あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part205

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part204
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231760546/



まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:28:30 ID:lK5tEnRC
乙!
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:29:55 ID:o3gbbkAm
>1乙なんだぜ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:32:06 ID:fKRYN5CU
http://www35.atwiki.jp/anozero/pages/5957.html

使い魔の左手、悪魔の右手-01

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作品内容に別作品からの盗用疑惑がかけられているため、一時的に掲載を取りやめております
詳細は避難所の運営議論スレ5,>>888->>907を参照。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:45:06 ID:0uURXwgM
1乙!!
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:50:30 ID:MA+52E4f
>>1

>>4死ね
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:52:04 ID:alFyD/03
スレを立てた>>1が相手なら覇王翔吼乙を使わざるを得ない!(AA略)
8デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 22:54:41 ID:lK5tEnRC
地味に投下予告。

今回はちょっとした声優ネタあり
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 22:56:04 ID:MO/SB5b+
>>1

>>7
シエスタ・サカザキさん乙
10デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 22:59:57 ID:lK5tEnRC
第三節「デジタライジング」

時は、十数分前まで遡る。
まだ右手が麻痺しているアルファモンのことを心配しながら、ルイズは昼食を食べていた。

一方、数名の男子生徒が談笑していた。
何のことは無い、ギーシュが誰と付き合っているかで話し合っているだけ。
当のギーシュは、巧妙にはぐらかす。
が、タイミングよく、彼のポケットから香水の入ったビンが落ちた。
そして運悪くシエスタがそれを拾ってしまう。

「あの、これ、落としました?」

シエスタが聞くが、もちろんギーシュは無視する。
しかし、結局他の男子生徒たちがそれを見て、「モンモランシーが作った香水じゃないか」と騒ぎ出し、原作どおりに二股がバレた。
原作とは違い火攻めと水攻めを食らって、瀕死になるギーシュ。

「さようなら、ギーシュ様……」
「さよなら! ギーシュ!」

ギーシュはズタボロの状態でケティとモンモランシーから別れの言葉を吐きかけられた。
そして、起き上がったギーシュはフラレた腹いせにシエスタに当たり始めたのだ。
それを見たルイズはギーシュを咎め、言い合いに発展して……現在に至る。
杖も兼ねた薔薇の造花を手に、ギーシュはキザな仕草でポーズを決めた。

「諸君、決闘だ! ルイズ、僕は魔法で戦う。君では勝負になら無いと思うけどね……」
「……ひょっとして、私が怖いの?」

ルイズの挑発に、瞬時に頭に血が上ったギーシュは、一体のゴーレムを錬成する。
女性を模った青銅のゴーレムで、その手にはレイピアが握られていた。

「行け! ワルキューレ!」

自分目掛けてレイピアをかざして突進するワルキューレを見ながら、ルイズは思い出した。
「君が自棄になったら、使い魔である俺はどうすればいいんだ!?」、アルファモンの悲痛な訴えを。
そして、決闘を申し込まれた際に、一度断った際のギーシュの一言も。
「やれやれ、君の従者も大変だね。あんな重そうな鎧を着せられた挙句……」、全部言い終わる前に金的をかまし、黙らせたついでで決闘に応じたが。
ワルキューレをギリギリまでひきつけ……、ルイズは紙一重でレイピアでの一突きをかわし、杖をワルキューレの顔面に突きつけ、吼える。

「錬金!」

ワルキューレの頭が吹き飛び、残りの部分もその衝撃で砕けた。
呆然としている隙を突き、ルイズは一気にギーシュとの距離を詰める。
ギーシュが我に帰った頃には、既にルイズは彼の眼前に杖を突きつけ、降伏を勧告した。

「……さっきの人形の二の舞になりたい?」
「ぼ、僕の負けだ……」

もし、抵抗の意思を見せれば、ルイズは迷うことなく失敗魔法を炸裂させる、彼女の目を見たギーシュはそれを悟った。
魔法が使えないルイズが、あっさりギーシュに勝ったのを見て、観衆がざわめく。
素直に感心したり驚愕する者もいれば、呆れた事にそれを良しとしない者もいた。
その中の一人が、ルイズの勝利に異議を唱え、決闘を申し込む。

「『ゼロの』ルイズが勝つなんて認められるか! 今度は僕が決闘を申し込む!」

彼のその一言に、ルイズの勝利を認められない者たちが一斉に決闘を申し込み、それを見たルイズは吼えた。

「面倒くさいわね! そんなに勝負したいなら、みんなまとめて掛かって来なさい!!」
11デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 23:04:40 ID:lK5tEnRC
厨房では、ルイズとギーシュが決闘することと、そうなった事情を聞いたアルファモンは、決闘がどこで行われるのか聞き、そこに向かおうとしてマルトーに止められる。
アルファモンの身を案じてのことであった。

「あんた、たかが貴族一人のために死にに行くのか!?」
「……俺は死なない。それ以前に、俺はルイズの使い魔だ!」
「それだけの理由で……」
「ルイズは、俺のことを「優しい」と言ってくれた。それも理由だ!」

マルトーを振り払い、アルファモンはヴェストリの広場へと向かう。
ただ、ルイズ一人のために。


アルファモンがたどり着いた際に見たのは、ズタボロになって尚立ち上がっているルイズの姿。
制服はボロボロ、所々出血し、顔は惨たらしいまでにアザだらけ、挙句の果てに右腕は筋を斬られたらしく、ただ垂れ下がっているだけであった。
それでもルイズは闘志を失わず、更にアルファモンの姿を見て、微笑みかける。

「どうしたの、アルファモン?」

ボロボロになったルイズの姿を見て、アルファモンは加勢しようとするが、ルイズの目で止められる。
「手助けはいらないわ、私の決闘だから」、目がそう言っていた。
周りを囲む、決闘相手たちの魔法の一斉射撃を必死に避けるルイズ。
それを口惜しそうに見ているギーシュを見て、何があったのかを問い質した。

「一体何があったんだ!?」
「彼女が僕に勝ったのが認められいからって……、あいつらが一斉に決闘を申し込んだんだ。それに怒ったルイズがまとめて掛かって来いって言ったから一斉に……」

それを聞いたアルファモンは心の中で毒づく。
これのどこが決闘なんだ、と。
すでに体力が底を突いていたルイズは、一瞬よろめく。
その隙を突き、生徒の一人がファイアーボールを放ち、避けられないと判断したルイズは、動かなくなった右腕を盾にしてそれを防いだ。
もちろん、右腕は焼け爛れ、所々炭化する。

「○×△□〜〜〜〜!!」

余りの激痛に声になっていない呻き声を上げながらも、ルイズは闘志を失わない。
が、見ている方は限界であった。
再びルイズ目掛けて放たれたファイアーボールを、アルファモンは前方に立ち塞がり、ファイアーボールを代わりに受ける。
生徒たちはファイアーボールが直撃しても傷一つついていないアルファモンの姿に、ルイズはいきなりアルファモンが割って入ったことに驚愕した。

「アルファモン、これは私の決闘よ!」
「使い魔は、主人と一心同体だと君は言った。ならば、俺の決闘でもある!」

アルファモンは眼前にいる、ルイズの右腕を焼いた生徒に狙いを定める。
それと同時にアルファインフォースを発動させ、瞬時にその生徒を滅多打ちにし、止めにがら空きのアゴを蹴り上げた。
もちろん、アルファモン以外は最後の一撃しか見えない。
いきなり四肢があらぬ方向に曲がったかと思うと、アゴを蹴り上げられた衝撃を宙を舞ったその生徒の姿に、他の決闘相手たちは唖然となる。
そして、彼らにアルファモンは事実上の死刑宣告をした。

「そっちが集団で挑んだんだ、卑怯とか言うなよ!」
12デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 23:07:08 ID:lK5tEnRC
ギーシュは我が眼を疑った。
アルファモンのその常識外れの強さに。

「デジタライズ・オブ・ソウル!」

アルファモンが放った、破壊力を持った光の奔流が、ゴーレムをあっと言う間に塵に還す。
その衝撃で、ゴーレムを錬成した生徒が無残に吹き飛ばされた。

「スティング!」
「ぶあ!」

次に、別の生徒の後ろに回り掛け声と共に、その延髄に指を突き刺す。
穴こそ開きはしなかったが、延髄に食らったダメージでその生徒は悲鳴を上げた直後に泡を吹いて気絶する。
アルファモンの強さを見て、決闘を挑まなかった他の生徒たちは、何時の間にかアルファモンを応援し始めていた。
ルイズは自分の使い魔の強さに見とれていて気付かなかった、決闘相手の一人である「風上の」マリコルヌが自分の背後に回り、『ブレイド』によって剣と化した杖を振り下ろさんとしていることに。
そして、ギーシュはたまたまルイズの方に視線を移した際にそれに気付き、一心不乱に駆け出した。

「ゼロのルイズのクセにぃ!」

マリコルヌの声に気付き、振り向こうとした直後に、ルイズは何者かに突き飛ばされた。
ルイズが、元いた地点に目を向けると、そこには剣と化した杖を持ったまま硬直するマリコルヌと、左目を縦一文字に斬られ血を流すギーシュの姿が……。

「『ブレイド』!」
「……へ!?」

みんなが唖然とする中、ギーシュはブレイドを発動させ、魔力の刃をマリコルヌの右腕に突き刺す。
余りのことに、激痛を感じながらもマリコルヌはただ口を開閉するしかなかった。
そして、ギーシュはやれやれと言った表情で吐き捨てる。

「君は無粋なんだよ、マリコルヌ」

ブレイドを解除し、ギーシュはルイズの元へ駆け寄る。
斬られた左目からはまだ血が流れ、激痛が走っていたが、ギーシュはそれすら耐え抜く。

「ルイズ、右腕は……大丈夫じゃないみたいだね」
「あんたこそ、目をやられているじゃないの……」

彼女の左腕を肩に回し、ルイズを抱え起こすギーシュ。
しかし、それを見ていたマリコルヌは、懲りずに杖を左手に持ち替え、ギーシュたちに狙いを定める。
直後、アルファモンの声がいきなり響いた。

「聖剣、グレイダルファー!」
「……あら、ひ、ひだ、ひだだだだだだだだだだり!!」

アルファモンが、聖剣グレイダルファーでマリコルヌの左腕を容赦なく切り落とした。
自分の左腕が、肘から先からなくなってしまったショックで悶絶し、悲鳴を上げるマリコルヌ。
そんなマリコルヌに、アルファモンは言い放つ。

「バーロー。そんなもの、魔法でくっ付ければいいだろ」

マリコルヌ以外の決闘相手たちは、すでにアルファモン一人によって全滅していた。
アルファモンはルイズをお姫様抱っこして、医務室へと向かう。
ギーシュは左目をおさえながら、それを追った。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 23:09:57 ID:cry4/icg
支援
14デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 23:10:11 ID:lK5tEnRC
学院長室。
遠見の鏡で一部始終を見ていたコルベールが唖然としていた。
一方、リリスモンは非常に楽しそうである。
オスマンは、自らの使い魔に話しかける。

「モードソグニル、あれが「空白の席の主」の力なのか?」
「……いや、彼奴は辛うじて手加減はしておった。それでもあれだけの力か……。我に牙向いた時、その力を解放するかどうか……楽しみだな」
「……楽しむためなら己が命すら大事にせぬその性分、少しは直したらどうじゃ?」
「叶わぬ夢をほざくでない」

意味深に微笑みながら軽口を叩き合うオスマンとリリスモン。
一方のコルベールは、アルファモンが作った惨状を見て固まっている。

「おおお、オールド・オスマン、如何いたしましょう!!??」
「……まあ、誰が悪いのかは明らかだし。とりあえずヴァリエールとグラモンは決闘の罰として来週までの謹慎って形で休ませて、「空白の席の主」の小僧にボコられた奴らは来週まで謹慎&外出禁止、謹慎明けから数日は中庭掃除とかをやらせるかの」
「ミス・ヴァリエールの怪我は、ご実家の方に報告しますか?」
「……あれだけ派手にやったんじゃ、いっその事全部正直に報告した方がいいじゃろうて。それと、小僧のルーンに関しては他言無用じゃぞ」

思いっきり投げやりであるが、どこかオスマンは嬉しそうであり、リリスモンとコルベールもそれを見抜いていた。
そして、二人そろって首を縦に振る。


医務室。
アルファモンは椅子に座り、黙り込んでいる。
一方のギーシュは魔法で止血はしてもらったものの、左目は完全に失明しており、縦一文字の傷には顔の右半分に大きく走っていた。
そしてルイズの右腕は……、彼女自身の予想通り「既に手遅れ」と診断される。
それを聞き、激昂しそうになるアルファモンを抑え、ルイズは痛みをこらえながら淡々と治療を担当してくれた教師に頼み込む。

「治したところで、既に元通りに動かせ無いことは予測できていました。ですからこの右腕、肩から切り落としてくれませんか?」

辺りが静寂に包まれる。
それは、ルイズ以外が驚きのあまり言葉を失ったからであった。



次回、「デジタルワールドからの物体NANIMON」まで、サヨウナラ……。
15デジモンサーヴァント:2009/01/16(金) 23:13:57 ID:lK5tEnRC
投下終了。
今回のサブタイは、かのスティーブン・キング御大の同名の小説が原作のホラー映画、「シャイニング」から。

後、デジタライズ・オブ・ソウルは本来は「サモンサーヴァントに近い技」なのですが、『DIGITAL MONSTER X-evolution』では「破壊光線みたいな技」だったので文中でもそれに準拠しました。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 23:56:02 ID:NgeAjO/p
投稿乙!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/16(金) 23:57:49 ID:nNJzpnri
バーローwww
18ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:09:22 ID:XVCdqcmb
こんばんは、どなたか予定なければ十五分ごろから投下します。
19ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:18:06 ID:XVCdqcmb
ゼロの魔王伝――12

 生命の息吹が最も豊潤になる春の季節。風は踊り、花は歌い、小鳥は楽しげに空を飛び、獣は地を悠々と歩む。
 楚々と揺れる白い花弁の野の花にも、草を食む小動物の姿にも、花の香りを乗せてはるか遠方から流れてきた風にも、命の豊さが充ち溢れている。
 さわさわと大きく広がった枝がふれあい、まるで囀るような音が耳に心地よい木陰の下で、どっかと草の上に腰を下ろし、大木の幹に背を預けた青年がいた。
 大木の枝が作る影が、真の闇に変わってもその美貌ばかりは火が灯される様に、あるいは夜闇をあえやかに照らす月の如く輝いて映る事だろう。
 眼も、鼻も、唇も、眉も、何もかもが人ならぬ何者かによって作り出されたとしか思えぬ、至上の美の集合体であった。
 胸元で揺れる深海の青を封じ込めたペンダントは、揺れる梢から零れ落ちる光にゆらゆらと煌めき、漆黒の装いの青年に一つのアクセントを添えていた。
 左肩に抱き寄せる様にして優美な弧を描く長剣を抱え、先程から両手を休まず動かしている。右手には小振りな小刀。学校で児童に与えられる彫刻刀に似ている。
 左手側には長さ三十センチほどに切り揃えられた枝が無造作に積み重ねられている。左手でその中から枝を一本掴み、右手の小刀で形を整えているらしく、出来上がった品は青年の右手側にまとめて置かれていた。
 しゅ、しゅ、と小刀の刃が枝を削る音ばかりが風と揺れる木や草花の音に混じり、青年の周囲で蟠っていた。音さえもこの青年の傍から離れる事を嫌がっているのだろうか。
 また一つ、作品が出来上がったらしく、左手に抓んだ品を青年は厳しい芸術家の眼差しで観察した。不備の一つもあればなんの躊躇いもなく作品を壊し、痕跡を残さぬ厳しさが瞳に浮かんでいた。
 数えて二秒ほどソレを観察してから、ふむ、と満足げにうなずいて地面に置く。
 ぴく、と指が止まった。傷一つ付けたら、世界中の人間を敵に回しかねぬほど美しい眉間に深い皺が幾筋もより、青年の瞳が見る間に険しさを増す。
 かすかに開いた紅の唇からは細い吐息が何かを堪える様に、ゆっくりと吐かれている。ひゅ、とわずかに息を吸う音がし、その直後

「ぶえっくしょい!!」

 盛大なくしゃみが、これ以上ないほど美しい青年の口から下卑た声と共に出た。ぐしゅ、と鼻を啜り、青年が左手の甲で鼻をぐずぐずと擦る。

「誰かおれの事を噂してやがる。ま、この顔じゃ仕方ないわな」

 なんともまあ、安っぽいナルシズムに満ちた言葉を一つ口にした。とはいえ、青年の自負も無理からぬことではあった。色欲の限りを尽くし、性の悦楽に飽きた暗愚の王もたちまち虜にしてしまうだろうその美貌。
 媚を込めて見つめれば、どんなに苛烈な修行を積んだ聖職者の類でも、脳裏に淫らなものを思い描かずにはおれまい。
 それからまた一度鼻を強く啜ってから、新たな一本を取った所で、さく、さく、と緑の色が深い草を踏み分けてくる足音を聞いた。
 実際にはとっくの昔から気付いていたのだが、あえて気付かぬ振りをしていた。自分を驚かせようと、足音を殺してわざわざ背後から近づいてきているのだ。その程度のいたずらに付き合う程度の度量は青年にもあった。
 おそるおそる幹の反対側、青年を背後から見つめる視線と気配に気づき、やれやれ、とばかりに口を開く。どこか唇の形は楽しげであった。

「何か用か?」
「きゃっ! もう、気づいていらしたのね」

 驚かす筈が驚かされて、可愛らしい声をあげた青年の背後の声の主は、もう、とあどけない幼女の様に拗ねた調子で呟き、青年の正面に回り込んだ。まだうら若い女性であった。
 太陽の光を浴びて一層優しげに、そして淡く輝くピンクのブロンド。豊かな桃色の流れは、持主の腰ほどまで伸び、手入れを欠かされぬ髪はそれ自体が一つの宝物のように眩い。
 コサージュで飾り、ゆったりとした白い上衣と、深い紫色のロングスカートを纏い、首元には赤いスカーフ。いつも絶やさぬ笑みは女性を永遠の少女の様に見せている。
 やや白の色が強い頬を除けば、絵画の中から飛び出て来た聖母を思わせる美女だ。青年の隣になんのてらいもなく腰掛けて、その肩に小鳥やリスが止まり、周囲にはどこに隠れていたものか、鹿やウリ坊や子犬、果ては虎までもが集まりだす。
 自然の環境下では考えられぬ無数の動物達が、一人の女性の元に集い、食べる者と食べられる者のこれ以上ない緊張の関係を匂わせる事もなく、おもいおもいに寝そべり、安堵しきっている。
 その小さな奇跡を起こしている美女は、小首を傾げて愛らしく青年に質問をした。今年で二十四歳になる筈だが、そこから十歳を引いてもなんとなく納得してしまうような幼さが、時折挙措の合間合間に垣間見える。
20ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:19:51 ID:XVCdqcmb
 無論、見た目は母性と言う言葉に美貌のアクセントを加えて人間にしたような、極上の美女だ。
 年相応の外見ながら少女の姿を幻視してしまうのは、最後の花弁の一片が落ち行かんとする花に似た儚さが、常に付き纏うからだろうか。

「なにをしていらっしゃるの?」

 女性は、自分がサモン・サーヴァントで召喚したこの青年のが何をしているか、興味が尽きぬらしい。
 ころころと良く変わる表情を、不思議そうなものにして、女性は青年の手元を覗きこんだ。青年は右手の小刀を鞘に納めて出来上がった作品の一つを手に取った。
 良く目を凝らさなければ見えぬほど細く、長さは三十サントほどもある木の針であった。先端は目に見えぬほど細くそして鋭い。石も貫いてしまうのではないかと思うほどだ。しめて二十本ほど青年の傍らにまとめて置かれている。

「珍しい、木の針なんて。でもお裁縫をするにはちょっと長すぎるわね」
「まあ、縫物をする為じゃねえな。これは投げ針だ。見ていな」

 一本をつまみ上げた青年が、特に構えるもでなく、手首のスナップを利かせるでもなく、親指と人差し指の間に抓んだ木の針をひょい、と竪琴の弦を爪弾くように弾いた。
 緩やかな放物線を木の針が描き、それが落下に移ってから地に刺さる間に起きた事に、女性の顔が、まあ、と驚いたものになる。
 狙いを着ける素振りもなく放られた木の針は、その細長い体に十枚を越える木の葉や花びらを纏っていた。しかも青年の指が齎した影響か、それとも針の鋭さの賜物であったものか、地面に針はその半ばほどまでめり込んでいる。
 これが偶然ではない事は、青年の先ほどのセリフからも聞きとれる。元から気まぐれな風のままに舞う花びらや木の葉を狙って、放られたのであろう。

「お上手ね、あんなにたくさん木の葉や花びらを一本だけで縫い止めるなんて」
「その気になれば一キロ――こっちじゃ一リーグだったか?――先の蠅の目玉も抉ってみせる。まあ、ホントの所は白木かトネリコ、サンザシなんかの木で作りたかったがな」
「何か違いが出てくるのかしら?」
「おれの喧嘩相手にはそっちの方がよく効くのさ」
「まあ、私が見つけた時にあんなに大怪我をしていたのに! まだ懲りないのですか?」
「リベンジしない事には男が廃るんでね。つーてもその相手がどこに居るか分かりもしないが」
「なら、私は貴方の喧嘩友達が見つからない事を祈ります。だって、あんなに大きな怪我をしてしまうんですもの。いくら男の子がそういう生き物だからって、限度があるでしょう?」
「喧嘩ね。そう言われるとなんか虚しくならあ。おれ達にとっては命賭けだったんだが」
「ですから、今度は命が危なくない喧嘩をなさって」
「へいへい」

 と、どうにも調子が狂うな、と苦笑しながら青年がぼやいた。その様子を見咎めた女性――ルイズの姉カトレアは、やんちゃ坊主を窘める母親の様な顔をしていた。

「聞いていらっしゃるの? Dさん」
「聞いているさ。命の恩人の話だからな」

 ハルケギニアに召喚される以前、“にせD”と呼ばれ、カトレアにはDと名乗った青年は、そう言って人好きのする笑みを浮かべて、カトレアに笑い返した。
 かつて、ルイズが召喚したDによって頭頂から顎先までを割られた鮮やかな斬痕は、今はもうどこにも残っていなかった。
 それから、不意に青い空を見上げて、Dよりも千倍も表情豊かな“にせD”は、感慨深げに呟いた。

「今頃“おれ”とミアのねーちゃんはどうしているかねえ? ま、達者でやっているだろ。なんつっても“おれ”だしな」

 
 ラ・ヴァリエール領から場所は変わり、トリステイン魔法学院にて。

「何しているの、D?」
「ルイズか」

 声を聞くまでもなく、足音で目下の主(仮)が近づいてきている事を悟っていたDが、旅人帽の下の視線を動かす事もなく声だけで答えた。
件の決闘騒ぎがあったヴェストリの広場に在るベンチに腰掛け、Dは左手の手元に置いた木の枝を先程から削っているようだった。
21ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:21:32 ID:XVCdqcmb
 昼を済ませ、午後に履修している授業まで一時限分時間が空いたルイズは、Dを探して厨房を訪ねていた。
 ギーシュとの決闘騒ぎの際に、シエスタを擁護し、またギーシュとの決闘で泥臭いながらも平民も貴族も関係ない全力を出し切ったルイズの姿は、貴族嫌いで有名なマルトー料理長にも比較的好意的に(あくまでも比較的)受け止められていた。
 貴族の子弟ばかりが通う魔法学院の中でも一、二を争う大貴族であるヴァリエール家の息女が、裏口から厨房に顔を見せたのにはコックたちもやや驚きの様子であった。
 使い魔達が食事を取っているスペースにDの姿が無かった為、どこにいるのか尋ねに来たルイズに、シエスタがDさんならヴェストリの広場に向かわれましたよ、と教えてくれたのだ。
 ルイズよりも、魔法を使わずに弧剣のみでギーシュのワルキューレを撃退したDは、厨房のコック達の人気を集めていた。
 夜の闇に潜む恐怖を纏っているかのような雰囲気こそ滲ませているものの、直接ギーシュとの決闘を見ていなかったし、シエスタがDとその主人であるルイズに助けられたという事実が、マルトー親父に気に入られている。
 もっとも、まともにDの顔を見ると厨房のあちこちで指を切って具材にしかけたり、注ぎすぎたスープで火傷したりする連中が後を絶たないので、Dが顔を出す事は滅多にない。
 ともかく、先日の決闘騒ぎで若干ルイズに対する周囲の評価が変わったのは確かであったし、Dとの主従関係も匍匐前進で一歩くらいは明るい方向に進んだといえよう。

「隣、座ってもいい?」

 これが数日前なら何も言わずに座る所だ。それどころかご主人さまを放っておいて何をしていたのよ、とか昼食が終わったんだから迎えに来なさいよ、と言っているだろう。召喚した相手が相手だから、実行できたかは甚だ怪しい所ではあるが。
 Dが頷いたので、ルイズは枝の山を挟んでDの左に座った。Dはルイズに一瞥を向ける事もなく手元の作業を続けている。
 なにをしているんだろう、とルイズは姉に似た仕草でDの手元を覗きこんだ。DとにせDの双子の兄弟もそうだが、桃色ブロンドの姉妹もどこか言動に似通っている所があるらしい。
 ハルケギニアに召喚される前からDの所持していた短剣で枝を削って形を整えているようだ。見る間に削られていく枝を見て、ルイズが怪訝な顔をした。むう、と眉を寄せる姿は幼げな容姿に良く似合う。

「木の針? なんで針なんか作るの?」
「秘密兵器じゃよ」
「……ふうん」
「なんか不満かの? さてはこ奴に答えて欲しかったか? けけけ、色を知る年かの? 髪の毛同様、頭の中も真昼間から桃色らしいわい」
「こ、こここ、この左手は〜〜!」

 ことある毎に自分をからかってくるDの左手の人面疽に、歯を剥いてルイズは顔を怒りで赤くした。毛を逆立たせた子猫を思わせた。
 言うに事欠いて、よ、よよよりにもよって色を知る年!? 色を知る、年ってなな、なによ、なんなのよ!? いい、色……色恋沙汰の色!? キュルケが夜に男の子を引っ張りこんだりしているアレの事をいい、言っているのかしら。
 ふしだらだわ! みだらだわ! はしたないわ!
 い、色を知るって、わたわた、私ががががが、だ誰に教わ、教わるるって? Dに、Dに? Dに! Dになの!? Dが私と、私がDと? 私がDで、Dが私で手取り足取り教えられるの? 仕込まれちゃうの! 躾られちゃうの!?
 めしべがおしべで、メスとオスが、卵で、コウノトリが運んできて、結婚してからじゃないとだめで、結婚してからでも三ヶ月はだめで、始祖ブリミルと母さまにお伺いを立ててからじゃないとだめで………………。

「……あ、あううぅ。け、けけけ、結婚……。だだ、旦那さまで、私が奥様で……こ、こど、子供は何人……欲し……ほし、…………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
 
 耳の先まで真っ赤にしながら握り拳をプルプル震わせているルイズの姿をどうやって見ているのか、左手の老人はつくづく、からかい甲斐のあるお嬢ちゃんじゃなあ、と意地悪く含み笑いを零していた。
 そんなルイズの様子はどうでもよさそうにしていたDだが、流石にルイズの見ていてとても心が痛くなる様子を哀れんだのか、口を開いた。錆に覆われた鉄の扉が何の前触れもなく開いたような口のきき方だった。
 自分の体を抱きしめて、自分の膝に額を押し付けながら小刻みに震え、ぶつぶつと妄想を口にしていたルイズがようやくDの声で正気にかえる。やはり、ルイズはアレな子であった。身内に一人いたら、とても切なくなるような意味で。
22ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:22:59 ID:XVCdqcmb
「それで、何か用か?」
「あ、ええっと、と、特に用事はないんだけど、何かDの方で変わった事はないかなって。次の授業まで時間もあるし」
「そうか」
「ねえ、その針ってなにに使うの? お裁縫?」

 とここは姉妹らしくカトレアと同じ質問を、同じ顔の男にした。答えも同じだったのは何の皮肉であったろうか。

「これは投げ針だ」

 そう言って右手で、やはりにせDが作っていたのと寸分たがわぬ木の針を摘みあげると、流れるような動作でその木の針を投じた。Dの指先の動いた方をルイズが見ると、魔法学院の塔の壁がある。
 そこに向かって木の針を投げたらしい。Dが自分の常識の外側を生きているという事は、ルイズも理解していたが、流石に石造りの塔の壁に木の針を投げて突き刺さるわけがないと、心中で否定していた。
 Dが視線をそちらに向けるので、ルイズはむぅ、と訝しげに眉を寄せつつも、とてて、と当の壁の方へと歩いて行った。Dは、もう興味はないとばかりに針作りを再開していた。
 投げたフリスビーを取りに行った犬を待つ飼い主のように見えなくもない。傍から見ている主従が逆転しているのではないだろうか。
 壁の下の辺りを見回したルイズだが、Dの投げた針は見当たらなかった。直径は三ミリほどもなかったが、長さは三十サントを越えていたから、すぐに見つかるかと思ったのだが、これはひょっとしてひょっとすると……?
 おそるおそる視界を上に向けたルイズは、ちょうどDと直線で結ばれる壁の箇所から突き出た、細長いモノを見つけた。
 無論、Dの投げた針である。宝物庫ほどではないとはいえ、『固定化』の掛けられた石造りの壁に、そのほとんどを埋めた針の片端が、四サントほど覗いている。戦車の重装甲も、厚紙の如く貫くDの投げ針ならではの威力であろう。
 うわ、とかすかに声を抱いて驚いたルイズは、両手を伸ばして壁から覗いている針を掴み、なんとか引き抜こうと力を込めて引っ張る。
 とはいえ、教科書よりも重いモノを持った事が無いといっても過言ではないルイズである。深々と突き刺さった針はそう易々とは抜けてくれない。
 ふぬぬぬ、と歯を食い縛って壁に突き刺さった針を格闘する事二分、ようやく針はその全貌を露わにした。
 きゃ、とルイズが声を上げて尻餅をついた。針を抜いた勢いでそのまま倒れ込んでしまったのだ。痛たた、と小ぶりな尻をプリーツスカート越しにさすりながら左手に掴んでいる針を見つめる。
 Dが作っていた時に見たのとなんら変わらぬ木の針だ。ぐっと力を込めればルイズの細腕でも簡単に折れてしまいそうだ。
 こんな何でもない針が、Dの手で投げられた時、石の壁も貫く異常な威力を発揮する。驚いたやら呆れたやらで目を丸くしたルイズが、やや小走りにDの元へと戻っていった。ご主人様に褒めてもらう為に急いで戻る犬の様だ。

「すごいわ、D! 学院の壁に刺さっていたのよ。スクウェアクラスのメイジが数人がかりで『固定化』の魔法を掛けているのに! なにか投げ方にコツでもあるの? それとも何か魔法でも使ったの?」
「投げただけだ」
「ま、地道な努力の賜物じゃよ。何事も諦めないのがこ奴のガキの頃からの取り柄でな。ニンゲン、一つの物事を地道にやっていけばこうなるものじゃ」

 『ニンゲン』を、ダンピールであるDの正体を知るが故に、左手は実に意味ありげに言った。といっても、ルイズにはとんと左手の皮肉の意味が分からなかったので、あまり意味はなかったが。
 左手の皮肉よりも、セリフの途中に遭った単語が、ルイズの気を引いたらしい。小首を傾げてこう、質問してきたのだ。

「……Dにも、子供の頃があったの?」

 ぷ、と左手が噴き出した。確かに想像し難くはある。この、万年鉄面皮の、氷の彫像みたいな青年の子供時代。たしかに今の姿から類推するには途方もなく難しい事だろう。
 Dも、それは自分でも分かっているのかいないのか、少し間を開けて答えた。

「たぶんな」
「たぶんって、自分の事なのに? まあ、いっか。私だってうんと小さい頃の事なんてぼんやりとしか覚えていないし。でもDでも努力ってするのね。生まれた時から何でもできた風に見えるわ」
「なに、こいつめ、他人の手を借りるのを恥と考える見栄坊なんじゃよ。おかげで要らぬ苦労ばかりよ」
「そう。そっか、Dでも努力するのね。私なんかでも、いつかちゃんと魔法が使えるようになるかしら?」

 ベンチに腰かけたルイズが、ゆるやかに蒼穹の空を流れて行く白い雲を見つめながら呟いた。何気ない一言は、なによりもルイズの心情を物語っている。その声にどのような痛切な響きがあったものか、Dが木針を作る作業を中断していた。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 00:23:04 ID:0phojiQG
支援
24ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:24:35 ID:XVCdqcmb
「あの爆発は魔法ではないのか?」
「冗談は止してよ。あんな失敗が魔法のわけないじゃない。何を唱えたって爆発しちゃうのよ? ライトでも、錬金でも、アンロックでも。どっか〜ん、どっか〜んて。そのお陰で私、ハルケギニアで一番爆発に慣れたメイジになっちゃったわ」

 くすくすと小動物の様にルイズは朗らかに笑う。ほんの数日前に魔法の失敗の話題になったら、どんよりと暗雲を背負って暗く沈むか、癇癪を起していただろうに、少しだけ、心に余裕ができているようだ。
 果たしてそれが、このDと言う名の若者の所為なのかは分からない。
 Dが自分の左手の甲を見つめながら口を開いた。零れた吐息が混じった風が、身悶えしながら地に落ちる。

「こいつも言っていたが、一つの物事を継続するというのはそれだけでも一つの力だ。気分転換に、あの爆発の研究でもしてみたらどうだ?」
「ええ〜? 系統魔法じゃなくって爆発の練習をするの? どれくらいの爆発が起きるかとか、一日に何回起こせるかとか、どれくらいの威力だとか? そんなことしていたら、爆発の音がやかましいって苦情が来ちゃうでしょ?」

 ルイズに答えたのは左手の老人だった。Dは手の作業を再開させている。

「普通の魔法の練習をしても爆発するのなら、最初から爆発の練習をするのも一つの考え方じゃろうて。あの爆発をコントロールできていたら、決闘の時にわしとこいつが助太刀する必要もなかったぞ? 
 それに、話を聞く限り普通の魔法の失敗と違って魔法が霧散するようなわけでもなし。ひょっとしたら四属性ではない系統魔法の使い手であったりするかもしれんぞ?」
「四系統以外って、『虚無』の系統? 私が? それこそ在り得ないわよ。いい? 『虚無』はね、始祖ブリミル以来、ハルケギニア六千年の歴史の中で誰一人として発現していない伝説なのよ? それが、落ちこぼれの私のわけがないでしょう。
 ほんとうにそうだったら、私はもう二度とクックベリーパイを口にしないって誓ってもいいわよ」
「大きく出たの。とはいえ六千年か、あまり長くはないわな」
「何か言った? ……でも、そんな風に言ってくれたのって、Dと左手だけよ。変な励まし方だけど、確かにいつもと違った考え方をするのも大切な事ね。今度爆発の練習でもしてみるわ。もちろん付き合ってくれるわよね?」
「ま、言いだしっぺじゃしな。おい、どうじゃ?」
「授業に支障の無い様にな」

 と、Dが答えたのには水を向けた左手のみならずルイズも目をまんまるにして、おでれーた。二人(?)を心底から驚かせた張本人は、自分の言葉が及ぼした影響など露とも知らず、三十二本目の針を削り終えていた。
 ぽかんと唇を開いてから十秒後、ルイズがポツリと呟いた。

「Dって、意外と常識人?」
「こいつに面と向かってそう言えるお嬢ちゃんは非常識じゃよ」

 確かにDの居た『辺境区』で史上最強の吸血鬼狩人Dの噂と、人となりを知る者からしたら、ルイズの方こそ非常識の極みといえた。
 これまでのルイズのDに対する言動の数々を知ったら、お前、首を刎ねられるのが怖くないのか、と目玉を剥くに違いない。

「貴方達って本当に仲が良いわねえ」

 と、そんな主従のやり取りに声を掛けて来たのは燃えるような髪と匂い立つ色香を纏ったキュルケだった。あいも変わらずルイズに絶望的な敗北感を与える果実を胸に実らせて、髪を掻き上げながら、はぁい、と手を振り振りこちらに歩いてくる。

「なによ、キュルケ。何か用?」
「あらあら、そんな逢瀬の時を邪魔されたみたいな顔はしない事よ、ルイズ?」
「だ、だだだ誰が、おうおう逢瀬よ!?」
「あ・な・た・よ」
「ふん! 好きに言っていなさい」
「ふふ。こんにちは、ミスタ・D。陽だまりの中で腰かけた貴方も美しいわね。名前は憶えていてくださって?」
「キュルケ」

 何やら皺まみれの老人の様な声だった事に、キュルケは眉を寄せたがそれでもにっこりとほほ笑んだ。普段の妖しい香りで獲物を誘い込む食虫花の様な魅惑的な笑みではなく、大輪のひまわりが咲いた様な、明るい笑みだった。

「ありがとう。名前を覚えていてもらうのがこんなに嬉しいのは初めてよ。わたしの友達の名前も憶えてくださるかしら?」

 背後を振り返ったキュルケの視線を追うと、同世代の中でも小柄で子供っぽいルイズよりもさらに幼げな女の子が立っていた。赤縁の眼鏡に身の丈を越す杖。白タイツの他はルイズと同じトリステイン魔法学院の制服姿の、青髪の美少女タバサであった。
25ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:26:11 ID:XVCdqcmb
 女性的な魅力という意味においてルイズが絶対にかなわぬキュルケと、幼さと言う背徳感を漂わす魅力においてルイズに勝利し得るタバサは、ある意味キュルケ以上にルイズの天敵であったろう。
 とはいっても、ルイズとタバサはクラスメイトであること以上には、ほとんど接点が無かったので、そんな事はこれっぽっちも考えるわけもなかった。
 ろくに言葉を交わした事も、というか全く話をした事の無いクラスメイトに対して、Dがどのように反応するのかルイズは気が気ではなかった。
 タバサ自身に対してはルイズは、少なくとも悪い感情を抱いてはいない。これまで散々バカにされてきた自分を、唯一笑いもバカにもしなかった事を覚えているからだ。
 とはいえ、それが、D同様に無関心を理由とするものであると今は分かるから、良い感情も持ててはいない。
 タバサが一歩前に出て、Dを見た。さしものタバサもDの美貌を前にすれば心揺らぐのか、頬はほんのりと赤みを増していた。普段は人形の様に振る舞っているタバサも、やはり血の気の通う人間なのであった。

「タバサ」
「Dだ」
「……」
「…………」
「………………」
「……………………って、それだけ!? お互いの名前を言っただけじゃない!」

 これはルイズだ。最小限の言葉で互いの名前を名乗り合ったまま沈黙の協定を結んでしまった二人の空気に耐えかね、思わず叫んでいた。キュルケも何か言うのかと思いきや、タバサの様子にうんうん、とどこか保護者めいた笑みを浮かべて頷いている。

「タバサ、貴方なにかDに聞きたい事とかあったんじゃないの!? 名前を言い合っただけって、もっと言葉を話しなさいよ」
「特に話す事が無い」
「ええっと、ほら、どこから来たの、とか。あの剣の腕はすごいとか、どうして剣が半分くらい折れているの、とか。帰りたいとは思わないの、とか。普通もっとあるものじゃないの?」

 ルイズが詰め寄っても口を閉ざしっきりのタバサの様子に、ルイズの心の方が先に折れた。今の今までルイズがDに質問しようとして出来ずにいた事を、聞いてくれるかもしれないと、ちょっぴり期待していたせいもあるだろう。

「まあまあ、いいじゃない。自己紹介しただけでも。名前も知らない他人から、名前と顔を知っている顔見知りになったのよ? 大きな前進ではなくて?」
「そういう言い方をすればそうだけど。そういう問題のとらえ方でいいわけ?」
「いいのよ、タバサがそれでいいって思っているのならね。それよりも、私は貴女がミスタがほかの誰かさんと喋るのを許容しているのが驚きよ。てっきり『私以外の誰かと口をきいちゃダメ』とか言うのかと思って位なのに」
「あのねえ、いくらなんでもそこまで独占しようなんて思わないわよ。それに、そんな言い方したら、Dの意思を無視しているじゃないの。ちゃんと、彼の意思を汲んだ上で行動するように心がけているつもりよ。何しろ人間を使い魔にしたんだから」
「ふうん。プライドだけは無駄に高いトリステイン貴族だから、貴族でもない人間を使い魔にしていじめているんじゃないかと思ったけど」
「それこそ貴族にあるまじき振るまいだわ。自分の一挙手一投足に至るまで責任を持つべきなのに、こちらの都合で勝手に召喚した相手の意思を無視するなんて! 第一、Dをいじめられる人間てどんな奴よ」
「……それもそうねえ。これだけいい男じゃねえ」

 うっとり蕩けて熱視線をDに向けるキュルケに、うう〜と喉の奥から唸り声を出してルイズが威嚇する。ご主人様に寄り着こうとする悪い虫を追い払おうとしているペットみたいだ。どうにも主従の逆転現象が折々に見える二人であった。
 と、ここまで黙りきっていたタバサが口を開いた。

「そろそろここから移動した方がいい」
「なんでよ?」

 と聞くルイズに、学院の方を杖で指す。なにかあるの? と根が単純(素直とは違う)なルイズは、そちらの方を見やり、ひゃ、と息を呑んだ。ルイズにつられたキュルケも、あはは、とひどく乾いた笑いを洩らした。
 黙々と木針作りを続けるDだけが、幸福な別世界の住人であった。タバサが杖で示した魔法学院の窓と言う窓に、生徒達の顔がびっしりと張り付いていた。後ろから散々押されているらしく、閉じた窓に押し付けられた生徒の顔が醜く歪んでいる。
 むろん、すべての視線はヴェストリの広場のベンチに腰かけて、木の針作りに精を出している美しき黒衣の吸血鬼狩人だ。見える範囲全ての窓に人間の顔が押し付けられている光景は、白昼に見る悪夢を思わせた。
26ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:28:43 ID:XVCdqcmb
 あまりに心臓に悪い光景に、ルイズの頬が痙攣している。笑えないとびっきりのブラックジョークを疲労された気分だった。キュルケも同様らしく、うわぁ、と心底からこれはない、と思っているらしい声を出している。
 視線の集中砲火を浴びれば、あまりの熱意とねっとり粘度を持ちそうな密度に、心臓麻痺の一つでも起こしそうなほどであった。そう言う意味では眉一つ動かさないDは、そう問う頑丈な心臓の持ち主らしい。
 そのまま窓を破って突き出てきそうな顔の数々に、肝を冷やしたルイズがDに移動を提案した。

「ねねね、ねえD。その針作りってここじゃなくても出来るわよね? ほ、ほら私の部屋でしましょう。おひさまが気持ちいいから外で造りたいかもしれないけど、ここで続けるのはいろんな意味でまずいわ。そりゃもう、いろんな意味で」

 うんうん、とキュルケも追従して頷いているのをDはどう捉えたか、顔をあげて窓をぐるりと見回した。Dの視線を受けた者やDが首を回して周囲を見回す動きを見た者達が、窓の向こうでふらりと揺らいで次々と倒れて行く。
 美貌の主の瞳に見つめられる事、新たな美の目撃者となる事への感動が、彼らに意識を保つ事を放棄させたのだ。気絶する者達を後ろに追いやって次々と新たな生贄達が窓に群がり、それが十数秒ほど続いた時、窓に張り付いていた顔は一つもなくなっていた。
 限度を知らぬDの魔的な顔の効果に、ルイズ達はこれまたぽかんと口を開いていた。Dはそんな三人の心などこれっぽっちも考えていないのか、

「では行くか」

 と他人事のように言うのだった。


 ヴェストリの広場でそんなやり取りがあった翌日の事。朝から夜まで集中して浴びせられる羨望と憎悪と嫉みと妬みの視線にさらされて、熟睡できずにいるルイズが、しょぼしょぼと眠たい眼をぱちくりさせながらDにこう切り出した。

「今日は虚無の曜日だから城下町で買い物しましょう」
「何か入用なのか?」

 と、トリステイン魔法学院で一番暇な存在となってしまったDが、日課となった厨房の薪割りに行こうとした所で足を止めて聞き返した。
 選択はシエスタが快く引き受けてくれるし、ルイズが授業の無い時はそれに付き合う必要もないので、これといってやる事が無いのだ。
 言葉から察するに休みの日らしいが、変わらず学院の制服姿のルイズがDの方を見て、即座に横に向き直る。直視するのはまだ難しいらしい。一目見ただけで真っ赤なリンゴの様になってしまった頬をもごもごさせてルイズが言うには

「ほほ、ほら、いつまでも貴方に折れた剣を使わせるわけにも行かないじゃない。使い魔の事を考えるのも主人の務めだし、貴方だっていざと言うとき困るでしょう」
「この間の決闘位なら百万回ぶっつづけでやっても平気の平左じゃがの」

 と、答えたのは左手だ。暗にあの程度のメイジなど蛙の面に小便じゃわい、と小馬鹿にしたニュアンスがあるから、いちいちルイズの神経に小さく爪を立ててくる。ちょっとだけむすっと頬をルイズは膨らませる。

「なによ、せっかく私が剣を買ってあげるって言っているんだから、素直に感謝しなさいよ」
「金はあるのか?」
「う、きゅ、急に声を変えないでってば、心臓に悪いわよ、まったく。ええっとこの間の怪我でちょっと秘薬代がかさんだから、新金貨で三百あるわ。これくらいあれば十分だと思うけど」

 とはいえ剣なんぞ買った事のあるわけもないルイズに、こちらの貨幣価値に対して未知のDでは、新金貨三百枚でまともな剣が買えるか分かったものではない。おもむろに、Dが腰のベルトに括りつけているパウチの一つに左手を突っ込み、机の上で広げた。
 じゃらら、という音と眩い光を立てて、黄金の塊が机の上に広がる。金貨の体裁は整えておらず、ごつごつとした金の塊らしい。ルイズが両手で掬っても毀れてしまう位大量の黄金を眼の当たりにして、ルイズは見ている方がつい笑ってしまうくらい驚いた。
27ゼロの魔王伝:2009/01/17(土) 00:31:01 ID:XVCdqcmb
「足りなければ使え」
「ええ、これって金? どうしたの、こんなにたくさん!? ……ひょっとして貢がれたの?」
「アホ抜かせ、自前じゃい、もうちっとあるが、何かあるか分からんでな。貯蓄に回させてもらうぞい」

 Dが取り出したのは、辺境で流通しているダラス金貨を、左手の口の中で溶かして固めたものだ。吸血鬼ハンターの報酬はその危険の度合いに応じて、他の職種を圧倒的に凌駕する。
 もっともその仕事がどれほど過酷であるかを表すように、吸血鬼ハンターを名乗る者の平均寿命は、東部辺境区で四年、西部辺境区で三年と半年、北部辺境区で二年、最も過酷とされる南部辺境区なら一年と半年だ。
 十年以上吸血鬼ハンターを続けることができたなら、文句なしに最強クラスのハンターとしてランクされる。
そしてDは、その短命な職種の中でも例外中の例外であった。最も長く吸血鬼を狩り続け、最も多く吸血鬼を滅ぼし、最も強く、最も美しいハンター。それがDであった。
である以上、Dの懐事情は個人どころか市町村単位で羨まれかねぬくらい潤っている時がある。今回はどうなのか分からぬが、一枚で農夫の家族一か月分の生活費になる一ダラス金貨も、このハルケギニアでは金である事以上の価値は得られまい。
その為、所持していた金貨の一部を左手の口の中にじゃらじゃらと流し込んで、こうして金塊へと加工しておいたのだ。他にも使えそうな宝石の類もあったがそれは左手の言うとおりパウチの中に取っておいてある。
いずれ辺境に戻った時に、Dの名前と顔と剣技の次にモノを言うのは、やはり金の力なのである。
一方のルイズは、これじゃ私の立場が、とかおもしろくなさそうにぶつぶつと呟いていたが、Dに行かないのか、と一声かけられて正気に返り

「でもいいの? Dのお金でしょう」
「おれの剣を買うのなら、おれが金を出すのが道理だろう。使わなければ返してもらうだけの話だ」
「う〜ん、まあそれでいいけど。でも、できれば私のお金で買い物をして欲しいのよね。まあ、お金が足りればその金を使わずに済むし、行ってから考えましょうか。ところでD」
「なんだ?」
「貴方は馬には乗れる?」
「人並みにはな」

 と平均時速百キロのサイボーグ馬に、二百キロ以上の速度を出させる神業的な技量の騎手は、平凡な答えを口にし、ルイズと前後して部屋を後にした。


 今回ここまでです。まとめの方を更新してくださった方、ありがとうございます。ああ、それにしても早く菊地世界らしい阿鼻叫喚の地獄絵図を書きたいものです。お邪魔しました。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 01:18:52 ID:3s1yl7xH
魔王伝の方、乙です。
この作品はよく知らないのですが・・・・

「菊地世界らしい阿鼻叫喚の地獄絵図を書きたいものです」

期待しますw
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 01:20:20 ID:sML7u1Ey

もうDが主人公だなw
俺はDしか読んでないから構わないが
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 01:35:53 ID:SOczMTY+
いや、元々才人のポジションが主人公ポジションではないのか。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 02:32:04 ID:QA+daLdc
個人的にはD、ルイズを主軸にしてほしいですう
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 02:33:54 ID:sML7u1Ey
魔王伝だから幻十だと思ってたが、ルイズ以外に呼び出されると話を作るのが大変だわなw
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 02:38:44 ID:zZYi6n9/
Dしか読んでなかったから本屋にあったドクター・メフィストを買ってきてしまったよ。
そのうち魔王伝も探すかな。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 03:05:10 ID:30byaEIo
魔王伝おもすれー
せつらとDのマジバトルが見たいが、せつらは召喚されてないんだよな。
「僕」じゃDには到底及ばないだろうが、「私」ならどうなることやら。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 03:43:41 ID:HxYkx/UB
魔王伝の人乙っす!上手いなぁ〜本当に…。
てか窓貼りつき生徒達自重wwww
思わずその光景が目に浮かんでキュルケ同様自分もうわぁとなってしまいますたw
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 04:09:58 ID:5ohudkVJ
魔王伝の人乙!

ちなみにDの世界にも、なんでか妖糸使いはいるw
37ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:18:04 ID:C4zigEXd
なんてこった!魔王伝の後だと?
とりあえずシーン07aの扉を06:25から開く。用意はいいかい?バディ。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 06:19:27 ID:5ohudkVJ
しえんしたいけどもう寝るんだぜw
どうしたもんか。
39ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:26:12 ID:C4zigEXd
「ヒュー、今日は王都まで出かけるわよ。」
「ん?ああ行ってらっしゃい。」
「何言ってるの、アンタも来るのよ。」
「なんでまた?」
「アンタねぇ、この間寝具を買ってあげるって言ったでしょう?それに着替えだって必要だし、あとそれ。」

と言いつつルイズはヒューの右手を見る、ヒューもつられて見て納得する。
ギーシュとの決闘をした日の夜、あまりワイヤーは使用しない事になった。理由としてはサイバーウェアがばれると色々
厄介な事になりかねないというのがルイズの意見だった。
曰く「折角召喚した使い魔がアカデミーで解剖なんてされたら…云々」という事らしい。

「そうだな、確かに何か武器が欲しいところだ。」

ちなみにヒューが今持っている武装は、右手に仕込んである<ワイヤード・ハンズ>を始め、隠密性が高い物が多い。
一応、小火器程度は鞄の中に放り込んでいるが、殺傷能力・隠密性等々の理由で使用する気は無かった。
しかし、そうなると手持ちの武装に不安が出てくる…。今の所、この間の決闘騒ぎが尾を引いており、生徒達はヒューの
事をメイジなのか、それとも平民なのかと推測している状況だ、それなりの理由がない限りこの間の様な騒ぎにはならな
いだろうが、用意しておく事に越した事はない。

「分かったらさっさと行くわよ、王都まで馬で行っても結構かかっちゃうんだから。」
「ん?馬?」


ゴーストステップ・ゼロ シーン07a “馬と竜と王都への道”

    シーンカード:バサラ(意思/まったく新しい情報や状況の判明。イマジネーション。)


「ちょっと待ってくれ、ルイズお嬢さん。馬っていうのはまさか“これ”の事か?」
「何言ってるの、“これ”以外に馬っていう生き物がいるなんて私は聞いた事が無いわよ。」

今、ヒューとルイズは厩舎の前にいる。厩舎の中には葦毛・栗毛・黒毛・白毛と様々な種類の馬がおり、中には誰かの
使い魔なのか頭に角が生えた種類もいる。
ヒューが呆然としていると、王都に出かけるのか学園の生徒達が自分の馬に乗って次々と走り去っていく。

「さ、アンタの分の馬は昨日言って用意させといたわ、気性は穏やかなのを選んでもらったから安心なさい。」

御主人サマは栗毛の馬を指してご機嫌にしている、そんなルイズに対してヒューは済まなさそうに口を開く。

「あー、ルイズお嬢さん」
「何よ」
「悪いが無理だ」
「何が?」
「馬」
「は?」
「いや、こういった…何と言うか、生き物に乗って移動とか俺がN◎VAにいた頃にはやった事が無いんだ。」
「馬に乗った事がないって、どうやって移動してたのよ。」
「リニアやらヴィークルだな」
「何それ…ああ、いいわその辺の事を聞くと話が長くなるのは分かりきっているもの。
 となると困ったわね、教えながら行くとなるとさすがに無理があるし…ん?」

ルイズがどうしようかと考えていると、背後から肩を叩かれた。振り向くとそこにはキュルケとその友人タバサが立って
いる。

「な、キュルケ何のつもり?」
「用があるのは私じゃないわよ?」
「じゃあ、何よ!」
「用があるのは私」
「タバサ、貴女が?…何の用なわけ」
40ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:28:20 ID:C4zigEXd
用事があるのはタバサの方だった。
しかし、それはルイズにとっては意外に思えた。ルイズにとってタバサという少女は、おおよそ他人に関心を寄せるよ
うな人物には思えなかったのだ、それこそ「人形の様な」という表現がぴったりくる少女。
魔法に関しては学園内でも有数の力を持ち、座学でもルイズには及ばないものの優れた成績を残している。実際彼女に
嫉妬めいた気持ちを抱かないではなかったが、そういった事よりも自分の事を考えなくてはならなかったのであまり意識
はしていなかった。

「私が王都まで連れて行ってあげてもいい」
「そりゃ助かる」
「アンタは黙ってなさいヒュー、どうせただじゃ無いんでしょう?」

ルイズの言葉に肯定の頷きをタバサは返す。

「貴女の使い魔に興味がある」
「私の使い魔?唯の平民よ、ちょっとした手品が得意な、ね。」
「ギーシュの『ワルキューレ』…、あの切断は魔法では再現できなかった。それにあの移動方法にも興味がある。
 教えてくれればこれから何かあった時に色々協力する。」
「そいつはありがたいね。どうだろうルイズお嬢さん、ここはこの…タバサ嬢の提案に乗るっていうのは」
「は?何勝手に決めてんのよヒュー!」
「最悪、アカデミーとやらに連絡がいっても?解剖されるのは遠慮したいんだがね。」
「う…、分かったわよ!但し、教えるのは今夜、私の部屋で。それで良かったらその提案に乗ってあげる。」
「分かった、感謝する。
 じゃあ、こっち。」

交渉を終えた一行はタバサを先頭にゾロゾロと学園の外へと出て行く。

「なあ、こんな原っぱに来てどうするつもりだ?」
「いいから黙ってなさい。」
「あら、ヒューってばタバサの使い魔を見てなかったっけ?」

ヒューの疑問にルイズは不機嫌そうに答え、キュルケは不思議そうに尋ねる。
その会話の最中、タバサは口笛を吹く。

「ああ、俺が来た時はコルベールの旦那とルイズしかいなかったからな。
 俺が繋がりを知っている他の使い魔っていうとキュルケのフレイム位じゃないか?」
「そうなんだ、ふふ。
 じゃあ吃驚するわよ、なんたって今年一番の大当たりだもの。」
「へぇ、そいつは楽しみだ。
 そういえば、この人数で乗るっていうことは結構大きな生き物なのか?」
「黙って待てないの?見れば分かるわよ。」
「…来た」

タバサのその言葉に周囲を見回すが特に変わった所は無い…いや森の方から何やら大型の生物が飛んで来るのが見える。
瞬く間に近付いて来たその生物を見てヒューはこの世界に来て恒例の頭痛に苛まれた、それは空を飛ぶ巨大な蜥蜴だった。
いやこれはドラゴンとかいう想像上の怪物だったか…。多分、死国やカムイST☆R辺りに行けば見れるだろうが、幸い
というかヒューは見た事が無かった。

「…ニューロ…」
41ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:30:29 ID:C4zigEXd
航空力学など聞きかじった程度の知識しかないヒューでも翼と身体の大きさに違和感を感じていたが、恐らく魔法の力で
も併用しているのだろうと予想する。
このドラゴンを見た時、ヒューは一つ決めた…、もう難しく考えるのは止めようと。思考停止とも取れるだろうが、実際
はニューロエイジにおける各技術に対するスタンスに近い。
要は使えるものならば致命的なモノでない限り気にする事は止めようという事だ。

「しかし、いつ見ても貴女のシルフィードは見事ねタバサ。」
「こいつは、ドラゴンってやつかい?」
「そう、タバサは風が得意だからウィンドドラゴンが呼び出されたのよ。
 確かまだ幼生のはずだから、成長すると10メイル位になるのかしら?」

ルイズの問いに頷く事でタバサは答えながら、甘えるように鳴くシルフィードの背中に乗って他の3人にも乗るように促す。
背中には鞍等は付いていなかったが、背ビレがあったのでそれにつかまる事にする。

「じゃあ行く、背ビレは離さないように気を付けて。」
「分かってる。正直ゾッとするがね。」

タバサの注意とヒューのその言葉を聞いていたのか、シルフィードは一声鳴いて宙へと舞い上がっていった。
シルフィードの挙動にも慣れた頃、ヒューはルイズに質問をしはじめる。

「なあルイズお嬢さん、ちょいと質問があるんだけど良いかい?」
「長くならないのならね。」
「こっちにはこのシルフィードみたいに高速で空を飛ぶ生き物や馬が交通の主流なのか?」
「そうね、基本的には馬とか馬に引かせた馬車が交通の主な役割を担っているわね、海や大きな河なら船を使っているわ。
 後、アルビオンに行く時や内陸に急いで大量の物資を運ぶ時にもフネを使っているの。
 タバサのシルフィードみたいなドラゴンとかは存在自体が希少で数がいない上に、あまり多くの荷物を運べないから急使
や騎士の乗騎になるのが一般的ね。」
「ちょっと待ってくれ、水上を行く船と陸上を行く船というのはどう違うんだ?後、陸上の運搬で使う馬車があるのに船を
別に言うという事は何か意味があるのか?」
「え?ああ、そういう事ね。アルビオンや内陸に対して使うフネっていうのは“風石”を使っているフネの事。」
「“風石”?風っていう事は風の魔法か何かが関係してるのか?」
「ええ、風石を積んだフネは空中に浮く事が出来るのよ。流石に大型になればそれだけ大量の風石が必要になるからそう
そう簡単に飛ばせないけど。」
「あら、じゃあヒューの故郷ではどんな運搬方法だったの?」

2人の会話を聞いていたキュルケが、興味をそそられたのか横から話に入ってくる、タバサも興味深げに此方を見ている。
ヒューがルイズの方を見ると、諦めたように溜息を付いてキュルケとタバサを見た。
42ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:32:43 ID:C4zigEXd
「他言無用…誰にも話さない事を杖に誓えるのなら言ってもいいけど。」
「分かった、誰にも言わない事を杖に誓う。」

ルイズの真剣な視線にたじろぐキュルケだったが、タバサは躊躇する事無く肯定の意を示してキュルケをじっと見つめる。

「タバサ…。はぁ、分かったわよ話のネタに出来ないのは残念だけど誰にも言わない、言いたい時には貴女の許可を得る
事を杖に誓うわ。ついでに今からの話を我が家とヴァリエールの争いに利用しない事も誓おうじゃないの。
 どう、これで満足?」
「いいでしょう、じゃあヒュー話して頂戴。」
「ああ、俺がいた所では生き物を使用した運搬方法はほとんど廃れている。まぁ、密林の奥地やらのどうしようもない場所
ならどうだか分からないけどな。」
「ちょっと待って頂戴、じゃあどうやって大きな荷物を運んでいるのよ?」
「それを今から説明するのさ。さて、俺が生活していた俗に言うニューロエイジでは魔法というモノ・技術は無いものとさ
れている、本当かどうかは分からんがね。
 噂じゃあバサラとかマヤカシなんていう能力者やアヤカシと呼ばれる魔物がいるっていう話だけど、幸か不幸か俺は会っ
た事が無い。」
「貴方メイジじゃなかったの!?それに魔法が無いって、じゃあどうやって生活していたのよ?」
「俺は君たちが言うところの平民だよ。それと、俺の所では魔法に代る技術が発達したんだ、それも色んな技術がね。」
「なら、その外套のマジックアイテムもその技術で作ったモノ?」
「ん?ああ、そうだな…こいつは<Model.2002>っていう代物で熱光学を利用して周囲の風景を表面に投影する
事で迷彩効果を得られるようにした装備だ…簡単にいえば“動く絵を生地にした服”とでも言えばいいのかな?
 キャッシュ…金さえ積めば誰でも購入できる。投影する際の技術的なアレコレは専門家じゃあないから勘弁させてもらう。
 と、話が逸れたか、…運送方法の件だが車輪が4つある馬車を思い浮かべてくれ、そいつが基本だ。それと今から説明す
る事はそういうものだと一応納得しておく事、疑問は今夜まとめて答える。」

キュルケとタバサが頷いた事を確認したヒューは簡単に説明を開始する。

「とりあえず馬車を引くには馬が必要だが、これには色々と問題が出る。一番大きいのは動力である馬の管理とその費用だ。
馬は生き物だからな、ただそこにいるだけで食費や衛生管理が必要になる、健康の為にも過剰労働も避けないといけない。
 そこでこう考えたヤツがいた≪馬を使わずに何とか馬車を動かせないか≫ってね、後そいつはこうも考えたのさ≪できれ
ば生き物は使わない…何かで≫。そうしてそいつは動力機関…要するにカラクリで動く馬を作り出したんだ。
 一度そのカラクリが出来れば後は、坂道を転がり落ちる様にその技術が発達していった、引かせるんじゃなくて車輪に対
して直接動力を伝えて動かす事で操作性を上げたり、そいつを使って空を飛んだり海を渡ったりするようになったんだ。」
「な、何ていうか俄かには信じがたい話ね。」
「けど、筋は通っている。」
「じゃあ納得する証拠を見せようか。」
「あるの?」
「ああ、今目の前にあるだろう?」
「その外套…」
「その通り、君らはこいつの能力を見た時マジックアイテムと言っていたな?という事は魔法ならこれと同じ事ができるか
もと思っているだろう、じゃあこいつを調べてその欠片もなかったら?」
「成る程、魔法と同様の事が出来る技術がある証明になるわね。」
「とは言っても壊されると困るんだが、できるかい?」
「大丈夫、『ディティクト・マジック』を使う。」
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 06:34:44 ID:5ohudkVJ
しえん
44ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:37:13 ID:C4zigEXd
そうヒューに答えると、タバサはヒューに向かって『ディティクト・マジック』を使う。しかしヒューが言うとおり、魔法
に反応する光は瞬きすらしなかった。
その光景はタバサとキュルケはもとより、ポケットロンとウォッチャーを知っているルイズにもヒューが言う事が現実の事
だと理解できた瞬間だった。
ルイズは己の左手首を見る、そこにはヒューから渡されたウォッチャーが巻かれている。そうするとこれもマジックアイテ
ムではなく、ヒューが言っていた通り“道具”なのだろうか…。

「ちょ、ちょっとタバサ!これ、これにも掛けてみてちょうだい。」
「何、ルイズその安物のブレスレットは?」
「いいからお願い!」
「分かった」

結論:光りませんでした。

「で、結局そのブレスレットは何?」
「多分ヒューからの貰い物」
「え!それ本当なのルイズ?」
「う、うん。感覚同調が出来ないからその代わりにって。」
「それは何?」
「ウォッチャーっていう私専用の道具、ヒューのポケットロンと繋がっていて話が出来るの…。後、音や絵を記録したり
時計でもあるって…。」
「なにそれ!そんなのマジックアイテムにだって無いわよ!」
「じゃあ、使ってみて」
「え?」
「私の絵を記録してみる。」
「う、うんやってみる…ヒューどうやるの?」
「映像の記録なら、ウォッチャーを起動してガイダンスに従ってやれば簡単にできる、何事も経験だから色々試してみると
いい。やばかったら警告が出るから、その時は一旦止めて初期画面に変わってからもう一度やり直すんだ。」
「わ、分かったわ。ん、んっ“ディアーナ”起きてちょうだい。」

ルイズが自分の手首にそう語りかけると、手首の内側にあるディスプレイに光が灯り可憐な声がルイズに返事を返す。

【おはようございます、マスター・ルイズ。現在時刻午前10時03分、健康状態は良好と判断いたします。ご用件をどうぞ。】
「え、っと。絵をとりたいのだけど。」
【了解しました、映像記録用レンズを展開いたします。記録モードはいかがいたしましょう?】
「記録モード?」
【はい、ただ今メモリの空き容量は13クリスほどあります。動画モードだと26分、静止画像なら130枚程保存が可能
になります。】
「じゃ、じゃあ動画モードで1分記録した後、1枚静止画像をとってちょうだい。」
【承知いたしました、映像記録用レンズを対象へ。手ぶれ補正モードで撮影されますか?】
「手ぶれ補正って、なに?」
【説明いたします。手ぶれ補正モードは周囲の振動や手の揺れ等で撮影した画像がぶれないようにする、もしくはぶれてし
まった画像を修正をする機能です、不慣れな内は使用する事をお勧めいたします。】
「分かったわ、じゃあおねがい。」
【はい、撮影する画像をディスプレイに投影いたします。撮影を開始される時は音声、もしくはジョグダイアルで入力をお
願いいたします。】

音声による問答が終了すると、ディスプレイと反対側にあるパーツの一つが開いて円形の硝子板が現れる。
ルイズがディスプレイを見ると、その円形の硝子板が向かっている場所が映っていたのでそれをタバサへと向けて「始め」
と命じると、ディスプレイに数字が現れた。小鳥が囀るような音と共に刻々と減っていく所を見ると、恐らくこれが0にな
れば1分が経った事になるのだろう。
そうして数字が0になり音が一つ鳴ると手首の“ディアーナ”から再び声が響いてくる。

【動画及び静止画像の撮影終了いたしました、確認いたしますか?】
「ええ、お願い。あ、少し待って。」
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 06:38:57 ID:5ohudkVJ
瞼をこすりながらしえん
46ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:39:21 ID:C4zigEXd
ルイズは一度停止をかけると、キュルケとタバサにもディスプレイが見えるようにして再生を命じる。
ウォッチャーの小さな画面ではあったが、その画面内にはタバサが映っていた。なびく髪、瞬き一つまで、全て忠実に1分
前のタバサがいる。
動画が終了した後も3人は彫像の様に固まったままだ。
そんな3人の止まった時を動かしたのはヒューではなく、ある意味一番ルイズに忠実な存在“ディアーナ”だった。

【いかがでしょうかマスター・ルイズ、ご不満であればただいま撮影した画像データを破棄し、新たに撮影を開始いたし
ますが。】
「え?あ、ああいいの大丈夫。そうね、データは破棄しておいて頂戴、撮影ももう終わり。何かあったらまた呼ぶわ。」
【承知しました。またのご利用をお待ちしております。】

そう返答すると、ウォッチャー改め“ディアーナ”は元の素っ気無い黒いディスプレイに戻っていた。
3人は顔を見合わせ、溜息をつくと頭痛を堪えるような表情になる。

「凄い…」
「そうね、多分今のままじゃ私達はこれの足元にも及ばないわ。」
「ええ。だけど、“ディアーナ”はどうやって生きているのかしら?」
「あれはだたのバディだよ。」
「ばでぃ?」
「ああ、お嬢さん達流に言うなら、身体を持っていないゴーレムってところかな。
 最近では勝手に生まれたりしてるみたいだが、要するに食堂にアルヴィーっていうドロイド…ゴーレムがあるだろう?
あれと同じものでね、決められた事を定められた手順でこなして、持ち主の手助けをする擬似人格プログラムの事をそう
呼ぶのさ。」
「さっきの反応を見るとガーゴイルに近い、じゃあ維持に使うのは何?
 ガーゴイルやゴーレムは一応維持に魔力を必要とするけど、これは魔力を使っていない。」
「これの維持は電力を使っている。」
「電力?」
「雷と同じ力だよ」
「雷!?」
「とはいっても全く同じものじゃないけどな。」
「じゃあ、貴方達は魔法を使わずに雷が起こせるの?」
「というか、それがなかったら生活が成り立たなかった。ある意味、俺の故郷のアキレス腱だな。」
「アキレスって?」
「俺の故郷の神話の登場人物でそういうのがいたのさ。そいつは無敵の肉体を持っていたんだけど、その部分だけが普通の
人間と変わらなかった。で、最終的にはその弱点を突かれて死んじまった故事から、弱点を示したりする時に使うようにな
ったんだよ。」
「ちょっと!じゃあ“ディアーナ”ってその内動かなくなるの?」
「いや、そこら辺は安心してくれ。そいつは太陽電池で稼動しているから、故障したり壊したりしない限り動くはずだ。バッテリー…電池の耐用年数があるから永久とはいかないが、多分ルイズお嬢さんが死ぬまでは動き続けると思う。
 ただ、ある程度の時間暗闇に放置していると、再充電まで動かなくなるから気を付けてくれ。」
「ある程度ってどの程度よ。」
「1週間位か、大体2〜3日位だと思っていれば大丈夫だ。」
「ところで太陽電池って何?あの太陽が入っているとか言わないでよね。」
「太陽電池っていうのはそういう意味じゃ無い…、そうだな正確には光電池って言うのが正しいか。
 そいつのベルト部分には光に反応して電気を作り出す仕掛けがあって、そいつの動力源になっている。でその溜め込まれ
た電気を使い切るのが大体さっき言った時間っていう訳だ。」
「じゃあヒューが持っているポケットロンもそうなの?」
「そうだな、多分そうなるはずだ。」
「あら、ヒューも同じ物持っているの?」
「ん?ああ、一応な。こいつは俺のだから誰かにやるって訳にはいかないけど大体おなじものだよ。
 ところでお嬢さん方、王都っていうのはあの街の事かな?」

ヒュー達をのせたシルフィードの向かう先には、城を中心に据えた町並みが広がっていた。
あれこそがトリステインの王都トリスタニア、今日の目的地である。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 06:41:11 ID:5ohudkVJ
静かに呼吸しながら支援
48ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:44:19 ID:C4zigEXd
シーン07a
無理だ
…基本的にトーキョーN◎VAで動物に乗って移動するという事は無い。
 どっかのキャストは乗っているかもしれないが、基本的にトーキョーN◎VAで乗り物といえばトロンで制御・管理され
たヴィークルの事である。

リニア(M・Y)
…トーキョーN◎VAを蜘蛛の巣のように網羅しているリニア・システムタイプの鉄道の事。
 渋滞や交通事故が多発するN◎VAでは信用できる交通手段の一つ。

ヴィークル(I・Y)
…無輪から大型特殊、水上水中、航空航宙…etc、人が乗って運用する乗り物の呼称。
 基本的にトロンで制御・管理されている。普通に使用する場合、トロンが運転を肩代わりするのである程度は安全。

カムイST☆R(M)
…現在の北海道石狩湾周辺の地域を指す。
 シベリア連合クリルタイが諸外国に向けて用意した“租界”。☆はAに変換してSTARと読む。
 “災厄”によって干上がった旧石狩湾の基底部に建設された都市。偉大なる精霊の力で都市基盤を築き上げた。
 大まかな都市の形状は五つの頂点を持つ星型をしている。成り立ちからして霊的なものがある為、アストラル関連の勢力が強い。
 また、数年前に奈落堕ちと呼ばれる大地震が起きた。それが原因で以降バサラ・マヤカシの能力に覚醒したり、今まで闇
に潜んでいたアヤカシが活性化したりしている。

アヤカシ(St)
…伝説の怪物、又はその力を引く存在。神様も含みます。
 自分が受けたダメージを一つ打ち消し蘇ることができる、この時行方をくらませる事も可能。
 ドラキュラや狼男もしくは鬼、wikiでは八雲紫やバージル、アマテラスやホロ辺りが相当する。
 は、もしかして早川健もなのか?w

キャッシュ(I・Y)
…お金の事。トーキョーN◎VAの舞台であるニューロエイジで金銭は全てデータ化されており、売買は基本的にデータでやりとりする。
 しかし、いつの時代でもある“表に出せないお金”をやりとりする時や、肉体的な問題でサイバー化できない人々の為に
クレッドクリスと呼ばれる信用素子(所謂プリペイドカード)がある。

ディアーナ(I・Y)
…ルイズが自分のウォッチャーに付けた名前。転じてウォッチャー内のバディの名前にもなっている。
 ヒューよりも使い魔らしいとルイズのお気に入り
49ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:46:35 ID:C4zigEXd
クリス(Y)
…ニューロエイジにおける記憶容量の事。
 ウォッチャー自体の記憶容量は1クリスだったがヒューがメモリを増設した為、現在は21クリスになっている。また、
様々なソフトを入れたままにしているので内8クリスを消費している設定。
 ちなみにRevolutionにおいて1クリスは約40MBとなっている、現在ではもっと進歩していると思われるが
特に気にしないでいく。
 1クリスにおける記憶容量(映像…2分、音声…15分、画像…週刊誌サイズの1P×10、完全5感データ…12秒)

バディ(Y)
…本文中にもあったように擬似人格プログラムの事。
 ただし、プログラム技術自体がかなり進化しているので、ある程度柔軟な対応が可能と思われる。法遵守プログラムが
含まれているのでカンニング等には使用できない。

勝手に生まれたり
…数年前に起きた“電脳聖母事件”以降、AIは機械を制御する存在から自由な情報生命体に覚醒するようになった。
 ライフパスでAIを選択するとなれる。
 ちなみにヒューが所属していたG.C.I.は“電脳聖母事件”によりトーキョーN◎VAから撤退する事になる。
 ヒューはこの事件についてある程度把握しているが、特に気にはしていない。

ドロイド(I)
…いわゆるロボットの事。人間型がドロイド、非人間型がドローンと呼ばれる。
 基本的にトロン制御で動いている。民生用から軍事用まで様々な用途で使われている。

太陽電池(I・Y)
…実際は充電器か何かがあるのかもしれないが、面倒な為便宜上付けた機能。
 現在の太陽電池とはものが違う、何しろ“日本”の電力はアマテラスと呼ばれる発電衛星によって賄われていた程。
 ちなみに宇宙から地上までどうやってエネルギーを送っていたかというと、太陽光線で作った電力をそのままレーザー
として発射し、富士山頂にある受信施設で受け止めるというバカ(褒め言葉)な方法だった。
50ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 06:49:10 ID:C4zigEXd
支援ありがとうございました、これで今回の扉を閉じたいと思います。

さて、キュルケとタバサにオーバーテクノロジーがばれたw
いや、これ以降この2人は絡んでくるんで、どうしてもこうなるんだけどね。
ただ、ヒューは枯れているのでキュルケの誘惑イベントはありません。
ちゅうか書き手の技量的に無理なのです。
ああ、それと乗馬を教わりながら王都までってむりだよね?


で、今回から出てきたルイズ的に最も使い魔らしい“ディアーナ”色々と覚えれば何気に有能です。
四則演算から健康状態のモニター、辞書機能もあるしね、恒常的に魔法にさらされるので情報生命体として覚醒するかも。
皆さん的にはどうでしょう。

次回はようやくデルフ登場+ごにょごにょ。

おやすみなさい。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 06:51:46 ID:5ohudkVJ
乙でした。
そして読む前にねむくなったので寝ます…。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 07:50:07 ID:lojI+adi
乙でした。

>1クリスは約40MB

この辺りの設定に時代を感じるなw
今だったら1クリス=100TBくらいでも、「サイバーパンクで擬似人格
搭載ならそんなもの」で済まされるだろうに。
53日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/01/17(土) 08:19:48 ID:wVstuy5c
 おはようございます。予告通り、今から3話目を投下しようと思います。
 投下は8:30からで、7レス消費予定です。皆さん、支援よろしくお願いします。

 ちなみに今回読むにあたってのヒント。仲間モンスターは、『かしこさ』のステータスが20以上にならないと、作戦や命令を受け付けません。
 
 ――学園長室――

「これは大発見ですぞ!」

 息せき切って学園長室に乗り込んできたのは、先日使い魔召喚の儀式を監督していた頭の眩しい教師、コルベールであった。
 彼が興奮しきった様子で手元の資料と先日のスケッチを学園長のオールド・オスマンに見せると、オスマンは秘書のミス・ロングビルを部屋から退出させ、詳しく話を聞いた。
 ――そこでコルベールが言ったことは、ルイズの召喚した平民の右手に現れたルーンが、伝説の『虚無』の使い魔『ヴィンダールヴ』のものに酷似しているということ。
 神の右手ヴィンダールヴ。心優しき神の笛。伝説の再来かと興奮し、王室に報告すべきと主張するコルベールに、しかしオスマンは首を縦に振らない。
 そんなことを公にすれば、ロクでもないことになる。オスマンはそう言ってコルベールに緘口令を敷き、話を打ち切った。

 と――ちょうどその時、学園長室の扉がノックされた。扉越しに誰かと問いかけると、返ってきたのは先ほど退出させたばかりのミス・ロングビルの声であった。
 彼女はそのまま扉越しに、報告を始める。いわく、学院の生徒がヴェストリの広場で決闘騒ぎを起こしているとのこと。

「で、誰が暴れとるんだね?」

「一人はギーシュ・ド・グラモン」

 その返答に、オスマンは一つため息をついた。あの好色漢ならば、おおかた女絡みであろうと当たりをつける。だが――その決闘の相手は、彼をして想像もできない相手であった。

「相手は誰じゃ?」

「それが、生徒ではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の妻を名乗る、身元不明の淑女です。名前は確か……フローラ。教師達は決闘を止めるため、『眠りの鐘』の使用許可を求めてます」

 その報告内容を聞いて、オスマンとコルベールは驚いて目を丸くしたが――すぐに表情を引き締める。
 そして彼は杖を振るった。すると壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリの広場の様子が映し出された。
 そこに映し出されたのは、対峙するギーシュとフローラ。彼女は戸惑うどころか泰然とした態度でギーシュを見据え、むしろギーシュの方こそが戸惑っているように見える。

「なるほど、可愛ええ娘じゃのう。グラモンとこのバカ息子はよく自分を薔薇にたとえると聞くが、彼女の方こそが薔薇と呼ばれるに相応しいの」

「ええ。確かに美しい……言うなれば白薔薇と言ったところですか。しかし見たところ、華奢な見た目に反して随分と肝が据わってるようですな」

「うむ」

(『ヴィンダールヴ』の妻……か。彼の素性を測る一端にはなろうかの?)

 一目見た彼女の印象をコルベールと小声で言い合うと、オスマンはこの決闘をとりあえず見守ってみることにした。

「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、わざわざ秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」

「わかりました」

 オスマンがそう告げるとミス・ロングビルは頷き――

「ああ、そうじゃ。ミス・ロングビル」

 去ろうとする前に、扉の向こうの彼女を呼び止めた。

「後で鍵を渡すから、宝物庫に異常がないか調べてみてくれんか?」

「……わかりました」

 ほんの少しの沈黙の後、彼女はもう一度頷き、今度こそ去って行った。
 そしてオスマンとコルベールは、揃って鏡に映し出された映像に見入る。

(それにしても……なんで宝物庫にあるはずの『奇跡の杖』が、彼女の手にあるんじゃ……?)

 その映像を見るオスマンは、隣のコルベールに悟られない程度に、その視線に疑惑の色を浮かべていた。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 08:30:30 ID:bkzpMzA5
大学行く前に1支援
 
 その日、ヴェストリの広場の真ん中で、ギーシュは困惑しながら自問していた。
 なぜ、こんなことになったのか――と。
 そんな彼の目の前には、にこにこと微笑を絶やさない青い髪の淑女の姿。だが、彼を含め、その場の誰もがわかっている――その笑顔が偽りだということを。彼女の額に小さく浮かんでいる怒りのマークが、その証拠である。

「それでは始めましょうか?」

「い、いや、そうは言ってもだね……」

「あなただって承諾しましたでしょうに。お互いに譲れないものがありましたからこうなった。そうでしょう?」

「う……し、しかしだね、やはりこんなのは間違ってる。貴族が平民に頭を下げるなど……」

「私はそれを間違ってますと言ってるんです」

 事ここに来てなお、二人の言い分は平行線であった。

 そう――事の始まりは、食堂で昼食を摂っていた時のこと。気の利かない平民のメイドのせいでギーシュの二股がバレてしまい、手痛い平手打ちを受けた上に頭からワインをぶっかけられた。
 無論、ギーシュはその責任をメイドに押し付け、叱責しようとしたのだが――そのメイドは、よくよく見てみれば平民にしておくのが惜しいぐらいに可愛かった。
 そこでギーシュは、薔薇たる自分の身の回りの世話をする役目――要するに自分専属のメイド――になることで無礼を手打ちにしようと考え、それを伝えた。
 平民からしてみれば、貴族に気に入られるのは立身出世のチャンス。粗相をした相手にこんなチャンスをくれてやるとは、僕はなんて寛大なのだろう――自身の考えに酔った彼は、相手は諸手を上げて喜ぶだろうと、疑いもしなかった。
 ……だが、返ってきたメイドの反応は、ただ怯えるばかり。
 なぜ? どうして? WHY? こんな栄誉、そうそうあるもんじゃないのに――ギーシュがメイドのそんな予想外の反応に戸惑っているうち、彼の元にフローラがやってきた。

「悪いのはあなたの方でしょう? あなたの方が、この子に謝るべきですわ」

 彼女はそう言って、ギーシュを責めた。
 よく見れば彼女は、『ゼロ』のルイズが呼び出した平民――その妻を自称して夫の代理と主張する、確かフローラとかいう名の女性だった。
 無論のこと、貴族であるギーシュが平民に頭を下げるなど、あってはならない。
 見ればその女性は、マントこそ着用してないが、その身なりや立ち居振る舞いは貴族のそれだ。同じ貴族ならば話せばわかると思って言い訳したのだが――それも通用せず、話はこじれることとなってしまった。
 そして双方平行線となったところで、 「ならば決闘でもしますか? マドモアゼル」 などと冗談交じりに言ったところ、 「それであなたが納得するのでしたら」 と真面目に返されてしまった。
 周りにも囃し立てられ、今更前言を翻すこともできず――あれよあれよと話は進み、気付けばこんなところでその女性と対峙することとなってしまった。

「……薔薇は多くの人を楽しませるために咲くもの。その薔薇たる僕が、女性を傷付けることなど……」

 誇りある貴族の子弟として、女性に手を上げるなどもっての他。ましてや自分は、他のどの男よりも女性に対して真摯であると自負している。……あくまでも自負であって、他人から見ての評価ではないが。
 そんな自分が女性と決闘するという現在の状況に、ギーシュは苦々しい思いが顔に出るのを抑えられない。
 だが、そんなギーシュに対し、対峙するフローラは――

「お気になさらないでください。こう見えても私、それなりに戦いの経験はございますので。傷を受けることを気にするような初心(うぶ)な時期は、結婚してあの人と一緒になった時に、既に過去のものとなってます」

 と、平然と返した。
 どうやら、引く気は微塵もないようである。ギーシュは諦観の篭ったため息をこっそりとつき、そこでようやっと自身の杖たる薔薇の造花を手に取った。

「仕方ありません……では、始めるとしましょう。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュです」

「フローラです。二つ名はありません」

 ギーシュの名乗りに律儀に答え、フローラは優雅に頭を下げてから、杖を構えた。
 
※以下、『戦火を交えて』をBGMに、ダイジェストでお送りします。


 ギーシュが あらわれた!


 フローラは にっこりと ほほえんでいる。

 ギーシュは れんきんを となえた!
 ワルキューレが あらわれた!


 フローラは メラミを となえた!
 ワルキューレに 78の ダメージ!
 ワルキューレを たおした!

 ギーシュは おどろき とまどっている。


 フローラは にっこりと ほほえんでいる。

 ギーシュは れんきんを となえた!
 ワルキューレが あらわれた!
 ワルキューレが あらわれた!
 ワルキューレが あらわれた!
 ワルキューレが あらわれた!
 ワルキューレが あらわれた!
 ワルキューレが あらわれた!


 フローラは ベギラマを となえた!
 ワルキューレBに 37の ダメージ!
 ワルキューレBを たおした!
 ワルキューレCに 34の ダメージ!
 ワルキューレCを たおした!
 ワルキューレDに 42の ダメージ!
 ワルキューレDを たおした!
 ワルキューレEに 41の ダメージ!
 ワルキューレEを たおした!
 ワルキューレFに 36の ダメージ!
 ワルキューレFを たおした!
 ワルキューレGに 38の ダメージ!
 ワルキューレGを たおした!

 ギーシュは せんいを うしなった。
58名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 08:35:15 ID:R5vy4RJL
sien
 
「続けますか?」

 にっこりとほほ笑んで問いかけるフローラに、腰を抜かしてへたり込むギーシュは、無言で首を横に振った。
 周囲はしーんと静まり返っている。あまりにも一方的なワンサイドゲームに、ギャラリーも理解が追いついてないようだった。
 が、やがて――

「……『火』のトライアングル?」

 一人がぼそりとこぼした呟きに、周囲がざわめき始める。「スクウェアかもしれないぞ!」だの、「詠唱は聞こえたか?」だの、「高位のメイジならいつの間にか詠唱終わらせてるもんだ」だの、議論が巻き起こる。
 やがてその議論は、誰ともなしに一つの疑問へと収束する。すなわち――「彼女は何者か?」という疑問だ。

「あ、あなたは一体……?」

「ただの主婦ですわ」

 ギャラリーを代表して、というわけではないだろうが、ギーシュがフローラを見上げて尋ねた。だが彼女は、平然とした様子でそう答えを返した。
 実際、彼女自身にとって自分の素性とは、リュカの妻以上でも以下でもないのだろう。それで答えは全てとばかりに「では、私の勝ちですわね」と早々に話題を変え、ギーシュの傍に歩み寄った。

「私が勝ったなら……わかりますね?」

「……僕があのメイドに謝ればいいのかい?」

「あの子だけではありませんわ。モンモランシーさんとケティさん……でしたっけ? あの子たちにも、ちゃんと謝っておいてくださいね」

 その言葉に、ギーシュはハッとした顔になった。ギャラリーに紛れて事態を見ていた当のモンモランシーとケティも、フローラの言葉に驚いた顔になっている。

「女の子を泣かす男の人は、最低ですよ?」

 そう言って、子供を叱るように「めっ!」と言ってしかめっ顔を寄せてくるフローラに、ギーシュは思わず言葉に詰まる。

「お返事は?」

「は、はい……」

「よろしい」

 戸惑いつつも頷くギーシュに、フローラは満面の笑みを浮かべた。そして、ギーシュの方に手を差し出す。
 立ち上がる手助けをしようというのか――女性にそんなことをさせるのにギーシュは自分を情けなく感じるも、負けたのは自分だと言い聞かせ、素直にその手を取ろうとした。

 が――不意に、その手がすり抜けた。

「え?」

 一瞬、何が起こったのかわからなかった。
 気が付けば、ギーシュは地面にへたり込んだ姿勢から、フローラの手によって四つん這いの格好にさせられていた。

「それはそれとして、おイタをした子には、『お仕置き』が必要ですよね」

「え?」
60名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 08:37:10 ID:R5vy4RJL
支援
 
 フローラが口にした言葉を、ギーシュは理解することができなかった。
 おイタ? お仕置き? もう決着はついたはずではなかったのか? 彼女は自分に、この上何を要求すると言うのか?
 嫌な予感が急速に膨れ上がってくる。それを回避するために立ち上がろうとするも、フローラに背中を押さえつけられ、それもままならない。

「あ、あの、ミス・フローラ?」

「私、実を言いますと、子供をお仕置きしたことがありませんの。うちの子供たちったら、私が言うのもなんですが、とっても良い子たちで……親としては、もっと困らせてもらいたいものなんですけど」

「そういうものなのでしょうか……? というか、それとこれとどんな関係が」

「私も小さい頃は、姉さんの影響を受けて結構やんちゃしたものです。そのたびにお母様に怒られて、お仕置きされたものですわ。でも私の方が親になっても、そんなお仕置きは、ついぞしたことがないんですの」

「いや、だから何の関係が」

 フローラの話に、この状況との因果関係を掴めずに困惑するギーシュ。
 ……だが、実際のところは予測が立っている。しかしそれは、否定してもらいたい類の予測であった――この歳になってそれは勘弁してほしい。ゆえに、「違っていてほしい」という淡い願望を込めて、尋ねているのだ。
 が――

「……おイタをした子には、『お仕置き』が必要ですよね?」

 ――現実は、厳しい。
 『うきうき』とか『わくわく』という擬音が一番しっくりくるような満面の笑みと共に、もう一度繰り返されたその台詞が、全てを物語っていた。それを見たギーシュの顔が、途端に青くなる。

「や、やめ――」

「えい」

 ぺろん、と。
 ギーシュの制止の声も遮られ、フローラは容赦なくギーシュのズボンをずり降ろし、尻を丸出しにさせた。周囲の女子たちから、黄色い歓声が沸き起こる。
 そして――『パァーンッ!』という平手打ちの音と、「アッー!」というギーシュの悲鳴が、ヴェストリの広場に響き渡った。



「…………はぁ」

 嬉々としてギーシュに『おしりぺんぺんの刑』を処するフローラを見ながら、ルイズはため息をついた。
 丸出しにされたギーシュの尻に興味津々の女子や、腹を抱えて笑い転げる男子どもが周囲を埋め尽くす中、ルイズの心中は暗澹たるものが渦巻いていた。

 ――結局あれは、力ある者の同情の言葉でしかなかったのか。

 教室での彼女の言葉が、脳裏に蘇る。いつか報われると自分を励ましてくれたフローラの言葉は、彼女の持つ『力』を見たその瞬間、途端に薄っぺらいものに感じた。
 あれだけの力がある彼女は、力を持たない自分の気持ちなど、表面的な理屈でしかわからないだろう。力を持たずに惨めな思いをし続けている自分の気持ちなど、真にわかろうはずもない。
 そしてそんな者からかけられる言葉など、とうに聞き飽きていた。それを言った者たちは、誰も彼もが、最後にはルイズを見捨てていた。フローラもその例に漏れないだろうと、ルイズは思う。
 実際はフローラも、かつては夫の力になれない貧弱な自分を呪ったことがあり、現在身につけた力はその時の苦難を乗り越えたがゆえのものなのだが――無論、ルイズにそれを知る由はない。

 ルイズはもう一度ため息をついてきびすを返し、歓声に沸くヴェストリの広場を、肩を落として去って行った。



 ――去り際、『お仕置き』によって痛みと羞恥に悶えるギーシュを羨ましそうに見てる、一匹の『豚』を蹴飛ばしつつ。
62名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 08:38:48 ID:R5vy4RJL
支援
 
「「…………」」

 所変わって学院長室――『遠見の鏡』で状況を見ていたオスマンとコルベールは、絶句していた。

「……いやはや」

「これはなかなか……面白い嬢ちゃんじゃのう……あのグラモンの息子を……」

「あれほどの辱めを与えて、問題にならなければ良いのですが……いや、彼女の後ろにいるのはヴァリエール公爵家ですから、その心配もないですかな?」

「そういった打算があるようにも思えぬがのう……まあ、こんなくだらないことで、家を挙げてしゃしゃり出てくることもなかろうが」

「そもそも、一体何者なんでしょうか?」

 コルベールのその問いに、オスマンの眉がピクリと動いた。
 彼は目を閉じ、数秒だけ黙考し――そして、ゆっくりと口を開く。

「……あの『火』、おぬしもわかったであろう? 『炎蛇』のコルベール君?」

「ええ。彼女の放った『火』の魔法は……杖を媒介としていませんでした」

 オスマンの問いに、コルベールは重い声音で答えた。その返答に、オスマン老は頷く。

「うむ。あの場に集まったガキどもで、それに気付いた者がいたかどうか……」

「あれは先住魔法なのでしょうか?」

「いや、行使した力は精霊の力ではなかった。先住魔法ではあるまいて。じゃが、わしらの知っている魔法ではないのも事実……『メラミ』『ベギラマ』などという魔法は、聞いた覚えもなかろう?」

「ええ」

 オスマンの問いに、コルベールは頷いた。
 だが、系統魔法でも先住魔法でもないならば、彼女の使っていた魔法は一体何なのか――興味が湧くと同時、恐怖も湧く。未知というのは、えてしてそういうものだ。

「『ヴィンダールヴ』の件も含め、ミス・ヴァリエールの使い魔とその縁者には、注意が必要じゃな」

「王宮に報告できない理由が、また一つ増えましたな」

「まったく、厄介なことじゃ」

 オスマンは眉根を寄せてそう言い、水ギセルをくわえた。
64名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 08:40:43 ID:R5vy4RJL
支援
 
 日は変わり、その翌日――ルイズは教室で、注目を集めていた。

 思い起こすのは昨晩のこと。昨日は決闘騒ぎの後、特に大過なく一日を過ごし、リュカがフローラを迎えに来る時間を迎えたのだが――その際、ルイズはリュカに怒鳴りつけたものである。使い魔が主人の元を離れるとは何事か、と。
 そもそも、代理を立てるというリュカの案を、ルイズが認めた覚えはなかった。この日のフローラにしたって、ルイズが認めようとしないところを無理矢理に押し付けられたようなものである。
 だから、明日からは代理を立てようなんて思うな――と、そう言おうとしたのだが。

「なら、まともに使い魔らしい使い魔を用意できるんだったら、どうかな?」

 そう言われた途端、「え?」とルイズの動きが止まった。その直前、フローラがリュカに何事か耳打ちしていたので、それが関係するものと思われたが――この平民(?)は、一体何を言ってるのだろう?
 そんなルイズの疑問を察したのか、リュカはにこりと笑って続けた。

「呼び出されるのは人間とばかり思ってたから、フローラを連れてきたんだけど……どうやら、失敗だったみたいだね。でも、明日からはちゃんとしたモンスターを連れてくるよ」

 モンスター? え? なに? もしかして幻獣を連れて来れるの?
 そんな困惑と期待の入り混じったルイズの視線に、リュカは自信たっぷりに頷いてみせた。「みんなの注目を集められる使い魔を連れてくるよ」と。
 ルイズはその言葉に、内心で小躍りしたくなった。だがそれを表に出すのは、ルイズのプライドが許さない。第一、どんな幻獣を連れて来ようと、リュカが本来の使い魔である事実は覆らないのだ。
 しかし、幻獣を連れて来れるというのは、なかなかに魅力的ではある。そこでルイズは、「私が納得するような使い魔を連れて来れたら、代理を立てるのは認めてあげるわ!」と、内心を隠しつつ居丈高に返したものだ。

 で、その結果――確かにこの日、周囲の注目は集められた。クラスメイトたちの目が輝き、羨望の眼差しが向けられている。
 が――

「……天然? ねえ、天然なの? あの夫婦、一体何考えてんの?」

 当のルイズは、まったく嬉しくなさそうだった。『こんな使い魔』をチョイスしたその基準に、頭が痛くなる思いである。
 確かに、人間などではない。『コレ』を生物にカテゴライズして良いものかどうかは判断がつきかねるが、自意識を持っているのなら使い魔と呼んでも差し支えはないだろう。
 そういった意味では、『コレ』は及第点をクリアして余りある、珍しい使い魔であった。それ自体に不満はない。不満はないのだが――

「だから、私が集めたい注目は、こんなんじゃないのよぅ……」

 ぼやき、だばーっと目の幅一杯に涙を流すルイズ。
 そんなルイズの目の前にいるのは――



 ――顔のついた袋を中心として舞い踊る、色とりどりの宝石たち。



 そう――彼こそが宝石のモンスター“踊る宝石”、その名もジュエル。ルイズが集めている視線は、要するにただの物欲の視線であった。

「……あのさジュエル、少しおとなしくしててくれないかしら?」

「♪」

 しかし『かしこさ:7』のジュエルは、ルイズの命令を聞くことはなかった。
 結局その日一日、物欲しそうな視線がルイズに注がれ続けることになり、ルイズはとりあえずリュカを一発殴ろうと心に決めたのであった。

 ――ちなみにキュルケの視線が一番怖かったのは、ルイズだけの秘密である。
66名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 08:42:36 ID:R5vy4RJL
支援
67日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/01/17(土) 08:43:20 ID:wVstuy5c
 以上、投下終了です。
 フローラがちょっとはっちゃけてしまった感はありますが、この作品ではこういうキャラ造形だということで。皆さんのウケが良いことを祈ります。
 ちなみにこれ以降、フローラの再登場予定は(今のところ)ありません。

 次回4話投稿は、本日の夜を予定してます。


 ……ところで『日替わりの人』って略すと、使い魔じゃなくて書き手の方が日替わりなイメージになっちゃいません?
68名無しさん@お腹いっぱい:2009/01/17(土) 09:05:53 ID:R5vy4RJL
ギーシュとフローラの決闘をどう表現するかと思いましたが、
ドラクエの戦闘画面そのままとは!
お見事です。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 09:16:36 ID:3s1yl7xH
もう3話までwikiに登録されてるしw

>>次回4話投稿は、本日の夜を予定してます。

ガンガンいこうぜ!
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 09:22:59 ID:Ua52oBua
乙ー!
そういやリュカの血統と出生が明らかになった場合ってハルケ的にはデンジャーだよね。グランバニアしかり、マーサしかり……
それにしてもおマチさんがどんな目に遭うかが……もっとも破壊の杖そっちのけでジュエル拉致りそうだけどw
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 09:34:02 ID:wJg8OBBr
日替わりの方、乙でした。
きっとこの日の夕方には『踊る宝石・ジュエル誘拐事件! 〜犯人はモグラ?〜』が始まるのですね。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 09:37:14 ID:ycznKLxP
GJ!です
フローラが黒ーい
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 09:50:44 ID:gN9wcqcd
>50
乙。
異文化コミュニケーションは差異が大きい方が面白いなぁ
いまだに異世界から来たなんて言わないヒューは大人だ
>67
乙。
決闘に負けたのにご褒美とは
ギーシュ氏ね
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 10:37:56 ID:WLMvVWGh
GJ!
俺もフローラにお仕置きされたい(´Д`;)
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 10:43:52 ID:kzC05844
>>67
日替わりの人乙です!決闘場面の表現に座布団10枚!
通称に関しては、1番誤解を招きそうなのは「ラスボスの人」だと思いますw

>>73-74
このスレにも豚どもがw
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 10:55:48 ID:evxhUKFr
>75
豚どもとか言うな!
せめてマリコルヌどもと言え!
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 11:03:28 ID:coT2lniL
そっちのほうが酷い
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 11:11:19 ID:wWMfSNGb
ガンダムSEEDからスーパーコーディネーターキラが呼ばれたら

「ルイズ、僕も杖が欲しい」
「っは、何を言っているのこの屑」
「いいから貸してくれないかな」
「っふん、いいわ」

「たしか、ユビキタス・デル・ウィンデ だったかな」
ぼふ ぼふ ぼふ ぼふ
「な、なんであんた魔法が使えるのよ!」
「こんなの簡単じゃないか」x5
79虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:19:05 ID:LwNfzTTh
予約などなければ、11:30頃投下させてください
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 11:24:15 ID:6bNjm8ws
支援
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 11:24:39 ID:AP0p1ban
支援しまっせ
82虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:30:28 ID:LwNfzTTh
魔法学院の正門をくぐって、王女の一行が現れると、整列した生徒たちは一斉に杖を掲げた。しゃん!と小気味よく杖の音が重なった。
正門をくぐった先に、本塔の玄関があった。そこに立ち、王女の一行を迎えるのは、学院長のオスマン氏であった。
馬車が止まると、召使いたちが駆け寄り、馬車の扉まで緋毛氈の絨毯を敷き詰めた。
「トリステイン王国女王、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーりーーーーッ!」
呼び出しの衛士が、緊張した声で王女の登場を告げる。
しかし扉が開いて現れたのは、枢機卿のマザリーニであった。灰色のローブに身を包んだ、四十ほどの痩せぎすの男である。
生徒たちは一斉に鼻を鳴らした。平民の血が混じってるとの噂のあるマザリーニ枢機卿は、貴族たちに人気がないのだった。
しかもマザリーニは、なぜか民衆の人気もなかった。妬みというものかもしれなかった。
マザリーニは生徒たちの態度を気にしたふうもなく、馬車の横に立つと、続いて降りてくる王女の手を取った。
生徒の間から歓声が上がる。
王女はにっこりと薔薇のような微笑を浮かべると、優雅に手を降った。
「あれがトリステインの王女?ふん、あたしの方が美人じゃないの」
キュルケがつまらなさそうに呟く。
「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
横に立っているティトォにキュルケは尋ねた。
その隣には、タバサもいた。
ふたりして図書館に引きこもっているところを、キュルケが引っ張り出してきたのだった。
「うん、どっちも美人さんだと思うよ」
「なあにそれ。お爺さんみたいな喋りかた!」
キュルケは笑ったが、17ほどに見えるティトォ少年は、実際には100歳以上のお爺さんなのだった。
ティトォはふと、少し離れたところにいるルイズの方を見た。
ルイズは、真面目な顔をして王女を見つめている。黙ってさえいれば、なんとも清楚で、美しく、華やかなルイズであった。
そのルイズの横顔が、はっとした顔になった。それから顔を赤らめる。
どうしたんだろう?と、ティトォは好奇心でルイズの視線を追った。
その先には、見事な羽帽子をかぶった、凛々しい貴族の姿があった。鷲の頭と獅子の胴体を持った、見事な幻獣に跨がっている。
ルイズはぼんやりとその貴族を見つめている。
ふとキュルケを見ると、彼女もまたルイズと同じに、ぼーっと顔を赤らめて、ルイズと同じ羽帽子の貴族を見つめていた。
少し前にはティトォにダーリンなどと囁きかけていたのに、キュルケはまったく気が多い女性なのであった。
ははあ、ルイズはああいうひとがタイプなのか。と、ぼんやりティトォは考えた。
しかし、ルイズがあの貴族に向ける視線は、キュルケのものとはなんだか違っているような気がした。
そのことが少し気になって、トントンとこめかみを指で叩きつつ、ティトォもまた羽帽子の男に目をやった。
タバサだけは相変わらず、座って本を広げていた。


そしてその日の夜……。
ティトォは、ルイズの部屋の隅に置かれた藁束の上に座っていた。
この藁束は、ティトォが部屋に持ち込んだものである。
アクアはルイズのベッドで一緒に寝ていたのだが、さすがにティトォが同じことをするのはどうかと思ったので、藁束で簡易の寝床を作ったのだった。
ティトォは、まん丸に太ったねこを膝に乗せている。
なぜルイズの部屋にねこがいるのだろう、とティトォは一瞬考えたが、気にしないことにした。
ねこは、どこにでもいるのだった。
83虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:32:16 ID:LwNfzTTh
ねこを撫でながら、ティトォはルイズを見ていた。
なんだか、ルイズは激しく落ち着きがなかった。
立ち上がったと思ったらふたたびベッドに腰かけ、枕を抱いてぼんやりとしている。
昼間、あの羽帽子の貴族を見てからずっとこうだった。
あれからルイズは何もしゃべらずに、ふらふらと幽霊のように歩き出し、部屋にこもるなり、ベッドでこうやってぼんやりしているのだった。
ティトォは、こんなにおとなしいルイズを見るのは初めてだった。
なので、ティトォはルイズの似顔を描くことにした。
ルイズは黙っていれば、はっとするような美貌の持ち主であった。高慢な性格を考えなければ、顔だけは。顔だけは可愛いのだった。
そんなルイズが、ベッドに腰かけ、もの憂げに目を伏せている。びっくりするほど絵になっていた。
アマチュア絵描きの魂を刺激されたティトォは、スケッチブックにルイズの似顔絵を描きはじめた。
それからしばらくの間、部屋にはスケッチブックに鉛筆を走らせる音と、ときおり付くルイズのため息の音だけが響いていた。
「あ……ちょっといい出来かも」
ティトォは筆を止め、呟いた。
自画自賛だけど、これはいい。イケてる。今まで描いてきた中でも、五本の指に入る作品かもしれない。
思いもかけず生まれた傑作に、ティトォの胸は高鳴った。ぜひぜひ感想を聞いてみたくなって、いても立ってもいられなくなってしまう。
「ルイズ、きみを描いてみたんだ。……どうかな?」
どんな反応が返ってくるか、ティトォは少し緊張しながらルイズにスケッチブックを差し出した。
ルイズはちらりとスケッチブックに目を落とす。
そこに描いてあったのは、小さな子供が見たら泣き出しそうな、おばけのような顔だった。
ティトォにはこれっぽっちも絵の才能がないのだった。
もし、ルイズが普段通りのルイズだったなら、このおばけの絵を目の前に「ご主人様の似顔でございます」などと言おうものなら、烈火のごとく怒り狂ったに違いなかった。
しかしティトォにとって幸運なことに、ルイズは深くもの思いに沈んでいたので、ほう、と切なげなため息をついただけだった。
その反応を、ティトォは「気に入ってくれたんだ」と解釈した。スケッチブックからそのページを破りとると、満足げににこにこ笑いながら、自分の傑作を矯めつ眇めつした。
ティトォは、自分と周りに花の咲いている人であった。
おめでたいヤツなのだった。
そんなふうにして二人が過ごしていると、トントンと部屋のドアがノックされた。
「誰だろ?」
ティトォはルイズを促した。
ノックは規則正しく叩かれた。初めに長く二回、それから短く三回……。
ルイズは、はっとした顔になった。
急いで立ち上がり、ドアに駆け寄り、開く。
そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりと被った、少女だった。
黒頭巾の少女は、そそくさと部屋に入ってきて、後ろ手にドアを閉めた。
それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から魔法の杖を取り出し、軽く降る。
短くルーンを呟くと、光の粉が部屋に待った。
「……ディテクトマジック?」
フーケの小屋で、タバサが使った探知の呪文だ。
ルイズが尋ねると、頭巾の少女が頷く。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
部屋のどこにも、聞き耳を立てる魔法の耳や、どこかに通じる覗き穴がないことを確かめると、少女は頭巾を取った。
ルイズはあっと息を呑んだ。現れたのは、なんとアンリエッタ王女であった。
「姫殿下!」
ルイズが慌てて膝を付く。
ティトォは一瞬ぽかんとしたが、ルイズにならって頭を垂れた。
アンリエッタは優しい微笑を浮かべていたが、やがて感極まったような表情になって、膝を付いたルイズを抱きしめた。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ!ああルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません。このような下賎な場所へお越しになられるなんて……」
ルイズはかしこまった声で言った。
「ルイズ!そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をして寄ってくる欲の皮のつっぱった宮廷貴族たちもいないのですよ!
 ああ、ルイズ、わたくしの懐かしいおともだち。あなたにまでそんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」
「姫殿下……」
ルイズは顔を持ち上げた。
84虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:33:33 ID:LwNfzTTh
ルイズは顔を持ち上げた。
アンリエッタは嬉しそうに、ルイズに語りかける。
「幼い頃、一緒になって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃない?泥だらけになって!」
はにかんだ顔で、ルイズが答える。
「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ボルト様に叱られました」
「そうよ!そうよルイズ!ふわふわのクリーム菓子を取りあって、掴み合いになったこともあるわ!ああ、ケンカになると、いつもわたくしが負かされたわね。あなたに髪の毛を掴まれて、よく泣いたものよ」
「いえ、姫さまが勝利をお収めになったことも、一度ならずございました。覚えておいでですか?わたしたちが『アミアンの包囲戦』と呼んでいるあの一戦を……」
ルイズとアンリエッタは懐かしい思い出話に花を咲かせ、くすくすと楽しそうに笑いあった。
ティトォはそんな二人を見て、ちょっと呆れていた。
おしとやかに見えたのに、とんだお転婆姫さまである。
ふとアンリエッタは、部屋の隅に控えるティトォに気付いた。
「あらまあ、ルイズ。ごめんなさい、もしかしてお邪魔だったかしら」
「お邪魔?どうして?」
「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?いやだわ。わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね」
「はい?恋人?ティトォが?」
ルイズは首をぶんぶんと振って、アンリエッタの言葉を否定した。
「姫さま!彼はただの使い魔です!恋人だなんて冗談じゃないわ!」
「使い魔?」
アンリエッタはきょとんとした面持ちで、ティトォを見つめた。
「人にしか見えませんが……あなたの使い魔は、そちらのねこではなくって?」
アンリエッタはティトォの横にいる白いねこを示した。
「違います。人の方です」
そう答えながらも、ルイズはなんで部屋にねこがいるんだろう、と思っていた。
まあ、いいか。あのねこって、どこにでもいるんだもの。
「まあ。ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「好きであれを使い魔にしたわけじゃありませんわ」
ルイズは憮然とした。
「どんな知り合いなの?」
ティトォが尋ねると、ルイズは懐かしむように目をつむって答えた。
「姫さまがご幼少のみぎり、恐れ多くもお遊び相手を務めさせていただいたのよ」
アンリエッタは、ルイズに微笑んだ。
「ええ、懐かしい……。あの頃は、毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんかなくって」
顔は笑っていたが、深い、憂いを含んだ声であった。
「姫さま?」
ルイズは心配になって、アンリエッタの顔を覗きこんだ。
「姫さま、どうなさったんですか?」
「いえ、なんでもないわ。ごめんなさいね……。いやだわ、自分が恥ずかしいわ。あなたに話せるようなことじゃないのに……わたくしってば……」
「おっしゃってください。昔はなんでも話し合ったじゃございませんか!わたくしをおともだちと呼んでくださったのは姫さまです。そのおともだちに、悩みを話せないのですか?」
ルイズの言葉に、アンリエッタは嬉しそうに微笑んだ。
そして決心したように頷くと、語りはじめた。
「今から話すことは、誰にも話してはいけません」
ルイズはちらっとティトォを見た。
「席、外そうか?」
ティトォはそう言ったが、アンリエッタは首を振った。
「いえ、メイジと使い魔は一心同体。席を外す理由がありません」
そして、物悲しい調子で、アンリエッタは語りだした。
「結婚するのよ。わたくし」
「……おめでとうございます」
その声の調子に、なんだか悲しいものを感じたルイズは、沈んだ声で言った。
85虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:36:19 ID:LwNfzTTh
「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」
「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
「そうよ。でも、しかたがないの。同盟を結ぶためなのですから」
アンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢を、ルイズに説明した。
アルビオンの貴族たちが反乱を起こし、今にも王室が倒れそうなこと。
反乱軍は『レコン・キスタ』と名乗り、ハルケギニアの統一を叫んでいること。
アルビオン王家を倒したら、次はこのトリステインにレコン・キスタの矛先が向くであろうということ。
それに対抗するために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと。
同盟のために、アンリエッタ王女がゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったこと……。
「そうだったんですか……」
ルイズは沈んだ声で言った。アンリエッタがその結婚を望んでいないのは、口調から明らかであった。
「いいのよ。ルイズ、好いた相手と結婚するなんて、物心付いた時から諦めていますわ」
「姫さま……」
「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を、血眼になって探しています」
アンリエッタは目を伏せた。
「……もしかして、姫さま。婚姻を妨げるような材料が?」
ルイズが蒼白になって尋ねると、アンリエッタは悲しそうに頷いた。
「おお、始祖ブリミルよ……、この不幸な姫をお救い下さい……」
アンリエッタは顔を両手で覆うと、床に崩れ落ちた。妙に大げさで、芝居がかった仕草だった。
「言って!姫さま!いったい、姫さまのご婚姻を妨げる材料ってなんなのですか?」
ルイズも興奮したようにまくしたてる。
「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです。それがアルビオンの貴族たちの手に渡ったら……、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」
「手紙?どんな内容なのですか?」
「……それは言えません。でも、それを読んだら、ゲルマニアの皇室はわたくしを許さないでしょう。婚姻は潰れ、同盟も反故。トリステインは、一国にてアルビオンの反乱軍に立ち向かわねばならないでしょうね」
ルイズは息せき切って、アンリエッタの手を握った。
「いったい、その手紙はどこにあるのですか?トリステインに危機をもたらす、その手紙とやらは!」
「それが、手元にはないのです。実はアルビオンにあるのです。反乱勢と骨肉の争いを繰り広げている、アルビオン王家のウェールズ皇太子の手に……」
「プリンス・オブ・ウェールズ?あの、凛々しき王子さまが?」
ルイズは息を呑んだ。
「では、姫さま、わたくしに頼みたいことと言うのは……」
アンリエッタはのけぞると、ベッドに身体を横たえた。
「無理よ!無理よルイズ!わたくしったら、なんてことでしょう!混乱しているんだわ!貴族派と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」
「何をおっしゃいます!このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・ヴァリエール、姫さまの御為となれば何処なりと向かいますわ!姫さまとトリステインの危機、見過ごすわけにはまいりません!」
ルイズは膝を付いて恭しく頭を下げた。
「『土くれ』のフーケを捕まえたこのわたくしめに、その一件、ぜひお任せ下さいますよう」
フーケ討伐において、ルイズは特に何もしていなかったが、ぶっちゃけほとんどティトォの手柄だったのだが、いいのだ。
使い魔の手柄は主人の手柄なのだから。
「このわたくしの力になってくれるというの?ルイズ・フランソワーズ!懐かしいおともだち!」
「姫さま!このルイズ、いつまでも姫さまのおともだちであり、まったき理解者でございます!永久に誓った忠誠を、忘れることなどありましょうか!」
ルイズがアンリエッタの手を取って、熱っぽい口調でそう言うと、アンリエッタはぼろぼろ涙をこぼした。
86虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:38:07 ID:LwNfzTTh
「ああ、忠誠。これが誠の友情と忠誠です!感激しました。わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れません!ルイズ・フランソワーズ!」
アンリエッタとルイズはひしと抱き合って、おいおい泣きはじめた。
自分の言葉に酔ったような二人であった。
ティトォは、半分呆れた気持ちで二人を見つめていた。
ルイズったら、いいように乗せられちゃって。こっちから進んで王家の密命を賜っちゃったよ。
狙って話を持ちかけたんなら、あの王女さま、たいした食わせものだね。
でもなんだか、あの人からはそういう悪賢い印象は受けないな。
どっちかって言うと、側近や侍女にも相談できなくて、本当に困り果てて、昔の友達を頼ってきたって感じかな。
ああいう芝居がかった仕草も、おそらく政の世界で過ごすうちに自然に身に付いてしまったもの……
トントンとこめかみを指で叩きながら、ティトォはアンリエッタを分析する。しかし、ふいに思考の展開を止めてしまった。
(……やめとこ。悪い癖だ)
落ち着くと、ルイズは身体を離し、アンリエッタの目を見つめた。
「アルビオンに赴きウェールズ皇太子を捜して、手紙を取り戻してくればよいのですね?姫さま」
「ええ、その通りです。『土くれ』のフーケを捕まえたあなたたちなら、きっとこの困難な任務をやり遂げてくれると信じています」
「一命にかけても。早速明日の朝にでも、ここを出発いたします」
ルイズはふたたび恭しく頭を下げた。
アンリエッタはにっこり微笑むと、ティトォの方に顔を向けた。
「頼もしい使い魔さん」
「え、ぼく?」
「わたくしの大切なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
そして、すっと手を差し出した。手の甲を上に向けている。
ティトォが目をぱちくりしていると、ルイズが促した。
「ぼさっとしてないでよ、もう。こんな光栄、めったにないんだからね」
ああ、キスを許されたってことか。忠誠の証に。
ティトォはこういう気取った儀式には慣れていないので、いささか優雅さに欠ける動きで頭を垂れると、跪いてアンリエッタの手に唇を近付けた。
と、その時、ドアがばたーんと開いて、誰かが飛び込んできた。
ティトォはびっくりして、ドアの方に顔を向ける。
「いけません姫殿下!使い魔にお手を許すなんてーッ!」
飛び込んできたのはなんと、以前アクアと決闘騒ぎを起こしたギーシュ・ド・グラモンであった。
相変わらず薔薇の造花を手に持っている。
「ギーシュ!あんた!立ち聞きしてたの?今の話を!」
ルイズが叫ぶ。しかしギーシュはその問いには答えず、夢中になってまくしたてる。
「薔薇のように見目麗しい姫さまの後を付けてきてみればこんなところへ……、それでドアの鍵穴からまるで盗賊のように様子をうかがえば……、姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せ付けますよう」
「なに言ってんのよ!覗きなんかして、どういうつもり!このバカチン!縛り首よ。ししし、縛り首だわ!」
ルイズが興奮して叫ぶ。
87虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:39:34 ID:LwNfzTTh
「ぼくも仲間に入れてくれ!」
ギーシュもわめいた。
「どうして?」
ティトォが尋ねると、ギーシュはぽっと頬を赤らめた。
「姫殿下のお役に立ちたいのです……」
ルイズはそんなギーシュの様子で、感づいた。
ギーシュは恐れ多くも姫殿下に恋してしまったのだ。
ルイズは呆れて、声をかける。
「あんた、彼女いたでしょう、ほら、モンモランシーが。どうしたのよ」
しかしギーシュは無言だった。ルイズはなるほど、と思った。
「フラれたのね、ギーシュ。今度こそ完璧に」
例の、食堂での香水の一件で、二股がばれたことをルイズは思い出した。
「う、うるさいね!きみの使い魔のせいじゃないかね!」
この場合の『使い魔』とは、ティトォではなくアクアのことである。
「グラモン?あの、グラモン元帥の?」
アンリエッタがきょとんとした顔でギーシュを見つめる。
「息子でございます。姫殿下」
ギーシュは立ち上がると恭しく一礼した。
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員に加えてくださるのなら、これはもう望外の幸せにございます」
熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお救い下さい、ギーシュさん」
「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった!姫殿下が!トリステインの可憐な花、薔薇の微笑みの君がこのぼくに微笑んでくださった!」
ギーシュは感動のあまり、後ろにのけぞって失神した。
ギーシュを見下ろすルイズとティトォの目は、どちらも同じことを言っていた。
大丈夫かこいつ。
アンリエッタはこほんと咳払いをすると、机に座って、ルイズの羽根ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためた。
アンリエッタは筆を止め、手紙をザッと見直すと、少し躊躇ったように末尾に一文付け加えた。
「始祖ブリミルよ……。この自分勝手な姫をお許し下さい。でも、国を憂いても、わたくしはやはり、この一文を書かざるを得ないのです……、自分の気持ちに、嘘をつくことはできないのです……」
密書だというのに、まるで恋文でもしたためたようなアンリエッタの表情だった。
アンリエッタは書いた手紙を巻いた。杖を振る。すると、どこから現れたものか、巻いた手紙に封蝋がなされ、花押が押された。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜くと、手紙とともにルイズに手渡した。
「母君からいただいた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金に充ててください」
ルイズは深々と頭を下げた。
ティトォは、『水のルビー』の事が、なにか気がかりだった。不死の身体が、『水のルビー』に奇妙な反応を示していたのだ。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなた方を守りますように」
88虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 11:41:38 ID:LwNfzTTh
以上です。
次回はみんな大好きワルドさんの登場です
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 12:54:03 ID:MrvqDWJX
乙ですー!
子爵様が3人のうちの誰にひどい目にあわせられるのか今から楽しみ
90ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 12:56:29 ID:q3RsY+Db
失礼します。投下予告させていただきます。予約がなければ13時05分を予定です。
カードダスのAAはやめて
1カードダス上のセリフ
2キャラ名
3下の一言解説
4HP
という形で載せさせていただきます。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 12:57:44 ID:FJw7PHMv
>>54
奇跡の杖……?
あっ『復活の杖』か!
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:05:30 ID:lP5r5m3N
>>27
遅レスだが、どうもデルフリンガーのような幅広な剣を持つDって想像できないな……
93ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:06:39 ID:q3RsY+Db
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン−1

トリスティン魔法学園 春の日 使い魔召喚の儀

その日は、ジャン・コルベールにとって普通に終わる日のはずであった。
「ミスタ・コルベール・・」
不安そうな生徒の声に意識を現実に戻す。
ピンク色の髪の生徒の目が「どうしましょうと?」訴えかける。
「ミス・ヴァリエール・・」
コルベールは彼女に対して、言葉を紡ぎだそうとするが、それには時間が欲しかった。
生徒たちは、ほとんどが召喚を終えて学園に戻っている。その場に残っているのは数人だけだ。
(どうして、こんなことになったのよぉ・・)
召喚の成功への喜びでもなく、召喚されたものに対する不満でもなく、事態の異常さに嘆きたいルイズであった。

トリスティン魔法学園では2年生の進級の際、自分の使い魔を呼び出す。
生徒たちにとって使い魔召喚の儀はこの学園に入った生徒の楽しみな行事の一つであり、
コルベールとっても召喚した生徒たちの一喜一憂する顔、また、生徒たちが召喚した使い魔を見るのが楽しみでもあった。
コルベールはルイズに召喚の儀で使われる形式的な意見を述べる
「ミス・ヴァリエール召喚の儀はとても神聖な儀式です。たとえ何があっても、『サモン・サーヴァント』で召喚されたものと契約しなくてはならないのです。」
「ですけど・・これは・・」
彼女が召喚した先に視線をやる。
「けど、これって、ゴーレムですよね?」
彼女に認識では、それは鉱物などでできた土のメイジが得意とする人型のゴーレムであった。
人型と認識したのは手と足があったからだ。
1・6メイル程の大きさでゴーレムとしては小型であり、白を基調とし赤い羽根のようなものを背負っている。
ただ、ルイズが気になるのはその頭身であった。人の頭身は約7頭身前後である。しかし、目の前のゴーレムは約3頭身しかない。ルイズの感覚ではまだギーシュのワルキューレのほうがなじみ深かった。
「ミス・ヴァリエール、『コントラクト・サーヴァント』には主への忠誠が含まれているのは知っていますね?」
コルベールは複数の意味を持つ契約でなぜそれだけを言ったのか?
「はい、しっています・・」
ルイズにはコルベールの意図がわかっていた。
「・・危険なのですか?」
「わかりません、けど、だからこそ『コントラクト・サーヴァント』を行う必要があるのです。」
同意を求めるように、コルベールがルイズを諭す。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:07:20 ID:xIfhjT3l
支援ガンダム
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:08:04 ID:Fh3kbyku
支援
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:08:13 ID:Fh3kbyku
支援
97ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:08:52 ID:q3RsY+Db
「でも・・こん「契約しちゃいなさいよ。」!」
自分の声を遮られ、ルイズが声の主に振り替える。
「キュルケ!あんた人ご「人ごとじゃないわよ。」」
「だって、あなたと同じものを召喚しちゃったんだもの。」
彼女は自身が召喚したものに指をさして、その声にはどこか諦めが含まれていた。
彼女が召喚したのも、また、ゴーレムであった。
大きさも同じで違いは自分のと比べて赤を多く含んでいるくらいである。
「ちなみに、タバサも同じゴーレムよ」
「・・同じじゃない」
新たな声の主は自分と同じくらい小柄な青髪の少女であった。
「微妙に違う・・」
彼女は自分のほうに振り向こうともせず、じっとゴーレムを観察している。
それも、また、彼女が召喚したゴーレムにそっくりであった。
同じ大きさでこちらは青を多く含んでいる。
そしてほかの2体と比べてルイズにとってなじみ深い騎士のような格好をしている。
得体のしれなさはかわらないのだが・・
(同じゴーレムでもタバサのほうがよかったわ!)
なんとなく、タバサが少しうらやましくなった。
「契約しなきゃだめなの?」
ルイズはキュルケに振り向きもせずに、声をかける。
「ていうか、もう契約しちゃった。」
「! 本当なの、それ!?」
ルイズは予想外の一言に驚きの声を上げ、改めてゴーレムを見直す。
見ればキュルケのゴーレムには契約の証しであるルーンがうっすらと光っている。
「なんで!なんで!?危ないとか!危険とか!危ういとか思わないの!?」
「3つとも意味が一緒じゃない・・ミスタ・コルベールの言った通りよ。
・・それに、もうタバサも契約しちゃってるし。」「ええっ!!」
「契約完了。」タバサが無表情にそれを告げる。
タバサのゴーレムの手にもまたルーンが光っていた。
(ウソ、なんでそんなあっさり契約できるのよー!)
事態を考えればそれは決して間違っていることではなかった。しかし、ルイズの理性はそれを許容できなかった。
そんな二人にルイズは早口でまくしたてる。
「あなたたち無神経すぎ、迂闊すぎ!!どうしてそんなにあっさり契約しちゃうの!?
ガリアやゲルマニアじゃどうか知らないけどトリスティンでは使い魔は神聖な物なの、一生物なの!!
気に入らないから、はい、さよならではいけないのよ!私はこの日をずっと楽しみにしてたわ、ゼロとバカにされた私がカッコイイ使い魔を召喚して見返してやるのを!
使い魔はメイジの鏡なのよ!わたしはこんなヘンチクリンなんかじゃないわ!!はぁはぁ・・。」
今までため込んでいた思いを一気にまくしたてる。
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:09:17 ID:Fh3kbyku
支援
99ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:10:07 ID:q3RsY+Db
すこし気分が軽くなったが、それでも、普段通りに戻るには至らない。
だが、しいていえば私の怒りが通じたのかキュルケとタバサが驚きの表情でこちらを見ている。一息深呼吸し言葉を続ける。
「やっと、あなたたちも私の「きみ、少しいいかい?」少しはえっ!なんですか、ミスタ・コルベール。私は今このふた・・」
ルイズはコルベールに向かって振り返り見上げる。
しかし、目の前に顔はなかった。
「君、少しいいかい?」声が聞こえた。ルイズは視線を平行に戻す。
顔があった。
「少しいいかい?」ゴーレムの顔であった。
「ここはどこだい?」どうやら自分に向かってしゃべりかけているらしい。
「私たちは、確かジーク・ジオンとの戦いで・・」なにかをしゃべっている。
「私たちは光に包まれ・・しかも、梟の杖もなくなっている。」
ゴーレムは状況を確認している。
「そうだ!ジーク・ジオンはどうなったのだ?ナイトガンダム殿がとどめを刺したはずだが・・・」ゴーレムが何かを聞いてくるが、それどころではない。
「あっアンタ、なに!?なんなのよぉ!?」
正気に戻りルイズは目の前のゴーレムに詰め寄る。
「うおぉっ!」ゴーレムは気押され半歩下がる。
ルイズは心なしか少し安心し、ゴーレムからの返答を待つ余裕はできた。
「すまない、驚かせてしまって。」
少しの間をおいてゴーレムは謝罪する。
立場という物が理解できたのだとルイズはそう確信した。
「私の名前は法術士ニュー、アルガス騎士団法術隊の隊長だ。君の名前は?」
「ルイズよ、ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!って、違うわよ、
アンタに聞きたいのはアンタの名前じゃなくてアンタが何者かってことよ!?ちなみにアンタの質問に答えるなら、
ここはハルキゲニアのトリスティン魔法学院であんたは私の使い魔として呼ばれたのよ!!」
謝罪の意味は立場の理解からではなく、名前を名乗らなかったことに対するものであった。
「トリスティン?聞いたことのない地名だなぁ・・私の様なガンダム族は珍しいが、ここにはあまりモビルスーツ族はいないのかい?」
「ガンダム族?モビルスーツ族?あんたの仲間って他にもいるわけ!?信じられない!ちなみに聞くけどあんたって生物?」
(――エレオノールお姉さまなら何か知っているかしら?)
アカデミーにいる姉を思い描き新種を発見した学者の心境で、ルイズはゴーレムに質問する。
100ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:11:03 ID:q3RsY+Db
「生物?君はずいぶん失礼なことを聞くなぁ、私はちゃんとした生物だよ、いくら物珍しいからと言って、そんなに驚く事かい?」
「驚くわよ、だってアンタって生物らしさゼロじゃない。キュルケ、タバサどうし――」
後ろの二人に同意を求めようとして、ルイズは固まった。
「よぉアンタ、ここがどこかわかるかい?」
キュルケの召喚した赤いゴーレムがキュルケに尋ねている。
「お嬢さん、失礼ですがここがどこか教えていただきませんか?」
タバサの召喚した青いゴーレムもまた丁寧な口調で同様のことを尋ねている。
「あ、あぁ・・」ルイズは事態の悪化を確信していた。
「おっ!ゼータとダブルゼータじゃないか」
後ろから覗き込むように、ゴーレムが前にいる二体を認識する。
「ニュー!お前もいるのか。」赤いゴーレムがこちらのゴーレムに気づき近寄ってくる。
「三人揃っているようだな。」青いゴーレムもまたこちらに近寄ってくる。
気がつけば三体のゴーレムにルイズは囲まれていた。ルイズの意に介さず三体は会話を続けている。
「どうなったてんだ?自分達はジーク・ジオンとの戦いで・・」
青いゴーレムが自分のゴーレムと同じようなことを口にする。
「ナイトガンダム殿が倒したんじゃないのか?それより俺の獅子の斧を知らないか?」
ルイズの知らない名前を赤いゴーレムが口にする。
「私の龍の盾も、そういえば見当たらんのだが・・そうだ!団長は?アレックス団長はどこに行ったのだ?」
こんなゴーレムが、まだいるのか!ルイズの脳裏に断片的な会話から思ったことがよぎる。
「・・ミス・ヴァリエール」
聞きなれた声に恐る恐る顔を向ける。
コルベールは目の前の事態に驚きとそして、ルイズに宣告する言葉を渋るような複雑な顔つきをしていた。
「・・ミスタ・コルベール・・」
ルイズは縋るように指示を仰ぐべき人間に顔を向ける。
「ミス・ヴァリエール・・契約しなさい」
ルイズにとって、それは無情な死刑宣告であった。

「0(どうして、こんなことになったのよぉ・・)」
召喚の儀
ルイズは途方に暮れている。
PROLOGUE


「1アンタは私の使い魔なのよ!」
ゼロのルイズ
ヴァリエール侯爵家の三女
MP 280


「2アレックス団長は?ここはいったい?・・ ]
法術士ニュー
ハルキゲニアに召喚される
MP 1150

ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン
春の召喚の日 朝 ルイズの朝はキュルケとの口論から始まる。
ルイズは今日の日を楽しみにしながらも不安であった。
自分は本当にゼロなのではないのか?
しかし、キュルケに闘争本能を刺激されその不安が消える。
(やってやろうじゃないのよ、キュルケなんかに負けるもんか!)
ルイズは広場に向かう、未だ見ぬ使い魔を想像して・・
101ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:13:03 ID:q3RsY+Db
投下終了しました。ニューのMPが高いのは経験を更に積んだからです。
最後のはカードダスの裏にある、サブストーリーみたいなものです。
ご了承ください
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:16:15 ID:kQ14ZC9L
騎士団の方、乙です。
アルガス騎士団がいきなり勢ぞろいですな。
ところで、

>ナイトガンダム殿がとどめを刺したはずだが

スペリオルドラゴンは誕生しなかったんですかね?
103ゼロの騎士団:2009/01/17(土) 13:19:18 ID:q3RsY+Db
>>102
ゲームだとジークジオン倒した時にアレックスが
ナイトガンダム殿と呼ぶのでそれに基づきました。
エンディングでアムロもガンダムと呼んでいますのでそうしました。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:21:24 ID:Fh3kbyku
支援
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 13:45:31 ID:RXQNP4yq
マテパの人乙です。

この場面、アクアだったら即あめ玉投げて追い返してそうだな
後、この世界にもいるのか、ねこw
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:00:00 ID:T+21zg0v
マジ乙です

多分甘党の高校生もいるはずだ……
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:14:49 ID:Ga1sEURt
パズルの人乙〜!さて、ワルドはどうなるかね?
ティトォの仙理算で行動を完全に読まれて叩きのめされるか、アクアにBBJされるのか。
それともプリセラにぶっ飛ばされるのか。どれにせよ碌な目にあいそうにないがw
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:18:19 ID:m5HZTjkS
マジなつい
ジオダンテとか当時やってた
ゴジラvsビオランテのパロディキャラいたよな
http://echizen-web.hp.infoseek.co.jp/hakkutu/g-card7.jpg
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:32:32 ID:/+chWST1
ビオランテか
ビオランテを召喚したらどうなるのかね
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:37:19 ID:K15TJCSV
>>107
メイプルソンみたく「アンタ何やってんの?」みたいにあっさりと看破されそう

というか、ねこいるんだ。ねこ!
やっぱ土塚ワールドはねこがいなきゃ
111ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/17(土) 14:43:04 ID:C4zigEXd
52>
ご意見どうもです、wiki内の本編、及び用語集で1クリス=1テラに変更しました。
まぁ、もっとはっちゃけても良かったんだろうけど、ここら辺で妥協してください。
様々な記録時間が少ないと思われるかもしれませんが、これは可視・可聴領域外の記録も録っているからと思って下さい。
それではまた。
夜中か、明日の昼位に後編を投下します。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 14:45:30 ID:9TnYpVzz
ネコミミがあるんだから猫はいるだろw
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:08:49 ID:pMNqSKEY
ルイズ VS ビオランテ
(中略)
トリスタニア湾に上陸したルイズ
スーパーサイト2の決死のガンダールヴミラー反射によって時間を稼ぐ
その隙に抗虚無バクテリアを撃ち込むが効果が薄い
バクテリアを活性化させるための作戦中に突然成体に成長したビオランテが現れ…
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:18:56 ID:IUrb6N5+
>>112
猫じゃないんだ、ねこなんだ
ttp://ranobe.com/up/src/up332004.jpg

>>113
ルイズに抗虚無バクテリア注入ってエロい絵面しか浮かびません!
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:25:41 ID:pMNqSKEY
>>114
鳥山「桃白白…?」
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:27:10 ID:lL79tv6T
>>115
残念!マッスルインフェルノでした!
117虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/17(土) 15:29:43 ID:+YMBoBG1
>>115
違うよ、秘伝の奥義の方だよ
この話のタイトルが「清村くんとインフェルノ」だから分かる
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:31:07 ID:jDdVJzej
騎士団の方乙です
今後が楽しみだ
>>113
ルイズ何者だよw
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:40:19 ID:X2nzq7Wl
ギーシュがバラとモンモンの細胞から生み出したのがビオランテとか
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:40:20 ID:IJinN2KX
ゴーストステップの作者楽しみにしています。

ルイズVSビ『ジ』ランテに見えた俺は、一体………どうしちまったんだ?
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 15:40:44 ID:kQ14ZC9L
VSビオランテって、けっこう後々まで伏線として扱われたりしてましたな。

VSキングギドラでは冒頭に「ビオランテによって封印されたゴジラが…」ってセリフがあったような気がしますし、
VSスペースゴジラはビオランテが爆発した時に宇宙に飛び散ったG細胞が、巡り巡ってスペースゴジラになったって話でしたし。
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 16:03:33 ID:Ua52oBua
ビオランテは怪獣としての造形、設定、背景が秀逸だったからなぁ
ジョゼフが死んだシェフィールドの細胞を使って培養した青いビオランテで世界を焼き尽くすのを想像した
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 16:07:30 ID:VM4NvTGG
いや、そこはシェフィールドじゃなくてシャルルであるべきじゃないか?ヤンデレ的に考えて
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 16:09:34 ID:X2nzq7Wl
まさかのイザベラ様
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 16:13:06 ID:ycznKLxP
ビオランテって新マンのレオゴンの話と同じ脚本家だっけ?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 16:39:58 ID:/+chWST1
>>122
個々ではそれぞれ秀逸だが
怪獣としての魅力が有り過ぎるがゆえに、設定、背景とのアンマッチが目立ってしまう
そういう意味では惜しい怪獣なんだよな
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 17:36:52 ID:ii7ZLjve
>>114
warota
なんだこれwwww
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:00:36 ID:lL79tv6T
>>127
清村君と杉小路くんろ
ってマンガ
ろは担当さんが3と間違えて誤植したらしい
ちなみにサッカーマンガ

作者はマテリアルパズルと同じ土塚理弘

現在
・清村君と杉小路君ろ
・マテリアルパズルゼロクロイツ
・バンブーブレード
・バンブーブレードB
を同時連載中
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:20:39 ID:OqUU7tLa
>>128
下の三つは原作じゃなかったっけ?
絵が違ってたような気がするんだけど。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:22:37 ID:kL400Hn0
バンブーブレードはヒロインの女の子がえろえろで主人公を襲う話としか知らない。

ちなみにソースはコミケだ。
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:34:37 ID:m5HZTjkS
>>122
ティム・バートンが自分の作品にビオランテの一部映像流用しちゃうぐらい好きだったはず
まあティム・バートンはゴジラに限らず
ウルトラマンセブンの監督やらせてくれとか
日本の怪獣映画ファンなんだよな
ナイトメアビフォアクリスマスからゴジラとか全然結びつかないがw
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:40:23 ID:lL79tv6T
>>129
そう
ネームだけ描いてる
バンブーブレードBのみ土塚+スタジオねこという構成
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:42:08 ID:YnVMKgD+
ガーディアンヒーローズからアンデットヒーロー召喚
不死身で、人間でなくて、地面からドドドって炎飛ばすし、最終的にはジェノサイドで全部消滅
なおかつ命令には忠実

ゼロ魔の人たちに敵と認識されなければ十分いけるな
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:42:48 ID:ZF+fwWvT
>>130
バンブレの主人公はユージ、そう思っていたのは一話まででした……

無口、無表情の剣道<特撮オタ>少女タマちゃんが主役でヒロインだそうな

原作で登場してる特撮はタマちゃんが大好きな戦隊もののブレードブレイバー、
牙狼やライダーのような単独もののシナイダーなんかが有るぞ

無敵看板娘の太田を混ぜたクロスとか面白そうな気も……
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:52:10 ID:Cp3606Ct
清杉ならアレだな
召喚したおめんをかぶったら取れなくなって、どんどん自分を見失うルイズだな
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:53:19 ID:N9C3O4C8
ゴジラ対モスラの撮影現場に来てたよなティム・バートンw
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 18:54:45 ID:OqUU7tLa
>>132
サンクス。しかし、アレだけ量産できるのは、本職漫画家としては大したもんなんだろうな。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:00:00 ID:Wjhe4VDj
>>135
そのあとキュルケに少林寺撲殺拳されるわけですねわかります。


杉小路喚ぶのが1番面白くなりそうだけど、たぶんルイズの精神と肉体がもたんよなぁww
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:11:11 ID:dwgdpjZL
>>138
学院の屋上から落とされたり、どこからか乗ってきた車に撥ねられるんですね、わかります。
140異世界BASARA:2009/01/17(土) 19:17:46 ID:80drPwOz
そしてタバサはカブトエビの幽霊を見て気絶ですね?
続きを投下してもよいですか?
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:18:18 ID:Pp5mJQ1Y
ok
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:19:20 ID:6Q5rS34q
バンブレの主人公はコジロー先生だぞ
143異世界BASARA1/7:2009/01/17(土) 19:20:33 ID:80drPwOz
では投下。

火竜に跨ったアルビオンの竜騎士達は、村の家々に火を付けて回った。
元々、メイジに対抗する事なんて出来ない平民達。しかも相手はかの有名なアルビオンの竜騎士隊である。
タルブの村人は、ただ悲鳴を上げて逃げ惑うしかなかった。
容易い仕事だと、竜に乗る騎士の1人が思い、次の家に火を付けようと高度を下げた。


「必殺!!!!」


突然であった。
頭上からの声に騎士は顔を上げた時、彼は既に得物を眼下の敵に振り下ろしていた。


「無敵斬りいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」


振り下ろされた刀は、恐るべき切れ味で騎士と、火竜の体を一度に真っ二つにした。
容易い仕事と余裕を決め込んでいた騎士の1人は、その生涯をここで閉じてしまった。

「わしがいる限り!この村を目茶苦茶にする事は許さん!!
無敵の力を恐れぬ者は、かかって来いいぃぃぃーー!!!!」

彼……シエスタの父は地面に着地すると、空を飛び回る竜騎士達に向かって叫んだ。



しかし運が悪かったのか、それとも彼の家系の宿命なのか……
彼の活躍はこの後続く事はなかった。
144異世界BASARA2/7:2009/01/17(土) 19:22:03 ID:80drPwOz
「ぬぅ?」
ふと、一体の風竜がこちらに近づいて来るのが目に止まった。
「無敵のわしと一騎打ちをする気か?面白い!!」
刀を構え、竜騎士に向かって彼は名乗りを上げた。
「わしは無敵じゃあ!ちょっとでかいトカゲ如きに負ける筈がな」
彼が迫り来る竜騎士に名乗りを上げていた最中であった。
竜が、突如スピードを上げたのだ。

彼の元いた世界には竜などいなかった。
その為、それがスピードに優れた風竜だと分からなかったのである。

(速い!?)
彼は避けようとしたが、竜の方が素早かった。
竜は彼を咥え上げると、そのままグングンと高度を上げていった。
「うおおぉぉぉ!?」
竜に咥えられて空高くまで連れて来られると、突然彼を勢いよく放り投げた。

「む、む、無敵のわしが……」

彼が叫んだ時には、竜に乗った騎士……“閃光”のワルドはウィンド・ブレイクの呪文を完成させ、放っていた。

「吹き飛ばされるだとおおぉぉぉぉぉ〜〜!!??」

その呪文の直撃を受け、シエスタの父は自身の言った通りに吹き飛ばされてしまった。
結局、彼の活躍は竜騎士1人を倒したところで終った。




無敵なのにやられてしまったのだ。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:23:05 ID:RXQNP4yq
>>107
最初から理詰めでいくならティトォ
(物理的に)思い出として消し去るならアクア
シチュ的に一番燃え上がるならプリセラ

一番ムゴいのがマジックパイル
146異世界BASARA3/7:2009/01/17(土) 19:23:22 ID:80drPwOz
トリステインにある急報がもたらされる少し前……
ルイズは、眠っている幸村の隣で本を開いていた。
といっても、その本には文字も絵も書かれていない。国宝の始祖の祈祷書である。
ルイズはこの祈祷書を手に、アンリエッタの婚礼の詔を考えていた。
だが、どうしても言葉が浮かんでこない。
いや、そもそもルイズは祈祷書を開いてはいるものの、別の事を考えていたのだ。
それは……今もベッドで眠っている自分の使い魔……幸村の事である。
あれから幸村はずっと眠り続けている。まったく目を覚ます気配がないのだ。
治療にあたったメイジは一命は取り留めたとは言っていたが……


“もしかしたら、このままずっと目を覚まさないのではないか?”


白紙のページを見ながら、ルイズの心中に嫌な考えが過る。
そんな訳ないと、ルイズは首を激しく振って今思った事を忘れようとした。
そして、再び始祖の祈祷書に目を戻した。

(……あれ?)

と、祈祷書を見たルイズは首を傾げる。
白紙である筈のページに、一瞬文字のような物が見えたのだ。
ルイズはもう一度目を凝らしてそのページを見つめる。


その時だった。急に外が騒がしくなったのは……
147異世界BASARA4/7:2009/01/17(土) 19:25:28 ID:80drPwOz
トリステインの王宮に、国賓歓迎のためラ・ロシェール上空に停泊していた艦隊が全滅したという報せがもたらされたのは、それからすぐのことであった。

ほぼ同時に、アルビオン政府から宣戦布告文が急使によって届いた。
不可侵条約を無視するような、親善艦隊への理由なき攻撃に対する非難がそこには書かれ、
最後に『自衛ノ為神聖あるびおん共和国政府ハ、とりすていん王国政府ニ対シ宣戦ヲ布告ス』と締められていた。

ゲルマニアへのアンリエッタの出発でおおわらわであった王宮は、突然のことに騒然となった。

「タルブ領主、アストン伯戦死!」
「偵察に向かった竜騎士隊、帰還せず!」
「1人で奮戦していた村民も行方が分かりません!!」
「そんな平民はどうでもいい!!アルビオンから何か連絡はないのか!?」
次々と情報が王宮内に入ってくるが、会議は一向に進まず、不毛な議論を続けるばかりであった。

怒号が飛び交う中、アンリエッタの心にはある男の言葉が浮かんでいた。


“兵に守られるのが総大将ではない。兵を守るのが総大将だ。それを忘れるな”


そしてあの日、自分はこう誓った。“自分は勇敢に生きよう。勇敢に生きて、皆を守ろう。”と……
そう決心した筈ではなかったのか?
愛するウェールズが勇敢に死んでいったのならば……
自分は勇敢に生きて、皆を守ると……



「……あなた方は、恥ずかしくないのですか」
アンリエッタは静かに、だが強い意志を込めた声で、議論を続ける重臣達に言った。
148異世界BASARA5/7:2009/01/17(土) 19:27:20 ID:80drPwOz
「国土が敵に侵されているのですよ。ここで議論を続けるより、もっとやらねばならない事があるでしょう」
王女の言葉に、その場がシンと静まり返る。
重臣の1人が、おもむろに口を開いた。
「し、しかしこちらの誤解やも知れませぬぞ。ここは先ずアルビオンに特使を派遣して話し合いの場を設けてから……」


「そんな話をしている間に!1人で戦っていた民が行方知れずになったのですよ!!」


アンリエッタはドンッ!と強くテーブルを叩いた。
その音と彼女の迫力に、一同はビクッと体を震わせる。
「あなた方は怖いのでしょう?アルビオンは大国、反撃に出たとしても勝ち目は薄い……敗戦後、責任を取らされるであろう、反撃の計画者になりたくないというわけですね?」
重臣達は答えない。いや、反論出来なかった。
殆どの者が彼女の言う通り、自身の保身を考えていたからだ。
アンリエッタは一度皆を見回すと、深く息を吸って言った。


「ならば私が戦います。あなた方はここで終らない会議を続けていなさい」
「「「な!何ですとおおぉぉ!!??」」」
アンリエッタの言葉に、一同は一斉に叫んだ。


「いけませぬぞ姫殿下!!お輿入れ前だというのに!!」
マザリーニが必死でアンリエッタを押し留めようとするが、もはや叶わない。
「あなたが結婚なさい!!結婚よりも、民を守る方が重要です!!」
そう言って、アンリエッタは会議室から駆けだして行った。
149異世界BASARA6/7:2009/01/17(土) 19:28:48 ID:80drPwOz
会議室から飛び出したアンリエッタは、中庭に向かっていた。

「姫殿下!」

と、急ぐアンリエッタの元へルイズが駆け寄ってきた。
「はぁはぁ……姫殿下、アルビオンが宣戦布告したというのは本当ですか!?」
肩で息をしながらルイズはアンリエッタに尋ねた。
「はい、どうやら彼等は最初から約定を破るつもりだったようですね」
「そんな……」
ルイズは言葉を失う。
しかし、アンリエッタは落ち着いた様子で話し出した。
「これから、アルビオンとの戦いが始まります。あなたは実家に戻った方が良いでしょう」
アンリエッタはルイズにそう勧める。
だが、ルイズは首を横に振った。
「……姫殿下……殿下はこれから戦いに行くのですね?」
「……トリステインの王女として、私は前線で指揮を取るつもりです」

「ならば、私も一緒に戦わせて下さい」

ルイズの言葉に、アンリエッタは驚く。
「私の使い魔……ユキムラだってきっとそう言うと思います」
「ルイズ……」


(そうでしょう?ユキムラ……)


未だ目覚めぬ使い魔に言うように、ルイズは心の中で呟いた。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:29:00 ID:/+chWST1
しえん
151異世界BASARA7/7:2009/01/17(土) 19:31:23 ID:80drPwOz
アルビオンの宣戦布告がトリステイン魔法学院に届いたのは、翌日の事であった。
これを受けた学院長のオスマンは無期限の学院休校を行った。
「遂に……僕の特訓の成果を見せる時がきた!」
多くの生徒が実家に帰る予定の中、ギーシュは1人戦う決意を胸に燃やしていた。

「戦争ですって、私達も実家に帰るしかなさそうね」
オスマンの話を聞いていたキュルケは髪を弄びながら、利家に言った。
「……?トシイエ?」
だが利家が返事をしない。
気になったキュルケが目を向けると、いつもの彼らしくない、険しい表情で考え込んでいる。
「……タバサ。忠勝と王宮に行っていいか?」
しばらく考え込んでいた利家は、顔を上げるやいなやタバサに言った。



一方、トリステイン王宮……
この王宮の一室で、幸村は未だ深い夢の中にいた。


(……むら…………幸村)


深いまどろみの中にいる幸村を誰かが呼んでいる。
懐かしい……とても懐かしい声だった。


(目覚めよ……目覚めるのじゃ幸村)


再度その声を聞いた幸村は、カッと目を開く。




そこに立っていたのは、大牛を思わせるような兜を被った大男だった。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:34:04 ID:Ua52oBua
お、おやかたさまぁ〜!!!
153異世界BASARA:2009/01/17(土) 19:36:45 ID:80drPwOz
投下終わりです。
そういえば今やっている大河ドラマは直江でしたっけ?
まさか死んだ兼続さんもBASARAであんなのになるとはおもってなかったでしょうね……
そして次回、遂に幸村が復活します!
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 19:46:55 ID:C9PdQdgb
>>54
更新してたのか!
次は誰が来るか楽しみなんだぜw
155日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/01/17(土) 19:59:12 ID:wVstuy5c
 BASARAの人、乙です。
 他に予約なければ、、20:10より第4話を投下させてください。7レス消費予定です。
 皆さん、支援の準備よろしくお願いします。

 ちなみに今回読むにあたってのヒント。スライムはLvが上がると、ブレス系の特技を覚えます。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:05:23 ID:E7plnmYD
ちょっ、それは幾ら何でも反則なんじゃwwwww
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:06:41 ID:uPpfRHJh
スラきち支援
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:07:22 ID:jZSJaAZO
スラりんといえばニフラム
 
フェオの月第三週 エオローの週第五曜日 ラーグの曜日


 今日もまた、リュカが『使い魔代理』を連れてきた。

 人間でもなければ、昨日のジュエルでもない。水色の、水滴のような形をした、ぷるぷる震える変な生き物。随分間の抜けた顔のそいつはスライムという種族で、名前を『スラりん』というらしい。
 昨日のジュエルもそうだけど、リュカの連れてくるのはこんな珍妙なものばかりなのかしら? 早くも不安になるけど、何も考えてなさそうなスラりんを見てると、なんかどーでもよくなってくるから不思議ね。
 「ピキー」とか鳴きながらぷるぷる震えてる様子を見てると、ついつい突っついてみたくなった。ちょいちょいっと指先でツンツンしてみると、そのたびにぷるぷる震える。なんか楽しいわね、これ。
 突っついてると、スラりんはだんだん嫌になってきたのか、「ピキー、ピキー」って抗議してきた。でもごめんね、止められないの。このプニプニした感触、病み付きになっちゃいそう。
 まあ、今日はあんたが私の使い魔なんだから、文句言わずにご主人様に従いなさいね。通じるとは思わないけど、とりあえずそう言ってみた。
 すると意外にも通じたのか、スラりんは途端に何も言わなくなった。……結構従順じゃない。見かけによらず、賢い子なのかしら?

 とにかく、私はそれからも突っつき続けた。


 ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに……


 …………気がついたら夜になってて、リュカが迎えに来てた。

 スラりんは助かったとばかりにリュカに飛びついた。気がついたら夜だったなんて怪奇現象、初めて体験したわ……一体何が起こったのかしら? もしかしてスラりんって、時間を操る能力でも持ってるのかしら?
 うん、そうだ。そうに違いない。この由緒正しき公爵家の三女ともあろう者が、時間を忘れてぷにぷにしてたなんて、そんなことあるはずないんだから。そーに決めた。今決めた。
 あとツェルプストーが、いつの間やらやってきてた。私の使い魔に勝手にひっつかないで欲しいわ。なーにが「ダーリン、私ジュエル譲ってほしーなー」よ。金銭欲丸出しじゃない。これだからゲルマニアの女は下品よね。
 リュカもリュカよ。なっさけない顔してるわねー。あんた妻子持ちでしょーが。もっとしっかりしなさいよね。
 私がそう言ってやったら、慌てて離れた。……結構流されやすい性格なのかしら、こいつ?

 で、リュカはスラりんを抱きかかえ、私とツェルプストーに別れの挨拶をした。
 ご主人様の私に挨拶するのはいいけど、ツェルプストーなんかに挨拶する必要はないわよ。私がそう思ってると、いきなりスラりんが「へくちっ!」ってクシャミした。

 ……と思ったら、目の前の景色がいきなり真っ赤に染まった。

 気が付けば、翌朝になってた。一体何がどーなったのかさっぱりわからない……あと、なんで私の髪が、いきなりアフロになってるんだろう? 一体誰のしわざ? 誰が直すのよ、この頭。
 とゆーわけで、この日記は翌朝に書いていたのでした。まる。
 
フェオの月第三週 エオローの週第六曜日 イングの曜日


 今朝日記を書いてたら、今日もまたリュカがやってきた。
 リュカは今日も代理を立ててきた。連れてきたのは小さなドラゴン。大きさは大型犬ぐらいかしら? タバサが子供の風竜を召喚してたけど、あれにしたって人間より大きい。ってことは、赤ちゃんなのかな? 名前はコドランだって。
 欲を言えば、もっと大きいのが良かったけど……うん、これはこれで、可愛いから許す。そーよこれよ。こーゆーのが欲しかったのよ。やればできるじゃないの。
 でも、リュカの様子がなんかおかしかった。どことなく、私に遠慮してるよーな、申し訳なさそうにしてるよーな……自分が使い魔としての仕事をまっとう出来ないのを、そんなに負い目に感じてるのかしら? だったらちゃんと使い魔やりなさいよね。
 そしたらリュカってば、私の髪を一生懸命直してくれた。意外に気が利くわね? ほんと、この私の髪をアフロにするなんてイタズラ、誰がやったのかしら? ヴァリエール家の三女にこんなことするなんて、いい度胸よね。

 かなり時間かかっちゃったけど、一通りの身支度を済ませて部屋を出たら、ツェルプストーの部屋の扉が開きっぱなしになってた。
 無用心よね。何かあったのかしら? そんな疑問を持って覗いてみたら、ツェルプストーが一生懸命髪を直していた。
 ……私と同じアフロだったんで、指差して笑ってやった。リュカがまた変な顔してたけど、気分が良かったんであまり気にならなかった。
 扉が閉まってなかったのも、自分の頭の惨状に気を取られてて、ついつい戸締りを忘れてたとか? あ、だめ、思い出したらまた笑いが……ペンが震えるからちょっと休憩。

 とりあえず、笑いが収まったんで再開。
 その後ツェルプストーと掴み合いの喧嘩してたら、タバサがツェルプストーを迎えに来た。授業時間が迫っていたのを思い出し、急いで教室に。
 また違う使い魔を連れて来たってはやし立てる奴もいたけど、それがドラゴンだったかしら。羨望の眼差しも混じってたわ。ふふん。こーゆー視線が欲しかったのよ、私は。
 その日の授業は、特に何事もなく終了。
 その頃にはコドランは、ツェルプストーのところのサラマンダーと、タバサのところの風竜と仲良くなってた。同じ竜種だからかしら? 特にタバサの風竜……シルフィードっていうらしいけど、お姉さん風を吹かせてしきりにコドランを構っていたわ。
 タバサの風竜はいいとしても、ツェルプストーの使い魔なんかと仲良くしないでよね……と思ったけど、無邪気にはしゃいでいるコドランを見てると、どーでも良くなってくる。ま、今日ぐらいはいいか。
 放課後は、そうやってじゃれ合っている三匹を、ツェルプストーとタバサと三人でぼーっと眺めていた。よく飽きずに遊び続けてられるわねって思ったけど、今思えば、それをずっと見てた私たちも同じよね。ああ、平和ってこーゆーことなのかしら……

 夜はやっぱりリュカが迎えに来た。
 リュカが来たら、コドランが嬉しそうに飛びついた。昨日のスラりんもそうだったけど、よく懐かれてるわね。
 コドランがクルクルと喉を鳴らしているのを聞いて、リュカは何度も相槌を打っていた。なんでも、コドランが「友達ができた」ってはしゃいでるとか。言葉、わかるのかしら? どうやらコドランがここを気に入ったみたいだから、明日も連れて来るってさ。ラッキー♪
 でも、今思ったけど……ジュエル、スラりん、コドラン……あの子たちとリュカの関係って、なんだろ? 明日にでも聞いてみようかしら。
 そうそう。明日はコドランと一緒に、あの子の兄貴分も連れて来るって。それもドラゴンなのかしら? 楽しみだわ。
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:12:53 ID:7sM8PCeD
支援
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:13:56 ID:/uDSRsZV
グレイト支援www
 
フェオの月第三週 エオローの週第七曜日 オセルの曜日


 今朝は、リュカの訪問と共に目が覚めた。

 リュカと一緒にいるのは、昨日と同じコドラン。新しい友達が気になるのか、部屋に入らずにツェルプストーの部屋の方ばっか見てた。……ま、しょうがないわよね。
 私は寝ぼけた頭で昨日のことを思い出した。確か、コドランの兄貴分を連れて来るとか何とか……それをリュカに尋ねたら、窓の外を指差された。言われるままにそっちを見てみたら……驚いたわ。窓の外に、黄金の鱗を持つ巨竜がいたの。
 リュカはグレイトドラゴンのシーザーって言ってたけど、そりゃもう立派なんてもんじゃなかったわ。これほど見事な巨竜は、ハルケギニア中探してもいないんじゃないかしら? ここまで立派すぎると、喜ぶより先に不安になるわ。こんなのを私が従えていいのかって。
 もちろん、学院は蜂を突っついたような大騒ぎ。教師がわらわらやってきて、見たこともない巨竜に杖を向けてた。リュカが自分の友人だって紹介したら杖を収めてたけど……あれ絶対、不審がられてるわね。ってゆーか友人? 使い魔じゃなくて?
 昨日の疑問と一緒に聞いてみると、なんともあっさりとした様子で、「コドランもシーザーも、みんな僕のかけがえのない仲間たちだよ」って答えが返ってきた。使い魔の契約とか、そういうのはまったくやってないらしい。
 契約もなしに、あんなドラゴンと友好関係を築けるって……ほんとに何者なのかしら? リュカが暇な時にでも、じっくり聞いてみようかしら? 今のところ、代理の送り迎えに来るだけで、あまり話す時間ないんだけど。

 リュカが帰った後、コドランを連れて教室に行ってみたら、シーザーのことで質問攻めにされた。
 私も見たまんまのこと以上は、リュカの『友人』ってことしか知らないから、ほとんど答えられなかったけど……それは結局、リュカの方に興味の矛先を変えさせただけだった。とは言っても、こっちの方もそんなに多くは答えられないんだけどね。
 グランバニアという、ハルケギニアじゃない場所にある国からやってきた、謎の青年。身なりはみすぼらしく、貴族っぽい妻がいて、多くの珍しい幻獣を友とする……うん、自分で書いてて何がなんだかわからないわ。確かにみんなの疑問ももっともね。
 窓の外を見てみると、シーザーがシルフィードにじゃれつかれてた。きゅいきゅいきゅいきゅい話しかけるシルフィードに、なんとなく戸惑ってるような感じに見えた。ドラゴン同士、一体何を話してるんだか。

 放課後、シーザーとシルフィードは、並んで学院の上空を旋回していた。随分仲良くなったものね。コドランも、小さい翼を一生懸命羽ばたかせて後を追ってたけど……何回周回遅れにされたのかしら。最後にはシーザーの背中に乗っけられてたけど。
 ああやってコドランを背中に乗っけてる姿を見ると、確かにシーザーはコドランの兄貴分なんだと思える。いえ、むしろ親子ね、あれは。……あんなコドランでも、大きくなったらシーザーみたいになるのかしら?
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:14:53 ID:WVPI2Os/
そういや∞ぷにぷにの中の人ってルイズだったな。
支援。
 
フェオの月第三週 エオローの週第八曜日 ダエグの曜日


 リュカが今日連れて来たのは…… 一言で言えば、変な騎士だった。
 ラーグの曜日に連れて来たスライム……の色違いにまたがった、小さい騎士。子供かと思ったけど、どうやらそうでもないらしくて、こういう体の亜人だって話だ。スライムナイトって種族で、名前はピエール。今までのとは違って、言葉が話せるみたい。
 ちょうどいいから、昼休みとかの時間を使って、リュカのことを聞いてみた。
 それでわかったのは、リュカはエルヘブンとかいう一族の血を引いていて、スラりんやコドランみたいなのと心を通わせる力は、その血筋によるものだってこと。
 世の中変わった一族もいたものね。まあその血筋のおかげで、こうやって色々な幻獣……と呼んでいいのかわかんないのも多いけど、とにかく珍しい生き物と多く接する機会に恵まれたんだから、悪くはないわよね。
 ついでだから、フローラさんのことも聞いてみた。リュカと彼女が結婚した時、ピエールは既にリュカの仲間だったらしくて、結構細かいところまで教えてもらえたわ。リュカって、結婚するために無茶な冒険やったみたいね……火山の洞窟に入るなんて、大したものだわ。
 そんな話をしてたら、急に婚約者のワルド様のこと思い出しちゃった。
 あの人もやっぱり、私と結婚するためなら、危険にも飛び込んでくれるのかしら? うーん、でも昔の話だし、親同士が決めた婚約者だし……よくわかんない。ワルド様、今どうしてるんだろう? 私のことなんか、もう忘れてるかしら?

 そんな感じで、なんとなく授業時間を過ごしていたら、放課後になった。アウストリの広場に出て、ピエール自身は何が出来るのかって聞いたら、案の定「剣」って答えが返ってきた。
 どれぐらいの腕前なのか聞いてみたら、答える代わりに広場にある木に体当たりした。何のつもりか聞こうとしたら、いきなり剣を振って、落ちてきた葉っぱを一枚残らず全て真っ二つにした。
 ……ものすごい早業。これぐらいの腕前があれば、メイジキラーって呼ばれる存在にだってなり得るわ。しかも聞けば、魔法の方も多少だけど出来るって。
 で、どんな魔法が出来るのか実践してみてって言ってみたら、見せてもらったのは『イオラ』とかいう空間爆砕――要するに爆発魔法。何よそれ。私に対する嫌味? ……ちょっと鬱になった。

 …………その威力を見て、「爆発もいいかもしんない」なんて一瞬でも思った自分が悔しい。どちくしょう。
 
 それから更に一週間、リュカはルイズのために毎日違う『代理』を立ててきた。

 コドランのようにルイズが気に入る者もいれば、ピエールのようにルイズを微妙な気分にさせる者もいた。ゴーストのドロンを連れて来た時なんかは、タバサが丸一日真っ白になっていたものである。
 ちなみに腐った死体のスミスを連れて来た時、一回気絶した後に「チェンジ」と言い渡されたのは、当然と言えば当然のことであった。さすがにそれはリュカが悪い。

 やがてルイズのクラスでは、ルイズが毎日違う使い魔を連れて来ることに、みんな慣れてきた。最近では、『明日のルイズの使い魔』というタイトルでトトカルチョが開かれるぐらいである。
 なお、主催はキュルケ、協賛――というか単なる付き合いでタバサ、そして後援でオールド・オスマン、ついでにツッコミがミス・ロングビルという完璧な布陣のトトカルチョである。このトトカルチョは、後にオスマンのドタマにルイズの怒りの失敗魔法が炸裂するまで続いた。

 そして、リュカが召喚されてから、もうすぐ二週間を数えようとしている頃――虚無の曜日を翌日に控えた、ダエグの曜日。例によって『代理』を迎えに来たリュカは、翌日が休日と聞くなり、ルイズにとある提案をしてきた。

「ふぅん。子供……ねぇ」

「そ。こっちに来たがっててね。明日は休日なんだよね? 僕も一日付き合うからさ」

 そう言うリュカは、どうやらこの国を子供に見せたいらしい――と言うよりはこの様子からして、子供にせがまれたと言った方が正しいか。まあルイズとしても他に予定もないし、別に構わないとは思うのだが。
 むしろ、いつもは『代理』の送り迎えをするだけのリュカが、珍しく一日付き合うと言うのだ。それならば、ルイズとしても願ったり叶ったりである。子供が一緒というのは気にはなるだろうが、それほど問題でもあるまい。

「まあ、いいけど……そうね。それだったらトリスタニアでも行こうかしら?」

「トリスタニア?」

「この国の首都よ」

 そこならば、観光としてはうってつけだろう。事実リュカも、その提案に満面の笑みで頷いた。
 というわけで、明日はリュカとその子供を連れて、トリスタニアに出発である。
 
 それから少しだけ時間が経った頃――ハルケギニアを後にしたリュカの姿は、魔界にあった。

 毒の沼地に隠れている入り口から、地下へと潜る。中に広がる洞窟は広大であったが、彼が向かうのはその最奥部ではなく、入り口にほど近い一つのフロアだった。
 そのフロアにある、一つの大きな扉。リュカは迷うことなくその扉を開き、中へと入って行った。

 扉をくぐった先――そこにあるのは、広大なすごろく場。

「えーと……」

 世界最大規模のそのすごろく場を、リュカはぐるりと見渡す。すると、一番最初に目に入ったのは、コースの上に立っている二本の剣を持った巨体――



 ――ただ今絶賛プレイ中のエスタークであった。



 このすごろく場は、本人いわく、『ひそかな楽しみ』であるとのこと。
 とはいえ、あの巨体がすごろくをする姿は、いつ見てもシュールである。リュカは苦笑しつつ、彼に声をかけた。

「エスターク」

「グゴゴゴゴ……リュカか……久しいな。手合わせならば後にしろ……」

「いや、今日はそうじゃないんだ。うちの子供たちが来てるはずだけど」

「それならば、スタート地点にいるぞ……」

 相変わらず、半分寝てるようなゆったりとした口調。リュカは言われた通り、スタート地点に視線を向けた。そこでは彼の子供たちが、こちらに向けて手を振っている。

「お父さーん!」

「こっちこっちー!」

 そんな二人の手には、それぞれすごろく券が握られている。どうやら順番待ちらしい。
 普段多忙なリュカと違い、彼らは暇を見ては頻繁にここを訪れていた。エスターク同様、子供達にとってもここは『ひそかな楽しみ』であるのだ。

「……タークはいないの?」

 子供達に応えるより先に、リュカは小首を傾げてエスタークに尋ねた。
 それは、エスタークの息子の名。子供達を迎えにここに来る時、いつもならば一緒にいたはずの彼の姿が、今日に限って見えない。

「タークはしばらく前に修行の旅に出て以来、音沙汰がない。だが奴のことだ。心配はいるまい……」

「ふぅん」

 実の親がそう言うのだから、そうなのだろう。かつてこのすごろく場の景品になっていた彼の強さを思い出し、リュカはエスタークの言葉に納得した。
 
 リュカはそこでエスタークとの会話を切り上げ、子供達の近くまで歩いて行く。ちなみに子供達の名前は、息子がレックス、娘がタバサだ。
 そういえば、向こうには娘と同じ名前の学生がいたな――とリュカは思い出していた。何の因果か、髪の色も似ている。そんなことを思っているうち、リュカの足はすぐに子供達のところに辿り着いた。

「お父さん、どーしたの?」

「それはこっちの台詞だよ。今何時だと思ってるんだい? ここは昼も夜もない魔界……というかそれ以前に地下だから、わかんないのも仕方ないけど」

「え? 嘘! そんなに時間経ってるの!?」

「道理で眠いと思った……ふわぁ」

 その言葉にレックスは驚き、タバサはあくびをして目をごしごしとこすった。どうやら、時間を忘れて遊んでいたらしい。そんな二人の反応に、リュカは苦笑を漏らした。

「ほら、遊びの時間はもう終わり。グランバニアに帰るよ。明日はトリステインに連れてってあげるから」

 リュカがそう言って帰宅を促すが、二人はその内容に「え?」と目を丸くして驚いた。
 そんな二人の反応に、リュカはイタズラが成功した子供のような笑みをその顔に浮かべ、二人の頭にポンと手を乗っける。

「トリステインだよ、トリステイン。前々から行きたがってただろ? 向こうじゃ明日は休日らしいから、ルイズが首都に連れてってくれるってさ」

「ほ、ほんと!?」

「もちろん。だから、明日は寝坊しないように、早く寝ないとな?」

「「うん!」」

 リュカの言葉に、二人は満面の笑みで頷いた。
 そして二人の手を引き、グランバニアへと帰ろうとし――その時。



「落とし穴……!? グゴゴゴゴゴ……」



 階下に落っこちるエスタークが、視界の端に見えた。

(……いつも思うんだけど、なんであの巨体であんなに小さな穴に落ちられるんだろう……?)

 きっとその答えを知る者は、誰もいない。
169日替わりの人 ◆VZdh5DTmls :2009/01/17(土) 20:22:32 ID:wVstuy5c
 以上、投下終了です。

 娘の名前は、あえてゲーム内デフォルト名のタバサのままにしておきました。「紛らわしい反面、かえってネタが湧きやすいかも?」という浅知恵からですけど……(;・ω・)
 ところで、エスタークがすごろく好きというのはオフィシャル設定ですが、実際に彼がすごろくをやる描写のある二次創作物って、どれぐらいあるんでしょうね?

 ともあれ、書き溜めていた分はこれで終了です。
 また暇見てちびちび書き続けますので、次回の投下は気長にお待ちください。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:22:36 ID:/UW75Lui
ターク支援。
あのすごろく場クリア出来なくって結局ターク諦めたんだよなぁ…
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:24:57 ID:fQjzPNfp
乙です。

エスターク
落ち着け
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:27:20 ID:3s1yl7xH
お疲れ様でした。
次回の投下は気長にですか・・・・

大変、面白かったですので頑張ってくださいねw
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:33:21 ID:xDNqumF9
BASARAの人乙!
父ちゃん……(´Д⊂ヽ

DQの人も乙!
こんだけいろいろな使い魔代理が来るとルイズも楽しいだろうなw
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:35:26 ID:2x1dYkb/
幸村の人、タルブ村戦かあ。最初のクライマックスだし期待してるぜ!
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:39:27 ID:6bNjm8ws
日替わりの人乙&GJです。
スラりんのブレス喰らったルイズとキュルケに蘇生魔法使うリュカを幻視したww
次回に超wktk。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:45:42 ID:dLYIsYTa
2レス程度の小ネタだけど5分後くらいに投下してもいいですか?
>>135のレスが元ネタです。
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:49:04 ID:WLMvVWGh
日替わりの人GJ!
地獄の帝王はん何やってはるんですかw
178ゼロのおめん:2009/01/17(土) 20:51:28 ID:dLYIsYTa
それでは投下します。
召喚されたモノの外見についてはまとめwikiのお絵かき掲示板ログ139を参考にしてください。

=================================================================================================


「宇宙の果てのどこかにいるわたしの僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!わたしは心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

本日何度目かの爆発が巻き起こる。
そしてついに、ルイズの呼びかけに答えしものが、土煙の向こうにその姿を現した。

「……なによコレ」

それは、大きな頭だった。
というか、よく見ると作り物だ。所謂おめんであった。
「ゼロ!ゼロのルイズ!おめんなんて呼び出してどうするの!」
「うるさいわね!」
おっほっほ、と笑いながらヤジを飛ばすのは、見物していた宿敵のキュルケである。
ルイズはキュルケをギロリと睨んだ。
「さ、ミス・ヴァリエール。契約を」
コルベールの言葉に、渋々おめんを持ち上げる。
何というか、非常にムカつく造作だ。
ごんぶとのタラコクチビルも、中途半端にニヤけた目元も、ちょろっとだけあるキューピー人形のような髪も、そのすべてが絶妙なイヤらしさを演出している。
「うわっ、重た……ったくなによ、こんなもん本当にかぶれるのかしら」
ルイズは思わず、そのおめんを頭にかぶせてみた。

「……とれないわ」

まさしくジャストフィットであった。
「むぎーーー!だめ、取れない!しかも前見えない!」
引っ張ってもなにしても,そのおめんはルイズの頭から外れなくなってしまったのだった。
「コレなんなのよォーーーーッ!!」
「なにって、おめんでしょ」
「見ての通り」
キュルケと、その隣のタバサが冷静にツッコんだ。
キュルケはニヤニヤ笑っている。
「そんな召喚された得体の知れないもんかぶったりするからよ」
「あんた今『こりゃ面白くなってきた』って顔してるでしょ!」
さんざん喚いてもおめんは取れず,ルイズは焦ってきた。
「ねえ、……これ、やばいわよ、いやマジで。ちょっとマジで真剣に考えましょうよ」
「そうね、どうする?一年生も呼んできて見せよっか」
「画家を呼んで肖像画を描かせる」
「あんたらねーーーーッ!」
ぜんぜん真剣に取り合わないキュルケとタバサに、ルイズはキレた。
「とりなさいよ!ねえ!なにしてんのよあんたら!はやくしなさいよ、殺すわよ!さあ!早く!とれーーーー!!」
「なんか精神的余裕がなくなったら、どんどん嫌な奴になってきたわね」
「うッ!」
喚くルイズが、突然首のあたりをおさえた。
「く、空気があまり入ってこない……、まま、まずいわ……、酸欠になっちゃう……」
「そりゃそんなに騒ぐから……」
見物していた生徒たちからツッコミが入る。
「あんたら呑気ね!そりゃあんたらはいいわよね!おめん付けてないんだもんね!」
「なに言ってんの」
179ゼロのおめん:2009/01/17(土) 20:51:53 ID:dLYIsYTa
その時、ルイズは足を引っかけて、びたーん!と盛大に転んだ。
おめんは前がぜんぜん見えないので、石に躓いてしまったのだった。
ルイズはがばっと跳ね起きた。
「あんたら今、足かけたでしょ!誰よコラ!ぶっ殺してやる!」
「心が狭くなって人間不信になってる……」
「どこ!あんたら!ここはどこ!どこ行った!わたしを置いて逃げやがったな畜生ども!」
「完全に混乱して自分を見失ってる」
「しょせんルイズはこの程度の人間だったということさ」
「むッ!そこかーーーーッ!!」
ルイズはがばっ!とタバサの使い魔・シルフィードに飛びかかった。
シルフィードは困って、きゅいきゅい鳴いた。
「実に面白い。予想外。今度他の人でも試してみよう」
タバサがなんだか物騒なことを呟いた。
さすがに見かねたキュルケが、ルイズに話しかける。
「しょうがないわねえ、ルイズ。それ割ってあげるわ。いらないでしょ?そんな使い魔」
「ホントに!?お願い!」
ルイズは必死になって答えた。
「タバサ、頼める?」
キュルケがそう言うと、タバサはこくりと頷いた。
「少し痛いかもしれない」
「なんでもいいから!早くして!」
「わかった」
そう言うと、タバサは自分の身長より大きな杖を、まるで野球のバットのように振りかぶった。

「 少 林 寺 撲 殺 拳 !! 」

「りゃーーーーーーーーーッ!!」
ボグシャァ!!
タバサは杖でルイズのおめんを思いっきりぶっ叩いた。おめんにビシィ!とヒビが入った。
「しゃーーーーーーーーーッ!!」
バリャァ!!
さらに杖を叩き付けると、ルイズのおめんが割れた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」
ドコドコドコドコドコ!!
タバサはルイズのボディに強烈なパンチを何発も叩き込んだ。
「オラぁぁ!!」
タバサはルイズを全力で蹴っ飛ばした。
「ちゃーーーーーッ!!」
タバサの渾身の右ストレートで、ルイズは30メイルも吹っ飛んで、森の木に激突した。


「ねえ……途中から記憶ないんだけど、なんで頭だけじゃなくて身体中に傷があるのかしら」
「さぁ」
「てゆーかわたしこの学校やめるわ」


『清村くんと杉小路くんと』からおめんを召喚
180ゼロのおめん:2009/01/17(土) 20:52:43 ID:dLYIsYTa
以上です。
マテパにも同じおめん出てきたけど、あっちは無駄に高性能だったなあー。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 20:56:25 ID:ucIuEP79
日替りでマスタードラゴンが連れてこられるのも近そうだ。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:02:57 ID:6bNjm8ws
清杉の絵でタバサにフルボッコされるルイズを幻視したwwww
GJ!
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:10:36 ID:pFJ2rHOS
>>165
gj!
怒涛の勢いの日替わり使い魔、堪能させてもらいました。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:12:05 ID:oiqbDQDu
遅レスだが…
地獄の帝王、本気で何やっているんだ。吹いただろうが
「日替わり」さん、GJです
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:13:45 ID:Ik013lMb
>「落とし穴……!? グゴゴゴゴゴ……」
台詞や愉快な行動の所為で中の人が田中天みたいに思えちゃったじゃないか
日替わりの続き期待してるぜ!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:15:16 ID:O1oDHK7V
小説DQ5だと、はぐれたコドランが成長してシーザーになってたな

あの小説、中盤で仲間モンスターが壊滅するシーンが読んでてつらい
後、ピエールかっこいい
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:17:03 ID:KcdpPlKS
やっぱりドラゴンキッズはグレイトドラゴンの子供で間違いないんだろうか
小説然りDQM然り
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:23:38 ID:ycznKLxP
地獄の帝王……デスピサロが失神しそうな光景だな。
やっぱタバサはゴーストが怖いか、レヌール城には死んでも行けんな、いや城ごと吹き飛ばすか。
なんにせよGJ
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:34:25 ID:lL79tv6T
>>186
あそこでスラりんが死んじゃって悲しかったよ・・・
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:51:03 ID:m5HZTjkS
ピエールってスライムが本体で
騎士が体の一部が変形したスタンドみたいなもんらしいな
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 21:58:40 ID:8PP3Z+H+
今日はみんなハーマイオニーにくびったけかい?
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:13:04 ID:IDZzUH2C
センター試験2日目そなえてんじゃね?
という俺は今執筆中につきひっこむぜ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:19:42 ID:O1oDHK7V
>>190
最近のDQだと騎士がスライムから飛び上がって攻撃するからその設定あわなくなっちゃったんだよね
194ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:31:36 ID:kQ14ZC9L
 日替わりの方、乙でした。そう言えば、フローラってけっこう嫉妬深いんですよね……。そしてテンションが上がると変な方向に突っ走ったりもしますしw
 おめんの方、乙でした。ルイズとタバサのテンションが素敵ですなぁ。

 他に予約の方がおられなければ、22:40から第23話の投下を行います。

 今回、とうとう40KBの大台に届いてしまったので、さるさんを食らう可能性が大です……。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:34:31 ID:zc1UBfy7
支援するのも私だ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:38:17 ID:pTbO7HeV
この支援も私だ
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:39:22 ID:4YhAkBrL
私も私だ
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:39:22 ID:1ylhIX9y
ラスボスの人のならM単位でも支援するぞ。
199ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:40:00 ID:kQ14ZC9L
「うぬぬぬぬぬぬぅ〜〜……」
 名門貴族の息女にあるまじき唸り声を上げながら、ルイズは学院の外の平原でユーゼスを見ていた。
 いや、正確に言うと、ユーゼスとその周辺を見ていた。
 正体不明の……何だろうか、鉄やら何やらのカタマリ。これは別にどうでもいい。自分の使い魔が変な行動をするのは今に始まったことではないし、新しい『研究対象』というところだろう。
 紫の髪の男。…………どこかで見たような気がするのだが、思い出せない。まあ、顔を見ても思い出せないということは、それほど重要でもないのだろう。ルイズ的にもそれほど興味はないので、これもどうでもいい。
 その紫の髪の男と、ユーゼスにアレコレ指示を出されてワルキューレを動かしているギーシュ。本当にどうでもいい。
 ……どうでもよくないのは、ここからだ。
 何だか、常にユーゼスとつかず離れずの距離を保っている、自分の姉と。
 それを受け入れるでもなく拒絶するでもなく、サラッと姉と会話などをしている当のユーゼス・ゴッツォ。
「一体何があったのよ、もう……」
 自分の知っているユーゼスとエレオノールの関係と言えば、『研究者同士でレポートや意見の交換している』くらいの認識しかない。
 しかし、『宝探し』から帰って来てからの二人は……。
「うぬぬぬぬぬぬぅ〜〜……」
 再び唸り声を上げる。
 いや、特にどこが劇的に変化したというわけではない。
 ユーゼスは相変わらず他人に無関心で、それはエレオノールに対しても変わっては……いや、微妙に変わったような気もするような。
 言葉にすると上手く表現が出来ないのだが、何だか、こう……。
「……そう、注意を払うようになってるのよ」
 よくよく観察しないと分からないのだが、たまにユーゼスの視線がエレオノールを向いていることがあるのである。ギーシュになんてほとんど向けないのに。
 紫の髪の男にも視線は向けられているのだが、何だかそれと『エレオノールに対する視線』は種類が違う。これも説明は難しいのだが。
 そして、何よりもエレオノールだ。
 家族だから当たり前なのだが、ルイズとエレオノールの付き合いは長い。だから、ルイズはエレオノールがどのような人間なのかもそれなりに熟知していた。
 ……熟知していたはずなのだが、今の姉はどうにも自分の知識の中には見当たらない。
 まず、その雰囲気である。
 ルイズの中のエレオノールは、『プライドと高慢』という言葉が服と眼鏡を着用した『角ばった石』とでも言うような人間だった。
 しかし、それがユーゼスと一緒にいる時限定で、その『角』が丸くなったような印象を受ける。
「根っこのところは、変わってないと思うんだけど……」
 父親と母親と真ん中の姉以外にはどんな相手だろうと硬質な態度を崩さなかったはずの姉が、わずかであろうと態度を軟化させるというのは、物凄い違和感がある。
 更に、エレオノールの振る舞いや挙動にも変化があった。
 先ほど挙げたようにユーゼスはたまにエレオノールの方を見ているのだが、エレオノールもまたユーゼスにチラチラと視線を向けることがあるのである。
 そうすると、自然と二人の視線がかち合い、目がバッチリと合うことになるのだが……。
 その結果、あろうことか1秒もしない内にエレオノールの方から視線を外すのだ。
 しかも、何だかドギマギした様子で。
「あ、あり得ないわ……」
 エレオノールがエレオノールらしくないという事態に、混乱してしまうルイズ。
 何が何だか、よく分からない。
 ……さっきから『何だか』という単語を何度も思い浮かべているが、そもそもの理由が分からないのだから、これはもう『何だか』と表現するしかないのである。
 って言うか、何なのよ。
 アンタの御主人様は、このわたしでしょ。
 そりゃ、エレオノール姉さまを気にするなとは言わないけど、もっとわたしを気にしなさいよ。
 むしろエレオノール姉さまより、わたしに視線を向けなさいよ。
「うぬぬぬぬぬぬぅ〜〜……」
 出来るのならばユーゼスにそう言ってやりたかったのだが、色々なプライドやら何やらが邪魔してそれが言えない。
 そのようなプロセスを経て、ルイズは詔(ミコトノリ)の考案もそっちのけでユーゼスとその周辺を見続けていたのだった。
200ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:42:00 ID:kQ14ZC9L
 そして、ユーゼスが魔法学院に帰還してから4日目。
「……どうにか完成したな」
「ギルドーラのプラーナコンバーターが機体と微妙に合致しなかったので、即興で小型化を行うことになってしまいましたがね。いや、苦労しました」
 改造したビートルを眺めながら、ユーゼスとシュウは喋っていた。
「……ヴァルシオーネRという前例が無ければ、もう少し苦労したでしょう。EOTから魔装機系統の技術への差し替えを行っていて助かりましたね」
「お前のネオ・グランゾンも、科学とラ・ギアスの技術の融合らしいがな」
 ちなみにユーゼスは実際にネオ・グランゾンを見たことは無いので、それに関しては知識だけで語っている。
 エレオノールはゲンナリした様子でそんな二人に呟く。
「…………私は機械のことはよく分からないけど、それをアッサリとやってのけるアンタたちが異常だってことだけは分かるわ……」
「そうか? ……まあ、機械工学は私も専門分野ではないから、そう役には立てなかったのだが」
「いえ、特にレーダー関係や電装系などに十分にお役に立ちましたよ。さすがは『あのシステム』を開発しただけのことはあります」
「ふむ」
 彼らがやったことは、実のところはシュウが持参したプラーナコンバーター(魔装機というロボットから直接取って来たらしい)に少々手を加えてジェットビートルに取り付け、上手い具合にエネルギーが機体に行き渡るように調整を加えただけである。
 だが。
(……コイツら、自分たちの異常性を理解してないのかしら……)
 ロクな設備もないこの状況下において、あんな複雑で(エレオノールは)見たこともない機械をいじる作業を、わずか3日で完了させたことは『異常』以外の何物でもない。
 これで専門の設備があれば、おそらく丸1日で作業が完了していただろう。
 と言っても『機械整備のための専門の設備』など、ハルケギニアで生まれ育ったエレオノールには想像も出来ないのだが。
「では、試運転はどうします? 今すぐにでも飛ばせられますが」
「そうだな、早速飛行させてみるか」
 特に今すぐ飛行させる理由はないのだが、今すぐ飛行させない理由も見当たらない。
(どちらでも構わないのなら、取りあえず今すぐ飛行させてしまおう……とでも考えたんでしょうね)
 とかく『研究者』という人種は、思考や行動において無駄を省く傾向がある。
 同じ『研究者』であるエレオノール自身もそのような思考をすることがあるので、彼女にとってユーゼスの思考の追従は、割と簡単なことだった。
 ……ちなみにユーゼスにとっての『無駄』の代表格である『見栄』や『飾り』などは、貴族にとっては必要なことであるとエレオノールは考えている。
「しかし、今更ながら疑問があるのですが」
「何だ?」
 ユーゼスはビートルを眺めながらシュウに答える。
「あなたはこれを飛行させて、どうするつもりなのです?」
「……………む」
 ユーゼスの表情が、わずかだが動いた。
「……まさかとは思いますが、『ただ何となく整備して飛べるようにした』というわけではないでしょうね?」
「最初はミス・ヴァリエールの依頼で、調査がてらということだったのだが……」
 ううむ、と考え込むユーゼス。どうやら本当に『飛行させた後のこと』については考えていなかったらしい。
(そこで悩まれても困るんだけど……)
 エレオノールにしてみれば『原理がよく分からないから調べよう』、『転用や応用が出来るようならそれを考えよう』程度の考えしか持っていなかった。
 実際、『特殊な油』という副産物を得ることが出来たのだから、目的の半分ほどは達成したとも言える。
 上手くすれば、このシュウ・シラカワがもたらした『プラーナ』とやらの研究に踏み出すことも可能だろう。現時点では不明な部分がかなり多いが。
 そんな感じに色々とエレオノールが考えていると、シュウからとんでもないセリフが飛び出した。
「やれやれ。……では、良い機会ですから東の『ロバ・アル・カリイエ』とやらにでも行ってみてはどうです? あなたの『故郷』に戻れるかも知れませんよ?」
「……………」
「!」
 『シュウを睨みつける』というユーゼスの行動にも驚いたエレオノールだったが、それ以上に『故郷』という単語にハッとした。
 ……当たり前の話だが、ユーゼスにも故郷はある。
 今更ながら、エレオノールはそんなことに気付いたのだった。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:42:37 ID:zc1UBfy7
ラブコメ支援
202ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:44:00 ID:kQ14ZC9L
「……私の素性を知った上でその言葉を口にするとはな。お前が嫌味や皮肉が好きだとは思わなかったぞ」
 ジロリ、とシュウを見るユーゼス。
 ……彼にしては非常に珍しいことに、その顔には『ある感情』が浮かんでいた。
(イライラしてるって言うか、不機嫌そうって言うか……)
 こんな一面もあるのね、などと感心するエレオノールだったが、感心している場合でもなさそうだ。
 ユーゼスとシュウの間に、険悪な空気が漂いつつある。
 ユーゼスの視線には言外に『余計なことを言うな』というメッセージが込められていたが、対するシュウはその視線を軽く受け流して話題を続けた。
「これは失礼を。ですが、よろしいのですか? このビートルにせよ、あなたが持っているという鞭にせよ、あなたの『出身地』から現れた可能性が高いのでしょう? その因果律を辿れば……」
「……戻るつもりがあるのならば、召喚された直後に戻っている」
「そうですか」
 睨み続けるユーゼスに、シュウは飄々と言葉を放つ。
「……随分と不機嫌なようですが、『素性を調べても別に構わない』と言ったのはあなたですよ?」
「『無遠慮に触れて良い』と言った覚えなど無いがな。……あるいはそれは私の記憶違いか、『背教者』?」
「…………ふむ」
 それきり、ユーゼスとシュウの話は止まった。
 さすがのシュウも、それ以上に踏み込んで不毛な会話を続けるつもりはないらしい。
 だが、ユーゼスにとっては何やら触れられたくない話題のようでも、エレオノールにとっては気になる話題である。
 ユーゼスの故郷。
 本人からは『遠くから来た』とだけしか聞いておらず、具体的にどのような場所なのかはサッパリだった。
(聞いてみたい、けど……)
 シュウとの会話からすると、どうも聞いて欲しくはないようだ。
 しかし、気になる。
 とても、気になる。
 すごく、気になる。
 思わずチラチラとユーゼスを見るエレオノールだったが、ユーゼスは意図的に無視しているようだ。
(……何よ、無視しなくてもいいじゃないの)
 せめて『聞かないでくれ』とか言ってくれれば、こっちだってそれなりの対応をするのに。
 そういう『人に対して自分の意思を積極的に伝えようとしない』と言うか、『人との関わりを持とうとしない』点が、エレオノールのユーゼスに対する不満点の一つだった。
 何よりもタチが悪いのは、その自分の不満点をユーゼスが自覚していて全く直そうとしないことであり、それが更に彼女の不満を呼んでいる。
203ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:46:00 ID:kQ14ZC9L
 そして、そんな不満そうなエレオノールの様子に、目ざとくシュウが気付く。
「おや、ミス・エレオノールは今の話が気になりますか?」
「えっ?」
 意図していたのとは別の人物から話が振られたので、エレオノールは驚いた。
 ……ちなみに、シュウはハルケギニアの貴族のことをユーゼスのように『ミスタorミス・“名字”』ではなく『ミスタorミス・“名前”』で呼んでいる。
 シュウは薄く笑みを浮かべながら、再びユーゼスに話しかけていく。
「このご婦人にあなたの『故郷』のことや『詳しい経歴』をお話ししてみてはどうですか、ユーゼス・ゴッツォ? 彼女も興味がおありのようですよ?」
「……………」
 わずらわしそうな視線をエレオノールに向けるユーゼス。
 ユーゼスはシュウに対してはある程度だが強気に出れても、エレオノールに対してはそうではなかった。……実際は、感情をぶつけるべき相手かどうかの線引きが明確なだけなのだが。
 しかし抑えてはいても、そこに『感情』は確かに存在する。
(う……)
 こうもハッキリとした『感情』を込められた視線をユーゼスから向けられるのは、初めてだ。
 しかし……出来れば、もう少しプラス方面の感情を向けて欲しかった。
「……私の故郷や素性についての詳しい話が聞きたいか、ミス・ヴァリエール?」
 あの夜、焚き火を前に『かつての自分の野望』を語った時などとは比べ物にならないほど言いたくなさそうに、明確な嫌悪感すら込めて尋ねるユーゼス。
「それは……」
 下手に『聞きたくない』などと言っても、すぐに嘘だと見抜かれるだろう。
 かと言って、無遠慮に『聞かせなさい』と言うのも、ためらわれる。
 ……ならば、自分はこう言うしかない。
「気にはなるけれど……無理にとは言わないわ。話したくなったら、その時に話して」
 我ながら実に模範的、かつ中途半端な回答だ。
 ユーゼスは『そうか』とだけ呟くと、エレオノールからほとんど興味を失ったかのように視線を外す。
「…………っ」
 そのことが、何故か辛く感じる。
 だからだろうか。
 反射的に、すがるように問いかけてしまった。
「ユーゼス、故郷に……帰りたいとは、思わないの?」
(……あ……)
 問いかけてから、後悔した。
 『触れられたくない部分』だとアピールされた直後に、自分から触れてしまってどうするのだ。
 ユーゼスはエレオノールを一度だけ見ると、彼女だけではなく自分自身にも言い聞かせるように言う。
「もう存在していない。……そもそも、『故郷』など私にとっては何の意味もない物だ」
「……………」
 それだけ言って、エレオノールから離れるユーゼス。
 視線はもう、彼女には向けられていない。
「……どうして私って、こう……」
 残される形になってしまったエレオノールは、溜息を吐いて右手で額を押さえ……彼女にしては非常に珍しいことに、自己嫌悪に苛まれる。
 結局、本日の試運転は見送りとなった。
204ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:48:00 ID:kQ14ZC9L
 解散した直後、少し離れた木の枝の上からその様子を見ていた青い鳥がパタパタと飛んで来て、その場に残っていた主人の肩に降り立った。
「御主人様、ちょっとからかい過ぎだったんじゃないですか?」
 シュウのファミリア(使い魔)、チカである。
 シュウはチラリとチカを一瞥すると、苦笑しながら言われた言葉を肯定した。
「……確かに、少々悪乗りが過ぎましたか。ユーゼス・ゴッツォとここまで深く話が出来るとは思っていなかったので、つい内面を探るような真似をしてしまいましたが……」
 その一連の言動や態度を思い出しながら、ユーゼス・ゴッツォの内面の分析を行うシュウ。
「やはり『私の知っているユーゼス・ゴッツォ』と共通している部分はあります。思考の回転はかなり早く、能力も高い……間違いなく優秀な人間と言えるでしょう。
 しかし外面では余裕を演じていますが、その実、割と感情的になりやすい傾向も共通していますね。まあ、そんなことだから『ユーゼス・ゴッツォ』は野望の達成が出来ないのでしょうが……」
「はあ……」
 どうやらシュウの主目的は『ユーゼス・ゴッツォの分析』にあったらしい。道理でアッサリと誘いに乗ったわけである。
 やけに気前よくプラーナコンバーターの調達に応じたとも思ったが、内面を分析するためにはその人間とそれなりに深く関わる必要がある。それがモノ一つで済むのなら、安いことだったのだろう。
(こういう回りくどいことばっかりやってるから、いまいちマサキに信用されないんだろうなぁ……)
 シュウのこのような迂遠なやり方は今に始まったことではないから、チカとしても慣れたものではあるが……なぜ普通に会話を重ねるなどの方法を取ろうとしないのだろう。
(友達いないから、人づきあいの方法とかが分かんないのかなー)
 主人に聞かれたら殺されても文句が言えないことを考えるチカだが、当然そんなことはおくびにも出さず会話を続ける。
「でもこのまま険悪な雰囲気ってのも、いけないんじゃないですか?」
「そうですね。お詫びはしておかなくてはなりませんか」
 魔法学院へと歩き出すシュウ。ネオ・グランゾンの中で睡眠をとっても良かったのだが、ミス・ロングビルの口ぞえで取りあえずの寝床は用意してもらっていた。
「しかし、試運転が出来なかったのは少し惜しかったですね。プラーナコンバーターの調整も行いたかったのですが……」
「未調整だったんですか、アレ?」
「サフィーネが所持していたギルドーラは、かなり長い間使用していませんでしたからね。起動させた際に、何か不具合が起こる可能性もあります。
 いつぞやのサイバスターのように機能不全を起こしたり、突然コンバーターが停止したり、下手をすると爆発するかも知れません」
「……危なくないですか、それ?」
「普通の人間であれば危険でしょう。しかし使用するのはユーゼス・ゴッツォです。そうそう心配することもないとは思いますが……」
 だが自分の手が入っている以上、可能な限り『完璧』に近付けたいとも思う。
「……やはり、試運転には立ち会っておくべきですね」
 それさえ済めば、自分の仕事も終わりである。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:48:47 ID:pTbO7HeV
すばっと参上、すばっと支援
206ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:50:04 ID:kQ14ZC9L
 その日の夕方、ユーゼスは久し振りにルイズの部屋の中にいた。
 一人で廊下を歩いていたら、やたらとイライラした様子のルイズに呼び止められて『詔がどうのこうの』と言われて部屋まで引っ張られたのである。
 ユーゼスとしても気分転換をしたいところだったので、黙ってルイズが読み上げる詔とやらを聞いていたのだが。
「炎は熱いので、気をつけること」
「……それは単なる注意事項だ」
「風が吹いたら、タル屋が儲かる」
「……深い言葉ではあるが、詩的な印象は全く受けないな」
 このような調子で、主人の詩の才能のなさを知るだけの結果となった。
「ああもう、文句ばっかり! じゃあアンタは何か思いつくの!?」
「思いつく訳がないだろう」
 詩など考えたこともないのだから、すぐに思いつけと言われても無理だ。
 ルイズは唸りながらユーゼスを睨み、『今日はもうやめる』と言ってベッドに横になる。
 そして不機嫌なままで使い魔に問いかける。
「…………今まで、どこに行ってたのよ」
「一言で言うなら『様々な場所』だ。ミス・ヴァリエールに色々と連れまわされたのでな」
 相変わらず淡々と語るユーゼス。
 それ自体には安心したのだが、サラッと『ミス・ヴァリエール』という単語が出て来たのでルイズの不機嫌度は増した。
「…………エレオノール姉さまと、何をしてたのよ」
「宝探しと、研究についての話と……昔語りくらいか」
「昔語り?」
「互いの過去を語って聞かせただけだ。どうにも似たような話だったので、面白味も何もなかったがな」
「ど、どんな話をしたのよ」
「?」
 やけに食い付いてくるな、などと思いながら詳細を少しだけ語る。
「これまでの人生はほとんど研究に打ち込んで、それなりに実績を残して、現在に至る―――という話をしただけだぞ」
「……ホントにそれだけ?」
「他に言いようがない」
「そう、そうなんだ……」
 妙に安心したような顔を見せるルイズだが、更に話は続く。
「あの外の広場にある……何だかよく分からない、大きな箱みたいなのは何?」
「空を飛ぶ兵器だ」
「兵器?」
「アレを使用して飛行し、搭載された銃などを使って巨大な怪獣……いや幻獣を攻撃したりする」
「……それで幻獣を倒せるの?」
「倒せる場合もあったはずだ」
「何よ、その表現……」
 実際にその通りなのだから、仕方がない。
 と言うか、随分と昔のことなのであまりよく覚えていないのだが、ジェットビートルに限らず防衛チームの戦闘機が単体で怪獣を撃退したケースなどあっただろうか?
 異星人連合ETFの円盤の迎撃くらいはしていたはずだが、その他の活躍と言うと……。
(……移動手段と、変身前のウルトラマンが乗っていた、という記憶しかない……)
 そう言えば『自分の世界』に来た時も戦闘機を持参していたな、などと回想するユーゼス。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:50:18 ID:zc1UBfy7
ルイズ空気化が著しい昨今
支援
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:51:48 ID:zc1UBfy7
と思ったらルイズが出てた
支援
209ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:52:00 ID:kQ14ZC9L
 過ぎ去った過去に思いを馳せていると、横からルイズの声が飛んで来た。
「ホントに飛べるの、アレ?」
「飛べる……はずだがな。実際にはどうなるかは分からん」
 タルブからここまでは飛行が出来たが、あれはプラーナコンバーターに換装する前の話である。
「試運転をしようかとも思ったが、あまり進んで行おうという気も起こらなくてな」
 実際には『行う気はあったのだが途中でやる気が無くなった』なのだが、それを正直に主人に言うのもためらわれた。
 ……まさか『聞かれたくないことを聞かれたので不機嫌になった』、などとは言えない。
「ふーん、意外に気分屋なのね、アンタ」
「……そうかも知れんな」
 思い当たる節がありすぎるので、否定も出来ない。
 そしてルイズは少し真剣な顔になってユーゼスに問いかける。
「とにかく、これだけはハッキリさせておきたいんだけど」
「何だ?」
「エレオノール姉さまとは、何もないのよね?」
「……? 質問の意図が分からないのだが」
「い、意図って……」
 『何もない』とは、どのような意味なのだろう。
 レポートなどのやり取りをしているのだから『無関係』ということはあり得ない。それはルイズも分かっているはずだ。
 自分と彼女の間で、特に事件があったわけでもない。
 強いて言うのなら、先ほど内面に踏み込まれかけたので『人間』としての個人的評価がダウンした程度だが、それだから特にどうということもない。
 ユーゼスは『能力の評価』と『人間性の評価』をほぼ切り離して考えているので、多少ソリが合わなくても『人材』として優秀ならば平気で同志や片腕としてスカウトしていた。
 さすがに個性が強すぎる場合は切り捨てるが、その辺りは割り切っているのである。
 ……過去にスカウトした人間のラインナップも、神官ポー、異次元人ヤプール、帝王ゴッドネロス、東方不敗マスターアジア……は駄目だったので代用品としてウルベ・イシカワ、トレーズ・クシュリナーダと、一部を除いて性格にかなり難がある面々だ。
 エレオノールも扱いにくいが、あの連中に比べればまだマシと言える。
 ……よくよく考えてみれば、過去を詮索されるのを遠慮したいのなら下手に身の上話などはせずに、業務上の話だけを事務的に行えば良いのである。
 ちなみにエレオノールは今、『これからどうやってユーゼスと接すれば……』と少しばかり悩んでいるのだが、そんなことは彼の知る所ではない。
(大体、『他の人間と関係を持つ』というのが私らしくなかったのだ)
 と、そのようにしてハルケギニアの人間との付き合い方をあらためて確認するユーゼスだったが、彼の主人の少女はモゴモゴと口ごもっていた。
「……その……まあ、姉さまと、アレコレすると言うか……」
「アレコレ? 具体的に言って欲しいのだが」
「ぐ、具体的に……!? …………いや、この反応からすると『そういうコト』は無さそうね……」
 なら別に良いか、と一人で納得してルイズはベッドから起き上がる。
「そろそろ夕食の時間ね。食堂に行きましょうか」
「何が聞きたかったのかはよく分からなかったが、分かった」
 いつもの調子を取り戻したルイズと、多少強引ではあるが召喚された当時の調子に戻ろうとするユーゼスは、共に食堂に向かうのだった。
210ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:54:00 ID:kQ14ZC9L
 ワルドは竜騎兵隊の隊長として、『ロイヤル・ソヴリン』号改め『レキシントン』号に乗り込んでいた。
 この戦艦は、先日新たに誕生した『神聖アルビオン共和国』代表の旗艦として、トリステイン王女とゲルマニア皇帝の結婚式に向かっているのだ。
 そして港町ラ・ロシェールにてトリステインからそれなりの歓迎やら挨拶やらを受けた後、トリステインの艦隊と合流し、結婚式の行われるゲルマニアの首府、ヴィンドボナに向かう。
 ……外面上は、そういうことになっている。
「要するに、来客を装った騙し討ちを仕掛けるわけか……」
「言うな、子爵。やる気が削がれる」
「これは失礼しました、艦長」
 ポツリと呟いた言葉が、隣に立っていたサー・ヘンリー・ボーウッドに聞こえたらしく、釘を刺されてしまう。
 ワルドは頭を下げつつ、内心ではこのボーウッド艦長に同情していた。
(『実直な軍人』という人種は、こういう時には辛いものだな……)
 上からの命令には絶対服従で、非常に忠実。軍人として優秀すぎるために『反抗する』という行動も選択肢に入れられない。一度作戦が始まれば非常に徹する。
 このボーウッドという男は、命令に対して徹底して『個』というものを殺し続けなければならず、しかもその生き方が染み付きすぎている。
 おそらく、一生この生き方を貫くことになるのだろう。
 それだけならばワルドとしても『よくある話』で片付けられるのだが、問題はボーウッドに色々と指示を飛ばす『艦隊司令官・兼全般指揮執行者』にあった。
「……艦長、こんな近付いて大丈夫なのかね? 長射程の大砲を積んでいるのだから、もっと離れたまえ。私は、クロムウェル閣下より大事な兵を預かっているのだ」
 サー・ジョンストン。一言で言えば、政治屋である。
 クロムウェルの信任はそれなりに厚いのだが実戦の経験などは全く無く、ハッキリ言ってしまえば、この場においては邪魔以外の何物でもなかった。
 しかし地位としてはボーウッドやワルドより上に位置しているため、ぞんざいに扱うことも出来ない。
(……この光景は、どの国でも同じだな)
 かつて自分がグリフォン隊の指揮を執る時も、トリステインの重鎮たちが『ああだこうだ』と的外れな指示を出すことがよくあった。
 とは言え、ボーウッドもその辺りのあしらい方は心得てはいるようだ。
「サー、新型の大砲と言えど、射程いっぱいで撃ったのでは当たる物ではありません」
「しかしだな、何せ、私は閣下から預かった兵を無事にトリステインに下ろす任務を担っている。兵が怖がってはいかんだろう。士気が下がるではないか」
「そうですな」
 やり取りの後、ボーウッドはジョンストンを無視して命令を下し始めた。
 とりあえず意見は聞いておいて、その後に淡々と『自分の方法』で効率良く進行させる。賢いやり方だ。
(しかし、『新型の大砲』か……)
 ワルドは、クロムウェルの傍らに立っていた得体の知れない……東方のロバ・アル・カリイエからやって来たという触れ込みの、小太り体型の大柄な男を思い出す。
(デブデダビデ、とか言っていたな)
 確かに聞き慣れない響きの名前ではある。東方ではそのような名前が使われていると言われたら、そう納得するしかない。
 あの不気味な雰囲気さえなければ、すんなり納得も出来たのだが。
(……得体が知れないと言えば、あの『紫の髪の男』……)
 目撃証言程度ならばそれなりに得ることは出来たが、いまだ実際に発見するまでには至っていなかった。
 まあ、これから戦場に向かおうと言うのに、いつまでも不確定要素について考えるのも好ましくはあるまい。
 あの男のことも気になるが、今は目の前の戦場だ。
 状況は既にアルビオンの『ホバート』号を自爆させ、その罪をトリステイン艦隊旗艦になすり付ける段階を通り越し、艦隊戦という名の一方的な蹂躙に入っている。
「さて、私も仕事をして来ますよ」
「気をつけてな、子爵」
 艦長の言葉を背に、ワルドはかつての祖国を攻撃するべく風竜の元へと向かった。
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:54:21 ID:hgfPmZ2I
ルイズがユーゼスをどう思ってるのかもイマイチはっきりせんな
支援
212ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 22:56:00 ID:kQ14ZC9L
 アルビオン宣戦布告の報が入ったのは、それが行われた翌朝のことだった。
 完全に不意を突かれ、王宮の上層部が大混乱に見舞われたために伝令が遅れたのである。

 ルイズとユーゼス、そして何となく気まずそうなエレオノールは魔法学院の玄関先でゲルマニアへと向かう馬車を待っていた。
 王女の結婚式ともなれば、当然トリステインの名門ヴァリエール家も(事情があって領地から出られない者を除いて)総出で出席しなければならない。
 ならばルイズとエレオノールは一緒に向かった方が効率が良いだろう、という判断である。
 しかし馬車はいつまで経ってもやっては来ず、代わりにやって来たのは慌てた様子の使者だった。
 その使者は落ち着かない様子でオールド・オスマンの居室を訪ねると、全速力で駆けて行く。
「「「?」」」
 3人揃って首を傾げるが、首を傾げたところで疑問が解消するわけではない。
「……ちょっと、何があったのか確認して来ます!」
「あ、ルイズ!」
 その疑問を解消するべく、ルイズは彼の後を追っていった。
「ああもう、まったくあの子ったら……」
「あの行動力は御主人様の長所なのか、短所なのか……。判断に困るところではあるな」
「……そ、そうね」
「……………」
 残された銀髪の男と金髪の女は、二言三言会話を交わすと、それきり無言になった。
「……………………」
「……………………」
(……ミス・ヴァリエールが落ち着いてないな)
 自分に対して注意を向けてはいるが、話しかけてこない。
 視線をこちらに向けようとはするが迷った末にそれをせず、逆にこちらが視線を向けようとすると顔を逸らす。
(?)
 機嫌が悪いのか、それとも自分が何かエレオノールの機嫌を損ねるような真似でもしていたか。
 思い当たる節は……。
 ……強いて言うなら先日の『自分の内面への踏み込み』くらいだが、それだとすると踏み込まれた自分が機嫌を損ねるのならともかく、どうして踏み込んだエレオノールが機嫌を損ねるのだろうか。
(まあ、別に構わんか)
 精神状態がどうであろうとも、その能力さえ低下しなければ自分としては文句は無い。
 思考は徹底してドライに。
 人間は『単なる道具』として扱う。
 ユーゼス・ゴッツォとは、そうあるべきだ。
 そうして暗示のように心の中で呟き続けていると、ルイズが大いにうろたえた様子でこちらへと走ってきた。
「……どうした御主人様、そこまで慌てるとは珍しい」
「ルイズ! 貴族がそんな息を乱して走ってはいけないと、子供の頃から言っておいたはずよ!」
 二人揃って『ルイズが慌てていること』への意見を言うが、ルイズはそれどころではないとばかりに大声でまくし立てる。
「ア、アルビオン軍が、タルブに―――!!」
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:57:45 ID:zc1UBfy7
ワルドはシュウと接触できなかったか
運が良い男だ
支援
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:00:01 ID:zc1UBfy7
さるさん?
215ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:00:02 ID:kQ14ZC9L
 いきなり宣戦布告したアルビオン軍が、タルブ村に陣を張った。タルブは炎上した。
 姫さまの結婚式は、無期延期になった。
 トリステイン王軍は、ラ・ロシェールに陣取ってアルビオン軍と睨み合っている。
「……………」
 ユーゼスはそれを聞いても大して驚かず、ただピクリと表情を僅かに動かしただけだった。
 見れば、エレオノールは口を手で押さえながら目を見開いて驚いている。
「ど、どうすれば……!」
「……別に何をしなくとも良いだろう」
「え?」
 焦るルイズに、ユーゼスは平然と答えた。
「戦争が始まったのだぞ? 個人で出来ることなど何もあるまい」
「う……」
 それは、その通りなのだが。
「……戦争は『流れ』だからな。先手を打たれて後手に回ったトリステインに勝ち目は薄いだろうが……」
「うう……」
 確かに、あの使者はトリステイン艦隊主力は全滅したと言っていたが。
「生き残るだけならば、そう難しくもないだろう。どこか安全な場所にでも身を隠して、戦後の身の振り方でも考えていれば良い」
「ううう……」
 それが一番、『賢い方法』であると理解は出来るのだが。
 だが、それでも。
「…………!」
 自分に何か出来ることは、姫さまのためにしてあげられることは……と思いながら、ふと周りを見回してみると、先日ユーゼスがその『機能』を説明した物が目に入った。
 学院の玄関から見える、飛行機械……改造ビートルを指差して、ルイズは確認する。
「―――ユーゼス。あそこのあの鉄のカタマリは、『空を飛ぶ兵器』だって言ってたわね?」
「……その通りだ、御主人様」
 ユーゼスは平然とそれを肯定したが、それに面食らったのはエレオノールである。
「ルイズ、あなた……!」
「黙っててください、姉さま!!」
「!」
 エレオノールは馬鹿なことをしようとしている妹を止めようとしたが、その妹に怒鳴られてしまい、思わず口ごもってしまう。
 ……ルイズが面と向かってエレオノールに反抗するなど、これが初めてのことだった。
「アレは飛べるのよね?」
「まだ試してはいないが、設計上はそのはずだ」
「戦えるのよね?」
「そのための武器は搭載している」
 平静な口調で答えるユーゼスとは逆に、ルイズの心はどんどん高揚していく。
「……じゃあ、まずはアレを実際に飛ばして見せなさい。行き先は言わなくても分かるわね?」
 強い視線を使い魔に向けるルイズ。
 ユーゼスは無感情にその視線を受けつつ、その言葉の『意味』を確かめた。
「それは命令か?」
「そうよ!」
「……了解した」
 主人の命令を了承するユーゼス。この少女が一度こうなったら、どんなに言葉を尽くしても意見をひるがえさないことは、経験として知っている。
 もはや諦めにも似た心境で、ユーゼスはルイズを連れて改造ビートルへと歩き出した。
 しかし。
「待ちなさい!!」
 ……当然と言えば当然の結果ではあるが、エレオノールに制止される。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:00:41 ID:Fh3kbyku
支援
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:01:06 ID:zc1UBfy7
支援
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:01:48 ID:3s1yl7xH
支援
219ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:02:00 ID:kQ14ZC9L
「ルイズ! 自分から戦場に行こうだなんて、馬鹿げたことを……!! あなたが行ってどうするの!?」
「馬鹿げたことじゃないわ!! トリステインのために戦おうとすることが、どうして馬鹿げたことなの!?」
「っ、あなたは女の子じゃないの! 戦争は殿方に任せなさいな!」
「それは昔の話だわ! 今は、女の人にも男性と対等の身分が与えられる時代よ! だから魔法学院だって男子と一緒に席を並べるのだし、姉さまだってアカデミーの首席研究員になれたんじゃない!!」
「それとこれとは話が別よ! ……そもそもあなた、戦場がどんな所なのか知っているの? 少なくとも、あなたみたいな女子供が行く所じゃないわ!」
 激しく口論するヴァリエール姉妹。
 蚊帳の外のユーゼスは、取りあえず成り行きを見守っていた。
「でも……でも、姉さまやユーゼスがいじっていたアレは、戦うための『兵器』なんでしょう!? 自分に戦える力があるのなら、戦うべきだわ!!」
「……それはユーゼスの『戦う力』であって、あなたの『戦う力』じゃないの! いいこと? 例えどんな使い魔を持っていようとね、あなた自身は何も出来ない『ゼロ』のルイズなのよ!?」
「……!!」
 ギリ、とルイズは歯ぎしりする。
 どんな使い魔を持っていようと、自分自身は『ゼロ』。
 ユーゼスを召喚してからずっと付きまとっていたコンプレックスを姉にストレートに指摘され、更に頭に血が上った。
「メ、メイジと使い魔は一心同体も同然でしょう!! だったら、使い魔の力はわたしの力だわ!! ……わたしとユーゼスの間にはね、姉さまなんかが入って来れない大事な絆があるの!!」
「っ!!」
「……………」
 そんな強い絆はあっただろうか、と密かに首を傾げるユーゼスだったが、言われたエレオノールは激昂して言い返す。
「……『絆』? 『絆』ですって? たかが2ヶ月くらい一緒過ごして、主従関係を続けただけで? ハッ、じゃあ聞くけど、あなたユーゼスのことをどれだけ知ってるのよ!?」
(む?)
 何だか、話が変な方向に進んでいるような。
「た、確かに知らないことは多いし、認めもするわ! でもメイジと使い魔の契約は一生のことだもの、これから時間をかけて色々知っていくんだから!!」
「フン、その分じゃあなた、ユーゼスがあなたに召喚される前に何を研究してて、何をしようとしてたのか知らないんでしょう!?」
「なっ!」
 どういうことよ、とユーゼスを見るルイズ。
 『お前も質問しなかったではないか』と言おうとしたが、ややこしいことになりそうなので黙っておく。
 ルイズは小さな唸り声を上げると、『だったらこれはどうだ』と言わんばかりに反論した。
「だ、だったら、姉さまだってユーゼスが『サモン・サーヴァント』で開かれるゲートを感じられること、知らないでしょう!?」
「……何ですって?」
 聞いてないわよ、とユーゼスを見るエレオノール。
 『別に言う必要も無いだろう』と言おうとしたが、面倒なことになることは明らかなので言わないでおく。
 そしてそのままギギギギギ、と姉妹は睨み合った。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:03:01 ID:oIgwFBby
この展開は支援w
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:03:12 ID:zc1UBfy7
痴話げんか支援
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:03:18 ID:cR0BDwjV
ツンデレ支援
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:03:57 ID:O1oDHK7V
科学特捜隊は実は防衛チーム有数の怪獣撃破数を誇っている 支援
イデの発明が優秀すぎるだけだけど
224ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:04:03 ID:kQ14ZC9L
(……これは『タルブに向かうかどうか』の言い争いだったはずなのだが……)
 いつの間にか、論点が全然別のものにすり替わってしまっている。
 まあ、これを修正するのも自分の役目だろう。
 ユーゼスは一歩前に進み出て、ルイズとエレオノールをなだめようとした。
「お前たち、いい加減にそのくらいで……」
 お互い、今は頭に血が上っているようだが、一度冷静になってくれれば議論の中心も元に戻るだろう、と思っていたのだが……。
「「アンタは黙ってなさいっ!!」」
「……分かった」
 頭に血が上ったヴァリエールの女が二人も相手では、自分程度ではどうにもならないようである。
「……大体ね、ユーゼス!」
 エレオノールがキッとユーゼスを睨みつける。
 この視線を受けるのも妙に久し振りに思えるな……などと思いつつも、ユーゼスは矛先が自分に向いたことに焦りを覚えた。正直、嫌な予感しかしない。
「あなたも『了解した』って人形みたいにルイズの言うことを聞くだけじゃなくて、少しは『自分の意見』ってものを持ちなさい!! ガーゴイルじゃないんだから!!」
「そう言われてもな……」
 『自分の意見』など持った所で、それを貫こうとする意志があるわけでもない。
 『自分の意見』を持とうとする気力も、そんなにない。
 それ以前に、持つつもりがない。
 ならば、彼女には『常識』を説くしかないだろう。
「……使い魔とは、主人に従うものなのだろう?」
 しれっと答えるユーゼス。
 その言葉を聞いて、エレオノールだけではなくルイズも硬直した。
「…………ユーゼス・ゴッツォ、少し確認するわよ?」
「何だ?」
「あなたが今までルイズの命令や指示に従ってきたのは、あなたが『使い魔』だから?」
「他に理由かあるのか?」
「……じゃあ、私の命令や指示に従ってきたのは、私が『あなたの主人の姉』だから?」
「『身分の高い貴族だから』というのもあるが。……それ以外に何がある?」
「ふ、ふーん、そう……」
「へ、へえー、なるほど……」
 ヴァリエール姉妹から発せられる怒りが、いきなり穏やかになる。
 いや、これは……。
(まるで拡散していたものを、一点に集中させているような……)
 ハッ、と気付いた時には、もう遅かった。
 ヴァリエール姉妹は同時に一歩を踏み出し、ユーゼスに詰め寄って、
「……ア、ア、アタマに来たわ!! 久し振りに!!!」
「どういうコトよ、それーーー!!!?」
 二人揃って、ユーゼスを怒鳴りつけたのだった。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:05:51 ID:zc1UBfy7
正直すぎる支援
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:06:01 ID:bkzpMzA5
支援
227ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:06:05 ID:kQ14ZC9L
「それじゃあ何!? アンタは今まで『使い魔だから』わたしの世話を焼いてたっての!!?」
「最初に雑用などを命じたのは、御主人様の方だったと……」
「それは確かにそうだけど―――それにしたって、『使い魔だから』!? 何なのよ、それは!!?」
「何なのよ、と言われても……」
 召喚した初日に『使い魔の仕事』として自分の世話を命じたのは、他でもないルイズなのだが。
 ユーゼスはどうにかしてルイズを落ち着かせようとしたが、そうする暇もなく今度はエレオノールに詰め寄られる。
「ならあの夜、私と話したことは何だったの!?」
「『あの夜』? ……いや、アレは単なる雑談のような物ではなかったのか?」
「はあ!? こ、この……!」
 ワナワナと震え始めるエレオノール。
 そして、とうとう彼女の中に溜まっていたものがあふれ出した。
「ああもう……! ……いいわ、もうこうなったら、変に遠慮するのなんて止めてやるんだから!!」
「? 今まで何を遠慮していたのだ?」
「黙ってなさい!!」
 何を遠慮されていたのか分からないユーゼスが思わず質問するが、その質問はピシャリと封殺されてしまう。
「これからあなたに対しては、言いたいことを言いたいだけ言わせてもらうわ!! あなたがそれに答えるなり、従うなりするのは自由よ!! 自分で決めなさい!!」
「わ、わたしだって、『使い魔だから』って理由だけで従って欲しくないんだから!!」
 エレオノールの言葉に触発されたのか、再びルイズがユーゼスに迫る。
 そして少しだけ口ごもりつつ、顔を赤くしながら問いを放った。
「……しょ、正直に答えなさい。ア、アンタ、わたしの所にいたいの? いたくないの? ホ、ホントのところはどうなのよ?」
「む……」
 そう聞かれても、困る。
「……お前の所以外に、どこに行けと言うのだ?」
「そ、それは……エレオノール姉さまの所、とか……」
 言いながら、チラリとエレオノールを見るルイズ。
「えっ!?」
 いきなり話を振られたエレオノールは、ルイズと同じようにカアッと顔を赤くした。
「?」
 ……ユーゼスは当事者、と言うかこの話の中心人物であるはずなのだが、話題に付いて行けていない。
「わ、わたしを選ぶのか、姉さまを選ぶのか、ハッキリしなさいよ!」
「……何?」
「そ……そうね、いつまでも宙ぶらりんは良くないわね。この際だから、ちゃんとしておかないと」
「いや、少し待って欲しいのだが―――」
「……………」
「……………」
 インターバルの申請を華麗に無視して、桃髪の美少女と金髪の美女の姉妹はモジモジしながら銀髪の男をチラチラと見る。
(何故、こんなことに……)
 困惑するユーゼスだったが、その疑問に答えてくれる者は誰もいなかった。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:06:55 ID:hgfPmZ2I
痛い姉妹だな。だがそこがいい
支援
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:06:56 ID:zc1UBfy7
タルブはどうでもいいのか
支援
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:07:32 ID:cR0BDwjV
修羅場しえん
231ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:08:01 ID:kQ14ZC9L
(……むう、どうにかしてこの状況を脱しなければ……)
 高ぶった感情を減少させるには、まずその注意を他の対象へと向ければ良い。
 そうすればベクトルが狂ったことにより感情の行き場がズレて、空回りした感情は勝手に霧散してしまう……はずである。
 要するに、話を逸らせば良いのだ。
 良いのだが……。
(どう話を逸らすか……)
 そもそも、最初の発端はタルブの戦場に行くかどうかという話のはずだったのに……と考えた時点で、ユーゼスに天啓がひらめいた。
 そう、キーワードはタルブである。
 ここで議題を最初の段階に戻しさえすれば、このよく分からない状況も終わる。そう思いたい。
 だが、どうやって……?
(……待て、論点を戻した所で、私としてはタルブに向かおうが向かうまいがどちらでも……)
 トリステインが滅ぼうがどうなろうが、大して興味も動かない。
 しかしここで『自分の意見』を持っていなければ、またアレコレと言われることは必至である。
(向かうべきか、向かわないべきか……)
 ユーゼスとしては『ハルケギニアへの干渉』はなるべく控えたい。しかし『ビートルを使った参戦』は……。
 そう言えば33年前にビートルを操縦した早川健は、コレを使ってどうしたのだろうか。
 ……タルブ村の住民の話によると、わざわざ燃料を満タンにして飛行させたらしい。ということは、『飛行させて使う必要があった』ということである。
 つまり、あの男は『ジェットビートルを使ってハルケギニアへの干渉を行った』のだ。
 いや、それ以前に快傑ズバットに変身したということは、もう人目をはばからず多大な干渉を行ったということではないか。
 早川健による干渉が良くて、何故ユーゼス・ゴッツォによる干渉が駄目だと言うのだろう。
(…………因果律を操作するわけでもないのだし、許容範囲内か……)
 普通ならまずこんな屁理屈のような思考方法はしないのだが、今は緊急事態なのである。仕方がないのだ。やむを得ないのだ。断腸の思いなのだ。
 そうと決まれば、あとは総力を挙げて強引に話を逸らすのみ。
「……………」
 ス、と視線をルイズとエレオノールに向ける。
「っ……」
「……!」
 二人は揃ってますます落ち着かなくなるが、そこでユーゼスは二人から視線を逸らして改造ビートルを見た。
「……こうしてはいられん、急いでタルブに向かわなくては!」
「え!?」
「はあ!?」
 我ながら白々しい口調だな、などと考えながらもユーゼスは話を続ける。
「何を驚いている、二人とも。そもそもこの話は『タルブに向かうかどうか』ということについての議論だったではないか」
「いや、それはそうだけど……」
「今はその話じゃなくて……」
 話が修正されそうになったので、強引に進めることにする。
「こうしている間にも人々が苦しんでいる……! 私はアレを使ってタルブに行く! 二人はここで待っていてくれ!!」
「「ええ!?」」
 驚くルイズとエレオノールをあえて無視し、ユーゼスは改造ビートルへと走っていった。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:08:40 ID:3s1yl7xH
寺田さんもユーゼスがツンデレ姉妹に翻弄されるとは考えもしなかったろうなあw
もう一回支援w
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:09:24 ID:zc1UBfy7
吹いた
支援
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:09:31 ID:lP5r5m3N
ユーゼスにこれ程似合わない台詞も無いなw支援
235ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:10:00 ID:kQ14ZC9L
 そしてしばらく走った末にビートルに到着し、急いでハシゴを上り、ビートルの搭乗口を開けて、中に入り込もうとして……。
「待ちなさい、ユーゼス!!」
「う……」
 女性の声が聞こえたので振り向いてみると、『フライ』なのか『レビテーション』なのかは分からないが搭乗口に向かって飛んで来るエレオノールが見えた。
「ユーゼス、止まりなさい!!」
「ぬ……」
 更に全力疾走でもしたのか、かなり息を切らしていながらだがルイズも自分が登ってきたハシゴの下の部分にいる。
(早く発進しなければ……)
 ガンダールヴのルーンを発動させて走る速度を上げておけば……などと後悔しつつ、このまま戻って来ないことも選択肢に含めて、二人に気付かない振りをしながら搭乗口を閉めようと手をかける。
 その瞬間。
「ちょ、ちょっと、どいて!」
「何?」
 それなりのスピードで飛行してきたエレオノールが正面からユーゼスに、ドガ、とぶつかった。
「ぐっ!」
「キャッ!?」
 そのままユーゼスはあお向けに倒れこみ、エレオノールはそのユーゼスの上に馬乗りになる。
「うっ……、な、何というパワーだ……」
「……貴婦人に向かって『パワー』とか言わないでもらえるかしら」
 この時、誰か別の人間がいれば『エレオノールがユーゼスを押し倒している図』を目撃することになったのだが、幸か不幸かそんな人間はいなかった。
 なお、ユーゼスはそのようなことには無頓着で、エレオノールは慌てていたのでそのことに気付いていない。
 そしていつまでも倒れこむような体勢のままでいるわけにもいかないので、二人が起き上がったまさにその瞬間、ハシゴを登ってルイズが現れる。
「ぜえ、ぜえ……い、いきなり、走り出すんじゃ、ないわよ……」
 呼吸を乱しながらも、ルイズはビートルの中に初めて入った。
「へえ、こうなってたんだ……」
 ジロジロとビートルの内装を見回すルイズだったが、ふとユーゼスとエレオノールが並んで立っていることに気付いて鳶色の瞳を細くさせる。
「ユーゼス、何だかウヤムヤになりそうだけど……」
「さあ、早く発進させなくてはな!」
 先ほどの話をウヤムヤにさせはすまいとルイズが再び話し始めようとするが、先ほどの話をウヤムヤにするべくユーゼスはやや強行的にビートルの発進手順に入った。
「……今回は普通に座ってベルトを締めるのだろうな、ミス・ヴァリエール?」
「と、当然でしょう!」
 赤面してうろたえながら座席に座り、ガチャガチャとベルトを締めるエレオノール。
 ルイズはそのやり取りに何か不穏なものを感じ取ったが、取りあえずは姉にならって自分もベルトを締める。
「さあ、余計な無駄話をしている場合ではない。一刻も早くタルブへ向かうぞ!」
「……………」
「……………」
 ジトッとユーゼスを見つめるヴァリエール姉妹だったが、ユーゼスはそんな視線など存在しないと言わんばかりに改造ビートルを発進させる。
 試運転なしで発進させるのは少々不安もあったが、改造ビートルは意外なほどスムーズに宙に浮き、飛行した。
「わ、わ、わぁ! 空を、空を飛んでる〜〜!!」
 なお、初めての飛行機械に興奮したルイズのおかげで、タルブまでの道中において詰問が再開されることは無かった。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:10:04 ID:cR0BDwjV
セリフの後ろに(棒)が抜けてる支援
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:10:34 ID:HNxILV0g
似合わない台詞を言うのも私だ支援
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:11:20 ID:Bv/UYhIv
棒読みでも気にしないのも私だ
239ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:12:01 ID:kQ14ZC9L
 青い粒子を撒き散らしながら飛び立つ、改造ビートル。
 その様子を、魔法学院の一室から眺めている男がいた。
「朝早くから、随分と慌ただしい試運転ですね……」
 改造ビートルの改造作業のメインエンジニアにして、十指に渡る博士号を持ち、『メタ・ネクシャリスト』とも呼ばれている超天才科学者、シュウ・シラカワである。
「何だか修羅場ってたみたいですけどねー。いやはや、あれほどの朴念仁はなかなかいないでしょう。まさに10年に1人の逸材!」
 シュウの肩に乗りながら、飛んで行くビートルを見送るチカ。
「……ユーゼス・ゴッツォの女性関係はともかくとして、さすがに未調整のプラーナコンバーターでは不安が残ります。一応、アフターサービスはしておきしょう」
 そしてシュウはミス・ロングビル宛に『少し出かけてきます』と書置きを残して、部屋から姿を消したのだった。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:12:36 ID:WLMvVWGh
支援
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:12:45 ID:zc1UBfy7
ネオグランゾン対アルビオン艦隊!?
こいつぁ見るドラッグだぜ
支援
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:13:09 ID:urNO/3bw
恐怖のアフターサービス支援!!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:13:15 ID:pTbO7HeV
ああ、もうどうでもいいが、支援するのはあれもこれもそれも私だ
244ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2009/01/17(土) 23:13:17 ID:kQ14ZC9L
 以上です。どうにか避難所を使用せずに済みました。

 ……しかし、何だか話を進めれば進めるほどユーゼスのキャラが壊れていくような……。

 と言うか、当初の予定ではエレオノールの「言いたいことを言いたいだけ〜」の後に「使い魔だからとかそういうのじゃなくて、あなた自身はどうしたいのよ」みたいなことを言わせて―――と考えていたのですが、どこで歯車が狂ってしまったのでしょう。
 やはり執筆BGMにトライアングラーを選んだのは失敗でしたか……。
 しかもこの後、女性の登場人物にもっとスポットライトが当たったりする予定ですから、スクウェアーやペンダゴナー、ヘキサゴナーなどになる可能性も……。
 ……でもよくよく考えてみると、原作の才人もそんな感じですよねぇ。

 それでは、支援ありがとうございました。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:14:37 ID:zc1UBfy7
お疲れさまっしたー!
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:14:56 ID:Bv/UYhIv
君は誰とキスをすると詰め寄られるのも私だったのかw
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:20:08 ID:F85pRv0d
>>244
乙です。モテモテなのも私だ

> ……でもよくよく考えてみると、原作の才人もそんな感じですよねぇ。

まあ、原作者自身「登場するヒロインは全員主人公と恋をするべき」とか言ってるし……w
でもサイトって意外とというかずっとレモンちゃん一筋なんですよねえ。
だから今更タバサフラグ立ってもタバサが気の毒なことにしか……
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:20:44 ID:WLMvVWGh
ラスボスの人投下GJ!
ツンデレって二人集まると
デレは2倍だが、ツンは4倍くらいになるんだな
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:21:24 ID:VLJCnQzp
次はアルビオン軍のマジックミサイルを板野サーカスで回避だ
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:22:34 ID:cR0BDwjV
ラスボスの人乙でした

ジェットビートルはウルトラマンだとホントに役立たずだけどw
ハルケ世界ではちゃんと戦えるのかな?
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:27:33 ID:hgfPmZ2I
ジェットビートル内からのエクスプロージョンは可能か否か。
ジェットビートルだけで充分勝てそうですが。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:28:48 ID:VpYX7Ta1
ラスボスの人、お疲れ様です!
まさか今回修羅場が見られるとは。そして朴念仁ユーゼスに笑いっぱなしでした。

次回はビートル無双とシュウ暗躍と…読んだ直後なのに次回が楽しみでたまりません。
しかしデブデダビデ、何もって来たんだ…

流石にワルドフラグ消化までは行かないかなぁ…
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:30:25 ID:F85pRv0d
>>250
失礼なこと言うなよ!
ジェットビートルだってなあ……うーん………
なんか活躍したことあったっけ……
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:30:29 ID:BnHnl6Yo
素晴らしい、最高の三角関係だ
ラスボスの人GJ
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:33:52 ID:zlfZ9Im/
一応ウルトラマンが現れる以前はあいつらだけで怪獣退治してたわけでして
あと本当はウルトラマン絡みじゃない怪獣出現も多くて世界中で現地の防衛軍が戦ってた筈
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:34:37 ID:pFJ2rHOS
>>223
その時イデが発明した
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:34:57 ID:GF++aJ/1
>>253
スパヒロのビートルならレベル次第で
バルタン星人を蜂の巣にできるんだぜ!
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:37:48 ID:zc1UBfy7
まぁハルケ世界の軍艦の戦闘力じゃマッハで空を飛ぶジェットビートルが横をすれ違うだけで大破できそうだが
そこらへんはデブデダビデが頑張って差を埋めてくれる・・・かなぁ
もしくは、最強の系統『風』の中でも最高位のスクェアのワルドが・・・
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:41:14 ID:Bv/UYhIv
>>256
だれうま
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:41:27 ID:VpYX7Ta1
ウィキペディアを見る限り、ビートルってかなり凄く見える
また空を飛んでるバルタン星人の大群を倒したのってビートルの武装じゃなかったか?
と思って読んだらあれはビートルの銃架に取り付けたイデの発明品だった
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:41:55 ID:N9C3O4C8

チカは焼き鳥にならずにすんだのかw
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:47:34 ID:X2nzq7Wl
ビートルは後の戦闘機に比べたら割と丈夫な部類だったり
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:55:56 ID:R42wJdtV
ビートルの性能を考えると、単純に怪獣のスペックが異常なだけなのではないかと思えてくる。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 23:57:59 ID:pFJ2rHOS
纏めると、イデとその発明は憚れる存在ってことになるな
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:02:38 ID:zNF8M/+Z
そりゃ単体で惑星ぶっ壊せる奴とかがゴロゴロいるんだぞ?
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:04:19 ID:CjKzCBNZ
ラスボス乙。
他の作家の人はBGMにどんなのをかけてるんだろうな。

そして亀レスだが>>131

>ウルトラマンセブンの監督やらせてくれとか

てめーは俺を怒らせた
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:11:00 ID:fTwPcGJC
>>266
ハリウッドの予算でティム・バートンがやるのは見てみたいけどなあ……
バッドマンってアメコミファンからすると酷かったの?
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:13:15 ID:/mtXXXE+
     ・ ・
ウルトラマンセブン
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:13:47 ID:+iFefVXh
ウルトラセブンであって
ウルトラマンセブンではないってことじゃないか
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:15:29 ID:JGUIwHtB
>256
イデと聞くとイデオンを連想してしまう・・・
あれもイデの意思が働いてただのビーム砲やミサイルを
形そのままでハイメガキャノンや核ミサイルばりに強化しちゃうからなぁ。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:16:26 ID:CjKzCBNZ
>>267
お前が犯した間違いはウルトラファンにとっては禁忌の物なのだが…、分からんのなら、もう何も言わん…
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:16:51 ID:zNF8M/+Z
良くも悪くもティム・バートンの映画だよ
異形の者に対する優しくて冷たい眼差しがある
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:16:53 ID:fTwPcGJC
失礼、そういうことか
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:18:09 ID:wU2k7kF4
目立った活躍がなくても
スカイドンを3機がかりでまったく持ち上げられなくても
それでもビートルは一番好きなマシンなんだ
あのむせ返るような昭和SF臭がたまらん

>>180
遅らばせながら乙
タバサが杉小路ポジションかw
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:20:20 ID:zNF8M/+Z
スカイドンは20万tあるんだぞ
でっかいタンカー数隻分くらいあるんだから戦闘機三機で持ち上げようってのが無理だ
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:20:45 ID:fTwPcGJC
>>270
そういうネタで書いたつもりw
イデオンの「その時イデが『発動』した」ってのを『発明』に変えてイデ隊員にしたw
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:21:35 ID:CjKzCBNZ
初代ウルトラマンの造形は、原点にして究極だと思う
つーか、何気に初代マンって作品中に優れた造形が多いよな
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:22:00 ID:fTwPcGJC
>>271
俺は>>131じゃないよw
あと、ちょっと気持ち悪いよw
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:24:10 ID:zNF8M/+Z
シリーズ物は原典が一番シンプルで美しいことが多いよな
ウルトラマン、ライダー、マジンガー、ゲッター、ガンダム・・・

バルタン星人はセミ人間の改造だから成田氏はあまり気に入ってなかったそうだけど
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:24:38 ID:HxsPnMQF
「マン」が省略されるのはセブンとタロウだけだっけ?
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:24:53 ID:kk0+Qz2k
とりあえず落ち着こうぜ
ルイズとエレオノールみたいに熱くなりすぎだ
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:25:21 ID:HxsPnMQF
えらい間違いを…
タロウは省略されてなかったなorz
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:25:32 ID:gTi6detp
ルイズの日記
 屋敷の下働きをしていた女が死んで、8歳の娘がその辺を(食べ物も与えられず、働き口も得られず)うろついていたけど
 今日見たら道端で餓死していた。その後、死体を食べた犬が娘の頭をくわえたまま庭に入ってきたので
 昼食の屋外パーティーがだいなしになった。


エレオノールの回想
 朝出勤する時、道端に赤ん坊がいたが、ほうっておいたことがあった。
 夕方帰り道を歩きながら「もう犬に食われている頃だろう」と思って見ると、まだ無事だった。
 不思議なこともあるものだわ。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:31:28 ID:8d5sDAFA
>>274
タバサをそのポジションにするとイザベラ様の命が危ない
プチトロワの屋上から落ちたり
シャルル・オルレアン号に轢かれたり
超天空×字拳を食らったりすることになる
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:33:29 ID:daT5LM6e
イザベラ様が清村+安井という最悪かつ最高のポジションになりそうだw
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:38:28 ID:63/p0dmZ
ラスボスの人GJ!!
なんというトライアングラーwwwwそして痛すぎる骨肉の争いwwwだがそれがいいwwwwGJ
シュウのアフターサービスのwktkが止まらないです。
次回に超wktk。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:50:22 ID:6bEbz5/6
非常に遅レスで恐縮ですが、ビオランテに触発されて、こんなプロット考えてみた。

ルイズ、召喚魔法を数回するも最後にサイトを召還。しかし、その数回の中に、ビオランテの光の胞子を召喚していたものがあったことに誰も気づいていなかった・・・。
 ↓
光の胞子は、爆風にのってラグドリアン湖に漂着。水の精霊力の影響を受け、胞子が活性化し、再生をはじめる。
 ↓
胞子の活性化に感応し、封じられていた奴が覚醒する。その動きを察知したエルフは、ビダーシャルを通じガリアに支援を要請。ガリアは国内に第一種警戒態勢を発令。
 ↓この間にアルビオン艦隊に対する、虚無の力の発動
自分を6000年も封じていた憎き虚無の力に反応した奴が目を覚ます。第二種警戒態勢発令。
 ↓
奴が封印を破り、地上に出現。第三種警戒態勢発令。アーハンブラ城に司令部を置き、ガリア両用艦隊が迎撃するも敵せず。エルフの反射を応用した決戦兵器ファイヤーミラー熔ける。
 ↓
同じ頃、ビオランテ、ラグドリアン湖上に復活。ちょうど水の精霊に会いに来ていたルイズこれに遭遇。極僅かに残っていた英理加の思念からこれも自分が召喚したものと知る。
 ↓
ルイズ、ビオランテと契約。しかし、奴の接近により完全に獣化しており、命令など聞くはずもない。そうこうしているうちに、ガリア軍を一蹴した奴が、ラグドリアン湖に到達。ビオランテとの死闘が始まる。

こんなんどうでしょ。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:51:34 ID:gbrGQk7m
まずはsageる
あと、避難所にそういうスレがある
そして
こんなんどうでしょって言われても困る
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 00:52:35 ID:6bEbz5/6

すまぬ
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:00:11 ID:R429OLMB
すまぬといったらスマヌ師匠
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:06:29 ID:zpGonJzs
ダンバインってゼロ魔の元祖じゃね?
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:08:15 ID:a0FUoogl
コーヤコーヤ星ってハルケギニアの元祖じゃね
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:10:32 ID:kk0+Qz2k
>>290
彼岸島なら雅召喚とか考えてたな
最初はルイズに従順に従うフリをしながらハルケギニアの世の常識、その他の知識を蓄えて
体制が整ったら教師達を中心に吸血鬼化して手勢を増やしてトリステインを掌握しようとする話

もしくは
斧神を召喚して素顔を見てビックリしたルイズがヒィーって話
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:13:11 ID:OACoAgAX
異世界にバイクとともに召喚

地上人はオーラ力がパネェ

なり行きで聖戦士として活躍

さすが富野だぜフゥハハー
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:22:22 ID:3x/KkPE3
他の召喚を扱う漫画で
ルイズが逆召喚されてこき使われる話ってあるかい?
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:23:20 ID:OACoAgAX
それはスレ違いだ
別を当たってくれぃ
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:23:40 ID:/csM3ltM
もしマクロスフロンティアの早乙女有人(アルト)が召喚されたら。

アニメ版では作画上の技術的知識的限界で割愛した部分もコミなら、
多分アルトはナイフ一つでドットメイジくらいは殺せそうだな、
演技という世界に腰すえて向き合ってるとき限定だけど。
とか思ったがさっぱりマクロスじゃねえよなあ、と断念。

じゃあバルキリーコミでは?
と思ったが、スーパーパック装備してなくても艦隊一つくらいは瞬殺しそう。
いやそれ以前に。
フォールド通信で助けを呼んで救援が来そうだよな。
少なくとも同じ銀河内にある惑星なら楽勝なきがする。

じゃあ別の世界に流されたとしたら?
・・・ダメだ、ランカとシェリルがバジュラの女王を私物化してアルト捜索にこき使い、
時空を超えるというヴァジュラネットのフォールドの波使ってすぐ探し出しそう。
そして起こるのはアルトをめぐるルイズ・シェリル・ランカの三つ巴の戦い・・・
もれなく激昂したランシェリの影響でハルケギニアにヴァジュラの大軍が
攻撃をかけてきます(-人-) (ちーん)


だめだ、どうあっても話が続かねえW
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:24:53 ID:OxmSB49k
うざ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:26:21 ID:Reko745e
>>279
>シリーズ物は原典が一番シンプルで美しい

防衛隊のヘルメットとかな。
シリーズを重ねるごとにどんどんイタいデザインに。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:26:23 ID:c5EkkGWA
自己完結してる妄想を長々と書かれるのはなんだかなぁ
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:26:43 ID:t3SkwCe0
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:32:39 ID:daT5LM6e
>>279
概ね同意だが、ライダーはブラックが一番美しいと思うんだぜ
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:36:31 ID:3x/KkPE3
ゴジラは平成ゴジラが一番美しい
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:39:57 ID:KH45SwKQ
>>301
胸のでかさと胴体の細さ
もう奇形だよな
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:40:00 ID:bB/IVEor
メカキングギドラみたいな魔改造が好きなオレは異端ですか?
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:47:37 ID:zNF8M/+Z
>>301
普通に引いた。
ここまでいくとキモチワルイ。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:50:37 ID:2f5KnfL4
身体改造系のエロゲの序盤に出られるレベル
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:52:54 ID:gR3z1xov
>>301
そもそも身体の中心がずれてね?
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 01:59:33 ID:ZEpXJb52
あんだけのもんぶら下げてりゃ骨格に歪みの一つも出るだろうさ
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 02:12:04 ID:/pRRckmi
イングランドのロングボウ兵は幼い頃からの訓練によって右手が異常なほどに鍛えられ骨格さえ変化するほどだったという
また所謂首長族といわれる部族は実は首が長いのではなく首輪の重みで超撫で肩になっているのだという
つまりだな
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 02:14:03 ID:c5EkkGWA
>>310
胸の重みで(ryとは言っても体の中心線がずれてるのとは何か関連性無い気がするな……
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 02:17:15 ID:MsNzBEf9
デカけりゃ良いってモンじゃ無い事を肝に銘じておきなさい!

………以上、おっ○い占いの歌より
313ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:42:56 ID:wsN0yBnR
ラスボスの人乙、あいかわらず面白かったです。
何だって投下する前に面白いSSばっかり投下されているんだ?
とりあえず、昼に予告していた通り。2:45から後編シーン07bの扉を開く。
314ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:45:12 ID:wsN0yBnR
王都の門の前に一旦着陸したシルフィードは4人を降ろすと近郊の森へと飛び去って行った。
現在、門は開け放たれており街道を往来する馬や馬車がひっきりなしに出入りしている。一応関所を兼ねているのだろう、
中に入る際に手形を見せる人々と武装した衛兵達の姿が見えた。
周囲を観察するヒューにルイズが声を掛ける。

「ヒュー、私達はこっちよ。」

ルイズ達がいる場所は貴族専用なのか、先程まで見ていた人々と違い身なりが小奇麗に見える。
まぁ、ヒューから見ると大昔の舞台で役者が着ている舞台衣装にしか見えないのだが…。
ルイズ達は身の証になるものを見せて悠々と王都の中へ入っていった、ちなみにヒューはルイズの従者という扱いである。


ゴーストステップ・ゼロ シーン07b “錆びた相棒とガンダールヴ”

    シーンカード:バサラ(意思/まったく新しい情報や状況の判明。イマジネーション。)



「そういえばルイズ、なんでまた王都まで来ようなんて思ったわけ?」
「ヒューの着替えとか、寝具、それに武器が欲しいって言ってたから、その辺の調達が主な目的になるかしら。
 後、時間があったら王都を色々と案内しようと思ったのよ。」
「へぇ、で。ヒューとしてはこのトリステインを見た感想はどうなのかしら?」
「ん?ああ、活気があって良いんじゃないか?」
「あら、そうなの意外ね。」
「意外って何が?」
「だって、さっきまで聞いていたヒューの話だと、私達の国の街並みなんて時代遅れも甚だしいでしょう?」
「確かにね、あれはあれで便利だし、金さえあれば快適な街だからな。
 ただ、前提からして違うものを比べてどっちが優れている、なんて言う気は無いよ。大体歩いてきた歴史も技術体系すら
違うんだ、なら比較をする事自体間違いだろう?
 肉と魚と果物、どれが一番美味いかと議論するようなものさ。」
「ふぅん、中々興味深い意見ね。」
「ただ」
「ただ、何?」
「この間、ルイズお嬢さんにも言った事なんだが、さすがに6千年は寝過ぎじゃないかと思うよ。
 多分、魔法っていうある意味、万能の道具があればこその話だったんだろうけどね。」
「あら、じゃあヒューの所の歴史ってどれ程なのかしら?」
「そうだな、“災厄(ハザード)”でごたごたした件もあるし、いいとこ2千5百年いってないんじゃないか?
 後、技術が発達し始めたのはごく近年の出来事のはずだから、技術革新という点でみると千いや大体7,8百年ってとこ
ろか。
 まあ、それ以前にも文明はあったらしいけどな、そこら辺の詳しい記録は残ってないからこれは別と考えていいだろう。」
「なるほど、そういった話を聞くと確かに6千年は止まりすぎね…。」
「多分、魔法の限界に関係があると思う。」
「え?タバサもそう思ったの?」
「何よ、2人して分かっちゃって、私にも分かるように説明してくれない?」
「恒常性や持続性の問題。」
「よく考えてみなさいなキュルケ、私達が使う魔法は基本的に個人の精神力頼みでしょう?
 確かに王族同士で組み合わせるヘキサゴンスペルとかあるけど、それにしたところで威力の上昇こそあれ、持続性という
点で見れば普通の魔法と変わらない上に精神力頼みなのは間違いないわ。」
「そっか、そういえば貴女やヒューが持っている道具は精神力なんて使わないものね。
 マジックアイテムにしたところで動力を得る事は難しいし。」
「ええ、これもヒューに聞いた話なんだけど。ヒューが住んでた場所の近くにある“日本”っていう国では空の彼方に光を
集める道具を置いてその力で電力を賄っていたそうよ…」
「は、ははは。もう何て言ったらいいか分からないわね。」
「ええ、私だってさっきの『ディティクトマジック』でマジックアイテムじゃないって分かるまで半分位信じてなかったも
の、無理ないわ。」
315ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:47:24 ID:wsN0yBnR
そんな話をしながら一行は寝具や服を揃えていく。
寝具を購入し、さて服を購入しようと言う話になるとルイズとキュルケの間で意見の衝突が勃発した。
購入してもらう立場のヒューとしては下着とそこそこの古着でいいかと思っていたのだが、ルイズの「ヴァリエール家の郎
党としてみっともない格好をさせる訳にはいかない!」という怒号と共に服を仕立てようという話になったのだ。
しかし、ここでヒューを気に入ったキュルケがルイズにちょっかいをかけ始める。

「ちょっと!人の使い魔になんて物着せようとするのよ!」
「あらいいじゃない、私からの個人的なプレゼントなんだから。人である以上貴女の趣味を押し付けるっていうのはどうな
のかしら?」
「あー、お嬢さん達肝心の俺の意見は…」
「黙ってなさい!御主人様の見立てに文句は言わせないんだから!」
「あーら、最近の流行から取り残されたトリステイン貴族のファッションセンスなんて高が知れてよ?」
「何ですって!」
「…店員さんちょいといいかい。」
「はい、何か御用でしょうかお客様。」
「今着ているものと大体同じ様な物は作れるかい?」

ヒューの質問を聞いた店員は全身を眺めやった後、問題無いという返答を返す。

「助かったよ、じゃあトリステイン魔法学院のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール宛てに数着…
そうだな3着程、送ってくれ。」
「畏まりました、では寸法を頂戴いたしますのでこちらへどうぞ。」

店員に寸法を測ってもらったヒューが店内に戻ってくると、ルイズとキュルケは呆れた事に未だ口論を続けていた。
よくもまぁ、ネタが尽きないものだと呆れて見ていたが、流石に昼近くになると腹の具合が寂しくなる、見ると2人もネタ
切れなのか肩で息をしながら膠着状態に陥っていた。
しかし、ここである意味救いの神が現れる。神は睨み合っている2人の腹から出てきた。

くぎゅうううう、きゅるるるる

ステレオで起きた休戦の喇叭は店内に響き渡り、2人の少女の頬を赤く染めていく。

「ルイズお嬢さん、キュルケ。いい加減昼にしないか?」
「そ、そうね今日のところはこの辺で勘弁してあげる。」
「あら勘弁してあげるのは私の方よ。」
「いいから早くいく。」
「はい」

未だ口論を繰り広げようとする2人を、タバサの底冷えする様な声が遮り、めでたく昼食となった。

「ルイズお嬢さん、服の方はこっちで手配しておいたからな。昼からは武器屋に行こう。」
「ちょっとヒュー何勝手に!」
「お嬢さん達に任せてたら武器屋に行けなくなりそうだったからな、しょうがないだろう。
 それに俺はもう28だ、派手なのは勘弁してくれ。」
「・・・まあ、しょうがないわね。
 服は個人の好みもあるし、いいわよもう。」
316ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:49:30 ID:wsN0yBnR
ヴァリエールとツエルプストーという珍しい面子で囲んでいた食卓ではあったが何事もなく終了する。
そうして武器屋へと行く道中、キュルケとタバサから疑問が上がった。

「そういえばヒューって魔法は使えないって言ってたじゃない?」
「ああ。」
「じゃあギーシュの『ワルキューレ』を切断したのって、何かの武器っていう事よね?」
「そうなるわね。」
「あれだけの威力の武器持っているのなら、別にハルケギニアの武器なんていらないじゃない。
 何でまたわざわざ武器を買おうなんて思ったわけ?」
「必要だからに決まっているじゃない。」
「なによ、教えてくれたっていいじゃない。」
「できるだけ秘匿したい?」
「まぁ、そうだな。そこら辺の事情は今夜まとめて教えるよ。」
「期待する。」
「ええと、秘薬屋の近くだから…ああ、あそこね。」

ルイズが指差した場所には剣が交差した看板を掲げている店があった。扉はくたびれているが武器をあつかっている為か、
かなりしっかりした造りになっている。
3人の女生徒は始めて入る場所に緊張しつつ、ヒューを伴って店内へと入って行った。
中は様々な武器や道具が積み上げられており雑然とした雰囲気を醸し出している、カウンターの奥にはパイプを咥えた初老
の域に至ろうかという男性が場違いな客をねめつけた後、相好を崩し満面に愛想笑いを浮かべた。

「これはこれは貴族の奥様方、うちは真っ当な商売をしてまさぁ。
お上に目をつけられるようなことなんざ、欠片もありませんや」
「客よ。」
「へ…?」
「何、貴族が客じゃあ何か変なの?」
「い、いえいえ!ただ樵は斧を振る、陛下はお手を振りなさる、それでもって貴族の方々は杖を振ると、ワシ等平民の間じ
ゃあそれが相場って物でして。へい。」
「私じゃないわ、使うのはこっち。」

と店主の言葉にルイズはヒューを指し示す。
店主はその言葉を聞いて、改めてヒューをジロジロと観察する。全体的に細身なヒューを見て大振りな剣は無理かと少々
残念に思いはしたが客は客である、話を聞こうと改めて愛想笑いを浮かべる。

「なるほど、剣を振られるのはそちらの従者さまでいらっしゃる。
 失礼ながらそちらの方の体格ですとこちらのレイピア等はどうでしょうか、これであればそこそこの力でも振れますし。
 特にこのレイピアなら貴族様の従者に相応しい風格もあろうというものです。
 そういえば最近では貴族の方々の間で従者や下僕に武器を持たせる事が流行っている様ですねぇ。そういった方々はこの
様なレイピアや、そちらにあるハルバードなんかを好んでご購入されますよ。」
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 02:50:18 ID:cZ2x0+gj
借りてきたCDをエンコしつつ逆に超圧縮技術で40MBでも事足りるようになったんじゃないか?
なんて思いながら支援
318ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:51:38 ID:wsN0yBnR
店主が示したレイピアやハルバードを見ると、それは宝石や金銀で飾り立てた実に見事な品だった。ルイズは一目見て気に
入ったが使うのはあくまでもヒューだ、服と違って自分の意見を挟むより本人に任せる方がいいだろうと思ってヒューを見
ると、当人は店内を珍しそうに見回している。

「ヒュー、使うのは貴方なんだから自分で決めて頂戴、私としてはこれとか良いと思うんだけど。」

と、さっき見て気に入ったレイピアを指し示しながらヒューに話しかける。

「ん?ああ、どれどれ。…ルイズお嬢さんこれは駄目だろう。」
「何でよ?綺麗だし格好良いじゃない。」
「いや、俺が欲しいのは実用品だ、こんなピカピカしたもの日常的に持つなんて勘弁してくれ。」
「おっと、旦那そいつは聞き捨てなりませんな。これはかの有名なゲルマニアのシュペー卿が鍛えたものでして、鋼鉄です
ら切り裂けるって業物でさあ。」
「なるほど魔法がかかってるって事か、じゃあちょっと見せてもらえるかな?」
「へい、怪我をされないよう気を付けて下さいよ。」

レイピアを受け取ったヒューは刀身の腹を数箇所叩いた後、店主に向き直る。

「親父、残念だがこいつは何回か使っただけでポッキリ逝くぞ?」
「な、なんですってぇ?そんなはずは。」
「こいつの刀身を何箇所か叩いたら所々で妙な音が聞こえた、多分刀身の強度にばらつきがあるんだ。
 例え魔法で強化されていてもあまり使いたい代物じゃあないな。」
「ちょっと、ヒュー見せて貰っていいかしら?」
「キュルケ?どうした。」
「ウチとシュペー卿は取引があるのよ、そのシュペー卿の失敗作が出回ってるなんて言われたら黙ってられないわ。」
「なるほど、じゃあどうぞ。」

ヒューは軽い感じでキュルケにレイピアを渡す。受け取ったキュルケはためすがえつ確認をした後、一つ大きな溜息を吐く。

「で、どうだった?」
「そうね、シュペー卿のサインも間違いなく本物だわ。確か以前シュペー卿から戒めとして残しておいた失敗作が盗まれた
って話を聞いた事があるから多分これの事ね。
 御主人これの他にシュペー卿の作品はあって?」
「い、いえ。ウチにはそれ一本だけでさあ、流れの傭兵から手に入れたって仲買い人からの紹介でして。」
「そう、それは良かったわ。
 これは私が買い取ります、おいくら?」
「い、いえ!そんな代物とは知りもしなかったんで。引き取って戴けるんならタダで結構です!」
「駄目よ」
「へ?」
「これはシュペー卿の信用の問題です。もしこういった代物を卿が作って売り払っていると知られて、広まったりたらあの
方の信用は失墜してしまうわ。」
「ではこれほどで。」
「いいでしょう、ではくれぐれも。」
「分かっております、…やれやれ何てこった。」
【はっ!ざまぁねぇなぁ親父!そんな剣として使えるかどうかも疑わしいヤツを買った罰が当たったってぇわけだ!】
「何だと!おい!デル公お客様がいらっしゃるんだ、ちったあ黙ってろ!」
【客だと?貴族の娘っ子とヒョウロク玉だけじゃあねえか!こんなのは武器屋の客じゃねえよ!】
「うるせぇ!黙らねぇと貴族様に溶かしてもらうぞ!」
【面白れぇ!やれるものならやってみやがれ!こちとら長く生きててうんざりしてるんだ!】

いきなり響いてきた第6の声に、ヒューたちは周りを見回す。
すると樽の中で鍔元の金具をカタカタ動かしている奇妙な剣が見つかった。
319ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:53:52 ID:wsN0yBnR
「何これ?インテリジェンスソード?」
「へえ、どこの貴族様が作ったのかは知りませんが、何しろ口が悪いの何の、ほとほと困っている所でさあ。」
「確かに」
「こっちにもバディ搭載の武器があるのか、どれ。」

物珍しさも手伝って、樽の中からヒューがインテリジェンスソードを引き上げる。
出てきたのは刀身に錆が浮いている長さ150サント位の片刃の長剣だ、ヒューが見た感じトーキョーN◎VAで時折見か
ける斬魔刀に似ているが刀身の幅は此方の方が遥かに広い。
ヒューは先程のレイピアと同じ様に刀身を何度か叩き、次いで軽く振ってみる。
強度は問題ない。しかし一番驚いたのは重量だ、恐らく斬魔刀以上の重量があるだろうと思って振ってみるとその意外な軽
さに驚きを覚える、見たところ刀身は錆びているものの刃の部分にはシミ一つ無かった。
錆の件は何か作為的なものを感じるが、武器として使う分には問題は無いだろう。そう思っていると不意に手元から話しか
けられる。

【ん?おめぇもしかして“使い手”…か?妙だな、感じとしては“使い手”だが何か…。まぁ、いいや、おいお前】
「ルイズ、これを買おう」
【て、おい!人の話を聞きやがれ!…って買ってくれんの?】
「え?いやよそんな錆だらけの剣。どうせならもう少し立派な剣にしときなさい。」
「いや、これは中々お買い得だと思うがね。そうだ親父さん、こいつで苦労してるんだろう?」
「へ?ええ、武器を買いに来る客は馬鹿にするわ、喧嘩を売るわで。」
「この樽の中にある武器はいくら位になっている?」
「そうですな、大体一本100エキュー金貨ってところでしょうか。」
「じゃあ、こいつとナイフを3本。後は砥石とかの武器の手入れ道具一式、それとこいつの鞘を入れて100はどうだ?」
「え?そこまで入れてですかい?」
「商売を邪魔されて苦労してるんだろう?金をもらえて厄介払いまで出来るんだ。良い取引だと思うんだけどな。」
「ん、う〜ん。いいでしょう!さっきのシュペー卿の剣の事も旦那が来なければとんでもない事になってたんだ!
 お買い上げありがとうございやす!」
「えー?ヒュー、本当にそれにするわけぇ?」
【うっせぇぞ娘っ子!相棒がオレサマを選んだんだ、ごちゃご言ってんじゃねぇ!】
「奥様奥様、煩いようでしたらこの通り鞘に入れちまえば」
【あ!なにしやがる親父てm…】
「静かになりますんで。」

店主は意外な事件に巻き込まれはしたが、そこそこの値段で買い取ってもらった事と厄介払いが出来た事で、その日は美味
い酒にありつけたという。

当初の目的を済ませた一行はシルフィードに乗り、魔法学院へと帰還したのだった。
320ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:56:27 ID:wsN0yBnR
そして魔法学院の夜、ルイズの部屋に2人の来客があった。
キュルケとタバサである。

「こんばんわ」
「お邪魔するわよ。」
「いらっしゃい、クッションがあるからそこら辺に座って頂戴」
「ああ、そうそう。これ長くなりそうだからお茶請け持って来たわ、遠慮なくつまんでね。」

ルイズ・キュルケ・タバサ・ヒューがお茶請けを中心に車座になるように座る。

「じゃあ、約束だから話すけど昼間にも言った通り他言無用よ?いいわね。」
「わかってる。」
「安心なさいな、話して良い事と悪い事の区別はつけてるつもりよ。」
「じゃあタバサ、盗み聞きされないようにサイレンスを扉と窓にかけてもらえるかしら?」
「わかった。」

「さて、じゃあ何から聞きたい?タバサから順に一つづつ質問を聞いていこう。」
「ちょっとヒュー、主である私が最初じゃないの!?」
「ルイズお嬢さんには昨日、色々と話したからな。それに一応、今日はタバサとキュルケにした約束を優先するべきじゃ
ないか?」
「なら一つ目…」


ルイズ達の質問に答え終わったヒューは、今日購入したインテリジェンスソードを持って学院の裏庭へと来ていた。
周囲に誰もいないことを確認すると鞘から抜き放つ。

【っぷあ!何だい何だい、いきなり鞘に押し込みやがって!】
「よう」
【お、相棒じゃあねえか。ひでぇなあおい、折角かび臭いとこから出られたと思ったらこんな扱いするなんてよ。】
「ああ、悪かった、どうにも御主人サマは騒がしいのは苦手らしくてな。」
【はっ!一番騒がしいのは何処のどいつだってぇ話だなそいつは、おっとそういえば自己紹介がまだだったな。
 オレサマはデルフリンガー、気軽にデルフとでも呼んでくれや。】
「そうか、じゃあこれからはデルフって呼ばせてもらう。これからよろしくな、俺の…」
【おおっと!皆まで言うな。使い手の事は大体分かるのさ、お前さんはヒュー・スペンサーだろう?
 しかし、オレサマも色んなヤツに使われてきたが、何だね相棒ボロボロじゃねぇか!よくもまぁこんな状態で生きていら
れるもんだ!】
「掛かり付けの医者が凄腕だったからな。
 しかし、使い手というのが何か分からんが、お前には所持したヤツの情報を読み取れる能力があるのか?」
【おう、…のはずなんだけどなぁ。なんかはっきりしねぇのさ。】
「どういう事だ?」
【ああ、お前さんの事は分かるといえば分かるんだが、あくまで表面的なものなのでね。
 こいつはあれだな、ルーンが上手い事働いてないんだ。】
「ルーン?」
【お前さんの左手に刻まれているヤツの事さ。】
「色々と知ってるようじゃないか、デルフ。」
【とは言ってもな、結構長い事生きてたもんでほとんど忘れちまったよ。】
「忘れる?というとどこか故障してるっていうことか?」
【さあ、どうだろうな。オレサマにも分かんね。】
321ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 02:58:54 ID:wsN0yBnR
「ふぅん…、どうにも釈然としないな。」
【何がだい相棒。】
「それだ、その相棒っていう呼び方、それにお前さんを覆っている錆だな。」
【どっか変なのか?自分の持ち主を相棒って言うのならおかしくねぇだろう。】
「じゃあ、俺の前に使ってたヤツの事はどう思っていた?」
【そりゃあ“お前”とか“旦那”とか…あれ?そういや相棒ってのはお前さん位だな。
 そういや錆がどうとか言ってたけど、どっかおかしいか?いやまぁ武器に錆が浮いてるってぇのは褒められた事じゃない
けどよ。】
「不自然だ」
【どこが?】
「錆は刀身全体を覆っているのに、剣としての肝心な部分…刃の所にはシミ一つ浮いてないじゃないか。
 流石にこいつはおかしい、意図的なものを感じる。」
【そうかいタダの偶然だと…】
「それは無いな。」
【何でだよ。】
「金属が錆びたり腐食したりするのはごく普通の化学反応だ、なら特定部位のみ免れるというのはどうにも理屈が合わない
だろう?
 しかもデルフ、お前はメイジに作られたインテリジェンスソードだ。なら武器として劣化しないよう処置を受けているの
は当然だ。何しろ様々な物を切るために作られたんだからな、そこら辺は間違いないはずだ。」
【…】
「俺に誤魔化しが効くと思うなよデルフ、これでもN◎VAじゃあ名の売れたフェイトだったんだ。」
【…、おでれーた!参ったね。今回の相棒は中々どうしてやりずらいじゃないか!ええおい、ガンダールヴ!】
「ガンダールヴ?」
【おうとも、相棒の左手に刻まれているルーン。そいつは“ガンダールヴのルーン”だ、ありとあらゆる武器を使いこなせ
るようになるって代物さ。】
「武器の使用方法が理解できるようになるって事か?」
【おう、大体そんなところだな。後は武器を持ったら肉体的にも強化されるはずだ・・・はずなんだが、おっかしいなぁ。
 相棒、身体が軽くなったりとかは?】
「無いな。いや、痛みとかはかなり楽になっている。」
【痛みの方はあれだな、使い魔になったせいである程度、生命力が強化されたんだろう。しかし、身体能力の強化がされて
ないのは何でだ?】
「まあ、何とはなしに覚えがある。」
【へぇ、聞かせてくれるかい?】
「ああ、この間といっても3日程前の話だが。とある騒動に巻き込まれて戦ったんだが、その時<IANUS>が妙な反応
をした。」
【<IANUS>ってえのは・・・ああこれか?相棒の頭ン中やら神経にひっついてる。】
「ああ、そいつから“詳細不明の”<サイコアプリケーション>があるって報告を受けた、多分それがデルフのいう“ガン
ダールヴのルーン”とやらだろう。」
【なるほどな、その<IANUS>が相棒の精神に閂かけているせいで、上手い事ルーンが働かない訳だ。
 で、どうするんだい?】
322ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 03:01:03 ID:wsN0yBnR
「どうするって?」
【閂を外すかどうかって話だよ。分かってるんだろう?ルーンを使えばかなり強くなれるって。】
「ああ、けどな。そうそう使う機会があるとは思えないんだが。」
【いいや、そいつはどうかな?】
「どういう事だ、デルフ」
【“ガンダールヴ”ってぇのは普通の使い魔じゃあねえのさ、使い魔になって何日か過ごしたんだろう?何か感じなかった
か?相棒】
「そうだな・・・、人間の使い魔が俺だけってところか?」
【そうさ、普通のメイジが従えるのは普通は動物、良くて幻獣ってところだ。だけどな相棒の“ガンダールヴのルーン”は
人にしか発現しねぇ。】
「確かにな、動物が武器を使えた所で口に咥えるのが関の山だ。」
【そうだとも、それにガンダールヴの本当の凄さはそこじゃあねえのさ】
「どういう事だ、まだ何かあるのか?」
【ああ、ガンダールヴは“心の震え”を力に変える事ができるんだ】
「“心の震え”?感情の揺れ幅が大きいとそれだけ力が出せるという事だな?」
【そうだ。怒りや悲しみ、そういった感情を感じる事で出せる力が大幅に変わるのさ、動物とかでもこの手の感情はあるん
だろうけどな、そこら辺の複雑さはやっぱり人間が一番強いんだろうよ。】
「なるほど、しかしそいつはまた難しい話だな。」
【だよなぁ、相棒枯れっちまってるもんなぁ…。戦闘力じゃあピカイチなんだけど“心の震え”って点から見ると最弱だよ
な…】
「そうそう美味い話は無いって事さ。」
【とりあえず、相棒の話はこんな所だ。次はお嬢ちゃんの話だな】
「ルイズの?」
【ああ、相棒がガンダールヴだってぇのは分かったな?じゃあそんな特別な使い魔を使役するメイジは本当に普通のメイジ
なのか?って話だよ。
 そう、違う。特別な使い魔を使役するのは特別なメイジなのさ!お前さんみたいな人間を使い魔にできるのは“虚無”の
メイジだけなんだよ!これだけは断言してみせるぜ。この世界は今、混乱期に入ろうとしてるんだ!
 ブリミルの時代から長い事眠り続けてきた世界だ、揺り返しはきっととんでもなくデカイ物になるぞ、それこそ世界を巻
き込んだ大騒動だ。
 さて、違う世界から来たお前さんならもう分かるだろう?】
「ああ、戦争・・・だな?」
【そうだとも、きっと今頃いろんな所で色んな火種が燻ってるはずだ。
 まぁ、オレサマはただの剣だからな、相棒がどうするかは相棒が決めてくれ。閂を外すも外さないも相棒の心一つさ。】
323ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 03:03:14 ID:wsN0yBnR
「心一つか…、とりあえずは使わないのが無難か…。
 そういえば妙な事を言ってたな、“虚無”のメイジがどうとか」
【ああ、言った。
 お前さんの主は“虚無”の使い手さ】
「その“虚無”っていうのは普通の魔法とは違うのか?」
【ああ、かなり違う。
 普通の魔法…面倒だから系統って言うがな、こいつは基本的に4元素を模した現象を発現できる。まぁ組み合わせる事で
色々とバリエーションが出来るんだ。
 対して“虚無”っていうのは基本的に系統とは全く異なる魔法なのさ。長々とした呪文は必要になるものの、その威力は
系統と比べると雲泥の差があるし、何より詠唱を途中で止めてもある程度の効果がある。
 まぁ、使う精神力も半端じゃないんだけどな。】
「となると今のままじゃルイズは」
【普通に考えると系統は使えねぇよ。コモンにしたところで“虚無”に目覚めねぇ限り使えないだろうしな。】
「セキュリティがかかっている状態か…。何がしかの処置を施さない限り使えないという事だな?」
【ああ、お嬢ちゃんは多分王家の血を引いてるから“虚無”の使い手になっちまってるんだろう。
 となると、後必要なのは王家に伝わるルビーと始祖伝来の秘宝だな、それさえあればお嬢ちゃんは晴れて伝説の仲間入り
ってわけだ。
 どうする?お嬢ちゃんにこの事話すか?きっと喜ぶんじゃねぇのか?】

デルフの試す様な問いにヒューは暫く考えた後、首を振った。

【へぇ、そいつはまたどうしてだい。】
「俺はルイズ達にしてみれば外様だからな、ルイズ達は自分の方が魔法の事を理解していると考えてる。
 恐らく信じはしないだろう、その時というかもう少しうまいタイミングを考えるさ。」
【相棒がそう判断したのならオレサマはそれに従うさ。】
「すまんな。後、何か隠している事とかあったりするか?」
【そうだな、後はオレサマのステキ能力位か?】
「例えば?」
【うむ!錆を出したり消したり出来る。】
「他には?」
【そうだな、メイジの魔法を吸収したり。その魔力で相棒を動かしたり強化できるってところか?持ち主の情報読み取りは
言ったからな、そんなところだろう】
「なるほど、中々便利じゃないか。」
【だろう?伊達にガンダールヴ専用を謳っちゃあいねえさ。で、どうする錆は取っとくかい?】
「ああ、そいつは頼む。どうにもルイズの受けが悪いからな、捨てられて妙な武器をあてがわれるのも困る。」
【あいよっと、どうでいこれがデルフリンガー様の本当の姿だ。】

一瞬の光の後に現れたのは、眩く煌く剣だった。

「なるほどな、こいつはあの親父に悪い事しちまったかな?」
【はっはっは!いいって事よ!今頃は今日の売り上げ持って酒場でご機嫌に決まってるんだ。良い夢は見れるときに見せと
くもんさ。】
「そうだな。デルフ、もう少し光を抑えてくれるか。普通の業物に見える程度に落としてくれると助かるんだが。」
【あいよ…っと、こんなところか?】
「うん、そんな所だろう。すまんなデルフ」
【良いって事よ】

そう言うと、デルフはもう話すつもりもないのか黙り込んでしまう。
ヒューは夜空を煌々と照らす双月を見上げながら溜息を一つつくのだった。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 03:05:32 ID:cZ2x0+gj
お休み前に支援
325ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 03:06:04 ID:wsN0yBnR
シーン07b
歴史
…ニューロエイジでは過去に起きた災厄による混乱の為、それ以前の歴史がほぼ失われている。
 ヒューが言っていた2千5百年云々はハッタリ。ただ作者の私見としてはそれ位が妥当じゃないかなと思う。

災厄(ハザード)
…地球の地軸が180度傾いた世界規模の大災害。変動は1週間もの間続き、世界の地形は激変している。
 また気象も変化しているため、現在の地球は氷河期になる。そのため世界規模の食料危機が発生、同時期に勃発した
“小災厄(マイクロハザード)”と呼ばれる世界規模の疫病の蔓延により人口がさらに減った。
 ちなみに日本はこの時、全世界に合成食料を供給する代わりに各国から鎖国の了承をとりつける事に成功した。
 TRPG・トーキョーN◎VAは、この災厄から数十年後の世界が舞台になっている。

くれぐれも
…この時、キュルケが行ったのは(理解してやったのかはともかく)風評被害の予防。値札通りの代金+αを支払って
店主に口止めをした。
 また、この後キュルケは買い取ったレイピアを実家に送って損失分の補填と小遣いをゲットしている。
 実家は実家でシュペー卿に貸しができている、ゲルマニア人らしいエピソードとして入れてみた。

バディ搭載の武器
…トーキョーN◎VAのアイテムは基本的にトロンが内蔵されている。特に指摘がない限りアイテムは電脳的に繋がって
おり、ニューロ(ハッカー)の手の内にあると言ってもいい。但し、セキュリティを上げたり電脳的な接触を遮断する事
も可能。
 また、テルヴィングという電脳搭載の武器もある。
 
斬魔刀
…所謂、日本刀の事。TRPGにおいて何故か日本刀は強い部類にカテゴライズされる傾向がある。
 トーキョーN◎VAのアイテムには珍しく電脳化されていない。

デルフリンガー
…扱いとしては1人のキャスト。アイテムではない。

ボロボロ
…元G.C.I.の特殊部隊“ARKS”の強化兵士だったヒューは全身を強化・調整されていた。
 その後、G.C.I.がテラウェアに吸収合併された際、フリーになってしまった為、調整が出来なくなる。
 (調整にはかなりの額が必要という事になっており、当時のヒューではとうてい手に負える額ではなかった。)
 日々、身体の内側から壊死が進んでいる為、外見的には少し不健康な男に見えるが、実際の余命はそう長くない。
 (リプレイ“ビューティフルデイ”の終了時点で彼の余命は2週間を切っている。)
 ヒューの肉体的には正常な状態なので、水魔法による治癒では治せない。
 (また、ハルケギニアのメイジでは理解も難しいと思うし、見ても人間ではないと思われるかもしれない。)
 とりあえず、ルイズとの使い魔契約により壊死の進行と痛みは緩やかになっているという設定。

真実/トゥルース (神)
…フェイトの神業。真実を聞きだせる。
 デルフに使うのはとても危険だったがやった、後悔しているが手が止まらなかったのだからしょうがない。
326ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/18(日) 03:07:55 ID:wsN0yBnR
支援感謝、今回はこれにて扉を閉じる事にします。

とりあえず、やっちゃった感があるデルフへの真実(トゥルース)ですが。ヒューの事を考えると、するだろうなと思い決
行しました。
今の所、ヒューはルイズに“虚無”関連の事実は知らせる気は無いです。話を聞く限りどう聞いても戦争とかにしか、使い道
がないしね。
きな臭くなってきたら、それとなく振るつもりでいます。

さて次回はとうとうフーケ編です、皆さんの期待に答えられるか…、頑張ります。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 03:09:34 ID:cZ2x0+gj
GJ!
デルフが随分とお喋りだな、と思ったらw
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 03:31:35 ID:J5jETb+5
なるほどそれでかw
GJ
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 06:05:20 ID:JCuWUJ5d
ビオランテ召喚はけっこう深いとこまで考えたことがあるんだが…どうしても戦力バランスがなぁ。
運用面でバランス取ってはみたんだが、それでも一度出てくればやはり怪獣の力は圧倒的すぎる。
あれで話を続けられるウルトラマンAの人とか凄いわ、ホント。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 08:51:55 ID:b225IFXc
ゴーストステップの人、GJ!ですー。
真実(トゥルース)とは、やられたw。

TRPGに限らず日本刀が妙に強い設定になってるフィクションは多いよねー…
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:13:39 ID:f3b05fPE
多くの西洋剣が叩っ切る目的で作られているにのに対して
日本刀は純粋に斬る目的で作られたからって違いを出しているって何かで見た
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:17:53 ID:d7l6E6eM
オタクの間では通説になってるな、それ
トンデモ理論でも突っ込める奴が居ないと既成事実になっちゃう典型例だ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:21:04 ID:5V5INcm6
鎧相手だと叩き斬る方が有効なんだけどな
戦場ではほとんど飾りというか、現在の拳銃とおなじ最後の護身用なわけで
そら非武装の相手に致命傷を与えることだけを考えれば日本刀の方が楽かも知れんが
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:24:34 ID:zOSQZl17
>>331
ただのファンタジーだけどね。
西洋剣も日本刀も刃に指を押し当てれば普通に血が出る。
そもそも斬れない剣なんて鈍器位にしか使えないし、鈍器を使うならそれ専門のメイスを使った方がずっと効果的。
剣と言う物は刃の鋭さと重量両方あって初めて武器として使えるようになる。
鋭いだけの剣は剃刀と同じだし、重いだけの剣は鉄棒でしかない。
ちなみに長さが同じなら西洋剣も日本刀も重量に殆ど差は無い。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:33:23 ID:BShsK3xe
日本刀を戦場で実用するなら、突きしかない。
素肌剣術で一対一なら、斬るのもありだけど。
介者剣術を伝えている剣術流派なら、鎧の上からぶった切るなんて考えないと思う。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:36:17 ID:UAHDJuTn
>333
それも結構誤解な訳で
あれ元々馬上武器として発展した側面もあるし不安定な場所で効率よく殺傷する為の物でもあったりしてな
船上戦でも使い勝手が良くて倭寇がやたらと強かった原因の1つでもあるぐらい
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:36:35 ID:15ME1CNr
日本刀は江戸時代に入ってから実用品じゃなくて美術品に重心が移行してるから
ダイヤの剣とかと同レベルで強力じゃなきゃ嫌だって感覚の幻想が有る
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:40:22 ID:daT5LM6e
>ダイヤの剣
あぁ、地獄のメリーゴーランドのあれか
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:42:43 ID:BGnml+us
またしても雑学講座の時間w
鎧着てるならお互い重心下げてガニ股で上段固めつつ鎧の無い股下を切り上げられないようにしたらしいよ
介者剣術では取っ組み合いか突きか股下斬りが一般的な技らしいから、日本刀が活躍した時代は技術より体力勝負
ていうか、日本の場合軍と軍がぶつかるときはすでに勝敗は決してることが多かったらしいけど
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:42:58 ID:b225IFXc
まー、そもそも太刀と打刀は同じ日本刀でももはや別のものなわけで。
そも、戦国時代のメインウェポンは槍と弓だぜよ。この二つを扱えなければどんだけ剣術が優れていようと
一人前の武人として認められなかった、ってぇ話を聞いたことはある。
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:43:11 ID:f14Uin3t
西洋剣の刃渡りの長いものって、どんぐらいの長さなんだろか。
前に、どこだったかの博物館で、鬼真柄の太郎太刀を見たことがあるが、
ドン引きするぐらいでかかった。
あんなの戦場で振り回されたら、逃げるしかねえよ。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:46:02 ID:b225IFXc
>>341
日本刀と同じように、西洋でも『神に捧げるべく打たれた剣』というのはあるそうで、
そういった『奉納品』としての剣の中には刃渡り3m近いものもあるんだとか。

どっかの有名な美術館だか教会だかにあったはずだが。
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:47:34 ID:wzKqbzNc
日本刀の切れ味は刀身の反りにある
自然と引いて切る働きをもたらす

尚、鋼の語源は「刃に用いる金」→「ハガネ」だと学んだ
実際日本刀に使われる鉄で一番硬いのは刃の部分


あんまり話の流れと関係ないな、これ
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 09:49:25 ID:5V5INcm6
いわゆるグレートソードってのは実用品じゃなかったらしいね。
実用の両手用剣だとクレイモアとかか
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:00:34 ID:wzKqbzNc
あー微妙に間違ってるな
俺の書き込み

まぁ勉強したのが5年前でそれ以降なんもやってなかったからな・・・

とりあえずスマン
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:03:18 ID:MsNzBEf9
奉納刀といえば鹿島神宮の直刀『ふつのみたまのつるぎ』が思い浮かぶ
スレチスマソ
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:06:20 ID:ujgIKMNI
ときどき刀剣蘊蓄スレになるよなw
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:08:33 ID:IXk6Qdrh
前にディスカバリーチャンネルで日本刀と銃をブレないように固定して撃った
弾が真っ二つに切られてたよ。

斬鉄剣とはあのことだな。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:09:31 ID:q3jHr/gX
武器としては、威力もさることながらメンテや補給も忘れちゃいかん。
刀剣は金属部分が多いから、折れたり曲がったりしたときに財布への
ダメージがでかいぜ。
槍と比べると生産量が少なくなっちゃうし、補充にも時間がかかりそう。

「折れず曲がらず良く切れる」を体現していてメンテフリーのデルフは、
流石ブリミル謹製というところか。補充は絶望的だけど。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:24:25 ID:5V5INcm6
そこで液体金属製の参式斬艦刀ですよ
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:30:30 ID:daT5LM6e
そういえば以前、コミック乱で刀鍛冶の漫画やってたな
単行本の巻末にあった薀蓄がなかなか面白かったが、打ち切りになったのか二巻以降を見ないけど
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:38:11 ID:t5JTCyk3
>>351
きっちり終わらせましたよ
コミックスがどうかは知らんですが
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:40:49 ID:b225IFXc
メンテや補給で思い出したけど、スターウォーズのジェダイの騎士って手元に何もない、完璧に無手の状態から
工作機械や原材料やらをすべて現地調達してライトセイバーを作るのが最終試験なんだっけ?
それが出来るんだったらライトセイバーに関しては補給その他を考えなくていいよなぁ…。
某所のベイダー卿はその辺どうしてたっけ?
354ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/01/18(日) 10:45:28 ID:YLZxjVO2
久し振りで且つ短いですが、11:00ごろに投下します。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:46:30 ID:NpbdhT5b
支援するでござる。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:52:47 ID:daT5LM6e
>>352
調べてみたら先月末に二巻が出てたみたいだね
うん、良かったよ

>>354
「やっている事は同じ支援かもしれんが、ゼロ魔ファンの熊の爪に対する支援と違い・ ・・
わたしたち肉ファンも兼ねる者の熊の爪に対する支援は・・・ 鍛え方が違う! 精根が違う! 理想が違う! 決意が違う!」
357ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/01/18(日) 10:56:39 ID:YLZxjVO2
>>356
そこまでの支援をされていると逆に悪い気になるのですが本当に短いです。
では、そろそろ投下を開始します。
358ゲーッ!熊の爪の使い魔1/2:2009/01/18(日) 10:58:24 ID:YLZxjVO2
第十一話 三重殺

フーケの襲撃を受けた後の学園、その学長室の中ではもうフーケは去ったというのに喧々囂々の有様を示していた。
教師たちの責任のなすりつけ合い、
その場にいた当事者として呼ばれていたルイズは
同じ貴族として彼らの行いを苦い思いで見つめていた。
情けなくて口を挟む気にもなれなかったが、そのうちに話は思いもしない方向へ進んでいった。
なんと責任を学園に来ていたアンリエッタ王女に負わせようというのだ。
もちろんそんなことをはっきりと口にする者はいないが王女がいた時に起きた事件であるからとかで、
言外に彼女の立場が悪くなるようなことを示唆するような流れになってきたのだ。
たまらずルイズは声を上げようとしたが、
「いいかげんにしなさい!今回の件は我々学園にいたもの全ての責任、
このようなことを話すのではなくどう解決するかということが重要なのじゃ」
その前にオスマンが皆を一喝して鎮めた。
それで少しは頭が冷えたのか教師から声が上がる。
「しかしどうにかするといってもあの悪名高いフーケのことですし王室の力に頼るべきでは」
「ならん、この件はこの学園で起きたこと、なら我々の手で解決するのが筋というものじゃろう。
そもそも王室へ連絡を入れている間にフーケは姿をくらませてしまうわい」
「しかしすでに一晩経っていることですしやつの居場所が分からないのではどうしようも」
その時学長室にオスマンの秘書のロングビルがやってきた。
「フーケの居場所が分かりました」
といって。
なんでも昨晩から付けており、やつの隠れ家を見つけたらしい。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 10:58:34 ID:zr6AbTyk
>>334
ところがどっこい
西洋剣は実際には刃の部分を握って使ってた時代もある。
打撃武器としても使われていた。
切るために西洋剣を使っていた時代は短いんだそうな。
360ゲーッ!熊の爪の使い魔2/2:2009/01/18(日) 11:00:06 ID:YLZxjVO2
それを受けてオスマンはフーケの討伐隊を募るも、誰も名乗りを上げない。そんな中、
「私が志願します」
と、今度こそルイズが声を上げる。
さらにそれに張り合うようにキュルケ、そして付き合うようにタバサが志願する。
当然生徒が行くことに対して反対の声が上がるが、
「だって誰も行こうとしないじゃないですか!というかそもそもここにいない人もいますし。
ミス・シュヴルーズやミスタ・コルベールはどうしてるんです?ここで何もしないなんて貴族の名折れです!」
それに対してオスマンが答える。
「……あー、その、君の使い魔がこの前決闘をしたじゃろう」
「え、ええ。でも挑まれただけですしそもそも今は関係ないでしょう」
「いや、そこで君の使い魔がクマの中から登場した際にじゃな、
シュヴルーズ君は気絶して倒れ、コルベール君も引き付けを起こしての、
二人とも現在療養中じゃ。よっぽどショックじゃったんじゃな。」
「……じゃ、じゃあミスタ・ギトーは?いつも風こそが最強だって言ってたじゃないですか!」
「ギトー君もの、件の決闘でクマからキャストオフしたのを見て暇を取って旅に出てしもうた。
過酷な現実を見つめなおしたいそうじゃ。
これによってベルモンドの三重殺が成ったわけじゃ」
「どうしてそんなに弱い大人なのっ!」
思わず敬語も忘れて声をあげてしまう。
しかしさすがに咎めることもせず、オスマンは逆に志願したルイズたちを
功績や実力、それに使い魔の点から捜索隊として認める。
さらにはロングビルも、
先の決闘でまだ生徒とは言えメイジを破った使い魔を持つルイズは適任だ、ぜひ行くべきだ、
と強く推薦した。
結果ここに、案内役のロングビル、メイジのルイズとキュルケとタバサ、使い魔のウォーズマン、
そして実況役の「実況」の二つ名をもつ生徒による討伐隊が結成されたのだった。
361ゲーッ!熊の爪の使い魔:2009/01/18(日) 11:04:31 ID:YLZxjVO2
以上で投下を終了します。
ホント短くてすいません。
悪魔超人軍のような心構えで描くべきなんでしょうが年末年始は本当に忙しいので。
今後も細々とがんばります。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 11:06:16 ID:NpbdhT5b
三(ノ;_ _)ノ=3 ズコォ

本当に短かったw
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 11:08:11 ID:CjKzCBNZ
熊の爪の人乙。

>そして実況役の「実況」の二つ名をもつ生徒による

何でだよwwwww
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 11:08:30 ID:daT5LM6e
乙です
まあ、こんな時もあるさw

しかし、本当に大人たちが精神的に弱すぎるw
あとやっぱり「実況」も付いてくんだなw
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 11:16:36 ID:63/p0dmZ
戦争男の人乙です。
なんというダメ先生共ww
次回にwktk。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 11:47:08 ID:v9n3mUvv
ソニック・ザ・ヘッジホッグからソニックが召喚されたらどうだろう…
ジョゼフがDr.エッグマン召喚で一気に文化レベル変わるww
367ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:13:55 ID:eMEMHGur
投下予告させていただきます。
予約がなければ、12時20分を予定しています。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 12:17:50 ID:b225IFXc
陸遜ゼータプラス作りながら支援
三国伝は積みあがってる数が凄いことになってしまった…orz
369ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:20:11 ID:eMEMHGur
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリスティン−2

ルイズがコルベールに死刑宣告された時、三人の会話はいったん途切れかけていた。
「ところで君、さっきから、気になったのだが契約や使い魔とは一体何の事だい?」
先ほどの会話の中で疑問に思ったことをニューがルイズに問いかける。
「聞いてなかったの!?アンタは私の使い魔になるのよ!」
「なんでだい?」「私があなたを召喚したからよ!」
二人の会話は落とし所の見つからない堂々めぐりになりかけていた。
(――気絶している間に契約しとけばよかった。)
二人の判断が正しかったことを悔やむ、ルイズにコルベールが助け船を出す。
「ミス・ヴァリエールいきなり説明もなしに契約というのは・・
私はこのトリスティン魔法学園の教師をしているジャン・コルベールと申します。あなた方三人のお名前をよろしいですか?」
「私はアルガス騎士団法術隊隊長法術士ニューと申します。」
「自分はアルガス騎士団騎馬隊隊長騎士ゼータ。」
「俺の名はアルガス騎士団 戦士隊隊長ダブルゼータだ。」
三人がそれぞれ答える。
「コルベール殿、あなたは先ほど魔法学院と申されましたが、ここは騎士の養成所か何かですか?」
三人を代表しニューがコルベールに尋ねる。
「騎士の養成所ではないのですが・・ここは貴族の子供たちを集めてメイジとしての教育を行う学校で、
私たちはこの時期になると『サモン・サーヴァント』によって生物を召喚しそれを使い魔とするのです。
本来『サモン・サーヴァント』で呼ばれるのは動物等がポピュラーなのですが・・
たまたま、気絶していたあなたたちが召喚されてしまったという訳です。」
コルベールがそう告げる。
「コルベール殿、申し訳ないのですが我々三人はそれぞれアルガス騎士団の隊長です。
我々には部下がおり、我々の帰還を望む人々がいます。我々はアルガスに帰らなくてはなりません。
アルガス王国にはどちらに向かえばよいのでしょうか?」
ニューの言葉にコルベールは疑問符を浮かべている。
「その、一つよろしいですか?」「なにか?」
「先程から出てくるアルガスという国は何処にあるのでしょうか?」
「え?アルガス王国はスダ・ドアカワールドのノア地方にある国で、我々ガンダム族発祥の地と言われて小国ながら有名なのですが・・」
二人の会話には些かのずれが生じ始めていた。
「スダ・ドアカワールド?あなたたちの地方ではハルケギニアのことをそう呼ぶのですか?」
コルベールは先程から出てくる聞きなれない単語に不安を覚える。
「私もスダ・ドアカワールドをハルケギニアという呼び名は初めて聞いたのですが・・二人とも何か知っているか?」
ニューが後ろにいる二人に対して振り返る。
「あっ!あ!あぁ!」ダブルゼータが声にならない叫びをあげている。
「・・どういうことだ?・・」落ち着きを払いながらもゼータも完全に混乱している。
振り返ると二人は何かに驚いている。
(ん?何かおかしなことでもあったのか?今の会話に変なところは多少あるが、そこまで驚く様な事もないだろうし・・)
二人の様子と先ほどの会話を照らし合わせるがそれ程、誤答があるとは思っていない。
370ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:21:12 ID:eMEMHGur
「どうした?お前たち、何を驚いているのだ?」
「あぁあ、あれっ!あれっ!」
ダブルゼータが震えた指で日が暮れ始めた空を指差す。
ニューは指された指になぞり空を見る。そこで、ニューの思考は大打撃を受ける。
「おや、どうかしました?」「コルベール殿!!」「はっ!はい!」
いきなり声を荒げらたニューにつられて、コルベールの声のトーンもつられて高くなる。
「あっ!あれは何ですか!?」二人と同じくニューの指した指に視線を向ける。
「月ですが、何か?」「イエ!そーではなくて!!」
ゴルベールにはニューの驚きの理由が見つけられなかった。
「あぁ、まだこの時期だと夕方でも見えるもので「何で月が二つあるのですか!?」」
それが3人の驚きの理由の答えだった。
「はぁ?アンタ何言っているの、月は二つしかないでしょうが?」
コルベールに変わりルイズが至極当然のように告げる。
「月は一つに決まっているだろうが!」
正気に戻ったダブルゼータが声を荒げる。
「何言ってるのよ!月は一年中二つよ、それともあんたたちのところでは月が一つになる日があるの?」
「そんなわけあるかい!」
ダブルゼータが声を荒げる。
「ニュー・・・」
ゼータが何か憶測を持った顔で名前を呼ぶ。
「ゼータ・・多分同じだろう・・」
(――あの顔は私と考えは変わらないだろうな。)
ニューはコルベールに声をかける
「――コルベール殿、我々は少し混乱しており、また、ある憶測があるのですが。
それを確認するために、私たちの話を聞いていただけないでしょうか?」
(いいことではないだろうな・・)
その言葉を聞きコルベールはさらに顔を渋くした。
「わかりました、どうせなら、歩きながら話しましょう。
どの道、我々は学院に帰らねばなりませんし・・それに、もうすぐ夜ですので。」
コルベールの提案にニューは黙ってうなずいた。
「では、我々はさっき話した・・・」
ニューが話をはじめ皆が歩き出していた。トリスティン魔法学院の入り口に向かって。
371ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:21:49 ID:eMEMHGur
ニューが自分の憶測を話し終えた時、目的地のトリスティン魔法学園入口に到着していた。
「では、あなた方はそのスダ・ドアカワールドという世界の騎士でジーク・ジオンなるものを倒した後に、ここに召喚されたというわけですか?」
ニューの話を聞いたコルベールは肯定でも絶対的な否定でもない曖昧さを含んだ声であった。
「はい、いろいろと違いがありますが、やはり最大の違いはあの月です。
我々の世界にも月がありますが、月は巨大な物であり、いきなり二つになるわけではありません。」
ニューは自分の憶測の最大の要因を挙げてコルベールに説明を続ける。
ハルケギニアもスダ・ドアカワールドも天文学がそれほど発達しているわけではない。
しかし、ガンダム族はノア地方のアルガス王国発祥といわれるが、それは月の民がアルガスにきた等、という俗説から来る事もあるくらいガンダム族と月の関係は深い。
実際ニューの実家には、その昔ガンダム族が書いたとされる月や星についての本もいくつか見られる。
しかし、ほとんどが解読できないためそれが事実であるかは分かる者はない。
「それに、数の差こそあれモビルスーツ族が全くいないというのは、おかしいと感じています。
自分達も他の地方を見てきましたが、少なくとも人間だけの地方というものは見たことありません。」
ニューに変わりゼータが話を引き継ぐ。
三人は自分たちが住んでいるノア地方だけではなく、アムロ達のいるラクロア地方に遠征している。
そこでラクロアの城下町を思い出す限り自分達の住んでいる町とはそれ程のレベルの違いはなかった。そして、何よりモビルスーツ族は珍しくはなかった。
「それに、気になったのですが、先ほどトリスティン魔法学校が貴族の子供を集めメイジを養成する施設と聞きました。この2点が私に引っ掛かりました。
まず、学校なのですが、アルガスでは学校は幼少子供達に学問を教える施設であって彼女達くらいの年の生徒はいません。」
スダ・ドアカワールドにも学校はある。だが、それは初歩の文字や計算を子供たちに教えるものであり、ましてや魔法を教えるものではない。
ニューやゼータの実家は騎士の家である。二人の教育は家庭教師の役目であり、それぞれ違う専門の教師達が彼らに教えたのだ。
もちろんルイズたちにも幼少の頃から家庭教師がおり、彼女達の教育をしている。
だがアルガスにはルイズくらいの年齢に学問を教える高等学問所は存在せず、彼女くらいの年齢で学問をするにはトリスティンのアカデミーの様な専門の施設になる。
なお、騎士の二人はそういうのには無縁で、ルイズくらいの頃には騎士の従者として騎士の修業を積んでいた時である。
「また、我々の世界にも魔法があるのですが、使える物は限られており、このように巨大な学校という施設で教育することはできません。」
ニューは魔法が使える自分の観点からも意見を述べる。ニューもまた、師匠である僧侶ガンタンクUから個別に指導を受けた。
アルガス騎士団では法術隊は二つの隊と比べて格が低かった。
それは、能力の差ではなく数によるものであった。
騎馬隊や戦士隊は馬の扱いが有る者や力の強い者がなれるが、魔法が使えるものとなると、前者に比べ絶対数が違うのだ。
ゆえに法術隊は訓練を完全に終えていない修行僧のジムキャノンを法術隊に組み込んだのだ。
団長のアレックスは法術隊の重要性を理解しており、冷遇する事はなかったが、代々騎士の出身が多い騎馬隊からは、それが不満とする声があったのだ。
372ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:22:37 ID:eMEMHGur
「私も魔法が使えるものなのですがや「ええっ!アンタってメイジなの!?」」
ニューの話をかき消すようにルイズが大声を上げる。
「やってみせて!」
「何をだい?」
「魔法よ、アンタ魔法が使えるんでしょ!?」
ルイズがはじめてニューに対して好意的な表情を見せる。
「それはとても興味深い、魔法が使えるゴーレムなど私は見た事も聞いた事もありません。
ミスタ・ニュー、私からもお願いしますぜひ見せてください。」
「確かに面白そうね、私も見たいわゴーレムさん。」
「見てみたい・・」
4人がニューに詰め寄られ、ニューは慌ててバランスを崩しそうになる。
(私が魔法を使えるのはそんなに珍しいのだろうか?)
ニューは魔法を見せるのが、見世物芸を見せるような心境であった。
とりあえず、標的となりそうな物を探し近くの木にする事を決めた。
「では・・ムービーガン。」
そう言って、手より光弾を放つ、音の無い光弾は一瞬で木に着弾し、鈍い衝撃音を立て折れた木が倒れこむ。
ムービーガン それはニューの中では比較的弱いほうの部類にはいるが、魔法を苦手とすつ技のバーサム等は、ほぼ一撃で仕留める魔法であった。
「今のが私の魔法なのですが・・おや?どうかしましたか?」
振り返ると4人とも程度の差はあれ驚いている。
(――あまり大したことないのかなぁ?)
もっと強い魔法を使えばよかったのだろうか?そう思っていると――
「すごいじゃない!!ねぇ!あんた何のメイジなの?火!風!クラスは?ライン?トライアングル?何今の!?詠唱も無しにバッと飛んだと思ったらバキッ!て木が折れちゃうし!
もしかして先住魔法なの!?解った!!ブリミルが残した対エルフ用汎用人型最終決戦ゴーレムね!?」
ルイズが興奮と驚きの様子でニューに質問の雨を浴びせる。
ニューはルイズを抑えるべき教師のほうに向くと、その教師の方もそう変わらなかった。
「ミスタ・ニュー何ですか今のはっ!?私も始めてみましたよ!驚きましたよ、確かに我々とは全く違う!
これは大発見です!これは他の魔法も見せていただいてもよろしいでしょうか?」
止めるどころか興味と好奇心と他の何かを持った、コルベールの瞳はニューに恐怖すら与える。
「ねぇタバサ今の見た?ゴーレムって魔法が使えるのね・・」
「びっくり・・先住魔法かも・・」驚いているがタバサの表情は変わらない。
前の二人と比べ驚きの中に喜びがない分、二人はまだ落ち着いていた。
「・・・ゼータ・・俺達、蚊帳の外だな・・」
「あぁ・・そうだな・・」
会話の中に入らなかった二人はニューに詰め寄る二人を見ながら少しの寂しさと蚊帳の外にいる安堵を感じていた。


「3教えてあげる、私の二つ名は『微熱』よ 」
微熱のキュルケ
トライアングルのメイジ
MP 380

「4その程度で俺を止められるかぁっ!」
闘士ダブルゼータ
キュルケと契約する。
HP 1130
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 12:24:30 ID:b225IFXc
法術士ニューは元々騎士だったっけ支援。
途中でクラスチェンジしたんだよね。
374ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:26:57 ID:eMEMHGur
以上で投下終了させていただきます。
ガンダムと月は機甲神伝説から、
法術隊はカードダスの裏にあるニューは元は剣士であり、
魔法の素質を認められて
ガンダム族初めての法術隊隊長なので
ニューという名がついたエピソードを参考にしています。
ゼータとニューは騎士の家で従兄弟同士という設定があったのでそれを参考にしました。

ゲームではこれらは語られていません。 ありがとうございます。
375ゼロの騎士団:2009/01/18(日) 12:30:12 ID:eMEMHGur
今がんばってまとめウィキに作っています。プロローグも本来載せるべきだった。
少しだけ長いものを乗せるつもりです。
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 12:47:21 ID:FZRh0x0r
『熊の爪』の人に『ゼロの騎士団』のお二方、投下乙です
>>361
短いけど笑いと突っ込みどころが満載でしたw
>>374
SDあんまり知らないんで、それぞれのガンダムをパイロットの人の外観と声で脳内補完しています
(ニュー→アムロ、ゼータ→カミーユ、ダブルゼータ→ジュドーで)
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 13:04:38 ID:rxWs99oa
騎士団の方乙です!
ナイトガンダム世代なのでこれからも楽しみにしています。
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 13:07:01 ID:5lMXTGsC
乙カレー
どうしてもFC版のナイトガンダム物語が脳に浮かんで困るw

ところでゼンガー親分を呼んだらガンダ補正で雲燿の太刀を生身で使えそうだなぁ。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 13:34:59 ID:3x/KkPE3
ラクロアの勇者と伝説の巨人はつべにOVAあがってるな
http://jp.youtube.com/watch?v=X7rM1zTeJas&feature=related
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:05:09 ID:0ObtBeaX
つべのアドレスなぞ貼るなよ。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:09:52 ID:3x/KkPE3
スマン・・
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:22:10 ID:+lkgc9EN
>>375
プロローグ読ませてもらいました
何十枚も十円玉持ってカードダス機回しまくった事とFCナイトガンダム2は1と3に比べ音楽がかなり残念だったのを思い出したw
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:32:58 ID:BaiT9UUU
騎士団の人乙でした。


>>343
遅いレスだけど、それも嘘というか迷信らしい。
戦前の剣道家が「日本刀の反りの程度では直剣と変わらない」という論文を残している。
あと剣を振ったらほぼ必然的に持ち手は自身の身体にひきつける形になるから、日本刀は引き切るというのも嘘。
より正しくは棒状の刃物は全て引き切る、ということになる。そもそも引かなくても切れるんだけど。
日本刀がRPGで特別視されるのは多分ウイザードリィあたりからと思われ。
そして西洋剣が重みでたたっきるという話が出回り始めたのは、80年代の後半、RPGブームが起きてファンタジー小説が流行りだした頃だと思う。
80年代とかのファンタジーアニメの剣のサイズのごっついことごっついこと…現実には柄の握りの何倍も幅広の剣はあんまない。
というか、そんなの戦場にしろ決闘にしろ振り回せないよ…。

あと続けるのなら雑談とかでな。
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:37:30 ID:ikITDf6r
その話題のループ二週目か、三週目か?
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:40:05 ID:faIwFUFq
自分で話題に乗っておいて「あと続けるなら雑談とかでな」とか臆面もなく言う人って何なの?馬鹿なの?死ぬの?
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:40:53 ID:RhXyTL/0
ガッツの鉄塊剣が推定150kgとかそんなんだしな
持ち上げるのも無理というか持って歩ける物体じゃない
(あいつはいろいろと人外の域だが)
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:43:16 ID:qGiTr2cd
自分だけ言いたいこといっといて他人には雑談スレ池とか…
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:46:53 ID:HQriwUVw
よし、じゃあ俺が言おう。
そろそろ刀剣の話は雑談スレとかでな!!
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:50:37 ID:BaiT9UUU
>>385
正直スマンカッタ
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:59:31 ID:Ot4nZjcX
>>348
ただの鉛の玉を鋼の刃物にぶつけるんだから当然の結果。
普通のナイフでも同じ事が起こるよ。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 14:59:43 ID:jM8cizVy
>>389
どうでもいいがIDかっこいいな。
3つの「U」か…ジョジョスレならスコップで殴ってもらえたかも。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:04:55 ID:FZRh0x0r
>>360
今更気付いたんだが

>さらにはロングビルも、先の決闘でまだ生徒とは言えメイジを破った使い魔を持つルイズは適任だ、ぜひ行くべきだ、
>と強く推薦した。

フーケがルイズを強く推薦とは珍しいなと思って正体発覚の話からもう一度読み返したら
秘宝がアレである以上推薦するのは当然なんだなw
……だけどアレの使い方なんて見ればすぐ分かるだろという気もするんだがw
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:12:15 ID:shWpNb2R
ご立派な使い魔読んだんだが…名作だな
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:15:27 ID:ikITDf6r
名作だよ、気さくな王女も読め。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:26:41 ID:PX/5pcuX
まとめにある完結作は名作が多くてこま……らないが、読みふけっていると時間を奪われていく。まるでスタンド攻撃のよう。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:32:21 ID:P8zmoC9x
それっ、みんなで提督を誉めまくるんだ
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:35:39 ID:t5JTCyk3
>>396
どのような意図でそれを発言したのかわからないがその言葉には悪意が垣間見える
こんにちは、それでは今週の分を投下したいと思いますがよろしいでしょうか?
問題なければ10分後の15:45から開始いたします。
なお、容量が前回よりワードパッドで10KBほど増しになってしまったので、恐らく(9/13)あたりでさるさんを
喰らう可能性がありますので、申し訳ありませんがそのときはよろしくお願いします。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:37:17 ID:QM4bKG53
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:37:51 ID:t5JTCyk3
支援しない理由を見出せない
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:37:57 ID:XaP8aFUf
ウルトラ支援
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:45:09 ID:IHZ/MWeh
支援
403ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (1/13):2009/01/18(日) 15:48:46 ID:QaSE7NXa
 第31話
 宇宙正義の守護者 (前編)
 
 怪獣兵器 スコーピス
 サボテン超獣 サボテンダー
 ウルトラマンジャスティス 登場!!
 
 
 アルビオンの領土の中央部、サウスゴータと呼ばれる地方の一角の森林地帯の中に、ウェストウッドという
小さな村がひっそりとある。
 ただし、村、といっても実際は小さな小屋が十件ばかりあるだけで、街道から離れていて人が訪れることもほとんどない。
それに、この村には一般的な村人と呼べる人間はほとんどいなかった。なぜなら、この村の住人の9割以上は
皆年の頃10前後の少年少女ばかりだったからである。
「あと、それと、その果物をお願いします」
 そんな中で、唯一子供達と違う……といってもまだ幼さを残した顔つきの、大きな帽子をかぶった金髪の少女が、
行商人から食物や衣類、生活雑貨の類を買い求めていた。
 大きな荷馬車からは様々な雑貨から、異国から運ばれてきたと見えるような珍しい物まで色とりどりに
目を楽しませてくれる。ただし、行商人の人のよさそうな笑顔の下の肉体はがっしりと引き締められていて、
半端な盗賊などはものともしないような戦士のような雰囲気も見える。もっとも、そうでなければこの戦時下で
商品を持って歩くことなどはできないのかもしれないが。けれど少女はそんな時代の息苦しさを感じさせない
明るい笑顔を浮かべて行商人に言った。
「いつもありがとうございます。あなたが持ってきてくれるものは大変助かります」
「いえいえ、これも商売ですから……そうだ、お得意さんのお礼と言ってはなんですが、これを差し上げます」
 行商人は、ぽんと手を叩くと荷物の中から小さな鉢植えを取り出して少女に渡した。
「これは……なんですか?」
 少女は見たこともないその植物を見て首をかしげた。緑色で丸っこく、全体に鋭い針のようなとげがびっしりと
生えている。
「それは、はるか南方の植物で、サボテンというそうです。私も最近知り合った商人から譲ってもらったんですが、
私のような者が持っていても使用が無いですからね。見てください、そのてっぺんのところ、つぼみがもうすぐ
咲きそうですよ」
 見ると、球体の頭頂部に小さな赤いつぼみがかわいらしくついている。
 少女は満面の笑みを浮かべて行商人にお礼を言った。
「ありがとうございます。大事に育てます」
「お気にいってもらえてうれしいです。それでは、こちらにはまた2週間ほど後に寄らせていただきます」
 お代を受け取った行商人は、にこやかな笑顔で少女に頭を下げて、荷馬車で立ち去っていった。
 
 
 そして行商人を見送った少女は荷物を家の中に運び込もうと、かさばるそれを力いっぱい持ち上げて、
一生懸命運び始めた。すべてが彼女を除いて子供用とはいえ、十数人分ともなればそれなりの量になる。
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:49:52 ID:XaP8aFUf
支援
405ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (2/13):2009/01/18(日) 15:50:02 ID:QaSE7NXa
「ふぅ……最近は暑くなってきたわね。このサボテンは花壇のほうに置いておきましょう」
 十と数分のち、ようやく大体の荷物を室内に入れてほっと一息ついたとき、彼女の耳にその子供達の
一人の声が飛び込んできた。
「ティファニアお姉ちゃん!」
「あら、ジムじゃない、どうしたの?」
 少女は、自分の名前を呼んできた少年の目線に腰を落として優しく尋ねた。
「大変なんだ、エマがどこにもいないんだ!」
「まぁ! いつからいないの!?」
「もうしばらく……あいつ、そろそろ北の森に木の実が生り始める時期って言ってたから、たぶん」
「大変! 村の外には野盗がいっぱいいるから、出ていっちゃだめって言ってあったのに」
 ティファニアは慌てて探しに出ようとした。行商人から、最近戦争が起こってあぶれた傭兵が野盗化して
あちこちで被害が出ていると聞かされていたので、彼女なりに用心していたのだ。
 唯一の護身用の武器である魔法の杖を確認し、子供達に戻ってくるまで家から出ないようにと言い聞かせて、
彼女は木の実の生っている北の森のほうへと駆け出した。
 しかし、村から出る寸前で、彼女は探しに行こうとした本人の元気な声を前から聞いた。
「テファおねえちゃーん!」
「エマ!!」
 胸の中に思いっきり飛び込んできたエマを、ティファニアは抱きとめて頭をなでてやった。
「もう、心配したんだから……怪我はなかった?」
「うん、悪い人達に追っかけられてすごく怖かったんだけど、あのお姉ちゃんに助けてもらったの」
 エマが指差した先には、あの黒服の女性が無言で立っていた。
「あなたが、エマを助けてくれたんですか?」
「野盗に追われていたところを偶然通りがかってな」
 彼女は無愛想に答えたが、エマはうれしそうに彼女の服のすそを掴んで助けられたことをティファニアに話した。
「このお姉ちゃんすごいんだよ。あっというまに悪い人たちをみんなやっつけちゃったんだから! ねえねえ、
お姉ちゃんも魔法使いなの?」
「いや、だが似たようなものかもな……お前がこの子の保護者か、これからはもう少しきつく言い聞かせておくことだな」
「はっ、はい!」
 まるで母親に叱られたように、ティファニアは背筋を正して答えた。
 彼女は、それだけ言うと踵を返して立ち去ろうとしたが、ティファニアはその手をとると、慌てて引きとめようとした。
「待ってください! エマの危ないところを助けてもらったのに、そのままなんてできません。なにかお礼させてください」
「偶然通りすがって、そのついでに送ってきただけだ。旅の途中なのでな、気にすることはない」
「じゃあ、せめて一晩泊まっていってください。もうすぐ暗くなりますし、夜の一人歩きは危険です」
 彼女は眉ひとつ動かさずに少しの間考え込んでいた。はっきり言って野盗などいくら来ようとものの数ではないが、
この娘はこちらがうんと言うまで離してくれそうにない。かといって無理矢理引き剥がしていくのもどうかと思っていたら、
エマも服のすそをつかんで絶対に離さないよと意思表示をし始めた。
「ねえお姉ちゃん、一晩でいいから寄っていってよ。テファお姉ちゃんのお料理はすごくおいしいんだから、ねえ」
 その、子供ならではの純真な瞳に、彼女もついに根負けしたかのように、ふぅと息をついた。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:51:51 ID:CjKzCBNZ
コスモスは作品テーマは正直好きじゃないのだが、使われている歌は大好きというこの矛盾支援
407ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (3/13):2009/01/18(日) 15:51:57 ID:QaSE7NXa
「……わかった、一晩だけやっかいになることにしよう」
「よかった! 子供たちも喜びますわ。わたしはティファニア、みんなはテファって呼びます。あなたのお名前は?」
「ジュリ、そう呼んでもらえればいい」
 こうして、不思議な旅人を加えてウェストウッドの日は落ちていった。
 
 
 日が落ちると、その日森の空は満点の星空に変わった。
 地球のようなネオンの輝きやスモッグによる邪魔もなく、二つの月を囲むように幾億の星星と、それが織り成す
大銀河が天空を銀色に明るく染めている。
 ティファニアの家から料理のできるよい香りの煙が漂いはじめるころには、彼女の家の居間は待ちに待った
夕食と、思いもかけない客人の来訪にはしゃぎ立つ子供達の騒ぎ声で、そこだけ別世界のようににぎやかになっていた。
 子供達は、最初無表情で椅子に腰掛けている黒服の女性に警戒心を見せたが、ティファニアがエマが森で
助けられたことを話して、そのエマが母親にするようにジュリのひざの上に飛び込んでいくと、一斉にジュリを
取り囲んで、どこから来たのとか、桃りんご好きとか色々勝手なことを聞き始めて、ティファニアが座りなさいと
声をかけるまでジュリは落ち着くどころではなかった。
 ただ、食事時になっても何故かティファニアは帽子を目深にかぶったままで、室内では邪魔であろうのに
外そうとはしていなかった。もっとも、帽子をかぶったままなのはジュリも同じで、ティファニアはそのことを
指摘されるかもと思っていたが、ジュリは気にした様子をまったく見せないので、少し安心できていた。
「それでジュリさんは、どうして旅をしてらっしゃるんですか?」
 夕食のシチューを行儀よくスプーンで口に運びながら、ティファニアはなんとなく聞いてみた。
「……ずっと追っているやつが、このあたりに逃げ込んでな。今度こそ始末しようと探しているのだが、
気配を隠しているらしく、なかなか見つからん」
「追ってきたって……ジュリさんって、お役人なんですか?」
「いいや、宇宙正義にもとずき、宇宙の秩序を乱すものを排除するのが私の使命だ」
「はあ……」
 ティファニアはよくわからないと、大きな瞳をぱちくりしながら聞いていた。
「それで、ジュリさんが追ってきた相手って?」
「スコーピス、数多の星を滅ぼした宇宙怪獣サンドロスの使い魔の、その最後の一体だ」
「星って、お空のあの星のことですか?」
「そうだ、お前たちには理解しづらいかもしれんが、あの星星にはここと同じように様々な文明が存在している。
ただ、とてつもなく遠いからここからでは小さな点にしか見えんし、この星の人間の力ではそれを知ることも
できないがな」
「はあ……」
 話はティファニアの理解できるレベルをはるかに超えていた。子供達にいたっては、まるで外国語を聞いて
いるようにぼんやりして、シチューをかきこむことのほうに集中していた。
 けれど、今の話にたったひとつだけティファニアにも理解できる部分があった。
408ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (4/13):2009/01/18(日) 15:52:53 ID:QaSE7NXa
「あのお、使い魔って、魔法使いの人が使役してるっていう、動物なんかのことですよね。つまり……その
サンドロスっていう人の使い魔のスコーピスという生き物が逃げ出して、ジュリさんはそれを追いかけている
ということですか?」
「ふむ、まあそういうことにしておくか……ここまで二体逃げてきた中で一体は撃ち落し、その後気配が
消えた、恐らくこの星の何者かに倒されたのだろうが、残る一体は私が必ず始末する」
 それならばティファニアにも理解できた。要するに、悪い人の悪い使い魔が逃げ出して、ジュリはそれを
追っているということだ。
 だが、スプーンを握ったままティファニアがうなづいていると、今度はジュリのほうが話を振ってきた。
「このあたりで、何か最近変わった話を聞いたり見たりしたことはないか? 例えば空から何かが降ってきたり、
森が突然枯れ始めたとか」
「……はっ、いっ、いいえ、そういったことは特に」
 慌てて手を振って答えると、ジュリはほんの少しだけ眉をひそめた。
「そうか、やはり気配を隠しているな、面倒なことだ」
「すいません、お役に立てなくて……わたし、もうずっとこの村から出たことがなくて」
 すまなそうにしょんぼりとティファニアはうなだれた。
「気にするな、だがいずれ奴はしびれを切らせて動き出す。凶暴で残虐な奴だ、子供達を大切に思うなら、
しばらくは遠出をせずに村でじっとしていろ」
「はい、わかりました!」
 子供達の安全がかかっているのならティファニアにとっても人事ではない。背筋を正して、まるで敬礼の
ようにぴしっと返事をした。
 といっても、元気いっぱいの子供達にとってはそんな重大な話もどこ吹く風、あっという間に皿の上を
平らげてふたりに擦り寄ってくる。
「ねえお姉ちゃん、早く食べないと冷めちゃうよ」
「ジュリお姉ちゃん、うちに着てよ、いっしょに遊ぼう」
「えーっ、ジムずるい、ジュリお姉ちゃんはあたしたちと遊ぶの」
 すっかり子供達に懐かれてしまったジュリはどうしたものかと思案にくれた。
 深い森の奥で毎日を過ごしてきた子供達は刺激に飢えており、その発散するパワーはものすごいものであった。
 結局、ティファニアが間にとってとりなしてくれたものの、子供達が疲れて寝付くころにはすっかり
夜も更けてしまっていた。
 
 
 そして夜も更けて、虫の鳴き声だけがわずかにするだけの時刻。
 子供達も自分達の家に帰って休み、ようやく解放されたジュリはティファニアの家に泊まることになって、
客人用のベッドメイクをしているティファニアの後ろで、壁に寄りかかったままじっとしていた。
409ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (5/13):2009/01/18(日) 15:53:33 ID:QaSE7NXa
「あの、狭いところで申し訳ありませんが、よろしければどうぞ……」
 控えめに言ったティファニアだったが、ジュリは壁に寄りかかって目をつぶったままだった。
「あの、お気にめしませんでしたか?」
「……睡眠という行為は特に必要としない。奴がいつ現れるかわからん、私はここで見張っていよう」
「はあ……」
 ティファニアは本日何度目になるかの「はあ……」を口にした。
 とにかく、彼女にとってこのジュリという女性は理解の範疇を大きく超えていた。これまでにも旅人を泊めた
ことは幾度かあったが、彼女はよほど遠方から来たようで、こちらの常識が通じない。なにせ仕草にいちいち
隙がないし、話すことは難しすぎてよくわからない。ただ、エマを助けてくれて、あれだけ懐くのだから
悪い人ではないのだろうと、それだけは確信していた。
 だが、ティファニアもまたジュリにまだ隠していることがあった。しかし、それを自分から伝えるには彼女に
とって大変な勇気を必要とすることだった。それに、ティファニアにはもう一つ、どうしてもジュリに聞いてみたい
ことがあった。
「あっ、あのっ!」
「ん?」
 何かを決意したように、目を見開いて叫ぶティファニアをジュリはいぶかしげに見つめた。
 
「あ、あの……た、大変失礼な質問だと思うんですけど……ジュリさんって、その……人間なんですか?」
 
 普通の人間なら、こんな質問をされたら烈火のごとく怒るだろう。人付き合いの少ない彼女でもそれぐらいは
分かった……それでも聞いてみようと思ったのは、ジュリから漂ってくる雰囲気が、ティファニアがこれまで
出会ったどんな人間とも違う、むしろ人間と一線をひいているようなところがあったからだが、ジュリは平然とした様子で。
「人間ではない。姿を借りてはいるがな」
「……!! じゃあ……」
「心配するな、本質的にはお前達とそこまで違いはしない。それに、生物学的に言うのならば、お前も人間では
ないのだろう?」
 心臓に矢を突き立てられるような感覚をティファニアは覚えた。
「気づいて、らしたんですか?」
 恐る恐る、それまでずっと目深にかぶり続けていた帽子を脱いだとき、ティファニアの顔の両側には、人間の
ものよりずっと長くとがった耳があった。
410ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (6/13):2009/01/18(日) 15:54:47 ID:QaSE7NXa
 それは、ハルケギニアに生息する多くの亜人の中でも、もっとも強く、もっとも人間に近く、そしてもっとも人間とは
相容れないと言われている種族、エルフの持つ特徴だった。
「見れば、大抵の種族の見分けはつく……なぜ人間の集団の中に一人だけでいるのかは知らんが、その様子だと
人間との間で何かあったようだな」
「私は、人間の父とエルフの母の間に生まれた混じり物……ハーフエルフなんです。父と母は昔……」
「思い出したくない思い出なら、無理に話さなくてもいい」
 その話をしようとして、ティファニアが悲しげな顔になりかけたとき、ジュリは話に割り込んで止めた。
 エルフは、大昔から人間と対立してきた種族として知られている。人間とは意思の疎通も、望めば愛し合い、
子を生すこともできるほど人間とは近い関係でありながら、ある理由のために何千年も両者は血を流し、
憎しみあい続けてきた。
「はい、でも……ジュリさんは、エルフであるわたしが怖くはないんですか?」
「お前の種族を恐れる理由を、私は持っていない。ところで、ティファニア」
「あっ、テファでいいです。なんでしょうか?」
「お前は、この村の子供達にとってなんなのだ?」
「えっ?」
 唐突なジュリの問いかけに、ティファニアはすぐに返事を返せなかった。
「見たところ、この村にはお前を除いて大人は誰一人いないようだ。そのお前もまだ年若い、なぜだ?」
「……この村は、孤児院なんです。あちこちで戦争や野盗のために親を失った子供達を、わたしが引き取って
育ててるんです」
「そうか、道理でな。しかし生活費用などはどうしているんだ?」
「私の親戚の方が援助してくださって、お金を送ってくれてるんです。あとは自分達で畑を耕したりして、なんとか
やりくりしています」
「なら、決して楽ではあるまい。私のような部外者を泊めてよかったのか?」
「いいんです。久しぶりのお客さんで、子供達も喜んでますから……ところで、ジュリさんはこれまでどんな旅を
されてきたんですか?」
 ティファニアの問い返しに、ジュリはすっと目を閉じて、昔のことを思い出すように瞑目した。
 
 これまでの自分の旅路は、一言で語りつくすにはあまりに長すぎる。それに、語っても理解してもらえるとは思えない。
しかし、特筆して深く記憶に残っていることならばある。
 
「少し前のことになる。ここからはるかに離れたところに、この星とよく似た、人間達の住む場所がある」
 ジュリは、ゆっくりと自分がこれまで生きてきた中でも、閃光のような煌めきを持つ一つの思い出について語り始めた。
411ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (7/13):2009/01/18(日) 15:55:29 ID:QaSE7NXa
「その人間達も、お前達のように泣き、笑い、怒り、思いやる心を持っていた。しかし、その人間達は将来宇宙の秩序を乱す
危険な存在になる可能性があった。ちょうど、あの野盗どものようにな」
 ティファニアは無言でうなづいた。
「だから私は、宇宙の絶対正義をつかさどる存在、デラシオンの決定に従い、その人間達をすべてリセットしようとした」
「リセットって……」
「文字通り、完全な消去だ」
 冷や汗と、心臓の鼓動が高鳴るのをティファニアは感じていた。
 ひとつの星、彼女の感覚からいえば一つの国というあたりになるが、その全てを消去……それはすなわち
とてつもない数の人間を殺すということに他ならない。けれど、ジュリはそんな恐ろしげな雰囲気は微塵も感じさせずに
穏やかな口調で話を続けた。
「しかし、その星の人間達はあらがった、絶対的な力の差があるにもかかわらずにな……」
 
"無駄だ、奇跡などない"
"だとしても、あきらめはしない!"
 
「……それで、どうなったと思う?」
「えっと……わかりません」
「ふ……彼らは、私の予想をことごとく上回った。奇跡など存在しないと考えていた私の目の前で、次々と
驚くべきことが起きていった」
 
"怪獣たちが、地球の危機に……"
"なぜ!? 怪獣が人間と"
 
「それまで、私は人間とはどうしようもなく愚かでちっぽけな存在だと思っていたが」
 
"これが人間の本性だ……守る価値などない"
 
「しかし、それは人間の持つ一面でしかなかったと気づいた」
 
"自分より、子犬の命を……"
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:55:32 ID:XaP8aFUf
特別総集支援
413ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (8/13):2009/01/18(日) 15:56:48 ID:QaSE7NXa
"これが、人間の未来を信じた理由なのか!"
 
「それで、ジュリさんは……」
「いつの間にか私も彼らを助ける側に回っていた……絶対正義に従うと決意していた私の心を、彼らは変えてしまった……」
 
"信じれば、夢は叶う……か"
 
「ふ、希望という曖昧なものを、信じていなかったはずの私がな……」
 軽く含み笑いをして、懐かしそうにジュリは言うと、ティファニアはぱあっと笑った。
「よかった。やっぱりジュリさんって、すっごく優しい人だったんですね」
「……」
 ジュリは答えずに、じっとティファニアの顔を見て思った。
(お前も、そういえば似ているな……人間の未来を信じ続け、私の心をも変えてしまった、彼のように……)
 
"なぜ……私を助ける?"
"僕らは、ウルトラマンだから"
 
 今はどこの空を飛んでいるのか、ジュリは誰よりも優しかった一人の勇者のことを思い浮かべた。
「さあ、もう夜も遅いぞ。寝ろ」
「あ、はい!」
 慌ててティファニアはベッドにもぐりこんだ。
 部屋の明かりが消され、薄目を開けたティファニアの目に、壁に寄りかかったままのジュリの姿が映った。
そういえば、さっきの話の結末を聞いていなかったなと思ったが、きっと大丈夫だったんだろうと、静かに
眠りに落ちていった。
 
 
 さらに時間が過ぎて、月が天頂に届く深夜。
 
 
 森の奥から足音を殺して、ひっそりと村に近づく怪しい人影があった。
414ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (9/13):2009/01/18(日) 15:58:33 ID:QaSE7NXa
「へっへっへっ……よく寝てるようだな」
 それは昼間ジュリに叩きのめされた野盗の一人だった。
 こいつらはあれだけやられたのにも関わらずに、まだ性懲りもなく村を襲おうと、斥候としてこの男を放ってきたのだ。
「……寝込みを襲えば、いくら強くても関係ねえ。あのアマ、今度こそ思い知らせてやる」
 実際は、いつ襲おうが野盗ごときがジュリ相手に万に一つも勝ち目はないのだが、愚か者たちは浅知恵を発揮して、
無益かつ非生産的な努力に血道を上げていた。
 彼は村人に感づかれないように忍び足で村の裏手からこっそりと近づき、そこにある畑の中を横切っていく。
「へっ、まったく無用心じゃねえか」
 子供達が精魂込めた野菜を汚い足で踏みにじりながら、野盗の男は畑を横断して、一軒の家の軒下にある
花壇のところにまで忍び寄った。
 男は家の中を窺おうと、そこにある小さな花々も踏みにじって進もうとしたが、コツンと足元に硬い感触を感じて
立ち止まって下を見下ろした。
「ん? なんだこりゃ」
 そこには、彼の見たことも無い奇妙な形をした植物が花を咲かせていた。
「けっ、なんでえこんなもの」
 花を愛でる心などさっぱり持ち合わせていない野盗は、その鉢植えを蹴り飛ばそうとした。
 だが、蹴りが当たる瞬間、その植物は鉢植えから飛び出すと、そのまま宙を飛んで、真赤な花でまるでヒルのように
野盗の喉元に喰らいついた!
「なっ、なんだこりゃ!? あっ、ぎっ、ぎゃぁぁーっ!!」
 
 夜の村に突如響いた断末魔の叫びは、当然眠っていた村人達を呼び起こした。
「どうしたのみんな!? なにがあったの」
 叫び声のした家の周りには、すでに寝巻き姿の子供達が輪をなしていた。
 彼らの前には荒らされた畑と花壇、そして足跡があった。
「盗賊……」
 こんなひどいことをするのは他に考えられない。
 だが……
「服だけ?」
 そう、花壇には野盗のものとおぼしき小汚い服が落ちているが、野盗本人の姿はどこにも見えなかった。
 子供達は服を脱いで逃げちゃったのかな、と推理しているが、上着どころか下着までも丸ごと残されている
のはいくらなんでも変だ。それに。
「見ろ、足跡は来たときのものだけだ。立ち去った形跡はない」
 ジュリが地面を指して言ったとおり、野盗の足跡は花壇で途切れていて、まるでそこで消えてしまったかのようだ。
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:58:36 ID:CjKzCBNZ
支援
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 15:59:25 ID:hcaO2x1Z
そろそろさるか?
417ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (10/13):2009/01/18(日) 16:00:15 ID:QaSE7NXa
 第一、あの叫び声はどうみても断末魔だ。ここで何者かに襲われたとしか考えられない。
 と、そのときティファニアは昼間この花壇に置いておいたサボテンの鉢植えがからっぽになっているのを見つけた。
「あら、あのサボテンどこに行っちゃったのかしら?」
 荒らされた花壇をランプで照らして探してみたが、あの特徴的な丸い姿はどこにも見当たらない。
 けれど、野盗が近くに来ているのは間違いない以上、このままにはしておけない。
「テファ、それは後にしろ、あの馬鹿ども、まだここを狙っているようだぞ」
「あ、はい。みんな、今日は危ないみたいだから、朝までわたしといっしょにいましょう」
 野盗達がどのくらいの規模か分からない以上、用心に越したことはない。子供達は今夜はみんな揃って眠れる
と喜んでいるが、事態の深刻さを分かっていないだけにティファニアは一人で大変そうだ。
 だが、子供達を連れて家に戻ろうとしたとき、突如地面がぐらりと揺れ、微小な振動が森の木々を揺り動かし始めた。
「えっえっ、なに、なんで揺れてるの?」
「きゃはは、おもしろーい」
「おねえちゃん、こわいよ」
 このアルビオンは浮遊大陸であるから地震というものはない。ティファニアと子供達は初めて体験する大地の
揺れに驚き慌てた。
 しかし、ジュリは振動とともに伝わってくる邪悪な気配をしっかりと感じ取っていた。
「動き出したか……スコーピス」
 
 
 その少し前、森の奥に潜んでいた野盗達の本隊も、思わぬ揺れに翻弄されていた。
「うっ、うわっこりゃ一体なんだ!?」
 野盗達のしゃがれ声の悲鳴が森に響き渡る。その数はおよそ20人、昼間ジュリにのされた残り4人の姿も
その中にある。どいつも無精ひげを蓄えた、元傭兵とわかるくたびれた鎧を着ていて、戦争に出るか盗みを働くかの
二つのみで生きてきた男達は直下からの突き上げに、地面にはいつくばってもだえていた。
 そして、地面が大きく割れ、幾人かの者達が飲み込まれたと思ったとき、そこから長大な尾を持った巨大な
甲虫、怪獣兵器スコーピスがその姿を現した。
「なんだ……こりゃ」
 それが野盗達がスコーピスの足に踏みにじられる前に言った最後の言葉だった。
418ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (11/13):2009/01/18(日) 16:00:54 ID:QaSE7NXa
 地上に姿を現したスコーピスは、鳴き声を上げると、さっそくフラジレッドボムとポイゾニクトを使って破壊活動を
開始した。
 森の木々が焼き払われ、腐らせられて消えていく。
 そして目の前に、明らかに人造物とわかる建物が密集しているのを見つけて、その破壊衝動に従って
ウェストウッド村へと進撃を始めた。
 
 もちろん、その巨大な姿はティファニアや子供達、ジュリにもはっきりと見えていた。
「な、なな、なんですかあれは!?」
「……あれが、スコーピスだ」
 ジュリはそう言うと、ゆっくりとスコーピスへ向かって歩み始めた。
「奴は私が倒す。お前は子供達を連れて逃げろ」
「そんな! あんなのに無茶ですよ」
 もちろん、ティファニアは慌てて止めるが、ジュリは一度だけ振り返ると、すでに戦士の顔になって言った。
「心配するな、奴を倒すのが私の使命だ。子供達を守るのが、お前の使命だろう」
「……はい! さあ、みんな行くよ」
 その強く言い聞かせるような言葉に、ティファニアは子供達をまとめると駆け出した。
 
 スコーピスは森の木々を踏み潰しながら悠々と近づいてくる。
 その眼前に、ジュリは毅然と立ちはだかっているが、巨大怪獣に対してたった一人の人間はあまりに果敢なげに見えた。
けれど、ジュリの心に使命を果たそうとする責任感はあっても、恐怖などは微塵もない。
 ジュリが左胸に着けていた羽根を模した小さなブローチを手に取ると、片翼のみであったブローチの翼が両方に現れ、
眩い輝きを発し始めた。
「サンドロス、貴様との因縁も、これで最後だ」
 ブローチの光を胸に押し当てると、ジュリの姿が金色の光に包まれて消えていく。
 そして、光は空に舞い上がって、一瞬巨大な光球となってスコーピスの目の前に現れたと思うと、そこから光り輝く
赤い巨人が姿を現した。
 
「テファお姉ちゃん、あれ見て!!」
「うわーっ、巨人だ!」
「あれも怪獣なの?」
「違うよ、行商人のおじさんが言ってたでしょ。きっとあれが、ウルトラマンだよ!」
 逃げていた子供達とティファニアも、夜空を真昼のように明るく照らす光の中から現れた巨人の姿に、思わず
足を止めて見入ってしまう。
 だが、口々に叫ぶ子供達とは別に、ティファニアはその巨人から力強さとともに、とても優しいものを感じていた。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 16:01:15 ID:hcaO2x1Z
ああ、正時(16:00)またいだからリセットされたのか。 支援
420ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (12/13):2009/01/18(日) 16:01:44 ID:QaSE7NXa
「ジュリさん……?」
 
 しかし、スコーピスはその巨人の姿を見たとき、明らかな怯えと、破壊本能を打ち消すほどの恐怖を感じた。
 なぜなら、ある星の伝説にこんな一節がある。
 
"宇宙には、光り輝く神がいる"
 
 そう、スコーピスが悪魔なら、悪を打ち砕く正義もまた存在する。
 ジュリの正体、それは宇宙の絶対正義を守護する伝説の巨人。
 太古より、宇宙の秩序を乱すものと戦ってきたその者の名は、ウルトラマンジャスティス!!
 
「ショワッ!!」
 ジャスティスは、村を守るようにスコーピスの正面に立ちふさがり、拳を前に突き出すファイティングポーズをとった。
 宇宙に散ったスコーピスの残党を倒し続け、残るはこの一匹のみ、これまでサンドロスとスコーピスによって
滅ぼされた数々の惑星のためにも、もう逃がすわけにはいかない。
 だが、スコーピスも恐怖に怯えながらも、生存本能に突き動かされてジャスティスに挑んできた。
 奴の額が赤黒く光り、フラジレッドボムの連射が襲いくるが、ジャスティスは身じろぎもせずに、腕で払うだけで
その全てを軽々と打ち落としてしまった。
「デヤッ、シャッ!!」
 ジャスティスにはかすり傷ひとつ無い。
 自身の攻撃がまったく通用しないことに愕然としたスコーピスは、金切り声を上げながら長大な尾をジャスティスへと
向けるが、その一撃も片手で軽く止められ、逆に先端を捕まえたジャスティスは、それを掴むと一思いに引きちぎってしまった!!
「デアァッ!!」
 ゴムのはじけるような音とともに、真っ二つにされたスコーピスの尾が宙を舞う。
 さらに、ジャスティスは引きちぎった尾を無造作に捨てると、瞬時にスコーピスの顔面に強烈な蹴りをお見舞いした。
「ダァッ!!」
 一撃で牙や触覚を何本もへし折られ、巨体が後ずさりする。
 戦闘開始から一分と経たず、もはやスコーピスは完全に戦力と戦意を喪失していた。
 とにかく、全てにおいて格が違う。
421ウルトラ5番目の使い魔 第31話 (13/13):2009/01/18(日) 16:02:55 ID:QaSE7NXa
 大人と子供、いやそれ以上……母体であるサンドロスであったならまだしも、その手駒ごときではジャスティスの
敵ではない。
「フゥゥッ」
 ジャスティスが気を集中すると、その腕にエネルギーが集中していく、積年の因縁に引導を渡す最後の一撃、
両拳を打ち出すとともに、それは金色のエネルギー流となってスコーピスに襲い掛かった!
『ライトエフェクター!!』
 光は圧倒的な威力を持ってスコーピスの体を貫通、どてっぱらに風穴を開けられたスコーピスは耐えられるわけもなく、
断末魔の叫びを短く残すと大地に土煙とともに崩れ落ちた。
 しかし、本来ならばライトエフェクターはスコーピスの体を貫通どころか粉々に粉砕するほどの威力を持つ、
ただしこの場所で本気で放てば被害はティファニア達や村にも及ぶ危険性があったので、わざと威力をしぼった。
これでさえ、相当に手加減していたのだ。
 大地に崩れ落ちたスコーピスが完全に動かなくなったのを見届けると、ジャスティスはゆっくりとウェストウッド村を
振り返った。
 ティファニアと子供達は無事なようだ。子供達はこちらに向かって笑いながら手を振っているのが見える。
 しかし、ジュリとして彼らのもとに帰るわけにはいかない。寂しいが、スコーピスの最後の一匹を倒した今、この星に
とどまる理由はなくなった。宇宙の秩序を守る使命のため、いつまでも同じ場所にいるわけにはいかない。
 なごり惜しげに、ジャスティスは子供達を見下ろしていたが、そのわずかな感傷のために、すぐ後ろで起こっていた
異変に彼女は気づくのが遅れてしまった。
 
 それは、スコーピスが倒されてジャスティスが振り返った直後、森の木々の陰からぴょこんと飛び出してきた
緑色の球体、あの小さなサボテンがスコーピスの死骸に採りつき、その残留エネルギーを吸収、瞬時に小さな
サボテンの姿から全身をハリネズミのような棘に覆われた緑色の巨大な超獣へと変化したのだ!!
「あっ、危ない!!」
 エマの声が響き、ジャスティスが振り返ろうとした瞬間、超獣の棘だらけの太い腕がジャスティスの首筋を直撃した!!
「グワァッ!!」
 さしものジャスティスも背後からの不意打ちには対応できずにダメージを受けて吹っ飛ばされた。
 初撃を成功した怪獣はうれしそうに体を揺すりながら、ガラガラと聞き苦しい鳴き声を上げている。
(なっ、なんだこの怪獣は!?)
 なんとか体勢を立て直したジャスティスは突然現れた怪獣を見据えた。
 まるでサボテンを2足歩行にし、尻尾と頭を取り付けたような不気味な姿、くぼんだ目は赤く爛々と光り、
花弁のような口からは鋭い牙が生えている。これこそ、異次元人ヤプールが宇宙怪獣とサボテンとハリネズミを
合成して誕生させたサボテン超獣、サボテンダーだった。
「デュワッ!!」
 再びジャスティスは初めて見る異形の怪獣へと構えをとった。
 ウルトラマンジャスティスVSサボテンダー、アルビオンを舞台にジャスティスの新たなる戦いが始まろうとしている。
 
 しかし、異次元人ヤプール……宇宙の平和を乱す最悪の悪魔の存在を、ジャスティスはまだ知らない。
 
 続く
422ウルトラ5番目の使い魔 第31話 あとがき:2009/01/18(日) 16:06:20 ID:QaSE7NXa
今週はこれまでです。支援、どうもありがとうございました。どうにかさるさんを受けずに終了できました。
ダイナ、ティガに続いて客演ウルトラマンの三人目は劇場版コスモスVSジャスティスより、ジュリことウルトラマンジャスティスに
登場してもらいました。
ウルトラ戦士では、アニメのアミアやウーマンベスを除いて唯一の女性戦士である彼女ですが、ここの住人の方いわく
『一番融通の利かないウルトラマン』だそうなので、キャラがそのように出せるように気を使ったつもりです。
なお、当然ながらティファニアのアレがいくら大きかろうが、ジュリにそういった類の関心はまったくないので
その手の期待は無用です。
 
それでは、春のウルトラ祭りも来週で最後です。一週間後に、またよろしくお願いします。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 16:07:23 ID:CjKzCBNZ
ウルトラの人、乙

劇場版3作目の最初で「ちょ、ちょっと落ち着こうよ、話をしようよ」と制止するコスモスを問答無用でぶっ倒したヤツも、丸くなったもんだ…
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 16:12:09 ID:XaP8aFUf
乙でした
そういやジャスティスは女性戦士とか無視した強さだったな
ユリアンとかウルトラの母とかとは見た目からして違うし
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 16:28:33 ID:LoRoLQzr
ハヌマーン出ないかな
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 16:33:31 ID:fTwPcGJC
ウルトラマンリンチか、あれの復活シーンは怖かったなあ……
427さざなみ寮生 ◆ZMP6Ne1FYo :2009/01/18(日) 17:03:53 ID:B4s88RXf
皆様、大変ご無沙汰しております。
最後の投下からすでに半年以上経ってしまい、もはや覚えている人もいないかと思いますがorz
忙しさが若干落ち着いてきたのでちょこちょこと書いていますが、投下するほどの分量になるにはまだかかりそうです。申し訳ありません。
ならばなぜわざわざ書き込んだのかというと、まとめWikiの拙作「イザベラ管理人」のページにすごくわかりやすい耕介と御架月の紹介が追加されていて、一言お礼申し上げようと思ったからです。
常々、もうちょっとわかりやすく説明できねぇのか自分と悩んでいたので、こんなにわかりやすいキャラ説明を追加してもらってとても嬉しいです。
いや、作中で説明すべきなんですが(汗
というわけで、追加して下さった方、ありがとうございました。
また、避難所等で、「イザベラ管理人」を待って下さっていると書き込んで下さる方々にも、最大級の感謝を。とても励みになります。
もうちょっとで、自分が一番書きたいシーンまでいけるので、頑張って書いていきたいと思います!
投下もなしに失礼しました。次は本編引っさげて現れたいと思います。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:06:09 ID:kdCD0csZ
うわああああああああああああ!

さざなみ寮生さん、帰ってきたああああああああああ!




本編投下お待ちしてます!
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:07:47 ID:t5JTCyk3
やっほやっほ、管理人の人が帰ってきた!
うれしいなったらうれしいな

これで爆熱の人が帰ってきてくれれば恐れるものは何もないのだが
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:13:29 ID:SklG04TZ
さざなみの人、お待ちしておりましたぞ!!

本編の投下楽しみにしております!
431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:23:22 ID:0c0+ebBp
という夢を見たのさ。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:28:51 ID:bwlkEUSC
これが良い夢だっていうのかよ
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:31:05 ID:wzKqbzNc
>>432
ショウ・ザマさんなにしてるんですか
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:36:24 ID:VnaUcanR
ドラゴンボールの自爆5秒前のセルがルイズに召還されました
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:36:42 ID:LoRoLQzr
あの作品のキャラがシルキー・マウに召喚されましたスレに帰れ
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:45:29 ID:BkzsjROq
ギースタワーから落下中のギースが召喚されました。

直後、大惨事。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:50:33 ID:t5JTCyk3
>>436
だいぜうぶ
「しっプゥ拳」で安心着地
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:56:09 ID:r4W2BW8r
>>436
小ネタで見た気がする
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:58:44 ID:fTwPcGJC
バルログと一緒に落下中のガンダルフが召喚されました。
ガンダルフがガンダールヴという早口言葉状態!
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 17:59:12 ID:oesVfZVr
>>436
大丈夫。墓石の体を手に入れて復活するさ
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:02:00 ID:VnaUcanR
バルログと一緒に落下中のザンギエフが召喚されました
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:03:20 ID:ZEpXJb52
>>436
落ちてく時にえらい情けない顔してたのは家庭用のほうだったか。

>>439
グラムドリングがあるからデルフ涙目なのか二刀流で行くのか。
そういえばオルクリストってどこ行ったんだっけ。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:08:52 ID:lHlnJBkF
>>439
ガノンドロフに一瞬見えた
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:10:37 ID:BkzsjROq
>>438
だいぶ前のスレの埋めを兼ねて投下された奴である。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:15:38 ID:GVBnznEQ
ガノタルブ
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:17:04 ID:BkzsjROq
じゃあ、モンスターメーカーからガンダウルフ召喚で。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:17:59 ID:fTwPcGJC
>>442
魔法を吸収するだなんて、ガンダルヴからしたらスゲー恐ろしい武器じゃないですか!
注意するべき敵も基本的に魔法使いですから、そらもうガンガン使いますでしょうよ。
かみつき丸は分からんです。

>>443
リンクが召喚されてエルフだと思った奴らがパニックを起こすんですね、分かります。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:19:44 ID:9MsWXEi/
ハイランドの勇者さまが未だに召喚されてないのは不思議だ
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:20:38 ID:fTwPcGJC
混ざっちゃった、なんだガンダルブてw
これはもう灰色の左手ガンダルヴだな!
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:23:01 ID:gWgjfUXH
ウンゴリアントが召喚→ラ・ロシェールの大樹や四つのルビーが食い尽くされる姿しか想像出来ない。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:23:33 ID:t5JTCyk3
>>447
いや、ガンダルフは基本的に知恵と腕力で窮地を切り抜けてくんで
魔法はほとんど使ってませんよ

だいいち人間じゃないし、アレ
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:25:05 ID:fTwPcGJC
にわか知識で失礼した。

人間じゃないのは知ってるぜ!
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:27:12 ID:yG0mH6H3
とりごや高校の屋上から落下中の清村が召還されました



なんだ、いつもの事じゃねーか
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:29:22 ID:0q26x3wq
ハイデルランドの勇者様!

「その日!地獄の炎の軍旗が翻り川は血で染まる!大地は恐怖で震える!
 そして善は悪に屈するのだ!ムハハハハ!」

 【それは勇者じゃない】
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:32:33 ID:iS2CFlMG
魔法もエネルギーの一種とすると、
べムスター召喚したら、全部吸収されるのだろうか?
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:41:24 ID:zr6AbTyk
ガンダールヴのルーンって実は「ガンダルフ」って書いてある
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 18:43:16 ID:mz4yf1rF
だからガンダールヴは肉体派なのか
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:05:33 ID:BkzsjROq
>>456
実は「ガンダム」って書いてある。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:08:17 ID:HQriwUVw
グン……ダム?
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:11:08 ID:6n7R2E5H
ヴァンダムだと!?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:13:58 ID:/pRRckmi
う〜〜ん
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:23:12 ID:RhXyTL/0
ようこそ…
『男の世界』へ……
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:23:35 ID:vBT1iPSQ
ジョジョスレへどうぞ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:24:12 ID:OACoAgAX
それはマンダム
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:36:52 ID:r4W2BW8r
>>394
鬼作だから敬遠してたけど読んでみた
ええ話しやった
気付いたら時間が飛んでたが
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:43:26 ID:JfEeRoDw
>>465
じゃあ次はヘルミーナとルイズ。
467ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:47:15 ID:VlX9clKi
ゼロの花嫁10話目でございます
他に予約が無ければ、19:55より投下したいと思います
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:49:40 ID:c5EkkGWA
>>467
支援じゃー
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:49:48 ID:+IhFwBN0
>>465
それはスタンド攻撃の可能性がある!

ヘルミーナとルイズが読めたらゼロのアトリエだな。
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:51:18 ID:msQqKxe0
>>465
小ネタからワルキューレの誓約を。
ああ、作者の人後日談書いてくれないかなあ……後、あのウェールズがアンアンをどう思っているのかも。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 19:54:30 ID:+IhFwBN0
支援仕る。
472ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:55:04 ID:VlX9clKi
ゼロの花嫁第10話「悪ガキ共が夢の跡」



一大事である。
伯爵位を持つ貴族が事もあろうに貴族の子弟に暴行を受け、その財産を奪われるのみならず平民の前で大恥をかかされたのだ。
教会の尖塔に縛り付けられていたモット伯は、街の衛士達に当り散らしながら救出された。
すぐさま城へと出頭し、事の次第を涙ながらに報告する。
実行犯の内、名前のわからなかったピンク髪の少女は、報告にある外見的特徴から、何とヴァリエール家の三女である可能性が高い。
調査を進めるにつれ解ったこれらの事実に衛士は自らの手に余ると判断、上司に報告をすると遂にはマザリーニ枢機卿まで出張ってくる程の騒ぎとなる。
押しも押されぬ大貴族の子弟である。
下手に騒ぎ立てては後でどんな目に遭わされるか。
そういった配慮の元、衛士達は動いていたのだが、被害者であるモット伯は持てる全ての力を活用し、この問題をより大きな物へと育てて行く。
ヴァリエール家に貸しを作る事が目的ならば、事を荒立てないのが上策だ。
これはモット伯の、例えヴァリエール家の恨みを買おうともこの件を大人しく済ませる気が無いという強い意思の表れであった。

そんなモット伯の気迫故か、事件発生から一日と経たずして、この件は王都トリステインに居る貴族で知らぬ者は無いという程に広まってしまう。
ヴァリエール家に近しい者達は、大慌てで領地に居る当主に対応を打診する。
知らせを受けたヴァリエール公爵は、妻を伴い即座に城へと向かう。
しかし、王都から領地へ、そして領地から王都へと向かうにはタイムラグがある。
モット伯はこのタイムラグの間に、全ての裁可を下させる腹づもりであった。
怒りに震えているとはいえ、彼とてトリステイン貴族を何十年も勤めてきた男。
ヴァリエール家の人間に死罪が下るとは思っていない。
しかし貴族位の剥奪ならば充分可能な範疇だ。
しかる後平民となったルイズを殺害したとて、平民の身分ならば文句も言えまい。
トライアングルメイジとして名を馳せていた自分が、学生ごときに魔法すら使わず倒されたなどと、断じて許せる事ではなかった。
無論ヴァリエール家に味方する者も多かろう。
そんな連中に自らの意図を隠し、誤魔化し、財産をばら撒いてでも話を進める。
貴族としてこれまで培ってきた全てのノウハウを駆使し、モット伯は確実にルイズを追い詰めていった。



コルベールが倒れると、キュルケは報告すべき事は済んだとそれ以上他の人間にこれを話す事は無かった。
ルイズもルイズで、来るなら来なさいとばかりに泰然と待ち構えるのみ。
二人共がまだ子供であり、貴族社会の陰湿さを身をもって体験していないが故に、心の何処かでアレで懲りたろうと楽観していた部分があったのだ。
これにより事実がオールドオスマンの耳に入るまでに、コルベールが意識を取り戻すまでの時間、丸一日が浪費されてしまう。
報告を受けたオールドオスマンは開いた口が塞がらなくなる。
格式ある貴族の子弟がチンピラ紛いの真似を平然とやってのけたのだから、コルベールが倒れるのも無理は無い。
ちょうどワルド子爵から感謝の手紙がオールドオスマンに届き、ロングビルの活躍に相貌を崩していた時だっただけに衝撃もひとしおだ。
報告の遅れを怒鳴る余裕すらなく、オールドオスマンとコルベールは事態の収拾策を模索する。
人事のように聞いていたロングビルは、笑いがこみ上げてくるのを堪えるのに必死であった。
『た、楽しすぎるわ。何だってこう次から次へとあの子達は……』
今晩アニエスと飲むのに、良い肴が出来たと内心ほくそ笑んでいた。
もちろんそれを表に出す程子供でもないが。
「とにかく城の方でどうなっているのかがわかりませんと、如何ともしがたく……」
「う、うむ。ワシが直接城に出向いてどうなっているか確認するとしよう。連中はとりあえず謹慎でもさせておけ。下手に外に出したらまた面倒な事になるぞい」
窓の外を覗いていたロングビルが二人に向かって告げる。
「既に手遅れかと」
473ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:55:40 ID:VlX9clKi
学園正面入り口には、十人程の兵に囲まれたトリステインの紋を背負った馬車が乗り付けてきていたのだ。



オールドオスマン、コルベール、ロングビル、ルイズ、キュルケの五人は学園長室で三人の兵士から宣告を受ける。
ルイズとキュルケの二人は重大な犯罪行為を犯している可能性がある為、その身柄を拘束するといった趣旨だ。
ルイズもキュルケも余計な事は何一つ口にせず、事態の推移を眺めている。
兵士が語る逮捕の理由にぐうの音も出ぬ程にやりこまれ、コルベールはすごすごと引き下がる。
オールドオスマンが次に何かを言おうとする前に、キュルケが口を開いた。
「牢に入れって事?」
兵士はしゃちほこばって答える。
「いえ! ミス・ヴァリエールとゲルマニアの有力貴族であるミス・ツェルプストーを牢に入れるなぞとんでもない! 城に部屋を用意させていただきましたので、そちらにお越しいただきたく!」
キュルケがちらとルイズを見ると、ルイズは嘆息しながら答える。
「……わかったわ。案内しなさい」
「恐縮であります!」
兵士に従い、部屋を出る前に二人はコルベールとオールドオスマンに頭を下げる。
悪びれる様子も無く、ルイズは淡々と二人に語る。
「状況は逐一報告させますので、どうぞご心配なく」
ルイズは、感情的にはなっていないとオールドオスマン達に伝える為、音が響いたりしないようドアを殊更にゆっくりと閉めた。
廊下を歩くと数人の生徒とすれ違う。
彼等は奇異の目でこちらを見てくるが、何せ学園最強の問題児二人だ。
触らぬ神に祟り無しと無関心を装って通り過ぎていく。
「ルイズ、サンとシエスタには話通ってるの?」
「いいえ、出かけてくるとだけ言ってあるわ」
能面の様に堅苦しくしていたキュルケの顔に、初めて微笑が浮かぶ。
「気が効くわね」
「城にまで乗り込んでこられたら、流石にフォロー出来そうにないもの」
これから法の下罰を受けるはずの二人は、そんな気配は微塵も感じさせず、年相応の女の子のように笑い合う。
兵士はそんな二人の様子に妙に感銘を受けたようだ。
「向こうに着いてから学園への連絡をなさるというのであれば、私の方で上に確認してみましょうか」
随分とへりくだって話す兵士だ。
杖を持っていないところから察するに平民なのだろう。
キュルケがよろしく頼むと伝えると、兵士は嬉々としてその旨を承った。
ルイズもキュルケも気付いてなかったが、侯爵家の娘と他国の貴族の娘、微妙な采配を要する二人の連行に貴族でない者を差し向けるのは奇妙な事なのである。
実はこれもモット伯の罠であった。
平民とはいえ正式な文章を携えた使者を蔑ろにすれば、それはその後の展開がより不利に働いてしまう。
気位の高い小娘ならば、必ずや使者を怒鳴りつけ追い返すだろうと踏んでの策であった。
まあ、不発に終わったのだが。
建物を出て護送用の馬車に乗り込むも、二人から貴族らしい優雅な立ち居振る舞いは失われなかった。
むしろ同席する兵士の方が恐縮していたのだが、そんな彼等に配慮する余裕すらあったのだ。

馬車に乗り込む時、二人は兵達の配置や振る舞いを観察していた。
そして、その必要が出た時、力づくで突破する自信があったればこその余裕であった。



王城に辿り着くと、二人はすぐに部屋へと案内される。
より正確に言うとそこは城ではない。
城壁側の待合室のような場所で、ドアに鍵をかけ軟禁状態にされたのだ。
そこで二人は別々の部屋をあてがわれ、延々二日に渡って待たされるハメになった。
その間部屋に顔を出したのは、日に二度の食事を運んで来た給仕のみで、事情聴取すら行われなかった。
お前は罪を犯した、そう言われて連れられて来た場所である。
この先、何がどうなってしまうのか。それを教えてくれる者も居ない。
474ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:56:06 ID:VlX9clKi
貴族である以上、数多居るはずの味方をしてくれるだろう人物も、誰一人訪ねて来てはくれない。
まるで世間から忘れさられたかのような孤独感が二人を襲っている……
はずであったのだが、二人共別段気にした風もなく、ルイズは紙と書く物を借りて何やら書き記しており、キュルケは給仕に始祖ブリミルの偉大なる軌跡を描いた書物を要求し、暇潰しにそれを読んでいた。

漸くルイズにお声がかかったのは、二日目の夕方であった。



ルイズの元に遣わされたのは、連行しに来た人の良さそうな兵士ではなく、如何にもな強面で居丈武な兵士であった。
ただこちらを見ているだけなのに、敵意を剥き出しに脅迫されているような気になってくる。
当然愛想も無い。
「こちらです」
何処へ、という説明も無し。
移動途中に見渡した通路は確かに王城の一角であり、それならばとルイズは何も聞かず付いていく。
大きな扉の前で彼は立ち止まり、顎をしゃくって扉を差す。
おそらくこの兵士はルイズに対して本当に敵意があるのだろう。
そう確信したルイズは、含むように笑った後兵士に告げる。
「貴方、私とケンカがしたいんなら、せめてモット伯ぐらい倒せるようになってからにしなさい。私弱い者イジメは好きじゃないの」
貴族とはいえ、自分の胸の辺りまでしかない小柄な娘からそんな言葉が飛び出してくるとは彼も予想していなかったらしい。
驚きと怒りから立場を弁えぬ言葉を吐き出そうとしたが、その頃には既にルイズは扉を開いて中へと入って行ってしまっていた。

さしものルイズも呆気に取られ、目を大きく見開いてしまう。
赤い絨毯がまっすぐ前へと伸びていき、その先には三段の階段、更にその先にはトリステインにおいて最も権威ある場所がある。
王家開闢以来変わる事無くあり続けた豪奢な椅子は、その存在だけで見る者を圧倒しうる何かを持っていた。
ずらっと左右に並んでいるのは正装に身を包んだ貴族の列。
彼等の視線は、その全てが扉を開いたルイズへと注がれていた。
侮蔑であったり、怒りであったり、はたまたそういった意思を全く感じえぬものであったり、視線の意味はそれぞれだ。
しかし、好意的なソレが全く無いというのだけは理解出来た。

王との謁見の間。
正式な形で王との対面がなされるここに通される者は、全て控えの間にて注意事項の説明を受ける。
それはその時王が話される事であったり、守るべきしきたりであったりと様々である。
そういった途中経過をすっとばして、いきなりこの場へと連れてこられたのだ。
貴族達の列の中程に、いやらしく笑うモット伯の姿が見えた。
どうやらこれはあの男の差し金らしい。
二日間も閉じ込めていた事といい、不意打ちの謁見といい、貴族社会での人の心の動きようを良くご存知だ。
ここでは歩き方一つにも作法がある。
ルイズは謁見の機会の多いラ・ヴァリエール侯爵の娘に生まれて、本当に良かったと安堵する。
多分に聞きかじっただけだが、一応謁見の作法は教わっていたのだ。
ただ、それをぶっつけ本番、覚悟も無しに、これだけの数の諸侯の前でやらなければならない。
一度目を瞑り、モット伯への怒りを腹の内に収める。
今はただ王との謁見に集中すべきだ。
覚悟を決めて目を見開くと、前へと歩を進める。
居並ぶ貴族達の横を通り過ぎながら、キビキビと、しかし決して焦らぬよう歩調に気をつける。
三段の階段を昇り、玉座の前約三メイルの場所で片膝を付いて頭を降ろす。
室内に僅かなざわめきが起こる。
ルイズのやったそれは、男性用の儀礼であったのだ。
皆の反応によりすぐに失敗に気付いたルイズだったが、それがどうしたとざわめきを黙殺する。
今更引っ込みなどつかぬし、王に礼を尽くすという意味であるのなら、どちらでも構わないはずだから。
それだけが仕事という傍目には随分と楽な役割を持つ貴族が、声高らかに主役の登場を宣言する。
475ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:56:48 ID:VlX9clKi
すると、今度は先とは違う大きなどよめきが起こる。
顔を下ろしているルイズには周囲の様子は伺いようがない。
一体何事かとやきもきしている中、遂に声をかけられる。
「顔を上げよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
しわがれ、擦れたその声がルイズの予想外であった為、作法より素早い挙動で頭を上げてしまう。

玉座に悠々と腰掛けている男の姿が目に入る。
そこには老齢の為、政務から退いていたはずのトリステイン老王の姿があった。





トリステイン王女アンリエッタ・ド・トリステインは、マザリーニ枢機卿から話を聞くなり可哀想な程に青ざめてしまう。
彼女にとってルイズは、幼き頃より親しくしていた唯一といってよい友と呼べる存在である。
その彼女が罪を問われ、事と次第によっては貴族位剥奪すらありうるというのだ。
「ああ、ああ、何という事でしょう……マザリーニ卿、このような事が起きてしまうなんて……私には信じられません。あのルイズがどうしてこんな……」
マザリーニは慰めるつもりがないのか、淡々と事実のみを述べる。
「証人も揃っておりますし、言い逃れ出来る状況ではありません。それでもラ・ヴァリエール侯ならば何とかするのでしょうが、今は自領におり裁判には間に合いますまい」
「そんな!? それでは誰がルイズの弁護をするというのです!」
「代理人や付き添いを頼めるような状況でもありませぬし、自身でやる他ありませんな」
アンリエッタはマザリーニに掴みかからんばかりの勢いだ。
「ルイズはまだ学生の身ですよ! そんな馬鹿な話がありますか!」
「仕方ありませぬ。貴族、そして王族が守るべき法に従った結果でございますから」
マザリーニはモット伯が暗躍した結果である事は百も承知で、しれっと言い切った。
貴族間のトラブルに王女が首を突っ込んで良い事など一つも無い。無用に恨みを買うのみだ。
何時もならアンリエッタもこれで引き下がるはずであった。
しかし、何故か今回は執拗に食い下がって来る。
「納得出来ません! ルイズは侯爵家の娘なのですよ! それがどうしてこのような目に遭わねばならぬのですか!」
「法は法でございます。それにミス・ヴァリエールが狼藉を働いたのも事実でしょうし、被害に遭ったモット伯の事を考えれば、こればかりは幾らアンリエッタ様とて……」
アンリエッタは理路整然とした反論を思いつけずに口ごもる。
「……あんまりです。ルイズが貴族を追われるなんて……何故このような事に……マザリーニ卿、どうにかならないものなのでしょうか」
時折幼き頃共に過ごした彼女との話を聞かされてはいたが、ここまで入れ込んでいるとはマザリーニも思っていなかった。
だが全ての段取りは済んでおり、後は謁見の間での対決を残すのみとなっている。
ここから引っくり返すには、少々力技を行わなければならない。
それ程の価値が彼女にあるのかと問われれば、マザリーニも首を傾げざるをえない。
ふと、城内にあるまじき高く忙しげな靴音が聞こえてくる。
アンリエッタから逃れるようにそちらに目を向けると、グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵の姿がそこにあった。
「マザリーニ卿!」
そう声をかけてくるが、すぐ隣に王女が居るとわかると居住まいを正して一礼をする。
彼も又、ルイズの罪の軽減をマザリーニに訴えに来たのだった。
彼がルイズの婚約者であったというのはアンリエッタにとっても初耳で、若手随一と言われている彼がルイズの相手だという事を、アンリエッタは大層喜んでいた。
ワルドはマザリーニが目をかけている青年でもあり、無下に断るのは少々気が引ける。
ルイズにはヴァリエール家の息女としての価値しか無いと思っていたマザリーニだが、どうやら勝手が違うようだ。
アンリエッタ王女とトリステインでも屈指の技量を誇るワルド子爵の両者が、ルイズ個人の味方であるとは思ってもみなかったのだ。
子爵にはつい先日彼が解決した密輸事件の褒美もまだ与えていない。
全ての手柄は、アニエスという兵士と彼女率いる首都の衛士達にあると言って自らの手柄と認めなかったのだが、その謙虚さを何処かで報いてやりたいと思っていたのだ。
口元に手を当て、しばし熟考するマザリーニ。
議事進行はマザリーニの役目であるから、進め方如何によってはルイズに有利に動く流れも作れよう。
しかしモット伯は入念な下準備を行っている。
476ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:57:35 ID:VlX9clKi
それを何処まで変えうるものか、マザリーニにも楽観は出来ない。
そも、マザリーニは自身の損得で判決を下した事は無い。
法を歪める時があるとするなら、それはトリステインの為になるか否か、その一点のみ。
最低限の保身は考えるが、それもまた私利私欲に走る有象無象共に国家の大事を任せぬ為の手段の一つにすぎない。
ヴァリエール家にはまだ娘が二人残っている。
ルイズ一人を見捨ててもこの件で恨みを買うのはモット伯とその周囲の者達であるし、差し引きで考えるのならトリステイン王家にはプラスに働くと考えていた。
王が老いてかつての力を失うに伴い、相対的に大貴族達の発言権が増してきている。
その増長にこの件で楔を打ち、磐石の体勢でアンリエッタへの引継ぎを行おうと考えていたのだが、当のアンリエッタはそんなマザリーニの思惑など何処吹く風と、ひたすら彼女を救ってくれと哀願してくる。
ため息も出ようというものだ。
「わかりました。ですが此度の件、謁見の間にて吟味の上判決を下す流れとなっております故、私の力で幾分かは有利になるよう取り計らう事は出来ますが、それが確実に彼女の無事を保証するものではないという事を覚えておいて下さい」

ワルドには思惑があった。
話を聞いた時は確かに仰天したが、これは良い機会である。
ワルドは以前に虚無の魔法について調べた事がある。
その圧倒的な力を我が物にと考えたのだが、どうやら虚無は従来の魔法とは完全に別系統の物らしく、ワルドが身につける事は出来なかった。
しかし研究の過程で、一つの仮説を打ち立てる事が出来た。
魔法を操る資格を持ちながら魔法を使えない者こそが虚無の使い手なのではないだろうかと。
もちろん確証を得ている話ではなく、まだまだ調べねばならぬ文献も数多い。
始祖ブリミルに連なる血統であるルイズが、姉妹皆強力な術者でありながら一人だけ魔法が使えないという不可思議さを知っていた事が、その仮説の一助となっていた事は想像に難くない。
もしルイズが虚無に連なる何者かであったのなら、これは是非とも手に入れておきたかった。
しかし相手は大貴族ヴァリエール家の娘。
おいそれと調査すら行えない相手である。
だが幸運な事にワルドはルイズの婚約者として、ラ・ヴァリエール伯にも認められている。
この件でルイズが貴族位を剥奪されるのならば、平民となった彼女を保護すればいい。
何とか切り抜けたとしても、今回の事件を学園などに居るせいにしてしまえば良い。
こちらには今すぐにでも妻に迎える用意があると侯に伝えれば、これだけの騒ぎを起こした娘を好んで妻に迎える者も居なかろう事から、侯は喜んでルイズを差し出すであろう。
どちらに転んでもワルドに悪い流れではない。
更にこれは、ワルドがルイズを心から想っていると周囲に知らしめる絶好の機会ではないか。
見目麗しく家柄も文句無し、虚無の調査にも役立つと、まことワルドの妻となるに相応しい存在である。
「最も優れた若手貴族との誉れ高いワルド子爵が、ルイズのお味方をしてくれるとは心強い限りです。どうぞ末永く私の友人でもあるルイズを守ってあげてください」
更に王女の信頼も得られそうだ。
アルビオン反乱軍との繋ぎを作ってあったのだが、一気にトリステイン中枢に食い込む事が出来るのなら、残っていた方が有利であろう。
凡庸な貴族が蔓延るトリステインには嫌気がさしていたのだが、先のアニエスやロングビルといい、優秀な人材も埋もれている。
彼等を率い、宮廷に一大勢力を築き上げる事が出来れば、新興国家での成り上がり重役を狙うよりは余程大きな事が出来よう。
今回の流れにうまく乗り切れれば、いずれは軍を掌握し、その先へと至る障害も随分と減ってくれる。
ワルドはここが正念場と自分に言い聞かせ、気合を入れなおすのであった。



マザリーニが執務室に戻り、処理すべき業務をこなしていると、病床に臥せっているはずの王から呼び出しを受ける。
王位継承に関する相談事であろうと当たりを付け、王の寝室へと出向くと、途中でアンリエッタ王女とすれ違った。
小さく会釈しながら横を通りすぎるが、ふと、王女の表情に不自然な点を見つけ、眉をひそめる。
違和感と言ってもいいそれが一体何だったのかは、部屋に入るとすぐにわかった。
「すまぬなマザリーニ、実は……」
王が口にしたのは、ルイズ・フランソワーズに関する事であった。
あの間抜け王女はよりにもよって病床の王を頼ったのだ。
お体に触るからと政務から遠ざかっているというのに、わざわざ心労になるような件を王の耳に入れるとは。
王女の余りの思慮の浅さに立ちくらみを起こしそうになる。
477ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:58:09 ID:VlX9clKi
「陛下、その件でしたらこの私めが処理しますゆえ、どうぞお心安らかに」
彼女が王に何と言って聞かせたかもわからぬので、フォローも当たり障りの無い言葉になってしまう。
「いやな、あのアンリエッタが涙ながらにワシに訴えてきおってな。あのように必死なアンリエッタは初めて見たぞ……」

マズイ。

これは最悪のケースが想定されてしまう。
病床の王の鶴の一声で解決したとなると、全ての恨みは王家が背負う事になる。
公平さを欠いた判決は、よほど下準備が整っていなければ、貴族全ての反感を買う事にもなりかねない。
「いえ、しかしですな……」
情に流されての判決などありえぬと、何としてでも納得してもらわねばならない。
勢い込んで口を開くマザリーニを、王は手で制する。
「良い、わかっておる。如何に我が娘とて、一方の言う事全てを真に受ける程ワシも衰えておらぬ」
王も老いたりとはいえ見識はしっかりしており、ほっと胸をなでおろすマザリーニ。
「だから此度の件、ワシが自ら判決を下そうと思うておる。今すぐワシに事件の全容を仔細漏らさず報告せよ」
王の御前にあるまじき、大口を開けた姿勢で硬直してしまう。
「卿がアンリエッタに恨みを買うような事態は避けるべきであろう。ワシの下した判決ならばヴァリエール侯も含め文句はあるまいて」
最盛期の王であれば、これほど頼もしい言葉は無かったであろう。
判断能力も落ちていないようであるし、王の裁可であれば何人たりとも異論を挟む余地などあるまい。
しかし、気苦労の多い裁判に王を引っ張り出すなど、とてもではないが許可出来ない。
「陛下、それだけはなりません。どうか御身を大事に」
「今は王位継承を控えた大事な時ぞ。ここで判断を誤れば後々まで引きずる事になる。マザリーニよ、ここは一つワシに任せてみろ」
「しかしっ!」
「何、言う程手間もあるまい。退屈しのぎぐらいにはなるだろうて」
かつて王が最も壮健であった頃に良く聞いた、絶大な自信に支えられし軽口。
判断能力が残っているという事は、長時間の政務に耐えられぬ自身の体の状態もわかっているはず。
その上でこう言うというのであれば、それはつまり、王はこれを最後の仕事と決めたという事だ。
ならばマザリーニに出来るのは、王の負担が少なく済む様、より正しき裁可が下せる様全力を尽くすのみ。
「……わかりました、直ちに資料を揃えさせます。もしよろしければ私見も添えさせていただきますが」
王は大きく頷いてみせる。
「うむ、現在の宮廷内派閥も含めて、だぞ。話が少し妙なのは誰がしかが動いておるからであろう?」
アンリエッタのおそらくは要を得なかっただろう話だけを聞いてそこまで察する事の出来る王は、やはり動いて下されば頼りになる。
王の最後の執務のパートナーとして選ばれ、共に政務を行う事が出来るのだ。
政務官としてこれに勝る喜びは無い。
部屋を辞した後、年甲斐も無く足取りが軽くなってしまうのも無理からぬ事であった。



ワルドは貴族達の列の後方でルイズの入場を眺めていた。
これが、あのルイズなのか?
謁見は初めてであろう、にも関わらず惚れ惚れする程毅然としており、進む足取りも確かなものだ。
ワルドの記憶にあるルイズは、貴族の令嬢というよりはお嬢さまといったイメージだ。
あどけない様で一生懸命ワルドの気を引こうと、たどたどしい言葉を紡ぐもすぐに話題に困り、頬を桜色に染めて俯き沈黙する。
そんな小さな女の子であった。
それがどうだ、この堂々とした様は。
凛とした様子で背筋を伸ばし、力むでもなく、怯えるでもなく、誇らしげに歩を進める。
謁見の礼に乗っ取り、片膝を付いて王を待つ。
それは男性用の儀礼であり、常のワルドならばその失敗にすぐに気付けたであろうが、あまりにも自然すぎた為、それこそがルイズの為の儀礼であると錯覚してしまった。
小柄な体躯でありながら、全身から放たれる覇気のせいか、見た目以上に大きな存在に見えてくる。
頭を振って自身を取り戻すと、マザリーニ卿の入場を待つ。
あの方ならばルイズの儀礼にも文句は付けまい。
478ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:58:38 ID:VlX9clKi
そんな事を考えていたので、不意打ちをまともに喰らってしまう。
まさか王が出張ってくるとは思いもよらなかった。
臣下にあるまじき鋭い視線で王を観察する。
随分と衰弱されてはいるようだが、ただ居るだけで周囲を圧倒する眼光は健在である。
数十年に渡りトリステインを支えてきた誇りと自信は、いささかも衰えているようには見えない。
マザリーニがルイズの罪状を読み上げ、裁判が始る。
幾人かの証人、もちろん謁見の間に入る事を許された身分の者であるが、は王の御前という事で常よりも緊張した面持ちで証言を行う。
いずれもルイズにとって不利な証人ばかりだ。
モット伯も形振り構わず潰しに来たらしい。その意気は買うが、目的が復讐とは無様にも程がある。
しかし、あのルイズの不敵な様子はどうだ。
自分に不利な証言ばかりが並べ立てられているというのに、微動だにせず悠々と聞き流しているではないか。
こちらからは表情を窺い知る事は出来ぬが、背なから感じる気配に動揺は見られない。
だからこそルイズの表情が見える位置にいるマザリーニ卿も戸惑っているのだろう。
王は……変化無し。王の王たる所以を良くご存知だ。
面白い。王が出て来た事といい、ルイズの信じられぬ変貌といい。
ここで口を出さぬようなつまらぬ真似が、どうして出来ようか。
ワルドはマザリーニの許可を得て、発言の機会をもらう。
「陛下、数多の証言は伺いましたが、未だミス・ヴァリエール側からは一言の反論もございません。これに関しましてはいかがお考えでしょうか」
ここがマザリーニ卿が仕切っている場であったのなら、恐らくモット伯はマザリーニ卿の許可も得ずにワルドを罵ってきただろう。
しかし今この場には王が居る。
そのような無礼な真似は到底出来まい。
王は頷き、ルイズに反論を促す。
ワルドは厳粛な仮面の下、ルイズの真贋を見極めてやろうと瞳を光らせる。
『さあ、可愛いルイズ。君は一体何を見せてくれる?』



ようやく、発言の機会が回ってきてくれた。
ここで言い返さねば、裁判はモット伯の言いなりで決着してしまう。
しかし、出来るのだろうか。
証言は全て事実であり、ワルド様はああ言ってくれたが、反論しようにも出来ないだけだったのだ。
だが引けない。引けるわけがない。
ワルド様が、ああ、久しくお会いしていなかったワルド様は、こんな私を気にかけてくださっていたのだ。
私を信じ、こうして機会まで与えてくださった。これに応えぬなど貴族の名折れだ。
足が震えている。
何かを言わなければと思えば思う程、足の震えは激しさを増し、床に着いた膝がこんこんと叩く音が響いて聞こえる。
王を前にして、何と情けない有様か。
そう自らを叱咤するも、体の震えは止まってくれない。
駄目だ、このままでは確実に王に震える音が聞こえてしまう。

ええい、ままよ!

ルイズはその場に立ち上がる。
立ってしまえば震えで床を打つ音など響くまい。
「証言数多あれど、当事者の言に勝るは無し。どうぞ、モット伯との直接対決をお許し下さい」

謁見の間に集まった貴族達から、大きなどよめきが起こる。
年端も行かぬ小娘が、海千山千の貴族を相手に何を語ろうというのか。
そも、王を相手にこんな大胆な発言を、謁見の何たるかも知らぬ小娘が言い放つ事自体、到底信じられる事ではない。
しかし、ルイズという名は知らぬが、ヴァリエール家の人間だというのであれば、納得出来ぬでもない。
479ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 19:59:07 ID:VlX9clKi
大貴族ラ・ヴァリエール侯爵が、娘に貴族の何たるかを教えておらぬはずなどないのだから。
貴族達は、からかい半分、興味半分でルイズの動向に注視する。
王はルイズの言を認め、モット伯に進み出るよう言い渡す。
負けようはずがない、そうモット伯の表情が語っている。
しかしルイズは、既に法の勝ち負けなど眼中に無かった。

先に相対した時、水飛沫を割って飛び出した時と同じ射殺さんが勢いの視線をモット伯に叩きつける。
「モット伯! 私は貴方の所業を許せません!」
開口一番そう言い放ち、勢いそのままに自らの思う所を語り続ける。
「王より賜りし民を無下に傷つけ、自身の欲の為に扱わんとするその態度! それが貴族のやる事ですか!
 授かった民の安寧と平穏を守るべき貴族が! 事もあろうに夜伽の為に民を用いるとは! 恥を知りなさい!
 法を守りさえすればいい、そんな理屈は平民の理屈です! 貴族たる我々には法よりも重い名誉があるはずでしょう!
 それを蔑ろにし、あまつさえ開き直って王に訴えるなぞ伯の誇りは何処へ行ったというのですか!」
法でも理屈でもないそんな怒声に、モット伯のみならず、並み居る貴族達は皆言葉を失う。
ルイズは王に向き直り、頭を下げる。
「私は、そんな伯をお嗜め申し上げただけでございます」



ルイズは宮廷での立ち回りでモット伯を上回るのは不可能と考え、ならば貴族の誇り、その一点のみに絞って突破を図ったのだ。
他の事に関しては委細構わず、全てを受け入れると覚悟を決めた上でだ。
罰は免れ得ぬ、そういう事をしでかしたのだから。
証言も全て受け入れよう、モット伯の非難も尤もだ。
貴族位を剥奪されるかもしれない。
よろしい、ならばその後の尽力で必ずや返り咲いて見せよう。
その為にも法によらぬ自らの正義を、示して見せる必要があった。
ルイズが以降沈黙を保つと、モット伯は体勢を立て直し反論を重ねる。
一つ一つに言い返してやってもいいが、それはあまり効果的ではない。決闘の時もそうだった。
見ている者達が後で冷静になり、ふと振り返った時、彼等の心に残る一言を、そんな言葉を残せたか否かだ。
この裁判は負ける。受け入れよう。
だが、人生全てにおいて敗北したなどと思ってもらっては困る。
私はこの程度の危機で潰されたりはしない。
まだまだ私は戦える。それを諸侯にも、王にもお伝えしなければ。
恐れるな、前を向いて胸を張れ。
体の震えなど力づくで押さえつけろ。
私は必ずやここに帰ってくる。そんな気概を持つと皆に知らしめるのだ。

全ての詮議が終わり、王が裁可を下す。
「貴族にあるなじき傍若無人な振る舞い許しがたし。よってルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ、そなたの貴族位を剥奪するものとする」
厳粛な判決に相応しい重々しい王の声が謁見の間に響き渡る。
それでもルイズは動揺の欠片も見せず、恭しく頭を下げる。
そこに、思いも寄らぬ続きがあった。
「……しかし、貴族の誇り故これを為したとするそなたの心持ち、まっこと天晴れ也。故に機会を与えようと思う」
諸侯がざわつく中、王は声高らかに宣言した。
「これより50日の猶予を与える。その間にトリステイン貴族に相応しい功を挙げよ。さすれば此度の件は不問に処す」
たったの50日、戦があるでもなし、その間に功を挙げるなど不可能だ。
諸侯皆がこの延命はヴァリエール侯爵家への僅かばかりの配慮と受け取った。
しかし、一人ルイズのみが違う受け取り方をした。
480ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 20:00:03 ID:VlX9clKi
感動の余り涙を溢しそうになる。

『私の……私の覚悟が陛下に伝わったんだ! 陛下は、見ていて下さったんだ!』

更に深く頭を下げるルイズを他所に、王は退室し、謁見の儀は終了した。



与えられた部屋へと戻るルイズ。
退室も儀礼に乗っ取ってつつがなく行う事が出来た。
王が退室した後、すぐにルイズも謁見の間を後にした為、廊下には護衛の兵が立っているのみであった。
兵が敬礼するのにも気付かず、ルイズはふらふらと歩く。
当人はまっすぐ歩いているつもりなのだが、何せ今更ながらに震えが来てしまってもう、どうしたものやら。
顎はがちがち言っているし、足は足で腿から先が別の生き物にでもなってしまったかのように感覚が無い。
歩く際、自然に振られる腕の動きが狂ってしまっており、ふらふらと体が揺れるのはそのせいだ。
そんな自身の惨状にも、ルイズは気付けずにいた。
『……やっちゃったあ……』
これが一番素直なルイズの感想である。
王や諸侯の前で啖呵を切った挙句、モット伯の悪評を振りまくような真似までしてしまった。
もう絶対、モット伯との和解は不可能だ。
個体識別すら不能な程、顔をぼこぼこにぶん殴っといて嗜めるも何も無い。
挙句教会の尖塔に半裸で吊るすとか、自分でやっといて何だが、貴族云々より人としてどうかと思う。
悪いのは圧倒的にこちらだが、だからといってあの場で言われるがままに処分を受けるような真似も出来なかった。
ルイズの後ろには同罪のキュルケもおり、また更にその奥には燦、シエスタ、そして下手をすればタバサにまで累が及んでしまうのだ。
やり方はどうあれ、戦わぬという選択肢は存在しなかった。
彼女達にみっともない話を聞かせられるものか。
返すべき言葉もなく、怯え震えて一方的に攻め倒されるのみなどと、断じて認められない。
それに陛下はこうして意を汲んでくださったのだ。
50日以内に功を挙げるとなると、よっぽどの無茶が必要になるだろうが、何としてでもやり遂げなければ。
すぐに手柄を立てるというのなら、戦場が最適だ。
この近くで戦場というとアルビオンの内戦ぐらいか。よし、アルビオンは兄弟国であるし、そこに赴こう。
一兵卒からでも構わない、何としてでも敵大将首をもぎ取って来てやる。

ルイズはやはり気付いて無かったが、これからどうするかを考え始めた時から、全身の震えは消えてなくなっていた。



謁見の間を後にした王に、付き従って歩くマザリーニ。
「……猶予、ですか」
王は愉快そうに含み笑う。
「マザリーニよ、お主にはこの結末、読めていたのではないのか?」
大仰に肩をすくめて見せるマザリーニ。
「とんでもございません。それに、ミス・ヴァリエールのあの足掻き方はとても予想出来るものではありませんでしたから」
王は今度こそ声に出して笑い出す。
「くくくっ、はっはっは、あれには驚いたぞ。おかげで随分と楽に話を進められたわ」
「なる程、アンリエッタ王女といい、ワルド子爵といい、入れ込む訳です。あれは手放しとうございません」
「案外かの者ならば50日以内に手柄を持ってきてしまうかもしれぬな。カリンの娘というが、情の強い所といいそっくりだぞ」
「陛下、それは幾らなんでも高望みがすぎましょう。じっくりと、育てていくがよろしいかと」
二人は今後に想いを馳せる。
「マザリーニよ、ラ・ヴァリエール侯が彼女を手放すと思うか?」
「嫌が応でもそうさせまする。その為の御裁可でございましょう」
老齢とは思えぬ、王の高らかな笑い声が響く。
481ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 20:00:30 ID:VlX9clKi
「ならば後は任せよう。十日後ぐらいが適当であろうて」
マザリーニは恭しく礼をする。
「承りました。お任せ下さいませ」



全てが終わり、与えられた一室で一休みするルイズの元に、まずアンリエッタが、すぐ後にワルドが訪れる。
ワルドはキュルケを伴っており、謁見の間での一部始終は既にキュルケに伝えてある。
「ああ、ルイズ。何という事でしょう……このような悲しき結果になろうとは……ですが心配しないで下さい。私が何としてでも復権出来るよう取り計らいますから」
ルイズも王女が口利きしてくれた事は聞いている。
幼い頃の思い出を頼りに、ここまでしてくれた王女には感謝の言葉も無い。
感激を言葉にしようと口を開きかけたルイズに先んじて、ワルドが王女の言葉に応じる。
「いえ妃殿下、その必要も無いかと存じます」
「子爵? それはどういう……」
ワルドは順序だてて王の裁可の中身を説明する。
そも猶予というのがおかしい。
ヴァリエール家へ配慮するというのであれば、そもそも当主抜きで一族を処断するなどという事があってはならない。
それが如何な結果であろうと、ラ・ヴァリエール伯は不服に思うであろう。
しかし、そちらに配慮してしまうと今度はモット伯が収まらない。
ここまでの下準備が問答無用で全て無に帰すなどと、他の貴族に対しても示しがつかぬ。
だから王に求められているのは、罪の判定を下しつつ、ルイズに累が及ばぬよう裁く手段である。
「おそらく陛下は近いうちに退位なされるおつもりでしょう」
核心を突きつけたのだが、何とも間が抜けた話で、誰もそこに気付いてくれなかった。
仕方無いのでわかりやすく説明する。
「退位の際の恩赦がございます。これが50日以内に行われればルイズの罪は不問となるかと」
今度こそ伝わってくれた。
余りの驚きに蒼白になるルイズとアンリエッタ。
当事者であるルイズ、そして嘆願を行ったアンリエッタ共に、まさか王がそこまでしてくれるなどと想像だにしていなかったのだ。
そして王の思惑にも気付いているワルドはそこから先を口にはしなかった。
これで二人は王に対し巨大すぎる負い目を背負う事になる。
アンリエッタには女王としての自覚を促し、ルイズには王家への更なる忠誠を。
翻せば王はそこまでして二人の行く末を案じているという事だ。
アンリエッタはともかく、ルイズにまでそうする王の気持ちを、ワルドは理解出来る気がした。
謁見の間での凛とした態度、王を前に堂々と貴族の誇りを語る気概、覚悟を決めたなら一切言い訳をせぬ潔い姿勢。
これこそ人を惹きつけて已まぬ、為政者に必要な得がたい資質なのだ。
並みの人生を送っている貴族には生涯得られぬソレを、この年にして手にしているのだ。
そんな人間をどうして処断なぞ出来ようか。
ルイズとアンリエッタの二人は王への畏れ多さに、身震いしながら手を繋ぎあっている。
巨大すぎる恩は、感謝以上に申し訳無さが先に立つ。ルイズがシエスタにしてやったのと同じ事である。
今後、二人は共に力を合わせて王への恩返しを行わなければならない。
同じ立場に居る者同士、お互いを支え合わんと必死にそれぞれの手を握り、重圧に耐える。
これを期に、二人の絆は余人の踏み込めぬ領域へと、更に深く結びついていくだろう。
王はまだ未熟な次の王に、信頼の置ける腹心を用意してやったのだ。
おかげでワルドの思惑は完膚なきまでに粉砕された。
にも関わらず、清々しさしか感じえぬのは何故だろう。
トリステインの由緒正しき貴族などと偉ぶってみても、所詮は有象無象の集まり。
自身の持つ力と比してみるにそうとしか思えなかったのだが、そのワルドをして同じ条件で同じ事が出来るかどうか、そう思える人物達に次々と出会う。
無論自分が彼等以下だなどと思ってはいない。
その全てを力づくで捻じ伏せる自信もある。
しかし、ワルドの目の届かぬ所でこういった存在が大量に生まれているかもしれないとなれば話は別だ。
482ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 20:01:02 ID:VlX9clKi
世界は、ワルドが今まで思っていた以上に、手強い相手なのかもしれない。

その思考が脳裏に纏わりついて離れない。
そんな考えを持つようになったのも、魔法も使えぬか弱い少女であったルイズの変貌が大きな要因である事は間違いなかった。

自国の事ではないので仕方がないとは思う。
当然といえば当然であるし、結果がこうなった以上、自分もお咎めなしとなりそうだ。
例のモット伯も直接ぶん殴ったルイズに恨みはあれど、こちらにはさして興味を示さなかったようだ。
何となく不愉快で、つい、ぼそっと口をついて出てしまった。
「私、空気じゃない?」
キュルケの言葉に誰も応えてくれないのも、まあ仕方が無い事なのだが。



学園へと戻るに当たり、てっきり馬車でも用意してくれるかと思っていたのだが、どうもモット伯の嫌がらせは続いているようで。
仕方なく馬を二頭借り受け、ルイズとキュルケは城を後にする。
道中言葉は無い。
馬を走らせているのだから当然だが、どちらも思う所あってか思考に耽っている。
半ばまで走破した所で、不意にルイズが手綱を緩める。
少し疲れたのかとキュルケも付き合い、二頭は並んでかっぽかっぽと歩きだす。
「ねえキュルケ」
「何よ」
声をかけときながら、その後の言葉を続けない。
キュルケも急かすような真似はせず、ただ馬の蹄の音だけが聞こえてくる。
ルイズは色々と頭の中で整理しているのだろう。
時折首をかしげ、かと思えばぽんと手を叩き、しかしまた眉根をひそめて考え込む。
どれほどそうしていただろう、ようやくルイズが口を開いた。
「あのさ、アンリエッタ様やワルド様、凄い私の事褒めてくれてたじゃない」
「そうねえ、立派だったってそう言ってたわ」
「あれ実は全然そんなんじゃないのよ。勢いっていうか、何ていうか……」
「勢いで王と謁見したの? それはそれで凄いと思うけど」
キュルケが混ぜっ返すと、ルイズは急にムキになって怒鳴り散らす。
「そういうんじゃなくて! その、さ。元々シエスタ助けに行ったのだってサンが危なかったからだし、
 そりゃモット伯のやり口が気に入らなかったのは本当だけど、そんな誇りだとか名誉だとかなんて、
 全然あの時は考えて無かったし。もちろん陛下に嘘言ったつもりはないわよ。それでも……その……」
何となくルイズが言いたい事は伝わって来た。
「みんなが言う程ご立派な自分でも無いのに、よってたかって褒められて、王にも大層なご配慮頂いて、今更へっぽこな自分に嫌気でも差したって事?」
てっきり怒鳴り返してくるかと思っていたのだが、ルイズは殊勝にも小さくコクンと頷いた。
「……名誉とか誇りとか大事だってずっと思ってたわよ。でも法を犯してまで押し通すなんて思っても見なかった。
 それが正しいって、そう思えたのだって、私がどうしたからじゃなくて……」
「サン……よね」
キュルケが言葉を続けると、またこくんと頷いた。
「あの子と居ると、自分がもっと頑張らなきゃって、もっと立派な貴族でなきゃって、そんな気になるの。
 使い魔に煽られてるなんて主人失格かもしれないけど、全然頭に何てこなくて、そうしてると何でか……」
「気分、良いわよね。どんな目に遭っても後悔なんて全然する気にならないのよ」
今度は大きく何度も頷く。
「そう! そんな感じよ! 後悔どころか、むしろそうしなきゃきっと自分が後悔してたって、そう思えるのよ!」
遠くを眺めるように地平線に目をやるキュルケ。
「本当……不思議な子よね」
483ゼロの花嫁10話:2009/01/18(日) 20:01:52 ID:VlX9clKi
「あの子と居ると、こうありたいって自分にどんどんなっていけるのよ。私が目指す貴族の姿に、そうだったらいいなあってそんな私に」
ルイズの方を見ていないので表情はわからないはずなのだが、ダンスでも踊っているような軽快な口調を聞けばどんな顔しているかは誰でもわかる。
たった今王との謁見を最高の形で決めて来た友人を、キュルケは複雑な想いで見やる。
「アンタもね」
「は?」
「何でもないわよ」
サンだけじゃなくて、アンタも充分不思議な生き物よ。と続けるのは止めにした。
ルイズに引きずられながらも負けられないと踏ん張っている身としては、それを素直にこのやたら強がったりヘコんだりと忙しい、無茶ばかりする友人に伝えてやる気にならないのであった。



二人が学園へ戻ると、正門前で燦とシエスタの二人が待ち構えていた。
ルイズとキュルケの姿を見るなり、二人は心配そうに駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫じゃった? 変な事されんかった?」
「お城に呼び出されたと聞きまして……やはり私のせいで……」
キュルケが抗議の視線をルイズに送る。その目が誤魔化したのではなかったのか、と言っているのでルイズは見えないフリをした。
責任を感じているだろう二人の表情は晴れない。
ルイズは、良いも悪いも責任も、何もかもを腹の内に飲み込んで、にかっと笑った。

「別に、何も無かったわよ」



以上で投下を終了します。またも長文で恐縮です。次回も何とか一週間以内に上げられるよう頑張ります
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 20:07:49 ID:+IhFwBN0
しえん
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 20:11:59 ID:+IhFwBN0
と、支援がまにあわなんだ。
つい読みふけってしまったからw

ともあれ花嫁の人乙!
そしてGJ!

次回の更新、お待ちしています。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 20:47:16 ID:r4W2BW8r
花嫁の人乙ー

PS
>>じゃあ次はヘルミーナとルイズ。
しんみりしちゃったじゃねーかコンチクショウ
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:03:36 ID:C6AP7/tj
しんみりした後は「愛しのシェフィ」や「ZERO A EVIL」で優しい気持ちになろう。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:12:38 ID:t5JTCyk3
王が出て来たの初めてじゃね?
というワケでniceでした

>>486
次は・・・・・・・小ネタで「Let's GO ! ZEROPANMAN!」
「『ぶん♪ぶん♪ぶん♪』」「今日も朝からのんびりと」
などを読んで見られてはいかがでしょう
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:18:47 ID:c5EkkGWA
>>488
原作自体開始時点で既にトリステイン王死んでるからな。
このスレでも王が存命のパターンは初めての気がする。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:26:49 ID:e64IvUa6
どうにも王様についてさほど思い出せることがないんだが、
死因とかって詳しく描写されてたっけ?
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:45:32 ID:7OIEf9UC
よくわからないけど案外風邪でころりといっちゃったとか・・・

現代でも風邪じゃなくてインフルエンザでなっちゃうのがいるぐらいだし。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:49:45 ID:CR09xgGk
箇条書きのメモで、一巻分のプロット作ってるけど、
そこから「読める文章」を作るのって難しいんだね。

ここに投下している作家さんたちは本当に凄いよ。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:51:54 ID:/pRRckmi
トリスタニア饅頭をのどに詰まらせて…
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:58:23 ID:Hs4wHjrI
どこの魔王だw
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 21:59:03 ID:FZRh0x0r
関係ないがパタリロのお父さんはインベーダーゲームのやりすぎで死んだそうだw
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:03:12 ID:GVBnznEQ
ふくぜうし
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:06:39 ID:Ovf0PGae
>>491
インフルエンザは、凄く恐い病気だぞ?
何しろ、今世紀初頭のスペイン風邪(インフルエンザ)の大流行では、5000万人の死者が出てる。
世界人口が20億に届いていなかった時代の話ね。
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:08:13 ID:RhXyTL/0
第二次世界大戦の死者に匹敵する数が死んでるしな
黒死病みたいだ
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:08:18 ID:QHh1Wuuo
福沢祐巳、藤堂志摩子、島津由乃を召喚
という言葉が思い浮んで仕方がない、マリア様がみてる4期OP
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:10:42 ID:c5EkkGWA
>>497
今世紀初頭って丁度今頃がそれに当たるよね。21世紀の。
うん、20世紀初頭だって言うのは分かってるんだけど無性に突っ込みたくて……
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:11:46 ID:yG0mH6H3
風邪をひいたんで薬を飲もうとして誤って劇薬を飲んでしまいポックリと…
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:12:28 ID:K+kTDgvx
>>497
今世紀?
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:22:18 ID:A2jNERG9
人類滅ぼすほどの病原体ったらやっぱTウィルスかね
あとはゴーデス細胞やDG細胞
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:23:08 ID:CjKzCBNZ
>>492
召喚シーンと契約シーンだけならwikiに見本や参考資料が沢山あるからいいんだけど、
話を進めれば進めるほどその「見本」が少なくなっていくと言う罠が待ち構えている。

そしてある程度の数を書いてからふと気付く。
「もしかして俺の書いた話も見本にされてるんじゃね?」と。

う、うわああああ、俺の話なんか見本にするんじゃねえよう、○○さんとか○○さんとか、もっといい話を書く人がいっぱいいるよう………と勝手に悶えたりするのが最近の俺の症状です。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:25:44 ID:w9OhoEvu
>>503
致死性ウイルス“マルバス”とか、三日熱とか。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:32:14 ID:FZRh0x0r
>>503
変な病原菌に感染しているキャラ召喚とかありだろうか?
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:35:18 ID:gR3z1xov
小ネタですでになかったっけ?最近見た覚えが。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:37:27 ID:0dX1IcBb
秘薬が有るから大丈夫なのかも知れないけど、遠い地方やら異世界から召喚されたってだけでも免疫のない病気くっついてきそうだけどな。
ゲートで排除でもされてるのかね。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:38:25 ID:DoF35tBe
変異種のFOXDIEとかきたらアウトじゃね
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:42:53 ID:y969rteE
ドラゴンボールでふと思ったのだが・・・
ゼロ魔キャラで筋斗雲に乗れるのって誰がいるだろう?

とりあえずパッとおもいついたのがカトレアだったんだけど・・・
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:47:59 ID:g+DvLz7J
今しがた一気買いしたガイバーを23巻まで読破した
アプトム、冷酷なフリして自分のために犠牲になった男の死に吼える主人公より主人公らしいあんたが大好きだ
主役になったこっちの続きもまってるよ!
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:48:16 ID:rGPA/CrP
sageるように気を付けろ。
乗れるのは・・・きゅいきゅいとテファじゃないかな。
他は無理そうだ。
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 22:52:25 ID:faIwFUFq
>>510
テファあたりは乗れそうだね。
一方、「ふんだ、ああああたしだって乗れるんだから!ご主人様、よいこなんだから!」と言うはいいが盛大に転がり落ちるルイズw
したたかに打ち付けた腰をさすりながら涙目で一言、「あによ!」。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:00:46 ID:daT5LM6e
幼少期悟空に股間をパンパンされるルイズか…
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:05:59 ID:sq/LMJMJ
人修羅の人マダー(´;ω;`)
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:06:03 ID:63/p0dmZ
>>514

そして玉がねー!→ノーパン→悟空爆破(でも死なない)となるのですねわかります。
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:07:07 ID:AHMVTrcF
>>506
ファイレクシアの疫病王を召喚しようぜ!
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:07:41 ID:+l5Ptg8m
ご都合主義で全部スルーされてるけど、キスとか自殺行為だよなほんとに…。

口内で平衡に達してる本当は致死性の細菌ウイルスなんてうじゃうじゃいるのに
キスとか危険すぎるって話題にならないなw
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:10:06 ID:r4W2BW8r
>>514
幼少ってか、1話でブルマと会う前の悟空さ召喚は考えてたっけ
最初は玉が有るか無いかで性別を判別
で、翌朝キュルケの股間も叩いて判別した後キュルケに
「普通の女は乳見りゃ判別できんのよ、あっとあなたのご主人様じゃそうはいかないわねヲホホ」
とからかわれた後
最初の授業でルイズを馬鹿にしたマルコデブの乳を見て
「オメーは女だな。乳が有るから判る」
「ぶ、侮辱だ!決闘だゴルァ!」
って感じのを

でも悟空なのにかめはめ波が撃てないんじゃらしさが無いよなぁって事で断念
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:15:00 ID:XaP8aFUf
強さとして適度なのはレッドリボン軍との戦闘中ぐらいの悟空だろうな
カリン党登った後ぐらいになると手に負えない強さになるし
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:15:19 ID:c5EkkGWA
>>509
オールド・スネークがMGS4のミッション前に召喚されたらやばいな。
新しいFOXDIEを投与できないままどんどん寿命に近づくから、一定期間過ぎた途端にハルケギニア壊滅するぞ。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:18:26 ID:JfEeRoDw
>>517
落ち着け、本気でみんな死んでしまうぞ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:20:20 ID:qEqCpzCA
尻尾あるからには亜人扱いだからルイズ大喜び。
でもものすごく食うからすぐ涙目。
自分で取って来いと言った日にはウェルダンテがウェルダンステーキに。
そしてギーシュが「け、決闘だ〜〜〜!」
多分シルフィードも食われます。

かめはめはは亀仙人との修行前でも見よう見まねで使えたから、
フライパン山イベントの後なら可能かな。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:20:31 ID:RhXyTL/0
>>506
小ネタにはナウシカとかマリア様とかあるな
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:27:13 ID:Dt/vmseH
そういや装甲騎兵ボトムズのキリコが召喚されてるけど、キリコの意思とは関係なく
関わった人間は物理特性すら変えるキリコの生存ゲームへの参加と同義となり、
経済的にも政治的にも利得は得られないとか。
キリコに惚れたアン様の突拍子もない行動にマザリーニさんの胃は限界を超え、
ワルドはヘタれ、エレオノール姉さまの嫁ぎ先は見つからず、ルイズの胸はまったいらのまま。

さすが触れ得ざるもの…関わったものを例外なく破滅させのな。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:40:30 ID:ObnCm9Sk
>>525
原作そのまんまや
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/18(日) 23:52:43 ID:A2jNERG9
空想科学大戦のカラーウィルスも厄介じゃね。
殴られただけで感染して暴徒になり、さらにねずみ算式に数を増やしていく。
ちなみにレッド=キュルケ、ブルー=タバサ、ブラック=ルイズ、ピンク=テファ、イエロー=スカロン
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:00:32 ID:LaziypKH
今日はもう無いのかな
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:07:15 ID:51B49eMM
>>528
日付が変わっているからあと24時間あるZE!
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:17:25 ID:DZZ/pCcY
24日後の感染者とドーンオブザデッドの感染者とバイオハザードの感染者を召喚
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:18:41 ID:zG9jnMEg
書いたものの投下にビビってる奴は多いはず。俺とか
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:19:04 ID:i06z0LFa
2424言ってるとバウアーさんが来るよ!
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:20:03 ID:hQCfDWXc
ペールゼンファイルズには男装の美少女がいたっけな
思えばボトムズにしては思い切ったな…あくまで小説版だけだが
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:20:27 ID:+Gkp3Ysv
ジャックバウアーか、当然24時間の使い魔って題名で二四時間かけて24話投下するんだよな。
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:24:43 ID:c0RTxHeL
バウアーなら24時間で地球に帰ってしまうだろ。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:25:40 ID:C+vbwc+k
>>519
トリコが召喚されても使い魔たちはみんな食われそうだな。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:26:00 ID:+Gkp3Ysv
でもそれまた何ヶ月か何年かしたらまた戻ってくるぞ。
そしてまた二四時間で解決するな。
538ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:26:22 ID:GQHt+oY1
だいぶ間が開いてしまったのですが、
19話が完成したので10分後くらいに投下してもOKでしょうか?
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:29:04 ID:7noMB1sF
なん…だと…
OK。そして支援!!
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:33:27 ID:nrxkwg5c
大喝采な支援
541ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:33:45 ID:GQHt+oY1
「と、勇ましく出て行ったは良いものの、ついた小屋には既に誰も居なくて、
土くれのフーケのその後の行方は不明。
フーケ捜索隊はそのまま学園への帰路を辿らざるを得なくなったと…。」
「うるさいわねぇ…。全く…とんだ無駄足だったわ。」

フーケ事件から丸1日が経過した。
ルイズ達4人のフーケ捜索隊は、結局土くれのフーケを発見する事はできなかった。
海馬が口にしたとおり、森の小屋にいって返ってくるだけの結果になってしまったのだ。
もっとも、その捜索隊の中にフーケが居た上に、捜索の指令を出したオスマンもその犯行に荷担しているともあれば
見つける方が無理というものだろう。
結局、盗まれたとされる『召喚銃』はそのままコルベールの私物と相成り、
事件をたくらんだオスマンの思惑通りに事は進み、事件は幕を閉じたのであった。
が、事件として片をつけたものの、フーケを捕まえる気満々で出て行ったルイズからすれば
不完全燃焼であり、その鬱憤がいまだ晴れずにいたのだった。
そのためルイズは、休日であるにもかかわらず、朝から部屋で愚痴をこぼすばかりである。

「まぁ、いいわ!過ぎた事をうだうだ言ってても仕方ない。
それよりセト。今日はこれから街まで買い物に行くわよ。」
「あぁ、いってこい。」
「えぇ、いってくるわね……じゃない!あんたの買い物に行くのよ!」
「…今特別に必要なものは無いと思うが?」

海馬は見当がつかないという顔をしているので、ルイズははぁ…とため息をついた後、ビシッと海馬を指差す。

「服よ!前にとりあえず下着だけは用意させたけど、毎日同じ物を着っぱなしっていう訳にもいかないでしょ。」
「ふむ…」

海馬の服は、召喚された日に着てきたもの1着しかない。
いきなりデュエル中に召喚されたのだから、それは仕方が無いことだろう。
キッチリと旅行支度をして『さぁ、召喚しろ!』という状態で召喚されることなどあるはずも無い。

「そのほかにも日用品なんかを買い揃えたりしなきゃいけないから…城下町まで行くわよ。」
「ふむ…いいだろう。」
542ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:35:36 ID:GQHt+oY1
学院の正門前には、馬が2頭用意されていた。
(ふん…乗馬をする機会など無いと思っていたが。あの英才教育…無駄にならなかったな)
さっと、苦も無く馬の背にまたがる海馬。
ルイズはといえば、これもまた苦も無くまたがっていた。
てこずる様子も無く馬に乗ったルイズに、ほう、と感嘆の声をかけた。

「貴族は馬車の方に乗る専門だと思っていたがな。なかなか様になっているじゃないか。」
「乗馬は得意なのよ。さ、いくわよ!」

そういって二人を乗せた馬たちはそれぞれ走り出した。


トリステインの城下町、ブルドンネ街
トリステインで一番の大通りであり、その道の続く先には、トリステイン宮殿が存在する。
大通りとは言うものの、道幅は5メートルほどであり、また人の通る数も多いため非常に通り辛い。
ルイズと海馬は、人を掻き分けるように通っていた。

「狭い道だ。これだけの人が通るのだから、もっと広く区画を作ればよいものを…。」
「なに言ってるのよ。ここはトリステインでも一番大きな通りよ?」
「交通量と道幅のバランスが取れていない。これだけ人が詰まっていれば、スリなどが横行するだろうに。」
「えぇ、まさにその通りよ。特に、魔法なんかを使われたらおしまいね。」
「?貴族がスリをするのか?」

意外そうに海馬が尋ねた。

「貴族=メイジだけど、メイジ=貴族ではないのよ。例えば、家が没落して山賊まがいの事をしているメイジもいるわ。
それに…裏通りでは人攫いみたいな事件もおきているらしいし…。
姫様のいらっしゃる城の近くにもかかわらず、あまり治安がよくないのよ。」
「ふむ…」

犯罪が、人の集まる場所でおきやすいのはトリステインでも地球でも変わらないようである。
543ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:37:58 ID:GQHt+oY1
警備兵やらの詰め所を各所に作って巡回させるなど対策もあるだろうが、やはりこの道幅ではどうしようもないだろう。
(しかし、おれが気にしてどうなるという事でもあるまい…。)
と、海馬はふと、左手に何か触れるような感覚があることに気づく。
目を向けてみると、ルイズの右手が恐る恐る触れそうになっては離れるを繰り返していた。

「どうかしたのか?」
「ふぇっ!?」

声に驚いたのか慌てて手を引っ込めるルイズ。

「あ、あ、あ、ああああのその、こ、これだけ人が多くて、瀬、セトが迷子にでもなられたらこ、困るから!
そ、そうよ!しかたなく、仕方なくて、ててて手をつな…ひゃっ!」

海馬はルイズが言い終わる前にルイズの手を握った。

「そうだな、貴様が迷子にでもなられたら面倒だからな。」
「ちがっ、私じゃなくて、あ、あんたの方が心配なのっ!この間だって、勝手に3日もどっかへふらっと…」
「さて、まずはどこの店だ?」

そういって海馬はルイズの手を引いていく。

「ちょっと、人の話を…!って、そっちじゃないわよ!服屋はこっち!」

悪態をつきながらも、どこか楽しそうに、ルイズは海馬とともに街を歩いていった。
…が、服屋に入ってからが問題だった。
ルイズ達が入った店は店主が意匠を施したものが人気の店で、トリステインでも有名な服屋であった。
ルイズもはじめの内は「これなんかいいんじゃない?」と、いくつか見繕ったものの、
やれ柄が気に入らないだの、裾の形が気に入らないだの、色使いが悪いだの、生地のさわり心地が悪いだのetcetc…。
店主のコメカミがぴくぴくしているのを気づきもせずに悪態をつくものだから、ルイズは気が気ではなかった。
結局2時間かけて店の中の商品を見回った上で、「ろくなものがない」
などと言い放ったものだから、店主は笑顔に憎悪をチューニングしたような恐ろしい表情を浮かべていた。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:39:26 ID:lwpcJs/3
支援
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:40:52 ID:cJdIy9k3
支援が遅れてしまったこと


本当にすまないと思っている
546ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:41:49 ID:GQHt+oY1
流石にこれはまずいと思ったのか、慌ててルイズは海馬を連れて店を出たものの…
その後もいくつかの店にも回ったが、全ての店で同じような結果に終わり、結局何も買わずに時間だけが過ぎていた。

「あぁ…2度とあのお店には行けない…。」

軽食も兼ねて入った喫茶店で、机に突っ伏しながらルイズはため息をついた。

「全く…ろくな物がないな。」
「言っておくけど、もう私の知っている店はないわよ?」
「そうか。では仕方がないな。…おい、そんな格好をしていると制服にしわが寄るぞ。」
「なにいってるのよ。学院の制服には固定化の魔法がかかっているから、放り投げたって皺なんかつかないわよ。」
「そうか。」
「そうよ。」

そんな話をしながら、運ばれてきたお茶をすすっていると、ふと、ルイズは見慣れない看板が目に付いた。

「あれ…?あんなところに武器屋なんかあったんだ。」
「武器屋か…。まるでファンタジーのようだな。」
「?どういう意味よ。」
「俺のいた世界では、個人が武器を持ったりする事のない世界だったからな。
必然的に武器屋などという商売は成り立たないし、あるとすれば昔話なんかででてくる程度のものだ。」
「武器がなかったら、平民はどうやって身を守るのよ。」
「武器を持っていなかったら身を守れないような事件に遭遇する事が、あまりないからな。」

もっとも、海馬の場合は拳銃を突きつけられても、カードを使って何とかしたり、
カードの詰まったジュラルミンケースで相手をぶん殴ったり、
個人的にジェット戦闘機を持っていたりと、『平民』というところとはかけ離れているから、実際には参考にならないわけだが。

「ふぅん…平和なのね。…あ!」
「なんだ?」
「せっかくだから寄っていきましょう?」
「どこへだ?」
「武器屋」





547ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:44:19 ID:GQHt+oY1
ルイズ達が入った店内は、昼過ぎであるにもかかわらず薄暗く少しかび臭い、お世辞にも繁盛しているとはいえない店だった。
店主はといえば、50台くらいのおっさんで、客など来るまいとタバコを吹かしていたのに、
いきなり貴族!それも若い男女という武器屋には似つかわしくない組み合わせが入ってきたので、訝しげに口を開いた。

「旦那、貴族の旦那。うちは真っ当な商売をしていまさぁ。お上に目をつけられるようなことは、これっぽっちもありませんよ。」
「客よ。」
「おい。俺は剣などいらんとさっき言っただろうが。」
「いいじゃない、持ってて損するような事ないでしょう。」
「…えっと、こちらの方がお使いになるんで?」

入店早々買う買わないで言い争いになっている二人をみて、とりあえず会話に入ろうとしてみる店主。
せっかく来た金持ちの客を、逃がす手は無いと思ったのだろう。

「最近じゃ、貴族の間でも下僕に剣を持たせるのが流行ってますからねぇ。
そう言う方々が選ぶとしたら、このレイピアなんぞでしょうか。」

そういうと店主は、立てかけていたレイピアを手にとり、ルイズ達に見せた。
長さはおよそ1メイルほどで、小さめなハンドガードがついており、見た目には地味だが質実剛健という感じの代物であった。

「ん〜…もっと大き目のがいいんだけど…セトあんたはどう…セト?」

意見を聞こうと海馬に声をかけたが、横にいたはずの海馬はまったく別のところに言っていた。
海馬はというと、いつの間にか鎧兜などが並べられている方に行っていた。
と、そのなかに、武器や防具とは少し異彩なものが混じっていた。
一言で表現するならば、鎖である。
長さは1メイルあるかないかといったところであり、鈍い光沢を放っていた。
ただし、何か分銅やら鎌やらが付いていれば、まだ武器ともいえるのだが、これには何もついておらず、
武器屋に置いてあるのは少し不思議な商品であった。

「おい、店主。この鎖は何だ?」

海馬はその鎖を手にひょいとつかむと店主の方へ振り向いた。

「あぁ、そいつはですね。最近仕入れたもんなんですがなかなかおもし―」
「ちょっと!人に剣見させておいてなに遊んで…なにこれ。」
「あっ!そいつを二人で持っちゃあ!」
『は?』

548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:46:43 ID:xSWTUNS+
支援
549ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:47:27 ID:GQHt+oY1
ルイズが海馬の持っている鎖を手に取った瞬間、ギチギチッっと金属のすれる嫌な音がして、
鎖が伸び、ルイズの左腕と海馬の右腕とを力強く結んだ。

「あ〜あ…やっちまった…。」
「ちょっ!何なのよこれ!」
「くっ…外れん!」

腕に巻きついてしまった鎖をぐいぐいと引っ張ってみたり、引っぺがしてみようとしたが、なかなか外れない。
まるで手錠のように、ルイズと海馬をつないでしまっていた。

「すみません。そいつはあるメイジが試しにと作ってみたマジックアイテムでして。
『二人で触ったときにその二人の腕をつなげてしまう拘束用のマジックアイテム』
って言う代物なんですがね。
まぁ、頼みって言うかねぇ断れなくって、仕方なく置いておいたんですよ。」
「なんかえらく使用法が限定しているマジックアイテムねぇ…?」
「何でもいいからさっさとこれを解け!!」
「はっ、はい!すぐに鍵を!」

海馬の剣幕に押され、鍵を探しに行く店主。
やれやれ、と二人ともとりあえずそこにあった椅子に腰掛ける。
と、そのときなぜか店の中に口元に『銀色で光る金属的な何か』を咥えた黒猫がいることに気が付いた。
なぜだろう…凄く…嫌な予感がする。
恐る恐るルイズは店主に尋ねてみた。

「ね、ねぇ…。店の中に黒い猫がいるんだけど…。」
「えっ!?あぁ、そいつは近所の野良でさぁ。良くうちの店に来ちゃあ筆とか咥えてどっかいっちま…」

店主もたぶん、いや確実に、ルイズや海馬と同じ『嫌な予感』が脳裏を走った。
ルイズはもう一度、その『銀色で光る金属的な何か』をよく見てから、店主に尋ねた。

「も…もう一つ聞いていいかしら?その…鍵って…銀色で、細長くて、緑色の宝石がついていたりする?」
「………はい。」

返事と同時に黒猫は表へと駆け出した。

「やっぱりぃいいいい!!?」
「叫んでいる暇はない!追うぞ!」

黒猫の後を追ってルイズ達も店を飛び出していく。

「ちょっ!旦那方!?ええぃ!デル公!ちょっと店番たのまぁ!」

そう言うと店主は、さび付いたボロボロの剣を引っこ抜き、カウンターの椅子に縦にぶっ刺して
その剣に声をかけると、そのままルイズ達の後を追って店から出て行ってしまった。
ぽつーん…と店の中に残される椅子に刺さったボロボロの剣。

「え…?嘘?俺の出番ここで終わりかよおぃぃ!!?
嘘だろ?武器屋まで来たのに買わないとかありかよ!?おぃぃ!!」

錆びついた剣はカチャカチャと鎬を鳴らしながら叫んだが、悲しいかなその叫びを聞くものは既にいなかった。



550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:49:59 ID:xSWTUNS+
リバース効果発動!不幸を告げる黒猫!
支援
551ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:51:03 ID:GQHt+oY1
鍵を加えながら裏通りを疾走する黒猫。
さっきまでは気ままに歩いていた黒猫が、走って逃げるようになったのにはわけがある。
武器屋を出てからずっとものすごい勢いで追っかけてくる2人の人間がいれば、
逃げる気がなくっても逃げる。
それが動物の本能であった。
一方追う側のルイズ達は、ゴミ箱を蹴飛ばし鉢植えを壊しながら、狭い道を逃げていく猫を追っかけていた。

「もー!!どうしてこうなるのよー!」
「泣き言を言っている場合ではない!見逃したら最後、二度と見つけられんぞ!」
『旦那!嬢ちゃん!』

と、どこからかあの武器屋の店主の声がした。
見回すと、ルイズと海馬、そして黒猫の進行方向にいつのまに回り込んだのか、店主が立っていた。

「挟み撃ちにしやすぜ!」
『了解した!』

店主が持っていた網を、猫に向けて振りおろす。
驚いて止まればそのまま網で確保、仮に後ろに振り返ろうとも、既にルイズ達が迫っている。

「もらった!」「いや、まだだ!」

二人が真逆の感想を持った瞬間、猫はなんと店主の方向に向けて加速した。

『なぁっ!?』

猫はそのまま店主の肩まで駆け上がり、そのまま蹴って駆け抜けた。
店主はまるで世界が遅くなったかのように感じるほどゆっくりと、自分の肩の上から飛び越えていく猫を見た。

「俺を…踏み台にしたぁ!?」

店主は空ぶりに終わった腕のふりと、あっけに取られて視線を離してしまった事により、大きくバランスを崩してこけてしまった。

「ぐあっ!?いってってて…」
「大丈夫!?」
「あぁ…それより猫を!一度見失っちまったら、見つける手段はねぇ…。
前に一度追っかけては見たものの、宮殿の辺りで見失っちまったんだ。
あいつが持ってった物をどこに隠してるかは…」

ハッ…と顔を上げると、鍵を咥えた黒猫はまた走り出してしまった。
しかも、人通りの多い大通りの方へ…。

「まずいわっ!」
「ちっ…人ごみに紛れ込まれたら…」
「急ぐわよっ!」

手に結びつけられている鎖などないかのごとく、息の合った動きで二人は再度、
黒猫の追跡を開始した。
細長く走りづらい裏道や、民家の屋根の上、他人の家の庭などを自由気ままに走り抜ける猫を追うのは流石に至難の業であったが
いろいろなものを壊しつつ走りつづけていると、少し開けたところにでた。

「って…ここはっ!?」
「武器屋の親父の言っていた通り…やはりここに来たか…」

そびえ立つ大きな門―
白く輝き、他とは比べ物にならない威圧感を豪華さを持つ、トリステインで最も重要な建物―
トリステイン王城
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:53:22 ID:xSWTUNS+
これこそ魔法除去でよくね?
支援
553ゼロの社長:2009/01/19(月) 00:54:12 ID:GQHt+oY1
以上で投下終了です
支援ありがとうございます
…時間開いた割に短くってすみません
ただ、変なところできるよりは一旦ここで区切ったほうが良いかなぁと…
忙しい事があらかた片付いたので、やっとまとまって書く時間が作れそうですので、
一人でもお待ちいただければ…嬉しいなぁ
ではでは
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:55:58 ID:xSWTUNS+
投下GJ!
オリ展開のうえに、いいとこで終わったのがもどかしい
続き楽しみにしてます
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:56:52 ID:po+9U3DB
乙です。
デルフwメタ発言自重w
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 00:59:55 ID:tzWgZrVZ
支援できなかったが社長の人乙!!
楽しみにしてたよー!
つづき待ってるぜ!

>>552 それはドラえもんの映画であの道具使ったほうがよくないとか
言っちゃうくらい野暮ってもんだぜ!
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 01:14:55 ID:F3kSt9eo
そういやデッキに魔法除去細菌兵器持ってたな。めっちゃメイジ殺しやんwwww
558ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:15:32 ID:i6kULtuk
ゼロの社長さん乙です。哀れデルフリンガー、このまま消えるのか……。

自分も書きあがったので、十分後位に投下します。
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 01:17:41 ID:JeKn94Rs
>>552
なまじ、手錠に似ているもんだから、先入観でそういう発想に行きつかないのかも。
ルイズも、そういう発想は苦手だし、タバサとかコルベールあたりに期待?
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 01:18:00 ID:8w3rCO6D
561ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:26:29 ID:i6kULtuk
ゼロの魔王伝――13

 Dから借りた金の塊を皮の子袋に入れたルイズとDの姿は学院の厩舎にあった。関係者の利用の為に常時複数の馬と、その世話係が常駐している。
 厩舎の中には生徒や教師の使い魔らしき額から角の生えた白馬ユニコーンや、雄々しい翼を備えた天馬ペガサスの姿もあった。
 ルイズが事前に虚無の曜日の外出用に申請し、選んでいた馬の所へと向かう。共に栗毛の若い馬達だった。
 よく躾けられ、また人間と長く接してきたために従順な馬の様子に、ルイズは満足げだった。
 Dが無言で一頭の馬に近づき、その首筋を右手で撫でた。ルイズが思わず嫉妬の炎を燃やしてしまいそうになる位優しい手つきだった。
 こういう他人に対して冷たい、ないしは無関心な態度を取るタイプによくいる、人間以外の生き物には多少なりとも優しさを見せる人種なのだろうか?
 羨ましい、と思わず口にしかけ、いくらなんでも馬に嫉妬するのはどうなのかしら? と自制し、ルイズはぴしゃぴしゃと軽く頬を叩いた。
 最近はこれくらいで正気を維持できるようになってきているあたり、ルイズの精神力もたいしたものだ。
 実は虚無の曜日のお出かけに、馬車ではなく馬を選んだのにはちょっとしたルイズの思惑があった。
 何を隠そう、いや、別に隠す必要はないのだが、ルイズの数少ない特技の一つは乗馬なのである。
 自分でも時々、私って本当に主人なのよね? と首を傾げる事のあるDとの関係に少しでも改善の糸口を見出すべく、自分の良い所をDに見せようという、行き当たりばったりな感のある魂胆があったのだ。
 良くも悪くも深く物事を考えるのに向いている性格とはいい難いルイズなりの、とりあえず地道な事からコツコツと主人としての立場を確立させようという、涙ぐましい考えである。

 あ、でも途中で私の馬が怪我をしたりして、Dの馬に相乗りするって言うのも一つの手ではないかしら? あらら、これって名案? ナイスアイディーア? ルイズちゃん、お利口ねえ、みたいな? やだ、私ってばお利口さん☆
 いえ、落ちついて考えなさい、ルイズ。むしろ狙いすぎて変に思われるかもしれないわね。それならいっそシンプルにご主人様を乗せなさいと最初から相乗りさせるのも…………。
 だめね。変に口のきき方を間違えたら、首は大丈夫でしょうけど腕位は落とされそうな気がするわ。というか睨まれたらそれはそれで私の心臓が止まりそうだし。
 私のね、寿命がね、きっと何年単位で縮むと思うのよ。ていうかもう十年くらい縮んでいるのじゃないかしら?
 というかDの左手の人面疽の所為で二人っきりっていう状況がまずあり得ないのよね。鬱陶しいわね。あいつ――どうすればいいのかしら? 
 あいつ口うるさいしなにかと私の事をからかうし第一Dに釣り合ってないのよなによあの皺枯れ声はちゃんと喉ついてるのいつも下品な声でぺちゃくちゃしゃべんじゃないわよDと私の会話の邪魔するんじゃないわよ切り落として火竜山脈に捨ててやろうかしら?

 と、これまで頭の中が一機に沸点まで達するだけだったルイズが、同時にあくまで冷静で客観的な意見も少しくらいは考えられるようになっているあたり、アレな方面でもレベルアップが見受けられている。
 Dがルイズに向ける視線に、生暖かいモノが混じる様になるのも、そう遠い未来ではないだろう。ルイズに散々罵詈雑言を浴びせられているとは知らぬ左手が、実に感慨深げに呟いた。

「春になるとああいうのが涌くというが、あそこまで見事な具体例は久しく目にしておらなんだなあ。貧乏くじではないとは思うが、外れでくじではあるか? 身体の方は貧乏じゃが。けけけ、おい、一つ、でかくなるようにお前が協力してやったらどうじゃ?」

 左手の声には答えず、傷一つない黒瑪瑙を象眼したようなDの瞳が、先程からぶつぶつと何やら呟いているルイズの方へと向けられ、一瞬ほど止まってから更にD自身の後方へと流れた。
 頬と髪を優しく撫でて行く春の風に乗ってきたかすかな足音と、香水の香り、さらにかすかな気配を察知したのだろう。
 昨日のヴェストリの広場での邂逅を再現するかのように、色香とたちまち身を焼いてしまうような情熱の炎が服を着ているようなキュルケ。
その傍らには分厚い本と杖を抱えた、透度の高い湖の底の様にかすか青みを帯びた髪と瞳の色がとりわけ美しいタバサがいた。
 足して二で割っても、これまた人の目を引くような美貌と個性を持った美少女が生まれてきそうなこの二人は、学友であると同時に親しい友人の間柄にある。
562ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:28:17 ID:i6kULtuk
 天敵たるツェルプストーの出現に、むむ、とあからさまに眉を寄せるルイズを尻目に、キュルケは人懐っこい笑みを浮かべてウィンクした。
 相手はD――ではなくルイズだ。からかうような、挑発するような、どちらとも言い難い仕草だ。
 男心を弄ぶ天性の才とはまた別に、人をからかう事を面白がる気性と才能の二物を、天から与えられているようだ。

「おでかけかしら、ルイズ? まあ、見れば分かるけれど」
「そうだけど、なによ。貴女達も馬で出かけるの?」
「いいえ、ただ二人が朝から出かける様子が窓から見えたから、タバサを誘って見に来てみたのよ。ね、タバサ?」
「あれは誘ったとは言えない。本を読んでいる途中で無理やり」
「ああん、つれない事を言うのね、私のタバサ! でもいいじゃない。ミスタ・Dとルイズの二人って、傍から見ていて面白いし」
「あのね、私達は見世物じゃないのよ」
「それは分かっているわ。見世物にしたらハルケギニア中の人間が見にくるでしょうけれど。もちろん、ミスタ・D目当てでね」

 鎖に繋がれて、檻に閉じ込められて見世物に晒されているDを想像し、ルイズはなんだが自分が天に唾吐くような事を考えたとんでもない気持ちになって背筋を振るわせた。
 そんな風にDを扱おうものならば、そういった心根の連中は皆、例外なくDの刃の露と消えて、一刀の下に斬り伏せられた無残な骸が、流れ出た血で赤く染まった大地に累々と横たわるに違いない。
 その想像を振り払う様に、Dの手で簡単に掴めてしまえそうな位細い首を、ぶんぶん横に振ってルイズは気を持ち直した。

「これからDの為に剣を買いに城下町までちょっと出かけてくるのよ。用が無いのなら部屋に戻るか、あんたのお友達の男の子にでも声をかけたら?」
「へえ、ミスタの為の剣ね。そう言えば決闘の時に抜いた剣って真ん中くらいから折れていたわね。それでもあんな風に青銅のゴーレムを切り裂くあたり、すごい業物なのかしら?
 でもそうね、街に出掛けるのなら、私達も付いていこうかしら? 特に予定もないし、タバサと二人でいるのも楽しいけど、貴方達と四人でいる方がもっと面白そうだし」
「Dの買い物に行くのに、なんであんた達を連れて行かなきゃいけないのよ!」
「だって、剣を買うなんて言うけど、他にも普段の着替えや寝具とかも必要でしょ? ルイズ、貴女は殿方の服を見繕った事なんてないでしょう? 私がアドバイスしてあげるわよ。それに、タバサが一緒なら馬よりも早く城下町まで行けるしね」

 ね? とキュルケに声を掛けられたタバサが指を小さな口にくわえて、ぴゅい、と短く吹いた。
 その指笛の残響が耳から消え果てる位になってから、ばさ、ばさと大きな翼が風を捉えて羽ばたく音が聞こえはじめる。
 ルイズがキュルケの言葉に思い当たる事があり、はっと空を見上げた。その先には使い魔召喚の儀式の折に、羨望を込めて見つめたタバサの使い魔がいた。
 朝の清澄な大気をゆうゆうと広げた翼に捕まえて、サファイアを繊細な神経を持った職人が手に掛けた様に美しい、青の鱗を持った竜であった。
 竜種の中でも最も飛行速度が速く、また航空距離の長い風竜の幼生で、名前は風の妖精から取り、シルフィードという。
 幼生とはいっても、伸ばした翼の両端は六メイルを越え、キュルケとタバサに加えてDとルイズの合計四人を乗せて空を飛ぶ事も難しい話ではなかった。確かに地を駆ける駿馬よりも、空を行くシルフィードの方が早い。
 馬達はさすがにシルフィードの姿に怯える様子を見せたが、当のシルフィードは緩やかに着地して、ごつい顔の割につぶらな瞳で興味津々と言った様子でDを見ている。青い瞳に、この若者は果たしてどのように映っているのだろう。

「どうせ買い物するのなら時間をかけてじっくりと選びたいし、それなら移動に掛ける時間は出来るだけ短縮するのが賢明ではなくって。ねえ、ルイズ?」
「それはまあ、そうだけど……。う〜、でも」

 とここでルイズはDをちらりと見る。懇願しているような、すがるような、あるいはご主人様の考えくらい読み取ってよね、と命令しているような、なんとも複雑なルイズの視線であった。
 Dはルイズの期待を裏切る方向で答えた。他人の意見を汲む事を滅多にしない青年と言う事もあるが、キュルケの言う通り合理的だからだろう。

「言う通りだな」

 Dが答えただけでもマシというものだが、ルイズはがっくりと肩を落とした。なによなによ、せっかく私がDと、“二人きりで”……妙なのが左手にくっついているけど、出かけようと思っていたのに!
563ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:29:37 ID:i6kULtuk
 無言のまま少しだけ頬を膨らませて、小振りな桃の果実みたいな顔で睨んでくるルイズの視線を意にも介さず、Dはどうする? とルイズを見つめ返した。
 Dの視線にたちまち叛旗の炎が胸の中から消え果てて、う〜、とちょっとだけ唸ってから、ルイズはもういいわよぅ、と半ば自棄になってほそっこい首を縦に、こくん、と動かした。
 その様子を、キュルケは意外に子供っぽい笑みで見つめていた。ついつい、からかってしまう相手のしょぼくれた様子が楽しくて仕方ないらしい。

「わしとお前みたいな関係かの」

 そんなキュルケとルイズを見ての左手の一言である。Dがかすかに、本当にかすかに訝しげな調子で左手に問うた。二人の間でしか聞こえぬ特殊な会話である。

「本気か?」
「ふむ。口であーだこーだ言っておっても、心は別と言う奴じゃな。今度お前が眠る時にはわしが子守唄の一つでも歌ってやるぞい」
「…………」
「リアルな顔をするな。冗談じゃよ」
「二度と言うな」
「善処しよう」

 お前が忘れた頃に言ってやるわい、と言外に含んだ左手に対して、厳しい視線を向けつつ、Dはすでにタバサがちょこんと乗りこんだシルフィードへと足を向けた。

 上空に浮かび上がったシルフィードの首にタバサが座り、ちょうど背もたれの代わりにするのに具合のいい背びれに、残りの三人がしがみついたり、背を預ける形で乗り込む。
 特別急ぐような用事でもないので速度は緩やかだが、上空の風は春とはいえ冷たく、それをタバサが風防代りに展開した風の防壁で避けている。
 『フライ』の使えるメイジでも、まず滅多に目にしない高高度の光景に、ルイズやキュルケ、特にルイズは感嘆の声を上げていた。
 彼方に霞んで見える地平線も、地上と上空とではまた違った角度で見え、まるで自分がとんでもなく大きな巨人にでもなったような視点は、おのずと心を震わせるものがあった。

「うわあ、あ、見て見てD! あそこに人がいるわ。農夫かしら? まるで豆粒みたいに小さいわ。並んだらきっと私よりも大きいのに」
「そうか」
「ほら、学院がもうあんなに小さいわ。確かに馬よりも早いし、馬で走っていたらこんな光景は見られなかったわよね」
「良かったな」
「ええ!」

 とはしゃぐルイズにDが律義に返事をしていた――と思わせておいて実際に返事をしていたのは左手である。
 口調だけDの真似をしているのだが、きゃっきゃとはしゃいでいるルイズは、声の主が違う事にも気付かない。
 キュルケとタバサは、これだけ顔がいいとどこかでおかしくなるのね、と老人の声で答えるDを、納得したように見ていた。
 ルイズはやや間隔を開けて連続しているシルフィードの背びれの間に腰を下ろし、片手で背びれを掴みながら、あっちを見てはこっちを見、こっちを見てはそっちを見ている。
 今は上空三百メイルほど。仮にメイジであっても、山々に足を伸ばして絶景を堪能するか、船で空の旅を満喫する以外にはほとんどの者が目にできぬ光景に、ルイズは他人の目と言うものを忘れた様子で楽しんでいる。
 むしろ無邪気な子供が浮かべる満開の笑みの様だから、傍に居てもやや騒がしい事を除けば不快になるような事はなかった。
 Dの様な人間を除けば、誰しもつられて笑みを浮かべてしまうだろう。
 キュルケが、初めて見るルイズの屈託のない無邪気な笑みを眩しげに見つめてからDを見た。美貌への陶酔を押しのけて暖かい感情がその瞳に浮かんでいた。
 キュルケという少女が、その派手な外見と騒動を引き寄せて拡大させてしまう性格だけではないと分かる、とても優しい光であった。

「学院に留学してからの付き合いだけど、ルイズのあんな顔は初めてみるわ。貴方のお陰かしら? ちょっとお礼を言いたい気分だわ」
「君とルイズは天敵と聞いたが?」
「そうねえ、まあ、色々とあちらには敗北の歴史があるし、戦争の度に殺しあっていたからいがみ合うのも仕方ないけれど、私達までそれに倣って窮屈な思いをするのは馬鹿らしくないかしら? 
嫌い合うにしても、なにかしら楽しみが無いと私って駄目なのよね。ついでに、相手が元気なら元気なほどからかう甲斐もあると思うわ」

 そう思わない? と尋ねる様に首をかしげてウィンクするキュルケを見つめてから、Dは、鳥の群れを見つけたと声を張り上げているルイズを見た。
 それから黙って前方に視線を向け直す。タバサの風防で緩やかな風の流れに乗ったDの返事が、キュルケの耳にかろうじて届いた。

「確かにな」

 そのDの耳に、またまた元気な声を出しているルイズの声が聞こえる。

「D、あれがトリステインの城下町よ!」
564ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:30:51 ID:i6kULtuk
 ルイズの声の通りに、シルフィードの背から望む光景の先に、王城を中心に白い石造りの街並みが放射状に広がっている。
 ゆっくりとシルフィードが降下に映り始めた。Dは、はしゃぎ騒ぐルイズとは対照的に、トリステインの城下町を変わらぬ氷の瞳で見ているきりであった。


 シルフィードに上空で待機しているようにタバサが言い含めてから、四人は城下町の門で衛兵と所定の手続きを済ませてから入った。
 衛兵達がDの顔の効果で、その場でぽかんと口を開いて即席の廃人になり、こちらの質問に、ああ、とか、ええ、という反応しかしなくなってしまったので、手続きはえらく時間がかかった。
 学院から城下町まで馬なら三時間はかかる所を、シルフィードのお陰でずいぶんと短縮できたことを考えれば、気にするほどの事ではなかったのが救いだろう。
 さて、なにから買おうかしら? と息を巻いていたルイズは、しかしここに来て重大な事を失念していた事に気づいた。Dの顔である。
 この青年が人と対峙した時、相手にどのような現象が襲いかかるかは、もはや説明するまでもないだろう。
 Dとおでかけ、おっでかけ、おっでかっけ、うっれしい〜なあ〜♪と即席の鼻歌を歌いかねぬほど、実は内心で浮かれていたルイズは、その最大の問題をすっかり頭の片隅にうっちゃらかしたままだった。
 なんの対抗策も手立ても考えずに目的の場所に到着してしまった事に気付き、ルイズはぴしりと罅の走る音を立て、石像のように固まった。

「…………」

 一度、相変わらず鉄面皮の憎いアンチクショウを見てから、ぎぎぎ、と錆びついたブリキ人形みたいにルイズは通りを振り返った。あにはからんや、ルイズの想像通りの光景が広がっていた。
 門の近くで土産物や果実、肉、乾燥食料、衣類、装飾品、籠や工芸品などを扱っている商人のみならず、忙しなく行き交っていた筈の通行人に至るまでが、手に持っていたものを落として、茫然と立ち尽くしている。
 中にはあまりの衝撃にふらふらとその場に崩れる者や、傍に居た他人と抱きしめあいながら涙を流して、感動している者もいた。
 神の降臨か悪魔の出現を目の当たりにした信心深い素朴な人の様だ。
 すべてDの姿を一目垣間見た者たちである。うわっちゃーーー、とルイズがぺしんと額を叩く。気付いた時にはすでに手遅れだったようだ。
 キュルケとタバサは、まあ、当然よね、と素知らぬ顔をしている。ルイズがこうなる事を見越した上で、それでも構わないと思って来たのだと解釈しているからだろう。
 元凶たるDは、やはりというか、顔の筋肉が鉄で出来ているのかと疑いたくなるほど表情を動かさず、また顔色を変える事もなかった。
 瞳に映っている世界は、すべて灰色の煙に覆われて見えているのだろうか。
 こんな風に生まれて、こんな風に死んでゆくのだろう。きっと。
 そんな使い魔の姿を顧みる余裕の無いルイズは、せめてこれ以上の被害の拡散を防ごうと、今さら手遅れよねー、気休めよねー、と投げやりな自分の声を聞きながら、大通りを避けた裏道の入り口を指さして、

「さ、さあ、行きましょう!! 出来るだけ迅速に! かつ的確に!」

 心の中で私の馬鹿、と罵りながら、ちょっぴり鳶色の瞳の眼尻に涙を浮かべながら言う。

「なにをあんなに慌てているのかしら?」
「たぶん、こうなる事を予測していなかった」
「ああ、それでこんな風になっちゃってパニックになっている?」
「おそらく」
「やっぱりルイズはルイズね。ほら、私達も行きましょう。ルイズったら逃げ出すみたいに走っているわよ」
「ドジっ子?」
「さあ?」

 髪の色も瞳の色も肌の色も体つきも、果ては性格まで正反対なキュルケとタバサは、それでも不思議と息の合ったやり取りをしながら、脱兎の如く駆けだしたルイズの後を追った。
 周囲の人間は例外なく足を止めて固まっているから、ルイズの後を追うのはさほど難しくはなかった。
 Dは、三人が駆けだしてからようやく悠々と歩き始めた。自分という存在と、及ぼす影響にもとことん無関心な青年であった。
 やっちゃったわ、と焦ったルイズが逃げ込むようにして足を踏み入れた裏路地でも、その騒動は続いた。
 まず、ルイズ、キュルケ、タバサと魔法学院の子弟すなわち貴族の子女が、こんな場所を歩いている事に驚き、さらにその後にやってくる風が夜の色に染まって人の姿を取ったような青年の姿に、半ば魂が抜け掛かるのだ。
565ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:33:26 ID:i6kULtuk
 前すら碌に見ずにずんずか歩いていたルイズは、そのうち洗濯物を吊るしていたロープに首を引っかけてしまい、うぐ、といささかくぐもった苦鳴を上げて仰向けに転倒し、石畳に後頭部を打ちつけて、声にならない悲鳴を上げながら悶絶する。

「☆@?#$%&〜〜〜〜〜!!??」

 後頭部と首に突如出現した痛みに訳も分からずパニックになりながら、ごろごろと転がって制服を散々に汚し、清潔とはお世辞にもいえぬ裏路地で転がるルイズを、追いついたタバサとキュルケが呆れた様子で眺めていた。

「……ほんっとうにDが召喚されてからのルイズは見ていて飽きないわね」
「一人百面相」

 流石に憐れみを覚えたのか、タバサが杖の先を転がり続けるルイズに向けて水系統の『治癒』の魔法を唱えてやった。タバサが得意とする魔法ではないが、タンコブが出来ない程度には治せるだろう。
 その内に痛みが治まったのか、ルイズのごろごろする速度が緩やかになり、やがてピタリと止まる。
 無言のままルイズは立ち上がり、ぱんぱんと手で叩いて制服についた腐りかけた肉がこびり付いた骨や、藁、埃、石ころなどをはたき落としてゆく。
 密かに自慢の桃色ブロンドに大きな蜘蛛の糸が絡み付き、その先に大きめの女郎蜘蛛が張り付いていた。ルイズが、にっこりと笑って蜘蛛を抓む。
 心なしか、人間の心の機微など分かる筈もない蜘蛛が、恐怖に震えているようにタバサとキュルケには見えた。
 形の良いルイズの唇が浮かべる笑み。凶悪無惨な殺人鬼が、思わず膝を突いて懺悔を始めてしまいそうなほど、神々しくさえあった。
 笑みだけを見るならば聖典に綴られた無限の慈悲を湛えた聖母を思い浮かべよう。しかし、二人と、おそらくルイズに抓まれた蜘蛛が抱いたのは、紛れもない恐怖であった。
 触れたらその指からじくじくと体の中へ恐怖と絶望と言う酩酊成分が沁み渡り、細胞を内から冒してゆくような、二度と味わう事が無い様に祈らずにはいられない恐怖。
 ルイズの指が容赦なく蜘蛛を潰すのではないかと、キュルケはじっと見つめた。
 ルイズは、人差し指と親指の間に優しくつまみ上げた蜘蛛を、石畳の上に繊細に、それこそ僅かな衝撃で砕けてしまう硝子細工を扱うような優しさで解放した。
 臨終の床の病人が、病苦を忘れてしまうような、何もかもを許す聖母の声でルイズが蜘蛛に語りかける。

「ほら、早く行きなさい」

 かさかさと足早に逃げ去る蜘蛛を、ルイズの足が容赦なく踏み潰し、踏み躙るのではないかと、息を飲んでタバサは見つめた。
 気のせいか両の掌がじっとりと濡れている。恐怖が分泌を促した汗であった。
 蜘蛛が視界から消え去るのを待ってから、ルイズが笑みを浮かべたままタバサとキュルケへと振り向いた。
 ひっ、と零れた声は、はたしてタバサのものであったか、キュルケのものであったか。
 ルイズは微笑む。
 天国の門戸に立ち、心清き死者達を慈しみ、慰め、出迎える天使の様に。どこまで優しく。ただ、愛おしげに。ただ、微笑みを、浮かべている。
 そんな微笑みを向けられているというのに、背筋の中に氷水を流されたように、キュルケとタバサは体が中から冷えて行くのを感じた。
 微笑みが、笑みに変わった。思わずキュルケとタバサはお互いの体を抱きしめ合った。自分とルイズ以外の存在が居る事を感じ取らなければ、その場で卒倒しそうだったからだ。
 事実、二人は一瞬気が遠のきかけていた。抱きしめ合うというよりもお互いを支え合う様にしてタバサとキュルケは固く体を寄せ合っていた。

「ねえ」

 ルイズの声は、浮かべる笑みとは反比例して冷たかった。タバサの二つ名『雪風』が、南国のそよ風のようにぬくく感じられるような、冷たい声。
 ここ、こんなルイズは見たくなかったわね、とキュルケは艶やかな頬をひくつかせながらルイズに笑い返した。

「さっき、見た事、忘れなさい? ね? お互いの為よ」

――口ヲ滑ラセタラ、ドウナルカワカッテイルワネ? 月ノ明ルイ晩ダケダト思ウナヨ?
 
 ルイズがそう言っているように聞こえて、キュルケは流れる冷や汗が止まるのを感じていた。
 流す事を強制された恐怖の冷や汗が、再び同じ要因でもって流れる事を止められたのだ。
 唐突に自分の体に寄りかかるタバサの体が急に重くなり、キュルケは慌ててタバサを見た。タバサは固く目を閉じている。
566ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:35:21 ID:i6kULtuk
「ちょ、タバサ!? 貴女、気絶しているの!?」
「あらあら、タバサはどうしちゃったのかしら?」

 ころころと笑いながらルイズが言う。
 恐怖で、命がけの修羅場をくぐって歴戦の猛者と並びうる胆力を備えたタバサを気絶させたルイズ。
 浮かべる笑みの神々しさと慈しみに反した気配で、キュルケの自律神経を狂わせて冷や汗を流させ、そしてまた止めさせたルイズ。
 Dを召喚した影響なのかもとからの素養なのか、例えて言うなら魔性の者共の頂点に、力と恐怖とで君臨する魔王の如き迫力を纏ったルイズが、そこに居た。
 周囲を凍りつかせる鬼気を纏ったDを彷彿とさせる姿であった。変な所で似ている主従だ。

「私、なにか悪いことした?」

 タバサをその豊な胸の中に抱きとめながら、半泣きのキュルケが天を仰ぎながら呟いた一言に、ルイズが、んー、と可愛らしく唇に右手の人差し指を添えて悩む素振りをし、ああ、と手を叩いて一言、あくまでも朗らかに、そして親しげに

「胸」

 と死刑を宣告する裁判官の様に呟いた。ただし、死刑を言い渡した相手の狼狽と恐怖に慄き、命乞いをする様を見るのを楽しみにしている極めて冷酷な裁判官だ。
 どうもサディストの気質もあるらしい。実際キュルケには、死ネ、と聞こえた。
 なんでルイズはこうなっちゃったのかしら? と今日の朝までは普通にからかう事が出来ていたルイズが、密かに育んでいた魔王の如き素養に、キュルケはさめざめと泣きたい気分になった。
 そんなキュルケとタバサを何処かの誰かが哀れんだのか、ようやく救い主が二人の後方から姿を見せた。
 ただそこに居るだけで世界を深い夜の闇に誘う様な漆黒の人型。Dである。
 なにやらにこやかに笑みを浮かべつつも、服や頬を盛大に汚したルイズと、半べそかいて気を失っているタバサを抱きかかえたキュルケを見てから一言

「何があった?」

 さしものDも、一体三人の身に何が降りかかったのかまでは分からぬようだった。
 Dの姿を見た途端に、本来のやや妄想過剰なアレな娘に戻ったルイズが、あたふたと手を動かしながら弁解するようにまくし立てる。

「なな、なんでもないわよ。ね、ねえ、キュルケ?」
「ひぅ、そそそ、そうねルイズ、何もなかったわね! あら、頬が汚れているわ、ルイズ! せっかくの美人の顔が台無しよ、私が拭いてあげるわ!」
「あら、ありがとう、キュルケ!」
「よしてよ、私と貴女の仲でしょう!」
「ええ、そうね、そうだったわね。ウフフフフフフ」
「あ、アハハ…………はぁ」

 ルイズの汚れた頬を、取り出したハンカチで優しく拭いながら、キュルケはルイズと笑い合う。なんとも胡散臭い二人のやり取りに、左手がこう呟いたのも無理のない事だったろう。

「なんじゃあの三文芝居? 田舎の劇場役者が希代の天才役者に見えるぞ」

 それから、へなへなと腰を降ろしながら眼を覚ましたらしいタバサに、Dが声をかけた。キュルケとルイズはこちらの声が聞こえていない様子だったからだ。

「なにがあった?」
「ルイズが……」

 耳の穴から響く声の余韻に、不意を突かれた脳が蕩け掛かるその途中、タバサの脳裏にあのルイズの笑みと言葉が蘇った。

――口ヲ滑ラセタラ、ドウナルカワカッテイルワネ? 月ノ明ルイ晩ダケダト思ウナヨ?
 
 タバサにはそう聞こえていたらしい。たちまち血の気を引いて蒼白に変わるタバサを、流石にDも訝しげに見ていたが、タバサは震える瞳でルイズを見つめながら、こう答えた。

「何もなかった」

 Dの美貌の呪縛をルイズの聖母の如き微笑の恐怖が上回ったのだ。恐るべし、ルイズ。
 その態度が何かあったと言っているようなものなのだが、Dと左手は気にする素振りをわずかに見せたきりで、それ以上追従する事はなかった。
 まあ、放っておいても害はないじゃろ、という左手の意見がすべてを物語っていた。
 とにかく、Dの合流で正気に戻ったルイズ達は、結局城下町で一番大きなブルドンネ街や他の大きな通りを通る事無く裏路地を歩き回った。
 ルイズはいつまでも椅子で寝起きさせていたんじゃ申し訳ないと、寝具や着替えを先に買いそろえようとしたのだが、Dの気遣いだけ頂いておく、という遠まわしな言葉に斬って捨てられてしまった。
 寝具はまあ、ともかくとして流石に着替え位は用意しないとまずい、というか不衛生よ、とキュルケやタバサもルイズを支援したのだが、Dは変わらず必要ないと主張するきりであった。
 Dにこう言われると強く出られないルイズは、本当に大丈夫なの? と言いつつも渋々引き下がるほかなった。
567ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:37:06 ID:i6kULtuk
 ロングコートをはじめ、Dが着用しているのは『辺境』区製の特別品だ。コート一つを取っても、耐熱耐寒耐電耐燃耐刃耐弾と、およそ『辺境』で襲い来る妖獣や人間の取り得る攻撃手段に対する対抗加工を施している。
 それに、ハサミで細切れにされても繊維通しが繋がりあって元の形へと自動修復する再生素材製だ。無論、抗菌処置や防塵、耐水処置も施してあるから、年がら年中この格好で過ごしても清潔さは保持されるし、ほつれや引っ掻き傷が出来る心配もない。
 さすがに溶鉱炉やマグマの中に突っ込めば流石に元通りにはならないが、レーザーで穴だらけにされる程度なら、放っておいても生地が独りでに治る便利な品である。
 そんな事情は知らぬルイズ達ではあったが、Dの主張を曲げる気力もなかったので、当初の目的であった武器屋を目指す事になった。
 Dの着替えを買ったら買ったで、また一騒動起こりかねない事に思い至ったのも理由の一つだ。
 まず、着替えを誰が洗うかで、使用人同士の間で流血沙汰が起こる。下手をすれば死人が出るだろう。
 次に、死闘を制した使用人が干した着替えを目当てに生徒、教師、衛兵やらを問わずあらゆる学院の関係者達が争奪戦を繰り広げるだろう。
 無論魔法の行使も厭わず、力の限りを尽くして。まず間違いなく死人が出る。
 それが堂々巡りで勃発し続けて、そして最後には予定調和の如くDの主人であり、同じ部屋で寝起きしているルイズへの羨望と憎悪が、その濃度と量を爆発的に増大させるのである。
 なんかもう、メンドくさいわねー、と悟ったように諦めた様子のルイズは、お腹の中に鉛でも飲んでしまったような気分になり、Dの主張に従うのであった。
 ルイズの記憶を頼りに四つ辻まで出た。人糞や腐敗した食べ物の匂いがかすかに立ちこめ、思わず鼻を顰める悪臭が立ち込めている。左右を壁に挟まれ、差し込む陽光は乏しく昼間だというのに薄暗い。
 大通りの華やかさとは裏腹に何時でもじめじめと湿り、光に落とされた影の様に陰鬱な気配が立ち込めている。
 ふんふんと、Dの左手の方から匂いを嗅ぐ音が聞こえた。

「マンドラゴラ、ツキヨノスイレン、ヘンルーダ、火竜草et cetera……『辺境』でもなじみの毒草や魔花と同じ成分と、似て非なる成分が入り混じっておる。
こういう発展途上の場所の方が妖術や魔術の原料は良質のものが摂れるからのう。いつか『辺境』に戻った時の為にいくらか手に入れて栽培しておくか? 売り捌けばわりかし儲かるかもしれんぞ」
「商才のある事だな」
「吸血鬼ハンターを引退出来たらの話じゃがな。つまるところお前が滅びるまで無いという事よ」
「確かにな」

 Dの口元をかすかな影が過ぎった。笑みだったかもしれない。

「望んでおるのか? 滅びを?」
 
 Dは答えなかった。影が過ぎ去ったとの口元は、元の一文字に閉ざされていた。
 そんなDと左手のやり取りは露知らず、ルイズが目的を見つけたらしく、とてとてと歩きはじめる。
 剣の形をした看板めがけてルイズが歩いてゆく。なるほど、実に分かりやすい看板であった。ルイズを先頭に、羽根扉を開いて四人と一つ(?)は武器屋に入った。
 薄暗い店内をランプが照らし出し、壁や棚、樽に乱雑に剣や槍が並べられている。机に肘をついて何をするでもなくパイプを吹かしていた、五十がらみの主人がルイズを胡散臭げに見つめる。
 貴族が下賤な場所と嫌う様なこの場所に、これほど似つかわしくない客も珍しい。それから、タイ留めに描かれた五芒星に気づき、はて? と首を傾げた。
 それがトリステイン魔法学院の生徒である事を示す事くらいは主人も知っていたが、魔法を学ぶ貴族の子弟が、なぜ武器屋なんかに用があるんだ? というわけだ。
 さらにルイズに続いて、キュルケとタバサの三人が足を踏み入れ、大・小・幼の貴族の組み合わせが突如店内に出来たのには、思わずパイプを落としかけて驚く。
 キュルケは物珍しそうに、タバサは無関心に、ルイズはふん、とかすかに胸を張って主人を見ていた。落としかけたパイプを器用に咥え直し、主人はドスの利いた低い声を出した。

「若奥様、貴族の若奥様! 三人もお揃いになってうちに何の御用で? これでもまっとうな商売をしているつもりでさぁ! お上が目を着けるようなものなんてありゃしませんぜ!」
「客よ」

 とルイズ。腕を組み、自分の親でもおかしくない位に年の離れた主人を見下ろしながらの一言に、思わず武器屋の主人は鼻白んだ。
568ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:38:15 ID:i6kULtuk
 気性の荒い荒くれ者や傭兵相手に長い事商売をし、それなりに修羅場もくぐって度胸も身に付けたつもりだったが、思わず目の前の小娘の顔色を伺ってしまいそうになる。
 先ほどの路地裏での一件を経て、普段から妙な気迫と威厳を纏い始めたルイズであった。

「こりゃ驚きだ! 貴族様が剣をお買いになる! ああ、驚きだ! おったまげた!」
「なぜ?」

 答え以外の言葉全てを拒絶する、骸の山と血の河を築いて覇を唱えた覇王の様なルイズの問いかけに、なんだこの娘っ子!? と主人は肝を冷やしながら答える。声の震えは抑えられなかった。

「いいい、いえ! 若奥様! 坊主は杖を振る、兵隊は剣を振る、貴族は杖を振る、教皇聖下は聖具をお振りになる、そして陛下はバルコニーで手をお振りになるというのが、私ら平民の相場と決まっておりまして」
「私じゃないわ。彼の為の剣よ」
「ああ、お付きの……か……た……です……か」

 と息も切れ切れに主人が言い終えたのは、たっぷり一分後の事であった。死を告げる死神の如く静謐に店内に足を踏み入れたDを見てしまったのだ。
 ふふん、とルイズはちょっぴり自慢気。自分の使い魔が褒められているようでうれしいらしい。

「こういう所は普段どおりなのにねえ」

 としみじみキュルケが呟いた。
 Dはさっと店内を見回した。今も背に負っている長剣は、『辺境』で大量生産されているありふれた刀剣の一つだ。
 それでも重機関銃の直撃に耐える中型火竜の装甲も斬る業物だが、吸血鬼達の超技術と超魔術の恩恵にあずかって鍛造された長剣は、ハルケギニアのレベルでは屈指の名刀・魔剣の切れ味と言えるだろう。
 どんなナマクラでもDの手に握られれば古今無比の名刀となるが、それでも少しはましなものが手に入るといいが、あまり期待はできそうにない。
 一方で主人は、突如店の中に出現した異端分子を、見て総毛だっていた。これでも武器屋の主人である。武器を扱う人間を見る目はある。
 その経験と勘が告げるに、目の前の黒づくめの若造は、かつて目にした事が無い程のとんでもない凄腕――いや化け物だ。
 主人は咥えていたパイプを放し、ひどく真摯な顔をしてルイズに向き直った。

「若奥様。申し訳ありませんがどうかお引き取りください」
「どうして?」
「若奥様が仰るにあちらの方が剣をお使いになられますとか」
「そうよ。なに? 彼に売るような剣はないって言うつもりなの?」
「いいえ違います。その逆です。あちらの剣士殿に見合う刀剣は、当店には残念ながらございません。いえ、トリステイン中を探しても見つかりますかどうか。
とにかく、あちらの剣士殿がお使いになるというなら、お売りしても恥ずかしくないと胸を張れる代物がないのです。……大変、口惜しくはありますが」
「そう言う事、それじゃあ……」

 自尊心をくすぐられ、悪い気はしていない根の単純なルイズが店を後にしようとしたとき、甲高い男の声が騒ぎたてた。

「おうおう、ずいぶん殊勝な事言うじゃねえか! どうした、腹でも痛てえのか?」

 店内の全員が、Dも含めて声のした方を見た。主人がぶすっと顔を顰めた。声の主はあまり愉快な相手ではないようだ。
 Dが音も立てずにくたびれた剣が突っ込まれている棚へと歩み、ひと振りの長剣を掴み上げた。

「おおっ!? なんだテメ、急に人を持ち、あげるんじゃ……ねえぞ、こら……」

 Dの右手に掴み上げられたのは薄手の刀身に錆の浮いた長剣であった。Dの背に負われている長剣同様にやや反った刀身で、刃そのものは薄いが幅は広く、長さも一・五メイルを越える。
 錆びこそ浮いているものの、良く見ればしっかりとした造りの長剣であった。その鍔に近い金具のあたりがぱかぱかと開閉して言葉を発しているらしかった。

「やい、デル公、お客様になんて口のきき方をしやがる!!」
「う、うるせえ、お前の様子が変だから心配してやったんだろうが! しっかし、おでれーた。握られているだけで分かるぜ、こりゃ、とんでもねえ剣士だぜ」
「それって、インテリジェンスソード?」

 当惑したルイズの声に主人が答える。

「そうでさ、若奥様。意志もつ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣を喋らせるなんて……。
 とにかくこいつは口が悪いわ、お客に喧嘩売るわで閉口していまして、腐れ縁と思わなきゃ、貴族の方に頼んで溶かしていただいている所でさ」

 Dはデル公を持ち直し、右手一本で握り直していた。デル公の錆の浮いた刀身にD自身の美貌が映っている。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 01:39:54 ID:AGIkUlM7
しえn
570ゼロの魔王伝:2009/01/19(月) 01:41:29 ID:i6kULtuk
「デル公のう。頭の悪そうな名前じゃな」
「おれはデルフリンガー様だ! てめえこそなんだ、若造の癖にじじむさい声しやがって! ……いや、違うな、お前、体の中に妙なもん住まわしてやがんな。おまけにお前さん自身、普通じゃねえ」
「ほう、意外と鋭い」
「しかも『使い手』、か? にしちゃ嫌に反応が薄いというからしくないというか……。まあいいや、なあ、おれを買いな。久しぶりに面白い相手に巡り合えたしよ。お前さんみたいな『使い手』は初めてだね」
「どうする? なかなか口のまわるナマクラじゃぞ? 何事か隠しておる様子だし、見栄えが気になるなら錆位ならわしが溶かしてやる。それにお前の腕なら巨龍の首だろうが、この錆剣でも一撃じゃろう。何を買っても変わらぬよ」

 Dは、かすかに握った手を開いたり閉じたりしただけだったが、それだけでデルフリンガーの使い心地を判断したらしく、ルイズに向き直った。

「これで構わん」
「え〜〜〜〜〜〜〜? そんな汚らしいの〜〜〜〜〜? もっと綺麗で喋らないのがいいんじゃないの〜〜〜〜?」
「売るものが無いというのなら、何を買っても同じだ。錆は落とせばいい。それとも折れた剣を使うか?」
「買え買え、娘っ子」
「ちぇ、ねえ、あれおいくら?」
「よろしいんで?」
「仕方無いじゃない。本人がいいって言っているんだし」
「でしたら新金貨で百で結構でさ」
「ふうん。安いの?」
「そうですな、名剣なら同じ新金貨でも千、二千はするでしょう。まあ、デル公なら厄介払いみたいなものですから、百でかまいやせん」

 ルイズはポケットから金貨の袋を取り出して、Dの金塊を使わずに済んだとほっとしていた。お互いの関係で貸し借りを作りたくなかったのだ。きっちり百枚を数え終えた主人が、毎度あり、と告げた。

「どうしても煩いと思ったら、こうやって鞘に収めればおとなしくなりまさあ」

 主人から鞘を受け取り、デルフリンガーを納めて、Dは左手に提げた。

「これで買い物終わっちゃったけどどうする? なんか今さら服とかを買いに行く気にもなれないわ」

 予定が狂いっぱなしね、とぼやくルイズに、またパイプを咥え直した主人が、ああそういえば、と口を開いた。

「お暇でしたら、旧市街の方へ足を運ばれてはいかがでしょう? なんでもアルビオンから来たとか言う変わった連中がいるとかで見物に行く連中が絶えませんで」
「大道芸か何かでもやっているのかしら?」
「さあ、ただ見に行った連中が全員ぼんやりとしっぱなしで。わたしの知り合いも、見物に行ってからかれこれ三日もぼけっとしちまっているくらいでさ」
「いやね、なにか変な宗教? それとも貴族崩れの傭兵か何かがいかがわしい事でもしているんじゃないの?」
「そればかりは目にしてみない事には、ああ、たしか――ファウストだかメフィストだかいうらしいでさあ」
「ふうん?」

 黒白の魔人二人の邂逅が、このような街の片隅の武器屋での会話をきっかけに行われるとは、当のDもルイズも気付くわけもなかった。


 投下終了。今回ここまでです。ルイズが変なことに……。なるべくゼロ魔の空気による形を心掛けてはいますが、いかがなものでしょうか? では、お邪魔しました。
571毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 01:46:34 ID:y07gpU9a
投下乙です。
このルイズ怖い…、カタカナで書かれた台詞が恐怖を倍増しています。
タバサは気絶しても仕方ないかも…(汗)


そして、毒の爪の使い魔の第26話が書き終わりました。
他に予定等が無ければ1:55から投下します。
572毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 01:55:30 ID:y07gpU9a
では、時間になりましたので、投下開始します。

「着いたな」
月明かりに照らされている魔法学院が見え、ジャンガは大きく伸びをした。
シルフィードはゆっくりと降下を開始する。
「これで漸く休めるゼ…」
「それはいいがよ、相棒……もう気にして無いのか?」
デルフリンガーの言葉にジャンガは、ハァ? と呆気に取られた表情をする。
「何がだ?」
「ルーンだよ、ルーン」
「んなの、もうどうでもいいゼ。別に無くても困るもんじゃねェし。
寧ろ、俺としてはあのクソ生意気なガキの使い魔と言う立場から解放されて清々したゼ」
「…まぁ、相棒ならそう言うだろうとは思ったけどさ」
「分かってんじゃねェか」
ニヤリと笑うジャンガ。
そうこうしているうちに、シルフィードは寮塔の前に着いていた。

「さてと……あのガキは起きてるか? オイッ、クソガキ、起きてるか!?」
そう呟き、窓に向かってそう叫ぶ。…返事が無い。
舌打をし、ジャンガは更に叫んだ。
「返事位まともにしやがれ!? 才能ゼロ! 可愛げゼロ! 胸ゼロ! の三拍子揃ったゼロガキ!!」
直後、バタンッ! と窓が開け放たれ、怒り心頭のルイズが顔を出す。
「ゼロゼロ煩いわよ!? 何処の誰よ――って、ジャンガ!?」
ルイズの姿を認め、ジャンガは片手を上げながら小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「よォ…帰ったゼ?」
「ジャ、ジャンガ!? あ、あんた今まで何処に――って、何その怪我!?」
傷だらけのジャンガの姿に目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。
と、隣の窓が開けられ、キュルケが顔を出す。
「もう〜…煩いわね。何をそんなに怒鳴ってるのよ、ルイズ?」
キュルケの姿を認め、ジャンガは再度ニヤリと笑う。
「よう、雌牛。暫くぶりだな?」
「あなた…暫く見なかったわね。随分と傷だらけのようだけど――って、ちょっとタバサ!?」
ジャンガの背後で眠っているタバサに気が付き、キュルケは窓から身を乗り出す。
「それに、その女の人…タバサのお母さんじゃない。何でここに…」
「まァ…説明すると長くなるんだが…、あ〜ったく、たりィな…。
とりあえず中に入れろ…、話はそれからだ」
ルイズにそう言いながら、ジャンガはタバサの母を背に背負い、タバサを両腕で抱く。
色々と言いたかったが、ルイズは窓から離れる。
両足に力を籠め、ジャンガはシルフィードの背を蹴って跳躍する。

華麗に窓枠に着地した――直後、足が滑った。
「うおっ!?」
あわや、まっさかさま……と思われたが、素早く下に潜り込んだシルフィードに拾われた。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
ルイズが慌てた様子で、窓から身を乗り出して叫ぶ。
「あ、危ねェ…」
「相棒、無茶するな。お前さんは今、物凄く消耗してるんだからよ?」
デルフリンガーの言葉にシルフィードも、きゅいきゅい、と鳴き声を上げて同意を示す。

ジャンガは忌々しそうに舌打をした。
573毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 01:58:58 ID:y07gpU9a
「――とまァ、話は以上だ」
「「「「……」」」」
ジャンガとデルフリンガーの話の内容に、ルイズ達は揃って呆然となった。
この場にはルイズとキュルケ以外に、ジャンガの怪我の治療の為に呼ばれたモンモランシー、
そして彼女の部屋で談笑をしていた為、付き添いで来たギーシュも居た。
因みに、タバサとタバサの母親はルイズのベッドに寝かされている。
暫くの沈黙の後、漸くルイズが口を開いた。
「…あんた、随分と滅茶苦茶してたみたいね」
そう言いながら、ルイズは目の前の使い魔の話を頭の中で繰り返す。
十日前の事件の際に裏切った為、タバサは騎士<シュヴァリエ>の称号を剥奪され、母親を拘束された。
母親を助ける為にタバサは単身救出に向かうも、エルフに敗北して連れ去られ、
シルフィードは重傷を負いつつも何とか魔法学院に戻り、タバサの救出をジャンガに頼んだ。
エルフの土地<サハラ>の国境付近の古城にタバサが監禁されてると知り、そこへ乗り込んだ。
そこでタバサを捕まえたエルフと戦い、苦戦しながらも勝利。
タバサとその母親を無事救出し、ガリアから魔法学院へ帰還。
「――そして、今こうしているって訳ね」
「キキキ、理解してもらえて嬉しいネ」
ルイズは、ふぅ、と息を吐くとジャンガに言った。
「あんた、バカじゃないの?」
「あン?」
「私達に一言の相談も無しに、そんな事をして、バカじゃないの?」
「テメェに話したら余計な時間を食うと思ったんでな…」
「どう言う意味よ?」
「変にプライドの高いテメェの事だから、あれこれ”下らない事”で時間を食いそうだったからな」
「何よそれ!?」
ルイズは怒鳴りつけたが、ジャンガは口笛を吹きながら無視する。
そんなジャンガにキュルケが声を掛ける。
「ねぇ、ジャンガ?」
「ン?」
「わたしはね、あなたの事が大嫌いなのよ? ラ・ヴァリエールと同じか、それ以上に」
「んなこたァ知ってるゼ」
今更何を、と言った表情でジャンガは答えた。
そんなジャンガをキュルケは複雑な表情で見据えながら、言葉を続ける。
「でもね、今回の事は素直に感謝するわ。…ありがとう、タバサを助けてくれて」
「……テメェの玩具を取られたのが、腹立たしかっただけだ。礼を言われる筋合いは無ェ…」
言いながらジャンガは頬杖を突き、そっぽを向く。
その様子にキュルケは、やれやれ、と言った感じでため息を吐く。

そこでジャンガの怪我を治癒魔法で治療している、モンモランシーが唐突に口を開く。
「それにしても、驚きね。先住魔法を使うエルフはとても恐ろしい相手なのよ?」
その後を引き継ぐように、ギーシュも口を挟む。
「そうだ。聖地回復連合軍に参加したぼくのご先祖も、君が行ったアーハンブラ城の戦いで死んだ。
代表的なトゥールの戦いでもガリア・トリステイン連合軍は勝利こそしたが、大分苦戦したんだ」
「確か、連合軍は七千で、エルフは二千じゃなかったかしら?」
「いや、実際は五百らしい。あまりにも格好がつかないので、報告では数倍になったんだ」
首を振りながらモンモランシーの説明を訂正するギーシュ。
「まぁ…そう言う事ね。ようするにエルフに勝つ為には十倍ほどの戦力が必要なのよ。
それを、たった一人とは言っても一対一で倒してしまうなんて……あなた、本当に凄いのね」
モンモランシーは半ば感心し、半ば呆れて言った。
574毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:02:05 ID:y07gpU9a
ジャンガはつまらなさそうに鼻を鳴らす。
「フンッ、あんなのにビビる感覚が理解出来ないゼ。確かに、奴の使う先住魔法は凄かったさ。
だがよ…あれは言ってみりゃあ、精霊の力とやらに手伝ってもらってるだけだ。
精霊の力が無ければ、大した事はねェよ…あんなのはよ。
大体な…人間を蛮人呼ばわりしてるくせに、ガリアに協力をしてる。
いつもは差別し、都合良い時だけ協力をする……人間と変わりが無ェ。
いや、人間の方が幾分マシか? 戦いに関して言えば、あれはまるでダメだ。
誰かに手伝ってもらわなければ、何も出来ないんだからよ。
寄生虫だよ…、相手に引っ付いて養ってもらわなければならないダメ野郎だ」
「…本当に君は凄いな。エルフをそこまで罵れるんだから…」
言いながら、ギーシュは苦笑いを浮かべた。
「はい、終わったわ」
治療を終えたモンモランシーは、そう言って立ち上がった。
ジャンガは一通り身体を触り、眉を顰める。
「オイ、まだ”全部”終わってねェぞ?」
「わたしの精神力ももう限界なのよ。あなたの怪我が酷すぎて、とても全部治しきれないわ。
水の秘薬が有ればまた別だけど…」
「テメェの腕が足りてねェだけじゃねェのか?」
ジャンガの一言にモンモランシーは唇を噛む。
「…そうね。確かに、わたしはまだまだ未熟よ。”あの時”だって、満足にギーシュを助けれなかったし」
モンモランシーの脳裏に、ジョーカーとの戦いの記憶が蘇る。
その気持ちを察したギーシュがモンモランシーの両肩に優しく手を置く。
「そんなに気を落とす事は無いさ。君は、十分ぼくを助けてくれたよ…未熟なんかじゃない。
そして、今の自分に不満が有るのなら、これから強くなっていけばいいさ」
「…ありがと」
そう返したモンモランシーの頬は、ほんのり赤く染まっていた。

そんな二人を尻目に、ルイズはジャンガに詰め寄る。
「それにしても…どうする気よ?」
「どうするって?」
何の事か分からない、ジャンガの様子にルイズは盛大にため息を吐いた。
「あのね…貴方は国法を犯したのよ? 例えどんな理由が在ったって、勝手に国境を超える事は赦されない事だわ。
付け加えれば、タバサはガリア王国では裏切り者として重罪人扱いされてるんでしょ?
それを勝手に連れ出して、内政干渉だとか取られて戦争にでも発展したらどうする気なのよ、あんた?」
一気に捲くし立てるルイズの話をジャンガは静かに聞いていた。
そして、爪で頭を掻きながら、ため息を吐く。
「ほらな……そうやって色々言うだろうが。だからテメェには言わずに行って来たんだよ」
「あなたね…事の重大さ分かってるの?」
「知らねェな」
「なっ!?」
ジャンガのあまりに他人事の様な返事に、ルイズは言葉を失う。
そんな事を露ほども気にせず、ジャンガは続ける。
「そうやって、あーだこーだ理由を付けやがって……テメェはアイツに感謝の一つも無ェのかよ?」
ジャンガはチラリとベットで眠るタバサを見た。
ルイズは一瞬口篭る。
「それは…勿論、タバサには感謝してるわよ。でも、それとこれとは話が別。
自分の感情だけで突っ走って、周りに迷惑を掛ける訳には行かないじゃない。
そんなのは、我侭なただの子供よ」


――お前の過去に何があったか知らないが……それだけは止めておけ――

――……テメェに何が解るんだ? バッツ…――


ルイズの言葉に、ジャンガの脳裏に過去が鮮明に蘇る。
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:04:49 ID:QVYRihcu
支援!
576毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:06:12 ID:y07gpU9a
「……」
「どうしたのよ? 急に黙ったりして…」
急に黙ったジャンガの様子に、ルイズは心配そうに顔を覗き込む。
ジャンガは首を静かに振る。
「いや……少し、昔を思い出しただけだ…」
「そ、そう…」
少しの沈黙の後、ジャンガが口を開く。
「まァ…お前の言い分も解らなくも無ェゼ」
「そう…。急に物分りが良くなったじゃない?」
「ああ……確かに感情に任せて暴れるだけじゃ、猪と変わらない。
周囲の意見に耳を傾けるのも大事だと思うさ」
ジャンガの態度の変わりっぷりに、ルイズだけでなく、その場の全員が目を丸くする。
「…あんた、一体どうしたの?」
「別にどうもしねェ…。ただ、今回は一刻を争うからな……お前等と話し合ってる余裕は無かった。
だから一人で行った。…それだけだ」
ルイズ達一同は何も言わなかった。
「それによ内政干渉だとか戦争だとか言ったが……別にそんなに心配しなくてもいいと思うゼ?」
「どう言う意味よ?」
「…本気で取り返す気なら、ここへ戻って来る途中で襲われてたはずだからよ」
その言葉に、それもそうだな、とデルフリンガーも相槌を打つ。
「つまりだ……奴等にとってタバサ嬢ちゃん達は、所詮その程度の価値しかないわけだな。
手元に有っても無くても関係無ェんだよ。だから心配する必要も無ェ」
「だと良いけどね」
ルイズはまだ少し心配そうだ。
そして、ベットで眠る母子を見つめる。
「それで、どうするの? 理由はともかく、このまま学院に置いておく訳にも行かないわよ?」
ジャンガは考え込んだ。
確かに、このままここに置いておくのも何かと問題はありそうだ。
かと言って、タバサの実家に戻すのも心配だ。さて…どうするか?
暫し悩み……唐突に窓を振り返る。
「誰だ?」
「な、何を言ってるのよ?」
ルイズは怪訝な表情でジャンガに聞いた。
窓から目を離さずにジャンガは答える。
「窓の外に誰か居るゼ…」
「「「「え!?」」」」
その場に居る全員の視線が、窓に向けられる。
ジャンガは窓に向かって叫んだ。
「そこに居るのは誰だ? とっとと出て来やがれ」
返事は無い。
ジャンガは爪を構える。
「出て来ない…ってんなら、こっちにも考えがあるゼ?」
ジャンガの言葉に観念したのか、窓がひとりでに開き、一つの人影が入ってきた。
フードを被っていて顔は良く判らないが、その華奢な体つきから年若い少女なのは見て取れた。
「だ、誰?」
ルイズは突然の闖入者に驚き、声を上げる。
窓から入ってきた少女はルイズの声に楽しそうに笑う。
「あなたの使い魔さん、本当に凄いわねルイズ」
その声にルイズは目を丸くする。
「あ、あなたは…まさか?」
少女は静かに被っていたフードを取る。
その場の(ジャンガとキュルケ以外の)全員が驚いた。
「姫さま!?」
「王女様!?」
「姫殿下!?」
そう、少女はアンリエッタ姫だった。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:08:57 ID:2D3dPiNL
支援。
578毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:09:05 ID:y07gpU9a
口々に驚きの声を上げながらも、ルイズ、モンモランシー、ギーシュは跪く。
ジャンガとキュルケは、そんな三人とアンリエッタを特に何をするでもなく、ただ見比べている。
ルイズはそんな二人の態度に苛立ちを覚えたが、姫殿下の御前ゆえにそれを抑えた。
顔を上げ、アンリエッタに尋ねる。
「姫さま、どうなさったのですか? お一人で…それもこんな時間に」
その言葉に、アンリエッタは少し困ったような表情を浮かべる。
そして、ベットで眠るタバサ親子の姿が目に留まる。
「この方は…確か、品評会の優勝者ではないですか?」
「あ、はいそうです」
「一緒に眠っている女性は誰ですか?」
「そいつの母ちゃんだ」
そう答えたのはジャンガだ。
「何故、学院の…それもルイズの部屋に?」
「話すと長くなるからパスだ。とりあえず、お前の用件を言いやがれ」
面倒くさそうに言い放つジャンガ。…酷く無礼な態度であった。
我慢が出来ず、ルイズは肩を震わせて怒鳴りつけた。
「あんた! 姫さまに向かってなんて無礼な口を聞くのよ!?」
「…いいのですよルイズ。余計な事を聞いた、わたくしも悪いのですから」
そう言い、アンリエッタは小さく咳払いをする。
「ルイズ、わたくしはゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事になりました」
その言葉にルイズは驚愕し、目を見開く。
「な、なんですって!?」
「あら? そうなんだ」
場の雰囲気にそぐわない軽い調子で、そう言ったのはキュルケである。
「それにしても急ですわね…、何か事情でも?」
キュルケに尋ねられ、アンリエッタは小首を傾げる。
「あなたは?」
キュルケは優雅な仕草でお辞儀をする。
「申し送れました…あたし、ゲルマニアのキュルケ・フォン・ツェルプストーと申します」
「ゲルマニアの…そうですか」
どことなく寂しさを感じる笑顔を浮かべ、アンリエッタは小さくお辞儀をする。
「それで、トリステインの時期女王陛下が、あたしの国の皇帝へと急に嫁ぐ事になった理由とは何でしょうか?」
キュルケに尋ねられ、アンリエッタは静かに口を開く。
「同盟を結ぶ為です」

アンリエッタはハルケギニアの政治情勢を説明する。
アルビオンの貴族が反乱を起こし、王室が倒れそうな事。
反乱軍が勝利すれば、次はトリステインに侵攻するだろうという事。
小国ゆえに一国では太刀打ち出来ない為、ゲルマニアと同盟を結ぶ事になった事。
その同盟の為に、アンリエッタがゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事になった事。
「そうだったのですか…」
ルイズは沈んだ声で言った。
アンリエッタがその結婚を望んでいない事は口調で明らかだった。
「好きでもない殿方との結婚…、気持ちが沈むのは理解出来なくはないですわね」
キュルケの鋭い指摘にアンリエッタとルイズの二人に、同時に緊張が走る。
そんな二人の様子にキュルケは小さく笑う。
「別にそんなに緊張されなくても、よろしいではありませんか。
それが事実としても、あたしは皇帝に告げ口をしようなどとは思っていません。
それに、同盟が結ばれれば、これまでの詰らないいざこざも無くなると言う物です。
邪魔する理由が何処に在りましょう?」
優雅に語るキュルケ。
そんな彼女を見つめながら「雌狸が…」と呟くジャンガ。
ようやく緊張が解けたアンリエッタの口から安堵の息が漏れる。
そして、真顔でルイズに向き直る。
「ルイズ、わたくしはトリステインの王女、国の為にこの身を投げ出す事に迷いは有りません。
それよりも…その同盟に関する事で、あなたにお願いがあるのです」
「このわたしに出来る事であれば、なんなりとお申し付けください、姫さま」
力強くルイズは答えた。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:12:30 ID:3i3Sx69V
支援
580毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:13:22 ID:y07gpU9a
その言葉にアンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう、ルイズ・フランソワーズ」
言いながら窓辺へと向かう。
窓の外、夜空に浮かぶ二つの月を見上げた。
「実は、ある物を回収してきて欲しいのです」
「ある物?」
ルイズは思わず聞き返していた。
アンリエッタは僅かに頷く。
「アルビオンのウェールズ皇太子に宛てた一通の手紙なのです。
それがどう言う内容なのかは…残念ながら言えません。
ですが、その手紙が白日の下にさらされた場合、ゲルマニアとの縁談は破談となってしまいます」
「ほゥ? そりゃあ確かに困るな。にしても破談になる内容ネ〜? …どんなのか気になるゼ」
「へぇ…珍しく意見があったわね? あたしもその手紙の内容には興味があるわ」
ジャンガとキュルケの、あまりに空気を読まない発言に、ルイズは怒鳴った。
「うるさいわよ、あんた達!!!」
怒鳴られても二人は馬耳東風。口笛を吹きながらそっぽを向く。

アンリエッタの話は続く。
「今アルビオンへ行かせるのは、大変危険だと言う事は重々承知しています…。
ですが…このような事を頼む事ができるほど信頼できる人は、貴方位しかわたくしにはいなくて…」
そうして、アンリエッタは静かに肩を震わせる。
その様子にルイズは、慌ててアンリエッタの下へと駆け寄り、跪く。
「ルイズ・フランソワーズ」
「姫さま、ありがとうございます。その様な重要な任務を、わたしにお与えくださって、この上なき幸せです」
ルイズは満面の笑顔で答えた。
その言葉にアンリエッタも笑顔を浮かべ、ルイズの手を取った。
「ああ、ルイズ。では、行っていただけますの?」
「はい。この一命にかけても、必ずや成し遂げてみせます」
ありがとう、と言い、アンリエッタはルイズの手を取った。

そこでギーシュがアンリエッタに声を掛けた。
「姫殿下、その任務…是非ともこのぼくにもお任せください」
「え? あなたは?」
「申し送れました、ギーシュ・ド・グラモンと申します」
アンリエッタはギーシュの名前を聞き、ハッとなる。
「グラモン…、もしやあなたはグラモン元帥の?」
「息子でございます」
答えながら深々と頭を下げる。
アンリエッタは微笑んだ。
「あなたも、わたくしの力になってくださるのですか?」
「勿論でございます」
そんなギーシュのマントをモンモランシーが引っ張る。
「なんだい、モンモランシー?」
「…まさかとは思うけど、卑しい事を考えていたりしないわよね?」
モンモランシーは僅かに哀しそうな表情を見せる。
そんな彼女に、ギーシュは微笑んでみせた。
「何も無いさ。ただ、トリステインの貴族として、純粋に姫殿下の力になりたいと思っただけさ。
それに…ルイズも”一応”レディだ。こんな危険な任務に一人で行かせる訳にも行かないだろ」
「そう…」
「言っただろう。レディには優しくするが、愛するのは君だけだと…な、ぼくのモンモランシー」
「ふ、ふん! わたしだって解ってるわよ! ちょっとだけ…気になっただけよ」
そっぽを向くモンモランシーにギーシュは笑った。
そして、真顔になりアンリエッタへと向き直る。
「任務の一員に、是非ともお加えください」
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようですね。
では、あなたにもお願いします。どうか、このわたくしを助けてください、ギーシュさん」
「光栄にございます」
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:14:21 ID:ESP99NeF
支援!
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:14:42 ID:QVYRihcu
何かジャンガにボロくそに言われそうだな、アンリエッタ…
支援!
583毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:16:56 ID:y07gpU9a
そう答えるギーシュを見ながらキュルケは頭を掻く。
「ギーシュも行くのね。…なら、あたしも付いて行こうかしら?」
「ツェルプストー!?」
ルイズが驚き声を上げる。
「何を驚くのよ? あたしも同盟が結ばれるのはとても喜ばしい事だと理解してるわ。
だから、お手伝いをするのは当然でしょ?」
「…そう」
「ミス・ツェルプストー……ありがとう」
お礼を述べるアンリエッタに、キュルケは恭しく一礼をする。
「いえ、トリステインとゲルマニアの間に良き同盟が結ばれる事を願っての事ですから」
そう言って、キュルケは微笑んだ。

それを見てモンモランシーは深く頷く。
「なら、わたしも…」
付いて行く、と言おうとした。
それをギーシュが手で制す。
「ギーシュ?」
「君はここに残ってくれ」
「何で?」
無言でバラの造花を突き出す。
その先にはベットで眠るタバサと母親。
「彼女達を放ってはおけないだろ?」
「あ…」
「ぼく達が帰ってくるまで、君に任せる。…いいだろう、ルイズ?」
ギーシュはルイズに同意を求める。
ルイズは逡巡し、モンモランシーを見た。
「お願い…してもいいかしら、ミス・モンモランシ?」
「…分かったわ」
静かに頷き、了承の意を示した。



ルイズは手紙の返却の事がしたためられた密書を、アンリエッタから受け取る。
「では、明日の朝、アルビオンへ向かって出発するといたします」
「ウェールズ皇太子はニューカッスル城に陣を構えているそうです」
「了解しました」
「旅は危険に満ちています。もしかすれば、アルビオンの貴族達の妨害があるかもしれません。
ですから、護衛の者を一人就かせます。アルビオンまでの案内はその者に」
「お心遣い、感謝します」
ルイズは深々と頭を下げた。

「おい…三文芝居は、もうそれ位にしとけよ?」

豪く無礼な言葉が聞こえた。
振り向けば、ジャンガがつまらなそうに欠伸をしている。
頭にきたルイズはジャンガに詰め寄った。
「あ、あんた…今、何て言ったのよ?」
「三文芝居もそれ位にしとけ…って、言ったんだよ。そこの”お姫様”にな〜」
その無礼な言葉に、ルイズは頭に一気に血が上るのを感じた。
「こ、こここ、このバカ猫……ひ、姫さまの依頼をよりにもよって”三文芝居”ですって!?
幾らなんでも言葉が過ぎるわ! 怪我人だからって容赦しないわよ!?」
言いながら杖を突き付ける。
だが、ジャンガはいつもの事ながら、全く動じる気配が無い。
器用に爪で耳の穴をほじっている。
584毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:20:35 ID:y07gpU9a
「姫さまにお詫びしなさい! 今直ぐ!」
「やなこった」
「なんですって!?」
「事実を言っただけで何で謝るんだよ?」
「何を指して事実って言ってるのよ?」
そこでジャンガは眉を顰めながらルイズを見つめる。
「解んねェか?」
「何がよ?」
ジャンガは、はぁ〜、と深くため息を吐くと、一拍置いて言った。

「そのお姫様は…テメェの事を利用しようとしてるんだゼ?」

――一瞬、時が止まった。
それは本当に一瞬の事だったのだが、その場に居た全員には非常に長く感じられた。
「あんた、何を言ってるのよ?」
ジャンガの言葉が理解できず、ルイズは聞き返す。
「だから、テメェを利用しようとしてるってんだよ、そのお姫様はよ」
「意味が解らないわ!」
「そうかい? なら、俺が代わりに言ってやるよ」
ジャンガはルイズを押し退け、アンリエッタに詰め寄った。
二メイル近い長身に睨まれ、アンリエッタは僅かに動揺する。
しかし、何とか平静を取り繕う。
「…何ですか?」
「テメェの尻拭いを友人にやらせるたァ…意外と腹黒いな、お姫様ァ〜」
その言葉にアンリエッタの表情が曇る。
「それは…」
「テメェはお姫様なんだろ? 偉いんだろ? なら、こんなガキにわざわざ頼む必要は無ェじゃねェかよ。
それこそ、お抱えの腕の立つメイジ数人を向かわせるのが利口ってもんだゼ…」
アンリエッタは答えない。ただ、静かに耳を傾ける。
「それをしないのは…まァ、色々お偉い方の事情って物があるんだろうな。
だから、他に行かせる事のできる奴はこのガキしかいなかった…ってんだろ?
キキキ…いいよな友人って。信頼できる相手であればあるほど、都合良く利用できるし、
こんな危険極まりない…命の保障も何もあったものじゃない任務にもホイホイ行かせられるからよ」
「……」
「ジャンガ! いい加減にしなさいよ!?」
たまらずルイズが口挟む。が、ジャンガは止まらない。
「テメェみたいな奴を一人知ってるゼ。そいつは自分が正義だとかぬかして、世界の支配者になろうとした。
そのために様々な物を利用した。人だろうが、物だろうが、生き物だろうがな。
そして、平穏を願う純粋な少女ですら、そいつにとっては目的を果たす為の道具でしかなかった。
自分を助けに来た奴等を傷つけないでくれ、と言う約束をも利用する徹底振りだったゼ。キキキ…」
笑うジャンガを、しかしアンリエッタは静かに見つめる。
「…テメェはアイツにソックリだ。友人の気持ちを利用して、テメェの尻拭いをさせようってんだからよ。
可愛い顔してなんとやらだな…。大した悪党だゼ」
「ジャンガ!!!」
ルイズは遂に堪えきれなくなり、杖を構えて呪文を唱える。
それをアンリエッタが止めた。
「やめて、ルイズ」
「姫さま?」
アンリエッタはジャンガを真っ直ぐに見つめたままだ。
「使い魔さん…反論はしません。確かに、わたくしがルイズに頼んだ事は、軽佻な行いの尻拭いでしかありません。
どのような言葉で飾ろうとも…友人である彼女を都合よく利用しようとした事実は変わりません」
「姫さま…」
力なく呟くルイズとは対照的に、ジャンガは忌々しそうに鼻を鳴らす。
「ケッ、今更そんな反省じみた台詞を言ったてよ…お涙頂戴のそれにしか見えないゼ」
「そうですね…。弁解の余地は有りません」
「少しはテメェの身の程が解ったみたいだな…?」
「…ええ」
ジャンガは顎に爪を当て、暫し何事かを考える。
585毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:23:37 ID:y07gpU9a
「キキキ…なら、一つ俺と取引をしようじゃねェか?」
「取引…ですか?」
ジャンガは頷き、顎をしゃくる。
アンリエッタがそちらに目を向けると、タバサと母親が眠っているのが見えた。
「あの二人ちと訳有りでな……テメェの所で預かってくれねェかよ?」
「匿って欲しい…と? どのような訳が有るのですか?」
「あ、そ、それはその…」
ルイズはうろたえる。
当たり前だ、とても言えた内容ではない。
だが、ジャンガは止めようとするルイズを押し退け、アンリエッタに事の次第を全て話した。
全てを聞き終えたアンリエッタの顔は見て解る位に曇っていた。
「そうですか……ガリアに赴き、囚われたこの二人を…」
「ここじゃ満足に面倒見れねェしよ……かと言って実家に戻すのもあれだ。
だから、テメェの所で預かってもらいたいんだがよ……どうだ?」
アンリエッタは目を閉じ、考える。
「…それに答える見返りは何ですか?」
ジャンガはニヤリと笑みを浮かべる。
「テメェの尻拭いを完璧にやり遂げてやる」
暫しの沈黙の後、アンリエッタは目を見開く。
「…必ず、ですか?」
「でなきゃ俺の要求だって呑んでもらえないだろうが? こいつは取引なんだからよ……キキキ」
見詰め合うブルーの瞳と、金と青の月目。
「…わたくしはまだ女王では……全てを決められる立場ではありません。
そして、その立場になったとしても、弱いわたくしに何が…どこまでできるか分かりません。
ですが…、あなたの要求にはわたくしの力の限り、善処する事を約束します」
アンリエッタは深々と頭を下げた。
「ですから…この弱いわたくしに、わたくしの為に危険な場所へ赴いてもらうルイズに…、
わたくしの大切な友人に力を貸してください…。お願いします…」
その言葉を待っていたかのようにジャンガは笑った。
「キキキ…、取引成立だな」



事の成り行きを見守っていた(キュルケを除いた)一同から、一斉に安堵の息が漏れた。
ルイズは直ぐにアンリエッタに声を掛ける。
「宜しいのですか姫さま? 内政干渉などの問題が起こる可能性もあるのですが…」
「いいのよ、ルイズ。確かに問題は多いと思うわ。…でも、だからと言って放っておけるわけはないし…。
なにより、わたくしの失敗の後始末をお願いするのです。多少なりと、わたくしも骨を折らねばなりませんわ」
そう言ってアンリエッタは満面の笑顔で返す。
その顔を見たルイズは最早何も言えなかった。
「分かりました」
「では、ルイズ…お願いね」
「はい」
アンリエッタは右手の薬指に嵌めた指輪を引き抜くと、ルイズの右手の薬指に嵌めた。
「これは…?」
「母から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです」
「…ありがとうございます」
「それともう一つ…」
アンリエッタはマントの内側に手を入れる。
そして、取り出した手には青っぽい色をした”何か”が握られていた。

その”何か”を見て、ジャンガの目が驚愕に見開かれた。
586毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:26:57 ID:y07gpU9a
アンリエッタはルイズに手にした物を手渡す。
ルイズは興味深そうに”それ”をあらゆる角度から見る。
「姫さま…これは何ですか?」
「珍しい物ね……何かしら?」
「刻まれているのは、王家の紋章ではないな…」
キュルケやギーシュも、ルイズが手にした”それ”を横から覗き込んでいる。
アンリエッタは困ったような表情で答える。
「わたくしも詳しい事は…。ただ、これは王家に古くから伝わっている物なの。
代々の王はこれを受け継ぐ事が義務付けられているのよ」
「そんな大事な物を…いいのですか?」
アンリエッタは頷いた。
「あなたを危険から守ってくれるように、それもお渡ししておきます」
「姫さま…お心遣い感謝します」
そうして、ルイズは手にした”それ”に目を落とした。

と、横から伸びた爪が”それ”を奪い取った。

「な、ちょっとジャンガ!? 姫さまから渡された物を勝手に…」
そこまで言って、ルイズは言葉を止める。
ジャンガの表情がやけに真剣だったからだ。
手にした”それ”をジャンガは暫く、ジッと見つめ、顔を上げるとアンリエッタに尋ねた。
「なァ、姫嬢ちゃんよ…一つ聞いていいか?」
「何ですか?」
「古くから伝わってると言っていたが……どれ位前から”これ”はあるんだ?」
少し考え、アンリエッタは首を振った。
「それは…分かりません。ただ、随分と古くから伝わってるとしか…」
「……」
再び”それ”に目を落とすジャンガ。
ルイズは気になって声を掛けた。
「ねぇ……それがどうしたの?」
「こいつは…」
「え?」
ジャンガは”それ”の名を口にした。



「こいつは…ヒーローメダル、俺の居た世界の物だ」
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:30:16 ID:pYax4OUf
支援
588毒の爪の使い魔:2009/01/19(月) 02:32:47 ID:y07gpU9a
以上で投下終了です。

罵倒にしては、ちょいと甘めかな?
まぁ、個人的にアンリエッタ好きなので、少しは大人にしてあげたいと思っています。
原作のオーバーリアクションは確かにあれでしたが、アニメはそうでもなかったので。
で、次回からようやくアルビオン編に突入です。ようやく、ワルドの出番だ…(苦笑)

では、今回はこれで。アデュー!
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:38:29 ID:F3kSt9eo
この作品ジャンガもジョーカーも分身使ってるからあんまりワルドのありがたみがないな
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 02:44:24 ID:QVYRihcu
毒の爪の人、乙です!
アンリエッタ、ジャンガの意見を正面から受け止めてますね〜
このアンリエッタは意外と胆力がありそうだ
その姫様と取引したジャンガ、足手まといとか言ってルイズ達を置いて一人で行っちゃいそうだw
ルイズは任務としてアルビオンに行くのだろうけど、タバサはジャンガの身を案じて同行しそう

>ようやく、ワルドの出番だ…(苦笑
ワルドとジャンガの対決は今から楽しみ
分身vs偏在は燃える!
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 03:29:24 ID:nrxkwg5c
毒の爪の人、乙です
う〜〜ん、初めてなのに名作の後っての投下が怖いぜ
でも、投下予告です
誰もいないようでしたら3時35分より小ネタ投下したいと思います
住めば都のコスモス荘より桜咲鈴雄を召喚(ちなみにアニメ版)
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 03:34:17 ID:pPBgft32
支援
593使い魔でドッコイ:2009/01/19(月) 03:35:38 ID:nrxkwg5c
 彼が召喚された時、ルイズは激しく落胆した。
 何十回もの失敗の末にようやく召喚出来たのが、どこからどう見ても冴えない平民にしか見えなかったからだ。
 しかしやり直しが効くはずもなく、ルイズは渋々彼と使い魔の契約をするのだった。


 最初は彼の方もいきなりの事に驚いていたが、何だかんだでルイズの理不尽な命令に対しても従ってくれた。
 生活環境に少々不満はあるみたいだが大した文句を言わず、それどころか授業で失敗したルイズに対してやさしく接してくれた。
 使い魔本来の働きとしては全く期待出来なかったが、ルイズは少し彼の事を気に入りはじめていた。

 ルイズの彼に対する印象が大きく変わった最初の事件と言えば、やはりギーシュとの決闘騒ぎだろう。
 ギーシュがメイドに突っ掛かっている所をルイズが注意したのがそもそもの切っ掛けである。
 ルイズ自身どうしてそんな事をしたのかよく分らなかった。
 もしかしたら平民の使い魔を召喚して、平民に情が移ったのかもしれないなどとも思った。
 だが一度振り上げた矛を自ら先に収めるなんて事がルイズに出来る訳も無く、感情のままに口論となって果てには決闘にまで発展してしまった。

「さてと、では始めるか」

 決闘の場、ヴェストリア広場で両者が対峙するのを他の生徒達が見守る。
 野次馬の様に集まったギャラリーは徐々に増え、いよいよ決闘が始まると思ったその時。
 ソレは突然現れた。

「なあ〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 決闘前という緊張感漂う空気を全て吹き飛ばすような景気の良い笑い声がどこからか響く。
 生徒達はその声の主を捜そうと辺りを見渡した。
594使い魔でドッコイ:2009/01/19(月) 03:36:49 ID:nrxkwg5c
「だ、誰だ!?」
「どこから聞こえてくるの?」
「見ろ、あそこだ!」

 生徒の一人が声の主を発見して指を指した場所は風の塔。その頂上にソレはいた。
 透き通るようなブルーの肉体。
 肩と胸と膝など部分部分は固そうな厚みのある金属で覆われてはいたが全体的には薄いプレートで覆われているだけのようだった。
 ヘルメットを被ったような頭部にはまん丸く光る目が二つ。
 そして額には一本の飾りのようなアンテナ。
 少々子供向けデザインのような気もしないでもない。
 腰に巻かれたベルトが幼稚なデザインに拍車をかけている。
 それでも通俗的なヒーローとしての格好良さがソレにはあった。
 しかし、何より生徒達を一番驚かせたのは、ソレが身に纏った真っ赤なマントだろう。

「夢だと思いたい異世界暮らし。夢でないなら覚悟を決めて。多少の理不尽あるけれど。生活のためにも頑張ります。
 株式会社オタンコナス製造、超特殊汎用パワードスーツ、ドッコイダー!!
 助太刀せよとただいま参上!」

 この世界ハルケギニアではマントはメイジ、強いては貴族を意味する。
 そんな事は知るよしも無いドッコイダーはポーズを決めたまま笑い続けていた。

 この時ルイズだけはドッコイダーが自分の召喚した彼だと気が付く。
 だが他の人たちはどういう訳かその正体に気が付く者は居なかった。
 実はこの一件の後も何度かバレてしまうようなシチュエーションがあったはずなのに、みんな気が付いた様子は無く。
 しまいには「マントを羽織っているのだから、その正体は顔を見られる訳にはいかない何処かの有名貴族だ」なんて噂まで広まった程だ。

「だ、誰だか知らないが君がルイズの代わりに相手になるっていうのかい? おもしろい!!」

 いきなりの乱入者に一度はギーシュも驚いたが、その見た目から大した相手ではないと判断したのだろう。
 すぐに余裕を取り戻してドッコイダーに向けて杖を構える。

「なに、メイジだか貴族だか知らないが燃える正義の熱血α波発生装置に不可能は無い。いくぞ!」

 ドッコイダーは風の塔から跳躍した。
 かろやかに空中を舞うその雄姿に誰もが目を奪われる。

「ミラクルハイパーエキセレントダイナマイツキイィィィィィィィィィィィィック!!」

 音声入力によって発動するドッコイダーの必殺技が、ギーシュを狙う。
 しかし、そのキックが決まる事はなかった。
 重たいヘルメット頭の所為でバランスが崩れ、ドッコイダーは頭から落下。
 さらに運が良いのか悪いのか、落下先にギーシュがいてそのまま激突。

 意図して行った行動とは思えなかった。
 起き上がった後で何事も無かったかのように「計算通り」なんて言っているが、誰もそんな事信じなかった。
 突然のヒーローの登場に一時でも目を輝かせた生徒達は、早速見せつけられたヒーローの醜態に唖然となった。
595使い魔でドッコイ:2009/01/19(月) 03:37:51 ID:nrxkwg5c
 しかし結果的にはギーシュをやっつけた様に、ドッコイダーはその後も色んな戦いで勝利を掴んだ。
 少々棚からぼた餅のような勝利も多かったが、運も実力の内と言うから良いのだろう。
 もちろんフーケのゴーレムと戦った時などピンチを迎える時だってあったが、

「燃える正義の熱血α波に、不可能は無い!」

 そう言っては耳元から流れてくる妙な音楽と共に何とか切り抜けてきた。
 武器屋で購入された彼の相棒曰く、その音楽に心の震えへの影響があるとは思えないらしい。
 だがどういう訳か彼の心の震えは強くなっているそうだ。

 そんな彼が最も心を強く震わせたのは、ルイズをワルドから救った時だろう。
 斃れたウェールズと気を失ったルイズを目にして、彼は正義の炎に燃えた。

「反逆者閃光のワルド! お前の敗因はただ一つ!!
 お前は傷つけてはいけないものを傷つけた! それだけだぁーッ!!」

 偏在を全て撃破しワルドを退ける事に成功。
 さらにはアルビオンからの脱出まで果たした。
 この時ばかりはルイズも、おまぬけ顔の彼が何よりも格好良く見えたと言う。
596使い魔でドッコイ:2009/01/19(月) 03:38:45 ID:nrxkwg5c
 そして彼は今また強く心を震わせていた。
 ステンドグラス越しの夕日が、荘厳な雰囲気を仕立てている寺院の中。
 彼はルイズと共にいた。

「変な使い魔で最初は何よこいつって思ったけど、今はあんたで良かったって思ってる」
「僕も、ルイズに召喚されて良かった。みんなと、ルイズに会えたから」

 寺院の外で事の成り行きを見守っていた金髪の美少年、ジュリオ・チェザーレは「そろそろいいかな」と呟いてから中へと足を踏み入れた。
 二人だけの時間も良いが、近づいてくるアルビオン軍が気になるころだ。
 少しからかってから二人に逃げるように言おうとしていたジュリオだったが、その事を口にする事はなかった。

「やあ、使い………スズオ…くん……?」

 ジュリオが思わず彼を名前で呼ぶ。
 確かに寺院に入ったのは彼とルイズの二人だけだったはずだ。
 しかし今ジュリオの目の前にいるのは、深い眠りについたルイズと彼女を抱き上げたブルーの人影である。

「いや、私は桜咲鈴雄ではない」
「きみは……いったい?」
「私の名前はドッコイダー。
 株式会社オタンコナス製造、超特殊汎用パワードスーツ、ドッコイダーだ!!」

 ルイズをジュリオに預けると、ドッコイダーは走り出した。
 本来ルイズが作戦を行うはずだった丘の上へ。
 その丘の上からは草原の地平の向こう、進軍中のアルビオン軍が見える。

「相棒はてんで義理がてえや」
「どうやら僕は困っている人を見過ごせない性分みたいなんでね」

 総勢七万もの軍。普通の人ならば逃げだしたくなるだろう。
 だが彼はその七万の軍と真っ正面から立ち向かって行くのだった。


 敵が七万いようとも! 怯む心はナッシング!!

 目指せ、正義の大勝利!!!

 熱き心で、ただいま参上!!!!
597使い魔でドッコイ:2009/01/19(月) 03:39:39 ID:nrxkwg5c
投下終了です
駄文失礼いたしました
今でも浪川の声を聞くとドッコイダーに変換されてしまう所為で黒神を見た時ふと思いつき
勢いがままに書いてみました
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 03:53:04 ID:pPBgft32
何もかもがお約束すぎるwww

まぁドッコイダーだからなぁw

599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 07:11:29 ID:gpCcfz5D
ドッコイダー乙!
アニメの最終決戦はちょっとウルッてきたぜ。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 07:14:24 ID:IqZacckq
お疲れさまでした。

ああ、次はワイルドウルフ様だ…
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 10:06:05 ID:AFMAPzhf
朝起きたらドッコイダー乙!!
マンガ版最終巻で泣いた思い出が…!
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 10:20:18 ID:7xzRt8Or
小説版もいいしアニメ版もドッコイダー復活のキメ絵が……
DVD売れなかったと聞いて返した後すぐに全巻買ってしまったぜ


80%オフで
あんまりだろ、この値下がり……
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 10:33:02 ID:rCtxrLpC
は〜ドッコイドッコイ♪
604ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:12:03 ID:r1zQ4wNu
誰もいない……?

投下するなら今の内……

11:20ぐらいから……
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 11:19:26 ID:haMalb79
>>597
ちょっと遅くなったけど、声援を送らせてもらいます。


ドッコイダー! ドッコイダー!

    ドッコイダー! ドッコイダー!
606ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:21:32 ID:r1zQ4wNu
ゼロの氷竜 十六話

ブラムドの足が、鎖につながれている。
太い鎖ではあったが、ブラムドの膂力をもってすれば引き千切ることは簡単だ。
その口から吐き出される、炎のブレスで溶かすこともできる。
しかし魔法で縛られたブラムドは、それらを考えただけで身を焼くような痛みに襲われる。
そのブラムドの前に、一人の女が立っていた。
さらにその後ろには鉄扉がそびえている。
ブラムドと女を隔てるものは何もなく、その視線は、見下ろす視線と見上げる視線はしっ
かりと合わされている。
女は両手にいくつもの指輪をはめ、額にはサークレットが飾られている。
その身なりから考えれば、給餌の役目を与えられた者ではない。
ブラムドを捕らえたものたちと同じく、魔術師であることに間違いないだろう。
にもかかわらず、女の表情に一切の恐怖はない。
女が口を開く。
「魔法というものは、マナへの干渉の結果もたらされる」
命乞いでも悲鳴でもなく、淡々とした説明が流れ出る。
女の名前は、アルナカーラ。
アレクラスト大陸を支配する魔法王国カストゥールの魔術師たちの中で、唯一ブラムドが
友と呼ぶ魔術師だ。
「竜が操る竜語魔法は自身に対して、そして竜族の召喚のみに限定されている」
長い寿命を持ち、フォーセリアにおいては敵となりうるものもほとんど存在しない竜にと
って、竜語魔法は補助的な役割しか持たない。
竜語魔法が竜にとって生まれ持って備わっている能力である以上、発展の余地もない。
竜には自明のことを説明され、その意図がわからないブラムドは心中で疑問を浮かべる。
アルナカーラは、さらに説明を続ける。
「でも私たち魔術師が扱う魔法には、まだ様々な可能性が眠っている」
「たとえば、どんなものだ?」
ブラムドの言葉に、アルナカーラは微笑みながら答える。
「たとえば、魔法を封じる魔法」
数多の竜を捕らえた側である魔術師の一人が、ブラムドの興味を引くことに成功した。
ブラムドが、フォーセリアで最も強いといわれる竜が、魔術師たちに、その操る魔法に苦
杯を舐めさせられた故に。

魔法の研究という点に関してハルケギニアと魔法王国時代のフォーセリアを比較した場合、
後者のほうがより進んでいたといえる。
その理由はいくつか考えられるが、一番の要因はマナの存在を認識しているか否かだろう。
フォーセリアでは万物の根源とされるマナ。
その存在を知覚でき、操ることが出来るものを、フォーセリアでは魔術師と呼ぶ。
マナの存在を認識できるということは、マナそれ自体へも干渉が出来るということ。
より強力な魔術師が、他の魔術師が操ろうとするマナに干渉することが可能となる。
マナへ干渉する力、強制力は魔術師の精神力に比例した強さを持つ。
竜と人間の能力には、比較する必要性も感じないほどの差が存在する。
それは肉体の強靱さや寿命の長さのみならず、精神力の強さにおいてもだ。
さらにはハルケギニアのメイジに、マナの概念は存在しない。
知らないものを考えることは不可能だ。
つまりブラムドはハルケギニアで唯一、強制力を発揮できる魔法の使い手といえる。
魔法という存在、その発動や維持の全てにマナが不可欠である以上、ブラムドの持つ強制
力にあらがえるマナなど、魔法など存在しない。
シエスタに対してブラムドが使った魔法は、約束通り一つ。
『封魔力場(パーフェクト・キャンセレーション)』
術者の強制力を下回る魔法を解除してしまう魔法だけだった。
フォーセリアのゴーレム、木や死体や石や金属に魔力を与え、組み上げられたものであれ
ば、魔法の力を失って動けなくなるか、分解される結果となる。
しかしギーシュのワルキューレのように、術者がマナを変質させたもの、つまりマナの固
まりのようなゴーレムでは、その存在をかき消されてしまう。
ブラムドはシエスタを中心として、魔法の力が及ばない力場を構築した。
メイジに対して使えばその魔法を封じることもできたが、ギーシュはブラムドに魔法を使
われることを了承はしなかっただろう。
ギーシュの魔法に意味がなくなるという点において、結果は変わらなかったが。
607ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:22:04 ID:r1zQ4wNu
ギーシュの目の前で、ワルキューレが消え去っっていた。
砕かれたのでもなく、壊されたのでもなく、断ち切られたのでもない。
シエスタに踏みしめられた青銅の花びらだけを残して、幻だったかのように消えていた。
それまで生きてきた常識を打ち破る理不尽さを、ギーシュの頭は処理しきれない。
一体誰が、落ちることが天空へ向かうことだと実証されて、即座に理解できるだろう。
たった今目の前で起こったことが、たった今目の前で起こったからこそ、ギーシュは理解
することができない。
メイジとしての能力の全てであったワルキューレは消えてしまい、今気絶せずに使える魔
法といえばコモンマジックがが一つか二つ程度だ。
藁を掴むようにシエスタへ使ったレビテーションも、その効果を発揮することはない。
ギーシュは、シエスタの顔を見ることもできないほどの恐怖に支配されていた。
だが貴族としての誇りが、男としての矜持が、その場を動かないという約定を守らせる。
冷静に考えさえすれば、シエスタがモップでギーシュに触れるだけのことでしかない。
それだけのことで、勝敗は決する。
腕が折られるわけでも、足が折られるわけでも、目が潰されるわけでも、ましてや殺され
るわけでもない。
それでもギーシュは事態を冷静に把握することもできず、震えることさえできなかった。
本人ほど混乱していたわけではないが、ギーシュの側の立会人であるオスマンと、決闘に
関する助言をしたコルベールも平静ではいられない。
無論、シエスタの側の立会人である三人の少女たちにしても同じ。
魔法というものがメイジとして、自己の存在を証明するために必要不可欠なものであれば、
その反応も当然のことだろう。
メイジにとって最も強固で、最も身近なよりどころが、粉々に打ち砕かれたにも等しい。
冷静でいられたのは、その結果をもたらしたブラムドと、何が起こっているかを認識して
おらず、目をつぶったままギーシュへと向かうシエスタだけだ。

「シエスタ、目を開いても良いぞ」
ブラムドの声で、ギーシュ以外のメイジたちが状況を認識する。
シエスタが立ち止まり、その瞳を開く。
決闘者たちが手を伸ばしても、指先が触れる程度の距離でしかない。
しかしシエスタが手に持っているモップであれば、触れることはたやすいだろう。
シエスタの勝利は、約束されたようなものだ。
ギーシュと違って彼女は冷静そのもので、モップで触れて勝利する以外はしないだろう。
混乱していればモップを振り回し、ギーシュに怪我を負わせる可能性もあった。
ところがブラムドが目をつぶらせ、周囲の状況をあえて理解させないことで、シエスタは
冷静さを保ちえている。
オスマンとコルベールは驚愕の表情を消しきれずにいたが、それでも決闘者たちが怪我を
しないであろうことに胸をなでおろす。
三人の少女たちは、シエスタに約束された勝利に微笑を浮かべる。
ただしこの瞬間、賞賛されるべきはギーシュだったかもしれない。
恐慌状態に陥って暴れだしかねない精神状態に置かれながら、貴族としての誇りが体を震
わせることもなく、男としての矜持が逃げ出すこともさせない。
ギーシュは自身で意識することもなく、ただ静かに敗北を受け入れていた。
乾ききって飲み下すものもないにもかかわらず喉を鳴らしたのは、愛嬌といえるだろう。
シエスタが胸に抱いていたモップを改めて握り、役割を交代するかのようにギーシュが目
をつむる。
いつの間にか、混乱しきっていたギーシュの心が落ち着いていた。
……ひっぱたかれるぐらいは覚悟しないと。
……肩かな? 頭かな? 胸かな? 腕かな? 足かな?
……顔はやめてほしいなぁ。
……さすがに鼻血を出しながら謝るのは嫌だ。
……でもあれだけひどいことを言っておいては、虫のいい話かな?
ギーシュは心の中で、自嘲して笑った。
だがいつまで待てどもモップの感触はなく、当然のように叩かれた痛みもない。
不審に思ったギーシュが目を開こうとした瞬間、その耳が乾いた音をとらえる。
それはまるで、ほうきやモップが地面に倒れたときのような音だった。
608ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:22:36 ID:r1zQ4wNu
目を開いたギーシュは、自分の前にいたはずのシエスタが消えたことに驚いた。
そしてその視線をおろして、シエスタが深く深く頭を下げていたことに気付く。
足下に倒れたモップを見て、ギーシュは再び混乱する。
勝利を目前にして、いやそれどころではない。
掴んでいたはずの勝利をなげうった理由が、ギーシュには理解できない。
勝ちさえすれば、シエスタの望みはかなえられる。
ギーシュ自身、ルイズへ謝罪することを覚悟していた。
約束をたがえないことは、その場から一歩も動かなかったことで証明されている。
再び混乱したギーシュに、頭を下げたままシエスタが話しかけた。
「グラモン様」
「なんだい?」
混乱していたはずが、ギーシュの口から出たのは落ち着いた声だった。
震えることも、裏返ることもない。
見下したような傲慢さも、なりをひそめていた。
「決闘は、私の負けで構いません」
ギーシュは驚くあまり返事もできず、それはシエスタ以外の人間も変わらなかった。
それはこの状況を生み出したブラムドにとっても、驚きをもって迎えられている。
思わぬ事態に、ルイズもキュルケもタバサも、声を上げることはできない。
いうまでもなく、オスマンもコルベールも見守っているだけだ。
「どうかヴァリエール様をゼロといったことを、取り消していただけませんか?」
ギーシュの心が震える。
自分が何をしていたのか、自分が目の前の彼女になにをしたのかを思い出す。
彼女が負った怪我をおもんばかることもなく、自己の主張のみを押し付ける。
熱に浮かされたように暴言を吐き連ね、考えたこともなかった選民意識を叩き付けた。
罪だ罰だと騒ぎ立て、挙句に彼女の友人を侮辱する。
自身の度量の狭さを棚に上げ、嫉妬して全ての責任を押し付けた。
だが彼女の望みは、友人の名誉を回復させることだけ。
その友誼の強さに、ギーシュは頭を金槌で殴られたような衝撃を受けていた。
彼女のたった一つの望みをかなえるには、ただうなずくだけでいい。
決闘の前に言おうとした謝罪の言葉を、今言ってもいい。
そう思いながら、ギーシュは一つの疑問を口にする誘惑に勝てなかった。
「勝ったとしても、その望みはかなえられたんじゃないかな?」
シエスタの望みをかなえる、つまりルイズをゼロといったことを取り消すだけならば、わ
ざわざ勝利を手放す必要はない。
ギーシュには唯一つだけ、答えが想像できた。
「貴族が、平民に負けたとあっては……」
シエスタは全てを口にしようとはしなかったが、その言葉でギーシュは自身の想像が的を
射ていたことを知った。
その思いやりの深さに、尊敬の念を禁じえない。
だがギーシュは少し勘違いをしている。
結局シエスタは、給仕に礼を言ったギーシュを、嫌うことができなかった。
暴言を吐かれ、友人を侮辱され、権威を振りかざされても。
誇り高いギーシュは、自分が敗北したことを隠すことはしないだろう。
平民に、しかも戦士ではなく、メイドでしかないシエスタに敗北した事実は、貴族である
ギーシュをどれだけ傷付けるのか。
友人も、そして恋人も無くしたギーシュに、更なる痛手を与えることを、シエスタは選べ
なかった。
それは思いやりではあったが、だれかれ構わずという無原則なものではない。
またさらに正確を期すならば、シエスタは自身の責任を痛感していた。
足下へ転がった香水瓶が見えなかったとしても、ギーシュにケーキをぶちまけるほかにや
りようがあったのではないか。
たとえば、自分が笑いものになるだけですんだのではないかと。
誇りは、貴族だけに存在するものではない。
メイジが、貴族が魔法を使うことを誇りとするように。
シエスタが尊敬する料理長マルトーが、美味い料理を作ることを誇りとするように。
魔法を使えないルイズが、それでも貴族としての誇りを失わないように。
メイドであるシエスタは、その仕事に誇りを持っていた。
ゆえにシエスタは、勝利を掴むことができない。
かといってギーシュにしても、自身に勝者たる資格がないと考えている。
シエスタが使用人である立場を崩そうとしていない以上、主導権はギーシュにあった。
609ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:23:14 ID:r1zQ4wNu
「命を惜しむな、名を惜しめ」
ギーシュが幼少の頃から父親に言われてきた、グラモン家の家訓だ。
だからこそ、ギーシュは貴族としての面子を重んじた。
また、貴族としての面子にこだわるのはギーシュだけではない。
同窓の貴族たちにとっても、それは非常に重要なものだった。
ところが貴族としての誇りは、特権意識に、平民の蔑視に変わりやすい。
精神的に未熟な若者であればなおのこと。
選民思想に毒された若者たちは、自分たちこそが貴族の誇りに泥を塗っていることに気付
きえず、同じように勘違いをしている教師も多い。
もちろん、真っ当な貴族の誇りを持つ教師や生徒もいる。
しかし残念なことに、その数は決して多くはない。
それは当然学院のみにいえることではなく、学院が属するトリステインという国自体に、
流行り病のように蔓延っているのだ。
甘い毒のような病から立ち直ったギーシュは、胸に刻まれた家訓を思い起こす。
それを思い浮かべながらも、すでに下らない面子に拘泥することはなかった。
学生でしかない自分に、戦に出たこともない自分に、何を惜しむ名があろうかと。
……下らない面子など、犬にでも食わせてしまえ!!
心の霧を晴らしたギーシュは、不意に現実へと意識の焦点を合わせる。
いまだに頭を上げることのないシエスタの様子を見ながら、ギーシュは頭を働かせる。
……勝ちを譲るといっても、彼女は納得しないだろう。
そう考えたギーシュは、一つのたくらみを思いつく。
「勝ちはいらないが商品はほしい、というのは虫のいい話じゃないかな?」
あまりにも優しげな声で、辛辣な言葉を口にする。
思わずその顔を上げたものの、シエスタはとっさに返事をすることができない。
その代わりに反応しかけたのは、傍らにいたルイズだった。
だが怒気を口から吐き出しかけたその瞬間、肩に置かれた手に気付く。
キュルケが、無言で首を振っていた。
なぜと問おうとするルイズは、再びシエスタたちに視線を投げるキュルケに追随する。
「そっ、れは、あの……」
うまく言葉にすることもできず、シエスタは反論にもならない反論を口の中で発する。
そしてその声と同じように、優しげに微笑むギーシュの顔を見て、何もいえなくなった。
次の瞬間、止める暇もあればこそ、ギーシュは倒れたモップへと歩み寄って持ち上げる。
「ブラムド様、私は動いてはならぬのに歩き、また彼女の武器に触れました。裁定はいか
に下りましょうか?」
「グラモン様!?」
シエスタは驚きの声をあげ、立会人も、裁定者も、とっさに返答ができなかった。
その様子はさして変わらなかったが、心中はそれぞれ微妙に異なる。
ルイズとタバサ、そしてコルベールはただただ驚く。
キュルケとオスマンは、ギーシュの誇り高さに微笑を送る。
そしてブラムドは、一人感動に打ち震えていた。
どんな世界であろうとも、人間は変わることはない。
魔術師たちの行状で掻き消えていく、蛮族の命に心を痛めたアルナカーラのように。
勝利を放棄することで、決闘の相手すら思いやるシエスタのように。
自らの敗北を、静かに受け入れようとするギーシュのように。
人間の素晴らしさに、ブラムドは心を震わされていた。
一拍をおいて、ブラムドが応える。
「確かに、約定に従えば勝者はシエスタとなろう」
その答えに、ギーシュは満足げに微笑んだ。
それとはうって変わり、今度はシエスタが混乱し始める。
「え!? いえっ、いけません!!」
慌てふためきながら頬や頭に手をやるシエスタに、周囲の人間は微笑まざるをえない。
次の瞬間、ギーシュの手からモップを奪い取り、シエスタはブラムドへ向かって宣言した。
「ぶ、武器に触りました!!」
こらえきれずに、キュルケとタバサがシエスタから顔を背ける。
コルベールはふきだしそうになる口を押さえ、オスマンはあごひげを握り締める。
モップを奪い取られたことでギーシュは一瞬呆け、再び口元に微笑を宿す。
ルイズは何とか破顔するのをこらえたが、シエスタに伝えられたのは一言だけだった。
「シ、シエスタ、違うわ」
「えっ? あの、あれっ!?」
そんなシエスタの様子に、三人の少女たちはとうとう笑いをこらえられなくなった。
610ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:23:52 ID:r1zQ4wNu
「皆さん笑いすぎです!」
ようやく混乱から立ち直ったシエスタは、憤懣やるかたないといった表情を見せる。
「ごめんなさい、シエスタ」
涙ぐむルイズの謝罪を受け、仕方なくシエスタは膨らませていた両頬を元に戻した。
そんなシエスタの様子に微笑んでいたギーシュが、真面目な顔を浮かべて彼女へ向き直る。
「先刻の暴言を、謝らせてほしい」
頭を下げたギーシュに驚いたが、次の瞬間には慈母のような微笑みを浮かべて返事をした。
「誰にでも、怒りに我を失うことがありますから」
少女の言葉に、少年は顔を上げて礼を言う。
「ありがとう」
「それに決闘が始まる前にも、謝ろうとしていたのではありませんか?」
シエスタの言葉に、ギーシュは驚きながら顔を赤らめたが、あえて何も言わなかった。
そして少女との約束通り、少女の友人へと向き直る。
「ミス・ヴァリエール、先刻の言葉を撤回させてもらいたい」
「いいわ。シエスタも許したんだし」
少し照れくさそうなルイズに、ギーシュが礼の言葉を口にする。
「ありがとう。ミス・ヴァリエール」
そんな若者たちの交流を楽しそうに、嬉しそうに眺めていたブラムドが口を開く
「さて、決闘の勝敗だが」
その言葉に、ギーシュとシエスタが同時に声を発しようとする。
ブラムドは二人を手で制し、自らの言葉を継ぐ。
「シエスタは勝者たるを望むまい?」
問われた少女が、深くうなずく。
「ギーシュも勝者たるを望まぬだろうが、シエスタを困らせたいわけではあるまい?」
問われた少年も、深くうなずいた。
「なれば、この決闘は我が預かったものだ。決闘の勝敗も、我が預かりおく。勝者も敗者
もない。……それでよいか?」
裁定者の言葉に、二人の決闘者が了解の意を表す。
貴族の少年と、平民の少女が、裁定者へ深く頭を下げた。
「ギーシュ」
裁定に充足感を味わっていた少年に、キュルケが声をかける。
「あなた、忘れていることはない?」
その言葉に、ギーシュは先刻泣かせてしまった少女たちを思い起こす。
「モンモランシー……と、ケティ……」
自分の前から去っていった少女たちの姿を思い出し、ギーシュは困り顔を浮かべた。
少女たちの涙のわけを、理解できなかったからだ。
困り顔を浮かべた純朴な少年に、恋多き少女が助言をする。
「一つ教えてあげる。女の子は優しい恋人が好きだけど、優しくしてほしいのは自分にだ
けなのよ?」
経験を踏まえた少女の金言に、経験の少ない少年の疑問は氷解する。
「ギーシュ、あなたが好きなのは誰?」
キュルケの問いに、純朴な少年は刹那の迷いも見せず、力強く答えた。
「僕が好きなのはモンモランシーだ」
「彼女は部屋にいるわ。許してもらえるかは知らないけれど」
少し冷たさを含んだその言葉にも、ギーシュは躊躇いを見せず、寮塔へ向かって走り去る。
その後姿を、少女たちと大人たちは微笑みながら見送った。
「のう、シエスタ君?」
横合いからかかった声に、シエスタは微笑みながら返事をする。
「何でしょう、学院長」
「誰も怪我をしなかったお祝いに、皆でパーティーでもせぬかね?」
「皆というと、今ここにいらっしゃる方々ですか? グラモン様は?」
シエスタの問いに、オスマンはあごひげをしごきながら答える。
「まぁ彼には恋人との語らいのほうが重要じゃろう。あとは心配しておるじゃろうから他
のメイドたちや、ミス・ロングビルなどを誘えばよいじゃろう」
唐突に、しかも全くこの件に関わっていないミス・ロングビルの名前が出たこと。
そしてあごひげをしごくことでも誤魔化しきれない口元の笑みで、四人の少女たちは学院
長の意図を正確に把握し、微笑を消しながら凍てつきそうな視線を送る。
ブラムドも呆れつつ、どんな世界にあろうとも、人間に変わりはない、と思い出していた。
「……男って、馬鹿ね」
異様に盛り上がるオスマンとコルベールへ放たれた微熱の吐息は、雪風よりも冷たかった。
611ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/19(月) 11:24:48 ID:r1zQ4wNu
以上。

えー、ようやくギーシュ編が終わりました。
長すぎですね。
なんていうか申し訳ないです。

応援スレで応援してくれる方々には誠に感謝です。
では、また次回。

あでぃおぅす
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 11:42:49 ID:5c40FIfS
ギーシュがいい奴だ…
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 11:48:39 ID:Q2XcNgTg
ブラムドの人乙
本当ハートフルな話だ
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 13:24:55 ID:WYXu5mWl
>>570
遅レスだが投下乙です
デルフと左手……なんという突っ込みコンビw
あと
>ファウストだかメフィストだかいうらしいでさあ
まさか師の方まで出てくるんじゃあ……

>>588
まだルイズはルーンが消えたの知らないんでしょうか?
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 13:48:40 ID:RiGVRmAw
妖魔夜行or百鬼夜翔から複数のキャラを召喚とか…
あんまり強すぎる妖怪だとストーリー破綻してしまうかしら?
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:03:46 ID:biJooxwb
ヨーダイとジェラルドでいいじゃん。
微妙に小賢しく立ち回るサイト、って気もしないではないがw。

あと“拳神雷”レイ・シュンライ召喚とか考えたけど、それやるとルイズがふたなりになるんで自重した。
いやー、いろいろ妄想を暴走させてたら虚無の系譜はふたなりとかゆーとんでも設定になりそうになってなぁ…w。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:06:58 ID:RiGVRmAw
つーか書き込んだ後でパッと閃いたんだが。

ギーシュが教授を召喚…まんまですなw
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:08:36 ID:E2IGVLG5
ってもう480kb越えているじゃないか
次スレ立ててくる
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:10:50 ID:E2IGVLG5
次スレ
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part206
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232341814/
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:13:12 ID:biJooxwb
おおっと!
スレ立て乙ですじゃー。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 14:14:25 ID:RiGVRmAw
スレ立て乙カレー
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:12:28 ID:8XUcAC+h
パーフェクト・キャンセレーションは対魔神王戦でウォートが使ってたロードス版かな
卓ゲ者だがロードスはさすがにルール把握してないので、ブラムドがどこまでのことをできるのか
分からない部分がある所が面白いと思うぜ
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 15:47:12 ID:CVH6F3Ik
500kbだったら、ルイズに双剣のバーツが召喚されて
ガンダールヴ効果で普通の剣が振れるようになり俺歓喜!
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 17:55:18 ID:ByhuGsmu
500kbnなら、川村ヒデオが召喚される
先輩から逃げられていやっほぉい状態だが目つきの悪さから警戒される
そしてもちろんトラブルの連続
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:13:38 ID:6KCWEzO7
500kBなら江戸伸介召喚。
ハルケギニアに下着革命が……!

ついでにいろいろエロいことに。
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:32:38 ID:825Qs62H
君達全然書く気がないじゃないかっ!!
1000なら久遠の絆〜再臨詔〜から杵築悠利召喚
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:47:51 ID:/WRj7PHS
>>615
忘れられた妖怪は消えてしまう運命。
自分を知るもののいない世界で存在し続けてられるのだろうか?
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:47:51 ID:6KCWEzO7
>>626
1000ならって言うところに途轍もない無理を感じるぜ。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 18:59:21 ID:6KCWEzO7
トリステインの国家の重鎮が一堂に会するとある会合。
正式な会議という訳ではないが、後日行われる御前会議に先立って情報交換や立ち位置の確認といった意味を持っている。
アルビオンとの戦からさまざまな動乱があり、ロマリアがぶち上げたエルフとの聖戦も穏便に片が付いた(本作品での独自設定)。結果として教皇の権威は随分と失墜したが。
その一連の結果、トリステインは国際的な地位を向上させることに成功した。
レコン・キスタとの戦は最後の決め手こそガリアが指したが、殿軍として七万の兵を一騎能く押しとどめ、連合軍を救ったのは、トリステインの者だった。
それに先立ち、レコン・キスタの竜騎兵を次々と撃墜、巨艦「レキシントン」をも落とし、戦力を大きく減じたのも、
ガリアの簒奪王ジョゼフに身柄を拘束されたシャルロット王女(現女王)を救出したのも、
ロマリア主導でガリアと干戈を交えたとき、ガリアの秘密兵器、巨大ゴーレムを倒したのも、
みなトリステインの者。
さらにはアルビオン王家の落胤を保護し、あるいは聖地と始祖の真実を解き明かし、遂にはエルフとの確執を解くきっかけを作った(本作品での独自設定)のも。

トリステインはこれらの結果、ガリアから各国に支払われた賠償金・割譲された領土の分配に於いて、他国より遥かに大きい権利を得、さらにはサハラに於ける風石の優先的な採掘権すら得たのである。


さて、ここで一つ問題が浮上する。
これらが殆ど全てが、とある個人を中心としたグループの功績による物であると、少なくとも、国内外の人々の間では、そう認識されているのである。

巷間に流れる噂を大別すると、その中心人物は以下の二人のいずれか。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。アクイレイアの聖女。
サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。アルビオンの英雄。虎街道の英雄。
そして、圧倒的に後者の噂が優勢である。
元平民であるというのが民心をつかむのだろうか。

で、吟遊詩人たちは冒頭のような詩を歌い、人々は喝采を上げるのである。

実はトリステイン外でもこの詩は人気である。国によって強調されるエピソードが違うなど、細部は異なるが。


「こうなると、生半な褒賞では追いつきませんぞ」
大功成った人物に見合う行賞が無いとなれば、国家の威信にも関わるし人心も離れやすくなる。

さてどうしたものか。
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:00:43 ID:6KCWEzO7
>>629
すまん、誤爆。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:16:23 ID:VvlWJR8l
500kBならジェレミー・クラークソン、リチャード・ハモンド、ジェームズ・メイが召還されてアルビオンまで
車とグリフォンのどちらが早いかを比べる
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:21:17 ID:WYXu5mWl
>>630
どこの誤爆かkwsk
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:31:22 ID:HQIoRbRv

              ヽ |l | /ヾ|、 ノイ  /! /_,|イ'l´    |   \   この感じ…  次スレね…
_______∧,、_ 〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| /   ト、    ヽ _ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄/   |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ  7   .!  ヽ     \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            /    |  |             /   |ヽ、|     〉
634 ◆sMc1nAya/k :2009/01/19(月) 19:32:34 ID:6KCWEzO7
>>632
現在執筆中。

送信してしまったのはエディタとブラウザの操作ミス。


近日IFスレで投下予定。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:37:44 ID:WYXu5mWl
なるほど、なんか物騒な展開になりそうな予感
(『狡兎死して走狗煮らる』という感じに)
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:41:33 ID:6KCWEzO7
高鳥尽きて良弓蔵わる……さあ、どんどんしまっちゃうからね。


1000だったら「ぼのぼの」から召喚。
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 19:47:55 ID:u0kNRome
500KBにはまだ届かない
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:04:34 ID:CVH6F3Ik
>>634
スンマセン、良かったら教えてくだされ
> 七万の兵を一騎能く押しとどめ
この「一騎能く」って何て読むんですか?

SSの方ですが、面白そうなので楽しみに待ってます。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:07:38 ID:LQy1Nlhm
の…能(よ)く
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:10:06 ID:CVH6F3Ik
>>623でバーツ召喚とか言っちゃったけどさ、
もちろんバーツも良いけどさ、オルカがいるじゃんな!
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:11:08 ID:CVH6F3Ik
>>639
ありがとうございます。
「いっきよく」って読むってことですか?
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:14:58 ID:haMalb79
>>633
何か可愛くてワロタw
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:18:09 ID:LvhOtnrN
デフォルメされたルイズがアンアンと区別がつかない・・・まあ、かわいいから許すw
644 ◆sMc1nAya/k :2009/01/19(月) 20:20:58 ID:6KCWEzO7
 お嬢様は救い出した。
 鬼神はエヴァンジェリンさんが討ち倒し、西の過激派である天ヶ崎千草とその一党は捕縛された。……あの白い少年だけは行方も正体もわからないのが気がかりだが。
 とにかく、修学旅行で起きた一連の事件は一応の幕を閉じ、3Aのみんなは日常へと帰還する。
 残る懸案事項は、私の個人的な問題。
 羽根を見られた私の行くかたのみ。

「ふん、行くのか。クラスメイト共や大切なオジョウサマをおいて。ずいぶんと冷たいことだな?」
 エヴァンジェリンの台詞は、字面だけを見れば随分と情に溢れているように感じるが、その表情は意地の悪い笑顔だ。面白がっているのだろう。
「い、一応一族の掟ですから……あの姿を見られた以上仕方ないのです……」
 刹那の表情は暗い。
 彼女とて、木乃香や明日菜たちと喜んで別れるわけではないのだ。
「お嬢様を守るという誓いも果たし、私を育ててくれた近衛家の恩も返すことが出来ました。
……お嬢様のことはネギ先生や明日菜さん達がいれば何の憂いもありません。
みなさんには、どうぞよろしくお願いします」
 無理矢理な笑顔を浮かべて、自分すら騙せぬ嘘を吐く。
 あからさまな強がりに、エヴァンジェリンは表情に呆れと、ホンの僅かな憐憫の色を混ぜた。
「まあ、お前の人生はお前のものだ、桜咲刹那。好きにしろ。伝言ぐらいは伝えてやる」
「有り難うございます。……では、失礼します」
 くるりと背を向け、一目散に走り出す刹那。
 表情を誰かに見られるわけにはいかない。……こんな、悔恨と失望で塗りたくられた顔など。

「……馬鹿な奴だ」

 エヴァンジェリンのつぶやきは誰にも聞き取られず、そして3−Aの生徒たちが起き出してくるまでは、まだまだ時間がかかるだろう。
 西の空はまだまだ暗い。


 暗い山道をとぼとぼと歩く。
 疲労した肉体では数十分と走ることすら出来なかった。
 そして払暁の冷たい空気にさらされて、少し冷静になった頭で考える。
『どこへ行くのか。私はどこへ行こうとしているのか』
 烏族の許に身を寄せるなど、考えられない。
 関西呪術協会からはたった今出奔したばかり。
 神鳴流の道場へは西と袂をわかった今、頼るわけにはいかない。そも、受け入れてもらえないだろう。
 麻帆良学園……論外だ。

 ……もはや寄る辺も知る辺もない。

 なんて、愚か。なんて、身の程知らず。
 この期に及んで、バケモノたる自分が人として生きようというのか。
 私などこのまま朽ち果てて路傍に屍を晒すがお似合いだろうに。

 溜息を吐いて辺りを改めて見渡す。考えに耽っていて、周りを全く見ていなかったことに気付いたのだ。
 そして、異変に気付く。

「鏡……?」
 彼女の目の前に、輝く鏡のようなものが浮いていたのだ。

 刹那は誘われるように、その鏡に手を伸ばし……そして吸い込まれるように消えていった。


と、ここまで書いて続き書く気全くなし! つーかこれ刹那を異世界トリップさせるためのテンプレとして作った文章で、GSクロスのために書いたんだけど、絶賛放置中の奴だwww

>>638
「能く」=よく、と読みます。 
困難なことをしたものだという気持ちを表す。そのおこないをほめるとき使う。けなげにも。よくぞ。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:43:14 ID:8giUKTu0
埋めろぉぉ!
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:47:10 ID:T3PBFKE+
500kbだったら続き書く
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:51:16 ID:u0kNRome
でもまだ500KBには届かなかった
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:53:20 ID:FEnIdQGd
>>641
一騎=日本では本来馬に乗った武士とそれに従う下士を合わせた単位だが、普通に一人という意味で
    使われることが多い
一騎能く〜=一騎で〜をする・できる。「一騎能く万軍を制す」だと一騎で1万人の軍勢を制圧することが
     できるという意味になる。
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 20:54:08 ID:8giUKTu0
500kBなら、あ号標的召喚
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:07:44 ID:BLliBz4W
>>631
ワルド「私のグリフォンならトリスタニア一周で10分を切れる」
ザビーネ・シュミッツ「わたしならディーゼルのバンでも勝てるわ」
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:09:00 ID:QCUXTRzh
目の前の箱は調べ物にも使えるんだぜ?
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:10:08 ID:onJtKHD0
500kbならゲッターエンペラー召喚しようとして逆に取り込まれる
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:10:50 ID:CVH6F3Ik
>>644>>648
ありがとうございます。
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:11:21 ID:tR9tOF96
500kbならハルケギニアでイデ発動
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 21:12:24 ID:CVH6F3Ik
500kbならゲッターエンペラー召喚するも山守義雄に食われる
656名無しさん@お腹いっぱい。
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