あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part206

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part205
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232112440/



まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:14:05 ID:biJooxwb
>>1
スレ立て乙です。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:17:38 ID:KrNDt8ra
http://www35.atwiki.jp/anozero/pages/5957.html

使い魔の左手、悪魔の右手-01

--------------------------------------------------------------------------------


作品内容に別作品からの盗用疑惑がかけられているため、一時的に掲載を取りやめております
詳細は避難所の運営議論スレ5,>>888->>907を参照。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:21:36 ID:W9oe/QTE
スレたて乙です>>1
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:31:49 ID:RiGVRmAw
スレ立て乙です>>1
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:35:16 ID:rCtxrLpC
1さん乙!
メンヌヴィル、ラーメンお湯入れ、麺ノビル
なんつってかんつって
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:21:44 ID:F2dt+6tz
二次創作自体が原作者の著作権を侵害しているんだから二次創作間で盗作って無意味だよね
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:27:58 ID:OWEMdwG1
へばこのスレ一番乗り、といふことで
半年振りに投下させて頂くです

キャラは「甲賀忍法帖」の甲賀眩乃介。
40分頃からよろしおまっか?
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:28:24 ID:OWEMdwG1
失礼、タイトルは「ゼロの視線」です
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:32:53 ID:KmCwNHBB
>>8
漫画版のバジリスクしか知らないけど支援
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:34:55 ID:4gnzG9bd
瞳術キター。
支援。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:37:54 ID:KmCwNHBB
そう言えば破幻の瞳ってメイジに効果あんのかなぁ
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:41:58 ID:ocDL5XYE
>>12
あれって一級フラグ建築士カミジョー氏の上位互換版だろ?
見るだけでかたっぱしから異能殺し
14ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:43:01 ID:OWEMdwG1
第四話


ごりごりごり

「あら・・・・・あなたは確か・・・・・・ミス・ヴァリエールの使い魔さんですね?」
「ええ、甲賀眩乃介と申します」
「コウガ・・・・・・・ゲンノ?」
「眩之介でけっこうです」
「ではミスタ・ゲンノスケ。このような朝早くから何をされてるのですか?
 あ、わたくしはロングビル。
 オールド・オスマンの秘書をしておりますわ」
なにやら植物を、おそらくコルベールあたりから譲り受けたであろう鉢に入れ
すりこぎのようなものですり潰している。
「薬を作っているのですよ」
その言葉に眉をひそめるロングビル。
「薬?ではあなたは水のメイジなのですか?」
「めいじ・・・・・というと術使いのことですね。
 いいえ、わしはあなた方の言うめいじとやらではありません」
「ですが・・・・・・」
とここで頭をひねり、ちと考える眩之介。
「物にもよりますが、薬を作るのには術などいらないのですよ」
その言葉に驚愕するロングビル。
「そ、そんな馬鹿な!」
「そうですね・・・・・・この草が見えますか?」
「それは・・・ヴァルヌ草ですね。
 実を齧るとお腹を壊すといわれてますわ」
「わしの故郷では違う名で呼ばれているのですがね、こう考えてみてください。
 食べるとお腹を壊すのなら、ごく少量服用すれば便秘や解毒の薬になるのだと」
「!」愕然とするロングビル。
「どうやらこちらでは術師の能力が優れている上一般的になり過ぎていて
 術師を介さないで何かをする、という考えがあまり無いようですね」
「ええ・・・・・・・・・」
「他にも、これをご覧ください。
 これはわしの地ではチョウセンアサガオと呼ばれています。
 マンダラゲとかキチガイナスビともいいますが。
 この花を摩り潰すことで眠り薬が作れるのですよ」
「花から作り、魔法を使わない眠り薬・・・・・・・」
「他にも一時的に痛みを消す薬や毒を消す薬などがあります」
「それが広まればメイジの権威など朝日の前の霧のように掻き消えてしまうでしょうね」
 今度、それらの作り方を教えていただけますか?」
「かまわぬが」
「そんな薬の作り方を知れば、故郷の妹たちも多少は自力で稼げるようになるでしょう。
 あの子達のために稼ぐのを苦労とは思いませんが、自分の足で立つ事も覚えさせないと・・・・・・」
そうつぶやくロングビルを、ひどく優しい目で見つめる眩之介だった。
15ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:45:19 ID:OWEMdwG1
しばらく話をした後それでは、と去っていくロングビル。
その後姿を見送った後妙な気配に見ると、青い羽の生えた竜らしき生き物が
興味深そうに彼の手元を覗き込んでいた。
たしか、たばさなる娘の傍にいた。
「きゅいきゅい」
「興味があるのか」
「きゅいぃ・・・・・・きゅきゅい」
少々退屈だけど見ておきたい、そう言っている風に見受けられる。
ほいっと花を、その竜の口に放り込む。
「きゅい?」
驚いたようだが、少しすると笑顔(らしきもの)を浮かべて噛み始める。
「その花の蜜は甘いだろう」
「きゅい」
そろそろ時間だ。
ご主人様とやらを起こさねばなるまい。


時は昼。
主人を起こし、身支度を整えた後授業とやらに送り出した後裏庭でまた薬を作り始めた眩乃介。
「子供が働く事無く学べる、か。平穏でよき地のようだな」
子供が学問に入れ込むなどごく一部の贅沢でしかなかった日の本を想う眩乃介。とその時
「何者!」
自らに向けられた気に飛び跳ね、腰の小刀に手をやる。
見ると、青い髪の少女が居た。
「君はたしか・・・・・・・たばさといったね」
こくりと頷くと「聞きたい事がある」と問いかけてくる。
答えられることなら、と答えると返事をする眩乃介。
「まず、私たちメイジは普通使い魔の見たもの、聞いた事を知る事ができる」
そういえばるいずどのもそう言っていたな。
「その上でシルフィード ー先ほど貴方に蜜をあげた青い竜の名らしいー から聞いた。
 貴方は解毒の薬を作れるのだとか。
 それはどのような毒でも消せるの?」

残念だがおそらく否、と答える。
「某の住む地は貴公らほど術が発達していない。
 貴公らの術を持って作られた毒はおそらくだが某の薬では消せないだろう」
「そう」
表情も態度も全く変わらないのに物凄い勢いで脱力したように感じさせるたばさなる少女。

とその時、巨大な轟音が大地を揺るがす。
見ると巨大な −おそらくは10丈(約30メートル)ほどー 人型が少し離れた場所に建っている
石作りの塔を殴りつけていた。
何事、などと一瞬も躊躇したりはしない。
即座にその塔めがけて走り出す。
数瞬遅れてタバサも走り出す。
「急がねばならんだろうな」
鍛えぬいた眩乃介の耳が、あの人型の足元でご主人様とやらの声を聞きつけたのだから。
「何があったのか知らぬが、全くいらぬ事をする」
かつての部下であり友人でもあった、やたら騒ぎを起こす丸っこい男の事を思い出しながら主人の下に駆けつけるのだった。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:45:42 ID:4gnzG9bd
>>13
固定化が片っ端から解けたり
杖がただの棒切れになったり使い魔のルーンが全部取れたり……。
17ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:47:33 ID:OWEMdwG1
たどり着いてみると、巨大な土の山の傍にルイズと・・・・・キュルケといったか?
赤毛の少女が佇んでいた。
「何事」
タバサの問いにキュルケが答える。
「このゴーレム −人型のくぐつをこの世界ではごーれむと呼ぶらしい そういえば昨日のぎーしゅもそう言っていたな
ー 
 が宝物庫に穴を開けたのよ!
 マントを羽織った人影が逃げていくのも見えたわ!
 おそらく『土くれのフーケ』よ」
その名は何かと聞くと、貴族のみを狙う義賊気取りの泥棒だ、とのこと。
石川五右衛門のようなものか。
背に大筒を背負った小太りの男の姿がなぜか思い浮かんだ。
どの地であっても似たようなのはいるのだな。
その時ようやく、年長者が数名駆けつけてくるのが見えた。
事情とか状況とかを説明せねばならないだろう

「ふうむ」
学園長の執務室で、ルイズ達の話を聞くオスマン。
調査で、宝物庫から「破壊の杖」が無くなっている事が判明している。
すでに時は夕方。
後片付けやらなんやらで、ひどく遅くなってしまった。
「『土くれのフーケ』、か」
なにやら思案を練っているように見えるオスマンは実は次のセクハラの手段だの
美人の下着の色だのを考えてるに決まっていると女性陣に陰口を叩かれていた。
「そういえばミス・ロングビルは?」
コルベールの言葉に「数時間前から姿が見えんのじゃ」と答えるオスマン。

とその場にうわさをすれば影、とロングビルが駆け込んでくる。
「どこに行っておったのじゃミス・ロングビル。
 必要な時に姿が見えんでは色々と」
「それより学園長、フーケの足取りが掴めました!」
「なんと!
 するとミス・ロングビルはこの調査をしておったのだな」
「はい、まあそんなところです。
 で、フーケについてですが近在の農民に聞き込んだところ少し前に近くの森の廃屋で
 黒ずくめのローブの男を見たそうです。
 恐らくその男がフーケかと」
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」コルベールが叫んだ。
「ばかもん、その間に逃げてしまうわい。第一、降りかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族じゃ。
 魔法学院の宝が盗まれた、これは即ち魔法学院の問題じゃ。当然我らで解決する!
 では、捜索隊を編成する。我は戸思うものは、杖を掲げよ」

誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだ。


「おらんのか? 我こそフーケを捕まえんいう貴族はおらんのか!」

「私が参ります!」
18ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:50:08 ID:OWEMdwG1
はいここまです。
当然ながらヴァルヌ草とやらは勝手に作りました。
今回はフーケ襲撃もですが、どちらかというとロングビルと眩之介の接触がメインです
なるべく早く次も投下したく存じまする。

今宵はこれにて
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:51:14 ID:KmCwNHBB
>>16
全員強制的にゼロだな。弦之介を選んだ氏の判断は正しかったようだ支援。
20ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:51:26 ID:OWEMdwG1
あ、最後の一行が無かったです

「私が参ります!」
ただ一人、たかだかと杖を掲げるのは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人であった。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:54:18 ID:KmCwNHBB
おっと終わってたか、乙。

ところで、名前が眩乃介だったり眩之介だったりしてるんだが。
22ゼロの視線:2009/01/19(月) 15:55:42 ID:OWEMdwG1
>>21
それも間違いでする
申し訳ない しくしく    眩之介が正解なのですー あうううぅ

23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:58:23 ID:qgyi7rUl
>>17の絶妙の引きが(苦藁
なにはともあれ乙
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 16:42:08 ID:4gnzG9bd
>>22
乙です。バジリスク好きなんでwktk
25ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 16:48:53 ID:8G9tDoxq
投下予告させていただきます。
17時00分を予定しております。
よろしくお願いします。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 16:52:05 ID:HtEmAdxE
>>23
藁とか久しぶりに見た
27ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:00:50 ID:8G9tDoxq
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン−3

トリステイン魔法学院 夜

太陽も完全に落ちて、三人は明日、この学園の責任者でもあるオールド・オスマンと会談する事になった。
コルベールはゼータとダブルゼータのルーンのメモを取り、自室へと戻ってしまった。

一応、三人はそれぞれ召喚された三人の部屋に泊まることになった。
ルイズと話す必要性のあるニューと取り敢えず疲れたので休みたいというダブルゼータはそれで異論はなかった。
だが、一人がその流れに難色を示した。ゼータである。
アルガスの騎士としてゼータは女性、しかも嫁入り前の少女と一緒に泊まるのは問題があると抗議したのであった。
「何を恥ずかしがっているのよ?アンタはゴーレムでしょ?
それに使い魔が主人と一緒の部屋で寝るのは、なにもおかしな事じゃないわよ。」
当然のことながら、ルイズはゼータを異性として全く認識していなかった。
「私はゴーレムではない、立派なモビルスーツ族だ!とにかく、
騎士としてそんな嫁入り前の女性と同じ部屋で寝るという事は許されないと言っているのだ。
私は野宿させてもらう、タバサ殿、話は明日聞きますので失礼します。」
ゼータがその場から立ち去ろうとすると
「だめ・・」小声だが力強い否定でタバサがゼータのマントをつかむ。
「タバサ殿!!」自分の提案を拒否され少し驚くゼータ。
「あなたは私の使い魔」
「ですから――」
「騎士は主を守る者」タバサがつぶやく
「うっ!」ゼータにとっての正論が彼を射抜く
「騎士は女性を守る者」更にタバサが逃げ道を塞ぐ。
「・・・」ゼータは言葉を探す。
「ゼータ、タバサ殿の言う通りだ」
兄弟子は助け船ではなく追い打ちをかける。
「我々はこの世界の事をよく知らない、ならば彼女達のルールに従うのが筋だろう、それに我々には情報が必要だろう。」
ゼータはタバサの目を見る。自分が一緒の部屋に行く事に対しての拒絶はないようだ。
(仕方ないか・・・)
「――わかった。」
ゼータはこの場で望まれる回答をする。
「じゃ、部屋に行きましょうか。」
キュルケが全員を促し、それに続き惰性で歩き出す。三人は部屋が近い事もありそれぞれほぼ同時に部屋に入って行った。
28ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:01:55 ID:8G9tDoxq
ルイズの部屋は学校の寮とは思えないほどで、高価な調度品が置かれていた。
ニューは部屋のあたりを見回し、ルイズと同じ年の頃、自分が従者だった時の部屋と比べていた。
(すごいなぁ、貴族の学校というのはこのようなものなのか・・)
実家ならともかく、数年しかいない部屋でこの様なら彼女の実家はどの様なものなのだろう?そんな事を考えていた。
部屋を物珍しそうに見渡すニューの事は気にせず、ルイズは部屋に入った時ある事を実行しようと考えていた。
それは使い魔の契約であった。
ルイズはニューの魔法を見た時から、この事だけを考えていた。
最初は変なゴーレムを召喚したと思ったが、ニューの見せた見たことのない魔法がルイズに使い魔の契約を踏み切らせた。
(確かに変なゴーレムだけど、これは多分当たりよ、だってあんな魔法見たことないもの。
それに、見たところそれほど凶暴そうじゃなさそうだし・・)
「メイジの実力を知りたければ使い魔を見よ」という格言がるように、メイジにとって使い魔は重要なものである。
(ただ契約の事をどうやって切りだそうかしら、さすがに契約は一生で、しかもその方法がキスだと言ったら、
このゴーレムもどう出てくるかわからないし、そもそも、まだ契約してないから迂闊に動くわけにもいかないわ・・)
強引にでも契約したいが、相手の能力を考えるにそれは自身にも危険かもしれない。
ルイズがそう思い、何かいい案はないかと思案を巡らせていると・・
「ルイズ殿」
部屋を見回し終えたニューがルイズに声をかける。
「どうしたの、ニュー」ルイズは初めて使い魔の名前を呼んだ。
「君とは使い魔の契約を結んだ訳だが使い魔とは何をすればいいのだ?」
ニューは自分のすべきことが何なのかを理解しておらず、ルイズに聞いてきた。
(もしかして、もう契約したと思い込んでいるの?)
ニューの言葉から内心で拳を上げる。
「えっとね、ニュー・・」
ルイズは少ししおらしく上目遣いでニューを見る。
ルイズは策を弄する事にした。
「契約なんだけど・・あなたはまだ仮契約の状態なの・・」
「え?どういう事だい?」ニューが続きを求める。
「確かに召喚されたらすぐ契約するものなの、けど私、あなたが何者かわからなくて・・」
俯き徐々に声のトーンを下げながら、ルイズは顔を曇らせる。
「そうか、私はこの世界では珍しいようだからね、君がためらうのも無理はない」
「いいのよ、けど、あなたにも意思があるのならあなたの了承を得たいの・・
私はあなたと契約したいの・・いろいろあるけど、その・・召喚した使い魔と契約しないと私・・留年しちゃうの!」
「ルイズ殿・・」
少し湿らせた声にニューは明らかに動揺している。
(ルイズ、殿方を落とすには時には女の弱みを見せることも重要なのよ)
友人であるアンリエッタの言葉が脳裏をかすめる。
「ルイズでいいわよ、ニュー、私と契約してくれる?」
少し目を潤ませ、もう一度俯いた顔を上げる。アンリエッタとの研究と特訓で編み出した技の一つだった。
ニューは少し考えた後、ルイズの望む答えを与えた。
(契約といっても、それほどの物ではあるまい)
どうせ自分は故郷に帰るのだから。
その考えを数分後に死ぬほど公開するのだが、今のニューは当然知らない。
「――わかった、アルガス騎士団法術隊隊長 ニュー、君と契約しよう。」
(うおぉぉぉぉっしゃっああああぁぁっっ!!!)
今までの人生の中で最大音量の咆哮がルイズの心の中に響いた。
この時、使い魔の契約は一生という事を伏せていなかったら、さすがにニューも契約しなかっただろう。
しかし、ルイズは当然それが爆弾であることに気づいていた。
「では私は何をすればいいんだい?」
ニューは契約の方法を聞いてくるという事は、了承したと考えてもよかった。
(だめよ、ルイズ!まだ開演中よ!ここからが正念場よ!)
脳内のアンリエッタが喝を入れる。その喝でルイズは現実に戻る。
「契約の方法なんだけど・・その・・キスなの・・」
29ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:02:38 ID:8G9tDoxq
「キッ、キスゥー!!」
赤らめて、少し恥ずかしそうに顔を下に向ける。
衝撃ともいえる方法とルイズの仕草がニューの思考に止めを刺した。
「わぁっわかりました!ルッ ルイズ!で、では目を閉じていますね。」
思わず敬語になり、潰すように強くニューが目を閉じる。
ルイズは流れが順調に行っていることに、ほくそ笑む
「うん・・ありがとう、ニュー・・」
ルイズは手を緩めない。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我が使い魔となせ」
ルイズの唇がニューの口に触れる。
それは一瞬でありルイズの顔の気配が離れるとニューは目を開けた。
「ルイズこれで契約はかうぉ!!つうぅぅぅ!」
ニューは右手を抑える。光となってルーンの刻印が刻まれる。
「契約のルーンが刻まれているの、すぐ終わるから」
しばらくすると、光が収まりニューの感じた痛みが徐々に薄れていく。
「はぁ、はぁ、・・ルイズこれでいいのかい?」
「えぇ、これで契約は終わりよ、今からアンタは私の使い魔よ」
舞台は幕を閉じた。
「え、ルイズ?」
「ニュー、私の事はご主人様って呼んで?」
ルイズは満面の笑みで告げる。しかし、その笑顔は何故か恐ろしかった。
「どうしたのだい、ルイズいきなり・・」
「ルイズじゃないわ、ご主人様よ馬鹿ゴーレム!!今日から一生アンタは、私の使い魔よ!」
ルイズが嬉々としてニューに宣言する。
「なっ、なんだって!もしかして騙したのか!?」
「騙してないわよ、アンタと契約しなきゃ本当に留年させられるもの。」
「そうではない!契約する為にあんな嘘の態度をとったのか?」
「あれは本当よ、だって契約方法は恥ずかしいし、留年は泣くほど嫌だし・・
とにかく今日からあなたは私の使い魔よ!というわけでアンタは、これから一生、私の為に掃除、洗濯などの雑用をやってもらうわよ!」
「ふざけるなー!!」
最大限の音量と共に、ニューは自分の迂闊さを呪いトリスティンの1日は終了した。
30ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:03:33 ID:8G9tDoxq
キュルケの部屋では、ベッドに座ったキュルケに対面する形でダブルゼータが床で胡坐をかいていた。
「使い魔ってのは、何をやるんだ?」
ダブルゼータは、契約の実感がない様子でキュルケに尋ねた。
「使い魔には三つの役割があって、一つが視覚の共有なんだけど、さっき試したけど駄目だったの」
(ルイズなら笑い話ですむんだけどね)
キュルケは内心でそう思った。
「まぁ、いいじゃないか二つ目は?」
全然気にも留めずダブルゼータの態度に、溜息を少し漏らす。キュルケは怒りよりも、
ダブルゼータが、物事にあまりこだわらない事に気付き始めていた。
「二つ目は秘薬の材料なんかを見つけてくるのだけど・・あなたじゃ期待できなさそうね」
二つ目も、たぶん無理だろう。ダブルゼータにはそのような事が出来るようには、とてもではないが思えなかった。
おそらくキノコの調達を頼んだら、キノコの代わりに毒キノコを持ってきそうだ。
「失礼だな、俺はこれでも山には長く住んでいたから、キノコや薬草なんかには結構詳しい方だぞ」
ダブルゼータは山で修行中にアレックスに引き抜かれた経緯があるだけに、ある程度、そういった知識は持っている。
「旅の途中、野宿した時に、俺が見つけたキノコで飢えをしのいだこともある程だ。」
「後で実はワライダケでしたってことはないでしょうね?」
キュルケは話の顛末を予想する。
「そんなミスはしない、現に俺は次の日は普通だったぞ。
ただ、多少の慣れが必要で、ゼータやニューは慣れないから少し体調を崩したけどな」
ダブルゼータは胸を張って答える。
(あなたは慣れているのね・・お腹が)
毒物を少量接種して耐性をつけるのと同じだろうもっとも、ダブルゼータは少量ではないから耐性は尋常ではない。
二人に同情しつつ、キュルケは最も聞きたい事を聞く。
「最後に三つ目が主の身を守る事だけど・・・あなたはメイジじゃないのよね?」
魔法で木を倒したニューの姿を思い浮かべ、残念そうに聞く。
(――ルイズは自慢するでしょうね)
その時に浮かべるであろう、ルイズの勝ち誇った顔がかなり癪に障る。
「まかせておけよ、キュルケ、俺は魔法が使えないが、アルガス王国一の怪力なんだぜ!」
自信を持って、親指を立てた拳を突き出す。
「ふーん、どのくらい力持ちなのアルガス一の怪力さん?」
挑発するようにキュルケが視線を向ける。
「見せたいのだがなー、この部屋には重いものが無い、だから俺の力は明日見せよう」
そう言ってあたりを見回す。
「何言ってるのよ、このベットなんか重いじゃない」
彼女が自分のいるベッドを叩く。彼女のベッドは特別製で男三人で運んだ代物である。
「それじゃ軽すぎる、俺の力を見せるにはもっとでかい物がいい」
当たり前のように言うダブルゼータ。
「そう、じゃ明日見せてね、アルガス王国一の怪力のダブルゼータさん」
到底信じているとは思えない口調で、キュルケは寝る準備をする。
「あぁ!信じてないな、俺はこれでもこんな大きい岩を持ち上げた「おやすみ」」
多少、脚色を交えながらも、身振り手振りのダブルゼータを一瞥することなくキュルケは眠りに就いた。
「・・・本当なのに」
信じてもらえず、少し寂しそうなダブルゼータであった。
31ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:04:30 ID:8G9tDoxq
「タバサ殿」
ゼータはタバサの部屋にいた。
(この娘は何を考えているのだ・・)
あまり女性が周りにいない環境で育ち、自分の周りにいるようなタイプでは無いので、どう接していいかわからなかった。
「・・タバサでいい」
「ではタバサ、私は何をすればいいのだ、使い魔とはいったい何をすればいいんだ?」
「あなたは魔法は使えるの?」
彼女の興味はニューの使った魔法にあるらしい。
(――ニューの魔法がそんなに珍しいのか?)
ニューに劣るところはないと思っている。だから、それはゼータにとっては不満であった。
「私は騎馬隊だ、魔法や力がなくても技がある。私はアルガスでは団長に次ぐ剣技を持っていた。」
二人が魔法や力を持っているようにゼータも磨きぬいた技が有る。そして、それはゼータの誇りでもあった。
「そう・・とりあえず、私の周りにいてくれればいい。」
ゼータの能力に対して不満もなければ喜んでいるといった風でもない様子でゼータを見る。
ゼータもまた、主の言葉を待つようにタバサを見る。
「・・・寝る」
短い沈黙の後、その短い言葉でタバサは今日の行動を終える準備をする。
「タバサ!」
「おやすみ」
ゼータに毛布を一枚渡し、ゼータの抗議を黙らせる。
「・・・・・・」
ゼータは渡された毛布をじっと見つめる。
(・・今日はもう寝るか)
彼女とのコミュニケーションの難解さを感じつつ、ゼータは毛布をかぶった。
3人のトリスティンでの1日目が終わった。

「5タバサは黙々とハシバミ草を食べている・・  ]
雪風のタバサ
ゼータと契約した少女
MP 530


「6例え仮初の主であっても、タバサは必ず守る 」
剣士ゼータ
人を守るのに世界は関係ない
HP1100
32ゼロの騎士団:2009/01/19(月) 17:05:32 ID:8G9tDoxq
以上で投下終了です。
ありがとうございます。
明日には4を投下できるかもしれません。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 17:19:26 ID:ahkCobKs
騎士団の人乙でした。
誰かカードダス描いてくれないかな…
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 17:31:01 ID:7xzRt8Or
ナイトガンダムの人乙。
今のところキュルケが大当たりで次点ルイズでタバサは……ハルケじゃ大はずれだよなぁ……
ゼータが魔法世界を同切り抜けるか期待。個人的にはダブルゼータのがすきですがw
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:38:54 ID:51B49eMM
BB戦士だとゼータは頭のドリルがスプリングで発射できたような気がする
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:59:03 ID:51B49eMM
あとBB戦士で発売されたアルガス騎士団はゼータだけ!
やったねタバサ

他はガレージキットであった気がする
元祖SDは全員出てたかな?
37ジル:2009/01/19(月) 19:10:07 ID:y89RMm8a
1915時に投下
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:12:33 ID:E2IGVLG5
シカゴタイプライターによる事前支援
39ジル:2009/01/19(月) 19:15:47 ID:y89RMm8a
「……Contact.Two tangos in hallway」
「見回り?」
「うんにゃ。サボってだべってる」
「聞こえる?」
「おう。えーと……」
 デルフが代弁する。

『貴族が三人と平民一人か。怪しいな』
『貴族派に参加する傭兵では?』
『いや、流石に子供は連れていかないだろう。戦い慣れてそうな女がいたが、子供の方は論外だな』
『余計に訳が判りませんな。そう言えばマストを吹き飛ばした妙な大砲はどうなりました?』
『いや、皇太子殿下達が船員を取り調べているらしいが目ぼしい情報は……』

 突然、ジルが通路に躍り出る。
「へっ!?」
「てきしヴ……!?」
 延髄に踵を叩き込まれた空賊が意識を一瞬で手放し、反応が遅れた空賊は杖を抜こうとするが、首にデルフの切っ先を当てられ、断念する。
「貴様……何者だ?」
「質問するのはこっちよ。アルビオン王党派ね?」
「くそ……聞いていたのか?」
「最初から疑わしかったわ。粗野に振る舞ってたつもりかも知れないけど、あなたたちは空賊にしては高貴すぎたわ。まだ色々と突っ込みたいけど、取り敢えず本題に入ろうかしら」
 デルフを首から離さし、しかしジルはデルフを鞘に戻さない。
「それで、本題とは何だ?」
「私達はトリステイン王国の使者よ。アンリエッタ姫の命により、ウェールズ皇太子殿下への書状を持ってきた、ね」
「な!?」
 トリステインの使者。これが真実であれば大変な事だ。彼らは謀らずしてそれを監禁してしまったのだ。
「むう……」
「伝えておいて。あなた達のボスに」
 考えている貴族に背を向け、ジルは堂々と歩きだす。
「おい! どこにいく」
「牢に戻るだけよ。そろそろ、我が儘な御嬢様が痺れを切らす頃だろうから」
 貴族はその姿が通路の角に消えるまで、止める言葉を見つけられなかった。
 余談だが、デルフは初めて武器として使われた事に感動して静かに泣いていた、らしい。



「ただいま」
「戻ってきてどーすんのよ!?」
「んー……種を撒いてきた?」
40ジル:2009/01/19(月) 19:16:27 ID:y89RMm8a
「何のよ。まったく」
 牢に戻ってくるなり騒がしいルイズを軽くあしらい、隅に座り込むジル。対角にはギーシュとロングビルが寝転がって、片方は唸り呻き、片方はいびきをかいている。
「で、何があったの?」
「果報は寝て待つものよ。すぐに判るわ」
 腕を組み、眼を閉じる。数分もしないうちに寝息をたてはじめた。
「……真似できないわね。どうしようかしら」
 牢の扉は開いている。しかし出てしまえば危険。こちらには装弾数二発のデリンジャー。しっかりジルに騙されたが、魔法の起爆装置たる杖は奪われたまま。どうやってガードしろと?
 今できる最善は、デリンジャーの装填練習くらいか。器用ではないにしても、開いて出して入れて閉じる、これだけの動作。器用不器用の問題では……
「あれ?」
 ポロポロと落ちる45Magnum弾。
「た、弾が悪かったのよ」
 拾い上げ入れ直すが上手く入らない。
「こ、これもだめみたいね……」
 装填にこうもくそもないのだが。
「ふぬ!」
 焦る、いや、苛ついている。
「こなくそ!」
 イライラが筋肉に変わりつつある。
「イヨォー!」
 間抜けな悲鳴のような怒声を撒き散らし、しかしルイズはそれでもできない。
「すたぁ……きゃ!?」
「うるさい」
 頭を叩かれたルイズが、ヒュプノス第三形態に似た悪鬼の表情から一転、元の美少女の顔に戻り、可愛らしい悲鳴を上げた。
「バラバラとまあ、散らかして。リロードの練習?」
「う……そうよ! 何か文句ある?」
「深呼吸。落ち着きなさい」
「すー、はー」
41ジル:2009/01/19(月) 19:17:05 ID:y89RMm8a
「はい、ゆっくりと入れ直す」
 言われた通り、バレルに弾を入れる。
「入った……」
 先程まで弾の侵入を拒んでいたバレルは、今度はあっさりと銃弾を受け入れた。
「ね、焦りは禁物よ。緊張したら不器用になるでしょう、ルイズ?」
「な、なんでそれを!?」
「力みすぎ。入るのが当たり前なんだから」
 ピンと45Magを親指で弾き、空中で掴み、流れるようにデリンジャーに装填した。
「何でも全力でやろうとする意思は素晴らしいと思うけど、力の要る作業と要らない作業をちゃんと分別しないと。頭はいいけど、要領が悪いんだから」
「うう……」
 何も言い返せない。
「さて、そろそろかしら」
「何が?」
 突如のジルの言葉に疑問を返すルイズ。
「ウェールズ皇太子」
 外から複数の足音が聞こえてきた。



「は……」
 艦長室。そこにはルイズが知っている人物が二人いた。
「ワルド様、なぜここに……」
「君達の護衛をするようにと命令が来てね。先に着いてしまったから皇太子の手伝いをしていたのだよ」
「アンリエッタ姫の御命令ですか?」
「ああ、そうだ」
 デリンジャーに手が伸びる。しかし、それは届くことは無かった。ジルが囁いたのだ。
『泳がしなさい』
 その真意は判らない。黒幕を捕まえるためか、或いは現行犯で捕まえるか、もしくはそれ以外か。
「ということは、ここにおられるウェールズ殿下は……」
「まごうことなく、本人だ」
 視線の先には、微笑む金髪の青年。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。といっても、大陸の端まで追い詰められて空賊なんてこともしてるがね。ようこそ、大使殿。用件を伺おうか」
「あ……私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました。彼女は……」
「ジル・ヴァレンタイン。ルイズの衛士よ。よろしく、皇太子殿下」
 全く物怖じしせず、いつも通りの態度で接するジル。ルイズは冷や汗を流していたが、ウェールズはそれを全く気にしていなかった。ちなみに、ルイズが案じたのはジルの生死ではなく、ウェールズを肇とする貴族達の安否だった。攻撃されたら、ジルは容赦無く反
撃して殲滅するだろう。死なせはしないだろうが。
「よろしく、ミス・ヴァレンタイン」
 寛大な心は命を長らえさせる。その実例を見た気分だった。
 残りの二人、ギーシュとロングビルだったが、ギーシュはまともに動けない、ロングビルは王族に因縁があるらしく顔を出せない。牢にこもることになった。
「では、密書を」
 一礼して、ルイズは密書手渡す。花押に接吻し、封蝋を解き、読み進める。
「……結婚するのか、私の可愛い……従妹は」
 その顔は後悔とも怒りとも悲しみともとれない表情だった。
「了解した。しかし手紙はここには無い。ニューカッスル城にあるんだ。すまないが、城までご足労願えるかな」



 手紙はすぐに渡してもらえた。
「敵に奪われそうになったら、すぐに燃やすわ。その点、文句はないわね?」
 それはジルがアンリエッタに言った言葉と全く一緒だった。ジルにしてみれば、この場で即処分したいのだろうが、そうすれば手紙を取り戻した証拠もなくなってしまう。ルイズが言えば全く問題は無いのだが、敵が手紙をでっち上げた時に逃げる術が無い。トリス
テインから見れば、処分したとしてもどう処分したか判らない以上、偽物か本物か判らないのだから。
「ああ、判っている。アンリエッタを……トリステインを危険にさらすより遥かにましだからな。確かに返却したぞ」
42ジル:2009/01/19(月) 19:18:59 ID:y89RMm8a
 しかしウェールズはその提案を苦い顔をしながらも了承してくれた。
「あの、ウェールズ殿下、王軍に勝ち目はあるのですか?」
 無駄な質問だとは思っていたが、ルイズはせずにいられなかった。
「無いよ。こちらは三百、相手は五万。これだけの兵力差は……」
「あら、たったそれだけなのね。もう少し絶望的かと思ってたけど……」
「な!?」
 驚くルイズの声とは対照的に、ジルの声は余りにも暢気だ。まさに勝てるとでも言わんばかりに。
「たった? たったと言ったか。一人百五十人倒したとしても……」
「たった百六十七人。しかも普通の生物相手、完全に殺さなくても無力化できる。そしてこちらはこんな大きくて入り組んだ城にいるの、正面からぶつかる必要は無いわ。ゲリラ戦でひたすら相手の戦力を削り、疲弊させる。これなら、対等程度には戦えるわ」
「だが……我々の名誉は……」
「勝てる可能性を捨てて、自ら無駄死にを選ぶの?」
「ぐ……」
 反論できない。希望が見えてきた。それは勝てば名誉は保たれるが、敗ければ不名誉。究極の選択だった。
「あと、見せて貰いたい場所があるの。もしそこにあれば、できれば貰いたいわ」
 悩んでいるウェールズに、しかしジルは暇を与えない。
「どこだね。最早未来など無いこの城のものなら、何でも持っていくといい」
「ふふ……あなた達が生き残るために、いえ、勝つために必要なものよ」



 ルイズはジルについて行くことにした。そのジルは、ウェールズに案内されるまま城のあちこちにある宝物庫や倉庫を見て回り、なにやらガラクタらしきものを拾っては、どこの部屋にもある錆びた鉄の箱に入れていた。どうせガラクタではなく、今ルイズのスカー
トのポケットに入っているデリンジャーに類するものだろう。
 そんなことを繰り返しているうちに、ある部屋にたどり着く。そこの扉が開かれると、ジルの様子が変貌した。
「まさか……いえ、確かにこれも兵器には違いないけれど」
 そこには、硝子の筒に満たされた水に浮かぶ、禿頭の巨人がいた。



 ジルは城の全容を調べるために走り回っていた。気になることがあったのだ。
 石造りの城だが、構造は中世のそれと大差は無い。しかし、変なのだ。脈絡なく置かれている不自然な彫刻や装飾、やたらと曲がりくねった通路、建造されて以来開かないと謳われる扉、時折聞こえる足元からの反響音。
 そして何より、距離だ。部屋の四辺に比べ廊下がやけに長かったり、明らかにデッドスペースが多すぎるのだ。
「まるで、あの洋館みたい……」
 そこで気付く。『みたい』ではなく、『あの洋館』なのだ。ジルの脳内に投影されたマップは、デッドスペースにあるであろう部屋が一気に表示された。
「あった」
 床に一部分、色が違う場所があった。
「なら……この近くに」
 石像があった。
「ふふ、初歩的な仕掛けね」
 石像を押して、色の違う場所にずらす。

 カチ

 小さな音がたち、百年以上忘れ去られていた扉が、重い音を響かせ、開かれる。
「さて、忙しくなるわ。そちらの準備は?」 不思議な独り言を普通に言い放ち、ジルは城中の仕掛けを解くために奔走を始めた。窓の外には、朱に染まった太陽が浮遊大陸の地平線に接しかけていた。



「なっ……なんだって!?」
 その報告は、ウェールズに驚愕をもたらした。
「これなら、名誉に傷はつかないし、ひたすら相手を虚仮にして戦争に勝てるわ。敵将を直接狙うんだから」
「しかし……」
43ジル:2009/01/19(月) 19:19:48 ID:y89RMm8a
「少なくともニューカッスルと、ハヴィランドは地下通路で繋がっているわ。それに両方ともジョージ・トレヴァー建築よ。絶対に仕掛けや隠し扉があるわ。ほとんどの戦力がニューカッスルに張り付いている今、ハヴィランドは手薄だろうしね」
 饒舌に作戦を語ったジルは、ウェールズの様子を見る。顎に手をやり、思案していた。
「名誉も何もないやり方なら、今すぐできるけれど」
「なに!?」
「既にオリヴァー・クロムウェルの身柄を確保する準備はできてるの。私が命じれば、一時間もせずに首を取れるけど、それじゃ面目丸潰れでしょう?」



 結果、ウェールズはジルの案を採用することにした。採用せざるを得なかった。名誉を護り生き残れるのみならず、勝てる手段があるのだ、このまま最終決戦に突入するなんて馬鹿な選択肢を取ることは、上に立つものとして許されるべき行為ではなかった。
 事の手順はこうだ。
 まずイーグル号で非戦闘員を非難させ、少数の人員で城門周辺から城内至る所にクレイモアをはじめとする罠を仕掛ける。その間に選りすぐりの50名程度の『絶対に信頼できる』兵力を地下通路・地下施設に展開、ハヴィランド宮殿地下まで進軍する。そしてジルが
全ての隠し扉を閉じる。残り250名はニューカッスルに残り、超粘着質なゲリラ戦で陽動及び時間稼ぎをする。地下部隊がクロムウェルを確保し、地下部隊の大半を残し可能な限り速くニューカッスルに連行、停戦あるいは終戦を呼び掛ける。残された地下部隊は地下
通路の存在を知られぬためにハヴィランドを制圧、占拠する。
 この作戦に於けるウェールズの命令はただ一つ。
「無駄死にだけはするな!生きてアルビオンを立て直すために!二度と反逆など起きぬように!」
 ただ、それだけ。だが、それだけで充分だった。戦士達に焔を灯すには充分すぎた。
 一瞬の静寂、そして咆哮。パーティー会場にあった悲壮感は一気に消え去り、変わりに希望が満ち溢れた。
 臨時司令官としてジルが陽動部隊に置かれ、オブザーバーとしてギーシュがウェールズに付く。ルイズは足手まといになりかねないので、顔を隠したロングビルに護衛を頼み、隠し部屋に押し込んだ。パーティー会場はブリーフィングルームと化し、作戦説明がジル
により行われる。
「いいかしら、地下と城の仕掛けはここに居るものだけの秘密よ。これが敵に漏れたら間違いなく終わり。無駄死によ。だけど成功したら、たった三百の兵が五万に勝ったと、後々まで語り継がれるわ」
 この美女も鼓舞がうまい。それを見ていたウェールズの率直な感想だった。
 それから、隠し部屋の追加された(一部は隠蔽されている)城の地図を広げ、罠と後退戦の説明がなされた。説明が終わると卑怯だと数名の貴族から意見されたが、全く動じない。
「ゲリラ戦は立派な作戦よ。卑怯というなら敵を見なさい。数の暴力で制圧する、これ以上の卑怯は無いわ。しかし戦争はそれが許されるの。なら、ゲリラ戦が許されない道理は無いわ。生き残りなさい。生きていれば汚名をそそげるけど、無様を晒して死んだらそれ
までよ」
 デルフを振り、独裁者顔負けのデモンストレーションで演説をする。
「反逆者に鉄槌を」
「反逆者に鉄槌を!」
「夜明け前に作戦を決行するわ。0500時に総員戦闘配置。工作班は今から罠を仕掛けにいく。各自、罠にかからぬよう、城の見取り図を頭に叩き込むこと。後退経路を間違えたら死を覚悟しなさい。解散」
 ジルの宣言と同時に、全員が散らばる。中には城の見取り図をかじりつくように睨む者もいた。
「ジル、君は……何者だ?」
 ウェールズが問う。
44ジル:2009/01/19(月) 19:20:18 ID:y89RMm8a
 隠された城の秘密を暴き、宝物庫のガラクタの使い方を知り、絶望的な状況から勝てる希望のある作戦を立て、平民という立場を貴族達に忘れさせ、今こうして貴族達を熱狂させ、命令を下している。
 ただの平民ではない。いや、まるでそれは────
「元警察よ」
 ウェールズの知らない単語が返ってきた。



「クレイモアの前に味方がいるときは間違っても起爆しないこと。ランチャーを持っている物は使い方を間違えない。不発のランチャーは敵に向けて投げること。間違っても持ち歩かない。C4は敵が集まったところで起爆させなさい」
 城壁内の広場で、工作兵に対し、兵器のレクチャーが行われる。工作兵に選ばれたのは、比較的若い貴族だけだ。柔軟な発想ができるからだ。老兵に最新兵器を与えても、使い方を覚えるまでが長い、そう言うことだ。
「ジル、質問があるのだが」
 一人の貴族が挙手する。
「Ok、何かしら?」
「本当に効果があるのか?」
「見てなさい」
 一つのクレイモアを城壁に向け、地面に置く。
「誰か、頑丈な鉄の像をあそこに錬金して」
 言われるまま、クレイモアの前に中身の詰まった像が作られる。
「耳をふさいで口を開けなさい。いいわね」
 その手にあるリモコンを押し込んだ。
「は!?」
 爆音は手を通り越して鼓膜を痛いくらいに振るわす。視界に一瞬光が見え、像は爆煙に消える。
「爆弾なのか?」
「ただの爆弾ならまだかわいいわ」
 煙が晴れる。
「…………」
 誰もが無言。
 そこにあった筈の鉄の像は、足から上が消え去っていた。残された足も穴だらけだった。
「お望みなら、全部の威力をみせてあげられるけど」
 ずらりと並べられた、Mk.II手榴弾、M84スタングレネード、デイビークロケット、C4、セムテックス、Tプラス、スメルボム、CSガス催涙手榴弾、AN-M14/TH3焼夷手榴弾……
「これなんかおすすめよ。数個で屋敷が吹き飛ぶの」
 その必要はなかった。
45ジル:2009/01/19(月) 19:27:16 ID:y89RMm8a
以上です。

アルビオン決選準備編、いかがでしたか。
投下して初めて気づく違和感と誤字脱字。
校正して完璧と思ってもこれですから、ものを書くのは難しいですねぇ。

はい、まさかのワルドです。彼は初出なのに出番があまりないです。
ルイズも、よその戦争に加担できる立場じゃないので隠れています。
この場合、ほとんど傭兵扱いのジルは動きやすいですね。

次回、悪ドが大暴れ。
匂いフェチもフルボッコの予定です。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:53:16 ID:h8Gqn66L
…デビー・クロケットなんてあるんだったらそれでレコンキスタの上にキノコ生やした方早くね?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:58:19 ID:wueHydxw
暴君乙
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:00:15 ID:TXRRDvUj
ジル=ダメ警官の図式が出来上がってる俺のりーぜさん脳をなんとかしてくれ。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:13:48 ID:E2IGVLG5
>>48
よう オレ。
最近更新が無いから辛いね

NBCのミズチとか召喚したらどうなるんだろうか?
普段は子どもの姿だけど、一気に成長するわ、杖なしでで浮遊するわ、火柱を起こせるわで
精霊扱いでもされるんだろうか?
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:16:17 ID:rlt+9ZYK
ラスボスだった使い魔22話ですが
原子炉、ゲッター線、縮退炉、ブラックホールエンジンは論外でしょう。原子炉は言わずとしれた放射線漏れが怖いし、ゲッター線は時空の彼方で戦い続ける事になったり未来から刺客が送り込まれてきかねない。
縮退炉やブラックホールエンジンはハルキゲニアごと吹き飛ばしかねない。
光子力はジャパニウムが存在しないので問題外。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:24:13 ID:Ntk0b8Zw
スパヒロはウルトラシリーズも混ざってるんなら、ネオマキシマやリパルサーリフトは安全じゃないか
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:31:00 ID:6KCWEzO7
じゃあ、シズマドライブで。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:38:10 ID:u0kNRome
シズマドライブは改善前のものを大量に使うと酸素が
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:38:25 ID:sa+AKZNq
騎士団の人乙
SDガンダムらしくっていい
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:39:36 ID:W5BJG3OR
一応精霊が存在してる世界なんだからラ・ギアス錬金術の知識と魔装機のフルカネルリ式永久機関で何とかなるんでない?
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:42:07 ID:6KCWEzO7
リアルバウトハイスクールから野人高校生を召喚して静馬ドライブ。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:42:17 ID:GiytwO/T
>>50
シュウはそこら辺は全部ジョークで言ってたんじゃなかったの
むしろあの場面でユーゼスが「いいね、それ。全部ちょーだい」って言ったら逆にうろたえるシュウが見れたかも
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:52:46 ID:8KP8TTSJ
ジョージトレヴァーがいるということはリサ=トレヴァーもいるのか
大惨事になりそうだ
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:52:47 ID:WlFCKD27
>>57
想像して吹いた
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:56:42 ID:Im+F3/e0
>>36
元祖だと団長とバーサルくらいじゃなかったかな?
団長の鎧が金属でマントまで布の頑丈な作りだったから感動した記憶ある
そのせいで他の騎士の記憶がぶっとんでしまってるが
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:13:44 ID:VDY5BRJt
>>60
元祖は全員出てたと思うが…気のせいかな?
とりあえずBB戦士のコミックワールドのナイトガンダムはかなりの
卑怯者だったことぐらいしか…
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:13:52 ID:sa+AKZNq
>>50
ブラックホールエンジン失敗例
ttp://www.kotaro269.com/archives/50706033.html
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:23:16 ID:FEnIdQGd
>>51
リパルサーリフトは重力制御推進システムであって動力源じゃないぞ
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:25:03 ID:Z+x8Bnfw
>>50
地球上だと出力低いが相転移エンジンをデスね…
ダウンサイジングしても月面でやっとの状態だからビートルに積むのは無理か
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:25:38 ID:TXRRDvUj
次元連結システムのちょっとした応用でなんとか。
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:27:27 ID:tR9tOF96
オーガニックエナジーとバイタルネットがあれば万事(ry
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:31:59 ID:cYR0bH2V
カンタムロボのネズミが車をこいで動かす超高性能エンジンをどうぞ
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:32:11 ID:l5asAk0d
>>65
次元連結システム?ああ、冥王様のアレか・・・
OVA版か漫画版か・・・それが問題だ
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:36:53 ID:51B49eMM
>>60
出てるみたい(ソースはウィキペディア)

No63 剣士ゼータ
No66 法術士ニュー
No73 騎士アレックス
No74 闘士ダブルゼータ

よく覚えてなかったんだけど
ジークジオンにとどめを刺そうとするスペリオルドラゴンに全ての力を与えて融合したらしい
アニメ・コミックではアルガス騎士団はジオン親衛隊と相打ちになったらしい


話は180°変わるけど
リュカの子供の名前は小説・ドラマCDだと
ティミー・ポピーで本名がそれぞれ
ティムリア・エル・ケル・グランバニア
ポピリア・エル・シ・グランバニア
だったような記憶があるんだけど
レックス・タバサの場合どうなるんだろう?
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:39:50 ID:KmCwNHBB
>>50
23話を投下した数日後に、22話のツッコミされても困るんじゃね?

さておきシュウはラ・ギアスからα世界にオリハルコニウムを持ち込んだ(っぽい)前歴があるから、どうにかしそうな気もするな。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:47:25 ID:oPXrpPuM
>>67
カンタムロボは最期のセリフがやけにカッコ良かったのを覚えてる

そんな俺はおきらく忍伝ハンゾーの力士を使った動力を勧めてみる
あの世界の高性能(うろ覚え)な蒸気機関もお勧めだが
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:54:44 ID:kQqYfstz
>>71
やることはやっていたw
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:55:32 ID:Im+F3/e0
>>69及び皆サンクス

5王子ティムアルだった気ガス
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:57:34 ID:rm3Fj6l/
縮退炉は
「レシプロかロータリーかの違いレベルでどっちもガソリンエンジンじゃねえか」
みたいなノリでブラックホールエンジンの一種なんだがな

>ティムリア・エル・ケル・グランバニア
>ポピリア・エル・シ・グランバニア
>だったような記憶があるんだけど

ティムアルと
ポピレアだ
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:59:22 ID:ahkCobKs
>>69
リュカの子供の名前はゲームのデフォルト名にしたと言ってたぞ
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:03:12 ID:51B49eMM
>>73,74
訂正d

>>75
リュカがフルネームで自己紹介したんだから
(リュケイロム・エル・ケル・グランバニアだったっけ?)
子供達もフルネームで自己紹介するかな?と思ってさ
デフォルトのレックスとタバサの場合、フルネームはどうなのかな、と
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:06:32 ID:3AoqRC3b
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:07:06 ID:Ntk0b8Zw
>>71
蒸気機関だったら、ひょっこりひょうたん島のハカセは五右衛門風呂から蒸気機関車を作るぞ
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:21:42 ID:CVH6F3Ik
五右衛門風呂スゲー
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:47:39 ID:QZ0E02YE
>>78
ひょっこりひょうたん島は死後の世界の話と言う裏設定がある罠
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:51:36 ID:1tyB1w6l
マジで!?
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:52:18 ID:QcJSMGWG
現在大好評連載中の丸太…否、彼岸島の西山なら
奥からいろんなものを見つけてくるわ、その辺の物からバズーカ砲を作るわで大活躍だェ!
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:54:34 ID:QZ0E02YE
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 22:59:13 ID:1tyB1w6l
>>83
うわぁ……。
いや、子供心に、よく食い物がなくならないなとは思ってたけど……。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:01:34 ID:KmCwNHBB
裏設定と言えば、スパヒロユーゼスにも色々と裏設定があるらしいな。

ギャバンと同じ地球人とバード星人のハーフだったり、仮面を被ってからは肉体の大部分を機械化させてたり、身長が175センチだったり。

……でもゲーム内ではまったく語られてないことだから、ラスボス氏はあえて無視してるのかしら。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:02:28 ID:QCUXTRzh
>>68
どっちにしろミク居ないとめいおー涙目なんだよな

>>70
αシュウには「グランゾンの力を以てすれば造作もありません」があるしねw
まあユーゼスの観察が目的の訪問だった訳だし言葉遊びつーかユの字いじりの一環だと俺も思うが
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:06:07 ID:bDSnLO8A
>>48>>49
便利屋に限らず、MUGENストーリーものでのジルは大抵ダメ警官だよな
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:09:23 ID:Dm0Sk5Pq
ガンダムネタの兄弟スレでバスク召喚小ネタが続いてる
無茶過ぎて笑っちまった
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:11:09 ID:tR9tOF96
彼がいるだけで一昔のバイオレンス空間の完成です
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:11:11 ID:OqKZfcI+
>>86
初音ミク召喚とな!?
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:11:45 ID:M4S8X+CH
>>87
どうみてもネクロマンサーにしか見えない、普通に火気をぶっ放してくるの2つの要素がそう見せるんだろうね
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:11:53 ID:L08HaIu7
>>76
無難に
レックス・エル・ケル・グランバニア
タバサ・エル・シ・グランバニアでも問題ないと思うが?
天空物語だと名前の後にグランバニアつけただけだったけど。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:13:09 ID:U3HT2PZx
>>85
ちょくちょくそこら辺は出てるぞ。

しょっぱなでそこら辺をいったんリセットされた状態で
喚ばれていることになっているし。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:16:06 ID:VMzfuEdC
>>83
知らなきゃよかったーーーーー
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:19:08 ID:0xmdrsGp
>>76
小説版がどうだったか、記憶にはないんだけどさ
息子や娘はともかくとして、ビアンカやフローラの場合、王妃になった時フルネームどうなってたんだろう?
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:27:07 ID:Yiaw67oj
>>84
リメイク版では一応食糧問題発生してたよー
「八分目でなくてもいい、四分目でいいから食べたい」とか言って空腹ソング歌ってたし

>>94
それには同意
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:36:03 ID:hQCfDWXc
ボトムズ劇場版で欝な気分が更に欝になったorz>ひょうたん島
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:40:45 ID:3a92PkGP
>>97
そんなにひどいんですか?>PF劇場版

主要人物の殆どが(一度は)死んでいる物語といえば仮面ライダー555もそうでした。
そういえば「使い魔の夢」(TV版後の巧が呼ばれる話)は完結してませんよね?
99三年寝太郎 ◆k6snja5Cmo :2009/01/19(月) 23:42:24 ID:6U1NepvK
 お久しぶりです。
 凌駕の人の如く寝ていたよう想われたかもしれませんが、起きてます。
 10分後、4話投下よろしいですか?

 あと、久々すぎてトリップ違っていたら嘲笑ってください(ぉ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:45:46 ID:hQCfDWXc
>98
いや新OPだけでも観に行く価値はあると思うよ。
ただ、大画面と大音量でバーコフ分隊の面々が壮絶な最後を遂げるのを見るとやっぱね…
ザキの最後だけはどうしても放心してしまう。小説版を読むとなおさら。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:50:34 ID:8nvQAMxf
いや、実は『使い魔の夢』完結しているのに完結しているよ、と言うの忘れたとか?
もし、そうだったらすごいぞ。一年以上も……。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:50:35 ID:7noMB1sF
支援
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:51:31 ID:3a92PkGP
>>100
あ、そうなんですか。
でもあのザキの最期は何だかとってつけたような感じで「え?」という驚きしかなかった。
あれも異能生存体の力と言われたらそれまでだけど。小説版だと何か説明あるんですか?

あれから更にTVウド編→ザ・ラスト→TVクメン・サンサ・クエント編→ビッグバトル→赫奕たる異端→孤影再びにつながるかと思うと可哀想ですな。
キリコさんの旅はいつまで続くのやら。

>>99
お待ちしておりました。
 
 トリステイン魔法学院が悪魔の襲撃を受けてから3日が経過した。
 
 学院長室は事件発生時から現在に至るまで、夜中でさえ部屋の明かりが消えないままであった。
 オールド・オスマンは、ときおり左手で頭を抱えながらも、ペンを握る右手をほとんど止めずに書類を書き進める。
 普段は魔法でペンを浮かせて書類を書くオスマンであったが、ここ数日は無駄な精神力の消費を控えるために自分の手を使わなければ続かない程に処理しなければならない仕事が有る。
 いつもは水ギセルを控えるよう口出しする秘書のミス・ロングビルも、この時ばかりは煙が眠気覚ましになるというオスマンの言い分を認めて黙認していたせいで、部屋内は煙が濃く立ち込め司会が微かに白く霞んでいた。
「そろそろ食事の時間です」
 まだ処理しなければならない書類は山ほどあったが、だからこそしっかりと食事を取らなければならないとロングビルが促す。
 彼女も最低限の睡眠と食事以外はほとんど休憩も取らずに仕事を続けているせいで、目の下に疲労の色が見える。
 そんなロングビルの言葉を合図にオスマンから深い溜息が吐き出される。
「そうじゃの」
 暇があればロングビルへのセクシャルハラスメントを欠かさないオスマンであったが、ルイズが“伝染病持ち”を召還してしまった日からそんな暇はほとんど無くなっていた。
 そればかりか、先日の悪魔の襲撃によって失われた多くの人命を始めとする数々の損害への処理に追われ、心なしか、顔の皺が深みと数を増やしている様にも見える。
 オスマンがペンを置くと同時に扉を軽く叩く音がした。
「…お、お食事をお持ちしました」
 扉の向こうから聞こえるメイドの声が怯えを含んでいる事に違和感を感じたのはオスマンとロングビルの両名。
 どちらからともなく顔を見合わせ、オスマンはロングビルに対し、扉の向こうに声をかけるよう促す。
「どうぞ、お入りください」
 貴族に対して畏まる事が身に染み付いてしまっている平民も、メイジではあるものの貴族では無いロングビルが対応するならばいくらかは気が楽になるでであろうとの配慮である。
「食事はそちらの来客用テーブルに置いて頂けますか?」
 ロングビルは扉を開き、出来る限り披露を隠して穏やかな口調と表情を崩さずに、来客用テーブルに食事を置くようメイドに促す。
「は、はい」
 対応をしているのが貴族ではない女性だからだろうか、少しは落ち着きを取り戻したらしいメイドはそれでも小刻みに震える手で来客用テーブルに食事の乗ったトレイをなんとか置いた。
 食事は先日まで厨房で出されたものとは比べるまでもなく質素なスープと大雑把に野菜を添えただけのサラダ、そして微妙に硬めのパンといった、まるで辺境の村の平民が食するかのようなメニュー。
 それでも、マルトーの作る料理に劣るものの、意外と言うべきかそれなりと言うべきか程には美味しくはあるのは救いである。
 悪魔の襲撃の際で惨殺現場となった厨房を再び使うわけにはいかず、教師であるミセス・シュヴルーズを中心とした土のメイジによって最優先で一日のうちに厨房自体は新設された。
 だが、厨房常勤の全員が今回の事件で死亡した為に、新設の厨房には現在、料理の心得のあるメイド数名が厨房に入っており、今用意されている料理はその彼女達の作ったものだ。
 なお、新しい厨房の人員の派遣を要請する伝書を伝令に持参させたのは今朝である。
 学院全体に伝染病の疑いが立ってしまった現状、三日目となった今日になってやっと外部に人材要請を始めとした伝令の派遣が出来る状況になったからだ。
105三年寝太郎 ◆k6snja5Cmo :2009/01/19(月) 23:53:55 ID:6U1NepvK
 
 そう、『伝染病』だ。
 オスマンは、事件発生時は、この部屋で指揮を取りながら『遠見の鏡』で巨躯の悪魔と蒼い悪魔の戦闘を見ていた。
 予見できなかった事とはいえ、厨房での悪魔の出現の報を受けるなり教師陣に速やかな撃退という指示を出し、使用人や生徒達の避難をおざなりにした為に、多大な犠牲という大きな失態を『遠見の鏡』を通してつきつけられた。
 遅れて生徒や平民の避難を指示する頃には、蒼い悪魔が巨躯の悪魔を倒して逃げ出す姿が魔法の鏡に映っていた。
 その後、援助を申請する前に、その理由となるこの過失をどう報告するべきかと頭を悩ましたオスマンであったが、その緩慢とさえ言える行動の為、結果として更なる愚を犯す前に、息をきらせながら学院長室に飛び込んだコルベールの報告で『伝染病』の事を知ったのだ。
 コルベールの口から告げられる“人間を悪魔に変える伝染病”などという前代未聞の脅威。そして、それがもたらしたのが今回のこの被害。
 脅威の伝染病の存在は、学院にいた多くの貴族の子息や教師に付け足して学院で働く平民の死をはじめとした様々な問題の処理以上に、オスマンの頭を悩ます。
 二日の間、伝染病の拡散を抑えるため、学院の人間の外出行動を止めた。
 勿論、内部から強い不満が出るだけでなく、更なる混乱の誘発の恐れさえあったが、結局は伝染病の潜伏期間とされる二日のうち、特に大きな問題が報告される事無く三日目を迎えることが出来た事は不幸中の幸いであった。

「顔色が優れませんがどうかしましたか?」
 ロングビルの心配そうな声に気づき、オスマンは思考を中断して顔を上げる。
 だが、ロングビルはオスマンではなく、そのまま部屋を去ろうとしたメイドに向かって声をかけたのだ。
「貴族のボンクラ生徒どもが悪さでもしとるのかの?」
 内心、自分の心配ではないのかと年甲斐もなく少し拗ねたオスマンではあったが、そのメイドの顔色と言うべきか先ほどからの態度は気にはなる所だったので、気遣いの言葉をメイドにかける。
 だが、オスマンの言葉にメイドは過剰に反応し、慌てて引き下がろうとするが、そんな彼女の手をロングビルが握ってとめる。
「大丈夫ですわ。オールド・オスマンは貴族と平民分け隔てなく接してくれるお方です」
「悩みがあるならここでひとつ吐き出してみんかね? それで少しは心が軽くなればそれで良いのじゃが」
 反応があまりにもおかしい事に内心訝しげにしつつも、あくまで穏やかに接するオスマンとロングビルに対して、メイドは折れるように、すがるように、それでいて何処か安堵するような表情で、ぽつりぽつりと、ここ3日のうち自分の周囲で起こった事を語りだした。
 
 
 
 
 
 
 ギーシュ・ド・グラモンが目を覚ましたのは三日目の朝食時間を過ぎた頃だった。
 目立つ外傷こそ無かったものの、文字通り精神力を使い果たしていたギーシュが回復するにはそれだけの時間を必要としたのだ。
 その彼は、今、女子寮のある一室の前に立っていた。
 基本的に女子寮だけに男子禁制ではあるが、ギーシュはこの部屋の主への面会をするよう、部屋の主の友人に懇願されたからだ。
 部屋の主の名はケティ・ド・ラ・ロッタ。ギーシュとは一学年下の少女で、ギーシュと交際していた少女であった。
 扉の前で俯くギーシュは、目に涙を浮かべ、震える声で謝罪の言葉を呟く。
「ケティ……すまない。君の危機に駆けつけることが出来なかった……ぼくを――」
 許してくれ、と口に出しそうになるが、かぶりを振ってその言葉を飲み込む。
 許して貰える筈が無い。それ以前に許しを請う事自体、それは自分の恥を上塗りする意外の意味がないとギーシュ自身が自覚したからだ。
 ケティは三日前の悪魔の襲撃で犠牲になっていたのだ。
 しかも、ケティが存在した事の最大の証となる彼女の躯も、既に浄化の火によって灰へと還って低調に葬られたと聞かされている。
 だから、ギーシュは彼女が存在していた事を証明する、まだ手をつけられていないケティの部屋の前で彼女の死を悼んでいた。
(……何が、薔薇は多くの人を楽しませるために咲く、だ!)
 グラモン元帥の息子、誇り高い軍人の家系の男が聞いて呆れる。
 思わずギーシュは歯を食い縛り、拳を変色するまで強く握る。
「ここにいたのね、ギーシュ」
 女の声はしたが、その声はギーシュには届いておらず、その声の主の少女が彼の肩に手を置く事で、やっとギーシュはその彼女を認識する。
「……モンモランシー」
 声の主はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。
 ギーシュと交際している少女である。
「聞いたわ。その子の事」
 モンモランシーの口調は、ギーシュへの憤りを含んでいた。
 当然だ。重婚制度があるわけでもないトリステインで二股がけなど不埒以外の何物でもないのだから。
「……すまない」
 本当に自分が嫌になる。
 以前、モンモランシーに対して、ケティとは何も無かったと嘘を告げた。
 同じようにケティにも好きなのは君だけだと囁いた。
 それは結局モンモランシーとケティに対する不義に他ならず、この場においてギーシュは自分の不甲斐無さに、無力さに、不誠実さに怒る事しか出来なかった。
「でも、ギーシュはわたしを護ってくれた」
 モンモランシーは『わたしを護る為に駆けつけてくれた』とは口に出さない。
 その言葉はケティという犠牲者に対する『死人に鞭打つ』行為に他ならないからだ。
 むしろ、今のモンモランシーの心に浮かぶのは、ケティという少女に対する哀れみだった。
 唯、偶然同じ男を想っていただけで、片や護られ、片や孤独に命を落とす。
 それが、モンモランシーにとってはケティが享受すべきささやかに幸せになる権利さえも、自分が奪ってしまったように思えてしまったのだ。
 そして思う。
 確かにギーシュの浮気は許し難い。だけど、それでも自分はギーシュが好きなのだと。
「……ごめんなさい」
 だから、モンモランシーの口から、自然とケティへの謝罪の言葉が漏れてしまっていた。
 この先、ギーシュの心を自分へ向けさせる事に対して。
「すまない、ケティ」
 再びギーシュがケティに謝罪の言葉を向ける。
 この先、自分の心がモンモランシーに向けられる事に対して。
「すまない……」
 ギーシュがモンモランシーに謝罪の言葉を向けようとするが、そのモンモランシーが彼の口を掌で押さえ、眉を潜めながら今一鈍感な男に諭す。
「ギーシュ、彼女の前よ」
 流石にその意味を理解したギーシュは、口をふさいだままではあったが本当にすまなそうな視線をモンモランシーにしばし向け、視線をケティの部屋の扉に向け直した。
 
 
 
 しばらくの間、ケティの部屋の前で彼女の冥福を始祖ブルミルに祈った二人は女子寮の外に出た。
 そろそろ昼食の時間だったが、お互い食欲は無かったものの、特に目覚めたばかりでまだ朝食すら取っていなかったギーシュ、
 この三日間、水のメイジという治癒魔法の使い手として生き残った生徒、教師、使用人の為に奔走していたモンモランシーは、お互いの体調を気にした結果、ムリにでも食事を取るという選択を取って、食堂に向かっていた。
 最初は無言のままのギーシュであったが、ふと、横に並んで歩くモンモランシーに言い出した。 
「モンモランシー、君は優しいんだな」
 勿論、モンモランシーへの気遣いや、彼女の気遣いに対する感謝や感心がそこにはる。
 が、ケティが死んでしまった事の哀しさから、癒しを求めるように声を出てしまった所が大きいのは、ギーシュ自身は口に出してから漠然と感じた事だ。
「違うわ。優しいわけじゃない。唯、わたしはこんなに哀しい事が許せないの」
 返って来たのは、褒められた事への照れ隠しなどではなく、微かな憤りと強い決意の篭る意思を感じさせる言葉だった。
 三日前の悪魔の襲撃の後、悪魔に対峙した者は無残な躯となっているか、ほぼ無傷かの両極端であった為、即時的な肉体的な治癒という面では水のメイジはほとんどやる事が無かった。
 だが、その直後に伝えられた伝染病の脅威に事前に対処する事や、多くのものを失った事で傷ついた心を癒すのも彼らの役割である。
 更なる脅威を未然に防ぎ、良き相談役になり、時には魔法の薬で体を心を癒す。
 彼らがいる事で、学院は大きな混乱を誘発しないで済んでいると言って過言では無い。
「わたしは水のメイジ」
 モンモランシーの脳裏には、あの日、救えたかもしれない、しかし救えなかった、変貌した教師の姿が、そして、その脅威から自分を護ってくれた少年の姿が浮かぶ。
「だから、私の周りに悲しみがある事が許せないの」
 この三日、彼女は自分の力不足への後悔と、自分が救われたことへの感謝を胸に刻み、心の癒し手として奔走した。
「だから癒さなくちゃ気がすまないのよ」
 そんな彼女の気丈な振る舞いを、ギーシュは尊敬の念で見つめ、理解する。
 つまりは彼女も貴族であり、前線で武器や杖を振るう兵士や騎士とは違う“戦い”に身を投じる癒し手なのだと。
 
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 23:58:18 ID:3a92PkGP
それぞれの戦いを続ける若き戦士達に支援を。

 
 
「――――せん!」
 突如耳に悲鳴の様な切羽詰った声が微かに届く。
「え!?」
「モンモランシー?」
 この三日で、そういったものに過敏になっていたモンモランシーは声の方に振り向いて駆け出す。
 何事かと後から追いかけてくるギーシュを尻目に、駆けつけたモンモランシーが見たものは、散乱するティーカップとポットの破片、跪き泣きながら許しを請うメイドの少女、そしてそれを怒鳴り散らす貴族――格好から三年の生徒であろう――であった。
「なんだ、平民が叱られているだけ――」
 何か粗相をしてしまった平民が貴族に許しを請うという場面に出くわす事はそう珍しい事では無く、普通ならば程度の差はあれ、貴族が平民を口で注意――あくまで貴族の視点ではその程度の認識でしかない――をする程度で終わる事だ。
 大事になるわけでないのならば関係が無い事だろうと、さして気にする事無く視線を外すモンモランシー。
 だが、
「メイド相手なんかに杖を向けるなんて、あいつらは何をしているんだ!?」
 モンモランシーから少し遅れてそれを見たギーシュが驚愕の声を上げるのを耳にして再びメイドの方を向く。
 そこには、威嚇とばかりに魔法の炎でメイドの足元の地面を焼く貴族の姿があった。
「ち、ちょっと!? 本当に何やっているのよ!」
 平民に向けて魔法を振るう事は、平民にとっては恐怖を植え付けられる事と同義であり、それにおいては貴族側も多少なりに理解している事だ。
 だというのに、謝罪する平民に対して明らかな攻撃魔法を向けるということは過剰の暴力を振るう事に他ならず、既にそれは誰が見ても“注意”の範疇を超えるものだった。
 モンモランシーが予想外の事態に驚く側で、ギーシュはすぐさま薔薇の造形をした杖を取り出し、呪文を唱える。 
 だが、既にその貴族の生徒は再び呪文を唱えており、ギーシュの介入が間に合うかどうかの瀬戸際だった。
(――間に合わないっ!)
 そして、ギーシュの呪文が完成するかしないかという状況で、メイドに杖を向けた生徒の呪文は完成し、あとは杖を振るうだけとなった、その瞬間。
「――モガッ!?」
 その貴族の口に突如として赤土の粘土が詰め込まれ、その突然の事態に彼は法を放つ事も止めて慌てふためく。
 ちなみに、メイジが魔法を使う為にはまず杖が必要であり、それと同じく呪文を詠唱しなければ結局は魔法を使う事は出来ない。
 つまり、メイジを無力化させるならば、杖を奪う他にも、声を奪えばいいわけで、これによって彼は口の中の粘土を吐き出すまで、魔法を使う手段を遮られた事になる。
「おやめなさい! 力無き民に杖を向けるなど、貴族としてしてはならない恥ずべき行為です!」
 無様としか言いようの無い貴族の生徒に対し、よく通る声で杖を向けるのは紫のローブをまとった中年のふくよかな女性。
 この学院の教員にして土のトライアングルメイジであるシュヴルーズである。 
 彼女は日常の授業で騒がしい生徒に使う赤土を口につめるという口封じの魔法をこの場で使い、彼の口を封じたのだ。
 突然口に赤土を押し込まれた貴族の生徒は、暫く両手を使いながら必死に口の中の粘土を吐き出し、荒い息を吐きながら口を塞いだシュヴルーズに講義する。
「ミ、ミセス・シュヴルーズっ! お、お言葉ですが、こいつはっ――」
 礼節と身分を重んじる貴族の子息が、生徒という立場にありながら明らかな目上である教師を前にしても激昂を抑えず口答えするというのは珍しい。
 それこそ、二つ名を汚されたり家名を貶められたといった、名誉を極端に貶められ、日常で貴族であろうと平民であろうと、うかつにそのような事はしないような事態になった場合位のものだ。
 例外的に、モンモランシーのクラスでは頻繁に見られる事ではあるのだが、この場では関係ない事だ。
「おだまりなさい! これ以上口答えするならば――」
 シュヴルーズの剣幕に、その貴族の生徒は黙って引き下がるが、その顔には強い怒りが浮かんだままで、鋭い視線を相変わらずメイドに向けていた。
「大丈夫ですか?」
 シュヴルーズは、その生徒とメイドの間に割って入り、憤怒の表情を浮かべたままの貴族の顔をメイドの視線から遮りながら、手を差し伸べる。
「あ……」
 だが、そのメイドはシュヴルーズの差し伸べた手を見て、びくりと身を怯ませる。
「いいのですよ。もうお行きなさい」
 だが、そのようなメイドの態度に対してもあくまで軟らかい表情を崩さずに、シュヴルーズは、メイドが逃げるようにその場を去るのを見送った。
「全く失礼な平民ね。ミセス・シュヴルーズに助けられたというのにお礼すらせずに逃げ出すなんて」
 その一部始終を見ていたモンモランシーがまず抱いたのは、恩知らずと言っていいメイドの態度に対する不快感。
 次に浮かぶのは、シュヴルーズがそれに対してさえ、特に気にするそぶりを見せていない事だ。
 モンオランシーは、ふと、この人には貴族としての面子は無いのだろうかとシュヴルーズに不信感を抱く。
「ミセス・シュヴルーズ。少しよろしいでしょうか?」
 と、モンモランシーが思案している横で、ギーシュが進み出て声を上げる。
「何でしょう?」
 シュヴルーズに向ける、ギーシュの視線は教師に対する視線と言うには微かに鋭い。
 何か不審なものを見るような視線だ。
「なぜ、先ほどの平民が何をしたのかさえ問質さずに肩を持ったのです?」
 その言葉にモンモランシーは納得する。
 場を抑えるにしても貴族側を理由も聞かずに一方的に『悪者』と断じる姿勢は、伝統と名誉を重んじるトリステインでは考え辛い行為だからだ。
「仕方ないのです。今のあのメイドにとって貴族は恐怖の対象でしかないのでから」
 そのシュヴルーズの返答に、今一要領を得ずに口を閉じ内心で首をひねるギーシュ。
 そんなギーシュに代わるようにして、先ほど粘土を口に込められた生徒が怒鳴り声を上げる。
「貴族は悪魔ではありません! むしろあいつらこそ僕達に悪魔をけしかけた張本人じゃないのですか?!」
 どういうことだろうと、ギーシュとモンモランシーが耳を傾ける。シュヴルーズも、今度は彼の言葉を遮ることなく無言で耳を傾ける。
「僕は聞いた! 彼女が厨房の連中が生きていればこんな事にならなかったと呟くのを!」
「はぁ?」
 その一言にギーシュは思わず疑問の声を上げて首を傾げる。
 最初にその言葉で連想出来るのは、厨房の人間がいなくなったので、食事の質が落ち、それを嘆いている、若しくはなれない厨房仕事に不満を漏らしたものだと思える言葉だ。
 ギーシュの脳内では、とてもその単語と悪魔とは結びつかない。
「……」
 だが、横にいるモンモランシーは合点がいったという溜息を苦虫を潰した表情で漏らす。
 目の前のシュヴルーズもモンモランシーと似たような表情をしている。
「モンモランシー、どういうことだい?」
「件の悪魔は最初、厨房で目撃されたそうなの」
 そこでギーシュも合点がいった。
 つまり、この生徒は悪魔が厨房から出てきたことから、厨房の人間が悪魔に変化して学院を襲い、メイドが再びそれを望んでいるものと解釈したのだと。
「それは貴方の思い込みです」
 シュヴルーズは生徒に対して断言する。
 ギーシュもこの生徒は、思い込みが過ぎるのではないかと思うが、逆に考えると仕方ないことなのかと思い浮かぶ。
 ギーシュは見たからだ。教師が異形へと変貌する瞬間を。
 となれば、むしろ貴族が悪魔となったと思われるのが当然で、そうなればメイドのあの態度も仕方ないのではないかと思い立ったからだ。
「それに、少なくとも彼らは悪魔では無く、普通の平民。ならば私達貴族が護る対象ではあっても、決して杖を向ける相手では無いでしょう?」
 流石にその言葉には少々無茶があるとギーシュは思う。
 いくら平民とはいえ、明らかに自分達に歯向かう相手だとしたらそれは護るべき対象ではなく敵である。
 それ以前に、先ほどの彼女は終始許しを請う普通の平民であり、確かに杖をむけていい相手では無いのだが。

 暫くしてシュヴルーズと件の生徒がその場から去った後、その場に立ち尽くすようにして残っていたギーシュとモンモランシー。
 二人は、それぞれ、今起こった事と先ほど二人で話していた事とを頭の中で考えていたのだ。 
「難しいものね……」
 誰にともなく呟くモンモランシー。目の前で起こった出来事を思い返し、先程自分が口にした決意は上辺だけではないのかと重い気分になったものが声になったのだ。
「うん」
 だが、ギーシュは理解する。
 この言葉は、モンモランシーがそれらと向き合っているからこそ洩れる言葉だと。
 だからギーシュの口から、自然と洩れた。
「頑張ろう、モンモランシー。ぼくも頑張る」
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:00:50 ID:3a92PkGP
いい顔になってきましたなぁミスタ・グラモン。
支援。
 
 
 食事を終え、メイドが後片付けをして部屋を去った後、オスマンは書類に手をつけようとしながらも手がほとんど動かずに思わず溜息をつく。
「……ふうむ」
 問題に問題が増えていく事に嫌気がさしているのだ。
 メイドの話を聞き終えたオスマンは、顎鬚をさすりながら今更になって問題が起こっていなかったわけではなく、問題が見えなかっただけだという事を知った。
 常々、貴族が平民をないがしろにしている現実を知らないわけでは無い。
 だが、自分のいるこの学院で、今回の悪魔の襲撃に関して言掛かりの如く鬱憤の対象にさえされてしまう事態が起こり、なおかつ自分が気づくのが遅れるとは、貴族の堕落ぶりと、それ以上に自分の眼力の衰えをつきつけられるようでもあった。
 オスマンが再び溜息を吐くと同時に、扉からノックがかかる。
「オールド・オスマン、シュヴルーズです」
 扉の向こうから、中年の女性の声がかけられるのを、オスマンは溜息をする暇も無いのかと、内心うんざりしながらもシュヴルーズに入室を促す。
「入りなさい」
「失礼します」
 入室してきた紫色のローブを着た中年女性の教師シュヴルーズは、オスマンの前まで足を進めると、軽く会釈をして口を開く。
「忙しい所を申し訳ありません。ですが、なにぶん急ぎの頼みがあります」
「申してみよ」
「実は――」
 
「なるほどの」
 先ほどシュヴルーズが目撃し対応した、一部の貴族の子息による平民への危害を聞いたオスマンは、先ほどのメイドの言葉が事実である事を再認識する事になった。
 シュヴルーズの報告があるということは、問題が教師にも見えるほどに表面化している事に他ならない。
 だが、よくよく考えれば仕方無い部分もあるだろう。
 悪魔の脅威と正面から対峙したのは貴族だ。だというのに、護るべき対象である平民は貴族への不満を口にし、更に件の巨躯の悪魔も事あるごとに貴族への怨みを口にしていたと言う。
 だからこそ、例の悪魔騒ぎ、つまり、この謎の伝染病は、平民が何らかの手段で悪魔と契約して起こしたものではないかという噂まで立ち始めているのだ。
(……何かに原因を求めてしまうのは仕方ないものなのかもしれぬが……浅ましく嘆かわしいの)
 原因も判らぬ見えない恐怖に対し、そのはけ口を求めた結果、時として無理やりに原因を“求めてしまう”のは、人の心の弱さが起こす仕方の無い、しかし仕方の無いと言うにはあまりに愚かな行為だと、オスマンは嘆く。
「何か対策を立てなければ、近いうちに罪無き平民から犠牲者が出る可能性が高いのです。この際、一度全使用人を総入れ替えする事は出来ませんか?」
「そんなこと簡単に出来る筈がありません。それこそ伝染病の危険性が有る事を王宮に宣告でもしない限り……」
「ですが、未だ感染症の恐れありと宣告してしまえば、そのまま処分対象になってしまいます!」
「では、どうやってこれだけの人数を追い出してなおかつ新しい人員を派遣してもらうのですか!」
 オスマンがさて、どう対応したものかと悩む横では、シュヴルーズとロングビルが言い争いにすら聞こえる討論をしている。
「……ふうむ」
 オスマンは顎鬚をさすり、二人の言葉に耳を傾けながらこれからの事を思案する。
 今回の発端であるであろう、伝染病の事に気考えを向けたその時だ。
「た、たたた、大変です!」
 突然、乱暴に扉が叩くようにして開かれ、頭の禿げた中年男性の教師、コルベールが息を切らせて部屋に駆け込む。
「何事じゃ?」
 礼儀も何もあったものじゃない突然のコルベールの来訪に部屋にいた三人は眉を顰めるが、コルベールはそんな事はおかまいなしに息も絶え絶えのまま叫ぶ。
「ミ、ミ、ミス・ヴァリエールの使い魔、い、いえ、感染症持ちのあの男が――」
 コルベールの言葉を最後まで聞き終わる前に、オスマンは顔を強く顰める。
 名前が出ただけで、既に更なる問題が出た事は間違いないからだ。
 そして、コルベールの締めの言葉は、オスマンだけでなく、ロングビルにシュヴルーズの顔を驚愕に変えるに充分なものだった。
「――だ、脱走しました!」
113三年寝太郎 ◆k6snja5Cmo :2009/01/20(火) 00:05:41 ID:aBELy27S
 以上、四話終了です。

 ……そういえば、キュルケもタバサ、名前すら出ていない事実に俺愕然。
 ちなみに、昨年、何スレ前にキュルケ人気ないと言い出だしたヤツ。
 ちょっとこっち来て、デモニアックになってもらおーか?
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:05:58 ID:S/8IAm99
ΩΩΩ<な、なんだってー!
支援。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:11:35 ID:vy3jKg+g
疑心暗鬼で殺伐としてるなあ
でもこういう雰囲気……キライじゃないんだぜ
GJ!
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:31:59 ID:u1WYOdxM
何とも言えないダークな雰囲気、たまらねえ……
GJでした。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:49:35 ID:j79TCCV6
長い事待たせやがってGJ!!
みんなストレス溜まって破裂しそうになってるな。
ここで誰かが事件起こしたら歯止めが効かなくなっちゃうね。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:50:09 ID:hwGxrqyu
ブラスレキタ!まってたよー
ジョセフマジ出番ねぇwルイズもか…
これぞ原作再現、雰囲気が出ています。GJでした
ギーシュとモンモンがヘルアマポジで物語を引っ張ってくことになるのだろーか
wktkしながら続き待ってます。あとキュルケは良い子
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 00:51:22 ID:Kc2j85NC
おお、だんだんとブラスっぽく・・・というより虚淵節っぽくなってきましたねw
GJ!
ところで、今更ですがコンシートとはどのような意味が?
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 01:52:30 ID:Qeu+70Hj
とっても亀なのだが前スレのゼロの氷竜氏、パーフェクトキャンセレーションは既に発動している魔法や
マジックアイテムを対象にして消滅させるための呪文であって、パーフェクトキャンセレーションの
効果範囲内で後からかけられた魔法の効果を打ち消すものではないのだが……
持続時間も一瞬だから何度も打ち消し続けることはできないし。
前スレ622の言ってるインスタント・キャンセレーションだとしても何度もかけ直さなきゃいけないはず。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:00:03 ID:/PwYYrpY
>>120
これだから設定厨は・・・
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:02:39 ID:Qeu+70Hj
あぁ、クロス先の設定は無視して構わんと
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:06:12 ID:kPxWx7ZF
どっちでも良いけど避難所で
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:08:50 ID:Gw/mtUSA
フロウウェンこないかな……まってるぜ!!
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:11:03 ID:kPxWx7ZF
俺の記憶が正しければ森に落ちてそれっきりだたけ?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:28:28 ID:Tg9ilj5L
鋼の人やら黒蟻の人の続きが気になるなー
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 02:32:12 ID:gqppNCBQ
もうないんだよ
鋼も黒蟻もパーフェクトハーモニーも
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 03:32:32 ID:y3+kmKms
アレクラスト世界では美しさが優先するみたいなことを水野が昔いってたよ。
まあルール上で不明瞭な解釈を要する部分はマスターの判断でいいという程度のことなんだろうが。

設定の指摘は書き手の側にいたことある者からしてみたらありがたいね。
俺は氷竜の人じゃないけど。
つかここじゃ書いてないけど。

つーても、根本的な間違いとか勘違いとかしてた時は、正直、キツいなw
下手したら一話丸々書き直しとか、代案どうするかとか、それ考えるストレスでも参っちまうわ。
もっと強く、というか設定をちゃんと把握しとかないとなあ…と何度も思った。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 04:15:23 ID:DTxT1gX0
雰囲気と効果見ると竜語魔法のカウンタースピリット・ノームだよねー<ゼロの氷竜氏、パーフェクトキャンセレーション
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 04:18:54 ID:y718lZCF
>>129
sageれ

んでもメイジの魔法は精霊魔法とは違うんじゃねぇの?
131ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 06:50:30 ID:SwQI8r91
おはようございます予約が無いようなら07:00からシーン08の扉を開こうかと思う。
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 06:58:30 ID:y718lZCF
支援
133ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:02:33 ID:SwQI8r91
それでは運命の扉を開きます、今回は本編6レスの予定。

ヒューとデルフが会話をしていた頃、学院を挟んだ反対側では一つの影が蠢いていた。
その場所は、魔法学院において宝物庫と呼ばれる場所である。ローブを目深に被ったその人物は傍目には男とも女ともしれ
なかった。
怪人物は宝物庫を守る堅牢な壁を何度か確かめるように叩き、また杖を振って何がしかの魔法を使っては頭を振る。
そんな事を根気良く続けていたが、芳しい結果が得られなかったのか、終いには宝物庫の壁を蹴りつけて去って行った。
茂みに隠れ、纏っていたローブを剥ぎ取り、怪人物から学園秘書ミス・ロングビルへと姿を戻した彼女は、教職員寮にある
私室へと戻り溜息をついた。

「あー、もう!何だってあんなに分厚いのさ!しかも壁自体に『固定化』を何重にも掛けてるもんだから『練金』すら効き
やしない!ああいうのを偏執的って言うんだろうね!
 あたしのゴーレムでもあれだけの厚さになると破壊にかなりの時間を食うだろうし、どうしたもんか…。」

学院秘書ミス・ロングビル、またの名を“土くれ”のフーケと呼ばれる彼女は、魔法学院にある<破壊の杖>と呼ばれるマジ
ックアイテムを奪取せんと1年近く前からこの魔法学院に潜入していた。
しかし、宝物庫の壁の厚さと幾重にも重ね掛けされた『固定化』は彼女に計画の破綻をありありと感じさせるものだった。



ゴーストステップ・ゼロ シーン08 “学院秘書と宝物庫”

    シーンカード:ハイランダー(希望/予期せぬ幸運。状況の好転。失敗しかけていた計画の奇跡的な進展。)



虚無の日から数日後、学園は何事も無く動いていた。
学生達はメイジとしての授業をこなしつつ青春の一時を謳歌し。
使用人達は日々の糧の為、精力的に仕事をこなしていた。
134ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:05:05 ID:SwQI8r91
さて、そんな時ルイズは何をしていたかというと、…爆発していた。もといキュルケやタバサの協力の元、魔法の検証に明
け暮れていた。
いつもは夕食が済んだ後にしていたのだが、キュルケやタバサから「流石に夜は迷惑」という意見(苦情ともいう)を聞い
て、授業と夕食の間に切り替えたのである。
今は以前、ヒューからあった指摘を参考に試行錯誤の最中だった。
呪文の順番を入れ替えたり、発音を変えてみる等、様々な方法を試してみる事にしたのだ。
しかし、その前に自分が起こしてしまう『爆発』についてより詳しく理解しようと思い立った、様々な爆発を起こして検証
しようというのである。
まず、普通に爆発が起きる場合でも距離によって命中精度にかなりの違いがある事に気が付いた。大体自分の身長と同程度
の距離なら命中は難しくない事。それから距離が出来るほどにばらつきが出てくる。
威力について、これは集中するだけ威力が増大する事は、経験上理解していたので割愛した。
生体と無機物に対しての威力の違い、流石にこれは人を対象にする訳にはいかなかったので諦めた。

「ふぅん、こうして改めて文章に起こしてみると、いかに貴女の爆発が不思議な現象か分かるわね。」
「そうなの?」
「ええ、例えばこの威力の上昇に関してだけど。普通にファイヤーボールを打った時も、集中して打った時もそう威力に変
化は無いのよ。
 強い威力が必要なら強い呪文、集中するのは命中精度を上げたり、制御が難しかったりする時、それが普通よ。」
「ただ、感情の昂りで実力以上の威力が出る事は何かのレポートで読んだ記憶はある。」
「うーん、感情の昂りとは違うのよね。こう“成功しろ〜成功しろ〜”って魔法の制御とは別の所で考えると爆発が大きく
なるのよ。」
「貴女、力の込めすぎなんじゃないの?」
「込めすぎ?」
「そう、もしかしたら貴女の精神力って馬鹿みたい多いんじゃないかしら。
 呪文に込める精神力が多い所為で、呪文が呪文として成り立たないんじゃないかって言ってるの。」
「制御に問題があるという事?」
「というよりもあれね、貴女が注ぎ込んでいる精神力と、呪文に必要な精神力に大きな乖離があるのよ。」
「じゃあ、想定して使う呪文のレベルを上げろって事?そんなの無理じゃないの。」
「そこが難しい問題なのよね、精神力はあってもドットの呪文じゃあ簡単にあふれるとか、普通は無いんだけど。」
「案外、ヒューが言ったのが本当の事なのかも。」
「それって、ルイズだけの魔法ってヤツ?…かもしれないわね。」

タバサとキュルケが深刻な顔になった事で不安になったルイズは恐る恐る尋ねてみる。

「ちょ、ちょっとどういう意味よ。」
「多分、多分だけどね。ヒューが言ってたあなたの魔法って戦術級になるんじゃないのかって想像したのよ。」
「はぁ?何よそれ!」
「落ち着きなさいなルイズ、よくよく考えなさい。
 ドットからスクエアになったとしてもドットの魔法に力を込めすぎて失敗するなんて普通は無いの。」
「分かってるわよそんな事位。」
「だとすると、貴女の魔法が使う精神力は私達とは違うレベルにあるって事じゃなくって?」
「例えば私達の精神力を測る目安がワイングラスだとすると、貴女の目安は桶の可能性がある。
 ワイングラスからナイトキャップに使うグラスには造作もなく水を移せるけど、桶だと難しい。そういう事。」
「うう、遠い道のりがますます遠くなった気分だわ。」
「安心なさいなルイズ」

キュルケはルイズに向かって慈母のような笑みと口調で話しかける。

「え?」
「その予想は間違ってはいないわ。」
「な、なんですってぇ!ちょっとキュルケそれどういう意味よ!」
「あら分からない?」
「ふ、ふふふ。ああ、良いところに生体と無機物の比較対象があったわね。
 そこでじっとしてなさいツエルプストー!アンタの屍を踏み越えて私は私の魔法に辿り着いて見せるわ!」
「あーら、貴女のノーコン魔法如きで私を屍にできるつもり?」
「い、言ったわね、言ってくれちゃったわね!そのノーコン魔法、おのが身でとくと味わうが良い!」

“宝物庫”前の広場に爆発音が響き渡った。
135ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:07:14 ID:SwQI8r91
一方、ルイズの使い魔である所のヒューはというと、…学院近郊の草原で乗馬の練習の最中だった。
講師を買って出たのはヒューのお陰でモンモランシーとよりを戻したギーシュである。こちらもあの一件以来、仲良くなった
モンモランシーとシエスタが少し離れた場所で、談笑しながらアフタヌーンティの準備をしていた。

「そう、基本的に馬を進ませたい方向は脚で指示するんだ。より急ぐ時は手綱を使って細かく指示しないといけないけど、
無闇に引っ張ると棹立ちになったりして落馬の原因になるから気を付けて。」
「あ、ああ。くっ、と、は。」

「ギーシュー、ヒューそろそろお茶にしましょー」

「おっと、レディ達がお待ちだ、今日はこの辺で切り上げようか。」
「ん?ああ。済まないなこんな面倒な事を頼んで。」
「いやいや、気にしないでくれたまえ。貴方に教えてもらった事に比べれば乗馬程度どうという事もないさ。
 というよりもだね、僕としてはこの後に貴方から聞ける戦闘に関する考察が聞けるだけ得をしてるともいえる、収支で
いえばこちらが得している位だよ。」
「あまり、こっちに集中されても困るんだがね。モンモランシー嬢の視線が痛くてかなわん。」
「まあそこは勘弁してくれたまえ、そんなところも彼女の魅力の一つなんだ。」
「やれやれ、ご馳走さん。」
「ん、それはどういう意味だね?」
「何のことだ?」
「いや、いまご馳走様とか言ったじゃないか。僕達は空腹を覚えこそすれ、満腹には程遠いんだが。」
「ああ、その事か。俺の故郷の言い回しさ。
 君に覚えがあるかどうか知らんがね、傍目で見ていて熱烈に愛し合っている2人がいたとする。」
「ふむふむ、僕とモンモランシーの事だね?」
「まあそうしておこう。でだ、どっちでもいいんだが片方が、その関係に全く関与していない第3者に惚気るとしよう。
嫉妬ってわけじゃないが、そうすると惚気られたその第3者は…」
「ああ、なるほど。確かに覚えがあるよ。実家にいた頃、両親の仲の良さによくあてられたものさ。
 うん、確かにあれはご馳走様と言いたくなるね。うまい言い回しだよ。」
「だろ?ま、若いんだせいぜい楽しむ事だな。」
「ははっ、何を言ってるんだい。貴方だってまだまだ男盛りじゃないか。
 確かにメイジじゃないとはいえあれだけの力を持っているんだ、上手い事売り込めばそれなりの地位は確実じゃないか。
 おっと、それじゃあ先に行ってるよ。君は無理をしない程度に急ぎたまえ。」

ヒューにそう告げるとギーシュは先行してモンモランシー達の下へと馬を進めた。

「男盛りねぇ…」

先刻のギーシュの言葉に苦笑しながら馬首を巡らせた時、ヒューは魔法学院の宝物庫から立ち上る煙を見た。

「何だありゃ?」
136ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:11:57 ID:SwQI8r91
ヒューが草原から魔法学院を見ていた頃、ルイズとキュルケは呆然としていた。

「や、やっちゃったわねルイズ…。」
「…アラ、大変ダワ『コテイカ』ガ切レテイタナンテ。急イデおーるど・おすまんカ、先生方ニ連絡シナクッチャ。」
「ルイズ、ごまかし切れない。」

現実逃避しようとするルイズの肩をタバサが叩く。
3人の目の前には宝物庫があったのだが、その壁にはうっすらとヒビが入っていた。

「わ、分かってるわよ!このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!逃げも隠れもしないわっ!」

そのヒビを前に、当事者というか犯人のルイズは薄い胸を張りつつ高らかに宣言する。

「…さすがに貴女をあれだけ煽った以上、貴女だけに背負わせるわけにもいかないわね、私も付いていってあげる。」
「いいわよ、自分の不始末くらい自分で拭うわ。」
「無理しないで良いわよ、ていうかヴァリエールに貸しを作るなんてまっぴらだし、貴女がいなくなったら色々とつまらなくなるじゃない?」
「アンタね!」

再び口論が勃発しようかというその時、コルベールをはじめとする学園の教師と秘書のロングビルが宝物庫前の広場へ駆けつけてきた。

「い、一体今の音は何事ですか!」
「うん?あそこにいる生徒はミス・ヴァリエールにミス・ツエルプストー、それとミス・タバサではありませんか?」

広場に到着した面々は改めて宝物庫を見上げ、次いで唖然とした。
そこには常識では考えられない現実があったのだ、何とスクエアクラスの土メイジが幾重にも『固定化』を掛けていたはず
の宝物庫の壁にヒビが入っているではないか!
特に土の属性に詳しいシュヴルーズなどは、何度も目をこすりながら見直している。

「一体何があったんだね?」
「私が魔法の練習をしていた際の話ですが、魔法を掛けようとしたら間違ってあちらに当ててしまいました。こちらの2人は見ていただけです。」
「ちょ、ちょっとルイズ。違うでしょう! 違いますミスタ・コルベール!」
「貴女は黙ってて!魔法を使ったのは私なんだから、責任を取るのは私で良いのよ!」
「そうじゃないでしょう?貴女ただでさえ評判悪いんだから…」

いきなり始まった女生徒同士の口論に教師達は唖然としていたが、そんな中コルベールがいち早く気を取り直すと、手を叩きながら2人の仲裁に入った。

「ミス・ヴァリエールにミス・ツエルプストー、少し落ち着きなさい。
 今は責任を問う場ではありませんぞ、状況を確認する為に聞いたのです。」
「ですから!」
「もう、ルイズあんたいい加減に」
「キュルケが煽ってルイズが魔法を使用したら宝物庫に直撃。これが実際に起こった事。」
「「タバサ!」」
「使用した事実と煽った事実、2人が言いたい事を要約すればこれで全部。」
「なるほど、そうでしたか。助かりましたぞミス・タバサ」
「しかし、処分…と申しても。」

とコルベールは口ごもりロングビルをちらりと見る。
宝物庫を見ていたロングビルはその視線に気が付いたのか、3人の所に歩み寄って困ったような表情で口を開いた。

「実は処分を下そうにも、責任者の学院長はこの間の虚無の日から王都へと出かけているのです。」
「では、帰りはいつ位になるのでしょうか?」
「そうですね、あちらでの仕事が片付き次第と申しておりましたから…恐らく明日の朝方から昼前になると思われますわ。」
「今から早馬を飛ばせば今夜中には戻ってこれるのでは?」

他の教師が名案だとでも言うような声音で意見を言うが、ロングビルの済まなさそうな言葉がそれを打ち消した。

「申し訳ありませんが、その仕事というのが明日の会議までに仕上げなければならない物なので…。
 本当でしたら先日には終わっている仕事だったのですが、学院長が伸ばし伸ばしにしていた為に、とうとう枢機卿閣下から呼び出しを受けてしまい…。」

広場に微妙な沈黙が広がる。
137ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:14:08 ID:SwQI8r91
「で、ですが連絡をするというのは良いかもしれませんね!
 仕事を終えた後に風竜に送ってもらえば、時間の節約にもなりますわ。」

気を取り直したように提案するロングビルの意見に教師達も頷きを交わした。
が、続いてコルベールが発した議案に全員が沈黙を返す。

「では、連絡はどなたが行かれますかな?」


結局、翌日授業が無いという理由でコルベールが選出され、一人トリスタニアへと馬を走らせる事になる。
走り去るコルベールを見送る学院秘書の唇はうっすらと笑みをたたえていたが、気付く者はいなかった。


その夜、処罰は翌日オールド・オスマンが帰還した後となった為。ルイズとキュルケは一旦部屋に戻された。
夕食も終わり、双月が頂点にかかろうかという頃、キュルケとタバサはここ数日以来の日課になったのか、ルイズの部屋に
来ていた、昨日までは魔法やN◎VAに関する意見を交換していたのだが、今日は少々様子が違った。

「ちよっとヒュー聞いて頂戴、何だってこの娘ってばあそこまで頑固なの?」
「ああ、話はマルトーから聞いたよ、何でも宝物庫の壁にヒビを入れたそうだな。」
「悪かったわね、どうせまた失敗魔法よ。」

ルイズはすねているのか、ふくれっ面でそっぽを向いている。
対するヒューは手元にあるハルケギニア語の教本(絵本)をめくりながら対応している、こちらの教師はデルフリンガーだ。

「いやいや、中々ニューロじゃないか。」
「何ですって?失敗魔法なのよ、どこが凄いって言うのよ!」
「効果だけ見れば確かに凄い。」
「あら?タバサとヒューは同意見なの?」

ヒューの意見を肯定するタバサにキュルケは質問をする。

「爆発という現象、そして宝物庫を傷つけたという結果を取り除くと、ルイズが使った魔法で≪スクエアクラスのメイジが
重ねがけをした『固定化』を無効化して、分厚い壁にある程度のダメージを与えた≫という結果が残る。」
「あ。」
「でも、失敗は失敗よ。」
「けれどもこれはスクエアでもかなり難しい仕事だと思う、特に『固定化』が厄介。」
「しかもルイズお嬢さんはピンピンしてるしな?」

タバサの解説にヒューが補足を加える事で、ルイズの爆発に関する謎がまた一つ追加された。

「一体何なのよ私の『爆発』って…」
138ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:17:49 ID:SwQI8r91
猛獣の様な唸りを上げながら、恨み言を口にするルイズだったが。視界の端に妙な物を捕らえそちらを確認する。
が、確認した途端、開いた口が塞がらなくなった。
巨大な土人形(大体30メイル位)が宝物庫を殴ろうとしていたのだ!

「ねぇ、私疲れてるのかしら?」
「かもしれないわねー、実際私も…って何あれ。」
「じゃあ今日はこれでお開きにしようか、……ふぅ、色々慣れたつもりなんだけどな…」
「今日も有意義だった…ゴーレム?」

ルイズの部屋にいる全員がそのゴーレムを確認した瞬間、巨大ゴーレムは学院の宝物庫の壁を粉砕する。

「なぁ、ルイズお嬢さん。こっちじゃあ夜中に解体工事とかやるのか?」
「そんな訳ないでしょう!賊よ!」

ヒューのとぼけた質問に激昂しながら答えるが早いか、ルイズは部屋を飛び出していった。
キュルケやタバサは窓から飛び出していく。

しかし、4人が宝物庫前まで来た時には全てが終わった後だった、シルフィードでゴーレムを追ったタバサも賊を見失って
帰還する事になる。
周囲では、念のため見張りをしていた数人の教師や衛視が怪我をした為、水のメイジによる治療を受けていた。

宝物庫の前でルイズは呆然としていた。自分の責任だ、自分が魔法を失敗して『固定化』を破ったりしなければ。そんな考
えが頭の中を駆け巡る。相談しようと自分の使い魔を探すと、彼は衛視や教師達から話を聞いていた。
御主人様をほったらかしにして何をしてる!と怒鳴ろうとしたが聞こえてきた声に思い留まる。

「じゃあ犯人の顔とかは見えなかった?」
「ええ、フードを目深に被っていたし。何しろこんな夜更けに暴れている『ゴーレム』の上の話ですから。」
「なるほどね、『ゴーレム』とやらが近付いて来た事に気付いたのは?」
「いえ、何もかもがいきなりでした。気が付いたらそこにはもう。」
「ほほう、ありがとう参考になったよ。」

「ちょっとヒュー、アンタ何してるのよ。」
「何って、初動捜査さ、現場にいる連中から記憶がはっきりしている内に状況をより詳しく聞き出すのはセオリーだからな。
 ルイズお嬢さん、記憶っていうヤツは自分で思っているほどしっかりした物じゃあないんだ、余程特殊なケースじゃない
限り、時間が経つに従って主観や他者の意見で曖昧になって来る。…それこそ閃光(フラッシュ)みたいにな。
本当は宝物庫の中も調べたいんだけどな、学院長の帰りを待つさ。」
「あら、ヒューってば何してるの?ルイズ。」
「よく分からないけど“初動捜査”だって。」

その後ヒューはミセス・シュヴルーズからゴーレムについて聞き、ポケットロンで周囲の地面や茂みを撮影した後、ルイズ
達と共に部屋に戻り、翌朝までぐっすりと熟睡してルイズを呆れさせた。
139ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:20:53 ID:SwQI8r91
シーン08
ハイランダー(St)
…軌道で生活するエリート(地上に堕とされた者も含む)、天上人。生来の特権や見知らぬ援助者の力によって望みが叶う。
 無垢な精神を持つキャラという位置付けでも使用される。
 三千院ナギや雪広あやか、wikiではマシロ君やディズィー(後援者は後ろの2人)

初動捜査
…ここでヒューが行っているのは、足跡の記録と衛兵や教師達からの聞き込み。
 ミセス・シュヴルーズには『ゴーレム』について考察してもらっている。
140ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/20(火) 07:23:50 ID:SwQI8r91
今回はこれで終了、運命の扉を閉じます。

馬の動かし方とか分かんないよ、だって貧乏人なんだもの…orz
次回はヒューがフェイトらしい所を見せる事が出来ると思います。

あとルイズの魔法失敗の原因が次元の人の論と似ていますが…本当に偶然です。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 09:13:21 ID:ZUEqCuoz
ゲルトオオオオォ!
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 10:21:28 ID:5EnDsmk4
>140
乙。
ルイズの魔法考察なんて大概出尽くしてるから似てても仕方無いし、気にする事も無いかと
指紋やDNAみたいな物証じゃ周囲が理解してくれないしなぁ
推理だけだと状況証拠にしかならないしどうなるか期待
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 10:28:48 ID:FaP0AYyA
前回の氷竜の人のあれはどれかというと遺失古代語魔法のルーン・シールドではないかと思うけど、
元ネタの設定・考察は避難所込みでもどこでやればいいのか分からん上に作者さんが確実に見てるとは限らんのよねorz

別に作品の間違いを見つけて叩きたいんじゃなくて、好きな作者の作品が後々読まれた時に
誰にとっても納得できる素晴らしい作品であって欲しいだけに難しいものだ
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 10:35:49 ID:4KCIgggI
フロ爺は一応一段落してるからなぁ
PSO本編の設定投げっぱなし状態よりもスッキリ状態
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 12:21:51 ID:mP6Pj4c5
>141
パンツじゃないから恥ずかしくないお姉ちゃん?
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 12:25:26 ID:mSmRcucq
設定が間違ってたら指摘するのは普通だろ
ただそれをダシに叩くのは論外けどね
あともう厨って単語に食いつきすぎ
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 12:52:10 ID:QEzz/925
>>103
小説版だと男装した少女という書き込みをどっかのスレで見たことがある
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 12:55:03 ID:cTU5Acot
ヒューの人乙です
まさしく探偵の腕の見せ所ですな
149ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/20(火) 13:33:14 ID:HFZA3uva
投下でもないのに失礼します。

>>120さん
ご指摘ありがとうございます。

魔法の名前を取り違えてました。

今回ブラムドが使ったのは『アンチ・マジック』です。
ロードス島戦記作中で登場したのは、一巻の最後の闘いになります。
スレインがウォートからもらったワンドで発動させた魔法がそれで、
『パーフェクト・キャンセレーション』は『アンチ・マジック』を破るためにカーラが使った魔法です

今回は名前だけ取り違えていたのが救いでした。
効果に関しては作中で表現した通りです。

まとめサイトの方は訂正させていただきます。

また、荒れる原因を作ってしまって申し訳ありません。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 13:44:35 ID:fag9x0Yy
>>145
ブラスレにも主役より主役らしいと言われているチャンプ、
ゲルト・フレンツェンと言うフェニックスのブラスレイターが居てデスね...
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 13:53:42 ID:D0QXZR6v
つまりルイズがゲルト・フレンツェンとゲルトルート・バルクホルンの両方を召喚してしまうんですねわかります。
面倒見の良いおにいちゃんと照れ屋で厳しいけどまっすぐなおねえちゃん。

あれエレオノール姉様の立ち位置が危ういよ?
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 14:12:30 ID:Nerm14D5
ズボン状態!
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 14:42:01 ID:sYQrPKZ3
マテパから芸を見せてる最中のピィゲル召喚

平民を召喚したとルイズを笑う生徒らの頭上に金ダライが!
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 15:30:07 ID:D0QXZR6v
金ダライ…
つまり『よくわかる現代魔法』から森下こよみ召喚ですね!<どんな魔法も金ダライ召喚魔法に変えてしまう特異体質
155143:2009/01/20(火) 15:34:22 ID:FaP0AYyA
>>149
考えてみればルーン・シールドは術者自身にしかかけられない上に確か遺失じゃなかったorz
ルーン・シールド、ルーン・アイソレーション、アンチマジック、〜キャンセレーション、サプレス・エレメンタルと色々あるから混乱したようです
こちらこそgdgd考察してすみませんでしたー
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 16:21:51 ID:K2Iz7u6C
最近書こう書こうと思っているし書きたいのに、どうにも筆が進まない……
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 16:39:36 ID:/ChAsPhQ
>>156
そういう時は、時間なら30分、それできついのなら10分
ページ数なら1枚と、ほんのちょっとだけ書くつもりでやってみれば?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 16:40:52 ID:cTU5Acot
>>153
作者自身に「使えねえなあこの魔法」と言わしめた魔法使いを呼ぶなんて、そんなこと…
おまけにギーシュとキャラが被るw
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:00:20 ID:3HLcmU6B
そう言えば、エルフの精霊魔法は、古代後魔法に分が悪いよなぁ
精霊鎮圧的に……
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:08:46 ID:ShNXc0rW
高位の精霊を従えてるキャラを精霊ごと呼べればエルフ相手に有利に戦えるかな?
先住魔法の使い手よりもっと従うべき存在にだろうし。
それより余所者として排除しようとするかな?
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:23:38 ID:eOe8+Wjs
むしろ精霊召喚しちゃえばよくね?
ある程度性格付けされてるのなら結構話膨らみそう
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:30:49 ID:wNVp1dvL
精霊召喚なんて超が付く大技なのにそんな物をホイホイ召喚するとか……するとか……えー……
…………ありなんじゃね?(ブラムド見つつ
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:31:12 ID:ClGT4tBl
すぐに思い浮かんだのがテイルズのクラースとエミルだ。前者は召喚士、後者は精霊と結構いけそう。
エミルは一応あれで剣の素人扱いされてるから、そんなにチートにはならんだろうし。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:33:14 ID:eMA3i0b8
>>162
某灰色の魔法使いですね、わかります。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:43:19 ID:BDdg1Xt2
個人差はあるが、パトラ・ペラ・ルナの呪文だけで誰にでも使えるようになる魔法もある。
あの3人の魔女を召喚したら……ハルケの人間はハートを抜かれてもあんま変わらんかも、特に教皇とジョゼフ
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:54:36 ID:5horqvoq
>>160
風の聖痕の和馬や綾乃ですね。
特に和馬は風の精霊王と直接契約を交わしてるので、下位の風の精霊は無条件で彼に従うとかなんとか。

ちなみに精霊王は上位世界に存在するらしいので、精霊ごと呼ぶと必要は無いと言うことでヒトツ。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 17:58:35 ID:djC4Hjiw
ばかっぽい
168ゼロの使い魔11話:2009/01/20(火) 18:06:31 ID:sPkpLD0a
予約が無ければ18:10から投下したいと思います。今回は短めですのでどうぞよろしくお願いします
169ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:07:03 ID:sPkpLD0a
名前間違えました。すみません_| ̄|○
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 18:08:41 ID:BDdg1Xt2
>>168
そりゃ全部だよ
シエン
171ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:10:35 ID:sPkpLD0a
ゼロの花嫁11話「ヴァリエール家族会議」



ラ・ヴァリエール侯が城に着いた時には、全てが終わり既にルイズ達も学園へと戻った後であった。
近しい者達にルイズへの判決が既に下っている上、内容は条件付きでの貴族位剥奪だと聞くと、隣で見ている夫人が眉をひそめる程に激怒する。
モット伯が色々と動いていた事は周知の事実であるが、それすら聞かず、判決を下した王への直談判を強行する。
夫人を部屋に待たせての談判はものの半刻も経ずに終わり、ヴァリエール侯は奇妙な顔をして夫人の待つ部屋へと戻ってきた。
夫人が状況説明を促すと、侯は首をかしげたままどう説明したものか悩んだようだが、整理するのは無理と諦め、ありのままを語る。
全てを聞いた夫人も、やはり同様に首をかしげる。
夫人は、ともかくルイズに話を聞こうと言うのだが、侯はルイズにそこまでの説明能力があるなどと思っておらず、実際に謁見の間に同席した者達から状況を聞く事にした。
皆口々にルイズを誉め称え、流石はヴァリエール家の娘よ、立派に教育なされましたなと侯を慰める。
王が期間を与えたのも見所あるが故、侯ならば手柄の一つや二つ簡単に用意出来ましょう、それを見越しての沙汰であると彼等は口にした。
それは言う程簡単でもないのだが、侯は既に退位の際の恩赦を考えての沙汰である事を、王自ら聞いている。
王にそこまで言わせる程、ルイズが謁見の間で立派に振舞ったなどとどうしても考えられない。
皆を帰した後、ヴァリエール侯は夫人にそう言ったが、夫人はあくまで冷静に事実を受け止めていた。
「彼等の言がお為ごかしで無い事はご承知でしょう、ならばそういった出来事があったという事。それが真にルイズであったかはわかりませぬが」
侯は押しも押されぬ大貴族である。
既に今回の件でヴァリエール家にどの程度の損害が出たのか、そしてその損害を誰がどれだけ減らしたのかも計算してある。
王、アンリエッタ王女、マザリーニ卿、この辺りは王家そのものと考えていい。
そしてワルド子爵。彼は冗談半分で決めたルイズの婚約者だが、その職責を果たしてくれたようだ。
逆に敵となったのはモット伯。こちらには後で思い知らせねばなるまい。
迷惑をかけたのだから寧ろこちらから配慮すべきであろうが、ここまで話を大きくした主犯を見逃せる程寛大にはなれない。
おかげで、王家に借りを作るなどという致命傷まで負ってしまった。
「私の小さいルイズに、一体何が起こったというのだ……」
決闘騒ぎはエレオノールが話をつけてくると言うので任せたが、直後に今度は王まで巻き込んだ大騒ぎだ。
夫人は淡々と語る。
「ルイズがこれを機にアンリエッタ次期女王と懇意にしているというのであれば、ヴァリエール家にとっては良き展開であると思いますが」
旦那が何を考えているのか分かっていながらそんな事を言ってくる夫人を、侯は憎憎しげに見やる。
「……エレオノールに引き続き、ルイズまでもを王室にくれてやれというのか?」
「手元に置いておきたい侯のお気持ちもわかりますが、既に事態はそれが許される状況にありません」
アンリエッタが王子であったのなら望む所ではあるが、そうでない以上アンリエッタからの好意がいつまでもルイズに向けられるとも思えないし、それに頼って何かを行うにも心許ない。
思い悩む侯に、相手はヴァリエール家の娘、幾ら王家でも無茶はすまいと夫人は語る。
「どうせ侯はルイズに何かあったらただでは済まさぬと、王に釘を刺してきたのでしょう?」
夫人にはお見通しらしい。
侯は王とマザリーニ卿に向かい、ルイズに何かあったならば王家が相手であろうと杖を向けるとまで公言してきてしまっているのだ。
相変わらず感情を表に出さぬ静かな口調で夫人は続ける。
「残るはモット伯への対応ぐらいですが、これは侯の得意分野ですからお任せします。ルイズには私から一言添えておきますので、それでこの件は終わりでしょう」
色々と言いたい事もあるが、自身ですらそれがわがままだと分かってしまっている。
ましてやそれを押し通したい相手は王家である。とてもそのような真似は出来るものではない。
「本来ならば、問答無用で家へと連れ帰るものを……」
「学園を卒業、しかる後公職に就くといった流れは、よほどの事が無い限り崩せぬでしょうな。無理を通すにしてもほとぼりが冷めてからでしょう」
冷徹に響く夫人の声が恨めしい。
「その間にルイズが新たな危険に晒されぬ保証は無いぞ」
「でしょうな。その時は侯も覚悟をお決め下さい」
侯は激昂して机を叩く。
172ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:11:05 ID:sPkpLD0a
「覚悟だと!? ルイズを失う覚悟か!? そんなものどうやって決めろというのだ! おお、私の小さいルイズ……どうしてこのような事に……」
頭を抱えて蹲るラ・ヴェリエール侯。
流石に他所でこのような醜態は晒せぬ。
だが溜めるだけでもよろしくないと判断した夫人は、敢えてこのような事を口にして侯に発散させたが、やはり彼女も又ルイズが心配な事に変わりは無い。
「ルイズ自身に自覚させるのが一番でしょう。せっかくこうして王都まで来たのです、明日の晩はエレオノールも交え久しぶりに家族での食事と致しましょう」



エレオノール襲来を思わせるルイズのヘコみ様に、燦もキュルケもタバサも処置なしと両手を挙げる。
「そんなに家族が苦手なの?」
キュルケは慰めるのを諦めて自身の興味を優先する。
ルイズはベッドに突っ伏した状態のまま、今にも擦り切れそうな声で答える。
「……苦手じゃないわよ。でも今回は、やりすぎたっていうか、その、きっと今までに無いぐらい怒られるから……」
呆れ顔のキュルケ。
「王を相手にやったみたいにすればいいじゃない」
がばっとベッドから顔を起こすルイズ。
「出来る訳ないじゃない! 今回はエレオノールお姉さまだけじゃなくてお母様もいらっしゃるのよ!? 私が一言だって口挟む余裕なんて無いわよ!」
本日の晩餐は王都にて家族四人で行う旨の手紙が来てからというもの、ルイズから前向きな反応が返ってきた試しがない。
「お父様もきっと怒ってらっしゃるわ……お父様の頭越しに陛下とお話したなんてお父様絶対お許しにならないもの……」
考えれば考える程どうしようもない事態であると気付くのか、話しながら徐々にベッドへと沈んでいく。
燦が発破をかけようとルイズの手を取る。
「ルイズちゃん思い出すんじゃ! あの剣士倒す為の特訓の日々を! あれに比べれば怒られるのなんてへっちゃらへーじゃきに!」
ルイズは泣きそうな顔のまま燦を見つめる。
「……私特訓の方が全然いい……ううん、もう一度決闘でもした方がマシ……そうよ、その手があったわ。
 サンのハウリングボイスでばっしーと私を吹っ飛ばして大怪我負えばきっと行かなくて済む……
 この際キュルケやタバサの魔法でも全然いいわ。手足の五、六本使用不能にしてもらって……」
タバサがぽつんと呟いた。
「……末期症状」
キュルケと燦は顔を見合わせて盛大に溜息をついた。



晩餐の宴、燦はお留守番で家族水入らずの食事であったが、そこに赴くルイズはまるで戦地に向かう兵の気分。
真っ青な顔を引っさげて会場入りした彼女を待ち構えていたのは、ルイズよりよっぽど難しい顔をした父と姉であった。
母が仏頂面なのは今に始った事ではないので敢えて特筆はしない。
かくなる上は、最終手段。
ルイズは覚悟を決めて(開き直ったとも言う)誰かが口を開く前に、今回の出来事全てを洗いざらいぶちまける。
言い訳も無し、自分が如何に愚かで浅はかであったかを滔々と語る。
誤魔化しなぞ一切通用しない相手だ、そういう相手には全てを正直に話して余計な事で怒る余地を与えぬのが一番。
全てを語り終えると、大きく頭を下げて三人に許しを請う。
下手に自分が責任取るなぞと言った所で、火に油を注ぐだけなのだから。
誰からも反応無し。
かといって下げた頭を上げる事も出来ず、そのままじーっとしていると、ようやく母から声がかかった。
「わかりました。ですが、今は食事を楽しむ時間ですよ」
「は、ははははいっ!」
母の言葉のおかげか、食事の時間中、今回の件を誰一人口にはしなかった。
父が思い出したように出す姉カトレアの話題、姉が現在研究中の魔法の話題を振れば、母が所々に合いの手を入れ、続きを促す。
晩餐の時は和やかに過ぎていくが、ルイズは食べた物もわからない程緊張しきっている。
ふうっ、と小さく息を吐いた後、母は今まで父も姉も触れなかったルイズに話題を振った。
「ルイズ、貴方に学友と呼べる人は居るのですか?」
実はあんまり居ない。
ぱっと頭に浮かぶのは、ここでは話題に出しずらいあのばいんばいーんな地黒女。
「タバサと言う子と仲良くしております。彼女はトライアングルですし、とても優秀な子です。他には……」
大して仲良く無い相手も引っ張り出すしかないルイズは、日常会話が可能な人間全てを挙げる。
173ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:11:35 ID:sPkpLD0a
そしてモンモランシー、ギーシュと並べた所であっさりと名前が尽きる。
ギーシュの名を出した時、エレオノールの表情が僅かに揺れるのを見てとったルイズは、すぐに次の話題に移る必要性に迫られる。
「あ、後、ライバルが居ます。絶対負けられない相手です」
そう言ってキュルケの名を出すと、父の眉が片方ひくっと上がる。
「え、えっとですね! 下品で品性の欠片も無い言動が目立ちますが、で、でもそれだけじゃなくて、
 結構優しい所もあって……じゃなくて! 座学でしたら私が圧倒的に上なのですが、彼女トライアングルで、
 魔法の精度とかはタバサと五分というか……じゃなくって! 実際に勝負したら戦績は大体五分で、
 い、いえ! 私の勝ち越しです! うん、そうです。確か私が一つ勝ち越してたはずですっ……ってそれはともかくっ!
 使い魔品評会では一歩譲りましたが、あれは派手好きな人にウケただけで実際は……いえ、実際凄いメイジですから、
 その部分は評価されるべきとも思いますけど、使い魔という点でしたら、絶対私の方が上で……」
何を言いたいのかまるでわからないルイズの言葉の羅列に、母は鷹揚に頷いてみせた。
「なるほど、よくわかりました」
相変わらず鋼鉄のような面皮を誇る母であったが、ふと、母が別の事を考えているのでは、そんな気がした。
自然に言葉が口をついて出る。
「お母様も学園で過ごされた時、好敵手のような相手がいらっしゃったのですか?」
一瞬だけ、鉄が青銅程度に緩んで見えた。
「しつこく挑んで来る者はおりましたが、私が本気で相手する程の者など学園にはおりませんでしたよ」
恐らく事実であろうその言葉を聞いたルイズは、以前ならば感じたであろう恐怖を覚えず、何故か我が事のように誇らしく思えた。
母は今のルイズで言うタバサやキュルケが相手でも、きっと片手で捻るようであったのだろう。
それを少し寂しい事とも思うが、それでもきっと母にとって良い思い出であったのだろう。
そう感じ取ったルイズは、この晩餐会の中で、ようやく心からの笑みを浮かべる事が出来た。
ルイズが緊張から解きほぐされた事で、食事も会話も、いつものヴァリエール家を取り戻す。
父はとても愉快そうに、姉も又ころころと良く笑った。
母は相変わらずだったが、それでも楽しんでいるように感じられた。
久しぶりの家族との晩餐はルイズにとって、とても楽しめるものであった。

「ああ、ルイズは少し残りなさい」

晩餐が終わった直後、母が言い放ったこの言葉さえ無ければ。
冬将軍のごとき寒波を撒き散らし、エルフですら恐れをなすであろう空気全てが泥土と化したかのような重苦しい瘴気。
父も姉も、その気配を感じ取って早々に退室してしまった。

地獄はこれからであった。



エレオノールが自室で頭を悩ませていると、執事が部屋のドアを叩く。
用件は父、ラ・ヴァリエール侯の呼び出しであった。
何事かと侯の部屋へ赴くと、父から悩み事の相談を受けた。
色々とややこしい装飾語に彩られていたが、侯の悩みというのは、つまり、
「ルイズが一体何を考えているのかわからん」
といった事らしい。実は全く同じ事でエレオノールも悩んでいた。
「あの小さいルイズが、晩餐の前に述べた口上。信じられぬ、あのルイズがどうしてあのような軍の報告じみた真似が出来るようになったのか……」
貴族が同じ貴族に報告する場合、華美な装飾語に彩られている事が多い。
必要事項のみを簡潔に伝えるなどという話し方を、侯はルイズに教えた覚えは無い。
これは、軍に入ってしごかれてこそ初めて身に付くはずなのだ。
トリステイン魔法学園でそういった報告の仕方を学ぶのか、との問いにエレオノールは首を横に振る。
「とんでもないですわ、学園は貴族の貴族たるを学ぶ場所でもありますから。一体ルイズに何が起こったのか……」
あーでもない、こーでもないと激論を交わす父と娘。
徐々に煮詰まってきた侯は、ぼそっと思い付きを口にする。
174ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:12:02 ID:sPkpLD0a
「……もしかして最近の娘達の流行という奴なのか?」
「うーん、それはわかりかねます……私もそういうのには疎いので」
「エレオノールが学園に居た頃はそういった奇妙な流行等は無かったのか?」
「そもそもそういった軽薄な風潮が好きになれませんでしたので」
二人は顔を突き合わせて悩む唸る。
ふとエレオノールと同じ職場で働く十代の娘達が、エレオノールの目を盗んでは、様々な物語を仕事中に読んでいた事を思い出す。
「もしかしたら、流行物の物語に何かヒントがあるかもしれませんわ」
「なんだそれは、平民ではあるまいにその様な物を読んでどうするというのか……」
ぶちぶち文句を漏らす侯であったが、事がルイズの為である。
執事に最近トリステインで流行っている物語を大至急全て揃えよと命じる。
「そうだな、ルイズの年頃の娘がたくさん出てくる話が良い。そういった物で一番有名な物を持って来るのだ」



ものの半刻もせぬ内に執事が手に入れてきたトリステインのベストセラー。
「ほ、放課後ラブハーツですか……何故でしょう、表紙に描かれた絵に殺意が沸くのですが……」
「うむ、放課後ラブハーツか。ルイズが学園に居る事を考えれば、相応しきタイトルよ」
二人が同時に読めるようしっかり二冊買ってきてある辺り、流石はヴァリエール家の執事である。
早速読み進める二人。
「え、エレオノール。話す語尾ににゃんとかつける話し方は初めて見たぞ」
「お父様……何ですかこの媚びに満ちた白痴の大群は……」
「確かに出てくるのは女ばかりだが、何故揃いも揃って美女ばかりなのだ?」
「胸の大きさが戦力の全てではない事を思い知らせてやりたいですわ……」
「どうして同じ立場にあるはずの者がこうも皆揃って謙り、下僕のごとき所業を行うのだ。主人公は貴族か?」
「高笑いする貴族って、こんな馬鹿が目の前に居たら私自ら説教してやりますわ」
序盤こそ冷静に読んでいられた二人だが、流石はトリステインベストセラー、あっと言う間に二人を物語に引き込んでしまう。
「うっ!? こ、この女の子……わかるわ、ええ、そのつい意地悪を言ってしまうその気持ち痛い程わかりますわ!」
「うおおおおっ! 何故だ! 何故別れねばならぬか! ええい、私ならばヴァリエール家の力を持って解決してやるものを!」
「ああ! 駄目です! そこはもっと正直にならなければ!」
「愚か者が! 男がそのように腑抜けた事でどうするか!? ええいそこへ直れ! 手打ちにしてくれる!」
そしてエンディング。二人は半泣きである。
「……そ、そんな……何故なの、やはり殿方は口数多い、明るく素直で優しい子を好むというの……」
「何故そちらを選ぶか! 情に流されず大局を見据えよ! おお、何たる事だ……」
どうやら二人の贔屓キャラは主人公とうまく行かなかった模様。
結構なダメージを受けテーブルに突っ伏す二人。
しばらくそうしていると、二人は同時に自分が何故こんなものを読んでいたのかを思い出す。
「エレオノールよ、学園ではこのような事が日常茶飯事的に行われているというのか」
「分かりかねます。あくまで物語ですから脚色もあるとは思うのですが……」
「しかしだな、やたら『あらあら』とか言う娘は、そのまんまカトレアのような気がしてならなんだぞ」
「あ、それ私も思いましたわ。後普段のルイズでしたら、比較的『あ、貴方の為にしてあげたんじゃないんだからね』とか言い続けてる子が似てるような気がしますわ」
「何っ!? 奴なのか!? いや、ルイズはもっとこう、素直な子では……」
「ああ見えて結構意地っ張りな所もありますわよ。見栄っ張りでもありますし」
侯がお前が言うなと思ったかどうかは定かではない。
「そ、そうか……それはさておき。という事はやはりこの本に書かれている事は最近の娘の近況に近しいという事か」
「ですわね。と、いう事は……つまりルイズは……」
「ぐ、ぐぬぅ、まさかまさかまさか……」
物語に出てくる登場人物達の奇行は、その人間的成長も含め、恋故の物と二人は理解していた。
「学園の何者かに懸想している可能性がありますわ」
侯はテーブルを叩いて立ち上がる。
「許さん! 何処の馬の骨だ!」
175ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:13:18 ID:sPkpLD0a
放課後ラブハーツ登場人物の一人に貴族の娘が居たが、その父も確かこんな感じだったなーと改めてこの物語にリアリティを感じてしまうエレオノール。
「お父様、まだ確定ではありませんし、そもそもルイズが平民のような尻の軽い真似をするとは思えませんわ」
しかし侯はルイズが何処の誰とも知らぬ男(物語の主人公を重ねている)に作った弁当を捨てられたり、雨の中待ち合わせをすっぽかされたり、他の女と天秤にかけられたりしてるビジョンが浮かんで止まらなくなっていた。
「断じて許さぬ。全身の皮を引き剥がし、生きたまま体中の骨を抜き取ってくれる」
エレオノールは、うっわ、本気でやりかねないわお父様、とか思いながらとりあえず宥める。
「落ち着いて下さい。あの晩餐の席でもルイズは男性の名前など一つしか挙げて無かったではないですか」
自分でそう言ってはたと気付く。
確かグラモン家の息子とは決闘をしていたはずであるのに、ルイズはあの場で友として名を挙げていた。
「お父様! そうですわ! あのグラモン家の息子に間違いありません!」
「何だと!? どういう事だ!」
「グラモン家の息子とは決闘までした間柄、しかし晩餐の席で友として名を挙げたという事はつまり……」
「おお! 物語にもあったあのパターンか! ケンカを機に惹かれていくという……」
「そうですわ! しかしあの決闘においてルイズはグラモン家の息子を叩きのめしております。という事は……」
「おおっ、おおっ! ならば懸想しているのはグラモン家の息子の方! つまりルイズは奴に何も感じておらぬという事か! 流石はエレオノール、良くぞ気付いた!」
最悪のパターン、ルイズの方が想いを寄せているという形が無くなった事で心底安堵する二人。
もちろんそれこそフィクションな訳で、逆パターンも充分にありうるのだが、学生の恋愛をこの本でしか知らない二人にはそこまで深読みは出来ない。
二人共恋愛に疎いという事ではない。
侯にしてもエレオノールにしても、社交の場での恋愛術は相応のものであるのだが、学生と言う特異な環境に慣れていないのだ。
気分は未開地に乗り出す冒険者である。
ルイズを連れ出す事適わぬ以上、何とかしてこの奇特な環境下においてもルイズに真っ当な人生を歩ませねばならない。
「トリステインには私の方が長いですから、知人を当たって学園の状況を探れないか頼んでみますわ」
結局エレオノールのその発言に頼るしか手段は残されていなかった。



エレオノールの両手を握り締め、何度も頼むと言っていた。
父はモット伯への反撃に専念せねばならないのだ、他の事をしている余裕はあまり残っていない。
しかし、ああは言ってみたものの、エレオノールにもさしたる心当たりを無い。
自分の部屋へと戻ったエレオノールは、テーブルの上に山と積まれている手紙を幾つか引っ張り出す。
内の一つ、中身さえ見ていなかったソレをナイフで開き、中身を読む。
『度々の書状申し訳ありません、以前にお話した時に出たお詫びの件ですが、よろしければ食事等いかがでしょうか。
 ヴェリエール家のご息女に相応しい会食をご用意させていただこうと思いますので、是非良きお返事を』
差出人はグラモン家の三男坊であった。
案外まめな彼の書状はこれで三通目であったが、エレオノールは全て放置していたのだ。
はずみで出た言葉だろうに律儀に誘いを繰り返す所は、鬱陶しいとも思うが、同時に悪い気もしなかった。
あれだけコテンパンにしてやったのだ。
176ゼロの花嫁11話:2009/01/20(火) 18:13:41 ID:sPkpLD0a
近づくのも嫌であろうに、自分が言った言葉は守ろうとする姿勢も不快なものではない。
彼をアテにしてみるというのはどうだろう。
咄嗟に思いついたにしては妙案だと頷き、エレオノールはミスタ・グラモンへの返信を書き始めた。



寝室にて、後は寝るのみとなった侯爵夫人は、まだ寝るつもりではない様子の侯爵に声をかける。
「どうされましたか?」
侯爵は、夫人にはバレバレでありながら当人は絶対隠せてると思っている冷静なフリをしながら答える。
「ふ、ふむ。いや幾つか読んでおかねばならぬ本があってな」
夫人がちらっと手に持った本を見やると、カバーの部分が裏返してあり、表紙もタイトルも読めぬようになっていた。
その程度飲み込むだけの器量を持つ夫人は、気付かぬフリをして寝所に入る。

後に夫人はこの事を少し後悔した。
それから数夜に渡り、深夜の寝室に侯の咽び泣く声が聞こえてきたからだ。
本の正体を執事に確認した所、侯は「放課後ラブハーツシリーズ」全巻をつい最近揃えたという話だ。

試しにと侯の目を盗んで少し読んでみたが、夫人は一ページめで挫け、以後夫の趣味には口を出さない事に決めたのであった。


以上です。次回も短めの話になりそうですので、一週間はかからないかな、と思っております
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 18:14:20 ID:1NeO1f6S
しえん
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 18:26:01 ID:18ZrWlEU
ヴァリエール公爵が狂った……w
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 18:26:20 ID:eyZQm29w
麻倉葉やハオあたりなら五大精霊の一つを持ち霊にしてる上にそいつの属性変更も可能だぞ

まあ葉の方は愛蔵版の書き下ろし分が出ない事にはどれ持つ事になるか不明だが
消去法で考えればスピリットオブアースかね
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 18:29:15 ID:nJ1j6oHI
ワルキューレとか巨大ゴーレムとか涙目になるのかな
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 19:38:22 ID:qtNdOEKk
精霊ねえ……某エロゲで一つ思いついたが思いっきりネタバレになるから書けんのよね。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:06:03 ID:/3AN5iwB
投下乙です。
それにしても末娘の成長を素直に認めてやれんのか父と姉(笑)
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:17:20 ID:9NVRz/Tr
きっとアレだ。
ツンデレの家系なんだよ多分。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:34:23 ID:dhSaDdVF
そりゃ10何年も娘が筋金入りの才能ナシってことを
見せ付けられてるんだから成長すりゃびっくりするだろう
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:39:01 ID:LhK3GWGo
悠久幻想曲から由羅&メロディの姉妹を召喚したら

1:獣人の姉妹の召喚だヤッホゥー
2:巨乳の姉妹の召喚だーorz

のどっちになるだろうなw
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:44:27 ID:wTaKBvkf
投下乙
これは……まさかあのおぞましい事件が起きてしまうのか……
裏声玄田……
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 20:48:20 ID:fag9x0Yy
精霊か
コーティとかのポリフォニカ系は神曲学士も居ないと駄目か
みつめてナイトのピコは……東洋人にしか見えないから論外

うーん、結構厳しいな
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:16:44 ID:DrQa9GIr
エンハウのスィリーはどうかね?ギャグにしかならんと思うがw
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:23:37 ID:/OEbYPmt
テイルズ系の精霊はどうだろう。
エターニアの連中なら結構人間味のあるやつらだしいけるかも。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:32:49 ID:YyWlg3te
精霊・・・・・・・・ブラウニーなんかどうだろう


「ねぇねぇビオラ、ここどこだろう」
「ファンタジーよ!これこそあたしが待ち望んでたファンタジーの世界よぉ!!!」
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:34:41 ID:a7iMluAA
対エルフにFFWのデルタアタック

ところで、ゴルベーザ四天王+ゴルビー召喚的なネタてある?
「使い魔ですか、いいですとも!」とか
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:46:39 ID:6xr+icUX
ディシディアの兄さんはいい人過ぎるからな、快くやってくれそうだw
やさしさも厳しさも持ってるし
193ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 21:52:27 ID:B4CNhOml
投下予告させていただきます。
22時00分を予定しております。どうかよろしくお願いします。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:54:33 ID:ic++7uhI
支援ー

そういやどうでもいい事だけど騎士ガンダム物語って人間族も三頭身だからMS族も三頭身なだけで
実はリアル世界だと人間大で人間と同じ頭身なのかなぁって

SDガンダムフォースだとMSは三頭身だけど
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 21:55:05 ID:YyWlg3te
騎士団の方は速度が速いですねぇ
うらやますぃ・・・・・見習いたいものです、支援
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:00:06 ID:xxE9Meqf
そういえばMS族は皆かなづちなんだっけ
197ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:00:36 ID:B4CNhOml
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン4

トリステイン魔法学園 朝

ゼータが目を覚ました時、まだ、日が明け始めたばかりであった。
時間の流れが完全ではないが、恐らく一昨日までは自分は昼夜の概念がないムーア界にいた。
しかし、今はスダ・ドアカワールドと、さほど変わらない昼も夜もある。
(感覚が少し麻痺しているのか?)
ゼータは意識を覚醒させつつ、ベッドで寝ている青髪の少女に視線を移す。
(私は、彼女に呼ばれたのだな・・・)
ゼータは昨日を振り返る。ムーア界でジーク・ジオンを倒した後、光に包まれ、この異世界に呼ばれたのだ。
(異世界というものは、信じたくはないのだがな・・あの月を見ると・・・
しかし、我々三人がいるのなら、どうして団長は私たちの周りにいないのだろう?)
あの戦いで、自分達とアレックスはそう離れてはいなかった。しかし、昨日の場所にはアレックスはいなかった。
とりあえず、どこかで朝の鍛錬をしたい。例え、異世界でも訓練を怠る理由にはならない。
そう思いゼータは少女が起きないように部屋を出ようとする。
「どこ行くの?」
声をかけられ振り返る。目が覚めてベッドから身を起こしたタバサが声をかけてくる。
(気づいていたのか?)
ゼータは気配に気付いた少女に少し感心した。
「起こしてすまない、近くの森で鍛錬してくる。」
「そう」
どうやら自分を止めるつもりはないらしい、ゼータは部屋を出て扉を閉めようとすると。
「2時間以内に帰ってきて」
少女が要求を伝える。
「わかった」
そう答え、ゼータは部屋を後にした。

ゼータが部屋を出て二十数分後、ニューも意識を覚醒させる。
野宿に慣れており、床の感触は悪くなかった。
「異世界か・・」
目覚めの一言を口にする。
視線をさまよわせ、ベットで寝ているルイズのところで固定する。
(寝顔だけなら、あどけない少女で話はすむんだけどな)
昨日の事を思い出しこのあどけない少女とのやり取りを振り返る。
自分はこのあどけない少女に泣き脅され使い魔の契約をしてしまった。
そして、このあどけない少女との契約は一生だという。だが、ニューには契約した意味がいまだに実感できずにいた。
自分の手にある契約のルーンなるものがニューにその事実を告げる。
一生――人とそう変わらない寿命のモビルスーツ族の自分にとっては、縁が遠い言葉だと思った。
彼は平均寿命の約三分の一を生きただけで、しかも、ここ数年は生きるか死ぬかの戦いを続けてきた。
死に体の状態で担がれたことも一度や二度ではない。そして、あの時、ナイトガンダムにすべてを託し自分は死んだのだと思っていた。
思考をやめ、体を完全に起こす。床には自分の毛布のほかに、彼女が昨日着ていた衣類が散乱していた。
「洗濯しろと、言っていたな」
もちろん、ニューにはルイズの衣類を洗濯するつもりはない。
だが、昨日の彼女の態度を考えるとそれに対する、何かしらのペナルティを考えているに違いない。
(ここが貴族の施設なら小間使いかメイドくらい居るだろう。)
そう思い彼女の衣類を手に持ちニューは部屋を後にした。
198ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:01:28 ID:B4CNhOml
朝食に向かう生徒が現れ始めた頃、学園秘書のロングビルは朝の学校を散歩していた。
ロングビルは、まだ秘書に着任してから日が浅く、学園の地理を完璧に把握していなかった。
ロングビルにとって地理を把握する事は学園秘書としても、また、本業の方でも重要なことであった。
(今日は森の方を調べようかしら・・)
ロングビルはそう思い森に歩を進める。
「そこの貴女、少しお訪ねしてよろしいでしょうか?」
後ろから声がする。
「はい」
そう言いながら振り返りロングビルは絶句した。
「自分はタバサ殿の使い魔ゼータと申します。
 鍛錬を終えダバサ殿の部屋に戻りたいのですが場所が分からないもので・・もしよろしければ道を教えてもらえないでしょうか?」
ゼータは騎馬隊隊長としてではなく、無用の混乱を避けるためにタバサの使い魔とする事にした。
しかし、ロングビルはゼータの顔を見て完全に錯乱している。
(?何か、間違った事を言ったか?)
ゼータは自分に不審な点がないかを注意しながら、もう一度ロングビルの顔を見る。
(どうして・・・どうしてコイツがここにいるの!!)
「失礼ですが、大丈夫ですか?顔色が悪いようですが?」
ゼータが心配そうにロングビルを窺う
「だっ!大丈夫です!少し立ちくらみがしただけですから、もう大丈夫ですわ。」
「そうでしたか」ゼータが顔の表情を崩す。
「ミス・タバサの部屋でしたね、それなら女子寮ですから、途中までは私が案内しますわ。」
「そうですか、お手を煩わせ申し訳ありません。」
ゼータは感謝を述べ、少し早い歩調のロングビルについていく。
道案内の途中ゼータとロングビルはお互いの事を簡単に話した。
(異世界から来た、なんて言わない方がいいだろうな)
女子寮の前に着いた時、ぎこちない空気はいくらか緩和されていた。
「ゼータさん、ここが女子寮ですわ」
「おお、たしかに、ロングビル殿、このゼータ心より感謝します。」
(失礼なアイツとは大違いだねぇ・・)
恭しく一礼するゼータに、ロングビルはある者を思い浮かべて比較していた。
「いえ、いいんですよ、また何か困ったことがあればご相談ください。」
秘書として社交辞令を述べ、早足でロングビルは去っていく。
(忙しそうなのに、自ら道案内までしてくれるとは、なんて素晴らしい女性なのだろう)
実際の理由を知らないゼータは、足早に去るロングビルに対して好意を持った。
(まったくガキどもが騒ぐから何かと思ったら・・まさかアイツと似たものだったとはねぇ)
ゼータの視線を感じなくなってからロングビルは深呼吸を入れた。
「あのゴーレムがもし、アイツと同じだとしたら・・・この仕事は一筋縄ではいかないねぇ・・」
誰もいない広場でロングビルは本業の顔に戻っていた。
199ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:02:06 ID:B4CNhOml
シエスタと別れた後、ニューは少し校内を歩く事にした。
その様子を幾人の生徒が不思議そうに見ていたが、ニューは気にも留めなかった。
「すごいな、こちらの魔法とは便利な物だな・・」
軽い気持ちで三階からフライを使い降りる生徒や、荷物を手で持たすに歩く生徒を見て、
こちらの世界の魔法の利便性に感心するばかりであった。
戦闘を主要目的とした魔法が多いニューにとっては少し羨ましかった。
(メガバズぐらい、見せた方が良かったかな)
単純な威力なら最も高い部類の魔法を頭に浮かべ、ニューは女子寮に戻っていった。
ニューが部屋に戻ると、怒りの気配のルイズは仁王立ちで出迎えた。
「ニュー、どこに行ってたの?」
かみつく前の犬のような顔で聞いてくる。
「洗濯をしていたのだが・・まずかったか?」
「まずいわよって!洗濯してたの?」
ニューの意外な行動に唖然とする。
(まさか、やってくるとは・・案外、躾の行き届いたゴーレムじゃない!)
命令を下しておきながら、ルイズはニューが洗濯をするとは思ってなかった。
「まっ、とっ当然よねアンタは私の使い魔なんだから」
洗濯した事に驚きながらも、乾いた洗濯物を受け取る
「ん?洗濯したのに何で乾いているの?」
「魔法を使わせてもらったよ、乾くのを待つのは面倒だったからね。」
その一言はルイズにまたも衝撃を与える。
「え!そんな魔法あるの!?聞いてないわよ!見せてよ、ここで、今すぐ!」
魔法を見れなかった事を少し悔やみながら、要求する。
「大した事ではない、ヒーター」
ニューの何気ない一言が、まだ冷えた部屋を暖気が包む。
「暖かい・・って!すごいじゃない!アンタはこれからは、毎朝これを使いなさい!」
ルイズが人差し指で命令の意思を伝える。
あきらかに部屋の温度が変わることに肌で気付いたルイズは、これから朝は使わせようと決意した。
「まぁ、それはいいのだが、ルイズ、そろそろ食事をとりたいのだが」
「え?アンタって食事するの?何を食べるの?鉱物?草?」
さも当たり前のように、ルイズは疑問を抱く。
「そんなものは食べないよ、君たちと同じ物だ」
「同じ物って、パンとかスープよ、アンタが食べれるの?」
「当たり前だろ、何を言っているんだ?」
当然だろ、といった態度でニューは答える。
「・・・まぁ、いいわ、じゃあ食堂に行くわよ」
そう言って部屋に出た。
ルイズが部屋を出ると、いつも鉢合わせするキュルケではなく、そこにいたのはタバサとゼータであった。
「タバサじゃない、珍しいわねこの時間なんて」
ルイズの感覚では、タバサは自分より早く食堂に行っていることが多い。
「遅刻・・」
「・・・申し訳ない」
タバサがゼータに視線を流し、ゼータは短く謝罪する。
「まぁ、いいわ 一緒に行きましょ」
ニューを連れて、自分ひとりで食道行くのは気が引けたので、同じ境遇のタバサがいるのは、少し心強かった。
コクリと頷き、タバサが食堂に向かい足を進める。
二人の少女に連れられて、ゼータとニューは後に続いた。
200ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:03:58 ID:B4CNhOml
アルヴィーズ大食堂は、本来、学生たちの喧騒で騒がしいはずだが、この日は妙に静かであった。
「静かね、何かあったのかしら?」
ルイズの疑問を聞き流しながらタバサはキュルケのいる方に向かう。
「あら、おはようルイズ、今日も遅いのね」
「あら、おはようキュルケ、貴女が早起きだなんて明日は・・・」
キュルケに対する皮肉を言おうとした所で、ルイズは静かな原因に気づく。
「おお、おはよう嬢ちゃん達!ゼータ ニュー早く座れよここの飯、凄くウマいぞ。」
「って!アンタ、何勝手に座って食べてるのよ!!」
ルイズがキュルケの隣で、手当たり次第に食べ物を喰らうダブルゼータに指をさす。
「え?もしかして、ここの飯は有料なのか?」
「違うわよ、ここは貴族専用の食堂で、平民や、ましてやアンタみたいな使い魔なんて、入る事も許されないのよ!!」
「貴族専用ではないわよ、誰も文句を言ってこないなら別にいいじゃない」
「キュルケ、アンタがそんなことじゃ使い魔の躾はどうするの?誰も指摘しなかったの!?」
そう言ってルイズは辺りを見回す。少し離れた位置から、こちらの方を見ていた貴族たちは慌てて視線をそらす。
(あの三人だけでも厄介なのに、得体のしれないゴーレムがいるなんて・・)
その眼には貴族でない者が座る怒りよりも、自分達が関わりたくないと意思表示している。
「タバサ、それは本当か?迷惑なら、私達は外でも構わないのだが。」
「・・別にいい、あなたはここ」
ゼータの提案を断り、椅子に座ったタバサは隣の席座るよう促す。
ゼータは遠慮がちにタバサの隣に座る。
「ルイズ、私はどうすればいいのだ?」
ルイズの後ろから、ニューが聞いてくる。
「いいじゃねぇか、タダなんだし、席もあいてるんだからよ。」
「なんでアンタが勝手に許可出してるのよ!
・・まぁいいわ、ニュー、アンタは私の隣よ、とりあえず、椅子を引いてちょうだい」
「まぁ、それくらいなら・・・」
ニューがルイズの座るのであろう椅子を引く。食事をしながらも、ルイズはニューに給仕の真似事をさせる。
なんだかんだ服従する、ニューにルイズは満足する。
だが、その様子はルイズ本人を除いては、やや滑稽に見えた。
その日の朝食は一部を除き静かなものであった。
201ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:04:32 ID:B4CNhOml
朝、差し込んだ光で、コルベールは目を覚ました。
(朝か、またやってしまったな・・・)
摩擦の無い頭をかきながら、コルベールは昨日調べていた、メモのルーンに目を移す。
「何だろうな、これは・・」
あの後、自室で調べたが、どちらのルーンも結局は解らなかった。
オールド・オスマンに報告するのが億劫になりながらも、着替えながら、頭の中で今日の予定を組み立てる。
「今日は、生徒と使い魔との親睦会だな」
生徒に適当な指示と注意をしてから、自分はもう少しルーンの事を調べてみよう。
(自分にとっては、ある意味、暇な日だな)
昨日みたいなことは起こらないだろう。コルベールはそう願った。
「私の使い魔とも仲よくやってほしいもんだ」
妻のように、長年連れ添った自分の使い魔を思い浮かべコルベールは自分の部屋を出た。

コルベールが寮の自分の部屋を出た後、シエスタは朝食を届けに来た。
コルベールは食堂で朝食を取りに来ないこともあり、たまに、簡単な食事をメイドが届けていた。
「ミスタ・コルベール、朝食をお持ちしました。」
シエスタがコルベールの部屋をノックする。しかし、返事は返ってこない。
「・・寝てるのかな?」
扉は開いており、シエスタは少し部屋を開けて様子を見る。
部屋にはコルベールがいる気配はない、取り合えずは、帰ってくるかもしれないので朝食を机に置く。
その時、近くにあったコルベールのメモが床に落ちる。
「もう少し整理してくれればいいのに・・あら、これは・・」
シエスタは拾ったメモのルーンをしばらく見ていたが、それを机に置いてコルベールの部屋を後にした。
「なんで、あんな物が書かれていたのかしら?」
コルベールのメモのルーンを思い浮かべながら、シエスタは仕事に戻った。

「7このルーンは・・一体?・・・」
教師 コルベール
初めて見るルーンに戸惑っている。
MP+100

「8なんで、あんな物が・・・」
メイド シエスタ
コルベールのメモを見ている
HP+50 (相手の動きを止める)
202ゼロの騎士団:2009/01/20(火) 22:05:42 ID:B4CNhOml
以上で投下終了させていただきます。
ありがとうございます。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:12:40 ID:xxE9Meqf
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:14:09 ID:/ATNebSk
乙であります!
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:15:01 ID:h2o2Ceh5
>>194
リアル等身のナイトガンダムとかあったのを思い出した。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:16:05 ID:2NDhuvL+
精霊ということで

A君(17)の戦争から小野寺総帥閣下召喚。
無論3話書いたら放置。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:19:49 ID:ic++7uhI
乙ー

ダブルゼータは寝坊してるタイプだと思ってたわ
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:29:52 ID:xxE9Meqf
>>205
あったな
リアル頭身の武者頑駄無とか摩亜屈とか仁宇とか
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:31:15 ID:sYQrPKZ3
>>158
何言ってんだ
シャイニングベンスンは凄いんだぞ

例えば、2巻のワルド戦
偏在で5人になったワルドがピィゲルを攻撃しながら楽しそうに笑い出す

すると何故かワルドの頭上に金ダライが!!


ほら、緊迫した戦闘シーンもあっという間にギャグ空間さ
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:32:49 ID:sYQrPKZ3
「ベンスン」じゃなくて「ベイスン」だったorz
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:36:41 ID:QiJeXmMQ
>>202
騎士団の人乙です。
コルベールが使い魔持ってるケースって珍しいですね。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:36:49 ID:a7iMluAA
>209
確かに凄い
そのまま舌噛んで呪文を封じ込めたら最強だな。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:42:59 ID:xxE9Meqf
シャイニングベイスンなめるなよ
名目上は回避不能の魔法だぜ
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 22:54:12 ID:xQGxGGSn
騎士団の人乙です。
ふと疑問に思ったんですけどジムヘンソンJrのようにモビルスーツ族は
人より成長が早いらしいけど寿命は一緒…なのかな?
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 23:03:29 ID:4/ITXD31
よりによってピィゲルの話題で盛り上がってるとはw

因みに、封じ込めるのはメイプルソンやシャルロックの役目と言ってみる
応用も効く魔法持ってるしな
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 23:03:46 ID:gEWSy+Xc
騎士団の人、GJ!
子供の頃は本当にはまったよ
217ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:36:25 ID:AWRCCj0I
腰は順調に回復中。修羅場は順調に地獄行き。そんな毎日の黒魔です。
……もう、現実なんて、見たくない。

というわけで現実逃避な投下です。
23:45頃からお願いいたします。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 23:43:44 ID:wTaKBvkf
>>213
いくら回避不可能でも攻撃力がぜんぜん無いんだもんよ……
正直シャイニングベイスンよりエリックを二度とお笑いのできない身体にしたピィゲルの鍛えすぎたツッコミの方が攻撃力あると思う
そして黒魔導士の人支援
219ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:44:42 ID:AWRCCj0I
投下開始です
――
「お、俺の左腕を――使い魔ごときにっ!こんな、こんな小童ごときにっ!!」
デルフが貫き、壊したのは、ワルドの左肩だった。
咄嗟に体を捻られてしまい、致命傷にはならなかったみたいだ。
でも、さっきまで杖を持っていた手を、潰せた。
「ワルド……忠告するよ。もう……降参して」
ワルドに静かにデルフを突きつける。
……もう、これで終わりにしたかったんだ、
ルイズおねえちゃんを……悲しませるのは。

―ゼロの黒魔道士―
〜第二十七幕〜 ただ生あればこそ

「相棒ぉ〜、もう一思いに殺っちまったほうが早ぇんじゃねぇか?おれっち今絶好調よ?」
キラキラ輝くデルフが言う。
「でも……でも……」
こいつは、確かに酷いことをした。
でも、それでも。ワルドはルイズおねえちゃんの婚約者だった人だ。
ルイズおねえちゃんは裏切られて悲しんだ。
それは礼拝堂に来る前に、何故か伝わってきた。
礼拝堂に来てルイズおねえちゃんの涙を見て、間違いないと思った。
だから、これ以上、ルイズおねえちゃんを悲しませたく無かったんだ。

「ケェェーッ!!!」
鋭い高音が、ステンドグラスの向こうから聞こえてきた。
『コメット』が破ったステンドグラス、そこから大きな塊が飛び込んできたんだ。
強く激しい風をまといながら。
その塊と、目の前のワルドが重なる。
「ふはははははは!!いつか後悔させてやる!この俺にトドメを刺せなかったことをな!!!
 攻城隊にやられるなよ!!俺自身が復讐してやる!!!」
猛風に目を閉じてしまって、次に目を開けた時にはワルドはもう消えていたんだ。
「チッ、悪運強ぇ髭オヤジだぜっ!ま、アレだな!俺様にビビって逃げたってぇわけだ!だはははははははは――」
「ルイズおねえちゃんっ!!」
ワルドを追うつもりは無かった。今は、それよりもやるべきことがある。
だから、ルイズおねえちゃんに慌てて駆け寄る。
ルイズおねえちゃんは、涙を流して呆然とその場にへたりこんでいたんだ。
「――どうして――ねぇ、どうして?」
「ルイズおねえちゃん……」
無理もない、信じていた婚約者に裏切られたんだ。
目の前で……
「――むっげぇなぁ〜、王子さんまで殺すことぁ無かろうによ〜?まぁ、アレだ、娘っ子よ!泣いてる暇ぁ無さそうだぜ?」
そうだ、さっきワルドが言っていた。攻城部隊がもうすぐ城にやってくるのだろう。
遠くの方で怒号が聞こえる。
さっき、ボクが乗って脱出する船はもう出てしまってる。
どこかに逃げるか……さもなければ……
「ま!安心しねぇ!おれっち達、今ギッランギランに輝いてっからよ!
 もーパワー全開?これならウン千万人の敵相手にできっぜ!だははははは――」
確かに、『トランス』したままならそれなりに粘ることができるかもしれない。
敵陣を突破して逃げるっていう手もあるかもしれない。でも……
「……デルフ、ゴメン」
「お?どうした、相棒?」
「『トランス』……もう、限界なんだ……」
光が、ボクの体を覆っていた光がしぼむみたいに消えていく。
「ぬぉぃっ!?相棒、どうしたってんだよぉ〜!?これからってぇときに!!」
『トランス』の力は、強力だけどせいぜい持つ時間は1度の戦いの間、それも長期戦は無理だ。
「ゴメンね……でも、なんとか、するから!絶対、なんとか、するから!」
必死に頭を回転させる。
着地で痛めた左足が、トランスの反動でものすごく痛む。
220ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:45:44 ID:AWRCCj0I
このままじゃ、みんな死んでしまう。
嫌だ。
ルイズおねえちゃんを守れないなんて、嫌だ。
だから考えたんだ。今この場所から、トリステインまで逃げることを。

「ちっきしょ〜!!相棒がギラギラってんならともかくっ!このままじゃおれっち見せ場ないままそこの王子さんと一緒にあの世行きかよっ!!」
デルフが耳元でわめく。
「――どうして――私――どうして?」
ルイズおねえちゃんの目は焦点があっていない。
あぁ、本当にどうしたら……
「――勝手に……殺さないで、くれる、かな?――ゲホッ――」
小さく、か細い声。
それが昨日まで元気に笑っていた声だって気づくのは、時間がちょっと必要だった。
「ウェールズ王子!?」
「お、なんでぇ、生きてたか!?しぶてぇな〜!!」
ルイズおねえちゃんもピクッと反応する。
「――幸い、急所は外したら、しいね――まだ、記憶になるわけにはいかないようだ――」
胸から血を流しながら、それでも気丈に笑顔を浮かべようとする王子様。
その笑顔が、とても痛々しかった。
「王子!や、休んでて!ぼ、ボクがなんとかするから!!!」
「そうだよ!見てたろ?おれっち達の大活躍をよー!もうちっと休んでたって――」
「――あぁ、君の勇気が、煌めくのを、見た――ゲホッ――だが、君も怪我をしている――だろ?」
服を真っ赤に染めながら、ウェールズ王子が体をゆっくり起こそうとする。
「よ、横になってて!ねぇ、大丈夫だから!!」
「おいおいおい、これってマジやべぇんじゃねぇか?」
「――城からの、秘密脱出孔を――ク――を教える――君達、だけで――」
「ダメよ!!!!!!」
ルイズおねえちゃんが突然大きな声をあげた。
「殿下も、ウェールズ殿下も一緒に!!」
「――足手まといは――捨てて、行きたまえ――いいか、良く聞きたまえ、ここを出て左に――」
「そんな!殿下は!姫が!姫が待って――」
ルイズおねえちゃんが必死に食い下がって、ウェールズ王子の声が聞きとれない。

もう少しよく聞かないと、逃げることだってできないかもしれない。
だから、ウェールズ王子に少し近寄った、そのときだったんだ。
地面からカリカリと引っ掻く音、それと何かが床を持ちあげるような振動。
「敵っ!?」
地面に向けてデルフをまっすぐ向ける。
足は怪我をしている。
ウェールズ王子はもっとひどい怪我をしている。
こんな中で、ルイズおねえちゃんを守らなきゃいけない。
「っちぃ、次から次に問題が――おもしれぇーことになってきやがった!」
デルフにはちょっと同意できなかったんだ。
ともかく、そんな緊張感の中、地面からの反応を少し待っていると、突然
「モグーッ!!」
と間の抜けた声と一緒に、モソモソと動くものが地面から生えてきたんだ。
それに続いて、長い爪と、その後に生えてる毛むくじゃらの体。
そして……
「モグモグーッ!!!」
クルクルッと空中に飛び出した毛の塊は、綺麗に宙返りをして得意げに礼拝堂に着地したんだ。
ポーズまで決めて……
「おいおい、これって確かギーシュの野郎の――」
「ヴェ、ヴェルダンディ!?」
221ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:46:55 ID:AWRCCj0I
「――久方ぶりの光だ――まったく、ヴェルダンディ、君はすばらしいよ!あ、いてててててて――」
「いいからさっさと進みなさいよ!後ろがつっかえてんでしょ!!」
「邪魔」
ヴェルダンディの空けた穴から、ギーシュ、キュルケおねえちゃん、タバサおねえちゃんが続けざまに出てきた。
何が、どうなってるの?
「あ、あんた達――どうして!?」
ルイズおねえちゃんが目をパチクリとさせて聞く。
「フッフッフ、ヴェルダンディの素晴らしい能力をお忘れかな?そう、かくも美しく聡明な我が使い魔はその華麗なる――」
「えーと、つまり、宝石捜す力であんたが持ってるっていう『水のルビー』探させて、地面掘ってきたってわけ?感謝しなさいよ、ルイズ」
ギーシュの長くなりそうだった説明を、キュルケおねえちゃんが簡単にまとめてしまう。
ヴェルダンディ、すっごい。
「――つまりその卓越した感覚こそ我がヴェルダンディの――あいたっ!?」
「緊急事態」
タバサおねえちゃんが、まだまだ続きそうだったギーシュの話を杖で殴って止めた。
「そうね、もうこのお城囲まれてるわよ?シルフィード待たせているから早く逃げないと――」
「な、何よっ!た、たまにはやるじゃない!」
ともかく、なんとかなりそうだった。
ちょっとホッとして力が抜けてしまう。

「応急処置」
タバサおねえちゃんが、ウェールズ王子、ボクと順番に杖を向け、呪文を唱える。
スゥっと痛みがひいていく。
まだ、ちょっと違和感はあるけど、歩いたりする分には問題は無さそうだった。
「よし、それでは、出発するぞ!みんな、この僕に続け――いたぁっ!?」
キュルケおねえちゃんの手刀は、ムチみたいにしなるんだなぁって思った。
「バカ言ってないで、さっさと脱出するわよ!」
「殿下も、お早く!」
ルイズおねえちゃんのせかす言葉に、ウェールズ王子は、体を支えていた右手で口元の血をぬぐって、
ゆっくりと、だけどとってもしっかりとした笑顔でこたえたんだ。
「いや――僕は、行けない」
「どうして!?もう、足手まといではありません!姫が、待ってます!!だから――」
ルイズおねえちゃんは、ウェールズ王子の服をグイグイと引っ張る。
王子様は、そのルイズおねえちゃんの腕をゆっくりとつかんで、言ったんだ。
「足手まといではないからこそ――行けないんだ。僕には、なすべきことがある――」
そのゆっくりとした小さな声は、沁み渡るように礼拝堂に響く。
「――愛する人を守るために――やらねばならない――」
その言葉に、ルイズおねえちゃんの腕が力なく地面に垂らされる。

「――小さな騎士君!君には、勇気をもらった!」
「は、はいっ!?」
突然、ボクに声がかけられる。
「――伝言を、頼めないか、指輪と共に――」
小さく、息を吸い直すウェールズ王子。
応急処置はタバサおねえちゃんにしてもらっても、やっぱり苦しいのかもしれない。
「『死しても貴女の記憶となろう、ときどき思い出してくれるだけでいい、だから』――」
もう一度、ゆっくり息を吸う。
顔が、少し青い。
「――『生きていてくれ!』と!」
「……う、うん!」
必ず、伝えようと思った。
何があっても。
222ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:47:45 ID:AWRCCj0I
「――さぁ、急ぐよ、諸君!ヴェルダンディ!来るんだ!」
「ほら、ルイズ、あんたも急ぐ!」
「脱出」
「うぇ、ウェールズ王子、あの、その……お元気で!!」
「なんか違わねぇか、相棒?ま、いっか!そいじゃーなー!!」
ヴェルダンディの掘ったらしい穴は、おっきな岩とかを避けたのかクネクネしててなかなか進みにくかった。
足下から、風が吹いているのが分かる。
……ルイズおねえちゃんが、ずっと無言なのが気にかかる。
「きゅい〜!!」
穴の先では、シルフィードがその場に留まって待っていてくれていた。
今は、高いところが怖いとかそういうことを言っている場合じゃなかった。
そんなに遠くないところに、大砲がたくさんつきだした軍艦が何隻も見える。


シルフィードの上は、しばらく無言だった。
みんな疲れていたし、何より、ウェールズ王子の笑顔が心に残っていた。
「――ビビ」
「……何、ルイズおねえちゃん?大丈夫?」
ボクは、なるべく下を見なくて済むように、帽子を深めにかぶっていた。
そしたら、ポンッとちょっと重めの荷物が背中にのしかかるような感じがしたんだ。
「――ちょっと、こうさせてて」
それが、ルイズおねえちゃんの頭だって気づくのにそんなに時間はいらなかった。
「……うん」
少しだけ、体を動かしてルイズおねえちゃんがもたれかかりやすいようにする。


ボクの小さな背中は、ルイズおねえちゃんを守れたんだろうか?
ルイズおねえちゃんを悲しませることしかできなかったんじゃないか?
だから、ボクは、そこからラ・ローシェルに到着するまで、
身動きせずに背中を向け続けていた。
ルイズおねえちゃんの涙を、なんとなく、見ちゃいけない気がしたから……

ピコン
ATE ―死神の幕引き―

「さて――と!!グ――やっぱり、痛いなぁ――」
若き王子の服は紅に染まり、
血は十二分に失うも、
なおも気丈に立ちあがる。
なんとか生きながらえた、
まだ立ち上がれる。
だからこそ、立ち上がる。
「――死しても記憶になる、か。結構だ――だが――」
そう、彼は一国の王子なのだ。
何より、愛する人のためでもある。
まだ、生きながらえる時間はある。
防衛指揮系統に混乱は無いか?
最悪、その場に立つだけでもいい。
士気が少しでも上がってくれればいい。
一刻でも、憎き『レコン・キスタ』の者どもを食いとめる時間が欲しい。
その後であれば、喜んで記憶になろう。
そうだ、愛する人の記憶になって生きるのだ。
使い魔の少年、ビビ君と言ったか、
彼は見事その勇気を、若きウェールズ王子の脳裏に焼きつけた。
ならば、年長者として、王子として、愛しき人への想いに答えるため、
「――せめて、記憶以外に、残さねばな――」
自分の血の匂いにむせそうになる。
だが、まだ体は動く。
まだできることはある。
記憶になるのはまだ早い。
223ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:48:23 ID:AWRCCj0I
「――宴の終わりは気の抜けた麦酒の如く――」
詩が、聞こえた気がした。
これは亡びゆく国を憂えた、精霊たちの鎮魂歌とでも言うのだろうか。
「――泡沫に散る星屑とともに飲み干さん――」
それにしては、いやにはっきり聞こえる。
お迎えにしては早すぎるし、
夢にしては、胸の傷が痛む。
これは決して幻聴の類では無さそうだった。
「――見事な舞台でしたよ!やはり、貴方が主役であるべきだった!」
死を啄ばむ銀色の孔雀。
そんな単語が脳裏に浮かぶ。
視界にゆらりと入ってきた男は、どうやら幻覚ではないらしい。
独特の香水の香りがする。
血の匂いと混じり、それは吐き気に近い嫌悪感をもたらした。
「――何者だ、どこから入ってきた?」
先ほどは抜き遅れた杖を抜き、眼前の男に突き立てる。
敵ならば、ここで相討ちも悪くない。
せめて一矢報いてくれよう。
だがおかしい。
こんな男の侵入を許すとは。
それに何だというのだろう、この静けさは。
防城戦前だというのに――

「これは失礼を、王子様。手前共の三流脇役が、麗しき愛の物語の邪魔をいたしまして――」
目の前の男の優雅な一礼は、あまりにも大袈裟で芝居がかっていた。
そう、芝居だ。
まるでカーテンコールに答える役者のような仕草。
舞台はもう終わりだと名残惜しむようなその所作。
「――何の、話だ?」
本格的に目の前が揺れ始める。
もう少し持ってくれ。
せめてこの得体の知れぬ敵を倒すまで。
「――憐れ、遠く離れた戦地での結婚式は己の殺害を目論む三文芝居!
 自身の真愛は暁の露と消えようとするも、幼き勇気の輝きに導かれ、
 王子は姫への愛を誓い立ち上がり、なおも歌おうとする!!――実に素晴らしい!!」
歌うように語る死神の言葉は、称賛と同時に同情の響きを伴っていた。
憐れむ、だと?誰をだ?
王子の疑問は尽き無くとも、向けられた杖は揺るがずまっすぐ相手を狙い続ける。
「――是非、このクジャめの舞台に加わっていただきたい、と言いたいところですが――
 生憎、僕の依頼者が先に貴方を欲してしまっているようだ――ハァ」
残念至極、という大仰な身振り。
ご丁寧にわざとらしい溜息までつけてだ。
この男は何が望みだ?
「――依頼者、だと?」
「そう、依頼者。まったく、主役の貴方をよりによって死体役で欲しいそうだ――ハァ、気が進まないねぇ――」
男が指を鳴らす。
それが合図だったのか、何体もの鎧甲冑が、
ガシャガシャと無骨な音を立てて礼拝堂に入ってくる。
顔の無いそれらは、死を予感させるのには十分な効果を発揮した。
224ゼロの黒魔道士:2009/01/20(火) 23:48:56 ID:AWRCCj0I
「まぁ、いいさ。手はある――安心してください、他の方々と同じく扱いますから――」
その言葉に悟る、静けさの意味を。
「貴様――まさか、私の部下を!!!」
「あぁ、最初の質問に答えてませんでしたね――正面から、入らせていただきましたよ。堂々とね」
不自然な動きの鎧共、ゴーレムか。
その一体に、血の痕がついているのが霞む視界に映った。
「少々、荒事はありましたけど、皆さん大人しく退場なさいましたよ――滅びゆく舞台から、ね」
ゴーレムが割れたステンドグラスを踏む。
乾いた音が礼拝堂に響く。
狙いを定めてたはずの杖が細かに震えだす。
「貴様――貴様、何を!私の部下に、何をっ!!貴様何者だ!!」
呪文の詠唱は、詰問の声の後となった。
それが仇となる。
風魔法より速く、周囲を鎧ゴーレムが取り囲み――
「――幕を引きに来た支配人代理ですよ、主演俳優殿」
眼前の男の右手は軽やかに天を指し――
「貴方の舞台は、ここで一度幕、です」
静かに、降ろされた。
「く、ぐぁぁぁぁぁぁぁっ――」

風、吹き抜けるアルビオン。
静かな礼拝堂に、もう人影は無く、
午後の日が割れたステンドグラスを通り白い日だまりを作る。
小さな想い、『最期に貴女を抱き締めたかった』という記憶を残し、
始祖の像だけが、顔も無いのに終幕のアルビオンを見つめていた。

――
以上です。やれやれ、アルビオン長かった〜。
まだまだ続く予定ですので、よろしければお付き合い願います。
……がんばって修羅場脱出せにゃ……
お目汚し、失礼いたしました。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/20(火) 23:55:47 ID:wTaKBvkf
乙です
次からの(多分)原作3巻分楽しみだ
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 00:04:07 ID:scSvrIlT
GJ
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 00:46:13 ID:iUNG3z2H
結構前からずっとだがロシェールだよね?
228ゼロの黒魔道士:2009/01/21(水) 00:50:37 ID:R3esgQie
>>227
ご指摘サンクスorz
勘違いして覚えてたらロクなことねぇですわ。
訂正しまくってきます。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:01:03 ID:eOIkKnPN
>>228
ついでに突っ込むと「ヴェルダンデ」じゃね?
230ゼロの黒魔道士:2009/01/21(水) 01:02:55 ID:R3esgQie
>>229
|まとめウィキ| λ..........
固有名詞って、勘違いしまくりだね
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:04:46 ID:czvNwPRw
だれか地院家若美でも召喚してくれんかな。
マイナーすぎるか。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:19:56 ID:pz3sp4rA
>>231
美少年分はどうする?
ギーシュか?
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:20:32 ID:qOV5mOCQ
>>231
おま、ギーシュが人格崩壊しちゃうだろ!?
若鳥は若美から逃れたい一心でテファに召喚されるかもしれんが
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:20:40 ID:amqiG04Y
ワルドがどんな目にあうかもう…
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:28:18 ID:pz3sp4rA
>>234
なぜかズボンが脱げていてワルド涙目なんですね、・・・・許せるッ!!!
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:45:03 ID:qOV5mOCQ
ギーシュのワルキューレが全て裸の美少年像に作り変えられ
ワルドの偏在は脱がされた上お持ち帰りされそうな
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 01:49:48 ID:czvNwPRw
料理を差し出したマルトーさんがおいしくいただかれちゃうわけですね
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 02:00:43 ID:Ps1jyhgI
若美はショタから中年オヤジまでなんでもいける口だからなぁ。
そして若美の使徒と化すスカロン
239ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:03:28 ID:RijiYO2p
おや?誰もいないのなら09:10から、シーン09の運命の扉を開きます。
240ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:10:17 ID:RijiYO2p
それでは、今回の運命の扉を開きます。

「メイジがこれだけ揃っておいて、賊の1人も捕らえられんとはどういった事じゃ!」
「は、全くもって面目次第もありません。」

翌朝、学院にコルベールと共に戻ってきたオールド・オスマンは学院の教師達と3人の女生徒、正体不明の使い魔を前に怒声
を吐いた。その様子は日頃、恒常的に秘書に対してセクハラを仕掛けているとは思えないほど猛々しいものだった。



ゴーストステップ・ゼロ シーン09 “土くれのフーケと名探偵”

    シーンカード:トーキー(繁栄/敵の正体露見。思いがけぬ味方。状況が将棋倒し的に進展する。)



「では、昨日の昼からの報告を聞こうではないか。」

オールド・オスマンの仕切り直しの言葉に秘書であるロングビルが応える。

「はい、それでは。
 昨日、学院における授業が終了し自由時間になった際、宝物庫前で魔法の練習をしていたミス・ヴァリエールの魔法が宝
物庫の壁を直撃しました。
 これにより壁にかけられていた『固定化』が解除され、壁自体にもダメージがあった事は学院教師数名の確認が取れてい
ます。また、この魔法が唱えられる際にミス・ツェルプストーが、ミス・ヴァリエールを煽った事が確認されています。」

ロングビルの言葉に昨日宝物庫に来なかった教師陣から。「またですか…」とか「いい加減にして欲しいものですな」とか
「全くこれだからゲルマニアは…」等と聞こえてきたが、ルイズやキュルケは見た目平静を装っていた。

「彼女達の処分については学院長からの裁定を頂きます。
 念のためという事で、事の次第の報告をミスタ・コルベールにお願いし。宝物庫の見張りも一応増強して当たりました。
 その後、10時前後に襲撃があったというのが簡単なあらましとなっております。」
「ふむ、ご苦労。
 そういえばミス・ロングビル、今日は珍しく遅刻したようじゃがどうかしたかね?」
「その件に関して今からご報告させてもらいます。
 実は今朝方より近在の村に赴いて、フーケの足取りが追えないかと聞き込みをしておりました。」
「ほう、流石に仕事が速いのう。で、何かつかめたかね?」
「はい、朝早くから畑に出ていた農民から聞いた話ですが、妙な人物が森の中にある樵小屋に出入りしていたと…。
 何でもフードを目深に被った怪しげな人物だったそうです。」
「なるほど、確かに襲撃を掛けてきた犯人もフードを目深に被っておりましたし、恐らく間違いないのではありませんか?」

ロングビルの言葉に教師の1人が賛同の意を表す。

「ふむ、してミス・ロングビル。
 その“土くれ”と思しき賊が潜伏しておる樵小屋というのはどの辺にあるのかね?」
「はい、ここからですと徒歩で約半日、馬で4時間というところです。」
「では、すぐに王宮に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらうべきですわ!」

シュヴルーズがそう叫ぶと、オールド・オスマンは苦々しげに吐き捨てた。
241ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:12:46 ID:RijiYO2p
「王室になんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ。昨日王宮に急使としてミスタ・コルベールが来た上に今日の
騒ぎを知られたら、ワシ等に無能の烙印が押されかねんわい。第一、しかもこの事態は魔法学院の問題。
 それに、身に降りかかる火の粉一つ払えぬようで、何が貴族じゃ。我らだけでこの事件は解決する!」

その言葉を聞いたロングビルは密かに微笑む。
オールド・オスマンは一度咳払いをし、集まった教師たちを見回すと有志を募る。

「では、捜索隊を編成する。我こそはと思うものは、手にした杖を掲げよ。
 ……誰もおらんのか? どうした! フーケを捕まえ、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

オールド・オスマンが困ったかのように顔を見合わせる教師たちを一喝する。
その時、意外な人物から声が上がった。

「学院長。」
「お主は、確かミス・ヴァリエールの使い魔の。」
「ミスタ・スペンサーではありませんか。いや確かに、貴方ならば実力的にも問題はありませんが。」

学院の教師や生徒の誰よりも先に声を上げたのは[未だにメイジと思われている]ヒューだった。それに驚きの声を上げる
オールド・オスマンとコルベールだったが、気にした風もなく言葉を続ける。

「条件付きですが、それを飲んでくれるのなら俺がやりましょう。」
「ほう、言ってみたまえ。」
「じゃあ遠慮なく。
 まず盗品を取り返したらルイズお嬢さん達の事を不問にする事。上手い事捕縛できたら報酬を貰いたい、要は盗品を取り
戻す事が出来たら、捕縛できなかったとしてもお嬢さん達の事を不問にしてほしい。
 こんなところかな。」
「なんじゃ、そんな事か。別に良かろう、元々ミス・ヴァリエール達がやらかした事に関しては厳重注意位で済ませるつも
りじゃったしな。」
「ちょっと待って下さい学院長!不問にするつもりとはどういう事ですか!」

オールド・オスマンの言葉にかみついたのはギトーと呼ばれている風のメイジであった。

「不問にするしかあるまい、考えてもみたまえ。たかが学生、しかも実技では最低の評価を受け続けている生徒が学院長で
あるワシでも難しい事をやってしまった…。他人に聞かれたらどういう理由で処罰したのかと笑われてしまうわい。
 それとも何かね、君はミス・ヴァリエールと同じ事が出来るのかね?出来るのなら今からこの席は君のモノじゃが。」
「い、いえ。それは…」
「無理じゃろう?だったら不問にするしかあるまい。」

教師からの反論を封じたオールド・オスマンが改めてヒューを見ると、その周囲には3本の杖が上がっていた。
242ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:14:56 ID:RijiYO2p
「ミス・ヴァリエールにミス・ツェルプストー、それにミス・タバサではないか。何事だね。」
「私も志願いたします。」
「何を無茶な!ミス・ヴァリエール。」
「使い魔にだけ危険なマネをさせるわけにはいきません!それに、これは自分がやった事の後始末でもあります!己の不始
末を使い魔に拭わせて平然としているほど恥知らずではありません。」
「ま、借りを作るのは趣味ではありませんし、ヴァリエールに負けるわけにもいきませんもの。」
「心配」

3人のそれぞれの志願理由を確認したオールド・オスマンは深く頷くと笑いながら承諾する。
途端に教師陣から反対意見が湧き上がるが、ならば自分がいくか?と問われるとその言葉も小さくなっていく。

「お主達は彼女達の姿形だけを見て判断しとりゃせんか?
 一番小柄なミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いていおるし、ミス・ツェルプストーは、ゲルマ
ニアの優秀な軍人を多く輩出した家系で。彼女自身も炎のトライアングルだと聞いておる。
 ミス・ヴァリエールに至っては昨日の出来事を見ても分かろう、失敗しておるとはいえスクエアクラスのメイジでも困難
な事をやってのける才能を有しておる。
 その上、彼女の使い魔を勤めておるミスタ・スペンサーは強力な風の使い手と聞いておる。
 どうじゃ、この4人に勝てると豪語できるものはおるか?」

改めて聞くとあまり相手にしたくない面子であった、気のせいかロングビルの顔色も悪い。
オールド・オスマンはルイズたち六人に向き直ると杖を掲げた。

「トリステイン魔法学院は、諸君らの働きに期待する!」
「杖にかけて!」

ルイズ、キュルケ、タバサの3人は真顔になり直立するとそう唱和した。
ヒューは別に何も言わず立っているだけだったが、おもむろにオールド・オスマンに話しかける。

「学院長、少々いいですか。」
「何かね、ミスタ・スペンサー?」
「宝物庫の中の検証と、盗まれたモノの詳細を伺いたいんです。」
「ほう、それはまたどうしてかな?」
「証拠集めです。」
「いや、遺留品とかは特に無かったと聞いておるが。」

オールド・オスマンがロングビルをみると彼女も頷く。
そう、特に落としたものは無いはずだ。

「いや、一応念の為、というやつですよ。」
「よかろう。ミス・ロングビル、ミスタ・コルベール案内してあげなさい。」
「承知しました。」
「それと馬車はこちらで用立てておこう、準備ができたら人をよこすので存分に検証してくるといい。」
「ああ、そうだ学院長。俺が頂く報酬に関して杖に誓っていただきたいんですが?」
「む、うむ。良かろうミス・ヴァリエール達の件は問わない事、君が“土くれ”を捕縛した場合、ワシが出来うる限り、君
の希望を叶える事をこのワシの杖にかけて誓おうではないか。」
「助かりますよ、学院長。」


ニヤリと笑って会議室を辞したヒューは、ルイズ達と共に案内役のロングビルとコルベールに導かれて宝物庫へと歩いていく。
243ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:17:06 ID:RijiYO2p
「そういえばタバサが持っているシュヴァリエの称号を持つ騎士ってどういう事だ?確か二つ名は“雪風”だったろう?」
「2つ名と称号は別物よ。2つ名は貴方の“ゴーストステップ”と同じハンドル、対して称号っていうのは爵位とかそうい
うものね、役職と言い換えてもいいかも。
 シュヴァリエっていうのは最下級の爵位のこと。ただし実績が無いと貰えない、実力者の証みたいなものよ。あの子位の
年齢でそれが与えられるなんて、普通無いわ。」
「なるほどね。そうだ、コルベールの旦那。」
「何かね、ヒュー君。」
「盗まれた<破壊の杖>っていうのはどういった代物なんだい?」
「ああ、あれですか。あれはオールド・オスマンの私物で、なんでも命の恩人の形見だそうですぞ。
 外見は…そうですな。50サント位の長さの筒状で材質は鉄の様でした、色は暗い緑色をしていて所々に白い文字が書か
れておりましたな。」
「で、どういった力を?具体的な名前が付いているんだ、学院長は力を知っていたんだろう?」
「いえ、詳しい事はそれほど。ただ、恩人の方が使った時にはワイバーンを一撃で殺害したそうです。」
「ワイバーンというのは?」
「力が弱い竜、基本的に前肢がない竜の事。普通の竜と違って知能が低い。」
「あら、ミスタの所にワイバーンはいないのですか?」
「ああ、昔は居たかも知れないがね。少なくとも俺は見た事が無い。
 しかし、そうなると厄介かもな…」
「まあ、何故ですの?ミスタほどの力さえあればフーケ如き簡単に捕縛できるでしょう。」
「いや、ただのメイジなら楽なんですけどね。そいつが強力な武器を持っているとなると困りものです。
 今までは『ゴーレム』だけを考えれば良かったんですが。“破壊の杖”を使ってきた時の事を考えないといけなくなりま
したから。」
「確かに…、そう考えると厄介ですわね。
 ミスタ、ここが宝物庫ですわ。」

話している内に着いたのか、目の前には堅牢な扉がある。

「では鍵を開けますので少々お待ち下さい。」

そう言うと、ロングビルは数箇所に取り付けられていた錠前を開けた後、『アンロック』を唱えて魔法の鍵を解除する。

「それでは失礼。」

ヒューを先頭に宝物庫に一行が入っていく。
宝物庫は様々なガラクタやそこそこ宝に見えそうな物で溢れ返っていた。

「ところで、普段<破壊の杖>はどこに?」
「あちらの棚ですわ。」

ヒューの質問にミス・ロングビルが答える。

「間違いなく?」
「ええ。先週、宝物庫の目録を作成したばかりですから。」

ロングビルに重ねて確認した後、ヒューは壁に残された犯行声明を見、次いで床とポケットロンを見比べながら、床を触り
ながら棚の前まで移動して行った。
しばらく時間が経過した後、不安になってきたルイズがヒューに質問する。
244ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:20:16 ID:RijiYO2p
「ねえヒュー、貴方何を目的に宝物庫に来たのよ。今は一刻も早くフーケの隠れ家に行くべきではなくて?」
「ん?いやいや。これでも色々と分かったんだけどな。」
「はい?分かったって何が分かったのよ。」

かがんでいたヒューは棚の前で立ち上がると、ルイズ達に向かってとんでもない事を言い放った。

「フーケの大体の身長・体重・歩き方・それと育ち。あと人物像かな?」
「え!」
「何ですって!」
「!」
「な!」
「何ですと!それは本当かねヒュー君!」

驚く一同を前にヒューは、残された足跡から判明した事実と、それを基にしたプロファイリングを披露する。

「ああ、フーケが土の『ゴーレム』を使ってくれていたから楽だったよ。下手にフライとかで入られたらお手上げだった。
 身長体重は…そうだな大体ミス・ロングビルやキュルケ位。年齢は大体20代前半から半ば。
 歩き方としては背筋を伸ばしていて姿勢が良い、ルイズやタバサに近いな。恐らくそこそこ高い地位のメイジの家系か、
礼儀に関してはかなり厳格な家庭の出だ。
 健康状態は良好、傷病は無い。
 人物像としては…そうだな、生真面目で計画性はあるがその場の勢いで行動するタイプでもある。
 後は、そう…女性だ。」



「な、なななな何を証拠にそこまでの事を。」

何故か震える口調でロングビルがヒューに質問する。
だが、それは誰もが思った事なので特に誰も口を挟まなかった。

「うん、まあとりあえず身長からいこうか、基本的には歩幅なんだが、決定的なのはこの犯行声明のサインだな。」
「サインが?」

聞き返してきたルイズにヒューは空中に書く仕草をしつつ説明する。

「普通、こう壁に書き込む時は自分が見易い所に書くだろう?急いでいるなら尚更だ。で、お嬢さん達の中でぴったりくる
のがキュルケとミス・ロングビルだったのさ。
 後、歩幅は身長や体格、年齢を測る上でかなり重要な証拠だ、タバサとキュルケではどうしても歩幅に差が出るだろう?
それから、一定以上年齢を重ねる毎に歩幅は狭くなってくる。」
「体重は?」
「身長が同じなら極端に体格が違っていない限り。大体の体重は絞り込める、そうだなこれ位だと…いや止めておこうか。」
「そうね賢明だと思うわよヒュー」

ヒューの背後でキュルケがにこやかに微笑んでいた。
245ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:22:25 ID:RijiYO2p
「次に歩き方だが、これは足跡に込められた重心のかかり方だな。足跡に残っている土の減り方から見てもこれは歩く時の
姿勢が良い証拠だ、この学院内の生徒でもそうは見ないな、とするとかなり厳格な家庭かそれなりに高い地位にいたと見て
しかるべきだろう。
 歩き方に崩れが無いことから、健康だという事も分かる。」
「崩れ?」

タバサの質問に対して、実際に色々な歩き方をしながら説明をする。

「片足に怪我をしたり、病気に罹ると歩き方がどうしても不自然になるだろう?
 こう、片方のつま先が進行方向とは別の方を向いていたり、ふらついたり歩幅にばらつきが出たり。」
「なるほど。」
「性格に関しては?」

というコルベールの質問に対しは、フーケの歩みを再現しながら話す。

「これは犯行声明と足跡の進行方向だな。
 犯行前の下調べがしっかりしているし、迷いが無い。何処に何があるか分かっていたのさ。こういった所からフーケは
生真面目で計画性がある人物という事が分かる。

 昨晩の犯行時、『ゴーレム』から飛び移ったフーケは『ライト』も灯りも使わずに、暗い宝物庫の中で<破壊の杖>へ
向かって一直線。他のお宝には目もくれず、サインを残してトンズラしたっていう寸法だ。
 ミセス・シュヴルーズの話じゃあ、サインはともかく『ゴーレム』を使いながら『ライト』っていうのはかなり無理があ
るらしいからな、これはしょうがないだろう。証言も録ってあるし間違いない。
 犯行声明に関して言えば最初から残すつもりだったのか、それともその場の勢いでやってしまったのか…、そこは捕まえ
て聞いてみないと分からないな。
 しかし、最初からやっているとはいえ。ご丁寧に自分を特定できるモノを残すという行為を毎度やっているのを見ると、
性格的にもう残さざるを得なくなったんだろう。恐らく貴族というものに対して、何らかの感情があるんだろうな。
 とまあ、足跡や世間に流布している風評でこれ位のことが分かる。
 見るべきものはもう無いし、そろそろ準備も出来た頃だろうし行こうか?」


ヒューの考察を聞いた一行はもう何も考えられず、ヒューの後を付いて行くのみだった。
後にルイズは“ミス・ロングビルに至ってはまるで死刑台に引き摺られていく死刑囚のようだった”と述懐している。
246ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:24:36 ID:RijiYO2p
一行は学院に残ったコルベールに見送られて、2頭立ての荷馬車でフーケの潜伏先へと進む。
道案内兼御者としてロングビルが同行していた。

「済みませんね貴女にこんな事までしてもらって。」
「い、いいえ、こんな事しかできなくて心苦しい位ですわ。全く先生方にも困ったものです。」
「いや、そう一概に責めても仕方ないでしょう、聞いた話ではあまり戦いに向いた感じはしなかったし。
 俺としては懐に入るものが出来て助かる位ですよ。おっと、これは秘密にしておいてくれると助かるんですが。」
「まぁっ。ふふ、分かりましたわ、先生方には言わないでおきましょうか。
 けど、ミスタ・スペンサーって言動だけ見てるとメイジには全く見えませんね。失礼、失言でしたわ。」
「いやいや、よく言われますよ。
 昔から身体を使う方が好きでしてね、良く勉強しろと怒られました。」
「あら!あれ程の知識や力をお持ちなのに?」
「ああ、あれは仕事の都合上仕方なく身についたものでして。いや、柄にも無く講義をしてしまいお恥ずかしい限りで。」
「いいえ、とても分かり易かったですわ!けれど、あれ程の観察術を一体何処で…失礼、何度も嫌になってしまいますわ、
普段こんなお喋りではないんですけど。」


馬車を御しているロングビルとヒューはにこやかに会話を続けている。
その会話を聞きながら、ルイズをはじめとする3人の女生徒は呆れるような視線をヒューに向けていた。

「しかし、まぁよくも立て板に水の如く言葉が出てくるわね。」
「だけど嘘は言っていない。」
「勘違いは助長しているけどね、話だけ聞いていると何処の天才メイジだって話よ。」
「まぁね、嘘は言ってないけど間違いは肯定しない代わりに否定も訂正しないもの。」

「ところで潜伏先に着いたらどうする?」
「ヒューに斥候をしてもらった後、誰か一緒に中に入ってもらうのがいいんじゃない?」
「じゃあ私が!」
「いえ、ここは」

タバサはここで言葉を切ってロングビルを見る。

「ええっ?言いたくないけどミス・ロングビルって…」
「だから」
「そうか、ヒューが目の前にいたら。」
「ああ、なるほど。うん良いんじゃない?楽できるし。
 そういえば、評判だけ聞いてるとフーケが狙ったのって悪名が高い連中ばっかりなのよね。まぁ、平民からの支援が受け
やすいっていう理由があったのかもしれないけど、窃盗で死罪っていうのはどうかと思うわよ?」
「アンタ、罪人を庇うの?」
「違う違う、罪と罰が等しくないんじゃないかって事。
 ヒューからあっちの量刑を聞いた時に思ったんだけどね、こっちって過度に貴族に対して量刑が甘いんだなって思ったの
よ。」
「そ、それは貴族には相応の義務があるから。」
「フーケが狙っているのはその義務を果たしていない連中よ?」
「う。」
「流石に見逃せとは言わないけどね、動機や目的如何では情状酌量の余地はあるんじゃない?」
「それにしていない罪まで課されかねない。」
「どういう事?」
「自作自演でフーケの仕業に見せかけて国に払う税を誤魔化すというやり方もある。」
「そういえば、確かフーケの犯行とされているものには極端に間隔が短いものがあったわね。」
「じゃあここはフーケの動機や目的を聞き出してそれから決めるって事?」
「それで。」
「まぁ、いいわ。但し、どうしても許せなかったら容赦なんてしないわよ。」
247ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:26:48 ID:RijiYO2p
フーケがいると思しき森の入り口で一行は馬車から降りて、徒歩で樵小屋に向かう事になった。
樵小屋が見える場所まで来た一行は、茂みに隠れてこれからの事を相談する事にした。

「そういえばミス・ロングビルは宝物庫前で魔法を使っていましたが、メイジだったんですか?」
「え?ええ、貴族としての名は失いましたが。土のラインですわ、土のトライアングルといわれるフーケに対して無力なの
がお恥ずかしい限りですが。」
「じゃあ、馬車の中で決めた通りで大丈夫ですね。
 ヒュー斥候を頼める?」
「ああ、それが妥当だろう。」
「中に誰もいないならミス・ロングビルに『ディティクト・マジック』と<破壊の杖>を確認してもらう為に行って貰うか
ら。ちゃんと守りなさいよ。」
「分かってるさ。」
「え?ミス・ヴァリエール?」
「申し訳ありません、ミス・ロングビル、私達は<破壊の杖>がどういった形なのか分からないもので。」
「当てにさせてもらいますよ、ミス。じゃあ行ってくる。」



ルイズ達から離れたヒューは間も無く姿が見えなくなる、森を迂回して影が多い所から近付くつもりだろう。
次にヒューを見つけたのは樵小屋の前だった。それを見たロングビルは感心していたが、次の瞬間、本当に驚きの悲鳴を上
げそうになった。

【ルイズお嬢さん聞こえるか?】

突如、ヒューの声がルイズから聞こえてきたのだ。
そちらを見ると、主のルイズは手首を顔の横に持って来て手首に巻きついている安物のブレスレットにも見える“それ”に
話しかけていた。

「ええ、大丈夫。問題ないわ。」
【窓から確認した限り人はいない、気配も感じない。ミスを寄越してくれ。
 それからお嬢さん達はシルフィードを呼んで上空で警戒していてくれると助かる、フーケの姿が見えるかもしれないし、
仮に『ゴーレム』で襲ってきてもそっちの方が戦いやすいだろう。
 そうそう、もし『ゴーレム』が出たら“これ”で教えてくれ。】
「わかったわ。
 申し訳ありませんがミス・ロングビルお願いします。」
「え、ええ。非才の身ですが出来るだけの事はやってみますわ。」

ロングビルが樵小屋に走って行った事を見届けると、タバサは上空に待機させていたシルフィードを呼び寄せ、ルイズやキ
ュルケと共にその背に乗り込んで、大空へと舞い上がらせた。
キュルケはロングビルの後姿を見ながら「私だったらもう挫けてるわ」と気の毒そうに1人つぶやいた。
248ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 09:29:08 ID:RijiYO2p
樵小屋に来たロングビルは、扉の横にいるヒューの顔を見て怪訝な顔になった。
何と、ヒューの顔には黒い仮面じみたモノがついていたのだ。

「やあ、ミス助かります。」
「い、いえ、別にいいのですが…。その、顔についている仮面は?」
「ああ、これですか。“便利な道具”です。」
「そうですか、それでは『ディティクト・マジック』を…あら?」
「どうかしましたか?ミス」
「い、いえ。確かミスタは風のスクエアクラスのメイジでは?」
「は?一体何の話ですか?」
「いえ、ミスタはメイジでは?」
「いいえ?」
「は?」
「何か勘違いしておられるようですが、私はただの平民ですよ?」
「え?だって。オールド・オスマンもミスタ・コルベールも…。ええ!」
「言っておきますが、≪俺は一言も“自分はメイジだ”などと言った覚えは無いが?≫」

ロングビルはぞっとした、確かにこの男はメイジではないのかもしれない。しかし、メイジではないという事がこの男が
無害だなんて事の証明になりはしないのだ、半人前の学生が作ったとはいえ青銅のゴーレムをいとも簡単に切り裂き、人の
目に留まらない程の速さで動く。
この距離で対峙している以上、最早この男の手に命が握られていると思わなければならないだろう。
もしかすると、この仮面もこの時を意図して付けていたのかもしれない、口元に浮かんでいる笑みが否応もなく不気味さを
演出していた。

「わ、分かりましたわ、では。」

青い顔で返答したロングビルは、改めて『ディティクト・マジック』を扉に対して使用する。

「魔法の痕跡はありませんね、大丈夫です。」
「よし、では入ろうかミス。」
「え、ええ。」




所変わってこちら上空のルイズ達。
3人とも気まずそうな顔でルイズの左手首から聞こえてくる会話を聞いていた。

「あ、あんまりだわ…」
「同情…」
「うわー」
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 09:35:44 ID:VW6sGs05
しえん
250代理:2009/01/21(水) 09:39:12 ID:VW6sGs05
536 :ゴースト・ゼロ:2009/01/21(水) 09:32:50 ID:822ve5QE
さるさん食らった…orz

シーン09
トーキー(St)
…報道カメラマン、新聞記者、芸能リポーター、キャスター。どんな事柄でも自由に報道できる。
 射命丸文や朝倉和美、wikiではキバヤシ(?)他に誰からしいキャラいたかな?

足跡
…最近では足跡から身長・体重・性別・体格等、色んな事が分かるようになっている。
 ましてやニューロエイジ、<ポケットロン>に色んなソフトをぶちこんでその場で鑑定=シャーロックホームズでこれ位
はいける。(と思う)

窓から確認した限り
…この時、ヒューは弥勒(後述)とポケットロンを結線して中を覗いていた。

黒い仮面(I)
…“弥勒 MI−6”多機能サングラスの事。
 
“弥勒 MI−6”多機能サングラス(I)
…暗視機能、偏光バイザー、対閃光シャッター、デジタルディスプレイが付いた多機能サングラス。

言っておきますが〜
…ヒューはこの後の≪≫内の台詞を喋る際、ペルソナをカゲ(暗殺者等のスタイル)に変更して威圧しています。
 ルール的な意味合いはありません、ほとんどロール(演技)的なものです。でもそれをあえてするのがトーキョーN◎VA。
251代理:2009/01/21(水) 09:39:33 ID:VW6sGs05
537 :ゴースト・ゼロ:2009/01/21(水) 09:38:36 ID:822ve5QE
此度はこれで運命の扉を閉じます。

ハルケギニアでは科学捜査なんて夢のまた夢なので、ハルケギニアの人達にも分かり易いように証拠として“足跡”を使いま
したがどうでしょうか?
実際は“足跡”の鑑定もこれ程、簡単ではないのですが。用語集にも書いた通り、ポケットロンを使用した力技で押し通しま
した、ニューロエイジの技術力ならこれ位出来ると信じています。w
そうそう、とりあえず歩幅が分かれば身長は推測できるらしいです。後のデータは実験等をして調べるそうですよ?
性格や人となりは、シャーロック・ホームズを利用したプロファイルです。

前回、今回と色々仕込んで後の話に繋げているつもりです、読んでいてニヤリとしてもらえたら、うp主としては嬉しいです。
今回はおマチさんをイジメてしまいましたが、次回良いことあるから勘弁して欲しいです。
いや、おマチさんは好きなキャラですよ?

それではまた、次回を楽しみにしていてくれたら望外の喜びです。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 09:41:34 ID:DJKLcIyI
ヒュー「では犯人くん」
おマチ「はい」

さすがにこれはなかったか
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 09:50:09 ID:3KTJTZ3g
現場検証する使い魔も珍しいな
探偵ならではの行動だから他では見ないよな
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:07:14 ID:CnuKNCTd
看破するのは「馬で行って帰る時間で調べるのは無理」というのが多いからね
プロファイリングはいい切り口だと思う
しかしまぁ、狸なオッサンだw
乙です
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:12:18 ID:SpJMoKTW
まあ「馬で行くと時間が合わない」だけだと「フーケに脅されて仕方なく共犯者に」という線が残っちゃうからこっちのがスマートだよな
coolっすよヒューのおっさん!
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:16:56 ID:mUXWRmye
宝物庫の床は、今まで石畳だと思っていた 支援
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:19:48 ID:QsZDipA3
ヒューの人乙です。
てか犯人モロバレだしww
次回に超wktk。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:47:48 ID:RNLkaJvZ
ロングビルもメイジなんだからフライで時間短縮とかの可能性はないんだろうか
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:56:37 ID:v6UUS/VX
そういえばアニメのフーケは
魔法で犯行声明文を書いてたような・・・?
原作ではどうたったっけ?

いずれにしろ自分が見やすい=書きやすい高さに書くだろうから関係ないかな?
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 10:59:30 ID:yjQ6S9Iq
フライが馬より早ければその筋は通るが・・・
フライのスピードってどれくらいなのかね?
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:10:09 ID:3KTJTZ3g
長距離飛べるかどうかもあやしいだろ
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:22:18 ID:5pQ8Rdcm
フライの方が馬より早いのなら貴族は馬に乗らないと思う。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:24:41 ID:l7rCREw4
精神力使い切ると気絶するんだから長距離は馬でしょ。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:25:17 ID:4FJjAxlx
俺はもし車より早く走れたとしても車使うわ
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:40:31 ID:LCALCxnm
GIFTを読んだ
ヴェノムが呼ばれてるんだからスパイディが呼ばれてもいいのでは、と思った

「元斗皇拳など知らぬ、通じぬ」
間違えた

「使い魔・・・・ああ、なんて卑しい職業なんだろう」
また間違えた
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 11:58:58 ID:RNLkaJvZ
うーん 森で飛行できるのは結構なショートカットになると思ったんだが
馬じゃ道なりにしか進めないし、併用してもいいし
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:11:15 ID:YnJBjfsi
>>266はフライで森を飛び越えて、はっと気づいた。
「馬、どうしよう」
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:14:25 ID:VW6sGs05
ルイズが乗馬得意な理由付けぐらいにはなるかw
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:21:17 ID:OYgij7Fs
おマチさんだったらゴーレム作成の応用で森の上に橋作って馬で突っ切ると言う芸当も出来そうなんだけどな
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:38:48 ID:N7pWA7Ee
>>259
魔法で書くにしても、壁にやる以上自分の目線から極端に離れた場所にはやらないんじゃないかな。
まして科学捜査の概念が全くないハルケギニアなんだし。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 12:44:05 ID:D43toNqF
>>259
ゴーレムを早めに解除してまで、魔法で書くことには拘らないとは思うけど、どうだったっけな。
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 13:29:43 ID:PxkxioTd
○○なら□□で〜〜できるだろっていうツッコミほんと野暮だよなぁ
そうしない方が面白くなるとおもって脚本作ってんだろ
ビックライトでなんの問題もなくピリカ星取り戻す宇宙小戦争や
タイム風呂敷でドラえもんの故障なおす雲の王国が面白くなるのかよと
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 13:32:30 ID:prIl6oW3
タイムマシンで過去に戻って存在抹消した鉄人兵団は面白かったよ
と野暮なことを言ってみる

いや、同意なんだがね
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 13:51:58 ID:VW6sGs05
作中人物がそれに気付かぬ愚か者でないという証明として、出来ない理由を明示して欲しいとは思うけど、主張の主旨には同意する
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:13:28 ID:PxkxioTd
でもキャラクターによるだろうけど、すべての可能性を考慮できる完璧超人の話って
それはそれでつまんないと思う
あの方法があるがあれはダメ、だからこっちとか、いちいちやられてもなぁ
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:19:18 ID:DJKLcIyI
ネプチューンマン「・・・・・」
スッ
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:34:49 ID:Y/8B+CZQ
>>246以降、ルイズたちの行動や状況がイマイチわかりづらい。
簡単でいいから書いてくれるとありがたい。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:49:50 ID:IGwRTDD7
>>275
ちょっと考えれば気付くだろうにってものから読者目線だから分かることまで
色々なケースがあるからな。前者の場合は何か説明が欲しい
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 14:50:14 ID:P8VTkL6h
>>276
完璧超人いたwwww
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:01:29 ID:LCALCxnm
>>273
藤子先生自身が「あのラストはまずかった」と発言されてますからね

しかし、短編集みてるとひょっとして藤子F不二雄先生って人間が嫌いなのかと思ってしまう
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:02:51 ID:jT6BUKUv
むしろ雲の王国の説教くささの方がまずかった、とかは流石に脱線しすぎか
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:09:41 ID:IMKa54Oa
『ミノタウロスの皿』がトラウマになっている人も多いだろう
正直あれは読んでて辛い

あの生贄の彼女が召喚されて、自分の住んでいる環境や境遇を誇らしげにルイズに語ったらかなりショックを感じるだろうな
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:14:18 ID:fT1gwmAw
ミノタウロスの皿……あれは高校卒業後に読んだが厳しい。
小中学生の時に読んだら間違いなくトラウマ。高校生でも厳しいだろうな。
藤子F先生の作品は実に皮肉に満ちているからな……。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:14:32 ID:P8VTkL6h
「じじぬき」と「定年退食」が酷い。
A先生がネーム書いてんじゃないかと思ったが、素でF先生作なんだなあれってw
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:21:42 ID:vwmPboSY
>>282
おいやめろ馬鹿、俺の封印したトラウマを・・・

あれ見たの小学生だった
当時は意味がわからないうえに衝撃がマッハだった
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:47:56 ID:KpZoocwQ
>>283
ハ 消防のとき読んだがトラウマなど抱えておらんぞ

未だにオヤジ・ロックの仕掛けがわかんねーんだよな…
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 15:55:02 ID:x0rDnfiI
ノスタル爺がトラウマ
何も無い土蔵の中ととても幸せそうな爺さんのギャップがとてつもなく不気味に見えたもんだ

あと、藤子じゃないけど、放課後の魔術師がトラウマ
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:03:53 ID:LCALCxnm
わたしのトラウマは手塚作品だけど「来るべき世界」
ポポーニャの末路とランプの最後が・・・・・・
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:04:28 ID:L9J1p59K
>>276
ネプチューンマンを召喚とな。
アルビオンに行く途中。現れた謎の仮面の男にルイズとクロスボンバーをかまし……。
290鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:17:54 ID:g2krsz2d
どうも久しぶりになります。体調悪かったり忙しかったりですいません。
では、早速投下予告。
16:30から。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:18:33 ID:/zklkHnP
小ネタでヒョンヒョロをクロス。
とか思いついた。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:19:07 ID:rOvcygSq
>>289
ルイズ「ウメー、ウメー」
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:20:27 ID:IE6IfIUh
>>292
蛍石をバリボリ食べるルイズとか嫌過ぎだ
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:22:13 ID:J3/5PXrq
外出する前に事前支援
295鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:30:24 ID:g2krsz2d
 『レキシントン』の甲板から、赤銅の鱗煌く火竜を駆って竜騎兵達は手綱捌きとともに発艦した。竜騎兵だけが身に着ける、金属板を組み合わせた
厳めしい板金鎧に陽光が照り返す。鞍に挿された軍旗にはアルビオン竜騎兵隊の象徴である赤竜旗がはためいた。
 速度や小回りで劣るものの、まともに浴びれば黒炭と化す強力なブレスを持つ火竜。飛び上がった2騎は眼下の自軍を超越し、対峙する小集団と、
その背後に控える集落を攻撃の目標とした。
 
 村北部の入り口まで後退していたアストン伯率いる兵達は、それぞれの杖を揮って自らの得意とする魔法を射出した。だが、鈍重とはいえ空を
高速で飛ぶ火竜は、騎兵の手綱に従って揚々と魔法をかわすと、旋回しながら高度を落として降下攻撃の体勢に入った。
 迫り来る竜騎兵から目をそらすまいとするアストン伯の視界の脇で、烈火球【ファイア・ボール】が他一方の竜騎兵から射出されて
傍らの部下を火達磨に変えた。
「くっ!」
 燃え上がる炎の熱波がアストン伯を炙った。
 その怯んだ僅かな隙に急降下した火竜が迫る。
「おのれっ!」
 もはやこれまでか、と、アストン伯は握った杖を構えて覚悟を決めた。死に際の魔法で騎兵を撃ち殺し、以って矜持を示してくれる。そう思った瞬間。
 遠くから乾いた炸裂音が響いて一拍、アストン伯へと迫っていたはずの火竜は、伯の鼻先で乗せた騎手をだらりと垂れ下げて
姿勢を崩し、あらぬ方向に飛んでいってしまった。
「……な、何だ…?」
 眼前の脅威から突然開放され、戦場にあって強かに放心するアストン伯の耳に、整然とした足音が聞こえる。振り向くと、姿勢正しくも
明らかにトリステインの兵士ではない一団がこちらに向かっていた。その悉くが銃を手に持っている。一団は伯の前まで進んでぴたりと行進を止めた。
「何者だ!」
 散開した部下達と杖を構えるアストン伯の前に、一人の者が進み出た。一団の中でも一際の異彩、銀色の光沢を放つコートに目深に帽子を被った者だった。
「領主アストン伯とお見受けします。我々はトリステイン王国政府より先遣部隊として派遣されたものです」
 きびきびと敬礼をして帽子の者は懐から書状を出し、アストン伯に手渡した。
「色々と質問があると思われますが、詳しくはこちらに書いてあります。マザリーニ殿の署名にございます」
「宰相殿とな…?!」
 目の前の仲間だという一団に困惑していたアストン伯は、書状を拡げる間もなく視界を空に奪われた。吼える火竜を操り、空に残った
一騎の竜騎兵が自分達へ迫ろうとしていたのだ。
「……」
 空に認めると帽子の者――アニエスは、コートの上から佩びたベルトより短銃【ピストーレ】をさっと抜き、空に向ける。
「駄目だ!銃ごときでは叶うはずが無い!」
 叫ぶアストン伯を無視して、アニエスは迫る火竜を見据える。
 火竜のブレスが届くか届かないか、ギリギリの距離まで詰まった時、構えていたアニエスの引き金が引かれた。
 発砲音の後、火竜が嘶き、やはりあらぬ方向へとその首を向けて遁走していった。
「ど、どういうことだ……?」
 困惑するアストン伯に対し、アニエスはベルトから新たな火薬と弾を補充し、短銃を納めた。
「騎手の頭部若しくは騎竜の眼球を狙えば竜騎兵の無力化は可能です」
「そ、そんな…銃で騎兵を落せるなど」
 向き直してアニエスは再びアストン伯に敬礼した。
「それが出来るのが我々『銀狼旅団』であります。…閣下には遺憾ではありましょうが私の指揮下で動いていただきたい。まずは迫る
敵軍を足止めし、本隊の到着までの時間を稼ぐのです」
 唖然とするアストン伯。それを無視してアニエスが控えている部下に振り向く。
「バッカス、シェリーは左翼、ドロシー、エリーは右翼に展開しろ。長銃【ハークィバス】用意、『鳥打ち』を仕掛ける」
「「イエス・シスター」」
 呼応する声という声は皆、女性である。すぐさま彼女らは村北東へ向けて駆け足で抜けていくだった。
 
「…君らは一体何者なのだ……?」
 気色ばむアストン伯に答えるアニエス。その声は少し喜色を帯びている。
「傭兵でございますよ。閣下」
 かくして後世に『タルブ戦役』と記録される戦闘が始まる……。
 
 
 
 『タルブ戦役・三―戦端/飛天―』
 
 
 
296鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:32:56 ID:g2krsz2d
 ヴァリエール公三女ルイズは、夕方の席のために急いでドレスの用意をしていた。公爵家付の針子衆が、ルイズとエレオノールが選んだ生地と
デザインに添って採寸や仮縫いをし、それが済むとあとは急ピッチで製作に入っていった。
 そうなってしまうとルイズはやることがなく、かといってサロンにわざわざ顔を出す気も起きない。したがって当てがわれた部屋で
父が戻ってくるのを、好物のクックベリーを使ったパイに舌鼓を打ちながら待っていた。
 その隣では姉エレオノールが心を落ち着かせる香りが昇る薬湯に口をつけていた。彼女は幼い時分からこの薬湯を好んで飲むところがあった。
「お父様遅いわね……何かあったかしら」
 常に持ち歩いている、銀の懐中時計を見ながら怪訝に思い始める。…実は、こうしている間もエレオノールの首元には
綺麗な青い鉱石で作ったネックレスが巻かれているのだが、隣のルイズはそれに関する話を知らないので、特に感知しない。
 
 そして突然、ノックもなく部屋の扉が開けられて父ヴァリエール公が飛び帰ってきた。驚く娘達の目に、父は少し息を切らせている。
「お、おかえりなさいませお父様。……お父様?」
 驚くエレオノールに目もくれず、ヴァリエール公は奥の机に置かれた鞄を開けた。中にはさまざまな書付がされた書類が、
何十枚と束ねられて入っている。ヴァリエール公はそこから何枚かの書類を引き抜き、内容を確認すると、まっさらな紙とインクを用意して机に向かった。
「………うむ。エレオノール。ルイズ。話がある」
 紙にペンを暫く走らせた後、ヴァリエール公は立ち上がって娘達に向かい合った。
「なんでしょうか…?」
「実に急な事態が起きた。お前達も動転するだろうが…夕方の参上の席は中止になった」
「えっ?!」
 驚くのは口元を拭いていたルイズである。先ほどまでああでもない、こうでもないとドレスをせっせと用意していたのだから。
「わけは今は話せぬ。察してくれ娘達よ。…そこでお前達には市街地にある我が家の別邸に移ってもらう。そこで暫く留まっていておくれ。
父は今から官庁のところに出向かねばならないのだ」
 突然の事に言葉が出ないルイズとエレオノール。それをヴァリエール公は複雑な顔で迎えなければならなかった。
「……父としては何があるのか、早急に話してやりたいが、今は少しでも時間が惜しいのだ。外に馬車を待たせてある。
別邸で待っている間はエレオノール、お前が監督しなさい」
「……はい」
 何とかエレオノールはそれだけ言った。
 それを見たヴァリエール公は、使用人に自分の荷物を持ち出すように言伝て、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「……姉さま、どういうこと?中止って……」
「知らないわよ。いいから町のお屋敷に…っ!」
 振り向いたエレオノールは、一瞬胸をぐっと締め付けられた。
 今日のことと言わず、彼女はこの十以上年差のある妹を、随分と可愛がっていた。どうもそれは時に、苛烈な空気を持っていたかもしれないが、
つまりそれだけ大事に思っていた。
 それが今、その大事な妹は年相応の気色を消して、青白くさえ見えるではないか…。
 
「中止って…ことは婚礼の儀式は……どうなっちゃうの?わ、私の作った祝詞は…」
 エレオノールはその時、漠然と『よくない何か』を感じ取る。砂山が水に溶けていくような脆さを、ルイズの浮かべる相に見てしまったのだ。
「姉さま……?」
 反応の無い姉にルイズが問う。その声音にはっと現実に戻ったエレオノールはしかし、やはりルイズの見せる消沈の度合いの深さに危機感を深めた。
「と、とにかくここを出払う支度をしなさいっ!……貴方たち、どういうことになってるのか探ってきなさい。判り次第屋敷に連絡すること。いいわね」
 ルイズの為にもここを一刻も早く出なければならないと感じたエレオノールは、同時に傍の使用人達を動かす。
 椅子に座ったまま呆然とするルイズの肩を、彼女はしっかりと捕まえた。
「……事態がどうなってるのかさっぱりわかんないけど、今はとりあえずお父様の言いつけのとおりにするのよ」
「……うん」
 病んだ人のようにゆっくりと、ルイズは頷いた。
 
 
 
297鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:35:40 ID:g2krsz2d
 王宮が急転直下に見舞われている頃。トリステイン魔法学院……。
 コルベール研究塔前には、キュルケ、タバサ、ギーシュがコルベール製作『飛翔機』の運用実験の立会人として、準備を進めるコルベールとギュスターヴの前にいた。
「えー、三方。わざわざ来ていただいてありがとうございます」
 昨日の事故でスケジュールが押しているために、疲れの色濃いコルベール。その隣では、皮のベルトを縦横に巻いたギュスターヴが立っている。
本番に際し、手には指貫の手袋をはめている。
「でも、本当にこれが飛ぶなんて思えないんですけど」
 如何わしいという目でキュルケは修理が終わったばかりの『飛翔機』を指差す。歪んだ枠は補修され、破れた羽布は張り直されている。
「まぁ飛ぶかどうかはやってみなけりゃわからないのが正直なところでして…万一の場合はミス・タバサに協力をお願いしますぞ」
 平素の調子でタバサは首肯する。それでも彼女なりに、目の前の異様な物体に関心と興味を持っているのか、時折ちらりちらりと視線が外れて『飛翔機』を見ていた。
「……ではミスタ・ギュス。準備の方を」
「分かった。…タバサ。何かあったら頼むよ」
 どこか軽い調子でギュスターヴは『飛翔機』に向かった。
 
 『飛翔機』の搭乗部に入り込み、ベルトを繋ぐ。搭乗部の隙間には、あらかじめ乗せていたデルフが収まっていた。
「おう。ついにこれが飛ぶってか」
「サポート頼むぞデルフ。頭は一つより二つの方がいい」
「つってもよー、俺様ただの剣だしなぁ」
「つべこべいうなよ。さて…」
 ベルトの具合を調整したギュスターヴは、次に取り付けられている各種のレバーの動きをチェックする。それも終わると、今度は取り付けられている
リールをゆっくり、確実に巻き始めた。
 リールは巻くほどに重くなっていき、おおよそ10回巻き取ったところで、カチンと音が鳴って機体がわずかに揺れた。
「これで機体が軽くなったはずだ…」
 口に出して言うのは、ギュスターヴも確信が無いからである。次に、滑走進路上に障害物が無いことを確認して、レバーの内『推進装置・点火』のレバーを
一思いに引いた。
 後方でくぐもる様な爆発音がして、次に炎の噴出すような音がし始めると、機体は徐々に前方に向かって動き出す。
「お、動き出したな。俺様どきどきするぜ。心臓ないんだけど」
 障害物が無いとは言え、舗装されているわけではない平地を徐々に速度を上げて『飛翔機』が走っていく。
 滑走距離の想定は約180メイル。これ以下では翼に必要な風を受けることが出来ないというコルベールの計算である。
 そして今、滑走を始めて110メイルを突破した時、ギュスターヴは『上昇・下降』レバーを引き、機首を空に向けた。
「飛べッ、飛んでくれッ!」
 コルベールが一心に願い、機中のギュスターヴも願った。
 滑走距離170メイルを過ぎたところで、地面に接しているはずの車輪の音が途切れた。
 そして180メイルを超えた時、車輪は完全に地面を離れ、機体は空中に向かって飛び出した。
 『飛翔機』は空に上がったのである。
 
「うっそ……」
「本当に、とんじゃった……」
 視界遠くには空へ舞った『飛翔機』が見え、ゆったりと旋回して魔法学院の上空を飛んでいる。
 唖然とするキュルケとギーシュをよそに、コルベールは絶叫を上げて飛び上がった。
「やったッ、やりましたぞッ!私はついに、空に上がる術を作り出した!ミスタ・カール!君に教えられた!蝶や鳥のように、人は空を飛べるのですぞ!」
 やった、やったとひとり歓声を上げるコルベール。その渦中にあって、タバサは傍に控えさせたシルフィードに乗り込んで自らも空に上がろうとしていた。
 
 
298鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:37:13 ID:g2krsz2d
「相棒!すげー!俺様、空、飛んでるよー!」
「ああ、これは凄い!コルベール師はシルマール師に匹敵する天才だった!」
 頬を風が当たっていく。寝そべるように乗り込んでいるせいか、背中の羽根で飛んでいるかのような視界が広がっている。
 流石のギュスターヴも不安と緊張に心肝を締め付けられた一瞬だった。翼を上向かせて加速し、徐々に機体が傾斜して浮かび上がる瞬間は、
胸に期待を満たす甘美の刹那であった。
 
 あまり学院から離れないために、『旋回』のレバーを調節し、また高度が下がらないように『上昇・下降』レバーもこまめに動かす。
 荒野のコンドルのように『飛翔機』は太陽の輪を描いて何処までも昇っていけそうだった。
「相棒、ちびっ子が着てるぜ!」
 視界を漂うばかりだったギュスターヴが側面を見ると、シルフィードに乗ったタバサと目が合った。シルフィードは『飛翔機』と平行して飛んでいたのである。
「タバサァー!」
 ギュスターヴは声を張ったが、周囲の風にかき消されてタバサまで届かない。
 それを見たタバサは杖を抜いてこちらに向け何か魔法を使った。
「<聞こえる?>」
「おお、タバサ。聞こえるぞ」
「<制音【サイレント】を使って声が聞こえるようにした>」
 目測で凡そ10メイル近く離れているように見えるのに、声がすぐ隣で話しているように聞こえるのは不思議な感覚だった。
「<……飛ぶって、どんな感じ?>」
 タバサはこちらをじっと、真剣な目で見ていた。
「…シルフィードの背中と違って、風が直に当たる。何の支えもない空にいるんだな、ってことが、よくわかる」
「<…そう>」
 
 そのまましばらく、タバサとギュスターヴは併走して空を飛び続けた。
 
「相棒、そろそろ燃料がきれそーだぜ」
 操作に慣れ始め、揚々と空の世界に浸っていたギュスターヴがデルフの声で引き戻される。事実、後方の噴射器の音が弱くなってきていた。
「よし、一旦降りるぞ。タバサ。先に降りてそう伝えてくれ」
「<わかった>」
 承知したタバサはやんわりと手を振って視線から外れ、シルフィードは眼下のコルベール研究塔前に向かって降下していった。
「さて、相棒、これどうやって降りるんだ?」
「待て、ちゃんと手順を踏んでやらないと…」
 ギュスターヴはレバーの中で『噴射器脱落』と書かれたレバーに手をかけたが、すぐに手を離した。
(今ここで噴射器を落したら真下のキュルケ達が危ないな)
 そう思い立ち、機体操作の各種レバーを動かして徐々に高度と速度を落としていく。
「おおー、だんだんさがってら」
 脇のデルフがはしゃいでいる。降りるのは離陸した時と同じ滑走路である。
 徐々に旋回しながら高度を落とし、ある高さまで行くと滑走路までの直線距離に機体を動かす。
 十分速度を落としたはずなのに、地面に迫っていくとかなりのスピードが出ているように見えて、ギュスターヴの額に冷や汗が浮かぶ。
「ぶつかる!ぶつかるって相棒!」
 デルフの悲鳴を無視して車輪が地面に当たると、ギュスターヴはレバーを引いて機体に制動をかけた。
 がたがたと揺れながら機体は滑走路を進み、併せて速度を落としていく。発進した地点を緩やかに通り過ぎて10メイル、ようやく機体は完全に停止した。
「ふぅ〜……」
 緊張から解放されたギュスターヴは、いそいそとベルトをはずして機体から降りた。なぜか足がすこし震えてしまうのが苦しい。
「ミスタ・ギュスターヴ!ご無事ですか!?」
 駆け寄ってくるコルベールは後退した額まで顔を真っ赤にしていた。後続するキュルケとギーシュも、不思議そうにギュスターヴを覗き込んでいた。
「み、ミスタ。怪我とかありませんの?」
「ああ。…ちょっと足が震えてしまうが、別状はない」
「驚いたよギュスターヴ。君が本当にこれで空を飛ぶなんて!」
 コルベール研究塔前の人員を歓喜が包む。沸き立つ三人を相手にしながら、先ほどまで自分がいた空にギュスターヴは無形の思いを向けるのだった。
 
 
 
299鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:39:27 ID:g2krsz2d
 タルブに押し寄せていたはずのアルビオン上陸部隊は、突然の銃撃でその勢いを緩めた。
 タルブの村主幹部まで、あと80メイルというところまで進んだ軍勢は、村の出入り口前方に展開して臥せていた銀狼旅団による正確無比な銃撃で
小部隊の隊長格を次々に狙い打たれたのだ。
 動揺する兵士達は進軍を止めようとしたが、部隊を預かるワルドは表情も変えずに言った。
「かまうな。行け」
 止まるなと言われた以上進むしかない。恐々としながらも兵士達は隊長なき小集団を形成しつつ前進する。それは全体の統率を落とし、
アルビオン軍の陣形はぐずりぐずりと歪みを作りはじめていた。
 
 
 50メイルを切ると臥せていた銀狼旅団に気付き始め、臥せている付近を狙った散発的な魔法による攻撃を始めるが、決定打にならずに銃撃は続いた。
 そして40メイルまで接近した瞬間。
「突撃ー!」
 若い女性の声とともにアルビオン軍の前方から兵隊が湧き出してアルビオンの軍勢に突進を仕掛けた。その先頭には銀のコートまぶしいアニエスが走っている。
「こっちも突撃だー!」
 誰かの叫びを皮切りに、アルビオンの兵士達も突進を敢行。トリステイン軍約230人とアルビオン上陸部隊約3800人が激突した。
 
「ぅぉおおおお!」
 先陣を切ったアニエスの左手には片刃の湾刀が握られていた。全長60サント程の湾刀は流れるように振るわれ、視界に最初に入った
兵士の頚部が若木を切るように両断された。
 突貫したアニエスに魔法と刃が押し寄せる。アニエスは刃という刃を介さず踏み込んでは剣を振るった。目に見えた先から兵士を手にかけ、血糊が華のように舞い散る。
「もらったぁ!」
 攻撃の隙を突いた兵士の槍先が、帽子の影になっているアニエスの顔面を狙って飛んでくる。
「『カウンター』!」
 首を振り、身体を沈みこませて槍をかわしたアニエスは、空かさず剣を納めると跳躍、右拳を握って兵士の顔面へ叩き込んだ。
兵士の顔面は拳の形にめり込み、頭蓋骨の中程まで拳が埋まっていた。
 軽やかにバックステップして間合いを取り直したアニエスは、再び身体を深く沈み込ませて跳躍する。今度は地面に水平といえるほど、低い。
「『キッチンシンク』!!」
 跳躍と同時に繰り出された膝蹴りが飛び込んだ先の兵士の胴を穿ち貫く。それでも威力が死なず、さらに後方の兵士4、5人を同様に貫通し、
着地の瞬間に足を引き抜いた。
「死にたくなければ私の視界から去れ!」
 一喝の後、さらに軍団の中を突き進むアニエス。突き出される刃も魔法も、アニエスの纏う銀のコートを貫けずに折られ、或いは潰されていった。
「こ、こいつ武器が効かねぇ!」
「ま、魔法も効かないぞ!」
 アニエスを取り囲むアルビオンの兵士が徐々に恐慌する中、彼女は自分に杖を向けていた一人のメイジ兵に肉薄した。
「ひっ!」
 魔法を唱える間もなく、アニエスの手刀が杖を叩き折った。
「『ブラウル』!!」
 さらに一声して、メイジ兵の五体へ嵐のように拳を叩き込む。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
 一撃の度に、骨の折れる音、肉の爆ぜる音が拳を伝ってアニエスの聴覚を刺激した。
「っ!」
 拳を引いたアニエスの前で、全身に乱打を受けたメイジ兵が、絶命寸前で立ち尽くす。
 そこからさらにダメ押しとばかりにアニエスは湾刀を引き抜き、メイジ兵を縦横に切りつけた。
「臓物(ハラワタ)を――」
 覇気満ちる声とともに剣を納め、
「ブチ撒けろっ!!」
 瞬間、加えられた斬り傷からメイジ兵の内容物が噴出してアニエスの銀のコートに降り掛かる。
 銀のコートは染み一つ残さず、全ての体液を弾いていくのだった。
 
 
 
300鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:41:16 ID:g2krsz2d
 戦場が徐々に狂乱の熱を増し始めた頃、タルブの西にある森では住民一同が肩を寄せあって事態の行く末を祈っていた。
武器の心得のある者は手に鋤や鍬、或いは使い古した武器を持って、固まって森にいる住人から万一の場合を備えている。
 シエスタの一家も、シエスタからの急報を受けて森の中へ避難していた。叔父とともにシエスタは自警役に回り、『プリムスラーヴス』を片手に握り締めている。
(村から火の手が上がってる……どうなっちゃうんだろう…)
 視界にみえる黒い煙に、握る手に自然と力が篭る。
(ギュスターヴさん…ミス・ヴァリエール……)
 心細さが募り、学院の皆が思い起こされる。
「おーい!ヴィクトリアー!」
 声を上げてシエスタに駆け寄ってきたのは父、エド――エドワード・ナイツだ。彼は避難の折に怪我をした者の手当てをしていた。
「どうしたの?」
「大変だ!大爺が…ロベルト爺がいない!」
「っ?!」
「もしかしたら、まだ村にいるのかもしれない…」
 そう聞いてシエスタの顔が青ざめる。今、村には火の手が上がっているというのに。
「私、探してくる!」
「ま、待つんだヴィクトリア!」
 父親の制止を振り切って、シエスタ――ヴィクトリア・ナイツは村に向かって走り出した。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:41:28 ID:YRI3HmXq
支援
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 16:41:43 ID:mW2qcJ1u
武装錬金支援
303鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk :2009/01/21(水) 16:49:51 ID:g2krsz2d
投下終了。
ぇー、間が開いた割にはなんというか、堅実よりは冒険してしまっている展開に…。
ぇー、シエスタの「本名」についてですが、サガフロ2においてナイツ一族は皆イギリスの国王から名前が取られているので、そこから【ナイツの名前】を取りました。
こっから合戦シーンとかがかなり増えて、書き手的に中々しんどいもんですね。

さて、それは脇に置いて、図版を色々と作成したり、してもらったりしたのでこちらで紹介したいと思います。
アップローダーに前々から置いてあったりしたものもありますが、改めて。
まず、鋼の使い魔版、トリスタニア地図の改訂版
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0092.jpg
脇の解説は世界遺産とかのイメージで読んでもらえるとありがたいです。
次にタルブ周辺図。これは前に紹介した気がしますが、一応
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0083.jpg
今更ですがラ・ロシェールってトリスタニアの南なんですね(第四巻参照)やべぇ、と思ったが、このまま押し切ります(ぇ
最後に友人に協力して書いてもらった「飛翔機」のイメージ図です
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0093.jpg
書いてもらった大塚悠貴君には感謝が堪えません。

あと魔法学院の地図とかも現在製作していますので、折を見て公開したいと思います。では、また。
304ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:15:05 ID:/BnIWu9l
鋼の方お疲れ様です。この後に投下するのはちょっと怖いですが、予定がなければ30分ころから投下させてください。
305ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:30:30 ID:/BnIWu9l
ゼロの魔王伝――14

「メフィストフェレスにファウストか。旧世紀の話に出てくる悪魔とそれにかどわかされた中世の碩学の名だったな。狙いすぎな名前じゃ」

 武器屋の主人が脳味噌を絞る様にして告げた名を、左手は揶揄するようにして笑った。由来を知って名乗っているなら大したハッタリ位にしか思っていないのであろう。
 もっとも、この異世界であるハルケギニア大陸に同じような話が伝わっているのなら、だ。
 そうでないのなら、D達と同じく別世界からのエトランゼか、単なる偶然か、の二つだろう。
 主人に名を聞かされたルイズやタバサ、キュルケと言った他の面々も興味は引かれた様子はなかった。
 とにかく、デルフリンガーを購入し、Dが寝具も着替えも不要と言った事もあって城下町に来た用件はすべて済んでしまったわけだ。
 ルイズとしてはもうすこしDと城下町を連れだって歩き回りたい所だ。しかし、それもタバサとキュルケが着いてくる以上は二人きりとは行かない。まあ、D自身の左手に宿っている人面疽やデルフリンガーの所為で、完全な二人きりなどないのだが。

――ちぇ、ちぇ、あによ。

 『な』によ、を『あ』によ、と発音してしまう位にルイズは心の中で拗ねていた。流石に表に出すには子供っぽすぎるし、そんな所をキュルケに見られるのは嫌なので、顔だけはつんと澄ましていたが。
 Dとその左手とデルフリンガーの順に鳶色の瞳を動かしているルイズの様子を見ていたキュルケは、流石に人生経験の差によるものか、ルイズの隠せていると思っている内心の感情を読み取っている様子であった。

「ねえ、ルイズ、私ちょっと寄っていきたい所があるから、ここで別行動にしない? そうねえ、二時間後に今日来た所の門で待ち合わせでどうかしら? あ、タバサには私と一緒について来てほしいんだけど」

 こくり、とタバサは頷いて了承した。キュルケの計らいで、Dと二人きりになれると気付いたルイズは、一瞬、長い冬を耐え忍んだ蕾が春の陽気に誘われて花開いた様な笑みを浮かべ、慌てて咳払いをして誤魔化した。

「そ、そう? 貴女達が勝手についてきたわけだし別に構わないわよ? じゃあ、D、行きましょう。二時間後に門で待ち合せね」

 うきうきとした様子でDに声を掛けてルイズはいそいそと武器屋の羽根扉を開いて出て行く。
 はやくー、と自分を呼ぶ声に、Dも続き、羽根扉を開いた所でキュルケへ振り向いた。

「素直ではないな」
「ルイズの事、よろしくね」
「ああ」

 肩をすくめて何の事かしら? と受け流し、キュルケはルイズの後を追うDの背中に手を振って見送った。思っていたよりも、あの黒づくめの青年は、善人なのかもしれない。
 それから、自分の意図を汲んでくれた小さな親友の方を向いて、悪戯っぽく笑いかける。
屈託のない、心を許した人にしか見せない笑みは、向けられた者の心が暖かくなるようだ。
 キュルケがこんな風に笑う事も出来ると知っている人間は、学院でも五指に満たないだろう。そしてタバサは、その数少ない者の一人だった。

「ごめんね、タバサ。私に付き合わせちゃって。お詫びと言ってはなんだけど、貴女の欲しい本くらいなら買ってあげるわよ」
「いい。でも、意外。貴女がルイズの為になるような事をするとは思わなかった」
「ふふ、まあね。ツェルプストーらしくないけど、その分ルイズの事はからかって弄くって遊ばせてもらうつもりよ。だってここ最近のルイズったら面白いし、おかしいし、妙に可愛いんですもの」
「やっぱり素直じゃない」
「素直な私なんて想像できて?」
「あまり。それともう一つ」
「あら、今日はずいぶんとおしゃべりね? なあに?」
「Dの事をどう思っている? 貴女がなにもしようとしていないのが不思議」
「そう、ね。ねえ、私が人の一番大切なものには手を出さないって言うのは前に話した事があったわね」

 こくり、とタバサは小さな顎を動かして憶えていると返す。去年に魔法学院へ留学したばかりの頃に、同級生達と諍いを起こして恨みを買ったキュルケとタバサが、決闘をするよう仕向けられた事がある。
 その時に手を合わせた事と誤解を解いたことをきっかけに二人は友人となったのだが、その決闘の時にキュルケが先ほどの様に、一番大切な者には手を出さないと言っていたのだ。
306ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:31:46 ID:/BnIWu9l
「今のルイズにとってDはとても大きな存在よ。魔法が成功したという証拠であり、同時に生涯を共にする使い魔でもある。ちゃんと意識を持ち、自分の考えもあるのに、ルイズの心を汲んでくれているのよ。
あの時のギーシュとの決闘騒ぎの事もあったし、今じゃルイズの方が使い魔なんじゃないかってくらいべったりだしね。今、ルイズからDを取り上げて御覧なさい。あの子、何もかもに絶望して自殺しかねないわ」
「……」

 タバサの沈黙は肯定を意味するものだったろう。魔法学院入学以来、いやその以前からルイズの心も体も縛っていた重圧と諦めと失望の鎖が、今ではもう随分と解けて、ルイズの心を軽くしているのはタバサにも分かる。
 やっぱり素直じゃない、と親友の事を評価しているタバサに、キュルケがちょっと悔しそうにこう言った。

「それに、あの顔だしねぇ。一目で私の微熱を燃え上がらされて灰にされてしまったわ。あんまり相手が凄すぎると、微熱も恋の火を通り過ぎて灰に変わっちゃうのね。いい勉強になったわ。
 というかDに色目を使うだけで学院中の人間を敵に回すわよ。罪作りな人だけど、自覚しているのかしら? なんだかそのうちルイズが魔法か刃物で刺されちゃいそうで怖いわ」

 これまた同感だったので、タバサは頷いた。ルイズに決闘を申し込めば、Dが出てくると学院の生徒達は考えているらしく、今のところルイズが余計な騒動に巻き込まれるような事はなかった。
 ただ、実際に決闘騒ぎになればルイズの性格を考えれば決してDの力は借りないだろう。
 Dの方も、今度こそルイズに手を貸すような事は、ルイズ自身が望まない限りはしないに違いない。
 誰かが命を捨てる覚悟でルイズに決闘を申し込まない限りは、今の状況が続くだろうが、それがいつまで続くかは、誰にも分からぬ事だ。

「さてと、とりあえずはルイズをからかうためにも」

 とキュルケはいやに艶っぽい仕草で武器屋の主人の方を振り返った。再びパイプを加えようとしていた主人が、小娘に過ぎない筈のキュルケのあまりの色香に思わず息を飲む。
 かつ、かつ、とブーツが床を踏みしめる音を立てて、キュルケが主人に歩み寄った。
 褐色の肌に覆われた太ももの肉の弾力は若さとあいまって、触れる指を押し返すほどに張りがある事だろう。
 膝を越える長いブーツと丈の短いスカートの合間から覗く太ももはひどく扇情的だ。
 胸元を大きく開いたシャツと、ルイズでは決して作る事の叶わない双乳が描く褐色の谷間のコントラストは目に焼き付いて離れない。
 所々で跳ねた赤い髪が、キュルケが歩くたびに揺れる様は、まるで意思を持った炎が女の形を取ったかのような錯覚を与えてくる。
 一歩ごとに大きく揺れるその胸の果実は、まるで男共の夢の中の産物の様にそそるものがあった。
 目の前に迫るキュルケの姿に圧される様にして主人が思わずのけぞる。鼻の穴から目から、キュルケの色香が忍び込んで主人の脳を絡め取る。

「このお店で一番見栄えの良い剣を見せてくださらない?」

 キュルケは、ルイズの反応を考えると今から楽しみで仕方が無いのか、やけに弾んだ声でそう告げた。


 一方でDとルイズの主従は変わらず裏路地を歩いていた。
 Dの方が必要する買い物もないし、ルイズはルイズで、目下必要そうなものは召喚の儀式の前に学院に来る行商人から購入しているから、取り急ぎ必要となるものはない。
 あてもなくぶらぶらと歩いてはいるが、いつまでもそうしているわけにも行かない。どうしよう、と困るルイズは結局武器屋の主人の言葉に縋る事にした。

「さっきのお店の主人が言っていた旧市街に行ってみましょう。私もはじめて聞いたし、なにか面白い事をやっているかもしれないわ」

 無言のままのDだが、とりあえず了承と判断したルイズが、先頭に立って再び歩きはじめる。
 行く先がどこであってもDは無言のままついていっただろう。ここら辺の無関心さと言うか無頓着さは相変わらずだ。
 長い歴史の中、拡張を繰り返してきたトリスタニアの街の中には、華やかな表通りとは裏腹に昼間でも薄暗闇に覆われ、どこか忘れられた様なもの寂しげな一角がある。
 かつては街の中心部と栄えながらも、今はその喧騒と華やいだ記憶を過去へと埋没させた旧市街の一角だ。
 とりわけ貧民や表に顔を出す事の出来ない後ろ暗い連中達の住処となり、トリスタニアの治安に暗い影を指す要因として嫌われるその旧市街に、ソレはあった。
 現市街との境目の区画およそ一万平方メイルを、アルビオンからやってきたという医師が国から借り受けたのである。
307ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:33:15 ID:/BnIWu9l
 市井の者達にはいまだ知られていないが、白の国アルビオンは今や戦火の真っただ中にある。
 中にはアルビオンの大地を捨てて他国に逃れる者もいようが、この医師と言うのがアルビオンでも評判となりつつある人物とあって、疑わしい目で見られていた。
 だが、結果として医師の希望通りに土地は貸し与えられ、それどころかその治療行為の邪魔をする者があらわれぬようにと、警邏の騎士と兵士達が土地の四方に密かに配備されているほどだ。
 この異常ともいえる事態は、とある霧の深い夜に、黒い馬車に乗った白づくめの医師が王城を訪れた翌日に、マザリーニ枢機卿の名の下に決定されていた。
 はたして月の明るい晩に、医師と枢機卿とトリステインの国政を預かる者達の間でどのようなやり取りがあったかは分からない。
 ただ、その旨を告げる際に、枢機卿をはじめとした一部の重鎮たちがことごとく頬を桃色に染めていた事が、使用人達や官僚達に目撃されているのは確かであった。
 医師の申し出を枢機卿及ぶ重鎮たちが了承したのみに留まらず、その周囲に警護の兵士達を配置し、決して医師の医療行為の邪魔をしないように厳命した事は賢明といえただろう。
 もし、その白衣の医師――ドクター・メフィストの医療行為の邪魔をトリステイン王国の国政に関わる者が行いでもしたならば、その日の内に、始祖ブリミルより授けられた三王権の一つたるトリステイン王国は長い歴史を閉ざす事になっていただろうから。
 あるいはそうなる事を白衣の医師の訪問があった夜に、さんざんに教え込まされたのかもしれない。この医師の邪魔をすれば、この国は終わると。
 そして、医師が手にいれた一角へとルイズとDは足を向けていた。
 見すぼらしい家屋の続く一角が急に開け、一辺百メイルの土地にあった建物はすべて取り潰されて、今は赤十字の描かれたまっ白いテントと、地面の上に置かれたベッドや、待合室代わりの長椅子を置かれた一角がある。
 四隅から細い柱が立ち上り、高さ五メートルの地点で強化ビニールが張られて、内部の空間を無菌状態に保っていた。
 四方を囲う柵に設けられた入口にはメフィスト病院と書かれた看板がついている。
 周囲には好奇心を剥き出しにした連中がいるかと思っていたルイズは、周囲にこれと言って人影がいない事をいぶかしんだ。
 武器屋の主人の話では、見物人が後を絶たないのではなかっただろうか?

「なんで誰もいないのかしら?」
「おい、気づいたか」
「無意識に働きかける結界だな」
「ふむ。治療を必要とする者以外の侵入を拒む為の、かの? となればとんでもない使い手じゃな。貴族(『辺境』の)の元老クラスでもおいそれと行使できるレベルではないぞ。
わしらが入れたのは招かれたか、それともメカニズムか術に間違いが生じたか。にしても……」

 左手の声は、目の前の野戦病院のような光景に対する疑問を告げていた。
 傷の痛みや病魔の苦しみゆえに漏らす悲痛な呻き声や、泣き叫ぶ子供達の声と共に、絶望を追い払う力強さや暖かさに満ちた励ます声が聞こえてくる。
 決して患者を不安にさせないよう抑えられながらも、的確に伝えられる医師達の指示とそれに答える看護師達の返事。
 傷つき、病み、それでもなお生を望む者達と、それに答えんと死力を尽くす医の道を行く者達。その二つの人種達が死に抗い生を得んと死闘を繰り広げている。
 特に症状がひどい患者達が寝かされているベッドには、ハルケギニアの技術水準を考慮すれば到底あり得ぬメカニズムが並び、患者の体調管理を行っている。
 人間は理解出来ぬものにたいして大きな不安と拒絶を覚える生き物だが、ベッドに寝かされている人々とそれを見守る人達の顔には、安堵と安らぎ、そして手にした希望への喜びばかりが輝いている。
 彼らは、自分達が救いの手の中に居る事を心から理解しているのだ。
 ルイズはひどくその光景が眩しかった。あそこには必要とされる者と必要とする者達が居る。
 患者は治療を求めて医師の存在を必要とし、医師は自分達を必要とする患者達の治療に全力を尽くしている。
 誰かが自分を必要としてくれているわけが無い。そう思うルイズにとっては、不謹慎な事と分かっていても、羨望の思いが胸の中にわくのも仕方のない事だろう。
 門の枠に付けられた円筒が、中から薄く発光しているのに気づいたルイズが、不思議そうに覗きこんだ。見つめていても眩しいとは感じない目に優しい色だった。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 17:33:35 ID:LCALCxnm
魔王伝支援
キマイラも出ねーかなーと思ってたら作者が別でした
にょれろーん
309ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:34:32 ID:/BnIWu9l
「消菌灯じゃな」
「ショウキントウ?」
「ここの連中には分かるまいが、空気の中には目に見えないくらい小さい毒の素が漂っておってな、健康な者ならばどうってことはないんじゃが、怪我をしたり病気で体が弱っているとそうもいかん。
 その明かりが、その空気の中の毒や服や体についた毒を殺しておるんじゃよ。上の方も透明な膜見たいので覆われているのが見えるじゃろう? ああしてこの中を清潔に保っておるんじゃよ」
「へえ。でもこんなの初めて見たわ。Dが住んでいたところにも同じようなのがあったの?」
「ま、そんなところじゃが……しかし、これは」

 在り得ぬ筈のものが確かに目の前に存在する違和感に言葉を濁す左手。Dはどう思っているのか無言のままである。
 へえ、とルイズは感心してばかりいる。理解が及ばない所ではない状態らしく、ただ呆れるようにして感心するしかないらしい。
 そんな二人の姿に気づいたのか、強化ビニールの幕を開いて、一人の看護師が声を掛けてきた。

「どうかなさいまして?」

 清楚な白い看護師服に身を包んだ少女だった。豊かな金の髪を額の真中で分けて、後頭部で括って馬の尻尾みたいに垂らしている。
 頭の上にちょこんと乗ったナースキャップ、胸元をウエストウッドと書かれた名札が飾り、ひざ丈のスカートから零れてすらりと伸びた足は白いタイツを履いていた。
 手も足も首も腰も細いのに、白い生地をパンパンに押し上げるほど胸元ばかりが豊かに育っていた。
 片手では到底掴み切れずに、両手で捧げ持つ様にしてもまた指の間から柔らかな肉が零れてしまうだろう。
 まろやかな曲線を描く肉体はこの上なく女性的な魅力に溢れていたが、慈しみと言う感情が輝かんばかりの柔和な表情や、代償を求めない無償の笑みが、性的な要素を取り払い、目の前の少女にいやらしさの欠片も与えてはいない。
 体の作りに比例してか、顔立ちもまた言葉にするのが天地を反せと言われるのと同じくらい困難に思えるほど美しい。
 ルイズもまた神がかった可愛らしさの美少女であるが、こちらの少女もまた幻想的な物語で語られる美しい妖精が目の前に現れたような錯覚を与える美少女だった。
 そんな美少女看護師に対しても変わらぬ冷厳な瞳を向けるDと違い、ルイズは巨乳看護師の金の髪から突き出た二つの長耳に目を見張っていた。

「貴女、エルフ?」
「はい、ハーフです」
「え、あ、そう」

 朗らかに答えられてしまい、ルイズは二の句が継げずにいる。むろん、このハーフエルフ巨乳看護師はドクター・メフィストをハルケギニアに召喚した張本人ティファニアだ。
 メフィスト病院での勤務生活からか、今ではすっかりハーフエルフである事を隠さず、むしろそれを誇りにしているかのように堂々とした態度を取っている。
 ルイズはまじまじとティファニアを見つめた。
 エルフ。ハルケギニアの人間達にとって最大の天敵。
 メイジの行使する系統魔法よりも強力な先住魔法を用い、かつて始祖ブリミルでさえついには勝利を得る事の出来なかった亜人達。
 そのあまりの強さゆえに、過去エルフ達と戦端を開いた貴族達は、子孫に多くの忠告めいた言葉を残している。
 ハルケギニア中の貴族を敵にしてもエルフは敵にするな、と伝えた者もいるほどだ。
 噂は噂を呼び、憶測は新たな憶測を生み、エルフは頭から人間を食べるだの、エルフは悪魔の手先など、本物のエルフが聞いたら眉を寄せて不快感を露わにしそうな言葉のオンパレードだ。
 ルイズもハルギニア貴族とエルフの抗争の歴史をよく知る古い貴族の一員であり、父母や家に昔から仕えている使用人達から耳にたこができる位にエルフの脅威を教え込まれてきた。
 だが、目の前に居るハーフと名乗る少女の笑顔を見ていると、ルイズにとって絶対と言っても過言ではなかった父母の言葉に、つい疑問を感じてしまう。
 それほどに、ティファニアがルイズとDに対して浮かべているにこやかな笑みは、悪意と言う言葉も知らないというのでは、と思う位に透き通った美しさと無垢な優しさもったものだったからだ。
 ふと、遠いヴァリエールの領地に居る姉カトレアの微笑を思い出し、ルイズは目の前のハーフエルフの少女に対する恐怖が萎れて行くのを感じていた。
 ルイズがエルフと聞いて恐怖を顔に露わにした反応に、ティファニアは慣れているのか笑みを崩してはいなかった。
 ルイズはこんな無害と言う言葉が美しい少女の形を取ったような少女に、恐怖を覚えた自分を恥じ、かすかに頬を赤に染めながら口を開いた。

「た、ただの見物よ。私もDも怪我も病気もしていないわ」
「そうですか」
310ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:35:40 ID:/BnIWu9l
 ティファニアは良かったと、二人の健康を喜ぶ様子で呟いてようやくDの方を見た。これまで同様の現象が起きたが、それがわずか五秒ほど破れたのは初めての事だったろう。
 ティファニアは細長い睫毛の揃った瞼を数回瞬かせただけで正気を取り戻していた。流石に雪花石膏の様な白く滑らかな頬は、ほんのりと桜色に染まってはいたが、思考の方は通常の判断能力を残している。
 これはやはりほぼ毎日顔を突き合わしているメフィストの美貌に対する慣れによるものだろう。それでも、美しいものはやはり良いらしく、五秒以上の直視は危険を伴う。

「当メフィスト病院は二十四時間、どんな時でも病み傷ついた方への治療の手を伸ばしています。もし、なにかお困りの事がありましたら、いつでもお尋ねください。でも、病院に用が無い方が喜ばしい事でしょうけれど」

 ちょっとだけ悪戯っぽく笑うティファニアは、ルイズが思わず身惚れるほど愛らしかった。

 ななな、なによ、すごく綺麗な上に可愛いってあり!? ええ、エルフの癖になんかすんごい可愛いんですけど!! し、しか、しかも、あによ、あの胸ぇえーーーー!!

 ギロリと擬音語が付いて回るような眼差しでルイズはティファニアの胸をじっと見つめた。そのうち穴があくんじゃなかろうかと疑いたくなるくらい見つめた。
 それから、Dを見る。相変わらずどこか遠い所を見つめているような、隣に居る方が寂しさを感じてしまう瞳で病院の方を見ている。
 が、だが、しかし、ルイズにはそれがティファニアの背後の光景ではなくて、ティファニアの胸を見ているように見えた。
 別に見てはいないのだが、ルイズにはそう見えてしまったのである。

 でぃ、でぃ、Dも大きい方がいいってわけね!? 巨の付く乳がいいのね!! あんたのご主人様は私なんだから私を見なさいよ見ていなさいよ見つめていなさいよ!!! た、たかが胸が大きい位で!!!

 そして再びルイズはティファニアの胸を見た。押し上げられた看護服の胸元の名札が、乳房のラインに沿って斜めにずれていた。
 大きい。そう感嘆せずにはいられない。
 ルイズは自分の胸元を見た。
 小さい。そう愚痴を零さずにはいられない。
 足して二で割れば平均的なサイズになるだろうか? 
 大=目の前のハーフエルフ。小=自分。
 という公式が頭の中で成り立ったルイズは、うう、と親の仇を睨む勢いでひたすらティファニアの胸を見る。
 ルイズの小さなお人形さんみたいな細い指と掌では到底掴み切れまい。それこそ幼い子供の頭くらいはあるのではと言うくらい大きい。
 体のどこもかしこも細くしなやかなくせに、胸ばかりは大きく、他の部分の細さと相まって余計に大きく見える。
 その癖、アンバランスなグロテスクさを感じないのは、これはもう神に愛されているに違いないという位体つきと顔つきと雰囲気が奇跡的な黄金の比率で存在し、互いの魅力を引き立て合っているからだ。
 それでいて決して派手に飾りつけたり主張する様な雰囲気ではない。窓辺を飾る一輪の花の様な慎ましさなのだ。
 それがこの看護士少女の印象から性的なフィルターを取り外し、生来の優しい気性や穏やかさを抽出して、好ましいものへと変えている。
 とはいえ、目下のルイズにはそう言った事は全く関係なく、さしものティファニアも不思議そうに小首を傾げた。食べちゃいたいくらいに可愛い仕草だ。

「あの?」
「ここ、このむ、むぅ」
「ルイズ」
「はっ!?」

 胸ぇ! と叫んで今にも掴みかかりそうなルイズの雰囲気を察して、Dが一声かけて止めた。流石に同行している人間が奇行に走るのは看過できなかったようだ。
 我に返ったルイズは、私何をしようとしていたのかしら、と本気で悩む風であった。そのうち二重人格になりそうな位、最近は感情の起伏が激しい。

「もしよろしかった献血していってください。お礼にメフィスト病院特製『ご長寿セット』を差し上げておりますので」
「『献血』? 『ご長寿セット』?」
「『献血』は血を失って危険な状態にある方に血を補充する為の血を、抜く事です。『ご長寿セット』は、お米を潰して形を整えたものを焼いた焼き菓子で、おせんべいというんです。厚焼き、ざらめ、海苔巻の三点セットです。院長のご趣味なんですが美味しいですよ」
「そのオセンベイとかいうのはともかく、血を抜くって、まるで吸血鬼じゃない!?」

 輸血といった概念がなく、医療行為もそこまで発達していないハルケギニアでは当然の反応をみせるルイズに、ティファニアは変わらずにこやかな笑みを浮かべたまま答えた。
 同じような質問を患者達から何度もされているのだろう。
311ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:36:50 ID:/BnIWu9l
「きちんとした医療行為ですので、グールになるとかそういった事は心配なさらなくても大丈夫ですよ。担当医の方からもきちんと説明致しますし、すでに何人もの方が献血されていらっしゃいますよ」
「だからって他人の血を自分の体に入れるなんてぞっとしないわ。よくそんな真似が許されたわね」
「院長先生がお話を着けてらっしゃったとの事ですので、詳しい事までは私どもには分かりかねます。あ、すいません、失礼します」

 ティファニアは自分を呼ぶ同僚の声に気づいて慌ただしく、金色のポニーテールを翻して院内へと小走りに戻っていった。
 ルイズは呆れたというか信じられないものを見たというか、曖昧な顔でその背を見つめていた。

「あの娘の言っていた献血とかもそうだけど、よくエルフを働かせておいて問題にならないわね。下手をすれば問答無用で監獄行きか極刑に処されかねないわ」
「とはいえ、実際にああして働いておるしの。話を着けた院長とやらがよほどの人物なのじゃろ。病院の名前からしてメフィストか。さて、どんな奴やら」

 左手とルイズのやり取りを尻目に、Dは先ほどティファニアが戻っていった方を見ていたが、おもむろに院内へと足を向けて動かしていた。

「え、ちょっとD! どうしたの、まさか献血するの!?」

 ルイズの声を止まらぬ足で千切り、先程のティファニアと黒髪の若い男の看護師が付き添っているベッドで足を止めた。
 先ほど運ばれたばかりと思しい女の子だ。まだ七つか八つだろう。満足に食べ物を食べられていない所為で、手足は枯れ木のように細い。
 口元を血で汚し、こけた頬は死人の色に近い。ルイズが、初めて目の当たりにする生々しい惨状と血の匂いに、息を呑んでいた。
 看護師の足もとに割れた注射器が落ちており、中の薬液が零れていた。無針注射器を撃とうとした時に運悪く女の子が暴れてしまい、注射器を取り落としてしまったらしい。
 口の端から血の泡を零しながら、女の子は死に瀕した手足を振り回している、蝋燭の最後の灯りが、死の方向へと向けて輝いているのだ。
 看護師が新しい注射器を取りに行く間、ティファニアが必死に女の子の体を押さえていたが、どこにそれだけの力があったものか女の子は暴れ続けている。
 Dが唐突に背後のルイズに声をかけた。

「あの女の子の体を押さえておけ」
「え、私が!? Dの方が適任なんじゃ……」
「別にする事がある。早くしろ。もってあと一分だ」
「わ、分かったわよ」

 有無を言わさぬDの口調と、あと一分で死ぬと言われたルイズはなかば考える事を止められて、Dの言うがままに女の子の体にかじりついて暴れる体を抑え込んだ。
 同じようにしていたティファニアが、突然目の前に現れたルイズの顔に驚き、口を開く。

「あの、どうして?」
「Dに聞いてよ!」

 そう怒鳴り返したルイズの目の前で、白目をむいた女の子がかは、と大きく顎を開いて大量の血を吐いた。びしゃりと、ルイズの頬と胸元が赤く染まる。
 その生暖かい感触と噎せ返るような錆びた鉄の匂いに、ルイズが反射的に手を離そうとしたのを、鉄の声が止めた。Dだ。

「離すな」

 その声に叱咤激励される様にして、血で濡れた頬を拭う事もせずルイズは自分の体重を掛けて女の子の体を抑え込む。
 なにがなんだか分からないが、さっきの男性が戻ってくるか、Dがなにかするまでこの子をしっかり抑えておく、そうルイズが腹を決めるのと、またDの声がするのは同時だった。

「離していいぞ」
「え、もういいの?」
「ああ」

 Dの言葉通りおそるおそるルイズが女の子から離れると、それまでの苦悶の様子が嘘のように女の子の呼吸が安らかなものになっている。
 まさか死んでしまったのでは、とルイズが一瞬誤解しかけたほどだ。ティファニアもルイズ同様に驚いた様子で女の子の呼吸を確認している。

「この子は折れた肋骨が肺に刺さって危険な状態だったんです。なのに、出血が止まっている。それに痛み止めも?」

 ルイズがDの方を振り返ると、以前Dの作っていた木の針が女の右膝の真ん中に突き刺さっていた。
 Dの言っていた別にやる事とは、この針を女の子の体に指す事だったのか。

「なんで膝に針を?」

 ルイズに答えたのは左手だ。

「人間の体にはいろいろな作用を及ぼす小さな点があっての、ツボとか呼んでおる。このお嬢ちゃんの場合は血止めと痛み止めの効果があるツボを針で突いたのじゃ。後五、六時間は保つ。それだけあれば十分じゃろ?」
「あ、はい! ありがとうございます」
312ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:38:28 ID:/BnIWu9l
 深く腰を折るティファニアに一瞥向けてからDは辺りを見回した。周囲では決して顔には浮かべぬが慌ただしげに行き交う看護師や医師達の姿があった。
 メフィスト病院の噂を聞きつけた近郊の村や町からも傷病人が集まってきているのか、千客万来と言う言葉通りの状況だ。
 メフィスト病院が請求する医療費は、平民でも十分に支払いが可能な低額だ。場合によってはタダ同然の時もあるのが主な理由だろう。

「忙しそうだな」
「はい。猫の手も借りたいくらいです」

 反射的に答えたティファニアと、周囲の様子に改めて気づいて呆然とするルイズが、耳を疑うような言葉を聞いた。

「手伝おう」
「…………え?」

 ルイズとティファニアの声が重なった。

「明日、世界が滅びるかもしれんなあ……」

 しみじみとした左手のつぶやきが、青い空に吸い込まれていった。


 それからのDの行動はハルケギニアで一番付き合いの長いルイズからしても到底信じられない事だった。
 一瞬悩んだティファニアが、Dとルイズの手を借りる事を決めるや二人に名札を渡して、次の患者元へと歩き出し、二人はそれに続いた。
 入口の消菌灯で消毒は済ませているからそのままの格好で院内を歩き回り、胃潰瘍穿孔、敗血症、腹膜刺激症状を起こした虫垂炎、慢性硬膜下血腫と多種多様な症状を訴える者達の医療行為に手を貸した。
 ルイズには精々暴れる患者の体を押さえつけたり、指示された道具を運んだりと雑用程度の事しかできなかったが、多くの患者達を見るにつれ、文句の一言もでる事はなくなり、真摯な眼差しで患者とそれを救わんとする医師達を見つめていた。
 Dは、先程の少女の様に時折木針でツボを突いたり、左手を患者の体に押し付けて痛み止めや血止め、症状の緩和を施していた。
 左手の老人の万能ぶりに、ルイズは呆れていたが、苦しんでいた人々が次々に安らかな顔になるのを見ているうちに、その呆れも忘れていた。
 何人目になるか分からない手伝いをしている中、ルイズが邪魔になるからと自分の髪をティファニアから借りたゴム紐で束ね、タイ留めを外してマントを脱ぎ捨てるのを、Dは静かに見守っていた。
 慌ただしく、そして濃密な時間が過ぎ、ひっきりなしに訪れる患者達の数が落ち着きを見せた頃、ようやく休憩するだけの余裕を手に入れたルイズは、看護師達用のスペースに案内されて、ティファニアの淹れたお茶を飲んでいた。
 衝立で仕切り、カーテンで遮っただけの簡単な空間だったが、備え付けの長椅子やソファはルイズの実家にある調度品に負けないくらい座り心地が良かったし、出されたお茶も最高級品と香りと色で分かる。
 血で濡れた頬を拭い、シャツをティファニアが持ってきた看護服に着替えたルイズが、お茶で喉を潤すや盛大に息を吐いた。
 血を浴びて青白く変えていた頬の色は元の血色のよいものに戻っていた。つん、と鼻を着く消毒液の独特の匂いには鼻を顰めるが、血の匂いよりはまし、と気を取り直した。

「つ、疲れた。いつもあんなに忙しいの?」
「トリスタニアに来てからは今日が一番。いつもはもうすこし余裕があるんだけれど」

 自分で淹れたお茶を両手で持ったティファニアが幾分砕けた口調でルイズに答えた。患者と看護士というよりも、友人の様なものと認識しているのだろうか。

「でもよかったの? 今さらなんだけど、お医者様じゃない私達が勝手に手伝って」
「本当はダメだけど……結果としてたくさん助けてもらったし、私は後悔してないわ。院長先生には怒られてしまいそうだけどね」

 ちょっと困った風に笑ってティファニアはお茶を品良く啜った。Dは立ったままお茶を口に運んでいる。
 他人の運命など眼中にないであろう青年が、こうして人々の治療に手を貸したのは果たしてどんなきまぐれであったものか、神にも悪魔にも、ひょっとしたらD自身にも分からないのかもしれない。
 リラックスした表情を浮かべ、ルイズと世間話などしていたティファニアが衝立の向うから姿を見せた白い影に、思わず息を呑んで立ちあがって背筋を伸ばした。
 ティファニアの見たものを見て、ルイズはぽかんと口を開いて呆けた。
 世界の輝きは二倍になっていた。Dという暗黒の人型が映える世界に、いかなる色も恥じて消え行ってしまう様な白が、突如出現したのだ。
 それはすなわち、Dにも匹敵する美の存在であるという事を示していた。くるぶしまで覆う純白のケープに身を包み、ケープの上に広がる黒髪はいかなる宝石の輝きも色あせて見えるほどに美しく。
 ティファニアが無限の畏怖と畏敬を湛えた声でその人物の名を告げた。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 17:39:22 ID:IMKa54Oa
魔界医師に吸血鬼ハンター……
これで煎餅屋がいれば凄まじいカオス空間w支援
314ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:39:54 ID:/BnIWu9l
「メフィスト院長」
「そちらのお二人かね? 治療を手伝って頂いたというのは?」

 耳が痛いほどに静かな夜を思わせる声であった。どんな感情の吐露も、その夜闇の深さと静けさの中に飲み込んでしまいそうな声。
 ティファニアが頷く。断罪の場に立ち、どんな罰も甘受する覚悟を決めた無実の人の様。
 メフィストの視線がDを捉えた。わずかに、その瞳が揺らぐ。揺らいだ感情が何かは分からない。

「メフィストと言う」
「Dだ。余計な真似をした」
「いや、的確な指示だったと聞く。患者が治療されるのならば私が異論を挟む余地はない。結果につながるならば過程は問わないよ」
「おれが勝手にした事だ。彼女に落ち度はない」

 彼女、とはティファニアの事であろう。ふむ、とメフィストが頷く。Dの言葉と姿を吟味しているようにも見えた。

「考慮しておこう。ではささやかだがお礼をしなければならないかな」
「形のあるもんがいいのう」

 これは左手である。メフィストを一目見た瞬間に感じた戦慄をおくびにも出さず、図々しく主張したのは大したものだ。
 メフィストの黒瞳がDの左手に映った。一目でその正体を看破したものか、面白げな光を浮かべている。

「なるほど、君もなかなか複雑な事情があるらしい」

 Dが腰のパウチの一つに右手を突っ込み、瓶を一つ取り出した。携行していた乾燥血漿の瓶である。Dの体格なら大体一瓶で半年分になる。
 半分ほど残っているそれを取り出し、メフィストに見せる。

「これと同じものを用意してもらいたい。金は払う」
「結晶化させた血液か。明日には届けよう。届け先はトリステイン魔法学院かね? それと料金は結構」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール宛で頼む」
「そちらのお嬢さんかね? どの様な関係かな」
「使い魔と主人だ」
「ほう」

 口から魂が抜けかけているルイズに、この世に存在する事が間違いだと告げるような眼を向けてから、メフィストは実に意味深気にほう、と呟く。
 なにか途方もなく良からぬ事を企む悪魔の様な“ほう”であった。思わずティファニアの豊かな胸の中に在る心臓が止まってしまいそうになるほどに。

「君の様な美しい男を使い魔にするとは、さぞ優秀なメイジらしい」
「まあ、優秀と言えば優秀だわな。ほっほっほ」
「さて、あまりお引き留めしては申し訳ない。私はこれで失礼しよう。どうやら、お互い遠い所からここへ来た身の上の様だ。いずれ、またの出会いを楽しみに」

 そう告げて、メフィストはDとの短い邂逅を終えて踵を返していった。
 その背をしばしDは見つめていたが、左手の方から苦しげな声が零れてきた。先ほどまでの調子とは違い、本音が滲んでいる。

「おい、ありゃなんちゅう化け物じゃ。お前と同等に美しいというのもあるが、あれは人の形をした別のモノじゃぞ。大貴族の連中が可愛く見える。信じられん」
「彼もおれ達同様に呼ばれたのだろう」
「じゃろうな。わしら同様にこの世界では異物すぎる。本来なら存在そのものが許されんような異分子じゃろう。
今の所は敵対する様子はないが、さてこれから先はどうなるものか。ま、悩んでも仕方ない。とりあえずお嬢ちゃんをたたき起して待ち合わせの所へ行こう。かれこれ二時間は待たせておる筈だからの」

 左手の声に応じる様にしてDがお茶のカップを机の上に置いた。律義に空になっていた。

「ごちそうになった」
「いえ、あ、そうだ『ご長寿セット』もどうぞ」

 ティファニアが脇に置いておいたせんべいの詰め合わせをDに手渡した。
 それをどう解釈したものか、結局Dは黙って受け取っていた。
315ゼロの魔王伝:2009/01/21(水) 17:41:37 ID:/BnIWu9l
それから、ルイズの肩に手を置いて揺さぶり、遠い世界に飛び立っていたルイズの意識を呼び戻した。

「え、あ、あれ? なにか白いモノが入ってきて、ええっとそれから、私、どうしたんだっけ?」

 Dとメフィストを同時に視界に収めて、あらぬ世界めがけて気を失っていたルイズが、状況を把握できずにうろたえる。

「そろそろ戻るぞ。だいぶ時間が過ぎている」
「あ、本当だ。もう夕方じゃない。じゃあ、私たち行くわね、ティファニア」
「はい、それとテファで構わないわ。あ、そうだ制服! まだお洗濯していないのだけれど……」
「いいわよ、そのままで。そのままでいいの。代わりにだけど、この服借りていい?」
「ええ、なんでしたらそのまま差し上げます。考えてみれば貴族の方にお手伝いしていただいたなんて、とんでもない事をしてしまったわ」
「それもいいわよ。貴重な体験をさせてもらったし。いつまでここで病院を開いているの? これからずっと?」
「ううん、あと三日だけ。それからアルビオンに在る本院に戻るの。忙しくなると思うから、その看護服は好きにして」
「じゃあ、記念に頂くわ。ねえ、テファ、ここの病院って随分と変わっているのね。聞いた事も見た事もない道具や治療をしているし、魔法がほとんど使われていないのですもの」
「そうね。ほとんど、というかすべてメフィスト院長が考案して、形にしたものよ。普通のお医者さん達とはずいぶん違うやり方みたいだけれど、たくさんの人の病気や怪我を治してきたわ」
「そう。私には病気の姉がいるの。どんなに高名な水のメイジでも治せなかった病気にかかっていて、領地の外に出た事もないのよ。その姉の病気も、ここなら治るのかしら?」
「院長先生なら、どんな病気や怪我でも治してくださると、私は信じているわ。患者の方が生きたいと心から願うなら、あの方はそれに応えてくださいます」
「そう……。もし機会があったら、ヴェリエールの領地まで足を運んでくれるかしら?」
「患者の方が、真に救いを求めているのならば、例えそこが地獄の底だろうと、メフィスト院長は躊躇わずに向かうわ。そして治療する。自分の全てを掛けて」

 そう言い切るティファニアの姿は限りない信頼に満ちていた。そうするに足るだけのものを、メフィストはこの少女に見せて来たのだろう。

「そう。そこまで信じているのね。今日は貴重な体験が出来てよかったわ。また会えるといいわね」
「ええ。ルイズさんも、Dさんも、今日はありがとうございました」

 そうして、看護服の上にマントを羽織ったルイズと、ご長寿セットをデルフリンガーごと左手に持ったDは、頭を下げるティファニアを背に、待ちくたびれているであろうキュルケとタバサの元へと足を向けるのだった。


今回ここまで。メフィストとDの初顔合わせですが、淡白に済ませました。まだまだ序盤ですので。ではお邪魔しました。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 17:42:53 ID:IMKa54Oa
投下乙です
なるほど、確かにメフィストなら乾燥血漿の製造くらいお安い御用だな
感服しました
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 18:47:03 ID:iY4z/9gR
投下乙です
毎回GJ!
318名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/21(水) 18:56:51 ID:LqmwoESg
しかし、メフィストにとってD(にせDだってそうだろう)はある意味究極のサンプルだよな。
たぶんメフィストのライフワークの一つである「不老不死」に一番近い存在だから。
というかDの遺伝子データは菊池世界(<新宿>のある)のすべての魔道士(キキの爺も)と科学者とあらゆる組織、秘密結社がちみどろの争奪「戦争」を繰り広げるだろうし。
もっともDの遺伝子には神祖のプロテクトがあるだろうからドクトルファウスト(メフィストの師匠)でも突破できんと思うが。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 18:58:50 ID:IMKa54Oa
そういえば魔界都市ハンターだとドクトルファウストの正体は"神"だったようだが
魔界都市の方ではどうなんだろ?
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:16:05 ID:4FJjAxlx
菊地スレで訊けば?
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:19:08 ID:KstQLGH2
>ご長寿セット

あんなにつれなくされてるのに異世界で宣伝とは健気だなw
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:20:28 ID:0E9lguna
ドクターモヒカンって良いょね
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:41:41 ID:HBWjYZCo
            ※予告です※

 帰ってきた大神さん。

 一部の要望に応え、キモカッコイイ大神さんが帰ってきます。
 今回のはなしはこんな感じで。

   あらすじ
 ルイズの指導係を外れた大神は、しばらくの間学院内でのんびりと過ごしていた。
そんなある日、学院長から伝説のゴーレム(つまり光武)、について書かれた古文書を
貰う。
 コルベールが読んだところによると、帝政ゲルマニア領内にある火の洞窟と呼ばれる
場所に、炎の衣という光武らしきものが封印されているという。
 その話を聞いた大神は、コルベールと二人でゲルマニア行きの相談をする。
その時、学院の生徒の一人、キュルケとタバサが部屋に乱入してきた。
 ゲルマニア出身のキュルケは、自分を連れていけば何かと便利だと申し出る。当初は
断る大神だったけれども、色々あった末に、結局大神、キュルケ、タバサの三人で火の
洞窟に行くこととなった。

 火の洞窟はゲルマニア屈指の火山地帯にあり、麓の町には温泉も出る。
 洞窟を前に、町で一泊する事を決めた三人。
 温泉を前に大神の取った行動とは?
 果たして火の洞窟には何があるのか。


       檄・トリステイン華劇団!!

      第二話 わが愛は炎よりも熱く


  平成21年1月22日(木曜日)20時30分ごろ投下予定
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:43:25 ID:HBWjYZCo
間違えたorz・・・・・
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:45:39 ID:BbPbV0Ck
投下時間まで長いwwwww
いや、予告はいいけど。
他に投下しようとしている作家さんが遠慮するから、あまり時間は開けないほうがいいよw
大体投稿は5〜10分前に予告するのがいい。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:51:52 ID:IMKa54Oa
急ぎの用がないなら8時にでも投下したほうがいいかも
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 19:53:01 ID:KXyESo7M
>>325もテンプレに入れた方が良いのかな
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:04:05 ID:jUuHnpA1
明日の今頃投下できそうですっていう報告じゃないか
別に何時しようが自由のはず
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:13:19 ID:IMKa54Oa
だけど間違えたって言ってるから、日付を書き間違えたんじゃないかな?
明日投下するのをわざわざ宣言するとも思えんけど
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:14:01 ID:KXyESo7M
>>324からして、何かしら間違えてたみたいだけど、
何を間違えたのかを書かないからなあ

自由っつーか、明記されてないだけじゃね?
明日の20時20分から30分の間にでも宣言して欲しいわ
331名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/21(水) 20:21:05 ID:LqmwoESg
Dなら姫を倒せるような気がする。ギルゼンを倒したアレを使えば。
332ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 20:21:28 ID:RijiYO2p
>>277さんへ
申し訳ありませんがど、こら辺が分かり難いのか教えてもらえないでしょうか?
何度か読み直しましたが、どの辺か分からなかったもので…。

返信が遅くなってしまいましたが、代理投下の方ありがとうございました。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:37:44 ID:2bzmrwiz
地の文が少ないって言いたいんじゃない?
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:39:37 ID:scSvrIlT
>>331
俺もそう思ってたw
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:40:08 ID:uJeDJjvk
>>331
D対アンリエッタ姫か〜。好カードですね。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:41:52 ID:NsnujOmm
>>335
どんなイジメだ、そりゃ
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:43:10 ID:KstQLGH2
アンアンならDを一目見たらルイズのこと考えずに
いつもの調子でビッチぶりを発揮してくれるに違いない
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 20:51:16 ID:Dz8ti4xP
>>319
漫画版は別世界の話じゃね
白い医師が黒いしw
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 21:10:58 ID:TqxLBs7I
魔王伝の人乙です、せんべい屋はご長寿セットで参加ですかw
ああくそ、給料日前なのにざらめ食いたいよざらめ

それと俺のトラウマは「アトムの最後」あれはひどいw
340ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/21(水) 21:12:19 ID:RijiYO2p
>>333-334
なるほど、ありがとうございます。
流れ的にいいかなと思っていたんですけど…なんとか修正してからwikiに上げたいと思います。
341名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/21(水) 21:18:52 ID:LqmwoESg
>>334
Dしか姫は完全に滅ぼせん(なんか姫も素直に滅びを受け入れる気がする)と思う。にせDもできるだろうけどやはり何千年かの研鑽がいると思う。
にせDをあまりにも早々に退場させたのはあまりにも惜しいと思う。キャラもいいし、キュルケとかとも気が合いそう。
しかし、メフィストにこの二人組み合わせはえらいカオスになりそう。カトレアさまが魅力的すぎて困る。
にせDには姫に「カトレアは宇宙一のいいおんなだぜ、てめえなんかよりもな」とでも啖呵を切ってほしい。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 21:19:12 ID:m8/6mwjW
魔王伝の人、乙でした。
Dとメフィスト先生が同じ空間に存在するのは、視覚の暴力です。
今後、DとにせDが同じ空間に存在するとかなったら、どんな最終兵器だ。

あと、ざらめもいいけど海苔が好きだー!
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 21:33:24 ID:wq1XdWtc
>>337
手紙のこともすっかり忘れてアルビオン編完!
ウェールズ涙目
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 21:51:54 ID:bqN6sjau
もしDの左手がアンアンにこう質問したらどう答えるだろう?

「Dとウエールズとどっちが美しい?」
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 21:59:58 ID:4ZXt7DhP
ヒューの人の新作読んでふと思った。


これがもし杉下右京だったら…
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:00:54 ID:NHMeFQhO
アンリエッタヘイトにしか見えないこの流れ。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:04:27 ID:8e+68TjW
でもみんな本当はアン様が好きなんだよな?
な?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:04:30 ID:6EgB/Ccu
ここの住人をゲハで発見しますた。


PC版PS2エミュ完成!PS3唯一の利点が無くなり死亡!
http://dubai.2ch.net/test/read.cgi/ghard/1231677163/788
788 名前:名無しさん必死だな[] 投稿日:2009/01/20(火) 22:35:57 ID:NlAbdq980
E7200
HD4850
6400を4G
WinXPproSP3

設定はまったく弄ってない


THUNDERFORCE VI.
80程度速すぎて速攻で死ぬw

アオイシロ
乃木坂春香の秘密
100近くでるけど早すぎて声が変

フェイト アンリミテッドコード.
20fps程度 遅すぎて話しになんね

http://uproda.2ch-library.com/src/lib093863.jpg
http://uproda.2ch-library.com/src/lib093864.jpg
http://uproda.2ch-library.com/src/lib093865.jpg
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:06:40 ID:xQ3jEuAx
>>345
「細かい事が気になってしまう。僕の悪い癖」

こうですか?わかりません!!
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:11:45 ID:yLIDldnk
>344
「花の美しさと宝石の美しさは別のもの、それを比べるなんて無粋ではなくて?」
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:12:30 ID:5FSDWl1m
「最後にもう一つだけ…」
じゃね?w

ふと思ったがご立派な使い魔のワルドは綺麗なワルドにカウントするべきなのだろうか?
ルイズを裏切ってはいないんだろうが、何つーか別の意味で汚れてるんだが…
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:15:58 ID:xQ3jEuAx
>>351
ロングビルがそう言われるんですね、わかります
書いてみたいけど、自分には右京さんのような知性派キャラは書けない
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:19:38 ID:+qmAjuWv
右京さんが血を吐いた!
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:21:16 ID:J3/5PXrq
謝れ! 右京さんに謝れ!
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:22:01 ID:5FSDWl1m
謝れ!!右京さんに謝れ!!
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:24:22 ID:yLIDldnk
>351
あの清々しい開き直りっぷりのどこに汚れがあると?
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:37:02 ID:Goe+gCDK
ゲーム機器に使うチート機器が召喚されるのがあったな
あれで母親を生き返らせて「ママ!ママ!」と甘えまくるワルドほど幸せそうな
ワルドは一度も見た事ないんだぜ
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:38:56 ID:XVxbl5nh
エクスキャリバーが召喚されたSS前あったけど
エースコンバット04のメガリスって、リアルメテオ装置なんだっけ?
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:45:30 ID:a6lLY2pq
メガリスといわれると発電施設を思い出す俺はインテリオルの回し者
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:48:19 ID:rbeDzscQ
メガリスといえばサガフロ2な俺
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:48:35 ID:L1+bY3Yg
>>348
お前のマッチポンプだろ
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:51:03 ID:OMU4pDcF
>>357
プロアクションリプレイ召還したやつか。あったなぁ。
漏れはドスガレオス(だっけ?)呼んだルイズ無双が好きだったw
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:52:49 ID:ZhaMfLtf
一年以上昔の連載作品なのに、いまだに頻繁に話題が出て、あまつさえ絵が投下されたりもするご立派の魅力とはなんなんだ?
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:53:28 ID:4FJjAxlx
ナニが魅力なんだろうな
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:54:46 ID:AXV62MlS
>>359
コジマ汚染者は巣に帰るんだ
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:57:33 ID:IMKa54Oa
>>364
『われらのせがれ』はゼロ魔SSの中でも屈指の名言
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 22:59:22 ID:blJT5Gde
綺麗なワルドか。
アルビオンとタルブで生き延びたら挑戦してみようかしら。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:13:19 ID:BFekckNG
ルパンの小ネタで出てきた、活き活きとしたワルドのはっちゃけっぷりが忘れられないw
多分数少ない幸せなワルドだw
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:17:31 ID:lsunxZOp
ご立派様は基本ギャグである為に無茶をしてもゼロ魔ファンに角が立たず、
最後は勝ちを譲るという形であるにせよ敗北することで只管蹂躙し続けるというわけでもなく、
なによりきちんと完結している。
人気がある上にアンチが沸きにくいから気軽に話題に出来る、というのが大きいのじゃないだろうか。
人気があってもアンチも多けりゃ話題にはしにくいからね。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:19:28 ID:MMPKGVbI
逆に一番悲惨なワルドってどれだろう?
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:22:03 ID:QwLyEWqK
赤スライムになったワルドか、スティンガーレイエクスキューションシフトで
跡形もなくなったワルドか....
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:22:46 ID:2pWhnD3e
圧倒・瞬殺されたワルドは数居れどハクオロさんに不老不死スライム化させられたワルドが一番悲惨だと思う
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:26:00 ID:gZ27b9+F
悲惨といえばアトリエのサイトは無残だったなw
「ちょっといいかも」と思っていた女の子から「二股を掛けているのが羨ましかった?」とか言われるなんてwww
しかもギーシュからもてる男の余裕を食らう有様……ギーシュに負けるSSは数少ないが、あれほどの負けっぷりはまたとあるまいw
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:26:52 ID:yLIDldnk
ラスボスで始終空回りしてたワルドも涙を誘うゼ!
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:26:58 ID:waURQlCw
逆に一番輝いてるワルドは?
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:27:38 ID:IE6IfIUh
一番ではないけど、蛮人のワルドは綺麗な分だけ悲惨かと
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:27:55 ID:j75Mach0
ワルドを馬鹿にするな。
やつはヨグ・ソトース様にも出来ない、偏在を使えるんだぞ。
ソースはタイタスクロウ(笑)な。
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:36:27 ID:JVioQcGj
>>375
mtlのワルドはチートでイカレ輝いてる
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:45:49 ID:jAcTkLc0
>>378
プレインズウォーカーになった時はさすがに吹いた
強化されすぎだろw
380sage:2009/01/21(水) 23:47:02 ID:BZX6DDN3
>>375
偏在はもちろん多様な 属 性 をも併せ持つ、虚無の王のワルドはイカスと言うかイカレてると言うかw
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:49:56 ID:hFXA2ekt
話が変わって申し訳ないんだが。
魔術師(魔導師)系のキャラが召還される話は数々あるけど
未だに『風の聖痕』御一行様の誰かが召還されてないのは何故だろう。
結構相性良さそうなのに。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:55:31 ID:YRI3HmXq
オレは、使い魔くん千年王国でバックベアードに乗っ取られたワルドも好きだぜ。
そーいや、あそこのルイズは、ドクターじゃないけどメフィストに金的かましてたな…。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/21(水) 23:58:40 ID:uzqK8d4N
蛮人のワルドは、右腕を失いつつも救国の英雄として伯爵にはなったが、
病んじゃったルイズと結婚したため出世の芽があんまりないという…
まあマシな方じゃね?
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:00:09 ID:nOSa7qxI
もしルイズがツンデレはツンデレでももう少し素直で
サイトが黄金の精神を持つナイスガイならなあ
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:07:30 ID:aCGRu9xJ
頭部には非常食のコロネですか?
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:08:55 ID:0GveK6nA
>>384
ルイズは最近はデレまくりのレモンちゃんだし、サイトはちょっとバカでスケベかもしれないけど純情だし決める時は決めてると思うけど。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:10:52 ID:5Xi8oe/L
>>375
魔砲の人のワルドは綺麗なワルドw
うまくすれば女王ルイズの王配に
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:11:31 ID:Nj7fo0Cw
>バカでスケベかもしれないけど純情だし決める時は決めてる

諸星あたるですね、分かります
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:12:17 ID:aLfAGNLq
>384
脳内で改竄すればいいじゃない
原作はこのままタバサルートで突き進めばいいのに
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:12:57 ID:TcK4J/A5
>>381
とりあえず議論だけなら過去相当な回数が話されててな、
そのへんログ漁ってみたらいいと思うぞ確かこのスレでも話はされてたし
それで大体疑問の解決はできる
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:15:27 ID:YTvyojxB
>>381
204スレで話を出した者だけど今がんばって書いてる。
テストが終わったら投下予定。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:18:42 ID:g8TbIXjk
>>386
てかサイトってあんだけいろんな女から言い寄られてるのに
ずっとレモンちゃん一筋なのは尊敬するわ
サイトがどんだけ好き好き言っても全然答えてくれないルイズより
シエスタ辺りにあっさり乗り換えても誰もサイトを責めないだろうに
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:26:43 ID:Rg2LrkCM
もうここ最近はルイズが答えないんじゃなくて間が悪いだけだからな、あの二人。
学院に戻って同居状態に戻ったら、あっという間に行くところまで行ってしまいそうだ。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:28:56 ID:cM/jXjlL
>>393
しばらくはタバサが護衛気取りで妨害してたけど、即位しちゃったからなぁ
ほんに即位後どう動くのかが気になる。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:52:04 ID:Rg2LrkCM
>>394
王位についたタバサが権力を盾にサイトを強引に召し上げ
豪奢なベッドでシーツを身体に巻き付けてさめざめと泣くサイトまで想像した。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:52:53 ID:92u3U5wH
やってる事がモット伯と同じだな
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 00:53:59 ID:id8kYQ92
――後の第二次トリステイン・ガリア戦争の幕開けであった。
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:00:04 ID:jzOBh6AQ
初めての投下になるのですが、構いませんか?
クロス先は電脳戦機バーチャロン・オラトリオタングラムから、
高性能光学兵器装備機体、HBV-502-H8ライデンです。
一応3レス予定ですが、もっと長くしないと駄目ですか?
399381:2009/01/22(木) 01:00:45 ID:jbM7fdug
>>390
dクス
何となく理解した。

>>391
期待してますぞ。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:05:15 ID:KYIbKOp3
今このスレに必要なのは小ネタだ支援
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:05:17 ID:92u3U5wH
>>398
俺は別に構わんが、
投下するってんなら何時から投下するか書かなきゃ
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:05:23 ID:YTvyojxB
>>399
遅筆だし文才無いからあんまり期待しないでもらえるとありがたい。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:05:59 ID:5h1lWuF3
>>398
個人的にはVRってだけで是非投下してほしいんだが・・・・
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:06:21 ID:jzOBh6AQ
>>401
すいません。できれば今から投下したいのですが。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:09:07 ID:aCGRu9xJ
>>404
『何分後に投下』とか、『10分から投下』とか、そういうのがあると良いんだぜ!
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:10:33 ID:3oxS0jPm
ちょっとスレ読んだら分からないか?
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:11:08 ID:jzOBh6AQ
重ね重ねすいません。では1:15から投下させて頂きます。
タイトルは『重攻の使い魔』第1話 赤き人形 です。
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:11:29 ID:kFrzeyZ/
分家の分家そのまた分家の…が継承順に絡んでこなかったり
ゲルマニア帝室に始祖の血が入ってなかったり
没落貴族の血が広まって平民メイジ大発生してなかったり
メイジって繁殖力が弱いんだろうなあ
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:12:42 ID:5h1lWuF3
Vレーザー支援
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:14:43 ID:aCGRu9xJ
この投下を待つ時間というのは、何故こうも長く感じられるのか!
それはwktkしているからに他ならない支援!
411重攻の使い魔 第1話『赤き人形』:2009/01/22(木) 01:15:09 ID:jzOBh6AQ

 さわやかな青空の下、トリステイン魔法学院の校庭では本日幾度目かの爆発が起きていた。爆
発の原因となっていると思われる少女はまたも声を張り上げる。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」

 必死になるルイズとは裏腹に、周囲にいる生徒達の反応は冷ややかなものだった。ルイズを指
差しこそこそと笑う者、悪意を隠そうともせずに侮辱する者、どうでもいいとばかりに文句を言
う者。この場にルイズの味方はおらず、彼女は孤独だった。
 ルイズの思いを裏切るように、またしても爆発し、周囲は灰色の煙に包まれる。いままでの爆
発に比べて一際大きな爆発だった。煙を吸い込み、咳き込む生徒達からは抗議の声が聞こえてく
る。

「いい加減にしろよ! 失敗するのはいいけど俺達を巻き込むな!」
「これからはゼロのルイズじゃなくてマイナスのルイズって呼んだ方がいいな……ゲホッ」

 爆風を間近で食らい、煤け乱れた髪を払いながらルイズは悔しさに唇を噛み締める。

「……どうして、どうして成功しないのよ」

 使い魔すら召喚できない貴族。普段から魔法の成功率は極めて低かったが、召喚の儀式も満足
にできないとは。ルイズは余りの不甲斐無さにどうしようもなく惨めな気分に陥っていた。決し
て他人の前では弱みを見せまいと努力をしてきたが、それも限界に達し、今にも泣き出しそうな
顔になる。煙に覆われ、周囲から泣き顔は見えなかったが、その煙も風に流され徐々に晴れてい
く。
 完全に煙が晴れ、ルイズが瞳を涙で潤ませながら顔を上げると、爆発で盆状に削れた爆心地に
は予想外なものが立っていた。

「……こ、これってもしかしてゴーレム?」
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:15:29 ID:d65OTE88
バーチャロンだと……?
支援せざるを得ない
413重攻の使い魔 第1話『赤き人形』:2009/01/22(木) 01:16:14 ID:jzOBh6AQ

 そこには鮮やかな赤色を基調とし、見るからに厳つい体に幾何学的な模様が刻まれた、軽く2
メイルを超える大柄な人形が佇んでいた。腕と思わしき所には見たこともない筒状の棍棒が握ら
れている。
 人形は微動だにしないが、それは未だに契約がなされていないためかもしれない。ルイズの顔
からは涙が消え、反対に日光を受けた花が花開くように明るくなっていく。

「やったぁ! こんな強そうなゴーレムを召喚できるなんて!」

 飛び跳ねながら全身で喜びを表現しているルイズとはうって変わり、先程まで文句を言ってい
た生徒達は一様に驚いていた。

「ウソだろ!? ゼロのルイズがあんなゴーレムを召喚できるなんて!」
「ちくしょう、なんであいつが!」
「ふん、ルイズが高位のゴーレムを使い魔になんてできるかよ」

 生徒達が嫉妬の声を上げるのは仕方の無いことだった。通常召喚される使い魔は生物であり、
ゴーレムのような無機的なものを使い魔にすることは稀である。また、ゴーレムを召喚したとし
ても、精々が土くれの人形であり、今しがたルイズが召喚した精密に構築されたゴーレムを使い
魔にするなど前代未聞である。修行中の身でも明らかな質の違いを感じ取ることはできた。

「あー、ミス・ヴァリエール。喜ぶのは構わないが早く契約の儀式を行いなさい。君の番で大分
 時間を食っているんだよ」
「あ、ハイ。すいません、今すぐやります!」

 頭の禿げ上がった40歳前後の教師に軽く注意され、ルイズは顔を引き締める。しかし体の中か
ら湧き上がってくる喜びを抑えきることはできず、引き締めたはずの顔は微妙に歪んでいる。早
く契約の儀式を行って使い魔にしよう。ルイズはうきうきとしながら赤いゴーレムへと近付く。
と、そこでちょっとした問題にぶつかった。

「あの、ミスタ・コルベール。頭に背が届かないので私にフライをかけてもらえますか?」
「仕方がありませんね。はい、これで届くはずですよ」
「ありがとうございます」
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:16:21 ID:3oxS0jPm
支援
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:16:39 ID:aCGRu9xJ
支援
416重攻の使い魔 第1話『赤き人形』:2009/01/22(木) 01:17:08 ID:jzOBh6AQ

 コルベールが軽く杖を振るうとルイズの体はふわりと浮き上がり、大柄なゴーレムの頭(と思
わしき部位)に届くようになった。ルイズはコモンマジックが使えないこともどこへやら、目の
前のゴーレムを使い魔とできることに狂喜していた。早速杖を振るい、契約の呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペン
 タゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 ルイズがゴーレムの頭に口付けをする。しばらく沈黙していると、おもむろにゴーレムの目や
体の各所にあるクリスタル状の物質がカッと光輝いた。

「きゃっ、なになになに!? ぅおえっぷ!」

 ルイズがきゃあきゃあと騒いでいると、次はゴーレムの体中から白い蒸気が吹き出した。その
蒸気をまともに受け、ルイズは咳き込んでしまう。しかしそれも短時間のことで、すぐにゴーレ
ムの異常は収まり、クリスタルの輝きも落ち着いた光度になった。

「サモン・サーヴァントは何度も失敗したけど、コントラクト・サーヴァントはしっかりと成功
 させたね」

 コルベールは嬉しそうにうんうんと頷いた。出来の悪い子ほど可愛いとはよく言うものである。

「マジかよ……。ルイズが契約まで成功させやがった」

 一方、生徒達にはまたしても大きな衝撃が走ったようであった。今まで下に見ていた人間が大
きな成功を収めたことに同様を隠し切れないのも無理からぬことかもしれない。

「ちょっと失礼するよ。ルーンのスケッチを取るからね。……ふむ、珍しいルーンだな」

 さらさらと簡単にスケッチを取ると、コルベールは教室に戻るよう生徒達に号令をかける。生
徒達は一斉に浮かび上がり、教室の方向へと飛び去っていく。幾人かの生徒は去り際にルイズへ
と侮辱の言葉を吐いていく。

「ルイズ! お前は歩いて帰ってこいよ!」
「ちょっとばかりいい使い魔を手に入れたからって思い上がるんじゃないわよ!」

 生徒達が全員立ち去り、校庭にはルイズとゴーレムがぽつんと立つだけになった。今のルイズ
 にとって、負け惜しみの中傷になど何の痛痒も感じなかった。自分はこんなにも立派な使い魔
 を手に入れたのだ。

「名前を付けてあげたい所だけど、早く教室に戻らなくちゃね。ね、あんた、私を乗せて教室に
 連れて行きなさい」

 そう言うと、ゴーレムはルイズの小柄な体を軽々と持ち上げ、ぽんと肩に置いた。とそこでゴー
レムの動きが止まった。ルイズがどうしたのかと思うと、具体的な指示を出していないことに気
付いた。

「私が指示するからあんたは言うとおりになさい。とりあえずあの棟に向かってちょうだい」

 するとゴーレムが歩くでもなく、地面をすべるように移動し始めた。かなりの速度が出ている
ようで、風を切る音が耳を叩く。もしかしたら自分は本当に素晴らしい使い魔を召喚したのかも
しれない。ルイズは見た目に反して軽快な動きを見せるゴーレムを見下ろしながらそう思った。




 この日、ルイズが召喚した赤いゴーレムの正確な呼称は高性能光学兵器装備重攻機体であり、
かつて世界中の戦場で伝説と恐れられた特殊重戦闘VR大隊に配備されていたHBV-05の後継機。H
BV-502-H8、通称ライデンと呼ばれる機体だった。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:17:22 ID:aCGRu9xJ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:17:33 ID:3oxS0jPm
419重攻の使い魔 第1話『赤き人形』:2009/01/22(木) 01:17:45 ID:jzOBh6AQ
とりあえずこれで終わりです。なんかライデンが小さくなってますが、リバース・コンバートし損なったぐらいに考えてください。
AIのようにある程度自己判断能力はもっているものの、ルイズに意見する程ではない(そもそも喋れない)ので、
割と原作をなぞる展開になると思います。
どこまで書けるかわかりませんが、出来る限り続けてみようと思います。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:18:34 ID:5h1lWuF3

今後の展開が凄く気になるんだな
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:20:38 ID:uj/gZM1J

しかし、バーチャロンとはまた珍しい。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:20:39 ID:aCGRu9xJ
バーチャロンは分からないけど、最後の説明からして大当たりの予感!
原作をなぞると言うことなので、デルフさんをどうするのかに期待w
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:27:24 ID:gZhP+Xwi
俺の愛機じゃねえか…乙です。
第三次αのハッター軍曹だったら喋っても違和感ないな。
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:30:19 ID:kAHjw7jZ
乙です。
ついにバーチャロンまで召喚されるとはw
しかもこのライデンなら奥の手もあるし、今後に期待
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:35:21 ID:+xczmFpf
またフザケタ火力の子が呼ばれたなw
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:39:33 ID:FNr6+ePm
乙でした。

死ぬなよギーシュw 決闘があるならだけど
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:45:23 ID:5h1lWuF3
ライデンはあまり使い込まなかったけど、あのBGMは今でも大好きだな
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:46:05 ID:wh6o+fSU
HBV-502-H8・・・どっかで聞いたと思ったら
この間コトブキヤから発売されたばっかりの奴じゃないかwww
全長2mとはいえ・・・おマチさん涙目だなwwww

知らない人のための参考画像を探してきたので、よければどうぞ
http://vo.kotobukiya.co.jp/wp-content/uploads/2008/08/rai_pub01_f_rgb1.jpg
http://www.over-drive-inc.jp/store/images/PL-KTB-VON-001_1.jpg
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:51:04 ID:DetEn136
ライデンは両肩からのレーザーに何度も泣かされた
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 01:51:09 ID:5h1lWuF3
知らないけどガンダム00を見てたって人にはヴァーチェって言えばだいたいあってる
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 02:00:15 ID:+xczmFpf
それはAC的にアルギュロスって事だな
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 02:13:22 ID:iFEhkmC7
バイモルフが仕込んだライデンだったらルイズの気苦労が耐えないけどな。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 04:11:42 ID:JQZiENhL
爆れつハンターからキャロットが召喚されたらデルフはほぼいらない子
キャロット魔法吸収するし
ゴーレム戦ぐらいしか活躍できないww
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 05:13:02 ID:07gzv9SI
ガーゴイルおるたより東宮ひかる&ガー助でちょっと考えてたんだがタイミングが微妙だな。
終了後だとラーの天秤強化版という超チート能力を持ってるし。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 05:51:07 ID:hrY9R02l
バジリスクの天膳が召還されたらうっかり死ぬたびに再契約しないといかんのだろうか?
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 06:49:46 ID:69QVBVu+
>>431
ネクストなんか召喚したらコジマ汚染でえらいことになりそうだな
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 07:53:37 ID:12LVZkjv
最近のACはわからんからナインボールでよろ
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 08:11:25 ID:EOuCDoPv
>>433
魔法吸収で獣化したらルイズが鞭でおしおき(?)ですね。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 08:52:59 ID:+eQkWJwy
>>435
アイツ絶対ルイズ相手に「伊賀の精をお注ぎ申す!」とか言い出すよ
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:16:17 ID:Cyi+smK3
脳内変換よゆうでした
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:53:58 ID:ByL8+Esl
昔ボンボンの初代バーチャロンのゲーム解説で見たけど
ライデンは一機購入するのにテムジン30機分の
値段だとか・・・ちなみにゲーメストでは
オラタンのライデンはテムジン26機分というお値段・・・
あまりに高額すぎる使い魔でもあるな
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:54:58 ID:ZTTqmGmV
7万のナインボールが襲ってくるのが見えた
勝てるわけがねぇ……
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:55:15 ID:SuYJYwQq
ジーグがきたらレコンキスタを全滅だ!してくれるんだぜ、きっと
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:57:20 ID:uxK6Ezgv
くそっ、ビッグシューターが無きゃ手も足も出ないぜ!
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 09:59:28 ID:fYZ+1Oy+
ジーグヘッドが体当たり(頭突き?)だけで七万を?
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 10:28:35 ID:730TqdhV
鋼鉄神ジーグでの強さを見る限り普通にチェンジサイボーグだけで7万くらいいけそうだが・・・
チェンジサイボーグしてない人間形態のまま「貴様の相手など拳だけで十分!」と
ハニワ幻人2,3体を撲殺するんだぜ、宙はw
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 10:32:46 ID:cStDl4FB
>>437
コクピットスペースに汎用探査プローブをいくつか積んでて、それがラナやハスラーのホログラムをまとってハルケギニア全土で管理したり排除したりする話をプロット段階で投げたのは私だ・・・
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 10:58:41 ID:7s/gR/2l
>>442
大丈夫、アクアビットマンがきてくれれば7万のナインボールも撤退を余儀なくされるさ。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 11:26:45 ID:xQG9v3ke
ZOEからドロレス…だめだきゅいきゅいが一体増える上にチート過ぎるwww
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 11:26:52 ID:Ec/8/9ob
>>735
また天膳殿が死んでおるぞー
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 11:53:19 ID:uBHiIlN6
○○を召喚
駄目だ、○○なシーンしか思い浮かばない

こういうレス見るのも飽きてきたな……独り言は自分の日記にでも書いてろ
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 11:53:27 ID:Ec/8/9ob
>>450
>>435だったorz
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 11:58:59 ID:tRhOsvml
>>451
じゃあお前が何か別の面白い雑談でも始めてくれ。
できるもんならな。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 12:24:08 ID:oP8gYJ8W
スル−推奨
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 12:36:04 ID:Wr+9bMrN
ワロタw
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 12:39:25 ID:9PcpkyrH
それコピペやねん…
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 13:37:56 ID:zKSwcltJ
今ふと若美とハプシエルと爆裂のガトーが召喚されたらギーシュは誰に染められるんだろうとか考えてしまった……orz
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 13:52:08 ID:vo8BL5gK
>>457
ハプシエルは別にゲイってワケじゃない・・・・・・よね?



外見が美少女だったら喜んで「福音を告げて」もらうのになあ。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 13:54:13 ID:WY+8r1hT
モンハンのキリンなら使い魔にするのに手頃なサイズだよなぁ。
ただ龍じゃなくてユニコーン扱いされそうだけどなw
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:00:41 ID:gZhP+Xwi
キ、キリン装備の女ハンターさん召喚ですか!?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:08:27 ID:9BHUYysq
キリン装備って事はそれなりに場数を踏んだハンターかな
どうしてもオリキャラになってしまうのが難しいけど
ハンター達はパワーバランス的に悪くないよね
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:14:48 ID:hrY9R02l
まぁ、フルフルだけは召還したくないわな
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:19:17 ID:ZTTqmGmV
キリンも煮たようなもんだろ
ル「今日からあなたは私の使い魔よ!乗馬は得意なんだし早速乗せてもらうわ。……うわぁ、たてがみふかふか……(もふもふぐいぐい)」
キリン「……(怒)」
ル「あばばばばばばばばばばば」
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:20:11 ID:gDzGxrPi
ディアブロス亜種とかはルイズ大喜びだな。
ご立派なものが二本も生えてるし。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:42:11 ID:dQgght2o
ナナ・テストカリとかテオ・テストカリとかクシャルダオラ召喚したらえらいことになるな。

あれは装備や準備を整えるなり覚悟をしたハンターだから何とか生きていいられるだけで、
普通の人間ならばたばた死ぬような状況になるし。

MHのハンターって確かむちゃくちゃ「強い」んだっけ。
どうしてかは知らないけど。
普通の人間なら即死の攻撃食らっても死なず、
普通の武器では刃も通らない奴らにダメージを与えるぐらいの力の持ち主だとか。
(ほかのモンスターがほかのモンスターからの攻撃で死なないのはそのため)
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:43:33 ID:lLg/rol1
予約無いかな?
投下します
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:45:08 ID:lLg/rol1
ラ・ヴァリエール家の屋敷、裏庭。
練兵場として使われている一角に、すり鉢状の穴があった。
その縁にはラ・ヴァリエール公爵夫人、カリーヌ・デジレが立ちつくしている。
彼女の着る、過度な装飾を廃した浅紫色のドレスは、貴族婦人と言うより、家庭教師を思わせる凛とした雰囲気を漂わせている。

「ここに居たのか」
公爵が、カリーヌの後ろから声をかけた。
カリーヌは返事をせず、じっと地面を見つめている。
「凄まじいものだな」
公爵が隣に並び、呟く。

数分の沈黙の後、カリーヌが口を開いた。
「……最初、ルイズが連れてきた使い魔を見たとき、ルイズが騙されているのではないかと思ってしまいました」
「わしもだ。…それどころか、今でも彼がルイズの使い魔なのか、疑問に思っている」
公爵はどこか寂しそうに呟く、それはまるで、娘が戦地に向かっていると知りつつ、止めることのできない悔しさが滲み出ているようだった。

「あの少年は、どんな思惑でルイズと接しているのでしょうね」
「彼の言葉を信じるなら、自身のためなのだろう。彼は家族も友人も失って、ルイズに召喚されたようだ」
「戦いの虚しさを知っているのなら、ルイズを力に溺れさせることはないかもしれません。ですが私には、彼の力に群がる者達が現れる気がしてなりません、ルイズがそれに耐えられるでしょうか…」
「カリーヌ…それは、私も同じだ」

二人は、強大な力に不釣り合いなほど、純朴な性格の少年…人修羅の姿を思い浮かべた。
ディティクト・マジックで計りきれぬ強大な魔力、系統魔法とは違う、先住魔法らしき魔法。
そして別の文化圏という、ハルケギニアを冷静に判断する視点の持ちよう。
彼が戦争を望むのなら、ハルケギニアを戦乱の渦に陥れ、世界を破滅させることも可能かもしれない。
彼が戦争を望まなくとも、その力を欲する様々な者達が、彼とルイズを混乱へと導くかもしれない……。

「メイジとして一人前になれなくとも、せめて貴族として社交を身につけて欲しいと、そう思って魔法学院に行かせた。だが、ルイズは、とんでもないモノを召喚してしまった」
そう呟いた公爵を、カリーヌが諫めた。
「女々しいですよ、あなた。ルイズは私たちが思っているよりもずっと困難な道を歩むのかもしれませんが…これも始祖のお導きかもしれないのですから」
「うむ…そうだな、そうだな。カトレアを診てくれたミスタ・人修羅に対しても、些か失礼な物言いになってしまった」

そう言って公爵は空を見上げた。

あまりにも強大過ぎる力の出現は、ハルケギニアにどんな影響をもたらすのか……
二人は、その力がルイズと人修羅自身を傷つけることにならぬよう、祈る以外に無かった。


◆◆◆◆◆◆



朝早くラ・ヴァリエールの屋敷を出たルイズと人修羅は、ゴーレムの御者が手綱を握るブルーム・スタイルの馬車に乗ってトリステイン魔法学院を目指していた。
ルイズは揺れる馬車の座席に座り、人修羅に寄りかかって夢を見ている、人修羅は実家に帰っても気の休まる暇がないルイズを案じて、魔法学院に到着するまで余計な声はかけないように勤めていた。

ごとん、という地面からの衝撃で、ルイズの体が前へと傾きそうになると、人修羅はそっとルイズの肩を押さえて体を支える。
ラ・ヴァリエールの領地にある屋敷と、魔法学院の間はそれなりの距離がある。
平均的な馬で三日ほどの距離があるのだが、帰りは馬でなく竜を使って馬車を引かせているため、移動時間を大幅に短縮できるとのことだった。
その見返りとして、ちょっとした地面の凹凸が大きく響くいてしまう、人修羅は、ふと中世の戦車はこのような物だったのか?と考えた。
古い時代の武将や、レギオンを召喚できたら聞いてみよう…そう考えて、またルイズに目を向けた。

安心して眠るルイズの姿は、妹が居たらこんな感じだったのか、と想像させるに十分な可愛らしさがあった。



◆◆◆◆◆◆
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:45:54 ID:lLg/rol1


ルイズは夢を見ていた、舞台はラ・ヴァリエールの領地にある屋敷、つい先ほどまで一時帰省していたはずなのだが、どこか雰囲気が違っていた。

夢の中のルイズは、屋敷の中庭を逃げ回っていた。
背丈と同じぐらいの高さだった植え込みが、まるで迷宮のようで、ルイズは誰かから逃げるようにその陰に隠れていた。
二つの月のうち、片方が隠れてしまう夕方のひととき、一つの太陽と一つの月が交差する時間。
「ルイズ!どこに行ったの? まだお説教は終わっていないのですよ!」

その声でルイズは、これが夢なのだと悟った。

聞こえてきた声は母。
ルイズはデキのいい姉たちと魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていた。
実際は母に叱られたことなど殆ど無い、だが、母の恐ろしさといったら家庭教師のそれとは比べものにもならない。
だから夢の中にも登場し、ルイズを叱りつけては、魔法のできが悪いと怒るのだろうか。
(これは、子供の頃の夢…)
そう思いながらも、夢から抜け出すことは出来ない。

だんだんと辺りが暗くなる頃、植え込みの下から、誰かの靴が見えた。
「ルイズお嬢様は難儀だねえ」
「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」

召使い達が自分のうわさ話をしている、それがとても悔しくて悲しくて、ルイズは両手を強く握りしめ、歯がみした。
召使い達が植え込みの中をがさごそと捜し始めたので、ルイズは植え込みの隙間を器用にくぐり抜け、中庭へと逃げ出した。


中庭にはあまり人が寄りつかない、が、その場所こそがルイズにとって最も落ち着ける場所だった。
池を中心に様々な花が咲き乱れ、小鳥が集う。石のアーチをくぐり抜けベンチの脇を通り過ぎ、池遊び用の小舟に乗り込むと、小さなオールを使って池の中心へと向かう。
池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で作られた東屋が建っている、ルイズはこの場所を『秘密の場所』と呼んでいた。

成長し、大人になった姉二人も、軍務を退いた両親も、昔はこの小さな池で船遊びをしていた。
だが今は忘れさられたのか、そこに浮かぶ小船を気に留めるものは、この屋敷にルイズ以外居ない。
ルイズは叱りを受けると、決まってこの中庭の池に浮かぶ小船の中に逃げ込み、一人でぼっちでただ時間が過ぎるのを待っていた。

幼いルイズは小船の中に忍び込むと、以前から用意してあった毛布に潜り込む。
毛布にくるまって顔だけを出していると、不意に誰かの姿が思い浮かんだ。

全身に入れ墨を入れた青年、人修羅の姿が、脳裏に浮かんだのだ。
すると不思議なことに、体に優しい暖かさが感じられた、人修羅が自分の肩を抱いてくれてくれている……そう思うと、ルイズの寂しさはいつの間にか暖かさに変わっていった。

「……?」


人修羅とは違う誰かの気配に、ふと顔を上げる。
いつの間にか小島には霧がかかっており、その向こうから誰かが近づいてくる。
その姿はマントを羽織った立派な貴族のようで、年のころは十六歳ぐらいに見える、人修羅と同じぐらいの男性だ。
「泣いているのかい? ルイズ」
その人物はつばの広い、羽根つきの帽子を被っていたので、顔を見ることができなかった。
だが、ルイズはその声を良く知っていた、彼が誰なのかすぐにわかったのだ。
夢の中で、ルイズは胸が熱くなるのを感じた。
すぐ隣の領地を相続した、憧れの子爵であり、晩餐会をよく共にし、自分を気にかけてくれる人である。

ルイズは、子爵と、父の間で交わされた約束を思い出した。
469アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:47:25 ID:lLg/rol1
「子爵さま、いらしてたのですか?」
幼いルイズは慌てて毛布で顔を隠す、憧れの人にみっともないところを見られてしまった、その恥ずかしさでルイズの顔はますます赤くなった。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね」
「まあ!」
ルイズはさらに頬を染めて、俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」
ほんの少しおどけた様子で子爵が言う、すると夢の中のルイズは、小さく左右に首を振った。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも。わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
そう言って、ルイズははにかんだ。
子爵もにっこりと笑い、ルイズにそっと手をさしのべてくる。
「子爵さま」
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。もうじき晩餐会が始まるよ。さあ、掴まって」
ルイズは差し出された手に、自分の手を重ねようとしたが、母親に怒られていたことを思い出し手を引っ込めてしまった。
「でも、わたし」
「また怒られたんだね? 大丈夫だ、ぼくからお父上にとりなしてあげよう」

小さな島の岸辺、から小船に乗るルイズに手が差し伸べられる。
その手は大きな手で、憧れの手だった。
ルイズは立ち上がると、そっと…子爵の手を握った。

その時、風が吹いて子爵の帽子が飛んだ。

飛んでいった帽子を見ていると、その先に、人修羅の姿が見えた。

「ひとしゅら!」

霧のかかった池は、いつの間にか巨大な湖と化していた。
その向こうで人修羅が立っている。
まるで…ルイズを祝福するように笑顔を向けていた。


それがたまらなく寂しくて、ルイズは子爵の手を離し、人修羅へと向き直った。


「人修羅! ……ついてきて、くれないの」


◆◆◆◆◆◆
470アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:48:23 ID:lLg/rol1

夕方。
魔法学院に到着したルイズと人修羅は、学院長に一時帰省の内容を報告した。
カトレアの治癒についていくつか報告した後、アンリエッタ姫殿下からの手紙を預かっているとのことで、ルイズだけが学院長室に残された。

人修羅が学院長室から出て、本塔の階段を下りていくと、途中でコルベールとロングビルの二人を見かけた。
「おやミスタ人修羅、いつの間に戻られたのですか」とコルベール。
「つい先ほどですよ」人修羅は笑顔で返す。
「ラ・ヴァリエール公爵にもお会いできましたかな?」
コルベールがそう聞くと、人修羅は顔を引きつらせた。
「むっちゃくちゃ緊張しました」
「ははは、まあ仕方ないでしょう」

と、そこで人修羅はあることを思いついた。
「あ、そうだ。ちょっと相談があるんですが」
「何でしょう?」
「実はまたルイズさんと外出することになりそうなんです。それで護衛に必要な道具が欲しくて」
「ほう。道具ですか…」
コルベールがううむと唸る。
「…道具を必要とするんですか?貴方が?」
ロングビルが不思議そうな顔で聞いてくる、すると、人修羅は苦笑いして答えた。
「手加減のために必要なんですよ」
「そ、そうですか…」
気のせいかロングビルの笑顔は、引きつっていた。


◆◆◆◆◆◆


しばらく後。
部屋に戻ったルイズは、人修羅の姿がないことに気が付き、ふん、と鼻を鳴らした。
「まったく、何処に行ったのかしら、人修羅ったら」
ぐるりと部屋を見渡すと、壁に立てかけているはずのデルフリンガーが無い。
また外で訓練をしているのだろうか?ルイズはそんなことを考えながら、窓から外を見た。

辺りを見回すと、魔法学院の塀の上に座っている影が見えた、よく見ると背中に剣らしきモノを背負っている…人修羅だ。
その隣には小柄な誰かが座っている、おそらくタバサだろう。
ルイズは驚いて口を開けたまま、並んで座る二人を凝視した。
「……っ!」
カーッと頭に血が上る、ご主人様を放っておいて何をやってるの!と叫びそうになるが、かろうじてそれを押しとどめ、ばたーんと勢いよく扉を開けて外へと駆けだしていった。


「ちょっとー!人修羅ー!」
「あ、ルイズさーん」
外壁の下からかけられた声に、人修羅はのんきな調子で答えた。
「ご主人様を放っておいて何やってるのよー!」
「ああ、ごめん。すぐ降りるよ」
そう言うと、人修羅は手の力だけで跳躍し、ルイズの隣へと着地した。
「ごめんごめん、ちょっと相談を受けててさ」
「相談ですって?……タバサが、貴方に?」

タバサという少女は、寡黙でしかも人付き合いが少ない。
自分から何かを相談するとは思えなかったが、人修羅が嘘を言っているようにも思えなかった。
人修羅は上を見上げると、塀の上からこちらを見下ろしているタバサに声をかける。
「タバサさん。さっき言った通り、ルイズさんにも説明してくれないかなあ」
「……わかった」
タバサは少し大げさに頷くと、レビテーションを使ってふわりと地面に降り立っち、服に付いた埃を払って、ルイズの瞳を見つめた。
471アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:49:08 ID:lLg/rol1
「な、何よ」
「人修羅が。貴方の姉を治癒して、一定の効果があったと聞いた……どうか、お願い。私にも治癒の力を貸して欲しい。母を、治したい」
「え?」
ルイズは、タバサの口から紡がれた言葉があまりにも意外だったので、言葉を失った。
そして、もしかしたら彼女の無口の理由はそこにあるのではないか…と勝手な想像を働かせてしまい、目をぱちくりとさせた。

「ルイズさん、ちょっと話はややこしいんだが…タバサさんの身内は、どうも普通の病気じゃないらしいんだ。
今までにも治癒のメイジに頼んだり、治癒の文献を読みあさって調べたらしいけど、全く原因もわからないらしい」
人修羅が説明をくわえる、と、ルイズは納得いったかのように頷いた。
「…そう、そうだったの。解ったわ、家族が病気なのは辛いわよね。でもしばらく待って貰えないかしら、私、明日からまたしばらく魔法学院を離れることになりそうなの。
帰ってきたら具体的な話を聞かせて、それで協力するかどうか決めるから」
「わかった」
タバサは小さく頷いて、そのまま魔法学院の寮塔へと戻っていった。



人修羅はタバサを見送った後、ルイズに促されて近くのベンチに座る。
「はあ…、そっか。タバサもそうだったんだ」
ルイズがため息を漏らす。
人修羅は少し間をおいてから、ルイズに声をかけた。
「ルイズさん、当分魔法学院を離れるって事は、王女様に会いに行くのと関係してるの?」
「え? そうなんだけど、ちょっと大変なことになりそうなの。オールド・オスマンが仰るには、明日にでもお忍びで姫殿下が来訪されるとか…」
どこか納得のいかなそうな顔で、ルイズはため息をついた。
「お姫様が来訪?ってことは、この魔法学院に?」
「そうよ…どうしても私と話したかったみたいなの……。なんか、私、複雑だわ」

幼なじみが政略結婚する…そんな経験は、人修羅にあるはずが無かった、かける言葉が見つからず、俯いたルイズを見守ることしかできない。

「あのね…姫様と会って、どんな話をすればいいのか解らないのもそうだけど…
私、立派なメイジになって姫様を助けたいって思ってたの。
お母様みたいに立派なメイジになれれば、何でもできるって思ってたのに、私はまだ何もできないのよ」
「だけどルイズさんは、俺を召喚したじゃないか」
「そうだけど、そうだけど……そうじゃないのよ。誰よりも強くて何よりも凄い使い魔を欲しがったのは私だけど。
だけど、オールド・オスマンも、お父様もお母様もお姉様も、人修羅を怖がるじゃないの。誰も、褒めてくれないわ…」

ずしりと、肩が重くなる気がした。

もし、ルイズが『もっと凄い使い魔が欲しかった』と駄々をこねたなら、人修羅は苦笑だけで済ませただろう。
もし、ルイズが『人修羅は最高の使い魔だからどんな敵も倒せる』と言ったなら、人修羅は怒っただろう。
もし、ルイズが『人修羅なんかいらない』と言ったなら、仕方ないと言ってそのまま旅に出ただろう。

しかしルイズは、ただひたすらに自分の不甲斐なさを責めていた。

「さっき、タバサがレビテーションを使って、外壁の上から降りてきたわ、私はまだレビテーションだって、アンロックだって確実にできないのに。なんだろう、私、悔しい……」

人修羅の出現で、皆の注目がルイズから人修羅へと移ってしまった。
その事で人修羅を責めるのは筋違いだと理解しているから、ルイズは自分を責めることを選んだ。

「ルイズさん」
そう言って、人修羅はルイズの肩を掴み、振り向かせた。

「悔しがらない人間はいない。悩まない人間は居ない。いや……何の悩みもなしに行動する人間より、悩んで、悩んで、それを乗り越えた人こそ、本当に尊敬されるべきだと思う」
ルイズはきょとん、とした顔で人修羅の言葉に耳を傾けている。
「ルイズさん、俺の力をどう使うか、ルイズさんの肩にかかってるんだ。俺は無闇に人を殺すつもりもないし争うつもりもない。
もしルイズさんが残酷な人だったら、俺はルイズさんの元に居ないよ、そうやって悩むことができるから、俺はルイズ産の元にいられるんだ」

「悩む…」
「そうだ。ルイズさんが悩んでいるのは、俺という存在がルイズさんの肩にかかっているからだろ、それは俺の行動の責任を取ろうとしてくれるからだろう。俺がもし他人の使い魔ならルイズさんはそんなに悩まないはずだ」
472アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:50:09 ID:lLg/rol1
「うん…そう、そうよ、でも人修羅が嫌いって訳じゃないわ、今までと私の扱いが違って…だから……人修羅にふさわしい主人になりたいのよ」
「それこそ貴族じゃないか。ノーブレス・オブ…何だっけ。ええと、とにかくルイズさんは、貴族って立場の責任を取ろうとしているんだろ。その悩みこそ貴族の悩みじゃないか、立場と責任ある人の悩みじゃないか。
『ふさわしい』とか『ふさわしくない』じゃないんだ。ルイズさんが俺をどうしたいのか、自分がどうなりたいのかを決めるんだ。今はそれを決めるために悩んでいるんだろう?それこそ……貴族じゃないのかなあ」


ルイズは、頭の中でぐちゃぐちゃになっていたものが、少しずつ解けていく気がした。
ラ・ヴァリエール家の人間として教育を受け、領地を持つ貴族がどんな仕事をするのか理解しているつもりだったが、実は何も解っていなかったのだと、気づいてしまった。
大貴族は『領地』の管理を地方太守に任せているが、それはあくまでも現状維持を任せているだけである。
領地を発展させるには、領主がしっかりと方針を定めなくてはならない、例え部下が失敗したとしても、部下に仕事を任せた責任が付きまとう。

人修羅は、自分にとって唯一の『領地』であり『領民』なのかもしれない。

人修羅だけでもこんなに悩むのに、魔法学院を預かるオールド・オスマンは、領地を預かる父母は、王女たるアンリエッタ姫殿下はどれほどの苦悩の中にいるのだろうか。

ルイズはそこまで考えると、両肩に置かれていた人修羅の手をどかし、目に力を込めて人修羅を見返した。

「人修羅、ごめんなさい。私、泣き言を言っちゃったわ。
私が領主で、人修羅が領民なら、私の言葉は領民を不安にさせる失言だったわよね。
私より悩んでいる人なんていっぱい居るのに、それに今更人修羅の主人として相応しいか悩むなんて…駄目ね」

そう言ってルイズは笑顔を見せる、つられて人修羅の表情も軟らかくなり、二人で微笑みあった。
「しっかりしてくれよ」
「解っているわよ。…とりあえず、そろそろ部屋に戻りましょう」

ルイズが立ち上がる、が、人修羅はベンチに座ったまま近くの花壇に視線を向けた。
「悪いけど先に戻っていてくれないか?」
「…いいけど、早く戻ってきなさいよね」
そう言って、ルイズは早足で寮塔へと戻っていった。



ルイズを見送った後、人修羅は唐突に身をかがめ、まるでカエルのようにびょーんと跳躍し、10メイルほど離れた花壇の裏側へと着地する。

「のぞき見かっ?」
「うわああっ!?」
花壇の裏側にいたのは、マリコルヌだった。
人修羅が真後ろに着地したので、マリコルは驚き、丸っこい体で地面を転がる。
「デバガメか!覗きか!つーか何してるんだよ」
「わ、わ、いや、別に。ちょっとスカートがめくれ上がってベンチの後ろからパンティが見えていたとかそんなことは絶対にないよ!」

人修羅はコケた。
「マリコルヌ…その情熱は凄いと思うけど、みっともないとは思わないのかよ」
人修羅が呆れたように呟くと、マリコルヌは立ち上ってふんぞり返り、偉そうに口を開いた。
「何言ってるのさ、最近のヴァリエールは、いや、君が召喚されてからのヴァリエールはツンとしたところが半減してどこか物憂げな感じで、これはこれで良いんだ。
そんなパンツを覗かずにいられると思うかい?偶然見てしまうよ!これは事故だよ」
「どこが事故だよ…」

人修羅は頭を抱えたが、ふと何かを思いついて、マリコルヌに小声で話しかけた。
「ところでさ、話は聞こえていた?」
「ま、まあ不本意ながら」
申し訳なさそうにするマリコルヌを見て、人修羅は苦笑いした。
「一応秘密らしいから、黙っててくれないか」
「もちろんだ。女の子のスリーサイズと同じぐらい大事な秘密だからね。決して口外しないよ」
「やっぱり、バカだろうお前」


◆◆◆◆◆◆
473アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:51:06 ID:lLg/rol1
翌日。

ルイズが授業を受けている頃、人修羅はコルベールの研究室にいた。
人修羅が小型の黒板に図を書き、コルベールがそれを元に練金していく……

昼頃になると、投げやすい形のナイフが十数個、親指の先端ほどのくず鉄が両手に収まらぬほど出来上がった。

「やはり、焼きを入れた鋼で弓矢を作るのは無理でしたなあ」
コルベールが呟く、見ると、足下やテーブルの上には失敗作と見られる鉄くずが幾つも転がっていた。
「すみません、無理を言ってしまって。でもこれだけ武器があればだいぶ楽になります」
「いや、君の意見は斬新でとても興味深い、見聞を広める意味でもこういった機会が得られたのは嬉しいのだよ。しかし、手加減のために武器が必要だとは、何ともまあ…」
人修羅は苦笑いすると、投げナイフを手に取り、バランスを確かめていく。
武器を持つと、左手の甲に浮かんだルーンが輝き始める…同時に、今までの戦いでは得られなかった『極めて精密な力加減』が人修羅の体へと浸透していった。

人修羅は、研究室の壁に立てかけられた木の板に向けて、ナイフを投げた。
絶妙な力加減で投げられたナイフは、的に見立てた節の部分に命中した。

「このルーンは凄いな。投げナイフなんて扱ったこともないのに、力加減が解る」
コルベールはその様子を見て、顎に手を当て頷いた。
「伝説とされていたルーンですからな。まったく素晴らしいものです。ですが武器だけというのは、些か残念でなりません」
「ああ、コルベール先生もそう思います?」
「戦争と武器だけでは、生活は豊かになりませんから」
コルベールはそう言って笑った、が、それはどこか寂しそうな笑みだった。
人修羅はそれを察したのか、そのことについて追求すべきでないと考え、何も言わなかった。



◆◆◆◆◆◆



そしてその日の夜……。
人修羅は簡易ベッドの上に座り込み、革製のベルトや、道具を入れるポケットを確認していた。
慣れぬ手つきで、革製の袋に針と糸を通し、ベルトに下げられるよう加工していく。
今度シエスタに裁縫を習おうかなぁ、と思いつつ、ちらりとルイズの方を見つめる。
なんだか、ルイズは激しく落ち着きがなかった、立ち上がったと思ったら、再びベッドに腰かけ、枕を抱いてぼんやりとしている。
姫様が来るからだろうか、授業が終わって部屋にこもるなり、ルイズはずっと落ち着きがない。

「焦っても仕方ないぞ」
人修羅が言った、しかしルイズは枕を抱きしめて、じっと黙っている。
ずいぶんと緊張しているんだろうなあ…と考えていると、ドアがノックされた。
規則正しく扉が叩かれる、初めに長く二回、それから短く三回……。
ルイズの顔がはっとした顔になった。
急いで枕をベッドに置くと、身だしなみを整えて、立ち上がりドアに手をかける。

ゆっくりとドアを開くと…そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった、少女だった。
辺りの様子を伺うと、そそくさと部屋に入り、後ろ手に扉を閉めた。
「……あ」
ルイズは何かを呟こうかと、声を上げたが、頭巾をかぶった少女が口元に指を立て、しーっと沈黙のジェスチャーをした。
そしてすぐ、頭巾と同じ黒いマントの隙間から杖を見せると、ルーンを詠唱して振りかざした。
光の粉が、部屋に舞う。

「あっ、ディティクトマジックは!」
ルイズが慌てたが、頭巾の少女はなんのこともなく、ただ頷いた。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
少女はディティクトマジックで、部屋の中に聞き耳を立てる魔法の耳や、どこかに通じる覗き穴がないことを確かめたらしい。
頭巾を取り顔を見せる…現れたのは、アンリエッタ王女だった。
ルイズは慌てて跪き、王女の顔色をうかがった。
「姫殿下!あの、おかげんは…気持ち悪いとかそういったことはございませんか」
474アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:52:01 ID:lLg/rol1
アンリエッタは首をかしげつつも、心地よい声で言った。
「おかしなことを聞くのね、私は元気に…いいえいつもより元気よ、貴方に会えるのを楽しみにしていたのですから。ルイズ・フランソワーズ」

ルイズはほっと安堵のため息をついた。
ディティクト・マジックで人修羅を調べたミス・ロングビルは、とんでもないモノが見えて卒倒してしまったのだから、姫様も同じように気絶する恐れがあった。
ちらりと後ろを見て、人修羅の様子を確認する…、そこには開け放たれた窓のみがあった。

どうやら人修羅は、窓から逃げ出したらしい。


◆◆◆◆◆◆


「うわあっ!?」
どすん!と音を立てて中庭に着地すると、隣から誰かの声が聞こえた。
「あ、悪い。驚かせた」
人修羅は軽い調子で謝ったが、その誰かは驚いて腰を抜かしたのか、杖と花束を地面に落とし、しりもちをついたまま人修羅を見上げている。
「……き、君はなんだね!?ミス・ツェルプストーの部屋から飛び出てくるなんて!」
「へ?いや、俺はルイズさんの部屋から出てきたんだけど」
「なんだと…」
男は、魔法学院の生徒らしかった、杖を拾い上げると寮塔を見上げ、二つ並んだ窓を見つめる。
「では、向かって右側がツェルプストーで、向かって左側がゼロのルイズか。危なかった、勘違いして覚えていたようだ」

こんな時間に女性の部屋を訪ねるとは、夜ばいだろうか?
しかし、よく見ると男は花束を持っている、夜のおつきあいか、紳士的な夜ばいという所だろう。
「ルイズさんの部屋は見ないでくれよ」
「ふん。ゼロのルイズには用はないさ、このベリッソンは灼熱の美女に用があるのだからね!」
そう言うと、ベリッソンと名乗る貴族は、レビテーションを唱えてゆっくりと上昇していく。


ツェルプストーの部屋から炎が飛び出すのは、その二十秒後であった。


◆◆◆◆◆◆


そのころ、ルイズの部屋では…
アンリエッタ王女が、感極まった表情を浮かべて、ルイズを抱きしめていた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけませんわ。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」
「ああ!ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはおともだち!おともだちじゃないの!」

<<中略>>

まるで歌劇のように、抱きしめて、離れて、くるくると回って再会を喜んだ二人。
しばらくして落ち着いたのか、二人はベッドに並んで座っていた。

王女アンリエッタが愁いを帯びた表情で呟く。
「ごめんなさいね……、あなたに話せるようなことじゃないのに……、でも、貴方にだけは、私の秘密を共有できるおともだちにだけは、聞いて欲しかったの……」
ルイズはアンリエッタに向き直ると、静かな口調で…しかし力強く言い放つ。
「おっしゃってください。幼い頃から明るかった姫様が、そんなため息をつくのには、姫様だけの苦悩がおありなのでしょう?私をお友達と呼んでくださるなら、私は姫様の…いいえ、アンのおともだちとして話を聞くわ」
「…わたくしをおともだちと呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」
アンリエッタは決心したように頷くと、語り始めた。

アルビオンの王室が、貴族派に追いつめられていること。
貴族派は、エルフからの生地奪還を掲げる『レコン・キスタ』という組織を形成していること……。
アルビオンが陥落したら、次は間違いなくトリステインが狙われるはず…迫り来るアルビオンに対抗するためゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと……。
そのため、アンリエッタはゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったこと……。
475アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 14:53:39 ID:lLg/rol1
「ゲルマニア!あんな野蛮な国に……そうだったのですか……」
ルイズは沈んだ声で言った。アンリエッタの悲しげな口調からも、結婚を望んでいないのが明らかだったからだ。
「いいのよ。ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、夢の中でしか許されないのですわ」
「姫さま……」

そうして、アンリエッタは、ゲルマニアとトリステインの同盟を妨害する、ある手紙の存在を話し出した。

それは、アルビオンの皇太子、ウェールズ・テューダーに当てた手紙であった。
内容は話せぬとしておきながらも、アンリエッタがウェールズを思い、目に涙を溜める姿は、その手紙が恋文であると思わせるに十分だった。

しかもその手紙は、今にも倒れそうな王室の、皇太子が所有しているという。

「ああ!破滅です!ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ!そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう!そうなったら破滅です!同盟ならずして、トリステインは一国でアルビオンと対峙せねばならなくなるのです!」

ルイズは息をのみ、アンリエッタの顔を見つめた。
「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは……」
「無理よ!無理よルイズ!ああ…わたくしったら、なんて事を言ってしまったのでしょう!貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」
「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば何処にでも向かいます!姫さまと、トリステインの危機を、ラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、決して見過ごすわけにはまいりません!」
ルイズアンリエッタの前み立つと、ゆっくりと跪き、恭く頭を垂れた。
「このわたくしめに、その一件、是非ともお任せくださいますよう」
アンリエッタは目に涙を浮かべると、ルイズの手を取った。
「このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ!」
「もちろんですわ! 姫さま!」


二人が見つめ合い、お互いに感激に目を輝かせていると、突然部屋の扉が開かれた。


◆◆◆◆◆◆



「何やってるんだお前ら」
「うわ!」「し、静かにっ」

そろそろ良い頃かと思い、ルイズの部屋へと戻った人修羅は、扉にべったりとくっついて聞き耳を立てている二人の生徒を発見した。
すかさず右腕で丸っこい生徒…マリコルヌの頭を抱える。
左腕では、バラの造花を持った生徒…ギーシュの首に腕を回し、ゆっくりと締め上げた。
「 そ れ が 貴 族 の や る こ と か? ああん?」
「〜〜〜〜っ!!!!!」「痛ったったったたたっ!」
ギーシュは声も出せず、苦悶の表情を浮かべ、マリコルヌは頭を締め付けられ悶絶した。
「マリコルヌ、お前、誰にも言うなって言ったよな」
「か、勝手に付いてきたんだ、ボクは悪くない!」
「悪いわ!」

人修羅はギーシュに顔を向ける。
「おい、中でなんの話をしているか、聞いたのか?」
「当然だ、こんな夜更けに姫様を見つけたら、気になるに決ま……ぐぇっ」

人修羅は、はぁーと盛大にため息をつく。
そして、行儀が悪いと思いつつも足で扉を開けた。

「立ち聞きしていた不審者をお連れしました」
「まあ!」
「人修羅?そっちはギーシュと…マリコルヌ?」
ルイズは慌てて立ち上がると、人修羅が連れてきた二人を見下ろした、マリコルヌは完全に気絶しているが、ギーシュは人修羅の腕を外そうともがいている。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 14:55:33 ID:Ffl5VYQH
しえしえ
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:00:14 ID:gDzGxrPi
とりあえずマリコルヌ、ちょっとその転がしたすりこぎの上に正座しなさい。
おーい、誰か漬物石持ってきてくれ支援
478アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 15:01:14 ID:XnTXGlXd
「外に捨ててきて」ルイズが冷たく言い放つ。
「いや、そういう訳にもいかないだろう」
人修羅は気絶したマリコルヌを床に下ろすと、ギーシュを抱える腕から力を抜いた。
するとギーシュは、ルイズの様子など気にもせず、姫様に向かってまくしたてる。
「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ……、どうか姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「え? あなたは……グラモン? あの、グラモン元帥の?」
アンリエッタが、きょとんとした顔でギーシュを見つめる。
「息子でございます。姫殿下」
ギーシュは立ち上がると、恭しく一礼した。微妙に声が苦しそうなのは気のせいではない。
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑む。
「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった! トリステインの薔薇の微笑みの君が!このぼくに微笑んでくださった!」
ギーシュは感動のあまり、後ろにのけぞって失神した。
「首を絞めるまでもなかったなあ…大丈夫かコイツ」
人修羅はギーシュの頭をつつくと、マリコルヌの隣に引きずって、並べた。

「ところで、貴方は…話からするとルイズの知り合いのようですが」
「姫さま、ええと……人修羅といって、東方よりはるか遠くからきた、私の使い魔…です」
ルイズは少し言いにくそうに、人修羅を紹介した。
「使い魔?」
 アンリエッタはきょとんとした面持ちで人修羅を見つめた。
「人にしか見えませんが……あら、不思議な模様が見えますのね、それは貴方の国の装飾なのかしら」
「一応、人です。姫さま」
「装飾じゃないんですが…ルイズさんの紹介の通り、人修羅と言います」
人修羅は床に正座して、アンリエッタに一礼した。
「ふふ……ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね。人を使い魔にするなんて聞いたことがないわ」
「私も驚いてます…」

アンリエッタは人修羅に向き直ると、笑顔を見せる。
「使い魔さん」
「はい?」
「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
そう呟いて、すっと左手を差し出した。
手の甲を上に向けている…これはいったいなんのジェスチャーだろうか?
ルイズが驚いた声で言った。
「ひひひ姫さま!使い魔にお手を許すなんて!」
「いいのですよ。使い魔とメイジは一心同体、この方もわたくしのために働いてくださるのです、忠誠には、報いるところがなければなりません」

人修羅は後頭部を掻いて、申し訳なさそうに視線を下げた。
「すまないが…お手を許すって、どういう意味なのか解らない。ルイズさんから教わっているが、まだハルケギニアに来て間もないので」
ルイズは人修羅の隣に移ると、小声で囁く。
「ええと、お手を許すってことは、キスしていいってことよ。砕けた言い方をするならね」
「キス!?……ああ、手にか、手だよな? びっくりした」
「あんた何想像してるのよ!」
人修羅はルイズに頭を叩かれ、いてっ、と声を漏らした。
その様子がおかしかったのか、アンリエッタはにっこりと笑っていた。それは民衆に見せるような…いわゆる営業スマイルとは違っていたかもしれない。


◆◆◆◆◆◆


人修羅が『風習の違い』という事で、手の甲へのキスを遠慮すると、ルイズは気を取り直してアンリエッタに向き直った。
「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」
「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」
479アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 15:02:22 ID:XnTXGlXd
二人の会話を聞いていると、人修羅はテレビで見た皇室の様子を連想する。
よくもまあ、尊敬語とか謙譲語とかで、すらすら会話ができるもんだ…


アンリエッタは机に座り、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためていく…。
人修羅はその間、気絶したマリコルヌとギーシュをどうしようか考えていたが、いつの間にかルイズとアンリエッタの会話は終わっており…アンリエッタを見送るついでに、二人を部屋に放り込んでおくことにした。


◆◆◆◆◆◆


朝もやの中で、人修羅は季節はずれなコートを身に纏って、ルイズとギーシュが馬に鞍をつけるのを見ていた。
人修羅のコートはオールド・オスマンが用立ててくれたモノで、中にはいくつものポケットや留め具があり、武器や道具を仕舞っておくことができる。

マリコルヌは、早朝にたたき起こし、誰にも喋らないようしっかりと注意しておいた。
まあ、下手をすると戦場を突っ切るかもしれないと理解していたので、マリコルヌはこの任務に付いてこない気だった。
今頃は部屋で二度寝しているだろう。

『それにしてもアルビオンか、相棒、やりすぎて地面を割るなよ』
背かからデルフリンガーが声をかけてきた。
「そこまでしないよ。…たぶん。…おそらく」
人修羅は自信なさげに答えた。
試したことはないが『地母の晩餐』を全力で放てば、大陸ぐらいは崩壊するのではないだろうか。
もし浮遊する大陸で大技を使ったら、どれだけの命が巻き添えになるか想像もできない。
ちなみに人修羅は、馬を借りず、自分で走る予定だ。

そんなとき、ギーシュが、困ったように人修羅へと言った。
「お願いがあるんだが……ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」
「ヴェルダンデか? 確か、ジャイアントモールだよな…地面を掘って付いてくる気かよ」
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ルイズがそう呟くと、地面がもこもこと盛り上がり、巨大なモグラが姿を現した。
大きさは小さいクマほどである。
「そうさ!ああ、ヴェルダンデ、きみはいつ見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」
嬉しそうにヴェルダンデが鼻をひくつかせる、するとギーシュは頬を寄せて頭を撫でた。
「そうか! そりゃよかった!」
そんな様子のギーシュに、ルイズは呆れたように呟く。
「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」
「そうだ。ヴェルダンデはなにせ、モグラだからな」
「いくら早く掘り進めても駄目よ、わたしたち、馬で行移動するし、目的地はアルビオンなのよ」
ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をつき、ヴェルダンデと見つめ合う。
「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンデ……」

そのとき、ヴェルダンデは鼻をひくつかせ、臭いを辿るようにしてルイズに擦り寄る。
「な、なによこのモグラ…ちょ、ちょっと!」
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体をまさぐり始めた。
「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」
ルイズは体をモグラの鼻でつつきまわされたが、すぐに人修羅がヴェルダンデを引きはがした。
「こらこら、何をするんだ、いきなり。 …なに?良いにおいがした?」
ギーシュはそれを聞いて、納得し頷いた。
「なるほど、ミス・ヴァリエールの指輪に惹かれたんだろう。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
「解ったから、今度は押し倒す前に止めような! ルイズさん大丈夫か」
「だ、大丈夫よ。ちょっとビックリしたけど。ギーシュ!あんた使い魔のしつけはちゃんとしなさいよね」
「はははごめんごめん。ヴェルダンデは愛らしくて、つい叱るのを忘れてしまうんだ」
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:02:26 ID:J7egvatJ
アンアンが命拾いしたように見えたのはきっと自分の気のせいだろう支援
481アクマがこんにちわ:2009/01/22(木) 15:03:25 ID:XnTXGlXd


うー、と犬のように唸るルイズ。
嫌みのない笑みでヴェルダンデを撫でるギーシュ。

人修羅はそんな二人組みを見て、呟いた。
「大丈夫かこのメンバーで」


バサッ


「ん?」
離れたところから聞こえる羽音に気が付き、人修羅が辺りを見回す、すると、グリフォンに乗った貴族がこちらへ近づいてきていた。
「ルイズさん、ギーシュ、誰か来たぞ」

ギーシュは驚いて杖を抜き、グリフォンを見た。
ルイズも驚いていたが…その様子はギーシュとは違っていた。

グリフォンをルイズ達の手前に下ろすと、その貴族は帽子を取って声を発した。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
灰色の頭髪、蓄えられた髭、長身……非の打ち所のない貴族であった。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
口を開きかけたギーシュは、相手が描く上の存在だと知って、慌てて頭を下げた。
魔法衛士隊は王族の親衛隊でもあり、トリステイン全貴族の憧とも言える存在であった、それはギーシュにとっても例外でない。

「ワルドさま……」
ルイズが、震える声で言った。
「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」

人修羅はぽかーんと口を開けて、ワルドと名乗る男の台詞を聞いた。
僕のルイズ!という台詞はなんか犯罪的だ。
ワルドは人なつっこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、軽々と抱え上げた。
「お久しぶりでございます」
ルイズは、頬をピンク色に染め、ワルドに抱きかかえられている。
「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
「彼らを、紹介してくれたまえ」
ワルドはルイズを地面に下ろすと、再び帽子を目深に被った。
ルイズは緊張しながら、ギーシュと人修羅の二人を紹介する。

「きみがルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな。ぼくの婚約者がお世話になっているよ」
ワルドは気さくな感じで人修羅にに近寄った。
「あ、どうも…って、婚約者でしたか。」
人修羅は苦笑いを浮かべた、ワルドはその様子を見るとにっこり笑い、ぽんぽんと肩を叩いた。
「どうした? もしかして、アルビオンに行くのが怖いのかい? なあに! 何も怖いことなんかあるもんか。この僕がついているさ」
そう言って、ワルドは笑う。

そんな様子を見て……人修羅は、心の中の叫びを口に出さぬよう、必死で我慢し続けていた。

僕のルイズ?
婚約者?

つまり…

ロ リ コ ン だ ー !


ーーーーーーーーーーーーーー
今回はここまでです。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:05:22 ID:J7egvatJ
っちょww
ロリコン認定されたw
頑張ったね、人修羅、叫ばないようよく頑張ったね!

乙でした!
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:06:18 ID:dQgght2o
アクマさん乙

・・・・ってそれ言っちゃらめ!!
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:18:13 ID:gDzGxrPi
ああ、未来が見える…
ロリコンだと誤解されきったまま人修羅に翻弄されて散ってゆくワルドの未来が…

そーゆーわけで乙でしたー。
とりあえず人修羅もだけどワルドも迂闊な言動は慎もうな。
マサカドゥス着けてるからニードルもハンマーもライトニングクラウドもまったく効かないから。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:19:00 ID:WY+8r1hT
アクマさんきたー
そしてマリコルヌ自重しろwww
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:23:16 ID:NJx/c240
人修羅の人乙です。
>>484
ハルケギニアで人修羅にダメージ与えられそうなの虚無くらいだからなあ。
純粋な殺し合いならカリン様でも勝てないだろうし。
……反魂神珠って死者蘇生だったよね? ワルドママ生き返らせたりするの無理かな?
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:28:53 ID:gDzGxrPi
>>486
“反魂”だからなぁ。魂が残ってないと無理なんじゃね?と思う。
成仏(ハルケギニアの人にこの言葉使うのもアレだが)しちゃって大分経っていると思われる以上流石に無理だろう。

クロトやモトがいれば仮初めの復活は出来るかも知れんけどなー。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:29:18 ID:oP8gYJ8W
ウィキのアレは直接投稿かな?勿体ないな・・・
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:32:31 ID:n4d6912z
避難所は確認した上で発言してるんだよな?
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:33:11 ID:0NwVy4OR
どれ?
長門のだったら避難所投稿だぜ?
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:34:17 ID:9PcpkyrH
あれってどれ?
ながもんのやつなら避難所に投下されてるけど。タバサが呼んでるわけだし。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:43:27 ID:oP8gYJ8W
あ−失礼、朝みたとき無かったから勘違いした、スマン
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 15:54:52 ID:4arFc66G
>>486
一応マサカドゥスの耐性って言う意味ならアバチュ準拠で銃と地変が効くかもしれん
まあ説明文は万能以外無効だからどっちでもいいんだろうけど
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 16:19:59 ID:Ffl5VYQH
乙でしたー
ところで龍籠って空飛んでくものじゃないの?
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:17:51 ID:9BHUYysq
DSで悪魔召喚しながら人修羅の人乙です
そういやギーシュも人修羅の実力知らないよね
ワルドが調子乗ったらアルビオン最後の日!になりそうで困るw
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:24:25 ID:WY+8r1hT
まぁ考えてみたらルイズとワルドの年齢差なんて
どっかの破壊神(戦車限定)に言わせれば「ちょっと年下なくらい」で済まされそうだしなぁ
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:26:25 ID:Wr+9bMrN
俺もルイズのパンツみてええええ
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:32:09 ID:gDzGxrPi
ルイズは意外に隙が多そうにも思えるのだがどうじゃろかー。普段はきちんとしててもすぐテンパるのがルイズだから…
タバサは見えても気にしない。キュルケは鉄壁、紙一重で見えない。
テファは見えてるんだけど誰も気づかない。みんな胸に目がいくから。

そんな妄想が脳内を駆け巡ってます。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:35:56 ID:hhZ5LkqN
人修羅の人乙です。
まぁ見た目中学生と成人だからねw10歳位離れてるしww
あとマルコメ自重w
次回に超wktk。
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:36:25 ID:1Iqkxz4D
>>484
逆に考えるんだ。

僕はロリコンじゃない母上一筋の健全な男だと
みなの前で大声でカミングアウトしてドン引きされるフラグだと考えればいいんだよ
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:39:17 ID:yZSyyRum
>>500
26歳にもなって八神くんか。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:41:32 ID:pO+SSbOB
母親の見た目の年齢が自分とあまり変わらなければ問題ない(棒
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:45:33 ID:hhZ5LkqN
可愛いければいいと思うよ(棒)
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:46:25 ID:1bWQH49o
そういえば、真・女神転生Vのご立派様は萎えていたな〜。
いや、頭だけだったというべきなのかな。あれは?
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:48:29 ID:wF3HYEbD
>>453
そもそも雑談がイラネ
人がいないと投下の時支援が云々と言うヤツもいるが、
普段過疎なジョジョ魔スレだって投下予告があれば
ちゃんと支援来てるし
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 17:56:35 ID:HSvYDRQn
おっ、アクマの人来てたのか。
俺も今、メガテンで小ネタ書いてるけど、何時完成するのやら……
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 18:06:28 ID:7d8Ujf0z
>>500
下品な話だが、ワルドはきっと自分の母親をオカズに
オナニーした事が一度や二度、いやもっとあるんじゃないだろうか…。
ワルドにとっての一番の心残りは、意を決して夜這いをかける前に
おかんが逝ってしまった事なんではないかと。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 18:07:35 ID:pO+SSbOB
下品ですが……母親を思うと……ふふ、勃起(ry
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 18:10:25 ID:wDGV2/WP
>>508
その台詞は救急車に轢かれて死亡フラグです
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 18:26:09 ID:yRTO74kI
さて・・・ワルドとの試合が楽しみだ
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 18:53:04 ID:2XDjmXvv
>>486

錬金の爆発は反射しようとしてた
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:05:29 ID:CzF9lXFD
ルイズの爆発は万能なのかな
個人的には覚醒前はただの物理で覚醒後は万能な感じだと思う
破邪の光弾→至高の魔弾な感じで
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:16:21 ID:3oxS0jPm
あんまり考察や議論してるとネタ潰しになり兼ねないから止めとこうぜ
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:19:30 ID:p+ZQpNDI
続きは避難所の考察スレでどうぞ
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:21:24 ID:BPy1iUz4
アクマの人、乙。
ワルドはロリコン認定乙w

>>507
ワルドの横にスタンド能力の如く真3ご立派様の影が見えたw
516鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:45:48 ID:5AJ+WJ3r
誰もいないようなので、五分後から投下したいと思います。
517鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:50:31 ID:5AJ+WJ3r
14話

「……そしてあの三人は使い魔になる事に同意したと」
コルベールが呟いた。
ここは学院長室。オスマンは先ほどやってきたコルベールの応対をしていた。
コルベールがここに来た理由はただ一つ。昨日、自分が退室した後どうなったのかを知る為だ。
「うむ。と言ってもミス・ヴァリーエルが給金を出す事と、学院側が仕事を与える事が条件じゃがな」
「なぜたかが平民三人にそこまで譲歩を?おまけに彼らの内一人はあなたに暴行を加えようとしたのですぞ?」
「彼らが全くの未知の世界からやってきたのは君も解っておるじゃろう?その知識を手に入れる事が出来るのなら安い買い物だと思わんかね?」
「……ええ。それは間違いありませんな」
思った通りの答え。もし彼が自分と同じ立場でも全く同じ事をしただろう、とオスマンは思った。
このコルベールと言う男の技術や知識への貪欲さはオスマン以上、殆ど変人の域に達しているといい。
最もそのおかげで三十を過ぎても女性とは全く無縁の生活を送っているのだが。

「一つお願いがあるのですが」
「何じゃね?」
「その内彼らを呼んでいろいろと話を聞くのでしょう?その時に私も同席したいのです」
予想通りの質問だったものの、オスマンは呆れた。
「君も物好きじゃのう。下手をすれば殺されていたかもしれん連中なのに」
「それはあなたも同じではありませんか?あなたもあの男から斬りかかられたんですから」
「む……」
オスマンはあの瞬間を思い出し、冷や汗が出そうになった。
あとほんの一瞬、杖を抜くのが遅れていたら、プッロは間違いなくオスマンを殺せていただろう。
あの炎蛇のコルベールをあっさりと人質に取れた事、そしてあの踏み込みの速さ。
あの二人が相当な手錬である事は明らかだ。恐らくはメイジ殺しに匹敵する力を持っている。
少なくとも10メイル以上の距離が無い限り、二度とあんな連中とは戦いたくないと言うのがオスマンの本音だった。

「あれは元々が事故の様なものですからそれ程は気にしていません。何はともあれ、怪我をする事も無かったのですから。そんな瑣末な事よりは、未知の国の知識の方にずっと興味があります。あなたもそうなのでしょう?」
確かにその通りだ、とオスマンは思う。彼は今、年甲斐も無く興奮している。
もう自分でも定かではないほどの長い時を生き、もはや自分を驚かせる物など何も無い。そう思っていたらこんな事件が起こった。
誰も聞いた事の無い、未知な世界の人間と話せるとは、何と言う幸運なのだろう!
オスマンは神と始祖に感謝せざるを得なかった。しかも彼らは魔法と言う物を全く知らないらしい。魔法が存在しない世界。
そんな物がどうやって成り立つのか、産業や生産の大部分を魔法に頼っている世界の住人であるオスマンには想像もつかない。
風習、技術、文化、宗教、政治、軍事、経済。彼の頭の中の疑問はどんどん増えていく。
しかもあの三人ならばあの男の正体について何か解るかも――

その時、ドアがノックされた。
「ミス・ロングビルかね?一体どうしたんじゃ?」
ドアが開き、ロングビルが豊かな緑髪を揺らしながら入ってきた。
彼女は軽く会釈すると、口を開いた。
「問題が発生しました、オールド・オスマン。ヴェストリの広場で決闘騒ぎが起きています」
知的興奮を味わっていたのを邪魔され、オスマンは鬱陶しそうに呟いた。
「やれやれ、暇を持て余した貴族の子供ほど厄介な物は無いわい。それで?一体どこのバカ同士が戦っておるんじゃ?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン。そしてもう一人がその……昨日ミス・ヴァリーエルに召喚された少年なのですが」
「な、なんじゃとおっ!」
「なんですとっ!」
オスマンとコルベールはほぼ同時に、我を忘れて叫んだ
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:52:02 ID:5AJ+WJ3r
冗談ではない。大事な客人が怪我でもしたら――いや下手をしたら死ぬかもしれない。
そんな事を許す訳にはいかない。異世界の知識がかかっているのだ。
しかもあの少年は他の二人とは違う国からやってきている。彼がもし死ぬような事になればニホンという国について解らなくなってしまう。
「い、一体なぜじゃ!?なぜこんな事に?グラモン、グラモン……元帥のバカ息子じゃな?女の子の奪い合いか何かか?」
「それが少年がミスタ・グラモンを侮辱した事が原因だそうで……」
オスマンはう〜む、と唸った。確かにあの生徒ならやりそうな事ではある。
だが原因はともかく、すぐに禁止させねばなるまい。
「教師の一人が止めに入ったのですが、うまく行っていないようです。彼は眠りの鐘の使用許可を求めています。どういたしましょうか?」
眠りの鐘とはその音を聞いた人間を、使用者を除いて全て眠らせると言うマジック・アイテムである。
この学院の中でも最も高価な宝物の一つで、子供の喧嘩騒ぎに使うのにはどう考えても不釣合いな物だ。
だが眠りにおちた多くの生徒達の後始末が大変とはいえ、この騒ぎを抑えるのにはうってつけの代物と言えた。
元々決闘は校則で禁止されているのだから口実は十分にある。

「仕方あるまい、許可しよう。すぐに宝物庫に行って鐘を取り、この騒ぎを止めなさい。急ぐように」
ロングビルは頷くと、すばやく部屋を出て行った。
後に残されたオスマンはため息をつき、頭を抱えた。
「やれやれ、いきなりこんな問題が起きるとは……これはとんだ問題児を抱えたかもしれんの」
「それよりオールド・オスマン。今彼らがどうなっているのか確かめた方が……」
オスマンは頷くと、杖を振った。すると部屋の鏡に広場が映し出された。
「……これは一体どう言う事でしょう」
コルベールが困惑したように呟く。
二人とも無力な平民がいたぶられている光景を想像していたのに、なぜかそこに映っているのはただの殴り合いだった。
「なんであの二人は取っ組み合いなんかをしとるんじゃ?」
「私に聞かれても困ります!」
眠りの鐘なぞ使う必要は無かったかもしれんの、とオスマンは少し後悔した。


才人を心配そうに見つめていたルイズとは対照的に、プッロは大きなあくびをしていた。
「……にしても退屈ですねえ。もっと面白く出来ないんでしょうか?これじゃ退屈でしょうがない」
「何を言っているんだ。剣闘士試合でも期待してたのか?」
もっとも、そう言ったウォレヌス自身が退屈さを感じられずにはいられなかった。
“決闘”が始まってからもう五分程経つが、勝負は双方とも互角と言った感じに進んでいた。
だが所詮は技巧など無いに等しい子供の喧嘩に過ぎない。仮にプッロかウォレヌスが乱入したとすれば、十秒もかからずに二人まとめて昏倒させられるだろう。
そんな児戯を見ていても面白みを感じられないのは自然な事だと言えた。だが、少なくともこれで才人が殺されるといった危険は回避する事が出来た。
ウォレヌスはあの蛮人の少年に特に思い入れがあるわけではない。だがそれでもプッロの言った通り、殺されれば少しは気分が悪くはなる。

そして奇妙な事に、この決闘騒ぎはある種の安堵をウォレヌスに与えていた。
つまり、この国の人間が自分達より劣った存在、つまり蛮人である事が再確認出来たからだ。
何故か?プッロは“ここでは貴族を怒らせた平民は殺されても文句は言えない”と言った。そんな“野蛮”な事はまがりなりにも法治国家であるローマではとても考えられない。
平民だろうと貴族だろうと、市民を殺せれば歴とした犯罪だ。例え執政官や大神祇官が物乞いや浮浪者を殺してもそれは変わりない。
権力を悪用した人間が都合の悪い人間を秘密裏に殺したり、強引に処刑させる様な事はあっても、公の場で“自分を侮辱したから”などと言う理由で殺人を犯す事など絶対に不可能だ。
ウォレヌスが生まれる数百年前に作られた、ローマ初の成文法である十二表法以前の時代ですらその様な事は考えられなかっただろう。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:52:07 ID:5q+Mbozw
>>515
それはガーディアンだろ、if的に考えて。
520鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:52:51 ID:5AJ+WJ3r
更には貴族と平民の間に大きな格差が存在するらしいと言う事もウォレヌスを更に安心させるのに役立った。
ローマも遠い過去には貴族が平民を搾取していた頃もあったらしいが、ここ数百年の間その様な事はなくなっている。
貴族と平民は平等な権利を保有し、一年に一回選出される国家の最高指導者である二人の執政官も、片方は平民でなければならないと法で義務付けられている。
ノビレスと呼ばれる、政治職を独占する一種の特権階級は存在するが、それは従来の貴族階層と有力な平民家によって構成される物だ。
現在ローマで続いている内戦も、閥族派と平民派と二つの派閥に分けられているが、これは単純な貴族と平民の争いではない。
閥族派は権力を元老院に集中させ、平民集会と平民の代表である護民官の力を制限させたい。平民派はその逆で、平民集会と護民官の権限を強めたい。
閥族派はノビレスなどの既得権益層の人間が多く、平民派はその逆で新興勢力の人間が多く属している。
双方とも大半は利権争いで参加しているに過ぎないが、逆に言えばそれこそが階級闘争ではない事の証拠だった。

平民派の貴族も、閥族派の平民も数多い。そもそも平民派の指導者とされるカエサル自身が名門貴族の出身だし、
逆に閥族派の指導者だった今は亡きポンペイウス、そして現在の指導者の一人と目されるカトーは両方が平民家出身である。
そしてパルティア遠征で戦死した、ローマ一の大富豪と呼ばれていたクラッススは平民家の出身。
逆にウォレヌスが生まれた頃にローマで粛清を繰り広げたスッラは名門貴族であるコルネリウス氏の分家の出身でありながら若い頃は貧窮し、娼婦のヒモの様な事をして食いつないでいた。
つまり、現在のローマでは上流階級と下流階級に間に大きな差はあっても、それは貴族と平民の差ではない。絶大な財力と権力を有する平民家もあれば没落し、貧窮した貴族家もいる。
そして有力な平民家と貴族家は婚姻を繰り返し、純血を保った貴族家などはもう存在しないと言っていいだろう。

だがここトリステインでは貴族が平民を殺しても問題は無いと言う点を見る限り、貴族と平民の間には相当な格差が存在するようだ。
これらの事がウォレヌスを納得させた。例え奇怪な魔術が使えようと、やはり連中の性質は理性より感情を優先させる蛮人のそれだ、と。
彼らの法はローマのそれより数百年遅れている上に、いまだに貴族と平民の間に大きな格差が存在する。
そして貴族の力が強いと言う事は、この国は恐らく王制が存在するのだろう。あの野蛮で劣った、蛮人向けの制度が。
どんなに凄い力を持っていても、こいつらは所詮は蛮人でしかない。ウォレヌスはこう考え、安心した。

才人の繰り出したアッパーがギーシュの顎にまともに当たり、ギーシュはそのままどさりと地面に倒れこんだ。
「おっ、いいのが入ったぞ」
プッロが楽しそうに言い、そして群集が才人にブーイングを浴びせた。
「……これで終わりかしら?」
ルイズが呟いた。ギーシュは倒れたまま動かない。
(これでこの茶番も終わりか)

だがギーシュはよろよろと立ち上がった。彼の鼻からは血が流れており、その目は血走っている。
「どうする?降参か?」
才人は勝ち誇った様に言った。
すると、ギーシュはブルブルと震えだし、
「ふ……ふざけるなぁぁぁ!」
と叫んだ。そして薔薇の花を模した杖を取り出し、言い放った。
「なぜだ!この僕が薄汚い平民と殴りあわなければならない!?そしてなぜ平民に殴られて地面に倒れなければいけない!?こんなバカな事があってたまるか!」
彼は杖を振り、杖から薔薇の花びらが三枚落ちた。
するとその花びらが見る見る内に大きく膨らんで行き、姿を変え、あっと言う間に三体の甲冑になった。
「なんじゃありゃ!?」
プッロが仰天した様に叫んだ。そして群集もざわざわと騒ぎ始めた。
太陽の光で鈍く光っているその青銅の甲冑は、女性を模しているのか胸部が膨らんでおり腰も細い。
主人の命令が無い為か、その場で佇んだまま動かない。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:53:20 ID:N6tbqCfD
支援だー
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:53:30 ID:5q+Mbozw
投下割り込んだ、すまない支援
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:53:58 ID:gX32kWwL
ホワッツマイケルからマイケル

「ルイズ君は昔と変わらないね!、まるで羽のようだ!」
「そこの猫は私の使い魔マイケルよ」

(ふわぁあああ)
あくびをして眠たげにしている

「やあ、使い魔くんルイズをこれからも頼むよ」
(マイケルは初見でワルドが嫌な人間だと見抜いた)
「ははは、おとなしいもんじゃないか」
頭をなでられ、いらいらしたマイケルはしっぽをふりつつ知らん顔を決め込む
それを喜んでいると勘違いしたのかワルドはマイケルを抱っこして頬ずりをし始める
耳を後ろに倒ししっぽから腰にかけて一瞬で毛が逆立つ
「うーうう・・・・・」

「に”ゃに”ゃ」
「そうかそうか、うれしいか、ルイズ見てくれよこんなに喜んでいるよ」
(こっちが嫌がっていることが判らないのかこの男は!)

そして宿屋に到着
「あれ?マイケルはどこだ?」
「ベッドの下に隠れているわよ」
「おーいマイケルー一緒に寝ようじゃないか、おーいマイケル」
(あんなやつ嫌いだ だいたい一生懸命毛づくろいした毛並みを何度もぐちゃぐちゃにしては喜んで 自分が眠くなると放り出すんだ)
っは
「こんなところにいたのかマイケルー」
「お、いたいた」
ふ、ふぎゃ
バリバリバリ
(ぅゎぁ たすけてくれー)
524鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:54:09 ID:5AJ+WJ3r
目の前でゴーレムが出現するのを見てウォレヌスは愕然となった。
花びらが鎧人形になる。これはウォレヌスが今まで見た魔法の中でも最も奇怪で、信じられない物だった。
話に聞くのと実際に見るのでは大違い。魔法の様な、否、魔法その物だ。
しかもルイズによればそれらは自分で動き、戦い、その力は普通の戦士三人に匹敵すると言う。
正直な話、現実味が全く感じられないが三体の甲冑は実際に目の前にいるのだから信じざるを得ない。
そしてウォレヌスは後悔した。蛮人が信義を守るはずが無いのは常識ではないか。
そんな事は歴史が何回も証明している。こうなる事を予測し、保険として剣を持ってくるべきだった。こんな物を相手に素手ではどうしようもない。

「て、てめえ!汚ねえぞ!約束はどうなった」
才人は後ずさると、焦燥した顔で声を張り上げた。
無理もない、あんな物を相手にしては勝ち目が無いのは誰にだって明らかだ。
「うるさい!」
ギーシュはそう一喝すると、群集の方を向いた。

「諸君!彼らが僕に浴びせた罵詈雑言を思い出して欲しい!彼らは平民の分際で僕をバカ、エセ紳士などと呼び、あろう事か腰抜けとまで言った。
この様な事が許されて良いのか!?断じて否!彼らは早急に処罰を受けて然るべきなのだ。わざわざ彼らに有利になる様なルールに従う必要など無い。
貴族のみに許された特権である魔法を用いて即刻裁きを与える事こそが貴族としてのつとめだと思うが、いかがだろうか!」

それに負けじとルイズが前に進み出、ギーシュに批判を浴びせた。
「あなたね、要するに負けそうになったから魔法を使いたいだけでしょ?屁理屈をこねるのもいい加減にしなさい!」
だがギーシュは全く退かなかった。才人にノックアウトされた事が、かえって彼に更に火をつけてしまったようだ。

「屁理屈?屁理屈をこねたのは彼らの方だろう!さっきはまんまと丸め込まれたが、彼らは要するに、“お前は自分たちより強いから手を抜いて戦え”こう言っているのだ!
自分の能力を使うのは卑怯でもなんでもない、当たり前の事、そして貴族の能力は平民のそれより優れている。それだけの話だ!手を抜く必要などない!」

なんと、群集は彼を支持し始めた。
彼らが見たかったのはあくまで貴族に打ちのめされる平民であり、それは魔法でだろうが素手でだろうが関係無かった。
才人達の言い分を支持したのは単にそちらの方が面白いと思ったからであり、彼らにとって公平さなどどうでも良かったのだ。
そしてギーシュが負ける危険が出てきた今、彼らは躊躇無くギーシュを後押しする事を決めた。
貴族は平民より優れていなければならないと言うトリステインにおける大前提。
その大前提は例え子供の喧嘩だろうと崩されてはならないのだ。

そしてウォレヌスはギーシュの言う事にも一理あると認めざるを得なかった。
要は魔法を武器や道具であるか、それとも能力や技能として扱うかの違いだ。
弓を使える人間が、だからと言って弓を決闘に持ち出せば卑怯と呼ばれるだろう。
だが拳闘を心得ている人間が拳闘で戦ってもそれは当たり前の事でしかない。魔法はどうなのだろうか?

そう思った時、ギーシュの声が耳に響いた。
「ワルキューレ!あの三人を攻撃しろ!」
その命令と共に、三体のワルキューレはそれぞれ才人、プッロ、ウォレヌスに向かってゆっくりと歩き始めた。
ウォレヌスは即座に今の考えを捨てた。そんな事よりも今は自分達にゆっくりと近づいてくるあのバケモノどもを何とかする方が先決だ。
素手ではどうにもならないのは明らか、剣が必要だ。ウォレヌスは躊躇無く叫ぶ。
「ヴァリエール……すぐに部屋に戻って私たちの剣を持ってこいッッすぐにだッ」
「え?そんな……」
「いいからさっさと行け!」
ルイズは戸惑った様に立ち尽くしていた。だが数秒経つと意を決した様に走り出し、すぐにウォレヌスの視界から消えた。
525鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:55:20 ID:5AJ+WJ3r
「ぐふっ!」
ワルキューレの拳を腹に食らい、才人は派手に吹っ飛んだ。相手にすらなっていない。
だがプッロもウォレヌスも、ワルキューレの相手をするのに手一杯で、とても才人を助けられる様な状況ではない。
幸い、ワルキューレの拳はそこそこの速さを持っているが、直線的な上に動作が大げさだ。
例えるなら、図体だけはでかい喧嘩の素人。よけるのはプロの軍人である二人にとってそう難しい事ではない。
だが、避ける事はできてもダメージを与える事が出来ない。それも当然だろう。
青銅の板を素手で打ちぬける人間など神話の英雄くらいだ。
ウォレヌスはワルキューレの大振りなパンチを避け、その隙をついて渾身の力を入れて蹴り付けてみた。
だが蹴られた箇所が少しへこんだだけで、ワルキューレは殆ど意に介さず攻撃を再開した。
(チッ、これではこっちの体力が先につきてしまう……)
例え相手の攻撃があたらなくても、こちらは動けば動くほどスタミナを消耗してしまう。
そして相手は青銅の人形だ。疲労を感じる事など無いだろう。その内こちらの体力が無くなってしまう。
そうなったら最後だ。更にうれしい事にこちらには相手に打撃を与える手段が全く無い。
(クソったれが!こんなクソガキに良い様にされるとは!)
ウォレヌスは心の中で毒づいた。

ルイズが剣を取りにいってから五分程が経過した。
才人は殴られては倒れ、立ち上がってはまた殴られを繰り返す。
これはもはや決闘などではない。ただのリンチと言った方が正しいだろう。。
既に彼の顔面は腫れ上がり、鼻から血がとめどなく流れ、左腕はおかしな方向に曲がっていた。
群衆の囃し立てる声が聞こえる中、ウォレヌス達はワルキューレの拳を避け続けた。
だがどうする事も出来ない。

「おいガキ!てめえには恥って物がねえのか!こんな人形に任せるんじゃなくて、自分で闘え!」
プッロが苛立ったように叫ぶ。
「先ほども言ったろう?貴族なら魔法を使うのは当然だ。そもそも平民如きを貴族が直接相手する事自体がおかしいのだよ」
「てめえ……!」
「そろそろ降参したらどうだね?僕のワルキューレを相手にここまで持ちこたえたのには驚いたが、君たちも解っている通りこのまま続けてもいずれは君たちの体力がつきるだけだ。跪き、心の底から謝罪すると言うのならば許してやろう」
ギーシュの顔には嫌らしい笑みが浮かんでいる。完全に勝利を確信しているのは明らかだった。
だが才人はボロボロになりながらも、その笑みを跳ね除けるようにはっきりと言った。
「……へっ。謝罪?ふざけるなよ。今からてめえをぶっ飛ばすってのになんで謝る必要がある。弱すぎるんだろ、お前の銅像」
「どうしようも無い程愚かなんだね、君は」
ギーシュはやれやれと肩をすくめて見せた。

ウォレヌスは才人の根性に驚き、そして感心した。
無論、ウォレヌスも謝る気など全く無い。それでもあんな状態になってもまだ大口を叩けるとはただ事ではない。
しかも彼はまだヒゲも生えない年齢の少年に過ぎないのだ。
ただのバカなのか、それとも相当の勇気を持っているのか。もしくはその両方か。
(それにしてもあの娘はいつ戻ってくるんだ!これではラチがあかん!)

「ウォレヌス!プッロ!」
その時、ルイズの甲高い声があたりに響いた。彼女は息を切らし、群集を掻き分けながら叫んだ。
その腕には二振りの短剣と二振りの短刀が抱えられている。
「これでしょ、あんた達の剣って!一応ナイフみたいな奴も持ってきたけど――」
だが群集を抜け出し、ウォレヌス達がどの様な状況にあるのかを見ると同時に彼女の言葉が止まった。
ギーシュがワルキューレ達に「止まれ」と命令する。ルイズを巻き込むのを恐れた為だろう。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 19:56:35 ID:4RPJAKBX
支援
ギーシュ…死ぬなよ…
527鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:56:37 ID:5AJ+WJ3r
ルイズは才人に駆け寄った。才人は弱々しく呟く。
「よぉ……」
「よぉ、じゃないわよ!あんた何やってんのよ!?腕が折れてるじゃない!」
「言っただろ……下げたくない頭は下げられないって。それに……ほら、お前をあのあだ名で呼んだ事を謝らせてないしな……」
「そんな事で……そんな事でなんでそこまで出来るのよ?あんたは良くやったわ。誰もバカになんかしない。降参しなさい!命令よ!」
ルイズの鳶色の目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ始める。
(泣き出した……?まさか彼の為に泣いてるのか?)
ルイズが自分達を体のいい奴隷くらいにしか考えてないと思ったいたウォレヌスはあっけにとられた。
だがそれもほんの一瞬の事。
「ヴァリーエル、我々に剣を渡せ。今からこの青銅人形を片付ける」
ウォレヌスは既にワルキューレの力を把握していた。戦士三人に匹敵すると言うのは明らかに誇張だ。
もしくはこの国の戦士と言うのが大した強さではないと言う事か。
武器さえあれば倒せない相手ではない。所詮は青銅製。鉄の武器に耐えられる強度は無い筈だ。
一対一なら攻撃を空振りした隙をつき、関節部分を狙えば勝機は十分以上にある。

「ルイズ、もうここまでだ。そんな剣如きでは僕のワルキューレは倒せない。それは解ってるだろ?」
ギーシュが自信満々に言い放つ。だがルイズは何も言わない。
「君の使い魔はとんでもなく強情だ。腕を折られても降参しないなんて、ある意味感心したよ。その意気に免じて、もし君が彼に代わり一言謝罪すると言うのならこの場で事を収めよう。それで終わりにしようじゃないか」
ルイズは才人を見、次にプッロとウォレヌスを見た。
そしてゆっくりと口を開いた。
「ギーシュ・ド・グラモン。わ、私の使い魔達があなたを侮辱した事を――」
「やめろ!」
あんな体のどこにそんな力が残っていたのか、才人は思いっきり叫んだ。
「なんでお前が謝るんだよ……俺が謝る必要すら無いのにお前がやっちゃ何がなにやら解らなくなるだろ!」
「で、でも……」
今度はプッロが苛立った様に声を張り上げた。
「お嬢ちゃん、いいからさっさと剣を渡せ!剣さえありゃこんな人形二秒で片付けられるからよ!」
「やれやれ」
ギーシュはそう呟き、再び杖を振った。新たなワルキューレを出す気かと思い、ウォレヌスは身構えた。

だが花びらは甲冑ではなく、剣に姿を変えた。ギーシュはそれを握ると、才人の方に向けて放り投げた。

「使い魔君。君のその愚劣なまでの勇気に少しは敬意を表そう。それは見ての通り平民どもがメイジにせめて一矢報いようと磨いた牙、剣だ。
今ここで一言“ごめんなさい”と言って手打ちにするか、それを握るか。好きにするといい。そしてルイズ、謝罪する気が無いと言うのなら抱えているその剣を他の二人に渡したまえ。
一人だけ武器を使うのでは“不公平”だろう?」

ウォレヌス達への皮肉のつもりか、不公平と言う言葉に妙なアクセントをつけた。

才人は戦うどころか剣を握れるかどうかさえ怪しい状態にあるのは明らかだ。
それでも彼は剣の方に歩き始めた。
「絶対に駄目!それを握ったらあいつはもう容赦しなくなるわ!お願い、降参して!」
ルイズはすがるようにして言った。才人は弱々しく、だが確かな動きで首を振った。
「すまねえなルイズ……下げたくない頭は下げられないんだ。こればっかりは曲げるわけにはいかねえ」
そして才人は剣の柄に手を飛ばし始めた。ほぼ同時にウォレヌスはルイズにむかって走り始める。
(これではラチがあかん)
力ずくでも剣をルイズから奪うつもりだった。
だがその時、その場にいた誰もが全く予想もしていなかった音が周りに響き始めた。鐘の音だ。
(鐘……?なんでこんな時に……)
ウォレヌスがそう思った次の瞬間、彼と広場にいた全ての人間の意識が闇に落ち、全員が糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。
528鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/22(木) 19:57:41 ID:5AJ+WJ3r
以上です。

今回のウォレヌスの考えに不快感を抱いた人がいるかもしれません。
ですがルイズや才人との経験を通じて考えを少しずつ変えていくウォレヌスはこのSSを書きたいと思った理由の一つなので、よろしければ気長に見てやって下さい。

それと、過去の話を読み返してみると恥ずかしい事に一人称と三人称がごったになってたり(と言うか正直今回もちゃんと出来ているのかどうか少し不安なんですが)、
視点となっている人物が知らない事の説明を始めちゃったりしてる部分が結構ありますね。
今後はもうそういう事が起きない様にしっかりとチェックしたいと思います。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:00:15 ID:4RPJAKBX
乙〜!
眠りの鐘がきちんと発動したのは珍しいかも
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:01:09 ID:pO+SSbOB
投下乙です
ここで決闘中止となると後々根にもつというかどこかで爆発しそうな予感が……
というかこの時点でガンダだと分かってないのは珍しい
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:09:19 ID:64jnC2cZ
GJ
まあ王制なんて文明人は持ってないからねえ。
ローマ時代と肩を並べられる後続の時代は18世紀か19世紀以降の話だし。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:24:03 ID:kL1mbIK4
英国人に謝れ。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:28:46 ID:1Iqkxz4D

30過ぎってか禿先生は44歳だったはず

頭髪以外は厨房の妄想クラスにチートな経歴と能力なのに
あの頭髪のおかげで毒がいい感じに抜けてるよな禿先生
534檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:29:59 ID:8YDTXM3E
  こんばんは。

差支えなければ予告通りはじめたいと思います
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:31:56 ID:d65OTE88
しえん
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:34:15 ID:Rwu614Kn
帰れ
537檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:35:14 ID:8YDTXM3E
   前回までのあらすじ
 大神一郎は帝國劇場のモギリとして働くごく一般的な男性。しかし、一たび帝都に害を
なす者が現れた時、霊的な力でそれを打ち倒す秘密部隊、帝國華劇団・花組の隊長に
なるのである。
 ある日、彼が列車の中で居眠りをしていると、いつの間にか知らない世界へと飛ばされ
ていた。よくわからないまま、現地の人に助けられた大神は、トリステイン魔法学院と呼ば
れる学校で、ニセ教師として過ごすことになった。そこで彼は、使い魔召喚の儀式に失敗
した退学寸前の落ちこぼれ魔法少女、ルイズと出会う。
 ルイズの霊的な才能を見抜いた大神は彼女につきっきりで指導することにした。そして
数日、いつものようにルイズと一緒に出かけていると、学院内に大神が元いた世界で戦っ
たことのある蒸気獣と呼ばれる化け物が出現したのだ。
 逃げ惑う学院関係者。光武(霊子甲冑)さえあればと歯ぎしりする大神に対し、教師の
一人であるコルベールが彼を地下室へと案内した。そこには、帝都で見た光武とそっくり
な機体が二体あったのである。
 大神は一緒にいた教え子のルイズとともに光武に乗り込み、蒸気獣を粉砕。さらに現れ
た巨大ゴーレムをも協力して打ち倒し、学院を守り切ったのである。


   檄・トリステイン華劇団!!

   第二話 わが愛は炎よりも熱く

 謎の蒸気獣の襲撃以降、それまでトリステイン魔法学院にニセ教師として過ごしていた
大神一郎は、その後正体はバレてしまったものの、学院を救った英雄ということで用心棒として
学院に残ることができた。
大神とともに蒸気獣撃退に貢献した教え子のルイズは、すっかり自信を取り戻し正規の
カリキュラムに戻ってしまったため、彼は基本的に暇。つまりニートである。
午前中は光武の整備をしたり、古文書を調べるコルベールの手伝いをし、午後からは警備兵
相手に剣の稽古などをするなど、比較的のんびりとした時間を過ごしていた。
事件から数日、とりあえず霊力も回復して(飯を食べて寝たら回復したが、パン食なので若干
回復が遅い)身も心も落ち着いた彼は、コルベールとともに魔法学院の地下に保管されてあっ
た光武を調べてみることにした。
 すると件の光武は彼が以前に使っていたものとは明らかに違う特徴を持っていたのだ。と
いうのも、本来の光武は蒸気機関と霊力を併用して動く、蒸気併用霊子機関と呼ばれるもの
をメイン出力装置としているのだが、この光武には大神の見たことのない鉱石がエネルギー源
として使われていた。
 コルベールの話によると、これは風石と呼ばれるもので、空を飛ぶために必要なものらしい。
もちろんそのような鉱石は大神の元いた世界にはないものだ。
 ということは、この光武はこの世界のオリジナル、もしくは彼が元いた世界の技術を合わせて
作られたものなのかもしれない。いずれにせよ技術畑ではない大神には、限界があった。
 光武については李紅蘭が一番詳しいはずだが、彼女のことを思い出すと彼女の着ていた
チャイナドレスはスリットがかなり高いところまで来ているので、下着を履いていたのだろうか、
などという、かなりどうしようもないことが頭をよぎる大神であった。


 そして二週間が経ったある日、大神はコルベールとともに学院長室に呼ばれる。そこには長く
白いひげを生やしたオスマン学院長が白いネズミの使い魔とともに待ち構えていた。ちなみに
この白ネズミについて、大神は変な話を聞いたことがある。以前学院長の秘書をしていたメガネを
かけた女性(大神好み)によると、使い魔のネズミがネズミ捕りにかかって死んでいたので、別の
普通のネズミとすり替えてみたのだが、学院長本人は気づいていないという。彼女の話が本当か
どうかはわからない。というのも、彼女は例の事件以降行方不明になってしまったから。学院長
本人に確認してみるという手もあるが、本当だったら怖いのでとてもそんなことはできない。
 それはともかく、学院長は数日前まで首都の学会に参加しており、昨夜帰ってきたばかりである。
それでも長旅の疲れを一かけらも見せずに元気でいるというのは凄い体力だ。未だにセクハラを
繰り返しメイドから往復ビンタをくらうだけのことはある。
「おお、久しぶりじゃのオオガミくん」学院長は笑顔で彼を迎えた。
「どうも、ごぶさたしています」そう言って軽くお辞儀をする大神。
「さて早速じゃが、キミに渡したいものがある」
538檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:37:28 ID:8YDTXM3E
「はい、なんでしょう」
「これじゃ」そう言って学院長は指輪を見せた。
「男性からのプロポーズはどうも……」
 ちなみに大神一郎、“そういう経験”は初めてではない。
「勘違いするな、そういう意味ではない」なぜか顔を赤らめる学院長。実に気持ち悪い。
「では、この指輪は一体なんでしょう」
「これは『召喚の指輪』と言ってな、召喚魔法のルーンが刻まれた石の付いた指輪じゃ。
これがあれば、魔法を使えない者でも物を召喚することができる」
「え? それって」
「あの鋼鉄のゴーレムを召喚するためのものじゃよ」
 鋼鉄のゴーレム、つまり光武のことだ。
「ミス・ヴァリエールは自分の魔法で召喚できるようになったというが、キミはダメだろう。
だからそのためのものだ。あれだけの物を馬や竜で運ぶのも骨じゃからの」
「でもこれは、大事なものなのでは……」
「ああ、アカデミーで開発を進めていた汎用魔法兵器の一つなんじゃが、戦争に使うより
はキミに使ってもらった方が良いと思って、持って帰ったんだ」
「しかし、自分のような者が……」
「そう謙遜なさるな。キミがワシを含めた学院の皆を守ってくれた、心ばかりの礼じゃよ」
「そんな……」
「もらっておきなさいオオガミさん」そう言って隣にいたコルベールが軽く肩に手を乗せる。
「は、はい。ありがたく頂戴いたします」
「うむうむ。それでいい。これは一旦召喚して、用が済めば元の場所に戻るという便利な
代物じゃ」
「それは凄い」
「ただし、ルーンの刻まれた石には限界があってな、そうじゃの。八回までしか使えんからな」
「八回ですか?」
「大事に使えよ。指輪の替えは、次に出来るまで時間がかかるゆえに」
「はい。わかりました」
「それからもう一つ。これはコルベールくんに渡そう」そう言って学院長は机の中から一冊の
本を出す。
「これは?」とコルベール。
表紙には何も書かれていないが立派な装丁の本だ。
「古文書の写しじゃよ。部下に命じてアカデミーの図書館から盗っ……、借りてきたのじゃ」
「これってまさか……」
「そう、オオガミくんの乗った鋼鉄のゴーレムに関する記述のある古文書じゃ。見つけるのに
苦労したというがの、この世界に起こっている異常を解くカギになるやも知れぬと思い持っ
てきた」
「失礼します。ちょっと読んでみてよろしいですか」そう言ってコルベールはパラパラと学院長
から受け取った本のページをめくってみる。
「どうじゃろう」学院長は自信満々で聞いてきた。
「さすが学院長。かなり重要なヒントになりますよ。これからどうすればいいか迷っていたところ
なので」
「そうか、それは良かった。これなら、オオガミくんが元の世界に戻れるヒントがあるやもしれん
からな」
「は!」
 元の世界に戻れる。最近忘れかけていたけれども、よく考えたらそれが最も目指さなければ
ならない目標のはずである。のんびりとした時間の中で緩みかけていた緊張感を再び引き
締める大神であった。


 オスマン学院長から貰った(借りた)古文書の写本によると、炎の衣と呼ばれるものが、
ゲルマニアという国の活火山地帯にある火の洞窟という場所に封印されているという。
 大神はその話を聞くと、今すぐにでも火の洞窟に行ってみたい衝動に駆られる。しかしそこには
大きな問題が二つほど存在した。
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:38:15 ID:4RPJAKBX
しえん
540檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:39:51 ID:8YDTXM3E
 一つはゲルマニアが外国であること。オスマンはトリステイン王国の臣民であるため、
自由な出入りができない。大神にいたっては無国籍だ。
 もう一つは、火の洞窟には炎を司る竜がいる、ということである。竜といっても王国で
飼いならされているような竜ではなく、幾人もの戦士を葬り去った悪の化身のような竜だ
という。
「竜なら、光武の力を使えばなんとか抑えられるかもしれません」
「しかし、どうやってゲルマニアの国境を越えましょうか」
 コルベールの居室兼実験室で二人が悩んでいると、突然ドアが開いた。
 思わずドアの方を見る二人。
「話は聞かせてもらったわ!!」
 そこには、赤髪で褐色の肌、そしてあふれんばかりの胸を持つ女子生徒がいたのだ。
「キミは……」
「あらやだ、一緒に戦った『仲間』を忘れちゃったの?」
 そう、彼女は大神とルイズが巨大ゴーレムと戦った際、人質に取られた学院長を救い
出した二人の女子生徒のうちの一人である。
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。キュルケって
呼んでね、大神さん」そう言うとキュルケは軽くウインクをした。
「あう……」大神は年下の仕草に動揺しつつも聞く。「ところでキュルケ、キミはどこまで
聞いていたんだい」
「最初から最後までよ」
「盗み聞きとは感心しませんね、ミス・ツェルプストー」コルベールは動揺を覆い隠すように、
教師としての威厳を意識してやや強い口調で言った。
「ふふふ、本当に重要な話なら、結界の一つでも張っておくものでしょう?もし私が他国の
スパイだったらどうするわけ?」
 急に身構える大神。
「落ち着いて、別に私はスパイでもなんでもないわ。ただの留学生よ。もちろん家の方では
そういう仕事を期待しているけど、私、政治とかには全然興味ないのよね」
「じゃあなんだって俺達の話を」
「ふふ、ここからは内密にしましょう」そう言うとキュルケはドアを閉める。
「……」
 いつの間にか、キュルケの背後には青髪の少女が立っていた。背が低いのと、意図的に
気配を消していたようなので、その存在に大神はすぐには気付かなかった。
「彼女はタバサ、私の親友。知っているわよね、大神さんなら」
 そう、タバサもキュルケと共に巨大ゴーレムと戦った女子生徒だ。シルフィードと呼ぶ青い
風竜の使い魔を従えている。無口で、喋っているところをほとんど見ていないけれども、強い
魔力の持主であることだけは大神にもわかった。
 タバサが誰にも聞こえないような小さな声で呪文を詠唱すると、周囲は耳鳴りがするほど
静まり返る。
「タバサの魔法で音は遮断したわ。これで思う存分密談ができるでしょう、先生方」
「それで、君たちの話というのは」
「簡単よ。協力してあげたいの、大神さんに」
「ん?」
「私はゲルマニアの人間なの。だから私が手引きすればゲルマニアにも普通に入れるわよ。
万が一役人に捕まってもあなたたちの身の安全は保障するわ」
 コルベールの補足説明によると、帝政ゲルマニアは中央に君臨する皇帝の権威が弱く、
地方の貴族が半独立的な勢力を持っているという。その中でもキュルケの実家である
ツェルプストー家はかなりの領地と財を有しており、その影響力は皇帝に匹敵すると言っても
過言ではないらしい。
「だから大神さん。私を連れて行ってくれれば、仕事が楽になるわよ」
「……」
 大神は押し黙ったままキュルケの瞳をじっと見つめる。
 そしておもむろに彼女の前に出ると、キュルケの後の方にいるタバサに向けて言った。
「タバサ。もう結界を解いていいよ」
「……」一瞬目を見開いて、驚いたような表情をしたタバサだが、すぐに元の人形のような無表情
に戻り、口を素早く動かすと、再び外から音が聞こえ始めてきた。
「どういうこと?」とキュルケが大神に詰め寄る。
「キュルケ、二人きりで話をしないか」
「え……?」
541檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:42:15 ID:8YDTXM3E
 学院内にある中央塔の最上階には、外を見張らせるベランダのような場所がある。
「風、気持ちいいわね」
 高いところなので、風も強い。キュルケの長い赤髪が風によって柔らかく泳いでいた。
「それで、二人きりで話したいことって? 悪いけど今夜は予約が入ってるから」
「いや、そういうんじゃない」
「なんだ。大神さん相手なら、予約もキャンセルしてもよかったのに」
 予約ってなんだろう、そう思いつつ大神は話を続ける。
「キミが俺達に協力する、本当の目的を教えてくれないか」
「本当の目的?」
「そうだ。俺達が火の洞窟を目指すのは、この世界の異変と俺が元の世界に戻るための
手がかりを得るためだ。ただ、それにキミたちが協力したところで、直接的な利益はないと
思うんだが」
「別に、ただ面白そうだからよ」
「そんな理由で連れて行くわけにはいかない」
「へ?」
「そんな理由で命を危険に晒すような真似はできないだろう」
「危険だなんて」
「俺達の話を最初から盗み聞きしていたのならわかるはずだ」
「それは……」
 不意に目を逸らすキュルケ。彼女とは付き合いは浅いけれども、それが何かを隠している
仕草である、ということくらい世界的なニブチンである大神にもわかる。
「似ているのよね、あなた」
「ん?」
「大神さんって、昔私が好きだった人に。いや、好きっていうより憧れていた人かな」
「それが」
「彼がね、その昔あの火の洞窟の竜退治に行くと仲間とともに出かけて行ったの」
「……」
「でも、戻ってこなかった」
「……」
「私は待ったわ。何日も何日も。それでも、戻ってこなかったわ。そうして何日待ったかわから
なくなったころ、私は決意したの」
「決意?」
「いつか私が強くなったら、彼の行ったあの場所に行き、彼の最期がどうなったのか確かめ
てやろうって」
「え……」
「そうしたらたまたま例の洞窟の話をしているじゃない?鋼鉄のゴーレムの話は初耳だけど、
これって神が与えてくれたチャンスなんじゃないかって思ってね。だから大神さん」キュルケは、
今度は目線をそらさず大神の方をじっと見つめた。
「なんだい」
「私も連れて行って。絶対に足を引っ張らないから」
「……、わかった」
 彼女の話が本当かどうか、なんてことはわからない。ただ、大神を見つめる視線は真剣その
ものであった。


 数日後の早朝。大神は旅の支度をして部屋を出る。
 数週間前に戦場となった学院の中庭では、シルフィードという名前の巨大な風竜と少女が二人。
一人はキュルケ、そしてもう一人はシルフィードの主人、タバサだ。
 コルベールは残念ながら仕事があるから行けそうにない。
 他に何か忘れているような気もするのだが……。
まあいい、とにかく出発だ。大神は二人を促す。学院長から貰った古文書の写しと召喚の指輪は
持っているから問題はないだろう。
542檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:45:15 ID:8YDTXM3E
   *

ルイズ・フランソワーズは早朝に目を覚ました。しかし身体が動かない。
これは金縛り?
以前大神に聞いたことがある怪奇現象。意識はあるのに身体が動かないという。ただ
完全に動かないというわけではない。両腕と両足が動かないだけだ。よく見ると縄で縛ら
れているではないか。しかも縄には魔法がかけられているらしく、縄ぬけができない。
「フガーッ、フガーッ!」
 自分の魔法で縄の魔法を打ち消そうとするも、口には猿轡(さるぐつわ)をはめられて
おり上手く喋れず、呪文の詠唱ができない。
 やったのはキュルケね。
 ルイズは心の中でそう確信した。
 確信はしたものの、寝起きでまだ心も身体も動き出していないうえに、もがけばもがく
ほど縄が食い込んでしまうのでどうにもならなかった。

   *

 朝の冷たい風が頬に当たる。
 東に向かって飛んでいるため日の出はいつもより早くなるはずだ。
「寒いわ大神さん」そう言って身を寄せてくるキュルケ。
「あまりこっちに寄らないでくれキュルケ。落ちてしまう」
 風竜の背中は大きいとはいえ、人が三人乗るには若干窮屈ではある。先頭にはタバサが
乗り、その後に大神とキュルケが二人並ぶように乗っている。
「悪かったねタバサ。付き合わせてしまって」
「……、別にいい」タバサは大神のほうを見ずに答えた。
 そして布袋から何かを取り出して食べる。
「何を食べてるんだい?」
「食べる?」
「やめときなさい。それ、ハシバミ草よ」後からキュルケが声をかけた。
「ハシバミ草?」
「すっごく苦いの。タバサはそれを乾燥させたやつをおやつ代わりに食べるの」
「それがいいのに……」やや寂しげにつぶやくタバサ。
「はは。クッキーとかに入れたら食べられるようになるかな」と大神は冗談まじりに言ってみる。
「なるほど。クッキー…、なるほど」その言葉を聞いたのか、タバサは一人で何かブツブツと
言っていた。
「ああ、一人思考モードに入っちゃったわね」とキュルケ。
「なんだいそれは」
「ああなったら、話しかけても無駄よ。一人で延々と議論しているの、頭の中で」
「はあ、そうか」
 シルフィードは一路東へと飛んで行くのであった。


 ゲルマニア帝国内マエル火山帯。小惑星の衝突によってできたと言われる盆地に街並みが
広がる。
 途中天候が悪化したため、予定より遅くの到着となった。夜になると危ないので、洞窟の探索
は明日にすることにしよう、ということで全員合意した。この日は麓の町で宿をとり、明日に備え
英気を養うことに。
 ちなみに火山の町ということもあってここには温泉が。
 温泉……!
 いやいや落ち着け大神一郎。そうだ、温泉はいい。日本を思い出す。温泉に入れば身も心も
リフレッシュするはずだ、と大神は無理やりに思考を健全な方向へと導いていった。
「大神さん」
「!!」
 大神が宿の部屋の中でウロウロしていると、部屋の外からキュルケの声がした。
「ああ、なんだい」ドアを開け対応する大神。なるべく平静を装っている。
543檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:47:16 ID:8YDTXM3E
「私たち、これから温泉に行くから」
「あ、そうなんだ」
「向い側の公衆浴場に行ってきますね」
「ああ、わかった。俺もちょっと疲れたけど、少し休んだら行こうかな」
「では」
 そう言って大神は、キュルケと別れる。
 そしてドアを閉めて考える。
 キュルケとタバサは温泉に行っている。
 ということは、
 彼の頭の中で例の選択肢が出てくる。



1.……体が勝手に温泉の方に……



 ちょっと待て! 全然選択肢になってないじゃないか、なんで項目が一つしかないの!
 大神は心の中で叫ぶがなぜか抵抗できない(本能に)。
 ふらふらと部屋を出ると、次の瞬間女性の悲鳴を聞いた。
「きゃあああああああ!!」
 急いで宿を出て悲鳴のした場所に走り出す。
 塀を越えるとそこは秘密の花園……。
「いやあああああああ!!!」
「いや、待ってくれ、俺はその……!」
 問答無用で大神は風呂桶をぶつけられ、鼻血を出してしまった。

   *

 その後、鼻の穴に綿をつめた大神は宿の部屋にいた。部屋の中には大神のほかに
キュルケとタバサ、そしてもう一人。いや、もう一匹と言った方が正しい。
「これは」
「火竜ね。火竜の子供」
「ほう」
「きゅううん」
 青のシルフィードとは違い、赤い外見の小さな、といっても中型犬くらいはあるドラゴンが
いたのだ。大きな瞳に嘴。そして翼もある。確かに小さいが形はしっかりと竜だ。
「この子が温泉に紛れ込んでいたんだな」
「そうなのよ。それえ大騒ぎになって」
「そうだったのか」
「ところで大神さん」
「どうしたんだい、キュルケ」
「裸が見たいなら私に言ってくれればよかったのに……」キュルケが熱っぽい視線を送ってくる。
「最低」一方氷のように冷たい視線を送ってくるのはタバサの方だ。
「いやいや、誤解だって。俺は女性の悲鳴が聞こえたから」
「まあ、そういうことにしといてあげる」
「そういうことって……、それはともかく、この子はどうするんだ」
「飼いましょう」
「ダメだよ」
「冗談よ。恐らく迷って麓におりてきたのね。明日山に帰してあげましょう」
「そうだな」
「きゅるるる」
 キュルケが竜の頭をなでると、気持ち良さそうに鳴く。まるで母子のようだ。
544檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:50:05 ID:8YDTXM3E
「名前は付けないのかい?」
 キュルケが子竜をあまりにも可愛がっているので、大神はそう聞いてみた。
「え?つけないわよ」
「どうして」
「だってこの子、いずれ山に返すでしょ?名前をつけたら情が移って返せなくなるじゃない」
「そうか」
 彼女の一応割り切っているのか。
「でもどうしてもっていうんなら、つけてもいいかも」
「ええ?」
「そうね、イチローとかどう?」
「却下で」
「もう。じゃあエリック」
 なぜ彼女がその名前にしたのか、理由までは聞かなかった。


 翌朝。この日も早い。大神たちは旅の準備を整え、火山帯へと向かった。目標は火の洞窟。
そこまでに行く道は領主によって閉鎖されているけれども、シルフィードに乗って飛んでいけ
ば問題ない。
 キュルケの腕には、昨日保護した火竜の子供がすやすやと寝息を立てて眠っていた。
 こうして見ると、彼女は母性が強いのかもしれない。別の一面を見られた気がして、大神は
少し新鮮な気持ちになった。
「見えた」
 タバサの声で下を見ると、そこには小さめの入口らしきものが見える。シルフィードは入れ
そうもないほどの大きさだったため、彼(彼女?)は外で待たせて、大神たち三人と火竜一匹
で行くことにした。
 入口こそ小さかったものの、洞窟の中はわりと広い。迷路のように入り組んでいるけれども、
迷うというほどではない。
「古文書によれば、この奥に伝説のゴーレムがいるという」タバサが小さな明かりを頼りに持っ
てきた古文書の写しを読みながら言う。目が悪くなりそうだ。
「何よ、意外とアッサリしているのね。あたしはてっきり巨大なドラゴンでも出てくるのかと思っ
たわ」キュルケはつまらなそうに言う。その後には火竜のエリックが、まるでカルガモの親子の
ように、後をついて歩いている。実にほほえましい。
 しばらく歩くと、大きく開けた場所についた。
「すごい……」思わず声の漏れる広さ。帝国劇場よりもさらに広い場所が洞窟の中に広がって
いた。
「見てタバサ、大神さん。あそこに石碑が」キュルケの指さすその先には確かに石碑のような
ものが見える。
 警戒しながら近寄ってみると、そこには文字が書いてあった。
「読める? タバサ……」心配そうにキュルケが聞いてみる。
「う、うーん。見た事もない字」とタバサらしくない返答をする。
あの勉強家のタバサが分からない字。一体どんな文字なのか。大神も興味本位でのぞいて
みると、
「あっ!!」
「どうしたの?」
「……?」
 それは見覚えのある字であった。いや、見慣れていると言ったほうが正しいか。
 漢字とかなで書かれた文字。それは間違いなく日本語なのだ。
 しかしなぜ日本語。なぜこんなところに。色々と疑問は浮かんだが、今は石碑に書かれている
文章を読むことが先決だ。
「読めるの?」
「ああ、これは俺が元いた場所で使っていた文字だ。ええと、なになに。『世界に異変が起きた時、
それを救う手段として炎の霊子甲冑をここに封印す。封印を解くカギは、使い手と伝説の……を……』
うーん」
「どうしたの?」
「すり減っていて上手く読めないんだ」
「随分古いものだしね。って、何?」
「どうした」
「それが、連れてきたエリックが……」
 よくわからないが何か震えている。
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 20:53:45 ID:Pk8Rhhs6
規制食らったならこちらへ
【代理用】投下スレ【練習用】3
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1222096182/
546檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:54:07 ID:8YDTXM3E
「光った?」
 火竜のエリックが赤い光に包まれているのだ。
「え、一体どういうこと」
「ねえキュルケ、あなたも」タバサがキュルケの方を見て心配そうに言う。
「へ?」
 つられて大神もキュルケの方を見た。
「どうなってるのよ!」
 すると、キュルケ自身も赤い光に包まれているではないか。
 続いて洞窟内が揺れ始める。
「地震か? 噴火か?」
 大神はパニックになりそうな自身の心を静めるよう努め、周囲を見回した。
 すると、石碑のあった場所の後の岩が音を立てて割れはじめた。
「なんだ?」
「これは!!」
 岩の割れ目から出現したのは、間違いなく光武、霊子甲冑であった。それも真赤な霊子
甲冑。トリステイン魔法学院の地下にあったものとはまた違う光武である。

「そこまでよ!!」

 洞窟内に聞き覚えのある声が響き渡った。
「誰だ!」
 よく見ると、紫色のローブを着た魔術師。あれは、以前魔法学院で巨大ゴーレムを操って
いた奴だ。
「お前は!!」
「ほっほっほ。また会ったわね。お宝の封印を解いてくれてありがとう。素直にそれを
渡せば、苦しまずに殺してあげますわよ」魔術師の不気味な声が洞窟内にこだまする。
 “それ”とは、間違いなく炎の衣、つまりこの赤い光武のことだ。
「誰が渡すものか!」大神は当然言った。
「そう、あなたならそう言うと思ったわ。では蒸気獣ども、やってしまいなさい」
 魔術師が手を広げると、広い洞窟内に何十体ともいえる蒸気獣が出現する。しかも学院で
見たものとは微妙に違う。色も赤に近いものだ。
「キュルケ、タバサ。キミたちは下がっていてくれ」
「でも大神さ……」
「いいから」
「……」
「タバサ」大神はじっと敵の様子を伺いつつ名前を呼ぶ。
「なに」
「これの使い方は、まだ聞いてなかったけど」そう言って自分の右手を彼女に見せる大神。
「召喚の指輪……」
「そうだ」
「召喚したいものを、強く念じればよい。ただそれだけ」
「ありがとう」
 そう言うと大神は、指輪をつけた右腕を固く握り、それを上に向かって付きあげた。
「光武、召喚!!」
 大神がそう叫んだ瞬間、指輪が光だし、その光は彼の足もとの地面に魔法陣を描き始める。
そしてその魔法陣から、トリステイン魔法学院の地下にある大神専用の白い光武が出現した。
「いいぞ」大神は素早く出現した光武に乗り込むと、レーダーで周囲の状況を確認した。
 状況は数的に不利。だがこまめに霊力を回復させながら各個撃破していけば勝機は見える。

 そう判断して飛びだした。
547檄・トリステイン華劇団!! ◆937OxU5ygs :2009/01/22(木) 20:56:41 ID:8YDTXM3E
   *

 胸が熱い。いや、胸だけでなく身体全体が熱い。
 キュルケの心臓は高鳴るばかりである。それはこの赤い炎の衣、いや、鋼鉄のゴーレム
を見てから。
 自身の体からあふれる赤い光。そしてゴーレムもまた、その光に呼応するようにわずかに
動いている。
 金属の塊のような外見にも関わらずまるで生きているかのような反応に彼女は戸惑った。
 もしかして自分も、大神一郎のようにこれに乗って戦うことができるのか。
 キュルケはそんな事を考える。まさか自分には、そうは思ったけれども、目の前のゴーレム
が呼んでいるようでならなかった。
 自分のすぐ後ろで自分を守るために戦っている者がいる。キュルケはそれを見ているだけで
やり過ごすような女ではない。
「タバサ」彼女は近くにいた親友の青髪の少女を呼んだ。
「なに」
「この子を、エリックをお願い」
 自分の足元でうずくまっていた赤い火竜の子供をタバサに預けると、彼女は赤い光武の元に向かう。
「はじめまして、私はキュルケ。あなたのパートナーになりたいの」
 彼女がそう言うと、赤い光武がまるで口を開くようにハッチを開き、操縦席を解放させる。
「良い子ね」
 そうつぶやくとキュルケは素早く光武に乗り込んだ。
 ルイズのやっていたことを見ていた、といっても彼女にとってははじめての体験。ハッチが閉じる
と一瞬視界が暗くなるが、すぐに明かりがつき周囲の状況が見えた。敵の姿ははっきりと視認できる。
「さあ、お楽しみの時間のはじまりよ」

   *

 斬っても斬ってもキリがない。やはり一人で戦うには限界があったか。こんな時に仲間がいてくれ
れば、とそこまで考えたところで大神は自分の弱さにいらだち頭を振る。そんな考えじゃだめだ。
 どうしてもあの光武を守り、また一緒に来た二人の命もまもらなければならない。
「なに!?」
 不意に噴きかかる火炎。赤い蒸気獣がはなったものと思われる。四方八方から炎が飛んでくる。
「心頭滅却すれば火も……」そこまで言いかけて止まった。やはり熱いものは熱い。光武は耐水も
そうだが、そこまで耐熱用の設計もなされていない。
 とりあえず素早さを生かして火の攻撃を避け、接近して斬る戦術を選ぶ大神。しかし敵もある程度
こちらの動きを読んでいるらしく、容易に近づけさせないような戦い方に切り替えてきた。
 数体の蒸気獣が一斉に火炎攻撃を仕掛けてこようとしたその時――

 地を這うような炎の波がその蒸気獣をなぎ払うように大神の目の前を走る。
「なんだ!」
『お待たせダーリン』
「きゅ、キュルケかい?」
『そうよ。助けにきたわ』
「キミも、動かせたんだね」
『無駄話は後、一気に倒しちゃおうかしら。それにしてもこの無線機っていうもの、便利よね』
 無駄話は後、とか言っているくせに無駄話をしているのは、キュルケであった。あの例の赤い光武に
乗っているようだ。光武は長い柄に斧状のものがついた、いわゆる長斧というやつであろうか。多少の
間合いなど気にせずぶった斬れる上に破壊力も強力だ。
 キュルケの出現にひるんでいる蒸気獣のスキをついて大神は斬りかかる。二刀流が接近した敵を
一体、二体、そして三体斬る。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:07:29 ID:hhZ5LkqN
さるさん?
549檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:10:26 ID:Pk8Rhhs6
539 名前:檄・トリステイン華劇団 ◆937OxU5ygs[sage] 投稿日:2009/01/22(木) 21:00:37 ID:8nBXihQk
『さすが、やるわねえ』
「危ないキュルケ」
 キュルケ機に急接近する蒸気獣を確認。
『問題ないわ!!』そう言ってキュルケは蒸気獣を一刀両断にした。
 接近戦も強いとは。
死角なしか?
大神がそう思った瞬間、蒸気獣はさらに間合いを広げで火炎攻撃をしようと移動しはじめた。
いくら長斧が広い間合いに使えるとはいえ、完全な飛び道具には及ばない。
『ダーリン!』
「ダーリンはよしてくれないか」
『そんなことどうでもいいの。とにかく、あなたは私を盾にして身を守って』
「な、何を言っているんだキュルケ」
『いいから私を信じて。私がこうするから、あなたは……』
 身を挺して仲間をかばうのは大神の専売特許のはずだが、キュルケにも何か考えがある
らしい。
「よし、まかせたキュルケ」
『まかせてダーリン』
「だからダーリンはなあ」
 蒸気獣が一斉に火炎と火球を飛ばす。それを真正面から受けるキュルケ。一瞬赤の光武が
炎に包まれ、さらに赤く燃え上がった。と、次の瞬間その光武の背後から大神機が飛び出し、
蒸気獣に最接近して斬りつける。
 荒方蒸気獣を斬り倒した大神は、すぐにキュルケの無事を確かめる。
「キュルケ!大丈夫か」
『平気よ。この機体、熱には強いらしいの。確かに無傷とまではいかないけど』
「よかった」
 しかしほっと一息ついたのも束の間。

「これで勝った気にならないことね!!」

 先ほどの魔術師が叫ぶ。
「お前の目的は一体何だ!なんのために光武を狙う!」
「あなたに話してやる義理わないわよ!!さあ出でよ竜型蒸気獣、メカギドラ!!!」
 洞窟内に魔術師の声が響き渡る。
 と同時にタバサが抱いていたエリックがじたばたと赤い光を放ち暴れ始めた。
「あっ」たまらず手を離すタバサ。
 地面に落ちた火竜の子供は、よろよろと立ちあがると赤い目を光らせる。
「まさか……」
「ふっふっふ、あれがこの地の秘宝を守る伝説の竜の子孫さ。そして私は、そいつに少し仕掛けを
させてもらった」
「仕掛けだど!?」
「蒸気獣として我らの手駒になるようにな」
「なんだって?まだ子供じゃないか」
「何を言っているかね。あれはその赤いゴーレムを出すための道具だよ」
「き、貴様……」
 モニター越しに見える魔術師に対して、大神は強い怒りを感じた。
『エリック!!』
しかしそれ以上に憤っていたのは――
「キュルケ!!」
 大神が叫ぶよりも早く、キュルケの乗る赤い光武は魔術師に向かって斬りかかっていた。
「よせ!!」
 しかしキュルケの構える長斧は魔術師には届かず、途中で巨大な火球によってはばまれてしまった。
『きゃああ!!』キュルケの叫び声が無線を通じって聞こえてくる。
 地面に落ちるキュルケ。しかすすぐに体勢を立て直す。
『はあ、はあ、あの子に……、何の罪もないエリックになんてことを』
「キュルケ落ち着くんだ!」叫ぶ大神。
 しかしその声は届かない。
「ふふふ、私を倒したければメカギドラを倒してからにするんだね」
 そう言って魔術師を守るように出現したのは、首が三本もある機械と竜を融合させた化け物であった。
 再び戦闘態勢に入るキュルケに対して三本の首が襲いかかる。
550檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:12:09 ID:Pk8Rhhs6
540 名前:檄・トリステイン華劇団 ◆937OxU5ygs[sage] 投稿日:2009/01/22(木) 21:02:54 ID:8nBXihQk
「まずい!」
 キュルケの機体は、熱に対しては強いが物理攻撃に関しては大神の機体とそう大差は
ないはずだ。しかも大きな武器を持っている分素早さも劣る。
「すまん!!」そう言って体当たりでキュルケの機体ごと吹き飛ばす大神。
『きゃあ!!』無線からは悲痛な叫び声が聞こえていた。
「大丈夫か」
『何するのよ!』
「焦るなキュルケ。冷静になるんだ」
『私は冷静よ!』
「それのどこが冷静だっていうんだ。まともにやり合って勝てるあいてじゃないだろう」
『だから魔術師だけを狙うの!あの子をあんなにして、許せない』
 キュルケは幼い火竜の子供を悪魔のような形にした魔術師に対して本気で怒っている。だから
といって、怒りに身を任せて戦っても勝てる相手ではない。
「魔術師を倒してもあの子は元には戻らない!冷静にこの場の対処を考えるんだ」
『なにを……!』
「キュルケ、危ない!」
 真横から接近してくる竜の首攻撃に、大神がキュルケを守るように割って入ったため吹き飛ば
されてしまった。
『大神さん!!』

   *

 不覚だ。一生の不覚。
 ツェルプストーともあろう者が怒りで我を忘れてしまうなど。
 奴らは冷静に悪事を働いた。故にこちらも冷静に罪を裁かねばならない。
 キュルケはきっと正面の三本首のドラゴン、メカギドラを見据える。
 これはもうあの子ではない。悲しい事実だけれども仕方のないことだ。ただ、彼女は人が思うほど
別れには強くない。
 エリック――
 タバサ、大神一郎。この場にいる人はこれ以上誰も死なせたくない。それは彼女が持つ偽らざる
本心であった。
 だから、ごめんなさい――
 キュルケは長斧を振う。
 接近戦ならば長い首の攻撃も、それほど意味をなさず、やたら炎も吐けないはず。
 それまでにないダッシュでメカギドラの懐に潜り込んだキュルケは長斧でひとつ目の首に斬りつけ、
そしてもう一つの首にも斬激をくらわせる。
そして返す刀で最後の首を斬りつけようとした瞬間、すでに真後に竜の首が迫っていた。
キュルケは敵の耐久力を見誤っていた。彼女が思っているほどダメージは与えられなかったようだ。
やられる!!
そう思った瞬間、背中に衝撃が走った。
これはやられたか。一瞬目をつぶるキュルケ。しかし、背中を貫かれたような感覚はない。
もう死んだから?
それとも光武というものは耐久力が高いのか。
どちらも不正解だった。
『大丈夫かキュルケ!』
「大神さん!」
 キュルケの背中では、大神がしっかりと竜の首の攻撃をガードしていたのだ。
551檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:13:39 ID:Pk8Rhhs6
541 名前:檄・トリステイン華劇団 ◆937OxU5ygs[sage] 投稿日:2009/01/22(木) 21:03:57 ID:8nBXihQk
   *

 メカギドラの攻撃を防いだキュルケと大神は、再び間合いを取る。広い間合いは不利だ。なんとかして間合いを詰めなければならない。
「キュルケ、聞こえるかい?」
『なに、ダーリン』
 すっかり元の調子に戻っている。冷静さを取り戻したようだ。
「今度は俺が前に出る。それで一気に片をつけよう」
『いいの?相手は火炎攻撃もできるのよ』
「俺の武器じゃあ間合いが足りない。キミの武器なら間合いといい威力といい十分だよ」
『私の武器でも、威力は……』
「大丈夫、その後二人で力を合わせれば問題ない」
『二人で……?』
「そうさ」
『わかった。あなたを信じるわ、ダーリン』
「じゃあ、行くよ」大神は一気にダッシュをかける。
 その動きを追尾するキュルケの存在をしっかり意識しつつ、光武の持つ二本の刀を十字
に構える。
「うおおおおおおおおお!!!!」
「ギシャアアアアア」メカギドラが口から炎を吐きだした。この機体は、炎にはあまり強くない。
しかし。
「心頭滅却すれば火もまた涼し!!!」やせ我慢だ。
 敵の炎に屈せず、更に前進する。
「今だ!!!」
 三つの頭が一斉に火を吐いたと同時に、大神の後にぴったりとくっついていた赤い光武が
飛び出す。火を吐いている時、頭はかなり無防備になっている。
『とりゃあああああああ』
 一気に斬るキュルケ。狙ったのは固い皮膚ではなく、目。
「ギャアアオオオオオオ」
 苦しむメカギドラ。
 そこに大神が叫ぶ。
「行くぞ!!」
『いいわよ』


《来て、ダーリン!!》
《やはりダーリンはちょっと》
《いいからやるわよ》
《おう!!》


《Das Backen von Hize grose Brandung (炎熱の大波)》


 メカギドラがひるんだ所に合体技を仕掛け、敵を完全に粉砕した。

 しかしそれは同時に、自分たちのいる場所を危険に晒す行為でもあった。
 大きく揺れる地面。
「まずいな、これは」
 洞窟が崩れるかもしれない。
「ダーリン!タバサは私が助けるから、あなたは出口の確保をお願い」
「わかった!」
 もう、どちらが隊長かわからない状況だが、そんなことは言っていられない。とりあえず、
大神は光武の力をフルパワーで使い、崩れかかる出口の穴を開き、障害物を取り除いた。
552檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:14:49 ID:Pk8Rhhs6
542 名前:檄・トリステイン華劇団 ◆937OxU5ygs[sage] 投稿日:2009/01/22(木) 21:05:21 ID:8nBXihQk
   *

 なんとか洞窟を脱出した大神たち三人。
 しかしキュルケは、塞がった洞窟への入口を見ながら沈み込んでいた。
「キュルケ」声をかける大神。
「なによ」
 ややぶっきらぼうな返事。今は一人でいたのかもしれないけれど、大神は話を続けた。
「あの子は、エリックはこの洞窟の守り神だったんだね」
「そう、なのかな……」
「だったら、その光武があいつらに取られなくてよかったじゃないか。エリックとその親が
代々守ってきたものが。これからはキミが守るんだ、それを」
「ダーリン」
「だからダーリンはやめてくれと」
「私を元気づけてくれるの?」
「いや……、まあ。落ち込んでいるキミはらしくないというか」
「やだ、嬉しい!」そう言うとキュルケは大神の首に巻きつく。
「ちょっと、よせキュルケ!ほら、タバサも見ている」
「……私は何も見ていない」そう言ってハシバミ草を食べるタバサ。
「やめなさい。って、そうだ。まだアレをやっていなかった」大神が首に絡みつくキュルケを
引き離しながら言う。
「アレ?」
「そう、戦いに勝った時はいつもやるんだ」
「もしかして……」
「さあ行くぞ、タバサもおいで」
「私は遠慮しとく」
「あんたも来なさい。私にだけ恥ずかしい真似をさせないで」そう言ってキュルケはタバサの
服を掴み引き寄せた。
「じゃあ行くぞ」


「勝利のポーズ!!」


「決めっ!!」
553檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:16:23 ID:Pk8Rhhs6
543 名前:檄・トリステイン華劇団 ◆937OxU5ygs[sage] 投稿日:2009/01/22(木) 21:06:37 ID:8nBXihQk
   エピローグ
 いつものアレもやったところで、帰り支度をはじめる三人。そんな中、大神はあること
を思い出したのでキュルケに聞いてみる。
「ところでキュルケ、ここはキミの憧れの人に関係する場所じゃなかったのかい?」
「え?あこがれ」
「花の一つでも手向けたほうがいいんじゃないかな」
「え……?ああ、ああ」何かに気がついたように、彼女は手をポンとついた。
 キュルケは、かつて憧れの人が火の洞窟に竜退治に行って帰ってこなくなった、と言っ
ていたのだが……。
「どうしたんだい」
「あれはウソよ」
「はあ!?」
「だってダーリンって真面目だから、単に面白そうだから連れて行ってくれっていっても連れて
行ってくれないでしょう?」
「そ、それって」
「ごめんなさいね」
「………!」
「もしかして怒ってる?」
「当たり前だろうがあああああ!!!!」
「結果オーライじゃないのお!!!!」
 こうして、大神たちの今回の旅は終わりを告げたのであった。

   *

 トリステイン魔法学院の中庭で、空を切る音が響く。
「ふんっ、ふんっ」
 ルイズは木刀で素振りを繰り返していた。
「ふう……」一通り練習を終えたルイズは汗を拭きながら空を見る。
 空は広く、気持ちが良いくらい晴れ渡っていた。
「私の出番は、まだかしら」



      お し ま い

554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:18:35 ID:hhZ5LkqN
大神の人乙です。
555檄・トリステイン華劇団!! 代理:2009/01/22(木) 21:24:41 ID:Pk8Rhhs6
投下終了宣言はありませんでしたが
内容、投下間隔的におそらく終了です。

大神の人乙でした。
それと投下予約ですが投下前5〜10分くらいに行うことをお勧めします。
長時間先を予約されるとそれを管理する人がいない以上混乱の元になりますし
もともと予約といっても投下最中に気づかず割り込みを防ぐのが目的のものですから。

もしこの時間しか余裕がないということでしたら日を改めて投下するか
はじめから代理投下スレという手段もあります。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:26:14 ID:uWk0Hr6z
乙乙
557ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:36:40 ID:lcBhuPdb
 大神の方、乙です。

 さて、他にご予約の方がおられなければ、21:45から第24話の投稿を行います。
558ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:37:43 ID:lcBhuPdb
……すいません、『投稿』じゃなくて『投下』でしたorz
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:40:14 ID:hhZ5LkqN
おぉ今日はいい日だ。人修羅に鷲に大神でラスボス…素晴らしい。支援する。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:42:49 ID:lj4DnmXE
ラスボス支援ー
561ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:45:00 ID:lcBhuPdb
 タルブ一帯は、アルビオンの軍勢で埋められていた。
 村は焼き払われ、村人の姿は見えない。広い草原は兵士や傭兵、メイジなどでごった返している。更にその上空には竜騎兵や戦艦が陣取っている。
 彼らは、やがて来るであろうトリステイン軍との戦闘を今か今かと待ち構えていた。
 少なくとも初手はこれ以上ないほど上手くいっている。
 騙し討ちではあるが完全に敵の不意を突き、今頃あちらの本陣は大混乱だろう。この期に及んでこの大部隊に散発的な攻撃しかしてこないのがその証拠だ。
 浮き足立ってロクに統率も取れていない集団など、物の数ではない。そう時間をかけずにこちらの勝利で終わる。
 それがアルビオン軍のほとんどの人間が抱いている、この戦争の共通認識であった。
 そして、彼らの中から『もうこちらからトリスタニアに攻め込んだ方が良いのではないか』などという意見が出始めた頃に、それはやって来た。
 最初に気付いたのは、一人の竜騎士である。
 タルブ上空を哨戒していた彼は、上空約2500メイルほどのある一点に『影』を一つ見つけた。
 その『影』は少しずつ大きくなっていく。こちらに接近しているのだ。
 竜騎士は、その『影』を敵の竜騎兵だと判断する。
 彼は味方に敵の接近を知らせると、その竜騎兵を迎撃するために飛び出していった。
 ……随分と速度が早いようだが、所詮は一騎。この大軍団の前にかかれば、何の脅威にも成り得ない。
 そのような『常識的な考え』を持ちながら、竜騎士は敵に接近して―――
 ―――その姿をハッキリと肉眼で捉えた直後、自分の乗っている竜と共にその命を散らしたのだった。

「……………」
 機体に取り付けられている機銃を使い、ユーゼスは空を飛ぶ竜騎兵たちを次々と撃ち落していく。
(……もろいな、ハルケギニアの幻獣は)
 連発とは言え、たかが銃程度で絶命するとは。
 ユーゼスの知っている『怪獣』は機銃どころかミサイルやレーザーを食らってもピンピンしている場合がほとんどだったと言うのに、この『幻獣』はかなり脆弱である。
(……どういうことだ?)
 宇宙怪獣などはともかくとして、自分の世界の地球怪獣が『天然』であれほどの脅威となっていたことに、今更ながら疑問を抱いた。
 それともハルケギニアの幻獣が弱いのか。
 『星や世界が違えば生物の性質も違う』と納得してしまうのは簡単ではあるのだが、それに簡単に納得が出来ないのがユーゼス・ゴッツォという人間である。
(人間に飼い慣らされるような個体がそれほど強力であるはずもないが、それにしても攻略が容易すぎる……)
 生物は環境によってその能力を進化・強化・付随、あるいは退化させていくものだが、地球とハルケギニアの間にそこまでの違いがあるとも思えない。
 最大の違いと言えば、やはり環境の汚染度だろうか。
(ふむ、やはりあの時の私の考えは間違っていなかったのか……)
 ……地球に赴任したばかりの頃の話になるが、ユーゼスはあの星に怪獣が生息しすぎている理由を『地球の環境汚染が原因である』と考えていた。
 異常な環境が異常な進化を引き起こし、その結果として異常な生物を誕生させるのだ……と読み、よって大気を浄化し、環境を再生すれば、怪獣の出現も減るはず……と結論づけた。
 その理論は、実際には地球の美しさに魅せられたユーゼスが大気浄化を強行するための方便に近いものだったのだが、しかし今でもそれなりに筋の通った理論だとユーゼスは思っている。
(やはりあの強靭さは、地球の環境汚染が原因だったのだろうか……)
 ほとんど環境が汚染されていないということは、異常な進化を遂げる可能性もほとんどないということである。
(……やはりハルケギニアに度を越えた超技術など必要ないな)
 今後もコルベールあたりには自分やシュウの持つ技術が行き渡らないようにしよう、とあらためて決意するユーゼスであった。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:46:49 ID:pO+SSbOB
あくまで環境にしか頭にないのかw支援
563ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:47:00 ID:lcBhuPdb
「ちょ、ちょっとこの銃、強力すぎない!? 竜をアッサリ撃ち落とすって、どういう仕組みなのよ!?」
「すすす、すごいじゃないの! 天下無双とうたわれたアルビオンの竜騎士が、まるで虫みたいに落ちていくわ!」
 横の座席のエレオノールと後部座席のルイズが興奮してまくし立てるが、取りあえず無視する。
 戦闘中に余計な会話をしている余裕など、そうそう無いのである。
「……………」
 と言うか、テンションの上がっているヴァリエール姉妹とは対照的に、ユーゼスのテンションは全く動いていなかった。
 戦争に参加する。
 引き金を引く。
 他人を傷つける。
 人殺しを行う。
 断末魔の光景を目にする。
 墜落の様子を眺める。
 あるいは、ボタン一つで大量虐殺を行う。
 これら直接的にせよ間接的にせよ『殺害』という行為に対して、ユーゼス・ゴッツォは良い感情を持っていない。
 だが、だからと言って悪感情を持っているわけでもない。
 好きでも嫌いでもない、『ただの行為』や『作業』として捉えている。
 自分が狙いを定め、銃を撃つ。弾丸が発射される。その弾丸が敵に命中する。敵は傷付き、血を流す。そして生命活動が停止する。それだけのことだ。
 奪う命の一つ一つに思いを馳せるような感傷や、その死に対しての悼み、哀れみなどは持ち合わせていない。
 そもそも、『命を奪う行為』は誰もがやっていることだ。
 生まれてから『人間以外の生命体』の肉を全く口に入れない人間など、ほとんどいまい。
 生命として成立する前の鳥類や魚類の卵すら、食べる者は無数にいる。
 また、『生命体としての形態』は異なるが、植物とてれっきとした生命体である。誰もがそれを躊躇なく摂取しているではないか。
 道の上を歩いていて、小さな虫や微生物を踏み潰さない者など、いるはずがない。
 このハルケギニアとて、それは同じだ。
 水と光と二酸化炭素さえあればやっていける植物はともかくとして、『動物』である以上、他の生命体を殺すことは逃れられない宿命なのである。
 それなのに、なぜ同じ人間だけを特別扱いしなくてはならないのだろう。
 ……顔見知りの相手である場合や、何らかの思い入れのある相手ならばそれも理解が出来なくはないが、今自分が相手をしているのは何の縁もゆかりもない他人である。
 ウルトラマンたちも宇宙刑事たちも、一度相手を『敵』と認識したら、ほとんどの場合は容赦などせず速やかにその相手を殺していたではないか。
 例外として、『殺人が出来ない』というプログラムを植え付けられている良心回路や自省回路を持つ人造人間たちについては―――ある意味『理想的』ではあるが、だからこそ苦しみ、悩み、もがいていた。
 感情ではなく理屈として、自分は『殺人』を嫌わないし、ためらわないし、苦しまないし、悩まない。もがく必要など全くない。
 ……もっとも、『暴力』は嫌っているのだが。
「か、火竜のブレスを浴びてもビクともしないって、どうなってるの、この乗り物!?」
「む」
 エレオノールの驚愕の声を聞いて、淡々と機械的に殺し続けていた精神がふと我に返る。
 見回してみると、敵の竜騎兵は全滅している。
 ユーゼスは残弾数を見てミサイルやレーザーを一発も使っていなかったことを確認しながら、ポツリと呟いた。
「……さて、艦隊に対してはどこまで通用するものか」
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:48:30 ID:lj4DnmXE
地球は怪獣だけじゃ無くて人間も一部おかしい(キングオブハートとか)
支援
565ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:49:02 ID:lcBhuPdb
 一方、縦横無尽に飛び回る改造ジェットビートルの中で、ルイズはガクガクと震えていた。
 この機のスペックを全く理解していないので、竜騎兵程度の攻撃はまず当たらず、仮に当たったとしてもビクともしないことを知らないのである。
 ……ちなみにユーゼスやシュウと一緒にビートルの整備をしていたエレオノールにはある程度の知識はあったが、それでも手を固く握り締めたり、ビートルの性能にいちいち驚愕したりしている。
 ある程度知っているはずのエレオノールですらそうなのだから、知らないルイズはパニック寸前だった。
 しかし恐怖に負けてなるものか、とルイズはポケットの中をまさぐり、アンリエッタから貰った『水のルビー』をはめる。以前の任務の際の報酬として受け取っていたのである。
「姫さま、どうかわたしたちをお守りください……」
 今までずっと肌身離さず持ち歩いていた『始祖の祈祷書』を撫でながら、祈りをささげた。
(……そう言えば、もう結婚式は取りやめになったんだから、コレを持ってる意味もなかったのよね)
 祈りをささげながら、そんなことを考える。
(…………一応は『“始祖の”祈祷書』なんだから、コレにも祈っておきましょうか)
 気休めでも何でも、とにかく今は安心が出来る材料が欲しい。
 ルイズはそう考えて『水のルビー』をはめた手で『始祖の祈祷書』のページを開き……。
 その瞬間、ルイズの手の中にあったその二つが輝きだした。
「えっ!?」
 その光に驚いたルイズは思わず声を上げる。
 間もなく『水のルビー』からの発光は治まるが、『始祖の祈祷書』からの発光は依然として続いていた。
「ルイズ、どうしたの―――、!?」
 後ろにいるルイズの様子がおかしいことを察したエレオノールが振り向いて妹に尋ね、その光景に度肝を抜かれる。
「ね、姉さま、『始祖の祈祷書』が……!」
「そんな、どういうこと……!?」
 ユーゼスにも意見を聞いてみたいが、戦闘中でそれどころではないので話しかけることは出来ない。
 一体どういうことなのよ、とやたらと光り輝いて存在をアピールしている『始祖の祈祷書』を見つめるルイズだったが、目を凝らしてみると光の中に文字を見つけた。
「……これ、古代ルーン文字……?」
「―――読んでみなさい、ルイズ」
 呆然としたルイズの言葉を聞いて、神妙な様子でエレオノールがその朗読を促した。
「は、はい。えっと……。
 『序文。
  これより我が知りし真理を、この書に記す。
  この世のすべての物質は、小さな粒より為る。
  四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
  その四つの系統は、“火”、“水”、“風”、“土”と為す』」
「『小さな粒』……? ユーゼスのレポートにあった『ブンシ』や『ゲンシ』のこと……?」
 内容を聞いてエレオノールがブツブツと呟くが、ルイズは構わずに朗読を続ける。
「『神は我にさらなる力を与えられた。
  四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。
  神が我に与えしその系統は、四のいずれにも属せず。
  我が系統は更なる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
  四にあらざれば零(ゼロ)。
  零、すなわちこれ“虚無”。
  我は神が我に与えし零を“虚無の系統”と名付けん』……って、虚無の系統!? 伝説じゃないの! 伝説の系統じゃないの!!」
 ルイズは鼓動を早めながら、『始祖の祈祷書』のページをめくっていく。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:50:19 ID:6N/7/VfU
地球産怪獣の頑丈さと、ハルケギニア産幻獣の紙装甲の落差に涙しつつ支援。
567ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:51:00 ID:lcBhuPdb
 木造の艦隊に近付いていく改造ジェットビートルの操縦席に座りながら、ユーゼスは事態を楽観していた。
(……あれならばミサイルやレーザーを一発撃ち込めば、大破させることが出来るな)
 その分析に間違いは無い。
 所詮は木造……いや仮に艦が鉄で造られていたとしても、このビートルに搭載されている兵器を使えば確実に致命傷を与えることが出来るだろう。
 これは逆に言うと、『そこまでの威力を行使しても地球の怪獣には牽制程度にしかならない』ということになるのだが……。
 ともあれハルケギニアに怪獣はいないので、気にせずユーゼスは最も巨大な戦艦に接近していく。
 ……あのような巨大な戦艦は、大抵の場合は『旗艦』なのである。
 艦隊司令や重要人物が乗っているのだから自然と武装や人員は満載になり、その武装や人員を収容するために艦の大きさは増大していく。明解な理由だ。
 そしてその分かりやすい旗艦を狙い撃つためにミサイルのトリガーに指をかけて発射のタイミングを見計らっていると、艦隊がチカチカと光った。
「む?」
 直後、機体にガツンと何かがぶつかる。
「……対空砲火か」
 接近しているのだから迎撃されるのは当然である。今までほとんど一方的に攻撃するばかりだったので、そのことを失念していた。
 だがハルケギニアの技術力による砲弾など、ジェットビートルには大したダメージには成り得ない。
 『昔の物だから』というわけではないが、この機体はかなり頑丈に作られているのだ。
 ……頑丈と言っても、『怪獣の攻撃を受けても辛うじて不時着が出来る』程度の頑丈さだが。
 しかし攻撃を受け続けるのも気分が悪いので、機動性を駆使して回避することにする。
「………」
 大きく旋回する改造ジェットビートル。
 それにしても、先ほどまでワーワーキャーキャーとわめいていたエレオノールとルイズがやたらと大人しい。横や後ろを確認している余裕がないので彼女たちの様子は分からないが、どうしたのだろうか。
 ……まあ、静かな方が集中もしやすいので構うまい。
「ふむ」
 ともあれ、対空砲火のせいで少しやりにくくはなったが、それでもこちらの優位は動かない。
 適当な位置まで移動したら手早くミサイルを撃たなくては……などと考えていると、大砲の砲弾とは別の『何か』が飛んできて、数発ほどカンカンと機体に当たった。
「……何だ?」
 少なくとも砲弾ではない。音や衝撃が少なすぎる。
 ならば小さい散弾か何かをバラまいたのか……と、ユーゼスは一瞬だけ艦に装備された砲塔に目をやる。
 そして自分の眼球が捉えた情報が、予想と違うことに驚いた。
「アレは……」
 敵艦の舷側からは、確かに金属の砲塔が突き出ている。しかし、装備されているのは大砲だけではなかった。
 その細身の砲身―――いや、銃身を震わせて弾丸を吐き出し続けるそれは……。
「……機関銃だと?」
 初歩的ではあるが、確かに固定式の機関銃だ。
 よくよく目を凝らしてみると、後ろに銃を操作する人間が配置されている。いわゆる銃架というやつだろうか。
「どういうことだ……」
 ハルケギニアの技術レベルではせいぜいマスケット銃が精一杯であったはずなのに、いきなり機関銃とは。
 この短期間に発明されて装備されたのか……と考えるが、この魔法至上主義の世界でそんな『急激な技術の発展』や、まして『新装備の迅速な普及』などがなされる可能性は極めて低いはずだ。
 予想外の攻撃にさらされて混乱しかけるユーゼスだったが、『大砲からの砲弾』や『機関銃からの銃弾』だけではなく、『別の攻撃』もビートルを狙っていた。
 それにユーゼスが気付けたのは、持ち前の知的好奇心から敵の旗艦を観察していたためだった。
 『鉛の弾丸とは明らかに別の物』が、敵艦から発射されたのだ。
 ただ物理法則や慣性に任せて、真っ直ぐに飛んで来る物ではない。どう見ても『自力の推進力』を備えている。狙いはかなりあやふやだが、煙を巻き上げて迫るそれは、
「ミサイル―――いや、ロケット弾か!」
 どうなっている、と回避行動を取りながら珍しく焦った様子を見せるユーゼス。
(唐突に軍事技術の革命でも起こったのか? それとも……)
 ……それとも、誰かが技術供与を行ったのか。
 疑問は尽きないが、戦場においてそんな疑問を深く考えている暇などは、存在しない。
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:51:50 ID:tRhOsvml
支援
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:52:57 ID:lj4DnmXE
ユーゼス以上に敵のほうが驚いてるだろうなー
支援
570ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:53:01 ID:lcBhuPdb
 ユーゼスはいきなりの『新兵器』の登場に慌てていたが、ルイズとエレオノールの姉妹はいきなりの『伝説』の登場という事態にもっと慌てていた。
「ルイズ、その本を私に渡して……いえ、内容が書かれているページを私に向けなさい!」
 これはまず自分が目を通しておくべきだと判断したエレオノールは、ルイズに祈祷書を見せるように命じる。
 『渡せ』と言わなかったのは、自分が持ったら本からの発光が消えてしまうと考えたためである。
 そして座席ごしにルイズに祈祷書を見せてもらったのだが……。
「見えない……!?」
 ルイズのように光の中に文字を見つけることは出来なかった。
 どうやらその文字とやらは、妹にしか見えないらしい。
 仕方がないので、続きを朗読させる。
「……えっと……。
 『これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐ者なり。
  またそのための力を担いし者なり。
  “虚無”を扱う者は心せよ。
  志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし“聖地”を取り戻すべく努力せよ。
  “虚無”は強力なり。
  また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。
  詠唱者は注意せよ。
  時として“虚無”はその強力により命を削る。
  したがって我はこの書の読み手を選ぶ。
  たとえ資格なき者が指輪をはめても、この書は開かれぬ。
  選ばれし読み手は“四の系統”の指輪をはめよ。
  されば、この書は開かれん。
  ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ』」
「………!!」
 エレオノールの頭の中で、急速に今までの情報が組み合わさっていく。
 『通常の四系統の魔法』を失敗し続けた妹。
 ユーゼス・ゴッツォに刻まれたルーン。
 始祖の使い魔と伝えられている、ガンダールヴ。
 それを使役する、自分の妹。
 王家に伝わる、年代物の『始祖の祈祷書』。
 妹にしか読めない、『虚無』に関する情報。
 始祖からのメッセージ。
 ……もう、答えは一つしか考えられない。
「『以下に、我が扱いし“虚無”の呪文を記す。
  初歩の初歩の初歩。“エクスプロージョン”』……」
 その後には古代後の呪文が続いているらしく、ルイズはそこで朗読を打ち切った。
 そして呆れたように呟く。
「……ねえ、始祖ブリミル。アンタ、ヌケてんじゃないの? この指輪がなくっちゃ『始祖の祈祷書』は読めないんでしょ? その読み手とやらも……、注意書きの意味がないじゃないの」
 その呟きにも一理はあるが、エレオノールは別の側面から『注意書き』について考えていた。
(……そこまで分かりにくい条件にする理由がある、ということ?)
 注意書きによると、『虚無』は術者自身の命すら危うくしてしまう類の物らしい。
 あるいは強力すぎて、使い方を誤れば取り返しのつかない事態になってしまうからか。
 しかしハッキリと『聖地を取り戻せ』と明記されている以上、この力を使わねばエルフには勝てないとも考えていたはず。
 とは言え、本当にブリミルがドジをしたという可能性も捨てきれないが……。
(…………頭がこんがらがってきたわ)
 もし6000年前に飛んで行けるのならば、今すぐに行って始祖ブリミルにこの件について問い質したい気分である。
 まあ、そんなことは神でもなければ不可能だが。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:53:15 ID:dQgght2o
なんかルイズと虚無の扱いが酷いようなw
支援
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:53:35 ID:nam43yO8
劣悪な環境に耐えうる生物が頑丈なのは自明の理……支援
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:54:05 ID:hhZ5LkqN
ビートル無双支援
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:54:37 ID:lj4DnmXE
でも今更エクスプロージョンの出番は・・・
575ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:55:00 ID:lcBhuPdb
「……!」
 雨あられと撃ち込まれる弾丸や砲弾を回避するため、機体を大きく旋回させる。
 使用されているのは、初歩的な大砲と機関銃とロケット弾。
 頑丈さに定評があるジェットビートルとは言え、さすがにそんな攻撃にさらされ続ければ撃墜されてしまうだろう。
(……出所はともかく、あれらを存在させ続けるわけにはいかんか……!)
 ごく初歩的な銃火器では威力はそれほどでもないし、連射性や速射性も低く、命中精度も高いとは言えず、ハッキリ言って『単発では』ビートルの脅威には成り得ない。
 だが、これがハルケギニアの竜騎兵や人間相手にならば、十分すぎるほどの脅威になる。
 加えて、銃火器を作る技術力があるということは、どこかに必ずそれを製造するための工場があるはずだ。
 技術力や工業力のむやみな発展は、自然や環境の破壊を引き起こす。
 ……そのような愚にもつかない発展をする可能性がごく低いからこそ、自分はこのハルケギニアに高い価値を見出したのに、これでは何の意味もない。
 アレは、ここで潰しておく必要がある。
(とは言え、どうする……?)
 こうも弾幕を張られていては、近付くことも出来ない。
 ……出力を全開にして最大速度であるマッハ2.2を出せば話は早くなるのだが、ぶっつけ本番のプラーナコンバーターにそこまでの無茶が可能なのかは不明だ。
 戦闘中でなければテストも兼ねて最大速度を試しても良いのだが、さすがに銃弾や砲弾が飛び交う中でそんなバクチなど打てない。
 ユーゼスは『分の悪い賭け』というものが、大嫌いなのである。
 それにコンバーターに問題が無いとしても、ただまっすぐに直進するのならばともかく、旋回や回避運動をしながらではそんな速度は出せない。
 自分は戦闘機操縦の訓練など、全く受けていないのだ。
 マッハで機動を行った際に生じる過負荷など、とても耐えられまい。
 クロスゲート・パラダイム・システムを使ってそれをカット出来るかとも思ったが、そこまでフレキシブルな使い方など今までやったことが無いので出来るかどうか分からない。
 最も手っ取り早いのは超神形態になることだが、『戦争』などという俗で下らないことのために自分の研究成果や光の巨人の力を使いたくはない。そもそも『ハルケギニアへの過度の干渉を控える』という自分のポリシーを逸脱しすぎる。
(ええい、ギャバンがいれば……)
 思わず、とっくの昔に縁を切ったはずのかつての友人のことを思い浮かべてしまう。
 あの男ならコンバットスーツを着ているのでちょっとやそっとの過負荷など全く気にしないだろうし、そもそも電子星獣ドルがあれば一網打尽に出来る。
 ……そもそも、何故自分はこんなことをしているのだろう。
 自分の担当は『現場』ではなく、『後方支援』や『研究』や『分析』のはず……と、ふと気付いてみると自分の思考が銀河連邦警察にいた頃のものに戻っていたことに気付いた。
(……かなり焦っているな)
 回避運動を取り続けながら、内心で苦笑する。
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:56:43 ID:bmCmwTIm
キョウスケとは絶対気が合わないなww、支援!!
577ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:57:00 ID:lcBhuPdb
 このまま撤退するのも一つの手かも知れないな、などと考えていると、後ろからガチャガチャと金属音が聞こえた。
 先頭中に振り向くわけにもいかないので、声を上げて確認を取る。
「何をしている?」
 すると、ポツリポツリとルイズが喋り始めた。
「いや……、信じられないんだけど……、上手く言えないけど、わたし、選ばれちゃったかもしれない。いや、なにかの間違いかもしれないけど」
「?」
「……いいから、コレをあの巨大戦艦に近付けて。ペテンかもしれないけど……。何もしないよりは試した方がマシだし、他にあの戦艦をやっつける方法はなさそうだし……」
「何を言っている?」
 戦場の空気に当てられて、気でも触れたのだろうか。
「ま、やるしかないのよね。分かった、取りあえずやってみるわ。やってみましょう」
「ミス・ヴァリエール」
「…………悪いけど、今はひとまずルイズのいうコトを聞いて」
 ワケが分からない。
 これは本当に撤退した方が良いか、と理性を保っていそうなエレオノールに提案をしようとすると、ルイズは後ろからユーゼスを怒鳴りつけた。
「ああもう、近付けなさいって言ってるでしょうが! わたしはアンタの御主人様よ!! 使い魔は! 黙って! 主人の言うことに従うッ!!」
「……………了解した」
 従わなければ後ろから首を絞められかねない勢いだったので、渋々だが引き受ける。
 ……とは言え、どうやって近付いたものか。
 砲撃は続き、回避運動も続く。
 武装は両舷に設置されているので、側面は論外。
 艦の底にも砲身を確認出来るので、真下も却下。
 と、なると……。
「キャッ!?」
「ちょ、ちょっと、もう少しゆっくり出来ないの!?」
 グン、と機体に負荷を受けながら、ジェットビートルは上昇する。
 横も下も駄目ならば、上に行くしかない。
「……ふむ」
 予想通り、そこは死角だった。砲弾も銃弾も存在していない。
「それで、この後はどうするのだ?」
 と言うか、この位置からミサイルを撃てばそれで終わるのでは―――とも思うのだが、主人のやる気を削ぐのも何なので黙っておく。
 そして、余裕が出て来たので振り向いてルイズの様子を確認したユーゼスは、そこにある光景を見て仰天した。
「えっと……、コレどうやって開けるのよ!?」
 なんと飛行中だと言うのに、搭乗口を開けようとしているのである。
 馬鹿かお前は、と言おうとしたが、どうせ言ってもまた怒鳴られて黙らされるのが目に見えているので、初めから黙っておく。
 まあ、そう危険な場所でもないのだし……と搭乗口の開け方を教えようとしたら、ジェットビートルに衝撃が走った。
「!」
 一体何だ、と驚くが、すぐに新たな敵だと思い至る。ここは戦場なのだ。
 前方を見ると、素早く動く風竜に乗った騎士が一人。
 その竜騎兵は小刻みに動いて、こちらに上手く狙いを付けさせてくれない。
 ……顔の確認こそ出来ないが、相当な手練だろう。まともに戦えば、一筋縄では行くまい。
 だが。
 あいにくとこちらは、ハルケギニアの範疇の『一筋縄』ではない。
 そして何より、ユーゼスは目の前の竜騎兵に対して『ある感情』を明確に感じていた。
 これから事を成そうという時に現れた障害に対する感情とは、すなわち……。
「邪魔だ……!」
 ユーゼスの苛立ちに反応して、左手のルーンが輝いた。
 身体が軽くなり、反応速度が上昇する。
 ガンダールヴの特殊能力を実感しながら、ユーゼスは引き金を引き、ミサイルを発射した。
「―――――」
 そしてある程度ミサイルが離れた位置―――まだ敵には届いていないポイントで素早く機銃を撃ち、ミサイルを撃ち落とした。
 すると盛大な爆発が発生し、しかしその爆風は敵には全く届かなかった。
578ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 21:59:00 ID:lcBhuPdb
「よし」
「どこが『よし』なのよ!?」
 エレオノールがわめいて文句を言ってくるが、取りあえず無視。
 ……このような至近距離であんな小さな的にミサイルを発射しても、スピードが乗らずに回避されるに決まっている。
 どうせ回避されることが分かりきっているのならば、その逃げ道を限定させれば、行動も読みやすくなる。
 今の行為によって、敵はミサイルのことを『飛んで来る爆弾』と認識したはずだ。
 そして、『先ほどの攻撃は爆発させるポイントを誤ったのだ』とも。
「―――――」
 続いてミサイルを3発ほど、“相手のやや下方に向かって”連射。
 3発はそれぞれ左右と中央の3方向に向かっている。
 爆発の衝撃力は、すでに見せ付けた。
 直撃などしたら即死、中途半端な回避も意味がない、迎撃しても爆風の影響からは逃れられないかも知れない。
 よって、敵の取る行動は1つ。
 唯一空いている、上に逃げるしかない。
「っ!」
 敵が上に方向転換した直後、ガツンという衝撃と共に風防の正面ガラスにわずかにヒビが入った。
 どうやら風魔法を放たれたらしいが、このジェットビートルは音速を突破する機体なのだ。その際に生じる衝撃波に比べれば、ちょっとやそっとの風魔法などは大した問題ではない。
 しかし何発も連発で受ければ危ないことは間違いないので、短時間で決着をつけるべくスロットルを操作して急加速を行う。
 まずは直進。
 ドン、という衝撃と轟音。
 どうやら音速を突破してしまったようだが……この際だ、別に構わない。
 先に発射したミサイルに追いついた(ミサイルはビートルの下を並行して飛んでいる)時点で機体底部のジェット噴射口に火を入れ、機首を垂直まで上げる。
 続いてミサイルを遠隔操作で自爆させ、同時に背部のジェット噴射口を全力で噴射。
 ミサイル爆発によって生じた衝撃と、ユーゼスの感情・生体エネルギー……プラーナを吸って得た推進力を使い、ビートルは急激な勢いで垂直上昇する。
 横で『女性の絶叫』が、後ろで『少女の悲鳴』と『何か人間大の物が転がる音』がしたが、無視。
 そしてそのまま上に向かって直進。
 向かう先には、敵の竜騎兵。
「む?」
 ……何か半透明な膜のような物が、カーテンのように機首にかかっている。
 この時ユーゼスに現象を考察している余裕があれば、この『膜』は自分のプラーナがカタチになって展開されたものだと気付けたかもしれないのだが、今はいちいち考えている暇などない。
(この位置は砲撃の死角でもあるし……、最大速度を試してみるか)
 ある程度の安全が確認されたのならば、そうためらう必要もあるまい。
 ユーゼスはそう判断すると、プラーナコンバーターの出力を上げていく。
「……!!」
 ビートルは瞬く間に、当初の設計上の最大速度を突破した。
 そして衝突する直前、敵の竜騎兵は見事な反応で自分の乗る風竜から飛び降り、脱出しようとしたが……。
「ぐ、うぉぉおおおおおおおっっ!!?」
 機体を覆うプラーナの膜がその身体をわずかにかすめただけで、遠くまで吹き飛ばされてしまった。
 飛ばされた際の叫び声に、どこかで聞いたような覚えがあったが……、特に思い出す必要も感じないので放っておくことにする。
「ふう……」
 邪魔な敵を撃退したことで、ユーゼスはようやく一息をつく。ビートルを減速させて戦闘機動から通常機動に戻すことも忘れない。
 それにしても今回は危なかった。
 普通なら、急加速の過負荷などには耐えられなかっただろう。身体能力を向上させるガンダールヴのルーンの効力が無ければ、もっと別の戦法を考え出さなければならないところだった。
 ともあれこれで主人も、心おきなく自分のやりたいことを行えるはずだ。
 きっとヴァリエール姉妹の二人も満足げな、あるいは安堵した表情をしているに違いあるまい。そう思って、横のエレオノールと後ろのルイズの様子を確認する。
 そして振り向いた瞬間に『乱暴すぎるわよこの馬鹿』、『わたしたちを殺すつもり』という賛辞の言葉を受け、姉妹そろっての平手打ちという祝福を受けた。
 かなり痛かった。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 21:59:45 ID:lj4DnmXE
ユーゼスにとっては初めての感情によるガンダールブ効果アップが苛立ちとは
しえん
580ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/22(木) 22:01:07 ID:lcBhuPdb
 以上です。
 本当はこの話の内に3巻終了分まで進める予定だったのですが、例によって例のごとく長くなりまくってしまい、キリの良い所でひとまず終わらせることにしました。

 それにしても、やっぱり戦闘シーンは苦手です。
 何と言いますか、『疾走感』とか『緊迫感』みたいなのの表現が得意ではないんですね、私は。
 おまけに無駄にダラダラと長くなるし……。
 他のバトル系のキャラを使っている人たちは凄いなあ、と感心するばかりです。

 ……って言うか、私に得意分野なんてあるんでしょうかね、もう。

 さて、何やら近代兵器っぽいものが登場してますが、このくらいなら許容範囲……いやアウトか?
 取りあえず普通の人たちも戦力アップはさせておかないと、アインストには対抗出来ないだろうと思ったんですが。
 とは言え、コレはそんなに簡単には普及させない予定でいます。ミリタリーバランスが崩れますし。
 理由は『魔法以外の“力”は信用されにくい』とか、『鳴り物入りで投入されたのに、タルブでは結局役に立たなかった』とか、付けようと思えばいくらでも付けられますからね。

 それとユーゼスが使った『ビートルのプラーナ体当たり』は、ぶっちゃけオリジナル技です。
 最初は単なる『ビートルの体当たり』だったんですが、気が付けばソニックブレイカーみたいになってしまった……。
 ……まあ、原作でも空中戦なんてそんなにありませんし、ビートルの戦闘もそうそうないでしょう。……多分。

 …………気が付けば、言い訳ばっかりになってるなあ。

 ともあれ皆様、支援ありがとうございました。
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:01:32 ID:hhZ5LkqN
哀れユーゼスw
いやご褒美か?支援
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:01:54 ID:lj4DnmXE
ワルド・・・死んだのか?
支援
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:04:20 ID:hhZ5LkqN
ラスボスの人乙です。
両頬を腫らしたユーゼスを幻視したw
次回に超wktk。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:04:23 ID:lj4DnmXE
ラスボス乙
>>『鳴り物入りで投入されたのに、タルブでは結局役に立たなかった』
これは説得力の有る理由になると思うな
貴族メンからすれば「やっぱ魔法サイコー!銃とか雑魚くね?」って事を大っぴらに言えるし
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:08:54 ID:uxK6Ezgv
ラスボスの人乙
まあワルド頑張った方かw
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:09:00 ID:WY+8r1hT
ワルドwwwギャグキャラ補正が付いてきてそうだなwww
それにしても大神大神って聞いてるとアマテラスを思い出してしまって困る。
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:10:01 ID:obynN3tO
ラスボスの人乙です

名づけるならアカシックビートルバスター?
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:18:47 ID:Jq5HGgUG
なんというがっかりウルフ&ワルドwww
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:21:25 ID:M5Mfyu8C
ラスボスの人GJ!
ソニックブームでワルドが本当に閃光になったw
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:38:17 ID:+2uz+08d
ラスボスの人GJ!
>『疾走感』とか『緊迫感』
は確かに不足してるかもしれませんが、淡々と事態を冷静に見るユーゼス視点と考えればこれもアリではないかと。
591虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:42:04 ID:cbeuVT4E
鷲の人乙です、プッロもウォレヌスも特殊能力持ってるわけじゃないけど
毎回異文化交流や価値観の違いで話が膨らむのが楽しいです
ガンダールヴ発現はまだなのか、畜生焦らしやがる

大神の人も乙。着々と学院内で大神チームが集結してきてる
次はタバサ話かしら

そしてラスボスの人はバトルがいつもちょっと捻った展開なのが面白いです
ビートルの活躍は心が躍ります
でもワルドは可哀想に

予約なければ22:50頃から投下させてください。
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:42:18 ID:aLfAGNLq
記憶にすら残らない…
ワルドは千の風(空気)になったのか
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:45:14 ID:wF3HYEbD
>>592
そういえば、キン肉マンフェニックスが、
存在した歴史すら抹消する技を使っていたな。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:45:19 ID:aH+jhUTz
相変わらず素晴らしい!
このユーゼスなら、何事も淡々と処理した方がらしいですよ
そしてワルド乙
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:45:49 ID:92u3U5wH
TAPの人、事前支援

是非、ブラックねこ登場まで頑張ってほしいなどと、無責任かつ無茶な事を言ってみる
596虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:50:12 ID:cbeuVT4E
朝もやのかかったトリステイン魔法学院の正門前。
出発を前に、ギーシュとルイズが揉めていた。
「お願いだよ、ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」
ギーシュは必死に訴えながら、足下の茶色い大きな生き物に頬擦りしていた。
はたしてそれは、巨大なモグラであった。大きさは小さい熊ほどもある、ジャイアントモールという種類である。
「ヴェルダンデ!ああ、ぼくの可愛いヴェルダンデ!」
「ねえ、ギーシュ、ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょ?」
「そうだ。ヴェルダンデはなにせ、モグラだからな」
「わたしたち、これからアルビオンへいくのよ。地面を掘って進む生き物を連れていくなんて、駄目よ」
ルイズがそういうと、ギーシュは地面に膝を付いた。
「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンデ……」
そのとき、巨大モグラが鼻をひくつかせた。くんかくんか、とルイズに擦り寄る。
「な、なによこのモグラ」
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で身体をまさぐりはじめた。
「や、ちょっとどこ触ってるのよ!」
ルイズは身体をモグラの鼻でつつき回され、地面をのたうち回る。スカートが乱れ、あられもない姿であった。
ギーシュはなんだかその光景を、眩しいものでも見るように見守った。
「やあ、ジャイアントモールと戯れる美少女っていうのは、ある意味官能的だね」
「止めなくていいの?」
ティトォがツッコミを入れる。
巨大モグラは、ルイズの右手の薬指に輝くルビーを見つけると、そこに鼻を擦り寄せた。
「この!無礼なモグラね!姫さまにいただいた指輪に鼻をくっつけないで!」
ギーシュが頷きながら呟いた。
「なるほど、指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
「なんで?」
ティトォが尋ねる。
「それはきみ。美しいものにはみんな惹かれるものだろ?」
キザったらしく言いながら、ギーシュはルイズのそばに寄って、ジャイアントモールを優しく引きはがした。
この場合の『優しく』は、当然ルイズにかかっているのではなく、愛するヴェルダンデに対する気遣いだった。
ルイズは服の乱れを整えると、ギーシュを威嚇するように唸った。
「なにしろそのルビー、とても大きくて輝きも強い。ヴェルダンデが興味を持つのも分かるね。強き石には、精霊が宿るって聞いたことないかい?」
そう言ってギーシュは、ルイズの右手を取る。
「な、なによあんた」
ギーシュはその問いには答えず、ルイズの指の『水のルビー』を軽く爪で弾いた。
キィン、と甲高い音が響き、『水のルビー』が突然強く光りだした。
「きゃあ!」
ルイズは思わず悲鳴を上げる。ルビーの光はあまりにも強烈で、目を開けていられないほどだった。
「わわ、これはすごいね。予想以上だね」
ギーシュも光から目を庇いながら、『水のルビー』を指でトントンと二回叩いた。
すると光は小さくなって、ルビーは元通りの輝きを取り戻した。
ルイズとティトォは、目をしぱしぱさせている。
「あんた、いま何やったのよ?」
ルイズはギーシュを睨みつけ、尋ねた。
597虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:51:31 ID:cbeuVT4E
さて、いまから一年ほど前の話。
当時、魔法学院の一年生だったギーシュは、城下町の酒場『魅惑の妖精』亭でクダを巻いていた。
一見ただの居酒屋なのだが、可愛い女の子がきわどい格好で飲み物を運んでくれることで人気のお店であった。
魔法学院に入学したばかりのギーシュは、悪い先輩からこの店の噂を聞いて、こっそりと城下町まで足を運んだのである。
なるほど店内には、ほとんど下着姿のようなビスチェを身に付けた女の子たちが、まるで妖精のような笑顔を振りまいて給仕していた。
ギーシュはすっかり店の雰囲気に当てられて、そわそわ、きょろきょろと女の子を物色しはじめた。
ギーシュが普段のギーシュであったなら、地上にこのような楽園の花園を創られたことを、始祖ブリミルに感謝したことだろう。
しかし今のギーシュは、可憐な女の子たちの姿を見ても、どうにも気持ちが沈んでしまって、浮かんでこない。
「あら!こちらはおはつ?かわいらしい貴族のおにいさん!わたしは店長のスカロン」
楽園の花園に、ドクダミが混じっていた。『魅惑の妖精』亭店長、スカロンである。
黒髪をオイルで撫でつけ、大きく胸元の開いた紫のサテン地のシャツからもじゃもじゃした胸毛を覗かせている。
鼻の下と見事に割れた顎に、小粋な髭を生やしていた。強い香水の香りが、ギーシュの鼻をついた。
「今日は楽しんでいってくださいましね!トレビアン!」
身をくねらせながら、スカロンは一礼した。
その仕草はまるでオカマであった。というか、オカマそのものだった。
正直キモいのでギーシュはげんなりしてしまったが、ぐいとワインをあおるとスカロンに愚痴をこぼしはじめた。
「聞いてくれたまえよ。あれ、イカサマじゃないのかね」
『魅惑の妖精』亭に来る前、ギーシュは景気づけにカジノで博打をすることにした。
そしてものの見事に、財布の中身の大半をスッてしまったのだった。
はァ〜〜、と深ーいため息をつくギーシュ。そんな彼の周りを、一匹のハエがブ〜ンと飛び回っていた。景気が悪いことこの上ない。
突然!ギーシュの耳元をギラリと光るナイフが通り過ぎた!
背後から投げられたナイフは、ギーシュの頬の薄皮を切り裂き、うっすらと血が滲んでいた。
額に脂汗を浮かべながら、ぎ、ぎ、ぎ、とまるで拙い人形劇の人形のような動きで、ギーシュは後ろを振り向く。
そこには果たして、あちこちに宝石が散りばめられた白いスーツとシルクハットを身に付けた、長身の男が立っていた。
男はナイフを投げたその手で、宝石だらけの趣味の悪いシルクハットのつばをちょいと持ち上げ、ニカッ!と微笑んだ。
「危なかったな!ハエだ!」
「億倍危ないよォーーーーーーーッ!!」
『魅惑の妖精』亭に、ギーシュの悲鳴が響き渡った。
「どうした少年、元気ないな」
男はフレンドリーに話しかけ、どっかりとギーシュの向かいの席に腰を下ろした。
「なんなんだねきみは!関係ないだろう!」
あまりにも無礼な男に、ギーシュは憮然とした。
杖を持っているようには見えない。貴族ではないのだろう。
宝石だらけの悪趣味な格好からして、おそらく大商家の二代目などに違いない。
こういう成金連中は、貴族相手にもまったく物怖じしないのだった。
「負けたんだよ、大負け。イカサマ、絶対」
「あー、あのカジノだろ?あそこはイカサマだって」
「知っているのかい?」
「さっき町に着いて、一番で入った」
「すると、きみもやられたか」
ギーシュはニヤリと、意地悪な笑みを浮かべた。
しかし男は不敵な笑顔で、握りこぶしほどの革袋を取り出してみせる。中身を机にあけると、エキュー金貨がジャラジャラとこぼれ落ちた。
「んにゃ、大勝ち」
「なんとまあ!」
ギーシュは驚きに目を見開いた。
「取り返したいんだろ、少年!どうだ、俺とひと勝負するか」
机に金貨を積み上げながら、男が持ちかける。
598虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:53:25 ID:cbeuVT4E
ぴかぴかの金貨を目の前にギーシュは揺らいだが、財布の中身を思い出すと冷静になった。
「いや、やめておくよ。これ以上取られたらたまったもんじゃない」
「ほわァ!」
突然男は奇声を発し、ギーシュにナイフを投げつけた。あわてて避けると、ナイフはギーシュの座っていた椅子の背もたれに突き刺さった。
「サソリだ」
「いないよ!どこにも!」
心臓をばっくんばっくん鳴らしながら、ギーシュが抗議する。
「む!肩にゴキブリが……」
「わかったよ!やるよ!やるやるやる!やればいいんだろ!」
かくして勝負が始まったのだった。
慣れた手つきでカードをシャッフルする男。カードはもちろん、開封したばかりの新品だ。
ギーシュは憮然として、机に頬杖を付いている。
男の顔に、不敵な笑みが浮かんだ。
(悪いが少年、俺は絶対に負けることはないのだよ)
机に置かれたシルクハットの宝石の一つ、緑色の宝石がぼんやりと輝きだした。
(いつも通り、相手の手札を教えるように)
『はい』
男は素早くカードを配り、手札を確認する。準備はすべて整った!
「さあ、始めよう!」
「あ、なんかいる」
ギーシュは男の横でふよふよ浮かぶものを指差した。半透明で、非常に投げやりな造作の目と口が付いていた。
男はカードを片付け、金貨を革袋にしまい、店の出口へ向かった。
「帰る」
「待て待て、待ちたまえ。なんなんだね、いったい」
ギーシュが引き止めると、男はため息をつきながら振り返った。
「なんだ少年、精霊見えるのか」
男はふたたび席に着くと、悪びれもせず語りだした。
「はっはっは、いや、わーり、わーり。俺いつもこいつら使って勝ってんだ」
男は笑いながら、先ほど現れた『精霊』を指でちょいとつついた。
「せ、精霊の使役?先住魔法じゃないか!」
「ちげえよ、俺貴族じゃねえもん。強き石には精霊が宿っているって聞かねェ?俺はそいつらと会話ができる。そんで友達になれば、力を貸してくれるってわけだ」
そう言って、男はイヤリングの宝石を軽く爪で弾いた。
キィン、と甲高い音がして、もう一つの宝石の精霊が現れた。
これもまた、まるで子供の落書きのような情けない顔つきであった。
ふたつの精霊は並んで、ギーシュの目の前に来る。
何か起こるのだろうか、と固唾をのんで見守っていたが、特に何も起こらなかった。
精霊はただふわふわ浮かんでいるだけで、時々思い出したように手?らしきものをちょいと動かす程度だった。
殺気を感じたギーシュが机の下に潜り込むのと同時に、椅子の背もたれに新しいナイフが生えた。
ナイフを投げつけた男が、不機嫌そうに言う。
「せっかく内気なふたりが、ジョークを交えながら精一杯自己紹介してるんだ。笑えよ!」
「聞こえないんだよ!」
ギーシュは机の下に隠れたまま叫んだ。
「なんだ、声は聞こえないのか」
「宝石の精霊なんて、見たのも初めてだ……」
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:55:47 ID:g8TbIXjk
支援
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 22:55:55 ID:92u3U5wH
ギーシュ、バケラッタークスなのかw
支援
601虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:56:12 ID:cbeuVT4E
ギーシュはおそるおそる机の下から顔を出した。
「ってこたァ、呼び出したこともないんだな、もちろん。少年、その指輪見せてみろよ」
男は、ギーシュの左手の人差し指の指輪を指した。シンプルな作りのシルバーのリングで、小さな石がはまっている。
「一応、宝石だろ」
「これかい?まあ……」
「じゃあ呼び出してやるから、話してみな。自分のだから話しやすいはずだぞ」
ギーシュが何か言うより先に、男はギーシュの指輪を爪で弾いた。キィン、と甲高い音が鳴り響く。
指輪の宝石はぶるりと震えると、巨大な熊ほどの大きさの、何か丸いものを吐き出した。
巨体に似合わず小さな顔を下にして、それはギーシュにのしかかって、押しつぶした。
「もが!もがが!」
下敷きになったギーシュはもがいた。
突然現れたナニモノかに、店の女の子たちは驚いて悲鳴を上げた。
「きゃああああ!」
その悲鳴に客たちも慌てだし、われ先にと店から逃げ出して、パニックが起こった。
ギーシュを押しつぶしているナニモノかの身体は、まるで密度のぎっしりつまったマシュマロのようで、ギーシュはあわや窒息するかと思ったが、なんとか頭を外に出すと、助けを求めて精霊使いの男の姿を捜した。
男は呼び出した2体の精霊を引き連れて、まさに店から逃げ出そうとしていた。
「帰る」
「帰んな!」
ギーシュは必死で叫ぶ。
「きみね!これね!どうにかしていってほしいんだがね!」
「だってそれ精霊じゃないしー。悪魔だしー」
非常にやる気のない声だった。
そうしているあいだにも、ギーシュは『悪魔』の体にむぎゅうとつぶされていた。
「そう言えば……、この指輪、グラモン家に代々伝わるもので……、いわく付きとかなんとか……」
「言わないお前が悪い。じゃあな、アディオス少年」
「最悪だよ。もういいよ。帰りたまえよ」
いい加減ムカツイてきたので、ギーシュは男に投げやりに言った。
『…………』
と、突然ギーシュの耳に、奇妙な声が響いた。とても小さな声だったが、それは頭の中に直接響いてくるようで、はっきりと聞こえた。
不思議な声の主を求めて、ギーシュはきょろきょろとする。
そして、今まさに自分を押しつぶさんとしている『悪魔』と目が合った。
これは、まさか、こいつの。『悪魔』の声?
『……………』
そうだ、会話することができれば、なんとか抑えられるかもしれない。
こいつが何を言ってるのか理解するんだ!
ギーシュは魔法の呪文を唱えるときのように、意識を集中した。
『………………』
悪魔の言葉が、だんだんと意味を持った響きに変わっていく。
いいぞ、もう少しだ。
集中しろ。
『……………』
ギーシュの身体にかかる圧力はどんどん大きくなっていて、耐えられずにかはっと息を吐いたが、集中は途切れさせなかった。
くくく、苦しい。でも。
わかる。
もう少しで、わかるぞ……!
そしてついに、悪魔の言葉ははっきりとした意味を持って、ギーシュの心に届いた。

『目薬さしすぎると糖尿病になるって本当かな……』

心底どうでもよかった。
「……知らないよ……」
悪魔と心を通わせた瞬間、ギーシュはなんだかひどく投げやりな気分になって、ただ身体が押しつぶされるに任せてしまったのだった。
602虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:57:10 ID:cbeuVT4E
「しゃーねーな」
男がそう呟くと、ドンッ!と大きな音を立てて、ギーシュにのしかかっていた悪魔が横殴りに吹っ飛んだ。
悪魔はテーブルや椅子を盛大に巻き込んで、壁に激突した。
「げほ!げほげほ!」
悪魔から解放されたギーシュは、咳き込みながら、首を回して精霊使いの男を見た。
3体目の精霊が、男の横に現れていた。
この精霊は、前の2体とは違っていた。その身体は半透明ではなく、強い魔力を感じる。
ギラリと意志の強そうな目を持ち、一本の大きな角が頭に生えていて、両の手は拳闘に使うグローブのようになっている。
「ネオカーネリアンの石は、力強さや勇気を表す。仕事の成功を導く石だ」
精霊使いの男の服に縫い付けられた宝石の一つが、強い光を放っていた。
吹き飛ばされた悪魔が、丸い身体を転がし起き上がった。ギロリと精霊使いの男を睨みつける。
男がニヤリと笑った。
「やる気かい?おもしれえ、ちょうどいい掘り出しもんを見つけたんだ。悪いが試させてもらうぜ」
男が懐から、大粒の宝石を取り出した。
「カイアナイトの精よ」
男の呼びかけに答え、宝石は強く輝いて、宝石・カイアナイトの精霊が現れた。
腹に12本のトゲが生えており、大きさは悪魔よりもさらに二周りほど大きい。巨大な拳は、それだけで子牛ほどの大きさである。
その力強い姿を見て、男は満足そうに笑った。
「行け!」
男の命令と同時に、カイアナイトの精は巨大な拳を容赦なく悪魔に打ち下ろした。
悪魔はその強烈な一撃で、まるで風船が破裂したように、ぺしゃんこになってしまった。
さらに、カイアナイトの精は潰れた悪魔を床から引き剥がすと、大きな手でぎゅうぎゅうとこねまわした。
悪魔はみるみるうちに小さく潰されて、カイアナイトの精が最後にぎゅっと手に力を込めると、その手の隙間から、ぽたりとしずくが落ちた。
しずくはギーシュの指輪の宝石に吸い込まれ、石の表面に小さな波紋を起こした。
ギーシュは指輪をしげしげと眺めた。
「悪魔が、戻った……すごい」
男が手にしたカイアナイトの石を、指でトントンと二回叩くと、カイアナイトの精も宝石に戻っていった。
「はっはっは、一生感謝しろよ、少年!俺がいて良かったな」
「自分で起こして、自分で終わらしてりゃ世話ないよ」
ギーシュの冷たいツッコミに、男は笑った。
「でもよ、頑張りな、少年。精霊見ることができるってのは、それだけで才能なんだから」
ずっとふざけた調子だった男の声に、初めて真面目な響きが現れた。
男はギーシュの才能を、素直に賞賛していたのだ。
ギーシュの肩を軽く叩いて、男は誇らしげに笑った。
「立派なバケラッタークスになれよ」
「おいおいそんな名前なのかね、いやだな永遠にならないよ」
「じゃあな、少年。忘れねェよ」
「ぼくはもう、この記憶焼き消したい」
男は荷物を持つと、店の出口に向かっていった。
扉の前で、カッとかかとを鳴らして立ち止まった。
男は振り向き、金貨を一枚投げてよこした。
「マスター、騒がしたな」
男の投げた金貨は、スカロン店長の頭に当たった。
スカロンは、眉間にナイフを生やして、床に大の字に倒れていた。
それは果たして、ギーシュの周りを飛び回っていたハエに向かって投げられた、あのナイフであった。
ギーシュは叫んだ。
「最初の一撃で仕留めてるしーーーー!」


※その後、ギーシュの手当の甲斐あってスカロンは息を吹き返しました。
603虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:58:48 ID:cbeuVT4E
男の前ではああ言ったものの、やはり精霊使いの力は魅力的であった。
強い精霊の宿った宝石を手に入れることができれば、ドットクラスでも、トライアングルを凌ぐ力を発揮できるのである。
精霊使いの力の強さは、術者本人の強さによらない。実際、あの精霊使いの男本人は、ぶっちゃけたいしたことなかった。
必要なのは、石の魔力を引き出す才能。それだけなのだ。
ギーシュは悪魔と心を通わせたときの感覚をたよりに、こっそりと訓練を重ね、ついには宝石の精霊の声を聞く力を身に付けたのであった。


「ふうん、そんなことがあったの。ギーシュが精霊使いのまねごとをしてるって噂、ホントだったのね」
ルイズは、『水のルビー』とギーシュの顔をしげしげと交互に眺めた。
「おや、誰から聞いたんだい?精霊使いの力は、下手をすると異端と取られかねないからね。秘密にしているはずなんだが」
「モンモランシーよ」
「ああ、モンモランシー。愛するひとに隠し事をするわけにはいかないからね。秘密にしてくれと念を押したのに、いけないレディだ」
ギーシュは格好を付けて髪をかきあげた。そんなギーシュを、ルイズは呆れ顔で見ている。
「モンモランシーだけじゃないわよ。ソーンのクラスの赤毛の子」
「む」
ギーシュの顔に冷や汗が浮かぶ。
「3年生の金髪さん」
「ぐ」
「おおかたあのケティって一年生にも話してるんでしょ。なにが秘密だか。あんた、女の子の気を引くために、誰彼かまわず触れ回ってるんじゃない」
「むむむ……」
ギーシュの顔に冷や汗がダラダラと流れた。
ギーシュの使い魔モグラの瞳がきらりと光った。そしてモグラはルイズに飛びかかると、ふたたびルイズを押し倒した。
「きゃあ!」
「ヴェルダンデ!」
ギーシュが叫ぶ。ヴェルダンデは、その愛くるしい瞳でギーシュを見つめていた。
ああ、ヴェルダンデ!ご主人様を困らせるルイズをやっつけてくれたのかい?
きみは本当にかしこいね。可愛いね。困ってしまうね。
ギーシュが感激していると、ヴェルダンデはルイズの右手の『水のルビー』に、ふたたび鼻を押し付けた。
実は単に『水のルビー』に夢中になってるだけかもしれなかった。
ルイズがモグラの下敷きになってじたばた暴れていると……。
一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばした。
「誰だッ!ぼくのヴェルダンデに何をするんだ!」
ギーシュが激昂してわめいた。
朝もやの中から、一人の長身の貴族が現れた。羽帽子をかぶっている。ティトォは、あっと小さな驚きの声を上げた。
この人、確か……
「すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なくてね」
604虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 22:59:32 ID:cbeuVT4E
「婚約者?」
その言葉に、ギーシュとティトォはおどろいた。
「ワルド様……」
ルイズが、震える声で言った。
長身の貴族は、羽帽子を取ると一礼した。
「姫殿下の命により、君たちを助けるために同行することになった。魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
ワルドは顔を上げると、人なつっこい笑みを浮かべて、ルイズに駆け寄ると、抱え上げた。
「久しぶりだな!ルイズ!ぼくのルイズ!」
ぼくのルイズ!なにそれ!ギーシュは、憧れの魔法衛士隊隊長のそんなふるまいに、口をあんぐりと開けていた。
ルイズは頬を染めて、ワルドに抱きかかえられている。
「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
「彼らを、紹介してくれたまえ」
ワルドはルイズを地面に下ろすと、ふたたび帽子を目深に被って言った。
「あ、あの……ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のティトォです」
ルイズは交互に指差して言った。ギーシュとティトォは、深々と頭を下げた。
「きみがルイズの使い魔かい?人とは思わなかったな」
ワルドが気さくな感じでティトォに近寄った。
「ぼくの婚約者がお世話になっているよ」
「はい。よろしく」
ティトォはワルドに人のいい笑顔で返した。
ワルドが口笛を吹くと、朝もやの中からグリフォンが現れた。鷲の頭と上半身に、獅子の下半身がついた幻獣である。
ワルドはひらりとグリフォンに跨がると、ルイズに手招きした。
「おいで、ルイズ」
ルイズは声をかけられると、ちょっと躊躇うようにして、俯いた。
ルイズはしばらくモジモジしていたが、ワルドに抱きかかえられ、グリフォンに跨がった。
ワルドは手綱を操り、杖を掲げて叫んだ。
「では諸君!出発だ!」
605虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 23:02:52 ID:cbeuVT4E
以上です。
最初、ギーシュには決闘の後におめんでも被ってもらおうかと思ってましたが、文章だとおめんの面白さがいまいち発揮できなさそうだったのと
なにより、ミカゼのポジションはルイズにやってもらうつもりだったので、やめました。
なので変わりに、後半絶対必要になる、精霊使いの役をやってもらうことにしました。

途中の支援をどうもありがとうございました。
606虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/22(木) 23:04:52 ID:cbeuVT4E
書き忘れチラシの裏

今回出てきた精霊使いの男は、MP本編のあの人とは何の関係もありません。
1/nのカミッツとMPのカミッツが別人であるように、この男もハルケギニアに最初からいる精霊使いです。
世の中同じような人が三人はいるって言うアレです。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:08:08 ID:aLfAGNLq
パズルの人乙でした。

今しがた「1/Nのゆらぎ」見ながら、精霊使い呼んでも面白いな…
とか、投下前に口走らなくて本当によかった。本当によかった
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:14:14 ID:uFoYqzzq
マテパの人乙です。

まさかの1/Nに吹いたwww
妖精亭はせいぜいブサディが出てくるくらいかと思ったし、
ギーシュはお面被って撲殺拳される役まわりかと…

あとスカロン死ん…でないーーー!!!
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:14:25 ID:g8TbIXjk
パズルの人乙
ギーシュがなにげに重要ポジションに
ひできーーーーーー!!
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:14:35 ID:92u3U5wH
TAPの人乙でした

ワルキューレ+精霊なんてギーシュすごいな
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:15:30 ID:qA4ksT2P
>>606
つまりMP、1/n、ハルケギニアにカミッツが三人ずついるということに・・・
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:17:40 ID:69QVBVu+
MPの人乙
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:17:53 ID:hhZ5LkqN
ティトォの人乙です。
サンと思ったら別人か…
次回に超wktk。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:24:48 ID:7h4iTsm2
ギーシュ「さあカイアナイトの精よ!お前の目の前にいるでかい口を叩く割には実力のない役立たずをぶっ飛ばせ!」
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:31:17 ID:aLfAGNLq
>614
強力な能力をまったく活かせてないギーシュが鮮明に思い浮かぶw
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:42:35 ID:92u3U5wH
そんな戦闘になると真っ先に逃げて、戦闘が終るといつの間にかいるようなギーシュは嫌だなw
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/22(木) 23:57:16 ID:RNHBhuOI
ギーシュがぶっ飛ばされるってオチ?
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:02:37 ID:Ba6SnZU/
>617
大変だ!ルイズがぶっ飛ばされる可能性もあるぞ
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:15:13 ID:2dA9P9CH
アクマがこんにちは、投下と同時に見られるとは望外の幸運

>古い時代の武将
クー・フーリンか師匠フラグですねわかります
あと、ライドウじゃなくてダンテなんですね
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:15:32 ID:NKFfNzhG
予約が無いのでしたら0:20から投下させていただきます。
重攻の使い魔 第2話『日常非日常』4レス予定です。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:18:46 ID:+6iGiwDP
支援しよう
622重攻の使い魔 第2話『日常非日常』:2009/01/23(金) 00:20:10 ID:NKFfNzhG

 ルイズが自室で目を覚ました時、真っ先に視界に入ってきたのは昨日召喚した赤いゴーレムだった。
あの後、ルイズは自室に戻り、ゴーレムを室内に入れようとしたが、ちょっとばかり苦労した。なに
ぶんこのゴーレムは身長が2.3メイルもあり、立っているだけで天井スレスレなのだ。横幅もこれまた
相当に広く、そんな図体の大きい代物を廊下に置いておく訳にもいかない。共有空間の私物化で咎め
られる可能性もある。
 そのため、ルイズはゴーレムを室内に入れることに決めたのだ。しかし、廊下を歩くだけで窮屈そ
うなゴーレムは自室のドアをくぐるにも一筋縄ではいかず、まるでパズルを解くかのように腕を曲げ、
足を曲げ、体をひねり、30分ほどかけてようやく部屋に入れることが出来たのだった。

「んー……、にひひ。わたしの使い魔かぁ」

 ルイズはしげしげと自らの使い魔となったゴーレムを眺めると、思わず破顔する。間違いなく同級生
の中では一番の使い魔だ。もうあんな魔法が使えるだけの馬鹿な連中に大きな顔はさせない。これまで
の不遇の反動からか、ルイズの思考は少しばかり暴走気味であった。

「名前、まだ決めてないけど、どうしようかなぁ。レッドドワーフ・ダハク・イーヴァルディ……。
 どれもいまいちしっくりこないのよね」

 昨日の夜からルイズは使い魔の名前をどうするかで悩んでいた。考え始めた最初に比べれば大分候補
を絞ってはいるのだが、なかなか決めるには至らなかった。これから長い付き合いになるだけに、絶対
に後悔したくはない。とびっきりの名前を付けてあげようとルイズは決めていた。

「まあ時間はあるんだし、もうちょっと考えてからでもいいわよね。……とと、もうこんな時間じゃない、
 そろそろ準備しなくちゃ」

 扉の外からはがやがやと生徒が話す声が聞こえる。朝食の時間が近くなったので生徒達はみな大食堂に
向かっているのだ。ルイズはぽんぽんと寝巻きを脱ぎ、かごへと放り込んでいく。洗濯物が入れられたか
ごは後で使用人に渡せばいい。朝食を食いはぐれるのは御免だとばかりにルイズは身支度を整えていく。

「さ、行くわよ。昨日のでコツは掴んだから大丈夫!」

 ルイズはそう命令すると、ゴーレムはのっそりと動き始める。昨日散々苦労した扉をくぐるのも、体を
器用に回転させながら割とすんなり通ることができた。ルイズが扉を閉め、さあ食堂へ向かおうとした時、
隣の部屋の扉が開いた。中から炎のように赤い髪をたたえた少女が出てくる。少女はルイズと傍に立つゴー
レムを見ると、心持ち慎重な態度で話しかけてきた。

「あら、おはようルイズ。……そのゴーレムがあなたの使い魔?」

 少女は異様な存在感を出しているゴーレムが気になるのか、若干引き気味である。普段ならこの少女に
声を掛けられると、決まってルイズは不機嫌になるものだったのだが、この日は違った。明るく弾んだ声
でルイズは返事をする。

「そうよ、驚いたでしょ。こんな立派なゴーレムを使い魔にしてる貴族なんていないわ。あの土くれのフーケ
 だってこんなの使える訳ないってものよ」
「そ、そう。よかったわね」

 普段のルイズとはかけ離れた態度に、少女はいささか面食らったようであった。犬猿の仲といっても差
し支えないほどルイズと少女の間柄は好ましいものではなかったのだが。

「で、キュルケ、あんたは何を使い魔にしたの?」
「う、えーと、……この子よ」
623重攻の使い魔 第2話『日常非日常』:2009/01/23(金) 00:20:52 ID:NKFfNzhG

 キュルケと呼ばれた少女は、後ろを振り向き手招きする。すると扉の中からのっそりと、赤い皮膚を持っ
た巨大な爬虫類が現れた。

「あら、これってサラマンダーじゃない。あんたも中々やるわね」
「……くっ、ナメてるわねルイズ」
「いいえ、そんなことないわよ? サラマンダーだって立派じゃない。もっともわたしのゴーレムには及ば
 ないけどね」

 ルイズはそう言うと、ゴーレムの体をこんこんと叩いた。ルイズとキュルケが話をしている間も、ゴーレム
は微動だにしない。ルイズよりも頭一つ背が高いキュルケも、このゴーレムの前では幼児同然の大きさだった。
巨体が特徴のサラマンダーでさえ、ゴーレムの威圧感の前では存在感が霞んで見える。

「ふんっ。得体の知れないゴーレムより、実績のあるサラマンダーの方がよっぽど価値があるわよ」
「へーぇ、こんなに精密に作られたゴーレムよりもねぇ。ま、いいけど。ほら早いとこ食堂に行くわよ」

 そう言い放つと、ルイズはゴーレムを引きつれ、食堂へと足を向ける。ルイズの使い魔を見た生徒の中には、
後ずさりをする者もいた。狭い廊下いっぱいを使ってのしのしと歩くゴーレムの威圧感はとてつもなかった。
 その立ち去るルイズの後姿を眺めながら、キュルケは抑えきれない悔しさに臍を噛んでいた。自分の使い魔
はそこら凡百の使い魔とは違う。事実、サラマンダーを使い魔とできる者はそう多くはなく、使い魔とした者
は例外なく優秀なメイジとなっている。何も劣等感を感じる必要はなかったのだが、それでもゴーレムのあの
姿を見ると、サラマンダーが見劣りしている気分になってしまうのだった。




 今までになく上機嫌で朝食を終えたルイズは引き続きゴーレムを随伴させながら、気分は大臣とばかりの足
取りで教室へと向かう。すれ違う生徒が畏怖を込めた視線を送ってくるのに、表現の仕様がない快感を感じる。
朝食を取っている間も、自分の後ろに立たせていたのだが、食堂にいた生徒・使用人全ての視線を集めていた。

(ふふん、あんたたちの使い魔なんて、わたしのゴーレムの足元にも及ばないんだから)

 特に他の生徒の使い魔と手合わせをしたわけではないので、どちらが強いなどという結論を出せるはずもな
いのだが、このゴーレムの巨躯は、圧倒的な力を秘めていると思わせるに足る雰囲気を醸し出していた。普段
は重い気分で開く教室の扉も、今日はさわやかな気分で開けることができた。
 ルイズに引き続き、ぐりぐりと体を回転させながらゴーレムが教室に入ってくると、先に来ていた生徒達は
一斉にルイズの方向を向いた。ルイズと目が合い、彼女がにやりと笑って見せると、そそくさと視線を外す。
ここにいるウスラ馬鹿どもはきっと報復を恐れているに違いないのだ。それも当然、今まで散々無能だと馬鹿
にしてきた人間が、見るからに強靭なゴーレムを使い魔にしたとあっては心穏やかではいられない。
 ルイズがゆうゆうと自分の席に向かう間も、侮蔑の言葉を投げかける者はいなかった。そしてそれは授業が
始まるまで続いたのである。

(ああ、この感覚、たまらないわ!)
624重攻の使い魔 第2話『日常非日常』:2009/01/23(金) 00:21:32 ID:NKFfNzhG

 横目で、ルイズへの嫉妬を隠しきれていない様子のキュルケを眺めながら、ルイズがひとり優越感に浸って
いると、教室前方の扉が開き、中年の女性が入ってきた。女性はルイズのゴーレムを目にすると、軽く目を見
開いたが、特別驚くでもなく、ゆったりとした声で話し始める。

「皆さん。春の使い魔の召喚は大成功のようですね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い
 魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」

 ルイズは先程のシュヴルーズの反応から、自分が声を掛けられることを半ば確信していた。土のメイジであ
るシュヴルーズが、このゴーレムを気にしないはずがない。今か今かと、ルイズは思わずそわそわしてしまう。

「ミス・ヴァリエール。あなたは素晴らしい使い魔を召喚したようですね。土のメイジとして、あなたのゴー
 レムからはとても強い力を感じますよ」

 きた!とルイズは思わず声を上げそうになった。しかし長年鍛え続けた自制心により、つとめて冷静かつ謙
虚な態度で受け答えする。

「ありがとうございます、ミセス・シュヴルーズ。わたしもこのようなゴーレムを使い魔とすることができて、
 感動しております。とはいえ、まだまだ若輩の身、今後も先生方の素晴らしいご指導を賜りたい所存であります」
「まあ、素晴らしい心がけですね。皆さんもミス・ヴァリエールを見習うように」

 ルイズの謙遜な態度は、シュヴルーズの目には輝かしく映ったようで、上機嫌で授業を始める。しかし、周囲
の生徒にしてみれば、歯の浮くようなおべんちゃらを並べ立てているようにしか見えなかった。
 シュヴルーズがルイズよりの立場を取ってしまったため、どうにかルイズを茶化してやろうと考えていた生徒
の出鼻は完全に挫かれてしまった。
 ルイズにしてみれば全て計算ずくのことで、このゴーレムを学院内での地位を確立する足がかりとする算段で
あった。これからは自分を侮辱するものは許さない。いまに誰もが恐れ敬うメイジとなってみせる。ルイズの意
思は強固だった。

 授業はつつがなく進行し、錬金の実践の時間となった。シュヴルーズは教室を見回し、誰を指名するか迷って
いるように見える。しかし、彼女の中では誰を指名するかは決まっており、教室を見回したのは単なるポーズに
過ぎなかった。そしてシュヴルーズは意中の人物を指名する。

「そうですねミス・ヴァリエール、あなたにやってもらいましょう。この石をあなたが望む金属に変えてご覧なさい」
「え、わたしですか?」

 シュヴルーズがルイズに魔法の実験に指名したことに、教室は騒然となる。するとキュルケが立ち上がり、
シュヴルーズへと進言する。
625重攻の使い魔 第2話『日常非日常』:2009/01/23(金) 00:22:03 ID:NKFfNzhG

「あの……、ミセス・シュヴルーズはルイズを受け持つのは初めてですよね? できればルイズにやらせない方が
 いいと思うのですが……」
「何故ですか? ミス・ヴァリエールは高位のゴーレムを使い魔としたのです。錬金ぐらい行うのはわけない
 でしょう。しかも彼女は努力家だと他の先生方から聞いていますよ。さあ、気にしないでやってごらんなさい。
 大丈夫です。失敗したとしてもそれはマイナスにはならないのですからね」
「ルイズ、お願い。やめてちょうだい」

 事情を知っているキュルケが蒼白な顔で懇願するが、彼女の願いはルイズには届かなかった。

「分かりました。やります」

 ルイズが席を立ち教壇へと向かうと、ゴーレムも当然とばかりにルイズの後についていく。ここで成功させれば
自分の評価はまた一段と確実なものになる。ルイズとしても失敗する不安はあったが、ここで同級生達に畳み掛け
るのもいいかもしれない。なにより後ろに物静かに佇んでいる己の使い魔がルイズの心の支えとなっていた。

「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」

 ルイズは頷き、手にした杖を振り上げる。そして唇をきつく引き締め、錬金の呪文を唱え始める。生徒達は我先
へと机の下にもぐりこむが、ルイズにとってそのようなことはどうでもよかった。今ルイズの脳内にあるのは錬金
を成功させることだけ。
 呪文を唱え終え、杖を振り下ろしたその瞬間、ゴーレムは素早くルイズの前方に回りこんだ。と同時に机ごと石
が爆発した。爆風の直撃を受けたシュヴルーズは吹き飛ばされて黒板に叩きつけられた。その衝撃で意識を刈り取
られたようで、シュヴルーズは目を回しながら倒れこんだ。
 突然の爆発に他の生徒の使い魔は驚き、教室はにわかに恐慌状態へと陥っていた。使い魔が使い魔を飲み込み、
マンティコアのような大型の幻獣が暴れまわる。そこかしこから悲鳴と抗議の声が上がる。

「もうっ、だからルイズにやらせるなって言ったのよ!」
「頼むからヴァリエールを退学にしてくれ!」
「おおおお俺のラッキーがっ! ラッキーがヘビに食われちまったぁ!」

 この騒ぎの原因となったルイズはというと、特に擦り傷一つなくぴんぴんしていた。ゴーレムがとっさにルイズ
を庇ったからである。

「あんた、わたしを守ってくれたの?」

 ルイズの声にゴーレムは何の反応も見せなかった。しかし自分を守ってくれたことは間違いなく、錬金に失敗し
たというのに余り落ち込んではいなかった。今まで家族以外でルイズに救いの手を差し伸べてくれた者はおらず、
長い間孤立していたルイズにとって、この一件はゴーレムに更なる信頼を寄せるきっかけとなった。




 この後、ルイズは目を覚ましたシュヴルーズにこってりと絞られ、瓦礫の山となった教室の後片付けを言い渡され
た。しぶしぶとルイズは片付け始めるが、周到なことにゴーレムを使って楽をしないようにキュルケが監視役として
見張っている。
 ルイズの計画が実現する日はまだまだ遠いようだった。
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:22:35 ID:NKFfNzhG
以上です。前回、コトブキヤのプラモデルに触れていた方がおられましたが、このSSはそれに影響されて書くことに決めました。
スパロボKでのマーズ参戦にチャロン熱が再燃し、思わずプラモデルを買ってしまったのが原因です。ミーハー根性丸出しですいません。
もっとも私はへたれライデン乗りでしたが。Vレーザーなんて出せませんよっと。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:26:41 ID:Uy/a2Qx2
ライデンの人乙!!
俺もライデン乗って撃墜した回数より撃墜された回数の方が上だったぜ
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:31:06 ID:0h0SRm6s
重攻の使い魔の人乙!
こういう使い魔は大好きです
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:39:09 ID:c+3vtHED
ライデン良い奴だなw
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:45:58 ID:+zux74fS
ライデンの人乙
ギーシュがワルキューレ諸共レーザーで蒸発する図しか思い浮かばないだろ、じょうしk(ry
でもスパロボで登場するかはまだ分からないんだぜ・・・

それと、人修羅の人に質問…というか何というか
まとめページに載せようと思ったら50k超えていて一ページに載せられず
しかし51k程なので二分割にするにも微妙なのですが、どうしましょう?
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 00:57:13 ID:/ihT8J/0
性格が付けられてないキャラって
勝手に性格考えていいのかな
それとも定番の性格ってあるのかな
632重攻の中身:2009/01/23(金) 01:00:56 ID:NKFfNzhG
すいませんちょっとだけ補足しておきます。このライデンは特に性格というものは持っていません。
契約の儀式によって、ルイズが最優先保護対象となっただけで、そこに感情はありません。
このSSは基本的にルイズ視点なので、そのあたりが説明不足になるかもしれませんが、できればご容赦下さい。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 01:02:41 ID:+mSR/Mwy
バイパー乗りとしたらライデンレーザーはマジトラウマ
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 01:05:22 ID:HHLGx0Ex
>>631
そもそも呼ばないことが吉。
自重できる自信があるなら頑張れ
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 01:13:07 ID:nvTPPheU
重攻の人乙

ギーシュの決闘にレーザー御披露目は勿体無い気がするw

グランドボムで充分だと思うw
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 01:18:11 ID:/ihT8J/0
>>634
自重ですか……頑張ってみます
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 02:54:13 ID:mT8y2On4
>>636
人修羅の人参照
かなり、自重してる
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 03:24:16 ID:I/2nWkfa
>>636
速い話が作者の自己投入キャラにならんよう自重せいよってことね、多分
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 03:58:07 ID:5AlUZK2a
ども、亀レス失礼します(_ _)

ライデン>>画像リンクが切れてる上に、ググっても型番が・・・・
スパロボのR-2パワードみたいなヤツですよね?確か

人修羅>>乙です
>>486氏の意見に乗っかる訳では無いんですけど、母上殿でも無理では?
かなり過大に見ても、どっこい手傷レベルかと;
ED後なら、無防備な状態に先制で必中不可避の焦熱or凍結系の一発打ち込んでも耐えそうですし;
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 04:50:37 ID:hDNhGAGF
ゴーストステップ・ゼロ シーン09
wiki登録お疲れ様です。修正によりつっかからずに読めるようになりました。
641edf2 ◆/dpP/JBpl. :2009/01/23(金) 06:32:49 ID:dQWh9nja
小ネタでThe地球防衛軍2の一般陸戦兵召喚を投下したいんだが、
他の人の予約とかある?
なかったら10分後位に投下開始。
たぶん18レス使用。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 06:44:08 ID:24UQ5ssQ
容量は大丈夫なのか?
643edf2 ◆/dpP/JBpl. :2009/01/23(金) 06:50:12 ID:dQWh9nja
>>641
あ!スレの容量か。
テキストで33KBだから、ちょうど埋まるくらいだと思う。
でもスレ立てたことないから480踏むと困る。
立ってからにしようか?
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 06:53:40 ID:c+3vtHED
さ、サンダー!
ってやつだっけ?
645edf2 ◆/dpP/JBpl. :2009/01/23(金) 07:02:52 ID:dQWh9nja
>>644
初代の迷台詞。

ギリギリなので避難所の練習用スレに投下します。
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 09:27:50 ID:jGY6gGID
いつからこのスレは妄想を書いちゃいけなくなったの?
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:14:23 ID:MsA5O0Sx
原作至上主義者達がガタガタさわぐから
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:15:30 ID:WxvprfCP
変なこと聞くけど十巻以上の作品の心情描写が殆どないレギュラーキャラで
もしSSを投下したら読む人によっては原作通りにも性格改悪にも受け取れるキャラってどう?
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:32:26 ID:wrq4CNfe
>>648
他人の目を気にしすぎて投下できなくなるほうが損だと思うんだぜ。
男は度胸、何でも(ry
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 10:59:31 ID:6uDTajun
>>646
妄想は避難所の毒吐きスレでやるのが最近の流行らしいよ
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 11:21:15 ID:FgxozyEQ
このタイミングなら少し前の投下のレスをしても怒られないはず!
ゼロの花嫁面白かった。これからも頑張ってくりゃーせ!!
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 12:37:36 ID:FqMJmKVm
元々本スレの妄想は職人を動かす原動力であり、ネタを使って貰ってるだけでありがたいよ!
盗作云々いうやつは本スレでネタだししないで作品にしてだせ!!
今度から本スレで出した妄想は職人に使われる可能性有りと注意書きを入れるべきか?
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 12:41:46 ID:yC1U72VX
つーか使って欲しいから書き込んでるんだと思ったが?
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 12:43:59 ID:ezy4ixnx
キャラについて、名前のないこと、背景のないこと、は別。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 13:14:38 ID:Wigv2Pm9
ある程度の構想が練られているなら、避難所のスレに行った方が喜ばれるだろうし、
似たような構想を練っていた人のネタ潰しにもならんから良いじゃないかなあ何て思ったりする。
ここに晒した妄想に似てるから『盗作だあ!』何て言う人は放って置けば良いけど、
作者さん側が被るのを嫌うのは放って置けないじゃない?
感想とかで展開を考察するのを自重するのも、それを嫌う作者さんが居たり、
無理に外そうとして微妙になったりするからって聞いて納得した。


個人的には、フルココからオルカ召喚!とかバーツ召喚してガンダ効果で握力復活!しかし、一刀では無力wとか
そんなレスから始まり、ちょろっとレスが付くと嬉しい
つーか、誰かフルココネタに乗っかってくれ!


>>648
そこで避難所ですよ!
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 13:48:09 ID:WRkexPze
>>655
展開予想とかは、そういうのもあったかとかアイディアが閃く場合もあるし、作者によりけりだから一概に悪いとは言えないが、嫌う方もいるので避けたほうが無難ではあるね。

>つーか、誰かフルココネタに乗っかってくれ!
食わない生き物は殺さないんですね。
ガンダになっても剣一本じゃろくに戦えなさそうです。
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 14:15:16 ID:/VUt3Cy9
デルフ一本で無力。シュペー卿の剣で無双に。折れて一刀になり無力に。
二本目が壊れたり無くなったり、色々イベントをこなしていくんだろうな。
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 14:17:55 ID:6obJtK0G
昔拾った目や鼻や口がある卵形の石を大切にするウェールズ。
マジックアイテムでもないのに表面にある目玉は此方を見つめ返して来たりするのが不思議でならない。
勝ち目のない最後の戦い、彼はそれを首から下げてお守りがわりにしていた。

ウェールズが普通のベヘリットを拾ってました。
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 14:29:13 ID:yC1U72VX
ゼロ魔キャラで使徒相手に勝てそうなのって誰かいるか?
第一巻最初で出てきたような雑魚クラスならスクウェアやトライアングルのメイジなら倒せるだろうと思うけど
ナメクジ伯爵や音速で飛ぶ少女使徒のような、異常にでかいもしくは音速並みのスピードを誇る奴だと
ルイズママンでもかなり手こずりそうだ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 14:58:59 ID:BCCMgTSI
ワイアルドは本体に気付かれたら余裕で殺されそう
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:02:49 ID:IjWVS8bV
むしろベヘリットはワルドに似合いそうだ
ゴッドハンドにルイズを捧げろ!と迫られるワルド
迷い悩み苦しみながら「ルイズを・・・・・捧げます」
虚無の魔法でゴッドハンドに、そして運命に逆らい挑むルイズ・・・・・・

捧げたのか、あんたは!?捧げちまったのか!
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:06:23 ID:yC1U72VX
ワルドにとってルイズは捧げる対象にはならんでしょ
あれ最も大切な存在でないとキャンセルされるし
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:09:39 ID:IjWVS8bV
>>662
「じゃあ・・・・・・このママンの絵姿の入ったロケットを」
「あたしは絵以下か!?」
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:11:29 ID:yC1U72VX
>>663
吹いたw
そっちの方がゴッドハンド達が受け付けてくれる可能性が高いのが怖いwww
(人でなくても良いっぽいし)
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:12:03 ID:Wigv2Pm9
つーか、ワルドさんって捧げられる程に大切なモノが無いような……
ゴッドハンドも困っちゃうね
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:14:42 ID:yC1U72VX
敵側の連中は既にその大切な存在を失ってトチ狂ってる連中が多いしね
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:20:32 ID:565RjnMI
ルイズ「私の…大切な…バストを捧げます!」
ボイド「いや、無いモンは捧げられんし」
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:24:26 ID:6obJtK0G
>>666
逆に考えると「捧げた後に」トチ狂ったのだと。
虚無の力も併用してガニシュカ並の力を得たジョゼフ(シャルル捧げた)は狂気まっしぐら

なんか、ここまでやると勝ち目が……。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:31:21 ID:hSRpyUXv
ゼロ魔のキャラは何かしら心に問題を抱えている
つまりハルケギニアには喪黒福造が必要なんだ
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:32:08 ID:+R5w5tOU
なんか時期的にアレかもしれないけど
自分もデビルメイクライ4のネロが召喚される話投下していい?
あ、長編ね。

OKなら10分後ぐらいに投下します。
タイトルは「Zero May Cry」です。
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:33:48 ID:Wigv2Pm9
平賀才人こと「落とし神」が原作通りに落としまくる!
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:34:17 ID:IjWVS8bV
支援するものであります
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:34:35 ID:Wigv2Pm9
>>670
容量はどう?
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:36:51 ID:+R5w5tOU
>>673
多分大丈夫かと
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 15:39:18 ID:Wigv2Pm9
ならば、ちょこちょこ支援させて頂きます
676670:2009/01/23(金) 15:46:19 ID:+R5w5tOU
すいません、ちょっと見直したら本文に不備が結構あって……(汗
投下はまた今度にさせてください。マジですんません
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:07:29 ID:7H85+L5u
微妙な容量だなー。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:14:13 ID:zv6lSeRZ
残り30kbか。 少し長めのSSがギリギリ投下できるかできないか位か
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:34:00 ID:qStU6ucF
適当に雑談しててもなかなか埋まらない位でもある
本当に微妙だな…
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:38:15 ID:vsm59iuR
心の奮えという感じにロードス島のオルソン召喚とか…
ルーンの力とデルフがあれば狂化もコントロールできるんじゃないかと思った。
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:45:54 ID:hSRpyUXv
>>679
最近は水を差す輩もいるしね
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:47:53 ID:df/CVO6Y
>>681
ポチャ―ン
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:50:14 ID:WRkexPze
>>682
見えた、水の一滴!!
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:53:18 ID:qStU6ucF
>>683
何を開眼したんだ
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:54:42 ID:FEF/zke1
明鏡止水
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 16:58:53 ID:XBgyR7R9
焼肉定食
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 17:02:03 ID:qStU6ucF
一日一膳
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 17:08:24 ID:9h9dRjXu
>>680
バーサーカーは使い捨てだから強いんじゃない?
そもそもオルソンは自分の意思で暴走させてたし、ルーンの効果で超暴走しそうだが
オルソンの場合はメイジより精霊使いのエルフの方がビビりそうだけど
689名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 17:09:14 ID:kZ+u8fsO

 短編ドラえもん ワルドの

『ぼ く の 生 ま れ た 日』
690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 17:11:32 ID:Pb+caiVw
釘宮理恵
691ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:04:31 ID:JqyPI08d
他に予約がなければゼロの花嫁12話19:10に投下します
13kbと今回も短めですので今スレで収まると思います
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:05:49 ID:vpvCuR7a
そんじゃ田村ゆかり
今般若って言った奴出てこいよ・・・から始まる物語
693ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:10:10 ID:JqyPI08d
ゼロの花嫁12話「品評会EXステージ」



ルイズが地獄を見た日から、半月程日々が流れた。
真っ白な灰となり、風が吹けば飛び散ってしまいそうな程にか細い存在と成り果てていたルイズも、既に何時もの調子を取り戻している。
宮廷は王位継承で連日大賑わい、ルイズ達の罪状も恩赦で無かった事に。
晴れ晴れした気分になれるはずのそんな日々を、より満ち足りた物にするイベントがルイズ達を待っていた。

「私達に芸を披露しろと?」
ルイズが呆気に取られた顔で問い返すと、コルベールは満面の笑みで頷いた。
「ああ、この間の品評会が特に好評でね、あれを王位継承祭の時に披露して欲しいと宮廷から打診が来たんだ。光栄な事だ、是非頑張ってくれたまえ」
その宮廷を散々騒がせた当人達に頼む事じゃないのでは。とか思ったが口にはしないルイズ。
上位三人、タバサとキュルケとルイズの使い魔を王都特設ステージで披露するという趣旨だ。
派手すぎるイベントはそもそも好まないタバサは無表情のまま、拒否オーラを出している。
キュルケは評価された事自体は嬉しいようで、面倒そうにしつつも悪い気はしてない模様。
そしてルイズ。声をかけてもらったのは嬉しいのだが、宮廷で目立つのはもう避けたいと思っていた矢先であるので、返答に困る。
「色々あったけど、それも含めての依頼だ。気にせず全力で披露してくるといい」
コルベールのそんな勧め言葉に、ルイズ達は頷くしかなかった。



「ふれいむうううううううううう!!」
泡を噴きながらぴくぴくと震える愛する使い魔を抱きかかえながらキュルケが絶叫する。
すぐ隣ではタバサの使い魔シルフィードが、同様に痙攣しながら引っくり返っていた。
ルイズ、キュルケ、タバサの三人はそれぞれの使い魔を伴い早めに会場入りしていた。
引率のコルベールが王室付きの医師を呼んできて、倒れた二体の使い魔の症状を見てもらうと、何らかの薬物中毒であるとの事。
すぐに治療した為大事には至らなかったが、魔法を持ってしても回復には丸一日かかるそうだ。
ひとしきり憤慨した後、さてどうするかとなった。
使い魔抜きでは芸の披露など出来ない。
コルベールは運営委員会に事情の説明をして、今回は出場を見合わせるといった旨の発言をするが、三人は納得しなかった。
あれから更に練習を重ねて練度を上げてきた珠玉の芸である。
何より、これが事故ではなく誰かの故意によって引き起こされた事態であると思われた事が四人を頑なにしていた。
ルイズは額に皺を寄せっぱなしである。
「冗談じゃ無いわ。何処の何方様か知らないけど、そんなに私達の芸が嫌だっていうんなら、絶対にやりきってあげる」
完全に戦闘体勢のキュルケ。
「犯人消し炭に変えるのは後よ。今はステージを成功させて奴の鼻を明かしてやるわ」
タバサもまた薬物の使用が余程気に入らなかったのか、顔に出さず激怒していた。
「……許さない」
誰一人止まってくれそうにない。それ以前にコルベールは剣振り回しながら犯人探しに行こうとする燦を止めるので手一杯である。
コルベール抜きのまま、どうするかの相談は続く。
たまたまその場に居合わせてしまった不幸な王室付き医師も巻き込んで、何とかステージのアイディアは纏まる。
細かい詰めに入る頃にはようやく燦も落ち着いてくれ、コルベールと燦も交えて突貫作業の準備が始った。



「な、何とか間に合ったわね」
肩で息をしながらルイズがそう呟くと、キュルケも壁にもたれかかって荒い息を吐く。
「間に合ったっていうのコレ? いやそれでももう、やるしかないんだけどさ」
「大丈夫よ、きっとウケるとは思うわ。というかこれだけやってウケ無かったら私暴れるわよ」
694ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:10:53 ID:JqyPI08d
「そんな元気が残ってればね」
タバサと燦の方もどうやら終わったらしい。
最後の打ち合わせを終えると、コルベールは舞台天井に登ってスタンバイ。
「……何で私もココに居るのよ」
お祭りという事で遊びに来ていたモンモランシーが何故か付帯袖に居る。
ぶちぶち文句を言うモンモランシーを、逃げたら燃やすの一言で連れてきたキュルケはぴしゃっと言い放つ。
「うっさい、ギーシュはお兄さんと一緒なんでしょ? だったらどうせ暇なんだから付き合いなさい」
「もう充分付き合ってあげたでしょ! 何で私が大工仕事なんてしなきゃならないのよ……」
ぐちゃぐちゃ言った所で、既に会場は満員御礼。
前席の貴族席はもとより、外野席に当たる平民用の席も立ち見が出る程の大賑わいである。
モット伯の件は宮廷のみならず平民達の間でも有名で、そんな連中が一体何をやらかしてくれるのかと皆興味津々なのである。
モンモランシーもここまで付き合ってしまった為、引っ込みがつかなくなってしまっているのだ。

大きく深呼吸一つ。
ルイズは舞台袖で皆に気合を入れる。
「行くわよ!」
まずはルイズとキュルケの二人がステージへ出る。
この二人こそモット伯晒し者事件の主犯である。自己紹介が済むと後席の平民達がわっと沸く。
平民を守って悪徳貴族を懲らしめた、そう街中に広まっているせいかエライ人気である。
思わぬ好感触に、二人は気をよくしつつ芸の準備に入る。
二人が引っ張ってきたのは巨大な箱である。
下に車輪がついているおかげで、スムーズな移動が可能なそれを観客達の前で一回転させ、タネも仕掛けも無い事を示す。
何をするつもりかと観客達が見守る中、ルイズがその箱の中に入ってしまう。
箱の上部にある穴から首を出し、準備完了。
箱の大きさはちょうどルイズの体全体がぴったり収まる大きさで、中で身動きする余裕もほとんどない。
そこでキュルケが取り出だしたのは一本の剣。
ルイズとキュルケ、二人の視線が絡み合う。
「い、いいわよっ!」
「おしっ、遠慮無しでいくから覚悟決めなさい」

ぶすーーーーーーーーっ!!

宣言通り遠慮呵責無しに、深々と箱に剣を突き刺した。
箱の上部から飛び出しているルイズの顔が、見るも無残に変形する。
観客席、特に貴族の多い前席からは小さい悲鳴が上がるが、すぐにルイズがにこっと笑ったおかげで皆が安堵する。
もちろん芸はこれで終わりではない。
アシスタントモンモランシーが、舞台袖から剣を十本、重そうにしながら持って来る。
「ちょ! ちょっとキュルケ!」
洒落にならぬ気配を感じ取ったルイズは、顔中から嫌な汗が垂れるのを堪えながらキュルケに抗議する。
「一本や二本じゃ誰も納得しないでしょ」
「だったら最初っから言っときなさいよ!」
「何言ってるの。最初に言ったらアンタ嫌がったでしょうに」
小声でぼそぼそと言い合いながらも、キュルケは剣を受け取り、早々に構える。
「いや、それ死ぬから! 本気で死んじゃうってばあああああああっ!」
「舞台袖に王宮付き医師揃えてるんだから、即死以外は何とかするわよ」
「人事だと思って……ぎゃあああああああああああ!!」
ルイズの悲鳴に重なるように、キュルケはもうこれでもかという勢いでぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすと剣を突き刺していく。
都度貴族のご息女とも思えぬ、もぬすごい顔になるルイズ。

そう、この手品。タネも仕掛けも本当に無いのである。
695ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:11:24 ID:JqyPI08d
気合で耐えて、ステージが終わるなり舞台袖に控えている王宮付きの優秀な医師達に魔法で治してもらうつもりなのだ。
箱の底板から赤黒い何かがじわっと染み出てくる。
上部の板にはルイズが吐き出した血が放射状に飛び散り、舞台上まで血しぶきが舞っている。
キュルケは全ての剣を突き刺し終わると、一礼をしようとするが、箱を振り返ってこんこんと叩き、ルイズにも礼をするよう促す。
当然、剣が十一本も刺さってるルイズはそれどころではない。
頭がぐでーっと穴の縁によりかかるように寝転び、反応すら出来ない。
それを見たキュルケは肩を竦めて見せ、観客達に大きく礼をして締めた。

観客達の大爆笑を背にステージ袖まで箱のままルイズを引っ張っていく。
誰も大貴族ヴァリエール家の娘が、本気で自分に剣刺してるなんて思ってもみないのだ。
奥にはサイレントの魔法で音が外に漏れぬようにしてある、簡易手術室が用意されていた。
「早く! 顔が土気色になってきてるわ!」
医師達は呆れすぎて文句を言う気にもならないらしい。
「……すげぇ……本気でやりやがった……」
「馬鹿! ぼさっとしてる場合か! すぐに手術にかかるぞ! バカバカしいとか思うなよ!
 むしろその勇気を称えろ! そうとでも思わなきゃ治してやる気になんてなれんからな!」
「急所外せばいいってもんでもないだろ……うっわ、ひでぇなこりゃ。この出血でまだ息があるとかそれが既に奇跡だろ」

次なるはキュルケの出番である。
フレイムがやる予定であった火の輪くぐりをキュルケ自身で行うのだ。
流石に品評会の時のような精度を維持しつつアクションは無理なので、火の輪はコルベール作成の鉄の棒に藁を巻いて油を浸し、火を付けるようになっている。
が、実際に火をつけてみたモンモランシーは確信する。
『……こんなのくぐったら自分も燃えるわよ、絶対』
コルベールが油の量を誤ったのか、凄まじい勢いで燃え盛る炎。
実はこれ、自分だけ痛いのが許せないと思ったルイズが、油の量を倍に増やしていたのだ。
曰く「このぐらいスリリングな方がきっと盛り上がるわ! キュルケも私の配慮にきっと感謝するわね!」だそうである。
モンモランシーが舞台袖に戻ってくると、キュルケが水を頭から被っている所であった。
この時体に纏わり付いた水を、モンモランシーとタバサが魔法で操り、火からキュルケを守るというのがこの芸のタネであった。
「キュルケ、多分無理」
炎の勢いを見たタバサは即断する。
「何言ってるのよ! 今更引っ込みつかないでしょ! 二人共頼りにしてるんだから頑張ってよね!」
モンモランシーとタバサは顔を見合わせる。
「……あの氷の矢に耐えたキュルケだし、きっといけるわよね?」
「耐えられるとは思う。患者が一人増えるだろうけど」
三つ程用意されていた火の輪は、その全てが紅蓮の炎で燃え上がっている。
キュルケは、舞台袖から走り出して行った。
モンモランシーとタバサの目には、その背中がうすらぼんやりと透けて見えたような気がした。

いきなり飛び出してきたキュルケは、まず一つ目の火の輪に頭から飛び込んでくぐり抜けると、すぐに立ち上がって観客達に礼をする。
にこやかに笑うキュルケであったが、内心それ所ではなかった。
『何よこれ! 滅茶苦茶熱いじゃない! どうなって……』
一応危ないからと厚手の服を用意していたのだが、その随所から火が上がっている。
水の幕なぞ一瞬で蒸発してしまった模様。
『たばさもんもらんしいいいいいいいいいい!!』
一度引っ込んで再度水の魔法を、そう思ったのだが、観客達は先の芸と同じ芸風かと大笑いで迎えている。
既に引っ込みはつかない。
『ああもうっ! やればいいんでしょやれば!』
豊満な肉体を誇るキュルケの衣服が、炎で焼け焦げ、瑞々しい皮膚が外に晒される。
服の端から燃え尽きていく形になっているので、長めのスカートの端から少しづつ艶やかな太ももが姿を現す。
696ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:11:59 ID:JqyPI08d
アクションの大きさもあって、絶対領域は確実に失われていく。
上着は端からではなく、はち切れんばかりに漲った胸部の上から黒ずみ、下の柔肌を露出させていく。
アクションのみではなく、得意の扇情的な仕草を交え、時に淫らに、時に激しく動いて観客達に応える。
キュルケはもう色んな意味でヤケになっていた。
きっちり台座に固定してあった火の輪を素手で掴んで、逆上がりまでしてみせる。
のんびり火の輪の中に座り込みながら欠伸をするなんて真似までやったキュルケは、最後にステージの前に出て会釈をした。
その頃にはもう全身が燃え盛っており、余りに派手な演出は、観客を存分に驚かせ、満足させてくれた。

ロクに前も見えない状態で何とか舞台袖に引っ込み、簡易手術室に駆け込むと、すぐさま全身に水をぶっ掛けられた。
「馬鹿か!? こいつら揃いも揃って発狂してるのか!?」
「普通熱くて動けなくなるだろ! 何で平気な顔してアクションとかやってられんだよ! おかしいだろコイツ!」
信じられぬといった顔の医師達を前に、キュルケはか細い声で言い放つ。
「……き、きあいとこんじょーよ……」
手を上げ、親指立てようとしたが、指が半ばから炭化していて動いてくれなかった。
「アホかあああああああ!! 気合も根性も使いどころ間違えすぎだろ! 誰が得すんだこれ! いやマジで教えてくれって!」
「何という病人。コイツが将来どうなっちまうのか、不安すぎて笑いが止まらん」
ちなみに魔法が無ければ間違いなく死亡である。
いかに火に慣れているとはいえ、全身に二度から三度の熱傷とか医師が匙を投げても誰も責めないレベルだ。

キュルケのステージ直後、大慌てで舞台の天井から降りてきたコルベールに、タバサは冷静に言った。
「あれならまだ治療が間に合う。ミスタ・コルベールがもしもの為に医療スタッフをと言った時、二人が反対しない所か諸手を挙げて賛成した理由をもっと考えておくべきだった……」
「しかしっ!」
「何を言ってももう遅い。次のステージは安全だから安心して」
キュルケもルイズも、この芸にはタネがあるとコルベール、タバサ、燦を騙くらかしていた訳で。
既にステージもラスト、今更中止した所で状況は変わらない。
「説教は私もする。とにかくこれを終わらせないと」
との言葉に渋々コルベールは従った。

最後は燦とタバサのステージだ。
直径3メイルを越える巨大な水槽を、タバサと燦の二人でえっちらおっちらとステージに引っ張り出していく。
コルベールは天井で待機。
しかる後、モンモランシーが人間サイズの箱を引っ張り出してくる。
箱の上部にはロープがついており、その上端は天井裏の簡易な滑車に繋がっていて、ハンドルはコルベールが握っていた。
極めて単純な芸だ。
箱の中に燦が入り、滑車を使って水槽の中に落とす。
箱には穴が空いており、観客の見ている前で箱の中へ水が入っていく。
水槽は箱より高い水位である為、水は箱の中を満たしてしまい、中の人間は溺れてしまうだろう。
が、中に居るのは人魚の燦だ。水を被ると人魚になってしまうが、溺れるという心配だけはない。
確実に中の人間は溺れ死ぬだろうという所まで放置した後、箱を引き上げ、タバサが魔法の布と言って乾いたタオルを箱の上から差し入れる。
それで水気を拭いた燦は人に戻り、扉を開ければ万事おーけいという訳だ。

最後の最後でまともな芸、これを見事に成功させステージで締めくくった二人は、協力者二人と共にステージ前面に並ぶ。
すぐに舞台袖からタンカに乗せられたままのルイズとキュルケも現れる。
それを見た観客達の爆笑を受けながら、六人は礼をし、ステージを終えた。
「ねえキュルケ。何かこう不条理じゃないこれ?」
「理不尽よね。私達だけこんな目に遭ってるのって」
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:12:44 ID:vpvCuR7a
しえん
698ゼロの花嫁:2009/01/23(金) 19:12:54 ID:JqyPI08d
どう考えても自業自得な二人の愚痴を聞いてくれる者は誰も居なかった。



後日、王都トリステインにとある噂が流れた。
例のステージ、あれ実は本当に大怪我を負っていたという噂だ。
出所も確かであったその噂は、しかし一笑に付された。
緊迫感もあり、スリリングなステージであった事は認めるが、まさか本当に刺したり燃やしたりする馬鹿が居るわけがない。
ましてや相手は貴族だ。そんな愚かな行為をどうしてしなければならないのか。
手品の世界では、まさか、という事を本当にやるからこそ客は驚き喜んでくれるという考えがある。
正にそれを地で行く展開であった。
命を賭した決死の芸は、長くトリステイン貴族に限らず平民にまで語り継がれる素晴らしいステージとなったのであった。
当然その後も出演依頼が殺到したのだが、生徒達に伝わる前に学園側が断固としてこれを拒否した。
無理からぬ事であろう。



以上です。次回は少し長いお話になる予定ですが、それでも一週間以内を自らの締め切りとして頑張ります
699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:20:44 ID:zv6lSeRZ
乙!


んじゃ 次スレ立ててくる
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:21:03 ID:Md/hstP4
                                          ○________
                               埋め          |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
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         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:21:30 ID:Md/hstP4
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
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      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
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702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:21:58 ID:Md/hstP4
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
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703名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/23(金) 19:22:02 ID:xLAAQFTC
まだだボケ
704名無しさん@お腹いっぱい。
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