと五体目が接近するが、無謀にも真正面から突っ込んでいく。
案の定、両肘と両膝を撃たれて、何も出来ずに行動不能にされる。
気づけばワルキューレ六体中のうち、五体を既に倒されており、残りは一体になった。
「も、戻れワルキュ―っ!」
自分の盾として六体目を戻そうと、ギーシュはワルキューレを動かす。
だが動かそうとした瞬間、首と両肘両膝に正確な射撃を食らい、最後の一体も倒れた。
全てのワルキューレを倒され、ギーシュは放心した。
キリコは次の攻撃に備えるが、魔法を使うための精神力は、すでにギーシュにはない。
しばしの静寂が、広場を覆った。
(打ち止めか。)
何も仕掛けてこないことを確認すると、キリコは一気に距離を詰める。
「ひっ!」
あまりの恐怖にギーシュは腰を抜かし、思わず尻餅をついた。
その様子を何の感慨もなく見下ろしながら、キリコは自動小銃の銃口を向ける。
「待った!や、やめてくれっ!撃たないでくれぇっ!」
青銅でできたワルキューレを容易く打ち負かした、見たことも聞いたこともない銃。
そんなもので人が撃たれたら、果たしてどうなるのか。悲惨な想像がギーシュの頭によぎる。
「降参しろ。」
キリコはそう言うと、銃口をギーシュに近づける。
「わ、わわ、わかったっ、降参だ!僕の負けだ!」
ギーシュは負けを認めるが、キリコはやめない。もう一つ確認が済んでいなかった。
セレクターをセミオートに戻し、さらに銃口を近づけながらキリコは問う。
「確認する。謝るか?」
「謝ります謝ります!君にもルイズにも謝ります、絶対にっ!だから銃をしまって!
いやしまってください!頼みます、命だけは助けてっ!やめて、お願いしますぅぅぅぅぅぅっ!」
ついには泣き叫び、土下座までして命乞いをするギーシュ。
負けと謝罪の確認をとったキリコは銃を下げて近づき、ギーシュから薔薇を取り上げる。
それを放り投げ、一発。
無慈悲な鉛球が薔薇を捕らえ、その花弁を散らした。
一拍の間を置いて、ヴェストリの広場に盛大な歓声が沸き起こった。
251 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:45:23 ID:nwzGmPKe
「ホントに、勝っちゃった。」
戦いを見ていたルイズは呆然としていた。
まさか傷一つ負わずにメイジに勝つなど、考えてもいなかったことだ。
だがキリコは勝った。それは紛れもない事実である。
「……。」
「あっ。」
いつの間にか、ルイズの目の前にキリコが立っていた。
「え……っと、勝ったのよ、ね?」
「あぁ。」
キリコはそれだけ言うと、ルイズの脇をさっさと通り過ぎる。
「ちょ、ちょっとどこいくのよっ!?」
ルイズの問いかけに、一度立ち止まる。
「ATを見てくるついでに、夕食もとる。済んだら部屋に戻る。」
そう言って再び歩き出し、キリコはヴェストリの広場から去っていった。
広場の喧騒をよそに、残されたルイズは一人つぶやく。
「っもぅ、使い魔のくせに勝手なことばっかりっ!」
「勝ちましたね。」
「うむ。」
コルベールとオスマンは、決闘の一部始終を見終わっていた。
「やはり、やはり間違ってなかったのです!あの身のこなし、普通の人間には真似できません!
ギーシュは最低ランクのドットメイジとはいえ、ただの平民に遅れをとることなどまずない!
しかし彼は勝った!間違いありません、彼は伝説の『ガンダールヴ』ですよ、オールド・オスマン!」
コルベールは非常に興奮した様子で、オスマンにまくし立てる。
「わかったわかった、そんなうるさくせんでも聞こえとるわい。」
そう言ってオスマンはコルベールをなだめる。
「これは世紀の大発見!早速王室に報告して指示を―」
「それには及ばん。」
オスマンは厳しい目つきでコルベールを止める。
「ミスタ・コルベール、『ガンダールヴ』はかの始祖ブリミルが用いた使い魔だと聞く。」
「はい。文献によれば、主人が呪文を唱えている長い時間、それを守るための存在であると。
さらにその力は、曰く、千の軍隊をたった一人で相手にできたとか。」
手に持った書物のページを見ながら、コルベールは答える。
「そうじゃ。その『ガンダールヴ』である彼は、確かミス・ヴァリエールの使い魔じゃったか。」
「えぇ、確かにそうです。最初召喚されたときは、ただの平民だと思っていたのですが。」
「ミス・ヴァリエールはメイジとしてどうなのかね?」
「え?あー、その、魔法が失敗ばかりで、なんというか、まぁ……。」
どう答えて良いものか、コルベールは言葉を濁す。
「メイジとしては、決して優秀なわけではないじゃろう?」
「まぁ、そういうことになりますな。」
苦笑いでコルベールはそう返した。
また新たなギーシュがかませとして散っていったか…w
支援
とはいえここはアニメの板だしなあ
アニメの設定で書かれてもあまり責められないなあ
254 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:47:28 ID:nwzGmPKe
「うむ。そして問題はここからじゃ。」
オスマンの表情が、一層険しくなる。
「そんな彼女が、なぜ伝説とまで言われるほどの使い魔を呼び出したのか。全くもって謎じゃ。」
「言われてみれば、確かに……。」
オスマンの言葉に頷くコルベール。オスマんは立派な髭をなでながら続けた。
「彼についても同様じゃ。そもそもなぜただの平民が、『ガンダールヴ』になったのか。
恐らく、異世界から来たという推測も含めて、何か関係あるやもしれんのぅ。」
「おぉ……!」
「とにかく、このことは機密扱いじゃ。もし王室のロクデナシどもに報告でもしてみぃ。
宮廷にいる暇を持て余した戦好きな連中が、彼らの力を利用して戦でも起こされたらかなわんわい。」
「ははぁ、学院長の深謀には恐れ入ります。」
「だからこの件はワシが預かる。口外もせんように。わかったの?」
「は、はいっ、わかりました!」
午後の日差しが、夕日になる少し前の出来事だった。
予告
恋とは、実に甘美な果物である。
それは同時に、時に理性を壊し、人を狂わせる猛毒も孕んでいた。
しかし誰もが知りながら、止めることなくそれを食す。
例え壊れてでも、得がたい愛があるのだと。
夜の学院に、愛に溺れた狩人がキリコを狙う。
次回「微熱」
キュルケは魅惑の焼夷弾。
炸裂、爆裂、ご用心。
乙です
256 :
装甲騎兵ゼロ:2009/01/27(火) 01:50:10 ID:nwzGmPKe
以上で終了になります。 さすがに決闘でATは使えませんでしたw
さて次回はまたいつになるやら……
支援してくださった皆様、ありがとうございました。
最後にペールゼン閣下からのお言葉を
「ルイズに召喚シリーズは…・・・異能、生存、スレ」
最低野郎乙
キリコ乙
・・・キリコってこんなに独白多い男だったっけ?
降下、じゃなくて投下乙でした。
>>258 キリコと言えばモノローグだからなあ。
無口に見えて、結構べらべら喋ってるし。
乙、ボトムズ見返しちゃったぜ
魔導物語より変態を召喚してみようと思います
今回はシェゾの独壇場だけど、次回からはルイズ達もしっかり活躍する予定
263 :
ゼロが欲しい:2009/01/27(火) 02:55:50 ID:P3j7nxW2
(何処だここは・・・)
青く晴れ渡った空の下、闇の魔導師は呆然と立ち尽くしていた。
時空の迷宮――
時空の水晶なる謎の宝石の力により、人が入るたびに形が変わるという不思議なダンジョン。
その宝石の並々ならぬ魔導力を得るため、闇の魔導師・シェゾ=ウィグィィは時空の迷宮に赴き
約一週間に渡る探索の末、ついにダンジョンの最奥まで辿りついた。
しかし時空の水晶に触れた瞬間、体を電撃が駆け抜けたかのような衝撃が襲い、体から力が抜け始めた。
――ヤバイっ!
命の危険すら感じたシェゾは、弾かれるように水晶から飛退いたが、飛んだ先が不味かった。
何時の間にか出現していた鏡のような物に頭から突っ込んでしまったのだ。
一瞬、もしや致死性のトラップに引っ掛ってしまったのではと焦ったが、どうやら侵入者を排除するだけの転移系罠だったらしく
しばらく異空間を流れた後、通常空間への転移が完了した。
(腕に覚えのある魔導師を奥に誘い、その力を吸収する。そのまま吸い殺せればそれで良し、失敗すれば反撃を受ける前に転移魔法で放逐って訳か。
生かして帰すのは、まさかリベンジに来た魔導師から再び力を吸収するためか?ちっ趣味の悪い奴だぜ)
心の中で舌打ちしながら空を仰ぎ、自分の身に起きた冷静に分析するが、実際のところ彼の心中は冷静からは程遠かった。
せっかく鍛え上げた魔導力を奪われたのは勿論の事だが、そんな事よりも水晶を目の前にして油断してしまった事と、軽いパニックに陥り
罠に引っ掛ってしまった事が、常に冷静で居るようにと心がけている彼のプライドを大きく傷つけていたのだ。
・・・普段の彼が冷静なのか、と聞かれれば疑問符が浮かぶ所ではあるが。
(とにかく一旦宿を取ろう。一週間もの探索は流石に疲れた。)
とりあえず近くに見える建物に行ってみるか。
現在位置と近くの宿場町を教えて貰わねばならないし、もしかしたら代価を払えば泊めて貰えるかもしれない。
多少ふらついた足取りでシェゾが歩きだした瞬間
「ちょっと!平民の癖にいつまで私を無視しているつもりよ!」
いきなり腕を捕まれた。
「あん?」
どうやら疲労と考え事のせいで、周囲が全然見えていなかったらしい。
視線を後ろに向けると、桃色がかったブロンドの少女が自分を睨み付けていた。
辺りを見回すと、魔導師っぽい格好をした十代半ばの少年少女達が何やら囃し立てている。
全員が似た格好をしているという事は、おそらく制服か何かなのだろう。
そして彼らの保護者と思われる中途半端に威厳がある大人。
シェゾの知識の中では、このような集団に当てはまる物は学生しか無かった。
おそらく彼らは魔法の授業をしていたのだろう。
屋外で行っているという事は、攻撃魔法の練習に違いない、よく見ると爆発で抉れたような穴がそこかしこに開いている。
少女一人が集団に囲まれているという事は、一人づつ前に出て実演してみせるのがこの授業の趣旨なのだろう。
そして、彼女の出番が来た途端、間抜けにも罠にかかったシェゾがこの場に転移してきた、という事だ。
シェゾを睨み付けている少女は明らかに怒っているようだが
自分の見せ場を潰された上に、無視なんてされたら誰だって怒る、俺だって怒る。
「すまん、悪気は無かったんだ。すぐに立ち去るから、俺の事は気にせずに続けてくれ」
彼にしては珍しく、素直に謝罪してその場を立ち去ろうとするが、その瞬間生徒(仮)達の爆笑が響き渡った。
264 :
ゼロが欲しい:2009/01/27(火) 02:58:03 ID:P3j7nxW2
(な、なんだ!?俺はまた何か変な事を言ったのか!?)
少女は盛大にため息を付くと、シェゾの手を離して頭髪の可哀想な男に向き直った。
「ミスタ・コルベール!もう一度だけでいいんです!召喚のやり直しを!」
「ミス・ヴァリエール、先ほども言ったが、使い魔の儀式は神聖な物だ、やり直しは・・・」
泣きそうな声で懇願する少女だが、コルベールと呼ばれた男は心底気の毒そうな声で申し出を拒否した。
使い魔?と思いながら再び視線を周囲に巡らすと、何やら生徒と同じ数だけのモンスターや動物が所狭しと並んでいる。
が、目の前の少女の傍らにだけは使い魔らしき存在が居ない。
(俺が近くに転移したせいで、使い魔の召喚陣になんらかの影響が出て儀式が失敗したって事か?)
空間転移系の魔法は繊細な制御を必要とするため、近くでなんらかの魔導力が働くと、失敗してしまう事が多い。
「なぁおっさん、俺からも頼む、彼女の意見を聞き入れてやってくれないか?」
事情はイマイチ把握しきれないが、恐らく儀式とやらは自分のせいで失敗したのだろうし、流石に無責任に去るのは寝覚めが悪いと少女のフォローをすると
何故か、再び周囲の生徒(なのだろう)が笑いだした
「ゼロの奴、相手の平民からも拒否されてるぜ!」
「さすがゼロのルイズ!」
ルイズと呼ばれた少女は顔を真っ赤にして俯いている。
シェゾは彼らの罵声を無視して、コルベールへの説得を続けた。
「事情はよくわからんが、多分儀式とやらが失敗したのは俺が急に転移して来たのも原因の一つだろう。
邪魔をした事は詫びるし、出来る範囲ならば責任をとるつもりはあるが。」
「・・・ならば彼女の使い魔になってあげてくれないか?」
――何言ってんだこのおっさん、頭髪だけじゃなくて中身まで可哀想なのか?
いきなりの失礼な発言に対し、かなり失礼な感想を浮かべた瞬間、シェゾの近くの地面がいきなり爆発した。
265 :
ゼロが欲しい:2009/01/27(火) 02:58:55 ID:P3j7nxW2
「なっ!?」
突然の襲撃に驚き、周囲の気配を探る・・・までも無く、犯人は見つかった。
「この・・・馬鹿にして・・・平民の癖に・・・!」
少女が杖を振りかざしながら何やら叫んでいるが、シェゾはそれを聞いている余裕は無かった。
(まさかこいつら、失敗を無かった事にするために俺を使い魔にして成功した事にするつもりか!?
吸血鬼じゃあるまいし、人間が人間を使い魔にするだなんて聞いた事がないぞ!
いやそれよりもこの爆発は一体なんだ!?)
最初は炎系の魔法で攻撃されているのかと思ったが、近くで爆発が起きたにも関わらず全く熱気を感じなかった。
それではジュゲムのように純粋に魔導力を炸裂させているのかと思ったが、そもそも爆発からは魔導力の欠片すら感じなかった。
ならば闘気放撃?いや、彼女はどう贔屓目に見ても格闘家では無いし、彼女自身からは確かに魔導力らしき物を感じる事ができる。
強いて言えば、アレイアードに似ていなくも無いが、あの類の魔法にしては威力が低いしそもそもあの年で習得できるとも思えない。
いや、自分は学生時代に習得したのだが、それについては少々特殊な事情があった。
断続的に襲い来る爆発を必死で避けながら、久しく見る事の無かった未知の魔法にシェゾは興奮を抑える事が出来なかった。
「おい貴様・・・名前は何と言う?」
シェゾからの呼びかけに答え、少女は攻撃の手を止める。
「よ、ようやくご主人様の話を聞く気になったようね!私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!
あんt「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」
名前を聞いた途端、ルイズの声を遮って叫びだすシェゾ。
何度も爆発を見る内に、シェゾは確信していた。
この力は、今まで見てきたどの魔法とも異なる力だ。
この力は、自分の好敵手であるあの少女に匹敵する力を持つかもしれない。
この力を得れば、魔界の貴公子とすら渡りあえるかもしれない。
だからシェゾは魂の底から、自分の望みを叫んだ。
「お 前 が 欲 し い !」
その瞬間、過去最大の爆発と共に変態がハルケギニアの空を舞った。
266 :
ゼロが欲しい:2009/01/27(火) 03:03:14 ID:P3j7nxW2
今回はここまでです
シェゾにお前が欲しいと言わせるためにあれこれしていった結果
ルイズの出番がどんどん削れていったけど
正直、人間を召喚した時の平民を読んでどうのこうのの流れはもう見飽きたからスルーでいいかなと
ボクっ子は最高だと思うんだがいかがか
乙。この時点でルイズを必要とする使い魔は珍しいね。
導入部分なのでもう少し肉を付けて欲しかったな。ここを端折ると何か手抜きというか、内容が軽いというか、折角の作品に悪いイメージがついてしまう。
逆にもっと軽くしよう
「ドカーン!チュッ!」
アタシは使い魔になった。ルイーズ(笑)
ぐらいに
ルイーズと言われると、『大統領閣下』と繋げたくなる。
そこでヘリック共和国召喚!
装甲騎兵ゼロのオスマン&コルベールの驚く所がちがくね?
今すぐ銃を取り上げろ!って騒ぐのが先じゃね?曲がりなりにも学校なんだし
キリコ優しいな。
ギーシュガ一体目のワルキューレを作るまで待ってやるなんて。
確かに学校内で銃や剣を当たり前のようにぷらぷらさせてたら注意するよな
婆汁あたりにそういったら首と胴体が泣き別れになりそうだけどw
>>272 従者が武器持ってるのは普通だし
ゼロ魔世界の銃の扱いうんこだし
危険視する意味がわからん
あれ
メタルウルフカオスの大統領って召喚されたっけ?
小ネタのほうにあったよ
>>275 サイトが剣で決闘に勝ったのと違って、凄いのはガンダールブじゃなくて銃だよねって事
本来の流れは
平民ボコボコ
↓
武器に反応してガンダールブのルーン発動 勝利
↓
オスマン&コルベール ガンダールブすげー
でもキリコは違うよね?(キリコなら素手だろうが圧勝できるのはオスマン&コルベールは知らないし)
剣はともかく、先込め銃でも装填済み発火準備も完了なら普通に危険だと思うけどな
エルフのように反射魔法が使えるわけでもないし、人間の反射神経で何とかなる範囲じゃないし
まぁ命中率は低いだろうけどそんなもの持ってて注意されないってのはありえね
作中では誰も銃として認識できなかったから事前注意されなかったようだが
その威力を見た後でも技術に関心のあるコルベールや安全管理義務のあるオスマンが無視してるのはないな
まぁ貴族マンセー魔法マンセー平民プギャー武器プギャーだからじゃね?
武器を持った平民を危険と認識することは、杖を持った貴族は武装した平民に勝てません、
何かあっても魔法で取り押さえられない弱者です、だから武器は持つなよ、怖いから
そんな風に公言するのと同義だからなぁ……できんだろ、貴族のプライド的に考えて
もちろん、オスマン達がキリコを裏で制止することは出来るだろうが
この世界の魔法使いって案外強くないよね
そんなことはないだろ
魔法を使って戦う専門家はかなりものだ
>>278 じゃあ、こうしよう
見慣れないアイテム持ってる
↓
凄い威力だ!
↓
どうやら銃らしい
↓
「銃がこんな威力なわけない!」
↓
これがガンダールブの力か!
↓
ガンダールブすげー!!←いまここ
いや、銃使っても貴族に平民が勝つのはすげぇだろ
遅レスだけど、鷹の人のプッロとウォレヌスの法治国家ローマの
市民としての当然の反応が痛快だった
ハルケ貴族を「蛮人」と言い切った(口には出してはいないけど)キャラって
他にいたっけ?
>>284 なるほどその視点は無かった
伝説の拡大解釈で
『ガンダールブが握った銃なら連発できて当たり前、当たり前、当たり前ぇー』ってことね
>>282 少なくとも魔法だけで6000年間覇権を握り続けることが出来るほど強くはないって意味なら同意。
ただ、ゲリラ戦術取られたらこれほどヤバイ連中はそうそういないと思うけど。
流石に詳しくは全く分からんが銃は悪くて火縄、良くてマスケットとかだろ?
命中率はザルだが数の暴力で誤魔化したり当たりゃ死ぬ銃音でビビらせて
敵の気力を削ぐのが当時の戦い方らしいが・・・
ただ敵をビビらせるなら目の前で広範囲に台風起こしたり爆発させたほうが効率的ってのが
魔法的な考えなんじゃないかな?射程は分からんが命中率で言えば確実性も高いわけだし
鍛えた弓兵以下だからな当時の銃
でも扱い方覚えりゃ鍛えてない弓兵以上なんだろ?
※ハルケギニアでの銃≠地球の中世ヨーロッパでの銃
欧州の鉄砲は日本の鉄砲よりレベルが低いからイマイチ判らんな
まあ弾が軟らかい分、貫通力はないけど当たれば弓よりは痛いだろうて
鉛自体も毒だし
人に優しいフルメタルジャケット弾なんて人権意識が芽生えてからだろうね
って事でフルメタルジャケットからハートマン先任軍曹を召喚
火薬が秘薬といわれるくらいに貴重品
腕のいい銃兵なんて存在すればどれだけ金の無駄遣いしたんだといわれそうだなw
>>293 最後はゴーマーパイル(微笑みデブ)のマリコルヌに
仕返しでズドンとやられる訳ですね。
>>292 そんな情報が原作のどこかにあったっけ?
原作で両者の違いについて特に言及されていない以上、現実のそれに準じて考察するのは極々普通のことじゃないかな?
>>297 ※ハルケギニアにおける銃の武器としての立ち居地≠地球の中世ヨーロッパにおける銃の武器としての立ち居地
ってことがいいたかった
火縄銃やマスケット銃ぐらいしかないならフェイザー銃を使えばいいじゃないか
「メイジ殺し」なんてのがいる以上「上手くやればそれなりレベルのメイジを殺せる」
武器なのは確か
チンピラをフイついて殺したところで評価上がる訳ないからね
>300
それにはまずフェイザー持ち歩くキャラを召喚しないとな
で、どいつがいい?
結論としてはガンダールブが握れば火縄銃も装填無しで連射が出来ると貴族は信じてる
もちろんガンダールブ効果で性能だって上がるから対ゴーレム戦も安心して送り出せる
フーケルートフラグって事で
つまりグレネーダーから流朱菜と殿の虎を召喚すれば良い訳か
流朱菜読んだ時点でルイズがぶち切れそうだが(おっぱいリロード的な意味で)
フーケのゴーレムならATのソリッドシューターで充分だろうな
あれってレールガンだし
>>301 牛殺しの大山倍達も熊殺しのウィリー・ウィリアムスも実際はあれだし異名なんてものはかなりオーバーにつけられるもんだぜ
>>284 劇中でギーシュらが銃の技術について散々驚いた描写があり
コルベールに至ってはタコまでいじっていながら
コルベールが全く興味を抱かないでガンダガンダ言うのはそれか
ガンダールブ=武器の威力を上げるという見解はなく、コルベール自身は
キリコの身のこなしを見てガンダールブだと確信してるけど
あーごめん、やっぱ無理
魔法の使える貴族から見たら
剣=ペーパーナイフ
銃=パチンコ
くらいな感じじゃね、もちろん「当たれば」死ぬけどメイジはトッドでも完全武装の歩兵みたいなもん怖くない
でメイジ殺しは戦場で上記の装備で生き残った傭兵みたいな感覚
>>298 それなら納得。
でも、メイジの中隊指揮官すら銃で武装して戦闘に参加しているのに、その銃の評価が低いってのも妙な世界だな……。
>>299 298の言い分ならともかく、ハルケギニアにだってマスケット銃はある訳だし、地球の中世〜近世ヨーロッパにおける
火縄銃・マスケット銃とハルケギニアのそれとを比較して語ることが出来る前提がある以上、その指摘は的外れでは?
第一、ハルケギニアは封建制度を取ってはいるものの、その文明レベルは18世紀の近世を想定しているらしいし。
この流れから考えると重攻の使い魔のライデンってかなりヤバいな。
全身武器の塊みたいな存在だから7万戦に不安を感じさせない、ただ機体のメンテナンスはどうするかは疑問だけど。
313 :
312:2009/01/27(火) 13:01:10 ID:BgtO5hrR
しまった・・・
戦略的な武器の話にバーチャロイドを出して話切っちゃってすいません。
シュバルツ・ブルーダー召喚
戦闘力は文句無しだし中身は面倒見の良いにーちゃんだし
機体のメンテは不要
ただ「宿敵」をジョゼフあたりが召喚しちゃうといろいろ困ってしまうが
ハルケギニアにはパイク兵と銃兵はいるけど、それがどの様に運用されてるのかが良く解らない。
テルシオみたいな長槍の密集方陣は魔法の格好の獲物になるから無さそうだけど。
マウリッツやグスタフ・アドルフのカウンターマーチをしながら連続射撃をするのは錬度から言っても無理そうだし。
殺傷に繋がらなくても当たれば死ぬ可能性のある鉛玉を発射しながらでかい音を立てて脅かすためにいるんじゃないかな
兵のほとんどは訓練のほとんどしてないこの前までは農民とか忠誠心のない傭兵とかだろうし効果はありそうだぞ
いい加減設定考察行った方が良いんじゃないかな。
つまりあれだよ、
リメイク版のサルの惑星で、サル女とその子分が
主人公の銃を奪って壊しただろ。
アレと同じことが起きるのが普通なんじゃないか?
ってな事だろ。
召喚された人物が所有している銃(それに類するものを含む)が
自分等の知っているソレ以上の性能であり、
それをルイズの使い魔とはいえ平民が使っている。
しかも、その平民がいた場所では量産が可能だったりして
使用方法も簡単だったりする。
すごく怖いじゃないか。
中途半端に頭の回る生徒がいた場合、
後でルイズに抗議されたとしても、
何とかして錬金でその銃を壊すだろうね。
怖いから。
>>310 >第一、ハルケギニアは封建制度を取ってはいるものの、その文明レベルは18世紀の近世を想定しているらしいし。
だからといって、一分野の技術レベルが同等といえる理由にはならんぞ。
魔法に頼ってる面が大きいんだから、銃の作成に必要な工業技術が同等な可能性は低いだろ。
今きたら我が初恋の愛しのシェゾが召喚されていただとーーーっ!?
GJGJGJ!!!!
が、ふと思ったのですが、シェゾの格好って平民に見える、かな?
どの服装かはわかりませんが、マントつけてたりしてるし平民には見えないような
考察はほどほどにね。
チートとか言われているけど、生身のキリコは弱いぞ
不意を突かれて窮地に陥ることが多い
考察というか感想なんだよ
生徒もギーシュもこの銃オカシイ連発できるって騒いでるのにオスマン達はスルー
ガンダールブすげーで終わってるから
銃はどうでもいいの?って
テムプレ作品にツッコムナヨw
いい加減ID:CSVmEzbZは毒吐きスレにでも行けよ
いつまでぐだぐだ言ってるんだお前は
前からだけど、このスレって銃の話題は妙に伸びるよな
>>320 >今きたら我が初恋の愛しのシェゾが召喚されていただとーーーっ!?
「愛しのシェフィ」って読み間違えた(笑)
装甲騎兵は見事なまでにテンプレ爆走してるから
余計に銃の扱いのおかしさが目立つんだな
銃と日本刀がNGワードになりそうだw
>>329 銃と、ある意味日本刀が出てくるSS書いてるのに……
>>320 一応、マジレスしておきます。
「貴族の証」はマントではなく「五方星のマント止め」の方です。
タバサの冒険でシルフィがタバサのマントを強奪して、騎士に成りすましてご飯を食べようとしたら追い出されたけど、マントなしのタバサを連れて行ったらマント止めを見て「騎士さまでしたか」と態度が変わるシーンがあります。
また、ルイズやサイトの身分が変わる時に、アンリエッタ女王が直々にマントを渡していたり(9巻・11巻)、魔法学院の生徒は、全員同じデザインのマントで学年によって色が違う(9巻)ので、「身分をあらわすマント」は特別なデザインがあるのでしょうね。
>>322 野望のルーツでも3人組にリンチされてたもんなw
毒吐きで別作品が叩かれてるタイミングで急にキリコを叩き出す
これは
>>331 そうだったっけ
万が一SS版魔導とかの格好だったら、平民には見えない気もするが
キリコの特異さはその回復力と悪運の強さだから
あと銃器や破壊活動の上手さ
(AT戦でハッチを開いて銃を撃ったり手榴弾投げたり、地上戦艦に取り付いて爆弾仕掛けたり)
そういう意味ガンダ向きと言えるかもしれない
336 :
331:2009/01/27(火) 16:37:46 ID:xG15Du3y
>>334 ああいう格好で召喚された場合、「ハルケギニアの貴族」ではなく「見たこと無い格好の高貴そうな人」に見えるんじゃないでしょうか。
「いい服を着てる」
↓
「でも、『五方星のマント止め』がないからハルケギニアの貴族じゃない」
↓
「他の国(東方とか)の身分の高い人を召喚しちまったか!?」
てな流れになるとおもいます。
>>337 火、水、風、土、虚無で5。
ヘクサゴン・スペルはアンリエッタとウェールズの
受け持ちがそれぞれ3だから6だよ。
いや、たぶん図形の名前の話をしてるんだと思うけど。
対角線結んだら星になるんだからいいじゃない。
>>338 不老じゃないけど、おそらく老化以外では死なない
ミスったorz
死なないんじゃなく、『死ねない』
何度か死のうとした事はあるけどその異常な生命力と悪運がそれを許さなかった
悪運で死ねない、なんて珍しくもないのでは?
たいていの物語の主人公はそうなんだし。
>>343 それをストーリーの主軸にしているから評価されているわけで。
悪運で死なない、じゃなくて死ねないってのはあんまり無いと思うけどなぁ。
すくなくとも明るい世界観では。
野望のルーツを見ると、認知できない事象には対応や反応ができない点は他の人間と差は無く、
第六感が発達しているエスパーという設定ではないようだ。
異常な自己治癒能力はまあフィクションだよね、ってところか。
異能者は機械との順応性が高いから、キリコらしさを出そうとしたらATのような戦闘兵器での戦闘シーンの時だろ
あとは負傷した時かな
ゴーレムにぶん殴られてもう死んだかと思ったらわずか一週間で回復して、それに狂喜乱舞するコッパゲとか目に浮かびますw
>347
何かコルベールがぐるぐる目で
「 こ れ で も っ と 実 験 が で き る ぞ ! 」
と言ってるのが幻視されたw
鋼鉄を蒸発させる火炎放射を始め、心臓を撃たれ、脊髄と腰椎その他を酷く痛めても、
衛星軌道から落下しても、ほんの数日で完治してしまうからな
ペールゼンファイルズのラストシーンでは、自らの死を願ったりもした
小説版ではそれが顕著で、ザキはキリコを殺すために放った銃弾の兆弾で死ぬが、
キリコは必死になってザキを庇ったが物理特性すら変える己の悪運で、目の前にまで
迫った銃弾が不自然な軌道を描いてザキに逸れていってる
で、キリコとは思えんぐらいに慟哭もしている
多分、キリコが初めて親しくなった“異性”だからだろうな…
猿羅神が召喚されるんですド ワ オ !
最も気づかなくてはいけない脅威に、その時誰も気づかなかったなんてことは
歴史を紐解けばいくらでもあるし、人によっては意識の多重性や神の意思とも呼ぶ
五芒星のタイ留めは黄門様の印籠のようなものでは?
金っぽい高価っぽい材料で出来てて、伝統的なマークも入ってて
高貴な者であることをわかりやすく現すシンボルになっている
王族や高級貴族みたいに金のかかった身なりで素性がわかる人間には不用だけど
つまりキリコは道具を使うことを覚えたウルヴィなんですね
「本当の記憶」とやらを取り戻したらしいけどどうせ話の都合で
「あれうっそぴょーん」ってなるんだろうなぁ
PEACE MAKERのコルトSAAでもハルケギニアではオーバーテクの銃か?
>>350 鬼吼神マキシウス召喚とな?
<馬鹿はむりやり違う作品のキャラの名を上げた!
>>282 ゼロ戦の機銃食らって死なない(普通体がバラバラになる)奴らだぜ?
ハルケギニアにはあんな凄い銃が無いから、当たっても大丈夫だと思ってたんじゃね?
スゴイね、人体
ワルダー?
ワルター・ワルザック?
マジだ。ワルドさんパネェ。
いやいや、遍在だという可能性は無いか?
あるいは超合金的な鎧を着てたとか。
きっと防御ロールで12だしたとか冒険者レベル6とかでダメージ軽減したんだよ
ワルドさんが食らったのは7.7mm機銃だよ
流石に20mm機関砲だったらバラバラになる
>>362 いくら固定化みたいなのを懸けてても衝撃とか凄くないのかね
さすが使い魔に噛まれるために日夜鍛えているだけのことはあるな
>>348 自分の作った武器で殺されるのが夢なんですね。わかります。
こんなの如何だろう
ルイズがウルトラマンコスモスを召喚・・・・
ルイズがコスモスになるのですか?如何なんでしょうか俺の脳・・・
何が言いたいのか分からない
舩坂 弘軍曹閣下ならば、七万人の軍勢を相手にしてもっ…………!
>>370 ドイツの爆撃魔王もフィンランドの白い死神もそして船坂閣下も
単騎じゃ戦争の結果自体は変えられなかったんだぜ?
まああんだけ大暴れしたのに戦後もピンピンして天寿を全うする辺りがやはり人類ではないが
fallout3からドッグミート
「犬だわ」
「秘薬とか持ってきなさい、いいわね?」
学院付近を散歩する一匹と一人
「何コレ?銃?あんたどっから拾ってきたの?」
わん
「弾?意外に頭がいいのね」
と、学院を襲撃しにきた巨大なベヒモス
サイトとワルドがルイズのウルトラマンコスモスを狙って激突
勝ったサイトは宇宙正義だけどシエスタやアンリエッタ、テファのウルトラマンコスモスに誘惑される
さらにはタバサのウルトラマンコスモスにも魅了され…
>>360 ルイズ「馬鹿イヌーっ!」
ワルダー「拙者は犬が苦手でござるーっ!」で逃亡かw
働きたくないでござるーーーーーっ!
今思ったが、魔神英雄伝ワタルとか必殺仕事人WやVのキャラを召喚したらカオスになるんだろうな
>コスモス
あの保護者に媚びた偽善者野郎は、敵を保護したいのか殺したいのかよく分からん。
シロ「拙者は狼でござる!」
拙者は侍なので掃除はしないでござる!
偽善者野郎が偽春菜野郎に見えた
脳内妄想垂れ流されても困る
三国志の武将で許猪を召喚したら和み系なお話になりそうな予感。
それも田舎っぺ口調だったら完璧。
ワルドの頭部が仏像で粉微塵にされるとこしか思い浮かばないんだが
>>378 ワタル読んだら層階山の階層の一つと勘違いするだろうな。
綺麗なジョゼフとか綺麗なワルドとか綺麗なヴィットーリオとかが出るのかな?
>>286 スパルタクスの反乱なんかを考えると、そのローマ人の反応は笑えるな
目くそ、鼻くそって感じ
蒼天航路の許猪ってそういうキャラなの?
農民出身で寡黙な人ってイメージだったから、カバみたいな感じに思ってたのよ
蒼天の許猪は田舎っぺだけど、かなり的確な意見を言える数少ない常識人ってイメージだな。
単純だからこそ、色々分かってるっていうか。
演義だと曹操の親衛隊長というイメージがあるな
嫌な予感がしたので曹操のところにいったら暗殺者がいたんでヌッコロしたとか
392 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:25:18 ID:Myhm1AJ6
8話投下予告させていただきます。
21時30分を予定しています。
よろしくお願いします。
つの丸のまんが「重臣猪狩虎次郎」から猪狩虎二郎を召喚してお役のギーシュとの決闘で槍を振り回して地面をドンと石突で突くと
7体のワルキューレの首を落としたついでに間違ってギーシュやギャラリーの貴族達の首を落としてしまって切腹
完
ってのを考えたけどゼロ魔の蹂躙モノにしかならんよなぁ
魔法には力の支援
支援
397 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:30:18 ID:Myhm1AJ6
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン8
シエスタ奪還作戦を実施している頃。
当のシエスタは、モッド邸の一室にある。浴場で湯浴みをしていた。
モッド伯の挨拶はシエスタに、自分があの学園に帰れない事を改めて思い知らされた。
自分はどうなるのだろうか?だが、突然の爆発音に驚く。
「・・何が起こったの?」
立ち上がり外を覗く。
そこには、見慣れない仮面をかぶった人間と、見知った顔のゴーレム達であった。
その頃、ゼータは屋内の2階に侵入していた。
「シエスタ!居るか、返事をしてくれ!」
ゼータが呼びかけるが反応は無い。
「どこにいるんだ・・「シエスタをお探しかな?」誰だ!?」
あたりが暗い中、廊下に人の気配を感じる。
「賊に名乗るのもなんだが、私はジュール・ド・モットだよ、アルガス騎士団のゼータ」
「何故、私の名前を・・・」
初対面の男に、名前を言われ困惑する。
「ドライセンから聞いたよ、君たちアルガス騎士団は」
「ドライセンだとっ!貴様、なぜそれを!」
かつての敵の名を、会ったばかりの男から聞かされ唖然とする。
モット伯はゼータに向け杖を前に差し出す。
「早速だが、死んでくれたまえ、賊に対するそれ以上の言葉を私は持ち合わせていないのでな!ジャベリン!」
詠唱を終えた氷の刃が、ゼータに向けて放たれる。
「なんの!」
その刃を剣で切り払う。全ての氷の刃は二つに割れる。
「賊のくせに、やるな!だが終わりではないぞ!」
その言葉と共に、割れた氷の刃が再度ゼータを襲う。
今度は横に跳び、10サント横を通り過ぎる。
「アイス・ストーム!」
ゼータの回避の間に、次の詠唱を終えたモット伯が避けた直後のゼータを狙う。
「何!」
避ける事は出来ず、ゼータは氷の竜巻の直撃を受け、そのまま1階のホールに落ちた。
「ふん、まだ生きておるか」
そう言いながら、とどめをさすべく、ゆっくりと館の玄関を目指した。
しえん
399 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:31:04 ID:Myhm1AJ6
中庭ではニューとダブルゼータが見事な庭園を無残な姿に変えていた。
「うおぉぉぉ!」
ダブルゼータが持っている木を薙ぎ払い、ガーゴイルと衛兵に叩きつける。
「バズ」競い合うように、ニューの魔法が噴水周辺を瓦礫の山へと変える。
私兵としてはかなりの戦力を有していたが、二人が暴れ出してから、ほぼ壊滅していた。
「あなた達、日頃何か嫌な事でもあるの?」
シエスタの救出以上に、体の良いストレス解消にも見えた。
「キュルケ!ニュー!」
その時、待機しているはずのルイズとタバサが慌てて中になだれ込んできた。
「あなた達、何やってるの!あ「敵が来る」え!敵?」
タバサが簡潔に理由を述べる。
「何が起こったのだ、ルイズ?」
ニューがルイズに理由を聞くと同時に外の壁が壊された。
「来た・・」顔を青くして、ルイズが呟く。
そして、それは現れた。「おっ!お前は!」
ニューの声に明らかな驚きが見える。
「久しぶりだな、アルガス騎士団!」
崩れた壁の上に、その敵はいた。
「ドライセン!なぜお前がここに!?」
かつて自分達と敵対した強敵がいる事に、ダブルゼータも目も見開いている。
「ダブルゼータ!なんなのアレ!?」
キュルケが明らかにハルケギニアの生物では無いドライセンに、自身の使い魔に答えを求める。
「ドライセン、私達と敵対していたムンゾ帝国の中でも一番の怪力といわれる、ジオン三魔団の一人だ。」
ニューが変わりに答える。
(あれが、ニュー達の敵・・・)
タバサの魔法も力で押しつぶす、敵にルイズ達は戦慄を覚える。
「一番の怪力?ならこちらにもいるじゃない、ダブルゼータ!」
「おう!」
キュルケがけしかけるまでもなく、突撃しながらダブルゼータが木を薙ぎ払う。
「ふん!」
真横に払われる木を、ドライセンが片手で切り払う。
ドライセンに当たる事無く、ダブルゼータの持つ根元から木は二つに割れた。
「なんなの、あれ・・・」
単純な腕力で今の出来事を実施した事に、キュルケも声を失う。
「どうした。アルガス一の怪力ではないのか?」
ドライセンがダブルゼータ挑発する。
「まだまだぁ!」折れた木を放り投げ、ドライセンに向けかけ出す。
「よせ、ダブルゼータ!」
ニューの制止も聞かず、ダブルゼータが殴りかかる。
「昔から、力は互角でも頭では俺の勝ちだな、もっとも今は力でも圧勝だがな!」
拳を受け止め、もう片方でその手をつかみ力任せに放り投げる。
「うおっ!」
弾き飛ばされるように、ダブルゼータが宙を舞う。
支援
支援
支援
403 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:31:33 ID:Myhm1AJ6
「大丈夫!?」キュルケがさすがに心配する。
「何とか、あの野郎どうなっていやがる!」
身を起しながら、すぐに立ち上がる。
「馬鹿な!奴は力ではダブルゼータとほぼ互角だったはず。」
「お前達が力をつけたように、俺もまた、あの方から力を授けられたのだ!
今の俺は唯の闘士ではない、さしずめ、超闘士ドライセンよ!」
力を誇示しながら、与えられた新しい名前を名乗る。
(何だか、紫というよりも青が似合いそうな名前ね・・)
関係のない事をキュルケが考える。
「あの方?まさか!ジーク・ジオンか!」
倒したはずの敵の名を出しながら、ニューはその名に驚きを隠せない。
「違う・・だが、あのお方は私に素晴らしい力を与えて下さったのだ!」
ドライセンが最悪の可能性を否定する。
「お遊びはそこまでだ、行くぞ!」
ドライセンが駆け出し、近くのルイズ達を標的にする。
「ルイズ!ムビルフィラ!」
ニューの中でもかなりの力を持つ強い光弾が打ち出される。
「甘いわ!」ドライセンはそれすらも、剣の圧力で叩き割る。
「ならこれは、ファイヤー・ボール」
キュルケがドライセンの地面を燃やし逃げ道をふさぐ。
「だから、どうした!」
剣で周りの地面をえぐり取る。
「タバサ!」「アイス・ウォール」
足を止めたドライセンに、タバサが氷の壁を作る。
直接当てるのをやめ、ドライセン自身を凍らせる。
「何!」回避を怠った、ドライセンが氷の壁に包まれ、大きなオブジェが完成する。
「終わったの?・・・」
ルイズが、三人の連携に終わりを期待する。
「悪かったな、お嬢ちゃん」だが、終わりはやって来ない。
その声と共に、氷の中から右腕がつき出され、あいた穴から不気味な赤い瞳が映し出される。
「嘘・・」(どうしたらいいの・・・)
あまりに絶望的な状況にルイズも思考回路も鈍り出す。
「俺の力の前には、いかなる魔法をも通用せんわ!」
(力には技を、技には魔法を、魔法には力を、これを忘れるでないぞ)
その言葉に、ルイズは夢での出来事を思い出す。
「みんな、屋内に逃げ込むわよ!ゼータと合流するわ!」
ルイズが檄を飛ばし、館に突入する。
(魔法や力が利かないなら、あいつには技のゼータを当てるしかない!)
「わかった!」「おう!」
使い魔二人が、過去の出来事を思い出したかのようにルイズの指示に従う。
それに続き、タバサとキュルケも館の中に入って行った。
支援
支援
406 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:32:07 ID:Myhm1AJ6
5人が中に入った時、ゼータはホールに倒れていた。
「ゼータ!ミディアム」
気付いたニューが魔法で回復させる。
「ゼータ何があったの!?」
ルイズがゼータの負傷の理由を聞く。
「モット伯にやられた、奴自身もかなりの使い手だ。」
身を起し、ゼータが報告する。
(ゼータじゃ相性が悪いのね)
ルイズがその理由で納得する。
「みんな聞いて、キュルケとダブルゼータはモット伯の相手をお願い。
ニューはシエスタの保護を、私とゼータとタバサはアイツの相手をするわ!」
ルイズが、先ほどとは違うように指示を飛ばす。
「どうしたの?ルイズ・・」
ルイズの変貌にキュルケが驚く。
「いいみんな、力には技を、技には魔法を、魔法には力をこれが合言葉よ!」
「ルイズ、なぜそれを!」
「いいから!アンタは早くシエスタを見つけてきなさい」
かつて、彼を指示した人間の言葉をルイズが使った事に驚くが、
それにも構わず、ルイズがニューを蹴り飛ばす。
「キュルケ、行くぞ!」
「もう、分ったわよ!」
ダブルゼータに連れられ、キュルケが2階に上がる。
「ゼータ、大丈夫?対ドライセンのカギはアンタよ!」
「了解した、ルイズ殿」
ゼータが、それに応じる。
「あなたは下がって・・」
タバサがルイズに距離を取るよう促す。
「わかった、二人とも気をつけて」
先程の戦闘で、自分が役立たずである事に気付いた、ルイズは素直に従う。
(みんな、がんばって・・)
指示しか出せない事に、ルイズは歯がゆい思いであった。
支援
支援
409 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:32:42 ID:Myhm1AJ6
「行くぞ!ドライセン」
ゼータがドライセンに向けて走り出す。
「来い、今までと同じと思うなよ!」
そう言いながら、剣を縦に振りおろすが、
ゼータは余裕を持って右足を一歩踏み出し、相手の側面に回り込む。
「遅い!」
空いた脇腹を狙い横に薙ぐ。
しかし、ドライセンは左手に持っていた剣でゼータの一撃を受け止める。
「昔の俺と同じと思うな!」
そう言いながら、左手一本でゼータを弾き飛ばそうとする。
力の入れ具合を感じたのか、相手の力を利用して後ろに跳び間合いを取る。
「たしかに、前とは違うようだな」
剣を構えなおし、ゼータは間合いを窺う。
「アイス・ストーム」
今度はタバサが攻撃を仕掛けるが、ドライセンは剣を交差しその一撃を受け止める。
「なめるな、小娘!」
氷の竜巻を耐えきり、タバサを睨みつける。
「ゼータ、今」
「何!」
一時的に視界を遮られた事により、ゼータを見失う。
「くらえっ!」
斜め後ろから、ゼータが渾身の一太刀を浴びせる。
「ぐぉっ!だが!」
避けきれず、腕を負傷する。しかし、痛みをこらえ一歩を踏みこみ。
ゼータを捕えて、さば折りの体制に持ち込む。
「うぁぁっ!」
ドライセンの怪力がゼータの肉体に多大な痛みを与える。
(どうすればいいの?)
ルイズは自分が何もできないのが悔しかった。
(君の出来る事を、君にとっての答えを見つけるんだ)
不意に、ニューの言葉が浮かぶ。
(私の出来る事、私の魔法ではあいつを倒せない。けど!)
「錬金」
ルイズが、魔法を唱える。
「どこに唱えているんだ、お嬢ちゃん」
ドライセンがせせら笑う。
「アンタに足りない所よ!ダブルゼータより頭がいい程度なら、私の圧勝ね!」
頭上で爆発音が鳴り、シャンデリアが落ちる。
「このガキ!」
慌てて、ゼータを放し距離を取る。
「今よ、タバサ!」
「アイス・ウォール」
タバサが着地した所を、再度動きを止める。
「倒れろ!」
動けなくなった所を、ゼータがモノアイに剣を突き刺す。
「ぐおぉぉぉぉっ!」
断末魔と共に、ドライセンは光へと消え去った。
支援
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412 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:33:11 ID:Myhm1AJ6
2階ではキュルケと、ダブルゼータがモット伯を相手に戦闘を繰り広げていた。
「うぉぉっ!」
ダブルゼータが、モット伯に向けて突進を行う。
「馬鹿か貴様は!アイス・ストーム」
モット伯が先ほど同じ様に氷を含んだ竜巻を放つ。
それをよけようともせず、ダブルゼータが手を交差し、竜巻を受けながら前進するが、
吹き付ける冷気が、ダブルゼータの動きを止める。
「正気か貴様!アイス・ストームを真正面から受けるとわ!」
モット伯が嘲り笑う。
「なんの、これ「ファイヤー・ボール」ぐおぉ!」
キュルケが後ろから、特大のファイヤー・ボールをダブルゼータめがけて放つ。
熱量と衝撃が、ダブルゼータの氷とモッド伯のアイス・ストームをもかき消す。
「キュルケ、何しやがる熱いじゃねぇか!」
相殺したとはいえ、火球の直撃を受けても対してダメージがないのか、ダブルゼータが文句を言う。
「あなたって本当に頑丈ね、私が炎の道を作るから、そこをあなたが突貫しなさい。」
普通では考えられないような指示を、キュルケが出す。
「無茶苦茶言いやがる!」
それでも、やる気があるのかダブルゼータが駆け出す。
「行きなさい、フレイム・ボール」
先程よりも、更に巨大な炎がモット伯を襲う。
「何を馬鹿な事を!」
「この程度はダブルゼータの馬鹿の内には入らないわよ!」
相殺された炎と氷の道の中をダブルゼータが走り抜ける。
「ダブル猛襲弾!」
道を走りぬけ終えたダブルゼータが、力任せに拳を叩きこむ。
鈍い衝撃と共に、声すら上げられないモット伯が、キャリーを合わせて10メイル程の距離を稼いだ。
「指示しておいて何だけど、あなたってホント非常識ね・・」
起こった事実を改めて考えて、キュルケは何やらポーズをとっている、ダブルゼータに近づいて行った。
支援
支援
415 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:33:38 ID:Myhm1AJ6
「終わったのよね・・・」
ルイズが安堵からへたり込む。
「そっちも終わったのね、ルイズ」
2階からキュルケの声が響く
「こっちも終わったわよ、「俺様の必殺パンチでな!」」
ダブルゼータが自慢気に話し出す。
「私の炎で相手の氷を相殺したおかげでしょ!あなた、最初に突っ込んで氷漬けになってたじゃない!」
キュルケがダブルゼータの失敗を告白する。
「そう言うお前も、シャレにならなかったぞ!こっちまで焼き殺す気か!」
「仕方ないじゃない、あれを溶かすにはそれしか無かったんだし!」
当事者にしかわからない、二人が言い争いをしている。
「とりあえず、シエスタの保護だ、ニューと合流しよう。」
剣を収めたゼータがみんなに提案する。
「2階にはいなかったわ」
階段を降りながら、キュルケが報告する。
「まだ、敵がいるかもしれない、急ごう。」
そう言って、ニューのいなくなった方向へ走り出した。
シエスタを見つけるべく、ニューはほかの部屋を探していた。
その中で、浴場を見つける。
「シエスタ、いるのか!?」
浴場の扉を開け、中を確認する。
「ニューさん?どうしてここに・・」
タオルを一枚巻いただけのシエスタが、唖然とした顔でニューを見ている。
「シエスタを助けに来たんだ、今みんなが時間を稼いでいる。さぁ早く!」
シエスタの手を取り、ニューが急いで出ようとする。
「待って下さい、ニューさん きゃぁっ」
バランスを崩し、ニューに倒れこむ。
「いたた、シエスタ大丈夫か」
「はい、何とか・・」
起き上がろうとするシエスタの動きが止まる。
「どうした、シエスタ敵か!」
慌てて辺りを見回し、それを見てニューの動きも止まる。
「ニュー、ずいぶんと良い御身分ね」
駆け付けたルイズが、使い魔の愚行を現行犯で見つける。
ちなみに、シエスタは、一糸まとわぬ姿で、ニューに抱きついている形になっている。
「私達が、とーっても苦労している時に、あなたはメイドといちゃつくなんて、
貴方みたいな使い魔を持って、私幸せだわ・・・だから、お仕置きよ!馬鹿ゴーレム!」
いつの間にかニューから離れたシエスタをキュルケが保護した後、
ルイズの先程と同等な一撃が、ニューを吹き飛ばした。
「なんで、こーなるんだ―!」
不条理を嘆く叫びが、その日モッド邸の最大な音となった。
その後、ダブルゼータの提案による家宅捜索により、一部の盗品とモット伯の不正の証拠を見つけ、
起きたモット伯を口止めして、ルイズ達は学院に戻って行った。
なお、シエスタは体調不良で退職した事になっている。
3日後、モット伯の件は学園内でも噂になっていた。
曰く、土くれのフーケは三体のゴーレムを扱う絶世の美女である。
曰く、オーガの様に大刀を振りまわすゴーレムを操る。幼女である。
曰く、3体合体のゴーレムを扱う、ピンクの髪の少年である。
など、様々な噂が流れたが真相を知る物はごく一部である。
支援
支援
418 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:34:18 ID:Myhm1AJ6
その噂を聞いたロングビルは頭を抱えたくなった。
「何て事してくれるのよ、あのガキども」
フーケのゴーレムとそのフーケに、ロングビルは目星をつけていた。
(人の名前勝手に使いやがって、しかも、あのモット伯に殴り込みをかけるなんて・・
この学校の警備も強化されるかもしれないし、ましてや、そのゴーレムと戦うかもしれないなんて・・・)
モット伯は、自分のリスト中にも入っていた。だが、予想外の警備の固さに時期を見計らっていた。
そして、その時に丁度、オスマンにスカウトされたのだ。
(まったく、あの子の言う通りアイツを連れてくればよかったかねぇ・・
けど、アイツがあそこにいるから、時間をかけて仕事が出来るし)
それまで、危険はあっても彼女の為に最短のコースを通る事が多かった。
しかし、それはロングビル自身に負担がかかる事でもあり、現に死に賭けた事も何度かある。
どうすりゃいいのかねぇ・・・そう考えていたロングビルを声が現実に引き戻す。
「ニュー、今度、町に行くわよ」
甲高い声が聞こえ、ロングビルは声の先に視線を向ける。
そこには、自分を悩ませる土くれのフーケのゴーレムとその土くれ達がいた。
「アンタも正式に使い魔になった事だし、ご主人様として必要な物は買ってあげなきゃと思ったの!」
ルイズがニューに主としての慈悲を見せる。
「確かに、安物でいいから出来れば寝具が欲しいな、後は杖が欲しい」
とりあえずはニューが要求を述べる。
「杖?アンタは杖なしでも魔法使えるじゃない」
ルイズはニューが杖を使わず魔法を使う所を何度も見ている。
「杖があった方が、魔法の力も強くなるのでな、この間の事を考えると、ある程度必要になってくるだろう。」
「まぁ、あんなな事があったしね・・・そう言えば何であんたの所の魔物がいたの?」
ルイズが薄気味悪い一つ目を思い浮かべニューに聞く。
「分からない、ジーク・ジオンかと思ったが、そうでも無いらしい。
だが、ドライセンが現れたとなると何が起こるかわからんな」
「じゃぁ、これからもあんな化け物が現れるって事!勘弁してよ・・」
あの時の事を想像し、がっくりと机に伏せる。
「あら、何の話?」キュルケ達が後からやってくる。
「うるさい、アンタには関係ないんだから!」
「町に行く話をしていたんだ。」
ルイズに構わず、ニューがあっさりと答える。
「ニュー、アンタ何勝手に「ふーん、何しに行くの?」」
「日常に必要な道具と、あとは杖が欲しいな」
ルイズを無視するかの如く、話を続ける。
「そう、ダブルゼータ、私達も町に行きましょうか」
「本当か、何か美味い物でも食うのか?」
嬉しそうにダブルゼータが聞いてくる。
「それもいいし、あなたにも武器が必要よね、毎回手近な木を武器にするのも何だし」
(幾らなんでも、あれじゃぁ可哀想だし・・・私が)
自分の使い魔が、木を振り回すのは、自分の鏡としては認められない。
「タバサも行く?」
キュルケが隣のタバサに問いかける。
「行く、ゼータにも装備が必要。」
珍しく、タバサが即答する。
「ちょっと、何勝手に話を進めてるのよ!」
大人数になる事に、ルイズが抗議する。
「まぁ、いいじゃないか」
大した問題ではないと、ニューがルイズを宥める。
「良くないわよ!キュルケとなんか、絶対行きたくないんだからね!」
ルイズの願いは叶えられることはなさそうだ。
(つまりは、今度アイツらは此処に居ない、って事は、これはチャンスだね)
聞こえる会話はロングビルにとって天啓とも言える情報であった。
419 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:34:47 ID:Myhm1AJ6
一応、体調不良で学園に戻ってきたシエスタは3日後から仕事を再開した。
最初の仕事は、コルベールに朝食を運ぶことであった。
「ミスタ・コルベール、お食事をお持ちしました。」
「シエスタ、ありがとうございます。すみませんが持ってきて下さい。」
コルベールがシエスタに持って来る様に頼む。
「はい、失礼します。」
そう言ってシエスタが中に入る。中ではコルベールが図書館から借りてきた本を調べていた。
「大変そうですね。」朝食を置き、シエスタが声をかける。
「はい、ニューさん達三人のルーンなのですが、いくら調べても分からなくて困っているんですよ!」
そう言いながら、朝食のサンドに手をつける。
シエスタはコルベールの調べているルーンのメモを見る。
「あっ!これがそうなんですか!」
「何ですか、知っているのですか?」
コルベールが意外な反応に興味を示す。
「これと、これ、なのですが」
そう言って、ゼータとダブルゼータのルーンをさす。
「ひぃお爺ちゃんの国の言葉で、確か・・・そうだ!空と光という言葉です。」
「本当ですか!?あなたのお爺様はどちらの出身なのですか?」
コルベールが興奮気味に近寄る。
「私の村はタルブなのですけど、おじいちゃんは、東の方から来たとも、
この世界からでは無い所から来たとも言っていました。
おかげで、村の中では変わり者扱いでした。」
亡き祖父を思い浮かべ、シエスタが祖父の事を説明する。
「この世界ではない・・・彼らの事を考えると嘘とは言い切れませんね。」
彼は既に、三人の異世界の住人を知っている。そう考えればおかしくはなかった。
「ふむ・・機会があればタルブで調べてみたいですね・・」
紅茶を飲みながらコルベールは考えをめぐらす。
「ありがとうございます。二人の事を知る事が出来たのはあなたのおかげです。」
「いいえ、では私はこれで私に答えられる事でしたら、何でもお聞き下さい。」
礼をして、部屋から退出するシエスタ。
「ふむ、それにしても珍しい、空と光か・・ではミスタ・ニューのは、なんて読むのだろう?」
シエスタの答えは一部だけ正解している。もしこれを読む物がいればこう読むであろう。
烈光、烈空、そして烈破
かつてある国で重大な意味を持ったその言葉の意味を、知る物はいない・・・
「15ネズミが入り込んだか!」
波動のモッド
誰かが黒幕にいる。
MP 650
「16久しぶりだな、アルガス騎士団よ!」
超闘士ドライセン
グル○ガストとは関係ない。
HP 2000
支援
支援
支援
423 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/27(火) 21:36:03 ID:jyIIgyCT
支援
424 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:36:05 ID:Myhm1AJ6
以上で投下終了です。
次回は下らない番外編です。
乙です。
最後下げそこね失礼しました。
騎士団の人、乙。
>今の俺は唯の闘士ではない、さしずめ、超闘士ドライセンよ!
騎士ガンダムのマンガは、ボンボンで連載されてて、な…。
…えーと、金色に光ったり、角にエネルギーを集中させたりするの?
>>426 なっつかしいなーあの漫画好きだったっけ。でも改めて考えてみるとあれって某バトル漫画の
モロパクリなんだよなあ……詳しくは言わないけど……
それはともかく騎士団の方乙です! しかしあの三人(?)の名前が出てくるとは……武者も
参戦フラグと言うことなんでしょうか?
投下乙
ただ、モット伯は「波動のモッド」ではなく「波濤のモット」では?
わざと変えてるなら申し訳ない
>>424 乙
名前がモットだったりモッドだったりしてますよ。
あと、波動ではなく波濤だと思います。
430 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/27(火) 21:56:47 ID:GxI3wWiz
>烈光、烈空、そして烈破
やつらも来るのか!?
431 :
ゼロの騎士団:2009/01/27(火) 21:59:15 ID:Myhm1AJ6
すいません変換間違えしました。
波濤に気づいて直したつもりになっていました。
まとめ載せるときは直しておきます。
ここ数ヶ月来てないんだけど提督なみにクオリティーの高い作品って出てきた?
おすすめあれば教えて
騎士団の人乙
>超闘士
俺にはウルトラマンしかでてこない……
それはそうと、烈光、烈空、烈破。
なんという武者。
>烈光、烈空、烈破
轟天ktkr
騎士団の人乙。
ニュー哀れ
>>393 つの丸ならサバイビーだろjk
小さいけど結構いいかも
烈光の鎧かっこよすぎて好きでした
天来変幻と天来ヘンショウ(漢字忘れた)だっけ?
あの鎧のデザインなんて、もう忘れちまったww
七人の超将軍編とかゴッド丸とか綺羅鋼とか、天零頑駄無とかは覚えてるんだがなぁ。
>>433 おおすぎてわからん
人気投票とかあればいいのにな
>人気投票
新しく来た読者にとっては目安になるので良いんだけど、スレが荒れそうだな。
組織票だとか多重投票だとか言い出す輩が必ず出ると思う。
つか、おそらく俺の書いたヤツ最下位になりそうだから勘弁なwww>人気投票
赤鋼と青鋼の鎧をつけるのは・・・ガンダム野郎だったか
避難所の感想スレや応援スレとか、絵板の支援絵とそれに付いてるコメントの伸びとかで判断は…難しいか?
ダースベイダー(アナキン)召喚するのもおもしろいかもとふと思った
>>443 SDスピリット指数とか、ガンキラーとかですな。
おいおい
ベイダー召喚がこのスレの元祖なんだぜ?
え?マジで?ww
グリーヴァス将軍(アニメ版で。映画版は微妙)とかどうよ?
しかしルイズに従うのかどうか。まぁ、ルーンで解決すりゃいいかもしれんが。
烈光、烈空、烈破てF91、F90ツー、ネオでよかったかな?
格闘家、剣士、忍者なのは覚えてるけど
超闘士・・・
メフィラスが男前なアレですね。
>>441 新参者には作品数が多すぎてつらいよ・多分
完結作品の大半はまともなのが救いかな
ヨーダ召喚でルイズがジェダイに!
ジョゼフが召喚したのはダース・シディアス!
教皇は毒虫で、テファはハリソン・フォード!
理想郷みたいな単純ページビューとかでも、あると参考にはなるかな。
新しい作品が埋もれないために、直近1ヶ月のPVで並べ替えとかできると良いかもしれん。
>>454 完結作品
元ネタを知っている作品
避難所の雑談や応援でのレスを参考に吟味
避難所の雑談でオススメを聞く
これだけあれば、読むものに一週間は困らない
ならジャッキーチェン(酔拳&木人拳)を召喚するしか無くなったな!
そしてキュルケに召喚されるサモハン
じゃあ二つの月つながりでFF4のゴル兄をww
ディシディアでのかっこよさは異常すぐるww
FF4のゴルベーザはメテオ使えるからレコンキスタがえらい事になりそうだ
ファファファ……
ゲキレンジャーの拳聖の中の誰かが召喚される、とか妄想しちまったじゃねーか。
464 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/27(火) 22:45:46 ID:7Lo3M0pf
ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニアは再開しないのかな、、、、してほしいな
最近、オススメ教えて君がよく沸<な
新手の荒しカシラ
新手じゃなくて古参
亀レスだが、
>>289 >>流石に詳しくは全く分からんが銃は悪くて火縄、良くてマスケットとかだろ?
火縄銃もマスケットの一種だぞ。
>>293 >>人に優しいフルメタルジャケット弾なんて人権意識が芽生えてから
フルメタルジャケットは防弾チョッキなどを貫通するために作られたものだから人権意識は関係ないと思う。
>>463 ママー、あいつら全編通してほとんど役に立たなかったよ!
特撮系ではそのうち仮面ライダーディケイドネタがきたりするのだろうか?
ただし平成ライダーではなく、他の使い魔に変身できる――とか
「ディケイド、あなたは全てのゼロ魔世界を旅しなければいけません」
「通りすがりのゼロの使い魔だ。覚えておけ!!」
ファミリア・ライド
シャーリー!
「……あ、間違えた。まあ、いい」
アタック・ライド
ヴィンダールヴ!
その前にルイズの夢の中で使い魔大戦だな
>>461 ビビもメテオ使えるじゃないか。
でもゴルべーザだったら、FF4TAの時期のをジョゼフ辺りに呼んでほしいとは思った。
ゲキレンジャーから来るならロンだろ
ミナガー作品はARMSしかないのね
朧とかジャンとか御神苗とかボーとか愉快そうなんだがなあ
>>474 D-LIVE!から万年腹減り貧乏小僧を召還しようと思ったが、
エンジンつきの乗り物無いと役立たずだったぜ!
そろそろルイズに「通りすがりのサラリーマン」が召喚されてもいい頃だな
斑鳩の零戦無双ですねわかいます
>>472 ビビのメテオは普通ダメージ
ゴルベーザのメテオは9999ダメージ
後はわかるな・・・?
我、生きずして死すこと無し
理想の器、満つざるとも屈せず
これ、後悔とともに死すことなし
ダンバイン召喚されたらどうなるかなとふと思った
デカマスターかっこいいよデカマスター
>>474 金にがめつい女トレジャーハンターがいいと思う。
たしか「園辺野女子学園」の生徒だったと思うが……
通りすがりのサラリーマン・・・
偏在使ったワルドすら生身で倒しても全く不思議じゃないから困る
ミナガー漫画でルイズと相性よさそうなのは…
宝石使いの女主人公とかどうだろう
投下予約無ければ五分後投下しますね。
破壊の爪だと……!?
>>475 ルイズたちに発射させたロケット砲で桃白白をやるのが見えた!
>>485 むう、話題になった途端来るとは
支援せざるを得ない
36.彩られた部屋(Colored room)
キュルケがグラスとワインを持って帰ってくると、
眠くなったルイズが部屋に来ていた。
壮観ねぇ。とでも言いたそうにルイズは青髪達を見る。
彼女達はまだ食べ続けていて、そろそろ袋の中身が無くなりそうだった。
あの大きい方が風韻竜だったとはね。
絶対言わないように口止めされたけれど、
言ったところで誰か信じたりするのかしら?
ありえないとルイズは確信を持って言えた。
「ああ、あんたもここな訳ね」
ルイズが振り向くと気怠げなキュルケがトレーを持っていた。
「ベッドが4つあるからそうなるでしょうね」
タルブワインと3つのグラスを持ったキュルケは、
一つをルイズに渡し、二つを貪る一人と一匹の近くに置く。
ルイズに注いでから、青いの二つにそそぐ。
「なんか、手慣れてるわね」
グラスに注がれたワインを見ながらルイズが聞いた。
「そりゃまぁ。お酌ぐらいよくしますから」
事も無げにキュルケは言った。
ああ、そう言えばそうねとルイズはワインを飲む。
飲み干すとふああ、と彼女の口からあくびがこぼれた。
「ほら、子供なのに夜更かしするから」
「何よ。子供なんかじゃないんだから」
キュルケはルイズに向かって笑った。
「そんな事を言っている間は子供なの。早く寝なさいな」
最近同じ事を言われた様な気がするが眠いのは事実だ。
子供じゃないもんとキュルケに言い返してから、
ルイズは眠ることにした。
タバサが去った部屋で、ルイズは自身の姉の事についてエルフに話していた。
彼女は公爵家のカトレアについて多少知っていた。
ヴァリエールの次女は病弱だという話は良く聞く。
それはトリステインの貴族なら誰もが知っている事であり、
それ故長女はアカデミーで病気の研究をしていて、
いつか妹を治そうとしているのだ。という美談となっている。
彼女は週に一回の下級貴族達とのお話で、そういった噂話をある程度小耳に挟んでいたりしている。
お礼代わりに。と快く了承した彼女に心から礼をして、
ルイズはキュルケ達のいる部屋へ行ったのだ。明日はどの魔法なら使えるか確かめないと。
と意気込んでもいる。少しくらい学校に戻るのが遅れてもいいじゃない。
薬をすぐにちいねえさまに届けたいし。
そういう訳で彼女はまだ学校に戻る気は無い。
ルイズの寝息が聞こえ始めるくらいに、
青い髪の乙女達は食事を終えた。
「一杯食べたのね。大いなる意志に感謝感謝」
笑顔で手を合わせて祈るシルフィードと、ワインを飲むタバサ。
色々と変わってるわねぇ。と思いながらキュルケは言った。
「ねぇ、その大いなる意志って何?」
キュルケが何となく聞いた問いに、シルフィードはそんな事も知らないの?
と言いたげな顔で答えた。
「とっても大きな猫なのね。月をお砂糖代わりに食べるくらい大きな猫なの」
「随分と変わってるわね。それがあなた達の神様なんでしょ?」
「きゅい!でもちょっと違うというか…司祭様の言葉は難しいのね」
崇めている神様がいるのだから、司祭とかもいるわよねそりゃ。
と、元々連中を神だと信じていないし、
心から信仰するのが本気で嫌な連中が作った神について、キュルケはそんな事を思った。
ベースは猫人のカジート達の昔話だ。最初から熱心に信仰する気0である。
尚、大いなる意志という言葉はここのエルフからもらってきた。
何があってもアカトシュの神格を作りたくなかったので丁度良かったと、
ある道具製作者にして今も生きている司祭は語っている。
「ふーん。で、その猫の名前は?まさか大いなる意志っていうのが名前じゃないでしょ?」
「恐れ多くて誰も知らないのね。でも、大いなる意志にはたくさんの家族がいるの。
影におはす方もその一人」
崇め奉ろうにも、名前が無ければ信仰の力は激減する。
流石にもう一度消し飛ばされたくはないので、
崇めているとポーズだけ取っているのだ。
信仰の感覚は、平賀才人がいる国の一般大衆くらいの熱心さである。
シルフィードはそこら辺の事情を全く知らない。
というのも、彼女は色々と変わった子だからだ。
普通は7つで機械人形の一つや二つ造れる様になるというのに、
生まれて200年以上経った今でも、まともに何も造れない。
不器用だからなのね。と大きな骨付き肉を食べながら親に弁解した。
その後、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
では魔法の才能はどうか?残念ながら平均以下である。
サハラのエルフ達と引き分けろとは言わんが…なぁ。と、
親にため息混じりで言われ、珍しく凹んだ経験もあった。
散歩がてらに空を飛んだら忘れてしまう程度の凹みだった。
本来種族の一員として備わっているはずのテレパシー能力も使えない彼女は、
様々な意味で鬼子だった。しかしいじめられる事は無かった。
変わっている事は良いことだと考える種族であったのと、
空を飛ぶのがとても上手であったし、
彼女の気性がとても好まれていたからだ。
>>464よかったな
俺はフロウ爺に再開してほしいぜ。ずっと待ってるんだよ。
そもそも、韻竜になった彼の種族の気性は基本的に頑固で、
目的の為なら神すら敵とする連中である。
そんな気難しい者が多い中天真爛漫な彼女の気性は、
そこらの男達を釘付けにした。主に服を着ないというところで。
人の姿になる度に女友達に注意や警告を受けるが、
その度にキュルケに言った事を言いながら渋々服を着るのである。
楽天的であまり小難しい事を考えず、
クヨクヨしないで周りに明るく振る舞うところも、
彼女を良い友とする韻竜が多い理由だ。
そんな彼女の仕事は大型機械や荷物等を運ぶ運搬業だった。
ずっと龍のままで出来て、自分の利点を生かせるからその職業に就いた。
それなりに評判も良かったらしい。
何故龍達が人の姿になるかというと、
その方が操作する機械や機械人形等を楽に作れるからだ。
龍の姿に合わせた機械は、人の姿に合わせたそれより遙かにコストがかかる。
その為彼らの中でも元々「深き者」だった者達は、人の姿で暮らしている事が多い。
後から生まれた者達は、仕事の時だけ人の姿になって作業をするのだ。
そんな彼らは現在ロバ・ウル・カリイエにある深い森の中で暮らしている。
技術提供の名目で、人間と共に暮らしている風変わりなのもいる。
そして彼らも人間も、サハラの狂信気味なエルフ達を煙たがっている。
モロウウインドからこちらに飛ばされた者達にとっては忌まわしき者達を思い出させ、
元々住んでいた人間にとってはハルケギニアとの貿易の際、
エルフがとても大きな障害になっているからだ。
かといって戦争に発展するほどの問題でも無いので、
この二種族はエルフを奇妙な隣人として扱いつつ、
「あいつら変だ」と思いながら暮らしている。
「そんな物かしらね。怖いのかしら?」
「よくわかんない。でも、怒ったらとっても怖いって聞いたのね」
そりゃ神様ならそうよね。とキュルケは微笑む。
どんな色の猫かしら。そんな事を思いながら。
そんな時、タバサが目をごしごししながらベッドに入ると、
その隣にシルフィードが入った。
「添い寝してあげるのね。お姉様だっていつも一人は寂しいでしょ?」
タバサの頭を優しく撫でるシルフィードと、
メガネを近くに置いて眠るタバサ。
良い関係だわこの主従は。
そう思いながら、ふと自分の使い魔を思い出す。
フレイムは今何してるのかしら。
留守番しっかりしてるといいけどと呟きつつ、適当なベッドに入るキュルケだった。
最近、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは変な夢をよく見る。
自身が召喚した男が原因と言えるが、では、ここは一体なんなのか。
ルイズは自問自答したが、答えは返ってこなかった。
「なんか、目がチカチカするわね」
極彩色という言葉が、ここまで似合う色も珍しいだろう。
何らかの建物の中にいることは分かっているが、
どうも何というか、凄いのだ。
「色合いがどうこうって問題じゃないわよね。これって」
色合いという物を完全に無視した部屋の内装は、見ているだけで目が疲れる。
明るく彩られた部屋にいるルイズはとりあえず扉を探す。
それらしき物があったので開けた。
「…何よここ」
廊下は尚更に極色に彩られていた。見ているだけでさらに目が疲れてくる。
趣味の悪いゲルマニアの成金だって、こんな装飾や内装は施さないでしょうね。
ルイズは心でそう毒づいた。
自分はさっき眠りについたはずだ。
ルイズはタルブでワインを飲んでベッドに入った事を覚えている。
なら、何故こんなところにいるのだろうと自身の頬をつねる。
何故か痛かった。夢の中なら痛くないのが相場だというのに。
「…えーと」
なんでこんな変な色の場所にいるのかしら。。
様々な色がごちゃごちゃと混ざり合った世界で、
ルイズがそんな事を考えていると、後から肩を叩かれた。
振り向くと、優に2メイルはありそうな巨体の亜人がいた。
見たことの無い鎧で全身を固めていて、
腰に人なら両手で持つような斧を提げている。
鎧は金色で、見事な装飾が施されていた。
「人間かい?」
兜を被っているのでどんな顔かは分からないが、
驚かせないように優しげな声でルイズに聞いた。
声色からして男のようだ。
どう答えるべきだろうか。ルイズは少し考えてから、
嘘をついても仕方ないと思って首を縦に振った。
「珍しいな。メリディア様の領域はムンダスから離れているから、
滅多に人の魂が来ないんだ。おいで。元の場所に返そう」
手まねきする亜人を見る。おそらくデイドラねと彼女は思った。
「待って。私はそこの者じゃないわ」
「とすると――暁の美石の人かな?尚更変だな。
いくらここと近いと言っても、アカトシュが制約で特にこことの境界を、
明確に分けているはずなのに…。まぁ例外もあるか。
おいで、桃色髪のお嬢さん。元の世界に続く所まで案内しよう」
ルイズは何故そんな風にハルケギニアが呼ばれるのかと思ったが、それより気になる事があった。
「ただの桃色?私の髪は『桃色がかったブロンド』よ」
「そうかい?失礼。なら名前を聞いてもよろしいかな。
僕の事はそうだな…オーロランとでも呼んでくれ」
名前が発音出来るか不安なので、彼は自身が属する種族の名を言った。
「私はルイズよ。で、ここって何?」
メリディア様の領域だ。とオーロランが話す。そして彼女についても。
「定命の存在全ての活力をつかさどるお方だよ。
とても優しいお方だ。まぁ――少々人間嫌いではあるけれどね」
最近はマシになった。と歩きながら彼は話す。
「失礼とは思うけど、案外マトモなのね。デイドラって」
危険な存在だ。とマーティンから教えられていたし、
へんてこな自称王子達の話を聞く内に、
どうにもこいつらはアレな存在というイメージをルイズは持っていた。
「マトモなのもいれば、マトモじゃないのもいるさ。
人間だってそうだろう?エルフだってそうであるようにね」
なるほど、とルイズは頷く。多少見ただけで、
それら全てを決定づけるのは浅はかな事なわけね。
そこまで思ってふと、疑問が浮かんだ。
「ねぇ、あなた普通に喋ってるけど」
「うん?」
「何か、ノクターナルとかヴァーミルナとかはもっとこう…」
『ああ、これかい?王子達は好んでこの喋り方をする事が多いからね』
それそれ。とまるで頭の中に直接響いてくるような、
変わった声の出し方を聞いてからルイズは頷いた。
「営業用だよ。神様っていうのは特別じゃないといけないからね」
こうするとウケが良いんだ。とオーロランは言った。
「そういうものかしら…」
「分かりやすいってことさ。つまり衝撃を与えやすいんだ。
不死ってのも楽じゃないんだよ?死ねないから恨みとかそういうの、なかなか解決できないし。
仲介役をアズラ様やクラヴィカス卿なんかに頼むけれど、
あの方々は基本引っかき回してその後放置するのが好きだから…
とと、そんな事はどうでもいい。ところで、ちょっと問題があるんだけど」
兜を被っている為その表情は分からないが、苦労しているのだろう。
少しげんなりしているオーロランの話す「問題」をルイズは聞くことにした。
支援
「何?」
「メリディア様はその髪の色が嫌いでね。
見つかると、君の命がよろしくない事になるかもしれない。
出来れば何も起こらずに帰ってもらいたいんだ。
あまりやっかい事は好きじゃないし、
あの世界でやっかい事を起こすとただじゃ済まないからね。
そういうわけで、髪の色を変えさせてもらってもいいかい?
もちろん、後でちゃんと元に戻すから」
そういえば、自分の髪色と似た色をこの毒の色合いの建物の中では見ていない。
好みかしら。とルイズは思いつつ、オーロランが完全な金髪にするまでそこに止まった。
「よし、と。じゃ、こっちだよ」
人なら両手で持つような戦斧を腰に下げ、オーロランは進む。
エレオノール女史の様な髪色になったルイズはその後をただ付いていく。
辺りの色合いで目がチカチカして、追いかけにくい事この上ない。
とりあえず、内装の趣味が最悪な事だけは間違いないわね。
ルイズがメリディアの評価を頭の中で下した時、どこからかハープの音がした。
「メリディア様が庭でハープを弾いてらっしゃるんだ。昔から音楽を愛されていてね」
普通の趣味だわ。なのに何でこんな変な建物に住んでいるのかしら。
ルイズはオーロランの後に着いていく。
しかしメリディアの歌声が聞こえた時、彼女は止まった。
美しくもどこか悲しみを含んだ声だ。
それは一度も聞いたことの無い声色だったが、
その歌はさっき聞いた歌だった。
「どうかしたのかい?」
神の左手ガンダールブ――
「こ、この歌…」
「ああ、なんでも故郷の歌だとおっしゃられていたよ。
暁の美石じゃこの歌が流行っているのかい?
あの方はシシス様によってそこから連れてこられたとか」
神の右手がヴィンダールブ――
「いいえ。ねぇ、デイドラって全部パドメイだかシシスだかと、
アヌイ=エルだかアヌだかが混じった時に創られたんじゃないの?」
神の頭脳がミョズニトニルン――
「必ずしもじゃないなぁ。下っ端デイドラは、その後王子達に創られた種族もいるし。
それにメリディア様はその辺りには関わっていないというか、オルビスの時に生まれたそうじゃないから」
そして最後にかの邪神……。記すことすらはばかれる……
「じゃあ、いつ頃から?」
「ムンダスの連中が第1紀と言ってる時代より少し前からだね。
もっとも僕達の少しと、君たちの少しは随分違うと思うけど」
全てを創りしロルカーン。世界の始まり虚無そのもの。
あらゆる邪悪の源で、我らと僕に倒される。
「!…どういうこと。ロルカーンは人の神って聞いたけど」
「へ?メリディア様は元エルフだよ。だから、半分デイドラじゃないウマリルというお子様がいるんだ。
ウマリル様は、配下と一緒にシロディールで布教活動中でね。タロスが持ちかけた儲け話だから、
あんまり気乗りはしていらっしゃらなかったなぁ。ご無事だといいんだけれど」
歌声が続くが、ルイズは確かめなければならなかった。
オーロランの制止の声を無視して、声の方へと走る。
色づいた部屋を駆け、奇妙な金色の扉を開くと庭らしき所へ出た。
歌声を放つ女性は、あの時見たエルフとはまるで違っていた。
どこか影が差す彼女がニコリと微笑むと、鳥のさえずりが聞こえる。
ルイズは、タルブで自分が寝ているベッドに戻っていた。
髪の色を元に戻されて。
投下終了。メリディア様はヒスだったり優しかったりする神様です。
テレパシー?聞いたことないぞと言われるなら、
『オブリビオンの扉』セイフィジ・ヒッジャ著 20p
の4pを見れば良い感じです。韻竜が元々何だったかはまたその内。ではまた次の投下まで。
支援ありがとうございました。今後ともよろしくおねがいしますね。
>>484 賭け事がからきしで少女に振り回されまくりの凄腕ガンマンがいるじゃないか
>>483 サハラも余裕ですよ
タカシ、聞いているはずだ!!
私はエルフが道を阻む聖地まで入ってこれることを証明してみせた。
今後、貴様に安全な場所はない!!
乙
乙です。
面白いんだけどなんて感想言ったらいいのか困るw
亀レスで申し訳ないが
>>467 FJ弾はダムダム弾が非人道的だからってことで出てきた弾じゃなかったか?
>>501 乙だけでいいんですよ。それだけで幸せですとも。
オブリビオンの作者さま、乙であります。
今すぐにでも旅を続けたくなるSSなのだが、悔しいかなうちの箱○は3つの赤い緋が灯り
入院状態。
>>484 ジェームス・ボンドの後を継ぐ男とか、人類最高の頭脳が面白そう
少し前にゴルベーザ様がチラッと見えたから語らせてくれ。
どうせなら四天王も召喚しようぜ!ってね
土のスカルミリョーネ&ギーシュ「フシュルル…盛りのついた噛ませ犬め」「うわぁっ毒吐きやがった!?」
水のカイナッツォ&モンモン「いやぁ!卑猥よぉ亀の頭が卑猥よ!!」
風のバルバリシア&タバサ「あら、ワタシ好みの御譲ちゃんじゃないか」「…!?(ゾクリ)」
火のルビカンテ&キュルケ「マントの中、見せてやろう」「まぁ大胆な方(ポッ)」
ゴルベーザ様&ルイズ「なんて威圧感なの、こんなのが簡単に使い間になんて…」「使い魔ですか?いいですとも!」
なんて愉快な仲間達だ。
>>506 クソワロタww 確かにこいつ等全員召喚したら濃すぎるww
FFつながりで思いついた。
ギルガメッシュなんかどうだろう。
デルフリンガーがデルフリンカーかデルブリンガーとかになりそうだが。
他勢力が気になるな、別の作品の四元素なんだろうかw
デスブリンガー召喚で世界滅亡
ここは基本に戻ってストームブリンガー召喚だろ
最後にストームブリンガーにルイズ殺されるけどなw
果てしなき蒼召喚して召喚戦記するルイズとかも見てみたい
使い魔召喚の時点でルイズが唯一使える魔法だし丁度いいとか言って見る
>>512 ちい姉さまがストームブリンガー所有。
虚弱ゆえにストームブリンガー無しでは生きてゆけぬ……エルリックのように。
>>512 関係ないがストームブリンガーと聞くとJAM Projectの曲を思い出す。
>>513 抜剣覚醒して銀髪キツネ耳なルイズになるわけですね、わかります。
ハイデルンのあの技のことかね?
>>480 リーンの翼からサコミズ・シンジロウ召喚ですね、分かります。
彼の特攻中に開いたのがオーラロードでは無く召喚のゲートで、
ルイズに特攻して終わる小ネタですね、分かります。
いやむしろシエスタの曾爺さんがサコミズ王!
タルブの村にあるのは零戦ではなく、オウカオー!
シエスタを嫁にやろう!!
く、そんな事を言って油断させる気か
そうでもあるがなああーー!!
コミック版しか読んでないが、サコミズってこんなやつだよな?
>>517 果てしなき蒼なら力の供給源とか問題無いし
ルイズをガンダにすれば剣の扱いも問題ない
しかし一番の問題はサモンナイト石をどうやって登場させるかであった
「サコミズ…サコミズ…共に行こう、今こそ君の力が必要だ」
なんだかんだでゲルマニアの王がサコミズ
>>521 俺なんかコミック版を立ち読みした程度だから、
「あっ、そんなシーンあったかもw」としか言えないんだぜ。
>>517 それじゃ声アリーゼの見た目ベルフラウじゃないか!
アティ先生の人帰ってこないかな・・・もう一年経つんだよな。
超律の人やクソ(クラフトソード)の人も音沙汰ないし、どうしたんだろうか?
>>522 初めて行った召還でイスラ召還して未契約のを貰うとか…
送還出来なかったらイスラからの口撃とか凄い事になりそうだけどカトレアとは良好な関係になりそうだ
ところで果てし無き蒼って"先生"と一体化してなかったっけ?
>>527 一体化してるけど先生が死んだ場合とかそんな感じで
島の時間の流れがおかしいから長生きだけど流石に不老じゃないだろうし
イスラは真エンドだとあれになってるからなあ・・・
おまけでも生徒が不滅の炎持ってるし・・・
ガリア王の元にショット・ウェポンが召喚されたら
ゼロ魔はダンバイン化したりして(滝汗)
予約が無いようなので1:15から投下させて頂きます。
重攻の使い魔 第3話『決闘未満(後編)』です。
支援を行なう
>>528 一応言っておくけど、先生は剣で共界線から魔力を供給している限り不死に近い寿命で不老だぞ。
投下開始します。
ヴェストリの広場において甲冑を着込んだ女性を象った青銅色のワルキューレ7体と、鮮やかな
真紅の鎧を纏った大柄なゴーレムが対峙している。
ギーシュが薔薇をさっと振ると、ワルキューレ達は赤いゴーレムを半円状に取り囲む。赤いゴー
レムは、ルイズに召喚されてから初めて明らかな戦闘体勢へと入っていた。棍棒を腰溜めに抱え
前傾姿勢を取り、いつ何時走り出せるようにとワルキューレ達を見据えている。
「いけっ、ワルキューレ!」
端正な顔に似つかわしい高めの澄んだ声でギーシュが命令すると、ワルキューレ達は赤いゴーレ
ムを確実に屠らんと、一斉に行動開始する。ギーシュは3体のワルキューレを使い、3方向からの同
時攻撃を仕掛けようとした。これで仕留められなかったとしても、相手は必ず体勢を崩す。それを
見計らって、支援に回した4体のワルキューレによって、体勢を立て直す暇を与えずに連続攻撃を仕
掛ければ、あの赤いゴーレムとて無傷ではいられまい。あとは7体全員で確実に仕留めればいい。
たとえあの巨大な棍棒が恐ろしい破壊力を持っていたとしても、当らなければどうと言うことは
ないのだ。見るからに鈍重な赤いゴーレムを前にし、ギーシュは速度重視の戦闘を取る自分の勝利
を確信した。
しかし、そこで観客の誰もが予想しない展開が始まった。
「なっ……!」
ギーシュはまともな言葉を発することすらできなかった。余りの短時間に目まぐるしく変わる戦
況に、人間の思考速度が追い付かなかったのである。
3方向から同時攻撃を仕掛けられたゴーレムは身を固めて防御するでもなく、どたどたと走り出す
こともなかった。3体のワルキューレが肉薄し青銅の剣を振り上げた瞬間、その巨体には似つかわし
くない速度で動き出したのだ。ゴーレムは地面をすべるようにして3体のワルキューレの包囲網を抜
け、即座に背後へと回り込んだ。ワルキューレの3本の剣はむなしく空を切り、赤いゴーレムに対し
完全に無防備な姿を晒してしまう。そして赤いゴーレムはその決定的な隙を見逃すことはしなかった。
攻撃を回避されたため一箇所に集まってしまった3体のワルキューレ目掛け、豪腕に握られた棍棒を
横方向へ薙ぐように目にも止まらぬ速度で振り切った。
ワルキューレは防御姿勢を取る間もなく、その攻撃を食らってしまう。青銅でできたワルキューレ
の体が、めきめきと音を立てながらまるで紙細工のようにひしゃげていく。3体のワルキューレは高
速で空中へと打ち出され、観衆の頭上を飛び越え本塔の壁に折り重なるようにして激突した。
「……そ、んな。……しまったっ、散開するんだワルキューレ!」
己の使役するワルキューレが余りにもあっさりと返り討ちに遭い、ギーシュは一瞬茫然自失状態へ
と陥ってしまった。主人の忘我はワルキューレの完全停止を引き起こし、もはや取り返す事のできな
い隙を作り出してしまう。我に返ったギーシュが慌てて指令を出すも時既に遅く、残った4体のワル
キューレもまた、まるで抵抗できない赤子が屈強な大人の男に捻り潰されるが如く破壊されていく。
あるものは全身を弾丸とした体当たりを受けて奇妙に捻れた体を地面に転がし、またあるものは縦
に振り下ろされた棍棒を脳天から受け、地面にめり込んでいた。他の2体は、最初の3体と同じように
空中へと打ち出され、遠くの校舎の壁に激突した。
「う、うそだろう……? こんな、こんな簡単に僕のワルキューレが……」
決闘に要された時間はわずか1分にも満たなかった。手だれの傭兵一個小隊に匹敵すると言われる
7体のワルキューレがたった1体のゴーレムに、いとも簡単に倒されてしまったのだ。呆然としている
のはギーシュだけではなく、先程までやんややんやと囃し立てていた観衆もまた驚愕を顔に貼り付け
ている。
圧倒的な力を見せ付けたゴーレムは最早ギーシュに抗う力は無しと見たのか、ただ静かに見つめて
いるだけだった。そのような余裕すら見せ付けるゴーレムに、ギーシュはどうしようもなく喚き出し
たい思いに駆られる。しかし一蹴されたことで、ただでさえ無様な姿を晒しているというのに、これ
以上ルイズ曰くみっともない真似はできなかった。悔しさに血が滲むほど唇を強く噛むと、ギーシュ
はぐっ目を瞑り手にしていた花びらを失った薔薇を手放す。薔薇はぱさりと地面へ落ち、そこで
ギーシュは敗北宣言をした。
「僕の、負けだ……」
ギーシュの敗北宣言に、広場は騒然となる。生徒の間ではルイズの魔法音痴ぶりは周知の事実であ
り、たとえ偶然から高位のゴーレムを従えることになったとしても、満足に操ることなどできないと
考えられていたのだ。ただしそれは又聞きしたものや遠くから眺めていた者の意見であり、間近で
ルイズのゴーレムを見た者はみなその異様な威圧感に圧倒され、決闘の勝敗云々を口に出すものは少
なかった。ギーシュの友人が必死に止めたのもそのためだった。
そして騒然となった広場にて一人、抑え切れない喜びにはしゃいでいるものがいた。赤いゴーレム
の主人、ルイズである。
「やっったぁ! さっすがわたしの使い魔、めちゃくちゃ強いじゃない!」
ゴーレムに駆け寄り、その赤い体をばんばんと叩きながらルイズは全身で喜びを表現していた。確か
に只者ではないと感じていた。根拠は無かったが、ギーシュに勝てるとも信じていた。それでもここま
で圧倒的な力の差を見せ付けて勝利するとは、当のルイズも予想していなかったのだ。こんな強力な
ゴーレムを使い魔に出来るなんて、自分はなんと幸せなのだろう、とルイズは思わず始祖ブリミルの感
謝の言葉を送る。
ルイズに付いてきて観衆にまぎれて決闘を見ていたシエスタは、やはり例に漏れず呆然としていた。
ルイズが自分の厄介事を引き受けてくれるとは言ってくれたが、それは決闘に勝たなければ意味のない
言葉だった。もし負けてしまえばきっと自分に厄が戻ってくると、シエスタは戦々恐々としていたのだ。
しかし、余りにも決闘の時間が短かったため、はらはらするにも時間が足りなかった。
「ギーシュ、これに懲りて自分の責任を他人に押し付けるなんてみっともない真似するんじゃないわよ。
たとえ相手が平民でもね。あんたもグラモン家ならそれに相応しい振る舞いをしなさい」
「……分かったよ」
「まったく、あんたみたいな軽薄男のどこがいいのかしらね? モンモランシーもケティって子も理解
に苦しむわ」
ルイズがゴーレムに抱え上げられ、意気揚々と広場を去ろうとした時、後ろから呼び止める声が掛け
られた。その声の主は俯いたギーシュだった。ルイズは怪訝な表情を浮かべる。
「ルイズ、君が僕をどう言おうと構わない。僕は紛れもない敗者なんだからね。でもあの二人の名誉を
傷つけるような発言はやめて欲しい」
「名誉って、あの二人に男を見る目が無いのは事実じゃない。あんたみたいな男に引っかかってるんだから」
「いいかい、グラモンの家名に賭けて誓う。僕はあの二人のレディを傷物になどしていない。君は決闘
の前に僕を侮辱したね。誰彼構わず突っ込むんじゃないと。でもそれは酷い誤解だ。マリコルヌも君も、
他の連中も揃いも揃って誤解する。僕はそれが我慢ならない……!」
その後に続いたギーシュの言葉を要約すると、モンモランシーとケティに対し、性的な事に及ぶことは
していない。ということであった。あの時ギーシュはマリコルヌを始めとする取り巻きに、何人に手を出
したのか、またその感想は何か無いか、などとしつこく質問責めにされて不機嫌になっていた。自分は
そんなことをしてはいないと否定しても、そんなはずはないだろうといつまでも食い下がってくる。
そんな時件の小瓶を取り落とし、それを見てなるほどモンモランシーと付き合っているのか、と更に騒
ぎ立てられた。その後はケティに酷い裏切りだと糾弾され、モンモランシーにも手酷い誤解をされた。
自分は手を繋ぐ、キスをする以上の行為は絶対に行わない。それは相手の未来に影を落とす原因になり
かねないからだと、ギーシュは言う。自分が望むのは相手の幸せであって不幸ではないと、普段のギーシュ
からは想像もつかない真剣さで語っていた。
話を聞くうちに、ルイズの高揚とした気分は逆に落ち込んでいった。これでは自分が悪役ではないか。
確かに自分は仲裁に入ったが、その時の挑発は完全に無用なものだった。あのような態度ではギーシュが
激怒するのも仕方がない。ルイズは周囲の全ての視線が己を責めているように感じられ、俯いてしまう。
「使用人の彼女を責めてしまったのは僕の落ち度だ。どうしてもいらいらを抑えることができなかったんだ。
できれば彼女にすまなかったと伝えて欲しい」
「……わかったわよ」
ルイズの声はか細く、いまにも雑音に掻き消されそうなほどであった。いまや、決闘に負けたはずの
ギーシュの方が誇り高く感じられてしまう。実際には見苦しい面も多々見せたのだが、潔く敗北を認める
姿と、自分の頬を叩いた女性達の身を第一に考える姿勢に、ルイズは自分が余りにも卑小な理由で戦って
いたことを自覚させられる。
「あと、最後にこれだけは言わせて貰うよ。僕は君に負けたのではない。あのゴーレムに負けたんだ」
「んなっ、何言ってんのよ! あいつはわたしの使い魔なのよ!?」
勝利まで否定され、流石にルイズは抗議の声を上げる。確かにこの決闘において、どちらの非が大きいか
と言われれば間違いなく自分だろう。しかし決闘の勝利まで否定される謂れはないはずだ。こればかりは受
け入れるわけにはいかない。
「確かに使い魔は主人の力を反映すると言われている。主人に力があればあるほど強力な使い魔が呼ばれると。
しかし使い魔の力が全て主人の力というわけではない。主人と使い魔、二つの力が合わさってこそ、そのメ
イジの力と認められるんだ」
「そ、それがなんだってのよ」
「君はこの決闘でゴーレムに指示を出していたかい? いいや、していないね。君は最初に行けと命令しただ
けだ。後はあのゴーレムが自分で判断して戦っていた。使い魔に戦いを丸投げするメイジなど主人としての
資格はない!」
追い討ちをかけるかのようなギーシュの言葉にルイズは言い返すことができなかった。言われてみればその
とおりだと改めて気付き、また今までそれを気にしていなかった自分にも驚いていた。この決闘は自分とギーシュ
が行っていたのではない。自分のゴーレムが全て片をつけてしまった。そこに自分は介入していない。勝利する
為の寄与を何一つ行っていないのだ。
「僕はいつか自力で君のゴーレムに勝ってみせる。必ずその高みへと到達してみせる。僕が言いたいのはこれ
だけだ。それじゃあ失礼するよ」
ギーシュはそう宣言すると、マントを優雅に翻らせて広場から去っていく。先程の一連の会話を聞き、観衆の
ざわめきは落ち着いてきていた。そして圧勝したルイズ側へのやっかみも込めて、これ幸いとばかりにルイズに
聞こえるよう中傷する者もいた。
そんな中、こっそりと決闘を眺めていたシエスタがルイズへと駆け寄り、俯き黙り込んでしまった少女に声を
かける。
「あ、あの、ミス・ヴァリエール。ありがとうございます。……す、凄いですよね、あのゴーレム! あんなに
強いなんてびっくりしちゃいました!」
何も反応を見せないルイズをなんとか元気付けようと、シエスタはわざとはしゃいでみせる。しかしそれでも
ルイズは何も言わず、とぼとぼと校舎へ向かって歩き出した。その後を、やはりゴーレムがのそのそとした動き
で付いていく。先程の俊敏な動きからもとの鈍重な動きに戻っていた。
「ミス・ヴァリエール……」
シエスタの呟きは広場のざわめきに掻き消され、誰も耳にする者はいなかった。
学院長室にてオスマン、コルベール、ロングビルの3人が驚愕に目を見開いていた。コルベールがオスマンに
事の詳細を説明している時に、ロングビルがヴェストリの広場で決闘騒ぎが起きていると報告しに現れ、当事者
は誰かとオスマンが尋ねると、ギーシュ・ド・グラモンと今の今話し合っていたルイズ・フランソワーズ・ル・ブ
ラン・ド・ラ・ヴァリエールだと答えたのだ。
オスマンはコルベールは目配せをすると杖を振るった。すると壁に掛けられていた大鏡に件の広場が映し出され、
学院長室から事の顛末を最初から最後まで眺めていたというわけであった。
「……余りにも力の差がありますね。ミスタ・グラモンは『土』のドットですが、ゴーレムを操る才能は侮れま
せん。それをああも簡単にあしらってしまうとは……」
「うむ……」
コルベールの言葉はオスマンの胸中そのものであった。グラモン家とは長い付き合いなので、その息子達のこと
はよく知っている。確かにギーシュは兄達よりも劣るドットメイジだったが、ワルキューレの練成や、それらを使
用した連携には目を見張るものがあったのだ。オスマンはコルベールともう少し話し合う必要があると考え、ロン
グビルへ指示を出す。
「ミス・ロングビル。学院としては理由はどうあれ私闘を認めるわけにはいかん。グラモンの馬鹿息子とヴァリエール
の三女をここへ連れてくるのじゃ」
私闘を止めようともせずに観戦していた身としては苦しい理由だとオスマンは考えたが、とにかく人払いをする
必要がある。ロングビルはやはり表情一つ変えずに、わかりましたと一言だけ言うと静かに退室した。ロングビル
が去っていったことを確認すると、コルベールはオスマンへと話しかける。
「あの戦闘能力、やはりあれは伝説の使い魔『ガンダールヴ』だと思われます。記述にも残されておりますが、
『ガンダールヴ』は主人であるブリミルを守護する為に一騎当千の戦闘力を持っていたとか」
「確かに先程の決闘を見る限り、グラモンのゴーレムを2倍3倍に増やしたとしても結果は同じじゃろうな」
「現代に蘇った『ガンダールヴ』……。やはり王宮に報告するべきではないでしょうか」
コルベールの進言にオスマンは顔を渋らせる。ここトリステイン王国は周辺諸国に比べ、軍事力において劣っている。
最も古い歴史を持つということで未だ独立していられるが、一度ガリアやゲルマニアあたりの強国に攻め込まれれば
そう長くはもたない。慢性的な戦力不足に悩むゆえに、王宮は戦力になると踏めば徴発にかかる可能性が高い。その
ような者達にこの件を報告することは肉食獣の前に肉をちらつかせるようなものだ。やはり、自らの預かる学院に在籍
する生徒を差し出すような真似はできない。オスマンはそう結論付けた。
「いや、この件はしばらくわしが預かる。王宮への報告は折を見て行う。影響を考えると今報告するのは時期尚早じゃ」
「……わかりました。ということは、この件は他言無用ということですね?」
「無論そのとおり」
そろそろロングビルが二人を引き連れ戻ってくる時間だ。これ以上の議論はできない。そう考え議論を切り上げると
ほぼ同時刻に扉が叩かれ、ロングビルとギーシュ、ルイズが入室してきた。
学院長室で学院長直々に絞られたルイズは、自室に戻ってくるとぼふんとベッドに飛び込んだ。あの後、今日は講義
には出ずに部屋で頭を冷やしておれと言われ、そのとおりにしたのだった。
ベッドに潜りながらルイズは先程の決闘を思い返していた。ゴーレムは自分の力ではない。ただ神が気まぐれに与え
たおもちゃで喜んでいた自分。自分は何も変わってはいない。結局魔法を使うこともできない無力なメイジということ
には違いないのだ。
(わたしは……結局落ち零れ……)
強力なゴーレムを使い魔としたことで自分は舞い上がっていた。確かにあのゴーレムはギーシュのワルキューレすら
物ともしない強さを持っていた。だが、主人である自分はというと降って沸いた幸運に胡坐をかいていただけだ。
決闘前の自分がしていた酷い誤解と侮辱もまた、ルイズの顔に影を落とす原因となっていた。とどのつまり増長し
きっていたのだ。それを自覚すると、ルイズの気分は際限なく落ち込んでいく。ギーシュに家名を汚さぬ振る舞いを
しろなどと、どの口が言うのだろう。
その時、自室の扉が控えめに叩かれた。ルイズが黙っていると再度叩かれたので、鍵は開いていると一言だけ言って
またベッドに潜り込んだ。
「あの、ミス・ヴァリエール。紅茶をお持ちしたのですが、大丈夫ですか……?」
訪問客はシエスタだった。遠慮がちに、ベッド潜り込んでいるルイズに声をかける。
「先程はその、本当にありがとうございました。ミス・ヴァリエールに助けて頂かなければどうなっていたことか……」
「……決闘したのはわたしじゃないわよ。あそこに突っ立ってるゴーレムよ」
ルイズは手だけベッドから出し、赤いゴーレムを指差す。シエスタが顔を向けると、主人が寝込んでいるのもどう
でもいいとばかりに真紅のゴーレムがだんまりと佇んでいる。
「……わたしのやることって空回りばっかりだわ。ギーシュの誤解も、ゴーレムの強さに喜んでたのも……。わたし
なんて結局何やっても駄目なのね」
「そ、そんなことありません! ミス・ヴァリエールは私を助けてくれたじゃないですか!」
「あれだって気が大きくなってただけよ。ゴーレムが無かったらあんなことできなかったわ」
「それでもっ、それでも私は救われたんです。誰も助けてくれない時にミス・ヴァリエールが助けてくれて、本当に
私嬉しかったんです。……だから、そんなに自分を卑下なさらないで下さい。私まで悲しくなっちゃいます……」
平民相手に弱みを見せるなど、普段のルイズからは想像もつかない光景であった。常に気を張り、揚げ足を取られ
まいと努力してきたルイズが、格下である平民に愚痴を零すまでにルイズの精神は弱っていた。しかし、シエスタの
言葉にほんの少しだけ救われた気分にもなっていた。ゴーレムは自分に従ってはくれるが、声を掛けてくれることは
無い。今まで自分に優しくしてくれるのは、人の目が無い時の父親と、常にたおやかさを失わない姉のカトレアぐら
いのものだった。
ベッドの中で少し潤んでいた目をごしごしと擦ると、ルイズはもそもそと這い出してきた。シエスタに紅茶を渡す
ように言うと、澄んだ紅茶の注がれたカップが手渡される。数口飲むとベッドの傍らに置かれているテーブルにカップ
を置いた。そしてシエスタにほんの少し、本当に少しだけ感謝を込めて礼を言う。
「……ありがと。紅茶、おいしかったわ」
「……! ありがとうございます。どうせなら明日もお持ちしましょうか?」
ルイズが自分に礼を言ってくれてことにシエスタはつい嬉しくなってしまった。シエスタの心遣いに、ルイズは
ならお願いするわと言うと、またベッドに潜り込んでしまった。そんなルイズを見て、シエスタはくすりと微笑む。
それでは失礼します、とシエスタが部屋を出ようとすると、ルイズに呼び止められた。
「……ギーシュがあんたには悪いことしたってさ。申し訳なかっただって」
シエスタも決闘の場にいたのでギーシュの言葉は聞いていたが、シエスタははい、と短く答えると静かに扉を閉
めて立ち去っていった。シエスタの遠ざかる足音を聞きながら、ルイズはベッドの中で平民相手にあんな態度を取
るなんてどうかしていると思ったが、何故か先程までの暗澹とした気分はほんの少し和らいでいた。
以上です。決闘の下りに少し手間取りました。
読んで下さっている方には、何故オリジナルVRでもないライデンが自律行動しているのか、弾薬・燃料・整備はどうしているのか、
そもそも何故ライデンは小さくなっているのか、と思われている方もいらっしゃるかと思います。
これらには、一応自分なりに理由付けを行っているので、無意味にこのような設定にしたわけではありません。いずれ本編の方で
明らかにするつもりです。問題はそこまで連載する気力が続くかということなのですが。
何故ライデンなのか、この話ならばもっと相応しいロボットがいるだろうという意見ですが、これはもう私の趣味です。シータと
ロボット兵というか、ナウシカと巨神兵というか、アイネイアーとシュライクというか、まあそんな関係をルイズとライデンで書
きたいなと思った次第であります。
また、この作品が今の所判を押したようなテンプレ展開なのにも意味があったりします。初投稿なのでやはり、完結させることを
最大の目標としています。序盤からオリジナル展開にすると、私の力量では間違いなく頓挫します。ですから可能な限り原作の流
れを踏襲しつつ、物語の締めの部分だけ完全なオリジナル展開を入れようと考えています。
最後に、感想を頂けるのは大変嬉しいのですが、できれば感想スレでお願いします。それなりに毒吐きスレに出入りする身としては、
あそこでポジティブな意見を書くのは余りよろしくないと痛感していますので……
言い訳じみた後書きを長々と続けてしまい、申し訳ありません。それでは失礼します。
乙!
意外と早く増長諌め展開来たな
ルイズの変化に期待
投下乙
>>532 そういえばそうだった
でも不死じゃないからきっといつか何らかの要員で死ぬはず
別に先生を殺したい訳じゃないけど、ルイズに果てし無き蒼は持たせてみたい・・・
自分に文才ありゃー自分で書くんだけどなあ
乙っす
>>470 超遅レスだがそのレス見てサングラスをつけたルイズが
「今日の使い魔は3回目の召喚ヒラガ・サイトさんでーす」
とか
サイトが次の使い魔紹介してといわれると学園中から
「えーっ」
と言われるのを幻想した
疲れてるのかな俺…
乙
ところでまとめサイトにある必殺仕事人って何?タイトルだけで本編が見当たらない・・・
荒らしの直接投稿兼無駄ページ モロボシ・ダンもそう
重攻の人乙!面白かったです!!
しかし、このライデン全然武装使ってないw 使ったらギーシュ死ぬけどww
フォースでΔ使いだったけどライデンシリーズは脅威だったなw今ならオンライン対戦
筐体出せそうなのに開発チーム解散しちゃったからな…(遠い目
ライデンの人乙
サルファで絶望した身としてはライデンの活躍は嬉しいw
次回の展開も期待
>>545 携帯だからまとめしか見てなくて本スレの流れが分からなかったんだ。
情報サンクス。
ライデンの人乙
毎回ライデンを見て思うけど、あの細すぎる腰は未だに慣れないw
ライデンの人乙です
ギーシュはバズーカすら使うに値しない相手ということなのかw
エクスデス呼ぼうぜ
どうもこんばんわ。
毒の爪の使い魔の第27話が書き終りました。
予定などが無ければ、3:20から投下開始します。
では、投下開始します。
アンリエッタからの依頼を受けた翌朝――
朝靄の中、ジャンガ、ルイズ、ギーシュ、キュルケの四人は馬に鞍を付けながら出発の準備をしていた。
キュルケはあまり馬に乗る事は無いらしいが、苦手と言うわけでもないらしい。
その事を指摘したルイズへ逆に、魔法の成功ゼロよりはマシ、と言ってからかう位だから、問題は無いだろう。
「ねぇ、ジャンガ?」
キュルケとの口喧嘩が一段落したルイズはジャンガに尋ねる。
馬の鞍に荷物を括り付けているジャンガは顔を上げずに答える。
「何だ?」
「何で馬を使うの? あんただったら普通に走るだけで十分だと思うけど?」
荷物を括り付け終えたジャンガは、ため息を一つ吐く。
「…別に。ただ、夕べの怪我が治りきってねェから本調子じゃねェだけだ…」
「そう…」
それだけ言うと、ルイズは右手に目を落とす。
薬指にはアンリエッタから渡された水のルビーが嵌っていた。
それを確認し、ポケットの中に入れていた物を取り出す。
青っぽい色をしたそれは水のルビーと共にアンリエッタに渡された物。
ジャンガが”元居た世界”に在った物。
「ヒーローメダル…か」
――昨夜の事
ジャンガの言葉に、その場に居た一同は唖然とした。
「”俺の居た世界”…って、どういう事?」
ルイズは思わず聞き返していた。
ああ…そうか、とジャンガは呟く。
「まァ…別に隠す事じゃねェし……タバサ嬢ちゃんにも話してるしよ」
そうしてジャンガは、自分が別の世界からルイズに召喚された事を簡単に説明する。
話の内容にルイズ達は驚いた。
「あなたが別の世界から来たなんて…」
「信じ難い話ね…」
モンモランシーもキュルケも流石に唸る。
だが、ルイズは不思議と納得できていた。
「…なるほど。それなら、前のあんたの話も全部納得が行くわね」
「前の?」
「あんたが目を覚ました時に、月がどうこう言っていた話よ」
「ああ…」
ジャンガは自分が召喚されて目を覚ました時の事を思い返した。
あの時は全く相手にされなかったが、『破壊の箱』や彼女自身が見た”夢”が、その証拠となっている。
「まぁ、それはそれでいいとするわ。で、本題なんだけど…」
「”これ”の事だろ?」
ジャンガは爪に乗っけた物=ヒーローメダルを見せた。
頷くルイズ。
「そう…、あんたの世界の物だって言うけど…どう言う物なのよ?」
ジャンガはヒーローメダルに視線を落とす。
「こいつはヒーローメダルって言ってな……俺の世界じゃ然程珍しくない代物だ」
その言葉にアンリエッタは口元に手を沿え、驚きの声を上げる。
「そうなのですか?」
「ああ。ヒーローを目指す者が手にする”ヒーローたる証”。
まァ…お前等に解り易く例えるなら、貴族の証として身に着けるマントみたいなもんだ」
ギーシュはジャンガの話を聞きながらメダルを覗き込んだ。
「これがぼく達貴族のマントと同じ物か」
「それがどう言う物かは解ったわ。けど…ヒーローってのは何なの?」
今度はキュルケが尋ねる。
「まァ……色々あるな」
それにモンモランシーが呆れた表情で言った。
「何よそれ? 全然説明になってないじゃない」
「しょうがねェだろうが? ヒーローメダルを持ってる奴は様々なんだよ。
純粋な人助けをしている奴も居れば、ただの賞金稼ぎも居るし、汚い仕事を受け持っている奴も居る。
更に付け加えればな、姫嬢ちゃんに似ていると言った悪党もヒーローメダルを持ってたさ」
全員開いた口が塞がらなかった。――あまりにも節操が無さ過ぎる。
「…そう。そんなに庶民的な物なんだ…これって」
ようやく、そう言ったルイズはヒーローメダルを見る。
ジャンガは爪で頬を掻く。
「ああ、そうそう……それとな」
「何?」
ジャンガの声にルイズは顔を上げる。
「そのヒーローメダルってのはな、持ち主の……その、なんて言うんだ。
心構えと言うか…態度と言うか…、そいつの”ヒーローの資質”って言えばいいのか?
そいつに応じて色が変わっていくんだ。種類は全部で四つ」
「ふぅ〜ん…それは凄いわね。…で?」
「で…って、何だよ?」
「それはどうなの?」
ヒーローメダルを指し示す。
ジャンガは爪で耳の穴を穿りながら言った。
「これは『ブランクメダル』……ヒーローメダルの中で”最下級”だ」
「な!?」
ルイズは大口を開けて絶句する。
無理も無い。まさか、一国の王女が持つメダルが”一番最低”などと誰が予想できよう?
そこへ追い討ちをかけるかのようなジャンガの言葉が聞こえた。
「ちなみに、先程話に出た悪党の持つメダルは金色の『ゴールドメダル』……ヒーローメダルの中で”最高位”だ」
「はぁぁぁーーー!!?」
殆ど悲鳴に近い叫び声が上がった。
これまた無理も無い。一国の王女よりも悪党が上…、それも”最低”と”最高”という差の開き。
――納得が行く訳が無かった。
ルイズはジャンガに詰め寄った。
「ちょっと、何かの間違いでしょう!? その悪党ってのがどういう奴か解らないけど、
悪党が最高で姫様が最低なんてありえないわ! 絶対にありえない!」
ルイズの猛烈な勢いに飲まれ、他の皆は何も言えない。
対してジャンガは涼しい顔。
「事実さ」
「嘘よ!!」
「おい……お前、ヒーローメダルを何か誤解してないか?」
「え?」
ルイズは呆気に取られた。
ジャンガは話を続ける。
「ヒーローメダルはそいつのヒーローの資質を表すんだよ。そして、ヒーローに善も悪も無い。
ヒーローってのは……テメェの中の信じる物、信じる事を真っ直ぐに貫ける奴を言うんだよ。つまり……」
言いながら、ルイズの背後のアンリエッタを爪で指し示す。
「その姫嬢ちゃんは、テメェの中のいろんな物を信じ切れてない、貫き通せてないって事だ。
ま、俺の知ってるあの悪党は、テメェの中の正義を信じて疑わなかった…。
やってる事事態はテメェらの目には不愉快に映るだろうが……その心はヒーローのそれだ。
少なくとも、テメェの尻拭いを他人任せにする”今の”姫嬢ちゃんじゃ…足元にも及ばねェな」
ルイズは悔しさに拳を強く握り締めた。
と、アンリエッタが声を掛けた。
「いいのですよ、ルイズ」
「姫さま…?」
ルイズはアンリエッタへ振り返る。
アンリエッタは静かに頷く。
「まだまだなのは、わたくし自身が一番良く解っています。
使い魔さんの居た世界はどういった所か解りませんが…、きっと意志の強い人達が大勢居るのでしょうね…」
「…まァな」
「わたくしもその世界の生まれならば…強くなれていたでしょうか?」
「知るかよ。大体、強くなるも弱くなるも、結局はテメェ次第だ」
「ですね…」
そこで会話が一旦やんだ。
暫しの沈黙が流れる。
アンリエッタが口を開く。
「わたくしも……自分の意思を貫けるように、もうこのような過ちを犯さないように。
そのメダルがあなたの言う金色の輝きを持つように…」
そこで一旦言葉を区切る。
「”今の”わたくしよりも強くなりましょう」
そう言って、アンリエッタはジャンガに向かって微笑んだ。
その顔にジャンガは軽く鼻を鳴らす。
(…解ってるじゃねェか)
――自分の言った”今の”と言う台詞が暗に示す”これから変わっていけ”と言う意味を一瞬で理解した。
こいつは道を間違えなければ化ける…、直感的にそう思った。
アンリエッタはルイズ達に改めて手紙の件を頼むと、ルイズの部屋から去って行った。
――そして、現在に至る。
ルイズはジャンガに尋ねた。
「ねぇ、今更聞くんだけど…」
「ンだ?」
「これって姫さまの物なのに、わたしが持ってても平気なの?」
「そんな事か。別に平気じゃねェか? 前に別の奴が持っていたゴールドが、
他の奴に渡ってブロンズになった事があるがよ…」
「だめじゃないの!?」
叫ぶルイズ。
ジャンガは大きくため息を吐く。
「前の所有者はその時くたばってたんだよ。だから、本来の持ち主が死なない限り別に平気だろ?」
「…不吉な事言わないでよ」
ルイズはメダルを暫く眺め、ポケットへと戻した。
そしてため息を一つ吐き、辺りを見渡す。
「護衛の人って……そろそろ来てもいいと思うけど?」
そうルイズが呟いた時だった。
ルイズの前方の地面が、唐突にモコモコと盛り上がり始める。
それに驚いたルイズは思わず声を上げた。
「な、何っ!?」
盛り上がった土を跳ね除け、茶色い生き物が顔を出した。
果たして、それはギーシュの使い魔のビッグモール=ヴェルダンデだった。
「ヴェルダンデ!」
ギーシュは己が愛する使い魔の出現に声を上げ、馬を下りるや駆け寄って抱き付き、頬擦りをする。
「ああ、ぼくの可愛いヴェルダンデ! ぼくがまた危険な目に遭うかどうか心配で出てきてくれたんだね。
ああ……きみはなんて優しいんだ。そんな君を召喚できたぼくは幸せ者だよ」
ヴェルダンデに惜しみない愛情を注ぎつつ、ギーシュは頬擦りを続ける。
その様子を冷めた表情で見つめる、ジャンガ、ルイズ、キュルケ。
ルイズは馬を下り、ギーシュへと近づく。
「あのね…言っておくけど、ビッグモールなんて連れていけないわよ?」
ルイズがそう言った時である。
ふいに、ヴェルダンデが鼻をヒクヒクと動かしながらギーシュの下を離れる。
そして、何かの匂いを嗅ぐかのように鼻を動かしながら、ルイズの下へと歩み寄る。
「な、なによ?」
近づいてくる巨大モグラに何かを感じ、足が自然と後ろへ下がる。
ヴェルダンデはルイズを見上げる。
そのまま暫く鼻をヒクヒクと動かしていたが…、徐にルイズに飛び掛った。
「きゃあ!?」
自分の身長と同程度の大きさのモグラに押し倒され、ルイズは悲鳴を上げた。
必死に手足をバタつかせ、ヴェルダンデを跳ね除けようとするが、重量がある為に上手くいかない。
ヴェルダンデは頻りに鼻をルイズの右手に――いや、ルイズの薬指に嵌る指輪に擦り付けている。
それに気が付いたキュルケがギーシュに尋ねた。
「ひょっとして、あなたの使い魔は宝石が好きなの?」
ギーシュは頷く。
「ああ、ヴェルダンデは宝石には目が無いんだ。しかも、貴重な物には特にね」
その言葉にルイズが叫んだ。
「冗談でしょ!? 姫さまから渡された大切な指輪をモグラなんかに食べられてたまるもんですか!!」
そんなふうに叫ぶルイズと彼女を押し倒すヴェルダンデを、ジャンガは静かに見つめる。
(まるでマイドゥみてェなモグラだな…。どっちかと言や、ホルドルが近いんだがよ…)
ジャンガがそんな事を考えた時だった。
一陣の風が巻き起こったかと思うと、ルイズの上に乗っかる巨大モグラを吹き飛ばした。
ヴェルダンデは暫く地面を転がり、目を回して仰向けに倒れた。
そんな使い魔を見て、ギーシュは目を見開いた。
「ヴェルダンデ!?」
今のは風の魔法だった…、つまり近くにメイジが居る。
ギーシュは造花の杖を手に取り、周囲を見渡す。
「誰だ!?」
ギーシュは朝靄に向かって叫ぶ。
と、ジャンガは何かの気配を感じ、空を見上げる。
朝靄に覆われた空に何かの影が浮かび上がったのが見えた。
「上だ」
「何?」
ジャンガの声にギーシュだけでなく、キュルケとルイズも空を見上げる。
空に浮かび上がった影は此方へと向かって降下してきているようだった。
低い唸り声のような物も聞こえる。
影は地面に近づくにつれて徐々にハッキリと姿を現していく。
地面に降り立ったそれは、鷲の頭と翼と上半身、獅子の下半身を持った幻獣グリフォンだった。
そして、グリフォンの上には一人の羽帽子を被った男が跨っている。
おそらくは、先程の風の魔法を唱えたメイジだろう。
ギーシュは自分の使い魔を吹き飛ばした男に杖を突き付け、怒りも露に叫ぶ。
「貴様、何者だ!?」
男はなんら臆する事も無く、グリフォンから華麗に降りると彼等の方へと静かな足取りで歩み寄る。
足を止めると帽子のつばを持ち上げ、顔を見せた。
男が顔を見せるや、ルイズとギーシュは驚きに目を見開き、キュルケは顔を赤らめ、ジャンガは特に反応無し。
「アンリエッタ様から君達に同行するよう命じられた、グリフォン隊隊長のワルドだ」
「あなたは!?」
ルイズは驚きの声を上げる。
その彼女にワルドと名乗った男は静かに歩み寄り、微笑んだ。
「驚かせてすまない。僕の婚約者が襲われているのを見ていられなくてね」
その言葉を聞き、ギーシュはあんぐりと口を開け、キュルケはつまらなそうな顔をし、ジャンガはやっぱり無反応。
そんな三人を他所に、ワルドはルイズに近づくとその身体を優しく抱き上げた。
「あ…」
突然の事にルイズは頬を恥ずかしさに染める。
「相変わらず軽いなきみは。まるで羽の様だ」
「いやですわ…ワルド様」
「恥ずかしがる事は無いじゃないか?」
そんな二人をキュルケはつまらなそうに見つめる。
「ふん」
「…羨ましいのかよ、テメェ? あんだけ、男引っ掛けておいてよ?」
ジャンガの声にキュルケはチラリと横目で一瞥し、直ぐに視線を戻す。
「少し違うわ。…ヴァリエールにイイ男がなびいているのが気に食わないのよ」
「嫉妬とどこが違うんだよ?」
「あたしとあのこは家が敵同士だしね。それを抜きにしても、あたしは個人的にあのこが嫌いだし。
だから何においても負けたくないの。…それだけよ」
「そうかよ…」
そんなやりとりをしていると、ワルドの声が聞こえてきた。
「さて諸君、出撃だ」
ワルドの言葉にキュルケとギーシュは馬の下へと戻った。
ジャンガも舌打ちをしつつ、渋々馬に戻った。
晴れ渡った青空の下、ワルドのグリフォンを先頭に一行は緩々と旅路を行く。
「ふん…」
ジャンガはつまらなさそうに鼻を鳴らす。
チラリと隣を見る。
「ああ…、あの魔法衛士隊の隊長たるワルド子爵が、直々にぼく達の護衛を務めてくれるなんて…感激だ」
ギーシュはさっきからこんな調子だった。
今度は反対側を見る。
キュルケはジャンガと大差無い表情を浮かべている。
まぁ、無理も無いかもしれない。自分には愛を語らう相手が居ないのに、
その宿敵が今、見せ付けるかの如く、愛(?)を語り合っているのだから。
視線を前に戻す。
相変わらず、ルイズはワルドと談笑をしながら微笑んでいた。――心底嬉しそうだ。
(あのクソガキ……任務半ば忘れてんじゃねェか?)
そんな事を考えていると、ルイズと目が合った。
だが、直ぐにルイズは気恥ずかしそうに目を逸らす。
暫くすると、山の中へと差し掛かった。
ジャンガはある程度の予測を立ててはいたが、一応ギーシュに尋ねる。
「オイ、港なのに山ってのはどういう事だ?」
「ん? きみは知らないのか――と、知らなくても無理はないか」
ギーシュはジャンガがこの世界以外の出身だと言う事を思い出した。
「アルビオンは浮遊大陸なのさ」
「ほゥ?」
「だから、空を飛んでいくんだ」
「飛行機械があるのか?」
「ひこうきかい?」
「…違うのか?」
「きみの世界の物じゃないよ。空を飛ぶが、あくまで船だ」
「空飛ぶ船か…なるほどね」
ジャンガは納得し、視線を前に戻した――その時だ。
赤々と燃える松明が崖の上から次々に投げ込まれる。
訓練を受けていない馬は松明に驚き、ギーシュとキュルケは地面に放り出される。
ジャンガは馬から飛び降り地面に着地すると、崖の上を見上げた。
と、夜風を切り裂いて何本もの矢が飛んで来た。
「奇襲だ!」
ジャンガは叫ぶ。
その声にギーシュとキュルケは起き上がり、急いでその場を飛び退く。
飛んできた弓矢が二人の居た場所に次々と突き刺さる。
ジャンガは崖の上をギロリと睨み付ける。
「ざけやがって…」
呟きながら腕を大きく振るう。
カッターが飛び、崖の上の襲撃者を八つ裂きにする――筈だった。
「…何?」
出なかった…、いや…僅かにそよ風のような物は起きたが、いつものようなカッターは出なかった。
どういう事だ…などと悩んでいる暇は与えられない。
崖の上から次から次へと弓矢が雨あられと降り注いでくる。
「クソッ」
悠長に悩んでいる暇は無い。
と、突然小型の竜巻が起こり、矢を明後日の方向へと吹き飛ばす。
見れば、グリフォンに跨ったワルドが杖を掲げていた。
「大丈夫か!?」
ジャンガは眉間に皺を寄せる。
「ああ…」
そう呟くと、崖の上で爆発が起きた。
見ればキュルケが次々に崖の上に向けて『ファイヤーボール』を撃っていた。
ギーシュもワルキューレを出して応戦している。
ジャンガも崖を駆け上ろうとした。
だが、いつもの様な動きができない。
イライラしながら、爪を崖に突き立て、強引に上る。
崖の上には数人の男達がいた。
「舐めた真似してくれるじゃねェかよ…テメェら。覚悟は出来てるか?」
ギロリと睨み付ける。
男達は震え上がったが、直ぐに弓矢を構え、矢を射かけた。
ジャンガはそれをかわしていく…が、全てをかわしきれない。一本を腕に受け、一本が頬を掠める。
「チィッ!」
舌打しながら、ジャンガは両の爪を振るった。
胸を切り裂かれた男達が次々に宙を舞い、崖下へと血の糸を引きながら落ちていく。
それを見つめながらジャンガは忌々しげに鼻を鳴らした。
「相棒、大丈夫か?」
デルフリンガーの声に、ジャンガは腕に刺さった矢を抜きながら吐き捨てるように呟く。
「別にどうでもねェ」
そんなジャンガにデルフリンガーは言った。
「相棒……本当に大丈夫なのかい?」
「だから、どうでもねェと…」
「怪我じゃなくて、体調の事だよ」
「…フン」
再度忌々しそうに鼻を鳴らし、デルフリンガーを鞘の中に押しこんだ。
崖を下りるとキュルケの火の魔法で焼かれ、ギーシュのゴーレムに殴り飛ばされ、
ワルドの風の魔法に吹き飛ばされ、ジャンガの爪に切りつけられた男達が呻き声を上げていた。
ギーシュとキュルケは男達の尋問を行っているようだ。
その様子をルイズとワルドは少し離れた所で見守っている。
ジャンガは二人の下へと歩み寄る。
「終わったみたいだな…」
「あ、ジャンガ?」
「そちらも無事で何よりだな」
二人はそれぞれ声を掛けてくる。ジャンガは顔を顰めた。
ルイズはともかく、ワルドの声は何故か癪に障る。
何と言えばいいのだろう……? 何か値踏みするような…嘲りに近いような感じがする、嫌〜な声だ。
先程の無様な戦いも連れ立って、ジャンガは眉間の皺を深くする。
「ん? 怪我をしているじゃないか……大丈夫か?」
ワルドが心配そうな様子で声を掛ける。
――それが心からの物でない事がジャンガには解った。
忌々しげに鼻を鳴らす。
「…別に。テメェに心配される筋合いは無ェ…」
「ちょっと、ジャンガ! ワルド様に失礼よ!?」
ジャンガに向かって怒鳴るルイズの肩に、ワルドの手が優しく置かれる。
ルイズは手を置いた婚約者を振り返った。
ワルドはニッコリと微笑む。
「いいんだよ、ルイズ。僕は別に気にはしていない」
「で、でも…」
申し訳無さそうに俯くルイズの頭を撫でるワルド。
そこへ、ギーシュとキュルケがやってきた。
「子爵、あの連中は”ただの物取りだ”と言っています」
「メイジとかも混ざってないし、間違いないんじゃないの?」
「ふむ、なら捨て置こう」
それだけ言い、ワルドはルイズを促しながらグリフォンに跨る。
「今日は港町のラ・ロシェールに一泊し、明日の便でアルビオンに向かう」
そして、ワルドはグリフォンを走らせる。
ジャンガ達もそれぞれの馬に跨り、後に続いた。
その晩、一行はラ・ロシェールで一番上等な宿である、『女神の杵』亭に泊まる事となった。
一階の酒場で食事を取りながら、旅の疲れを癒す一行。
「それにしても、魔法が出来ないと泣いていた君が、亜人を使い魔として召喚するとはね。凄いじゃないか」
「いやだわ、ワルド様。別にそんなに凄い事ではありません」
ワルドのからかう様な言葉にルイズは恥ずかしそうに頬を染める。
そんな彼女を優しげな…それでいて、真剣な色も含んだ目で見つめる。
「いや、君は気付いていないかもしれないが…君は凄い事をしたんだよ」
「え?」
言われた事が理解できず、ルイズはキョトンとする。
ワルドは、頬杖を突いて明後日の方へ目を向けているジャンガと、食事を楽しむギーシュを交互に見比べる。
「…君達は決闘をしたそうじゃないか?」
唐突なその言葉に驚くギーシュ。
食事が喉に詰まりそうになり、必死に胸を叩く。
詰まりかけたそれを何とか飲み込み、ギーシュはワルドに振り返る。
「あ、あの、それはですね…」
慌てて取り繕うとするが、それをワルドは手で制する。
そして、特に反応を示さないジャンガを見る。
「ジャンガ君、その決闘で君は彼を簡単に打ち負かしたそうじゃないか?」
「…ああ」
ジャンガは、つまらなそうに生返事をする。
「『破壊の箱』を用いて『土くれ』のフーケを捕まえた……これも事実だね?」
「…ああ」
「じゃあ…、君が伝説の使い魔――『ガンダールヴ』だと言う事も事実だね?」
ジャンガは目だけを動かし、ギロッとワルドを鋭い視線で睨みつける。
「…良く知ってるじゃねェか?」
ワルドは臆した風も無く、話を続ける。
「立場上、色々と情報が入ってくる物でね」
一方、ルイズはワルドの言った言葉が気になっていた。
(『ガンダールヴ』……何処かで――)
脳裏に浮かぶのは、あの学院の襲撃事件。
そして、コルベール先生の誘導でジョーカーと名乗った幻獣が喋った言葉。
――その通〜〜り! 彼女の使い魔たるジャンガちゃんは、正しく伝説の神の左手ガンダールヴ!――
ガンダールヴ……確かにそう言っていた。
気になったルイズはワルドに尋ねた。
「あの、ワルド様? ジャンガが”伝説の使い魔”…って、どう言う事ですか?
『ガンダールヴ』って一体…どういう」
ワルドは、後で話すよ、と答えるとジャンガに向き直る。
手を組み、ジャンガを真っ直ぐに見据える。
「そこで、きみに興味が湧いてね…。是非とも、一度手合わせを願いたいのだが?」
「「「え?」」」
ルイズ、ギーシュ、キュルケの三人の声がハモる。
当然だ。今は大切な任務の最中なのに、突然何を言い出すのだろうか?
そんな三人の反応を気にするでもなく、ワルドは続ける。
「無論、無理にとは言わないが?」
「別に…構わねェゼ?」
「ちょっ、ちょっとジャンガ、止めなさいよ!?」
あっさりと返事を返すジャンガにルイズは慌てて声を掛け、そしてワルドを振り返る。
「ワルド様、今はそんな事をしてる場合じゃ…」
心配そうに声を掛けてくるルイズを振り返り、ワルドは笑顔で答える。
「大丈夫。…ちゃんと手加減はするさ」
ブチッ!
――何かが切れる音が聞こえた。
音の方へ顔を向けると、俯くようにしているジャンガの姿が在った。
見れば、肩が小刻みに震えている。
そして、聞こえてくるのは――笑い声。
「キ、キキキ…、キ…キキ、キ…」
その笑い声にルイズは二度ほど聞き覚えがあった。
一つは、ギーシュとの決闘の時にギーシュのワルキューレに殴り倒された時。
もう一つは、フーケを捕まえに言った際、フーケに『破壊の箱』を突き付けられた時。
そして、どちらの時も笑い声を上げた後は――思い出したくない。
「ジャ、ジャンガ! 待って! 落ち着いて!」
ルイズは慌ててジャンガを落ち着かせようと声を掛ける。
しかし、ジャンガの身体の振るえ、笑い声は止まらない。
「キキキ……”手加減”ねェ…。たかだか魔法使えるだけの分際で…このジャンガ様に対して”手加減”ねェ…。
キキキ……いいねェ、実に面白い冗談だ……キキキ」
「ジャンガ! お願い!? 落ち着いて!!?」
必死にルイズは声を掛けた。しかし、願いは届かなかった。
ジャンガは立ち上がり、机の上に足を乗せる。そして、ワルドを凄まじい形相で睨みつけた。
「ざけた事ぬかしてくれるじゃねェか? このジャンガ様をあんま舐めんじゃねェよ…ヒゲヅラ!!」
「…では、手合わせをしてくれるんだね?」
「上等だ! テメェのそのスカした面、原型が無くなる位に刻んでやる! 今直ぐ表出ろ!」
叫び捲くるジャンガを、ワルドは手で制した。
「あン!?」
「今はもう時間も遅い。それに、先程の物取りの所為で互いに多少なりと疲労している。
だから、明日の朝にしようじゃないか」
「…いいゼ。今夜一晩、時間をくれてやらァ。…墓標に刻む文句でも考えときな!!」
ワルドは意味深な笑みを浮かべた。
そして、席を立つやルイズの手を取り、三人に部屋の鍵を渡し、自分達の部屋へと歩いていった。
「ケッ! 腹立たしい野郎だゼ!」
ジャンガは椅子に座り直し、テーブルの上に足を投げ出す。
そんな彼を見ながらギーシュもキュルケもため息を吐いた。
「やれやれ、まったく君は恐れ知らずというか…、礼儀知らずというか…」
「今に始まった事じゃないでしょ? こいつの無礼千万な態度は」
呆れたような表情でキュルケは言う。
その言葉にギーシュも首を縦に振る。
「まぁ…あの男が気に喰わないという意見には同意するわ」
そう言うキュルケをジャンガは横目で見る。
「ほゥ? 男好きのお前にしちゃ…ドライな意見だな?」
キュルケはつまらなそうな表情で頭を掻く。
「あの男、氷の様に冷たい眼をしていたわ。それに、人としての”暖かさ”を感じられなかったのよ」
「いい観察眼してんじゃねェか? …あの目は人の物じゃねェ。
例えるならそう……”蛇”だ。それも獲物をじわじわと少しずつ弱らせていく”毒蛇”だ。
しかも、外面は巧妙にカモフラージュしてやがるときた。
可哀想によ……あのガキ、とんだ毒蛇に目を付けられたものだゼ」
言いながら、ジャンガは二人が上がって行った階段を見つめた。
そんなジャンガにギーシュが声を掛ける。
「…なぁ、ガンダールヴとはなんだい?」
「ン? テメェも気になるのか?」
ギーシュは頷いた。
「…学院襲撃の時に、あのピエロのような幻獣も言っていたからね」
「ああ……そうだったな」
「ねぇ、何の話? 学院襲撃の時って…あたしが到着する前に何があったの?」
「…大した事ではないのだがね」
ギーシュは手短にキュルケに説明をする。
キュルケはジャンガを少し鋭さを増した視線で見つめた。
「ねぇ、あなたは何を知っているの?」
「……」
「…とりあえず、知ってる事を簡単に話してくれないかしら? それとも、隠しておく必要でもあるの?」
「キキ、確かに隠しておく必要は、特に無いからな……いいゼ」
そして、小声で知っている事を二人に話した。
ジャンガの話を聞いて、二人は揃って不思議そうな表情をした。
「あらゆる武器を使いこなす伝説の使い魔…か」
「あなたみたいなのが、そんなものになるなんてね…」
「…俺自身以外だよ」
ジャンガはグラスに注がれていたワインを一気に飲み干す。
そして席を立つや、部屋の鍵を掴む。
「先に部屋に行かせてもらうゼ」
それだけ言うと、自分の部屋へと歩いていった。
――翌朝
ジャンガとワルドは、かつて貴族達が陛下の閲兵を受けたという練兵場で、二十歩ほど離れて向かい合っている。
二人が向かい合っている場所から離れた壁際には、介添え人として呼ばれたルイズと、
見学目的でこの場に居るキュルケとギーシュの姿があった。
最早使われていない練兵場は、樽や空き箱が所々に積み上げられており、ただの物置き場と化していた。
「昔……と言っても、きみには解らないだろうが、
かのフィリップ三世の治下には、ここでよく貴族が決闘をしたものさ」
「ほゥ…」
特に無関心なジャンガはそれだけ返す。
「古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族達がそれに従った時代…、貴族が貴族らしかった時代…、
名誉と誇りをかけて、僕たち貴族は魔法を唱えあった。
でも、実際には下らない理由で杖を抜きあったりもした。そう…、例えば女を取り合ったりね」
ワルドの言葉にジャンガは帽子を取って、頭を掻く、
「くだらねェ…、要するにテメェの婚約者にいいカッコ見せたいだけか? テメェの器の底が知れるゼ…」
ジャンガの挑発。…しかし、ワルドは余裕を崩さない。
「では、始めるとしようか」
「文句は既に考えて、メモにでも残したか?」
「その必要は無い」
「…そうかよ」
そう言って、静かに身構えるジャンガ。
ワルドも杖を抜いた。レイピアのような形の頑丈そうな杖だ。
フェンシングのそれに似た構えを取る。
「全力で来るがいい」
「後悔するなよ、ヒゲヅラァァァーーーーー!!!」
叫ぶや、ジャンガは駆け出す。距離を詰め、爪を振り下ろす。
振り下ろされた爪をワルドは杖で難なく受け止める。
ガキンッ! と音がし、火花が飛び散った。
ジャンガは立て続けに両の爪を振るう。
それをワルドは杖で受け止め、軽やかなステップでかわす。
何度目かの振り下ろされた爪を、ワルドは杖で大きく切り払う。
「くっ!?」
体制を崩すジャンガ。
そこへ、ワルドは驚くほどの速さで突きを繰り出す。
それを何とか爪で防ぎ、ワルドへ蹴りを叩き込む。
しかし、蹴られる直前、ワルドは後方へと飛び退き、蹴りの威力と勢いを緩和する。
大したダメージを与えられなかった事にジャンガは舌打ちをした。
「なんでぇ、あいつ魔法を使わないのか?」
鞘から出たデルフリンガーがそう呟く。
ジャンガは忌々しそうに歯を噛み締める。
明らかに手を抜いた戦いだった。それで苦戦する自分にイライラする。
「なんてザマだ……クソがァァァーーーーー!!!」
怒りの叫び声を上げながら、再度ジャンガはワルドに向かって駆けた。
ワルドとジャンガの決闘を見守るルイズ達三人はジャンガの様子がおかしい事に首を捻っていた。
先ほどから見ていれば、両手の爪を馬鹿の一つ覚えみたいに振り下ろすだけだ。
あの風のカッターも分身もまるで使う気配が無い。
更に言えば、その動き自体もいつもよりも鈍っている気がする。
「どうしたのかしらね…あいつ?」
キュルケの呟きにギーシュもルイズも唸った。
暫くの間、切り結んだ二人は再び距離を取る。
しかし、荒く息を吐くジャンガに対し、ワルドは然程疲れた様子は無い。
ジャンガはギリギリと音がするくらい、先程よりも強く歯を噛み締める。
ワルドはジャンガを見据えながら静かに口を開く。
「魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるだけじゃないんだ。詠唱さえ、戦いに特化されている。
杖を構える仕草、突き出す動作……、杖を剣のように扱いつつ、詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本さ」
自慢げに語る口調が気に入らない。
ジャンガは壁に向かって跳んだ。
跳躍の勢いで壁に張り付き、更に壁を蹴ってワルドに飛び掛る。
見ていてイライラするヒゲヅラに爪を突き出す。
しかし、その攻撃も難なく杖で受け止められた。
「クソ!」
「きみは素早い、流石は亜人だと言おう。…だが、本物のメイジを相手にできるレベルではない」
爪を切り払い、ジャンガの胸に突きを繰り出す。
飛び掛った勢いと突き出される勢いがぶつかり合い、ジャンガの胸を強く打つ。
激痛にジャンガは呻き声を洩らす。
地面に倒れそうになるが、何とか踏み止まる。
そこで、ワルドは攻撃に転じた。
常人には見えないようなスピードで突きを繰り出す。
ジャンガはそれを受け流すのに精一杯だ。
「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」
「!?」
ワルドが呪文を唱えている事、杖が一定の間隔を持って突き出されている事にジャンガは気付く。
「いけねぇ! 相棒!」
デルフリンガーも警告を発したが…遅かった。
次の瞬間、杖の先端から発生した空気の塊に弾き飛ばされ、ジャンガは積まれた樽の山に吹き飛んでいた。
「ガ…、ガハ…」
ジャンガは苦しそうに息を吐き出しながら身悶える。
ルイズは急いでジャンガに駆け寄った。
「ちょっ、ちょっと…大丈夫!?」
「ぐっ……クソ…が……」
ジャンガは起き上がろうとするが、痛みでなかなか起き上がれない。
そこへ、ワルドが歩み寄ってきた。
ありったけの怒りを含ませた視線をワルドに叩きつける。
だが、ワルドは涼しい顔だ。
「解ったかいルイズ? 彼ではきみを守れない」
「だって、ジャンガはまだ怪我が全部治っていないのよ? 全力が出せないだけよ。
それに、あなたは魔法衛士隊の隊長じゃない? 適わないのも無理ないわよ」
「ならば、これから先の戦いでもそう説明するのかね? ”わたし達は弱いです。どうか杖を収めてください”と」
「それは……」
ワルドの言葉にルイズは何も言えない。
ワルドはそんなルイズの腕を掴む。
「あ?」
「今は一人にしておこう…。それが彼の為だ」
ルイズはジャンガを一度振り返る。
すると、キュルケとギーシュが自分に向かって、軽くウィンクを返していた。
それを見て、ルイズは軽く頷き返すと、ワルドに連れられて去っていった。
キュルケとギーシュは倒れたジャンガに近づき、声を掛ける。
「ねぇ、あなた…どうして本気を出さなかったの?」
「やっぱり、ルイズの言ったとおり…怪我が治りきっていないのが原因かい?」
ジャンガはそんな二人に返事をせず、ただ荒く息を吐いているだけだ。
やがて、徐に左手を上げると袖を捲くる。
そして手の甲を二人に見せた。
二人は顔を見合わせ、ジャンガに向き直る。
「手なんか見せて、どうしたんだい?」
「…何も無いだろう?」
ギーシュの問いかけを聞き、ジャンガはそう問いかける。
ギーシュとキュルケはジャンガの手を見る。
爪が直接生えた珍しい形の手だという事意外は変わりは無い。
「何も無いが?」
「それがなんだって言うの?」
「…ガンダールヴは、左手にルーンが現れるんだよ」
その言葉に二人は再び顔を見合わせる。
「ルーンなんか無いだろう?」
「ああ…無いが」
「…どういう事よ?」
二人の問いには答えず、ジャンガは笑った。
左腕を下ろし、右腕で顔を覆って笑った。笑いながら…泣いた。
「キキキキ……ルーンが消えた途端にこのザマたァな…。何だってんだよ…、何なんだよ?
クソが……、クソが……、…キキキキ……キキキキキ…」
ジャンガは笑って泣いた。悔し涙を流しながら、自棄になって笑った。
そんなジャンガをキュルケとギーシュは暫く呆然と見つめ続けた。
おはよう支援
以上で投下終了です。
ジャンガをボロ負けさせるのは当初からの予定通りです。
イメージは最終回で蓄積したダメージで弱ったウルトラセブンです。
あのセブンは歴代のウルトラ戦士のピンチシーンで最も痛々しかった…(苦笑)
では、今回はこれで。アデュー!
乙でござる
じゃ、ジャンガーーーーーーー!?
毒の爪の方&代理の方、乙です!
うーむ、ガンダの力がなくなったジャンガ、ワルドに負けちゃいましたね
それだけでなくジャンガの力その物も衰えてきてるような…
体調不良だけでなく何かヤバいことがジャンガの身に起きてきてるんじゃないかと心配です
作者さんの言う最終回のセブンの例えが合いすぎてますね
今回タバサが付いて来なかったのはまだ寝てたからとかかな?
タバサがジャンガの任務のことを知ればすぐに追いかけてきそうですけど
ジャンガがセブンならタバサにはアンヌ隊員の役になってほしいですねw
次回も楽しみにしております
569 :
白鳥の使い魔:2009/01/28(水) 07:46:26 ID:Cdl2NyVF
予約は無さそうなのでコネタを投下します。
570 :
白鳥の使い魔:2009/01/28(水) 07:49:21 ID:Cdl2NyVF
その時、サモンサーヴァントの呪文を唱えた若い女……キュルケは自分が呼び出した
使い魔……大きなな白鳥をポカンとした顔で見つめていた。
呼び出された白鳥のほうも見慣れぬ風景に驚いたのか、コォコォと澄んだ高い声で
鳴きながら長い首を器用に曲げてキョロキョロと周囲を見回している。
おかしい。
その時その場にいた全員が(自らの使い魔召喚に対する不安で他人のことに気を
掛ける余裕が無かった約1名を除いて)、そう思った。
何故なら、サモンサーバントの魔法が呼び出す使い魔は、“術者に相応しい”ものな
はずだから。
キュルケは“火”の“トライアングル”なのだから、普通に考えれば火竜や火蜥蜴、
鳥ならば極楽鳥といった火の属性を持った生き物が使い魔として召喚されるはずだ。
しかし、キュルケが呼び出したのは白鳥。鳥であるから基本的な属性は“風”。水に
関わりの深い鳥であることから“水”の属性があるとも考えられる。(万が一ペンギンや
ダチョウが呼び出されてしまった場合どう判断するかは難しいところだ。)
白鳥という鳥は、普通に考えてキュルケとの接点は何も無い最も彼女に相応しくない
生き物のひとつなのだから。
「ミス・ツェルプストー。」
キュルケは、担任教官の咳払いで我に返った。
「貴女が意外に感じるのも分かりますが。」
契約を促す声に肯きながら、改めて自らが呼び出した使い魔を見てみる。
白鳥といえば鳥としては最も大きな鳥の一つだが、キュルケが呼び出した白鳥は頭が丁度
キュルケの顔のあたりにあるのだから、その白鳥のなかでも群を抜いて逞しく大きい。
全身は一点の曇りもない純白で、その美しさには神々しささえ感じられた。
ついさっきまで身体をぶるぶると震わせたり翼をバタバタと羽ばたかせていた白鳥は、
今は落ち着いたのかじっと大きく澄んだ黒い瞳でキュルケの顔を見つめている。
「まぁ、いいか。」
キュルケは肩をすくめると、白鳥に向かってにっこりと笑いかけた。
「貴方が人間の男性だったら一目惚れしてたと思うわ。」
そう言って白鳥の首を抱き契約の呪文を唱えるキュルケの姿はとても美しくエロティックで
すらあったと、後に“風邪っぴき”の二つ名を持つ風メイジは語っている。
それはこの時期ハルケギニアのあちこちで見られる普通の光景。
しかし、今は誰も知らない。
キュルケが呼び出し後に“ゼウス”と名づけられた白鳥が、色々な意味で“キュルケに
相応しい”存在だったことを。
571 :
白鳥の使い魔:2009/01/28(水) 07:51:43 ID:Cdl2NyVF
以上、キュルケがギリシア神話よりゼウスを召喚でした。
ちょ、まじゼウスか!?(w
吹いたぜおいw。
ゼウスはカミナリオヤジだから属性風かなあ
というか主神ゼウスって、性的な問題を世界規模で起こしたエロオヤジでもあるからなあ。
ある意味ピッタリなのかもしれない。
575 :
569:2009/01/28(水) 08:59:18 ID:P0zJYA66
分らない方のために簡単に説明しておくと、ギリシア神話の主神ゼウスはとんでもない女好きで、
スパルタ王ティンダリオスの妻であるレダに手を出すのに、白鳥に姿を変えて通っていたのですが、
その途中でキュルケに召喚されてしまったということで。
詳しく書くとエロパロ板逝きになってしまうのでこの辺で。
ゼウスに見初められたらほぼ確実に身篭る羽目になるからなw
女生徒とおマチさんを避難させろ!おっとゼウスは美少年も大好きなんだっけ
とりあえずギーシュも逃げた方がいいな
「○○召喚を考えたが18禁描写になるのでやめた」ってのを文書化しただけだろ
オチも無いし、小ネタ未満の1レス穴埋めじゃん
こんなのでハシャぐとか意味フ
>おっとゼウスは美少年も大好きなんだっけ
逃げてぇ〜、ぼく・・・マリコルヌ逃げてぇ〜。
579 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 10:50:56 ID:w4Uccc9U
こんにちは、予約なければ11:00ころに投下します。容量とかはまだ大丈夫ですよね?
長めなので、途中で支援いただけますでしょうか?
おk
581 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 10:59:54 ID:w4Uccc9U
では投下します。
ゼロの魔王伝――16
夜露がまだ草花を濡らす中、彼方の地平線を地から天へと逆しまに貫く針のような陽光が、徐々に太く、数を増して、やがて黄金の球体が姿を見せた。
清澄な朝の空気に、ゆっくりとぬくもりを帯びさせてゆく朝陽を浴びて、どこか冷たい印象を受けるトリステイン魔法学院の石造りの校舎も、金色に染まってゆく。
夜の帳と共に終わった昨日から、朝陽と共に始まりを告げる今日へと、時は移ろった。
雪を敷き詰めたような錯覚を受ける真白いシーツの上に、薄いネグリジェを纏って悩ましげに体をくねって寝返りを打つ少女の寝姿があった。
シーツが形作る凹凸の陰影に匂わす程度に艶めかしく体のラインが浮かび上がる。
お世辞にも起伏に富んだとは言えないが流麗と賛辞する事が出来る肉体の山脈のラインは、指や唇で触れるよりもまず先に、蕾の中の花の美しさに心囚われるかの様に可憐であった。
そのまま永遠に生きたまま眠り続ければ、おとぎの中の眠り姫の伝説が再現されるだろう。
眠れる少女はそれほどまでに美しく、可憐で、そして夢の中の狭霧の向こうに居る様に儚げだった。
弧を描く細い睫毛に飾られた瞼がかすかに震え、少女の意識の覚醒を告げる。鼻にかかった、んん、というかすかな声は、まだ意識が眠りと覚醒の狭間を移ろっているからこそ、飾らぬ艶めかしさがあった。
男の肌も指も知らぬ清らかな身であるからこその、相反する背徳的な色香であった。
かすかに空隙を作った桜色の唇が、もごもごとそこだけ別の生き物のように蠢き、ゆっくりと眠りの海の底から覚醒の水面へと動き始めた事を告げた。
この少女は、言わずもがな、ルイズである。
春の陽気に合わせて少女と言うにもいささか青さを残した体を、生地が薄く体のラインを露わにするネグリジェに身を包んで眠り、起きようとしている所だ。
昨夜に、キュルケの買った錬金魔術師シュペー卿の作であるという豪奢な大剣と、Dが構わないといったとはいえ到底実践には使えそうにもない錆まみれの剣を巡るいざこざと、それに乗じたかの様な怪盗フーケの出現と相まって、眠りに就いた時刻は遅かった。
いっぽう、まるでそう物理法則で決められているように、同居人であるDは窓辺の椅子に腰かけたままだった。
本来夜の活動の方こそをバイオリズムの主に置くダンピールであるDにとって、ルイズに合わせて昼を主に活動の場とする事は、身体的にも精神的にも並みならぬ苦痛が伴う、どころか一種の拷問に等しい。
特定の手段に依らぬ限り不老不死を誇る存在でありながら、夜にのみ生きる吸血鬼――貴族の血が流れるダンピールは、昼日中に行動してもその体が灰になるような事はないが、あらゆる面で枷が掛けられ、また陽光に身を晒す事は途方もない苦痛をもたらす。
相応に超人的な精神力と身体能力を備えるダンピールであるが、超A級の吸血鬼ハンターとなったダンピールでも、昼でのフル活動は最大でも五時間程度が限界だ。
それを考慮すれば、ハルケギニアに召喚されてから夜であろうと昼であろうと時を問わずに活動しているDは、同じダンピールの眼からしても規格外中の規格外と映る事だろう。
しかし、その超規格外のDでも、今こうして椅子に座しているだけで、カーテン越しにうっすらと室内にかすか光量を灯しだした陽光が、全細胞に焼けた火箸を抉り込むような苦痛を与え始めている。
自分自身と左手に宿る老人しか知らぬ事ではあったが、Dはルイズに対して目に見えぬ所でかなりの譲歩をしているのだ。
Dが閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
閉ざされていた肉片から覗く黒瞳は夜空に広がる大宇宙の暗黒の様にどこまでも果てしない黒を湛えていたが、冷たさ以外のものがその最果てにあるに違いないと、今のルイズなら心からそう言うだろう。
Dは起きている時も眠っている時も被っている旅人帽の鍔を左手でつまんで下げた。
カーテンの合間から零れた陽光の一筋から、血管が青く透けて見えそうなほど白く冷たい肌に覆われた体を遮るためだろう。
左肩にもたせかけたデルフリンガーと、掌に浮かぶ皺まみれの老人は口を開かずに黙っている。
どちらも眠るという行為をするかどうか怪しい所だが、起きていれば左手はともかくデルフリンガー位は挨拶をするだろう。
悩ましげなルイズの声が止まった。ようやく目を覚ましたらしく、ふにゃあ、と可愛らしく小さな口から欠伸を零しながら、寝起きの仔猫のように瞼を閉じたまま上半身を起こした。
支援
583 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:01:20 ID:w4Uccc9U
「ふぁあ、んん、おはよう、Dぃ〜」
「おはよう」
ここ数日で、ルイズは自分が目を覚ました時に必ずDがすでに起きている事を確認し、朝起きたらまず、Dに朝の挨拶をすることを決めていた。
こういう何気ないスキンシップを常態化する事で、使い魔と主人との信頼関係を築くのよ! とルイズは密かに慎ましい野望の火を燃やしていたりする。
D相手にどれほど効果があるか甚だ心許ない。
本来、ルイズは二度寝という人類すべての人々の寝起きにとって最大の敵であり、同時に至高の快楽をもたらす行為を憎みながらも同時に深く愛する少女だ。
だが、そんな物臭をするような真似を、この世界との交わりを拒絶しているように孤独な使い魔の目の前でする事を、固く自分に禁じていた。
朝の挨拶に加えて、Dの前ではせめてご主人様らしく、ルイズが心に思い描く『貴族』らしく、凛と、毅然と、堂々と、そして優雅に在ろうと決めている。
数時間にわたって自分自身が温めた寝床との別離には後ろ髪を引かれる思いであったが、昨夜の内に、朝つまりは今になったら、改めてフーケが宝物庫を襲った時の状況について学院長や教師達に説明する事になっているのを思い出し、なんとかベッドの中から出た。
私って、えらい。
そんな風にまだ寝ぼけていて回転の遅い頭で自分をほめながら、ルイズは頬を染めて、Dが椅子から立ち上がるのに気づく。
ルイズの着替えの間、Dが廊下の外で待つためだ。
首筋から脛までルイズの体を隠すネグリジェも、Dが気を利かせて開いたカーテンから愛しい人への抱擁の様に勢いよく溢れる陽光に、半ば透かされる様にして照らされ、隠された未成熟な少女の体の陰影を浮き彫りにする。
年若い少女を好む性癖の無いものでも、思わず一味試したくなるような、否応にも目を引き付ける魅力が輝いている。
ルイズの肌と髪から淡く零れる処女の血の匂いは、吸血鬼の血を引くDにとって、おそらくは天上界の美酒の様に、甘くそして芳しく感じられるに違いない。
鉄の精神を誇るダンピールといえど、この滾る陽光が齎す苦痛の中で、目の前に現れたこの至上なる甘美な味わいを約束する獲物を前にすれば、自制の声を忘れて細く白い首筋に嬉々として牙を突き立てるだろう。
自分の振る舞いが、どれほど自分自身にとって危険な事か、そしてDに対してどれほどの負担を要求する行為であるかを知らぬルイズは、ある意味で幸福であるだろう。
無言のままDが自分の目の前を通り過ぎ、後ろ手に扉を閉めるのを確認してから、ルイズは閉じていた瞼を開き、なだらかな丘陵地帯を描く胸を膨らませてから、吸いこんだ息を静かに吐く。
ここ数日で、朝起きたら異世界の産物としか思えないような途方もない美の化身が、原始的な恐怖を励起させる威圧感と共に目の前に居るという事態にも慣れたようだ。
今では起きぬけの一番気の緩んだ状態でDを直視しても、朝からうっとり出来る余裕が、ルイズには生まれていた。
あの超を幾つつけても足りないほどの美青年を自分が呼んだのだと思うと、つい口元がにへら、と緩くなってしまう。
なんだかんだで、ルイズは自分に向けられてくる憎悪と羨望と嫉妬がミックスされた視線にも慣れてきている。
むしろ――私がDを独占(自分で言っていて大嘘よねえ、とは思う)しているのに、その程度の悔しさなの? 羨ましいのでしょう? 憎たらしいのでしょう? だったら面と向かって文句を言いなさい。
もっともっと怒りの炎を熱く燃やした瞳で睨んだら?
憎悪に狂って真黒な感情に染まった瞳で私を睨み殺すくらいの事は出来ないの?
貴方達が胸を焦がして朝も夜も眠れぬ時を過ごすほど思いを募らせているDを、私が、この、ゼロと蔑まれたこの私が! 独り占めしているのに、その程度の嫉妬しか抱けないの?
と、思い切り見下した視点で考えるようになり、嫉妬されればされるほど、憎まれれば憎まれるほど、羨望されれば羨望されるほど、Dの魅力を評価されているようで嬉しくなってしまうほどだった。
ある種の性的志向にも似ている。いろいろと人として如何なものかと疑いたくなる方面の素質も、かなり持ち合わせていたらしい。
ともかく、つい最近まで周囲の無言の重圧の所為でろくに眠る事も出来なかった自分とは、もうすぐおさらばできる位に肝が太くなったというか変な方に目覚めたルイズは、鼻歌交じりに着替え始めた。
着替え終えたルイズはそのままDの待つ廊下へ出て、Dとあいさつを交わしていたキュルケ、タバサと合流して、呼び出されていた宝物庫へと足を向けようとした所で、キュルケがDに声をかけた。
584 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:02:50 ID:w4Uccc9U
キュルケの手には麻の布にくるまれた、例のシュペー卿の手からなるという黄金の装飾剣があった。
キュルケは、Dが『辺境』から持ち込んだ長剣の代わりに、高分子ザイルを柄尻に巻いたデルフリンガーを背に負っているのを見て、小悪魔めいたウィンクをする。
「ねえ、ミスタ、昨日の決闘は有耶無耶になってしまったけれど、やっぱり使うならこっちの剣でしょう?」
「な、きゅる、キュルケ! 貴女まだそんな事を言うの!!」
これは昨夜と同じ結末になるかと、珍しくタバサが溜息に似たものを口の中で溜めた時、おもむろにDが、変わらぬ氷と鉄の声で言った。
「その剣を」
「あら? やっぱりこちらがお好みよね」
「D!?」
当然という表情をしながら、どこか憮然としたキュルケと、この世はすべて裏切りと絶望ばかりだと悟ったように、春風に舞う桜の花びらを思わせる顔色を、たちまち蝋の様にまっ白に変える。
そのまま死んでしまうのでないかとキュルケとタバサがルイズを案じる中、Dは左手にシュペー卿の剣の抜き身の刀身を握った。柄ならともかく刃を握れば、たちまち肌が血を噴くだろう。
ましてや
「D、やめて、指が落ちてしまうわ!!」
思い切り左手を握りしめるとは。
次の瞬間、廊下にぽとぽとと落ちるDの指を想起したルイズが、想い人の最後の瞬間を目撃した悲劇の美女もかくやの悲痛な声を挙げる。しかし、その声に答えたのは、硬質の物体が二つに割れる音であった。
ばきん、といささか鈍い音を立てて、Dの左手に握られた剣の刀身が折れていた。込められた力がどれほどのもであったのか、Dの左手の掌の中の、握り潰された刀身は微細な欠片になってきらきらと輝いている。
二千馬力を誇るサイボーグの全力を片手でいなす吸血貴族の怪力を、さらに上回るDならではの所業であったろう。
唖然と口を開く三人に向かい、Dがこう言った。
「こいつなら折れなかったろう」
こいつ、とはデルフリンガーの事だ。口ぶりから察するにどうも最初からシュペー卿の剣が真っ赤な偽物と知っていたようだ。
その癖キュルケがルイズをからかうのを止めるどころか、加担するような事をしたのは、この青年なりの茶目っけであったかもしれない。
そんなモノが、この青年に存在するのならば、という話ではあるが。
だが、三人の目の前でわざわざ鏡のように研ぎ澄まされた刀身を握り潰して見せたのは、まるで必要性が無い行為だ。
あえてそうしたのは、ひょっとしてひょっとしたら、三人の驚く顔を見ようと思ったのかもしれなかった。
万が一、いや、億が一、いやいや、兆が一、いやいやいやいや、それこそ無限の一の割合でそうだとしたならば、ルイズとキュルケとタバサは、まさしく神にも成し得ぬ奇跡を起こしたのかもしれなかった。
そんな評価をせざるを得ないあたりが、Dの徹底的な無感情、無関心ぶりを証明しているのは、いささか人としてどうか、と万人に思われてしまうだろう。
握りつぶした剣の破片を落とさぬように注意を払いながら、麻の布にくるみ直して呆然としているキュルケに返した。
「気持ちだけ頂いた」
「……ひょっとして最初から鈍らだって分かっていたのかしら?」
「商売道具じゃからな。刀剣に対して人よりは目が利くようでなくてはやっとられん」
下方から聞こえてきた老人の声に、キュルケがおもわずぎょっとした顔になってDを見つめたが、微動だにせぬ美神の彫像を目の当たりにしている気分になって、すぐに視線を逸らした。
「はあ、ルイズはよく貴女と同じ部屋に居て正気を保てているわね。見なおしたというか、なんというか。ねえ、ミスタ、本当はあの日ルイズに手を出したのではなくて?
でもなければ、ルイズがこうも貴方と行動を共にして、平気でいられるのが不思議で仕方が無いのですけれど?」
「君の好きに考えたまえ」
「あら? じゃあ、やっぱり?」
「さて、な」
「でぃでぃでぃD!? なに、なにをいい、言っているのよ!!」
「う〜ん、ルイズのあの反応からしてまだあの子はオコチャマみたいね。ねえ、ミスタ、もし、貴方がその気になったらルイズには優しくしてあげてね。あんなちんちくりんな体だから色々と窮屈でしょうけど」
「朝っぱらか何ちゅう会話をするんじゃ」
呆れた調子の左手の声に、キュルケは小首を傾げて不思議そうにしたが、微笑を浮かべる。
泣く子も思わずつられて微笑んでしまいそうな、どこか人好きのする笑顔だった。Dが、苦笑に似た影を口元に這わすのを目撃したからだ。それを浮かばせたのが自分である事が純粋に嬉しかった。
585 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:04:05 ID:w4Uccc9U
「あら、私ってば意外と貴女の好みなのかしら?」
「まあ、平原よりは山の方が征服のし甲斐もあるわな。ほっほっほっほ」
自分の言葉に頬を赤らめるキュルケに、Dではなく左手の老人が同意する様に笑う。キュルケもキュルケで、初めて恋の意味を知った少女の様な自分の反応に、わずかに戸惑っていた。
故郷のゲルマニアでもこのトリステインでも、馬鹿な男達を手玉に取ってきた自分が、自分でも信じられないくらい無邪気な子供の様な反応をしてしまうのだ。
それこそ、校舎の窓辺から去りゆく憧れの人の背中を見つめては、憂いに満ちた溜息をつく日々を過ごす、内気な少女の様に。
魔法学院中の人間が嫉妬しそうな位和やかな二人の様子に、やはりというべきか桃色ブロンドのご主人様は怒り心頭の様子であった。
ゆるく波打った髪が降り注ぐ陽光を紅蓮の焔に変えて逆立ち、一本一本が満たされる事の無い飢えに苛まれる蛇の如くざわざわと震え、ぎりぎりと軋る眩い白の歯並は、浪蘭幻十の振るうチタン鋼の魔糸だって容易く噛み切りそうなほどだった。
昨日の悪夢を二度も体験させられたタバサが、必死の思い、どころかここで死ぬのではないかと半ば諦めの境地に達しながら、半泣きの顔になってルイズをどうどうと宥めていた。
「うぎぎぎぎぎぎぎ……」
「そこまでにして、ルイズが抑えられなくなる」
キュルケは初めて耳にする、今にもべそをかきそうなタバサの声に正気を取り戻し、羞恥に頬を染めながらDから一歩引いた。一時の夢から醒めた事を悟った少女の様であった。
ごめんね、とタバサに詫びて、多少マシになったが、悪鬼を踏みつけ憤怒の形相で周囲を睥睨する明王の如き形相のルイズに、ウィンク一つをしてこう言った。
「良かったじゃない、貴方の剣の方を最初から使うつもりだったみたいよ、あの人」
「ふん! あったりまえじゃない。私は! Dの主人なのよ!! Dと一番長く時間を過ごしているのも。同じ部屋で寝起きしているのも、私なの!! だから、そんなの当たり前よ!!」
「そういう割には、ねえ? タバサ、貴女にはルイズの顔がどう見えているのかしら?」
「頬が落ちそうなほど緩んだ笑顔」
「そうとしか見えないわよねぇ」
にっこにこ、と擬音語が公用語のガリア語になって、周囲で踊っていそうなルイズの満面の笑顔であった。にこにこ、という文字たちには腕と足が生え、腕を組んで軽妙にステップを踏んで陽気に動き回っている事だろう。
それまで浮かべていた別の表情から笑顔に変わる事を破顔と言い表すが、これはそれ以上の変貌ぶりであった。
因縁の怨敵を前にしていたようなルイズの凶相が、今やどんな悪口を言われても終始変わらぬ笑顔を浮かべて受け止めるお人好しみたいに、笑顔が顔面を支配しているのだ。
大黒様の笑みみたいなものと言えば想像しやすいだろうか。
キュルケやタバサがいなかったら、その場で寝転がってゴロゴロと左右を転がり回って喜びを露わにしそうなルイズであった。
それから、Dが握り潰した剣をキュルケが自室に戻すのを待ってから、ルイズ達は学院長達の待つ宝物庫へと向かった。なお、宝物庫へ着くまでの間、終始ルイズがにこにこと笑っていたのは語るまでもないだろう。
本来強力な『固定化』を複数のスクウェアメイジによって掛けられた宝物庫は、物理的な衝撃が比較的弱点といえども、三十メイルを越す巨大ゴーレムを持ってしても破れる代物ではない。
おそらくトライアングルクラスと言われるフーケといえども、そう容易く、どころか単純な力技で破る事は出来ない筈だった。
もっとも、現実は、外側から加えられた圧力によって宝物庫の内部に散乱した壁や、衝撃で倒れた学院の宝物が散らばっているという光景となって、ルイズ達の目の前に広がっていた。
既に教師陣が破壊された宝物庫の中におり、学院長を中心に昨夜の状況について話を進めていた。
衛兵達を糾弾する声もあったが、平民である彼らなど頼りにならないという蔑視に基づく声が出て、責任追及の矛先は昨夜当直であったミセス・シュヴルーズへと向けられた。
以前、ルイズに錬金の魔法を行うように指示をして、爆発の被害に遭った中年の女性メイジである。
ふくよかな体つきの、おっとりとした印象の女性だ。
いわゆると言えばよいのか、普通のトリステイン貴族で、他意の無い言動が時に思わぬトラブルの火種になる事はあるものの、温厚な人柄で貴族でない者にもさほど蔑視する素振りを見せない人である。
586 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:05:26 ID:w4Uccc9U
メイジとしても文句なしに優秀とされるトライアングルクラスの土系統メイジであったが、こちらは研究を主に行う学術肌だ。仮に当直を行っていて、フーケと相対したとしても、取り押さえられたかどうかは怪しい。
貴族の屋敷や豪邸の住まいに真正面から巨大なゴーレムを操って乗り込み、力づくでお宝を奪う事もあるフーケと、静かな湖畔のシャトーで、暖かな陽気の下のんびりとお茶をしているのが似合いのシュヴルーズとでは、比較するのが間違いだろう。
数人の教師達は、昨夜当直の当番でありながら詰所におらず、自室ですやすやと惰眠を貪っていたシュヴルーズの責任を追及したが、これは見苦しいと判断したのかオールド・オスマンがやんわりと釘を刺して事なきを得た。
シュヴルーズが当直を怠っていたのは、ひとえに関係者の大部分がメイジであるこの魔法学院に忍び込む賊が居るなどとは、夢にも思わなかったためだ。
メイジ崩れの盗賊は、フーケの例からしても確かに存在する。だが、精々、十人かそこらが徒党を組むかどうかという程度だろう。対して魔法学院には数百単位のメイジが居る。
その大部分が温室の中の世界しか知らぬか弱い花々でも、中には触れた指に血を滴らせる棘を持った者もいるだろう。キュルケやタバサなどがまさにいい例だ。
ましてや教師陣は文字どおり魔法と貴族としての在り方を教える側として揃えられた人材だ。職務相応に能力の高い者が多い。
戦闘経験のある者がどれほどいるかは未知数だし、学院長を務めるオールド・オスマンに至っては、三百歳とも百歳とも言われる月日を生き、今もトリステイン最強のメイジとして名が挙げられる生きた伝説なのだ。
このような環境に身を浸していれば、たしかにシュヴルーズの怠慢も仕方のない事だったかもしれない。
それを証明するように、シュヴルーズを糾弾していた教師達もまともに当直を行っていた者は皆無で、唯一『炎蛇』のコルベールのみが、真面目に当直の当番をこなしているきりだった。
自分の事を棚に上げて、という言葉の見本と化した教師達を、同席していたルイズ達はことさら冷たい瞳で見ていた。
少なくともこの場に居る教師達に対する敬意が幾分薄れたのは事実だった。Dがいなくて良かったと、ルイズは内心安堵した。
自分が目指す貴族と同じ存在である筈の目の前の大人たちの姿を、Dに見られる事がひどく恥ずかしかったのである。
Dが席を外してこの場の醜態を目にしなかったおかげで、自分が目指している在り方は、他者の責任を追及する事を優先し、奪われた学院の宝を取り戻す手段や方策を考える事を後回しにする彼らとは別のものだと、言い訳をする必要もない。
もっとも、言い訳をする事で、ルイズ自身がさらに惨めになるだけだったろうが。
Dはこの場に同席してはいなかった。仮にDが居たら、やはりというか、あの顔の所為で話が進まなくなる事は明白だったからだ。
その辺はDも自覚があるのか、大人しくルイズの懇願――指示や命令ではない辺りが、二人の力関係を如実に表している――通りに部屋の外で待ってくれている。
そんなルイズ達の心境や状況を露とも知らず、ミセス・シュヴルーズは今にもむせび泣きだしそうな顔で、自分を庇ってくれたオスマンに感激し、尻を撫でる老人の手を、むしろ私のお尻でよかったら、いくらでも!などと言う始末であった。
言われた方のオスマンもこれには困る。場を和ますつもりでシュヴルーズの尻を撫でたのだが、反応はなかった。突っ込むなり咳払いするなりしてくれるものとばかり思っていたのである。
(う〜む、誰も突っ込んでくれん。それにどうせ撫でるなら若い方が……。いや意外と?)
やや太り肉のシュヴルーズの尻は肉付きがいい。
若さのもたらす張りが去ってから月日はたったが、その代りに熟した女の脂と受け止めて来た男共の手練手管で開発され、触れた指がそのまま沈み込んでしまいそうな豊さがあった。
上等の絹をふんだんに使ったスカートのすべすべとした触感を纏った向こうに在る、たっぷりとした白い肉の柔らかさは、枯れ木のように細く骨張ったオスマンの指の肉になってしまいそうな柔らかさだ。
年を経た分、若い女性が持たぬ熟された艶と肉欲が薄皮一枚を経て泥濘の様に詰まっているのだろう。ぐにゃりと握る肉の奥に熱い肉欲のうねりが、更なる刺激を求めて発情した雌犬の様に息を荒げて舌を垂らしている。
思わぬ淫らな尻肉の感触に、かっと眼を見開いたオスマンがさらに力を込めてシュヴルーズの白い肉を揉みしだくべく、残る手を伸ばそうとした時、それ以上は目の毒だと告げる様にコルベールのうぉっほん、という咳払いが止めた。
587 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:07:05 ID:w4Uccc9U
こりゃいかん、と気を取り直したオスマンは、シュヴルーズの尻に届きかけていた左手の方向を転じ、自分の長い白髭をしごいた。
撫でていた右腕を尻から離す時の、シュヴルーズのかすかな、あん、という艶めかしい声が、粘度の高い液体の様にオスマンの鼓膜を揺さぶり、こりゃツイとるのう、と宝物庫の宝が奪われた不幸を一時忘れさせた。
頬を染めたシュヴルーズが恥ずかしげに俯くのを待ってから、オスマンがルイズ達に目を向けた。この場で唯一犯行現場を目撃した三人だ。
それまでの幻滅の光景に、朝から気分をひどいものにしていたルイズも、流石に学院長の目の前とあって表情を取り繕って畏まる。
オスマンは三人の顔触れに興味深げな眼をしたが、ルイズの使い魔の姿が見えない事に気が着いた様で、そのことをルイズに問いただした。
使い魔が同席していないという点ではキュルケもタバサも同様なのだが、学院の機能が麻痺するか暴走するかのどちらかの現象を引き起こす使い魔というのは、古今Dのみだから、注意が行くのも仕方が無いとルイズ達も納得していた。
「その、Dは外見がちょっとアレですので、この場に呼ぶのは相応しくないかな、と」
Dをアレ呼ばわりしたのは、たぶんルイズが史上初だろう。まあ、悪意はないのでDの機嫌を損ねる事もあるまいが。
「ふむ、彼の外見のう…………………………………」
「あの、学院長? 学院長!」
「ぬお!? おお、いかんいかん、つい彼の顔を思い出したら、気が遠くなってしまったわ。なるほど、確かにミス・ヴァリエールの使い魔を同席させられんわな。賢明な判断じゃ」
「はい」
遠目からでもDの姿を見た事のある教師達が、オスマン同様にうっすらと頬を染めて、過去の記憶の世界へと旅立っていた。約半数。残りの半数が、恍惚と蕩けている同僚たちを気味悪げに見ていた。
「では、昨夜の状況を詳しく説明しなさい」
ルイズが一歩進みでて、胸を張りながら堂々と口を開いた。無論、決闘云々に関してはキュルケ達と口裏を合わせて無かった事にするつもりである。
ルイズの性格なら真っ正直に言ってしまうものかと思われたが、ここら辺の融通は利く方らしい。
「はい。突然大きなゴーレムが表れて、宝物庫の壁を殴って壊したんです。そのゴーレムの肩に、黒いローブを頭から被っていた人影がありましたから、たぶんそのローブ姿が犯人です。
それから、そのローブ姿のメイジが宝物庫の中に入って、何かを持ち去って行きました。たぶん、『破壊の槍』だと思います。盗み出した後にまたゴーレムの肩に乗って逃げだしたんです。
それで、私の使い魔がゴーレムと戦ってんですけどその途中でゴーレムが崩れて土になっちゃって、そのどさくさで犯人には逃げられてしまいました。後は、皆さんの知っていらっしゃる通りで、手がかりも残ってはいませんでした」
「ふむ、結局今分かっているのは、犯人の名前と盗まれた秘宝が『破壊の槍』であることだけか」
オスマンは、破壊された宝物庫の壁に魔法で刻印された
『破壊の槍、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
という、巷を騒がせている怪盗メイジのメッセージに目をやった。破壊の槍、と書かれたプレートの上には、飾られているべき『破壊の槍』はなかった。
ゴーレムの一撃によって散乱した秘宝はすでに別の保管庫に移してあるが、破壊された宝物庫の壁の瓦礫やゴーレムの一部と思しい土はそのままだ。
「しかし、他の秘宝には目もくれずに『破壊の槍』のみを狙うとは。さて、どこで『破壊の槍』の事を知ったのやら、フーケの女狐めは」
どことなく面白がるようなオスマンの言葉に、ルイズ達三人とコルベールだけが違和感を覚えた様な反応をした。
土くれのフーケは、男か女かも分かっていないメイジの大怪盗だ。それを、オスマンは『女狐』と称した。
フーケに関する噂は尾鰭が着いたものも含めて平民達や貴族の間で流布しているから、その内のひとつにフーケが女だとしているものがあり、オスマンが耳にしたのがその噂だったのかもしれない。
だが、ただ噂を鵜呑みにしたにしては、やけにオスマンの口調は確たる根拠が根付いているような断定するものだった。それを訝しく思うルイズだったが、オスマンが口を開いたので追及の言葉を封じた。
「時に、ミス・ロングビルはどこに行ったんじゃ? 朝から姿が見えんが?」
「私達にも、学院長が仰られる通り朝から姿が見えませんで……」
「ふうむ、そうか。案外、フーケの後を尾行でもしていて、居場所を突き止めておるかもしれんの」
「まさか……」
588 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:09:23 ID:w4Uccc9U
コルベールが苦笑するように呟くが、オスマンは手のかかる子供の悪戯を見抜いている好々爺のように、どこか笑いを含んでいた。そして、そのタイミングを見計らっていたかのように、ロングビルが宝物庫に姿を見せた。
若草色の髪をストレートに伸ばし、涼やかな目元に金色の瞳の輝きが美しい、妙齢の美女である。オスマンの秘書として実に有能な働きぶりを見せている。
廊下で待っている筈のDとは鉢合わせしなかったらしく、頬が真っ赤に染まっているとか、目の焦点が合っておらずどこか虚ろに視線を彷徨わせていないのが証拠だ。
どこにいっていたのか、ロングビルにコルベールが興奮した様子で話しかけた。
「ミス・ロングビル、どこに行っていたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」
口から唾を飛ばしかねぬ勢いのコルベールに反して、ロングビルはあくまで冷静な調子でオスマンに告げる。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」
尾行とまではいかぬが、教師陣が愚にも着かぬ責任追及で時間を無駄にしている間に、調査を進めていたロングビルの行動は賞賛に値するだろう。オスマンの言葉がなかば的中していたわけだが、そんな事を表には出さず、オスマンが先を促した。
「仕事が早いの、ミス・ロングビル。君を秘書として雇って正解だったよ、常日頃思うておるよ」
「ありがとうございます、学院長。調査の結果なのですが、フーケの隠れ家が判明しました」
「誰かに聞いたのかね? それとも直接フーケの姿を確認したのかね?」
「はい、近在の農民に聞き込んだ所、近くの森の廃屋に入っていった黒尽くめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼は怪盗フーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
「ふむ、黒尽くめのローブとな。ミス・ヴァリエール達が目撃した通りじゃな」
ちら、と目配せするオスマンに、ルイズがこくりと頷いた。
「はい。姿は同じです、ただ、私達はフーケが男かどうかまでは分かりません」
「ま、夜じゃったしの。その農民は夜明けにでも目撃したか、前々から怪しい風体の男が廃屋に出入りしていたのを気にしておったのかもしれんし。さて、ミス・ロングビル、フーケの隠れ家とやらはここから近いのかの?
「はい。徒歩で半日。馬で四時間と言ったところでしょうか」
ざっと四、五十リーグほどであろう。コルベールがロングビルの報告に声を上げた。
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
コルベールの意見を、オスマンは首を横に振って否定し、ついで目を剥いて怒鳴った。多くの貴族の子弟たちを輩出してきた由緒ある魔法学院の長に相応しい、威厳と迫力に満ちた声であった。普段の色香に目のくらんだろくでなしの老人とはまるで別人だ。
「ばかもの! 王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ! その上……、身に掛かる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた! これは魔法学院の問題じゃ! 当然我らで解決する!」
オスマンの言葉を聞いたロングビルは、こうなる事を待ち望んでいたような、意味深げな笑みを浮かべていた。美女の浮かべるそれは魅力的であったが、その様子を横目で観察していたオスマンの口元にも、似た様な笑みが浮かんでいたのを、彼女は知らぬ。
オスマンは咳払いを一つして、盗まれた『破壊の槍』奪還の為の有志を募った。
「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」
オスマンの言葉が、荒らされた宝物庫に重々しく、しかし虚しく響いた。
「で、名乗りを上げたのがお嬢ちゃん達三人か。ざまあないというか、あそこの大人どもは腑抜けの上に腰抜けか。どっちも似たような意味だが」
呆れ果てた様子の嗄れ声に、ルイズはむう、と反論の言葉を飲み込んだ。今、ルイズとDは馬車に乗っている。Dが御者台で手綱を握り、荷台にはご主人様(おそらく)のルイズと、タバサ、キュルケ、それに案内役を任されたロングビルが居る。
あろうことか、オスマンの言葉に答えて杖を掲げる者は教師達の間には一人もおらず、その不甲斐なさに業を煮やしたルイズが自ら名乗り出たのだ。それに負けじとキュルケが、さらに友人を心配したタバサが志願したのである。
589 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:13:41 ID:w4Uccc9U
だが、誰も捜索隊には志願しなかった事と、タバサ、キュルケの優れた能力に加えて先日ギーシュとの決闘でその力の片鱗をみせたDの存在を評価したオスマンの推薦もあってこうして、馬車の荷台で揺られる次第と相成ったのである。
元々母国で軍人としての教育も受けていたキュルケや、キュルケも知らなかったがシュヴァリエの称号を持つタバサの存在は、ルイズにとっては心強いものであった。
シュヴァリエというのは、王室から与えられる爵位の内、最下級のものだ。ただ、男爵や子爵といった爵位が、領地を買う事で手に入れる事が可能なのに対して、シュヴァリエだけは違う。
純粋にその個人の功績に対して授与されるものであり、それは実力の証明でもあった。昨日からタバサには迷惑のかけっぱなしであったルイズは、申し訳ない気持ちでいっぱいだったから、学院に戻ったら大好物のクックベリーパイでも奢ろうと思っていた。
それとはまた別に、フーケの捜索を行うと告げたルイズに不平の一つも言わずに、今は御者台で馬の手綱をDが握っていてくれる事に安堵もしていた。
Dという存在自体に寄せるルイズの絶対的な信頼もあるが、やはり昨夜フーケのゴーレムを相手に見せた実力も明るい材料となっていた。Dがいれば、むざむざ返り討ちに遭う様な事もないだろう。
Dの顔を目にしてしまい、意識を別次元の彼方に放逐してしまったロングビルも、馬車に揺られて小一時間ほどもするとようやく現実世界に帰還を果たし、恥ずかしげに頬を染めて細くしなやかな指をせわしなく組み合わせていた。
妙齢の美女ながら、どこか幼い少女の様に初々しい所作であった。
不意に、Dが口を開いた。普段の無口ぶりを知っていると、一生言葉を離さずに過ごすのではないかと思えてくるのだが、この面子が居るところでは比較的話をするし、自分から口を開く傾向も見えつつあった。
以前なら皆既日食とか、めったに起きない自然現象に遭遇してしまったような反応を、おっかなびっくり示していたルイズも、今ではさも当たり前のようにDと受け答えをしている。慣れた、という事以上に相性の様なものも良かったのであろう。
「盗まれた『破壊の槍』とはどんなものだ?」
「えっとね、前に宝物庫の中を見学した時に見たけど、二メイル位はありそうな槍よ。そのまんま槍ね。学院長が何十年か前にどこかから見つけてきて、そのまま宝物庫にしまったの。由来もどんな力を持っているかも誰も知らないわ」
「それで、価値があるのか?」
「さあ? 学院長の私物みたいなものだし。ただ、フーケは魔法の品物が大好きみたいだから、どこかから聞きつけて来たのかもしれないわね」
「他の宝には目もくれずか」
「そうみたい。まあ、あそこにはガラクタとかもあるし、あんな派手な盗み方をした所為で、他の秘法を盗む余裕もなかったんじゃないかしら?」
「計画性の無い怪盗じゃなあ。盗み方も豪快と言えば豪快じゃが、後先考えておらんのが見え見えじゃぞ」
「先生達が言っていたけれど、フーケは必ずしもゴーレムを使うわけじゃないみたいよ。夜陰に紛れてこっそり宅内に侵入して宝物を盗んだりとか、『錬金』の魔法で『固定化』の掛けられた壁や錠前を土に変えてまんまと盗んだりとか、パターンが複雑みたいね」
「そうか」
と、つれない一言で会話を切り上げ、Dが深い森の中へと馬車を進めた。そのままロングビルのどこか熱に浮かされた様な声に従って馬車を降り、木立に手綱をゆるく巻いてから、徒歩で、森を通る見から続く小道に入る。
ほどなくして森の中の開けた場所に出た。
確かにロングビルが農民から聞いたという通りに、廃屋がぽつんと一軒だけ建っている。元は樵か誰かが使っていたものだろうか。朽ち果てた炭焼き用らしき窯と、壁板が外れた物置が並んでいる。
小屋からは見えない位置の木の陰に隠れ、五人は相談を始めた。といっても、Dは会話には参加せずに小屋の方を見ている。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中に居るという話です」
ミス・ロングビルが小屋を指さして言った。とりあえず『破壊の槍』を取り戻す為に一戦交えぬとならないのなら、奇襲に越したことはない。昨夜の働きで、さしものフーケも疲れを感じて眠っているかもしれない、もしそうなら御の字だ。
「もし、あのゴーレムがまた出てきたら厄介ね。あんな大きいのに利く魔法なんて、私達では使えないわ」
ルイズの意見に、タバサが地面に杖で絵を描きながら作戦を明示した。まず偵察兼囮が小屋の中の様子を伺う。中にフーケがいれば挑発して外へとおびき出す。
小屋の中にはゴーレムを造るような土はないから、フーケはそのまま小屋の外に出てくるだろう。そこを、残りの面子の魔法で一気に叩くのである。
支援!
591 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:14:54 ID:w4Uccc9U
あの土ゴーレムに対する対処法が無いのなら、それを使わせる暇を与えなければいい、というわけだ。
ひょっとしてDなら単独でもあの土ゴーレムに勝てるかも、と頭の隅で考えていたルイズも、D一人に全てを任せる事への申し訳なさと不甲斐なさ、それにタバサの明示した以上の作戦が思いつかなかったので、賛成する。
ふんふん、と作戦を聞いていたキュルケがこう言った。
「じゃあ、偵察兼囮を決めないとね。といってもミスタ・Dが一番の適任でしょうけれど。ていうか、ミスタの顔を見せれば、フーケもあっさり捕まえられるのではなくて?」
「それもそうよね。つくづく反則だわ、あの顔。……ねえ、D? 小屋の偵察お願いできる、てもう行っているし!?」
相談には一言も意見を発しなかったDが、すでに小屋に向かって歩き出している事に気づいたルイズが素っ頓狂な声を上げた。滾る陽光の中を、影の国から現われた魔王子の如く、Dは躊躇する様子も警戒する素振りも見せずに歩いていた。
すでに小屋の中の気配を探り、反応が無い事を確かめていた。Dの知覚をやり過ごせる陰形の技を身に着けているのかもしれぬが、そうなら直接対峙するまでの話だ。
ここらへん、自分の命を軽んじているのか、不動の自信を持っているのか、Dは大胆極まりない。
「さて、小屋の中には誰もおらぬだろうが、どうする? お前の腰のパウチの中に確か焼夷弾やら破砕用の手榴弾が残っておったろう。あれを使えば小屋ごと吹き飛ばせるぞ。万が一隠れておったとしても跡形もなく吹き飛ばせば無用なリスクは避けられる」
「『破壊の槍』とやらが壊れぬ保証はあるまい」
「そういえば奪還が任務じゃったの。誰かを滅ぼせという以外の仕事は久しぶりか。死の暗雲が立ち込めぬような仕事はあんまりお前向きではないな」
「かもしれんな」
無造作に廃屋の扉を開き、Dが足を進めた。
上下左右、どころか自分の影の中からの奇襲もこれまでの戦いで経験してきただけに、一件無警戒に見える姿でも、瞬時に右手が閃光と化して背のデルフリンガーを振り抜き、三百六十度あらゆる方向からの攻撃に対応できるDならではだろう。
使われなくなって久しいのか、一部屋きりの小屋の中には埃が降り積もり、人の足が絶えた年月を忍ばせている。転がった酒瓶や椅子、テーブルを見回し、崩れた暖炉や積み上げられた薪を見回す。
「ふむ、新しい足跡があるの。分かっておるだろうが、彼女のものと同じじゃ。どうも突発的な犯行だったらしい」
「ここを見つけたのは僥倖か」
「悪運はあるらしい。いや、あったと言うべきか。お前がお嬢ちゃん達についてきたのは、彼女にとっては最悪と言うほかあるまい。八つ裂き、四肢切断、生首を刎ねる、頭から真っ二つ、心臓を突く、さて、お前の好みはどれ―――ぎええ」
厭味ったらしい左手を握りしめて黙らせ、Dは薪の隣にあるチェストへと足を向けた。ダンピールの特性か、それともDの歩方によるものか、埃に残ったDの足跡はフーケの足跡の半分ほどしか沈んではいなかった。
チェストの傍らに、布でくるまれた二メイルほどの細長い竿の様なものがあった。おざなりといえばこれ以上ないくらい粗雑な扱いの『破壊の槍』であった。
あまりの呆気の無さに、つまらんと左手が思わず零したのも無理からん事だろう。『破壊の槍』やそれを包む布に不穏な気配の無い事を察知したDが、左手を『破壊の槍』へと伸ばした。
その時である。小屋の外で大きな物音とルイズの悲鳴が聞こえたのは。左手に『破壊の槍』を握ったDが、ロングコートの裾を翻して、黒い疾風となって小屋の外へと出た。
昨夜、Dが指やら腕を斬り落とした、あの巨大な土ゴーレムが居た。その足もとでルイズやキュルケが大慌てで走って逃げだしながら、杖の先をゴーレムに向ける。
迸る紅蓮の大火球や、鋭い風の刃がゴーレムに当たるが、それだけでさしたる効果は見込めない。キュルケの炎は土の塊であるゴーレムにはさして効果もなかったし、風の刃は確かに鋭かったが、やはりキュルケの炎と同様の理由で功を無さなかった。
「これは、ちょっと無理があったかしらね!」
そう言いつつも、炎の塊をゴーレムの指先などの細かな部分にぶつけ効果が無いか試みるキュルケに、タバサが至極冷静に呟いた。戦闘での見切りの付け方は、感情に左右されぬ分、タバサの方が的確だ。
「退却」
Dはタバサと一緒になってゴーレムから逃げだしたキュルケを一瞥し、最大の問題である己がご主人様の姿を探した。ルイズは、全高三十メイルはあるゴーレムの背後に居た。
592 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:16:02 ID:w4Uccc9U
珊瑚細工の様な唇の動きからなにがしかのルーンを呟き、魔法を行使しようとしているのが見て取れた。Dが小屋から出た勢いをそのままにルイズめがけて疾駆する。
ゴーレムの背が揺れて、巨体を構成する土がぼろぼろと毀れ落ちた。ルイズの失敗魔法が引き起こす爆発の成果だ。
ルイズは続けて魔法を唱えた。詠唱の短さから言って、ライトやレビテーションといったコモン・マジックだろう。何を唱えても爆発するのなら、発動までの時間が短く連射の利くものを、と選択したのであろう。
土ゴーレムは逃げるキュルケ達を追おうか、背後のルイズを踏み潰すかまよう素振りを見せていたが、しつこく爆発を繰り返すルイズを目障りに感じたらしく、くるりと振り返った。
それまで敢然と魔法を唱えていたルイズが、自分を見下ろすようにしているゴーレムの威容に、思わず体を竦ませた。明確な敵意をゴーレムから向けられた所為だ。ルイズの人生で、殺す事も厭わないという敵意を向けられたのはこれが初めての事であった。
それでも、目は瞑らず、ルイズは再び呪文を唱えてゴーレムの額のあたりに爆発を起こした。同時にゴーレムが右腕を振り上げて、ルイズめがけて凄まじい勢いで落とす。
爆発が命中した事に気を取られたルイズは、自分めがけて落ちてくる直径一メイルほどの拳に気づき、慌ててその場を離れようとしたが、それはとても間に合うとは思えなかった。
上空に待機させていたシルフィードに乗ったタバサとキュルケも、おもわず殴り潰されるルイズの姿を想像して息を飲む。振り下ろされる土の拳から、逃げられないと悟ったルイズは咄嗟に自分の足元めがけて魔法を発動させた。
その爆発の勢いを利用して自分自身を吹き飛ばし、三メイルほど滑空してから以前にも感じた事のある逞しい感触に抱きとめられた。
ルイズの方へと走っていたDの方へ、運良く吹き飛ばされたらしい。けほ、とせき込み、土で白皙の頬を汚したままのルイズが、自分を片手で抱きとめるDの姿に気づき、はっと顔を挙げた。
「小屋の中にフーケはいなかったぞ」
「ええ、分かっているわ。まずはあのゴーレムを何とかしなきゃ」
「逃げないのか? 誰も君を責めはすまい」
「心配してそう言ってくれるならうれしいけど、でもダメよ」
「命あっての物種と言う言葉はこちらにはないのか?」
「あるけど、ねえ、D。人間にはね、これが無くちゃ生きているとはいえない、生きている意味が無い、っていうものが少なからずあると思うの。私もそれを持っている」
「貴族か?」
「そうよ。魔法も使えない貴族、貴族じゃない貴族の私が、せめて魔法以外では貴族であるにはここで逃げてはいけないの。無様に敵に後ろを見せるのも、全力を尽くす前に逃げ出す事も、私が、私を貴族として誇る為には許されない事よ」
「命を捨ててまで、か」
「ううん。違うわ。命を捨てるんじゃない。命を賭けて、よ。私が掛けられるたった一つのモノを賭けて、私は自分の事を誇れる私でありたいのよ。
私は、ラ・ヴァリエールの娘だって。ゼロのルイズと馬鹿にされるのが私だけなら仕方のない事だわ。
でも、それは私だけじゃない、父様や母様、姉様、ちいねえ様皆への侮辱も混じっているの。娘がこんな有様じゃあ、あのヴァリエールも名ばかりで実の伴わない貴族なんだろうって。私は家族の名誉の為にも、貴族でありたいの、本当の貴族に」
振り下ろした拳を引き抜いた土ゴーレムが、Dとルイズめがけてずしんずしんと、数十トンを超す体ならではの重々しい音を立てて追いかけてくる。Dはルイズを右腕で小脇に抱えて駆けだした。
「D?」
ゴーレムから二十メイルほど離れた所で足を止めたDが、抱えていたルイズを下ろした。ルイズは意図が分からずこの青年の顔を見上げたが、Dは不思議と穏やかな顔で自分の主人を見下ろしていた。
ルイズは、Dが左手に握っている『破壊の槍』から白煙が噴き出しているのに気付いて目を剥いた。
593 :
ゼロの魔王伝:2009/01/28(水) 11:17:56 ID:w4Uccc9U
「D!? 手が」
「おれではだめらしい。君が使え」
「え?」
「手を添えろ」
有無を言わさぬDの声に従い、ルイズは差し出された『破壊の槍』を握った。不思議と重さは感じられず、まるで手足の延長の様にルイズの手に馴染む。槍と触れた掌から、なにか暖かい力が体の中に流れ込み、全細胞が徐々に熱を帯びてくる。
「すごい、これが『破壊の槍』?」
「やはり、お嬢ちゃんなら扱えたか。どうにもこやつでは拒絶されての。まあ、こやつの体に流れる血の半分が原因じゃろうが。しかしとんでもない力を秘めた槍じゃ。わしでも底が読み切れん」
感嘆の声を挙げるルイズは、槍によって焼け爛れた左手がそう呟くのを聞いてはいなかった。ルイズが拙く槍の穂先をこちらへ向かってくるゴーレムへと向ける。Dが、それを補助する様にルイズの手に自分の手を重ねて、ぴたりと穂先を固定する。
背後から抱き締める様にして、自分の手に重ねられたDの両手の逞しさと、冷たさに、ルイズの頬がうっすらと朱に染まった。
「意識を槍に集中しろ。あとは槍が導いてくれる」
「はい」
素直な気持ちでルイズはDに返事をした。とくん、とくん、という心臓の鼓動が鮮明に聞こえる。ルイズは耳から周囲の音が消えてゆくのを感じた。
木々の匂いも立ち込める土煙もDの掌の感触も、すべてが失われてゆくのと引き換えに『破壊の槍』の中で眠る白い光の様なものと意識が溶けあってゆく。
それは常人の近くでは到底理解出来ぬなにか途方もない、しかし人のぬくもりに似たものを持った力であった。
さしずめ、神の手によって鍛造されたかのような、人知を超えた力。だが、この槍を鍛造した神は善き神であったろう。力と共に体の中に溢れる暖かさに、ルイズはゴーレムへの恐怖を忘れた。
ずしん、と近くで音がした。槍を構えるルイズとDの目の前で、足を振り上げたゴーレムの姿があった。『破壊の槍』と同調し、その力を引き出すルイズは眼を瞑っている。Dはルイズを支える様に槍を持ちながら、ゴーレムを見上げた。
途方もない質量を持ったゴーレムがわずかな躊躇もなく振り下ろされるのと、『破壊の槍』の穂先が、槍自身の意思で動くのは同時だった。
周囲を全て白く染めるほどの清らかな光が『破壊の槍』の穂先から放たれ、そこから地上から天へと逆しまに迸った光は、大神が魔の眷属を滅ぼす為に落とした轟雷の様であった。
その威力がどれほどのものであったか、右足の裏からゴーレムの頭のてっぺんまでを一気に穿ち、それでもおさまらずゴーレムの巨体全てを塵芥へと粉砕せしめたではないか。
耳を劈く轟音と、眼を焼く白光の中、Dは『破壊の槍』を見つめていた。それまではどこにでもあるような平凡な槍だったが、今は、鬼神のごとき文様が銀の刃に浮かび上がり、左右にも刃が伸びて形状が変化している。
ルイズの力によってその姿を変えた『破壊の槍』は、かつて国造りを行い現行の世界を破壊せんとした創造神イザナギ・イザナミを封じた『神の槍』と呼ばれたものであった。
以上で投下終了です。支援をして下さり、誠にありがとうございます。破壊の槍は魔界学園にて登場した神の槍でした。では、お邪魔しました。
支援〜
あれですか
てっきりロンギヌスのレプリカかと思ってました
魔王伝の人GJです。
何か…シュウ゛ルーズ先生まで妙に色っぽく脳内再生されたw
神の槍までwおマチさんイ`ww
次回に超wktkせざるを得ない。
隼人が来るのは確定かw
魔王伝さんGJ!
よもやシュヴルース先生にこれ程エロスを感じさせられる日が来るとは思わなんだw
くっそ、神の槍で来るとは意外すぎた! 吸血鬼の居ない(少なくとも当人は気付いていない)世界でのDってのも新鮮だ
原作Dのように周囲の人間にスポットを当てて、その生き様を見せる書き方もクロスにうまく合ってるし、とても良い感じです
次も期待しています。頑張って下さい
魔王の人乙
ところで最低野郎の人にちとツッコミ
アーマーマグナムの装弾数は3+1発です
>600
グリップ内にも二発の予備弾があるぜ
フーケのゴーレムに潰されてミンチより酷い状態になっても完治するんだろうなぁ
魔王の人GJ!
しかしなんつーか、凄いなハルケギニア。
菊地キャラがどんだけ過去に関わっているんやらw
この調子だとブリミルの四人の使い魔とかもそうなんじゃあるまいなw
ああ、あとゲーム版には武道だか武士に被れているお姫様がでるらしいが、そっちの関係者が柳生友矩なんてありそうだw
柳生友矩と聞くと、ジョゼフと若竹を育てたり夜の新陰流を伝授したり、
作者が歴史の捏造過程を嬉々として暴きそうな気がしてならない。
>>568 タバサが巨大化するのか!
そして、まさかのジャンガ上司登場!
>>601 ふとアーマーマグナムの弾装ってどういう構造になってるんだろうと気になって調べてみたんだが、
あれってショットガンでよくあるようなチューブマガジン式ってやつなんだね。
最初は普通の拳銃みたくグリップ部分にマガジンが仕込んであるのかとも考えてたんだけど、
マグナムのデカい弾丸じゃあの短いグリップ部分には到底収まらんわなw
パンプキン・シザースのハンス呼び出したらコルベール先生のトラウマ直撃だろうな
この場合、属性的に呼び出すのはキュルケになるのかしら?
キュルケのネグリジェ姿にわたわたするハンス(童貞)の姿を浮かべたら不覚にも萌えた。
でも特殊な器具がないとハンスは食事も排泄も出来んのよ…
608 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/28(水) 15:50:56 ID:iXjZuX80
なんか毒吐きで賞賛してる奴が居るから臭いと思ってたら
やっぱ自演してたのね重攻の人
ちょうど使い魔がいなかったコルベールが見本を…
という設定なら、そのまま呼び出せるな。話が展開しにくいだろうけど。
それより、まとめが見れねぇ…鯖しんだか?
ありゃ、本当に見れませんね
>>608 あの本当に私じゃないんですが……
信じていただけるか否かはそちらの判断になりますけど
だから酉付けとけばよかったんだよ
すいません。最初からトリップ付けておくべきでした
まぁ勘違いはよくあることだから気にすんな。
次回をwktkして正座待機。
ここでのキャリアがある程度長い人は、投下予告と終了報告以外ろくにスレに書き込まない。
そのあたりのことを少し考えるんだ。
>>611 2ちゃんでの自演乙はまあ挨拶みたいなもんだからキニシナイ
ライデン、毎回楽しみに読んでるよ
自作自演してようとしてまいとどうでもいいけど本スレをageてまで言うことか?
>>てっきりロンギヌスのレプリカ
「うわー、もうだめだー」(笑)
重攻の人は読者とコミュとろうとしない方がいい。
誤字脱字、明らかな設定間違い以外は
読み手の意見なんて何の足しにもならないからな。
ガンダールブやらマルコリヌにミョズニルトンにシェスタは多いよね>誤
タバサをダバサなんて間違えてたのもいたけどwどんなタイプミスをしたのやら
人間だもの byみつを
>ダバサ
ワロタwwwいっぺんにモッサリ感MAXな印象を受ける名前にw
「ミョズニルキ〜」は流石にないかな
なるほど
提督の人が呆れて出ていく訳だ
>>607 その特殊な器具は火炎放射器や耐火服と同じく肌身離さず持ってるんじゃねぇかな?と思ってた。
>>625 あれは開き直って投下した本人にも責があるような
分かりやすい餌に釣られるなよ
提督さん出すのは大抵荒らしだからまともに相手しちゃいけない
と最近やっと理解できた。
ザイト、ロイズ、アンエリッタ、シェスタ、ティタニア、ダバサ、キョルケ、シェルフィード、
モンランシー、ギーシェ、マルコリヌ、ワルド、フーカ、コルペール、キトー、ジョセフ、ウィールズ、
デルブリンガー、プリミル、ガンダールブ、ミョズニルニトン、トリスタン、トリスティン、
ハルキゲニア、ハルゲニア、ハルゲキニア…
宇宙は一巡したッ!
カンブリア紀とか好きだったから最初はハルキゲニアと脳内変換してたわ
ちょっと待てワルドw
シュヴルーズ
シュブルーズ
シェフルーズ
ショブルーズ
シェヴールド
ジャフルール
ショゴス
シュブ・ニグラース
【SAN値が減った】
シェフィールドとシルフィードも混同しやすいというか、
ちょっとややこしい名前だよなぁ
ハルケギニアとハルキゲニアとか
偏在と遍在とかマリコルヌとマルッコイノとかな。
ゼロ魔には富野的な名前が必要だったんだよ
ルイズ・ルイス
伝説は虚無じゃなくてイデなのか
モンモランシーの名前なんかは縮めてよむと
「モンモランシー・モンモランシ」とななるのでちょっと御大ちっくな感じだな。
発動したら全部終わってまた始まるんですね、わかります
モンモランシー・モンモランシ
コレン・ナンダーは良い名前。
コレンはどうしても股間のマークに目がいってしまうw
股間といったら大邪神ゾーク
確かに強いし怖いんだけど、アレがねえ…
作品によっちゃウェールズが生きているというケースがあるけど、その場合登場するとなればテファはどうなる(どう扱われる)んだろう?
王家の血と虚無を継いでいるとはいえ、エルフの妾腹なんてアルビオンの王室にとってはこれ以上は無いスキャンダルだから、やはり父王の様に対処するんだろうか?
シェフィールド
「ジョセフ様?」
シルフィード
「きゅい?」
シルフィード
「ヒヒーン!」
確かに混同しやすい。
>>648 マガジンに連載されてた馬漫画自重……でいいんだよな?
車に轢かれて死んだ馬で・・・よかったよな?
原作片手に書いててロングヒルと勘違いしてた。
恥ずかしかった。
迎えにくるの 迎えに来るのね〜
誰かが シルフィを連れて行くのね〜
道は空いている?
投下してもいいですか?
道が空いてないならこじ開けるような漢ばかりだろうに支援
魔王の人、乙!!
たぶん「姫」を倒せる唯一の武器だろうな…メフィストに見せたらえらいことになりそう
でも菊池作品でこんな派手な特殊効果が見える武器も珍しい。
>654
そりゃそうだ……では投下!!
“自分は……まだ夢を見ているのか?”
幸村は目を擦ってもう一度目を開く。
だがそこには間違いなく自分の主……甲斐の虎と呼ばれた男、武田信玄が立っていた。
「目が覚めたか幸村よ」
信玄は戸惑う幸村に対して、温かみのある声で言った。
「お、お、おおおお、お館様あああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!!」
感極まった幸村は涙と鼻水を垂れ流しながら叫んだ。
「幸村よ、わしの元に戻って来るがよい」
「は、ははぁぁっ!!この幸村、お館様の御上洛を力の限りお助けする所存にあります!!」
信玄はそれを聞くと、満足そうに大きく頷く。
「そうか、よく言うたぞ幸村よ。それでこそ日本一の兵じゃ」
「おおぉ……お館様あぁ!!」
感嘆する幸村に信玄は一度微笑んだ。
「などと……………言うと思ったかあああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜!!!!!!」
しかし次の瞬間、鬼のような形相になった信玄は拳を繰り出してきた。
「ぶるああああぁぁぁぁぁ〜〜!?」
顔が酷く変形する程強力な一撃を受けた幸村は、壁をぶち破って外に吹き飛んだ。
しかし、不思議な事に地面に落ちた感じがしない。
辺りを見回してみると、いつの間にか目が覚めた時の部屋や城壁がなく、暗闇の中に倒れていた。
と、目の前に突然信玄が現れた。
「今のお前は日本一の兵ではないっ!日本一のたわけ者じゃぁ!」
顔をさする幸村に向かって信玄は大きな声で怒鳴る。
「見よ!!」
次に信玄は暗闇の一点を指差すと、そこが明るくなり、どこかの軍隊の姿が映された。
そして、その陣列中にいた1人の人物が大きく映し出された。
その桃色のブロンド髪を揺らす少女に、幸村の目が大きく見開かれる。
「ル、ルイズ殿!!」
「そうじゃ、今お前のいる……何処とも知れぬ世界でお主を置いてくれた娘じゃ」
「し、しかし何故ルイズ殿が。あれではまるで戦に行くようではありませぬか!」
「その通りじゃ、あの娘は今……戦に赴いておるのじゃ」
幸村は言葉を失う。
いつの間に戦争など起きてしまったのか。いや、それよりも何故ルイズがその戦地に向かっているのか分からなかった。
「聞け幸村よ。お前が寝ている間に、天より敵軍が攻めてきたのだ」
頭を抱えている幸村に信玄は説明した。
自分がルイズと共に行ったあのアルビオンが条約を破り、トリステイン艦隊を蹂躙した事……
そしてトリステインは劣勢の状態で開戦を決意し、ルイズはそれに賛同した事を。
「馬鹿な!!何故こんな危険な場所へ……」
「ならば幸村、お前は国や……慕う者に危機が迫った時、ただ黙って見ているか?」
その言葉に、幸村ははっと顔を上げた。
お館様の超格好いい騎乗姿に憧れて自転車2台で信玄乗りを試みるも、ビビッて体重をもう一台に預けられないまま坂道をふらつき川に突っ込んだ過去を懐かしみつつ支援
「ではルイズ殿は……」
「そうじゃ。あの娘も国の為、己が慕う者の為に動いたのよ。
幸村、お前はどうする?このまま眠り続けるか、それとも恩義に報いるか!?」
幸村に選択が迫られた。
しかし、彼の心は既に決まっていた。
自分は甲斐の国に戻る方法が見つかるまではルイズの元にいると、彼女を守ると誓ったのだ。
そしてそのルイズが戦地に赴き、戦おうとしているのなら……
「申し訳ありませぬ!ルイズ殿への恩も忘れ、甲斐に帰っては武士の恥!!
この幸村!!ご恩返しによって武士の務めを果たして参りまする!!!!」
信玄は幸村の言葉を聞くと、今まで険しかった表情を崩し、その顔に笑みを浮かべた。
「よくぞ言った幸村よ!!それでこそ武田の将よ!!」
「おおおぉぉぉお館様ああぁぁぁ!!!!」
信玄は再び一点を指差す。
すると今度はそこから眩い光が見えてきた。
「行け幸村!今こそ真の目覚めの時、己が力を奮う時じゃ!!」
「ははっ!!」
信玄の言葉に応えると、幸村はその光に向かって歩き出した。
「幸村!」
と、後ろから信玄が幸村の名を呼んだ。
「今からお前に必要な言葉を言う!それを胸に戦へ行け!!」
幸村は振り返る。
信玄はすうぅっ、と息を深く吸うと、暗闇を吹き飛ばさん限りの声で言った。
「気合じゃ幸村!!!!気合いがあればいかなる窮地も打ち破れる!!!!」
「お館様……!」
「幸村!!気合い!気合いじゃああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!!」
同時刻、利家を先頭にキュルケ、ギーシュ、氏政はトリステイン王宮内を歩いていた。
向かっているのは、幸村のいる部屋。利家は幸村を迎えに来たのである。
「王宮の人に聞いたけど目を覚ましてないそうよ?そんな状態で連れて行く気?」
「ならば引きずってでも連れて行く」
利家の応えにキュルケは溜め息を1つ吐いた。
そんな事をしている間に、キュルケ達は幸村の眠る部屋に到着した。
「幸村、入るぞ」
一応、利家はそう言ってから扉を開いた。
どうせまだ眠っているに決まってるじゃない……キュルケは心の中でそう呟いた。
しかし、開いた扉の向こうにいたのは……
赤い具足に着替え、背中に槍とデルフリンガーを背負った幸村だった。
「皆の者、待たせたな」
赤い鉢巻を締めながら幸村は言う。
その幸村の様子を見て、利家は「大丈夫そうだな」と言った。
「あ〜ユキムラ。病み上がりの所悪いんだけど……」
と、横からギーシュが口を開いた。
「知っておる。戦が始まったのだろう?」
「へ?」
自分が言おうとした事を先に言われ、ギーシュだけでなく、キュルケも呆気に取られた。
「そうか、ならルイズが戦場に向かったのは知っているな?」
だが利家は落ち着き、幸村に言った。幸村が頷く。
「ならばすぐに行くぞ。忠勝とタバサが外で待っている」
幸村達がタルブに向けて出発した頃……
「ようやく目覚めたか……幸村め、またまだ未熟よのう……」
ハルケギニアとはまったく異なる世界。
日本の……甲斐にある屋敷の屋根の上で信玄は呟いた。
「幸村よ。お前が遥か彼方でどのような事を学んだか……戻ってきたら見せてもらうぞ」
「時に幸村、お主あの娘が戦場に行ったと誰から聞いたんじゃ?」
「お館様だ、お館様が教えてくださったのだ!」
「…………(駄目じゃこいつ……早く何とかせねば)」
ごめんなさいちょっと足してしまいました。
何で日本にいるお館様が幸村の夢の中に出てこれたのか……
逆に考えるんだ。“お館様ならやりかねない”と考えるんだ……
一作目のアニメシーンであった額に武田の紋が浮かび上がるアレの仕業か!投下乙
乙ー!
お館さまは熱すぎるぅぅぅぅ
アニマルお館さまwwww
なにごとも気合ですね、わかります!
お館様ああぁぁぁ!!!!
なんと常識外れ! だがそれがBASARA!!
投下乙ですwww
ヒント:幸村はお館様の使い魔
こんばんは。
他に予約の方がおられなければ、21:45から第26話の投下を行います。
ラスボスとリアルタイムに遭遇できたのなら支援せざるを得ない
ラスボスきたああ
支援するのも私だ
ルイズは眠りについた意識の中で、もはやお馴染みとなった感覚を味わっていた。
『ただ見ているだけ』だった最初の頃とは違い、今では感想を交えながら『観賞する』余裕さえある。
そして、今回の夢でルイズが第一に抱いた感想は『疑問』だった。
(……また、この夢?)
てっきり前の『仮面の男の敗北』で終わりだと思っていたのに、どういうことなのだろうか。
(アレの続きなのかしら?)
しかし、死んだ後の続きなんてあるんだろうか。
……幽霊になった男の物語なんて、見たくはないのだが。
「40年前、ETFの攻撃によって瀕死の重傷を負った私は、皮肉にもそのETFのザラブ星人に助けられた……」
まだら色の空、銀色の地面。
重々しい口調で語る男と、それを聞く様々な人間たち。
(……コレって、あの『最後の戦い』の場面じゃないの)
また同じ場面を見せようとしているのだろうか?
「そして……ETFに身を寄せた私は、光の巨人……ウルトラマンの研究を始めた」
(……だけど、覚えのない内容ね)
似たようなことを話している場面はあったが、話している場所やそこにいる登場人物が違う。
ということは、『今まで見ていなかった場面』なのだろう。
思えば、あの舞台は主要な部分だけを抜き取った断片的なものだった。
ならばコレは、『主要な部分以外の、語られなかった場面』ということになるのだろうか。
「彼らは素晴らしい……。悠久の時を生き、裁定者として宇宙に君臨している……。
更に、深い慈愛の心と超越的な破壊力を併せ持ち……生命の謎をも解き明かしている。
ウルトラマンは神に等しい存在だと言えよう……」
「………」
(へえ……)
それはすごい。本当に神さまみたいだ。
仮面の男が憧れる理由も、ちょっと分かる。
……その『神の力』を与えられたはずの丸い兜と黄色い服を身に付けた男は、仮面の男の言葉を厳しい顔で聞いているが。
「だが、彼らは神のように遠い存在ではない。ハヤタや郷 秀樹のように……人間と一心同体になれるのだ」
「………」
「……私はかつて地球で見た光の巨人たちに憧れた。あの素晴らしい力を欲した。
私も……ウルトラマンになりたいと思った」
言葉の端々から、妙な実感が込められていた。
おそらく、その言葉は本音なのだろう。
「だが、ウルトラマンは新西暦155年の地球を境として……その姿を見せなくなった。地球を去ってから、私は彼らに会うことが出来なかった」
仮面の男は、本当に残念そうに話す。
「……もっとも、私のように邪念を持つ人間とウルトラマンが同化しないことは分かっていたがね……」
(何なの、コイツ……?)
自分のことを、よりによって『邪念を持つ人間』だと言い切った。
普通、自分で自分を表現する時に、そんな言葉を使うだろうか?
この仮面の男が分からない。
理解の出来なさ加減では、自分の使い魔に匹敵するかもしれない。
声もよく似てるし、もしかしたら本当に……などと考えながらも、ルイズは続けられていく『舞台』を見ていく。
支援するのもされるのも私だ
ネオグランゾンの力を持ってすれば支援など造作も無いことです
「我々の力を手に入れて、何をしようと言うのだ!?」
「もちろん……この宇宙を調停するのだ」
黄色い服の男の問いに、平坦な口調で答える仮面の男。
「お前たちのように正体を隠して他文明の危機を救うのではなく、当初から絶対者として宇宙に君臨する。
それが……超絶的な力を持った者の定めだ!!」
「違う! 我々はあくまでも、人々の意思を尊重する!」
仮面の男の主張を、黄色い服の男は真っ向から否定した。
……どうでもいいが、確かこの男はあくまで『光の巨人と一心同体になった』だけで、人格はあくまでも『黄色い服の男』であるはずなのに、なぜ完全に『光の巨人』の視点で話すのだろう。
(一心同体になりすぎて、完全に溶け合っちゃったのかしら)
まあ、大して気にすることでもないのだが。
ともあれ、『舞台』は続く。
仮面の男は、苛立たしげに言葉を放っていた。
「……私や銀河連邦警察の宇宙刑事たちに不可能なことを、お前たちはアッサリと成し遂げ、無力な人々に奇跡を見せる。
その結果、人々に与える印象は何だ?
私がどんなに汚れた大気を浄化しようとも……宇宙刑事たちが命をかけて犯罪者を捕まえようとも……。
ウルトラマンの存在を知った人々が思うことは一つ……」
そして憎しみすら込めて、仮面の男は『その言葉』を口にする。
……他でもない、仮面の男自身が強く抱いたその思いは……。
「『ウルトラマンがいれば何とかしてくれる』」
「!! そ、それは……」
(……!)
『舞台上』の黄色い服の男だけではなく、見ているルイズもドキリとした。
思えば……自分も、使い魔に対してそんなことを考えていなかっただろうか?
(で、でも、私だって『虚無』を使えるようになったんだから……)
そう思って何とか意思がくじけそうになるのをこらえるが、仮面の男は追及の手を緩めない。
「……お前たちは、自分たちより弱い立場にいる者を甘やかしているだけだ。偽善者面で神を気取っているだけなのだ。
お前たちは弱者の自立を遅らせている! 宇宙はお前たちの存在など必要とはしていない!!」
「………」
憧れていた。その存在になりたいと思った。
だからその憧れが強い分だけ、不満も強い。
(う、うう……)
そして、この男の声でこんなに強く責められると、何だか『力』を持っていることが、とてつもなく悪いことのような気がしてくる。
「この宇宙に必要なものは……全てを支配する者! そう……因果律を調整する者なのだ!!」
「……っ!!」
目が覚める。
部屋の中は真っ暗だった。
「嫌な、夢……」
額を手で押さえながら、ルイズはかぶりを振る。
「……私は、私の力を……」
あの夢の最後の結論はどうかと思うが、その直前までの理屈はルイズを打ちのめしていた。
無力な人々に奇跡を見せる。
偽善者面をして神を気取る。
弱者を甘やかし、自立を遅らせているだけ。
救世主など必要とはしていない。
「私の『虚無』も……そうなのかしら?」
アレは、確かにすごい力だった。聞いた話だが、城下では『奇跡の光』などと呼ばれているとか。
……もし他の人間がアレを見たら、自分を頼ろうとするのも……まあ、分かる。立場が違ったら、自分だってそうするかもしれない。
「でも……」
しかし、その人々の期待や願いに応えて、危機から救ったとして。
それが本当に『助けられた人々』ためになるのか、と言うと……。
「……………」
分からない。
何とかしなきゃいけない状況になって、他の人には何にも出来なくて、でも自分には何とか出来る力があって。
自分がその状況を解決するのは……いけないことなのだろうか?
「分かんないわ……」
……早くも考えに行き詰まったので、ベッドに体重を預ける。
「…………ユーゼスなら、分かるのかしら」
ルイズは溜息をつきながら、ポツリとそんなことを呟く。
でも、この問題は自分自身で解決しなければいけない。……漠然とだが、そんな気がする。
「少なくとも、アイツに相談することだけはやめよう……」
これは自分で考えて、自分で結論を出しておかなくてはならないことだ。
―――しかし、もしも実際にその時が来たら自分はどうすれ……いや、どうするのだろうか?
トリステイン魔法学院の図書館は、巨大である。
30メイルほどもある本棚がギッシリと敷き詰められ、それが延々と続いている。
本塔の大部分は、この図書館で占められているほどだ。
なので、当然ながら扱っている蔵書も多岐に渡る。
門外不出の秘伝書、子供用の簡単な文章が書かれているもの、始祖の使い魔について記されている本、……そしてポーションのレシピが書かれた書物など。
「うーん、『リラックス用』や『イライラさせる用』を応用すれば、何とかなると思うんだけど……」
そんなポーションのレシピをじっと熟読しながら、金髪巻き毛に青い瞳の少女、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは悩んでいた。
『悩んでいた』と言っても、アルビオンとの国交や戦争、トリステインの今後の政治などについてなどではなく、ごく個人的な用件についてである。
学生にとっては『戦争』など、あくまで遠い世界の出来事でしかないのだ。
「あー、やっぱりダメだわ。……もうこうなったら、闇ルートを使うしかないのかしら」
「随分と熱心だな、ミス・モンモランシ」
「っ!?」
ブツブツ独り言を言っていたら、横から突然に声をかけられる。びっくりしたモンモランシーが、自分に声をかけてきた人物の正体を確かめるために視線を動かすと、そこには……。
「……って、な、何よ、ユーゼスじゃないの。いきなり話しかけないで」
「それは失礼した」
焦った様子で自分に話しかけてきた、白衣を着た銀髪の男……ユーゼス・ゴッツォに注意を行うモンモランシー。
「図書館に来てみれば見知った顔がいたので、声をかけてみようかと思ったのだが、邪魔だったか?」
なら他の席に移るが、とユーゼスは無表情に言う。
モンモランシーは少し悩んだが、やがて意を決したようにユーゼスにこの場に残るように頼んだ。
彼女が作ろうとしているポーションについて、この男から何かアドバイスをもらえるかも知れない、と考えたのだ。
…………無論、そのポーションをこの男に使うつもりなどは全く無い。
彼らの関係を一言で表すと、『研究仲間』である。
最初はモンモランシーが『何で平民が、貴族しか入れない図書館にいるのよ』と突っかかり、ユーゼスは黙ってオールド・オスマンから貰った許可証を差し出しただけの関係だった。
その後、両者は何度か図書館内で顔を合わせ、ユーゼスが水系統の書物を持っていた時に『あら、それは……』とモンモランシーが興味を引かれた。
そしてモンモランシーが『ちょっと話をしてみるか』と気まぐれをおこし、互いの研究について説明しあう。
結果、水系統専門のモンモランシーと、水に限らず全ての系統を網羅しているユーゼスの二人の分野が重複していたので『だったらお互いに情報を交換しよう』ということになったのだ。
モンモランシーとしては、これまでにない視点や発想から繰り出されるユーゼスの意見や考察は、かなり新鮮だった。衝撃と言っても良いかも知れない。
彼女は自分が作ったポーションを街で売っていたが、彼の意見を元に作成したポーションは、好調な売れ行きの人気商品だ。その点は感謝もしていた。
ユーゼスとしても、実際に魔法を使えるメイジの意見を直接聞くことが出来るのはありがたかった。最も身近にいるメイジが魔法をほとんど使えないため、意見を聞こうにも聞けなかったのである。
要するに、二人は利害が一致していたのだ。
「ほう、精神操作系のポーションか」
「……ええ。あなたのおかげで『感情をある程度操作する』研究は進んでるんだけど、それはあくまで『うわべだけの感情』なの。心の底からどうこう、って言うのは難しいのよ」
モンモランシーとユーゼスは、図書館内の広めの机に向き合って座って話し始めた。
「人間の精神を、そう簡単に操れることの方が問題だと思うが」
「うっさいわね。……しかも、操れるのは喜怒哀楽とか興奮とかの『単純な感情』だけだし。悔しさとか好意とか、そういう『複雑な感情』はコントロール出来ないの。
理論上は可能なはずなんだけど……」
そんなモンモランシーの言葉を聞いて、ユーゼスは率直な意見を口にする。
「お前は人間を洗脳して、完全なコントロール下に置きたいのか?」
「そんなワケないでしょ。……理論上可能なんだったら、作ってみたいとは思わない?」
「確かにな」
どうやら自分が持つ好奇心について、ユーゼスも心当たりがあるらしい。
「……しかしそこまで強力なポーションとなると、間違いなく禁制になるだろうな」
「うっ……」
痛いところを突かれた。それを言われてしまうと何も出来なくなってしまう。
いや、それでも好奇心はバリバリに存在をアピールして『作りたい作りたい』と心に叫ばせるのだが。
「だが、まあ……別に構わないか。作るだけで使用しなければ発覚する恐れは無いだろうし、仮に使用したとしても発覚さえしなければ罪にはならない」
「は、はあ……」
まるで過去にそういう犯罪行為を行ったことがあるかのような口振りだ。
……ともあれ、自分の行為を見逃してくれるのはありがたい。おまけにアドバイスまでしてくれる。
「そこまで強力な精神操作を行うポーションは『通常の製法』や『通常の材料』では作成出来ないな。『裏』で出回っているものを手に入れるしかないだろう」
「やっぱりそうなっちゃうのね……。うーん、この際仕方ないか」
どうしても値は張ってしまうが、元々は自分で稼いだ金だ。どう使おうが自分の勝手である。
それじゃ、近い内にトリスタニアの『裏の魔法屋』に行ってレシピと材料を……などと考えていると、ドカッ、といきなりユーゼスが陣取っている位置の右隣に大量の本が置かれた。
「っ!?」
びっくりしたモンモランシーがその『大量の本を置いた人物』の正体を確かめるために視線を動かすと、そこには……。
「……あーら、お邪魔だったかしら?」
自分の髪にも負けない見事な長い金髪を微妙に揺らした眼鏡の美女、エレオノールが立っていた。
支援
支援
「だ、誰?」
知らない顔がいきなり現れたので、取りあえずこの女性の知り合いらしいユーゼスに問いかけるモンモランシー。
問われたユーゼスは、手短に互いを紹介する。
「御主人様の姉で、アカデミーの主席研究員でもあるエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールだ。
ミス・ヴァリエール、こちらは御主人様のクラスメイトのモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。たまに私の研究の相談に乗ってもらっている」
「ふぅん、モンモランシ家ねえ? 確か水の精霊の機嫌を損ねて、領地の干拓に失敗した落ち目の家だったかしら?」
「うっ……」
モンモランシーを威圧するような視線を向けるエレオノール。
(な、なんでわたしに対してこんなに高圧的なのかしら……)
『ルイズの姉』というだけで性格については大まかな推察が出来るが、それにしたって初対面の出会い頭にこの対応は無いのではないだろうか。
そんな風にエレオノールに圧倒されていると、横から平然とユーゼスが口を挟んだ。
「ところで、わざわざ図書館に来るとは何の用だ?」
「な、『何の用』……!? ひ、人がせっかく、アカデミーから始祖ブリミルや『虚無』について書かれた文献を持って来たって言うのに……!」
「ふむ。……ご苦労なことだな」
ユーゼスはチラリとモンモランシーを見て、少し考える素振りを見せた後に言う。
そのユーゼスの視線の動きにエレオノールはビキッと表情を引きつらせたが、一瞬後には何かに納得が行ったかのような顔になって落ち着いた。
「……ああ、そうね。これは『私の個人的な研究』だから、後であなたの研究室で話しましょう」
「了解した。私も『始祖が使ったと伝えられている系統』については興味があるが、このように人が大勢いる図書館で大っぴらに話す内容ではないからな」
「?」
そんな二人のやりとりに首を傾げるモンモランシー。
二人で一緒に伝説の『虚無』の系統を研究していることは何となく分かるのだが、それは別に図書館でも出来るのではなかろうか。
ますます首を傾げるが、それに構わずエレオノールはユーゼスの右隣に座る。
しかし……。
(……何なのかしら、あれ?)
ユーゼスとエレオノールの位置関係は、まさに『つかず離れず』の微妙な距離だった。
近いと言うほど近くもなければ、遠いと言うほど遠くもない。
と言うか、明らかに『もうちょっと近付きたい』、『でも近付けない』という2つの真逆の空気がエレオノールから同時に発せられているのだが……。
「……………」
しかも、そのエレオノールは顔を少し赤くしながら横目でじっとユーゼスを見て、何やらヤキモキしているご様子である。
表情をよく観察すれば、その顔は『何で私はこんなに悩んでるのに、あなたはそんなに平然としてるのよ』と自分の心境をアピールしていた。分かりやすい女性だ。
(し、しかもユーゼスはそれに全然気付いてないみたいだし……)
いや、『視線』とか『自分に何らかの感情が向けられている』ことに気付いているようではある。たまに『ん?』とか言ってエレオノールを見たりするし。
エレオノールは目が合った瞬間に恥ずかしそうに顔を伏せたりするが、それはこの場では置いといて。
……そんな風に『色々と向けられていること自体』には気付いているようなのだが、『それに込められた意味』には全然気付いていないようなのである。
(そう言えばコイツと話してて、たまに『人付き合いが苦手』とか『人の気持ちをほとんど察してない』とか思うこともあるけど……うーん……)
それにしたって、こんなバレバレな態度に気付かないなんてことがあるかなぁ。
『鈍感』とか『他人に無関心』とかのレベルを超えてるような気がする。
(コイツって人間がよく分かんないわ……)
それは、ユーゼスに会ったハルケギニアの人間のほとんどが抱く感想であった。
と、悠長にユーゼスとエレオノールについて考えている場合ではない。
自分がやろうとしていることは、禁制の重罪行為だ。
ユーゼスはたまたま『別に構わない』という意見の持ち主だったが、エレオノールがそうだとは限らない。……むしろ、普通はそうでない可能性の方が圧倒的に高い。
(……とっととこの場から退散しよう……)
下手に自分に話が振られた場合にうまく言い逃れが出来ないかもしれないので、手早く離れることにする。今後の指針のようなものは決定しているのだから、この場に留まる理由もあまりない。
そして手書きのメモや本棚から持って来た本などをテキパキとまとめ、エレオノールから遠ざかろうとした瞬間、ドカッ、といきなりユーゼスが陣取っている位置の左隣の席に腰掛ける人物が現れた。
「っ!? ……こ、今度は誰!?」
ドキッとしたモンモランシーがその『ユーゼスの左隣に座った人物』の正体を確かめるために視線を動かすと、そこには……。
「……御主人様を放っておいて何をやってるのかしら、アンタは?」
桃色の長髪をザワザワと揺らした美少女、ルイズがいた。
「ル、ルイズ?」
ユーゼスの右隣に座るエレオノールに対抗するように、でーん、とユーゼスの左隣に座るルイズ。
そんな妹に、姉は強い口調で告げた。
「…………ルイズ。私たちは今、あなたのために『二人で』『色々と』『あなたには難しい研究の話を』しているの。あなたは部屋の中で黙って一人で待ってなさい」
随分と高圧的な物言いだったが、それにルイズは反論する。
「……ユーゼスは私の使い魔ですわ、エレオノール姉さま。使い魔は主人と四六時中一緒にいるものでしょう? ……『使い魔の監督はメイジの初歩』とおっしゃっていたのは、どこのどなたでしたっけ?」
そのまま真ん中のユーゼスを挟んで睨み合う、ヴァリエール姉妹。
(す、凄い……)
何が凄いって、挟まれているユーゼスが平然としているのが凄い。
普通、ああいう場面ではアワアワするとか、二人をなだめようとするとか、言い訳するとか、逃げようとするとかしそうなものなのに。ギーシュみたいに。
「そう? じゃあ、あなたは義務感でユーゼスと一緒にいるのね、知らなかったわ」
「姉さまだって、研究のため『だけ』が目的でユーゼスと話をしていたなんて、全く存じ上げませんでしたわ」
「……………」
(だから、どーして平然と本なんか読んでるのよー!?)
当事者であるユーゼスより、傍観者的な立場を取っているはずのモンモランシーの方が危機感を覚えている。何だ、この状況は。
「……ふむ」
そんな感じにモンモランシーが冷や汗を浮かべていると、ユーゼスがパタンと読んでいる本を閉じて立ち上がった。
(つ、ついに行動を起こすのね!?)
期待を込めた目で銀髪の男を見る、金髪巻き毛の少女。
だがその銀髪の男は、
「では、3人揃ったのだし私の研究室に移動するか」
そんなことを言い放った。
「…………」「…………」
ヴァリエール姉妹は、2人揃って鳶色の瞳でじぃ〜〜っとユーゼス・ゴッツォを見る。
「どうした? 遊んでいないで早く行くぞ」
「………………そうね」
「分かったわ…………」
盛大に溜息を吐いて、エレオノールとルイズは席を立った。
エレオノールは持って来た本をドサッとユーゼスに持たせてズンズンと前に進み、ルイズはエレオノールの後ろに付いていく。
二人は共通して、苛立ちと呆れと脱力感をにじませていた。
「それでは、いずれまた会おう。ミス・モンモランシ」
「え、ええ」
重い本を持っているせいか、フラつきながら歩いていくユーゼス。何とも頼りない姿である。
「まあ、その人の良さなんて、分かる人にしか分からないものらしいけど……」
あの男の『人間的な良さ』は自分には分からないが……少なくとも、これだけは断言が出来るだろう。
「―――アイツ、頭は良いんだけど馬鹿ね」
支援
惚れ薬イベントか・・・一体誰が飲むんだろう
支援
アルビオンの首都であるロンディニウムの南側に、ハヴィランド宮殿という建築物がある。
『宮殿』の名が示す通り、国王が済む建築物だ。
よってその中の一室に、神聖アルビオン共和国の皇帝であるオリヴァー・クロムウェルと、その付き人という名目の小太りな男がいるのは当然のことである。
だが……。
「ワルドとかいう奴が死んだらしいな」
「……は、はい。優秀な、優秀なはずの男だったのですが……」
『皇帝』であるはずのクロムウェルは立ったまま平身低頭で恐縮しており、逆に『付き人の男』が椅子に座ってふんぞり返っているという異常な事態が、そこには展開されていた。
一体どちらが皇帝でどちらが付き人なのか、分からなくなってしまう図式である。
「フン、元々『こちらの人間』に対しては、あまり期待もしていなかったがな」
「しかし、ミスタ……、ミスタ・デブデダビデ。我が軍の人材不足は深刻です。元よりレコン・キスタが決起した際に優秀な将官や仕官は処刑してしまい、残った熟練者もタルブで……」
「……確かに、人材不足は問題だな」
ある程度以上の規模を持つ組織にとって、それは十分に致命傷となり得る。
加えてこの男がもたらした『新兵器の数々』も大した戦果を上げられはしなかったため、アルビオン軍全体の士気すら危ぶまれる状態にあった。
その問題性を十分に理解しながら、デブデダビデと呼ばれた男はボリボリと頭を掻きながらこう言い放つ。
「だが、それがどうした?」
「なっ……!?」
目の前の男の発言が信じられず、思わず目を見開いて驚くクロムウェル。
そんな皇帝をさも興味がなさそうに見ながら、デブデダビデは続ける。
「まあ、俺のツテを使えば人材はある程度だが確保も出来るだろう。俺の『同類』は他にもいる」
「な、ならばその方々を……!」
「しかしそいつらは『別の場所』を担当しているんでな。こちらに回すことは出来ない」
……確か、エルフとかいう連中の中の一人が『主』の召喚主に接触してきたので、その召喚主の護衛と言うか付き人のようなことをやっているのが1体。
そして召喚主の出身地の地中深くで眠っているのが1体。……まあ、アレの場合は『新型のガーゴイルだ』とでも言えば通用するような気もするのだが。
「何故なのです!? このままでは我が軍はガタガタに……!」
「―――そんなことは、今更お前に言われるまでもない」
デブデダビデは殺気を込めて、ギロリとクロムウェルを睨みつける。
その視線をまともに受けたクロムウェルはガタガタと震えて冷や汗を流しながらも、どうにか言葉を絞り出して自軍の不安材料を述べていった。
「そ、それにタルブで発生したという『巨大な光の玉』は一体……!? 未知の魔法、もしや本当に『虚無』なのですか!!?」
「知るか」
出自不明の小太りな男は、すがりつくアルビオン共和国皇帝をアッサリと突き放す。
「―――いいか、お前の役割をもう一度だけ教えてやる。『このハルケギニアを混乱させる』、これだけだ。単純だろう?」
「うぅ、し、しかし……」
「お前はただ、『我が神』のために動いていれば良いんだよ。余計なことなど考えず、壊れたようにな」
かなり酷薄な言い分だったが、クロムウェルはそのデブデダビデのセリフの中に一つの光明を見た気がした。
「『我が神』……おお、『あのお方』ですな! そうだ、我々の後ろには『あのお方』が付いていたのだ!! イザとなれば二国でトリステインとゲルマニアを迎え撃てば良い!!
……いや、連中もまさかガリアが敵に回るとは思っていまい! その虚を突いて背後から攻撃を行ってもらえば……!!」
「……………」
興奮するクロムウェルを、デブデダビデは冷ややかな視線で見つめていた。
皇帝の勝手な思い込みを、付き人であるはずの男は否定も肯定もしない。
(……フン、まずはあの死体を使ってみるか)
ただ、更なる混乱を……『神』の糧となる負の想念を引き起こすためには、どのような手段が最も効果的なのかだけを考えていた。
モンモランシーが図書館の中でユーゼスに『とある評価』を下してから、数日後。
そのユーゼスは、エレオノールと二人で自分の研究室にいた。
『二人で』と言っても、やることは始祖ブリミルや『虚無』に関しての内容が記述された本を熟読したり、考察や推察を行ったり、それに関して互いの意見を出し合ったりするだけである。
時折、ふとした拍子に二人の視線がかち合ったり、肩や腕や手がわずかに触れたり、妙に気まずい沈黙に支配されたり、その度にエレオノールがアワアワしたり顔を赤くしたりもしたが、特に問題はなく時間は流れていく。
……そう、特に問題はないはずだったのだが……。
(おかしい……)
エレオノールと共に考えている『虚無』の魔法。異分子であると思われるアインスト。プラーナコンバーターの調整のために明日またやって来る予定のシュウ・シラカワ。そして突然出現した『ハルケギニアにとってのオーバーテクノロジー』。
ユーゼスにとって現在考えるべきことは、それなりに多い。
だが、それよりも気になることが存在していた。
(……なぜ、私は……)
それは自分の心境……と言うか、『興味の対象』の変化である。
ハルケギニアに召喚されたばかりの頃は、この世界の魔法や幻獣、自然環境などについて興味を抱いていた。いや、今でも抱いてはいるのだが。
そして、先に挙げたような『この世界を取り巻く事象』。
これらについては、このハルケギニアの自然を脅かし、下手をするとハルケギニアそのものを崩壊させかねない危険性を秘めているのだ。放置しておくわけには行くまい。
つまり余計なことを考えている暇など、それほどない。
だと言うのに。
(……なぜ、私はミス・ヴァリエールのことが気になっている?)
理由はよく分からないが、あのタルブ戦から戻って来たあたりから、頭の片隅でエレオノールのことを考える時間が少しずつだが増えているのだ。
最初は『同じ研究者に対する親切心や老婆心、あるいは興味のような物か』……と思っていたのだが、そう思えば思うほど違和感が生じてきた。
クロスゲート・パラダイム・システムを使って調べても、自分とエレオノールを繋ぐ因果律が若干強くなっている以外にそれほど変化は見られない。
……むしろ『エレオノール』という存在が自分とハルケギニアを繋ぐ因果律になっている節もあるようだが、それについては今考えるべきではあるまい。問題は因果律ではなくて、自分の精神だ。
しかし、軽く自己分析を行ってみても理由は分からない。
(?)
首を傾げてみても、答えは出なかった。
……ここで、ユーゼス・ゴッツォという人間について少し解説しておく。
彼のこれまでの人生は、ハッキリ言ってしまえば『研究一色』だった。
汚染された大気の浄化の研究、光の巨人の研究、時空間移動の研究、因果律の研究、ハルケギニアの魔法の研究……と、約68年の人生において、そのほとんどが『研究』なのである。
……そんなことばかりやっていては、人付き合いが上手くなる訳がない。
辛うじて『友人』と呼べるのは、仕事上の付き合いがあった宇宙刑事ギャバンこと一条寺 烈くらいである。
当たり前だが恋人などいたことは、無い。
いや、そもそも誰かに『恋愛感情を抱いたこと』や『淡い好意を抱いたこと』すら、全く無い。
『人に対する好意』など、向けたことも向けられたことも無い。
ユーゼスはそのような感情について理解が出来ないと言うか、その類のモノに対して『それに何の意味がある?』と真顔で問いかけてしまうような男なのだ。
当然、『人の心の機微』などは分からない。
『自分の心の機微』すら、よく分かっていない。
何せ『自分が地球を愛していたこと』や『自分の鏡像に自分の良心を反映させてしまった可能性』ですら、死に際になってようやく気付いたほどなのである。
まあ、要するに。
ユーゼス・ゴッツォは、『筋金入り』どころか『巨大な鉄骨入り』の鈍感なのだった。
そんな微妙な空気を漂わせているユーゼスの研究室に、ノックもせずにルイズが肩を落としながら入って来る。
「……ただいま帰りました、姉さま」
「あら、ルイズ……どうしたの?」
また自分に突っかかってくるのか、と少し身構えるエレオノールだったが、すぐに妹が沈んだ表情をしていることに気付いた。このあたりはさすがに姉妹である。
「アンリエッタ姫殿下……いえ、今はもう女王陛下だったわね。女王陛下にお呼ばれして、王宮に行ったのでしょう?」
「……はい」
「? それならどうして……」
ルイズとアンリエッタの関係は、エレオノールも知っている。幼少の頃によく遊んでいて、今もその交友関係と言うか友情のようなものは続いているはずだったのだが……。
そのアンリエッタと会って、なぜこんなに落ち込むのだろう? 酷いケンカでもしたのだろうか? それとも非常識な命令でも下されたのか?
話す内容については、それなりに想像もついていたが……。
(……やっぱり、一応ユーゼスも付けておくべきだったかしら)
王宮に呼ばれたのは『ルイズとその使い魔の男』だったのだが、ユーゼスはいかにも興味なさげに『どの道、メインは御主人様だろう。私が行く意味はそれほどない』と言って学院に残ったのである。
……実際、多くの人間にとってユーゼス・ゴッツォは『ルイズの付属品の、少し頭が良いらしい平民』として見られているので、エレオノールもその判断を無難と判断していた。
(それ以前に、この男とアンリエッタ女王陛下がどんな会話をするのか、ほとんど想像が出来なかったって言うのもあるにはあるんだけどね……)
おそらくアンリエッタの言葉を徹底的にコキ下ろすか、あるいは徹底的に無関心&生返事で通すかのどちらかだと思うのだが、どちらにせよ女王相手にそんなことをやられてはたまらない。
閑話休題。
ともあれ、今はルイズがどのようなことを言われてきたのかを尋ねるべきだろう。
「それで、女王陛下とどんな話を?」
「はい、えっと……」
ルイズはまず、『ビートルで飛行してアルビオンの竜騎士隊を全滅させ、艦隊を撃退したのが自分たちの仕業だとバレていた』ことを話す。
と、ここでルイズが入室してから初めてユーゼスが口を開いた。
「妥当な状況だな」
「……どういう意味?」
訝しげに聞くエレオノールに、平然とユーゼスは答える。
「『魔法学院に“空を飛ぶ妙なマジックアイテムのような物”がある』という情報程度なら、王宮もタルブ戦の前に掴んでいただろう。何せあれだけの外見と派手な飛行方法だ、噂はすぐに立つ。そして『その外見についての情報』も流れる」
その言葉をまとめると、
「つまり『初手から目立ちすぎていた』ということ?」
「有り体に言えばそうだ」
隠蔽工作や口止めを徹底しておくことは不可能に近かったから、これは仕方あるまい……とユーゼスは続ける。
エレオノールは溜息を吐きつつ、ルイズに続きを促した。
ルイズはどことなく気まずそうに言う。
「だけど、私たちに対して勲章や恩賞を与えるわけにはいかない、って……」
「……そうでしょうね」
何せ艦隊を一瞬で壊滅させてしまうほどの力だ。それを個人が所有していると発覚してしまえば、色々と角が立ちすぎる。
とは言え、アンリエッタの口からそれが漏れないとも限らないのだが……。
>>681 ユーゼスに決まっているだろ!
惚れる対象はエレオノールな!!
エレオノールがそうして思考を展開していると、ユーゼスがルイズに話しかけた。
「御主人様の今後の身の振り方はどうなった? 王家や女王陛下に『虚無』を捧げる制約でもしたのか?」
それを聞いて、エレオノールの表情が動く。
……最大の懸念事項はそれだ。
ルイズならば、特に後先を考えもせず『神は姫さまをお助けするために、わたしにこの力を授けたに違いありません!』とか言って自分から兵器扱いされることを望んだとしても、何ら不思議はない。
いや、むしろそうする可能性は極めて高いのでは……。
……と、そう思っていたのだが。
「…………するわけないでしょう、そんなこと」
「そうか」
ルイズは少し悩んだ様子で、だがキッパリとユーゼスの言葉を否定した。
そんな妹に、姉は大いに驚く。
(あのルイズが……?)
自分の知っているルイズなら、多少悩んだとしてもアンリエッタに『虚無』を捧げるはずである。
ルイズの性格とアンリエッタに対する敬愛から考えるに、てっきりそうするものとばかり予想していたのだが……。ついでに、そのことを叱りつけようとも思っていたのに。
(ルイズはルイズなりに成長してる、ってことかしら……)
あのちびルイズが……などと、感慨深げに回想にひたり始めるエレオノール。
「でも、さすがに放っておくことは出来ないし、いずれ『虚無』のことを嗅ぎ付ける人間も現れるかもしれないから、取りあえずは『姫さまの直属の女官』ってことになったわ」
言いながら、ルイズはアンリエッタの筆跡が書かれ、花押が押された羊皮紙を取り出す。
「ふむ……。これで少なくとも、トリステイン国内でのみだりな干渉は『ある程度』防げるだろうが……」
難しい顔で考え込むユーゼス。
『公爵家の三女』という立場に加えて『女王直属の女官』という地位まで手に入れたのだから、今のルイズにそう簡単に手は出せないのでは……とエレオノールは思い、それをユーゼスに言ってみる。
しかしその返事は、
「甘いな」
という、にべもない物だった。
「『力を求める人間』は、なりふり構わずそれを手に入れようとする。その力を持つ者の、人権や人格を無視してもな」
「……やけに詳しいわね」
「似たような経験があるだけだ」
(……そう言えば『神になろうとした』とか言ってたわね……)
その途中で、そういう力を手に入れようとしたことでもあるのだろうか。
(興味はあるけど……って、あれ?)
考えている途中で、何だかしっくり来ないことに気付く。
そう言えば、ここ最近は自分とユーゼスがこんな風に会話をしていると、横からルイズが口を挟んできたり、ジーッと厳しい目つきで見つめてきたりしていたのだが、今回はそれが無い。
やりやすくはあるのだが、全く無いとなると妙な寂しさを覚えてしまう。
どうしたのかしら、とルイズを見てみると、そのルイズは何かを深く考え込んでいるようだった。
そして、ふと気付いたように顔を上げて、持っていた鞄から袋を取り出す。
「……これ、姫さまからアンタにだって」
「?」
何かがギッシリと詰まった袋を、ユーゼスが重そうに受け取る。
その袋の中身をのぞき込んで見ると……。
「金か」
金銀宝石がたっぷりと入れられていた。ざっと見積もって500エキューはあるだろう。
「せめてもの感謝の気持ち、だそうよ」
「分かった。貰えるのならば貰っておこう」
アッサリとそれを受け取るユーゼス。
(コイツ、意外にお金に対しては執着してるのよね……。そういうものからは縁が遠いと思ってたんだけど)
この男は別に守銭奴というわけではないのだが、金銭に対しては意外と主張が強かったりするのだ。
何でも『手持ちの金は多すぎても問題はあるが、だからと言って少なすぎても問題がある』とか何とか。まあ、要するに『お金は大切です』ということか。
(ま、良いんだけどね。……そういう『執着』って言うのは、大事なような気もするし)
なお、本人はほとんど自覚していないのだが、エレオノールはユーゼスのそのような『人間的な部分』を発見する度に、少しだけ嬉しくなったりしていた。
「ふう……」
ルイズは息を吐いて、ユーゼスの対面の席に腰掛ける。
その顔は控えめに見ても、悩みや憂いを抱えているように見えた。
そんな主人に対して、使い魔は平坦な口調で話しかける。
「どうした御主人様、何か悩みごとか? ……『エクスプロージョン』の不発については、『精神力の不足』ということで落ち着いていたはずだが」
「……うっさいわね、それについてはいいのよ」
タルブ戦の後、ルイズたちは『実験』という名目で小規模ながらも何度か『エクスプロージョン』を発動させようとしていたのだが、成功したのは最初の1〜2回だけで、後は全て不発に終わっていた。
この不発の原因を、ユーゼスとエレオノールの二人は『今まで蓄積していた精神力を、ほとんど使い果たしてしまったため』だと分析している。
スクウェアメイジとて、スクウェアスペルが使用可能になるまで精神力が蓄積するのは長い期間がかかるのだ。それが伝説の『虚無』であれば、なおさらだろう。
ちなみにその精神力が溜まるメドは、今の所ほとんど立っていない。
……念のため、かつて始祖ブリミルの使い魔であるガンダールヴに使われていた(と本人は言っている)デルフリンガーにも聞いてみたのだが……。
―――「何だよぅ、剣として使っておくれよぅ、あの宝探しの時にちょっとくらい使ってくれても良かったじゃねえかよぅ、せめてたまに話しかけておくれよぅ、“じぇっとびーとる”ってヤツを動かすときのサポートくらいは出来るよぅ……」―――
と、愚痴とすすり泣きをするだけで全く何の役にも立たなかったので、もうこの剣の知識とやらに期待するのは止めた。
「今までの『失敗魔法』についても、仮説は立てているし……」
「……………」
これに関しては、『普通の油を入れたランプ』と『ジェット燃料を入れたランプ(ユーゼスも少量はジェット燃料を確保していた)』という例えを使って仮説の解説を行った。
『普通の油のランプ』に火を近付ければ、普通に火が灯って明かりとなる。
『ジェット燃料のランプ』に火を近付ければ、爆発してランプは粉々になる。
ここで言う『普通の油』は『通常の系統魔法のための精神力』に、『ジェット燃料』は『虚無の魔法のための精神力』、『火』は『詠唱する魔法や呪文』、更に『ランプの明かり』は『発現の仕方』へと変換される。
つまり。
―――「使い方を根本から間違えていたのだな」―――
そのユーゼスの言葉を聞いたルイズとエレオノールは『じゃあ始めから普通の系統魔法なんて成功するワケなかったんじゃないの』と肩を落とした。
どうやら今までの苦労が水の泡になったことが、意外と堪えたらしい。
今までさんざん努力していたルイズはともかく、エレオノールについては……ルイズがいない時に聞かされたが、彼女がアカデミーに入った理由の大部分は『妹のため』だったのだそうだ。
もっとも、『これで“残りの方”に専念が出来るわ』などと言っていたし、問題が解決したのは確かなのだから、結果オーライというやつだろう。
……まあ、それらの『過去の問題』はともかくとして、今はルイズの悩みとやらである。
「適切な助言が出来るかどうかは分からないが、話を聞くだけならば私でも出来るぞ」
その言葉を聞いたルイズは、ハッと顔を上げてユーゼスを見て……少し口ごもった後、ためらうように言葉を発した。
「……もし、大きすぎる力を使えるとして……」
そこまで言ったところで、ルイズはセリフを途中で切る。
「?」
「…………何でもないわ、忘れて」
「ふむ。……御主人様がそう言うのであれば、そうしよう」
相変わらず素っ気ないユーゼスの態度だったが、それにどこかホッとした様子を見せるルイズ。
エレオノールはそんな妹に何か声をかけようとしていたが、その手を伸ばしかけたところで思い留まった。
(……口を出すのは簡単だけど……)
おそらく妹が抱えているのは、本当の意味での『自分自身の問題』だ。横からアレコレ言って思考を矯正したりするのは簡単だろうが、それでは妹の成長には繋がるまい。
自分に出来るのは、せいぜい見守ることと……。
(出した結論に対して、アレコレ文句を付けることくらいかしら)
もしその結論に問題があるようだったら、引っぱたいてでもそれを叱責しなくてはならない。
『虚無』についてはたとえ家族……父や母、ルイズがよく懐いている二番目の姉であっても易々と明かせはしない以上、道を正すのは自分の役割だ。
(……ついこの間までは、私に叱られてピーピー泣いてたのにね)
エレオノールは11歳年下の妹の成長を、嬉しいような寂しいような気持ちで見つめる。
―――と同時に、ルイズが成長したってことは私は老けたのかしら、と軽くダメージを受けたりもしていたのだった。
以上です。
……何でしょう、この中だるみ展開は……。しかもダラダラと長いし……いや、長いのはいつものことですけど。
ふふふ、正直、説明パートばっかりだと筆が乗りませんぜ。
ま、ともあれ。
冒頭でユーゼスが語っている『ウルトラマン論』については既に原作のゲーム内で、この作品の中では第1話の前半部分で結論は出ています。
ユーゼスがハルケギニアに対してやたらと『干渉したくない』と繰り返しているのは、このシーンが元になっていたり。
……読み返してみて思ったんですが、ユーゼスって藤宮博也とだったらある程度は話が合うかもしれませんなぁ。
それと、ラノベとかゲームとかでは『異常なほど鈍感なキャラ』がたびたび出て来るのですが(才人の場合は『勘違い』もありますけど)、鈍感なら鈍感なりの『理由』が必要だろうと思い、取って付けてみました。
って言うか、スパヒロ内でユーゼスがマトモに喋ったことのある女性キャラってヴィレッタを除けば、神官ポーとリリーナくらいですしねぇ……。
神官ポーを『女性』としてカウントするべきか否かってのは、また意見が分かれると思いますがww
デブデダビデに関しては、もうほとんど完全にオリキャラと化しております。
何せグレイトバトルシリーズの中での情報と言うか、喋っているセリフが少なすぎるので……。お気に触った方がおられましたら、申し訳ありません。
……さあて、話はそろそろ惚れ薬イベントの季節ですな。どうしたものか……。
それでは、支援ありがとうございました。
乙ー
作者が長いと感じるくらいでも読んでると短いと感じるわい
乙でしたー
ふぅ、前回で「ストーリー的な意味でウルトラマン」なユーゼスが見れるかと思ったが…
いい意味で裏切り続けてくれて嬉しい限りです。
…まさかユーゼスが他者への好意を持つ日が来るとは…
ラスボスの人GJ
30近いヒロインとのラブコメなのにニヤニヤしてしまうのは何故だ
ラスボス乙っした
いい年なのにかわいいぜ姉さま
そして惚れ薬イベントが楽しみだw
ラスボスの人乙です。
エレオノールのラヴコメっぷりが最高ですGJ!
次回に超wktk。
ラスボスの方GJです!!
ラスボスの人GJでした。
しかしユーゼス…齢68にして初恋とかw
697 :
sage:2009/01/28(水) 22:33:36 ID:EycmmrZk
ラスボス乙でした。楽しかったです。
いっそのことヴァリエール三姉妹全員撃墜を狙って欲しいと思うのは私だけかしら。
次女の人とは一番話が合いそうな気がするけども。自然好き的な意味で。
枯れ木に花が咲きかけてるな
もはやルイズが一番真剣に見えるな
>>697 そして、始まる。ヴァリエール家、血みどろの争いが……しかし、
ユーゼスはそれに気づかず(笑)
>>700 それいっちゃらめえええええええええええええええええええええええww
>>700 ルイズ「ユーゼスはあたしのよ」
エレオノール「いいえあたしのよ」
カトレア「わたしのですわ」
カリン「わたしのだといってるでしょう」
ヴァリエール公爵「いや、俺のだし」
ユーゼス「あ、クワガタ」
カトレアが何かに執着する様は想像できんなー
>>702 公爵家の下2人まてぃw
争奪戦を起こすのも私だ
なんだ私か
いえいえ私だ
どうぞどうぞ私だ
じゃあ私だ
それも私だ
これで1000まで埋める気かw
それはたわしだ
まさかの2X歳ラブコメ万歳!
王女はユーゼス的には論外だろうからやはり次の期待はカトレアか!
それも私だ乙b
精神年齢60代と三十路手前のラブコメ……
こう書くと凄いインパクトだよなぁw。
ドラマ化決定
どうも「私だ」と聞くとムスカ大佐を連想するせいか
上のやりとりがなぜか分裂したムスカ大佐達の言い合いに脳内変換されてました・・・orz
今回のスレは1000行くかな?
乙、ところでテファ特製の鳥の丸焼きはまだですk…
この先ユーゼス自身が「それも私だ」って言う事は有るのだろうか?
タバサ「まさか、あの時(ラスボス7話)私を助けたのも?」
ユーゼス「それも私だ」
これだとただの良い人だよなぁ
ヴァリエール家での争奪戦は直接的に自分のだといわないほうがらしいと思うが
ル「ちょ、ちょっと!急だけど2週間後にお城で晩餐会があるのよ!そそそそそれであんたも連れて行ってあげるからごにょごにょ……」
エ「ああああら丁度良かったわ、急だけど2週間後にって……」
バチバチバチバチ
一方
カ「ああユーゼスさん。ユーゼスさんが見つけたあの子猫、ようやく元気になったんですのよ。
あらあらユーゼスさんの所に行きたいの?……ああ、ユーゼスさん駄目ですわ、もっとこうやさしく抱いてあげないと……キャッ
ごめんなさい、その、こんな近くでお顔を……はしたない」
ル、エ「ギギギギギギギギギギギギギ」
何気にグレイトバトル勢の参戦で心が躍っている俺がいる
キラー系も出てくるのかな・・・わくわく
うーん、ユーゼスってマサキ・ケイゴやゴンドウ参謀みたいなタイプかなあ。
しかし「ウルトラマンがいれば大丈夫」って考えはメビウスで、ウルトラマンも地球を愛する仲間という考えに変わったな。
セリザワ隊長を助けたときにM87光線で円盤群を一掃したゾフィーはかっこよかった。
鈍感か……恋愛以外で鈍感な人っていたかな?
気さくな王女はイザベラは…は違うし、
カービィ?いや、あれは幼すぎるだけだし、
お前の使い魔のダネットの場合は鈍感というよりバカだし、
う〜ん、恋愛だと鈍感な人ってすぐに思いつくけど、
恋愛以外で鈍感な人だと中々、思いつかないのはどうしてだろう?
グレイトバトルの敵で真っ先に思い浮かんだのはデブデダビデ。
何かいつもあいつに苦戦していた気がする。
逆に一番弱いと思ったのはクリスタルドラグーン。
ブラックラグーンから、フライフェイス+遊撃隊を召喚すると
大変な大戦争になります
世界に慣れる前に孤立してジリジリ消耗して結局全滅になりそうな
バラライカは周囲と全くソリ合わせようとしないしな
まだ容量いけそうですかね?
番外編をちょい投下したく存じます。
0:10頃からお願いします。
しえんします
投下開始です
――――
にんぎょうげきが はじまるよ!
にんぎょうげきが はじまるよ!
ぼっちゃん じょうちゃん よっといで!
にんぎょうげきが はじまるよ!
きょうの しゅやくは おんなのこ!
にんぎょうになった おんなのこ!
かのじょのなまえ?
かのじょのなまえは――
―ゼロの黒魔道士―
〜幕間劇ノニ〜 タバサときゅうけつきと……
そもそも、彼女の名前はタバサなどでは無かった。
犬猫ではあるまいに、
そんな名をつける親などいるものか。
シャルロット・エレーヌ・オルレアン。
それが、本来、親から授かった彼女の名前だった。
名前が示すとおり、
彼女はかのガリア王国の王弟、
オルレアン公シャルルの娘である。
その事実は、彼が死した後にも変わることは無い。
父の死、それがそもそものきっかけだったのかもしれない。
続けざまに、彼女の母が病に伏す。
だがそれは、表向きの理由だ。
真実は、軟禁である。
ご丁寧に、毒を盛られ、夢も幻も分からぬ状態にされて、である。
今の母は、タバサという名の人形こそがシャルロットで、
彼女は刺客か何かだと思い込んでいる。
それから、である。
笑顔の絶えぬ少女であったシャルロットが、
人形の名前であったタバサと、名乗るようになったのは。
全ては、目的のため。
彼女から全てを奪った、憎き男に復讐を果たすため。
だが今は、その男のために任務についている。
男の名は、ジョセフ。
かのガリア王国の王。
そう、彼女の伯父にあたる。
父を殺したのも、母に毒を盛ったのも、
彼女から全てを奪い取ったのは、ジョセフその人だ。
支援
支援
そんな男の言いなりになり、
北花壇騎士団という名の汚れ仕事に従事しているのは、
母を人質に取られているだけが理由ではない。
今はまだ、少女の躯しか持たぬ身。
もっと、鍛えなければならない。
トライアングル・クラスの魔力でも足りない。
もっと、磨かなくてはならない。
全ては、復讐のため。
「雪風」の異名は、何も使う魔法が風系統や水系統であることだけが理由ではない。
目的のため、人形と呼ばれるほどに捨てた感情の冷たさと、
目的のため、いかなる恥辱にも耐え抜く、揺るがぬ意志が、
そう呼ばせるのだ。
彼女は、そのために、
任務をこなし、その意志を、その力を磨き続けている。
今宵も、そんな任務の一つを終えるところだった。
吸血鬼騒動。
ハルケギニアで最も恐れられる種族の一つ。
それを退治せよとの命である。
もちろん、簡単なものでは無かった。
人の血を喰らい、先住の魔法を使う吸血鬼。
その最大の特徴は、人と見分けがつかないこと。
血を吸うと時まで牙を隠し、人の中に紛れている。
それ故、自身の後ろから噛みつかれぬ内に、なんとかする必要があった。
しかし、もうそれも終わりだ。
犯人は、吸血鬼はエルザという名の少女だった。
だがそれも、驚嘆には値しない。
何故なら、吸血鬼は人と見分けがつかないからだ。
エルザ。
メイジが嫌いと言っていたエルザ。
タバサを「人形みたい」と言ったエルザ。
近頃、「人形」という言葉が、気にかかるようになってきた。
もちろん、彼女は感情を捨て、人形になろうとしたことは間違いなかった。
彼女自身そう望んだし、そうあるべきだと思っていた。
しかし、状況は変わるものだ。
変わった状況は、使い魔の儀。
ルイズという少女が召喚した、少年。
彼は異界から来た魔人形、ゴーレムの類であったという。
それなのに、それなのにである。
彼は、あのように感情豊かに異界の話をする。
彼には、怒りも、悲しみも、喜びもある。
人形として生まれた彼が、人間以上に人間らしく生きている。
人間として生まれた彼女は、人形になろうとしたのに。
人間と人形、何が違うというのか。
自分は、人形ですらないのか。
支援
支援
支援
「おねがい……殺さないで」
目の前の、氷の槍に刺し貫かれた少女が哀願する。
「生きるためにやったんだよ」
先ほどまでの恐ろしげな形相を隠し、
いかにも無害でございという表情を繕う少女。
「わたしは悪くない 人間とどこも違わない……そうでしょ?」
生きるために、殺す。
それが人間と言うのなら、
やはり彼女も人間なのかと、
どこか安堵するタバサ。
人形になりきれてないのは自分が甘い証拠ではあるが、
人間離れしたいとも思わない。
いつかは、シャルロットに戻りたい。
それが偽らざる本音だ。
「確かに違わない」
認めよう。
「けれど私は人間なの」
今は人形でもいい。
いつか、人間に戻る日のために。
「あなたが生きるために牙をふるったように」
今はただ任務を終わらせよう。
「人間が生きるために私も――」
この杖をあなたに、
それでトドメを刺し、終わるはずだった。
「――さえずる小鳥は籠の中、太陽見たいと歌うだけ――」
詩を、吟ずる声がした。
注意が削がれ、トドメをさす機会を失う。
「――踊る人形は舞台の上、操り糸にも気づかずに――」
嘲りの詩は、月闇の陰からか突然現れた男が詠っていた。
銀髪が赤と青の月に照らされて、神秘的な輝きを与えている。
「――そこまでにしてもらえるかな、操り人形君!その吸血鬼は僕が預かろう」
「きゅ、きゅいっ!?お、おねえさま、こ、この人!この人は!!」
シルフィードが何ごとかわめきだすが、タバサはいたって冷静だった。
突然現れた男。
そこだけを抜き出せば幽霊とも取れる。
風貌で言えばまさに妖の者だ。
だが、少なくとも透けたりはしていない。
実態のある人間、あるいはそれを装う亜人や幻獣、ゴーレムの類と考えるべきだ。
任務の途中ということも手伝い、タバサはいつもの冷静さを取り戻していた。
「何者」
質問自体に意味は無い。
相手の出方を伺うための手段だ。
問答無用で攻撃してくるならば敵とみなすまで。
返事をするようならば、できるだけ話し合いを試みる。
無用の戦闘は控えたかった。
「おや?そこの風の子から聞いてないのかい?――やれやれ、しょうがないな。
この分だと、頼んだ伝言も果たされて無いようだねぇ――やはり僕自身が出てきて正解だったか」
言葉の端々に、一々動作をつけて強調する男。
道化のように、あざとく鼻につく動き。
しかしタバサはそれを注視する。
油断させるための動き、あるいは動作の最中に暗器を使う可能性もある。
惑わないこと、それこそが任務遂行のための必須事項である。
「もう一度聞く。あなたは誰」
もちろん、同時に視線は吸血鬼、エルザにも向けられている。
虫の息とはいえ、吸血鬼。
どんな隠し玉があっても不思議ではないからだ。
支援
支援
支援
支援
「――クジャ、そう呼んでくれればいいよ、シャルロット姫」
ニヤリと歪む男の顔。
そして呼ばれる、隠した名。
一瞬の動揺。
外れる視線。
動く吸血鬼。
「ね、眠りを導く風よ!」
先住魔法の呪文が、素早く唱えられようとしていた。
が、それは、唱えられることはなかった。
「――おっと、危ない危ない――ふむ、吸血鬼にも効果アリ、か」
クジャと名乗った男が、吸血鬼の顔を布で覆った。
薄手のハンカチーフのようなもの。
その薄い布の切れ端で、吸血鬼は棒のように動かなくなっている。
「何をしたの」
一瞬遅れて構えなおした杖はそのままに、タバサが聞く。
「ん?あぁ、ちょっとした薬草なんかを染み込ませてあってね?
――スリープ・クラウドを定期的にかけたハシバミ草とかね」
つまりは、相手を睡眠状態にするマジックアイテムか。
どうやら、目の前の相手はメイジ、もしくはそれを装う何からしい。
しかしスリープ・クラウドをかけたハシバミ草とは。
もしかしたら、安眠効果でもあるのかもしれない。
今度、機会があれば試そうかとタバサは頭の端に記憶した。
「その子を、どうする気?」
先ほど、この男は吸血鬼を「預かる」と言った。
「ちょっとね、この子に協力して欲しいことがあってね――
あぁ、そんな目で僕を見つめないで!ちゃんと、君の上司からの許可もあるさ」
大袈裟な身振りで懐から取り出したのは、確かに王印のついた書状だ。
すると、この人物もタバサと同じく、何らかの任務についている者なのか?
疑念は晴れないが、一応の納得はする。
第一級の警戒は解除し、構えをやや崩したものにする。
「納得いただけたようで光栄だね。それじゃ、夜更かしは美貌の敵だ、帰るとしようかな――
あぁ、いけないいけない――風の子に頼んだ伝言、もう一度、操り人形君に頼めるかな?」
くるくるとよくも舌が回る男だと思う。
エルザから氷の槍を抜きとり、簡単な処置をしてそのまま肩にかつぎつつ、
長台詞を息を止めずにしゃべりきった。
「何を?」
「とんがり帽子の男の子にね、伝えて欲しいんだ――“お久しぶり、『虹』が見えたときにまた会おう”とね」
「拒否した場合は?」
妖しい男に、怪しい伝言。
危険で無意味なことには乗らない方がいい。
この辺りは理屈ではない。
経験に則った直観である。
「ん〜――しょうがない、自分でいずれ伝えるかな。その方が彼も驚くしね」
肩をすくめたときに、エルザが少しずれた。
それを少し直し、きびすを返そうとするところで、またも大袈裟に立ち止まる男。
「そうだ、ついでについでだ!操り人形君、君に言っておきたいことがある」
「何」
男の顔が、妖しさを一層増す。
二色の月灯りが、それを助長する。
「――操り人形君、人間になりたいと星に願うだけかい?
それとも、糸を断ち切ってでも自らの足で歩くかい?」
「何が、言いたい?」
はぐらかすような、戸惑わせるような、人を小馬鹿にするような、
そんな男の台詞回しに、少しだけ苛立ちを感じるタバサ。
だが同時に、その嘲りの言葉が、彼女を操り人形と呼ぶ男の言葉が、
男自身にも向けられていることに気づいていた。
「――運命の糸に気づかぬ操り人形君、気をつけたまえ」
「何を」
この男は、彼女を運命に操られるだけの身と言いたいらしい。
だが、この任務を受けたのも、彼女の意志。
運命に操られてなど、いない。
彼女の意志には、まだ揺らぎは無かった。
「――復讐は甘美な御馳走。だけど、食べた後には何も残らない。
満たされぬ飢餓に悩まされるだけさ。永遠にね」
「それが、どうしたというの」
悪魔のような囁き、全てを見透かすような言の葉。
彼女に、迷いの色が出る。
それは彼女が、タバサがタバサである理由を否定する言葉。
復讐を果たすこと。
それは母を自由にすること。
それはシャルロットを取り戻すこと。
甘美な馳走でもなんでもない、
ただ、果たすべき責務。
それなのに、何故そのとおり否定の言葉が発せられないのか?
あるいは、彼女自身、認めてしまっているというのか?
復讐など、無意味だと。
「――操り人形君、復讐こそが君の望みかい?
失った心をそれで埋めるつもりかい?」
「違う」
その設問には否定の言葉がすぐに出る。
シャルロットの望み、それは、もう一度家族と共に笑うこと。
それは小さな小さな願い。
そのために、母を取り戻すために、彼女は動いている。
誰に命令されたわけではない、自らの意志で。
復讐は、そのための手段であり目的だ。
だから、復讐を望むのだ。
だが、今までの問答から、彼女の心に迷いが生じる。
復讐は、果たして彼女の望みを叶えるものなのか?
いや、そもそも、である。
復讐を果たした、そのときに、
タバサはシャルロットに戻れるのか?
新たな惑いが彼女の中に生まれてしまう。
しえn
「――操り人形君、また会おう!答えが見つかることを観客席から祈らせてもらうよ!」
最後にそう言い残し、吸血鬼を担いだ男は、来たときと同じように闇に消えた。
辺りに残るのは、ムラサキヨモギの仄かな香りだけ。
「お姉さま、あの、その――」
「気にしなくていい」
そう、気にすることはないのだ。
そう、迷うことはないのだ。
今はただ、任務を果たしていくことが、
全ての望みにつながると信じるのだ。
今は、まだ。
いつの日か、全て元通りになると信じて――
だが、それは自分を誤魔化しているだけと、
心の底では彼女も気づいていた。
かくして、惑うはずのない雪風が、
見えぬ操り糸に絡められていると気づき、
静かにもがき、
静かに苦しむこととなる。
それは、少しずつ、少しずつ進んでいた。
―――
にんぎょうげきは まだつづく!
にんぎょうげきは まだつづく!
ぼっちゃん じょうちゃん またおいで!
にんぎょうげきは まだつづく!
あやつりいとは いつきれる?
ふくしゅうは ほんとに のぞみなの?
こたえは だれにも わからない!
だから にんぎょうげきは まだつづく!
くるり くるり と まだつづく……
―――
投下完了です。支援、感謝です。
脇役の方が動かしやすいって気づく今日この頃だぜ!
あ、あと、上の方で原作読んでないとか言われてますが、読んでますよ?
手元にあるのはコミック版だけだけどね。原作はダチに借りたりとかなんで……
細かい間違いとかあったら本当にすいません。努力して違和感ないように仕上げていく所存ですので。
お目汚し失礼いたしました。
支援
支援
乙でしたー
地味にエルザ生存キタ!
748 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:13:20 ID:lDoFSbC0
こんばんわ、容量的に大丈夫そうでしたら20分くらいから投下します。昨日のお昼の時よりは短いです。
よーし、事前支援だ!
わーい楽しみにしてたー!うれしいー!
支援です
751 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:25:21 ID:lDoFSbC0
ゼロの魔王伝――17
今も残響が鼓膜を揺るがす中、ルイズはへなへなと萎れた様にぺたんと腰を落とした。すがる様にして『破壊の槍』いや『神の槍』を両手で握り締めている。
自分の体の奥に眠る何かが導かれる様にして神の槍へと流れ込み、熱い迸りとなって穂先から溢れ出てゴーレムを粉砕した代償であった。そのルイズの傍らにばっさばっさと、音をたてながらシルフィードが降り立つ。
同時に驚きの顔を浮かべているキュルケとタバサが、駆け足でルイズに駆け寄った。Dならなんとなくわかるが、よもやルイズがゴーレムを倒したとは信じられず、驚いたやらなんやらで目を丸くしていた。
「ちょっと、ちょっと、ルイズ貴女何したの!? あれだけ大きなゴーレムが一瞬で粉々になっちゃったじゃない!」
「あ、あはは、私もやるもんでしょ?」
タバサが隠しきれぬ好奇心を瞳に輝かせて、ルイズの手の中に在る槍について尋ねた。ディテクト・マジックを使わぬくとも肌をぴりぴりと刺されるような圧倒的な気配がこちらにも伝わってくるのだ・
「それが破壊の槍?」
「あ、うん。Dが見つけて来たの。自分じゃ使えないから、私に使えって。そしたらなんだかすごい力が体と槍から溢れて来て、気づいたらコレよ」
「あら、じゃあ、ルイズの力じゃなくて破壊の槍の力のお蔭なの? 褒め損ねぇ」
「なによ、褒めて損はないわよ」
「はいはい。ていうか、なんだか前見た破壊の槍と形が変わっていない?
「え、あ、あれ?」
Dに手渡される直前に見た破壊の槍とは、確かに穂先の形状が違う。なんというか、良くも悪くも普通の槍の外見だったのに、今では悪鬼羅刹の様な文様が浮かび上がり、鋭く左右に弧を描く刃が伸びている。
いかにも破壊の槍と呼ばれるに相応しい姿で、目に見えぬ途方もない力が陽炎のように立ち上っているような気さえするではないか。
ただ在るだけでその場の空気を固く戒めるような、荘厳ささえ伴っている。ルイズの力と呼応する事によって、それに相応しい姿へと変わったのだ。
メイジの力量を量るには使い魔を見よというが、この槍の姿の異様さと力強さもまた、ルイズの潜在的な力の強さを物語っている。
きょろきょろとルイズの周りを見回したキュルケが、ふと気づいた様にルイズにこう聞いた。
「ところで、ミスタは?」
「え?」
キュルケの疑問どおりにルイズは、自分の背後で手を添えてくれていた頼りになることこの上ない使い魔を振り返り、そこに誰もいない事に気づいた。
Dはゴーレムを倒すのと同時に、姿を消していたのだ。
そのDの姿は、森の中にあった。肥沃な大地と滴り落ちるがごとき陽光を浴びて豊かに育った木々の合間を歩んでいる。まるで木々の方がDを避けているのではと錯覚を覚えてしまうほど、堂々たる姿であった。
木の葉を踏みしめても、枯れ木を踏み折っても、音一つ立たないのは如何なる歩法を納めているのか、怪盗フーケでも教えを請うかもしれない。
Dが、足を止めた。目の前には、凝然と身を竦めたミス・ロングビルの姿があった。ゴーレムが姿を現しルイズ達に襲いかかるのと同時に、姿をくらまして何処に居たものか、Dを前にしてその顔色は血の気を失っていた。
感じ取ってしまったのだ。Dの美貌への恍惚さえ吹き飛ばされる鬼気を。青白い燐光の如くその美影身より吹き出す、異形の気を。
言葉を離す事を忘れたようにロングビルは青白く変わった唇を動かせず、あ、あ、と意味の無い呻き声を上げている。首に当てられた断頭台の刃の冷たさを、骨の髄まで味わってしまったのだろう。
「フーケはお前だな」
疑いをわずかも含まぬ断定の言葉に、ロングビルは唇を痙攣させた。ぎゅっと、心臓が縮まる確かな感触をロングビルは味わった。一生知らずに済めばよかったと心底から思った。
「なぜ、そう、お思いになられるのです」
これほど冷たい自分の声を聞く事になるとは、ロングビルはこの男の同道を許した自分の選択を心から後悔した。この男は、自分の運命を暗く冷たいものに変える死神だ。
そんなロングビルの様子を、Dの左手の老人は実に楽しそうな声で笑った。ようやく自分達らしい状況になってきたと、真実楽しんでいるのだ。
「一つは宝物庫と廃屋の中に残っていた足跡がお前さんと同じだという事。二つはま、勘じゃ。こいつの勘は時に反陽子コンピュータの計算を上回る精度でな。
特にこれが決定的じゃったが、三つ目は血の匂いがするのじゃよ。こやつが馬の手綱を握ったのは僥倖だと思ったじゃろう? お前さんの右腕では手綱を操れまいからの。裾を捲ってわしらに見せてみい」
見よ、支援
支援
支援
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756 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:26:40 ID:lDoFSbC0
「……」
Dの気迫に骨の髄まで緊縛されて抗う気力を失ったのか、ロングビルは左手の指示通りに、裾を捲り、巻かれた包帯を見せた。
昨夜、ゴーレムで宝物庫を襲撃した際に、ルイズ達の目に止まらず放たれた白木の針の肉に埋まった部分が、今もそこに突き刺さっているのだ。
そこから漏れ出るわずかな血の匂いを、Dと左手の老人はかぎ取っていたらしかった。むしろDの素性を考えるのならば、血の匂いをかぎ取る事はいとも容易い事であったろう。
観念したのか、ロングビルはそれまでの穏やかで理知的な雰囲気をかなぐり捨て、平民の様な伝法な口調に変わった。
「なんなんだいこれは? どれだけ力を込めて引っ張っても引き抜けやしないし、痛みばかりはあるのに血は滲むくらい。仕方無いから私の体から出ている部分だけへし折るしかなかったよ」
「ふむ、そちらが地か? いや、それでもどことなく気品が漂っているあたり、生まれはなかなか上品らしいの。花よ蝶よと育てられた令嬢が今や怪盗に落ちぶれたか。どうやら苦労した様じゃ。同情してやるぞい」
「はん! あんたこそ見た事が無いくらい良い男だけど、その声は碌でもないね。碌な人生送っていないんだろう。それで、どうする気だい? わたしをとっ捕まえて官憲にでも突き出すのかい?」
「そうじゃのう、金も出るじゃろうなあ。お前さん、ずいぶん派手にやった様じゃし、裁判になってもまず縛り首、市中引き回しの刑、断頭台の赤い露、辺りが妥当か。それを免れても一生監獄暮らしか、孤島にでも幽閉されるじゃろ。
いやいや、その前に恨み骨髄の貴族共が暗殺者の一人二人も放ってお前さんの首を掻き切ろうとするのも自明の理。
いやいやいや、お前さんほどの美貌じゃ女の尊厳をさんざか踏みにじられて人形扱いされてもおかしくないの。良かったのう、未来の選択肢はずいぶんあるぞい。暗いだけなのが玉に瑕じゃが」
「そうかい、そいつはありがとう!!」
右腕の裾を捲る動作に隠して握った杖の先をDに向ける。左手が厭味ったらしくネチネチと言葉で嬲る様に喋っている間に、口中で唱え終えていた魔法を発動させ――視界の中に縦一文字の銀光が走った。
「あー、相棒、お久しぶり。あのね、もうちょっとおれっちの事をさ、大事に扱ってくんね? おれ、自力で鞘から出られないからさ」
「っ!?」
昨夜のゴーレム戦以来ようやく鞘から抜かれたデルフリンガーの愚痴を聞く筈もないDは、目の前で右手首を抑えて蹲るロングビルへと歩み寄る。膝をついたロングビルの目の前には、デルフリンガーの抜剣と同時に斬りおとされた右手首があった。
骨ごめに断たれたロングビルの右手首は、そこを過ぎ去った斬撃がどれほどの鋭さを持っていたものか、血の一滴も滲んではいなかった。
言葉を失って膝を突くロングビルの顎にデルフリンガーの切っ先を突き付けて、俯いていたロングビルの顔を上げさせる。
Dの鬼気を浴びて蒼白と変わっていたロングビル、いやフーケの顔は、右手首を斬りおとされたという事実を前にしてさらに血の気を引き、今や脂汗をびっしりと浮かべて、白蝋を成功に削って彫琢された彫像のような色になっていた。
自分の顎に当てられた刃の冷たさよりも、フーケは自分を見下ろすDの瞳の冷たさに血が凍る思いであった。今、自分の心臓は血ではなく、氷水を全身に流しているに違いない。
相手を人間と、いや、生き物とさえ見ていない。
その辺の石ころを見る人間の目つきを、万倍も冷たく、暗くした様な視線。
魂までも斬り捨てられるような、生命以上の何かを失うと、心から知ってしまう瞳。
そこに決して人間が出会ってはならぬ、人間外の存在の心が如実に表れている。
「さて、どうするかのう。とりあえずとっ捕まえるのが筋じゃろうが。わしとお前にとっても色々と使い道があるしのう」
「つ、使い道って、いったい、なにさ?」
「そうじゃのう……。ルイズお嬢ちゃんらと違ってこっちの世界の裏側も知っておるじゃろうし、色々と小間使いになってもらうもよし」
「……」
右手首を落とされ、目の前の魔青年に命を握られた状況とあっては、命が助かるだけでも儲けものだろう。フーケは、Dの使い走りになる事で命が助かるなら迷わず従うつもりだった。
だが、次の左手の老人の言葉がそれさえも許さぬ事を無慈悲に伝えた。
「こやつの食事になってもらうもよし、じゃ。やはり人工物よりも生の人間の血の方が身になるのでなあ」
「……え?」
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食事ですか支援
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763 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:30:01 ID:lDoFSbC0
唐突にフーケの視線が高くなった。青い空ばかりが視界を埋め尽くし、首に圧倒的な圧搾が加えられている。Dの左手がフーケの胸元を掴み上げ、親指で顎を押して顔の向きを固定させているのだ。
フーケは、左手の告げた生の人間の血という言葉に、がちがちと歯を打ち鳴らした。人間の血が、身になる? 人間の血を糧とする者。
それは、ああ、それは!?
「吸、血、鬼……」
「ま、そんな所じゃ。男の血は熱く、女の血は甘いとわしらの知る貴族共は口を揃えて言う。お前さんの血はさて、どんな甘みがある事やら」
「……ゃ、い、やぁ……いやぁ!!」
デルフリンガーを握りしめた右手の人差し指を伸ばし、Dはフーケの首筋を露わにした。怪盗という命がけの荒事に携わっていたにも拘らず、その肌は雪肌と呼べるほどに白く美しい。
その肌の下に滔々と流れる血潮は、この上ない美味となってDの喉を潤すだろう。
見たくない。見てはいけない。見れば、きっと、いや、魂が狂いかねぬほどに後悔するだろう。だが、ああ、しかし、それが己の運命を決めるのだとすれば、見ずにはいられまい。
それ――自分の喉に欲情し、飢えを露わにした血を吸う鬼の顔を。
「ああ、あああぁぁあああああああああああああ」
フーケの口から連続する『あ』。
それは絶望の『あ』、それは恐怖の『あ』、それは後悔の『あ』、それは戦慄の『あ』、それは、それは、それは魂の挙げる悲鳴であった。
白蝋と等しい色になっていたフーケの顔は、魂の凌辱への恐怖でより一層白くなる。そのまま透き通って消えてしまいそうなほどに。
Dの瞳は変わらず冷たい黒を湛えたままであった。だが、しかし、その血が凝縮されたように赤い唇を割って伸びる二本の牙を、フーケは見た。どこまでも白く、どこまでも鋭く伸びた血を吸うための牙を。
眠り姫となった美女の褥に忍び入り、その首筋に突き立てて溢れる血潮を吸う為の牙。人間の生命を呪われた死者のモノへと変える牙であった。
「やめろ、相棒!!」
自らの新たな使い手の正体を、忌むべき魔性のモノの本性を知ったデルフリンガーが、普段のお茶らけた様子を取り払い、真剣そのものの声で制止した。
自分の主が行わんとする悪行を止められぬ事が、この上なく悔しいのであろう。吐けるものならば、血を吐かんばかりのデルフリンガーの制止の声は、しかしDの動きを寸分求める事は出来なかった。
フーケの体から力が抜けた。度を超えた恐怖に、魂が何かを感じる事を拒絶し、無感情に変わったのだ。これ以上恐怖する事も絶望する事も耐えられぬと、心が最後の一片を守る為に諦めたのだ。
表情を変えぬ人形のように変わり果てたフーケの首筋に、静かに、ぷつりという音さえもなくDの牙が突き立てられた。
自分の首筋に感じられる二つの痛覚と、そこから流れ出る熱いものと、心の臓から奪われてゆくぬくもりを感じ、フーケの瞳から清らかな滴が流れ落ちた。フーケの唇がかすかに動いた。
こう、動いた。
「テファ、ごめんね……」
Dは、ごくりと喉を鳴らしてフーケの血潮を飲んだ。
Dよ、呪われた死者、吸血鬼の血を引く者よ。
フーケの血は美味いか? 熱いか? 甘いか?
お前の中の呪われた死者の冷たい血を温め、人のぬくもりを感じ取っているのか。血を吸う悪鬼の子よ、やはりお前も呪われた命か。
二つの影が溶けあっていたのは、それから数十分後にも、数秒後にも感じられた。思いのほか優しくフーケは下ろされた。Dの唇を割って覗いていた白々と輝く牙は元の歯並に戻り、唇は真一文字を描いている。
フーケが震える手で自分の首筋を抑えた。そこにはうじゃけた二つの穴が並んでいた。指先に触れたその傷跡に気づきフーケの唇から、あはは、と乾いた笑いが漏れた。
感情が抜け落ちたがらんどうの笑い声であった。感情の伴わぬそれはひどく虚ろであった。聞くものの心をどこまでも暗い泥濘に突き落とす笑い声だった。
「はは、これで、わたしも吸血鬼の下僕、グールかい? あは、はは、あんた、なんてことしてくれたんだい? もう、あの子たちの前には行けないよ。どう、してくれるんだい? ねえ、ねえったら?」
声だけは笑いながら、フーケはDへの詰問を続けた。それを遮る様に左手の老人がぷぷぷ、と笑いながらこう言った。慰める様、というよりは悪戯の種を明かす様な口調だ。
「何を勘違いしとるか知らんが、お前さんは別になーんにも変わらんよ。今だって陽の光を浴びてもなんともなかろう」
「はい?」
「なんだって?」
ぽかんとしたフーケとデルフリンガーがにゃにい? という声を出した。
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765 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:31:09 ID:lDoFSbC0
「こいつはダンピールという奴でな。吸血鬼の父親と人間の母親の間に生まれたハーフよ。ダンピールは吸血鬼同様に血への渇望を覚えるが、血を吸っても相手を吸血鬼化する力は持たん。ま、時たま今みたいに血を吸いたくて堪らなくなるがの」
「吸血鬼と人間の、間に生まれたってのかい? あんたは、ああ、だから、か。そんなに綺麗なのは。そうさ、人間同士の子供があんたみたいに美しいわけが無い。人間じゃない者の血が混じらなければ、あんたみたいなのが生まれるもんか」
どこか納得したようにフーケは言った。自分が人間ではなくなるという恐怖が杞憂であると告げられ、あまりの安堵に感情が混濁してしまったらしい。けっけっけ、と左手の老人は笑う。
「ただし、血を吸われた以上、お前さんは一生、こやつにメロメロじゃ。どんな命令も、どれだけ遠くに居ても聞こえ、逆らえぬようになる。もっともそうでなくとも、この顔相手では女なら骨抜きじゃわな」
「……言う通りだけどさ」
と、フーケは首筋を抑えたまま、青白く変わっていた頬に恥じらいの朱を昇らせた。自分の首にDの唇が触れた事実に興奮している自分を、抑えきれなかったのだ。
しかし頭に上った血を何とか冷やして、フーケは鋭い眼差しでDを睨み、コンマ一秒で失敗した。だめだ、この顔と向き合った時点で自分の負けが確定している。
それが厳然と存在するこの世の法則なのだとフーケは理解した。その程度にはフーケの頭は動いていた。
「それで、これからあんたの気が向いた時には私の血を吸わせろってのかい?」
「さて、それはこやつの飢え次第かのう。とはいえ、そんな嬉しそうな声を出しては睨んでも意味が無いぞ」
「う、うるさいね。嬉しいわけがないでしょう!」
しかし、フーケの頬は明らかに性的興奮を伴う赤に染まっている。吸血鬼が血を吸うとき、吸われる相手はこの世のものとは思えぬ至上の快楽を与えられるという。
それを味わってしまうと、二度三度と重ねられる吸血鬼の訪れを、被害者達は心待ちにしてしまうのだ。
自分が人間でなくなる恐怖さえも凌駕する吸血の快楽。それを今フーケは魂まで味あわされたのだ。ましてや、これほど美しい青年では。
「相棒よお、心臓に悪いぜ、そういう真似は。おれっちには心臓無いけどさ。ただの人間とは思っていなかったが、はあ、妖魔と人間の間に生まれた子供ねえ。相棒は滅多やたらと人間を襲うようなタイプじゃないみたいだけど、ほんとびっくりだわ。いや、まじで」
「それで、ダンピールさん、わたしに何をさせるのさ。あんたが血を吸う相手を用意する手伝いなんてさせられる位なら、私は自分で自分に始末をつけるよ」
「本気らしいの。精神力や体質次第で血を吸われても自我を維持する人間はおるが、お前さんの場合は前者かな。まあ、それでもこやつの呪縛からは逃れられまいが。ところで本当に言葉通りにする気か?」
「ああ、そうさ。そのつもりだよ。確かに私は堂々とお天道様の下を歩けるような人間じゃないさ。国の定めた法律を破る悪党さ。けどね、そんな私でも命を天秤に掛けても手を染める気にはならない事ってのはあるさ」
「テファと口にしたな。養う家族でもいるのではないか」
ようやく口を開いたDである。錆を帯びた氷の声は、フーケの心の奥底へと一直線に切り込んできた。それは、家族を引き換えにしても命を捨てるのかと問うている。
フーケは、ぐっと苦いモノを飲み込み、視線を彷徨わせたが、決然と言った。
「地獄耳だね、あんたは。なんであんたなんかが召喚されちまったんだか。ああ、そうだよ、そうさ、私には養ってかなきゃならない大切な家族がいるさ。あの子たちの為ならどんな事だってやってみせるつもりだったよ。
でもね、あの子たちには申し訳ないけど、それでも譲れない一線てのはあったみたいでね。喉の渇きを癒すのに泥水を啜るのだって、飢えを誤魔化す為に木の根を齧って木の皮を食べるのだって構わないさ。
けど、自分の命惜しさにバケモノの片棒を担ぐなんてごめんだね。私がいなくなったら、きっとあの子たちは困る。ひょっとしたら、生きてはいけないかもしれない。
それは、本当に申し訳ないと思う。けどね、人間は誰だっていつかは巣立たなきゃいけないんだ。私だってこんな稼業をしている以上、いつかはトチっておっ死ぬかわからないって覚悟している。
だから、遅かれ早かれ、あの子たちは私の庇護から飛び立たなきゃならないのさ。それが、あんたのせいで早まっちまうってのは、腸が煮えくりかえるけどね」
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770 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:32:35 ID:lDoFSbC0
そう言ってDを睨むフーケの瞳は轟々と怒りの炎が燃えていた。Dに血を吸われ、多少なりとも隷属の影響を受けているはずなのに、服従の影さえ見せないのは、この美女の精神の堅牢さを物語っていた。
「人間の精神は滅ぼせない。なぜならそれは魂によって支えられているからだ」
「なんだい、それは?」
「大昔、人間の事を支配し尽くそうとして失敗した者達の残した結論だ。ここでもそうらしいな」
「そうかい、で、私の処遇は? 返答しだいじゃ、例え首だけになったってあんたの喉笛を噛みちぎって道連れにしてやるっ!」
「いつもどおり過ごせ。学院長の秘書としてな」
「……」
「それから、時々裏側の情報を集めて持ってこい。当面はそれで構わん」
「当面、ね。なんだって私に秘書に戻れなんて言うんだい?」
「これまでうまくやっていたのだろう。それに学院長も君の事は知っているだろう」
「あのボケじじいが?」
「多分な」
「……吸血鬼らしく処女でも集めろ、なんて言われるかと思ったんだけどね」
どこか気の抜けた様子で、しかし警戒の様子は残したままフーケが言う。Dはいつもどおりの様子であった。
「おれは吸血鬼ハンターだ」
「……吸血鬼の血を引くあんたがかい?」
「その血を引くからだ」
「ふうん、近親憎悪? いや同族嫌悪かね。私も大概のメイジは嫌いだからなんとなく分かるけど、だからってあんたが私の血を吸った事実は変わらないんだ。心を許す気にはならないね」
「ほっほ、好きな時にこやつの心臓に刃を突き立てるがよかろう。甘んじて受けるかもしれんぞ」
「さっきから気になっていたんだけどさ。その声はあんたじゃないのかい?」
眼鏡の奥の柳眉を寄せるフーケに向かって、Dが左手の掌を向けた。そこに浮かぶのは無論、あの皺でできた様な老人の顔である。その小さな顔が人並みに好色な笑顔を浮かべるのを見て、フーケが絶句した。
「そりゃ、ちょっと趣味悪いよ。縁切りな」
心から同情するように言うものだから、Dが面白そうにこう答えた。
「いつかな」
「はあ、まったくなんであんたなんかと巡り合っちまったのやら。土くれのフーケ一生の不覚だわ。とりあえず、怪盗フーケは捕まえられず、代わりに神の槍は奪還成功ってシナリオかい。そんで私は目出度くあんたの小間使いかい」
「よろしくな」
抜け抜けと言うDに、心底疲れた様子でフーケは溜息をついた。この青年は顔がいい分、根性と性格があらぬ方向にねじり曲がっているのだと悟ったのだ。
「ああ、もう。珠のお肌に傷まで作ってさ。なんなのよ、もう!」
すでにルイズ達の所へと戻る為に歩き始めたDの後を追い、フーケは自棄になってずかずかと歩き出した。その途中、左手がふと思い出したように呟いたが、Dにもフーケにも聞こえなかったようだ。
「はて、テファ? 最近どこかで聞いた様な?」
地面に腰を下ろし、両手で神の槍を握ったままの姿勢でいたルイズが、戻ってきたDとフーケの姿に安堵してぱっと顔を輝かせた。その様子にキュルケとタバサが目を合わせて苦笑した
ちなみにフーケの右手首は元通りだ。Dが切り落とした右手首を拾い上げ、ぴたりと合わせると、何事もなかったようにくっついて元通りになったのである。
先住魔法? と驚くフーケに、Dはくっつくように斬ったと一言だけ告げて、絶句させた。もうなんでもありなんじゃないの、とフーケはつくづく己が不運を嘆いた。
「D! ミス・ロングビルも、お怪我はありませんか?」
「ええ、ミス・ヴァリエール、かすり傷一つありませんわ。それよりもミスタ・Dから伺いました。その破壊の槍で見事、土くれの巨大ゴーレムを斃されたとか。素晴らしいご活躍ですわ!」
「ありがとうございます」
すっかり元の美人秘書に戻ったフーケの褒め言葉にルイズは、照れた様子で頬を染めた。その癖両手にはすっかり凶悪な形に変わった神の槍を握っているから、アンバランスな事この上ない。
「ねえ、D、フーケを追っていたんでしょ。……捕まえられなかったの?」
「すまない」
「ううん! Dのお陰でゴーレムに踏み潰されずに済んだもの。それに破壊の槍はこうして取り返せたのよ。最低限の任務はこなせたわ。学院長もきっとお許しくださるわ」
実際には隣にそのフーケがいるのだがDはおくびにも出さない。嘘をつくのが上手いというよりは、いつもと変わらない顔をするだけで済むのだから便利である。感情が読めないというわけだ。
「ええ、ミス・ヴァリエールの仰る通りですわ。わたくしからも皆様のご活躍を学院長のお耳に入れます。褒めてくださるに違いありません」
支援
772 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:33:42 ID:lDoFSbC0
ロングビルの仮面を被ったフーケの慰めに、ルイズは、はい、と素直に頷いた。
こうして、『破壊の槍』奪還を目的としたフーケ捜索隊は、フーケこそ取り逃がしたものの、無事学院の秘宝を取り戻し学院へと帰還した。
事の次第を学院長室でルイズ達と使い魔のDはオスマンとコルベールに説明した。ロングビルことフーケは、この件について書面を作成すると告げて退室している。
オスマンが口に咥えていた水キセルを離し、残った手で髭をしごきながら、ルイズの報告を聞き終えた。
「ふむ、槍は見事取り返す事に成功したか。なに、フーケを取り逃がしたというが諸君らは見事取り返したのじゃ。恥じる所か胸を張ると良い。
シュヴァリエの勲章授与申請とまではいかぬが、今期の学業について便宜を図ろう。とりあえずある程度の単位の免除あたりが妥当かな」
これにはキュルケとタバサが嬉しそうな様子を見せた。基本的に真面目な学生とはいえぬキュルケと、意欲はあるが本国からの命令によって長期的に授業をさぼる事の多いタバサには実にありがたい申し出だったからだ。
ルイズが遠慮した様子でおずおずと前に出て口を開いた。
「あの、学院長、Dにはなにかないのでしょうか? 彼のおかげで破壊の槍を取り戻せました。私も彼の主人としてなにか報いたいのです」
オスマンは孫娘を慈しむ祖父の様に、優しい目でルイズを見つめた。
「彼は貴族でも学生でもないからの。その代りわしのほうで生活の足しになるものを用意しておいたよ。さ、受け取ってくれたまえ」
オスマンが机の棚の一つを開き、中からエキュー金貨の詰まった牛革の袋を取り出して、机から立ち上がって手ずからDに渡した。Dは黙ってそれを受け取った。ルイズの財布と同じくらいの重さだ。となると三百エキューくらいか。
黙したままのDに代わり、ルイズが感謝の言葉を告げた。
「まあ、オールド・オスマン、ありがとうございます!」
「なになに、お金で済むなら安いものじゃよ。しかしまあ、破壊の槍が外見が変わるとはな。わしも知らんかったわ」
ほへぇ、と感心した様子でオスマンはいまだルイズが握っている神の槍を見つめた。最後にオスマンが見た時と比べてなんとも凶悪な形に変化したものだ。
「も、申し訳ありません。まさかこんな事になるなんて。あの、所で、この槍は一体どうやって学院長の手に渡ったのですが。その、学院長もお知りでない事があるようですし」
ルイズの質問に、オスマンは遠い眼をして過去の記憶を掘り起こし始めた。
「あれはもう何時の事だったか。一メイル先も見えぬ深い霧の漂う日じゃった。わしが森を散策しておると、霧が立ちこみ始めて道が分からなくなってしまったのじゃ。
訳も分からず彷徨っていると何もない荒野に出たのじゃ。そこには途方もなく巨大な石像が転がっておった。男と女の二つの頭が一つの体から生えておったよ。
何時、何処の誰が彫琢した石像であったのか、どんな風雨に晒されても罅一つ入らぬような圧倒的な迫力の石像は、ばらばらに砕けていた。その砕けた心臓の部分にその破壊の槍を突き刺しておった。
わしはおそるおそる槍に近づき、意を決して槍を引き抜いたのじゃ。するとどうした事が巨人の石像は見る間に目にも映らぬ小さな塵となって消えたのじゃ。後には呆然とするわしと槍と荒野だけが残っていた。
わしは荒野を造り出したのが槍の力によるものと直感的に感じ、破壊の槍と名付けて学院に持ち帰った。後であの石像は本当に消えたのかと確かめに行ったが、二度とあの荒野には辿り着く事はなかった」
オスマンにとっても謎の代物であったらしく、その話を聞いた所為でかえって神秘性が増し、ルイズ達は神の槍をまじまじと見つめた。Dには扱えず、ルイズの手に握られた時フーケの巨大ゴーレムさえ粉砕する力を見せた、謎の槍。
おずおずとルイズから神の槍を受け取ったオスマンは、うむ、と一つ頷いてから、ぽんぽんと手を合わせた。にっこりと好々爺そのものの笑顔を浮かべた。
「さあさあ、今宵は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り破壊の槍も戻ってきたし、予定通り執り行う。今夜の主役は君らじゃ。存分に着飾り、心行くまで楽しんでくれたまえ」
派手好きなキュルケは特に楽しみにしているようで、オスマンの言葉で思い出したらしく、忘れていたわ、と実に楽しげに言った。ルイズ達はそれぞれ礼をして学院長室から退室した。
オスマンはそれまでの好々爺ぶりをどこかに忘れた様な眼差しをDに向け
「すまんが、Dくん、君はちょっと残ってくれんかね。話がある」
「D」
「先に行け」
しえん
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777 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:34:58 ID:lDoFSbC0
心配そうに自分を見つめてくるルイズに短く告げて、Dはオスマンと向き合った。ごくりと、これから何が起こるのかと、慄くコルベールが生唾を飲む音がいやに大きく響いた。
無言で待つDに、ああ、わしの寿命が見る見るうちに減ってゆくのお、とごちりながらオスマンが口を開いた。
「訪ねたいのだが、本当にフーケは取り逃がしたのかな?」
「どうかな。だが、学院で女性を優遇すればしばらくは姿を見せんだろう」
「ふむ、特に有能な女性秘書とかかの?」
Dに続いて左手がそう告げるのを聞いて、オスマンは愉快気に笑った。やはりというべきか、フーケの正体についてうすうすと気付いていたらしい。
「ほっほ、そうかそうか。うまく君がやってくれたようじゃな。なにどうしようかと思案しておったのだが、ここに残ってくれるなら幸いじゃ。君の睨みならわしが釘を刺すよりも万倍も効果があるじゃろう」
釘を刺すどころか牙を突き立てたとは、流石にDも言わなかった。何の事を言っているのか分からないコルベールだけが、不思議そうな顔をしているが、この場では無視である。
「その破壊の槍だが」
Dの視線はオスマンの手の中の神の槍を見つめていた。
「なにかの?」
「槍は使い手を選んだ。自らの意思でだ」
「インテリジェンス・スピアだと?」
「正確には異なるだろうがな。もしルイズに何かあった時には“何か”をするかもしれん」
「何か、か。突如彼女の元に出現したり、とかかな?」
「そこまでは分からん。そうなるかもしれんという事を覚えておいて損はないだろう」
「にわかには信じ難いという奴じゃが、なにしろ君の言葉じゃ。肝に刻んでおこう。さて、ミスタ・コルベール、君の方からも話があるのではないかね」
「はい。ミスタ・D、貴方の左手のルーンについてですぞ」
「これか」
とDは左手の甲を見つめた。今回のゴーレム戦ではデルフリンガーどころか白木の針さえ握らなかったので、まったく出番の無かったルーンだ。これほど意味の無いルーンというのも珍しい方だろうか。
「うぉっほん、それは始祖ブリミルの用いた伝説の使い魔ガンダールヴの印ですぞ。あらゆる武器を使いこなし、千の兵隊にも勝る力を奮ったとか。貴方はその伝説の再来なのです!」
「なぜおれが?」
「それは、その、分かりません。ただそのルーンがガンダールヴであるというだけでして」
「肝心要の所は分からぬままか」
「すまんのう。それと君を送還する為の方法もちゃんと探しておるから、あまりミス・ヴァリエールの事を責めんでやってくれよ。君が女子供を詰る様な卑劣漢ではないと信じてはいるがの」
そう言ってからからと笑うオスマンと、コルベールに背を向けてDは学院長室を退室した。
その夜、アルヴィーズの上の階のホールで舞踏会は行われていた。思い思いに着飾った貴族の子弟と教師達がそこそこで語らい合っている。
ホールから続くバルコニー。暗天を見上げながら、ホールから届く囁き声や蝋燭の灯す明かりの残滓がほのかに輝く霧のように、漂っていた。
栄華と伝統と享楽と誇りとによって形成される舞踏会から外れた影がそこに一つあった。Dは誰の目にも止まらぬ内にバルコニーにいた。
舞踏会など素知らぬ顔でルイズの部屋か中庭に逃げるかと思われたが、ルイズたっての頼みとあって顔を出しているのだ。デルフリンガーを枠に立てかけて、右手に持ったワイングラスを時折口に運んでいる。
夜空を彩る億千万の星と蒼と紅の双子月と、かすかな冷気を孕む夜風を供に、Dは舞踏会の絢爛さと喧騒から隔離された闇の静けさに身を浸していた。
ダンスの相手がいない女性を壁の花と言うが、壁の花などと例えれば花の方が申し訳なくて枯れてしまいそうな青年だ。
そんなDに、シックなドレスに身を包んだフーケが声を掛けてきた。首の傷跡を隠す為にシルクの白い襟巻を巻いていた。
「なにやってんだい。ご主人様はどうしたのさ?」
「まだ来ていない」
「ふうん。あんたさ、あのじじいと何か話した?」
「何かあったか?」
「話したんだね。なに、今度から給料を上げてくれるって言われてね。おかげで危険な真似をする必要がずいぶん減ってね。まあ、しばらく土くれの話題はなくなるだろうねえ」
意味ありげにこちらを見つめてくるフーケに、一瞥くれてDはワインを一杯飲んだ。フーケはこれほど話しかける甲斐の無い相手もいないね、と溜息をついた。それから空になっているDのグラスにワインを注いだ。
778 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:36:10 ID:lDoFSbC0
「美人のお酌さ。手酌よりはましでしょ?」
「……」
「はあ、ありがとう位言いなよ。もう」
「ありがとう」
「……ヴァリエールのお嬢ちゃんも苦労するね。せいぜい楽しみなよ。私のご主人様」
そういってひらひら手を振りながら、フーケはロングビルとして舞踏会へと戻っていった。抜き身のままのデルフリンガーが、フーケのご主人様発言にからから笑った。
「はは、使い魔を持った使い魔ってのは初めて目にしたぜ、相棒。てえしたもんだ」
「使い手が人間ではなくても、気にしないのか?」
「なあに、下手な人間なんかよりもずっと相棒の方が面白いやね。それに相棒も血を吸いたくなるので、結構苦労しているみたいだしね。まあ、長い人生そう言う事もあるさね」
「生意気な剣じゃわい」
騒がしさが倍になった状況をどう思っているのか、Dはフーケの注いだワインを黙って飲んだ。ちょうど、ホールの壮麗な門が開き、目一杯着飾ったルイズが姿を現した。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール嬢のおな〜〜〜〜り〜〜〜〜〜〜〜〜!」
ルイズは桃色がかったブロンドの髪を細やかな装飾で埋め尽くされた純銀のバレッタでまとめ、純白のパーティドレスに身を包んでいた。学院の制服姿の時でも、学友達の中で一際目立つ高貴さを纏っていたルイズは、よりいっそう輝いていた。
胸元の開いたドレスで飾られたルイズの美貌はそれまで彼女の事をゼロと馬鹿にしていた者達が、群れとなってダンスを申し込むほどに優美で、華があった。
どんな大国の舞踏会に姿を見せても賛辞の言葉しか出ぬほどの美貌と麗しい姿のルイズは、ゆっくりと流れ始めた音楽と共に踊り始めた貴族達の間をすり抜け、バルコニーに佇む漆黒の青年の元へと急いだ。
恥じらいに頬を染め、ルイズは上目使いにDを見た。双子月と万光の星、ビロードの様に広がる夜の天幕のすべてが、この青年の為の舞台装置のように見える己の使い魔を。
「D……、あの」
「きれいだ」
「え? わたし?」
「ああ」
「うん、ありがとう、D。初めて名前を呼んでもらった時と同じくらい嬉しい」
月夜にのみ咲く一輪の花の様な可憐さで笑うルイズ。輝く魅力、透き通るような魅力。ルイズと言う少女の一番きれいで、可愛くて、良い所をすべて集めた様に美しく、はにかんだ笑み。それは、Dの目にどう映ったのだろう。
「D、隣、いいかしら?」
「好きにしたまえ」
「ん、ありがとう」
そう言って、ルイズはDの右手側に立ってバルコニーに背を預けた。奇跡的にDの方から話しかけた。
「踊らないのか?」
「いいの。誘ってくれた人たちはいるけど、みんな今日の私を見るまで馬鹿にしてきた連中よ。私の外見だけで決めたってことでしょ? それこそ馬鹿にしているわ」
「君がそれだけ魅力的という事だ」
「えへへ、Dにそう言って貰えると、嬉しいな」
ルイズは大好きな人に褒めてもらった幼い子供の様に無垢な笑みを浮かべていた。本当に、ただDの横に居るだけで嬉しいのだ。
そうして二人は華やかな舞踏会から離れたまま、肩を並べたまま時を過ごした。ルイズはそれだけで、幸せそうに慎ましく笑っていた。
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781 :
ゼロの魔王伝:2009/01/29(木) 01:37:34 ID:lDoFSbC0
やがて、止む事はないかと思われた音楽は止み、ダンスと歓談に耽っていた貴族達は自室へと戻り、ホールも片づけを終えて、忙しなく動いていた使用人達もほとんど人影はなくなっていた。
ルイズとDはそれからようやくバルコニーを降りた。ただ横に並んでいただけで幸福感に包まれていたルイズは、不意にホールで足を止めたDを、小首を傾げて見つめた。
「D?」
ルイズの目の前に、そっとDの右手が差し出された。デルフリンガーは壁に掛けられていた。
「D?」
「今なら、人の目を気にしなくてもよいだろう」
「え?」
伸ばされたDの手が、優しくルイズの手を包み込んだ。気付いた時、ルイズはDの腕の中に居た。
最後に残っていた使用人の少女が、何か片付け忘れた者はないかと確認する為にホールにのぼった時、目の前の光景に我を忘れて身惚れた。
「まあ」
あらゆる感動を表す言葉が胸に湧きおこり、どれもが口から出る事はなくただ『まあ』という呟きになって零れ落ちた。メイドの少女はシエスタであった。
シエスタは、明かりを落とされ音楽も絶えて静寂に満ちたホールの中で、音も光もなく踊る二つの人影を見つめていた。
ルイズの純白のドレスぬ包まれた細腰に手をまわし力強く、かろやかに、優雅にリードするD。
導かれるまま足を動かし、手を動かし、片時も離れぬ恋人の様にDの胸に頬を寄せて踊るルイズ。
Dのリードは優しくさり気無く、バランスを崩さずに。さりげない不動が、二人の上半身と下半身の回転と旋回を支え、上半身は下半身を追い、下半身は上半身を導く。
Dの足は床を踏む音を立てなかった。音楽の絶えた静かな舞台に相応しく、夜の闇を照らす月光と星の光に淡く影を落としながら、つながったDとルイズの影は
床を踏んだ足は重力を感じさせぬ動きで夢の様に跳ねた。飛び立つ白鳥の様に優雅に飛んだ足は霧の様にさりげなく舞い降り、新たな夢を目に見えない形で産んだ。
美という名の夢を。ダンスの形をした美を。見る者がいたならば、生涯目の前の美を忘れず、感動に震えた記憶を生涯胸に抱くだろう。
ルイズはこの一時こそが夢だと知っているように、ただただ、幸福に包まれたまま踊り続けた。いつか醒めると分かる夢ならば、醒めるその時まで酔いしれていたかった。
壁に掛けられたデルフリンガーは、心からの感動を言葉にした。
「てえしたもんだ。てえしたもんだよ、相棒。主人のダンスの相手を使い魔が務めた事も、こんなに綺麗なのも。相棒、おれはこんなに綺麗なものを見た事がねえよ」
Dとルイズの影は、長い事繋がり合ったままだった。
投下終了です。おひとりでたくさん支援して下さった方も、支援くださった方も、ありがとうございます。容量は、結構やばかったか。ではではおやすみなさい。
乙です
おやすみなさい。
乙です!
このDはずいぶんとサービスがいいなw
まるで1巻の頃のようだ。
うーん、怖くて優しくて美しいDでした。先が楽しみです。
おやすみなさい!
投下乙!
そしてそろそろ容量が危ういな。
1000はさすがにいかないな、これは。
次スレ建ててくるよ
魔王の人乙でした!
そしてGJです!
>いつか醒めると分かる夢ならば、醒めるその時まで酔いしれていたかった。
「よい夢だけを見れるのならば、人はいつまでも眠り続けるでしょう」
みたいなことをメフィスト先生が言ってたよルイズ。
だから、その夢は決して覚めないんだぜい。
1000なら作品投下する
するとハルケギニアでひどいことがあって、二巻だと…ということかな?
今日は珍しくなぎはらえの人が来ない
ゼロ魔、原作未読だがSSは面白いな。
原作も読んでみようかな。
ジェット燃料って基本は高品質の灯油なんだっけ?
成分的には、灯油とかガソリンに近いらしい
高品質の灯油に添加物を加えた物
>>794 原作はラブコメレモンちゃんと聞いて躊躇してる俺
ここのSSがなまじ面白いからもし原作が合わなかったらと……
>>798 よりによってレモンちゃんかよとは思うが
レモンちゃんはギャグだから大丈夫。
ギャグでも笑えないから困る
レモンちゃんにドン引きですよ
メロン・アモス召喚フラグですね
わかります
1000なら復活!!必ず実行する!!
1000取る気ねーだろw
>>801 それはジロン・アモスでは?
っていうか、ルイズとエルチは結構似てるな。
いっそ、アイアンギアごとカーゴ一家御一行を召喚してしまうというのはどうだろう。
ジロン召喚か……
自分の復讐にサンドラットやカーゴ一家をまるごと巻き込んで、あげくに体制打破したある意味革命家みたいな奴だから
学院で働いてる平民連中巻き込んで大騒ぎ起こしそうな予感が
>>805 しかしドマンジュウは復讐ついでにやったわけで・・・・関係ない世界だったらどうでもいーやって感じになるんじゃね
基本的に偉そうなやつは嫌い、掟なんか知るか!俺はやりたいようにやるって性格だから
トリスティンの貴族とは上手くいかんよーな
キュルケやウェールズみたいな気さくな連中とは気が合いそうだが
メロンであってる
ウェールズは気さくだけど基本的にLOWな性格。
これを覆すにはご立派様を連れてくるぐらいしかない。
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500kbなら富野作品からなんか召喚する
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test
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. /'´三三ニヽマ^′ ヽ!
|三三三三 冫 l
|三三三三 冫 } 、 l
. j三三三三. 冫 / ヽ , {
,仁三三三三{ { } / }
〃 チ⌒ヾニ厂´ _ ⌒ゞ=z、._ノ 廴z≠Y
/ 斗 し)|ニ| ヽァz=‐rォ >>、 〈ミーrォイ
. 〈__/ いて.{ニ{ 丶` ̄ ´ } ` ̄´}
〉、ヘ{え、 | ノ
! ゞ-j `ヽ、 , l { /
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///レ' 厂¨ヽ!、 冫:::√´_,.ー-‐ 、 Y:: ハ ヽ 埋めてすまなかった、許してくれ
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