あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part207

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part206
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232341814/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:29:39 ID:Zn/dj9z1
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:30:15 ID:xLAAQFTC
テンプレ終了

馬鹿が前スレ埋めたんで勝手に立てた。
もし重複していたら削除依頼出します。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:30:52 ID:AmkfQDHu
>>1乙!

そして前スレでAA埋めした馬鹿はルルイエへ行け
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:31:16 ID:NJ3eBfFW
立て乙!
さて、執筆開始すっかー…
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:31:55 ID:XyRgSXfQ
http://www35.atwiki.jp/anozero/pages/5957.html

使い魔の左手、悪魔の右手-01

--------------------------------------------------------------------------------


作品内容に別作品からの盗用疑惑がかけられているため、一時的に掲載を取りやめております
詳細は避難所の運営議論スレ5,>>888->>907を参照。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1227588208/888-907
7ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:33:05 ID:JqyPI08d
新スレお疲れ様です。次回以降、少し投下のタイミングを考えます。やはりギリギリでというのはあまりよろしくないですから
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:33:36 ID:pOc20L+r
>>1

作品投下後はAAでなく感想で埋めろよ
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:34:27 ID:pOc20L+r
>>7
投下乙ですよ〜
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:35:40 ID:xLAAQFTC
>>7
あまり気になさらずに。
馬鹿がいなければちょうど良い容量でしたし。
次の投下を楽しみにしています。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:36:12 ID:dSIWc+PE
>>1


新スレ立つ前にAAで埋めたやつはイデに飲み込まれろ
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:40:22 ID:J9mCFULm
ID:Md/hstP4
ID:XyRgSXfQ
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:43:31 ID:9ouurR7V
>>1

スレ立つ前にAAで埋めた奴は因果の向こうに行ってしまえ
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:53:16 ID:JBEE2F7Y
花嫁の人乙です。
こんなど根性入ったバカ見た事無いwwwGJ
次回にwktk。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:54:26 ID:WXG0tIfY
イデオン劇場版はガチ。
アニメ好きなら一度は見とけ。

ガイナックスなんてモロこれの影響受けてるのがよくわかるから。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:01:14 ID:hIN0NeMr
作画はともかく演出ではいまだに超えるものは無い(同格の作品ならいくつか)
と言い切ってしまえる超傑作だ
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:03:22 ID:+Jcyf1UA
20ぐらいなら
パンパカパンツから4匹のブタとパンツの妖精を召喚してみたい。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:09:10 ID:m4ms016z
20なら今日中に投下できるように頑張ってみる。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:10:48 ID:ERze4G/2
>>4
それでそいつが闇の三巨人を復活させたらどうすんだよ?
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:12:36 ID:NJ3eBfFW
20なら明日投下する
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:15:23 ID:JBEE2F7Y
>>20

待ってるぜ
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:30:41 ID:wrq4CNfe
>>20
楽しみにしてるんだぜ。

俺も某魔砲少女アニメのキャラ召喚させたいけどなかなかうまく書けない。
技量云々じゃなくて純粋に長文書ける人が羨ましい……
23ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:31:25 ID:z/T/Au95
5話の投下予告させてもらいます。
20時40分を予定しています。
今回、約8レスを予定しています。
よろしくお願いします。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:32:23 ID:dkaooDa8
>>20
嘘でも調子合わせて期待すると言っちゃうのは楽しいぜ
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:33:13 ID:1McVUG3/
だいじょーぶ。1日20行とでも決めて毎日書けばできるできる。
……筆がノルと余裕で30kbオーバーすることになるがな!
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:34:18 ID:1McVUG3/
よーし、支援だ!
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:35:03 ID:Hhc6pbN+
支援するぞ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:37:13 ID:NJ3eBfFW
嘘じゃないもん。今書いてるし。まぁがんばります。

そして支援だ!
29ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:40:07 ID:z/T/Au95
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン−5

トリスティン魔法学園 学長室

ロングビルはオスマンの部屋で秘書の仕事を行っていた。
部屋の扉が開く音がするがロングビルは気にも留めない。
「おはようございます、オールド・オスマン」
作業の手を休めずロングビルは挨拶を述べる。
「おはよう、ミス・ロングビル。おっと、失礼」
ロングビルに近づく途中でわざともたつき、椅子に座ったロングビルの太ももに頭を載せる。
「いやぁ、すまん、すまん、年を取ると転びやすくてな」
太ももに頬ずりしながら、オスマンは立ち上がろうとはしない。
「・・・・」
無言のままロングビルはオスマンのこめかみにペンを突き刺す。
「ぐぉっ!ミス・ロングビルいきなり何をするんじゃ!」
オスマンは激痛に思わず飛び退く
「熱湯がよかったですか?」
事も無げに危険な事を聞いてくる。
「老人のお茶目なジョークじゃよ」
こめかみをさすりながら、自分の席に着く
「今日は何の予定じゃったかな?」
「今日は2年生が召喚した使い魔の親睦会ですよ」
作業に戻り、何気なしに答える。
「親睦会じゃと!!迂闊、今日がその日だったとは・・」
「どっ、どうしたのですか、オールド・オスマン何か問題でも」
いきなり声を荒げたオスマンにロングビルも思わず驚く。
「何も起こらなければ問題ない、だが今日はアイツにとっては、とても重要な日なのじゃ!」
「あいつとは、誰のことなのです?」
深刻そうなオスマンに、ロングビルは思わず聞き返す。
「ミス・ロングビル、君はまだ入ったばかりだから知らないだろうが、
 この学園では逆らってはいけないものが三つ有る。一つはわしじゃ」
オールド・オスマンが自分を指差す。
「では、後の二人は誰なのです?」
(ジジィのほかにも、そんな奴がいるなんて・・・)
情報の不備に、ロングビルは慎重になる。
「二つ目はコルベールじゃ」
「ミスタ・コルベールが?」
温厚そうな、中年教師の顔を思い浮かべる。
(あいつがねぇ・・・そうは見えないけど)
「正確には奴、身よりも、三つ目のコルベールの使い魔じゃ」
「使い魔?人じゃないのですか?」
ロングビルはコルベールの使い魔を見たことない。
「見ればわかるぞい、あれは危険じゃぞ。」
そう言って遠見の鏡の鏡を出し、親睦会の準備の映像を映し出す。
「何をしているのです?」ロングビルが問う
「監視じゃよ、問題を起こさぬようにな」
(そんなに厄介なヤツなのかい)
警戒しながら、ロングビルも鏡を覗き込む。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:40:42 ID:C1GkTTGG
支援
31ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:40:44 ID:z/T/Au95
朝食を終えルイズ達は広場に来ていた。
広場ではメイド達が準備をしており、遠巻きに生徒達が眺めている。
「キュルケ、何が始まるんだ?」
キュルケに向かってダブルゼータが聞く。
「今日は使い魔の親睦会なのよ、あそこのテーブルなんかでお茶するのよ」
キュルケが準備されているテーブルを指差す。
「キュルケ殿、それにしては空気が重々しいのだが」
場に張りつめた異様な緊張感がそこにはあった。
「・・・使い魔にとっては大事な日・・・」
タバサが何気なくつぶやく
「?確かに大事な日であるだろうが、なぜ空気が重くなるのだ?」
ニューがもっともな疑問を口にする。
「それはね「ふっ、ふっ、ふっ、その余裕も今のうちよ、この馬鹿ゴーレムども!」」
キュルケの会話を遮りルイズは場の空気に合わない位の声を上げる。
「ルイズ、どうしたのだ?」
ニューがいきなりの事に声が遠慮がちである。
「今日は、使い魔の親睦会であると同時に、あなた達のボスの挨拶の日なのよ!!」
空気の音が聞こえるくらいの勢いでルイズが指をさす。
「?コルベール殿の言っていた、オールド・オスマン殿の挨拶か?」
「違うわ、まぁ、いずれわかるわ。」
邪悪な笑みを浮かべながらルイズは来るべき時を待つ。
三人は疑問符を浮かべながら顔を見合わせた。
「みなさん、おはようございます」
コルベールの挨拶は場の空気をさらに緊張させる。
「おはようございます。ミスタ・コルベール」
生徒達が軍隊のような力の入った挨拶を返す。
(本当に、何が始まるのだ?)
三人はいよいよもって高まっていく場の緊張感に目を配らせる。
「今日は召喚した使い魔とのコミュニケーションを取ってもらいます。
私は用事があるので自室にいます。是非とも使い魔と良い関係を作り上げてくださいね。」
コルベールのあいさつが終わる。
その時、ニューはなぜか震動を感じた。
「そうだ!せっかくなので私の使い魔を紹介しましょう、出不精なんですけど、
こうやって使い魔親睦会の日には出てくるんですよ、こいつは、さびしがり屋なんですよ」
最後の方は振動で聞き取れなかった。
「何だ!あれは・・」ダブルゼータが驚く
「なるほど・・・」ゼータが状況を理解する。
「そういうことか・・・」ニューがルイズの言葉の意味を理解する。
三者三様のリアクションでそれに対応した。
それは山であった。コルベールの背で見えなかったが彼の背には山が見えた。
コルベールが横に退くと、それが何であるかわかった。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:41:27 ID:C1GkTTGG
支援
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:42:22 ID:C1GkTTGG
支援
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:42:28 ID:1McVUG3/
支援
35ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:42:34 ID:z/T/Au95
「な!なんなのですかあれは!?」
ロングビルが鏡を指差す。
「知らんのかい?サラマンダーじゃよ」
「サラマンダーはもっと小さいはずです。」
「個体差じゃよ」
そう言って、旧敵を見るような眼でオスマンは鏡を見ていた。

サラマンダーは平均で高さ0・6メイル、全長1・6メイル位である。
しかし、コルベールの使い魔はその常識を超えていた。
高さ2.2メイル、全長7メイル、背中には大きい傷と様々な物で傷つけられた模様が亀の甲羅にも見える。
一歩、歩くだけで振動が起こり、呼吸音さえも唸っている様に聞こえる。
尻尾の炎の熱気が少し離れた所からでも感じられる。

「どうです、これが私の使い魔ハリマオスペシャルです。可愛いでしょう?
 いかつい外見に似合わず照れ屋なのですよ。皆さんの使い魔も仲良くして下さいね。」
コルベールに応えるように、ハリマオスペシャルは咆哮を上げる。
その声に気の弱い女性徒は既に足が震えていた。
「おい!嬢ちゃん、何だよあれは!?」
ダブルゼータが小声でルイズに詰め寄る。
「ミスタ・コルベールの使い魔ハリマオスペシャル、
名前の由来は、物語のサンダー将軍記の主人公のペットからよ。
ちなみに続編の主人公のスーパーオラシオンと、どちらにするか迷ったって言っていたわ!」
嬉しそうに、ルイズが名前の由来まで説明する。
「そういう事を聞いてるんじゃない!!なんだあの怪物は」
ダブルゼータに便乗するようにニューもルイズに詰め寄る。
ニュー達はスダ・ドアカワールドで数多くの敵と戦ってきた。
もちろん、あれより凶悪な敵も沢山いた。
だが、それは倒すべき敵であって、ペットなんかではありえないレベルだった。
(コルベール殿は、あれが可愛く見えるのか)
ニューの中でコルベールの株が急落した。
しばらくして、親睦会は始まった。しかし、それは異様な光景であった。
コの字型に丸テーブルに椅子が並べられて、
 上座のにハリマオスペシャルが寝そべっており、それを取り囲むようですらであった。
「すごい光景だな」
ゼータが呆れながらも、どこか納得している。
「アレにいちゃもんつけた、トライアングルの教師が二人、学校を辞めたわ」
キュルケが紅茶を飲みながら、視界に入れないようにしている。
隣では、タバサは、皿の上のクッキーを独占している
「サラマンダーは火、だから火のメイジは相性が悪い、
土のメイジのゴーレムも金属だと溶けるし土や石だと体当たりと尻尾で破壊される。
 20メイルのゴーレムでも踏みつぶせなかった。
風のメイジの魔法も表面に傷を入れるだけだったし、雷も大してきかない。
背中の大きな傷をつけたのはオールド・オスマンただ一人だけ。」
タバサが特徴と過去の戦歴を淡々と語る。その様子は、どこか嬉しそうだ。
(ダバサもこんな顔をするのか)
わずかだが、主の表情の変化を見られて、ゼータは少し嬉しくなる。
「しかし、暴れる様子もない様だし、問題ないじゃないか」
ニューがケーキを食べながら、動きがないことに安心している。
「甘いわよ!恐怖の親睦会はこれからが本番よ!」
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:42:51 ID:1McVUG3/
支援
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:43:13 ID:C1GkTTGG
支援
38ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:43:21 ID:z/T/Au95
結果的に、そのルイズの一言が合図だった。
その言葉に反応するようにハリマオスペシャルが咆哮を上げる。
途端に、何人かの生徒達の使い魔が、クッキーなどを持ちハリマオスペシャルに近づいて行った。
(腹でも減ったから、分けてやるのか?)
自分の感想を、ニューは事態の異常さに気付いてなかった事に舌打ちするだろう。
いくつかの使い魔達が、神にお供えをするようにお菓子を置いて、思い、思い服従を誓ったのだ。
クッキーなどを一瞥して一口で平らげた後、ハリマオスペシャルは行けと言わんばかりに首を横に振った。
頭を下げて一礼するように使い魔達は主たちのもとに戻っていく。
主たちは無事に帰ってきた使い魔達を子供のように抱き抱える。
その様子は、命がけの試練を終えた子供を祝福する親のようでもあった。
「何なのだあれは・・・」
劇に出てくるような絵に描いた暴君劇を見せられニューは困惑する。
「当然、アンタ達もやるのよ」ルイズは心配するよりも、むしろ嬉しそうだ。
「使い魔だからか?」「当然」
ニューのジト目にもルイズは嬉しそうな顔が消えない。
ルイズ達が話している間にも、他の生徒達の使い魔がハリマオスペシャルにお供え物を差し出していく。
積まれていき、小山のようになったお菓子は、信仰のそれである。
「あ!ニューさん」
唐突に声をかけられニューは後ろを振り向く、そこには心配そうな顔のシエスタがいた。
「知り合いか?」隣のゼータがニューに聞く
「あぁ、洗濯途中に知り合った。シエスタは給仕かい?」
「はい、そちらの方々はニューさんの知り合いですか?」
二人がそれぞれに自己紹介をする。
「はじめまして、私はメイドのシエスタといいます。
 そうではなくて!ニューさん行かなくていいのですか!?」
シエスタが心配そうに詰め寄る。
「なにがだい?」
「ハリマオスペシャルに対する“お供え”ですよ。」
どうやらニュー達が、未だにお供えをやらない事を危惧しているらしい。
「別にかまわんだろう、たかがペットに餌をやらない位で問題は起こるまい」
「大問題ですよ!!去年も」
空気を叩く衝撃音でシエスタの言葉は打ち切られた。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:43:58 ID:1McVUG3/
支援支援〜♪
40ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:44:01 ID:z/T/Au95
音の方に振り向くと、モグラが空を飛んでいた。
そして短い滞空時間の後、モグラはルイズ達の近くに着地した。
「ああ!!僕のヴェルダンデ!」
頭を抱えながら金髪の少年が悲鳴を上げる。
「キュルケ殿!何があったのだ!?」
「お気に召さなかったようね、彼」
痙攣したモグラの口にくわえられた、ミミズを見ながらキュルケが告げる。
「今年の犠牲者はギーシュか・・」
周辺では喧騒が起きる。生徒達は同情の眼付でギーシュの使い魔を見る。
(さすがにこれはまずいな・・・)
モグラの様子が危険な事に気づき、立ち上がろうとすると・・
「ニュー、そのモグラの治療を頼む」
「お前が言わなくてもやるつもりだよ、マディアム」
ダブルゼータに促されるまでもなく、近づき、魔法をかける。
大きく腫れた部分は消え、痙攣も治まる。
(うそ!アイツ、あんな事もできるの!)
瞬く間に傷を治したニューに、ルイズは思わず目を見張る。
「おおっ!ヴェルダンデ無事だったんだね!ありがとうゴーレム君」
モグラが助かった事が嬉しかったのか、ギーシュはニューの魔法を気にも留めなかった。
だが、周りで様子を見ていたギャラリーはニューが瞬く間に傷を治した事に驚きを隠せない。
「ニューさん、すごいです・・・」
ニューが魔法を使えることを知っている、シエスタでもその様子に驚いている。
だが、ギャラリーの興味は別のところに移つりつつあった。
先程までルイズ達の席の近くにいた。ダブルゼータがハリマオスペシャルの目の前にいたのだ。
「やっと、お供えする気になったのね、あれを見ればお供「おい!トカゲ野郎!!」」
ルイズの声をかき消すくらいの大音量が周囲に響く
「トカゲ野郎!てめえが威張り散らすのは勝手だがよ、
 餌が気にくわねぇからって張り倒すのは、お門違いもいいところじゃねぇか!」
ダブルゼータが睨みつけながら啖呵を切る。
「何やっているの・・アイツ」
「喧嘩を売っているのだろうな、多分」
ニューはそちらの様子を見る事なく、モグラの状態に気を配る。
「アイツ、馬鹿じゃないの!」
「ルイズ殿、今頃気づいたのか」
ゼータが相槌を打つ。
「ニューさん止めて下さい!ダブルゼータさんが死んでしまいます!」
泣きそうな声でシエスタが、ニューに止めるように求める。
「問題ないですよ、シエスタ殿。」
ゼータがニューの言葉を代弁する。
「何を言っているんですか!トライアングルのメイジでも勝てない代物なんですよ!あ」
またまた、話が途切れたのは、飛んできた物体の不時着した音だった。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:44:04 ID:C1GkTTGG
支援
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:44:47 ID:C1GkTTGG
支援
43ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:44:48 ID:z/T/Au95
目を離していたので解らなかったが、何かしらの方法でダブルゼータが飛ばされたらしい。
テーブルに激突し、あたりが散乱する。
「ルイズ、何があった。」
ニューが状況を見ていたルイズに、何が起こったかを問いただす。
「尻尾で吹き飛ばされたのよ・・」
刺激的な光景を望んでいたが改めて見せられると、ルイズもさすがに青くなる。
「キュルケ!アンタなんで留めないのよ!」
ルイズがキュルケに責任を追及する。
だが、当のキュルケは椅子にすわり、考えた様子でダブルゼータを見ている。
「・・・ダブルゼータさん・・・」
青ざめた表情で、倒れたダブルゼータを見ている。
「ニューさん、さっきの魔法「いらないよ、シエスタ」え!」
ニューの薄情な答えに言葉を失う。
ゼータもニューと薄情な顔で、倒れたダブルゼータに目を向けている。
「油断しすぎだ馬鹿物。」
「いっつー、あのトカゲ野郎、言うだけはあるじゃねぇか!」
「え!ダブルゼータさん大丈夫ですか!?」
シエスタが驚く、ダブルゼータがいつの間にか立ち上がり首を鳴らしていた。
「大丈夫ですか!?骨は折れてないんですか?」
本気で心配そうにシエスタがダブルゼータに駆け寄る。
「ああ、チョッち、痛いけど問題ねぇっ!さぁ第2ラウンドと行こうかい!」
そう言って、ハリマオスペシャルに向けて猛突進するダブルゼータ。
「ちょっと、大丈夫なの!?なんで向かっていってるのよ」
ルイズがゼータに、ダブルゼータの異常さに同意を求める。
「ルイズ殿、あいつはそれしか取り柄が無いからです。」
「答えになってないわよ!」
ルイズはゼータの回答に不満を示す。
そう言っている間にダブルゼータが組みつく。
ラグビーの様に首と首を合わせて力を比べ合う様は、さながら闘牛の様であった。
得体のしれないゴーレムが、ハリマオスペシャルと力比べをし始めた事に、
周りの生徒達は見世物の様相を呈してきた。
「また向かって言ったよ。」
「無謀だよね。」
「牛みたいだな」
「まるで、キュルケも牛だからな、一部が」
下賤なヤジが、当たりに飛び交う。
組み合ったが一方的に見えた。地面にダブルゼータの足の形をした二本の棒が描かれる。
「やっぱ押されてるじゃん」
「偉そうな事言った割に対した事ないのね」
気がつけば、地面の棒が2メイルまで伸びていた。
「キュルケ!アンタそれでいいの!?」
ルイズがキュルケに詰め寄るがキュルケは何も答えない。
(まかせておけよ、キュルケ、俺は魔法が使えないが、アルガス王国一の怪力なんだぜ!)
昨日のダブルゼータの言葉が脳裏をよぎる。
だが、当事者に最も関わりがありながら、キュルケはぼんやりと必死なダブルゼータの顔を見ていた。
(べつに今、ここで証明しなくてもいいのに・・・それに、充分、力は強いじゃない)
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:45:28 ID:1McVUG3/
ハイメガ粒子砲支援!
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:45:35 ID:C1GkTTGG
支援
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:46:21 ID:C1GkTTGG
支援
47ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:46:21 ID:z/T/Au95
一部を除き、誰も気づいてないが、ハリマオスペシャルと組み合って食い下がっている時点で、
ダブルゼータの力が尋常ではない事はキュルケには充分にわかる。
去年、ハリマオスペシャルと馬5頭の綱引きのカルチョで、倍率の高い馬五頭に賭けて、
引っ張られた馬が空を飛んでいく様を、券を握りしめながら見ていたキュルケには忘れられない光景だった。
(まぁ、善戦したし、後でなぐさめる位はしてあげるわ)
思考の海から、現実に意識を戻したところで、ダブルゼータはキュルケの足元にいた。
「おかえりなさい」
「ただいま、また行ってくる。」
ゆっくりと身を起しながら、ダブルゼータはその身を起こす。
その様子に呆れ、溜息をつきながらダブルゼータに近寄る。
「ねぇ、もういいじゃない、あなたの力が強いのは十分にわかったわ、もうやめなさい。」
彼女を知る者からすれば、その声は異様なまでに優しかった。
「悪いが、やめられないね。」
「どうして!?」
理由が分からず少し苛立った声をキュルケは上げる。
「周りの事を気にしているの、別に構いわしないわよ!けど何で貴方がそこまでするの
ギーシュのモグラのため?それとも私を含めて馬鹿にする。ギャラリーの鼻を明かすため?
モグラの為なんてカッコ悪いし、私はそれが分らない程、馬鹿じゃ「言っただろ」え!」
ダブルゼータの言葉がと手がキュルケを遮る。
「キュルケ、俺は魔法も技もないが、アルガス王国一の怪力なんだぜ!」
親指を立て拳を握りながら、土のついた薄汚れた顔で笑う。
「これは喧嘩じゃねぇ、この学園の怪力一を賭けたタイトルマッチだ。
もっとも、タオルを投げ入れられたってやるけどな。それによぉ・・」
途端に少し照れた顔になる。
「カッコよくて、賢いなんて、俺らしくないだろ?」
恥ずかしそうに言いながら、すぐに振り返る。
キュルケは意外な答えに唖然とした。
(そう、そうかもね・・・確かに、カッコよくて賢いなんて、らしくないわね・・・)
人はキュルケを妖艶で狡賢いと言う。
しかし、その鏡ともいえる使い魔のダブルゼータは。そういった物からは程遠い。
(私はダブルゼータを否定もしなければ、肯定もしなかった。それは、ダブルゼータが他人だと思っていたから
 ・・・けど、彼は私の鏡、ある意味で私自身、彼は私の使い魔なのよ!)
何かを決意した瞳で、ダブルゼータを見つめる。
「・・・確かに、カッコよくて、賢いなんてあなたらしくないわね。」
「はっきり言うなよ!」
彼の表情は見えないが笑っているのだろう。
「じゃあ、使い魔の為に、主として出来る事をしましょうか・・・」
キュルケは周囲のギャラリーを見渡した。
「さぁ、ここからが本番、私の使い魔が勝つか、ハリマオスペシャルが勝つか!
オッズは1対10よ、もちろん私はダブルゼータに賭けるわよ」
「賭けにならないぞ、キュルケ!」
少年達が彼女の愚かな提案を笑う。
「あら、だったら、私が負けたら全裸で学園一周してあげるわ!」
「すばらしい!ハリマオスペシャルに1000じゃ」
聞こえはしないが、遠見の鏡からオスマンは興奮気味に参加を表明する。
「おい、聞いたか、僕はハリマオスペシャルに100賭けるぞ!」
「俺も100だ!キュルケ、絶対やれよ!」
生徒達がカルチョへの参戦を次々に表明する。中にはキュルケを妬む女性もカルチョに参加していた。
「話を大きくしやがって、俺はプレッシャーに弱いんだぜ」
「使い魔のお尻を叩くのも、主の役目よ!必ずベルトを奪取なさい!」
キュルケが喝を入れ、力強く送り出す。
「おう、まかしとけ!」
再び、ハリマオスペシャルに突っ込むダブルゼータ。
「キュルケ!アンタ頭がおかしいんじゃないの!?」
「ルイズ、あなた私の二つ名をご存じ?」
「何、言ってるのよ!「微熱」でしょ!アンタほんとに熱でもなったの?」
「そうよ!「微熱」に浮かされたのよ」
妖艶とも母性とも違う目で、キュルケがダブルゼータを見つめる。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:46:52 ID:1McVUG3/
しえーん
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:47:11 ID:C1GkTTGG
支援
50ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:47:48 ID:z/T/Au95
「ダブルゼータに50エキュー」
キュルケの眼に気付きながらも、タバサがいつの間にか近くにいた。
「タバサ、あなたも一緒に脱いでくれるの?」
「大丈夫・・・あなたが賭けたから」
確保していた、タバサがクッキーを頬張る。
「・・去年のトトカルチョでも、そう言って負けなかった?」
去年の出来事を思い出しながら、他人事のようにキュルケはつぶやいた。
第2ラウンドが始まっても、誰もダブルゼータに賭けるものはいなかった
今度は、前より善戦していた。押すことはないが、かといって押されるわけではない。
貴族たちにとって、それは場を盛り上げる為の演出であった。
どうせ勝つのだからある程度の見せ場くらいあってもいいだろう。
金銭を賭けた当事者たちの傲慢な驕りであった。
だが、ダブルゼータの顔は、むしろ徐々に明るくなって言った。
「お前は確かに強えよ・・・だがなぁ!!」
そういって、咆哮と共にゆっくりと進んでいく。
その様子にギャラリーは動揺する。
「どうして・・・」
ルイズも、なぜダブルゼータの方が押し出してきたか、理解できないでいた。
「スタミナ・・・」
タバサがポツリとつぶやく
「え?だってあっちの方がスタミナありそうじゃない!」
「力の強い動物はパワーや瞬発力があっても、スタミナや瞬発力が少ない。
 それに、そういった訓練もしていないからああやって持久戦になると弱くなる。」
「それに、ルイズ殿、アイツはあれでも山ごもりしていたから、ああいった動物と戦うのは得意なのですよ。」
始めて会ったとき、フロッグアッカイを飼いならしてそれに乗っていたのを思い出しながら、
ゼータがアピールポイントを付け足す。
一部は勝利を確信し始めていた。
そして、それは起こった。
「うぉぉぉっ!」
相手を押し始めたダブルゼータがブレーンバスターで持ち上げて地面を叩く。
轟音と共に、ハリマオスペシャルが仰向けにひっくり返る。
「まだまだぁ」
仰向けになったままの状態をジャイアントスイングでまわし、塔の壁に叩きつける。
固定化を忘れたのか?そう見えるように壁にヒビが入る。
「これで、ラストだぁぁぁ!!!」
「うそ・・」
ルイズは地面と垂直になったハリマオスペシャルを見て口をあけていた。
「だりゃあぁぁぁ!!」
左手で首をロックし倒れこみながら右腕を相手の腹に巻きこむ。そして、地面に叩きつける。
大技であるジャックハマーが、トリスティンに局地的大地震を引き起こす。
ハリマオスペシャルは今度こそ動かなくなっていた。
「うおぉっしゃあぁー!!!」
ダブルゼータの勝手な勝利宣言を止める者は誰にもいなかった。


51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:48:13 ID:C1GkTTGG
支援
52ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:48:37 ID:z/T/Au95
「9ミス・ロングビルは太ももも捨てがたいのぉ」
オールド・オスマン
こんなのでも学園長である。
データ不明 (負けてもカードを取られない)

「10山のように雄大に、ハリマオスペシャルはあらわれた。」
サラマンダー ハリマオスペシャル
コルベールと合体はしない
HP 880

ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン
専用の厩舎でハリマオスペシャルは目を覚ました
「おはよう」コルベールが朝食を届ける。
「今日は使い魔の親睦会なんだよ」嬉しそうに、
コルベールは告げる。「みんなと仲良くしてやってくれよ」
そう言ってコルベールは厩舎を後にする。
主の願いを叶える為、彼は厩舎を出た。
使い魔達の王としての役割を果たすべく・・・

以上です。投稿を終了させていただきます。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:49:52 ID:C1GkTTGG
支援
54ゼロの騎士団:2009/01/23(金) 20:50:23 ID:z/T/Au95
ちなみに、ハリマオスペシャルは将頑駄無の相棒で、
スーパーオラシオンは二代目将頑駄無です。

55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:51:09 ID:1McVUG3/
投下乙!
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:51:29 ID:C1GkTTGG
乙でした!
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 20:58:11 ID:D0Fy/Ni8
投下乙っしたっ!
千生頑駄無に火傷させた奴かと最初思ったけどアレはバサラマンダーでしたか。
あと黄虎璽をれんそうしたぜ!<下半身が虎
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:05:14 ID:FqMJmKVm
ナイトガンダム乙です
ダブルゼータあんた無茶しすぎ!w

アルガス騎士団か、なつかしいな・・・
昔、伝説の巨人編のアニメ化にオリジナルモンスターの応募があって出したけど不採用でしたが・・・
伝説の騎士団編で密かに一部の不採用の奴がカード化されてて自分のもカード化されてて小躍りしたのが懐かしい思い出です
ちなみに出したのは『バットドップ』でした。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:10:35 ID:gMSPuwF7
ガンダムさん乙です。
サンダー将軍記に興味が湧いた。
60ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:39:02 ID:m4ms016z
 騎士団の方、乙でした。そう言えば、デブデダビデは騎士ガンダムのパーツを自分の身体に組み込んだり、アルガス騎士団の装備は巡り巡ってデュオ、トロワ、カトル、五飛に渡ってたりしてましたなぁ。
 ……いや、騎士ガンダムは出しませんよ? ホントに。

 それでは他にご予約の方がおられなければ、22:45から第25話の投下を行います。
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:41:55 ID:c+3vtHED
>>54


どこかで聞いたことがある名前だと思ったらそいつらかw

>>57
バサラマンダーは千生と合体して千生大将軍になる奴だっけ?
千生将軍(ザクレロヘッド)がバサラマンダーと合体してサラマンダーヘッドに
なるのはガンダム野郎だったか
そういえば千壱将軍ってのも居たよな
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:42:22 ID:D0Fy/Ni8
閃光のように輝いた活躍すらなかったワルドさんにふいた作品の続きが来た!
支援!

そういえばガンダム無双に出てきた武者ガンダムは自立稼動してたな…
63ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:45:00 ID:m4ms016z
 底部のジェット噴射口を駆使し、機体を敵艦隊の上空でホバリングさせる。
 ルイズは開いた搭乗口から敵艦を見下ろしながら、詠唱を開始した。

「……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」

「『虚無の魔法』か。どのような物なのか、詳細は書いていなかったのか?」
 額に浮いた汗を手でぬぐいながら、ユーゼスはエレオノールに尋ねる。
「『エクスプロージョン』って言うくらいだから、多分爆発する魔法だとは思うんだけど……」
 しかし、何しろ初めて見る魔法なので、エレオノールも推測や予想しか話せなかった。
「もしかしたら、今までの御主人様の『失敗』は、その『エクスプロージョン』の出来損ないなのか?」
「……かも知れないわね」

「……オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」

 『ゼロのルイズ』が『虚無のルイズ』に、『無能』が『伝説』に変わろうとしている。

「……ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ……」

 エレオノールは大きな不安と小さな期待を、ユーゼスは興味を持ってその光景を見ていた。

「……ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル―――!!」

 呪文が完成し、ルイズは敵艦隊に向かって杖を振り下ろす。
 一瞬の後、タルブの空に強烈な光のカタマリが現れた。



 タルブの空の戦いはひとまず終わったが、タルブの陸ではそれ以上の激戦が繰り広げられていた。
 敵は新型の大砲を使って、上空からこちらを攻撃してくる。
 ウワサに名高いアルビオンの竜騎士隊が見当たらないのが不思議と言えば不思議だったが、軍と軍との戦いならば竜騎兵などの出番はそれほど無い。
 そもそも艦隊をあらかた潰されてしまったトリステイン軍には、アルビオン艦隊に対抗する力など存在しないのだ。
 おそらくこの砲撃が終われば、敵は降下して直接攻撃を仕掛けてくるだろう。
 砲撃によって数は減らされ、陣形は乱され、士気はくじかれ、トリステイン軍はもはやガタガタである。
「……!」
 そんな中で、トリステイン軍のある一人の兵士はこの状況に歯噛みしていた。
 その兵士は女性であり、短く切りそろえた金髪と澄んだ青い瞳を持っていたが、その眼光はまぎれもなく戦士のそれであった。
 名前を、アニエスと言う。
 アニエスは、とある事情からある程度の権力を欲している。
 そして平民の自分が名を上げるには、戦場で功を上げるのが最も手っ取り早い……と考え、喜び勇んでこの戦いに参じたのだが、この体たらくでは功を上げるどころか生き残ることすら危うい。
(生き残りさえすれば、『私の目的』を達成するチャンスもいずれ巡ってくるかもしれない……)
 本気で逃げ出すことを考え始めるアニエス。
 と言うか、事実として自軍の内の何人かは逃げ出し始めている。
 そして砲弾の雨にさらされ続け、いい加減に『もう逃げるか』と一歩を踏み出したその時。
 自分たちを殲滅せんと攻撃し続けていたアルビオン艦隊は、突如として発生した巨大な光に飲み込まれていったのだった。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:45:37 ID:JBEE2F7Y
ラスボス支援!
65 :2009/01/23(金) 22:47:08 ID:PQ+9inCr
支援でござる
66ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:47:15 ID:m4ms016z
 ―――光が消えると、アルビオン艦隊は炎に包まれていた。
 全ての戦艦の帆と甲板が、赤く燃えている。
 そしてつい先ほどまでトリステイン軍に砲撃を行っていた大艦隊は、それまでの猛攻が嘘だったかのように墜落していく。
「……………」
 その場にいる誰もが、呆気に取られていた。
 こちらからは何もしていないのに、いきなり敵がやられたのだから当たり前である。
 それはアニエスも例外ではない。
 トリステインの軍勢は、しばしそうして呆然としていたが、
「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! 伝説のフェニックスによって!!」
 マザリーニ枢機卿の叫びによって、ハッと我に返る。
 なるほど、上空を見れば確かに『何か』の姿の確認が出来た。
 マザリーニ枢機卿は『伝説の不死鳥だ』などと言っているが……アレは本当に鳥なのだろうか? 遠いのでよく分からないが、どこか違う気がする。
 しかしアニエスの疑問などには構わず、全軍の士気は爆発的に増大した。
「うおおおおおおぉーッ!! トリステイン万歳!! フェニックス万歳!!!」
 そこかしこから自分たちを鼓舞する大声が轟き、それらは巨大な渦となる。
「むう……」
 集団心理とは恐ろしい。
(だが何にせよ、これはチャンスだ……)
 アルビオンに傾いていた『流れ』は、一気にトリステインへと引き寄せられた。
 上空には、泡を食った様子で落ちてくるアルビオン軍の面々。
 浮き足立った敵(先ほどまでは自分たちが浮き足立っていたのだが)の掃討など、そう難しいことではない。
「全軍突撃ッ! 王軍ッ!! 我に続けえッ!!」
 アンリエッタ王女の声が、高らかに響く。
(言われるまでもない……!)
 一人でも多くの敵を倒し、戦果を上げるため、アニエスは銃を握り締めながら駆け出していった。


「ぐ、う…………っ!!」
 『謎の飛行する鉄のカタマリ』に吹き飛ばされたワルドは、かなり離れた位置の森の中に流され、墜落していた。
 身体中が痛い。
 あの『謎の飛行する鉄のカタマリ』と激突する際、とっさに風魔法を使ったので衝撃はある程度は殺せていたが……それでもかなりのダメージだ。
 左腕の義手など、完全に壊れてしまっている。
 ……当たったのが身体の左側ではなく右側であれば、もう一つ義手を用意しなければならなかっただろう。
「おのれ、ガンダールヴ……!」
 『謎の飛行する鉄のカタマリ』からわずかに見えた銀髪と顔は、まぎれもなく自分の左腕を奪った、自分のかつての婚約者の少女の使い魔だった。
「…………!!」
 ユーゼスへの憎悪を募らせながら、ワルドはこれからのことを考える。
 アルビオン艦隊は、燃え落ちている。
 おそらくこの戦いは負けだろう。
 取りあえずはクロムウェルの元に戻り、体勢を立て直さなければなるまい。
 こうなったら『紫の髪の男』についても、本格的に調査を開始しなければ。
「何にせよ、戻らねばならんか……」
 詳しい作戦は、戻って落ち着いてから練ることにしよう、と歩き始める。
 そして歩いている内に、森の中の開けた場所に出て……そこに、ある人物が待ち構えていた。
「ふむ……、ビートルの試運転は、それなりに上手く行っているようですね」
「な、お前は……!?」
 遠くタルブの空を飛ぶ『謎の飛行する鉄のカタマリ』を眺めながら、白衣を着込んだ男は自分に目をやる。
「まあ、詳しい乗り心地や使い勝手については、後でユーゼス・ゴッツォに伺うとして……。
 ……さて、この場での私の用事はビートルやユーゼス・ゴッツォではなく、あなたです」
 動転するワルドを眺めながら、『紫の髪の男』は告げた。
「それではお話をしましょうか、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵」
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:49:08 ID:Y7s1TSmS
支援
68ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:49:15 ID:m4ms016z
(どこで俺についての情報を……いや、あのガンダールヴか)
 あの銀髪の男から、さわり程度でも自分のことについて聞いていたのだろう。
 元トリステイン軍グリフォン隊隊長。
 今はレコン・キスタの一員。
 ラ・ロシェールの酒場で自分たちの話を盗み聞きしていた人物は、この男であること。
 そして、大まかな外見とフルネーム。
 これだけの情報があれば、推測や調査はたやすい。
 そして『紫の髪の男』は、ワルドにある確認を取った。
「……私の周辺をコソコソと嗅ぎ回っていたのは、あなたですね?」
「!」
(気付かれていたのか!?)
 驚くワルド。行動には細心の注意を払っていたと言うのに、どうやって自分の動きを察したのだろうか。
 ワルドの内心の動揺にも構わず、『紫の髪の男』は言葉を続けた。
「……遠巻きに私の話を盗み聞く程度ならば無視しても構わなかったのですが、こうも周りで動き回られると目ざわりなのですよ」
「ぐ、う……」
 一歩後ずさるワルドだが、男は追及の手を止めない。
「取りあえず、私の周辺を探っていた理由を聞かせていただきましょうか」
 物腰は柔らかかったが、『言動にわずかな偽りも許さない』、とその視線が語っている。
「……!」
 やがてワルドは神妙な面持ちをしながら、ブツブツと小声で何かを呟き始めた。
「? ……申し訳ありませんが、もう少し大きな声で喋っていただけませんか?」
(馬鹿め!!)
 首を傾げるシュウを内心であざ笑いながら、杖を抜き放つ。
 呪文の詠唱は、すでに完了した。
 あとは発動させるだけだ。
 バリィイイイイインッ!!
 相手に驚く暇も与えず、杖の先から電撃がほとばしる。
 シュウに『ライトニング・クラウド』を浴びせながら、ワルドはようやく『紫の髪の男』に対しての回答を行った。
「フン、お前に話す必要などはない……!」
 と言っても、死体に話しても意味がないのだが。
 それでは死体を検分し、この男が持っているはずの『力』についての情報を集めよう……などと思っていると、何と自分の言葉に対しての返答が聞こえてきた。
「……そうですか。それは残念です」
「何!?」
 『ライトニング・クラウド』の放電が終わり、事象の結果が明らかになる。
 そこに立っていたのは、無傷の男。
 白衣にわずかな焦げ目すら無ければ、特に防御を行った様子も無い。
「な、何だと……!?」
「ククク……。その程度の電撃で、ネオ・グランゾンの歪曲フィールドを破ることは不可能ですよ」
「ね、ねおぐらんぞん……!?」
 泡を食うワルドに追い討ちをかけるように、『紫の髪の男』の背後が歪み―――そこに、魔神が出現した。
「おや、『かくれみの』が解けましたか。やはり戦闘しながらの展開は出来ませんね。しかし歪曲フィールドの壁の内側に立つというのも妙な感じです」
 後ろの巨人を振り仰ぎながら、『紫の髪の男』は軽く呟く。
 藍色の金属でその身を固め、黄金の輪を背負い、見る者全てに等しく恐怖と畏怖を与えるその威容を前にして、なぜああも平然としていられるのか。
 その答えは、ただ一つ。
「これが……、お前の力……!?」
「その通りですよ、ワルド子爵。しかし、電撃でコレにダメージを与えたいのであれば、せめてグレートマジンガーのサンダーブレーク程度は……と言っても分かりませんか」
 ヴン、と闇の魔神の硬質な瞳が光り、ワルドは思わず後ずさった。
 『紫の髪の男』は、仕方がないと言わんばかりに溜息をつく。
「素直に『私の周辺を探る理由』を話していただければ、その内容次第では見逃さないこともなかったのですが……」
 ワルドを見据えたまま、彼は一つの宣言を下した。
「今の攻撃のお礼は……させていただかなくてはなりませんね」
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:49:39 ID:lMswQ/gz
ワルドww
支援
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:50:15 ID:Aw40sJFA
ワルドーーー
支援
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:50:47 ID:eLTCxMR4
ワルド(ノд`)アチャー
支援
72ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:51:15 ID:m4ms016z
「ユ、ユビキタス・デル・ウインデ……!」
 即座にワルドは詠唱を開始した。
 攻撃を行うためではなく、逃げるために。
「む?」
 どうやら『紫の髪の男』はこちらの行動を観察する余裕があるらしく、悠長に詠唱を見逃している。
 ……口惜しいが、この男には勝てない。
 だが、いずれはその力を……。
「さらばだ!!」
 『偏在』で5体の分身を作り出した直後に、捨てゼリフを残してその場から飛び立つワルド。
 5体はそれぞれ、素晴らしいスピードでバラバラの方向に逃げて行った。
(これで確率は5分の1か……!)
 全く別の方向に逃げれば、相手も始末には手こずるはずだ。
 もしかすれば最初に『本体』を引き当てられる危険もあるのだが、そこは賭けである。
 そうワルドは思っていた。
 だが。
「?」
 自分以外の4体の分身たちの視覚に、妙なモノが映し出される。
 一言で言うならば、宙に浮かんだ黒い穴。
 穴は恐ろしいほど暗く深く、その奥にあるものは全く見えない。
 一体何なのだと疑問に思った瞬間、その穴の中から光が飛び出し、4体の分身たちは同時に消滅した。
「な、な……!?」
 分身たちが消滅したのと完全に同じタイミングで、少し離れた4つの地点に爆発が起こる。
 ……自分の分身がいるはずの地点と、全く同じ場所だった。
「…………!!」
 一体、どうやって『本体』と『分身』を見分けたのか。……いや、それ以前にあの攻撃は何だ。自分はあんな攻撃など、見たことも聞いたこともありはしない。
 驚愕するワルドだったが、そんな彼を更にたたみかけるかのように、今度は本体である彼自身の視界にも『黒い穴』が現れた。
 それも、1つや2つではない。
 10個、20個……いちいち数えている精神的余裕などワルドには存在していないため詳しい数は分からないが、とにかく多くの『黒い穴』が四方八方、ワルドの周辺を取り囲んでいた。
《……なかなか賢い逃げ方です。決断も早ければ、手際も良い。あなたは優秀ですね》
「…………う、うう…………!」
 もはや言葉も出ないワルドに向かって、『紫の髪の男』の声を発しながら闇の魔神が空を飛んでやって来た。
《相手が私ではなければ、逃げることも出来たかもしれませんが……。ここまでです》
 そしてフワリとワルドの前に降り立つ、闇の魔神。
 ―――周囲は『黒い穴』、その向こうには絶対的な力。
 逃げ場は、ない。
《では、あらためてお尋ねしましょう。……私の周辺を探っていた理由は何ですか?》
 変わらぬ口調が、ワルドに投げかけられる。
 どのような仕組みかは分からないが、この闇色の魔神は『紫の髪の男』の意識や声を伝達させる能力があるらしい……と、ボンヤリとそんなことを考えるワルド。
 だが、そんなことを考えている場合ではない。
 下手なことを言えば、自分も『偏在』で作り出した分身たちと同じ運命を辿ることになる。
 ……しかし、この男相手にごまかしや嘘が通用するだろうか?
(こうなったら、イチかバチか……)
 仕方がないので、ワルドは正直に全てを打ち明けた。
 銀色の髪のガンダールヴが持つ、知識と力を見たこと。
 あの男と話していた『紫の髪の男』ならば、同等程度の知識と力を持っていると考えたこと。
 そして、調査を開始したこと。
 あわよくば、その力を手に入れようともしたこと。
 話している途中で『ガンダールヴとは何か』、『その銀色の髪の男の能力は』などという質問もされたが、それにも偽りなく答えていく。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:51:36 ID:j+1zWk+R
サヨウナラ、ワルド子爵支援
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:52:59 ID:D0Fy/Ni8
うわ、ホントに閃光にすらなれなかったよワルドさん…支援

千壱将軍は青かったんだよなー。
ちなみに千生大将軍にパワーアップした時は全治三ヶ月の大火傷を負っていた
75ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:53:35 ID:m4ms016z
《ふむ、なるほど……》
 ……どうやら、ある程度は納得してくれたらしい。
《1つだけ確認しますが。……今までの話を総合するに、あなたは私のことを利用しようとしたのですか?》
「そ、そうだ。その力を手に入れてみたいと、思った……」
《……そうですか》
 その回答が腑に落ちたのか、ワルドを取り囲んでいた『黒い穴』が消えた。
 はあ、とワルドは大きく息を吐く。
 これでひとまずは安心だ。
 ……あくまで『ひとまずは』であるが。
「…………っ」
 この闇の魔神の前にいる以上、心の底からの安心など出来ない。
 それにこれを操る『紫の髪の男』が少し気まぐれを起こせば、自分の命は瞬時に刈り取られてしまうだろう。
 逃げなくてはならない。
 そう考えるや否や、ワルドは即座に行動する。
 自分のこれまでの人生の中でもトップクラスに素早い詠唱を行い、呪文を完成させた。
「っ!!」
 強力な突風が発生し、盛大に土煙を舞い上げ、その土煙は闇の魔神をスッポリと覆う。
「よし……!」
 続いて『フライ』を詠唱。
 慌ててはいけない、しかし遅いのは論外、速度と正確さを両立させて、最大速度で低空飛行、そして森の中に逃げる。
 ……後ろから、『紫の髪の男』の声が聞こえてくる。
《……このネオ・グランゾンの力の片鱗を目にして、なおも抵抗したその勇気は評価して差し上げましょう……》
 後ろを振り向くべきかどうか迷うが、振り向いたりすれば速度が落ちるので振り向けない。
 だが、『見てみたい』という気持ちはある。
《しかし、分不相応な勇気や野心は命を縮めるだけですよ》
「ぐ……!」
 そして恐怖心と好奇心のせめぎ合いの末、ワルドは後ろを振り向いた。
 そして見た。
 闇色の魔神の胸の部分が開く光景を。
 その開いた箇所に白い光が集まり、光がまたたく間に黒い闇へと変わる瞬間を。
《……光栄に思いなさい。生身の人間相手に、直接攻撃を下すのはこれが初めてです》
 付け加えるなら、『アインスト』と呼ばれるモノを除けば『ハルケギニアの存在』に対しての攻撃もこれが初めてであったのだが、ワルドにはそんなことを知る由もない。
《極小サイズですが……》
 魔神は胸にある『闇のカタマリ』を片手で操作すると、それをワルドに向かって投げつけた。
《ブラックホールクラスター、発射!》
 『闇のカタマリ』は、高速で自分に向かって来る。
 森の木々を、石を、地面を、空気を無尽蔵に吸い込みながら。
「う、うあ、あああああ……!」
 ワルドは逃げる。
 だが、逃亡もむなしく『闇のカタマリ』はワルドの身体を捉えてしまった。
「ぁ…………!!」
 瞬間、世界から音と光が消えた。
 どこかよく分からない場所へ、無理矢理に連れて来られた。
 ここはどこだ。
 一体何なのだ。
 闇が渦を巻いていることしか分からない。
 そしてワルドがその存在を完全に消されてしまう直前―――

 ―――自分が追っていた『紫の髪の男』の、名前すら知らないことに気付くのだった。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:55:49 ID:j+1zWk+R
デスヨネー支援
77ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:55:50 ID:m4ms016z
「少々、ムキになってしまったかも知れませんね」
 周辺の木や地面ごと『消滅』してしまった地点を見ながら、シュウはあっけらかんと言った。
「…………明らかなオーバーキルだと思いますけどね、私は」
 そんなシュウの使い魔であるチカは、相変わらずサラッとメチャクチャなことをする主人に向かって呆れたような……と言うか、実際に呆れた口調で呟く。
(つーか、ワームスマッシャーだけじゃなくブラックホールクラスターまで使うって酷すぎるような……)
 一応、そのことを主人に言ってみると、
「彼は私に攻撃を加え、そして何よりもこの私を利用しようとしました。当然の報いです」
 そんな答えが返ってきた。
「……は、はあ、そうですか……」
 チカとしても、そう言われてしまっては強引に納得するしかない。
 そして使い魔との話を切り上げたシュウは、ネオ・グランゾンに記録されている映像を見ながら、先ほどアルビオン軍の艦隊を襲った『謎の光』について考える。
「ビートルと『光』と艦隊の位置関係からするに、おそらくこれはビートルに乗った人間が行ったもの……。
 当然ながらプラーナコンバーターを付けただけの機体にそんなことが可能なわけはありませんし、ユーゼス・ゴッツォもわざわざ『力』を軍事行動に使うわけがない……。
 となると、残りの人間がアレを行ったことになりますが……」
 可能性が高いのはユーゼスの『主人』である、あの少女か。
「ふむ……」
 記録映像は、墜落する戦艦の中から次々にメイジや兵士たちが脱出していく場面に差しかかった。
「……死傷者がいる様子はありませんか。あの『光』が残した効果は、艦隊の炎上と『風石』とやらの反応の消失のみ……。どうやらサイフラッシュとコスモノヴァを合わせたような性質を持っているようですね」
 『サイフラッシュ』と『コスモノヴァ』。
 どちらもシュウと浅からぬ因縁を持つ、魔装機神サイバスターの武装である。
 『サイフラッシュ』とは、簡単に言うと周囲にエネルギーを放射する武装なのだが、その際に攻撃を行う操者の意思を反映し、ダメージを与える対象を選別することが出来る。
 また『コスモノヴァ』は膨大なエネルギーを敵にぶつけて、次元を歪ませた上であらゆる物質を粉砕するという武装だ。……コレは以前にネオ・グランゾンを破壊した攻撃でもあるので、シュウとしても多少の思い入れがある。
「……………」
 と、昔を懐かしんでいる場合ではない。
「どこにも似たような攻撃はあるものですが……しかし、これを個人の力で放つとは……」
 シュウの見立てでは、あの『光』のエネルギー総量はサイフラッシュやコスモノヴァに劣る。
 だが、アレは明らかに『人間が放つ攻撃』の範疇を逸脱していた。
 このネオ・グランゾンとて、アレをマトモに受ければ『多少のダメージ』を受けてしまうだろう。
 ぜひ一度じっくり研究してみたい所だが……。
「まあ、アレの分析や考察はユーゼス・ゴッツォに任せますか」
 実に都合よく『力の行使者』の近くにいるのだから、せいぜい頑張ってもらおう。
「それにしても……ユーゼス・ゴッツォ、アインスト、ラ・ギアスの物とは異なる魔法、ガンダールヴ、そしてあの『光』……」
 この世界の存在と事象に関して、興味は尽きない。
 加えて、自分を召喚したティファニアが扱う『記憶を消去する魔法』についても気にかかる。
 ユーゼスから受け取った『ハルケギニアの魔法』の研究レポートを見るに、そのような『部分的な記憶消去』の魔法などは存在していない。
「ハルケギニア……面白い世界です。しばらく滞在してみましょう」
 そう言えばユーゼスたちは今、何をやっているのだろうか……と、ネオ・グランゾンのレーダーを確認してみる。レーダーに反応するような兵器はハルケギニアに今のところビートル1機だけしかないので、補足は容易なのだ。
「おや?」
 反応はあった。すぐ近くの上空だ。
 ……しかし、その反応がやけに弱い。
 ネオ・グランゾンの視線を動かして映像でビートルの様子を確認してみると、何だかフラついている。
「何かトラブルでもあったんでしょうかね? やっぱり未調整ですし」
「では、取りあえず連絡してみますか。……これもアフターサービスというやつです」
 そして、シュウはチカに命じてビートルに通信を繋げさせた。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:56:09 ID:ks8axDq2
やっちまった……生身にブラックホールクラスターってひどすぐる支援ww
79ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:57:39 ID:m4ms016z
「ど、どうしたの、ユーゼス? 何だか、凄く顔色が悪いけど……」
「……くっ……、身体に……力が、入らない……?」
 ユーゼスは、猛烈な疲労と脱力感とめまいに襲われていた。
 事が済んで、後は戻るだけ……という段階になって、いきなり何だと言うのだろうか。
(このまま、気絶してしまうわけには……)
 意識を失いでもしたら、ビートルは即座に墜落してしまう。
 だが少しばかり気を張ったところで、この症状に抵抗が出来るとは思えない。
(どうすれば、いい……?)
 遠くなりかけている意識を総動員して対策を考えるが、その思考も鈍っていた。
 やむを得ないのでクロスゲート・パラダイム・システムを使うか、とユーゼスにしては短絡的な結論に行き着きかける。
 その時、ビートルの通信機がピピピ、と電子音を発した。
「……む……?」
 気だるい身体を動かして、通信機を操作するユーゼス。たったそれだけの動作が、今は酷く辛かった。
「……何、だ……?」
《やはりトラブルに見舞われていたようですね、ユーゼス・ゴッツォ》
「ミスタ・シラカワの声……? どういうマジックアイテムなの、これ?」
 いきなりシュウの声が聞こえてきたので驚くエレオノール。だが、彼女の疑問を解消している余裕はユーゼスにはなかった。
「シュウ・シラカワ……、この症状に心当たりは……あるか?」
《……ジェットビートルの通信機は音声のみですので、そちらの様子は分かりません。口頭で説明していただけませんか?》
 そして、ユーゼスは息も絶え絶えに自分の状態を説明した。
 それを聞いたシュウはなるほど、と呟いてユーゼスが陥った状態を分析する。
《典型的なプラーナの使い過ぎですね》
「使い過ぎ、だと……?」
《ええ。未調整のプラーナコンバーターを行使したことにより、必要以上にプラーナを消費してしまったのでしょう。このままでは危険ですよ》
「……ぐ……」
 何でもないことのように言うシュウに対して文句を言おうとしたが、その力もない。
 そんな衰弱しているユーゼスに代わって、隣のエレオノールがシュウと話し始めた。
「危険ですよ、って……どうすればいいのよ!?」
《適切な処置をして、ゆっくりと休息を取れば大丈夫です。……まあ、簡単な応急処置の方法もありますが……》
「その『応急処置』っていうのは、どんなことなの!?」
《それは―――》
(…………っ、ぅ…………)
 エレオノールとユーゼスの会話が、途中で途切れる。
 いや、会話自体は続いているのだが、それを聞き取れなくなったのだ。
 いよいよもって、危なくなってきたらしい。
「ちょ、ちょ、ちょっと、それ以外に方法はないの!?」
《相応の設備がない以上、これしかありません》
「う……、うう〜〜〜……」
 再びエレオノールとシュウの声が聞こえ始めた。どうやらこの難聴の症状は断続的なもののようだ。
 ……と、何か悩んだ様子のエレオノールが、ためらいながら自分をどかしてビートルの操縦癇に触り始めた。
「何を、している……?」
「……いいから、ちょっと黙ってなさい」 
 なぜか顔が赤いが、どうしたのだろうか。
《操縦桿に触りましたね? そこから『自分の中の何か』が吸われていく感覚がするでしょう。それがプラーナです。では、その流れを感じ取り、制御してください》
「簡単に言わないでよ、もう……!」
 シュウから何かのレクチャーを受けるエレオノール。
 そして彼女はそのまま目を閉じて集中を始めると、『これで良いのかしら』などと呟いてユーゼスに向き直った。
「…………?」
「……か、感謝しなさい。貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」
 どこかで聞いたようなセリフである。
 続いて真っ赤な顔で『ちょっと目をつむってなさい』と言われたので、言われた通りに目を閉じていると……。
「んっ……」
「……んむ?」
 唇に柔らかいものが触れる感触と、口内に空気が注がれる感触を同時に感じた。
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 22:57:41 ID:Aw40sJFA
さよならワルド支援
81ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 22:59:55 ID:m4ms016z
「なっ……!!」
 それに真っ先に反応したのは、やられたユーゼスではなく彼の主人であるルイズである。
 『エクスプロージョン』を使用した反動なのか大きな疲労感に襲われ、後ろの座席でグッタリとしていたのだが、いきなりあんな光景を見せられてはグッタリなどしていられない。
「な、なななな、なん、なん、何をしてるんですかっ!? エ、エエエエレオノール姉さまっ!! い、い、いきなりなななな何をっ!!?」
「……応急処置よ、応急処置」
「はあ!?」
 ワケが分からない。
 どういうことだ、と更に姉を問い詰めようとしたら、『遠くの相手の声を伝えるマジックアイテム(ルイズは通信機についての説明を受けていない)』を通してシュウが説明した。
《ユーゼス・ゴッツォはプラーナを大量に消費し、危険な状態にありました。ですので、ミス・エレオノールのプラーナを彼に補給させたのです》
「補給!?」
《弱ったプラーナを補給するには、他者から口移しを行うのが最も手早い方法ですからね》
「……ふむ、確かに少し楽になったな」
 ユーゼスは手を開いたり閉じたりして、自分の身体の状態を確かめた。どうやら先ほどまでよりは良好らしい。
 ……なお、『プラーナを口移しされた』ことに対する動揺は見られなかった。
 それに対して『プラーナを補給した』エレオノールはと言うと、
「ま、まったく……困ったものだわ」
 そう言いながらも、少しボンヤリとしながら唇を指で撫でている。
 ルイズはワナワナと震えながら文句の1つや2つや10や20も言いたいところだったが、『応急処置』という名目がある以上は下手に口出しは出来なかった。
 なので、消極的な抗議を行う。
「…………なんで、姉さまがそれを?」
「だ、だって、あなたは『虚無』の魔法を使って疲れていたでしょう? そんな様子の妹に、応急処置なんて難しいことはさせられないわ」
「……………」
 ジトーっと姉を軽く睨むルイズ。
 そのままわずかな時間が流れると、ユーゼスがある異変に気付いた。
「……ミス・ヴァリエールの顔色が悪くなっているが」
「え?」
 紅潮しているから少し分かりにくいが、確かに顔色が悪い。
《自分のプラーナをあなたに分け与えたのですからね。彼女のプラーナが不足するのは当然でしょう》
「……では、近くの安全な場所にビートルを着陸させるぞ。私に対しての本格的な治療も受けたいからな」
《ならば私も近くにいますので、そちらと合流しますよ》
 シュウの言葉を聞いて、ビートルを動かすユーゼス。
 ……このジェットビートルのこれからの取り扱いや、プラーナコンバーターの調整、今後のトリステインとアルビオンの動向、そして主人の『虚無』など、問題は山積みだ。
 しかし、取りあえずの問題は……。
 恥ずかしそうにチラチラとこちらに向けられるエレオノールの視線と、射殺さんばかりに向けられてくるルイズの視線の、相反する2つの視線に対してどのように対応するかである。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:00:06 ID:BKb2QNIs
プラーナ補給イベントキター支援w
83ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/23(金) 23:00:39 ID:m4ms016z
 以上です。

 さて、色々とやっちまいましたが、やはり私的には何よりも『プラーナの口移し』ですね。
 『これをやりたいがために動力源にプラーナコンバーターを採用した』と言っても、決して過言ではありませんww
 しかし、SFCの魔装機神をやってた頃は『弱ったプラーナを補給するには、口移しが一番手っ取り早かったから……』などという文章だけで興奮していたとは、私もウブでしたなぁ。

 アニエスに関しては取りあえず存在のアピール、というところです。
 武器屋でデルフを買う時にもチラッと登場はしているのですが、やはり本格的に登場する5巻以降にならないと描写は難しいですね。

 ワルドは……、合掌、とだけ言っておきますww
 ワームスマッシャーについては、ああいう使い方も出来るんじゃないかな、という半分私のオリジナルみたいな物です。
 ……何だかオリジナルな要素が多いですな、私。

 それでは、支援ありがとうございました。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:00:59 ID:A/AOLZvG
げに素晴らしきトライアングル支援
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:01:39 ID:A/AOLZvG
スマン、もう投下終わってた
プラーナコンバータ採用の理由が環境に配慮してではなくキスのためと申したか。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:04:38 ID:j+1zWk+R
つまり戦士階級になれば嫁さんを二人までゲットできるという法律が。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:04:52 ID:PpFz2i39
GJです
口移しで勇気をあげちゃったな
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:04:56 ID:lMswQ/gz
んな理由でプラーナコンバータ使ったんかいww
そしてシュウ様、情け容赦なさすぎです。
今回も相変わらず面白かったですわ〜
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:06:00 ID:Aw40sJFA
GJでした
プラーナコンバーターを採用した理由にこれ以上ないぐらい納得w
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:06:48 ID:Ba6SnZU/
つまり浪漫はいかなる事情よりも優先されるんですね
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:09:41 ID:D0Fy/Ni8
乙でしたー
まあ、ネオ・グランゾンですからコレくらいの小技が出来てもおかしくないと思いますよー。
プラーナの口移しは最初聞いたとき「もっとエロいネタにできるだろう!」と素で思ってしまったエロ餓鬼でしたいぇー。
92ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:11:32 ID:T4WueSv/
ラスボスの人相変わらずGJでした。
しかし、なんでいつも投下する前に面白いシリーズが投下されているんだ?

投下予告が無いようなら23:15からシーン10の扉を開きます。
今回は27kbの11レス+用語集&後書きの予定なので、さるさん食らったら代理お願いします。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:11:39 ID:myO8/B4o
ネオ・グランゾンじゃなにやらかしてもしかたないw
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:12:11 ID:Om1pueDF
乙したー。

ワルドは閃く暇もなく事象地平の彼方へ消え去っちゃったかー。
まあアレだ、よそ様あんまり巻き込まんだだけマシな最期かなぁ。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:13:32 ID:JBEE2F7Y
ラスボスの人GJ!!
ワルドww成仏しろよw
あとなんというトライアングラーwwGJ
次回に超wktk。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:14:54 ID:m4ms016z
ゴーストステップの方、支援です。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:14:56 ID:UEOqmONJ
wikiに上がってた雪と雪風を読んで、遂にやってくれた人にお礼を言いたくて着ました。
gj

そして、ラスボスさん、エレオノールが、エレオノールがかわいいよぉ!!
98ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:15:15 ID:T4WueSv/
大丈夫そうなので、運命の扉を開きます。

樵小屋の中は埃が積もっており、お世辞にも片付いているとは言えない状態だった。
そんな中、一際目を引く、豪奢な箱がテーブルの上に置かれている。
ヒューが無造作に近付いてその箱をぞんざいに開けると、そこには学院において<破壊の杖>と呼ばれているモノが入って
いた。
「なるほど」と呟き。箱の蓋を再び閉じると、ヒューは横にある椅子の上の埃を払って腰を下ろす。
ロングビルはそれを見て訝しげな顔になる、確認の為に自分を呼んだのではないのか?

「とりあえず、そちらの椅子に腰掛けてくれないかい?ミス」
「何故です?<破壊の杖>があったのなら一刻も早く撤収するべきでしょう?貴方が平民だというのならなおさらです!」
「ほう、俺のような平民の事を気にかけてくれる?」
「あたりまえでしょう!貴方にも家族がいるはずです、使い魔になってしまったとはいえ、その家族にも会えないまま死ん
でしまうなんて、あって良いわけがないでしょう!」
「いや、これは御主人サマとその友人以外には言ってないんだがね、俺に家族はいないからそこら辺は気にしないでくれ。
しかし、まぁ意外な動機だったな、まさか“家族”とは。」

そう口にするとヒューは顔に付いていた仮面を取り去った。
ロングビルはその仮面の下から出てきた目をみて憤然とした、笑っているのだ。

「な、何が可笑しいんですか!家族がいるかもしれなかったら、と心配しただけでしょう。」
「いや、済まない。本当に失礼だった。謝るよ“ミス・フーケ”」
「…え?」
「まぁ、座ってくれ。手荒なマネはなるべくしたくない、疲れるからな。」



ゴーストステップ・ゼロ シーン10 “真実”

    シーンカード:カリスマ(啓蒙/宗教、あるいは世俗的権力の介入。権力。罪の恩赦。)




何かが抜けたのか。埃も払わずに力なく、すとんと椅子に腰掛けた目の前のフーケは、ヒューに向かって真正面から目を合
わせた。
その姿は<“弥勒 MI−6”多機能サングラス>と結線した<ポケットロン>から、ルイズが持つ<ウォッチャー>へと
転送されている。

「まず、先に謝罪しておこう。君が盗賊“土くれ”のフーケだという事は宝物庫で大体推察していた。」
「私が?何故ですか?」
「あの時、もう一つ君達に話していない情報があった≪学院関係者、しかも学院長の動向を知っている人物≫っていう一言
がね。」
「あら、何故そう思われたんです?。良ければ一つ教えていただけません?」

不思議そうにヒューに聞き返す、未だ学院秘書の仮面は被ったままである。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:17:22 ID:m4ms016z
支援
100ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:17:29 ID:T4WueSv/
「タイミングの問題と現場周辺の足跡、だよ。」
「タイミングと足跡?」
「ああ、タイミングはルイズお嬢さんの魔法だ。
 ルイズお嬢さんの魔法で『固定化』が解除された事。こいつはあの日、学院にいた人間にしか知りえない事実だ、学院内
にいる人間から何らかの連絡が外部に行ったとしても、あのタイミングでの襲撃は難しいだろうな。
 決定的だったのは『固定化』解除の難易度だ、学院長でも難しいと言っていたじゃないか?ならトライアングルの君なら
もうお手上げ状態だったはずだ。
 そんな時、正体不明の『爆発』で『固定化』の解除に加え壁にヒビまで入った、この機会を逃したらもう無理だろう、次は
学院の威信をかけて、宝物庫は今まで以上の強力な処置を受ける。
 となると、もうあまり時間は無い、大体昨日の夜から今日の未明がリミットってところだ。怪しまれない為に一旦、学院に
戻らないとならないからな。
 少なくとも学院長が戻ったら彼の指揮の元、王宮から来たメイジで『固定化』がかかる可能性も捨てきれない。だから学
院長が帰る前に済ませる必要があった。」

ヒューの言葉に内心舌打ちをしながら聞く。確かにその通りだ、ヴァリエールの小娘の失敗魔法がなかったら、そもそも盗
む事さえ不可能だった。その上、翌日以降になってしまったら、以前以上に犯行は不可能に近くなっただろう。

「じゃあ足跡は?」
「こいつはもっと簡単。
 衛兵に話を聞いた所、『ゴーレム』はいきなり出てきたって話だ。使用したのは宝物庫前の広場の土、ミセス・シュヴル
ーズに聞いた話じゃあ『ゴーレム』の作成は離れていると難しいっていう話じゃないか?
 で、『ゴーレム』が出てきた辺りの茂みを探したら何と“学院内から続いている足跡”を見つけたのさ。」
「別におかしくないんじゃありません?」
「“戻る足跡”が無くても?」
「『フライ』か『レビテーション』でも使ったんでしょう。」
「だったらいいんだけど、“戻らなかった足跡”と“同じ足跡が宝物庫にもあった”ものでね、この足跡の主は学院内に生
活の場を有する人物だと分かったんだよ。」

ロングビルは、その言葉にほくそえんだ。
やっとドジを踏んでくれた!足跡なんてどいつもこいつも同じだろうに。こいつは自分で墓穴を掘ったのだ。

「どうして同じ足跡だと?宝物庫には色んな人の足跡がありましたよ?」
「正確にはミスタ・ギトーとミセス・シュヴルーズだな。
 彼らの足跡は一致しなかった、基本的に確認するのは壁の穴から<破壊の杖>が置かれた棚にまで続く足跡だけだったか
らな、あちこち動き回らなかった分、特定は楽だったよ。ちなみに足跡はこれで確認した。」

そう言うとヒューは、懐から足跡の画像データを表示しているウィンドウを展開した<ポケットロン>をフーケに見せる。
画像は宝物庫前の茂みと宝物庫内、2つの足跡を表示していた。

「そ、それは…。」
「こいつも俺が持っている“便利な道具”の一つ。こうして画像を記録して確認したり比較したりできる、色々と役に立つ
道具さ。」

そこまでヒューの推理を青い顔で聞いていたロングビル…フーケは、ヒューに尋ねるように聞いて来た。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:19:10 ID:wrq4CNfe
おマチさん涙目支援
102ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:19:32 ID:T4WueSv/
「そう、そこまで分かっているのならもう何も言わない。弁明も釈明も無駄だろう?」
「いや、どうだろうな。俺は別にこっちの法に関わる人間じゃないから…、量刑とか分からないんだが、普通はどうなんだ?」
「アタシにそれを聞くのかい?貴族の財産を盗んだんだしね、普通は死刑さ。」
「なんとも極端な事だな。」
「へぇ、アンタの所は違うのかい?」

ここ、ハルケギニアにおける常識を“極端”と断じた、ヒューの故郷に興味を覚え、質問を返す。

「基本的に死刑は重犯罪(大規模な破壊行為や計画的で悪質な殺人や事件)や、更正の余地がないとされた相手に対してしか
適用はされない、筈だ。少なくとも窃盗では難しいな。」
「貴族相手でもかい?」
「近い階層の連中はいるけど、基本的に貴族はいない。いたとしてもそう変わらないし、反対にそいつらの不正が見つかって
訴えられる事がある。」
「どうやって?誰が訴えるんだい?」
「そりゃあ、犯罪の摘発をしている連中さ。窃盗の立件の最中に被害者の不正が見つかったら、その不正を別の事件として扱
うんだ。」
「そりゃあ、痛快だね!」

からからと明朗に笑うフーケ、そんな彼女をヒューは無表情に見ている。

「そうだ、いくつか聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「なんだい、支障が無かったら教えてあげようじゃないか。」
「目的は?」

簡潔に尋ねる、その言葉に対してフーケは足を組みながら笑い、答える。

「金さ、決まってるだろう。ああ、後は悪徳貴族共が慌てふためく姿を見たいっていうのもあるかな?」
「学院秘書の給料では足りなかった?」
「あ、ああ!足りないね!いくらあったって足りゃしない!こう見えたってアタシは金遣いが荒いんだ!悪かったね!」
「の割りに服は質素だな。」
「賭け事で日頃からスッてるのさ。」
「なるほど、ギャンブルジャンキーという訳か。」
「ギャン…なんだって?」
「賭け事中毒の事だ、中々厄介らしいな。」
「あ、ああそうともさ!」
「学園長の話では、真面目そうに聞こえたんだが。」
「どういう意味だい。」

たかが金の使い道で、チクチクと尋ねてくるヒューに、不快感もあらわにして聞き返す。

「日頃からスッていると言っている割りに、勤務は真面目な様だったからさ。学院長は確か≪今日は珍しく遅刻した≫、と
言っていたな?という事は日頃は遅刻していない。いや、出勤時刻は学院長よりも早い位だったろう。」
「う。」
「さて、仕事が終わって王都だか近在の村にある賭場に行き。平民向けの安いレートで遊びながら夜中まで負け続け、学院
に戻って翌朝早く秘書の仕事に就く、…中々ハードだ。俺だったら一月も経たずにダウンは必至だな。」
「うう。」
「調べれば分かる事だがな、君が何処に金を送っていたとか。」
「!」

フーケの肩が揺れる、ヒューは一つ溜息をつくと言葉を続けた。

「君は俺を説得して外に出ようとする時“家族”と口にしたろう、“主人”や“報酬”では無く“家族”と。なら君には自
らを犠牲にしても守りたい“家族”がいるんじゃないか?
 恐らくその“家族”は普通の生活ができない状態なんだろう、社会的か肉体的か…その辺ははっきりしないが、とにかく
人々の中に入って生活するには厄介な状況にあると推察する。
 さて、話してくれないか?君が何処の誰で、何故こんな事になったのか。少なくとも俺は…、俺や主人達はそこまで悪い人
間じゃあないつもりだ、できる事があれば手を貸す気もある、少なくとも俺はな。」

ヒューのその言葉にフーケは瞑目した後、ゆっくりと溜息をついて目蓋を開く。
そこには学院秘書のミス・ロングビルも、怪盗“土くれ”のフーケもいなかった。そこには1人の誇り高い令嬢がいた。
103ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:22:45 ID:T4WueSv/
そうしてフーケは、いやマチルダ・オブ・サウスゴータは語り始める。
隣国“白の国”アルビオンにおいて闇へと葬られた歴史、とある王子と異種族の娘へと訪れた悲劇を。

「アタシ、いえ私の名はマチルダ。マチルダ・オブ・サウスゴータ。
 “白の国”アルビオンの交通の要所、サウスゴータ地方の太守を勤めていたサウスゴータ家の娘です。
 …もうありませんけどね、当時アルビオンにはモード大公という方がおられました、王の弟で財務監督官を担当されてい
た方です。
 ある時、王からその大公に命が下りました≪愛妾とその子供を追放しろ≫と。公は、それはもうその母子を愛しておいでで
した。追放などしたら、その2人が死んでしまう事は想像に難くなかった事でしょう。
 公は王に翻意を促しましたが、聞き入れてもらえず投獄されて殺されました、母子は我が家が匿っていましたがそれも程な
く見つかってしまい。
 残されたのは娘だけした、我が家も家名を取り潰され、今は私とほんの僅かな郎党が平民として生きているのが現状です。」
「君はその娘を恨んで?」
「馬鹿言わないで頂戴!その娘を恨んだって…、そりゃ恨んだ時もありました、なんで他人の家族のせいで私の両親がって。
 けどね、それ以上に大切で愛しかった。裏の汚れた仕事をしているこんな私にも微笑んでくれる、そんな心根がね…本当
に愛しかった。あの娘はね、目の前で母親を殺されたのにその犯人達を許す程…優しいんですよ。
 あの娘の母親の死に様はそりゃあ酷いものでした、女としてあんな最後だけは迎えたくないと思う位酷かった…。あれが
同じ人間のする事かと思う位、それでも誇りあるメイジ…騎士かと思える程。
 そういう風に母親が殺される様子を見ていたのに…あの娘はっ。」

自身の境遇、そして保護している少女の、生い立ちと人となりをヒューに語ったマチルダは、涙に濡れた目尻を指で拭うと、
再びヒューに向き直る。

「なるほど、では仕送りは…」
「ええ、あの娘と営んでいる孤児院にね。」
「孤児院?」
「死んでしまった郎党の子供や貴族の暴力で親を殺された子供、口減らしに捨てられた子供、色々です。
 さ、これで全部。
 官憲に突き出すなり何なり好きになさい、けど少なくとも約束は守って頂戴。」

フーケ…いや、マチルダはせいせいしたとでも言いそうな表情でヒューに笑いかけた。
その笑顔はあくまでも澄んでいた。しかし、それは覚悟し諦観した者の笑顔だった。おそらく、話の中に出ていた母親もこの
ような顔で死んでいったのだろう。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:24:29 ID:vCmEydIa
《真実》はもう使ったし、これはただの交渉かな 支援
105ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:25:18 ID:T4WueSv/
上空、シルフィードの上は沈黙に満たされていた、<ウォッチャー>は最早、映像も音声も発していない、ただ沈黙だけが
その場を支配している。
ルイズが困惑したように2人を見る、キュルケも溜息をつきながら2人を見る、タバサはじっと2人を見ていた。
意を決したルイズが、オズオズと2人に話しかける。

「どう、する?」
「私はフーケはいなかったに入れるわ。」
「ちょ、キュルケ?わかって言ってるの?多分その“娘”って!」
「それがどうかした?ルイズ、貴女私が誰か分かっていないようね!
 わたしはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ!
 情熱と愛と恋が本分のツェルプストーの娘なの!それがこれ程の情熱を!命を掛けた愛を!種を越えた恋を見せられて!
 その結晶を守ろうという情熱の持ち主を殺させると思って!?いいえありえないわ!あろうはずがないの!
 我が家の情熱はね、例え仇敵の恋人であろうとも燃え上がったら奪わずにはいられない程激しいものなのよ!
 貴女が官憲に突き出そうとか思ってるのなら、私はマチルダを奪ってゲルマニアに行くまでよ!」

キュルケが燃えていた、燃え盛っていた。もう何というかシルフィードの上から飛び出しそうな勢いである。

「私もいなかった方に入れる。」
「タバサァ?」

簡潔に言葉を紡いだタバサに、ルイズが驚いた声を上げ、キュルケが抱きつく。

「やーん、さっすがタバサ!冷血なヴァリエールとは大違いだわ!」
「ちょっと!だれが冷血よ!私だって公と母の仲は羨ましかったし、娘さんの純粋さには感激したわよ!」
「じゃあ何が問題なのよ?」
「だって、エ、エル」
「そこはこの際、問題無い。」
「どういう事よ?」
「その母親の覚悟に報いたい。」
「ううっ」

確かに母親の死に様を聞いた時には憤りながらも鼻の奥がツンと来た、だって娘を隠したのは恐らくその母親なのだ。
母親は自分に与えられる苦痛を、女として到底受け入れがたい苦痛を我慢して娘を隠し通したに違いないのだ。
先住を使えば殺せたのに、恐らく無抵抗で、理不尽な暴行に耐えて自分の娘を守りきったのだ。そこまで考えるとどうしても
非情な選択はできなかった。
ルイズは敬虔なブリミル教の信者である、ならばこそ“エ”から始まる先住魔法を使う亜人は殲滅の対象だった。
しかし、マチルダ・オブ・サウスゴータが語った言葉は真実だろう、その中に確実にあった愛や想いというものはルイズの
中にある純粋な少女としての心を刺激していた、この愛や想いは自分が家族から受け取ったモノと同じだと確信していたか
らだ、ここで否定したら家族の愛を否定する事に繋がらないか?それはして良い事なのかと煩悶する。
そんな時、“ディアーナ”の声が響いた。

【マスター・ルイズ。ヒュー・スペンサーから連絡が入っておりますがいかがしますか?】
106ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:28:04 ID:T4WueSv/
その時さっきのヒューが言った言葉が脳裏に蘇った。

(俺や主人達はそこまで悪い人間じゃあないつもりだ)

何というか、腹が立った。使い魔にいいように使われているという事に、今更ながらに気が付いたのだ。
しかし、彼が言葉にした事は事実だし、自分も人の善意というものは信じたいと思っている。
ならばこそ、出る言葉。出すべき結論は決まっていた。

「つないで頂戴。」
【了解しました。】
【結論は出たかい?】

地上にいるヒューの言葉が空にいるルイズに届く。

「ええ」
【じゃあ、聞かせてもらおうか。】
「じゃあ、タバサからどうぞ。」
「フーケは<破壊の杖>を放置して逃げていた。」

ひどく簡潔にタバサが答える。

「次はキュルケね。」
「ええと、ミス・サウスゴータ。
 とても羨ましく悲しいお話でしたわ、けど、彼女が末永く幸せに暮して行ければハッピーエンドです。
 ちなみに私はハッピーエンドが大好きなので、何かあったら相談してくださいな。」

キュルケはどこか夢見るように、羨ましそうに、<ウォッチャー>の向こうにいる、マチルダに話しかけた。
そしてルイズは…。

「最後に私からだけど、とっても悩んだし腹も立ったわ。恨むわよヒュー」
【吹っ切れたみたいだけどな】
「アンタなに笑ってるの、怒るわよ。
 それはともかく、私の結論だけど。
 フーケって誰?私ってば最近、生意気な使い魔のせいで忘れっぽくなってるのよ。
 これはきっとあれね、アフタヌーンティを摂れと始祖ブリミルが仰っているのよ、という訳で私達は先に帰ります。
 ミス・ロングビルをちゃんと学院まで送り届けるように。じゃ。」


視線を感じて2人を見ると、どちらも笑いを必死で殺していた。タバサは背を向けていたが、両肩が小刻みに震えているの
で笑いを堪えているのが丸分かりである。

「あ、貴女ってば本当に見ていてあきないわね。」
「うっ、うるさい!うるさい!うるさい!いいからさっさと学院に向かいなさい!」
「あっはっははははは、分かってるって。さ、さあタバサ、アフタヌーンティが私達を待っているわ、学院に帰りましょ。」
「っつ、了っ解。くく。」

顔を真っ赤にした少女と笑い転げる少女、笑いを堪える少女を乗せて風竜は魔法学院へと飛び去って行った。
107ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:30:51 ID:T4WueSv/
樵小屋の外は中と違い、一種不思議な感じを受けた。
長年溜め続けた言葉を吐き出したからか、吸い込む空気も一味違う。背後を見ると<破壊の杖>を箱ごと持っている男が立
っていた。
よくよく考えてみれば、変な男である。樵小屋に入る時には殺されるかと覚悟していたのに、最終的には拷問されても話す
まいと思っていた事をすんなりと喋ってしまった。
あの娘に対する恨み言さえ(まぁ、恨む心よりも愛しいと想う気持が勝っていたのは嬉しい事実だ)言ってしまったのは意
外だったが、今思えばあって当たり前な感情だろう。
あの男とヴァリエールの小娘が持っているブレスレットが通じていて、話ができる様になっていた事は忘れていたが、この
男の事だ、まだ隠し玉はあるのだろうが、これからは何度も顔を合せる事になるのだ、その内色々と聞ける時もあるだろう。
不意におかしくなり笑みがこぼれる。

「で、これからアタシは学院秘書に返り咲きって事でいいのかい?」
「そこは、君が好きにするといい。別の仕事に就くも、どこぞの貴族の花嫁になって幸せに暮すも自由さ。
 ただ、フーケにはいなくなってもらって、ある程度は秘書を続けてくれると俺が助かるかな?」
「どういう事だい?」
「フーケ事件のゴタゴタが収まらない内にいなくなったら色々と勘ぐられるだろう?
 それに、娘さんを放って死ぬわけにもいかないだろうしな。」

ヒューのアドバイスに「娘じゃなくて妹のようなもんだ」と返しながら、一抹の不安を口にする。

「ああ、そういう事かい。分かっているさ、今すぐには辞めないよ。幸い給金だけは良いからね。
 しかし、戻れるかねぇ。」
「ん?」
「あの爺さんさ。多分、何気に気付いてるんじゃないかと思ってるんだけどね。
 それに宝物庫にはコルベールもいたし、もう報告が行ってるんじゃないのかい?」
「ああ、それなら大丈夫だろう。」
「どうしてさ。」
「有能な秘書はそうそう手に入らないからな、怠ける事もできなくなるから簡単に手放さないだろうさ。
 それに、報酬は払ってもらうしな。」
「ああ、そういう事かい。
 いや、とんだお人よしかと思ったら中々どうして一端の悪党じゃないか。」

静かな森の中に3つの名前を持つ女性の笑い声が響き渡った。



学院へと馬車を進める中、マチルダがふと気になったのかヒューに話しかけてくる。

「ねぇ、少し聞きたいんだけど。」
「ん?」
「アンタ、“それ”が<破壊の杖>だと一目見て分かったのかい?」
「これの事か…、ああ分かった。まさかこんな物がお宝になっているとは思ってなかったけどな。」
「ふぅん。じゃあ、どんな物なのか知ってるって訳だ。」
「知りたいか?」
「教えてくれるのならね。」
「別に減るものじゃないし、教える分には構わないんだが条件がある。」
「条件?」
「他言無用ってやつ。」
「別に言いふらすつもりはないよ。」

軽い返答だったが、特に問題はないだろうと感じてヒューは口を開く。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:31:08 ID:0h0SRm6s
GJ
このシュウって男は利用されそうになっただけで人を殺す様な奴なのかw
109ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:33:04 ID:T4WueSv/
「君には色々と見せてるから今更だったな。ところで質問なんだが、ここら辺の飛び道具って魔法以外だと、どんなものが
ある?」
「急に変な事を聞いて来るね、つまり平民でも使える物って事か。…持って運べる物となると銃や弓、フネとかには大砲が
積まれているけど、それがどうかしたのかい?」
「信じがたいかもしれないけどな、こいつは携帯型の大砲だ。名前は<ラケッテン・パンツァー・グレネード>。
 俺の故郷じゃあかなり旧式の部類に入るタイプの武器だけど間違いない。」
「それが大砲?」
「信じられないかい?」
「そうだねぇ、アンタには色々と騙されてたからね。
 けどま、信じるさ。学院長の体験談もあることだしね。」
「言っておくが嘘はついていない。」
「否定も訂正もしなかったけどね。」

2人は横目でお互いを見た後、不意に苦笑して会話を続ける。

「そういえば俺からも疑問があるんだが?」
「なんだい、話す事はもう何もないよ?」
「いや、聞きたい事は動機とかそういったものじゃないんだ。
 何故、潜伏先の情報を流した?どこかの地中にでも隠しておいて、ほとぼりが冷めた頃を見計らって売り捌けばいいのに。
 わざわざ危険な橋を渡る必要は感じないんだが。」

ヒューにとってこれだけが分からない不可解な謎だった。犯人の人物像も身体的特徴も、ある程度分かった彼にとって、これ
だけは判然としなかったのだ。

「アンタがいた時点でほとんど失敗だったんだけどね…、なんだって足跡だけであそこまで分かるのさ。」
「俺の故郷には色んな学問があってだな、その中には犯罪学とか統計学…そういった研究をしている連中がいるんだよ。」
「呆れたね、どんな暇人だい。」
「そう言うな、研究している連中の中には犯罪で人生狂ったヤツとかもいるんだ。」
「…悪かったね。そうそう、危険な橋を渡った理由だったか。
 簡単さ、盗んだはいいけど使い方が分からなかった…それだけだよ。
 色々試したんだけど、結局何にも分からなかった、分かったのはそいつに『固定化』が掛かっている事と、普通に振っても
何も起こらない事。
 使い方が分からなけりゃ売りモノにもならないからね、学院の連中ならもしかして知っているヤツが奪還にくるかも…、
なんて思ったのさ。」

マチルダの説明を聞いたヒューは、呆れたような安堵したような、曰く言いがたい溜め息を吐いた。

「なるほどね。とりあえずは幸運だったって事か。」
「何が幸運だい。とんだ茶番に嵌められて、赤っ恥をかいちまったよ。」
「そっちの幸運じゃない。」
「何か他にあるのかい?」
「さっき言っただろう。≪故郷にある携帯型の大砲だ≫って。こいつは手順さえふめば誰だって使える代物なんだ、もし何
かの偶然で使えてしまって、中にある大砲の弾が君の目の前で炸裂したら?」
「…したら、どうなったんだい?」
「ま、良くて重症。普通に考えれば死ぬだろうね。」
「なるほど、そいつは幸運だ。」


馬車は魔法学院が見える所まで来ていた、先に帰っていたルイズ達から報告があった為か、門の所には学院長を始めとした
教師達がヒューとロングビルを待っていた。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:33:12 ID:Mpmn1z9D
殺すってより原子の塵も残さない感じ
111108:2009/01/23(金) 23:33:57 ID:0h0SRm6s
割り込みすんません支援
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:33:57 ID:j+1zWk+R
シュウ・シラカワ。
自由を心より愛する男。それを妨げるもの、彼を利用するものは
相手が本物の神であろうと容赦しない男。支援。
113ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:35:19 ID:T4WueSv/
出迎えに来た教師や衛兵達の、喜びの声や賞賛の声に包まれた後、ヒューは3人の少女達と一緒に学院長室に来ていた。
学院長室には学院長であるオスマンと何故かコルベール教諭がいる。ちなみにロングビルは仕事があるという事で席を外し
ていた。

「ご苦労じゃったな、フーケは<破壊の杖>を放置したまま逃亡していたとはいえ、これを回収できたのは幸いじゃ。」
「いえ、ほとんどの事は使い魔がやってしまいましたから。」
「謙遜する事は無いぞ、ミス・ヴァリエール。
 君らはウチの腰抜け教師共より、よほど貴族らしい心根を持っておるのじゃから、ワシは君らがこの任務に志願してくれ
た事、その事こそが最も嬉しいんじゃよ。
 流石にフーケを取り逃がしたので公的な報酬は出せんが、ワシのポケットマネーから幾許かの報酬を出そう。
 それに今日は“フリッグの舞踏会”じゃ、日頃の憂さを晴らして存分に楽しんできなさい。」
「まあっ!そうでしたわ!フーケの事件ですっかり忘れておりました。行くわよタバサ!ルイズ!私がお化粧手伝ってあげ
るから、ほら早く!」
「興味ない。」
「ちょ!ちょっとキュルケ!オールド・オスマンの御前よ!失礼でしょう。」
「あ、あら。これは失礼いたしましたオールド・オスマン、ではこれにて。」
「よいよい。若いモンはそれ位、元気な方が微笑ましいというものじゃ。
 それから、ミス・ヴァリエール。すまんがミスタ・スペンサーには報酬の件で話があるでな、少々お借りするぞ。」
「は、はい。ヒューくれぐれも失礼のないようにね。」
「分かってるってルイズお嬢さん、せいぜい楽しんできてくれ。」

舞踏会と聞いて顔を輝かせたキュルケはルイズとタバサを引っ張ると、2人を引き摺って学院長室から退室していった。

姦しい少女達が去って行った学院長室は先程までと違い、痛い程の沈黙に支配された。
ヒューが部屋の隅にある姿見で死角を確認すると、杖を構えているコルベールを確認できる。学院長を見るとこちらは先程、
少女達に向けていた表情と同じものをヒューに向けていた。
なるほど、マチルダが言う様に喰えない爺さんだ。

「さて、ミスタ・スペンサー。君への報酬の話じゃが…。」
「おや、フーケの捕縛はならなかったんだからそれは無いのでは?」
「…ミスタ・スペンサーもう良かろう、お互いこういった会話は面倒じゃ。」


オスマンの面倒そうな言葉にニヤリと笑ったヒューは、ソファの背にどっかと身体を預ける。
それを見たオスマンも一つ深い溜息をつくと、ヒューの背後にいるコルベールに頷いてみせた。
ヒューの背後にいたコルベールは、未だ警戒しながらもオスマンとヒューの間にあるソファに浅く腰掛ける。
114ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/23(金) 23:37:32 ID:T4WueSv/
「やれやれ、寿命が縮んだわい。
 さて、お主に聞きたいのはミス・ロングビル…いやさ“土くれ”のフーケの事についてじゃ。
 何故、捕縛せずに連れ帰った?」
「一つ質問がある、学院長。」
「何かね。」
「彼女がフーケだとしたら、貴方はどうするつもりだ?」
「ヒュー君、彼女は咎人だ。ならばこそ官憲に突き出すべきだろう。」
「証拠は何もないぞ?」
「な、宝物庫で君が言ったではありませんか!あの証明の数々が…」

慌てるように言い募るコルベールに、ヒューは悪戯っぽい笑いを浮かべながら、彼が言うところの“証明”をひっくり返す。

「おいおい、コルベールの旦那。耄碌するにはまだ少しばかり早いぞ、使い魔の戯言を真に受けるなんてどうかしてるん
じゃないか?」
「む。」

そう、宝物庫でヒューが語った数々の言葉は所詮N◎VAにおける犯罪学や数々の鑑定法から導き出したものに過ぎない、
いかに説得力に満ちようとも、いかに正しかろうとも、それを確認・証明するだけの知識がこのハルケギニアには無い。
ならばこそ宝物庫にあった足跡はN◎VAならともかく、このハルケギニアでは証拠たり得ないのだ。

「ふっ、ふぁっはっはっは!そうじゃな!これはミス・ロングビルに失礼な事を言うてしもうた!
 確かに、確たる証拠も、フーケの顔が彼女だという証言も無かった!いや全く!この年まで生きておるせいでちと耄碌し
たようじゃな。」
「オ、オールド・オスマン?何を!」
「しょうがなかろう?君が言うとった証拠とやらも、結局本人から否定されてしもうた。ならこれはフーケに逃げられた、
という事じゃ。」
「そんな…」

がっくりと肩を落とすコルベールを横目で見ながら、ヒューが問いかける。

「なあ、コルベールの旦那、一つ聞きたいんだが。」
「何だねヒュー君。」
「ここいらでは、咎人は赦されてはいけないのかい?」
「そ、それは!」

この時コルベールの脳裏には自分が築き上げた炎の地獄があった。ヒューの脳裏にも彼の地獄があった。
そう、フーケ以上の大罪を犯した己が何様のつもりだと、過去がコルベールのココロを切り刻む。

「分かりません…、他人は赦すのかもしれませんが、罪は己を常に刻むでしょう。」
「すまんね、悪い事を聞いた。
 ただ、これだけは言いたいのさ、フーケが捕まって死んでしまうと、不幸になる人がいるかもしれない、それでも突き出す
べきなのか?
 それに、フーケの被害者は、本当に何の罪も無い善良な人間なのか?」
「それは…。」

「暗くなる話はその辺で止めないかね。」

うんざりした顔でオスマンが2人の会話に割り込む。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:39:41 ID:D0Fy/Ni8
軽妙なやり取りが良い感じ支援

>>108
>このシュウって男は利用されそうになっただけで人を殺す様な奴なのかw
Exactly(その通りでございます)
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:42:32 ID:m4ms016z
 じっくりとした描写ですな支援。

 >>108
 えーと、かなり大雑把な説明になりますが、コレをご覧ください。

 ttp://www35.atwiki.jp/anozero/pages/6158.html
117ゴーストステップ・ゼロ(代理):2009/01/23(金) 23:45:34 ID:vCmEydIa
「そうだな、という事でフーケの捕縛はできなかった。俺は報酬が貰えなくて残念だったがしょうがないさ。」

オスマンが2人の会話を遮った事をいいタイミングと判断したのか、ヒューがソファから立ち上がる。

「まぁ、待ちたまえ。流石にそれはあんまりじゃからな、ワシから一つ教える事がある。」
「何だい?学院長。」
「お主の左手についておるルーンの事よ。そいつはな“ガンダールヴ”のルーン、伝説の使い魔の証じゃ。」
「へぇ、伝説って事は何か謂れがあるんだろう?」
「うむ、“ガンダールヴ”を従えていたのは始祖ブリミルという話じゃ。伝説ではあらゆる武器を使って主を守り通したと
されておる。」
「なるほど、カブトなら欲しがりそうだな。」
「カブト?甲冑がどうかしたかね?」
「ん?ああ、そうじゃない、俺の故郷では人を守る事に長けた連中の事をカブトっていうのさ。」
「ほほう、なるほどのう。」
「話は終わりだな?じゃあ腹も減ったし、これで失礼させてもらうよ。」
「うむ、これからもミス・ヴァリエールの事を守ってやってくれるかの。」
「そいつが“使い魔”の仕事っていうのならやるまでさ。じゃあな、セクハラも程々にしとけよ学院長。」

そこまで言うと、ヒューは学院長室から退室して行った。

「やれやれ、何という事じゃ、最初から最後まで彼の掌の上ということか。」
「申し訳ありませんオールド・オスマン、私さえ付いていっていれば。」
「よい、恐らくもうフーケが出る事も無かろうからな。」
「どういう事でしょうか。」
「何がしかの必要があってフーケは盗みを働いておったという事じゃよ。その証拠にほれ、昨年はほとんど王都では出てお
らんだろう。」
「確かに…。」
「ならばちゃんと給金を出しておれば不安はあるまい、彼も2度目は赦さぬだろうしな。
 何より有能な秘書じゃからな、手放すには惜しい人材じゃよ。上手くすれば教師にもなってもらえるかもしれんし。
 それにのうミスタ・コルベール、ワシは杖に誓ってしまったからの≪ワシが出来うる限り、君の希望を叶える≫、とな。」

そこまで言い募った後、オスマンは急に黙り込む。
その様子を訝しく思ったコルベールが、オスマンに伺いを立てると、返ってきたのは予想もしない言葉だった。

「オールド・オスマン、どうかされましたか?」
「いや、先程のミスタ・スペンサーは、何かおかしくなかったかね?」
「何か…、といいますと。」
「うむ、“伝説の使い魔”などという言葉を出したにも関わらず、反応があまりにも淡白すぎたような。」
「スクエアメイジである以上、武器の有効性にあまり価値を…。いえ、確かに不可解です。」
「何か引っかかるかね?」

何かに気付いた様子のコルベールに、オスマンが問いかける。

「ええ、彼等がフーケ捕縛に向かう前、宝物庫に行った事はオールド・オスマンもご存知でしょう。」
「ワシが許可を出したからな、当然じゃ。」
「その時、彼は≪ただのメイジなら問題ない。しかし強力な武器を持っていたら≫と言っておりました。」
「なるほど、メイジにして武器の有用性を理解している…という事じゃな?」
「はい、しかしそれならば、ルーンの効果に関して、何がしかの反応を示すはずです。」
「もしや、知っておったのか?」
「まさか!あのルーンが記載されていた<始祖ブリミルの使い魔たち>はこの学院の他には、数冊しか存在しないはず…」
「ますます、分からんのう。彼は一体、どういった人物なんじゃ?」
「その内、ミス・ヴァリエールに聞いてみるしかないのでは?」
「じゃな、そっちの方が楽な気がしてきたわい。」

学院長室に2人の溜息が漏れたその時、夜の帳が落ち“フリッグの舞踏会”の幕が開く。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:45:41 ID:JBEE2F7Y
ヒューかっこいいよヒュー支援

>>108

てか利用したら最後。神様も殺すからマジで
119ゴーストステップ・ゼロ(代理) :2009/01/23(金) 23:48:13 ID:vCmEydIa
シーン10
破壊の杖(I)
…ラケッテン・パンツァー・グレネードの事。

ラケッテン・パンツァー・グレネード(I)
…旧式の対戦車ロケットランチャー。単発。様々な会社から出ている商品。

量刑
…トーキョーN◎VAにおいて法とはあって無きが如しかもしれないが、流石に窃盗で死刑はないだろうと思う。

話してくれないか
…ヒューはここでおマチさんに対して“真実”を使用した。
 聞き出す事柄は…何故こんな事になったのか、もしくはこうなってしまった経緯。

カブト(St)
…ボディガード、衛兵、軍人、用心棒。自身もしくは他者が受ける肉体的・精神的ダメージを完全に遮断する。
 セイバーやキャプテンブラボー、wikiではヒースクリフ・フロウウェンやアイオロス
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:49:43 ID:JBEE2F7Y
ヒューの人GJ!!
ヒューかっこいいよヒュー
次回に超wktk。
121ゴーストステップ・ゼロ(代理) :2009/01/23(金) 23:50:50 ID:vCmEydIa
支援&代理投下ありがとうございました。以上で今回の運命の扉を閉じます。

とりあえず、こんなんになりました。
一応、おマチさんと戦うかどうか考えたんですが、ヒューの場合、宝物庫で大体判るし、量刑に関して不満というか呆れてもいたので、コネとして活用しようと思いました。
とりあえず、ヒューのスタイルはイヌ(刑事)ではなくフェイト(お人好しな探偵)だということで…。
あと、終盤のちゃぶ台返しは、コルベールとオスマンから追及をさせないために考えました。今、考えるとよくもまぁ思い付
いたもんだと、今更ながらに思います。

それから、神業ですが、これは1エピソード毎に使用回数はリセットされているものと思ってください。

しかし、ヒューはいつまで隠し通すのかw今更ばらすのもなんなので、上手い事考えたいですね。
今の所ヒューがメイジではないと知っているのは。ルイズ、キュルケ、タバサ、デルフ、マチルダ、ギーシュ、シエスタ、
マルトー…といった面々です。


---------------ー-----------------------
以上、代理した
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:52:06 ID:m4ms016z
 ゴーストステップの方、乙でした。

 終わり方からすると、フリッグの舞踏会にも1話分を使うんですかね?
 ……私はかなりサラッと流してしまいましたがw
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:53:49 ID:D0Fy/Ni8
作者さんも代理さんも乙でしたー
隠すと言うか否定も肯定もせずにはぐらかしてるだけですからねぇw

あと神業って1シナリオで使えるのは1種類につき一回だけでしたっけ。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 23:56:56 ID:vCmEydIa
運命の扉が開く〜閉じる で一回のシナリオなのね
単行本一冊単位で1シナリオだと思ってたんで失礼した

あと、N◎VAの司法は結構公正らしいよ
裁判は偉いさんも参加するトトカルチョの対象だから
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:00:51 ID:zxNiqBKz
ヒューの人gj!
やっぱ面白いなあ


私の見落としかも知れませんがマチルダ独白部分でティファのエルフについて言及してないです。
126ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/24(土) 00:06:36 ID:kCPYl6Du
>123さん
 神業の回数…ですね、実際は1シナリオにつき、選択したスタイルの神業が使えます。
       ちなみにヒューは真実×1、不可知×2が使用可能です。
>124さん
 1エピソード=1シナリオとなります。今までのエピソードは以下の通り。
 召喚〜ギーシュとの決闘。デルフ購入。フーケ編。
こんな感じです。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:07:40 ID:b8qiID01
>>108
利用されたら利用した相手を
それが例え邪神でも
自分の手で復活させてから滅ぼすようなお方です
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:08:11 ID:nNRCCvkg
ニューロだぜ!バディ!
プラチナムなSSだな
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:09:40 ID:HjNG78uW
おおっと、作者さん解説ありがとうございます。
合計で3回、なんですなぁ。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:10:46 ID:U94Ny9N/
>>116
これは一回死んで、生き返ったら支配からぬけたってとらえればいいのか?
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:15:57 ID:Jsti/weZ
昼間投下しようとしてしなかった奴ですが、今度こそ
もしよろしければ5分後ぐらいに投下させてもらいますね

タイトルは「Zero May Cry」
クロス元はデビルメイクライシリーズよりデビルメイクライ4です
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:16:53 ID:ilA8efqu
生き返ったら記憶喪失で契約も忘れちゃった
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:17:07 ID:Hqam/1Pd
>>130
YES
だから後はやりたい放題やってるんだよ

ところでキスのシーンで何故か鋼鉄天使思い出してそのまま地球しか救えないソウマ君はトリスティンを救えるのか?
とか連想した俺は逝って良いと思う
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:17:11 ID:b8qiID01
>>130
そういうこと

補足すると蘇生させた奴のレベルが低くて邪神との契約の記憶が消えてしまったから
契約が無効になった
だったはず
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:17:31 ID:lA3O+Apc
支援!
136Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:20:31 ID:Jsti/weZ
投下させていただきます。以下本文です。
Zero May Cry - 01


 その日は彼らにとっては少しばかり重要な日だった。
 勿論中には少しばかりではないほどに重要といえる者もいたが、とにかく重要な事には変わりはなかった。

 そして、こと彼女にとってはこの日は他の者と比べても特に重要な日になると言えた。

 いや―――重要な日になった。

 よもや、この日を境にあんな日々が初まるとは、夢にも思わなかっただろう。


「……………」


 彼女―――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、己が行った「サモン・サーヴァント」の儀式により現れた青年を見て失意に苛まれた。

 均整のとれた端整な顔立ちに、一見すると白か銀かは区別が付かない、鮮やかとさえ形容できる髪。
 紺色を基調としたコート。その下には対照的な赤のジャケット。黒のズボンに長いブーツ。身なりは悪くないが、さりとて優雅なわけでもない。
 ルイズ達から見れば、彼は文句なしに平民と表現できる人物だった。

「こ……こんなのが私の使い魔………」








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







 俺はあの日、あの事件の後、彼女を護ると誓った。
 この右腕を受け入れ、憎しみを誇りに変え、俺は騎士になった。
 君を護る、君だけの騎士《ナイト》に………。








137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:20:35 ID:U94Ny9N/
>>133>>134
thx
そして支援
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:20:36 ID:7bFwM7fa
そんなシラカワさんも平気で利用したユーゼス。平行世界の別人だけど
139Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:21:29 ID:Jsti/weZ
「キリエ!!」

 彼は夢の中で己に背を向けて歩いていってしまう人の名前を叫んだ。叫ぶ必要があったのはそれが自分の愛しい人だったからだ。
 だが、彼のその叫びに対する返事はなかった。
 代わりに彼の目に映ったのは彼の知らぬ、彼が夢の中で見た女性とは別の女性……いや、女性というには幼過ぎるか。
少女といったほうがしっくりくる。そして周りには、彼女と同じぐらいの年頃の大勢の少年少女達。彼らは一様に彼に対して好奇心を感じさせる視線を送っている。
 彼の目前に佇む件の少女は、眠っていた状態から突然半身を起こして叫んだ彼に驚きの表情を見せていた。

「き、きりえって誰よ。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「ルイズ…ふら……? いや、ンなことはどうでもいい。ここは何処だ? 俺は確か……」

 ルイズと名乗った少女は目の前の白髪の青年が何気なく口にした「どうでもいい」という単語で思わず激昂し、尻餅をついたような体勢の彼に食って掛かった。
 彼女にしてみれば己の使い魔となるべく男に「名前などどうでもいい」と言われたのだから無理もない。

 しかし少女はこの青年がどのような人物か知らない。―――当然と言えば当然だが、それがこの少女の些細な不幸だったのかも知れない。

「どうでもよくないわよ! 私は貴方の主人なのよ! 主人の名前も覚えられない使い魔なんて、聞いたことない!」
「つ、使い魔? なんだそりゃ?」

 青年は少女、ルイズの言う言葉の意味を分かりかね、思わずその言葉を反芻した。

「俺はミティスの森で昼寝をしてたんだ! ここは何処だ!? 俺はキリエの所に帰らなきゃいけねぇんだよ!」
「帰るって……! 貴方は使い魔なのよ!? 帰る所は私の所!!」
「なっ………!!」

 青年はルイズが放ったその一言にとうとう我を失った。いきなり知らない場所で目を覚まし、少し混乱していたせいもあるだろう。
 少女の胸倉を掴み、その小さな体躯を無理やり己の方へ引き寄せる。青年の突然の行動に驚き、ルイズはただ身を強張らせることしか出来なかった。

「ッざけんじゃねぇ!!! 俺はキリエを護るって決めたんだ!! なんで知らねぇお前のことを護らなきゃ……!」

 そこまで一気にまくし立てて、青年は自分が何をしているのかに気づいた。

 ―――自分よりも随分と幼い少女の胸倉を掴み、凄まじい形相と勢いで怒鳴りつけている。

 目の前には、涙目になり小さい声で「あぅ……あぅ……」と意味の分からない言葉を繰り返す少女の姿。
 そして彼らを取り囲み野次を飛ばしていた――その殆どを青年は聞いていなかったが――少年少女達もその迫力に黙り込んでいた。

「わ、悪い……。謝るから、落ち着けよ……」

 青年の余りの形相に完全に怯えた様子のルイズを、青年はこれまでの態度とは逆になるべく優しくなだめようと努めた。
 そこへ一人の男性が近づいてゆく。先程まで遠巻きにこちらをみていた男だ。彼は突然怒鳴り始めた青年に対しても落ち着き払った様子で青年に声をかけた。

「君の方も、落ち着きましたか?」

140Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:22:08 ID:Jsti/weZ
 思いのほか友好的に接され、青年はバツが悪そうに答えた。

「ああ……。悪いな、いきなり叫んじまって」
「無理もないさ。君もいきなり知らない場所に召喚されて混乱しているのでしょう? 説明は追ってしますので、今は儀式を済ませてもらえせんか?」
「儀式?」

 男が口にした単語に訝しげに首を捻る青年。
 そして、先程少女が言っていたことを思い出す。

「そういや……使い魔ってのは何なんだ? この嬢ちゃんには悪いんだけどよ、俺はさっさとフォルトゥナに帰りてぇんだよ」

 青年のその言葉に、男性は難しい表情を見せた。むぅ、と小さく唸りながら。
 男が見せたその態度に、青年は思わず冷や汗を流しながら叫んだ。

「でっ……出来ねぇのか!?」
「それは……………」

 男性―――教師、コルベールは青年から目を逸らしながら、どう答えたものかと逡巡した。
 理由は多々ある。まず先程青年が口にしたフォルトゥナというのは、会話の流れから察するに土地の名前なのだろうがこのトリステイン魔法学校で教師を務めるコルベールも聞いたことがなかった。

 そして―――何よりも。

 このように人間の使い魔が召喚されたというのは前代未聞の出来事だ。
 ―――流石はミス・ヴェリエール………と、今はそれは置いておこう。
 言ってしまえば生き物を使い魔にするというのは、その生き物を専属の奴隷にするのと同じようなものだ。いかに使い魔として召喚されたとは言え人間にそんな境遇を受けさせるわけには行かない。
 確かにその生き物の主人となる人間が出来た者ならば、その使い魔は奴隷というよりも寧ろ優秀なペット、信頼の置ける相棒、己に忠実な部下と表現できる関係になるだろう。
 しかしそれでも自由を奪う事に変わりはない。使い魔は常に主人の監視下に置かれ、主人の意思に反する行動は全て咎められる。逆に、主人が命令する事ならばどんな事でも従わなければならない。

 その役目を人に押し付けるというのだから―――。

「………済まない。この儀式は彼女にとっても一生を決めるものなんだ。どうか、君にもそれを理解して欲しい―――」

 コルベールが、苦渋に満ちた表情になるのも無理はない。
 そして先程からようやく落ち着きを取り戻したルイズは、コルベールからそう宣告をされる青年の顔をみて、思わず言葉を詰まらせた。

「…………………………」

 青年の顔は、まるで紙のように白くなっていた。呆然と、目の前の現実とこれからの事実を受け入れることが出来ないでいる。
 加えて―――何か大切なものを失ってしまったような、そんな心境を青年の表情は感じさせた。
 だから、ルイズは青年に強く当たろうとして、それが出来なかった。
 どこか彼を気遣うような、なるべく彼の励みになるような言葉を、無意識の内に探していた。

「あ、あの。べ、別に使い魔って言ってもそんなに辛いことじゃないわよ。身の回りの世話とかしてもらうけど、そんな大した事じゃないし。それにね、アンタがいくら平民みたいでも私がちゃんと生活は保障してあげるから………」
141Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:22:59 ID:Jsti/weZ
 そんなルイズの様子を見ながら、青年は悲愴な表情のまま唇を笑みに歪めた。
 青年のその態度に、ルイズはどこかからかわれた様な心境になり、拗ねたように眉をひそめる。

「な、何よ」
「さっきとは随分と態度が違うぜ。………気遣うなよ」

 泣き笑いのような顔で言いつつ、青年は深いため息をついた。同時に、その顔を左手で隠すかのように覆った。
 そこで、ルイズは改めてこの青年の身なりを確認した。
 左手は普通だ。右手は………。

「………怪我してるの?」
「……何が?」

 言われてルイズは、青年の右腕を指差した。
 その右腕は包帯とギプスで覆われ、首からベルトで吊り下げられていた。明らかに骨折している者の様子である。

 よく見れば青年は何処かの傭兵といった外見だ。背中には大きすぎる片刃の剣を背負い、腰に下げられている妙な入れものには……ルイズの知識の限り、それは銃というものだった。
 長い銃身を辿るとまるでレンコンのような弾倉。ルイズがもう少し銃についての知識があれば、その銃の構造がおかしい事に気づいただろう。
 銃身が上下に繋がり、銃口が二つ覗いている、その異様な外見に。

 ―――それは、人ならぬ者を撃つための武器故の構造だった。

「あんた………何者なの?」
「………話は後だ。儀式をするんだろ?」

 青年が放ったその言葉に、場の空気が代わった。ルイズはもとより、コルベールや周りの少年少女達も驚きの表情を見せている。
 ルイズは喜びと驚きの両方に、思わず瞳を細かく震わした。

 それは、この男に自分を受け入れられたという思いもあるからかも知れない。

「……い、いいの……?」
「……これからの事は、これから考えるさ。だから……今はこれでいい」


 ―――きっとキリエも、それを望んでいるはずだ―――


 そう、ここで激情にかられ、周りの人間に八つ当たりをしても決して愛しの人は喜ばない。それならば、今目の前の現実を受け入れその上で今後のことを考える。それでいい。そのはずだ。
 それにこの儀式には目の前の少女の一生が掛かっているという。そこまでお人好しになった覚えはないが、何の助け舟もなくこの少女を切り捨てるというのも気が引ける。
 だから青年は一度ルイズの使い魔になる事を決意した。今はこれでいいと、そう思ったから。


 だが、称賛に値する青年のその誓いは、ルイズが行った次の行動で粉々に砕け散ることになる。

「じゃ、じゃあ……行くわよ……」

 そう言ったルイズの顔が急に近づいてくる。その様子に青年は思わずぎょっとした。だが、青年が行動を起こそうとした時には既に遅きに失していた。

 そして。
142Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:25:05 ID:Jsti/weZ
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
「っ!!?!?」

 重なる唇。目の前には、ルイズの顔。

「ふはっ! な、何しやがるっ!!?」

 唇を離すやいなや、青年は先程の殊勝な心意気はどこへやら、頬を赤らめさせたままルイズを睨んだ。
 その視線に思わずたじろぎながら、ルイズは口を開く。

「だ、だって契約はこうしないと成立しないから……!」
「け、契約って………!」

 そう言われてしまえば反論は出来ない。青年は一度でもルイズの使い魔になると自分で決めてしまったのだから。


 ―――ゴメン、キリエ………その……何と言うか……ゴメン………


 と、そんな情けない懺悔をする青年に変化が訪れた。

「グッ!?」

 突然、左腕の甲が熱を帯びたかのように痛みだす。
 思わず青年は叫んだ。

「おいっ……! こいつは何だっ!? これも契約の内なのかよ!」

 そんな青年にルイズは慌てて近寄り、肩を支える。

「だっ、大丈夫よ。使い魔のルーンが刻まれるだけだから……」
「るっ、ルーン……!?」

 言葉の意味が理解できずに、青年は己の左手を見つめる。その左手は最早熱だけでなく光も発していた。
 そこに彼が見たものとは。

「こ、コイツは……?」

 奇妙な文字列のような模様が左手の甲に刻まれていた。

 ―――これが使い魔のルーン……ってやつなのか?

 既に痛みも気にするほどではなくなっており、青年はまじまじとそれを眺めた。
 やや距離を置いたところで、その模様を目にしたコルベールの瞳が薄く細められていたが、青年はそれに気づかない。
 青年の様子を見届けたルイズは、ここまで彼に尋ねていなかった一番大事な事を初めて尋ねた。

「ねぇ、まだ名前……聞いてなかったわよね?」

 ルイズのその言葉に、青年は短く己の名を告げた。彼のその頭の中からは既にルーンの事は薄れてきている。
143Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:26:43 ID:Jsti/weZ
「………ネロ、だ」

 青年―――ネロのその返事に満足したのか、ルイズはようやく安堵の表情を見せた。
 その顔を眺めながら、ネロはそこにキリエの顔を重ねてしまっていた―――。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







 その後、全ての生徒の儀式は終了したという事になり、彼らは教室へ戻ってゆく。余談だが彼らが平然と空を飛ぶのでネロは少々面食らったとか。
 そしてその場にはコルベールに呼び止められたネロとルイズのみが残った。

「ネロ……君でよろしいかな? 君のその左手のルーンを少し見せてくれないか?」
「あ、ああ………?」

 ルーンの事など全く知識のないネロは、やや訝しげに首を捻りつつも大人しくコルベールに従った。
 何か不都合があったら自分自身にとっても困る。そう思ったからだろう。

 しかし、コルベールが言った言葉はそんな彼の不安とは大きくかけ離れたものだった。

「フム……。これは珍しいルーンですね。少し時間を頂けませんか? スケッチを取らせてもらいたいのですが……」
「俺は別にいいけどよ」

 素っ気無さ気に答えて、ネロはそっぽを向いた。早くしろと言いたかったが、彼の理性が喉まででかかったその言葉を飲み込む。
 しかし彼が言うまでもなく、コルベールのスケッチは手早く終了した。
 ネロの方もその間に落ち着きを取り戻したのか、徐々に普段のふてぶてしさを取り戻していた。

(さて……どうしたもんかな、これから)

 そんなことをネロが考えていると、コルベールがルイズへ指示を出していた。

「それじゃ、ミス・ヴァリエール。彼にこの学園の案内をしてあげなさい」
「えっ……でもそれじゃこの後の授業は……」
「特別に、大目に見ましょう」

 コルベールのその言葉に、ルイズは大人しく従った……………のだが。

「いや、お前は授業を受けてろ」
「「……は?」」
144Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:27:40 ID:Jsti/weZ
 コルベールとルイズの二人分の声がネロへ返ってきた。
 当のネロは眠たそうに大きなあくびを一つしている。

「昼寝の途中だったから、俺眠いんだよ。どっか寝かせてくれる場所はねぇのか?」
「ダメよ! わざわざ先生が授業を免除してくれるって言ってくれてるのよ? そのご好意を無駄にする気!?」

 ルイズのその言葉にネロはやれやれとかぶりを振って、眠たそうな目を擦りながらとっとと歩き出した。
 その勝手な行動にルイズも腹を立てたのか、後ろから彼に追いつきふくらはぎ辺りを軽く蹴る。

「いてっ。何すんだよ?」
「自分の主人を置いて何処に行く気なのよ!? もう、さっきから勝手なことばっかり言って!」
「じゃあ早くその学校の案内とやらをしてくれよ。ルイズ……だっけ? お前の部屋にベッドとかねぇのか?」
「ご主人様と呼びなさい! 大体、ご主人様のベッドで寝るつもりなんてどんだけ生意気なのよ!」

 ルイズの変わらぬ態度に、ネロは最早処置なしとばかりに肩をすくめながら彼の前を歩き出した彼女の後をついていった。
 そんな二人の様子を、コルベールは苦笑いをしながら見送った。彼の目には、二人がまるでじゃれあっているように映ったのだろう。








 ―――ネロは気づかない。己の今の立場を。

 ―――事態は彼の想像を遥かに超えていることも。

 






―――to be continued…….
145Zero May Cry:2009/01/24(土) 00:31:16 ID:Jsti/weZ
以上で投下終了です。どうもです

第一話書いてる時点ではまだDMC4未プレイでしたんですけど(今はプレイ済み)どうですかね?
自分のネロは性格が本家よりヤワく感じてしまう………orz

それではこの辺で失礼します。自分明日(今日)大学試験なんで^^
またよろしくお願いします
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:32:44 ID:nlPVSme/
乙……って
投下しとる場合かーーッ
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:35:25 ID:vCyX/Fzv
>>145
乙!
てか勉強しろよww
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:37:05 ID:iL3gT5iX
>>145
乙だが、次回は合格の知らせを共に運んでもらうよう、切に祈る
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:51:37 ID:L1Y/sdWu
ネロの人乙
勉強の合間の作業は何故か集中できるんだよなぁー

兎も角、明日の試験は頑張って下され。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 00:53:55 ID:jzisPd3i
>>147
この時間なら、勉強ではなく体調を整えるために寝るべきでは?
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 01:02:30 ID:kDZONQbm
なんかさ、勉強してるときや授業中の方がいいアイデアが浮かんで来るよね
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 01:05:34 ID:vCyX/Fzv
>>150
確かに、俺の場合中々寝付けなくて当日眠かったな。電車乗り違えて試験開始一分前に着席したしw

こんな俺でも受かったんだ、作者さんも頑張れ!
俺は三ヶ月前に終わったから今は投下のために書き進めてるぜ。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 01:06:04 ID:irst4EBT
>>151
それを「現実逃避」と言うんだwww
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 01:55:29 ID:nsM7bXgp
いいから早く寝るんだ。

話は変わるが、

邪神に利用された。邪神は封印されてて手が出せない。
どうしますか?

シュウの場合・・・邪神をわざわざ復活させて殺す。

だからな。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 01:56:58 ID:ZHswpML/
どこぞであったネタだが、現実逃避時に発生する『逃避エネルギー』は偉大だと思う
…まじで妙に筆やらなにやらがはかどるんだよなぁ、普段と比較しても
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:30:46 ID:lYuVlAJZ
いよいよ間に合わないか、ってなった時の作業の進む早さは異常
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:32:39 ID:lYuVlAJZ
そりゃ機械と分かりあえる超能力じゃないから……
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:34:01 ID:lYuVlAJZ
あ、誤爆orz
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:41:38 ID:4g1IsK97
よし、ちょっとその列車に乗ってネジの体になってくるんだ
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:52:53 ID:DRyKQMzu

              ヽ |l | /ヾ|、 ノイ  /! /_,|イ'l´    |   \   この感じ… なに…?
_______∧,、_ 〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| /   ト、    ヽ _ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄/   |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ  7   .!  ヽ     \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            /    |  |             /   |ヽ、|     〉
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 02:55:24 ID:jT2lihuS
メーテルがルイズに召喚されました

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162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:04:56 ID:9t0Gt1sx
DMC4乙です
個人的には、続報よりも合格の吉報をお持ちしております(_ _)
貴方に幸あれ

ネロ>>そう言えば、最近とんと見ないDMC3のダンテ召喚って話もありましたね
確か、ネロが出てきた所で止まってた様な
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:18:01 ID:2hkEXCmQ
DMC4乙

取り敢えず、大学入試に受かってからSSを書きなさい。
大学生になれば時間はたっぷりあるんだから…と、社会人になってから大学の夜間に通っていた俺が言ってみるw
164蒼い使い魔:2009/01/24(土) 03:28:30 ID:5TkTSXWD
ネロがきたとは……
閻魔刀は大事に使ってやってください

そしてその背後霊が35分にこっそり投下させていただきます

そろそろ俺は死にそうだ
試験?なんだそりゃ、銃(コイツ)を喰らいな!
だれか時の腕輪をくれ……
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:32:09 ID:EsjbYrLM
支援だ!!
166蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:35:20 ID:5TkTSXWD
朝、太陽が顔を出し、さわやかな日差しが部屋の中に差し込み始めたころ、ソファからバージルが起き上がる
ふと床へ目をやると、そこには昨夜床につき落としたシルフィードの胸に顔をうずめる形でルイズが寝息を立てていた
「うぅ〜ん……やわらか……うふふふ……」
「あっ……おにいさま……そんなに強く……」
なにやら幸せそうな顔で呟いている二人を放置し、掛けておいたコートを羽織る
そして昨日受け取ったメモを確認していると、不意に部屋のドアがノックされる
応対のため静かにドアを開けると、そこにはタバサが立っていた
「何の用だ」
「これ」
タバサはそう言うと何やら大きめの服を手渡す
「あの子の服」
どうやらシルフィードのサイズに合う服を持ってきてくれたらしい、
ルイズの服ではサイズが合わないと駄々をこねていたのでありがたく受け取ることにした
「受け取っておく」
「ごめんなさい、私の責任」
少々憮然としたバージルの態度にタバサは謝罪の言葉を口にする、
そんな彼女をよそに、バージルはそれもそうだな、と言わんばかりに肩を竦めると、踵を返しドアを閉める。
そして眠っているルイズに近づくと、襟首を掴み持ち上げ、声をかけた。
「起きろ、街へ行く」
「はぇ……? 夢……胸……」
胸が大きくなる夢でも見ていたのであろうか、ペタペタと哀しそうな表情で自分の胸を触る
「何を寝惚けている、さっさと準備しろ」
「え? あ……うん……」
そんなルイズに構うこともなく、バージルはつま先でシルフィードの頭を小突いた
「んがっ……ふぁ……おはよう……」
すると目をこすりながらシルフィードが起き上がる。
そしてんん〜〜っと大きく伸びをするとはらりと身を包んでいたシーツが床に落ちた、
「んなっ!?」
それをみたルイズが身体を硬直させる
そんなルイズを気にすることもなく、シルフィードは生まれたままの姿になりながらも気にすることもなく大きく伸びをした後、
バージルの胸に抱きつき目をつむり、唇を突き出す
「おにいさま、おはようのキス、ん〜〜〜! むがっ!」
その瞬間バージルの掌が蠅を叩く様にシルフィードの顔を直撃する、
「うぅ〜〜〜……いたたた……」
「下らん事をしている暇があったらさっさと服を着ろ、街まで貴様に乗ってゆく」
しゃがみ込み鼻の頭を抑えるシルフィードにバージルはさらっと受け流すと
先ほどタバサから受け取った服をシルフィードに投げつける
「…むう、今度はこれを着ればいいの?」
シルフィードは少し不満そうな声を漏らすが、窮屈なルイズの服よりマシだと考え着替えることにした。
「ばっ! バージル! なに女の人の着替えを見てるのよ! 見ちゃダメ!」
ようやく我に返ったルイズが今さらだがバージルには見せまいと背中から飛び付き目を塞ぐ、
「ついこの間まで目の前で堂々と着替えていたのはどこのどいつだ、いいからお前も早く着替えろ」
バージルは鬱陶しそうに振り払うと、ルイズにも着替えるように促し、外へと出る
ドアを開けると廊下には出てくるのを待っていたのか、タバサとキュルケが立っていた
167蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:37:01 ID:5TkTSXWD
「ハァイ、おはようダーリン」
「キュルケか……」
小さく手を振りながらキュルケがバージルに声をかける
「何か用でもあるのか? お前はタバサの実家について行くと聞いていたが」
「んー、そのつもりなんだけどね」
そういうとタバサへ視線を落とす
「私たちも街へ行く」
「と、言うわけ、迎えの馬車は昼過ぎに来る予定だから、ちゃちゃっと済ませばすぐ帰ってこれるわ、
だから私たちも付き添い、この子が言うには監視らしいけどね」
キュルケが後の言葉を引き継ぐように説明をする、
「……まぁいいだろう、好きにしろ」
タバサが近くにいればシルフィードも妙な行動は起こすまい……そう判断したバージルは同行を許可することにした。
「ところで、こいつは秘薬屋とやらで全て揃うものなのか?」
ふとバージルがキュルケに昨日受け取ったメモを手渡し尋ねる
キュルケはそれを見ると軽く頷き答える、
「えぇ、ほとんど買えるわ、でも……『精霊の涙』、これは闇屋に行かないと手に入らないんじゃない?」
「気にはなっていたが……何だそれは」
「『精霊の涙』は、水の精霊の体の一部よ、流通量も少ないし、結構違法すれすれの秘薬だから、ちょっと値が張るかもね」
「そうか……」
バージルがメモを再び受取り、コートの中にしまい込むと部屋の中からなにやら争う音が聞こえてきた。
「この雌竜ぅ!! いい加減にしなさいよぉ!」
「きゅい! 胸がないからって嫉妬しないでほしいのね!」
ドタン! バタン! と物が飛び交う音が部屋の中から漏れてくる、
「……随分にぎやかね」
「……」
キュルケが茶化すも、バージルは腕を組みながらだんまりを決め込む、
「で、ダーリンは大きいのと小さいの、どっちがお好みかしら?」
キュルケが自分の胸を強調するようにバージルに詰め寄る
「……さぁな」
「相変わらずお堅いのね〜、まぁそこがいいんだけど」
それを冷たく一蹴しケラケラと笑うキュルケから目をそらす、
その横でタバサが自分の胸をじっと見つめていた。
168蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:39:44 ID:5TkTSXWD
「……あによ……なんであんたたちまで来るのよ……」
学院の外へ向かいながら、ルイズは恨めしそうな声を上げながらキュルケを見る、
「まったくなのね! 桃髪だけでもおじゃまむしなのに! あいたっ!」
同じように抗議の声を上げるシルフィードの頭をタバサが杖で小突く、
「いーじゃない、シルフィードがへんなことしちゃわないように一緒に監視してあげるんだから、ねぇ?」
「う〜……タバサの実家から馬車が迎えに来るんでしょ? 学院にいなくていいの?」
「すぐ行って用を済ましてすぐ帰ってくれば問題ないわよ」
そんな会話をしながら学院の外に出て、人目の付かない場所へと移動する、
「竜の姿にもどれ」
「きゅい!」
思慕の情、とは便利なものである、主人でもなんでもない、立場的には同じ使い魔であるバージルの命令にも関わらず
シルフィードはうれしそうに一声鳴くと、元の姿に戻るべくぱっぱと服を脱いでゆく
その光景はルイズにとってははらわたが煮えくり返る思いだが……
当のバージルはどこ吹く風、もはや慣れたのかタバサとそろって仲よく無表情である。
そしてつむじ風がしゅるしゅると身体を包み込むと……シルフィードは元の竜の姿に戻っていた。
「……本当にシルフィードだったのね……」
「本当ね、先住魔法って直接目の前で見るとやっぱりすごいわねぇ……」
わかってはいたが今さらルイズとキュルケが呟く、百聞は一見に如かずとはよく言ったものである、
「むっ! まだ信じてなかったのね! シルフィは嘘はつかないの!」
「どの口がほざく……、まぁいい、さっさと乗れ、時間が惜しい」
バージルは呆れるようにそう言うと地面を蹴り、華麗にシルフィードの背中に飛び乗る、
続いてルイズがシルフィードの背中に乗ろうとした途端――。
「やだやだ! シルフィはおにいさま以外に体を許した覚えはないのね!」
「きゃっ! ちょっ! シルフィード! 暴れないで! きゃあ!」
突如シルフィードが暴れ出し、ルイズを振り落とす。
地面に尻もちをつくかたちになったルイズにシルフィードは
「桃髪達は馬で行くといいの! シルフィの背中はおにいさまだけの特等席なのね! きゅい!」
「バカなこと言ってないでさっさと乗せなさいよ!」
なおも乗り込もうとして振り落とされるルイズを尻目にタバサは静かに脱ぎ散らかされた服を回収すると、
フライを使い、バージルのそばに降り立つと服を手渡した。
シルフィードはそれすら見咎めると、激しく首を振りタバサすら振り落とそうとした。
「きゅいきゅい! ダメなのダメなの! おにいさま以外乗っちゃダメなの!」
その言葉には流石にショックを受けたのかタバサがうつむく、ルイズもそれを見てシルフィードに食ってかかった
「ちょっと! アンタはタバサの使い魔でしょ! 使い魔が主人を乗せなくてどうするのよ!」
その言葉にはシルフィードも少し思うところがあったらしい、少し考えると、意を決したように口を開いた
「おねえさまは〜……、うん、おにいさまとの交際を正式に認めて下さったら乗せてあげてもいいのね」
「なっ!! そんなのダメに決まってんでしょうがぁ〜〜!!」
タバサではなくルイズが顔を真っ赤にしてシルフィードにわめき散らす。
それを横目で見ながらキュルケがため息をつきタバサに尋ねる
「はぁ……あぁ言ってるけどどうする?」
「肉抜き、一ヶ月延長」
そういうとタバサはスタスタと学院へ向け歩いてゆく
「ちょっと、どうするのよ?」
「馬で行く」
歩調を緩めることなく短く答えるとタバサは学院へと戻って行った
「ふぅ……ほらルイズ、私達も馬で行きましょ、仕方がないわ」
「うぅ〜〜〜〜……いい!?街の前で待ってなさいよ? いいわね!」
キュルケがルイズをズルズルと学院へと引きずってゆく、
「モテる男はつらいねぇ、相棒」
「黙れ、へし折るぞ」
取り残されたバージルは眉間を指で押さえながら呻く様に呟いた。
169蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:42:24 ID:5TkTSXWD
「おにいさま今日もすっごくStylish! わたしうれしい!」
空を飛びながらシルフィードはどこで覚えたのか会話の節々にそんな言葉を織り交ぜバージルとの会話を楽しむべくおしゃべりを開始する。
だがバージルは昨日に引き続きまともに受け答えしようとしない
この反応の薄さは主人であるタバサそっくり、否、それ以上かもしれない。
しかし反応が薄い人物の相手は慣れているのか、シルフィードは気にせずはしゃぎながら口を開いた。
「そう言えばおにいさまにはまだ教えてなかったの! わたしの名前!」
「……」
「竜達の名前では"イルククゥ"、そよ風って意味ですわ! 人間たちの名前では"シルフィード"。
わたし、名前が二つありますわ! おねえさまと一緒なの!」
うれしそうに説明するシルフィードとは違い、バージルにとっては果てしなくどうでもいい話題である。
相槌を打つこともなくただ腕を組みながら目をつむり右から左へ聞き流していた。
「おねえさまに召喚された時にシルフィードの名前をいただいたの! 今でも覚えてるの!
おにいさまが召喚された時のことも覚えているのね!」
その言葉を聞きバージルの顔が少し険しくなる、
あの時、ダンテに敗れ、魔界へと身を投げた、そして奈落の底へと堕ちきる刹那
なんの因果かルイズによってここ、ハルケギニアに召喚され、彼女の使い魔として契約、現在に至っている、思えば短い期間で様々なことがあった。
「……相棒、何を考えてるんだ?」
雰囲気が変わったことを察したのか背中のデルフが声をかけてくる、
「なんでもない、ただ思い返していただけだ」
「そうかい、相棒、ちょっと聞きたいんだがな」
「何だ」
「お前さん、何時までこんなことを続ける気だね?」
デルフのその言葉にバージルの眉がピクと動く
「……何のことだ」
「とぼけるなよ、娘っ子のことだ」
「………」
「いつまで心を開いている『ふり』をするつもりだ? まったくおでれーたよ、急に人が変わったかのように
娘っ子に優しくするんだからな、頭でも打ったのかと思ったぜ」
あれで優しく、と言うのかは少々疑問ではあるが、ここ最近、彼はルイズに対しかなり穏やかに接している、
召喚された時と比べればまるで天と地の差だ。
バージルは左手を見つめると静かに口を開く。
「気に入らんことが……、ある種の賭けだった、奴に…ルイズに多少なりとも心を許してしまった時、わずかだが身体が軽くなることに気がついた。」
眉間にしわを寄せながら話すも、あくまで淡々とした口調で続ける。
「だから俺はほんの少し、奴を信用することに、賭けてみることにした、ギャンブルは性に合わんのだがな、
どうやら今回は勝てたようだ、それだけのことだ」
「信用、ね、利用している風に聞こえるのは俺っちだけかね?」
「デルフ」
バージルは短く言うと、再び静かに目を閉じる
「俺は言ったはずだ、利用できるものはなんでも利用する、と
奴を受け入れるだけで力が手に入るなら、安いものだ……だが、いつかはこのルーンを捨て去らねばならん時が来る、
おそらくそれは、俺が魔界へ行き、この世界から切り離される時だ」
バージルは目を見開くと決意を新たにするように改めて口を開く
「それまでの間は、使い魔をやってやる、そう決めた、少しでも多く、この力を自分に取り込むためにな」
「受け入れる? ハッ! よく言うよまったく……、それにしちゃお前さんの心の奥底は凍りついたまんまだぜ?」
170蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:44:39 ID:5TkTSXWD
「それでもだ、……ガンダールヴの力、これほどまでに強力なものとは、甘く見ていた、と言っても過言ではない
体が軽い、手から足から、力があふれる、まるで魔力を開放した時と同じ、これでルーンの力を全て解放したらどうなる?
父を、スパーダすら上回る力さえ手に入るのではないか? そんなことまで思えてしまう」
バージルはそこまで言うと小さく「かいかぶりすぎだろうがな……」と付け加えた。
「ついでだから教えてやるよ、そのルーン、まだまだ相棒に力を貸すぜ」
デルフはカチカチと音を鳴らしながら言葉を続ける、
「前にも言ったが、ガンダールヴの原動力は心の震えだ、怒り悲しみ喜び、なんでもいい、
お前さんの場合は、"力"への底無き渇望、そして恐ろしい程の"自己に対する怒り"だ、
ガンダールヴの心の震えとしては上々ってところかね、……逆に栄養価高すぎて毒じゃないかってくらいだな」
「では何故力を貸さん」
「心の奥底が凍りついちまってるせいでイマイチ力が出ない、そんなところだな
流石のガンダールヴのルーンも心の底から震えないとどうしようもないぜ?」
「……」
その言葉にバージルは押し黙ってしまった、デルフはそれに構わず彼に尋ねる、
「なぁ、相棒にとって強さって何だ?」
「分かり切ったことを……力だ、力こそが全てを征する、力こそが強さだ」
くだらない質問、答えは決まっている、と言わんばかりにバージルが答えた。
「ふぅん、で、相棒はその力を手に入れて一体どうしようってんだ? 世界に覇でも唱えるつもりかい?」
「そんなものに興味はない、俺はただ力が欲しい……スパーダのような純粋な力が」
「んじゃ、仮にその力を手に入れたとしよう、そんでもって仇すら倒しちまった、その後お前さんはどうする気だ?」
「……」
バージルの言葉が止まる、
――俺は力を手に入れて……そして……?
「お前さん、いつから目的と手段が入れ替わっちまったんだ?」
「何だと?」
その言葉を聞き、バージルが眉間の皺をより深くする
「お前さんはいつか言ったな? 力がなきゃ何も守れないと、"何か"とはいわんが、
それを守る力が欲しかったんだろ? 違うか?」
「……お前に何がわかる」
「最後まで聞けっての、お前さんはいつしか"力"のみに執着しちまった、目的を忘れちまってるんだよ」
「何が言いたい」
「スパーダは何のために戦った? 魔界の侵攻から、人間界を救わんと剣を取ったんだろ?」
「……」
「俺っちが思うになぁ、スパーダが魔帝に打ち勝てたのは、純粋に力が強いから、だけじゃねぇと思うんだよな」
「力は決定的なものではない、そう言いたいのか?」
バージルは不快感を隠そうともせずにデルフに聞きなおす
「そうさ、大事なのはな、『守りたい』と思う信念だと思うんだよ、愛だよ、愛」
茶化すようにデルフがカチカチと笑う
「ふざけているのか?」
「まぁ、そう怒るなよ、別に俺っちの考えをお前さんに押し付けるつもりはないさ、だがな、
今のお前さんには、守るべきものがあるってことを知ってもらいたいんだよ、
前にも言ったろ? 守りたいものがあるとき、いくらでも強くなれるもんなんだよ、それが人であれ……悪魔であれな」
「……それがルイズだとでも言うのか? 馬鹿も休み休み言え……」
バージルは吐き捨てるように呟くと地上を見る、シルフィードが飛ばしすぎたのか街道にはルイズ達の姿は見えなかった。
171蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:47:16 ID:5TkTSXWD
「誰かを守るための力ってのも、悪くはないぜ? 相棒も本当は守るための力が欲しかったんだろ? 
そこんとこ、やっぱスパーダの息子だぁね、しっかり受け継いでやがらぁ」
「………」
「ガンダールヴはな、敵を皆殺しにするのが役目じゃない、
詠唱を行う主人を守る、それこそが"神の盾"たるガンダールヴの本来の役目なんだ
ま、お前さんのことだ、どうせ『さっさと皆殺しにすれば手間が省ける』なーんて言いだしそうだがな」
「……」
「まっ、お説教はこれで終わりだ、悪かったなぁ、シルフィードとのフライトに水差しちまってよ? おにいさま?」
楽しそうにカチカチと笑うデルフを背中から鞘ごと引き抜くと、地面へと思いっきり放り投げる
「おい、やめっ! ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………!!!」
悲鳴を上げ地面へと落下していくデルフを冷たい目で見送るとドカっとバージルは腰をおろした。
「でね! おねえさまったらあの時……むっ! おにいさま聞いていらっしゃるの?」
自分語りに夢中になり、バージルとデルフの会話を聞いていなかったシルフィードは
くるりと視線をバージルへ向ける
「黙れ、街が近い、人目のつかん場所へ降りろ」
それを無視し顎で街を示すと、シルフィードに降下の指示を出す。
「守るべきもの……守るための力……か」
彼の呟きは風と共に消えて行った。

「遅いな……」
バージルが街道を見つめながら低く呟く、人目につかない場所でシルフィードから降りた後、
変化を使わせ待ち合わせ場所である、街の門前にやってきたのだが……
シルフィードがペースを考えずに飛んだため、馬で移動しているルイズ達を余裕で置き去り
ルイズ達が全行程の半分も行かないうちにトリスタニアへ到着してしまっていた。
「ところでおにいさま? どうして桃髪達なんか待ってるの? おじゃまむしが来ないうちに早くデートしたいのね!」
街へ行く、その部分だけしか聞いていなかったのか、シルフィードはここに来た理由を知らないようだ
「……勘違いするな、用があるのは秘薬屋だ、俺は場所を知らん」
「わたし秘薬屋さんの場所知ってるの! 何度かここの上を飛んだ時におねえさまに教えてもらってたから街には少し詳しいのですわ、きゅい」
「本当か?」
バージルがジト目でシルフィードを見る、
「うんうん! だから早く行くのね! おにいさまっ!」
そう言うとシルフィードはバージルと腕をからめると、街へと引っ張るように歩いて行った。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:49:12 ID:wrSI9nJJ
支援!
173蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:49:23 ID:5TkTSXWD
シルフィードがバージルと腕を組みブルドンネ街を歩いてゆく、
まだ早い時間とはいえ、道端では声を張り上げ果物や肉、籠などを売る商人達の姿が見え
通りは活気を帯びはじめていた。
そんな中、ぐー、とシルフィードのおなかが鳴る、その音にバージルも気が付いたのか
シルフィードへと視線を落とすと、恥ずかしそうに頬を少しだけ赤くし、上目遣いで見つめてきていた。
「ねぇおにいさま」
「……なんだ」
「おなかすいたの」
「我慢しろ」
お決まりの一言を冷徹に一蹴する、だがそれで引き下がるシルフィードではない。
返事を返してくれるだけマシ、伊達にタバサの使い魔を務めていない。
「おなかすいた、おなかすいた、おなかすいた」
「草でも食ってろ」
色気より食い気、それでも駄々をこねるシルフィードにバージルが鬱陶しそうに吐き捨てる、
「シルフィは草なんてたべないの! お肉たべたい! お肉たべたい!」
ギリッ……とバージルが奥歯を鳴らし眉間にしわを寄せる。
「おにいさまはおなかすいてない? きゅい」
「……黙れ」
「お顔に書いてあるのね! おなかすいたって!」
尚もわめくシルフィードは、バージルの目が次第に色を失っていくことに気がついていない。
「おなかすいたの。おなかすいたのーのーの」
「……黙れと言っている」
「だっておにいさまはおねえさまと同じなんだもの、おねえさまはすぐわたしのごはんを忘れる。
だからおにいさまにもたくさん言うの、おなかすいた、おなかすい――」
シルフィードがそこまで言った途端、突如バージルの手がシルフィードの細い首を掴みぐいっと上へと持ち上げる。
「――ぐっ!? きゅ……く……」
立っていた地面を失い、シルフィードは一瞬何が起こったのか分からず、苦しみに目を白黒させながらバージルを見る
「この際だ、俺の嫌いなものを一つ教えてやる」
惚れ薬の効果があるにも関わらず、シルフィードが恐怖に戦慄く、バージルの目は冷たく、一切の色が消え失せていた
174蒼い使い魔 第35話:2009/01/24(土) 03:52:08 ID:5TkTSXWD
「貴様のように聞きわけのない奴だ、これ以上続けてみろ……次はない」
バージルは冷たく言い放つと地面にシルフィードを投げつけた、
その光景は当然道行く人の視線を引いてしまう、何事かと人が集まってくる、
そんな中にも関わらず、バージルは地面にへたり込み、目に涙をためながら苦しそうにせき込むシルフィードを冷たく一瞥すると……
踵を返し集まってきた人間をかき分け通りへと消えて行った。
「……うっ……げほっ……げほっ……! ぅ……ふぇっ……うぇっ……うぅっ、うわ〜〜〜〜〜ん!」
その場に取り残されたシルフィードは、恐怖に身を震わせながら人目を憚らず泣き始めてしまった。
「ねぇちゃん……大丈夫かい? まったくひでぇ兄ちゃんだ……ほれ、立てるかい?」
その様子を見かねたのか、人の良さそうな男がシルフィードに手を差し伸べる、
シルフィードはそれに力なく首を振りながら、ゆっくり立ち上がる、
「ち……違うのね……ひぐっ……シルフィが悪いの……シルフィっ……わがまま言ったから……」
「んなこと言ったってよ……、ありゃいくらなんでもやりすぎだ……」
心配する男をよそにシルフィードはすすり泣きながらふらふらと歩きだした。
「ぐすっ……だ、大丈夫なの……」
早く追わなくちゃ……そう思いながら通りを進もうとする、
そしてふと前を見ると、去って行ったはずのバージルがこちらへ向かって歩いてきた。
シルフィードはビクリと一瞬体を強張らせるも、おずおずと謝罪の言葉を口にする
「あっ……、お、おにいさま……その……ごめんなさい……シルフィ……」
「……」
そんなシルフィードに何も言わずに近づくと、バージルは無言で手に持っていた包みをシルフィードへ押しつける。
「ふぇ?」
突然押しつけられた包みを困惑の表情を浮かべながらシルフィードが封を開ける。
その中には香ばしい匂いを漂わせる、串焼きが数本入っていた。
それをみたシルフィードの顔がぱぁっと輝く。
「おにいさまっ……!」
感極まり、シルフィードがバージルの背中に抱きつく、
「鬱陶しい……」
背中で泣きじゃくるシルフィードを一瞥し……バージルは小さくため息を吐いた。


投下終わりです、支援感謝です
兄貴マジギレ、大人げナッシング、
ちなみに、兄貴もキスくらいしたことありますよ
ネヴァンと……HPぎゅんぎゅん減らされて何度か腹上死させられましたがね……
しかも兄貴もネヴァンの腰にさりげなく手を回してる……流石は双子だ
最期まで見届けた俺の業も深い……ではまた次回、お会いしましょう……死んでなければ……
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:55:06 ID:XEVz3c77
投下乙ー
兄さんツンデr(キィンッ!!)
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 03:59:56 ID:Wva1mUoH
乙です
いかん、バージルのツンデレ進行が深刻だw
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 04:00:17 ID:86ck34zd
やだ・・・胸がキュンっときた・・・バージル兄貴に・・・

破壊力高杉
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 04:02:35 ID:wrSI9nJJ
投下乙です!

バージル大人気ないなぁ〜w
いや、問答無用で切り捨てないだけでもマシな方か?
シルフィ、まさかタバサまで乗せるの拒否するとは…あとで食事以外のおしおきは確定だなw
『涙』が品切れだとタバサの実家にバージルが行くのは確定かな?
その場合タバサの母親の事を知ったバージルどうでるか楽しみだ
次回も楽しみにしております!
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 04:25:43 ID:J6PN/zP9
投下乙です
しかし何という破壊力のあるツンデレ・・・
惚れ薬の効果が無くなっても状態が変わらない気がw
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 05:58:32 ID:JOS3MxtI
理想郷どうなってんだ?
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 07:02:39 ID:iZixxLpK
―――や………を多用する作品ってよく見るけど、あれって何なんだ?
そんなに文章にリズム等が付く訳でもなし
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 07:32:58 ID:6qBTLDlk
このままゼロの魔王伝が流れてしまいそうなのが寂しい・・・
12、13、14と作者もwikiに追加する気がないみたいだし。

15に続くんだよね? ね?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 07:37:13 ID:OLpxAMTH
Wiki登録は気付いた人の仕事
気になるなら自分でやんな
男は度胸なんd(ry
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 07:39:16 ID:SaqDtk8B
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 07:55:23 ID:ywZXDved
>>181
作風

自分の趣味を他人に押し付けるな
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 08:09:40 ID:Q/sYvnMW
時々ここで読んだ記憶があるのに登録されてないものがあったりするんだが、
アレは書いた人間が削除してるんだろうか?

それとも俺の勘違いか。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 08:17:33 ID:U94Ny9N/
ただ単に「登録されてない」だけじゃね?
流すのが惜しいなら、メモ帳にでもコピペして保存しておけばいいんじゃ
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 08:19:52 ID:Q7CvBOmJ
別に登録しなきゃいけないわけじゃないからなあ
作者が自分で登録する気がなくて、
他に登録しようって人がいなければまとめ入りしてないのは当然かと
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 08:44:01 ID:KkCMnqkV
まとめに登録する作品って結構選り好みしてしまうけどね
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 08:56:52 ID:jzisPd3i
妙な使命感や義務感を持っていない限り、自分好みの作品しか登録しないのは当然かと
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 09:22:19 ID:7aM6rF4t
あくまでこっちがメインでまとめは補助的なものだしなあ
漏れがあっても不思議はないだろう
作者さんもまとめに載せるために書いてるわけじゃないだろうし
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 10:11:46 ID:RCBbB/66
>>180
復旧したぞ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:07:58 ID:/+2A1Lvg
たまに登録してる人間から言わせてもらうと、本当は作者さん自身が登録してくれるのが一番いいと思う。
容量の問題でページ分けたり、wikiで見難くなる改行を削除したりしてると
作者さんの意に沿ってるかどうか不安になってくる。

wikiにはプレビュー機能があるからいきなり失敗する事はないし、テスト空間で練習してもいい。
特にポリシーがあるわけでなく、ただwiki編集は敷居が高いと思ってる人は一度挑戦してみてほしい。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:13:02 ID:gDhaNgnf
意外と簡単だからな、本当にほぼ誰でもできる
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:16:39 ID:oQGhmnJl
たまにしか書かない作者だが、最近までwiki登録のしかたがよくわからなかった、
ってか、難しいかなと敬遠していたけど、一度ものは試しとやってみたら
思ったほど難しくはなかったから、助かった

やっぱ何事も挑戦だね
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:19:11 ID:fzmW18Yu
ttp://www35.atwiki.jp/anozero/pages/152.html
具体的な作業手順はこのページ参照
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:26:22 ID:rcmeli7U
>>195
俺もやってみたら簡単だったから、自分で登録するようになったけど
誰かに登録してもらえると、なんというか必要とされてる感じになれて嬉しくならないか?
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:37:08 ID:XXYQUHne
なるけど「誰もボクを応援してくれてない……」ってな無言のプレッシャーを発しているというか、「俺を褒め称えろ」と強要しているような気がする。
という被害妄想系の自分は翌日に登録されてなければ自分で登録してる。
199ジル:2009/01/24(土) 14:47:02 ID:15wH5S/m
1500から11.5話を投下
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:50:35 ID:u3cZL+vO
登録を忘れてた時に誰かが登録してくれたのは、確かに嬉しかった。
ただ、読んでもらった上に登録の手間までかけさせるのは悪い気がするから、基本的には自分で登録してる。
正確な元データを持ってるのは作者だけなんだし。

バレンタイン支援
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:52:43 ID:IPxzKkt1
しえん
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:59:07 ID:CofwwMnH
毒吐きで叩いてる奴が居るから作者登録はNGだと思ってた
203ジル:2009/01/24(土) 15:08:04 ID:15wH5S/m
 ルイズ達、大使一行が出発する前日。
 ワルドは、偽情報に踊らされていた。
「え? もう出発しただと?」
 既に昨夜には出立した、ラ・ロシェールで船を徴発、無理矢理アルビオンに航る。それがワルドが手に入れた情報だった。
 すぐにグリフォンを伴った偏在で追うが、追い付くはずはない。目標は原点から一歩も動いてないのだから。
 ルイズが動いていないのを知るのは、偏在とグリフォンがアルビオンに到達し、ジルが高音と共に学院を発った、かなり後だった。
「な!? まさか情報が違うのか?」
 アンリエッタによる、ほぼ完璧な情報統制。それは、たわいもない風の噂で綻びを見せた。
 慌てるワルド。アルビオンまでの道で疲弊したグリフォン。王党派と接触してしまったがために消せない偏在。どう頑張っても追い付けない相手の移動速度。新たに偏在を使おうにも、精神力は有限であり、常に偏在を、しかも何体も出せば、たとえスクウェアでも
すぐにスッカラカンになってしまう。ただでさえ、ロンディニウム、ニューカッスル、雑用、情報収集にそれぞれ一体、計四体を動かしているのだ。
「くそ、どうする……せっかくの王族のスキャンダルが……」
 トリステイン・ゲルマニア同盟阻止の材料となる何かが、ニューカッスルにあるらしい。レコン・キスタに属する者としては、喉から手が出る程欲しいものだ。
「あのアホの子のアンリエッタにこんな知恵があるとは思えん……誰かの入れ知恵だ……マザリーニか?」
 完璧に後手に回ってしまった。そして、城では本格的なスパイ狩りが始まっているだろう。今動くのは得策ではない。今はただ、ニューカッスルでルイズを待つしかなかった。



 高空から、彼女達は非常識なそれを追っていた。
「すごいわね、風竜ですら追い付くのがやっとなんて」
「きゅい! きゅい!」
 滑空など愚の骨頂、常に羽ばたかなければ追い付けない。蒼い風竜は『重量オーバーで最高速が出せられない』相手に、全力を出さなければならない。無論、かなり疲れている。
「やっぱりかっこいいわ。そこらの男より断然素敵よ」
 男の趣味が悪くなった友に頼み込まれ、少女は人知れず溜め息を吐く。
「ねえ、もっと近付けないの?」
「無理」
 今まで距離を離されなかったのが奇跡なくらいだ。今回ばかりは、おしゃべりな使い魔を褒めてもいい気になった。
「ああ、どこに行くのかしら? フーケとギーシュまで連れて、面白いことになりそうね」
「不安」
 少女は一言だけ、その予感を言葉にして返す。
「あら?」
 風竜がだんだんと高度を落としてゆく。羽ばたきの回数も減ってきている。そして目標は────
「あ……まって!」
 だんだんと小さくなり、消えた。
「ああん、もう! どうしたのよ!?」
「限界。疲れてる」
 完全に羽ばたくのをやめ、滑空している風竜は、息も荒くどうにか姿勢を保っている。
「ああ……ジル……」
 趣味が悪くなった訳ではなかったらしい。道を誤っていた。



 アンリエッタは執務室で報告を待っていた。言うまでもなく、諜報の成果を。
「あの衛士の方……ジルの言う通りでしたわね」
「我々にはない発想でしたな。眼から鱗です」
 傍らに控えるマザリーニは、アンリエッタから聞いた話を反芻していた。話術とは、かくも簡単かつ効果的に相手に情報を吐かせるのか、甚だ不思議でならなかった。
204ジル:2009/01/24(土) 15:09:18 ID:15wH5S/m
 平民を密かに登用し、諜報員としての初歩的な訓練を施し、一部は盗聴させ、一部は監視をさせ、一部は使用人の振りをさせる。貴族は貴族には警戒するが、余程の事が無い限り平民を空気扱いする。或いは、気に入った平民に自ら秘密をぶちまけたりする。平民に
は力が無い、そんな思い込みからの無警戒だった。
「平民を蔑ろにできないいい例ですな。今回はそれに救われましたが」
「思い込みと慣れは恐ろしいですわね。ああ、そうでしたわ。貴族も絶対強者ではありませんでしたわ」
「ほう、なにかあったと見えますな」
 アンリエッタはマザリーニの言葉に、自虐的に微笑む。
「ルイズの使い魔、いえ、平民の衛士に一瞬で組み伏せられましたわ。杖を取り出せていたにも関わらず、ディテクトマジックすら唱えられませんでした」
「成程、それは……」
「ジルは、驕ったメイジなど敵にはならないでしょう。いえ、驕らずとも、彼女は敗けない、そんな気すらしますの。例え幻獣やオーク鬼や、吸血鬼さえも彼女には敵わない」
「大きく出ましたな」
「ええ。もしかしたら……」
 と、ノックの音がアンリエッタの話を遮る。
「姫殿下、ケイシーです。報告に参りました」
 使用人諜報班で最も優秀な男が戻ってきた。



 オスマンは泣いていた。いや、比喩などではなく。
「ミス・ロングビル……君の偉大さが身に沁みる気分じゃ……」
 机の上には書類が堆く積み上げられ、オスマンの椅子の周りにも、彼を囲む檻の如く積み上げられている。
 ロングビルが適所に振り分け、オスマンの仕事を最小限にしていたのだが、彼女が抜けた穴はひたすらに大きく、その結果がこれだった。
 オスマンは身動きが取れない。下手に動けば書類に襲われ埋もれてしまう。
「うおおーい! だれかたすけてくれんかー!?」
205ジル:2009/01/24(土) 15:14:09 ID:15wH5S/m
番外編、いかがでしたか?
情報戦に負けたワルド、
百合の道に走ったキュルケ、
諜報活動に精を出す王女に、
秘書がいなくて遭難した学院長。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 15:16:42 ID:SibCjcyV
ここじゃないけど携帯で編集やっちゃった俺が通りますよ

トップのテンプレやリンクちょっと追加するだけの作業でも超緊張したなあ
WIKIによってはページ破壊しちゃう事があるから基本PCからするべきなんですがね
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 15:21:51 ID:SibCjcyV
ってごめんなさい

ジルの人乙です
ワルド…w
208ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:29:25 ID:WYQz+Tpx
ワルドかわいそすwww
乙っした!!

さて、原作3巻辺りに突入しました黒魔でございます。
とはいえ、ここから脱線しそうな気がめちゃくちゃするので、先に謝ります。すいません。
15:35辺りから失礼します。
今日は新展開プロローグみたいなものなので、短めですがよろしくお願いいたします。
209ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:34:57 ID:WYQz+Tpx
投下開始
――

「あの、ね、ビビ。王宮には私が報告に行くから、ここでちょっとだけ待ってて欲しいの」
「……え?ついてかなくて、大丈夫なの?」
事件から一夜明けて、ボク達はトリスタニアにいたんだ。
「えぇ。せめて――報告だけは私にさせてほしいの」
ルイズおねえちゃんは、昨日ずっと黙っていた。
ラ・ロシェールで治療されてたときも、晩御飯のときも、今朝シルフィードに乗ってたときも。
なんとなく、自分を追い詰めてるって、そんな感じがした。
もしかしたら、今は1人になりたいってそういうときなのかもしれない。
「……うん、分かった。じゃぁ、これ、『風のルビー』……あと、王子様からの伝言は……」
「分かってるわよ!一言一句、ちゃんと記憶にあるから!――じゃ、ちょっと行ってくるわね」
そう言って、少しだけ笑ってお城の門まで小走りに駆けていくルイズおねえちゃん。
……ちょっとだけ、危なっかしい感じがしたんだ。

―ゼロの黒魔道士―
〜第二十八幕〜 涙の数だけ強くなれるよ

「相棒〜、良かったのか?」
「ん〜……ルイズおねえちゃん、色々ショックだったろうし……1人になりたいんじゃないかなぁ?」
お城の前の広場、噴水のある辺りでのんびりとルイズおねえちゃんの帰りを待つ。
思えば、今回の旅って本当に衝撃的だった。
ルイズおねえちゃんに婚約者がいるって思えば、
そいつが裏切り者で、
ラ・ロシェールで大勢に襲われるし、
デルフがトランスして……
「……そういえば、デルフ?なんでまたサビサビに?」
「ん?あぁ〜、やっぱしこの方が落ち着くしな!なんつーの?長いことこの姿だったしよー」
デルフは、あの後、すぐに元の錆びまみれのボロボロの姿に戻っちゃったんだ。
でも、鞘を自分で出したり閉ったりできるようになったから、ちょっと便利かもしれない。
……鞘が自分で抜けるぐらいに、ボクがもうちょっと大きかったらなぁって思う。
「ボロボロの方が落ち着くんだ?変なの……」
「変っつーなよ、相棒ぉ〜!愛着とかわくってぇもんよ!」
「ふ〜ん……」
空はあんなことがあったのに、青くて高くて広かった。
シルフィードやタバサおねえちゃん達は、先に学院に戻ったんだ。
なんか、「無断欠席の言い訳をしておく」とかなんとか……
とすると、学院へ帰るときは馬に乗るのかな?
今度は急いでないから、あんまりトバして揺れないといいなぁ、とかそんなことを考えていたんだ。
210ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:35:43 ID:WYQz+Tpx
「お前、見ない顔だな?」
「……え?」
ボーっとしてたら、声をかけられた。
銀髪の、ポニーテールの、活発そうな男の子。
「――お!お前、でっかい剣持ってんじゃん!」
「あ、う、うん……」
なんか、人懐っこくて、パック王子を思い出す。
その男の子は、デルフを持って、しげしげと舐めるように見ていた。
「あー、でもボロボロだなー?ほらよ!あ、剣持ってるってことは、お前も『先生』に?」
「わ、わたたた……え?せ、先生?」
デルフを見るのに飽きたのか、男の子がポーンとデルフを投げて返す。
『先生』って……学院の、かなぁ?
「『先生』、すっげーからな〜!まさに達人っての?よし!じゃ行こうぜ!遅刻するわけにはいかねぇしな!」
「え、あ、ちょ、ちょっと待っ……」
その子の勢いに流されてそのままズルズルと引きずられてしまった。
えっと……どこ行くつもりなのかなぁ?
「――相棒、ちっとは抵抗とかしろや」

――――

ピコン
ATE ―風に揺れている花のように―

「――『生きていてくれ』、それが、あの方の伝言なのですね?」
「――はい」
ルイズはアンリエッタの私室にいた。
衛兵と一悶着はあったものの、『水のルビー』を見せれば、案外すんなり通してくれた。
そして今、目の前の姫殿下は『風のルビー』を握りしめ、悲しみに耐えていた。
最後に見たウェールズ殿下の姿と言葉を、そのまま伝えるのは思いのほかこたえるものだった。
本当に、何もできなかった。ルイズはそう痛感していた。
元婚約者の裏切りを止めることもできず、友人である姫の恋人を亡命させることも叶わず、
せめて、起こったことの報告ぐらいはと考え、一人ここに来たものの、
改めて、己の無力さに気付かされるだけである。
今の自分には、目の前の姫の心を癒すことすらできないのか、と暗く沈んだ姫の表情を見て思う。
しばらく、沈黙が場を支配した。

「ルイズ、あなたと、あなたの使い魔には酷いことをさせました、まさかあのワルドが――」
「いえ――まず、私が気づくべきでした」
そう、まずは自分が気づくべきだったのだと、ルイズは自ら悔いる。
道中でのワルドの言動、あれは明らかに何かを焦っていた。
そこでワルドの企てに気づいてさえいれば。
「〜たら」「〜れば」が頭でいくつもいくつも浮かんで消える。
またも沈黙が場を満たす。

「――ルイズ、手を、出してください」
「――え?はい――」
沈黙に息が詰まりそうになったころ、姫殿下が場の空気を両断するように凛とした声を出す。
その声は、悲しみに震えるものではなく、怒りに満ちたものでもなく、
決意に溢れる堂々たるものだった。
「この、『水のルビー』――貴女がお持ちなさい。せめてもの、報酬です」
「そ、そんな!これは、王家の――」
焦るルイズ。
「いえ、これは、私なりのケジメです。
 姫として、そして、貴女の友として――今後も名乗って良いものならばですが」
一方、慈愛に溢れた笑みを湛え、これに答えるアンリエッタ姫。
その左手には、先ほどまで強く握りしめていた『風のルビー』が輝いていた。
211ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:36:27 ID:WYQz+Tpx
「――あの方は、私に『生きろ』と言い、自分は勇敢に立ち向かったのでしょう、運命に。ならば――」
愛しき人への想い出を、かみしめるように目をつぶる姫殿下。
それを市井の平民のごとくただ見ることしかできないルイズ。
「――私は、生きて運命に立ち向かいましょう。あの方の想い出に、答えるために」
そして今を見据えるかのように見開かれる姫の目。
ルイズは、またも『強く、大きい背中』を見てしまった。


部屋を辞し、ドアを閉じてしばし佇むルイズ。
また、『強く、大きい背中』を見ることしかできなかった。
せめて、姫殿下の友として、互いに嘆き、傷の舐めあいをしたかった。
率直に言ってしまえば、ここに一人で来たのもそんな情けない理由だ。
しかし、そんな浅はかな考えを、姫殿下はアッサリ乗り越えてしまった。
そして、来たる明日のために、自から今に立ち向かおうとしている。
ルイズが憧れとしていた、文字どおり『貴族らしく』である。
自分は、とルイズは自問する。
まだ肩を並べて歩く資格すらないのか、と問いかける。
誰かの背中を見るだけで、隣に立ち、共に歩くことすら無理なのかと問いかける。
ポロリ、ポロリと王宮の廊下に涙の雫。
握った『水のルビー』がそれを淡く照らしていた。


「あぁ、そこの君、アンリエッタ姫殿下はご在室かな?今度のご婚儀のことで――」
どれくらい、時間が経っただろうか。
どれくらい、今の自分の顔はグシャグシャなのだろうか。
声をかけてきた老人が、ルイズの顔を見て戸惑った表情を見せる。
「――あ、え、す、すいませんっ!ひ、姫殿下はご在室です!えぇ、間違いなく!」
慌ててハンカチを取り出し、顔を隠すルイズ。
だが、目の前の老人は部屋に入ろうとせず、ドアで耳をそばだてているだけである。
「――ふむ、確かに。だが、今は入らん方が良さそうですな」
溜息混じりの苦笑で、ルイズの顔を見ないように答える老人。
やっと、その老人がマザリーニ枢機卿であること思い出すルイズ。
はて、入らぬ方が良いとは?
枢機卿にならい、ドアに耳を当てて中の音を聞こうとする。
「――グズッ――うぅ――」
ドアの厚みで音がくぐもるも、内容は容易に想像がつく。
姫殿下も泣いている。部屋で一人。
「困ったものですな、人の上に立つ者が、感情に任せ涙を流していては
 ――最も、誰彼かまわず人前で泣いたようではないですし、昔よりはマシになりましたかな」
その言葉に、赤い目をきょとんと丸くするルイズ。
212ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:37:02 ID:WYQz+Tpx
昔より?
ルイズの知るアンリエッタ姫は、
昔からお転婆で、どちらかというと好き勝手に生きているという印象の方が強かった。
姫殿下は、姫殿下も、何度も何度も泣いたのだろうか?
「ま、人は泣けば泣くほど強くなると言いますし、今は好きに泣かせますかな。
 風に揺れる野花も、踏まれて強くなると申すことですし」
マザリーニ枢機卿は、独り言とも、説教ともつかぬ、穏やかでゆっくりとした口調で語る。
それは市井で『鳥の骨』と揶揄される男には似合わぬ、
まさに枢機卿という肩書どおり、聖職者のごとく包み込むような慈愛のこもった言葉だった。
「泣きたいときは、泣いてもいいでしょう――時と場所は選んでいただきますが。
 ですが、泣いたら、それだけ前に歩きだしてもらわねば。
 涙は、そのための栄養ですからな。涙もタダではありません」
その言葉が、ルイズ自身に向けられていると気づくのに、少々の時間を要した。
肩の荷が、ほんの少しだけ、降りたような気がした。
「あ、あの――お、お見苦しいところをお見せいたしまして!!!」
慌てて最後にもう一度顔をぬぐってからハンカチをしまい、一礼をするルイズ。
だが、それにマザリーニ枢機卿は答えなかった。
「はて、何のことですかな?年を取ると独り言が多くなってかないません――」
自然と、微笑みがどちらの顔にも浮かぶ。


涙は前へ進むための栄養だ。
だから、泣いたら明日は前へ進もう。
ルイズは新しい何かを得て、王宮を後にした。


――――

「いいか、お前達!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
「は、はい、先生……」
なんで、こんなところにいるんだろう……
「お前たちは、まだ、たまねぎすらまともに切れぬひよっこだ!いや、お前たち自身たまねぎだ!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
男の子に引きずられてきたのは、街外れの広場。
そこにいたのは他の3人の子供たちと、
鎧を着た『先生』……女の人だった。
「だが、たまねぎでも何度も刻み、何度も涙を流し、そうしてはじめて一人前の剣士となる!それを心得よ!!」
「「「「はい、先生っ!!!!」」」」
そう、この女の人、アニエス先生って言うらしいんだけど、この人は剣の先生なんだって。
そうさっきの男の子、ルーネスって子が教えてくれた。
(ちなみに、他の子はアルクゥ、レフィア、イングズって言うらしい)
ルーネスによると、アニエス先生は名の知れた賞金稼ぎで、
大物強盗だろうと、メイジだろうと、何人もの犯罪者をその剣で捕らえたすっごい人、らしい。
で、ときどきこうやって平民の子供たちに剣の技を教えてくれているんだって。
何でも、「いざというとき貴族はアテにならないから」らしい。
……なんか、大変だなぁ、こっちの平民の人たちって……
213ゼロの黒魔道士:2009/01/24(土) 15:37:33 ID:WYQz+Tpx
「――しっかし、おっかねぇ女だなぁ〜!鬼教官ってぇのがしっくりくる感じだぜ」
デルフの言うのがちょっと分かる。
つりあがった目に、ガッシリした鎧。
さらにその口調。
鬼教官って言葉がこれぐらいピッタリくる人をボクは他に知らなかった。
「そこぉ!!新入りっ!!私語は慎めっ!」
「わ!?は、ははははははいっ!!!」
で、あっさりデルフの声を聞かれてしまう。
デルフは口(はないけど)を閉じて知らん振り。
どうも、私語をしていたのはボクってことになってしまったみたいだ。
「ふん、自分の力量もわきまえず大剣を持参して、か――新入り!名前は!!」
「え、あ、は、はい、び、ビビです……」
あまりの迫力に、後ろに一歩下がりたくなる。
帽子をつかんで、そうならないよう必死に耐える。

「ふむ……今日の生徒は5人、か……ちょうどいい。
 4人は2人ずつ組を作り、練習開始!わたしは新入りの実力を見るとしよう」
「え」
なんか、すっごく嫌な予感がしたんだ。
「おっとぉ、おもしれぇことなってきたなぁ〜」
デルフの小声で、さらにすっごく嫌な予感になったんだ。
「このわたし、アニエスが直々に鍛えてやる!かかってこい!!」
腰につけていた剣を抜いて、構えるアニエス先生。
その構えは明らかに冗談とかじゃなくかった。
「……どうして、こうなっちゃうんだろう……」
今日、何度目か知らないけど同じ言葉をつぶやいた。
――
以上、投下完了です。
まともに原作どおり進んだら、アニエスさんの登場が困難ですので、
無理やり登場願いました。すいません。
次回はできるだけ早く、という曖昧な書き方ですいません。がんばって書かせていただきます。
お目汚し失礼いたしました。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 16:03:17 ID:KkCMnqkV


FF3 DSの主人公集の名前が出るとはねぇ
玉葱を馬鹿してはいけないぞ FC版じゃLv95辺りから最強のステの頭角を示し
DS版でも言うなれば超強化赤魔道士だし、タクティクスじゃ成長率が最高の隠しジョブなんだぞ
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 16:10:03 ID:oiCF/r+0
レベル上げてオニオンそろえれば
鉄巨人や暗闇の雲とタイマンして勝てるからな
まあそこまで上げて装備揃えるのが滅茶苦茶苦労するんだけど

3色ドラゴン強くなりすぎw
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 16:39:46 ID:15wH5S/m
友よ!雪だ!雪が積もった!
217Zero May Cry:2009/01/24(土) 16:50:53 ID:Jsti/weZ
終わったあああああ(いろんな意味で)
ということで第2話を5時ぐらいに投下したいと思います
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 16:52:35 ID:CD6oAUHy
>>217
良い意味で終わった事を祈ってるよ。
そんな訳で支援だー
219Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:00:34 ID:Jsti/weZ
Zero May Cry - 02


 やがて学園の一通りの説明が終わり、ネロはルイズの部屋へ案内された。部屋の内装を見てネロは一言、「悪くないな」と呟く。
 二人は部屋に置かれている小さめの机を挟んで椅子に腰掛けた。ネロの方は行儀悪く大きく脚を投げ出している。

「アンタねぇ………」

 そのネロの態度を見かねてか、ルイズは可愛らしい眉をヒクヒクと震わせながら怒りを押し殺した声で言った。

「ご、ご主人様の御前なのよ……? ももももう少しまともな態度は、とと、取れないの……!?」
「おいおい声が震えてるぜ? 何か怖いものでも見たのか?」
「スッゴイ腹立つものなら今目の前で見てる!」

 ダン!と大きな音をたててルイズは立ち上がると、まるで世も末と言いたげな表情で頭を掻き毟る真似をした。

「あぁ〜もぅっ! 何で私の使い魔がこんな傭兵みたいな人間なのよぉ〜! ドラゴンとかグリフォンとかもっとカッコイイのがよかったぁ〜!」
「別にいいじゃねぇか。あんな化け物みたいなのよりか俺の方がまだ可愛げがあるだろ?」

 そう言いながらネロは昼の儀式の時に目にした他の生徒達の使い魔を思い出していた。
 中には浮遊する目玉のような生き物もいたはずだ。あんなのに比べたらまだ自分の方が見栄えはいいと、そう言い切る自信がネロにはあった。
 確かにネロは、そこいらの美男子、美形の男性と比べても整った顔立ちをしていると言えるだろう。
 しかし悲しいかな、ルイズにとって今重要なのは使い魔の顔などではなくその種族や風格だった。

「何つまらない冗談言ってるのよ!!」
「冗談じゃないぜ? あの化け物の集まりよりか俺の方が全然イイ男だ。顔見たらわかるだろ?」
「………………………もういいわ。とにかく、今はもっと別の事を話さなきゃだし」

 そう言ってルイズは力なく再び椅子に腰掛けた。真面目な顔つきになり、ネロへ質問をぶつける。

 それからは、ネロにとってもルイズにとってもウンザリする程の質問タイムだった。



「ハルケギニアも、トリステイン魔法学校も知らないですって?」
「ああ。そんな地名俺のいた国だと聞いたこともないな」
「呆れた……どんだけ田舎なのよ、アンタの国……」
「そっちが田舎なんじゃないのか? でもまぁ雰囲気はフォルトゥナと似てるな」
「だからそのフォルトゥナって何処の国よ? 絶対そっちが田舎よ」

 ここまで話を聞いて、ネロは己の心の中に段々とある疑問が湧き上がるのを感じていた。
 確かに雰囲気自体はこの国はフォルトゥナに似ている。
 だが………。

 だが、何かが違う。自分がここにいる、その事実が何か違和感を覚えるような感覚。

 そんな疑問を抱えながら、ネロはルイズとの問答を続けた。

「で、アンタはそのフォルトゥナって国で騎士をやっていたの?」

 そう言ってルイズはネロの身なりを確認する。とてもではないが、ルイズ達が知る騎士《ナイト》には見えない。
 ルイズの疑うような視線を気にせず、ネロは続けた。
220Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:01:27 ID:Jsti/weZ
「ああ。魔剣教団っていうクソみたいな連中に混ざって、俺も踊らされたのさ」

 突然自嘲気味に語りだすネロを見て、ルイズは訝しげな視線を彼に送った。

「………そこで何かあったの?」
「………別に。何でもねぇよ」

 ネロは脳裏にあの教皇の顔を浮かべ、吐き捨てるようにルイズに言った。

「お前も気をつけろよ。普段ニコニコしてるような奴が、裏で何を考えてるかなんて分かりゃしねぇんだからな」
「え? それって……どういう事よ?」
「……何でもねぇ。質問の続きだ。俺はとにかくそこで騎士をやってた」

 そこで一旦言葉を切り、ネロは未だに釈然としない様子のルイズに向かって珍しく真剣な視線を向けた。

 そして、こう切り出す。

「悪魔って信じるか?」
「あ、悪魔………?」

 その言葉を聞いて、ルイズは目を丸くした。彼女の常識では悪魔など空想の生き物で、それこそ本の中でしかお目にかかれない存在だ。
 突然飛び出した場違いな単語に、ルイズはフンと鼻を鳴らしてネロに答えた。

「何言ってるのよ。悪魔なんて実在するわけ無いでしょ。笑わせないでよ?」
「そうか…………」

 ルイズのその返答に、ネロの中での疑問は確信へと変わった。


 ―――悪魔を知らない―――


 それは、ネロの住む世界においてはとても重要な事だった。
 ただ普通の人間として暮らしているのならばともかく、ルイズのように“魔”法を扱う人間ならば一度は目にしていてもおかしくはない。
 魔法という人にあらざる力を行使する人間には、やがて人にあらざる訪問者が訪れる。

 それがこの国の人間―――いや、この世界の人間にはない。

「どうしたの? 何か悪魔に思い入れでもあるの?」
「いや……。どうやら、俺はとんでもない勘違いをしてたらしい」
「………?」

 ネロが放ったその一言に、首をかしげるルイズ。

「どういう事? 勘違いって………」
「俺はこの国が俺の住む国とは別の国だと思ってた」

 ネロの言いたい事が理解できずに、ルイズは怪訝な表情のまま彼の言葉を聞いていた。
 そのネロ本人は不愉快極まりない、と言った表情で続ける。
221Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:02:34 ID:Jsti/weZ
「この国は、俺の住む“世界”とは別の“世界”の国らしい」
「は…………?」








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「異世界………」
「ああ。悪魔を知らない世界なんて聞いたことないぜ」
「そ、そんな………」

 ルイズは愕然とネロの言葉を聞いていた。
 悪魔の実在する世界。悪魔狩りを生業とするネロの組織。人々を救った伝説の悪魔の存在。
 そのどれもがルイズにとっては御伽噺だった。しかし目の前にいる青年が嘘をついているようには見えない。

「じゃ、じゃあ……あんたは悪魔を相手に戦いをしてたっていうの?」
「そうだ。……何だ、少しビビっちまったか?」
「そ、そんなことないわよ! それに、この世界には悪魔なんて存在するわけないんだから!」

 顔を赤くして反論するルイズを見てネロは薄く笑った。

「そりゃ平和なことだぜ。まっ、俺なんかは廃業になっちまうけどな」
「はぁ。もういいわ。とにかく……あんたにはこれから私の使い魔として暮らしてもらわなきゃならないんだから」

 その一言に、ネロは己の今後を想像してため息をついた。

「……なんでため息をつくのよ」
「何でもないって。それより、その使い魔は何をしなきゃならないんだ?」
「そうね、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるんだけど……言ってみれば感覚の同調ね」
「そうなのか? でも俺は何も感じないぜ?」
「うん……まぁ普通の人間だし、それは期待してなかったけど」
「へっ。それで、次は?」

 相変わらず不遜な態度のままのネロに、ルイズは怒りを覚えつつもそれを押し込めて口を開いた。

「次は秘薬の材料なんかを取ってきたりしてもらうんだけど……それも無理よね」
「その材料ってもんを知らなきゃ取ってくるもクソもないぜ」
「そうよね……あーぁ」
「そう暗い顔すんなよ。次ぐらい役に立てるかも知れないぜ?」
「何であんたはそんなに気楽なのよ……。でも確かにあんたが役に立つのは次くらいかな」

 そう言うとルイズは腕を伸ばしてネロの顔の前に手を持っていき、そこで人差し指を「ビシィッ」とばかりに突き立てた。
222Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:03:35 ID:Jsti/weZ
「最後になったけど、これが一番大事。主人の護衛よ。使い魔は主人を護らなきゃならないの。あ、あと雑用も」
「護る、か………」



 護る。誰かを護る。

 ネロは、この言葉の意味の重さをよく知っていた。
 誰かを護ると言うのはとても難しい事だ。どれだけ強力な力をその身に宿していようと、大切な誰かに危害を加えようとする「敵」を見分ける事も出来なければその大切な人を護る事など出来ない。

「今度のお姫様は、随分と小さなお姫様だな」
「お姫様……って!」

 突然目の前の男が思いもしなかった言葉を口にして照れると同時に怒り出すルイズ。
 お姫様と言ってくれるのは嬉しいが小さいとは聞き捨てならない。

「ちっ、ちちち、小さくて悪かったわね! ど、どどっ、どうせあんたはどこもかしこも大きいのが良かったんでしょ!」
「何勝手に一人で意味の分からねぇこと言ってんだ? 俺は“お姫様”にしては随分と小さいって言ったんだぜ? 誰もお前が小さいなんて言ってねぇよ」

 露骨に顔を赤くするルイズを見てネロは思わずつられて笑ってしまった。

 しかし、そんな彼も心の中では大きな決心をしていた。


 ―――キリエ。ゴメン。何時になるか分からないけど必ず、帰るよ。必ず。だからそれまでは―――


 ネロは目の前でしどろもどろになりながら怒っているのか照れているのかよく分からない態度を見せる少女を見やる。

「ハハッ。こりゃお姫様じゃなくて子猫ちゃんか?」
「だだだだ、黙りなさい!! そそそれ以上主人に無礼な態度は、ゆゆ許さないわよ!!」


 ―――俺はこの小さな姫を護る騎士《ナイト》になろう―――








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「それじゃ私はもう寝るわ。色々疲れたし」
「そうしろそうしろ。俺も昼寝の途中だったから眠いぜ」
223Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:04:25 ID:Jsti/weZ
 ネロによるルイズの弄りも終わると、二人は色々と疲れも溜まっていたのでそのまま就寝することにする。
 そんなルイズはネロの目の前で服を脱ぎ始めた。その様に流石のネロもその顔を僅かに赤らめ、視線を逸らした。その姿は普段の斜に構えた皮肉なネロとは、また随分とかけ離れていた。

「おっ、オイ。人の目の前で服なんか脱ぐなよ」
「人って……あんたは使い魔でしょうが」
「そういう前に俺は男だぞ? 恥ずかしくないのかよ………」

 そう言ってネロは部屋の扉へ向かった。彼のその行動を見て驚くルイズ。

「ちょ、ちょっと何処に行くのよ!?」
「廊下で寝るよ。女と一緒の部屋で寝るわけにもいかねぇしな」
「な、何をそんなに気にしてるのよ。別にいいじゃない」
「………お前が良くても俺が良くないんだよ……」

 ネロは天を仰ぐように顔を上に上げ、ため息と共に左手で己の額を押さえた。
 そんなネロを見てルイズは何とか彼を引き止めようと声を上げる。

「だ、だって……その……とにかく! 私が部屋で寝ていいって言ってるんだから部屋で寝なさいよ!」

 随分とキツい物言いだがこれでもルイズはルイズなりにネロを気遣っているのだ。
 使い魔とは言えまさか人間を廊下で寝かすわけにもいかないと考えているのだろう。

 ―――しかし彼女の場合はその性格が災いして素直にその事を伝えられないのだが。

「………やれやれ、俺のご主人様も困ったもんだぜ……」
「……何よ。文句でもあるの?」
「仰せの通りにしますよ、ご主人様」

 そう言ってネロはなるべくルイズが視界に入らないような位置を陣取った。
 恐らくネロはルイズが言わんとした事を悟ったのだろう。彼女の精一杯の気遣いを無下にするのも気が引ける。ネロは大人しく部屋で寝る事にしたのだ。

 だが。
224Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:05:13 ID:Jsti/weZ
「それじゃ、これ洗濯しておいてね」
「いっ!?」

 突然眼前にルイズの服(しかも脱ぎたて)が放り投げられ、思わずネロはそれを叩き落とした。中には女性のパンツも見受けられる。
 しかしそんなネロの態度を目にしたルイズはまたも大声を上げてしまう。

「なっ! ななななんてことするのよ!! 主人の服を叩き落すなんて!」
「お前がいきなり投げつけるからだろ!? もうちょっと気の利いた渡し方を知らねぇのかよ!」
「もも、もういいわよ! とにかくそれ洗濯しといてよ!」

 それだけ言い放ち、ルイズはベッドに横になった。そんなルイズを尻目に嘆息するネロ。

「……ったく、何で俺がこんな目に遭わなきゃならねぇんだよ……」

 ネロは散らばったルイズの服を足でどかしながら、そのまま横になった。
 とにかくこれからの事は明日考えよう、今はとにかく眠い―――。

「それと、朝起こしてね。服の用意もしといて」

 その一言を聞いて、ネロは小さく「Damn it……」と呟いた。
 しかしそんな悪態をついたのも束の間、そのままネロの意識は眠りの中へ落ちていった。

 こうして、ネロにとっての異世界での一日は取り合えず終わりを迎えた。








―――to be continued…….
225Zero May Cry:2009/01/24(土) 17:08:18 ID:Jsti/weZ
以上で終了ですー
今更なんですが、自分の小説ってかなりゼロの魔のアニメに沿ってるんで
アニメ見た人は先の展開とか分かっちゃって面白くないかもです;
台詞とかアニメからそのまま取ってくるようなシーンも多いし………
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 17:19:06 ID:Iui+orxu
みなさんGJです!
ところでジルの作者様・・・ケイシーってまさか?
ジルよりやばいコックの人ですか?w
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 17:25:38 ID:NlbYk2go
>>225
乙です。
バージルとネロときてダンテの人も帰ってきてくれないかな・・・
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 17:29:39 ID:0ctCAaVL
>>155
>逃避エネルギー
自分もそれ聞いた事があるな。でも元ネタがどうにも思いだせん・・・。
確かなんかエロゲの主人公みたいな軽いキャラが
ぶつくさ言ってる独白の中でそういう感じの事を言ってたような。
でもネット上で見たものなので、ゲームとかじゃないかもしれん。
予約なければ五分後に投下しますね。
35.死霊術師と三つの月

とりあえず燃やすか?いや、それはもったいないな。
と、ムフフな本達の処分をどうするかマーティンは考えている。

ルイズは先ほどマーティンに本を渡した男を見た。
オモロ顔だわ。見れば見るほど。等と感想をこぼしたところで、
ふと目があった。何故か青年は顔を赤くして目線を外す。

やっべ。ヴァーミルナも可愛いけど、やっぱりこの子もすんごく可愛い。
むしろ素のままでこれなんだからこっちの方が可愛いっていうの?
と、モグラ野郎はそんな事を考える。
どこの次元であろうとも、東京在住のサイトならルイズを美しく思ってしまうのだ。

ルイズは何とも言えぬ顔でサイトを見ている。何、今の反応。
さっきのキュルケの言葉がルイズの頭に浮かんだ。
オモロ顔なら現れるんじゃないの?オモロ顔なら現れるんじゃないの?
頭の中でこだまし続ける。やがてツェルプストーがおきまりのポーズで高笑いを始める。

いいえ、ダメ。もっとカッコいいのがいいわね。
頭の中の宿敵を爆発で吹っ飛ばした。変な服を着た青年に少々興味を覚えたルイズは、
結ばれたかもしれない男性に声を掛ける。

「ねぇ、あんたなに?」

サイトは崩れ落ちた。何ですか。人扱いですらないんですか。
そうだよね。だって俺モグラが似合ってるから。モグラだから仕方ないんだ。
とダウナー思考に陥りそうになるサイトだが、
なにか扱いに近づくだけじゃね?と思い直した。人として接すれば、
その内人扱いしてくれるヨ!とアッパー思考になったところで立ち上がり、
ようやく口を開く。それまでの奇態を目にしたルイズは、
うん、これ人じゃないわ。絶対違うわ。と思った。

「俺、平賀才人って言うんだ。その…」
「変な名前ね。で、あんたなに?人間とは違うと言ってくれると、すごく嬉しいけど」

何か良い感じな事を言う前にそんな事を言われて、
がふっ。と効果音付きでサイトは倒れた。
彼にはまだマリコルヌ程の耐性はないので、
いきなりそんな事言われて何言ってるのさ、人間だヨ。とか言えなかった。
そんなサイトをあきれ顔でヴァーミルナは見る。

『何をしているんだ?さっさと帰るぞ』

倒れてジタバタしているサイトを引きずって鏡の中に消える彼女は、
何故かルイズくらいの背丈の女の子になっていた。
デイドラの思考は、まったく理解できないものだ。

好きな人間の男に自分を心から愛させる為に、男の無二の親友を人質にとったり、
奥さんが亡くなって落ち込んでいる男を元気づける為に、
奥さんの墓の前で誰かに怒らせて戦わせてみたり、空から燃える犬をたくさん降らしてみたりと、
基本的に変な考えが、デイドラ達の間ではマトモな考えなのだ。

「何だったのかしら。あいつ」
「気になるのかね?ヴァリエール嬢」

はぁ?とルイズは顔を赤くもせずにジェームズの方を見た。
「ああ、脈無しか。いや、すまんすまん」

はっはっは。とジェームズは笑う。
このお茶目な王様は…。とルイズは思う。実際のところ、
自国の王様の方がよっぽどお茶目だったのだが、
ルイズはそんな事を知らなかった。


タバサが先ほどデイドラ王子から教えてもらった事を要約すると、
そこのエルフは魔法得意そうだから、そいつに頼め。
という事だった。少々の事情を省き、病状のみを説明する。
ティファニアもこんな商売を1年以上やっているだけあって、
事情を聞こうとはしなかった。おそらく姉さんが知っているだろうし、とも思っている。
タバサは船上の事と、使い魔の事を全員に口止めしているが、
盗賊に喋るなと言って喋らない方がおかしい。広げてくれと言っているようなものだ。

「できる?」

「はい。薬の効果を打ち消すだけなら作れると思います。手伝ってもらいましたし、
お代はいりません」

ありがとう。とタバサは頭を下げた。
まだお腹は減らない。今度はマーティンの所へ行った。

「リッチか…マニマルコが本当にリッチにしたというのなら、それはひどくやっかいだな」

やはり出来るだけ事情は言わずに話す。タバサの顔がこわばった。

「ただ、どうだろうな。私が知る限りリッチになった者は、まるで化け物の様になると聞く。
 マニマルコは別格としても、従姉は昔のままの姿で君を覚えていたのだろう?
 まだリッチではないのかもしれない。デイドラが必ずしも真実を話す訳ではないからね。
問題は、どうすれば助けられるかということだ」

何らかの魔法を打ち消す薬を飲ませればもしかしたら。
ティファニアに薬の量を二人分作る様に頼んだとき、
ようやく彼女の腹の虫が、大音量で鳴り響いた。
お腹が空くと、嗅覚が鋭くなる。
音に驚いている部屋の面子を残し、
タバサは美味しそうな匂いの方向へ駆けていった。


二階の別の部屋。割り当てられた三つのベッドが置かれた部屋にて、
キュルケは眠ろうとした。が、お喋りな青髪の女が先にいて、
さっきからそのマシンガントークを聞かされている。
また、隣がアンアンうるさかったので壁にサイレントも掛けた。
魔法は案外上手くいって、壁に掛けた魔法が音を遮断する。外からの音は聞こえなくなった。
しかし、慣れない風の魔法を壁全体に使ったせいかそこで力が切れた。
自分にかければ良かったわね。けど、解除の先住魔法とかあったりして。
主に主人の待遇の悪さをグチグチ言ってる使い魔を見て、彼女はそんなことを考えた。

このギルドハウスには、二階に4つの部屋がある。
普通より少々大きいこの建物は、表向きには集会所や村のお祭りの際に使われている。

「でね。でね。お姉様ったらひどいのね。
 自給自足とかありえないの。ご主人様として、
シルフィにおにくとかスペアリブとかを食べさせる義務があるのですわ」
どんな義務だ。と思いながら、はいはい分かった分かった。
と気のない返事をする。韻竜って結構お馬鹿ね。と思いながら。

「何なのねその反応!これだから人間はー」
「文化人気取るなら、まず服くらい着た方が良いと思うけど」
「人じゃないもんね。文化龍だからかまわないの」

さいですか。と生まれたままのシルフィを見て、
色気より食い気だから私の勝ちねとキュルケは笑った。
二人は同じベッドに寝転がり、話をしている。
本来一人用なのでくっつきそうな近さだが何も問題は無い。
キュルケは学生服のままだった。

「服なんて体を締め付けるだけなの。
 動きにくくなるのはいや。
 だからきゅるきゅるも、
そんなの脱いじゃえばいいのね」

とことん馬鹿なのかしら?とは口に出さず、寒いから嫌だと返す。

「そうか。人間「は」裸じゃ寒いから服を着るのね」

いい加減眠らせて。嫌々ながらキュルケはシルフィードの話を聞いている。
そんな時、どこからか大きな腹の虫が鳴った。
どうしてサイレントを超えてでも聞こえるのかしら?
何らかの力が働いているのかとキュルケは思う。

「今の、何?」

「お姉様ですわ。さっきからなんにも食べていなかったけど、
 ようやくお腹が空いたのかしら?」

待て。とキュルケは頭の中でツッコんだ。それなりに親しい間柄だから、
彼女の食べる量はどれほどの物か当然知っている。
何故かシルフィードはえっへん、と胸を張った。

「まったく。シルフィがお腹一杯になったから、
 後で食べようと持ってきたごはんが無ければ、
一体お姉様はどうなっていた事か…」

部屋の一角を占領しているとても大きな袋。
どうやって入れているのかは知らないが、
上手い具合に料理が入っているようだ。

「あの袋の中ってそれだったわけね。たしかにたくさんありそうだけど――」

中身大丈夫なの?と聞こうとする前に、
バタン、と扉が開く。そこにはタバサがいて、
何も言わずに袋の方へ行く。開けて食べ始めた。

「お姉様!マナーがなってないですわ!
 それ元々シルフィのなの!
 くださいって言わないといけないのね。
 お姉様―?聞こえていますか。…このちびすけめ。
あ、そのスペアリブはダメなのね!」
メイジの実力をはかるには使い魔をみろという格言だか、
ことわざだかがあったと思うけど、
このコンビは本当に凸凹してておもしろいわね。
キュルケはあくびをして、ようやく夢の世界へ旅立てると思ったが、
さっきからのシルフィードの声を聞いている間に眠気が消え去ってしまったらしい。
変に目がさえてしまったのだ。経験則からして、こんな時は簡単には眠れない。
ああ、とため息を一つついて彼女はベッドから出た。

「たまには、男がいない夜更かしもいいかしらね」

タバサが持ち直した事に安堵しつつ、
キュルケは暴食している二人に、飲み物でも持って来ようと外に出る。
その足取りはどこか軽やかだった。


アルビオンから見える青の月と赤の月は、
地上から見るそれとは別格の美しさを誇っている。
今や死体と瓦礫の山になったアルビオン王家最後の砦は、
その美しい二つの月からの光に照らされている。

「素晴らしい光景だ。そうは思わないか?クロムウェル」

マニマルコの頭のルーンが妖しく輝くと共に、
身につけている死霊術師のアミュレットが青と赤の月に照らされた。
本来このマジックアイテムは自身の身体能力を低下させる代わりに、
魔法力を増幅する物だ。しかしルーンの影響かそれとも改良の結果か、
低下を引き起こさない上に以前よりも魔法力が増幅する品となっている。

おせじでも良い眺めとは言えない。クロムウェルは苦笑いでごまかした。

「いやー…それよりマニマルコ様。人員の確保も出来ていませんし、
 レキシントンに戻って後続が来るのを待ちませんか?」

作業は出来ませんし、ここ寒いですし。とクロムウェルは言うが、
マニマルコはそれを無視して呪文を唱え始めた。

大損害を被ったレコン・キスタの軍は、現在戦傷者の治療やら何やらで忙しい。
城の検分を行うには、後二日は必要だと先ほど兵から聞いたところだった。
空に浮かんでいて寒いから、死体だってそこまで早く腐ったりしないし大丈夫ですよ。
と言われ、死体は見飽きたなぁ。と元司教の頭の中で感想がこぼれた。

「…マニマルコ様?」
「黙れ犬。ゾンビにランクアップでもしたいのか?」

いえいえまさか。とニッコリ笑って何も言わない事にする。
少し経って、イザベラと共に黒いフードを被り、
変なデザインが入った黒いローブのメイジが何人か来た。
何でもマニマルコの部下らしい。ガリアで彼女の教えを受けた「蠱の僕」、
だか「蠱の隠者」だとかいう連中だとクロムウェルは聞いた。

「マニマルコー。これどこに置けば良いの?」

片手で人が入る白い棺らしき物を持って、イザベラは言う。
へんてこなロゴが入った赤い布を持っている黒装束達は、
ひざまずいてマニマルコの指示を待つ。

「ああ、ありがとうイザベラ。ここに置いてくれるかな?慎重に。ひびが入ると面倒だからね。
お前達はその棺の下に大きい布を敷いておきなさい。小さいのを上に掛けるように。分かったね?」
コクリと頷き、イザベラは交錯する手の骨とドクロが描かれ、
白と黒で縁取りされている布の上に棺を置いた。
死霊術師のタマゴ達は、二つの小さな布を棺の上に掛ける。
タムリエルの魔法は使えないが、使えなくても出来る事はたくさんある。
よしよし。とマニマルコは満足げに、その棺を眺めた。

口調こそ優しく見えるが、彼女は弟子にとても厳しい。
素材の無駄遣いや、素材その物をダメにすることを極力禁止している。

もっとも彼らはタムリエルの魔法を使えないので、
今はマニマルコの指示で防腐処理や、
マニマルコお手製のマジックアイテムを使って、
人間の魂を何処かから取ってきたりするくらいだ。


「あのー…マニマルコ様。何をされているのでしょうか?」
「まぁ見ていろ。もっと良い眺めにするだけだ」

また長い詠唱に入る。何でも東方には色々と魔法の種類があるそうで、
短い詠唱か、または唱えなくても問題無く使える魔法が今は流行っているが、
昔ながらの「古き法」とかいう魔法は、長々と呪文を唱えないといけないのだとか。
それはとても難しいから、イザベラはまだ使えないらしい。
魔法というのも色々あるんだなぁ。と全く使えない男は思う。

「ねぇクロムウェル。何が起こるのー?」
「いや、僕にも分からないんだ。とりあえず、静かに待っていよう」

長い詠唱が続く。クロムウェルは比較的綺麗な所に座ってそれを眺める。
隣にイザベラが座り、少し離れて黒い集団が座って、蠱の王へ祈りを捧げている。

本当に長々と続く。言葉が違うので雑音の様に聞こえるそれは、
眠気を増長させる役に立つ。イザベラがクロムウェルの肩に頭を乗せ、
スヤスヤ眠り始めた頃、ようやく詠唱が終わったようだ。

「さて…我が敵達の目はごまかせたか?」

死体に魂を入れて使役したり、魂そのものを使役したりする死霊術師は敵が多い。
毛嫌いする神は、エイドラにもデイドラにもいる。

白い棺――儀式用の祭壇――に天から光が降り注ぐ。
薄い桃色の光が辺りを照らす様はこの惨状の中でも美しく輝く。
それはクロムウェルがイザベラを起こすのには十分な理由だった。

「うわぁー凄い。これ、マニマルコがやったの?」

その光の意味するところを知らないイザベラは、
美しい死霊術師の月にうっとりしながらマニマルコに聞いた。

「そうだとも。これこそ私が編み出した魔法だ。
 さて、眠っている連中やここらを漂っている連中がいい加減不憫だ。
 起こしてやるとしよう」

近くの死体に近づき、マニマルコは呪文を唱えた。
何かが入り込んだかのように死体がうごめき、
意識を取り戻したかのように立ち上がる。
死霊術師の長たるマニマルコにとって常人では視認出来ない魂など、
ありふれた死霊術用の素材である。
普通のメイジなら魂を使うために「魂石」と呼ばれる神秘のアイテムが必要となるが、
彼だった彼女はそのまま使う事が出来る。
「マニマルコ様のお手を煩わせなくても、指輪がありますが」
「クロムウェルよ、あまり指輪は使うな。それの研究はまだ済んでいないのだ」

死体達を蘇らせ瓦礫を撤去させる。死体なのだから、
当然体のどこかが欠けている兵士もいる。
しかし何の問題も無く彼らは働いている。痛みも意識も無く、
忠実な奴隷としてのみ彼らは存在しているのだ。

「明日の昼には終わるな。死体が増えれば増えるほど、
 作業がはかどるから楽になる。お前達は防腐剤の用意を。
 腐り始めるとやっかいだからね。いくらかはスケルトンにするから、
 それの準備もしておくように」

ペコリと頭を下げ、蠱の僕達はレキシントンへと戻って行った。
彼女の死体収集や死体を蘇らせる魔法は一般兵から奇異の目で見られているが、
クロムウェルの直属だからと、問題視はされていない。
魔法の腕も良く、水の秘薬が無くても大けがの治療が出来る事も大きい。

しかし最初からマニマルコにとって、
レコン・キスタの兵隊は実験道具程度の認識しかない。
その内皆自身の配下に加える予定だ。
犬は素体にすらならなさそうだし、外交とか面倒だからそのままにするつもりなのだ。

ジョゼフにこちらの統治を任されたので、楽しい所にするつもりである。
誰にも邪魔をされずに死霊術の研究が出来る所に。
古巣の、アルテウム島の様な防衛設備を持っているだろうこの大陸は、
それらをするにうってつけと言えるだろう。

「綺麗だねぇクロムウェル」

死んだ兵士が瓦礫を運び、マニマルコが辺りを漂っているらしい魂を死体に入れ、
蘇らせて働かせている事を除けば、そこは二つの月とたくさんの星の光と、
天から降り注ぐ淡い桃色の光が美しい景色を作っている。

「ああ、そうだね」

下界に捕らわれず、上を向いておけばいいや。
とクロムウェルは死体とその主を見ないで空を見る事にした。
ああ、これだけなら何も問題はないのに。そんな事を思いながら。


「美しい光景だ。これをシロディールに現した頃は良かったのだがなぁ」

死霊術師の月と、赤と青の月を見て蠱の王は呟く。
シロディールの政府高官の腐敗ぶりは、
未熟な見習い死霊術師が防腐剤処理すら施さずに作り、
真夏の炎天下の湿地帯に放置したゾンビの様な物だ。
実際その通りとしか言いようがない。ほぼ腐りきっているのが現状である。

基本的に帝国の中央シロディールで官僚になれるのは、
皇帝の側近である文武両道の優秀なバトルメイジを除き、帝都人のみである。
それらは、シロディールの田舎である西のコロヴィア地方や、
東のニベネイ地方で他種族と共に暮らす者達よりも帝都、
またはその近くに生まれ幼少から帝都の「洗練された」ニベネイ文化に触れてしまった、
帝国中央ハートランド近郊出身の者が多い。
つまり、帝国中心主義者しかいないということだ。
タムリエルにおいて、人間は寿命の低い側に位置する。
エルフが千年生きていられるのだから、当たり前と言えるかもしれない。
そしてどこの世界でも、腐敗した権力者は長生きしたいものだ。
そんな訳で帝都の官僚は死霊術師と手を組み、延命の為の報酬として死体を渡していた。
しかしメイジギルドの頭が変わり、ハンニバル・トレイブンと名乗る男が、
シロディールのメイジ達を統べるようになった時、異常が起こった。

「真の無知とはああいう奴を言うのだろうな…サイジックでも見たことのないタイプだった」

彼は死霊術絶対禁止令を掲げ、死霊術を行う者を容赦無く罰した。
結果として、有力者の庇護下にあった術者達は捨てられ、
力のある者達はシロディール以外の地方に逃げた。
そこにやって来たウジ虫のたかったゾンビの様な連中が、
我こそは蠱の僕!とか言い始めたので、それなら僕になってくれるか?
とマニマルコが行ったのである。蠱の名を汚すなと言いたかったようだ。
もし隠れ潜む隠者がいれば、そいつも回収しておこうかとも考えていた。

しかし、隠者の様な事をやっている奴の中には、断食でリッチになろうとした馬鹿もいた。
ウジ虫でも頭に沸いているのかね?とオブラートに包んでやんわり言うと、
それすら有難いお言葉として流した。彼はその時シロディールには本当の馬鹿しか残っていないと痛感した。

あまりにも可哀想なので、最も単純かつ面倒なリッチ化の方法を教えてあげたのだが、
以前『死者の書』に書いた内容であるにも関わらず、文書化不可能とか言い出した。
はぁ。とマニマルコはため息をついてから、こいつの始末を闇の一党に依頼した。
こんなのに最も簡単な物といえども、蠱の秘術を教えた私が馬鹿だったと思いながら。

「ダガーフォールでも何があったかまるで分からん。後一歩だったはずなのだがな…」

気が付けばサラスに戻っていて、ずっとここにいましたよ?
と部下に言われた。神の名を語る連中が介入したのは間違い無かった。
過去への介入は、連中の誰かが創った巻物の影響で不可能なはず。
ならば記憶を改ざんしたか。とマニマルコはその時思った。

その後時折タムリエルに戻っては、各地のメンバーの研究発表等を彼だった彼女は聞いていた。
新しい風により、様々な事が違う視点で明らかになる様は、見ていて面白い物だ。

「だが、まぁ良い。時間だけは無限にある。チャンスはまた巡って来るだろう」

そんな事を呟きながら、34体目の死体に魂を入れていると、
後でクロムウェルと言う名の駄犬が、叫び声を発した。
いい加減死体の耐性は付いたはずだが。と思って振り向くと、
2メイルを超える亜人らしき男がいた。
人なら両手で持つだろうハンマーを片手で持っていて、
体の色は緑で目は赤く、髪の毛は無い。
上半身はその筋骨隆々とした肉体を見せつけたいのか裸だった。

「あの槌は…ヴォレンドラングか?ならば――」

やはりここにも現れるのか。いや、だが何故こいつが現れる?
オークの王に、オークの死体をくれと使いを出したからか?
妖艶な、黒髪の女の体を寄り代としているマニマルコはそんな事を思った。
これに魂を入れた理由は、元の素体が大気からの魔法力吸収効率が高かったからで、
それを手直しして尚更良い具合にしたからだ。それ以外の付加価値なんて、微塵も考えていない。
『マニマルコとは貴様の事か?ああ?』

いかにも不機嫌そうなデイドラの主、マラキャスが言った。
彼は元々「トリマニック」と呼ばれるとても腕力のあるエイドラだったが、
色々あってデイドラになった存在である。

「これはこれは妖魔の王マラキャスよ。あなた様の姿が見られるとは、真光栄に思います」

そんな事は全く思っていないが、社交辞令というやつである。
マラキャスの機嫌は悪いままで、吐き捨てるように話を始める。
エルフの面汚しめ。とマニマルコはそんな感想を頭の中でこぼした。

『この俺様からの儲け話だ。お前の主をある女に殺させたい』
「それは願ってもないこと。ですが…」
『分かっている!今回は少々勝手が違うからな。報酬を言え。用意するぞ』

マニマルコはそれを聞いてニヤリと笑った。
一つ、欲しい物があった。そう簡単には手に入らず、とても力のある物だ。

「では、ハイランドに生息している人間以外の連中の死体を」

マラキャスの顔が不快に歪む。体が怒りによって震え、
ヴォレンドラングの柄から軋む音がした。手に力が入りすぎて、
自身が創ったアイテムすらその馬鹿力で壊れそうになったのだ。

『俺様が、誰か、分かっていて−−それを言っているのかぁ!!』

マラキャスの叫び声が辺りに響き渡る。その声は辺りにいる死体に縛り付けられていた魂達を引っぺがし、
近くにあった瓦礫を塵になるまで粉砕した。
そのまま雄叫びを上げ、マニマルコを睨む。
神の怒りが向けられているというのに、彼女は涼しい顔だ。
片手の槌を振り上げ、緑色の亜人はマニマルコ目掛けて振り下ろす。
風を切る音と共に槌は彼女へ向かうが、顔に当たる直前で何故か止まる。
心底嫌そうな顔を浮かべるマラキャスはうなり声をあげて威嚇するが、
マニマルコには何の効果も無かった。

彼女の目論見は当たった。デイドラが自分から頼みに来るということは、
つまり私以外には出来ないということだからな。
マニマルコはほくそ笑む。

『…いいだろう。殺してから報酬は渡す』
「ありがたく頂戴いたしますマラキャス様。では、その内容の方をお話下さい」

メファーラの計画が書かれたメモを渡して、マラキャスは塵となり消えた。
やれやれとでも言いたげにマニマルコが肩を回していると、
クロムウェルとイザベラが彼女の方へ走ってきた。

「マ、マニマルコ様!今のは一体?」

「追放されし者の守護者だの、復讐の神だのと言われる低脳だ。
 気にするな。所詮連中は神ではない…ああ、訳が分からんか。
 面倒だから分からないままでかまわん」
分かりたくもない。死霊使いと出会ってから心休まる日が一切無いクロムウェルは、
聞こえないようにぼそりと呟いた。

「あれ、神様なの?」
「違うよイザベラ。力が強くて死なないだけの、可哀想な豚だ。全ての連中に言えることだけれどね」

どーいう意味?とイザベラは聞き返すが、マニマルコは彼女の頭を撫でるだけだった。
だが私は違う。そう誰にも言わず己に言い聞かせて。

投下終了。
燃える犬降らす神は常に別格ですけどね。それではまた次の投下まで。
音信不通気味ですいません。徐々に投下速度上げていきますね。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 19:30:38 ID:hYZMGsJA
逃避エネルギーってRが元ネタじゃね?
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 19:49:21 ID:FYsRmeEW
スターオーシャン2じゃなかったっけ
現実逃避の際に発生する行動力=逃避エネルギーに関する論文をまとめようと思うけど、いざ論文にまとめようと思うと逃避エネルギーによって論文が進まないという……
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:00:19 ID:n79fgyEy
すげえ遅いがラスボスのワルド合掌ww

「人間の天才と邪神」で「過ぎた力に手を出した者は身を滅ぼす」っていう話になる場合、
普通なら「邪神」の方が過ぎた力で「人間の天才」が滅びるはずなのに
シュウとヴォルクルスの場合、逆だからなw

まーこんな奴を見かけた時点で運の尽きというかなんというか……
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:03:49 ID:2cwQWeW5
>>241
マサキの存在も大きいけどな。
精霊のかごを受けて、その力を一身に受けることができる存在が手助けしてくれれば、
大抵のことはなんとかなるのがセオリーだろう。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:10:43 ID:U94Ny9N/
攻撃の威力の比較対象がグレートマジンガーってのも凄いなww
勝てるわけがねえwww
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:11:23 ID:b8qiID01
そういえば魔装機神LOEでシュウinネオグランゾンが出てくるルートって
邪神ルートだけだっけ?
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:19:16 ID:7HnajWii
予約が無いようなので20:30から投下させていただきます。
重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』です。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:22:31 ID:2cwQWeW5
>>243
旧第三次をやると、グレートマジンガーの火力がしょぼく見えるよ。相対的に。
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:28:03 ID:oiCF/r+0
つうかウィンキー時代のマジンガーは火力低いよ。
化けたのはα以降のマジンパワー搭載から。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:29:27 ID:jzisPd3i
マジンパワーは新からだぞ
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:29:52 ID:2cwQWeW5
>>247
ニュータイプに非ずは人にあらずだしなぁ。
スーパー系の攻撃なんざまず当たらないし。
250重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』:2009/01/24(土) 20:30:25 ID:7HnajWii

 ルイズが教室を爆破したことで、せっせと後片付けをする羽目になっていたその頃、トリステイン
魔法学院図書館、フェニア・ライブラリ内において、一心不乱に書物を漁る人物がいた。始祖ブリミル
がハルケギニアに新天地を築いて以来の、全ての歴史が納められたこの図書館は非常に広い。高さが30
メイルにもなる書棚が所狭しと屹立している様は圧巻の一言であった。
 その中でも、機密性の高い書物や、著された時代が非常に古く、固定化の魔法を施してなお劣化を止
める事のできない書物のような、貴重な書物が収められているのがフェニア・ライブラリである。教師
以外の立ち入りが禁止され、その教師ですらそうめったには足を踏み入れないエリアにて、しらみつぶ
しに書物を調べていたのはコルベールだった。
 なぜ彼がそのように必死になっているのかと言うと、昨日ルイズが召喚したゴーレムの左拳に現れた
ルーンが気に掛かって仕方がなかったからである。ルーンは珍しいものであったが、スケッチを取った
その時は思い出すことができなかったのだ。その後、非常に古いルーンだということは思い出したのだ
が、細かいことはやはり記憶の霞の向こうにあった。
 幸い今日、彼の受け持つ授業は午後からであったので、こうして朝食も取らずに日が昇る前から探し
続けているのである。9時間ほど探しているのだが、中々お目当ての書物を見つけ出すことができず、
昼食の時間も迫りつつある。流石に昼食まで抜くわけにはいかないため、後1冊調べて駄目だったら明日
に回そうと最後の書物を手に取り、なんとも幸運なことにその書物こそがコルベールの探していた書物
だった。
 その書物は、始祖ブリミルとその四体の使い魔たちについて記された古書だった。あるページにてコル
ベールの手が止まり、そこに記されている一節と図説に目を通すと、彼の顔に驚きと納得の二つの表情が
同居した。コルベールは軽く始祖ブリミルに感謝の言葉を述べると、件の書物を抱え、学院長室へ向かって
急いで走り出した。




 コルベールが本塔最上階に位置する学院長室の扉を叩くと、室内から重々しい声で入るように告げられた。
扉を開き室内に入ると、正面の学院最高権力者に相応しい調度が施された机に立派な白髭を蓄えた老人が座り、
その傍に緑色がかった金髪の女性が控えていた。

「失礼します、オールド・オスマン。少しばかりお耳を拝借したいのですが」
「おやコルベール君ではないか。要件は手短にな。わしは昼食を取らねばならんからの」
「は。できればミス・ロングビル……人払いを願えますか」

 古書を抱え、かしこまったコルベールの態度にオスマンは感じる所があったのか、昼行灯とした表情から
一転、他人に何事も言わせぬ雰囲気を纏った。オスマンは傍に控えていた秘書のロングビルに退室を命じ、
室内の会話を聞くことを禁じた。ロングビルは特に渋る様子も見せず、素直に学院長室を出て行った。

「して何事じゃ。なにやらただならぬ雰囲気じゃが」
「これをご覧下さい。このページです」

 コルベールは先程のページをオスマンへと見せる。

「これは『始祖ブリミルと使い魔たち』ではないか。また古臭い文献を引っ張り出してきおったな。これが
 どうかしたのかね?」
「実は昨日、ヴァリエール公三女の召喚の儀式に立ち会いまして、その時に召喚された使い魔に刻まれた
 ルーンに関してお伝えせねばならないと思い立ち、こうしてお時間を頂いているのです」

 ブリミル教の始祖に関する書物、そしてそれが関係するルーン。予想される結論に、オスマンの顔は一段と
険しい表情となり、コルベールへと先を促す。

「詳しく説明するのじゃ。ミスタ・コルベール」
251重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』:2009/01/24(土) 20:31:13 ID:7HnajWii


 ルイズの錬金失敗による爆発により、瓦礫の山となった教室を片付け終えたのは昼休みの直前だった。
キュルケは最初こそルイズを見張っていたが、どうにも退屈で仕方なかったのか、気が付けば姿を消していた。
ルイズはこれ幸いとばかりにゴーレムを使って瓦礫の片づけを進めることにしたが、それでもなお瓦礫の量は
膨大であり、結局昼食の時間を過ぎてしまった。もしゴーレムなしで片付けていたら夕方になっても終わらな
かったに違いない。ルイズは普段犬猿の仲のキュルケが姿を消してくれたことに心底感謝した。あの気に食わ
ない女でもたまにはいいことをするものだ。
 いい加減空腹を感じていたので、昼食を取ることために食堂へと向かう。昼食の時間は過ぎてしまったが、
無理を言えばおそらくありつけるだろう。ルイズはゴーレムに労わりの言葉を掛け、次いで自分を抱えるよう
に命じた。ゴーレムは素直に厳つい左腕を差し出し、その上にルイズが腰掛けると、静かに立ち上がり食堂へ
向かってのしのしと歩き出した。

「なにかしら。食堂が騒がしいわね」

 食堂の前に着くと、なにやら室内でヒステリックに怒声を上げる男の声と必死で謝っている女の声が聞こえ
てきた。ルイズは男の声に聞き覚えがあり、なんとなくだが怒りの原因も推測できた。
 ぴょんとゴーレムの腕から飛び降りると、ルイズは食堂の扉を開いた。すると目の前で長身金髪の優男が顔
を真っ赤にしながら、使用人の少女を激しく叱責していた。優男の顔が真赤になっているのは怒りだけが原因
というわけではなかった。その端正な顔の両頬には鮮やかな紅葉が咲いていたのである。

「申し訳ありません、申し訳ありません! わたくしはただ落し物をお渡ししようと思っただけなんです!」
「それが余計なことだというんだ! 君の浅はかさのために二人の女性の心が傷付いたんだぞ! そしてこの
 僕の名誉も傷付けた! この責任、どう取るつもりなんだ!?」
「も、申し訳ありません、申し訳ありません! どうか、どうかお許し下さい!!」

 顔面を蒼白にしながら必死で許しを請う少女に対し、優男は糾弾の手を緩めることはなかった。何が何でも
少女を許すつもりはないらしい。周囲の生徒は面白い捕り物でも眺めるかのように、遠巻きにはやし立てていた。
 ルイズはうんざりとした表情を貼り付けながら、優男に話しかける。

「ちょっとギーシュ、なにぎゃあぎゃあと喚いてんのよ。みっともないったらありゃしないわ」

 背後から声を掛けられたギーシュと呼ばれた少年が振り向くと、憤然やるかたないといった顔をしていた。
みっともないと言われたことで更に怒りを加速させたようで、ルイズに傲然と噛み付く。

「ふん、ゼロのルイズじゃないか。魔法も使えないメイジが僕に声を掛けないで欲しいね。みっともないのは
 君の方じゃないのか?」
「魔法が使えないからってなんだってのよ。あんたみたいに逆らえない女をいたぶる趣味の男の方がよっぽど
 格好悪いわよ。どうせ二股がバレて引っ叩かれたんでしょう。ほんと学習能力の無い男ね」
「……口には気をつけたまえよ。君がヴァリエール家だからといって、ここじゃ特別階級じゃないんだ。何か
 あっても生徒間の問題で済むからな」

 ギーシュの二つの紅葉を咲かせた顔は更に赤く染めあがり、見るからに怒りは頂点に達していた。その口は
どうにも穏便ならない言葉を抑えきることはできないようで、感情に任せるままに言い返す。

「なに? それでわたしを脅してるつもりなの? あんたがその節操のない下半身をどうにかすればいい話でしょう。
 誰彼構わず突っ込んでんじゃないわよ」

 ルイズの軽蔑を込めた揶揄に、ついにギーシュの怒りが炸裂したようだった。一段とヒステリックな怒声を上げる。

「いいだろう! ここまで僕を侮辱すると言うことはそれなりの覚悟があるんだろうな!? どちらが上なのか
 分からせてやるよ!」

 ギーシュは胸のポケットから花を一輪取り出すと、さっと振り上げ声高に宣言した。

「決闘だ!!」
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:32:00 ID:ODYf0aHF
どのスパロボを買えばこのシュウの恐ろしさを見られますか?
253重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』:2009/01/24(土) 20:32:32 ID:7HnajWii


 最後にヴェストリの広場へ来いと言い放ち、ギーシュが憤然と食堂を飛び出していくと、ルイズは思わず溜息
をついた。怒りで周りが見えなくなっているらしいギーシュは、扉の外に立っていたゴーレムにすら気が付かな
かったようだった。ルイズは何となく悔しい気分になっていたが、まあどうでもいいことであった。床にへたり
込み、すんすんと泣き続けている少女に、とりあえず声をかける。

「あのさ、あんたなにやらかしたの? あいつが二股ばれたってのは間違いなさそうだけど、なんであんなに
 怒ってたのよ?」
「み、ミス・ヴァリエール……。その、実は……」

 少女ははらはらと泣きはらしながら、訥々とこの騒ぎの原因を語り始めた。少女の話によると、ギーシュが
香水の入った瓶を落とし、それに気付いた少女が拾い上げて渡そうとした。そのときギーシュは友人に異性関係
を尋ねられ、何とかはぐらかしている最中だった。少女が拾った香水はどうやらモンモランシーと呼ばれる少女
のものだったようで、それに気付いた友人達がモンモランシーと付き合っているのかと囃し立てた。運の悪い
ことにその場には二股相手のケティと呼ばれる少女が居合わせていたらしく、涙目でギーシュに詰め寄ると、
別れの言葉と平手を叩きつけ、走り去ってしまった。更に今度は二股を知り怒り狂ったモンモランシーが、有無
を言わさずギーシュに絶縁状を叩き付けた。そして一連の痴話喧嘩のきっかけとなった少女を糾弾していたと、
そういう訳であった。

「ほんとに馬鹿じゃないのあいつ。全部あいつの自業自得じゃない」

 少女の話を一通り聞こえると、ルイズは心底呆れ返っていた。

「わ、わたくし、もうどうすればいいか分からなくて……うくっ。い、一体これからどんな目に遭うのか……ひぐっ」

 使用人の少女は尚も青白い顔のままぶるぶると震えていた。使用人、いわば平民は貴族に対し抗うことはでき
ない。たとえ理不尽な糾弾だったとしても、平民はそれを受け入れるしか選択はないのだ。貴族と平民。その間
には社会的地位や魔法の有無など、厳然たる壁が立ちはだかっている。
 一回の平民がそのような貴族の怒りを買うということは、すなわち死を意味する。魔法であっさりと殺される
か、拷問にかけられて殺されるか。しかも酷い時には自分ひとりではなく、一族郎党処刑されることもありうる。
もしくは殺さずに人身売買にかけられ、どこかの好事家の貴族に売り飛ばされてしまう。死なないにしても、人生
と言う意味では死に等しい。使用人の少女は、自らの暗い未来に絶望し、恐怖に震えているのだ。
 ルイズは別にこの件に関わる必要などなかったのだが、ゴーレムを使い魔としたことで気が大きくなっている
ことと、教室爆破の事後処理で不機嫌になっている所にギーシュの馬鹿げた怒りを目にしたことで、つい売り言葉
に買い言葉で決闘騒ぎにまで発展させてしまった。とはいえ別にルイズは決闘の心配などしておらず、それよりも
空腹が気になって仕方がなかった。

「あーもう、もう泣くんじゃないわよ。決闘を申し込まれたのはわたしだし、そもそも悪いのはあいつなんだから」
「で、でも……」
「デモもストもないわよ。いい加減あいつの馬鹿面には辟易してたところだし、わたしがお仕置きしてやれば少し
 はおとなしくなるでしょ」

 実の所、ルイズとしてはこの決闘は願ったり叶ったりだった。私闘は規則で禁止されているものの、自分を馬鹿
にしてくる連中を黙らせるのには丁度いい機会だ。一度のお咎めで今後の雑音を排除することができるのなら安い
ものだ。ここいらで自分の使い魔に戦わせてみよう。

「でさ、あんたなんて名前なの? まだ聞いてなかったけど」
「す、すいません。わたくし、シエスタと申します……」
「そ。ならシエスタ、今回は特別にあんたの厄介事をわたしが引き受けてあげるわ」

 貴族であるルイズから発せられた言葉にシエスタと名乗った少女も含め、周囲は騒然となる。みな貴族が平民に
肩入れするとは信じられないと言った表情であった。シエスタはかけられた救いの言葉に感極まったようで、手を
胸の前に組みながらルイズに感謝の言葉を述べる。

「ほ、本当ですか!? あぁっ、ありがとうございます!」
「本当よ。ただわたしお腹すいてるから、昼ごはん持ってきてちょうだい。決闘するにしてもその後よ」
「は、はい! ただいまお持ちしますぅ!!」
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:33:35 ID:oiCF/r+0
>>248
新忘れてた。

>>252
第3次。
全軍が総力を上げてかかってギリギリ勝てるくらいのとんでもない強さのシュウが見られる。

支援。
255重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』:2009/01/24(土) 20:33:59 ID:7HnajWii

 シエスタは一目散に厨房へと走り去っていく。その後姿を眺めた後、ルイズはゴーレムを呼び、自分の席へと向
かう。ゴーレムが食堂にのそりと入ってくると、扉付近に群がっていた生徒達は雲の子を散らすように逃げていった。
昨日の夕食と、今朝の朝食で、もうすでに2度、目にしているはずなのだが、未だ慣れないらしい。遠巻きにひそひそ
と囁きあっているのが見える。
 シエスタが昼食を運んでくると、有象無象の囁きなど気にもしないといった態度で、ルイズは食事を始める。この
ゴーレムがいる限り自分はゼロのルイズじゃない。ルイズにとってゴーレムとは自信の象徴だった。

 ヴェストリの広場とは、魔法学院の敷地内『風』と『火』の棟の間に位置する中庭のことである。ここは学院の
西側に位置するため、日中でもあまり日が差すことはなく、薄暗く常にひんやりとした広場だった。先程食堂で怒
りを振りまいていたギーシュはここを決闘の場と決めた。
 ギーシュは不機嫌の絶頂にあった。あの後、ギーシュの後を付いてきた友人達が脂汗を浮かべた顔でしきりに決闘
するのはやめておけと言うのだ。ヴァリエールの使い魔のゴーレムは普通ではないと。

(この僕がゴーレムでの戦いで敗れると思っているのか!?)

 そう、ギーシュは『土』のメイジであり、ゴーレムを駆使して戦う人間だった。その彼がゴーレムでの戦いで
勝ち目がないと言われれば、プライドを傷つけられるのは想像に難くなく、事実ギーシュは友人達に抑えきれない
怒りをぶつけていた。

(今までゴーレムを使ったこともない、落ち零れのゼロのルイズめ。偶然高位のゴーレムを召喚したからっていい気
 になりやがって! あんな図体がでかいだけのウスノロゴーレムなんてワルキューレでズタズタにしてやる!)

 ギーシュは怒りで平静を失ってはいたが、自らの使うワルキューレ単体であのゴーレムに勝てるとは思っていなかっ
た。自らの戦いの極意は7体のワルキューレによる波状攻撃。それならば、あの見るからに鈍重そうなゴーレムを屠る
ことなど容易い。ギーシュはそう考えていた。
256重攻の使い魔 第3話『決闘未満(前編)』:2009/01/24(土) 20:34:23 ID:7HnajWii


 昼食を取り終え、食堂を出て指定された広場に向かう間もシエスタはルイズとゴーレムにぴったりとくっ付いて
きた。先程からいつまでもありがとうございます、このご恩は忘れません、だのとしつこく感謝の言葉を掛けてく
るので、ルイズはいささかげんなりとしていた。貴族の少女に巨大なゴーレム、そして使用人の少女という酷く不
釣合なトリオを組みながら決闘の場へと足を進める。

「諸君、決闘だ!!」
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はゼロのルイズだ!」

 どこから聞きつけたのか、ルイズ一行が広場に到着すると、そこには人だかりができていた。ギーシュの宣誓に
盛り上がる観衆の声がルイズの鼓膜を震わせる。ギーシュはルイズの方向を向くと、怒りで歪んだ剣呑な表情を見せた。

「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてあげようじゃないか」
「誰が逃げるってのよ」

 ゴーレムを引き連れて現れたルイズは、何を馬鹿なことをと言わんばかりの態度で応酬する。

「さて、観客を待たせるのも申し訳ない。今すぐ始めようじゃないか」

 ギーシュはそう言うと、やはり胸ポケットから一輪の薔薇を取り出し、さっと優雅に振り上げた。七枚の花びらが
はらりはらりと宙を舞ったかと思うと、瞬時にして女戦士を象った人形の姿となった。

「『青銅』のギーシュ・ド・グラモン。七体のワルキューレでお相手する。君の使い魔もゴーレム、僕が使役するの
 もゴーレム。よもや数が不平等だなどとは言うまいね?」

 ギーシュは挑発するが、ルイズはどこ吹く風であった。メイジと使い魔は心で繋がるもの。このゴーレムの心を感
じることはできないが、強靭な体から力が発っせられているのを感じる。教師も力があると認めた使い魔だ。こんな
優男ごときに負けるはずがない。根拠は薄いが、ルイズは自らの使い魔の勝利を確信していた。

「さあ、あの馬鹿を死なない程度に懲らしめてやりなさい!」

 ルイズはゴーレムへと威勢よく命令する。主人の命令を受け、ゴーレムの瞳がにわかに明るくなる。ゴーレムの肉体
に秘められた力の一端が今、解放されようとしていた。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:35:09 ID:7HnajWii
ちょっと尺が長くなりそうだったので前後編に分けます。皆さんの予想通り、ギーシュ君には酷い目に遭ってもらいます。
流石にレーザーで蒸発ほど酷くはありませんが……

このお話は一応長編になります。今の時点で最終話までの流れは考えていますが、どこまで行けるかなぁ。
ただ最低でもタルブ降下作戦まではやります。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:36:27 ID:U94Ny9N/
なんかジャイアントロボみたいだな支援
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:37:48 ID:U94Ny9N/
って終わってたか、乙
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:42:26 ID:ODYf0aHF
重攻の人乙。

>>254

ありがとうございます。
そうか、αじゃないのか。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:52:41 ID:2cwQWeW5
>>260
味方の攻撃力が2500あれば高い方という時代で、縮退砲は160000。
HP、装甲、運動性すべて限界値。

精神コマンド使わないと、アムロでも普通に攻撃を外すし、シュウの攻撃は食らう。
そして、当たれば何をどうしようと一撃で落ちる。
さらに2回行動するので、全員閃き使っていても、1ターンに一機は確実に落ちる。

そんなイカレたレベルだ。
HP回復を持っていないのが唯一の救いかな。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:55:12 ID:ikYtISa7
スパロボやったことないけど、それがもはやトンデモ性能ってレベルじゃないのはわかった
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:55:46 ID:7bFwM7fa
そんなことない。縮退砲はシャインスパークと同値の2500
防御すれば生き残れる奴も多い
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:56:05 ID:RPmiLDsd
なんかライデンが可愛いと思える
乙でした!
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 20:58:26 ID:1oErxm1Z
EXと第四次では基本値18000だったかな?>縮退砲
ちなみにEXのバランスは第三次と大差なく、第四次は通常の最強攻撃が5000〜6000台だが、ぶっちゃけここまで差が開いてると大差ないw
まぁアトミックバズーカの攻撃力が9999あったりしたけど。w
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:03:41 ID:fUvgU5O+
なんだ、スレを久々に見に来たら俺のライバル機が召喚されてるじゃないか。

重攻の人、乙。
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:04:18 ID:2cwQWeW5
>>263
縮退砲の攻撃力が飛んでもなかったのは第4次だっけ?
いずれにしても、味方の能力とのバランスから考えてスパロボ史上最強の敵なのは間違いないが。


第4次は、奇跡+アトミックバズーカというチートがあったしなぁ。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:06:13 ID:562np8Rb
性能面での強さなら第3次、演出面でのやりすぎ感ならOG外伝かな
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:08:34 ID:1oErxm1Z
>OG外伝
演出で言えばOGSのグランゾンのブラックホールクラスターも吹いたけどな。
ありゃ戦闘アニメか、それともムービーか。w
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:09:24 ID:2cwQWeW5
>>268
OG外伝は……
どう考えても、味方が強すぎるんだよなぁ。
哀れなりよ。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:10:03 ID:HjNG78uW
αでも25565の敵機を一撃で消滅させてなかったっけ?
それもネオじゃない通常のグランゾンで>シュウ

そんで重攻の人乙でしたー。
影響されてライデンのプラモデル買いに行ったけど売り切れてたんだぜ!
ここ数年ずっと残ってたんだけどなぁ…WAVEのブラックオニキス…。
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:11:13 ID:Hk5nXvxp
>>268
OG外伝は太陽系ふっとばすような演出しといて
数値上は最強クラスと言ってもそこまでオーバーキルな威力は無かったしな。

設定上はネオグランゾンとシュウがまだヴォルクルスの支配下にあるから
真価を発揮して無いってことだろうけど。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:13:29 ID:2cwQWeW5
まぁ、乗りまくった俺が言うことじゃないかもしれんが、そろそろスパロボ談議も終わりにしよう。
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:14:32 ID:HjNG78uW
おk、ここからはフェイ・イェン談義とエンジェラン談義が始まるんだな?
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:15:11 ID:OxuyHUKv
>>261を読んで、マニクロのルシファーを思い出した。
閣下、ただでさえ鬼強い真ラスボスがディアラハンでHP全回復は
反則でっせwと
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:15:12 ID:Hk5nXvxp
いいえ、サイファー系の紙装甲についてです。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:15:46 ID:1oErxm1Z
>>272
その前の事実上のラスボスがスパロボ史上最悪レベル(最強ではない)の強さだったからなぁ。
余計にかすんでる所もあるよね。
つか1ターンにHPの60%を回復するってどんだけよ。
直撃+スタンショックで行動不能にさせること前提のバランスって何よ。

だから、ネオグランゾンはイヤらしくない「最強」の強さを見せてくれる・・・そう期待してた時期が俺にもありました。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:16:31 ID:7uomd6DK
>>274
おいおい・・・ガラヤカを忘れてもらっちゃ困るな
怒ったら巨大化して破壊の限りを尽くす最高の燃えキャラだぜ?
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:16:33 ID:ODYf0aHF
小ネタでシュウ喚んだルイズは……一生ゼロのままってだけですんでよかったってことか。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:16:49 ID:1oErxm1Z
>>275
P3のエリザベスも、根性入れればハルマゲドンなしに倒せる・・・そう思っていた時期が俺にも(ry
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:18:19 ID:2cwQWeW5
おまえらの望む、最強の敵っていうのはどんなタイプなんだ?
FFのすべてを超えし者あたりか?
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:20:07 ID:RPmiLDsd
第三次αのテムジン774ことチーフやハッター軍曹を召喚したら
元ネタの種別としてはスパロボ?それともバーチャロンMARZ?
283Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs :2009/01/24(土) 21:22:42 ID:Ubgigjm0
皆様お久しぶりです。
昨年は色々ありましたが何とか持ち直しました。
10分後に投下させていただきます。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:23:28 ID:1oErxm1Z
>最強の敵
こちらをあっさり全滅させられるほど強いけど、戦術を駆使すれば正攻法で倒せる奴、かなぁ。
まぁ作品やプレイヤーによって「正攻法」の範囲は全く違うだろうけど。
個人的にはP3のエリザベスがラインで、ダー○ブレインは×、第三次およびEXのネオグランゾンは○。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:23:44 ID:sYnW6G+o
>>279
知らぬは本人だけ、ってやつだな
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:25:17 ID:wrSI9nJJ
支援だ!
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:25:19 ID:lA3O+Apc
>>283
おかえりなさい!支援
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:29:09 ID:OxuyHUKv
>>281
人修羅のように一撃がHPの上限値をはるかに上回り、サタンのように
毎ターン相性が変わって呪殺を連発し、ルシファーのようにHPを全回復し、
エリザベスのように反射・無効化を持っていると即死させられる美人で
ございます口調の敵。
289Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs :2009/01/24(土) 21:32:33 ID:Ubgigjm0
 空の旅はアンジェリカにとって物珍しいものであった。つい先ほどに人を殺したことなど感じさせない無邪気な笑みを浮かべていた。
 ルイズにとってもこのアルビオンへの航程は心休まる一時だったのかもしれない。船の上ならば敵の襲撃など考えずともよいのだから。
 唯一の気懸かりは船乗り達の言う空賊であろう。もし空賊が現れたなら抵抗はしてはならないと船長から伝えられた。
 何しろこの船は積荷に硫黄といった火の秘薬を積載しているのだ。万一砲撃や火矢を浴びたらひとたまりもない。
 そのことも踏まえ、アンジェリカにちゃんと言うことを聞くようにときつく言い聞かせるルイズであった。
 ワルドはルイズに空賊など杞憂だと安心させるようなことを言っていた。そう、まさにその時だった。
 見張り台に昇った船員が大きな声で警鐘を鳴らす。空賊が来たと。
 その声を聞いたルイズは慌ててアンジェリカから銃を取り上げる。空賊に発砲でもしたらこの船は一体どうなることか。
 そうこうしている内に空賊の船はルイズたちの船へ横付けし、小奇麗な空賊たちがわらわらと乗り入れてきた。



 結論から言えばルイズ達は無事アルビオンへ到着した。何ということはない。空賊の正体はアルビオンの正規軍だったのだ。
 しかも乗船していた将の名はウェールズ。ルイズたちの目的とする人物であった。
 ルイズはアンリエッタから受け賜った手紙を彼に渡そうとしたが受け取る場所はここではないと断られてしまった。理由を尋ねてもはぐらかされてしまう。
 そして、理由さえも話されずに王宮の一室に連れられて行く。

「お供の方はここでお待ち頂きたい」

 先導する衛士がそう告げる。ルイズがそれはワルドとアンジェリカのことかと尋ねればそうだと答える。ワルドは何故か一緒に行くと聞いて中々譲らなかったが、アンジェリカは素直なものだった。

「アンジェ、ここで待ってなさい」
「はい、ルイズさん」

 しかし、子供であるアンジェリカがルイズの言葉に素直に待つと言ってしまえば大人であるワルドもそうせざるを得ない。
 一人何処かへ連れて行かれるルイズは通路の脇に直立して彼女を迎える幾人もの衛士を見た。彼女はこの光景を知っている。トリステインでも見たことがあるのだ。
 そう、それは王宮の玉座へと向かう通路、母に連れられて在りし日の王に謁見した幼き日の記憶。アンリエッタと出会った……。
 今は思い出に浸る場合ではないと彼女は頭を振る。
 先導する衛士の顔が段々と固くなってくる。通路で見かける人も衛士から人目で貴族と分かる者まで目に付くようになった。玉座はその扉の向こうだ。
 厳かな手付きで、煌びやかさはないものの威厳をそこに携えた扉がゆっくりと彼の手で開かれる。

「トリステイン王国大使! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 前へ」

 玉座の間に一歩、足を踏み入れた途端、ウェールズに声高らかに己の名を呼ばれてしまう。それと同時に突き刺さる幾つもの視線。ルイズが戸惑って周りをキョロキョロと見渡したのも仕方が無いことだ。

「大使殿! 前へ。ジェームズ1世の御前なるぞ!」
「は、はひぃ!」

 再び玉座の間にウェールズの大きな声が響き渡る。ちょっと舌をかんで返事をしたルイズは視線を真正面に向ける。
 玉座にどっしりと腰をすえる老人はジェームズ1世か。現在の国の状況を示すかのようにその顔は焦燥しきっている。対して傍らに立つ青年、ウェールズは生気に漲っている。もしこの国に未来があるのならば彼において他に国を任せられる者などいないであろう。
 ゆっくりと玉座に向かって歩く彼女に突き刺さる視線は止むことはない。何故このような事になっているのか。アンリエッタから託された任務は私的な文を回収するだけのはずなのに。それがこんな大勢の人の前でするというのか。
 考えても考えても思考はぐるぐる回るばかり。そして答えの出ぬまま、玉座の面前に辿り着いてしまった。

290Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs :2009/01/24(土) 21:34:28 ID:Ubgigjm0
「さぁ、書簡を」
「あ、あの……渡せません。いえ! そうじゃなくって、その……」

 王の面前、しかも非公式の任務のはずが公式の大使のように扱われてしまい、何がどうなっているのか混乱しているのだ。ルイズはウェールズ宛の手紙だと上手く言葉に伝えることが出来ないでいた。
 当然その場に居合わせた者はルイズの『渡せない』という言葉にどよめいてしまう。

「静まれ!」

 王の一喝。置いてなおその威厳は健在であった。その一言でその場は即座に平静を取り戻す。

「ウェールズ」
「はい。大使殿、その書簡は私に宛てられたものなのだね?」
「え? あ、はい」

 ルイズは即座にアンリエッタから託された手紙をウェールズに差し出した。

「ふむ。それがトリステインからの正式なものだと証明できる物は持っているかい?」
「は? いぇ、証明ですか? ちょっと待ってくださいね」

 あたふたと預かった水のルビーを出そうとポケットを探るルイズは気付いていない。彼女はアンリエッタの使者であり、トリステインの使者ではないのだ。
 小さなようで大きな違い。それが一体何を意味するのか彼女は知らない。

「あ、ありました。これでいいですか?

 差し出された指輪『水のルビー』をウェールズに手渡す。彼はそれを手に取ると頷き、ルイズにそれを返し、手紙を受け取った。

「確かに……」

 受け取った手紙をその場で封を切ると内容を確かめる。ルイズがポカンとその様子を眺めている間にも彼はその手紙を王へと手渡す。
 ルイズは声を出せない。その手紙は彼へと送られたアンリエッタの恋文について書かれたものではないのだろうか。
 事態は彼女を差し置いて推移して行く。
 手紙を読み終えた王は玉座から立ち上がる。

「諸君。忠勇なる臣下諸君! 喜べ! トリステイン王国が我が国民を受け入れると表明した!」

 次いでウェールズが言葉を紡ぐ。

「舫を解き放て! 残存船全てを使い、アルビオンを脱する民衆を全てトリステインへと運ぶのだ! 良いか! 民衆に一人の死者を、負傷者を出してはならん! 我が国民が叛徒の手によって蹂躙されることを許すな!」

 その場ではただ一人、ルイズだけが事態を飲み込ずにいた。

「ウェールズ、お前は船団の指揮を執れ。わしはこの作戦の指揮を執る」
「はい。陛下、御武運を。私も避難民を無事トリステインに送り届けましたら戦列に復帰します」
「うむ。皆の者! 聞け、現時刻よりわが王国軍はこの地を避難する者たちを守る為に戦う。作戦目的は分かるな! これより遅滞作戦を開始する。作戦開始時刻は本日今より! 終了時刻は避難民を皆トリステインに送り届けるまでだ!」

291Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs :2009/01/24(土) 21:36:50 ID:Ubgigjm0
 オーと言う勇ましい掛け声が王城全体に響き渡る。それは当然別室に待たされていたアンジェリカとワルドの耳にも届いていた。

「一体何が起きていると言うのだ」

 ワルドが呟いてもそれに言葉を返す者などいない。アンジェリカは椅子に座り、足をプラプラと動かしていた。まるで周りの状況になど一切の興味がないとでも言うように。

「チッ。抜け出すか……」

 ただ受動的に何が起きているのか待っていても埒が明かないと立ち上がり、部屋から抜け出そうとするワルド。アンジェリカはそんな彼をじっと見つめる。

「……何か?」
「ルイズさん、帰ってきますよ?」

 アンジェリカがそう言うや否や、扉を開けるルイズの姿があった。

「お帰りなさい」
「ルイズ、ずいぶん慌しい雰囲気になっているが、何があったんだい?」

 ワルドの問いにルイズはただ一言返すだけだった。

「わかんない」



Episodio 37

Una lettera, la vera intenzione
手紙、その真意



292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:41:15 ID:oiCF/r+0
>>281
オズマとか神龍改クラスの奴
293Zero ed una bambola(代理):2009/01/24(土) 21:48:55 ID:lA3O+Apc
Intermissione



「殿下! 一体どのような御積もりですか!」

 トリステインの王宮の一室にマザリーニの怒鳴り声が響いた。

「何の事かしら?」

 一方の怒鳴られているアンリエッタは素知らぬ顔でマザリーニの怒鳴り声を聞き流していた。

「何の事ですと? とぼけるのは大概になさいませ! アルビオンの避難民の件です!」
「いいじゃない。だってあの人達はゲルマニアにもガリアにも来るなって断られたんでしょう? 可哀想じゃない」
「何故あの国々が避難民の受け入れを拒否されたかご理解されておりますか!? 彼らに与える、土地は、住居は、食糧は一体何処から捻出するのですか!」
「貴族達の領土を少し削ったりすれば?」
「出来ませぬ! そのような事をすればアルビオンのような叛乱がこの地でも起きてしまいますぞ!」

 マザリーニは大きく息を吐き、肩を落としながら弱々しく呟いた。

「仮に、仮にですが、彼らを受け入れるにしても何故御相談くださらなかったのですか……」
「だって相談してもダメの一点張りでしょう? 今まで私の意見を聞き入れた事はあるのかしら?」
「いえ……ですが物事には段取りというものがあるのです」
「いっつも周りの貴族が貴族がでは何も出来ないじゃない。それって王家が存在する意味があるの? ウェールズ様は仰られておりましたわ。
 王家は民の為にあるべしと。貴族の為に国はあるのではないのよ。私がゲルマニアに嫁ぐのだってこのトリステインの民を戦火に巻き込まぬようにする為でしょう?」
「で、殿下……」

 アンリエッタの言葉にマザリーニは肩を震わせる。

「な、何?」

 生意気なことを言いすぎたかしらと少し慌てる彼女であったが、よくよく見ればマザリーニはその目にちょっぴり涙を浮かべている。

「よくぞ、よくぞ申して下さりました。民の為……このマザリーニの施策の真意がご理解いただけましたか」
「え、ええ……」
「殿下の覚悟しかと受け賜りました。反対する貴族? なぁにこの鳥の骨が叩きのめしてくれますぞ」
「た、頼もしいわね」



 貴族達は憤る。決して裕福とは言えぬトリステイン。それなのにアルビオンより避難民を受け入れるとはどういうことか。
 増える支出、しかし増やせる税収は雀の涙。彼らは嘲笑う。無能とアンリエッタを嘲笑う。
 雀の涙とはいえども民衆にも増税により生活は苦しくなる。しかし、彼らはそれに耐えるのだ。
 彼女の行いによって遠きアルビオンの民は叛徒の略奪の手より逃れられたのだ。
 誇れ我らの王女アンリエッタ。貴女は正しい。民衆はそう謳う。
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:50:29 ID:u29ZNonu
fallout3よりゲイリー召還

ルイズを見つけ
「ハハッ、ゲイリー!」x複数
「な、なによあんた!」

「ワオ、ゲイリー」
複数のゲイリーがナイフでルイズに襲い掛かる!

おわり
295Zero ed una bambola(代理):2009/01/24(土) 21:51:09 ID:lA3O+Apc
以上で投下終了です。


申し訳ありませんがどなたか代理投下お願いします。

----------------
ここまで代理にてお送りしました。
アンリエッタの「いっつも〜 のところで長すぎって怒られてしまったんで、勝手ながら改行して対応しました。
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:56:59 ID:4GKURDaV
>>282
スパロボだろうな、MARZじゃ中に人乗ってるはずだし。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 21:57:38 ID:wrSI9nJJ
アンジェの方&代理の方、乙!

ルイズの『わかんない』にうけたw
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:06:36 ID:9fgjigHz
>>296
中の人ごと召喚されて、夜な夜な厨房から食材が消えるという怪談が生まれ
タバサが涙目になるっていう展開も有りだとは思わないのかい!?
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:08:21 ID:e6W2GQAT
アンジェリカの人、乙。
なんだか鳥の骨が激しくアンリエッタの真意を誤解している気がします。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:18:19 ID:jicA3//J
重攻の人乙

ガンダ補正が付いたライデンとは・・・
感情の起伏が無い分、補正力は弱そうだけど元がライデンなだけに激しくgkbr

ギーシュも頑張ってライデンの攻撃から生き残ってほしいなぁ。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:20:27 ID:PSIoMTkj
いや、いっそのことオリジナルフェイ・エンをだな
302Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:22:29 ID:Jsti/weZ
よし、今日の内にもう一話投下しよう
終わったことだしなw

というわけでよろしければ五分後に第三話、投下させてください
303Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:28:22 ID:Jsti/weZ
Zero May Cry - 03


「ん………」

 僅かに開いた瞼から差し込むのは朝日の光。ネロは未だにハッキリとはしない意識の中で、朝を迎えたと言う事実を認識した。
 そのままゆっくりと体を起こし、周りを見渡す。

「こう都合よく夢でした……みたいなオチじゃねぇよな……」

 そこにあるのは見知らぬ部屋の中に散らかった女性用の洋服。そして視線を窓の方へ投げるとベッドの上で寝息を立てる少女の姿。
 それらが何を意味するのか、ネロはもう一度頭の中で整理をした。

 自分はこの少女に使い魔として「召喚」された事。
 この少女のために、自分は使い魔になることを受け入れた事。
 「召喚」されたこの場所は自分にとって異世界である事。

 元の世界に帰る方法が、果たしてあるのか。
 それは、今のネロには分からない。

「さて……怖い怖いご主人様が目ぇ覚ます前に一仕事済ませるか」

 そう言ってネロは散らかっている洋服をまとめて手近にあったかごへと放り込む。それを左腕で抱えてネロはルイズの部屋の窓から飛び降りた。
 洗濯と言うからにはおそらく水汲み場のような場所があるのだろうが……。
 庭へ着地したネロは辺りを見回す。一見するとそのような場所は見受けられない。

「チッ……面倒くせぇな……」

 取り合えず適当にうろつこう。誰かに出会えばそいつに聞けばいい。
 何ともいい加減な考えだが、結果だけを見ればその考えは間違っていなかった事になる。
 ネロは庭を歩く一人の少女を見つけたのだ。よく見ればメイド服を着ている。こういった雑用には慣れていそうだ。

「おい、そこのあんた」
「え、私でしょうか?」
「ああ」

 ネロの方へ振り向いた少女へ歩み寄ると、彼は抱えていたかごを見せて言った。

「洗濯できる場所を探してるんだ。教えてくれねぇか?」
「洗濯ですか? 分かりました。直ぐにご案内しますね」

 その道中、少女はネロへ尋ねた。

「あの、もしかしてミス・ヴェリエールの使い魔になった方ですか?」
「ミス・ヴェリエールってのは……あのチビっこ嬢ちゃんのことか?」
「ええと……多分その通りかと。髪が桃色の可愛らしい方ですよね?」
「ああ。……で、何であんたは俺のこと知ってるんだ?」

 ネロのその問いに少女は笑って答える。

「平民が使い魔として召喚されたって、噂になっているんですよ」
「へっ。ドイツもコイツも平民平民って……そんなに貴族は偉いもんなのか?」

 皮肉なネロの一言を受け、少女は慌ててネロへ頭を下げた。
304Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:29:21 ID:Jsti/weZ
「すっ、すいません! 私、そんなつもりじゃ……」
「おいおい、あんたが謝るなよ。俺だって、別にあんたに言ったわけじゃないさ」

 そして、ネロは直ぐにこう付け足す。

「それに平民だろうが貴族だろうが、俺にはあんまり関係ねぇしな」
「そうなんですか? 不思議な人ですね」

 少女はくすりと笑ってネロを見つめた。
 そんな少女の態度に何を思うのか、今度はネロが少女へ質問した。

「そういうあんたは貴族じゃないのか? 魔法とかは使わねぇのか?」
「とんでもないです! 私は魔法が使えない平民ですので、ここでこうして皆様にご奉仕させていただいて貰ってるんですよ」
「へぇ……。まだ若いのに随分と見上げた心がけだな」
「いえ……そんな……」

 ネロの言葉に照れたのか、少女は僅かに頬を赤らめた。

「あっ、まだ名前を言ってませんでしたね。私、シエスタという者です」
「俺はネロだ」
「ネロさんですか? いい名前ですね」
「……そりゃどうも」

 いつの日だったか、己が口にした言葉と同じ事を出会ったばかりの少女に言われ、思わずネロは唇を笑みに歪めた。
 と、そんなやり取りをする内に二人は水場へ辿り着く。

「ここか」
「はい」

 ネロはそのまま一着ずつ洗濯をしようとするのだが……。
 何分、彼の右腕をギプスで覆われたままだ。その状態では普通の家事にも不自由を感じざるを得ないだろう。

(チッ、左腕だけじゃ面倒くせぇな……)

 片腕の洗濯に悪戦苦闘するネロを見て、シエスタは彼に声をかける。

「あの、手伝いましょうか?」
「いいのか?」
「ええ。これぐらいなら大した量ではないですし、お気になさらないでください」
「そうか。悪ぃな。頼むぜ」
「はい!」

 流石にシエスタの手際は良く、ネロが一着洗濯し終える頃にはあらかた済んでいた。

「助かったぜ。ありがとな」
「いえ。他にも困った事があったなら言って下さいね。ネロさん」
「へっ……。ああ」
305Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:30:20 ID:Jsti/weZ
 シエスタのその一言にネロは薄く笑い、背を向けると軽く手を振りながら歩き去って行った。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 洗濯を終えたとはいえ、ネロにとっての面倒ごとはまだ残っていた。
 そう、寝ているルイズを起こす事である。

「おい。起きろよ」
「う〜ん………」
「おいコラ。起きねぇと引っ叩くぞ」

 その言葉が引き金になったわけではあるまいが、とにかくルイズはまだ眠たそうな様子を見せながらも身体を起こしてネロを見やった。

「……誰? あんた」
「あぁ? お前何言ってんだ? 急にボケちまったのかよ?」
「ああ……使い魔か……ネロ……よね?」
「ああ。洗濯物はここに置いとくぜ」
「うん……。あと、これ」

 そう言ってルイズは手にバケツを持ってネロへ差し出した。
 ルイズの言いたい事が理解できずにネロは首を傾げる。
 
「水を汲んできてちょうだい……」

 やれやれと言いつつネロはそのバケツを受け取ると同時に窓から飛び出した。
 その様に思わず目を見開くルイズ。寝起きにも関わらず窓から身を乗り出して叫んだ。

「ちょっと何考えてんのよ!? ネロ!!?」
「何だよ朝から叫ぶなよ。周りの皆さんにご迷惑だろ?」

 三階にあるはずの部屋から飛び降りたというのに、庭から何事も無かったかのように返事をするネロをみて、ルイズは思わず足下をふらつかせた。
 何なのだあの男は。三階から飛び降りて無事な人間など聞いたことがない。しかもネロは右腕を骨折しているのだ。怪我人が骨折必死のダイブを敢行するとはどういう事か。

 そんなことを考えている内に、ネロは戻ってきた。

「は、早かったわね」
「そうか? 普通だろ」

 さらりと答えたネロに対しルイズはさらに驚くが、ここはあえてスルー。平静を保つのよルイズ。
 意味の分からない暗示をしつつ、ルイズはネロが汲んできた水で顔を洗った。
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:30:30 ID:YMdVS7pc
支援
307Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:31:48 ID:Jsti/weZ
「じゃあ洗濯物干してよ。まだ濡れてるわ」
「まだこき使う気かよ……」

 小さく舌打ちをしつつも、ネロは言われた通りにかごに入ったままだった服を干してゆく。
 すると背後から響くルイズの声。

「それ終わったら着替えさせてちょうだい」

 その一言についにネロも我慢の限界を超えたのか、彼にしては珍しく冷たく言い放った。

「それぐらい自分でしろ。それともお前は着替えも自分で出来ねぇのか?」
「貴族は下僕がいる時には、自分で服なんて着ないの!」
「メンドくせぇ。自分でしろ」

 使い魔にあるまじきネロの態度に、とうとうルイズの方も堪忍袋の緒が切れたようだ。

「何よ!! そんな事言ってるとご飯食べさせてあげないわよ!?」
「ハッ。俺が飯で釣られると思ってんのか? めでたい嬢ちゃんだな」
「〜〜〜〜〜っ!!! もう知らないっ!! 朝御飯も抜きだからね!!」

 それで気が済んだ訳ではないだろうに、しかしそれでもルイズは自分で着替えを始めた。
 ネロの方はそれを見向きもせずに無言で洗濯物を干すのを続けている。片腕だけに手間取っているようだ。
 やがて着替えを終えたルイズは怒りが納まらぬ様子でネロに言った。

「私はこれから朝食を食べに行くけど、あんたはここで大人しくしてなさい!」

 それだけ言い終えるとルイズは勢い良く扉を閉めて行ってしまった。
 一人残されるネロ。

「…………マジで困ったもんだぜ。ありゃ」

 しかし彼は気にした様子もなく寧ろ呆れたように一人呟いた。
 別にネロはルイズの態度に腹を立てている訳ではない。ただ慣れない雑用が純粋に面倒くさいと思っただけだ。

「こいつも隠さなきゃなんねぇし……ホントにメンドくせぇぜ」

 そう語る彼の視線は、左腕でさすられるギプスに包まれた右腕に注がれていた。
 この右腕はもう忌むべきものではない―――そう分かってはいるものの、初対面の人間の前でいきなり見せる気には流石にまだならない。

 いずれ時がきたら、この右腕もルイズに教えるべきだろうか―――ネロはそんな事を思った。








―――to be continued…….
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:32:59 ID:nlPVSme/
デビルメイ支援
309Zero May Cry:2009/01/24(土) 22:34:09 ID:Jsti/weZ
以上で終了です。支援してくれた方どうもです
続きをよろしくお願いしますー
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:39:47 ID:nlPVSme/
おつ
これでDMCからは三人目か?
311ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:49:12 ID:p9RTRh1u
えーっと、書いてる自分がびっくりなペースで仕上がったので
予約が無ければ、ゼロの花嫁13話22:55投下したいと思います
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 22:53:27 ID:JNVNShf8
支援!
313ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:55:07 ID:p9RTRh1u
ゼロの花嫁13話「ハルケギニア最強の漢」



ロングビルは長く顔を出していなかった、贔屓の商人の下に顔を出す。
商人の眉間には向こう傷があり、右の肩口は大きく変形している。何より印象的なのはその眼光だ。
気の弱い者ならば、古傷を負った顔の恐ろしさと相まって卒倒してしまう事受けあいである。
そんないかにもカタギとはかけ離れた商人に、気安く世間話を持ちかける。
「久しぶり、どう? 商売はうまくいってるかしら?」
対する商人の男は、不機嫌の極みといった顔だ。
「……アンタがエモノ持ってきてくれりゃ、もうちょい景気も良くなるんだがね」
「そう簡単に言わないでよ。命賭けた程度じゃ手に入らないような物持って来ようってんだから」
下町の一角、少しでもこの街を知る者ならば決して近づかない区画の最奥にある、今にも崩れ落ちそうな掘っ立て小屋の中で、ロングビルは男と話をしていた。
「だったらこっちに用はねえよ」
「……少しは愛想良くしなさいよ。随分儲けさせてあげたでしょうに」
「代金は払った。それ以上を望むか?」
すぐに両手を上に挙げて見せる。降参の合図だ。
「ごめん、悪かったわ。だから少し話を聞かせてちょうだい」
ようやく椅子に座ってくれた商人は、テーブルの上に置いてあった酒瓶をそのまま呷る。
「……飲むか?」
ロングビルが首を横に振ると、男はただでさえ底冷えのする眼光を更に鋭く光らせる。
「俺の酒を断るってか?」
「酒はおいしく飲むものよ」
「安酒で悪かったな……フン、相手がてめぇでなきゃ今頃袋叩きにしてる所だよ」
個人の持ちうる最強クラスの戦闘能力を保持しているメイジ、その中でもトライアングルであり実戦慣れのおまけまで付いているロングビルにケンカを売る程、男も愚かではなかった。
「さっさと用を言え」
強面も脅しもそよ風のように受け流し、常と変わらぬ様子で会話を続けるロングビル。
「アルビオンの近況を聞かせて欲しいのよ。貴方最近顔出してきたばかりなんでしょ?」
男は再度酒を口の中に流し込む。
「最悪だありゃ。商売以前の問題だな、半年もたず国が潰れるぞ」
ロングビルの表情が硬くなる。
「そんなにキツイの? 内乱の規模なんてせいぜい一都市程度だったんでしょ?」
「持ち直せるかどうかは、今頃やりあってるだろう会戦次第だ。俺は負けると踏んだがね」
トリステイン国内に流れてくる情報とは著しい差異が見られる。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どうやったらあの馬鹿みたいに強い空軍倒せるのよ」
男はツマミを探してテーブルの下を覗き込むが、見つからないとなると早々に諦めたようだ。
「半分は反乱軍に取り込まれちまった、残りも時間の問題だな。クロムウェルってのがどうやったかは知らんが、空軍に限らず次々正規軍の奴等が取り込まれてる。あれじゃ幾ら戦力があったって勝てん」
少し考え込んだ後、ロングビルは自信無さげに呟く。
「もしかして魔法? マジックアイテムが絡んでるとか……」
「さあな。口説く手は他にもあるだろうし、それも使ってるんだろうが、要所要所で魔法が絡んでると俺は睨んだね。でもなきゃアルビオンの古豪までが寝返る理由がわからん」
「戦力分布聞いていい?」
男は面倒臭そうに立ち上がると、棚の奥から地図を引っ張り出してテーブルの上に広げる。
小汚い字でずらずらと描かれて居る配置を見る限り、五分で渡り合ってるようにも見える。
そう、一都市程度の戦力しかなかった反乱軍は、既にそこまで勢力を広げているのだ。
男が説明を加えると、当面の所は問題無しとロングビルは判断する。
妹が居る村は、これなら多分巻き込まれるような事は無いだろう。
だが、懸案事項は残る。
「ねえ……これだけ全土で戦の気配が漂ってると、物価、物凄く上がってるんじゃない?」
「だから商売にならねえって言っただろうが。こっちから下手に商品持ち込んだ日にゃ、一週間と持たず商隊ごとかっ攫われちまうだろうしよ」
治安の悪化も著しいらしい。
314ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:55:33 ID:p9RTRh1u
それでもアルビオンに信用のおける商人は存在するが、彼等とて物が無ければ値段を上げる他無くなる。
「今の穀物相場、わかる?」
男がテーブルの上に乱雑に詰まれた紙の束の中から、それらしい物を引きずり出してロングビルに見せると、彼女の目が驚愕に見開かれる。
「嘘っ!? 何よこれ!」
半ばぼやくように男は語る。
「な、アホらしくなるだろ。仕入れる気も無くなっちまったんで、馬鹿面下げて何もせず引き上げて来たって話よ」
アルビオン特産品の外での価格も当然高騰してるはずなのだが、それ以上の勢いで全ての価格が跳ね上がってしまっている。
利に聡い商人たちは、早々にアルビオンを見捨てにかかっているという事だ。
「反乱軍にでもツテがありゃ別なんだろうが……アンタそういうの無いかい? どうもそっちにゃトリステイン・アルビオン間の商人じゃねえ連中が出張ってきてるみたいなんでよ」
半分冗談、半分本気でそんな事を言ったのだが、聞かれたロングビルはそれ所ではない。
妹の為にと既に置いてきてある金を、どうやりくりしたってこの物価では持ちこたえられない。
程なく全ての財産を食い尽くしてしまう事だろう。
それでも妹一人ならばどうとでもなろうが、あの村に居るたくさんの子供達を見捨て自分だけのうのうと食べるような真似をあの子は決してしないだろう。
秘書として与えられている給金からかなりの量を送ってもあるのだが、とてもじゃないが追いつくような額じゃない。
「おい、その身代賭けた商品が検問と税金と野盗に残らずかっさらわれたみたいな顔は一体何事だ?」
男の声で我に返ったロングビルは、礼を言って小屋を後にする。

「結局、こういう運命なのよね……」
帰り道、そう呟いたロングビルは、行くつもりだった酒場には寄らず学園へと戻っていった。



何時ものバーでアニエスはグラスを傾けている。
「今日は……来れないのか」
そう一人ごちると、マスターに勘定を払い店を出る。
とびっきりの良いニュースを持ってきたのだが、まあ良い、明日にでも伝えればいい。
ワルド子爵からシュバリエの申請が正式に通ったとの話があったのだ。
もしロングビルも軍役に就くというのであれば、ロングビルの分も新たに申請しようと言ってくれた。
ロングビルはあまり軍を好まないし、もしかしたら断るかもしれない。
しかし、ロングビルと共に仕事が出来るかもしれない。
二人でなら、きっとどんな敵にだって負けはしない。
そんな夢溢れる空想をどうして止められよう。
ロングビルに強要するような真似をしない為にも、自分の希望は極力抑えて話をしなければならない。
だが、足取り軽く跳ねるように歩いてしまうのは、アニエス自身にもどうにも抑えの効かぬ事であった。



最初に発見したのは燦である。
「でっかいな〜。あれも魔法なん?」
暢気な口調だったので、問われたルイズも何の気無しにそちらを見てみただけだ。
そして目が飛び出しそうな程瞼を開くルイズ。
「な、なななななななっ!?」
ルイズの声で気付いたのかキュルケもタバサも唖然としたままソレを見上げている。
全員、脳内で自らの正気を確認してる模様。
何で学園のど真ん中に軍用に使うような巨大ゴーレムが聳え立って居るのか。
「キュルケ、タバサ……何あれ?」
そんな馬鹿な言葉を発してしまったのも、動揺していたせいだろう。
「……ゴーレムじゃない?」
「……大きいゴーレム」
キュルケとタバサが馬鹿な返答をしてしまったのも、やはり動揺していたせいだと思われる。
315ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:56:00 ID:p9RTRh1u
しかしそこは無駄に危険に満ちた人生を送っている四人、すぐに我に返って対応する。
四人は何時ものように誰も居ない離れで昼食を取っている最中であったので、周囲に人は……

「な、なによあれえええええええええ!?」

聞き覚えのある絶叫が、広場の入り口付近から聞こえてきた。モンモランシーのようだ。
どうも彼女、最近とみに不幸遭遇率が高い模様。
ルイズは、モンモランシーに教師を呼ぶよう指示する。
「モンモランシーは先生呼んできて! あれはとりあえず私達が様子見てくるから!」
「ちょ、ちょっとアンタ達! もしかしてあの側に行く気!? 正気……かどうかをアンタ達に聞くのはそれこそ無意味よね」
いろんな物を諦めながら広場から駆け出していくモンモランシー。
タバサと燦の二人はシルフィードに乗って上から、ルイズとキュルケの二人は地上から全長30メイルの巨大ゴーレムへと接近する。

ゴゥンッ!!

ゴーレムは塔の一角に拳を叩き込む。
貴重品を保管する場所でもある強固な魔法で守られた塔は、それでも崩れ落ちる事は無かったが、四人はこれでゴーレムを完全に敵と判断する。
上空から近寄るタバサと燦の二人は、ゴーレムの肩口に人が乗っているのを見つける。
「あれが術者。叩き落せばゴーレムは止まる」
しかしすぐにゴーレムもシルフィードに気付き、手の平を大きく開いたまま平手をかましてくる。
有効打撃面積が広すぎる。
学園食堂で使っている巨大テーブル用テーブルクロスを一杯に広げたような、そんな壁がシルフィードへと迫る。
馬鹿馬鹿しい程に強力な一打を、シルフィードはゴーレムから距離を取る事で回避する。
それでも手の平を振る事で生じた竜巻のような旋風により、シルフィードは大きく体勢を崩す。
燦はそのやり口にカチンと来たようだ。
「エゲツない事してくれるで……タバサちゃん! ゴーレムにシルフィード寄せられるか!?」
「どうする気?」
背負った剣に手をかけ、燦は不敵に笑う。
「飛び移ってとっ捕まえたる!」
タバサの返答は早かった。
「絶対無理。お願いだから止めて」
当たり前だ。飛び降りれる場所はほとんど無く、失敗したら30メイル近く落下してしまう。当然即死であろう。
「えー」
「えーじゃない。落っこちたら拾えないから、大人しくしてて」
そこで不意にタバサは気付く。
二手に分かれたのは失敗だった。
何故なら下の二人がするであろう無茶を、止めてくれる人は誰も居ないのだから。

無理無茶無法がウリのルイズとキュルケでも、この巨大な物体はどうしようもない。
遂にゴーレムが塔の一部を粉砕する事に成功し、術者の塔への侵入を許しても手も足も出なかった。
尤もそれで黙ってくれるようならタバサもコルベールも苦労はしない。
キュルケにこの場を任せ、ルイズは塔の下部にある衛兵詰所から武器をかっぱらってくる。
「どうキュルケ?」
先ほどから何度も炎を叩き付けているのだが、いっかな効果が上がらない。
「やっぱ術者狙いね。塔の中から出てきた時が勝負よ」
そこまで言うと、怪訝そうな顔でルイズが手に持つ武器を見やる。
「……アンタ弓何て使えたっけ?」
「初めてだけど、何とかなるでしょ。流石に拳は届かないだろうし」
そもそもどうしてロクに使ってもいない魔法学園の衛兵詰所に弓があるのかも不思議である。
316ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:56:31 ID:p9RTRh1u
ルイズは試しにと全力で弓を引いてみる。

ぶちん

弦が千切れてしまった。
「ヤワな弓ねぇ」
「……ねえルイズ。アンタのやってる訓練に関して色々と言いたい事が出来たんだけど」
「後になさい。別の弓取ってくるわ」
何とか犯人が塔から出てくるのには間に合った。
深くフードを被った犯人が背負っている袋は、直径で1メートル程の大きさ。
それが丸く膨らんでいる所と、侵入してから脱出するまでの時間を鑑みるに、片っ端から宝物を突っ込んできたか。
キュルケとルイズが同時に攻撃を開始する。
流石に魔法は狙い過たず犯人へと吸い込まれていくが、ゴーレムが僅かに動いただけで土の壁に阻まれる。
ルイズの矢は論外である。
30メイル近く上に居る標的付近にまで矢の威力が失われぬ膂力は大したものかもしれないが、如何せん精度が無い。
「下手な鉄砲でも数打てば当たるのよ!」
「下手に甘んじてないで工夫なさいよ」
キュルケの魔法はある程度の誘導が可能であるが、ゴーレムの術者はきっちりキュルケの魔法に対応してきている。
その間隙を縫うようにルイズは矢を放つのだが、やはり命中打は無い。
相手にはしてられぬと、ゴーレムは二人に背を向け逃亡にかかる。
キュルケは舌打ちをすると、走ってゴーレムを追う。
「何やってんのキュルケ! 正面に出たら避けらんないわよ!」
ルイズの注意も耳に入っていない。
いざとなればレビテーションの魔法で一息に逃げられるとの読みあってだ。
でもなければ、この巨大ゴーレムの真正面に立つなどという真似、出来るはずがない。
ルイズとて何時でも闇雲に危険を冒している訳ではない。
自分なりの勝算あっての勝負(確率が低いとか失敗したら死ぬとかを無視してはいるが)であって、確実に死ぬとわかってる真似をしたりはしない。
この場合、ゴーレムの前に出るという事はルイズにとっては確実な死、そしてゴーレムは止められぬという最悪の結果を招くと確信していた。
ルイズの俊敏さを持ってしても、ゴーレムが地面を嘗めるように片足を振り回してきたら、回避の術が無い。
矢で術者の動きを少しでも制限して、地上からのキュルケ、空中からのタバサの魔法に賭ける。
それが最適だと考えたのだ。
しかし、ゴーレムの二本の腕はこの二者からの魔法を完璧に防ぎきっており、キュルケが移動したのもそれに業を煮やしての事であった。
より射角の取りやすい位置へ、だがそれは死と隣合わせの場所である。
「馬鹿! そこはダメよ!」
ルイズはキュルケが取った位置取りを見て悲鳴をあげる。
確かにゴーレムはまだ足による攻撃をした事は無い。しかしそれが今後絶対やってこないという理由になどならない。
あそこまで踏み込んではキュルケの魔法でも避けるのは無理と考え、上空のタバサに合図を送る。



振り下ろす腕ならば、例え手を大きく広げていようと魔法の詠唱が充分間に合う。
攻撃魔法の詠唱途中でそれをされたら、その時はタイミングの判断が必要だ。
逆に言えばそこさえミスらなければ、この位置からでも充分攻撃出来る。

キュルケは、ゴーレムが足で蹴ってくる可能性を失念していた。

「キュルケ!」
叫びながら駆け寄るルイズ。
ゴーレムの予備動作だけでその動きを見切れたのは、体術の訓練を馬鹿みたいに繰り返してきたおかげであろう。
キュルケはルイズが半ばまで駆けて来た所で、ようやくそれに気づいた。
呆然とした顔で、大地を削り取りながら迫る巨大な土壁を見つめている。
絶望の壁がキュルケに辿り着くより、ルイズがキュルケを突き飛ばす方が先であった。
317ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:56:59 ID:p9RTRh1u
もちろんそれでかわせるような幅ではない。
それでも、伏せていればまだ助かる可能性もあるかもしれない。そんな期待がルイズにはあった。
しかしゴーレムの術者は流石にその扱いに長けているようで、大地とゴーレムの振るわれる足との間に隙間は無かった。
ルイズは両腕を前に交差させ、インパクトの瞬間を待つ。
死ぬ。そう思う。これは生きて帰れぬ。間違いなくそう思う。
こんな質量をこの勢いでぶち込まれては、原型すら留めず比喩でなしにバラバラに砕かれる。
それでも意地で耐えてやる。こんな所で死んでなるものか。
土壁に憎しみの視線を叩き付け、ルイズは構えた。

タバサがそうしたのは何故だろう。
自分は何があろうと死ねぬ身だ。
生き残って初めて大切な人を守れるのだ。
そんなタバサがシルフィードに命じる。
二人を助けろと。
タイミングはギリギリ間に合わない、巻き込まれてこちらも死ぬ可能性の方が高い。
だから魔法を唱えた。
エアハンマー。
上方から放たれるこの魔法では、二人はただ地面に押しつぶされるのみ。
だからエアハンマーの目標は二人のすぐ直前の大地、タイミングは二人が交錯した瞬間。
僅かにタイミングがそれるが、構わず魔法を放つ。
地面にぶつかった空気の流れは、大地に弾かれ、斜め下から斜め上へと力強く押し出す風となる。
これによって二人は斜め上方に吹っ飛ばされ、宙を舞う。
それを上からかっさらうような形でシルフィードの後ろ足が掴み、まっすぐ前へと飛びぬける。
シルフィードの尻尾がゴーレムの足が巻き起こした竜巻に巻き込まれて渦を巻くも、辛うじてあの質量だけは避けきってみせた。
しかしそれでも危機は脱していない。
斜め上方から急降下して地面すれすれを飛んでいるのだ。失速し墜落するかもしれない危機は続いている。
速度は当然落ちていない。二人を拾うにはそれでもギリギリだったのだから。
こんな勢いで地面に激突すれば、全員が致命傷を負いかねない。
シルフィードは必死に堪えた。

上へ、舞い上がるんだ、私が、みんなを守るんだ。

「きゅいーーーーーーーーーー!!」

シルフィードの気合の声と共に翼が斜め上方に傾く。
前方からの風を受け、体が大きく上へ引き上げられる。
一瞬、浮力が失われる瞬間。
シルフィードは有らん限りの力を込めて、両翼を力強く羽ばたいた。
その一旋で体が完全に真上を向く。
タバサと燦はシルフィードの首にひっ捕まってこれを堪える。
まだまだ危機は去っていない。
ゴーレムは大きく一歩を踏み出し、シルフィードを狙っている。
肩口まで振り上げ、自由落下に任せて落とされた腕。
その稜線に沿うように真上へ向けて上昇を続ける。
掠らせてもダメだ。今、シルフィードは皆の命を預かっているのだから。
一気にゴーレムの頭上まで飛びあがったシルフィード。
しかし一点、彼女の見事な成功に水を差す事態が発生していた。
「お姉様! ルイズが落ちちゃったのね!」
シルフィードはタバサに言葉を発する事を禁じられてはいた。しかしそんな事言ってる余裕など無かった。
318ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:57:28 ID:p9RTRh1u
タバサは咎める事もせず、シルフィードの首から両手を離し、背中を数歩駆けた後、勢い良く宙へと飛び出して行った。

ルイズは突然の浮遊感の理由に気付き、本当に頼れる友人に心の中で美辞麗句を並べ立てる。
キュルケも突き飛ばして体が横になった状態で居たので、ルイズよりも大きく宙を舞っていたおかげか、シルフィードのもう片方の足にがっしりと捕まえられている。
あの巨大ゴーレムの腕が全力で振るわれるのを超至近距離で見るというド迫力の映像を経て、ルイズは次なる算段を立てる。
九死に一生を得たはずのルイズは、既に勝つ為のプランを練っていたのだ。
『この間合いなら! 絶対かわせないわよ!』
ゴーレムの頭部横を飛びあがっていくシルフィード。
その足から、ルイズは強引に自分の体を引き抜いた。
目指す落下点はゴーレムの肩。
そこに居る、あの憎っくきフードの盗賊!
飛び蹴りの一発で叩き落して、自分は肩に着地。
逃げ場など何処にも無い。かわせるものならかわしてみろ!

しかし何たる事か、フードの盗賊はルイズの蹴りを待つまでもなく、自ら前方へと身を投げ出したではないか。

その理由に気付いてルイズは歯噛みする。
ゴーレムの腕に着地するよう、自らとゴーレムを操れば良い話だ。
でっかい袋を背負っている割に奴め、やたら動きが良い。
こうなってくると厳しいのはルイズだ。
蹴り飛ばす反動も考えて飛び降りていたので、このままでは勢いがつきすぎている。
この際見た目云々言っている場合ではない、何としてでもゴーレムの肩にしがみつかなければ落下して真っ赤な花を咲かせるハメになる。
足の先が辛うじてゴーレムの肩に触れる。

ぐきっ

足首が捩れてそこで踏ん張る事が出来なかった。
『マズッ!?』
そのまんま勢い良く飛び出してしまうルイズ。
『……あっちゃー、こりゃ死んだかしらね』
そんな暢気な事を考えてるルイズの視界に、必死の形相でこちらへと飛んでくるタバサの姿が見えた。
『ホント……頼れる子よね、タバサって』
これが終わったら例え破産する事になろうと、思う存分食事を奢ってやろうと心に決めたルイズであった。



使い魔も使い魔なら主も主だ。二人揃って似たような無茶をしたがるとは。
そんな事を考えながら、タバサはルイズを抱えて大地に着地する。
すぐに逸るルイズに釘を刺す。
「これ以上は無理。追跡だけに留めておくべき」
しかしルイズの闘志は微塵も薄れない。
「冗談でしょ? こんだけ死ぬ思いさせられて、どうして黙って通してやんなきゃなんないのよ」
「もう充分。これ以上は本気で死人が出る」
「今更そこ恐がる所?」
まるで引かない。意地になっているのではなく、この期に及んでルイズはあの巨大ゴーレムに勝つ気で居るのだ。
タバサは、これだけは言いたくないと思っていた一言を口にする。
「……私は、まだ死ねない」
ルイズからの返答は至極あっさりとしたものであった。
「みたいね。そういう動き方してるわ、貴女」
驚きが顔に出てしまう。それを見たルイズは、この場の雰囲気にはまるでそぐわない、優し気な手つきでタバサの頬を撫でる。
「だからさっきのは本当嬉しかったわ。ありがとタバサ」
319ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:58:05 ID:p9RTRh1u
そう言ってルイズはゴーレムに向かって駆け出して行った。
後ろも見ずに、最後の言葉を言い残す。
「生きて戻ったら私の奢りで好きな物食べさせてあげるわ! アンタはそこで待ってなさい!」
タバサは言葉も無く立ち尽くすのみであった。



燦はシルフィードの上から、ルイズがゴーレム目掛けて駆けて行く様子を見下ろしていた。
「ルイズちゃん……まだ、ヤル気なん……」
その果て無き闘志、決して折れぬ信念、敵の大きさではなく、自らの心に従って戦うか否かを定める毅然とした姿勢。
ああ、自分の主人は、何と勇敢で、男気に溢れた好漢なのであろう。
タバサに、飛竜の上でのハウリングボイスは余程うまく射角を取らないとシルフィードにも当たると言われここまで黙っていたが、これ以上何もせぬなど瀬戸内人魚の名折れだ。
自分は使い魔だ。決して前に出る存在ではない。
なら、そんな自分がこの戦いで出来る事は一体何か。
「私に出来る事は! 精一杯ルイズちゃんを応援したる事だけじゃ!」
家族以外には行った事がなく、出来るかどうか余り自信はない。
「ううん、私とルイズちゃんの絆ならきっと届く! いいや届けてみせるで!」


「人魚古代歌詞(エンシェントリリック)! 英雄の歌!!」





タバサにはそれに気付けるだけの素養があった。
人知れず修羅場をくぐりぬけてきたタバサだからわかる、その圧倒的な気配。
突如聞こえてきた燦の歌声に呼応するかのごとく、ルイズの全身から放たれる気質ががらっと変わった。
だからであろう、そのルイズ目掛けてゴーレムが拳を放った時も、あれでは倒せぬ、そう確信出来たのは。

「スローすぎて、欠伸が出るわね」

ルイズは振り抜かれたゴーレムの拳の上に立ちそう言い放つ。
まるで異界の生物でも見るように、畏れ、恐れ、怖れる。我が身が震えるのを止められぬタバサ。
「あれは……一体何? 本当にルイズ?」
一時たりとも目は離していない。
たった今タバサに優しく声をかけてくれたルイズは、あそこに立って昂然と腕を組んでいるルイズと同一人物のはずだ。

違う。

あれはもっと圧倒的で絶望的な何かだ。
何度も難敵と戦ってきたタバサをして一度も出会った事がない、そう思わしめる程、今のルイズが放つ鬼気ともいうべき気配は絶大であった。
術者が居ないあの巨大ゴーレムを自らの魔法のみで蹴散らせ。
そう言われるのと変わらぬ絶望感。あのルイズにはソレと同じレベルの何かがあった。
「サンの歌? にしてもアレは別次元すぎる……あんなモノがこの世に存在する事自体間違ってる……」
アレが何をする気なのか、理解出来た。
アイツはサイズの違いすら一顧だにせず、巨大ゴーレムと真正面から殴り合いをするつもりなのだ。
ふっと頭に浮かんだ単語を口にする。
「神……いや、あれはむしろ……」
かつて始祖ブリミルを守護したという強力無比な使い魔の存在を思い出す。
320ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:59:05 ID:p9RTRh1u
伝承に語られる程の戦いも、あれ程の存在感があれば為し得るかもしれない。
タバサは引き寄せられるようにルイズの姿に魅入られていた。



その力があれば術者を狙う事も容易かろう。
術者はゴーレムの片手の上におり、その挙動に集中しているのだから。
だがルイズはそうしなかった。
遠くで見守る者にすら霞んで見える程の俊足で、ゴーレムの腕を駆け上がる。
「ほおおおおおお、あたぁっ!!」
肩口まで駆け上がった勢いそのままに、ゴーレム左耳付近に拳を叩き込む。
打ち込まれた拳を基点に、放射状に頭部を走った亀裂は一瞬で反対側へぶち抜け、僅かに遅れて襲い掛かる衝撃が頭部全体を吹き飛ばす。
ただの一撃、それだけでルイズの数倍の大きさがある頭部が粉微塵となったのだ。
「聞こえるわよサン! 貴女の声が! 心が! だから私は何処までも強くなれる!」
再生が始った頭部を放置し、何とルイズはゴーレムの肩から飛び降りる。

「あーたたたたたたたたたたたたたたたほあたぁっ!!」

飛び降り様に喉元に一発の拳を。その衝撃は首後ろに突き抜けボコッという音と共に大きな膨らみを作り出す。
ルイズは落下しながら更に、胸板、鳩尾、腹部、腰に無数の連打を叩き込む。
拳が打ち込まれる度、ゴーレムの背中に気泡のごとき膨らみが増えていく。
そしてそれが当然のように、ルイズは音も無く大地へと着地する。
同時に膨らんだ無数の気泡が弾け、轟音と共に崩れ落ちるゴーレム。
ルイズはその様を見ながら、心底愉快そうに口の端を挙げる。

「どうしたの!? これで終わりじゃないわよ! さあ立ちなさい!
 胸を! 腹を! 腰を! 全てを再構築して立ち上がりなさい!
 貴方には私を満足させる義務があるわ! 何度でも! 何十回でも! 何百回でも! 何千回でも!
 百万の屍を積み上げる代わりに、貴方が何度でも蘇り私の拳を受け止めなさい!
 それこそが! 唯一貴方がこの世で出来る事よ! ただその為に生き! 私に尽くしなさい!」

もう誰だコイツと。
テンション上がりすぎて最早別人格である。
再び懲りもせず振り下ろしてきたゴーレムの拳。
硬度を上げ、鉄のごとき強度を誇るその拳を見て、ルイズはにやりと笑う。
「フフ、これなら崩れ落ちる心配も無さそうね」
右手の親指、人差し指、中指、左手の親指、人差し指、中指。
六本の指を前に突き出す。
インパクトの瞬間を見切るなぞ、今のルイズには造作も無い。
「ふんぬらばあああああああ!!」
白魚のように細く透き通る指。
それが六つ。
ルイズはそれだけでゴーレムの拳を受け止める。
衝撃に耐え切れなかったのは、ルイズではなく両の足を支える大地だ。
がりがりと嫌な音を立てながら削り取られる大地。
しかし、それもほんの1メイル程でぴたりと止まる。
ゴーレムがぶるぶるとその全身を震わせるも、ルイズはびくともしない。
「……なるほどね。今の私を下がらせるなんて、その巨体は伊達じゃないわね。面白いわよ、あ・な・た」
今もゴーレムは力を込め続けている。その証が震える体よ。
そんな中、ルイズは支点を六本の指から、片手のみへと切り替える。
321ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 22:59:39 ID:p9RTRh1u
そして、浮いた片腕を無造作に振り上げ、
「ほあたぁっ!!」
鉄並みの堅さを持つ拳に叩き込む。
土より硬度がある代わりに柔軟性を欠いた拳は、衝撃を逃がす事も出来ず、瞬時に肘まで亀裂が走る。
「でも、最初に私を狙ったのと同じやり方で倒そうというのは気に喰わないわ」
バカンッと腕が爆ぜる。
さあ、次の攻撃よ早く来い。そうルイズの目線が告げている。
その瞳からは、感情を持たぬゴーレムすら恐怖に震えさせると錯覚する程の、闘気が漏れ出していた。
腕の再生も待たず、ゴーレムはルイズ目掛けて足を振り上げる。
蹴り飛ばすのではない。
完膚なきまでにその重量が伝わるように、ルイズを踏みつけんとしているのだ。
当然足の硬度も上げている。
今度は腕を支える程度では済まない圧力がルイズを襲うはず。
「そうよ、そう! いいわ! 工夫の後が見られるのは素晴らしいわ!」
天を全て覆う様なゴーレムの足裏を見上げながら、両膝を落とし構える。
ルイズがかかと側の位置になるように。ここならば、足先より高い力がかかるはず。
これが俺の全力だ! そんなゴーレムの叫びすら聞こえてくるような、全体重を乗せた踏み付け。
体のバランスを取り、踏みつける足に全ての重心を乗せられるよう動く見事な挙動は、ゴーレムの意地か、操る者の技量か。

ああ、そんな全力を真っ向から打ち破る事の何と心地よきか。

反動からか、ルイズの真下の大地が一瞬でクレーターの様に大きくへこむ。
もちろんゴーレムの足によるものではなく、拳を振り上げたルイズの足が放った反動だ。
踵は粉々に砕け散り、更に足首、脛までもが真上へと振り上げられた拳の一撃で粉砕される。
重心をそちらにかけていた為、大きく体勢を崩して倒れるゴーレム。
その位置を、ミリ単位で見切っていたルイズは、すぐ側に倒れ込む巨大な構造物にも眉一つ動かさず。
巻き起こる土煙すらルイズを恐れ、その周囲を取り囲む事を拒否している。
「邪魔よ」
ルイズは埃でも払うかのように足を振るい、すぐ隣に落ちてきていた見上げんばかりの胴体部を蹴り飛ばす。
力を入れ方を工夫したのか胴体は砕ける事もせず、その数十メイル程の巨体がごろんごろんと転がる。

こんな真似をしているルイズは無論、生身である。
その身体に損傷を負わせられれば倒せる、はずである。
しかし、30メイルの巨大ゴーレム相手に人間サイズで平然と力比べをしてみせるこの物体の硬度がどれ程のものなのか、想像する気すら起きない。

燦の歌には力がある。
心繋いだ相手にその力を与える歌が「英雄の歌」である。
しかしこれ程の強化が為し得るなど燦ですら考えていなかった。
心の繋がり、お互いを信じあう心が「英雄の歌」の真髄だ。
ならば主と使い魔、ルーンを通して神秘の力で繋がる二人の絆は、かつて燦が経験した事のない程強い物である事は想像に難くない。
この歌の副次効果である、男前な性質強化も嫌な方向にぶちぬけきっている所を見るに、力の強度は天元すら突破しそうな勢いだ。



これだけの大騒ぎ、学院に居る生徒で聞きつけない者など居まい。
皆が皆校舎の窓に張り付いてこの戦いを見守っている。
モンモランシーに呼び出され、おっとり刀で駆けつけた教師陣も、ただ唖然と見守る事しか出来ない。
危ないからと共に来てくれたギーシュに、モンモランシーは戦いに目を貼り付けたまま問う。
「ギーシュ、アンタアレにケンカ売ってたの?」
同じくギーシュもまたルイズの勇姿から目を離せない。
「いやいやいやいやいやいやいやいや……無い、あれは無い。おかしいよ、絶対。何もかもが」
「同感だけど、ほら私の目から入ってくる光景が常識全てを否定してくれるのよ。何とかしてよギーシュ」
322ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 23:00:20 ID:p9RTRh1u
「モンモランシー、なるほど、これは僕一人が見ている白昼夢じゃないんだね。とても認められないけど、もし仮に万に一つとしてあれが現実であったと仮定したなら、やっぱりどうしようもないんじゃないかなぁ」



ゴーレムが崩れ去る直前に何とか大地に着地した、フードを目深に被った盗賊、土くれのフーケことロングビル。
眼前に繰り広げられる光景が信じられず、何度もこの悪夢を打ち破らんとゴーレムを挑ませるが、都度より深き絶望を味わう。
背負っていた袋が破れ、盗み出した宝物が毀れ落ちているのにも気付かず、冷静さの欠片も無い闇雲さで、笑えるぐらい必死に、ひたすらこのヒトっぽい何かを叩き伏せんと挑みかかる。
「嘘よ……ウソ……こんな事が……」
自らのゴーレムに対する自信は無論あった。
だがそれが絶対の力でない、そう思う程には賢かったはずである。破れる事も、倒される事もありうると思っていた。
ならば何故ロングビルはこんなにもルイズ撃破に拘るのであろうか。
理由は簡単、ただただ一重に恐怖故、それだけである。
ゴーレムが及ばなければロングビルにコレに対抗する手段は残されていない。
あの強力、俊敏さ、圧倒的なまでの殺意、戦闘の最中で歓喜に震え哄笑を上げる狂気、どれを取っても、勝てる要素が見当たらない。
あんな存在が、この世にあるなんて、始祖ブリミルの力すら及ばぬだろう、遭遇した事が不運、そう断じる他無い存在。
じりじりと後ずさりながらゴーレムを操っていたロングビルは、遂に正気の限界を迎える。
「いやああああああああ!!」
悲鳴と共に再生も半ばのゴーレムをルイズに覆い被らせる。
ほんの僅かの間でもいい、これで時間を稼いで少しでも遠くへ逃げる。
ゴーレムも学園の秘宝もどうでもいい。とにかく、もう一秒たりともこの場所に居たくない。

あんなものの攻撃対象になっているなど、そうと認識するだけで気が狂ってしまう。



体中から再生途中の土を振り溢しながら、全身を使ってルイズに覆い被さるゴーレム。
「ほおおおおおおおおおっ!」
如何なる呼吸法か、そう叫ぶルイズの全身に、ソレ、を為すに十二分な力が漲っていく。
「ああああったたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたあたぁっ!!」
外部からはゴーレムの姿しか見えぬが、ルイズの打撃が放たれている事は良くわかる。
ゴーレムの全身に次々生じる瘤から土砂が吹き上がり、人の形を保っていたゴーレムの部位を片っ端からただの土くれへと変えていく。
もうどうにでもしてくれといった気分で見物していたタバサは、それ以上再生しないゴーレムを見て、決着が着いた事を悟った。
そこで気付く。
術者を探さなければ意味が無い事に。
冷静なタバサをしてそんな簡単な事を失念させる程、この光景が現実離れしていたのである。
慌てて周囲を探るが、ゴーレムを覆い被らせた直後に逃亡したのであろう、すぐ近くに姿は見られなかった。
上空を舞うシルフィードを呼び、追跡に移ろうとするタバサ。
だが、更にもう一つの事に気付いた。
ゴーレムの残骸である土砂の中に居るはずのルイズは、いっかなそこから出て来ようとしないのだ。
そしてこれが一番恐ろしかったのだが、ついさっきまで周辺に満ち満ちていた重苦しい存在感が消え失せてしまっている。
シルフィードがタバサの側に降りてくると、歌を止めた燦が慌てた顔でタバサに駆け寄ってきた。
「タバサちゃん、何かルイズちゃんに歌届いてないみたいなんよ……」
タバサはもう一度土砂の山を見る。
燦の歌を聴く事でルイズは力を得た。そう仮定するのなら、あれだけの量の土砂に埋もれている現在、ここでどれだけ大声を出そうと聞こえるはずもなく、だとするのなら……
土砂の山に駆け寄りながら、タバサは燦に指示を出す。
「学院に行って人手を集めて来て。多分ルイズは生き埋めになったまま身動きが取れなくなってる」
「ええええええええっ!!」
燦は悲鳴をあげながら駆け出して行った。
タバサはキュルケにも手を借りようと声をかけるが、キュルケの反応が妙に鈍い。
「キュルケ?」
323ゼロの花嫁:2009/01/24(土) 23:01:26 ID:p9RTRh1u
「あ、ああうん。大丈夫よ。ルイズ掘り返すのよね」
この緊急時にキュルケの対応が鈍いというのも少し変だと思ったが、それ以上に気になる事が山盛あったので、そちらを先に整理する事にした。
燦とルイズのこの力、下手に扱ったらとんでもない事になってしまうだろうから。



生徒達はほとんどが現場に近づくのを嫌がったので、教師陣と一部の生徒達でルイズを掘り起こす。
その間に賊の探索が進められたが、森の中に宝物が転がっている以外の収穫は得られなかった。
その中で、燦は土砂に埋もれていた一本の杖を発見する。
オールドオスマンが教えてくれたその杖の名は「名も無き杖」といい、何がしかの能力を秘めているのだが、それが何なのかわからない物品らしい。
その杖を前に、燦はうーんと頭を捻る。
「どうかしたかの?」
「私これどっかで見た事ある……何処じゃったかな……」
不意に思い出したのか、ぽんと手を叩く。
「そうじゃ! これ政さんがやっとるウチの通販商品じゃ!」
オールドオスマンは興味深げに燦に問い返す。
「知っておるのか? ワシもこれを手に入れたのは偶然じゃったからのう。霧の中で一人の……」
オールドオスマンの昔話は放置で燦は嬉しそうに言った。
「迷槍涅府血遊云(めいそうネプチューン)じゃ! 間違いないで! 確かコレ体の異常とか治してくれる浄化の力がある言うてた奴じゃ!」
ちょっと寂しそうだったが、名無しから格上げ出来そうなので、オールドオスマンは素直に燦に感謝する事にした。
「ふむ、ミス・ヴァリエールの使い魔は中々に博識じゃのう。他にも色々あるが、良ければ見てはくれんか?」
「ええよ。通販商品全部覚えてる訳じゃないけど、私でわかるものじゃったら」
この時タバサの耳が僅かに動いた事に、気付く者は無かった。



草木が生い茂る森の中をひた走る。
盛り上がった木の根に足を取られても、不気味にうねった蔦に腕を取られても、ねっとりへばりつく苔むした幹に顔をすり擦っても、ロングビルは止まらなかった。
後ろなど恐ろしくて振り返れない。
次の瞬間真後ろから、城砦程もあるゴーレムを子供の玩具扱いする腕力を振るってくるかもしれない。
足を止めた瞬間、あの俊敏さをもって瞬間移動でもしてきたかのように眼前に姿を現すかもしれない。
先日野盗紛いの特殊部隊とやりあった、あの時の比ではない。
奴等は理解出来た。強さも、存在意義も。
しかしアレは違う。
どうやってアレが存在しえているのか、どうすればアレになれるのか、そも、あんなモノが何故この世に存在しているのか解らない。
直前までは魔法も使えぬただの小娘だったではないか。それがどうして、何故、どうやって……
様々な疑問が頭を駆け巡り、ロングビルをより深き混沌へと誘っていく。
千々に乱れた思考を纏める余裕もなく、こけつまろびつ逃げ続けるロングビル。
隠れ家の一つとしていた小屋に駆け込みドアを閉めて鍵をかけ、ようやく永劫にも似た逃亡の時間を終わらせる事が出来た。

床に仰向けに倒れ、今にも止まりそうだった呼吸を整える。
背負っていた荷物は三分の一までに減ってしまっている。
突然、何かに気付いたかのように跳ね起きて窓の外を伺う。
そこに動く物の気配が見て取れないと、大きく安堵の吐息を漏らして再び床に座り込む。
そこら中に盗み取ってきた宝物が無造作に転がっている。
宝石、玉、剣に杖、首飾りや王冠等が散らばっているのが見える。
それらが価値ある物なのはわかる。それでも、今のロングビルにはどうしてもガラクタの山にしか見えなかった。
無性に悲しくなって来る。
「……ねえアニエス、教えてよ。私、一体何やってんのよ……」
立てた膝に顔を埋めて、何が悲しいのかもわからぬまま、ロングビルは一人涙を溢した。



以上です、今度もまた早めの更新が出来るよう頑張ります
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 23:10:31 ID:1oErxm1Z
サンの人乙。

・・・・つか人外だよルイズ。転龍呼吸法使ったケンシロウ並みにチートだよこれw
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 23:12:19 ID:YMdVS7pc
ルイズ無敵すぐる・・・

何はともあれサンの人乙。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 23:16:30 ID:0ctCAaVL
乙っしたー!
ルイズの一人北斗神拳が最強すぎるw
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 23:18:40 ID:gg8xcC9m
超戦士誕生しちゃったー!
最終回には『英雄の詩』無しで自立型超戦士化できるようになるんですね、分かります
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 00:00:30 ID:/29XuT5a
>>281
何の変哲もない民家から突然現れ、周りの連中を片っ端から切り殺していく漆黒の鎧を纏った騎士
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 00:08:53 ID:mK+su9z7
>>328
しっこくハウスの事かぁーッ!?
330ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:42:12 ID:X7RTooBP
こんばんわ、どなたかご予約とかなければ50分ごろから投下いたします。

そして花嫁の方乙。ここまでハイテンションで面白強いルイズは見たことがないw
331 :2009/01/25(日) 00:46:18 ID:UcOCFANt
支援でござる
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 00:49:16 ID:1Ns7AvIy
ござるござる
333ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:52:42 ID:X7RTooBP
では投下します。いささか下ネタあり。

ゼロの魔王伝――15


「おそーーい! もう、何時間待たせるつもり?」

 普段は自分が待たせる側であるキュルケは、不満も露わにようやく待ち合わせ場所に姿を見せたDとルイズに、大きな声で問い詰めた。
 Dはそよ風に吹かれているとでも言う様な、まるで意に介していない様子――要するにいつも通りと言う事だ。
 デルフリンガーとご長寿セットをまとめて左手に持ったDと、ビニールパックに血で濡れた制服をしまったルイズは、荷物をどっさりと抱えたタバサとキュルケの元へと悠々と歩いて行った。
 ちなみに、Dが左手に持っている『ご長寿セット』は、ドクター・メフィストが贔屓にしている西新宿にある『秋せんべい店』の三代目の店主が売り始めた品をアイディア基としている。
 本来、魔界都市<新宿>にある本院ならば販売はしていないのだが、ハルケギニアに開いた分院では、院内の売店や献血などのお礼の粗品として配られている。
 院長であるメフィスト手ずから焼いたとも、メフィストがどこからか招いた職人――あるいは生み出した人造生命体――が、手作りしていると、病院関係者ではもっぱらの噂だ。
 ご長寿セットの内訳は、噛んだ歯の方が欠けそうな位に大粒の砂糖が、びっしりと白く化粧を施した様にまぶされたざらめ。
 新潟県魚沼産コシヒカリと秋せんべい店秘伝の醤油の成分を、余す事無く再現したタレで焼いた厚焼き。
 いつまでも焼きたてのぱりぱりとした触感を保ち、磯の匂いがかすかに香る海苔が巻かれた海苔巻。
 計三種それぞれ四枚ずつの十二枚セットとなる。他にも抹茶せんべいや、げんこつせんべい、塩せんべい、ぬれせんべいなどなどバリエーションは豊富だ。
 これらの内、ティファニアがDに渡したのは、当たり外れの無い最もスタンダードな組み合わせと言えよう。
 これらのバリエーションの豊富さが院長の趣味なのか、秋せんべい店でも同じものが売られているからなのかは目下不明だ。
 まあ、せんべいとしては普通だし、味も評判がよいので文句が出た事はない。
 長さ一・五メイルはある長い包みを抱えたキュルケや、足元に大量の書物を置いたタバサが、ようやく姿を見せた桃色ブロンドと旅人帽の主従に抗議の視線を向けるが、黒づくめの青年の美貌に焦点を結ぶや、たちまち頬が落ちてしまいそうなほど蕩け掛ける。
 ここら辺は、もう一つの自然現象、大宇宙の鉄の掟に等しい物理法則なのだと諦めた方が手っ取り早い。抗う気力を振るい起こすのもいちいち面倒なのだ。
 その威力がどれほどのものか、ルイズ達がトリスタニアの城下町に到着した時に、Dの姿を一目見て、魂を口から放出させていた人々の大多数は、数時間を経過した今も膝や尻餅をつき、頬をうっすらと桜色に染めて幸せそうに蕩けているではないか。
 いくら慣れたとはいえ、正気を維持して行動しているルイズやタバサ、キュルケの精神力は大したものといえた。
 その精神力をフルに活用して、Dの美貌から視線を引き剥がしたキュルケは、どことなく元気の無い様子のルイズに気づき、何か失敗したのかしら? と疑惑を胸に抱いた。
 せっかくDと二人きりにしてあげたのに、不甲斐ないわねぇ、と思うのが半分、いつもの様子との違いに、何かあったのかしら? とやや不安になるのが残りもう半分。
 良くも悪くもキュルケは、ルイズの理解者と言えるだろう。なにしろ雰囲気と顔色から大体の感情や機嫌の良し悪しは察せるのだ。
 本人は腐れ縁だのなんだのと否定するだろうけれど。

「あら、ルイズ、元気ないのね。そんなんじゃあ、ただでさえまっ平らな草原を描いている貴女の胸が、そのうち萎んで抉れてしまうわよ」

 自分の言葉に対して烈火のごとく怒り、髪を逆立てて反論してくると予想したキュルケに返ってきたのは、どこか憮然としただけのルイズの声だった。

「そんなわけないでしょ」
「……ルイズはなにか悪いものでも食べた?」

 大好物と思って口に運んだ料理が、泥団子だと食べてから気付いた様な声で、キュルケが事情を知っていそうなDに水を向けた。
 どんな風月の過ごし方をしても、変わらず厳然と聳え続ける鉄扉の様に固い口元が開いた。言葉は短い。

「飲みはしたな」
「衝撃的な体験をしたという奴じゃ」
「なにそれ? そういえばルイズ、貴女その服はどうしたの? それに手に持っているのは……」

 目敏くルイズが両手で抱き締める様にして抱えているビニールパックの透明な生地越しに、血に濡れた制服の一部が見えたキュルケは、ルイズの様子の変化とDと二人きりだったという状況、さらに遅れてやってきたという事を極めてあらぬ方向で曲解した。
334ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:53:55 ID:X7RTooBP
 キュルケはどこか感動したように、あるいはよくもまあ、Dを相手に、この青年をその気にさせるなんて! と奇跡を目の当たりにしたように瞳を震わせていた。
 キュルケの隣のタバサは、この親友の反応に思い当たる節が無く、初めてみる様子に少しだけ興味深そうな眼を向けていた。

「ルイズ、まさか貴女がそんな事をするなんて。いいえ、むしろ凄いと思うわ。正直な私の感想よ。痛かったでしょう? ミスタ・Dは優しくしてくださった? よく頑張ったわ。けれど学院に戻っても誰にも言ってはダメよ。
 貴女とミスタ・Dがそういう関係になってそういう事をするのが何の不思議もないからと言って、自慢げに吹聴すると貴女の身に危険が及ぶわ。これまでの嫉妬が千倍、憎悪は万倍になるわよ」

 なにやら、ルイズの事を心から心配してはいるらしいのだが、妙に熱のこもったキュルケの言葉に、流石にルイズやタバサも噛み合っていないというか、互いの間に例え難い温度の違いがある事に気づいた。
 こっちこそ、なにか悪いものでも食べたんでしょう、と言いたいのを堪えて、ルイズが典雅な形の眉を寄せて質問した。
 Dと私の関係? 何を言っているのかしら、このツェルプストーは?

「なんの話よ?」
「もう、照れているのね、ルイズ! 恥ずかしがるのも無理はないけれど、大丈夫、私が今後いろいろとアドバイスしてあげるわよ! いやぁね、なんだか自分の事みたいに嬉しいだなんて」
「だから、なんの話をしているのよ。さっぱりわからないんだけど?」
「もう、私の口から言わせるつもり? いいわ、ならはっきりと言ってあげる。ルイズ、貴女、大人になったのでしょう? 殿方の事を体でよく知ったのでしょう? しかも初めてなのに『飲む』なんて」
「……………………ハイ?」

 ぶふぉ、と吹き出す声がした。Dの左腰の辺りに垂らされたその左手からだった。Dの隣に居るルイズには、必死に笑いを堪える皺まみれの老人の姿が容易に想像できた。
 キュルケが何を言っているのかまだよく分かっていないルイズは、ふと、Dの顔を見上げた。
 大体三十サント位背丈に差があるから、すぐ隣でDの顔を見上げるのは首が疲れる。疲れの代わりに目に映す事が出来るモノを考えれば、苦にはならないのがせめてもの救いだろう。
 ルイズは心中でキュルケの発言が反芻した。

 『大人になったのでしょう?』『殿方の事を体でよく知ったのでしょう?』

 そう言いだす前にキュルケが見たのは何だったろうか。メフィスト病院で手伝いを行っていた時に、血で汚れた制服だったはずだ。

 制服、制服……『血』で汚れた?
 キュルケは言った。『痛かったでしょう?』と。
 痛かった? 大丈夫だった? Dは優しくしてくれた? 『してくれた』?? なにを? いや、ナニを? ナニ? ナニって、ナニで、ナニの事なの、かし、ら……って、それって、ひょっとしてひょっとすると。

 Dの横顔を見つめていたルイズの頬にたちまち朱が昇った。白百合が唐突に自分は本当は薔薇の花だと思いだしたような色の変化だった。
 ルイズの体温が一気に三度は上昇し、心臓の鼓動は数割増しで激しくなる。

「きゅ、きゅる、きゅるきゅるキュルケ!? な、あああ、あんた、なに、ナニ、を考えているのよ!!!」

 あまりに破廉恥で、あまりに魅惑的で、あまりにも甘美な誤解を炸裂させているキュルケを怒鳴りつけようとして、ルイズは、タバサの使い魔の鳴き声みたいにキュルケの名前を呼んでしまった。
 かなり動揺している。
 すっかり赤一色になった顔色は、そのうち髪の毛まで同じ色に染まるのではないかと思うほど鮮やかだった。湯気が立ち上っていないのが不思議なほどである。
 キュルケは、Dを一瞥してからポッと頬を染めて顔を逸らした。キュルケらしいようならしくないような勘違いに、タバサもようやく気付いたのか、霊峰に降り積もった白雪の様な頬を林檎色にして、俯いた。
 普段、無表情、無感情で通しているタバサにしては珍しいはっきりとした感情の表れ方であったが、まあ、事態が事態だ。止むをえまい。

「ナニって、意地悪なルイズ。それを、こんな往来で私の口に上らせるつもりなの?」

 かは、とルイズは肺に残っていた空気を吐き出した。脳が沸騰する様な興奮と混乱の極みに達した所為で、呼吸さえも碌にできない。
335ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:55:09 ID:X7RTooBP
 そんな主人と友人達の喜劇をどう思っているのか、Dは変わらず無言である。どうでもいいにも程があるのだろう。
 その左手の掌の奥に引っ込んだ老人と、鞘に収められた所為で喋れないデルフリンガーは、少女達の誤解劇を大いに楽しんでいるらしく、Dの左手は小刻みに揺れ、デルフリンガーも鞘と鍔がかちゃかちゃと音を立てて震えていた。
 人間だったら腹筋がよじれるような大爆笑を必死の思いで堪えているに違いない。
 そんな使い魔と寄生生物とインテリジェンスソードの様子に気づく余裕の無いルイズは、最近やたらと豊かになってきた想像力と妄想力を、幸か不幸か発揮していた。
 キュルケはこうも言っていなかったか。

 『初めてなのに“飲む”なんて』

 そしてその前にDはこう言っていなかったか。

 『飲みはしたな』

 これまでの流れからいって、キュルケはDの言葉からルイズが飲んだと誤解したのだろう。何を飲んだと思ったのかは語るまい。
 が、ルイズにはキュルケの脳内でどのような連鎖反応が生じ、いかなる答えを導き出したかを理解した。
 愛娘の成長を喜び、慈しみに満ちた目で見守る母の様な顔をしたキュルケ。こんな時でさえ無かったら、彼女がこんな顔をするなんて、とルイズは驚くだけで済んだだろう。
 だが、今は。
 キュルケが優しく囁く。

「寝具は確かに要らなかったわね。二人で同じベッドに入ればいいんですもの。そして毎夜熱い夜を過ごすのね、ルイズ」

 本当にキュルケに悪意はないらしく、あくまで宿敵たるラ・ヴァリエール家の息女であるルイズを祝福している様子だ。
 自分自身の妄想とキュルケの言葉の数々に、まるで石像の様に固まって思考停止しているルイズに、キュルケがとどめの一言を放った。

「ちなみに、何回したの?」

 これが引き金になった。ずわ、と肌を撫でる気配に、Dが傍らのルイズを見た。この青年に注意を向けさせるほどの、半ば物体化したルイズの気配であった。
 ルイズの口元には、あの、キュルケとタバサを恐怖で震わせた笑みが浮かんでいた。
 聖母の仮面を被った悪魔の笑み。小柄な体からは全てを凍りつかせる冷気と、触れるもの全てを灰にする灼熱の殺気とが矛盾しながらも溢れだす。
 それでもルイズの頬は紅に染まっていた。妄想の余韻だろう。音も無く腰のベルトに挟んでいた愛用の杖を手に持ち、その先をキュルケへ。
 一連の動作は淀みない川の流れの様に流麗でさえあった。
 Dとルイズがニャンニャンしている姿を妄想し、身をくねらせて照れているキュルケは、ルイズの変貌に気が付かなかったが、傍らのタバサは今一度目の前に出現した魔王に気づき、とっさに退避しようと反射レベルで動いて見せた。
 しかし、恥ずかしいやら嬉しいやらでまともな思考を失った魔王ルイズの反応は、タバサの回避行動の数段先を行く速さだった。

「き、記憶を失ええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 城下町への出入りを検閲する門に、直径数メートルの光球が突如産まれ、世界を苛烈な白い光で飲み込み、鼓膜を突き破る轟音が響き渡ったのは、ルイズの絶叫の直後であった。

「巻き添え」

 悟ったようなタバサの諦めの言葉も、ルイズの起こした爆発の轟音と爆煙と光の中に飲み込まれて呆気なく消えた。


 ふっくらほっぺをぷりぷりと膨らませて、拗ねた様子のルイズは乗り込んだシルフィードの青い鱗をぐりぐりとやや力強く撫でていた。きゅい〜、と時折迷惑そうにシルフィードが鳴くが、それを無視して、ぐりぐり、ぐりぐり。
 ルイズの渾身の爆発で半径三メートルのクレーターを作り出し、その痛みと衝撃の二重奏でキュルケを正気に戻した帰り道の途上である。
 巻き添えを食らい、髪の毛があちらこちらに跳ねて制服の裾を焦がしたタバサが気絶から目を覚まし、上空に向けて指笛を鳴らし、空で待機していたシルフィードを呼び、今は幼い風竜に乗っている。
 タバサ同様に目を覚ましたキュルケが、自分のしでかした盛大な誤解に気づき、一応ルイズに謝罪するように口を開いた。

「もう、ルイズ、いつまでも拗ねないでよ。ちょっとしたすれ違いでしょ? そんなに気にしなくてもいいじゃない」

 ばりばり、ぱりぱり。

「うっさい」

 ごりごり、ぽりぽり。

「まったく、頑固なんだからラ・ヴァリエールの所の人達って。もー、私が悪かったわよ。これからはあんな風に貴女と貴方の使い魔さんの関係を勘違いする様な事も言わないし、勘ぐるような真似もしないわ。だから機嫌を直しなさいな」
336ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:56:41 ID:X7RTooBP
「あのね、本当に謝るつもりがあるなら、せめてその食べる口と手を止めなさいよ。なによ、さっきからばりばり、ばりばり、私が貰ったものよ。勝手に食べるんじゃないわよ!」

 と振り返ったルイズの眼には、二枚目の海苔巻をかじっているキュルケの姿があった。
 シルフィードの首のやや前の方に座ったタバサを先頭に、D、ルイズ、キュルケの順で座っている。
 歯を剥いて威嚇するルイズを、きょとんとした顔で見つめてから、キュルケは軽い調子で言い返した。

「美味しいわよ、このオセンベイ。ここらへんじゃ慣れない味だけど、歯応えもあって食べがいがあるわね。貴女も食べたら?」
「ツェルプルストーに食べさせるぐらいなら全部私が食べるわ!」

 といって、Dからご長寿セットの袋を受け取り、適当に中にあった砂糖の粒がきらびやかなざらめを一枚掴み、初めて口にする食べ物に対して一瞬躊躇する素振りを見せたが、そこはルイズ、ままよ、と目を瞑って思い切り齧りついた。

「ふう〜、う〜、か、固い」

 咬筋力の弱いルイズでは、厚みも砂糖の粒もびっしりとしたざらめを一撃で噛み砕くのは難しかったようだ。この調子では他の海苔巻や厚焼きも簡単に食べられそうにはない。

「胸だけじゃなくて体全体が貧弱なのね、ルイズ。タバサなんて貴女より小さいのにしっかりと食べているわよ」
「珍しい味。でも美味」

 とタバサ。くるりとルイズを振り返り、小さく割った厚焼きを口に運び、ぼりぼりと盛大な音を立て、頬を膨らましながら食べている。
 まだ付き合いが短くていまいちタバサとの接し方が分からないルイズは、シルフィードに乗せてもらっているという事もあってか、キュルケの時と違い文句は言わなかった。
 悪戦苦闘する事、数えて五齧り目、ようやくぱき、と音を立ててざらめを割る事に成功したルイズは、口の中に広がる醤油の辛さと次いで溶けてゆく砂糖の甘味に、ちょっと驚いたように眼を開いた。

「…………」

 ぼりぼり、ごりごりと口の中でざらめを砕く音が木霊する。ルイズがこれまで食べた事が無い不思議な甘辛さと、固い触感だ。
 クックベリーパイが大好物のルイズとしては、この固さは極めて異質的だったが、この“ぼりぼり”という音と歯応えも、このオセンベイのおいしさの一つなのではないだろうか、とそんな風に思う。
 更に十数秒苦戦を続け、ようやく飲み下したルイズはこう言った。米を焼いた独特の香ばしさは初めての味だったけれど、美味しいと思えた。とはいえ素直に口には出なかった。
 この辺がルイズがルイズたる由縁だろう。

「まあ、クックベリーパイほどじゃあないけどなかなか食べられる味ね。でも紅茶にはちょっと合いそうにはないかしら」
「これだけを食べるのは少し辛いかも。なにか飲みたくはなるわね」

 指についた海苔の切れ端を、ひどく艶めかしい動作でキュルケが舐め取りながらルイズに同意した。ちろちろと小さく燃える火の様な色をしたキュルケの舌が、ぬめぬめと濡れたまま褐色の指を這う仕草は、眺める者に生唾を飲み込ませる艶があった。
 それからしばらく、四人の間では会話もなくせんべいを齧る音が続いた。
 ルイズがようやくざらめとの戦いを終えて、胃の中に米と砂糖と醤油の申し子を下した時、不意に風を受けて黒髪をなびかせるDの背中を見た。
 どこまでも広く、どこかさびしげな背中だった。人は孤高と言うかもしれない。孤独と評するかもしれない。
 何よりも美しく、故に誰からも遠い、壮絶な独りぼっち。そんな背中だった。
 ルイズはなぜだかそれがとても悲しい事のように思えた。
 気づけば口が動いていた。目の前の黒尽くめの青年の事をわずかでも知る事で、せめてその孤独を和らげる事が出来たなら、その孤独を少しでも分かち合う事が出来たならと、そう思ったのかどうか、後になって思い返してもルイズには分からなかった。

「ねえ、D」

 ちら、とDがルイズを振り返った。返事はしなくとも振り返るだけ以前よりもルイズに対して反応しているといえた。常なら無言を維持したまま背を向けっぱなしのままにしている所だ。

「貴方は、どこから来たの? そして、どこへ行くの?」
「どこへ、か。どこへ行くのか、おれにもわからん」

 わずかにDの口調に翳の様なものが差していた。Dは苦笑したかったのかもしれない。ルイズの問いに答えられない自分にか、それともかつてルイズではない誰かに同じ様な事を聞かれたのを思い出したからか。

「だが、どこから来たか、なら分かる。君達は知らんだろうが、『辺境』というところからな」
「辺境? 地名じゃないじゃない」
337ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:58:18 ID:X7RTooBP
 これはルイズだ。それもそうだろう。Dが言葉を続けた。神が奇跡を大盤振る舞いしているのかもしれない。この青年がこうも多弁になろうとしているは、それほどに珍しい事であった。

「昔は名前があったらしいがな。今はだれもがそう呼んでいる」
「ふうん。それで、Dは何をしていたの? 剣を背負っていたから傭兵か何か?」
「似たようなものだ。どの道褒められるような仕事ではない」

 貴族を名乗った吸血鬼の血を引くダンピールは、吸血鬼ハンターとして最高の素質を秘めているが、その身に流れる吸血鬼の血は、時に狩るべき吸血鬼と同等の脅威となって周囲の人々に災厄をまき散らす事がある。
 そうでなくとも、『辺境』の人間にとって数千年にわたって人類の上に君臨し、恐怖と力と血と死で支配していた吸血鬼達への憎悪と恐怖は計り知れないモノがある。
 例え半分“しか”その身に吸血鬼の血が流れていなくとも、半分“も”流れているという事実が、人々にダンピールへ恐怖と排斥の意識を向けさせる。
 貴族を自称する吸血鬼からしても、高貴な同胞の血を引きながら下賤な人間の血を持ち、自分達を狩り立てるダンピール達は最も唾棄すべき下劣な存在であった。
 かつて、吸血貴族達の間で、仕留めた獲物や返り討ちにした人間達の生首や干し首を競りに掛ける残酷で血なまぐさい市場が開かれていた頃、最も安く売り払われたのがダンピール達の首であった。
 人間からは恐怖と迫害と不理解を。貴族からは目にするも汚らわしい雑種、そして親殺しを生業とする下賤な輩と蔑みを向けられる。
 昼に生きる者からも夜に生きる者からも嫌われ、受け入れられぬダンピール達の運命は極めて過酷であり、そしてまた絶対的に孤独なのであった。
 そういった背景を考えれば、今Dが身を置く状況は『辺境』では考えられないものだろう。
 多分に、Dが生きてきた世界と彼自身の素性への無知と未知によるものであったが、ルイズらのDへの態度と接し方は、長い時を生きてきたDにしても珍しい事であったろう。

「ここに比べて随分と生きる事が厳しい世界だ。その昔世界を支配していた支配者達が生み出した妖物や怪奇現象、外からやってきた侵略者たちの置き土産や彼らとの戦争の名残が、あちこちに残り、今も牙をむいている」
「なんだか、実感がわかないけど凄い所なのね」
「三歳の子供でも、必要とあれば自分の親の心臓に短剣を突きたてられなければ生きてはいけない。親もまた必要とあれば我が子の首を絞める事が出来なければならん。できなければ失うのは自分と多くの者達の命だからだ」
「子供が、親の心臓にって、なによ、それ。そんな酷い事が罷り通るの!?」

 親殺し、子殺し。それをさも当然の様に語るDのセリフに直情径行の在るルイズが真っ先に噛み付く。ルイズほどあからさまではないが、キュルケやタバサも面白い話を聞いたという顔をしてはいなかった。

「言った筈だ。できなければ失うのは、自分の命とその他の者達の命だと」
「だけど!」

 言い募ろうとするルイズを宥めたのは、Dの右手だった。いつもの揶揄する様子はなく諭すような口調でルイズに話しかけた。

「そう噛み付くな、お嬢ちゃん。『辺境』に住む連中の誰もが親殺しや子殺し、兄弟殺しを経験しておるわけではない。最近はましになってきおるからの。
 まあ、村の中でも妖物共の侵入が完全にないとは言い切れんから、女子供も短槍、剣、銃くらいなら当たり前に使いこなす。それとて身を守る為じゃ。好き好んで殺戮を行う者など……あ〜〜、まあ、少ない方じゃよ、たぶん」
「変な間が空いたわね」
「なに、気にするな。それにの、こやつとて素知らぬ顔をしておるが必要となれば、泣き叫んで命乞いをする子供の首も……」
「そこまでにしておけ」
「ふん、どうした? 自分が悪く思われるのが嫌だったか? ありのままを晒せとまでは言わぬが、本当の事を言う位構うまいに」
「学院が見えてきた。お喋りはここまでだ」

 Dの言うとおり、彼方から迫る闇に払拭される間際の夕陽に、燃える様に照らし出された学院が見えてきた。朝陽と共に飛び立った学院へ、夕陽を従者の如く引き連れて、ルイズ達は帰って来たのだ。
 学院の中庭に舞い降りたシルフィードから降り立ち、おもにキュルケが買い込んだ大量の荷物を下ろす。
 普段から無口なタバサはともかく、ルイズはどこか機嫌悪げに口を閉ざしていた。
 せっかくDと話を出来たにもかかわらず、その内容の凄惨さと、あくまでも淡々と他人事のように語るDの様子がどうしても気に入らないのである。
338ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 00:59:35 ID:X7RTooBP
 Dの言葉を全て信じるなら、『辺境』とはたった三歳の子供が自分の親を殺す様な事も罷り通る場所だという。
 実際に目の当たりにしたわけではないが、そんな場面を思えば誰だって胸に痛みを覚えるに違いない。
 なのに、Dは変わらぬ無表情の氷の仮面を被ったままだ。自分が口にした事の悲しさを、やるせなさをわずかなりとも理解していれば、あんな顔のままではいられまい。
 それを、Dは何も感じていないと誰にも分かる様子だった。
 無論、それが当たり前の環境で生きてきたDと、自分とでは価値観や倫理観にかなりの違いがあるのだろうという事はルイズにも分かってはいたが、それでも納得しきれぬものがあった。
 そんなルイズの胸の中で、ふとした疑惑が鎌首を持ちあげた。

――ひょっとして、私がDに対して怒っているのは、あんな話をしても悲しむ素振りも見せないからではなくて、Dが私と同じように悲しみ、怒ってくれないからではないか?

 同じ感情を抱いてくれない使い魔への苛立ち、それがこの怒りの原因か。その考えはひどく自分を惨めなものと感じさせたが、同時に頷くものもあった。
 ルイズはDに求めていたのだ。自分と同じものを見た時、聞いた時、同じように悲しみ、怒り、憎しみ、愛しみ、笑い、泣く事を。その片鱗でもよいから見せてはくれないかと。

「なによ、私だってひどい人間じゃない」

 そんな自分の考えが許せず、ルイズは柳眉を寄せて自分自身を責める。ぎゅ、とビニールパックを抱きしめるルイズの様子に気づいたのは、やはりDではなくキュルケだった。
 ルイズの落ち込んだ様子に、どうしてこう、Dは自分の主人を思いやる事が出来ないというか、気落ちさせるような真似を連発するのかしらねえ、と心底から呆れる。顔はいいが、中身はやはり問題ありと判を押すしかない。
 ああ、もう、とキュルケはなんで私がルイズを励ますようなことしなきゃいけないのよ、と心の中で愚痴を言いながら、武器屋の主人から買った一番見栄えの良い剣を手に、ルイズとD目掛けて歩きだした。
 そんなキュルケの様子を見ていた小さな親友はこう呟いた。

「素直じゃない」

 むう、と少し影を背負った様子のルイズに、キュルケは努めて明るく、そしてからかうような調子で声をかけた。
 麻の布を巻いていた包みを外して、中の宝石や黄金の鍔や柄の造りが眩いばかりの輝きを放つ大剣を取り出して自慢げに披露する。
 ルイズは、一度だけ大剣を見つめただけですぐにそっぽを向いた。そんな気分じゃないのよと、無言で告げている。とりあえず反応はしたわね、とキュルケ。

「ほらほら、見なさいな、ルイズ。貴女がDに買ってあげたボロっちいのと違って、ゲルマニアで名高い錬金魔術師シュペー卿の業物よ。これ一本で森付きの屋敷が帰るのよ。誰かさんが大切な使い魔に上げた剣とは格が違うわ。格が」
「ふん、使う相手もいない剣を買うなんて、ツェルプストーはお金の使い方も知らないのね。価値から勉強しなおしてきたら?」
「あら、贈る相手ならいるわよ? 貴方の使い魔さんよ。あんなおしゃべりで錆だらけの剣なんかよりも、この剣の方がいいわよね? ねえ、ミスタ」

 キュルケはこちらを向いたDににっこりと微笑ながら、視線で訴えかけた。貴方の所為でなんだかルイズが落ち込んでいるんだから、少しは気を利かせなさい、と強く睨む。
 これまでDに対して最も強気な態度で接したのは、この瞬間のキュルケだった。

「あの武器屋のご主人が見せてくれた一番の業物よ。魔法が掛かっているから手伝って両断出来るわ。そんな、野菜位しか切れそうにない剣より、誰だってこちらを選ぶわよね。 
 刀身なんか鏡みたいに磨き抜かれているのよ。ねえ、ミスタ、貴方さえよければこちらのシュペー卿の剣、ただでお譲りするわ。貴方みたいな美しい人にはそれ相応の武器で無いとね」

 分かっていらっしゃるわよね、そう目配せするキュルケの意図をDが読み取ったかどうかは甚だ怪しかったが、ルイズの変化は顕著だった。
 落ちつかない様子で何度もDを見つめ、どこか縋るような、期待する様な、恐れるような、なんとも複雑な、そして思わず抱きしめたくなるほどいじらしい様子だ。
 自分がDに贈った初めてのプレゼントが、よりにもよってキュルケの買った剣に取って変わられるのかもしれないのだ。気が気ではない。
 そんなルイズを追い詰める様にDが口を開いた。
339ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 01:00:39 ID:X7RTooBP
「見栄えはいい方がいいな」
「だ、だめーー!! だめ、だめ、だめったらだめ!! D、Dは私が買った剣を使いなさい! あ、貴女だってデルフリンガーで良いって言ったでしょ!? わ、わたし、が買ってあげたんだからっ」 

 食いついたわね、そう口の中で呟いたキュルケは、精々ルイズをからかってやろうと、さっきまでの励ますという目的を撤回していた。ここら辺の切り替えの早さは見事と言える。

「あーら、ルイズ、つまらない嫉妬でもしちゃったのかしら? 貴女がミスタ・Dに買った剣なんかよりもずーっと、立派な剣を私が買っちゃったものだから」
「ち、違うもん! ツェルプストーからは豆粒一粒だって恵んで欲しくないだけよ、それだけよ! なによ、ひ、人の使い魔に余計なことしないでよ!!」

 今にも泣き出してDに走り寄って抱き付きそうなルイズの様子に、キュルケは予想以上の成果にほくそ笑みそうになるのを堪えなければならなかった。
 本当に最近のルイズは面白い。

「でも、それを決めるのは貴女ではなくてミスタではなくて? 貴女も言っていたじゃない、ミスタの意向は汲むつもりだって。それ位はするって、貴女自身のお口が言ったのよ? それを言わなかった事にするつもり?」
「そうだけど、そうだけどっ」

 今にもルイズは泣きだしそうだった。Dがキュルケの大剣を選んでしまう事がよほど嫌らしい。せっかく使い魔との距離を埋める行為が出来たのに、それが無かった事にされてしまいそうで、ルイズはキュルケが思う以上に狼狽していた。

「ルイズ、貴女だってどっちがいいって言われたら私の剣を選ぶでしょう?」
「……」
「黙っていちゃ分からないでしょ。貴女の口と頭は何の為についているの? ほら、何か言いなさいな」
「……うぅ。……よ」
「んん? なあに? 声が小さくて聞こえないわよ」
「決闘よ!! ええもう、こうなったらツェルプストーとラ・ヴァリエールの因縁に決着付けてあげるわよ! 
なによ人の使い魔に色目使っちゃってDもDよなんで見栄えのいい方がいいなんて言うのよ私が買ってあげたじゃない錆びててぼろくて喋るけど剣買ってあげたじゃないお金出したじゃないなのになんでそんな風に言うのよ貴方は私の使い魔でしょだったら素直に私
の買った剣を使いなさいよ少しはキュルケに遠慮する素振りとか断る姿勢を見せなさいよ!!! はあ、はあ」
「…………」

 一息に言い切ったルイズが盛大に息を吐いて飲む音が響く中、キュルケが片目をつぶりちらっと赤い唇から舌を覗かせてタバサを振り返った。
 言葉には出さずにこう言っていた。

『やりすぎちゃった。テヘ』

 タバサは静かに首を横に振った。Dは、相変わらず無言である。渦中にあるのに、まるで気にした素振りが無いのは、大物と言うよりもどこか頭の中の大切なねじの締め方が間違っているように思われた。
 そしてこの後、タバサの提案で決闘ではなく本塔の上からロープで垂らしたお互いが購入した剣を、どちらの魔法が先に落とすか、という穏便な形で落ち着く。
 だが、運悪くこの場に居合わせた怪盗『土くれ』のフーケのゴーレムが、ルイズの爆発魔法によって罅の入った宝物庫の壁をぶち破り宝物をまんまと盗む事に成功する。
 かくて、物語はようやく過去の回想を終えるのだった。
340ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 01:01:49 ID:X7RTooBP
 そして、ルイズ達とはまた別に、この夜思索に耽っていた者が居た。
 トリステイン王国王都トリスタニアの城下町――旧市街区の一角。
 異世界から訪れた謎の医師が、一週間の期限という条件で開いたメフィスト病院も、忍び寄る夜闇の静けさがゆっくりと満ちつつあった。
 闇の中に紛れて生きる術しか知らぬ夜の住人達や、表通りで眠る事を知らず酒を浴びるほど飲み、嬌態に耽り、一夜の快楽を貪る者達の喧騒は遠く、まるで彼岸の彼方の出来事の様。
 メフィストが手ずから作り上げた人造生命体達が大多数を占める病院のスタッフ達は、寝静まった患者達の容体の急変に対応すべく、体を休めつつも即座に対応できるよう半覚醒状態にある者が多い。
 浮遊大陸アルビオンのウエストウッド村にある本院ならば、十分な数のスタッフとメカニズムのサポートによって、スタッフ達ここへの負担ももっと小さかったかもしれないが、今回は人手も少なく設備も乏しい。
 である以上一人一人への負担が増える事は無理もない事であった。しかし、不満や不平を口にする者はいない。
 彼らは決して患者の前で口にしてはならない言葉がある事を骨の髄まで『教育』されていたし、また一人一人が、命を救うというこの上ない崇高な使命を果たすこの職務に誇りを抱いているからだ。
 コンピュータ制御の治療ユニットが付属した重病者用のベッドの奥に、病院スタッフのよう簡易テントがいくつか並び、その奥にメフィスト個人用に設営された白いテントがあった。
 不可思議な事に中で灯りを燈してもテントの生地にメフィストの美影が映る事はなく、時折巡回する看護師達が不思議そうな視線を向けては、院長だから、と納得して歩き去ってゆく。
 どこから調達したのか重厚な黒壇の机の上に広げたカルテに目を通していたメフィストが、不意にテントの天井を見つめた。
 その瞳には空に輝き始めた満天の星空の、さらにその先の光景が映っているのかもしれない。
 霊魂が発生させるたんぱく質に酷似した物質であるエクトプラズム製の椅子は、使用者に最も快適な角度へ万分の一単位の精度で自動的に調整され、やや頤を天に向けたメフィストの姿勢に適した角度を取る。
 一生この青白い椅子の上で過ごしたいと願うものもいる事だろう。
 しかし、メフィストは世界の真理を既に解き明かしてしまった疲労感に苛まれる哲学の輩の様な様子で、天を見上げているきりだ。
 その唇から零れた言葉はこの医師にそぐわぬ感慨深げなものだった。人並みにそのような行為に耽る事は、人間ならざる美貌の存在がすれば途方もない違和感を伴う。

「せつら以外に黒が似合う益荒男に出会うとは。思いもかけぬ収穫だったな」

 胸を焦がすなどと言う例えが、虚しく聞こえるほどの想いを募らせる想い人“せつら”の名を呟き、次いで昼間に出会った黒衣の魔青年Dの姿を思い描いたのか、この非人間さぶりではD以上の医師が、どこか切なげでさえあった。
 次に言葉を紡いだ時、そこにはいつもどおりの魔界医師の顔があった。肌を斬る冷たさと静けさばかりが世界を満たす冬の静夜が、人間になったような顔が。

「私とDくんとそして召喚者達で二組。残る二組はどこの、そして誰が誰を呼ぶ? いいや、一つは分かっている。
“姫”。全ての存在に対する反存在。関わったもの全てを破滅させるあの女だ。蘇らせたものは天からも冥府からも人からも呪われるだろう。では最後の一組は? いいや、これも分かっている」

 メフィストの瞳はソレを見つめていた。よりの闇を帯びつつある空を漂っている一筋の糸を。
 青い髪の少女の体のある一点に巻きつけられ、それの片端を握る者にあらゆる情報を伝えている千分の一ミクロンのチタン鋼の糸を。

「せつらの振るう糸と等しく美しく冷たい糸だ。千分の一ミクロンと言う細さも、材料も、加工法も、切れ味も、すべてが同じだ。
 だが、それでも私には違うと分かる。糸の問題ではない。振るうものの心の問題だ。それが糸にも現れるのだ。君もまたこの世界に居るのかね? 浪蘭幻十よ。
 私がせつら以外に黒が似合うと称賛を禁じ得ぬ男が、二人、か。さて、どうなることやら」

 この時、ただ一人魔界医師だけが、このハルケギニア大陸に虚無の担い手達によって“召喚されてしまった”四人の異邦人をすべて知っていた。
 ハルケギニア大陸がこれから血に染まり、死体で大地が埋め尽くされ、天を死者の嘆きが覆うか否かは、メフィストにも分からぬ事であった。
341ゼロの魔王伝:2009/01/25(日) 01:04:51 ID:X7RTooBP
投下終了です。まとめの方を、更新してくださった方、ありがとうございます。
ようやく8あたりの話に追いついた……。先は長いですね、出したいだけのキャラクターならたくさんいるのに。
魔界都市ハンターの本田三佐とか、地下鉄サムとか。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:09:48 ID:mnXW76SC
乙です
キュルケ自重と言わざるを得ないw
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:13:38 ID:CIoJHl4w
乙です
ああ、せつらのコピーにせんべいを焼かせているのか
本人が知ったら細切れにされかねん真似をw
344名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/25(日) 01:15:45 ID:rPMZU+dv
おおっこれって、にせDが決め手か!?
さしものメフィストもにせDの存在には気がつかなかったようです。
「神祖」はできそこないと思っているようですが、メフィストやドクトルファウスト、トンブからすればマジギレするでしょう。
にせDはこのSSで一番得してほしい。Dでけりをつけてもいいけど、にせDは未熟だからこそDとは別の可能性を開いてほしい。
でもこのSSは神祖がでてくる可能性もあるんだよな……。ゲートから出てきそう。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:20:30 ID:6JsPTqYA
投下乙でした。

それと、ネタ潰しはほどほどにね>>344
346名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/25(日) 01:21:06 ID:rPMZU+dv
「虚無ではない」カトレアさまから召喚された「にせD」これこそがジョーカーになるかも知れん。

しかし、メフィスト病院とハルゲニアはゲートでつながりそうだな……。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:26:02 ID:b88meC+Z
むかーしは読んでたけど、Dも魔界都市関係も。

“姫”出てくるの(確か夜叉妃伝?)も魔王伝も1回読んだきりだったような気が。

にせDのあたりからのも読んでないし。
そのあたりのから後ので神祖自身が出てきたの、Dで?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:31:38 ID:VxiZdBL2
神祖はわりとちょくちょく顔見せてたような気もするけど
にせDの話以前はあんまり出てないんだっけ?
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:40:59 ID:lky9O9b7
>>326
>ルイズの一人北斗神拳
「YOUはSHOCKじゃぁーー!」ですアルね。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 01:45:49 ID:CIoJHl4w
×「あの武器屋のご主人が見せてくれた一番の業物よ。魔法が掛かっているから手伝って両断出来るわ。
○「あの武器屋のご主人が見せてくれた一番の業物よ。魔法が掛かっているから鉄だって両断出来るわ。

>「子供が、親の心臓にって、なによ、それ。そんな酷い事が罷り通るの!?」
それをDに言うのかルイズよ
自身の父親を付け狙い、自身の片割れである双子の兄弟ですら斬り殺したDに
つか、何で誰もかれも工藤明彦はスルーするんだよw

>>348
最近はよくでているが、にせDの前は神祖の子供身ごもった女の話で少し出ただけじゃね
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 02:04:27 ID:iRtyzkN1
亀レスですが、皆々様乙です(_ _)

DMC4>>ネロの口調が、随分と幼い(有態に言ってしまえばチンピラっぽい)様に印象受けました
(申し訳無いです;)

ライデン>>死なない程度にぶっ殺すって言うか、ディスク解放(と言えば良いのか?)の影響がどう出るか、気になる所です
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 02:09:06 ID:7+l//6lr
魔王伝の方、乙でした。
いよいよ、おマチさんの登場かあ。
…ついでに淫藤宗光も来ないかなあー。
353Zero May Cry:2009/01/25(日) 03:57:36 ID:+KE8fnVx
>>351
やっぱり、なんか違いますよね・・・…(;_ _)
これ書いてる時にはまだネロがどんなキャラなのかを大まかにしか捉えられてなかったからかな
自分もゲームやってみて初めて違和感を感じましたね……orz
ただ、自分の中ではネロはダンテやバージル達と比べて青臭い、どこか幼いイメージがあるので、それの反映かもしれません

それでは誰もいない今の内に……第四話、4時辺りから投下させてもらいますね
354Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:01:52 ID:+KE8fnVx
Zero May Cry - 04


 やがて朝食を食べ終えたルイズは自室へ戻ってくると、窓際から外を眺めているネロを目にした。
 ホントは気遣いの言葉の一つでも投げかけてやりたいのだが、やはり彼女の性格がそれを邪魔する。

「ど、どう? 少しは反省した?」

 ああ、やっぱりこういうことしか自分は言えないのか―――。

 ルイズは口を付いて出た言葉を思わず呪った。
 もしかしたら、片腕を怪我して使えぬ男に雑用をさせているという負い目が彼女の心の中にあるのかも知れなかった。

 しかし、ネロの返答はルイズの思わぬものだった。

「飯は食ったのか? 次は授業じゃないのか?」
「え―――」

 彼の口から出たのは、恨みや皮肉ではない。
 ルイズを気遣う言葉であった。

 ネロの言葉に、束の間の間呆気に取られていたルイズだがすぐにいつもの調子で喋りだす。
 それでも、なるべく言葉に棘が出ないように気をつけて。

「あ、う、うん。そうよね。次は授業なんだけど、使い魔には教室まで見送りに来るのが普通なの」

 いつもより大人しい感じになったルイズを見て、ネロは思わず唇を笑みに歪めた。
 そのネロを見てルイズはまたからかわれたような心境になり、ぷいと背中を向けて言った。

「早くしなさい! ホントに遅刻になっちゃうから!」
「やれやれ……」

 最早、ここまでくると慣れたな……とばかりにネロは笑みを崩さずルイズの後について行った。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「へぇ……。結構広いな」

 教室へ辿り着いたネロが開口一番に言ったのがその台詞だった。
 ルイズには知る由も無いことだが、この学校の教室を見てネロは、何となくフォルトゥナの劇場内部を思い出していた。
355Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:02:53 ID:+KE8fnVx
「無駄口叩いてないでさっさと席に着きなさい」

 ルイズに背中を押されたネロはおどけたようにルイズへ言う。

「何処が俺の席なんだ? 悪いけど俺は授業に出るのは初めてでね」
「私の隣よ! 早く来なさい!」

 そう言ってネロの前を歩き始めたルイズを見てネロは最早何度目か分からぬため息をついた。

「どうでもいいけどよ、何で俺まで授業受けなきゃならねぇんだ?」
「あんたは人間だから。ホントは使い魔は外で待ってるんだけど、特別よ」
「俺としちゃ、外で待ってるほうが良かったぜ………」

 ネロはそう言うと周りを見回した。そこいるのは個性豊かな生徒達。しかしその殆どがこちらに向かって好奇の目を向けている。
 その中のいくつかの視線に対してネロは、お得意の睨む様な視線を返した。するとその誰もが思わず彼から目を逸らした。当然と言えば当然かも知れないが。
 それに満足したのか、ネロは彼らに向かって小さく笑うと、再び前を向いた。その横ではルイズがネロから睨まれなかった何人かの幸福な生徒にヤジを飛ばされている。

 そうこうしている内に、教師と思われる物腰の柔らかそうな中年の女性が教室へと入ってきた。
 ルイズへヤジを飛ばしていた生徒達も一旦口を閉じる。

 その後ルイズと教師の女性にマリコルヌと呼ばれた少年による唾棄すべき口論があったが、それ以外はなんの支障もなく授業は進められた。

 とは言っても、ネロにとってはそれらのことは全て興味の範疇外であり、彼は当然の如く授業を聞きはせずに、何とはなしに腰の銃――ブルーローズという名のネロの愛銃だ――をホルスターから引き抜くことなく弄んでいた。
 そんな彼の耳には「属性」「錬金」などの単語が届いていたが、勿論気にも留めない。

 だが、突然ルイズが立ち上がって壇上へ向かって行き、それと同時に周りの生徒が騒がしくなると流石のネロも「何が起こったのか」と周りを見る。
 生徒達の顔は一様に焦りと不満の色が見て取れる。それを目にしてネロは訝しげに首を傾げた。

「おいおい、何かヤバい事でも起こるってのか?」

 冗談混じりに呟き、ネロはふと視界の隅に教室を出て行ってしまう青い髪の少女を捉えた。手には大きな杖を持っている。
 その少女の後を追おうとネロが席を立つのと、ルイズが壇上でルーンを唱えて杖を振り下ろすのはほぼ同時だった。

 瞬間、ネロの耳に轟音が響き、視界は眩い光で覆われた。そんな中でも本能的に回避行動を取れたのは流石と言えよう。

 ネロは弧を描くように大きく跳躍し、突然起こった原因不明――勿論そう思ったのはネロだけだったが――の爆発を避けると同時に壇上の近くへ降り立った。
 爆発は壇上を中心として起こった。ネロは思わず嫌な展開を想像したが……。

「……何だよ。自分でちゃんと立ってるじゃねぇか」
「あ、ネロ」
「何呆けてんだよ。大丈夫かよ? ボロボロじゃねぇか」

 ネロの言う通り、今のルイズの外見は酷い。服は破け、顔は埃で汚れている。ニーソックスも穴だらけだ。
 だが今の爆発の中心地にいながら外傷は殆どない。普通に考えれば奇跡に近かったが、ネロはルイズのなりをみて不謹慎にも笑ってしまった。
356Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:03:47 ID:+KE8fnVx
「ヒデェな、そのカッコ。まるで悪魔に襲われたみてぇじゃねぇか」
「うるさいわね! ちょっと失敗しただけよ!」

 と、ルイズがそうネロに反発すると―――。

「何がちょっとだよ! いつもこうじゃないか!」
「ゼロのルイズ! 魔法が成功した例なんてゼロのくせに!」

 そのヤジを聞きながら、ネロは隣のルイズへちらりと視線を送った。その顔は平静を保っているいるが、それが見せかけなのは明らかだった。
 ネロは何も言わずに、ルイズの側で目を回しながら倒れている教師の女性へ歩み寄って彼女を介抱をしたのだった。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 その後、ルイズは己の不始末の処理をさせられていた。無論、滅茶苦茶になってしまった教室の片付け、掃除、他多数といった事である。
 そして黙々と片づけをするルイズの側には、こちらもまた黙々と掃除をするネロの姿があった。片腕を使えぬ身なりに努力して箒を操っている。

 二人の間に沈黙の時間が流れていく。

「………なんで何も言わないの?」

 不意にルイズが口を開く。その口調は言い知れぬ負の感情が感じられる。
 ネロはそんな彼女の方を見向きもせずに答えた。

「くだらねぇ無駄口聞く暇があったら掃除した方がいいだろ?」
「……………………」

 最もな意見だった。口を動かしながら手を動かすよりも手だけを動かした方が物事の効率は良いだろう。
 しかし、今のルイズが聞きたかったのはそんな現実論ではない。

「まだ………!」
「……………?」

 急に声が震えだしたルイズの方を見やるネロ。その顔には面倒事を嫌がる雰囲気は出ているがルイズに対する嫌悪や侮蔑はない。
 しかし当のルイズは顔を俯かせたまま呪いのように言葉を紡いでゆく。

「まだ馬鹿にしてくれた方がいいわよ……! まだ笑ってくれた方がいいわよ……! どうして……どうして、何も言わないの……!?」
「……何言ってんだ? お前」
357Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:04:37 ID:+KE8fnVx
 ネロは相変わらずの調子で答える。
 その一言でついに激昂したのか、ルイズは顔を上げてネロへ叫んだ。

「そこまで言わせたいの!? いいわ、言ってやるわよ! 私の二つ名は『ゼロ』! そう、魔法が一度も成功しないからゼロ! あんたも他の奴ら見たくゼロゼロ言えばいいじゃない! 普段偉そうなくせに魔法も使えないのかって!!」

 自暴自棄に叫ぶルイズを見て、ネロはまたもため息をついた。

 ―――この嬢ちゃんに会ってからため息ばっかだ。幸せが逃げちまうな。

 そんな場違いな事を考えながら、ネロはルイズから視線を逸らしつつ語り始めた。

「魔法が成功してないなんて、誰が言ったんだ?」
「え……」

 ネロの思わぬ質問に言葉を詰まらせるルイズ。目元を擦りながら彼女は逆にネロに尋ねた。

「……どういう意味よ……?」
「これだけの爆発を起こしたんだぜ? このザマ見て魔法が失敗したなんて抜かす奴は相当な間抜けか、只の木偶の坊だ」
「でも私は錬金をやろうとしたのに爆発させちゃったのよ!? 何時もそう! 爆発じゃなくてちゃんとした魔法をしようとしてるのに……!」
「じゃあお前は錬金なんてしなきゃいい。別に錬金が出来る奴が特別偉いわけじゃないんだろ?」
「でも私は他の事もできない! 空を飛ぶ事も出来ないし……!」
「じゃあこう考えろ。今さっきこの学校に悪魔が襲って来ました」
「何言ってんのよ! 悪魔なんている分けないでしょ!」

 突然ネロが悪魔と言うワードを出したのでルイズは思わず口を挟む。
 しかしそれでもネロは構わず続けた。

「お前はその爆発する魔法で襲われた先生や友達を助けました。そのまま悪魔の群れもやっつけてお前は学園のヒーローになりました」

 その言葉を聞いていたルイズは変わらないぶすっとした表情を見せている。
 しかしそこに負の念はない。先ほどとは違って純粋に子供が拗ねているような顔になっている。
 そんなルイズを見ながら、ネロは微笑して続ける。

「お前は錬金とかが出来なくても、その魔法がありゃもっとスゲェ事が出来るぜ。それこそ悪魔狩りとかよ」
「………うれしくない」
「ハッ。そう言うなよ。これだけの爆発が起こせりゃそこら辺の悪魔共は一発だ。偉そうな顔してる悪魔野郎にもイイ気つけになるだろうぜ」
「偉そうな顔してる悪魔ってなによ……」
「そうだな。体中から炎を出してる暑っ苦しい四本足のでっかい怪物とかか?」
「……もういいわ。嘘か本当かわかんなくなって来たから」
「オイオイ。全部ホントだぜ?」

 ルイズの顔に普段のふてぶてしさが戻ってきたのを感じ取ると、ネロはおどけたように笑った。
 やがて、教室の片付けもあらかた終了する。

「さて、じゃこれから昼食にしましょう」
「いいねぇ。流石はご主人様だ。気が利くな」
「偉そうな口聞いてるとまたご飯抜きにするわよ」

 その一言にネロはかぶりを振って苦笑いした。
358Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:05:19 ID:+KE8fnVx
「何が不満なんだよ? ちゃんとご主人様って言ったぜ?」
「もっと私を敬いなさい」

 それだけ言って教室から出て行くルイズの背中をネロは追う。ルイズは紅潮している己の顔をネロに見られたくなかったのだ。
 ネロはネロなりに自分を慰めようとしていた―――そんな思いがルイズの胸中に広がってゆく。

 対してネロはルイズの小さな背中を見つめながら思う。

 ―――こんな感じの光景を目にするのも、もう何回目かわかんねぇな。

 顔に浮かべた苦笑いを何時もの仏頂面に変えながらも、心の中では彼は笑っていた。

 その時彼は、自分でも何故か分からないほどに彼女に優しくしている己がいることに気づいて、首を傾げた。








―――to be continued…….
359Zero May Cry:2009/01/25(日) 04:10:27 ID:+KE8fnVx
以上で投下終了です、ありがとうございました

こうやって見ると、やっぱりネロの性格に違和感がありますね……
なんか……ヌルい? それとも甘い?
自分は本家と比べて丸い感じがするような気がするんですが……どうでしょう?
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 07:27:28 ID:UfKLHMJa
>>359乙。俺のイメージではネロはある程度親しい人には気さくに話すけど
あって間もないやつには少し壁を作って話す感じがするんだが。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 09:55:18 ID:BgxoSAqV
OKOKお前ら、煽り煽られの泥かけやっててもイライラするだけだろう?
ここはまず深呼吸しよう

ここまでの話を総合的にまとめると
皆わたメカルドさんが大好きということで少し落ち着こうか
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 09:56:12 ID:BgxoSAqV
>>361
なんという誤爆\(^o^)/
363シャイニング・マジック:2009/01/25(日) 10:00:19 ID:lztSA2sx
10:10から第5話を投下します。

うーん、気がついたら3ヶ月も休止してましたね。
364シャイニング・マジック 第5話(1/6):2009/01/25(日) 10:10:09 ID:lztSA2sx
「今日の課外授業は、外で野外実習をするよ」
魔法部屋の黒板の前でヒカルが宣言した。
ヒカルと共に外で実習をするのは初めてだ。
「野外実習……ですか?」
「うん、マルデヨーナ世界で実際に体を使って勉強をしてもらうよ」
「へー、なんだか面白そうね」
ルイズとモンモランシー、ギーシュが顔を見合わせてちょっと興奮気味に話している。
「それじゃ、早速行こうか!」
ヒカルがマジチケットを取り出しグリップフォンで改札する。
そして魔法部屋の扉を開けると、一行は光に包まれた。

『ただいニャより〜 0番線に列車が入りニャ〜す!
 お待ちのお客さまは、白線の内側ニャでお下がりくだニャ〜い!』
スモーキーのアナウンスが流れる中、ルイズたちは駅の中にいた。
黄金の列車を前にギーシュとモンモランシーが目を丸くしている中、ルイズはちょっとだけ冷静だ。
「トラベリオンじゃない。そういえば客車に入るのは初めてね」
「え?トラベリオンって、あの大きな冥獣を倒した?」
「これが『魔法特急トラベリオン・エクスプレス』だよ。この間、ピーヴィと戦った『魔法鉄神トラベリオン』は
 このトラベリオン・エクスプレスが魔法の力で変形するんだ」
モンモランシーがじっと金色の列車に釘付けになっている後ろからヒカルが話しかけた。
生徒達を客車に招き入れると、ヒカルは運転席に乗り込む。
「マジスチームプレッシャー、圧力確認よし!」
ヒカルが計器類を確認している後ろで、スモーキーはスコップで石炭を救い上げた。
「魔法の石炭マジコーク準備OKニャ!」
「前方確認よし!魔法特急トラベリオン・エクスプレス、出発進行!」
ヒカルがレバーを引くと、大きな汽笛が鳴り響き、重く低い音を立てて車輪が回り始める。

「へ〜、中はけっこう広いのね」
木で出来た床板を踏みながら、ルイズたちは珍しそうに客車の中を見回している。
ビロード張りの4人掛け椅子がいくつも並ぶ中、入口の近くの席に陣取って窓のカーテンを引いた。
「見て、モンモランシー!飛んでる!飛んでるよっ!!」
窓から見えるトリステイン魔法学院は、もうはるか下に小さくなっている。
ハルケギニアには、風石を動力に空を飛ぶフネはあるが、彼らがそう頻繁にのるものではない。
めったに出来ない体験に、ルイズたちは舞い上がってはしゃいでいた。
しばらくすると、魔法特急トラベリオン・エクスプレスは、空間にぽっかりと空いた穴に入っていく。
その先は異次元をつなぐトンネル。
星のような光が後ろへ流れていくのを、ルイズたちは珍しそうに眺めている。

『まもなく終点〜。マルデヨーナ世界〜。マルデヨーナ世界〜!
 お降りのお客様は、お忘れ物のニャいようにお願いしニャす〜!』
スモーキーのアナウンスが終点を告げると、ルイズ達の視界に緑色の世界が入ってきた。

365シャイニング・マジック 第5話(2/6):2009/01/25(日) 10:10:47 ID:lztSA2sx
ルイズたちは、高い崖の上にいた。眼下には、広大な森がうっそうと広がっている。
「まずは君達の『杖』を預かっておこう」
3人が『杖』をヒカルに渡す。すると、彼は引き換えに小さな袋を一つづつ渡した。
ルイズが袋を開けてみると、中にはナイフとロープ、そして鍋に皿が入っている。
どう見ても袋の容積より多くのものが入っているのだが、また何か魔法がかかっているのだろう。

不思議そうに袋を覗いているルイズたちにヒカルは語りかけた。
「さて、今日の実習だけど、魔法使いにとって大切な事柄について考える勉強だ。
 君たちには、この世界で魔法を使わずに生活してもらう」
「えっ!?」
完全にピクニック気分になっていたルイズ達は目をむいて驚いた。
「ちょ、ちょっと待って、こんな所で!?」
「ど、どういうことよ!?、そ、それに一体いつまで!」
口々に質問を浴びせるルイズたちの目の前で、ヒカルは1枚のマジチケットを取り出した。
「この帰りのマジチケットを見つけるまで」
ヒカルはルイズたちにマジチケットを見せると、崖下の森めがけてチケットを投げた。
3人は一瞬なにが起きたのか理解できずに唖然としていた。
彼女らが呆然としている間に、チケットはひらひらと風に乗り森の中へと消える。
「それじゃ、がんばってね。みんな」
ヒカルは、そういって笑うと、トラベリオンやスモーキーと共に姿を消した。

しばらくして、我に返ったルイズたちは呆然として顔を見合わせた。
「どうするのよ、これ!あんな広い森の中で1枚のチケットを探すなんて!!」
「今日はデザートが、月に1度のクックベリーパイの日なのに……あんなの探してたら間に合わない」
「それどころじゃないよ!僕たちは『呪文』が使えないんだよ。もし、森で獣に襲われでもしたら!」
「『野外実習』って言ってたから、ピクニック程度だと思ってたのにぃ……」
「…と、とにかく、ここから降りる道を探しましょう。チケットが落ちた辺りに行かなきゃ!」
3人は口々に言い争いながら、崖を降りる道をたどっていく。


「旦那ぁ、ルイズたち、どれくらいで帰ってくると思うニャ?」
「うーん、そうだね……」
ヒカルとスモーキーは話しながらトラベリオンから降り、魔法部屋へと入る。
すると、スモーキーが鼻をフンフンと鳴らした。
「旦那、冥獣反応だニャ!」
「『召喚の儀』の丘か…、すぐに行こう。さて、みんなが帰ってくるのとどっちが早いかな?」

『召喚の儀』の丘の上では、牛のような頭を持つ頑強な冥獣人が地面を睨みつけていた。
『冥獣人ベヒモス』のベルダンだ。その手には大きな杭とハンマーが握られている。
しばらく地面のあちこちを睨みつけていたが、やがて片手に持った杭を地面に突き立て両手でハンマーを振りかぶった。
「ここだ、大地の地脈のツボ!!」
ベルダンがハンマーを振り下ろそうとした瞬間、その体に何発もの銃弾が弾け、ハンマーは空を切った。
「そこまでだ!」
銃弾の飛来した先では、天空勇者マジシャインがマジランプバスターを構えている。
「地脈を狙っているって事は、魔法学園の一帯に地震でも起こすつもりなのかい」
「うぅぅっ!邪魔するなー!!」
ベルダンはハンマーを抱えたまま、3メイル以上もある巨体でマジシャインに突進した!
金色の天空勇者は素早く身をかわすと、マントを闘牛士のようにヒラヒラと動かす。
「さあこいっ!」
「うぅぅっ!赤いマントを見ると興奮するー!!」

366シャイニング・マジック 第5話(3/6):2009/01/25(日) 10:11:50 ID:lztSA2sx
「おかしいな、崖で行き止まりになってる」
「…どこに、チケットがあるのよっ!こっちだって言ったのギーシュじゃないのっ!!」
「…もう、3日目……クックベリーパイ」
「いい加減諦めなさいよ、ルイズ。それより食べ物よ!!お風呂どころか、水だってまともにないし!!
 あんな木の実だけで、これじゃチケット見つける前に倒れちゃうわよ」
3人は、へとへとになりながら森の中を歩いていた。
どこもかしこも同じような景色で、自分達がどの辺りにいるのかすら判らなくなりつつある。
幸運にも『蛙苺』が群生している場所を見つけたので、ありったけ摘んで袋に詰めて食事代わりにしていたが、彼女達の疲労はもう限界である。

疲れと空腹でギスギスした雰囲気の中、ギーシュとモンモランシーは来た道を戻ろうとすると、ルイズの膝が崩れて座り込んだ。
ハアハアと荒い息を吐きながら、仰向けに倒れこむ。
「ちょっとルイズ!あんたも少しは……」
モンモランシーは怒鳴りかけて、ハッと息を呑んだ。
今まで気がつかなかったけれど、ルイズの顔が真っ赤だ。額に手を当ててみるとかなりの高熱である。
「ルイズ、しっかりして!!……どうしよう、『杖』がないと『治癒』(ヒーリング)も使えない……。
 こんな場所じゃ、医者も薬もあるわけないし……ギーシュ」
モンモランシーがギーシュの方を見ると、道から外れて茂みのほうには行っていく。
「ちょっと、ギーシュ!こんな時に何してるのよっ?!」
「静かに!」
ギーシュは口の前に指を立てると、茂みの奥へと消えた。
「な、なんなのよ。ギーシュの馬鹿!ルイズが大変な時にっ!!……こんな森で、わたし一人でどうればいいのよ」

しばらくすると、ギーシュが茂みの奥から出てきた。
その手には、緑色の葉っぱと、10サントほどの蜘蛛を刺したナイフを握っている。
「ギーシュ、……それは?」
「トタテグモとセリヨモギがあった。とりあえずは、これで凌ごう」
どちらも、魔法を使うときの触媒である『秘薬』の材料だが、粉にして煎じて飲むだけでも解熱効果がある。
「じゃあ、さっきのって」
「トタテグモに逃げられたら困るじゃないか。それに、セリヨモギが生えているってことは近くに水場があるはずだよ」
そう言われて、モンモランシーは周囲を見渡した。
確かに、きれいな水のある近くにしか生えない植物がちらほら生えている。
「『杖』がなくても、僕たちはメイジだ!『呪文』が使えなくても、僕たちが学校で学んだことは無駄じゃないはずだ。
 …とにかく、休めるところを探そう。ルイズを助けなきゃ!!」

367シャイニング・マジック 第5話(4/6):2009/01/25(日) 10:12:29 ID:lztSA2sx
洞穴の前で、モンモランシーは夕食を作っていた。
水は、近くの小川から鍋でくんできた。
火は、ルイズのナイフを『火打鉄』代わりにして熾した。
鍋の中には、小川でモンモランシーが見つけた貝と、ギーシュが近くで掘りだした芋が煮えている。
煎じ薬が効いたのか、後ろの洞穴ではルイズが眠っている。
近くの枯れ葉などを集めて、とりあえず横になれる場所は確保した。
鍋から流れる匂いにやっと緊張が解けたのか、ギーシュとモンモランシーは疲れたような顔で笑っている。

モンモランシーは、鍋から皿へと中身を入れるとギーシュに手渡した。
自分にもよそって、皿を手に取ると、ふたりで同時に中身をすすった。
冷え切った胃の奥まで、熱い汁が染みわたるようだ。
普段はトリステイン魔法学院で贅沢な食事を食べている彼らにとっては、これは、調味料すら使っていない粗末極まりない鍋だが、今の彼らには涙が出そうなくらい美味しく感じた。
「ルイズ、大丈夫かな」
「ええ、熱は大分下がったみたい。ちゃんと休めば心配ないと思う」
熱い芋を頬張りながら、ギーシュは話を続けた。
「とりあえず、今日はみんな休んで、明日からここを拠点にしてチケットを探そう」
「そうね。闇雲に探しても、どうなるかわからないし、食べ物は確保しておいた方がいいわね」
「それなんだけど、この森の『土』の流れは少し変な部分があると思うんだ」
「あっ、わたしも。さっき水を汲みにいった川の周囲は『水』の流れが不自然だった」
「この森は、ヒカル先生の作った『マルデヨーナ世界』だったよね。もしかしたら、魔力の流れをたどっていけば……」
「そんな事言っても、どうやって『魔力の流れ』を特定するのよ!それこそ闇雲に動いてもわからないわよ」

話に熱が入っている二人の奥から、別の声が割って入った。
「ヒカル先生の『輝く太陽のエレメント』の見分け方、たしか、魔法大図鑑に載ってたわよ」
「ルイズ!」
「大丈夫なの、起きて」
「なに言ってるのよ!こんな、いい匂いがするのに寝られるわけないじゃない!!」
モンモランシーはギーシュと顔を見合わせて笑うと、ルイズの皿を手に取った。

368シャイニング・マジック 第5話(5/6):2009/01/25(日) 10:13:14 ID:lztSA2sx
トリステイン魔法学院の近く『召喚の儀』の丘の上で、天空勇者マジシャインと冥獣人ベヒモス・ベルダンの戦いは続いていた。
マジシャインは軽やかにベルダンの攻撃をかわし、マジランプバスターを打ち込む。
しかし、強靭な肉体を持つベルダンには、何発もマジランプバスターを命中させても決定打にならない。
そのとき、『召喚の儀』の丘の空に、汽笛が鳴り響いた。
金色の列車が天空から駆け下りる。
「旦那、あいつら、帰って来ニャしたぜ!」
「うん、中々に優秀だね」

マジシャインの近くにトラベリオン・エクスプレスが停車し、ルイズたちが出てくる。
マジシャインが指を鳴らすと、ルイズ達の手に『杖』が現れた。
ギーシュは、冥獣人ベルダンの方へ向き直ると、薔薇の造花を模した『杖』を振り上げた。
「グラモン家が一員、この『青銅』のギーシュがお相手しよう!!」
彼の言葉と共に『杖』から、薔薇の花弁が1枚剥がれ落ちる。
その花弁は、宙に舞うと同時に形を変え、甲冑を着た女戦士の姿の人形になる。
女戦士『ワルキューレ』は、ベルダンに向かって突進する。
しかし、怪力ベルダンのハンマーによって一撃で粉々に砕かれてしまう。
「偉そうなことを言って、この程度かー!」
ハンマーを振り上げて、勝ち誇るベルダンにギーシュは『杖』を向けた。
いつの間にやら、薔薇の花弁が全て無くなっている。
次の瞬間、ベルダンの四方から6体の『ワルキューレ』が同時に組み付いた。
驚いたベルダンがハンマーを振り下ろす間もなく、『ワルキューレ』はベルダンを押さえつけようと組みかかる。
ベルダンは、すぐさま『ワルキューレ』を振りほどこうと体をひねる。

すぐさま、ギーシュの左右でルイズとモンモランシーが高らかに『呪文』を唱える。
「ラグーズ・イル・イーサ・ウォータル…、『ジャベリン』!!」
「ジルマ・ジー・マジカ…、『スモーキー・ゼロ・シャイニングアタック』!!」

ベルダンがワルキューレを振りほどくために動きが止まったところを、『氷の槍』と『閃光のスモーキー』が刺し貫く。
強靭な体を貫かれ、ベルダンの足元から小さな爆発が巻き起こった。
「チェック!!」
ルイズとモンモランシーは、声を上げ、真ん中にいるギーシュの方に顔を向ける。
「メイトォォォッ!!!」
ギーシュが満面の笑みを浮かべて指を鳴らすと、冥獣人ベヒモスのベルダンは光となって消えた。

369シャイニング・マジック 第5話(6/6):2009/01/25(日) 10:13:48 ID:lztSA2sx
「やった!やったぁぁぁっ!!」
3人は、肩を抱き合って喜びあっている。
「課題クリアーだ、よくやったね。みんな」
いつの間にか変身を解いたヒカルが、手を叩いて彼らに話しかけた。
「ヒカル先生……」
ヒカルは、そのまま真顔で話し続ける。
「『呪文』は確かに強力だが、ただ唱えればいいというものではない。
 強力だからこそ、『呪文』の効果を最大限に発揮できるように状況を作り出す必要がある。
 いざというときに『呪文』をどう使えばいいのか、どうやって状況を作るのかを考える。
 魔法を使わなくてもできることを見極め、今の自分がやるべきことを考える。
 これは、系統魔法もマジトピアの魔法も変らない。そのために、みんな勉強しているんだ。
 それを忘れなければ、君たちはきっと立派な『魔法使い』になれる」
「はいっ!!」
「それじゃ、今日の野外実習はこれまで。」

ルイズたちは学院までの道中を話しながら歩いていた。
「さて、帰ったらそろそろ夕食の時間だね。今日のデザートはクックベリーパイだったかな」
「え?だって、クックベリーパイは、マルデヨーナ世界に行く前の日の……」
「向こうで6日いたんだよね。こっちの世界だと、ちょうど1時間になる計算だ。
 夕食まで少し時間があるから、体を洗って着替えてくるといい」
「旦那は『ルイズたちが帰ってくる前に冥獣を倒す』とか言ってニャのにねー」
「スモーキーっ!!」
「おいらは本当のことを言っただけだニャ〜」
スモーキーがそう言って笑うと、ヒカルが照れる前でルイズたちも笑っていた。
「実際のところ、もう少し時間がかかると思っていたよ」
「判ってみれば、簡単だったわね」
「そうね。最初はどうなることかと思ったけど」
「冷静になってみると、あの世界は毒のあるキノコとか生えてなかったし、危険そうな獣もほとんどいなかった。
 『エレメント』の見分け方も判ってみれば、一目瞭然だったしね」
「うーん、じゃあ、次の野外実習はもう少し難しくしてみようかな」
「えー!」
和気藹々と話しながら、寮へと向かうルイズ達の会話を聞いている者がいた。
褐色の肌に、赤い髪……ルイズ達のクラスメイトだ。

「ふーん、『野外実習』ね……面白そうなことしてるじゃない。」


【おまけ】


ギーシュ:「今日の呪文は『ワルキューレ』!青銅の戦乙女を作り出し意のままに操る呪文だ。
       そもそも、この呪文は『土』のドットメイジである、僕こと『青銅』のギーシュがその二つ名の通り…」

キュルケ:「ラ・ヴァリエール、なんか面白そうなことしてるじゃない」
ルイズ  :「なんで、あんたが私の部屋に入ってくるのよ!!」
キュルケ:「そりゃ、ここを通らないとヒカル先生の部屋に入れないからに決まってるじゃない」
ルイズ  :「ヒカル『先生』って、なんであんたまで勝手に生徒になるって決めてんのよ!」
キュルケ:「ギーシュも『野外実習』受けてるんでしょ。私だって一応同じクラスよ」
ルイズ  :「そんなのダメに決まってるじゃない!!絶対に認めないわっ!!」
キュルケ:「あ、怖いんだ。『ゼロのルイズ』がヒカル先生の魔法まで私に負けると思って怯えてるんでしょう」
ルイズ  :「そ、そそ、そんなわけないじゃない!フォン・ツェルプストーがマジトピアの魔法を覚える前に、
       わたしが系統魔法を使いこなせるようになってみせるわよ!!」
キュルケ:「あ、そ。じゃ、決まり。よろしくねー。ヒカルせ・ん・せ」
ルイズ  :「ああああっっ!い、今のなし、今のは無効だってばっ!!」

ギーシュ:「ちょっと、君たち僕の話も聞いてくれよぉぉっ!!」

370シャイニング・マジック:2009/01/25(日) 10:14:19 ID:lztSA2sx
以上で第5話終了です。

マジレンジャー本編では、筋肉ムキムキの『マッスルグリーン』の話でしたが、さすがにギーシュを筋肉ムキムキにするのは無理がありすぎるので、色々と変更しています。

トタテグモと蛙苺は、原作に名前だけ出ていますが、セリヨモギはオリジナル(というか適当な名前)です。
解熱作用についても、原作にはトタテグモにそんな効果はありません。お間違えのなきように。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 10:27:35 ID:MZH9fsbY
アニキはマジで強かった・・・
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 10:57:22 ID:qC/OrMZH
ヒカル先生乙。
前向きだなぁ、生徒たち。

…ゴーオンVSゲキレンは、最後の10分さえなければいい映画だった…。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 11:34:13 ID:FbUy3ot3
ヒカル先生乙でした。
おまけのギーシュが
リアルで自分にかぶってちょっと涙目にwwww


関係ないけど
ここ、スレ進行早すぎてなかなか書き込めんのは僕だけだろうか・・・・・・
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 11:52:34 ID:x6FrYgj3
>>373
そんな時は避難所へ行ってのんびりすれば良いと思うよ
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 12:32:08 ID:FbUy3ot3
>>374
なるほどその手があったかw
避難所でのんびりしてきますww
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 14:14:44 ID:l0qEE6NN
>>375
姉妹スレも大分まったりしてるよ。
IFとかジョジョとか。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 14:36:29 ID:FbUy3ot3
>>376
そうなのかw

今は、投下も一段落してるみたいなんで
まとめの完結作品を上から順に
ゼロのアトリエまで読んだんだけど

お勧め作品とかあるかな?

幽“零”楽団 ~ Phantom Ensemble
は個人的に面白かったと思うんだけど。。

長文スマソ
こんにちは、1月続いた春のウルトラ祭りも今回で終わりです。
では、予約がなければ14:50より投下開始いたします。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 14:44:17 ID:rzxB38s6
「ウルトラー」
「しえーん」
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 14:46:07 ID:rzxB38s6
>>377
完結作品のお勧めについてはウルトラさんの投下が終わるまでガマンしてね
381ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (1/9):2009/01/25(日) 14:53:22 ID:A21pNDOC
 第32話
 宇宙正義の守護者 (後編)
 
 サボテン超獣 サボテンダー
 ウルトラマンジャスティス 登場!
 
 
 超獣、それは異次元人ヤプールが惑星攻撃用に地球の生物と宇宙怪獣を超獣製造機で合成して作り上げる
生物兵器で、文字通り怪獣を超えた生物である。
 今、力を取り戻しつつあるヤプールは異次元世界で新たに開発した超獣製造機を使い、ベロクロン、ホタルンガを
はじめ、次第にその数を増しつつ、ひそかに地上に送り込んでいた。
 このサボテンダーもその一つ、しかしまだ不完全な力しか持たないヤプールは最初から完全体としてサボテンダーを
作り出すことができず。エネルギー充填のために小さなサボテンの姿で送り出した。
 奴は可憐な花で人の目を騙しながら人から人へと渡り歩くたびに、昆虫、動物、さらには人間を次々に捕食しながら
成長し、遂にこのウェストウッド村でスコーピスのエネルギーを吸収することによって完全体となって巨大化したのだ。
 
 しかし、その前には宇宙正義の守護者、ウルトラマンジャスティスがいた。
 今、時空を越えた宇宙正義と宇宙悪との最初の戦いが始まろうとしている。
 
「ダアッ!」
 サボテンダーに向かってウルトラマンジャスティスは果敢に挑みかかっていく。本来ならその星の原住生物との
交戦は避けたいところだが、明確な敵意を持って向かってくる以上迎え撃たないわけにはいかない。それに、
この怪獣をそのままにしておいてはウェストウッド村にまで被害が出るだろう。
「ファッ!!」
 胴体の棘の隙間を狙ってジャブの連撃を見舞う。
 ジャスティスにとっては軽い攻撃だが、一撃一撃は岩をも砕く鉄拳だ、巨大なバチで叩かれる太鼓のように
柔らかいサボテンの表皮がへこまされていく。
 そう、ジャスティスの戦い方は常に真っ向勝負、いかなる敵であろうとも正面から戦って粉砕する。
 しかしサボテンダーもやられっぱなしではなく、鋭い棘で覆われた腕を振り下ろして反撃に出てきた。
「シャッ!」
 とっさに受け止めると、腹に蹴りをくれてジャティスはサボテンダーを引き離した。
 けれど、距離が開いたのを見るとサボテンダーは全身の棘をまるでミサイルのようにジャスティス目掛けて
放ってくる。
「!?」
 側転してかわしたジャスティスのいた場所にトゲミサイルは着弾して、派手な爆発を引き起こす。
382ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (2/9):2009/01/25(日) 14:54:17 ID:A21pNDOC
 しかも、発射した棘は後から後からいくらでも生えてくる。触るな危険みたいな見た目をしているにも反して
意外にも飛び道具も豊富なようだった。
 けれど、そのときジャスティスの耳に子供達の応援する声が届いてきた。
 
「頑張れー! ウルトラマーン」
「負けるなーっ!!」
「怪獣をやっつけてー!!」
 
 その声援を背に受けて、ジャスティスはトゲミサイルを乱射するサボテンダーに向き直り、右手から必殺の
破壊光弾を一瞬の虚を突いて放った!
『ジャスティスマッシュ!』
 光弾はトゲミサイルとぶつかり合い、これを粉砕しながら前進してサボテンダーの腹に命中! 牽制程度の
技だが、命中の爆発でサボテンダーは痛覚神経を熱と衝撃で過剰労働させてもだえた。
 もちろん、その隙を見逃すようなジャスティスではない。
「デュワァッ!!」
 猛々しい叫びをあげると、サボテンダーの胴体の中央部に向けて必殺のパンチを炸裂させる。
 これはさっきの様子見のジャブではなく、渾身の力を込めた正拳突きだ。拳の形に大きく胴体をめり込ませ、
内臓破壊にまで達する超重量級の一撃に、サボテンダーははじかれるように吹っ飛ばされる。
 だが、ジャスティスは追撃の絶好の好期であるにも関わらずに、立ち尽くしたままじっとサボテンダー
を見ていた。
(これでもう敵わないのはわかっただろう。早く逃げるがいい……)
 なんとジャスティスは目の前の怪獣を殺す気は最初から無く、力の差を見せ付けることで逃がそうと
考えていた。宇宙の調和を守る存在であるがために、スコーピスのような完全な悪はともかく、多少凶暴で
あろうと現住生物の無用な殺戮はすべきではない。
 それは、ジャスティス自身の使命感と……かつて会った怪獣保護という夢を追い続け、信じれば夢は
叶うということを教えてくれたある男に対する礼の気持ちもあった。
 だが、その怪獣は自然と調和することのできる怪獣ではなく、悪意から産み落とされた破壊の権化、超獣だった。
 
 奇声を上げ、地面で這いつくばっていたサボテンダーの体から手足と尻尾が引っ込み、見る見るうちにその姿が
怪獣型から球状のサボテンの形に変形していく。
「ヘヤッ!?」
 いぶかしむジャスティスの前で、サボテンダーは球体の体をまるでサッカーボールのように飛び跳ねさせると、
空中からジャスティス目掛けて体当たりを仕掛けてきた!
383ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (3/9):2009/01/25(日) 14:55:02 ID:A21pNDOC
「ヌウォッ!?」
 とっさに受け止めて放り投げるが、サボテンダーはまるで見えないゴム紐でつながっているように再び
ジャスティス目掛けて飛び掛ってくる。これは避けきれないと判断したジャスティスは、向かってくる
サボテンダーに渾身の蹴りで迎え撃った!
「ヌウァッ!!」
 超重量の物体同士が高速で衝突する轟音と衝撃波が、夜の森とティファニア達の顔をしたたかにひっぱたいた。
サボテンダーの球体は蹴られた衝撃で、サッカーボールのように飛んで森の木々を巻き込みながら転がり、
なおもUターンしてジャスティスへと迫ってくる。
「クッ!」
 ジャスティスがうめいた。
 だめだ、このままでは埒があかない。それにしても、この怪獣はいったいなんなのだ? 動物と植物の
特徴を合わせ持っているだけでなく、恐るべき凶暴性を持っている。
(ともかく、このまま放っておくわけにはいかん)
 普通の怪獣とは何かが違う……そんなひっかかるものを感じながらも、ジャスティスは転がってくる
サボテンダーに向かって身構えた。
「ヘヤッ!!」
 突進を正面からがっしりと受け止め、渾身の力で勢いを殺す。
「ヌゥゥ……デヤァッ!!」
 止まった球体を、そのまま大地に叩き付けて動きを封じる。
 しかし、サボテンダーはその叩き付けられた衝撃さえ利用して、鞠のように空高く跳ね上がった。
「ヌッ!?」
 思わず空を見上げるが、さしものジャスティスも頭上は死角だ。まっ逆さまに落ちてきたサボテンダーを
受け止めきることができずに、強風を受けた看板のように弾き飛ばされてしまった。
「ウォォッ!!」
 思わぬ攻撃を受けてしまったジャスティスは、膝を突いてダメージになんとか耐えようとした。
 超獣の恐ろしいところは、単にそのパワーが怪獣を超えているということではない。兵器として改造された、
その特有のトリッキーな特殊能力の数々がやっかいなのだ。
384ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (4/9):2009/01/25(日) 14:55:52 ID:A21pNDOC
 もし、普通に怪獣としての形態のままで戦えば、サボテンダーはジャスティスにとってそれほど面倒な相手では
なかっただろう。しかし、相手の虚を突く超獣との戦闘経験が無かった事がジャスティスにとって不利な要素と
なっていた。
 
「がんばってーっ、ウルトラマーン!」
「立ってーっ」
 
 けれど、そんな中でも子供達のウルトラマンを応援する声はやむことはなかった。
 みんなウルトラマンの勝利を信じて、テファも子供達を守りながら、ぐっと目をそらさずに戦いを見守っている。
 
(だめだ、逃げろ!)
 しかしジャスティスはそんな声援をうれしく思いながらも、それが危険であると感じていた。
 なぜなら、ジャスティスに聞こえるということは怪獣にも聞こえるということだからだ。
「わっ、超獣がこっちに来る!」
「みんな、逃げて!」
 球形から怪獣型に戻ったサボテンダーは、村のほうへ向けて進撃を開始した。
 聞き苦しい鳴き声をあげながら、鋭い牙の生えた口が不定形に不気味によだれをたらしてうごめく。
 だが、そうはさせじとジャスティスは背後からサボテンダーに飛びついて歩みを止めようとする。
「テヤァッ!!」
 後ろから羽交い絞めにし、村へと向かうのを阻止し、そのまま無理矢理に振り向かせて、首根っこを押さえて
地面に引き倒す。
 が、サボテンダーもただではやられない。仰向けに倒れこんで、追撃をかけるためにジャスティスが覗き込んだ
瞬間、木の洞のような口から真赤な鞭のような舌が伸びてきてジャスティスの首に絡まって締め付け始めた。
「ウォォッ!!」
 鉄塔でもつぶしてしまいそうな圧力で首を絞められて、ジャスティスは首を押さえてもだえた。
 その隙にサボテンダーはむくりとビデオの逆再生のように起き上がると、右に左にと舌を振り回してジャスティスを
苦しめ、投げ捨てるように勢いをつけて放り出した。
「ガァァッ!!」
 森の木々を巻き込みながら、吹き飛ばされたジャスティスは森の中に倒れた。
 なんという怪獣だ……倒れたジャスティスの脳裏に、長年の戦闘経験が警鐘を鳴らすが、首を絞められたダメージで
頭が朦朧とし、なかなか立ち上がることができない。
 その間にも、サボテンダーは絶好の餌場とみなしたウェストウッド村へ、ティファニアと子供達の元へと迫っていく。
385ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (5/9):2009/01/25(日) 14:56:40 ID:A21pNDOC
「ウルトラマンがやられたっ!」
「わっ、こっちに来るな!」
「お姉ちゃん、怖いよお」
 悲鳴をあげて逃げていく子供達の後ろから、サボテンダーは彼らの家や畑を踏み潰しながら迫ってくる。
「みんな、頑張って走って!」
 ティファニアは子供達の背を押しながら、隠れる場所のある森のほうへと走っていく。
 けれど、サボテンダーはジャスティスを絞め倒した長い舌を伸ばして、子供達を捕まえようとしてきた。
「みんな、伏せて!!」
 とっさに子供達の上に圧し掛かって、地面に押し倒したティファニアの上を毒々しい赤い舌が風を切りながら
通り過ぎていった。あと一瞬遅ければ、5、6人はまとめて捕らえられていただろう。
 けれど、空振りしたはずの舌はそのままその先にある一本の立ち木に絡みつくと、深く根を張っているはずの
それを、まるで雑草のように軽々と引き抜き、ティファニア達の上に大量の土を降らせた。
「わーん!!」
 そのとき、恐怖に押しつぶされそうになった一人の子が、ティファニアの腕を振り切って走り出してしまった。
「待って!! そっちに行っちゃだめ!!」
 その子は怖さのあまり、見晴らしのいい畑のほうへと逃げ出してしまった。
 当然、サボテンダーがこれを見逃すはずはなく、子供の足では速さもたかが知れている。獲物を狙う蛇のように、
長い舌がスルスルとその子の背後から迫った。
「やめてーっ!!」
 ティファニアの絶叫が森にこだまする。
 だが、食欲に濡れた舌が、子供の小さな体に巻きつく寸前、ティファニアの手がその子の体を突き飛ばし、畑の
柔らかい土の上に倒れこんだその子は無傷で助かった。
 しかし……
「あっ!! テファお姉ちゃーん!!」
 そう、狙った獲物を空振りしたはずのサボテンダーの舌は、その代わりにもっと大きくてうまそうな餌を捕らえていた。
 飢えて唾液に濡れた舌がティファニアの華奢な体にがっしりと巻きつき、その身の自由を完全に奪って、そのまま
奴の口の中へと抗いようもない力で引き込み始めた。
 あの鋭い牙の生えた口の中に放り込まれたら、人の体などひとたまりもなく噛み砕かれてしまうだろう。けれども、
自らの命が危機に立たされているというのに、ティファニアの口から出たのは悲鳴ではなく、最後まで子供達の
ことを思う言葉だった。
「みんな、早く逃げて!!」
「お姉ちゃーん!!」
 子供達は喉も割れんと叫ぶが、どうすることもできない。
386ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (6/9):2009/01/25(日) 14:57:31 ID:A21pNDOC
 そして、ティファニアの体がサボテンダーの口に飲み込まれようとした。その瞬間!!
 
「デヤァァッ!!」
 まさに刹那、立ち上がったジャスティスの腕がサボテンダーの舌を掴み、寸前のところでティファニアが飲み込まれる
のを防いでいた。
「ジュリ……さん」
「ウルトラマーン!! お姉ちゃんを助けて!!」
 子供達の心からの叫びがジャスティスの耳を打つ。
 その拳に渾身の力を込めて、ジャスティスはティファニアを捕まえたサボテンダーの舌を引きちぎった!!
「ヌォアァッ!!」
 はじける音とともに、サボテンダーの舌は真っ二つに千切れ飛び、神経の集合地を破壊されたサボテンダーの
脳はキャパシティを大幅に超える激痛に襲われて、敵のことも忘れて地面をのた打ち回った。あれでは
しばらくは反撃してはこれないだろう。その間に、救い出されたティファニアはジャスティスの手のひらに乗せられて、
子供達の前にゆっくりと降ろされた。
「ありがとう……ございます」
 ティファニアは、自分に抱きついて泣いて喜ぶ子供達の背を抱きとめながら、ジャスティスの姿をいとおしげに
見上げて、心からの礼を言った。
 そして、ジャスティスの心にもティファニアの姿がかつての記憶と重なって見えていた。
(自らの命を犠牲にしても……仲間のために……これが、この星の生命か!)
 このとき、ジャスティスはティファニアの中に、未来へつながる希望を持つ者の姿を見た!
 
 サボテンダーは、発狂するほどの激痛にもだえながらも、それをジャスティスへの怒りと憎しみに変えて
猛然と突進してくる。
 だが、ひとつの決意を定めたジャスティスは悠然と立ち上がると、迫ってくるサボテンダーへ向けて両腕を
顔の前に構え、全身のエネルギーをそこに集中させた。
「フゥゥ……」
 エネルギーはジャスティスの目の前で、太陽のような眩い輝きを放つほどに凝縮されていき、一瞬の
覇気とともに両腕を突き出したとき、それは金色に輝く超破壊光線となってサボテンダーに向かった!!
 
『ビクトリューム光線!!』
 
 正義の光の鉄槌が、邪悪な超獣に下される。
 命中の瞬間、膨大な熱量と衝撃を送り込まれたサボテンダーは、全身から炎を吹き上げながらのたうち、
やがて雷に打たれた巨木の最後のように、ゆっくりと倒れると、その破片の一片すら残らないほどの火炎に
包まれ、大爆発を起こして吹き飛んだ!!
 
「やったあ!! ウルトラマンが勝った」
「かっこいい!!」
387ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (7/9):2009/01/25(日) 14:58:11 ID:A21pNDOC
 微塵となったサボテンダーの炎に照らされて、子供達ははじめて見るウルトラマンの戦いと勝利に興奮して、
飛び上がらんばかりに喝采をあげている。
 
 しかし、戦いには勝ったが、ジャスティスの心は晴れなかった。
(やったか……しかし、この怪獣はなんだったのだ?)
 自然に生息する怪獣とは違い、ただ破壊と食欲にのみ従って動く生物、確かに宇宙にはそうした凶悪怪獣の
類は存在するが、この星に元々生息していたとは思いにくい。
 不可解なものを残し、ジャスティスはこのままこの星を立ち去ることをよしとは思えなかった。
「デュワッ!!」
 ジャスティスの体が光のリングに包まれると、それが収束して、やがてジュリの姿へと戻っていった。
 
「ジュリさーん!!」
 ティファニアと子供達が息を切らせて走ってきた。
「無事だったか」
「はい、おかげさまで……ありがとうございます」
 誰もこれといって怪我などはしていないようだ。特に子供達はあれだけのことがあったというのに、ジュリに
囲んでうれしそうに、テファお姉ちゃんを助けてくれてありがとうと元気そうにはしゃいでいる。
「お前達、私が怖くないのか?」
「えっ? なんで」
「テファ姉ちゃんを助けてくれた人が悪い人なわけないじゃない」
「すっごくかっこよかったよ!」
 試みに聞いてみた問いだったが、何の屈託もなく子供達はジュリの存在を受け入れていた。
 ここの子供達には、未知のものを受け入れるだけの器の深さがある。それは本来人間誰もが持っている
ものだが、成長するにつれて徐々に好奇心より恐怖心が勝っていく。けれど、彼らにはまだそれが残っていた。
「よい親を持ったものだな」
「えっ?」
「なんでもない……それよりも、お前も無事でよかったな」
 ジュリにそう言われ、ティファニアは泥と唾液で汚れた自分の服を見て、改めてジュリに頭を下げた。
「さっ、先程は本当に、命を助けていただいて、どうもありがとうございました。みんなが無事なのは、
ジュリさんのおかげです」
「私は自分の使命に従っただけだ。子供達を守ったのは、テファ、お前だ」
 それはジュリの偽らざる本心だった。たとえ戦う力がなくとも、誰かを守ろうとするために立ち向かう勇気は
何にも変えがたい強さとなる。
「だが、テファ……このあたりにはああいう怪獣が出ることがあるのか?」
「いっ、いいえ、これまでには一度も……アルビオンには超獣は出ないって、行商人さんも言ってたんですけど」
「超獣? 怪獣ではなくてか?」
 聞きなれない単語にジュリの眉が触れる。
388ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (8/9):2009/01/25(日) 14:58:51 ID:A21pNDOC
「はい……私も人づてに聞いた話なんですけど……今、違う世界からヤプール人っていう人達が、この世界を
侵略しようと、超獣というのを送り込んでくることがあるそうなんですが、わたしはこの森から出たことが
ありませんので……それ以上は」
「ヤプール人……か」
 なるほど、あの怪獣も侵略用の怪獣兵器の一種だと考えれば、特異な能力や際立った凶暴性も納得がいく。
しかし、この星に怪獣を改造して兵器化できるほどの科学力があるとは思えない……違う世界からの侵略者、
異星人による侵略攻撃かと、ジュリは判断した。
 それに、そういえばスコーピスがこの星へと進路を変えたのも突然だった。偶然にしてはできすぎている。
となれば、この星にさらに多くの宇宙怪獣がやってくる可能性もある。
「どうやら、このまま戻るわけにはいかなくなったようだな」
 宇宙正義を守る者として、侵略行為を見過ごすわけにはいかない、ジャスティスはその侵略を阻止するべく、
この星に残ることを決意した。
 だが、その言葉を拡大解釈したティファニアと子供達は、ジュリがこの村にずっといてくれるものと思ってしまった。
「えっ、ジュリさん、ずっとここにいてくれるんですか!? よかった」
「ぬ? いや、私はこの星にとどまると言ったのだが」
 しかしティファニアはともかく、子供達のほうの喜びはすごかった。口々に歓声をあげてジュリに抱きついて、
話を聞いてくれそうもない。
 といっても、それで考えを変えるほどジュリの意思は弱くない。子供達が落ち着くまで少し待って、改めて
ティファニアに言った。
「……この星になにが起こっているのか、私は見てまわるつもりだ。悪いが、お前達といっしょにはいてやれない」
「あぅ……やっぱり、そうですか……」
 とたんに、ティファニア達の顔が暗く沈んだ。
 しかし、侵略者の存在が明らかになった以上、ここに居続けるわけにはいかない。一刻も早く侵略者の正体を
掴まなくては、宇宙の秩序が暴力によって捻じ曲げられてしまう。
「それで、これからどこに?」
「特に定めていない。しかし、敵の目的がこの星そのものであるならば、いずれ出会うこともあるだろう」
 ウルトラマンであるジュリ、ジャスティスにとって時間というものはさして問題のあるものではない。食事や睡眠も、
特に必要とはしないために、そのあたりの感覚がティファニア達とは違ったが、それを聞いたティファニアは、
はっと思いついたことを思い切って言ってみた。
「じゃ、じゃあ……ずっといてもらうのは無理でも、この村を、きょ、きょ……拠点にしてみてはいかがですか?」
「どういうことだ?」
 いぶかしげに聞くジュリに、勇気を出してティファニアは説明を続けた。
「えっ、えっと、この村は大陸の真ん中にあって、どこに行くにも便利ですし……行商人の人もあちこちの情報を
持ってきてくれますから、探し物にはちょうどいいんじゃないかと……わたしもここに来る人に、今度からいろいろ
聞いてみますから、ここを中心にすれば効率よく探せるんじゃないかな、と思ったんですが」
389ウルトラ5番目の使い魔 第32話 (9/9):2009/01/25(日) 14:59:36 ID:A21pNDOC
「ふむ……」
 確かに、むやみに探し回るよりはそのほうが情報を得やすくはある。
 ジュリはティファニアの顔をじっと見つめた。世間知らずそうで、実際そうなのだが、頭の回転は人並みに
あるようだ。いや、その中に隠された本当の気持ちは見え見えなのだが……
「あの……」
 ティファニアと子供達のじいっと見つめる目がジュリに集中した。
 数秒か、数十秒か、ジュリの答えを待つ沈黙の時間が流れ、そして。
「わかった。ずっとは無理だが、定期的にここに立ち寄ることにしよう」
「!! はい!! よかったねみんな」
 子供達はそれを聞いて、今度は万歳三唱しながら喜んだ。
 しかし、これからは約束どおりに情報収集でジュリの役に立たなければならない。ティファニアは、これまで
ハーフエルフだからということで、できるだけ外の世界と触れ合わないようにしてきたが、これからは村の
外には出れなくとも、外交的に人を招いて話を聞かなくてはならない。
 ただ、ズレているという点ではある意味ジュリもいっしょのようだった。
「では、私は出発する」
「ええーっ!!」
 一斉に抗議の大合唱が唱和された。当然である、まだ夜も明けていないのだが、ジュリにとっては昼も夜も
関係がない。人間とは視点が大幅に違うゆえの感覚のズレだった。
 かといって、引き止めるにも相応の理由がいる。ティファニアはここぞとばかりに、普段使っていない頭を
総動員して考えた。
「ちょ、ちょっと待ってください。あの、出発する前に……わたしたちの家が、さっきの戦いで壊れちゃったんですが、
建て直すの手伝ってもらえませんか?」
「なに、そうか……だが、私には寄り道をしている余裕はないぞ」
「はい……エマの家はジュリさんが倒れこんだときに壊れたのに……裏の畑についた足跡は……」
「……」
 ジュリは返す言葉を失った。超獣を倒すためには仕方なかったとはいえ、厳然たる事実だからだ。
 子供達も、そうだそうだと言わんばかりに無言でジュリを見ている。色々言われるよりも、その視線のほうが
責任感の強いジュリにはとても堪えた。
 こんなとき、彼なら破壊された建物を修復できるのにとジュリは思ったが、あいにくジャスティスにはそういった
能力は残念ながらなかった。
「ふぅ……家を建て直したら、すぐに出立するからな」
 やった!! という大合唱がジュリを取り囲んだ。
 してやられたか……と目の前でにこやかな笑顔を浮かべている長い耳の少女を見つめてジュリは思った。
 宇宙正義の厳格な執行者も、たった一人の少女と子供の前には形無しだった。
「あの、ジュリさん?」
「なんだ」
「ジュリさんのこと……その、お姉さんって、呼んでいいですか?」
「……好きにしろ」
 
 こうして、ウルトラマンジャスティスと、ハーフエルフの少女のティファニアは運命的な出会いを果たした。
 この邂逅が、その後のハルケギニアの運命をどう動かすのかはまだわからない。
 
 続く
390ウルトラ5番目の使い魔 第32話 あとがき:2009/01/25(日) 15:01:26 ID:A21pNDOC
以上です。今回も支援いただきましてありがとうございました。
正月から、ティガ、ジャスティスと2大ウルトラマンをハルケギニアに呼んだ春のウルトラ祭り、お楽しみいただけましたか。
はてさて、宇宙最強の人をお友達にしちゃったティファニアはどうなっちゃうのでしょうか。忘却の魔法は使う暇が
ありませんでしたが、まあ次の機会というわけで。
しかしハルケギニアって、ジャスティスはまだしもデラシオンからは相当やばい目で見られてそうですよね。

次回からは再び舞台をトリステインに戻して進めます。
ここのところ、スフィアの存在をほったらかしにして話が進んでいたダイナみたく(忘れた頃にやってくるジオモス)、
話が原作2巻からちっとも進んでいませんでしたが、多少はアルビオンに近づける予定です。
それにしても、出したい怪獣、超獣、宇宙人、ロボット、ウルトラマンはいっぱいいるんですが、今は週1回が限界です。
では、また来週!
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 15:09:46 ID:FbUy3ot3
ウルトラの人乙でしたっ!!

ティガは僕が一番最初に見たウルトラマンだったな〜
また活躍してくれないだろうか
と心の奥で思ってみる

ウルトラの人の作品を読んでたら
ウルトラマンシリーズを全部見たくなってきたww
こんどツタヤに行って借りてこようかな。。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 15:13:23 ID:rzxB38s6
お疲れ様でした
平成ウルトラマンは全く知らないのですがツンデレ?なジュリさんがかあいいです
個人的にはキングジョーとかバルタン、ゼットンを期待しちゃうのです
あとエースキラーとか

さて>>377さん
個人的には完結作品では「アトリエ」「気さく」「おとうさん」「英雄」「薔薇乙女」
「提督」「鮮血」そしてほぼ頂点に立つ作品として「ご立派さま」
をお勧めしちゃいます

あくまで個人的意見ですので
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 15:53:10 ID:qC/OrMZH
ウルトラ乙、やっぱりジャスティスは残ったか。

>「ジュリさんのこと……その、お姉さんって、呼んでいいですか?」

テファ、おマチさんのことを忘れないであげて!!
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 15:54:27 ID:RviVrGO/
避難所の長門召喚のやつも完結したなぁ。
4日間で12話投下と言うすげーペースだったけど面白かった。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:03:48 ID:+dhI8rnp
すっげえ遅レスだけど

>>つか、何で誰もかれも工藤明彦はスルーするんだよw
ビジュアルが西川のりおなのが致命的でせう

>>…ついでに淫藤宗光も来ないかなあー。
触手自重
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:17:36 ID:mCGlRH9D
自分的にお勧めの完結作品は
ほのぼのして笑えて泣ける鬼畜物語!「気さくな王女」
自分的には原作を超えた感動作!!「愛しのシェフィ」
原作を遥かに凌ぐ高みに存在する大傑作?「ご立派な使い魔」
です。では、
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:23:48 ID:12aaaGei
お奨めはうっとうしいのが寄ってくるから勘弁。
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:24:08 ID:2zmTArau
めぼしいのあらかた見たら、100スレ記念とか見るといいかもね。
あそこのはなんだかんだと楽しい。

とりあえず完結作でというと、「ヘルミーナとルイズ」は外せねえ。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:34:29 ID:QZA+GPA8
自分の好みなのは
UM☆アルティメットメイジ
谷まゼロ
あと完結したてな
雪と雪風_始祖と神

なんというか長期連載して完結したのもいいけど
初めから完結まで考えられたような作品は綺麗にまとまってるって気がする
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:40:03 ID:y6LXFG8t
誰もてめえらの好みなんて聞いてねぇんだよボケ
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:43:25 ID:syr3ZnKo
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:53:42 ID:y6LXFG8t
ごめんなさい
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:57:11 ID:A2pcyxNq
>>402
なんかすごい好感持てる切り返しだな
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 16:58:20 ID:olRXmgPJ
何だか知らぬが とにかく良し!
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:04:00 ID:FbUy3ot3
みなさんありがとうっ!!

今は「気さく」を読んでいます!!

王女がっ!!
おもしろすぎますwwwwwww

まだラストまで読み終わってないので
読みに行ってきますよ〜ノシノシ
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:12:58 ID:zQr2xexk
お勧めの完結作品…?
そんなの全てに決まってるだろう…!!

まとめを見ろ…!!
何作更新が止まってる…何作このスレから作品が消えた…!!!!
そんな中でも書き上げた作品達だぞ…面白くないわけないだろう!!!!!!
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:14:08 ID:8dhLVASD
ところで

完結作品リストからのリンク先が
全部モバイル版になってる気がするんだが…
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:18:04 ID:0ytV2MkV
どうせ現在進行形のSSもほとんどが完結せずに放置されるのさ
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:32:08 ID:w6Wy/Pua
>>407
本当だ。なぜ……?
と思ってたら修正された、乙
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:34:28 ID:FbUy3ot3
「気さく」読み終わったーーーーーーーーーーっ!!!!

王女がいい人すぐるww

「ご立派」はルイズが憐れすぎwwwwwww
でもいい使い魔だと思うっ!!!
あんな使い魔がいれば.........


>>406
す、すみませんでしたっ!!
全作品読んできますっ!!!

411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:40:01 ID:ZSfD4Jyp
毎度思うが完結することがそんなに重要か?
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:46:36 ID:0ytV2MkV
中途半端に終わらして評価される事なんてあるのか?
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:49:36 ID:12aaaGei
それで金稼いでいるプロでもそうそう出来ないことだからな。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 17:57:06 ID:Nm5tvult
漫画なんかは特殊な例を除けば無理やりにでも完結させられるけど、
小説の場合は未完のまま終わることなんてよくあるぜ。
人気がなくて、とかだとまだいい。作者の問題だとマジ凹む。

皇国の守護者は小説でも漫画でも俺を凹ませてくれてるのに
それでもファンを止められない罪な作品だw
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:01:19 ID:0ytV2MkV
未完のまま終わる小説なんて思い出したくもないぜ
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:02:09 ID:d3H1NRBE
>>411
完結しないってことは作品が完成してないってことだぞ。
どんなに面白くっても完結しなければ基本的にダメ作品だと思うが。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:03:57 ID:12aaaGei
>>416
「(あなたの思い浮かべる作家の名前を入れて下さい)」の悪口はそこまでだ!!
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:06:15 ID:9HWM3P1v
まぁ勢いだけで書き始めると収集がつかなくなって
結果飽きて放置とかありがちな話
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:06:58 ID:GcnrqeVR
トリブラ読んでみようかと興味持った矢先に訃報飛んだから頭の中真っ白になったな
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:08:43 ID:V9OG1TUP
「さびしい王様」でも読むれ
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:14:14 ID:qC/OrMZH
「新吼えろペン」より

富士鷹「読者に『これはどうなるのか』と期待させた気持ちを裏切らないで・・・・・・ちゃんとそのキャラクターや事件やテーマに、決着をつけてやる」
炎尾「すばらしい着地を見せてやる! ――と、いうことだ! 一応お前だってそれを想定して・・・・・・」
富士鷹「物語作ってるんだろ?」
流れ星「えー? なんで着地させないといけないのー?」
富士鷹「!?」
炎尾「!!」
富士鷹「いや・・・それは・・・・・・」
炎尾「だってモノカキの責任として・・・・・・」
流れ星「責任ってさ――何? 何よ? 毎回毎回面白がってもらうことのほうが大切でしょ?
 富士鷹、前におれに言ったじゃん、エラソーに。『子供がラーメン屋でふっと読む一冊のマンガ雑誌』『その子がラーメンを待つ間、楽しませれば満足だ―――って。言ったじゃん!」
富士鷹「・・・・・・・・・・・・・・・・・・言った。つーかたしかに今でも言ってるよ・・・・・・・・・」
流れ星「名作にしようとか思ってんだろ、今さら! 最高の最終回で名作の仲間入りかよ!?」
富士鷹「いや、・・・・・・それは、そこを目指して悪いのかよ!?」
流れ星「違うよ富士鷹!! 現在(いま)はなあ・・・
 最終回でコケるのが!! 名作の条件なんだよ!!!」
富士鷹「そ・・・・・・そういえば!!」
流れ星「お前ら・・・・・・間違ってるよ・・・・・・最終回で納得がいく? ふざけんなよ! 納得がいく最終回ができる奴なんてなぁ・・・・・・普段セーブして描いてる奴だよ!
 着地点目指してうまーくうまーく力をセーブしてやがんだよ! トリプルアクセルはやめて、2回転で安全策さ!
 セーブしてる回の載ってる週刊誌買ったら、つまんなくってバカ見るよ! だからみんなコミックス派になるんだよ!!」
富士鷹「な・・・流れ星どうしたんだお前!? いつになくちゃんとしたこと言うじゃないか!?」
流れ星「いつもちゃんとしてるよ、おれは!!」
ボタQ「そのとおりです! 話は聞かせてもらいましたよ! 流れ星先生のおっしゃるとおりですよ!!」
炎尾「あっ、ボタQさん!」
流れ星「ボタQ元編集長!!」
ボタQ「私の・・・…経験上言わせていただきますと・・・・・・いろいろな天才作家がいましたが、たとえ天才でも―――100回連載が続くとしたら、1回はつまんない話があります!!
 ただ、天才は・・・・・・その1回を、最終回にもってくるんです!」
炎尾「おおっ!」
富士鷹「そうなのか!?」
ボタQ「それまで99回読者を楽しませるんですよ! 読者はワクワクします! 本は売れます! 評判になって賞ももらえるかもしれない! 最高です!! ―――そして、
 幕引きだけちょっとショボイ・・・・・・と! まあ最終回の1回ぐらいいいじゃないですか!!
 私に言わせれば、そこまで楽しませてもらったのに文句を言うヤツのほうが、どうかしてますよ!」
流れ星「あ! そうですよボタQさん! まったく同意見ですっ!!」
富士鷹「そうか―――そうか―――流れ星・・・・・・」
炎尾「それでお前のマンガ・・・」
流れ星「なんだよ!?」
炎尾「いつもいつもストーリーは進んでないくせに・・・・・・・・・つぎつぎと新しい謎ばかり! 期待感たっぷりに出てくるよな!!」
流れ星「あ――まあね―――
 出てくるよ――人間の闇! 世界の破滅! すべての崩壊の時は近いよ!! でも、すべての崩壊なんておれ描けねーし!
 よくわかんないし! だけど煽るよ―――! 煽ると読者が喜ぶから! 勝手にね♪」
ボタQ「そしてどんどん本は売れます!」
流れ星「読者の豊かなイマジネーションを刺激してんだよ! 作者のおれよりもっと優れているところにいってるよ、ヤツらは!」
富士鷹「炎尾。2人だけで話そう」
流れ星「あれっ? なんだよ、おれ仲間はずれかよ!」
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:17:37 ID:1bqFZiUQ
そんなことは解っている!
だが解るわけにはいかんのだ!!
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:20:49 ID:ZSfD4Jyp
>>416
>どんなに面白くっても完結しなければ基本的にダメ作品だと思うが。

こういう考え方が無駄だよなぁ
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:22:36 ID:q6+SxPr8
「気持ちよく覚醒してやるぜ!」
は今でも忘れられない
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:23:17 ID:d3H1NRBE
>>423
そうか?押しつける気はなかったんだ、スマン。
あくまで「自分的には」だから。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:25:09 ID:iNYcp0Zy
最後の1ページが白紙ってのも、物語性があって味な……ってのは創作の中だけのものなんだよ。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:26:19 ID:ZSfD4Jyp
>>425
そんなに気にされるとは思わんかった。すまんの。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:28:56 ID:sEfSI9pI
「それはそれ!これはこれ!」
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:32:06 ID:j04e7dZN
ご立派は基本的に避難所連載の作品だからあんまこっちに持ち込むなよ
430ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:32:43 ID:wm4Xnfft
18:40から完結させる予定のない作品で君の視線を釘付けにする。

エルザイジメ話前編です。

6話がまとめで二つに分かれててこの話が7話にすればいいのか8話にすればいいのか分からなくなったので話数表記なし。
今回10レスくらいです。
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:34:55 ID:1bqFZiUQ
ファイナル・ブラスターテンペストで支援する
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:35:13 ID:FbUy3ot3
事前支援だ!
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:36:06 ID:Zx3O2sIF
>>430
エルザは犠牲になったのだ……

支援
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:38:54 ID:zQr2xexk
俺はただの読者だけど投下前にこれだけは言わせてくれ

終わりがないとその作品へのドキドキが終わらないから終わらせて欲しいんだ
せめてこれで終わりで俺の気持ちを整理させてもらいたいんだよ…
435ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:40:03 ID:wm4Xnfft
 アプトムの朝は、ルイズを起こすところから始まる。
 二度寝を愛する少女は、一度、起こしたぐらいで完全に目を覚ますことはない。放っておくと、着替えもせずに食堂に向かおうとするルイ
ズを着替えさせ、食堂へと輸送する。
 この辺りでの荷物か猫の子のような扱いにもルイズは慣れたらしく、もう文句も言わなくなった。いや、それはどうよ? とキュルケなど
は思っていたが。
 それはともかく、制服の襟を掴まれてダラーンとぶら下げられたルイズに、こいつは自分を召喚するまで朝はどうしていたのだろうと疑問
を感じるが、実はアプトムが来る前のルイズはちゃんと一人で目を覚ましていた。
 アプトムが来てからの彼女は、それまでにも増して魔法の勉強に励み結果として寝るのが遅くなったため、朝起きられなくなったのだが、
そんな事をアプトムは知らない。ルイズとしても、それまで以上に頑張って頑張って頑張って、それでも結果に結びついていないなどと知ら
れたくはないだろうが。

 ともあれ、食堂に着くと寝惚け眼のルイズにキュルケが親しげに話しかけてくる。
 『破壊の杖』捜索隊に志願した日以来、妙に馴れ馴れしいキュルケに、ルイズは困惑するが、半ば寝惚けた頭はだからどうしようという思
考を働かせてくれない。
 眠いという想いが、キュルケへの敵愾心を大きく上回る朝のルイズは、妙に素直に応対してくるのでキュルケとしてはいつもとのギャップ
がおかしくて、更に後でこの時の事を話すと真っ赤になって否定しようとするので、キュルケとしては一粒で二度美味しい気分である。
 ちなみにアプトムのことは完全に無視している。いいかげん彼に決闘を申し込む生徒も今では、いなくなってきていて芝居をしても嫌がら
せにならなくなっていたのだ。
 そうなると、わざわざ嫌いな相手に話しかける趣味もないので、いないものと扱うようになっていた。
 別に、そのことに関してアプトムに思うところはない。この学院というかこの世界の人間と深く係わり合いになるつもりのない彼は、誰に
どう思われようとかまわない。

 朝食が終わると、ルイズはキュルケに手を引かれ、ゴニョゴニョと文句を言いながらついて行く。
 それを見送った後、さてどうしたものかと彼は考える。
 ルイズが授業に出ている間、彼は無駄に時間を潰していたわけではない。授業をさぼって決闘を申し込んでくる生徒の相手をしていたとい
うのもあるが、それ以外にも役に立つかどうか分からないが、学院とその周辺を歩き回り脳内地図に記す作業をしていた。フーケとの対決の
ときに、衛兵に見咎められず外に出られたのもそのおかげである。
 しかし、その作業も終わった。学院の立ち入り禁止区域はまだ調べていないが、学院長に地球に帰る協力を申し入れられた現在、そこに侵
入するのは気が咎める。
 だからと言って、決闘を申し込んでくる生徒もいないので特別やらなければならないこともない。
 そう考えて、舌打ちする。
 今までアプトムに決闘を申し込んできていた者たちは、いい加減、勝てないと理解して彼の前に姿を現せなくなっていた。ただ一人を除い
て。
 その一人、ギーシュ・ド・グラモンを思い出すと、いつしか苛立ちが湧くようになっていた。
 勝てないと理解しているはずなのに、そもそも勝ったとしても、もはや意味など無いだろうに、何度も挑んでくる姿はある意味道化じみて
いて見える。
 そして、その姿が自分に重なって見えるのは何故なのか。
 あの少年と自分に共通する部分など何一つ存在しないというのに、まるで無意味に見える自分に挑む少年の姿が、ガイバーTに挑む自分の
姿に重なり、それがガイバーTを倒すことを望む自分の行動が無意味だと訴えているように見えて彼は不機嫌になる。
436ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:42:33 ID:wm4Xnfft
 そんな事を考えていたせいだろう。前から接近してくる人影に気づくのが遅れたのは。
 それは洗濯物を両手いっぱいに持ったメイドであった。
 注意力散漫だったとはいえ、前から歩いてくる相手にぶつかるほどアプトムは鈍くはない。だが、ぶつかる寸前で避けたためだろう。いっ
ぱいの洗濯物で前がよく見えてなかったメイドは、寸前でアプトムに気づき慌てて避けようとしたところで洗濯物を落としそうになり、落と
すまいと更に慌てて今度は足をもつれさせてひっくり返った。
 何をやってるんだか。と思ったが、これが自分のせいだということは自覚している。
 前が見えないほど洗濯物を持って歩く方が悪いのも確かだが、授業中のこの時間は生徒や教師がこんなところを、ふらふら歩いているはず
もないので、人とぶつかることを想定しているはずもない。

 生徒か教師にぶつかりかけたとでも思ったのだろうか。「すみません」と頭を下げ、慌てて洗濯物を拾い集めようとするメイドに、どうし
たものかと考えた後、自分も洗濯物を拾うことにする。
 似合わないことをしているなと思いつつも、拾い集めた洗濯物を渡すとメイドは恐縮して礼を言って頭を下げた後、あれ? という顔にな
る。

「あなたは、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔の……」
「知っているのか?」

 言ってから、当然だろうと気づく。毎日、学園内をうろうろ歩いていたり、この学院の生徒の決闘相手を務めている自分の事が知られてな
いわけがない。
 実際その通りだったらしく、アプトムのことは召喚された日から噂になっていて、ギーシュとの決闘の後は、貴族に勝った平民だからと知
らない者がいなくなっていたらしい。
 おかげで、学院で働く平民の中には、アプトムと親しくなりたいとまでは思わなくても、一度話をしてみたい、知り合いにくらいはなって
みたいと思うものが少なくなかったのだが、そこに待ったをかける者がいた。食堂で働くコック長のマルトーである。彼の貴族嫌いは有名で、
そのくせ貴族の子弟の通う魔法学院で働く自分の事も嫌悪していた。
 そんな彼がアプトムに向ける感情は複雑なものだった。魔法を使えない平民の身で貴族を打倒したのは痛快だが、それが主の命令でやった
決闘であるにすぎず、唯々諾々とルイズに従っているその姿は、貴族を毛嫌いしながらも結局は貴族に尻尾を振っている自分を皮肉っている
ようで不愉快きわまりない。だが、平民が貴族に従うのが当然の、この世界でアプトムに文句を言うのが筋違いであると自覚もしている。
 そして、マルトーと似たような考えの者も、この学院には少なくないのだった。
 だから、彼らはこう考えた。アプトムのことはいないものと扱おうと。
 別に、話しかけられても無視をしろというわけではない。向こうから接触してこないかぎり、こちらからも関わらない。その程度の話。
 だから、アプトムから話しかけてきてくれないかと思っている平民も少なくないのだとメイドは笑う。
 そんなものかね。と思い、アプトムは下を指差し、いいのか? と問う。
 何が? とメイドが下を見ると、そこには頭を下げた時に零れ落ちた洗濯物があった。歩いていて前が見えないほどの多くの洗濯物を持っ
て頭を下げたりしたら、そうなるのは当然である。
 メイドは、慌ててそれを拾おうとして、また落とす。悪循環だ。

 らしくない。それが彼の感想。洗濯物を持ち、シエスタという名前のメイドと並んで歩きながら彼は思う。
 このメイドが、自分と話をしてみたいと思っている側の平民であろうが、多すぎる洗濯物を運ぶのに苦労していようが、自分にはどうでも
いいことだろうと彼は思う。
 なのに、なぜ自分は手伝うなどと言ってしまったのか? 考えても答えは出ない。ただ単に、面倒見がいいだけだという自覚は彼にはない。
 地球に残った分体など、倒すべき仇敵がヘタレている時、そこを狙うどころか、「今のお前を倒しても仲間は喜ばない」などと激励に行く
ようなお節介なところを見せたりするのだが、そんなことを今ここにいるアプトムは知らない。
 シエスタと共に水汲み場に行き、洗濯板を使った作業も手伝いながら。やはり、らしくないな。と彼は内心呟くのだった。

 そんな彼の前に、青い髪の少女がやってきたのは、しばらくして洗濯も終わろうという時の事。


437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:44:50 ID:8dhLVASD
ザ・支援
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:45:04 ID:QbnBEqiP
タバサ接触編か!?
支援!
439ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:45:04 ID:wm4Xnfft
 北花壇騎士七号というのが、彼女、タバサの肩書きである。と言っても、表向き存在していない騎士団なので、彼女がそれを名乗ることは
ない。
 王家の汚れ仕事を一手に引き受ける北花壇警護騎士団というその組織の中でも、彼女に回ってくるのは無駄に危険なものが多い。
 その中でも、今回は最悪だと彼女は思う。
 吸血鬼。人間に比べて高い身体能力を持ち、先住の魔法を使い、血を吸った相手を一人だけとはいえ屍人鬼として操る、人間とまったく見
分けがつかない姿をした妖魔。
 戦闘能力だけでもメイジの手に余りかねないそれは、人の中に紛れ正体を隠し人を襲うため、騎士ですら正体をつかむこともできぬまま返
り討ちあうことは珍しくない。
 それを退治するのが今回の仕事だという。他の騎士の協力などはない。北花壇騎士は常に単独で任務につくのだから。
 死ねと言われているようなものだが、彼女に拒否権はない。なんとか、上手く立ち回るしかないかと考えた時、彼女に声をかけてくる声が
あった。

「お姉さま! やっばりお姉さまだけで吸血鬼に立ち向かうなんて無茶なのね!」

 声のした方向に眼を向けると、そこには彼女がシルフィードと名付けた一頭の青い風竜。それが、韻竜と呼ばれる人語を操る伝説の幻獣だ
と知るのは、彼女ただ一人。
 伝説の幻獣を召喚し、それを使い魔にした彼女は、しかし、そのことを誰にも秘密にしている。
 使い魔はメイジにとって一生を共にする相棒である。だが、それが伝説の幻獣ともなれば、道理を無視して取り上げ実験に使おうとする研
究者が出てくるのは分かりきっている。そして、もし彼女に命令できる立場のものが渡せと命令してくれば、彼女に反抗は許されない。だか
ら、彼女は隠しておこうとしている。
 それなのに、どうしてこの使い魔は無警戒に話しかけてくるのか。
 無言で睨みつけるが、幼い精神しか持たない使い魔の韻竜は気づくことなく話を続ける。

「そうだわ! あの人に助けてもらいましょ! あの魔法も使わずに変化する、あのおじ様に助けてもらえば、吸血鬼だってなんとかなるか
もしれないわ!」

 きゅいきゅいと鳴きながらの言葉に、そのおじ様のことであろうアプトムという男の姿を思い浮かべる。

 その男を最初に見た印象は、自分に似ている。であった。もちろん容姿ではない。彼の眼は、自分と同じ復讐者のものだと彼女は感じたの
だ。
 そして、その後のとある生徒との決闘で、その男のことを人間ではないと判断した。
 だからどうしようと思ったわけではない。その男が、親友がよくちょっかいをかけている少女の召喚した使い魔であったことも、その男を
親友が嫌っていることも、彼女にはどうでもいいことであったし、その男と破壊の杖の捜索に出かけたことも、彼女の男に対する無関心に変
化をもたらすことはなかった。
 その男にとって自分がそうであるように、自分にとっても男はどうでもいい存在だったからである。
 自分と男が間接的にではなく関わることなど生涯ありえないだろうと思っていた。

 だが、ある夜、彼女の使い魔がインテリジェンスソードを拾ってきた。そして、使い魔は剣から聞いた事を彼女に話した。
 ミス・ロングビルが土くれのフーケであったこと。アプトムという剣の持ち主が、亜人に変化してフーケのゴーレムを打倒したことを。
 この時、デルフリンガーという名を持つ剣は慌てた。彼は自分の相棒の秘密を暴露する気などなかった。寂しさのあまり自分を拾った風竜
にいろいろと話してしまったが、それは相手が人の言葉を理解できるなどとは思わなかったから。犬や猫に話しかけるレベルの独り言のよう
なつもりだった。まさか、相手が韻竜でありなおかつ、誰かの使い魔であろうとは考えもしなかったのだ。
 しかし、ここで慌てたのは彼女も同じである。表情が変わらなかったので、傍目にはそうと分からなかっただろうが。
 彼女は、自分の使い魔が韻竜であることを誰にも知らせる気はなかった。この口の軽い剣を、そのまま返してしまえば、このことが露見す
るかもしない。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:46:54 ID:1jMCZAkd
頑張れギーシュ支援
441ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:47:36 ID:wm4Xnfft
「消す」

 この時、彼女のどんよりと濁った眼は本気と書いてマジだと語っていた。とデルフリンガーは後に語る。

「いやいやいや、バレて困る秘密を知られたのはコッチも同じだから。ほらお互い様お互い様」
「あなたは、口が軽い」
「いやいやいや、それ以上にソッチの韻竜はウッカリだから」
「そのことを、あの男が知れば、シルフィードを始末しようとするかもしれない」
「……いやいやいや、相棒はそんな非道な真似しませんよ」
「今の間は?」
「うっ……」

 などというやり取りはあったが、実際にはデルフリンガーは口止めだけをしてアプトムに返還された。
 消すと言ったのは脅しである。いや、話によっては本当に消す気だったが。
 なんにしろ、それがタバサとアプトムが間に誰かを挟むことなく直接顔を合わせる最初で最後の機会になるはずだった。

 だが、今回タバサに回ってきた吸血鬼を倒すという任務は、彼女をもってしても死を覚悟しなくてはならない難事。そこに三十メイルの巨
大ゴーレムを打倒する戦闘力を持ったあの男を巻き込めば、自分の生存率は大きく上がる。
 一見冷徹に見える彼女だが、本来は無関係な人間を巻き込むことをよしとしない優しい性格の持ち主である。そんな彼女であるが、相手が
自分を圧倒的に上回るであろう戦闘力を持った、しかも自分にとってはどうでもいい存在、そして自分の大切な親友に嫌われている男であれ
ば、巻き込んでも良心の呵責を感じずにすむのではないだろうか。ついでに言えば、誰かに助けを求めろと使い魔がうるさい。
 そんな結論を出すまでに、それほどの時間は必要としなかった。




「二、三日の休暇がほしい」

 彼女の使い魔がそんな事を言ったのは、半ば寝ぼけた頭で、しかし自動書記のごとく授業内容をノートに書き写す午前の授業が終わった昼
休みのことである。

「なんで?」

 前に休みが欲しいと言ってきた時は、決闘を申し込んでくる多数の生徒たちがうんざりするからというものだったが、それももう収まって
いる。
 なのに何故? と思うルイズにアプトムは「バイトだ」と答える。

「欲しいものでもあるの?」

 なら買って上げるけど? と言うルイズに、そうではないと使い魔は答える。
 彼は、このハルケギニアのことを知らな過ぎる。ルイズが学院に通う生徒である間はいいが、いずれ卒業した時に彼女についていくであろ
う身の上としては、子供ではあるまいに世間の事を何も知らないでは問題があるだろう。ならば、社会勉強の意味もこめて街でアルバイトを
してみたほうがいいだろうと、彼は言う。
 もちろん嘘だが。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 18:49:49 ID:1jMCZAkd
タバサ非道w というか逆に死亡フラグたってね?
443ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:50:03 ID:wm4Xnfft
 彼には、この世界に留まろうというつもりはない。ルイズの魔法以外に地球に戻れる手がかりがあるのなら、積極的にそれを集めるつもり
でいる。
 青い髪の少女に吸血鬼退治の手助けを求められたとき、この地にはそんなものがいるのかと感心し、彼が思い浮かべたのは、血を吸った者
を次々と吸血鬼に変えていく日の光と十字架とニンニクを嫌う不老不死のバケモノである。
 この世界に実在する吸血鬼とは微妙に乖離したイメージだが、アプトムにはそんなことは分からない。タバサも、アプトムの思い違いに気
づかないので、特に訂正もしない。
 そして、彼は思う。その吸血鬼が何百年も生きていたなら、あるいは自分が地球に帰るための手がかりを知っているのかもしれない。
 そうでなくとも、吸血鬼などと恐れられる生き物を喰らえば自身の能力を高められるかもしれない。
 だから了承した。何故、自分に手助けを求めて来たのかについては考えない。大方、口の軽いインテリジェンスソードが洩らした彼の正体
を知って戦力になるとでも思ったのだろうが、タバサがそのことについて何も言ってこないのであれば、突っ込んで尋ねる必要はない。

 そんな事情を馬鹿正直に話すはずもないアプトムを前に、ルイズは考える。
 アプトムのいう事に特別おかしなところはない。何か不に落ちない気もするが。その思考が、何故に浮かんだものか分からない。
 本音を言えば、この使い魔を身近から離したくはない。だけど、彼女には負い目がある。アプトムは自分のいう事に黙って従ってくれてい
るのに、伝説に残るようなメイジになると宣言した自分は、いまだコモンマジックすら成功させていない。
 だから、これは最後の抵抗。

「でも、あんたがいない間。誰が、わたしのお世話をするのよ?」

 一人じゃ朝起きれないのに。などと言うルイズに、代理は頼んであるとアプトムは答える。
 バイトというのは方便だが、タバサからいくばくかの報酬の約束も取り付けてある。その報酬から謝礼を出すからと先ほど知り会ったばか
りのメイドではあるが、シエスタという少女に頼んである。学院で働くメイドを、こちらの都合で使うことについても、元の世界に帰るため
の協力を約束してくれたオールド・オスマンに許可を取りにいくつもりだ。
 本人は、学院から給料を貰ってる身なのだから謝礼はいらないと断ったが、あいにくとアプトムは借りを作るのが嫌いだ。なぜなら、何か
の形で返さなくてはいけないと思ってしまうから。
 かくして、不本意ながらもルイズは許可を出し、その翌朝にはアプトムはタバサと共にシルフィードに乗って学院を出るのだった。



 タバサとアプトムを乗せたシルフィードが最初に向かったのは、隣国ガリアの王都リュティスにあるプチ・トロワと呼ばれる小宮殿である。
 今回のタバサの任務は吸血鬼退治だが、まだ正式な指令として下されていない。だから上司に会いに行く必要があるのだが、そこにまでア
プトムやシルフィードが同行する必要はない。
 というわけで、一人で北花壇警護団団長でありガリアの王女でもある、イザベラと書いて意地悪な従姉と読む少女の命令と嫌味を受け取っ
て帰ってきたタバサは、袋いっぱいのニンニクと十字架のネックレスを持ったアプトムと対面することになった。

「それは、何?」
「吸血鬼退治といえばコレだろう?」

 真顔で口にする言葉に冗談の響きはなく。実際アプトムに冗談のつもりはない。
 アプトムの知る地球の吸血鬼の伝承をタバサが知るわけもなく、ゆえに何故そんなものが吸血鬼退治に必要なのか分からない。
 しかし、タバサとて吸血鬼のことについては、この任務を知らされた後で学院の図書室にあった本で読んだ知識しかないので、そういうも
のなのかなと思うくらいである。かくして、吸血鬼に脅える、ある辺境の村人たちは、ニンニク臭い騎士を迎えることになるのだった。


444ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:52:34 ID:wm4Xnfft
 吸血鬼が現れたのは、王都リュティスから五百リーグ南東にあるサビエラという村である。
 最初に犠牲者が出たのは二ヶ月ほど前。12歳の少女の遺体が森の入り口で発見されたのを皮切りに、一週間おきに吸血鬼の襲撃があり、今
では九人の犠牲者を出している。
 その中には、メイジもいた。王室から派遣されたガリアの正騎士であったが、到着して三日後には遺体で発見された。
 屈強なトライアングルメイジである騎士がやってきたとき村人たちは、これでもう大丈夫だと喜び希望を抱き、それが摘まれた時、絶望に
押しつぶされた。
 だから次の騎士を送ると言われても、浮かんだ希望は糸のように細く。そして、実際にやってきた騎士を眼にした時、その糸は切れた。

 その騎士は、小柄な体を水色のローブで包んだ少女だった。
 従者らしき、眼光は鋭く顔の左側に広く傷跡を残した酷薄そうな男が一緒にいるのだが、そちらが前を歩き、その後ろをついて行くように
歩いているだけに、余計頼りなく見える。
 それだけなら、まだよかったのだが、何を思ったのか少女は糸で数珠繋ぎにしたニンニクを体中に巻いている。
 吸血鬼退治に必要なのは、どちらかと言えば強さよりも吸血鬼がどこに潜んでいるかを見抜く判断力であるが、いかにも弱そうな上に、こ
んな頭の悪そうな格好をした少女では、村人たちの信用は得られない。

「子供だぜ」「あれじゃ、どっちか騎士さまか分かりゃしねえ」「というか、なんだよあの格好」「こないだいらした騎士さまは強そうだっ
たのに」「こないだの騎士さまは三日。今度は一日でお葬式かねえ……」「騎士なんかあてにはならねえ!」「俺たちの手で、吸血鬼を見つ
けるんだ!」「怪しいのは、あのよそ者の婆さんだと思う」「どういうことだってばよ?」「言い換えれば、怪しいのは、あのよそ者の婆さ
んだってことになるだろ」「つまりこういうことか。怪しいのは、あのよそ者の婆さんだ」「占い師だとか言ってるくせに、占いなんかしな
いで、一日中家に閉じこもって出てこない、しわくちゃ婆か」「この村には療養に来たとかぬかしてたけど、怪しいもんだ。ほんとは血を吸
いに来たんじゃねえのか?」「この村に来たのも三ヶ月前だし、息子だって言ってたでくのぼうがグールだとか言う奴なら説明がつくしな」
「ああ、あんな怪しい奴らは見たことがねえ」「あやしさ大爆発だ――――ッ」

 そんな村人たちの噂話に迎えられたのは、言うまでもなく、タバサとアプトムである。

 前に派遣された騎士がすぐに始末されたことから、今回も吸血鬼は自分たちを狙ってくるだろうとタバサは考えた。では、吸血鬼どんな手
段をとってくるだろうか?
 答えは簡単。吸血鬼に脅える無力な村人のふりをして近づき油断をさせて襲う。前の騎士もそうやって殺されたのだろう。
 シンプルだが、誰が吸血鬼とその下僕である屍人鬼か特定できてない状況では対応が難しい手である。
 ならば、それを逆手に取ればいい。
 そこで考えたのが、襲ってくる状況をこちらの方で作ってやる作戦。正体を隠さなければならない吸血鬼は、従者と一緒にいる時のメイジ
を襲うことは避けるだろう。どちらかを逃がしてしまえば、正体が知れてしまうのだから。だから、二人が別行動を取れば、即座に襲ってく
るだろう。その時に返り討ちしてしまえばいい。
 その作戦に必要なのは、別行動を取るときには吸血鬼に対抗できる準備をしておくこと。そして、そのことを吸血鬼に悟らせないことであ
る。
 普通に考えて、二人が別行動を取れば先に狙われるのは従者の方だろうというのが、二人の見解である。メイジより従者の方が楽に捕らえ
られるし、メイジが一番油断する相手は自分が連れてきた従者だからである。ならば、その従者を屍人鬼に変えてしまえば、メイジなど簡単
に始末できる。余談だが、アプトムは、この相談をしていたときに初めて、吸血鬼に血を吸われた者は吸血鬼ではなく屍人鬼という下僕にな
ると知った。ついでに、吸血鬼が先住魔法を使うことも。
 アプトムは見るからに強そうだが、それでも魔法を使うメイジと平民なら、メイジの方が手強いと考えるだろう。
 とは思うが、絶対の確信があるわけではない。それにタバサの方が狙われるのならまだいいが、自分たちを無視して村人が襲われてはたま
らない。
445ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:55:03 ID:wm4Xnfft
 それなら、いっそ確実にタバサが狙われるような状況を作ったほうがいい。彼女が大して役に立たないメイジであると思わせ、おびき寄せ
る。
 だから、捜査はアプトムが主導でやることに決めた。幸い、タバサは見た目からして強そうには見えない。ここで、従者の言う事に従うし
か出来ないような能無しと印象付けておけば、吸血鬼も侮ってくれるだろう。
 ひょっとしたら、アプトムを従者のふりをしたメイジではないかと疑い、杖を持っていないのを幸いと狙われる可能性もあるが、そちらは
問題ない。なにしろ彼がどういう存在かを知らない者に彼を殺す事など出来ないのだから。

 そんなわけで、アプトムはタバサを従えて村長の家に向かった。シルフィードは村の外で待機である。

「ようこそいらっしゃいました。騎士様」

 そう言って出迎えたのは、髪も髭も白くなった人のよさそうな老人。これが村長である。

「俺はアプトム。それで、こいつがガリア花壇騎士のタバサだ。事件のことを詳しく聞きたい」

 従者らしからぬぞんざいな口調で、タバサの紹介をして問いかけてくるアプトムに村長は困惑しながらも二人を居間に通し、従者であろう
はずのアプトムがタバサを従えているかのように上座に腰掛けるのを確認して、それまでの事件を語る。

 二ヶ月前に、最初の犠牲者が森の入り口で発見されたことから、その後、森に近づくものはいなくなった。そこに恐るべき吸血鬼がいると
信じたからである。だが、次の犠牲者は村の中で発見された。
 だから、その後は村の中だけでも、夜に出歩く者はいなくなった。しかし、そうなると今度は家の中で遺体が発見されるようになった。そ
の間、犠牲者の家族は吸血鬼が侵入していることに気づかず眠っていたという。
 扉を固く閉じ、窓を閉めきって釘で打ちつけても、吸血鬼はどこからか侵入し、家の者が寝ずの番をしていても、吸血鬼が来るときは眠っ
てしまう。
 何故そんな事になってしまうのか? 村人たちは、そこに答えを出してしまった。
 吸血鬼は血を吸ったものを一人だけ屍人鬼に変えて、己が意のままに操るという。村人たちは、村に住む誰かが屍人鬼になって吸血鬼を手
引きし協力しているのではないかと疑心暗鬼になり、お互いを監視し、しかしその監視をしているのが屍人鬼ではないかと疑う悪循環におち
いってしまっていた。

「屍人鬼には、吸血鬼に血を吸われた傷があるはず」

 置物のように黙って座っていただけの少女がボソリと言った言葉に、村長は今その存在に気づいたような顔をしてしまい、そのことを自覚
して、ばつが悪そうな顔を向けて、「そう思って確かめたのですが……」と答える。
 この村では、虫や蛭にやられて血を吸われた痕を残すものが多く、特に山蛭は首を狙ってくるので首に傷があるものだけでも七人はいる。
吸血鬼の方も、それを知っているのか犠牲者の遺体に残された傷痕は、そんな関係のない傷と見分けがつかないようなものになっている。
 困ったものです。とため息を吐いた村長の首に、アプトムは右手を伸ばす。

「何をするつもりで?」

 疑念と恐怖の入り混じった声に、アプトムは「屍人鬼になってないか調べさせてもらう」と答える。
 前に派遣されて来ていた騎士とて、完全に無警戒だったわけではあるまい。ならば、騎士がもっとも油断する相手は誰だろう。そう考える
と、村長を怪しいと考えるのは当然であろう。
 アプトムの持つ融合捕食という能力は、対象を吸収する能力だが、完全に融合する前なら、対象の体細胞を調べるだけで切り離すことも可
能だ。彼は、その能力で村長の肉体に異常なところがないか調べるつもりでいた。もっとも、この世界の人間の正常な細胞を調べていないの
で、村長だけを調べても異常を異常と気づけない可能性もあるが、それは追々他の村人も調べていけば分かるだろうと結論付けた。
 何をするのかと、タバサが興味深そうに見る中、伸ばされた手は首を掴もうとして、だが、その手は途中で止まる。
 扉の隙間から覗いている視線に気づいたからだ。この能力は見ればアプトムが人ではないと判断されてしまうものであり基本的に隠すべき
ものである。村長には掴まれた自分の首など見えないだろうが、それ以外の人間が見ていては使うわけにはいかない。この部屋にはタバサも
いるが、すでに獣化した姿のことも知られているだろう相手には、見せても大した問題はなかろうと彼は結論づけている。
446ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 18:57:38 ID:wm4Xnfft
 伸ばしかけた手を止め、扉の方を見ているアプトムに気づき、村長もそちらを見ると、そこには五歳くらいの金髪の少女が顔を覗かせてい
た。そして、それは老人のよく知る子供の顔である。
 ここは、叱るべきだろうか? そんな事を思ったが、それはやめておく。この娘の過去を考えれば、今は叱るべきではない。
 だから、叱る代わりにその名を呼ぶ。

「お入りエルザ。騎士さまにご挨拶なさい」

 呼ばれ、怯えた様子で入ってきてギクシャクと挨拶をしてくる少女に、アプトムが無感情な眼を向け、その子は何者かと村長に眼で問いか
けてくるので、村長は答え説明することにする。
 少女の名はエルザ。一年ほど前に寺院の前に倒れていたのを拾われた娘で、本人の言う所によると両親がメイジに殺され一人逃げ延びてき
たが、そこでついに行き倒れたらしい。そこで、身寄りもないそうなので、早くに子を亡くし妻も死んでしまい一人寂しく生きていた村長が
引き取ることにした。

「わしはこの子の笑った顔を見たことがないのですじゃ。体も弱くて、あまり外で遊ぶこともさせられん……。一度でいいから、この子の笑
顔を見たいもんじゃが、今度は村では吸血鬼騒ぎ。早いところ、解決してほしいもんじゃ……」

 痛ましげにエルザを見て訴える村長に、当の本人は聞いているのかいないのか、村長の背中に隠れチラチラとアプトムとタバサを覗き見。
見られている二人は、特に感情の変化も見せずエルザを観察していた。
 お互い自覚はないし相手がそうであるとも知らないが、二人には冷徹なわりに甘いところがある。とはいえ、縁もゆかりもない相手の不幸
な過去とやらに無差別に同情するほど優しくもないので、エルザを見る眼は、さきほど村長にも向けていた屍人鬼ではないかという疑いの入
り混じるものと同じものでしかない。
 その眼に、村長が不快な表情をするが、二人は特に気にしない。他人にどう思われようと気にするような殊勝な性格はしていない。
 もっとも、だからといって何をするわけでもない。第三者の眼があっては融合捕食で調べるというわけにはいかないし、裸に剥いて傷がな
いかを調べてみても、それが吸血鬼の噛み痕であるか確認のしようがない現状では意味がない。
 ここで、こうしていてもしかたがない。実際に現場を見て回ろう。そう言って立ち上がるアプトムをエルザは怯えた目で見ていたが、同時
にその眼には観察するような色があったことには、誰も気づかなかった。

 現場を見て分かったことは、村長から聞いた情報と大して変わりのないものだった。
 吸血鬼に侵入を許した家の扉や窓は釘で打ちつけてあり、さらに家具を山と積んで開かなくしたようだが、それを力ずくでこじ開けた形跡
はないし家具を動かした形跡もない。犠牲者の家族が何故か眠ってしまったという話についても聞いてみたのだが違いはない。屍人鬼になっ
た村人に睡眠薬を飲まされたのかとも考えたが、そういう覚えもないらしい。
 先住魔法には、風の力を利用した眠りの魔法があるのだが、タバサとて先住魔法には精通していないしアプトムは魔法そのものの知識がな
い。

「吸血鬼は蝙蝠になって家の隙間から入ってくるといいます。本当なのでしょうか?」

 そんな事を聞いてくる村人がいたが、蝙蝠になったところで、ここまで厳重に閉め切っていては入ってくるのは無理だろうと、扉と窓を見
て思う。
 いや、あそこからなら入ってこれるか。とタバサが煤だらけになって調べている細い煙突に顔を向ける。
 何か見つかったかと聞いてみたが、タバサは無言で首を振る。まあ、小さな子供でもなければ通れないような細さだし、本当に蝙蝠にでも
変化して通ったのなら、侵入の形跡が残っているはずもない。
447ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 19:00:04 ID:wm4Xnfft
 さて、どうしたものかと、考えていると外から怒声やらなにやらが聞こえてきた。
 何が起こったのかと外に出ると、十数人の村人が鍬や棒きれや松明を持って村はずれに向かっており、その後についていってみると一軒の
あばら家があった。

「出て来い! 吸血鬼!」

 そんな怒鳴り声が、村人たちのから聞こえてくる。
 一瞬、どういうことかと思ったが、村に入ってすぐに聞こえてきた村人たちの会話に、占い師が怪しいという話があったが、あのあばら家
に住んでいるのかと特に感慨もなく見ていると、中から四十ほどの年齢だろう男が出てきた。

「誰が吸血鬼だ! 失礼なことを言うんじゃねえ!」
「アレキサンドル! お前たちが一番怪しいんだよ! よそ者が! ほら吸血鬼をだせ!」
「吸血鬼なんていねえよ!」
「いるだろうが! 昼だっつうのにベッドから出てこねえババアが!」
「おっかぁを捕まえて吸血鬼とはどういうこった! 病気で寝てるだけだ!」

 母を吸血鬼と決め付ける村人たちに、アレキサンドルは怒気をこめて叫ぶが、村人たちは取り合わない。
 外に引っ張り出して、日の光の下にさらせば、はっきりするとあばら家に押し入ろうとする村人を、アレキサンドルが押し返し、あわや乱
闘にとなりかけたところに、アプトムが割って入った。
 タバサの指示である。
 黙って聞いていて思ったのは、あばら家に閉じこもった占い師は確かに怪しいということと、前に派遣されてきた騎士が、そこまで怪しい
相手に油断をしていたのだろうか? という疑問である。
 吸血鬼が、思った以上に強力だったため、前の騎士が油断をしていなくても勝てなかったという事も考えられるが、その場合もし本当に占
い師が吸血鬼だったなら、ここに集まった村人のほとんどが命を奪われる恐れがある。
 アプトムはもちろん、タバサも赤の他人の身の安全を心配するほど、お人好しではない。とはいえ、何も考えずに虎穴に入っていく人間を
黙って見ているほど非道ではないし、無駄に犠牲者を増やすと難癖をつけてくる上司もいる。
 というわけで、止めに入ったわけだが、当然村人たちにはそんなことは分からない。
 邪魔をするなと、突き飛ばそうとしたところで、村人の一人がアプトムの後ろに立つタバサの持つ杖に気づいた。

「貴族!?」
「お城からいらっしゃった騎士さまじゃねえか」
「ちょうどいいや。この家のもんを調べてくだせえ! 間違いなく吸血鬼だ!」

 口々に言われ、しかしタバサは村人に応えず、伺うようにアプトムを見上げる。当初の予定通り、頼りにならない騎士を演出しているよう
だ。
 しかし、そうなると、ここはアプトムが仕切らなければならず、自分たちが調べるから解散するように言うが、当然村人たちは納得しない。
 ただでさえタバサは、見た目からして頼りない子供なのだ。その上、従者に決めてもらわないと何も出来ないような素振りをみせられては、
このまま任せてしまおうなどと誰が思うだろう。
 本当に貴族なのか? などと疑う村人も出てくるが、タバサはアプトムの後ろに隠れて、ボソリと「本当」と答えるだけで説得力のないこ
とはなはだしい。

「お城はなにを考えてるんだ! こんな情けない騎士なんかよこすな!」

 怒ればいいのか、呆れればいいのか分からないというように嘆く村人に、まあ気持ちは分かると頷くアプトムである。
 そんな中、騒ぎを聞きつけたのだろう。村長がやってきた。
448ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 19:02:36 ID:wm4Xnfft
「こらこら! お前たち! 何をしておるんじゃ!」

 村長は、吸血鬼による被害を恐れていたが、それ以上に村人同士が疑心暗鬼になって傷つけあうことを恐れていた。
 そんな彼に、この騒ぎが看過できるはずがない。だから、怒る。叱る。
 だが、村人たちは引き下がらない。いつ自分や家族が吸血鬼の犠牲になるか分からないという恐怖の中、それを忘れるために彼らは眼に見
える敵を必要としていた。
 それに、彼らが占い師の親子を疑ったことに、まったく根拠がないというわけではない。

「アレキサンドルが怪しいというのには、ちゃんと理由があるんで。ほら、あいつの首には二つの牙のあとがあるんですよ」
「だから山ヒルに食われたあとだって言ってるだろう? 何度言ったらわかるんだよ!」

 村人の一人の言葉に、アレキサンドルは即座に怒鳴り否定するが、無論それで納得する者はいない。
 とりあえず、アプトムとタバサはその傷を見せてもらったが、治りかけで虫に刺された物と見分けがつかない。
 それに、もしこれが吸血鬼の牙の痕だというのなら、アレキサンドルが吸血鬼に血を吸われて屍人鬼になったのは、ここ二、三ヶ月の間、
この村に引越してきた後の可能性が高いことになる。それでは、母親である占い師が吸血鬼で息子が屍人鬼だという理屈がおかしくなる。
 とはいえ、今の村人たちに言っても無駄だろう。どう言っても村人たちは引き下がらないだろうし、さりとて彼らに勝手をやらせるのも拙
いので、アプトムとタバサは何人かの村人を連れてあばら家に踏み入った。
 あばら家の中には、枯れ木のように痩せ細った老婆が寝ていた。マゼンダという名のその老婆は、村人たちを見て怯えた様子で布団にもぐ
りこんだが、それを許さない者がいた。村人の一人、レオンという名の男が布団を引っぺがし嫌がる老婆の口をこじ開けて牙がないか確認す
る。もちろんアレキサンドルが怒り騒いだが、他の村人に取り押さえられる。

「どうだ? レオン!」

 尋ねられて、レオンは困った顔で首を振る。老婆は、牙どころか一本の歯も残さず抜け落ちていたのだ。

「騎士さま。確か吸血鬼は、血を吸う寸前まで牙をしまっておけるんでしたね?」

 問われ、タバサは、こくりと頷く。ならば、まだ吸血鬼でないと決まったわけではないと言うレオンと同意する村人たちに、アレキサンド
ルは激昂する。そんなにも母を吸血鬼だということにしたいのかと怒鳴る彼と村人たちの間に一触即発の空気が流れたが、それを村長が諌め
た。
 村長の望みは村人同士の諍いを起こさせないことである。老婆が吸血鬼だと決まったわけではない以上、これ以上の諍いを許すわけにはい
かない。そして、村長は村人たちに信頼されているらしく、村人たちもこれ以上、証拠のないことで騒ぎ立てるわけにもいかず、しぶしぶで
はあるが、解散することになった。

 その後、タバサは村長に頼みごとをした。
 村に残った若い娘たちを村長の屋敷に集めてくれというものである。
 今回狙われるのは、吸血鬼退治に派遣されてきた自分か、その従者ということになっているアプトムであろうとタバサは思っているが、吸
血鬼がこちらの予想通りに動いてくれる保障があるわけではない。かといって、村全体を見張るというのも物理的に不可能なので、狙われる
可能性の高い娘たちを一箇所に集めることにした。
 これには、一箇所に集めたら、一度に襲われてしまうのではないかと村人から反論が上がったが、そこは村長が説得してくれた。
 そして、吸血鬼が動くのは夜だろうと、見張りをアプトムに任せタバサは睡眠をとることにしたのだった。
449ゼロと損種実験体:2009/01/25(日) 19:04:47 ID:wm4Xnfft
長くなったのを無理矢理ぶった切ったので中途半端ですが、ここで投下終了。支援に感謝。

あえて言うぞ後編は来週だ。覚えておくがいい。

今回は上手くギャグ分を仕込めませんでした。
オチはみなさんの想像するとおりのものとなります。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:14:00 ID:GZzh6NKR
つまんね
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:14:29 ID:1jMCZAkd
>「ああ、あんな怪しい奴らは見たことがねえ」「あやしさ大爆発だ――――ッ」

ちょっと待てwww
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:15:18 ID:6PrxR8Cm
予想道理のオチ……?
森の中に逃げ込んだエルザを倒すために成層圏を超えて上昇して羽根を広げて…………
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:16:12 ID:6PrxR8Cm
「どうり」じゃねぇ、「どぉり」だ俺……
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:17:59 ID:nd3bHHnK
まぁ無難に「全弾発射!」で村ごと消滅w
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:22:36 ID:mGXpgHyG
アプトムの人、乙です。
後編は来週ですか。ならば待つまで。
考えられるオチは・・・エルザはアプトムに喰われる。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:24:44 ID:FbUy3ot3
アプトムの人乙したっ!!

後編は来週か.........
それまで待てるかな.....................

オチは>>455に言われてしまったorz
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:29:01 ID:1jMCZAkd
まあ作者さんがオチは想像するとおりといってるからなw

JOJOスレのホル・ホースみたくヒロイン格までのし上がるのは稀だ
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:29:52 ID:ygnen9mA
アブトムの人、乙です!

タバサ、アブトムをキュルケが嫌ってるとあってか態度がドライだ
アブトムの能力を知ってるのに、その力にあまり興味を持たないのは珍しいかも
アブトムの能力を直に見た時のタバサの反応が楽しみです
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:34:47 ID:1jMCZAkd
改めて考えると主要人物の殆どから良く思われてないな

あとヒロイン候補が少ない
第一候補がフーケで、今回の話でやっとシエスタが出てきた
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:37:07 ID:d3H1NRBE
アプトムの人、乙です。
>>459
ルイズ………は、ヒロインというより保護対象か…。
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 19:38:42 ID:q6+SxPr8
アプトムの人乙です。

考えられるオチ……
いつの間にか村人全員がアプトムに!
冗談だが可能だってところが怖いw

そういえば、アプトムが晶に鞭を使って喝を入れる場面で笑うのは俺だけだろうか?
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:10:59 ID:i2Zof84Y
乙でした

「誰が、わたしのお世話をするのよ?」 のところで、名もなき犠牲者使った
分体が出てくるかと思って心配した・・・
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:13:54 ID:QbnBEqiP
>459
タバサの場合アプトムがイーヴァルディになれるかは…微妙かな〜
アプトムが復讐者の眼をしてる、とタバサは考えてるようだけど、復讐者というイメ−ジが近頃の原作のアプトムからはあまり感じられないんだよね
立場的に逆らえない状況に置かれているタバサの事をアプトムが知ればどうなるんだろ?
まぁ、それ以前にアプトムが他人に関心を持つ事自体がかなり無理なんだけどw

464ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:41:44 ID:V08pL5Qo
投下予告させていただきます。
20時50分を予定しています。
よろしくお願いします。
今回は、地味にいろいろと出てきます。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:41:45 ID:1bqFZiUQ
アプトムさんは、ああ見えて情に厚い方だがな。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:42:50 ID:FbUy3ot3
事前支援させていただくっ!!
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:46:11 ID:c+Z8T4c2
待ってました支援!
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:47:20 ID:QtGT5AcE
騎士団の人、大好きだぜ!
支援
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:49:43 ID:1bqFZiUQ
支援のために三種の神器を召喚だ。
オーノホ…ティムサコ…タラーキーだったかな
470ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:50:11 ID:V08pL5Qo
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン6

「うおぉっしゃあぁー!!!」
ダブルゼータが拳を振り上げる。
「ウソ・・アイツ勝っちゃった・・・」
あまりの逆転劇にルイズは、それ以上声が出なかった。
「・・儲かった」
その割には、タバサの表情は変わらない。
ニューとゼータが近寄っていく。
「幾等なんでも、投げるか普通。」
ゼータが呆れながら、ダブルゼータの肩を後ろからつかむ
「いてっ!一応、ケガしてんだから、労れよ!おい、ニュー回復してくれ」
ダブルゼータが痛みをこらえながら、ニューに催促する。
よく見るとハリマオスペシャルの炎に触れており、数か所が火傷している。
しかし、ニューは近くに倒れている。ハリマオスペシャルの様子を見る。
「お前は後だ、そのくらい我慢しろ、ミディア」
ニューが素早く呪文を唱える。途端に、ハリマオスペシャルの傷がふさがれていく。
「まったく、私がいるからと言って、そんな無茶な戦い方をするな、ウォーター」
ダブルゼータに向けてやけどを癒す魔法を掛ける。
手から出るシャワーのような水と、心地よい冷気が、ダブルゼータの全身の火傷を癒す。
ウォーター 火傷や火だるまを治す呪文で、旅の途中は飲み水などにも使われた。
「おいニュー、ミディアムかけてくれよ」
火傷を治しただけで不安なのか、ダブルゼータが不満をぶつける。
「お前はそれで充分だ、少しは大人しくしていろ。」
「おい!奴が気づいたぞ」
ゼータが気絶から回復した事に気づく。
ハリマオスペシャルは、傷は癒えたが、まだ、足取りはお没かなった。
ダブルゼータに近づき、ただじっと見つめている。
「うぉぉぉん!!」
親愛でも服従でもない咆哮であった。
それに対し、ダブルゼータもまた瞳から怒りの色は消えていた。
「・・お前も大した奴だったよ」
素直に相手を讃える。
ハリマオスペシャルは咆哮の様な息を唸らせ、振り返る事無く専用の厩舎に向け歩き出していた。
「なんなのよ、あれ・・・」
ダブルゼータの怪力より、ニューの魔法よりも、
得体のしれない友情の誕生が、ルイズには何よりも理解できなかった。
ギャラリーも、ただ二人のやり取りを見ているだけだった。
自分の使い魔の無事を喜んでいる、金髪の少年を除いて・・・
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 20:50:40 ID:kSDb4nNX
支援
472ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:51:35 ID:V08pL5Qo
ダブルゼータの勝利宣言を、遠見の鏡から二人はじっと見ていた。
「勝ちましたわね、彼・・・」
唖然とした面持ちで、ロングビルは同意を求める。
「勝ってしまったのう・・」
オールド・オスマンも、驚きが隠せないでいた。
「彼らは何なのじゃ?あんなゴーレム見た事無いわい、
しかもあの赤い羽根の奴は、見た事もない魔法を使ったではないか」
ニューのミディアムは、オールド・オスマンであっても始めてみる魔法だった。
ダブルゼータとほかの二人を鏡から見ながら、オールド・オスマンは独り言のようにつぶやく。
「彼らの全ては解りませんが、アルガスという国の騎士で、
あの青いのはゼータといい騎馬隊の隊長だそうです。
今、現在はミス・タバサの使い魔をやっています。
私は今朝、彼と会話しましたが、彼らは明確に自分の意識を持っています。」
今朝、ゼータと会った時の、情報を使える。
(そう、彼らはアイツのように自分の意思を持っている。)
心の中でロングビルは、三人を誰かに重ねていた。
「アルガスとやらは、あんなゴーレムが沢山いるのかのぉ・・」
一体だけでも驚きであるのに、三体もいて、しかも、彼らのようなのが不特定多数存在する。
オールド・オスマンには想像もつかなかった。
(やっかいじゃのぉ、あんなものどうしろって言うんじゃい)
事態の異常さに、オールド・オスマンは頭を抱えた。
「失礼します。おや、どうかしたのですか?」
自室で遅めの朝食を終え部屋に入るなり、コルベールは空気の重さを感じる。
コルベールはオスマンの近くに行くと遠見の鏡に気づく。
「何を見ているんですか?・・ああ、生徒と使い魔の親睦会ですね。」
自分の使い魔の姿を見て、一人納得する。
「ハリマオスペシャルも、皆と馴染んでいるようですね。」
先ほどの光景を見てないだけに、コルベールの表情は暖かい。
(どこを、どう見てそう言えんだい、この鈍感男)
周りの生徒達の空気に気づかないコルベールを、口に出さず、ロングビルが罵る
「あれはミスタ・ダブルゼータじゃないですか、
人見知りのハリマオスペシャルが懐くなんて、珍しい事ですね。」
周りが、唖然としている光景を見てコルベールは素直に感心する。
「コルベールくん、君は彼らを知っているのかね?」
ダブルゼータに驚かないコルベールに、オスマンは彼らとの関係を問いただす。
「彼らが、昨日報告した、ミス・ヴェリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサの使い魔ですよ。
今日この後、彼らと会談する事を昨日伝えましたよね?」
コルベールが昨日の報告に不備がないか確認する。
「なにっ!彼らが、昨日の報告にあったゴーレムじゃと!」
(なぜ、そんな重要な事を詳しく話さんのじゃ、こやつは・・)
事の重要性を理解していないコルベールへの罵声と、
それを軽視した自分への罵りがステレオとなってオスマンの心に響く。
一般的にゴーレムはメイジが作る物で、使い魔にはならない。
使い魔を召喚する儀式で、それでは不合格になってしまう。
だからこそ、オスマンは、変なゴーレムを召喚してしまった三人への、
進路の事だと思っていただけに、彼らとの面会は気が滅入った。
「そうじゃったな、もうすぐ親睦会も終わりじゃ、昼食の後に、彼らと生徒たちを呼んできたまえ・・」
何かを注意しようにも、今のオスマンにはそれができなかった。
「そうですね、後、オールド・オスマン彼らのルーンの事なのですが、
昨日一晩かけて調べたのですが辞典には彼らのルーンが見つかりませんでした。
こう言ったルーンなのですが、何かわかりますか?」
シエスタが見た同じメモを、コルベールが差し出す。
オスマンはそれを一読するが・・
「ふむ、これはわしも解らのぉ、コルベール君、引き続き調べてくれたまえ。」
オスマンが持っていたメモを、コルベールに返す。
「分りました、オールド・オスマン」
一礼して、コルベールが部屋を出ていく。
コルベールの退出音と共に、部屋は長い沈黙に包まれた。
473ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:52:26 ID:V08pL5Qo
昼になり親睦会がお開きとなり、ルイズ達は昼食に向かう途中だった。
「どうだ、キュルケ、嘘じゃないだろ。」
ダブルゼータが自慢げに3度目の同意を求める。
「わかったわ、アルガス一でトリステイン一の怪力なダブルゼータさん」
しつこさから、さすがに呆れ始め、キュルケの対応もおざなりだった。
「けど、すごい力ね、魔法でも使ったの?」
ルイズがニューに秘密があるのかと聞く。
「私の魔法に失礼だぞ、ルイズ」
「さり気無く呼び捨てにしないでよ、アンタは私のご主人様なのよ!」
ニューの対応が、ルイズにとっては不満でならない。
「あら、仕方ないじゃない、ニューと違って、あなたは「ゼロのルイズ」じゃない」
ゼロを強調しながら、キュルケがルイズをからかう。
「キュルケ殿、ゼロとは何の事だ?」
ニューが疑問を口にする。
「ゼロはルイズの二つ名よ、メイジには能力に由来する二つ名があるの、
ちなみに、私は「微熱」でタバサは「雪風」よ」
キュルケは自分とタバサの二つ名よりも、ルイズの二つ名を嬉しそうに言う。
「二人はともかく、ルイズは何でゼロなのだ?」
ルイズに向かって、ニューが由来を聞く。
「うっさいわよ!アンタ、飯抜きよ!」
ルイズが怒りで理不尽な命令を下す。
「なんでだ、私は、ただ、理由を聞いただけだぞ」
「あっ、みなさん」
天啓とも言えるタイミングで、シエスタが表れる。
「シエスタ、どうしたんだい?」
ニューがシエスタに、助け船を求める。
「はい、三人・・ダブルゼータさんに料理長のマルトーさんが、
何か言いたいそうです。厨房に来てくれませんか?」
主役はダブルゼータであるらしい。
だが、主と居るよりはよっぽどよかった。
「ルイズ殿、そういう訳だから厨房に行って参ります。」
二人とシエスタを引き連れ、早足で歩き出す。
「ああっ!待ちなさい、馬鹿ゴーレム!」
ルイズの罵声から逃げるようにニュー達は厨房に向かった。
474ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:53:47 ID:V08pL5Qo
「マルトーさん、連れてきましたよ」
「おお来たな、待っていたぞ」
ある程度、調理が終わった厨房で、三人を料理長らしき男が笑顔で出迎える。
「あのハリマオスペシャルに勝つとは、大した奴だ。」
「うおっ!なんだいきなり」
マルトーが息子への抱擁のように、ダブルゼータに抱きつき、慌てて突き放す。
大男のマルトーが、2メイル程後ろに飛ぶ。
「なるほど大した力だ!アイツは、使い魔とは思えないほど傲慢で、
下手なメイジより強いから、誰も手を出せなかったのに勝っちまうとは!」
マルトーにとって、ハリマオスペシャルが投げられたのが、よっぽど嬉しい様だ。
「俺はお前さん達にお礼がしたいのさ、もっとも、
俺が出来るのは料理くらいだけどな!さぁ、こっちに座んな!」
「こっちですよ、皆さん」
シエスタが中央の大きなテーブルに案内する。
そこには、朝の食事よりもさらに豪勢な食事が並べられていた。
「本来は貴族用なんだが気にする事はねぇ、俺からの気持ちだ!たくさん食べな。」
「ありがてぇ!ちょうど腹が減ったところだったんだ。」
ダブルゼータが二人に相談もせずに、席に飛びつき、皿を空にし始める。
「馬鹿、いきなりみっともない真似するな」
そんな、ダブルゼータを注意しながらゼータも席に着き、ニューもそれに続く。
「おお、いい食いっぷりだな!じゃんじゃん行ってくれ!」
マルトーが嬉しそうに言い、周りも頷く。
三人は5人前の食事を、あっという間に空にしてしまった。
「ウマかった、親父さんありがとな!」
「マルトー殿、大変、美味でした。」
「ごちそう様、とっても美味しかったよ。」
三人が、三者三様の感想を述べる。
「おう!また、来てくれよな!」
厨房を後にする三人をマルトーとシエスタが嬉しそうに見送った。

厨房を後にした3人は、同じく食堂を出たルイズ達と再会する。
「遅いわよ、アンタ達!ご主人様を待たせるなんて、どういうつもりよ!」
先に待っていたルイズが噛みつく。
「すまない、マルトー殿からもてなしを受けていた。」
「なんで、使い魔のアンタ達がもてなしを受けるのよ!」
納得のいかない様子で、ルイズがニューに詰め寄る。
「まぁいいじゃない、それよりも、今ミスタ・コルベールが来て、
オールド・オスマンが私達とあなた達に学院長室に来るようにって」
キュルケが3人に行動予定を伝える。
「アンタ達!オールド・オスマンはこの学園の学園長で一番偉いんだからね!
馬鹿な真似は絶対しないでよ!」
ルイズが何も問題を起こさないように三人に注意を促す。
「いきましょ」
ルイズの返答を待つより早く、タバサが歩き出す。
「タバサ待ちなさい!いい事、絶対問題起こさないでよね!」
(ダブルゼータはともかくとして、私やゼータは何もしてないのに)
自分に対する信頼の無さに、ニューは少し寂しさを感じた。
475ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:55:04 ID:V08pL5Qo
学院長室の中で、ゼータはロングビルと再会する。
「ロングビル殿、お忙しい中、今朝はありがとうございます。」
「よろしいのですよ、ゼータさん」
ゼータがロングビルに今朝のお礼を言う。
「あなたって、真面目な割に手が早いのね」
ゼータに対して、キュルケが間違った感心をする。
「なっ!何を言っているんだ、キュルケ殿!」
「慌てるところが、余計に変」
「タバサ!」
妙な所で、二人が絶妙な連携を発揮する。
「君!ミス・ロングビルはわしの物じゃ、手を出されても困るよ。」
ゼータの事は冗談でも、ロングビルの所有権には冗談を感じられない口調で、オスマンが口をはさむ。
そして、ロングビルに近寄る。
「勝手に所有しないで下さい、後、どさくさにまぎれないでください。」
口調の割には、えげつない肘打ちが、オールド・オスマンのこめかみをとらえる。
(マチルダさんみたいだな)
ニューが操られているとはいえ、かつて法術隊を壊滅寸前にまで追いやった女性を思い出す。
「いたた、ミス・ロングビル暴力はいかんよ・・・
私はこの学院の学院長を務めるオールド・オスマンじゃ」
三人に改めて自己紹介をする。
「早速じゃが、お前さん達は三人に召喚されてここに来たらしいのぉ」
「はい、私達は・・・」
異世界であるスダ・ドアカワールドのアルガス王国の騎士である事。
魔王ジーク・ジオンを倒すため、また違う異世界である。
ムーア界に行った事。そして、倒した後、この世界に呼び出された事等を語った。
オスマンはひとしきり聞いた後、眉間に皺を寄せ重い口を開いた。
「・・わしも、いろいろな地方を旅したが見た事もない魔法を使い、
ハリマオスペシャルに力で勝つゴーレムなんか初めて見るぞ」
遠見の鏡の出来事が彼らの尋常ならざるものである事を、オスマンは受け入れていた。
「で、アルガスの騎士団であるお前さん達は、当然そのアルガスに帰らねばならんのう。」
「はい、それで、貴方の力を借りたいのです。オールド・オスマン」
ニューが、そう言ってオスマンの助力を求める。
「それは・・できん相談じゃよ・・・
なぜならサモンサーヴァントで呼び出したものは、もとに返す事は出来ん。
ましてや、異世界などと言えばなおさらじゃ」
彼らにとって、絶望的な言葉をオスマンは口にする。
「ふざけるなよ、ジジィ!!」
ダブルゼータがオスマンをアルゼンチンの形で担ぎあげる。
「うお!何をするのじゃ、やめてくれ誰か止めてくれぇ!!」
「ダブルゼータさんやめてください、そして出来れば、そのまま頭から叩きつけてください。」
「何気にワシを亡き者にしようとしてないか!ミス・ロングビル!!」
「おちつけ、ここでお前がその老人の頭をへこませて、剣で2、3回突き刺そうとも現状は変わらん!」
「ゼータの言うとおりだ、その後、爆風と電流とかを与えたって何も変わらん!」
「味方はおらんのか!!」
ダブルゼータがオスマンの背骨に致命傷を与えた所で、オスマンは解放された。
「はぁ、はぁ、むろんわしも何もしない訳ではない、色々調べてみる。さすがに、死にたくないからのぉ」
激痛で緩んだ膀胱の尿意を堪えながら、オスマンは口約束をする。
「その代わりと言っては何じゃが、もう少し使い魔をやってくれんかのぉ」
オスマンは取引を持ちかける。
帰れない事よりも、ルイズの使い魔の期限が無期限と化したのに、ニューはただ泣きたくなった。
476ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:56:10 ID:V08pL5Qo
オスマンとの会談が終わり、夕方。
「・・・で、アンタは私の一生の使い魔になる事が決まったのね。」
部屋に戻るなり、ルイズは満面の笑みを浮かべる。しかし、その笑みは何かやましいものが含まれていた。
「アルガスに帰るまでだ、オスマン氏がその方法を見つけるまではここに留まる事にしただけだ。」
「ここに留まれるのは、そして、食事ができるのは誰のおかげかしら、法術隊隊長のニュー様?」
答えが分かっているような、声でルイズがニューを見下ろす。
「もちろん、お世話になる代わりに雑用くらいはしてあげますよ、「ゼロ」のご主人様」
ニューはゼロが何かしらのキーワードであると知った為、それを皮肉に交える。
「この馬鹿ゴーレム、いい度胸じゃない!アンタなんか食事抜きよ!」
近くの部屋に聞こえるくらいの罵りあいが始まる。
「・・サイレント」
タバサが世界の音を遮断し、本に視界を移す。
(さわがしい、二人だな)
動きと音のない静かな世界で、ゼータは聞こえてくるであろう二人のやり取りを、少し羨ましく思った。
477ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:56:39 ID:V08pL5Qo
中庭では、人だかりが出来ており、その中心はキュルケとダブルゼータであった。
「さぁ、さぁ、ここにいる私の使い魔のダブルゼータは、
あのハリマオスペシャルを打ち破った、トリステイン一の怪力よ、
このダブルゼータをこの丸い円の中から出す事ができれば賞金2000エキュー、
しかも、トリステイン一の称号はあなたの物、さぁ、挑戦する者はいないの?1回20エキューよ」
キュルケが丸い円を指差しながら、挑戦者を募る。
「なぁ、キュルケ、何でこんなことするんだ?俺は疲れてい「あなたが頑張ったら、さらに美味しい食事が出るわよ」
おうおう、偉そうに貴族の看板掲げているくせに、俺にビビって誰もででこねぇのか、この腰抜け貴族ども!」
労働の意味を見つけ、睨みつけるように辺りを見回すダブルゼータ。
「その言葉、聞き捨てならないなぁ、ゴーレム君」
人だかりの中から、先ほどのモグラの主である金髪の少年が現れる。
「ヴェルダンデの敵を討ってくれた事には感謝するが、今の言葉は貴族として許せん」
そう言いながら、ギーシュがバラを掲げる。挑戦者が表れた事に、観客のテンションが上がる。
「ギーシュ、挑戦してくれるのね!あなたってやっぱ勇敢だわ!」
媚びているのが丸分かりで、キュルケがギーシュの果敢な挑戦を称賛する。
「キュルケ、賞金は僕とモンモランシーの華麗なデートに使わせてもらうよ!」
そう言ってキュルケに、参加費用を渡す。
「誰かと思えば、モグラの坊主じゃねぇか、モグラが俺の相手をしてくれるのかい?」
「ふっ!僕の可愛いヴェルダンデに、君みたいな野蛮なゴーレムの相手をさせる訳ないだろう、出でよ、ワルキューレ」
薔薇の杖を掲げ、4メイル程の青銅のワルキューレが誕生させる。
「君の相手は、このワルキューレが勤めよう、キュルケ異論はないね!」
ワルキューレがダブルゼータの前に立ちはだかった所で、観客のテンションは最高潮にヒートアップする。
「オールオッケーよ!ギーシュ」
そう言いながら、ダブルゼータの近くに行き、耳打ちする。
「少し手加減しなさい、圧倒的な力で勝つと挑戦者が現れないから。あなたも美味しい食事がしたいでしょ?」
ダブルゼータに指示を出す。
「オッケー、任しときな!」
了解して、キュルケを円の中から出るように促す。
「じゃぁ、いくわよ・・・・はじめ!」
キュルケが開幕のゴングを鳴らす。
「いけっ!ワルキューレ!」
ギーシュの掛け声とともに、ワルキューレがダブルゼータに突進する。
「うぉっ!結構やるじゃねぇか、この姉ちゃん」
(こいつは思ったより、力が在りやがる。しかも意外と重てぇ!)
圧し掛かられるような、圧力に苦戦の気配を感じ取る。
「どうしたのだい、ゴーレム君!口の割には大した事はないな!」
以外に、押している事に気を良くするギーシュ。
「なろぉぉぉっ!」
叫びと共に、身をかがめて懐に潜りこむ。そして、辺りをつかみ放り投げる。
「なっ!ワルキューレ!」
ギーシュが一瞬の出来事に驚く。慣性で飛ばされたワルキューレは、そのまま地面に墜落した。
「やるじゃねぇか、小僧」
相手の善戦に、ダブルゼータが素直に称賛する。
「ダブルゼータの勝ちね、さぁ、他に挑戦者はいないの?」
キュルケが相手を求める。
「次は俺だ!」
「嫌、この私だ!」
何かに触発されたのか、次々に参戦の声を表明する。
その日の夕方は、いつもより喧騒に溢れていた。
478ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:57:28 ID:V08pL5Qo
トリステイン 宝物庫
外の喧騒を聞きながら、ロングビルは秘書と本職の仕事を果たそうといていた。
「この扉は特別でして、カギと合言葉がないと開かないのですよ」
コルベールがそう言って鍵を見せる。
「けど、何故宝物庫に?」
コルベールが問う
「はい、モッド伯が、王宮に提出する、目録を作ってほしいとの事なので・・」
「なるほど、最近モッド伯が、ここに多く来るのもそれが理由なのですね。」
ロングビルの答えに、ここ最近、よく訪れる伯爵に納得する。
「以前から、伯爵はある物を手にいれたがっているのですよ」
「ある物ですか?」
ロングビルの瞳に興味の色が出る。
「はい、百獣の斧というものです。
出自と効果が解らないマジックアイテムなのですが、モッド伯はなぜかそれを欲しがっているのです。」
(きっとそりゃぁ、訳ありな、代物だねぇ)
そう言ったものは、何かしらいわくつきな代物であり、欲しい者には高値で売れる事を経験から感じ取っていた
「アイコトバヲオネガイシマス。」
突如、扉の無機質な音があたりに響く。
「え!どこから声が!?」
「マジックアイテムの一種なんですよ。」
驚いた、ロングビルにコルベールが説明する。
「フカーヤノネギ」
「アイコトバヲカクニンシマシタ」
鈍い音をたてて、扉が開く。
「こちらです。」
二人が宝物庫に入る。
「入口の方に比較的新しいものがあります。何年か前の目録がありますので、それを参考に作って下さい。」
「ミスタ・コルベール百獣の斧とはどういった代物なのですか?」
ロングビルが獲物を定める。
「百獣の斧ですか、こちらにあるのがそうです。」
そう言って、ガラスの箱に飾られた斧を指さす。
それは、煌びやかには程遠いが、片手用の斧であり獅子の顔が刻まれていた。
(これが百獣の斧かい、なんだか地味だね)
ロングビルは、その斧からあまり金銭的な価値を感じなかった。
「では、私はしばらくここで作業しています。」
「はい、分りました。カギはお貸ししますので、後で返して下さい。」
その声とともに、コルベールの気配は遠ざかる。
「念のために、調べてみるかい」
そう言って、ディティクト・マジックをかける。
「!何だい、これは・・・」
ロングビルはそれをただの斧だと思った。
しかし、かけた瞬間、巨大な獅子のイメージがロングビルの視界を覆った。
(確かに、こいつはタダ物じゃないね・・・)
先程までは感じなかった、何かしらの力を今は感じる事が出来る。
「さて、このまま、こいつを盗んでとんずら・・と行きたいけど、それだと、真っ先に疑われるしね・・
まだ、本業として仕事をしていく為に迂闊な真似は出来ない。
「それに、アイツ等がいる事を考えると厄介だしね」
(目録を作るついでに、目星を付けとくかい)
そう思い、ロングビルは宝物庫を調べ始めた。
479ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 20:58:16 ID:V08pL5Qo
モッド邸 深夜

モッド伯は寝室にメイドを呼ばず、客人を待っていた。
「お久しぶりですな、モッド伯様」
「来たか・・」
姿の見えない声にもさほど驚かない。
「あれは、今、学園にかけあっておる。余りせかすな」
モッド伯は手で待てのサインを送る。
「それも重要なのですが、一つ、力をお貸し願いますか?」
声と共に辺りの闇が強くなる。
「それは、あの方のご命令か?」
「いえ、ですが早めに手を打っておくべきかと思いまして」
(あの方の命では無いとは、珍しい)
目の前の声を聞きながら、モッド伯はそう思った。
「私は、何をすればいいのだ?」
「あるメイドを一人学園から連れてきて欲しいのです。」
「それは問題ないだろうが、それに何の意味があるのだ?」
メイドの価値などたかが知れている。モッド伯がそう思い疑問を口にするのは当然であった。
「そのメイドを餌にすると、ある物が釣れます。そのある物に価値があるのです。」
「お前の言っていた奴らか・・ふん、まぁよい、それくらいなら容易い。」
モッド伯が承認する。
「では、私はこれで」
「あぁ、また会おう・・闘士ドライセン」
この世界の物でない闇の中、赤く光るモノアイが消えた後、
体の寒気を忘れるべく、モッド伯は寝る事にした。


「11君の相手はこの青銅のギーシュがお相手しよう」
青銅のギーシュ
青銅だがゴールドには勝てない
MP 330

「12ギーシュがワルキューレを錬金した。」
ワルキューレ
7体まで現れる。
HP 360 (3体で)
480ゼロの騎士団:2009/01/25(日) 21:00:48 ID:V08pL5Qo
以上で終了です。
マチルダさんはゲームに出てきた方です。
フカーヤノネギは円卓の騎士に出てきた合言葉で当時爆笑しました。
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:04:33 ID:CXch7Ei6
長門の奴完結したのか
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:06:02 ID:hW/vSh6+
投下乙!
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:09:42 ID:QtGT5AcE
GJ!
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:12:15 ID:Xc/DtuI3
ふ、深谷の葱?
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:22:21 ID:FbUy3ot3
騎士の人乙でした!

深谷の葱、だと・・・・・
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:24:02 ID:I+NQNPgF
くさいたま!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 21:47:21 ID:vLFvNiuR
乙ですー

>青銅だがゴールドには勝てない
あれは勝てる5人のほうがおかしいんだよ! ギーシュはわるうないよ!
488異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:07:06 ID:MTE8n7Z+
ゼロの騎士団さん、乙です。
青銅にゴールド・・・小宇宙を燃やしたくなる俺って・・・

前回投下から一ヶ月
ようやく第三話が完成しました。一応22:20頃に投下したいと考えています

期間が空いたので、簡単な作品紹介
召喚者:アッシュ(作中ではルーク・フォン・ファブレ)
エルドラントで死んだはずのアッシュがハルケギニアに召喚された
ルークを再び名乗ったアッシュが異世界で待ち受ける試練とは・・・

一つお聞きしますが、今回少し長い話になります。スレの容量は大丈夫でしょうか(現在434KB)
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:12:44 ID:ZSfD4Jyp
使い切っても足りなかったら二万文字は悠に超えてるな
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:17:38 ID:jyr6rm6m
>>488
アッシュの出ている作品名は何ですか?
491異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:19:53 ID:MTE8n7Z+
二万文字は多分ないはずだから、問題ありませんね
返答していただいた方、ありがとうございます
>>490
テイルズオブジアビスです

第三話 貴族の使い魔

時空が違えど、変わらないものがある。太陽はその一つだ。山間から昇る柔らかな陽光が、今日も天地の命に活力を与えている。
日輪の輝きを受けて、トリステイン魔法学院の外壁が鈍く光る。今日も、いつもと変わらない平穏な日々を告げる淡い光線が学院内注がれる。
異世界より降りし、赤い髪の男児とその主人を除けば。
陽光と薄暗さが溶け合う部屋の中で、貴族の使い魔が目を覚ました。

「ん、く……、朝か」
スッキリとした目覚めじゃない。意識の半分が朦朧としている。俺は目を擦って、どうにか起きた気になる。
昨夜の大騒ぎのせいだ。頭がボーとするのが抜けない。視界も狭い。度の合わない眼鏡でも掛けたように目の焦点が合わない。
こめかみを指で押えようと腕を動かそうとしたら、体のほうもかなり重い。重体だった身が一晩で回復するわけがないってわけか。
ヴァンに鍛えられてなきゃ、ろくに体を動かすこともできなかった。表面では憎もうとも、常に俺を助けたのは師匠の教えだ。
俺はさほど苦労もせずに上体を起こせた。見慣れない調度品に囲まれている。何処だここは。
その答えは瞬きより早く導き出せた。
眠気で相当なボケをやった。慣れるほど滞在していないとはいえ、昨夜の記憶が曖昧になってるとは。
リミットが近い兆候だろう。この部屋には馴染めそうもない。

「おはようございます。ミスタ・ファブレ」
快活で小気味いい声が響く。勝手に傾げようとする首を曲げると、メイドが立っていた。昨日付けで俺の御主人様とやらの使用人となったシエスタだ。
「おはよう。早いな」
屋敷でもそうだった。メイドの朝は早い。俺は、誰かさんと違って、朝は早いほうだ。それでも、着替えにメイドが間に合わなかった記憶はない。
俺の目覚ましが扉をノックする音だったことは両手で数えるのが馬鹿馬鹿しいほどだ。
「は、はい。やることは朝からありますから。それに……」
「それに、何だ」
何となく、相槌を打ってみた。
「き、貴族のベッドで眠るなんて初めてで……、緊張してあまり眠れませんでしたから」
貴族とメイドには厳然たる格差がある。同じなのは屋敷に住んでるだけだ。寝床がいきなり貴族のものとなって、熟睡できるほど豪胆なメイドはそうそういない。
「あ、も、申し訳ありません。メ、メイド風情がえ、偉そうですよね」
そう言って、シエスタは椅子の上に置いてある服を手に取った。上着と思しき物の色は白。下穿きは黒い。あれは昨日ルイズが着ていたものか。
シエスタはそいつを持って、俺の前へと近づく。
492異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:20:45 ID:MTE8n7Z+
「ミスタ・ファブレ、これはあなたのお召し物です。ミスタ・コルベールからこれを着るように、との指示を仰せつかっております」
ベッドで寝息を立ててる女とは関係がなかった。よく見ると、下穿きが男用だ。
わざわざ、こんなものまで用意するとは。学院側としては、俺が包帯を曝け出して学院内を練り歩かせるわけにも行かないだろう。こればかりは極々自然な事だ。
解せないことは、さっきからムニャムニャうるさい主人の服の男用ってことだ。
「そこでお寝んねしてるのと似たような服だな。どういうことだ」
「ミスタ・コルベールは、ミスタ・ファブレはメイジであられるので、学院の制服でも問題ないだろうと仰っていましたが……」
こいつはこの学院の制服らしい。いくら貴族であっちの論理の魔法が使えるとはいえ、俺は学院に籍を置いてない。どういう措置だ、これは。

「あ、お、お気に召さなかったでしょうか」
シエスタが心配そうに覗き込んでくる。機嫌を損ねた風に見えたんだろう。
「いや、これでいい。断ったところで、他に着る服を調達できない」
「そ、そうですか。良かった……」
シエスタは体が一回り小さくなったと錯覚するほどに全身から力と空気を抜いている。
コルベールはこの女にどんな忠告をしたんだ。少なくとも、親しく接しろだの、敬うようにだの、お近づきになるような指示は間違いなく出ていない。
俺としては好都合だ。こうもおっかなびっくりしてれば深入りしてくることもない。
「そ、それではお洗濯に行ってきます。もうすぐ朝食の時間なのでお早めに食堂へ向かってください」
そう言って、シエスタは服が入った桶を持って小走りで部屋から出て行った。メイドの朝が忙しいことも、屋敷にいた頃と変わらないな。
「朝食か……」
俺の体を考えるなら、あまり人前に出るべきじゃない。一人でこの部屋に寝そべって療養してもいいはずだ。
しかし、食事に出てこない、容態が重いのか、と俺を監視してる連中に思われるのは都合が悪い。
あっちにとって、俺の存在自体が懸念材料になっている。俺の体調が悪いと、そいつがそのまま抗議文となって飛んで来るとかで、戦々恐々となってることもありえる。
異世界に文を届ける方法があるなら、是非とも利用したいもんだ。遺書を残してもいい女性が地平線の彼方どころではないほど遠い国にいるからな。
俺は健康的に、貴族と変わらぬ生活をしたほうがいいだろう。それが、一番の誰の関心も引かない方法だ。

背中に太陽の温かみを感じる。ちんたらと腰を下ろすのは終わりだ。
後ろに振り返ると、昇る日などどこ吹く風、のんきに寝相を打ってるご主人様がいる。窓から注がれるほのかな光の束を浴びても睡魔の湖に引っ込んだままだ。
今この部屋に残ってるのは俺とルイズだけだ。必然的に俺が叩き起こすことになる。
俺は立ち上がって、ルイズのベッドのシーツを掴んだ。そして、思いっきりひっぺ返した。
「な、なぁ、なにごと!」
シーツを剥いだらルイズが飛び跳ねた。横たわった状態から空中に浮くとは器用で豪快な女だ。
「朝だ。ご主人様」
「ふぁ、へ……朝。そ、そう。……ってあんた誰よ」
人が壮快な目覚めを提供してやったのにまだ夢に中にいやがった。呆れた暢気さだ。
「てめえの使い魔だ。人の顔を憶えないと将来苦労するぞ、貴族のお嬢様」
「あ、ああ。確かルークって言ったわよね。昨日召喚した……」
493異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:21:19 ID:MTE8n7Z+
ルイズは左手を支えに、右手で目を擦っている。一定間隔で頭がカクカク上下するのは眠気を完全に払えてない証拠だ。
「飯の時間が近いそうだ。このままだと遅刻するな、ご主人様」
「も、もぉそんな時間なの。ふぁ、早く着替えなきゃ……」

ルイズは大きく背を伸ばして全身に覚醒を促していた。ようやく、お目覚めになりなさった。
「あれ、メイドのあの娘がいないみたいだけど」
ルイズは部屋を見回しながら、自分の専属メイドを探している。
「洗濯だとよ。しばらく戻ってこない」
「ご主人様と使い魔の寝巻きをほっぽっといて洗濯?おかしいんじゃない、あのメイド」
そう言われると確かに妙だ。寝巻きが入らないほど洗い物の量が多いとは考えにくい。さっき見た桶の中にたいした嵩はなかった。
それに、やたら急いでいる印象を受けた。他にも仕事を抱えているんだろうか。
「主人を着替えさせるのは下僕の仕事だってのに。あのメイド、貴族の仕え方を知らないのかしら」
「さあな、忙しいんだろ」
「仕方ないわね。ルーク、私に服を着せなさい」
「お断りだ。服くらい自分で着やがれ。外で待ってるから、終わったら呼ぶんだな」
ルイズの眉間に皺がよったので、さっさと扉に向かって歩き出す。朝っぱらから耳を不快にさせたくはない。

しばらくは扉の向こうから叫び声が聞こえていた。騒いでも無駄だと知っただろう今になっては壁越しに響く音はない。
壁にもたれ掛かって目の前のランプを眺めてみる。俺の知識からすれば、かなりの年代物。貴族を集めた学校でこれなら、この時代の科学水準はさほど高くない。
俺の背もたれの壁側には木の扉が並んでいた。ルイズと同様、ここで魔法の学を修めてる貴族の部屋だろう。この区画は貴族の寮と聞いている。
あれこれ推察を始めると、扉が開いた。桃色がかったブロンドの髪、アリエッタと同じ色のそれがなびいて俺の前に流れる。
「終わったわよ。次はあんた」
俺は部屋に戻って、上着に手をかけた。

学院の制服の着心地は悪くない。さすがは貴族御用達といったところだ。マントも大して気にならない。
神経を使うのは眼前で仁王立ちしている女だ。俺の格好を見るなり、急激に機嫌を悪くして動かない。
「何であんたが制服着てるの」
「知らん。コルベールの指示だそうだ」
「あんた使い魔。それは貴族しか纏えないの」
「俺も貴族だ。ヴァリエール殿」
顔を真っ赤にしたルイズは踵を返して足早に廊下に出た。俺も遅れずに付いて行く。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:21:51 ID:/B5pWkaL
sienn
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:21:51 ID:/B5pWkaL
sienn
496異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:22:08 ID:MTE8n7Z+
後ろ手に扉を閉めると、隣の扉が開いた。香水の甘い匂いが漂う。
部屋の主は女だった。背は俺と変わらない。柄じゃないが、グラマラスでスタイルがいい。そして、俺と同じ焔の象徴をなびかせている。
赤い髪の女はルイズを見て、意地悪そうに笑っている。
「おはよう。ルイズ」
ルイズは女と視線を合わそうとしなかった。あまり良い仲ではなさそうだ。
「おはよう、キュルケ」
女は俺へと視線を移す。俺の全身を嘗め回すその瞳は蛇のそれを連想させた。明らかに俺を値踏みしてやがる。
「あんたの使い魔……、本当に貴族とは思わなかったわ」
「そうね。口が悪すぎて貴族と思えないけど」
ルイズがそう言った瞬間、キュルケって女が吹き出した。自分の事を棚に上げている、俺と同じ感想だろう。
ルイズはキュルケを睨んで地団駄を踏んでいる。かなりご立腹であるご様子だ。言葉が出ないのは自滅したとわかってるからか。

その様子をニヤニヤしながら眺めているキュルケは艶かしさを加えた瞳で俺を捕らえる。
「あなたのお名前をお聞きしてよろしいかしら」
「ルーク・フォン・ファブレだ」
名前を言ったら、キュルケが細い指を顎に触れさせ記憶を探る姿勢になった。
「ファブレ……、聞いたことないわね」
「ハルケギニアの貴族じゃないからな」
俺の言葉を聴くなり、キュルケ女は驚いた顔になった。コルベールも同じ話で似たような反応をしていた。どうやら、ここでは異国の人間が珍しいらしい。
「あんた、もしかして砂漠の向こうから来たわけ」
「ここらの地理には疎い。遠い国としか言えない」
「そう、まあいいわ」
そう言うと、キュルケは腰を折り、俺を上目遣いで見つめ始める。瞳が水に浸っているほど潤んでいる。
「ミスタ・ファブレ。あなたの私の運命の人だと思うの。炎の髪が映える夕日の中で、お互いの思いを燃え上がらせません」
何をするかと思ったら、とんだお誘いだ。俺にはナタリアがいる。こいつ程度に焦がれる心などない。
「断る。篭絡するなら別の男でやれ」
「あなたほどの殿方、このハルケギニア広といえども滅多にお目にかかれませんわ。もっと自分の魅力に自信を持たれては」
ブラウスの裾を指で引っ張っている。おまけに腰をゆらゆら振っている。娼婦か、この女は。
「ちょ、キュルケ!こいつは私の使い魔なのよ。手を出さないで!」
「あら、いいじゃない。こんな素敵な男、あなたの使い魔にしておくには勿体ないわよ」
どっちの意見にも半分だけ同意したい。俺は素敵とは程遠い男だ。それに、使い魔といっても形式だけの期限付きだ。
「はしたない女だ。下らない。俺は食堂に行くぞ」
「あ、ちょっと、ルーク。ご主人様を置いていかないでよ」
小刻みな一人分の足音が耳に届く。これはルイズだ。キュルケは扉の前から動いていないらしい。
くだらないことで足止めを食らった。俺はここの貴族とも馴染めそうにはない。もっとも、そんな気は皆無だ。
497異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:22:42 ID:MTE8n7Z+
食堂へと向かう途中、左手の角から昨日見た黒いローブが歩いてきた。コルベールも朝食の徒についているようだ。
「おや、君はミスタ・ファブレではありませんか。おはよう。昨日はよく眠れたかな」
「おはよう。再会は教師と使い魔の関係になってからじゃなかったのか」
コルベールが傍目では知覚できないほどわずかに視線を落とした。何かあるのだろうか。
「私はこの学院の教師ですぞ、ミスタ・ファブレ。そして君は使い魔となった。私の言葉通りだろ」
解せない気分になるのはコルベールの言うとおりだからか。この俺が使い魔とは、世も末ってことだ。
コルベールは先ほどと同様に視線をわずかに落とす。俺も目線を負ってみると、それは俺の左手に到達した。俺の手に何か付いているのか。
「おい、どうした」
「ミスタ・ファブレ。君の左手の使い魔のルーンを見せてくれないかな」
「使い魔のルーン?何だ、それは」

「使い魔になりましたって証よ。あんたの左手に刻まれたのね」
振り返ると、ルイズが真後ろに立っていた。息が荒いのは俺の歩く速度に追いつこうとしたためだろう。
左手を見てみると、甲に妙な文字が刻まれていた。どうやら、こいつが使い魔のルーンらしい。
コルベールが顔を近づけて覗き込んできたので、俺は少しだけ手首をひねって見えやすいようにした。
「珍しいルーンだな……。後で調べてみるか」
そう言って、コルベールは身を引いた。踵を返そうとして、忘れ物でもしたのか、一歩も進まず立ち止まった。
「そうだ。ミスタ・ファブレ。君が着ていた騎士の正装なのかな、あれは私の口利きで同じものを作ることになった。数週間もすれば完成するそうだ」
なんとも至れり尽くせりなことだ。俺を買いかぶりすぎだな、この学院は。
俺の死に装束になるはずが、レプリカの被験者になろうとは。あれは特別な素材を使って、物理攻撃と譜術攻撃のどちらにも耐性がある。再現は難しいはずだ。
「いらんお世話だ」
「人の好意は素直に受け取るものですぞ」
コルベールは俺から目線を切って、食堂に向かって歩き出した。
俺の一挙手一投足であたふたしてる奴らの、形だけの好意など受け取れるわけないだろう。

トリステイン魔法学院は大人数が闊歩するだけあって、食堂もかなり広い。記憶の残滓に残っている、バチカルの城の晩餐会を執り行う大広間もここまで広くはないだろう。
食堂の奥まで伸びるテーブルには学院の生徒と思しき俺と同じ格好の貴族が席についている。
各テーブルに座る貴族の羽織るマントの色が違う。これは学年別に分けているのか。となると、俺とルイズは中央のテーブルで食事を取ることになる。
俺の席はルイズの隣だ。主人は使い魔を離ればなれになることを望まなかった。
俺が椅子に腰を掛けようとすると、何人かがざわめく。
「ルイズ、こいつは君が昨日召喚した使い魔じゃないか。なぜ、我々と同じ格好でこの『アルヴィーズの食堂』の席に座ることができるんだ」
隣に座る、小太りの男がいちゃもんを付けてきた。申し訳ない、使い魔風情が偉そうで。
「こいつが貴族だからよ。気に入らないことにね」
ルイズの発言にそこらの貴族がどよめいた。「本当だったのか」という声もあることから、昨日から俺の正体を勘ぐってたらしい。
「だが、使い魔風情が我々と食卓を共にするなど……」
「文句ならコルベールに言え。ここに座れと言ったのはあいつだ」
刺す様に睨んでやったら、小太りの男は竦んで凍ったように動かなくなった。
ここでは俺が蛇だな。竦んだ蛙を早々に眼中から外し、俺は椅子に腰掛けた。
498異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:23:14 ID:MTE8n7Z+
ひそひそ話はまだ続いている。俺が気にすることでもないので、目の前の豪勢な食卓に目を落とす。
何時、料理に手をつけられるかをぼんやり待っていると、誰かが俺の背後に止まった気配がした。
「あら、ルーク。もういたのね」
この声は先ほど聞いたものだ。俺と同じ焔の髪を持つ女、キュルケだ。
正直、合うなり俺を誘惑してきた女の口は聞きたくない。俺は無礼承知で無視を決め込んだ。
「あら、つれないわね。もしかして、私の気を引きたいの」
知らん顔をしたらこれか。アニスを思い出す、ムカつく女だ。
「キュルケ。こいつは私の使い魔よ。手を出さないで」
ルイズが割って入ってきた。単に意地になってるだけだろうが、俺としてはありがたい増援になる。
「あわ、いいじゃないルイズ。彼はメイジの象徴たるマントの着用を許されたのよ。つまり、私達と同じ貴族。あなたの所有物じゃなくってよ」
「う、うるさいわねぇ。こいつの主は私なのよ。それをツェルプストー家の女に渡すわけにはいかないわ」
「あら、恋と炎のツェルプストー家に男を奪われ続けたヴァリエール家のご息女が言うじゃない」
「だ、黙りなさい!私の家を辱めるなんて、許せない!」
援軍は俺をそっちのけで取っ組み合いに夢中となった。矛先を逸らしてくれるとは優秀な盾だ。

ほっとけば何時までも争いそうな勢いだったが、キュルケのほうから身を引いた。
キュルケが席に座ると同時に、誰もが両手を合わせて、目をつぶった。食事の前の祈りの時間だろう。
俺もそれに習って、同じく手を合わせて目を閉じた。
――偉大なるブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧をわれに与えたもうたことを感謝いたします――
貴族の食卓に並ぶのは誘拐直前以来だ。相も変わらず、胃にとってはささやかな糧ですまない。神託の盾で健康的なメニューが続いていた俺の胃が辛いことになりそうだ。
正直、こうした貴族たる者がすべき生活ってのは好きじゃない。
権力者の腹が膨れようと、それで民がうまい飯を食えるようになるわけじゃない。むしろ、俺たち貴族が民に与えられる施しを吸い上げているようにも思えた。
民のテーブルに皿を増やせるのは貴族たる資質だけ。ファブレ家の屋敷から町に繰り出し、神託の盾の任務で世界を巡った俺が辿り着いた一つの結論だ。
この食堂の中に、自分のできることをやり切れる貴族がどれほどいるだろうか。少なくとも、俺の両隣は権力に胡坐を掻いているだろう。
誰にも気づかれぬようにため息を吐く。この世との関わりが不可能となる俺がこんなことを憂いてもどうにもならない。
それより、山のような料理を平らげよう。飯をゴミにするなど、民に対しては最大の侮辱だからな。
499異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:23:50 ID:MTE8n7Z+
「……ふう」
やっと完食した。見た目よりもずっと腹が膨れちまった。今日一日、腹に重りを吊り下げて歩くことになりそうだ。
少しでも胃袋を軽くするために、一息ついてリラックスする。
溜まったものを腸に沈めようと力を抜いたら、陶器が木を叩く音が響いた。
首を捻って音のする方を見てみると、メイド達が各人の前に皿を置いていた。食後に追加される料理など考えなくてもわかる。デザートがまだあった。
これ以上何か詰めたら胃が抗議してきそうだ。民の愚痴を聞くことより耐え難いものではないので我慢はできる。
配る量が多いので、結構な数のメイドが動員されている。テキパキとそつなく作業しているため、次々とデザートが並んでゆく。
腹の膨れを縮める努力をする間もなく、足早に俺の前にデザートを置いたのは見慣れたメイドだった。

「シエスタ」
名前を呼ばれたシエスタは空になったトレーを下から支えながら体に引き寄せ、顔をイチゴのように真っ赤にして俯いている。
俺が名前を言ったのが聞こえたらしい、ルイズもシエスタの方を振り返る。
「あんた、私のメイドじゃない。何でここにいるの」
「は、はい。えー、春の初めは仕事が山積していまして、人手不足が深刻なんです。だから、私が数日お手伝いに……」
口をすぼめて話しているせいで聞き取りにくかったものの、伝いたいことは理解した。
「じゃあ、あんた。私の世話とメイドの仕事の両方やってるわけ」
「は、はい……」
ということは、朝方に慌しかった原因はそれだ。俺たちがとろとろ着替えるのを待ってたら、朝食の準備に間に合わなかったのか。
こんな急場しのぎの配置転換をせざるをえないとは、改めて、俺の存在がイレギュラーだってことがわかる。
いるだけで荷物になるとは最悪の棺桶だな。
「シエスタ。数日手伝うと言ったな。具体的な日時はわかるか」
「は、はい。え〜、三日後に補充の人員が来るよう、手配したとのことです」
三日後か。そのくらいだったら、心配することのほどじゃないな。だからといって、俺の責任を放棄する理由にはならない。
後で機会があったら、仕事を手伝えるか申し出てみるか。
「そうか。手を止めさせて悪かった。仕事に戻れ」
「は、はい」
シエスタは、カチューシャが外れそうなほど、大げさに頭を下げて配膳の仕事に戻った。
俺は机に向き直って、苺のケーキを眺める。赤を映えさせる光沢がやけに冷たく感じるのは、胃の愚痴が喧しいからだろう。

「ルイズ、あのメイドと知り合いなのか?」
ルイズのこう聴いてきたのは、言葉遣いがぬるぬるしている金髪の男だ。口がイニスタ湿原と繋がってるかもしれない。
薔薇を片手に食事を奇妙なしきたりある家出身らしい。こんな奴が実在するとは。
「私の専属メイドよ。使い魔が貴族だから、別に世話する人が必要なんだって」
また騒ぎ出した他の連中をよそに、俺はクリームの中にフォークを沈めた。
500異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:24:26 ID:MTE8n7Z+
「掛け持ちしてるなら、してるって言いなさいよ、あのメイド」
食堂から出て、ルイズは開口一番にこれだ。こいつには相手の立場を思い図る頭がないのか。
「それを告げようにも、夢の中に他人は入れん」
ルイズのマントが翻され、空気がはためく。また、この女の短気が顔を出したか。
「う、うっさいわね。昨日の夜なら時間はあったわよ。そういう大事なことは、速やかにご主人様へ報告するべきでしょ」
「しゃべりにエネルギーを回し過ぎたお前が言える台詞か?まあ、それに付き合った俺にも責任があるがな」
「何よ、私が悪いってわけ。それにお前って何よ。使い魔の癖に生意気ね」
「わかってるなら、黙ることだな。それと、あんまり喧しいとお前の使い魔は増長するぞ」
腹に据えかねただろうルイズは野良犬のように唸っている。口を開ければ、倍返しができるボキャブラのなさは呆れを通り越して、哀れみを覚えそうだ。
「一つ聞くが、この後どこに行くんだ」
「教室よ……。授業があるの」
いきり立つ野犬の牙の隙間から漏れる吐息が鼓膜へと流れる。

牙を立てていた犬は少し落ち着いていた。それでも解消されないストレスは、足を速めて振り落とされている。
さっきから、俺とルイズの間で会話はない。頭上から差し込む太陽の輝きが廊下を白と灰の縞模様に彩っている。
影の向こうでお喋りを弾ませている連中と乖離されたような静寂の空間。
といっても、所々に穴が空いている。正しくは、針を通している連中がいる。
ルイズは気付いてないだろう。日の元から外れ、俺達を隠れて覗き込んでる誰かには。
俺は幼い頃から修行に明け暮れ、数多くの戦場で武勲を挙げた。気配を察知する術など朝飯前だ。
敵意は感じるが、今すぐ攻撃が飛ぶほどの切迫した様子はない。
俺かルイズ、どっちが気に入らない分子か知る良しはない。今わかることは、こいつらが尾行の素人以下ってだけだ。
多く見積もって三人。おそらく、振り返ればはっきりと姿を確認できる距離にいるだろう。俺への用なら、相手をしてやらないこともない。
俺にぶら下がる重りを外せればって条件付だが。どうせ、構っても時間の無駄だ。
背中を見てるだけで息を潜めた気になっている間抜けなど、気にする材料にはならん。
501異世界に灯る聖なる焔 ◆VneD5ej16w :2009/01/25(日) 22:24:58 ID:MTE8n7Z+
廊下の角を曲がって、太陽を背に受ける格好なった。俺の影が伸びで、ルイズの足元に潜り込む。
黒く伸びる俺の頭にマントを捕まれたルイズが歩みを止める。太陽を浴び、より濃さを増した黒いマントに俺の影が飲み込まれる。
俺の髪が桃色がかったブロンドのルイズの髪に重ね合わない位置で、俺も足を止めた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
俺が数歩引いた場所にいるせいか、はたまた、光がルイズの体のラインをくっきり浮かび上がらせているせいなのか、ルイズがやけに小さく見えた。
「文句は受け付けないぞ」
ルイズの両肩がわずかに揺れる。ルイズの表情が伺えなくとも、体のどこかが今の気分を教えてくれる。
まだ、腹の虫が治まっていないようだ。誰とも馴れ合う気など一切ない俺にとってはそいつに留まり続けて欲しいもんだ。
ただ、常に愚痴を放り投げられたら、俺の我慢の檻に収容しきれないだろう。そいつを回避する予防線は、今後も張らせてもらう。
死に損ないを人目に触れさせただけでも気分は最悪なんだ。更なるストレスは遠慮願いたい。
若干俯いたルイズは廊下に漂う薄暗さを頭で押し退けている。むしろ、呑まれているという表現が正しいか。
そのまま、全てを薄闇の中に投げ出すかと思ったが、ルイズは勢い良く頭を振り上げて光の中に舞い戻った。
桃色の若木が枝を広げ、光の粒子を散らしながら水流が下へと降りていった。
「お願いがあるんだけど、あんたの持っているアクセサリーみたいなもの見せてくれない」
意外な願いだった。用があるのは俺ではなくポケットの中身か。
「そいつは譜石のことか」
「ええと、あんたが身に付けてた綺麗な石をはめ込んだ装飾品……でいいのよね」
あの譜石をどうしたいのか。目的が推測できない。光を浴びていない
「見たいのなら、見せてやるよ」
とりあえず、ルイズに言われるがまま行動することを選んだ。あれこれ類推して進むのは時間だけだ。
俺はルイズと影が並ぶまで歩いた。俺が隣に立つと、ルイズは俺に押されるように顔を背ける。
俺はズボンのポケットの中の詠師加護譜石を掴んでルイズに差し出す。石のきらめきがルイズの目を引く。
「これって、魔法の使用を助ける効果があるのよね」
「ああ、正確には詠唱時間の短縮や譜術、お前らの世界では魔法だな、の負担を抑える効果がある」
ルイズが何を思ってこんな要求をしたのかは不明だ。髪の毛は人の心理を教えない。
「ひ、一つ頼みがあるんだけど……。これ、私に貸してくれない」
まさか、譜石を宝石の類と勘違いした、なんてことはないだろう。何を企んでいるんだ、この主人は。
もっとも、今の俺に譜石は無用の長物。悪用しないなら、誰が使おうと知ったことではない。
「別にかまわないが、こいつをどうしたいんだ」
「授業で使うだけよ。魔法を使うかもしれないからね」
そう言えば、ここは魔法使い養成学校だと聞いていた。この分だと本当らしい。
「それなら問題ないな。何なら、ずっと貰っといてもいいぞ。俺がこいつの世話になることはないからな」
その言葉を発した途端、ルイズは、譜石を俺の手からむしり取り、その勢いのまま石畳を踏みつけながら歩き始めた。
俺は言葉の選び方を間違えたのだろうか。もしかしたら、使い魔風情に物を贈られたことが高すぎるプライドを傷付けたのか。
内面に靄が掛かった女が陰に引かれて遠ざかってゆく。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:25:05 ID:/B5pWkaL
sien
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:25:06 ID:/B5pWkaL
sien
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:25:39 ID:/B5pWkaL
支援
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:31:41 ID:qC/OrMZH
ハルケギニアに音素ってあんのか支援
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:33:48 ID:ZSfD4Jyp
ていうかね。メモ帳に保存してサイズ確かめればおkなのよ。
507異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:35:47 ID:RviVrGO/
魔法学院の教室は扇形の部屋が階段状となっていて、格段差に机が設置されていた。右手にある、机の列と向かい合った台は教鞭をとる者が使うためにあるようだ。
教室内のどこを見ても、人及び魔物がいないスペースはない。人間に懐いた魔物、あれが使い魔と判断していいだろう。
知り合いと仲良く談笑している面子でも多くて三、四人の中で、一際目立つ集団がある。
その中心にいるのは、あの猥らな女、キュルケだ。キュルケの足元には尾に炎をともす火トカゲの魔物が寝そべっている。おそらく、キュルケの使い魔だ。
主人だけでもむさ苦しいのに、使い魔まで熱がある。四六時中、発情している女にはお似合いなことだ。
しばらく熱のある女を眺めていたら、キュルケを取り囲む男の一人と、俺は目が合った。そいつは周りの連中に何か言い始めた。
そして、全員が何かに気付いて俺の様子を横目で窺っている。キュルケにいたっては、明らかに俺を誘っている。
俺に『鮮血』の二つ名を勝手に付けたディストに習い、奴の通り名は『お熱』に決定だ。
俺はこいつらの話題の種らしい。教室にいる貴族のほとんどが俺に目を注ぎ始めた。朝食の時と同じだ。誰も彼も、俺の姿を確認した端から騒ぎ始める。
俺は、自己紹介をして、こいつらの疑問に応えてやる義理などない。人の姿を視界から消して、ルイズの足音を追った。

席に座ってまもなく、俺達とは歳の離れた女性が入室する。あれがこの授業の教師のようだ。
帽子を被り紫のローブが身を覆っている、見た目も、おそらく、中身もふくよかな中年の女性。
シュヴルーズと名乗った女性は、召喚に成功した貴族たちに賛辞を送った。
「そして、ミス・ヴァリエール。あなたはここにいる皆さんの予期せぬ友を召喚いたしましたわね」
シュヴルーズの言葉が号令となり、教室中の双眸が舞い上がる。
「ふん、何が友だ。たかだが使い魔風情が我らと同等であるはずがないだろう」
ゆったりと昇るそよ風を引き裂く一陣の風が吹く。人目を纏め上げた男は、口の端から人を挑発しているいけ好かない野郎だ。
「ミスタ・ロレーヌ、彼は学院に認められたメイジですよ。そのような言葉は無礼に当たりますわ」
「彼がメイジであるという証拠が何処にあるのです、ミセス・シュヴルーズ。もしかしたら、ミス・ヴァリエールが我らを欺くために用意した共謀者かもしれませんぞ」
真横で机をぶっ叩く音に触発されて、俺の心が熱を帯び始める。
「な、何よ!わ、私がこいつと何したって言うのよ!」
「わからないかね。さすがは『ゼロ』のルイズ。君がその男を使って、召喚の成功を偽装したと言っているのだよ」
屑って言葉が素晴らしく似合う野郎だ。何が哀しくて、こんな阿呆と悪巧みをしなければならないんだ。
「ふ、ふざけんじゃないわよ!こいつはきちんと私が召喚したのよ!」
ルイズもすっかり煮えくり返っている。これは噴火寸前の火山だな。
「怪しいな。君の『サモン・サーヴァント』は土煙を召喚しただけじゃないか。大方、そこの赤い髪を地中に隠していたのだろう」
「でも、赤い髪の彼は傷だらけだったよ」
言葉は俺を庇っているのに、口調と表情が人を小馬鹿にする色がある。こいつは引き立て役か。
「じゃあ、あそこに彼の墓でもあったのかもしれないな。はは、『ゼロ』のルイズに命が『ゼロ』の使い魔、お似合いじゃないか」
その一言は何人かに笑いをもたらした。こいつは確かに愉快な男だ。ここまで人の心を逆撫でしてくれるとはな。
ルイズも相当なもんだが、このロレーヌとかいう奴は、俺が学院内で出会った貴族の中でも最上級の屑だ。
活火山が二つに増える。これ以上、辛辣な物言いを許すわけにはいかない。
508異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:36:47 ID:RviVrGO/
「あいにく、俺の髪は赤いままでな。汚れた跡がないんだよ。地中に潜ってたのはてめえだろう。土色の髪がお似合いのロレーヌ様」
教室の空気が硬直した。そして、視線が土色に絡め取られる。むず痒い静寂に耐え切れなくなった何人かが喉を鳴らして吹き出した。
一度、ある方向に傾いた空気の流れは徐々に教室中を呑み込む。所かしこに失笑が漏れる。俺の耳元からも甲高い笑い声が響き渡る。
「あはははははは。ひ〜、可笑しい。あんた面白いこと言うじゃない。そうよ、ミスタ・ロレーヌ。あんたの髪の毛はまるで土を塗り付けてるように綺麗だわ」
今にも爆発してマグマを撒き散らしかねなかったのが、薔薇の花畑になっていた。
形勢を即座に引っくり返されて気が動転しかけたロレーヌだったが、棘に刺された痛みが気を一点に集結させた。
余裕の仮面が剥ぎ取られ、怒りと羞恥心に染まったロレーヌが立ち上がる。
「な、何を言っているんだ。ぼくは日々頭髪の手入れは欠かさないぞ!それが土で汚れているわけがないだろう!第一、ぼくの系統は『風』だ。『土』は関係がない!」
「へ〜、そうだったわね。でも、風って土を舞い上げるのに最適な魔法だわ」
緩やかな川が滝に差し掛かった。爆発的な勢いで轟音をがなり立てる水塊が笑い声となり、教室中を揺らした。
「貴様ら!このぼくを侮辱した狼藉、ただでは済まさないぞ!」
ロレーヌの怒りが臨界点に達したようだ。言動から恥の色は消え失せ、全身から激情を放出している。
「ふん、喧嘩を売ってきたのはあんたの方よ。貴族を侮辱したらただでは済まない、ですって。今のあんたを見てると本当にそう思えるわ」
その一言で、ロレーヌの口が縫い付けられた。反論の材料が乏しいことを悟ったのだろう。
それを見てルイズは得意満面そうだ。調子に乗るとここまで付け上がり、舌が饒舌になるとは考えもしなかった。
ルイズは胸の前で腕を組んで、自分の正当性を確固たるものにするがごとく胸を張った。止めの言葉でも刺すつもりだろう。
しかし、ルイズの声が高らかに響くことはなかった。どこぞから吹く風の糸がルイズを捕らえたからだ。
ルイズは口を開く暇さえなく風を操る何者かの人形になり、体重を感じさせないほど静かに席へと座らされた。
同時に、ロレーヌの驚いた声が届く。何事かと首を捻ったら、奴も同様に風に翻弄されていた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・ロレーヌ・みっともない口論はおやめなさい」
風の主はシュブルーズらしい。右手に杖を握り、争っていた二人を嗜めている。
「はい。申し訳ありません」
ルイズはやたらとご機嫌だ。ロレーヌを言い負かしたことがそれほど嬉しいのだろうか。
「はい……。すみません……」
鬱憤を解消する機会を失ったロレーヌは嵐の前の静けさを思わせる。足元から風が昇っていると錯覚するほどの怒りを帯びていた。
「それに、ミスタ・ファブレ。ミスタ・ロレーヌの言葉は許し難い暴言ですが、それを汚い言葉で返したらあなたも彼と変わりませんよ」
シュヴルーズの言葉は正論だろう。だが。俺は好き放題に蔑まれて大人しくしているほど、品行方正な貴族じゃないんだよ。
「いいですか、皆さん。この場にいるのは共に学問を修める友なのです。ですから、馬鹿にしたり、笑ったりせず、一人の人間として尊重し合うのですよ」
ありがたい話が耳に入っているとは思えないほど喜んでる人間と、俺達を殺気立って睨みつけている人間に、人を尊重の神経はなさそうだ。
「では、授業を始めますよ」
509異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:38:27 ID:RviVrGO/
ルイズは俺が考えるより真面目な性格をしていた。しばらくは喜びに浸って自分の世界に閉じこもらなかったのだ。
ルイズは、シュヴルーズの教鞭が始まると同時に真剣な眼差しで机に向かった。
このちょっとした感心は、俺も講義に引き込まれる形で霧散しそうになる。ハルケギニアの魔法の外殻に触れたからだ。
ここの魔法は、『火』『水』『土』『風』の四つの系統を基礎とするらしい。これは第一音素の『闇』と第六音素の『光』の魔法が存在しないことを意味する。
気になったのは、『虚無』と言っていた系統だ。こいつはもしかしたら、第七音素かもしれない。
だが、第七音素は六大音素にプラネットストームを吹きかけることによる、全ての音素が結合した結果。ハルケギニアにプラネットストームがあるようには思えない。

一応、感覚を研ぎ澄ませればレムとシャドウの音素の振動を僅かながらも感知することはできる。第七音素は音はまったく拾えない。
ハルケギニアはどの音素も少量で、俺はろくな譜術ができない。だったら、大した魔法は使えないと推測したが、それも違うらしい。
土系統のメイジだと言ったシュヴルーズは小石を真鍮に変えた。また、彼女の話によれば、ハルケギニアの生活には、魔法がかなり密着しているらしい。
これを真実と採るなら、ここはさしずめマルクト帝国だ。あの国は譜術で民を支えているからな。
問題は、大気中の音素がオールドラントと比較すると微量となってしまうのに、マルクトと同じ事が可能な点だ。
もしかしたら、貴族連中はジェイドの譜眼と同様の、大量の音素を取り込む装置でも体に刻んでいるのか。
もっとも、譜眼は素養のない奴が扱えば死に至る禁術。それをこれだけの人数が扱うとなると、大きな疑問があると言わざるをえない。
あるいは、譜眼ほど危険性がなく、かつ同様の効果を得れる技法があるのかもしれない。
本当にそんな技術があるなら、プラネットストーム停止以降、音素の総量が減るオールドラントの譜業や譜術の大きな助けとなる。
そいつの理論なり何なりを持ち帰れば、これから苦しくなるだろう民の生活を改善できるのではないだろうか。
そこまで考えて、俺は自らの愚を悟った。俺は、もうすぐ音素乖離を起こして死ぬんだ。
オールドラントには帰れない。たとえ、その方法が見つかったとしても、この世界の魔法を解明する時間はない。
俺は、この期に及んで生きようとしている自分自身を嫌悪感したくなる。
510異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:40:01 ID:RviVrGO/
「『スクウェア』に『トライアングル』……、術のランクのことか?」
思わず声に出してしまった。今まで考え詰めだったのが影響したか。
「そうよ。ただ、ちょっと違うわね」
口元で囁いただけのつもりだったが、隣の耳に入ってしまった。独り言が聞かれた気恥ずかしさが頬を熱くする。
「何が違うんだ……」
「ランクって言い方も間違いではないんだけど、実際は系統を足せる数を表しているの」
「系統を足せる回数?例えば、『火』に『土』を加えると新たな魔法になるって事か?」
譜術の常識は、こっちの魔法の法則と一致するのか。
「そうよ。物分りがいいわね。今言った、『火』と『土』の二つを足せるのがラインメイジ。その下、『火』単体だけを使えるのがドットメイジ」
俺を何だと思ってやがるんだ。一言多い女だ。半ば意地になって、俺は続く言葉を代弁してやった。
「そして、三つ足せるのがトライアングルメイジ。四つがスクウェアメイジってわけか」
「そ、そうよ。後、同じ系統を足すと、より強力な系統魔法が使えるの」
魔法は俺からして未知の産物ではなかった。多少の差異はあれども、譜術と変わる部分が少ない。
「ルーク、あんたハルケギニアの外から来たのよね。そっちの魔法も私達のと同じなの?」
「多分な。ただ、こっちは、一度使われた術を利用して、系統を足している」
「どういうこと?使われた魔法を利用するって?」
「術を発動した後、その場には音……エ、エネルギーが高い濃度で残留する。そいつを自分の術と組み合わせる。例えば、『土』の術で攻撃した後、そいつを『水』二つの術に取り込めば『水』『水』『土』のトライアングルになる」
音素による変化技の説明をしてしまった。予期せぬ共通項が妙な親近感でも抱かせたんだろうか。
空間を隔てるほど遠いのに、奏でる音は近いハルケギニアに俺を召喚した少女を脇目に捉える。
何故か、爛々と瞳を輝かせていた。そして、唇が引きつっていた。俺は人が感心するようなことを話した覚えはないのだが。そもそも、この陰陽が奇妙に混じった顔は何だ。
「ね、ねえ。い、今の、え〜と、一度使った魔法を再利用する方法って、わ、私にもで、できるの?」
「俺は魔法の知識が乏しいから何とも言えん。それより、何でそんな事を知りたがる」
系統が四つとはいえ、ほとんど譜術と扱っても問題ないだろうから、不可能って事はない。ただ、こいつがそれを欲する理由がわからない。
「え、いや、あの……、その」
「ミス・ヴァリエール!」
不意に届いた下からど突かれるほど質量を持った声に、俺もルイズも体が跳ね上がりそうになった。
「は、はい!」
「授業中の私語は慎みなさい」
「すいません……」
何たる失態だ。俺ともあろう者が。僅かな心の緩みでマナーを守れんとは。
「おしゃべりをする暇があるなら、あなたにやってもらいましょう」
「え?わたし?」
ルイズが何をやらされるかは分からない。処罰ではないだろうが、その原因の半分を作った心が疼く。
「そうです、ここにある石ころを、望む金属に変えて御覧なさい」
単なる演習と安堵した俺とは裏腹に、教室中の貴族が猛獣に遭遇したかのごとく、恐怖を貼り付けた顔で俺達を注視していた。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:40:25 ID:/B5pWkaL
しえん
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:40:25 ID:/B5pWkaL
しえん
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:41:35 ID:/B5pWkaL
支援
514異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:41:42 ID:RviVrGO/
状況を整理することができない。何故、ただの魔法の演習をするだけの事で、敵軍に追い詰められた軍隊の様相を呈するんだ。
特にキュルケは、ルイズにやらせるな、とシュヴルーズを嗜めている。この高慢ちきの何が問題なんだ。
途中に私語をしてしまったものの、それまでは真面目に授業を受けていた。ルイズの授業を受ける態度には落ち度がない。
しかし、当の本人は指名された途端に、帰還困難な戦場へ赴く兵士のごときオーラを放っている。
異様な光景に、俺の頭は危険だという警告を発令しっぱなしだ。
とうとう、キュルケはルイズに自制を促した。しかし、それはルイズの反骨心に火を付けただけかもしれない。
覚悟を決めた女が席を立った。その右手には、俺が渡した譜石が握り締められている。軋み、壊れそうなほどの握力で締め上げられて。

シュヴルーズは魔法の説明をし、ルイズはそれを食い入るほど熱心に聴いている。
「畜生……。何で『ゼロ』のルイズにやらせるんだ」
誰かの言葉が耳に入った。
『ゼロ』。そういえば、ロレーヌって奴が嫌みったらしい口調で口にした単語だ。
二つ名であることは分かる。何を表しているかは不明だ。少し候補を思い浮かべた程度では正答に辿り着けそうもない。
二つ名は、己の特徴を模したものだから、ルイズの魔法を拝見すれば何かしらのヒントは得れるだろう。
とりあえず、今はルイズのお手並みを測ることにした。
教室の最下段に設置された台に隠れたルイズの右手が掲げられる。指先には、詠唱用だろう、杖を挟んでいる。
杖に音素が集約されるのを感知した。これは『土』の講義だから、使われるのは第二音素だ。
しかし、何故か杖を纏う音素に第二音素が存在しなかった。別の音素が放出されているのだ。
疑問を感じだので、感覚を研ぎ澄まして音素の正体を探る。馴染みのある音素だ。俺の体内に同調して振るえる音素。
次の瞬間、脳が指令を出す前に、俺は机から飛び出していた。
こいつは『土』じゃない。俺に届いた音、それは紛れもなく第七音素。
第七音素を媒体にする魔法はそう数があるものじゃない。この音は、全てを破壊し消し去る超振動以外にありえない。
「よせ!ルイズ!」
腹の底から全ての空気を吐き出しそうなほど、全力で叫んだ。しかし、時既に遅し。杖は振り下ろされた。
閃光が瞬く。望まぬ終わりが俺を締め付ける。ルイズの下へ走る間もなく、俺は爆風に飲み込まれた。

超振動の炸裂。至近距離でそいつを食らえば、あの世への階段が拝める。しかし、ルイズのそれは拍子抜けをする威力だった。
せいぜい、机と窓の破片を撒き散らし、人間と使い魔が暴れる程度。怪我人といっても、シュヴルーズが壁に叩きつけられただけだ。
これは中級譜術の下の部類ほどの破壊力もない。
だが、被害がどうあれ、それが超振動であることには変わらない。その事実が俺の体を投げ出させる。
「ちょっと、失敗みたいね」
「何が失敗だ!どうして何も考えずに超振動を使った!」
真横で怒鳴られたことに驚いただけのルイズは俺の神経を逆撫でするには十分だった。
515異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:42:57 ID:RviVrGO/
日が最も高く昇る頃、ルイズが滅茶苦茶にした教室に二人の人間の姿が動いている。この惨事の張本人とその使い魔だ。
今、俺達はルイズの超振動で瓦礫の集積場と化した教室の片付けをしている。こうなった原因は俺達なのだから、当然の処置だ。
どうせ邪魔になるだろうから、ご主人様には現場監督を任せてやった。本人もその気になり、司令官よろしく、台の上で足を組んで上官風を吹かしている。
時間を大分食ったが、もう終わりが近い。机を運んで並べる作業が残ってるだけだ。
本来なら、もっと時間を短縮できただろう。暇なのをいいことに、あれこれ聞いてくる監視役さえいなければな。
「何度も聞いてやるわ。チョウシンドウって何よ。教えなさい」
「駄目だ。何度も繰り返させるな」
教室に二人だけ残されてから、ずっとこの始末だ。ルイズが超振動を放った直後は俺が叱っていたのだが。
こいつは俺の言葉が耳に入ってるのに、機嫌を悪くする兆しを見せなかった。
その反面、暗闇の中の光を求めるように、俺に縋ってきたのだ。超振動とは何か、と。
「何よ、いいじゃない。私が何て呼ばれてるか知ったでしょ」
その理由がこれだ。ルイズの『ゼロ』は、魔法の成功率のことだと本人から聞かされた。長年、それをネタに馬鹿にされていたそうだ。
そいつを克服するために、誰にも笑われないようにずっと努力を続けていたらしい。
「だから教えて。私は自分の魔法が何なのか知りたいのよ」
同情できないこともない。しかし、今のルイズに詳細を語ることは無理だ。
こいつは奴と同じ臭いがする。自分を認めさせようとして、町一つを地図から消したあの劣化レプリカと。
「断る」
「何でよ!気に食わないけど、あんたは私の魔法をどうにかできる手がかりなのよ。お願いだから、チョウシンドウの事を話してよ」
どれほど頭を下げられても、金を詰まれても、俺は折れない。
単なる疑問の解明ならいくらでもしてやるさ。だが、超振動を知ってどうするつもりだ。
お前みたいに、己の力を証明する目的で使いかねん人間に教えられるか。たとえ、星の記憶に記されよとも、俺はそいつを突っぱねる。
「あんた、私が生意気だからへそ曲げてるのね。小さい男ね。謝ってあげるから、あなたの知ってること、洗いざらい話なさい」
俺が小さいならお前の態度は巨人並だ。背丈のまま進む平行線が交わることなどありはしない。
数えるのが面倒なほど、同じ話題がループしている。そろそろ、下らなく、生産性のない問答は御開きとしたい。
「ふん、今更黙っても私は引かないわよ。あんたからチョウシンドウのことを聞き出すまで諦めないからね」
どれほど、根気を続かせても、墓の穴までは追いかけられまい。我慢比べは最初から俺の勝ちが決まっている。
「聞きたいことが山ほどあるけど、もう昼食の時間が近いから一旦休憩」
「そのまま休憩してろ」
「いやよ。ルーク、今日中にチョウシンドウについて教えなさい。絶対よ」
拒否させてもらう。絶対にな。超振動の詳細は信頼できる相手でもなければ、口外していい力じゃない。
やたらと机に重量があるのは、次々に増える重荷も一緒に乗っかっているせいだろうか。
516異世界に灯る聖なる焔(代理):2009/01/25(日) 22:44:25 ID:RviVrGO/
投下終了です
ド・ロレーヌは資料がなかったので勝手に外見を想像してしまいましたが、大丈夫・・・ですよね
ハルケギニアの音素は、アビスの世界観と合わせる必要があったため、ゼロ魔の魔法をいじくりました

ディストの通り名ネタは漫画版の番外編から
薔薇のディスト様のネーミングセンスはオールドラントで並ぶ者なし

次回は決闘編。アッシュと対峙するのは誰かな?
---------------------
以上、代理にてお送りしました。
この休みは代理投下に縁があるなぁ……
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:44:39 ID:6jf7WpQA
支援
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:44:46 ID:/B5pWkaL
支援
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:44:51 ID:/B5pWkaL
支援
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:48:49 ID:qC/OrMZH
アッシュ乙

魔法と音素のすり合わせに頭をひねった後が見えるな
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:49:26 ID:6jf7WpQA
って、終わってた
乙でした〜代理の方も乙!

謝ってあげるから、って謝る人の態度じゃないよねってか上から目線だよね
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 22:53:05 ID:hE9hIywz
投下乙!
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:00:01 ID:hE9hIywz
そういえばアビスといえばシンクを召喚したら面白そう
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:02:08 ID:syr3ZnKo
アッシュ・リンクスを召喚させようとしたけど18禁描写多そうだから止めた。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:12:03 ID:0ytV2MkV
召喚する気なんて無いし、最初からSS書く気も無いからやめた
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:14:20 ID:HAkfCyl8
>>525
お前の一人語りなんて聞いてねぇ
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:20:57 ID:JBDAroBs
豪血寺一族の豪血寺お種を召喚したら、最初の契約のキスでルイズが吸われたりするんだろうか?
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:22:40 ID:V9OG1TUP
>>526
皮肉じゃね?
529 :2009/01/25(日) 23:28:17 ID:UcOCFANt
>>527

それならヴァンパイアセイバーのモリガンを召還したら、最初の契約のキスでルイズが白骨化していきなり物語が終わってしまうなw
530ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:29:32 ID:Fr4AsY+8
えーと、投下出来るようでしたら
ゼル伝のトワプリンク召喚を
これから投下したいと思います
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:30:21 ID:wbH+zkyS
とうとう緑衣の勇者キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:32:24 ID:/B5pWkaL
>>530
とりあえず、sageを忘れないように。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:32:50 ID:12aaaGei
>>530
とりあえずsageて下さい。
いちいち入れるのが面倒なら専用ブラウザの使用をお奨めします。
534ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:33:04 ID:Fr4AsY+8
 
 その日、トリステイン魔法学院では、春の使い魔召喚の儀式が執り行われていた。生徒達は自分の使い魔となる生物の容貌を期待に胸を膨らませたりしているが、彼らの系統を判断するための大事な儀式なのだ。
 大半の生徒達が召喚を終えていく一方、派手な爆発を繰り返すだけで、一向に使い魔の姿を見せない召喚を繰り返している生徒がいた。
 召喚に全く成功しない彼女を、周りでその様を見ている生徒は指差し、声に出して嘲り笑う。普段から魔法の成功を見せたことのない彼女を馬鹿にする者は少なくない。ルイズは半ば自棄になって召喚に挑んだ。
 
「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに応えなさい!」
 
 何度目かも判らない召喚に、とうとう彼女の使い魔は現れた。だが、その使い魔の容貌は他の生徒の召喚したもののそれと大分異なっていた。
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:33:13 ID:IIoUE6vE
スレの残り要領が少ないから、次スレが立ってからの投稿をお奨めします。
ってことで、次スレ立ててきていいか?
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:37:34 ID:IIoUE6vE
タイミングよく(?)480KB踏んだんで立ててきました。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part208
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232894176/
537ゼロの伝説:2009/01/25(日) 23:37:54 ID:Fr4AsY+8
>>535
あ、でしたらそうすることにします
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:43:30 ID:eu7G7IAC
600にも達してないのに次スレの季節か。
相変わらず流れの速いスレじゃのう。
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:50:24 ID:YVB9MjWR
500kbなら一方通行さん召喚でエルフと反射合戦
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/25(日) 23:59:59 ID:rglDJMry
500kbならSO2より双頭竜を召喚してルイズが呪われる
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:04:28 ID:EQ0s3lb1
500kbならDODのカイムだけを召喚
っていうのを書く
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:06:00 ID:AEX1t2oA
>>539
一方通行はもう呼ばれているよ一年以上更新停止しているけど。
あと、戦車砲で破られる反射では、一方通行の自転砲をとめられないでしょう。
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:07:12 ID:nmiBfOUY
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
かすかなるやんでれ
いちめんのつんでれ

いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
るいずのおしゃべり
いちめんのつんでれ

いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
いちめんのつんでれ
さいとはうんのつき
いちめんのつんでれ。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:08:14 ID:Fyx70IuR
>>543
何だろう、この目から落ちてくる滴は。

久しぶりに文学に触れた。
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:09:24 ID:m+yt7fCN
>>543ってまとめに載せるべきか?
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:14:19 ID:NcVhMKCm
小ネタに載せようかと思ったが・・・
wikiのいじり方が判らない・・・
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:15:48 ID:6bk5Uq4h
500なら魔法探偵ハリー・ドレスデン召喚
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:18:12 ID:nmiBfOUY
>>543
書いて、送信してから思った。
今のルイズは「いちめんのでれでれ」だな、と。


ちなみに、言わんでも判ってると思いますが、>>543は山村暮鳥の「風景(純銀もざいく)」が元ネタです。
 
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしゃべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな。
 


549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:21:13 ID:elU9hqBh
「いちめんのかれーざら」を思い浮かべたのは俺だけでいい
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:22:03 ID:YLBlUJ9j
アッシュって中二病?
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:25:22 ID:nmiBfOUY
>>549
みさき先輩のことかー!

かるくなるおさいふ

あれは笑った。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:34:26 ID:Fyx70IuR
>>548
良かったよ。
こういう、くすりと来る作品、俺は大好きだよ。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:42:00 ID:BwLdmY8y
きょ、きょうようをようきゅうするなー
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:44:56 ID:RJnzPwL/
500kbならゼロの使い魔映画化
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:49:51 ID:nmiBfOUY
>>553
教養を強要するなと申したか。




……まさかホントにwikiに登録されるとは……
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:51:34 ID:zEj9LTNz
500kbならゼロの使い魔ハリウッド映画化
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 00:58:00 ID:J/eO1oqc
                                          ○________
                               埋め          |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
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                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>


558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:02:33 ID:J/eO1oqc
                                          ○________
                               なぎ払えー       |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>


559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:04:22 ID:nmiBfOUY
AAで埋めるのってのは芸がないな。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:05:45 ID:nmiBfOUY
500KBなら魔法の将軍ジェネラル・ナチ召喚。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:07:43 ID:psY1jGUL
AA張るなら一緒に次スレURLも入れてくれ
まあ無理に埋める必要も感じないけど
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:08:29 ID:SxisJ3b8
500KBならお喋り刀と鉄仮面召喚。
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:08:55 ID:J/eO1oqc
                                          ○________
                               埋め          |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:13:32 ID:fWKWPPUi
500kBなら今月中に投下する
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:13:58 ID:6s1vBw4V
500なら今日中に投げる
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:14:14 ID:gdPzRpcA

              ヽ |l | /ヾ|、 ノイ  /! /_,|イ'l´    |   \   この感じ… あの作品のキャラがルイズに召喚されました
_______∧,、_ 〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| /   ト、    ヽ _ ______   Part208 http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232894176/ ね…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄/   |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ  7   .!  ヽ     \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            /    |  |             /   |ヽ、|     〉
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:15:40 ID:NcVhMKCm
おしまい
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:15:48 ID:Y5Ko9aCw
500kbならフェイトさん召喚!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:17:07 ID:6+2kjxCQ
500kなら護堂十字を召喚するけど、誰にも分かって貰えない。
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:18:24 ID:nmiBfOUY
500KBなら
高町なのは with くーちゃん召喚。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:19:39 ID:nmiBfOUY
いや、やっぱキャプテン・ロジャーフォーチュン召喚。星海王ブラスでもOK.
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:20:39 ID:j0d7vfjE
500tならワンピースから麦わら海賊団を召喚
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:26:19 ID:aNkZQE/c
500ならミンサガから海賊シルバー召喚
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:28:08 ID:gdPzRpcA
orz < あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part208 http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232894176/
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/26(月) 01:30:19 ID:4P+49YGU
500ならFSSのアマテラス召喚
576名無しさん@お腹いっぱい。
>>543

こうか?


んでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれ
つんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんで
れつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつん
でれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつ
んでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれ
つんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんで
れつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつん
でれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつ
んでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれ
つんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんで
れつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつん
でれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつ
んでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれ
つんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんで
れつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつん
でれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつんでれつ