あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part201

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part200
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1230455459/



まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/04(日) 23:25:16 ID:5UC/dvsS
スレ立て乙!
が、ここはpart202だぜ!
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/04(日) 23:29:38 ID:SnjH2wBy
こっちを使って向こうを次スレってことで良いのかな?
スレ番の間違いだけじゃ削除通らないだろうし、即死待ちってのも手だけど
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 00:01:48 ID:2+EzLHDD
即死待ちでいいじゃないか
放置すりゃ落ちる方が早いだろ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:16:40 ID:UqoG4Hfj
マジシャン ザ ルイズ 3章 (52)ウルザの意思

アルビオンへと潜入を果たしたキュルケ達は曲がりくねった鍾乳洞のような区画を抜け、階層を降りながら中枢へ向かっていた。
途中、動く屍や黒い油にまみれた戦争機械などとも遭遇したが、幸いこの作戦に選ばれた精鋭達の前では敵でなく、これまでのところ大きく被害を受けることもなく進んでいた。
順調すぎて、むしろ案内役のマチルダの方がへばっている始末である。
さて、そうこうして一同は新たなる区画に入った。
その場所はこれまで見てきた光景に比べて格段に人工の匂いが強い、明らかに人の手が入った作りであった。
床には歩くと乾いた音をたてるできた灰色のタイルが敷き詰められ、通路の形は正方形。
そこは、ハルケギニアとは全く違う、異質な文明の遺跡のようにも見えた。
「ここから進んだしばらく先に、アルビオンを浮かせている風石があるはずさ」
今は前から三番目を歩いているマチルダがそう口にすると、全員の注目が彼女に集まった。
「あたし自身はこれ以上先に進んだことは無いけれど、ワルドの奴はそんなふうに言ってたよ……」
堅い面持ちで言うマチルダ。
そう、彼らの目的はアルビオン下層部にある、アルビオンを浮かせている風石の破壊。
その意味するところは、アルビオンの『墜落』である。
彼女がどのようなことを思って自分の故郷を地面に叩きつけようとしているのかは、この場の誰にも分からない。
しかしキュルケは、呟いたマチルダの顔に、郷愁ともの悲しさを見た気がした。

通路を道なりに進んで少しすると、一同は突然開けた場所に出た。
その光景に全員が身を強ばらせて警戒する。
吸血コウモリしかり、戦争機械群しかり、これまで開けた場所に出ると決まって敵との遭遇戦に突入していた。
二度あることは、三度ある。
全員が警戒したのは、それぞれ戦士の勘とでも言うべき第六感によるものであった。

出た場所はすり鉢状に中心に向かうほどへこんでいる、ホールのような円形の大部屋。端と端までの距離はゆうに二〇〇メイル以上はあるだろう。
そして、その中心には高さ三〇メイルを超える、異彩を放つ巨大なモニュメントが安置されていた。
遠目から見た質感は、黒曜石の輝きを持った金属。
形は、この世のあらゆる動物と、あらゆる虫をツギハギに継ぎ足したらこうなるかも知れないといった、醜悪な姿をしている。
そして、それはあたかもそのままの形でこの世に生まれ出たように、どこにも継ぎ目が見あたらない。

その像の背後、キュルケ達が入ってきた出口の丁度正反対、そこにはこの部屋の出口があるのが見えた。
必然、そこにたどり着くためには巨大像を迂回して回るしかない。

キュルケが無言で手を振って進むジェスチャーをすると、一団は頷いてゆっくりと壁沿いに沿って移動を始めた。
移動しながらも、部屋の中央で不気味に鎮座している巨像の沈黙に、それぞれの警戒心が嫌が応にも高まっていく。
一歩二歩三歩、一団はゆっくりとだが確実に歩みを進めていく。
そうやって全員が中心の巨像を警戒しながら、壁沿いを半ば近くまで進んだとき、キュルケは小さな音が聞こえた気がした。

ミシリッ

という音。
同時、
「散って!」
「散れっ!」
キュルケとカステルモール、二人の声が残響を伴って、その場に響いた。
声に反応した隊員達が蜘蛛の子を散らすように一斉に散開する。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:17:21 ID:UqoG4Hfj
その直後だった、轟音をたてながら、巨大な質量が彼らに向かって動いたのは。

煙る視界、宙を舞う無数の破片、そしてなにより、聴覚を麻痺させるほどの衝突音。
見れば彼らが先ほどまで背後にしていた壁には、中央に鎮座していたはずの巨像がめり込んでいた。
三十メイルはあろうかという巨体が、一瞬の間にこれだけの距離を移動したという事実は、それだけで彼らにとって驚異以外の何者でもなかった。

「早く!」
舞い上がった埃によって十分な視界が得られない中、キュルケの切迫した指示が飛ぶ。
何を早くかなど問いかけるものはいない、精鋭達は一斉に行動を起こした。
一端ばらばらに散会し、次いで示し合わせたように目的地へと殺到する。
逃げ込む先は、巨像の図体では入り込めないその背後の通路。
あれだけの巨体を相手に、正面から戦う愚は冒せなかった。

こういった場合には風の機動力はものをいう。
カステルモールを含め幾人かの風のメイジは空気の対流で敵の位置を読み、迅速に目標地点へと駆けた。
だが、他系統のメイジにとっては、巨大な図体でありながら警告から襲撃まで一瞬の間しか許ぬような爆発的な突進力を持つ敵に狙われて、それを振り切るのは至難の業である。
だが、そのような状況の中、彼ら猛者達は、この局面を確実に切り抜ける手段を既に導き出していた。
それは誰かが囮となって敵を引きつけ、その隙に全員が逃げおおすという方法である。
彼らの目標は仲良く全員無事にアルビオンを堕とすことではない。
むしろ、誰か一人でも中枢にたどり着き、アルビオンを浮遊させている風石を破壊すれば、その目的は達せられる。
例え犠牲を払ったところで、その他の大勢が助かるのなら、それは是とするべきことなのである。

だから、キュルケの走る先に、曇る視界を切り裂き、地面を盛大に削る爆音を伴った巨像が滑り現れたときには、彼女も覚悟を決めていた。
「ウル・カーノ……」
キュルケは大急ぎで呪文を詠唱する。
せいぜい暴れて敵を引きつける、それが彼女に残された最後の見せ場であり、使命であった。
「ファイアーボール!」

しかし無慈悲な現実は、 非情なこの世界は、 そんな彼女を嘲笑う。

キュルケの放った火の玉は、相手の巨体に対してあまりに非力で、そして無力だった。
トライアングル以上の力で放たれた火球が、巨像のぬらりと黒い表面ではじけた。
――後には傷一つ残っていない。

巨像はキュルケの攻撃など露程にも気にしていないのか、躊躇無く彼女に向かって突進を開始する。
その動き、猛獣が飛びかかるよりなお早い。

決定的な死の前に、一矢報いることすらままならない。
一瞬の後には己が挽肉になるであろうことは、彼女にもはっきりと理解できた。
それは直感というより、すでに必定に近い。

人は時として、死を前にすると感情を爆発させる。
それは恐怖であったり、怒りであったりする。
自分の死を悟ったキュルケの胸にそのとき到来したのは、意外にも悔しいや憎いといった激しい感情ではなかった。
むしろ心地よい、これで楽になれるという安らぎですらあった。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:18:04 ID:UqoG4Hfj
普段使う系統魔法のルーンに、古代のルーンを絡めた特殊な呪文詠唱を終えたモンモランシーは、自信の呪文の効果に目を見張った。
ギーシュを捕まえていたドラゴンの背後に、銀色に光る鏡が出現していた。
どこかで見覚えがあると感じたモンモランシーは、それがすぐに使い魔召喚の儀式の際に現れるものとそっくりであることを思い出した。

『ギャッギャ!?』
変化はすぐに訪れた。
あの巨大なドラゴンが、鏡のある方へ、背後へと引き寄せられ始めたのである。
『ギャギャギャッ ギャッギャー!』
身をよじらせ抵抗する意を示す赤竜。しかし、引き込む力はそれ以上なのか、どれだけ抵抗しても一向に開放される様子は無い。
そうこうしているうち、ドラゴンの手からギーシュの体がするりと落ちた。
「フ、フライ!」
慌てたギーシュの呪文。
荷物を抱えたまま二階ほどの高さから船の甲板へと叩きつけられる直前、何とか浮遊の魔法が間に合って、ギーシュは危ういところで怪我をせずに済んだ。
ギーシュが命からがらといった様子でルイズ達の方へ駆けてくる一方、ドラゴンを捕らえた呪文も最終段階を迎えていた。
暴れるドラゴンの存在感がどんどんと希薄になっていく。その姿も半透明に薄れ、その向こう側の景色が透けて見えるようになる。
この世界と別の世界をつないだ扉が、その存在を放逐しようとしているのだ。

『ギャッギャー、ギャシャーッ!』
咆哮一声。
ドラゴンはなおも抵抗しようとしたが、結局、断末魔にも似た叫びを残し、一気に鏡へと吸い込まれていった。

そして、その叫びを最後に、静寂が周囲を包む。
脅威は去った。
今やそのドラゴンがこの世界にいたという痕跡は、損傷したウェザーライトUのブリッジだけであった。

モンモランシーはこの日の為に、秘本に記されていた古代ルーンを絡めて構築された、ドミナリア呪文のハルケギニアアレンジ版とでも言うべき魔法を、二つ丸暗記してきていた。
今彼女が使ったのはその片方。
秘本に記されたところによれば、『送還/Unsummon』という呪文は、ドミナリアのウィザードが扱う、最も基礎的な呪文の一つなのだそうである。
その効果は、元の世界とのリンクを絶たれていない被召喚物を、強制的に元の世界に送り出すというもの。
非常に限定的な効果の呪文である『送還/Unsummon』を選んで暗記してきたのは、それが自分に扱えそうな呪文の中で唯一攻撃的な呪文だったからだ。
襲ってきたドラゴンが異世界からの被召喚物であったのは、幸運だった。
とは言え、ドラゴン一匹をこの世界ではないどこかに放逐して、危機に瀕している状況を脱したのは確かであった。

「も、モンモランシー! すごいじゃないか、ドラゴンを一発で倒してしまうなんて! そんなすごい魔法をいつ使えるようになったんだい!?」
そもそも、ドラゴン退治と言えば、成し遂げただけでシュヴァリエの称号を与えられるほどの偉業であり英雄的行為である。
駆け寄ってきたギーシュが、興奮した様子で開口一番そう言ってモンモランシーの手を掴んだのも、当然と言えば当然だった。
「え、ええ……」
しかし、そんな彼を前にして、モンモランシーの心中は複雑だった。
(確かにすごいけど……)
心中には自分の行為に無邪気に舞い上がって喝采を上げる自分がいる一方で、自らの得た大きな力に、不安を抱く自分もいたからだ。
(ドットの私が使ってこれほどなら、ラインやトライアングル、ましてやスクウェアなら、どれほどのものが使えるの? これは、本当に、使って良いものなの?)
あまりの成果に、モンモランシーは逆に落ち着かないものを感じていた。
しかし、そんな不安も目の前で鼻息を荒くしたギーシュが、自分の手を掴んで上下にぶんぶんと振り回しているのを見ていると、些細なことのように思えてくるから不思議だった。
今はただ、彼を救えたというその事実を喜ぶべきだと、心の底から思えた。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:18:58 ID:UqoG4Hfj
「モンモランシィィィ!」
だが、感極まったギーシュが勢いよく抱きついてくると、話は別だった。
「ありがとう、助けてくれてありがとうモンモランシー、僕ぁもう、僕ぁもう駄目かと思ったよ!」
よほど恐ろしかったのだろう、どんなときであれ外面を取り繕うのは忘れないギーシュが、涙声でそんなことを言っていた。
モンモランシーの豊かとは言い難い双丘に顔を埋めて、顔を左右に素早くふるふるさせて。

物思いに耽っていたモンモランシーだったが、そこでようやく乙女的に考えてちょっとあり得ないギーシュの体勢に気がついて、顔にぼっと火を付けた。
「ちょ、べ、別にっ!」
あまりに恥ずかしさに『あなたの為にやったんじゃないんだからねっ!』、と叫ぼうとしたところで、突然モンモランシーの膝が折れた。
「あ、あらら……?」
バランスを崩して、前から抱きついているギーシュに体重を預ける形になってしまう。
おかげでギーシュはモンモランシーの細くて柔らかい体を堪能できてご満悦である。

気がつけばモンモランシーの膝は完全に力を失っていた。
元来、彼女は胆力のある娘ではない。
生まれてからこの方、多くの名のある貴族の子女がそうであるように、彼女も大切に育てられてきた。
そんな彼女がドラゴンを相手にするなどと、普段なら考えもしないところである。
それでも友達の為、と思って自分を奮い立たせていたのだが、気が抜けてしまえばごらんの有様。本当なら膝どころか腰が抜けてしまってもおかしくなかったのだ。
加えて、先ほどの使用した魔法による精神力の消耗も深刻だった。
(くう、今更しょうがないことだけど……やっぱりこの呪文、反則よ。一回でこんなに消耗するなんて、異常じゃない!)
モンモランシーがこの日のために、ウルザの秘本から習得した魔法は二つ。そのどちらも、モンモランシーの普通使っている水魔法に比べ、格段に燃費の悪い代物だった。
モンモランシー自身の見立てでは、同様の魔法は三回が限度。それ以上はまだ試したことがないが、無事では済まないだろうと思った。

「モンモランシー……」
ギーシュの熱い抱擁にもがくモンモランシーに、ルイズが声をかけたのはそんな頃合いだった。
「あなた……」
言ったルイズの顔色は蒼白。
まるで悪夢を前にした子供のようだ。
そんなルイズに様子に気がついて、モンモランシーは強引にギーシュを振り切って胸を張った。
「見ていたかしら? どうせあなたは何でも自分でできるとか、何とかできるのは自分だけとか、そんなことを思ってたんでしょうけど。お生憎様、ごらんの通り、私にだってこのくらいできるってこと、分かったかしら」
挑発的な言葉。
かねてから言おうと思っていた通りに、モンモランシーはルイズに言ってやった。
「分かったら、これからは少しは私や……タバサ、キュルケ達、他の人も頼りなさいよねっ」
そう、何でも一人で抱え込もうとする彼女に、言いたかったことを、やっと言えた。
今までは言えなかった。力がない自分が言っても、何の気休めにもならなかったことを、やっと言えた。
その言葉には周囲が抱え込ませようとする、そしてルイズ自身一人で抱え込もうとする重責と負担を、少しでも肩代わりしたい、そんな気持ちが現れていた。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:19:38 ID:UqoG4Hfj
だが、それを聞いてもルイズの顔色は変わらない。
「そんな……そんなことじゃないっ! 今の呪文、誰が……誰があなたに教えたのっ!?」
なぜなら、ルイズが問題としているのはそんなことではなかったからだ。

虚無を除いて、ハルケギニアの魔法には『召喚』の概念はあっても、『送還』の概念は無い。
今となってはルイズはそのことを、恣意的に消された概念なのではないかと疑っている。
確証はない。ただ、歴然として存在する『外』の世界に対するアプローチが、ハルケギニアの歴史の中で一切生まれてこなかったということからの推測だ。
しかし、そこまで深く考えずとも、ルイズにはモンモランシーの使った呪文が、確実に本来のハルケギニアの枠からはみ出した呪文だということくらいは分かった。
問題は、誰がそんなものをモンモランシーに教えたのか。
誰がこんな場所に来るように、モンモランシーを唆したのかということだった。

「えっと、それは……」
モンモランシーが口ごもる。
けれどルイズにはその答えが分かっていた。
そんなことができる者は、今この世界に二人しかいない。
そして、モンモランシーに枠外の呪文を教えるなどということを実際に行おうとするのは、一人しかいない。
だから、
「あなたの呼び出した……ミスタ・ウルザよ」
その名前が出てきたことも、半ばルイズの予想通りだった。

「なんで……っ! なんでよっ!」
ルイズは力が入らない手に、それでも力をこめられるだけこめて握りしめた。
そして、怒りと困惑を隠さず吠えた。
「私はみんなが死なないために頑張った! みんなを生かす為に、ここにいる! それなのに、なんでモンモランシーも、ギーシュもここにいるのよっ!? これじゃあ意味がないじゃないっ! 何のために、私が……私がっ!?」
張り上げた声に、涙がにじんだ。
みんなが笑っていられる世界のために、せめて自分の視界に入る世界だけでも守るために、ルイズは虚無を手に取った。
誰かが犠牲になるなら、自分がそれになろうと。
自分の行いが誰かの為になるならと、体を蝕む病にも耐えるつもりでいた。

だというのに――

「何を考えているのっ!? ウルザッ!」


                             今、誰が笑っている?
                             そしてこれから、誰が笑う?


ウルザは正しくなんて無い。


改めてあけましておめでとうございます。
2007年に始まったお話も、もう2009年になってしまいました。
お話としては残りわずかですので、読んで下さっている方、もう暫くお付き合い下さい。

それでは、次の投下で……


追伸 スターライトマナバーンが次回で最終回だそうです……
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 01:20:26 ID:UqoG4Hfj
                    ,ィ'"~          ` 丶 、
                  /                  ヽ.、
                  /.           _____       `ヽ、
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.                 'l,      .:::iシム"二、  -_:ニミ州》、;:::::..........:::::\
.                  'i,   ..::::::::::'巡v"(ノ )  'て)ゞ>三: \;::::::::::::::::::ヽ
                    ヽ:::::::::::::::::::::::`゙li.  〈、    /,.-、   ``ヽ;:::::::::::)
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11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 12:07:31 ID:IGgDZR58

だよなー、ジョーカーがあんなあっけなく終わるわけが無いよなー…
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 12:08:26 ID:IGgDZR58
GJ!
次回にwktk。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 12:09:18 ID:IGgDZR58
やっぱりアイツはあれで終わってなかったか。
続きにwktk
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 12:10:23 ID:IGgDZR58
乙です!
ンガポコとンガググって似てますね。いや意味はありませんが。
そういえばサザエさん、今はじゃんけんなんですっけ?
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 14:29:33 ID:LVrn4SsH
  ______
  |          |
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  | ⊂⊃  ⊂⊃|              i'|
  |    ハ     |               i' |
  |   ()()    |              i' |
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   |  <ニ>   |/      / `i   /  |
    |          |      /   `i/  /
.    |          |      |\    \ /
   `i        `i    |   ̄ ̄ ̄ ̄
     `i        `i   |
     \       \ ノ
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 22:58:32 ID:D8fYQKZM
>>12
あー、やっぱそう思うよね?
行頭3文字目とかで脈絡もなく改行とかされたりすると、もう……!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 22:59:17 ID:D8fYQKZM
作者の一人なんだがさ、この流れで聞きたいことがある。
改行もそうだが、空行ってどうすうのが見やすいと思う?
一応、場面転換のときは空行つけてるんだが、
最近、会話文の前後も空行を入れた方が見やすくなるかなと迷ってるんだが。
最も、空行入れまくるとスッカスカになってかえって見場も悪くなりそうでな。
どうしたもんだか。

モノローグと会話が交互に入るような場合は、スカスカになる危険があるな。
原作1巻P170〜171あたりをそのまま引用させてもらうが、


 いきなりスイッチを入れたオルゴールのように、キュルケの口から言葉が飛び出した。

「タバサ。今から出かけるわよ! 早く仕度をしてちょうだい!」

 タバサは短くぼそっとした声で自分の都合を友人に述べた。

「虚無の曜日」

 それで十分であると言わんばかりに、タバサはキュルケの手から本を取り返そうとした。キュルケは高く本を掲げた。背の高いキュルケがそうするだけで、タバサの手は本に届かない。

「わかってる。あなたにとって虚無の曜日がどんな日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ。でも、今はね、そんなこと言ってられないの。恋なのよ! 恋!」

 それでわかるでしょ? と言わんばかりのキュルケの態度であるが、タバサは首を振った。キュルケは感情で動くが、タバサは理屈で動く。どうにも対照的な二人である。そんな二人は、何故か仲がよい。


と、まあ、こんな感じになるんだけど、これをどう判断するかはそっちに任せる。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 23:00:56 ID:D8fYQKZM
傲岸不遜!
さすがは聖帝サウザー!
かっこいいぜ。

乙&GJ!
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 23:01:29 ID:D8fYQKZM
乙!

ルイズも、真の帝王学が学べて幸せもんだなw
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 23:02:16 ID:D8fYQKZM
ルイズに心からの同情を、しかし前に召喚された妖星のユダ様よりはましだ
そして歴代最凶の決闘を挑んだギーシュのKYぶりにGJ!
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 01:45:20 ID:FWAU4upO
このスレ、次スレ用に保存ってことでいいの?
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 01:54:13 ID:f3mSypnh
>>21
違う。
最初から読めば分かるが、既に>>3-4で結論が出ている。
それ以降は荒らしがコピペしてるだけ。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 18:56:55 ID:vW5MvMwE
                           ヘ
                   /゙  ̄ ̄ `ヽ|: : :\ー- 、
                      /: : : : : : : : : : :|: : : : : : : : : : ヽ、
                  /: : '´ : : : : : /: :l : : : : : : : : : : : :.\    すみません、さすがに初対面の方との
                 / : : : : : /: :/: :/: : : : : :/|: : : : : : : : :ヽ   性交は遠慮させてもらいますね
                 / : : : : : : /: : _/:_:/ !: : : : / |: | : : : : : : : : ',
                 /: : : : : : : : /: :'´/|: / |: : : : |  l:丁`ヽ: : :ヽ: : :i
             /: //: : : : ,': : : / .|/  :l: : : : |  ヽ|: : : : : : :.∨ |
                // ,' : : : : i: : :/ ,ィ≠k ',: : : :.| z=kVヽ: : : : : ∨
                  | : : : : :|: ://代 ノハ  ヽ:..:::| f..う_ハ: : : : : :l
          | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|小 {i ::::::j} } ∨:| {i:::::::ハヾ|: : :|:: :│
          |  ━━━━━  l{ハ V廴ソ f==fヾ Vヒ ソ j: :.∧:: :|
          |    一昨日  |ヘ}、 _ _ ノ ' ヽ、 `¨ ノ| :/小: :|
.         /^) 来て下さい.  |: :ゝ _ ::.:.  こフ   ̄.:.:::/ :|/: : | ∨
       {/ ス          |: :.|: :.|> ,  __    </: : :|: :.│
        {/ _ノ           |: :.|少'   r|   W\ /: : : :l: :.│
        ヽ'´_フ             |: :.|    |_   |  ノ: : : :/ : :│
        V|              |: :.|    |  `7 /: : : : /: : : : l
           ト|              |: :ヘ.    |  ,/ /: : : : / \: : : l
           {.L.rー‐、(こ'ー-、__.」: : :}ヽ   |  /  { : : : / /}: : :ヽ
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 00:41:28 ID:vnGy/O4x
                    ,ィ'"~          ` 丶 、
                  /                  ヽ.、
                  /.           _____       `ヽ、
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.                   |        ,イ;;i||jシ"   `ミミミ;;,、...     \
.                 'l,      .:::iシム"二、  -_:ニミ州》、;:::::..........:::::\
.                  'i,   ..::::::::::'巡v"(ノ )  'て)ゞ>三: \;::::::::::::::::::ヽ
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                /"~ ̄~ ̄ ';,....::::::::ヤ\.`~  ,/ヤ;::::ヘ;;;;;/″ ト;:く
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25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 19:06:04 ID:VlyPohdE
                    ,ィ'"~          ` 丶 、
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26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 00:15:33 ID:O+PoizQB
ラスボスの人乙!
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 00:39:11 ID:Bsy1wkFT
それではここを再利用ということで
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 01:44:19 ID:t6Haeq1n
ここは実質203スレ目かな
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 01:49:03 ID:b5wLauCd
これぞまさしくリサイクルw
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 02:03:27 ID:zrT+ka+n
んじゃ、新しい話題を一つ。

ルイズが喚びだしたのは、黒髪を短く刈り込んだ中年のエルフ男性だった。
ルイズの短慮短気に、彼は顔色一つ変えず論評する。
「ご主人、それは非論理的です」
武器屋で知性を持つ剣を見て、彼は片眉をあげる。
「おもしろい」
アルビオンにおける危機を、彼はずば抜けた知性と膂力で切り抜ける。

やがて、ゲートが開いてこの世界を去るとき、
彼は中指と薬指の間を開けた手のひらを掲げ、
自分を喚んだ異世界の人々に別れの挨拶を送る。
「長寿と繁栄を」

帰還した宇宙船の艦橋で船長への報告を漏れ聞いた船医が
女性の許に送られたのが女たらしの船長でなくて良かったと
安堵したとかしないとか。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 02:21:10 ID:/Idx0cHz
Mr.スポックか
完成を楽しみにしてる
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 05:02:06 ID:pzSK0n+Q
やはりボーイです・・・
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 06:42:17 ID:vrkMLrKi
>>「おもしろい」
そこは「魅惑的だ」じゃね?
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 07:45:25 ID:QaiGSRGc
part202がそろそろ480kbなのでここを203スレ目として再利用
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 08:10:41 ID:6ZEy9Cyb
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 08:29:23 ID:5MKZQQDP
>女性の許に送られたのが女たらしの船長でなくて良かったと
>安堵したとかしないとか。
いくらカーク船長でも、親子ほども年下の少女はさすがに守備範囲外でしょ
・・・多分

かわりにアニエスやおマチさんが危険だが
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 08:32:46 ID:mOicZauN
キュルケに迫られたら、なし崩し的に……
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 08:58:09 ID:O33LxFTa
>>33
故久松保夫氏の吹き替えに慣れた身としては、「おもしろい」も許容できる


秘書のジャニス(ジェニー)って確か16じゃなかったっけ?
年齢詐称してエンタープライズに乗ってた記憶があるが。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 09:31:56 ID:dI7Zx7D/
そういやミゴールの新作投下されてなかったっけ
オイラ過去ログ見れないから確認出来ないけど
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 09:32:26 ID:Q69oVjtj
>>32はスポックじゃなくて死刑囚のスペックだろwww
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 10:28:43 ID:cFMhelJ9
きっとこのスレも見てるであろうID:S1D5Nc/Bに聞きたいんだが、
なぜそんなに急いでスレを埋めようとするんだ?
普通にダラダラ駄弁りながら1000や500KBを目指すんじゃ駄目なのか?
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 10:54:35 ID:X9MJaWg8
次スレが用意されている場合はとっとと埋めるのがマナー
2スレ進行は他スレに迷惑
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:26:18 ID:E5zySHl3
そうやって放置してたらコピペ荒らしが来た事もあったしね
あと42の言う通り次スレが立ったらさっさと埋めるのがマナー
……こういう基本的な事すら知らない人が今のこのスレの主役なんだなあ、ここって一応2chだよな?
実はどこかに間違ってスレ立ててるとか言わないだろうな
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:29:01 ID:wn/Bz3B2
みんなこのスレ使うのヤダから新スレ立てるはずだったんだぜ
ここは即死待ち
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:33:55 ID:4RKeEZcO
>>42
マジレスすると、
その行為は止めて欲しいとひろゆきは言っていたりする。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:43:04 ID:DIwkIirl
ええと、ここでいいんだよな?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:46:24 ID:X9MJaWg8
>>45
そんなのどうだっていい
次スレが建てば速やかに埋めるのが2chの礼儀
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:53:37 ID:ffGkjGLe
>>47
何このキチガイ……。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:55:52 ID:m8al0MoH
やめて!私のために争わないで!
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:57:26 ID:X9MJaWg8
>>48
ネットだからって平気でそういった書き込みが出来る貴方には言われたくない
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:58:43 ID:jFUbWG3T
やっぱこのスレ駄目かも
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 11:59:03 ID:fmE7YWsg
違う!!

俺の為に争ってんだ
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:01:50 ID:csGd1YAG
このスレにはオーガニックエナジーが足りない
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:03:56 ID:m8al0MoH
オーラ力的意味で
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:07:08 ID:BiNHQPWT
このスレが放置されてた状態で同時進行させておきながら
道義やルールを説くって どんだけダブルスタンダードなんだと問いたい
重複したスレの削除依頼した人なんていなかったんだろ?

56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:07:44 ID:/Idx0cHz
初スルー検定か
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:10:22 ID:yFQ01c4B
ID:X9MJaWg8
ネット関係なしにキチガイだな。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:10:28 ID:N5svV6Kt
>>41
さっきから単発で絡んでるのこいつだな
ID:BiNHQPWTの空行で確信したわ

もうこの話題はいいから凄い奴を召還して流れをかえようぜ
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:16:03 ID:5uvziXcb
今我々に必要なのはおっぱいだ!
おっぱいソムリエとなって美の求道者となろうじゃないか
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:16:39 ID:cFMhelJ9
そうなのか、オレは単発で絡んでたのか
知らなかったな
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:19:18 ID:skAmrzug
ギーシュにワルキューレで手伝わせてスゥー…バシィー!でナニを鍛える
ぼくらのスゴイやつを…
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:21:49 ID:a4TQSRLB
流れを変えるためにとうk……さっき書き始めたばかりだからすぐは無理だけどね!
まとめwikiで作品見始めたばかりの新参だから、たとえ一話書きあがっても
貼る勇気搾り出すにも一苦労だろうけどw
流れを変えるために好きなだけ叩いておくれ。

どうでもいいけど、同時進行で二作品以上書いてるつわものっているのかな?(読みきり少ネタや短レス除く)
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:22:44 ID:vP/gDd1T
>>58
スレを見直したが空行の使い方共通してる奴いないんじゃねぇか?
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:26:32 ID:gjEjUZOW
スレを跨って書く人はいるねえ。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:27:00 ID:yFQ01c4B
てか、なんで空行でわかるのさ?
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:28:15 ID:m8al0MoH
第七感
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:30:04 ID:vP/gDd1T
むしろ>>58こそが単発の本人なんじゃないかと思える、言いだしっ屁の理論
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:30:41 ID:/Idx0cHz
>>62
ストックしといて次の話書き上げてから見直し誤字チェックして投下した方がいいと思うよ
複数作品書いてるって言ってた人はいたと思うがそれが嘘か本当かは分からない
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:39:02 ID:kxLC+Vvz
個人サイト持ってて、そこで「おお、これもこの人が」ってのはあるな。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:40:02 ID:X9MJaWg8
梅の説明をしただけでキチガイ認定か・・・怖いスレになったね
レスしても荒れるだけなので退散するよ
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:47:31 ID:5Vnk6yRp
そりゃひろゆきが言ってたって事をどうでもいい2chの礼儀は他にあると言えばおかしい人扱いされても仕方ないだろ
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:47:35 ID:yFQ01c4B
>>70
着眼点が違うと思うよ。自分が絶対に正しい姿勢が問題。埋めがどうとかは些細な問題。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:49:09 ID:yFQ01c4B
>>72
おろ。自分が絶対に正しい“と思う”姿勢が問題。抜けてた。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:51:51 ID:qymzWK+T
>>71
管理者の望むやり方と使う人が便利な使い方が違うのは当然だろ
公式に禁止と明言されて板ルールに埋め禁止って書かれたなら従うけどさ
重複消しの対応も遅いしage荒らしへの対応も遅いんだから住民が埋めで対抗しようとするのは普通と思う
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:53:53 ID:mT4VbBzv
>>72
絶対に正しいも何も2chの基本だろうよ
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:54:53 ID:AYBrSlRh
>>74
モラルについて考えた方がいい
2chでモラルなんてナンセンスかも知れんけど
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:55:47 ID:5Vnk6yRp
>74
たとえ当然で通ってても、ひろゆきの意見そのものをどうでもいいで流すのはまた別の問題だろう
しかもそれを礼儀と言い切れば言葉としても相当におかしい
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:55:55 ID:m8al0MoH
枝葉末節
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:59:45 ID:yFQ01c4B
>>75
AAで埋めるのをやめろって話だよ?
面白みも何もないからやめろよと思われてんのにやるなんて馬鹿じゃん。
それでも基本守る?
てかAAで埋めるのが基本なの?
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 12:59:58 ID:a4TQSRLB
>>68
アドバイスありがとう。誤字は目立つと粗だし気をつけたいトコロどすね
ただ今、独特というよりも言い回しがクドいというか妙な感じで表現しちゃってるせいで、
最初から書き直しじゃね? と怯えている状態w 誤字無くても貼り付けれるかびみょw
しかも参考のためにとある書籍と他の人の作品見ながらやってるんで、ペースもおせぇwww
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:02:47 ID:mT4VbBzv
ひろゆきは裁判を無視するようなクズだぞ
そんな奴の意見なんてどうでもいいわ
それに今は管理人じゃないから。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:09:39 ID:qymzWK+T
>>76
昔のアクセス過多で閉鎖危機やってた頃ならモラルって意見もわかるが
今それをモラルで通すのは相当に無理があると思うが
基本的に使用者の要求と管理者の要求は対立するし、お互いぶつけあって調整されていくもんだろう
変に自粛するのは相手にカードを切る機会を失わせるし、しかもその自粛を自治厨っぽく荒れネタにされるのは本末転倒だと思うが
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:14:28 ID:fVnbr07R
なぎはらえ馬鹿がでる前は普通に1000なら〜とかで埋まってたから違和感有るんだよ
今はジブリ馬鹿までわいて
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:14:39 ID:ADUWxfiy
てかその手の議論は避難所でよくね?
ここは巨乳キャラと貧乳キャラについて語るスレだぜ?
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:16:24 ID:K3SW3Iqz
エッでもその前から1000いかないことも多かったよ!
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:16:41 ID:gjEjUZOW
マザリーニ枢機卿の気持ちが少し分かった気がする。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:19:33 ID:a4TQSRLB
むしろ武器屋の親父の気持ちがわかった気がする。
どうでもいいけどよくギーシュやらワの人とかデルフは不遇とかいわれるけど、
一番不遇なのは登場しても精神的にフルボッコ、登場しなかったら「居たっけそんなの」な武器屋の親父だと思う。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:21:13 ID:yFQ01c4B
>>87
アニメだとそれなりのキャラデザなのにな
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:39:05 ID:m0L/B87U
もともとはメインの作品が行き詰った時にでもチマチマ書くのが目的だったのに、いつの間にか2本とも書かないと……になったバカならここにいる
おれは何をやっているんだか……。SSなんてまともに書いたことないから、完結できるかかなり不安だというのに


自分としては残りわずかなスレがなにで埋まろうと気にしないが、ゼロ魔に全く関係ないAAで埋まるのは勘弁してほしい
2〜3スレ前にルイズAAで寸劇みたいなのがあったけど、あれはかなり好きだったな
背中を見せないのを貴族と〜ってのね。あいうので埋めてくれるならそれが最高な気がする
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:43:36 ID:/Idx0cHz
それだけじゃゴルゴも貴族にはクソワロタ
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 13:55:40 ID:JlGxS02v
AAうざいと自治っても時間と容量の無駄
480kbになればいつものように大容量AAで埋められる
スルーの魔法が一番なのだよ
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:02:18 ID:/Idx0cHz
何でAA荒らしうざいが自治になってるのか3行で説明してくれ
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:07:56 ID:4RKeEZcO
愚痴(ぐち)と打ち間違えたんじゃないかな。
>自治
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:15:28 ID:JlGxS02v
AAうざいから辞めろ、と言うのは自治行為の範疇に入らないのかな。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:31:23 ID:wi7gS1sU
関係ないが
ジュリオが登場するSSってほとんどないね
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:37:20 ID:x5NYyRTn
>>95
ギーシュみたいに憎まれ口をたたき合う仲になったわけでもなく、
愛嬌があるわけでもないから扱いにくいかも
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 14:45:54 ID:/Owky4W7
右腕をルーンごと奪われたり、教皇と一緒にジョゼフに謀られたりしてる
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 15:11:59 ID:fm3RR607
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 15:19:23 ID:bQty9LRT
レモンちゃんはないわ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 15:19:26 ID:EU8kty95
>>87
IFスレではゼロ魔キャラの一人としてスポット当たったりもしてるけどな。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 15:59:36 ID:mOicZauN
スポット当てるために武器屋に因んだキャラ出してもコルベールに持ってかれるだろうしなあ……
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:18:11 ID:UU4pPTY7
>>89
敵に後ろを〜
の台詞を見る度に、フーケが後ろから見ていたらどうするんだと思ってしまう。
心構えを言っているのであって物理的な位置とは関係無いのかもしれないが、
それならそれでゴーレムからは逃げつつフーケ本人を探せばいい気がするし。

というわけで、座学の成績が優秀であるルイズを上手く導いて、ただ突撃するのではなく、
その豊富な知識を活かした戦い方をするように仕向けられるキャラは居ないものだろうか。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:26:16 ID:yPiKldgb
>>102
ルイズを言いくるめられるくらい口が回って頭の回転も速くないと難しくないかソレ。
『ひぐらしのなく頃に』から羽入とか?中身かなりのタヌキだぞアレ。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:29:01 ID:csGd1YAG
天才少年カント・ケストナーなら(ry
多分ルイズには嫌われると思うけど
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:29:36 ID:AZaU8PZ0
COOL、いやKOOLな男ならルイズを言葉だけで操縦できると思う。
部活メンバーが揃って召喚されたら大事たな。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:34:08 ID:a4TQSRLB
1.おだてて誘導。ただし失敗すると怒りの矛先がこちらに向かう。
2.論破する、なお内容は妄想電波だろうと超☆天☆才的考えでも可。
3.スーパーカリスマで圧倒させて無理矢理従わせる。ご立派。
4.「何ィ〜、なら俺が貴様を殺してやろう、チネェ」的な引導を与えようとする。
5.見捨てる。一人ぼっちのウサギちゃんは何もできないの♪方面を狙おうとして多分死ぬ。

理想像はガンパレのブータ召喚っぽい。もはや別キャラに近いほど孔明だけどあれ。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:37:41 ID:iKk1ZyX8
中禅寺秋彦なら文庫本一冊くらい語ってルイズの憑き物が落ちる
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:41:52 ID:XEV7Kw0s
まぼろし佑幻召喚と申したか
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 16:49:04 ID:+Encd0Tt
変化球でギーシュが企業戦士YAMAZAKI召喚とか
超イイ男に成長しそうだ
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 17:15:23 ID:ydyH6H3A
>>109
すでに小ネタである
速さが足りない
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 17:30:45 ID:yGSW0BsT
ルイズが「卑怯戦隊うろたんだー」を召喚

色々酷いことになりそうだ・・・
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 17:38:58 ID:X0XgUEF5
ルイズがルイージ召喚
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 17:50:18 ID:psAkR4Vd
徴税官ミス・チェレンヌ
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 17:54:42 ID:mozL0UiW
ルイズがパーマンからコピーロボット召喚。
契約のキスをしたときに鼻を押してしまいガンダールヴのルイズ爆誕。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:02:46 ID:dI7Zx7D/
藤子ワールドからならウルトラ・スーパー・デラックスマン召喚

で、エイジス十三世がカイケツ小池さんを呼んでしまうのな
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:23:22 ID:ayjduOr1
>>115
19代前の聖エイジスか。随分昔の話だな。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:27:14 ID:dI7Zx7D/
>>116
え?(原作読み直し中)・・・・・・・・・
嘘!間違い!今のなし!
「エイジス三十二世がカイケツ小池さんを召喚」に書き直しね



なんでこんな間違いしたのやら
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:32:44 ID:1Jy9JuII
でもヴィットーリオ以外の教皇って、どんなんだったんだろうな
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:33:45 ID:mOicZauN
>>116見て思ったが先祖が召喚した使い魔が
代々一族の使い魔として召喚されてるってのも面白そうだな
いい感じのキャラがさっぱり浮かばないが……
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:35:36 ID:mozL0UiW
>119
禁書目録から御坂妹を二万代くらいかけて全員召喚?
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:39:06 ID:1Jy9JuII
先祖代々に渡って同一の使い魔じゃなくて、先祖代々同じタイプの使い魔ってのはどうだ?
曽祖父がメフィラス大魔王で、祖父が初代メフィラス星人、父親が三代目メフィラス星人、そして今代が二代目メフィラス星人とか。
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:42:04 ID:dI7Zx7D/
バルタンなんか二十億三千万代かけねばならんではないか
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:43:46 ID:yFQ01c4B
>>119
BLOOD+で実は一世代前のシュバリエだったオカマがいたのを思い出した。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 18:45:35 ID:87T9oQvW
ルイズがマリオ召喚
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:11:48 ID:0ha+4lEF
そしてジョゼフがルイージ召喚
「ちんちんは僕の方が大きいのに」
「シャルルがお前と同じことを言ってたら、俺は泣けてたのになぁ」
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:16:21 ID:O33LxFTa
>>124
ありとあらゆるスポーツを華麗にこなすも
フレイムに触れて死亡
シルフィに触れて死亡
ロビンに触れて死亡
ワルキューレに触れて死亡
偏在に触れて死亡
その辺の花食ったら色が変わって火の玉投げまくってルイズ涙目

そんなこんなでいつの間にか99人死んでおしまい
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:28:00 ID:niZRTBkJ
誰かの召喚した亀の使い魔を階段にセットしているようです
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:31:28 ID:pLox3q8q
>>126
それはむしろスペランカーの仕事だろう。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:31:50 ID:4fabizWI
>>126
…と思ったら実はカメックと一緒にテレポートして脱出してただけだったり
死んだのに弟が緑色のキノコをポケットから取り出して口に押し込んだら生き返ったり
いつの間にかゴルフ漫画になってたりオリンピックやってたりピザ屋やってたり
黒幕が変装してたクッパだったりするんですね、わかります

そして世界観の都合からいつの間にかマリオRPG版になってしまうのか
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:33:35 ID:cTQAjlFv
>>121
二代目怪獣には初代が持っていた品がない奴が多いからダメ
ゼットン二代目なんてなんだよ
初代の得体の知れなさ・威圧感がまるでねえじゃねえか
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:40:03 ID:oJ8airAT
ルイズが実は超古代の光の遺伝子を受け継いでいた。とか
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 19:57:45 ID:1S/Y3oVB
>>131
それはIFスレでどうぞ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:15:54 ID:DTqDXW+l
闘士列伝のゼットンとメフィラスの格好良さは異常
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:22:54 ID:KS+/sr81
EAT-MANから冒険屋ボルト・クランクを召喚なんつーのはどうだ?
食事中の時に呼び出したら少なくとも普通の平民には思われないなw
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:25:24 ID:oJ8airAT
闘士列伝ではヤプールまで改心してるからな
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:26:00 ID:T9ucUEOF
ギーシュとおマチさん絶対勝てねぇ…。
っていうかEAT-MANの空気を表現する文体が大変だろうな。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:28:38 ID:1S/Y3oVB
>>134
ギーシュのワルキューレはどうなってしまうん?
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:30:48 ID:sgUS98yz
食べる繋がりでピザファットの看板ヒーロー、ファットマンを召還

……駄目だC級ヒーローで脂肪をコントロールと旨いビザ焼く位しかないピザ屋のあんちゃんじゃあマチ姉戦で詰む
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 20:40:11 ID:cTQAjlFv
ボリボリワルキューレ食ってご満悦なボルトにうまかったと言われて逆に満足するギーシュ
何故か対抗心を燃やすマルトー
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:26:19 ID:XEV7Kw0s
「バーサーカー 皆殺し軍団」から冒頭に登場するバーサーカー召喚。
ただし、惑星サーゴルの環境上時間軸が前後するので


























迎撃ミサイルが先にゲートに到達して爆発。
時空構造的災害も追加で大惨事な広場のゲートからバーサーカー出現。ハルケギニア終了。

というのを前から考えているのだが問題はこのネタが理解できる奴は確実に40代以上&ゼロ魔を読まんという事だ。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:29:54 ID:LAoIHRya
>ヴィットーリオ以外の教皇って、どんなんだったんだろうな
マザリーニが教皇候補だった事考えるとヴィットーリオが大分例外なんだろうな
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:30:59 ID:/Owky4W7
冒険屋が一ヶ所に留まるワケねーわな
死んで生き返えればルーンも消えて、フラリと東方へ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:31:04 ID:cTQAjlFv
というか、虚無持ちはまともな魔法が使えなかった奴ばっかだから
どいつもこいつも精神的にアレな奴だし
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:38:43 ID:mOicZauN
魔法が使えない分
ルイズやジョセフは他の分野頑張ってたから、努力家揃いかもしれない
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:45:02 ID:Utk99Fn9
ヴィットーリオも陰謀方面に努力を傾けているな
テファは胸……じゃなくて子供達の養育に努力を傾けていたな
マチルダさんの仕送りがあったとはいえ1人で大勢の子供を育てるのは大変だったろうな
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 21:46:12 ID:cTQAjlFv
努力が実らない→余計歪むの黄金パターンにハマったわけか
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:03:31 ID:2V7eScL8
努力が実らない→もう諦めよう……
→不自由な状況でも純粋に楽しんでいる子どもたちが目に入る
→何を贅沢なことを言っていたんだ!
→そして伝説へ…の王道パターンは?
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:05:39 ID:pfOGwnOj
>>140
つまり君はゼロ魔を読んでないわけか。
149虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:07:56 ID:U29CCwxA
22:15頃から投下させてください。
第一話ラストです
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:09:40 ID:O4mCH3ur
>>146
テファの場合は他の三人と比べると歪んでないよな
魔法使えなくても、自分はエルフの血を引いているんだから使えなくてもしょうがないと考えたんだろうか
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:13:23 ID:m8al0MoH
エルフって事である程度隔絶されてるから周りに嘲笑されなかったんでね
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:13:46 ID:cTQAjlFv
>>150
あいつ貴族なのに魔法使えないのかよ、という周囲の眼が歪む主原因の一つだから
人付き合いそのものが少なかったテファは歪みが少なくて済んだと思われ
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:14:15 ID:psAkR4Vd
ダルタニャン物語からルイーズ・ド・ラ・ヴァリエールを召喚とか・・・
しえん!
154虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:16:07 ID:U29CCwxA
学院長室で、オスマン氏は戻った4人の報告を聞いていた。
「ふむ……まさかミス・ロングビルが『土くれのフーケ』じゃったとはな……美人だったもので、ろくに身の上も調べず秘書にしてしまったのじゃが……」
「死んだ方がいいのでは?」
コルベールの容赦ないツッコミと、生徒たちの冷たい視線に晒されて、オスマン氏は誤魔化すように咳払いをした。
「おほん。……さて、君たちはよくぞフーケを捕まえ、『禁断の鍵』を取り戻してくれた。フーケは城の衛士に引き渡し、『禁断の鍵』は無事宝物庫に収まるじゃろう。一件落着じゃ」
オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でた。
「君たちの『シュヴァリエ』爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。と言っても、ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」
三人の顔が、パアッと輝いた。
ルイズはおずおずと、オスマン氏に尋ねる。
「オールド・オスマン。ティトォには、何かないんですか?」
「残念ながら、彼は貴族ではない」
「そんな」
フーケを捕まえられたのは、ティトォのおかげだ。それなのに……
「いいんです。ぼくは何もいりませんよ」
ティトォがそう答えると、オスマン氏はぽんぽんと手を打った。
「さてと、今夜の晩は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり『禁断の鍵』も戻ってきたし、予定通り執り行う」
キュルケの顔がぱっと輝いた。
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
「今夜の主役は君たちじゃ。用意してきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」
三人は、礼をするとドアに向かった。
ルイズは、ティトォをちらっと見つめた。そして、立ち止まる。
「先に行ってていいよ」
ティトォは言った。ルイズは少し躊躇したが、やがて頷いて出て行った。
オスマン氏はティトォに向き直った。
「何か、私に聞きたいことがおありのようじゃの。言ってごらんなさい。爵位は授けられぬが、せめてものお礼じゃ。できる限りの力は貸そう」
それからオスマン氏は、コルベールに退室を促した。
わくわくしながらティトォの話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。
コルベールが出て行くと、ティトォは口を開いた。
「ぼくは、こっちの世界の人間ではありません」
「ふむ、こちらの世界とは?」
「ぼくが元いた場所は、こことはまったく違った世界でした」
「本当かね?」
「本当です。ぼくはルイズの『召喚』によって、こちらの世界に呼ばれたのです」
「ふうむ」
オスマン氏は目を細めた。
「しかし、ミス・ヴァリエールが呼び出したのは小さな女の子だったはずじゃが」
ここまで来たら、隠したままではいられないだろう。意を決して、ティトォは口を開く。
「アクア。……ルイズが最初に呼び出した女の子のことです。アクアは今は眠っています。ぼくの身体の中で」
「どういうことじゃね?」
「ぼくたちのこの『不死の身体』には、三人の魂が宿っています。ルイズが召還したアクアと、ぼく、そしてもう一人、プリセラという女性の魂が。死ぬと、『存在そのものが入れ替わる』……『存在変換』を繰り返して、ぼくたちは長い時を生きてきました」
「なんと……」
オスマン氏は、しばし言葉を失った。
200歳とも300歳とも言われるオスマン氏。しかし目の前のまだ年若い少年も、およそ100年以上の時を過ごしてきているのだろう。
155虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:17:33 ID:U29CCwxA
「なるほど、その人形のような瞳。奇妙な魔力を感じる身体。普通の人間ではないと思っておったが……いやはや」
「『禁断の鍵』の魔法は、この世界の系統魔法とは明らかに違っています。あれは、ぼくたちの世界の魔法に近い物です」
ティトォは話を続ける。
「ぼくたちの世界では、魔法を身につけることはとても難しいんです。魔力の組み立ては、偶然じゃできません。知識だけでもできません。何年にも及ぶ経験が必要なんです」
ティトォはオスマン氏の机の上に置かれた『マスターキィ』を手に取る。
「しかし、潜在する魔力の高い人間……ぼくたちは『マテリアル使い』と呼んでいます。……それを一発で魔法使いにする方法があります。あらかじめ魔法の力が込められた魔法器具を使うことです」
ティトォはマスターキィを、机の上でかちかちと鳴らす。
「ぼくはこの『禁断の鍵』いえ、『マスターキィ』によく似た魔法器具をいくつも見たことがあります。魔力を打撃力に変換する棒や、魔力を稲妻に変換する鎚。この『マスターキィ』をここに持ってきたのは、誰なんですか?」
オスマン氏は、ため息をついた。
「それはこの魔法学院が設立された時から、ここの宝物庫に収まっていたものじゃよ。もう何十年も前の話じゃ」
「何十年も前から?そんな」
「本当じゃよ。それよりもさらに昔。それこそ何百年も前には、『禁断の鍵』……いや、『マスターキィ』と言うのかな。この魔法の使い手がおったのじゃ。しかし、その使い手が亡くなって以来、誰もこれを扱えなくなってしまった。
 しかし強力なマジックアイテムには違いあるまい、こうして宝物庫に秘蔵されてきたと言うわけじゃ」
「魔法器具は、複雑な魔力の組み立てをすべて自動的にやってくれます。しかし、その魔法に適正のある者にしか、使うことはできないんです」
「なんと、そうじゃったのか……」
さらに、ティトォは質問を続ける。
「分からないことがあります。マスターキィへの『適正』は、ぼくにもないはずなんです。それなのに、ぼくはマスターキィを使うことができた。
 それだけじゃありません。マスターキィを手にした瞬間、魔法の使い方や、マスターキィに関する情報のすべてが頭に浮かんできたんです」
「ふむ、それはおそらく……」
オスマン氏は、話すべきかどうかしばし悩んだ後、口を開いた。
「それはおそらく『ミョズニトニルン』の力じゃろう。おぬしの額のルーン、それは『ミョズニトニルン』の印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
「伝説の使い魔?」
「そうじゃ、その伝説の使い魔はありとあらゆるマジックアイテムを自在に操ることができたという。おぬしがマスターキィを使えたのも、そのおかげじゃろう」
ティトォは首を傾げる。
「なぜそんなルーンがぼくに?」
オスマン氏はかぶりを振る。
「わからん。それともうひとつ、ミス・アクアに刻まれたルーンは、同じく伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』のものなのじゃ。もしかすると、未だ見ぬミス・プリセラにも、伝説の使い魔のルーンが宿っておるやも知れん。身体を共有しておるのじゃ、ありえん話ではない」
オスマン氏はティトォを見つめた。
「もしかしたら、おぬしらがこちらの世界にやってきたことと、伝説の使い魔の印は、なにか関係しているのかもしれんな。しかしすまんの、詳しいことは私にも何もわからんのじゃ」
ティトォはため息をついた。結局、わからない事だらけだった。
「すまんの。おぬしがどうしてこちらの世界にやってきてしまったのか、私なりに調べてみるつもりじゃ。でも……」
「でも?」
「なにもわからんでも、恨まんでくれよ。なあに、こっちの世界も、住めば都じゃて」
ティトォは再びため息をついた。
156虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:18:29 ID:U29CCwxA
アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。
ホールの中では、綺麗なドレスに見を包んだキュルケが、たくさんの男たちに囲まれて笑っていた。
黒いドレスに見を包んだタバサは、一生懸命にテーブルの上の料理と格闘している。
皆それぞれに、パーティを満喫しているようだった。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様の、おな〜〜り〜〜!」
門に控える呼び出しの衛士の声とともに、ホールの荘厳な扉が開き、ルイズが姿を現した。
ルイズは、ホワイトのパーティドレスに身を包んでいた。バレッタでまとめたピンクがかったブロンドの髪が、高貴な雰囲気を演出していた。
胸元の開いたドレスが、ルイズのつくりの小さい顔を、宝石のように輝かせている。
主役が全員揃ったことを確認した楽士たちが、小さく、流れるように音楽を奏ではじめた。
ルイズの周りには、ダンスを申し込む男たちが群がっていた。
今まで『ゼロのルイズ』とからかって、ノーマークだった女の子の美貌に気付き、いち早くつばを付けておこうと思ったのだ。
ホールでは貴族たちのダンスが始まったが、ルイズは誰の誘いも断った。
ルイズはきょろきょろとホールを見回し、バルコニーにティトォの姿を見つけ、歩き出した。

「住めば都、なんて言ってたけど。確かに、綺麗なところだな」
ティトォはバルコニーに寄りかかり、外の景色を見ていた。
城壁の松明の光が、ぼんやりと魔法学院を照らしている。城壁の外に見える薄暗い森が、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ティトォは、オスマン氏に頼んで用意してもらった、鉛筆とスケッチブックを鞄から取り出し、その景色をスケッチし始めた。
シャカシャカという鉛筆の音が、ホールの音楽と混ざり合って、独特なリズムを取っていた。
(落ち着くな……こうして静かな中、なにも考えずに筆を走らせる。100年経っても、飽きないな……)
ふと手を止め、スケッチブックに目を落とす。
まるで子供の落書きだった。
いや、子供の方が、まだ絵心があるに違いなかった。
(……100年経っても、上達しないけどね……)
ティトォはちょっと泣きそうになった。
「なに描いてるの?」
ルイズは、ティトォの背中に声をかけた。
ティトォは驚いて、びくりと身をすくませた。
「なんの絵?見せなさいよ」
「だっ……駄目!」
「あなた使い魔でしょ?言うこと聞きなさーいー!」
「駄目だったら、駄目ー!」
ルイズはスケッチブックを掴んだが、ティトォはそれを奪われまいと、必死で引っ張った。
見せろ、駄目、の騒ぎはしばらく続いたが、とうとうお互い疲れ果て、バルコニーにへたり込んでしまった。
肩で息をしながら、ルイズは笑い出した。ティトォはきょとんとしていたが、つられて笑い出した。
ひとしきり笑った後、ルイズはティトォに話しかけた。
「本当に、アクアとは違う人なのね……」
「うん。アクアはアクア、ぼくはぼく。今はぼくだけしか存在できないけど、ちゃんとぼくの中にアクアはいるよ」
157虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:19:09 ID:U29CCwxA
「ねえ、ティトォ。あなたは、何者?」
ふいに尋ねられ、ティトォはルイズの顔を見返した。ルイズは真剣な顔をしている。
こうやって、年相応の男の子のように笑っているティトォ。
優しい笑顔をしているティトォ。
かと思えば、平気でわたしに厳しいことを言うティトォ。
そして、ティトォと同じ目をした女の子、アクア。
生意気で、無邪気なアクア。
小さな子供なのに、時々、老婆のように意地の悪いことを言うアクア。
「あなたたちは、何者?」
ルイズはまっすぐにティトォの瞳を見つめていた。
ティトォはポケットからライターを取り出し、火を付けたり消したりした。
しばらくそうしていたが、やがてルイズに向かって、ゆっくりと語りだした。
「100年前、ある国に、ある三人の人間がいました……」

その三人は傷つき、今にも死にそうでした。
この大地から、その存在を失おうとしていました。
でも、三人はまだ死ぬわけにはいきません。
彼らは罪人だったのです。
死んでも消えないほどの罪を犯した罪人だったのです。
まだ、死ぬわけにはいきません。
でももう彼らには、この大地に存在できる力が、ほとんど残ってません。
三人合わせて、やっとひとり分しか……

そこで三人は、ひとつの身体に、自分たち三つの魂を入れました。

そして三人は、ひとつの身体の中で、生き続けることができました。
しかし、今度は逆に、死ぬことができなくなりました。
まるで、呪いのように……

そして、解けない魔法にかかった三人は
今もその消えない罪を胸に
どこか世界の片隅で、静かに暮らしています……


『残念ながら、もう安息の日々が訪れることはない』


トリステインから遥か遠く、ロマリアの地。
若きロマリアの教皇。
三爪の杖を携えた、がっしりと鍛えた身体を持つ青髪の男。
巨大な鐘を頭に被せた、長い髪の美しい女。
左右異なる色の瞳を持つ、『月目』の少年。


ここからが、不老不死の三人の、
そしてルイズの、本当の大冒険の始まりだった。


第一話:おわり
158虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/09(金) 22:20:54 ID:U29CCwxA
以上です。
聖地奪還までプロットだけはできてるので、完結まで早く書きたいです
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:34:51 ID:yFQ01c4B
ものすごい先なのか、オリジナル展開でそうでもないのか、
どっちにしろ楽しみ。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:39:34 ID:wi7gS1sU

計画性あって羨ましいぜ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:46:47 ID:MZ7+Dj0i
そこまでプロットが立っているなんてすげーなw
以後の展開楽しみにしています! 乙でしたー!
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:49:40 ID:U29CCwxA
ゼロ魔の方はまだ未完だけど
マテパは彩光少年シリーズを持って一応の完結をしている(実際はゼロクロイツ・神無に続くでぜんぜん完結してないけど)ので
オチは割と早くに決まりました
砂漠のエルフ戦だけは想像で書くしかないけど
ガリア攻略まではゼロ魔のストーリーに添ってやっていきたいです
書いてるうちにゼロ魔17巻くらいまで出ないかしら
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:54:09 ID:E4oG0hJ+
パズルの人乙。

触発されてなんか書きたくなってきたw
しかし原作は七巻までしか読んでない…
最新刊までさっさと読んじまおう
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 22:56:30 ID:ADUWxfiy
ティトォの人乙です。
うわぁ、あの三人まで来てるしw
これは次回にwktkせざるを得ない。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:01:47 ID:wi7gS1sU
>>164
あの三人っていうか、来てるのは三つの魔法じゃね?
いや、マスターキィがあるってことは五つか?
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:01:55 ID:6jSE5pV1
乙!ぶっちゃけプリセラ、アクアに勝てる奴いないだろとか思ってたら三大神器もしっかり召喚されてたかww
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:12:37 ID:NI+vBFXD
恋姫無双とのクロス誰か書かないかな
       \ | | | '/   ___    |   /  /
        ゞ-'  ̄ フ<       `ヽ、| / /_
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    r‐|    V.   i | ハ、 | l | l   く r」}]]]K´
   i´| ト、_   / / | | | | ||| | | |  └―‐┘ \
   r|   \ ̄| | l | | | ||| | ハ | |  _,. -< ̄
   l \    フ l | 「| ト、! //」/‐/二 | ∨´      \
   ト、 `=ァ'′ ! .ト、 |ハチヘ '′ 'ィチニ ト| l/ Lr―‐r--、_{
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   ヽ ヽ      `rヘ ´  !      /} }´  「 ̄ ̄_|
            フへ、 ー-‐ ,. イfr'′ '< ̄ ヽ 
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           |  | ∧ く// ヽ  / |/´/,. イヽ
          .ハ /  ∨ ハ ノー‐'   !'   _fレァ ハ
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       く |     レヘ |        | /    ヽ >
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        ヽ ! {^T´ ||「ヽニニニ.ヘ r‐ '/   |        ハ
          |,|   !' ||′ 7/  リ  ′  |   _ '  ヽ
          l !  ノ' ||   |       |     |  /<「 7 ^ヽ.\
       _/ノ /  .ハ           ',   |  /7ノ   ̄ヘヽ \         , /
   _ rに -| |!     | |         ,.ィヘ   | ハ |      \ヘニゝ      //
 rに- '´  / |    / ヽ.     //^´ \ !/フ /  ,. へ.   ヽくァ    _/ /
ハ rぐ'  /  ト、  /    \ / /    //ゞ〈   f/ ⌒ヽ // 〈 _ Y_ ` く
.V |  ´   | ヽ/          /    〈/ 'T |\ レ' ´ ̄\' // ヽ \`! |
 > 〉      |            /      7ノ リ  >' ニ->へ>へ、   ハ  |

168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:17:33 ID:/Owky4W7
該当スレが過疎だからってこっちくんな
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:17:38 ID:lEFLNO1z
>>167
既に専用スレがあるようだぞ。中身確認してないけど。

ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1221997053/
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:18:55 ID:2V7eScL8
>>754
ピッコロさん!
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:25:01 ID:2V7eScL8
>>764
日本人だけど、イタリアの若本さんの孤児院で育ったことにすれば宗教繋がりでイケるぜ!
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:25:39 ID:UMz069ID
>該当スレが過疎だからってこっちくんな
「ハガレンのエドが〜」は保管庫があるから鋼の錬金術師のキャラのネタはここではできないのかなぁ
いや、別に鋼ので書く事は無いけど
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:26:12 ID:2V7eScL8
すいません>>170-171は誤爆です!
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:27:31 ID:2V7eScL8
>>172
あそこ機能してんの?
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:28:09 ID:dGJ0NbS3
さよなら天さん
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:29:15 ID:cTQAjlFv
ギョウザか
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:31:39 ID:uIjR6Opw
マテパの人乙です。

ジョセフとテファどうなるかと思ったら五大魔持ってロマリアについてる?
ジュリオもアダラパタよりクゥのポジションに?
そしてデルフは…

wktkして待ってます
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:33:09 ID:TzH3zdQ9
コイツは面白くなってきやがりました!
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:02:45 ID:lR7cyp70
       \ | | | '/   ___    |   /  /
        ゞ-'  ̄ フ<       `ヽ、| / /_
       _f└rべ/         、  Y ⌒\ ∠_
  .   i′|  ト、/´               ヽ | /イ ,、ヘ  _>
    r‐|    V.   i | ハ、 | l | l   く r」}]]]K´
   i´| ト、_   / / | | | | ||| | | |  └―‐┘ \
   r|   \ ̄| | l | | | ||| | ハ | |  _,. -< ̄
   l \    フ l | 「| ト、! //」/‐/二 | ∨´      \
   ト、 `=ァ'′ ! .ト、 |ハチヘ '′ 'ィチニ ト| l/ Lr―‐r--、_{
   | `ー'    |Nヽ.ハ Vニ!     ゞニソイ | ノ\  \__
   ヽ ヽ      `rヘ ´  !      /} }´  「 ̄ ̄_|
            フへ、 ー-‐ ,. イfr'′ '< ̄ ヽ 
               .> - イ |'     >' \
           , -f^/ ̄|トくハ |'  フ=ァ ―/   /
          / i |/.  ノ1ハ「′ / イ   /  /
           |  | ∧ く// ヽ  / |/´/,. イヽ
          .ハ /  ∨ ハ ノー‐'   !'   _fレァ ハ
          / /    /   |        |/ /    ̄ヽ|
       く |     レヘ |        | /    ヽ >
        /`|   /f´`!V       ∨  /´     \
.        〈  ト、 ハ ゞ-'ノ     _ //ヽ-|       {
        ヽ ! {^T´ ||「ヽニニニ.ヘ r‐ '/   |        ハ
          |,|   !' ||′ 7/  リ  ′  |   _ '  ヽ
          l !  ノ' ||   |       |     |  /<「 7 ^ヽ.\
       _/ノ /  .ハ           ',   |  /7ノ   ̄ヘヽ \         , /
   _ rに -| |!     | |         ,.ィヘ   | ハ |      \ヘニゝ      //
 rに- '´  / |    / ヽ.     //^´ \ !/フ /  ,. へ.   ヽくァ    _/ /
ハ rぐ'  /  ト、  /    \ / /    //ゞ〈   f/ ⌒ヽ // 〈 _ Y_ ` く
.V |  ´   | ヽ/          /    〈/ 'T |\ レ' ´ ̄\' // ヽ \`! |
 > 〉      |            /      7ノ リ  >' ニ->へ>へ、   ハ  |

こっちで呼んでくれたって良いじゃん、召喚してよ
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:05:14 ID:d2uxYynv
クロスキャラをゼロ魔の原作知識有りで召喚するのは反則かな?

いや、プロットを練っていたら、何となく思いついたのだけど。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:06:24 ID:vmmApeuD
現実世界が舞台の作品ならラノベを読む可能性もあるってこと?
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:08:53 ID:xEjpdNHb
>180
ミッドチルダ在住『高町なのは』さんが、久方ぶりに帰郷した所、旧友より『ゼロの使い魔』を進められ熟読、後、召喚される。とか?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:11:59 ID:74SM4zbF
巣に帰ってね
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:14:18 ID:9Pb2LTYG
179

荒らしにマジレスもなんだが、
専用スレがあるクロス先はそちら優先が一応ルールだ。
例外はそのスレが立つ前にこちらで始まっていた場合ぐらいだ。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:14:50 ID:NUW0HeOo
その場合、ノボルの立場は神か超能力者になるのか
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:15:03 ID:d2uxYynv
とあるオタ趣味を持つキャラで、なおかつ異世界に渡るのに慣れてるキャラが、
アキバで召喚ゲートらしき物に遭遇し、「これってもしやゼロ魔の召喚ゲートじゃね?」と、
状況を理解しながら突っ込むってのをやろうとしてる。

まあ、原作知識有り系は破綻も早いので、少し躊躇もしてる。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:16:08 ID:5j95B+vI
>>180
そんなあなたにドラゴン ファンタジー。
マーリンの魔法でアーサー王の時代の農夫に読者の精神を憑依させたのが
主人公だから、設定的には問題ない。
スレ住人を中の人に据えるわけだ。

問題点としては、
・やっぱ地雷。やるにしても避難所。
・原作は絶版しているので入手が難しい。
 Amazonには何点か出品されてた。
 グレイル クエストと名前を変えて、新装版が3巻まで出てる。
・14の争奪戦が起こる。
・あの軽妙で辛らつな文体を再現するのは骨だ。詩的な魔神とか
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:16:35 ID:LXLVnp3E
>>186
ここの空気に合ってると思う?
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:19:09 ID:vmmApeuD
空気は吸うものだ
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:19:36 ID:d2uxYynv
>>188
うん、とりあえず、諦める。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:24:42 ID:hKk/iBfW
>>186
ヒラコーか? ヒラコーなのか!?
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:31:58 ID:74SM4zbF
そのクロス先の原作でゼロ魔読んでるってんなら未だしも
もう何でも有り?って感じだな・・・
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:33:09 ID:R8R1Yq/I
このスレは実質Part203でいいんだよね。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:39:12 ID:XyBwAt1H
いかにも
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:45:33 ID:+PFpazY6
ま、まさか
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:48:34 ID:OaIKxmT5
今ネタを考えてるんですが別に「サモン・サーヴァントで召喚」っていう縛りはないですよね?
ちょっと変則気味(下手したらこじ付け)の「償還」になるんですが
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:49:17 ID:OaIKxmT5
>>196
おっと肝心の漢字間違え
「召喚」ですな
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:49:42 ID:cLMeFJVq
あれだ
強力な予知能力者を選べば原作知識の代わりになるぜ
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 00:52:43 ID:wnkY2acy
>>192
げんしけんとか大同人物語とか乃木坂春香とかなら……まあ無理にひねりだすよりも、素直に理想郷で俺召喚書いた方が色々と幸せな気がするが。
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:02:35 ID:vmmApeuD
「(…でも絶対コルベール先生の方が攻めだよね…ああ、手が勝手に描いてしまう…)」
「もうやだこの使い魔」
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:10:50 ID:BZ50Fb8h
>199
なんか知っているが主軸に行かずにおっぱいの大きさが問題になりそうなラインナップだな!
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:11:47 ID:/ueq7No0
>>199
コミックパーティからオタクタテ&ヨコを召喚とか
でもその内禁断症状出ちゃうから駄目か

妄想戦士ヤマモトの連中なら強く生きていけそうだな
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:15:39 ID:+PFpazY6
>>198
ブリミル族メイジ預言書を持ったミートくん召喚で始祖争奪トーナメント開催ですね
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:18:32 ID:wnkY2acy
>>202
どうせこみパからなら九品仏大志でいいんじゃね。ジョゼフや教皇に対抗できるかもよ。
あとはあさひちゃん(ルイズの声をやっていたという追加設定)とか……。

夢が膨らむな!
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:21:26 ID:/ueq7No0
>>204
貴方の書き込みを見た途端ヴィンダールブいくみんが胸に七つの傷を持つ兄と他人の使い魔を手足の如く操る姿を幻視してしまった....
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:30:19 ID:wnkY2acy
>>205
それも夢が膨らむが、いくみんは俺の嫁なので教皇なんぞに唇をやるわけにはいか(ry

ふーむ、あさひちゃん召喚なら小ネタでいけそうだなぁ。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:34:47 ID:Nq6AYTMd
( @∀@)女王陛下!朝曰新聞ですが…
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:36:48 ID:F+K6hE3j
>>203
突如浮かび上がって空中で合体するトリスタニア城とニューカッスル城だな
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:38:36 ID:/N3HHr7z
>>207
それアサピーw
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:43:21 ID:qE9X5dT4
漫画版のタテ&ヨコは爆発物処理を会場内で実行してたな。たしか。

211ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 01:48:09 ID:SvRbmmyA
こんばんは、予約なければ55分ごろから投下します。問題ありましたらお知らせください。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:50:09 ID:/ueq7No0
そして解除が間に合わずヨコが肉体で爆発を閉じ込めた
アレで生き残ってるから凄いよな

あと漫画はミズキが何処からとも無く釘バット取り出せるなどでデルフがまた…
もう撲殺ステッキに形を変えてコスプレで無双してもらうしか!!
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 01:54:58 ID:CHe5kaAL
三次創作になっちまうが某所から46cm砲戦艦なみずきちを…
214ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 01:55:04 ID:SvRbmmyA
ゼロの魔王伝――10

 触れられたものが、一生その思い出を糧に生きる事さえできそうなほど美しい指が無造作に倒れた机を掴み、小枝を拾う様に軽々と持ち上げるや、隅の方へとのけて行く。
 硝子の破れた大窓も枠ごと桟から外し、そこら中に散らばっている瓦礫の破片や割れた窓硝子に足を取られる事もなく、机と同じように一か所に集めていた。
 ルイズの『錬金』の魔法によって、教壇を中心に爆発が起きた後の教室である。罰として魔法の使用を禁止した上での教室を命じられていた。
 もっとも、ルイズはまともに魔法を使う事が出来ないので、魔法の行使を禁止されてもたいした意味はない。
 ルイズの使い魔たる黒衣の美麗無双の美丈夫は黙々と、それこそ言葉を母の子宮に置いてきた様に体を動かしているきりだ。
 何も言わず、何かを考えているようにも見えず、散らかっている教室を淡々と片付ける機械的なその姿は、歴史の陰に名を捨てた錬金術師が持てる技術と知識の粋を込めて生みだしたゴーレムに、声を司る黄金の声帯を入れ忘れでもしたようにも見える。
 不平不満の一欠けらも、慰めの言葉も、侮蔑の視線も、何一つルイズによこす事はない。あるいはそれらを向ける価値さえもルイズにはないのかもしれなかった。
 いっそ、罵倒してくれれば、いっそ、失望した色を見せてくれれば、いっそ、呆れたようにしてこちらを見てくれれば。
 そう、なにか感情の動きを見せてくれれば、これほど惨めな気持にはならないのに――ルイズは、チリトリと箒を動かして細かな破片を集めながら、縋るように、怯えを交えた視線を時折Dへと向けていた。
 自分が使い魔にして良いのかと、おそらくハルケギニアのメイジ達の中でも唯一使い魔との契約を遠慮したメイジであるルイズは、その幼い乳肉がなだらかな丘陵を描く胸元に苦しみを一杯に溢れさせていた。
 使い魔の目の前で良い所を見せようと燃やした闘志は無残な結果に終わったこと以上に、それに対して何の関心も見せぬDの態度に怯えて、不安に震えていた。
 これまで朝起きてから食堂に行くまで自分の言う事を聞いてくれた事で、少しいい気になっていたのは否めない。
 美しさを語る言葉の虚しさばかりが募るDの美貌、どう考えても普通ではないと分かる骨まで緊縛してくる氷結の気配。
 メイジではない以上平民であろうはずなのに、どう考えても平民とは思えぬその尋常ならざる雰囲気に、使い魔としての不満など露ほども抱いてはいなかった。
 だが、今、ルイズの目の前に在るのは何の感情も感じさせず、美しすぎるが故に言い知れぬ恐怖を見る者の心に呼び起す別の何かだった。
 無論、Dは常と変わらない。昨夜、目を覚ましてから今に至るまで、彼自身は格別ルイズに対する態度を変えてはいなかった。
 Dに対する評価がルイズの中で変わっているのだとしたら、それはルイズの眼に、ルイズ自身によって何らかのフィルターが掛けられたからだろう。あるいは、Dという青年の心根をわずかなりとも理解してしまったからか。
 一通り目立つゴミを片付け終え、床を汚す塵や埃もルイズが掃除し終えた頃、Dに背を向けていたルイズの肩がやにわに震えだした。
 最初は小さく、仔細に観察せねば分からぬほどかすかな震えは、次第次第に大きくなり、嗚咽とも慟哭とも取れるものを必死に堪えているのが分かる。 

「ねえ、どうして何も言わないの?」

 耳を打たれた者が足を止め、悲嘆に暮れる心のまま見つめる事しかできぬような声。ルイズの小さな手が、真っ白に染まるほど強く握りしめられていた。
 きり、と爪が肌に食い込み、赤い筋を刻む音が聞こえる様。
 たいしてDは無言。冷たくも暖かくもない視線をルイズの震える背に向けたきり。やはり、何も言わず、何も語らず、何も思わず、何も浮かべず。
 Dよ、お前に心はないのか? 震える感情は? 思い浮かべる思い出は? 目の前の涙を流さずに泣く少女を思いやる、人間なら誰だって持っている筈の当たり前の気持ちは?
 Dよ、その美しさの様にお前は当たり前の人間の心を持たぬのか?
215ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 01:56:20 ID:SvRbmmyA
「ねえ、何か言ってよ。魔法が使えないのかって、失敗ばかりなのかって、馬鹿にするのでもいい。
 頑張れって、諦めるなって、励ましてくれるのでもいい。ゼロのルイズは、魔法が成功しないからかって、聞くのでもいい。
 何か言ってよ。何も思わないの? 自分の主人がこんな落ちこぼれで嫌にならないの? 
 こんな私に使い魔扱いされて怒っているんじゃないの? 惨めだなって思わないの? 悔しくないの? 
 ねえ、どうして何も言わないのよ。それとも……私なんか、どうでもいいから? どうだっていいから何も言わないの? 私の言う事を聞いてくれた事も、私と契約してくれたのも、なにもかもどうでもいい事だったからなの?」
「…………」

 沈黙がそれを肯定した。Dにとって、ルイズは自分を元の世界へ返す約束をした少女であるという以上の価値はなく、またそれ以下の価値もない。
 成績がどうだろうと、友人関係がどうであろうと、家柄がどれだけ高貴であろうと、その心にこれまでどれだけの苦しみと負の感情を抱いてきたのであろうと、自分を呼び出した責任を全うし、送り返す事にしか、価値も意味も見出していない。
 詰る所、約定さえ果たされれば、ルイズの涙も、怒りも、悲しみも、嘆きも、憎悪も、何もかもが関心の外にあると言っていい。おそらくは、その生死さえも。
 自分を元の世界に帰す、その約束にしか、自分は価値を認められていないのだと、、沈黙の時の中でルイズにも分かった。
 ルイズは、一度だけか細くしゃくりあげると、激情を爆発させる素振りもなく、むしろ落ち着き払った声で言った。背をDに向けたままだった。

「もう、掃除はいいから。私、食堂に行く。貴方は好きにしていて」

 掃除用具をまとめて抱えて、ルイズは教室を後にした。一度も、Dを振り返る事はなかった。孤影悄然と、森羅万象、時の流れにも忘れられたように教室に佇むDに、左手の老人が声をかけた。

「お嬢ちゃん、お前の名前を呼ばんかったの。お前が名乗ってからはあんなに嬉しそうにD、Dと呼んでおったが。ちと冷たくし過ぎではないか? お前は、もう少し女子供に甘いと思ったが?」

 親鳥を呼ぶ雛鳥の様に、あるいは雨に打たれながら誰かのぬくもりを求めるように鳴く子犬の様に、ルイズは飽きる事無くDの名を呼んでいた。
 胸中に抱く何もかもに対する不安と恐怖の反動故か、唯一魔法を成功させたという事実の証明であるDに対し、そうだと、君は魔法を成功させた、君はゼロではないのだという答えを求める様にDの名を呼んでいた。
 父を呼ぶ娘の如く、兄を呼ぶ妹の如く、憧れの人を呼ぶ少女の如く、騎士を呼ぶ姫君の如く、しかし、そのいずれでもない声で。
 肉親を呼ぶ声と言うにはどこか一歩を踏み出せずにいる距離を隔てた遠慮がある。憧れの人を呼ぶ声と言うには胸の高鳴りが冷たい。忠義の騎士を呼ぶ声と言うには縋る様に弱々しい。
 だが、そのルイズに対してDが告げた答えは沈黙が肯定する無関心。
 普通の心の持ち主であるなら、いや、人間であるなら少なからず同情や憐れみの念を、あるいは唐突な事態に対する憤りや怒りを抱いてもおかしくはないというのに、Dの心にはそれらが何一つ、欠片ほども浮かんではいないようだった。
 Dが、ルイズが閉じていった教室の出入り口のあたりの床の一点を見つめた。果てしない宇宙の闇を凝縮させて閉じ込めたように深い漆黒の瞳は、しばしそこを見つめ続けていた。
 きらりと慎ましく陽光に輝く何かがあった。左手が物憂げに呟いた。

「涙か」

 堪え様として堪え切れず、教室を出る時にルイズも知らぬうちに流した一滴の涙の粒であった。
 床に落ちて弾けた涙の痕が、悲しみも嘆きも恐怖もない澄み切った輝きを放っていた。流れた涙の主の心も、そうであれたなら、どんなに救われた事だろう。

「……」

 しかし、なお、Dは無言であった。過ぎたる美は、その持ち主から人の心を奪うのか、Dがルイズの後を追って食堂に向かう事はなかった。


 瞳からこぼれ落ちそうになる涙を、ルイズは流すまいと必死に歯を食いしばり、眉根を寄せて堪えていた。
 自分が呼んだ使い魔の本音を知り、自分がどれだけ道化として振る舞っていたか、少なくともDの瞳にはそう映っていただろう事を思い知らされた。
 悔しいのか、悲しいのか、怒っているのか、嘆いているのか、後悔しているのか、恥ずかしいのか? そのどれでもないのか、自分の心の事が、ルイズには分からない。
 掃除を終えて、中天に太陽が燃える時刻。一層輝きを増す陽光が窓辺から射し恵み、石造りの学院校舎の冷たさを払拭し、オレンジとも金色とも見える光がぬくみと共に校舎に光と熱の化粧を施している。
216ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 01:58:16 ID:SvRbmmyA
 その陽光のカーテンを切り裂くような勢いでルイズは足早に歩いていた。じっと俯き、流れようとする涙を必死に堪えている。

――なによ。

 おはよう、と朝の挨拶をしてきたDの声が聞こえた気がした。

――なによ、なによ。

 Dだ、と自分の名前を告げた時のDの横顔と声が蘇った。

――なによ、なによ、なによ。

 おれはなにをすればいい、と使い魔としての役割を訪ねてきた時のDの顔と声が思い浮かんだ。

――本当は、私の事を馬鹿にしていた。違う、馬鹿にさえしていなかった。私がDの言葉に、行動に、騒いだり慌てたりするのもどうでもよかったんだ。
 私なんか、どうでもいいから、私が何をしても関係ない。気にしない、怒りもしない。Dにとって、私はそこらへんに転がっている石ころと変わらないんだ!

 誰かに認めてもらう事を強く願っているルイズにとって魔法を成功させた証明そのものであるDに好意どころか、考えようによっては嫌悪や憎悪、怒りよりも残酷な、無関心と言う態度を取られていたという事は、到底耐えがたいものだった。
 好意を抱かれていない。それは仕方ない。ルイズにもルイズなりの事情があったにせよ、Dの事情を一方的に無視して召喚してしまったのだから。
 嫌悪されている、あるいは怒りを抱かれている。それも仕方がない。DにはDの生活があったろう。聞けばある男を探しているという。元の場所ですべきことや帰りを待っている人がいるのかもしれない。
 それを考えれば、Dの意思を無視して拉致したも同然、しかも変える方法が分からないと告げるしかない自分を嫌うのは、むしろ当然の事だろう。
 だが、Dはルイズに対してそれ以前のレベルで接していたのだ。人間と人間との関係の中で、無関心ほど希薄な者が有ろうか?
 好意を抱く相手ならば、その相手に不幸が訪れれば胸が痛み、悲しみや同情をおぼえるだろう。時には涙を流す事もあるだろう。
 嫌う相手ならば、その相手の幸福を妬み、嫉み、あるいは憎しみを抱くかもしれない。
 だが、無関心は。相手がどうなろうともどうでもいい、そんな考えは感情でさえ無い。ある種相手の存在や人格と言ったものを認めていない、拒絶ではないか。
 どうでもよいからどう思われようと何をされようと構わないという、何事も受け入れるかの如き姿勢は、しかし同時に拒絶と背中合わせでもあるのではないか。
 そしてルイズにとってDの無関心は、その心を体ごと引き裂かれるような痛みを伴うものだった。
 今のルイズを形作る最大の要因となった、ゼロと言う名の劣等感にも等しい苦しみ。
 ルイズの足が止まり、力無く壁に肩を預けた。俯いていたルイズの瞳から、一つ二つと、廊下に落ちるモノがあった。
 一人の少女の悲痛を知り、慰める様に降り注ぐ太陽の光の中を宝石のように煌めき、廊下に落ちては飛沫となって弾ける涙。清らかに輝くそれは、しかしルイズの胸の中で溢れる悲しみや、苦しみや、痛みや、自嘲が外に溢れたものであった。

「なによ、なによぅ……。私一人だけ、怖がったり、喜んだり……馬鹿みたいじゃない。使い魔にまで、Dにまで、馬鹿にされたら、見捨てられたらどうしようって、怖かったのよ?
 メイジが、使い魔に、見捨てられるなんて、在り得ないけど……ゼロの私なら、そうなっちゃうかもって、怖かったのよ。怖かったの。
 なのに、D、貴方はそんな私のことなんかどうでもいいって……。そんなの、そんなの、もっと、ずっとひどいわ。なによ、なによ、Dの……馬鹿」

 この学院に来てからのルイズを知る者が見たならこれは夢だろうかと疑う事だろう。今にも膝をついて人目を憚らずに泣き出してしまいそうなほどに、ルイズは次から次へと、堪え切れぬ涙を零していた。
 白磁の陶器を思わせるルイズの頬が、うっすらと赤に染まり、その頬をきらきらと輝く跡を残して涙の粒が飽くる事無く流れて行く。
 喉の奥からかすかな嗚咽が、止む事を知らぬように次から次へと零れ出て、ルイズの周囲の世界を憂いを帯びたモノへと変えていた。

「ひっく、うぅ……ばか、ばか、……でぃ、Dのばか………………わたしの、ばか」

 十分か、三十分か、一時間か。幸い人の通る事はなく、ルイズが咽び泣く姿が事情を預かり知らぬ誰かに目撃される事はなかった。
 泣き腫らした両眼を手の甲で力無く拭い、ルイズは再びとぼとぼと歩きはじめた。世界中の嘆きや悲しみが、ルイズの背に圧し掛かっているかのような責め苦に苛まれている姿だった。
217ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 01:59:59 ID:SvRbmmyA
「部屋には……戻りたくないな」

 Dが、いるかもしれない。Dが、戻ってくるかもしれない。今、Dには会いたくなかった。声を聞きたくはなかった。その姿を見たくはなかった。
 今朝までは自分の使い魔の名を呼ぶ事に心が弾んでいた。生きをする事さえ忘れるほど美しい青年が、自分の意を汲んでくれる事実に、我を忘れて喜びを覚えていた。
 なのに、ほんの数時間しか経っていないというのにルイズの心は負の感情が天蓋のように蓋をし、鬱欝と沈んでいた。
 この世に在るモノはすべて絶望だと悟ったように歩くルイズが、不意に目の前の扉から聞こえてくる喧騒に、瞳をあげた。自分が学院のどこを歩いているのかさえ分かっていなかったルイズだが、そこがどこであるかはよく知っていた。

『でね! キュルケのひいひいひいひいおじいさんの……』
『ここが食堂か?』
『え? あ、うん、ここが食堂よ。通り過ぎちゃうところだったわね。でも初めて来たのに良く分かったわね』
『食べ物の匂いと騒がしさじゃな。朝からずいぶんな馳走を口にしとるようじゃの』

 かつて交わした会話の残響が、まだそこにある様な気がして、ルイズはその頃に戻れたいいのにと、わずか数時間前の自分の無知を羨みながら、アルヴィーの食堂の扉を弱々しく開いた。
 昼餐の時刻とあって食堂の中は満員だった。壁際に控えた給仕たちは忙しく、しかしそのような素振りは見せずに、呼びつけてくる貴族の子弟たちの間を巡り、生徒達は名も知らぬ給仕たちの労を労う事もなく口と手を動かし続ける。
 そんな光景がルイズにはひどく色褪せて見えた。自分の心が今感じているモノが何か、ルイズにはよく分かる。
 “どうでもいい”、だ。アルヴィーの食堂を賑わす生徒達の声も、食器の擦れる音も、慎ましく、時に大胆に踊るアルヴィー達も、何にも心が動かない。

「Dは、こういう風に私を見ていたのね」

 くっ、とルイズには決して似合わない嘲りの笑みが、自分に対して可憐な唇を歪めて浮かぶ。
 連綿と古えから続く血統と歴史が培った精神、この二つの気高さを花開く前の蕾ながらも備えていたルイズの卑屈な笑みを見れば、あのキュルケもルイズに何があったのかと目を丸くして他意の無い慰めの言葉の一つも掛けた事だろう。
 食堂の中の光景や騒がしさの全てに背を向ける様にルイズは、自分の席に座った。すでに食前の祈りは済まされているのだろう、隣の席のマリコルヌやクラスメイト達は食事をはじめ、くだらない話に花を咲かせている。

「D、お昼は何を食べてるのかしら? ……やぁね、貴方が私に興味がないって解っても、私は貴方の事を考えているのよ」

 砂を噛むような痛みが変わった言葉は、そのまま暗い靄の様に変わってルイズの膝に落ちていてもおかしくはなかったろう。思い込みの激しい所があるルイズは、一度入り込んだ感情の迷路の奥へ、奥へと思考を沈めていた。
 もそもそと口を動かし、純銀のフォークやスプーン、ナイフで料理を切り分け、スープを掬って口に運び、歯で噛みつぶして嚥下する。
 食事と言う行動の動きのみを抽出した姿だ。食材と振るわれた料理人の技術に舌鼓を打ち、食べるという行為を楽しむ様子はない。これほど食事を振る舞う甲斐の無い相手はそうはいないだろう。
 今、ルイズが口に運ぶ料理がどれだけ美味であっても、またその逆に不味くても、ルイズにはどちらも変わらぬ事だった。
 食事を楽しみ、美味を喜ぶ心が沈み切っているのだ。それがどうにかならぬ限り、目の前の料理達は、わずかな意味さえ無い存在のまま皿の上から消えるだろう。
 鬱屈とした様子が、まるで光の届かない深海にでも囚われているのかと一瞬錯覚させるほどに沈んだルイズの耳に、クラスメイト達の下世話な話が聞こえてきた。
 聞きたくもないのに聞こえてくる会話の内容が、ルイズの思考にさざ波を打たせはじめた。
 やれ、どの女の子が本命なのだとか、美への奉仕者だとかなんとか、普段でも腹の立つような下俗の会話だ。ふつふつとルイズの感情の水面に細かな水泡が浮き上がり、ぱちん、ぱちんと弾けはじめた。
それは、Dの本音を知ってからルイズの中で重く沈澱していた怒りであった。ぎり、と我知らずルイズが奥歯を軋らせていた。

――私が、自分がどれだけ滑稽だったか思い知らされて、こんなに苦しんでいるって言うのに、アンタ達はそんなくだらない事で笑っていられるのね。
218ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 02:00:46 ID:SvRbmmyA
 それが八つ当たりだとは、ルイズ自身理解していたが、一度歯車が噛み合う様にして動き始めた怒りは、向けるべき相手ではないと知りつつも徐々に熱を帯びはじめる。
 そんな事をしてもますます惨めになると自分に言い聞かせてなんとか自制している内に、クラスメイト達の方では急展開が訪れていた。
先程から話の中心にいた生徒が、なにやら女生徒達に対して二股をかけていたようなこと露見し、二人の女生徒からなじられ果てには頭からワインを掛けられていた。

――いい気味ね。

 自分でも卑しいと思う笑みが、心の中で浮かぶ。こんな自分は、後で嫌いになるだけだというのに。それでも少しだけ、本当に少しだけ気分が晴れたルイズは、三分の一だけ手を着けた料理を残し、席を立ち上がろうとした。
 なんとはなしに振り返った視界に、給仕をしていたメイドを糾弾している件の生徒の姿が映った。
 少年――ギーシュが落とした香水の壜をメイドの少女が拾った事がきっかけで、ギーシュの女性交遊が露見してしまった事を、メイドの少女の責任として擦り付けているようだ。
 貴族と平民との間に存在する魔法と言う埋めがたい壁を知る少女は、哀れにも肩を震わせて頭を下げていた。瞳には涙さえ浮かべているかもしれない。
 その姿を見て、ルイズの中で沸騰しかけ、何とか沈められたと思っていた感情が堰を切って溢れた。
 ギーシュの振る舞いに、日頃から魔法が使えぬ代りに気高く在らんとしたルイズの中の“貴族”が反発したのかもしれない。
 非が無いにも拘らず貴族を前にしては意に従う他ない平民の姿が、平民同様に魔法が使えないにも拘らず大貴族の子息と言うだけで、こうして隔絶した生活を送れる自分を卑しく思わせたからかもしれない。
 あるいは、単にメイドに対して憐れみを覚えたからかもしれない。
 ルイズは自分の足が勝手に動いている事に気づいた。気付けば口が開き、何かを口走っている。驚いてこちらを見上げる黒髪のメイド、唐突な乱入者に気色ばむギーシュ。
 ルイズは、自分がひどくギーシュを怒らせる言葉を吐いている事を、ギーシュの顔色で知った。
 普段のルイズであったら、ギーシュが、ちょっと脅かそうと思っただけなのに思った以上に怖がっているメイドに対して、どうしようかと困っている様子に気づき、ここまで怒りを覚える事もなかったろう。
 だが、今のルイズは、普段のルイズではなかった。
 貴公子然と振る舞おうとしてあまり成功していないギーシュの顔が、ルイズの口が動くたびに恥辱の赤に染まり、怒りを募らせている。
 ギーシュを怒らせている自分を、ルイズはまるで別人のように見ていた。ギーシュの行為をきっかけに、本当はDか自分自身に向けるべき苛立ちや負の感情をぶつける愚かな自分。それを冷ややかに見つめている自分。
 ギーシュとメイドと、二人の何が自分をこうも捨て鉢にさせるのか、ルイズは嘲りの笑みと共に悟っていた。
 自分は、Dと、この二人の様に理不尽な糾弾を受ける事もされる事もない。その事に対する、醜い、あまりにも醜く哀れな嫉妬であった。自分で自分がどうしようもないほど下らない奴だと、笑ってしまう。

「決闘だ!!」

 我慢の限度を超えたギーシュが、食堂に居る皆に聞こえる様に叫んだ言葉を、ルイズはどこか遠い世界の出来事のように聞いていた。
 使い魔にさえどうでもいいと思われる自分だ。だったら自分自身さえもどうでもいいと思ったって仕方がない。
 ルイズの心はかつてないほど自暴自棄の念に囚われていた。
219ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 02:01:59 ID:SvRbmmyA
 息せき切ってこちらに向かって小走りに近づいてくるメイド――シエスタの姿を認めたDが、木陰に立ったままシエスタの到着を待った。教室でルイズと別れてから、これといってする事もなく、持ち物の点検も終えて、身を焼く陽光を避けていたのだ。
 足を止め、荒くなった息を整えているシエスタに視線を向け、無言で何か用かとDは問う。その視線に立ち眩みに襲われたようにシエスタは上半身を揺らしたが、気を取り直してDに向かって半ば叫ぶように告げた。

「ミス・ヴァリエールが大変なんです! あの、Dさんはミス・ヴァリエールの使い魔なのでしょう? だからお伝えしなくちゃって、私の所為で、ミス・ヴァリエールがっ」
「彼女がどうかしたか?」

 今日の天気を訪ねるような口調であった。この人、自分の主人の事が心配ではないのかしら、とシエスタは一抹の疑問を抱いたが、それどころではないと口を開く。

「ミス・ヴァリエールが私を庇ってミスタ・グラモンと口論になって、それが、決闘騒ぎになってしまったんです」
「……」
「ミス・ヴァリエールは魔法が使えないのにミスタ・グラモンの挑戦を受けて、今はヴェストリの広場で」
「彼女が自分の意思でした事ならば、おれが口を挟む問題ではない」
「ミス・ヴァリエールが心配じゃないんですか?」
「命の危険があるのか?」
「それは、学院の生徒同士ですし、命までは取られないと思いますけれど」
「なら、問題はあるまい。それに教師もいるだろう。いざとなれば彼らが止める」
「どうして、そんな風に冷たい事が言えるんですか。ミス・ヴァリエールの事をなんとも思っていないのですか?」

 シエスタの声にこたえる風もなく、その通りだと暗に告げているかのようなDの姿に、シエスタはこれ以上Dと話をしても無駄なのだと悟り、かすかな失望と憤りを胸に抱いて、馬鹿な決闘騒ぎを止めてくれる教師達を求めて踵を返した。
 Dは、シエスタのその背を一瞥したきり、木陰の下で世にもあり得ぬ美しい彫像と化したように動かなかった。左手の老人も揶揄する事はなかった。Dが動かぬと理解していたからだろう。


 物見高い暇な生徒達が十重二十重と輪を作ってヴェストリの広場で決闘を行っている二人を見守り、時に囃し立てていた。あまり日の射さない中庭には、金髪に色白のギーシュと対峙するルイズの影が落ちていた。
 両者の間には、金属の光沢を全身に持った彫像が一体あった。鎧兜で身を固めた戦乙女をモチーフとした青銅製の彫像である。
 その彫像『ワルキューレ』こそが、ギーシュの得意とするゴーレムであった。薔薇の造花を模した杖を片手に、ギーシュが愁いを帯びてルイズを見つめた。
 すでに決闘を始めてから、ワルキューレの拳や手刀を受けたルイズは、苦しげに呻いて立っているのもやっとと言った様子だ。
 絵にかいた美少女そのままの顔に、傷一つないのはギーシュのせめてもの配慮によるものだろう。

「ルイズ、どうか参ったと言ってくれ。言葉にするのが屈辱だというのならその杖を置いてくれ。ぼくは、魔法が使えなくても貴族足らんと努力する君の事が、嫌いじゃないんだよ。これ以上君を傷つけさせないでくれ」 

 聞き様によっては侮辱と取れるギーシュの言葉は、紛れもない真摯なものだった。少なくともこのギーシュと言う少年が、みだりに婦女子に暴力を振るう事を是とするような卑劣漢でない事は確かな事実なのだろう。
 多少、様々な女性に対して甘い声を掛けてしまうのは(成功するかどうかはまた別として)この少年の愛すべき欠点であったが、それでも女性に対して紳士的に振る舞おうという姿勢は確かなものだ。
 食堂でメイド――シエスタに対して明らかな八つ当たりをして、いたずらに怖がらせてしまった事は、ギーシュ自身その場でやりすぎたと思っていたし、ましてや同じ貴族たるルイズに暴行を加えるのを心苦しくも感じていた。
 それ以前に、ルイズは女の子ではないか。多少、どころではないが意地っ張りで癇癪持ちで、魔法が使えないと散々バカにされてもめげずに努力している。
 ギーシュはルイズとさして親しいわけではないが、悪口を真っ向から受け止めて倍に返し、普段の居振る舞いでは常に貴族らしく堂々としようとしているその姿勢には、好感めいたものを覚えていた。
220ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 02:03:28 ID:SvRbmmyA
「ルイズ、聞こえているのかい?」
「ええ、良く、聞こえているわ」

 ワルキューレに殴られたお腹がずきずきと痛む。蹴られた太ももが先程からじんじんと痛んで熱っぽい。
 ルイズの唱える魔法はどんなものであれ爆発と言う形で発生し、ルイズの狙い通りに行く事はなくワルキューレを爆破する事も、ギーシュを爆発で吹き飛ばす事もなかった。
 ルイズが魔法を唱えた数だけヴェストリの広場のあちこちに小さな爆発の後だけが穿たれ、ルイズの精神力を無為に消耗させてワルキューレからの手痛い反撃を招くばかりだった。
 最初は面白がって囃し立てたりもしていた周囲の生徒達も、流石に一方的な展開に興ざめしたり、同情の視線を向け、ルイズに早く降参しろ、負けても恥じゃないと声をかける者達もいる。何人かは決闘を止める為に教師達を呼びに走り去っていた。
 
――私、何やっているんだろう。Dにどうでもいいって思われているって気付いて自棄になって、メイドを庇ってギーシュと決闘の真似事なんてやって、こんな痛い目に遭って。本当、何をしているんだろう?

 体中のあちこちから聞こえてくる痛みの声を無視して、どこかぼんやりと、ルイズは今の自分の状況を、馬鹿みたいと笑った。

「なにが可笑しいんだ、ルイズ?」
「なにもかもがよ。そして、何よりも誰よりも、私自身が馬鹿だって分かって、可笑しいのよ」
「ルイズ、自分でもそう思うなら早く降参するんだ。これ以上は、ひどい怪我になるかもしれない」
「いやよ。あのね、ギーシュ、私は自分がどうしようもない馬鹿で道化みたいだって分かったけど、せめて自分の言葉に責任を持ちたいの。
私がなりたいと願う貴族は、そうでなければならないのよ。一度決闘と口にし、それを受けたからにはとことんまでやってからじゃないと、負けを認められないわ」

 なんだ、私にも譲れないものがあるじゃない、とルイズは体中の痛みと引き換えにして見つけたモノに気づき、今度はかすかに嬉しそうに微笑んだ。そのルイズの姿を見てギーシュは何を思ったのか、厳しいモノを顔に浮かべる。

「分かったよ。ぼくもグラモン家のはしくれ。やわか婦女子に後れを取ったとあっては末代までの恥。君の心が折れないなら、その杖を折るとしよう。
 それにしても、君の様に痛めつけられても同じことを言える貴族が、この広場にどれだけいるだろうね。それだけでぼくは君を称賛するよ、ルイズ」
「ギーシュ、今気づいたけれど」
「なんだね?」
「貴方、意外といい男ね。もっと軽薄な人かと思っていたわ」
「ぼくは君がここまで意地っ張りだとは思わなかったよ。それと、こんな時に何だが、褒め言葉をどうもありがとう。意外と嬉しい。……では、行くよ」

 来なさいよ、そうルイズが心の中で答えるのと同時にワルキューレが動いた。石畳を青銅の脚絆が蹴り、金属の軋る甲高い音を立ててルイズへと真正面から迫る。
 格別運動神経が良いわけでもなく、何度か殴られた痛みで体の動きが鈍いルイズには、疲れも痛みも知らぬワルキューレの動きは迅速に過ぎた。体は意思を裏切るように重く鈍い。
 視界の片隅で振り上げられたワルキューレの右腕が映った。これまで狙わなかった顔か頭だろう。これ以上下手に長引かせるよりは、とギーシュが考えたに違いない。
 手加減すれば、周囲の生徒達の水の治癒魔法で跡を残さずに治す事も出来るだろうし、これ以上体の方を痛めつけては骨が折れるかもしれない。この期に及んで自分を気遣うギーシュに、ルイズは苦い笑みを覚えた。

――まったく、ゼロだからって舐めるんじゃないわよ! 

 振り下ろされようとするワルキューレの右腕にルイズは自分からかじりついた。まさかルイズの方からワルキューレに飛びかかってくるとは思わなかったギーシュの反応は、数秒遅れた。

「どうせ爆発しか起きないんなら、それでどうにかしてみせようじゃない!」

 詠唱の短いライトを唱え、本来暗闇での光源を得る為の魔法はルイズの詠唱によって小規模な爆発となってワルキューレの背で起きた。

「ルイズ、まさか自分ごと!?」
「これだけ近ければいくらなんでも当たるでしょう!」

 ルイズを振りほどこうと身を捩るワルキューレの左腕がルイズの顔を打ち、鼻の奥から熱いモノが滴ってくるのをルイズは感じた。口の中にも零れてきたそれを吐き捨てながら、なんども詠唱し、その度にワルキューレとルイズの体は爆発に晒され揺れていた。
 生身のルイズと青銅で痛みを感じぬワルキューレならば、どちらの方が耐久力が上かは語るまでもないが、ルイズの爆発の特性がルイズに味方していた。
221ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 02:05:41 ID:SvRbmmyA
 教室で机を吹き飛ばしその衝撃で窓硝子を悉く粉砕するほどの威力を持ちながら、人間に対する殺傷力は極めて低いという、ルイズの失敗魔法の特性がワルキューレに痛打を浴びせながらも、ルイズにはわずかにしか作用しないのだ。
 ルイズが詠唱を数えて何度目か、ルイズは自分が必死の思いでしがみついていたワルキューレが異様に軽くなった事に気づいた。瞑っていた眼を開くと、背をぽっかりと抉られ、左腕が付け根からなく、顔も半分になったワルキューレの姿があった。
 ワルキューレに動く力が無いことを悟り、ルイズは一層痛みを増した体を剥がす様にして離れ、がらがらと耳障りな音を立てて崩れるワルキューレを見た。

「なんだ、ゼロでもできること、あるじゃない」

 自分自身が口にしている事に気付いているかどうかさえ怪しい言葉を、口にするルイズに、ギーシュが確かな称賛を交えて声をかけた。

「見事だ、ルイズ。正直な所、魔法の使えない君にワルキューレを斃されるとは思わなかった。考えようによってはその爆発が君の魔法だったか。その見事さに敬意を払う。ワルキューレ!」

 ギーシュが右手に握っていた薔薇の杖を振るうや散った花弁が地に落ちるよりも早く青銅の戦乙女へとその姿を変じる。
薔薇の花弁から生まれた人形達は全部で六体。先ほどルイズに壊された分を含め、合計七体のワルキューレがギーシュの最大の武器であった。

「ぼくの全力だ。ルイズ」
「ふうん、出し惜しみはなしね。だったら早くかかってきなさいよ」
「まったく、口が減らないな、君は」

 どこか愉快そうに呟くギーシュとは裏腹に、ルイズは流石にこれ以上は駄目かな、とどこか他人事のように思っていた。だが、決闘を始める前の陰鬱とした気分は随分と晴れやかだった。
 ワルキューレを一体とはいえ自分の力だけで倒したこと、痛みの中で自分の中に譲れないもの、折ってはならないものがある事を見つけられたからだろうか。
 少なくとも、今度はDと話す事を怖がらずに済みそうだ。ワルキューレの内の一体がルイズめがけて一歩を刻んだ。
 ルイズは朦朧としはじめた意識がふっと遠くなり、膝から力が抜けるのを感じた。慌てて力を込めようとしても、折れる膝はルイズの意思をわずかも反映してくれない。

「あっ」

 そのルイズの体を横から延びた逞しい左腕が支えた。漆黒の衣服から覗く左手には使い魔のルーンが刻まれ、白雪のきらめきを映した肌にアクセントとなっていた。

「D」

 崩れおちんとしていた自分を支えた腕の主を悟り、ルイズは、顔をあげて自分を見つめるDを見た。

「無茶をする」
「なに、よ。私の決闘よ。私が、私の意思で受けたのよ。それを止める権利なんて、誰にもないわ」
「そうか」

 ルイズはDの胸に手を突き、自分を支えるDの左腕から離れた。この使い魔に支えられる事無く自分の力で立っていたかった。
少しは主人らしくあろうというかすかな意地が、まだ自分の中に残っている事に気づいたからだ。Dに何を言うでもなくワルキューレに立ち向かおうとするルイズの右肩に、Dの左手が置かれる。

「使い魔は、主人を守るのが役目だったな」
「D?」
「君を守ると約束した」
「……でも、私の事なんてどうでもいいんでしょう? それにギーシュだって命まで奪おうとなんてしてないわ。むしろ私が大怪我しないように手加減してくれているのよ?」
「ルイズ」
「えっ?」
「任せろ」
「…………なによ、私が決闘しているのに、姿も見せないと思っていたら、こんな時になってから現われて、なによ、なによ自分勝手なんだから」
「親の躾が悪くてな」
「なにそれ、冗談?」
「好きに受け取ってくれ」
「分かった。でも、ギーシュとの決着は私が着けるから、貴方はワルキューレをお願い。どうにかできる?」
「問題ない」
「そう。ねえ、D?」

 視線だけを向けるルイズに、Dははにかんだ、幼い少女の無垢な笑みを浮かべた。

「ルイズって、名前で呼ばれて、すごく嬉しかった」

 そうほほ笑むルイズは、どこまでも可愛らしいことを除けば、ごく普通の少女にしか見えなかった。
222ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 02:07:13 ID:SvRbmmyA
投下終了です。ギーシュがギーシュじゃないですね。そしてタイトルに反して幻十が最近出てきませんね。
菊地伝でにも改題したほうが妥当でしょうか? それでは、また次回。お邪魔しました。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 02:26:32 ID:ltUA1iA7
乙っした
ギーシュがいい男すぎて生きてるのが辛い
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 03:00:00 ID:QpMVB93a
多くの人どころか全ての女性の為に咲いていそうですなw
乙でした
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 03:05:21 ID:ENYCighz
魔王伝のルイズは可愛いな
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 03:44:11 ID:/pU5O+5T
>>203
ワルドがルイズの最大の敵に唇を奪われるんだな
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 04:13:32 ID:ajRms0pp
ルイズが自分のスカートをたくしあげるとそこから眩い光が溢れだし
それを浴びたドブ川が澄んだ川に変わる
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 04:42:05 ID:tI1AQx1x
>>186
小ネタでなら、らき☆すたの泉こなたが実行しようとして夢オチだったという話が・・・
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 04:45:51 ID:gexqjCld
えと、ルイズでなくてタバサの掌編を投下したいと思うのですが。こちらでよろしいのでしょうか?
了解いただければ、書き上がり次第投下したいと思います。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 04:48:00 ID:6o8FB0i+
魔王伝の人乙です
覚悟決まってるルイズはカッコいいな
そしてDさん、カッコいいけどそこで手を貸すのは無粋では?w

パズルの人も乙です
>>166
まるでティトォなら勝てるみたいな言い方だなw
…うん、まあ確かにガシャロにあっさり殺されかけてたけどね…
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 04:57:47 ID:9Pb2LTYG
>>229
できれば何を喚ぶか教えていただけないでしょうか。

あと書き込み前にしっかり確認することをお奨めします。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 05:06:57 ID:gexqjCld
>>231
GSからです。キャラについてはすぐばれるでしょうけどナイショです。一発ネタみたいなもんなので・・・。
1は読みましたです。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 06:43:05 ID:gGWx9y96
駄目絶対
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 06:44:44 ID:OL6t2QLe
そう言わずにお願いしますよ
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 07:16:36 ID:FNDcskeP
小ネタならいんじゃね。
面白ければ、なお良し。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 07:50:55 ID:KFUQcubq
>>227
ルイズのスカートはキン肉マンのマスクじゃないぞwww
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 07:59:45 ID:2XL+geKW
>>236
家政婦が黙殺にそんなネタあったなぁ。
厨房神経でギーシュはぶっ倒れるんだろうか。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 08:11:19 ID:d2uxYynv
>>237
バイブの中にルイズを入れるのですね、わかります。
239ゼロの魔王伝:2009/01/10(土) 08:18:10 ID:TqDNCgn8
》221
誤字です。
×視線だけを向けるルイズに、Dははにかんだ笑みを〜

とありますが、ルイズとDが逆です。はにかんだ笑みを浮かべたのはルイズの方でした。

240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 09:34:24 ID:YolDVVjL
初期のDはもっと感情出してた気がする
いつからムッツリになっちまったんだ
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 09:52:54 ID:TPu+y6W4
スムーズに動物を召喚しようとして乗り手も召喚てのもありだよね。
松風ごと前田慶次を召喚とか、赤兎ごと呂布を召喚等など。

むしろ呂布が動物扱いになるかもしれんがw
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 10:05:28 ID:krvkGEAF
バイクに変形する赤兎ですねわかります。
犬のセキトとアホ毛が付いた呂布でもいいけど。
243魔導書が使い魔:2009/01/10(土) 12:14:50 ID:N3seZEas
年末年始はバイトに揉まれ、終わったら終わったで風邪に犯され悶え苦しんだ人生を送ってる者です。
なんとか病状も安定し、執筆活動も再開中。
長らくお待たせしました、あともう少しでお目見えできると思います。

ぇ? それ以前の時期……べ、別にMHFなんかにハマっていたなんてないんだからねっ!
(今夜からMHFは時間制限を設けることになりました――自己封印)
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:17:49 ID:4HfuzgpM
誰も訊いてねーよ、んな事。
245魔導書が使い魔:2009/01/10(土) 12:18:09 ID:N3seZEas
あ、下げ忘れてた。すいません。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:21:57 ID:NUW0HeOo
自己顕示欲の強い書き手が多いスレだな
他じゃ予約と終了でさっさと帰るのが普通だろ
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:23:01 ID:ajRms0pp
動物と一緒に召喚なら正義のアメリカン忍者が一番よ
サムスピ零以降はナコルルとのフラグ回収までしたモテっぷり
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:25:12 ID:pwucXQvR
揉まれて犯されるとはけしからん奴だな
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:27:42 ID:hKk/iBfW
>>246
予約とか終了とかいうレベルじゃなくね?
近況報告だけしに来るとかw
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:29:25 ID:a8l642hc
昨日も思ったがこのスレ怖い人が多いな
挨拶くらい大目にみてやる寛容性はないのか
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:30:39 ID:8w2gJ5ii
そういう近況報告は、次回投下の予約の時にでもやればいいと思うがなぁ
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:35:10 ID:IcjNVN49
ここは2ちゃんなので馴れ合いを嫌う人がいるのもしょうがない。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:35:44 ID:/hDAwwTq
>>128
スペランカー先生は・・・強いよ・・・
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:36:39 ID:hKk/iBfW
>>250
近況報告ばっかになりそうじゃんw
それにモンハンやってたとかどうで良くね?
私生活とか報告されても困るわw
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:37:45 ID:66B3y6Yf
>>222
投下乙です
>Dよ、その美しさの様にお前は当たり前の人間の心を持たぬのか?
魔界都市と吸血鬼ハンターにはこの手の文章は不可欠ですなw

>>240
第一巻では女の首筋に欲情してたりと今では考えられないほど正直者だったんだがw
まああの頃はまだ若かったってことじゃない?
あと巻数が進んでいくとDが見てきた悲劇(大体が父親が原因)の数が半端じゃないんでより無感情になっていったとか
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 12:56:00 ID:LDQUb0ob
>>250
それぐらいの心の余裕は持っていたいよね
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:05:31 ID:Nq6AYTMd
個人サイトじゃあるまいし、作者の近況報告だけのレスとかいらないだろう。
みんながやり始めたらウザいだろうし、馴れ合いも凄いことになるだろう。

具合が悪いとか、今は何にハマってるとかなんて本当にどうでも良いし、
>>251の言ってる通り投下のついでにやるくらいにしてくれ。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:18:09 ID:G3sUxF4F
生存報告ぐらいは良くないか?
更新がないのに待つ苦しみは…酷いぞ?
まぁそりゃ一日ごとや一週間ごとにやられちゃたまらないけど…
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:27:07 ID:Nq6AYTMd
基準なんて人それぞれだから止めといた方が良いんじゃないか?
一ヶ月か、三ヶ月か、半年か、一年か。

生存報告は、投下を持って代えさせて頂きます。で良いじゃないの。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:32:00 ID:y4p5nT3w
>>250
まぁ以前書き手関係でゴタゴタとした事が多かったからね…
今は予約と投稿、それと終了宣言だけした方が無難だと思う。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:33:19 ID:8w2gJ5ii
投下予告の時に、
「間が空いちゃってすいません、○○してましたorプライベートでちょっとありましてor体調がすぐれなくてor創作意欲がどうのこうの」
みたいなことを書けばいいんでないの。

それすら認められないほど、このスレの住人の器量は狭くあるまい。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:34:09 ID:3EhuuxJK
>>258
避難所の方に作者さんの近況報告板を作るとかどうだろうか?
何らかの理由で投稿が遅れるとか、次の投稿は何時頃だとか
書いてくれれば、読み手としては安心できると思うんだけど。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:35:21 ID:0ZYiiZBO
別に目くじらを立てなくても良い気がするんだけどな。

魔導書の作者は執筆活動も再開するって知らせでしょ、別に馴れ合いでもなんでもない。
フェードアウトする作者も結構いるし、そういう知らせを書いてくれるだけでも立派だと思うけどね。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:37:15 ID:Nq6AYTMd
>>261
>>258が言ってるのは生存報告だから、それとはまた違うんじゃね?
間が空いた人が「どうのこうの」があったけど、また書き始めましたとか、
まだまだ書きますよ!とか言ってくれる、執筆継続宣言みたいな?
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:38:33 ID:9Pb2LTYG
こっちの方が良かったのかも。

雑談スレ part4
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1214014544/
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:40:09 ID:tMMAFQBU
>>265
だな!
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:42:50 ID:QpMVB93a
>>255
まあ言わないであげようよw<正直者
Dだって相手がドリスだからって部分もあったんだろうし

あの姉弟にはそれなりに思い入れがあるみたいだよね
後の巻で二人の名前(多分)を聞いた時のDの反応好きだな
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:45:11 ID:Nq6AYTMd
>>263
具合が悪かったとか、MHFがどうとか言ってますけどね。
読み手は心配するだろうし、MHFに乗っかる奴は出るだろうし、馴れ合いになるんじゃね?

知らせじゃなくて投下で良いじゃん。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:50:14 ID:66B3y6Yf
>>267
死街譚ですな
あの話はDを見て「マスがかきたくなる」とほざいていた愉快な男がいい味を出していたw
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:51:09 ID:IcjNVN49
避難所には雑談スレの他にも応援スレ、感想スレ、毒吐きスレがあります。
今はID表示に戻っているので、作者の方も読者の方ももっと気軽に避難所にきてほしい。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:53:30 ID:vX6w8xfK
避難所でやれと言わざるを得ない。
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 13:59:29 ID:fxTAtdS5
作家の生存報告がダメでくだらない雑談はOK、と
意味が分からんな……。まあおっぱいの話題の重要性は皆が認識するところではあるが
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 14:04:13 ID:j9Xe7Xpz
>>268
ここの執筆継続宣言はHXHの何号から連載再開みたいな物だと思ってるよ。
商業ベースじゃあるまいし、執筆継続宣言に付随した軽い近況報告くらいは良いんじゃない?
近況報告が別の話題に発展してスレ違いになったら、その時に注意すれば良いだけ。
正直、あの近況報告でここまで議論することじゃない。
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 14:05:52 ID:pUKsNPKY
昔のバルカン半島みたいなところですねここ
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 14:10:52 ID:Nq6AYTMd
>>272
作家の書き込みと、くらだない書き込みを同じレベルで判断するなよw
空気を変えようとしたおっぱいネタが必要以上に続くのももウザいけどな。

>>273
自分でもしつこかったと思う、スマン。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 15:13:51 ID:opnQodpN
そういえばなんでロマリアはバルカン半島相当の場所にあるんだろう
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 15:23:01 ID:krvkGEAF
>そういえばなんでロマリアはバルカン半島相当の場所にあるんだろう
そうか、だからゼロ魔本編で火種になってんのかロマリア。いや最大の火種はガリアだけどさ。
278魔導書が使い魔:2009/01/10(土) 15:33:16 ID:N3seZEas
自分の発言でスレが荒れてしまい、騒がせしてすいませんでした。
これらの意見を参考にし、これからは軽々しい発言は控えるようにします。
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 16:12:37 ID:gexqjCld
こんにちは。229で「タバサの掌編投下しても大丈夫ですか?」と確認したものなのですが
一発ネタなら問題ないとのことなので、16時30分から投下してみようかと思います。
元ネタはGS美神。消費レス数は3か4だと思います。
問題あればご指摘ください。よろしくお願いいたします。
280恐怖の使い魔:2009/01/10(土) 16:31:08 ID:gexqjCld
 トリステイン魔法学院の演習場。
 神聖なるサモン・サーヴァントの儀式もつつがなく進み、雪風のタバサと二つ名を授かる神秘的な少女の番となった。
 空はどこまでも澄み晴れ渡り、気持ちよさそうに雲がたゆたっている。
 
「…人?」

 召喚の呪文・サモンサーバントを完了した後、現れた『使い魔』を見てタバサは首をひねる。
 自分と同じ空になじむ青い髪、見慣れない紅白の着物、そして日に焼けたことなどないかのような白い肌。
 召喚された『使い魔』は人間の女性。
 ただ、美人と言って差し支えない彼女が普通と違っていたのは−−−空に浮かんでいるということ。

「タ、タバサがメイジを召喚したっ?!」
「炎を背負ってる? 先住魔法かっ?!」
 
異口同音に同級生達はその変事を騒ぎ立てる。

「……」

 タバサは動じず、じっと彼女の顔を見据えているだけだった。召喚された女性もようやく事態がわずかに理解できはじめたのか、初めて口を開いた。

「え、あれ? えーと?? ……あのすみません。ここってどこなんでしょうか?」

 問いかけられたタバサは、いつまでも答えを返さない。召喚された『使い魔』をじっと訝しげに見つめているばかり。やがて彼女の顔を見あげるのをやめ、ゆっくりと中年の男性の元へ近寄っていった。

「ミスタ・コルベール」

 控えめな声で、この学園の中年教師・コルベールの名が呼ばれた。
 
「失敗しました」
「いや、成功だよ。ミス・タバサ」

 コルベールの返答にタバサは一瞬だけその蒼い瞳に失望の色を浮かべるが、すぐに普段の平静な −感情が見受けられない− 様子に戻った。

「失敗? 成功? 困ったなあ、早く事務所に帰らないといけないのに。横島さんもお腹すかせてるだろうし……」

 なにやら自分にはわからない話を進める二人に『使い魔』はただおたおたし、食べ物が入っているらしい手元の袋を気にしている。
 周囲にいるのは見慣れないマントを羽織った少年少女、物珍しい視線を感じ気恥ずかしい。とにかく、いつまでもここにはいられない。道案内を求めようとしたとき、先ほどコルベールと呼ばれた男性が頭頂に眩い光を頂いて進み出、至極真面目な目で言う。

「サモン・サーヴァント』の結果として彼女が現れたのだ。ミス・タバサ
 使い魔としては前代未聞だが、ちゃんと彼女が召喚された。
 成功していることは疑いないし、『使い魔召喚の儀式』は魔法学院の長い伝統に乗っ取る儀式。
 まして主人と使い魔が一生を共にする初めの一歩だ。
 やり直しは認められない」

 コルベールは言い終えると、出来る限り重々しく咳払いをした。
 常日頃感情の見えないタバサはコルベールにとっても得意な生徒ではなかったが、コルベールの言に案外と素直にタバサはうなずいた。汗の浮かんだ額をなでながら、ほっと一息つく。
 渋々納得したのか、それとも早々に仕方ないとあきらめたのか。タバサは召喚した『使い魔』に歩み寄る。
 放っておかれた彼女は安心したように、もう一度問いかけた。

「お話終わりましたか? よかった、事務所に戻る道をお伺いしたいんですが……」
「……降りてきて」
「え? えと、はい。これでいいですか?」

 慌てている様でずいぶんと落ちているようにも見えるが、ともかく細かい事情はお互い後で話せばいいだろう。自分と同じ青い髪をした女性がこれから先ずっと共に過ごす使い魔なのだから。
 例え意に沿おうが沿うまいが、サモン・サーバントはメイジにもっともふさわしい存在を使い魔として選定する。そういうものだと、タバサは契約の呪文を唱え口を動かしていた。が

「……透けてる?」
「あ。普段はちゃんと見えるんですけど、光の加減でそうなるときもあるみたいです」
「……え?」
「あたし、幽霊やって長いですから。そう言えばまだご挨拶してませんでしたね、キヌって言います……って?」
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 16:31:18 ID:N3seZEas
支援
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 16:33:01 ID:N3seZEas
栄光の手支援
283恐怖の使い魔:2009/01/10(土) 16:34:45 ID:gexqjCld
 タバサの顔が不意に近づいたと思えば、おキヌの体をすり抜け前のめりに倒れた。ぴくりとも動かない。

「ミス・タバサっ?!」
「え、え、え? 大丈夫ですかっ?!」
「お化け。お化け怖い……」
 
 うわごとをつぶやくタバサを運ぶ騒ぎでサモン・サーバントは一時中断となり、使い魔を召喚できるか気に病んでいたピンクの髪した少女が少しだけ安心したとかしないとか、それはまた別の話であったりする。



☆☆☆



 あれから一週間。
 おキヌはコルベールの努力もあり、ここが異世界であることなど理解し落ち着いていたが、未だタバサの契約は終了していなかった。

「契約は一回で終了させて欲しいものなのだが……」

 ほとほと困り果てたコルベールがのたまう。担当教師のコルベールや親友のキュルケがどれだけ説得しても医務室で逃げ、寮で逃げ、教室で逃げ。果てはトリスティン中を逃げ回り、おキヌという少女は宙ぶらりんとなっていた。

「コルベール先生……あたし、そんな嫌われることしたでしょーか……」
「君に罪はないよ、おキヌ君」

 涙ぐむおキヌを慰めなだめ、事態の解決を図ってきたがとにかくタバサの逃げ足といったら無い。曲がりなりにも軍隊の一部隊長を務めた自分がまるで追いつけないし見つけられない。
 ガリア王室からシュバリエの称号を授与されていると聞いてはいたが、こんな能力の無駄遣いをして欲しくは無かったと、コルベールは心底思う。

「おキヌ君には申し訳ないのだが、もう少しばかり待っていてくれないか? タバサ君は必ず説得するから」
「……はい。じゃあ、シエスタさんのお手伝いでもしてきます……」

 話してみれば、とにかくおキヌはいい娘だった。優しく朗らかで気遣い上手、多少天然ボケと言ってもよかったが、そこもチャームポイントだ。幽霊という事を差し引いても盛大におつりが来る。事実、もうすでにおキヌは学園の一員として迎え入れられていた。
 帰るに帰れず、かといってどうにもならない。肩を落とし飛んでいくおキヌが気の毒だったが、留年してもいいとしか答えず逃げまわるタバサにある意味驚いてもいた。
 この世全てにあきらめきった、達観した表情を浮かべるタバサがこうまでも『熱い』抵抗を見せるとは想像もしていなかったからだ。
 ある時偶然も手伝ってようやくタバサを捕まえられたときなど

『ヤです』
『いやだから』
『ヤです』
『あのですね』
『ヤです』
『ですから、って待ちたまえっ?!』

 待ちません、と言い終える前にすでに姿の見えないタバサに舌を巻いた。微熱のキュルケはずっと協力してくれているが、どうにかタバサを捕まえられても、やはり

『……お化け怖い』

 とだけ、後はサイレンスの魔法をかけられて終わりだと言う。恐がりが幽霊を召喚したのは悲劇かもしれないが、それでもサモン・サーバントは絶対だ。タバサにもわかってはいるのだが、理性というか感情がそれを受け入れない。だってこわいんだもん。
 タバサ自身、幽霊を使い魔にするくらいなら留年した方がよほど気楽だし、そも貴族の名誉など最初から剥奪されている。
 が、ある日部屋を訪ねてきたキュルケの一言で、タバサの認識は一変する。

「あの娘が消滅する?」
「そうなのよ。なにかあの娘の体が前よりずっと透けて来てね……」

 召喚時に透けていたのは光の具合だったのだが、1週間ほど経ちコルベールやキュルケにも目に見えて透けていく様がわかった。おキヌは自身の体を見て、寂しげに呟いた。

『縁が薄くなってる……』
『縁?』
『はい。縁っていうのはこの世との関わりの事なんですけど……ハルケギニアに来たあたしはそもそも誰にも、どこにも縁がありませんから……』
284恐怖の使い魔:2009/01/10(土) 16:37:41 ID:gexqjCld
 異世界から召喚されたおキヌには、このハルケギニアで縁を結べる存在はタバサしかいない。事情を聞いたタバサはわずかに青ざめ、しばらく考え、意を決して立ち上がった。

「……け、け、け」
「落ち着きなさいよ、タバサ」
「……契約する」

 恐れながらも毅然とキュルケに宣言する。そもタバサは母を助けるために力を尽くしている。王室から押しつけられる任務を達成するためにも、使い魔は出来る限り有力な存在であれば助かったのだが、呼び出したおキヌを消滅させてしまうとなると話は別だ。
 逃げ回ってるけど。
 それでは、母に毒を盛った無能王と同じ存在になってしまう。それだけはイヤだった。タバサはキュルケを伴い研究室を訪れ、おキヌとコルベールに詫び、改めて契約の儀式を執り行おうとしたが

「タバサっ?! ちょっとタバサしっかりしなさいっ!!」
「お化け怖い、お化け怖い……」

 キュルケは激しくタバサをかき揺らす。幾度も気絶し倒れ、さっきからちっとも契約の儀式は進んでいなかった。

「コルベール先生……なにかあたしものすっごく悪いことしてる気が……」
「ま、まあタバサ君には良い試練だと思うよ。この先生きていく上で、壁になることなどいくらでもあるのだから」
 
 幾分プライドを傷つけられていたコルベールは割合さばさばしていたりした。キュルケはずっとタバサを介抱しっぱなしだ。

「あたし、上手くやっていけるのかしら……」

 気絶しまくるタバサを見て、おキヌは深いため息をついていた。この女の子と、これからきっと少なくない時間を過ごすのだろうから。
 ふと窓の外を見た。このハルケギニアに呼び出された日と同じように空はどこまでも澄み晴れ渡り、気持ちよさそうに雲がたゆたっていた。

「大丈夫。怖くない、あの娘はいい娘普通の娘……」

 タバサが暗示をかけるように繰り返し呟く。キスしようとしては気絶してを繰り返し、結局どうにか契約出来そうな段階まで来るのに夕方になってしまっていた。

「……この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 額に口づけをした瞬間、使い魔のルーンが刻み込まれると同時におキヌの体が −幽霊ではあるが− 密度を取り戻していく。コルベールやキュルケも契約完了に歓声を上げた。

「ありがとうございます! これからよろしく……ってあれタバサさんタバサさーん?!」
「立ったまま気絶してるし……」
「なんともまあ」

 タバサは口からほのかに白いものを出し、どこか遠い世界に旅立っていた。夜空に浮かぶ二つの月は、のんびりあたりを明るく冷やしている。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 16:39:49 ID:gexqjCld
ということで、投下完了でございました。タバサにとっての「恐怖の使い魔」というオチで一つ。ありがとうございましたー。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 16:42:50 ID:53PdRmww
おキヌちゃんそんなに怖いかwwww
投下乙
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:06:23 ID:ojIlFOjn
おキヌちゃん、乙!

何気に有能な使い魔になりそうです。

しかも戦えば無敵。




……もとの世界で死津喪比女の復活が心配されます。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:11:04 ID:ojIlFOjn
>>287
無敵、と書いたが、厳密には「不死身」ですな。
幽霊じゃなかったら死んでるとこでした。
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:15:44 ID:45xkZt67
おキヌちゃん大好きです乙
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:17:36 ID:pwucXQvR
おもしろかったけどなんで投下前に召喚キャラ隠してたのかが分からない
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:20:57 ID:LDQUb0ob
>>290
作者の思惑があったからでしょう
作者には作者なりの考えがあって、それが分からないんなら黙ってればいい
ちなみに私にもわからんけど、まあ、そういうもんだ
おキヌちゃんかわいいし
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:21:29 ID:O5ZE+4XV
>>290
言ったら展開読まれちゃうからじゃない?
「タバサがおキヌちゃん召喚」なんて言ったら、どうなるかなんて火を見るより明らかだしw
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:28:12 ID:TPu+y6W4
ゴルゴム霊界怪人も怖がるのかな?
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 17:29:40 ID:XyBwAt1H
ですよね
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 18:44:57 ID:fiCF77bg
超加速とジョゼフの加速。
どっちが速いんだ.
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 18:59:17 ID:tI1AQx1x
ウルトラ怪獣だと
シーボーズ、タイラント、EXタイラントが苦手になるのかなタバサは・・・
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:00:45 ID:PPgnNrzA
おキヌちゃんの事を知ってシャルルが化けて出ない事を嘆くジョゼフとか、
見えてないだけでいますよ。とか言い出すおキヌちゃんとか想像してしまったんだが。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:00:51 ID:CtfjXi+h
おキヌちゃん乙。
確かにかなり有能な使い魔になりそうだよな、姿消せるし壁抜けや料理も出来る。
ただやっぱり元の世界が大混乱しそうだけどw
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:03:05 ID:fiCF77bg
>>298
美神令子除霊事務所が崩壊の危機にww
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:26:53 ID:gGkklosi
>>296
ヒドラ、バサラ、アクマニヤ星人、ガンQなんかもマジに霊体だからな。
ガゾートUのプラズマでシャルルやウェールズの霊が実体化したりしたら。
>>299
3日持たんな
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:52:47 ID:etuCIoZd
>>288
小説版でノスフェラトゥ相手に消滅しそうになったことがあったはず。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 19:59:44 ID:fiCF77bg
不良ギーシュ「ああん?なんだてめえ、ミス・タバサの使い魔じゃねえか(中略)よおし、タイマンだ!」
おキヌ「タバサさん!たいまんって何ですか!なまけててどう勝負が着くんです!」

こんな妄想が・・・・・・
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 20:15:14 ID:47TSmTJu
タバサは幽霊駄目だけど妖怪はどうなんだろ?

幽霊と似たようなものと説明しなければ大丈夫なんかな
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 20:21:47 ID:sXxwbAfB
モンスターが歩いてる世界で妖怪もくそもなくねw
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 20:27:02 ID:qYRHGwDn
実体がない、朧げなものが苦手なのか、それとも死んだ人間がダメなのかねぇ?
ゾンビあたりは苦手そうな気がするけど。
306ナイトメイジ:2009/01/10(土) 20:38:35 ID:b9wh8qJx
45分から投下させてください
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 20:45:37 ID:AhttqUrw
>>305
どっかで似たようなの聞いたことあるなぁ
バケモノが怖いのか死んだ人間に出会うのが怖いのか?ってやつだっけ・・・
308ナイトメイジ:2009/01/10(土) 20:46:42 ID:b9wh8qJx
ひんやりとした洞窟の空気を首筋に感じ、ルイズは背筋をぶるっと振るわせた。
一方、隣のキュルケはというと全然寒さを感じている様子はない。
火のメイジは体温が高くて寒さに強いという噂を聞いたことがあるけど、それは案外本当かも知れない。
そんなことを考えながら目を懲らすと、闇の向こうには赤い松明の光が揺れていた。
それは先にこの洞窟に入っている盗掘団の灯りだ。
「二人はここで待っていてください。私は先に行って盗掘団を脅かしてきます。その後、私が合図をしたら動いてください。それまでは決して動かず、静かにしていてください。いいですね」
声を潜めるコルベールにルイズは首だけを動かして答えた。
「あれから洞窟には誰も入って来てませんわ」
キュルケは使い魔を連れていない。
彼女の使い魔のサラマンダーは絶えず尻尾で炎が燃えており、暗い洞窟の中では目立って盗掘団にすぐに見つかってしまうからだ。
かわりに外の茂みの影に隠れて見張りをしている。
キュルケは自分の使い魔の目を通して見た事を言っているのだ。
「では、後ろから挟み撃ちに合うことはありませんね」
確認したコルベールはに迷うことなく真っ暗な洞窟の奥に足を進めていく。
少し時間がかかるかと思っていたが変化はすぐに起こった。
洞窟の奥から盗賊達がざわめく音が聞こえてきたのだ。
反響して聞きづらい声を聞き取ろうとルイズは耳をこらした。
すると今度は風を切る音が聞こえ、直後に盗賊達が騒いでいる場所の天井が崩れる音が聞こえてきた。
「今のは警告ですぞ。命が惜しくば立ち去りなさい!」
コルベールの声に盗掘団が慌てるざわめきがどんどん大きくなる。
耳をこらし続けるルイズは、ざわめきの中にある声を聞き取れるようになってきた。
「今の声?まさか、コルベール先生」
聞き覚えのある声がする。
主に教室でよく聞く声だ。
だが、それを遮って聞こえてきたのはもっと聞き覚えるある声だった。
「タバサ、向こうに魔法を撃って。そのあたりよ」
その声を聞いたルイズの頭には、にやにや笑う金色の目が浮かんでいた。
「ピンクブロンドの凶暴なのが居そうな気がするわ」
「誰が凶悪よ!あんた、わかってやってるでしょ」
手近に落ちていた石をひっ掴んで、声の方向に砕けよ顔面とばかりに力一杯投げる。
水平に飛ぶ石は狙い違えて一直線。
「ひぎゃっ」
狙ったベール・ゼファーではなく、ギーシュの頭部をものの見事に直撃していた。


先に洞窟に入っていたのは盗掘団なんかではなかった。
なんのことはない。ルイズが追っかけていたベル、タバサ、シエスタ、ギーシュの4人だったのだ。
「あ、ん、た、ねえ」
ルイズは水に濡れて滑りやすい床などものともせず、噛みつくんじゃないかとキュルケが心配するほどの勢いでベルに詰め寄る。
「ちょっとした冗談よ」
「冗談って、怒るわよ」
「もう怒ってるじゃない」
「それに主人をおいてこんな所に来るなんて!少しは使い魔としての自覚を……」
「主人?主人だって?おい、そりゃホントか?」
そこに知らない声が割り込んでくる。
「誰よ、今の声」
ルイズは闇の中で松明の炎に浮かび上がる顔を確認していく。
聞こえたのは男の声だ。ベル、キュルケ、タバサ、シエスタでは無い。
ならギーシュかコルベールのどちらかと言えばどちらでもない。
だけどここにいるのルイズを含めたらは7人だけ。
──なら、誰の声?
ルイズはちょっと怖い考えになって、もう一度1人1人見回してみる。
ベル
タバサ
ギーシュ
それから
「ここだ、ここ、メイドの娘の背中だ!」
シエスタで視線がとまった。
じっと見続けていると、シエスタの背負っている長い棒のようなものから声が聞こえたように思えた。
309ナイトメイジ:2009/01/10(土) 20:48:03 ID:b9wh8qJx
「なにそれ、インテリジェンスソードじゃない」
あきれかえったキュルケのおかげでようやく分かった。
松明の光だけではよくわからなかったが、シエスタが背負っているのは長剣だ。
しかもただの長剣ではない。喋るマジックアイテムの剣。インテリジェンスソードだ。
といってもそんなに驚くようなものではない。
喋る石像のガーゴイルはルイズの実家にもある。
ただ、剣を喋らせるのはそんなにあるものではない。
あまり意味がないからだ。
「頼む、そこの娘っ子!いや、お嬢様!助けてくれ!お願いだ!たーのーむーー」
口に見えないこともない鍔元の金具をカタカタさせながら騒がしくわめき続けるインテリジェンスソードにはだんだんうんざりしてくる。
「あー、わかったから。で、あなたは何から助けて欲しいの?」
「よくぞ聞いてくれました。あんた、あの銀髪の使い魔の主人なんだよな?」
「銀髪って、ベルのこと?」
ルイズが振り向いて見ると、ベルは「私がどうしたの?」とでも言いたげに眼をぱちくりさせている。
──あれは絶対演技だ
とルイズは確信し、同時にベルには説明する気はないし手伝う気もないことも確信した。
「ベルが何かしたの?」
「まだなにもしてねえよ。まだな。だけどよ、何かするに決まってるんだ」
「何かって、ベルが何しようっていうのよ」
武器がとてつもなくいやがることとは何か。
武器になったことのないルイズにはさっぱり分からない。
「わからねえよ。だけど何かろくでもねえことするに決まってんだよ」
「わからないわね。はっきり言いなさいよ」
「あんたホントにわからねえのか?」
「なにがよ」
「あいつはなあ、人間とか使い魔とかそんな生やさしいものじゃねえんだよ。あいつはなあ、くそ、どう言ったらいいんだよ。ルケギニアを無茶苦茶にすることだってできる……」
「魔王って言いたいの?」
「そうだよ、それそれ」
はぁ
溜息しか出ない。
ベルは魔王を自称しているがまさかそれを本気にするやつがいるとは思わなかった。
「あなた、名前は?」
「名前か?俺はデルフリンガーだ」
「そう。なら、デルフリンガー。あなたはね、ベルにからかわれているだけなの。あいつが魔王なんて大層なものなわけないじゃない」
「信じてくれよぉ。俺はな、持ったやつがどんなやつがだいたいわかるんだよ。間違いねえよ。助けてくれよお」
目があったら涙目なのだろうが、あいにくデルフリンガーには目はない。
とにかく今はこのインテリジェンスソード、デルフリンガーとは話にならない。
だけどこのままわめき続けさせるわけにもいかない。第一、うるさい。
なので仕方ないけどベルと話をすることにした。
「ねえ、ベル。あのインテリジェンスソードに何かしたの?」
「べつに。なにもしてないわよ」
大変疑わしい。
「だいたい、あんなものどこで手に入れたのよ」
「ここに来る前にトリスタニアに寄ったの。そこの武器屋でちょっとね」
「よりにもよって、あんなみすぼらしいのを」
「見た目よりは面白と思うわよ。あれ」
「うるさいだけよ。とにかく何とかしなさい。いっそのこと捨ててしまいなさい」
「えー」
ベルはまことに不満げな声を上げる。
が、ルイズに賛同する声は意外なところから上がった。
「もう、それでいいよ。そこらへんにぽーんとおいていってくれたらいいからさ。な」
「ああ言ってるし」
どこがいいのかベルはあのうるさいデルフリンガーを気に入っているようだ。
よくわからない使い魔だが、趣味までよくわからない。
「しょうがないわね」
ベルは細い腕を伸ばし、デルフリンガーを掴む。
「ひっ」
そして、引きつるような声を出したデルフリンガーの耳元に口を寄せた。
耳がどこにあるのかはこの際気にしない。
「…………」
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 20:48:46 ID:l34oCV+k
支援
311ナイトメイジ:2009/01/10(土) 20:49:15 ID:b9wh8qJx
ベルが何か一言喋った途端にデルフリンガーは静かになる。
さっきまで泣いてわめいていたのが嘘のようで、まるでふつーのインテリジェンスではない剣のようだ。
「これでいい?」
「……いいけど」
あんまりよくないところがありそうな気もしたけど何となくなので妥協する。
「まったく、剣なんて買ってどうするつもりなのよ」
「宝探しには必要なものよ。宝には番人がつきものでしょ」
「ベル……あんた、そんなことしにきたの?」
だんだん頭が痛くなってきた。
だいたい、宝探しなんて成功するはずがない。
宝に関する話なんておとぎ話かガセか嘘か詐欺に決まっているのだ。
本当の話だったら、その話を聞いた誰かが宝を既に持って行っているはず。
そのくらいのことはルイズにもわかる。
だけど、それがわかっているのかいないのかベルの話に食いついてくる人もいた。
「お宝?あるの?」
キュルケと
「ほほう、やはりそうなのですか」
コルベールだ。
ルイズは半ば忘れていたが、秘宝を探すコルベールの手伝いをするということでここに来たのだ。
キュルケもお宝には興味津々だったし。
「ならば、我々も同行させてもらえませんか」
「そうねえ」
ベルは珍しいことに、まじめな顔つきで、一同を見回し、1人1人指さしていく。
「1,2,3……7人か。ちょっと多すぎるわね」
「多すぎたら何かあるのですかな?」
「宝探しはね、5人でするのがセオリーなの。でも5人目は初心者にはちょっと難しいところがあるのよ。だけど、宝探ししたことあるのって学院には居なくて初心者ばかりなのよね。だから4人で来ることにしてたのよ。それに」
「それに?」
次の台詞がよめた。
近頃この使い魔の考えが少しだけわかってきたような気がする。
「人数が多いと簡単すぎて面白くない、なんて言うんじゃないでしょうね」
「よくわかったわね」
「わかるわよ!」
普通なら使い魔を理解できたのは悪くないことなのだが、その使い魔がベルとなるとあまりいいことに思えないのは気のせいだろうか。
「で、私が行かないって言ったからタバサを入れて4人にしたわけね。でも、なんでタバサにしたのよ」
「近くにいたからよ」
「近くにいたって、犬や猫じゃないのよ」
「犬や猫、ね……首輪はあるのかしら」
「ないに決まってるでしょ」
当たり前だ。
タバサにそんなものをつけてもしかたがない。
「でも、どうしようかしら」
今度は腕組みまでして何かを考え込む。
口の中でぶつぶつ呟いているのは、どうやら何かを計算しているみたいだ。
「ま、いいわ。当日になっていきなり参加者が増える事ってよくあるし。足りなくて中止よりはずっといいわよね」
よくわからないが何とかなるようだ。
「では、参りましょうぞ。まだ見ぬ秘宝を探しに」
「ええ、行きましょう」
秘宝のことしか見えていないようなコルベールとキュルケを先頭に、一同は洞窟の奥へと再び進み始めた。

***********************
今回はここまでです

似たような行動をするキャラが2人揃うと難しいです
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 21:09:39 ID:NnWsQf0J
うっかり以外は一応魔王だしなあベル。

このままいくとまさかのワルドとデルフが手を組む事態になるのでしょうか。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 21:12:18 ID:BFaVnlkJ
乙 

S=F+NWで7人はカウント処理が…
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 21:20:05 ID:qYRHGwDn
遅ればせながら、乙。
ワルドの動向が気になってしょうがないんだよなぁ、これ。
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 21:43:51 ID:KU2dw9Rw
ベル様乙です

>>301
ノスフェラトゥの霊圧で消滅しそうになってたな、あの場面って元の劇場版にはあったっけ?
それと本編でも鼠のネクロマンサーに操られた時に消滅しかかった。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 21:47:00 ID:aRRLLU3z
>>313
死にますね(主にGMが)。
きくたけ作品って、その辺はバリバリ第一世代だから。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 22:09:37 ID:FrQMWl92
年末に出てた復刻版読んで、奥瀬サキの「火閻魔人」から桃源津那美を……
とか思ったけど、どう考えてもすでに掲載されてるスーパー菊池大戦の
下位互換にしかならないので断念。
代替わりして、ようやく普通の人として死んでいけると思ったところで、
ルイズに呼ばれるというネタを思いついたんだが。
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 22:46:55 ID:kY7n5HMG
>奥瀬サキの「火閻魔人」
うわっ、懐かしっ!
俺は結構好きだったぞ。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 23:07:39 ID:A1OmcHIM
復刻出てたのか。またチェックしとかないと。
あと津那美を呼ぶのなら、「支配者の黄昏」からでいいんじゃなかろうかと。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/10(土) 23:45:52 ID:S2pCin8d
奥瀬サキだったら流香魔魅はどうでしょう。

バニーガール霊能力者いわく、レズのロリコンだけどナイチチ同士でうわなにすやめ
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 00:15:07 ID:QxGCT3/E
>>317
戸谷さんが召喚されてトリステイン中の肉屋が潰されてもやっぱり菊地大戦の下位互換かな

あと菊「地」な
本人がそう愚痴ったコラム書いたくらいよく間違われるけども
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 00:28:39 ID:l/BeCyI+
ヘイ!お待ち
朝日今年一発目の捏造でぃ!
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1208034.html
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 00:29:43 ID:8C2pb4Zy
>>320
ルイズのパンツにヘンな呪言を書いて怒られるんですね。
わかります。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 00:31:39 ID:XkzBAmyB
>>321
「外」谷さん無礼帳なんて誰もしりません。ぶう。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 01:18:41 ID:TvLEO5FF
>>322
KYっうぇww
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 01:37:39 ID:a3kYZNa6
サキと聞いてスケバン刑事、麻宮サキの召喚を思いついた
原作では成人男子の倍近い筋力で男共をバタバタ倒したり
男のみならず女まで魅了する色気があったりの高スペックだが
ヨーヨーでギーシュと決闘してタンカを切るシーンしか思いつかない
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 02:23:20 ID:FOPYS7U7
サキ…鋼鉄天使の方を召還すればめくるめく百合の世界に!

ただ個人的には作者繋がりで地球しか救えないソウマ召還とか見てみたいんだよな
出来ればテファ辺りで
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 02:34:08 ID:nbKK6P97
「俺には地球を救うことしか出来ないけれど」
かつてこれほど地球の価値が下がった台詞もないよな。地球なんか
どうだっていい、と言うより遥かにヒドい。
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 02:42:55 ID:DCIOlsCm
ソウマと聞くと悪魔城ドラキュラの来栖蒼真を思い出すぞ〜。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 02:47:32 ID:twAjMJGf
地球しか救えない男召喚と聞いてと聞いてアースガードの宗野水砂樹を(ry
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 02:51:06 ID:LXnXw6wi
バンピートロットからバニラビーンズ召喚

…鬼畜選択肢とか出せないから無理だな
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 03:00:13 ID:PXmblziH
>>326
パロネタやってた渡サキが思い浮かんだ。ついでに座敷童子の方も
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 03:24:01 ID:x4Nz4Ol6
悪魔城ドラキュラか
やっぱりアルカードをだね
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 03:25:12 ID:YnR54PoG
>>331
鬼畜選択枝と聞くとみつめてナイトの東洋人を思い出すな
妖精のピコも居てかなり有用だけどピコ等の真実を知るとあっという間に鬱に……
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 03:45:27 ID:VYZsHnRZ
>>334
EDで告白を断る主人公だからなw


みつナイといえば、ソフィアのバッドエンドでジョアンに激しく憎悪したのもいい思い出
二次元キャラにあんな感情持ったのは、後にも先にもあの一回だけだw
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 03:52:43 ID:j4VzT9HA
鬼畜といえば、鬼作や臭作さんを忘れちゃいけねーやw
投下された某SSは、面白かったなーw

そういえば、日本一はまだかなーw
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 04:11:49 ID:hWVJ5zr1
とらドラの大河を召喚したら・・・
似たもの同士けんかする程仲が良いんだか悪いんだか、になるか?
召喚したと言うよりは、ルイズが地球について来ちゃったよという感じだが。
竜児がもっとだらしないやつだったら、才人そっくりなんだろうけどな。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 05:04:50 ID:mDVARtqV
なに言ってんだお前。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 05:50:51 ID:KFcgUaRt
ドラキュラ最新作からシャノア召喚は考えたなー。
ガンダールヴがまるまる無意味になるというデルフ自壊ものの設定なんだ。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 06:02:37 ID:OZcdsLxG
ヴラド召喚かあ
ワラキア大公時代のアーカード召喚とか見たい
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 09:04:06 ID:1MEjRPQF
>>339
グリフは万物に宿る力の象徴(さすがにゲーム中じゃ制限あるけど)
だから倒した相手の武器や能力を奪って使用できるようになるし
魔法の詠唱中に相手の魔法を奪って使用できるからずいぶんとチートな設定
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 09:08:40 ID:ZrS4IHOT
ふと思ったんだが、以前何回か出てきたルイズがエルフ召喚したらって話で彼女の名前出てきたっけ?

つ 『雷帝』アーシェス・ネイ
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 10:11:25 ID:alamKIDJ
ネイは、ハーフダークエルフだったっけ?
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 10:25:00 ID:g0NM9wWg
>ネイ
武器装備ですか
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 10:25:47 ID:l/BeCyI+
バスタードの女キャラは平均180センチのバスト90センチオーバーのやつばっかりだよな
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 10:32:56 ID:VmJb92/G
つかダークシュナイダーに絶対会えない、
なんてなったらガチで3村、町単位の死人が出ないか。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 10:48:48 ID:Jjjg1/oa
>>330
地球しか救えないと聞いてガンエデンがふと浮かんだ。
第二次αだと”救えない”じゃなくて”救わない”だけど。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 11:25:04 ID:7zeqgN3n
ガンエデンは地球を鎖国して守るシステムだしな。
だがきっと聖地にはハルケギニアのガンエデンが封印されているに違いない。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 11:38:45 ID:YnR54PoG
>>348
もしも召喚されたのがゼンガーでおそらくは巫女であろうブリミルに見初められたら……


デル公歓喜だろうけど
ガンエデン同士の戦いがまた始まっちまう
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 12:12:15 ID:mBujeS/6
>>328
何故か「俺には何も救えない」「俺にできるのはヤツを倒す事だけだ」と言った鬼人を思い出した
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 12:39:50 ID:9dyWmATH
作者が近況報告するのも許されないってのに何でお前ら普通に雑談してるんだよ
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 12:53:54 ID:X8lvqfOs
名前出しての近況報告なんざダダの売名行為
チラシの裏にでも書いてりゃいい
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 12:54:35 ID:PwiUJEN+
近況報告からは何も生まれないけど、雑談からは時にネタがでるからでないかね。
つーても、俺は別に近況報告くらいいいと思ってるけど。

プリティサミー召喚とピクシィミサとだったら、どっちを召喚がいいだろうか…ずっと悩んでいる…。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 12:54:36 ID:jenMRRFe
>>351
まあまあ、蒸し返すのもなんですし。

>>349
い、イルイたんはどうなるんだろう!
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:06:02 ID:zwAsoszA
>>326
サキはギーシュぐらいならガンダ補正なしでも勝てそうではあるが、
あのヨーヨーってガンダールヴのルーンに武器と見なされるかな?
サキのヨーヨーは明らかに戦闘用だからいけるか?

サキならルイズの事も「うるさい子だねえ」とか言いながらも
いい方向に向かわせてくれそう。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:07:28 ID:ZrS4IHOT
>>353
ラジオ版サミーとOVA版サミーと人妻隊を出せばいいんじゃね?
357モヒカン:2009/01/11(日) 13:22:18 ID:FiOuwCTd
ヒャッハー!聖帝様の御投下だぁぁぁぁーーー!
支援しろー!消毒されてぇかーーーーー!!

南斗って分派してるから、北斗みたいに一流派の奥義少ないから
AC版(十字陵、投槍除く)や、天の覇王の設定入れてるけど、世紀末って事で激流に身を任せてください。

てか、絵の方は天の覇王の方が、原作よりまだ馴染むかもしれんね。
ユダ様の扱いには納得いかんけど。(特にアニメ版)
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:26:16 ID:jenMRRFe
南斗支援
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:26:34 ID:1MEjRPQF
>>355
ヨーヨー自体が元々は南方のハンティング用具で
木の上とかから動物の頭上に下ろして攻撃する為の
道具(磨いた固い木や石と動物の健や蔓で出来ていた)だったので
十分武器扱い出来るのでは?
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:26:44 ID:alamKIDJ
しえんいるですか?
361帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:27:43 ID:FiOuwCTd
南斗六聖拳。
かつては皇帝の居城を守る六つの門の衛将と呼ばれた、南斗聖拳の頂点に立つ六人の拳法の使い手達である。
世紀末の世にも各々が宿星を持ち、その星の宿命を背負った男達が存在した。

愛に生き、愛に殉じた殉星の男シン。
人のために生き、命を懸けた義星の男レイ。
裏切りの宿命を背負い、南斗六聖拳を崩壊に導いた妖星の男ユダ。
仁の星の元、己を犠牲にして人を救う仁星の男シュウ。
妖星を動かし、世紀末の世の支配を目論んだ将星の男サウザー。

一星崩れた時残る五星も乱れ、世紀末の世に巨大な悲劇の種はバラ撒かれた!


第弐話『否退』


使い魔、いや契約をしていないのだからまだ正式な使い魔ではないが
召喚し死に掛けているところを助けてやったはずの男が、天を指差し、己は頭を下げぬと言った事が、その言葉がルイズには信じられなかった。
本当に、どこかの国の帝王なのかもしれないが、魔法も使えない者が貴族に命を助けられたのだから言うべき言葉ぐらいはあるはずだと考えていた。
だが、目の前の男が纏う雰囲気は、傲岸にして不遜。
常に他の者の上に立ち、またそれを当然だと言わんばかり。

「ペジかギジ、リロンかハッカでも居れば任せてもよいのだがな」
南斗双斬拳と南斗飛燕拳の使い手達。
二組の名を挙げたが、一組はケンシロウに、もう一組はラオウに、とうの昔に敗れ去ってしまっているので意味の無い事だ。
あれだけ挑発しといて何だが、挑まれたとはいえ、あの小僧相手に本気で決闘なぞする気にもなれないのだ。

「それと、使い魔だが」
「ぐ…なによ。あんたはわたしが召喚したんだから仕方ないのよ」
知らないという事は一種幸せな事である。
サウザーに気圧されつつも、メイジの立場からそう言ってのけるのだから実に恐ろしい事だ。
下手すれば、テーレッテーとかいう音楽の元、奥義を叩き込まれた挙句FATAL K.O.とかが出てもおかしくは無い。

だが、ルイズにはまだ死兆星は見えていなかったらしく、サウザーは頬杖を付いたまま続けた。
「そこら辺の蛙でも使い魔にすればよかろう」
「冗談じゃないわよ!しかもなんでよりによってカエル!?」
「ドブネズミのリーダーの方がよかったか?」
一瞬ルイズの頭の中で、両目を潰した男の顔が見えたような気がしたが気のせいだ。
むしろ、目の前の男より使い魔になってくれそうなのでそっちの方がよかったかもしれない。

「じゃなくて!使い魔ってのはサモンサーヴァントで召喚したやつしか無理なの!」
のらりくらりとかわすサウザーに業を煮やしたのかルイズが叫んだが、サウザーは空のグラスを手で弄びながらルイズを見ている。
「残念だったな。レイやシュウなら話が違うのだろうが、俺は聖帝。誰にも媚びはせぬ」
義星と仁星。どちらの人のために生きる星だ。
この二人なら見込みはあったかもしれないが、生憎と目の前の男は将星。またの名を独裁の星。
世紀末の住人ならば、このような光景自体が異様な事だと思う事だろう。

「くぅぅ……!話が進まないわ、それでどうするのよ。ギーシュをあんなに怒らせて決闘に行かないつもり?」
「俺が相手をするようなヤツではあるまい。放っておいても問題なかろう」
「ふ〜ん。偉そうな事言ってるわりには逃げるのね」
ルイズが挑発的な言葉を投げかけた瞬間、サウザーの手の中のグラスが思いっきり砕けた。
「なんだと…?」
「だってそうじゃない。あんたこのままだと、ギーシュから逃げた平民って言われ続ける事になるわね。まぁ普通はそうなんだけど」
「退かぬ、媚びぬ、省みぬ!面白い事を言うな……俺が逃げるだと?よかろう!何も知らぬお前達に帝王の姿を見せてやらねばなるまい」
手の中のグラスの欠片を投げ捨てるとサウザーが立ち上がった。
逃げるという言葉の反応の良さに、言ったルイズもこれには驚いた。
案外、扱いやすいやつなのかもしれない。とまで思ったがサウザーは、そんなルイズを気にするでもなく食堂から出て行き
新しいワインを持ってきたシエスタに広場までの案内を任すと、さっさと行ってしまった。
362帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:28:53 ID:FiOuwCTd
「ルイズの平民が来たぞ!」
日中でもあまり日が差さぬ、普段あまり人が集まらない場所。
『ヴェストリの広場』にそんな声が響く。
ギーシュとルイズが召喚した平民が決闘をするとの噂を聞きつけた生徒達で、広場は溢れかえっていた。
その生徒の群れをモーゼの如くかき分け進むのは聖帝サウザー。

「遅かったじゃないか。てっきり逃げ出したのかと思ってしまったよ」
「冗談が過ぎるぞ小僧。この俺が相手をしてやるのだ、光栄に思え」
ギリッ!と音がせんばかりにギーシュが歯噛みしたが、薔薇の香りを嗅ぐかのような仕草をとると、平静な顔を取り戻した。
「まぁいいさ。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、君の相手をするのは」
ギーシュが薔薇の杖を振ると花びらが一枚宙に舞ったかと思うと、いつの間にか、どこからともなく甲冑を着た女戦士の形をした人形になった。
「この青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ。メイジが魔法で戦うんだ、今さら卑怯とか言ってもらっては困るよ?」
余裕の笑みを浮かべながらギーシュがうそぶいたが、対するサウザーは僅かにワルキューレを眺めるとつまらなさそうに言った。

「それだけか?」
「?」
「お前の技はそれだけか?と聞いている」
「青銅の戦乙女ワルキューレは全部で七体!でも、平民相手には一体で十分だ!」

つまり、あれと同じ物が後六体出せるという事か。
くだらん。余興にもなりはしない。
このまま切り裂いてやってよかったが、それではあまりにも味気ない。

「三秒。俺が三秒数えている間、その人形で好きなように攻撃してくるがいい」
両腕をだらりと下げ、限りなく見下した笑みをギーシュに向け言い放つと
完璧に馬鹿にされている事に逆上したギーシュが叫びながらワルキューレに命令を下した。
「後悔するな!行け、ワルキューレ!」

「ひと〜〜つ」
数えると同時にワルキューレが、サウザーに向かって突進してくる。

「ふた〜〜つ」
ワルキューレが右の拳を振り上げた。

「みい〜〜つ!」
三つ数えると同時に重い音がして、その右拳がサウザーの腹に当たった。それでもサウザーは微動だにしない。
青銅製のゴーレムの拳だ。痛みでのた打ち回るのが普通だった。
食らった相手が普通ならだ。

「気も通っていない」
そんな低く、重い声が広場に響く。
「出来損ないの木偶では、この俺の身体に傷一つ付ける事はできぬわ!」
まるで何事も無かったかのようにサウザーの右手がワルキューレの頭を掴むと、それを軽々と持ち上げそのまま握り潰した。
363帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:30:11 ID:FiOuwCTd
世紀末の世界は放射能の影響か知らないが、良い意味でも悪い意味でも妙な連中が多い。
そんな連中を一撃で粉砕する北斗神拳伝承者の拳を受けても、口から僅かに血を流すだけなのだから
たかが青銅如きの木偶人形でサウザーにダメージがあるはずもなかった。
どこかの世紀末アクションスポーツゲームで『やわらか聖帝』だとか『紙』だとか言われているが大違いである。
頭を潰されたワルキューレが陸に打ち上げられた魚のように暴れていたが、無造作に投げ捨てられると
塔の壁にその身を叩きつけられ無残に砕け散っていった。

「南斗聖拳を使うまでもないな。小僧、お前如き腕一本で十分だ」
サウザーが唖然としているギーシュに近付く。
ジャリ、と音を立てて迫るサウザーに半ば恐慌状態に陥ったギーシュが薔薇を振ると、六体の武器を持ったワルキューレが現れサウザーを取り囲んだ。

だが、サウザーはつまらない物でも見るかのようにそれらを一瞥すると、ギーシュへと近付く。
一歩近付く毎にワルキューレがサウザーを襲ったが、武器を振っても全て避けられ、逆に一撃を貰っては沈黙させられている。
それを六度繰り返すと、サウザーとギーシュの間には何者も存在しなかった。

「もう終わりか?その程度の腕で、俺に挑み勝つ気でいたなどとは、とんだ笑い種だな」
ギーシュの武器は合計七体のワルキューレだ。
それを全て失ったという事は、もうギーシュに抗うだけの術は無い。

「ま、参った。僕の負けばら!?」
震える声でギーシュが負けを認めようとした瞬間、その身体が吹き飛び地面に叩き付けられた。
「ひっぶぁ…!こ、降参するって言ったじゃないか!」
鼻血を出しながら何が起こったのか分からないかのような声。それを聞いたサウザーが嘲るかのように哂いながら言った。
「参った?降参する?クッハハハハ。俺に逆らった者に降伏が許されると思っているのか?」
「そ、そんなしぼ!」
そこでギーシュの意識は途絶えた。
後頭部を強く踏まれたからだ。
ただ、完全に意識を手放す前に一つだけギーシュが理解できた事があった。

虫けらのように殺される。

事実、サウザーが脚の力を強めれば、ギーシュの頭は熟れたトマトのように潰れてしまうことになる。

「次は誰だ?」
ギーシュの頭をぐりぐりと踏みしめながら、周りに向け短く言うと観客のざわめきが一瞬で止まった。
「お前か?」
そう言った瞬間、その視線の先に居た観客のほとんどが後ずさる。
「それとも貴様か!?」
別の方向を向き言ったが、結果は同じだ。
それでも、気に押される事無く立っていたのは赤と青、大と小の対照的な二人の少女だった。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:30:35 ID:ZrS4IHOT
…まあ、聖帝さま相手じゃ青銅人形じゃこんなもんだよねぇ…w支援
365帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:31:52 ID:FiOuwCTd
「ごきげんよう、ミスタ。でも人と話すには、その足を離した方がよろしいんじゃありません?」
「この小僧か。稽古台にもならぬ相手だが、それは貴様に命令されるような事ではないな」
「あなた正気?グラモン家、いえトリステインの貴族を全て敵に回す事になるわよ?」
ギーシュの家、グラモン家はトリステインでも有数の軍人の家系だ。
しかし、サウザーはそれを聞いても表情を崩さず、逆にギーシュを踏む脚の力を少し強めた。
一瞬、呻く様な声が少し聞こえたが、それもすぐに止まる。

「それがどうした。俺の前に立ち塞がるのであれば、制圧前進し全て叩き潰すのみ!」
手を前にかざし、不敵に言い放ったサウザーを見て少女―キュルケがため息を吐いた。

まったく……ルイズもとんでもないのを召喚したわね。契約もまだみたいだし。

このルイズの使い魔は、例え国を敵に回しても省みる事は無い。
漠然とした考えでそう判断すると、杖を構えた。
「あたしが先でいいわね。タバサ」
青い髪の―タバサが小さく頷くとキュルケが広場の中へと進んだが、サウザーは足をギーシュから離そうとしない。

「女にこの帝王の相手が務まるか」
「メイジの事をよくご存じないようなので説明してさしあげますわ。メイジのクラスは四つに分かれて下から
  『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウェア』。あなたが今足蹴にしているギーシュは『ドット』。お分かりかしら?」
そう聞いてサウザーが目を細めた。なるほど、この小僧は雑魚にすぎぬという事か。
「あたしの二つ名は『微熱』。炎のトライアングルメイジ。そっちのタバサの二つ名は『雪風』。風のトライアングルメイジよ」
トライアングルといえば、学院の教師とほぼ同等。それを知ってか知らずか、無造作に両腕を下げたサウザーがギーシュから足を離すと観客に向け蹴り飛ばした。
「どの程度か知らぬが、メイジとやらの実力を測るには丁度よさそうだ。二人まとめてかかってくるがいい!」

「トライアングルメイジ二人を同時に?傲慢もいいところね」
呆れた顔でサウザーを見たが、幾分か強張った顔でタバサが前に出てきた。
「あたし一人で大丈夫よタバサ。隙だらけじゃない」
キュルケが軽く言ったが、タバサは首を横に振った。
「確かに隙だらけに見えるけど……隙なんて無い」
南斗鳳凰拳に構えは無い。だが、構えがないのが構えなのである。
相手の拳に対応して受けるのではなく、千変万化する相手の動きに合わせ必殺の拳を無想に繰り出す。
そこに一片の隙などあろうはずもなかった。

タバサが短く呪文を呟き最小の動きで杖を振ると、風の刃がサウザー目掛け飛ぶ。
風の刃がサウザーに届く寸前、顔を傾けると頬に一筋の傷が奔った。
「俺に傷を付けたか。だが、傷を付ける事は出来ても、果たしてこの俺を倒す事ができるかな?」
僅かに流れる血を親指で拭うと、血を舐めあげる。
366帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:33:07 ID:FiOuwCTd
次いで炎の球が次々とサウザーを襲ったが、最小限の動きで炎の動きを見切るとそれを避ける。
火力はあるようだが、単純な攻撃だけに見切ることは容易い。

「そんな大道芸で、この俺が怯むとでも思ったか?だとしたらお前も、あの小僧と同じだな」
炎をかわされ、見下されたような言葉を受けたが、意外にもキュルケはサウザーに微笑を浮かべると一礼をしながら言った。
「あたしをギーシュと一緒にするなんて言ってくれるじゃない。『微熱』のキュルケが情熱の炎というものを教えてさしあげますわ」
次いで再びキュルケの杖の先に炎が巻き起こる。
先ほどの炎球よりも一回りも大きい炎の塊がサウザー目掛け飛んでいったが、対するサウザーは口元から猛獣の牙のような歯を見せ嗤った。

「一度かわした攻撃が通用するか、愚か者が!」
大きさ事上回っているが、動きが単調すぎる。
この程度の攻撃をかわせないようでは南斗六星拳の名が泣くというものだろう。
炎を避けるとキュルケを見据える。この女も南斗聖拳を使うまでもあるまいと判断し一歩前へと進める。
だが、二歩目を進める前にそれを中断せざるを得なくなった。

後ろから先ほどかわしたはずの炎が迫ってきている。
「なんだと?」
今放たれた魔法は、『炎』、『炎』、炎の二乗。対象を焼き尽くすまで追い続ける『フレイム・ボール』の魔法。
「いかがかしら、トライアングルメイジの魔法の味は。ドットのギーシュのものとは一味違いましてよ?」
なるほど。確かにこれは少し厄介だ。いかに南斗聖拳の使い手とはいえ、炎は避ける以外に防ぎようが無いからだ。
が、それで出し抜いたとでも思っているなら甘い。

「少しはやるようだが、自分達の使う魔法とやらが最強とでも思っているようだな。この俺を甘く見た事を後悔させてやろう」
水は低きに流れる。
前に敵がおり後ろからも襲われたならば、前進し制圧した後、改めて後ろの敵を正面から迎え撃つのみ。
そして、それこそが南斗鳳凰拳の本領。
北斗神拳伝承者をして、『なんという踏み込みの速さ!』と言わしめた程の踏み込みを持ってすれば、それを行う事は容易い。

「あらそう、それならこれはどうかしら」
再び、キュルケの杖から放たれた炎がサウザー目掛け飛んだが、一直線にしか飛ばない物を避けるのはそう難しくはない。
大抵の者なら後ろに退く、というところだろうが、サウザーは違う。
身体を僅かに反らし炎を避けると、そのまま一気に距離を詰めるべく踏み出す。
例え、今の炎が追ってこようともそれ以上の速さで操り人を打ち倒してしまえばいいだけの事。

「では、こちらからも……ぬぅ!?」
キュルケに拳撃を撃ち込むため、間合いを詰めようとした瞬間、後ろから思いもよらぬ衝撃を受けた。
「ぅく…く……今の炎は俺を狙ったものではなかったか!」
追ってきていたはずの炎の姿が無い。そして、今かわしたはずの炎も。
「当たらないなら、当たるようにするまでよ。あなたこそ、メイジを甘くみていたんじゃなくて?」
点が当たらないなら、面で攻撃する。
フレイム・ボールにファイヤーボールを当て、二つの炎の爆発で生じた衝撃波が後ろからサウザーを襲ったのだ。

膝こそ付かなかったものの、予想もしていなかった事と、今まさに前へと踏み込もうとしていた事が重なり大きく体勢を崩してしまった。
立て直す時間は一瞬。
だが、その一瞬の間に異変が起こった。
367帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:34:52 ID:FiOuwCTd
「これは……?氷か!」
人の腕ほどの太さもある氷の矢が無数にサウザーを取り囲んでいる。
「魔法は詠唱さえ終わっていれば、いつでも使う事ができるのよ。それが一瞬の間でもね」
完全に氷の矢に周りを囲まれた。
してやられた。こんな小娘に。
そう思った瞬間、周りを取り囲んでいた氷の矢が一斉に動き出しサウザーを襲った。


少し時間が戻るが――
ルイズは目の前の光景が信じられなかった。
ワルキューレの青銅の拳をまともに食らったのに、痛がる素振りすら見せず、逆に頭を握り潰し塔の壁へと投げ捨てた男が。
襲い掛かる六体のワルキューレの攻撃をも全て避けると、一撃だけで破壊した男が。
そしてギーシュが降参したにも関わらず、『降伏すら許さぬ』と言ってのけた男が。
とにかく、ルイズには何が起こったのか理解できなかった。

「次は誰だ?お前か?それとも貴様か!?」
それを聞いてルイズの心臓が跳ね上がった。
ギーシュを一蹴した挙句、まだかかってこいと不敵に言い放っている。

それと同時に不安になる。
いつも『ゼロ』とバカにされている自分が、ドットとはいえメイジを圧倒した男と契約できるのかと。

意を決して杖を握り広場の中に進もうとしたが、それより先にキュルケとタバサがサウザーの前に出ていた。
出るタイミングを逃したので一先ず静観する事にしたのだが、サウザーはトライアングルメイジ二人の攻撃を悉くかわしている。

次いで起こる爆発。
自分が起こす失敗魔法ではなく、炎に炎をぶつけ起こされた爆発にサウザーが体勢を崩し
その周りを無数の氷の矢が取り囲んだが、絶体絶命とも言える状況を見ても不思議とルイズは止める気にはならなかった。
どことなくだが、あの『程度』の攻撃でやられはしないと感じている。
そして、氷の矢が降り注いだ瞬間、サウザーの姿が消えた事をその場の全員が目撃した。


タバサは困惑していた。
キュルケのフレイム・ボールにファイヤーボールをぶつけ、二つを爆発させ直撃とはいかずとも体勢を崩した所に
既に呪文の詠唱を終えていた、得意中の得意の呪文。トライアングルスペル『ウィンディ・アイシクル』を四方八方から撃ち込んだ。
退路もなく、かわせるはずのない必殺の状況。無数の氷の刃がサウザーを撃ち抜いたはずだった。
だが、サウザーはそこには居ない。忽然と姿を消してしまっている。
368帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:37:03 ID:FiOuwCTd
「消えた……?そんな!」
サウザーの姿が無かった事にキュルケも動揺は隠せてはいない。
あの崩れた姿勢からかわせるほど、タバサの氷の矢の数は少なくなく甘くもない。
メイジなら、フライを使って空に逃げる事も考えられたが、あの男がメイジでない事は知っている。
汗が額を伝ったが、その考えられなかったはずの空からあの声が聞こえてきた。

「ハハハハハ!この俺に一杯食わすとはな!フハハハハハハ!」
その声が聞こえてきた場所は二人の遥か上空。
本来、生身の人間が立ち入れぬ場所に踏み込んだのは、跳ぶなどという生易しいものではなく、飛翔の域にまで達した恐るべき跳躍。
「その礼に俺も技を一つ見せてやらねばなるまい!」
頭を地面に向け二人へと落下するサウザーが、その腕を交差させる。
「受けてみるがいい!」

   南斗鳳凰拳
『南 斗 爆 星 波』

サウザーがキュルケに向け交差させた腕を同時に振り抜くと膝を曲げ地面に着地したが、その行為がキュルケにはどういう事なのか理解できていなかった。
手刀を叩き込むわけでもなく、身体の遥か手前で交差させた手を振っただけ。

あれだけ大見得切って空振り……?まぁいいわ。なんにしても隙だらけだし、この距離なら外さないわ。
杖を向けすぐさまフレイム・ボールの詠唱を始めたが、呪文の詠唱が半ばまで終わった時、誰かに横から突き飛ばされ派手に地面に倒れてしまった。
「いっったぁ〜〜…ちょっとタバサなにやって……タバサ?」
詠唱の邪魔をし、地面へと押し倒した者はタバサだった。
だが、飛び付くかのようにキュルケを押し倒したタバサの顔色が青い。

この子がこんな顔するなんて、一体……?
普段、滅多なことでは見られない顔に、さすがのキュルケもなぜこうなったのかは分からない。
まるでそうしなければ命でも危なかったかのように、と考えた瞬間、さっきまで立っていた場所の地面が爆ぜた。

「命拾いしたな、女」
聞こえてくるのは、倒れている二人を見下ろすサウザーの声。
全身から嫌な汗が吹き出そうなのを我慢して、そこを見ていると吹き飛んだ地面の跡に深く鋭い十字の傷跡が残されていた。
もし、タバサに押し倒されぬまま、呪文の詠唱を続けていればどうなったか。
それを考えると思わずキュルケが身震いした。あの地面の十字傷が自分の身体に刻まれていかもしれないのだから。
369帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:39:09 ID:FiOuwCTd
……エア・カッターの比じゃない。
それが、南斗爆星波を受けたタバサの第一の感想だった。
両腕が振り抜かれた瞬間生み出された交差する二つの風のような刃。
今ほど自分が風の系統で良かったと思った事は無い。
風使いならではの空気を感じる鋭敏な感覚が無ければ、キュルケの身体は無残に切り裂かれていた。
風のようなと評したのは、エア・カッターで生み出されるような物ではなく、もっと根本的に違うものだと思ったからだ。
そして、それは間違ってはいない。

南斗聖拳の鋭い手刀は真空を生み出し、衝撃波を飛ばす事ができる。
その一番手ともいえるのが、南斗六聖拳の一つ南斗紅鶴拳だ。
南斗爆星波も衝撃波の射程・威力そのものは紅鶴拳奥義『伝衝烈波』に劣るだろうが
伝衝烈波と違い、こちらはあくまで拳撃の副産物なので大した問題ではない。

もし、あれが続け様に放たれたら?
どうなるかなど考えるまでもない。避けるだけで精一杯だ。
そして、呪文の詠唱すら無かった事から察するに、先住魔法ですらなく体術。
おまけに生半可な攻撃では、あの体捌きで全て避けられてしまう。
それに、もし……

そんな二人の様子を見てサウザーが口元を歪めたが、視線と言葉はキュルケではなく、タバサへと向けられている。
「フフ…我が南斗鳳凰拳の一撃をかわすとはな。お前のような小娘がよく見切れたものだ」
南斗聖拳はもちろんのこと、他の流派の使い手でも、一撃とはいえ鳳凰拳を見切れる者はそう多くはない。
それをこんな子供とも呼べる少女が見切ったのだから、ここは率直に賛辞の言葉が出ても不思議では無かった。

「さて、魔法というものがどういう物かは理解した。……そろそろ終いにするか」
『終いにする』。その言葉を聞いて、キュルケとタバサの緊張が最高点に達した。
眼光は捉えた獲物を逃がさぬ猛禽のそれ。例えるなら大空の王者『大鷲』。
手にする武器は、獲物を引き裂く猛獣の爪と同等かそれ以上。例えるなら百獣の王『獅子』。
空の王者と陸の王者。その二つを兼ね備えた帝王が牙を剥き出しにして悠然と迫ってきている。

サウザーが一歩進める毎にキュルケとタバサが一歩退く。
それを繰り返すこと十数度。遂には壁際へと追い詰められてしまった。

「どうした、もう退かぬのか?」
その問い掛けに呼応したかのように炎球と氷の矢が幾つも放たれたが、結果はさっきと同じだ。
殆どが最小限の動きのみで避けられ、避けられなかった氷の矢に至っては手で捕まれ投げ捨てられる始末。
少しすると、キュルケの杖から小さな炎が飛び出るとすぐに消えた。
タバサも同じようで、小さな氷の欠片がパキリと音を立てて地面に落ちると、それっきり何も起こらなくなった。

「……打ち止め」
「……みたいね」
ぽつりとタバサが小さく呟くと、キュルケもさっきまでとは違う調子を落とした声で同じように呟く。
追い詰められているという焦りもあったのだろうが、攻撃呪文を立て続けに唱え、魔法を使うだけの精神力が尽きてしまったらしい。
精神力が尽きれば、メイジも平民と違いは無い。むしろ、普段そういう状況になる事を想定していない者がほとんどなだけに平民以下かもしれない。
370帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:41:33 ID:FiOuwCTd
学生とはいえ、トライアングルクラスのメイジ二人を同時に相手して、僅かな傷一つで圧倒した男に恐怖心を抱かぬ者が居るはずがない。
観客のうち半数は広場から逃げ去り、もう半数はその場に膝を付き座り込んでいる。
この広場において、今現在立っているのはキュルケとタバサの二人だけ。
その光景は知らぬ者が見れば、王に平伏する平民のようにも見た。
後は、どこかの頭の薄い炎のメイジがサングラスをかけて『汚物は消毒だ』とでも言いながら炎を出せば完璧だろう。
彼がモヒカンであればより完璧なのだが、それだけの毛髪が無いので仕方ない事だ。憐れ。
若干、世紀末の世界が見えてきたが、サウザーは構わずに壁際の二人へと近付いていく。

――止めを刺す気だ。

さっき降参したはずのギーシュに無情にも『降伏すら許さぬ』と言ってのけたのだ。
広場の全員が同時にそう思うのも無理はない。

ワルキューレを一撃で粉砕した力で叩き潰すのか。
それとも、さっきのように十字に切り裂くのか。
どちらにしろ、ろくな結果は訪れそうにない。
精神力は尽きた以上打つ手はない。二人の中にどんよりとした絶望が広がっていった時
呪文の詠唱が、それも普段なら絶対聞きたくない声での詠唱が聞こえてきた。

「っぐぁ!なにィ!?」
その場に轟いた音は爆音。
サウザーを召喚した『ゼロ』の少女が唯一行使できる魔法。
本人はファイヤーボールのつもりだった爆発がサウザーの鳩尾を捉えていた。

吹き飛ぶサウザーを見てルイズとキュルケが一先ず安堵の息を吐いたが、タバサだけはまだ違っている。
「爆発の瞬間、後ろに飛んでいた」
風系統ゆえか、それとも生来の洞察力の鋭さゆえか、タバサだけはサウザーが後ろに飛び爆風の威力を弱めていた事を見ていたのだ。

後ろに飛んだとはいえ、爆風を受けてなお二つの脚で膝を付くことなくサウザーが止まった。恐ろしいまでのバランス感覚だ。
「次の相手は貴様か…」
ルイズを見下ろすサウザーは爆発によるダメージは然程受けていないようにみえた。
それでもルイズは怯むことなくサウザーを見返し言った。
「ええ、そうよ。あんたはわたしが召喚したの。これ以上好き勝手やらせないし、契約して使い魔になってもらうわ」
気のせいかもしれないが、ピシリとガラスにひびが入るかのような音がルイズを除いて聞こえたかもしれない。
トライアングルメイジ二人をも圧倒した男に使い魔になれと言い放ったのだ。
空気読めというより、もはや簡便してください。と思われても仕方ない事だろう。

「ちょ、ちょっとルイズ!あたしたち二人でもこの有様よ?『ゼロ』のあんたがどうにかできる相手じゃないわ、逃げるか先生でも呼んできなさいな!」
慌てたキュルケに同調するかのようにタバサも首を縦に振ったが、ルイズは動かず、むしろ二人に対して声を荒げた。
「嫌よ!いつも『ゼロ』『ゼロ』ってバカにされて、ここで契約もできずに逃げたりしたら、また『ゼロ』だから逃げたってバカにされるじゃない!」
「ああ、もう。そういう事じゃなくて――」
「わたしは貴族よ。魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないって事ぐらい知ってるでしょ?」
杖を握り締め、見下ろすサウザーを見据えルイズが叫んだ。
「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
ヴァリエール家の三女として生を受け、十六年間魔法が使えなかった少女の心からの叫びがそこにあった。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:44:17 ID:zwAsoszA
支援
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:48:11 ID:9KorG60C
南斗支援拳奥義!
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:49:03 ID:z6CDcCl8
sien
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:49:13 ID:9KorG60C
ヒャッハァー支援だぁー
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:49:40 ID:rJacND9H
規制くらったかな?支援
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:50:52 ID:z6CDcCl8
避難所の代理スレにはまだ来てないようだな
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:52:22 ID:9KorG60C
これで駄目なら2009年
投下はさるの炎に包まれた
って事で
378帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:52:34 ID:FiOuwCTd
「この俺を前にして退かぬと言うか」
ルイズは答えない。ただサウザーが近付いてくる様子をじっと見ている。
「今なら秘薬に免じて許してやってもよいが?」
「使い魔の傷を見るのも主人の役目よ。許してもらう必要なんてないわ」
「そうか。では死ねぇィ!!」
サウザーの手刀がルイズを貫くべく一直線に伸びる。
キュルケが悲鳴をあげ、タバサが目を瞑った。

「退かぬか」
少しの好奇心を含んだ声がする。
見るとサウザーの手刀は、ルイズの服の僅か手前、薄皮一枚のところでピタリと止まっている。
「絶対に逃げない…!」
言い返すルイズの目は、手刀が向かってくる時もずっと見開かれていた
「くふ…ハハハハハハハ!我が南斗鳳凰拳を前にして、一歩も退かず、目も閉じぬとは気に入ったぞ!」
つい、とルイズの胸から手刀を離すと、心底愉快そうにサウザーが笑った。
「南斗六聖拳は皇帝の居城を守る六つの門の衛将だったと聞く。俺もしばらくはこの遊びに付き合ってやろう。クハハハハハハ!」
「手間かけさせるんじゃないわよ。契約するから、あんたしゃがみなさい。でかいんだし」
『契約』と聞いて、サウザーの笑いが止まり歩き出した。半ばルイズの期待を吹き飛ばすような形で。
「頭に乗るな。あくまで俺がお前を気に入っただけの事。俺を従えさせたくば力で捻じ伏せてみるがいい」

力こそが正義!いい時代になったものだ…。強い者が好きな物を手に入れられる。

南斗弧鷲拳のシンの言葉だが、世紀末の帝王も同じ思考である。
使い魔にはならぬが、あくまで対等として付き合ってやるだけかなり譲歩した方だ。
それに、ルイズを気に入ったというのもあるが、この世界を見極めるためにも当面は見に徹する必要がある。

それにしてもルイズが勝てば使い魔になると言った事は、少し前なら考えられなかった事だ。
ギーシュにしても、止めも刺していない。
ぬくもりを思い出したせいか、愛や情けというものが多少は戻ってきたのかもしれない。

広場からサウザーが立ち去ると、残されたルイズ達も気が抜けたのかようやく地面に座り込んだ。
「ルイズ…あんたホントとんでもないの召喚したって分かってる?」
「……彼、わたし達二人を相手にしても全然本気じゃなかった」
今さらながら、遊ばれていたという実感がキュルケとタバサの二人に沸き起こっている。
例えるなら、猫に遊ばれる鼠。というのが適切だろうか。とにかく、生き残ったという安堵感がそこにはあった。

が、その二人とは違い、当のルイズは怪しいオーラを撒き散らしながら独り言を言っている。
「ふ…ふふ…力で捻じ伏せてみろですってえ〜……?上等じゃない…何様のつもりよあれ」
本人が聞いたら聖帝様だ!とでも返されそうだが、なにやら妙な迫力が今のルイズにはあった。
「ぜっっっったい!使い魔にしてやるんだから!」

他の二人ドン引きの中、ゼロの少女が空を見上げる。
全ては自分がゼロではないと証明するために。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:54:35 ID:jenMRRFe
支援!
380帝王(貴族)に逃走はない(のよ)!:2009/01/11(日) 13:54:43 ID:FiOuwCTd
ヴェストリの広場から少し離れた、誰も居ない場所。サウザーはそこに居た。
「魔法か…なかなかどうして、楽しめそうだが………」
拳法の修行もしていない、年端もいかぬような少女に一杯食わされたのだ。
これで本格的な修行を受けた高位のメイジならば、どれ程のものかと思ったのだが、こんな人気の無い場所に来たのには理由がある。

サウザーが喉元を押さえると、口からかなりの量の血を吐き出した。
「……ッ!がっ!…それにしても解せぬのは、…がはっ!あの小娘…ルイズとか言ったか……ごばぁっ!」
足元に血溜りができ、吐血が治まってもその息は荒い。
「凌いだはずのあの爆発……南斗鳳凰拳伝承者の俺の身体を以ってしても、これ程までに……!」
身体に違和感を感じたのはルイズに手刀を放つ直前。言い様の無い吐き気に襲われ、危うくあの場で血を吐きかけた。
それをしなかったのは、帝王のプライドのなせる業というものか。

爆風が直撃する瞬間、後ろに飛んで確かに凌いだはずだった。
人体の急所である鳩尾に貰ったとはいえ、後ろに飛び凌いだうえ、あの程度の爆発でこれ程のダメージは異常だ。
「この威力は……まるで拳王の……」
口元から垂れる血を手の甲で拭いながら、昔の出来事を思い出す。
かつて拳王が聖帝の領土に侵攻してきた時、ユダの策を用いて逆に拳王府を落とし、ラオウと対峙した時だ。

凌いだはずの北斗一点鐘。北斗神拳が利かぬこの身を以ってしてもかなりのダメージを受けた。
その時とほぼ同等のダメージが、今サウザーを襲っている。
「おのれ……今しばらくは、あの爆発の正体を見極める必要があるな……」

呼吸を整えると世紀末の帝王が天を見上げる。
全ては鳳凰が再び天へと羽ばたくために。

投下したッ!
もう少し、モヒカンどもが多い時間にずらすべきだったか……
しかし、デルフ出ないんだよねーこれ……一応仮面付けて剣持ってたけど飾りだし、どうしようか。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:56:27 ID:jenMRRFe
投稿乙!

新たなる鳳凰の歩みを見た!
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 13:57:19 ID:gj92gJ/g
乙でした。
でも、キャラの視点変更に気をつけた方がいいと思います。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:00:10 ID:FiOuwCTd
>>382
苦手なんよねー…視点変更。
向こうでも全然やってな…な…ないばら!?
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:01:27 ID:zwAsoszA
聖帝の人乙!

そうか、ルイズの爆発が効いてたんだな。
それが無ければ確実に死んでたルイズ悪運よすぎだなw
そしてこの空気読めなさこそルイズ。勇敢ってレベルじゃねえw
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:24:07 ID:FrwH3koz
空気読めないやつがお師さんを侮辱した瞬間、どんなに殺しても死なない帝王が
出現するのが目に浮かぶ。
「お師さんを侮辱したのは貴様かーー!!」
っていうふうに
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:29:35 ID:K0FBJFFf
面白れぇwGJ
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:34:37 ID:M+XvVrkj
聖帝の人、GJでした。今、俺の頭のメインキャラは世紀末風作画になっちまった
ところでお師さんは今どうなってるんだ?気になってしょうがないや
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 14:51:53 ID:j9Z2cniz
GJ!

>もう少し、モヒカンどもが多い時間にずらすべきだったか……
俺達モヒカンかよ! 光栄です聖帝様。
389ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:06:14 ID:glJKKSLv
あっしはむしろすいてる時間が好き。

というわけで

誰もいない……?

投下するなら今の内……

15:15ぐらいから……
390ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:09:32 ID:glJKKSLv
眼精疲労でとうとう通院する羽目になりました……。

目がァ!! 目がァ!! ってほど酷くはないけどw

目の奥が重くて痛いのがずっと続いて書くのに集中できませんよ。

という言い訳です。

いやホント遅くて申し訳ない。
391ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:11:26 ID:glJKKSLv
そういえばあやかしびとの廉価版が発売されたので買ってしまいました。
一乃谷愁厳の方まだかなぁ……。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 15:14:10 ID:alamKIDJ
しえんでつ
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 15:14:51 ID:/g9dHneM
俺はこの3連休に書き溜めるぞーと意気込んでたのに、まだ3行しか書けてない。
自分の集中力のなさに呆れるばかりだ。
394ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:15:49 ID:glJKKSLv
ゼロの氷竜 十五話

ルイズは、自らの使い魔に質したいことがいくつもあった。
なぜ決闘を後押しするようなことをいったのか。
見物人を退けた意図はいかなるものか。
手の怪我は大丈夫なのか。
不安げな表情を浮かべたまま、主は使い魔の名を呼ぶ。
「ブラムド……」
あとの言葉は、ブラムドの人差し指に阻まれる。
眉根の皺を深くしながら、ルイズはブラムドの顔を見上げた。
視線の先で、思わせぶりに周囲を見渡すブラムドの瞳がある。
そっと、ルイズの肩に手が乗せられた。
「あとでも、いいでしょ?」
ルイズの不安をはらうように、キュルケは微笑みながらそれだけを言った。
わずかに、ルイズの肩から力が抜ける。
その様子を見たシエスタは、驚きを隠せなかった。
なぜならその相手は、今までルイズが毛嫌いしていたキュルケであったから。
つい先刻ルイズから紹介された、それまで名を挙げられたこともないタバサとは違う。
それまで怒りと共に吐き出されてきた名前の持ち主が、放った当人と心を通わせている。
なにがあったのかシエスタには知りようもないが、ルイズは仇敵を友人としたようだった。
ただしシエスタはルイズと違い、キュルケの態度の裏側に隠された心情に気付いていた。
キュルケの名前がルイズの口から出るのは、彼女が落ち込んでいた直後だけだったから。
シエスタは自身の降りかかる災厄を一時忘れ、暖かな微笑をルイズに送っていた。
そんなシエスタの様子を見ながら、ブラムドもまた微笑む。
だがブラムドがオスマンへ問いかけた瞬間、少女たちの微笑みは凍り付いてしまう。
「オスマン、決闘にふさわしい場所はあるか?」
微笑が凍りついた瞬間を見てしまったオスマンは、口ひげをいじりながら答えを返す。
「ヴェストリの広場が良いでしょう。人目にもつきにくいですし」
その仕草が笑いをこらえる為だと、ブラムドだけが気付いていた。
口ひげをいじりながら笑いをこらえるオスマンは、決闘という単語に浮き足立つ少女たち
が微笑ましくてたまらない。
学院を統括するオスマンがシエスタやギーシュの身を案じていないのは、ひとえにブラム
ドへの信頼が強い証だ。
オスマンは、シエスタもギーシュも大した怪我を負うことはないだろうと予想している。
見物人を許さなかったのは、ギーシュの心を覆う虚飾を引き剥がす為。
ギーシュ自身が実は素直で純朴な少年だということは、オスマンも気付いていた。
そのため見栄をはる相手をなくしてしまいさえすれば、素直にシエスタに謝罪するのでは
ないだろうか、と楽観視している。
当然、オスマンの予想は楽観が過ぎた。
正確に言えば純朴さ、すなわち素直さゆえの愚直さを、考えに入れられなかったのだろう。
さらにこの件に関して、オスマンのブラムドに対する評価は明らかに過大だった。
ブラムドはオスマンやキュルケほど、ギーシュのことを知らない。
ロングビルのように、信頼を寄せるオスマンの態度から読み取れる情報もない。
主であるルイズから話を聞いているわけでもない。
しかもギーシュはルイズを侮辱していた。
その言葉を返上させようとしていたシエスタに対しての評価は高まっていたが、相対的に
ギーシュへの評価が下がるのは仕方のないことだろう。
ブラムドは、主に無礼を働いた若者を少したしなめてやろうと考えている。
無論、怪我をさせるつもりはないが。
見物人を許さなかったのも、ギーシュと違って自らの力をひけらかすつもりがないからだ。
力を秘匿する重要性を、ブラムドは熟知していた。
竜が火を吐くことを知れば、その咆哮に魔力がこもっていると知れば、魔法を使うことを
知れば、それぞれに対応の手段を考えることは可能となる。
それだけで討たれることはなくとも、相手を無傷で退散させることは難しくなってしまう。
また、目立たぬようにというオスマンとの約束もある。
下手なことをすれば、オスマンが学院の人間にさせた誓いも無駄になるだろう。
人の口に、戸は立てられないのだから。
395ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:16:22 ID:glJKKSLv
「ではコルベール、グラモンに決闘の場を伝えてもらえるか?」
オスマンの後ろに続いていたコルベールは、ブラムドから差し出された自らの杖を受け取
りながら返事をする。
「承りました。では、のちほど」
コルベールの後姿を見送ったブラムドに、キュルケが声をかける。
「あの、ブラムド様。手は、大丈夫でしょうか?」
ルイズと同じく、キュルケもブラムドの怪我を気に病んでいた。
しかし当のブラムドは気に留めてもおらず、気楽に返事を返す。
「先ほどモンモランシに治してもらった」
ブラムドはそういいながら、怪我の痕もない左手を広げて見せた。
異常ともいえる再生能力を持つ竜にとって、死に直結しない傷であれば軽症といえる。
今回のような切り傷や、腕や足、眼球や内臓などの欠損であっても、時間をかけさえすれ
ばいずれ治癒してしまう。
死に至るような怪我であれば、治癒の魔法も存在する。
『竜の卵(エッグシェルター)』にその身を包めば、回復は自然治癒よりもはるかに早い。
ではなぜ先刻の怪我にそれを使わなかったのかといえば、『竜の卵』に包まれている間は
外界と一切遮断されてしまうからだ。
それでは使い魔としての役目を果たすことはできない。
ルーンの効果とも思われるが、さしたる出血もない軽症に対して『竜の卵』を使う必要性
を、ブラムドは感じられない。
無論今のブラムドの体が人間のそれである以上、放置しただけで治るものではなかったが。
副次的な結果ではあるが、それを奇貨としてルイズとキュルケ、そしてタバサが友人とな
ったことも、ブラムドが自身の怪我を気にかけない理由の一つだった。
「気にすることはない。お主やルイズに大した怪我がなくてよかった」
その喜びを表すブラムドの言葉に、キュルケは小さな疼きを覚えていた。
まだ姿を現すことのない棘は、その胸の奥に潜んでいる。
だがその棘を意識するよりも早く、シエスタの声がキュルケの意識をさらった。
「あの、何か飲み物でも持ってまいりましょうか?」
膝が震えているルイズの様子を見て、その友であるメイドが提案をしている。
「そ、そうね。食事は無理だけど、飲み物を飲むぐらいは大丈夫でしょ」
ルイズの言葉に、自分の席へ一歩踏み出そうとしていたタバサの足が戻る。
その様子を見たシエスタは、笑みを表に出さず、厨房へ飲み物を取りに行った。
「良く気がつくわね」
感心するような、ある種あきれるようなキュルケの言葉に、ルイズが自慢げに答えた。
「メイドの仕事に誇りを持ってるっていってたからね」
「別にルイズが胸張ることじゃないでしょ」
からかうようなキュルケの言葉で、ルイズが剣呑な表情を浮かべる。
「胸張るつもりもないのに張ってるような女に言われたくないわ」
「なかなかいうじゃないの」
睨め上げるルイズの視線と、見下ろすキュルケの視線がぶつかる。
険悪な雰囲気の裏のじゃれるような気配に、ブラムドとオスマンはわずかに微笑んだ。
それらを横目に、タバサはテーブルに用意された料理に目を奪われている。
腹部を押さえるようなことはしていないが、杖を握る両手に込められた力は強い。
「お待たせいたしました」
そこへ、シエスタがトレイとポットを抱えて戻ってくる。
「丁度焼き上がったところでしたので」
トレイの上には、大振りなパイが乗せられていた。
「クックベリーパイ?」
「ご名答です」
喜色を満面にしたルイズに、シエスタも嬉しそうに応じる。
それがルイズの好物であることを、ブラムドとオスマンは知らなかった。
ひとまず食事が済んで空いたスペースに陣取り、シエスタがパイを切り分けるのを待つ。
小皿に載せられたパイを受け取って満面の笑顔を浮かべたルイズは、それを見て微笑む友
人たちと使い魔、そして学院長の顔に気付く。
さすがに学院長へ見るなともいえず、笑顔を収めて取り澄ます。
朱に染まった頬から色を抜くことはできなかったが。
シエスタはルイズのその表情に、恐怖が和らいでいくのを感じていた。
ブラムドが食器を扱えないと知るシエスタは、切り分けたパイをさらに細かくしていく。
ルイズはその様子を見ながら、ほっとしたような、残念なような、背反する気持ちを抱い
ていた。
396ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:16:55 ID:glJKKSLv
食事代わりの茶会が終わり、数人の男女がヴェストリの広場へと移動していた。
その中の一人だけが、不満そうな顔を隠していない。
その理由は茶会で自分に笑顔が向けられていたこと、そしてもう一つ。
五人の男女に、八つに切り分けられたパイが配られていた。
使用人であるシエスタは、アルヴィーズの食堂で食事をすることは出来ない。
年老いたオスマンは食が細い。
ブラムドは食事に対しての欲求それ自体が少ない。
消去法で考えれば、少なくとももう一切れは自分のものになるはずだ。
好物を租借するルイズは考える。
が、目の前のパイを半分ほど片付けてトレイを見れば、残っていたはずのパイは跡形もな
くなっていた。
ルイズはそれを知らなかったが、タバサはその一事のみで貴族嫌いで知られる厨房の主、
マルトーを唸らせるほどの健啖家である。
とはいえ、食べられたことは不機嫌な理由の一つでしかない。
八つに切られたパイの半分をその腹に収め、なおもため息混じりに空腹感を訴えるタバサ
の仕草にこそ、ルイズの不満は向けられていた。
「ルイズ、そんな顔をするな。決闘が終われば食事も出来よう」
苦笑いではなく、微笑みながら、彼女の使い魔が諭す。
そういわれ、ルイズは表情を切り替える。
それは食事という言葉ではなく、決闘という単語によって。
「ブラムド、シエスタは大丈夫?」
不満げだった表情を不安げに変えたルイズに、ブラムドは微笑みをたたえたままに答える。
「無論だ」
一歩、二歩、三歩と踏み出したブラムドが、ルイズたちに振り返る。
「さて、グラモンは少女をいたぶって喜ぶ類の人間か?」
指を立て、まるで講義をする教師のように問いかけた言葉に、ルイズは答えられない。
「いいえ」
「違いますな」
代わりに答えたのはキュルケとオスマンだ。
「うむ。でなければ、オスマンがことの推移を見守ろうとするはずもない」
ブラムドの言葉に、三人の生徒と一人のメイドが納得する。
「先刻は怒りにまかせて挑発し、決闘を申し入れたが、身を清めるだけの時間があらば多
少なりとも落ち着こう」
ブラムドの深慮に、学院長が唸る。
「つまり勝敗を別にすれば、シエスタが怪我をすることはなかろう」
安心したようなため息が、ルイズとシエスタの口から漏れた。
「ただし」
その言葉に、十個の瞳が同じ方向へ向けられる。
「あのようにルイズを侮辱され、なおそのままにするつもりは我にはない」
ブラムドの浮かべる笑みが、質を変えていた。
「ブ、ブラムド殿?」
不安げなオスマンの言葉を、ブラムドは手で制す。
「案ずるな、怪我をさせるつもりはない。そんなことをしては決闘にはならぬしな」
「じゃぁ、どうするの?」
ルイズが周囲と共通の疑問を口にする。
「シエスタを勝たせる」
路傍の石を蹴り飛ばすような気軽さで、ブラムドが不可能ごとを口にした。
ハルケギニアにも、メイジ殺しと呼ばれる平民の戦士や傭兵が存在する。
文字通りメイジを殺すことの出来る人間だが、無論シエスタはそんな技能を持っていない。
あまりにも衝撃的な発言に、最初に反応できたのはオスマンだった。
「い、いやしかし貴族が決闘するなら、魔法を使わないということはあり得ませぬぞ?」
「当然だろう。おそらくグラモンは、ゴーレムでシエスタを取り押さえようとする」
何故ギーシュがゴーレムを扱うとブラムドが知っているのか、気付くものはない。
それ以上に衝撃的なことを口にしているのだから当たり前だろう。
戦闘の知識も経験もない平民が、何体ものゴーレムを操るメイジに勝つ。
解決の糸口も見えない難題に、メイジたちも使用人も首をかしげるだけだ。
「それでどうやってシエスタを勝たせるの?」
というルイズの言葉にも、ブラムドはその考えの内を明かそうとはしない。
曖昧に、楽しげに、微笑むだけだった。
397ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:17:36 ID:glJKKSLv
決闘場に現れたギーシュは、まるで憑き物が落ちたように晴れやかな表情を浮かべていた。
先導していたコルベールがオスマンの元へと歩み寄ると、ギーシュはそちらへ向かって深
く頭を下げた。
「よろしくお願いいたします」
そして暴言を吐いたルイズや決闘の相手であるシエスタへ顔を向けたとき、ほんの一瞬、
何かを言いかけた。
かぶりを振ってブラムドへ向き直ったギーシュは、決闘についての提案を始める。
「ブラムド様、メイジが魔法を使わない決闘など、聞いたことがありません。とはいえ勝
敗が決まっているようでは、決闘といえないでしょう」
「自明だな。だがそういうからには何か思案があるのか?」
ブラムドの問いかけに、ギーシュは心中で笑みを浮かべた。
「彼女に、何か武器を持たせるというのはいかがでしょう?」
「なるほど。だが、互いに怪我は避けたいのではないか?」
その言葉に、ギーシュは驚きを隠せなかった。
確かに、コルベールの案にはさらなる条件があったからだ。
「では、私は開始の位置から一歩も動きません」
提案を口にしながら、ギーシュは案を退けられるのではないかという不安を覚える。
「その上で、彼女の武器が私に触れさえすれば彼女の勝ち、彼女を動けなくするか、彼女
の武器を奪う、もしくは破壊すれば私の勝ち、という条件はいかがでしょう?」
ルイズたちはギーシュの提案に、シエスタを取り押さえるという項目があったことに驚く。
それは先刻、ブラムドが予想した通りだったからだ。
「よかろう。だがそれだけでは、シエスタが勝つには不足であろう」
ブラムドは、ギーシュの提案を予想していた。
ではなぜ裁定者であるにもかかわらず、先に規則を定めなかったのか。
それは先に提案をしたギーシュが、ブラムドの案を受け入れるしかなくなるからだ。
「決闘の前に、一つ魔法を使わせてもらう」
その言葉で、ブラムドの魔法の威力を知るギーシュは顔を青くする。
ブラムドはその表情に笑みを浮かべそうになりながら、自らの言葉を継いだ。
「案ずるな。使うのはお前自身にでも、お前のゴーレムにでもない。シエスタにだ」
自分にでもワルキューレにでもないといわれたギーシュは、それでも言いしれぬ不安に提
案を退けたくなる。
しかし、自分の提案だけが受け入れられては公平さを欠く。
そうすれば、先刻の提案も退けられる可能性が生まれてしまう。
「わかりました。問題はありません」
ギーシュは心中の渋面は表に出さず、表面上はすんなりと提案を受け入れた。
その不安は、後に的中する結果となる。
「さて、ではシエスタに何か武器を持ってきてもらおう」
「ぶ、武器ですか?」
当事者の一人であるにも関わらず、どこか部外者のように話を聞いていたシエスタは驚く。
話を振り向けられたことにも、武器という単語にも。
「触れば勝ちってことだから、モップかほうきみたいな長いものがいいんじゃない?」
助言をしたのは、もちろんルイズだった。
「あ、はい。ではちょっと持ってきます」
小走りで広場から立ち去るシエスタを見送りながら、ブラムドがつぶやいた。
「では決闘の前に、埃を払っておくかな」
その言葉の意味を、コルベールとギーシュを除く勘のいい人間は理解した。
『遠見』と『透視』を立て続けに使ったブラムドは、決闘を覗こうとしている人間たちへ
と話しかける。
『音源転移(リプレイス・サウンド)』
音そのものを転移させるその魔法で、覗こうとしている人間たちはブラムドの声を聞く。
「今その場を離れるのならば、オスマンにはいわずにおこう」
ブラムドと同じように遠見の魔法を使っていた生徒たちは、どこからともなく聞こえたブ
ラムドの声に、慌ててその場から逃げ出す。
四度、同じ言葉を伝えたブラムドは、最後に違う言葉をつぶやいた。
ブラムドの様子に注視していたルイズたちだったが、その話している中身を読み取ること
は出来ない。
最後の言葉が、それまでのものと違うことだけが読み取れる。
それを聞いたのは、いわれて慌てて立ち去った一人だけだった。
その言葉は短い一言。
「二本足の鼠」
398ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:18:22 ID:glJKKSLv
武器を持たせること、その武器を奪うか壊すことで勝負を決すること、コルベールの提案
は受け入れられた。
だが、ギーシュにはブラムドの言葉が楔のように打ち込まれている。
ブラムドの魔法。
もっとも弱い攻撃のための魔法で、ワルキューレをいともたやすく打ち砕く威力。
食堂で見た、転移の魔法。
ハルケギニアの常識で考えれば、シエスタへかけると考えられる魔法は多くない。
事後であれば治癒の魔法だろうが、事前というのであれば防御を司るものだろう。
土の防壁では、その場から動けない。
鎧を作ってまとわせるには、シエスタの体力が持たないだろう。
となれば風の防壁のようなものが、可能性としては一番高いといえる。
しかし、ブラムドが他にどんな魔法を知っているのか、ギーシュには想像も出来ない。
その思考も、シエスタが決闘場へ戻ることで打ち切られる。
シエスタへ向かって、ブラムドが話しかけた。
「シエスタ。グラモンへ向かってまっすぐに、目を閉じて進め」
ブラムドの言葉に、全員が驚愕する。
ギーシュですら、怒りを覚えるよりも先に驚きに支配されていた。
シエスタが、その沈黙を破る。
「……わかりました」
その返事に、ブラムドは満足そうに頷く。
「それでは決闘を始める」
ブラムドの宣言で、シエスタはブラムドの右手に、ギーシュは左手に歩いていく。
両者の距離は三十歩程度離れている。
「ワルキューレ!!」
ギーシュが杖を振り、一体のゴーレムが姿を現す。
「メイド君。降参をするなら、今のうちだよ?」
その言葉に、シエスタは首を振る。
「私は、ヴァリエール様を信じております。ヴァリエール様の使い魔である、ブラムド様
を信じております」
一息つき、シエスタは自らの言葉を継いだ。
「何より、この決闘にはヴァリエール様の名誉がかかっておりますので」
ためらいもなく言い放ったその言葉に、ギーシュは羨望を覚える。
……自分をこうまで信頼してくれるものがいるだろうか?
ギーシュの自問は、自身で否定される。
決闘が始まる前に勝敗が定まっていることを、ギーシュは肌で感じていた。
しかし、貴族としての矜持をなげうつわけにはいかない。
覚悟を決めた両者を確認し、ブラムドが魔法を放つ。
「では、始め!!」
ブラムドの合図で、シエスタが目を閉じる。
信じるとはいっても、恐怖を払拭できるわけではない。
それでも、意を決してシエスタはギーシュへと向かい始めた。
「……シエスタ……」
つぶやきながら、祈るように握られたルイズの手に、キュルケとタバサの手が乗せられた。
ルイズは力なく、二人に微笑む。
二人も微笑みながら、一歩一歩ギーシュへと近付いていくシエスタを見やる。
近付くシエスタを押しとどめようと、ワルキューレもシエスタに近付いていく。
後ほんの一歩近付けば、ワルキューレの手はシエスタの肩へ届いていた。
だがその一歩を踏み出し、近付いたワルキューレの手が、腕が、霞のように消えてしまう。
後に残った一片の花びら、青銅で出来たそれをシエスタが踏みしめた瞬間、ギーシュは悲
鳴を上げるようにルーンを叫んだ。
「ワ、ワルキューレ!!」
新たに生み出されたワルキューレは二体。
ギーシュの限界である七体を作り出すには、魔力が回復しきっていない。
それでも平民の相手をするには十分だったはずだ。
混乱するギーシュの目の前で、ワルキューレはシエスタに近付くだけで消えてしまう。
得体の知れない状況に、ギーシュの混乱は恐怖に変化する。
恐慌に陥るギーシュが大地から土の防壁を作っても、シエスタの歩みを止められない。
「シエスタ、目を開いても良いぞ」
何が起きたのか理解できず、対応手段を考えることも出来ないギーシュの目の前で、決闘
相手であるシエスタが目を開いて立っていた。
399ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2009/01/11(日) 15:20:30 ID:glJKKSLv
というわけで決闘が終わりま……せんでした。

いやマジスイマセン

次かその次でようやくフーケ編に突入です。
支援と応援、誠にありがとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

ではー
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 15:32:27 ID:VJV+MbHQ
改行と空行を入れてほしい。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 15:42:12 ID:QxGCT3/E
気の長い話だ
402ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 15:54:49 ID:wY20PC8r
こんにちは、どなたかご予定なければ16:00から投下します。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 15:55:00 ID:2nXieBKc

相変わらず面白いわ
404ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:01:42 ID:wY20PC8r
ゼロの魔王伝――11

 トリステイン魔法学院の『火』と『風』の塔の中間にあるヴェストリの広場に集った生徒達は、中天に燃え盛る太陽が雄々しく輝いているというのに、まるでそこに静夜にほの白く輝く月が灯った様な錯覚を覚えていた。
 だが、果たしてそれは錯覚であったかどうか。降りしきる太陽の光の中でその深みを増す漆黒の衣装。星一つ輝いていない夜の闇を思わせるロングコートから覗く手、首、そして顔の白は、自ずから輝いているかの様。
 傍らにはマントの裾が破れ、ブラウスやスカートを汚し、典雅さの漂う鼻梁から赤い筋を垂らしている桃色の髪の少女があった。
 その清冽な心を闇夜に輝く月に祝福された少女か。奈落の底の様に深い夜の奥に棲む魔性に捧げられた生贄の少女か。
 どちらも相応しく、どちらでもない二人であった。
 ルイズとD。交わらぬ筈の運命を交錯させた二人である。
 海を割り、迷える民を導いた伝説の聖者の如く生徒達の壁を左右に除け、主たるルイズの傍らに立ったDを恐れてか、いや、その美貌に心打たれて、ギーシュはルイズに襲いかからせようとしていたワルキューレを動かす事を忘れていた。
 使い魔召喚の場で、食堂で、教室で、その姿を目にした者達がDにそそぐ恍惚。その只中で、ルイズはDが傍らに居る事が、ひどく自分の胸を高鳴らせるのを感じていた。
 ワルキューレに散々痛めつけられた体は、今もひっきりなしに痛みを訴えていたが、それらを押しのけて、自然と頬がほころびそうになるのを、ルイズは必死に堪えなければならなかった。

――私の事なんかどうでもいいなんて態度を取っていたくせに、こうして傍に居てくれるなんて、ちょっとずるい。ううん、ちょっとじゃない、とってもずるい。

 そんな事をされたら期待してしまうではないか。Dにとって、自分が少しは関心を引く相手なのだと。意識を向けるのに値する人間なのだと。
 ルイズの胸中の想いを知ってか知らずか、Dはルイズの決闘相手を見ていた。フリルのついたシャツに紫のスラックスを身につけ、薔薇の造花を模した杖を持った金髪の少年だ。
 それなりに整っている顔立ちは、持ち合わせた血統が付与する高貴さとあいまって、口を閉ざしていれば声を掛けてくる女の子に困る事はあまりないと見える。
 今は突如姿を見せたDの美貌に視線をくぎ付けにされ、やや呆とした表情になっているが、つい先ほどまではルイズの意地と矜持と覚悟とに小さくはない感嘆の色を浮かべていた。
 Dが口を開いた。ルイズとギーシュの双方に問いかけるような口調であった。

「この決闘におれが手を出す事は作法に反するか?」

 その言葉に我を失いかけていたギーシュが目を瞬かせて正気を取り戻し、Dの顔から視線を強引に外して答えた。頬は熟した林檎のように赤い。老若男女を問わぬDの魔貌の威力であった。

「いや、君はルイズの使い魔だ。使い魔を決闘に用いる事は予めそう取りきめていない限りは問題ないだろう。それにこのワルキューレはぼくの魔法だ。そして君はルイズの魔法によって召喚された存在。
 貴族が自分の魔法の成果を用いて、なんの問題があるだろうか。他の誰かが文句を着けても、決闘の相手たるぼくが認めるよ」
「君の使い魔は?」
「生憎、ぼくの可愛いヴェルダンデは戦闘向きじゃないのさ。それに数では七対二、ぼくが有利だよ」
「そうか」

 ギーシュは七対『二』と言った。すでに力無く、Dに支えられなければそのまま倒れていただろうルイズを、いまだ打倒すべき敵として認めているのだ。たとえ爪牙を剥く力無くとも、決着がつくまでは敵としてみなしている。
 彼は杖を交え、血を流し、屍を築き、戦場で武勲をあげて貴族としての高名を勝ち取った武門の家の子であった。体に流れる血が、ギーシュにルイズを誇り高い『敵』と認めさせている。
 Dがルイズを振り返った。ギーシュの心意気を察してか、ルイズは柳眉をきりりと引き締め、凛とギーシュとワルキューレを見据えている。
自分が思っていたよりも気高かったギーシュに対し、相応の態度であらねば、この決闘を汚す事になると悟っていたからだろう。首に刃を添えられても、命乞いも恐怖も見せぬ勇者の様に凛々しく、誇らしく。
 Dの腰の辺りに垂らされている左手から愉快愉快と忍び笑いを堪えた声がこう言った。

「思ったよりも骨のあるガキじゃ」

 それはルイズに向けてか、ギーシュに対してだったか。あるいは二人に対してだったかもしれない。
405ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:04:59 ID:wY20PC8r
「しかし、お嬢ちゃんが一人でどこまで出来るか見守るのが筋かと思うとったが、わしが止める間もなく割り込むとはの。無粋のそしりも甘んじで受けるしかないのう」
「……」

 シエスタにルイズの危機を伝えられてから一向に動こうとしなかったDが、なんの気まぐれかこのヴェストリの広場に足を向け、ルイズが一体目のワルキューレを倒す光景を見ていたD。
 そのDが、新たに六体のワルキューレが姿を見せた時、傍観者から立場を変えた事を揶揄しているのである。口と態度でルイズに対して酷薄な対応をして置いて、これか、と底意地の悪い意図で口を開いているのだ。

「けけけ、なんじゃ、お前やっぱり心根がウツクシクできておるの。女子供の危機には体が動くか?」

 Dはとことん根性のねじり曲がった老人の声には答えず、まだふらふらと揺れているルイズの横顔を見やった。目立った外傷こそないがそうとう痛打を浴びせられたのか、時折激痛にその可憐な顔を歪ませている。

「周りは引き受ける。彼とは君が決着を着ける。それでいいな?」
「ええ。それ位は私の手でしないといけないから」
「分かった」

 改めて双方の役割を確認し、ルイズとDはそろってギーシュに目を向ける。こちらはいつでもいい。好きな時に戦いを再開させろと、四つの瞳が静かに告げる。
 くっと、自分の唇がつり上がっているのにギーシュは気付いていた。実際問題、ルイズはともかく、その傍らに立った使い魔は見慣れぬ格好だが背に負った長剣からして貴族――メイジの類でないことは明らかだ。
 であるならば、メイジとしては最低レベルのドットであるギーシュといえど平民を相手に負けるはずはない。自惚れでも何でもなく、平民と貴族とにはそれだけの壁がある。それがこのハルケギニアの理であった。
 だが、あの美という概念が生物となったような若者から滲む気配はどうだ。こうして対峙しているだけで全身の毛穴と言う毛穴から、恐怖がねっとりとした液体に変わって沁み込んでくるようだ。
 鳥肌を立たせる余裕も、冷や汗を流す余裕も許さぬ途方もない凄絶な気配。それをごく当たり前に纏っている。
 目の前のルイズの使い魔は、ギーシュは会った事はないがスクウェアメイジにも匹敵する、自分には抗いようのない存在なのではと思えてならない。
 だからといって負けた時の慰めや言い訳にはならぬし、またそうするつもりもない。ギーシュは、Dから感じる恐怖の故に美の恍惚による緊縛から逃れられていた。
 薔薇の造花を口元に引きよせ、それを優雅に胸元へと移しながら軽く頭を下げる。彼なりの決闘の作法であった。ルイズに対して既に一度行い、そしていままたその使い魔へと礼を取る。
 貴族が、使い魔に対して礼を取る。そのことを驚く意識は、周囲の生徒達にはなかった。突如出現したルイズの使い魔のその美貌に心奪われ、D以外の事象に意識が向いていないからだ。
 この時、正気を保てていたのは決闘の当事者たるルイズとギーシュ、そして片手の指で足りるほどの一部の見学者達のみ。
 使い魔を相手に礼を取る事を、ギーシュは恥とは思っていなかった。決闘の相手である以上、メイジも使い魔も等しく敵であった。
 戦働きによって大貴族の地位を得た一族の血には、かつて誇り高く決闘を行っていた時代のメイジ達の気概が、今も滔々と流れていた。

「ギーシュ・ド・グラモン。グラモン家の家名と自らの誇りに掛けて全身全霊でお相手しよう」

 Dが、この青年の気性を考えれば小さな奇跡の様にギーシュに答えた。礼に対して礼を返さぬ青年ではないようだ。

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが使い魔、D」
「今の所はの」

 と左手がオチのように付け足してから、ギーシュはDの名を噛みしめる様にして瞳を閉じ、再び開いた時には戦意の炎を猛々と燃やしていた。
 ルイズはDが自分のフルネームを覚えてくれている事に、望外の歓喜を覚えていたが、Dの右手がゆっくりと背に負っていた長剣に伸びるのを見て、息を呑んだ。
 思えば、尋常ならざる気配故に相当の腕の持ち主と勝手に思い込んでいて、実際にこの青年がどれだけの実力を持っているのか、その片鱗さえも知らない。
 それでも、メイジに魔法の使えぬ貴族が叶う筈はないと、これまでのルイズの常識は告げている。
 しかし、この青年はルイズのこれまでの常識と日常からはかけ離れた存在だ。この青年が自分の常識を打ち壊す存在だと、ルイズは無意識に期待し、また等しく恐れてもいた。
 ワルキューレが動いた。Dまで三メートルの距離に居た三体が、三方からDの前と左右を固めて同時に襲いかかる。太陽の光を鈍く反射しながら、青銅の女戦士達は俊敏な動きを見せていた。
406ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:06:47 ID:wY20PC8r
 ゆるゆると持ち上げられていたDの右手が、ようやく長剣の柄を握った。ワルキューレは徒手空拳。貫手、拳。手刀と変えたそれぞれの腕を容赦なくDへと突き立てるべく一挙に踏み込む。
 ワルキューレの拳が届く位置まで迫ってなお長剣を抜き放たずにいるDに、ルイズが喉の奥からか細い悲鳴をあげんとし、その鳶色の瞳を一筋に銀光が流れた。
 Dめがけて一足に飛びかからんとしていたワルキューレ達が動きを止め、数瞬の間をおいて金属の擦れる甲高い音を立てて、それぞれ左胸から右腰に掛けて斜めにずれ始めた。
 内部の空隙を覗かせながら、青銅の乙女たちはがらがらと音を立てて力無く地面に崩れ落ちる。瞬き一つする間に起きた出来事に、事態を呑みこめぬルイズがDの右手に握られた長剣に気づき、あ、と声をあげた。
 Dから目を離さずに見つめていたというのに、いつこの青年が背から長剣を抜き放ったのか、そして三体のワルキューレを斬って捨てたのか、その斬撃の影さえも瞳に映す事は叶わなかった。
 Dの右手に握られた長剣は、ハルギニアに来る直前に貴族(Dの世界の)によって刀身を半ばから砕かれている。それでもおよそ七十サントほどは刃が残っていた。
 研ぎ澄まされたようなワルキューレの断面は、その縁に指が触れたら血の球を結ぶほどに鋭い。誰の目にも止まらなかった剣速と、この事実を持ってDの一刀の威力を推して量かるべし。
 Dが無造作に歩きはじめた。斬り捨てたワルキューレには一瞥もくれず、悠々と、散歩でもするかの様にギーシュへ向かって音もなく歩み寄る。暗い冥府の底から遣わされた使者の如く、Dの黒影はギーシュへと迫った。
 呆然とその姿を見つめていたルイズが、慌てて後を追った。ギーシュの眦が険しさを増した。目の前の若者が尋常ならざる敵と全細胞が改めて認識する。

「ワルキューレ!」

 ほんの数秒の間に数を半分に減らしたワルキューレが、ギーシュの魔力と命令を受けて動いた。先頭のワルキューレがDの歩みを止める為に飛びかかる。両手を広げ、その視界を埋める様にして跳躍。
 左右にかわしても、迎え撃っても、残るワルキューレがDを打つ。三対一の数の利を活かさずしてこの若者に抗し得ようか。また、三体のワルキューレを一瞬で全て斬り捨てたDの剣を警戒し、三体それぞれがわずかな時間差を持って動いていた。
 Dは構わず歩いている。闘争の場に居るとは思えぬゆっくりとした歩調だ。そのDの後に続くルイズの心には、Dがいれば大丈夫だという安堵と信頼のみがあった。
 目の前の美しい青年が、いつもこうして、立ちはだかる敵を倒し、歩き続けてきたのだろうと感慨に耽る余裕さえあった。
 灼熱の陽光が降り注ぎ、乾いた風が吹く砂漠も。
 あらゆる生命の死に絶えた荒涼漠々とした荒野も。
 道行く者全てを氷の中に閉じ込めようと凍えた風の吹く白銀の世界も。
 この若者は、常にこうやって歩き、そして見続けてきたのだろう。
 ぎしり、とルイズの耳に一つの音が届いた。Dの折れた長剣が飛びかかってきたワルキューレの胸を貫いた音だ。青銅が綿か紙にでも変わったように易々と刃は貫き、そのまま貫いたワルキューレを右方から迫っていたワルキューレに叩きつけた。
 Dの世界の貴族は概ね五十人力を誇るとされ、人との間に生まれたダンピールはその半分ほどの膂力を持つという。
 ならば、Dにとって軽量化の為に内部を空洞にしてあるワルキューレを片手で持ち上げ、振り回す事など造作もなかったろう。
 高速で動いていた物体同士が衝突する悲惨な音を立てて、二体のワルキューレがお互いを潰し合う。投げつけたDの力がどれほどのものであったか、二体のワルキューレはどちらとも微細な欠片となって砕け散っていた。
 鼓膜を揺する音に思わず眉をしかめたルイズの視界に、再び一文字に輝く銀の光が映る。言わずもがな、Dの横薙ぎの一閃である。
 折れた切っ先を右手側に流したDの左手側から迫るワルキューレへ、最遠の位置にあった刃が、一条の光となって襲いかかった。
 跳躍したワルキューレの拳がDの頬に届く二十サントほどの距離に到達したとき、右下方からワルキューレの胴体を斜め上方に折れた長剣が横断し、真っ二つにされたワルキューレの胴が空中で左右に別れて、そのままDの後方に墜落した。
 数えて一分にも満たぬ間に0へとその数を減らしたワルキューレに、ギーシュは半ば信じられない、半ばやはり、という複雑な思いを噛みしめていた。
 やはり、自分の力が及ぶ相手ではなかったか。結局、後者の思いの方がはるかに強くギーシュの心を占めた。
407ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:09:16 ID:wY20PC8r
 未熟なギーシュではワルキューレの七体製造と操作だけで魔力は打ち止めだ。後は魔法の使えない平民同様に自分の肉体しか武器は残っていない。
 Dが、ワルキューレの最後の一体を倒した所で足を止めた。長剣は抜き身のまま右手に提げている。全幅の信頼を寄せる騎士と姫君の様にDの後に続いていたルイズを振り返り、言葉少なに告げた。

「あとは君の出番だ」
「はい」

 Dの言葉を受け、ルイズはDの傍らを過ぎ、まっすぐにギーシュへと歩きはじめる。決闘の決着こそ付いていないが、ワルキューレとの戦闘を終えたDにこれ以上すべきことはない。
 ギーシュをDが倒してしまったら、それこそギーシュとルイズ双方の決闘への意気込みを踏み躙る行為だろう。それをしないだけの思慮は、Dにもあった。
 Dに見送られて、ルイズはギーシュと対峙した。伸ばせば互いの手が届く距離であった。
 体が痛い。あちこち痛い。今は止まっているけど鼻血も出た。体中痣だらけ、内出血もしている。口の中に鉄の味が広がっている。ふらふらと視界は定まらないし、まったく何でこんな事になっているのだろう? まったく、まったく。

「また笑っているね?」

 とギーシュ。すでに魔法は打ち止めの筈だが、表面上は変わらず冷静に、かすかに気障を交えた態度のまま。
 ルイズは、このクラスメイトが思っていたよりもずっと肝の据わった男だと感心していた。

「なんだかすごく馬鹿らしくって。昨日、ううん、ついさっきまでこんなに痛い目にあうなんて思ってもみなかったわ」
「だろうね。ぼくも君と決闘するなんて思わなかったよ」

 ルイズに怪我を負わせた張本人だろうにギーシュは、まったくもって同感だと笑う。互いの声には奇妙な清々しさばかりがあった。

「でも、一番おかしいのは」
「うん?」
「今、私は、すごく気分がいいって事よ!」

 ルイズの握り拳が重くギーシュの左頬を抉った。平手ではなく力一杯握りしめた拳である。が、と重い音を立ててギーシュの首が右に捩じれた。捩じれた首を戻しながらギーシュが答えた。声がひどく楽しげだった。

「奇遇だね。ぼくもだ!」

 薔薇の造花を胸ポケットに戻しながら、ギーシュの右手がルイズの頬を張った。こちらは平手であった。見る間にルイズの頬は赤い紅葉の葉の様に腫れた。

「女の顔に手を出してんじゃないわよ!!」

 返すルイズの左拳がものの見事にギーシュの下顎を真下からカチ上げる。唇を切り、見る間に赤く下顎を濡らすギーシュが、さらにルイズに返礼を見舞った。

「決闘に、男も、女も、ない!!」

 仰け反った首を勢いよくふり、ルイズの形の良い額に思い切り自分の額を叩きつける。お互いの視界の中で火花が散り、思わず両手で額を抑えて苦痛を堪える。

「〜〜〜〜〜〜痛いじゃないの!!!」
 
 野の獣のバネを乗せて、ルイズの右膝がギーシュの鳩尾を深々と抉った。くの字に体を折り、げほ、と空気を吐くギーシュが、体を折った姿勢のままルイズの左足にタックルをかまし、その体を地面に押し倒した。
 馬乗りにされるのを嫌ったルイズがギーシュの顔を殴りつけて爪を立て、ギーシュも恥も外聞もないとばかりにルイズの手首を掴み動きを止めようと奮闘していた。
 まったく貴族らしからぬ泥臭い二人の様子を、呆れたようにDの左手の老人が見ていた。かつて人間の世界で一世を風靡していた拳闘という格闘技を例えに出してこう評した。

「まるで四回戦ボーイの泥仕合じゃな。というかただのガキの喧嘩じゃわい。ま、その方がらしいがなぁ。そういえば、お前の手の甲のルーン、微小な反応を見せておるが、なにかあったか?」
「この長剣の使用方法や戦闘手段が流れ込んできた」
「お前にとっては意味がないにもほどがあるの。しかし、コンマ一パーセント以下じゃが身体能力の向上もある。ま、あって損はなしかな」

 Dは、ごろごろと転がってマウントポジションをせわしなく交代しながら、爪を立てて噛み付き、殴り合う二人の様子を静かに見守っていた。

「しかしなんじゃな。鍛えれば一流の戦闘士になれそうなお嬢ちゃんじゃ。お前を呼んだだけあるかの。そういえば気付いとるか? さっきから誰ぞ遠隔視しておるぞ。ESPやメカの類ではあるまい」
「学院の責任者だろう」
「というかそれ位しか選択肢がないの。気付いているふりはするなよ。いざと言う時に、こっちの事を甘く見られていた方が油断を誘発しやすい。寝首を掻く真似をせねばならなくなるやもしれんしな」
408ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:11:01 ID:wY20PC8r
 やがて、周囲の生徒達もちらほらと影を減らす頃、ようやくDが右手の長剣を背の鞘へと戻した。冷たい鞘鳴りの音を立てつつ、地面に転がって気絶しているルイズの華奢な体を抱き上げた。
 尻餅をつき、顔じゅう腫らしたギーシュを見つめ、決闘の勝者に言葉をかけた。

「君の勝ちかな」
「はは…………いや、まったく勝った気がしないな。なあ、君」
「……」
「この勝負、引き分けにしてはもらえないだろうか? なんというか、そうした方がいい気がするんだ。ぼくにとってもルイズにとっても。最初から君がいたらぼくの負けだったろうし、君が来なかったらぼくの勝ちだったろう」
「だから間を取って引き分けと言う事かの?」

 それまでの若々しさの中に鉄の響きを交えていた声が、突如老人の声に変わった事に驚きながら、ギーシュはすこし恥ずかしげに肯定した。次があったらぼくの完敗かな、と思っていた。

「そうしてもらえると助かる」
「伝えておこう」

 今度は元の寂びた青年の声であった。

「恩に着るよ。それと、メイドの彼女と、ケティとモンモランシーにはちゃんと謝っておくと、ルイズに伝えておいてくれ」
「決闘に負けたらそうするのではなかったか?」
「途中で頭が冷えてね。勝っても負けてもそうする事に決めていたよ」

 両手にルイズを抱え、いわゆるお姫様だっこをしているDが、周囲の観客の中の一人を顎をしゃくって示した。

「先にこの場で一人済ませておけ」
「そうするか」

 はは、と力無く笑い、ギーシュはよろよろと立ちあがってDが示した先で、怒りと心配を半々にして見つめている見事な巻き毛の少女――モンモランシーの方へと歩きはじめた。
 ギーシュに気づいたモンモランシーが慌ててギーシュの傍に駆け寄り、ゆらゆらと定まらぬギーシュの体を支えて何か言葉を交わし合い始めた。
 その様子を見つめてから振り返り、決闘に割り込んだ時と同様に、左右に割れる生徒達の道を悠々と歩き、Dはルイズを保健室へと運んだ。ルイズを見つめる黒瞳は、心なしかいつもよりも、かすかに暖かいモノを帯びていた。


 その様子を、『遠見の鏡』と呼ばれる遠隔地を鏡面に映すマジックアイテムで眺めていた二人が居た、魔法学院学院長室の主オールド・オスマンとコルベール教諭だ。
 コントラクト・サーヴァントの折に、Dの左手に刻まれた珍しいルーンが気になり調べていたコルベールが、それが伝説の虚無の系統の使い魔ガンダールヴであると突き止め、オスマンに報告にきたちょうどその時に決闘騒ぎが起き、それを見ていたのである。

「ふうむ、結局ミス・ヴァエリエールの使い魔はグラモンとこのバカ息子のワルキューレを斃したっきりか」
「でで、ですが、メイジでない者が貴族に勝ったのは一大事ですぞ」

 まだ脳裏に残る美貌の残鋭に、渇いた肌をうっすらと桃色の染めながら、オスマンが口を開き、同じように恍惚としていたコルベールが慌てて告げる。老人と中年の二人が頬を染めあっている光景は気味が悪いことこの上ない。

「では問うが、君はDくんがただの平民だと思うかね?」
「……いいえ。ディテクト・マジックで調べてみましたが魔法の反応はありませんでした。ですが、なにか途方もないモノを秘めた人間、いや存在だと確信しております」
「ふむ。『炎蛇』としての意見かの?」

 『炎蛇』と呼ばれた瞬間、コルベールは温和な顔つきに果てしなく暗い影を這わせたが、それをすぐに払拭した。

「学院長が感じているものと同じものを感じています。彼は、異質すぎます。我々と同じ形をしていながら、あまりにも違うのです。言葉にできませんが強いて言うならば魂が理解しているのです。彼は、違うと」
「その“違い”がミス・ヴァリエールを不幸にせんと良いがな。のう、コルベール君、率直に言ってわしは恐ろしいのじゃよ」
「彼が、ですか?」
「うむ。あの美しさでこの世界を歩き回った時、何かわしらには理解できない恐ろしい事が起きそうな気がせんかね? そしてわしらはそれが起きたという事も理解できず、それが解決した事にも気付けぬのじゃ。
 わしらが何も知らぬ間に全ては解決し、決着を迎え、気づいた時にはわしらは全員墓場の土の下におる。そんな気がするのじゃよ。まこと、美しさと恐怖は同じ意味なのかもしれんなあ」
409ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:12:29 ID:wY20PC8r
「たしかに、そうかもしれません。この事は王室には知らせぬ方が良いでしょうな」
「ふむ。王家の血に連なるヴァリエール公爵家の令嬢が伝説の使い魔を呼んだとあっては、どんな事に利用するか分かったものではない。決して口外してはならぬぞ」
「はい。しかし、伝説の使い魔ガンダールヴ、言い伝えではその力は千人もの軍隊を壊滅させたとありますが、ギーシュに勝ったのはその力でしょうか?」
「さてなあ、直感を信じるならDくんの実力であろうが、使い魔として得た力で勝ったという方がまだマシかもしれん。始祖ブリミルの使い魔か。伝説のガンダールヴも、彼の様に美しかったのかのう?」
「それは……」

 と二の句を告げぬ間に、オスマンとコルベールは脳裏に蘇ったDの美貌に恍惚と酔いしれた。幸福な夢の世界へ首までつかり、二人が正気を取り戻すのはそれから二時間後の事であった。


 ギーシュとの決闘騒ぎの途中で気を失ったルイズは、瞼を明るく照らす朝の光で目を覚ました。湿布や包帯が体中に巻かれている事に気づき、自分が決闘の途中にあった事を思い出して上半身を起こした。
 鈍い痛みがじんわりと体の中で広がり、ルイズは思わず歯を食いしばった。途中でDが姿を見せて、ギーシュのワルキューレをあっという間に倒して、そして自分は魔法が打ち止めになったギーシュと取っ組み合いの喧嘩を始めたのだ。
 今思い出しても到底貴族の決闘とはいえぬ行いだったが、それでも自分の全力を出し切ったという思いは残っている。しかし、その途中で記憶が途絶え、自分がこうしてベッドの上で寝かされているという事は、自分が負けたのだろうか?
 う〜ん、う〜んと唸っていると、不意に窓から差し込む光が陰るのに気づいた。遮った影に目をやれば、そこにはあの美しすぎでルイズ困っちゃう、などと考えた事のある使い魔――Dの姿があった。
 左手に折れた長剣を下げて、いつもどおりのロングコートに旅人帽姿だ。目を覚ましたルイズに目を向けて

「おはよう。体の具合はどうだ」

 と至極まっとうな質問をしてきた。そのDの瞳に映る自分に気づき、ルイズはしばし呆然と見惚れていたが、なんどか眉間を揉んで自意識を復活させる。
 いちいち見つめられただけでこうなってしまうのを、どうにかしないと、とルイズは切に思った。

「だだ、大丈夫よ。ほ、ほら、もうこんなに元気だもの」

 とその場でベッドの上に立ち上がろうとし、びきりと体に走った痛みにへなへなと腰砕けになってしまう。あうあうと涙目になっているルイズにDが近寄り、ルイズが気付く間もなくその額に左手の掌を押しつけた。
 なにやら小人に口づけでもされるような感触が額に触れるや、頭のてっぺんから爪先までなにか暖かいものが流れ込み、ルイズの全身から痛みを一時奪い去ってゆく。
 眼を丸くして驚くルイズが、離れて行くDの左手の掌に浮かぶ人面疽に気づいて、ぱくぱくと酸欠の魚の様に口を開いては閉じる。その様子を面白げに左手の老人が笑った。

「ディディディ、D!? 左手、左手、人人、人の顔が浮かんでる!!」
「人面疽という奴だ。見た事や聞いた事はないのか?」
「なななな、無いわよ! そそ、そんな気色の悪いの!?
「失礼なやつじゃ。左手さん、と敬意を込めて呼ばんかい」
「しし、しかも生意気だし!? ていうか、なにそれ! 寄生されているの!? か、体、操られたりしてないの、大丈夫なの!」
「うるさい以外は問題ない」
「けー、いままで散々わしの世話になっておいてそれか。世も世知辛いわ。お嬢ちゃんの痛み止めをしたのもわしじゃぞ? 礼の一つも言えんのかい」
「へ?」

 そう言われてみると、先程左手が額に触れてから体の中を駆け巡っていた痛みが潮の様に引いている。おそるおそる腕を回し、首をめぐらせてみても、痛みが走る事はない。

「感謝せんかい。本来ならあの水のメイジ連中の『治癒』でも三日は寝たきりの所を、わしがちょちょいと弄くったおかげで、丸一日寝ただけで目を覚ましたんじゃからの」
「……弄くったってなによ?」

 弄くった、という部分のいやらしい口調にルイズが眉をしかめた。

「お嬢ちゃんの胸が著しく発育するように成長ホルモン関係を弄くった」
「本当!?」

 光の速さで自分の乳房を確かめたルイズは、変わらずそこでなだらかな丘陵地帯を描いている白い乳房を見た。無言でDの左手を見つめた。今にも泣き出しそうな、癇癪を起して大爆発を起こしそうな、噴火寸前の火山の様な、実に複雑な顔をしている。
 胸の中に秘めていた――何度見てもやはり小さい――乙女の夢を踏み躙られたのだからしかたの無いことかもしれない。
410ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:15:11 ID:wY20PC8r
「う〜〜〜〜〜〜〜、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ほっほっほっほっほっほっほ、睨んでも何も出て来んわい」
「D! そ、そいつ黙らせてよ!!」
「そうだな」
「ちょっとま、ぎえええ!?」

 ぎりりと音がするほどに力強くDの左手が握り拳を造り、はたしてどれほどの苦痛が与えられているのか、左手が盛大な悲鳴を上げた。溜飲が下がったのかルイズはそれを聞いてふん、と鼻を鳴らす。
 左手の尾を引く悲鳴が絶えて、沈黙がたちこみはじめる中、ルイズはおそるおそる口を開こうとし、ノックの音がそれを遮った。

「ミス・ヴァリエール、お目を覚まされたのですか?」

 銀盆の上にふかふかのパンと、シチュー、水差しとグラスが乗っている。黒髪にそばかすがチャームポイントのメイドの少女に、ルイズの記憶が刺激され、たしかギーシュに絡まれていた子だと、認識する。

「あんた、たしか食堂の時の」
「覚えていてくださったなんて光栄です。申し遅れましたが、私、シエスタと申します」
「ふうん。まあいいけど、そういえば私が気を失ってから一日しか経ってないって聞いたけど、ほんと?」
「はい。『治癒』を掛けられた貴族の方々が不思議がっていましたよ。傷がすごい速さで治り掛かっているって」

 どうやらDの左手が言っていた事は本当らしく、役に立つ事は立つのね、ムカつくけど、とルイズはしぶしぶ認めた。シエスタはベッドの傍らの机に銀盆を置き、深々とルイズに頭を下げた。

「食堂では私を庇っていただきほんとうにありがとうございました。そして申し訳ありません、私がもっと早く先生方を呼んで来られたら、ミス・ヴァリエールがそこまでお怪我をされる事もなかったでしょうに。本当に、申し訳ありません」
「別にいいわよ。貴女を庇うって言うよりは私がギーシュの事を気に入らなくて突っかかったんだし。そういえば、貴女あれから何か言われたり、暴力を振るわれたりしていないの? というか、そうだ、私、決闘の結果は!?」
「それは、引き分けです」
「引き分け?」

 きょとんとしたままルイズはDへ視線を送った。窓際の影で朝の光を避けていた使い魔は、静かに首を縦に振った。ギーシュの願いどおり先の決闘は双方引き分けと扱っている。

「はい。それで、ミスタ・グラモンがあの後私に謝罪しに来られたんです。私、まさか貴族の方々に頭を下げられるなんて思ってもみませんでした! ちゃんと話してみるとミス・グラモンも優しい方でした」
「そう、ギーシュの奴、貴女に謝ったの」
「ルイズ」
「何、D?」
「おれを呼びに来たのは彼女だ」
「あんたが?」

 とルイズに見つめられ、シエスタは恥ずかしげに俯いた。意識しないでおいたDの声を聞き、心臓の鼓動が激しさを増している。

「は、はい。で、でもDさんを連れてくる事はできませんでした。決闘の事をお伝えはしましたけど、広場に来られたのはDさんの意思ですよ」
「そ、そう。ふーん、なんだ、やっぱりご主人様の事が心配だったんだ。ふーん、へー、そー。す、素直じゃないんだから。でで、でも褒めてあげなくもないわよ」

 ルイズは全然嬉しくないんだから、むしろ使い魔なんだから当然よ、という態度を取ろうとしているのだが、眼尻は下がっているし、もじもじと動いている指はせわしないし、なにより口元がにやにやと笑みをどうしても浮かべてしまう。
 なんのかんのと言い繕ってみても、Dに気に掛けてもらえる事はどうしようもなく嬉しいらしい。にこにことついつい、満面の笑みを浮かべながら、ルイズはちらちらとDを見ている。
 そんな二人の様子に、シエスタは微笑ましいモノを覚えてつい笑みを浮かべてしまう。まるで、好きな男に素直になれない女の子の反応そのものだ。
411ゼロの魔王伝:2009/01/11(日) 16:16:21 ID:wY20PC8r
「それでは簡単なものですけれど、お食事をここに置いておきます。食器は後で取りにまいります。ミス・ヴァリエール、Dさん。本当にありがとうございました。厨房の皆も、お二人に感謝しています」

 そういって潤んだ瞳を二人に向けて、もう一度深く頭を下げてシエスタは退室していった。ルイズは、シエスタの感謝の言葉が長く耳から離れなかった。
 ああいう風に誰かに感謝されたのは初めての事だった。胸の中が暖かい。その事をDに悟られるのがいやに恥ずかしくて、ルイズは誤魔化すようにわざと大きな声を出した。

「あ〜あ、お腹空いちゃった。そういえばDは、朝ごはんは済ませたの?」
「ああ。それは君が食べたまえ」
「そうするわ」

 そういって、ルイズはパンを手にとって小さな口にあったサイズに千切り、シチューをふー、ふー、と息を吹いて冷ましながら食べ始めた。一度空腹に気付くと、手と口は止まらず、食器の上の料理は瞬く間に減っていった。
 Dは、寝床兼用の椅子をベッドの傍らに置いてそこに腰かけた。ルイズはたちまち緊張で身を固くする。なんともはや面倒な主従である。

「そういえば、この前食堂に行ったとき、ヴァリエール家とツェルプストー家の話をしていたな」
「え、ああ。食堂を通り過ぎかけた時の話? そういえばキュルケのひいひいひいおじいさん、いえひいひいひいひいおじいさんくらいの話をしていた時に食堂についたのだったかしら? それがどうかしたの」
「続きを聞かせてもらおうかと思ってな」
「…………え?

 意味が分からずまたまたぽかんと、繊細な珊瑚細工の様な唇をOの字に開いたルイズに、復活したらしい左手がDの意図を告げた。

「なに、単なる話の接ぎ穂じゃよ。こいつめ、顔はいい癖に碌に冗談や話をせぬから普通の会話と言うものができん。ようするにお嬢ちゃんの事をもっと知っておこうと、そういうわけじゃよ」
「そうなの?」

 とルイズ。信じられないという様子で、Dを見つめる。ルイズの視線にさらされたDは、ルイズに初めて苦笑する様子を見せた。ルイズは目の前で奇跡が起こっているのではないかと本気で疑った。

「そう言う事だ」

 その返事を聞いたルイズは、雲に隠れたお月さまも、思わずにっこりと笑い返してしまうような、輝く笑みを浮かべて

「なんでも話してあげる!」

 と、それはもう、嬉しそうに答えるのだった。


今回ここまでです。お目汚し失礼しました。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:22:59 ID:72RrzkA1
投下乙です
相変わらず左手がいい味だしてるwww

そういえば前々回で気になったんですがDは乾燥血液をどのくらい持ってるんだろ?
無くなったら自分の血を吸うしかないよーな
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:34:22 ID:nxVYnJ2g
ちょっと出かけてる間に連続で投下きてたのでまとめ乙

イメージ的にギーシュのワルキューレ一体はモヒカン1人より弱い程度・・・かなぁ
勝てんわな
皆さんこんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、お待たせしました。今週はウルトラマンティガ堂々の登場です。
予約なければ第30話の投下を開始しようと思います。
開始時刻は16:45からで、よろしくお願いします。
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:42:02 ID:sCkfRonj
ウルトラの人きたぁぁぁぁ!!!支援!!
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:42:53 ID:bDrzm1Pq
やはり日曜日にはウルトラの人が降臨か。

事前支援いたします。

……ところでヤプール的にはアストロモンスってどうなんだろう。
「怪獣より強い超獣より強い怪獣」第1号で、超獣を一飲みするようなヤツなんだが……。
417ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (1/12):2009/01/11(日) 16:47:33 ID:f/qlj5Cr
 第30話
 ガリア花壇の赤い花 (後編)
 
 宇宙魔人 チャリジャ
 宇宙大怪獣 アストロモンス
 ウルトラマンティガ 登場!
 
 
 ウルトラ兄弟のいる地球とも、ハルケギニアとも次元を隔てたある世界に、もう一つの地球がある。
 そこは、我々のいる世界とよく似ていて、怪獣や宇宙人が現れ、人間がそれに立ち向かっていく。
 しかし、怪獣たちの脅威はときに人の力を上回る。
 そんなとき、その世界にもまた人類のために戦う光の戦士がいた。
 超古代の遺伝子を受け継ぐ青年、マドカ・ダイゴは3000万年前の光の巨人の力を受け継ぎ、闇の力に立ち向かう。
 力の赤と、速さの紫をその身にまとって、いかな敵にも屈しはしない。
 その名は……ウルトラマンティガ!!
 
 
「ショワッ!!」
 街影から望む朝日を受けて、今ティガがハルケギニアの地に立ち上がった。
 迎える敵は、宇宙大怪獣アストロモンス、かつては超獣を倒したこともある超強力な大怪獣だ。
 
「フッフッフッ……やはり来ましたね、ウルトラマンティガ」
 アストロモンスの肩あたりに、チャリジャがいつの間にか浮かんでいた。
「……!」
「1965年の世界では、あなたとウルトラマンのおかげでヤナカーギーがやられてしまいましたが、今度の
怪獣もけっこう強いですよ」
 彼らは、ここに来る以前に、過去の時代にタイムスリップして戦っていたが、チャリジャの復活させた
宇宙恐竜ヤナカーギーは倒され、元の時代に戻る途中にチャリジャの時空移動にイザベラの魔法が干渉し、
ダイゴはそれに巻き込まれてしまった形になる。
 チャリジャがなにを考えているのかはいまだにわからないが、このまま怪獣を次々に復活させられては
かなわない、こいつはここで倒す!
「では、か弱いわたくしはこのあたりで失敬します。頑張ってくださいね」
 チャリジャはドロンとテレポートして消えた。
 残されたアストロモンスは、右手のムチと左手の鎌を振りかざして雄たけびをあげる。
 
「デャッ!!」
 
 ティガも右手を前にして構え、アストロモンスに向かっていく。
 先手はティガ! 振り下ろされてきたムチをかいくぐったミドルキックがアストロモンスの脇腹を打ち、
巨体を揺さぶる。
 けれど、宇宙大怪獣にとってその程度の打撃はたいしたダメージにはならない。
418ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (2/12):2009/01/11(日) 16:48:57 ID:f/qlj5Cr
 すかさず、斬りつけてきた鎌を白刃取りのように受け止めて流し、至近距離から膝蹴り、ひじ打ちを
叩き込む。
「タアッ!」
 流れるような連続攻撃が巨大怪獣の体を打ちのめしていく。
 
 その勇姿に、避難しかけていた人々も振り返って熱い声援を送り始めた。
 ウルトラマン、かつて壊滅しかけていたトリステインに現れて以来、幾度となく異世界からの侵略者と
戦い続けている謎の巨人。
 トリステインからガリアに移ってきた人々は、あれはトリステインに現れたエースとは違うと主張したが、
正体がなんであれ、人間のために戦ってくれているのは間違いない。
 
「テァッ!」
 怪獣の突進してくる勢いを利用して、合気道のようにこれを投げ飛ばす。
 確かに体格ではティガはアストロモンスより一回り小さいが、その代わりに格闘テクニックと俊敏さでは
負けていない。その攻撃の先を読み、最適の反撃を繰り出していく。
 だが、アストロモンスもチャリジャが駆け回って探してきた怪獣だ、右手のムチをでたらめに振り回し、
近づけさせないようにしながらティガの体を乱暴に痛めつける。
「グッ……」
 ガードしててもその上から衝撃が伝わってくる。中距離ではリーチの差でティガが不利だ。
 が、そのとき突然アストロモンスがムチでの攻撃をやめた。
 
「いまだ! 奴はスキだらけだぞ」
 人々からいっせいに歓声があがる。どうしてか、奴はムチも鎌もぶらりと垂れさがらさせていてスキだらけだ。
今なら奴のどこであろうと攻撃しほうだいに見えたが、ティガはそれを躊躇した。あまりにも無防備すぎる、
これは誘いだ!
「ダッ……シャッ!」
 ティガは一歩だけアストロモンスに近寄ると、間髪入れずに後方へバック転で飛びのいた。
 すると、奴の腹の巨大な花の中央部から真っ白な煙が噴出してティガに襲い掛かった!!
「セァッ!!」
 ギリギリのところでその煙をかわしたティガの目の前で、煙を浴びた草花や建物の残骸が水をかけられた
紙細工のようにドロドロになって溶けていく。強酸性の溶解液だ!
 間合いをとって、油断なくティガはアストロモンスに向かって構える。懐に飛び込めばこちらが有利だが、
あのムチと鎌、さらにこの溶解液ではもう簡単に近づかせてはもらえまい。
 対してアストロモンスは、近づけさせなければ有利だと学習し、ムチを振り回しながら猛然と迫ってくる。
419ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (3/12):2009/01/11(日) 16:50:12 ID:f/qlj5Cr
「……」
 ティガは逃げずに、向かってくるアストロモンスをじっと見据える。
 そして、両者の距離が一足の間合いとなり、巨大なムチが高く振り上げられたとき、ティガはひざを突き、
両手を胸の前でX字に揃えた。
「あっ!」
 人々は、一瞬後に起こるであろう惨事を予感して、ある者は目をそらし、ある者は目をつぶった。
 しかし、視線をそらさずにティガを見つめ続けていた人たちはまったく違う展開を、その生涯の記憶に焼き付けた。
 ティガの胸の金色のプロテクターが一瞬輝き、両手が水平に押し出されると、そこから三日月形の光の刃が飛び出した!!
『ティガスライサー!』
 それは振り下ろされてくるムチの真ん中を捉えると、大根のようにスパッと巨木ほどの太さがあるムチを輪切りに
してしまった。
「タッ!」
 ムチを失って慌てふためくアストロモンスに、ティガの猛反撃が開始された。
 一気に距離を詰めてハイ、ミドル、ローキックを打ち込み、ジャンプして頭にチョップを打ち下ろす。
「タァッ!」
 さらにふらつくアストロモンスのどてっぱらに向けて、渾身のパンチを送り込む。
 だが。
「ヘヤッ!?」
 アストロモンスの腹の花の中央部に命中したパンチが抜けない。
 いや、それどころかティガの腕が花の中へとズブズブと呑み込まれていくではないか!
「ウァァッ!!」
 これこそ、アストロモンス最大の隠し技、かつて出現した個体が超獣オイルドリンカーを丸呑みしてしまったように、
奴の花はもう一つの口となっているのだ。
「ああっ、ウルトラマンが喰われる!」
 ティガはふんばるが、奴の吸引力のほうが強い。このままでは人々の悲鳴のままに、ティガはアストロモンスの
エサにされてしまう。
 アストロモンスはこれで勝利を確信したのか、小気味良く喉を鳴らしてひじまで呑み込まれてしまったティガを
見下ろしている。
 だが、そのとき!!
「ヌゥゥ、デャァッ!!」
 ティガの額が輝いたかと思うと、その身を包んでいた色が一瞬にして真紅に変化した。
 
『ウルトラマンティガ・パワータイプ』
 
 これこそティガの真骨頂 『タイプチェンジ能力』 ティガは戦況に合わせてバランスの基本形態から力とスピードの
2つの形態に自在に変化することができるのだ!
 そしてこれがその一つ、無双の超怪力を発揮する赤のパワータイプだ。
420ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (3/12):2009/01/11(日) 16:51:14 ID:f/qlj5Cr
 燃えるような赤に身を包んだティガは、腕が呑み込まれた状態のままアストロモンスの巨体を軽々と持ち上げると、
自身をコマの軸に見立てて大きく回転しはじめた。
「ダァァッ!!」
 回転で強烈な遠心力が加わって、風車のようにアストロモンスの巨体が回転する。
 それは普通に引き抜くよりも強いパワーを与えただけでなく、回転によってアストロモンスの三半規管を麻痺させ、
吸い込む力を弱めさせた。
「ダアッ!!」
 一気に勢いを加えた瞬間、遂にティガの腕がアストロモンスの花から吐き出された。
 それと同時に回転軸を失った羽根の部分は、遠心力に導かれるままに放り出されて庭園の芝生の上に転がった。
着地で巻き上がる土煙と砕かれた草木が宙を舞う、しかしアストロモンスは回転で酔いながらもまだ起き上がってくる。
 だがそれを見逃すティガではない。奴が反撃できない隙に駆け寄って、奴の左手に残った巨大な鎌を両手で
掴み、それを勢い良くひざに叩きつけると、大鎌は枯木が折れるような音を立てて真っ二つにへし折れた。
 アストロモンスは自失していたところに、左腕をへし折られたショックで強烈な悲鳴をあげる。
 これで、もう奴に武器は腹からの溶解液しか残っていない。それとて、至近距離で真正面にいなければ喰らいはしない。
距離をとってティガはとどめの体勢に入った!
「セヤッ!!」
 ティガが両手を下向きに広げると、赤熱するエネルギーが両手を上に上げるに従って集まっていき、頭上に掲げられた
ときには太陽のように真赤に燃える球体となって、ティガはそれを投げつけるようにアストロモンスに向けて発射した!!
『デラシウム光流!!』
 炎のボールは燃え盛る炎の河となってアストロモンスに向かう。
 しかし、命中直前アストロモンスはその巨体のどこにそんな力があるのか、鳥のように羽ばたいて空に飛び上がっていって
しまったではないか。
 逃げる気か!!
 誰もがそう思った。両腕を失い、怪獣にもう巨人に勝つ術はなくなった、ならば余力があるうちに逃げ去るしかない。
 翼もないその図体からは想像もできないが、アストロモンスはなんと空中をマッハ3もの超スピードで飛行する能力を
持っている。このままでは逃げられてしまう。ティガの飛行速度はパワータイプで同等のマッハ3、すでに戦い始めてから
相当時間も経ち、ティガの活動制限時間である3分に近づき、カラータイマーも点滅を始めている、このままでは追いつけない。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:51:40 ID:bDrzm1Pq
支援
422ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (5/12):2009/01/11(日) 16:52:17 ID:f/qlj5Cr
 ただし、そのままであるならば。
「ハッ!!」
 両腕を額の前で交差し、額の輝きと同時に振り下ろすと、今度はその身を包む色が赤から一瞬にして紫に変化する。
 
『ウルトラマンティガ・スカイタイプ』
 
 力のパワータイプから素早さのスカイタイプへ、タイプチェンジによってティガに対応できない戦場などない!
「ショワッチ!!」
 俊敏性を最大まで高めた姿でティガは飛翔した。この姿のときの飛行速度はマッハ7、あっという間にリュティス上空で
アストロモンスの背後に追いつく。
 
 その風を切り、朝日を浴びて輝く勇姿に、目を覚ましたリュティスの市民達も空を見上げて見とれる。
「みんな、空を見ろ!」
「怪獣、それに……」
「ウルトラマン!!」
 たとえ地球でもハルケギニアでも、光の巨人が人々の希望であることに違いは無い。
 
「シャッ!!」
 圧倒的なスピード差でアストロモンスの上空に出たティガは、天空から急降下キックを奴の背中におみまいした。
 見事命中、背骨を逆向きに強制的に変形させられて、裂けた口から苦悶の声があがる。
 だが、ティガはうかつに奴を撃ち落すわけにはいかない、下は市街地、墜落すれば甚大な被害が出る。
 ティガはアストロモンスの真後ろにつけると、奴の背後から狙いをつけて、右手から青白い光線を放った!
『ティガフリーザー!!』
 冷凍光線が奴の下半身から瞬時にして氷付けにし、行動の自由と飛行能力を奪う。
 そして墜落していくアストロモンスを、空中で受け止めると、そのまま力いっぱい宮殿の方向へ向かって投げ飛ばした。
「デャァッ!!」
 クルクル回転しながらアストロモンスは隕石のようにヴィルサルテル宮殿の庭園に落下し、荒れ果てていたそこに
さらに巨大なクレーターを轟音とともに新造した。
 しかし、それでもまだ奴は生きていた。
 墜落のショックで氷が砕け、全身ボロボロになりながらもまだ起き上がってくる。
423ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (6/12):2009/01/11(日) 16:53:39 ID:f/qlj5Cr
 恐るべき生命力……そう、生物を超えた生物、それが怪獣なのだ。
 その目の前に、ティガは昇り行く朝日を背に浴びながらゆっくりと降り立ち、正面で両腕をクロスさせ、かけ声と共に
三度その姿を変えた。
「ハッ!!」
 それは、最初にティガが現れたときの、銀色の体に赤と紫を併せ持つティガの基本スタイル。
 
『ウルトラマンティガ・マルチタイプ』
 
 そしてティガはアストロモンスを見据えると、両腕を素早く正面に向かって突き出した。
 一瞬の閃光、さらにその腕を左右両側に向かってゆっくりと広げていくに従って、ティガのカラータイマーに向かって
白い光が集まっていき、両腕を完全に開き終えたとき、光の力は極限まで高められ、ティガの最強必殺光線の準備が整った。
「デヤッ!!」
 瞬間、L字にクロスさせたティガの右腕から、白色の光線が放たれる!!
 
『ゼペリオン光線!!』
 
 光のエネルギーが奔流となってアストロモンスに吸い込まれていく。
 数々の凶悪怪獣を葬ってきた光の鉄槌の前には、いかな宇宙大怪獣とて耐えられない。わずかな断末魔を残した後、
注ぎ込まれたエネルギーの内圧によって、瞬時に粉々の破片となって爆散した!!
(やった……)
 微塵に粉砕された怪獣の破片が朝日に輝いて、雪のように風に乗って飛んでいく。
 ティガは、ウルトラマンの勝利に湧く人々の歓声を背に受けて、天空を目指して飛び立った。
「ショワッチ!!」
 
 
 人の意思は、時に人に知られずにすれ違っていく。
 庭の片隅をひょこひょこと逃げてゆく白塗りの似非紳士の前に、ガッツスーパーガンを構えたダイゴが立ちふさがっていた。
「追い詰めたぞチャリジャ、これ以上この世界で好き勝手はさせない」
「うーん……あの怪獣にはちょっと自信があったんですが、さすが強いですねウルトラマンティガ……ですが、
ちょっと相談なんですけど、ご存知の通り、この星で何をしようが地球には影響はありません。ですから、あなたを
地球の元の時代に送り届けて差し上げますから、わたくしを見逃してはいただけないでしょうか?」
424ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (7/12):2009/01/11(日) 16:54:46 ID:f/qlj5Cr
 チャリジャの持ちかけた取引に、しかしダイゴは断固として言い放った。
「だめだ、どこの星の人間だろうと、平等に平和に生きる権利がある。その平和を乱そうとしているお前を
許すわけにはいかない!」
「……ですよね、仕方ありません。少し惜しいですが、この星ともそろそろお暇しましょう。お土産も充分にいただきましたし」
 チャリジャが脇に抱えたトランクケースを開けると、そこには様々な形のカプセルや、何かの種、用途不明な機械が
ぎっしりと詰まっていた。
「そいつは、まさか!」
「ご明察、私は怪獣バイヤーですからね。元手がかからずにこれだけ商品が集められて幸せいっぱいです。さて、
それではお先に失礼します」
 トランクの中の装置のボタンがポチリと押されると、チャリジャの周りの空間が水飴のようにぐにゃりと渦を巻いて
歪み始めた。
 ダイゴはとっさに引き金をしぼるが、ビームは空間の歪みに吸い込まれてチャリジャに届かない。
「では、さようなら」
「待て!!」
 チャリジャの姿は、渦の中に吸い込まれるように消えて行き、後を追ってダイゴも歪みの中に飛び込んでいった。
 ハルケギニアに二人の姿は消滅し、空間の歪みもそれを見どけるようにして消えた。
 その後、ダイゴは元の世界に帰還し、直後に南太平洋に復活した超古代遺跡ルルイエで邪神ガタノゾーアとの
最後の戦いに望むことになる。
 彼が、ハルケギニアでのわずかな時間の出来事を思い出すことになるのは、それからしばらく後のことである。
 
 
 しかし、そのほんの一時は、カステルモールを初めとするガリアの人々にとっては生涯忘れえぬものとなって
記憶に刻み付けられていた。
「以上が、私が見聞きして、可能な限り調べ上げたこの事件の概要です」
 戦いから半日が過ぎて、日も傾きかけたグラントロワの一室で、タバサはカステルモールからヴィルサルテル宮殿を
襲った怪獣と、それと戦ったウルトラマンの話を聞かされ終わった。
 話は、当然ダイゴに関することは入っていなかったが、イザベラが呼んだ不思議な怪人物と、そいつが持ってきた
球根、その直後に庭園に出現した食肉植物と、一連の出来事がその怪人物からつながっていることは明確に
読み取ることが出来た。
「それで、その怪人は?」
「はっ、その後四方手を回していますが、発見されておりません。彼女もあの様子ですし、すでにどこかに逃げ去った
ものかと思われますが……」
 実際に、花壇騎士の攻撃をものともしない相手だけに、捕まる可能性は低いだろう。その件はそれ以上の期待は
できそうもない、これは相手の出方を待つしかない。それよりも、当面問題なことは目の前にあった。
425ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (8/12):2009/01/11(日) 16:55:48 ID:f/qlj5Cr
「わかった……けど、あれはどういうことなの?」
 ドアをわずかに開けて、二人は室内にいるイザベラの様子を覗き見た。
 そこにはベッドの上に腰掛けて、ぼぉっと宙を眺めている彼女の姿、しかしその目は虚ろで焦点が定まっておらず、
ときおり思い出したように……
 
「ダイゴ……さま……」
 
 と、うわ言のようにつぶやいていて、こちらが何を言ってもまったく応答がないばかりか、顔中まるで熱病にでも
侵されているように真っ赤にほてっていて、タバサには訳がわからない。
 しかもそれに混ざってときたま、「ああっ!」とか「胸が熱い……」とか意味不明なことを口走ってはベッドの上で
もだえていて、正直気味が悪いことこの上ない。
「まさか……毒でも盛られた?」
 タバサは一瞬母を狂わせた水魔法の毒薬のことを思い出した。イザベラに同情する義理は無いが、もしそうだとすれば
由々しき事態だ。けれどカステルモールはなぜか微笑を浮かべながら首を横に振って。
「いいえ、あれはもっと重くてやっかいな心の病です。しかも、誰でも一度は経験するね……はは」
 そう言うカステルモールがイザベラを見る目は、以前と違って『人間』を見るものであった。
 
 怪獣が倒された後、庭の片隅でボロボロの有様になったイザベラが発見されたとき、彼女は気絶しながらも、
誰のものともわからないハンカチをしっかりと握り締めていた。しかも、体のあちこちにつけられていた傷は手当て
されており、誰かが彼女を助けたのだということはすぐにわかった。
 この宮殿にイザベラを助けようなどと考える者は一人もいないはずだ。なのにいったい誰がこんなに丁寧な手当てを
していったのか……余計なことをと、彼女を恨む者達は思ったが、そのときイザベラがすうっと目を開いた。
「あんた……は?」
「!! ……はっ、東花壇騎士団長カステルモール、ただいま姫殿下をお救いに参上いたしました」
 目の前にいたカステルモールは驚いたが、とりあえず本心を押し殺して東花壇騎士団長として形式通りの挨拶をした。
 しかし、イザベラはぼおっと自失したままで、人形のように反応しようとしなかった。
「姫……様?」
 もとかして恐怖のあまりおかしくなられたのか? と、彼が思ったとき、イザベラはそのとき誰一人予想できなかった
行動を起こした。
「助けに……来てくれた……ほん……とうに…………うっ、うえぇぇぇん!!」
 なんとイザベラは突然目に大粒の涙を浮かべると、まるで幼児のように大きな声をあげて泣き出した。
426ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (9/12):2009/01/11(日) 16:56:33 ID:f/qlj5Cr
「ひっ姫様!?」
 今度は、騎士達が茫然自失することになった。てっきり何故もっと早く助けに来なかったなどと金切り声を上げて
叱責されるものと予想していただけに、まるで幼児のように泣き喚く彼女の姿は、とてもあの傲慢な女と同じ人間
だとは信じられなかったとしても仕方が無い。
「怖かった、怖かったよお……でも、でも本当に助けにきてくれたんだよな……」
 極限状態の中で、心を覆っていた虚栄の皮がはがされて、ただの小さな子供だけがそこにいた。
 カステルモールは泣きじゃくるイザベラの背中を優しくさすってやった。
 彼も、彼の部下達も大切なことを忘れていたことに気がついた。
 いくら王女であろうと、いくら捻じ曲がっていようと相手は子供、自分達は簒奪者の娘、王女と家来の関係だからと
彼女の行動を正そうとはまったくしてこなかった。子供の尻のひとつも叩いてやれないで何が大人か、確かに
イザベラが性悪だったのは間違いない。しかしそれを助長し、ここまで育ててきたのは自分達だ。
 やがて泣き疲れて彼女が眠ってしまうと、彼はその身を抱きかかえると、寝室まで丁重に運んだ。
 
 けれど、目を覚ました後にイザベラはあのとおりに誰かの名前を呼ぶばかりで、別人のように呆けているばかりだ。
「重くて……やっかいな病?」
「恋の病ってやつですよ。しかも、極めて重度のね……まぁ、間違いなく初恋でしょうから、強烈ですな」
「……」
 タバサには、それは理解の外にあるものだった。いつもキュルケが隣でうるさく講義しているから、知識として
頭にはあるが、その人のことばかり頭に浮かんで他のことが考えられなくなるなどこれまで一切経験がなかった。
 それにしても、それはあの非人間の見本であったようなイザベラをここまで変えて、さらに周りから見る目までも
変化させてしまうものなのだろうか。
「……どうすれば、治るの?」
「時間にまかせるしかありませんな。そのうち熱も冷めるというものでしょう……しかし、我らは正直ほっとしてるのです。
あのイザベラ様に、こんな人間らしい……いや、可愛らしい一面があるのだと……」
「……」
 複雑な思いをタバサは抱いた。あのイザベラでさえ人間らしいというのなら、果たして自分はなんなのだろうかと。
「シャルロット様も、生きている限り必ずお分かりになる日が来ますよ……イザベラ様が今後どう変わっていくのか、
それとも何も変わらないのか、それはまだ分かりませんが、しばらくはあなた様の元に無茶な指令が行くことも
なくなるでしょう。王宮は、我らが責任をもってお守りしますので、あなた様はしばしお休みくださいませ」
 そう言いながらも、カステルモールは心に迷いが生まれるのを感じていた。これまで彼をはじめとした大勢の
オルレアン派の者達は、いずれ簒奪者である現王と、その娘であるイザベラを追放してシャルロットを王座に
迎えようと考えていたが、あの泣き顔を見たあとで、果たして自分はそれをできるだろうか……
 
 
 しかし、事態は彼らの思惑とは別に、さらに悪いほうへと動こうとしていた。
 グラン・トロワのさらに深奥、花壇騎士でさえ立ち入れない薄暗い一室に、薄笑いを浮かべた一人の男がいた。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 16:57:58 ID:bDrzm1Pq
支援
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 17:09:46 ID:72RrzkA1
イザベラとダイゴの再会は少なくとも当分は無いのか……
429代理 ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (10/12):2009/01/11(日) 17:24:11 ID:72RrzkA1
「人を超えた巨人の力か……なかなかに興味深い……そうは思わんか、余のミューズ?」
 その男は、青い髪の下の暗く淀んだ瞳を細めて、水鏡に映し出されたティガとアストロモンスの戦いの記録を見ていた。
「おっしゃるとおり……その力、手に入れば大望の成就のこの上ない力となりましょう。ですが、求めて手に入る
ものでもないかと……この力は人知を超えております」
 男の背後から、黒いローブに身を包んだ女性の声が響いた。しかし、男は顔色ひとつ変えずに、なおも低い声で言った。
「だろうな……この力は仮にエルフどもの力を借りたとしても及ぶまい。まさに神の領域、しかし……だからこそ
手に入れたいのだ!!」
 まるで高価なおもちゃを親にねだる子供のように、男は見ようによっては無邪気にも、見ようによっては欲深い
暴漢のようにも見える顔で、包み隠さずに本心を吐き出した。
 すると……
「では、少々お手伝いいたしましょうか?」
「誰だ!?」
 部屋の片隅の暗闇から、突如響いた軽口の言葉に、黒いローブの女性はとっさに身構えた。
「ほっほっほ……いえいえ、怪しい者ではございません。わたくし、こういうものでございます。どうかお見知りおきを……」
「……ほう、面白い……余に力を貸そうというのか……見返りはなんだ?」
「特に……ただあなたの領内でのわたくしの行動の自由さえくだされば……いや、やっぱりこの世界はあきらめるには
惜しいですからね」
「ふ……よかろう」
 かつて、手に余る力を手にしようとした者達が辿った運命、それを彼らはまだ知らない。
 
 
 けれど、運命の歯車の行く手を知りえる者は、善にも悪にも一人も存在しない。
 このガリアでの事件も、ハルケギニア全てを覆う流れからすれば、ほんの一部の出来事でしかなかった。
 時を同じくして、ガリア、そしてトリステインからも北方に遠く離れた巨大な浮遊大陸国家アルビオン……
その巨大な都市郡からも、にぎわう町々や王軍と反乱軍との戦場からも離れた深い森の奥にも、始まりの時は訪れようと
していた。
 
 深い森の奥の道なき道を、一人の5才くらいの幼い少女が息を切らせて走っていた。
 その後ろからは脂ぎった顔を血走らせて、手に手に凶悪な輝きを放つ刀や斧などを持つ男達、一目見て傭兵崩れか
盗賊だとわかる風体の者達が追ってきていた。
「待てこのガキ!! てめえをとっつかまえりゃ、あのみょうちくりんな術を使う小娘に人質に使えるんだ。殺しゃしねえから
黙って捕まりやがれ!!」
 彼らはつばを吐き散らし、口汚い言葉を吐き出しながら、藪の中を掻き分けて少女を追っていた。
 平らな場所であったら、鍛えた彼らは簡単に少女を捕らえられただろうが、藪や木立が密集する森の中では小柄な
少女でもなんとか逃げれていた。
 しかし、それでも体力は差がありすぎる。次第に彼女は追い詰められていった。
430代理 ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (11/12):2009/01/11(日) 17:25:47 ID:72RrzkA1
「ぐすっ……テファお姉ちゃん」
 彼女はそれでも捕まるまいと、半べそになる自分を励ましながら走った。
 木の実を多くとって仲間達を喜ばせてやろうと、うっかり森の奥に入りすぎてしまい、運悪く野盗の集団と出くわしてしまった。
これで捕まってしまっては、自分のせいで仲間達や、一番大切な人がひどい目にあわされてしまうかもしれない。それだけは
なんとしても避けようと、彼女は必死に走り続けた。
 だが、もはや前すらろくに見えない中で、ひとつの藪を抜けて開けた場所に飛び出したとき、彼女はその正面にいた
誰かと思いっきりぶつかってしまった。
「きゃっ!!」
 尻餅をついて、もうこれまでかと恐る恐るぶつかった相手を少女は見上げた。
 だが、その小さな目に映ったのは、荒くれた野盗ではなかった。
 それは、長身の黒い服を着て、同じ黒い帽子をかぶった若い女性、少女は一瞬野盗の仲間かと思ったが、
その女性は少女の目線にまで腰を落とすと、穏やかな口調で言った。
「どうした?」
 そこに野盗のような悪意やとげとげしさは微塵も感じられなかった。
 この人は違う……直感的にそう判断した少女は、必死で助けを求めた。
「助けて! 悪い奴らに追われてるの!」
 しかし、少女が言い終わる前に、追いついてきた野盗達が二人を取り囲んだ。
 数は全部で5人、リーダー格と思われる大柄な男を筆頭に、どいつも明らかに血でできたさびの浮いた刀を振りかざしている。
「やっと追いついたぜ……ん? なんだてめえは」
「おいてめえ、そのガキをこっちにわたしな、さもねえと痛い目を見るぜ」
「親分、こいつ女ですぜ。ついでにとっ捕まえていっしょに売り飛ばせばいい金になりやすぜ」
「そりゃいい、げへへへ」
 野盗達は荒い息を吐きながら、下品な声で品性のかけらもない相談を楽しそうにした。それが、野盗達が民衆を襲う上で
相手への威嚇になると経験的に学んできたこと、目の前で屈強な男達に余裕たっぷりでこんな話をされたら、普通の人間は
恐怖で萎縮する。
 けれど、今度の相手は野盗達のつまらない経験が通じるような相手ではなかった。
「失せろ」
「なっ……なに!?」
 その女性は野盗達の会話などまるで耳に入っていないように、平然と『命令』した。
431代理 ウルトラ5番目の使い魔 第30話 (12/12):2009/01/11(日) 17:27:30 ID:72RrzkA1
「失せろ……目障りだ」
 そこには一片の恐怖もなく、野盗達の存在などまるで意に介していない……
 いや、それどころか、ただ立っているだけなのに、この光景を見る者がいたとしたら野盗の姿が森の木々と同化して
見えるのではないかと思うほどに、絶対的なまでの存在感の差が彼女にはあった。
 そうなると、元々自制心など無きに等しい野盗達は、雀の涙ほどのプライドを傷つけられたことに激昂し、次々に
獲物を二人に向かって振り上げた。
「やっちまえ!!」
「殺せ!!」
 怒りに我を忘れて、野盗達は当初の目的さえ忘れていた。
 少女はもうだめだと思って目をつぶる。しかし、黒い服の女はさっき少女に語りかけたときとまったく同じように。
「掴まっていろ」
 彼女は少女を脇に抱えると、四方から斬りかかってくる野盗達を無視して、大地を蹴って跳躍した。
「なっ!?」
 驚いたのは野盗達である。武器が宙を切ったときには、相手は地上5メイルほどの高さまで一瞬で飛び上がっていたのだ。
 そして、重力に従って落ちてきたと思ったときには、彼らの視界は真っ黒に塗りつぶされた。
 野盗達が獲物を振り上げるより早く、彼らの顔面に回転しながら降下してきた彼女のキックが4人にほぼ同時に命中!! 
華奢な体つきからは想像もできないほどに重い蹴りに、野盗達は何が起こったのかもわからないうちに顔面を
へこませて意識を飛ばされた。
 残ったリーダー格の男は、あっという間に仲間が倒されたのを悪夢でも見ているかのように見ていたが、
彼女に「仲間を連れてさっさと失せろ」と言い捨てられて、奇声をあげて切りかかっていったが、首根っこを締め上げられて
悶絶させられたあげく、近場の木に投げ捨てられて無様に気を失った。
 その間、わずか10秒足らず。
 あっという間に5人の野盗を叩きのめし、彼らへの興味をなくした彼女は、抱えていた少女をゆっくりと地面に下ろした。
「大丈夫か?」
「……あ……はわわ」
 しかし少女はあまりにも信じられない出来事と、高速で振り回されたことで完全に我を失っていた。
 幸い目をつぶっていたせいで、野盗達の見苦しい姿は見ずにすんでいたが、追われていた恐怖から解放されたことも
あって幼い心にはショックが強かったようだ。
 すると彼女は少し困った顔をしたが、やがて思い出したようにポケットから何かを取り出すと、それを手のひらに乗せて
少女の目の前に差し出した。
「……?」
 少女は一瞬なんだかわからなかったが、鼻孔に漂ってくる甘い香りをかぐと、混乱していた心がしだいに落ち着いていった。
 それは、包み紙にくるまれた丸い一粒の飴玉、そのどこにでもありそうな一粒を、大事そうに、しかし惜しげもなく
差し出しながら、彼女は微笑を浮かべて言った。
 
「どうだ? 甘いぞ」
 
 
 続く
今回は以上です。支援してくださった方、どうもありがとうございました。
ティガの活躍、いかがだったでしょうか。
残念ながらダイゴは元の世界に帰ってしまいましたが、彼にはこれからティガとして大事な使命が残っているので、
引き止めるわけにはいきません。
それに、レナを悲しませては男として問題ですからね。
先週から数々のご期待をいただけて、これほど反響があるとは思っていませんでした。
私もティガ放映当時は見ていた口ですが、49話はビデオに撮って何十回も見返したものです。
そして10年以上の時を経ての超ウルトラ8兄弟でティガ、ダイナ、ガイアもウルトラ兄弟入りしたときは本気泣きしました。
グリッターティガの登場を期待されていた方は申し訳ありません。なにせグリッター化はよほどのことがないと
できませんし、この当時ティガはまだグリッター化をしたことがありませんので、また今度の話ということで
お願いします。
 
イザベラの変わりようについては色々あるでしょうが、彼女がここまで曲がったのは本人のせいももちろん
あるでしょうが、周りにろくな大人がいなかったせいも強いと思い、こういたしました。正直、あんな環境で
育てられてまともに成長できるとはとても思えません。
 
では、次回は舞台をアルビオンに一新、当然ティファニアが初登場、そして盗賊達を一蹴した黒衣の女性の正体も明らかに、
過去ログを見るとすでに気づいている人もいらっしゃるようですが、春のウルトラ祭りはまだまだ続きます。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 17:31:57 ID:bDrzm1Pq
げえっ、ホントに一番融通の利かないウルトラマンが出て来たー!
いや、でもウルトラマンレジェンドになった後っぽいから、多少は利くようになってるのか?

何はともあれ、超期待です!
ウルトラの方、乙でした!!
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 17:32:00 ID:72RrzkA1
フゥゥーー……
初めて…………代理投下をやっちまったァ〜〜〜〜〜♪
でも想像してたより、なんて事はないな。

というのは冗談で、これで良かったですかね?
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 17:51:23 ID:j61HQTBC
ダメです
嘘です
乙です
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 17:58:23 ID:nms2dcNj
>>434
よくやった!もうオメーはマンモーニじゃねぇっ
437ゼロと損種実験体:2009/01/11(日) 18:30:29 ID:Nk7nHtWC
18:40から皆さんの予想を裏切り、期待も裏切るフーケ戦を投下したいと思います。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:31:53 ID:bDrzm1Pq
>>437
予想はともかく、期待は裏切っちゃらめぇぇええええ支援。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:32:43 ID:wAZyNC+X
ウルトラの人乙!
イザベラかわいいよイザベラ
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:35:12 ID:42OwQcnm
超絶GJ!!! Take me higherを流しつつ読みましたぜ。
うーん、さすがにこの時点じゃ帰っちゃうか〜。でも超ウルトラみたく再集結しそうなフラグがw
最後にでた人って劇場版ガイアのウルトラマンかな? 今度ツタ屋で借りてこよう。
しかし無能王がどこぞのラスボスみたいな感じになってるwww
441ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:40:03 ID:Nk7nHtWC
 その日、トリステイン魔法学院は朝から蜂の巣をつついたような大騒ぎの舞台になっていた。
 それは、学院の宝物庫に保管されていた『破壊の杖』と呼ばれる秘宝が奪われたからである。
 犯人は、土くれのフーケを名乗る盗賊。彼の怪盗は巨大なゴーレムを操り、その拳で宝物庫の外壁を破壊して進入、目的の物を盗み出すと
壁に『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』とメッセージを残して立ち去っていた。
 土くれのフーケと言えば、最近この国の貴族の財宝を荒らしまわっていると有名なので、学院の教師にもその名を知る者は少なくない。と
はいえ、知られているのは通り名だけなのが現状であり、今までの被害者同様学院側の誰もが手がかりを掴めておらず。現場である宝物庫に
集まった教師たちのすることといえば、ただの責任の押し付け合いであった。

「衛兵はいったい何をしていたんだね?」「衛兵などあてにならん! 所詮は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」
「ミセス・シュヴルーズ! 当直はあなたなのではありませんか!」「当直なのに、ぐうぐう自室で寝ていましたぞ!」「マジか!」「サジ
だ!」「"シュヴルーズは"許さんぞ"シュヴルーズ"!!」

 かくして、怒声の響く宝物庫にて、生贄の羊は決定した。



 キュルケ・フォン・ツェルプトーという少女がいる。
 寮では、ルイズと部屋が近く、なにかとちょっかいをかけている少女である。
 彼女に、ルイズの事をどう思っているのかと尋ねたならば、おそらくこう答えるだろう。『人間ビックリ箱』と。
 実際ルイズという少女は、遠くから見ている分には面白い相手だった。
 優秀なメイジを多く輩出しているヴァリエール公爵家の生まれであり、誰よりも真摯に魔法に取り組み、座学では優秀な成績を修めている
のに、いざ実習となるとまるで魔法が使えない。
 いくらなんでも、ここまでやるものだろうかというほど努力しても、それが実らない。
 全ての努力が徒労に終わっているのに、あきらめない。
 貴族は総じてメイジであり、魔法の使えない者は貴族と見なされないハルケギニアでも、特にこの傾向の強いトリステイン王国に生まれ育
った魔法の使えない貴族でありながら、卑屈になることなく、侮辱に対しては真正面から反論する。度が過ぎてヒステリックではあるが、遠
くから見ている分には、それも面白い見世物である。
 なので、キュルケは暇な時や気が向いた時にはルイズをからかう事を娯楽の一つにしていた。

 だから、使い魔召喚の儀式の日も、キュルケは夜も眠れず朝寝過ごすほどにワクワクしていた。自分が呼び出す使い魔の事が気にならなか
ったわけではないが、メインはルイズの使い魔である。あのゼロのルイズは、こちらの予想を裏切って物凄い幻獣でも呼び出してくれるのだ
ろうか? あるいは、更にその予想を裏切って何の役にも立たないミミズとかを呼び出してくれるのか? どちらにしろ楽しみな事であった。
 残念なことがあるとしたら、ルイズとはクラスが違うので、召喚の場に居合わせての見物が出来ない事だったが、まあそのくらいは我慢し
よう。
 その後、進級と共に、同じクラスになるのだが、それは翌日の話である。
 ともあれ、ルイズが呼び出した使い魔が予想のどちらとも違う平民だったと聞いたときは、さすがはゼロのルイズだ期待を裏切らない。と
爆笑したものである。
 そう。ルイズとは、キュルケにとってそれだけの価値しかなかったはずである。
 なのに何故、自分はルイズの使い魔が人間ではないと聞いた時、危険な者ではないか確認しようとしたのか。何故、危険だと思ったときル
イズから引き離す方法がないかと、頭を悩ませたのか。何故、破壊の杖が盗まれる現場に居合わせたからという理由で、ルイズが教師達と共
に現場にいると聞いて、いても立ってもいられず、宝物庫の扉の前まで来て、聞き耳を立てているのか。
 彼女には、自分が分からない。来るときに、ついでに首根っこを掴んで持ってきた親友が聞けば、お節介で面倒見がいいから。と答えたか
もしれないが。
 そんなキュルケの葛藤には関係なく、宝物庫内では話が進んでいく。
 最初、責任の押し付け合いで始まった会議は、当時の当直であったシュヴルーズの吊るし上げ大会に移行し、その時になって学院長秘書の
ミス・ロングビルが宝物庫に駆け込んで行った。
 途中、扉の前で聞き耳を立てていたキュルケとタバサを訝しげに見ていた気がするが、気のせいだろう。きっとそうだ。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:40:12 ID:bDrzm1Pq
>>440
ダンナ、最後に出た人は劇場版コスモスのヤツですぜ。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:42:10 ID:bDrzm1Pq
おっと失礼、支援。
444ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:42:35 ID:Nk7nHtWC
 駆け込んできたロングビルに、教師の一人が、どこに行ってたのかと問うと、彼女は調査に出かけていたと答えた。
 いわく、朝起きたら大騒ぎになっていて、それがフーケの仕業と知ってすぐに調査を始め、フーケの居所を突き止めてきたとのことである。

「仕事が早いのぉ」

 などと、オールド・オスマンが呟くが、早すぎるだろう。常識的に考えて。とは誰も思わない。人間非常時にはうまく頭が働かないもので
ある。

「近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋は
フーケの隠れ家ではないかと」
「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません」

 ルイズが叫ぶ。彼女は、昨夜ゴーレムの肩に乗った黒いローブを着た人影を見ていたのだ。ちなみに、その隣でどうでもよさそうな顔で立
っているアプトムには、フードからこぼれた長い髪なんかも見えていたのだが、特に口にしようとは思わない。彼にとって、これは自分とは
関係のない事件なのだ。そうでなければ昨夜その場でフーケを捕らえていただろう。彼には、それを可能にするだけの力があるのだから。
 だが、彼がそう思っていてもルイズはそうではない。
 話は、王室に連絡しよう。いや、貴族の名にかけて自分達でフーケを捕まえるべきだ、という流れになり、捜索隊に志願する者を募った時、
ルイズだけが杖を掲げて志願していた。
 ルイズは責任を感じていた。フーケが宝物庫の壁を破壊した時、壁はルイズの爆発魔法でヒビが入っていたのだ。しかも、その魔法を使っ
た理由がただの勘違いからきた感情の爆発だという事も、今は理解している。
 今にして思えば、何故あの時、アプトムがミス・ロングビルと二人して自分を馬鹿にしているのだと思ったのかも、分からない。
 ただ単に一週間かけて少しずつ溜まっていったストレスが、その吐き出し先を求めて、その思考を感情を爆発させやすい方向に誘導してい
ただけなのだが、そんな事が分かるほど自分を客観視できているわけもない。
 分かるのは、破壊の杖が盗まれたのは自分のせいだという事実だけ。だが、その事実を口にしたところで、誰も彼女を責めない。そんなに
自分を責めなくてもあなたのせいじゃないと気遣われさえする。
 教師たちからすれば、スクウェアクラスのメイジがかけた固定化の魔法に守られた壁が生徒の、こともあろうにゼロのルイズの魔法くらい
でどうにかなると考えるわけがないのだから、ルイズを責めようはずがない。だが、それが分からなかったルイズは責任を取ろうと考え、そ
して捜索隊に志願したのだった。

「ミス・ヴァリエール! 何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も志願しないじゃないですか」

 注意してきたシュヴルーズに言い放つ。どのみち責任を取らなくてはならないと考えていたが、破壊の杖の捜索に誰も志願しないとあれば、
自分が行くしかない。ルイズはそんな風に自分を追い詰めようとする。
 その時、杖を掲げてキュルケとタバサが宝物庫に入ってきて、自分たちも志願すると言ってきた。

「ヴァリエールだけにいいカッコさせる気はありませんわ」

 そんな事を言うキュルケだが、それが理由でないだろう事は流石に自覚していたし、隣のタバサにも見抜かれていた。ルイズは気づかなか
ったが。
 そうして、あれよあれよと言う間に、ルイズはキュルケ、タバサ、アプトム、ロングビルと共に破壊の杖捜索に出かけることとなった。
 やはり、アプトムの意志とは関係なく。


445ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:45:31 ID:Nk7nHtWC
 御者をかって出たロングビルが手綱を握る馬車に乗って、一行はフーケの隠れ家だという廃屋に向かっていた。
 徒歩で半日、馬で四時間という距離なので道中は暇である。ので、暇をもてあましたキュルケがロングビルに話しかける。

「ミス・ロングビル……、手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」
「いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから」

 笑いながらの答えるロングビルに、キュルケはきょとんとする。

「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族だ平民だということに、あまり拘らないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」

 興味津々と顔に書いて尋ねるキュルケに、差しつかえありますと口に出しては言わないが、態度には出してロングビルは曖昧に微笑む。
 しかし、そういう態度を取られるとかえって知りたくなるのがキュルケという少女である。

「いいじゃないの。教えてくださいな」

 にじりよるキュルケだったが、その肩をルイズが掴んだ。

「よしなさいよ。昔の事を根掘り葉掘り聞くなんて」
「暇なんだもの。おしゃべりくらいしててもいいでしょ」

 つまらなそうに鼻を鳴らす。黙って馬車に乗っているだけの時間を、何時間も続けられる忍耐はない。本を読んでいられれば幸せな親友と
は違うのだ。とタバサを見て。しかし、この揺れる馬車の上で本なんか読んでてよく酔わないなと感心する。

「暇なら、作戦でも考えればどうだ?」

 そう言ってきたのは、ルイズの使い魔だった。
 キュルケは、この男に対する警戒心をまだ解いてない。どうやらロングビルも、なにやら警戒しているらしい。タバサは、どう考えている
のか分からない。ルイズは、信用しているらしい。どういう意図があっての言葉なのかと、探るように「作戦って?」と問いかけてみる。
 問いかけられたアプトムは、その言葉に呆れる。彼らは、盗賊の捕縛に行くのだ。相手が黙って捕まってくれるはずもなくなく、おそらく
は戦闘になるだろう。となれば、あの巨大なゴーレムをどう攻略するかの作戦を立てるのは必須である。
 もっとも、それ以前に隠れ家だという廃屋にフーケがいる保証などない。というか、まずいないだろうとアプトムは思っているが。

「いないって、どうして?」

 そう尋ねるのは、この一行の中でただ一人アプトムに含むところのないルイズ。
 そんな彼女にアプトムは答えて告げる。
 ようするに不自然なのだ。学院の宝物庫が襲われた翌朝に、森の廃屋に入っていった黒ずくめの男を見かけたという農民が現れる。フーケ
の正体が男か女かも分かっていないのに、馬で四時間もかかるような距離で見かけられただけの男を、大した根拠もなくフーケと関連づけて
考える。

「つまり、どういうこと?」

 ルイズの問いに、偽装だ。とアプトムは答える。
 おそらくは、その農民と言うのは追っ手を遠ざけるためにフーケに金を貰って偽りの証言をしたのだろう。もしくは、そんな農民は最初か
らいなくて、フーケの仲間か手下が変装してロングビルを騙したとも考えられる。

「仲間か手下ですか? フーケに仲間がいるだなんて聞いた事がないのですが……」
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:46:56 ID:bDrzm1Pq
おお、作戦タイムか支援。
447ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:48:03 ID:Nk7nHtWC
 なんだか引きつった表情で、ロングビルが言う。お前は騙されたのだと言われたようなものなのだから当然か。

「聞いた事がないからといって、いないと決め付けるのは早計だ。盗みに入るという行為には、調査、計画、準備、実行、逃走の段階を踏む
必要がある。それを全て一人でこなしていては必ず破綻がくる。国中で有名になっていて、いまだ破綻してないということは、単独犯ではな
いと考えるべきだ」

 いや、単独犯なんですけどね。などと言うわけにはいかないミス・ロングビル。別名、土くれのフーケは引きつった顔のまま、そうですか
と相槌を打つ。

 ルイズからは感心の、キュルケからは何故そんな事に詳しいのかという疑いの眼を向けられながらアプトムは、それにと続ける。
 仮に、この考えが的外れなものであったとしても、やはり未だにフーケが廃屋にいる可能性は低い。フーケが、廃屋で寝泊りしていたり、
そこを盗みの拠点としていたなら、その黒ずくめの男は何度も目撃されていただろうし、それでは農民はそこを廃屋とは言うまい。となれば、
フーケは一時的に廃屋に立ち寄っただけと考えられるし、そうでなくても仮にも怪盗と呼ばれる者が農民に姿を見られた事に気づかなかった
とは考え難い。
 さて、ここで問題だ。徒歩で半日。馬で四時間かかる場所で目撃されたフーケと思しき男の情報が学院に届くまでの時間と、一行が廃屋に
着くまでの時間を足すと何時間になるだろう。そして、その間フーケが待っていてくれる可能性はどれほどあるだろう。

「じゃあ、わたしたちって無駄足?」

 意気込んで出かけたら、フーケはとっくに逃げた後でした。というのは、さすがに情けなさすぎではないか。

「とは限らない」

 続けて、アプトムは言う。廃屋にまっすぐ向かったならば無駄足になるだろうが、それならばフーケらしき男を目撃したと言う農民に会え
ばいい。
 情報が偽りなら、その農民はフーケかその仲間と接触しているか、フーケの仲間そのものであるし、偽りでなかったとしても、何か新しい
情報を持っている可能性もある。つまり、先に行くべきは、廃屋ではなくロングビルが話を聞いたという農民の所である。
 言い切ったアプトムに、ロングビルがなんだか慌てたように言い立てる。

「いや、でも、もしかしたら、まだ廃屋にいるかもしれないし、それなら急いだほうがいいのでは……」
「すでに何時間も経っている。いまさら、廃屋に急いで行っても何も変わらないだろう」

 でも、その、となにやらゴニョゴニョ言っているロングビルに助け舟を出すように、今度はキュルケが口を開く。

「でも、一時的にでも廃屋にいたのなら、何か手がかりが残っててもおかしくないんじゃない?」
「そうです。それに、ひょっとしたら、廃屋には盗んだ破壊の杖を隠すために立ち寄ったという事も考えられます!」
「その可能性は低い。それに、そうだとしても、それなら後回しにしても問題ない」

 もっともだなあ。とルイズは思ったが、絶対にフーケを捕まえて破壊の杖を取り戻さなくてはならないと考える彼女は、この絶望的な状況
から、アプトムの推理では、もう逃げてしまっているフーケを捕まえる手段を模索しなくてはと頭を空回りさせる。

「二手に分かれればいい」

 そう言ったのは、読書に集中していて話を聞いていなかったと思われていたタバサである。

「農民に話を聞くのは重要。でも、できれば廃屋も調べておいたほうがいい。なら、二手に分かれたほうがいい。フーケがもういない可能性
が高いなら戦力の分散も気にしなくていい」
「分散して、フーケがいたら? 相手はトライアングルクラスのメイジらしいから、分散してたら返り討ちにあうかもしれないわよ」
「すぐに逃げて、もう一方に知らせに行く。シルフィードが追いかけてきてるから、あの子に乗ればすぐに合流して追いかけられる」
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:50:22 ID:42OwQcnm
>>442
おっと間違えちまったぜ&支援
449ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:50:33 ID:Nk7nHtWC
 キュルケの問いに答えて名前を挙げたシルフィードとは、タバサが使い魔として召喚した風竜の幼生で、これに乗れば、馬などよりはるか
に速く移動することができる。
 最初から馬車じゃなくて、それに乗ってくればよかったんじゃないかとルイズは思ったが、さすがに人間五人が乗るのは窮屈だしシルフィ
ードも嫌がる。ついでに言えば、タバサはキュルケの付き合いで来ただけで捜索に積極的ではなかった。

「それじゃ、そうしましょ。それで、どう分かれようか?」
「では、わたくしは廃屋の方に……」

 まとめに入ったキュルケにロングビルが言うが、アプトムが待ったをかける。

「フーケらしき男を見た農民を知っている、唯一の人間が廃屋の方に行ってどうする?」
「しかし、もし廃屋に破壊の杖が残されていたとしたら、わたくしがいかないと、それが破壊の杖だと分かりませんし……」
「ああ、わたし分かるわよ。宝物庫の見学したとき見たから」

 そう言ったとき、キュルケはうなだれるロングビルから、ほとばしる殺気を感じたような気がしたが、すぐに気のせいだと思い忘れた。

「わたしたちは、廃屋に行きましょ」

 少しでも、フーケと直接対峙できる可能性の高い廃屋に行きたいルイズは、そうアプトムに言うが断られる。
 廃屋の方には、風竜とその主であるタバサが行かなければならない。本当にフーケがいた場合、すぐに合流するためには風竜に乗って移動
しなくてはならなくなる廃屋に行く方の人数は少ないほうが望ましい。というのがアプトムの考えであるし、可能性は低いが廃屋のことを証
言した農民がちゃんといてなおかつフーケの仲間であるということもありうる。その場合、戦闘になるかもしれないので、ロングビルを一人
で行かせるわけにはいかないだろう。
 なるほどと納得したルイズは悩んだ後、廃屋に行く方を選ぶ。
 フーケと直接対決して、自分の力で捕まえたい。そして、自分をゼロと馬鹿にした皆を見返したいという救いがたい心の赴くままに。もち
ろん、どうやって捕まえるのかという考えはない。



 二手に分かれた後、シルフィードに乗って深い森に入ったルイズたち三人は、開けた場所にある廃屋を見つけた。
 元は、木こり小屋だったらしいそこは、なるほど人が住んでいる痕跡がなく、長らく誰かが、そこを生活の場にしたことなどないのだろう
事が伺える。

「あれが、ロングビルの言ってた廃屋ね。ホント、アプトムの言ったとおり誰もいなさそうね」

 忌々しそうに言うルイズを気にした様子のないタバサは、シルフィードに地上に降りるよう命じる。

「汚い小屋ねえ」

 調査するには、そこに入らなくてはならないのだが、一歩でも足を踏み入れれば埃が舞いそれを呼吸しなくてはならないであろうそこに入
るのは、キュルケにはためらわれた。
 だが、タバサの方は、その手の忌避がなかったので、無造作に小屋に入って行った。ルイズは、見張りを買って出たので小屋には入らない。
 そして、小屋のチェストから、破壊の杖はあっさりと発見された。

450ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:53:03 ID:Nk7nHtWC
 狐につままれたような顔のルイズたちがアプトムたちに合流したのは、それからすぐのことである。
 実際彼女たちは訳がわからなかった。偽の情報かと疑いつつも行った先には、人の姿など影も形もなく、盗まれた品物だけが隠すでもなく
無造作に仕舞われていた。
 フーケがいるのではないかと、少し周りを調べてみたが、やはり人の気配などはない。
 合流してみれば、ロングビルが話を聞いたという農民は見つからず、他の農民に尋ねてみても、この辺りにそんな農民は住んでいないと言
われた。
 それはロングビルが話を聞いた農民というのが、フーケの仲間だったのだろうという推測が事実であろうという証明になったわけだが、そ
れで廃屋に盗品を置いておくというのも意味が分からない。
 一体なんだったんだろうと、一行は首を捻りながら学院に帰ることになったのであった。

 その道中、破壊の杖を見たアプトムが少し眉をひそめ、同じくロングビルがアプトムを強く睨んだのだが、幸いにも、どちらにも誰も気づ
かなかった。




「ふむ……。つまり、なんじゃね。フーケがいるという廃屋に行ってみたら、破壊の杖だけがあってフーケは影も形もなく、ついでにミス・
ロングビルが話を聞いた農民もいなくなっていたというわけかね?」

 学院長室にて、帰ってきた一行の報告を聞いたオスマンが、納得がいかないとばかりに首を捻る。
 しかし、納得がいかないのは自分たちも同じなので、ルイズたちも釈然としない表情で頷く。

「フーケは、一体なにがやりたかったんじゃろうのぉ?」

 オスマンが誰にともなく呟くが、それはルイズにもキュルケにもタバサにも分からない。ホントにねえ、私は何がやりたかったのかしら。
と心の中で呟く虚ろな目の女性が約一名いたが、幸い誰にも気づかれることはなかった。

「まあ破壊の杖が帰ってきただけで良しとしよう。今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この騒ぎのせいで、一時は中止にしようかとも思った
が、予定通りに執り行うとしよう」
「そうでしたわ! 忘れておりました!」

 すっきりしない表情をしていたキュルケの顔が輝く。良くも悪くも気持ちの切り替えの早い娘なのだ。

「行くわよ。二人ともわたしが、可愛くコーディネートしてあげるわ」
「ちょっ、なんで、わたしまであんたなんかに……」
「いいから、いいから」

 馴れ馴れしく手を引くキュルケにルイズは文句を言うが、彼女はニコニコ笑うだけで取り合わず、ルイズとタバサの手を取り学院長室を出
るときになって、思い出したように礼をして出て行く。

「うむうむ。せいぜい着飾るといい」

 こちらもニコニコと笑うオスマンは、何故かルイズたちについていこうとしないアプトムに気づき、片眉を動かすとロングビルにも行くよ
うに声をかけた。

「しかし、わたくしには仕事が……」
「かまわんよ。それならミスタ・コルベールにやらせる。男の眼を楽しませるのも美人の仕事じゃて」

 え? と驚くコルベールを無視してカラカラと笑うオスマンに、ロングビルは、ため息をついてルイズたちに続く。
 女性たちの足音が遠ざかったことを確認するとオスマンは真面目な顔になってアプトムに顔を向ける。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:54:02 ID:72RrzkA1
こう来たかw
マチルダさん生存バンザーイwww
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:55:07 ID:bDrzm1Pq
ゴーレム戦がなしってのも珍しいかも知れないな支援
453ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:55:33 ID:Nk7nHtWC
「なにかワシに聞きたいことがおありのようじゃな。他の人間には聞かれたくない種類のな。コルベールくん席を外したまえ」
「ミス・ロングビルの仕事を押し付けておいて、話も聞かせないとかいいやがりますかジジイ」
「おまえさんだって、着飾ったミス・ロングビルを見たいじゃろうが。それで我慢しとけい」

 ぶちぶちと文句を言いながらコルベールが出て行った後、アプトムが口を開く。

「あの破壊の杖は、どうやって手に入れた?」
「なんじゃと?」
「あれは、俺が元いたほ……世界の兵器だ。あれが、どうしてここにある?」

 一瞬、星と言いかけたがそれでは通じないかもしれないので言い直し、自分は、この世界の人間ではない。ルイズの召喚で連れてこられた
別の世界の住人であると、アプトムはオスマンに説明する。

「なるほど、事実は伝説よりも奇なりじゃな。あれは、ワシの命の恩人の持ち物じゃよ」
「どういうことだ?」

 三十年も前の話である。森を散策していたオスマンはワイバーンに襲われ生命の危機に陥った。そこに傷ついた男が現れて、もう一本持っ
ていた破壊の杖を使いワイバーンを倒した。
 オスマンは傷ついた男を学院に運び込み治療を施したが、看護の甲斐なく男は息を引き取り、男が使った一本を共に墓に埋め、もう一本を
恩人の形見とし破壊の杖と名づけて宝物庫に保管した。

「彼はベッドの上で、死ぬまで『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と言っておったよ」
「そいつも、俺と同じように召喚されてきたのか?」
「それは分からん。事情を聞いている時間も余裕もなかったのでな」
「そうか……」
「それとじゃ」

 オスマンはアプトムの左手を取り、その甲を示す。

「おぬしのこのルーン。これはガンダールヴ。伝説の使い魔の印じゃよ」
「伝説だと?」
「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる『武器』を使いこなしたそうじゃ。一度試してみるといい」

 つまり、デルフリンガーを握ってルーンが発動したのは、あれが武器だったからで、別に特別な物だったからではないということ。もっと
も、そんなことが分かっても彼には意味がない。アプトムの望みは地球に帰ることなんだから。

「もしかしたら、おぬしがこっちの世界にやってきたことと、そのガンダールヴの印は、なにか関係しているのかもしれん」

 その辺りは調べておいてやろうと、オスマンは言う。
 彼は悔やんでいた。三十年前に恩人に何もしてやれなかったことを。だから、これは代償行為。
 三十年前は恩人を救うことができなかったが、代わりに同じように違う世界から来た異邦人は、元の世界に帰れるように手伝いをしてやろ
うという自己満足。
 そして、アプトムは、それを受け入れた。


454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:56:51 ID:72RrzkA1
淡々としてるなぁ支援
455ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 18:58:04 ID:Nk7nHtWC
 アルヴィーズの食堂は上の階が大きなホールになっていて、舞踏会はそこで行われていた。
 そこでは、着飾った生徒や教師が歓談しダンスを踊っている。
 そんな中で、ルイズは一人つまらなそうに壁の花になっていた。
 ホールの中央ではキュルケが多くの男性に囲まれて談笑している。ルイズに声をかけてくる男もいるが、今の所ルイズには男にちやほやさ
れて喜ぶ趣味は無い。タバサのように、テーブルに盛られた料理を制覇しようと、食事を続ける気もない。
 そんなわけで、ルイズは暇をもてあましていた。
 アプトムでもいればいいのにとも思うが、舞踏会に使い魔を連れて行く奴がいるのか? と本人に断られてしまった。
 あの使い魔は、今なにをしているのかなぁと思っている時、件の使い魔は学院の敷地外にいた。



「あの。わたくしに話があるというのは、いったい……」

 そう尋ねたのは、パーティドレスに着替えたミス・ロングビルである。彼女は舞踏会が始まる前に、アプトムに呼び出されて学院から少し
はなれた森の中にいた。
 用件は、フーケのことでいくつか確認したい事があるから。
 そんな用件で学院外に呼び出すなど、無視してもよさそうなものだが、何故か、ロングビルは魔法を使って衛兵にも見つからないようにし
て城壁を越えてきていた。
 そんな彼女に、同じように衛兵に見つからずに出てきたアプトムは、ロングビルではなく左手に持った鞘に収まったままのデルフリンガー
と手の甲のルーンを見ながら口を開き。

「フーケ。おまえは、なにがしたかったんだ?」

 そんなことを言った。

「あの……。なにを言ってるんですか?」
「『破壊の杖』を盗んだと思ったら、自分で隠し場所を教える。生徒三人が取り返しに行くと言ったら自分もついていく。何がしたいのかと
監視していたら、何もしないで帰ってくる。何がしたかったのか、さっぱり分からん」
「だから、あなたは何を言ってるんですか?」

 困惑し問いかけるロングビルであったが、アプトムは気にせずに続ける。

「言ってなかったが、俺は目がよくてな。おまえが、宝物庫の壁を破壊したゴーレムの肩に乗ってた時に顔を見ている」
「……フーケはフードで顔を隠していたはずですけど?」
「あの時は、日が暮れて普通でも見通しが悪かった。そんな中で深くフードを被っていては、盗賊と言えどゴーレムを操ることも宝物庫で目
的のものを見つけることも難しかった。だから、お前は顔を隠しきれていなかった」
「その暗さとあの距離で顔が見えたと? ミス・ヴァリエールには、黒いローブを着ていたとしか分からなかったはずですが」
「言っただろう。目がいいと」
「……もし、あなたの言う事が本当だったとして。どうして、そのことを今まで話さなかったんですか?」

 話していれば、わざわざ廃屋までいく必要などなくフーケを捕らえられていただろう。そう言うロングビルにアプトムは、自分の方が怪し
いからだと答える。

 魔法を一度も成功させたことの無い『ゼロのルイズ』が召喚した、前例の無い『平民』の使い魔。その使い魔は、ドットやラインとはいえ
メイジを圧倒する戦闘力を持ち、主が授業を受けているときは、どこで何をしているのか分からない。そして、その男がやってきて一週間後
には『土くれのフーケ』という盗賊が現れて、その場にも男は居合わせた。

「自分で言うのもなんだが。ここまで怪しい奴は、そうはいない」
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 18:59:53 ID:72RrzkA1
怪しさ大爆発だァーッ!!支援
457ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 19:00:33 ID:Nk7nHtWC
 こんな怪しい男が、学院長秘書を指してフーケだと言って誰が信じるだろう。だから言わなかったのだ。

「なるほどね。それで私をフーケと知っていたあんたは、ご主人様に私が悪さをしないか監視してたってわけかい?」
「そうなるな」

 アプトムの答えにロングビル、フーケは嗤う。つまり、自分は道化だったということ。

「ふざけんじゃないよ!」

 怒りと共に言葉を吐き出すと、彼女はルーンを唱え杖を振る。
 それは、彼女がもっとも得意とする巨大ゴーレムを作る魔法。土から生まれたゴーレムは創造者の意思に従い拳を振るいアプトムを襲う。
 だが、アプトムも黙ってゴーレムに殴られはしない。鞘を捨てデルフリンガーの錆びだらけの刀身を抜き、そこから飛びずさる。

「そんなボロ剣で私のゴーレムに勝てると思ってるのかい!?」

 馬鹿にしたように叫ぶフーケにアプトムは答えない。その余裕が無い。
 彼の左手に刻まれたルーンには、その身を戦闘に最適化させ身体能力を向上させる機能がある。その結果ゾアノイドに対しては獣化を促す
わけだが、獣化を抑えた場合、身体能力の向上だけを得られるかもしれない。そう思ったからここにデルフリンガーを持ってきた。その予想
は当たっていたのだが、思った以上にその身を獣化させようと干渉してくる力が強い。干渉を遮断しすぎれば身体能力を向上させる恩恵も遮
断することになるし、ルーンが発動している間は常に獣化を抑える方に意識を回さなくてはならなくなる。

「つくづく使えない能力だ」

 呟きながらゴーレムの拳を避け、その腕に剣を振るい続ける。剣はゴーレムの腕を何度も切り裂くが切断するには及ばず、その傷はすぐに
塞がってしまう。
 デルフリンガーは長い刀身を持つ剣だが、巨大なゴーレムの腕や足を切断したければ、刃を完全に埋めるくらいはしなくてはならないだろ
う。現在のルーンの干渉に抗っている状態では難しい。いっそ剣を捨ててしまうか? いや、それよりも……。そう思った時、足がぬかるみ
に沈んだ。
 そんな物は無かったはずだと思ったアプトムに、フーケの嘲笑が投げかけられる。

「油断したね! 私は土メイジだよ。ゴーレムを作るだけが能じゃないのさ」

 つまり、これはフーケの作った罠。そう気づいたときには、もう遅い。膝まで沈んだ泥は、固まりアプトムの動きを封じる。
 アプトムの力なら、少しの時間があれば、そこから抜け出すのは難しくない。だが、そんな少しの時間をすらフーケは与えるつもりが無い。
 動きを封じられたアプトムに、三十メイルの巨大ゴーレムが、その質量の全てを込めた右拳を振り落とした。
 静かな夜であれば、学院の人間が異常を感じたであろう轟音が響き土煙が舞う中、ドレスがよごれちまったね。とフーケは笑う。
 それは、勝利を確信したがゆえの笑み。あの男がどれほどの力を持っていようと、あの質量で潰されて生きていられる生物などいない。そ
う思ったから。
 だが、砕かれたのはゴーレムの拳。その生き物は、傷一つなくそこに立っていた。

「なんだよ。あのバケモノは」

 そう呟く先にいるのは、先ほどまで人間の姿をしていたはずの者。二メイルを超える身長の人間に、昆虫の黒い甲殻を装甲に見立てて隙間
なく貼り付けたような怪人。
 彼女の妹が召喚した少年が変身した怪物よりは小さく見えるが、その戦闘力は怪物に劣るものではあるまい。
 まずい。とフーケは思う。あの男は今まで正体を隠し本気を出していなかった。本気を出されては巨大ゴーレムでも勝てる保証は無い。い
や、さっきの一撃で殴り負けたことを考えればもう勝ち目はないと考えたほうがいい。
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:02:07 ID:bDrzm1Pq
って、ゴーレム戦がないと思ったらフェイントだぁー! 支援。
459ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 19:03:03 ID:Nk7nHtWC
「逃げようなどと考えるなよ。お前の出せる全力を出してかかって来い」

 内心の考えを読まれ、フーケは背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。
 勝ち目がないのが分かっているのに逃げることが許されないなどと、それはなんという罰ゲーム。
 だが、怪人のいう事を無視したところで、逃げ切るのは無理なのだろう。ならば、全力で怪人を倒すしかない。
 フーケは、ゴーレムに命じ攻撃をしかけさせ、自身もアプトムやその周囲に魔法をかけて援護をする。
 土ゴーレムの拳では、あの怪人に傷を負わせることはできない。ならば、と砕かれた拳を再生させ、それを錬金で鋼鉄に変える。
 だが、当たらない。変化して正体を現した怪人はパワーだけでなくスピードも増している。それに、拳だけを鋼鉄に変えるとバランスが悪
くなって動く相手を上手く捕らえられない。
 ゴーレムの拳は空を突き、何もない地面を陥没させるだけ。
 踏み潰す。そんな事を思いつき実行してみたが、そんな緩慢な攻撃が当たる相手ではない。
 足元を錬金で泥に変える作戦ももう使えない。見抜かれているからというのもあるが、怪人は背中に昆虫のそれのような翅を持っていて、
それを開き自由自在に空を飛ぶ。そんな相手に足元への攻撃がなんになる。ゴーレムは当たらぬ攻撃を繰り返し、逆に怪人の拳や蹴りをくら
い何度も砕かれる。
 ゴーレムは、砕かれるたびに、その部分を再生させて怪人に殴りかかる。そんな事を繰り返すうちに、怪人は地に降り足を止める。
 怪人の意図がどこにあるかなどフーケは知らない。知る必要も感じない。足を止めた怪人に鋼鉄の拳を振り下ろさせる。そして、怪人は……



「ちくしょう……」

 漏れる呟きは、絶望の色に深く染まっていた。
 怪人が足を止めたのは、鋼鉄の拳に正面からぶつかり、それを砕く意思のゆえ。怪人は、鋼鉄の拳に自身の拳を打ちつけ、鋼鉄の拳はその
一撃に耐えたが、それを支える手首が耐えられず砕け落ちた。
 最初から勝ち目などないと分かっていた闘いではあった。だが、彼女は負けられない。彼女には養わなければならない家族がいる。盗賊な
どをやっているのも、そうでもしないと、それだけの金が手に入らないからだ。いや、学院長の秘書をやり始めてからは、盗賊を続けなくて
なんとかやっていけるだけの給料が入っているのだが、とある事情から貴族を嫌っている彼女の心は、貴族の通う学院で働く自分に嫌悪感を
感じてしまう。ムカつくセクハラ学院長もいるし。こんな所で捕まるわけにはいかない。いや、正体を見せたという事は、怪人は自分を殺そ
うとしているのかもしれないが、それもごめんだ。
 だから、彼女は精神力を振り絞る。譲れぬ想いがあるのだから。
 何故か、この時フーケの眼に、目の前の怪人が妹の召喚した使い魔の変じた怪物と重なった。同じく人の姿から変じたものだとはいえ、そ
の姿には大きな違いがある。あの怪物に比べてこの怪人はスマートで洗練された姿であると感じられるもので、また理性的である。それでも、
両者は同種のものであると彼女は感じ。そして、排除しなくてはならないと確信する。
 時に、強い感情はメイジのランクを引き上げるのだという。フーケの負けられないという想いが彼女の実力を上げたのだろうか。拳だけで
は足りないというのなら全て鉄に変えればいい。そう考えた彼女が、残る精神力を振り絞った魔法はゴーレムの全身を鉄に変えた。自分のた
めに、妹のために。
 それでも、結局の所、結果は変わらなかった。土が鉄に変わっても怪人には同じことだった。怪人との、圧倒的な実力差が縮まることはな
かったのだ。
 一方的な、しかし決着のつかない戦いが、フーケの主観で何時間続いただろう。
 決着がつかないのは、フーケの実力とは関係がない。ただ単に、怪人がフーケを相手にせずゴーレムだけを攻撃していたから。怪人に戦い
を終わらせる気がなかったから続いていた。ただそれだけの茶番。

 徒労感というのは、これの事なんだろうね。とフーケはため息と共に吐き出す。正体を現した怪人を相手にフーケの攻撃はまったく意味を
成さなかった。一時の激情もすでに絶望に塗り替えられている。
 ゴーレムの攻撃は怪人が自ら受けようと考えない限りかすりもせず、怪人の拳や蹴りは容易くゴーレムを砕く。援護の魔法を使う精神力な
どもうない。どのみちゴーレムの拳を正面から受けて破壊するような相手に有効な魔法などフーケにはないのだが。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:05:29 ID:wA8RuzPb
支援
461ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 19:05:33 ID:Nk7nHtWC
「こんなものか」

 そんな呟きが聞こえたと思った時、怪人は右腕をゴーレムに向けていた。
 右下腕部の装甲が開くと、そこから無数の何かが飛び出しゴーレムの全身に着弾する。
 地球の人間が見ればミサイルだと思うだろうそれは、戦闘生物であるアプトムが、体内で生体ミサイルを精製するゾアノイドを吸収し手に
入れた能力。
 生体ミサイル群は、着弾と共に爆発しゴーレムを跡形もなく破壊しつくす。

「なんだよ。いまのは」

 呆然と呟くフーケに、アプトムは自分の持つ能力の一つだと答える。それは、つまり今の攻撃はまだ、この怪人の全力ではないということ。
 こんなバケモノにケンカを売った自分の馬鹿さ加減には呆れるしかない。

「もう。終わりでいいんだな」

 もう精神力も打ち止めなので頷くと、アプトムは獣化を解き元の左の顔に傷跡を残す男の姿に戻る。

「それで、お前は何を考えていたんだ?」

 それは、最初に言われた問いだったが、一瞬何を聞かれたのか分からず困惑する。
 アプトムが尋ねたフーケの行動には、大した理由はない。破壊の杖を盗んだのはいいが、使い方が分からない。自分で使うにしても売るに
しても使い方が分からなくては、意味がない。そこで考えたのが学院関係者に使わせること。捜索隊に使い方を知っている者がいればゴーレ
ムをけしかければ使うだろうから、それをみて覚えればいい。いなければ全員始末して次を持つ。それだけの理由。

「馬鹿な事を考えたものだな」
「まったくだよ。正体を知ってる奴が捜索隊にいたんじゃ、なんにもなりゃしない」

 投げやりに言うと、そうではないと返ってくる。いわく、アプトムは破壊の杖の使い方を知っているのだが、あれは一度しか使えない。一
度使えば何の役にも立たなくなるのだから、一度使わせようというフーケの作戦は、そこで破綻している。

「じゃあ、私のやったことは……」
「骨折り損のくたびれもうけというやつだな」

 それだけ言うと、もう用事は済んだとばかりにアプトムは立ち去ろうとする。

「ちょっと待ちなよ。私を捕まえなくていいのかい?」
「なぜだ?」

 不思議そうに、アプトムが問う。
 結局の所、フーケが自白したといっても、この場にいてそれを聞いたのがアプトムだけである以上、そこに意味は無い。何しろさっき言っ
たように、アプトムはロングビルなどよりはるかに怪しいのだから。それに、アプトムにはフーケがこの先も盗賊を続けようがどうしようが
どうでもいいのである。捕まえようなどと思うはずがない。
 ここに、彼女を呼び出したのは、単に確認したかったことがあっただけである。

「私が、何を考えてるのを知りたくて呼び出したってわけ?」
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:05:35 ID:72RrzkA1
相手が悪いってレベルじゃない支援
463ゼロと損種実験体 6話:2009/01/11(日) 19:08:03 ID:Nk7nHtWC
 それこそ、どうでもいいのではなかろうかとフーケは思う。そして、その通りアプトムにとって、それはついでに聞いてみただけのもので
しかない。
 アプトムが確認したかったのは、トライアングルメイジの実力である。自分の役目は主である少女を守ることであるし、今後のことを考え
ると知っておいて損はないだろう。もう一つ、ガンダールヴのルーンの能力の確認もあったが、そちらは言う気がない。

「じゃあ、あんたは私の事を学院に報告する気はないって事」
「そんなことをして、俺になんの得がある?」

 あっさりと答えるアプトムは、しかしもう学院の物を狙うのは止めておけと告げる。さすがに犯行現場に居合わせてしまえば、ルイズが黙
ってないだろうから自分も捕まえる側に回らなくてはならないから。
 もう一つ、地球に帰ることに協力してくれると申し出た学院長に迷惑をかける行為を見過ごすわけにはいかないという理由もある。本人は
気づいていないが、彼には義理堅いところがある。

「もう一つ質問。あんたは変化できることを隠してるんだろ? 私がこのことをバラしたらどうするつもりだい?」
「自首でもする気か?」

 アプトムの獣化のことを話そうと思えば、彼女は自分がフーケである事を話さなくてはならなくなる。そこまで馬鹿ではないだろう?
 そう言って今度こそ立ち去ろうとするアプトムに、またフーケが声をかける。

「ちょっと待ちなよ。あんた、その格好で学院に戻る気かい?」

 ゴーレムとの戦闘で獣化したアプトムは、現在全裸であった。

「そりゃあ、学院の警備はザルだけどね。それでも、万が一ってことがある。その格好が見つかったら、あんたもう学院には置いてもらえな
いよ」

 だから、自分が着替えを持ってきてやるとフーケは言う。
 何故フーケが、そんな事をする気になったのかと疑問に思ったが、どうでもいいかとアプトムは思い直す。相手の考えなどというものを考
えていては深入りしてしまう。それは、地球に帰ることを最優先にしている彼には好ましくない。
 フーケの方はといえば、なんだか馬鹿馬鹿しい気分になっていた。自分の計画がまったく意味の無いものだったり、打倒すべきバケモノが
自分のことなど眼中になかったりで、気が抜けてしまっていた。だからまあ、この男から会話で一本取れればそれでいいやと投げやりな考え
になっていたのだった。
 かくして、二人は森の出口まで一緒に歩き、そこで分かれてフーケはアプトムの着替えを取りに行き、アプトムはそれを待つことになる。



 そして、二人の立ち去った少し後の森に、青い翼を持つ風竜が舞い降りた。
 シルフィードという名を持つこの風竜は、主である少女と一緒にいるとき以外は常に暇をもてあましていた。
 暇をもてあまし、空を飛んでいた時、彼女は森の方から爆音を聞いた。なんだろうとそこに行ってみると、そこには人の姿がいないのに声
が聞こえた。
 かくれんぼでもしているのかなと舞い降りたとき、その声の主と彼女は出会った。

「ひでーよ。相棒。いくら素手で充分だからって戦闘中に捨てたあげく、忘れていくなよ。杖の捜索の時は置いて行くしよー」

 それはデルフリンガーと名乗る剣。蔑ろにされすぎて口が軽くなっているこの剣と、風竜の出会いが何をもたらすのか、今はまだ誰も知ら
ない。
464ゼロと損種実験体:2009/01/11(日) 19:10:22 ID:Nk7nHtWC
投下終了。支援に感謝。
本当は……、


「いやよ! あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしをゼロのルイズとは呼ばないでしょ!」

 ルイズの悲痛な叫び。それは、彼、アプトムとその仲間たちであったロストナンバー・コマンドがガイバーに挑んだときに心に浮かべた想いと同じではなかったか?
 そう思ったとき、彼の心は決まった。少女が自分を召喚したのはあるいは運命だったのかもしれない。

「俺は、お前の使い魔だ」

 唐突なアプトムの言葉に、ルイズは困惑する。しかし、彼はかまわず言葉を続ける。

「俺は、お前の魔法で呼び出された者。俺が倒す者は、お前が魔法で打倒したと同じだと知れ!」

 それは叫び。それは咆哮。その声と共に彼は獣化する。かつて、超獣化兵と呼ばれた者たちを融合捕食して手に入れた姿。アプトム・フルブラストへと。


というのを書くつもりだったんですが、何故かこうなってました。
しかし、この戦闘は必須だろ物語的に。と思ったので最後、無理矢理戦闘させてみたり。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:14:32 ID:72RrzkA1
投下乙です
何かキュルケがよりアプトムを危険視・敵視しそうな気が……
だけどルイズはキュルケがいくら言っても信じないだろうけど
(フーケを見逃しただけならともかく化け物に変身したってのは)

あとマチルダさん、今後もゾアノイド絡みで揉め事に巻き込まれそうだw
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:14:58 ID:bDrzm1Pq
アプトムの方、乙でした。

さすがアプトム、おマチさんのゴーレムに潰されても何ともないぜ!
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:15:37 ID:wA8RuzPb
GJ!!
自分はむしろテンプレ進行よりも新鮮でよかったと感じた
468ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:33:23 ID:i3vyKN8s
他に予約が無ければ、ゼロの花嫁第八話投下したいと思います
開始は19:40からです
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 19:40:50 ID:HwdyvHHp
素晴らしい。どんどんきたまえ。
470ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:41:35 ID:i3vyKN8s
ゼロの花嫁第八話「使い魔品評会」

学園生徒達が思い思いの時間を過ごす放課後。
しかし、二年生だけは何時ものように自由に振舞う事が出来なかった。
使い魔品評会と呼ばれるイベントが明日開催されるのだ。
使い魔の力量は術者に比例すると言われている。
そのお披露目は、魔法能力の多寡が重要視されるトリステイン貴族社会において、最も重要なイベントの一つと言えよう。
しかも今回は来賓としてアンリエッタ王女も観覧に来る予定なのである。
貴族の子弟である生徒達にとって、この場での失敗は断じて許される事ではなかった。



「行くわよサン!」
「わかったで!」
まずは序章、ルイズが豪快に振り回す剣を、燦は危なげなく受け流す。
ちなみにルイズは迫力を出す為に全力で剣を振るっている。
そんな一撃一撃を、金属であるデルフリンガーで受け流していながら火花一つ散る気配が無い。
まるで双方の剣が柳の枝であるかのような流麗な剣捌きであった。
「二幕!」
ルイズの叫びに合わせてサンの受け流し方が変化する。
正面を向いたまま剣を振るっていたサンが、その場で回転を始める。
ルイズの剣は変化が無い。つまり全力で剣を叩きつけ続けているという事だ。
それを回転による遠心力を用いて、一撃一撃力づくで跳ね返す。
くぐもった金属音が響き、火花が豪快に跳ね上がる。
「三幕!」
ここでサンが攻撃を開始する。
ルイズの剛剣と言って差し支え無い程の剣撃を跳ね返し、吸い込まれるようにルイズの急所へと向かうデルフリンガー。
それをルイズは右に左に体捌きのみでかわす。
攻撃は交互に、勝敗の天秤はどちらともつかない攻防である。
「ラストよ!」
ここでサンが更に剣速を上げる。
サン得意の回転による剣撃もより威力を増し、両者の動きが激しくなる。
舞台もぎりぎりまで使っての大立ち回り。
今度は交互に攻守は入れ替わらず、ある時はサンが、またある時はルイズがコンビネーションを駆使して相手を追い込む。
二人のボルテージが限界まで上がっていき、両者の視線が一瞬絡み合う。
「はっ!」
「せやっ!」
直後、両者お互いに背中を向ける。
無論戦闘終了ではない。
全身のバネを使い、真後ろを通って一回転し、あらん限りの力を込めた一撃を叩き込む。
二人の剣は中空にて激突し、甲高い音を立ててルイズの剣が半ばからへし折れる。
二人は満足気にお互い微笑を交わした後、見物人であるコルベールとタバサに一礼した。



「ルイズが品評会で何やるか聞いたタバサ?」
自らの使い魔サラマンダーに曲芸を仕込みながら、キュルケは隣に座るタバサへと問いかける。
「……ミスタ・コルベールからやり直しさせられてた」
最後の締めのアクションでキュルケが噴出した為、サラマンダーはバランスを崩して引っくり返る。
「ちょっと、品評会は明日よ。間に合うの?」
「わからない。多分今頃三人で相談していると思うけど……」
サラマンダーが恨みがましい目でキュルケを見上げると、片目を瞑ってそちらに謝るキュルケ。
「一体何やったのよルイズは」
「サンがルイズを相手役に剣舞を披露してた」
「へぇ、悪く無い案じゃない。何がまずかったの?」
「大貴族ヴァリエール家の娘がやる事じゃない」
当然思いつくべき事柄であったが、キュルケも失念していたようだ。
「あっちゃ〜、サン一人じゃまずいの?」
「いいと思う。けどルイズはその場合の出来に納得していない。かといって他にサンの相手が務まる人も居ない」
眉間に皺を寄せるキュルケ。
471ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:42:41 ID:i3vyKN8s
「う〜ん、ルイズが失敗するのは良い気味だけど、サンも一緒だしねえ。ちょっと様子を見て来ようかしら」
タバサはサラマンダーを見つめている。
「……魔法の精度が格段に進歩している。軍人との戦闘訓練の成果?」
いきなりまるで違う話題を振られて面食らうキュルケだったが、曲芸練習を見ている時から気になっていたのだろうと察する。
「実際に戦闘で用いるって事考えると、今までみたいな荒いやり方だとうまく行かないのよね」
「……そう。あまり必要なスキルだとは思わないけど」
タバサはサラマンダーを見つめたままだ。
キュルケはその横顔を横目に眺めながらさらっと話す。
「ふぅん。自分でやってみて気付いたんだけど、タバサの魔法もそういうやり方してるわよね」
やはりタバサは無言のまま。
試すようにキュルケも無言のままで居ると、すっとタバサは立ち上がる。
「夕食の時間」
これは先ほどの話題の変え方とは明らかに違うとキュルケは感じたが、話すのが嫌ならそれでいい、そう考え追求するのは止めにした。



澄み切った青空に花火が上がり、野外特設ステージには満員のゲスト達。
誰も彼もが今の生徒達にとっては雲の上の人だ。
自分の子供達の晴れ姿を一目見ようとわざわざ遠出してくる貴族まで居た。
そして何といっても今回の目玉はアンリエッタ王女である。
王位継承権第一位、押しも押されぬ王の後継者。いずれこの国の全てを手にする権威と権力の象徴。
そんな天上人を前に使い魔を披露するというのだ、生徒達の緊張は極に達していた。
誰も彼もが震えを収めるのに必死な中、何処吹く風とばかりに暢気におしゃべりをしているのはトリステイン貴族ではないキュルケとタバサである。
「みんな張り切って練習してきたみたいだけど……悪いけど優勝は私がいただくわ」
準備期間が短かった割に自信満々のキュルケ。
「……無理」
まさかキュルケの曲芸を見ているタバサから否定の言葉を聞かされようとは思いもよらず、目を見開いてタバサを見る。
無表情は相変わらずだが、そこからキュルケは何かを感じ取ったようだ。
「へぇ、自信あるんだ」
「審査員次第。でも多分無理」
キュルケは、タバサがここまで言うのだ、恐らく確信に近い何かを持っているのだろうと察する。
「敵に塩を送るとは味な真似してくれるわね……いいわ、もう一捻り加えようじゃない」
「キュルケは私の芸を見ていない。これでおあいこ。先生には私から言っておく、くれぐれも遅れないように」
キュルケが控え室から出ていくと、入れ替わりにルイズと燦が姿を現す。
「あら? キュルケは?」
「仕上げの確認」
この期に及んでの悪あがきに肩をすくめるルイズ。
「で、王女様はいらっしゃってるの?」
「貴賓席に居る。ルイズの準備はどう」
「万全よ! タバサには悪いけど今年は私達がいただくわ!」
ミスタ・コルベールの忠告を無視して剣舞をやるつもりなのだろうか。
そんな失礼な想像をしていたタバサだったが、当然口に出して言ったりはしなかった。



キュルケはその豊満な肉体を誇示するがごとく胸をそびやかしながら入場する。
衆目に臆する事無く、しかし登場したのはキュルケ一人である。
観客席から怪訝そうなひそひそ声が聞こえてくる中、高速で術を唱える。
キュルケの詠唱に応え、舞台のど真ん中に直径数メイル程の巨大な火球が生まれる。
観客達の中で火のメイジが注目したのは舞台自身だ。
未熟な技術でこれを作ったのなら、舞台への延焼は免れまい。
しかし、薄く焦げる程度に留まっているそれを見て、感嘆の息を漏らす。
その中心からキュルケの使い魔であるサラマンダーが、火の粉を撒き散らしながら飛び出してきた。
予想も付かない演出、そしてサラマンダーという優れた生物を使い魔としている事に皆が驚きの声をあげる。
目ざとい者は、この尻尾の特徴からこれが特に質の高い火竜山脈産である事に気付いていた。
舞台中に飛び散った火の粉が、たくさんの火の輪へと形を変える。
サラマンダーはその輪を、ある時は走り、ある時は飛びあがり、体を捻りながらくぐり抜ける。
息もつかせぬ連続アクションの後、サラマンダーは舞台中央前面にゆっくりと歩み寄る。
舞台の端まで来ると、首だけを曲げて上を見上げる。
472ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:43:26 ID:i3vyKN8s
固唾を呑んで見守る観客達の前で大きく息を吸い込み、炎の吐息ブレスを吐き出した。
空高くへと放たれた炎の弾は、ドラゴンのブレスもかくやという巨大な物で、遙か上空まで舞い上がった後、炎の大きさに相応しい大爆発を起こし、周囲一体に熱風が吹き荒れる。
観客達が風から身を守るべく上げていた腕を下ろす頃には、キュルケとサラマンダーは舞台に並んで立っていて、同時にぺこりと会釈をしてお披露目を終えた。



満足気に舞台袖に戻ってくるキュルケに、ルイズは苦々しい顔で文句をつける。
「最後のブレス、アレ貴女の魔法でしょ」
その隣に居たタバサが解説する。
「舞台の前に歩み出たフレイムに注目を集めておいて、自分はマントで口元を隠して詠唱する。フレイムのブレスと同時に魔法を放てるように」
フレイムとはこのサラマンダーの名前である。
「あら、やっぱりバレた?」
当のキュルケは悪びれもしない。
「審査員も数名は気付いていた。それも含めて演出と判断するか、ズルと取るかはその人次第。私は別に構わないと思う」
タバサは言いたい事を言うと、舞台へと向かう。

『目立つつもりは無かったけど、責任は取らないと』
決闘騒ぎ、これはタバサの判断ミスで起こってしまったと今でも彼女は悔やんでいるのだ。
そのせいで延期させられケチのついてしまった品評会。
これを例年通りの成功ではなく、例年に無い大成功にする事で、迷惑をかけた人達に少しでも何かを返したいとタバサは考えていた。
舞台に一人で姿を現すタバサ。
最初の構成はキュルケと一緒だ。
観客達も今度は何が出るかと、期待に満ちた目をタバサに向けている。
静まり返る会場、そこでタバサはすっと腕を上げる。

「きゅいーーーー!!」

そんな叫び声と共に、舞台の真裏から上空目掛けて飛びあがってきたのは青い風竜であった。
見栄えもさる事ながら、実用性の高さからも使い魔として人気のある竜だが、当然それに相応しい力量の持ち主の召喚でなくば応じる事は無い。
風竜は舞台の上を優雅に飛行した後、翼音を立てながら舞台に向かって急降下を開始する。
急な挙動に観客が驚く前で、翼を大きく広げて減速し、ちょうどタバサの頭上で浮力とのバランスを取る。
その足がタバサの両肩を掴む。
そして見る間に上空へと飛びあがっていく。
風竜の急上昇にもタバサは表情一つ変えず、合図を送ると、何と風竜は空中でタバサを離してしまう。
女性の観客が小さい悲鳴を上げる。
しかし、風竜は急旋回から真下への捻り込みでタバサの下へと回り込む。
タバサが空中で軽く両足を広げると、そこにすっぽりとはまるように風竜の首が差し込まれる。
安堵のため息が漏れる中、タバサの誘導に従って様々な飛行を観客へと見せ付ける風竜。
タバサを乗せた状態のまま、一回、二回とくるくる回転する技は、慣れた飛竜使いでも易々と出来ぬ技で、それを披露してみせたタバサに賞賛の声があがる。
ラスト、舞台に戻ってきたタバサはちょこんと風竜から降り、一人と一匹が同時にお辞儀をして締めとする。
観客達からは惜しみない拍手が送られた。

「……めちゃめちゃ本気じゃないあの子。何かあったのかしら?」
舞台袖で呆気に取られながらそれを眺めていたキュルケの呟きに、ルイズはしかし自信に満ちた表情を崩さない。
「ふん、それでもサンには敵わないわね」
タバサのステージが終わり、次はトリであるルイズと燦の番だ。
しかし燦の姿は未だ見えず。
473ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:43:56 ID:i3vyKN8s
不審そうにきょろきょろと周囲を見渡すキュルケは、舞台袖端の方で隠れながらもじもじしている燦の姿を見つける。
「あらサンそこに居たの。……ってどうしたの?」
その場を動かないまま、か細い声で答える燦。
「ちょ、ちょっと恥ずかしい……」
しかし燦の主張はルイズに一蹴される。
「何言ってるの。私の使い魔として恥ずかしくない格好してなきゃダメでしょ」
「で、でもルイズちゃん何時もの制服じゃし……」
「学園のイベントでこれ以外何着ろってのよ」
まだゴチャゴチャ言っている燦をルイズは強引に引っ張り出す。
そこに現れた燦の姿に、思わずキュルケは息を呑む。
薄い黄色を基調にしたスレンダーなデザインで、両の肩口は大きく開いており、胸元のレースは白。
足首まで隠れるたっぷりとした大きなスカートは、その縁が花をあしらったレースで覆われており、細く閉まったウェストとのバランスが好対象となっている。
つまる所、燦はドレスを着ていたのであった。
コルベールの助言を無視して剣舞で来ると踏んでいたキュルケは完全に呆気に取られるが、すぐに持ち直し、いや別方向に騒ぎ出す。
「かわいいっ! かわいいわサン! 何よどうしたのよこれ!」
「えと、えっと……ルイズちゃんがせっかくの晴れ舞台じゃからって……」
「最高よサン! 良くやったわルイズ! もうこれで品評会の結果ボロボロでも私が許すわ! というかもう満足! このまま私が持って帰っていい!?」
ルイズは不敵な笑みを崩さない。
「ふっふっふ、サンの発表が終わってから同じ台詞が言えるかしらね」
驚き振り返ってルイズの両肩を掴むキュルケ。
「何!? まだあるの!? コレ以上の何かがまだあるっていうの!?」
自分も参加者である事など忘れてしまったかのようにはしゃぐキュルケに、ルイズは「まあ見てなさい」と余裕の表情で燦と共に舞台へと向かう。

派手なステージが続いたせいか、会場も興奮冷めやらぬといった雰囲気が漂う。
使い魔のグレードもその練度も申し分無く、魅せるという事を意識した舞台構成に誰もが満足していた。
そんな品評会も遂に大詰め。これだけのものがトリではないというのだ。
嫌が応でも期待は高まる。
しかし観客達の期待を裏切り、次の演者は少女が二人。何の芸も無くただ歩いてくるのみ。
二人が並んでステージ中央に立つとルイズが誇らしげに紹介する。
「こちらがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、サンです」
緊張からか少し硬い表情で会釈する燦。
その肩を叩いてウィンク一つ。ルイズは舞台袖へと下がっていった。
残ったのはサンと呼ばれた人間の使い魔のみ。
会場がざわめく。さもありなん、人間の使い魔など聞いた事もない。
一体全体どういう事なのか、いぶかしむ観客達に一切の説明は行われず、燦は芸の披露を始めた。

最初は透き通るような高音、それをいともたやすく会場中に響き渡らせる声量は、とてもあのような体躯から発せられてるとは思えない。
ゆっくりと、しかし確実にその高音が動き出す。
時に奏でるように軽快に、時に詠うように朗々と、それらは少しづつ観客達に染み渡っていく。
メロディが始ると、それだけで全ての者が引き込まれる。
共に響く優しさを歌う詩のせいだ。
誰かの為に、何かの為に、この曲のようにただ静かにそうあり続ける女性の詩。
苦労と困難に満ちた生活の中に埋もれ消えて行く、純粋すぎるたった一つの想い。
誰もがかつては持っていたそれを、ただそれだけを歌った、単純でしかし、まっすぐな歌。
観客の何人かが目元を押さえる。
かつてそうであった自分が、それ故にぶつかった幾多の苦難を思い出しているのだろうか。
はたまた思いもよらぬ善意に助けられた美しい思い出に浸っているのだろうか。
善意の大きさは人それぞれ。
それでも、心にほんの一滴でも優しさが眠っているのなら、この歌は全てを拾い上げ、汲み取ってくれる。
474ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:44:25 ID:i3vyKN8s
そんな燦の歌だった。

歌が終わり会釈をする燦に拍手は無かった。
不安になって顔を上げた燦の視界には、呆然とこちらを見つめる観客達と、泣き崩れ、顔も合わせられない幾人かの姿が映る。
その意味がわからない燦は小首を傾げた後、舞台袖へと下がっていった。
割れんばかりの拍手が巻き起こったのはその少し後の事であった。

舞台袖に戻るなり燦に飛びつくキュルケ。
「最高だったわよ! もう可愛い! 可愛い! 可愛すぎるわサン!」
「ちょっとキュルケ! それは私の役目よ! 離れなさいってば!」
ムキになって抗議するルイズを尻目に燦に頬ずりしているキュルケ。
タバサは既に席を外していた。
誰にも見られないだろう場所まで逃げると、そこで堪えきれなくなったのか涙を溢す。
燦の歌は、積み重ねた苦労が多ければ多い程、大切な何かを捨てていればいるほど『効く』らしかった。



審査は三派に分かれて乱戦の相を呈してきた。
最も声が大きいのはキュルケを推す派手好きな審査員達。
またここには炎のメイジも混ざっており、演出の派手さのみならず炎を操る見事な技術にも評価点が入っていた。
次点は泣き落としで他派攻略を狙うルイズ派だ。
老境に至ってる者が多く、本気で涙を流しながら訴えかけてくるので始末に終えない。
最後に一番冷静な派閥、タバサ派である。
暴走しがちな二派を宥めながら、審査が議論として成立するよう動く随所での配慮が光る。
「観客を意識した見事な演出! 子供であろうと評価しうる程単純で、しかし各所に散りばめられた高度な炎の技術が光るあれこそが珠玉の芸でしょう!」
声高らかに宣言する男に、銀色の髪をなびかせる老婦人が反論する。
「何をおっしゃられますか、心の琴線に触れる感動なぞそうそうお目にはかかれません。あの歌を評価しないなぞ、我が家紋の名誉に関わりますわ」
中年男性が、静かに主張する。
「使い魔品評会であるという事を考えれば、おのずと結論は出ると思いますが……」
炎のメイジである同じく中年程の男性がだんっと席を立つ。
「ええい黙れこのロリコンが! 貴様が彼女を評価するはちんまい背と絶壁な胸部のせいであろう!」
「何だと!? 貴様こそ何だおっぱいスキーが! 揺れる胸と一緒にヘッドバンキングしていた貴様が何を言うか!」
「ちょっと待て聞き捨てならん! 貴様今つるぺたを侮辱したか!? 私はミス・ルイズの芸を勧めるが、ミス・タバサのそれも捨てがたいと心から思うぞ!」
「地獄へ堕ちろペド野朗! おっぱいだろ! ハルケギニア全土と始祖ブリミルとに誓っておっぱいの大きさは全ての価値観を凌駕するのだ!」
「諸君は一体何を話しているのかね! 確かに肌の色艶は甲乙付けがたく、敢えて言うのなら肩甲骨の美醜でこそ女性の美は決まると思っているのだが……」
「ああっ、あの歌を父上にもお聞かせしとうございました……天国の父上、そちらにお尻のきゅーとなレディはたくさんいらっしゃるでしょうか? 居るというのなら今すぐ向かいますが多分いないでしょうな、はっはっは、ざまーみろ」
「太ももだっつーの! 健康的な、それでいてエキゾチック漂うあの太ももに惹かれないとか死んでしまえ貴様等!」
「ロリコンの何が悪い!? ちっちゃい子のぷにぷにしたほっぺをつついてみたいと思うのがそんなにも責められるべき事柄なのか!? 私は断固そのような風潮には逆らい続ける! 反逆だ! 今こそ進化の言葉を刻んでくれる!」

審査が纏まる気配がまるでしてこない。
オールドオスマンの付き添いでこの場に来ていたコルベールは苦笑する。
「オールドオスマン、しばしかかりそうですし我々は一度出直して……」

「お主達いい加減にせぬか! 何故おっぱいも炉も等しく愛せぬ!? エロ道がたった一つと誰が決めたというか! 全てを愛してこそ真のエロ師匠たるが何故わからぬ!」

「……根元から腐っていては、治るものも治りませんか。最近は大人しくなっていたと思ったんですけどねえ」
475ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:44:57 ID:i3vyKN8s
肌のツヤまで蘇ったかのように活き活きと激論に加わるオールドオスマンを、後ろから蹴飛ばしてやりたい衝動を必死に堪える。
何かもう色んな事がどうでも良くなったコルベールは、隅っこの方で真面目に審査を続ける幾人かに混じって、アレ等と自分は別であると力強く主張するのであった。



後は審査待ちとなり、生徒達はようやく緊張から解放され安堵の笑みを見せ始める。
自然とみんなが行った芸の良し悪しを語る事になるのだが、やはりキュルケとタバサの評価は生徒間でも飛びぬけていた。
しかし、燦の話になると皆が一様に難しい顔となる。
そもそも人間の使い魔というのはアリなのかと。
魔法とはまるで関係の無い『歌』という芸に眉をひそめる生徒も多かったのだ。

タバサは遅めの昼食を取りながら、隣に座る燦を詰問していた。
燦は既にドレスから普段着へと着替え終えている。
「サンの声には力がある。さっきのはそれ?」
ハウリングボイスや眠りの歌の事を言っているのだろう。
「どうじゃろ? 私は思いっきり歌っただけじゃし」
「絶対力を使ってる」
何時に無く頑なにそう主張するタバサ。
キュルケは飲み物だけを口にしながら、タバサに問いかける。
「何よ、私のはアリでサンのはダメなの?」
「ダメじゃない。でも力は使ってる。あれは絶対普通の歌じゃない」
どうやら涙を溢してしまった事を不覚と思っている模様。
もちろんそんな事情を察しえないキュルケもルイズも燦も、タバサの拘りには気付いてやれなかった。

四人は随分前からクラスの人間達と距離を置くようになっていた。
例の決闘騒ぎがキッカケであるのだが、それ以降も何かと四人が一緒にまとまっている事が多い。
もちろん向こうから恐がられ、近づかれないのは決闘が理由だが、こちらから向こうに接点を持とうとしないのには訳がある。
当人達は意識していないが、既に彼等とは見ている場所が違ってしまっているのだ。
タバサは元々だが、ルイズとキュルケは学園内での成績や実力に、最早興味を持っていなかった。
自分の力が外で通用するのか、外で通用するにはどうすればよいのか。そんな事ばかりを考えていた。

といった事情がある為、燦を含む四人は他の生徒があまり顔を出さない場所に自然と集まるようになっていた。
今も舞台から離れ、塔の側でのんびりと結果が出る時間を待っている。
突き抜けるように青い空を見上げながら、四人は並んで芝生に寝転がる。
むき出しの肌に丈の低い草がちくちくと刺さるが、鼻腔をくすぐる草の臭いや全身満遍なく降り注がれる陽光の気持ち良さが不快感を凌駕する。
「ん〜〜〜」
燦は横になったまま背筋を大きく伸ばし、芝生をごろごろと転がる。
全身に葉の欠片がまぶされるも、それが面白いのか何時までも止まらずごろごろ転がり続ける。
ルイズもキュルケもタバサも陽気に誘われたか、燦を追うような事はせずうつらうつらとお昼寝の時間である。
久しぶりに思いっきり歌えて気分の良い燦は元気一杯、芝が切れる場所まで転がっていった。
「ふいー、目が回るでー」
何が楽しいのか、にこにこしながら上半身を起こす燦。
その前には驚いた顔でこちらを見下ろしているロングビルの姿があった。
「……品評会の最中じゃなかったかしら?」
燦の奇行には一切触れない辺り大人である。
「今は休み時間なんです。えっと、ロングビルさんは何をしてるんです?」
塔を見上げながら燦にではない誰かに言うように呟く。
「私も少し……お休み中よ」
その後に続く言葉は心の中だけに仕舞っておく。

『後、少しだけだから。ごめんねテファ……』

後少しだけ、ここに居させて欲しい。
この心地よい風をもう少しだけ感じていたいと、ロングビルは祈るように天に願うのだった。
476ゼロの花嫁:2009/01/11(日) 19:45:52 ID:i3vyKN8s
以上です。今回は短めに纏めてみました。次は又一週間以内に上げたいと思います
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 20:22:26 ID:bDrzm1Pq
乙でした。
ルイズとキュルケとタバサが達観している…。
そう言えば、おマチさんは燦ちゃんの歌を聴いて思うところはなかったのかな?

そしてオスマン自重しろwww
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 21:22:47 ID:imEk1HBm
ちと遅いが南斗投稿拳乙
サウザー「トキがいなけりゃこんなもんよ」
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 21:37:10 ID:wAZyNC+X
花嫁の人乙
そんな歌あったっけ?と一瞬思ったが
東西極道懇親会で歌ったアレかw
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 21:46:40 ID:FBdI85yl
花嫁と損種実験体の方、乙です!

ところで損種実験体の方ですが、世界観の設定からするとブリミルが降臨者、
4つの使い魔は獣神将という風に魔改造ブリミルと化すのではw

勝手な書き込みでスミマセン。
次回も楽しみにしております。
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 21:50:43 ID:o212/RRV
アプトムの人、乙です。
ところで…ガイバーで獣神将ワフェルダノス召喚すれば以外と言うこと聞いてくれるかもと思っているのだが
死亡後だったらゾア・クリスタルどうするかが問題だ
対7万戦でクリスタル外しはすぐ妄想出来るんだが
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 21:59:19 ID:s3Hd+cib
アプトムの方、乙です
予告どおり2重で期待を裏切りましたよ。
対ゴーレム戦が無いと思ったら別の場所で発生とは。

>>481
どっちかというと獣神将になる前の状態で召還されてた方が面白いかと。
483毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:33:07 ID:8iLFL08C
遅ればせながら、ウルトラの人、乙です。
アストロモンスがカッコイイ。
オイルドリンカー丸呑みした時、ムルチを引き裂くドラゴリーを思い出したよ。
でも、アストロモンスの鎌は切れ味は悪い感じがするな…、太いし(爆)
で、イザベラは可愛い。何か俺の好みを刺激しまくってます♪
続きも楽しみにしてます。

で、毒の爪の使い魔の第24話が書きあがりました。
予定その他が無ければ、22:40から投下したいと思います。
484毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:40:30 ID:8iLFL08C
では、時間ですので投下開始します。

清楚な作りのベッドの上で、タバサは目を覚ました。
目を開くと、眼前に白いシーツが飛び込んできた。ゆっくりと身体を起こす。
ベッドに突っ伏した状態で眠っていたようだ。
傍らでは母が安らかな寝息を立てている。
そんな母と、片手に持った本、ベッドに突っ伏した状態で眠っていた事から、タバサは状況を把握した。
どうやら、本を朗読しているうちに眠くなり、いつのまにか寝てしまったようだ。

今現在、タバサが母と共にいるのは実家のオルレアン邸でも、
ガリアの首都リュティスにあるグラン・トロワでもない。
エルフの住まう砂漠<サハラ>との国境近くにあるガリアの古城――アーハンブラ城である。

アーハンブラ城は砂漠の小高い丘の上にエルフが建築した城砦であり、もともとはガリアの物ではなかった。
千年近く昔…ハルケギニアの聖地回復連合軍が多大なる犠牲を払い、エルフから奪取。
その先に国境を定めた後、エルフの土地への侵攻拠点とされた為、エルフから何度も攻撃を受ける事となった。
その後も、取ったり取られたりを繰り返し…、聖地回復連合軍が再び主となったのが数百年前。
そして、軍事拠点として規模が小さいと言う理由で戦略から外され、廃城となった。
以後は、アーハンブラ城が建つ丘の麓に広がる、ちょっとしたオアシスの周りにでき始めた小さな宿場街により、
砂漠を旅する旅人が立ち寄るちょっとした交易地となり、現在に至る。

ふと、気が付けば母が目を覚まし、自分を見ている。
暴れるでも、何かを言うでもなく、ただ静かにジッと見つめていた。
タバサは「母さま」と呼びかけた。が、母は反応を示さない。ジッと見つめているだけだ。
正気を取り戻した訳ではない。…が、タバサにはそれで十分であった。
小さく微笑みながら頷く。
「シャルロットが、今日も御本を読んでさしあげますわ」
そして、タバサは自分が手に持つ本――『イーヴァルディの勇者』の朗読を開始した。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 22:41:46 ID:M/xI4R7C
支援
486毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:43:18 ID:8iLFL08C
「相変わらず、その本ですか。よく飽きませんネ〜?」
暫く朗読をしていると、暢気な声が部屋に響いた。
しかし、タバサは気にも留めずに朗読を続ける。
ここに連れてこられてから十日近くになるが、その間は毎日、タバサは母に『イーヴァルディの勇者』を読み聞かせていた。
他の本では昔のように取り乱してしまうのだ。
『イーヴァルディの勇者』を呼んでいる間、母が落ち着いているのは、心に強く残っているからなのかもしれない。
だから、タバサは何度も『イーヴァルディの勇者』を読み返していた。
最早、本を直接読まずとも内容を反復してしまえる位に、完璧に暗記してしまうほど、読み返している。
だが、そこまで読み返していてもタバサは飽きる事は無かった。
母が自分を見て、自分の読み聞かせる話を聞いてくれている……それが嬉しかったから。

それゆえに、今ではビダーシャルやジョーカーが部屋に入ってきて、話しかけたとしても、
特に用事が無ければ本の朗読を止めようとはしなかった。

「そんなにその本は楽しいですか?ワタクシ、少〜し読ませてもらいましたが……つまらない内容でしたよ」
タバサは答えない。静かに朗読を続ける。
ジョーカーは、やれやれ、と言った調子で手を広げ、頭(?)を振る。
そして、僅かに声のトーンを低くしながらタバサに告げた。

「薬……明日完成のようですよ?」
「!?」

ページを捲る指が、朗読をする声が止まる。
本から目を離し、ジョーカーの顔を見つめる。笑顔を貼り付けた、相変わらずの無表情だった。
「貴方が貴方でいられるのも、今日限りと言う訳です」
その言葉にタバサの表情が僅かに強張る。

ここで目を覚ました日に、彼女は既に自分の運命を宣告されていた。
エルフの調合する、母に使われた物と同じ水魔法の薬で心を奪われると。
その薬の調合には十日ほど掛かる為、残された時間をここで過ごせと。
タバサが黙ったのを見て、ジョーカーは静かな口調で話しかける。
「何か、最後にお望みとか有りますかネ? 有れば…可能な限り叶えて差し上げても宜しいですけど。
あ、勿論”逃がして欲しい”と言うのは受け付けられませんが」
「……」
タバサは本へと視線を戻し、ページを捲る。
「おんや〜? 何もお望みは無いのですか? 最後なんですから、遠慮なんてなさらずに――」
「情けはいらない」
短く一言。その言葉にジョーカーは黙る。
「そうですか…」
「出てって…、母さまと二人きりになりたい」
本から目を離さずにタバサは言った

そう…ここから逃れる事以外であれば、望むのはそれだけだ。
最後の瞬間まで、母と二人でいたい。それが叶うのであれば、他には何も望む必要は無い。

ジョーカーは何も言わずに部屋から消えた。
そしてタバサは朗読を再開した。
487毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:47:23 ID:8iLFL08C
タバサへの通達を終えたジョーカーは、後の事をビダーシャルと駐屯しているガリア軍に任せ、プチ・トロワへと帰還した。
王女の部屋に入ると、主であるイザベラはソファに腰掛け、ペットである三体の幻獣を愛でていた。
「ただいま戻りました」
「…ああ、あんたかい…」
自らの使い魔の姿を認めたイザベラは、そう返した。
その言葉にはいつものような元気が感じられない。
ジョーカーは首を傾げる様に身体(?)を傾ける。
「元気が無いようですネ〜…、どうかしましたか?」
イザベラは何処か困ったような表情で、傍らでソファに乗っているムゥ=リトルの頭を優しく撫でる。
自分の頭を優しく撫でられ、満足げな表情を浮かべるリトルを見つめながら口を開く。
「明日だったよね…、あの人形娘が”本当の人形”になるのは…」
「はい、そうですが…それが何か?」
ジョーカーは、あっけらかんと言い放つ。
そんな態度がイザベラには少し癪に障った。
多少忌々しそうに鼻を鳴らし、ジョーカーを見据える。
「……あんたは、何も感じないのかい?」
「はて? 何も感じないとは…どう言う意味でしょうか?」
イザベラは、ふぅ、とため息を吐く。
おそらく目の前の使い魔は、演技でもなんでもなく、本気で何も考えていないのだろう。
大分慣れた物とは言え、あまりの能天気ぶりに呆れかえってしまう。
「いや…、いいよ」
「はぁ…」
「そう言えば…お前の友人とか言う亜人はどうしているんだい?」
イザベラの言葉にジョーカーは難しい表情をする。
「ジャンガちゃんはまだリュティスに居ますよ。
あれから七日経ちましたが……未だ頑張ってシャルロットさんの居場所を探しているようです」
「そうかい…」
「ワタクシとしては、そろそろお引取り願いたい物ですがネ? あの風竜に連れられてやって来ただけですし…。
余計な揉め事を起こさないうちに、お帰りになってほしいのですよ…」

そう言って苦笑する。
正直に言えば、リュティスにやって来たその日にでも本人の下へと赴き、帰るように伝えたかった。
だが、前の事件の事もあるので、少々出辛かったのだ。
ゆえに、自然に諦めてくれるのを願っていたのだが、今日で七日目。――正直、困った。
とは言え…、明日には薬は完成。シャルロットは永遠とも言える永い時を、人形のように過ごす事となる。
その時にでも伝えれば良いだろう。そうすれば――

(そうすれば……ジャンガちゃんも多少は昔に戻るでしょうしネ…、のほ♪)
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 22:49:48 ID:bDrzm1Pq
支援
489毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:50:24 ID:8iLFL08C
「何を笑っているんだい?」
――思わず笑い声が漏れてしまったのだろう。
イザベラが怪訝な表情で自分を見ている事に気付き、ジョーカーは急いで取り繕った。
「いえ……ただの思い出し笑いですよ、のほほ♪」
そんな使い魔の言葉を聞きながら、イザベラはリトルの頭を撫でる。
幸せな表情をするリトルに対し、イザベラの表情は曇っていた。

――どうしてこんなにも気持ちが沈むのだろう?

イザベラは心の中で自問自答していた。
明日、例の人形娘が心を失う……その事で頭が一杯だ。
それは何も今日始まった事では無い。あいつが捕まって、その処置が伝えられてからだ。
勿論、あの人形娘は気に喰わない存在だ。
このまま本当の人形になってしまおうと、知った事ではないのだ。
だと言うのに――気になって仕方がない。

(どうしちまったんだろうね…わたしは)


解らない…


解らない……


解らない………











――本当に解らないのか?
490毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:53:27 ID:8iLFL08C
頭を一瞬、そんな疑問が過ぎった。軽く唇を噛む。

――解ってはいるのだ、本当は。
しかし、自分にそれを認める権利が果たして有るのか? …有る訳が無い。
あいつを”人形娘””ガーゴイル”と呼び、今まで嫌がらせを続けてきたのは誰か?
そして、あいつをこのような境遇にした、そもそもの原因は何だ?
考えれば考えるほど、イザベラの中に言葉では言い表せないモヤモヤとした何かが募っていく。
唇を噛む力が強まる。

「イザベラさん?」
ジョーカーの言葉にイザベラは我に返った。
今の考えを吹き飛ばすように頭を大きく振る。
しかし、それでも心の中のモヤモヤは無くならなかった。
目を閉じ、暫く何かを考え……ジョーカーを手招く。
ジョーカーは招かれるままにイザベラの下へと歩み寄る。
「なんでしょうか?」
イザベラは目を開き、ジョーカーを真っ直ぐに見つめた。



「なぁ…一つ、頼まれてくれないか?」



――同時刻――

――ガリア王国:首都リュティス――



隣国トリステインとの国境から、おおよそ千リーグ離れた内陸部に位置する、
人口三十万人からなるハルケギニア最大の都市。
そんな都市の一角、建物に背を預けながらジャンガは、手にしたワインをラッパ飲みにした。
ぶはぁ、とオヤジのような仕草で酒臭い息を吐く。
「ったく…、もう七日になるってのによ、まるで手掛かりが掴めないじゃねェか」
言いながら、隣に立つ(変化の術で人に化けた)シルフィードに目を向ける。
シルフィードも不機嫌そうな目でジャンガを見据える。
「そんな事をシルフィに言われても困るのね。お前の調べ方が悪いのね」
「ケッ! テメェこそ、使い魔のくせに主人の居場所が解らないでいるじゃねェか?
普段自分の種族の事を偉そうに言ってる割には、肝心な時に使えねェ野郎だゼ…」
「それはお前も同じなのね!」
「あン?」
ジャンガはイライラを隠そうともせずに睨みつける。
しかし、シルフィードは怯まない。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 22:54:06 ID:o0gVODtb
支援だ!
492毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 22:58:12 ID:8iLFL08C
「大体にして、お前は計画性という物が無さ過ぎなのね! いっつも勢いだけで行動する、まるでイノシシなのね!」
「ンだと!?」
「今回の事にしてもそうなのね! 他の学院の皆にも付いて来てもらえば、こんなに手間は掛からなかったのね!
それをお前は『あいつらも誘うと面倒だ』とか言って、シルフィと二人っきりでこんな所まで来てしまったのね!」
デルフが小さく「俺もいるだろ」と呟いたが、無論二人には聞こえない。
「全く、自信過剰もいい加減にしておくべきなのね! きゅい! きゅい!」
「ルセェ! あのクソガキ共なんざに言ってみろ! どうせ、国法が何だとかぬかして、
色々と面倒な事態になるに決まっているんだよ! あのガキ早く助けたいなら、そう言う事にも頭回せ!」
「きゅいきゅい! それは、このシルフィの頭が足りてないと言いたいのね!?」
「それ以外に何の意味がある!?」
「きゅ〜〜〜い〜〜〜!」
「大体、テメェは大喰らいなんだよ! 学院からくすねてきた”資金”も、アッサリと底をついちまったじゃねェか?
お陰で足りない分の”資金”を現地調達する羽目にもなったじゃねェか!」
「仕方が無いのね! 『変化』は物凄く疲れるのね、だからお腹もすくのね!」
「ケッ! 意外と使えねェじゃねェか…テメェ。所詮は翼が生えただけのトカゲって訳か!」
「こ、ここ、この古代種たるシルフィを、よりにもよってトカゲ呼ばわりとは、許せないのね!」
「ほぉ、許せないならどうするってんだよ!?」
「お前のような無礼な奴は、このシルフィが”大いなる意思”の名に置いて、”魂の泉”に返してやるのね!」
「やってみやがれ……クソトカゲふぜいがァァァーーーーー!!!」

そうして始まる取っ組み合い。
何やら訳の分からぬ事を言いながら、取っ組み合う二人に道行く人達は物珍しそうな視線を向け、
しかし、止めようともせずに、素通りした。

暫く取っ組み合いを続け、やがて力尽きたのか、二人はどちらからともなく、その場にぶっ倒れた。
ハァハァ、と荒く息を吐く。
「…で、本当にこれからどうするのね、きゅい…」
「……チッ」
苦しそうに、しかし悲しげに聞いてくるシルフィードの声に、ジャンガは腹立ち紛れに舌打ちをした。

正直、手詰まりだった。ここ七日ばかりの間、あっちこっちで情報を集めた。
しかし、これと言って有力な物は未だ手に入らずじまい。
今日であのガキが連れ去られて十日目……いい加減危険である。
…もしかすれば、既に始末されているかもしれない。

でも、どうしてこんなにも自分はあいつを気に掛けるのだ?
…いや、解っている。それを認めたくないだけで、解ってはいるんだ。



イザベラとジャンガ――生まれた場所も、今居る場所も遠く離れた…それでいて”非常に似た境遇”の二人。
その二人の心は、タバサと言う存在に対し、奇跡的にもシンクロしていた。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:01:10 ID:wvKMPRrA
支援
494毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:01:43 ID:8iLFL08C
ズキンッ!
「がっ!?」
また、左手が痛んだ。――あの事件の翌朝、庭で二人のガキに話しかけられた時のように。
反射的に飛び起き、ジャンガは左手を押さえる。

――…むを……つめよ………やくに…がい………めよ……――
そして、また頭に響く声。――うっとおしい。
(ルセェんだよ…、何だか知らねェが……ウルセェ…)
…暫く、ジャンガは痛みと格闘を続けた。

「ああ、面倒くセェ!!」
ようやく痛みが治まり、大声で叫んだ時だった……、彼の頭――正確には帽子に何かがコツンと当たるのを感じた。
「ン?」
ジャンガが手を伸ばすよりも早く、帽子に乗った”それ”が落ちる。
服の上に乗ったそれは、丸められ紐で結わえられた羊皮紙の書簡だった。
それを認めたジャンガは夜空を見上げる。
月明かりを受け、その場を飛び去っていく、羽の生えた一匹の幻獣の姿が見えた。
「何だ?」
怪訝な表情をしつつも、ジャンガは今の幻獣が落としていったと思しき、書簡を手に取る。
紐を解き、書簡を広げる。
シルフィードも体を起こし、傍に寄って来た。
それを無視し、書かれている内容に目を通す。
書簡を丸めて懐に入れると、ジャンガは立ち上がった。
「どうしたのね? それには何が書いてあったのね?」

ジャンガは首の骨を鳴らしながらシルフィードに言う。
「…近くの森で元の姿に戻れ」
「元にって……何処へ行くのね?」
「テメェのご主人の所に決まってるだろうが…」
「分かったのね!?」
ジャンガは頷いた。
シルフィードは興奮した口調で聞いてきた。
「ど、どこなのね? お姉さまは今、何処に居るのね!?」
ジャンガは町の外へと向かって歩きながら、振り向かずに答えた。



「アーハンブラ城だ」



元の風韻竜の姿になったシルフィードはジャンガを背に乗せ、夜空を一路…アーハンブラ城へと向かって飛んだ。
古代種たる風韻竜のシルフィードはアーハンブラ城の名前と場所は知っていた。
やがて、二つの月明かりに照らされ、夜の闇に幻想的に浮かび上がる古城が見えてきた。
「あれがアーハンブラ城か」
「そうなのね、きゅい」
アーハンブラ城の上空……高度にして三千メイルほど。
シルフィードは上空に停滞しながら、眼下の様子を確認する。
篝火やテントやらが見えた。それが何か、確認するまでも無い…。
ご主人様達が逃げないように、そして外からの侵入者を防ぐ為に、配置されたガリア軍の物だ。
「囚われのお姫様のお守り役にしちゃ……度が過ぎてるな?」
「シルフィもそう思うのね、きゅい」
ジャンガの言葉に同意するシルフィード。
と、ジャンガはシルフィードの背の上で立ち上がる。
そして、静かに告げた。
「とりあえず、テメェは近くの森にでも隠れて身体を休めてろ。
テメェのご主人を助けたら、口笛を吹く。そうしたら迎えに来い」
「きゅい?」
「そして一時間…いや、二時間して何も無かったら……テメェはこの場からバッくれろ」
「きゅい!?」
495毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:05:06 ID:8iLFL08C
その言葉にシルフィードは驚愕した。
何かあった時には自分に逃げろと言うのだ。
「納得いかないのね! 逃げるくらいなら、シルフィも一緒に行くのね!」
「駄目だな」
「なんでなのね!?」
「テメェじゃ足手まといだ」
「きゅい…」
言われてシルフィードは落ち込む。
確かに自分は主人を助けようとして一度敗れており、適わないのは分かりきっている。
だが、だからと言って愛すべき主人を放って逃げるなど、どうしてできようか?
そんなシルフィードの気持ちにジャンガの言葉が水を差す。
「テメェがくたばったら、あのガキは泣くゼ?」
考えようとしたくなかった事をズバリ指摘され、シルフィードは項垂れる。
悔し涙が溢れ、夜風に吹かれて散っていく。
ジャンガは、はぁ、とため息を吐きいた。
「まァ…そんな心配すんな。軽く片付けてきてやるからよ」
シルフィードはジャンガを見上げる。
「…大丈夫なのね?」
その言葉にニヤリと笑うジャンガ。
「俺にはこう言う状況にピッタリな二つ名があるしよ」
「毒の爪がピッタリ? 分からないのね、きゅい」
「そっちじゃねェよ…。まァ…とあるガキに言われただけだから、二つ名と言うのも難しいがな…」
「きゅい?」
怪訝な表情をしてジャンガを見るシルフィード。
ジャンガは二つの月が彩る夜空を見上げていた。

シルフィードへと視線を向け、再び不敵な笑みを浮かべてみせる。
「キキキ、とりあえずは待ちな…。じゃ、あばよ!」
それだけ言うと、ジャンガはシルフィードの背から飛び降りた。

「ピッタリな二つ名…」
瞬く間に小さくなっていくジャンガを見ながら、シルフィードは今のジャンガの言葉を反芻した。
あいつだけで本当に大丈夫だろうか? あのお姉さまでも適わなかったエルフに勝てるだろうか?
不安はあったが、最早自分にはできる事が無いのをシルフィードは理解していた。
そろそろ空を飛ぶのも限界に近い。
シルフィードはジャンガに言われたとおり、近くの森へと降りていった。

徐々に近づく地面を見ながらジャンガは身構えた。
そして、前転の要領で身体を大きく回転させる。
そのまま地面へと急降下。そして、着地。
まったく音も立てずに降り立ったジャンガは、しかし特に何も以上は無いようだった。
「いや〜、あの高さからたいしたもんだ。流石は相棒…猫だけある」
デルフリンガーが鞘から出て賞賛の声を掛ける。
しかし、ジャンガはそれを無視して辺りの様子を窺う。
篝火やテントなどがあるが、兵士の姿が見えない。――何処に居るのだろうか?
注意を払いながら、慎重に歩を進めるジャンガ。
静かにテントの中を覗いてみる。と、そこでは兵士達がこれ以上無い位のだらしなさで、眠りこけていた。
「なんでぇ…随分と無用心じゃねぇか?」
テントの中の様子にデルフリンガーは呆れ果てた様子で呟く。
しかし、ジャンガは険しい表情をしたままだ。
辺りを警戒しながら城の中へと入る。
城のホールにも数人の兵士が眠りこけており、直ぐ右隣の客間にも四十過ぎの貴族が一人眠りこけていた。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:08:34 ID:bDrzm1Pq
支援
497毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:10:03 ID:8iLFL08C
階段を上りながらジャンガは顔を顰めた。
仮にも軍隊の兵士が全員眠り込んでいるこの状況、幾らなんでも異常すぎだ。
デルフリンガーも事のしだいに気が付き始めた様子だ。
「俺達以外に侵入者がいるのかね?」
「そいつは奥に行けば分かるだろ。上手くすれば、タバサ嬢ちゃん連れてこのままおさらばと行けそうだゼ」
「そう上手く行けばいいんだがね…」
「妙にそわそわしてやがるな?」
「そりゃそうさ……エルフが居るかも知んないんだからな。俺に足が有れば、今直ぐにでも逃げたいね」
「そんなに恐ろしいのかよ…そのエルフってのは?」
「ああ…怖いね」
にべも無く、デルフは答えた。
「何が怖いって言えば、そいつらが使う先住魔法だ」
「先住魔法…」
何処かで聞いた単語だ…、と考えて直ぐに思い至る。
あの決闘で、自分の切り札の分身を見せた時に、タバサ嬢ちゃんが口にしていた。
「その先住魔法ってのは…何だ?」
「まぁ、言ってしまえば自然に宿る力を利用する術だ。火とか水とか、風とか大地とかのな。
メイジの使う系統魔法は、個々の意思の力で大なり小なり理を変えて効果を発揮するがね。
自然の力と人の意思……比べられる物と思うかい?」
「……」
ジャンガは難しい顔をして悩む。
メイジの使う魔法が個人の力に対し、先住魔法は自然の力を拝借して使っていると言う事は解った。
だが、それの――正確にはそれを使うエルフの何が怖いのかが解らない。
なにしろ、聞いている限りではその先住魔法と言うのは――

「お前は何者だ?」
ジャンガの思考は良く響く、澄んだ声に遮られた。
顔を向けると、痩せた自分と同じ位の長身の男がそこに立っていた。
茶色のローブに身を包んだ流れるような金色の長い髪をし、その髪の隙間から尖った耳が突き出ている。
その耳を認め、ジャンガは顔を顰めた。
「…テメェがタバサ嬢ちゃんを連れてったエルフか?」
「タバサ? ああ、あの母子か。…そうだと答えておけばよいものか?」
ジャンガの放つ敵意と殺気には微塵も反応を示さない。
エルフは階段を一歩ずつ下りて来た。
「私の名はビダーシャル」
ビダーシャルと名乗ったエルフはジャンガを見据え、口を開く。
「ここには蛮人の兵士達がいたはずだが…」
「生憎とな…全員お寝んねしてるゼ」
「亜人よ、お前がそれをやったのか?」
「い〜や…俺が来た時には全員眠ってたゼ。まァ、誰がやったか俺には関係無ェがな」
そうか、と呟きビダーシャルは目を閉じる。
ジャンガはそんなビダーシャルに問いかける。
「おい、それよりも…タバサ嬢ちゃんはここにいるんだろうな?」
「あの母子ならば、この上の部屋に居る」
それだけ聞ければ十分だ、とばかりにジャンガはビダーシャルに飛び掛った。
爪を構え、一足飛びに距離を詰める。
「おい!? 相棒よせ!!」
デルフリンガーの制止の声が届く前に、ジャンガはその爪をビダーシャルへと振り下ろしていた。

振り下ろした爪は目の前のエルフの胸を切り裂き、鮮血が迸る筈だった。
しかし、次の瞬間…ジャンガは吹き飛ばされていた。
498毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:13:03 ID:8iLFL08C
「な、何だ…?」
背中から地面に叩きつけられ、ジャンガは痛みに顔を顰めながらも体を起こす。

爪は間違いなく、エルフを捕らえたはずだった。
だが、爪がエルフに届こうとした瞬間、驚くべき事が起きた。
爪が見えない何かに阻まれるかのようにしてエルフの眼前で止まったのだ。
そして、止まった爪はそのまま弾かれ、その爪に引っ張られるようにして自身も宙を舞った。

いや、あれは”弾かれた”と言うよりは”押し戻された”と言った方が正しい。
大きなゴムの塊を殴りつけ、限界までめり込ませた後、元に戻ろうとするゴムに押し戻されるあの感覚に近い。
「チィッ…なんだってんだ、今のは?」
ジャンガの言葉に答えたのはデルフリンガーだった。
「ありゃあ『反射』<カウンター>だな。戦いが嫌いだなんてぬかすエルフらしい、厄介で嫌らしい魔法だぜ」
「…どう言う物だ、そいつは?」
「あらゆる攻撃、魔法を跳ね返す、えげつねえ先住魔法さ」
「ほう? それで俺の爪は跳ね返された訳か」
「あのエルフ、可也の”行使手”だな。この城中の”精霊の力”と契約しやがったようだぜ。
覚えとけよ相棒。あれが”先住魔法”だ。
今まで相棒がメイジを相手にしてきたのは、言わば仲間内の模擬試合のようなもんさ。
始祖ブリミルがついぞ勝てなかったエルフの先住魔法。
さて、本番はまだこれからだが、どうしたものかね?」

デルフリンガーの説明を聞き…しかし、ジャンガは俯いたままだ。
ビダーシャルは階段の途中に立ち止まり、ジャンガを見下ろす。
「立ち去れ、亜人よ。我は余計な争いは好まぬ。そして、お前では決して我には勝てない」
「ほう? 大層な自身じゃねェか…」
ジャンガは俯いたまま立ち上がり、服の埃を払う。
「亜人よ、無駄な抵抗はやめろ。この城を形作る石達と我は既に契約している。
この城に宿る全ての精霊の力は我の味方だ。
もう一度言う……お前では決して勝てぬ」
ビダーシャルの言葉を聞いても、ジャンガは反応を示さなかった。
デルフリンガーが心配そうな様子でジャンガに声を掛ける。
「なぁ、相棒…個々は大人しく引いた方が無難だぜ。どうあがいても、お前さんじゃ勝てねえよ。
あの娘っ子の事は気の毒だが、俺は相棒の方が大切だからよ。
いや、本当に勝てっこねぇから。言ったろ? 始祖ブリミルですらついぞ――」

「キキキ…」

ジャンガの口から唐突に漏れた…それは”笑い声”。
それも、相手を徹底的に馬鹿にした、嘲りを含んだあの笑い声だった。
「あ、相棒?」
心配になったデルフリンガーの声も余所に、ジャンガは高らかに笑った。
「キィィィーーーーッ、キキキキキィィィーーーーーッ!!! キキキキキッ!
キィィィーーーッ、キキキキキィィィーーーーーーッッッ!!!」
狂ったようなその笑いに、ビダーシャルは僅かに眉を潜める。
「亜人よ、何がそんなに可笑しい?」
ビダーシャルの言葉に、ジャンガは嘲りの表情を浮かべて目の前のエルフを見た。
「可笑しいさ、心底これ以上無い位にな…、キキキ」
そう言って一拍置き、ジャンガは言った。

「テメェらエルフが、どうしようもない位の”臆病者”だと言う事が解ってな」
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:14:32 ID:o0gVODtb
支援!
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:16:37 ID:bDrzm1Pq
支援
501毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:19:11 ID:8iLFL08C
「それはどう言う意味だ?」
感情を余り表に出さないこのエルフには珍しく、眉を潜めてあからさまに不機嫌な表情を浮かべている。
ジャンガは依然嘲りの表情を浮かべたまま、ビダーシャルを見つめている。
「言ったまでの意味さ。テメェらエルフは臆病者だ。精霊の力とやらを使わなきゃ、何一つ出来ないんだからよ。
だってそうだろ? そうやって相手の攻撃から身を守りながら、精霊の力とやらで相手を攻撃するんだろ。
拳一つ使わない奴を臆病者と言って何が悪い。俺はな卑怯な事も自分の手で行ったさ。
テメェのように”他人任せ”で戦った事は一度だってねェ。
キキキ……傑作だゼ。恐れられてるとか言うから、どんなやろうかと思えば…精霊の力とやらに媚び諂って、
助けてもらうしか身を守れねェ”臆病者”だとはな。ガッカリだゼ」
「…我等エルフは争いを好まぬだけだ。決して臆病者などではない」
「ハンッ、そうかい!? だがな、テメェが自分の手で何もしてねェのは事実だ。
そんな野郎が人間を蛮人呼ばわりとは、傲慢だよな」
そこまで言って、ジャンガは一息入れる。
「正直、テメェらも人間と変わらねェよ。媚び諂って、他人任せな戦いをする所なんかな。
いや、メイジの方が幾分マシか。テメェらエルフと違って”自分の力”で戦っている分にはな。キキキ」
ビダーシャルの表情は曇っていた。
ジャンガはニヤリと笑い、止めの一言を言った。

「誰かの力を借りなきゃまともに殴り合いも出来ねェ野郎の分際でよ、
威張り散らしてんじゃねェよ、寄生虫ふぜいがァァァーーーーーーーッッッ!!!」

ビダーシャルの顔にハッキリと怒りの表情が浮かんだ。
無理もあるまい。ここまで自分達を侮辱された事は未だ嘗て無かったのだから。
「亜人よ、今の言葉は我等に対するこれ以上無い侮辱だ。…取り消してもらいたい」
「嫌だ、と言ったら?」
挑発するようなジャンガの笑みにビダーシャルは両手を振り上げた。
「石に潜む精霊の力よ。我は古き盟約に基づき命令する。礫となりて我に仇なす敵を討て」
途端、ビダーシャルの言葉に呼応するように、左右の階段を造る巨大な石が、地響きを上げながら持ち上がる。
石は空中で破裂し、無数の石の弾丸となってジャンガに襲い掛かる。
「チィッ!」
舌打ちをし、ジャンガはその場を飛び退く。
しかし、石の弾丸は広範囲に拡散している。とてもじゃないが交わしきれない。
ジャンガは爪を振るい、石の弾丸を叩き落すが、それでも数発を身体で受けた。
ただ石を投げつけられた、と言うレベルではない激痛に意識が遠退きそうになる。
しかし、唇を噛み締め、何とか踏み止まった。
ビダーシャルは静かに、しかし怒りを隠しきれていない表情でジャンガを見下ろしている。
「亜人よ、今一度言う。我等への侮辱の言葉を取り消せ」
ビダーシャルの言葉はあまりにも静かだった。
しかし、ジャンガはニヤリと笑う。

「テメェの間抜けさ加減を言われて、逆ギレしてるようなガキに誰が謝るんだよ?
寝言言ってるんじゃねェよ、バァァァーーーーーカッ!!!」

その言葉にビダーシャルの顔に浮かぶ怒りの色が濃くなる。
再び両手を上げると、今度は左右の壁の石がめくれあがり、巨大な石の拳を形作る。
「ケッ、直ぐにキレやがって、ガキが…」
言いながらジャンガはその場を飛び退こうとする。
が、足が動かない。まるで地面に足がくっ付いたかのように。
「相棒! 足を見ろ!?」
デルフリンガーの言葉にジャンガは足を見る。
粘土の様に形を変えた床が両足を飲み込んでいる。
苦虫を噛み潰したかのような表情になり、必死に足を引き抜こうとする。…しかし抜けない。
ハッとなり、顔を上げる。

――眼前を迫り来る巨大な拳が覆っていた。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:20:44 ID:wvKMPRrA
支援だ!
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:22:13 ID:z6CDcCl8
おっと支援
504毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:23:28 ID:8iLFL08C
――イーヴァルディは竜に向けて剣を振るいましたが、硬い鱗に阻まれ、弾かれました――

静かに朗読をしていたタバサは、突然響き渡った何かが破裂するような炸裂音に顔を上げた。
隣で静かに自分の朗読を聴いていた母は怯え、布団に蹲る。
そんな母をタバサはやさしく抱きしめ、大丈夫ですから、と呟いた。

轟音が響き渡った。

巨大な、その轟音にタバサは驚き顔を上げる。
それは大砲が岩石に撃ち込まれたかのような凄まじい物だった。
衝撃は城全体に行き渡っているらしく、部屋も僅かに軋み、天井から石の欠片がパラパラと降り注ぐ。
何が起こっているのだろう?
タバサは確かめようとベッドを降り、扉へと向かった。

ベッドの上に残された『イーヴァルディの勇者』は、とあるページが開かれたままだった。



――剣を弾かれ地面に倒れたイーヴァルディを、竜が噴出す炎が襲い掛かりました――
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:24:42 ID:M/xI4R7C
支援
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:24:49 ID:z6CDcCl8
終わりか?
507毒の爪の使い魔:2009/01/11(日) 23:28:36 ID:8iLFL08C
以上で投下終了です。
原作の『イーヴァルディの勇者』の話が途中に入れられているのが気に入ったので、自分もやってみました。
おそらく、次回もあると思います。

にしても、ビダーシャルの『カウンター』の名前と効果を見る度に、
ポケモンの”青い奴”の顔が浮かんで浮かんで…(汗)
シリアスな場面なのに、あいつが浮かぶと台無しです(爆)

さてさて、虚無抜きでどうやって勝つんだ?と言う疑問の答えは次回で。

では、今回はこれにて。アディオース♪
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:31:35 ID:bDrzm1Pq
毒の爪の方、乙でした。
もはやルイズが影も形も出て来ておりませんなww

そしてジャンガの馬鹿笑いがステキでしたww
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:42:51 ID:rautbkWG
毒の爪の人今回もGJ
ジャンガと互角に取っ組み合いするシルフィ密かに強えw
510ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:44:08 ID:Dv2+7ZvR
しかし、あんまりジャンガって勇者って感じはしないのなw
乙っした!!

というわけで、構想はあっても時間が無くなってきてるんで、ちょいちょい投下できる機会があれば投下したい黒魔です。
投下予約無いのであれば、投下したく思います。
23:50頃からお願いいたします。
511ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:49:54 ID:Dv2+7ZvR
投下開始ですよ

――

……その日は、朝から「おでれーた」日だったんだ。
「――ビビ?」
「あ、ルイズおねえちゃん、おはよー。よく眠れた?」
ボクとデルフは別の部屋で寝てたんだ。
今日は、おそらく悲しい日になるんだと思う。
けど、悲しんでばかりはいられないんだ。
ルイズおねえちゃんをトリステインまで連れて帰らないと……
「――あの、ね、ビビ、驚かないでね?」
「?どうしたの?ルイズおねえちゃん……」
「あ、あたし――求婚されちゃった――ワルドに」
「え!?……あ、そっか、婚約者、だもんね……」
「おいおい、めでてー話じゃねぇの?」
そう。おめでたい話なのに、ルイズおねえちゃんの顔はちょっと浮かなかったんだ。
「そ、それでね――結婚式、することになったんだけど――」
「うん、おめでとー、ルイズおねえちゃん!あ、結婚式って、ボクも参加していいの?」
「ますますもってめでてーな!日取りはいつでぇ?おれっちも一芸ぐれぇ披露しねぇと――」
「そ、それが――」
ルイズおねえちゃんが、ゆっくりと深く息を吸って、落ち着こうとしたところで、ワルドおにいさんがやってきたんだ。
「今日、さ。ウェールズが媒酌人を務めてくださるのでね」
「あ、今日なんだ、そっかー。おめd……え?」
「え?」

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」
デルフと、最近よくハモるなって思うんだ……


―ゼロの黒魔道士―
〜第二十五幕〜 誰がための力


「き、昨日決まったことなのよ?わ、私もちょっと混乱してるんだけど――」
ルイズおねえちゃんはすっごく戸惑っているみたいだったんだ。
「いずれ、結婚するのだからね。どうせなら、と、ウェールズ殿下にお願いしたら見事快諾してくださったので、というわけだよ」
「こ、こいつぁ、おでれーた!」
デルフにすっごく同意したい気分だったんだ。
貴族の人の結婚って、こんなに急でも大丈夫なのかな……?
「それで、だね、使い魔君、残念なんだが――」
「え?」
「あの、ね、ビビ。最後の船はもうすぐ出るの。ワルドのグリフォンだと、2人乗りだから――」
「つまり、我々の結婚式に付き合ったら、君は帰る術を失うというわけだ。後で追いかけるので――」
「あ、えーと……先に、みんなと船に乗って帰れってこと?」
……ルイズおねえちゃんのドレス姿、見たかったけど無理かぁ……
「うむ。すまんね。後でラ・ローシェルで合流しよう」
「あの、ビビ、本当に、ゴメンね?」
「あ、ううん、いいよ。えっと……ルイズおねえちゃん、本当におめでとう!ワルドおにいさん、ルイズおねえちゃんを、よろしくね?」
「あぁ、もちろんだとも!」
ワルドおにいさんはルイズおねえちゃんの肩を抱いて堂々とそう答えたんだ。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:50:18 ID:B5N0RDOq
よかろう。支援する。
513ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:50:36 ID:Dv2+7ZvR
「めっでて〜んだけどなぁ?相棒、本当にいいのか?」
「うーん……でも、ルイズおねえちゃん達に迷惑をかけるわけにはいかないし……」
ルイズおねえちゃん達は結婚式の準備があるからってことで、早々と行動を別にして、
ボクはデルフと一緒に脱出船の準備を手伝っていたんだ。
「しっかし、急だよなぁ?近頃ぁこーゆーのが流行りなのかねぇ?」
「うーん、どうなんだろ……」
確かに、色々とおかしいとは思うんだ。
戦争前に結婚式、しかも今から愛する人のために戦おうとしている人の前でなんて……
ワルドおにいさんって、結構、人の気持ちが分からないのかなぁ?
「……ルイズおねえちゃんが、幸せなら、それでいいんだけどね……」
ルイズおねえちゃんの顔が、あんまり嬉しそうじゃなかったのが気にかかる。
運んでいたロープを甲板に降ろして、その上に座って考えてしまう。
「まぁ、俺様達にできることぁそんな無いわなぁ。無事にラ・ローシェルで合流できること祈るしか――」

「……うん、そうだn……え?な、な、何、これ!?」
突然、目の前の風景が2つに割れたような感じがしたんだ。
そして、甲板の上に、ワルドおにいさんとウェールズ王子の顔が見えた。
何がなんだかサッパリ分からなかった。
誰かが入り込んだような変な感覚。
その感覚の中で、ワルドおにいさんがマントに手を入れて、そして……

「出港するぞ〜!」
「お、出るってよ!相棒、高いとこ怖いんだし、とっとと船室にでも――」
「……行かなきゃ!」
デルフをつかんで、船から降りて思いっきり走る。
「お、おいどこ行くってんだよ!」
「ゴメン、デルフ!た、大変なんだ!!!」
とんでもないことが、入りこんできた景色に映る。
嘘で欲しかった。冗談で欲しかった。
だから、ボクは走った。
ルイズおねえちゃんの元へ……


―――
ピコン
ATE ―いつかその背中を―

ルイズは、悩んでいた。
「――詔をとなえさせていただく――」
ウェールズの声が礼拝堂に響く。
目を上げればワルドの顔も見える。
あぁ、本当にこの人と結婚するんだ、と実感する。
確かに、それは夢だったこともある。
綺麗なドレスを着た、花嫁姿。
女の子ならば誰もが憧れる光景。
でも、それは、こんな気分で迎えるものなのか?
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:51:16 ID:M/xI4R7C
支援
515ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:51:27 ID:Dv2+7ZvR
ルイズは、悩んでいた。
「汝、新郎、子爵 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドよ――」
ただいま紹介にあずかったワルドは、
確かに、滅びゆく王国で結婚式などと、
ウェールズに対して配慮が足りないという気もする。
多少、性急で強引なところはある。
だがそれらの欠点を全てあわせたところで、魔法衛士隊の若き隊長でこの美丈夫。
何の不満があるというのか?

「――誓います」
ワルドの声が、すぐ横で聞こえる。
先日、彼女に始祖の力である虚無」とやらが眠っていると、夢を見たことを言った声でだ。
力、か。
彼女は小さく、ほんのり小さくため息をつく。
いくら手を伸ばしても、届かなかった「力」とやら。
それが彼女に眠っているなどと、とうてい信じることはできなかった。
「――心配しなくていいよ、ルイズ。夫として、君を守るから」
ワルドが小さなため息に小さな声で答える。

「汝、新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール――」
ただいま紹介にあずかったルイズは、
かつて小さな女の子だった。
今よりも、ずっと小さな女の子だった。
今と同じく、魔法も使えないか弱い女の子だった。

自分より大きな背中を見るだけだった女の子だった。
いつか、大きくなったら、
いつか、魔法が使えるようになったら、
自分の婚約者として紹介された男の人や、
お父様や、厳しいお母様、2人のお姉さま達と、肩を並べることが、
せめて一緒に歩くことができるかと望んでいた。
背中を見るだけは、溜息をつく悲しい背中はもう見たくなかった。

でも、あれから何年か経っても、
背はまだまだ小さいままで、
魔法は全部爆発して、
遠い遠い悲しい背中を追うだけかと、
悔しくて、悔しくて、
意地を張って背伸びをして、
1人で泣いた夜を何度も過ごした。

そこに、あの使い魔が現れた。
自分よりも、小さな小さな使い魔が。
その小さな背中で、悲しい溜息ではない背中を、
小さいくせに、大きなその背中を見せた使い魔が。
自分に「ルイズおねえちゃんは何があってもルイズおねえちゃんなんだから」
と言ってくれた使い魔が。

「新婦?どうされました?気分がすぐれないようでしたら――」
「ルイズ?ルイズ?おい、どうした、ルイズ?」
「あの、お二方――」
ダメ、なんだ、とルイズは思った。
今のまま結婚をしたところで、結局誰かの背中を見続けるだけだ、と。
「大変失礼を致しまして申し訳ありません!ご無礼をお許しください!」
もう少しだけ、自分の力で頑張りたかった。
もう少しだけ、自分の力でその背中を乗り越えたかった。
「私は、私は――」
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:52:02 ID:M/xI4R7C
支援
517ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:52:14 ID:Dv2+7ZvR
今は、もう自分の力だけではない。
ビビだっている。学校に少しでも話ができる連中もできた。
今は、もう背伸びをせずに頑張れる。だから――
「ワルド、ごめんなさい、今は、私、結婚できない!」
「ルイズ!?何を!?」
「ワルド、ごめんなさい。あなたのことは憧れていたし、今も憧れている、でも――」
ここで、誰かの背中に頼るのは、自分の目指す貴族像に背を向けることに他ならない。
「もう少しだけ、まって欲しいの。もう少しだけ、自分の力で歩きたいの。お願い!」
「る、ルイズ、君は疲れているんだ、そうだろう!?僕の求婚を断るはずが――」
「ゴメンなさい――」

「――ワルド子爵、お気の毒だが、これは彼女に分があるね。式は中止だ。ルイズ嬢、あなたの歩み、応援させていただくよ」
ウェールズが優しい微笑みをルイズにかける。
「く――バカな!ルイズ、君には、力が!力があるんだぞ!?」
ワルドも、優しい微笑みをかけてくれると思っていたが、取り乱している。
詮方ないことなのかもしれない。だが、これもルイズ自身が決めた道だ。
「ゴメンなさい、ワルド。私、決めたの。もっと、強くなるって。だから、逃げたくないの」
ワルドには悪いが、ここで結婚をすることは逃げている気がしてならない。
これは1つの決意なのだ。

「世界を!世界を手にいれるための力が、君にはあるというのに!!何から逃げると!!」
「――え?わ、ワルド!?」
ワルドが突然ルイズの肩を揺さぶり始める。
獲物を掴む鷹のごとく強く、えぐりこむように爪を立ててルイズの肩を持って、である。
「ワルド子爵!いい加減にしたまえ!君は何を焦っているというのだね!?」
「うるさい!黙れ!お前に、お前に何が分かる!!」
ルイズは、己の婚約者の豹変ぶりに唖然とした。
目は血走り、息使いも荒く、唸るような怒鳴り声は野獣のそれを思わせた。
「わ、ワルド、痛い!離して!離しなさいっ!今はあなたとは、結婚できないのっ!!」
痛みに顔をしかめてのの拒絶の言葉、それがきっかけとなった。
「く、く、く、クハハハハハハハハハハハハハハハ!!拒むのか!?この俺を、拒むと言うのか!あぁ、そうか!!」
「きゃぁっ!」
ワルドが再び豹変した。
ルイズを放り飛ばす動き、狂ったような笑い声。
「クハハハハハハハハハ――ならば、目的の1つは諦めよう!」
「目的、ですって!?」
祭壇の横に倒れながら、そう問うルイズ。
「あぁ、そうさ。この旅には3つの目的があった。1つは、ルイズ、君の力。1つは件の手紙――」
ワルドの目は、慈愛を込めたものではなく、猛禽類が獲物を狙うときのそれに変わっていた。
「ワルド子爵、貴様――」
ウェールズがその僅かな違いに気がついたのか懐の杖に手を伸ばす。
だが、それは遅かった。

ズブリ

湿気を伴う軽い音が、礼拝堂に静かに響く。

カラーン

ウェールズの杖が、石畳の上に乾いた音を立てて転がる。

「――そしてもう1つは、貴君の首だよ、ウェールズ殿下」

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

高音の悲叫が、ステンドグラスを揺らした。


―――
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:52:35 ID:8iLFL08C
>>508
ルイズは…仕方ありませんよ。だって、姫様関連のイベント発生する事確実だし(苦笑)
ジャンガの挑発にあの馬鹿笑いは、やはり必須ですから(笑)

>>510
それは当然ですよ。なんてったってジャンガは根っからの”ワル”ですし(笑)

それはそうと、黒魔道士支援!
519ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:53:15 ID:Dv2+7ZvR
走った。走った。ボクは全力で走った。
嫌な光景はずっと続いている。
ワルドおにいさんの顔が獣みたいに歪んでいる。
嘘であって欲しい。
ウェールズ王子の胸から血が出ている。
冗談であって欲しい。
精一杯、もつれる足を前へ前へと出して、礼拝堂に走ったんだ。

「ルイズおねえちゃんっ!?わ、ワルドおにいさん、何をっ!?」
礼拝堂の扉の中は、不思議なぐらい静かで、鉄っぽい臭いがした。
「ほう、来たか――ガンダールヴよ、我が力となるならば、主と共に来い。だが断るならば――」
「ビビッ!!き、来ちゃダメっ!!ワルドは、ワルドは――」
さっきまで見えていた光景が、視点を変えてそのままそこにあった。
ルイズおねえちゃんが、涙を流して取り乱している。
ウェールズ王子は、ぐったりと倒れていた。
いくら、ボクがトロくさいって言っても、すぐに状況は分かった。
……信じられたかどうかは、また別の問題だったんだけど。
「わ、ワルドおにいさん?ど、どういうこと!?」
「相棒っ!気ぃつけろ!嫌ぁ〜な感じがしやがるっ!」
「――君の主が悪いんだよ、ガンダールヴよ。一言、『俺と共に来る』と言えば良かったものを――」
昨日までの、ワルドおにいさんの声じゃなかった。
もっと寒々しい、凍るような声。
信じられない、嘘だ。冗談だ。夢だ。そんなことが、頭の中をグルグルとせわしなく駆け回る。
「る、ルイズおねえちゃんを!ルイズおねえちゃんの婚約者なんでしょ!?守るんじゃ、守るって言ったじゃない!!」
それは、全て嘘だったの?違うって、言って欲しかった。何かの冗談だって、言って欲しかった。
「守る、だと?ふん!俺のものにならない力ならばいらない、それだけだ。そんな戯言を抜かすとは、やはり子供か――」
「そ、そんな、じゃぁ、全部、全部嘘d」ザザザシュッ「うぁっ!?」カランッドサッ
「ビビッ!?」
突然、手足に鋭い痛みが走って、デルフを取り落とした。
後ろから、刃物で切り付けられたみたいな痛み。
手足が、まるで自分のものじゃないみたいに、重さのある棒のような感覚になっている。
何が起こったのか、サッパリ分からなかったんだ。

「――機動力を不意打ちで削ぐ。戦闘の基本だよ、後学のために――」「最も、君達に『後』はないか」
ワルドおにいさんの、ワルドの声が前からも後ろからも聞こえてきた。
うずくまった姿勢から、肩越しになんとか振り返ると……
「ラ・ローシェルの仮面っ!?」
「――失望したよ、使い魔君。所詮、綺麗事を信じる青二才だったということか」
白い仮面をゆっくりと取り外す仮面の男。
その下は……ワルドの顔がすごく歪んであったんだ。
「さて、後片付けをしなければな――『ユビキタス・デル・ウィンデ』!」
前にいるワルドが呪文を詠唱すると、姿が歪んで、揺れて……増えた!?
「『風は偏在する』さ」
「我ら5人」
「君は1人」
「獅子は鼠を全力で狩る」
「確実にやらせてもらおう」
同じ声が幾重にも重なって、気持ちの悪くなる曲を聞いてる気分だ。
左手を、なんとかデルフに伸ばす。なんとか、柄をつかむことができる。
「そのインテリジェンス・ソードは厄介だったな」
「あぁ、魔力を吸収する厄介者だ」
「だが剣は1振り」
「しかも手負いの子鼠」
「囲んでしまえばどうということはない」
左に、右に、同じ顔が広がってくる。
520ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:53:54 ID:Dv2+7ZvR
なんだか、ものすごく気持ち悪い。
「お、おい相棒、大丈夫か!?怪我が痛むか!?」
怪我をしているから、じゃない。
「――わ、ワルド?じょ、冗談にしては笑えない、わよ?ねぇ、冗談って、冗談言ってよ!冗談でしょ!?」
信じられない光景が広がってる、からでもない。
「ふん、煩い!」
「邪魔者を片付けた後でお前の相手もしてやる!」
「あぁ、全くの茶番だったな!全くだ!」
「最初からこうしていればよかったか」
「慣れぬ演技などするものではないな!」

「……どうして?どうして、裏切ったの?どうして?守るって……一緒に守ろう、って、言ったんじゃないの?」
デルフを支えにして、なんとか立ち上がろうとする。
左足が、ひどく重い。膝から下が千切れたみたいに感覚が無くなっている。
「はっ!やはり子供だな!芝居だよ、し・ば・い!」
「大人はな、仮面をかぶらないと生きれないんだよ!」
「仮面をかぶらないでいいのは、力ある者だけだ!」
「俺はな、理想のため力が必要なんだよ!」
「力の無い、何も守ることのできないガキはもう黙れ!!」
頭が痛くなりそうな五重奏が、ガンガンと響いてくる。
でも、不思議と心は静かだった。
頭はこんなに痛いのに、風のない水面みたいに静かだった。

……そうか、ボクは……

「……ルイズおねえちゃんを、守るつもりは、ないんだね?」
まっ正面のワルドを睨みつけて聞く。
息は切れ切れだけど、視線はずらさなかった。
「何を今さら」
「俺のところに来ることを拒んだものを」
「守る気などもはや皆無!」
「邪魔は排除するだけのこと」
「抵抗しないなら、楽に死なせてやるぞ?」
ラ・ローシェルまでの優しそうなワルドおにいさんは、もういなかった。

「そっか……」
頭が痛い理由が、完全に分かった。
こいつは、ワルドは、嘘をついていた。
ルイズおねえちゃんを殺そうとしている。
そうだ、ボクは……
……ボクは、怒ってるんだ!

すぅっと息を吸い込む。覚悟を決めなきゃいけない。
頭は痛いし、足は動きそうにない。
頼れる仲間は遠い空の向こうかもしれない。
でも、そんなの、みんな、みんな関係ないんだ。
「あ、相棒、マジ大丈夫か!?お、おれっちに、まk なんだこりゃ!?心の震えか!?お、おい相棒無理すんじゃ――」
「いいかげんにしろよなコノヤロぉぉぉぉぉぉぉーッ!!」
思いっきり、叫んだ。
ボクは、ボクは、ルイズおねえちゃんを守りたい!
力が無い?なら足せばいい!
できるわけがない?諦めるのは早すぎる!
ボクは、ルイズおねえちゃんをただただ守りたいんだ!
「できること」じゃなくて、「できなくちゃいけない」ことなんだ!

怒りが、頭の痛みが、全部左手に集まって、そこから光になって溢れ出してくる。
「おほっ!?なんじゃこりゃ!?ただ心の震えってだけじゃねぇ!?理屈ぁ似てっけど前の使い手とは全然勝手がちが――」
光は、全身を駆け巡り、ボクの体は光に満たされる。
521ゼロの黒魔道士:2009/01/11(日) 23:54:29 ID:Dv2+7ZvR
「ワルド!!!ボクは、ボクは……ボクはお前を許さないっ!!!」
光が全身を覆うこの感覚を、ボクは覚えている。
『トランス』。
感情の高ぶりがもたらすエネルギー。
さっきまでとは逆に、心が沸きたって、頭がハッキリしてくる。

「ほぅ?少しは楽しめるようだな?」
「だが、所詮は子鼠のあがき」
「もうお前の死は絶対だ!」
「あがくならば、苦しみを」
「楽に死ねたものを――」

「うるさいっ!!ボクは……もう、決めたんだ!!」
ルイズおねえちゃんを、守ると、そう決めた。
お願いだから。お願いだから、その間、輝きが失われないように……

――
というわけで、強制トランスイベント発生です。
一応最終回まで構想はあるんだけど、いかんせん、締切とか色々あってきっついです。
週1で書ければいいなぁ…
ということで、投下完了です。
お目汚し失礼しました。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/11(日) 23:55:06 ID:M/xI4R7C
支援
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:33:02 ID:IBHgSidZ
黒魔の人、乙です。



関係ない話、ワルドの『風の偏在』と
スーパー3・マイトの分身とが戦ったらどうなるだろう?
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:47:09 ID:TG4w0YV9
強い方が勝つに決まってるだろ
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:48:17 ID:mrLxq8CO
白い方が勝つわ
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:48:54 ID:icGlkz0T
勝った方が強いんだよ
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:49:20 ID:ZwwK0NuU
>>525は賢いな
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 00:58:46 ID:DzRSGUz8
負けなければどうということはない
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 01:02:34 ID:MVbfruEw
書ける! 私にもssが書けるぞ!
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 01:10:52 ID:IHCpkfXZ
>>481>>482

むしろ使い魔の証がゾア・クリスタルに近い役目を果たすのでは?
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:06:46 ID:lxPY/Ixv
流れを無視して申し訳ないが、魔王伝の方、乙!
しかしこうイイ話が続くと、学院の外の出来事なんて、まるで悪い夢の中のお話のよーな。
それにしても、ガンダのルーン効果がコンマパーセント以下なんてw。
ルイズのために心を燃やすDを見たいよーな、見たくないよーな……複雑な気分。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:27:10 ID:fJJTQSEK
実写は駄目?ならキングダムハーツUからジャックスパロウを召喚するのはOKなのか?
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:31:41 ID:9ghn87Ee
デ○○○ーだと!?黒服の男達がやってくるぞ!
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:35:25 ID:u/VNqDF0
「実在の人物」が駄目であって、「実写」はいいんじゃないか?

でも、○○○ニーは超危険牌だろうから、やめるのが無難
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:38:21 ID:ZwwK0NuU
○ィ○○ーは確かに危ないな
国士無双十三面に振り込むくらい危ない
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:40:46 ID:fJJTQSEK
そうか、じゃあ○○ズ○ーはやめるよ
537装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 02:44:23 ID:dH61wjnt
寒さの厳しい連休の中、皆様どうお過ごしでしょうか。
どうもこんばんは、最低野郎なものです。

予約等なければ、2:50から投下させていただきます。
538装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 02:50:19 ID:dH61wjnt
時間になりましたので、それでは投下を


第5話「理由」

朝食が終わり、昼食の時間までは授業となる。
ルイズたちが教室に入ると、食堂のときと同じ視線が向けられた。静かな笑いも聞こえる。
蔑視と嘲笑を、片や仏頂面で受け止め、片や無表情で流し、段上になっている席へと向かう。
ルイズは椅子に座ると、「メイジの席だから、使い魔はダメ」と、キリコに床へ座るよう促す。
するとキリコは特に何も言わず、ルイズのすぐ隣の石段に腰を下ろした。

「……。」
片ひざを立て、黙って床に座る自分の使い魔をルイズは眺める。
(そういえば『使い魔のことは了承した』って言ってたっけ……。)
だったらその立場や扱いというのも、ある程度分かっているのかも知れない。
本心はどうであれ、素直に命令を聞いたキリコの行動に、ルイズはそう自分を納得させていた。

時間が経つにつれ、教室の椅子は生徒で埋まっていく。あちこちに使い魔もみうけられる。
その間も、二人は幾度となく見られては笑われていた。
しばらくして、一人の中年女性が教室に入り、教室の一番下の段にある教壇に立つ。
(格好がいかにも『魔法使い』だな。)
入ってきた女性を見ながら、キリコの頭にはそんな感想が浮かんだ。
「皆さんおはようございます。今日は使い魔を召喚してから初めての授業ですわね。
 全員無事に成功しているようで、このシュヴルーズも教師として喜ばしい限りです。」

そういって教室全体を見渡すシュヴルーズ。あたりには多種多様な使い魔たちがひしめいている。
彼女はこの光景を見るのを、毎年新学期の楽しみとしていた。
ふと、シュヴルーズは見慣れない格好の人間がいることに気づく。
コルベールや他の教師の話を聞いていた彼女は、すぐに思い当たった。
「あら、随分と変わった使い魔を召喚されましたね、ミス・ヴァリエール。」
そのシュヴルーズの言葉で、他の生徒達ががどっと吹き出した。

笑いで教室が包まれる中、誰かが言い始める。
「どうせその辺を歩いてた平民でも連れてきたんじゃないか〜?」
「魔法が失敗したからって、インチキするのはよくないぜ。ゼロのルイズ!」
「ホントホント、貴族がズルなんてなぁ。」
何人かの生徒が代わる代わるルイズを馬鹿にしていく。
耐えかねたルイズが声を上げようとしたとき、ルイズを馬鹿にした生徒たちの口に赤土で蓋がされた。

見れば、厳しい目つきで杖を振ったシュヴルーズがそこにいた。
「いい加減にしなさい、お友達を悪く言うのは何事ですか。
 罰として、あなた方はそのまま授業を受けなさい。いいですね?」
先ほどの赤土は彼女の魔法だった。成り行きを見ていたキリコは驚いていた。
一定量の土の塊を複数個、手も使わずに飛ばすなど、彼の元いた世界では考えれらない現象である。
(確かに、魔法でもなければできないような芸当だ。)
改めて、ここが魔法の存在する『異世界』だということを思い知るのであった。
539装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 02:53:12 ID:dH61wjnt
やがて授業が始まった。学年が上がってから最初ということで、基本の復習とやらが中心らしい。
シュヴルーズの講義内容(本人は否定してるが、やや『土』系統を贔屓している)に、生徒達は耳を傾ける。
先ほどの罰のせいか、お喋りをする生徒は一人もおらず、実に静かな授業風景となっている。
しかし彼らの使い魔達にとっては退屈でしかない。
それに加えて静かともなれば、昼寝には最高の環境だ。すでに殆どの使い魔は昼寝を始めていた。

その中で唯一、あくび一つもせず、真っ直ぐシュヴルーズに眼を向けるものがいる。キリコだ。
端から見れば、まるで授業を聞いてるようだ。本当に聞いてるかはわからないが。
そんなキリコの様子を、ルイズは横目で眺める。
(てっきり居眠りでもするかと思ったけど……ひょっとして意外と真面目?)
眠るそぶりも見せない、無愛想な自分の使い魔を見ながらルイズは思った。

そんなキリコを、シュヴルーズは誰よりも真面目な授業姿勢(彼女にはそう見えた)だと感心していた。
「ミス・ヴァリエールの使い魔は、実によく授業を聞いているようですね。
 主人であるミス・ヴァリエールも努力家だと聞いていますから、きっと早くも主人に似たのでしょうね。」
笑顔でシュヴルーズは語る。褒められたルイズは嬉しかった。
内心では、キリコと自分が似ているというのには、ちょっと納得いかないようだが。
「そうですわ。ミス・ヴァリエール、あなたに『錬金』をやってもらいましょう。」
シュヴルーズの提案がなされた瞬間、瞬く間に教室の空気が凍りついた。

キュルケが恐る恐るシュヴルーズに言う。
「先生、その……、危険だからやめといた方がいいと思います。」
「どうして危険なのですか?」
シュヴルーズはキュルケの言っている意味がわからないといった顔になる。
「ルイズを教えるのは今日が初めてですよね?」
「えぇ。ですが先ほどもいったように、彼女は努力家だとも聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。
 あなたの努力を見せてあげなさい。例え失敗しても、それを恐れては何もできませんよ。」

当のルイズといえば「やります。」と教壇に向かっていく。他の生徒は一斉に机の下に隠れだした。
「……?」
成り行きを見守っていたキリコが、周りの様子に疑問を抱いた。
「キリコ、あなたもはやくこっちに!」
呼ばれたほうをみれば、キュルケが手招きして自分を呼んでいる。
状況がさっぱり理解できないキリコだが、とりあえず言われたとおりに向かった。

「一体なにが起こるというんだ?」
生徒達のただならぬ様子に、思わずそう聞くキリコ。
「すぐにわかるわ。」
と、キュルケからの回答はよくわからない。
だがなにやら危険だということを、キリコは周りの空気から感じ取る。そのときだった。
教壇から、教室の隅にまでとどくほどの、実に盛大な爆発が起こった。
「っ……!どうなってるんだ……。」
「あの子、魔法を使おうとすると、いっつもこうなるのよ。」
キリコは机の下からでて辺りを見回す。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:54:37 ID:9p1IoNRe
最低野郎支援
541装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 02:55:01 ID:dH61wjnt
教室の有様は酷いものだった。
窓ガラスは割れ、机もボロボロ。椅子にいたっては殆ど吹き飛ばされている。
また爆発音により、寝ていたところを起こされた使い魔が騒いだり、パニックになっていた。
教壇の方を見れば、至近距離で爆発をくらったシュヴルーズがのびている。
その直ぐ近く、爆発引き起こしたルイズも、服があちこちボロボロだった。
ルイズはで汚れた顔をハンカチで拭きながら、涼しい顔で言う。

「ちょっと失敗しちゃったみたいね。」
その言葉に、たちまち生徒たちの非難が飛んでくる。
「どこがちょっとなんだよ!ゼロのルイズ!」
「いつでも魔法失敗で、成功回数ゼロじゃないか!」
教室が非難と混乱で騒がしくなる中、キリコは立ち尽くすルイズを見つめていた。


ルイズたちの教室が、爆発で大騒ぎになるのと同じ頃の図書館。
その中で教師のみ閲覧可能な書物のある、『フェニアのライブラリー』にコルベールの姿があった。
(あのルーンの形状……確かに見覚えがある。)
彼はキリコの左手にあったルーンが、どうしても気にかかってた。
それを調べるため、今朝から殆ど休まずに図書館の本を漁り続けている。
やがてコルベールは一冊の古書にたどり着いた。タイトルは『始祖ブリミルの使い魔たち』。
(これならば、もしかしたら……。)

書棚から古書を引き抜き、手早くページをめくっていく。
そしてある記述に目が止まり、ページをめくる手もその動作を止めた。
コルベールは恐る恐る、ポケットから先日とっていたルーンのスケッチを取り出す。
そしてそのスケッチと、本に記述されている『あるもの』を見比べる。
(やはり……、これは間違いない!)
何かを確信したコルベールは、慌てた様子で図書室を飛び出す。
脇に先ほどの古書を抱えて、オスマンのいる学院長室へと駆けていった。

コルベールもいなくなった図書室は、完全に無人となっていた。
『フェニアのライブラリー』では、片付けられないままの本が、乱雑に散らばっている。
コルベールが読んでいた本の種類は様々で、中には非常に胡散臭いものも混じっている。
その中の一冊に、現在でも解読不能な言語で書かれた書物が埋もれていた。
だが、その本が読まれることになるのは、まだずっと先のこと。
今はただ、誰も読めない謎の書物として扱われるだけであった。


キリコとルイズは、爆発で散らかった教室の片付けをしている。
先の爆発からしばらくして、騒ぎを聞きつけた教師たちが駆けつけた。
授業は中止となり、騒ぎの原因を作ったルイズに対しては、罰として教室の片付けが言い渡される。
『魔法を使わずに』という制約つきだが、元々使えないルイズにはあまり意味がなかった。
どの道自分の手でやるしかなかったのである。
ちなみに掃除をする前、ルイズとキリコの間でこんなやりとりがあった。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:57:03 ID:9p1IoNRe
支援
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 02:57:30 ID:DWZ9BRl2
支援
544装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 02:58:39 ID:dH61wjnt
「先に言っておくが、俺に全てやらせる気なら断る。」
「ま、まだ何も言ってないじゃない!?」
何も言って無いのにずばり自分の考えを当てられ、尚且つ拒否されたルイズは固まる。
もっとも、今までの彼女の行動からすれば、容易に想像がつきそうなことではあるが。
「……じゃあ、手伝いなさいよ。使い魔なんだから。」
どこか諦めにも似た気持ちでそう言うと、キリコは箒を取って床を掃き始めた。

(なんで使い魔に命令するだけで、いちいち言葉を選ばなくちゃいけないのよ……。)
ハァ、と思わずため息が出るルイズ。
そういった主人の心情など欠片も考えることはなく、キリコは掃除の指示を出す。
「俺は破損した机やガラスの運搬、交換をやる。ルイズは雑巾で汚れた場所を拭いてくれ。」
「〜っ、使い魔のくせに、主人に対して普通に命令してるんじゃないわよ!」
そんなこんなでどうにか掃除を終わらせ、二人は食堂へ向かう。


今日一日の食事を抜かれていたキリコは、食堂に入らず外を歩いている。
何処か、食事を提供してくれそうな場所を探しているのだ。
(考えられるのは、やはり厨房か。)
もらえるかどうかは分からなくとも、頼むだけ頼んでみるつもりらしい。
そんな思惑でキリコが厨房を探していると、見覚えのある顔に出会った。
「あ、キリコさん。」
彼女のほうも気づいたようだった。

「シエスタか。」
「どうなされたんですか、こんなところで。」
「厨房を探している。飯を提供してもらえないか頼もうと思ってな。」
「そうでしたか。厨房なら、私も行くところだったのでご案内しますわ。」
歩き出すシエスタに、キリコも付いていく。

「でもご飯の提供って……ミス・ヴァリエールから、頂けなかったんですか?」
「あの後口論があってな。結果として朝から抜かれた。」
「まぁ、朝からですかっ!?」
朝から何も食べていないのかと思い、シエスタは驚く。
「一応、携帯できる食料が少しあってな。朝はそれで間に合せた。」
「そうだったんですか……。」
シエスタは心配そうな顔でキリコを見る。
話しているうちに、二人は食堂の裏手にある厨房へとたどり着いた。

「ちょっと待っててくださいね。」
そういってシエスタは、小走りで厨房の奥へと消えていく。
少しして、皿を運んで戻ってきた。見れば皿には、暖かいシチューが入っている。
「余りもので作った賄い食ですけど、よかったら食べてください。」
「すまないな。頂こう。」
早速シチューを食べ始めるキリコ。一口食べると、動きを止めた。
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:00:29 ID:Uu3gb/hO
僕三ッキー支援
546装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 03:01:12 ID:dH61wjnt
「あ、もしかして、お口にあいませんでしたか……?」
シエスタは急に動きを止めたキリコを見て、料理が不満だったのだろうかと不安になる。
「……いや、そうじゃない。ここまで美味いものを食うのも、随分と久しぶりだと思ってな。」
「ほっ……そうですか。そういってもらえると、なんだか嬉しいですわ。」
黙々とシチューを食べるキリコを、安堵したシエスタは笑顔で眺めていた。

「助かった。」
空になった皿を返し、率直に礼を述べるキリコ。
「お腹がすいたら、またいつでも来てください。今みたいな賄でよければお出しできますから。」
「また飯を抜かれるようなことがあれば、そうさせてもらう。」
「はい、是非。」
まだ仕事があると言って、シエスタは再び厨房の奥へと姿を消した。
キリコも食堂へと戻るため、厨房を後にする。


食堂では、まだ大勢の生徒が食事を取っていた。
キリコは人の邪魔にならないよう、適当な壁に背を預ける。
(……まだかかりそうなら、ATを見てくるか。)
そう思い、自分の行き先をルイズに伝えておこうと、キリコは食堂を見回してルイズを探す。
(あれか。)
ルイズを見つけたキリコは歩き出した。そこで彼の足に何かが当たる。

「……?」
床を見て、キリコは何が自分に当たったのかを確かめる。
見れば、小瓶が転がっていた。拾ってよく見てみる。
瓶の中では紫色の液体が揺らめいていた。
(飲料……薬か?)
顔の辺りまで持ち上げ、光に透かしながらしばらく眺めていた。

「ちょっと、そこのあなた。」
呼ばれたキリコが振り向くと、そこには二つの巻き髪をもつ少女―モンモランシーが立っていた。
「なんだ。」
「その小瓶、なんであなたが持ってるの?」
モンモランシーはキリコの小瓶を指差しながら尋ねる。
「落ちていたのを拾った。」
「そう。それ私のなのよ、拾ってくれてありがとう。」
モンモランシーが手を差し出したので、キリコはその手に小瓶を渡す。

小瓶を受け取ったモンモランシーは、さっさとキリコの脇を通り過ぎていった。
キリコも特に気にせず、ルイズの元へ向かう。
一方ルイズは、昼食後のクックベリーパイに舌鼓を打っていた。
「〜♪」
今朝に比べれば、随分と機嫌がいいようだ。至福の一時なのだろう。
「……?なにかしら。」
食堂の一角から、なにやら言い争いが聞こえる。そこにルイズも見知った顔がいた。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:01:20 ID:DzRSGUz8
手塚治虫の「メトロポリス」からミキマウス・ウォルトディズニーニを召喚
548装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 03:04:52 ID:dH61wjnt
「ルイズ。」
見ていた一角から目を離し、ルイズが呼ばれた方に顔を向ける。そこにキリコがいた。
「あら、どうしたのよ。」
「まだ食事の時間はかかるか?」
「……?まぁ、もう少しかかるけど。それがどうしたの?」
「時間がかかるなら、言っておくことがあってな。」
キリコが話を切り出そうとしたときだった。

「そこの君。」
またもや呼ばれるキリコ。
呼んだのは、他の生徒とは少し違うシャツを着て、手に薔薇を持っている少年だ。
「ギーシュじゃない。どうしたのよ、顔が赤く腫れてるみたいだけど?」
「あぁ、そうか……ルイズ、君の使い魔だったか。いやなに、ちょっとそこの彼に話があってね。」
ギーシュは手に持った薔薇で、キリコを指して言う。

「君が瓶を拾ったせいで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「「……?」」
最初、キリコとルイズにはさっぱり意味が分からなかった。
少しして理解できたのか、ルイズが口を開く。
「あぁ、今モンモランシーと一年の子とで何かやってたけど、そういうことだったのね。」
「説明してくれ。」
呆れた顔になるルイズに、いまいち状況を把握しかねるキリコが尋ねた。
ルイズと、一部始終を見ていた生徒達が説明する。

まずキリコの拾った瓶は、モンモランシーが自分のために作っている香水だという。
それをギーシュに送っていたということは、二人は付き合っているということになるようだ。
だが当のギーシュは、ケティという少女にも手を出していたらしい。
要は二股をしていたことが、キリコが小瓶を拾ったことがきっかけでバレたとのこと。
ギーシュはその責任を、キリコにとれといっているのだった。

「本はといえば、あんたがその瓶を落としたのが悪いんじゃない。」
「言い掛かりも良いところだ。」
ここにきて、何故か妙に息の合った二人。ギーシュの言い分を正論で粉砕する。
「ぐっ……。」
言葉に詰まるギーシュ。何かいうことが見つかったのか、再び口を開く。
「ふんっ。所詮は魔法の使えないゼロのルイズと、その使い魔である田舎ものの平民か。
 そもそもそんな君らに、貴族の機転を期待する僕のほうが間違いだったね。」
気障なポーズをつけ、二人を馬鹿にするギーシュ。

「な、なんですってぇっ!?」
「乗るな。安い挑発だ。」
馬鹿にされて怒るルイズの肩を、キリコが手でつかんで制す。
「でも!真正面から馬鹿にされて黙ってちゃ、貴族の名が廃るわ!」
(面倒だな、貴族とやらは……。)
口には出さないが、心の中でそうつぶやくキリコだった。
549装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 03:06:27 ID:dH61wjnt
そんな二人を見て流れが自分に向いたと思ったか、ギーシュはさらに言う。
「ふむ、だったらどうするんだい?」
「そ、それは、どうするって……。」
言ってはみたが、具体的にどうするとまではルイズには考えられない。
ニヤリ、とギーシュが静かに笑う。
「では、決着をつけるために一つ提案をしよう。決闘だ。」

ギーシュのその提案に、食堂にいた生徒達にどよめきが走る。
「決闘って……何言ってるのよ。それは学院の規則で禁止されてるじゃない。」
「まぁ待ちたまえ。いくら僕でも、ルイズ、君と決闘なんかするわけないだろう。」
ルイズの反論に、逐一気障な仕草でギーシュはそう返す。
「じゃあ一体どういう……。」
ギーシュの言わんとしてることがわからず、ルイズは首をかしげる。
だがキリコのほうは分かったようで、その思惑を口に出す。
「こいつが決闘したいのは、どうやら俺のほうらしい。」

さらにざわめきが広がり、同時にギーシュは待ってましたといわんばかりの表情になる。
「そのとおりだ。確かに決闘は禁止されているが、それは貴族同士の場合だ。
 貴族と平民、もしくは使い魔の間での決闘は、特に禁止されてはいないからね。」
得意げな表情で、ギーシュは言葉を続ける。
「そ、それはそうだけど……。」
言いよどむルイズ。
「まぁそうでなくとも、君らが謝れば許すことを考えよう。」
「……っ!」
当然、そんなギーシュの提案を、ルイズが簡単に呑むわけもない。

しかし使い魔であるキリコに、決闘をさせて怪我をさせたくないともルイズは思う。
(ここでは)平民だが、それでも彼女の使い魔である。
(悔しいけど……ここはっ。)
『許すことを考える』とギーシュはいった。たぶん、そんな簡単ではないだろう。
しかし謝れば、この場は解決するかもしれない。ルイズはそれが一番良いと判断した。
そして謝るために頭を下げようとしたルイズだが、それをキリコは手で制す。
「え?」
「ん?」
ルイズとギーシュは同時に声を上げる。

「俺が勝ったら、お前は謝るのか?」
キリコの言葉に、一瞬間の抜けた顔になるギーシュ。すぐに先ほどの表情に戻る。
「ハハハッ、何を言い出すかと思えば!いいだろう、君が僕に勝てたら謝るよ。」
余裕な調子でギーシュは答える。
「約束は守ることだ。場所はどこだ。」
「勿論守るさ。ではヴェストリの広場で待っているよ、使い魔くん。」
そういってギーシュは去っていく。多くの生徒も、それに続いて食堂を後にする。
550装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 03:10:34 ID:dH61wjnt
「ちょ、ちょっとあんた!何勝ってなことしてるのよっ!」
一連の流れにしばし呆然としていたルイズ。
何事かをようやく把握したようで、自分を抜いて話を進めたキリコに詰め寄った。
「俺もお前も、謝る理由がない。」
「それは、そうかもしれないけどっ……。」
キリコの言い分ももっともだが、だからといって戦わせるわけにもいかない。
なんとかして決闘だけはやめさせようと、ルイズは説得する。

「聞いて。メイジが相手じゃ、平民のあんたは絶対に勝てないの。」
「魔法が使える、使えないの違いか。」
キリコの予測を、ルイズは続く言葉で肯定する。
「そうよ。下手をしたらあんたは死ぬかもしれない。
 だから早いうちに謝っておけば、きっとギーシュだって許して……。」
「あいつの何にあやまるのか、俺には分からないな。」
「だからっ、それは……とにかくっ!」

なおもルイズはキリコに食い下がる。だがキリコの決意は変わらない。
「相手が魔法を使うなら、こちらも相応の準備が要るな。」
言ってキリコは歩き出す。ルイズもその背中を追う。
「あ、待ちなさいっ!」
歩むキリコの頭は、『メイジ』という未知数の相手とどう戦うかを考えていた。
日が傾き始めた午後。キリコの眼は、傾いた日差しより、鋭い。



予告

人は戦うとき、それに求めるものは何か。
あるときは、勝利という栄光を。
あるときは、金銭という賞品を。
あるときは、寵愛という心情を。
しかしどれも、命というチップに遠く見合わない。
危険という名の快楽求め、粗暴なギャンブルが始まる。

次回「決闘」
その値打ちもまた、二束三文ですらない。
551装甲騎兵ゼロ:2009/01/12(月) 03:12:14 ID:dH61wjnt
以上で終了です。次回はいよいよ、ギーシュとの決闘です。
が、劇場版ペールゼン・ファイルズとどちらが早くなるやら…。

支援してくださった皆様、ありがとうございました。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:15:10 ID:UtjPda5L
>>551
乙、この最低野郎
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:18:53 ID:IW+j41wE
>>551
お疲れ様です。

書物・・・・・・まさかペールz・・・
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:35:15 ID:J9CnMUzB
GJ!
ところで幻想水滸伝からってあんま呼ばれないよな?
ルカ様が呼ばれるのを呼んでみたい・・・
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:36:20 ID:Ib5sjspE
そんなに呼びたいのなら、遠慮なんかせずに呼んでくれ。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:42:49 ID:1/CT2o7a
どうせやるなら108人全員喚ぶべさ
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 03:49:52 ID:u/VNqDF0
その場合一作品に絞るべきか
それともそれぞれの星のキャラを各作品から抜き出した幻水オールスターズにするべきかw
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 04:42:37 ID:Ib5sjspE
ルイズ「ワシの使い魔は百八体まで居るぞ!」
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 04:57:54 ID:tPAeV6bZ
>>558
・・・全使い魔入場をやれと?
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 05:20:21 ID:j28v/WK2
とりあえず108人との契約シーンを省略せずに全部書いてもらおうか。話はそれからだッ!
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 05:20:26 ID:fJJTQSEK
幻水2主人公とルイズの連携技
2主人公が頑張って敵をボコってる間にルイズはミカン食べたり本読んだりしてます
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 05:30:38 ID:31v9S1yN
テニヌかよw
でもまぁ、ホントに108の使い魔の入場シーンを書いたら尊敬するぜwww
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 05:39:41 ID:J7n4uwQ7
>>554
小ネタでなかったっけ?
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 08:19:39 ID:GIqd6T1W
それよりも一気に108体もの個性的な使い魔達を相手にしないといけないワルドが可哀想だ。
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 08:39:58 ID:lS9q+JoQ
最低野郎の人乙。

しかしこのキリコ、魔法の事を全然舐めてないからギーシュ仕留めるのに全力投球してきそうだw
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 08:42:13 ID:d/EluP+6
そんだけいればエルフとか楽勝じゃね?
倒しても倒してもガンダ…キッツイぞ〜w
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 09:02:55 ID:vP9BSdi7
近代兵器キャラにはギーシュはいいキャラだよね
錬金の恐怖と有効性を知るいい窓口だ
朝倉みたいにおもちゃにされることもあるけどw
568ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:05:52 ID:wwslFLQm
こんな最低野郎の次に投下するのは気が引けるけど。
9;10位からシーン06aの扉を開こうかと思う。
569ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:11:04 ID:wwslFLQm
では、大丈夫みたいなので扉を開こう。


シエスタは恐怖していた、目の前の少年が言っている事はただの言いがかりに過ぎない。それはあまり学が無いシエスタ
にとっても理解できる事実だった。
けれども彼女は平民で、目の前の少年は貴族…それは事実を覆して有り余る身分の差でもあり、覆し様の無い力の差でも
ある。



ゼロのフェイト シーン06a “ヒューとルイズのスタイル”

     シーンカード:イヌ・T(審判/事件の決着。逮捕。失われしものの再生、復活。蘇生。浄化。)



「も、申し訳ありません!まさかその様な事になるとは露知らず。」
「全く、これだから君達平民は度し難いんだ。
 いいかね、ああいう時は後からそっと渡してくれれば良かったんだ。それをよりにもよって「トリック・オア・トリー
ト」誰だ!」

いきなり耳元で囁かれたギーシュは驚き飛び退る。ふり返ると、今まで自分がいた場所に見た事が無い平民の男が立って
いた。
珍しい仕立てのコートを纏っている男だ、印象としては鋭利な刃物を感じさせるが所詮は平民、特に脅威という訳でもな
い。
しかし、この平民には見覚えがあった。知ったのは数時間前だが…確かルイズの使い魔の平民だ、良く考えるとメイドと
共に居たのはこの男ではなかったか。そう思うと一層苛立ちが募る。

「君は確かそこのメイドと一緒にいた男じゃないか、貴族にいきなり言葉をかけるとは躾がなっていないようだね。
 まあゼロのルイズの使い魔じゃあしょうがないともいえるけど「一言いいかい?」何?」
「確かミスタ・グラモンで間違いありませんね?」
「その通り、ギーシュ・ド・グラモンとは僕の事だ。で、何だね言い訳位聞いてあげようじゃないか。」
「いやね、先程からそちらにいるシエスタを責めていらっしゃるように見えますが、それはとんだ見当違いだと言いたいん
ですよ。」
「どういう事だね、まさか僕の所為だとでも言いたいのかい?」
「いえいえ、別にミスタが二股かけようが此方には関係は無かったのですが。事、香水壜の件について言えばミス・モンモ
ランシに渡したのは俺でね、彼女は一切関知していないんですよ。」

 ギーシュは目の前の平民がメイドの少女を助けようとしている事を感じとった。
 改めてメイドの少女を見るとなるほど、平民にしては見目が良い。どうやらこの僕を出汁にしようとしているのだろう、
何とも無謀な平民である。居るのだ時折こうして貴族に立ち向かう無謀な平民が、そうした身の程知らずはどう対処すべき
か…ギーシュは至極まっとうな貴族の思考の結果にたどり着いた。

「ほう、それでは何かね?君はこういった事態になると分かっていながらモンモランシーに香水壜を渡したというのかね?」
「流石にここまでとは思いもしませんでしたがね。俺としては、大事な贈り物を落とされた彼女からちょいとお小言を貰う
程度だと思っていたんだが。まさか二股かけているとは思いもよらず…いや、誠に申し訳ない。」
「なるほど、どうやら君は躾がなっていないようだね。いいだろう、そこのメイドの分の躾は勘弁してあげるよ。その代わ
り君には2人のレディの心と、僕と彼女達の名誉を傷つけた詫びをしてもらおうじゃないか。」

ヒューは呆れていた、未熟といえばそれまでなのだろうが。ここまで自分に都合が良い思考展開ができるのは、一種の人格
障害かアッパー系のドラッグでもキメている状態としか思えなかったからだ。改めてギーシュの目を見てみるが、ドラッグ
特有の瞳の濁りは見受けられない…となると人格障害という線が濃厚になってくるが、そこまでとなると最早カウンセラー
が必要になるレベルだろう。
対するギーシュといえば、黙り込んだヒューを見て満足感に浸っていた。ようやくこの田舎者の平民にも貴族に逆らう事の
恐ろしさが分かったと見える。しかしここで許しはしない、この平民にはモンモランシーとケティに詫びてもらわねばなら
ないのだ。流石に2人との関係を元通りにはできないだろうが、少なくとも2人の傷ついた心は幾許か癒されるだろう。そ
の後はこの平民に躾をしてやろう、大体この平民の主であるルイズからして僕達に迷惑をかけまくっているのだ、彼女自身
に手を出せない以上、この平民を使って日頃の鬱憤を晴らさせてもらうとしよう。
570ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:12:36 ID:wwslFLQm

「どうしたね、今更自分がした罪におののいても許しはしないよ。そうだな、まずは「すまないが」何だね!さっきから人
の話を」
「得意になっている所すまないんだがミスタ…、面倒だなギーシュと呼ばせてもらうぞ。話を聞いていると俺やシエスタが
ギーシュ、君や君に二股をかけられていた女性達に詫びる必要性は感じられないんだが?」
「な!話を聞いていなかったのかね君は!」
「いや、聞いていた。だからこそさ、俺があの時渡さなかったのは友人達からからかわれるのが恥ずかしかったんだろうと
いう考えからだった。流石にあの時点で、君に彼女であるところのミス・モンモランシにばれては困る秘密があるなど思い
もしなかった。
 それとも君ならアレだけの情報でそこまで推測できると?
 第一、二股をかけたのは君だろう。なら詫びるのは俺やシエスタではなくギーシュ、君であるべきだ。断言するが俺やシ
エスタが彼女等に詫びた所で以前の関係には戻れないし「もういい!」っと」
「何と、何と無礼な平民だ!せっかくこの僕が穏便に済ませてやろうと思って慈悲を示してやったのに!貴族を呼び捨てに
するのみならず、説教まで!よかろう、そこまで貴族を愚弄するというのであれば。貴様が愚弄した貴族の、いやメイジの
力というものをその身に刻んでくれる!決闘だ!」

ギーシュの常ならぬ怒号に食堂が沸いた。
ギーシュは「ヴェストリの広場で待つ!逃げるなよゼロのルイズの使い魔!」と言って食堂を後にする。
それを見たヒューは、少しからかい過ぎたかと反省してシエスタに広場の場所を聞こうと。見てみると何かあったのかシエ
スタの顔色は真っ青で身体はガタガタと震えていた。

「どうしたシエスタ。風邪で「こ、殺されちゃいます!」は?」
「ヒューさん、貴族を本気で怒らせたら…」

そこまで言うと、シエスタは泣きながら走り去っていった。
シエスタが走り去って行くのを見送ったヒューは、改めてルイズに広場の場所を聞こうとルイズの元に進む。
歩いているヒューにキュルケとその友人らしい少女が近付いてくる。キュルケの表情は心配半分、好奇心半分という感じだ。

「よう、キュルケ。」
「よう、じゃないわよヒュー大丈夫なの?ギーシュあんなに怒らせちゃって…。
 貴方が住んでた所がどういう場所か知らないけど、貴族に勝てるの?」
「さあ、何とかなるんじゃないか?見えない場所から襲撃されるわけじゃなし、目の前ならなんとでもしようがあるさ。」
「あら、大した自信だこと。安心しなさいな死にそうになったら止めてあげる、その前にルイズが出張ってくるだろうけど
ね。」
「そいつはありがたいね。
 ルイズ、ルイズお嬢さん、ちょいと聞きたいことがあるんだけどいいかい?」

と、ルイズの席近くに来たヒューは彼女に話しかける。
考え事をしていたらしいルイズは、言葉だけでは気付かなかったのか、肩を揺さぶられて初めてヒューとその後にいる2人
に気が付いた。
(キュルケを見た途端、眉間に深い皺が寄ったが)

「何?ヒュー、昼休みの終わりまでまだ時間があると思うんだけど…あら?妙に閑散としてるわね。」

そろそろ、昼休みが終わるのかとヒューに聞いた後、常ならぬ食堂の雰囲気に首を傾げる。
周りを見回す主にヒューは何でもないかの様に会話を始める。

「ああ、何でだろうな。ところでヴェストリの広場って何処か分かるかい?」
「ヴェストリの広場?分かるけどどうして?」
「ちょいと野暮用でね、親切な貴族が色々教えてくれるらしい。」
「ふーん、まあいいわ。食事も終わったし散歩がてら案内してあげる、ついてらっしゃい。」
「悪いね。」

その主従の会話を聞いていたキュルケは呆れるしかなかった。決闘の“け”の字も口に出さない使い魔もだが、今までの
騒動に気が付いてもいなかったルイズには呆れを通り越して感心すらしていた、これだけのの集中力を発揮するメイジは
スクエアにもそういないはずだ。
それだけに、この少女が魔法を使えない事を残念に思っていた。彼女が魔法の才を開花させていたならば、どれ程のライバ
ルになれただろう。きっと、すぐ隣を歩いている読書の虫の少女と同じ位のライバルになれたにちがいない。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 09:13:37 ID:vP9BSdi7
しえーん
572ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:15:45 ID:wwslFLQm
ヴェストリの広場が近付くにつれ、生徒達のざわめきが聞こえてくる。何せ貴族の子女を集めた全寮制の学院だ、王都まで
の距離もそれなりにある為、娯楽にも乏しく若い好奇心は常に飢えていた。
そんな彼らの娯楽は大体異性や魔法の力に向いていく。しかし今日は違う、滅多に見られない決闘なのだ、相手は平民とは
いえ“あの”ゼロのルイズの使い魔の平民である、毎日魔法の練習と称して爆発を繰り返す迷惑な公爵家の娘の使い魔だ。
流石にルイズ自身には手は出せないが、使い魔となれば話は別だ。ついでに平民である、幻獣や猛獣ならあるいは…という
事もありえるが何の力も持たない平民なら負ける事は無い。
そう、これは結果が見えた安全なレクリエーション。残酷な見世物だった、ここに集った貴族達は一部を除いて平民の使い
魔が血みどろになって許しを請う場面を見に来ただけなのだ。それは決闘の当事者でもあるギーシュとて同じだった。

(ふむ、今考えると色々と大人気なかったかな?まぁいい、ここはゼロのルイズの代わりにあの平民を躾てやろう。
 手足の1,2本も折ってやって土下座位させてやれば見物に来た皆も納得するだろう。
 そうそう、ケティには申し訳ないけど今度の虚無の曜日にはモンモランシを連れて王都に買い物に行こう。いや、それよ
りもこの決闘が終わったら許しを請わなければなるまい。…あああ、思い出したらますます腹が立ってきた。)

「来たぞ!ゼロのルイズの使い魔だ!」
「ルイズも一緒なんだ、あれキュルケとタバサもいる。」
「珍しいなあの2人が来るなんて。」
「しかし、あの平民のおっさん見れば見るほど変な格好だよな。」

ヴェストリの広場に来た4人はルイズを除いて平然としていた。ヒューは飄々としており、キュルケは呆れ気味、タバサに
至っては本から顔を上げようともしない。
しかし、残る1人…ルイズはというと…困惑していた。元々このヴェストリの広場は学園の西側に位置する為、日があまり
差さない=人があまり寄り付かない場所だった、それなのに何故ここまで人が溢れているのだろう。
改めて広場を見ると、そこにはギーシュが立っていた。頬に赤い手形がある所をみると、またモンモランシーと揉めたのだ
ろう、懲りない男である。となると、ヒューが言っていた“親切な貴族”というのは彼の事なのだろうか?

…おかしい、変だ、ありえない、だってギーシュなのだ。自分を薔薇とか言って、制服も変な改造をしている、女誑しの貴
族。そう貴族なのだ、ヒューは男である、女ならもしかしてありえたかもしれないが、ギーシュが平民の男に世話を焼くと
は到底思えない。
そういえば私はヒューがどういった経緯で“貴族の親切”とやらを受けるようになったのか知らない。嫌な予感がする、片
や貴族を敬わない平民、片や女好きの貴族(手形付き)。意を決したルイズは恐る恐るヒューに尋ねてみる事にした。

「ね、ねぇヒュー?そういえば私、貴方に色々と教えてくれるっていう貴族の事を何も聞いていないんだけど…。
 どういった経緯でそうなったのか教えてくれる?」
「ん?ああ別に大した事じゃない。
 落ちていた香水壜を製作者に渡したら、それが元で持ち主の二股が発覚してね」
「あー、もう良いわ大体分かったから」
「そうかい?それは良かった、じゃあ行ってくる。」
「ちょ!ちょっと待ちなさい!
 いい?平民は貴族に決して勝てないの、悪い事は言わないから謝りなさい。何なら私も一緒に謝ってあげるから、いい「それ
はだめだ」 何でよ、主が謝れって命令してるのよ?いいから謝ってきなさい。」
「ルイズお嬢さん、お嬢さんは自分が悪くないのに謝れるのかい?それが君がいう貴族ってヤツなのか?」
「それとこれとは「違わないね」な!」
「俺はこの間までロクでもない生き方をしていた、ちょいとした薬を手に入れる為にまともなフェイトじゃあ引き受けない
仕事も引き受けた、真っ暗な道を明かりも無しで歩いているようなものだったよ、そんな時一つの事件を解決したのさ。
その事件の最中、1人のイヌ…ここらでいう騎士とか衛視みたいなもんだが、ソイツとソイツの部下達が犠牲になった。まぁ
ソイツも大概な悪党だったんだが最後に真実ってヤツを明かす為に自分のスタイルを貫いたのさ。」
「で?何が言いたいのよ。」
「ここで謝ったら俺のスタイルを貫けなくなるって事さ、ついでに言えばあの世で旦那に焼かれちまう。」

573ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:19:10 ID:wwslFLQm
ルイズはヒューの言葉を考えた、スタイル…多分これは生き様という意味だろう。それを自分に当て嵌めてみる、自分は貴
族だ。確かに魔法は使えないだろう、だけど生まれてから今まで“貴族たれ”と育てられたしそう生きてきた、これからも
そうするだろう。
ならば“貴族らしく”生きる事が自分のスタイルだ。例え魔法が使えなくても、例えゼロと馬鹿にされても自分はこの道を
歩くだろう。ならば私はヒューの生き方を、スタイルを妨げる事はできない。

それは、ある意味自分に貴族である事を辞めろと言う事に繋がるだろうから。

「分かった、もう止めないわ。
 けど死にそうになったらアンタの意見なんて聞かないわよ、何としても止める。それが私のスタイルだから。」
「そいつはニューロだ。じゃあ俺もゴーストステップのハンドルに相応しく、2秒で片付けてくるさ。」

そう言うとヒューは、3人から離れて広場に向かう。目の前には恐らくバサラであろう少年、周囲には笑いを浮かべた魔法
学院の坊ちゃん嬢ちゃんといったエキストラがひしめいている。トーキョーN◎VAから遠く離れた異界で、ヒュー・スペ
ンサーはスタイルを貫く為の舞台に立つ。



時間を少々巻き戻し、所を変えてここはトリステイン魔法学院の学院長室。オールド・オスマンなる老メイジの執務室。
しかし、今この場で繰り広げられている光景は、そういった重々しい外聞とはかけ離れた光景だった。

「痛い!ごめん!許して!もう、もうしませんから!」

情け無い老人の悲鳴と共に、重々しい打撃音が響き渡る。打撃音を出しているのは妙齢の美女の手足だった、その両手両足
はオスマンの身体の急所を的確にかつ、仕事に支障が出ない程度に痛めつける。しかも服に隠れて見えない部分ばかりを狙
うという周到さだった。

「あたた、ひどいのうミス・ロングビル。いたいけな老人にここまでの暴力を振るうとは。」
「セクハラが酷いようだと王宮に報告すると以前から言っているのに、収まる気配が無いからですわ。」
「はっ!王宮が怖くてセクハラが出来るか!そんなんじゃからミス・ロングビルは婚期を逃すんじゃ!」

そう言いつつオスマンがロングビルの腰に手を伸ばそうとした瞬間、足から駆け上ってきた激痛に悶絶し足を凝視する。見
てみると、ロングビルの踵がオスマンの布靴に包まれた足の小指を踏みつけている。しかも、ゆっくり捻る様に踵を捻って
いるのがオスマンの目に飛び込んできた。
最早、オスマンには悲鳴を上げる程の余裕も無く。ただただ、激痛に身悶えるしかなかった。

そんな時、慌てたようなノックの音と共に1人の教師が学園長室に入って来る。

「オールド・オスマン!大変です!」
「何じゃね、ミスタ…あーミスタ…「ミスタ・コルベールですわオールド・オスマン」おおう、すまんすまん。
 ミスタ・コルベール、慌しい。もうちっと落ち着かんか。」

コルベールが学園長室に入室した時、オスマンとロングビルはそれぞれの仕事に就いていた。

「こ、これは申し訳ない。しかし、一大事なのです!」
「そういう風にしておっては全てが大事じゃ、まずは落ち着いて説明せい。」
「ではまずこれをご覧下さい。」
「これは…『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか、またぞろ古臭いものを持ち出して来おったのう。で?これがどうか
したのかの?」
「では次にこちらのスケッチをご覧下さい。」

いぶかしげな表情のオスマンに一枚のスケッチを差し出す。

「ミス・ロングビル。少々席を外しなさい。」

ミス・ロングビルが席を外した事を確認すると、オスマンは改めてコルベールに問う。

「ミスタ・コルベール、どういう事か説明してくれんかの。」

574ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:21:21 ID:wwslFLQm
そうして大体ヒューとルイズがヴェストリの広場に着いた頃。
コルベールは前日に行った、使い魔召喚の儀式から始まる一連の流れを説明し終わった所だった。

「ふうむ、君はその“ヒュー・スペンサー”なる人物に刻まれたルーンが気になって調べてみた所。始祖ブリミルの使い魔
『ガンダールヴ』に行き着いたと…。」
「ええ、そうです。これは一大事ですぞ学院長!現代に蘇った『ガンダールヴ』!早速王宮に知らせて指示を「それには及
ばん」は?
 な、何故ですか。」
「ルーンだけで決め付けるというのは早計というものじゃろう。」
「そ、それはそうですが…。」
「この件に関しては、一時ワシが預かる事にする。よいな、他言無用じゃぞ。」
「了解しました、オールド・オスマン」

そうして、ヒューに刻まれたルーンの一件に決着が付いた頃。執務室の扉からノックの音が響いた。

「誰じゃ」

オスマンの言葉に応えたのは先程、この部屋を出て行ったミス・ロングビルだった。

「私です、オールド・オスマン」
「ミス・ロングビルではないか、何事じゃ?」
「ヴェストリの広場で決闘騒ぎが起きています。
 教師達が止めに入ろうとしているようですが生徒の数が多く止められない様です。」

ミス・ロングビルの報告にオスマンは苦虫を噛み潰した様な表情になる。

「全く、貴族の糞ガキ共が。暇を持て余した貴族程、度し難い生き物はおらんわい。
 で、騒ぎを起こしておるのは誰じゃ。」
「1人はギーシュ・ド・グラモン」
「グラモンの所の馬鹿息子か、大方女絡みじゃな?
 で、もう1人は」
「ミス・ヴァリエールの使い魔の男性です。
 いかがいたしましょう、教師達は“眠りの鐘”の使用を要請しておりますが」
「いや、ここは監視に留めておくように。
 広場の様子はこちらで確認しておく、生死に関わるとワシが判断したら秘宝を使う事とする。」
「承知しました。」

そうしてミス・ロングビルの気配が離れていく、恐らく教師達に一連の報告をしに行ったのだろう。
オスマンとコルベールが顔を見合わせた後、部屋の隅にある大きな姿見に向かってオスマンが杖を振る。
するとどうであろう、そこにはヴェストリの広場の状況が映し出されたではないか。

「伝説が蘇ったか、それとも唯の偶然か見てみるとしようかの。」

575ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:23:21 ID:wwslFLQm
シーン06a
スタイル(Y)
…生き様、そのキャストのスタイル

イヌ(St)
…警察官、警備員、検察官、裁判官。法の裁きを与える事ができる。
 法の維持に携わるキャラという位置付けでも使用される。
 草薙素子や杉下右京、wikiでは博麗霊夢やポンコツ

裏読み(特)
…状況から事件の成り行きを予測して先回りするフェイトの特技。

旦那(P)
…“火刑官(バーンドドッグ)”紫城京司。高等警察ブラックハウンド機動捜査課巡査。故人。
 「オレは、弱いものいじめが大嫌いなんだけどねえ」

高等警察ブラックハウンド機動捜査課(Y)
…警官や刑事のキャスト(プレイヤー)が所属する事になる部署(必ずではない)。
 ブラックハウンド自体は“日本”政府の直属組織ではあるが、現在はN◎VA軍が駐留している為、主に重犯罪や対テロ
が主な活動内容になってきている。
 機動捜査課は重犯罪の初動捜査を担う課。その性格上、正規の捜査対象を外れたケースに関与する事が多い。
 ここに属する隊員はクセがある人物が多いが、その反面有能な隊員も多い。
 ちなみにヒューが活躍するリプレイ“ビューティフルデイ”には、この課の課長である千早冴子女史のイラストが掲載さ
れている。

ハンドル(Y)
…2つ名、通称

2秒(S)
…極々短い時間。すぐに、ちょっと、一瞬で
576ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/12(月) 09:26:20 ID:wwslFLQm
以上で今回は終了。
は、旦那の説明文に故人なんて書いたままだった…orz
折角本文でぼやかしたのに、無駄になっちまったじゃないか。焼かれてきます。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 09:29:12 ID:vP9BSdi7
乙。
元ネタ解らないんですけど近未来系ですかね、ちとwiki見てきます
単分子ワイヤーギャロットとかジェットピストルとか大好きなんでw
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 11:22:50 ID:algh58DE
おつですー
飄々としたヒューが素敵に格好良いなぁ。これはある程度年齢重ねないと出ない味だよね。

トーキョーN◎VAは近未来系というかサイバーパンクなんで、ちょっととっつきにくいと言えばその通り。だけど面白いぜよ。
初心者向けのサイバーパンクって最近だと何があるかなぁ。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 11:26:10 ID:6UZ/PAv9
>>565
アーマーマグナムで余裕ですね
……まさかスコタコ使わんだろうなw
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 12:50:47 ID:Y3Cl/bp+
>>577
ジェットピストルは無いなあ>N◎VA
昔の銃器のコピーや、あるいは新規生産でも通常弾薬の銃がメインだし
口径13ミリの大口径銃とかはあるけど
ちなみに、単分子ワイヤーは(かなり凶悪な武器として)存在する
首絞め専門じゃないけど

>>578
最近は、まさにトーキョーN◎VAが初心者向けな罠
ハイランダー(特権階級)が初心者向けスタイル扱いになったりとか、やはりニューロエイジは回り続けている
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 12:54:21 ID:881XW6Ta
そういやジェットピストルで思い出したけど
昔ジャイロジェットっていう弾がロケット式なピストルがあったらしい
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 12:59:56 ID:Y3Cl/bp+
>>581
まさしくその銃のことだと思う>ジャイロジェット・ピストル
至近距離だとおもちゃ並の威力しかない、遠距離だと命中精度が悪い、弾薬が高価とデメリットが多い
メリットは発射音が小さいことぐらい(それも専用設計の低音拳銃と比較するなら小さいメリットでしかない)
で、すぐに消えたけど
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:23:10 ID:xOsf9C+e
>>582
反動が小さいのと、発射速度が遅いから麻酔弾とかアンプルを打ち込むのにも使えるのを追加してくれ、兄弟

>>578
単分子ワイヤーといえば、サイバー化した親指鞘に仕込むのが常識みたいになってますね。
北野武的に。

…ギーシュ死ぬなよ。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:24:01 ID:2erLT+Rj
NOVAは2ndまではバッチリじゃ!

飯はまだかのぅ
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:38:46 ID:Y3Cl/bp+
>>583
おお、反動とアンプル投与は忘れていたよ、兄弟>ジャイロジェット・ピストル
でも、それらは空気銃でモ十分だから、武器としてのメリットは薄すぎだと思うんだ、兄弟

単分子ワイヤーは、酷い武器なんだ、兄弟
暗殺向けの武器なんだ、兄弟
後は、ヒューのスタイルを思い出してくれ、兄弟

・・・ギーシュ死ぬなよ
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:41:20 ID:YsFV4Ryf
一瞬で背後を取られてキュッ
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:49:32 ID:+ZoCiiB6
単分子ワイヤーかあ。
両手指全部に仕込めばアラ不思議。 ウォルターさんが。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 13:59:11 ID:algh58DE
気配を消して背後を取って「トリック・オア・トリート…」とささやくのがヒュー・スペンサーの趣味と言えば…
これが最大のヒントだ、兄弟。

>>580
…そっかー、最近はいきなりブレードランナーのビデオ渡されたりしないんだー…
<N◎VA入門のときに先輩にやられた
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 14:03:40 ID:Y3Cl/bp+
>>587
そんなことをすると、エッセンスが足りなくなり(ゲームが違います)

マジな話、N◎VAは二個以上の武器の同時運用は事実上不可能なので、あんまメリットはないのです>両手の指に・・・
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 14:13:03 ID:vP9BSdi7
色々ルール違うんだなぁ
ガープスだと生体ホルスターに隠匿した徹甲炸裂弾装填ジェットピストルは狂ったように強いのに
隠密性捨ててジェットカービンにすれば秒間10連発でコンバットアーマーの兵士をミンチにし、
両足フルカスタムに大型火器用ハーネス背負って車両用ジェットマシンガンを担げばワンマンアーミー誕生という極悪武器だよ……
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 14:18:09 ID:nal4d2Gp
俺はニューロマンサーだったな>>サイバーパンク入門書
あの一番最初の一文は今でも覚えてる
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 14:32:22 ID:Y3Cl/bp+
>>590
N◎VAはワンマンアーミーをやるなら、むしろ達成値を向上させるサイバーウェアの方に手を出すと思う
それに極端に言えば、フルボーグを新聞紙で殺せる世界だし>N◎VA

あと、>>589訂正
二個以上じゃなくて、三個以上だ
二刀流はできたはず
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 14:32:57 ID:algh58DE
まあ、ブレードランナー見る前にシャドウランに触れていた覚えがあるけどな!
それはともかく、スペースオペラ初体験は『ハイスピード・ジェシー』と『クラッシャー・ジョウ』、どっちが先だったかなぁ…。
秋津透の『ダモクレスの槍』じゃないのは確かなんだが…。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 15:03:39 ID:70U+MWn9
スペオペ→ハヤカワSF→エターナルチャンピオンと連想して
黒い剣持ったメルニボネの皇子が来たら大惨事だなーと思ったw
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 15:38:30 ID:xOsf9C+e
>>592
夜叉が二刀流+フラッシュドライブ+分身で30人切り捨てたりしてたな、昔
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 15:41:01 ID:xOsf9C+e
>>586
ところで、単分子ワイヤーってめっちゃ細いから普通のものは切断しちゃうから、括れないぞ?

背後から人間の首に引っ掛けるとだな、キュッなんてする必要はないんだ、実際
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 16:05:06 ID:1/CT2o7a
>>596
僅か数秒で単分子ワイヤーのマフラーを編む
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 16:09:23 ID:algh58DE
>一瞬で背後を取られてキュッ
きっとこれがヒューの手加減の仕方なんだよ。
こう、後ろから首に腕を回して、頭を90度真横に傾けるんだよ。たぶん。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 16:10:54 ID:C8Fnqcrp
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 17:30:56 ID:Rlg2bPfl
糸使いだと吉田親司センセのMMからカレー召喚とか。
壮絶にルイズとキャラが被ってるような気がする。

でも多分一番相性が良いのはマザーズ・タワーのウラーしかセリフがなかった人。
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 18:16:11 ID:D4T4M/Lx
談志?実在の人物はアウトでしょ
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 18:26:32 ID:blSHqVca
細糸による斬撃といえば、初めて読んだ忍法帖「風来忍法帖」の戸来刑四郎が絶望的なまでに強かった印象がある。
603虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:27:21 ID:mGOebMYT
18:35頃から投下させてください。
604虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:35:28 ID:mGOebMYT
それでは投下します。

※以下チラシの裏
前回までのお話、ゼロ魔1巻の内容に相当する部分を『序章』という扱いにしたいと思います。
このSSの元ネタで言うところの、序章『大地の片隅の3つのかけら』通称きのこ編です。
そして今回からのお話を、第一章として始めます。
605虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:36:42 ID:mGOebMYT
ルイズは自分のベッドの上で、夢を見ていた。
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの?ルイズ!お説教はまだ終わっていませんよ!」
そういって騒ぐのは、母であった。夢の中の幼いルイズは、出来のいい姉たちと魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られていたのだった。
「ルイズお嬢様は難儀だねえ」
「まったくだ。上の二人のお嬢様は、あんなに魔法がおできになるっていうのに……」
召使いにまでばかにされて、ルイズは悲しくて、悔しくて、屋敷から逃げ出していた。
そんなときルイズはいつも決まって、中庭の池に浮かべた小舟の中に忍び込み、用意してあった毛布に潜り込むのだった。
そこは、ルイズの秘密の場所であった。
あまり人の寄り付かない、うらぶれた中庭は、ルイズが唯一安心できる場所だった。
ルイズがそうやって小舟の中でめそめそ泣いていると、中庭の島にかかる霧の中から、立派なマントを羽織った、一人の貴族が現れた。
歳の頃は16歳くらいだろうか?夢の中のルイズは、6歳くらいの背格好だから、十ばかり年上に見えた。
「泣いているのかい?ルイズ」
「子爵さま、いらしてたの?」
幼いルイズは慌てて顔を隠した。みっともないところを憧れの人に見られてしまったので、恥ずかしかった。
「どうか泣かないで、ミ・レィディ。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
「でも……」
「また怒られたんだね?安心しなさい、ぼくからお父上に取りなしてあげよう」
島の岸辺から小舟に向かって手が差し伸べられる。
大きな手、憧れの手……。
ルイズは頬を染めながら頷き、立ち上がって、その手を取った。
そして、ぐいと引っ張られて、島に足を付くと……
「え」
ルイズは当惑の声を上げた。
ルイズの足が踏み締めているのは、生まれ故郷のラ・ヴァリエールの領地、屋敷の中庭の池に作られた、あの懐かしい小島ではなかった。
いつの間にか、中庭の池も、小舟も、憧れの子爵さまも、どこかへ消えてしまっていた。
ルイズは、なにやらとても大きな樹の上、その太い枝の上に立っていた。
その樹はとても高くて、地面が見えなかった。枝は、上にも下にもあらゆる方向に伸びていて、どこまでもどこまでも続いているようだ。
気が付くと、ルイズは6歳から16歳の今の姿になっていた。ベッドに入ったままの、ネグリジェ姿だった。
「あれえ?ルイズじゃん。なんでこんなとこにいんの」
ふと聞き慣れた声がして、ルイズは思わず振り向いた。
そこにいたのは果たして、小さな女の子だった。
ふたつ括りにした、栗色の長い髪。生意気そうに吊り上がった目。
「アクア!アクアじゃない!」
ルイズはアクアに駆け寄って、顔をよく見ようとしゃがみ込んだ。
「あんた、いったい今までどうしてたのよ!急にいなくなっちゃって、わ、わたしがどんな気持ちだったと思ってるの!」
ルイズの目の前で、突然死んでしまったアクアの姿を見て、ルイズはちょっと涙ぐんだ。
「泣くことないでしょ、気持ち悪いなあ。ルイズ、これは夢だよ」
「夢?」
「そう、あたしの見ている夢」
ルイズはわけが分からず、目をぱちくりさせた。
「おーいアクア、プリセラー」
するとどこからか、ティトォの声が響いた。
アクアが手を振ると、それに気付いたティトォが、枝の間をひょいひょいと身軽に飛び回って、こちらにやってきた。
「やっほー、ティトォ。おひさー」
アクアがとことこと駆け寄ると、ティトォはその両頬を軽くつねってこねまわした。
そうしてじゃれていると、二人は、仲の良い兄妹のように見えた。
「ひさしぶり、アクア。あれ、ルイズ?どうしてぼくらの夢の中に?」
「わかんにゃい。ルイズの夢とは繋がってないはずなんだけどねえ」
頬をつねられたまま、もごもごとアクアが答えた。
目の前の二人のことを、ルイズはよく知っていたが、二人揃ったところを見るのは初めてだった。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 18:36:48 ID:blSHqVca
支援
607虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:38:00 ID:mGOebMYT
「夢……そう、夢なんだこれ。そういえば、なんだか身体がふわふわしてるわ。ねえアクア、これ、あんたの夢だって言ってたけど、それじゃあそのティトォも、あんたの夢の中のティトォなの?」
「いや、ぼくは本物のティトォだよ。これは『夢の樹』って言ってね、夢と夢とを繋ぐ、魂の枝なんだ」
ティトォは、どこまでも続く大きな樹の枝を指し示した。
「でも、変だな。夢の樹は、ぼくたち三人の夢にしか繋がってないはずなんだけど」
ティトォは首を傾げる。ルイズにはひとつ、心当たりがあった。
「使い魔の契約をしたことが原因かもしれないわ。ほら、使い魔と主人は、感覚の共有ができるって教えたでしょ」
「普段はできてないけどね」
ルイズは、意地の悪いニヤニヤ笑いを浮かべるアクアを睨みつけた。
ああ、やっぱりアクアだわ、間違いなく。
ふと、ルイズの心に疑問が浮かんだ。
「ねえ、この樹は、あんたたち不死の三人の夢を繋いでいるのよね。もう一人はどこにいるの?」
「そういえば。アクア、プリセラは?」
ティトォもふと辺りを見回す。
「プリセラの夢とはくっついてないみたいだよ。あのねーちゃん、いっつも夢の樹の奥の方にいるんだもん」
「なかなか三人揃わないねえ。ぼくらは、夢の中でしか会えないのに……」
ティトォがため息をつく。
「ま、いっか。100年間も一緒だし、これからもずっとくっついてるんだろうしね」
軽い調子でティトォが言う。しかしその言葉に、アクアは顔を伏せてしまった。
「……やだよ、あたしは」
どこか悲しそうな、弱気そうなアクアが珍しくて、ルイズははっと息を呑んだ。
「絶対に元の身体に戻る!そして……!」
それ以上言う前に、ティトォの手が、ポンとアクアの頭に乗せられた。
「分かってる。絶対、元に戻ろうな」
アクアの頭をやさしく撫でながら、繰り返した。
「三人とも、絶対戻ろうな。元の身体に……」
決意とか、使命感とか、願いとか、いろいろなものがないまぜになった声だった。
ギーシュとの決闘の日の夜、アクアは、自分たちのことを『不死身にさせられた』と言っていた。
舞踏会の夜、ティトォは、自分たちのことを『罪人』と言っていた。
この人たちは、100年の間、どんな思いで生きてきたんだろう。100年前、なにがあったんだろう。
ルイズはティトォや、アクアのことをもっと知りたかった。
(でもそれは、わたしなんかが知ってもいいことなのかしら)
そうしているうちに、アクアがふいと遠くの方を見つめて、言った。
「……でも、一番元に戻りたいのは……」
「ああ……」
ティトォが同意する。
「……一番元の身体に戻りたいのは、プリセラだろうね」
ルイズは無意識に、アクアの視線を追った。
すると、はるか遠くの枝間に、背の高い女性の人影が見えたような気がした。
ルイズとよく似た桃色がかったブロンドの髪が、風に揺れていた。



第一章『大陸の魔法使い達』



遠く離れたトリステインの城下町の一角にある監獄で、土くれのフーケはぼんやりとベッドに寝転んで壁を見つめていた。
彼女はさんざん貴族のお宝を荒らし回った名うての盗賊であったので、魔法衛士隊に引き渡されるなり、すぐに城下で一番監視と防備が厳重なここ、チェルノボーグの監獄にぶち込まれたのである。
得意の『錬金』の魔法を使って、壁や鉄格子を土に変え脱獄することも考えたが、杖を取り上げられてしまったので魔法は使えない。
フーケは、杖を持たないメイジの無力さを噛み締めた。
「まったく、かよわい女一人閉じ込めるのにこの物々しさはどうなのかしらね?」
苦々しげに呟く。
608虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:39:02 ID:mGOebMYT
裁判は来週中にも行われるとのことだったが……。あれだけ国中の貴族のプライドを傷付けて回ったのだから、軽い刑でおさまるとは思えない。
最悪、縛り首。よくて島流しと言ったところだろうか。
故郷の妹の顔が浮かんだ。あたしがいなくなったら、あの子はどうするだろう。
そんなとりとめもないことを考えながら、とりあえず寝ようと思い……
フーケは目をつむったが、すぐにぱちりと開いた。
いつからそこにいたのだろう?フーケの牢獄の前に、長身の黒マントの男が立っていた。
ひ、とフーケは身をすくませ、ベッドから身を起こした。
マントの中から長い魔法の杖が突き出ている。どうやらメイジのようだ。
しかしその顔は、白い仮面に覆われて見えなかった。
フーケは鼻を鳴らした。
「おや!こんな夜更けにお客さんなんて、珍しいわね」
マントの人間は、鉄格子の向こうに立ったまま、フーケを値踏みするかのように黙りこくっている。
フーケはすぐに、おそらく自分を殺しにきた刺客だろうと当たりを付けた。
フーケが盗んだ貴族の宝の中には、王室に無許可で手に入れたご禁制の品や、他人に知られたくないものも少なくない。
裁判でそれが明るみに出る前に、フーケの口封じをするつもりなのだろう。
黒マントの男が、口を開いた。歳若く、力強い声だった。
「『土くれ』だな?」
「誰がつけたか知らないけど、確かにそう呼ばれているわ」
「話をしにきた。マチルダ・オブ・サウスゴーダ」
フーケの顔が蒼白になった。それは、かつて捨てた、いや、捨てることを強いられた貴族の名であった。
「あんた、何者?」
平静を装ったが無理だった。震える声で、フーケは尋ねた。男はその問いには答えずに、笑って言った。
「ふたたびアルビオンに仕える気はないかね?マチルダ。お前の父を殺し、家名を奪ったアルビオンの王家は倒れる。近いうちにね」
「どういうこと?」
「革命さ。無能な王家は潰れる。そして、我々有能な貴族が政を行うのだ」
芝居がかった口調で、男は言う。
「我々は優秀なメイジが、一人でも多く欲しい。協力してくれないかね?『土くれ』よ」
フーケは疑り深い目で、男を見た。
「あんたはトリステインの貴族でしょう。アルビオンの革命とやらと、何の関係があるっての?」
「我々はハルケギニアの将来を憂い、国境を越えて繋がった貴族の連盟さ。我々に国境はない。ハルケギニアは我々の手で一つになり、始祖ブリミルの降臨せし『聖地』を取り返すのだ」
「バカ言っちゃいけないわ」
フーケは薄ら笑いを浮かべた。
ハルケギニアを一つにする?トリステイン王国、帝政ゲルマニア、故郷のアルビオン王国、そしてガリア王国……
未だに小競り合いが絶えない国同士が、一つにまとまるなんて夢物語だ。
おまけに『聖地』を取り返すだって?あの、強力なエルフどもから?
ハルケギニアから東に離れた地に住まうエルフたちによって、『聖地』が奪われてから幾百年。
それから何度も、あまたの国が聖地を奪回しようと兵を送ったが、その度に無惨な敗北を喫してきた。
長命と独特の尖った耳を持つエルフたちは、そのすべてが強力な魔法使いであり、優秀な戦士なのだ。
同じ数で戦えば、人間たちに勝利の機会がないことを、ここ数百年でハルケギニアの王たちは学んできたはずである。
「『土くれ』よ。お前は選択することができる。我々の同士となるか、さもなくば……」
後をフーケが引き取った。
「ここで死ぬか、でしょ?なにが選択だか。強制じゃないの」
フーケは笑った。
「で、あんたら貴族の連盟とやらの名前は、なんていうのかしら」
「味方になるのか?ならないのか?どっちなんだ」
「これから旗を振る組織の名前は、先に聞いておきたいのよ」
男はその答えに満足し、ポケットから鉤束を取り出し、鉄格子に付いた錠前に差し込みながら、言った。
「レコン・キスタ」
609虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:40:01 ID:mGOebMYT
「つまりね、使い魔って言うのは、常に主人と共にあり、主人を守り、主人を助け、主人を導くものなの」
「はあ」
滔々と語り続けるルイズに、シエスタは空になったティーカップをもてあそびながら返事した。
この愚痴も何度目か知れないので、つい気のない返事になってしまっていた。
「それなのに……」
ぶるぶるぶる、とルイズの身体が小刻みに震えだした。
あ、まずい。
これはミス・ヴァリエールが爆発する予兆だわ。
そうシエスタが思ったのと同時に、ルイズはがたん、と椅子を鳴らして立ち上がった。
「それなのに、あのアホティトォ!ご主人様をほっぽり出して何やってんのよ!」


フーケ騒動が終わってからしばらくして、ルイズはティトォに学院を案内してやった。
アクアは学院の使い魔たちとじゃれているか、調理場にたかりに行っている以外の時は、大抵ルイズの部屋にいて、ルイズの勉強の邪魔をしたり、ぐうたら眠ってばかりしていた。
一日中ゴロゴロしているその姿は、見た目は子供だというのに、堂に入ったババ臭さだった。
そんなだから、アクアは学院の施設をほとんど知らないままだったのである。
なので、ティトォは学院の中を見て回りたい、と言い出したのだ。
そしてルイズが本塔の図書館を案内したとき、ティトォはすっかりその大図書館に心奪われてしまった。
眼鏡をかけた司書が、出入りする生徒や教師を厳しくチェックしている。なにしろ門外不出の秘伝書やら、魔法薬のレシピやらの貴重な書物が、30メイルほどもある本棚におさまっているのだ。
蔵書の数は目眩がしそうなほどで、魔法学院の本塔の大部分は、この図書館でできていると言われている。
ティトォにとって、そこはまさしく宝の山であった。
貴重な書物が山積みとなっている図書館は、普通の平民では入ることすら許されないのだが、ティトォはオスマン氏に頼み込んで、図書館を利用する許可を取り付けた。
先のフーケ討伐の功績もあったので、ティトォの願いはすぐに聞き入れられたのだった。
ティトォはハルケギニアの文字は読めないのだが、図書館の存在を知ると、熱心に勉強した。
ティトォの気を惹きたいキュルケの頼みによって、タバサが字を教えたりもした。
「教えたことは一度で完璧に覚えた。すごい記憶力」とはタバサの談である。
恐るべきスピードで文字を覚えたティトォは、以来、図書館に足しげく通い、夢中になって本を読みあさった。
開館時間から閉館時間まで図書館に入り浸り、休日もルイズの部屋で、借りてきた本とひたすら格闘していた。
いつぞやのこと、ルイズが城下町に買い物に行く時、ティトォを誘ったのだが、返ってきた返事は「ごめん、後でね」だった。
ルイズはため息をついた。
ティトォの「後で」は、夜なのだった。


「あの生意気が服を着て歩いてるみたいなアクアと比べて、礼儀正しいし、最初はいいやつだなんて思ったけど、とんでもない!あいつも結局、変人なんだわ!」
だん!とテーブルに拳を叩き付け、ルイズが叫んだ。
ひう、とシエスタは身をすくませる。ルイズの癇癪には、いつまで経っても慣れなかった。
シエスタは所在なげに視線をさまよわせ、時計に目を止めると、ぽん、と手を叩いて言った。
「あ、ミス・ヴァリエール!そろそろですよ!」
その言葉に、ルイズは椅子に座りなおした。
「そう、じゃあ持ってきてちょうだい」
「はい、かしこまりました」
シエスタはほっとした表情で、とたとたとどこかへ駆けていった。
ルイズはテーブルの上の紅茶に口を付けたが、すっかり冷めきっていたので、すぐ元に戻してしまった。
ルイズは背もたれに身を預け、辺りを見渡した。
広い部屋の中に、大鍋やオーブンがいくつも並んでいる。
そこは、食堂裏の調理場であった。
「お待たせしました、ミス・ヴァリエール」
シエスタは、厨房の一角にしつらえられたテーブルに戻ってくると、ルイズの前に焼きたてのパイを置いた。
ルイズの大好物、クックベリーパイである。
「とてもお上手に焼けていますよ!今、お茶を入れなおしますね」
シエスタはそういって、ティーポットを持ってふたたび駆け出した。
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 18:42:12 ID:Zv1PyfXw
支援
611虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:42:29 ID:mGOebMYT
ギーシュとの決闘騒ぎ以来、アクアの保護者ルイズと、シエスタはなんとなく仲が良くなっていた。
もともと友達の少ないルイズは、休日となるとひたすら自習に明け暮れていたのだが、息抜きにシエスタを呼んで、お茶会を開くようになった。
呼び出されるたび、シエスタは手作りのお菓子をふるまってくれた。
そうしているうち、ルイズは自分でも菓子作りをやってみたいと言い出したのだった。
菓子作りを趣味にしている貴族もいることはいるのだが、その数は少ない。
厨房の仕事を邪魔されるのにコック長のマルトー親父はいい顔はしなかったが、貴族には逆らえないし、なによりシエスタがルイズのことを憎からず思っているので、それを態度に出したりはしなかった。


紅茶を入れると、シエスタはその手でクックベリーパイを切り分けた。
芳醇なクックベリーの香りが、辺りに漂う。ルイズは自分の『作品』の香りを満足そうに吸い込むと、パイくずが服に落ちないよう膝にハンカチを敷き、パイにかぶりついた。
もぐもぐと咀嚼して、飲み込む。
そして一口かじったまま、ルイズはなんともいえない微妙な表情になってしまった。
「……なにかしら。決して不味くはないんだけど……いまいち生地がさっくりしてないわ。底も生焼けみたいになっちゃってるし……」
「いけない。フィリングを詰める前に、底にスポンジケーキを砕いて入れればよかったですね。そうすれば、フィリングの水分を吸い取ってくれるんです」
シエスタもパイを口にして、感想を述べた。
「でも、ミス・ヴァリエール。初めてでこれなら、すごいですよ。上等なパイ生地を作るには、熟練の技が必要だってマルトーさん言ってましたけど。ミス・ヴァリエールなら、きっとすぐに上達します」
「そう、ありがと、シエスタ」
ルイズはため息をついた。はじめからうまくは行かないか。
でもいつか、わたしの手で完璧なクックベリーパイをつくってみせるわ!
ルイズが趣味に燃えていると、調理場の扉がガラッと開き、緊張した顔のミスタ・コルベールが現れた。
彼は奇妙ななりをしていた。頭に馬鹿でかい、ロールした金髪のかつらを乗っけている。
見ると、ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍やらが踊っている。何をそんなにめかしこんでいるのだろう?
「あややや、ミス・ヴァリエール!こんなところにいたのですかな!」
「ミスタ・コルベール?今日の午前は、わたしの専修の授業はなかったはずですが」
ルイズは戸惑いながら言った。
「おっほん。今日の授業はすべて中止であります、ミス・ヴァリエール。恐れ多くも、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」
ルイズは驚いて、目を見開いた。
「姫殿下が?」
「したがって、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて、歓迎式の準備を行います。生徒諸君は正装し、門に整列すること。さ、ミス・ヴァリエールも、早く」
612虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/12(月) 18:43:09 ID:mGOebMYT
今回は以上です。
支援をありがとうございました。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 18:58:34 ID:fdSXd7v8
パズルな人、お疲れ様でした

ところでしろがね達は糸使いに入るのだろうか
人形使いは糸使いとは別?でも糸も使って戦えるしなぁ
しかししろがね達を糸使いとすると珠州も糸使い・・・・・・
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:03:30 ID:j28v/WK2
乙ですー

しろがねは人形使いでしょ。糸は応用というか技の一つ程度でしかないし。
相手が自動人形じゃないから召喚したところで何の優位性もないのが困り者。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:06:00 ID:Zv1PyfXw
パズルの人乙
そういえば2章ラストでグリンが夢の樹に来てたなあ
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:09:06 ID:C0UCyn0M
>>614
おいおい、しろがねはほぼ不死身だぞ。
常人なら腕がもげるような重火器を片手で振り回す事も出来るし。
最終手段だがアクアウィタエを飲ませるという回復手段もある。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:10:19 ID:oWB2e3tr
乙っす。
なんかドンドンうまくなってる気がするな、パズルの人。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:20:34 ID:A9ysKQmu
マテパの人乙です。

ルイズ、ティトォを変人て…そうかもしれない
ニセ姉様…じゃないプリセラが出て来たらどんな感想を抱くんだか
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:34:19 ID:3PLPCI1l
しろがねの身体能力は常人の5倍
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 19:43:04 ID:ojXlQJ7v
さらにロープの反動、体の回転を使うことによってその力は
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:00:48 ID:f4Z8PvcM
人形遣いは引かれ合う
622鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:03:05 ID:O5aHlYFT
5分後に投下したいと思います。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:04:17 ID:DzRSGUz8
インペラトール!インペラトール!
624ゼロHiME:2009/01/12(月) 20:04:44 ID:AgMUXkJY
前回から結構間か空いてしまいましたが、ゼロHiME20話書きあがったので、20:10ぐらいから投下します
進路オールクリア?
625ゼロHiME:2009/01/12(月) 20:05:54 ID:AgMUXkJY
うわ、かぶったので出直してきます;
626鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:07:03 ID:O5aHlYFT
13話

才人は二つの理由で怒っている。まずは自分へ対する怒り。才人はルイズが自分を拒絶したのを自分のせいだと考えていた。
つまり、ルイズがどの様に感じるかなんて特に考えもせず、軽い気持ちで無責任に励ましかえって傷つけてしまったと言う自分への怒りだ。
もう一つはギーシュに対する怒り。言いがかりをつけられた事はもちろんだが、ギーシュの“薔薇とはその美しさを皆に平等に与えなければいけない”と言う言葉に一番の怒りを感じていた。
それだけでも殴りたくなる位に気障な台詞な上に、更にギーシュはそれを実行していない。
もしそうしていたのなら、ルイズがあんな風に一人でいるのを放置したり、ルイズがバカにされるのを放っておく筈などない。つまりあんな言葉なんて単なる飾り。
だから、才人はあの時カッとなってしまった。才人の人生の中でも、あれだけ人を目の前でバカにした事は無かっただろう。だが後悔はしていない。
(あのキザで卑怯なエセ紳士に絶対に目に物見せてやる。魔法がどうのこうの、知った事じゃねえ)
そんな事はなんとかなる、才人は根拠も無くそう思っている。いや、むしろそう思い込もうとしていると言った方が正しいか。
奴がどんな魔法を使うかは解らないが、自分より圧倒的に強い筈のプッロでさえオスマンに対してあの体たらくだった。
一応勝算はある。あるが、非常に不確かであやふやな物だ。大した期待は出来ない。だがだからと言って「勝ち目が無いので止める事にします」などとは言えないし、ましてやギーシュを侮辱した事を謝るつもりなど毛頭ない。
ある強い感情が才人の中にある。それは“下げたくない頭は下げられない”と言う物だ。才人としては、どう考えたってこの事はギーシュが悪いのだ。
確かに彼に悪罵を浴びせたが、その内容は全て事実。本当の事を言ったのに頭を下げる必要なんてない。
だからこそ勝ち目なんて無くてもこの決闘から逃げない。それが才人の考えだった。
そしてそう思えば、自分を無理やり引っ張っていっている目の前のこの男が鬱陶しく感じられる。
だがそもそもこの男はなぜ自分を連れて行ってるのだろう。さっさとあのギーシュと言う奴の所へ行きたいと言うのに。

「……別に助けなんていらないんですけどね。これは俺の喧嘩なんですから、余計な手助けはいりません」
そう言った才人の額を、プッロが小突いた。
「アホ。忘れたのか?俺だってあのガキにご指名されてるんだよ。つまりこれは俺の喧嘩でもある」
その事をすっかり忘れていた。確かにギーシュは“ゼロのルイズの使い魔全員に礼儀を教えてやる”とか言っていた。
だとすればプッロとウォレヌスは、自分が始めた様な喧嘩に巻き込んでしまったと言う事だ。
元々彼らはこの事に何の関係も無いのに。才人は申し訳なく感じ、謝罪した。
「……すみません。あなた達を巻き込むつもりはなかったんですけど」
そう言いながら二人は廊下の角を曲がる。
「そう思うんなら次からは自重――」
プッロはそこまで言って立ち止まった。数歩先に、厨房にいる筈のウォレヌスが立っていた。

「あれ?なんでこんな場所に?厨房にいたんじゃ?」
プッロは不思議そうな顔で聞き、ウォレヌスはいつもの仏頂面で答えた。
「皮むきなら、もう終わった。単調な、つまらない仕事だったがな……軍の懲罰に使えそうな位にな。それでお前がつまみ食いでもしていないか様子を見に行こうとしたんだが……なぜサイト君と一緒に?」
「それがちょっと困った事になりましてね……簡単に言えばここの生徒の一人と喧嘩をする羽目になったんです」
ウォレヌスの目が点になった。
「喧嘩、だと?どう言う事だ?」
「ええ。それがですね、その生徒――ギーシュって言うガキなんですが――が香水の入った瓶を落としてこいつがそれを拾ったんです」
ウォレヌスは肩をすくめてみせた。
「だからなんだ?感謝されこそすれ、喧嘩になるわけがない」
「いえね、俺にもいまいち良く解らなかったんですが、それが原因でそいつが二股をかけてた事がバレちゃったんですよ」
「はあ?」
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:08:21 ID:WRQDxCDv
sien
628鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:08:53 ID:O5aHlYFT
そしてプッロは事のあらましを話した。
「そいつは二股がバレて、娘二人にその場でフラれたんです、派手に。それでそいつがこの坊主に“お前が香水瓶を拾ったからこんな事になった”とか言い出して、決闘とやらをする羽目になっちゃいました」
特に付け加える事も無かったので、才人は口を挟まなかった。
ウォレヌスは額を悩むように揉むと、ため息をついた。
「そんな馬鹿馬鹿しい理由で子供と喧嘩をする羽目になったのか?お前は」
確かにこうやって他人が話すのを聞くと、下らない話に思える。
バカな痴話喧嘩から発展した、バカな意地の張り合い。だが、それでも才人はやめる気にはならなかった。
バカな喧嘩とは言えど、正統性がこちらにあるのなら頭を下げる必要なんてない。
「ええ、まあ。ただ、シエスタが言うにはこれはただの喧嘩じゃないそうです。なんでも殺されてもおかしくないそうで」
その言葉を聞いた途端、ウォレヌスの呆れた様な表情が、油断の無い警戒した物に変わった。
「殺される、だと?ただの子供の喧嘩でか?」
「それがね、なんでもここじゃ平民が貴族を侮辱すれば、殺されても文句は言えないそうで」
「……つまり、何か?ここでは貴族は気に入らない平民を殺しても罪にならない、そう言う事か?」
「多分そうでしょうねえ。シエスタはとても冗談を言ってるようには見えませんでしたし」
ウォレヌスはひどく驚いたように、呟く。
「……ホルテンシウス法以前のローマ――いや、十二表法が作られた時代ですらそんな事が許される訳が無いか――」
そして苛立ったように舌打ちをすると、幸運の女神を呪った。
「チッ、多少は奇怪な術が使えてもやはり蛮人は蛮人か……ああ、フォルチュナよ!一体なぜ貴方はこうも我々に災厄を降らすのか!」
だが奇妙な事に、才人はなぜかその言葉に安心が込められるている様な気がした。
何故かは見当もつかないが。そしてウォレヌスはプッロに向かって忌々しげにはき捨てた。
「それにしても次から次に問題を起こしおって……おおかたお前が余計な口を挟んだからこんな事になったんだろう?少しは自重と言う物を覚えないのか、お前は」
この言葉にプッロは憤慨した様に返す。
「ちょっと、これは俺のせいじゃないんですよ!この坊主が」
と言ってプッロは才人を小突く。
「そいつをクソミソに貶したからこんな事になったんです」

それはその通りだ。あそこで自分が大人しく何も言わずに立ち去れば決闘にはならなかっただろう。
だが最初にわけの解らない難癖を言ってきたのはあちらだ。
「……まあ、確かにそうですけど。でも元々イチャモンをつけてきたのはあいつですよ。」
「それでもお前があのまま自分を抑えて黙って立ち去ってりゃ、決闘なんて事にはならなかったんだよ」
確かにそこは痛い所だ。あの余計な言葉で決闘なんて事になったのは間違いないからだ。
だがそこにウォレヌスが、助け舟を出したつもりなのかは定かではないが、割って入った。
「お前が他人にそんな事を言えた身分か?お前が才人君と同じ立場ならその場で半殺しにする位の事はやりかねないだろうが」
「俺が?冗談言っちゃいけませんよ、俺ほど温厚な人間なんてそうはいませんよ!だいたいあんただって似たようなもんでしょう――」
プッロはそう冗談とも本気ともつかない口調で返した後、才人の方を向いた。
「――そもそも、一体ルイズと何を話したんだ?お前、あのギーシュと話す前からイラついてたんだろ?顔を見ただけで解ったよ。あいつに何か言われたのか?」
そう言われて、才人の脳裏に、ルイズの吐き捨てた言葉が蘇った。
――私が一体どれだけ努力してきたか知りもしないのに良くそんな事が言えるわね?そもそもこれ以上何を頑張るって言うのよ!?――
――私に哀れみでもかけてるつもり?笑わせるわ。平民如きに同情されるなんて願い下げよ!――
そして強く実感した。やはり自分は安易な同情で彼女を傷つけただけだ。そもそも自分は彼女がどの様な人生を送ってきたかなんてまるで知らない。
知っている事と言えば、彼女は魔法が使えないゆえにコンプレックスを感じていて、それが理由でいじめられていると言う事だけだ。
その程度の理解で、プライドがやたらと高そうな彼女に安易な哀れみや同情をかければどうなるか?
単に不快にさせてしまうだけだろう。放っておけないなどと言う感情だけで行動するべきではなかったのだ。
少なくとも、軽率に励ますべきではなかった。才人は心の中で、自分の軽挙に再度悪態をついた。
(クソッ!もうちょっと考えてから行動しろよ、俺!)
彼女に会ったら謝らなければいけない。才人は強くそう思った。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:08:57 ID:C8Fnqcrp
禿の女たらしのお出ましだ 支援
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:10:27 ID:WRQDxCDv
sien
631鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:10:40 ID:O5aHlYFT
そう思索にふけり、何も言わない才人にプッロが声をかけた。
「おい?聞こえたのか?」
「え?あ、ああ。すみません、ちょっとボーッっとしてました」
「……まあ、いい。それは別に重要じゃない。それより隊長、何か良い案はありませんかね?あんたの所に行こうとしたのもそれを聞く為です」
ウォレヌスがいぶかしげに聞く。
「良い案だと?」
「ええ、ですからそのガキをぶっ飛ばす案ですよ。そのガキがあのジジイみたいな魔法を使えるってんなら、マトモに戦ったって勝ち目は薄いでしょうから」
「いちいち子供の喧嘩に付き合う事も無いだろう。無視すればどうだ?」
プッロは驚愕した様に、大げさに言い返す。
「無視?あんたがそんな事を言うとはねえ。いいですか、第十三軍団の兵士が喧嘩を売られたって事は、第十三軍団自体が喧嘩を売られたって事に等しいでしょう?」
ウォレヌスを腕を組んだまま、何も言わない。
「蛮人のガキが我が軍団に喧嘩を吹っ掛けたってのに逃げるって言うんですか?そしたら、あのガキは“あのローマ人はぶっ飛ばされるのが怖くて逃げた”とか言い触らすでしょうねえ。それで良いんですか?
 それに俺が無視したって、この坊主はもともとやる気まんまんみたいですよ?俺はさすがにこいつが殺されちゃあ、少しは寝覚めが悪くなります。あんたはどうなんですか?」
さっきもそうだったけど、この人はやたらと第十三軍団と言う物に拘るんだな、と才人は思った。
プッロは第十三軍団と言う物に、単なる誇りよりもずっと強い感情を持っているように感じられる。それが何なのかはは解らないが。
そして一応自分を心配してくれているらしいのも少しうれしかった。
(まあ、“殺されたら少しは寝覚めが悪くなる”ってのが心配かどうかはわからねえけど)

ウォレヌスはやがて、ゆっくりと口を開いた。
「……解ったよ。まあ、お前の性格からして喧嘩から逃げるなんてもともと考えられんしな」
ただし、とウォレヌスは付け加えた。
「勢いあまって殺すなよ。余計な騒ぎはごめんだ。貴族が平民を殺しても問題無いのなら、その逆は多いに問題ありって事だろうからな」
「解ってますよ、それくらい。じゃあ早速聞きますけど、何かありますか?良い考え」
「いきなり思いつく訳が無いだろう。少しは時間がいる」
そこに才人が口を挟む。
「良い案かどうかは解りませんけど、俺に考えがあります」
「ん?ああ、そう言えばそんな事も言っていたな。勝算があるとかなんとか」
「なら言ってみてくれ」
二人とも、大して期待はしていないようだ。だが才人は構わず自分の考えを述べた。
「メイジにはランクがありますよね?確か四つ。学院長は多分一番上のスクウェア、そしてミセス・シュブルーズはトライアングルでした。ならあいつはドット、精々ラインって所だと思うんです。なら勝ち目はあるんじゃないですか?」
才人達のメイジの実力の指標は、オスマンが見せた魔法に基づいている。だが、学院長ともなれば相当の凄腕に違いない。
実際、才人には視認する事すら出来なかったプッロの抜刀よりオスマンは早く反応し、杖を抜いたのだ。
あんなヒョロすけが彼と互角である筈が無い、と言うのが才人の考えだ。
無論、こんな物は勝算と言うには余りにもろく、はかない。魔法使い全般の実力と言う物の見当が、才人には全くついていないからだ。
だがそれをプッロよりも、ウォレヌスよりも早く指摘する者が現れた。

「あ〜もう!甘い!甘いのにも程があるわよ、あんた!」
そう叫びながら、ルイズが廊下の角から転がるように飛び出し、一気にまくし立てた。
「メイジの力が全然解ってないのね、あんた。いい?平民は絶対にメイジに勝てないの!例えドットだろうとスクウェアだろうと関係無い。勝ち目なんて万に一つも無いの!あんた達!さっさと謝ってきなさい!命令よ!」
才人は謝罪の事よりも何よりも、まずあっけにとられた。なぜ彼女がここにいるのか?
「お、おい。お前、いつからそこにいたんだ?」
「最初から。後をつけたのよ。全然気づかなかったんだから笑っちゃうわ!」
ルイズは自信に溢れた様子で、あっさりと言ってのけた。一見すればいつものルイズに見える。
だが、才人にはそれがえらく不自然に思えた。なにせあんな事が起こった後だ。
彼女は多分無理をしている。
「……な、なあ、お前大丈夫なのか?」
「大丈夫って、何が?」
才人は先ほどのルイズとの会話を思い出し、口ごもった。
632鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:11:27 ID:O5aHlYFT
だがプッロは才人の躊躇を蹴り飛ばすかの様に、高らかに笑い始めた。
「アッハッハッハッハ!いやぁ、存外に面の顔が厚いんだな、お嬢ちゃん」
「ど、どう言う意味よ?」
「文字通りさ。さっきは泣きながら負け犬みたいに飛び出していったやつが、今ノコノコと現れて、またご主人様気取りだ。俺なら恥ずかしくてとても無理だね」
ルイズは表情を強張らせた。その体は小刻みに震えている。
(やっぱり無理をしているな、あいつ)
思った通り、彼女は意地を張ってここにいる。だが、なぜ?
「なあ、ルイズ。お前、一体何をしにここに来たんだ?」
才人はなるべく優しく聞いてみた。ルイズはどもりながら答える。
「あんた、いや、あ、あんた達を助ける為に決まってるでしょ。幾ら粗野で、野蛮な使い魔でも、危険に陥ってるのに放っておく、しゅ、主人なんて主人失格だから!」
これで合点がいった。主人としてのプライドが理由だ。確かに彼女らしいが、それでも自分達を心配してくれているのはうれしかった。
あんな風に思い切り感情を爆発させて泣き出した後に、あの二人の前に出るのは凄く恥ずかしいことだろう。それでも顔を出したのだから、自分達は完全に嫌われたわけではないらしい。
だが、プッロはイライラとした口調でルイズに言い放った。
「ボケ老人かてめえは!?言った筈だ、俺はガキを主人に持った覚えなぞ――」
「いい加減にして下さい!」
気がついたら才人は叫んでいた。プッロはギョッとした様に才人に振り向く。
才人は我慢ならなかった。こんな事を繰り返したってルイズが傷つくだけだし、何の進展にもならない。
こんな風に罵り合って一体なんになると言うのだ?
「喧嘩なんかしてる場合じゃないでしょう!?いいですか、あなた達がルイズを嫌っているのは解りますし、その理由も理解できます。でもね、今こんな風に言い争ったって何の解決にもならないでしょう?」
プッロはわけが解らないと言った風に肩をすくめた。
「おい坊主、イカれちまったのか?このガキが俺たちに何をさせようとしたのか――」
だが言い終えられる前に、ウォレヌスが彼を制止した。
「その少年の言う通りだ、プッロ」
「で、でも……」
「今はこの決闘とやらについてのみ考えるべきだ。下らん口喧嘩なぞ後回しにしろ。今はメイジの意見が必要だ」
「……チッ、解りましたよ」
そう言って、プッロは押し黙った。それを見て、才人はルイズに振り向いた。
彼女の顔には驚愕の色が浮かんでいる。今自分が言った事が信じられないらしい。
才人はルイズにも意見するつもりだったが、その前に、ルイズに先ほどの失態を謝罪した。
「ルイズ。まずはさっきの事を謝る。ロクに考えもせずに適当な事を言ってすまなかった」
「え?な、なにを――」
「でもな、一々その“私がご主人様”って態度はやめてくれ。どう考えたってあの二人には逆効果だろ?」

そう言って才人は大きく息を吸い込んだ。同じ部屋で住む者同士、こんな風にいがみ合っててはお互いの為にもよくはない。
(俺たちみんなが妥協しなきゃいけない)
彼はそう考え、勇気を出して大声で言った。
「プッロさん、ウォレヌスさん、ルイズ。一度、俺たちはじっくりと話し合う必要があると思います。罵り合うだけじゃ両方とも嫌な気分になるだけでしょう?
 いっかいお互いの考えを納得いくまでぶちまけるましょう。もちろん今はそんな時間はありませんから、今の所は一時休戦って事にしません?」
三人とも虚をつかれたように何も言わない。沈黙が場を包む。
だがやがて、プッロが諦めた様にため息をついた。
「は〜っ、解ったよ。今の所は黙っててやるよ。そこのお嬢ちゃんもそうすれば、の話だがね」
ルイズも、才人から目を逸らしながらもポツリポツリと話し始めた。
「……ま、まあ、私としてはその位の譲歩はしてやってもいいわ。主人としても多少の柔軟性は持たないと……」
「ウォレヌスさんはどうなんですか?」
「私か?一時休戦と言うのには同意だ。こんな事に時間を使っている場合ではない」
思ったよりすんなりとうまく言った事に才人は驚いた。もっと抵抗されると思ったのに。
これが緊急事態だと言うのが手伝ったのかもしれないが。何はともあれ、場の空気は変わった。
ぎこちないながらも、皆の間に会話が成立している。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:12:57 ID:DzRSGUz8

634鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:13:28 ID:O5aHlYFT
「……ヴァリエール。さっき、お前は勝ち目は万に一つも無いと言ったな。あれはどう言う事だ?」
「文字通りの意味よ。はっきり言ってあんた達はメイジの力を全然解っちゃいない。昨日、オールド・オスマンが見せたのなんてその片鱗ですらないわ。いい、平民は絶対にメイジに勝てないの!」
「その判断は我々がする。まずはそのギーシュとやらのランクを教えてくれ。それが解らなきゃ話にならん」
ルイズはため息をついた。お前らは何も解っちゃいないと言わんばかりに。
「……ギーシュはドットメイジ。ついでに言うと土が得意属性で、ゴーレムを作るのがうまいの」
「ゴーレムとはなんだ?聞いた事が無い」
ウォレヌスはそう言って首を傾げたが、ゴーレムくらいなら才人も聞いた事はある。
魔法使いが作る、金属や土で出来た動く人形。知能と呼べる物は無く作成者の命令に忠実に従うだけの存在だ。
もちろん、ルイズの言うゴーレムが、RPGゲーム等に登場する物と同じならの話だが。
「ほんっとうに魔法が無いのね、あんた達の世界は。いい?ゴーレムって言うのは自分で動き、痛みを感じず、主人の命令を絶対に遂行する人形の事よ。ギーシュは青銅のゴーレムを作るのが得意で、二つ名も“青銅”。確か一度に七体まで作れた筈」
やはりこの世界のゴーレムと、地球の物(フィクションの存在だが)は同じ物らしい。

「青銅で出来た動く人形……クレタ島のタロスを小さくした様な物か。そんな物まで魔法で作れるとはな……」
「タロス?何よそれ」
ルイズはいぶかしげに聞いたが、ウォレヌスは関係無いと言う様に手を振った。
「こちらの話だ。関係無い」
そしてプッロが口を開いた。
「お嬢ちゃん、どれだけ強いんだ?そのゴーレムってのは」
「強さはドットメイジが作る物だから大した事は無いけど、それでもあんた達が勝つのは絶対に無理。ドットメイジのゴーレムでも、平民の戦士三人に匹敵するって言われてるんだから」
もしそれが本当なら、自分に勝ち目なんて万に一つも無いだろう。
そして彼女に嘘をついている様子なんて全く無い。自分の考えは相当に甘かったんだな、と才人は思った。
だがプッロはルイズの言う事を信じられないようだ。
「あんなヒョロそうなガキの作る人形如きがそんなに強いのか?ちょっと信じられんな」
「全部本当よ。悪い事は言わない、今すぐ謝りにいって。冗談じゃなく、殺されてもおかしくないのよ、あんた達は!」
「話は聞いてたんだろ?俺もプッロさんも、謝るつもりなんて全然無いんだよ。あいつがどれだけ強かろうが、下げたくない頭は下げられない」
才人はキッパリと断った。それだけは出来ない。
「変な意地を張るのは止めなさい!あいつが最初に滅茶苦茶な言いがかりをつけて来たのは確かだけど、殺されちゃおしまいでしょう!勝ち目なんてないのよ!?」
確かに勝つ方法なんて無い。才人は押し黙った。だがだからと言って謝るなんて問題外だ。
(玉砕覚悟でやるしかねえのか……)
そう思った時、ウォレヌスが口を開いた。
「杖が無ければ魔法は使えない。これは本当なんだな?」
「え?え、ええ。そうよ。どんなに凄いメイジでも、杖が無ければ魔法は全く使えない。これは鉄則だけど……」
「なら、私にいい考えがある」
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:13:39 ID:WRQDxCDv
sienn
636鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:14:27 ID:O5aHlYFT
ウォレヌスは手早く説明を終え「……と言う物だが、どうだ?正直言ってあまり感心出来る手口じゃないが……」と三人に聞いた。
「ま、まあ、うまけ行けば確実に勝てると思うけど、あいつがそんな事を承知する筈無いわ。そんな事をしては勝ち目なんて無いのは子供にだって解るもの」
「これがただの喧嘩ではなく、名誉をかけた決闘ならばそもそもそうしなければおかしくなる。そこをついて相手にそうせざるを得ない状況に追い込むんだ。怖いのか、と挑発してな」
「な、なるほど。確かにそうすればあいつの性格から考えてもそうする確率は高いかも……うん、やってみる価値はあるわ。姑息な手段だけど」
ルイズはこの案で決闘をやる事に賛成してくれたようだ。確かにうまく行けば少なくとも殺されるなんて事は有り得なくなる。
ルイズの言うように、正々堂々とした手段とはいえないが。そこにプッロが一つ疑問をもらした。
「一つ問題があります。俺たち全員が戦っちゃ公平もクソも無い。でも俺は降りる気なんてありませんよ。喧嘩を売った奴を放っとくわけにはいきませんから」
確かにそれは問題になる。この案がうまく行けば、一対三で戦うなんてただのリンチになってしまうからだ。
いくらギーシュが憎たらしいと言っても、そんな事をする気は才人には毛頭無い。
「俺も止める気はありませんよ。元々俺が原因の喧嘩なんですから」
「なら今日は一人が戦って、後日もう一人が戦うと言う風にすればどうだ?それと言っておくが、私はやらんぞ。喧嘩を売られたのはお前達だからな。私は観戦するだけだ。誰が戦うかは二人で決めてくれ」
ウォレヌスの提案に、プッロは納得したようだ。
「それが一番でしょうねえ。それで、どうやって決めるんです?クジでも作りますか?」

クジなんかをわざわざ作るよりずっと早い方法がある。こういう状況でする事と言えば一つしかない。
「プッロさん、ジャンケンって知ってますか?」
「じゃんけん?なんだそりゃ?」
才人はジャンケンの歴史なんて全く知らないが、少なくとも古代には存在していないだろうと言う事くらいは解る。
だから手早くプッロにジャンケンについて説明した。
「――って言うルールです。それで決めませんか?」
プッロもそれが気に入ったらしい。
「そりゃ良さそうだな。それでやろう」
その結果、才人が勝利。ギーシュに挑むのは才人だと言う事に決まった。
これは才人としてもうれしかった。
(元々俺が原因で始まった様な喧嘩なのに、他人に戦わせるなんてどう考えたっておかしいだろ)
そう思った時にルイズに声をかけられた。
「ねえ、あんた喧嘩をした事あるの?」
「あん?少しはあるけど」
才人も健康な男子であるから、多少の喧嘩の経験はある。
が、それだけだ。格闘技を習っているわけでもないし、喧嘩と言ってもお遊びの様な物だ。
だがそれは相手も同じだろう。
「いいこと?やるからには絶対に勝ちなさいよ。それが条件」
「ああ、解ってるよ。あんなひょろすけに負けるかっての」

そして四人が広場に向かう前に、ウォレヌスが最後に付け加えた。
「それとプッロ、挑発するのはお前がやれ。そう言う事はお前の方が得意だからな」
「お前の方が得意って、どう言う意味ですか、それは?」
プッロはムッとしたように答えた。
「人を苛立たせる才能があるって事だ。解らないんなら自分の胸に聞いてみろ」
637鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:15:07 ID:O5aHlYFT
四人はやっとヴェストリの広場についた。広場には既に大きな人だかりが出来ており、その中心にギーシュがいる。
四人を見止めたギーシュが口を開く。
「やれやれ、ようやく来たか。……おや?なんだ、ルイズ、君も一緒か」
「ええ、そうよ。使い魔が決闘をするって言うのに主人が黙って見ている訳にはいかないでしょ?」
ルイズの言葉に、ギーシュは肩をすくめた。
「あれ程無礼な男が使い魔とはねえ。本当に同情するよ。まあ、別に見ているだけなら僕は構わないがね。それにしても随分と遅かったじゃないか?てっきり逃げたのかと思ったよ」
才人がムッとした様に答えた。
「ほざけ。ちょっとばかし作戦ってのを経てたんだよ」
「どんな作戦だろうと、かなう筈は無いんだ。今君たちが地面にひざまずいて、無礼を謝ると言うのならこの場で許してやってもいいんだよ?」
プッロが憤慨した風に言う。
「おいおい、何もやってない俺までなんで謝らなきゃいけねえんだ?」
「何もやってない?君は平民の分際で貴族である僕に対等な立場であるかの様な口を聞いた上に、僕の弁解を“恥ずかしいから誤魔化している”等と歪曲した。君も十分に非礼を働いている。もっとも」
そう言って彼はルイズに振り向く。一見落ち着いている様に見えるが、その顔がピクピクと痙攣している事に才人は気がついた。彼が相当怒っている事に間違いは無い。
「ルイズ、君が彼らの非礼と侮辱を詫び、今後この様な事は一切起こらないと保証するのならこのまま手を引く事にやぶさかではない」
ギーシュの提案をルイズは一蹴した。
「ふざけないで!もともとケティとモンモランシーの両方に手を出したのはあんたよ。確かにサイトが言いすぎたのは認めるわ。でも元はといえば全部あんたのせいでしょう!」
「やれやれ、使い魔を見れば主人がわかる、というのは本当だったみたいだね。まあいい、ところで君」
ギーシュはキザったらしい仕草でウォレヌスを指差す。
「君はこの件には関わっていない。彼らに協力したいのならしても構わんが、痛い目に会いたくないのならそこで突っ立っていたまえ」
ウォレヌスは何も答えなかった。まるでギーシュなぞ存在すらしていないかのように。
何も言わないウォレヌスを見て、ギーシュもウォレヌスを無視し、薔薇を持った右手をかかげ、高らかに宣言した。
「では始めよう。諸君、決闘だ!」
その言葉で、待ちくたびれようとしていた観衆から大きな歓喜の声があがる。

「その前に一つ約束しろ」
「うん、いったいなんだね?」
「もし俺たちが勝ったなら、俺にイチャモンをつけたって事を認めろ。そしてあいつをゼロのルイズって呼んだ事を謝って、二度とその呼び名は使わないと誓え!」
才人はギーシュがゼロのルイズと言う呼び名を使っていたのを覚えていた。恐らく、その名前がどれだけ彼女を不快にしてるのかも知りもしないのだろう。
だが、だからこそ許せなかった。魔法、魔法、魔法。ここに来てからそればかりだ。平民は魔法が使えないから平民で、ルイズは魔法が使えないからバカにされている。
(魔法を使えるのがそんなに偉いのか?エセ紳士さんよ)
だがギーシュは不敵に笑う。
「ふふふ、いいだろう。まあ、勝てたらの話だがね。その代わり僕が勝ったら君たちには僕の前に跪き、非礼を詫びて、許しを乞う。それでいいね?」
「ああ、それで構わねえよ」
「僕はメイジだ。だから魔法を使わせてもらう。無論、文句はあるまいね?」
そう言ってギーシュを杖を取り出そうとした。そこでウォレヌスが始めて声を上げた。
「文句ならある。杖をしまえ」

ギーシュは一瞬呆けた様な表情になったが、すぐに高らかに笑い出した。
「ハッハッハッハッハ!それはもちろんそうだろうさ。そうしては君たちに勝ち目なんて無いからね。だが僕がメイジである以上魔法を使うのは当然だ。後悔するのなら貴族に無礼を働いた――」
だがウォレヌスはギーシュが言い終える前に、割って入った。
「これは決闘なのか?それともただの喧嘩なのか?」
「何を言っている!先ほど言った通り、これは互いの誇りをかけた神聖な決闘だ。私は彼らに罵詈雑言を浴びせられ、不当に名誉を汚されたのだ。だからこそ決闘を行い、彼らにその過ちを認めさせる必要がある」
「あんたねえ、決闘が校則で禁止されてるのは知ってるんでしょう?」
「禁止されてるのはあくまでも貴族同士の決闘だ。平民と貴族が決闘をするのは禁じられていない。よって何の問題も存在しないんだよ、ルイズ」
638鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:15:53 ID:O5aHlYFT
ウォレヌスはギーシュがこれを決闘であると宣言するのを見届けると、後に下がった。
そして今度は。プッロが前に進み出る。
(始まったな。うまく行けばいいんだけど)
この作戦が通用すれば、自分にも十分に勝ち目はある。後はプッロの挑発がうまい事を祈るだけだ。
プッロはコホンと咳払いをした後、大声で演説をする様に言い始めた。
「いいか、名誉をかけた決闘って言うんならお互い公平な条件で始めるってのが筋ってもんだろ?お前がやろうとしてるのは素手の喧嘩に弓を持ち出す様なもんだ。そしてこれがルール無用の喧嘩じゃないってのはお前がたった今認めたんだぞ?」
「……ハッ!何を言い出すかと思えば!魔法は貴族が貴族たる理由だ。貴族である僕がそれを使うのは当然の事だ!」
「でも俺たちは魔法が使えない。つまりお前は自分だけが使える武器で、一方的に有利な条件で戦おうとしてるんだ。これのどこに名誉とやらがあるんだ?俺には力に物を言わせた卑怯な憂さ晴らしにしか見えねえがな」
そう言って、プッロは「ねえ、他の皆さんもそう思うでしょう!」と観衆を向いて言う。

杖が無ければ魔法が使えないのなら、杖を封印すればいい。魔法が使えないのなら、メイジはただの人間に過ぎない。
これがウォレヌスが考えた作戦だった。そしてギーシュが決闘と言う形で私刑を行おうとしたのも幸いした。
そのおかげで「決闘なのに公平な条件ではないのはおかしい」と言う理屈で相手を責める事が出来たのだから。
正直に言えば、才人もこれが苦しい理屈である事は解っていたがもとより相手は公平な条件で“決闘”をする気なんて全く無いのだ。
単に同じ条件で戦うと言うだけなのだから卑怯と言う程でもないだろう、そう考えた。
そしてプッロの言葉を受けて、観衆がざわめく。
「あの平民めちゃくちゃな事を言ってるぞ」
「でも実際にちょっとズルいよな。平民達に勝ち目なんてないんだぜ?」
「確かに決闘って言うよりはムカついたからボコろうとしてるだけだな」
そしてギーシュの顔が徐々に蒼白になっていく。
それを見て、才人は心の中でざまあみやがれ、と喝采を送った。
こっちを思う存分いたぶるつもりだったのだろうが、そうはいかない。

「……いったい何が言いたいのだ、君は!」
「なあに、簡単な事さ。杖をしまって素手で戦えって事さ。男らしい、素手での殴りあいだ。これならお互いに公平な条件だろ?」
「ふざけるな!僕に平民と酔っ払いのように殴りあえと言うのか!そんな汚らわしい事が――」
だがそこにプッロが止めを刺した。
「怖いのか?」
ギーシュは絶句してしまう。
「な……!」
「まあそりゃ怖いだろうね。お前の様な人を殴った事も無さそうなヒョロガキじゃあ、喧嘩なんて無理だろうしな。だから魔法に頼るしかない。哀れなもんだ」
その瞬間、蒼白になっていたギーシュの顔が一瞬で赤く染まった。その様子を見ていた才人は思わず噴出しそうになった。
「い、言わせておけば……!き、き、貴様らはいったいどこまで僕、いや、貴族を侮辱すれば気がすむのだ!」
「侮辱?本当の事じゃないか?違うって言うなら素手で戦って、自分は男だって証明してみろ。貴族が平民より優れてるんなら、それ位出来るだろ。ねえ、皆さん!そう思いませんか?」
そう言ってプッロは再び観衆の方を向いた。
639鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:16:43 ID:O5aHlYFT
「そうだギーシュ!男らしく戦え!」
「魔法が無くても貴族は平民より凄いって事を教えてやれ!」
驚くほど簡単に、観衆はプッロの提案を支持した。
が、もとより単に見世物を見る様な感覚でここにいる連中だ。
結果が決まりきっている一方的な勝負よりは、泥試合の方が面白そうだと思うのは当然だった。
そしてギーシュ自身、そのキザったらしい振る舞いのおかげで余り人気が良くなかったと言うのも大きい。
ギーシュは歓声が浴びせられる中、無言のまま暫くの間うつむいていた。だがやがて、青白くなった顔をゆっくりと起こし、ヤケクソになった様に一気にまくしたてた。
「……いいだろう!ここまで言われて引くのは単なる臆病者だ!君たちの馬鹿げた提案に乗ってやろう!そして魔法が無くとも平民は貴族にはかなわないと言う事を教えてやる!」
そしてギーシュは杖を懐にしまった。それを見た群集が「いいぞ!ギーシュ!」と声を上げる。

「へっへっへ、そうこなくちゃ面白くない。じゃあ始めるか。言っとくが、いまお前と戦うのは一人だけだ。一度に一人戦うとしても疲労の分不公平だからな。今はそこの坊主がお前とやり、後日俺がお前とやる。それでいいか?」
その言葉を受けてギーシュの表情が平静な物に戻った。いかにも屈強そうなプッロよりは、才人と戦う方が遥かに勝ち目があると思ったからだろう。
「今すぐ君たち全員と戦ってもいいのだが……君たちがそう言うのなら良いだろう。一人ずつ順に戦ってやろう」
気取るような仕草でそう言った。
「それと一応規則って奴を決めとく。目突きと金的は禁止……でいいか。勝負は相手が気を失うか、参ったと言ったら決まる。それでいいか?」
「ああ、構わん!さあ、早く来たまえ!」
才人は前に進み出、ギーシュから10歩ほど離れた場所に立った。
これで決闘が始まる。だがただの殴り合いなら自分にも十分勝算はある。
(さて、どうなるか……)
才人は、拳を構えた。
640鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2009/01/12(月) 20:17:41 ID:+Lr0YYet
以上です。支援、どうもありがとうございました。
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:24:12 ID:C8Fnqcrp
Bonus.

弁舌は魔法よりも強し、というところか。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:27:28 ID:AgMUXkJY
鷲と虚無さん、投下乙
しかし、うまいことギーシュ乗せましたねえ
とりあえずギーシュに合掌w
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:28:39 ID:UrqziQX+
容量がヤバイので次ぎスレ挑戦行ってみます
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:29:15 ID:DzRSGUz8
弁証法はローマ人の嗜み
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:33:35 ID:fLz549Zo
鷲と虚無の人


そろそろ次スレを立てる時?
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:34:44 ID:fdSXd7v8
鷲の方お疲れ様です
しかし>>634のラスト、「私にいい考えがある」という台詞が
例のあの人(あのロボ)の声で聞こえて「こりゃ駄目だ」と思ってしまいました
647643:2009/01/12(月) 20:34:47 ID:UrqziQX+
ホスト規制でスレ立て出来なかったので誰かお願いします。

次スレはPart204です。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:35:19 ID:/xg/Dj5z
じゃあ立ててくる
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:38:43 ID:/xg/Dj5z
だめだった。誰か頼む。
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:41:11 ID:C0UCyn0M
おし、行って来る。次は204だよな。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:43:09 ID:C0UCyn0M
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part204
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231760546/

立った。
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:44:03 ID:UrqziQX+
>>651
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:51:44 ID:DzRSGUz8
                      __
                 _, '"´      `丶、
                /            \
                  / ,' /  / /  ヽ   `ヽヽ
               l l j __ // ,イ   、ハヽ   }! ハ
               l l 「 j_从7ヽハ  !七大 ` } リ }/
                | l Vf゙i圷/ jl ノィアト、ヘ// /
                  j l  l  V_:ソ  ´  V:リ /jイノ  こんばんわ
               ,' ハ ヘ.       '  ` ,'  l !   みんなのレモンちゃんことルイズ・フランソワーズよ
                / / l  ヽ   ー ‐  .厶 |ハ
                //' ∧  弋ト 、 __ , r<7  l ヽ
          / / / ∧   Vー、 Kヽ{   ヽ  ヽ
         /  /./  /¨}   ',__∧_j_l::::ハ   \ }/
         ,′  l {  /:::/   /::::ヾ ☆Y:::ハ    X
         {   V r'::::::/   /::::::::::\__j:::::入xぅ/  \
         ヽ  l  { :::/   /::::::::::::::::::V://∠     ',
          }  ! j/  /:!::::::::::::::::::∧V _二}:ヽ   /
          /  /  {   〈:::::::l:::::::::::::::/:| j/ -ーソ:::ノ   /
         / /  |ヽ  \:::l:::::::::::/∠/j  rテ':〃  ( ヽ   ,
.      / /  、__jノ   ∧{::::::/ ,/ {  _/:::ハ   `ー彡
      /  〃  、__ >   /::;>'´   /! ∨ヘ::::ヾ::\   < _
      ヽ {{    =ァ 彡<::/     { >く{ ヽ:::::ヽ:::::ユ=―'´
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:52:25 ID:DzRSGUz8
            /                 \
           /                 `ヽ 丶
             /        .:ノ            ',  ヽ
         / /  /   .:.:/     :ヽ:. ヽ:ヽ   V   l
         l.:.|  :/  .:./.;イ    :ヽ:...:.:l.:.: .:|:..:l   l:  !
         |.:.| .:l .: \!/ l:.:{  .:.:.|ヽ:.:}ヽ .:j .:.!    |:.  |   サイトにうまく乗せられちゃってレモンちゃん恥ずかしい…
         ヽハ:l:.| !:.:.:jV\{:八 .:.::.l }:/_,j;ィト:.l   .:l:.:  |   なんて言っちゃったけど、本当はあんな事言うつもりなかったんだからね!
            ヽ从:.: iイfチ心ハ 、从ィ厶斗<V  .:.jl:.:  |
             \ト小._V;zソ ノ/  V;;_z1 '/  .:.:.:ハ:.:. 八
              リ :} .:::::: ,     :::::::..  /  .:.:.:/.:.ヽ:.:.: ヽ
            _..ノ/八            /  .:.:.:/.:.:.:.:.\:.:.  \
         , -‐´ :/ .:.:>,.、 ´ ヽ   ィ′ .:.:.: ハ;.__ .:.:.:.:\:.:.:   ̄`丶、
        〃 .:.:/  .:.:.:.:.: ノ'¨ ヽ、_ , ィ≦7   :.:.:./'´  ヽ.:.:.:.:.` ー- 、:.   ヽ
         l .:./  .:.:.:.:. ;.'イ\ ノ} /`∨  :.:.:.:{     ゝー、.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:  }
         {.:/  .:.:.:.:.:/  }  Vx1_/  {   :.:.:.:ヽ      ∧.:.:.:.:.:.:.:}:.:. ,′
       〃  :.:.:.:./   j/  ̄ ̄ ヽ入   :.:.:.:.:.\      ヽ.:.:.:.:./:.:/
       {  :.:.:.:.{      |     /  \   :.:.:.:.:.\     ):.:/:.;イ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:53:01 ID:DzRSGUz8
         /       /    、  \   ヽ  、
        l /        |     \   ヽ   ヽ  ',
        |/     / 人      ヽ,   ',   |   !
        ||  !. l 、| /  ヽ l    /l   |_,  !  ヽ
        ヽ |l | /ヾ|、 ノイ  /! /_,|イ'l´    |   \   そもそもレモンちゃん(はぁと)なんて、ちょっといい響きな気がするのは
         〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| /   ト、    ヽ   チキュウ語で翻訳出版されてるからなのよ
        /   |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ  7   .!  ヽ     \
      /    |  |             /   |ヽ、|     〉
      ヽ     |  l u          u./.    |:::::::メ,    /
       〉  r'゙/   ヽ   ー─--、   /     |::::::::::::}_  /
      /  {./     |>- ` ー一'_, イ      /:::::::::´::::::ヽ `ヽ
    /  r'7     ノ:::::∧` >< /     /:::::::::::::::::::::::ハ  ` 、
   /   /´/     ∧:::::::::∨ ,、 ∧     ヽ; -ー' ´::::::::::::}.    \
. /    |::/     /::::::\:::::∨ | /:::::ヽ      \::::::::_,::::ハ       \
〈      /     /:::::::::::::::\ ヽ7::::/::ヽ      ヾ´::::::::::::::::l        \
 ヽ   /     /::::::::::::::::::::::::`::^__´::::::::::l       |::::::::::::::::::ヽヽ      ヽ
  }  〈      ∧::::::::::::::::::::::::::::::::::::`'一::〉       l:::::::::::::::::::::', |      /
  〉  ∧      ヽ::::::::::::::::::::∧:::::::::::::/         /::::::::::::::::::::::∨    /
. /  |:::::ヽ      ',::::::::::::/| ト;:::::/        /::::::::::::::::::::::::::::ヽ   /
. /   l:::::::::}      }::::::/  || || ∨        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::\〈
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:53:36 ID:DzRSGUz8
            ,. -─── 、
         //  /      `ヽ   
         /.:./  / / .:.  /     \   
       / .:.:./   / ,斗-- 、:{:. .:. ヽ    ヽ 
       /  /:  イ´l .:|l.:.:∧:|.:.:.: .:斗ー   ',  
       l ..:.:|:.:.   | ィチ才ミヾヽ.:.:.:/厶.: / .:  〉 
       l.:.:.:.!:.:  ∨  }:ヘ.リ  ノ/仟テk';.:./ィ/ 
      ノ.:.::人:.   ヽ ゝ-'      ト;'ソ//!   東方由来のあの果物って、
   /.:./.:.:.ヽ:.   ヘ       ` ` |:.: |    北トリステイン訛りではシトロエンって言うのよ。
  /.:./.:.:.:.::.ノ.:}:.    ',     __    ,:.  |    ガリア訛りでシトロンって言えばちょっとなじみがあるかしら
/.:./.:.:.:.:.:.:/.:.|.:.:.  l    ´ ´ /.:  |
.:.:./.:.:.:.:.:.:.:./_ィ.:.:.:.   小    イ/:.:.:.:.  l
.:.〈.:.:.:.:.:./   ./.:.    }_,工,.´ー=〈:.:.:.:..   ヽ
 :ノ.:.:/   /.:.:.:.:   /.、 ∧ ̄入ヽ:.:.:.:.   \
/r' ─- 、/.:.:.    /  ∨_ノ´\l/ \:.:.:.:.:   ヽ
.:.:.l    /.:.:     / \  \ /ヽ/ /  ヽ:.:.:.:.:.:.:  〉
/   /.:.:     / \ \  ヽソ /    }:.:.:.:.:  /
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:53:53 ID:C8Fnqcrp
AAで埋めるなっちゅーに
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:54:08 ID:DzRSGUz8

                  _ ,ィ'´ ̄了⌒{ーrヘ
                 / ヽ厶 - ┴‐-'< 〈_r'ヽ
               /ゝ'}/         \/ 〈
               {_/    .:j       ヽイ~i}
               {// :/ .;イ:/    ヽ. ',  l Vr'
               / l:. ./:/:.:!:〃:   }:.:.:l:.. } l  !~}
               lV{:.:.l::l>トハ:.:. /ム斗_/j::j  l/|  「シ、シトロエンちゃん恥ずかしい…」
              /:.:∧从{仗._jソ/ル仗_j`ハ/  :l. l  
                /:.:/  lヘ ゞ-'     ゞ-'' /  .:,' ヽ
             /:/  lハ xxx  '   xxx /  .:/:..  \
           /´   ,:ィ,'   ヽ、  ‐-   ィ/  .:∧:.:.:..   \
          /   .:/:.ノ   :.!/::{≧r≦}::/  :.:.l:.:.:ヽ:.:.:..   ヽ
         /  .:/.:./   .:.}-<彡水ミ>!   :.:.L_:.:.:.\:.:.:.:..  ヽ
          { .:.:./.:/   .:.:.:/ く__/ ヽ_,/l   :.\ }:.:.:.:ヽ:.:.:.:.   }
         ヽ:.:.:l:/    .:.:./        ヽ:.    :.\:.:.:.:.}i:.:.:  /
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:54:43 ID:78NQWw3a
500kならサイレント・コアシリーズから司馬三佐召喚
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:54:48 ID:DzRSGUz8
             __, -ー- 、
           / /    ヽ` 、
.          /. l l从、 从、| | l
           \!」>ヽ'< '7 |!
            ノ|  __   / ∧ヽ    微妙ね。微妙だからオチもないわ
          // >、 _`イ  l  \\
.         〈 人  トr十一) ヾヽ 〉 〉
          ヽl/ノ  〉夲/  /_::Ll. /
          r/ /ヾ〈   〈:::::::::\\
         _/   ./:::/::||、\  \::::::::!  \
       / イ  〈:::/::/||::ヽ::)   ヽ::::ト、   ヽ  あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part204
      / / ヽ トゝ::/::||:::/  l  ):l \  〉 ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231760546/
      l |   f´ヾ`:::/::::∧彡__ノ/!/::::|   l /
      \  |::::::::::/::::::| !\:::::\::::\:l //
        lヽ|::::::::/::::::::| |::::::\:::::\::::Y /                     ,..rァ            
.       ノ ノ:::::/::::::::::| .!:::::::::::ヽ::::::ヽ」 |                    ,r'"`^´¨ヽ      
        ̄/::::::/::::::::::::|人!:::::::::::::::::::::::::| \      ,土ヽ ┤r┐ L  |   { ∴   ∴}
.       /::::::/::::::::::::::|::|::|::::::::::::::::::::::::::!`l ̄     (__! ) イ _|    _!   ヽ ∴_,,,.ノ
 ←これはみかん
661名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:56:36 ID:blSHqVca
AAで埋めるのは、その方が手っ取り早いからか?
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:56:54 ID:6UZ/PAv9
>>640
才人が上手い事二人とルイズの仲介役に立てて関係改善に一歩前進かな?
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 20:58:25 ID:xEcoM1LY
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、           /     {   {____ハ    }
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 21:00:06 ID:/xg/Dj5z
500kbなら、今書いてる小ネタが今週中に書き上がる。
ついでに、連載の方も来週中に書き上がる。
665名無しさん@お腹いっぱい。
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
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