あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part201
1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part200
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1230455459/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/12/04(木) 03:08:31 ID:DO3FnTGf
皆様、感想、雑談をぶった切るような形での書き込み。初めに謝罪をしておきます。
本スレに書くものかと思ったのですが、一応気になったので書き込みをします。私、この板ではリリカルなのはクロスとゼロの使い魔クロス、この二つのスレ・まとめサイトをよく見ております。
そんな中で、ふと気になりましたのが、先日投下されました「使い魔の左手、悪魔の右手」氏の作品、第一話の事です。
DMC4のクロスはまだまだ少なく私も大好物ですが、読んでいて思ったのです。召喚される前、ネロとキリエのシーンの文が、リリカルクロススレの方で連載されている作品によく似ていると。
その作品は、DMC4とのクロス、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTEERS〜」氏の同名作品です。
その第5話後半、シグナムとフェイトがネロを次元犯罪者と勘違いし、地球まで追ってきて、ネロ達と出会う場面の文及び描写と酷似している部分があります。
悪魔の右手氏
『城塞都市フォルトゥナ、ミティスの森
フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森。
そのフォルトゥナで信仰されている宗教、再建が進む魔剣教団の本部が一望できるその場所で
二人のカップルが歩いている。』
↓
リリカルなのはDHS第5話
『何かを知っている。フェイトは今度こそは失敗しない事を胸に誓い、歩いて行く。
2人が向かうは、ミティスの森。フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森だ。 』
悪魔の右手氏
『「ネロ」
「何だい?キリエ」
ネロ、と呼ばれた青年が振り返る。
「いつ来てもここは…素敵なところね、小鳥のさえずりと川のせせらぎがよく聞こえるわ」
「静かっちゃ静かなんだがな…」
「あなたとの時間もとても長く感じれる」
キリエ、と呼ばれた美しい女性はそういうと彼の左腕に腕をからめる。
「まぁ……ね…」 』
見ているこっちが恥ずかしくなるほどのノロケっぷりである、恋人であるキリエの口から出た素直な言葉に
ネロは少々頬を赤くしながら鼻の頭を気恥かしそうに?いた。
↓
リリカルなのはDHS第五話
『「ここは、やっぱり静かね・・・・・・動物の鳴き声と川の流れの音だけ・・・・・・・ネロはそう思わない?」
「いや、いいところだとは思うさ」
ミティスの森でネロとキリエの2人はゆったりとしていた。何をするでもなく、ただ寄り添い、自然を感じる。
自然は人の心を癒し、恋人の存在はさらにそれを加速させる。ただ、静かに2人でいることが若い二人には幸福だった。
特にネロは、キリエがいいならなんでもといった感じだ。普段のはねっ返りぶりとは正反対である。
「でも悪魔が出たら危ないだろ?」
「でも、ネロが守ってくれるでしょ?あの時も・・・・・そうだったし・・・・・・・」
思い出されるのはあの全てが解決した日。2人の初めての接吻を邪魔した悪魔をネロは完膚なきまでに叩き潰した。それを持ってこられるとネロの顔も赤くなる。
「まぁ・・・ね・・・・」
鼻を掻き、照れ隠しをするネロ。そんな彼の様子を見て、キリエは優しい笑みを浮かべていた。 』
904 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:29:09 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
失礼いたします。
私、「リリカルなのはクロスSSスレ」にて、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTERS〜」という作品を連載させて頂いている者です。
自分は、こちらのスレの作品の読み手として、主にまとめwiki、たまにスレ・避難所を覗いております。
この度、私の拙作からの盗用疑惑というのが報告されたようですが、同一作者の可能性及び、被害者の存在というコメントがありましたので、書き込みをさせて頂きました。
結論から言いますと、私は、こちらのスレでの長編作品は現時点では一切投下しておりません。
確認として、自分が執筆しておりますのは、件のリリカルなのは&DMC4クロス
某サイトにて投稿しております、マブラヴオルタネイティヴ&アーマード・コア4クロス、デビルメイクライ&ブラック・ラグーンクロス。
更新を停止しておりますが、ジョジョスレにて、仗助&トニオ召喚モノの4本を手掛け、これ以外に執筆しました長編作品はございません。
盗用疑惑に関するコメントですが、報告のレスを拝見させていただきました。
確かによく似ている部分があるなという感想を私は持ちました。あくまで個人的な意見ですが、あまりよい気分は致しません。
何故かと言いますと、クロス元がゲーム作品であり、今夏発売予定だったノベライズ版も未だ発売に至っていないと記憶しております。
また、設定資料集「デビルズ・マテリアライズコレクション」・「Saber of Savior」にも開発段階でのシナリオ台本のみで
DMC4本編の後日談に関する文献が存在しない状態で、こうも似るものだろうかと思うわけであります。
自分の中では、試作予告編も含めれば、10ヵ月近くに渡って執筆してきたものであり、所詮2次創作といえど、思い入れの強い作品であります。
それを盗用されたとなりますと、前述の通りいい気分は致しません。
とは言え、全て完全なコピペというわけではなく、現時点ではあくまで「疑わしき」でしかありませんので、管理者の方、議論をされた方の結論を待ちたいところであります。
仮定として、もし、盗用事実があるのなら、私はこのケースに関しては即刻削除は求めません。話の前半部分であり、完全なコピペではないからです。
但し、該当部分の全面改訂だけは求めたいと思います。
また、このスレの判断であります、「悪魔の右手」氏を反応を待つというのは、それはもう結構であります。
偉そうな事を言える立場ではございませんが、確実な検証をして頂き、氏のコメントを待ちたいと思います。
疑惑が事実であるのなら上記の該当部分を改訂していただければ結構ですし、
完全に氏が「そのような事実は全くない」と申されるのであれば私はそれ以上何も申しません。
そこからは議論者の方々の判断にゆだねたいと思います。
かつて、リリカルスレで盗作擁護の判定を受け追放された書き手もおりました事を考え、発言いたしますと
私は、盗作・盗用行為は許されざる事だと思っております。
ただ、今回はケースがケースですので比較的穏やかな姿勢で見ていきたいと思っております。
しかしながら、この件に対するレスポンスの皆無、反省のない態度、私以外からの引用、引き続き同様の行為が繰り返される等の事態になった場合
私は、流石に厳しい態度を取らざるを得ません。そのような場合は、削除を求めたいと思っております。
最後に、長文の書き込みを謝罪いたしますと共に、日々運営に関して議論を続けられています管理者及び他の方々に感謝を意をささげたいと思います。
追伸として、今後私に対する何らかのレスポンスが求められた場合、「リリカルなのはDHS」の名で書き込みをいたしますことをお伝えしたいと思います。
906 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:51:22 HOST:wb01proxy01.ezweb.ne.jp
>>904 リリカルなのはDHS作者氏
自分はDMCもなのはもわからんので判断できんのですが
わかりやすい判断基準としてラテン語で云々の部分て
どっちかの原作とか資料とかであるんですか?
あと
>>888=889であげられた以外に作者からみて疑わしいところってありますか?
>>管理人および議論スレ諸氏
盗用問題はコピペでもない限り検証が非常に難しいので
疑わしい部分の比較や双方の作者のコメントを待ちたいと思いますがどうでしょうか
あと期間とかの案として
一ヶ月間使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがない場合
wiki登録分から本文を削除して盗用疑惑があるために一時削除の注意書きのみとし
二ヶ月間レスポンスがなければページを削除という形はいかがでしょうか
使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがあった場合はコメントの内容次第になると思いますが
907 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M:2008/12/06(土) 02:45:24 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
ラテン語云々の部分に関しては、設定資料集などには一切記述されていません。
ただ、私が参考にいたしましたのは、2007年11月初め、プレス向けなどに発表した当時の最新情報にラテン語で「優しい」を意味するという記述はありました。
それの原文に関しては
『「デビル メイ クライ」シリーズでは珍しい、日差しが強く緑に囲まれた世界。それがフォルトゥナ郊外に広がる森林地帯「ミティスの森」だ。
ミティスとは優しいという意味を持つラテン語。
その名の通り、見る者の心を和ませる雄大な森だったか、フォルトゥナの悪魔に呼応するかのように、不気味な樹木が数多く見受けられるようになってきた。』
となっておりまして、私の文とは違うのは、原文では、場所については『フォルトゥナ郊外』、広さに関しては広大ではなく『雄大』と表現されています。
ただ、公式サイトでミティスの森に関して述べていたのは、比較的短期間で、詳細なキャラクターや武器などの紹介ページが出来てからは見ることが出来なくなっています。
また、他の疑わしいところという質問ですが、報告されましたレスでは、ネロが照れるシーンがありますが、鼻頭をかく。とはっきり言っているのは
拙作第六話にて
『この3人が集まり、使い捨ての尖兵にも等しい下級悪魔に劣ることがあろうか。
もとより悪魔を滅する使命を持つ者、愛する者のために重圧を押しのけた者、主の為にすべてをささげた者。古からの『原初の恐怖』でも彼らをすくめることなど出来なかった。
大剣が炎を巻き上げ悪魔を喰らう。大鎌が無慈悲にも悪魔の命を刈り取る。炎の魔剣が悪魔を切り裂く。
相手が人間ではないのならネロはもとよりフェイト達にも手加減をする理由は無い。30を超えるスケアクロウの群れが瞬く間に散っていく。
身を膨らませ、甲虫の群れが体液をまき散らしながら飛び散っていく。あとに残るのはちぎれた布袋、されどそれもやがて霞のように消え去っていく。
5分とかからない戦いであった。背に剣を戻したネロはすぐさまキリエの下へと歩む。
「大丈夫だったか?」
「うん・・・・・ネロが・・・守ってくれたから」
「まあ・・・・・ね」
鼻頭を掻きながら照れた表情を浮かべるネロ。
離れた場所で初めてその穏やかな表情を見たフェイト達はわずかに驚いたものの、すぐさま当初の目的を果たそうとする。 』
という5話と同じように「まぁ・・・ね」と言うシーンがございます。
とは言えどちらも同じような台詞まわしですので、現時点では疑惑でしかない事を考えますと
どちらかだ!とは申せませんが。
鼻頭をかく行為自体は、DMC4エンディングスタッフロールにて、あまり内容には触れませんが
2秒ほど映る場所があります。
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ .
l lf小从} l /
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
テンプレ乙
新春早々乙
新年早々立ったのがPart201というのは、なんか切りがええの
>>1乙
何時かルイズが、まじしゃんず・あかでみいの佐久間榮太郎を召喚してくれると信じてる
ドアラ召喚
そういや実在の人物はアウトか
マスコット「キャラクター」だからいいんじゃないかな
いやドアラはありかもしれんぞ……
イチローをどっかで見た気がする
ドアラが登場する作品があればいいんじゃないか
無ければNGだろうが
ということはジャビットやトラッキーもOK?
じゃあカープのスラィリー召喚で魔法学園が恐怖の渦に
>>25 アレを召喚したら、ルイズが可哀想だw
ってかさ、ギーシュとかワルドが悲惨な目にあって、ギーシュとか自殺しかねんしw
新スレおめ
>>26 大丈夫だ。彼はすべての種族・性別に平等だ。被害を被るのは女性陣も同じw
それに自殺するくらいなら防衛本能で同じ道に入るだろうからw
>>28 確かに、平等かも知れない。
だが、ハルケギニアの魔法使いや平民だと対処法が皆無で、あまりにも可哀想過ぎるだろw
召喚するぐらいなら、聖地に封印されてる事にすれば良いんじゃね?
だからエルフが必死で封印を解かさないように頑張ってるとかさw
>>29 それもそうか…最終的にあんなんでも神魔だからいなくなったの危惧して捜索が来る
なんて希望的観測があったが"あんなん"だからな…
仕方ない。
ガンダー…御狩谷はるか
ミョズ…ファルチェスク
ヴィンダー…ケモノミミの使徒
で我慢しよう。
>>30 むしろ、ガンダはフェルミorエーネウスで良いんじゃね?
前者だとMだからルイズが主でも問題無いと思う。後者だと榮太郎のストッパーがいなくなって、まかでみーがヤバそうだけどw
>>31 フッ…わかってないな…この構図…
超兵器VS擬人化萌えVSケモノミミの構図が!
>>32 いやぁ…ハルケギニアだと科学技術が低過ぎて、超兵器を作るの難しいと思ってね
>>1 乙
そしてスレ住民のみなさん、あけおめことよろ
今年の目標はリリカルなのはStSからフェイトを召喚するSSを書こうと思う
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ .
l lf小从} l /
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
,.へ、_ __ __ , ――――一ァ
∠ i_〃- - 、(( ___ /
| | イソハ)トリミj /./
| | ji、゚ー ゚´!j)" /./
| | ,<ヌ交ヌ>ヽ {. {__/|
∠_ヽ/. ム介iム ハ ヽ____」
. イ〜(_ハ_)〜ゾ
ガンダはミヤビでいいと思うけどね
刀使うし
時空を超えてギガミヤビの召還も可能かも試練
プロレスラーを呼びたいと思ったが
コミックより面白い奴らが揃ってる実在レスラーがタブーなのが残念
「プロレス・スターウォーズ」とかの登場人物ってことにすれば大丈夫かな
我を護りし神のアゴ(猪木)心優しき神の霧(シン)知恵のかたまり神の虎、(佐山)
そしてその正体は口にするのも憚られる、ゼブラ・ザ・グレート(???)
>>38 石渡治の「白兵武者」って漫画に猪木出てっからそっから呼べばいいんでね?
41 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 06:43:12 ID:atmdSzJl
朝も早いですが、おはようございます。
毒の爪の使い魔の第22話が書きあがりました。
予定その他が無ければ、6:50から投下します。
42 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 06:50:00 ID:atmdSzJl
では時間になりましたので、投下開始します。
「…なんだ? もう終わってんじゃねェか…」
ゆっくりと歩いて来た為、時間が掛かった。ジャンガは、ざっと周囲を見回す。
草原は、いたる所が炎に焼かれ、風に抉られ、物理的な衝撃に粉砕されている。
こっちの戦闘も相当激しかった事の証明だ。
自分の直ぐ近くの地面に目を向ける。
そこには気障ガキとドリル頭の姿が在った。
気障ガキは意識が無いのか、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。
全身に無数の傷が付いているが、致命傷のようなのは見受けられない。単純に気絶しているだけだろう。
その傍らにドリル頭。荒く息を吐いており、限界に近いのが解る。
だが、その瞳は死んでいない。自分を怒りの篭った目で睨み付けている。
今度は前方に目を向ける。
人形娘に雌牛が(何時の間に来たのか分からないが…)覆い被さるようにして倒れていた。
人形娘の方は比較的無傷だったが…雌牛の方は酷い火傷を負っている。
恐らく……と言うよりは、確実にジョーカーの炎にやられたのだろう。
そして…、雌牛が人形娘に覆い被さるようにして倒れている事や、人形娘が泣いてる事から察するに――
(庇ったのか…)
ジャンガはそう思い至った。…他に考えようが無い。
「ジャンガちゃ〜ん♪」
場の雰囲気にそぐわない、能天気な声にジャンガはため息すら出なかった。
声の主に視線だけを向ける。
「…ン?」
「もう、つれない返事ですネ〜? ワタクシ、ジャンガちゃんが無事でいたのが嬉しいだけですよ。
いやいや……あの大爆発が起きた時は、本気で心配したのですがネ…」
爆発…と聞いて、先程のコルベールが起こした”あれ”を思い浮かぶ。
(まァ…確かに俺自身、よく生きてたと思うゼ…。……別にくたばっても良かったとは思うがよ…)
――そんな事を考えていると、耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた。
43 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 06:53:01 ID:atmdSzJl
「ちょっと!ジャンガ!?」
目を向ければ、ケイジィに捕まった桃色髪のクソガキが怒鳴っている。――特に何の感情も浮かばない。
「……何だよ?」
その様子にルイズは妙な違和感を覚えた。
普段のあいつなら、今のような怒鳴り声に、こんな気の抜けた返事はしない。
それこそ「あン?」とか言いながら睨み付ける位はするはずだ。
嫌々ながらも、一緒に過ごしてきたルイズには確信を持って言える事だった。
だが、今はそんな事は置いておくべきだ……先に聞くべき事がある。
「コルベール先生はどうしたのよ!?」
ルイズの言葉にモンモランシー、キュルケ、タバサの三人もハッとなる。
そうだ……ジャンガは丁度、学院を挟んだ反対側でコルベール先生と戦っていたはずなのだ。
それが、ジャンガはここにいて、コルベール先生は姿が見えない…。
…一体どういう事なのだ?
――答えはジャンガの口から直接聞かされた。
「――あいつなら死んだよ…」
四人が四人とも呆然となった。
…こいつは今、何て言った?
四人が四人ともそう思った。
解らない……のではない。理解したくないのだ…、認めたくないのだ…。
四人が四人ともそうだった。
「あいつは…コルベールは死んだよ。…俺が殺した」
言葉を失い、呆然となる四人に対し、ジャンガは特に何の感情も込めずに再度言い放つ。
その言葉にモンモランシーが呆然と呟く。
「嘘……」
ジャンガは座り込む、巻き毛の少女を見下ろす。
「嘘じゃねェ」
やはり感情の籠もらない言葉だった。
モンモランシーは小刻みに肩を震わせる。
「嘘よ…」
「嘘じゃねェよ。…信じらんねェなら、向こうへ行ってテメェの目で見てくりゃいいゼ。…奴の骸があるからよ」
「嘘よ!!」
たまらずモンモランシーは叫んだ。僅かに浮かんでいた涙が零れる。
新年初の投下来た!これで勝つる!
支援するのは確定的に明らか
ネトゲがメンテで暇なんすよ
45 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 06:56:03 ID:atmdSzJl
その様子にルイズも叫び声を上げた。
「ジャンガ!!あんた……あんた……」
「……」
ジャンガは何の感情も表さない顔でルイズを見つめる。
「あんた……なんて、なんて…事を……」
ルイズもまたモンモランシーのように涙を流す。
向こうではキュルケもタバサも一様に暗い表情をしていた。
そんな四人を見てもジャンガは表情を変えない。
視線を下に向ける。モンモランシーは本格的に泣いていた。
「何で…何で…」
「どうして泣きやがるんだ」
「え?」
モンモランシーは思わず顔を上げる。
自分を見下ろす月目と目が合った。
「テメェは別にアイツをそんなに慕ってはいないはずだろうが。
この前の授業も対して興味を示していなかったし…、別に泣く理由は無いだろ。
それなのに……何で泣くんだ?」
「それは……確かに、コルベール先生の授業は先生の妙な発明の発表とか…火の平和利用とか、
興味は余り湧かないのばかりだったわ…。でも……」
「でも……なんだ?」
「やっぱり悲しいわよ…死んだなんて…。だって先生は私達を…助けようと思って…」
そう言って、モンモランシーは俯き、声を押し殺して泣く。
それをジャンガはただ黙って見下ろす。
「ジャンガちゃん?」
「………ンだよ?」
ジョーカーの声にジャンガは気の抜けた声で返事をする。
「まァ、無事で何よりと言う事で……そろそろ、こちらも仕事を終えたいのでして」
「…それで何だよ?」
「そのお二人……片付けてくれませんか?」
「ッッッ!?」
ジョーカーの言葉にモンモランシーは反射的に顔を上げる。
ジャンガは黙って二人を見下ろす。その顔に浮かぶのは殺意も哀れみも無い、空っぽな表情だ。
モンモランシーは杖をジャンガに突きつけた。
「ギーシュには……手は出させないわ」
「……よせよ。テメェはもう限界間近なんだろうが?それに…この距離なら、テメェが唇を動かした瞬間、
そのか細い首を削ぎ落とせるゼ?」
言いながら、爪をモンモランシーに見せ付ける。
だが、彼女は怯む気配も見せず、ジャンガを睨みつける
46 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 06:59:00 ID:atmdSzJl
「先生に続いてギーシュもなんて…絶対にさせないわ」
「……安っぽいな」
だが…、と呟き、ジャンガはキュルケとタバサに視線を移す。
(そんな安っぽいのが……妙に眩しいゼ)
ジャンガはモンモランシーから離れ、キュルケとタバサの方へと歩み寄る。
ジョーカーの不思議そうな声が聞こえたが、気に留めない。
二人の傍へと歩み寄り、見下ろす。
キュルケは火傷の痛みを堪えながら、ジャンガを睨む。
「…ジロジロ見ないでくれる?あなたに見せるには…もったいなさすぎるわよ……この身体は…」
「……テメェの言っているような意味で、女に興味なんざねェ…」
言いながらジャンガはキュルケの身体を改めて見た。
…火傷は相当酷い。一歩間違えれば即死もあったはずだ。
直ぐに手当てなり、なんなりしなければ命に関わってもおかしく無さそうだ。
ジャンガはタバサに視線を移す。
「どうしたよ…この様は?」
タバサは答えない。
「言わなくてもいいさ……大体解ってるからよ。…助けられたんだろう?」
タバサは答えない。
「お前の事だ…、こいつ相手でも全力で相手をしたんだろう。…殺す気でな。
…だが、こいつは……お前の親友はお前を見捨てなかった。それどころか、身を挺して助けた…。
自分を殺そうとしたはずのテメェをだ…」
タバサは答えない。
「なァ…一ついいか?」
「……何?」
ようやくタバサが口を開いた。
ジャンガはその碧眼を覗き込む。
「このまま人形でいるか…、後戻りをするか…、どっちにする?」
「……」
「人形のままでいるんなら、俺が今直ぐ全部終わらせてやる…。
テメェに覆い被さってる女と向こうの二人……直ぐにだ」
「……」
「……で、後戻りをするんなら……」
「……するなら?」
「この先はテメェ次第だ…」
ジャンガの言葉にタバサは悩んだ。
このまま人形のままでいる……それは今までの生き方を変えない事。
簡単な事だ…、安易な道だ…、今までと全く同じ事を続けていけばいいのだから。でも……
――失う物だって多い……――
ならば、後戻りをするか?
…これは難しい。難しいと言うより……怖い。
こんな…自分と母とを守る為に続けて来た事を止めて…、
今更別の道を行こうとする事が周りに許されるかどうか…、
親友が…、共に学院で学んだ皆が…、何の変わりも無く受け入れてくれるか……
――とても…怖い…――
47 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:02:00 ID:atmdSzJl
黙るタバサを暫く見つめていたジャンガは、唐突にキュルケに声を掛ける。
「オイ?」
「……何よ?」
「お前は……コイツを、親友と今も思っているのか?」
「当然よ…」
迷いも何も無い瞳でジャンガを見上げながら、彼女はそう答えた。
「この子は……ただ、不幸なだけ…。…少しだけ道を踏み外して――いや、”踏み外された”だけよ。
悪いのは…この子を不幸な目にあわせて……まだ不幸を与え続けている連中よ…」
そこまで言ってキュルケはタバサを見つめ、その頭を優しく撫でる。それは母親が娘にするような…そんな感じがした。
「私は……この子を最後まで見捨てるつもりは無いわ…」
そのキュルケの言葉にタバサは再び静かに涙を流し、ジャンガは目を静かに閉じた。
パチ、パチ、パチ
小馬鹿にするような、乾いた拍手の音が響く。
拍手の主はジョーカーだ。
「いやいや……実に素晴らしい。本当に素晴らしい…」
賞賛しているように感じる言葉だ。…が、ジョーカーは片目の形を変え、さも可笑しいといった表情を浮かべる。
「…お涙頂戴の三文芝居にしてはネ〜」
ジョーカーの言葉に、モンモランシーとルイズは頭に血が上る感覚を覚える。
キュルケの思いに裏表も無いのは明白だ。それなのに……このピエロは…。
ジャンガは閉じていた目を開き、タバサを見る。
「…こいつはこう言ってるがよ」
タバサはジャンガを真っ直ぐに見据える。
「…テメェはどうする?」
――どうする…?
――どうするって…
――そんなの…決まってる…
――ここまで私を信じてくれているのに…
――迷い悩む必要がどこにある…?
事は一瞬だった。
キュルケを跳ね除け、起き上がったタバサは素早く詠唱。
巻き起こった”氷嵐”をジョーカー目掛けて放った。
悲鳴を上げ、ジョーカーは地面に落下した。
(・∀・)シエーン
49 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:05:02 ID:atmdSzJl
”おや……、北花壇騎士殿。これは一体…どういうつもりかしら…?”
ガーゴイルの声が響く。
”飼い犬が主人にはむかおうというの?”
「…勘違いしないで。あなた達に忠誠を誓った事など一度も無い」
タバサは上空のガーゴイルに杖を突きつけ言い放つ。その碧眼には最早、迷いも悩みも無い。
”あなたの裏切りは報告するわ。それに…獲物はきちんと戴いていくわよ”
言うが早いか……ガーゴイルはルイズを捕らえているケイジィを掴み、全速力で離脱を図る。
ズバンッ!!!
ガーゴイルの身体が左腰から右肩までを袈裟切りにされ、
ケイジィもまた、翼と頭の付いたカゴ状の身体の上の部分が輪切りにされる。
ガーゴイルはそのまま地面に落下し、ケイジィは細かな粒子のようになって消滅した。
「きゃあ!?」
解放され、地面へと落下するルイズは悲鳴を上げる。が、その身体を淡い光が覆い、ルイズの落下速度が揺らいだ。
タバサがレビテーションを掛けたのだ。
ジャンガが笑いながらタバサに声を掛ける。
「キキキ…、鮮やかな手際だな?」
「…あなたも」
その言葉にジャンガは不適に笑った。
ガーゴイルとケイジィを切り裂いたのは、ジャンガの放ったカッターだった。
地面に落ち、最早飛ぶ事など適わない身体であるにも拘らず、ガーゴイルはもがいている。
ジャンガは静かに歩み寄り、その頭を踏み付けた。
力を込めて踏みつけると、ミシミシと音が響く。
”おやおや……、あなたもその出来損ないの飼い犬と同じように、私達を裏切ると言うのね”
ガーゴイルのその言葉にジャンガは「はァ?」と言い、何の事か分からないと言った表情をする。
「おいおい……テメェ、あいつの今言った言葉…理解できてるのかよ?」
”…どういう意味?”
「あいつは”忠誠を誓った事は一度も無い”と言ったんだゼ?
裏切りってのはな…相手との信頼関係か、相手に対する忠誠心が存在する者が、
それらを捨てる行為をする者を差すんだよ。
つまりだ……タバサ嬢ちゃんも、俺もテメェ等には微塵も、信頼も忠誠心も存在しねェからな…、
裏切りとは言わねェんだよ。解ったか?」
”…屁理屈を”
ガーゴイルの言葉にジャンガは笑った。
「キキキキキ!おいおい…何言ってるんだよ?テメェが勝手に勘違いしたのが悪いんじゃねェか。
”神の頭脳”が聞いて呆れるな…とんだ間抜けだゼ、テメェは。
”神”じゃなくて”紙”なんじゃねェか?ペラペラな白紙のような頭って事でよ。
…ああ、いや違ったな。テメェの所の王様は”無能”とか言われてるんだよな?
そんな奴が今の王様なんだ……同じような”馬鹿”が出てきてもおかしくねェよな。キキ…悪ィ悪ィ」
そこで一旦言葉を切る。
ガーゴイルは暴れるのを止めていたが、こころなしか…歯軋りのような音が聞こえる気がする。
…何れにせよ、操り手は相当怒っている様子だった。
それを感じ、ニヤリとした笑みを顔に貼り付け、目を見開いて叫んだ。
「ま、何にせよだ……何でもかんでも本気にすんじゃねェって事さ、バーーーカッ!!!」
グシャッ!
硬い物を踏み砕く音が周囲に響き渡った。
50 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:08:03 ID:atmdSzJl
頭を破壊され、完全に動きを止めたガーゴイルを一瞥し、背を向ける。
そこでジャンガは、キュルケやモンモランシー、ルイズが自分を見ている事に気付く。
その疑いの眼差しにジャンガは自嘲気味な笑みを浮かべた。
キュルケが口を開く。
「あなた……何のつもり?」
「何のつもり?」
「惚けないでよ……、あなた…コルベール先生を殺しておいて……今更――」
「別に……何も無ェよ?俺は俺のためにあのガーゴイルを潰した……それだけだ」
「……」
ジャンガの言葉にキュルケは黙る。
その時、地面に落下したジョーカーが身体をようやく起こした。
「……流石に、今のは効きましたよ…シャルロットさん?」
言いながらジョーカーはタバサを睨みつけた。その表情には怒りの色が浮かんでいる。
タバサは油断無く、杖を構える。
と、そんなタバサを腕で静止し、キュルケはフラフラしながらも立ち上がる。
「…キュルケ?」
「…悪いわね。こいつは…、わたしの相手よ…」
ふら付きながらも、キュルケは杖をジョーカーに向ける。
その光景にジョーカーは思わず笑ってしまった。
「ぷぷぷ……これはこれは、実に実に無謀な…。そんなボロボロなお体で、ワタクシに勝てるとお思いですか?
自信過剰は良くありませんネ〜」
そんなジョーカーに対し、キュルケはいつもの小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「それはどうかしら…ね…。第一…あなたの炎、全然熱く感じないわよ…?
あれなら、まだ…夏の日差しの方がこの身を焼いてくれるわ…」
その言葉にジョーカーは笑いを引っ込める。…その表情は笑みを形作ったままだが。
「…安っぽい挑発ですネ。ですが…まぁいいでしょ」
そう言って目を紅く輝かせる。
「そ〜んなに相手をしてほしいのであれば、してあげますよ…」
魔力が集中し、高熱が生じる。陽炎が生まれ、ジョーカーの顔が歪む。
「今度は手加減抜きで放ちますからネ……消し炭一つ残りませんよ!!?」
叫び声と同時に目の輝きが増す。
収束させた魔力が大気に火を点ける。
発生した火球は魔力の供給と大気との摩擦とで、見る間に巨大になっていく。
ジョーカーとほぼ同じ大きさまで成長し、火球は炎球へと変化する。
口の端を更に吊り上げ、ジョーカーはニヤリと笑う。
「では…さよならですよーーー!」
ジョーカーの叫びと同時に、巨大な炎球がキュルケ目掛けて放たれた
51 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:12:18 ID:atmdSzJl
迫り来る炎球。しかし、キュルケは避けようともしない。
ただ、静かに詠唱する。
(見せてあげるわ……この”微熱”のとっておきを)
詠唱が完成し、杖を突き出す。
杖の先端に小さな火の玉が発生する。
それを見てジョーカーは笑った。
「のほほほほほほ!そんな小さな火の玉で何をしようというんですか――って、え?」
目の前の光景にジョーカーは絶句した。
発生した直後は小さな火の玉は瞬く間に膨張し、ジョーカーが放った物よりも一回り巨大な炎球になる。
火、火、火。火の三乗。
ホーミング性能を排除し、破壊力と速度を追求した物。
それは、ただ純粋に進路上の物を焼き尽くす炎の塊。
『バーニングボール』と言うトライアングルスペル。キュルケの隠し玉だ。
キュルケはジョーカーに妖艶な笑みを浮かべてみせる。
「この一発は…熱いわよ?」
「え?」
瞬間、巨大な炎球は杖の先端を離れ、凄まじい速度で飛んだ。
「ええ?」
向かって来た炎球を容易く飲み込み、更に大きさと激しさを増す。
「えええぇぇぇーーーーー!!?」
避ける暇も無かった…。巨大な…巨大すぎる炎球はジョーカーを、あっと言う間に飲み込んだ。――そして、爆発。
「あぁぁぁーーーーーれぇぇぇーーーーー!!!?」
ジョーカーの悲痛な叫び声が響き渡る。
超特大の大爆発が、夜空を一瞬…夕焼けのように赤く染めた。
52 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:15:12 ID:atmdSzJl
大爆発を見届け、キュルケは微笑み――その場に崩れ落ちる。
その身体をタバサが受け止めた。
「無茶をしすぎ」
「…ふふ…そうね…、流石に疲れたわ…」
今の一発で精神力、体力共に底をついたキュルケは、そのまま意識を失う。
「キュルケ!?」
「ちょっと、しっかりしなさいよ!?」
ルイズとモンモランシーも慌ててキュルケの下へと駆け寄る。
モンモランシーは残った精神力を振り絞り、可能な限りの『治癒』を掛けた。
「これで……少しは…大丈夫……でしょ…」
モンモランシーもまた、限界が来たのだろう。キュルケ同様、意識を手放す。
ぶっ倒れた二人と、向こうで既に倒れている一人。
計三人の気絶者を見て、ジャンガはため息を吐く。
「ったく……ガキの分際で、無茶する奴等ばかりだゼ…」
その言葉にルイズが食って掛かる。
「何よ!?あんた…これで今までのを帳消しにとか、言う気じゃないでしょうね?」
ジャンガは静かにルイズの目を見つめる。
「な、何よ?」
「…別に、許しを請う気は無ェ。――あいつを殺したのは事実だからな」
「……やっぱり、本当なのね…」
「……ああ」
そこでお互い黙ってしまう。
その沈黙を破ったのは――
「くくく……まさか…こんな事になるとは…ね……」
三人は一斉に顔を向ける。
そこには、元の姿…元の大きさに戻ったジョーカーが立っていた。
全身ボロボロ、炎と爆発による火傷が全身に広がっており、じつに痛々しい。
半死半生なのは間違いなかった。
その様子に驚きながらも、ルイズは問いかける。
「あ、あんた……生きてたの?」
「まぁ…何とか…」
「…まだやる気?」
「のほほ…いえ、流石にもう動けませんよ…」
油断無く杖を構えるタバサと問いに、ジョーカーは座り込みながら苦しそうに言う。
「……ああ、まさか…まさか…、このワタクシが負けるなんて……コケルなんて……、
メゲルなんて……、挫けるなんて……、信じられませんよ……」
実に悔しそうに呟き、ジャンガを見る。
「ジャンガちゃん…」
「……」
「何で…ですか?」
「……」
「何で……助けたんですか…その方達を…?ワタクシの知るジャンガちゃんは……そんな事は――」
「テメェの知る毒の爪はもう死んだ……それだけだ」
「……のほ……のほほ……のほほほほほ」
苦しそうに…、
悲しそうに…、
悔しそうに…、
ジョーカーは笑った。
53 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:18:11 ID:atmdSzJl
「そうですか……ワタクシの知るジャンガちゃんは……とっくに毒されてたんですネ…。
この平凡極まりない……退屈極まりない……下らない事この上ない……日常に……」
――ドクンッ!
心臓が脈打つような音が響く。
――ドクンッ!
また音が響く。
見れば、ジョーカーの身体は真っ白く輝き、明滅を繰り返している。
――ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!
音が、明滅が、規則正しいリズムを保ったまま、そのテンポを速めていく。
「ジョーカー!?テメェ!?」
「ジャンガちゃん……ワタクシの中では……いつまでも、残虐非道の…毒の爪ですよ……」
――ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!
「のほほほほほほほほ!!!ジャンガちゃ〜〜〜〜〜ん!!!」
――ドクンッッッ!!!
一際大きい音が響き、白い閃光が辺りを照らし出す。
直後、巻き起こる大爆発。
爆風は周囲の土を巻き上げ、吹き飛ばす。
ルイズとタバサはキュルケとモンモランシーを抱えてうつ伏せになる。
ギーシュは飛び出したジャンガが、爆心地から更に引き離した。
爆風が収まった後には、巨大なクレーターが生まれていた。
ルイズもタバサも何も言えなかった。ジョーカーの余りにも壮絶な爆死。
敵とは言え……やはり、気持ちの良い物ではなかった。
ジャンガは……ただ静かに爆心地を見つめ続けていた。
54 :
毒の爪の使い魔:2009/01/01(木) 07:23:34 ID:atmdSzJl
以上で投下終了です。
まぁ、とりあえずは…タバサ説得とジョーカーVSキュルケの決着は書けました。
次は…屋敷の所までいけるかな?
ちなみにキュルケのオリジナル魔法は、何でも吸い込むピンク球さんのコピーの一つを基にしてます。
では、アディオース♪
何だかこうして見るとジョーカーが居なくなって寂しいものである
とりあえず何にせよ作者さん乙です
バーニングボール…ゴルドーすら素で通過するアレか火達磨かあたりか?
おつおつ
コルベール先生が死ぬのは滅多にないね
まあ二つ名が「不死」のコルベールなら心配ないか
悪党を活かすこともできず安っぽい勧善懲悪か
>>30 教授召還されたら色んな意味で凄いことになると思う
角にも目覚めたから人化シルフィに竜角付けさせるだろうし
おマチさんにツンデレ獣耳装着や
テファにダイブしたり……
"あの"ハプシエルに立ち向かい続ける位だしデルフ持ったら凄いレベルになりかねない
まあ問題は魔法使いで講師、格好も相まって周囲からの扱いをどうするかって感じか
……テファかジョゼフに召還されれば凄い活躍しそうだよな、言う事聞かないけど
(耳っ娘堪能的な意味で)
>>30 教授召還されたら色んな意味で凄いことになると思う
角にも目覚めたから人化シルフィに竜角付けさせるだろうし
おマチさんにツンデレ獣耳装着や
テファにダイブしたり……
"あの"ハプシエルに立ち向かい続ける位だしデルフ持ったら凄いレベルになりかねない
まあ問題は魔法使いで講師、格好も相まって周囲からの扱いをどうするかって感じか
……テファかジョゼフに召還されれば凄い活躍しそうだよな(耳っ娘堪能的な意味で)、言う事聞かないけど
今年は溝ノ口発の真っ赤なヒーローと戦ってる川崎支部の方々を丸ごと呼ぼう
小説のほうでも化けて出た事があると回想されてる。
毒の爪の人、明けおめ〜&投下乙であります!
むむむ? ここでジョーカー退場とは…ちょっと意外かも
イザベラのとこにいる『ムゥ』達がきえたりしなきゃいいのですが
タバサはやっぱりこの後ビダーシャルに捕まるのかな?
『イーヴァルディ』が誰になるのか楽しみです
さらばCV島田敏……あれ?CV古川登志男だっけ?
otu
67 :
61:2009/01/01(木) 11:16:28 ID:MXBofBrd
ルイズがバトルナイザー召喚という電波が来た…
>>68 ゴモラとかベムラーとかを自由自在に操れるようになるのか。
あとペダン星人と友情を育んだり。
キングジョーブラックVSエースキラーという格好良い対決があったり。
一番好きなウルトラ怪獣はバキシムさ!<聞いてねぇ
俺もバキシム好きだぜ!!
>69
バキシムは『超獣』だ!w
>>71 そうだった、すまんw。
となると一番好きな超獣はバキシムで、
一番好きな怪獣はベムスターということになるな!
…自分で言うのもなんだが結構ミーハー趣味だなぁ…w
虚無の使い手同士でレイオニクスバトルか!
ルイズ
ミクラス
ヒドラ
ゴルメデ
ジョゼフ
ジャンボキング
バードン
タイラント
テファ
ピグモン
リドリアス
ハネジロー
教皇
ゾグ
シラリー
ガタノゾーア
超獣か怪獣かどっちか怪しいけど、やたらぶさいくで強い改造ベムスターが俺は好きだ!
前スレ811.すまん、マイナーっていうか、
・ 2chのSSスレネタで
・ 何年も前の話
なので、誰も知らないと思ってたのよ。
仕方ないから、俺もたまにはギーシュが活躍する話でも考えてみるかなぁ
76 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 13:30:53 ID:QcTDOkz5
映画版スパイダーマンのヴェノムが召還される、「GIFT」っていう作品と
百鬼丸が召還される、「ぜろろ」
2作品を探してます。どっちも途中で更新止まってるんだけど、
もしかして、もう投下されてない・・・?
とりあえずsageを憶えることから始めよう
ごめんなさい
とりあえずsageてね
怪獣系統で素直に従ってくれそうなのはピグモンやミクラス等くらいしか思いつかないマン・セブン世代な俺
他に友好的な怪獣っているかな?
>>54 亀だが毒の爪の人投下乙
新年早々投下が見れて嬉しい
続きが楽しみ
>>80 ピクミン召喚に見えた
あいつらは引っこ抜いた相手に付いていくから従順といえるだろうけどサイズが…
ぶったたか〜れて〜♪蹴た〜おされ〜♪引き〜ずられ〜♪
で〜も〜わたした〜ちラデ○ンに従いつく〜しま〜す〜♪
という替え歌があったなー…。
>>83 ラデ○ンというと、ラデオン(グラボ)しか思いつかぬ。
>>75 俺もヤムチャ様のAAが貼りたかっただけだから、あんま気にしないでというかスマン。
ギーシュがギニューに見えてwktkしちまったぜ。
>>80 メトロン星人とか、メフィラス星人とかが友好的だよね!
あれは友好的じゃねーだろw
紳士的なのは認めるが
ペガッサ……(´;ω;`)
友好的な宇宙人といえばメイツ星人だろう?
>>80 コスモスなら設定上従う?っていうかそんなのが多かった気がする
ガイアのティグリスとかミズノエノリュウとかも捨てがたいが、
後者が召還されたら双方の世界にとって大問題になりそう
友好的な宇宙人…
ウルトラマンに決まっ
…ごめんなさい
ぶったたか〜れて〜♪蹴た〜おされ〜♪殺〜されて〜♪
で〜も〜わたした〜ちアルベドに従いつく〜しま〜す〜♪
百式哀歌
って替え歌なら知ってる
モンスター系は友好的な奴じゃないと召喚した時危険すぎるな
ポケモンなら可愛い方だがメガテンの悪魔なんてやばそうな奴多すぎ
>>93 ポケモン馬鹿にならんよ、インド象とか瞬殺だからなマジで
>>93 アニメ版のデビルチルドレンなら比較的大丈夫s・・・いやなんでもない
>>94 悪魔どころか人間ですら、地球を滅亡させるレベルの象を素手でぶっ殺す奴とかいるからなあ……
史上最強の生物ですね
…今一瞬塩漬けの原始人が召還される電波を受信したが、
登場人物みんなどっか喰われたり性的に喰われたりしそうで怖い…
メガテンの悪魔は既にいくらか召還されているから大丈夫かと。
でもルシファーとかはさすがにヤバいな。
悪魔は大物なら自力で帰れるからそう問題でも無い
制御する力が無ければ召喚者を殺したりするだけ
作品によっては創造神レベルや世界崩壊レベルの奴が
レベル50〜60くらいに何人も居たりするらしいからな>メガテン
魔神インドラ のLV変遷
真T:LV72 真U:LV27(!) if:LV57
異聞録:LV89 ペル罪:LV50 ペル罰:LV52
魔神U:LV56 NINE:LV44 デビチル:LV19(!)
インドラ象:白い、飛べる、牙も多め。乾季に便利?
>>99 それなら安心だね!
それじゃあ人修羅さんはどんだけなんだ、と思うわけですよ
クトゥルフや這い寄る混沌まで使役できるからなあ・・・メガテン。
いっとくが最強は悪魔じゃない。人間だ
>>105 やったこと無いから知らんがマジで?アザトースとかもいたりするのか?
ってか神話ごったまぜなの?
>>103 それずっと前からテスト空間にあるんだけど…
邪神クトゥルーは終盤ザコでわらわら出てくるゲームがあったりする
まあ元々クトゥルーは神なんかじゃねーしそれはどうでもいいわな
ニャルラトテップはラスボスとかスタンドとして登場するニャルラ
手下で使えたゲームは無かった気がするニャルラ
>>107 メガテンはもともと世界各国の神話や伝説の神や悪魔を使役できるのが売りだぞ。
俺が確認しただけでもクトゥルフならニャルラトテプ(ゲーム内呼称)がいたし、
真Uには中ボスとしてヤ○○ェが出てきたりしてた。
>>107 とりあえず唯一神すらブチ殺せるゲーム、
外国では販売できません。
>108
アニメ版とボンボン版のフェンリルの違いに吹くw
アニメではオカマで、ボンボン版ではCV大塚昭夫が似合う漢なのに…
ペルソナもクトゥルー色強かったな。
罪深い使い魔の続き見たいな…
さすがにアザトースはいないが、ペルソナとしてはハスターやシュブ・ニグラスやヨグソトースも出てる
クトゥルーやニャル(闇の跳梁者形態)はifのラストダンジョンで狩りまくったな
ほえぇ〜、いろんな意味ですげぇゲームだな。
クトゥルフが雑魚敵とかw
とりあえずヤ○○ェが敵としてでてきてしかも倒せるとか、制作してる会社が聖戦と称して襲われそうだw宗教に関して異常なほど無頓着な日本だから成せる業だな
でも海外で発売しようとして見合わされたのはナチスタブーに触れたペルソナ2罪だけだったりする
>>117 嘘かまことか
開発前恒例のお祓いに行けなかったスタッフが
交通事故で全治2,3ヶ月のケガをしたとか、
開発中は心霊現象が日常茶飯事とかいう噂があるからな。
オカマフェンリルだけはーーあのフェンリルだけはーーー
神話から創作まで大好きな存在だが、オカマだけは許容できなかった俺がいる。
ところで、だんだんここが何のスレだった分からなくなってきた。
>>117 ちなみにメガテンはクトゥルフの舌のデザインがやばい。
タイトルに使い魔、ゼロ、虚無、ルイズが入ってない作品て短編だとそれなりにあるけど長編だと少ないよな
流れを完全に無視してモンハンから
と考えたけどアレでキャラクターが固定されているのってアイルーぐらいか。
小説とかコミックとかは読んだこと無いからイマイチキャラクターつかみづらいし。
・・・・ってか一歩間違うとシリーズや愛用武器での派閥争い鵜が勃発しかねないかな。
某公式作品で愛用武器の使い手がどう見ても悪役な俺涙目。
グラビ召喚ならあったよ。
つまり、流れ的に人修羅の人の投下を期待するんですね。若しくはペルソナ0の人
マーラ様召喚した話書くと18禁扱いになるのかの考察
既に召還済み>マーラ様
モブでいいじゃない。ポケモンも多数召喚されているし。
………いっそあの時ルイズと一緒に使い魔召喚した新二年生全員モンハンのモンスター(草食獣・アイルーメラルー含む)なんてどう?
ルイズがグラビモスでキュルケがリオレウスでモンモランシーがガノトトスでギーシュがモノブロスで…
タバサはクシャルダオラがいいなぁ。
フルフル召喚したマルコルヌは涙目。
すまん変換ミスった。
×召還
○召喚
隠語でなく直接詳しく描写するとまずい。
でも伏字や詳しい形状描写を省けば大抵問題ない。
写真より絵のほうが、絵よりは文章のほうが警察が決める18禁制限がゆるいから。
あと、オナ用販売よりは芸術用販売のほうが、芸術用よりは学術用販売のほうが
同じものだとしても18禁制限がゆるい。
そういう法律の国です、日本は。
>>125 一応人、もしくは人の形したもの喚んでなんぼだと思っているんで。
ってかあれのモンスターはどれ喚んでも大当たりな気が。
ハズレは魚竜種ぐらいじゃ。
(大きい河川、湖沼が必要なガノス系、広大な砂地が必要なガレオス系、
活火山などの溶岩が豊富なところが必要なヴォルガノス)
むしろ、生徒が召喚したのがみんなクトゥルフ神話のやつら。
ディープ・ワンズみたいな亜人とそう変わらないやつらから、旧支配者クラスの奴等まで。
ハルケギニアどころか銀河二、三個は終わりそうだ。
亜人までにしないと召喚したその瞬間に終わるぞww
黒い人は普通にどっかに紛れてそうだが
>>124 何故か全然関係ないのに「竜の国のユタ」のジサマを思い出した
まぁ、あの作品にはヴィンダールヴ向きのユタや
特攻(ブッコミ)のフリードクンとかおあつらえ向きのキャラが揃ってるが
ふとホーンテッドジャンクションから会長召還とか考えたけど駄目だ……
教会関係者だからデルフ使えないわハルケ的に異教徒の上消滅・再生の力と神霊、悪魔の召還能力だとかで思いっきり粛正対象だ
何より絶対に憑いてくるで在ろう学校霊連盟のお陰でタバサがピンチ!!
てけてけはまだ良いとして生きた人体模型と骨格標本とか卒倒もんだからな〜〜
>>80 セブンのカプセル怪獣一式を召喚したら……どいつもいいところで負けそうだな。
セブンガーなら頼りになるか、でも制限時間一分とチャージに40時間ってのがな
あけましておめでとうございます。
他に予約の方がおられなければ、21:45から第19話の投下を行います。
クトゥルフなら神格呼ばなくてもズカウバに憑依するはずだったカーターとか
PC版CoCのジャック・ウォルターズとか
>>137 最終話以後の会長だと半ば無敵だからなぁ。力の行使に限界があるから無双とまではいかないが。
まだら色の空に、平らな正六角形の銀色のブロックを敷き詰めた異空間。
仮面の男が作り出した、千年王国。
ここでは全てが存在し、全てが無となる、因果律を超越した世界……。
「よく来た……ガイアセイバーズの諸君」
そこで男は、自分の敵たちと対峙する。
「お前……やはり、あの■■■■■■■■■なのか!?」
「そうだ、一条寺 烈……いや、ギャバン。君と共にバード星から地球に派遣された、銀河連邦警察科学アカデミーの科学者、■■■■■■■■■だ」
「その仮面を脱いで素顔を見せろ!」
「……私の素顔は見ない方がいい。もう私はお前が知る■■■■■■■■■ではない」
やはり『男の名前』以外―――他の人物の名前は、普通に聞こえる。
どうして男の名前だけが、聞き取れないのだろうか。
……相変わらずそんな自分の疑問には構わず、展開は進んでいく。
「さて、ガイアセイバーズの諸君……今までご苦労だった」
「何だと!?」
(……?)
部下や協力者だったはずの者たちがことごとく破られたと言うのに、『ご苦労だった』とはどういうことだろうか……?
「お前達が倒してきた者たちは、私と現世を繋ぐ因果律……。おかげで余計な手間が省けた。感謝するぞ」
「■■■■、それはどういう意味です!?」
「私の正体を知る者の始末が終わりつつある、ということだよ。それにより、私は■■■■という小さな器から解脱出来る」
ローブを身にまとった……女、なのだろうか? 男にも見えるが……ともかくその人物の問いに、男はサラリと答えた。
「さしもの私も、部下を自らの手で始末するのは辛いからな……。
それが私に残された、最後の人間性だと理解してくれ……」
「ま、まさか……それで因果律を操作せず、部下たちを復活させなかったというのですか……?」
「そうだ」
「そして……あなたはこの私をも……」
「そうだ。信じるものは己のみ。孤高の存在とはそうあるべきだ」
(ひどい……)
自分で彼らを勧誘しておいて、わざと見殺しにするなんて……とルイズは思った。
しかし、よくよく考えてみれば『勧誘された者たち』も、この仮面の男を倒すつもりだったようだし……。
つまり、どっちも悪人だ。
(自業自得……ってヤツなのかしら)
「私を相手にするか、彼らを相手にするか……楽な方を選べ」
「おのれ……人間の分際で!」
激昂したローブの人物が仮面の男に攻撃を行おうとするが、逆に妙な衝撃波のようなもので攻撃されて、弾き飛ばされてしまった。
「私に向かってきたか……正しい選択だ。どの道、お前を生かすつもりはないのだから……」
……さあ、どうせ死ぬのなら彼らと戦って死ね」
「う、うう……身体の自由が……利かない!? これが……奴の力……!」
「まだ、不完全だがな……」
そして、なかば自暴自棄になりながらも戦いに身を投じたローブの人物は、青い鎧を身にまとった戦士の横一閃の一撃によってその生涯を閉じる……。
>>112 メガテンもペルソナもロスやボンで売ってたぞ
邪魔者を排除した仮面の男は、目の前に立つ自らの複製人間の素性を語り始める。
「私の複製人間は……誕生後、ネオバディムからモビルスーツ・トーラスを奪って脱走し、行方不明となった……」
「そう……俺に埋め込まれたナノマシンは作動せず、その代償として俺は記憶を……■■■■の記憶を失った。
今にして思えば……記憶喪失が、俺の独自の人格を形成するのに役立ったのかも知れん……」
「だ、だけど、お前はイングラムなんだろう!? 俺たちの仲間……イングラム・プリスケンなんだろう!?」
「お前たちが知るイングラム・プリスケンは……■■■■■■■■■の記憶と、独自の人格を持つイレギュラーな複製人間……。不完全・不安定で哀れな生き物なのだよ……」
仮面の男は、自分の複製である青い髪の男を完全に見下していた。
いや、ある意味では嫌悪感すら抱いていたかも知れない。
「だが、まさか自分の複製人間が全ての因果律をまとめ上げ……。
私に対する対抗手段として、ガイアセイバーズを引き連れて来るのは予想外だったがね……」
その手腕や意志の強さを認めつつ、しかし存在を認めることはしない。
なぜなら、それを認めてしまったら……。
「デビルガンダム!? さっき破壊したはずなのに……」
「今の私でも、この程度の芸当は可能だ。そして……この容れ物には、すでに光の巨人の力が満たしてある……。
後は私が生体ユニットとなれば良い……」
まさに悪魔のような異形の金属の巨人へと同化する、仮面の男。
そして青い光のカタマリ―――たしかカラータイマーという名前だったか―――が現れ、その力の源となった。
「さあ、行くぞ! ガイアセイバーズ!!」
夢は、もはや佳境に入っている。
おそらくはこれが、最後の戦いとなるのだろう。
赤と青、左右非対称の身体の『人間ではないモノ』が、黒い翼を穿つ。
白と青の色をした鉄で作られた巨人が、両手から物凄いエネルギーを放つ。
赤い服を着た男が、その強化服の能力と超絶技巧をフルに活用して一撃をぶつける。
そして白銀の鎧をまとった、仮面の男のかつての友は……ほんの僅かな葛藤を見せつつも、光の剣を振り下ろす。
超神と化した仮面の男は、それらの攻撃にも構わず、因果律を操作して自身の再生を図った。
だが、それは彼が憧れた光の巨人たちの『捨て身のエネルギー放出』という所業によって、阻止されてしまう。
それによって、光の巨人は自分の姿の維持すら出来なくなったが……。
「おのれ……ウルトラ兄弟め! 再生が……再生が間に合わん!!
くっ、クロスゲート・パラダイム・システムが……作動しない! 奴らの力で私の力が中和されたとでも言うのか!?」
その引き換えとして、超神の力も相殺していった。
これで、敵と条件は五分である。
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「イングラム! 貴様が……貴様さえいなければ……!!」
もはや軽く錯乱すらして、複製だったはずの男に呪詛の言葉を吐く。
この男さえいなければ、自分の計画は成功するはずだった。
だが、この男を作ってしまったのは……他でもない仮面の男だ。
ならば仮面の男は、どこで―――何を、間違えてしまったのだろうか?
……やがて戦いは終わる。
仮面の男は敗北した。
それは、もしかしたら必然だったのかも知れない。
そして男の仮面は砕け、素顔があらわになるのだが……。
(……見えない……?)
ちょうど仮面の男の素顔の部分が、霞がかかったようにボヤけていて、よく見えなかった。
この男の素顔に関してはかなり気になっていたのに、これでは生殺しである。
「ふ……ふふふ……この顔は……まぎれもなく……私の顔だ……。
……私は……40年前……地球を脱出する時に……瀕死の重傷を負い、本来の顔を失った……。
この顔は……その後で与えられたもの……。
複製人間であるイングラムの顔と……この顔が同じなのは当然だ」
「イングラムの顔は……この顔を、コピーしたものなのか……」
「今思えば……■■■■■■■■■という人間は、40年前に死んだ……。
お前たちが知る……本当の■■■■は、すでに死んでいるのだ……。
だから私は……仮面で、偽りの素顔を隠した……」
それが与えられた顔を忌み嫌い、仮面を被った理由。
その意思は紛れもない自分自身であるのに、その顔は自分のものではないという矛盾に耐えられなかったのだ。
(でも、この顔と同じってことは……)
青い髪の男の顔は、よく見える。
この顔と、同じ顔ならば―――
ルイズの疑問に構わず、息も絶え絶えに内心を吐露した男は、やがて同じ顔を持つ複製―――いや、一人の地球人に対し、最期にして初
めて羨望の言葉を送った。
「私は……お前が……うらやましい。地球人に受け入れられた……お前がな……」
そうして、彼の物語は終わった。
「……………」
いつものように、目が覚める。
おそらくあの仮面の男の死をもって、一連の夢は終わりなのだろう。
だが……。
「……納得いかないわ」
そう、納得がいかない。
そりゃあ、男に敵対していた者たちから見れば、敵を倒せて良かっただろう。これで『悪』はいなくなったわけだから、めでたしめでた
し、だ。
……でも、それじゃあ倒された男はどうなるのか?
確かに、色んな酷いことをした。完全に悪人だ。弁明の余地もない。
「……でも、だからって……」
あの男は、あんな物凄い力を持つ存在たちに、よってたかって袋叩きにされるほど悪いことをしただろうか?
しかもこちらは、たった一人だというのに。
色々と策謀を巡らせて、世界の運命を狂わせた。間接的には、人もたくさん殺した。
だが、直接手を下したことは……全く無いとは言わないが……ほとんど無かったじゃないか。
「……………」
……スッキリしない気分を抱えたままで、ルイズの一日は始まったのだった。
瓦礫と死体の山と化した、ニューカッスル城。
かつては名城としてその名をハルケギニアに知られたその城は、もはやかつての栄華など見る影もない。
そんな残骸のような場所を歩きながら、ワルドは戦跡を検分していた。
金貨や宝石を漁っている傭兵の一団が視界の端に映るが、あのような下らない連中などはどうでもいい。
ワルドは礼拝堂だった場所まで進み、瓦礫を小型の竜巻で吹き飛ばす。
すぐに自分が殺したウェールズの亡骸が目に入ったが、それもどうでもいい。
そのまましばらく、『目当ての人物』の死体を探したが……どこにもそんなものは見つからず、代わりに人間一人が通れる程度の穴が見つかった。
「………」
穴からは、風が吹いている。ということは、この穴は外に通じているということだ。
「……やはり生きているか」
予想通りではあるが、出来ればあの連中には死んでいて欲しかった。
今は『ただの学生たちと、その使い魔』に過ぎないが、下手をすると自分の最大の障害になる可能性がある連中だ。
特にルイズの秘められた力が開花した場合、その使い魔の頭脳と組み合わされでもしたら―――
「想像も出来んな……」
自分の婚約者だったルイズが『虚無』の系統であるのは、ほぼ間違いがないと思うのだが、その『虚無』の魔法がどのようなものなのかは全く分からない。
『全く分からない』のであれば、対策の立てようもない。
仮に分かったとしても、あのガンダールヴはこちらの想像もつかないような応用方法を考えてくる可能性が高い。
「……………」
まあ、そんな正体不明のものに対して、いつまでも気を揉むのも馬鹿らしい。
取りあえず戻るか……と礼拝堂の残骸を後にしようとしたところで、そんなワルドに声がかけられた。
「子爵! ワルド君! 件の手紙は見つかったかね!?」
緑の装束に身を包んだ30代半ばほどの男、『レコン・キスタ』の総司令官―――今となってはアルビオンの新皇帝ことオリヴァー・クロムウェルである。
元は司教で聖職者のはずなのだが、どうにも信用できない空気を身にまとわせていた。
「申し訳ありません、閣下。どうやら手紙は穴からすり抜けたようです。私のミスです、何なりと罰をお与えください」
地面に膝をつき、深々と頭を下げるワルド。
……ハッキリ言ってワルドはこの男をほとんど信用していないのだが、現在の社会的地位や『得体の知れない力』を操ることなどから、ひとまず恭順の態度を示していた。
そんなワルドに対して、二カッと人懐こそうな笑みを浮かべてその肩を叩くクロムウェル。
「何を言うか、子爵! 君は目覚しい働きをしたのだよ! 敵軍の勇将を一人で討ち取るなど、並の人間に出来ることではない!!」
アルビオンの新皇帝は、笑いながら部下に賞賛の言葉を送る。
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戦隊モノだとリンチが日常支援
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そしてひとしきりワルドの肩を叩いた後、クロムウェルはウェールズの亡骸へと歩み寄った。
「ふむ、彼はずいぶんと余を嫌っていたが……こうしてみると不思議だ、妙な友情さえ感じるよ。ああ、そうだった。死んでしまえば誰もが『ともだち』だったな」
微笑みを浮かべて皇太子の死体を眺めるクロムウェル。
「ワルド君。余はこのウェールズ皇太子と、更に友情を深めたいと思っているのだが……異存はあるかね?」
「いいえ、閣下の決定に異論を挟めようはずもございません」
「うむ」
クロムウェルは頷くと、腰に差した杖を引き抜き、何やら判別のつかない言葉で詠唱を開始した。
そして詠唱が完了し、杖を振り下ろすと―――もう固く閉ざされていたはずのウェールズの瞳がパチリと開き、ゆっくりと身を起こす。
青白く、血の気が全く感じられなかった顔に、みるみる生気が……文字通りに『甦って』いく。
その様子を『当然』とばかりに眺めていたクロムウェルは、軽い口調でウェールズへと話しかけた。
「おはよう、皇太子」
「久し振りだね、大司教」
「失礼ながら、今では皇帝なのだ。親愛なる皇太子」
「そうだった。これは失礼した、閣下」
そのままクロムウェルはかつての仇敵と談笑を始め、にこやかにその仇敵だった男を自分の親衛隊に加える。
「よし。では早速で悪いのだが、会議と行こうか。
今後の政略や軍略、それと戦が終わったら頻繁に現れるようになった、例の怪物どもの対策も立てねばならんしな」
『例の怪物』というのは、先の戦の終盤から姿を見せている異形のモノのことである。
今のところ『怪物』は3種類ほど確認され、レコン・キスタの人間たちからはそれぞれ『骨』と『ツタ』と『鎧』という通称で呼ばれていた。
そしてウェールズと共に歩き出そうとしたところで、クロムウェルは思い出したように足を止め、ワルドに向かって喋り出す。
「ワルド君、失敗をそう気に病む必要はない。同盟は結ばれても構わぬ。……いずれにせよ、余の計画に変更はないのだから」
「は……」
ワルドは会釈した。
「レコン・キスタの―――いや、新たなるアルビオンの最初の標的はトリステインだ。あの王室には『始祖の祈祷書』が眠っておるからな。あの忌まわしきエルフどもから聖地を取り戻す際には、是非ともこの手に持っておきたいものだ」
言い終わって自分のセリフに満足げに頷くと、クロムウェルは礼拝堂跡から去っていく。
その姿が完全に見えなくなった時点で、ワルドは大きく息を吐いた。
クロムウェルが言うには、あれが『虚無』らしいのだが……そうだとすると、恐ろしい力だ。
つくづくルイズを手に入れられなかったことと、確実に始末が出来なかったことが悔やまれる。
「だが、俺は更なる力を手に入れられるかも知れぬ……」
予定より少し早いが、善は急げということで既に『偏在』で作った分身を各地に飛ばして、あの『紫の髪の男』に関する情報収集は開始している。
アルビオン近辺が怪しいと睨んでいるのだが、ボヤボヤしていると感付かれて逃げられる可能性もあるので、なるべく急がねばなるまい。
「さて……、それでは取り急ぎ義手を手に入れねばな……」
ワルドは無くなった左腕の辺りを撫でながら呟く。
『紫の髪の男』に接触したとして、その後どのような結果になるのかは分からないため、自分の状態を万全にしておくに越したことはないからだ。
……その『紫の髪の男』について僅かでも知識のある人間がワルドの思惑を知ったら、呆れるか同情するか失笑するか忠告するかしたのだろうが……。
生憎と、ハルケギニアにおいて『シュウ・シラカワ』の恐ろしさを知っている人間は、ほとんど存在していなかった。
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「『始祖の祈祷書』、ですか?」
ボロボロの古びた本を遠目に眺めながら、里帰りから帰ってきたミス・ロングビルが疑問の声を上げた。
「うむ、今しがた王宮から届けられたものなのじゃがなぁ」
そのページをめくりながら、オールド・オスマンは溜息を吐く。
「トリステイン王室に古くから伝わる……という触れ込みのくせに、300ページの内で文字が書かれている部分が1箇所もなくての」
「まがい物ではありませんの?」
「……何だか、私もそんな気がしてきた」
この『始祖の祈祷書』という本は、『1冊しか存在しない』はずなのにハルケギニア各地に存在しているという奇妙な本である。
始祖ブリミルが六千年前に読み上げた呪文が記されていると伝承にはあるのだが、何せ六千年も時間が経過しているだけあって偽物が数え切れないほど作られてしまい、今では『この本を集めるだけで図書館が出来る』とまで言われていた。
「しかし、まがい物にしても酷い出来じゃな」
いくら何でも、全く文字すら書かれていないとはどういうことか。
そんな感じで首をひねるオスマンだったが、ふとミス・ロングビルが物憂げに溜息をついていることに気付いた。
「おや、悩みごとかね、ミス・ロングビル?」
「……ええ、まあ。帰省した先で、少しありまして」
「ふむ、よければ私に話してみんか? 伊達に年を食ってるわけではないのでな、何かアドバイスが出来るやも知れん」
悩める女性の相談に乗る、というのは少し心惹かれるモノを感じる。
それに上手くすれば、これを機に『秘書と学院長のイケナイ火遊び』などに発展する可能性も……。
「もし解決が出来ずとも、話して楽になることもあるでな」
……内心のそんな下心を微塵も表に出さず、あくまで『頼れる学院長』を演じながらオスマンはミス・ロングビルに悩みの告白をうながす。
「はあ……。実は、男性のことで……」
オスマンは『よりによって男の相談かよ』、と内心で盛大に舌打ちした。
しかし自分から話を振った以上、途中で打ち切るわけにもいかない。
「続けたまえ」
「はい。実は私は、ここで貰った給料の一部を仕送りとして実家……と言いますか、とにかく帰省先に送っているのです」
「ほう」
それは初耳である。やはり人の相談は聞いてみるものだ。
「そこには、妹代わりの……血は繋がっていないのですが……年頃の娘がいまして」
「ふむ」
「で、先日戻ったらですね、なぜかその『妹代わりの子』の家に、変な男が居ついていたのです」
「はあ、それは……」
つまり、妹代わりの少女とやらが色気づき始めた……ということだろうか。
ミス・ロングビル本人の相談ではなかったことに若干安堵しつつ、オスマンは質問する。
「よく分からんが……その男はどのような男なのかね?」
「どういう、と言われましても……説明しにくい男ですから……」
うーん、と悩むミス・ロングビル。
そんな様子を見て、オスマンは質問の形式を変えることにした。
「その男とやらは、君の妹代わりの少女に対して……まあ、その、下心があるようだったかね?」
「……いえ、多分ないと思いますが」
「少女がその男を嫌がっている素振りは?」
「ありません。と言うか、間違いなくその男に対して……好意を抱いているみたいでした」
「男の性格が破綻している、とかは……」
「これでもかと言うほど徹底的に、冷静かつ理知的に見えました」
「では、顔が悪いのかね?」
「…………認めたくありませんが、女性が10人いれば8人か9人は『美形』と言うと思います」
「じゃあ、何が不満なのかね?」
話だけを聞くと、まさに非の打ち所のない人間である。
「いや、しかしですね……!」
ミス・ロングビルは頭を抱えて唸り出す。
まあ、保護者と言うのはそういうものかも知れんなぁ……などと思っていると、学院長室にノックの音が響いた。
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ミス・ロングビルが少し慌てながらもチラリとオスマンを見ると、オスマンは小さく頷いた。
そして彼女はドアへと歩いていき、扉を開ける。
扉の前には、オスマンが呼びつけたルイズが立っていた。
ルイズはミス・ロングビルによって部屋の中に通されると、オスマンから先日の任務についての労をねぎらわれる。
「来月にはゲルマニアで、無事に王女とゲルマニア皇帝の結婚式が執り行われることが決定した。君たちのおかげじゃ、胸を張りなさい」
にこやかに言うオスマンだったが、ルイズの心は晴れやかではない。
政治の道具として、結婚すら利用されてしまうアンリエッタのことを思うと、悲しくなってしまうのである。
オスマンは黙って頭を下げるルイズをしばらくじっと見つめていたが、やがてスッと『始祖の祈祷書』を差し出す。
「これは?」
「王室に伝わる、『始祖の祈祷書』じゃ」
「これが……ですか」
国宝であるはずの『始祖の祈祷書』がこんな所にあることに、ルイズは疑問を抱いたようだった。
「トリステイン王家の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばならんのじゃ。
選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔(ミコトノリ)を詠み上げる習わしになっておる」
「は、はあ」
「そして姫さまは、その巫女にミス・ヴァリエール、君を指名してきたのじゃよ」
「姫さまが……わたしを、ですか?」
半信半疑でオスマンの言葉を反芻するルイズ。
「その通りじゃ。巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠み上げる詔を考えねばならぬ」
「……って、詔ってわたしが考えるんですか!?」
てっきり『お決まりの文章』を読み上げるとばかり思っていたらしく、まさか自分で考えるとは思っていなかったようだ。
まあ、王族の結婚などそうそうあるものでもないので、知らないのも当然だが。
「もちろん、草案は宮中の連中が推敲するじゃろうが……伝統と言うのは面倒なもんじゃのう。だがな、姫はミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ。これは大変に名誉なことじゃぞ」
それを聞いて、ルイズはキッと顔を上げる。
幼なじみが、かつて共に過ごした自分を式の巫女役に選んでくれた……ということを再認識して、やる気を出したのだろう。
「分かりました。謹んで拝命いたします」
ミス・ロングビルの手を経由して、ルイズに『始祖の祈祷書』が手渡される。
そしてボロボロの本をしっかりと握り締めたまま、ルイズは学院長室を後にしたのであった。
「……結婚、か」
ルイズが去った後、ミス・ロングビルはポツリとそんなことを呟く。
そして、オールド・オスマンはそれを聞き逃すような真似はしなかった。
「時にミス・ロングビル」
「何でしょう?」
「君の年齢はいくつかね?」
「……………」
しばしの沈黙の後、ミス・ロングビルはゆっくりと口を開いた。
「…………23ですが、それが何か?」
「ほぉ〜、そうかそうか。姫さまは17で結婚するというのに、ミス・ロングビルは23で―――うおっ!?」
そこまで言いかけると、いきなり分厚い本が高速で飛来してきた。
長年のカンでそれを回避するオスマンだったが、見るとミス・ロングビルは『何かそれなりの大きさがある物体』を投げた姿勢のまま、ゾッとするほど冷ややかな視線でこちらを見ている。
「……ミ、ミス・ロングビル?」
「あら、申し訳ありません。少しばかり手がすべってしまいましたわ」
「す、少しって……」
「『少し』、です」
それなら、こっちだって少しばかりからかっただけなのに……と言おうとしたが、余計な災厄を招きそうなので黙ることにした。
(この話題をミス・ロングビルに振るのはやめておこう……)
教訓として、オスマンは学習する。
もちろん、後のフォローも忘れない。
「……ご、ごめんなさい」
「はい。それでは溜まっている仕事を、速やかに、手早く、迅速に消化してくださいね」
保護者支援
おマチさんの苦悩支援
一方、ユーゼスは研究室の中でギーシュと話していた。
「……前から聞こうと思っていたのだが」
「何だね、ユーゼス?」
今日届いた手紙を読み上げながら、金髪の少年に質問を投げかけるユーゼス。
「お前はなぜ、ことあるごとに私の研究室に入りびたるのだ?」
「駄目かい?」
「駄目ということはないが……」
アルビオンから戻って以降(と言ってもまだ数日しか経過していないが)、ギーシュは毎日のようにユーゼスの研究室に顔を出していた。
最初は『女子寮に忍び込む口実がわりか』とも思ったが、頻繁に『ワルキューレを使った攻撃方法』などを質問してくることから見るに、単純にそういうわけでもないらしい。
「なら良いじゃないか」
まあ、特に騒いで迷惑というわけでもないので、取りあえず放置しておく。
そして手紙を机の脇に置くと、クロスゲート・パラダイム・システムを起動させて『覗き見』を開始する。
『覗き見』と言っても、その対象は個人のプライバシーや組織の暗部などではなく、並行世界である。
『シュウ・シラカワの世界』を見て以来、『他の世界』にも興味が湧いてきたのだ。
差し当たって、手始めに『自分のいた世界と位相がごく近い世界』を見てみるのだが……。
(……イングラムが女だった場合の世界、か)
何を思って自分の複製を女にしたのか、『その世界の自分』の思考があまり理解できないユーゼスだったが、まあそのような世界もあるだろう。
しかし、その性別が女であること、名前がイングラムではなく『ヴィレッタ・プリスケン』であること以外は全くと言っていいほど差異が見当たらない。
(何の意味があるのだろう……)
そう思って『ヴィレッタ・プリスケン』を辿ってみると、別の並行世界では自分の複製であるイングラムの、更に複製として存在していることが分かった。シュウ・シラカワのいた世界にも、そうして存在している。
彼女はイングラムの代役のような存在としてR-GUNに搭乗し、SRXチームの隊長に収まっているようだった。
(ふむ……)
深く追求するつもりはないが、少なくとも無意味な存在ではないようだ。
やはり色々あるものだな、と並行世界について一人で納得するユーゼス。
「……む?」
ふと意識を現実のハルケギニアに戻すと、ギーシュが自分のレポートを興味深げに見ている光景が目に入った。
「何をやっている、ミスタ・グラモン」
「ああ、いや、何かの参考になるかと思って、君の論文を見てたんだが……いやぁ、難しい単語が並べ立てられてて、僕にはサッパリだな」
「学生のレベルで、いきなり第5稿などを見るからだ」
1〜2稿ならば『勉強熱心な学生』程度でも読み解けるだろうが、5稿にもなると専門的になり過ぎており、完全に専門的な『研究者』に対してのレベルになっている。
と言うか、下手に自分のレポートなどを読むよりは、普通の魔法の学術書でも読んだ方が余程ためになるだろう。
その旨をギーシュに伝えると、彼はうーむ、とアゴに手を当てて首をひねる。
「そういうものか……。しかし、よくここまで複雑な論文を、これだけ大量に書けるものだね。何日も徹夜しないといけないんじゃないかい?」
「ああ、実際にしているぞ」
ユーゼスの言葉を聞いて、ギーシュは驚く。
「その割には、君は……何だ、えらく健康そうに見えるが」
「ミス・モンモランシから『眠気覚まし用』のポーションや、『体力回復用』のポーションを貰っているからな」
そうなのか、と一瞬納得しかけたギーシュだったが、何だか聞き捨てならない単語が先ほどの会話に含まれているコトに気付いた。
「ちょ、ちょーっと、その辺りを詳しく説明してくれないかなー、ユーゼス・ゴッツォ君?」
「詳しく、と言われてもな……」
自分のアイディアを元に、よく図書館で一緒になるモンモランシーに『眠気覚まし用』だとか『集中用』などのポーションを作ってもらっているだけなのだが。
ちなみにそのアイディア自体は、メトロン星人がやっていたことの応用である。
それを説明したところ(無論、メトロン星人うんぬんは伏せてある)、ギーシュはまだ納得がいっていないようだった。
「僕が聞きたいのは、そういうコトじゃなくてねー? どうして君が、モンモランシーと交流があるのかってコトなんだよねー?」
「口調がおかしいぞ、ミスタ・グラモン」
そしてユーゼスは、なるべく理解しやすいように自分とモンモランシーの関係を語った。約5分ほどの時間を要した。
一通りの説明を受けたギーシュは、額を右手で強く抑えながらユーゼスに確認する。
「…………うん、ちょ、ちょっと、ちょっと待ってくれ、ユーゼス。……いいかい、情報を整理しようじゃないか」
「? 分かった」
「まず、君はよく図書館に行く。これは良いね?」
「ああ」
「そして、モンモランシーもよく図書館に行く」
「そうだ」
「つまり君とモンモランシーが図書館でよく会うのは、ある意味で必然だ」
「うむ」
「よし、ここまでは良い。……で、君は水魔法や秘薬の関連で、図書館の蔵書を調べている時に、モンモランシーと出会った」
「ああ」
「で、それが元になって、以降モンモランシーと君は、図書館でよく会話をするようになったわけだ」
「『よく』と言うほどではないが」
「そうかい。それで、君から色々と話を聞いて、モンモランシーは香水の試作を行っており―――」
「………」
「―――その香水の試作品を、君に渡して意見を聞いている、と」
「最初は金を受け取ろうかと思ったのだが、双方にとって得になるだろうから現物支給で、ということになってな。いわゆるギブアンドテイクというやつだ。互いの知識の交換にもなるしな」
「ふむ……。ここまでの話を総合すると、『君』と『モンモランシー』は『よく図書館で会って』いて、『彼女の香水』を『君が受け取り』、更に『お互いの知識について理解を深めて』いる―――という結論に達するわけだが、これについて何か訂正はあるかね?」
「無い」
「なるほど……」
うんうん、とギーシュは頷いて、
「……って、ふざけるなぁぁぁあアアアアアアアアアア!!!」
「何だ、いきなり」
猛烈な咆哮を放った。
「こ、ここここ、ここ恋人の僕をさしおいて! 密会して! プレゼントと言葉を交換し! アレコレ理解を深めているだとぉォオオオオオオオ!!?」
「かなり曲解しているな」
それにモンモランシーからはよくギーシュについての愚痴も聞かされているが、彼女の口ぶりでは二人は別れたように言っていた。
どうも二人の間では、認識にズレがあるらしい。
「け、ケケケケ決闘だぁぁァァアアアアアアアア!!!」
全身と顔の筋肉全体をガクガクと震わせ、バラの造花を取り出しながら叫ぶギーシュ。
ユーゼスはすかさず『リラックス用(試作)』と書かれた小ビンを手に取り、フタを開けてギーシュの鼻先に突きつける。
「うっ……っ」
するとギーシュはビクンと痙攣し、やがて無表情になっていった。
「……まあー、いっかー」
「ほう」
どうやら効果はあったようだ。
「もうー、モンモランシーのこともー、他の女の子のこともー、どうでもー、いいやー」
「……む?」
何か様子がおかしい。
「僕自身のこともー、トリステインのこともー、生きてることもー、どうでもー、いいやー」
「……………」
そのままバタン、と倒れるギーシュ。どうやら効き過ぎたらしい。
「……『問題あり、リラックス用の成分を半分以下にするべき』……と」
まあ、実験に失敗はつきものである。
試験支援
まさかモンモランシーとフラグを立ててやがったとは支援
薬漬けユーゼス支援
そして必要以上にリラックスしまくりのギーシュを横目に、また並行世界を覗くか、本を読むか、レポートを書くかしようとしていると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。
わざわざノックをしてまで入ってくるような人間など、ハルケギニアにおけるユーゼスの知り合いには片手で数えるほどしかいなかったが、ともあれ来客を無下に断るのも何なので迎え入れることにする。
「鍵はかかっていない、入れ」
一体誰だ、と思いながらボンヤリとドアを見ていると……、
「ふぅん、平民にしては異例の扱いじゃないの、この研究室」
ドアが開いて、ついこの前にユーゼスが会ったばかりのスレンダーな体系の女性が入って来た。
「……ミス・ヴァリエール?」
金色の長い髪に、眼鏡をかけているため元々キツい瞳がもっとキツく見えるルイズの姉、エレオノールである。
「さあ、出発するわよ」
「出発?」
いきなり放たれた言葉を、思わずそのまま返してしまうユーゼス。
エレオノールは若干イライラした様子で、ユーゼスに確認を取り始めた。
「私があなたのレポートの添削と一緒に送った手紙は読んだわね?」
「これのことか?」
机の脇に置いていた手紙を手に取る。
それには、大まかにこんなことが書かれていた。
・王宮から、宝物やマジックアイテムの探索の依頼が来た。
・アカデミー的には本来なら断る類のものなのだが、自分の権限で半ば強引に受けることにした。
・それにあなたもついて来なさい。拒否は認めないわ。
・近い内にそっちに直接行くから、早いうちに仕度をしておきなさい。
「……『近い内』すぎるだろう」
「ウソは書いてないでしょう」
それにしても、手紙が着いたその日にやって来る……などというのは急すぎる気がする。
アルビオンとの戦争が迫っているこの時期にトレジャーハントなどを行う理由について、大体の予想はつくのだが……。
(……『この時期』だから急なのか?)
おそらく、昔の財宝なりマジックアイテムなりを発掘・発見して、それを資金源や武器や兵器にでもする腹積もりなのだろう。
そう都合よく宝が見つかるとも思えないが、何もしないよりはマシ……と言った所だろうか。
アカデミーが断ろうとするわけである。
「まあ、さすがに探索メンバーが私とあなただけという訳にもいかないから、他に学院の生徒を適当に連れて行っても良いわよ」
「………?」
疑問符を浮かべるユーゼス。
『学院の生徒を連れて行く』というのは、別に構わない。
だが、先程エレオノールの口から出たセリフの前半の部分に、何か不穏なものがあったような気がするのだが……。
「……待て、ミス・ヴァリエール。他にアカデミーの研究員や、護衛の人間はいないのか?」
「いるわけないでしょう、これを受けたのは私の独断に近いんだから」
「……………」
「仕度をしてないのなら、とっとと仕度をなさい。他のメンバーは……取りあえずコイツにしておきましょう」
「まあー、どうでもー、いいやー」
エレオノールはユーゼスに命令しつつ、生きながら死んでいるような状態のギーシュを指差す。そして『どうでもいいなら、別について来ても構わないわね』と形ばかりの念押しをした。
「……………」
普段は感情を顔に出さないユーゼスだったが、この時ばかりは微妙に嫌そうな顔をする。
(そう言えば、御主人様の許可は取ったのだろうか……)
忘れがちだが、自分はあくまでルイズの使い魔であって、決してエレオノールの従者でも助手でもない。
ならば、そもそもルイズが首を縦に振らなければ……と思って、その旨を質問してみると、
「は? そんなもの、これから許可させるわよ」
「…………そうか」
『許可を取る』ではなく『許可させる』と来た。
記憶を掘り返してみると、ルイズはこの姉に全く頭が上がっていなかったことを思い出す。
もはや決定事項か……と、ユーゼスはなかば諦めに近い心境に至るのであった。
以上です。
最初はウェールズをアインスト経由で再生しようか、とも思ったんですが、それだと話がこじれる上にウェールズ版アルフィミィまで製作しなくちゃならなくなるので、取りあえず止めときました。
そして本格的に話に絡み始めたエレオノールを、これからどう扱ったものか……実はまだ考え中だったりw
それでは皆様、支援ありがとうございました。
>>151 私が言うのも何ですが、スパヒロはストーリーはそれなりですけど『ゲーム』として見るとけっこう難がありますので、注意した方がいいですよ。
そして本命登場支援
ラスボス氏乙
喚ばれた面々で最強クラスの一角でありながら色々異色なキャラですな。
これまでまともに戦ってなかったり、変なフラグ立てたりw
169 :
151:2009/01/01(木) 22:15:24 ID:DvGruIyq
同時期にサガフロ2とスパヒロをプレイしたのですが、スパヒロは開始1時間で止まったけど、サガフロ2は30時間以上プレイして2週目に突入しちゃいましたw。
あれ?オレ何やってるんだろう?
乙です
平民どころか使い魔なのにやたら快適な生活してるなw
ラスボス乙ー
そしてことよろー
乙
ギーシュには女難が似合うw
個室が与えられ金にも困らないで悠々自適とか理想的な余生だ
ラスボス氏乙です。
そして、あけましておめでとうございます。
今年もラスボスだった使い魔を楽しみにさせていただきます。
ラスボスの人乙
チート級キャラなのに妙な立ち位置が良いですなw
そしてワルドがゆっくりと破滅の道へ・・・(ノ∀`)
フラグたてまくりだな乙!
しぬがよい そしてさようならだ
ワルドさらば・・・・。
>>150 ウルトラマンリンチことハヌマーンの悪口はそこまでだ!
ラスボスの人乙。
しかしワルド……アルビオンオワタなくらいにオーバーキルの攻撃喰らうか、
ヒーロー戦記のマ・クベみたいな目に遭いそうなフラグを着々と立ててやがんなw。
ワルド死亡へのカウントダウンを着々と進めてますね
運が良ければ
>>179氏の言うように生きてられるから頑張れ……ただし廃人だけどな
ラスボスの人乙
183 :
魔法陣ゼロ:2009/01/01(木) 23:27:18 ID:pzQZyUNv
あけましておめでとうございます。
アドバーグ・エルドル氏の誕生日を祝いつつ、7話を投下したいと思います。
10分後を予定です。
7 決闘
「しっかし、広いなあ」
学院の門に立つ衛兵からトイレに関する情報を手に入れたあと、二人は本塔の周りを歩いていた。
そびえ立つ塔を見上げたニケは、首が痛くなった。
一部の地域で『学校』というものを見た事はあった。だが、ここまでゴツい物ではなかった。
中央にそびえる巨大な本塔を5本の塔が囲み、それぞれの塔が渡り廊下と城壁で接続されている。
このトリステイン魔法学院は、ちょっとした城のような規模だった。
「ねえ、あっちに人がたくさん集まってるよ」
「ホントだ。なんだろ?」
塀と渡り廊下に囲まれた広場には、多くの生徒達が集まって騒いでいた。
何かをとり囲んでいるようだが、人垣に阻まれて全く見えない。
近くにいた男子生徒に、ククリが尋ねた。
「ねえ、ここで何か始まるの?」
「青銅のギーシュと平民が決闘するらしいぞ。その平民が、ギーシュを侮辱したとかなんとか。
ところで、見かけない顔だね。誰かの妹さんかな?」
「ありがとー。それから、違うよ」
前をスタスタと歩くニケに追いつこうと、ククリは走りながら答えた。
ニケが人ごみを掻き分け、ククリがすぐ後ろをついていく。
なんとか一番前までたどり着くと、輪の中心には一人の男が立っていた。
その男はすぐこちらに気付き、急に表情を変えた。
「遅いぞ、平民! このギーシュ・ド・グラモンを待たせるとは、いい度胸だ!」
「あ……やばっ」
ニケは引き返そうとしたが、人々に押し返されて出れない。
「おいおい、ギーシュと決闘するんじゃなかったのか? もう待ちくたびれたんだ、早く始めてくれよ」
「け、決闘? ニケくんが!?」
「ええ!? 無礼な平民って、あんたのことだったの!?」
驚いて自分を見つめるククリとルイズに、ニケは返事をできなかった。
(ま、まずい……すっかり忘れてた)
「さあ来い、決闘だ!」
ギーシュがバラの花を振ると、花びらが一枚飛び出した。
地面に舞い落ちるその瞬間、花びらは光を放つ。そして、甲冑を装備した人形に変化した。
人形はニケに向かって一歩前進し、拳を構える。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?
青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
「ちっ、仕方ないなあ」
ニケは、広場の中央に向かって歩き出した。
ワルキューレは女の姿をしてはいるが、ニケよりもかなり背が高く、重さもありそうだ。
(こいつに殴られたら痛そうだな……)
「行け、ワルキューレ!」
ワルキューレが、ニケに向かって突進してきた。
しかし、スピードは一般人程度。
「よっと」
ワルキューレのパンチを、ひらりとかわす。
さらに二度三度と攻撃してきたが、ニケに避けられない攻撃ではなかった。
「ふん、随分とすばしっこいね」
ギーシュが再び杖を振る。ニケの背後に、ワルキューレがもう一体出てきた。
二体のワルキューレが、ニケを前後から襲った。ニケは、後ろに大きくジャンプして避ける。
着地すると、二体目のワルキューレのすぐ後ろだった。
「チャンス!」
ニケは腰の短剣を抜き、目の前の背中に突き立てる。
観客から歓声がわいた。
〜〜〜
「すごいじゃない。あんなに深く刺さって――」
「刺さってない」
ニケの意外な強さに関心したキュルケを、隣に立つ小柄な少女が否定した。
「あら、本当ね」
それを聞いたルイズが、驚いて叫ぶ。
「ど、どうゆうこと!? だって、ニケの剣が――」
「刺さっているように見えるだけ」
「え?」
「ゼロのルイズ、あなたは視力もゼロなの? 剣をよく見なさい」
「えーと……あっ!」
確かに、刺さってはいなかった。
>>137 なら慎吾君を・・・と思ったけど、能力が松下ともろ被りだったな。
と言いつつ尻から支援。
〜〜〜
「しっ、しまった! 剣が折れてたんだった!」
昨日戦ったのは、やたらと固いモンスターだった。
それを知らず攻撃した時に、剣が折れてしまっていた。
折れた剣がワルキューレの背中に当たる様子は、遠目には剣が刺さっているようにも見えた。
「なんだい、その剣は? 僕をバカにしているのか?」
二体のワルキューレが、突進して来た。さっきよりも速い。
「ちょ、ちょっと待て! タンマ!」
しかし、待てと言われて待つワルキューレではない。
なんとかギリギリで攻撃をかわしたが、そろそろ疲れてきた。
「そ、そうだ! 光魔法『キラキラ』!」
光魔法の最高峰『キラキラ』は、勇者のみが使える、自然界のあらゆるものから剣を取り出す魔法だ。
自分自身からエネルギーを取り出せば、自分をかたどった光り輝く剣が生み出される。
ニケは、右手に意識を集中させた。
ニケの姿をした剣が、右手に現れ――
「なんじゃこりゃあ!?」
なんかムキムキとした剣が、右手に現れた。
ギラギラと黄金色に輝き、筋肉を見せつけるようなポーズをしている。
「なんだそれは!? 何かのマジックアイテムか?」
「すごい、キラちゃんがレベルアップしてる! でも、あんまりかわいくない……」
「なんだか分からないけど……行け!」
「ヤーカリカリ!」
『自分の剣』は凄まじい速度で伸び、ワルキューレに向かって突進していく。
以前より遥かに強烈な反動に、ニケは驚いた。
本来なら、体が後ろに倒れてしまうほどの反動だ。しかし、不思議と余裕で耐えられた。
(よし、この勢いなら倒せるかも!)
剣の頭がワルキューレの腹に突っ込み、ワルキューレが吹っ飛んだ。
胴体がグシャリと潰れて折れ曲がり、もはや使い物にはならなさそうだ。
「くっ! なかなかやるな……。
この僕も、ちょっと本気を出す必要がありそうだ」
ギーシュは、さらに5体のワルキューレを作り出した。今度のワルキューレは、それぞれの手に武器を持っている。
それに対して、ニケは――
「……! ……!」
頭を抱えて、うずくまっている。
「ん? どうしたんだ? 僕の圧倒的な実力を見て、怖くなったのかな?」
(う〜〜〜! 痛い痛い、頭が痛い!)
『自分の剣』の攻撃が当たった瞬間、ニケの頭に激痛が走っていた。
あまりの痛さに、動けないほどだ。
「降参するかい? 今謝るなら、君の勇気に免じて、命だけは助けてやろう。
このまま続けてもかまわない。僕の杖を奪うか、降参させたら君の勝ちだ。
だが、そんな事が平民にできるわけがないだろう?」
ワルキューレ達が武器を構える。それを見たニケは、この戦いに疑問を持った。
(7対1とか、反則なんじゃ……奴は中ボスじゃなくてザコ敵なのか?
――え? あれ?)
ふと、ニケは気付いた。今自分はうずくまっている。
にもかかわらず、ワルキューレ達が構える様子が『見えて』いる。しかも、こちらに向かってはいない。
ワルキューレの向く先には、うずくまる自分自身が見えた。
『自分の剣』の長い胴体が、こちらまで伸びている。
(こ、これって……『自分の剣』の視界なのか!?)
視覚だけではない。ワルキューレが動くたびにカチャカチャと出す音もはっきりと聞こえた。
手を動かそうと思うと、その通りに動く。指の一本一本まで自在に動かせる。
(あのバラの花が、杖なんだろうな。じゃあ――)
「あと10秒だけ待ってやる。それまでに降参しなければ、一斉に攻撃するぞ!」
ギーシュはこちらに向かって杖を向けたポーズを取ったり、観客の女の子に向かってウインクしたりしている。周りを警戒している様子は一切無い。
『自分の剣』を、ゆっくりと伸ばしてみた。
「10、9、8、――」
地面を這わせて、ギーシュの足元までたどりついた。まだギーシュは気付いていない。
光っているせいでかなり目立つのだが、ギーシュは自分に酔っているようだ。
「ねえタバサ、あれって何なのよ?」
「分からない」
ギーシュの背後で、剣を上に伸ばす。杖を持つ手の、すぐ後ろまで来た。
周囲から飛んでくるヤジが、謎の物体を怪しむ低い声に変化する。それでもギーシュは気付かない。
「3、2、1――」
ガシッ!
『自分の剣』の小さな手が、ギーシュの杖を掴んだ。
すぐに剣をシュルシュルと縮め、杖を手元に引き寄せる。
ワルキューレ達は力を失い、その場に崩れ落ちた。
「な、何をした!?」
「見ての通り、杖を奪ったんだよ。
これでオレの勝ち、だろ?」
「ひ、卑怯だぞ! 怖がるふりをして、油断させた隙に杖を奪うなんて……!」
「お前が勝手にカウントなんかしてるからいけないんだ」
「で、でも――」
「ギーシュ、往生際が悪いわよ? 負けを認めなさい」
「そ、そうよ! あんたの負け!」
「うぅ……わかったよ、キュルケにルイズ。僕の負けだ」
野次馬達がどよめく。ドットメイジとはいえ、貴族が平民に負けたのだ。
あのマジックアイテムのおかげだ、いやギーシュがバカなだけだ、と議論している者もいる。
「ニケくんっ!」
人垣の中からククリが飛び出した。
その後から、ルイズも歩いてくる。
「大丈夫? ケガしてない!?」
「ああ、痛かっただけでケガはしてないよ」
「あんた、本当に強かったのね……。
で、何なのよあれは? さっきの閉じ込められたのと合わせて、ちゃんと話してもらうわよ」
ルイズに連れられ、ニケとククリは立ち去った。
それを眺める、キュルケと小柄な少女。
「光を放ち、自在に伸びて手先も動く人形……聞いた事ないわね。
手の中に隠し持っていたのかしら。タバサ、どう?」
「違う。初めは持っていなかった」
「杖も呪文も使ってないから、ゴーレムじゃないのよね」
「彼は『光魔法』と言っていた」
「もしかして、先住魔法……?
ククリも変な魔法を使ってたし、あの二人は気になるわね」
「気になる」
「あら、あなたも? じゃあ、さっそく――」
以上、終了です。
もっとスラスラと文を書けるようになりたい…
乙といいたいが、地の剣を先に試さなかったのが疑問だった
ニケは手抜きの知恵があるというイメージなもんでな
魔法陣の人、乙。
>>181 スパヒロにはシャイダーも神官ポーも出てたよ。
さて、背徳の炎ソル・バッドガイでも召喚する話でも書くか
でも絶対易々とキスされないよな、奴
乙
何時の日か親父の剣が出て来るとしんじてry
>>186 今思ったんだけどルイズが遥都君召還→召還に対する駄目だしと契約拒否、
同じ"学校"のよしみで何人かが交代で使い魔やるって手も有るんだよな
鏡子ちゃんか花子さんさえ召還してしまえば鏡orトイレで行き来出来るんだし
見て見たいドリームマッチ
ギーシュVSはるお君&ジンコツ君
オマチさんゴーレムVS踊る巨人(ハイヒールVer)
ワルドVS赤マント仮面
キスしにくいならまだいい…
メ・ギノガ・デとかキス出来ない奴もいるし
グルグルの人、乙
さすが職業盗賊の勇者
>>191 オッポレ、オッポレやらないと出せない剣は決闘のときは不便だろう。
地と植物の精霊の加護もいるし、水、火はそこに現物がなければ作れない。
風は気まぐれであてにならんし、所詮は暑苦しいおっさんたちの武器。
そう言えば数年後を描いた読み切りの外伝だったかで、噴水の水からチャポッと水の剣を作ってたな。
ラスボスの人乙です。
何故か「おマチさんは心配性」という言葉が浮かんだw
ワルド…地雷原に着々と向かってるなぁwとりあえずオーバーキルor廃人は確定だなww
次回に超wktk。
グルグルの人乙です。
次回にwktk。
グルグルの人乙
ただ火や水などの精霊が関係する魔法剣はハルゲニアの精霊の許可が必要かも
水の精霊イベントが重要になるのかそれともギップルの大群がアルビオン大陸を空中に浮かべてるのか?
>>199 なあに、それは作者が好きに決めればいいさ
>>199 したから見上げたら一面褌って光景は勘弁して欲しいな
グレンラガンから結婚式直後のシモン召喚とか見たい。
マント羽織ってブータを肩に乗せたシモンをメイジと勘違いしたり、ルイズにお前の魔法で天を衝け!と言ったり。
小説によるとあのあとシモンは無償で井戸とか穴掘りばっかしてたみたいだな。
というか半分世捨て人みたいになってるからまともに動いてくれるかどうか。
204 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 02:02:39 ID:s2ShdXtB
>>193 そこは召喚時に気絶でOKな気もする。
アクコア+ストーリーのBエンド後スタートからだとやりやすそう。
Aの途中からでも何とかなりそう
ただ目覚めてからが危険。
まあソルなら意外と面倒くさがりながらも使い魔してそう
ただし聖騎士団ソルなら焼け野原になる。
ミスッた。Sageる
ラスボスの人乙!
なまけ怪獣 ヤメタランスネタだったかな?
Aの人あたりでも活躍して欲しい怪獣だが
>>202 螺旋力以外は穴掘りしか能がないって作中で言われてるんだよなあ>シモン
あの世界では大天才だけど
ルイズ的には天才型と努力型のどっちが好みなんだろ?
サイト自体が才能がある訳でも努力が好きな訳でも実戦で鍛えまくる訳でもないからイマイチ分からん
結婚式後ならあまり無茶なことも言わなくなってると思う
自分が結局穴掘りシモンであることを自覚して
螺旋力を持つ者としての使命を次の世代に託した後本来の自分に戻っていったわけだし
>>194 極論してしまうと赤マント一人で全部片付い(ry
うお、しばらく来てなかったら、いつの間にか200スレ越えてる
200スレ越えおめ
赤マントといわれると、葛葉ライドウに出てきた赤マントを思い出してしまう…
素で強いけど凄い扱いにくいんだよなぁw。
俺はぬ〜べ〜の赤マントを思い出しちまうよ。
……いまだに軽くトラウマだぜ…
>>207 実際、ルイズが望んでいるような完璧な使い魔を召喚したら、そこが気に入らなくて当たり散らすと思うね。
どちらかというなら、努力型の方が「まし」でしょう。
ルイズの抱える問題を取り除いていくぐらいまで物語を進めたら、どちらでも構わなくなるでしょうけど。
強く優れている使い魔の影響でルイズが成長する話はよくあるが
弱くてどうしようもない使い魔を召喚してしまったばっかりに
逆にしっかりしなきゃと一念発起して逞しくなり
使い魔を叱咤激励するルイズなんてのも見てみたい
ルイズに叩きなおして欲しいヘタレ男っていうと誰だろ
カオスヘッドやNHKへようこそのヒキコモリキャラか
のび太やこち亀の電極ガキのような道具頼りか
あるいは、日野ちゃま
>>202 どっちかというとその時点のニア召喚が見たいな。
私はルイズ・フランソワーズ・ド・ヴァリエール。
私は今、自分が召喚してしまったものに対して、困惑し、後悔している。
ああ、ミミズだってオケラだってアメンボだって良かったのに。
なぜこんな事に
たっぷりのフリルとふわふわのレース。瀟洒な純白のドレス。
私が召喚したのは何処からどう見ても 花嫁 だった。
ああ、ヴァリエール家のこの私が「花嫁泥棒」になってしまうなんて!
ご先祖様になんといってお詫びすれば。
呼んだ使い魔は
望んだ通りに強くて優れてて美しかった。が、
どうしようもないくらい変態だった
シェゾ「お前(の魔力)が欲しいぃ!!!」
ルイズ「変態!!変態!!ド変態ぃぃ!!」
アルル「シェゾったら節操無いなー…とうとうあんな小さい子にまで
手を出すなんて…。」
ぷよぷよ・魔導物語よりシェゾ・ウィグィィを召還
ワルド「ルイズ(の虚無の力)は僕のものだ!」
シェゾ「なにをいう!貴様ごときに俺(が奪う予定)のルイズ(の魔力)は渡すものか!」
キュルケ「随分ともてもてね、ヴァリエール」
ルイズ「何故か全然嬉しくない・・・」
ドラコを召喚して美少女コンテストを・・・・
やめたほうがいいな
>>218 俺ドラコで思いついたのが彗星怪獣の方だった…
簡単に帰れるのにわざわざ使い魔になって状況を引っ掻き回す10万とんで25歳を幻視した。
クトゥルーっぽい邪神召喚したり太陽を二つに増やしたりと明らかにチートです本当に(ry
ここはタイガージョーを召喚してルイズを鍛えなおす方向でひとつ
タイガージョーならワルドは勿論七万の軍勢すら一蹴してしまうだろう
>>220 そういえばあの人は顔良し、頭良し、MS戦も強いけどガノタにとってはヘタレの代名詞みたいな存在だなw
ルイズの実家へ行ったらあっさりカトレアに鞍替えしそうな
というかルイズやタバサには見向きもしない可能性が(基本的には女性に母性を強く求めてる男だし)
>>215 ニアと聞いて、NieA_7を思い出した。
ハルケギニアにUFO召喚してクレーター地区が出来るという。
>>223 いや、あの人は女性関係では母性を求めつつも地雷を踏む事を趣味にしてるからな
「気がついたらエレオノールの婚約者にされていた」に50ガバス賭けるぞ
>>225 そしてあの性格に耐えられず例によってトンズラ→姉妹揃って病むのコンボが発動するのか
女性関係であそこまでダメな男も珍しいよな
>>225 その展開は面白そうだ、エレオノールがハマーン化しそうでw
……確かにわざとやってんのか?と思うくらい地雷を踏んでるというか、相性が悪い女性を選んでるよな
孤児院で思い付いたんだが使い魔は鉄拳のアーマーキング。
虎っぽいマスクを付けたテファがワンダフルメキシカンコンボをするのを想像した事がある。
ついでに言うと赤ん坊ミネバにクェスにクムと幼女も大好物だ
ルイズもタバサも決して安全ではないぞ
ララァが出てから明らかに駄目になったよな、あの人。
ゼロ魔における地雷の代名詞なアンアンはロリでも母性系でもないから安全だな
だいぜうぶ
レコアだってロリでも母性キャラでもなかったからね
あの人の魔手から逃れることはかなわんのさっ
>>233 あの人も一見するとしっかりしてるけど、実際は支えてもらいたくて仕方がない女性だったしなぁ
……ひょっとするとシャアと似たもの同士で惹かれあったのかもね
シャアさんの凄い所は自分からじゃなくて相手から求めてくる所
凄いなぁ憧れちゃうなぁ
>>234 で、それに対して「私にいったいどうしろと」だからなぁ
つくづくダメ男
取りあえず「子供に殴られたくらいで泣くなよ」と言いたい。
ギーシュあたりにその役を任せるのは……少し無理があるか?
よく考えたら誰かにNice boatされててもおかしくないんだよな、シャアは。
つーかZでハマーンにされかけたか。あんときは百式が不憫に見えたなぁ
まあハルケギニアなら様々なしがらみ(偉大な父親や強敵アムロといった超えられない壁・スペースノイドからの期待)
から解き放たれて新しい人生送れるかもね
平民率いて革命やりかねない気もせんでもないけどw
(アムロ曰く『世直しの事をよく分かってないインテリ』だそうだが)
女性遍歴を列挙してみると、
アルテイシア→ララァ→ハマーン(ロリ)→レコア→ナナイ→クェス
……何だろう、致命的にゼロ魔のキャラと相性が悪いような気がするんだが……。
案外タバサあたりと上手くやれそうな…………気がしたような錯覚が一瞬したけど、多分駄目だw
ガンダムのキャラってセリフが感情丸だしだからゼロ魔のキャラというか他作品と口論したら色々と食い違いを起こしそう
なんせメインヒロインを筆頭に地雷が多い世界だからなw
同じマザコンのワの人とは気が合うかもしれないが
いや、同族嫌悪の可能性も捨てきれない
今頭の中に「アルビオン落とし」という単語が浮かんだ
プロレス技みたいだな
でかい物を落とす作品って他にあったかな
トップをねらえ?
地球剣・愛国富士山落とし!!
空からの贈り物
スカイドーン
シャア召喚は時期によって色々と物語が作れそうで面白いかも。
一年戦争時・グリプス戦役時・第二次ネオ・ジオン抗争時……。
アクシズ落としの後くらいなら協力的になるか?
ところで、呼ばれたことで逆に主人公側の敵対勢力が困るようなキャラっているかな?
「灼眼のシャナ」の坂井悠二が蛇化する直前に召喚されて仮装舞踏会涙目とか。
でかい物を落とす・・・・・・・・「必殺原稿落とし!」by冨樫義博
いつものことか
逆に呼ばれても勢力にとって全然マイナスにならないってどんだけ悲しいんだよ
このスレの管轄からは外れるがジョゼフにヌッコロされる直前のシャルルが呼ばれるとか
お前ら全員大雪山おろし・二段返しで処刑な
>>249 Z終了時とかに呼び出されたら、腐敗した貴族にキレてとんでもないことやらかしかねない
>>246 そいや羽衣イースでジェバが「メテオストライク」の上位呪文「ムーンストライク」使おうとして止められてたな。
え?はごろもフーズ?
オーテーメー!
タバサの英雄信仰が涙目になるか
でかい物……ぼくらののジアースと対戦中の機体か
ハルゲニアもアルビオンも一日で滅ぶな
でかいものといえば、小ネタにある「ゼロのルイズが巨大隕石を召喚して人類滅亡」が最大だろうな
マザコンでロリコン扱いのワルドだが、味方になって活躍する話ってある?
たいてい悲惨な目に遭ってる気がしてさ
ご立派だとロリコンに目覚めてガチでルイズに惚れてた
>>260 既存のではルイズが伝承族を呼ぶっつーのがありますよ
知らない方へ
伝承族とは長谷川裕一の漫画「マップス」に出てくる悪役で、ぶっちゃけ惑星サイズの頭です
並大抵の星なら近付くだけでロシュの限界により破壊してしまう
武器はその巨大な脳による超能力
大きいものと言えば
エースコンバットシリーズで出た反射式衛星砲施設一式敷地ごととか
リューナイトのアースブレード(ちょっとした大陸並のサイズがある剣)
を喚んだ小ネタならあったな。
>>261 JOJOスレだとアヌビスとか仮面とかワルドがジョナサンの母親召喚した話が思いつく
このスレだと薔薇乙女で一旦休戦して手助けしてたりしてたような
>>255 「貴様らがー!」
連邦軍宇宙・大気圏内両用強襲揚陸艦アルビオンのクルーから召喚なんて妄想
シーマとガトーがいるからいいじゃない!
大きいものといったらファイナルコードとか
ハルケギニアに縁も恨みも無いアルマゲストのキャラがするとは思えないけどね
>>261 魔砲の人の話だと野心持ちつつも味方になってたな。
270 :
虚無と金の卵:2009/01/02(金) 15:50:36 ID:/qaK2S1Q
予約無ければ「虚無と金の卵」、16:00より投下します。
今回は短め。4レス分程度。
大きいものを落とす、つまりテファのむ
へんじがない。ただのばかのようだ。
サイトが酒場から出た後、ルイズ達も宿の部屋に引き上げていた。
流石に上等な部屋だけあって、調度品も一級品、ベッドも天蓋付きであった。
公爵家の屋敷に住んでいたルイズがそれらに気後れするはずもなく、旅の疲れを癒すのにはうってつけだった。
だが旅の荷を降ろしたところで、キュルケのはしゃいだ姿がルイズの視界に飛び込む――溜息が出る。
「渋いわ! それに愛嬌もあるし! 学院じゃあお目にかかれなかったタイプよね。ねぇタバサ、あなたはどう思う!?」
「……興味はある。噂がどれだけ本当か、知りたい」
「でしょうでしょう? ここで出会ったのが運命よね! 確か、王党派の詰め所に居るって言ってたわよね」
サイトと別れた後も、キュルケはきゃあきゃあと騒ぎつつ、次なるアプローチを考えているらしい。
キュルケはいち早く部屋のドレッサーに陣取っていた。
タバサも、まあ何とはなしにキュルケに付き合いつつも、読書しながらの対応で、憎らしいほどにいつも通りだ。
ルイズは、自分の肩に乗った責務の重さに比べて、軽すぎるキュルケの立振舞いに妬ましさすら覚えた。
「……あんたは、気楽で良いわねぇ。大体、ペリッソンはどうしたのよ」
「出会いはいつも突然よ、ヴァリエール。過去を振り向く暇なんて無いのよ」
何のてらいもなくキュルケは答えた。
この女、本気で忘れてるじゃない――とルイズは思う。
ペリッソンじゃなくてスティックスじゃなかったけ――とタバサは思う。
「……本当に忘れられるの?」
「ん?」
「キュルケは……あんた、本当に、心から好きだった人がいたら、忘れられる?」
普段なら、ルイズはこんなことを尋ねない。
恋愛絡みの話で、キュルケの意見など絶対に求めたりしない。
言うなればそこは、ヴァリエール家の数多の良人を奪ったフォン・ツェルプストー家の領地であり本陣に他ならず、
ルイズが何の準備も無く、実戦経験も無く、単身そこへ乗り込むのは無謀な自殺行為でしかない。
だが、ルイズは敢えてその地雷原に足を踏み入れた。
「ルイズに聞かせるには百年早いわ」、とか、「もう少しマシな下着を選べるようになってから考える事よね」とか
軽口を叩くだろうかという思いが一瞬よぎったが、今は茶化すような雰囲気でもないだろう、とルイズは自分を納得させる。
珍しいじゃない、とキュルケも驚いて呟き、神妙な表情になる。
「……でも、そうねぇ、ルイズに聞かせるには百年早いわ。もう少しマシな下着を選べるようになってから考える事よね」
キュルケの神妙な表情は3秒も続いた/4秒目からは憎らしいほどに普段通り。
あまりに予想通りの展開にルイズはがくりと肩を落とす。
「そうよね、あんたに聞いた私が間違いだったわよね……!」
と言い、ルイズが激昂して手が出る直前のところで、「うそうそ。ま、ちゃんと答えるわよ」などとキュルケは
真面目な表情をして考え出した。
結局、手を出すタイミングを上手く躱されたルイズは、仕方なしに黙って聞いた。
「……少なくとも、忘れて構わない男は、本当に忘れちゃうからね。だから、忘れがたい人が欲しいのかも。
きっと、忘れてないってことは心の中にその人が居るってことだし、何も終わってないってことなのよ」
「じゃあ、忘れられない人が居て、会えなかったら、どうする? それでも、他の男を捜したりするわけ?」
「……そうねぇ」
キュルケは思案げな声を出す。だがすぐにキュルケはルイズに目を合わせてくる――不敵な微笑み。
「つまり、そういう男の人が今、側に居ない状況ってことよね?」
「……た、例えばの話よ」 ルイズ――微笑にたじろぐ。
「本気で寄りを戻したいんなら、どんなことしたって引き戻すわ。男に連れ合いが居ても、私に連れ合いが居ても、関係ないわ。
……でも、もしも別に寄りを戻すつもりがなくても忘れられないのなら、精算することよね」
「精算?」
「嫌いになったなら、あんたなんか嫌いって言えば良いのよ。恨みがあるなら、一発殴るなり魔法で燃やすなり、
好きにすれば良いのよ」
「……あんた気付いてないだろうけど、ちょっとワガママ、じゃなくて凄いワガママよ」
ルイズがジト目で言葉を返すが、キュルケは「そうかもね」などと流して、何処吹く風といった調子だった。
「ともかく、自分の心のままに決着を付けるのよ。心残りだったことをやって、すっきりさせることよね」
「決着……」
その言葉を、ルイズは自分の心に刻み込んだ。
自分の関わる事態のどれも終わりを見せていない。自分自身の決着を付けようともしていない。
ただ漫然とラ・ロシェールに佇む自分に、これ以上相応しい言葉は無い、とルイズは思う。
「ま、自分の心なんて、会うその瞬間までは固まらなかったりするものだけど」
貴女はどうかしら――キュルケの微笑みは問いかけている。
そのあと、結局キュルケの話に延々と付き合わされた。
サイトはどんな女性が好みなのか、どんなアプローチを仕掛けるべきかなど、微に入り細にわたって
作戦を練るつもりのようだった。
「そういえば、ずいぶんと宝石にご執心だったわね。実家に近ければよかったのに」などと歯噛みしていた。
当然ルイズは途中で付き合いきれなくなり、話の半ばでタバサに押し付けて宿の外へ出た。
外は小雨が降っていた。まだ日は沈んでいないはずだが、空は陰り、もはや夜と変わらない有様だ。
女神の杵亭の裏手には、広場があった。
朽ちかけた立て看板には、「練兵場跡地」と書かれていた。
ルイズは、「体を冷やすぞ」というウフコックの注意にも生返事を返すだけで、
ウフコックは仕方なしにフード付きのローブに化けてルイズを包み込む。
冷たい風に当たるつもりなのに――そうルイズは思ったが、敢えてそれを剥ぎ取りはしなかった。
練兵場の跡地の光景は、寒々しいものだった。
その光景と寒さ、今のルイズにはそれが心地よかった。
「……部屋へ戻ろう、ルイズ」
「良いのよ」
昨日から続く混乱の局地から抜けて、ルイズは冷静になった。
上等な宿で飲み食いして休み、キュルケと馬鹿な話をしたあたりで、ルイズは、悩みに悩んでいた自分に対して、
急に馬鹿らしくなってきてしまった。
姫様の依頼を受けたこと/婚約者のワルドが国を裏切ったこと/ワルドが、サイトとかいう傭兵に殺されかけたこと。
どれも確かに災難に違いない。
だがそうだとしても、それら出来事一つ一つに対して始祖ブリミルに嘆いたり恨んだりするようなことではない。
悩むよりも前に、悲しむよりも前に、まだ何も始まっていないのだ。
「ねえ、ウフコック。私、なんだか思い違いをしてたわ」
「……どんな?」
「どうしてこんな目にあってるんだろうって、さっきまで考えてた。きっと今日は凄く不幸な日なんだって思ってた。
でも、たまたま悪い目が重なっただけで、一つ一つは、そんな難しいことじゃあないのよ。きっと」
それは、今のルイズの偽らざる本音だった。
そう断言できるほどの強い眼差しで今と未来を見つめていた。
難問の数に押し流されそうだっただけで、今ならば、一つ一つを考えて取り組む余裕が生まれていた。
ただ――状況に翻弄され流されるまま、こんな無様を晒しているのか、それだけが心のしこりとして残った。
どうして自分は、流されるままの状況に甘んじているのか。
キュルケにからかわれて、気付いてしまった。
自分が、どれだけ自分らしくなかったかということを。
冷静になって考えれば考えるほど、恥ずかしく、苛立たしく、腹立たしい。
しこりとして残ったものの正体をルイズは見破った――それは紛れもない怒りだった。
「それに、まだ、何も起きてないのよ。私は誰にも攻撃されてなんてなかったわ。
確かに危険な瞬間はあったけど、私が狙われていたわけじゃない。乗り越える壁があっただけで、それに怯んでただけなのよ」
「ルイズ……」
凜とした声でルイズは語りかける――静かで平らかな声。
だが、それが本気で怒る兆候であることにウフコックは気付いた。
感情の臭いを嗅ぐウフコックには、今のルイズの冷静さが嵐の前の不気味な静けさと等価だと、すぐに気付いた。
「……だからそうよ。私はそれを今から、乗り越えるのよ!」
ルイズの決意――力に満ちた声で。暴風にも怯むこと無く。
「この私を! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを差し置いて好き勝手やってる連中に!
私が誰か思い知らせてやる必要があるのよ!!!」
ルイズは激怒した――難題を押し付けておいて自分だけ悲嘆にくれる我が儘アンリエッタ姫に。
ルイズは激怒した――十年以上放ったらかしのままレコン・キスタなどに身を投じた放蕩貴族のワルド子爵に。
ルイズは激怒した――少しくらい腕が立つ程度で貴族に舐めた口を聞く田舎者の傭兵サイトに。
ルイズは激怒した――人が真面目になときにくだらない茶々を入れる、頭のネジと貞操観念の緩んだゲルマニア女のキュルケに。
ルイズは大いに激怒した――そんな身勝手な連中になすがままにされる、弱虫でちびなゼロのルイズに。
宿に引っ込んでいろと言われて大人しく布団を被っているような自分を許せるか――否。
大事だった人が死ぬのを、ただ傍観している自分を許せるか――否。
どれだけ運命に翻弄されようとも、そのを良しとする自分を許せるか――断じて否。
流されるままの弱い自分など、自分ではない。許すことなどできない。そうルイズは思う。
「そうよ、決着を付けてあげようじゃないの」
「る、ルイズ……」
「決めたわ、ウフコック。私はワルドを助ける。大事だった人を見捨てるのは、私の流儀じゃないの。
もちろんそれとは別に、姫様の依頼も絶対に達成する」
「しかし、危険だ」
ウフコックの逡巡を、ルイズは即座にはねのける。
「そんなのは承知の上よ」
【ヨハン】FE聖戦
ドズル家の次男でアクスナイト。アクスファイターの弟ヨハルヴァとの二択で仲間になる。
普通にプレイしてればこれといって役に立つ事もないが、平民プレイでは数少ない貴族キャラなので頼りになる。
「ヨハン死せども愛は死なず……」
タバサがFSS最強の騎士『ダグラス・カイエン』と『クーン』を召喚しま・・・やっぱパワーバランスが悪すぎるかな?
「君は、レコン・キスタに与するつもりではないだろう。どうするんだ?」
「彼一人だけ、ここの王党派の目を盗んで匿う。場合によっては眠らせるなり捕縛するなりするわ。自分の手で。
そして手紙の任務の達成の褒美として、ワルドの助命を嘆願するのよ。ま、爵位の剥奪くらいの処分はあるだろうけど」
その発言はウフコックの発想を超えていた。
ウフコックがローブの形態をとりながらも、動揺している様子がルイズには手に取るようにわかった。
「む、無茶な……それに、国の犯罪者を自らの手で量刑するなど、君の立場を悪くするのではないか」
「別に裁くわけじゃないわ。でも、今の状況で裁くだの何だの言ってられる状況じゃない。
明らかにレコン・キスタってわかったら、何をどう言い繕ったとしても、問答無用で殺されたって仕方のない状況なのよ、きっと。
内乱でマトモな裁判なんてあるわけが無いんだから、温情措置を願うなら自分の手で何とかするしかないのよ」
ルイズの言う通り、という面は確かにある。
ここは司法と他の権力との分権も定かではない、王政の敷かれた国である。
戦争という異常事態にあって、ウフコックの居た現代的な都市ですら司法が揺らぐ。
自分で事態を切り開かない限り、王権や財力といった圧倒的な力に、個々人の事情など押し潰されるのが現状と言って良い。
「だが俺はワルドを知らないし、君も恐らく、今のワルド、というか、今のワルドの人となりを知るまい。
はたして、信念を曲げて君の提案を肯んじる人間なのか?」
「助けられるか、断って死ぬか、選ぶのは彼よ。私は手を差し伸べるけど、それを掴むかどうかまでは知らないし、知った事じゃないわ」
「だが、どうやって? 君は彼の居場所など知るまい」
「……さっき、サイトが偉そうに言ってたことを覚えてる? 敵か味方か選べ、って言ってたことよ」
「ああ。覚えているが……」
「選ぶ、って考えが間違ってるわ」 ルイズはせせら笑う。
「私はあくまで私の味方よ。誰かの味方に付くなんて受け身の態度を取るつもりはないのよ」
「つまり?」
「傭兵ってことはつまり金で雇われているってこと。なら、彼が納得する報酬で雇えば良いのよ。
そしてワルドを殺すのは諦めてもらう。捕らえさせて私の元に連れて来させるって仕事に鞍替えしてもらうわ」
ルイズは、自分の指に嵌められた指輪を空に翳した。
雨露に濡れた水のルビーの静謐な輝き。それは曇天の下でも褪せることなくルイズを照らしている。
おーとっと、支援しますれてた(汗)
279 :
虚無と金の卵:2009/01/02(金) 16:09:56 ID:/qaK2S1Q
以上で投下完了。ありがとうごいました。
今回は短め、というか本来は前回分と一緒に投下する予定だったのですが、
長すぎたので分割した格好だったり。
ところで1月はちょっと仕事が忙しいので、更新ペースは割と遅くなるかもです。
春までにはアルビオンの話は終わらせるつもりなのですががが。
虚無と金の卵の人、乙〜
ルイズはなんだかんだ言っても使い魔らしいのが召喚できれば素直に喜びそうなんだがな。
ルイズも自分がドラゴンやグリフォンなんていう上位の幻獣が召喚できるとは本気で思っては
いないだろうし、猫やフクロウなんかでも召喚できれば御の字だったのではないだろうか。
人並みの使い魔が召喚できれば徐々にではあるが別の魔法も使えるようになるのでは、と
希望を抱いていたのかも。そうすれば挫けそうな心の慰めにもなったのだろうし。
乙
だいたいメインのオマケだから、有能なサイトってのも珍しい
甘すぎるルイズが現実にフルボッコされる様ってのも見所かと
>>276 バッタバッタとメイジを斬り殺して斜に構えてカッコつけるカイエンを想像してるんだろうが
あの人ジョーカー星団離れたら多分何もしないよ
周囲がデコピン一発で脳みそ撒き散らすようなザコばかりならなおさら
生徒とかロングビルのスカートめくったり
魅惑の妖精亭に入り浸るグ〜タラ生活送りそう。
乙
>>283 好き勝手生きているようで、
実際は普通に老いることも、子供を成すこともならず、
人並みに死ぬことも出来ないまともでない己の人生に絶望して
投げやりな生活していたんだっけ。
>>215 そのキャラって、結婚式の直後に消えちゃうんじゃなかったっけ?
>>286 真面目に生きると死亡フラグが立つからなカイエンは
289 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:04:18 ID:p9Sc89L3
あけましておめでとうございます。予約なければ10分ごろに投下します。
>>261 うろ覚えだから活躍はしてなかったかもしれないけど、ボムボムの実が召喚される話
>>275 オガーザーン
291 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:12:34 ID:p9Sc89L3
ゼロの魔王伝――8
夢の世界に沈んだルイズは、これが夢の中だと分かる不思議を感じながら、懐かしくさえ思える夢を見ていた。それは春の使い魔召喚の折の事。唱えても唱えても爆発ばかりが起き、一向に使い魔を召喚できずにいたルイズに周囲の生徒から罵倒が飛ぶ。
“ああ、これは、Dを召喚した日の事ね”
この日の事は今も鮮明に思い出せる。その時の情景も、周囲から向けられる感情の種類も、虚しく空を切る杖の感触も、なにも呼ぶ事無く虚ろに響く呪文も……もっとも、Dの美貌ばかりは夢の中でも思い出せないけれど。
魔法学院の外に広がる薄緑が連なる草原の真ん中で、同級生達に軽蔑の視線でもって見守られながら、ルイズは何度も杖を振り、呪文を唱え続ける。だがそれは実を結ぶ事無く草原に土煙を幾筋もたなびかせていた。
引率として同伴していた頭頂の毛が薄い、温和そうな中年男性のミスタ・コルベールが、最後の機会と夢の中のルイズに告げる。ルイズは上空からその様子を俯瞰する高さで見つめていた。これが最後と覚悟を決め、詠唱を始める夢の中のルイズ。
それまでと変わらぬ爆発が起きた時、夢の中のルイズは目の前が真っ暗になったようだった。いや、実際そうだった。必死に歯を食い縛って流すまいと堪えていた涙の粒が眼尻に大きく盛り上がり、ついには理性の堤防を破って滴り落ちそうになる。
その涙を許さない貴族としての矜持、もうどうでもいいと投げやりになる素の感情。せめぎ合うそれらがルイズの心を掻き乱していた。
周囲の生徒達の野次が一層ひどく、そしてコルベールの姿にも傍から見てもあからさまに失望の色が伺えた。無理もない、また自分は落ちこぼれのルイズである事を証明したのだから。
一人進級する事も出来ず、また同じ一年を過ごし、周囲からの嘲りと憐れみとを満身に浴びて、いずれは耐えきれずに屈辱に胸を掻き毟り自ら命を断つか、あるいは心に癒えぬ傷を抱えたままラ・ヴァリエールの領地に戻っていただろう。
“でも、違った”
慈悲深き始祖ブリミルはルイズを見放しはしなかった。やがて土煙に薄く人影が映し出された時、すべての音は絶え、唯一その場に居た人間のみならず使い魔たちの息を呑む音だけが響いた。
そう、風さえも音を絶やしていた。風は怯え、土は慄き、火は熱を失い、水は流れる事を止めた。
ルイズが召んだ者――いやモノとはそれほどまでに美しく、それほどまでに恐ろしいものだと、人間よりも世界が悟ったのだ。
見よ、立ち込める土煙は決して触れてはならぬ者の出現を悟り自ら左右に分かれ、踏みしめられる大地は喜びと共に甘受し、頬に触れた風は恍惚と蕩け、泥の如く蟠って大地に堕ちた。
ルイズの瞳にそれが映し出された。コルベールの脳がそれを認めた。周囲の生徒達が考える事を止めた。使い魔達は来てはならぬ者が来た事を悟った。
かつて、森の彼方の国から、一人の美女を追って全てを白く染めるほどに濃い霧と共に、死者のみを乗せた船の主となって倫敦を訪れたバンパイアの様に、ソレは姿を見せた。
太陽の光がそのまま闇の暗黒に変じてしまうかの如き黒の服装。胸元で時折揺れる深海の青を凝縮したようなペンダント。それらが彩る、広く伸びた鍔の旅人帽の下にある美貌よ。美しさとは、これほどまでに極まるものなのか。
それは、美しいという事さえ認識できぬ美しさであった。目の前のそれを表す言葉を探り、しかし美しいと言う他ないと認め、それよりも相応しい言葉を見つけられないと絶望するのに刹那の時を必要とした。
若い、まだ二十歳になる前の青年であった。銀の滑車がついたブーツは音一つ立てずに歩み、かろうじて息を吹き返した風の妖精たちによって靡く波打った黒髪も、漆黒のコートもその全てに美しいという形容の言葉を幾度も着けねばならぬ。
右肩に柄尻を向けて斜めに背負った一振りの長剣は180サントを悠々と越える青年の身の丈にも届くほどに長く、尋常な腕では満足に鞘から抜き放つ事も出来ないだろう。
一歩、二歩と歩む青年の姿はルイズの魂を根幹から揺さぶるほどに美しく、この瞬間、ルイズはこれまで影のように傍らに在り続けた“ゼロ”というコンプレックスを忘れた。
一人の少女の輝かしい生涯を、その終りまで暗黒に変えるだろう劣等心を忘却させた青年は、しかし、三歩目を刻む事はなかった。土煙とは異なる白煙を全身から立ち上らせた青年は、ゆっくりと、その様さえも美しくうつ伏せに倒れたのだ。
ど、と重い音が響く。ルイズが目の前の光景を理解するのに数秒を要した。
292 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:13:34 ID:p9Sc89L3
『目の前に倒れているのは、誰? 私が召喚した、使い魔? いや、こんな美しい御方が? いえ、それよりも、倒れている? どうして? 違う、そんな事よりも!!』
意味のある言葉にならぬルイズの思考を突き動かしたのは、自分が呼び出したかもしれない使い魔を保護しようという意識ではなかった。
それは奉仕の心であった。この方の為に何かしなければならない。何か自分に出来る事があるのなら、それに全力を尽くさねばならない。期待の結婚詐欺師にかどわかされ、夫を殺した婦人方の万倍も強く、ルイズは眼前の青年の奉仕者となっていた。
トリステイン王国でも五指に数えられる名家中の名家ラ・ヴァリエール家の令嬢として、多くの召使たちに傅かれ日常の雑事の全てを他者に委ね、頭を下げられる事を当たり前の事として育った少女が、この時世界の誰よりも強い奉仕の心を持っていた。
誰よりも早く倒れ伏した青年――Dに駆け寄り、膝をついて白煙をたなびかせる剣士へと手を伸ばして声をかけた。
「大丈夫ですか、ミスタ! どこかにお怪我でも? 熱っ!?」
その背に恐る恐る伸ばした右手が、途方もない熱を感じ、思わずルイズは手をひっこめた。この場に居る誰もが知り得る筈もないが、Dはほんの数秒前まで燃えたぎるマグマに飲み込まれんとしていたのだ。
その余熱がこの青年の体を焼き、今も体内に残留していたのである。Dの意識が絶えている事を、自分の呼び掛けに無反応である事から確認し、ルイズは大きく声を張り上げた。これほど乱暴に声を荒げたのは初めての事だったろう。
「誰か、水魔法使える子は早く来て! 治癒をかけるのよ、怪我をされているわ! のろくさとしないで、さっさとしなさい!!」
雷に打たれたように、ルイズの怒声を耳にした生徒達の中の、全水系統の者達が全力疾走でDの元へと駆け寄った。彼らもまた美の奉仕者へと変わったのだ。
押しあいへしあい、我先にこの美しい方の傷を癒さんと杖を伸ばす生徒達のど真ん中で、ルイズは憎悪の視線さえ向けられながらぐいぐいと遠慮なく体を押されていたが、それに負ける事無く、ひたむきな視線を倒れ伏したDへと向けていた。
敬虔な信徒、忠義に熱い騎士、一途な恋に身を焦がす少女、その全てに似て非なる視線であった。だが、Dの身を案ずるという一点においてその全てと共通していた。
ルイズにとって二番目の姉の体を案ずるのと同じくらいに、今、Dの怪我の治癒に対して心を砕いていたのだ。
流石に教師としての面目を思い出したのか、コルベールが最も早く正気に戻り、Dの傷が癒えた頃を見計らって、生徒達に戻るよう声をかける。途端にこれまでの人生で浴びせられた事の無い程の、怒涛の殺気がコルベールの全身を呑みこんだ。
途方もなく巨大な蛇に飲み込まれてしまったように、コルベールは恐怖に身を竦ませた。美への奉仕を邪魔する者に制裁を、この一念で水系統の魔法学院生徒達はコルベールを睨みつけたのだ。
とても実戦経験の無い生徒達が放つとは思えぬ殺気を浴びてコルベールの毛根は死んでゆく。はらはらと抜け落ちる自身の毛髪には気付かず、なんとか心胆に力を込めて生徒達に声をかけ直す。
「こ、これで使い魔召喚の儀は終わりですぞ! 急いで学院に戻りなさい!」
ゆらゆらと立ち上がる生徒達は、まるで冥界から生ある者を恨みながら黄泉返った死者の様に恐ろしくコルベールの眼に映る。チビりかけるが、かろうじてこらえる。教師としての威厳や年長者としての自尊心を動員し、なんとか成功した。
傍らを過ぎる度に水系統生徒達に血走った眼を向けられて、コルベールは保健室で胃薬を貰おうと決心した。その他の系統の生徒達も、頬を薔薇色に染めながら、失神したクラスメート達を抱えて、学院へと戻り始めた。
美の衝撃は抜けず、人間に空を飛ぶ事を約束するフライの魔法を唱える事の出来た者は一人もおらず、全員が自分の足で使い魔を連れて戻っていった。他の生徒達がいなくなった草原に、倒れたままのDと共に残っていたルイズに、コルベールが声をかけた。
「さ、ミス・ヴァリエール、保健室にその方を運びますぞ。契約はそちらが目を覚まされてから事情を説明した上で、でよろしいですかな? 古今人間を使い魔にした例はありませんが、神聖な使い魔召喚の儀式においてやり直しは認められませんからな」
「あの、でも、ミスタ・コルベール」
雨に打たれる子犬の様に弱々しく、ルイズはそのまま泣き出しそうな顔で、上目使いにコルベールを見た。赤く染まった頬に潤んだ瞳は、誰もがこの小さな少女を守ってあげなければならないと思わせるほど儚く、可憐だった。
293 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:14:38 ID:p9Sc89L3
「なんですかな?」
「わたしなんかが、この人を使い魔にするなんて事があって良いのでしょうか?」
「うむ、それは、まあその青年が目を覚まされてからの話と言う事で」
と、コルベールは逃げた。彼自身、このような使い魔が召喚されるなど想像だにしていなかったのだ。メイジに相応しいと思える使い魔が召喚される場面は何度も見てきたが、使い魔に相応しいかどうかと、メイジの方を疑ったのは初めての経験だった。
その後、コルベールが対象物を浮かび上がらせるレビテーションの魔法を掛けてDを保健室まで運んだ。
旅人帽と長剣、ロングコートを脱がし、腰に巻かれた戦闘用ベルトを括りつけられたパウチごと外して清潔なベッドに寝かせたDを、傍らでぽけっとルイズは見つめていた。完全無欠に心ここに在らずである。
気を絶やして眠りの世界に陥った青年の横顔を、宝物を眺めて一日を過ごす子供の様にして見ているのだ。
この時、ルイズは生涯でもっとも幸福であった。この時を一分一秒でも長く過ごす為にか、ルイズの体は身体機能を調節する術を覚え、保健室に運びこんでからの数時間、手洗いに一度とて行く事もなく、また睡魔に襲われる事もなかった。
自分の膝に肘を着けて、細い顎にほっそりとした指を添えて、うっとりと、うっとりと見つめていた。このまま食を断ち、眠りを忘れて命を失い、骸骨に変わろうとも何の後悔もなくルイズは見続けるだろう。
ルイズとD。ただ二人だけの世界は、この上なく美しく輝いていた。ちなみに保険医の水メイジの先生は、Dの美貌を目の当たりにして瞬時に気を失い、Dの隣のベッドで笑みを浮かべながら眠っている。
固く瞼を閉ざし、浅い呼吸は時に目の前の青年が既に息をしていないのではないかとルイズの胸に不安の種を植え付け、それが芽吹くたびにルイズは、震える指を青年の花の前にかざし、本当にかすかな吐息を確認する。
Dの吐息を浴びた指が、そのまま宝石に変わってしまいそうでルイズは頬をだらしなく緩めた。
一見すれば気が触れたとしか思えないうっとり具合であったが、その原因が桁はずれの説得力を有する外見の為、今のルイズをからかう資格のある者はこのトリステイン魔法学院には誰一人としていなかった。
はあ、とルイズは切ない溜息をついた。もう切なすぎてそのまま死んでしまうんじゃないかしら、私? と本人が思うほど切ないのである。憂いも愁い患いもルイズの心の杯をいっぱいに満たし、溢れんとしている。
それは、ルイズがこれから行うかもしれない使い魔との契約の儀が理由だった。召喚した使い魔との契約――それは粘膜の接触、すなわち口と口での接吻であった。
通常動物や幻獣の類が召喚される為、この接吻は誰とてキスの一つには数えぬものだが、ルイズの場合は相手が相手であった。
『ここここここの、くく、唇に、キキキキキィイイイイイッススススススゥをしなけれなならないのかしら? わわわわたしししし!? ふぁ、ファーストキッスにかかか、カウントすべきよね! ね!!』
とまあ、こんな具合に愁いを帯びた深窓の令嬢の雰囲気とは裏腹に、ルイズの内心はいい感じに茹だっていた。タコを放り込めばコンマ一秒で真っ赤っかになるだろう。実にホット。地獄で罪人を煮込む釜並みにぼこぼこと沸騰しているに違いない。
はあ、とそのまま雪の結晶になって落ちて砕けてしまいそうな溜息が、ルイズの唇から零れる。これまでルイズに目向きもしなかった同級生達も、はっと息を飲みそうなほどに麗しい。
可憐、と言う言葉を物質にできたならまさに今のルイズほど似合う少女は居なかったろう。
つい見惚れて、ふらふら〜っと誘蛾灯に誘われる蛾よろしく――蛾、というのはいささかルイズに失礼かもしれないが――、ルイズは思わず目を細めて唇を突き出し、Dの唇へと引き寄せられる。
二人の唇の間に引力が存在するかのように、夢見る顔でルイズの頭が眠りの世界の魔王子となっているDの頭に重なる。
『横にズレなし、後は縦に落ちるだけよ、ルイズ!』
さあ、さあ、ぶちゅっと一発! とルイズは平民の様な伝法な声で自分を励ます自分の声を聞いていた。心の中の鼓膜が盛大に揺れる。それを、絞り粕の様に残っていたルイズの理性が留めた。
いくらなんでも眠っている殿方の唇を奪うなど、婦人に夜這いを掛ける殿方よりも、よほど卑しくはしたないではないか、と誇り高いトリステイン貴族でもとりわけ格式も誇りも高いヴァリエール家に生まれたルイズの気高さが、反攻の狼煙を上げたのだ。
294 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:15:33 ID:p9Sc89L3
『でもこの唇に、キ、キスできるのよ?』
はう、と声を上げてルイズは自分の小ぶりな胸を押さえて背を逸らした。残り数センチで重なった唇は、遠く離れる。反攻の狼煙は一瞬で踏み潰された。
重なる唇。触れ合う唇。融け合う唇。
私と、この青年の、唇が、こう、ちゅう、とくくく、くっつく!?
かは、と息を吐いてルイズは自分の体を抱きしめた。やばい、非常にやばい。このまま心臓の鼓動が激しくなりすぎて破裂しそうだ。
ルイズはそのまま燃え上がりそうなほど過熱してゆく体温を感じていた。年相応に豊かなルイズの想像力が、重なり合う二つの唇を思い描いて脳の許容量を突破し、ルイズの理性を粉微塵にした。
『もう、悩んでないでぶちゅっといっちゃえば? べ、別に私だって好きでこんなはしたない真似するんじゃないわ。だ、だって使い魔を呼び出せなきゃ進級できないし、そしたらお父様やお母さまに恥をかかせることにもなるし。
……ね、だからキスするのは仕方のないことなのよ。し、し、仕方なくああ、貴方とキスするんだから、そこの所を誤解しないでよね! 仕方なくよ、仕方なく何だから!』
と、この上ない至福の笑みを浮かべて契約の呪文を唱える。一秒が数十年にも感じられる中、呪文を唱え終えたルイズはすう、と息を吸った。なだらかな丘のラインを描く胸がかすかに膨らむ。
お父様、お母様、ルイズは女になります――
「いざあああああああああ!!!!!!」
と、豪胆な戦国武将さながらに反らしていた背を勢いよく振りかぶった。割とアレな子らしい。アレとはなんぞや? と言われた、まあ、頭のネジの締め方が緩いとか、数本外れているとか、そーいう意味でだ。
そんな時、気迫が何らかの獣の形を取って咆哮を挙げている姿を幻視するほどのルイズが、どん、と背中を押された。
へ? とルイズがぽかん、とする間もなかった。コルベールに頼まれてDの世話をしにきたメイドがルイズの背を押した張本人だった。
怪我人でも摂れるようにと軽めの食事を乗せた銀盆を手にやって来たのだが、ベッドの中の眠り姫ならぬ眠り吸血鬼ハンターに心奪われ、夢遊病者の様に歩み、ルイズと激突したらしかった。
そして自分のタイミングを逸したルイズは、え、まだ心の準備が、と今さらな事を呟きながらD目掛けて落下し、やがて
ぶちゅうううう
という音がした。
Dが目を覚ましたのは、そのぶちゅう、という乙女のロマンもへったくれもないキスをルイズがかました直後である。
左手に刻まれる使い魔のルーンの熱と、痛みが、暗黒の淵に落ちていたDの意識を浮上させたのだ。
とうのルイズはもっと、もっとこうロマンと言うかムードのあるキスがああああああ、となまじキスが成功した所為で、現実のキスとの落差にショックを隠しきれず頭を抱えていた。
一方で、ルイズに望まぬ形でのキスを行わせた張本人たるメイドは、目の前で行われた美青年とルイズのキスの光景に、気を失って保健室の床に伸びていた。
ま、無理もない。この世ならぬ美とこの世の範疇に収まる美の接触を目の当たりにした事は、メイドの少女にとって直視に耐えうるレベルを超えた現象だったのである。
もはや兵器と呼んでも差し支えないのではないかと言う、冗談じみたDの美貌であった。頭を抱えてうんうん唸るルイズは、やがてDの視線に気づきはっと顔をあげ、Dの視線とルイズの瞳が交差した。
ひゃん、とルイズの喉の奥から仔猫の様な泣き声が一つ漏れて、腰砕けになる。かろうじて椅子から落ちなかったのは幸運といえただろう。
開かれたDの瞳に宿る感情を読み取る事は、どれだけ人生経験の豊かなものでも不可能だろう。およそ人間とは様々な意味で縁の遠い青年なのだ。その時の流れを忘れた堅牢な肉体も、その氷と鋼鉄でできた精神も。
Dはルイズの様子に注意を払うでもなく無造作に上半身を起こし、枕元に置かれていた旅人帽とロングコート、長剣を身につける。それから、至福の笑みを浮かべたまま器用に気絶しているルイズを見た。
床で伸びている黒髪のメイドにはそれこそ一瞥をくれる事もなく、ルイズの額へとDは左手を伸ばした。その左掌の表面がもごもごと波打つや、小さな老人の顔が浮かび上がったではないか。
皺と見間違えてしまうような、糸のように細い眼。米粒を植えた様に小さな歯。こんもりと盛り上がった鉤鼻。驚くほど年を取った老人の人面疽であった。この青年は自らの左手に独立した意思を持った老人を宿しているのだ。
表に出た老人の顔が口を開いた。
「やれやれ、九死に一生かと思えばとんでもない所に来てしまったのう。お前も気付いとるだろうが、ここは“辺境”区ではないかもしれんぞ」
295 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:18:40 ID:p9Sc89L3
答える声はなく、Dの左手はルイズの額に触れて、老人の唇から目に見えぬ何かがルイズの体内へと流れ込んだ。まるで氷水を直接頭蓋骨に流し込まれたような冷たい感触に、ルイズの意識が急速に覚醒した。
はっと眼を開き、自分の額から離れて行くDの左手に、皺の集合体の様な老人の顔が浮かんでいるように見え、驚きに目を見張った。老人の顔は、ひどく意地悪げに笑っていたのだ。
「あ、あの」
「ここはどこだ?」
こちらの問いの答えしか聞かぬと冷たく告げるDの声に、ルイズの蕩けていた心が強張った。目の前の青年が、美しいだけの人間ではないと悟ったからだ。不用意な言葉の一つが、自分の首を刎ねる理由になる。
それほどの、抜き身の刃と例えるも生温い心根の主なのだと悟った。美貌に囚われた心は、今や眼前の青年が死の塊なのだと知り恐怖に怯えた。
「ここは、トリステイン魔法学院よ」
これほど落ち着いた声を出せた事が、ルイズには不思議だった。心当たりがなかったのか、二秒ほど間をおいてDが質問を重ねた。
「ほかの地名は?」
「……ハルケギニア大陸、トリステイン、ゲルマニア、ガリア、アルビオン、ロマリア。主だった国や地方の名前だけど……」
「おれがここにいる理由は?」
来た、とルイズは思った。自分が目の前の青年に殺されるとしたら、コレだろうと覚悟していた。
ルイズは何が嬉しくて使い魔の契約で命の覚悟をしなければならないのかと、自らの不運を呪ったが、うまく行けばこの超絶美青年が使い魔である。
着替えさせて、と命じるルイズ。返事はないがもくもくとルイズの服を脱がして新しい服を身につけさせるD。
食事よ、と食堂に来たルイズの為に椅子を引き、腰かけたルイズにうやうやしく給仕をするD。
寝るわ、とととと、特別に私のベッドで寝てもいいわ。勘違いしないでね、藁を敷いた床で眠らせるのがちょっと可哀想だから、特別なんだからね! 普通の貴族だったら、こ、こんなこと許してくれないのよ。
私の優しさに感謝してよね、だだ、だから、ほら、早く入んなさいってば! いいこと、同じベッドで寝てもいいけど、指一本でも、私に触ったらダメなんだから! そういうのは結婚してから、結婚しても、三ヶ月はダメなんだから!
……で、でもどうしてもって言うんなら、ちょっとだけ許してあげない事もない事もないのよ? ど、どうしてもって言うならよ!
ちょ、さ触ったらダメって、始祖ブリミルも、お父様もお母様もお許しに、や、ご、強引なんだから……あ、あぁ…………。
でへへ、とルイズはにやけた唇の端から涎を垂らしていた。何が引き金になって首をはねられるか分からないこの状況で、かような妄想に浸れる辺り、やはりルイズはかなりアレな子であった。可哀想な意味で。
そのルイズの様子を九割呆れ、一割感心した様子で眺めていた左手が感想を零した。
「お前を前にして、なんというか、度胸のあるガキじゃな」
「…………」
ルイズのようなタイプは珍しいのか、Dは沈黙していた。毒気を抜かれたか、肌の内側に滞留していた鬼気を小さなものに変えていた。それでもルイズか周囲に敵意を感じ取れば、レーザーよりも早いと謳われた抜き打ちが放たれるのは間違いない。
二人(?)の痛いモノを見る視線に気づいたのか、ルイズは頬を恥ずかしさで赤く染めて、もじもじと床の一点を見つめた。そうしているだけなら神がかった可愛らしさなのだが、常軌を逸した妄想に浸った直後の姿なので魅力も万分の一であった。
それから、流石に下手をしたら自分が殺されかねない状況を思い出したのか、若干手遅れな気もするシリアスな顔をした。
「少し長い話になるけど、いいかしら?」
Dは黙って頷き、先を促した。意を決したルイズの唇が開く。淡い桜色に染めた珊瑚細工の様な唇は、死を覚悟する事で一層美しさを増していた。
「私、貴方使イ魔呼ンダ。私、貴方ノ主人」
びびって片言だった。しかも省きも省いたりな内容だ。ルイズ、ここ一番で空気の読めない子であった。
だってホントの事言ったらどうなるか分からないんだもん、怖いんだもん、女の子だもん、とルイズは心の中でマジ泣きしていた。
「短いわい」
「なに、その声?」
自分の口調は棚に上げて、ルイズは聞こえてきた老人の声に眉を寄せる。若者の張りの中に鋼の響きと錆を孕んでいたDの声とは、聞き間違えようの無い声である。これは無論Dの左手に宿る老人だ。
ルイズの疑惑に答えはせず、今度は影を帯びた青年の風貌に相応しい声がルイズの心臓を射抜いた。
296 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:20:12 ID:p9Sc89L3
「きちんと答えろ」
「ひう、は、はい。実は……」
ルイズは一言ごとに自分が死刑台への階段を踏んでいるようで、まるで生きた心地がしなかった。かといって下手に誤魔化しを口にしようものなら、その場で体を真っ二つにされかねないのだから、選択肢など元からない。
ルイズは、はやくもこの使い魔を召喚した事を後悔しつつあった。
――あ、なんか胃に穴が開きそう。
なんとか、ルイズがDを召喚した事実を伝え終えたとき、
ルイズは自分の髪が全部白髪になっているではないかと疑ったほどだ。
Dは開口一番、
「戻る方法は?」
「わ、わからないわ。普通、人間が呼び出されることなんてないから、そのまま使い魔として扱うし、使い魔の契約は使い魔が死なない限りは解除されないのよ」
「では、契約者が死んだ時は?」
「そ、それは」
見る見るうちにルイズの血色のよい顔から抜けて行く血の気。瞬く間に顔色を死人の色へと変えたルイズは、目の前の青年が必要とあれば殺す事も厭わないのだと、悟った。
――あ、私死んだ。これは殺されるわ。
死への恐怖に涙をぽろぽろ流し始めてしゃくりあげるルイズを見てから、Dは無言で立ち上がった。びくり、とルイズの小柄な体が跳ねた。えう、と嗚咽を漏らし、せめて痛くないと良いな、優しくしてくれるかしら? と思いながら眼を閉じた。
何にも出来ずに終わる。ずっと馬鹿にされて、ずっと憐れまれて、ずっと悲しませて、ずっと失望させ続けてきた人生が、今、自分が呼び出した使い魔によって幕を引く。それはそれで、ゼロの自分には相応しいと思えた。
ぎゅ〜と眉を寄せて瞼を閉じていたルイズに、Dの声が届く。
「この学院の責任者の所へ案内してもらおう」
「……え? あ、あの私を殺……」
「早くしろ」
「はは、はい!」
背に鉄筋でも通したみたいにあわあわと立ち上がり、ルイズはDを魔法学院の最高責任者オールド・オスマンの所へ案内すべく動き始めた。生命が助かった安堵も、新たな緊張に即刻引き締められ、ちっとも気が楽にならない。
ルイズがきびきびとドアを開けて歩きはじめてからその後を追うDに、左手からこんな声が聞こえてきた。
「お前にしてはずいぶん優しい反応じゃな。左手の甲に浮かんでいるルーンから精神干渉がさっきから来とるが、この程度で靡くようなやわな心でもあるまいに」
寝ている間にルイズによって交わされた契約によって刻まれた左手のルーン。一般に人間との意思疎通が難しい幻獣や動物の類を、主人に従順に従う存在に変える為に、使い魔のルーンには使い魔の知能向上のほかに親しみや忠誠心を抱かせる効能もある。
最終的には思考が主人と同一化するという、ある種と残酷極まりない洗脳効果もあるのだが、Dも過去に都市の住人全員を千分の一秒で発狂死させる精神攻撃を破った男、そう簡単に心は操れぬようだ。
「ずいぶん遠くに招かれたようなのでな」
「衣食住と情報源の確保か。しかし、青色と紅色の親子月か。貴族の手が伸びた外宇宙にもこんな衛星の記録はなかったわい。となるとさらに外側の宇宙か、別次元か。やれやれ、厄介なのは毎度の事じゃが、今回はいつにもまして面倒じゃわい」
Dの視線は、廊下の窓から覗く蒼と紅の二つの月を見つめていた。
そして学院長室にルイズとDは到着し、まだ執務中だったオールド・オスマンに会う事が出来た。
オールド・オスマンは齢三百歳を超えるトリステイン最強のメイジ、と謳われる事もある大御所なのだが、入学式の時にフライを唱え損ねて死に掛けたのを目の当たりにした事があるから、ルイズはさほど尊敬できずにいる。
ノックの音から間もなくオスマンから入室の許可がお降りた。夜中にアポイントを取らずの急な訪問であったが、オスマンの返答は穏やかな声だったので、ルイズは少し安堵した。
扉を開いた向こうには、白く変わった髪とひげを長く伸ばし、ゆったりとしたローブに身を包んだオールド・オスマンが椅子に腰かけて待っていた。動かしていた羽根ペンを止めて、入室者を見つめる。
「このような時間になんの様じゃね? ミス・ヴァリエールと…………」
ルイズの傍らに立つDを見て、机の上でクッキーをかじっていたネズミの使い魔ソートモグニル共々ぽかん、と口を開けて固まる。
自分の使い魔に対する反応に、ルイズは奇妙な優越感を感じてかすかに口元を緩めた。自分も同じ目に遭っていたのだが、それが他人も同様と知って嬉しいらしい。
297 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:21:24 ID:p9Sc89L3
たっぷりと一分かけてオスマンが現実世界に復帰してから、Dが一歩前に出て口を開いた。オスマンも、Dの体からかすかに立ち上る尋常ならざる気配を前に、二度と我を失う様子はなく、生ける伝説に相応しい威厳でDと対峙した。
そうそうに用件を口にし、使い魔の契約の解除とも元いた場所への返還手段を訪ねた。オスマンは長いひげをしごきながら黙ってDの話を聞いていた。使い魔の契約を解除してくれ、などと使い魔の側から言われたのは初めての事だろう。
「おれはある男を捜さねばならん」
「ふう、む。しかし君には悪いが使い魔を帰す魔法はわしの知る限り存在せんのじゃよ。君の事情とやらもなにかただ事ではないと分かるが、帰してやろうにも帰し方が分からぬのじゃ。
どうじゃね? ミス・ヴァリエールの使い魔が不満と言うなら、護衛の傭兵と言う触れ込みでしばらく暮らしてみては? 住めば都と言うてなあ、君ほど美しければ嫁さんもいくらでも……」
と、そこまで諭すように口を開いていたオスマンの口を止めたのは、Dの気配に死神の携える鎌を思わせる冷酷なモノが混じっていたからだ。これまでの人生で多くの大剣をしてきたオスマンからしても、一瞬死を覚悟せざるをえぬ鬼気。
それを止めたのは二人のやり取りを見守っていたルイズだった。
「やめて! 貴方を呼んだのは私よ。私が召喚した所為で貴方に迷惑をかけたというのなら、私が償うわ。ここには大陸中の魔法関係の書物を集めた図書室もあるから、情報もたくさんあるわ。
貴方の食事とかの世話も私の責任で見ます。貴方を元の場所に帰す方法も探します。怒りが収まらないというのなら私を斬っても構わない。だから!」
一人の少女の懇願をどう受け取ったか、Dはしばし自分をまっすぐ見つめるルイズを見返していた。左手のルーンがかすかに輝いていたが、それはDの心に影響を及ぼす事がないのは、すでに明かされている。
「口にしたからには守ってもらうぞ」
「はい。貴族の誇りに掛けて」
ルイズの口にした貴族と言う言葉に、Dはかすかに苦笑めいた影を這わせたが、それをルイズやオスマンに悟らせる間もなく消し去り、踵を返した。
どうやら矛を収めてくれたらしい、とルイズとオスマンが気づいたのは、Dが院長室の扉に手を駆けた時だった。
「ま、待って。ええっと……」
「Dだ」
「あ、ディ、D? Dが貴方の名前なの?」
「そうなるな」
ようやく使い魔都の名前を知る事が出来た事の喜びに弾むルイズの声が、二人の主従共々消えてから、オスマンは深く長い溜息をそろそろと吐き出した。一気に何十歳分も年を取ったような気分であった。
「なんとまあ、ミス・ヴァリエールはとんでもないものを召喚したものじゃ。まだこちらの言い分を聞いてくれるから救いが無いわけではないが。こりゃ『転校生』を呼ぶ事も視野に入れた方がいいかの?」
298 :
ゼロの魔王伝:2009/01/02(金) 20:22:23 ID:p9Sc89L3
オールド・オスマンの呟きは知らず、Dとルイズは再びルイズの部屋に戻り、緊張に満たされた世界で対峙していた。
ルイズはベッドの上に、Dは窓際に背を預けて腕を組み、黙って目を閉ざしている。部屋に戻って以来言葉の一つもない。シーツをぎゅっと握り締めてもじもじしていたルイズが、何度目になるか分からない覚悟を決めて口を開いた。
「あ、あの」
「……」
「えっと、D? あのね、一応使い魔の役割を説明しようとおもんだけど」
「……」
「い、いい? まず主人の目となり耳となって、視覚や聴覚を共有するのだけど」
Dの首がほんとうにかすかに横に振られた。まあ、確かに同じものは見えていないので、ルイズも同意する。今の所Dの導火線に着火するような真似はしないで済んでいるようだ。早く終わらせないと私の神経が持たない、と判断したルイズは一気にまくし立てた。
「あとは秘薬なんかを探してきたりするの。ポーションやマジックアイテムの作成の時に必要だから。それと特にこれが重要なんだけど主人の身を守る事、これ、これ大切よ」
「世話になる間は君の身は守ろう」
「ほ、ほんと?」
「嘘を言っても仕方あるまい。だが、おれを帰す魔法の調査は約束通り行ってもらおう」
「は、はい!」
「もう眠れ。明日は授業なのだろう?」
「そう、だけど」
「なんだ?」
そんなまともな事を言われるとは思わなかった、と口にする勇気はルイズにはなかった。ぶんぶんと壊れた人形みたいに何度も首を縦に振る。
雰囲気はやたらと怖いけど、わりとまとも? とルイズは一縷の希望に縋る様な感想を抱いた。そうだったらいいなーというかそうであって欲しいなー、と痛切に願う。
ルイズはもう色々と疲れすぎて着替えるのが面倒になってしまい、そのままベッドに倒れて眠ってしまった。
Dは、その様子を黙って見守っていた。
終了です。ふつうはこれが一話だなー、と今更後悔しております。
ちょっと待て、『転校生』が存在するのかよ!
『転校生』って、魔界のような学園に転校する奴のことなんだろうか?
少年チャンピオンに連載されていた漫画の方ならそれで間違いないんだろうけど
他に『転校生』が出てくる作品ってあったかな?
あの作品も十傑集並みの能力を持った学生がゴロゴロ出てきてたなw
>>302 これはナイスな支援絵だ。雰囲気出てるなあw
魔王の人乙
なんかもうね、美の表現だけで遅々として進まんわー!
と思いながらしっかり読ませるパワーがあるのがすごいw
心苦しいけど、地の文章が良いだけに目立つ誤字の抽出
>292
期待の結婚詐欺師
>297
人生で多くの大剣
ようやく使い魔都の名前
以上、今後も頑張って下さい
じゃあ炎の転校生で。
転校生の統原ムリョウくんを召喚
ハルケギニア終了にはならないから問題ないよね
じゃあ炎の孕ませ転校生で
「ここが今日からオレの通うトリステイン魔法学院か……」
彼の名はノボル・ド・タキザワ!
タキザワ子爵家の長男だ!
彼が学院に向けて一歩を踏み出したとき!
突然に彼の足元が爆発した!
「立ちなさい!遅刻者!」
「私はルイズ!人呼んで【週番のルイズ】!」
うん、続きかける気がしねえや。
隼人クル――――――――!!!
あれのヒロインも全体的に薄くて細かったなような。
葉隠覚悟「校舎に礼」
しかし『転校生』ってどうみても見た目平民だがどう対応されるんだろうな
人を超える美形でもないし
イザナギイザナミ殺すほどの力をもってるから戦えば一発だが
やはり五体バラバラで箱に入った状態で登場するんだろうか
「先生が死ねといったら死ぬの?!」
・
・
・
・
「先生がタバサと結婚しろと言ったらするの!?」
そのセリフはノボルを追い詰めたかのように見えた。
しかし。
「する……」
「え?」
「結婚、する!」
ノボルは息を吹き返し、雄雄しく叫んだのだ!
「タバサとだったら結婚するぞ!」
個々のシーンは思いついてもねえ。
「ノボル」が目に入った瞬間、ヤマグチノボル氏が召喚されたのかと思った
ギーシュあたりが殺虫パンチを使うのですね。わかります。
転校生呼ぶならミス・ヴァージンもどっかで出てきて欲しいな
しかし馬鹿なことかいてたら気になった。
これだと、ノボルの父親が教師「ミスタ・ワザキタ」として赴任してたりしなくてはならん。
サブロウ・ド・イブキはタバサのことが好きだが、エレオノールを見るとそっちに鞍替えするかも知れん。
「ミス・タバサは魅力的だ!しかし、彼女は若い。この先、オレの大好きな平らな胸が大きくなってしまうかも知れん!
しかし、ミス・ヴァリエールの姉君は○○歳!
この先成長する恐れは無い!」
とか言って。
魔王の人乙
『転校生』は一晩の夢のために戦うんだったかな。
つまり、全てが終わったあと、ジョゼフやシェフィールドが教師をやっててヴィっトーリオが生徒会長をやってる学園物な夢を見てEND。
氷雪ではなく冬のタバサですねわかります
>>318 「私の名はX仮面! 無意味な戦いはおやめなさいっ!」
「止めないでっ! ちいねえさまはコイツの暗黒流れ星にやられたのよ! だから、わたしはちいねえさまの仇を討たなきゃいけないのっ!」
「おちつきなさいっ、少女よ! あなたがそんなことをして、あなたの姉は喜ぶのですか!?」
「喜ぶわっ! 自分が手を出さずに、自分の仇がやられるんですもの! ちいねえさまはスキップして喜ぶに決まってるでしょう!」
(そ…そーゆー風に姉を…え…X仮面は…X仮面は悲しいわよっ!)
こうですか? わかりません!
魔王伝の人乙です!
「菊池先生があのゼロスレに興味を持ったようです」という言葉が思い浮かんでしまいそうな程の
濃厚かつ繊細な描写に毎度の事見入ってしまいますねぇ。
『転校生』までいるのかw
続きが楽しみすぎる
>>302 遅らばせながら支援絵乙!
プリセラも髪ピンクだからルイズの姉妹みたいだw
魔王伝の方、乙っす!
それにしても、ルイズ……恐ろしい子ッ!!
次回も楽しみにしております。
魔王伝の人乙です。
『転校生』てw
もうwktkが止まらないw
次回に超wktk。
329 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/03(土) 00:00:12 ID:M1wtKZi3
ではお言葉に甘えて投下します。
時空のハザマ悪有漢 バキゴスドバ暗殺者(ばばあ!添加物様にはちかづきせんぞ!)
ババロア「ええいどけい必ず秘密をあばいてやるぞ」暗殺者(そうはさせるかしねえ)
ババロア「くやるなワープだ「ぽわわーん暗殺者「まてえばあば!」
人間の世界の森
おやじ(とうさんは森のよごれを調べてくるからな。たかしはここで休んでなさい、)
???「ここはどこじゃ?」暗殺者(ばばあ見っけたぜ!)しつこいのまだやるか?バスガス
ババロア「まきぞえはぜせん!ここは退散じゃ暗殺者「そうはさせんぞどがーん
ババロア「うわあいかん!魔法が暴走するぞい!ぴきゅいーん
異次元の世界???「うう何とか戻れたか頼む森へ連れてってくれ?」
おんぶしてあげますか?
はい
⇒いいえ
???「えちょw
たかしは光る鏡にすいこまれた・・・・・・ つづく
現在の主人公の状態です
たかしレベル1HP15/15MP0/0
けいけんち〇 次のレベルまで4ポイント
もちきん〇ソルト
つよさ8しゅび3すばやさ3
ぶき果物ナイフテンガロンハットよろいふだんぎたてなし
せっとまほう上なし左なし右なし下なし
>>326 プリセラは19歳で止まってるから、さしずめルイズとカトレアの間にもうひとり姉妹がいたら、みたいな感じだなw
乙
>>319 報酬は「三日間」。
これは魔人学園での話。ただし魔人学園では「転校生」は傭兵なようなもので、特別なのは主人公一人だけ。
魔界学園の方では「転校生」はみんな次元の果てから現れる存在だった。
最後のほうは打ち切りくさいちょう展開だったので報酬は「君の笑顔だ」とかいって去ってたけど。
……しかし、この分だとスーパー菊地大戦に突入してしまいそうだな……。
というか、Dとすぐに話せるオスマンがさりげにスゲェw
>>335 >スーパー菊地大戦
ハルキゲニアが何個あっても足りねーw
大ちゃん辺りならまだ人間の範疇だが・・・
来たら来たで一番おいしいところは絶対彼にかっさらわれるw
魔界学園の名古屋が聖地と繋がってるとかもアリかもしれん
転校生魔戒十条って何条まで出たっけか
最終回で第十条がでたのは覚えてるが
木刀『阿修羅』を持ったチャクラ使いが呼ばれんかなあ
人修羅がなんだって?
阿修羅ったらスッポンポンで登場した鬼神だろ
スッ
折角だから呪刀『破修羅』持った超人を。
sが半角になってないんだぜ?
刀ということで七剣邪……
ソードブレイカーネタは古すぎて誰も知らんか
魔王伝の方お疲れ様です
今回はルイズサイドという事で、お茶目な描写をふんだんに交えた演出お見事でした
思うように引っかかり、にやにやしてしまっています
D、魔界医師、吸血姫、幻斗に加えて転校生とかもう、ああ、感動が止まらない……
剣ネタか?
だったら鬼切丸もった角の無い鬼を呼んで
ハルケギニア中鬼だらけにしてくれよ
刃鳴(ry
ティトゥスを召還して修羅道をですね
……拙い、鉄拳執事みたいにやりがいのある相手居ないから渇きがヤバイレベルに...
後はあやかしびとから坊さん喚ぶとか
弟のがやりやすそうでは有るんだけどね、快楽主義だし
>>346 それルイズとタバサが鬼化フラグ建っちまいそうだうよ
あと(嫉妬で)エレオノールもか
>>344 最後にピピッとやってくれないと、ピッっとできないじゃないか!
>>350 果たして人間に戻ったブシドーなのかアンチクロスのままのブシドーなのかで分かれるな
The Witcherから白狼ことゲラルトを召還……
契約すら出来無さそうだし使い魔になってもさっさと逃げるから無理か。
最終兵器彼女からシュウちゃんのみを召還。
終盤辺りになってシュウちゃん探しにやってきた最終形態ちせが
宇宙からアルビオンに…
だめだ。みんな死ぬ
>>356 どっちみち世界の支配者になったり生命の創造ができたりするレベルじゃねえか
名古屋と繋がってる聖地ってのもやだなw
エビフライだらけなのか
魔王伝スゲェおもしろいんだが、なんか壮大過ぎて心配になってきた。
無理せず続けてくださいませ。
>>353 魔人ブシドー→強さこそ総て
ルイズが契約しようとした時点で剣気と鬼気解放して全員殺しかねない
人ブシドー→人間だからすぐ殺しはしないだろうけど契約には応じない
進級がかかっていると言われても多分無駄
……あれ、
どっちみち契約出来なくね?
某所に十六夜京也召喚、あったな。
「あははは、ホントに平民を召喚したのね! そこの貴方、お名前は?」
「オレ?オレは平g「貴族の奴隷・哀れで卑しい犬ッコロよ」……ってなんだよ!」
椎名百貨店?
椎名百貨店ネタかあ。
こんなのはどうか。
オスマン学院長が生徒全員を集め、その前で話し始めました。
「本日は、皆さんに残念なお知らせがあります」
そのあまりに沈痛な声音に、ギーシュもサイトも、何があったのかと身を乗り出しました。
オスマン氏は話を続けます。
「実は……
我が学院は……男子校です!」
>>364 メイドは女子ですよねえ?
さりげなくトイレットペーパーの端を三角に折ってしまうサイトにワラタ
>>364 それ漫画知らないとどういう意味かわかんないかも、自分はわかったから笑えたけどw
ちょっとまて、今いる女子は全部オカマだったとか言う落ちか!?
イグザクトリー。
無論、ルイズも……
ルイズならなんとかなりそうな気がしないでもない
ぺったんこ的な意味で
タバサはふたなりっ娘。
ガチで。
予定がなければ11時くらいにゼロのヒットマン 02話を投下します。
ふおお、フォーティーセブン?!支援支援
ふたなりはかんべん
「あっ、獄寺に頼みたいことがあったわ。」
「用件はなんだよ。」
「獄寺、あんたにやってもらうのはこれよ。」
獄寺はルイズの後をついてゆく、その先にはルイズの洋服と下着がある。
「まさか俺に洗濯をやれと言うのかよ。」
「そうよ。」
「ふざけんじゃねぇ!てめーのモンくらいてめーでやれよ!それに俺洗濯やったことねーんだよ。」
「あんたは私の使い魔なの!だから主人の言う事は聞く!それに私と一緒に元の世界に帰る方法を探すんでしょ。」
「分かったよ、やりゃーいいんだろやりゃ。」
仕方なく獄寺はルイズの洗濯物を持って外へ出た。
「これ結構重てーな。うわっ!」
「きゃっ!」
獄寺はバランスを崩し、近くにいたメイドにぶつかった。それと共にルイズの洗濯物も散らばる。
「痛てーな、おめーも気をつけろよ」
「すいません。私も外で洗濯をしようと思ったので。あなたの方こそ大丈夫ですか?」
「当たりめーだ。俺はこの程度で怪我をしたりしねーよ。」
「あなたって、ミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」
「ああそうだぜ。俺は訳あってルイズの使い魔になった獄寺隼人だ。おめーの名前はなんていうんだよ。」
「私ですか?私はここの魔法学校でメイドをしているシエスタと申します。それにしても洗濯物散らかりましたね、私も拾うの手伝っていいですか。」
「助かるぜ、ルイズの奴俺をこき使いやがるからな。」
「いいんですか、貴族を呼び捨てで呼んでて。」
「いいんだよ。貴族だろーが何だろーが、俺はルイズって呼んでんだ。」
そう言うとシエスタは喜びの笑顔を浮かべた。
「すごいですね!獄寺さんは貴族に媚びたり、諂ったりしない立派な姿勢!尊敬します!」
そして散らばった洗濯物をシエスタと一緒に集め始める。獄寺が洗濯物に手をやった瞬間、
同時にシエスタの手も獄寺の手元にある洗濯物に近き、そして獄寺とシエスタの手が触れ合った。
「あっ、すいません。」
「この程度で動揺すんな。さっさと片付けるぞ。」
シエスタは顔を真っ赤にしながら言った。
「はい。」
その後、水場に着いた2人は洗濯を始める。
しかし獄寺は戸惑っている。
「おいシエスタ、俺洗濯の仕方分かんねーんだ。さっさと片付けないとルイズの奴・・・ ・・・」
獄寺の頭の中に鬼ルイズのような形相が浮かんだ。
「洗濯の仕方なら私が教えますから安心して下さい。」
シエスタに洗濯を教わりながら獄寺は慣れない手つきで洗濯を始め、洗濯が終わったあとは部屋に戻って
獄寺はルイズの着替えを手伝う。
その後、獄寺とルイズは食堂についた。既に食堂は生徒達で賑わっている。
「ここで飯が食えんのかルイズ。」
「そうよ。だけどあんたのご飯はあっちよ。」
ルイズが指を向けた先には固いパンと質素なスープが並んであった。
獄寺は不満な表情を浮かべる。
「ふざけんじゃねぇ!俺にこんな朝食を食わせる気か!」
「平民のあんたが『アルヴィースの食堂』で食事ができる事だけでも感謝することなんだからね!」
「少しぐらい、飯よこせー!」
獄寺はルイズに飛びついてきた、しかしルイズは獄寺を跳ね返した。
仕方なく獄寺は固いパンと質素なスープを口にした。
「ちくしょう、なんで俺がこんな飯食わなきゃいけねぇんだよ。」
その一方獄寺の近くでなにやら生徒達が会話しているようです。
「ギーシュ、お前誰と付き合ってんだよ」
「付き合うって、僕にそんな特定の彼女なんて〜」
ギーシュと生徒の会話が気になって獄寺は近くに行く、するとギーシュのポケットから香水が落ち、獄寺はそれを拾い上げて
それをギーシュに渡す。
「おい、てめーのポケットからこれ落としたぜ。」
その香水の瓶に気づいたギーシュの友人達が騒ぎ始める。
「ギーシュ、お前二股かけてたなんて最低だな。」
そこから二股がばれたギーシュは・・・
「君が僕に香水を渡したせいで、二股がばれてしぱったよ。」
「ふざけんな!二股かけてたのはてめーだろ!ばれたら俺のせいにするのかよ!」
「この貴族である僕に向かってそんな態度をとるなんて、外に出ろ!僕が貴族に対する礼儀を教えてやろう。」
「やってやろうじゃねぇか、その勝負受けてたつぜ!」
ギーシュが外に出た後、ルイズが後ろから駆け寄ってきた。
「何やってんのよ!さっさと決闘なんてやめなさい!」
「うるせぇな、俺は売られた喧嘩は買う主義なんだよ。それに俺はあんな二股ヤローには負けねーから。」
早速広場にて決闘が始まる。決闘が始まると同時にギーシュはゴーレムを出す。
「僕はメイジだ、だから魔法で勝負する。『青銅』のゴーレム、ワルキューレが相手になるよ。」
「その程度のゴーレムなんてぶっ壊してやるよ。」
ワルキューレは獄寺に近づき、拳を繰り出すも獄寺は易々とかわしてくのであった。
「その程度じゃ俺は倒せねーぜ。喰らえ!2倍ボム!」
大量のダイナマイトがワルキューレに降り注ぎ、ダイナマイトがワルキューレの近くで爆発した。
広場に大きな煙が巻き上がった。そして煙が消えていくと、そこにはバラバラになったワルキューレの姿があった。
「そんな・・・ 僕のワルキューレが敗れるなんて・・・」
「これで分かっただろ。おめーじゃ俺には勝てないって。」
獄寺はポケットからダイナマイトを取り出し、ギーシュに向けて放とうとする。その時ルイズが獄寺に向かって飛び出してきた。
「やめて!獄寺!」
「何だよ、勝負の邪魔すんじゃねーよ!」
「もしギーシュがそれで大怪我でもしたら、ギーシュの家の人だって黙ってないし、それにギーシュはクラスメイトだし、
とにかくそれをギーシュに放つのだけはやめて!」
「分かったよ。だけど俺はあの二股ヤローと話しがしてーんだ。いいか。」
獄寺はルイズにそう伝えると、ギーシュに近づいた。
「おいそこの二股ヤロー、二度とみっともねぇ真似すんなよ!」
「分かったよ。今回は僕の負けだね。」
獄寺はそう言うと、広場へと戻る。
「ルイズの使い魔の平民、ギーシュに勝っちまうなんて。」
「あの平民強いなぁ、俺だったら戦いたくないぜ。」
「あ、いたいた、獄寺さん。」
そう言いながらシエスタが獄寺に向かってきた
「どうしたんだよ、シエスタ。」
「昼間の決闘見ましたよ!ビックリです。貴族を倒してしまうなんて。」
「当たりめーだ。俺があいつに負けるとでも思ってんのか。」
「いえいえ、とんでもございません。そういえば厨房のみんなで祝勝パーティを開くんです。それで獄寺さんを探してたんですよ。
早く行きましょう。みんな待ってますよ。」
シエスタは獄寺の腕を引っ張っていき、厨房に連れて行く。
その夜、厨房では獄寺の祝勝パーティが行われていた。
「いやぁー昼間の決闘は驚いたねぇ、俺、見たよ!貴族と決闘して負かす平民がいるなんて感動だよ。」
厨房に入ると、コック長のマルトーが獄寺を歓迎している。
以上でゼロのヒットマン 02話の投下を終了します。
ゴミはゴミ箱に捨てましょう
(・ω・)
いつぞやのレボリューションと同じにおいがするぜ・・・・
相変わらず薬品の試験紙みたいな連中がおるな
ノノノノノ
( ○○) ・・・。
(||||)
それは、毒吐きで語るべきこと。
どんなに下手でも、下手であることを理由に叩いてはいけません。
自分の作品に自身が無い良作の人がこなくなって
面の皮の厚いバカばかりになったらやでしょ?
普通の作者なら、読み返して誤字脱字がないか
口調、人称、視点が統一されているか
文がおかしくないかを見て
会話文ばかり続いてたりしたら修正して
それで何度直しても、自信はもてないものだと思ふ。
>>382 男のリトマス試験紙ことスタローンのことかー!!
乙
>>384 見るたびに修正して、収拾つかなくなる時はあるね。
1日あけて、3日あけて、1週間あけて、って間隔延ばす度に、
誤字・脱字は完璧になっても、
ここの表現はこっちの方がいいな、とか、ここの台詞はこうした方が合ってるなとか。
>384は気の効いた遠まわしな皮肉だと思ってる
>>365 俺はオカマになんかならないぜ、といいつつじわりと汚染されてる才人ですね、わかります。
Dr.椎名の教育的指導!はオカマネタ多いよな。
>>387 そして投下した後に「しまった、よくよく考えてみれば、こうしておけば良かった!」と後悔するわけだな。
……難しいぜ……。
>>388 いや、遠まわしに見せかけて遠まわしじゃないぞw
誰でも書いているうちに技量は上がってくものだよ。
お正月の使い魔といえば、よし、正月仮面を召喚だ。
あ、もういるか。
>>392 お正月の使い魔という単語で半熟英雄のあけまつ&おめでとりしか思い浮かばなかった
SS書くのに時間かかりすぎると、
書いてるうちに何度も読み直すから自分の作品を読み飽きてしまい
これでおもしろいんだろうか?と内容に不安を覚える時がある
最低条件として、少なくとも「自分がある程度面白いと思える」ってのはある。
そして自分が力を込めた部分が割とスルーされて、意図せずにサラッと書いた部分が意外にウケたりするのだw
あんまり「ここがおもしろいんだぜ!」とばかりに強調されるとかえって白けることはあるな
感じるからって同じところばかり愛撫されると痛くなるのに似ている
下手だろうなんだろうと別に良いんじゃないかなと思うけどね。
書き手が楽しみつつも一生懸命頭を捻って生み出した作品に
ケチをつける気にはちょっとなれないなぁ…。
作者氏にはゼロのガンパレードよろしく「それがどうした!」の精神で
自分なりに趣味を楽しんでいけば良いと思うよ。
叩く奴は何をどうしても叩くからな
対応するだけ無駄
という訳でこのスレはアドバイス禁止になりました。
叩いても良いが叩いても作者を伸ばす叩き方にしろよと思うな
何故かしら叩き潰そうとする人間が多いが
それで潰れるやつはそこまでだと厨な事を考えてそうだな
403 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/03(土) 16:59:49 ID:7Oxjy516
まとめに型月ものらしいのがあったんだが大丈夫なのか?
既に削除要請が出てる
>>340 阿修羅かあ
>教皇よ! 鰤見るに会え!
少年と呼んだほうがむしろふさわしい引きしまった精悍な肉づきと、それに似つかわしい澄んだ、黒いややきついまなざしが、教皇の心をとらえた。
「あしゅら王に問いたい」
すまん、アシュラと聞くとどうしても首ポーンな幼女が
浮かんできてしまう俺は多分若くない
マジンガーZのあしゅら男爵
孔雀王の阿修羅
らんまのルージュ(水をかぶると阿修羅に変身)
阿修羅原を連想した
年ばれる
>アシュラ
やっぱ〇肉を食べちゃう描写がある作品は非難所逝きでしょうか?
ぬっ…大事なのが挙げられてない気が…
アシュラマン
腕が六本あって顔面が三つあったら流石に亜人扱いもされずに化け物呼ばわりだろうな
ハルケギニアに行ったら、竜巻地獄にアレンジ加えて
氷の粒や砂の粒に炎何かを混ぜてくれそうだぜ!
メイジの腕を頂いて魔法を使ったりとかw
化け物呼ばわりどころか見た瞬間にダッシュで逃げるかもしれん
>413
そこはツープラトン攻撃にするんだ
せっかく丑年だからバッファローマンをだな
アシュラマンって、なにげにトラウマだらけだぞ。
>>415 やっぱりそうですよね。
サンシャイン当たりが粉微塵になれば良いかな?
とりあえず強敵には今まで相手が同じ超人なら標準装備なせいで意味のなかったこれだな
巨大化
光線技もねー
丑年か……
グランディア2からミレーニアを召喚
キュルケと競争しそうだよな
そして、ルイズの胃に穴が開きそうだw
フェイトちゃん9歳を召喚・・・
『あ、あんた馬鹿じゃないの!?
き、貴族の娘が、そ、そんな淫らな格好してお母様は何も言わないのかしら!?』
なぜかキュルケには感心される。
>>422 あの格好は淫らってほどじゃねーだろww
>>421 牛といえばグランディア1からミルダ。
ダーリンに会えないとわかってブチ切れ大暴走で収拾つかず。
あけましておめでとうございます。
18:40からキュルケフラグが立ったりルイズとアプトムがお買い物に出かける話を投下しようと思います。
>丑年
おっぱい大きくて頼れそうなお姉さんを召喚しろということですね?
宇宙海賊サラとかいいんでね。おっぱい大きいし剣の腕前(ライ○セー○ー)も強い。
っつか誰も知らんか。ブラックlilithの作品なんて。
>422
フェイトそん19歳ソニックフォームだろ。
まぁ9歳の頃からお尻丸出しで戦ってたわけだけどさ…
>426
しかしすぐアへる
だって沙悟荘なんだもん…
「休みをくれ」
彼女の使い魔がそんな事を言い出したのは、彼が召喚されて来てから一週間ほどの時が過ぎた、ある夕暮れの図書室であった。
「なんで?」
ルイズが首を傾げるのも当然のことであろう。使い魔は主であるメイジと一生を共にする存在であるが、別に四十六時中一緒にいるわけで
はない。
特に、学生が主である場合、主が授業に出ている間、大抵の使い魔は好きに時間を潰しているものであり、それはアプトムも例外ではない。
ルイズとしては、授業中も一緒にいてほしいと考えているのだが、この偉そうなくせに大抵の要求には従ってくれる男に、「授業に使い魔
を連れて行かなくてはならない義務があるわけでもないだろう」と言われると沈黙するしかない。
使い魔を召喚して最初の授業では、誰がどの使い魔を持ったのかを他の生徒や教師に知らせるためのお披露目として授業に連れて行くこと
を半ば義務付けられているが、その後の授業では、邪魔になるので連れて行かないの生徒は多い。
考えてみるといい。教室に、虎くらいの大きさのトカゲが鎮座して、大蛇がトグロを巻き、大きな目玉がふよふよ浮いていて窓の外からド
ラゴンが教室を覗いていたりしたら目障りだし。使い魔のルーンの影響で知能が高くなっていても、本質は野生の獣たちだ。毎日意味もなく
大人しくしていられるものばかりではない。
付け加えるなら、同じ教室にはカエルを使い魔にしたメイジと、カエルが嫌いなメイジがいる。というような例もある。
よって、主が授業に出ている間、多くの使い魔には自由時間が与えられていることになるわけで、そんな暇をもてあましている使い魔のは
ずの彼が、何故休みを欲しがるのかとルイズは思うのだが。
「決闘だなんだと周りが騒がしくてな……」
疲れた表情で言う彼に、「ああ、それは……」とルイズは納得する。
それは、アプトムがギーシュとの決闘に勝利した日の夜の出来事。
アプトムの勝利に狂喜したルイズであるが、寝不足且つ教室の片付けで肉体を酷使したルイズは、昼の授業を待たずして電池が切れた玩具
のようにパタリと倒れ、寝入ってしまっていた。
いやまあ、決闘が終わるまでに、とっくに昼休みは終わって授業が始まっていたのだが。
起きぬ主に暇をもてあまし、適当に部屋にある本を手に取り読めないことを確認し、そういえば言葉は通じているが、話している時の相手
の口の動きと聞こえてくる言葉が合ってなかったな。と思っているときに扉をノックする音が聞こえてきた。
誰が来たのか知らないが、この部屋の主は寝ているぞ。そう言おうと扉を開けて、アプトムは、そこに赤い巨大トカゲを確認した。
たしか、キュルケという女の使い魔だったなと、朝に食堂まで案内してくれた赤い髪の娘を思い出しながらトカゲの後ろを覗いてみるが誰
もいない。
なんの用だ?
聞いてみようかと思ったが、このトカゲが人語を解する知能を持っていたとしても、自分にトカゲの言葉が分かるはずもない。
どうしたものかと悩む暇も与えるつもりがないらしく、トカゲは服の袖をくわえると、ついて来いとばかりに引っ張りはじめた。
どこに? とは思わない。引っ張る方向を見ればキュルケの部屋があるのだから。
その部屋に、キュルケは下着だけの姿でいた。
「なんの用だ?」
先ほど、トカゲに言いかけた問いを放つと、キュルケは妖艶に笑う。
「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。あなたが、ギーシュを倒したときの姿……。それを見てね。あたし、あなたに恋をしたの」
妖しく笑うキュルケに、アプトムも笑みを浮かべる。
だが、それは自身を恋い慕うものに向ける笑みなどではない。自分を騙そうと見え透いた偽りを吐くものに向ける嘲笑。
「恋か。お前の眼は、俺を敵か味方かを見定めようとしているとしているようにしか見えないんだがな」
その言葉に、キュルケは笑みを消す。
その通りだ。キュルケは恋多きツェルプトーの娘だが、別に誰彼かまわず惚れるわけではない。
ギーシュに勝ったアプトムを見たときにキュルケが抱いた感情は、ルイズも中々良い使い魔を引き当てたものだなという感心。
それを変えたのは、隣に立って決闘を見ていた青い髪の親友の言葉。
「……人間じゃない」
ポツリと呟かれたその言葉を、キュルケは聞き逃さなかった。
それがどういう意味なのかと問い詰めた理由は、好奇心だとキュルケは考える。けっしてルイズが心配になったからなどではない。
問い詰めるキュルケへのタバサの答えは簡潔なもの。あの怪力は、たとえ魔法を使ってでも人間にはありえない。
肉体を駆使して戦うことのないメイジであり、狭い世界しか知らない学生である者たちでは見過ごしてしまう事実を少女は指摘する。よく
考えれば気づくことでも、平民が貴族に勝ったという驚きに目隠しされるそれ。
そして、あの使い魔はルイズに忠誠を誓ってなどいないと付け加える。
使い魔は皆、主であるメイジに対し親愛の情を持っている。それは、眼を見れば分かる。だが、あの男の眼ににそれはない。害意はない。
敵意もない。だが、好意もない。
一時的に雇った傭兵だと言うのなら、そんな人間を身近に置くのもいいだろう。だが、一生を共にする使い魔であることを考えるなら、そ
れは危険すぎる男。
そして、キュルケは決意する。自分があの使い魔を見定めようと。別にルイズがどうなろうと知ったことではないが、そんな危険な男がそ
ばにいるのは落ち着かないのだと自分に言い聞かせて。
そんなキュルケの思考を読んだわけでもないだろうが、男は「心配しなくていい」と笑う。
「俺は、ただ帰りたいだけだ。お前達にはなんの興味もないし、何かを企んでもいない」
まあ、信じるかどうかはお前の勝手だがな。と続ける男の言葉に偽りは感じない。だが、それは帰れるのなら、すぐにでもルイズを放り出
すという宣言でもある。
それは、この言葉に偽りがあれば、この男は敵。なければ、敵ではないかもしれないが味方ではない。そういう意味。
キュルケ・フォン・ツェルプトーは、この男を好きにはなれないと確信する。
だが、それを言ってみても意味は無い。この男はルイズの使い魔であり、ルイズの友人でもない自分が口を出す理由などないのだから。
「話は終わりか? なら部屋に戻らせてもらおう」
そういって男が踵を返そうとしたとき、窓から部屋に入ってくる者がいた。
「キュルケ……。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば、誰だその男は!?」
それは少年。恋多きキュルケの恋人の一人。逢引の約束をすっかり忘れていたキュルケは一瞬あっけにとられ。そして、いいことを思いつ
いたとニンマリ微笑した。
「あたしのダーリンよ。ごめんなさいねベリッソン。あなたとは、もう終わったの」
「なんだってーっ!」
そう叫んだのは、さらに別の声。新たに窓から飛び込んできた乱入者。
「どういうことなんだよ!」
「恋人はいないって言ってたじゃないか!」
続々と入ってくる少年達に、キュルケはアプトムを自分の恋人だと紹介し、彼らはアプトムを嫉妬の眼で睨みつけた。
正直、アプトムとしては馬鹿らしい事態でしかなかったので、その場はすぐに退散することにしたのだが。
翌朝の食堂で、キュルケはアプトムのことを『ダーリン』と呼んで擦り寄ってきた。もちろん本心の行動ではない。彼女は、徹底的にアプ
トムに嫌がらせをするつもりだった。
その行動に、昨夜の騒ぎを知らなかった『キュルケの恋人たち』は猛り。しかし、最初は冷静を装いキュルケを問い詰めた。キュルケが多
くの男性を『恋人』にしていることは、誰もが知っていたからである。
そんな彼らに、キュルケは「あなたたちとは、もう終わったの。もう、わたしには彼しか見えない」などと言ったものだから、その日から
多くの生徒達がアプトムに決闘を申し込むようになり。キュルケは「計画通り」と笑ったとかなんとか。
その際、ルイズが、どういうことかとアプトムを問い詰める一幕があったのは、キュルケには嬉しい誤算であった。もっとも、すぐに決闘
に名乗りを上げた『キュルケの恋人たち』のせいで、それ以上の進展はなく、決闘の後にすぐ誤解を解いてしまったのは不満であるが。
さて、決闘を申し込んでくるのは、大抵がドット、たまにラインクラスのメイジである。メイジとしてのランクが低く実戦経験もない彼ら
を、アプトムは危なげなく退けたのだが、勝ち方が拙かったらしい。
貴族の子供に怪我などさせては後が面倒だろうと、ギーシュとの決闘でやったように相手を傷つけないように勝利したのだが、負けても痛
い目に遭うことのなかった少年達は、何度敗北しても懲りずに再戦を申し込んでくる。アプトムが手加減していると分かる戦い方をしたのも、
彼らの屈辱感を煽ってしまうのに一役かっていたのだが。
ともあれ、多くの生徒に決闘を申し込まれる毎日にアプトムはウンザリしていた。
相手が、もう少しレベルの高いメイジなら、まだ丁度いい戦闘訓練だと思えたかもしれないが、教師は勿論、それなりに実力のある生徒な
どは、勝っても自慢にならない。負ければ大恥だ。と理解しているので平民に決闘を申し込んだりはしない。
「でも、休みをあげても、決闘を申し込んでくる生徒がいなくなるわけじゃないでしょ?」
それでは、意味がないだろうと思うルイズに、アプトムは行きたい所があると答える。
「いつまでも借りた服一枚で過ごすのもあれだろう。街に行って服を買いに行きたい」
言われてみて、使い魔が召喚されてきた日にコルベールから借りた服を、着替えることなくずっと着ていることを思い出す。
なるほど、洗濯もしないで着たきり、そのうえ連日の決闘で薄汚れた服をいつまでも着せているのは問題があるだろう。
ついでに言えば、ルイズが夜に床で寝るように命令しているせいもあるのだが、その辺はスルー。本人も文句はないようだし。
ちなみに、かつては秘密結社、今は世界を支配した巨大組織クロノスの脱走者であるアプトムは野宿なども日常茶飯事だったので、いまさ
ら床で寝るくらいで不満を感じたりはしない。
「でも、お金はどうするの?」
召喚した時点で全裸だった使い魔が、衣服を買う代金を持っているとは思えないので尋ねてみると、バイトでも探すと答えてくる。そのた
めにも休みが欲しいと。
アプトムのいう事はよく分かった。筋も通っている。だが、納得がいかない部分がある。欲しいものがあれば、まず主人である自分に相談
してみるのが筋ではなかろうか。頼まれたからといって何でもかんでも買ってやるつもりもないが、必要だと判断すればお金を惜しむつもり
はないのだから。
だから、ルイズはこう言う。
「そういうことなら、わたしが買ってあげるわ。明日は虚無の曜日だから、一緒に街に行きましょう」
「勉強は、いいのか?」
そう聞くのは、今もそうだが、授業が終わった後のルイズが図書室に籠もって魔法を成功させる方法を模索しているから。ルイズが、休日
だからといって、それを怠るつもりがなかったことを知っている。
「大丈夫。それにアプトムがいないと、高いところにある本が取れなくて効率が悪いし」
見回すと、図書室には30メイルもの高さのある本棚が並んでいる。レビテーションの魔法が使えないルイズの手が届かない所にある本を、
アプトムは特に苦労もなく昇り、必要な本を持ってきてくれる。そのアプトムなしでは、はかどらないとルイズは答え。確かにな。とアプト
ムは思うのだった。
虚無の曜日は、地球で言えば日曜日である。ので、トリステイン魔法学院でも休日となっていて、この日は授業がない。
休日の過ごし方は、生徒によって様々である。自堕落な生徒などは、昼近くまで寝ているし、勤勉な生徒は朝早くから起きて予習復習を始
めたりもする。
さて、ルイズはどちらかと言うと勤勉な生徒に該当するが、二度寝を愛する彼女は早起きなどしない。
とはいえ、昼まで寝ているという事もなく目を覚ましたルイズは、アプトムに着替えを手伝わせて食堂に行き朝食を済ませた後、自分の分
とアプトムの分の二頭の馬を借りてくる。
街までは馬に乗っても三時間、徒歩なら倍以上は時間がかかるのだから、これは当然の用意なのだが、この時になってアプトムは信じられ
ない事を言ってきた。
馬に乗れない。というか乗ったことがないと言うのだ。
貴族であるルイズにとって乗馬はできて当たり前のものなので、アプトムの答えは想定外のものであった。
しかし、アプトムとしては、馬になど乗れなくても困らない。彼の身体能力であれば走って馬に追いつくことなど獣化するまでもなく簡単
なことであるし、ついでに言えば地球に帰れば二度と馬にのる機会などないであろうから、乗馬の経験を積む必要性も感じない。
だが、ルイズの方はそうはいかない。アプトムが馬に乗らないのであれば、なんのために二頭の馬を借りてきたのか。やっぱり一頭でいい
から返す。とでも言いに行けというのか。というか、馬に並走して走る平民の姿など誰かに見られたら問題があるだろう。
それに、使い魔はメイジと一生を共にする存在である。これからの人生において、常にもっとも自分の身近にいるべき者が馬にも乗れない
というのは、外聞が悪い。
ちなみに、ルイズはアプトムを故郷に帰してやるという約束を忘れているわけでもなければ、約束を破るつもりもない。単純に想像力が欠
如しているだけである。
ともあれ、乗り方を教えて街に向かったわけだが、たどり着くまでの間、アプトムは初めての乗馬にひどく疲労することになるのだった。
乗馬に必要なのは、体力よりも慣れなのだな。と、気疲れした様子で隣を歩く使い魔を見てルイズは思う。
三時間、馬と並走しても平気だと言ったアプトムは、同じ時間を馬に乗っていただけで疲労しきっていた。
まあ、それも分からないではない。馬は乗り物であると同時に生き物である。そして生き物であるからには、人を乗せるのを嫌がる場合も
ある。
学院に用意されているのは、人を乗せるのが当たり前の馬である。だが、当然ながら人間以外を乗せることは想定されていない。
動物の本能だろうか、アプトムを人間ではないと看破した馬は彼を乗せることを嫌がった。嫌がる馬にも乗るだけなら、アプトムには簡単
なことであったが、乗れば大人しくなるというものでもない。暴れる馬を宥めすかし力ずくで押さえ込み、なんとか走らせて三時間。これで
は、アプトムとて疲れないはずがない。
目的地についた時には、アプトムは眼に見えて疲労しており、それ以上に疲労した様子の馬は、帰りはどうしようかと悩んでしまうような
有様であった。
街の門のそばにある駅に馬を預けて、どんな運動をさせたらこんなになるんですか? と驚かれた後、ルイズはアプトムを連れて買い物を
済ませる。
街に来た目的はアプトムの服だが、せっかく街まできたのであるから、それだけ買って帰ると言うのももったいない。シャツとズボンを何
着かといくつかの日用品を買った後、露店を冷やかし屋台で間食を取り、秘薬屋に行く。
今の所、特に秘薬を必要としているわけではないが、どういう秘薬があるのかを知ることはそれだけでも勉強になるし、急に必要になった
時のために品揃えを把握しておくことは悪い事ではないだろう。
そうして立ち寄った秘薬屋の近くには、とある武器屋があった。
その武器屋にアプトムが興味を持ったことに、特別な理由はない。
アプトムの心に浮かんだのは小さな疑問。このハルケギニアにおいて魔法を使えない平民は絶対にメイジには勝てないと言う。であれば、
それは魔法がよほど大きな力を持っているか。もしくは、技術レベルが低すぎてメイジに対抗できるような武器兵器が開発されていない為だ
ろうが、アプトムの見た所それは後者だろう。
学生の身分でしかない、学院の生徒の、そのまた一部の実力しか知らないが、大きくレベルが違うということもないだろう。そこから考え
ると、ある程度強力な武器があれば、平民でもメイジを打倒できるはず。
では、おそらくは平民が使うためのものであろう、メイジには敵わないレベルの武器とは、どんなものなのだろう。そんな程度の好奇心で
あったのだが、武器屋に眼をやるアプトムに、「なに? 武器がほしいの? それなら買ってあげるわよ」というルイズの声がかけられた。
ルイズは、自分が呼び出した使い魔に、これといった不満がなかった。亜人で、大人で、自分がいつか魔法を使えると信じていてくれて、
ドットやラインのメイジを寄せ付けない実力を持つ使い魔。これに文句を言っていては罰が当たるというものだ。
だが、物足りないと感じることがある。彼は、自分との間に距離をとっている。
キュルケに心配されるまでもなく、ルイズにはアプトムが自分に一片の好意も持っていないことが分かっている。
アプトムが求めるのは、情の絡まぬ冷たい契約。地球に帰す代わりに使い魔の役目を果たすという取引。
しかし、ルイズが求めるのは互いに支えあう暖かい関係。だから、彼女はアプトムに頼られる事を望む。彼の好意を望む。
だけど、人に頼られるには、どうしたらいいのかなど知らない。人の好意を得る方法など知らない。
学院ではゼロのルイズだなどと言われ蔑まれ、実家では使用人にまで魔法を使えない出来損ないと陰口を叩かれてきた彼女を気にかけてく
れた人間は、両親や二人の姉達のような家族以外には一人しかいない。そして、彼らがルイズに何かを求めたことはない。求める側は常にル
イズ。求めたものは無償の愛。
実際には、本人が気づいてないだけで学院にも彼女を気にかける者はいるのだが、ルイズはその事を知らない。
そんな彼女が、人から好意を得るために思いつくのは、相手が欲しがっている物を買い与えることくらいのものであった。
だから出た言葉に、アプトムは特に反応を返すこともなく、元気に武器屋に入っていくルイズに黙ってついていく。彼にとって、ルイズの
感情を理解する理由も必要もないので、言われたことには黙って従うだけである。
武器屋の中は、乱雑に剣や槍や甲冑が並べられ、それらが窓から射し込む光を塞ぎ、ランプの灯りがあってすら薄暗いありさまであった。
店主であろうパイプをくわえていた壮年の男が、視線を向けてきて、服装からルイズを貴族だと見抜く。
「貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」
「客よ」
「貴族が剣を! こりゃおったまげた!」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、美人は男をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりにな
る、と相場は決まっておりますんで」
「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」
そういって振り返った先には、店に並んだ武器を興味深そうに見るアプトムがいる。
使い魔というのは動物ではないのかと、店主は内心首を捻るが、それを顔に出したりはしない。
「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるうようで」
冗談めかして言って、「それで、どのような剣をお探しで?」と問う。
そう言われても、ルイズには剣の知識などない。どうしようかと、アプトムに眼で問うと彼は呆れたように、自分も剣の知識などないと答
える。
アプトムは、剣や槍では、もはや武器として成立しなくなった世界の住人であるし、更に言えばゾアノイドという銃などの武器すら必要と
しない生体兵器に調整された身の上である。
そんな彼にとって、剣など物珍しい骨董品のような実用性のない代物なので、どういうものが欲しいかと問われても答えようがない。
「適当に見繕ってちょうだい……」
ルイズが言うと、店主は「わかりやした」と答え、奥の倉庫に入っていく。そこには、まともな兵士や傭兵は決して手を出さない値がはる
だけの実用に耐えない、ようするに何も知らない貴族から金貨を巻き上げるために用意した商品が保管してあるのだ。
そこから店主が持ってきたのは、一メイルほどの長さの細身の剣。刀身にも美しく模様が彫られた工芸品のような代物であった。
「昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たすのがはやっておりましてね。その際にお選びになるのが、このようなレイピアでさあ」
「貴族の間で、下僕に剣を持たすのがはやってるの?」
「へえ、なんでも、最近このトリステインの城下町を『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が、貴族のお宝を盗みまくってるって噂で。
貴族の方々は恐れて、下僕にまで剣を持たせる始末でさ」
「ふーん」と店主の説明を聞き流し、ルイズは剣を見る。他の貴族の考えはともかく、盗賊には興味がないのだ。
店主の持ってきた剣は、見栄えこそいいのだが、人間大の大きさのゴーレムを持ち上げ振り回すアプトムの力で振り回されればポッキリと
折れてしまいそうに見えた。どう考えてもおかしなチョイスなのだが、これには事情がある。
倉庫の奥にある見栄え重視の剣は、非力な貴族の腕でも振り回せるような細い剣か、飾っておくために制作された、人の腕で振るうには無
理のある大剣のどちらかしかないのだ。従者に持たせるための剣を買い求めてきたカモに売る剣としては、選択の余地がない。
だが、もちろんルイズがそんな事情を知るはずもない。もっと大きくて太いのがいいと言われ、店主は細剣を持って倉庫に戻り、今度は長
さだけでも一・五メイルはある大剣を持って出てきた。
「これは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の鍛えた剣でさ。魔法がかかってるから鉄だって一刀両断ですぜ。まあ、その分お
やすかあ、、ありませんがね」
それは、ところどころに宝石が散りばめられ、両刃の刀身が鏡のように輝く美しい剣で、例えるなら、それは剣の形をした貴金属であった。
ルイズも、これなら。と思ったのだがアプトムの感想は、「持ってるだけで盗賊を引き寄せそうな玩具だな」という気のないものであった。
「気に入らないの?」
「邪魔になるだろう。どうせ実用性のない飾りなら、こんな場所をとるものより、腰に下げられる手ごろな大きさの剣にしたほうがいい」
「飾りってこたあ、ないでしょ旦那。さっきも言ったようにコイツは鉄だって切れる業物ですぜ」
「鉄だって切るか」
呟くと、アプトムは店主から大剣を受け取り、柄と刀身を手にする。
「そんな業物なら、ちょっと力を入れたぐらいじゃ折れたりしないんだろうな?」
「もちろんでさ」
「もし折れたら、お前は貴族を騙そうとした詐欺師ってことになるな?」
「へえ?」
なにか、おかしな話になってきたなと、店主がアプトムを見た時、バキリッと音を立てて大剣はへし折られた。
「さて、これでお前は貴族を騙そうとした詐欺師なわけだ。まっとうな商売をしてると言ってたが、あれも嘘だったのか?」
剣呑な眼で睨まれて、店主は狼狽する。
確かに、貴族を相手に商売するときは、料金にいくらか上乗せして売っていたこともあるが、紛い物を売ったことはない。いや、少なくと
も紛い物と知って売ったことは一度もない。
とはいえ、人がちょっと力を入れただけで折れるような剣が本物の業物であるはずがなく、自分は貴族を相手に詐欺を働いてしまっていた。
店主はこの後の自分がどうなるのかを想像して脂汗を流し、ルイズは予想してなかった事態に思考を停止させ。そして、アプトムも内心焦
っていた。
実の所、彼は剣を折る気などなかった。剣が折れたらと言ったのも、ただのたとえ話のつもりで、少し剣をしならせてみせて、こんな剣は
すぐに折れると言って突っ返すつもりだったのだが、大剣には彼が思ったほどの弾性がなかった。
店主が、大丈夫だ折れないと太鼓判を押した後なら、本当に折っても問題なかったのだが、このタイミングで折ってしまっては弁償を要求
される可能性がある。
だが、弁償する金の持ち合わせなどないし、こんなことで、ルイズに借りを作るのはマヌケすぎるだろう。
こうなっては、彼にできることは一つ。揉め事は先に怒った方が勝つの法則に乗っ取り、因縁をつけて店主に非を認めさせるのだ。
人として色々と間違っている気がするが、他に手はないのだからとの考えで脅しつけ。ついには、店にある武器をどれでも一つだけ無料で
貰うという話で落ち着く。
ここで、値の張る剣を選ぶのはさすがに性悪にも程があるだろうなと、アプトムはその辺に無造作に置かれた剣を物色する。どちらにしろ、
二度とこの店には来れないが。
どれにすべきかと見回すが、やはり剣の良し悪しなど分からない。まあ、いい剣を選んだところで彼が本気で振り回せば曲がるか折れるか
だろうから、どれでも同じようなものなのだが。
「おでれーた! おもしれー奴だな、おめえ」
その声は、もう、どれでもいいか。と思いかけたところで笑い声と共に聞こえてきた。
「親父を脅して、剣を一本ただで持ってくって約束を取り付けるもんだから。てっきり、たけー剣を選ぶのかと思ったら、安モンの剣から探
すなんて普通しねーぞ!」
その声は、壁に立てかけられた錆びついた一本の剣から聞こえてきていた。
「剣が喋っているのか?」
疑わしそうに呟くと、自分が買ってあげるはずだったのに結局ただで剣を手に入れることになった使い魔を、つまらなそうに見ていたルイ
ズが珍しいものを見たという顔で近づいてくる。
「それって、インテリジェンスソード?」
「そうでさ、若奥さま。意志を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうねえ、剣を喋らせるな
んて……」
カウンターの向こうから答えてくる店主の声には力がない。まあ、店一番の業物を折られたあげく、別の剣をただで持っていかれるのだか
ら、やる気が出ないのも当然ではあるが。
「おでれーた! しかも、てめ『使い手』じゃねーか! 丁度いい俺を持ってけ」
「『使い手』? なんだそれは?」
「俺を持ってみな。そうすりゃ分からあ」
持てばどうなるのかと、アプトムは無造作に左手を伸ばし喋る剣の柄を掴み、そしてすぐに離した。
「どうしたの?」
まるで、火傷でもしたかのような勢いで引っ込めた左手と剣を見比べ、何事か考えているらしい使い魔にルイズが問うが、彼は答えずしば
らく考え込んでから。このインテリジェンスソードを貰うと店主に伝えた。
学院への帰り。デルフリンガーというらしい喋る剣を収めた鞘を背負い、アプトムはそこにある剣のことを考える。
ルイズが、そんなボロい剣はやめろと言ったが、彼にはこれを持ち帰らなければいけない理由があった。
あの時、デルフリンガーを掴んだ左手のルーンが輝き、そこから彼の左手は本人の意思を無視して獣化を始めようとしていた。
あの感覚には覚えがあった。
獣神将。そう呼ばれる存在がある。彼らは、獣化兵の上位存在として調整された者たちでゾアノイドの精神を支配し、その体を操る能力を
持つ。
あの、彼の意思によらない獣化は、獣神将に肉体の制御を奪われたときの感覚に似ていたのだ。
だが、何故そんな事が起こりうるのか? 獣神将の精神支配は損種実験体には及び難い。なかでも、アプトムは獣神将との念話すら通じな
くなった特異体である。その彼の肉体の支配権を奪いかけたあれはなんだったのか?
心当たりはある。ルイズと契約を結んだとき彼女はこう言っていた。使い魔は主と視覚、聴覚を繋げ目となり耳となると。それは、獣神将
と獣化兵の関係に似てはいないだろうか?
そう考えると、使い魔のルーンが勝手に自分を獣化させようとした事の原因の仮定もできる。
なにか手違いがあったのか自分とルイズに視覚、聴覚の繋がりがなかったのだが、それも自分が損種実験体であるのが理由ではないかと考
えれば納得がいく。
だが、それはあくまで仮定。事実には届かない。彼は、デルフリンガーが、その答えを持っているのではないかと考える。そして、その事
実が自分を地球に戻す手がかりになるのではないのかとも。
もちろん、そのことをルイズに言う気はない。彼としては、地球に帰れるのなら、それがルイズの魔法だろうが、そうでなかろうがどちら
でもいいのだが、ルイズは違うだろう。ならば、わざわざ不機嫌にさせる必要もないだろう。それが彼の判断であった。
投下終了。
というわけで、ルイズにキュルケフラグが立ちました。
ルーンが逆効果というかかえって災いになるというのも珍しい支援
>>411 アシュラマン「同じ使い魔かもしれんが見てくれだけの使い魔とは違い、
私たち虚無の使い魔は
鍛え方が違う!精根が違う!理想が違う!決意が違う!」
アプトム乙
アプトムの人乙です。
次回にwktk。
442 :
ジル:2009/01/03(土) 19:52:27 ID:s8Ipq8z9
2000時に10話投下予定
支援
しえん
二十分過ぎたけど・・・・・ひょっとしてさるさんか?
さるさんは早すぎないか?
なにかリアルでアクシデントか…
アプトムって体重300キロ位無かったっけ、馬も大変だなw
448 :
ジル:2009/01/03(土) 20:28:15 ID:s8Ipq8z9
急遽下痢が・・・
すみません。
2030に出直します。
>>447 ああ、馬が疲れたってそういう・・・
ジルの人遅いなぁ
無理はしないでくれ。
451 :
ジル:2009/01/03(土) 20:30:24 ID:s8Ipq8z9
次の日。ルイズ一行は出発、せずに、日が昇る前から訓練に明け暮れていた。
「リロードは五秒以内にできるように」
「Sir!」
ギーシュがAK-74をリロードする。コルベールのガラクタ置き場から拾ったものだ。筒と布切れで作った簡易サプレッサーも付けて、騒音を防いでいた。以前、ジルの射撃訓練がうるさいと苦情があったらしく、流石に自重したのだ。精度は落ちるが仕方がない。
「ルイズ。サイトを使わない」
「わかってるわよ!」
片眼を閉じてこれまたコルベール秘蔵のダブルデリンジャーを構えていたルイズは慌てて照準をずらし、そのまま撃つ。無論、ワイン瓶には当たらない。
「きゃあ!」
無茶な体勢は軽いはずの反動を殺せず、そのまま後ろに転がる。
「ギーシュ、腰だめで撃て」
「Roger」
米海兵隊員の様に英語で返事を返し、言われた通りに撃つ。
「Ok、戦闘になったら?」
「敵に向けて銃を撃つ!」
「相手が知り合いでも?」
「躊躇わない!」
「逃げる奴は?」
「敵だ!」
「逃げない奴は?」
「よく訓練された敵だ!」
「Good」
教練軍曹に叱咤されまくった兵士の様にギーシュは叫ぶ。過去の訓練はジルに対する服従を叩き込まれていた。
「……ルイズ、いい? あなたの力じゃ、遠くの敵に当てるのは無理」
ゴニョゴニョと耳打ちする。
「そうね……」
「だから、今は反動に慣れるだけでいいの。慣れたら、爆発を的確に当てられるように練習しなさい。あなたの爆発は、戦闘では圧倒的に有利なの。精神力の消費がそんなにないコモンマジックで爆発をいきなり相手に叩きつけられる。私ですら避け損ねたもの。私の
ナイフも壊したのよ。威力もコストパフォーマンスも最高レベルなの」
「え……」
ルイズは耳を疑った。今、私は誉められている。ゼロと蔑まれてきた私が。相手は貴族より強く誇り高い平民の、私の使い魔。
昔の彼女なら泣けてくるだろうが、今の彼女はそれが誇らしかった。
「だけど……無茶はいけないわ。強い相手に迂濶に挑んで敗けるのはあなたの勝手だけど、今回の任務は生きて帰るのが前提。死んだら貴族の誇りもクソもないわ。そうね……あなたが死んだら、少なくともトリステインは滅びる。姫様の言葉を要約するとこうなるわ」
「わかってるわ……絶対に、死ねない」
「だから、敵には容赦をしてはダメ。爆発が効かなければ逃げる。Ok?」
「らぁじゃーだっと? よ」
ギーシュの真似をして、英語で伝えてみた。少なくとも今日一日、ジルのもとで訓練したのだ。少なくとも今は、ギーシュと同じ訓練生なのだ。
「じゃあ、はじめましょう」
その日の昼まで、爆音と銃声は途絶えなかった。太った少年をはじめとする数人がそれぞれ別の場所からその光景を複雑な表情で隠れ見ている以外は、今日もトリステイン魔法学院は平和だった。
その日の夜、しばらく見かけなかったエルザがルイズの部屋にいた。
「あれ? エルザ?」
「マスターは?」
「私には挨拶も無しなの?」
「……ただいま。マスターは?」
しぶしぶといった表情で、エルザは呟くように言った。
「おかえり。って、なんか腹立つわね……ジルはコルベール先生のところだと思うけど……」
「ありがとう」
今度は素直に礼を言い、すぐ部屋を出ていった。
「ここに住むとか言ってたのに……」
滅多に帰ってこないエルザを、ルイズはいぶかしげな眼で見送った。
「さて……」
目の前には一つのトランク。
下痢なら仕方が無い
支援
つ正露丸
454 :
ジル:2009/01/03(土) 20:33:24 ID:s8Ipq8z9
今、ルイズはそれに何を入れるべきか迷っていた。『戦場にドレスは要らない』と、最初の荷造りでジルに一蹴されたのだ。トランク三つは流石に多いかな、などと思っていたが、こうも減らせと言われるとは。最初にジルが提示したのは、小さなバックパック。ル
イズがごねてごねてごねまくって、どうにかこのサイズのトランクになった──流石にこれ以上はジルに銃を突き付けられた──がル
イズにとってこれではまだまだ少ないのだ。
「お金と下着とタオルくらいでいいわ」
とジルは言ったが、それだけでは貴族として────
「戦争を何か勘違いしてない?」
ジルの非常に冷たい眼が思い出される。そう、あれは魔王の眼だ。逆らったら死ぬ。
「は、早く準備しないと……を」
思い出しただけで背筋が寒くなる。冷や汗と共に荷造りを再開した。
「……以上です」
ロングビルとエルザの報告は、有益な情報がかなり存在した。その小屋の本来の主は、学院周辺にガラクタ漁りに出ていた。Y2Kや小屋の使用など、情報と知識の対価としては少々安いかもしれないが、ジルは密会の場所としてこの場所を借り受けていた。
「レコン・キスタのスパイは城に十名弱……上に食い込んでるのは二人程度ね。ご苦労様、エルザ。立て続けに悪いけど、先行してて」
「わかりましたぁ!」
先程コルベール謹製輸血パックを飲み終えたエルザは、かなり上機嫌だった。コルベールの研究小屋からすぐに消えた。
「そうだ。ロングビル、あなた、アルビオンに詳しいの?」
「……元、アルビオン貴族です。地理はそれなりに」
その顔に翳りが映る。それにどんな意味があるか、そんなことはジルには関係ない。要は戦地に詳しい者が欲しかった、それだけだ。
「案内役がいないの。ついてきてくれるかしら」
準備は整った。計画も万全に近い。後はネズミが罠にかかるのを待つだけ。
「なあ、相棒。なんで今回はそんなに娘っ子に協力的なんだ?」
木に立て掛けられたまま一日以上忘れ去られていたデルフが問う。確かに、今までのジルは、ルイズにあまり協力的とは言えなかった。
「……国のトップにコネができるからよ。城には、ここにない情報があるかもしれない。門外不出の口伝とか、本とかがあるかも」
「ほう、結局は帰る方法か」
「ええ。目的のためには手段を選ばないわ。国だろうと神だろうと、利用できれば利用するし、邪魔するなら殺(け)すわ」
「おーおー。恐ろしいこった」
二つの月が重なり、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく日を『スヴェルの夜』という。まだ夜には少し遠い夕日の中を、甲高い音を立ててラ・ロシェール方向に驀進する影が一つ。
「ルイズが猪突猛進型の馬鹿でなくて助かったわ。ろくな準備もできず、ラ・ロシェールで無駄な一日を過ごす羽目になるものね」
ジルが感心するが、ルイズは心をちくちくと針でつつかれている気分だった。急いで昨日の朝に出発する気だったのだが、船が出るのはスヴェルの夜だけだ。船が出る日時と港までの距離を訊ねるジルを不思議な眼で見ていたが、成程合理的だった。一ヶ所に留まる
なんて、敵に襲ってくださいと言っている様なものだ。
「あとギーシュ、誰にもこの事を言ってないわよね? 家族や恋人にも。手紙や、任務を連想させることも」
「も、もちろんですとも!」
どもるところが怪しいが、訓練の前から厳命されている。高速で移動する板の上にいるのが怖いだけらしい。
征露丸で支援だ!
456 :
ジル:2009/01/03(土) 20:35:14 ID:s8Ipq8z9
今ジル達が乗っているのは、リアカー付きY2Kだ。フーケ討伐の際に使用したものに囲いをつけただけのものだ。簡単な構造でやたらと頑丈だが、その速度には振り回され、よく横滑りを起こす。経験者のルイズやロングビルは蒼い顔をしながらも平然としているが、
慣れないギーシュはいつもの騒がしさはどこへやら、話しかけない限り喋らない。ギーシュがゴネて使い魔のモグラを連れてきたが、走り出して早々に引っくり返っていた。
「次は!?」
ジルが訊く。
「右!」
非常識な速度で分岐を曲がるので、ナビは遥か手前で行われる。迷う暇なんてない、道程が頭に入っていないと答える前に急ブレーキだ。ロングビルがジルにつきっきりでナビをしているが、既にかなり疲弊しているように見えた。ギーシュ同様、口数が少ない。
「フッ……」
「うおおおお!?」
気を抜いていたギーシュが落ちかける。カーブ時のGは人間を吹っ飛ばすには充分な力を持っている。
「うるさい!」
「この坊主にゃ酷ってもんよ、娘っ子」
ルイズが怒鳴るが、反論する元気は彼にはない。代わりにデルフがたしなめる。
「もうそろそろよ。あれかしら?」
「そうよ、ラ・ロシェールの港、世界樹」
「おう、やっぱ早ぇな。しかしまー、久し振りに見るね」
「じゃあ、このまままっすぐね」
デルフの言葉を独り言に仕立て上げ、アクセルを回す。ガスタービンエンジンが更に回転を上げ、更に高い音が耳を貫く。マフラーの無いエグゾーストパイプは、エンジンの立てた音をそのまま垂れ流していた。
限界まで回されたアクセルは、止まるまで緩められはしなかった。
ラ・ロシェールの厩にY2Kを預け、いつの間にか気絶していたギーシュをジル叩き起こし、歩行が困難と判ると背負い、港に向かう。使い魔は既に起こして土の中だ。主人よりガッツがあった。
厩の管理人は戸惑っていたが、ジルが
「アカデミーで開発中の乗り物の試作よ。壊したり盗まれたりしたら、処刑を覚悟することね。あと、他言は無用よ。布でも被せて隠しておきなさい」
と命じると、管理人はコクコクと機械的に頭を動かせた。それなりの金を握らせたから、信用はできるだろう。
予定通りに、なんらの障害もなく船に乗り込む。アンリエッタはジルの言った通り、情報統制を完璧にしている様だ。
甲板の手摺に寄っ掛かり、髪を靡かせながら船員の作業を目的もなく見ていたジルに、ルイズは話しかける。手摺の外、遥か眼下の大地を見ながら。
「ねえジル? ここまで何もないと……」
「不安になる? だったら備えなさい。何があってもいいように、ね」
「……そうね」
その少し離れた場所で、ギーシュが盛大に吐いてなければ、最高に絵になるシチュエーションなのだが。二人はもう完璧に無視していた。連れてくるべきではなかったと諦めながら。
「私は部屋に戻るわ。ジルは?」
「ここにいるわ。気を抜かないようにね」
いつ裏切るか判らない、今は疲れて眠っているロングビルことフーケのことかと思い至るが、どうやら違うらしい。そこで、『いつ、何が起こるか判らない戦場』の話をやっと思い出し、杖とスカートのポケットに仕込んだデリンジャーを確かめるように叩き、船室
に降りていった。
「戦争が予想通りだといいんだけど」
残されたジルは船の舳先、さらにその先に眼をやり、まだ見ぬ戦地の様相を想像していた。
「なーなー、そんなに深く考えることはねーと思うぜ?」
イッヒ フンバルト デル ゲリ
458 :
ジル:2009/01/03(土) 20:37:04 ID:s8Ipq8z9
今まで黙していたデルフが口をだす。話すことが生き甲斐のようなこの剣は、Y2Kでは邪魔なだけなのでしまわれていたが、今は船に身を任すだけ、余裕ができたので外に出されていた。とはいえ、何故今まで黙っていたのかは疑問だが。
「どんな状況でも対応できるようにしないと。ルイズが姫の指輪や手紙を無くしたり奪われたり、ロングビルが裏切ったり、あるいは、誰かが死んだり」
「悪いことばっか考えると、現実になるぞ?」
「悪いことばかりじゃないわ。成功した場合も考えて……」
「く、空賊やァ────!」
「停船命令だと!?」
船員の叫び声に、ジルは頭を押さえる。
「この発想はなかったわ……」
あらから吐き尽くして、べれーんと手摺に引っ掛かっていたギーシュを蹴り急かし、のろのろと動きだしたギーシュを船室に至る扉に蹴り込む。心配そうに寄り添っていたモグラは、その後を追う。
「んで、どうするよ?」
「拿捕しましょう」
言うが早いか、ロケットランチャーが敵に向けられていた。
「撃ってきた!」
「取り舵いっぱァーい!」
敵艦から、弧を描いてゆっくりと飛来する、球状の砲弾、いや砲丸が見えた。ジルの眼が光る。
「まさか相棒……」
ロケット弾は火を噴き煙を曳きながら砲弾目掛けて飛んでゆき、着弾。見事な空中爆発を演出した。
「まだまだよ」
威嚇射撃を撃ち落とされ、未だ時の止まっている空賊艦に、バカスカとロケット弾は襲いゆく。砲弾より速く正確なそれは、空賊艦をかすめる様に飛び、存分に威嚇の義務を全うしていた。
「なんだあの女は!?」
「おお、助かるかも知れんぞ!」
甲板が沸き立つ。しかし、それは敵の第二射が来るまでの話だった。片舷の全砲門から放たれた砲弾は、着弾こそしなかったものの、その風圧で船を揺らす。命中精度の落ちたジルのキャパシティでは、いやそれ以前に物量から見ても完全な迎撃は不可能だった。そ
して照準の狂った砲撃は、見事、敵艦マストへ。
「あー、失敗したわね」
まともに戦えば戦力差で押し潰される。こちらには強力な兵器があるのだと示威して降伏勧告をするはずだったのだが。今や敵はこちらを沈めかねない。船に着弾しそうなものだけを狙い、幾つか砲丸を撃ち落すが、いかんせん数が多い。
「あまり目立ちたくなかったけど」
ロケットランチャーは消え、両手を挙げてやれやれと首を振る。一回撃ったら再装填に時間がかかるみたいだが、時間差をつけて発射するので隙があまりない。
「おいねぇちゃん! なにしてんだ、奴を沈めてくれよ!」
「船長に、降伏勧告を。分が悪いわ」
マストを吹き飛ばしたランチャーの威力に勝利を確信していた船員は愕然とする。
「あっちの砲を全部落とす前に、こっちが沈むわ。もう少し動かないかと思ってたけど、相手の統率はかなりのものよ。逆らわない方がいい」
実際、空賊の手際は非常によかった。まるで軍人の様に。
「まったく、なにしてんのよ?」
「船と運命を共にするよりましでしょ?」
そうは言うが、ジルは未だジ・エンドだとは思っていなかった。
手際と統率の割には、ろくに身体を改めずして牢にぶちこむのは何故か。メイジ連中の杖(ロングビルに至っては身体中に隠していた杖まで)は取り上げておきながら、ジルには全くの関心を示さなかった。いや、まだ知らないだけかも知れない。
「これからどうするんですか?」
「魔法にばかり頼っていた人類は、杖が無くなるだけで随分情けなくなるわね。科学に溺れた人類が言えた話じゃないけど……」
がさごそとサイドパックを漁る。
「あった」
459 :
ジル:2009/01/03(土) 20:39:06 ID:s8Ipq8z9
その手には、数本の針金。みたいなもの。
「なにそれ」
「キーピック」
いたずらっぽい笑みで、それを牢の鍵穴に突っ込み、少し弄ると。
「開いた」
「どうやったの?」
「ふふん。ただの『アンロック』よ」
それだけ伝えて、自分だけ外に出て扉を閉めた。
「ちょ、なにすんのよ!?」
「足手まとい。ぞろぞろと歩いてたら隠密行動はできないわ。鍵は開けておくけど、出ないこと。ただでさえ船酔いで役立たずのギーシュを抱えてるんだから。疲れて集中の乱れてるロングビルと二人きりにしたくはないし。速射と威力の塊はガードに置いておくのが
いいでしょ?」
言うことがいちいち正論だ。いやになり、
「あーあー。いってらっしゃい」
と投げ遣りに追っ払う仕草をする。そのうち溶けるんじゃないかと心配できるくらいにへちゃっとくたばっているギーシュ、やたらと憔悴して舟を漕いでいるロングビル。同意を得るまでもない。
「そう。なるべく騒ぎは起こさないで。しばらく待てば面白い事になるから」
「は?」
謎の言葉、というより不安の種を残し、ジルは消える。
「面白い? こんな状況で、暢気なものね」
「まるでダイ・ハードか日本の小説ね。あ、ゲームもあったかしら?」
ハッシュパピーで眠らせた見回りを小部屋に引きずり込みながら独り言を呟く。眠ってはいるがいつ起きるか判らない。しっかりとインシュロックで拘束して、更にガムテープで口をふさぐ。
「痛そーだな」
立て掛けられた、痛みのない剣が呟く。ジルが睨むと、それきり喋らなくなる。
順調に『そして誰もいなくなった』を遂行するジルは、次なる獲物を探して艦を徘徊する。無論、目的は別にある。
「こいつもメイジ……食いっぱぐれて堕ちた、って訳じゃなさそうね」
行動から滲み出る高貴さと誇りは、悪事に手を染めた人間にしては眩しすぎた。
「レコン・キスタだけじゃなく、王家の方も探っておけばよかったわね。せっかくエルザに遠出して貰ってるのに……」
粗方の検査を終え、杖をインシュロックで束ねる。そして、悪魔のような思い付きのもと、ガムテープでぐるぐる巻きにして、ぽんと床に転がした。
「事が終われば解放してあげるわ。それまで、Good night」
デルフを掴み、通路に切っ先を少しだけ出す。
「Zero movement. Forward area clear(敵影ゼロ。前方クリア)」
「Ok」
相変わらず、剣としては使われず、動体探知機(モーションセンサー)の代わりとして重宝されていた。
460 :
ジル:2009/01/03(土) 20:45:38 ID:s8Ipq8z9
以上です。
Ich hum walte der 水ですよほんとに……
腐りかけのカニ鍋かな?それともカビた餅かな?
ともあれ、この時期の食い物には気をつけましょう……
さて、アルビオン編ですが、ワルドが未だに出ません。
もう少しして、情けなく出てきます。
私は奴が気に入りません。ので、結構フルボッコしてやりますよ。ルイズが。
ゲームというだけで色々別のゲームネタを散りばめております。
判りにくいものからあからさまなものまで。
乙ー
ワルド・・・接触した瞬間に敵扱いで射殺かしら
乙ィネルヴァッサーベンデルン
463 :
ジル:2009/01/03(土) 20:54:10 ID:s8Ipq8z9
訂正。
軍事や映画ネタも。
あと、9話で何か変だなと思ってたところを修正しておきました。
『 階級や権力など関係ない、純粋に対等な力関係がここに構築された。』
が
『 姫という肩書きに全く物怖じしない物言いにルイズは肝を冷やす。しかしアンリエッタは全く気にしていない。ジルのその、戦士
としてのオーラ或いはそこらの貴族より誇らしく堂々とした態度が、階級や権力など関係ない、純粋に対等な力関係をここに構築した。 』
となります。
力関係の構築が突然でしたね。もっとよく推敲しないと。
>>422 フェイトちゃん3〇才召喚は理想狂で見たが(そういや最初こっちで掲載するつもりだったらしいな)
9歳は無いなあ。リリカルイズでチラっと出てたが結局、タバサとはどういう関係だたんだろう?
@タバサが召喚してタバサに憑依(んじゃ、シルフィは?)
Aジョセフが召喚して
Bイザベラが召喚して
どれにしても何で実体で現れないでタバサと身体を共有?してるらしい理由がわからんかたなあ
C実はアリシアの亡霊でタバサに取り憑いてる
ああリリカルイズさんの職人さん早く身体直して復帰してくれんかな
ジルの人乙です。
相変わらずの魔王っぷりが素敵ですw
あと成仏しろよワルドw
次回に超wktk。
どうでもいいけどまとめサイトに型月クロスあるから登録した馬鹿さっさと削除しろよ
乙
阿修羅の話題に仏ゾーンの阿修羅君が出てなかったな
まあドマイナーだし仕方ないか
取り敢えず馬頭兄さん召還されたら"仏の顔も三度まで"で酷く怒られるキャラ多そうだ
仏ゾーンはうっかり敵側にマーラ様配置したくなるヨね。
理想郷って何ですか?
ガンダーラ
厨房SS書き御用達の投稿掲示板
用途はこのスレとあまり変わらないが、提督騒動の時に
「理想郷の方が管理人がマシ」という事で流れた作者多数あり
まあ半分以上事実だから
ふと思いつく。
バーニングアリサネタ。
許容範囲なのだろうか?
余所を引き合いに出して相対的にここを見下し、優越感を得る
素晴らしくみみっちぃ人生ですね
一体誰と戦ってるんだ
クロスで三次。
で、なんでそれが大丈夫だと思ったのかな?
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ .
l lf小从} l /
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
どうでもいい
→落ち着け!!
正直よく分からない
< >
< 嫌なら見るな! 嫌なら見るな! >
< >
ノ Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Yヽ
/ ̄(S)~\
/ / ∧ ∧\ \
\ \(`・ω・´)/ /
\⌒ ⌒ /
)_人_ ノ
/ /
∧_∧ ( ))
( ; )ω  ̄ ̄ヽ
γ⌒ ⌒ヽ  ̄ ̄| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
>>「理想郷の方が管理人がマシ」という事で流れた作者多数あり
作者が離れて行ったのは確かだが
明確に理由を述べて去って云った人は少なかったはず。
捏造乙
ィァどうでもいい
落ち着け!!
正直よく分からない
NIGHT TALKERも活気が無くなってきたな
風牙亭は無くなったし
堕ちた天使のなんとかって所も更新が一年くらい止まってる
いよいよ世代交代ですか
堕ち天は投稿掲示板のほうはまだ活発だよ
>>486 捏造したいんだろう
自分の都合のために
>>473 失礼な奴だな。あそこまでちゃんと管理してくれる管理人は滅多にいないというのに。
あけましておめでとうございます(遅
さて、ちょっと妙な雰囲気ですが、投稿OKでしょうか?
問題なければ11時からスタートしたいと思います。
年内目標だったのですが、結局年越ししてしまったorz
>>132 超亀だけど魚召還して池占領してお仕舞いっていうSSがあったなw
それでは、投下開始します。
今回は気持ち短め。
キュルケとタバサへの対応をどうしようかと迷いながらしばらく待っていると、思ったよりも早くフィアースが戻ってきた。
「もうよかったの?」
「あぁ、あのあと少し話をしただけだ。それより」
そこで言葉を切ると、キュルケとタバサを見てから訊いて来た。
「何かあったのか?」
「この娘……タバサが、あなたに話を聞きたいんですって」
「俺に?」
そこまで話すと、タバサがフィアースに話しかけた。
「さっきの決闘も、教室でのことも見てた。やり方、教えて」
ものすごい単刀直入ね。しかも訊きたい事を伝えるのと同時にごまかせないようにしてる。
フィアースの顔を窺うと、ちょっと渋い顔をしていた。
「ルイズ」
「な、何よ」
あうぅ……沈黙が痛いわ。何を言いたいのかもよく分からないし、どうしろっていうのよ?
「し、仕方ないじゃない!というかわたしは何も言ってないわよ!?」
そう言い返すと、さらに渋い顔。
するとすかさずキュルケが口を開いた。
「それって〜、人には言えないような秘密、ってことよね〜?」
ぐさッ。
ツェ、ツェルプストーめ。なんて痛いところを突いてくるのよ。
というかさっきの返答って、もしかして自爆?
ちらりとフィアースを窺うと、目を閉じて黙っている。けどそれがわたしの自爆を肯定しているみたいに見えた。
……がっくり。
さて、一体どうしたものかしら。
内緒にしておくようにって学院長先生にも釘をさされたばかりなんだけど、この状況じゃ無理があるわよね。
「ルイズ」
突然フィアースがわたしを呼んだ。見ると、何かを決めたような顔をしている。二人に聞かれない方がいいかと思い、わたしはフィアースに歩み寄った。
「何よ?」
「もう誤魔化しきれまい。他言無用にして、ある程度話すしかないだろう」
う〜ん、それしかないかぁ……。
「分かったわ。じゃあそうしましょ」
「相談は終わり?」
「えぇ、これからちゃんと話すわ。でも、このことは絶対に誰にも言わないで。お願い」
わたしはそう言って、頭を下げた。
ツェルプストーにお願いをするなんてホントは嫌で嫌でしょうがないんだけど、事が事だけにそうも言っていられないわ。
家族が待ってるって言ってたフィアースをアカデミーに引っ張られるのも忍びないし、下手をすればフィアースを召喚したわたしまで研究所に連れて行かれかねないもの。
わたしの言葉に、キュルケとタバサは顔を見合わせている。
キュルケ自身もわたしがツェルプストーを嫌っていることは知っているはずなので、先ほどの言葉の意味に驚いているみたい。
「わかったわ。ヴァリエールがそこまで言うのなら、それだけの話なんだろうし。タバサもいいわよね?」
キュルケに振られると、タバサも頷くのが見えた。
◇◆◇
「それで、フィアースに訊きたい事って、具体的にはどんなこと?」
ルイズが話を振ると、タバサが俺に目を向けて訊いてきた。
「決闘の時に使ってた技と、魔法の受け流し方」
やはりそこか。
しかしあれらは、ほとんどがARMによるクラスのスキルである以上、この娘には使えないはずだ。先ずはそこから説明しないといけないだろうな。
「では少し遠回りになるが、先ず俺の話をしなければならないな」
タバサは目で続きを促してくる。
「俺はこの世界……ハルケギニアの人間ではない。こことは別のファルガイアという世界からルイズに召喚された、異世界人だ」
その言葉が予想外すぎたのか、キュルケとタバサはぽかんとした表情だ。
「ハルケギニアじゃない別の世界?別の国とかじゃなくて?」
「違う。何しろ、ファルガイアには月が一つしかない」
一番分かりやすいだろう例を挙げて説明する。
「月が一つしかない世界なんて、とてもじゃないけど信じられないわ」
ルイズの時と大体同じような反応が返ってくる。まぁ当然か。
「何か証拠になりそうなものでも無いの?」
「あの決闘が証拠」
「そう言われても……」
早くもタバサは立ち直っているようだが、キュルケの方はまだ混乱中のようだ。
さて、どうしたものか。ARMを見せるにしても、効果を実証しづらいのが問題か。
少し考えていると、ルイズが脇をつついてきた。
「どうするの?ARMじゃ分かりづらいんじゃない?」
「いいものがある」
そうルイズに切り返しながら、懐から懐中時計を取り出した。これは別にエミュレーターの防具ではなく普通の懐中時計なのだが、この世界の技術力ではおそらく作れないものではないだろうか。
「何これ?」
「懐中時計だ。振動によってねじを巻き、半永久的に動作する」
そう言いながらキュルケに渡す。受け取ったキュルケは、ものめずらしそうにそれを見ていたが、ある程度見て納得したらしい。
「……確かに、こんな細かい機械は見たことが無いわね。それに装飾もきれいだし」
「こっちの絵は何?なんかすごく綺麗な絵だけど」
横からルイズに問いかけられた。懐中時計のふたの裏に入っていた写真が気になったらしい。クラリッサとアレクシアを中央に、ブランクイーゼルのみんなで撮ったものだ。
「ファルガイアにいたときの仲間たちの写真だ」
「写真?」
ふむ。この反応だと、懐中時計より写真の方が証明になりそうだな。
「瞬間的な絵を残す機械で撮ったものだ」
「へぇ、便利なものがあるのね。これは確かにハルケギニアには無いものね。時計の方ならどこかにあるんじゃないかと思ったんだけど」
どうやら納得してもらえたらしいので、話を続ける。
「話を続けよう。ファルガイアでは旅人……渡り鳥と言うのだが、ほぼ例外なく持っているのが」
そこで言葉を切って、懐からARMを取り出して二人に見せる。
「このARMだ」
「なに、これ?」
よく分からないといった表情の二人に向けて、言葉を続けた。
「Artificial Reincarnate Medallion。様々な状況に対応するために、クラスという形でまとめられた戦い方を記録した機械だ」
ARMをタバサに手渡すと、説明を続ける。
「俺が先ほどの決闘で使った技や教室でルイズの魔法を受け流したのは、これに記録されたクラスの能力だ」
「私にも使える?」
タバサが問いかけてくるが、俺は首を横に振る。
「ARMは個人用に調整が必要だから、これをタバサが使うことはできない。ファルガイアなら一部を除いて普通に売られていたから問題は無かったのだが」
「そう」
タバサは残念そうな表情を浮かべながら手の中のARMを俺に返す。
「だが、ある程度の原理なら説明もできるかもしれない。それで構わないのであれば、力になれないこともないだろう」
「原理?」
俺の言葉が予想外だったのか、疑問の表情を浮かべながら訊き返してくる。
「例えば最初のワルキューレを攻撃したリタイエイションは、受けた攻撃の衝撃を相手に叩き返すという行動を極限まで短縮したものだ」
意味がよく分からないのか、ぽかんとした表情を浮かべる3人。
「攻撃を捌く場合は、衝撃を自分の体からずらす方向へと逃がしてダメージにならないようにするわけだが、リタリエイションは体を使って相手に衝撃を叩き返すんだ。
そうだな、タバサのその杖で横殴りにされたとしよう。その杖からの衝撃を左手で受け止めながら回転の力に変換し、反対の右手で叩き返す……と言ったイメージになるのだが」
正確には少し違うのだが、わかりやすくするための説明なのでこれで我慢してもらおう。
ルイズとキュルケはよく分からない顔をしているが、タバサは何か思うところがあるのか考え込んでいる。
「教室の方は?」
ルイズの爆発を受け止めた、レジストブロックのことか。
「大まかなところでは物理攻撃を受け流すのと変わらない。違うのは、相手が魔法であるがゆえに物理的に受け止められないことだ。
ならば同じ状況にしてやればいい。『魔法を受け止められる術式』を組み上げ、それによって魔法を受け流す。術式の構造上、常時展開はできない上に成功確率も高いわけではないのだが」
俺の説明に頭をひねり出すルイズとキュルケ。タバサも流石に考え込んでいるようだ。
「ねぇ、今でてきた『術式』ってどういう意味?魔法のことじゃないわよね?」
ルイズが訊いて来る。
「基本的には同じだ。例えば、魔法で火の玉を出すとしよう。火が燃えるためには、燃える元となるものが必要になる。ランプや暖炉を思い浮かべればいい。油や薪が無ければ、火は燃え続けないだろう?」
ハッとした表情で頷く3人。
「その状況を、環境を操作して作り上げる。燃える物と燃焼に必要な熱量を準備し、それを火の玉として現象化するという手順になる、と言うのが俺の予測だ」
「そう言われればそうね。そんなこと考えたことも無かったけど」
そういえばキュルケは火のメイジだったな。
「おそらく術式展開を感覚的に行っているか、もしくは呪文にすべてが集約されているのだろう。
それはともかく、魔法によって引き起こされる現象にも一定の形式や手順があるということだ。それらを総称して『術式』と呼んでいる」
◇◆◇
「結論としては、魔法を受け止めることができる術式さえ組み上げてやれば、物理攻撃と同じように受け流すことができる」
そんな簡単な事のように言われても。
……ってちょっと待ちなさい?
「ねぇフィアース。物理攻撃と同じように受け流せるのなら、さっきのと同じように跳ね返すこともできるの?」
「可能だ。リフレクトという技術がそれにあたる」
あきれた。スペルキャスターだっけ?それってメイジみたいな能力なのに、メイジ殺しの能力も持ってるなんて。
「話を戻すが、ではどういう術式を使ってレジストブロックをしているかというのは」
その言葉に身を乗り出すわたしたち。
「実は、よく分からない」
がっくり。
「なによそれ。期待させるだけさせといて」
キュルケも文句を言っている。
「掛け算のようなものだ。3×4は3が4つあるからではなく、3×4だから12だろう?」
「もったいぶって、何が言いたいのよ?」
「原理はともかく『そういうもの』として覚えてる?」
あぁ、なるほどそういうこと。
タバサの返答に、フィアースは首肯を返す。
「あぁ。そしてそれを可能にしているのがこのARMというわけだ」
ホントに便利いいわね、ARMって。
「もう一つ。最初のゴーレムに止めを刺した技」
タバサが話を続ける。
「ウェポンボルトは俺個人が作った技だ。衝撃波を一点集中し、投げつける。
効果範囲は狭いが高低差があっても当て易いし、何より俺自身の慣れもあってすぐに展開できる。
あの時は素手だったから切り裂くにとどまったが、武器があればイメージが固めやすい分威力もまだ上げられるだろう」
とどまったってアンタ、素手でアレだけの威力が出せれば十分でしょうよ。
「なんにしても、お前たちの魔法ほど便利なものでもないと思うのだが……それはいいか。
基本はいま言った通り、イメージによる衝撃波の一点集中だ。衝撃というものは、針のように当たる面積が小さければ威力は大きくなるからな」
「フィアースが作ったって事は、ARMがなくても使えるの?」
「適正や訓練が必要になるだろうが、できないことはないだろう。だが、メイジが使う必要があるとは思えないのだが」
そっか。それは確かに。
「いや」
あれ、タバサが反論してる。
「素手で遠距離に攻撃できるのは便利」
「確かに、あたしたちメイジは杖が無いと無力だものね」
「いざというときのための、ということ?そんな状況がそうそうあるとは思えないけど」
あたしの疑問に、しかしタバサは何も答えない。
「さっきの捌きと合わせて、教えて欲しい」
「どうしたのよタバサ、やけにこだわるじゃない」
キュルケの疑問にも何も返さず、フィアースを見ている。
「……ルイズ」
「はぁ、好きにしなさいよ」
わたしに伺いを立てるのはいいけど、こう何度もとなると段々面倒になってきたわ。
「だそうだ。時間のあるときにでも声をかけてくれれば」
「ありがとう」
あれ、タバサ少し顔がゆるんだかしら?無表情だから分かりづらいけど。
「お礼は」
「いや、俺は特に望むものは無いんだが」
フィアースが困惑してる。面白いけど、助け舟を出してあげようかしら。
「何か思いついたらその時に、でいいんじゃない?」
「ふむ。それならそういうことでどうだろう」
「わかった」
わたしの提案で、意外とあっさり決まってしまった。まぁ悪くない提案だと思ってたし、これでいいでしょう。
はぁ、ホントに一時はどうなることかと思ったわ。
「ところでフィアース、さっきの絵のことなんだけど」
何とか一段落したと思ったら、さっきの写真のことが気になってきちゃった。
「あの人たちが家族?」
「そのようなものだ。アウィルの姓を持った家族ならクラリッサだけだが」
懐中時計を開けて、再びみんなに写真を見せる。
「中央左側にいるのがクラリッサ、その右側にいるのがアレクシア。後列は俺から順に、ラブライナ、レヴィン、ログナー。みんな一緒に旅をした、かけがえの無い仲間であり、家族だ」
クラリッサ、っていうのがフィアースを待ってる娘よね。隣のアレクシアって娘は姉妹かしら?ものすごくそっくりだけど。
「ねぇ、旅をしていたって言ったけど、どんな旅だったの?」
興味を惹かれたか、キュルケが旅の話を求めてきた。
もうフィアースのことは話したあとだし、ファルガイアでのことを話してもらったとしてもそれほど問題はないかしらね。わたしも気になるし。
「そうね、わたしも興味あるわ。ついでだから話しなさいよ」
わたしがキュルケの話に乗ると、フィアースは少し考えてから、口を開いた。
「それでは話すとしよう。エレシウス王国での戦火<クロスファイア>を駆け抜けた、つい先日までの日々のことを。
話は、一人の男を追って俺とクラリッサがエレシウス王国へとたどり着いたところから始まる……」
今回は以上です。
1つめ、番号間違えた・・・1-4です。
なんか思ってたよりどんどん長くなっていく・・・この先どうなることやら(汗)
さて、次がんばろう。
フィアースの人乙です。
次回にwktk。
乙です。
確かにハルケギニアの懐中時計には自動巻き機構なんて付いてないだろうなあ。
懐中時計自体は原作にも出てくるけどね。
んあ?出てきたっけか?久しぶりに読むか。
>>502 水兵服買った露天に並んでた・・・・・・と思った。
デルフがアプトムに取り込まれ高周波ソードの代わりになったりするのかと
しかしハルキゲニアでアプトムがパワーアップするなら
ドラゴンとかじゃないとただの栄養補給なんだろうなあ
>>504 メイジやエルフ食えばきっと魔法使えるようになるよ。
506 :
ミゴール:2009/01/03(土) 23:55:11 ID:OgKs1v0V
こんばんわ、予約無ければ0時から投下したいと
俺は待ってたぜ支援
どぞー
フーケの小屋の中で見つけた「破壊の剣」、それに手を触れた瞬
間、ルイズの周囲が――世界が弾けた。
気付けばルイズは漆黒の世界の中に浮かんでいた。
ただただ広い、ただただ深い闇。
その闇の中に浮かぶ無数の星々。
そんな距離も自分の位置も向きすら分からない漆黒の世界。
「これは……ここは……?」
ここがどこで、ここが何で、なぜここにいるのか、何も分からな
い。何も考えることが出来ない。ただただ際限なく広がっている世
界を前にルイズは圧倒されていた。
呆然とするルイズ。どれほどそうしていただろうか、気づくとル
イズの目の前に星の一つが漂っていた。何気なく手を伸ばしたルイ
ズの意思に応じるように、その小さな星がルイズの手に収まるよう
にふわりと飛び込んでくる。
「うわぁ……これが、星……? こんな風に見るなんて……すごい」
ルイズの手の中で光る星、その中には一つの世界があった。広大
な大洋に浮かぶ島々、水を切って行き交う巨大な帆船、その船を飲
み込もうとする白い四本腕の怪物。怯える船員を押しのけ、慌てて
甲板に飛び出す一人の男。
「ああっ、危ない! 逃げないと……」
驚き心配するルイズをよそに、男は怪物を見据えると一つ深呼吸
をして心を落ち着かせ、きっと睨み返しながら腰の皮袋から一枚の
石版を引き抜いた。それは先ほどルイズが目にしていた「破壊の剣」
とは少々形状と大きさが違うものの――
「カード!? それじゃあこの男は?」
ルイズが覗き込む星の中で、男はカードを手に一声叫ぶ。ルイズ
の知らない言語での呼びかけ、それに応えてカードが展開する。板
状だったカードが中央とその周囲のパーツに別れて広がってゆく。
その広がってゆくカードの中央から、四本腕の怪物の半分に満たな
い程度だが同じく怪物が生まれる。現れた怪物は全身が水で形作ら
れた水人間というべき存在。それが船に近づく四本腕の前に立ちは
だかり拳を振るう。負けじと四本腕も水人間に襲い掛かるが、水人
間の体は飛沫を上げるだけですぐに飛び散った水が集まり人型を取
り戻す。。
そんな異形の戦いを思わず拳を握りながら見守っていたルイズだ
が、いつの間にかその周囲にまたいくつもの星が集まっていた。あ
る星の中には不毛の荒野で粗末な鎧の盗賊がカードを手に亜人を率
いて村を襲い、ある世界ではドラゴンが奇妙な剣を手にしたメイジ
――いやセプターによって打ち倒され、ある世界では大量の矢が飛
び交う戦場で平然とジャグリングを演じるピエロが笑っていた。角
ばった塔が林立する中を走る道を大量の人が埋め尽くす街があった。
火の雨が降り注ぎ人々が逃げ惑う光景があった。薄暗い樹海を生き
抜く小さな獣の一生があった。
いくつもの星々、その中にある全く知らない異郷の風景、次々に
集まっては散ってゆく星の見せる世界にルイズは見入っていた。だ
がある一つの星に手を伸ばした時、突然周囲を強い光が満たし始め
る。驚きの声すら塗りつぶす強い光、両手をかざしながら光源へと
向き直ったルイズの前に、光を背負った巨大な人影が立っていた。
「始祖……」
思わず呟くルイズ。ルイズたちハルケギニアの人々にとっての絶
対の存在である始祖ブリミル、それを思わせるほどの強大な存在感
を持ったものが彼女の前に居た。
――――力を使え
厳かな「声」がルイズの心に刻まれる。突然心の中に侵入してき
た「声」に戸惑うルイズだが、そんなことは意に介さず「声」は続
く。
――――その手に集めよ
「声」と共に、本のイメージが心に浮かぶ。その本がパラパラと
めくれて行き、やがて最後のページに到達するとばらばらになって
散り散りになる。
――――時を越え
ばらばらになったページが平原に、海に、森に、雪原に、砂漠に
とさまざまな場所に降り注ぐ。
――――目指せ
それらのページ、カードに何者かが手を伸ばし……
覚醒。
突然の轟音。
小屋が震え、窓の板戸が、続いて屋根が根こそぎ吹き飛んでゆく。
「な、何が……!」
突然開けた周囲の風景。今までのことは、今の轟音は何なのか、
この光景は何なのか、驚愕の連続にルイズは混乱のまま轟音のする
方へ目を向ける。そこにあったのはさらなる驚愕だった。
屋根がなくなった小屋から見える周囲の木々とそこにそびえる巨
大なゴーレム――土くれのフーケ。だがそれ以上にルイズたちを驚
かせている物、それはルイズの手の中にあった「破壊の剣」、この
ただの石版だったものが姿を変えつつあったのだ。
「これは……カードが……」
「ル、ルイズ!? もしかしてこれが破壊の剣の本当の姿なわけ?!」
現れたフーケのゴーレムを前にして浮き足立っていたキュルケと
タバサが今の状況も忘れて変容する破壊の剣を見つめていた。その
変化しつつあるカードを呆然と見つめていたルイズの唇が、無意識
に脳裏に浮かんだ言葉を呟いた。
「ストーム、コーザー」
胎動。
その言葉が紡がれた瞬間、「破壊の剣」はルイズが先ほどまで見
ていた星の中の世界のよう、その中に秘められた力を顕現させた。
「なんてこったい、大当たりだよ。まったく生徒なんかがやって来
ちゃ誰も使い方が解らないと思ったら……何とか生け捕りにして使
い方を吐かせてやらないとね」
小屋の方へと足を進めるゴーレムの上で、土くれのフーケは姿を
変えつつある「破壊の剣」を見下ろし不敵な笑みを浮かべながら呟
いた。学院から破壊の剣を盗み出したフーケだったが、箱の中に収
められていたのは小さな石版一枚だけだった。なにのマジックアイ
テムだろうとは思うのだが、破壊の剣の名を呼ぼうと、思いつく限
りの呪文で呼びかけても何をしても反応しない。このままでは魔法
学院の宝物庫から危険を冒して使えないゴミを持ち出したことにな
ってしまう。それ故フーケはさらなる危険を犯すことになるものの
学院へと取って返して教師達を破壊の剣の元へとおびき出して使い
方を知ろうとしたのだ。
結果としてこの芝居は成功したものの、教師達は身の危険と任務
に失敗した時の責任に二の足を踏んでなぜか生徒がやって来てしま
った。しかし、その生徒の中に「破壊の剣」の使い方を知る者が居
たというのはとてつもない幸運である。
「さぁて、森の中じゃこのゴーレムから逃げるなんて無理だろうねぇ。
再生する私のゴーレム相手にどこまでやれるかい?」
「おお、ルイズ様はやはりセプターの才が……」
展開してゆくカードの姿を前に感激の声を漏らすミゴール。見守
るキュルケとタバサ。その前でようやく、カードの中に秘められて
いた物が姿を現した。
最初に飛び出したものは、禍々しい鉤爪。それを先端に付けた昆
虫のような、百足の胴体のような足が続けて何本も飛び出して展開
したカードの淵を捕らえ、びきびきと力が込められて行く。
みちりみちり、そんな音を漏らしながら、カードから飛び出した
足が中からその「破壊の剣」そのものと言うべき物を引きずり出す。
最初に引き出されたのは眼、緑に光る眼球。それが瞬きをするたび
に単眼と複眼に入れ替わる。その眼の先に存在する刀身には人の顔
が刻み込まれていた。それも慟哭に震えるかのような、恐怖と絶望
に染められたデスマスクである。
現れたのは禍々しくおぞましい魔剣。赤黒く塗れた刀身に緑の光
を灯す眼、ギチギチと蠢く柄から伸びた鉤爪のある触手――まさに
「破壊の剣」と言う名に違わぬ恐怖を与える姿だった。
「これが……破壊の剣だって言うの……こんな物が、学院の宝?」
迫るフーケのゴーレムよりも、この剣に恐怖を感じて一歩後ずさ
るキュルケ。ルイズはそれに構わず視線を傍らのミゴールに移す。
顔を上げるミゴールと眼が合う。無言で力強く頷く己の使い魔の姿
に、ルイズも頷き返す。今、ルイズの心の中には先ほどの混乱と驚
愕は既に無く例えようも無く落ち着いていた。自分の心が、精神が、
ルイズという存在が「広がった」、そんな感覚がルイズにあった。
「ミゴール、この剣で勝てるわね?」
「お任せ下さい」
短い言葉。ルイズとミゴールの意思を受けて、破壊の剣が担い手
としてその鉤爪の生えた足をミゴールに伸ばして右腕に食らい付き
同化してゆく。黒い血が飛び散り腐臭と煙を上げ、ボコボコと皮膚
の下に剣の足が潜り込む。そのおぞましい姿に青ざめるキュルケと
タバサだったが、ルイズは顔色を変えずにその様子を見届けると、
一言命令を下した。
「やりなさい」
フーケはゴーレムの上から小屋の中での「破壊の剣」の変化を見
届け、ルイズを人質にしようとゴーレムに腕を伸ばさせながら一歩
踏み出そうとした。だが、その視線の先でルイズがその使い魔――
昨夜にただの鉄の棒を投げつけてゴーレムの体を抉った亜人に破壊
の剣を持たせるのを見て一瞬体が凍った。頭の片隅で、盗賊として
の勘が猛烈に警鐘を鳴らし始める。これは危険だと、ゴーレムの力
を過信するなと、今すぐ逃げろと本能が叫ぶ。トライアングルメイ
ジとしてのプライドが、土くれのフーケという自負がそれを押し止
めようとするが――
「ちっ、こういう勘は当たっちまうもんだよっ」
吐き捨てるとゴーレムの肩を蹴り後ろへ跳躍しながらレビテーシ
ョンを唱える。結果として盗賊としての勘に従った行動が、プライ
ドによる躊躇いが、その双方がフーケの命を救った。
「コオォォォォォォォ!」
「ッガアアアアアアア!」
二つの咆哮。一つは洞窟を吹き抜ける風のような空虚で寒々しい
心を乱し引き裂く声。もう一つは昨夜も聞いた、敵に死の先触れの
恐怖を刻む荒々しい闘争の雄叫び。
爆音に近いほどの猛烈な突風が吹き荒れ、残った小屋の壁が舞い
上がり風に砕け、直後に風が収束して収まる。その風が収束した中
心、そこにあの亜人が破壊の剣を腰だめに構えてゴーレムを見据え
ている。その右腕は破壊の剣と一体化し、亜人と破壊の剣、双方の
禍々しい外観が相まって、おぞましい異形の怪物となっていた。
「グゥゥ、ゴアアアアァァ!」
振り抜かれる破壊の剣。
その刀身から迸った物は、風。ミゴールの雄叫びすら飲み込み吹
き荒れる嵐を刃として押し固めた破壊の刃。それは大地を抉り木々
を切り裂く。ぶ厚いゴーレムの胴をあっさりと両断してフーケの足
元数メイルの空間を突き抜け、それでも止まらずその背後の森を斬
り進む。
「くっ、さすが学院の秘宝だね……だけど両断されたくらいならま
だ再生は」
空中で幸運にも嵐の刃を身に受けずに済んだフーケが、さらなる
破壊に巻き込まれる。押し固められた嵐が解き放たれ爆裂する。風
が爆発する、新たに小さな刃がでたらめに飛び散る、また爆裂する。
嵐の刃を追いかけるように走る風の爆発が両断されたゴーレムを粉
々に砕き、フーケを深い森の中に吹き飛ばし、そして森を1リーグ
に届く程も切り開いた。破壊の剣の一振り、たったそれだけのこと
がこれ程の破壊を巻き起こしたのだった。
「あぁ、そっちはどう?」
「……(ふるふる)」
「そう……やっぱり、あれに巻き込まれて……」
使い魔の風竜から降りたタバサからの返答に沈むルイズ。フーケ
をただの一撃で撃退した「破壊の剣」の破壊力はすさまじいものだ
ったのだが、如何せん破壊力が大きすぎたのだった。森を切り開く
ほどの破壊力はルイズたちが乗ってきた馬車にも及んでいた。嵐の
刃の痕跡が残る末端付近なのだが、それでも馬車は目茶目茶に砕け
散っており、馬車を牽いていた馬も無残に「散らばって」いる。
あの破壊の剣の一振りでフーケのゴーレムが破壊されたのは一目
瞭然、だというのにミス・ロングビルは一向に現れる気配が無かっ
た。フーケのゴーレムが破壊されたというのに、周囲の警戒に残っ
たミス・ロングビルが現れない理由……考えられるのは、フーケに
捕らえられたか破壊の剣に巻き込まれて気絶している、あるいは……
と、その時森の木々の間を縫って空に火球が一つ昇り爆発した。
はっとしたタバサがレビテーションを使い木々の上に浮かび上がる。
その視線の先で、髪に木の枝をつけたキュルケが気絶したロングビ
ルを抱えて飛んできていた。
「全く、感謝して欲しいわねルイズ。私が見つけなかったら気絶し
たミス・ロングビルを死んだことにして帰っちゃう所だったのよ?」
「むぐ……でもあんたがやったことってそれだけじゃない」
「何よ、そもそもミス・ロングビルが気絶したのはあんたのとこの
せいじゃない」
気絶したミス・ロングビルの手当てをするタバサ――水の系統魔
法に加えて応急手当の心得もあるそうだ――の横で言い争うルイズ
とキュルケ、その騒がしさによってか手当てのかいあってか、その
まぶたがゆっくりと開かれる。
「眼が覚めた」
タバサの声に、ルイズとキュルケは慌てて言い争いをやめてロン
グビルの様子を窺う。三人が見守る前でロングビルは上体を起こし
ながら何度か瞬きをする。そして、
「なっ、あ、あんたらっ!?」
慌てて跳び退ろうとするが、先ほどまで気絶していた程の打撲と
感覚の狂いに疲労で地面に倒れこむ。キュルケが慌ててその体を抱
き起こし、ルイズと共に声を掛ける。
「大丈夫?! ミス・ロングビル、しっかりして」
「ミス・ロングビル、もう大丈夫です。フーケは倒しました、もう
安全ですから」
体を支えられた上体で前後から声を掛けられることで、だんだん
とロングビルも落ち着きを取り戻して目覚めた直後の怯え慌てた様
子も収まった。目覚めたロングビルにタバサがいくつか質問しつつ
体の調子を確かめて骨折などの様子が無いことを確認する。
「ああすみません、ご心配をおかけして……すっかり足を引っ張っ
てしまいましたわ」
「お気になさらないでミス・ロングビル。それもこれも加減を知ら
ないヴァリエールがいけないのですわ」
口元を隠しながら笑うようなしぐさをするキュルケ。それに反論
しようとするルイズだったが、その前にロングビルが慌ててルイズ
の肩を掴んで問いかける。
「そうですわ、破壊の剣ですわ! ミス・ヴァリエール、破壊の剣
の使い方は、今どこに!?」
「ちょ、ミス・ロングビル落ち着いて……」
「ですから、破壊の剣はっ」
と、そこでロングビルの言葉が途切れる。ずい、と半身を黒く汚
したミゴールが無言で歩み寄るとロングビルの体に手をかけて持ち
上げる。というか体が宙に舞った。自由落下を経てどさりと地面に
激突する。
「ご無事ですかルイズ様?」
「ミ、ミゴールあんた怪我人に何してんの!」
ルイズの傍に控えていたミゴールが強引にロングビルの体を放り
投げたのだ。先ほどの破壊の剣を振るった際の傷が開いて黒い血が
滴っている怪我人の一人なのだが、多少動きが鈍い程度でどうもあ
まり気にした様子が無い。とりあえずミゴールは大丈夫そうだと判
断したルイズは再び慌ててロングビルの元へと駆け寄る。
「落ち着いて下さい、ミス・ロングビル。破壊の剣は無事取り戻し
ましたわ。ほら、ここに」
そう言って胸元にしまって置いたカードを取り出すルイズ。だが
ロングビルは苦しそうに身を起こしながら首を振る。
「いえ、ミス・ヴァリエール……その破壊の剣は学院の秘宝であり
ながら誰も使い方が解らなかったそうです。もし使い方が解るので
あればやって見せて頂けませんか? そこまで確認しなければ……」
苦しそうに言葉を紡ぐロングビルの様子に、ルイズは頷いてカー
ドを手にその名を唱える。
「ストームコーザー」
再び展開するカード、そこから現れる禍々しい魔剣を見てロング
ビルはにやりと微笑んだ。現れた破壊の剣――ストームコーザーに
手を伸ばすルイズに、ロングビルは渾身の力を振り絞って飛び起き
て思い切り突き飛ばす。
「な、ミス・ロングビル!?」
驚愕するルイズたち、その前でロングビルがストームコーザーを
手に取って倒れたルイズに突きつける。その表情は苦痛と疲労、そ
してそれ以上の悪意で歪んでいた。
「やれやれ、こんなことになっちまうなんて予想外だよ。でもまあ
予定通り人質も取れたし……げほっ、結果オーライってとこかね」
「ミス・ロングビル……いえ、もしかして……」
突き付けられた刃の下でルイズが睨む。その視線を受けてロング
ビル、いやフーケが悪意に満ちた笑顔を返す。
「そうさ、わたしが土くれのフーケさ。盗んだのはいいんだけど、
使い方が解らなくてね。ふん、要するに全然関係ない名前が付い
てただけかい」
フーケはキュルケ、タバサ、ミゴールの様子を見守り牽制しつつ
どうやって逃げようかを考え始める。だが、いかにも悔しそうにし
ているキュルケに対して(タバサはいまいち解らないが)ルイズと
ミゴールの様子が妙に落ち着いている。特に、あの忌々しい亜人の
ミゴールはやたらと主人に忠誠心が強く、先ほど怪我人のフーケが
主人の肩に手をかけただけで宙に放り投げるほどだ。それがこうし
て剣を突き付けられた主人を遠巻きに見ているだけというのはおか
しい、何かを企んでいると見るのが正解だろう。
ならば、とフーケは考えを変えた。もうみんな殺してしまおう、
全員この場で殺して、しばらく休んで体力が回復したら死体5人分
になるほどばらばらに刻んで逃げればいい、それが一番確実だ、そ
う考えた。
常識的に考えればそれが確実な手段だったろう。だが、今この場
この状況においてはその判断は致命的な失敗だった。いや、これを
「フーケが判断を誤った」と言い切るのは酷なことだろう。フーケ
は知らなかったのだ。ストームコーザーがどういう剣なのか、ミゴ
ールがどのようにしてこの剣を右腕にとったのか、そして、ミゴー
ルの血が「黒い」ということを知らなかった。故に気づけなかった
のだ、魔剣が放つ破壊力の代償が何なのか。
このフーケの攻撃の意志を、殺意を、右手の魔剣は鋭敏に感じ取
り、彼女を次の自身の担い手と認めて――その触手を伸ばし、体に
突き立てた。
鮮血が舞った。
邪悪な笑顔を浮かべたままのフーケの首がぼとりと転がる。
バケツをひっくり返した、と形容されるようにルイズの上に血が
溢れる。ストームコーザーがフーケの右腕を咥えたまま地面に突き
刺さる。
血を溢しながら立つフーケの体は右腕から右胸までが、一瞬にし
てストームコーザーの触手によって綺麗に食い千切られていた。
起き上がるルイズに押されてどさりと倒れるフーケの体。
思わず嘔吐するキュルケ。破壊の剣に杖を向けるタバサ。
それをよそにルイズはマントで顔を乱暴に拭い、軽く精神を集中
する。するとそれに応えて破壊の剣は再びカードに戻った。そう、
カードはルイズが己の意志でその内に秘められた力を解放していた
だけであるため、ルイズがカードに戻そうと思えばフーケの命を奪
う前にカードに戻すことも出来たのだ。だがそうしなかった。始め
て得た「己の」力に酔っていたのだろうか、それともこんなことに
慣れなければいけないという無意識の決意なのだろうか。フーケの
死の証である鮮血に濡れながら、ルイズは先ほどの行動を思い返し、
なんとなく口に出して思い返してみる。
「私も随分変わってしまっていたのね。ミゴールを召喚して、カル
ドセプトなんて神話を知って、ミゴール族を救うと誓って……私が
カードが使えると知って……ふふ、そしてフーケを見殺しに、いい
え、フーケを殺して……なのにこんな風に落ちついてられるなんて」
口にした瞬間、ルイズの体に一瞬震えが走った。口にしたことで
はっきりと自覚した。落ち着いてなどいない、ただ理解できなかっ
ただけだ、理解を拒否していたんだと気づいてしまった。
私は、人を殺した。
震えが手にも伝播する。いけない、そう直感する。このままでは
自分が壊れる、そんな思いが脳裏に浮かぶ。耐えなければいけない。
フーケは罪人だ、自分達を襲った、それに貴族ではない、むしろ賞
賛される行為だ、そんな自分を弁護する言葉が次々と思い浮かぶが、
そんな考えを勢い良く頭を振って追い出す。飛び跳ねた血の飛沫に
遠巻きに様子を窺っていたキュルケが小さな悲鳴を上げたが、ルイ
ズは構わず己の使い魔を呼ぶ。
「ミゴール。こいつの、首を、持って帰るわ。こんな表情なんだも
の、証拠としては十分でしょ」
「はっ」
足元の生首を示しながら必死になんでもない様子を装う。私はこ
んなことに動じたりはしない、父様と母様も戦争を経験しているの
に、その娘の私が盗賊退治で「人を殺してしまった」なんて言える
ものか、父様と母様に「人を殺しす感じにどうやって慣れたか」と
教えてもらうつもりか。自分に言い聞かせ、心に湧き上がる恐怖と
後悔に必死で耐えた。そうして傍らにやってきたミゴールと共に、
フーケの首をその手に取って、フーケのローブで包む。震えそうに
なる両腕と足を叱咤しながら、行動によってルイズは死を乗り越え
ようしていた。
そうして昨日までならば想像すら出来なかった行為を終えたルイ
ズは血にまみれた袋を手に提げながらキュルケたちの方へ振り返る。
ルイズはなんでもない風を装いながら、しかし強張った表情と声でキ
ュルケとタバサに告げた。
「ねえキュルケ、タバサ、帰る前に頼みがあるんだけど。私が「破
壊の剣」の使い方を知っているってこと、秘密ね。……絶対に言わ
ないでよ?」
ストームコーザー。嵐を刃とする「最強」の魔剣。
「最強」の代償は、命。命を用いて嵐の刃を得る。
そして「最強」を振るう代償を払い切れない者がその力を求めた
時、その者は刃を振るう間も無くただ命の全てを食い尽くされ無為
の死を遂げる。
その犠牲者が、また一人。
517 :
ミゴール:2009/01/04(日) 00:07:36 ID:zLk7ZaoC
以上で投下終了です。ミゴールはほとんど喋ってませんが。
今週末福岡に行ってきます。では。
乙様
福岡のどこ?
うぎゃああ、おマチさん死んだー!?
ルイズもついに手を染めてしまったし、
元ネタ全然知らないけどかなりハードですな。
何はともあれ、ミゴールの方、乙でしたー!!
ミゴールの人乙です。
おマチさん、思いっきりババ引いたなぁ。まあ、作品的には仕方ないか。
この先のお話にも期待してます。
予約なければ0:45から投下させてください
千客万来、支援よろし
それでは投下します
第一話その6です
『土くれ』の二つ名を持ち、トリステイン中の貴族を恐怖に陥れているメイジの盗賊がいる。
高価な調度品やマジックアイテムを専門に狙う怪盗で、盗みの手口として、主に『錬金』の魔法を使う。
『錬金』の呪文で扉や壁を砂や粘土にして潜り込むのである。
その盗みの技から、怪盗は『土くれのフーケ』と呼ばれていた。
忍び込むばかりではなく、力任せに屋敷を破壊する時には、フーケは巨大な土のゴーレムを使う。その身の丈はおよそ30メイル。
巨大なゴーレムに、魔法衛士たちはまるで歯が立たずに蹴散らされ、白昼堂々お宝を盗み出されてしまったこともある。
そんな土くれのフーケの正体を見たものは誰もおらず、男か女かも分かっていない。
ただ、分かっていることは、おそらくトライアングルクラスの『土』系統のメイジであること。
そして、犯行現場の壁に『秘蔵の○○、確かに領収しました。土くれのフーケ』と、ふざけたサインを残して行くこと。
巨大なふたつの月が、五階に宝物庫のある魔法学院の本塔を照らし出していた。
その壁に、垂直に立つ人影があった。土くれのフーケである。
フーケは足の感覚で壁の厚さを測ると、小さく舌打ちをした。
「さすがは魔法学院の本塔、作りが厳重だこと。こんなに壁が分厚かったら、私のゴーレムでも、壊せるか分からないね」
フーケは、腕を組んで悩んだ。
宝物庫の壁には『固定化』の魔法がかかっているため、『錬金』で壁に穴をあけるわけにもいかない。
フーケの『錬金』は、大抵の『固定化』などものともしなかったが、宝物庫の『固定化』は、スクウェアクラスのメイジが数人がかりで施した、非常に強力なものだったのである。
「やっとここまで来たってのに。しかしこのままおめおめと、『禁断の鍵』をあきらめるわけにゃあ、いかないね……」
フーケは歯がみする。そうしてしばらく考え込んでいたが、本塔の向かいにある中庭から人の声がして、フーケは慌てて暗闇に身を隠す。
「学生?なんだってこんな時間に……」
フーケは暗がりから、そっと中庭の様子をうかがいはじめた。
本塔の壁から、ゴーラの実がロープで縛られ、空中にぶら下がっていた。
春の使い魔召喚の日、アクアがルイズに何度もぶつけたあの実である。キュルケとルイズは、中庭からそれを見上げている。
「いいこと、ヴァリエール。先に魔法でロープを切って、あの実を地面に落とした方の勝ちよ」
「わかったわ」
貴族同士の決闘は禁止されているので、このような勝負方法をとることになったのである。
塔のてっぺんには、使い魔の風竜に跨がったタバサが見えた。ゴーラの実を塔にくくりつけたのもタバサである。
普通だったらとっくに寝息を立てている時間に、こんなことに引っ張り出されて、タバサはわりと機嫌が悪かった。
もっともタバサはいつも通りの無表情で、その変化に気付けるのは親友のキュルケぐらいのものであったが。
「ねえルイズ、大丈夫なの?」
後ろに控えていたティトォが、ルイズに声をかける。言外に『魔法を失敗させてばかりのルイズが、魔法で決闘なんて、大丈夫なのか』と言っているのだ。
アクアと違って空気の読めるティトォは、ストレートに言葉に出したりはしないのである。
「もちろんよ!誰が負けるもんですか。相手はあのにっくきツェルプストーなのよ」
「なんでそんなにキュルケに突っかかるの」
ギロリ、とルイズはティトォを睨む。何かまずいこと言ったかな、とティトォは後ずさった。
「いいこと、まずキュルケは、トリステインの人間じゃないわ。隣国ゲルマニアの貴族よ。私はゲルマニアが大嫌いなの」
「どうしてさ」
「私の実家があるヴァリエールの領地はね、ゲルマニアとの国境沿いにあるの。だから戦争になるといっつも先陣切ってゲルマニアと戦ってきたの。そして、国境の向こうの地名はツェルプストー!キュルケの生まれた土地よ!」
ルイズは歯ぎしりしながら叫んだ。
「つまり、あのキュルケの家は……フォン・ツェルプストー家は……、ヴァリエールの領地を治める貴族にとって不倶戴天の敵なのよ!」
ルイズはますますヒートアップする。ティトォは、こめかみを指でトントンと叩きながら話を聞いていた。
「……なにしてんの、さっきから」
「うん、ただの癖だから。気にしないで。はあ、それで寮の部屋も隣同士。なるほど、いがみ合うわけだね」
ティトォがヴァリエール家とツェルプストー家の因縁についての講義を受けていると、キュルケが声をかけてきた。
「いつまでおしゃべりしてるの?ルイズ、順番はあんたからよ。『ゼロのルイズ』には、このくらいのハンデをあげないとねえ」
ニヤリと笑うキュルケ。ルイズはあっさりと挑発に乗り、冷静さを失ってしまった。
「ののの、望むところよ。先手を譲ったこと、こここ、後悔させてあげるわ!」
杖を構え、狙いを付ける。塔の上のタバサが、ロープを振り子のように振りはじめた。
『ファイヤーボール』などの魔法は命中率が高いので、動かさなければ簡単に命中してしまい、勝負の公平さが失われるからだ。
しかし、ルイズには命中率以前に、『魔法が成功しない』という問題点があった。
しかしルイズにも、考えがないわけではなかった。完全に勢いで決闘を申し入れたのだが、ほんの少しだけは勝算があった。なくもなかった。
要はロープが切れればいいのよ。そう、わたしの魔法は失敗ばかり。でもあの爆発なら。机を粉々にするあの失敗魔法の爆発なら。あんなロープ、たやすく焼き尽くせるわ。
勝ち目は薄くても、ゼロじゃない。そうよ、ゼロなんかじゃ、決してない!わたしは!
ルイズは目を見開き、『ファイヤーボール』のルーンを唱え、気合いを込めて杖を振った。
一瞬遅れて、本塔の壁が爆発した。ロープがぶら下がっている位置からは3メイルほど離れていて、爆風でもロープは切れていなかった。
ルイズの失敗魔法は、コントロールがまるで効かないのだった。
本塔の壁にはヒビが入っていた。それを見て、キュルケは腹を抱えて笑っていた。
「ゼロ!ゼロのルイズ!ロープじゃなくて壁を爆発させてどうするの?器用ね!」
ルイズは憮然とした。
「さて。私の番ね」
キュルケは、狩人の目でゴーラの実を吊るしたロープを見据える。タバサがロープを揺らしているせいで、狙いが付けづらい。
それでもキュルケは余裕の笑みを浮かべ、短くルーンを呟いた。
メロンほどの大きさの火球が現れ、ゴーラの実を吊るしたロープをたやすく焼き切った。
どすん、と重たい音を立てて、ゴーラの実が地面に落ちる。
キュルケは勝ち誇って、笑い声を上げた。
「あたしの勝ちね!ヴァリエール!」
ルイズはしょぼんとして座り込み、地面の草をむしり始めた。
フーケは、中庭の植え込みの中から一部始終を見守っていた。
いったい、あの魔法はなんなのだろう?唱えた呪文は『ファイヤーボール』なのに、杖の先から火球は飛ばなかった。代わりに壁が爆発した。
あんな風にモノが爆発する魔法だなんて、見たことがない。いや、それよりも。
フーケはひびの入った本塔の壁を見上げる。あれはちょうど、宝物庫の辺りだ。
フーケは薄く笑うと、呪文を詠唱しはじめた。長い長い詠唱であった。
足下の地面が、音を立てて盛り上がる。
土くれのフーケが、その本領を発揮したのだ。
勝ち誇るキュルケと、座り込んで腐っているルイズ、そんなルイズを心配そうに見つめていたティトォは、中庭を覆いつくす巨大な影に、驚いて振り返った。
3人は、我が目を疑う。
身の丈30メイルはあろうかという、巨大な土ゴーレムが、ずしんずしんと地響きを立てて、こちらに向かってくるではないか!
「きゃあああああ!!」
キュルケが悲鳴を上げ、逃げ出した。
呆然となっていたルイズとティトォも、その声に、弾かれたようにその場を離れる。
土の巨人は、足下を逃げ惑う3人のことなど気にもかけず、本塔の前まで足を進めると、ひびの入った宝物庫の壁に、巨大な拳を打ち下ろした。
拳が壁にめり込み、ばらばらと破片が中庭に降り注ぐ。
ルイズとティトォ、キュルケは、その光景を離れた場所で見ていた。
「なんなの、あれ」
ルイズが震える声で尋ねる。本塔の壁を打ち壊したゴーレムの肩に乗っていた人影が、壁の穴から中に入り込んだ。ゴーレムは、そのまましばし動かなくなった。
やがて壁から、ふたたび人影が現れ、ゴーレムの肩に戻る。
「あそこって、確か……」
壁の穴を見ながら、キュルケが呟く。
「宝物庫だわ。なんてこと、あれはフーケ。『土くれのフーケ』に違いないわ」
土くれのフーケ。最近世間を騒がせている盗賊である。ティトォも、生徒たちの噂話でその名を何度も耳にした。
実際に聞いたのはアクアなのだが、ティトォたちは記憶を共有しているのである。
「そんな、魔法学院に賊が侵入するなんて……」
ルイズは呟く。
魔法学院の宝物庫には、王宮のメイジたちにより、厳重に『固定化』の魔法がかかっているはずだ。
建物自体も頑丈に作られていて、並のメイジではとても太刀打ちできないはずなのである。
そんな宝物庫の壁をあっさりと破壊したフーケの力に、ルイズは怯えた。しかしどうにも、心の奥で引っかかることがある。
あの土ゴーレムが打ちすえた場所。そこには確か、ルイズの爆発によってひびが入っていたのだ。
もしかして、わたしのせいで?わたしが、本塔の壁を爆発させたから?
そう考えると、ルイズは色を失った。
ゴーレムはゆっくりと身体の向きを変え、歩き出した。ルイズはその後を追って、走り出した。
「ルイズ!何を!」
ティトォが叫ぶ。
「賊を捕まえるのよ!このまま逃がしてなるものですか!」
「ルイズ、ばかはやめて!」
キュルケの呼びかけにも振り返らずに、ルイズはゴーレムに追いすがった。
支援
ゴーレムは魔法学院の敷地を取り囲む外壁を跨ぎ、まさに逃げ出す寸前であった。
「待ちなさい!この恥知らずの盗賊!」
ルイズは叫び、『ファイヤーボール』の呪文を唱える。
ルイズは肩の上の黒いローブに実を包んだ人間、フーケを狙ったのだが、狙いはまたしても大きく外れ、ゴーレムのわき腹のあたりを爆発させた。
ゴーレムの皮膚が削り取られ、一瞬バランスを崩した。
ゴーレムの肩に乗るフーケは、足下のルイズに気付くと、ゴーレムの腕を操って、魔法学院の外壁を崩した。
ガラガラと音を立てて、ルイズの頭上にレンガの雨が降り注いだ。
風竜に乗って、ゴーレムの上空を旋回しながら様子をうかがっていたタバサは、ルイズに気付くと、助けるために風竜シルフィードを飛ばせた。
しかし、一瞬遅かった。ルイズは瓦礫の下敷きになってしまった。
「ルイズ!」
追いかけてきたキュルケが、青ざめた顔で叫ぶ。
そんな騒ぎを尻目に、ゴーレムは悠然と学院を去っていったのだった。
「ルイズ、ルイズ。そんな、うそでしょ」
キュルケは呆然と、瓦礫の前に立ち尽くした。
遅れて追いついたティトォは、瓦礫の中のうめき声に気付いた。
ティトォは崩れた壁に駆け寄っていく。
そこには果たして、ルイズの姿があった。タバサが空気の塊を打ち出す呪文『エア・ハンマー』で、ルイズに降りかかった瓦礫を吹き飛ばしたのである。
しかし。
「うう、痛い……痛いよう……」
降りかかる瓦礫をすべて除くことはできなかった。ルイズは右脚を瓦礫に潰されていた。
ルイズの脚はおかしな方向に曲がり、脚を包むオーバーニーソックスはあちこち破れ、血と泥で汚れていた。
弱々しく泣き続けるルイズの様子に、ティトォは顔を歪ませた。
「ルイズ。ルイズ、本当にごめんよ。ぼくは使い魔を引き受けると言ったのに、主人のきみをこんな危険な目に遭わせてしまった」
ルイズのそばに膝を付き、ティトォは悲しそうに言う。
キュルケはすぐさま『レビテーション』で、ルイズの足にのしかかる瓦礫を取り除いた。
「タバサ、『水』系統の先生を起こしてきて、お願い!」
後ろに立っていたタバサに、声をかける。
しかしティトォは、それを制止した。
「大丈夫、ぼくがなんとかするから」
「なんとかって、あなた……」
ティトォは、服のポケットから、何やら小さな装置を取り出した。
ティトォがそれを弄ると、装置の先から、火がついた。
それは本体に溜めたオイルに、回転ドラム状のヤスリによって火をつける装置。いわゆるライターであった。
しかし、ハルケギニアにはライターは存在しないため、キュルケはそれをマジックアイテムの一種だと思った。
「マテリアル・パズル」
ティトォが呟くと、チラチラと小さく燃えていた炎が、突然勢いを増し、ティトォの右手のライターから、大きな火柱が立ち上がった。
カチャカチャと、何かが組み立てられるような音とともに、炎の色が変わっていく。
「炎の力よ、変換せよ!」
ティトォはその炎を、うずくまるルイズに叩き込んだ。
ゴオッ!と音を立てて、炎がルイズの全身に燃え広がる。
「なにをするの!?」
めらめらと燃えるルイズの身体を見て、キュルケが悲鳴を上げる。表情に乏しいタバサの顔にも、驚きの色が浮かんだ。
慌てて炎を消そうと、杖を構える。しかし、ふたりの口は、驚きのあまりルーンを唱えることを忘れてしまった。
ルイズを包む炎はみるみるうちに色を変え、白い炎となった。
ごうごうと勢いよく燃える炎は、ルイズの肌も、髪も、服も焦がさなかった。それだけではない。
「傷が……消える」
タバサが呟く。
ルイズの傷口はみるみるうちに塞がり、脚の骨は再びくっついた。
痛みにうめいていたルイズは、自分の身に起こった不思議に、目を見開いた。
「炎の治癒魔法!?そんな、ありえないわ」
キュルケが声を上げる。
『火』の本領は、情熱と破壊である。
古来より、傷を癒すのは、人の身体に流れる『水』を操る、『水』の系統魔法であった。
さらに、これほどの大けがともなれば、治療には専用の水の秘薬の助けが必要不可欠のはずなのである。
『火』が、秘薬もなしにこれほどの治癒の力を見せるのは、まるで道理にかなわない。この世の法則に則してない。
その時、ルイズはアクアの言葉を思い出していた。
(この世に新たな法則をつくり出す、それが『魔法/マテリアル・パズル』)
ルイズの視線に気付いたティトォは、すっかり体力を取り戻したようすのルイズを見て、心底ほっとした表情になった。
「これがぼくの魔法。炎の力を変換し、傷を治す癒しの力にする。無事でよかった、ルイズ」
ライターの炎を消すと、ルイズを纏っていた白い炎も消えた。
東の空が白みはじめ、この騒ぎに何事かと、教師や生徒たちが集まってきていた。
翌朝、魔法学院は上へ下への大騒ぎであった。
なにせ、魔法学院の秘宝『禁断の鍵』が盗賊に奪われてしまったのである。
ゴーレムによって宝物庫の壁に開けられた大穴のすぐ横には、『禁断の鍵、確かに領収しました。土くれのフーケ』と、犯行声明が刻まれていた。
学院長室に集められた教師たちは、口々に好き勝手なことを喚いている。
昨晩の当直である、ふくよかな中年の女性教師、ミセス・シュヴルーズは震え上がった。
何しろ、魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは信じられず、当直をサボり、ぐうぐう自室で寝ていたのだった。
当然のこと、責任の所在を求めて、教師たちは口々にシュヴルーズを責めたてた。
「ミセス・シュヴルーズ!当直はあなたなのではありませんか!」
「この責任はどう取られるおつもりか!」
「あなた、『禁断の鍵』を弁償できるのですかな!」
ミセス・シュヴルーズはとうとう、よよよと床に崩れ落ちてしまった。
そこにオスマン氏が現れる。
「これこれ、女性をあまりいじめるものではない」
シュヴルーズを責めていた教師の一人である、ギトーがオスマン氏に食ってかかる。
「しかし、オールド・オスマン!ミセス・シュヴルーズは当直なのに、ぐうぐう自室で寝ていたのですぞ!責任は彼女にあります!」
オスマン氏は、長い口ひげをこすりながら、興奮したギトーを宥める。
「落ち着きたまえ、ギトー君。きみは怒りっぽくていかん。さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」
オスマン氏は、辺りを見渡した。教師たちはお互い、顔を見合わせると、恥ずかしそうに顔を伏せた。名乗り出るものはいなかった。
「さて、これが現実じゃ。責任があるとするなら、われわれ全員じゃ。この中の誰もが、まさか魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思わなんだ。なにせここにいる者は、ほとんどがメイジじゃからな。われわれは油断していたのじゃよ」
オスマン氏は壁にぽっかりあいた穴を見つめ、尋ねた。
「で、犯行の現場を見ていたのは誰かね?」
「この3人です」
禿頭のコルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた3人を示した。
ルイズにキュルケにタバサの3人である。ティトォもそばにいたが、見知らぬ顔に、オスマン氏は眉をひそめた。
「はて、きみは誰じゃったかのう。年を取ると、忘れっぽくていかん」
「お初にお目にかかります。ぼくはティトォ、ルイズ・ヴァリエールの使い魔を務めています」
礼儀正しくティトォが答える。
「はて、ミス・ヴァリエールの使い魔は小さな女の子だったはずじゃが」
「ぼくは彼女の腹違いの兄です。わけあって使い魔の仕事を引き継ぐことになりました」
どんな『わけ』があれば、親兄弟が使い魔の肩代わりをすることになるのか、その場にいた教師たちの誰一人として分からなかったが、
ティトォはあくまでこの言い訳で通すつもりのようであった。
ルイズは頭を抱え、話題を逸らす。
「それよりも、オールド・オスマン。昨晩私たちが見たことですが」
「おお、そうじゃった。詳しく説明したまえ」
「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗ってたメイジが、この宝物庫に侵入しました。その、おそらく『禁断の鍵』を盗み出したんだと思います。盗み出したあとは、ゴーレムは城壁を超えて逃げ出しました……」
「それで?」
「ゴーレムの後を追いました」
タバサが後を引き取る。タバサはルイズの治療を見届けた後、使い魔の風竜シルフィードで、ゴーレムの後を追いかけたのだった。
「ゴーレムは、崩れて土の山になっていました。メイジの姿はありませんでした」
タバサは簡潔に、要点だけを述べた。
「ふむ……後を追おうにも、手がかりナシというわけか……」
オスマン氏はひげを撫でた。
ルイズは俯いて、両手を握りしめていたが、やがて決心したように、オスマン氏に声をかけた。
「オールド・オスマン。わたしとツェルプストーは昨晩、中庭で決闘を行いました」
∧l二|ヘ
(・ω・ ) ←に土産を持たせてどこかのスレに送ってください
./ ̄ ̄ ̄ハ
| 福 | |
| 袋 | |,,,....
 ̄ ̄ ̄ ̄
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オプーナ オプーナ オプーナ 株券 オプーナ 信長の野望online争覇の章 いづおロール 犬上小太郎
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キュルケはぎょっとする。なんで今そんなことを言うの、この子は。
ざわざわとする教師たちに、タバサがフォローを入れる。
「決闘ではありません、魔法の腕を競っていただけ」
ゴーラの実を吊るしての、射撃勝負のことを説明する。
なぜそのような勝負をすることになったかについては、非常にしょうもない話なので、適当にぼやかした。
「それで、あの。わたしの魔法が外れて、壁を爆発させてしまったんです。そしたら、あのゴーレムがあらわれて、その。わたしが爆発させた壁を殴って、その。もしかしたらわたしのせいで、その」
ルイズの話を聞いていた教師たちは、笑い出した。
「ミス・ヴァリエール。本塔の壁には、厳重な『固定化』がかけられています。たとえスクウェアクラスのメイジでも、あの壁に傷を付けることは難しいでしょう。
しかし『物理的な力』への対抗策はおろそかになっていた。今回はそこを突かれてしまったのです。あなたが気にやむことではありません」
コルベールは、優しくルイズに言った。
ルイズはまだ納得していなかったが、この話はそこで打ち切られた。
朝から姿の見えなかったミス・ロングビルが現れたのである。
「ミス・ロングビル!どこへ行っておられたのですか!大変ですぞ!事件ですぞ!」
コルベールがまくしたてる。しかし、ミス・ロングビルは落ち着いた態度で、オスマン氏に告げた。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの。」
「調査?」
「ええ、今朝方起きたら、大変な騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐにフーケの足取りを追いかけました」
「仕事が速いの。して、その結果は」
「私は馬で、ゴーレムが逃げた方角にある、東の農村を訪ねました。この学院からは馬で半刻ほどの、近在の村です。この学院から東には、人が暮らす村はそこしかありませんから」
「ふむ」
「そこで住人に聞き込みをしたところ、東の村から、さらに東に向かったところにある町との中間ほどに、打ち捨てられた廃屋があると言います。
そこは人が暮らしてはいないはずなのですが、たびたび明かりが付いていたり、黒ずくめのローブの男が出入りしているのを、村人が目撃しているそうです」
ルイズが叫んだ。
「黒ずくめのローブ?それはフーケです!間違いありません!」
「私は、そこがフーケの隠れ家ではないかと思います。しかしこれ以上は私一人で追いかけるのは危険と考え、報告に戻った次第です」
オスマン氏は、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で四時間と言ったところだそうです」
「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
叫ぶコルベールを、オスマン氏が一喝する。年寄りとは思えない迫力であった。
「ばかもの!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!その上、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、なにが貴族か!魔法学院の宝が盗まれた!これは魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」
オスマン氏は咳払いをすると、有志を募った。
「では、捜索隊を編成する。我をと思う者は、杖を掲げよ」
誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだ。
「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!」
ルイズは俯いていたが、それからすっと杖を掲げた。
「ミス・ヴァリエール!」
ミセス・シュヴルーズが、驚いた声を上げた。
「何をしているのです!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか」
ルイズは言い放った。ティトォが何か言いたげにこちらを見ていたが、ルイズは無視した。
ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケも渋々それに倣った。
「ヴァリエールには、負けられませんもの」
次いでタバサも、同じように杖を掲げる。
「タバサ、あんたはいいのよ。関係ないんだから」
キュルケはそう言ったが、タバサは短く返した。
「心配」
キュルケは、そんなタバサに感動した。また抱きついてかいぐりたいと思ったが、学院長の前であるので我慢した。
そんな3人を見て、オスマン氏は笑った。
「そうか、では頼むとしようかの」
「オールド・オスマン!わたくしは反対です!生徒たちをそんな危険にさらすわけには!」
「では、君が行くかね?ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ……わたくしは体調がすぐれませんので……」
「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だとも聞いておる」
教員たちがざわめく。タバサはいつも通り、ぬぼーっと立っていた。
「本当なの?タバサ」
キュルケも驚いている。王室から与えられる爵位としては最下級であるものの、タバサの歳でそれを与えられるというのが驚きであった。
次いでオスマン氏は、キュルケに視線を移した。
「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力だと聞いておる」
キュルケは得意げに、髪をかきあげた。
「それから。ミス・ヴァリエールは……えー………」
ルイズの番になって、オスマン氏は言葉を詰まらせてしまった。誉めるところがなかなか見つからなかった。
「こほん。その、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ。将来有望なメイジと聞いておる。そしてその使い魔は!」
オスマン氏は、アクアがギーシュとの決闘に勝利したことに触れ、誉めるつもりであったが、残念ながらアクアはこの場にいなかった。
「……その、きみ。あの女の子は本当にいないのかね?」
オスマン氏はティトォに尋ねた。
「申し上げた通り、ぼくが使い魔の仕事を引き継いだのです。契約のルーンも、この通り」
ティトォは前髪を上げて、額のルーンをあらためた。
「む!むむむ!そのルーンは!」
コルベールがうめき声を上げた。それは『ヴィンダールヴ』のルーンではなかった。
しかし、『ヴィンダールヴ』について調べている時に、コルベールはこれとまったく同じルーンを見ていたのである。
「きみ、すまない。スケッチさせてもらってかまわないかな」
一応同意は求めたものの、返事を聞く前にコルベールはルーンのスケッチを取りはじめた。
オスマン氏に「あとにしなさい」と杖で小突かれて、コルベールはやっと教師の列に戻った。
先ほどまでの厳かな雰囲気がやや薄れてしまったが、オスマン氏は気を取り直して、ルイズ達に向き直った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
ルイズとタバサとキュルケは、その声に杖を掲げ、宣誓した。
「杖にかけて!」
道案内として同行することになったミス・ロングビルとともに、一行は、門の前に準備された馬車に向かっていた。
その途中、ルイズはティトォに呼び止められた。
「ルイズ、きみは学院に残るんだ」
ルイズは一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「……どういう意味よ」
「言葉通りだよ。フーケの捜索は、キュルケとタバサの二人に任せよう。きみも見たと思うけど、ぼくの魔法は、アクアとは違って、戦うための魔法じゃないんだ」
射殺すようなルイズの視線も、まるで気にした風がなく、ティトォは淡々と話した。
「それに、恥ずかしい話だけど、ぼく自身の身体能力はあまり高いとは言えない。正直なところ、あんな巨大なゴーレムを操る魔法使いを相手に、ぼくはきみを守りきれないかもしれない。主人にむざむざ危険なことをしてほしくないんだ」
ティトォは、フーケのゴーレムによってルイズが危うく死にかけたこと、タバサがいなければ、自分の助けの手が間に合わなかったことなどを思い出していた。
ティトォの言葉は、嘘偽りのない本心であったのだが、プライドの塊であるルイズは、これを侮辱と受け取った。
「なによそれ。あんた、わたしが『ゼロ』だから。魔法が使えないから、足手まといだって言いたいの!」
怒りに肩を震わせ、ルイズは叫ぶ。
「そうだよ。ルイズ、きみがいると邪魔なんだ。足手まといだから学院に残ってくれ」
眉ひとつ動かさずに、ティトォは宣告した。
ティトォの言葉に、ルイズは頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。
今までも、からかいや侮辱の言葉は何度投げかけられたか知れないが、今回は事情が違う。
主人を守護し、常に共にあるべきパートナーであるはずの使い魔から、『お前は無能だ』と言われたのである。
ルイズは蒼白になって、唇を噛んだが、やがてきびすを返し、歩きはじめた。
「学院長の前で、誓いを立てたのよ。今さら怖じ気づいて逃げ出すのは、貴族にとって死も同然だわ」
ルイズは静かな怒りを声ににじませながら言った。そして、ティトォのことを一度も振り返らずに、先に行ってしまったキュルケたちを追った。
「失敗したな……かえって意固地にさせちゃったかな」
ティトォはため息をついた。
貴族って言うのは、色々しがらみがあるものなんだなァ。
バレットを見てると、とてもそんなふうには見えないんだけど。
ティトォは古い友人を思い出していた。
ティトォは、無鉄砲な『主人』が去っていった先を見ていたが、やがてルイズを追って、歩き出した。
「……ま、いいさ。それを守るってのが、約束だものね」
死んだのにコントラクト・サーヴァントが解除されないのは明らかにおかしい
以上です。
「君がいると邪魔なんだ」は、もっと後のイベントに取っといてもいいかなと思ったけど
ここで使っちゃいました。
支援と、
>>302で絵を描いてもらったことに、ありがとうございました。
おつー
面白かったです
>>536 批判するなら最初からきちんと読めよ低脳君
>>536 まあ真の意味で死ななきゃ消えないんだろ。それぐらいの改変は目を瞑れって。
というかティトォとアクアのルーンは別物だから、消えたかすらわからないし。
乙です
>>536 この三人の場合、死ぬけど本当に死ぬわけじゃないし難しいな
心停止でルーンが消えたしな
使い魔として役に立たなくなったら即「ルーンの判断」で使い魔解任なのかも?
>>505 強くなりたくば喰らえ!
喰らって喰らって喰らいつくせ!
ですねわかります
逆に死んでるけど生きてる相手とは契約できるの?
話は変わるが
炎の回復魔法ってコッパゲが喜ぶだろうなあ
新年初投下。
してもOKか?
第二節「アイ・アム・ナッシングネス」
夜が明け、ルイズの部屋にも朝日が差し込む。
学院内の探検を終え、室内で静かにしていたアルファモンが眺める中、ルイズは目を覚ました。
アルファモンを召喚したことで機嫌がいいのか、なんとも爽やかに目覚めた。
「おはよー、アルファモン」
「おはよう、ルイズ。意外と早起きだな」
「そう?」
ルイズの場合、早起きが習慣になっているだけだが、それがアルファモンには若干新鮮に見えた。
そして、アルファモンは何故か本棚に目をやり、次に何か言いたげな目でルイズを見る。
それを察したのか、ルイズはこう言った。
「本を読みたいの?」
「駄目か?」
「イイに決まってるじゃない! どれにするの?」
ルイズは本棚から数冊取り出し、アルファモンに手渡す。
本の表紙に書かれた文字の意味を理解した瞬間、アルファモンは違和感を覚える。
「変だな……。初めて見る字なのに、読めるぞ」
「……あっ!」
ルイズも異変に気付く。
ハルケギニアとは違う世界から来た存在が、何故今日になってこの世界の字が読めるのかを。
しかし、すぐ原因にも気付く。
何のことはない、コントラクション・サーヴァントでルーンが刻まれた場合、使い魔は特殊な能力を得るケースがある。
アルファモンの場合、元々喋れるので、知能面が大幅に強化されたのだ。
もっとも、アルファモンが得た恩恵はそれだけではないが。
「ルーンが刻まれた場合、何かしら特殊な能力がつく場合があるの。人の言葉が喋れたり、異常に頭が良くなったり」
「俺の場合、後者か……」
ok
548 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/04(日) 01:35:51 ID:HplljRpb
ボーボボ召喚する話誰か書いてくれないかなぁ…
自分に文才さえあればorz
制服に着替え(その間アルファモンは後ろを向き、目を閉じていた)、残りの身支度も終えたルイズはアルファモンを連れて部屋を出る。
アルファモンの手には、ルイズから渡された数冊の本があった。
最初は機嫌が良かったルイズだが、同時に外を出たある同級生の姿を見て、一気に機嫌が悪くなる。
「あらルイズ」
「何であんたも早起きしてんのよ」
「いいじゃない、別に」
キュルケの顔を見た際のルイズの表情を見て、アルファモンはルイズは彼女のことが嫌いなのだと判断する。
もっとも、キュルケの方は、単純にからかっているだけに過ぎず、アルファモンもそれに気がついたが。
そうこう言い合う内にキュルケはアルファモンの方に視線を移した。
「貴方が使い魔ね。いつもそんな鎧着けてて、疲れない?」
「言っておくが、俺は元々こんな姿だ」
「……冗談でしょ?」
そういうキュルケに、アルファモンは額に刻まれた純白のルーンを指差し、ダメ出しした。
「よく見ろ、鎧越しにルーンが刻まれるか?」
この一言にキュルケは微妙に納得する。。
「それも……そうね。それじゃ、今から私の使い魔を紹介するわ。フレイム!」
キュルケのこの一声で、彼女の側に虎ほどの大きさのトカゲが出てきた。
よく見ると、尾の先端に火が灯っているように見える。
アルファモンはそれを不思議そうに見ていた。
「この子はフレイム。火山山脈出のサラマンダーよ」
得意げに語るキュルケ。
しかし、ルイズの反応は薄かった。
「そう。行くわよ、アルファモン」
「ああ」
二人はそのまま女子寮を出て行った。
ルイズの反応の薄さに面くらい、思わず呆気にとられるキュルケ。
「……反応が薄いわね。からかいがいがないじゃない。ね、フレイム」
アルヴィーズの食堂。
そこにはアルファモンの姿はない。
入った直後に、アルファモンの分の食事を頼むことを忘れたことに気付いたルイズが、ばつが悪そうに厨房の方に行く様に言ったからである。
厨房。
そこには、賄いにありついているアルファモンの姿があった。
シエスタはおろか、マルトーを始めとする厨房の人間たちも興味深そうにアルファモンを見ている。
最初、元々甲冑をまとったかのような姿であると聞いた際、シエスタ以外は耳を疑った。
しかし、額に刻まれた純白のルーンと、賄いのシチューを黙々と口に運ぶ光景を見て、納得させられたのである。
「俺みたいなのは、珍しいのか?」
視線が気になったアルファモンが口を開く。
その一言に、シエスタ以外は思わずはっとなる。
そしてシエスタがそれを肯定した。
「多分そうだと思いますよ」
「それも……そうか」
このときアルファモンは気付かなかったが、シエスタの手の皮膚は、人間とは思えない形状と色合いをしていた。
教室。
この日の授業の担当であるシュヴルーズには年に一度の楽しみがある。
それは、新2年生たちが召喚した使い魔を見ること。
今年はどのような使い魔たちが召喚されたのかを想像する楽しみもある。
教室に入り、挨拶をして、教室の奥の方にいる使い魔たちに目を通す。
真っ黒な甲冑姿で本を読んでいるアルファモンの姿に目が行く
「ミス・ヴァリエール、これはまた珍しいのを召喚しましたね」
その言葉に笑う者もいれば、得体の知れない者への警戒を抱く者いる。
もっとも、後者は少数であったが。
クラスメートの一人が、はやし立てる。
「ゼロのルイズ! いくら成功しなかったからって、実家から連れてきた従者に鎧を……」
その言葉は、アルファモンから放たれる殺気と、怒りが篭った視線に遮られ、敢え無く途切れる。
これ幸いとばかりに、ルイズは切り返した。
「うるさいわね。目が見えてるの? 風邪っぴき。額のところにちゃんとルーンが刻まれているでしょ!」
この一言で、はやし立てようとした生徒、マリコルヌは黙る。
それから、何事も無く授業は進んでいったが、シュヴルーズの何気ない一言で、生徒たちは凍りつく。
「ミス・ヴァリエール、貴方にやってもらいましょう」
錬金の実演に、ルイズを指名したのだ。
シュヴルーズは発言を撤回する気はなく、止める様に言い出した同級生たちの発言にキレたルイズもやる気満々になる。
それを見ていたキュルケたちは、一斉に机の下に避難する。
何事かと気になったアルファモンはキュルケに話しかけた。
「一体何がおきるんだ?」
「見てれば分かるわよ」
その一言で、何か良くないことが起きると判断したアルファモンは、ルイズに呼びかける。
それと同時に駆け出す。
「ルイズ! 呪文を唱えちゃダメだ!」
しかし、時すでに遅く、ルイズの「錬金」の一言が響く。
そして真鍮の塊が光りだすのと同時に、アルファモンは右手でそれを握り締めた。
直後、真鍮の塊が爆発し、爆発の衝撃でアルファモンは吹き飛ばされる。
「……!」
かろうじて気絶は免れたものの、右手があるのに、それが有るという感覚が無い。
動かそうにも、右手の指は微動だにしなかった。
爆発の衝撃で一時的に麻痺したのである。
アルファモンがルイズに感じた違和感の正体。
それは、「魔法が使えない」ことであった。
驚いたシュヴルーズの判断により、授業は中止となり、生徒たちは教室を出て行く。
そのうちの何人かは口々にルイズを罵倒しながら出て行った。
ルイズとアルファモンだけが残された教室。
ルイズは申し訳なさそうに、アルファモンの右手を自分の両手で包む。
またもや失敗し、しかも今度はアルファモンがそれで傷ついた。
ルイズは完全に自棄になる。
「分かったでしょ、あいつらが何で私のことを「ゼロ」って呼んでいたのか……。何度やっても爆発しか起こせない出来損ない……。笑いなさいよ、馬鹿にしなさいよ、アンタも!!」
泣きながら怒鳴り散らすルイズ。
眼前のアルファモンが寂しそうな目をしたのと同時に、右頬に衝撃が走り、視線が強制的に逸れた。
直後に、アルファモンが自分に平手打ちしたことを悟る。
「君は出来損ないじゃ無い。俺と契約した時、爆発は起きなかった。君が自棄になったら、使い魔である俺はどうすればいいんだ!?」
「アルファモン……。貴方は、どうしてそんなに優しいの?」
「俺は、最初からこんな姿ではなかった。かつて『ドルモン』という、君より小さい毛玉だった頃、俺も一人ぼっちだった」
ルイズに、淡々と過去を語るアルファモン。
X抗体を持つが故に迫害され、共に戦う仲間たちから疑われ、それでも絶望せずにイグドラシルに挑んだ過去。
己の影、デクスモンを敢えて相討ちとなることで倒し、自分の力とイグドラシル打倒をオメガモンに託したことを。
「ドルモンに戻った俺はトコモンたちと再会し、今度は歓迎された。だが……それから月日が流れたある日、俺はいつの間にかこの姿でリアルワールドにいた。後は、昨日話したとおりだ」
「アルファモン……」
「ルイズ、君はもう一人じゃない。俺がいる」
その言葉に、思わず涙目になるルイズだが、すぐに拭って立ち上がる。
そして、顔を赤くしながらこう言った。
「あ、当たり前でしょ! 使い魔と主人は一心同体なんだから!」
「それでいい……」
ルイズは少しくらい意地っ張りの方がいい。
アルファモンはそう思った。
ルイズから借りた本を回収し、まだ麻痺している右手でルイズの頭を撫でる。
「右手、動くようになったの?」
「まだ、だな。しばらくすれば動くようになるさ」
教室を出て、とりあえず昼食の時間まで中庭で過ごそうと考えたルイズは、アルファモンを連れて廊下を歩いていた。
と、そこにたまたまシエスタが通りかかる。
「シエスタ」
「こんにちわ、ミス・ヴァリエール、アルファモンさん」
シエスタに気さくに挨拶するアルファモン。
シエスタとは馴染みであるルイズは、ある事をシエスタに頼む。
「シエスタ、ちょっと頼んでいい?」
「何でしょうか?」
魔法の失敗による爆発での負傷で、アルファモンの右手の指が一時的に動かないため、彼の昼食は片手で済ませられる物にして欲しいとのことであった。
「それなら任せてください。サンドイッチは得意ですから」
昼飯時の厨房。
アルファモンのためにと、シエスタが腕によりをかけて作ったサンドイッチが並んでいた。
慣れない左手でそれを食べ始めるアルファモン。
アルファモンはしばらくしてから、シエスタがこの場にいないことに気付く。
「……シエスタは?」
「アイツなら、デザート配りに食堂に行ったぜ」
「そうか」
サンドイッチの美味さに、和みながら食べ続けるアルファモン。
しばらくして平らげた直後、急に廊下の方が騒がしくなった。
何事かとマルトーたちが思い始めた直後、いきなりドアが乱暴に開かれる。
ドアが開かれた先には、青ざめたシエスタがいた。
「ア、アルファモンさん、た、大変です……、ミス・ヴァ、ヴァリエールが……」
「どうしたんだ!?」
「殺されちゃう……。ミス・ヴァリエールが殺されちゃう!」
その頃、学院長室。
今朝、リリスモン経由でオスマンから、アルファモンのルーンを調べて欲しいと頼まれたコルベールが報告していた。
「純白だったので思い出すのに意外と時間がかかりましたが、彼のルーンは『神の本』のそれと全く同じでした」
「うぬぅ……。やはり『虚無の使い魔』であったか」
二人のやり取りを見ていたリリスモンは、気紛れで遠見の鏡を発動させる。
そこには、大変な光景が写っていた。
「オスマン、コルベール。彼奴の飼い主と、グラモンのバカ息子が決闘をするようだぞ」
「何じゃと!?」
「何と!?」
観衆に囲まれ、ルイズとギーシュ・ド・グラモンが対峙している光景が映し出されたいた。
次回、「デジタライジング」まで、サヨウナラ……
投下終了。
今回のサブタイの元ネタは、三度映画化され、新版が出るたびに邦題がコロコロ変わったSFホラー小説、「アイ・アム・レジェンド」です。
今年もよろしく
ティトォの人乙です。
使い魔になったのがティトォ達でなくて「星のたまご」ならこうなるかも。ゴーレム戦期待してます。
次回に超wktk。
ミゴールの乙です。
おマチさん追悼。まぁそうなるわな。
次回に超wktk。
アルファモンの人乙です。
ギーシュイ`w
次回にwktk。
投下予約ないようでしたら40分より投下します。
今年の目標は、SSを完結させる、です。
>>548 色々と勉強して書いてれば一定までは上達するから、無いのは文才じゃなくてやる気な
上達しないのは足りないから
それは、奇跡と呼ぶには余りにも不可解な状況であった。
敗走する連合を一飲みにせんと、ロサイス近郊まで迫っていた筈のアルビオン軍。
その彼らが行軍を停止してから、はや三日。
事態を不審に思い、密かに斥候に出た殿の部隊が、アルビオン軍の野営地で見たのものは
肩まで土中に埋められ、身動きが取れなくなっている七万の兵士達であった。
一体、何をどうすればこのような状況に陥るのか。
完全に衰弱している者、必死で這い出そうと悪足掻きを続ける者、
始祖ブリミルに祈りをささげる者、互いを口汚く罵り合う者。
兵達の態度は十人十色であったが、一介の傭兵から高級仕官に至るまで、
その地に居合わせた全ての者が、その身を土中へと沈めていた。
部隊を率いていたルイズ・フランソワーズは、ありのままを本営へと報告した。
とても現実とは思えぬ突飛な話に、首脳部も混乱をきたしたが、
圧倒的優位な状況にありながら動こうとしない敵軍自体が、彼女のもたらした情報の正しさを証明していた。
ともあれ、この一連の事態で、アルビオン軍は主力の大半を失い、連合に野戦を仕掛ける事は不可能となった。
戦いは瞬く間にアルビオン首都・ロンディニウムの攻防戦へと推移した……。
大勢は決した。
後に残ったのは、敗色濃厚のレコン・キスタと、補給に難を抱える連合が、
どこで事を手打ちにするかという、政略上の問題のみであり、
戦術面での価値を失った桃色髪の少女は、敵城の陥落を見る事なく、本国帰還の命を受けた。
伝説の虚無の担い手、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの初陣は
結局、ただの物見遊山のみで終わりを迎えたのだった……。
・
・
・
支援
「ほれ アンタ達が探してたのはこいつだろ?」
手の目が軽々と放った指輪を、キュルケが片手で受け取る。
三日前より幾分小さくなった深水色の宝石が、キュルケの手の中で怪しく瞬く。
水の精霊の力を宿したアンドバリの指輪。
二人が学院を長らく休み、戦乱のアルビオンを訪れたのは、この指輪を手に入れる為であった。
「そいつは人の子が扱うには 余りにとんでもない力を秘めた道具だ
下手な欲は出さずに 無事に持ち主の下へ返してやっとくれよ」
「フン どの口が言うのやら……
私から言わせれば あの廃人の記憶を覗いて
見様見真似で指輪を使って見せたアンタだって 十分とんでもないと思うわよ」
「よしてくれや くどいようだが あっしのは只の芸さ」
どうかしら、とキュルケがシェフィールドを見やる。
風竜の背に拘束された女は、未だ心定まらずといった風の、憔悴した視線を地面に落としていた。
しばしの間、その様を見つめていたキュルケだったが、その内、ふと胸中の疑問を口にした。
「でも なんだってあんな回りくどい事をしたの?
あの女がやったように 七万の兵士を丸ごと寝返らせた方が楽だったんじゃない?
衰弱した四万の味方に加え 三万もの捕虜を抱え込んだんじゃ
連合も城攻めどころじゃ無いでしょうに……」
「何でって……
そこまでやっちまったら あっしもアイツと同じ 只の外道だろ?
あっしは別に トリステインの味方ってワケじゃねぇし それに……」
「……それに 連合が勝ち過ぎない方が あなたには都合がいい?」
「!」
傍らのタバサの大胆な発言に、キュルケが思わず目を見張る。
一方、手の目はさして驚いた風も無く、タバサの問いを肯定した。
「まぁね……
物事が順調に行き過ぎると 欲を出したくなるのが人の業ってもんさ
トリステインのお偉いさん達が何を考えてるかは分からねぇが
暫くは外征の余裕が無いぐらいのゴタゴタを抱え込んでいた方が お嬢のためにゃいいだろう」
言いながら、手の目はかぶっていた山高帽をとると、タバサの前へと差し出した。
「手間をかけるが こいつをお嬢に渡しといてくれるかい?
あっしが持っているよりも よっぽど役に立つ筈だからね」
「……本当に このまま行く気?」
「そうよ 手の目!」
ずいっと、キュルケが会話に割り込んでくる。
「ルイズとの口論だって お互い演技だったんでしょ
このまま本当に出て行ったりしたら あの娘 相当落ち込むわよ」
「別にあんな痴話喧嘩を気にしてるワケじゃァ無いよ
ただ 成り行きとは言え お嬢の元には長居しすぎたからね
今回の一件は丁度良い機会と思うのさ
あっしも先の戦いじゃ 自分の未熟さを思い知らされたからね
あちこち見聞を広げて 己が芸を磨き直してェのさ」
「……これから どうするの?」
「とりあえずはトリステインに戻って それから東かね……
まあ 零戦の件もカタをつけなきゃならねェし
その内に学院にも顔を出すようにするさ」
言うが早いか、手の眼は漆黒の外套を羽織り直すと
飄々と二人の前を通り抜けて行った。
「それじゃあ 元気でやっとくれよ お二人さん!」
「手の目ーッ ルイズには便りの一つも送ってやりなさいよ!」
キュルケの叫びに対し、手の目は振り向きもせず
彼女らしい鷹揚さで右手をひらひらと振って応えた……。
・
・
・
「……それで アンタ達は手の目を黙って見送ったって言うの?」
学院の自室で事情を聞いたルイズは、実に恨みがましい視線を二人に向けた。
「しょうがないでしょ 彼女には彼女の意志があっての事だし
それに 彼女をクビにしたのはあなた自身でしょ ヴァリエール?」
「だって あの時はああ言うしか……」
山高帽を受け取りつつ、ルイズが言い淀む。
ルイズが手の目と喧嘩別れしたのは、彼女を無事に逃す為の方便であり、ルイズなりの気づかいであった。
だが、小癪なる当の使い魔は、全て承知の上で狂言に乗り、
主人の預かり知らぬ所で無茶をやった上、一人で事態を解決して、颯爽と消えてしまったというのだ。
ルイズとしては、嬉しいやら情けないやら腹立たしいやら、
高ぶる感情のぶつけどころを失い、一人やきもきとするしか無かった。
「手の目 何だって私に一言も言わず……」
山高帽に視線を落とし、そこでルイズのぼやきが止まる。
何事かに気付いた二人も、思わず帽子を覗き込む。
「タバサ…… これ」
「あ」
ルイズが帽子の中から取り出した封筒に、タバサも驚きの声を洩らす。
おそらくそれは、手の目からルイズに宛てられた、別れの言葉であろう。
「手の目」
震える指先で手紙を取り出し、ゆっくりと紙面を開く。
手の目は一体、どのような想いを込めて、この手紙をしたためたというのか……。
「…………」
読めない。
まったくもって読めない。
書面には、毛筆を使って書かれたと思われる、伸びやかな異国の文字が踊っていた。
改めて考えると、手の目がハルケギニアの文字を勉強している姿を、ルイズは見た事が無かった。
「読めないわよこんなのッ!
アイツ バカじゃないのッ!」
手紙を投げ打ち、ルイズが勢いよくテーブルを叩きつける。
突然の剣幕に、ビクン、と二人が身をすくめる。
「ルイズ 落ち着きなさいよ!」
「だって! だって……」
憤怒の形相でキュルケを睨み返したルイズだったが
そのうちに、徐々に瞳がうるみ始めた。
「だって こんなのあんまりじゃないッ!
アイツはいつだって自分勝手で おせっかいで……
私 この前のこと まだ謝ってもいないのに行っちゃうなんて」
支離滅裂な言葉を並べながら、ルイズはやがて、メソメソと泣き始めた。
情緒不安定な友人の姿に、キュルケとタバサは互いに顔を見合わせていたが、
意を決したキュルケが、ゆっくりと口を開いた。
支援
「ねぇルイズ 彼女と話をしたいのなら もう一度 呼び出してみてはどうかしら?」
「……え?」
「サモン・サーヴァント」
説明不足なキュルケの言葉をタバサが引き継ぐ。
思わずルイズが、あっと声を上げる。
「そう あなたと手の目は まだ正式な契約を結んでいない…… でしょ?
そんな事は 長い学院の歴史の中でも異例の事態でしょうけど
でも それならもう一度 彼女を召喚出来るかも知れないわ
あなたと彼女の『縁』が まだ切れていないというのなら……」
キュルケの説明を聞き、ルイズの表情が翳る。
もし、魔法が失敗したら、
いや、あるいは、まったく別の使い魔が召喚されてしまったら……。
最悪な予想が胸中を巡り、ルイズは思わず身を震わせたが、
長考の後、きっ、と顔を上げて言った。
「……やる! やってみるわ
それだけが アイツともう一度会える方法なら」
ルイズはおもむろに杖を取り出すと、瞳を閉じ、ゆっくりと深呼吸を始めた。
キュルケとタバサも部屋の隅に避けると、固唾を飲んで事態の行方を見守る。
やがて、落ち着きのある澄んだ声で、ルイズが詠唱を始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」
高まる魔力のほどばしりと共に、杖を前方にかざす。
膨大なエネルギーが徐々に形となり、ゆっくりとゲートの形を成し、そして……
「う うわあああァァ―――ッ!?」
「え? なっ きゃあああァー!」
どすん、と
突如、ゲートから転がるように飛び出してきた何者かが、
テーブルを蹴散らし、ルイズを勢い良く押し倒した。
「ぐっ…… てぇ〜 何なんだ 一体……?」
「そ それはこっちのセリフ……」
ようやく顔を上げたルイズの瞳が、乱入者の視線と交わる。
困惑した瞳を向ける、黒髪の異装の少年……。
――いや、かつてルイズは、ハルケギニアではない何処かで、確かにその少年と出会っていた。
色とりどりの魅惑的なネオン。
近代的なビルディングに不釣合いな、雑多な屋台。
血沸き肉踊る、奔放なパーカッション。
異形達が奏でる、百鬼夜行のパレード。
そして……、
「……サイト ヒラガサイト……なの?」
「え? お前……」
・
・
・
「読めるよ この手紙」
長い長い状況説明の後、件の少年―― 平賀才人は、手の目の手紙を見て、そう言った。
「ほ 本当?」
「ああ やけ古めかしい文字だし 文章も妙に堅苦しいけど……
でも これは間違いなく俺達の国の言葉だ」
才人の言葉に、ルイズの顔が華やぐ。
才人は一つ咳払いをすると、たどたどしい口調で手紙を読み始めた。
「え〜……
拝啓 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール殿……」
――拝啓、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール殿
貴方がこの手紙を読んでいる頃には、貴方は既に、本当の運命の人と出会っている事でしょう。
先ずはその件、心より祝福致します。
今更言う事でも御座いませんが、貴方と初めてお会いしたときから、手前には、この結末が見えておりました。
つまり、近い将来、貴方の前には本物の使い魔が現れ、偽者の私は貴方の元を去るだろう、と。
どちらが先になるかまでは分かりませんでしたが、要は、今がその時だった、それだけの事で御座います。
尤も、運命に逆らうのも又運命、眼前に敷かれたレールに従う道理などは存在しない訳ですが、
どうにも手前には、今、この時こそが旅立ちの好機と思えるのです。
王道を志す貴方と、芸に生きる私、長く寄り添う事は、互いの為にもならないでしょう。
勿論、今生の別れという訳では御座いません。
佐々木氏の遺言の件も残っておりますし、各地を巡り、己が芸を見つめ直した暁には、
再びトリステインの地を踏もうと考えております。
その時には、酒の席にでも声を掛けて頂ければ幸いです。
最後に、差し出がましい事では御座いますが、御二方の未来を先見した事を報告致します。
先が変わるといけないので詳しくは話せませんが、二人の未来は薔薇色だった、とだけ申しておきます。
今後も貴方の行く先には、様々な困難が付き纏う事でしょうが、自らの信念に従い進むならば、
きっと道は開ける事でしょう。
それでは、短い間ではありましたが、本当にお世話になりました。
近い将来、貴方と再会する日を楽しみにしております。
敬具――
(追伸―― 本当にどうしようもない時には、手前よりも、若旦那の方をお頼りなさい。
ああ見えて、高貴なレディには甘い御方です。
貞淑な態度で涙の一つも見せてやれば、ニヤケ顔で万事解決して下さる事でしょう。)
「――以上 終わり
……しっかし バラ色って言われてもなぁ」
「運命に逆らうのも運命 ねぇ
どうするルイズ あいつを探す?」
「ううん……」
朗読が終わった後も、暫く手紙を見つめ続けていたルイズだったが
やがて顔を上げ、どこか吹っ切れたような表情を見せた。
「考えてみれば いつまでもアイツに頼りきりってのも冴えない話だし
ヴァリエール家に飼い殺しにされる手の目ってのも サマにならないわよね……
うん 決めたわ!
覚悟しておきなさいよ 手の目
いずれ 女王陛下はじめ居並ぶ国賓達の前で アンタの芸を披露してもらうわよッ!」
妙な情熱を燃やし始めたルイズに対し、キュルケとタバサは、やれやれといった風に顔を見合わせる。
そんな二人の事を気にもせず、ルイズは未だ状況が掴めていなそうな少年に視線を向けた。
「そんなわけだから 今日から宜しく頼むわ サイト!」
「え? あ ああ こちらこそ……」
親しげに差し出された右手を、おずおずと才人が握り返す。
ルイズは悪戯っぽい笑みを浮かべると、右腕に力を込め、一気に才人を引き寄せた。
「え ええッ!?」
吐息がかかるほどの至近距離での交錯に、才人の視線がドキリと止まる。
「――五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
短く詠唱を唱えると、ルイズはゆっくりと瞳を閉じた……。
・
・
・
支援
「……などと 格好つけて出てきたまでは良かったが」
店内の喧騒を尻目に、手の目が大きく溜息をつく。
「まさか路銀が足りなくて いまだにトリステイン国内にいるとは思うまい
シエスタに連絡を取ってもらって 何とか住み込みの働き口こそ確保したものの……」
手の目が改めて自分の姿を見つめ直す。
いつもの仰々しい着物も、お気に入りの外套も、今は身に纏ってはいない。
フリルの付いたきわどいスカートから伸びる、カモシカのようなスラリとした足。
小ぶりながら形の良い胸元が、今にもこぼれ落ちんばかりに大きく開いた黒のビスチェ。
華やかなハイビスカスの髪飾りで結い上げられた、豊かで艶やかな黒髪。
大胆なスリットから露わになる、白磁のように白い背。
これで口さえ開かなければ、妖精と言っても差し支えないほどの可憐な少女の姿が、そこにあった。
「嗚呼…… こんな姿 お嬢にだけは見せられねェな」
「ほら 手の目 何をブツクサ言ってるのさ!
とっととお客さんに酌しなさいよッ!」
「へェ! ただ今」
まとめ役の少女の剣幕に、ヤケクソ気味な愛想を振りまきつつ、手の目が店内を駆ける。
「やぁ お待たせしやした
本日はあっしをお引き立て頂き まことに有難う御座んす
おや若旦那 見ない顔だね
こういった店は始めてかい?
ああ そんなに硬くならなくても良いんだよ
やれやれ 初心な御方だ
うん あっしかい? あっしは手の目だ
先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ
親無し 根無しの浮草家業 あちこち旅をしてきましたが
今じゃちょいと色々あってね ここの店で草鞋を脱いだって訳でさァ
へぇ? ここの店に来る前の話しかい
はてさて 一体どこから話したもんか……」
ちょっと小首を傾げながら、手の目が右手をかざす。
すると、たちまちその背が縮み始め、
若者が気付いた時には、ようやく十を過ぎたばかりといった風の
小便臭さの残る、こまっしゃくれた童女の姿へと変貌していた。
(手の目の十八番はむしろ、香り立つような色年増に化ける事だったのだが
店のコンセプトから離れ過ぎているためか、客からの評判はすこぶる悪く
現在ではそちらの芸は、店主から使用を禁じられていた)
「そうそう 丁度こんな頃合だ
あっしも漸く座敷のイロハを覚え始めたばかりの 小生意気な餓鬼の頃だった
あっしが今から話すのは そんな時分に巡り合った
やたら奇妙な座敷での 長い長い一夜の噺だ
へへ どういう訳だか あっしはこの店じゃ泣かず飛ばずでさァ
若旦那さえ宜しければ 今宵は明け方まで とっぷりと御付き合い下さいやし……」
支援
支援
以上を持ちまして本作は終劇とします。
拙作を支援してくださった皆さん、避難所に投下してくださった方々
本当に有難うございました。
プロットの段階では、原作どおり、大人の女性に成長した手の目を書くつもりだったのですが
「幼手の目にビスチエを着せろ」と言う天啓を得たため、急遽ラストを差し替えました。
姉御ファンの皆さんごめんなさい。
支援
乙した
これはいい終劇、お疲れさまでした
手の目の人お疲れ様でした。
一言で言うとGJでした。
次回作に超wktk。
乙でした
なんだかんだで手の目はまたガリア戦とか巻き込まれそうな気がするw
皆様あけましておめでとうございます。
GP−10投下してもいいでしょうか?
今回は今後の展開を考えてルイズ・ガイアークとキュルケ・タバサ・ギーシュという2グループの構図が構築される話(の前編)です。
「炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! GP−10」
次回予告
「ガンパードだ。何だかみんなの様子がおかしいぜ。どうやら新聞に惑わされてるみたいだな。何、キュルケが逮捕された? どうなってんだ?
GP−10 捏造ホウドウ
――GO ON!!」
フリッグの舞踏会翌日の昼過ぎの学院中庭、ギーシュは手を振ってケティと別れていた。
「今日のデートはこれで最後……と」
「ギーシュ、今日のデートは随分少ないのね?」
「うん、ミスタ・コルベールから大任を受けたし、いざという時にデートなんて事が無いようにね。……はあー、僕の事が大好きな妹が12人くらいできないかなー……」
「ギーシュは暢気ね。まあ、今のところ平和だしね」
「ルイズの使い魔達も特に変わった様子は無いしね」
キュルケもギーシュも油断していた。しかし事件とは得てしてそういう時にこそ発生するものなのだ。
丁度その時、
「号外ー、号外だよー。マジックワールド一早くて確かな真実の泉、『蛮々。新聞』の号外だよー。これを読まないとあなたに明日は無いわー」
少女の甲高い声が上空から響いたかと思うと何枚もの紙切れが舞い落ちてきた。「蛮々。新聞」と書かれたその新聞の1面には、
『「ガリア王国王位継承者」シャルロット王女 クーデターにより簒奪者ジョゼフから王位奪還』
の文字とタバサの写真が。
『タバサが王位継承者に!?』
新聞に載っているタバサは普段通りの無表情のままVサインをしている。
その2人の混乱に追い討ちをかけるように、
「号外ー、号外だよー。マジックワールド一早くて確かな真実の泉、『蛮々。新聞』の号外だよー。これを読まないとあなたに明日は無いわー」
の声が再び響き空から大量の新聞が舞い落ちる。
『ビプリーベ伯爵 19人の孫娘全員の婚約者にギーシュ・ド・グラモンを指名』
「ええーっ!? ぼ、僕!?」
「ギーシュ、このビプリーベ伯って人知ってるの?」
「いいや、全然」
「ええっ!?」
「でもこの新聞によると僕が指名されたって……。今日からハーレム、ナンパ生活とはおさらばだ!! イエーイ!!」
ギーシュはそのまま喜び勇んで中庭から走り去っていってしまった。
「ちょっとギーシュ……。……王位継承者にハーレム? いったいどうなってるの?」
――GP−10 捏造ホウドウ――
場所は変わってヘルガイユ宮殿。モニターには幾つものウインドウが開かれ、タバサやギーシュに関する新聞記事が映し出されている。
「これがキタネイダス達の邪魔をさせないための作戦? キュルケ達何だか楽しそうよ」
「ああ……、何か腹立つな……」
「いや、これでいいなり」
ルイズ・デルフリンガーの反応に反論しつつヨゴシュタインが現れた。
「我が害地目のリンテンバンキよ!」
呼びかけと共にモニターの映像は、トリステインの城下町上空を飛行しつつ大量の新聞を印刷・散布している少女型蛮機獣のものに変わった。
「その調子で作戦を続行するなり」
『かしこまろうぜ、蛮々。新聞! 世界で一等電波な新聞〜』
「だが奴らの楽しそうな顔を見るのは……」
「何だか癪だぞよ」
「そう思ってキュルケは趣向を変えてやったなり。フフフ……」
ヨゴシュタインは不気味に微笑むのだった。
一方女子寮・キュルケの部屋では……、
「何がどうなってるのよ、これ……」
空中から降ってきた新聞を眺めつつ溜め息を吐くキュルケの耳に、
「犯人に告ぐ、無駄な抵抗はやめて出てこい!」
「何? 事件?」
キュルケが部屋を出ると、数人の武装衛兵がキュルケの部屋に入り込んできた。
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプシュトーだな!」
「ええ、そうだけど?」
コルベールの研究室の窓を突き破って新聞が飛び込む。そこには、
『「土くれ」の正体判明 連続窃盗犯人キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプシュトーを指名手配』
「……大変です!」
いきなり壁に叩きつけられるキュルケ。
「何するのよ!」
「お前を窃盗の容疑で逮捕する!」
「そんな馬鹿な! 何かの間違いよ!」
「無駄な抵抗はするな!」
「盗みなんかしないわよ!」
衛兵を突き飛ばして逃げ出すキュルケ。何とか衛兵達を巻いて溜め息を吐く。
「何で私がこんな目に……」
――キュルルル
(主だけではありません。他の皆さんに起きている事も何だか奇妙です)
「確かめてみるわよ」
ガリア王国・ヴェルサルテイル宮殿。
簡素ながら上品なつくりの執務室内では、タバサが部下から持ち込まれる案件に指示を出していた。
「パンデ子爵に反乱画策と噂されるアルビオン貴族との密会疑惑が……」
「……現場に踏み込んで身柄拘束……」
「クッジャ川堤防が老朽化し今度の雨季に決壊の恐れが……」
「……軍工作部隊出動……」
「ナテンア男爵配下の騎士団が男爵解任を求め……」
「……男爵は解任……首謀者は投獄……」
「キンバ財務大臣が……」
「……私が口を出す問題じゃない……」
廊下に出たタバサをキュルケが呼び止める。
「タバサ!」
「……キュルケ……」
「いったい何やってるのよ?」
「……新聞……見なかったの……私はジョゼフから王位を取り戻した……」
「タバサ、あんた……また来るわ!」
タバサを非難しようとしたキュルケだったが、衛兵隊に気付いて即座に逃げるのだった。
「おい! いたぞ! 待てえ!」
そのタバサの目の前をキュルケを追いかける衛兵達が駆け抜けていった。
「………」
逃げまとうキュルケの様子が映し出されたモニターに、満足気な表情のルイズ達。
「この調子なり。リンテンバンキ、作戦をセカンドステージに進めるなり」
『かしこまり! 号外ー、号外だよー……』
再度新聞を撒き散らすリンテンバンキ。
『工房排煙10倍法案可決 今日から全ての工房で従来の10倍の煙を出す事が法律で義務付けられた』
一方ビプリーベ伯邸では……、
「おうおうおう、新聞に載っていた通りの立派な少年じゃ。ハハハハハ。うんうん、じゃあ早速孫達に紹介しよう」
ビプリーベ伯の傍には大きな本を抱えた薄桃色の髪の少女・リボンを結んだ青髪の少女・金髪を縦ロールにまとめた少女。
「今屋敷にいるのはこの子達5人じゃが、他のみんなが帰ってきたらまた紹介しよう」
そこへ、東方風の白い上着に赤いロングスカート姿の黒髪の少女がやってきた。
「兄者、そちに客人が来ておるぞ」
「え? 客人?」
客人とはキュルケの事だった。
「確かに不思議だけど……、新聞に書いてあったじゃないか」
「それでいいの!? 私達と一緒にミスタ・コルベールから大任を任された時の気持ちは忘れちゃったの!?」
ギーシュの両肩をつかむキュルケだったが、ギーシュは非情にもその手を払いのけ、
「ルイズの使い魔の相手より、可愛い妹達の相手の方が楽しいかも!」
「あの、お兄ちゃん、チェリーと遊んでくれますか?」
「うん、行こう、チェリー!」
そう返事して紫色っぽい茶色の髪の頭に大きな帽子を被った少女と一緒に立ち去ってしまった。
「そんな……」
道端にうずたかく積み上げられたゴミの山。
騎馬衛兵達の通過を確認してキュルケ・フレイムはその中から這い出した。
「……ねえフレイム、野良犬って知ってる?」
――キュルルルル……
(さあ、火竜山脈にはいませんでした。……それよりここはどこでしょう? ゴミ捨て場とは思えませんが……)
周囲では町の人々があちこちにゴミ袋を捨てている。
顔をしかめてキュルケは1組の父娘に声をかける。
「駄目じゃない、こんなとこに捨てちゃ」
しかし父親はまったく悪びれた様子も無く、
「知らないのですか? 新しい法律ができて、家庭のゴミはどこに捨ててもいい事になったんですよ」
「え?」
「工房から出す煙も今までの10倍にする法律ができたって、新聞に書いてあったよ」
「新聞で?」
『号外、号外ー。町を汚すための新しい法律が出来たよー!』
「あっ……」
その時、キュルケの脳内で一連の異変のキーワードが浮かび上がった。
(――……『新聞』……見なかったの……)
(――『新聞』に書いてあったじゃないか)
「まさか……」
「ミス・ツェルプシュトー!」
そこへコルベールが駆け寄ってきた。
「ミスタ・コルベール!」
「ミス・ツェルプシュトー! 無事だったのですね」
「ええ。それより新聞を調べてください。ルイズの使い魔が何か細工をしているに違いありません!」
「なるほど……。こちらも新聞の発信源の場所が特定できました」
「………!」
決意の表情で歩き出すキュルケ。
――キュルル?
(1人で行くのですか、主?)
支
以上投下終了です。
GP−11では後編と共に、原作登場の某キャラを登場させる予定です。
投下おつです
次回wktk
wktkって簡単でいいよね
俺も次回すごくワクワクテカテカして待ってます
なるほど、テレビじゃなくて新聞になるのか…
しかしキュルケ正義の味方w
テレビで仲間にうったえかけるのはできないし、どうやって解決するのか楽しみだ
及川さん乙でおじゃる
ところで特殊能力満載だが唯一かみなりに弱い(つまりワルドに弱い)
つうキャラはどんなのがいるだろ?
怪物太郎くらいしか思いつかなかったが
>電撃に弱い
つ 【魔人属 レッドライダー】
いやすまん、いま葛葉ライドウ対アバドン王プレイしててな…?
番町のイザナギもだ!
間違えた疾風だった
ライドウやってて思いついてしまったんだが
魔人アリスを召喚してしまい
>つかいま?それってなぁに?おともだちのこと?
>がっこうにもかよえるの?すてき!いいわ、おともだちになりましょう!
>アリスのおともだちはね、みんなしんでるの!
>だからね、おねえちゃんも……
> 死 ん で く れ る ?
とかやってゾンビー大量召喚して阿鼻叫喚な惨状を作り出してしまったり、というのをちょっとやりたくなったが…がんばってみるかなー?
597 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/04(日) 12:45:52 ID:QFth4xxI
誰かナルトを召喚してみたら
そういえばイタチを召喚していた人がいたようないなかったような
>>591 元ネタの神話ではゾンビ化したかみさんに雷くらわされたからあながち間違いじゃないw
しかし総長化すると全属性耐性ができる不思議
定期的にナルト(笑)とかDグレ(笑)のキャラ召喚してとか言う焼酎腐が沸いてくるな。
そんなに見たいならドリー夢小説サイトでも回ってろと。
雷で思い出した。とら。だれかやらないものか…どうやら完全に帰ってこないようだし…
新作いつか来る事を祈ってるよ
>>593 すげー見てみたいが…どう考えても小ネタむきですね。
自分としてはうしお抜きでとら単体というのは何か違和感感じてたな
かといって両方一度に召喚したらとんでもない事になるしw
やっぱり召還するなら元ネタで完全に死んだか行方不明になったキャラが
やりやすいってことかな
だとしたらドラゴンボールの悪役とかるろ剣の志々雄、
ジョジョ第四部のチープトリックみたいに
地獄行き描写された奴らはどうなっちゃうのやら
>>604 チープならJOJOスレの短編でアルビオンを文字通りの阿鼻叫喚の地獄に変えやがったよ……
あれは蝶怖かった
>>595-596,602
見てみたいと言ってくれてありがとう。ただ、どうあがいても小ネタにしかならないと思うんだw。
集団で沸いてきて銃撃してくるゾンビー憲兵。
ゾンビーだけに耐久力はないが倒すと爆弾岩よろしく自爆して周囲にダメージを与えてくる。
しかも無尽蔵に沸く。間違いなく召喚の儀式の場はパニックになりますねありがとうございます。
アリス本人はのほほんと歩き回って魅了したり石化したり呪殺したりしてるだけなんだがねー。
ただ個人的にはアバドン王のアリスイベントより超力兵団のアリスイベントの方が好き。
超力兵団のアリスも結構性質悪いけどw。
ライホーくんなら上手く乗せれば使い魔になってくれると思う
> アリス本人はのほほんと歩き回って魅了したり石化したり呪殺したりしてるだけなんだがねー。
わぁ、なんてかわいらしいんだろう!!
その混乱に乗じて何者かが学園を魔界化して虚無転生が始まるんですね!!
でもヒーホー君はあれで意外と
気に入らないとかんしゃく起こして凍り漬けにして殺すDQNですよ
ウィットにとんだ会話をルイズがこなせるかどうか、だな。>ライホーくん
むしろタバサが召喚するのが面白いかもしれん。
タバサが召喚したライホーくんvsイザベラが召喚したジャアクフロスト(真Vボス戦仕様)
これはこれで見てみたいがタバサとキュルケが完璧にお荷物だw。
>>611 氷結効かないんじゃないか?>ジャアクフロスト
>>610 マジっすかwww
アクマの人のイザベラ危なかったんだなw
ふとSoundHorizonのキャラ呼ばれるのを見てみたいと思った
>>612 真3のジャアクフロストは氷結吸収:火炎・呪殺反射:破魔無効:物理1/10という防御特性
アバドン王のじゃあくフロストだと氷結吸収:火炎・呪殺無効:衝撃弱点だからちょっとマシ。
>>615 真Vのジャアクには何回か抹殺されたよ。しかも呪殺に火炎、氷結あるからライホーくんとタバサだけじゃ勝てないんじゃないか?
ライホーくんが召喚するマカミとピクシーの電撃が攻略の鍵になるな。
あとタバサのエア・ハンマーやエア・ニードルなどの純風スペル。
…どっちみち火力不足だ…w。マハカーラもテトラカーンで壁役するしかないしなー。
メガテンはやはりネタの宝庫だな。
たとえ小ネタにしか出来なくても適当な悪魔1体で1作品作れるんだから。
>>615 ペルソナ2しかやったことないんだが、ようするに攻撃魔法がほぼ無効なんで肉弾戦で倒すのが有効ってことか?
こうなったらジャアクフロストと友だ…もとい手下になるしかないな
∧l二|ヘ
(・ω・ ) おいらをどこかのスレに送るんよ
./ ̄ ̄ ̄ハ お別れの時にはお土産を持たせるんよ
| 福 | |
| 袋 | |,,,....
 ̄ ̄ ̄ ̄
現在の所持品: 帽子 ハロゲンヒーター エロ同人誌 新美薫 練炭 抜けない飯島愛写真集 マームのトップバリューお茶2g
ホンタクキムチ
>>619 むしろ肉弾戦だと絶対に勝てない。おれはごり押しで言ったら返り討ちになった
上手く風、雷撃、飛礫とか耐性にないので攻撃する。
マルコメとギーシュなんかが結構いいんじゃないか?
あけおめ、誰も投下しないのなら14:05からシーン02の幕を上げる。
今回は寝るまでなのでちょいと短め。(03と04も)
では投下開始。
ヒュー・スペンサーは窓を見ていた、より正確に言うならば窓の向こうに広がるトリステイン魔法学院の風景を。
(なんともね…、多分とんでもない場所に連れて来られたんじゃないかと思っちゃいたけど、地球ですらないとは。
ていうとあれか?噂に聞く火星ってやつか?)
窓の外には石造りの建造物と二つの月が浮かぶ夜景が広がっていた。
ゴーストステップ・ゼロ シーン02 “使い魔の仕事とポケットロン”
シーンカード:チャクラ(調和/双方互角。自然な安定。何らかの均衡。和解。相互協定。)
そんなヒューに背後から苛立っているらしい声がかけられる。
「ちょっと!聞いてるのヒュー!」
「ん、ああ悪い。何だっけ?」
「ア、アンタねぇ。貴族を馬鹿にするのも大概にしなさいよ!
わ、私だから良いけど他の貴族にそんな態度とってごらんなさい、死んだって知らないんだから!」
「いや、本当に悪いと思ってるよ。
ルイズお嬢さん、どうか気を悪くしないでくれ、故郷じゃ中々見れない光景に吃驚してしまってね。」
「そ、そう、じゃあ仕方ないわね。
たしか、とーきょーのばとかいう名前だっけ、聞いた事ない地名だからきっととんでもない田舎なんでしょうね。」
ポケットロンの事は風変わりな模様を見せるマジックアイテムとでも思っているらしいルイズ。
ふふん、と得意気な表情でヒューの方を見る御主人サマにヒューは特に抗議をする事もなかった。
「で。話を進めるわよ。
ヒュー、貴方にはこれから私の使い魔として仕えてもらうわ。
その件については、召喚した時にコルベール先生との話で承知していたから反論は認めないわよ。」
「ああ、別に反論するつもりも無いさ。
契約書を交わさないっていうのは予想してなかったがね。」
といいつつ左手のルーンを見る、不思議な事にこの刺青(ルーンという物で使い魔の証明らしい)を刻まれてから、
絶えず身体を苛んできた痛みが止まっているのである。
どうやら、このルーンとやらには痛み止めかそれに類する効果があるらしい。悪し様に想像するのであれば使い魔に
なった以上、そう簡単に死んでもらっては困る…という事なのだろうか。
根本的に治癒されているか、それともただ痛みを止めているだけなのか、そこら辺は分からないが。華玲辺りだと
「キスだけで治るの?なら、その魔法ってファイブカードみたいね。羨ましいわ」とでも言うのかもしれない。
「ふん、まあいいわ。
ところで使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるんだけど…」
「で、見えるのかい?」
「ダメね何も見えないし聞こえない…。」
「まぁ、良かったんじゃないか?」
一旦瞑目して悔しそうに口にするルイズに対して、何でもない様にヒューはそう応える。
「何ですっ「いや、ルイズお嬢さんも人のベッドシーンとかトイレ」分かったから黙りなさい!
ベッドはともかく、まぁ色々見えたりするのも良し悪しよね!
ええ、そこは勘弁してあげる、感謝しなさい。」
人を使い魔にした弊害を告げたヒューの軽口に真っ赤になったルイズは、仕切り直すように咳払いをして説明を再開
する。
「まあいいわ、使い魔の次の役目だけど。使い魔は主人の望むモノを見つける事が出来るの!」
「望むモノって?」
「秘薬の材料になる植物や鉱石、とにかく色々よ」
「それって、地面掘ったり森の中に入ったり…って事だよな?」
「当たり前じゃない、お金を払って買ったりしても意味無いでしょ?」
「じゃあ無理だな、生憎そういった場所や特技には馴染みがない。」
華玲みたいなタタラや噂に聞くバサラやマヤカシとかいう連中ならどうだか分からないが。
「でしょうね、平民ってだけでもう期待してなかったわよ。」
これには安心したのか、ルイズにも少し余裕が生まれる。
「そして、これが最後なんだけど。
使い魔は主人の護衛を担う存在なんだけど…、アンタあまり強そうに見えないわね。
背は高いけど痩せぎすだしあんまり力も強そうに見えないし、何より人間だもん。
まぁ良いわ、その代わり雑用とかやってもらうけど文句無いわよね。」
そのルイズの言葉にヒューは肩をすくめる事で答える。
まあ「ご随意に」という所であろうか、ヒューのその仕草を見たルイズはいきなり服を脱ぎだした。
唖然とするヒューをよそに寝間着に着替えると、脱いだ服をヒューに投げて寄越す。
これは?と視線で問いかけるヒューを無視してベッドに入ると指を鳴らして部屋の照明を落とす。
「洗濯しておいて、それから明日は起こして頂戴。」
「あいよ、ところでルイズお嬢さん。
視覚とかの共有代りに渡しておくものがあるんだけど灯りを点けてくれないか?」
ルイズはそんなヒューからの言葉をいぶかしみながらも部屋の照明を再び点ける。
「で、何を渡してくれるって?つまらない物だったら承知しないわよ。」
「少なくとも役には立つ、保証するよ。」
そう言いながらヒューは鞄の中からブレスレットを取り出して、サイドテーブルに置く。
銀色をしたそのブレスレットは装飾部分以外、全て細かい金属の部品で出来ているようだ。どうやら細かい部品を
調整して、個人に合うようサイズを変更できるらしい、唯一金属で出来ていない所は黒色の硝子板が嵌め込まれて
おり、枠には摘み等細かい部品が付いている。
「何、この安物のブレスレットは?言っておくけどこんな物で眠りを妨げたっていうのなら怒るわよ。」
不機嫌そうに睨むルイズだが、当のヒューはというとポケットロンを操作していた。
「ちょっとヒュー!」
「まぁ、落ち着けって…ああ、これだ。」
目当ての項目を見つけたのか、手に力を入れるとサイドテーブルに置いてあったブレスレットから音が鳴り響く。
すぐ横に居たルイズはいきなり鳴り響いた音に驚いて、ブレスレットをまじまじと見る…と、黒色をしていた硝子板
に妙な記号が踊っているではないか。
「な、これってオルゴールだったの?」
「違う、とりあえずその絵を軽く触ってみてくれ。」
ヒューのその言葉に、ルイズは恐る恐るブレスレットを手に取り、言われた通り絵を撫でてみる。
すると、瞬時に音は止まり踊っていた絵は変化して別の絵にすり変わった。
今度の絵は、同心円を2〜3個重ねた様な絵だ、下の方には文字らしき記号が羅列されている。
ブレスレットのその変化をいぶかしんだルイズがヒューを見ると、当人は部屋の隅に移動しながらポケットロンを
耳に当てている。
「ヒュー、一体「聞こえるかいルイズお嬢さん」【聞こえるかいルイズお嬢さん】ふぇ?え、何?何でこのオルゴー
ルからアンタの声が聞こえて来るのよ?」
目の前のヒューが声を出した瞬間、手元からも同じ声が聞こえてきた為、ルイズは軽いパニックに陥っていた。
「悪い、さすがにそこまで驚くとは思ってなかったもんでな。とりあえずその手に持っているのに何か言ってみて
くれるか。」
「え…、これに?」
「ああ」
「何でも言いの?」
「どうぞ」
「じ、じゃあ。我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリーエール」
【我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリーエール】
「え?こんどはそっちから?」
今度は自分が出した言葉と同じ言葉がヒューの手元にあるポケットロンから響く。ルイズは信じられない物を見た
ような表情で、ヒューと自分の手元を繰り返し見ている。
ルイズの隣まで近付いてきたヒューは、持っていたポケットロンもサイドテーブルに置くと説明を始める。
「まあ、見た通りこいつはちょいと離れた場所なら会話ができる道具でね。
俺は職業柄、何台か持っていたんだけど、とりあえず保険代わりに持っておいてくれ。
ここら辺はウェブが無いから保証はできないけど、学園の敷地内位なら十分カバー出来るはずだ。
ああ、それからあまり丈夫じゃないんでな、水に濡らしたり強い衝撃を加えたりすると壊れちまうから気を付けて
扱う事。
使い方は…そうだな色々手続きがあるから明日にでも教えるよ、それまで弄くらない様にしてくれ。」
「すぐには使えないって事?」
「要するに誰がご主人様かこいつに覚えさせなきゃ俺の他には使えないのさ、それをルイズお嬢さんにも使える様に
しておく。」
「え?それってそのブレスレットが私専用のマジックアイテムになるの?」
「まぁ、そうなるかな?」
これにはルイズも驚いた、使用者を限定できるマジックアイテムなんてそうないだろう。
流石に使い魔の感覚共有には及ばないものの、こんな珍しいマジックアイテムを持っているなんて他の使い魔では
考えられない事だ。
しかし、ここで甘い顔をしては主人として使い魔に示しがつかない。
毅然と、そう!貴族らしい態度で臨まなくては!これからの主従関係に問題が起きかねない。
思わずニヤケそうになる頬を親譲りの頑固さで無理やり引き締め、再びヒューに向き直る。
「へ、へぇ。なかなか珍しいマジックアイテムじゃない。
いいわ、本当はご主人様を驚かせた罰を受けてもらう所だけど、その殊勝な心構えに免じて許してあげる。」
「そいつはありがたいね。
ところで、俺は何処で寝れば良いんだい?」
「そうね、今度寝具を買ってあげる、それまで床で我慢なさい。ああ、それとそこにある毛布も使っていいわよ。」
ルイズが言った毛布を受け取ったヒューは、毛布にくるまって鞄を枕にし、部屋の隅で横になる。
(ま、雨風凌げるだけましだろ)
トーキョーN◎VAにおけるレッドエリアの住民達の生活を知っているヒューは、別に文句を言うでもなく
別世界での最初の眠りに落ちていった。
シーン02
チャクラ(St)
…格闘家、モンク、肉体を鍛錬する者、修行者。自分や他人の肉体的・精神的ダメージを癒す。
ラオウさまや幕の内一歩、wikiではケンや東方不敗が相当(ここだけなんか酷いな…)
火星(M・Y)
…地球に最も近い惑星。カーロスという男が出身地だと嘯いてる土地でもある。
TRPG・トーキョーN◎VAでは他にもレティクル座から来たと言う人物もいる。
基本こういった発言は冗談もしくは妄言と捉えられる。が、別に本当でも構わない。
カーロス(P)
…カーロス・マウリシオ・ダ・シルバ。火星生まれのトラブルメイカー。「火星じゃこんな事日常茶飯事さ」
華玲(P)
…芳華玲(ファン・ファアリン)。N◎VAのスラム街で医師を営むクールな女性。凄腕。ヒューの主治医だった。
「動くと死ぬわよ。貴方の命だから、どう使おうと勝手だけど…」
ファイブカード(S)
…ありえないほどラッキーなこと、イカサマという意味。
タタラ(St)
…技術屋、科学者、発明家、職人。自分の状況を予測していたかのようなアイテムを用意できる。
BJや真田さん、wikiではユーゼスやウフコック。
バサラ(St)
…念動力者、魔術師、拝み屋。建造物や乗り物を一つ破壊したり、集団を壊滅させる自然現象を引き起こせる。
物理的な術が基本。光・火・電気・風・水・地・重力・器物・生物を操れる、全体的に派手目な傾向がある。
超人ロックや八神和麻、wikiでは高町なのはやビビ。
マヤカシ(St)
…幻術師、霊媒、シャーマン、エスパー、退魔師。“高次の意識体”の力を借りて危機を回避できる。
知覚・霊感系の術が基本。スタンドの様な能力“エニグマ”も使用できる。
マーリンや安倍清明、wikiでは博麗霊夢や葛城みかん
ブレスレット(I)
…千早重工製“ウォッチャー”バディの相当品、G.C.I.製。出典はトーキョーN◎VA Revolution
腕時計型のポケットロンの互換品。K−TAIにしようかと思ったが、会話しかできなかったのでこちらにした。
ヒューが過去に使っていた品という設定。
レッドエリア(M)
…トーキョーN◎VAにおけるスラム街。その地の住民は行政上“存在しない人間”として扱われる。
以上で今回の投下は終了、おそまつさまでした。
ごめん、修正箇所がありました。
誤…これには安心したのか、ルイズにも少し余裕が生まれる。
正…この件に関して承知していたのか、ルイズもあっさりと納得する。
前に書いたVer.のまま変更してなかった所を見落としてました…orz
fallout3の主人公が
シェルター出口でルイズに呼ばれた場合
「おかしい、地上は核戦争で荒廃している筈なのに」
フーケが盗んだ破壊の杖
みんな大好きFATMAN mini-nukeでフーケ戦死
タルブ村に召還されたメガトンの御神体
爆発させると進行してきた兵士をあぼーん
火炎放射機を装備した傭兵が学園を襲ってきたり
ワルドが何人も居たり
投下乙。
N◎VAらしいキャラクター。N◎VAらしい単語。N◎VAらしいアイテム。
この雰囲気にわくわくするね。
次回も期待してます。
乙です
ヒューの人乙です。
原作知らないけど、頭脳派の様ですね。
次回にwktk。
新年明けましておめでとうございます。
昨年はへちょい文章を晒しまして、御迷惑をおかけいたしました。
本年はもう少しマシにしていくよう心がけてまいりますので、どうかお付き合いくださいませ。
そんなわけで、15:15ぐらいから投下しようかと思います。
よろしくお願いいたします。
投下開始です
―――
「こらビビ〜、起きなさい!アルビオンが見えてきたわよ!」
船室から顔を出すと、周りは茜色に染まった大きな雲だったんだ。
「すっごいでしょ?ほら、もっとこっち来てみなさいよ〜!」
おっきなマシュマロの塊みたいな雲の上に、おっきな陸地がのっかっている。
チョコボの空中庭園よりも巨大で、それは綺麗で幻想的で、すっごい光景だった。
でも……
「あ、あのさ、ルイズおねえちゃん、そんなに乗りだしちゃ危ないよ?……こ、ここからでも十分見れるし……」
高い所って、やっぱり怖いなぁ……
―ゼロの黒魔道士―
〜第二十幕三〜 白の王国 アルビオン
流石に、ルイズおねえちゃんみたいに甲板から身を乗り出すことはできなかったけど、
お日さまがゆっくりと上がってきて、周りが朝やけのオレンジ色の雲で囲まれるっていうのは、
心が揺れて、旅をしてるなぁってワクワクしてくる。
ボクたちが乗っているハルケギニアの飛空挺は、『風石』っていうのを燃料にしつつ、
帆船みたいに風を受けて燃料を節約したり、舵をとったりしてるんだって。
ガイアみたいに『霧』がないから『霧機関』もないし、『ジョウキキカン』もないみたいだ。
こっちの方が、ガイアの飛空挺よりゆっくり飛んでくれるし、静かなのはいいけど、
大きな風が来るとすぐ揺れるのはイマイチだなぁって思う。
「カカカ!相棒、船室でガタガタ言ってたしなぁ〜」
……デルフの怖いものって、何か無いのかなぁって思ってしまう。
「やれやれ、使い魔君にも怖い物があるとはね」
ワルドおにいさんも苦笑いだ。
「右舷前方の雲より船っ!!」
にわかに甲板上が騒がしくなる。
「あら、変な船ね、真っ黒で旗が無いわよ?ビビ、こっちきて見てみなさいな」
「え、ぼ、ボクはいいってば……」
ルイズおねえちゃんみたいに、甲板から体半分乗り出すなんてことは、
もう一度生き返ったとしてもできそうにないな、と思うんだ。
それにしても、なんだろう?
船員さん達はみんな、走り回っているか、叫んでいるかだ。
なんか、嫌な予感がしてきたんだ。
「おっとぉ〜?キナくせぇにおいだなぁ、おれっちワクワクしてきたぜ!」
デルフの発言が、より嫌な予感を確実なものにしてしまう。
……デルフの鞘、宿屋さんに忘れてきちゃったなぁ、そういえば……
ドォーンッ
突然、大きな音がボク達の乗っている船の上を通り過ぎた。
「威嚇射撃っ!!」「やはり空賊かっ!」
かろうじて聞き取れた船員さん達の怒号から、状況がやっと分かった。
「……もしかして、この船、狙われてる?」
「あぁ、そうだな。使い魔君」
「えっと……もしかして、かなりマズい状況?」
「あぁ、そうだな。使い魔君」
……なんで、こうなっちゃうんだろう?
「そんなっ!ワルド、なんとかできないの?」
「魔法は、この船を浮かべるために打ち止めだよ。あの船に従うんだな」
昨日の夜、この船は飛ばないはずだったんだけど、
ワルドおにいさんが『風石』の魔力を補うのと、
通常の2倍のお金を払うことでなんとか飛んでもらうことになったんだ。
だから、ワルドおにいさんは今は魔法が使えない。
つまり、ルイズおねちゃんを守るには……
「ルイズおねえちゃん、えっと、向こうの船を落とせばいいの?」
ボクがなんとかしないといけない、そう思ったんだ。
「! そうよ、あんたがいるんじゃない! ビビ!きっちり沈めてきなさいっ!任務のため、邪魔な障壁は排除よ!」
「う、うん……」
ルイズおねえちゃん、こんな勢いがずっと続くってすごいなぁ……
やっぱり、お友達のお姫様のため、だからかなぁ?
「えっと、あ、あれかな?」
「おら、相棒っ!しっかり狙い見定めやがれっ!ビビんじゃねぇぞ!」
「……デルフ、黙っててくれる?」
「お、おぅ、すまねぇ」
雲の隙間から近づいてくる真っ黒な船が、こっちに沢山の大砲を向けていた。
悪い人達が乗っているおっきな船。
確実に落とす必要があるかな、って思ったんだ。
「時は来た。許されざる者達の頭上に……」
だから、『メテオ』の呪文を詠唱しはじめたんだ。
「使い魔君、慎重に頼むよ?」
「カカカ、大丈夫っての!相棒はやるときゃやんだからよ!しっかし、これだとおれっちの出番ねぇなぁ〜……」
「星砕け降りそs」ドッゴオォォッン「うわっ!?」「きゃぁっ!?」「おぉっ!?」「な、なんだなんだ!?」
もう少しで詠唱が完成するところで、ボク達の乗っている船が突然揺れたんだ。
「い、威嚇射撃が着弾!?」「くそ、あいつら卑怯なっ!」「航行不能!航行不能!」
「浮いているのがやっとです!」「舵がやられたっ!!」「消火消火ぁぁっ!!」
帽子をなおしていると、船員さん達の叫び声がさらに激しくなっていたんだ。
「――どうやら、空賊の船とはいえ救助してもらう他ないようだね」
ワルドおにいさんがさっきの揺れでコケたルイズおねえちゃんを助け起こしながら言う。
「な!? な、なんとかならないのっ!?ビビはまだ魔力があるはずだし――」
「この船はもはや空に浮くガレキらしいからね。口惜しいが、ここは諦めて――」
「そんな!!」
「娘っ子よぉ、優先順位ってぇの考えな?任務も大事だがよ、命あってのものだねっつーぜ?あぁ、ちきしょ!おれっちの出番は無ぇのかー!」
……ときどき、ホントにときどき、デルフの言うことはその通りだなぁって思うんだ。
「剣にセリフを取られたね――まぁ、そういうことさ、ルイズ。ここは堪えよう。婚約者に怪我でもさせたら僕は生きていけないよ」
船尾からは煙があがってきていた。
空賊達の船っていうから、もっと汚くてゴチャゴチャしてるかなって思ってたんだけど、
ボク達が閉じ込められた場所は思った以上にスッキリと片付いていたんだ。
もしかしたら、ボク達がラ・ローシェルから乗ってきてた貨物船よりも綺麗かもしれない。
「……でも、すごい臭いだよね……」
「うむ、積み荷の硫黄と同室とはな――」
船員さん達と、ボク達と、積み荷の硫黄。
船員さん達は別室に閉じ込められているみたいで、ボク達は硫黄と一緒に船倉に閉じ込められたんだ。
「人質は少ししかとるつもりなかったからよ?まぁ貴族のお嬢ちゃん方にゃ悪いが、人命救助分の代金だ。狭くて臭いのは我慢しな!」
ってルイズおねえちゃん達の杖とデルフを回収した空賊は言ってたなぁ……
「なんで!!なんでこんなところで空賊なんかにっ!!」
「国家が荒れるときは、えてしてこういう愚か者どもが出るものさ。ルイズ。今は待とう。機会は向こうから来るはずだ」
やきもきしているルイズおねえちゃんをワルドおにいさんが諌める。
今は、待つしか無い、か……
ちょっとだけ、うたた寝をしちゃっていたら(昨日はあんまり眠れなかったし)、
船倉の扉がバタンと開いたんだ。
「おらぁ!貴族様方よ!お頭が面見たいって呼んでっから、来い!」
空賊の1人がそう言って入ってきた。
……どことなく、無理してセリフを言っているような感じがするなぁ?
「あまり、殺しはしたくない。だからお前らを救助した、そこまではいいな?」
空賊のお頭の部屋は、質素な造りではあったけど、置いてある道具はどれも高そうで、いかにも偉い人の部屋って感じだった。
インテリアの趣味で言えば、ギーシュよりもいいかもしれない。
(ギーシュの部屋はあのクジャの宮殿と同じぐらいゴチャッとして変な香水の臭いがしたんだ)
「と、トリステインの大使として言うわ!!即刻、私達を解放しなさい!!」
ルイズおねえちゃんが足をふんばって大きな声で言う。
今、身分を明かしちゃったりしていいのかなぁ……
あ、やっぱりワルドおにいさんが慌ててルイズおねえちゃんの口をふさいだ。
「ほほぅ?大使、ねぇ?お前さん達、貴族派かい?」
空賊のお頭がニヤリと笑って机の上の足を組み直した。
「あぁ、僕達h「王党派よっ!!誰が、あんな貴族の風上にもおけない薄汚い連中になんか!」る、ルイズ!?」
ワルドおにいさんが口をふさいだのは無駄だったみたい。
……もしも、ここで戦闘になったら、ボクがなんとかするしかない。
「(肉体をむしばみ、魂の器に満ちる毒……)」
だから、こっそりと『バイオ』の呪文を唱え始めておいたんだ。
ハルケギニアの魔法は杖がないと使えないみたいだし、
油断しているところを攻撃して、隙ができたら逃げる、そういうつもりだった。
「ハハハ!正直はいいことだがね、お嬢さん!命が惜しいならそんなことは言うもんじゃねぇな!俺達が貴族派ならどうするつもりなんだ?」
「反乱軍に名乗るぐらいなら、舌を噛み切って死んでやるわよ!」
「ルイズ!!」
呪文の詠唱は完成している。もし、戦闘になったら……
ドアの向こうにもこいつらの手下がいるだろうけど、どうしよう……
そんなことを考えながら、魔力を込めた掌をそっと後ろに隠して時を待っていたんだ。
「――最後のチャンスだ。貴族派につかねぇか?お前らをもってけばそれなりの金になるし、お前らも勝ち馬に乗りゃ稼げるぜ?」
「お断りだわ!死んでも、最低の連中になんか与するものですか!!」
その言葉に空賊のお頭が机から足を降ろして立ち上がろうとする。
いよいよか、と思ってボクは両手を構える。
「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
突然、お頭は笑い始めた。
どういうことか全然分からなくて、構えた両手の降ろしどころが分からなくなった。
「ハハハハハ――いやいや、突然笑いだして失礼。その気概がある貴族があと5人でもいれば、こんなことをしなくても良かったのだがね」
そう言ってボサボサの髪の毛に手を伸ばして、自らそれを取り払ったんだ。
……カツラだったの?ツケ髭もつけていたみたいで、ベリッと剥がすときちょっと痛そうだった。
ボクは、唖然としてしまって、両手に込めた魔力が散ってしまわないように留めておくので精いっぱいだった。
「ほぅ――」
ワルドおにいさんは何かに気づいたみたいだった。ニヤリと口の端っこをもたげた。
「自己紹介がまだだったね。アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。アルビオンへようこそ!気の強い、可愛い大使殿!」
「「え」」
ルイズおねえちゃんと声が重なった。
「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」
「こいつぁおでれーた」ってデルフの声が聞こえそうな気がした。
……王子様やお姫様って、行動的、なのかなぁ?
アンリエッタ姫や、ダガーおねえちゃんもそうだったけど……
あんまりにも驚いて、『バイオ』を込めた両手を自分に向けてて、危うく自分にかけるところだった。
ピコン
ATE ―舞台演出家―
空賊船が廃船となった貨物船を離れ、ゆっくりと進路をアルビオンに向けた頃のことである。
「やれやれ、やっと動き出したようだ。これで、舞台は完全に整ったわけだ!」
雲に紛れ、風龍が一頭、そっと頭を出す。
「――いっそ、あの船落としてりゃ話は早かったんじゃないのかい?」
風龍の尾側にまたがる人物がそう尋ねる。
「ん?船を落とす?あぁ、それもできなくは無かったけどね」
そう言って頭側の人物が掌から白銀の光球を浮かび上がらせる。
見るからに強力な魔力の塊だ。船を落とすなんざ造作もないだろう。
それを呪文も杖もなしに、だ。
マチルダは思いっきり溜息をつく。
逆らうだの、逃げるだの考えるのもバカバカしくなってくる。
散るのが船ではなく自分になるだけだ。
「あいにく、主役級の役者達がご搭乗だしね。何より、ドラマチックな出会いを演出をした方がいいだろ?裏方としてはね」
唇を歪ませて光球をもみ消す男。
貨物船の舵を、雲の反対側から1撃で破壊した光球をだ。
精度も、距離も、ハルケギニアの魔法常識から外れている。
その気になれば、ここから乗客1人1人の頭を確実に吹き飛ばせたんじゃないか?
「主役級、ねぇ――あんたがご執心なのは、例のとんがり帽子のガキだろ?ビビってったっけ?」
最初に捕まったときに、トドメを刺した人形みたいなガキを思い起こす。
不思議な格好の小坊主ではあったが、そこまで熱心になる理由が理解できない。
「でもさ、あのガキ、強いには強いけど、そこまで熱心になるほどかねぇ?」
確かに、あのガキは強い。変な魔法を使う。剣の達人らしい。
とはいえ、あくまでも『ガキの割には』とつくのは事実だ。
ガキのうちから英才教育でもするつもりならともかく、
あんなガキ雇うぐらいなら、魔法衛士隊の1人でも懐柔させた方がてっとり早い戦力になるだろう。
「それとも、まさか『将来性にかけてオーディション合格』てなとこかい?」
「ほう?彼の実力を全て見たのかい、君は?君から見て、彼はどういう力を持つのかな?」
風龍の頭をなぜながら、振り向かずにそう問う男。
一々癇に障る物言いをする男だ。
「ワルドとかいう髭オヤジと戦ってるのは覗いたけどね、下見ついでに――ボッコボコにやられてたよ、あのガキンチョは」
自分のゴーレムがボッコボコにやられたことは伏せておく。
「ワルドに?なるほどね――仮説は立証されつつあるようだ」
唇に指先をあて、ほくそ笑む男。野郎のくせにしなやかな挙動がまた妙な色気を出している。
そういった色気がマチルダは一層嫌いだった。
過剰な男の色気など、吐き気以外の何をもたらすというのだ?
「仮説、ねぇ?偉大なる演出家様は何をお考えでしょうかねぇ?」
皮肉混じりに聞いてみる。
男性が饒舌にしゃべるときは情報収集のチャンスである。
だからこそ、酒場で売りたくもない媚を売ったし、セクハラにも耐えた。
とはいえ、この男の長く鬱陶しい言い回しは耐えれるものでは無かったが。
「――彼はね、まだ眠ぼけているのさ。光の扉に触れたときから、彼はゆるやかで穏やかなまどろみの中にいるんだよ」
これだ。この芝居がかった言い回し。腹が立つし腹も減る。
そういえば、昨日から何も食べていないと気づく。
「極上のワインと同じさ。花開くには栓を開けてしばし待つ必要がある。だが、目覚めればその香りは誰にでも分かる――」
ワインか、それも悪くない。だが、アルビオンの酒場なら、麦酒の方がいいものが揃っているだろう。
昼飯を麦酒にするかワインにするか、そんなことを考えてしちめんどくさい言い回しに耐えようとする。
「――目覚めの後に待つのは、悪夢かもしれないけれどね」
ぞくっと寒気がして、子羊ローストの妄想から思考が引き戻される。
大きな手振りで告げた静かな一言は、幼き日に見た悪夢そのものを連想させた。
「さて、舞台演出に戻ろうか。主役がお待ちだよ!」
とんがり帽子の使い魔に、マチルダは心底同情した。
どういった因縁かは知らないが、こんな妖しい男に目をつけられているのだ。
だが、自分も同様であるという忌まわしい考えが浮かびそうだったので、
同情するのも束の間で、あとは風龍の背中で目を閉じ、
再び蜂蜜ソースのかかった肉へと思いを馳せることにした。
――
投下完了です。
今年もお目汚し、失礼いたしました。
乙です
>>633 ヒュー・スペンサーは、原作だと主戦力でした罠
まとめにある彼のスタイルは「フェイト◎、カゲ=カゲ●」
フェイトは(正義の)探偵で、確かに頭脳派ですが、カゲは「暗殺者」「忍者」なんかです
スタイルとは、表の顔(◎の部分)、裏でかつ真の顔(●の部分)、隠れた才能を現してると思えば、おおむね合ってるかと
召喚したらいろんな意味でやばいティベちゃん& オッドアイの神様(ドラマCDver)
そういえばモーラとかリャノーンとかギーラッハ呼んだら学院が恐怖だよなぁ・・・
皆さん、新年明けましておめでとうございます。
さて、2009年最初のウルトラ5番目の使い魔、第29話を投下したく思います。
開始時刻はいつもどおり10分後の16:00からお願いします。
そこで崩拳の使い手鳴海VSシエスタですよ
あけましておめでとうございますウルトラ支援
>>641 ありがとうございます。
おかげでwktkが止まらないです。
フェイスレスは無能王と仲良くなれそうだな
はた迷惑なダメ人間ぶりではいい勝負だけど
>>647 どっちも歪んだ兄弟愛的な部分があるわな
第29話
ガリア花壇の赤い花 (前編)
宇宙魔人 チャリジャ
吸血植物 チグリスフラワー
宇宙大怪獣 アストロモンス 登場!
「宇宙のどこかにいる我が下僕よ! 我にふさわしいこの世でもっとも強く、気高く、美しい者よ! 我は命じる、
我の召喚に応じてこの場に姿を現せ!!」
その日、プチ・トロワの魔法儀式のための大広間に使い魔召喚の魔法、『サモン・サーヴァント』の呪文の声が
高らかに響き渡った。
唱えた張本人の名はイザベラ、このプチ・トロワの主であるガリア王女にしてタバサの従姉妹である少女。
しかし、その性根はタバサとは鏡に写したように冷酷にして残酷、さらにタバサに対して強いコンプレックスを
持っており、その反動と王女ゆえの特権もあいまって、本来多感であるはずの若い心は制動されることなく、
どんどん捻じ曲がっていっていた。
そしてこの日も、タバサの持つ使い魔、風竜のシルフィードに激しく嫉妬し、自分の本当の力を皆に見せ付けて
やろうと、一人部屋にこもって呪文を唱えていた。
(あたしが、あたしがあんな小娘に劣るはずはないっ!)
怒りと憎しみを込めて呪文を唱え、杖を振り下ろす。
魔法の力はその者の精神力によって決まり、精神力はその者の強い感情に左右される。
ろくな魔法が使えないと散々陰口を叩かれ、さらにタバサへの憎しみ、愛情のかけらもなかった父の
冷たいあしらいの記憶も加わって、たまりにたまったイザベラの怨念は知らぬ間に彼女に強力な魔力を与え、
その眼前に光り輝く鏡のような召喚のゲートを作り出した。
「やった! さあ、来い!」
遂に開いたゲートをイザベラは期待のまなざしで見つめた。サモン・サーヴァントは一度開けば、後は何が召喚
されるかはまったくわからない。何が来るのか、鳥、獣……それともドラゴンかグリフォンのような幻獣?
とにかく、王女として誰もグウの根も出ないような使い魔なら……
固唾を呑み、今か今かと待ちわびるイザベラの目の前で、突然ゲートの中からぽんっと何かがはじき出されるように
現れて、はじめて言った言葉は。
「おや、ここはどこですかな?」
イザベラの手から杖が零れ落ちて、乾いた音を立てた後に部屋の隅まで転がっていった。
それは、動物でも幻獣でもなく、蝶ネクタイをつけた真っ黒なスーツを着て、顔を白塗りにした小柄でやや小太りな
人間の男性だった。少なくとも、そのとき彼女にはそう見えた。
「お、お前いったい誰だよ」
やっと声を絞り出して言ったイザベラの問いに、男は手に持っていたこうもり傘と、手品の小道具でも入っていそうな
トランクを置くと、懐から一片の紙切れを取り出して、うやうやしくおじぎをしてそれを彼女に差し出した。
「わたくし、こういうものでございます」
その仕草は芝居じみており、紳士というより町劇場の芸人か俳優のように見える。
イザベラは、その紙片を手に取り、そこに記された文字を眺めたが、それは彼女にはわからない言語で書かれていた。
「なによこれ、全然読めないじゃない」
「おや、これは失敬。では、これでいかがですか?」
突っ返された紙片を、その男が指で軽くなでると、なんとその紙片に記されていた文字はガリア語のものに変わって、
シンプルな名刺だということがイザベラにも伝わった。
『怪獣バイヤー・チャリジャ』
名刺には、短くそれだけが書かれていた。
「怪獣バイヤー?」
「はい、わたくし色んな怪獣を探して星から星へと飛び回り、強い怪獣を売買するビジネスをおこなっているのです。
つい先日も、長年捜し求めた怪獣と、ようやくめぐり合えたところだったのですが、不運にもすぐにやっつけられてしまいました。
それで仕方なく帰ろうとしていましたところ、強い力に引っ張られてここにやってきたのです。失敬ですが、ここは
どこでございましょうか?」
ビジネススマイルを浮かべながら、怪獣を売り買いしているなどととんでもないことを言うその男に、イザベラの
かんしゃくが爆発するのに時間は必要なかった。
「どこだだって? ここはガリア王国のヴィルサルテル宮殿だよ!! で、あたしは王女のイザベラ様だ! 聞いて驚いたか!
てめえこそ、いったいどこから来た!」
およそ王女どころか女の子とも思えないほど口汚く怒声を放ったイザベラだったが、男はまったく動ぜず、きょろきょろと
周りを見回すと興味深そうに言った。
「ほほお……どうやら、とんでもなく辺境の未開惑星に呼ばれてしまったようですね。まあよいでしょう、こういう場所に
こそ掘り出し物の怪獣がいたりするものですから」
「あたしを無視するな!」
「これはまた失敬、それであなたが私をここに呼んだ張本人というわけですか。はて、何ゆえに?」
王女を前にしても、ひかえるどころか堂々と質問をしてくる相手に、イザベラは感情をおさめることができなかった。
なにせ、これまでずっと人にかしずかれて育ってきたのだ。王である父以外に上位、対等の相手と接した経験など
ほとんどなかった。
だが、それでも一応は自分の魔法で呼び出した相手である。金切り声を混ぜながらも、サモン・サーヴァント、
使い魔の契約などについて一息にイザベラはしゃべりきった。
「ほぉ……宇宙は広いですなあ、そのようなことで空間を歪めて他の生物を転移させる能力があるとは。ですが
残念、私はフリーのバイヤーでして、スポンサーは必要ありません。はい」
「なっ、なにこの!」
イザベラはカッとなって拳に力を込めたが、自分にはまともに使える攻撃呪文のひとつも無いことを知っているだけに、
それ以上のことはできなかった。
だが、男はそんなイザベラを見て、ほっほっと喜劇じみた笑いを浮かべると。
「ですが、故意ではないとはいえ、思いがけないビジネスチャンスを与えてくれたお礼はしなければなりませんね。
あなたの専属にはなれませんが、少しあなたのために働いてあげましょう。使い魔の仕事に、秘薬や薬草を
探してくるというのがありましたね。では」
すると、男は傘とトランクを持ち上げると、すたすたと窓のほうへと歩いていく。
「おい、どこに行く!」
「ちょっとお出かけしてきます」
「待て! 逃げようったってそうはいかんぞ! 衛兵!!」
たとえ常識離れしたことばかり言う奇人でも、自分が呼び出した使い魔には違いない。そして使い魔は
それが死ななければ次を呼び出すことはできない。ここで逃げられたら、自分は一生使い魔なしになってしまう
かもしれない。
しかし、そこまで考えたとき、イザベラの心に悪魔がささやいた。そうだ、こいつさえいなくなれば、あたしは
別のもっとましな使い魔を呼び出すことができる、と。
やがてイザベラの怒鳴り声に答えて、扉の外から槍や杖を持った兵士が10人ほど部屋の中になだれ込んできた。
「王女の部屋に忍び込んできた狼藉者だ、殺せ、殺してしまえ!」
兵士達がすぐさま円陣を組んで男を取り囲む。どいつも王室警護の屈強な兵士に、トライアングル以上の
メイジばかり、普通ならスクウェアクラスのメイジでも脱出不可能な陣形だったが、男は微笑みをそのままに
したまま、傘を開いて床に置いた。
「おお怖い……けれどわたくしもこの世に未練たっぷりな身の上、ここはひとまず失敬させていただきますね」
「逃げられると思っているのか、やれ!!」
包囲陣から一斉に魔法攻撃が男に浴びせかけられる。しかし命中直前、男の姿は手品のように掻き消えた。
なんという地雷支援
「なっ!?」
空振りした魔法がぶつかり合って起きた爆発が部屋の空気を激しく揺さぶる。
そして頭の上から、あの男の声が響いて頭上を見上げたイザベラの目は大きく見開かれた。
男は広げた傘の上に立って、宙をふわふわと飛んでいる。
「ざーんねん。そのぐらいでは私は殺せません。けれど私は一度した約束は守りますよ。ではお姫様、
しばしの間お待ちくださいませ」
「に、に、逃がすな!」
再び幾重もの魔法攻撃が男を襲うが、男は当たる前にドロンと煙とともに消えてなくなってしまった。
「ほっほっほっ……ご心配に及ばなくとも、すぐに素晴らしいおみやげを持って帰りますよ……」
何も無い空間からしてくる男の声が、だんだんと小さくなっていくのを、イザベラも兵士達もただ呆然と聞いている
しかできなかった。
その後、サモン・サーヴァントの失敗を誰かに言うこともできずに、使用人やメイド達に当り散らし、昼食の
豪勢な料理を味が気に入らないと兵士の顔に投げつけたりして、うさを晴らしながら、イザベラは自室で
不貞寝をはじめてしまった。
「やれやれ……あの女のヒステリーも、どんどんひどくなっているな」
「まったくだ……シャルル様が生きていてくだされば、こんなことにはなっていなかったものを」
「だが、まだ我らにはシャルロット様がいる。あのお方は強い、必ずや近いうちに王座を奪回なさるだろう。
そうしたらあんな可愛げのないガキ、知ったことではないさ」
王女の寝室のすぐ前なのに遠慮の無い陰口をたたく侍従や兵士は一人や二人ではない。
否、この王宮内でイザベラの味方をする者自体、すでに皆無といってよかった。彼女が王の娘として、
このプチ・トロワに来たとき、簒奪者の娘として冷たい目で見る者はすでに多数いたが、親と子は別だと
普通に接しようとした者もいた。魔法が使えないことにも、同情の目を向けた者もいた。
しかし、それらのわずかな善意の人々も、イザベラ自身の傲慢さによって次々に彼女を見放していき、
いまや作り笑い以外の笑顔をイザベラに向ける者は一人たりとていなくなっていたのだ。
「ちっ、いっそ火事でも起きねえかな、そうしたら魔法の使えないあんな小娘、簡単にくたばってくれるのに」
そんなことになっているとも知らず、イザベラはベッドの上で毛布を蹴飛ばして高いびきをかいていた。
だがこのとき、自他共に『無能』のレッテルを押されているはずのイザベラの魔力の真価の一端か、
それとも単なる偶然か、奇跡が起きようとしていることに、本人も誰も気づいてはいなかった。
すでに誰もいなくなった魔法儀式の間で、チャリジャが現れたのと同じように次元の歪みが生じ、
そこから一人の青年が投げ出された。
「うわーっ! いってー……どこだ、ここは?」
その青年は、歪みから飛び出て部屋の中に落ちた後、部屋の中、そして窓の外の景色を見て目を丸くした。
「これは……おいおい、1965年の円谷プロの次は、中世のヨーロッパか? あいつめ、今度は何をたくらんでるんだ」
その風体はどう見てもハルケギニアのものではなかった。全体的に白をベースに、グレーとレッドの混じった、
強いて言うなら地球のジャンパーに近いようなそんなもので、胸にアルファベットでGUTSと記されたエンブレムが
つけられている。
彼は唖然とした様子でその風景を眺めていたが、扉の外から兵士の硬い靴音が近づいてくると、とっさに
身構えた。まずい、こんなところを見られたらどう見ても不審者にしか見えない。この時代だと捕まったら死刑か?
火あぶり、それともギロチン台? 教科書やテレビで見た展開が頭をよぎるが、隠れるところなどない。
あたふたしているうちに扉がきしんだ音を立てて開くと、現れた兵士達は予想通りの反応をした。
「だ、誰だ貴様は!?」
すぐさま槍を向けてくる兵士に、彼は「怪しい者じゃない」と答えたが、この状況でその返事は逆効果なのは
言うまでもない。
「族が出たぞーっ!! ひっ捕らえろー!!」
「なにーっ!! この王宮に忍び込むとはいい度胸だ! 捕まえて火あぶりにしてくれる!!」
たちまちあちこちから何十もの足音が地響きのように近づいてくる。
目の前の兵士達も目を血走らせていて、とても話を聞いてくれそうな雰囲気ではなく、命の危険を感じた彼は
唯一残った逃げ道である、窓から身を投げ出した。
「うわーっ!!」
2階から落ちた彼は、運良く下が植え込みだったおかげと、普段からそこそこ鍛えているおかげでほとんど無傷で
地面に降り立った。
だが、兵士達は彼を追い詰めようとあちこちから集まってくる。彼は必死で走ると、広大な庭の植え込みの一角に
身を潜めた。
彼の隠れている植え込みのすぐ側から、追っ手の兵士達の話し声が聞こえる。
「いたか?」
「いや、こっちにはいない。変な白い服を着た奴だから、目立つはずなんだがな」
「ああ、族にしては目立つ格好をしてたな……異国の奴かもしれんな、なにせあの王は最近怪しげな奴をよく招き入れている
というしな」
「そうだな……なあ、よく考えたら真面目に探す必要無くないか、あれが暗殺者だったとしたら、むしろ望むところだろ」
「なるほど! 確かにそうだな。あの無能王と無能姫じゃ、狙われても助かるまいから俺達が責任を取らされる心配も
ないし、これでシャルロット様が戻ってきてくだされば万々歳だ」
「そうそう、じゃあさっさと戻ろうぜ。がんばれよ暗殺者」
兵士達は、急激にやる気を失うと、あくびをしたりしながら去っていった。
彼はほっとすると同時に、自分が大変なところに迷い込んでしまったことを悟った。
「やれやれ……これはどう見ても現代じゃないな……仕方ない、夜までここで隠れてるか」
先程の兵士達の様子から見るに、それほど真面目に警備をしてはいないようだ。それなら、夜になれば動きやすく
もなるだろう。戦えないこともないが、無関係な人を傷つけたくない。
「はぁ……勝手に何日もいなくなって、後でイルマ隊長になんて言おうか……それにレナ、怒ってるだろうな」
落ち着いてくると、元の世界に置いてきた仲間達のことが浮かんでくる。しかし、考えていても始まらないと、
芝生に寝転ぶと、今までの疲れもあってやがて静かに寝息を立て始めた。
そして、太陽が天頂から一傾きほど動くころ、爆睡中の王女の部屋に忍び込む影があった。
"ぐがー……ぐがー"
蟻一匹入り込めないほどがっちりと固められた寝室に、その男は手品のように壁をすり抜けて入ってきた。
「おやおや、おねむの途中ですか、じゃあちょっと失礼いたしまして……はい」
男は、ポケットから風船を取り出すと、ぷーっと息を吹き込んで膨らませて、それをイザベラの目の前で、
針でつんっと突っついた。
当然、彼女の目の前で10人くらいが一斉に手を叩いたような音がして、いっぺんに彼女は飛び起きた。
「ななな? なんだ、いったいなんだ!?」
「おはようございます。お姫様」
ベッドから落ちかけてシーツにしがみつくイザベラの視界に、あの男の満面の笑顔が飛び込んできた。
「あっ、おおお、お前は、いったいどうやって入ってきた!!」
「ほほほ、この程度のセキュリティなど、特に問題ではありませんよ。それよりも、約束どおりおみやげを
持ってまいりましたよ」
男は、人のよさそうな笑顔を浮かべると、丁寧に包装された小箱を手渡した。
「お改めください。つまらないものですが、一生懸命探してまいりました一品です。さささ」
その男のせかすような態度にイザベラは胡散臭いものを感じたが、仕掛けを疑って臆病者呼ばわりされるのを
嫌い、リボンをほどき、包み紙を解いて箱を開いてみると、そこには子供の握りこぶし大の茶色く丸っこい塊が
納まっていた。
「……球根?」
それはまったく、何の変哲も無い球根であった。
「はい、綺麗な女性に一番似合うのはやっぱりお花ですからね。きっとイザベラ様にぴったりのお花が咲くと思いますよ」
「ざけんな! 花なんかあたしゃもう見飽きてるんだよ。それよりもさっさと死ね!」
イザベラは衛兵を呼んで男を捕らえさせようとするが、やはり男は涼しい顔を崩さない。
しえん
怒った衛兵が攻撃を仕掛けても、ほほほと笑いながら軽くかわしてしまう。
そして男は再び傘に乗ると、衛兵達などまるで最初からいないように、笑いながら窓の外に飛び出してイザベラに言った。
「いやあ、お気にめさなくて残念。ですが、それはあなたのために探してきた特別な球根、咲かせる花もまた特別なのです
がねえ。仕方ありません、また来ましょう。ちょっと散歩してきましたが、ここは中々面白いです」
男は、バイバイと手を振ると、またドロンと煙のように消えてしまった。
だが、2度にわたってコケにされまくったイザベラは、怒り心頭で球根を握り締めると、渾身の力でそれを庭園の方へと
投げ捨ててしまった。
「ふざけやがって……あたしは、あたしはガリアの王女だぞ……あの野郎、次は必ず殺してやる」
タバサに似て、整った美しい顔立ちを醜く歪めて罵るイザベラの姿を、衛兵達が白い目で見ているのを、知らないのは
その本人だけだった。
一方、イザベラを屈辱に震わせた張本人は、追っ手を軽く煙にまいた後、スキップのような足取りで見張りの
いない庭園の一角を歩いていた。
「ほっほっほっ……おや? あなたは」
しかし、その前に、あの白い服の青年が立ちはだかった。
「おやおや……どうやらあなたも私のタイムワープに引きずられて、ここにやってきてしまったみたいですね」
「探したぞ……チャリジャ、1965年で怪獣を蘇らせた次は、今度はこんな時代で何を企んでいる!?」
彼は腰のホルスターから銃を抜いて、チャリジャに向かって構えた。
「別に、わたくしも元の時代に帰ろうとしていたところを、ここに呼ばれてしまっただけですからね。気づいてませんか、
ここは地球ではありません。よく似ていますが、別の星のようです。まあ、帰ろうと思えば帰れますけど、少々
面白そうなのでもう少し滞在させてもらいます」
「そうはさせないぞ、また怪獣を呼び出して暴れさせるつもりだろう!」
「それはどうでしょうか? では、わたくしはまだお仕事が残っていますので、ここで失敬いたします」
「待て!」
彼はチャリジャに向けて銃の引き金を引いた。だが、チャリジャはレーザーが当たる寸前に、また煙とともに
消えてなくなってしまった。
「いったい、なにを企んでいる……」
チャリジャのあざ笑う声が遠ざかっていく中、彼は呆然と日が傾き始めた空を見詰めていた。
しかし、彼の心配は不幸にも的中していた。
その夜、月も山影に沈みゆくほどの深夜、犬を連れて警備巡回していた兵士が、庭園の片隅で芝生の中から
ぽつんと一輪だけ顔を出して咲いている赤い花を見つけた。見た目はチューリップに似ているが、それより赤みが強く
全体的にとげとげしい雰囲気がある。
おや、こんな花ここにあったかなと彼は不思議に思った。ヴィルサルテル宮殿内の庭園はすべて専門の職人によって
完全に管理され、一部の隙も無く人工的に作られた自然の理想郷を形成している。青々とした芝生の上に一輪だけ
花が生えているなどありえなかったが、兵士はそれは自分の仕事ではないと、無視して行こうとしたが、連れている
犬がその花を睨んで動こうとしない。
どうした、と犬の鎖を引っ張ったが、犬は言うことを聞かず、その花に向かって吼え始めた。
「おいどうした。何の騒ぎだ?」
「いや、この犬が急に……」
犬の声を聞きつけて、他の兵士達も集まってきた。
目の前には相変わらず、見慣れぬ一輪の花しかない。だが、犬はそこに何か得体の知れないものがいるかのように
吼えるのをやめない。
そして、信じられないことが兵士達の目の前で起こった!
「! なんだあれは!?」
一人の兵士が、芝生の間をすり抜ける蛇のようなものを見た次の瞬間、それは犬の前足と体に瞬時に巻きついて、
大人ほどもある体格のその犬をすさまじい力で花の根元まで引きずっていくと、まるで飲み込むように地面の下に
引きずり込んでしまったではないか!
「う、うわわわぁぁぁ!!」
「花が、花が犬を食っちまったぁ!?」
人食い花、このハルケギニアではそれはおとぎ話ではない。密林の奥深くに潜んで獲物を狙う食肉植物は図鑑にも
確かに存在する。きれいな花だと思って獲物がのこのこ近づいてきたところを、地中に潜んだ本体が捕らえて捕食するのだ。
過去にも、これによって全滅させられた探検隊や、枯れた食肉植物の中から大量の人骨が発見されたなどという、
恐ろしい実例も報告されている。
耳を澄ませば、獲物を捕らえる触手のようなツタが地面をはいずってくる音がまた聞こえる。
兵士達は取るものもとりあえず逃げ出した。
「に、逃げろ喰われるぞ!!」
「た、助けてくれぇー!」
「俺達じゃ手に負えん、花壇騎士を呼べ!!」
庭園の中に食肉植物が現れたという報告は、恐怖に震えた兵士によってすぐさま花壇騎士団へと伝えられた。
これを受け、ガリア東警護花壇騎士団団長、バッツ・カステルモールは一個小隊を率いてただちに出動し、連絡の
あった庭園の一角を封鎖し、目的の花を包囲した。
「あれが、そうか?」
「はい、あれの根元から突然ツルみたいなものが生えてきて、犬を絡めとるとそのまま引きずり込んでしまったんです」
ガダガタ震えている兵士から話を聞き、彼を下がらせると、カステルモールは見慣れない形の花を睨みつけ、
何故こんな場所に辺境にしか生息しないはずの食肉植物が現れたのかと疑問に思ったが、それ以上にあれを
野放しにして、万一繁殖でもされたら一大事、犠牲者が犬一匹のうちに始末してしまおうと決意した。
それに、ここは悪いことに王女イザベラの寝室のすぐそば、騒ぎが大きくなって感づかれたら面倒だ。
「よし、全隊それ以上近づくな。とにかく、怪しいものは一応処分しよう。土、および風系統の使い手、前に」
食肉植物にとって、地上に出ている花の部分はあくまで獲物をおびき寄せるための疑似餌、いわば
チョウチンアンコウの触覚のようなものだ。焼こうが引っこ抜こうが、地下の本体を枯らせない限りいくらでも
また生えてくる。
そこで、まずは土系統のメイジによって周辺の土を金属化して食肉植物の動きを封じるとともに、それを伝導体として
風系統のメイジが雷撃を発射する風のトライアングルスペル『ライトニング・クラウド』で地下の本体を電撃で
感電死させる。
そうなると、さすが王宮警護の精鋭部隊、瞬く間に布陣を終え、団長の命令を待つだけとなった。
「ようし、一撃で仕留めろよ……『連金!』」
命令一過、5人の土メイジが目標の地面を一斉に鉄に変える。これで、食肉植物の武器であるツルが出てくる
ことはない。後は、隊長以下の雷撃によってとどめを刺すだけだ。
「これまでだ……『ライトニング・クラウド!!』」
カステルモールと、4人のメイジの杖の先から強烈な閃光と雷鳴を伴った太い電撃の束が、鉄と化した地面へと
吸い込まれていく。一人一人でも強力だが、これだけ集めると本物の雷にも匹敵する威力となる。
これにより、瞬時に鉄は電熱により赤熱化し、その直下にあるはずの食肉植物の本体も焼き尽くされて
枯れ果てるはずであった。
「終わったな……我ら東花壇騎士隊の5連雷撃はミノタウロスすら瞬時に絶命させる。食肉植物ごとき、
今頃は地中で炭と化しているだろう」
そう、普通の食肉植物であったなら、そうなっていだろう……
しかし、その植物の名はチグリスフラワー、これが持つ特性の恐ろしさを彼らは知らない……
突如、東花壇騎士団の足元から突き上げるような衝撃が襲ってきたかと思うと、マグニチュード7以上もの
とてつもない揺れが彼らを翻弄した。
「うわぁぁっ!?」
メイジ達は突然のことに対処できずに、地面を転げまわった。
だが、本当の恐怖はこれからだった。
赤い花の生えていた場所を基点にして、地面に亀裂が走り、そこが盛り上がっていったかと思うと、そこから
周り30メイルを越えるかのような巨大な赤い花が現れた。
「花の……化け物」
東花壇騎士の団員達は口を揃えてそう言った。
けれど、それは氷山の一角に過ぎない。土の中から、大木のように太いムチ、巨大な鎌、それとつながる
爬虫類のような外皮を持った二足歩行の胴体、そしてその上に乗る鋭い牙の生えたワニのような頭……
かつて地球でウルトラマンタロウを苦しめた宇宙大怪獣アストロモンスが出現した!!
「か、か、怪獣だぁーっ!!」
アストロモンスは大きく遠吠えをあげると、庭園、花壇を踏み荒らし、腕のムチと鎌を振り回して暴れ始めた。
さしものカステルモールをはじめとする東花壇騎士団も、これにはどうすることもできずに蜘蛛の子を
散らすように逃げ出していく。
その様子を、離れた場所からにこやかな笑顔でチャリジャは見ていた。
「ははは、ヤナカーギーがやっつけられてがっくりきてましたが、こんな掘り出し物を見つけられるとは
ついてますね。いけぇーアストロモンス! 破壊だ、手当たり次第に破壊しろ!」
チャリジャが傘を構えて念じると、その姿が奇怪な姿の宇宙人に変身した。
深夜のヴィルサルテル宮殿は一瞬にして阿鼻叫喚の巷に変貌した。
「なんだ、いったい何事だい!?」
就寝中を轟音で叩き起こされたイザベラは、手近にいた使用人を捕まえて問いただした。
「に、庭に突然怪物が! あ、あれです!」
「なに? なっ、なんだいあれは!?」
窓から入ってくる星明りに怪しくうごめく巨大なシルエットを見て、さすがのイザベラも愕然とした。
怪獣は、両手のムチと鎌を振り回し、近づくメイジや飛竜などを次々と蹴散らしている。像に挑む蟻どころか、
火中に飛び込む蛾のようだ。
「何してんだい役立たずどもめ、あんな怪物一匹仕留められないのかい!」
さるさん?
503 :ウルトラ5番目の使い魔:2009/01/04(日) 16:17:16 ID:xdmPMmO6
申し訳ありませんが、新年早々さるさんに引っかかってしまいましたので、代理をお願いいたします。
毎度ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
行ってくる
「そんな! 怪獣に人間が敵うはずがありませんよ!」
「なんだと! ……そうだ、お前今すぐにあの人形娘を呼び戻しな、あいつに仕留めさせるんだよ」
使用人は、その命令とさえ言えないめちゃくちゃなイザベラの言葉に慄然とした。この王女の衣装を着た狂人は
王宮の危機すら利用して、我等の本当の王女を殺そうとしている。
彼が躊躇していると、イザベラはいらだったように言った。
「なにをしてるんだい、"ただちにリュティスに帰還しろ"それを届けりゃいいだけだろが、さっさといきな。それとも、
お前の家族もろとも辺境で一生石炭掘りでもさせてやろうか?」
「はい……」
彼は、血を吐くような思いで、命令を実行するために魔法人形の保管されている工房へ向かった。あそこは
まだ破壊されていないし、重要施設だからメイジも残っているだろう。彼は心の中で血の涙を流してシャルロットに
詫びながら走った。
「ちっ、まったくどいつもこいつも愚図め」
走り去っていった使用人の姿を見送り、イザベラは不愉快そうに吐き捨てた。よく見れば城内にはもう誰もいない。
すでに怪獣におびえて逃げ去ってしまっていたのだが、それを知らないイザベラは王女を放り出していったい
どこに行ったのかと憤慨したが、思慮の浅い彼女は自分がこのあたりでもっとも目立つ建物の中に居ることを忘れていた。
振り下ろされてきた巨木ほどの太さと長さ、そして重さを持つアストロモンスのムチがプチ・トロワの天井を直撃する。
自身の愚かさを悟る間もなく、轟音とともに城の天井が崩れ、周囲の壁が音を立てて崩れ始めた。
「ひ、きゃあぁーっ!!」
イザベラは絹を引き裂くような悲鳴をあげて、その場にうずくまった。
その上に、巨大な瓦礫が怒涛のように降り注いでくる……
いまや、宮殿は完全にアストロモンスの遊び場と化していた。
壮麗な大理石で作られたプチ・トロワも、怪獣の破壊力の前では砂の城同然だった。
東、西、南、どの警護花壇騎士団もアストロモンスの暴虐を止めることはできない。中には無謀にも、
この宇宙大怪獣に挑んでいった者もいたが、それはかつてベロクロンに挑んだトリステイン魔法衛士隊と
まったく同じ運命を辿ることになった。
「団長、このままではヴィルサルテル宮殿が……いえ、リュティスが滅んでしまいます」
散り散りになった団員をなんとかまとめたが、カステルモールも破壊されていくプチ・トロワを呆然と
見つめているしかできなかった。
「全員、城内の人間の避難を最優先に行動、これ以上犠牲者を増やすな」
「はっ……あの、姫……様はどういたしましょうか?」
「……」
沈黙、それがカステルモールが花壇騎士全員を代表して示した雄弁かつ明確な回答であった。
「はっ、東警護花壇騎士団、これより宮殿内の非難誘導に当たります」
彼らは、プチ・トロワとは反対の方向へと散っていった。
だが、完全に瓦礫の山と化したプチ・トロワの中で、イザベラは奇跡的に生き延びていた。
彼女のためにあつらえられた純白のシルクのネグリジェは、ほこりまみれで見る影も無いが、イザベラ自身は
魔力の障壁に守られて、あの瓦礫の雪崩を切り抜けていた。万一の暗殺に備えるために、王族が常に身に着けている
一度だけ持ち主の危機を救う魔法のイヤリングの効果だったが、それも役目を果たして砕け散った。
「あたしの……あたしの城が……誰か! 誰かいないのかい!!」
大声で叫んだが、廃墟と化した周りからは誰の返事もなかった。
しかし、その声を聞きつけたのか、重々しい足音がだんだんとイザベラのほうに近づいてくる。
それと同時に星明りに怪しく光り、赤く毒々しい花弁を持つ巨大な花が闇の中からうごめく。アストロモンスが
引き返してきたのだ!!
「ひ……ああーっ!!」
悲鳴をあげ、裸足のままでイザベラは逃げ出した。
瓦礫を掻き分け、芝生に飛び込み、必死で走るが大きな足音は背後からどんどんと迫ってくる。
そのとき、逃げ遅れていたのか一人の使用人の姿を見つけて飛びついた。
「おいお前! あたしを背負って走れ!」
「なに! うるせえこの野郎!」
その使用人はイザベラを突き倒すと、あっという間に走り去っていった。
「ぐっ……ち、ちきしょうが!」
すりむいて毒づくイザベラだったが、アストロモンスは遠慮なく迫ってくる。振るわれたムチが彼女のかたわらの
木々を5,6本まとめてへし折って、折れた枝や木の葉が降り注いでくる。
再び逃げ出そうとするイザベラの前に、逃げ遅れた者と見たのか、飛竜に乗った騎士が一人降りてきた。
「おお、よく来た! さあ、早くあたしを乗せな」
「……ちっ」
しかしその騎士は相手がイザベラだと知ると、舌打ちをして飛び去ってしまった。
「お、おいなんで行ってしまうんだ!! あたしを助けろ! ひっ、きゃぁぁっ!」
逃げる、走って逃げるしかできない。
足の裏は擦り切れ、体のあちこちからは血がにじみ、運動などほとんどしたことのない体は悲鳴をあげる。
それでも、生きたい、死にたくないという思いだけが彼女を人のいる方向へと走らせる。
「誰か! 誰でもいいからあたしを助けろ! そうしたら貴族に取り立ててやるぞ!」
泥まみれになった髪を振り乱し、出会う人間にそう叫びながらイザベラは走った。
だが、彼女がイザベラだと知ると、誰もが顔をしかめて逃げていく。
そして、ついに走る力も失って倒れこんだとき、最後に身近に残っていた執事らしき男の足首を必死に掴み、
あるだけの威厳と権威を込めて言った。
「あ……たしを、安全な場所まで……連れていけ……」
けれど、その男はぼろ雑巾のようになったイザベラを一瞥すると、乱暴にその手を振り払って一言だけ。
「死ね!」
そう言い放って逃げていった。
彼女は、その男の顔に見覚えがあった。毎日彼女に食事と菓子を運び、常に礼儀正しく、どんなわがままにも
黙って従ってきた忠実な犬のような男だった。
そして、イザベラの周りには誰もいなくなった。
……そうか、みんなあたしをだましてたんだ……誰もあたしを助けてはくれないんだ……
冷たい地面にはいつくばって、イザベラはようやく自分がとうに全てを失っていたんだと知った。
もう、手も足も動かない。動かす気も起きない。
怪獣はもう数歩歩けば、彼女を虫けらのように踏み潰していくだろう。
自分が死んだら、誰もが笑って喜ぶのだろう。あの父は、恐らく涙ひとつこぼさないに違いない。
死ぬことでのみ、人のためになれる。だったら自分という存在はいったいなんだったのだろうか……
「は、ははは、あはははは……」
絶望の、乾いた笑いが口から零れ落ちてきた。
アストロモンスの足の裏さえもう見える。
地獄とは、どんな場所なのだろうか……そこに落ちた自分を、シャルロットはどんな目で見るのか。
自然に涙もあふれてくる。
あと瞬きひとつすれば、あの巨大な足は自分の上に覆いかぶさってくるだろう。
イザベラは、目を閉じようとした……そのとき!!
「危ない!!」
突如、誰かの腕が彼女を抱え上げ、そのまま間一髪のところで圧死から救い上げると、彼女を抱きかかえた
まま駆け出した。
「あ、あんたは……?」
「しゃべらないで、舌を噛むよ」
虚ろな意識の中で、イザベラはその誰かの顔を見た。
見たことも無い白い服を着た、凛々しい顔つきの青年だった。
彼は物陰にイザベラを下ろすと、泥まみれになった彼女の顔をハンカチでぬぐってくれた。
そして、もう一枚ハンカチを取り出すと、それを幾つかに裂いて、彼女の手足の傷を覆って応急手当を施した。
「いいかい、ここから動いちゃいけないよ。すぐに助けがくるからね」
うそだ、誰もあたしなんかを助けに来やしないと彼女は思ったが、その青年の言葉はなぜか安心できるものがあった。
「あなたの……名前は……?」
「……マドカ・ダイゴ」
薄れゆく意識の中でイザベラの心に、手のひらに握らされた一枚のハンカチの感触と、その一言だけが残った。
だが、イザベラの姿を見失ったアストロモンスは、その姿を捜し求め、遂に二人を見つけるや再び進撃を開始する。
ダイゴは、眠り姫の体を壁に寄りかからせると、アストロモンスの正面に立ちはだかり、懐から先端が二股に分かれて、
中央にクリスタルが埋め込まれた金色のスティックを取り出し、それを天に掲げて叫んだ。
「ティガ!!」
眩い光が天を貫き、光が形となって顕現する。
3000万年前の光の巨人の末裔が、時空を超えて降り立った!!
「エース……?」
「いや、違う……しかし、あの巨人もウルトラマンだ」
続く
508 :ウルトラ5番目の使い魔 第29話 あとがき:2009/01/04(日) 16:22:01 ID:xdmPMmO6
以上、来週に続きます。
自身の傲慢さから招いた恨みから誰からも見放されたイザベラ、しかしその報いはもうこれで充分でしょう、
そう、新年一発目のサプライズ、客演ウルトラマン第2号はあの伝説の光の巨人の登場です。
以前ウルトラマンダイナを登場させたこともありまして、いつかはこうなるかもと予想していた人もいると思いますが、
この話は、少々補足説明いたしますと、第49話『ウルトラの星』からつながっています。
ダイナの登場と時代が前後して変に思うかもしれませんが、平行世界ということでご容赦ください。なにせ
ウルトラシリーズにはタイムスリップを平然とおこなう怪獣がいっぱいいますから。
次回はいよいよティガVSアストロモンスです。脅威の3タイプチェンジを見逃すな!!
代理投下終了
一言で言うとGJでした。
次回作に超wktk。
ウルトラの人乙です。
おぉティガキターッ
これはガイア登場も期待せざるを得ない。
次回にwktk。
ティガが来るとは…ダイゴはなんか振り回される予感がするw
3タイプチェンジ楽しみにしてます
明けましておめでとうございます
”舵輪(ヘルム)”の使い魔の第3話を16:50から投下したいと思います
今回は短く3スレ程です
一番大好きなウルトラマンが!!!!
あんたやべぇよ!最高だぜ!続きをwktkせざるを得ないじゃないか!
つ、ついにティガが! 俺の青春にして初ウルトラマンが!
ヤベェwktk過ぎるwww Take me higherの脳内再生が止まらないwww
3タイプチェンジのみならずグリッターティガの光臨もぜひ!
第3話『初めての着替え(一回休み)』
早朝、ルイズの部屋にノック音が響く。
早起きの生徒は起き出している時間ではあるが、低血圧で寝坊すけなルイズにとってまだまだ甘美な眠りの時間であった。
先にミュズがそれに気付いて目を醒まし、すうすうと寝息を立てるルイズを揺すって起こそうとする。
「マスター、起きて下さい。シエスタが呼んでいます」
「はえ?そ、そう……。って誰よあんた!」
ルイズは寝ぼけた声で怒鳴った。
ふにゃふにゃとした顔で眠そうにしている。
「ミュズです」
「ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」
ルイズは起き上がると、欠伸をした。
そして、ミュズに聞く。
「シエスタ…。ああ、昨日のメイドの事?で、そのメイドがどうしたのよ」
その時、再度、扉の外からノックとルイズを呼ぶシエスタの声が聞こえる。
「すみません、ミス・ヴァリエール。昨日、御依頼された件でご相談が…」
ルイズはシエスタに待つ様に返事をすると、ミュズに命じる。
「服」
ミュズに椅子に掛かった制服を手渡されると、ベッドの隅に置き、ルイズは怠そうにネグリジェを脱いだ。
「下着」
「どこにあるんですか?」
「そこのクローゼットの、一番下の引き出しに入っているわよ」
ミュズはルイズが指したクローゼットの引き出しをあけ、適当に下着を取り出すと、ルイズに渡す。
下着を身につけたルイズが、再び怠そうに呟く。
「服」
「さっき渡しませんでしたか?」
「着せて」
下着姿のルイズがベッドに座って、気だるそうに言う。
「平民のあなたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいる時は自分で着ないのよ」
ルイズは唇を尖らせてさらに言った。
「そうなんですか」
理解した様に大きく頷くと、ミュズはベッドの上にある制服のブラウスを手に取り、のたのたとルイズの腕に袖を通す。
初めて人の着替えをする様でたどたどしいが、これから教え込ませれば良いと、ルイズは目を閉じて考えていた。
そうしていると、首筋にがさがさとした違和感を感じる。
目をパチッと見開くと、正面でミュズがブラウスのボタンを、んしょんしょと”内側に”掛けていた。
ボタンを一つ違いに掛け違えしているのはご愛顧としても、更にブラウスが裏表逆なのは、”いつもより早く起こされて”機嫌の良くないルイズの堪忍袋の緒を易々と切ってしまった。
「何やってんのよ!あんたは〜!!」
その怒号は扉の向こう側で待っていたシエスタが跳びはね、女子寮全体に響き渡る程に大きな物であった。
「服はこうやって着るのよっ」
ルイズは、裏っ返しのブラウスの中に片手を突っ込んで内側に留まったボタンを外し、ブラウスが表になる様に翻すと、素早くボタンを上から順にピッタリと留めた。
スカートを手に取ると、ズバッズバッと細い脚を入れ、腰の留め金を掛け、ループタイを五芒星の飾りで固定すると、黒いマントを羽織る。
そして、どうよと言わんばかりの顔で、胸を張り腰に手を当てて、ミュズを睨み付ける。
そんなルイズの姿をミュズはまじまじと見つめて、「なるほど」と知らなかった事を知って感服した面持ちだった。
「ミス・ヴァリエール。どうなさいました?」
そこに、ノック音と共に扉の向こうから、中の様子を気にするシエスタの声が聞こえた。
「なっ、なんでもないわよ」
ルイズはちょっと恥ずかしいポーズを決めている事に顔を赤らめ、慌てて返事をする。
「そんな事、気にしないで入りなさい」
扉の鍵をガチャリと開けて、怒鳴り声を上げたのを誤魔化しつつ、ルイズは部屋にシエスタを入れた。
「で、何よ。相談って」
ルイズは椅子に腰掛け腕組みをして、シエスタに尋ねる。
「それがその…、」
シエスタは機嫌の悪そうなルイズの様子を見て、怯えて身体を震わせながら恐る恐る声を絞り出すと、頭を深々と下げる。
「申し訳ございません。お預かりした布に鋏が通らなくて、上手く仕立てられませんでした」
シエスタは面を見せないまま、謝罪の言葉とその訳を告げる。
「えっ、どう言う事?」
ルイズはイマイチ意味が分からない様で、シエスタに疑問を投げ掛ける。
裁縫や服飾に詳しい訳では無いが、公爵の息女であるルイズは平民と比べると触れた布の数や種類では数倍も多い。
あの布を触った感じから、織り目自体は細かいが地は薄くて堅い印象を受けなかった。
学院内のメイドに任せても一晩で服が出来上がる物だと思っていた。
「ご覧になって下さい」
シエスタは持っていた籠の中から、鋏を一丁取り出してルイズに差し出す。
学院からの支給されている鋏には教員の土メイジによって固定化かけられている筈で、その刃が毀れてボロボロになっている。
「これは酷いわね。それで服の方はどうなったの?」
ルイズは鋏をシエスタに返しながら、あの真っ赤な布がどうなったかを訊く。
シエスタは籠からルイズから預かった赤い布を広げ、言った。
「どうにか着れる形にはしたのですが…」
一見するとワンピースのドレスの様だが、肩を掛ける所が片方しかなく、縫われているのはその反対側の腰だけで、そこ以外の体側はバックリと開いていた。
鋏もそうだが、針で縫うのも侭ならない様子であった。
「それ、着られるの?」
シエスタはルイズの許可を貰い、二人のやり取りを聞いていたミュズに着替えさせ始めた。
着ていたワンピースを脱がすと、赤い服をミュズに潜らせる。
二つ付いている胸の留め具を左右の脇から通して背中で固定し、胴のコルセット状のベルトを巻き、縫われていない方の腰に開いている穴に長いベルトを着ける。
着替え終わったミュズが嬉しそうにクルッと回るがはだける事もなく、ワンピースとして様になっていた。
ただ、脚の両側のスリットは深く、ほぼ両肩が出て、胸元が開いている。そんな格好を好んでするのはゲルマニアの女ぐらいだ。
「留め具も元々付いていたものでしか布にくっつけるが出来ませんでした。胴のベルトは手持ちの似たような色合いの布と留め具を無理矢理、縫い付けて使ったのですが、如何でしょうか?」
「まっ、まあ。良いじゃないの」
ミュズが服を着た様子を見て、ルイズはシエスタが『上手く仕立てられませんでした』と言ったものの、それなりに形になっていたので妥協する事にした。
その言葉に表情を曇らせていたシエスタの顔がパアッと晴れる。
「ありがとうございます、ミス・ヴァリエール」
「それで。また、頼みたい事があるんだけど…」
「はい。なんなりと」
「この娘に使用人としての作法や技術を仕込んで欲しいの。どうも、世間知らずと言うか常識が無い所があるから」
「わかりました」
シエスタはにっこりと微笑んで即答する。
「じゃあ、よろしくね」
「それでは失礼いたしました」
シエスタは深々とお辞儀をすると、ルイズの部屋を慌てて出て行った。
シエスタを含むメイド達には、今の時間は朝食の準備があるので、大変なのである。
シエスタが去っていった所で、ルイズは部屋を出る仕度を済ませる。
「それじゃ、私達も行くわよ」
体をねじらせながら嬉しそうに服の様子を見ているミュズに、ルイズは声をかけて、ドアノブを掴んで扉を開けた。
以上、投下終了です
俺のバカorz「短く3スレ程」ってなんだよ
次回は長くなりそうだったので、ここまでで投下しました
新年早々投下ラッシュ乙
今年も勢いが衰えないなあ
黒魔道士の方、乙でした。
……ウェールズにバイオがかけられた場合も、ちょっと見たいと思ったりw
ウルトラの方、乙でした。
一瞬、80でレッドキングを出したあの魔人(名前忘れました)を思い出してしまいましたよw
ヘルムの方、乙でした。
シエスタに一般常識などを教えてもらうと言うのは、珍しいかもですね。
さて、私も投下ラッシュに乗りたいと思います。
他に予約の方がおられなければ、17:50から第20話の投下を行います。
ラスボスの人いらっしゃい支援。
「う゛〜〜〜〜……」
ルイズは部屋の中で一人、唸り声を上げていた。
「う゛う゛う゛〜〜〜〜〜……」
納得いかない。
どうしていきなり長姉がやって来て、自分の使い魔を強引に連れて行ってしまうのか。
どうしてあの馬鹿は、それに対して抵抗らしい抵抗もせず、ただ黙ってついて行ったのか。
姉が自分に対して命令口調で説明を行っている時、銀髪の男が黙って部屋の中を掃除していた記憶が頭をよぎる。
最近になって、自分の中で使い魔に対しての羞恥心が猛烈に湧き上がってきたので、洗濯や身の回りの世話はルイズが自分でやるようになっていた。
なので、使い魔の仕事が朝起こすことと髪を梳くこと、それと掃除くらいしかなくなってしまったのだ。
とは言え、残ったそれらの仕事に関しても、ルイズは微妙な気恥ずかしさを感じていたりするのだが……。
閑話休題。
……あの無表情を思い出すと、ムカついてくる。
いや、まあ、長姉に逆らえないのは自分も同じだし、苦手意識がかなり深いところに根付いてしまっているから、思わず『は、はい』と言ってしまったけれども。
よくよく思い返してみれば、あの馬鹿からも……なんだか諦めてるような空気が出てたけれども。
それにしたって、どうして姉はよりによって自分の使い魔なんかを連れて行ったのだろうか。
確かに『研究者』としては……優秀、だろう。
実はこっそり使い魔の書いたレポートを読んでみたことがあるのだが、なんとも斬新な―――と言うか、珍妙な視点からハルケギニアの魔法についての考察を重ねていた。しかも、それがいちいち的を射ているのである。
あれなら、エレオノールが一目置くのも分かる。
では、『戦う人間』としては……そんなに強くもない、とは思うのだが……。
(仮にもワルドに勝ったらしいし……)
自分がその光景を見たわけではないし、どうせ奇をてらった戦いをして不意打ちに近い勝ち方をしたのだろうが、少なくとも『弱い』ということはないだろう。
「……………」
こうして考えてみると、なんだか自分の使い魔ってけっこう凄いのでは? という気がしてきた。
「いやいや、ちょっと待ちなさいルイズ」
その能力は高くても、人間的に問題がかなりある。
無愛想だし。
いちいち理屈っぽいし。
何を考えてるのかよく分かんないし。
生意気だし。
そもそも貴族に……って言うか、御主人様に対する敬意もないし。
必要以上の会話をしようとしないし。
同じ部屋で寝なくなったし。
なんだか最近、わたしにかまってくれてないような気がするし。
「う゛う゛う゛う゛う゛〜〜〜〜〜〜〜…………!」
また唸り始めるルイズ。
本当は差し迫るアンリエッタの結婚式に向けて、詔(ミコトノリ)を考えなくてはならないのだが……こんな正体不明のモヤモヤした気分を抱えたままでは、とても出来そうにない。
「う゛〜〜〜〜……」
でもやらなきゃいけないことなので、取りあえず机に向かって、ボンヤリと詔に関係あることないことを考えたりするルイズなのであった。
なんという投下ラッシュw
ラスボス支援!
ちょっと遅くなったがミゴールの人乙ー
……っておマチさあぁぁぁん!!HP30なかったのー!?(泣)
そしてラスボスの人支援!
数十年の時を経て、荒れ果ててしまった寺院跡。
かつて開拓されかけ、しかし『ある理由』からその開拓を途中で放棄されてしまった場所である。
その寺院跡に、一人の男が立っていた。
男の狙いは、かつての寺院の司祭がこの地から離れる際に置き去りにしてしまった『秘宝』にあったのだが、それを手に入れるには1つの……しかし強大な障害を解決しなくてはならない。
ここでこうして立っている分には、平和でのどかな平原でしかないこの場所に、一体どのような障害があると言うのか?
男はその『障害』に思いを馳せ、身震いした。
後方では、自分をサポートするために仲間が控えている。イザとなれば、必ずや自分を助けてくれるだろう。助けてくれるはずだ。助けてくれるに決まっている。助けてくれないと困る。
そして、何故に自分がこのような場所にいるのかを考える。
(……気が付いたらここにいた、ということしか分からない……)
あの高慢でプライドばかり高そうで、そして胸がほとんどない金髪眼鏡の女性は、さも当然とばかりに自分に命令を下す。
くそう、家が名門だからってそんなに偉いのかよう。
……偉いんだよなぁ。
そうして男は―――ギーシュ・ド・グラモンは、ガックリと肩を落としたのだった。
「って言うか、何で僕が前衛なんだ!?」
普通に考えれば、ユーゼスが前衛で、自分はワルキューレなどで後方支援、そしてほとんど攻撃魔法が使えないエレオノールが物陰からちょこちょこサポートをする……となるはずだ。
なのにユーゼスが前衛だったのは最初の戦闘くらいで、以降は全部この自分が前衛なのである。
ギーシュも1〜2回目くらいまでは『まあ、ユーゼスもワルキューレで色々と試してみたいことがあるんだろうな』と快く引き受けていたのだが、さすがに6回目ともなると不満が爆発してしまう。
そりゃあ、最初から最後までずっと孤立無援というわけではないし、ユーゼスも本当に危なくなった場合は援護してくれた(エレオノールは本当に何もしなかったが)。
……しかしユーゼスに関しては、秘宝が目当てではなくて『実験』の方が重要なんじゃいかと思っている。
人の魔法を使って実験なんかしないでくれ、と言いたい気持ちもあるにはあるが、何だかんだ言って役に立っているのは事実なので、そう大っぴらに文句も言えない。
「ぐぬぅ……。……っ!?」
そんな感じにギーシュが悩んでいると、いきなり爆発音が響いた。
自分が先日『錬金』で作った爆発物が、エレオノールの『着火』によって爆発したのである。
……その爆発音によって、この村跡が打ち捨てられてしまった『ある理由』が飛び出してきた。
「ふぎぃ! ぴぎっ! あぎっ! んぐぃぃいいいいいッ!!」
オーク鬼の群れである。
あんなのが大挙して押し寄せて来ては、開拓民たちも逃げ出すしかないだろう。開拓民たちはオーク退治を領主に訴えたらしいが、その訴えは却下されたらしい。ハルケギニアでは、そんな話はよくあることだった。
そして自分はオーク鬼の群れから逃げ出したいけど、逃げられない。ギーシュはエレオノールに逃亡と今回の宝物の探索の取り止めを何度も訴えたが、その訴えは却下された。毎回そんな感じであった。
「ええい、くそっ……!」
バラの造花を振り、その花びらからマントを羽織ったゴーレム……ワルキューレを5体ほど造り上げる。
敵の総数は……目測で20よりは少ない。
ギーシュはまずワルキューレを1体だけ前に出し、ユーゼスが言っていた『実験技』を繰り出してみることにした。
この『実験技』は当たりもあればハズレもある、半分バクチのようなものなのだが、今回はどうなることか……。
「……!」
考えている間にも、オーク鬼の群れは迫ってくる。
とにかく、やってみないことにはどうにもならないので、実行に移す。
ワルキューレに拳を作らせ、その腕を前方に突き出し、拳を対象にして更に『錬金』をかける。
どうにも自分のセンスからは外れている技の名称だが、イメージがしやすいのでギーシュは技の名称を叫んだ。
「無限パーーーーンチ!!」
突き出した拳に『錬金』がかけられ、その拳が変化して新しい手首となる。
新しい手首の先には、また拳がついていた。
そしてその拳に、更に『錬金』をかけ……これを延々と繰り返す。
伸びていった腕は、見る見る内に敵であるオーク鬼へと伸びて行き……、やがてその中の1体に、ゴガン、とぶつかった。
「よ、よし……!」
ユーゼスが言うには、このまま拳で持ち上げて、更に地面に叩き付けるのだとか。
取りあえず言われた通りにやってみるか、と手首の角度を変えて体長2メイルほどもあるオーク鬼の身体を持ち上げようとして……。
ベキリ、とワルキューレの腕が途中で折れた。
「ええっ!?」
ギーシュが仰天していると、更にバランスを崩したワルキューレが伸びた腕の重みで転倒してしまう。
「何だそりゃああああ!?」
唖然とするギーシュだったが、攻撃されたオーク鬼たちの方は激怒し、興奮し、いきり立った。
おまけに厚い皮と脂肪を鎧としているオーク鬼には、生半可な拳の打撃など大して効果がないらしい。
つまり結果だけ見ると、精神力を無駄遣いしてオーク鬼を怒らせただけだった。
「ああもう、何でこうなるんだぁ〜!!」
転倒したワルキューレの腕にもう一度『錬金』をかけ、伸びた腕を切り離して普通の長さに戻す。
しかし、オーク鬼十数匹に対して、こちらの戦力は装甲が厚めのワルキューレ5体、プラス自分。
1体分の精神力は無限パンチで使い果たしてしまったし、『最後の手段』のためにラスト1体分の精神力はキープしておかねばならない。
何とも、心もとない布陣である。
そして剣や槍で武装したワルキューレたちは、真正面からオーク鬼にぶつかったが……。
「よ、弱い……」
それなりに善戦はしているのだが、やはりオーク鬼にはちょっとやそっとの切り傷など何もしていないのと同じである。
ワルド戦で使った『ディスタント・クラッシャー』を使えばそれなりにダメージを与えられはするのだが、あくまで『それなりのダメージ』であって致命傷には至らない。奴らを戦闘不能に追い込むためには、最低でも2発は食らわせる必要があるようだ。
だが、ワルキューレの『ディスタント・クラッシャー』は火薬を仕込んだ単発武器。そしてワルキューレの腕は2本だけで、場に出しているのは5体。
……オーク鬼を4体ほど倒した時点で、ワルキューレたちに打つ手はなくなってしまった。
あとは個々の能力と、何よりも数が物を言わせ―――それでも1体だけオーク鬼を倒したが―――ワルキューレは全滅してしまう。
「あ、あわわ、あわわわわわわ……!」
もはや丸裸同然のギーシュは、ガクガク震えながらたった1人で10匹前後のオーク鬼と対峙する。
そして、ギーシュの頭脳はこれまでの17年間の知識を総動員しながらフル回転し、ある1つの行動を主人に導き出した。
逃げよう。
ダッ、と全速力で後ろへと駆け出すギーシュ。
当たり前だが、オーク鬼たちは怒り狂って追いかけてくる。
(お、追いつかれたら、死ぬ……!)
『命を惜しむな、名を惜しめ』という父の言葉が一瞬だけ頭をよぎったが、こんな戦いに名誉も誇りもあったもんじゃない。だから今は命を最優先だ。
しかしオーク鬼のスピードは、人間よりも明らかに速かった。
逃げ惑うギーシュへと迫り来るオーク鬼の棍棒。その大きさは人間1人分ほどもある。当たれば良くて大怪我、普通で即死、悪ければ苦しんだ末に死ぬだろう。
「ひっ……!」
オーク鬼の荒い息遣いが聞こえ、黒い影が自分を覆う。
ギーシュは必死の逃亡もむなしくオーク鬼に追いつかれ、棍棒に強打されてその短い人生を閉じようとしていた。
(も、)
もうダメだ、と思う間もなく棍棒は振り下ろされ、
赤い血が草原を染め、
ギーシュはまだ走っていて、
僕は死んでるはずなのに何でまだ走ってるんだ、と思ったギーシュがふと右を見ると、
銀髪の男が遠くから鞭を振るっている光景が見えた。
アクエリオン支援
ズバットアタック期待支援
「……やはり駄目だったか」
長い鞭を飛ばしてオーク鬼の首をはね飛ばしたユーゼスは、ポツリと呟いた。
ワルキューレに転用が出来そうな攻撃方法はないものか……と、クロスゲート・パラダイム・システムを使って様々な次元世界を覗いてみたのだが、『無限拳』は無理があったようだ。
そもそもアレは『アクエリオン』というロボットだからこそ可能な技であって、外見だけ真似できるからといってそうそう上手くいくわけがないのである。
しかし出来ないと99.9%理解していても、残りの0.1%を検証せずにはいられないのが研究者や科学者という種類の人間なのであった。
……ギーシュに聞かれたら殴られても文句が言えないが、言うつもりなど全くないので特に問題はない。
それに、このトレジャーハントの旅の途中で、ワルキューレについては色々と試した。
成功例としては、ワルキューレの腕を弓にした『ゴーガン』(弓を武器にも転用出来たので採用された)や、身体の一部を始めから刃にしておいて戦闘時に取り外して武器にする『スラッガー』などがあった。
他にも『ディスタント・クラッシャー』の時に使う鎖を、『ディスタント・クラッシャー』に使わずにそのまま敵の動きを束縛するのに使ったり、その鎖の先に鉄球を付けて武器にしたりした。
また、目くらましや動きをさえぎるカーテン程度にしか役に立たないと思っていた『マントを羽織らせる』というアイディアはギーシュがえらく気に入ったようだ。何でも見栄えがグッと良くなるらしい。
……アイディアの元は海賊のガンダムから頂いたことは、黙っておこう。
ワルキューレの足に車輪を付けてみる、というアイディアもあったのだが、これはスムーズに動けるようになるまで少し習熟期間を要するため、保留となっている。
そして、成功例があれば失敗例も数多くあった。
ワルキューレの身体を一度バラバラにして、もう一度合体して再構成を―――
とギーシュに話したら『無茶を言うな』と言われてしまった。やはりゴーレムに飛行機能が付加出来ない以上、『手の平サイズで空を飛ぶ』ことが大前提のビット兵器のようなものは無理らしい。
……では他の方法で飛行する方法はないものか、と考えはしたのだが……。
極限まで軽量化して、鳥の骨格を模して飛ばせるのはギーシュが鳥について徹底的に熟知する必要があるので無理。
背中にジェットやロケットのような物を付属させるのは、ワルキューレが弾丸になるだけなので駄目(これはこれで良い攻撃方法ではあったが)。
それなら詳しくは知らないが『LFO』という機体のようにボードに乗せてみてはどうかと一瞬思ったが、よくよく調べてみたらあれはトラパー粒子とやらが存在しないと飛べないと判明したので口には出していない。
結論、ワルキューレを飛行させることは不可能である。
……他にもワルキューレを人型から獣形態に『錬金』を使わずに変形させようとしたが、人型形態か獣形態のどっちかが、どうしてもイビツになってしまうので駄目だった。
ならば始めから獣形態ならどうか……と、ユニコーン型、ライオン型、ヘビ型、竜型、イノシシ型、牡牛型の6種類のゴーレムを作らせてみたのだが、『やっぱり人型の方が動きのイメージがしやすい』ということで没。
上半身が人型のままで、下半身を馬のような四足歩行にした『パーンサロイド』も試してみたが、やはり違和感を感じるらしい。
だったらこれはどうだ、と複数体のワルキューレを物理的に合体させようとしたが、変形と同じ理由で駄目だった。
結論、ワルキューレは人型で単体のままが一番。
……ワルキューレそのもののバージョンアップがこれ以上無理なら、使わせる武器を考えようともした。
まず最初に『ドリル』を付けようとしたのだが、あのスパイラル状の形状はともかくとして、『回転させる』機構を『錬金』のワンアクションで再現するのは無理だ、と言われたので断念。
ワルキューレの全長を上回るほどの巨大な斧や、巨大な剣……『使い勝手が悪すぎる』と不評だったので断念。
ワルキューレに銃や大砲を付けてみる……ドリルと同じく機構の再現が出来なかったので断念。
両手に剣を持たせ、高速で横回転させて攻撃する『シュトゥルム・ウント・ドランク』はどうかと思ったが、『高速で横回転』がどうしても『ただ踊っているだけ』に留まってしまうため断念。
やはり機体の能力はともかくとして、ガンダムファイターの『技』を再現させるのは不可能であった。
結論、普通の武器で普通に戦った方が良い。
と言うか、ここまで来るとワルキューレの運用方法よりも、ギーシュの『操り方』の強化をした方が良いのではないだろうか?
そんなことを回想しつつ考えながら、ギーシュがオーク鬼から逃げる光景を眺めていると……。
「……む」
ギーシュが逃げる方向をこっちに向けた。
(あれでは私も巻き添えを食ってしまうな)
そんなことはご免こうむるので、とっとと逃げ出すことにする。
するとギーシュは、物凄い形相で何かを叫びながら自分を追いかけてきた。
(足止めをしたいのならば、青銅のトラップでも仕掛ければ良いだろうに……)
そう思いはしたが、錯乱しかけているギーシュにそんなことを言っても無駄だろう……と結論づけて、ともかくユーゼスは逃げる。
……取りあえずはモグラのヴェルダンデが掘った穴まで、あのオーク鬼たちを誘導しなければなるまい。
「も、もう、もう嫌だぁぁあああああああ……!!」
『戦利品』である真鍮製のネックレスやイヤリングを見て、ギーシュが嘆く。
……あの後、どうにかこうにかオーク鬼たちを迎撃しつつ落とし穴まで誘導し、落としたオーク鬼たちに用意しておいた油を浴びせ、更に火薬を満載させた最後のワルキューレを1体放り込んで『自爆』させて事なきを得た。
結果としてオーク鬼たちは全滅し、ユーゼスは『自爆させるくらいなら、頭や下半身をミサイルのように飛ばせば……』などと考えたりしていたが、ギーシュの精神はかなり参っていた。
ギーシュは切実かつ切迫した様子でユーゼスに訴える。
「……も、もう、もう魔法学院に帰ろう!? そもそも、僕たち3人だけでこんな危険なことをするってこと自体が間違いだったんだよぉ……!!」
「確かに3人で、というのは少々厳しかったな」
出発する直前、他について来てくれそうなメンバーに声をかけようとはした。
最初にキュルケの所に行こうとしたのだが、『ミス・ツェル―――』と言いかけた時点でエレオノールに物凄い形相で睨まれた。そう言えばヴァリエール家とツェルプストー家は物凄く仲が悪かった、と思い出してキュルケは諦めた。
次にタバサに声をかけようとしたが、部屋まで行ってノックしても返事がない。どうやらどこかに出掛けているらしく、何でもタバサはたまにこうやって学院からいなくなることが多いそうだ。
ではダメ元でモンモランシーはどうかという話になり、『ならば僕に任せてくれたまえ』と自信満々でギーシュが向かったが、10分後に頬に赤い手形をつけて戻って来た。
他にも色々と声はかけてみたのだが、返事は全てNO。
まあ、あるかどうかも分からない宝を探して、大怪我どころか命すら危ない道中に身を投じるために授業をサボタージュするような酔狂な人間はそういるまい。
しかも実際に命が危なくなったのだから、ギーシュが嫌になるのも無理はなかった。
「大体、直接的な戦闘に向いている人間が一人もいないって時点で……!」
と、必死になってユーゼスに帰還を呼びかけるギーシュだったが、今回の宝探しの『そもそもの元凶』の出現によってその口は閉ざされる。
「……泣き言を言うのはそれまでにしておきなさい。それでも元帥の息子?」
「ミ、ミス・ヴァリエール……!」
苦手意識どころか、もはや軽い怯えすら見せてエレオノールから後ずさるギーシュ。
『もうやめましょう』、『もう帰りましょう』、『もう諦めましょう』と言う度に徹底的に言い負かされ、自分の意思を無視され、そして強引に……と言うか無理矢理にここまで付き合わせた女性である。
なお、このエレオノールとの一件によってギーシュには『年上の女性』が少々トラウマになりつつあるのだが、本筋とは関係がないので割愛する。
そんなギーシュはなけなしの勇気を振り絞って、エレオノールに上申した。
「ミス・ヴァリエール、もう7件目です! この1週間……いえ、もうそろそろ10日になりますが、あなたがどこからか手に入れた地図を頼りに行ってみても、見つかるのはせいぜい銅貨が数枚! 地図の注釈に書かれた『秘宝』なんて、カケラもないじゃないですか!」
「フン、最初から失敗を恐れてるようじゃ、成功は望めないわよ」
「限度がありますよ!! いくら何でも!!」
(……確かにな)
ユーゼスは道中でのエレオノールの言動や行動を見るに、彼女は『宝探し』よりも別に目的があると考えていた。
特に先ほどのような戦闘中は、自分に視線が向けられていることを感じる。
(目的は……『私』か?)
ガンダールヴの能力の見極めか、あるいは自分という人間を判断するためか。
妹を預けるような形になっている以上、心配することは理解が出来ないでもないが……。
ともあれ、さすがに10日間というのは長い。
「その辺りにしておけ、ミス・ヴァリエール」
「……何よ、ユーゼス。あなたも文句があるの?」
ジロリとこちらに視線を向けるエレオノール。
ちなみに一週間を越える時間を経て、彼女のユーゼスに対する呼び方は単なる『ルイズの使い魔』とか『平民』から、『ユーゼス』に変わっていた。
「持って来た保存食料も底をつき始めた。それに夜具やテントも使い込んで調子が悪くなりつつあるからな、いい加減に切り上げ時だろう」
「……むう」
確かに、一理ある。
体力も辛くなってきたし。
そろそろテント生活が耐えられなくなってきたし。
何より、肌がどんどん荒れてきたし。
「…………なら、最後にあと1件だけ行ってみて、それで終わりにしましょう」
そのエレオノールの言葉を聞いて、ギーシュの顔がパッと明るくなった。しかし直後に『まだあと1件あるのか……』と落ち込み始める。浮き沈みの激しい男である。
「最後の1件か。……どのような場所にある、どのような宝なのだ?」
「場所は……ラ・ロシェールの向こうにあるタルブって村ね。名前は……『銀の方舟』だとか」
「……『銀の方舟』?」
聞き覚えのある名前だった。
アレは確か……。
「話は道中でも出来るでしょう。それじゃ、早速出発するわよ」
ユーゼスが思い出している途中だったが、それに構わずエレオノールは馬車に乗り込む。
(出来ればアレは放置しておきたかったのだが……)
口でエレオノールに勝てるとはとても思えないし、他の人間ならともかくこの女性に対して嘘をつき通せる自信もない。
取りあえず『現物』を見てから考えよう、とユーゼスはギーシュを引っ張って馬車に乗り込んだのだった。
紫煙くゆらせ支援
その日の夜。
街道の脇で馬車を止めて、一行は野宿することにした。
近くには手頃な村もないので、こうするしかないのである。
馬車を操る御者はその馬車の中で休んでおり、ギーシュは自分の使い魔のヴェルダンデと抱き合いながらテントの中で眠っていた。
ユーゼスは転がっていた丸太に座って焚き火の見張りをしながら、何をするでもなく星を眺めていたのだが―――
「……雰囲気の暗い男ね。そうして火に照らされていると、危ない人間にしか見えないわよ?」
エレオノールが横に置いてあるもう一つの丸太に布を敷いて、その上に腰掛ける。
そんな彼女を一瞥すると、ユーゼスはぞんざいな口調で『それで構わん』と呟いた。
……暗い人間だとか、危ない人間だとか言う評価など、別に問題ではない。
むしろ、自分を的確に表現していると言えるだろう。
しかし、言われた彼女の方は自分の言葉に納得がいかないようだった。
「この道中、あなたとはそれなりに関わってきたけど―――何だかあなた、人とあまり関わろうとしていないのね」
「ふむ」
少し驚く。
ただ頭ごなしに命令するだけかと思っていたが、意外と人のことを良く見ているものだ。
……いや、自分の観察に重きを置いていたようだったから、その程度のことは分かって当然か。
「いかにもその通りだ。……私は、人との関わりを避けている」
「……………」
「どうした、そんな驚いた顔をして。お前の見立ては間違いではなかったのだぞ?」
「……いえ、普通はそこで『そんなことはない』って言うんじゃないの?」
「否定しても意味がないだろう。同様に、人と積極的に関わることも意味がない」
意味のないことは、極力しない主義だ。
それにこの女性は自分と話をしたいようであるし、ここで否定しては話が途切れると考えたので、あえて肯定してみた。
まあ、無意味と言うのなら、この会話こそが無意味ではあるが。
「『無意味なことに意味がある』……なんて哲学的なことを言うつもりはないけど。あんまりそうやって効率を重視したり簡潔すぎたりすると、息苦しくなるわよ?」
「特に問題はないな。息苦しさなど、昔からずっと感じていたことだ」
「……………」
呆れた視線でエレオノールはユーゼスを見る。
……そんな目を向けられても、自分の人生はこれまでずっと息苦しさを覚えるようなものでしかなかったのだから、仕方がない。
ずっと何かに追い立てられていた。
ずっと何かに焦っていた。
ずっと何かに苦しんでいた。
ずっと何かを求めていた。
ずっと……何かと戦っていた。
今となってはその『何か』の正体も分からないが、そんな状況で息苦しくないわけがない。
ユーゼスにとって、『息苦しさ』とはもはや日常であった。
「しかし、『息苦しい』と言うのならば……」
そうしてユーゼスは、ゆっくりとエレオノールを見つめる。
「……何よ?」
いぶかしげな様子で、今度は自身がユーゼスの視線を受け止めるエレオノール。
だが次に彼が放った言葉によって、彼女の表情は固まった。
「いや、『息苦しさ』ならば、お前も感じているのではないか?」
「…………な」
『そんなことはない』、と否定しようとして―――だが、エレオノールはその言葉を否定しきれない。
貴族として。名門ヴァリエール家の長女として。アカデミーの主席研究員として。
物心がついた時から両親には厳しく躾けられ、常にトップであることを義務づけられ、なまじ才能があったばかりに―――
「……っ」
強引に思考を打ち切る。
このことについて、深く考えては駄目だ。
止めないと……何かが、止まらなくなる。
エレオノールは少しわざとらしく咳払いをして、話題を転換した。
「……そんな抽象的な話はともかく……」
「お前から話を振ってきたはずだが」
「うるさいわね! ……ともかく、もうこの話はやめましょう。それこそ息苦しくなってくるんだから」
「そうだな」
転がっていた小枝を薪として焚き火に放りながら、ユーゼスは同意する。
……ある程度の期間を一緒に過ごして分かったのだが、どうにもこの男には『主体性』というものが見えにくかった。
とにかく受動的と言うか、意志の強さが感じられないと言うか……。
あのグラモン家の四男のゴーレムにあれこれ注文を付けている時は、そんなものも見え隠れしていたが、一旦『研究』から離れるとすぐ元に戻ってしまう。
まるで人生全てを諦めているような、あるいは人生でやるべきことを全てやり尽くしてしまった後のような、そんな印象をエレオノールは感じていた。
(見た目は若いわよね……)
どう見ても自分と同年代程度にしか見えないこの男が、そんな密度の濃い人生を送っているとも思えない。
何かの呪いか、あるいは魔法で不老にでもなったのかしら―――とも思ったが、それなら『ディテクト・マジック』に何らかの反応があるはずである。
……そこまで考えると、この銀髪の男が妹に召喚される前のことが気になった。
よくよく思い返してみれば魔法学院の生徒や、主人であるルイズですらユーゼスの過去は知らないようであるし。
興味本位でそれを尋ねてみると、
「……人に語って聞かせるような、立派なものではない」
アッサリと、そう返された。
そして逆に尋ねられる。
「では、お前のこれまでの経歴はどうだ? 人に物を尋ねるのであれば、まずは自分から語るのが道理だろう?」
「え……」
そう言われても……それこそ、語って聞かせるようなものではないような気がする。
だが、まあ、立て続けに自分から話を振っておいて、自分で話を打ち切るのはどうかと思ったので、簡単にではあるが『自分の経歴』をユーゼスに話した。
ヴァリエール家の長女に生まれたこと。
幼い頃から『立派な貴族であるように』と、さまざまな教育を受けたこと。
トリステインの魔法学院に入学し、優秀な成績を残し続け、首席で卒業したこと。
卒業後はアカデミーに鳴り物入りで入所し、以後は様々な業績を残して首席研究員にまで登りつめ、現在に至ること。
「……………」
ユーゼスは、黙ってエレオノールの話を聞いていた。
「……まあ、こんな所かしら」
語り終わって、何だかむなしくなった。
何と言うか―――意外に早く、自分の経歴を語り終えてしまったのである。
もちろん細部には色々なエピソードがあるし、努力もしたし、壁にぶつかったことも一度や二度ではない。
プライドの問題があるため言わなかったが、恋だって少なからず経験がある。……全部破れたが。
だが、こうして簡潔にまとめてみると……『簡潔にまとめてしまえる』ことに、何だか落ち込んでしまう。
「ふむ、なるほど」
自分の話を聞いていた銀髪の男はそう言って頷くと、
「私もそれと大差がないな」
唐突に自分のことを語り始めた。
おそらくエレオノールが過去を語ったので、自分も語る気になったのだろう。
ユーゼスは『子供の頃など、もはや全く覚えていないので省くが』と前置きした上で、自分の過去を語り始めた。
「……学術機関に在籍していたのは、そちらと同じだ。そこで自分の決めた研究テーマに打ち込み、それなりに結果も出した」
「研究テーマ? ……どんなことを研究してたのよ?」
「汚染された大気や自然環境の浄化、だな」
「?」
何よそれ、とばかりにエレオノールは首を傾げる。
無理もない。
このハルケギニアでは『環境汚染』などという概念は、あまり馴染みがないのだから。
「……何と説明すれば良いか―――そうだな、『空気や水を通して世界中に広がる毒』を除去する、とでも考えてくれ」
「はあ……」
まだ得心がいかない様子のエレオノールだったが、ユーゼスは概要はおぼろげながら理解したと判断して話を進める。
「その後は……あまり多くは語りたくないのだが」
「何よ、気になる言い方ね」
「そうかね? ともあれ詳細は隠させてもらうが、分不相応な野望を抱いて、それに破れた。破れた直後は何をするでもなく一人でいたが、そうしている内に御主人様に召喚され……後は知っての通りだ」
「……肝心なところが隠されてるから、いまいち要領を得ないけど……。その『野望』って言うのは何なの?」
「語りたくない、と言っただろう?」
「それは気になる言い方だ、とも言ったわね」
「……………」
「……………」
沈黙する二人。
そのまま少しの間、そうしていたが―――やがて焚き火の中の枝がパチンと弾け、ラチが明かないか、とユーゼスは根負けしたように自分から口を開く。
「……笑われるか呆れられるかされることを、覚悟で言うが」
「言ってくれなきゃ、反応のしようもないでしょう」
そしてユーゼスは、さも言いたくなさそうに、まるで『自分の恥部』を告白するかのように、言った。
「神になろうとした」
「…………え? 何ですって?」
思わず聞き返すエレオノール。
よく聞き取れなかった……と言うか今、この男の口から凄い言葉が出たような気がする。
主人から『無愛想で何を考えているのかよく分からない』と評された使い魔は、ハルケギニアに召喚されてから初めて苦々しげな表情を浮かべ、もう一度その言葉を口にした。
「……神になろうとした、と言ったのだ」
「…………神ぃ?」
エレオノールは唖然とした。
神?
この理屈や理論を何よりも重視し、不確かな存在など一切認めないとでも言わんばかりの、このユーゼス・ゴッツォが?
『実際には神とは違うのだが……』などとブツブツ言ってはいるが、例え話にしても『神』とは……。
「何と言うか……」
吐息と共に、言葉が漏れる。
それを聞いたユーゼスは額を指で小突きながら、
「……だから言いたくなかったのだ」
と、深い溜息と共に小声で言うのだった。
「ふぅん……。まあ、確かに壮大すぎると言うか、身の程知らずと言うか、馬鹿みたいな考えねぇ……」
「……………」
やはり言うのではなかった、と後悔してももう遅い。
これ以降、この話を元に自分が散々からかわれたり馬鹿にされたりする光景を思い浮かべて、ユーゼスは少し落ち込んだ。
……落ち込むような精神がまだ自分に残っていた……いや、そんな精神が新たに芽生えていたことに、驚きも感じていたが。
そしてエレオノールは、ユーゼスに蔑みやあざけりの言葉を、
「でもまあ、それも良いんじゃないの?」
「?」
……そんな言葉は、放たなかった。
まさかそのようなリアクションが返って来るとは思わなかったので、思わずユーゼスは疑問を顔に浮かべる。
その疑問に、エレオノールは答えた。
「何だか安心したわよ。……悪いけど、私は今まであなたに対して『人間味』みたいなのをあまり感じてなかったから、そういう『願望』みたいなのがあったって分かるとね」
「そういうものか?」
ユーゼスとしては、どうにも信じがたい理屈である。
「そういうものよ。たまにあなたのこと、ゴーレムかガーゴイルかって思うこともあったし。
……その内容はいただけないけど、でも……」
エレオノールは、軽く笑みを浮かべた。
「あなたもちゃんと『人間』なんだって、安心した」
「……………」
「……何よ、その絶滅したはずの幻獣を見たような顔は?」
「…………お前が笑っている所など、初めて見た」
ユーゼスが言った言葉に、カチンと来るエレオノール。
その言い方では、まるで自分が笑い方を知らないようではないか。……いや、確かに他人に笑顔などを見せるのは随分と久し振りなような気がするが。
「悪い? 人間なんだから、怒りもすれば笑いもするわよ」
って言うか、笑わないのはそっちも同じじゃないの……と、拗ねたような顔をして、ユーゼスに言う。
そして次の瞬間、今度はエレオノールが驚いた。
「フッ……、そうだな。結局、私は―――どこにいようと、どこまで行こうと、どれだけ時が経とうと、人間でしかない……」
「……………」
「……何だ、そのありえない現象を目撃したような顔は?」
「…………あなたが笑ってる所、初めて見たわ」
その言葉を聞いて、ユーゼスは自分の顔を右手でペタペタと触る。
だがすぐに気を取り直すと、エレオノールに向けて反論を開始した。
「悪いか? 人間なのだから、怒りもすれば笑いもするだろう」
金髪の女性は、銀髪の男の言葉にキョトンとして―――
「……フフ、そうね」
―――もう一度、軽く笑う。
つられたユーゼスもまた、もう一度軽く笑った。
「それじゃあ、もう寝ましょうか。明日も早いんだし、もしまた何かの亜人や幻獣がいたら寝不足じゃ対応しきれないわよ?」
「そうだな」
ユーゼスはギーシュと同じテントに、エレオノールは専用の少し豪華なテントに向かう。
意味があるのか無いのか、よく分からない話はこれで終わりだ。
明日には、最後の秘宝があるというタルブ村に着くだろう。
それに備えて、睡眠をとらなくてはならない。
「朝にはちゃんと起こしなさいよ?」
「起こしたのならば、きちんと目覚めることだ」
就寝のあいさつ代わりに、言葉を交わす。
二人はそれぞれ違う場所で毛布を被り―――
(……そう言えば……)
(……あれ以前に最後に笑ったのは、いつのことだったか……)
―――全く同じことを考え始める。
しかし記憶を漁ることに疲れ始めると途中で切り上げ、やはり二人ともほぼ同じタイミングで眠りに入ったのだった。
支援
以上です。
……いや、もう、ホントに意味があるのか無いのか、よく分からん会話を書いてしまった……。
何と言いますか、『雰囲気』の演出って難しいですな……。
それでは、支援ありがとうございました。
ラスボスの人、乙です
>シエスタに一般常識などを教えてもらうと言うのは、珍しいかもですね。
確かにそうかも
ミュズが社会的な常識に関しては赤ん坊同然だし、短気なルイズがそれを丁寧に教えそうに無い、シエスタスキーの自分の思惑と言う複雑な事情によりこうなりました
ラスボスの人、乙です。
19:00から、破壊の杖を別の物と変えようかと思ったけど、それをやるとフーケがコントロール・メタルの破損したユニットを
殖装して犠牲になりそうなのでやめましたでござるの巻を投下しようと思います。
ラスボスの人乙でした
雰囲気は伝わってきてて中々素晴らしい・・・素直に上手いと言える出来だと一読者として思いますよ
日も沈みかけた黄昏の時刻。その剣の柄に、彼は右手を伸ばす。その剣は魔剣、意思を持ち言葉を解する長剣。
剣を鞘から抜くと同時に、彼の左手に刻まれたルーンは輝き彼の肉体に干渉を始める。
「なるほどな」
呟き。彼は、剣を鞘に収める。
「なにが、なるほどなんでい?」
剣が聞いてくるが、彼は答えない。この剣は自分の秘密を話すに値する相手なのか判断がつかないから。
彼は、調整を受けることにより、自身の意志の命ずるままに獣化する能力を得たゾアノイドである。
その肉体が、このデルフリンガーという剣を初めて手にした時、使い魔の契約と共に左手に刻まれたルーンが反応し、勝手に獣化を始めよ
うとした。
この時、彼が考えたのは、このルーンと剣は、二つ揃うことで、ゾアノイドの上位調整体である獣神将のような、ゾアノイドを精神支配す
ることができる能力を持っているのではないかということである。
その考えが正しければ、これはゾアノイドにとって危険な代物である。左手に刻まれてしまったルーンはともかく、剣の方は早く処分して
しまうべきだろう。彼が普通のゾアノイドであったなら。
だが、アプトムはゾアノイドという枠をはみ出し、獣神将の精神支配から完全に解き放たれた存在である。たとえルーンに精神支配の能力
があったとしても抗うことは可能なはずだと考え、それは正しかった。
剣を抜きルーンを発動させた彼は、自身の獣化を押さえ、そしてその肉体への干渉を分析し、その解を得た。
結論から言うと、このルーンの彼の肉体への干渉は獣化を目的としたものではない。このルーンの能力は、刻んだ肉体の戦闘への最適化。
彼が獣化しかけたのは、ゾアノイドにとって戦闘に最適なのが獣化した状態だったからにすぎない。もし、彼が未調整の人間だったなら、
身体能力の向上という形でルーンの能力は発現しただろう。
「くだらん能力だ。こんなものが地球に帰る手がかりになると思ったとはな」
自分で考えていたよりも、焦っていたのかもしれないな。と苦笑し、彼は主の待つ女子寮に向かった。
乙
すっかりオモチャになったギーシュの明日はどっちだw
アニメのワルキューレはDB並みにシュンシュン動いてた様な気がしないでもない。
二度目のフーケ戦とか
土くれのフーケと呼ばれる盗賊がいる。錬金の魔法で、狙った獲物のある屋敷の壁を土くれに変え標的を盗み出すことを得意とするトライ
アングルクラスのメイジである。
と言っても、それしか能がないというわけではない。時には、30メイルもの巨大な土ゴーレムを使い貴族の屋敷を破壊することもある。
そして、今回フーケはトリステイン魔法学院の宝物庫にあるという『破壊の杖』を狙っていた。
だが……。
「さすがは魔法学院本塔の壁ね……。スクウェアクラスの固定化の呪文がかかってて私の錬金じゃ歯が立たない。物理的な衝撃には意味がな
いと聞いたけど、この壁の厚さじゃ私のゴーレムでも厳しいね」
呟き、腹立ち紛れに本塔の壁を蹴る。
或いは、巨大ゴーレムの拳を鋼鉄にでも変えて、時間をかけて何度も殴りつければ破壊できるかもしれないが、それでは壁を破壊する前に
人が集まってきてアウトだ。
いっそ巨大ゴーレムに頼らなくても、本塔の外壁を壊せるくらいの物理的衝撃ってないもんかねえ。と頭を掻き毟り、一つ心当たりがある
ことに気がついた。
それは、彼女の稼ぎで孤児たちと共に暮らしている妹分の少女が、一年ほど前にサモン・サーヴァントで召喚した少年。
最初、ハルケギニアでは珍しい黒髪、黒目のその少年を、召喚者である妹の言う事をなんでも素直に聞く大人しい人畜無害の平民だとフー
ケは思っていた。
それが間違いだと知ったのは、水汲みに言って帰ってきた少年の後を追い、食い詰めた傭兵たちが少女の住む村にやってきた時。
村を発見した彼らは、女子供ばかりの村を発見したことに喜び、最初に村で唯一の男手である少年を後ろから刺し殺した。
そのつもりだった。
突然起こった凶行に、少女は刺された少年を救おうと駆け寄ろうとして、殴られ意識を刈り取られた。
この時点で、フーケは彼らを生かして帰さない事を自身の心に誓った。さして親しくない少年が殺されたことなど、どうでもいい。だが、
妹に手を出したことは許せない。この村にメイジがいた事に気づかなかった己の迂闊さを呪うがいい。そう思った。
だが、彼女が杖を振るう前に少女を殴った傭兵が吹き飛んでいた。
吹き飛ばしたのは、二メイルを超える体躯を持つ怪物。それが、少年の変じたものだと気づく余裕があったのかどうか、傭兵たちは剣を振
るい槍を突き、怪物に挑み、そして敗れた。
怪物は強かった。強すぎた。その拳は大した力を入れたわけでもないのに容易く岩を砕き、その身は剣や槍では傷一つ負わぬ頑健さで、そ
して勝ち目がないと逃げだした者に容易に追いつく脚力を持っていた。
全ての傭兵を打ち倒した怪物が振り返ったとき、フーケは死を意識した。正直、自分の操る巨大ゴーレムでも、この怪物を倒せる気がしな
かった。
怪物が、こちらに近づいてきたと知ったときフーケは呪文を唱えようとして、妹の声を聞いた。
目を覚ましたのかと目を向けたが、それは寝言のようなものだったらしく、少女の眼は閉ざされたままだった。
そうして、フーケがもう一度怪物に視線を戻したとき、そこには変化が訪れていた。少女が口にしたのは彼女が召喚した少年の名だった。
その名を聞いたとき、怪物の胸にルーンの輝きが生じ、怪物は元の少年の姿に戻っていた。傭兵たちに刺される前の傷一つない姿でだ。
正直なところ、その時フーケは少年を始末すべきだと考えたし、今でもその判断が間違っていたとは思っていない。
だけど、できなかった。戦って勝てる自信がなかったというのもあるが、その時、少年の足元には気を失った妹が倒れていたからだ。
その後、自室のベッドで目を覚ました妹に、フーケは怪物の話をしなかった。妹は怪物のことを知っているのかもしれないし、知らないか
もしれない。だが、どちらにしても、そのことは話すべきではないと感じた。いや、もしかしたら話したくないと思ったのかもしれない。
あの怪物の力なら、この壁も破壊できるかもしれないと考え、そんな自分の思考に苦笑する。
あの怪物は、外に出すのは危険すぎる存在であるし、そもそも遠く離れた地にいる。そんなものに頼ろうなどというのは、ただの現実逃避
でしかない。
どうしたものかと、意識を外に向けたとき、彼女の眼は中庭を女子寮に向かって歩く一人の男の姿を捉えた。
それは、彼女の妹が召喚したのと同じく、人間に平民に見える。しかし人間ではないであろう使い魔であった。
突然だが、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはとても爆発しやすい少女である。
魔法もそうだが、感情を爆発させることが異常なまでに多い。そんな彼女が自分が召喚したものだとは言え、貴族を歯牙にもかけない横柄
な態度の使い魔に一度しか感情を爆発させていないと聞けば、学院の生徒なら誰でも耳を疑うだろう。だが、そこには現在の彼女の性格を形
成するに至った過程が大きく影響している。
さて、これまた学院の生徒が聞けば耳を疑うことだろうが、彼女は元々は内に籠もるタイプの人間で嫌な事があると一人になれる場所を捜
して泣いているような少女であった。そんなルイズが現在の性格になったのは、学院に通うことによって彼女を取り巻く周囲の環境が変わっ
たからである。
彼女は、魔法を成功させたことがなかった。努力が足りなかったわけではない。もし努力というものが必ずしも結果に結びつくものであっ
たなら、ルイズは今の年齢で、すでにトライアングルクラスのメイジにもなれていただろう。
努力が中々実を結ばないということは苦しいものだ。だが、まったく報われないというのはいかなる苦痛だろうか。底の抜けたひしゃくで
水を汲もうとするような徒労感に苛まれ続け、それでも止めることが許されない。そして、家族は叱りつけ彼女に言うのだ。何故そんな事も
出来ないのかと。貴族なのに魔法が使えなくてどうするのかと。
家族の言葉が、彼女を思いやってのものであることを理解できてなけなければ、まだ救われたかもしれない。家族の言葉に怒り、家族を憎
み全てを投げ出せれば彼女の心は、ここまで追い詰められなかった。
だけど、彼女には分かっていた。家族の叱責は、彼女を心配してのもの。
魔法が使えない貴族などいない。これは、ここハルケギニアでは常識以前の理。そんな世界で、魔法の使えない貴族として生きなければい
けない彼女の未来が明るいものであるはずがない。彼女の魔法を成功させるために必要な道具でもあれば、彼らはそれがいかなる高額な物で
あったとしても手に入れただろう。だが、そんな都合のいい物は存在しない。メイジの誰もが学び苦労して努力の末に魔法の力を獲得するの
だ。
だから、彼らは努力が足りないとルイズを叱りつけ、その想いが理解できるから、彼女は自身の不甲斐なさを責めることしかできず一人涙
し、その心の奥底に暗い憤りを沈殿させる。
そうして、努力の甲斐なく魔法が使えないまま学院に通うことになったルイズは、周囲の自分を見る目に些細な、しかし決して見逃せない
違いがあることに気づいた。
かつての彼女は、魔法が使えないルイズであった。両親も姉達も優秀なのに一人だけ魔法が使えない出来損ない。それが彼女の評価。
だが、学院に通うようになってからの彼女は、魔法が使えないヴァリエールと見なされるようになった。
それが当然であるのだと言うように容易く魔法を使って見せる学院の生徒たちはルイズを蔑み、そして彼女の家族をも貶める。
ゼロのルイズと血が繋がった家族が、優秀なメイジだなんてありえない。公爵家の権力で捻じ曲げた風聞を広めているに違いない。
面白おかしく語られるそれらを、ルイズは看過できない。自分が悪く言われるのは仕方がない。だけど、家族を悪く言うのは許せない。そ
んな想いが彼女の心の奥に沈められた激しい怒りを汲み上げる。
そして彼女は憤りを外に出すことを学習する。自分に魔法が使えないことを馬鹿にする者に、憎しみにも似た怒りをぶつけるようになる。
だけど、ルイズを馬鹿にする者は絶えず、彼女の内に感情を爆発させやすい性格が形成されていった。
そんな彼女が己の使い魔に一度しか感情を爆発させたことがないのは、彼が一度もルイズの魔法を馬鹿にしなかったから。
だけど、爆発しやすく形成された性格は、彼の態度の一つ一つにルイズ本人すら気づかぬ苛立ちを溜め込み、爆発のきっかけを待っていた。
休日を利用して街に出かけた理由はアプトムの着替えを買うことだったが、ルイズ本人にもよく理解できない何かモヤモヤとした感情をど
うにかするための気晴らしの意味もあった。
だけど、モヤモヤは消えなかった。
アプトムはいつも通りだった。偉そうな物言いで、そのくせ彼女のいう事に特に逆らいもしない。
生活に必要な物だけを要求し、それ以外には興味も持たない。武器屋に興味を示したようなので、何か買ってあげようと思ったが結局ただ
で貰うことになり、しかも結局それほどの興味はなかったようで、貰ったのは錆びだらけのボロ剣一本である。
アプトムは、悪くない。自分が勝手に彼に距離を感じているだけである。それが分かっていても、その心の奥の燻りは消えない。ルイズの
心はアプトムに怒りの感情をぶつける事を求めており、その自覚のない彼女にそれを止める術はない。
そして彼女は、それを目撃する。
街から帰ってきた後、確認したいことがあると言って、武器屋で手に入れた剣だけを持って部屋を出て行った使い魔が、ある女性と並び話
しながら歩いている姿を。
土くれのフーケは、仕事の前に綿密な調査を欠かさない盗賊である。綿密な調査と臨機応変な行動。それが、彼女を神出鬼没の大怪盗たら
しめていた。
ただ、臨機応変な行動には後先の考えの足らなさもあった。
今回は、調査のためにロングビルという偽名を使い学院に潜入していた。ちなみにフーケというのも本名ではない。本名を使って犯罪行為
を行うほど愚かではない。
事前の調査で、学院の宝物庫を襲うには自分の力だけでは無理だと知った。彼女に足りない力を補えるであろう男に声をかけたのは臨機応
変な行動力ゆえ。
問題は、そこからだ。声をかけたのはいいが、何をどう話せばこの男を利用できるのかという考えが足りなかった。彼女が持つ男の情報は、
おそらくは人間ではないであろうという推測と、ガンダールヴとかいう伝説の使い魔と同じルーンを持っているらしいというあやふやなもの
しかないのだから。
考えなしに動くもんじゃないねえ。などと内心呟きながら共通の話題、つまりルイズの事を適当に話しながら歩く。
会話の内容は当たり障りのないものだった。そもそも彼女にとって、ルイズという少女は貴族なのに魔法が使えないらしいという噂を知っ
ているだけの相手に過ぎない。そんな相手の話をしようというのが間違いなのだ。どうせなら学院に召喚されてからの苦労話でも聞いたほう
が良かったと考えたのも後の祭りであった。
だが、それが結果的に彼女を助けることになる。
ルイズは怒っていた。その原因は彼女の使い魔。
中々帰ってこないアプトムのことが気になって捜しに向かった中庭で、常に自分との間に距離を取っている使い魔が他の女性と楽しそうに
話をしているのを見てしまったから。そして、その相手は学院長秘書のミス・ロングビルで話題は自分の事。
実際には、アプトムがロングビルとの会話を楽しんでいたという事実はない。彼は、いつも通りの愛想のない顔で話していた。
しかし、ついに爆発したルイズには分からない。二人の会話に自分の名前が出てきた瞬間、彼女の脳はそれを実家のメイドがよくやってい
た陰口だと思い込み、やはりあの使い魔も自分を影でゼロのルイズだと嘲っていたのだと判断した。
ラスボスの人乙です。
姉様のデレとフラグの進行具合に期待w
次回にwktk。
学院長の秘書を名乗る女に話しかけられた時にアプトムが思ったのは、この学院には暇な人間が多いのだろうか? であった。
コルベールが召喚のときの事を話さない限り、彼の立場はゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔である。珍しくはあるだろうが、それだ
けの存在である。
いやまあ、メイジである学院の生徒たちに何度も決闘を申し込まれ、その全てに勝利しているという事実もあるが、どれも負けた生徒たち
が未熟な者たちだっただけという結論が同じ生徒たちの通説になっている。貴族に勝る平民などいない。いてはいけないのだ。でなくては、
六千年続いた貴族の支配体制が揺らいでしまうではないか。
そんなわけで、アプトムはどこぞの『我らの剣』のように学院で働くコックやメイドに、もてはやされることもなく、学院の多くの使い魔
がそうであるように、周囲に埋没してモブか背景のように日々を過ごしていた。
そんな彼に、特に用事もなく話しかけてくる女が暇人でないなどとは彼でなくても思わないだろう。コルベール辺りなら、自分に気がある
ものだと勘違いするかもしれないが。
そんなわけで、ルイズについての誰でも知っているようなどうでもいい話をしてきたときも。ああ、やっぱりな。と思っただけであった。
どうでもいい話に、適当に相槌を打つだけの意味の無い時間。それを破ったのは誰あろう、彼の主たる少女であった。
「……やっぱりね。そんなことじゃないかと思ってたのよ」
何がやっぱりなのか彼には分からなかった。分かるのは少女が怒りに我を忘れているであろう事実だけ。
その両の瞳はギラギラと憎悪に輝き、口元はようやく怒りを吐き出せる喜びに歪に歪み、なんというか、ようやく出会えた倒すべき宿敵に
でも向ければ絵になるだろう形相。
殺意すら見え隠れする、子供が見たら、泣き出しそうな視線で睨まれたのはアプトムだが、その隣にいたロングビルも当然それを見るわけ
で、「ひっ」と小さく悲鳴を上げてアプトムの腕に抱きついてしまったのも他意があったわけではない。
それが、ルイズの怒りの炎に油を撒く行為であることなど知らないし。知っていたとしても、この状況ではしかたあるまい。
猛るルイズは、杖を振りルーンを唱える。アプトムには分からないが、それは火球を作り打ち出す『ファイヤーボール』の呪文。魔法は使
えないが、座学において優秀な成績を修めるルイズは全ての呪文をそらんじる。
もちろん、その魔法が成功することはなく、アプトムの立っていた場所の少し横の空間で爆発が起こる。
だが、その時にはもう元の位置にアプトムはいない。ジャリっという土を踏む音が聞こえ、顔を向けたルイズはロングビルを横抱きに抱え
た使い魔を見てしまう。
「――――っ!」
失礼しました。
アプトム支援
それは、怒声だったのか悲鳴だったのか。
矢継ぎ早にルーンを唱えるルイズから、いったん距離を取ったアプトムはロングビルを降ろして、そこから離れる。
他のものが見えなくなっているのだろう。使い魔に向かって杖を振り辺りを爆発させ続けるルイズに、アプトムはどうしたものかと考える。
時に、見当違いな所を、時に顔の近くで爆発するルイズの魔法に曝されながら、しかしアプトムに危機感というものはなかった。それは、
使い魔として過ごした一週間ほどの間に知ったルイズの魔法の特性ゆえ。
ルイズの魔法は必ず爆発する。爆発する位置を選べるのならまだ使いようもあるが、それもできない。といっても、どこが爆発するのかま
ったく分からないというものでもない。ルイズの魔法で爆発するのは彼女の視界内のどこか。ようするに、そこから回避してしまえば爆発を
避けることは可能だ。そして、アプトムにはそれができる身体能力がある。
と言っても、それがルイズの魔法に危機を感じない理由ではない。アプトムが知るルイズの魔法の特性とは、馬鹿馬鹿しいほどの殺傷力の
なさ。
今ルイズが唱え爆発させた魔法は、岩を破壊し地面に大穴を開け本塔の壁にヒビを入れている。それだけの威力を持ちながら、この魔法が
人を傷つけることはない。
例えば、錬金の授業の時、この魔法で吹き飛ばされたミセス・シュヴルーズは気絶したが、それは黒板に叩きつけられたからで、爆発その
ものでは傷一つ負っていない。
理由は分からない。だが、理由がわからなくともその事実は動かず、その事実とよく分からない理由で怒るルイズにどう対応すればいいの
か分からない故に、アプトムとしては半ば投げやりにどうしたものかと考える。
だが、答えは出なかった。いや、出す必要がなくなったというべきか。
それまで無心に魔法を回避し続けていたように見えたアプトムが、急に自分に向かってきて彼女を抱きかかえたとき、ルイズは悲鳴を上げ
ていた。
それは使い魔が自分に危害を加えるはずがないという信頼か、或いは甘えが裏切られた瞬間のようにルイズは感じた。
それが勘違いと気づいたのは、ルイズを抱えてその場から離れたアプトムの目線を追った結果目にしたものが原因。
そこには巨大なゴーレムがいて、それが先ほどまでルイズが大暴れしていた所に向かい歩いていた。
巨大ゴーレムの肩の上に立ち、それをコントロールしているフーケは、笑いが止まらない気分だった。
自分の力だけでは破壊することのかなわない宝物庫の壁に、一度はあきらめかけた。ところが、苦し紛れに近くにいた平民の使い魔にちょ
っと話しかけてみたところ、それが原因で使い魔と主の間で諍いが起こり、その余波で固定化の魔法で保護されているはずの壁が破損したの
だ。何故そんな事態が起こったのかは分からない。
だが、この幸運を逃すわけにはいかない。その使い魔に話しかけるときに隠した黒いローブを取り出しフードを被り、ゴーレムを生み出す
と即座に宝物庫に向かわせた。
宝物庫の前に立ったゴーレムがヒビの入った壁に拳をぶつけると、もはや固定化の効果も消えているのか、容易く穴が開く。
「まったく使い魔さまさまだね」
笑いと共に次げた言葉を聞いたのは、宝物庫の壁だけだった。
投下終了。
今回は視点がグリグリ動いて読みにくいかもと思ってみたり。
この話を書いてて思いました。使い魔のルーンにはコントロール・メタルやゾア・クリスタルのような体細胞管制制御能力があるんだよ。
それはそれとして、フーケの回想に出た少年がこの先ストーリーに関わってくる予定はありません。
乳エルフの使い魔だと七万戦の後でないと出てこれそうにないしね。
ウルトラの五番目の作者さん いつも楽しみにしてます。お疲れ様でした。面白かったです!
球根の怪獣は子供の頃の僕にはトラウマでしたww ティガとエースの共闘が楽しみです!
ラスボス氏 いつもながら読みやすく大変面白いです! ところでユーゼスのカラータイマーって
エースから分捕ったものでしたっけ?
アプトムの人、乙です。
気になるなあ、テファの使い魔w
しっかし、ここまで他の平民と関わらない使い魔も珍しい。見た目は平民なのに。
やっぱりガイバー世界の平賀才人なのかね?
しかしテファ召喚だと憚られる方だから只のゾアノイドとは思えんし
あとアプトムよりルイズの方が怖いですw
716 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/04(日) 19:30:59 ID:K5V/yTlm
「調整」済と言うことは、精神支配を受けているのかな?
ひょっとしたら調整済みじゃないのかもね
主の危機に反応してルーンが『調整』したとかだったらまさに憚られるわけだが
アプトムの方、乙です。
このルイズは、なかなか凄いですなぁ……。
>>713 ユーゼスのカラータイマーは、確かゴルゴダ星でウルトラ兄弟を磔にした際、
もぎ取ったカラータイマーを分析して作った複製みたいなもののはずです。
>>716 精神支配はゾアロードがいなきゃ意味ないし
ジョゼフか教皇が召喚してるのかな
多分実写映画版のバルカスとかグーオーとかショーンが召喚されてるんだよ
アンドバリの指輪の石がゾアクリスタルなんだよ
…クリスタルがデカすぎるから腕輪かな
ウルトラの人、ラスボスの人乙!
49話からの引きなら初代マンにも登場して欲しいですが…
両作品のどちらかにはサハラ編で『バラージの青い石』をやって欲しいもんです。
ところでノアの神とウルトラマンノアは別人なんでしょうか?
エレオノールとカトレアの属性って明言されてたっけ?
たしかエレオノールが風で、カトレアが土だったような記憶はあるんだが……。どうにも思い出せない
>>723 エレオノール姉さんは水じゃなかったっけ?
違ってるなら夜天さんとこの読み過ぎかな?
エレオノールが風で、カトレアが土で間違いないと思う
エレオノールが風なんて何処で出てきたっけ?
エレオノールは火だったような・・・・・
土じゃね?
何でカトレアが土なんだ?
カトレアは土メインなのは確定なのだが
エタノールさんは風だったような、どうだったかなぁ?
731 :
MtL:2009/01/04(日) 22:57:58 ID:vhAfNXq9
あけましておめでとうございます。
MtLは残りの話もわずかとなって参りましたが、今年もよろしくお願いします。
何事もなければ、10分後から投下を開始いたします。
エレオノールは原作では全く魔法を使っていないため属性が不明で、
カトレアは6巻で『錬金』を使っていることから土の可能性があるかな……って感じだったはずです。
ただ、ヴァリエール公爵が火系統を「罪深い系統」と言っていることから、火の可能性は低いのではないかと。
>>732 ひょっとしたらツェルプストー家が代々火の系統が多いんで『罪深い』とか言ってるんじゃないの?
>>732 カトレアは橋の鎖を遠距離錬金した上に、アニメではゴーレム作ってます。
とりあえず次スレをお願い致します。
俺は携帯だから無理orz
736 :
MtL:2009/01/04(日) 23:03:39 ID:vhAfNXq9
む、容量的に不安な感じですね。
では、次スレが立ってから投下することとします。
>>733 けど、実の息子に「本当に罪に塗れた系統だ……」とまで
言わしめるとは、例えるなら黒ルイズの男性版だったのかも。
ユーゼス人生の春……いや、無理だろうなあ。
あの遺伝子持ちは女を泣かせたことしかないと思う。
アプトムの方、乙です。
テファが召喚したのってまさかガイバーT?
>>736 おお、待ってました
ルイズの状態がアレだから続きが気になる
スレ立て挑戦してくるぜ!
>>739 二メイルを超える体躯の持ち主とあるから違うんじゃない?
自分は、主人公が父親を殺したトラウマから立ち直った辺りから読んでないんだが
ダーメだってよ、スマン↓の人よろしくちゃん
錬金なんて、メイジなら割と誰でも使えるんだから、それだけでちいねえさまが土メイジだという根拠にはならんだろう。
と思ったけど、ヴァリエールの家の門の鎖に固定化がかかってないとは思えんから、その固定化を抜くだけの力はあるのかも。
>>742 ガイバーTも体長メートルは軽く超えてるよ。
ごめん、立てられなかった。
誰か頼む。
カトレアが密かにスクエアだったら土の三段重ねはできるだろうからそれでたいていの鎖は土にできたりして
>>739 身長以外のことが分からないからなんともいえないですね。
外観上の特徴が描写されてませんから。
風系統のタバサは、『錬金』が苦手のようでしたしね(火薬を炭に変える程度)。
……ふふふ、この2人の属性とクラスが明言されてくれれば、どれだけ話の展開が楽になることか……。
スレタイ間違ってる方をスルーしてりゃ落ちない?
753 :
MtL:2009/01/04(日) 23:33:10 ID:vhAfNXq9
結局スレタイが正しい方に投下、ということでよろしいのでしょうかね?
良いんじゃないでしょうか
__
_, '"´ `丶、
/ \
/ ,' / / / ヽ `ヽヽ
l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ
l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/
| l Vf゙i圷/ jl ノィアト、ヘ// / 魔法を使える者を貴族と呼ぶのではないわ、
j l l V_:ソ ´ V:リ /jイノ 敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ。
,' ハ ヘ. ' ` ,' l ! これ、私の決め台詞ね。
/ / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ
//' ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ
/ / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ
/ /./ /¨} ',__∧_j_l::::ハ \ }/
,′ l { /:::/ /::::ヾ ☆Y:::ハ X
{ V r'::::::/ /::::::::::\__j:::::入xぅ/ \
ヽ l { :::/ /::::::::::::::::::V://∠ ',
} ! j/ /:!::::::::::::::::::∧V _二}:ヽ /
/ / { 〈:::::::l:::::::::::::::/:| j/ -ーソ:::ノ /
/ / |ヽ \:::l:::::::::::/∠/j rテ':〃 ( ヽ ,
,. -─── 、
// / `ヽ
/.:./ / / .:. / \
/ .:.:./ / ,斗-- 、:{:. .:. ヽ ヽ
/ /: イ´l .:|l.:.:∧:|.:.:.: .:斗ー ',
l ..:.:|:.:. | ィチ才ミヾヽ.:.:.:/厶.: / .: 〉
l.:.:.:.!:.: ∨ }:ヘ.リ ノ/仟テk';.:./ィ/
ノ.:.::人:. ヽ ゝ-' ト;'ソ//! でも正直それだけじゃゴルゴも貴族だし、
/.:./.:.:.ヽ:. ヘ ` ` |:.: | メビウス結びの紙も貴族になると思うの。
/.:./.:.:.:.::.ノ.:}:. ', __ ,:. |
/.:./.:.:.:.:.:.:/.:.|.:.:. l ´ ´ /.: |
.:.:./.:.:.:.:.:.:.:./_ィ.:.:.:. 小 イ/:.:.:.:. l
.:.〈.:.:.:.:.:./ ./.:. }_,工,.´ー=〈:.:.:.:.. ヽ
:ノ.:.:/ /.:.:.:.: /.、 ∧ ̄入ヽ:.:.:.:. \
/r' ─- 、/.:.:. / ∨_ノ´\l/ \:.:.:.:.: ヽ
.:.:.l /.:.: / \ \ /ヽ/ / ヽ:.:.:.:.:.:.: 〉
/ /.:.: / \ \ ヽソ / }:.:.:.:.: /
\ / / \
\ / / // / / ヽ ヽ ヽ
\ / / ├/十ハー{ } | l |
ヾ、二ヽ、 ノ/ / /リ 、_レ' 〉 /ト 、/ } ハ } /
\ \}:::l ̄:ヾ / / l{  ̄∠ - '´、 !/|/// j/ /
\ |:::l:::::::::::>/ | - ′ `ー //ヘ , -ーァー/ だから、次からは
\ |:::l:::::::::::::{ \ { > /´|.__ \ /:::::::// 「魔法が使えて、かつ背中を見せない者を貴族と呼ぶのよ」
l\ !:::l:::::::::::::ヽ \ ` ´ / ヽ>ー':´:::::::::/ / / って言う事にするわ。
|:::::\ |::::::::::::::::::::::\ ゝ--_ァ‐ ´! \::::::::::::::/ / / 伝記作家の皆さんもそのように倣ってね。
|:::::::::::\!:::::::::::::::::::::::::::〉 ヾ!∧ /::::ヽ \:::::/ / /\
|:::::::::::i::::|:::::::::::::::::::::::::/ 〉-/:::::::::::\ \ /::::::::::l
|::::::::::::i:::|:::::::::::::::::::/ //:::::::::/:::::\ \ハ::::::::::::::|
l:::::::::::::l::l:::::::::::::/ /∨:::::::::::´::::::::::::::ハ 〉::i:::::::::::::l
l::::::::::::::i::ヽ::::::/ /:::/:〉─--:::::::::::/:::::〉 /::::::i:::::::::::::l
. !::::::::::::::i::::::\! {:::::::::/l ヽ:::::::::::::::::::::::/ /:::::::::i:::::::::::::|
!::::::::::::::i::::::::::{ \'´ | \::::::::::::/ /::::::::::::i:::::::::::::!
-─‐- 、
-‐'´ 丶
/ / 〃:./ { ヽ
/ / .:/:∧:l:.. ヽ:.: ヽ:. ヽ:.:.:.',
l :i.:.l.:.:.:.:7メk!八:.:. }厶匕:.jl:..:.:ハ
Vl从 :.:.{/フ必ハ` イ/心 `V:.:.:.:i |
ヽト、:f‘ 乏ン ノ/弋乏. !:.:.: | l え?勇敢な元貴族のメイジはどうするのかって?
小:.:.ゝ ::::: ' :::::: /.:.: i ハ
/..:l :.:人 ' ⌒ヽ ,/.:.: ,' ',
/.:.: l :.:.:.:.> 、. , イ/.:.: / :.:. ヽ
/ .:.:.:./:ヽ..:.:.:.\ j. `´ レ′ ∧:.:.:.:... \
/ .:.:.:.:./:.:/¨ヽ :.:.:.:.ヽ 、 /.:.:. ,'7ヽ、:.:.:.:.:.:.:..丶、
/ .:.:.:.:.:/:._/ _} :.:.:.:.:} _{:.:.:.: {_}} `V:.:.`ヽ:.:.:.:.:..ヽ
{ :.:.:.:.:.:{〃I丁l7/ :.:>ナ戈夫ニニ=ヾ与-ヘ===、、:.:.:.ハ
ヽ :.:</''''`´`レ′///''大'''ヽ:.:.:.:.:.:..\''ー->:.:.:/`\、:/
ヽ:./ _ 〃:://:/<_人_> \:.:.:.: 〉」_jト,>:.:.:.ノ゙ヽと}
r<r ┘ヽ//:.:./ j川 ノ:.:.:.:. / リ ヽ:./ ハ'´ j
/⌒ /:ニヽJ/:.:.:.:.:ハ /∧ヽ/:.:.:.:.:.:/ i !l Y ノ .に/
/ >ヘ._X_).:.:.:.::.:.:.〉</ V :.:.:.:.::.:.:ハ ! l | r イ
__, -ー- 、
/ / ヽ` 、
. /. l l从、 从、| | l
\!」>ヽ'< '7 |!
ノ| __ / ∧ヽ
// >、 _`イ l \\
. 〈 人 トr十一) ヾヽ 〉 〉
ヽl/ノ 〉夲/ /_::Ll. /
r/ /ヾ〈 〈:::::::::\\
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/ イ 〈:::/::/||::ヽ::) ヽ::::ト、 ヽ
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l | f´ヾ`:::/::::∧彡__ノ/!/::::| l /
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. ノ ノ:::::/::::::::::| .!:::::::::::ヽ::::::ヽ」 |
 ̄/::::::/::::::::::::|人!:::::::::::::::::::::::::| \
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,. -ー ´ ̄` 、
/ \ ヽ
{ l l / ハ 、ヽ 、 ヽ ',
从l大ト、ヽ !斗く.l } ト--一-、 じゃあ「※ただし貴族に限る」とでも書けばいいじゃない!
rー'_ノリ| > }ノ < } ∧ _ } トートロジー?知らないわよ!ばーかばーか!ばーか!
ィ' ̄ 人 r -、 / /::::\ ヽ |
〈 /::\`>-ァ' |:::::::::::ヽ | ヽ、_, -─- 、
ヽ `ヽ::::::::ヽ {´{ \__ノ/ l _ 〉
/ ̄ヽ / 〉 }::::::::::::∨ゝ、 `ヽ、` ̄´ `ヽ /
{ |_| ノ\/ ノ`丁フ卞/::::::\ 〉ゝ--、 }. /
`ヾ,´ \ / ノ::/_ ∨ ̄ヽ 〉 /:::::::\.:ヽ / 〈
ノ\ \ /::/´ / / ` 一ァ:ヽ;l / ヽ
=ニ二_ノ\ ヾ,/_/´ー- 、 人 -=<´:::::::::\ /あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part202
/::::::::;ゝ-、 ィ,´ ̄〉__ノ \_ゝ ̄ ̄:::::::::::::::::ヽ
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231078976/ /::::::::::::::::: ̄ゞメ_ノ__ノ:::::::|\___/:::\:::::::::::::::::::::::::::〉
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